ウルトラマンリンドウ (ノイズシーザー(旧ノイズスピリッツ))
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ファーストコンタクト(前編)
──ある宇宙の、ある惑星の荒れ果てた地で1つの戦いが起こっていた……
「────ッ!」
珊瑚を彷彿とさせる赤い装飾が印象的な怪獣……否、とある異次元人の怨念が生み出した怪獣兵器……〝ミサイル超獣ベロクロン〟は咆哮をあげながら、敵である〝銀と黒の巨人〟に向けて己の異名の由来であるミサイルを体中の珊瑚から発射する。
無数のミサイルが雨のように巨人に降り注ぎ、辺り一面が爆炎に包まれる。
それを見たベロクロンは自分の勝利を確信したのか、まるで高笑いするかのように咆哮する。
……しかし、燃え盛る炎の中で光が漏れ出し、その中から銀の部分がオレンジ色に、黒い部分が赤く染まり、筋肉質で力強い姿となった巨人が地響きを鳴らしながら駆け抜けてきて、そのまま拳を振りかぶり、ベロクロンを殴りつける。
姿が変わった巨人に殴られたベロクロンは倒れ込み、そのまま地面に沈む。その隙を見逃さないと言わんばかりに巨人は倒れるベロクロンの上に跨り、ひたすら殴り続ける。……勿論ベロクロンも口から火炎放射を吹かし、巨人の顔に浴びせたり等して抵抗するも、火と土の力を宿した姿となった今の巨人には全く通用しない。
火炎放射を浴びされる中、巨人はミサイルの発射口である赤い珊瑚と金縛り光線と光弾を発射できる両腕を順番に掴み引き千切る。
火炎放射以外の武器のほとんどを破壊されたベロクロンはもはや満身創痍だ。
だが巨人はそんなことは関係ないと言うようにベロクロンの尻尾を両手で掴み、そのままベロクロンをジャイアントスイングの要領で振り回し、空中に放り投げる。
放り投げたと同時に巨人は胸の前で両腕をクロスする。
するとみるみる巨人の両腕に限界までエネルギーが溜まり、両腕を一旦離してから、今度は相手に向けるように両手を十字にクロスし……そこから光線が放たれた。
放たれた光線はまっすぐベロクロンに向かっていき、見事に命中。
空中のベロクロンは内側から爆発四散。パラパラとその残骸が巨人の周りに散らばる。
ベロクロンを葬った巨人は光線の構えを解くと同時にその体をまたしても光に包ませる。
光に包まれた巨人の体はみるみる小さくなっていき、やがて人間大のサイズまで縮んだと同時に光が消え、人間の青年の姿になる。
さっきまで巨人だった青年は周りに散らばるベロクロンの残骸には目もくれず、ある場所を目指してこの場を走り去っていった。
「……はぁ……はぁ……っ!」
息を切らしながらもなんとか目的の場所まで辿り着いた青年はある山の頂上にいた。……そこに居たのは、仰向けで倒れている明らかに人ではない怪物の姿。
「ブレットっ、しっかりしろ! 目を開けろっ!!」
青年が名を呼びながら怪物……ブレットの名を呼びながら駆け寄る。だが青年がいくら呼び、体を揺すってもピクリとも動かない。それはそうだろう、何故ならブレットは既に事切れていたからだ。
青年はそれに気づきながらも呼びかける事を止めない。諦めたくないからだ。
やがてブレットの死を受け入れ呼びかける事を止める。
だが青年はブレットの亡骸を両腕で抱き抱えながら、涙に濡れている瞳を怒りに染め上げ、顔を上げて空を睨みつける。
──怒り、涙に濡れた顔で空を睨みつけるその瞳には青く輝きを放つ巨大なリングが映っていた。
とある宇宙の地球……そこにある小さな町、華道町。
日が沈む夕暮れ時に、双子の姉弟が追いかけっこしている。男女にしては珍しくそっくりな双子だ。学校帰りなのだろうか、制服を着ている。
「待って! 待ってってば!?」
汗だくの少年……ヒュウガトウマが息を切らしながら疲れた様子で双子の姉であるハルカに制止の言葉をかける。
「や〜だよ〜だ!」
同じく笑顔でイタズラっぽく舌を出しながら、少女……ヒュウガハルカは双子の弟に答える
「そんな〜……」
少女の言葉にしょんぼりとし、肩を落とす少年
「ほーら! 早く帰らないと冷蔵庫にあるプリン、アンタの分まで食べちゃうからね、トウマ!」
「えぇ!? いくら何でもそれは酷いよ、ハルカ!?」
「なら早く追いつく! 駆け足ぃ!」
「ちぇ、仕方ないなぁ! 待て〜!」
そんなやりとりをしながら 2人は帰宅路を進み、自宅に帰宅した。
「「ただいまー!」」
「お帰り! ご飯もうすぐできるから、2人共先にお風呂入りなさいね!」
「「はーい!」」
ドアを開けて、元気よくただいまを告げる。するとエプロン姿に、片手におたまといった如何にも食事の支度中といった、格好の女性が2人を出迎える。2人の母親である、チナツだ。
チナツは自分の子供達に風呂に入るよう伝え、双子は声を揃えて元気よく返事をして、どちらが先に風呂に入るかをジャンケンで決める。……結果はハルカの勝ちであった……
──帰宅してすぐに、2人は順番に入浴し、それを終えて食卓に座って、エプロンを外したチナツも着席。そのまま3人で家夕食を楽しんだ。
「……」
「どうしたのよ、トウマ? ずーっとテレビ見てて?」
食事を済ませ、鼻歌を歌いながら食器を洗っているチナツを尻目に、テレビを齧り付くように見ている弟に言葉を投げかける。
「ああ、近くにある大きな山にUFOを見たってニュースが報道されてさ。気になっちゃって……」
「へぇー、アンタ相変わらずそういうの好きねぇ……」
どうやらニュース、それもオカルト関係の奴を見ていたらしい。
ニュースの内容は華道町の近くにある山で謎の光る玉のような飛行物体の目撃情報が多数あるという話題で持ち切りになっていた。
そのニュースの内容を流し見しつつ、ハルカは弟の幼い頃から変わらない趣味に思わず笑いそうになる。
「悪い?」
そんな姉を見て勘違いしたのか、ムッとした顔で姉を睨みつける
「ぜぇーん、ぜんっ! 明日休みだし、なんなら一緒にその湖にいく?」
「いいの!?」
「だからいいって言ってるじゃん」
「やったぁ!」
自分には良さが理解できないが、だからといって弟の趣味趣向を否定的になる理由がないのだ。
だからその現場に行くことを提案する。姉としていい格好がしたいから。
「ふふっ……」
そんな子供達を見守るように、チナツはにっこりとふふっと笑いながら子供達を見ていた……
翌日、リュックとチナツのお手製弁当と水筒を持って、双子は例の山に向かっていた。
「……ここがその山? UFOが出たっていう?」
「うん。……UFOらしき飛行物体が目撃されたっていうのはこの山だね」
そびえ立つ山を見上げ、ハルカは弟にしか聞こえない程小さく呟く。弟の為とはいえ、やはり退屈そうだ。
そんな姉の心情を理解して、思わずトウマは苦笑いを零すが
そのすぐ後に真剣な表情になり、何らかの痕跡がないかと辺りを見回し始める。
「……ほんと好きねぇ」
そんな弟を見ながら、ハルカは気持ちを切り替えて共に痕跡を探そうと──
「こんなところで何をしている?」
「「えぇ!? 誰っ!?」」
……したが、自分達ではない第三者の声が聞こえ、ハルカは勿論、トウマも驚き唖然とする。
「……落ち着け。大きな声をだすな」
「「は、はい……すみません……次からは気をつけます」」
そんな2人に人差し指を口に当てて青年は注意する。2人も、山に来てるのは自分達ぐらいだと思ったていたから、驚いただけなので素直に青年に謝る
「……ならいい。……俺はヒカリリンドウ。お前達は?」
「双子の姉のヒュウガハルカです。現役JCでーす!」
「弟のヒュウガトウマです。……リンドウ、さんでいいですか?」
お互いに自己紹介を始める。どうやらこの長身の青年はリンドウというらしい。
「ハルカにトウマだな。……で何故子供だけでこんなところに?」
「えーっとそれは……」
ハルカはリンドウにここにきた経緯を話す。気のせいか、それを聞いたリンドウの顔が多少引きつっていたが子供だけで来るなんてとかそういう理由だろうと思い、話を続ける。
「……なるほどな。UFOね……」
話を聞き終えたリンドウは深くため息をつく。何故かは分からないが先程と比べると疲れているように見えた。
「あのっ、リンドウさんこそどうしてここに?」
「僕も気になります、教えて下さい。……出来れば、ですけど……」
「……俺はここには、まぁたまたま近くに寄ってきただけだ」
双子の質問になんの抵抗なくはっきり答え、自分のカバンから水筒を取り出して蓋を開けてあおろうとしたが突如地震が起こり、激しい揺れに水筒を落としてしまう。
「あっ、水筒が……」
「ど、どうぞ!」
「ああ、済まないな。ありがとう」
コロコロと水筒が転がり、トウマの足元までいく。それを拾い上げ、リンドウに手渡す。
水筒を拾ってもらった事でしっかり礼をいい。その後に改めて水筒をあおり、中のラムネを飲み始める。
一通り飲み終えた後、リンドウは2人にある事を聞く。
「最近、地震が多いのか?」
「何言ってるんですか? もしかして外国人?」
「いや違う。(まぁ、ある意味外国人ではあるな……どちらかと言えば、外星人というのが正しいだろうが)」
「なんだ……」
「ここ最近、やたらと地震が多いんです」
「……なるほど。ありがとう」
地震が多いのか? という妙な質問に対して、双子は首を傾げるも、真剣に答える。
それを聞いたリンドウは休憩はおわりだと言わんばかりに立ち上がり山の奥へと進もうとするが、再び地震が起きる。
「ぐっ!?」
「「あ、待ってください! ──わぁ!? さっきよりずっと強い!?」」
立ち上がれないほどの地震と共に、山の頂上から火が噴いた。
「「えぇえええぇえ!?」」
「っ!? お前達は今すぐここからにげろ!」
火山ではない筈の山から火が噴いて、双子は思わず呆気に取られる。
何かを感じとったリンドウが逃げるように双子に伝えるが、既に遅かった。
山から突き出るように巨大な怪物が現れたのだ。
──頭にトサカのような黄色い発光体が特徴的な怪獣……その名も熔鉄怪獣デマーガが現れた!
ウルトラマンどこー?(白目)
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ファーストコンタクト(後編)
【トウマ視点】
「…噓……?」
体を恐怖で震わせながら、それを指さしてハルカが言う。
「………」
リンドウさんは無言でそれを睨み付けている。
「か、怪獣…!?」
GYAOOOOO!!!!
──僕の呟きに答えるかのように、それは大きく口を開けて吠えた…
「きゃあ!?」
その大きな声に驚き、ハルカはしりもちをつく。…それを見た僕は慌てて手を差し出そうとしたけど…
「…大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます…」
リンドウさんが先に手を差し伸べて、立たせてくれた。…ぼ、僕もお礼を言わなきゃ!
「ありがとうございます、リンドウさん!」
「どういたしまして。…早くここから逃げるぞ、ここにいたら危険だ」
「「はい!」」
そう言って、僕にも手を差し伸べるリンドウさん。差し出されたその手をとって、僕とハルカは言葉を返す。
火を空中に噴き出す怪獣から背を向けてそのまま三人で手をつなぎながら、その場から逃げ出した…
【リンドウ視点】
──参ったな、まさか地球に来て早々にこんな目に合うとはな…俺の両側で手をつないで走ってる双子を横目にで見ながら、どうするべきか考える。…答えは決まっている。まずはこの2人を安全な場所まで連れて行かないと…
…それにしてもあの怪獣…以前先輩に連れて行ってもらえた光の国のデータベースで見たことがある。…確かデマーガとかいったはずだ。…いざってときは目の前で変身してでもこの二人を守らねぇと…
「シェルターとかは近くにあるか!?」
俺は隣の双子にこの近くに安全な場所はないのかと声を掛ける。
「シェルターは町の地下にあります!」
「でもここからだとすごく遠いです!」
オレの問いに対して双子がそう答える。…遠いのか。…目の前で変身することも視野に入れないとだめだな。…あまりこの星の者に無用な混乱をさせたくないが、だからといってこの二人を見捨てることは出来ない。ブレットだったらきっとそうしてる、だから俺もそうする…!
そう思い立った俺は、足を止めようとした瞬間に上空から大きな音がエンジンの唸りあがる音が響き渡る。
なんだと思って上を見上げるとそこにあったのは巨大な戦闘艇。あれまさかこの星の…
「あ、あれって!」
「防衛軍よ! 防衛軍が来てくれたわ!」
戦闘艇を見上げて、歓喜の声を上げる双子。やっぱりこの星の防衛軍か、これは様子見か…? 俺がそう考えてると戦闘艇の先頭部に設けられたハッチが開き始める。そこから戦闘機が五機程、順番に発進されていき、町に向かって前進を続けるデマーガに翼の両側に付いているビーム砲で攻撃を仕掛ける。攻撃を受けたデマーガは怒ったのか、足を止め、戦闘機に向け火を吹いて攻撃を仕掛ける。
戦闘機達はそれを華麗によけつつ、更にビーム砲でデマーガを攻撃し翻弄させる。
……凄いな、かなりの練度だ。これは俺が出る幕はないのかもしれない。
「いいぞー! 頑張れー!」
「やったー! 私達助かったんだ!」
トウマは防衛軍を応援して、ハルカの方は助かった事に安堵の声を出しながらその場に座り込んだ。いやまだ安心するのは早いだろう……そう声をかけようとした矢先に、戦闘艇が俺たちの近くに着地する。
『そこの民間人! ここは危険だ、早くこちらに乗り込みなさい!』
そう女性の声がスピーカー越しに聞こえたと同時に、ハッチが開き始める。…随分と太っ腹だな、機密情報とかあるだろうに。……いや、見せないようにすればいいだけか。
『ほらあなたも早く乗る! おいて行かれたいの!?』
「リンドウさんも早く乗ってくださーい!」
「早く―!」
俺が考えていると、アナウンサーと既に乗り込んでいる双子が呼びかけてくる。……ちゃっかりしてるな、あいつら…そう考えて俺は戦闘艇に向かって走り出して、乗り込もうとするが、デマーガの奴何を考えたのか、着地してる戦闘艇に向けて火炎放射をしてきた! ……っ、あぶねぇ! そう思ったと同時に俺は腰のベルトのホルスターに収められた、大きな横笛型のアイテム、リンドウスパークを取り出して剣に変形させて天に向けて突き出す。すると剣から光が溢れ出して、まるで花びらのように俺の体を包みこんでいき、今の俺の本来の姿である、ウルトラマンへと変わっていく──
【トウマ視点】
──怪獣が僕らが乗っている防衛軍の戦艦に火を吹いて攻撃してきてもう駄目だと思ったら遅れてきたリンドウさんが剣を突き出すと、その体が光りだした! あまりの眩しさに僕らは目をつむってしまうと、そこにいたのは──
「デュアァァァ!」
──雄叫びを上げながら、デマーガに飛び蹴りをする巨人がいた……、飛び蹴りを怪獣に浴びせた巨人は、そのまま空中で一回転して態勢を整えると同時に土ぼこりを巻き上げながら、僕らが乗る戦艦を守るように土を巻き上げながら地面に着地する。……あれは、もしかして…リンドウさん、なの…?
「な、なんなのよ…? あの巨人は…!」
「り、リンドウさんが巨人になっちゃった…!」
アナウンスして、僕らを呼んでいたおねぇさんとハルカが驚きながら、巨人となったリンドウさんんの背中を見る。黒色と銀色の体の巨人…。…リンドウさんは、宇宙人だったんだ!
【リンドウ視点】
俺にけたぐられたデマーガは怒り狂いながら、俺に向かって火を噴いてくる。それに対して俺は両手を前に突き出して光の壁……ジェンリウムディフェンサーを展開し、攻撃を防ぐ。
『そこの巨人!』
火炎放射を防ぎ続けている俺に、背後の戦闘艇から先程のアナウンスとと同じ声が聞こえてくる。
俺は攻撃を防ぎながら、後ろを振り向く。
『──あなたは私達の味方ね?』
その問いに俺は静かに頷いた。当然だ、俺はウルトラマンなんだからな!
『……そう。なら、援護するわ! 総員! 彼を援護して!!』
『ラジャー!』
俺が出てきた時から、待機していた五機の戦闘機から、一斉に返事が聞こえ、そのままデマーガに攻撃を仕掛けてきた!
『協力するぜ、巨人さんよ!』
戦闘機の一機から若い男性の声が聞こえてくる。俺はそれに対して感謝の念を込めて、頷と、その戦闘機と共にデマーガに向かって走り出す!
ビーム砲でデマーガを攻撃をすることで注意をこちらから逸らしてもらい、その隙に殴るかかると同時に自分の体を光に包ませる! ──直後、デマーガの巨体が倒れ込む。火と土の力を宿した、格闘戦特化の剛力形態、ヴォルカニックへとタイプチェンジを果たした、俺の拳によって地面に沈んだのだ!
GYAOOOO…!!?
それに追い打ちをかけるがごとく、倒れ伏すデマーガに五機の戦闘機が一斉にビーム砲で攻撃をしてくる。
攻撃を浴びて悲鳴を上げていたデマーガも苦し紛れに火炎放射で反撃しようとするも、全く当たらない。
『うおぉ!? 体の色が変わって、めっちゃムキムキになった! すげぇや!』
攻撃を仕掛けている戦闘機の一機から先程の男性の声が響く。…騒がしいやつだなぁ…ムードメーカーだろうな、このパイロットは。
そんなことを考えていると、胸のカラータイマーが赤く音を立てながら点滅する。エネルギーの残量が残り少ないからだ。……聞いてはいたが、地球じゃ三分間しかウルトラマンになれないってのは本当みたいだな。
時間が無い。だから痛みで倒れ込んだまま悶絶しているデマーガを両手で持ち上げるたまま空高く飛ぶ上がる!
『おお! 飛べんのか!』
その声を聞きながら上昇して、ある程度まで飛んだら、そのまま空中にデマーガを放り投げる! そして俺は胸元で両腕をクロスして、残ったエネルギーを両腕に集める。両腕をいったん離してから、両手を十字に組んで、必殺である、光波熱戦…ジェンリウム光線を放つ!
光線を浴びたデマーガはそのまま空中で爆発四散。それを見届けた後、高度を下げて地面に降り立つ。
『助けてくれてありがとよ、巨人さん!』
降りた俺に、労いの言葉をかけてくれる、パイロット。それを合図に、他のパイロットや、戦闘艇の中にいる人たちからも、感謝の声が響き渡る。
……感謝されるのは、慣れてないな。嬉しいが照れ臭い。…そろそろ限界だな、人間の姿に戻らなければ。
体が光に包まれて、段々と縮んでいき、人間の姿に戻る。
それと同時に戦闘機も全機着地して、中のパイロット達も降りて俺に近づいてくる。
「へへっ本当にありがとな! 助かったぜ!」
その中の1人が俺に手を差し伸べ、握手を求めてくる。
「…いや、むしろ礼を言うのは俺の方だ。──ありがとう、信じてくれて」
俺は差し出された手を握りながら、感謝の言葉を伝える。礼を言われ男性を含めた、隊員達は皆、驚くも照れたように笑みをこぼす。
「……へへっ、どういたしまして!」
男性は朗らかに笑った。……先輩、いやガイさん。…俺が来た地球も、あなたが来ていた地球に負けないぐらい、いいとこですよ……
リンドウスパーク
リンドウがウルトラマンへと変身する為のアイテム。
横笛型のティンバーモードから、両刃剣型のソードモードに変形する。
当然だが生身の戦闘でも使用可能。
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悪魔の遊戯(前編)
【????】
『ギャオオオォォ!?』
──空中に投げ飛ばされ、ウルトラマンの光波熱線を浴びた〝私の操る〟デマーガが、絶叫をあげながら爆散。残骸をばら撒きながら、絶命する。…やるじゃないか、あのウルトラマン…くくっ、ゲームはこうでなくては面白くない。
…くく、次はどの怪獣で遊ぼうかな…?
──カプセルはいっぱいあるし、迷うなぁ!
【リンドウ視点】
pipipipi…
……う〜ん。…もう朝か。目覚まし止めて飯の支度しねぇと。
ぴぴぴとうるさい目覚まし時計のボタンを押して音を止めて。…さてと朝飯朝飯。
部屋を出てそのままリビングへ入り、キッチンへと向かって近くに置かれた冷蔵庫の中身を確認。
……え〜と、冷蔵庫の中は…おっ、卵にウィンナーか。確か開けてない食パンがあった筈だ。…決めた、今日の献立は目玉焼き、ウィンナー、バター塗ったトーストにしよう。
そうと決まれば早速準備だ!
【マトイ・リュウガ視点】
…ふぁぁああ〜! いやー、よく寝た。…ん? お前は誰だって? 俺はマトイ・リュウガってんだ!
地球防衛隊、WGPのスペシャリスト部隊〝セレクト〟の一員なんだぜ!
「いや、誰に言ってんのよ…リュウガ…?」
「うぉっ!? 居たのか、隊長!?」
びっくりしたぁ…あ、今後ろから話しかけてきたのがワシオ・ギンコ! セレクトの隊長なんだぜ!
「だから誰に言ってんのよ…」
え? 誰にって、そりゃ勿論……あり?
「…誰に言ってたんだっけ?」
「しっかりしなさいっ」
アイタァ!? …問答無用で頭にチョップは酷ぇ!?
「…ったく。リンドウが朝食の用意がしたうくれたから、早くリビングに来なさい。皆待ってるわよ?」
「マシっすかっ!?」
…こりゃいけねぇ、食われて全部なくなる前にいかねぇと!
【リンドウ視点】
「リンドウさん、おかわり!」
「こっちも頼む」
「もぐもぐっ!」
「………」
ここに来てもう1週間ぐらい経つけど、本当によく食うな…。……まぁ作り甲斐あるからいいけどよ。
「あいよ。ほら、サクラちゃん、テツヤさん、おかわりの目玉焼き」
おかわりを要求してきた2人組、元気いっぱいの少女、ノガミ・サクラちゃんと名前の通り、体がクマみたいにでけぇ、厳つい顔の大男、クマタニ・テツヤさんに2皿目の目玉焼きを渡してやる。
それと今もぐもぐ食ってる2人組の内、美味そうにがっついてる恰幅のいい男がアマギ・カイリさんで、静かに食べている方の理知的な美人がカリヤ・ハジメさんだ。ちなみに1週間前にアナウンスしていたのはこの人だったりする。
この2人はオペレーターで所謂でこぼこコンビという奴だ。
……この人達が地球防衛隊WGPのスペシャリスト部隊、セレクトの隊長とメカニックチームを除くメインメンバー5人の内の4人だ。…あと1人はどうしてるかって? そろそろ隊長が残り1人を起こしている頃だな。
「やった! ありがとう!」
「ありがとう。すまんな、いつもご馳走してもらって」
それぞれ感謝の言葉を俺に伝えながら、トーストを載せた皿を受け取る。
テツヤさんは申し訳無さそうに言ってくるが、俺はそんな事は気にしてない。むしろこっちが感謝したいぐらいだからな。
「いいんすよ。ここに置いてもらってんすから」
「…ハハッ、それでもありがとう」
その言葉を聞いたテツヤさんは苦笑いしながら、礼を言った。……ポーカーフェイスが上手い方でよかった、顔に出てたらぜってぇに不細工な顔になってた。
「AIBOOOO!!! 俺の朝飯残ってる!?」
…はぁ、やかましい奴兼ムードメーカーが来た…
「ちゃんとあるよ。あと相棒って言うな」
そう伝えながら人を無断で相棒と呼んでくるツンツン頭のリュウガに取っておいた朝飯を渡す。
「おお〜! 流石相棒! 気が利くぅ!」
「だから相棒って言うな」
茶化すように言いながら、リュウガはテーブルに向かう。
……全く、こいつと来たら本当に…俺とお前の関係性はどちらかといえば先輩後輩だろう…俺の地球知識が間違ってる…わけじゃないのはこの1週間でわかってんだよなぁ…
「相変わらず仲が良いわね」
デュアッ!? ──びっくりした、隊長か…いきなり後ろから話しかけられたからびっくりした…顔と声には出さなかったが。俺って一応この場では1番の年長だから悟られるのは流石に恥ずい。
「…隊長、見回りお疲れ様です!」
『お疲れ様です!』
真っ先に話しかけられた俺の挨拶を合図にするように、朝飯テーブルに置いて食べようとしていたリュウガを含めたパイロットチーム全員が一旦食事を止め、立ち上がってワシオ隊長に挨拶する。
「ふふっそう畏まらなくていいわ。あ、ヒカリ隊員、私の分もあるかしら?」
「そういうと思って用意してます。どうぞ」
「いつもありがとうね」
そんな俺達の様子を見た、ワシオ隊長は笑みを零しながら言ってくる。ちゃっかり朝飯要求してくるあたり茶目っ気がある人である。見た目は所謂クール系だけど。
「ヒカリ隊員も席について食べなさい?」
「ああ、すみません。今自分の分出して座ります」
っとと、いけねっ、考え込んでたらその間に皆食事再開してんじゃんっ、俺も自分の分出して席に座って…
「いただきます」
…うん、我ながら美味いわ。…料理覚えてよかった。
【三人称視点】
そうして朝食を食べ終えて、休憩を挟んでからミーティングを行い、そしてリンドウを含めたメンバーは訓練場にいる。
『よーし、各機フォーメーションα!』
通信機越しにテツヤの声が響き、扱い的には新人であるリンドウとオペレーターであるカイリ、ハジメ、そして隊長であるギンコの4人を除いた残りのメンバーはアースウイングに乗り込んで〝 5機〟によるフォーメーションの訓練を行っている。
何故パイロットが3人しかいないにも関わらず、5機が動いているのか、理由は簡単だ。
残りの2機はAIによる自動操縦で動いているからだ。上層部の意向で試験的に運用されている2機だ。
「おい、リュウガ! 先行し過ぎだ!」
「ととっ、すみませんしたー!」
テツヤの機体を先頭に、まっすぐな列を作るようなフォーメーションをしていたが、操縦ミスをしたのかリュウガの機体が上に逸れてしまい、それをテツヤに咎められて慌てて位置を修正する。
「リュウガの奴何やってんだか…」
その様子を見ていたギンコは呆れながらも射撃訓練をしているリンドウとオペレーター組の2人に視線を戻して、考え込む。彼が、リンドウがこの星に来て1週間も経つわねと。
(デビルスプリンター…怪獣を凶暴化させる物質を持った指名手配犯の宇宙人、レイオニクスキリミラを追って遠いところから来た彼…)
そう、だからリンドウを入隊という形で協力関係を結んだ。結んだのだが…
(だけどあの1件以来、全く怪獣が現れていない。…リンドウが持っていた端末からその情報が嘘じゃない事は確認している…何か胸騒ぎがするわね…)
顎に手を添えながらギンコは考え込むのだった
【キリミラ視点(三人称)】
(…さーて、そろそろ休憩は終わりだ! 楽しい、楽しい遊びを始めよう!)
誰も住んでいない、廃ビルの地下深くにある宇宙船。その中にある自室で欠伸をしながらそれは起き上がった。人形を連想させる異常なまでの白い肌に、仮面を付けた道化を連想させる出で立ち。
──サイコ星人のレイオニクス、キリミラである。
どうやら休憩と称して眠っていたキリミラは欠伸をしながら机に無造作に置いてある、箱を開けてその中にある、バトルナイザーに似たアイテムと怪獣の姿が描かれたカプセルをいくつか取り出してポケットにしまって、テレポートで外に出る。
「ひひひひ! 楽しい遊びの時間だよっ! 次の遊びは──!」
くるくると踊るように回りながら怪獣カプセルを起動して、バトルナイザーをベースに自ら改造を施したキリミライザーに起動させた怪獣カプセルを装填、そのまま上に掲げてトリガーを引く。
「町のビルで積み木をやろう! といわけで来てくれたまえ、レッドキングっ!」
そう言うと同時にライザーから禍々しい紫の粒子が溢れ、それが怪獣の形を形成する。黄色い体躯に長い首と大きな腕が特徴の怪獣レッドキングが街のド真ん中に現れてしまった!
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