カリスマ()モデルひまりさん (くまねこ)
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あっタイミング逃した
「……っ頼む……残ってくれ!──君はモデル部門の、自慢なんだ……!」
ビジネススーツに身を包み、外からでも分かるほど引き締まった肉体、短く整えた前髪からは清潔感が漂う。
いかにもデキる男といった風格……そんな男が今、子供の前で冷静さを失っていた。
いつもなら『モデルとの距離感が〜』とか言って近づいてこない癖に、今はオレの腕を掴んできやがる。
──ちょっとイジワルしてやろう。
「……楓さんや岡崎先輩は自慢じゃなかったってことか?」
「そんなことはないっ!」
「ぴゃぁっ」
ガバッと音が聞こえそうなほどの勢いで更にオレに詰め寄ってくる。
もう片方の拳は力強く握られていて、少し震えて見えた。
「俺が担当ならあんな馬鹿なことはしてないッ!ちゃんと一人一人と向き合ってこそがプロデューサーじゃないのか!?──くそっ今からでもアイツ等を殴りとばして……ッ!」
「……あーっやめとけやめとけ!」
そんなことしても捕まるだけだし、彼女達のこれからの手助けになるわけでもない。
ったく、立場は弱い癖して義には厚い、ついでに手が出やすいと来た。
コイツが出世できる未来はないね、間違いない。
「まだオレも辞めるなんて言ってないし。……ほら、そんな不安そうな顔するなって」
彼女達にはこれが正解なのだ。
高垣楓はアイドルになることで、自分を表現することに自信を持って歩きだす。
岡崎泰葉はモデルをやめて、子役としてでなく本来の自分の輝かせ方を知るのだ。
……皆が悩んでるのも分かってて、オレもそこから目を背けた。
所属するモデル部門は女の子の本心と向き合わず、その結果新設するアイドル部門へ移籍が決定。
モデルのプロデューサーをしてるコイツからしたら納得できない気持ちもわかる。
けれど、楽しくなさそうに仕事をする子に、他の活躍の場を与えたと言えばマトモに聞こえるだろう。
「二人ならこっちを見返すほどにビッグなアイドルになってくれるさ。あっ、ついでにオレも入れて三人ユニットとか……」
「良かった…ッ!てっきり俺は──ひまりも不満があってモデル辞めるつもりなんだと思って……!そのことが何よりも不安で……!」
「んん、別にオレは不満はないけど……、でも本当はアイドルしてみ──」
「至らない点も沢山あるし、こんな新入りのプロデューサーで悪いけど、ひまりが本当に輝けるように頑張るから……、任せてくれッ」
「……ん、あー、うん」
今この瞬間オマエもアイドルの本心がわかってないぞ、とは思っても言わない。
ぶっちゃけコイツは敏腕で誠実だし、いつもなら距離感とかも考えてくれるし、新入りでコネが何もない事以外に問題はないのだ。
その問題も、オレが自分で仕事を取ってこれる程度には有能なのでデメリットにもなっていない。
前のプロデューサーよりも大事にしてもらってるし、WIN-WINと言ってもいいほどに好相性な関係……。
──でもこの世界はアイドルマスター。
モデルじゃなくて、アイドルとして皆の成長を見守りたいじゃないか。
そんなことをオレ──姫白ひまりは考えていた。
今生を自覚したのは6歳のときだった。
バレエの練習の最中で頭を打った拍子に、前世の記憶と経験が頭の中を走り抜けていった。
視界に入った、壁一面に貼り付けられたアイドルのポスター。
そこに日高舞という名前を見たときに、アイドルマスターの世界であることに確信を持った。
この世界で女として生まれたからにはアイドル目指すしかないじゃん!
可愛い子と仲良くなれるし、成長の物語を一番近くで見ることができるなんて最高だ。
最初に765プロの存在を知ったときには大いに悩んだ。
当時の自分は12歳、突撃しても門前払いだろう。
仮に通してもらえても、大事な娘を零細の怪しいプロダクションに所属させることに納得できる親は少ないとも思う。
物語も少人数で完結してるし……。
346プロならもう少し後なので年齢は合うし、大企業なのも魅力的だ。
しかし、肝心なアイドル部門がまだない。
大規模オーディションはまだ先の話、そしてそれを超えられるかも怪しい。
シンデレラとしてスカウトされるなら大事なのは笑顔……選ばれる気がもっとしない。
そう悩んでたときに名案が突然浮かんできたのだ。
346プロにモデルとして所属して、後で出来るアイドル部門に移籍すればええやん!
楓さんとか前例もあるし、シンデレラプロジェクトの先輩ムーブできるとか最高か?
ダンスやボーカルも審査されるアイドルより、ビジュアル特化のモデルの方が実はいけるのでは。
幸い顔には自信があるし、ここから化粧技術と佇まいを磨けば大人びた子として採用してもらえるかも。
上手くいったらそこからボーカル、ダンスを極めて万能型になれば良いのだ。
……天才だ。
そうして8年をかけた壮大な計画、通称『ひまり、モデルからアイドルへ変身大作戦!』は始まったのだ。
そしてそれはつい最近までは完璧だった、と思う。
13歳で書類選考を通り抜け、今の19歳まで346プロダクションのモデルとして仕事をこなしつつ、いつか来る日のために個人レッスンをこなしてきた。
ティーンズ雑誌の表紙を何度も飾ったし、あまりに順調すぎてアイドル部門ができないんじゃないかと不安になったこともある。
外れプロデューサーを引いて喧嘩続きの時期もあった。
それでもちゃんとここまで来たのだ。
後は一言、モデルからアイドルになりたいと言えば素敵な
なのに──人間関係の問題、ちょっとしたモデルという職業への愛着がオレを引き止め続けていた。
「──姫白さん!お疲れ様ですっ!」
「……お疲れ様デス」
「いやあ、姫白さんも出ていっちゃうかと思って不安でした!これからもモデル部門、一丸となって頑張りましょう!」
「……そうっすね」
またこの雰囲気、苦手だ。
オレが精神年齢的にも余裕があるから大丈夫なだけで、不快に思う女の子は多いと思う。
さすがに言いはしないけど。
時代がアイドル全盛の中で、346プロはこれまで歌手や俳優、モデルを輩出して対抗してきた──いや、対抗できていた。
なのに突然のアイドル部門の新設。
有能なプロデューサーやアシスタントも引き抜かれていく。
今悪態をついてたヤツも、性根が悪いヤツではなかったと思うし、逆の立場ならオレも現状に不満は持っていたと思う。
それが分かるからこそ言い出しづらいんだ!
モデル部門に所属している子達の中で優遇されてる自覚もあるし、仕事だって充足感を感じてる。
楓さんみたいに悩んでることがあるわけでない。
アイドルになりたいというのはただのオレの我儘なんだ。
これ以上の迷惑と心労をかけたくないのも本音だ。
幸いなことにシンデレラプロジェクト開始まで、まだ2年近くの歳月があるはず。
これから少しずつ仕事を減らして、アイドル路線に移行しよう。
その頃には部門同士のいざこざも和解してるはずだし。
プロデューサーだってオレがアイドル目指してるとは少しくらい察してるだろうし、積極的にアピってくしかないね!
「──ひまり!ヘアメイク広告の新しい仕事取ってこれたぞ!」
「お、やるじゃん、ひよっ子プロデューサー!」
「ああ!その髪の綺麗さ、ひまりの魅力を押し出せるように頑張ろうな!」
プロデューサー歴1年足らずでモデルの力に頼らずに新規の顧客を捕まえられるとは、相変わらずやるやんけ。
信用が大切なこの職種だと、若造と両断されることも少なくないだろうに。
持ち前の熱意だけで頼み込んできたんだろう。
……今はまだモデルとして頑張るか。
コイツの熱意に付き合うのも悪くないのかもしれない。
皆で高めあって、時に競い合ったり特訓して、最後はライブする。そんなアプリが最近は人気だと聞きました。
つまりそう──デレステかシャニマスですね。
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周りを固められてる気がする
子猫さん、マカロニパスタさん、ベルスニカさん、7 キルさん、token_sageさん、しーずさん、もぐもぐ星人さん、ありまりまさん
評価ありがとうございます。
346プロダクションに所属していると内部施設を無料で利用できる、というのをご存知だろうか?
本来アイドル達が自己研鑽に取り組むための設備、今これを最も利用しているのはこの女ーっ!
──オレだ。
「……いっちに、いっちに、右、左、ぴーすっ!」
今までは満席で予約できなかったダンスルームと防音室。
増設されたことで仕事の合間でも自主練が可能になり、大変ありがたい。
トレーナーの青木さんは時間に余裕があるみたいでよくレッスンを見てくれるし、……やっぱりアイドル部門は、最高やな!
「──表情が固いが、相変わらず筋は良いな」
「動きながら笑顔ってムズくない?髪も張り付くし……」
「止まる度に笑顔を作ろうとするから、どこかぎこちなく見えるんだ。自然体で通していけ」
「……ぐぬぬ」
自分の長所を聞かれたら、迷わず顔と髪と答えるだろう。
肌荒れや日焼け対策を6歳から行うことで作った白スベ肌から放つこのスマイル!
鏡が割れるんじゃないかと不安になるほど練習したことで、止まった瞬間に癖で微笑が出ちゃうんだよ。
極めつけは『女は髪が命』ということで腰より長く伸ばしたこの白金の髪。
乾かすだけでも30分近くかかり、普段から時間効率の悪さに涙を飲みながら育ててきた一品なのだ。
これが激しいダンスだと鬱陶しいことこの上ない。
──まさかここにきて育ててきた武器がオレに牙を向くことになるとは。
髪とか正直すごく邪魔だし切りたいけど、ヘアメイクのモデルは座ってるだけで良い楽な仕事だからなあ……。
アイドルになる時に髪は切るとして、自然体の笑顔は要練習だな。
「では他のアイドルを見てくるから、ここの片付けと鍵は頼んだぞ」
「えっ、誰だれ!?オレも見たいが!なんなら無理矢理でも──」
「元モデルの子だ。来ない方が良いだろう」
「あっ、はい。帰る準備しますね」
冷静に考えれば、アイドル部門はまだオーディションを始めたくらいだし、移籍した子くらいしかいないじゃん。
誰と会っても嫌味にしかならないし、いくら穴場とはいえちょっと来づらくなった。
朝はここで練習するとしても、夕方と夜は諦めるか。
やっぱり私には夜の公園で自主練が似合いますよっと。
さて、退散。
トレーニングルームを出た瞬間、眼の前に人がいることに気づく。
私よりも少しだけ背が高い。
「……姫白さん」
「いえ、人違いです」
「私、高垣楓と言います──」
澄んだ青のオッドアイに、妖艶さとミステリアスを纏う女性。
会いたくなかったランキング1位は、ダジャレなんて欠片も言いそうには見えない。
「少し……お話しませんか?」
「……はい」
いつになく真剣な表情なのに、不安で泣き出しそうで──頷くしか選択肢は残されていなかった。
高垣楓はモデルという職業が好き、だったと思う。
だが、雰囲気が良いからと無表情な写真ばかり撮られて、本来の自分が分からなくなっていく。
憧れ色褪せる中で、不安ばかりの毎日。
そうしてアイドル部門へと移籍して……、小さなライブ会場で大切なことを思い出す。
ファンと一緒に、笑顔で輝くこと、アイドル高垣楓はこうして始まるものなのだ。
そう信じて、助言だって言うこともできた立場だったのに黙って、物語通りにここまで漕ぎ着けたんだ。
その大切なスタートを、オレ自身が躓かせるわけにはいかない。
楓さんはレッスン前のはず、10分乗り切れば勝ちだ。
「……えっと……」
自信なさげに視線を飛ばすその姿は、オレが知っている高垣楓とかけ離れていた。
それもその筈、彼女は今自信を失って新たな道を志したばかり。
ここは精神年齢が先輩である自分が、話をリードすることが正解だろう。
「アイドル、応援してます!不安はあると思いますけど全部大丈夫です……!たぶん……」
「……あら、ありがとうございます」
こっちから話を振ったことが意外だったのか、びっくりして目が丸くなってる。
うーん、可愛い。
「すみません、てっきり知ってると思わなくて……」
「モデルぶ……達の間でも話題になってました!あと歌が凄く上手なんだって!」
危ない……モデル部門って言いかけた。
今更話題に上がってたと言われても良い気はしないだろうし、気づけてよかった。
もし下手に傷つけて歯車を狂わせてしまったら、楓さんの引退、ひいてはシンデレラプロジェクト解散まであり得る。
そんな私をおいて、曖昧そうに瞳が揺れる。
「──あの、モデルのお仕事は楽しいですか……?」
爆弾きた、それもでかい奴。
なんて返すべきか全く分かんない。
「オレ……こほん。……私は楽しくやらせてもらってます……。ほら、プロデューサーのお陰とかで!──モデル部門としては、もっとやりようがあると思いますけど……はい」
楽しい時もあれば大変な時もある。
一概にどうとは言えない。
楓さんの欲しい答えも分からないし、何言っても不正解まである。
だから素直に答えた。
──楓さんの目が少しだけ細まる。
口の中が、乾く。
「ふふっ、良かった……」
「はい?」
「昔の私が目指したことも間違いじゃなかったんだなって、そう思えたんです……」
微笑えむ顔は、雑誌なんかで見た時よりもずっと綺麗に見えた。
これは間違いない──パーフェクトコミュニケーションだ!
モデルis良い仕事!モデル最高!
生で最高の笑顔見れたし、我が生涯に一片の悔い無し!
「もう少しモデルで頑張りますっ!」
「……?頑張ってくださいね」
ちょうどトレーナーが楓さんを呼びに来たので解散。
我ながらかなり上手いこと立ち回れていたんじゃないか。
『よし、楽しく話せたな!』という言葉が頭をよぎっていく。
楓さんの中では、モデルに対しての思いに既に区切りをつけていたのかもしれない。
だからこそオレにとってモデルがどうか聞きたかったのかも。
この返事の直後にアイドルに移籍するのは印象が良くないし、楓さんも納得行く形でアイドル部門から移籍しないといけなくなったけど、もはやそれくらい誤差の範囲。
楓さんの初ライブ後……大体4ヶ月後くらいなら、オレがモデルを辞めたとしても、アイドルとして確立された楓さんが変に傷つくこともない。
そしてそれまでに、選択が間違ってなかった、モデルも割と良い職業なんだってことをちゃんと態度で示そう。
なんならモデル部門とアイドル部門の架け橋を目指すくらいの気持ちでも良いかもしれない。
となると午後の仕事にも熱が入るってもんだ。
輝かしきアイドル生活と未来のシンデレラ達、待っていてくれ!
オレ、頑張ります!
「そういえば、どうしてひまりさんはダンスレッスンルームに居たんでしょう……?」
ひま虐したい
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プロデューサーとひまりさん
竜人機さん
評価ありがとうございます。
半年たったらしい。
13歳で彗星のごとくデビューしてから、常に第一線を走り続けるモデル──姫白ひまり。
アイドル全盛期などお構いなしとばかりにファッション誌の表紙を飾り、出演したCMは数知れず。
時間が押しても嫌な顔一つせずやり通すプロ精神には、現場での評価も上々。
次の朝ドラのヒロイン役に推す声もあり、今や美城プロダクションに所属するモデルの中で、一番勢いに乗っていると言ってもいいだろう。
そんな女性のプロデュースをしなければいけないらしい。
まだ一人も担当したことがないようなド新米の俺が?
抜擢なんてレベルじゃない話に、何かの間違いじゃないかと確認を取りに行ったほどだ。
──そこで分かったのは、むしろ彼女が俺のことを指名したという事実だった。
疑問は膨らむばかりだが、光栄なことだ。
理由は本人に聞かないとわからないが、プロデューサーとしてできることなら何でもしよう。
そう、意気込んで迎えた顔合わせ当日。
彼女が姿を表しただけで世界が静まったかのように感じた。
テレビで見た時の印象は、穏やかな太陽だった。
口元を隠してコロコロと楽しげに笑う姿に、共演者も視聴者も目尻を下げただろう。
……それがどうだ。
触れると折れてしまいそうな体躯とは対象的に、自分への絶対の自信が窺える紺の瞳。
癖一つない長いプラチナブロンドの髪は、月の光を映しているかのように輝いて見えた。
見たものの庇護欲を掻き立てる繊細さと圧倒的な美。
思わず心を奪われた。ただ見惚れた。
……だから、聞き間違えたと思った。
「送迎が必要な場合は予め連絡致します。では、仕事に行ってきますので──」
どうぞ、ここでお寛ぎください。
細い指が差したのはプロデューサーオフィスの椅子。
唖然とする俺に一礼すると、振り返りもせず去っていく。
彼女は俺にプロデューサーとして、何の期待もしてなかった。
──選ばれた決め手はゴールド免許の有無。
目の前が真っ暗になったのを覚えている。
「……ゃ遅くなって悪いねえ──ん、聞いてる?」
少し心配そうに小首をかしげながら車のドアを開けたのは自分の担当モデル。
その白金の髪が、沈みゆく夕日を反射して輝いていた。
妖精はいるかと今聞かれたら咄嗟に頷いてしまうかもしれない。
「……すまん、起き掛けで頭が働いてなかった」
「おいおい、めっちゃ疲れたんだからさ、安全運転で頼むぞ〜?」
座席に体を預けるや否や、ぐでっと体勢を崩す。
時間は18時少しを過ぎており、予定時間を過ぎてもサイン会を続けていたことが窺える。
……設営の人は困っただろう。
後で謝罪の電話を入れておかないと。
「今日はもう仕事がないから事務所じゃなくて……家、だよな?」
「んや、駅でいいよ。もうちょい体力付けたいから走る」
聞かずにケツの有無も分かるとかすっかり本物のプロデューサーじゃん、と明るい声が車内に響く。
なんで少し自慢げなんだか……。
「というか、ひまりがちゃんと教えてくれないから把握できないんだよ……」
最初は送迎が必要な仕事しか予定を教えてくれなかった。
そこからひたすら仕事に付き添って、ようやく仕事のスケジュール
これで解決したと思ったら、今度は休憩時間にサイン会を開き始めたり、ランウェイにサプライズで登場したり……。
さすがに突発の握手会は危ないので止めたが。
『思いつきでやってる』とは本人の弁だが、仕事の合間時間でイベントスペースを押さえてはファンサービス。
そして毎回大盛り上がりなのに、次の仕事には絶対に遅れない。
こんな日々が続けば俺でも分かる。
彼女の中には完璧な予定があって、それを教えてくれないのが心苦しかった。
素で話してくれるようにこそなったが、まだ本当の信頼は得られていないと感じる。
彼女にプロデューサー、そして頼れる大人として認められるためにももっと頑張らないといけない。
そのためには受け身でいるんじゃなくて、自分が動くことが大切ではないか?
「よし、これ以上の無茶はプロデューサー権限で止める!今日は直で家まで送るぞ!」
「……はっ!?じゃあ今すぐ下ろせ!」
今日は朝早くから人気バンドのMV撮影が行われ、午後には休憩を挟みながらとはいえ握手会で4時間立ちっぱなし。
仕事も自主練も増やすのはやりすぎだろう。
全部をやりきろうとするのはひまりの長所だが、保護者の立場から見ていると不安で仕方なかった。
最近は仕事のペースを落としぎみだったのに、突如として増やしたのも引っかかる。
アイドル部門が出来たことで、モデル部門を支えることに使命感を覚えたのかもしれない。
異動した人を心配させないために無理しているとかもあり得そうだ。
そんな焦りを感じるのだ。
担当モデルを一人にはさせられない。
「──じゃあせめて俺も走ろう!」
「お前頭おかしいって!」
もう少し長くしようと半年放置してましたが諦めて投げます。
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