NEXT WORLD (千本虚刀 斬月)
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ぼうけんのしょをつくる
死んでしまうとは何事だ。
仕方の無い奴だ。
貴方には、特別に機会を与えよう。
「亡霊は消えるべきよ。あんたも、…わたしもね」
切嗣の『起源弾』をもってエインズワースの
だが、同時に
「・・・・・でもま、悪くない結末じゃない?」
十分がんばった・・・よね、
最後に、イリヤとミユに、ちゃんと
「・・・ったく、なんて顔してるのよ。頑張りなさい!お姉ちゃんが見守ってるからね!」
クロ――――――ッ!!!
ふと意識を取り戻す。そこは白く広大な空間で、目の前には明らかに人間を超越した女性が椅子に座っている。
(英霊?いえ、ちがう。まさか
畏怖の余り身震いしそうになる。そこに
「クロエ・フォン・アインツベルンさん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなりました。短い人生でしたが、あなたの人生は終わってしまったのです。…さて、初めましてクロエ・フォン・アインツベルンさん。私の名はアクア。日本において、若くして死んだ者の魂を導く女神よ。あなたには、幾つかの選択肢を与えます。」
1、天国・・・実際は英霊の座である。
2、平行世界の日本に転生して人生をリスタート。
「そんなのどっちも嫌よね?そこで、とぉっても
3、異世界で魔王討伐
その女神曰く、その世界には魔王と呼ばれる存在と配下の魔物達が居て人類を脅かしている。その世界で死んだ者が増えすぎて、しかも輪廻転生を断る者が後を絶たなくなっているのだとか。このままではその世界は遠くない未来において子供が生まれず、人は絶滅してしまう。更には死んだ魂が昇天までもを拒み、結果としてアンデットやリビングデッドとなり現世を彷徨う者も増えるという負のスパイラルに入っているらしい。そこで天界は苦肉の策に出た。若くして死んだ未練の多い人間達を、肉体や記憶はそのままで送り出すのだ。それも、送ってもすぐに死なれても意味が無いので、何か1つだけ転生先の世界に好きなものを持って征かせる。
「・・・てか、いまさっき
「大丈夫!既に結構な数の勇者(候補)を送ってるから。戦力も十分整って、魔王討伐も間近の筈よ!だから安心しなさいな!」
何というか、胡散臭い。それも、ギルガメッシュ(小)の様な底知れない感じでは無く、間抜けな三下っぽい胡散臭さ。
「仮に魔王討伐を引き受けたとして、いえあくまで仮定の話だけど、コミュニケーションもとれないんじゃどうしようも無いで「それも大丈夫!言語は送るときに脳にビビビーっと書き込まれる感じですから安心してください。送られた後は、まず冒険者ギルドへ。そこで冒険者のカードを作ってもらいます。その世界での身分証明書のようなものになります。OK?」
「そう言えば、さっき特典をもっていけるって話してたわよね?」
「おお!興味持ってくれたみたいね?ええ、ええ。どんなものでも1つなら良いわよ。何にする?」
「・・・それなら――
「ふ~~む、うむむむ・・・まあ良いいでしょう!願わくば貴方こそが魔王をも打ち倒すことを祈っています!さすれば神々からの報奨としてどんな願いでも1つ叶えて差し上げましょう!」
アクアは女神として厳かに神託を下す。その様は超越者と讃えるに相応しい神威を纏っていた。
「さぁ、旅立ちなさい!!」
再びこのような事にならぬ様祈っているぞ。
では、征ってこい。勇者クロエ・フォン・アインツベルンよ!!
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チュートリアル
気が付くと、目の前には驚きの光景が広がっていた。
一昔前にはRPGの定番とも言えた、中世舞台のファンタジー。
そうとしか形容できない街並みと、雑多に行き交う住民達。
それに何より、マナの濃密さ。神秘の薄れた現代では考えられない。それこそ神代にも匹敵するかも知れない。
「なるほど、たしかに異世界だわ。」
これまた驚いた事に、受肉を果たした状態で現界していて、最大の懸念事項が解消されていた。
オマケに掌には紙1枚、良く分らない肖像画と1000の数字が書かれている事から多分軍資金なのだと推測する。
「・・・まったく、至れり尽くせりのサービスね。」
あの女神は冒険者ギルドにいってカードを作って貰えと言っていた。そして、魔王討伐の暁には
よし!そうと決れば前進あるのみ!!
ちょうどそのとき、如何にも冒険者な風体の男達が通り過ぎた。
ギルドに報告を~と言っている。彼等の後を付いていけば冒険者ギルドに辿り着けそうだ。
やって来ました、冒険者ギルド!
意気揚々と扉を開けると、清々しいくらいにテンプレ通りな内装で、むしろ感動すら覚える。
やや奥まった位置にあるカウンターに行こうとすると、視線が集まり、ささやかながらざわめきが起こる。
まあ確かに、見た目10歳程度の美少女(しかも結構きわどい露出の衣装)が一人で、となると流石に目立つみたいだ。
「冒険者ギルドへようこそ。えっと、お嬢ちゃん一人かい?」
「ええ。冒険者になりたいの。でもつい最近この街に着たばかりだから、未だ勝手が良く分らないの。」
「なるほど、登録手数料が必要なんだけど、大丈夫かい?」
「これで足りるかしら?」
「うん、千エリスちょうどだね。…コホン。それでは改めまして、冒険者ギルドへようこそ。これから冒険者について、軽く説明させていただきます。」
(ふんふん。説明を聞く限り、まんまRPGね。)
そして書類に必要なパーソナルデータを記入し、滞りなく受理された。
「はい、問題ありませんね。ではこちらのカードに触れてください。それで貴女のステータスがわかりますので、その数値に応じてなりたい職業を選んでください。」
そもそも、クロエはエミヤのデミ・サーヴァント同然なのだから、身体能力は人間の領域を凌駕している。
え?
魔力にしたって、完全に受肉しているため燃費は大幅に改善されている。
だから、選択可能な職業は数多に及ぶ。選り取り見取りだ。
冒険者・・・基本中の基本の職。専門職の様にステータスのプラス補正は無いが、その分レベルは上がりやすいし、スキルポイントさえあれば無限に
アーチャー・・・そもそも
ソードマスター・・・投影宝具の憑依経験がある以上は、やっぱりわざわざ選ぶ旨味は無さそう。
クルセイダー、アークプリースト・・・聖職者なんてガラじゃ無いし、なにより神への信仰心なんて持ち合わせていない。
アークウィザード・・・超魔法特化職。特化とは言え、身体能力値が下方修正されたり、既に習得している近接戦闘系スキルが使えなくなる、とかの心配は無いらしい。
悩んだけど、アークウィザードに決めた!
「アークウィザードですね?――では、クロエ・フォン・アインツベルン様。ギルドのスタッフ一同、今後のあなた様の活躍をきたいしています!」
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カエルぴょこぴょこ
クロエはギルドの片隅で冒険者カードをいじっていると、習得可能スキル一覧に良く識る
『固有結界・
迷わずポイントを消費してそれらを習得する。
他には、初級魔法、中級魔法、
「さて、次はクエストね。」
今のクロエにはお金が無い。服や小物なんかはいざとなれば投影品で賄えるとして、このままではバゼットと一緒だった時みたいに、お風呂はドラム缶(百歩譲ってまだ我慢できる)、最悪の場合は木の根っこで飢えを凌ぐハメになりかねない。
それに、新たに習得した魔術/魔法の試し撃ちもしておきたい。
お手頃雑魚モンスター群の討伐系クエストを受けてみよう。無論、一人で。こんなデタラメな異世界とは言え、
受けたクエストはカエルの討伐。
さっそく街の外に出て、広大な平原地帯にGO!
「カエルぴょこぴょこ、三ぴょこぴょこ。合わせてぴょこぴょこ、六ぴょこぴょこ♪みみずにょろにょろ、三にょろにょろ。合わせてにょろにょろ、六にょろにょろ☺」
鼻歌交じりで平原を散策していると、居た。
「あれね。・・・話には聞いてたけど、でっかい!?」
人1人くらい丸呑みに出来るサイズ、とてもじゃないけど「ぴょこぴょこ」なんて可愛い表現は当て嵌まりそうに無い。
一際デカくて派手なカエルに、やや小柄なカエルが何頭か群がっている。そして騒音を越える大合唱が轟いている。
はぁ?!うっせぇ、うっせぇ、うっせぇわ!!
「アレかしら?繁殖期って言ってたし、交尾のための求愛行動ってやつ?」
ま、何にしても好都合ではあるか。
Let’s蹂躙タイム!
新たに習得した魔術/魔法の試射を一通り済ませ、その場に残ったのは数多のカエルの残骸と、魔力の切れかけたクロエ。
本来受けたクエストは3日以内に5匹倒せば10万エリス、死体の買い取り価格が1匹につき5千エリス。最大で12万5000エリスの稼ぎとなる。クロエはたった数時間でこの数倍もの額を稼いだ。
コチラの物価に疎いから、この金額でどの程度の水準でどれ位の期間生活できるのか良く分らない。
冒険者は納税義務が免除されるらしいが、日本では当たり前だった医療保険や老後年金などの社会保障制度も一切無い。全てが自己責任らしい。
「そう考えると、やっぱり今のうちにある程度まとまった金額を稼いでおいた方が良さそうね。」
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女神…??
クロエはカエル殲滅の報告のために意気揚々とギルドに赴いたのだが、そこで
どうやら、と言うかやっぱりやり過ぎだった。
何しろ半日足らずで斃したカエルの総数は100オーバー。その内6割程が跡形も無いか、原型が残ってないくらいグチャグチャで食用に回せない有様。3割弱が肉が傷んでいて、味質の低下が免れない状態。真面なのは1割ちょっと。
御陰でトードスレイヤーなんて二つ名が定着しそうになっている。
いや、わたしどこぞの四方世界の銀等級冒険者じゃ無いんだけど!?
それから、暫くは冒険者として活動するにあたって制限が課せられる事になった。それは、先輩冒険者とパーティーを組む事。しかし、ギルドの職員は暫しの間、人選に悩む。
如何に高ステータスの上級職であろうとも、クロエはまだ11歳の少女であり、つい先日冒険者になったばかりである。やはり先導役が居た方が誰にとっても今後のためになる。
ギルド職員が候補に挙げたのは2人。両者共に、面倒見の良い女性冒険者。
1人は、人格面でも品性方向な淑女で、かつては氷の魔女と謳われた歴戦のアークウィザード。普段は魔道具店を営んでおり、柔和で気立ての良い店主として親しまれている。
もう1人は、気風の良い姉御肌な、期待の若手盗賊。最近は貴族令嬢と思しき
先導役としては女性アークウィザード同士で
ギルド職員が悩んでる間、クロエは冒険者カードの確認していた。そこでクロエの冒険者カードの習得可能スキル一覧に新たな項目が増えていることに気付いた。
『聖杯拡張』『錬鉄向上』
(朝までは無かったのに、今になって出現したのは何故?カエルを倒してレベルが上がったから?わたし自身がこの世界に馴染んだから?チュートリアル完了で開放された?う~~ん、わかんないや)
取敢えず新たに得たポイントを含めて全部のポイントを5:5で振り分けていく。
これによってクロエの能力値は、イリヤと分離して性能を分割される前、黒化セイバーと戦った時に勝るとも劣らないレベルとなった。
クロエは
なんだか若干値切られた感じがして腑に落ちない部分もあるが、まさか最初に持たされていた登録料の1000エリス分だというのだろうか?
「まあ、本来ならあのまま消滅してたワケだし?至れり尽くせりとまでは言えないけど、受肉して異世界転生の時点で充分に奇跡の大サービスなんだから、文句言っちゃ罰当りか…」
そう考え、呑み込む。
その時、不意に強大な力を感じ取る。
それは魔力というにはあまりに強大すぎた。甚大で、重厚で、濃密で、そして清浄すぎた。それはまさに神気だった。
「!?!?――この気配は、あの女神!?・・・一体、どういう事…?」
クロエは唐突な緊急事態に頭を抱え、暫し煩悶する。
そして、ギルドに見知った女神が少年と共にやって来た。
「いいかアクア、一先ずは冒険者ギルドへの登録と最低限の装備を調えられる程度の軍資金の調達、そして宿泊場所の確保までは今日中に進めるぞ。」
「分ったわ。とりあえず私も冒険者として登録すればいいのね?」
「そういう事だ。よし、行こう!」
二人は意気揚々と受付の列に並ぶ。しかしこの二人には、冒険者として登録するには致命的に足りない物が在った。
受付嬢のルナが、ある意味死刑宣告にも等しい言葉を吐く。
「では登録手数料が掛りますが大丈夫ですか?」
そう、この二人は全くの無一文だったのである。
この光景を目の当たりにして、思わず目を逸らしてしまったクロエはきっと悪くない。
その後、たまたま居合わせたプリーストに対して意気揚々とお金を集る様は筆舌に尽しがたく、更にはその
ちょうどそのタイミングでギルド職員から声をかけられた。件の先導役の冒険者は、どちらも今日は都合がつかないらしい。なので、明日の昼過ぎくらいにまた来て欲しいとのことだった。
そういう事なら仕方ない。とは言え、やるべき事はたくさんある。今日の処は街の探索と、宿泊場所の確保。明日の午前中には入り用の小物類の調達を済ませたい。大忙しだ。
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