少女前線 ~戦術人形になった傭兵~ (蒼月 アイン)
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第一話
暫く失踪していましたがやっとこさ執筆再開です。
待ってた人、本当に申し訳ありませんでした。
あらすじでも言いましたが前作と設定一部異なったり物語の内容が殆ど変わってたりします。
更新はほぼほぼ不定期となりますがよろしくお願いします。
2度の大戦、一度の冷戦を乗り越え21世紀へと突入した世界は幾度の内戦・紛争を繰り返しながらも
それでも争いは絶えず続いており、特に南アジア、中東、アフリカを中心としたイスラーム系の過激派テロ組織や軍閥・独裁国家との戦闘は過激の一途を辿っていた。
当初は米軍や国連の多国籍軍によって対処が行われていたそれらは止めどなく続く争いに追いつけなくなり何時しか、正規軍に代わり民間軍事企業達がそれらに対処し始めていた。
最初は後方での物資輸送・補給線の確保・治安維持を主な仕事としていたPMCは何時しか正規兵に紛れて前線に立つ事が当たり前となっていた。
中東某国
度重なる戦闘で荒廃した大地を車列が列を成して走っていく。
護衛と思しき装甲車を先頭と最後尾に1両ずつ、その間に護衛対象であろうトラックが3台の車列だ。
車列は一定の間隔を保ち、決してスピードを緩める事無くさっさとこの場所を立ち去りたいと言わんばかりに走っていく。
やがて車列の前方に二つの障害物が姿を現した、道路を遮り強制的に減速させる様に置かれた2両のLAVとジープの残骸だ。
車列は仕方なく、速度を緩めて残骸の隙間を縫うように走り抜けようとする。
無論、敵からすれば襲撃する絶好の機会でありそれも車列を守る兵士たちも理解しているので周囲へとの警戒を強める。
ジリジリと刺すような陽の光と乾いた風が肌を撫でる中、先頭の装甲車が残骸の間をすり抜け終わろうとし襲撃が無かった事に安心し誰かかがため息をついた瞬間、正に残骸をすり抜けた装甲車が木端微塵に消し飛んだ。
突如とした爆発と閃光を喰らい、呆気に取られる兵士たち。
その内の1人がハッと正気に戻って叫んだ。
「IEDだッ!!」
その一言で兵士たちはこれが敵の襲撃の合図だと悟り慌てて周囲を警戒しよう展開し始めようとし、数人が撃ち抜かれて脳漿と血液を撒き散らしながら倒れた。
「ス、スナイパー!」
真横にいた同僚の頭が吹き飛ばされるのを見た兵士が叫びながら地面に伏せた。
他の兵士たちもそれにすぐさま対応して地面に伏せるなり、遮蔽物に隠れるなりしてスナイパーから姿を隠した。
それでも反応が遅れた数人が運悪く撃ち抜かれる。
やがて銃声が止み、狙撃が終わったと思った瞬間車列最後尾の装甲車に飛来した対戦車ミサイルが突き刺さった。
弾頭内の炸薬が作動しその爆発が装甲車の弾薬や燃料等の可燃物に引火し大爆発を起こし運悪く装甲車の近くに隠れていた兵士が数人巻き込まれた。
車列の前後を塞がれ、更にスナイパーに頭を押さえられている。
(クソッ、クソッ、クソッ!!)
最悪の状況に陥り、兵士の一人が内心で悪態をついた。
ただ物資を積んだトラック達を前線基地に送るだけの筈だった。
楽な仕事だ、すぐに終わらせて基地に帰って飲もうと仲間内で気楽に話していた。
その筈は蓋を開けてみれば正体不明の敵に突如襲撃されて立往生する羽目になった。
(一体、どうすればいい!?どうすりゃ生き残れる!?)
半ば狂乱状態に入った頭で考えスナイパーに撃たれない様に周囲を見た彼は見つけた。
狙撃された方向や対戦車ミサイルが飛んできた方向とは間反対の方向から音も無く近づいてくる統一された兵装をした複数の人影を・・・
その内の1人と目が合った、そしてその右肩に張り付けられているラウンデルの存在にも。
翼を広げて羽ばたく眼帯をしてアーミーナイフを咥え両足に二つのSを鷲掴みにした荒鷲とその周囲を円を描く様に書かれたドイツ語・・・
『Leise, schnell, präzise.(静かに、素早く、正確に)』
戦場で彼が最も会いたくないと思っている兵士たち・・・
思わず顔を蒼褪めさせながらも彼は叫ぼうと息を吸った。
コンタクトッ!!
そう叫ぼうとし、彼は声を発する前に目が合った兵士によって正確に頭を撃ち抜かれた。
ACOGサイトの向こうで敵兵が倒れ伏し、ピクリとも動かなくなったのを確認し張り詰めていた息を吐いた。
「お見事」
「あぁ・・・」
隣の同僚に声を掛けられそう返しながら愛銃を構え直した。
危ないところだった、あのまま叫ばれていたら折角、陽動を掛けてまで静かに近づいた意味が無くなるところだった。
改めてサイトをのぞき込んで敵兵の様子を確認するがこちらに気づいた様子はなく、必死に陽動部隊の狙撃から身を画しているのが見て取れた。
それに安堵しつつ周囲で警戒している味方にハンドサインで敵兵に接近する様に指示を出した。
それからの戦闘は簡単に終わった。
奇襲部隊は音も立てずに敵兵たちへと近づき片っ端から片付けて行った。
流石に敵も奇襲に気づいたが後の祭り、ただただ混乱するだけで真面に対応できる筈なく最後に数人の敵兵が降伏して戦闘は終了した。
陽動部隊も合流し、降伏した敵兵の武装解除と拘束を終えた俺たちは近くで待機している回収部隊へと連絡を入れてその到着を待ちつつ周囲の警戒をしていた。
戦闘は終わったがここは前線に比較的近い位置にある補給路の一つだ、連絡が途絶えた車列の捜索と救援に敵の増援が何時現れても可笑しくない状況だ。
待ち伏せと奇襲で敵の車列を拿捕した俺らがその敵に奇襲され返されて全滅しましたじゃ笑い話にならない。
交代で周囲を警戒していたのだが敵の襲撃等の問題は起こる事無く、味方の回収部隊が到着した。
数両のM2 ブラッドレーとハンヴィー、更に2機のUH-60と1機のAH-1Fが車列に合流した。
俺たちの仕事はここで終了し、拿捕した車列並びに捕虜の輸送は地上部隊とそれを上空援護するAH-1Fが行うことになっている。
任務を終え後を引き継いだ俺たちはUH-60に搭乗し前線基地へと帰還する事になる。
「それじゃあ、後を頼む」
「あぁ、任された」
地上部隊の隊長への引継ぎを済ませ、俺は既に全員搭乗が完了し後は俺を乗るのを待つのみとなったUH-60へと搭乗した。
ヘリへと乗り込み、パイロットに向けてGOサインを出すと少ししてヘリは浮上し瞬く間に高度を取って基地へと進路を取った。
基地へと向かうヘリの中は全員、リラックスモードに入っていた。
一仕事を終え、後は基地に戻って今日の業務は終了だ。
何人かは基地に戻ったら酒を飲みに行こうと話し合う者もいれば明日の予定を聞き合う奴もいる。
隊員によっては明日から休暇の者もいる、他にも雑談に興じる奴、読書をする奴や音楽を聴いてる奴等様々だ。
かく言う俺自身も砂漠を眺めながら愛好している煙草を吸い、紫煙を燻ぶらせる真っ最中だ。
部隊の隊長を務める俺は基地に戻れば報告書の作成が待っているのだがこれぐらいは許されるだろう。
「おい、相棒」
「うん?」
等と思い耽っていると突如と声を掛けられ肩を叩かれた。
後ろに振り向くと一人の隊員が俺の肩に手を掛けていた。
仲間内からはお喋り好き野郎(マシンガン・キッド)と揶揄されるその男は部隊内で唯一俺の事を相棒と呼ぶ兵士でそれだけ付き合いの長い奴でもあった。
「どうした?」
「今、みんなで以前いた部隊の事を話してたんだがよ。お前はここに来る前はどこに居たんだだって話になってな?」
なるほどと思いつつ記憶を辿ってみるが確かにこいつらに俺の過去を話したことは無かったなと思い出す。
別に隠している訳でもないし、話しても問題ないだろう。
チラッと他の兵士を見れば声には出さないが全員、興味津々と言った顔をしている。
「別に構わないが・・・お前は以前どこに?」
「俺か?俺は前はカナダ陸軍に居た、それで?」
お前はどこにいたんだ?
と聞いてくる相棒に肩を竦めつつ俺は煙草を携帯灰皿にねじ込んだ。
「アメリカだ」
「アメリカ?ていうと
「いや違う、陸軍だ。第75レンジャーにいた」
そういうと聞いていた仲間は驚きの表情を浮かべ何人かは口笛を吹いた。
「75レンジャーか、赴任地は?」
「アフガン、で5年ほど任務に就いていた」
「その後は?うちに来たのか?」
「いや、アフガンである部隊と任務で一緒になってな。うちに来ないかって誘われてそっちに移った」
「ある部隊って?」
聞いていた兵士の一人が聞いてきた。
名前はウォルター・コリンツ、俺の隊のライフルマンの男だ。
「第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊」
その名を口にすると隊員たちに更にどよめきが走った。
いつの間にか、他の隊員たちも雑談を止めこちらの話を聞いていた。
「ヒュッー!デルタフォースかよ!それで?入ったのか?」
「あぁ、試験を受けて無事にデルタ入りしたよ」
そう答えると隊員たちからやるね!、流石!と言った声があがった。
「それで、デルタに入った後は?」
「アフガンにイラク、イランに北アフリカで7年ほど仕事に就いてた」
「結構、広範囲だな・・・そーいや、お前がこっちに配属された理由って」
「十中八九、俺がここらの情勢に明るいっていうのが理由だろうな」
そう言って肩を竦めてみせると何人かが苦笑染みた笑みを浮かべた。
実際、部隊内で一番中東の情勢に明るいのは間違いなく俺だろう。
「それでその後はどうしたんだ?」
「軍を辞めた」
「辞めた?どうして?」
「負傷だ、任務中にな」
そう言って俺は左目の上から下に抜ける傷をなぞった。
それを聞いた隊員たちは気まずそうな顔をしている、不味い事を聞いたと思っているようだ。
「まぁ、そろそろ軍を辞めようかと思ってたからな、丁度良かったさ」
態と気楽気に言うと隊員たちも小さく笑った。
重くなっていた空気も軽くなったようだ。
「辞めた後はどうしたんだ?」
「あぁ、1年ほど休養を兼ねてバカンスを楽しんでたさ」
そう言って俺は懐から新たな煙草を取り出し、口に咥えた。
ライターを取り出し、火を点けて支援を吸い込み吐き出す。
「それで、休養を終えてさてどこかに就職するかと思ってた矢先に・・・」
「矢先に?」
「社長にスカウトされた」
人差し指と中指の間に挟んだ煙草を上下に振って遊びながらそう答えると隊員たちからマジかよ・・・という声が漏れた。
まぁ、そう言う気持ちも分からんでもない。
12年ほど勤めていた軍人を退役したと思ったらPMCの社長にスカウトされたというのだ。
俺を見る隊員たちからは同情の目線が見て取れた。
「良く、スカウトを受けたな」
「あぁ、最初は断ってたんだがな。何度も何度も勧誘されて最後は俺が折れる形で契約したよ」
そう言って俺は肩を竦めるとやれやれと言わんばかりに首を左右に振った。
その言葉に隊員たちは大変だな、とか良くやるよ、等と同情やら呆れやらの声を俺に掛けてきた。
「さて、他に何か聞きたいことは無いか?今だけ特別に答えてやるぞ?」
そう言って煙草を咥える。
するとお互い顔を見合わせた隊員達は挙って俺にあれやこれやと質問を投げ始めた。
主人公
前作と違ってあちらは戦災孤児であったがこちらでは元米兵という設定に変更されている。
第75レンジャー、デルタフォースと軍歴を重ねた後に現在のPMCの社長直々のスカウトによって傭兵になったという経緯を持つ。
作中において触れられていないがHK416A5の20インチモデルにACOGサイト、グリップポッドを取り付けたマークスマン仕様をプライマリに、セカンダリにM45A1 CQBPを愛用している。
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