七草家の末っ子 (主義)
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入学式

『七草家』は十師族の中でも最有力とされている一族。僕はその一族の当主である七草弘一の子供。異母兄弟を含めて一番年下。

 

 

 

 

香澄姉さんと泉美姉さんの一つ下なので今年から第一高校に入学する。そして今日は第一高校の入学式の日。父さんや母さんは仕事の関係で来れないとのことなの真由美姉さんが保護者代わりとして出席してくれるらしい。

 

 

「別に真由美姉さんも忙しいなら来なくても良かったですよ?入学式に保護者が来れないとしても問題はないと思いますし」

 

 

 

 

「そうはいきません!!折角、弟の晴れ舞台に姉さんが来ない訳にはいかないわ」

 

 

 

 

「晴れ舞台…って…只の入学式ですよ、姉さん」

 

 

姉さんたちは何かと入学式や授業参観とかにも顔を出す。父さんや母さんは忙しいためにあんまり来てくれたことは無いけど……姉さんたちは毎回来てくれる。嬉しいけど少し申し訳ない気持ちもある。だって僕のために姉さんたちは学校を休んできたり、予定をキャンセルしてくれたりするからだ。

 

 

 

 

 

心緒(みお)くんが第一高校に入学するのは後にも先にも今回の一回しか無いんだからそんな貴重な時に来ないでどうするの」

 

 

 

 

「その気持ちは嬉しいですけ「心緒(みお)くん!!!!」」

 

 

 

すると前から僕の名前を大きな声で叫びながら近づいて来る双子がいた。その双子は言わなくても分かると思いますが…僕の姉である香澄姉さんと泉美姉さん。叫んでいるのは香澄姉さんだけだけどね。

 

 

 

 

 

「態態…寝抜け出したまで来なくても良いのに。香澄姉さんも泉美姉さんも」

 

 

 

 

この二人は第一高校の在学生で香澄姉さんは風紀委員、泉美姉さんは生徒会役員として第一高校に貢献している。こんな二人の弟というだけで期待値がいつも高い。比べられるのは今に始まったことじゃないから別に良いけど…ね。

 

 

 

 

 

香澄姉さんは僕の近くまで来ると抱き着いてきた。これもいつものこと。香澄姉さんは僕と一緒にいる時はほとんど抱き着いて来る。

 

 

 

 

「そうはいかないよ!風紀委員の方も忙しいけどボクが弟が入学するのにその姿を見に来ないなんてあり得ないよ!」

 

 

 

「香澄ちゃん、心緒くんが少し引いてるよ。心緒くんに会いたかったのは分かるけどそんな風に迫っていたら、いつか嫌われちゃうかもしれないよ」

 

 

泉美姉さんは香澄姉さんとも正反対でとても穏やかな人。僕も十五年ぐらい一緒にいるけど泉美姉さんが怒っているところをあんまり見たことがない。

 

 

 

「………嫌われる……嫌われる…」

 

 

 

泉美姉さんの言葉に反応したのか…抱き着いていた香澄姉さんは何かを小さな声で呟きながら僕から離れていった。

 

 

 

 

 

「それにしても…心緒くんは制服似合うね!」

 

 

 

 

泉美姉さんは笑みを浮かべながら、こちらの方を見て言った。いつも思ってしまうけど…双子なのに香澄姉さんと泉美姉さんの性格は真逆と言ってしまっても良い。香澄姉さんは明るくて誰とでも友達になるようなタイプ、泉美姉さんは大人しくて大人っぽさがあるタイプ。これほどまでに双子なのに違うのだ。

 

 

 

「そうですかね……でも、似合っているなら良かったです」

 

 

似合わないとしても制服だからこれから三年間、着なくてはならないのだけど似合わないより似合う方が良いに決まっているからね。

 

 

 

 

「ボクも似合っていると思うよ!!」

 

 

 

「ありがとう!香澄姉さん、泉美姉さん」

 

 

 

これから僕は国立魔法大学付属第一高校に入学してどんな風に変わるのだろうか。少しの期待と少しの不安を感じながら僕は国立魔法大学付属第一高校へと入っていく。



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三矢詩奈

その後も暫く『七草家』の面々で会話を繰り広げて…入学式が近くになるとそれぞれがそれぞれのいるべき場所に散った。さすがに真由美姉さんは人望が厚かったらしくボクたちが話していると在校生らしき人達が集まって来ていた。まあ、生徒会長だし、容姿も整っているからモテるのは当たり前ですからね。

 

そして入学式が始まった。校長や生徒会長の話を適当に聞き流しながら入学式が終わるのを待っている。そして最後は新入生総代。

 

 

 

新入生総代を勤めていた女性は堂々と皆の前に立って新入生総代の役割を果たしていた。同い年なのに凄いなぁ~と感心してしまったほどだ。『三矢』と名乗っていたから数字付きなのだろうが…ボクと違って優秀なのだろうね。彼女は一科生でボクは二科生。第一高校には一科生と二科生が存在する。これは指導教員の不足事情が原因なのだから仕方ない。ボクはこういうのを気にしないけど…他の二科生の人はあんまりこの制度をよく思っていないようだ。

 

 

まあ、それも仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。人間は人と自分を比べてしまう生き物なのだから。結果として今の時点で一科生に比べるとニ科生が劣っているのは事実。ボクも一科生だけど他の一科生と比べれば劣るところも多々あるだろうしね。分かりあうのは多分未来永劫無理だろうけど分かりあおうとする努力を忘れてはいけない。

 

そんなことを考えていたらあっという間に入学式は終わりを告げていた。

 

 

 

ボクは座っていた席を立ち、出口への道を歩み始めた直後に後ろから誰かに掴まれた。後ろを振り向くとそこに居たのはさっきまで新入生総代を務めていた人物だった。

 

「三矢」

 

 

「はい、そういうあなたは七草光莉さんじゃないですか?」

 

ボクの名前はすぐに出るとは…この人調べてきているな。家督を継ぐわけではないからそんなに有名ではないんだけどな。

 

 

「そうですけど…どこかでお会いしたことありましたっけ?」

 

 

 

「いや、只こちらが一方的に知っているだけですので」

 

一方的に知っている……?まあ、『七草家』に属している以上知られている可能性はないわけでもない。

 

 

「…それで何か用があってボクを呼び止めたのでしょうか?」

 

 

 

「いや、そういうわけではないのですが…あなたとは一度お会いしてみたかったものですから」

 

 

ますます、怪しくなってきた気がする。ボクなんかと会って何をしようとしているんだろうけど。

 

 

「そうですか。期待外れの人間でした?」

 

 

 

「いえいえ、期待通りの人でした」

 

 

 

「そうですか…」

 

 

それだけ話すと三矢さんはボクの目から去って行ったが…最後まで一体本当の目的が何なんのか分からない。不気味でしかない。これからの学校生活に支障が出なければ良いんだけどな。『三矢』に目を付けられるようなことをした覚えはないんだけどな。

 

 

 

 

それから数日後にあんなことが起こるなんて思いもしなかった。



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