この一走に全てを駆けた (デーニッツ)
しおりを挟む

外伝あるいはそれっぽいナニか
ターフを駆ける黄金の残光


あけおめ!ことよろ!(激遅)

これは世界観を共有した外伝です。
タイタンちゃんが現役を退いた後の世代の時間軸の話です。

あっ、そうだ。
プロローグを少し改稿しました。マックイーン世代にスペちゃんが現役だと時空が捻れ過ぎちゃうからね。仕方ないね。


SIDE トレーナー 安堂勝利 

 

 "有馬記念で勝ちたい"

彼女のトレーナーとなった日、最初のミーティングで彼女の目標を語ってもらった時の言葉だ。

 

 私が担当した娘達は皆、お世辞にも勝てるウマ娘ではなかった。しかし、夢を持ち志を持ち、勝負の場に立つことを選んだ"強い"娘達だった。だからこそ、歴史に大きな蹄跡

を残せる様な活躍こそ出来ずとも、重賞で何度か勝利し、そしてターフを去っていった。

 故に私はいつの間にか、"重賞入着バ請負人"と呼ばれる様になっていた。勝てないウマ娘達を重賞で勝負出来るまでに育てられるトレーナーという訳だ。そんな2つ名を戴いてしまったせいか、私の元には勝てないウマ娘達が集まる様になってしまった。どれだけ走っても勝てない、担当トレーナーに見捨てられた。でもせめて一勝したい。

そんな理由で私の所へやって来る。全員を見てあげられた訳ではない。全員を勝たせてあげられた訳ではない。

それでも見捨てられなかった私は、傲慢にもすべてに手を差しのべた。そしていつの間にか、トレセン学園からも最後の受け皿として見られる様になっていた。

 

 それ自体に不満があった訳ではない。しかし、こんな事の為にトレーナーになった訳ではない。様々な名の有るトレーナー達のようにG1レースを何勝も出来る様な才能有るウマ娘達を育成してみたい。野心があった。夢があった。

彼女達が夢や目標を持つように、私にもそれが有ったというだけの話だ。

 だから、彼女が門戸を叩いてきた時も"またか"という感情を持ってしまっていた。既にスカウト等せずとも良いとされ、落ちこぼれのウマ娘達を勝たせてあげるだけの思い出作りをさせる"何か"になってしまっていた。既に私はトレーナーとしては死んでしまっていた。

しかし、彼女は勝ちたいと言った。G1を何勝もしたいと言ったわけではない。しかし有馬記念に出るという事はそういう事だ。

 

 その日、私はトレーナーとして生き返った。彼女も例に漏れず、勝てないウマ娘だった。しかし、後ろ向きな考えから私の所へきた訳ではない。明確に目標があり、夢の為に私へ逆スカウトをかけてきた。その意思の強さに、その走りに私は救われたんだ。

 

常に彼女のすべてを見てあげられた訳ではない。しかし、自分の全てを持って彼女を育て上げた。

今日がその集大成だ。この三年間で勝ち星を挙げられたG1レースは二つ。たった二つ。しかし一つ取れるだけでも、取ることすら出来ずに終わる中で二つだ。

 

「必ず勝ってこい」

 

ターフへ征く彼女へ最後にかけた言葉。情緒も何も有ったものじゃない。でも、彼女は必ず帰ってくる。一着の栄誉を持って帰ってきてくれる。私はそう信じて彼女を送り出した。

 

 

SIDE ウマ娘 クリムゾンワールド

 

 私には何も無かった。皆に称賛されるような才能も、皆に振り向かれるような容姿も。いつだって私は競争では下から数えた方が早いぐらいで。いつだって男の子達から声をかけられるのは最後の最後で。

 

 諦めたく無かった。

 

 あの日、私はメジロタイタンというウマ娘の走りに魅せられた。有馬記念で彼女は歴史に残る走りを見せた。五人がもつれあってのゴールなどケイバ史上、類を見ない大接戦だった。

 

 あんな走りを、あんな闘いを私も…

 

必死の思いでトレセン学園へと入学した。そこで改めて思い知らされた。私の存在など小さなモノなのだと。

入学して直ぐにあるトレーナーの話を聞いた。

 

"重賞入着バ請負人"

 

どんなに勝てないウマ娘でも勝たせてくれるトレーナーが居るという噂話。周りがトレーナーとの契約を済ませる中、選抜レースでも結果を出せず、一人取り残されるだけの私はそんな噂話でもすがるしかなかった。

 

結論から言えば噂は真実だった。私のトレーナーは普通のトレーナーの何倍ものウマ娘達を育成し、重賞へ送り出していた。私は受け入れらるか心配だったが、受け入れられた。私の三年間は辛いものだったと言える。でも、トレーナーとの二人三脚で、そして他の皆からも助けてもらいながらここまできた。

 

G1二勝、G2三勝、G3二勝。それが私の三年間だ。ここに居る他の娘達はもっと勝っている。でも私は此処に立っている。

 

「必ず勝ってこい」

 

何気なく言われてきた言葉がここまで重いものだとは思っていなかった。このレースはトレーナーだけじゃない。チームの皆の思いも込められた言葉だ。

 

「16番人気クリムゾンワールド。」

「勝ち星こそ少ないですが、安定した走りと驚異的な末脚がこの娘の持ち味です。」

「根強いファン人気から有馬記念への初出走となります。」

「"黄金の残光"の二つ名の通り、レース中の時止めが見れるのか。この目で見てたいですね。」

 

私の紹介が終わり、ゲートへの入場が終わる。後は走るだけだ。

 

 

*******************************

 

 

 ガタン

 

「各ウマ娘一斉に飛び出しました。ハナを奪い合うのは4番ストレングスゴールドと、3番シルバーホィール。二バ身後ろから一番人気タワーオブナイト。それを見るように5番キングオブマジシャン。続いて6番ブレイクデビル。外から2番ラブ・ラバーズ。ここまでが先頭集団を形成。」

 

「後方集団を見ていきましょう。三バ身後ろから二番人気エンペラーオブサン。少し後ろから10番ムーンスター。続いて8番ジャッジメント。外から11番エンプレスジャスティス。13番デッドライン追走。三番人気ハイエロファントここにいた。並んで15番ハーミットハングドマン。内から14番テンパランスザフールー。続いて12番ハイプリエステス。最後尾は16番クリムゾンワールド。」

 

「激しい先頭争い。制したのは三番シルバーホィール。タワーオブナイト追走。1コーナーから2コーナーへ向かうウマ娘達。おっと!ここで2番ラブ・ラバーズが仕掛けた。」

 

「長丁場のこのレース。仕掛けるには早すぎますね。場所も悪い。完全に掛かってしまっていますね。」

 

「向こう正面に入って2番ラブ・ラバーズが先頭に。タワーオブナイトと3番シルバーホィール並んでいる。五番キングオブマジシャン追走。4番ストレングスゴールド後方に下がる。」

 

「後方集団を見てみましょう。あぁっと?16番クリムゾンワールドが後方集団先頭を走っている!後方集団が先頭集団へ追い付いてきた!」

 

「早速、黄金の残光が見れましたね。これは一波乱有りそうですよ。」

 

「三番人気ハイエロファントと二番人気エンペラーオブサンが並んで猛追!少し後ろから13番デッドラインが追い掛ける。」

 

「レースの展開が読めなくなってきましたね。」

 

「残り1000mを通過。16番クリムゾンワールド不気味に息を潜めている。先頭は変わらず2番ラブ・ラバーズ。タワーオブナイトが内で脚を溜めている。」

 

「これは…クリムゾンワールドの時止めが見れるかもしれませんよ!」

 

「団子状態のまま、第四コーナーへ。」

 

「ここが仕掛けどころ!最後の直線で全てが決まります!」

 

「抜け出したのは一番人気タワーオブナイト。二番人気エンペラーオブサンと三番人気ハイエロファントが猛追。中山の直線は短いぞ!後ろの娘達は間に合うか?」

 

「今世代の三強はやはり強いか!タワーオブナイト、世代最強を魅せてきます。」

 

「残り400mを通過。先頭はタワーオブナイト。2番手争いにエンペラーオブサンとハイエロファントがしのぎを削る!」

 

「残り200m…。なんとぉ!16番クリムゾンワールドがタワーオブナイトに並んだぁ!」

 

「これが"時止め"…。圧巻です。」

 

「二人並んで苦しい展開。2番手との差は僅か。エンペラーオブサンとハイエロファントもこの闘いに参戦するか!?」

 

「栄光まで残り50m。四人が並んだ!並んだ!ハナを譲らない!」

 

「これは手に汗握る展開だ!」

 

「もつれ有ったままゴールイン!タワーオブナイトが体勢有利か?」

 

「いやいや、エンペラーオブサンとハイエロファント、クリムゾンワールドの体勢も変わりませんよ!これは史上初の四人同着の可能性が有りますよ!」

 

「今、順位が出ました!……、これはぁ!タワーオブナイトとクリムゾンワールドが同着!ハイエロファントとエンペラーオブサンは同着で2着だぁ!」

 

「今年が最後のクリムゾンワールド。執念の同着一位でした。」

 

*******************************

 

 同着であっても一着。それは変わらない。私にしては頑張ったと思う。それでも、先頭の景色を我が物には出来なかった。相手が強かったと称えれば良いのか、誰も寄せ付けない一着を取れなかった自分を責めれば良いのか分からない。

あの三人とは互いの健闘を称えあった。いや、参加していた全員と健闘を称えあった。二着以下もタイムはほぼ変わらず、非常に白熱したレースだったのだ。それ自体を否定する事は出来ない。

 

 しかし、でも、と思ってしまう。私にとってはこれが最後で、これが集大成だったのだ。URAファイナルやドリームリーグでの栄誉とは違う。この三年間でしか得られないモノだった。

 

「入るぞ。」

 

トレーナーが控え室に入ってきた。いつもの優しいトレーナーが泣いていた。

 

「お前はよくやった…。やったんだ…。」

 

「トレーナー、私…私。」

 

そんなトレーナーを見て、冷静になるどころか自分も涙が止まらなくなってしまった。

 

「夢が叶った!叶ったのに…。このレース…、惜しいと思っちゃうの。私は…。」

 

思わずトレーナーに抱きついて泣いてしまう。

夢は叶ったのだ。しかし、満足は出来なかった。今まで、走り続けてきた。ずっと走り続けてきた。

レースに"でも"や"もしも"は無い。どんな結果だろうと等しく走った者は称えられ、同時に一番強かった者が勝者となる。それがレースなのだ。だからこの感情はレースに出ていた他の娘達への侮辱になってしまう。しかし、思う事が止められないのだ。自分が一番早いと証明したかった。

 

「お前は聡い娘だ。分かってるんだろう。仕方ない。でも、この栄誉はお前の物だ。お前だけの物だ。お前は俺をトレーナーにしてくれた。勝利を運んでくれたんだ。お前は立派だよ。」

 

「私、私…。」

 

誰にも顧みられることなどなかった。父や母でさえ私の勝利を本当の意味で信じてくれていなかった。だからこそ、この有馬記念で証明したかったのだ。

私はここにいると。私は誰よりも早いのだと。

 

 ライブが終わり、熱が退きつつある中山で二人は泣き続けた。勝利の喜びと、そして一抹の後悔を洗い流すように…。

 




繁忙期って何だよ!忙し過ぎるんじゃい!

ほんへも執筆してるから心配するなって。安心しろよ!
エタらないよう頑張るからなぁ。応援よろしくぅ!

ぶっちゃけちょっとスランプです。誰か助けて…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロローグ
プロローグ~夢の終わり~


ウマ娘二次創作が沢山書かれてますね。
私もはまりました。
とある二次創作にインスピレーションをもらって書きました。怒られたら消します。

ちなみに主人公の名前は「メジロタイタン」ちゃんです。

追記
改稿と、登場ウマ娘を変更しました。
ウマ娘はスペシャルウィークからライスシャワーへ変更となります。


 「有馬記念」そこに立つのは全てのウマ娘達の夢であり、トレーナー達の夢である。そこに立つため多くのウマ娘達が走る。走った末に落伍していく。

 

 「年末の中山で争われる夢のグランプリ・有馬記念!あなたの夢、私の夢は叶うのか!一番人気を…」

 

 今、私は有馬記念の舞台に立っている。天皇賞春も奪った、天皇賞秋も奪った。そして最後の仕上げがこの有馬記念で勝つこと。可愛い従姉妹達には悪い事をしたと思う。それでも、私は私のために走る。家の名を背負って走るあの娘達をこの足で下す。「メジロ」の"名"にメジロの名を持つ私自身が砂をかけてやる。

 

「さぁ、ゲートイン完了。出走準備が整いました。」

 

 この一年に全てを賭けた。私のバ生の数年間を賭けてもまだ足りない。だからこの先数十年のバ生も全て賭け金にしてこのターフを走る。走り抜けた時、私はどうなるのだろうか。あの人は私の蹄跡をどう評価するのだろうか。何よりもトレーナーは喜んでくれるだろうか。

 ゲートが開いた。一斉に皆が駆け出す。私の全ての終着点がここだ。

 

 

 

 

 

 運命がカードを混ぜ、プレイヤー達に配られた。賭場は一度。一度切り。この一晩の夢が終わった時、破滅しか待っていなくとも、タイタンは全てを賭けた。名誉の為、奪われた全てにケリを着ける為。その為に法外な掛け金と分かっていて尚、運命という悪魔から掛け金を借り出したのだ。コールの時間だ。運命の歯車が今、終末へと回り始める。

 

 

 

 

 

 「最後のスパートも激しい競り合いだ!五人が並び競り合っているぞ。一番人気のトウカイテイオーが頭一つ抜け出したか!しかし、後続が指し返す!誰が一着になるのか!誰も譲らない。ゴールはもう目の前だ!」

 

 息が出来ない。足の感覚も無い。でも、まだ私は走っている。前に進んでいる。マックイーンとライアンが隣にいる。ライスシャワーがいる。トウカイテイオーが抜け出した。まだだ、まだ終わってない。もう脚のことなどどうでも良い。きっと終わったら踊ることなど出来ないだろう。もう一段ギアを入れる。トウカイテイオーを差し返す。マックイーン達も追い上げてきた。やはり駄目なのか…。私は…。

 

 「お前なら勝てる。俺の全てをお前に賭けた。俺のトレーナー人生全てをお前に賭けてる。後の事は全部俺が何とかしてやる。だから走ってこい。」

 

 …そうだ。トレーナーは私に全てを賭けてくれた。私が諦めることは許されない。私自身のプライドに懸けて、私のトレーナーの名前に懸けて。

 

「五人がもつれあったままゴールイン!一体誰が夢の栄冠を手にしたのか!結果は動画判定になります!」

 

終わった…。結果はまだ分からない。何も感じない。誰かの声が聞こえる。立ち上がらなきゃ。最後まで見届けてこそ私は終われる。

 

 「タ…タン…!タイタン!やったぞ見てみろ!」

 

 

ケイジバンガヒカッタ…

 

ワタシノチャクジュンハ…

 

ワタシハ…ワタシハ…

 

ナニモミエナイ…

 

ナニモキコエナイ…

 




初投稿です。
今回はプロローグです。
亀更新になるのはお慈悲~

あっそうだ…。主人公ウマ娘の名前の由来は思いつきです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

名馬達の邂逅~幼年期編~
第一話~名駿との出会い1~


ニ度めの初投稿です。

今回はマックイーンとタイタンちゃんの邂逅の話。
長いので分けます。


 お姉さまと初めてお会いしたのは五歳位の時でしたでしょうか。始めは同い年かと思いましたわ。私の背と同じ位だったのですから。

 だから、新しい遊び相手として連れ回しては、困らせていましたわ。その代わりと言っては何ですが、悪い遊びを教えられましたの。二人でイタズラをして、お姉さまだけが怒られる。苦い、けれど大切な思い出です。それがなければ私はきっとつまらないウマ娘として育っていたでしょう。それ程までにお姉さまは、私にとって私のお姉さまでした。

 

 

 

 

  

 

 

 メジロタイタンは両親に連れられ、メジロ家の本邸にいた。何でも当主の孫娘、それも本家筋の者の話し相手をしろとのお達しだった。

 

 両親は共にメジロ家の使用人として働いている。父は庭師、母は屋敷メイドとして。だから、私もマナーは生まれた時から教え込まれていた。将来、母の後を継げるようにと。別に誰かにそう頼まれた訳ではない。ただ、メジロ家の使用人という仕事は世間一般からすれば安定した仕事だ。ただ、両親は私の幸せを願って私をその様に育てていただけなのだ。

 

 私には他の子達のように、遊園地へ連れていって貰った記憶は殆ど無い。クリスマスだって家族三人で祝った事だって数える程。一人でご馳走を食べ、一人でプレゼントを開ける。私にとっての普通が他の子にとっての普通ではない事には気付いている。でも、私の両親はメジロ家の使用人として生きる事を選んだ。それ以外の生き方を知らないのだ。

だから…、私はまだ顔も見たことの無いメジロ家の次期当主様が嫌いだった。私から家族を奪う人達を好きになることなど出来はしない。否、現当主様だって私の敵。でも、彼女達がいるから私は生きていられる。

 

 

 タイタンは"お嬢様"の部屋の前で深呼吸をする。これからの自分の振る舞いが、父と母の築いてきた信頼を左右する。緊張しない訳がない。まだ、使用人として働くには幼すぎる彼女にだってそれ位は理解出来ていた。

母に習った様に、大きすぎず小さすぎず、しかし確かにノックをする。

 

「誰かしら?」

 

扉の向こうから声がした。

 

「本日からお嬢様のお話し相手を勤めさせて頂きます、メジロタイタンでございます。」

 

悪感情を覚られぬよう、しかしわざとらしくならぬ様、努めて平坦な声で答える。

 

「まぁ、貴女が…。入って頂戴。」

 

「失礼いたします。」

 

部屋にいたのは芦毛の少女だった。自分とは違う世界を生き、自分とは違う世界を見る、正しく人の上に立つ人物。一目で理解した。出来てしまった。嗚呼、成る程、これがメジロマックイーン、メジロ家至宝のウマ娘。同じウマ娘でも"格"が違う。

 

「あの…、タイタンさん?」

 

「失礼いたしました。お嬢様…。改めて自己紹介を、

私はメジロタイタン。本日より、貴女様のお話相手を勤めさせて頂きます。」

 

「何故そんなに他人行儀なの?貴女も"メジロ"なのでしょう?」

 

良くもまぁできた娘だと考える。五歳でこんなしゃべり方が出来るのは育ちの良さが伺える。などと、自分を棚に上げ考える。

 

「確かにメジロでは有りますが、私は分家も分家。父方の曾祖母がメジロの家の者であった為にメジロを名乗っているだけにございます。また、私はあくまでお嬢様のお話相手役。主と使用人の関係でありますれば。」

 

「そんな難しいお話は分からなくてよ。それより遊びましょう。私、おままごとがしてみたいですわ。ライアンもドーベルもやったことが無いと言っていましたから、私が一番乗りですわ。」

 

結局、その日はマックイーンお嬢様に付き合い"おままごと"をして終わった。

 

 こうして私の使用人としての一日は終わった。両親はまだ仕事があるとの事で一人で家路に着く。きっと今日も一人でご飯を食べて、一人で寝る。そして明日が来る。

物心着いたときからの習慣だ。でも、明日が来れば芦毛の彼女に会える。そう思うとそう悪い気もしなかった。

 

 

 




さっさと曇らせるんだよ。あくしろよ。という方。分かります。
でも待って下さい。積み重ねがあってこそ曇らせが映えるんです。

だから(亀更新なのは)許して


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第ニ話~名駿との出会い2~

続き行くよ~


 朝が来た。学校が終わればまた、メジロ家へ出仕しなければならない。正直、手のかかる従妹の相手ばかりは飽きる。たまには学校の友達と遊びたいと思う。しかし、与えられた仕事はこなさなければならないし、懐いてくれているマックイーンの事を思えば悪い気にはならなかった。

 

 

 学校が終わり、皆が下校する。私はそのままメジロ家本邸まで歩く。最初は一度帰宅してから出仕していたのだが、お嬢様たっての希望により下校後は帰らずお嬢様の部屋まで出向くようになっていた。

 

「お嬢様、タイタンが参りました。」

 

「待っていましたわお姉さま!」

 

儀礼的なやり取りの後、部屋へ入る。また、学校での話しを求められるのだろう。身長はマックイーンとあまり変わらないが、年上な私の話はマックイーンにとっては興味深い話ばかりなのだろう。

 

「今日もお話を聞かせて下さいまし。お姉さまのお友達のお話が聞きたいですわ。」

 

「クイーン・デンドロビウムのお話ですか?いかに彼女と言えども、そう毎日おかしな事をしている訳ではありませんよ?」

 

「その方もウマ娘なのでしょう?私、メジロのウマ娘以外の方には会った事が無いので…」

 

「であれば、今日はこのような事が…」

 

 

 

 

 楽しい時間というものはあっという間に過ぎていくものである。だから、気が付いた時には終わっているという事は良くある事だ。

ボーン、ボーンと振り子時計が時間を伝える。それは二人がさようなら、また明日をする時間。全国の子供達が等しく共有する時間であった。

 

「もうこんな時間…。もっとこの時間が続けば良いのに…。」

 

「マックイーン、また明日会えるわ。それに、ずっと一緒だと疲れちゃうわ。」

 

「お姉さまと一緒の時間ならそんな事無いわ。」

 

「それは今だから言えるの。」

 

 二人の時間。この時だけはタイタンとは別にいる付き人も席を外す。それはマックイーンがマックイーンとしていられる時間を邪魔してはいけないという気遣い、メジロの一族の期待を一身に背負うマックイーンへの優しさであった。タイタンもそれに気付いていたから、この時だけは口調を崩す。彼女にとって嫌いな相手の一人であっても、自分に懐く妹分を邪険に扱う事は出来なかった。

 

「お姉さまもここに住めば良いわ!おばあ様に言えばきっと許して下さるはずですわ!」

 

それはそれとしてとんでもない事を宣う妹分に辟易しつつ、何時もの口調で話す。

 

「お嬢様、ここはお嬢様だけの家では御座いません。

いかにお嬢様のお願いでも、御当主様はお許しになられないでしょう。」

 

「都合が悪くなるとそういう話し方をするお姉さまは嫌い…。」

 

「分かってマックイーン。そういう訳にはいかないの。また明日会いに来るわ。それに明日はメジロドーベル様が来るのでしょう?楽しみにしていたお茶会も有るのよ。なら、楽しみはとっておかなくちゃ。ね?」

 

駄々をこねてむずるマックイーンを抱きしめ、諭すように話す。自分に妹が居ればこんな感じなのかと思いつつ、話し続ける。

 

「貴女は良い娘だから分かるでしょ?また、明日。ね?」

 

その姿はまるで姉妹というよりは親子のようであった。

それはマックイーンが何処かに置いてきてしまった"何か"をタイタンに求めた結果なのだろう。

 

さようなら、また明日。

マックイーンが知らずの内に求めていた温もりは明日までお別れとなった。




パパ~!(唐突な親子要素)
あっ…そうだ、おいドーベル。お前マックイーン達が遊んでる時チラチラ見てただろ?
手(友達の輪)を入れる専門家を呼んでやるからお人形持って神妙に待て(脅迫)

頂いた感想の情報から親子要素をブチ込んで見ました。
プロットなんて有ってないようなモノだから仕方ないね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三話~茶会にて~

お ま た せ !
遅くなって申し訳ナス。
なんでもするから許して。(なんでもするとは言ってない。)

今回はメジロドーベル回。やっぱこう、自然に対面させるとなるとマックイーン経由になるのは当然かなって。

追記
誤字の修正しました。
第四話は執筆中です。
もつ少しだけ掛かるんじゃ…。


 今日のタイタンは朝からメジロ家本邸にいた。今日が休日だからというのもあったが、メジロ家の中でもかなりの力を持つ分家筋の娘であるメジロドーベルが遊びに来る日なのだ。故に、話し相手役であるタイタンも母と共に出迎えの準備に奔走する。

 

「タイタンったら何をしていますの?」

 

「本日はメジロドーベル様がお見えになる日です。

なので、お迎えの準備を…。」

 

「駄目よ。貴女はこっち。」

 

忙しい中お嬢様が私を拉致していく。はっきり言ってかなりの修羅場なので止めて頂きたいと思うタイタンだが、主の勢いに負けて連れていかれる。

 

「さぁ、直ぐに着替えて!」

 

連れていかれ放り込まれた部屋には、普段の自分は絶対に着ることのないドレスがかけられていた。

 

「お嬢様、これは一体…?」

 

「今日の貴女は私達の従姉妹として此処にいることになりましたわ。おばあ様がそう決めました。」

 

本当ならとんでもない事だし、嘘でもヤバい事を告げられた。

 

 

 

 

 

 数刻後、タイタンはメジロマックイーン、メジロドーベルと共に紅茶を飲んでいた。マックイーンは楽しそうだが、非常に居心地が悪い。自分がこの場にいる事もそうだが、メジロドーベルからの重圧が凄いのだ。まるで親の仇かのような目でこちらを見ている。

 

「…それで。どうしたのドーベル?」

 

「いえ、マックイーン。この娘は?」

 

「そう言えば紹介がまだだったわね。この娘はメジロタイタン。貴女と同じメジロ家の一人よ。」

 

「メジロタイタンと申します。」

 

それ以上に言うべき言葉が見つからず、名乗るだけにとどまる。

 

「そう…。私はメジロドーベル。マックイーンの゛従姉゛よ」

 

何故か従姉を強調して名乗られた。いや、何となく意図は分かる。つまり、ドーベルは拗ねているのだろう。ドーベルとマックイーンはかなり仲が良い。メジロ家に仕える様になる前から知っていた。庭師の父とメイドの母の娘でしかない私が知っていた位だ。その仲の良さはかなりのものだったのだろう。そんなところに同じメジロ家とは言え、遠縁過ぎてほぼ無関係な分家の自分が可愛い妹分の話し相手役をしているだけでなく、プライベートではまるで姉の様に振る舞っている。今までは影も形も無かったぽっと出の血族がそんな位置に着いたのが面白くないのだろう。ドーベルは少々人見知りの気が有ると、他のメイド達が話しているのを聞いたことがある…。気持ちは分からなくも無いが、良い迷惑である。

 

「ご安心下さいドーベル様。今日は訳有って同席させて頂いておりますが、私は一介のメイドに過ぎません。」

 

一度言葉を切り、ドーベルだけに聞こえるように耳打ちする

 

「貴女からマックイーンを盗ったりしないわ。」

 

ドーベルはまるで心を読まれたかの様な視線を向けて来る。

 

「私は一介のメイドですが、お友達になって頂けると嬉しいですわ。」

 

「まぁ、何を言っていますの。こうして一緒にお茶を飲んでいるのよ。もうお友達も同然ですわ。そうでしょうドーベル?」

 

「う…、うん。あの、よろしく…。」

 

「こちらこそ、お願いしますわ。ドーベル様。」

 

これがメジロタイタンとメジロドーベルの出会いだった。

 

 




あ"あ"~投稿する音~
私生活が忙しすぎるんだよね。それ、一番言われてるから。

ウマ娘やる暇が無いね…
ガチャはバクシンしました。

newきゃら、new衣装…ガチャ…うっ…ふぅ…

また、次も遅くなります。
気長にお待ちください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四話~茶会の後~

待たせたな!
続いたので初投稿です。

こうなんと言うかですね。コンスタントに投稿出来る人は尊敬します。

追記
脱字の修正を行いました。


 今日の私は機嫌が悪かった。マックイーンに会えるのは嬉しい。しかし、そのマックイーンにメイドが付いたというのだ。それが気に入らない。

 私達の一族は名家だ。顔どころか名前すら知らない"親戚"が大勢いる。だから、メイドがメジロを名乗っている事自体はどうでも良い。しかし、メジロを名乗るウマ娘というのが気に入らない。メジロを名乗り私達に近づき家の威光にすがろうとするウマ娘がいる。きっとメジロタイタンとかいうウマ娘もそんな輩の一人なのだ。だからマックイーンに近づく敵は排除しなくてはと思う。決して、マックイーンがあまり構ってくれなくなったのが理由ではない。最近、マックイーンがあまり構ってくれなくなり、会えてもメジロタイタンとの話ばかりされるのが気に入らないとかでは無いのだ。

 

 

 お茶会で初めての顔合わせ。第一印象は良くも悪くも普通であった。他のメジロに連なるウマ娘達のような覇気が感じられない。どこまでも平凡なウマ娘。ウマ娘である以上、走ることには拘りは有るのだろう。プライドや思いも有るのだろう。しかし、名を残す名バ達の様な"オーラ"が感じられないのだ。だから、今までもそうだった様に顔も知らない"親戚達"の一人として私達に取り入ろうとしている一人だと思った。

 

 

 

「貴女からマックイーンを盗ったりしないわ」

 

 自己紹介の後、私だけに聞こえる様に耳元で囁かれた。

その時、私はメジロタイタンを勘違いしていた事に気が付いた。彼女はメジロの家に執着などしていない。今まではマックイーンと親しい親戚を除けば皆、私の機嫌取りばかりしてきた。

 でも、タイタンは私の様子を見てその上で本当に心の底からそう言った。少なくとも、私へ取り入ろうとしての言葉では無いことだけは分かった。私にはそう感じられた。

 

 

 お茶会の後、私はタイタンと連絡を取り合う様になった。とりとめのない日々の事だったり、マックイーンの事だったりを沢山話した。そして、他のメジロ家の者達には隠していた少女漫画の話も。笑われるかなとも思った。でもそんなことはなく、むしろ彼女の方から少女漫画の話題をふって来てくれるぐらいだった。

 

私にとって初めての年上の、しかし、両親やメジロ家の重鎮達よりも年の近い親戚。私はいつの間にか、マックイーンだけでなく、タイタンと遊ぶことも増える様になっていた。互いの家に呼び合ったり、流行りの少女漫画を貸し合ったり。マックイーンが姉と慕い、他の目が無いとき等は崩した話し方をする様に、私もまた、タイタンをお姉さまと呼びメイド達や両親の目が無い時にはマックイーンと同じ様に話す様になった。

 

 「ねぇ、お姉さま。私、貴女に会えて良かったわ。」

 

 「唐突ね。何か有ったの?」

 

 「ううん。ただそう思っただけ。」

 

 私はタイタンお姉さまに抱き付き、少し困ったような顔をされながら抱き締め返された。

 

 

 嗚呼、だから、私達の罪はきっと彼女に会ってしまった事。過度な期待を掛けてしまった事。何よりも彼女と一緒に居たいと、"走りたい"と思ってしまった事だと気付くのが遅すぎたのだ。それが私達三人の罪…。

 

 

 




次の話はメジロライアン姉貴との邂逅になります。
それからメジロ家総裁と"お話"してトレセン学園へ入学していきます。

曇らせはもう少しだけ先になるんじゃ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第五話~走る者達~

お〇んこぉ~(気さくな挨拶)
今度はメジロライアン姉貴との邂逅です。
今回は(ライアン姉貴の描写はほぼ)無いです。


 今日はマックイーンお嬢様のレース教練の日だ。まだ、小学校に入ってすらいない内から…とも思うがここはメジロ家なのだ。そして、メジロ家の悲願、"親子三代での天皇賞春秋連覇"の期待が掛けられているのがメジロマックイーンというウマ娘なのだ。私の様に、母親からレースに出ることを反対される様な"ハズレ"のウマ娘等ではないのだ。

だから、何故私が動きやすいトレーニングウェアを着てマックイーンとそして、メジロライアン"お嬢様"と共に並走等しているのかが分からない。分からないがマックイーン辺りの我が儘だろう。私は考えるのをやめ、せめて年下の妹分達の練習の邪魔とならない様、脚を動かした。

 

 

 数刻後、メジロタイタンは疲労困憊だった。まぁ、当然の事ではある。メジロマックイーンも、メジロライアンもメジロ家の次世代を担う優駿だ。対してタイタンはあくまで傍流も傍流で、名前だけメジロ家に名を列ねている分家筋のウマ娘である。母や父方の曾祖母がウマ娘ではあったが有力なウマ娘とは言えず、地方レベルで中堅、中央レベルまでいくと、ギリギリメイクデビューを果たせた程度の戦績しか残していない。それにタイタンが一人の子供として過ごしていた間に、二人はレースの教練を受けている。タイタンもウマ娘として、最低限のモノは受けているがあくまで学校教育の、それも小学生低学年レベルまでである。そもそも、メジロ家専属のトレーナーからの教育を受けている二人とは初めからレベルが違う。

 

「ゴホッ、ゴホッ…。ヴッ。」

 

 乙女として、他人には凡そ聞かせることの出来ない声を出しつつ息を整える。何故、こんな自分までメジロ家の英才教育を一緒に受けているのだ。余りにも荷が重すぎる。しかし、マックイーンやライアンお嬢様は息は上がっていても無様な姿は見せていない。

 

「大丈夫ですか?お姉さま?」

 

「…ご心配には及びません。」

 

マックイーンの優しさが心を苛む。いくらなんでも年下の前で辛い等という言葉は出せない。ましてや自分はお付きのメイドなのだ。時々、マックイーンやドーベルと遊ぶことは有っても、本当の意味での親戚付き合いという形にはならず、一歩引いた所から遊ぶことになる。

 つまり年上としてのプライドと、使用人という立場から、主達よりも先に音を上げる事などタイタンには考えられない事であった。

 

 

 それはそれとして、メジロライアンがとても静かだ。マックイーンから聞く限りではこのような様な場だと活き活きとしだす様な娘のはずだ。

 結局、二言三言、言葉を交わしたのみで並走やフォームの指導、そして3人でのレースを行いその日の教練を終えた。

後日、プライドだけでマックイーン達と競り合った反動か、起き上がることすら億劫になる程の筋肉痛に苛まれる事になり、マックイーンに心配される事になるのであった。

 

 




はぁ"ぁ"ぁ"(畏怖)
なんだこのウマ娘は、たまげたなぁ。
マックイーンやライアンと同じトレーニングを受けて音を上げないとかおかしい…おかしくない?

タイタンちゃんはマックイーン達の様にレースのトレーニング等していません。あくまで子供です。

ライアン姉貴を待ってた兄貴姉貴達、次回からネットリ(当社比)描写してやるからななぁ?
楽しみにしとけよ?

次回をお楽しみにお待ち下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第六話~追いすがる者~

今日も気持ち良かった(意味不明)ので初投稿です。

プロローグでの誤字報告兄貴姉貴ありがと茄子!

今回は(レースの描写が)有りまぁす!
(クオリティは)ナオキです…。


 今日の教練はマックイーンとの合同教練だった。いつもならそこにドーベルが加わる所だが違った。メジロタイタン、最近マックイーンに付いた世話係が一緒になるらしい。話を聞くところによると、ウマ娘としてはそこまで期待の持たれる実力は持っていないらしい。マックイーンの"お願い"で急遽参加する事になったという。マックイーンやドーベルが仲良くしている様だがそれが何だか面白くなかった。きっと嫉妬なのだろう。

 

 

 

 フォームの指導と基礎トレーニング、そして並走。私とマックイーンには慣れたものだった。しかし、メジロタイタンは違ったようだ。まぁ、マックイーンの付き人だというのだから当然だろう。私も初めの頃は辛かったが、この程度は準備運動だ。

 

 

「ゴホッ、ゴホッ…。ヴッ。」

 

淑女としてはかなりはしたない声を出しながら息を整えているメジロタイタンに、そのガッツを認めて顔をかけようとしたところでマックイーンが先に声をかけた。

 

「大丈夫ですか?お姉さま?」

 

「…ご心配には及びません。」

 

その様子を見て私は不機嫌になった。やはりこいつは…。

次の教練はミニレースだ。そこでこいつを潰す。

 

 

 ゲートに入る。この瞬間が好きだ。周りの全てが静まりスタートの一瞬の為に世界から切り離される。

 

 ガタン

 

ゲートが開き、私を含めた三つの影が飛び出す。

 

ハナを取ったのはメジロタイタンだった。その後ろに私が付き、マックイーンが並ぶ。このレースの距離は2000m。このままタイタンを先頭に走らせ、疲れた所を抜き去ってやる。恐らくマックイーンも同じ戦法を取る筈だ。

 

最初のコーナーが迫ってくる。タイタンはまだ、速度を維持したまま走っている。レースの駆け引きが分かっていないな…。外側に膨らんでいく。あえてマックイーンを先に行かせる。差しの私が此処でハナを取る意味は薄い。

マックイーンが減速する。私も合わせて減速し、足を溜める。タイタンが後ろに沈んでいく。横目にタイタンを見ながらマックイーンへ集中する。やはりタイタンはレースに、いや"走る"事に慣れていない。

 

二つ目のコーナーを過ぎ、再びの直線。私とマックイーンの一騎討ち。しかし、まだ距離は半分以上残っている。足を溜めつつマックイーンにプレッシャーを掛ける。まだだ、まだ競り合う所ではない。マックイーンが少しスピードを出した。こちらの戦法を崩すつもりか。挑発にのってやろう。離れ過ぎない程度にこちらもスピードを出す。

タイタンの事が頭から抜けていた事に気付き、一度後ろを振り返る。4バ身程後ろを走っている。かなりヘロヘロな様子だ。あの状態ならもう追い付いては来ないだろう。前を向きマックイーンに再度注意を向ける。

 

三つ目のコーナーに差し掛かる。此処が勝負の仕掛け処だ。徐々にスピードを上げ、2バ身先を走るマックイーンへプレッシャーを掛けつつ前へ出る。四つ目のコーナーが見えてきた。マックイーンとは半バ身差だ。このまま直線へ向けて競って行く。そこで後ろから何かが追いかけてくる予感に襲われた。後ろにはタイタンがいる。しかし、かなり後ろの方にいる筈だ。マックイーンも何かを感じたのか更にスピードを上げた。

 

最後のコーナーを抜け、最終直線に入る。

また、プレッシャーを感じた。そして、重圧への恐怖は驚愕へ変わる。メジロタイタンが横にいた。

そして、驚愕は恐怖へ再び塗り替えられる。タイタンが大きく見えた。マックイーンも同じ事を感じたのが更にスピードを上げていく。しかし、完全にペースを崩された。

気付けば私もマックイーンもタイタンに抜き去られていた。

 

結局、レースの結果は1バ身差でタイタンが一着、私とマックイーンが同着で二着となった。

 

教練の後、私はメジロタイタンへ声をかけた。

 

「本当に、レースは初めてだったの?」

 

「私はメジロマックイーンお嬢様のメイドですから。」

 

「…。次は負けないから。」

 

握手をしてその日は終わった。

以後、私は何かとタイタン姉様と勝負をするようになった。タイタン姉様は何時でも全力で返してくれた。レースでも、勉強でも。あの二人が姉様を慕う理由が分かった気がした。

 

 

 

 

 

 きっと私達はあの人に目を焼かれてしまったのだろう。だから、あの人の本質に気が付く事が出来なかった。タイタン姉様が抱えていたモノに気付かず背負わせてしまったのだ。だから、あんな事になってしまったのだ。

 

 「憧れとは、理解から最も遠い感情だ」

 

何処かで聞いた台詞が頭をよぎった。

私達に出来る事は何だろうか。

 

こんな時に限って、プロメテウスの知恵を授けてくれる人は遠いところにいる。

 




メジロライアンはこんな娘じゃないという兄貴姉貴、ごめんなさい。
これは私の解釈、あるいは別世界線のメジロライアンだと思って頂ければ。

因みにタイタンちゃんがレースに勝てた理由は根性です。
まだまだ身体も出来ていない時期なら何とかなるかなぁって。(小心者)

つ↑ぎ↓は総裁とのお話になります。
そろそろ雲行きを怪しくなっち、雲行きが怪しくなった、怪しくするんだよ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第七話~本家にて~

おち〇ち〇!(新挨拶)
筆が乗ったので初投稿です。
少々強引かもしれませんが、話を動かすにはこれが精一杯だったんです。(言い訳)


 あの娘達には酷い事をしてしまった。しかし、メジロ家の総裁として、一族を率いて行く者としてはああするしかなかった。だから、言葉が足りない事があると分かっていたにも関わらず、あの娘一人を呼びつけた事は私の落ち度だ。

 

 

 

 

 その日、メジロタイタンは一人、メジロの総裁と対面していた。

 

 「楽にしなさい」

 

そう言われるが、タイタンは緊張でガチガチになっていた。当然であろう。普段から言葉を交わす間柄であればまだしも、一族の総元締めたる"総裁"に用件も告げられず呼び出されて平静を保てる程、タイタンは豪気な性格をしていない。しかも、小さな円テープルの上にはポットが置かれ、茶菓子まで用意されている。そこに座れと言われたのだ。

 限りなくメジロ家からはかなり遠縁の分家の自分が受けるべき待遇ではない。もしや、クビか?いや、であればこれは一体なんなのだ?頭の中で疑問が渦巻く。

 

 「貴女のことはマックイーンから聞いています。あの娘の世話をしてくれてありがとう。」

 

 「いえ…、それが私の務めですので…。」

 

消え入るような声で答える。総裁の考えが全く分からない。

 

 「貴女は良くやってくれているわ。マックイーンの世話に教練の相手、プライベートでもあの娘の支えになってくれている。」

 

 「恐縮であります…総裁。」

 

 「だからこそ、総裁として貴女には報いなければならない。貴女には"才能"が無い。しかし、…」

 

"才能が無い"その一言を聞いた先からタイタンは総裁との会話を覚えていない。ただ、母からも父からもお咎めが無かったのだからきっと受け答えは問題無かったのだろう。その筈だ。

 タイタンの胸を占めているのは絶望と後悔、そして生まれへの恨みであった。自分が平凡なのは分かっていた。分からされていた。マックイーンやドーベル、ライアンと走れば走る度その差を感じていた。自分は年上だ。全身全霊を掛けて彼女等の走りに着いていく。全てを出し切ってだ。模擬レースでは彼女等に勝てた事は最初の一度切り。その後はどれだけ走っても良くて二着。基本は四着だった。

 彼女達の全力を引き出せていない。模擬とは言えレースだ。本気でそれに挑む。しかし、レース後の三人は息も上がっていない。互いの健闘を称え合うそれが虚しいモノに見えていた。それでもあの優駿達を脅かす事が出来る。何も無い私でもその程度は出来るのだと思っていた。

だから努力した。あの娘達と共に走るウマ娘として。姉と慕ってくれる彼女達の期待に答える為に。しかし、そのプライドは容易く打ち砕かれた。何よりも恨みながらも折り合いを着け、仕えてきた者。他ならぬ主君の手によって。

 

 何故、私はこんな所に居るのだろうか。父からも母からも何も期待されてこなかった。友達はいない訳では無かったが、彼等彼女等が遊んでいる時、私はこの家に仕えていた。

 

 そう言った意味ではタイタンには理解者と呼べる者は一人もいなかった。友とは深い仲は築けず、マックイーン達は親戚ではあっても仕える者とその主君。仕える者としては近すぎる関係ではあったが、最後の一線だけは越える事は出来なかった。そうあれかしと育てられた結果であり、タイタンなりの、年上のお姉さんであるというプライドがそれを許さなかったから。つまるところ、メジロタイタンというウマ娘は孤独であったのだ。

 

タイタンの耳に、何処かで何かが音を立てて崩れる音がした。

 

 

 

 

 

否、私がすべきであったのは一人の人として、マックイーン達の祖母としてあの娘に声を掛けるべきであったのです。それが出来ないのであれば、メジロを率いる者としてあの娘達の"願い"を切り捨て、"総裁"として振る舞うべきだったのです。

 

 

 




えぇー本日の採点をしたいと思います。
100点満点です。(自信過剰)

は?(殺意)

後一話、マックイーン達や周囲からの視点を入れてから次章へ進みます。

応援してくれている兄貴姉貴達、謝謝茄子!
書き終えるまで俺も走り続けるからよぉ…。止まるんじゃねぇぞ… 


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第八話~幼年期の終わり~

初投稿でした。


 あの娘が生まれた日、私達夫婦にとっての最良の日は間違いなくあの日でした。私の可愛い娘。この子には幸せになって欲しい。だからこそ、あの娘にしてしまった事は母として失格でした。

 私は余りにも娘を見ていなかったのです。だからあの娘が苦しんでいた事に気が付いてあげられなかった。思えば、家族として過ごした記憶が余りにも無さすぎました。

クリスマスも誕生日も、授業参観も何もかも仕事を理由に蔑ろにしていました。それなのにあの娘には私の理想を押し付けて、話をしようともしなかったのです。あの娘から何かを求められた事は一度も無かった。それを素直に育ってくれていると、勘違いした。あの娘はもう私に何かを求める事を諦めていただけだったのに。

 

 

 僕は親として失格だった。あの娘が生まれた時、家族を護っていこうと誓ったのに。

 父親として、僕は仕事に打ち込んだ。それが家族の為だと信じて。しかし、それは家族を顧みない事とイコールでは無い事を理解していなかった。間近で反面教師となる両親を見てきていた筈なのにだ。それでも僕なりに、タイタンに出来る事があるとクリスマスや誕生日にはプレゼントを用意したし、やりたい事があるならやってみなさいと声を掛け続けた。時々、何かを求める様な目をしている事には気付いていたんだ。しかし、娘とのコミュニケーションを取る機会が少なかった僕は気付かない振りをして、逃げてしまったんだ。きっと、タイタンは僕達を許してはくれないだろうね。

 

 

 私にとってのお姉さまは完璧なウマ娘でした。何でも知っていたし、脚も速かった。私の知らない世界を教えてくれて、私をウマ娘として一段先へ連れて行ってくれる。そんなお姉さまの様に誰かを導く様なウマ娘になりたかったのです。だからお姉さまが何かに悩んでいる事なんか夢にも思いませんでした。

 だから、私達は願ってしまったのです。同じ学舎で学び、そして同じレースで競い合う事を。

私の贖罪はレースで勝つこと。お姉さまに幻想を見てしまった私は先へ進む事を、勝ち続ける事しか許されなくなってしまったのです。それがメジロの刺客として天皇賞連覇の悲願を背負って立つ私の呪い。お姉さまの全てを否定して見せる事が私の唯一の贖罪の方法なのです。

 

 

 タイタンお姉さまは私の知らない世界を教えてくれた。私のトリプルティアラの夢を笑わなかった。メジロ家の三世代の天皇賞連覇の悲願に縛られる必要はないと言ってくれた。メジロ家の者としては失格だったのだろう。けれどそう言ってくれる人が、ウマ娘が一人でも居てくれた事で私は救われたんだ。でもタイタンお姉さまにはそんな人が一人でも居たのだろうか。

 結局、私達はタイタンお姉さまに背負わせてしまった。無責任な希望を。私はどうやってタイタンお姉さまに謝れば良いのだろう。

たった一人で立ち続けたお姉さまの強さを知ったのは皮肉にも、トリプルティアラの懸かったターフの上だった。

 

 

 タイタン姉様はいつだって全力だった。勉強も教練も、遊びも。タイタン姉様と競う事はアタシの楽しみだった。だから、余りにも姉様の事が理解出来ていなかった。アタシはきっと姉様と並び立てるウマ娘になりたかったんだ。 

 周りからはスポーツ少女だとか、麗しき実力者なんて呼ばれるけれど、タイタン姉様はもっと先を行く。追い付き追い越せ。マックイーンとドーベルと共に姉様を追い詰め過ぎてしまった私達に出来る事はこれ位。

姉様を支えられる存在。きっとそれにはアタシ達はなれない。メジロである者とメジロに仕える者では視座が違う、立場が違う。それに気付けたのはメジロタイタンが私達に仕えてきてくれたからだ。もっと早く出会えていれば、違う形で出会えていれば。

メジロ家のウマ娘だからこそ出会いがあったのだという事実は皮肉な話だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『中央トレセン学園へ入学せよ』

 

 メジロ家の総裁からそんな命令が言い渡されたのは、年の暮れ。受験を控えた学生達は最後の追い込みをかけている時期。タイタンは普通の中学校への進学を考えていた為、受験勉強などしていない。正に青天の霹靂である。

あの日から、タイタンは何も変わっていなかった。正確には諦めてしまった。先へと進む気持ちが萎えてしまったのだ。だからタイタンはあの日以降、足踏みを続けていた。

 

 この命令を持って来たのは両親であった。母は難しい顔をしていた。父は誇らしい様な、申し訳なさそうな色々な感情が入り交じった顔をしていた。

 母は事あるごとに、レースになど出るなと言っていた。元競争バとして、中央を走っていた母はメイクデビューこそ果たす事が出来たが、その後が勝てなかった。結局OP戦、PreOP戦で少し白星を上げられただけにとどまった。

だからそんな事を言い続けてきたのだろう。"夢"など見るなと。私は母には何も言えなかった。負けを知っているから、勝てなかったから諦めてしまった姿に嫌悪を覚えたから。

 父は敷かれたレールの上を歩く人生を強いられ続けてきたらしい。だから私には好きに生きろと、自由に生きて良いのだと言い続けてきたのだろう。その様に言う割には私がメジロ家に仕える事になった時、何も言わなかった。きっと父はそれ以外の生き方を知らないのだろう。

 そんな父でも母だけは自分で選んだのだと言っていた。どうせなら、その選択を、選ぶ勇気をもっと出して欲しかった。そんな父が情けなく見えてしまったのは、きっと私には何も無い弱い存在だからなのか。

 

 …腹がたった。私から何もかも奪い、お前には何も無いのだと言われた。こんな身勝手な連中に私は生かされているのか。胸に灯った怒りの炎は、心の炉にくべられた何もかもを焼いて大きく爆ぜた。

良いだろう。私には何も無い。それで良い。それが良い。私の周りを取り巻く全てを見返してやる。その為に進学しよう。そこで私の全てを賭けて走ろう。そして思い知らせてやる。お前達の足元に居る者達はお前達に安寧をもたらす者ではないのだと。 

 

 その日、メジロタイタンの時間が再び動き出した。




タイタンちゃんは孤独なボッチです。
友達100人出来ませんでした!
残念でしたぁ!(人間の屑)

周りに人は居たんですけどねぇ。
どうしてこうなってしまったのでしょうか。
不思議ですねぇ~。(他人事)

次話からは新章に移ります。
覚悟完了のタイタンちゃんが自らも、周囲も曇らせてくれるのをご期待下さい!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

巨人、トレセン学園へ
第一話~始まりの季節~


新章開始なので初投稿です。


 春、出会いと別れ、始まりの季節であり終わりの季節である。

 メジロタイタンは日本ウマ娘トレーニングセンター学園にいた。冬の間、タイタンはトレーニングと勉強で死にかけていた。全ては日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園入学の為。急な総裁からの入学命令であったが、拒否する事は出来ない。メジロ家に名を列ねるとはそう言う事なのだ。

 

 さて、そんな必死の思いで入学したトレセン学園だが、見知った顔が居た。"クイーン・デンドロビウム"、タイタンの数少ない友人であり、ライバルであったウマ娘である。

 

「久しぶり~。まさかあんたも此処に入るとは思わなかったよ~。」

 

「私もつい12月まではそう思ってたよ。」

 

「家の事情ってやつ?あんたも大変だね~。」

 

「本当に、あのクソババアを何度殺してやろうと思った事か…。」

 

「あはは…。まぁ、こうして一緒になれたんだし、悪いことばっかじゃないでしょ?」

 

「…まぁ、それもそうね…。」

 

この友人はタイタンから見てとても眩しい人種である。友人は多く、本人もさっぱりした性格なので男女問わず人気が高い。レースの時を除いてだが。

 

 

「そう言えば、選抜レースはどうするの?」

 

「まだ、悩んでるかな。と言うか、貴女はどうなのよ?確か、中距離か長距離でしょ?」

 

「うーん。出来ればメジロの巨人さんと競ってみたいかな?」

 

「私は…。」

 

挑発的な目で私を見てくる。しかし、来年入ってくる筈のマックイーン達と闘う事を決めていた。だから選抜レースには出ても、デビューは遅くするつもりであった。その為、適当な理由をでっち上げて来年まで選抜レースに出ないという事まで考えていた。

 

「真面目に考えときなさいよね。デビューを遅らせる事とトレーナーを見つける事は別問題よ?」

 

「そうよね…。」

 

きっと、クイーン・デンドロビウムはトレーナーを見つけるだろう。なら、私はどうだろうか。メジロのトレーナーからの評価は平凡。しかし、血統はメジロ家。そのせいで悪目立ちしてしまっている。その為、声自体は掛けられる事は考えられてもトレーナー探しが上手くいくビジョンがまったく見えていないまであった。

 

「ここだけの話だけどさ。アタシの従姉が入ってるチームがあるんだけどさ…。」

 

「唐突ね?」

 

「内々にだけど、そこに入る事になってるのよアタシ。」

 

「…話が見えないわね。」

 

「あんたも一緒に入らない?」

 

「それは…。大丈夫なの?」

 

「どんな形であれ、メジロ家のウマ娘の育成が出来るなら食い付いて来るわよ。そういうトレーナーだしね。」

 

「…。」

 

二の句を告げない、否、何と言うべきか迷っていると手を引かれていた。

 

「善は急げよ。アタシのライバルが何もしないまま沈んでいく事は許せないしね。」

 

「私は…。」

 

「別にデビューが遅くても、闘いの場は有る。例えばURAファイナルとかね!」

 

 

何故、友人がここまでするのか分からないまま、メジロタイタンは友人に手を引かれてまだ見ぬ海へと漕ぎだした。

 

 

 




新キャラ登場!ではないんだなぁこれが!
彼女は第二話の会話の中で登場しています。

タイタンにとっての良き理解者兼ライバル枠です。
マックイーン達は倒すべきラスボスだからね。ライバルにはなれないのも多少はね?
口調も普段とは違う感じになるのは当たり前だよなぁ?

マックイーン達とは年の差があるので、一年間は足踏み期間です。

こ↑の↓章はあまり時間はかけずにいきたいと思います。

最後に、高評価・お気に入りしてくれた兄貴姉貴達いつもありがと茄子。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二話~チームへ~

仕事が忙しくなるので初投稿です。
会話が殆どです。


 クイーン・デンドロビウムにトレーナー室の前まで連れてこられた。部屋の前に表札が架かっており、"チーム・アルビオン:浦木 光"と書かれている。

 

「ここ?」

 

「そう!しっつれいしまーす!」

 

「ちょっ、ちょっと!」

 

遠慮無く扉を開けて中へ入って行く友人に引っ張られながら、入室する。

 

「相変わらずなんだな。デンドロビウム。」

 

入室すると、トレーナー用のデスクだろう無機質で武骨なそれの向こうから声がした。

 

「いや~、おじ様に会いたくって。」

 

「まだ、おじ様と呼ばれるには早いな。」

 

「またまた、若い娘に比べたらおじさんでしょ?」

 

「一体何の用だ?」

 

うんざりしたようにトレーナーが先を促す。

 

「いやぁ、アタシの親友を紹介しようと思って…。」

 

「皆まで言うな。こうなるのは分かっていた。だが、彼女の意思はどうなんだ?」

 

「…えっとぉ…。」

 

「私は…、私はメジロ家に勝ちたいです。貴方は勝たせてくれますか?」

 

ここで何も言わなければ始まれない。タイタンが考えるより先に口が言葉を紡いでいた。

 

「…勝つのはお前さんだ。俺は勝てる為の道を探す手伝いをするだけだ。」

 

「さっすがトレーナー!話が分かるぅ!」

 

「茶化すな…、デンドロビウム。」

 

「勝たせてやるとは言ってくれないんですね。」

 

「…当然だ。走るのは俺じゃない。お前達だからな。俺達のやっていることは唯の手伝いだ。」

 

「なら…、なら手伝って欲しい。私は勝ちたいんです。」

 

「自己紹介もしてないのに決めてしまっていいのか?」

 

「私の親友が信頼してる人なんです。疑う理由はありません。」

 

参ったなという風に空を仰ぎ見るトレーナー、デンドロビウムは何やらニヤニヤしている。かなり恥ずかしい事を口走ってしまったと気付く。しかし、もう止まらない。一度言ってしまったことは取り消せない。

 

「俺は浦木 光(うらき こう)だ。チームアルビオンを受け持っている。そこのデンドロビウムもチームメイトになる予定だ。」

 

「私は…、私はメジロタイタン。どんな事をしてでも勝ちたいです。」

 

「そうか…。君の事は話に聞いていた。どんなウマ娘なのかもある程度リサーチしている。だが、クイーン・デンドロビウムもそうなのだが、選抜レースは走ってもらう。」

 

「"実際にレースを走っている所を見せろ"と言うことですか?」

 

「それもある。が、正確には走っている所を見た上で、正式に担当として受け持つかを決める。」

 

「…それは、いえ、そうですよね。」

 

「…分かってくれるなら助かる。」

 

 それは、浦木トレーナーにとっての矜持でもあった。

彼女達ウマ娘は人生を賭けてレースを走る。彼等トレーナーは人生を賭けて彼女達を勝たせる為のトレーニングを施す。つまり、才能があるのか、或いはその才能を伸ばしてやれるのか、そういった部分を見た上で決める。互いに人生を賭ける以上そこはケジメとして譲れないという事であった。

 

「選抜レースの日は当然俺は見に行く。まだ日にちは有った筈だが、出走距離が決まっているなら教えて欲しい。」

 

「今のところ、長距離、中距離は走ります。」

 

「メジロ家に挑戦するのなら妥当だな。」

 

「それから、後一走はまだ、決めかねています。」

 

「…そうか。なら、決まり次第教えてもらえると有難い。」

 

「分かりました。」

 

「はい!はーい!アタシは~…。」

 

「お前はもう知ってる。」

 

「だって、アタシだけ蚊帳の外じゃん!」

 

こうして、メジロタイタンの新しい戦いが始まることになった。まずは選抜レース。そこが彼女の目指す先となった。

 




どっかで聞いたチーム名に、トレーナー名?
何のこったよ?(すっとぼけ)

どっかの機動戦士とは関係有りません。
これだけははっきりと伝えたかった。

お仕事が繁忙期に入るので、更に亀更新になります。
何でもしませんが、許して下さい。オナシャス。

いつも応援してくれる兄貴姉貴、これからも応援オナシャス!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三話~始まりのレース~

仕事が忙しかったので初投稿です。 


 待ちに待ったこの日がやってきた。タイタンとその友人クイーン・デンドロビウムは少ない例外であったが、多くのウマ娘達にとってはここからが始まりであり、これからを占う大事な日であった。

 

「いやぁ、遂にこの日が来ちゃいましたねぇ!」

 

「貴女も私もトレーナーはもう決まってるでしょ。」

 

「そうは言うけどさ、同期の娘達と走れるってワクワクしない?」

 

確かにタイタンにも分からない感覚では無かったが、そもそも才能が無いと言われていたタイタンにとっては憂鬱な気持ちの方が強かった。

 

「分からなくはないけど…。」

 

「ま、ま、ターフで会いましょ?」

 

そう言って、デンドロビウムは離れていった。きっと、他のウマ娘の所へ行ったのだろう。彼女は友人が多い。

一人残されたタイタンは伸びをして、ストレッチを始めた。レースの順番はまだだが、走れるように備えておいて損は無い。

 

「あれがメジロの…。」

 

「思っていたよりも…。」

 

一人になると耳に入ってくる声、声、声。称賛の言葉も有れば、良くない言葉も有る。メジロの名前が彼女を目立たせていた。

 

「…。」

 

レースまで一人、時間を待つしかなかった。

 

 

 

 

選抜レース。第17走目。遂に走る時が来た。今までは殆どあの優駿達が相手だった。他の娘達と本気で走るのはこれが初めてかもしれない。そう思いながらゲートに入る。

音が消えた。

 

ガタン

 

ゲートが開く。タイタンは弾かれるように飛び出した。今回は追い込みでいく。逃げや先行でいくべきだったが、才能豊かな娘達が多かったので作戦を変えた。

ぐんぐん先頭集団が離れていく。まだ、始まって300m程。2000mのレースでここまで差が開くとなるとペースが早すぎるか、後続集団が遅すぎるか。周りの娘達を見る。デンドロビウムは先頭集団の後ろに着けている。周りのペースは遅くは無さそうだ。ならばやる事は一つ。待つ事。前に構って足を使う必要は無い。

 1000m地点を越えた。まだ、半分。やっと半分。先頭集団のペースが落ちてきたのか、後続集団との差が近くなってきている。デンドロビウムはまだまだ余裕の表情。しかし、他の先頭集団の娘達は辛そうな顔をしている娘達が多い。後続集団の娘達は前程ではないが、余裕はそこまで無さそうだ。

"揺さぶりを掛ける"

足は残っているし、デンドロビウムはまだ先にいる。これ以上は置いていかれる。あの娘は速い。しかし敢えてハナを取らず先行策で走っている。

あの娘はそういうウマ娘だ。

本気で走るなら前目の先行策、やる気が無いと爆逃げ。何時でも全力だが、本気で走る事はあまりない。しかし一位は誰にも譲らない。

才能有る者にだけ許された傲慢で我が儘な走り。

そのデンドロビウムが、先行策なのに集団後方に居る。

"遊んでいる"という事実が面白くない。故にロングスパートを掛けた。周りも含めてどよめきが起きる。重賞レースならそんな展開も有るかもしれない。しかし、これは選抜レースなのだ。それを実行出来る実力の有るウマ娘などどれ程居ようか。

 

 「勝負よ」

 

心の中で宣戦布告する。デンドロビウムも待っていたとばかりにロングスパートを掛け始めた。それが切っ掛けとなりレースは完全に崩壊した。タイタンとデンドロビウムの一騎打ちとなった。他のウマ娘達は二人の四馬身後ろを追いかけている。デンドロビウムとタイタンが並んで走る。

残り300mを切る。更に末脚を使う。デンドロビウムも更に加速する。

そして、二人がトップスピードに乗り切る前にレースは終わった。

 

結果は語るまい。デンドロビウムが笑っている。つまりはそう言う事だ。

二人は数多くのトレーナーに声を掛けられた。そして浦木トレーナーからのスカウトを受けた。

 

ここからが本当の意味でのスタート。タイタンにとって波乱の三年間の幕開けとなる。

 




早く終わらせると言ったな、あれは嘘だ。

書いてて思いましたが、デビューをマックイーンと合わせなくても良いなコレ。
方針転換してこのままデビューさせます。(鋼の意思)

タイタンちゃんそこそこやってるやんとお思いの兄貴姉貴達。
彼女の才能をゲーム的に言うなら、芝、ダートB。全脚質Bで賢さと根性が高めの他ステは低めな感じです。
何でも出来る器用貧乏なので、今回みたいな初見殺しならともかく対策されたり、適正の噛み合った走れるウマ娘相手だと勝てないのです。
これはメジロ家でのマックイーン達の教練において、様々な脚質での走りを出来る当てウマ娘としてタイタンちゃんが調↑教↓された結果です。

元々そんなに走れるウマ娘では無かったのをここまで育てたメジロはやはり名家。(称賛)
そのせいで全て狂ってるのでやはりメジロは悪魔。(手のひらクルクル)

まだまだ繁忙期が続くので更新は遅いです。
許して。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四話~選抜レースの後~

初投稿です。

初投稿って何なのだ?
~深考ウィンディ~


 浦木トレーナーは険しい顔で選抜レースを見ていた。デンドロビウムはそこまで心配していない。あの娘は強い。しかし、メジロタイタンはどうか。未だベテランとは程遠く、中堅には届かないが新人でも無い己から見てもあの娘は走るウマ娘では無いように見えた。

 

ガタン

 

ゲートが開く。ウマ娘達が一斉に飛び出す。あの二人も同様に飛び出した。デンドロビウムは先行策で行くようだ。しかし、完全に遊んでいる。あるいは"待って"いるのか。

メジロタイタンも先行でいくと踏んでいたが群れの後方に着けていた。序盤だというのにかなりハイペースなレース展開となっている。恐らく"メジロ"タイタンを警戒した結果なのだろう。しかし、タイタンは焦った様な表情はしていない。

 レースが動いたのは中盤に入ってからであった。タイタンが仕掛けたのだ。ロングスパート。タイタンの居た後続集団はそれを見ても垂れてくるだろうとまだ脚を溜めている。しかし、先行集団は違った。デンドロビウムがプレッシャーを掛けながら走っていたため消耗している。そこから更に新たな脅威が飛び込んできたのだ。そしてデンドロビウムも加速してきた。完全に先行集団はペースを乱された。先行集団が全体で垂れて来た事で後続集団もコースを塞がれ前へ行く事が難しくなっていた。

 

「巧いな…。」

 

周囲は完全に崩壊させられたレースに感嘆の声を上げている。

もはやレースは二人の一騎打ちとなっている。しかし、デンドロビウムが勝つだろう。タイタンは根性で喰らい付いている。デンドロビウムは己の才能を遺憾なく発揮してレースを楽しんでいる。外から見ていて圧倒的なまでの壁がそこに有るように見えていた。

浦木光はメジロタイタンを育ててみたいと思わされた。

フィジカルではなく、才能でもなく、技術と根性で走る。タイタンをかつての自分に重ねながら浦木トレーナーは二人へ声を掛けた。

 

 

 

 

「目茶苦茶やるじゃん。」

 

レースの後、デンドロビウムとタイタンはチームアルビオンの部室に居た。改めて正式にスカウトされ、チームの顔合わせをする為である。

 

「貴女に言われると嫌味にしか聞こえないわ。」

 

「そんな事はないよ~。まさかあんなロングスパート掛けてくるなんて思わなかったんだよ?」

 

「…、まだ小学生の頃のレースで貴女も同じことをやってたじゃない」

 

「だって、アタシより速いのが居るなんて思わなかったんだもん。」

 

どこまでも傲慢で、才能溢れる親友にコンプレックスが刺激される。デンドロビウムはいつだってそうだった。出来るのにやろうとしない。そこそこで終わらせる。しかし、自分の一位が脅かされると奪りにくる。故に小学生時代は絶対王者であり続けた。

 

「あんたのそういう所は大嫌い。」

 

「アタシはタイタン大好き!」

 

狙って言っているのだろう、ズレた返しを聞き流しタイタンは待つ。チームアルビオンは新興のチームで、所属するウマ娘は有名ではない。しかし、知っている者は知っている古兵達がこのチームに在籍している。それを知ったのはスカウトされた後であったが。ともかく、自分はそんな強者達と走れる。走らされる。

 

彼女達はどんな走りでタイタンを鍛えてくれるのか。まだ見ぬ先達を思い、隣で喋り続ける親友に相づちを返しながら時が経つのを待ち続ける。

 




遅くなったかな。なってへんかもしれん。自信無いわ。

毒にも薬にもならない話でしたね…。
今回の話は捨て回、はっきり分かんだね…。

応援してくれている兄貴姉貴達いつもありがと茄子。
スローペースですが完結まで走り切ります。(鋼の意思)

これからも応援よろしくお願いいたします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第五話~先達とこれからと~

お待たせ

駄文しかなかったけど良いかな?


 
そう言えば、トレーナーの名前の読みは

ウラキ コウ になります。
分かりづらくて申し訳。



 「二人とも揃ってるな」

 

タイタンとデンドロビウムの二人の会話に割り込む様に浦木トレーナーが入室してきた。二人が何かを言う前に手で制し、続ける。

 

「これからお前達のチーム入団式兼顔合わせを行う。ブロッサム、頼む。」

 

そう言われて入ってきた先輩達。見事な黒毛のウマ娘を先頭に、栗毛、芦毛の三人が続く。

 

「先ずは入団おめでとう。今日から私達は仲間だ。互いに勝つために頑張っていこう。っと、自己紹介を忘れる所だった。私はチェリーブロッサム。このチームのリーダーを任されている。どうぞよろしく。ゼフィランサス頼む。」

 

「紹介に預かりました、ゼフィランサススターと言います。副リーダーを任されています。お二人と共に走れる事を嬉しく思います。よろしくお願いしますね?」

 

「最後はアタシだな。アタシはサイサリス。アンタ達と同じく平のチームメンバーだ。まぁ、なんだ…よろしく頼むよ。」

 

「三人ともありがとう。そして改めて、俺は浦木光。このチームを受け持つトレーナーだ。俺はこの三年間、お前達の勝利の手伝いをする事に全力を尽くす。お前達は

何か有ればドンドンぶつけてきて欲しい。そして、最高の三年間にしよう。」

 

 

チェリーブロッサム、ゼフィランサススター、サイサリス。三人は"有名"なウマ娘という訳ではない。しかし、この三人こそ彼の皇帝や、スーパーカー、そして怪物といった強豪達と熱い闘いを繰り広げ、伝説達を倒し得る"強い"ウマ娘だということを知っていた。

 

 

なんと言う巡り合わせか、彼女達は強い。しかし、伝説の影に隠された日陰の存在だ。否、世代が違えば間違いなく名の残る優駿だ。ただ、伝説があまりにも強すぎるのだ。

その有り様は常に次代の伝説達の影にいたタイタンと同じではないか。違いは、彼女達は強く才能があった。タイタンにはそもそもそんなモノは無い。

 

 

 

 自己紹介が終わり、歓迎のレクリエーションとしての五人での模擬レースが終わった後、タイタンは寮の談話室でココアを手に、一人ソファに掛けていた。脳裏に浮かぶのはチームメイトの走りだった。黒毛のチェリーブロッサムの逃げは圧巻だった。速く疾くそして垂れてこない。栗毛のゼフィランサススターは先行だったか。圧巻の逃げを打つチェリーブロッサムにピタリと着いて気持ち良く逃げさせない。サイサリスは追い込み型か差しか、後方から追い立てて間に挟まるタイタンとデンドロビウムを猟犬の様に追い立てて自分のレースをさせてくれなかった。

結局、タイタンはドベであった。デンドロビウムが最後の意地とばかりに四着を奪っていった。

 

「…。」

 

ここに来たのは生家に挑戦するためだ。例え、それが誰かから与えられた権利であっても。

目指すは天皇賞春、そして秋。遠く、苦難の旅路に思いを馳せ、タイタンの夜はふけていった。

 




モチベが…ね?
お仕事も忙しかったし…。

少しずつ進めていきます。
よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メイクデビュー
第一話~青い空の下で~


 新章開始なので初投稿です。

*追記
今回、タイタンちゃん自身の自虐表現として"駄バ"という表現が有ります。愉悦が好きでも、そう言う表現が嫌いな兄貴、姉貴は注意!
 



 空が青い。そんな中でメジロタイタンはサイサリスに追い立てられていた。トレセン学園の練習場で一番大きい、実際の競バ場を模したコース。通称"大レース場"だ。

勿論、そこで行われているのは後輩苛めではなくメイクデビューの為の練習だ。

 

 タイタンはメジロ家にいた頃、様々な走り方を学ばされて来たが、マックイーン達を追いかける事が多かった。その為、必然的に差し、または追い込みで走ってばかりであった。つまり、誰かが後ろにいる状況で走った経験が少ない。故に追い込みが得意なサイサリスを後ろに走っていた。

 

「どうしたんだタイタン?息が上がってるぞ?」

 

デビューすらしていないウマ娘に対して良くも言う。全力で圧をかけながら言う台詞ではない。サイサリスの激に苛立ちすら覚えながらも懸命に足を動かす。

 

「ペースが乱れてるなぁ!それがメジロのウマ娘かよ?」

 

サイサリスの言葉が飛んでくる。 

 

 "メジロのウマ娘"だと?

 

ペースを上げ、サイサリスを突き放しに掛かる。早く、ただ早く。ゴール板を目指し加速していく。周りの景色が流されて行く。そして、一人で走っているのではないかという妄想が頭を支配し始める。

 

「おい、待て!タイタン!待て!」

 

浦木トレーナーの声が聞こえる。関係無い。もっと早く。

更に加速を掛けようとしたところで、重いプレッシャーが飛んできた。浦木トレーナーの隣、チェリーブロッサムからだ。

  

        『そこまでだ』

 

ただ一言で、タイタンは頭に血が上っていたことに気が付く。

 

「バカ、なに考えてんだ!」

 

立ち止まった所に追い付いたサイサリスにポカリと頭を叩かれる。

 

「あんな走り方したら足壊すぞ!」

 

「すいません…。」

 

「お前なぁ…。」

 

先ほどの掛かり様と、立ち止まって話している今の様子に毒気を抜かれて言葉が続かないのだろう。

 

「確かに敢えて煽ってたが、あそこまで掛かるのは普通じゃないぞ?」

 

「すみません…。」

 

「ったく…。」

 

「大丈夫か二人とも。」

 

浦木トレーナーが割って入ってきた。まあ、当然だろう。監督しているのは彼であり、制止も聞かず爆走していたのだから。

 

 

「サイサリス。お前はブロッサムと並走だ。」

 

「ん。りょーかい。」

 

「タイタン、お前は残れ。」

 

「はい…。」

 

サイサリスは肩をすくめてからチェリーブロッサムの元へ歩いて行く。

 

「タイタン…。ブロッサムが止めなければ走り続けていたろう?どうしたんだ?」

 

「いえ…、その、熱くなってしまいました。」

 

「本当にそれだけか?」

 

「はい。」

 

浦木は渋面で頭を抱える。抱えながら言葉を紡ぐ。

 

「お前が色々と訳ありなところが有るのは把握している。言いたく無いならそれでも構わない。だが、取り返しの付かない事にならない内にどうにかするんだ。」

 

一度言葉を切り、顔を上げる。タイタンの目を見ながら続けられる。

 

「俺はお前のトレーナーだ。まだ至らないところは有るだろう。だが、出来ることは何でもする。トレーナー室の鍵はいつでも開いてる。良いな?」

 

「…はい。」

 

「分かったら頭を冷やしてこい。今日はそれで終わりだ。分かるな?」

 

「はい。」

 

「よし!行ってこい。」

 

皆から離れてタイタンは小走りで走り出す。走って大レース場から離れる。こんな自分が皆と一緒にいるのが場違いに思えたから。

 

 

 レース場から離れ、学園内に設けられた遊歩道へたどり着いた。そこは学園の生徒達の憩いの場となっており、大レース場が使えない時のトレーニングコースとしても使われている。そんな場所へ私の足は自然と向いていた。

 

「…。」

 

自身がどう思おうと、他人からすれば"メジロ"だ。それは変わらない。しかし、どうしてもそれを受け入れられない。

理由は分かっている。マックイーン達や、顔を見た事が有るだけであるが、アルダンやブライトと言った優駿達を知っている。

知識としてだけでなく実態として。

翻ってメジロタイタンはどうか。言葉は悪いが所謂、"駄バ"と言われる部類だろう。駄バでなかったとしても、あの面子に混じってターフに立つ所は想像出来ない。

思考のどつぼにはまっていく。

 

 

  何故、此処に有るのか。何故、走るのか。何故…

 

 

「あら、タイタンさん。ごきげんよう。」

 

聞き覚えの有る声がかけられる。

 

「ご機嫌麗しゅうございます。クロスレーン様。」

 

「そんな他人行儀にならなくても…。」

 

そう言う訳にもいかない相手だ。何故なら、彼女の推薦枠を奪い此処に居るのがタイタンなのだから。

 

「それは…、私は貴女を良く知りませんので…。」

 

         嘘をつくな

 

「そんなこと、わたくしは気にしていなくってよ。」

         

 ならば、なぜ私のメイクデビューに合わせて来るのか

 

 

二人の間を青い風が吹き抜けていく。

青い空の下、タイタンはライバルとなるウマ娘と対峙する…。

 




クイーンデンドロビウムやマックイーン達はどうしたって?

アイツらはラスボスであってライバルではないからね。
仕方ないね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第ニ話~好敵手と布告~

ッシャア!

筆がのったので初投稿です。

地の文が多め、背景の説明的な語りが多いかも。

成人の日だぞ、上等だろ?(意味不明)



 豊かな金髪に女性らしいフォルム。クロスレーンは生まれ持った美貌を持つウマ娘だった。そして彼女は美貌だけでなく走る才能も与えられていた。

その微笑みはイタズラ盛りの男子達ですら魅了し、走ればURA関係者達から称賛の声が上がった。まさに天より二物を与えられたウマ娘だった。

家はメジロ家と太い繋がりが有り、メジロのウマ娘達と競い合う良き好敵手として、そして将来の栄光を期待されたウマ娘であった。世代が合わなかったが、それ故にクロスレーンはメジロ家の持つ特別推薦で"日本ウマ娘トレーニングセンター"へ通えるはずだった。互いにURAを盛り立てる実力者のそれとして、メジロ家を中心とする派閥の重鎮の代表が彼女だった。

 

 しかし、彼女にとって初の挫折、或いは思い通りにならぬ事がその推薦で起きた。土壇場での推薦枠の変更。それ自体が派閥の中で大きなさざ波となって広がった。が、総帥の鶴の一声でそれは収まった。或いは"収められた"と言うべきか。

 

曰く、本家の"至宝"とまで言われる令嬢に仕えるウマ娘に推薦を与える。

曰く、そのウマ娘はメジロ家にとって良く仕え、かつ血族で有ること。

曰く、それに値するだけの働きをしたが故に。

 

と。総帥自らがそこまで言うのであれば否を唱えられる者などそういない。しかし、半ば決定していた推薦を、血筋の者とは言え、今まで名前すら上がらなかった娘に与えるという事に疑問を持つ者や、憎悪とも言い換えられる嫉妬を持つ者が出る事だけは避けられなかった。

何とか不和が出ぬ様、総帥周辺が走り回った事で事態は収まってはいるが、それはあくまで表面上の話だ。

 

幸い、クロスレーンは頭の出来も一流であった為、一般入試枠でも問題はなかった。が、自身の覇道に意を唱えたウマ娘への注目は当然有る。持たざるを得ない。それは派閥を形成するウマ娘達共通の話題でもあった。

 

口さがない言葉を吐くウマ娘達もいる中、クロスレーンだけはメジロタイタンを見極めようと思っていた。

しかし、タイタンは平均よりも下。地方ならば上位にも入れるだろうが、中央ともなればデビューすら危ういと言わざるを得ない。そんなウマ娘だった。しかし、彼女は己の前に立ちはだかった。どんな思惑があれ、肯定しかされてこなかったクロスレーンにとって初めての対立者がメジロタイタンであった。

だから、その日、メジロタイタンとの邂逅でクロスレーンは彼女へ宣戦布告をする事にしたのだ。

 

 

 たまたま、本当に偶然だ。その日の彼女は休養日であり、友人達とお茶を楽しみ、帰ってきた所であった。だから、帰り道でメジロタイタンと出会ったのは彼女にとって予期しない事であった。

 

「あら、タイタンさん。ごきげんよう。」

 

「ご機嫌麗しゅうございます。クロスレーン様。」

 

確かに使用人として仕えていたというのは本当らしい。実際、メジロ家本邸でのパーティーで、給仕をする姿を見かけた覚えがある。それに彼女は覚えていないかもしれないが、一度だけ彼女の走りを目にし、言葉も交わした事が有ったはずだ。 

 

「そんな他人行儀にならなくても…。」

 

「それは…、私は貴女を良く知りませんので…。」

 

嘘ではないだろう。しかし、真実でもない。

メジロタイタンというウマ娘の評判は使用人としてのものが殆んどだ。同い年のウマ娘達と比較すれば、その振る舞いや仕事振りは大人達と遜色がないと。抜け目ない彼女なら知らないという事だけは無いはずだ。

言葉を交わす為、クロスレーンは言葉を続ける。

 

「そんなこと、わたくしは気にしていなくってよ。」

 

「…。恐れ入ります。クロスレーン様。」

 

「止めてくださいな。そういうのをここで出すのは不粋よ?ところで今日はトレーニングを?」

 

「…。そうよ。」

 

「貴女はチームに入ったと記憶していたけど…。」

 

「私は早めに上がるのよ。」

 

「まさか…、怪我とか…。」

 

「そういうのじゃないわ…。ただ、身が入っていないならトレーニングの意味がないってだけ。」

 

「…そう。貴女の評価を聞くと手を抜く様には思えないわ。」

 

「誰からどんな話を聞いたのかは詮索しないけど、買い被りも良いとこね。私は別に木の又から生まれた訳じゃないし…。」

 

「ちょっと変わってるわね、貴女。」

 

「"そうあれかし"と、母の教育の賜物ね。貴女とは見ている世界が違うだけよ。」

 

「でも、同じターフを駆ける者よ。」

 

「…。それは…、なら…、違うわね…。私からも良いかしら?どうして私のメイクデビューと合わせてきたの?」

 

「偶然よ。」

 

「本当に?」

 

「貴女がどう思おうと、私は貴女に勝たなければならないわ。派閥がどうとかではなく私自身の誇りとしてね。」

 

「…、謝る事はしないわ。でも開き直るつもりもない。私はただ、与えられた機会を活かすだけ。」

 

「貴女に勝ちますわ。そしてホープフルステークスを獲得る。それがわたくしのジュニア級における目標よ。」

 

クロスレーンは宣言する。自らにとって疚しい事など無いのだと誇るように。勝利を得るのは自身であるのだと声高に。

 

少なくとも、メジロタイタンというウマ娘は噂で語られる様に、総帥やその周囲に取り入って此処にいるというわけでは無さそうだ。ならば、同じ競技者としてレースで闘うのだ。クロスレーンにはそうする甲斐のある相手だと思えた。

 

「貴女と走れるのを楽しみにしていますわ。まずは阪神で。」

 

「そう…ね。阪神で。」

 

その言葉を最後にクロスレーンは歩き出す。走りたい気分だ。トレーナーからは休養日のトレーニングは禁止されているが、少し走るくらいなら良いだろう。先ずは許可を取らなければ。足取りは軽くその場を後にするのだった。

 

 

**********************************************************

「…、…。」

 

 メジロタイタンは立ち尽くすほか無かった。

 

クロスレーンは少なくとも、表面上はこちらを恨む様な素振りはなかった。あくまで表面上は。

実際の所は分からない。否、分かる必要は無いだろう。競技者として闘おうと言われたのだ。これは言葉通りに受け取って良いだろう。

 

タイタンにとっては眩しいウマ娘だった。自分の持っていないものを全て持ったウマ娘、クロスレーン。負けたくない。負けられない。

しかし、タイタンは進むべき先を見据えられないでいた。

春の盾と秋の盾。その獲得。物心が付いた時から仕えてきた。ずっと仕えてきた。そんなメジロという血族へ、あるいは自身への反逆。それがたった一つの冴えたやり方なのだと思っていた。

しかし、それは果たしてターフに立つ理由になるのだろうか。それが成った時、果たして何が残るのか。

 

後ろ向きな理由で走る自分は、果たしてレースを走る者として相応しいのか。少なくともアルビオンのメンバーは走る事に誇りを持っている。

 

夢を否定され、持つものは全て捧げてきた。その結果与えられたモノ。それはタイタンを怒らせるには十分なモノだったはずだ。『何を今更』と。

 

 そびえ立つ壁に巨人は立ち尽くす。プロメテウスの火は何も語らない。

 

青空の下で投げかけられた布告は、大きな重しとしてタイタンの双肩へ科せられた。

 




新章に入ってから二話も使ってこの体たらく。

恥ずかしい、やだこんな恥ずかしい。

アイアンマン!(羞恥の叫び)



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三話~迷い~

止まるんじゃない、犬のように駆け巡るんだ!




 「阪神で」

 

そんな約束を交わしてから3日。メジロタイタンはサイサリスと共に、学園外に有る神社の石段にて坂道トレーニングに励んでいた。

 

「っ、はぁっはぁっ、くっ!」

 

「オラァ、どうした!たかが三往復程度でへばってんじゃねぇ!デンドロビウムはもっと持ったぞ!」

 

「くっ!」

 

歯を食い縛り脚を上げる。踏み出す。レースで走る距離を考えれば短い距離。しかし、見上げて登る距離は遠く果てない様に思える。

 

「うわぁぁ!」

 

こんな所では立ち止まれない。メイクデビューまではまだ時間がある。しかし、他のウマ娘達も今、この瞬間にも勝つためにトレーニングを積んでいる。自分だけでは無いのだ。皆が勝つために走り続けている。思いだけで勝てるものでは無いのだ。

 

「休むなぁっ!走れ!春天はもっときついぞ!」

 

しかし、こうして自身を追い込み先を目指してみてもそこまで辿り着くのは容易では無い。分かっていた事ではあるが、そこまでの道のりに挫けそうになる。

 

必死に脚を動かし、石段を登り切る。息をつく間もなく長い石段を駆け下りる。

 

登る時よりも早く景色が過ぎ去って行く。眼下の街の景色が急速に迫って来る。自身が街の中へ呑み込まれそうな錯覚を覚える程に。もっと、もっと速く。と、身体が動き出そうとした所で地面に足が着く。

 

「インターバルは1分だ。」

 

「っくっ、はいっ!」

 

インターバルの中で息をを整えようと深呼吸をする。しかし、熱の入った身体がそれだけでは足りないと酸素を求め、短く呼吸が続く。それが呼吸を乱し、咳き込む。

咳き込みながらも、大きく息を吸い込み、深呼吸をする。

それは長距離を走るなら必要な技術だ。熱く熱された身体のギアを落とさず、呼吸を整える。呼吸で無駄な体力を消耗させない。このトレーニングにはそんな技術の習得の意図があった。

 

「10秒後にスタートだ。」

 

サイサリスの言葉で、直ぐに飛び出せるよう体勢をつくる。

 

「3、2、1、今っ!」

 

強く地面を蹴って再び石段を登りだす。

流れ行く景色を横目に五往復目を走り出すのだった。

 

 

***********************************************************

 

「何でタイタンは春の盾を取りたいんだ?」

 

 地獄とも思える坂道トレーニングを終えての帰り道、歩きながらサイサリスから問いかけられた。タイタンの目標、春天の制覇。その根元に対しての問いかけである。

 

「…。それがメジロの悲願だからです。」

 

「ん、まぁそう言う話が有るのは知ってる。が、本当にお前はそれが目標なのか?」

 

「どういう意味ですか?」

 

「まぁ、私たちが走る理由は色々有る。走るのがとにかく好きな奴、デカイレースで勝ったウマ娘のそれを見て自分も勝ちたいって奴、憧れのウマ娘の様になりたいって奴。そして、お前のように一族の悲願だか、使命だって奴。」

 

言葉を切ったサイサリスは立ち止まり、タイタンの目を見る。

 

「でもお前はそのどれでも無い様に思えるんだ。」

 

「…、…。」

 

タイタンは答えない。答えられない。何故レースを走るのか、自己の証明の為だと答えるのは簡単だ。しかし、本当にそれだけなのか、メジロという血族への意趣返しの意味も有る。が、現実を改めて見せられたタイタンには、それが理由だと自信を持って答えられなくなっていた。

 

「ま、私はお前の先輩であっても友達じゃねぇ。チームの仲間として気にはかけるが、踏み込むつもりもねぇ。」

 

「はい…。」

 

「だけどな、先輩として言わせて貰うなら、どうしたいのかはハッキリさせるべきだ。

意志の無い奴や、弱い奴はどんだけ走っても勝てねぇ。走る前から無意識の内に手前ぇで諦めちまってるからだ。」

 

「私は…。」

 

「直ぐにどうしろとは言わない。だけどな、折角仲間になった奴が、そんなツマンねぇ理由で辞めてくってのはクるものが有るんだ。それは忘れんなよ?」

 

「…はい。」

 

「さ、帰ろうぜ。門限過ぎるとメンドくせぇ。」

 

それ以上はその話題には触れず歩いた。互いに無言であったが、タイタンにはそれが有り難かった。

 

 

帰宅後、寮の談話室でタイタンは一人考えていた。走る理由は何なのか。それが揺らぎつつある。




最近、過去話を見返しましたが、描写が飛んでいる部分がちらほらありますねぇ…。何だこれは…、たまげたなぁ。

手を入れる専門家を呼んで書き直しやるからなぁ…?


それはそれとして、タイタンネキも青春してるねぇ。(暗黒微笑)
仮初めの何かを手に入れさせて、そこから落とすって最高じゃないですか?
上げて落とす時は落差が有れば有るほど良いんだよなぁ。
(上手く書けるとは言ってない)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四話~メイクデビュー1~

繁忙期が終わったので初投稿です。


 《メイクデビュー》ウマ娘達にとって、最も輝かしき始まりのレース。同時に挫折し、失意のままターフを去ることになる試練となるレース。そのレースのタイタンの番が回ってきた。

天候は晴れ、バ場状態は良。正にレース日和である。そんな中にあって、緊張や未来への期待とは程遠く、タイタンの顔は暗かった。

 

「何のために走るのか?」

 

結局、サイサリスから問われた"走る理由"は見つけられなかった。ずっとそれだけを考えてきたにも関わらず。そのせいか、トレーニングにも集中しきれず、仕上がり具合は良いとは言えない状態だ。

こんなことになったのはチームに入ってからだ。皆が持つ情熱が自身の情熱を惑わせる。

何も持っていない空の自分。メジロに仕える以外知らなかった。だから、"走る事が好きなお前に環境を与えよう。"等と言われた時には喜びよりも、怒りと困惑があったはずだ。だから、結果を出して見返したかった。誰からも期待などされていなかったから。

 

「タイタン入るぞ。」

 

 思考の海に潜り込み、レースから意識が外れていたところに控え室に入ってくる者がいる。サイサリスだ。

 

「しけた面してんなぁ。レース前だぞ?」

 

「すいません…。」

 

「すいませんってなぁ…。まだ、迷ってんのか?」

 

「ええ…、はい。」

 

「はぁ…、まぁしょうがねぇか…。タイタン。まずはレースに勝つ事だけ考えろ。」

 

「それは…、」

 

「良いか?レースは目の前だ。ここを勝たなきゃ始まることすら出来ねぇんだ。未勝利戦があるなんて考えは間違ってる。始まりからしてずっこけてちゃG1どころかG3だって届かない。お前の目標は盾二つだろ?」

 

「はい。」

 

「ならすべき事はクロスレーンに勝つ事だ。」

 

と、そこでドアがノックされる。

タイタンがどうぞと言えばレーススタッフで、パドックへ出る時間だとの事だ。

 

「熱くなりすぎちまったな。」

 

ばつが悪そうにサイサリスが肩をすくめる。

 

「まぁ、良い。タイタンよぉ。とにかく走る事だ。私達に出来ることはそれ以外無いんだ。いってこい!」

 

何かを言い返すこともさせて貰えず、肩を押して控え室を追い出されたタイタンはパドックへ歩くしかなかった。

 

***********************************************************

 「これで良かったのかよ?トレーナー。」

 

タイタンを送り出し、一人になった部屋でサイサリスはここにいないトレーナーに問いかける。浦木トレーナーはデンドロビウムの方へ着いていった。

タイタンのメンタルに問題がある事が浮き彫りになった時点で、トレーナーはサイサリスを専任でタイタンのメンタルケアに当てた。

いわく、"走る目的というウマ娘の根幹は結局、同じウマ娘しか共有出来ない。"らしい。そして、チームの中で適任なのはサイサリスなのだとも。トレーナーからそう言われてしまっては従うしかない。

 

 それでもサイサリスはここにトレーナーがいてくれたらと思わずにいられなかった。言っている事は間違っていない。だが、指導者であるトレーナーとの絆が大事なのだ。ウマ娘は誰かの"想い"を乗せて走る。自身の想い、家族の想い、友人達の想い。そしてトレーナーの想い。それらに貴賤は無い。無いのだが、それでもウマ娘としてはトレーナーからの期待が有るのと無いのでは、レースに懸ける想いの重さが変わってくる。少なくともサイサリスはそう考えている。

 

いずれにせよ、賽は投げられてしまった。後は応援してやる事しか出来ない。サイサリスは観客席へ足を向けた。

 

 

レースが始まる。

 




まずは完走します。
改稿はその後ですかねぇ。

メイクデビューレースは次話に持ち越しです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。