呪術廻曼荼羅英霊譚ー轟流伝ー (食卓の英雄)
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明日の先の話

クリアした結果感動して源氏郎党になったので書きました。

蘆屋道満(リンボ)と夏油傑(羂索)の共通点。

蘆屋道満→昔は安倍晴明と共に高みを目指していた。
夏油傑→昔は五条悟と共に高み(最強)だった。

蘆屋道満→最高レベルの術師なのに清明と比べると……。
夏油傑→最高レベルの術師なのに五条と比べると……。

蘆屋道満→最大のライバル(安倍晴明)によって殺される
夏油傑→最大のライバル(五条悟)によって殺される

蘆屋道満→弱み(清明)をつかれてリンボに乗っ取られる
夏油傑→五条悟の弱み(死体処理)をつかれて羂索に乗っ取られる

蘆屋道満→1000年以上前の人物
夏油傑(羂索)→1000年以上前の人物


『こちらが先日発見されたという、あの紫式部の日記です。欠損や落丁はほぼ無いようで、大変貴重なものとなります。内容を把握次第、国の重要文化財に追加される様です。その内容ですが―――』

 

「これこれ!このニュースよ!」

 

ある高校の一室。眼鏡をかけた女子高生が己がスマホを掲げ、同室内にいる二人の男子生徒に話しかける。

 

「紫式部の日記?あー、確かにそんなニュースあった様な…。でもどうしたんすか?それってオカルトってよりは歴史研究とかじゃ?」

 

椅子の背もたれに顎を置く、ツーブロックの生徒が問いかける。それを予期していたかのか、女子生徒はこのニュースについて有志の人が翻訳したスレッドを開く。

 

曰く、度々登場する鋼の怪。これは大柄な武者とも捉えられるが、描写が可笑しく、ある所では怪異として書かれながらも、紫式部の一人称では親しみのある何かとして記されており、最期には光の粒子になったのだという。

 

これだけならば、よくある悲劇の別れの話にも思えるが、他にも鬼の姿が細かく記されていたり、坂田金時や源頼光等、源氏の武者達も登場している。

 

一般公開されている中で読み取れたのはそこまでであったのだが、当時の書物に書かれている事で、源頼光女性説や、蘆屋道満及びに坂田金時が実在の人物という声が上がり、一部の界隈では更に沸き立った様相を見せていた。

 

「ン゛ン゛ッッ!」

「お、おう、虎杖、急にどうした…?」

 

急に吹き出した事を疑問に思ったもう一人の男子生徒が声をかける。虎杖と呼ばれた少年は大丈夫と返し、次の言葉を待つ。

 

「いい?これは当時の市井とか情勢にもしっかり触れられてて、専門家も信憑性はかなり高いって言ってるの。つまり、これを信じるなら、平安の街には本当に鬼がいて、それと武者達が争ってたって事になるのよ!」

 

興奮したのか頬を蒸気させる女生徒にを宥めるように男子生徒は言った。

 

「いや、それは俺も見たが…前半は兎も角後半は創作物語の案を書いただけってあったが。…それに、そんな鬼やらは前から乗ってたからなぁ」

 

その言葉に女生徒はガックリと項垂れる。

 

「もお〜〜!そんなの分かってるのに!ちょっと位夢見させてよ!」

「あの、やっぱり、こういうのは定番の都市伝説とかどうでしょう?こ、コックリさんとか」

「…やる!」

 

わいわいと2年生で盛り上がる中、虎杖は一人心中で胸を撫で下ろす。

 

(あー、びっくりした。コレがバレたのかと思った。他の人も持ってるって話だったけど、もしかしたらって事もあるらしいしな…)

 

握りしめた服のその下、その胸元。右と左に三つずつ、都合六つの刻印は、これから起こる出来事を予見するかの様に仄かに赤く輝いていた。

 

 

 

 

「じゃっ、先生。俺用事あっから。ナイススローイング」

 

少しばかり時は過ぎ、グラウンド。唖然とする生徒教師を置き去りに、オカ研の二人と話し込む。

 

(凄いなアイツ。呪力なし素の力でアレか。……禪院先輩と同じタイプかな…)

 

それを眺める影が一つ。明らかにこの学校の生徒ではない、虎杖と同年代に見える黒髪の男。その視線は周囲の生徒とは毛色が違い、まるで珍しい動物を見るような目。さも当然と言う訳ではないが、異常な身体能力に対する反応としてはあまりに薄い。

 

そんな彼に注視する生徒など居るはずもなく、やがてまた趣向の違うざわめきが蔓延する。

 

「ねね、あれ誰かの知り合い…?」

「うわっ凄えガタイ…」

「イケメンと美女だな…」

「う、羨ましいっ…!」

 

その元凶は校門前に留まる二人の人物。

かたや190cmと大柄な体格に加え、神が手ずから造形したかのような肉体美。まさに天性の肉体と形容するに相応しい体を持つ金髪の美丈夫。

その人物は校門前で大きく手を降っており、如何にもな厳つさを持つが、不思議と萎縮はしない明るさを持ち合わせていた。

 

もう一方は、女性にしては高めの身長を持ち、墨のような美しい漆黒の頭髪、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる、まさに理想のスタイルの女性。

恐ろしい程の美貌も兼ね備えており、大和撫子の要素を寄せ集めれば、この女性になると言われても違和感すら持たないだろう。

そんな彼女、かけているエプロンが不思議な程によく似合い、一部生徒を幼児退行させていた。

 

「おーい!大将!」

「あ、金ちゃん!頼光さん!」

 

「「「お前かよ!!?」」」

 

この一連の流れについ見入ってしまったが、その男は、自らの使命を今一度思い浮かべる。

 

(いや、こんなことしてる場合じゃねえ。さっさと呪物を―)

 

「迎えに来てくれるなんて、何かあったの?」

(呪物の気配!明らかに今強くなった!)

「オイお前!―――って、早すぎんだろ!?」

 

男子――伏黒恵は咄嗟に反応するが、その時にはもうかなり遠くまで行っており、引き止める声は届かなかった。

 

「アイツ50m3秒で走るらしいぞ」

「車かよ」

「いや、平然とそれについてけるあの二人もナニモンだよ」

「さあ?」

 

 

 

 

ある病室に、一人の老人が横たわっている。一見普段どおりの元気さを見せているが、見る人が見れば死期が近いと分かるだろう。

老人の他には虎杖の姿しかなく、言うまでもなく、彼岸に近いこの老人は、虎杖悠仁の祖父である。

 

「悠仁、お前の両親の事だが「いいよ興味ねーから」………」

 

最期にかける言葉、それを放とうと口を開けば、ばっさりと切り捨てられる。これには思わず真顔になる。

 

「お前の!両親の!事だが!」

「だから興味ねえーって。死ぬ前にカッコつけようとすんのやめてくんない?」

「オ…オマエ…!」

 

いつも通りに、お互い譲らずに口喧嘩をする始末。はたしてこれが最期の会話だとは誰が思うだろうか。

 

「…悠仁」

「んー?」

 

話を切り替えたかったのか、それとも悟ったのか、背を向けたままに悠仁に話しかける。

 

「オマエは強いから人を助けろ」

「手の届く範囲でいい。救える奴は救っとけ。迷っても、感謝されなくても、とにかく助けてやれ」

 

「爺ちゃん…?」

 

「オマエは大勢に囲まれて死ね。俺みたいにはなるなよ」

 

そう言うと、瞳を閉じて沈黙する。待てども待てども物音一つしない、痛い程の静寂は、悠仁の心に死というものをハッキリと浸透させていく。

 

「…爺ちゃん…」

 

悲しみに暮れる心を何とか鎮め、看護師に知らせようと扉に手をかける。

 

「それと!」

「ぅのわっ!?い、生きてんのかよ!ビックリさせんなって!」

 

思わぬドッキリを仕掛けられ、オレの純情を返せと訴える悠仁を視界に収めず、ただ虚空を見つめて言った。

 

「そこの二人。悠仁を、バカ孫を頼みます」

「は?爺ちゃん、見えて…」

 

真剣に、そこにあるものとして扱う祖父。どうやらまぐれでも無いようで、じっとその一点を見つめ続けている。

 

観念したのか、二人が粒子を纏いながら病室へと姿を現す。

 

「…本当に気づいてたみてえだな」

「ですが……」

「あァ…。んーと、大将の爺ちゃんよ。アンタ、今彼岸と此岸の間にいるぜ」

 

金髪の男、坂田金時はやや言いづらそうに告げる。しかしそれも分かっているとばかりに頷くと、どこか穏やかに昔話を列ねていく。

曰く、悠仁には友達が少ないとか、頭が悪いとか。とにかく、いい事、悪い事、どうでもいい事まで時系列を問わずに語っていく。

 

「あらあら、そんな事が…」

「やめろって!そんなんガキの頃の話だろ!?」

 

久しぶりに、本当に久しぶりに笑い合えた二人。なんの変哲もない家族の団欒は、唐突に終わりを告げる。

 

「コフッ」

「爺ちゃん!………死ぬ、のか…?」

 

分かっている。頭ではそうだと分かりきっている。何より、自分よりも遥かに()()()()()()()に詳しい彼等が、それが薄氷の上に成り立つ空元気だと言っていたではないか。

さっきまでは何とも思って居なかったが、今度こそ現実味を帯びた死の予兆。

 

途端に心に暗雲が立ち込め、行き場のない不安と焦燥が胸中に渦巻く。

 

「………」

「アホ、ジジイ一人見送るのに何て顔してやがる。そんなんじゃ妻に先立たれた時が恐ろしいわ」

 

黙りこくる悠仁に、フッ、と緩んだ顔で微笑みかける。

 

「さっきはな、人を助けろって言ったがよ。やっぱ、アレは無しだ。勿論、出来る範囲では助けろよ?」

「…は、はあ?何だよ、それ。結局、どっちなんだよ」

 

「いいか。これから先、オマエが挑むのはぜぇーんぶ戦いと言ってもいい。大学受験、テスト、就職。他にも、やりたいこと、やらなきゃいけない事があるだろ。そんな時に大切なのは実力じゃあねえ。戦う理由だ。自分が戦う理由さえ定めちまえば、どんな事があってもその芯を貫けるってモンだろ」

 

「「……っ!!」」

 

反応を待たないまま、いや、既にもう目も耳もマトモに機能していない。この男、本当に根性だけで喋っている。

 

「爺ちゃんっ…!」

「ああ、仁。オマエの子供はまだまだ半人前で……」

 

ピー

 

無機質な音声が木霊し、今ここに一つの命が消えた。

虎杖は立ち上がり、今度こそ病室を後にする。

 

『はい、どうされました?』

『…虎杖さん?』

「爺ちゃん死にました」

 

その声は震えていて、弱々しかったが、迷いも未練も無かった。

ただ、少しだけ泣きたくなった。

 

「なあ、大将よ…。その…よ」

「ん?」

 

坂田金時は思い出す。決して忘れられないあの戦争を、あの明日の先から訪れた、異邦の友人達を。

 

『戦う理由!

 ―――俺がマサカリ振るうのは、何の為か!』

『何でもない毎日を生きる、

 数多の連中(みんな)のために!

 オレは! オレの(いくさ)を続けてやらあ!』

 

「大将の爺ちゃん、相当にゴールデンだったぜ」

「ッ……!!」

 

その後、虎杖から漏れる呪力の残穢を追ってきた呪術師、伏黒恵によって両面宿儺の指の危険性を示され、学校へと向かう事となる。そこで、不意をつかれて伏黒は危機に陥るも、虎杖の乱入で難を逃れる。

 

如何に驚異的な身体能力を持つ虎杖とはいえ、呪力でしか攻撃の通じない呪霊には劣勢に立たされる。そこで特級呪物たる宿儺の指を飲み込み、一時的に体を乗っ取った四腕の鬼神、両面宿儺により呪霊は祓われた。

 

両面宿儺は雑魚狩りを終えた源頼光へ襲いかかるも、そこは源氏郎党。難なく一蹴する。

 

後に五条と名乗る伏黒の教師が現れ、現在の虎杖の立場や呪術界隈の話を進め、条件つきで、秘匿死刑の無期限執行猶予が認められる。

 

―――…

 

「呪いに遭遇して普通に死ねたら恩の字 ぐちゃぐちゃにされても死体が見つかればまだマシってもんだ」

 

「宿儺の捜索をするとなれば凄惨な現場を見ることもあるだろうし 君がそうならないとは言ってあげられない」

 

「ま 好きな地獄を選んでよ」

 

「……いや、俺はまだ死ねない。爺ちゃんと約束したんだ。俺は俺の戦う理由を探す。それまでは死にきれない」

 

「じゃ、もし見つかったら?」

 

「戦う理由を貫き通すから死ねない」

 

「ヒュウ、我儘だねぇ。でも僕、そういうの嫌いじゃない。……で、そろそろそこの二体?二人?も説明して欲しいんだけど…」

 

「サーヴァント『ライダー』。源頼光。彼、虎杖悠仁の使い魔の様なものです」

「サーヴァント『バーサーカー』。坂田金時。あー、まあ、アレだ。何ともゴールデンな縁って奴で召喚された。一応本人?だぜ」

 

事情を知らない五条悟に、聖杯戦争やサーヴァントを説明し、秘密裏にだが認められる。

 

「楽しい地獄になりそうだ。あ、今日中に荷物纏めておいで」

「どっか行くの?」

「東京」

 

坂田金時は、ワチャワチャと戯れる二人を見つめ、その後に街へと目を向ける。

道は驚く程に整備され、人々の姿は多種多様。想像すらしていない大きさの道路が続き、どこもかしこも平安京とは比べるべくも無い程に様変わりしている。

 

(だが、人の営みは何処までいっても変わりゃあしねえ)

 

『アンタはアンタの世界を守れ。

 オイラは、オイラの世界のために!』

『戦うさ!』

 

(なあ大将。明日の先から来た相棒。こいつが、オイラ達の守った明日の先って奴だよな。…だが、な…)

 

(呪霊なんていう魔性が湧いてると来た。さらには今の大将にゃあ鬼神までもがついていやがる)

 

(まだまだ戦いは続くみたいだぜ。相棒)

 

「誰かがオレを呼びやがる。魔性を屠り、鬼を討てと言いやがる!オレは頼光四天王が一人、主馬佑坂田金時!」

 

「ゴールデン!」

 

 




続かないと思う


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