ブラック・ブレット 〜Nocturnal Hawk〜 (神武音ミィタ)
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プロローグ〜過去〜

皆さんはじめまして。初投稿です。
ブラック・ブレットの魅力に取り憑かれ、やってしまった。
しかし後悔はしてません。
アドヴァイス、感想等はぜひよろしくお願いします。
それではどうぞ。


一人目のプロモーターは俺に言った。

 

「てめぇか、俺の新しいイニシエーターってのは。」

 

こいつにとって、俺は「道具」でしかない。

 

「おい、ぼやっとすんな。さっさと行くぞ。」

 

こいつは、死んだ。

俺を信用せず、一人でガストレアに向かった所を捕食された。

そのガストレアは、俺が倒した。

 

 

 

二人目も、考え方は同じだった。

「サポート頼むぜ?所詮は戦うことしか出来ない道具なんだからよ。こういう時くらい役立たせてやるよ。」

 

こいつにとっても、俺は「道具」でしかなかった。

こいつも、死んだ。

怖くなって俺を見捨て、ガストレアに体液を注入されたようで、ガストレア化した。

そいつは、俺が倒した。

 

 

三人目も四人目も五人目も、同じような奴らだった。

俺を道具扱いして、死んでいった。

 

 

俺は、立て続けにプロモーターを失った。

そんな中、俺に付けられた肩書きは……『死を運ぶ鷹』だった。

 

 

そんな時、そんな俺の目の前に現れた六人目のプロモーター。

そいつは……違っていた。

 

「一緒に頑張ろうね!私、まだまだ未熟だけど………あなたを支えるから!あ!ごめんね〜、自己紹介遅れちゃった!私は徳崎 心音(とくさき ここね)!!」

 

こいつは、俺のことを「道具」とは思っていない。

そう確信した。

 

「……モデル・ホーク。小鳥遊 真(たかなし まこと)だ。」

 

そいつは……心音は微笑んだ。

 

「よろしくね、真!!」

 

今でも覚えている。

純粋で、疑う余地の無い笑顔だった。

 

 

だが、俺は彼女に、優しくしてもらった心音に「あんな」ことをしてしまった。

 

 

「く……っ!!」

 

最悪の状態だった。

なんとかガストレアの猛攻をくぐり抜けたが、俺たちには何も残ってなかった。

しかもだ。心音はその時、左腕に少量ではあるがガストレアから体液を注入されており、危険な状態だった。

いつガストレア化してもおかしくない状況だった。

彼女を負ぶっていた感覚も覚えている。

 

「まこ……と…」

 

「喋んな!安心しろ、キャンプ地に戻れればなんとかなる!!」

 

その時、俺の脳裏によぎったのは……

 

「っ!?」

 

俺の過去のプロモーター達だった。

皆、死んだ。

中にはガストレア化した者もいた。

こいつも……心音も?

そうなるのか?

 

「真……あなただけでも…逃げて……」

 

心音は俺から降りた。

 

「!? 何言ってんだよ……?」

 

「少ししか体液……注入されてないけど………キャンプに着くまでには……間に合わない………だから……行って…?」

 

何言ってんだ。

そんなの嫌だ。

俺は……どうすれば…?

 

「真……っ。」

 

嫌だ。

俺は咄嗟に動いていた。

心音の腰にあった刀を右手で握り、左手で彼女の腕を掴んだ。

そして。

 

「うわぁああああああああああっ!!」

 

俺は……心音の左腕を肩から斬り落とした。

 

「!!? っ!!!」

 

鮮血が舞う。

心音は、声にならない悲鳴を上げた。

そして気絶した。

その時、俺は我に帰った。

何てことを。

俺は心音を抱え、キャンプ地へ急いだ。

 

 

心音はその三日後に目覚め奇跡的に一命を取り留めた。

左腕は機械化兵士と同じ要領で手術が施された。

だが、俺は彼女に合わせる顔が無かった。

俺のせいだ。

苦しみから逃れるかの様に、俺は民警を去った……。

 

 

三年後……現在。

俺は心に決めていた。

 

「もう、プロモーターは付けない。」

 

俺は一人でも戦う。

ガストレアと……。




いきなり凄いことしちゃいました。
もう設定崩壊気味ですね。
他のブラック・ブレット二次創作の作品様でも、男の子イニシエーターはあったので便乗してしまいました。
では、続き書きますか。
よろしくお願いします。


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〜孤高 死を運ぶ鷹〜
第1話〜夜の鷹〜


1話です。記念すべき(?)1話です。


ガストレア。

ウイルスに感染し、遺伝子を書き換えられた生物。

人類はこれに敗北。「モノリス」と呼ばれる壁の中へと追いやられた。

そして今でもガストレアは、モノリスを越えて人を襲う。ガストレアから襲われ、体液を注入された生物はガストレアとなる。それが、奴らの繁殖能力。更に高い再生力を持ち、通常の弾丸による攻撃は通用しない。ガストレアに対抗出来るのは「バラニウム」と呼ばれる、ガストレアの再生能力を阻害する効力を備えた鉱物のみ。

そして、ガストレアに対抗すべく創設された「民間警備会社」、通称「民警」。そこに所属する、ガストレア抑制因子を持った「呪われた子供」…「イニシエーター」。それをサポート、共に戦う「プロモーター」。彼らこそ、「人類最後の希望」なのかもしれない……。

 

 

 

「…………」

 

静まり返った森の中。そこで蠢く黒い影と、赤い三つ目。

木の陰で気配を殺し、ライフルに弾を込める。そして、足音を立てず黒い影…ガストレアの後部に回る。大きさから推測すれば、ステージ2程度か。タイプは…8本脚。モデル・スパイダーか。関節部に8発撃ち込み、脚を封じる。とどめに0距離で散弾で木っ端微塵に。よし。

 

俺はライフルを構える。

ガストレアの右脚の付け根に狙いを定める。

こちらには気づいていない。

 

………今だ。

俺は引き金を引いた。

モデル・スパイダーの右脚が千切れる。そいつは悲鳴を上げた。

 

俺は走り出す。別の木の陰へ。狙いを定める。引き金を引く。

こいつを繰り返す。奴の脚が全て動かなくなるまで。

 

「………よし。」

 

動きが止まる。自力で移動も出来ないだろう。

俺はそのモデル・スパイダーに歩み寄り、ショットガンを構えた。

 

「ジ・エンド……だ。」

 

俺は引き金を引く。0距離で放たれた散弾は、そのモデル・スパイダーの体を、たちまちのうちに木っ端微塵にした。

俺は銃をバッグに収め、背中に背負う。今夜の仕事はこんなものかな。

時間は……3時54分。丁度いい。

俺……小鳥遊 真はその場を去った。

 

 

その日は眠れなかった。いや、眠たくなかったというべきか。俺は一人、朝の路地を歩いていた。今日は日差しが心地いい。眠気なんて吹っ飛んでしまう程に。

俺が民警を去ってから3年が経つ。このモノリスの内側は相変わらずだった。ガストレアに脅えつつも、希望を信じて生きていた。

 

「心音……。」

 

俺は罪を償う気持ちで、孤独にガストレアと戦っていた。

 

「オラッ……オラァッ!!」

 

ビルの裏路地に人影が見えた。それは……集団でリンチを受けていたショートカットの赤い瞳の少女……「呪われた子供」だった。

 

「きったねーんだよ化物!俺たちが殺してやるぜ!」

 

なす術も無く蹂躙されている少女の姿を見て、俺は男たちに近づいた。

 

「あぁん?」

 

こちらに気づいたようだ。

 

「………止めろ。」

 

「何だと………っらぁっ!!」

 

こちらに拳を振るってきた男。遅いな。俺はしゃがんでそれを躱し、男の腹部に拳

を叩き込んだ。

 

「っ!?ごほっ……」

 

その場に踞る男。

 

「止めろ、と言ったんだ。聞こえなかったのか?」

 

「てめぇ!!」

 

次々と男どもが襲いかかるが、俺は軽々となぎ倒していった。

 

「ぐぅっ……!」

 

男たちは一目散に逃げていった。

俺は少女に歩み寄って、抱きかかえた。

 

「大丈夫かい?」

 

「うん………お兄ちゃんもしかして、『みんけい』の人?」

 

その質問に、俺は少し胸が痛くなった。

 

「……うぅん、違うよ。でも、君の味方だよ。」

 

俺はその少女の顔を隠すように上着を被せ、負ぶっていった。

 

 

 

「はっ!てやっ!」

 

仮想戦闘プログラム。そこに映し出される、データ上のガストレア達。

撃つ。切り裂く、そしてまた、撃つ。

それの繰り返しだ。

 

「でやぁああっ!!」

 

全てのターゲットを片付ける。

 

「……シミュレーション終了。」

 

会社のシミュレーションルームで私、徳崎 心音はトレーニングをしていた。

 

「お疲れさまです、心音さん!」

 

一人のツインテールの少女が水を持ってきた。私はそれを受け取る。

 

「ありがと。」

 

「それにしてもすごいですよね心音さん!あそこまで体が動くなんて!あたしには無理かも〜。」

 

彼女の名前は川野 実緒(かわの みお)。うちの会社の新米イニシエーターだ。私たちが所属しているのは「明島民間警備会社」。社長は明島 信也(みょうじま しんや)。小規模な民警で私たちが職場として使っているここは、オフィスビルの10階の広い部屋だった。4割程をシミュレーターが占領しているが。また、ここで私たちは生活もしており、時折迷子の「呪われた子供」達の保護も行っている。ある程度保護した子供達は他の団体の運営する施設へと送られるとのこと。

この会社は私が昔から所属しており、かつては……私の元イニシエーター、小鳥遊 真もいた。

ピーンポーン……

 

「ベル?こんな時に……」

 

「あ、私出ますね!」

 

実緒が玄関へと向かう。私は椅子に腰掛け、水を飲んだ。

 

 

「はーい!」

 

ドアを開け出てきたのは、黒髪のツインテールの少女だった。

 

「あぁ、すまない。少し頼みがあるんだが……」

 

俺は負ぶっていた少女を降ろした。

 

「! あの、この子……」

 

「あぁ……暴行を受けている所を助けたんだが……」

 

「酷い………大丈夫?」

 

ツインテールの民警少女が彼女を心配する。

 

「お姉ちゃん……ここ、みんけい?」

 

「うん、そうだよ!もう大丈夫だよ!!」

 

微笑むツインテール。そして、俺の方を見上げた。

 

「では、この子はこちらで保護しておきますね!」

 

「あぁ、頼むよ。」

 

俺は、明島民間警備会社を後にした。

 

 

「心音じゃなくて良かった……」

 

一言呟いた。事実だった。

 

 

 

「心音さん!保護の件でした!この子です!」

 

実緒は、ショートヘアの娘とともに戻ってきた。

 

「酷い傷……」

暴行の跡が生々しく残っていた。

 

「実緒、救急箱持ってきて!」

 

「はーい!」

 

実緒はすかさず救急箱を持ってきた。私は少女の傷の手当を始めた。

 

「大丈夫?」

 

「うん……黒い髪の優しいお兄ちゃんが助けてくれたの。」

 

「………そっか。」

 

私は少女の言葉だけで分かった。彼女を助けた張本人が。

 

「………真…ね。」

 

「? 誰ですか、その人。」

 

実緒が聞いてきた。

 

「そっか、実緒は知らないのよね。」

 

「知り合いですか?」

 

少女の手当が終わった。私は彼女をソファに横たわらせた。少女は疲労していたのか、直ぐ様寝息をたてた。

 

「……私の…相棒よ。」

 

今でも、そう思ってる。

真のプロモーターは、私だって。

 

 

 

結局、俺は夕方の6時に帰ってきた。マンションの郵便受けを開ける。そこには1枚の紙が。

 

「不在連絡票……」

 

送り主は……「明島民間警備会社」。

「いつもの」か。

俺は宅配ボックスに番号を入力し、ボックスから荷物を出した。部屋に着く。箱を開けると……そこにあったのはバラニウム製の弾丸のストック。軽く1ヶ月半は持つかな。それと、1ヶ月分のウイルス抑制剤。イニシエーターは体にウイルスを飼っているような者だ。浸食は少しではあるが進んでいる。それを抑える為の注射を定期的に射たねばならないのだ。俺は注射器に抑制剤のカートリッジをセット。それの先端部を自分の二の腕に刺し、抑制剤を射ち込んだ。

 

「心音……」

 

この荷物は、あいつからのほんの少しの気遣いだった。正直、とても助かっている。だが、俺は民警に戻る気は無かった。

また、心音を傷つけるのが怖かった。

逃げだということくらい分かっている。けど、これが正しいんだ。俺は決めたのだから。

 

「一人で……戦う。」

 




てなわけで、書きました。
うーん……感想が欲しい!!www
感想をいただければ、アイデアのひらめきが加速します。
読んでくださった方々、ありがとうございます。
次回も頑張ります。


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第2話〜夢と癖〜

原作のキャラも出してみますか。
ちなみに作者は小比奈ちゃんがお気に入りです。
あの凶器じみた瞳がたまりませぬ。hshs。


南の方の森。ステージ1の昆虫モデルのガストレアの群れが飛び回っていた。ざっと数えて15……容易い。奴らがこちらを通り過ぎるのに所用するであろう時間は……あと30秒。通り過ぎた所を背後から狙い撃つ。群れが近づいてきた。

 

「…………」

 

木の陰で気配を殺す。あと20秒。

羽の音が近づいてきた。あと11秒。

10……9……8……7……

ライフルを握る手を強める。

5……4……3……2……1。

ガストレアの群れが通り過ぎた。

 

「!!」

 

木の陰から飛び出し、銃口をガストレアに向けて放つ。相手はレベル1のみ。急所を狙えば一撃で黙る。一発一発確実に撃つ。こちらに気づいたようだ。3体ほどUターンしてくる。残り二発。あのスピードでは弾を込める時間がない…………よし。

まずは2体仕留める!

素早くトリガーを引き、2体仕留める。そして、すかさずホルスターからショットガンを取り出し、

 

「!!」

 

すれ違い様に0距離で散弾を放つ。

ガストレアは木っ端微塵になり、肉片が飛散した。

 

「こんなものかな。」

 

俺は銃をバッグに入れ、森を去った。

 

 

真の戦い。それを遠くで眺めていた二人の人物がいた。

 

「ほう……噂以上の腕前だ、『死を運ぶ鷹』………」

 

一人は男。長身でタキシードにシルクハット。顔にはマスケラ。

 

「ねぇーパパー。あのおにーさん、仲間にするのー?」

 

もう一人は女。年は10くらいだろうか。青い髪に赤い瞳、腰には2本の小太刀を携えている。

 

「あのイニシエーターは里見 蓮太郎と同じ匂いがする。おまけに民警を去っているとなれば、立場は私と同じだ。元は民警にいた者同士の仲間が欲しかったところだよ。」

 

「ふぅーん……」

 

「後日、彼に挨拶に伺うとしよう。行くぞ、我が娘よ。」

 

「はい、パパ。」

 

その謎めいた親子は、暗闇に消えていった……。

 

 

家に帰り、ソファに飛び込んだのは深夜の1時半頃。

俺は眠りに着いた。

 

 

 

「真ー!!こっちだよー!!」

 

一面に広がる花畑。その遠くに心音がいた。

 

「早くー!!真ー!!」

 

俺は彼女の方へ歩き出した。

そのときだった。

 

「!? きゃあっ!?」

 

心音は、地面に引きずり込まれた。

 

「!? 心音!!」

 

俺は走り出した。

 

「真!助けて!!」

 

地面から生えた触手に引きずりこまれており、必死に左手をこちらに伸ばす心音。俺はその手を掴む。

 

「心音!!くっ……おおおおおっ!!」

 

俺はその手を引っ張った。

 

ーブシャアッ!!

 

「!?」

 

俺の手が赤く染まる。

 

「キャアアアアアア………」

 

心音が引きずり込まれてしまった。

俺は掴んでいる手を見た……。

 

「!!!」

 

俺が掴んでいたのは……肩から斬り落とされた、心音の腕だった。

 

「あ………あぁ…………っ!!!」

 

 

 

「うああああああああああああああっ!!!!」

 

目が覚め、飛び起きた。

 

「ハァッ……ハァッ……!!」

 

酷い汗だ。俺は即座にシャワーを浴びに風呂場へ駆け込んだ。

汗だくの体をシャワーで洗い流し、全身を洗って風呂場を出た。体をタオルで拭き、肌着を着る。

……まただ。またあの夢だ。

定期的にあんな夢を見る。その度に最悪な目覚めをする俺であった。

時計を見る。朝の7時か。

俺は着替えて身支度をし、コーヒー牛乳とクリームパンを口に放り込み、その三時間後に家を出た。

 

 

「ふんふんふふ〜ん♫」

明島民間警備会社のキッチン。

そこで料理しているのはこの私、徳崎 心音だ。

ここは普段、私と実緒が生活をしている場でもある。社長の明島 信也は「社長出勤」と称して昼の1時頃にやってくる。よって、普段の朝は私がここで朝食を作るのが日課だ。

 

「おはよーございまぁす……ふわぁあ………」

 

実緒が起きてきた。

 

「おはよ。お顔洗ってきていらっしゃい。」

 

「ふぁーい……」

 

実緒は洗面所に向かった。

 

「心音お姉ちゃん……おはよ……」

 

実緒に続くかのように、昨日真が連れてきてくれた少女…リコちゃんも起きてきた。

 

「あら、リコちゃんおはよ。大丈夫?具合、悪くなぁい?」

 

「うん、へいきだよ。実緒お姉ちゃんがね、一緒に寝てくれたの。」

 

「そっか。じゃ、顔洗ってきてね。一人で出来る?」

 

「うん。」

 

リコちゃんも洗面所に向かった。

 

「よし!」

 

ごはん、よし。お味噌汁、よし。卵焼き、よし!

完成した朝食を盛りつけ、4人分を食卓に並べた。

 

「………あ。」

 

いけない。一人分多く作っちゃった。また癖だ……。

 

「真……」

 

ご飯……ちゃんと食べてるかな?

私はどうしても、彼のことが気になっていた。

真が……相棒が。

 

 

勾田公立大学付属病院。

俺はここに定期的に来ている。用があるのはここの地下。

薄暗い急な階段を降りたところにある扉を開く。

 

「……先生、小鳥遊です。」

 

「んー……?おお、確か君は……ことりあそび君だったかな?唯一の男の子イニシエーターの。」

 

「……『たかなし』です。」

 

俺は、その部屋の主……室戸 菫の前に座った。

怪しげな雰囲気を醸し出しているこの女医は「神医」と呼ばれている。かつてガストレア大戦時に持ち上がった「新人類創造計画」。それの最高責任者であった。そう、心音の左手を手術したのは彼女だ。

 

「それで?今日は……あぁそうか。身体検査だったね。じゃ始めようか。まずは服を……」

 

俺は上半身を露にした。

 

「あの、先生。」

 

「何だい?」

 

「口元から何か垂れてます。」

 

「……ジュルルッ。すまない。飽くなき探究心が体の外へにじみ出ていたようだ。」

 

「死体にしかそんな風な反応するんじゃないんですか。」

 

「君の体は別だよ。死体並みに興味がある。男のイニシエーターなんて君しかいないんだから。」

 

やれやれ、この人は相変わらずだな。

俺は菫先生による検査を受けた。

 

 

「……特に異常はなし。汚染度も低いし長生きできるだろうね。」

 

検査が全て終わり、俺は服を着て菫先生の前に向かって座っていた。

 

「そうですか。」

 

「ただ……」

 

菫先生は俺にペンを向けた。

 

「心の中、ちょっと抱えてるみたいだね。」

 

「……分かりますか。」

 

「当然だ。私を見くびらないでおくれよ。」

 

「はぁ。」

 

「……また例の夢かい?」

 

図星だった。以前にもこの話をしたことがあった。

 

「はい……」

 

「やはり、まだ抱えているのか……あの事を。」

 

「これは……」

 

俺は立ち上がり、言った。

 

「俺の問題、ですから。」

 

ありがとうございました、と言いながら俺は部屋を出た。

 

 

「全く……何でそんなに一人で抱え込むのやら……」

 

菫はケータイを取り出し、電話を掛けた。

 

「私だ。今から来れるかい?……そうか。少しね……うん。そうか、じゃあ、待っているよ。」

 

菫は電話を切り、メスで肉団子を刺して口に放り込んだ。




感想の方で菫せんせーと真の絡みがみたいとありましたので、早速書きましたwww
次の話では、ブラック・ブレットを見てるなら誰でも知ってるあの二人も出ますよ!
お楽しみに!!


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第3話〜罪滅ぼしと心配〜

昨日、僕の住んでいる地域ではアニメの第4話があっていました。
夏世ちゃん、ええ娘やん……(T . T)


病院から出て、俺は繁華街をぶらりと歩いていた。今晩の夕食を探していた。

 

「何食うかな……」

 

足が止まる。中華か……悪くない。中華惣菜店を覗いてみる。家にインスタントのコンソメスープがあった。今日はちまきと麻婆豆腐にするか。

 

「すみません、ちまき二つと麻婆豆腐一つ。」

 

俺はその二つを買い、店を出た。

 

ーガシャアアアン……‼︎

 

「⁉︎」

 

遠くの方……窓ガラスの割れる音が。

俺はその方向へ走り出した。

 

 

「あれは……」

 

物陰から見る。

そこでは戦闘が行われていた。

ガストレア……ステージ1の…カブト虫……モデル・ビートルか。

それと戦っているのは、黒いスーツに身を包んだ青年と、黄色いパーカーに身を包んだツインテールの少女。プロモーターとイニシエーターか。

 

「延珠、跳べ‼︎」

 

「っ、ふんっ‼︎」

 

ほう、あの跳躍力。見た目からして、モデル・ラビットだろうか。

 

「くらえ‼︎」

 

黒スーツのプロモーターがガストレアに発砲。弾丸はモデル・ビートルの角を破壊した。ガストレアが怯む。

 

「でやああああああっ‼︎」

 

イニシエーターが空中から急降下し、ガストレアの背面に蹴りを叩き込んだ。なるほど、靴底にバラニウムを仕込んでいる訳か。

ガストレアは飛散し、肉片が辺りに散らばった。

 

「大丈夫か、延珠。」

 

「問題は無いぞ。今日は容易かったの。」

 

「ステージ1だったしな。早目に倒せて良かったな。」

 

「それより蓮太郎。妾は空腹じゃっ。」

 

「あぁ、そうだったな。よし、なんか食いに行くか‼︎」

 

「おぉ〜‼︎よし、行こう‼︎」

 

そのプロモーターとイニシエーターは、その場を後にした。

 

「……中々見所のある奴だな。」

 

いつか会うこともあるだろうな。その時は色々と話してみたいもんだ。

俺は足を進め、帰路を辿った。

 

 

「……なぁ、蓮太郎よ。」

 

「ん?どうかしたか?」

 

「さっきの戦い。何か…『誰かに見られている感じ』がしたのじゃが…」

 

とある喫茶店で、プロモーターの里見 蓮太郎と、そのイニシエーターの藍原 延珠は一服していた。

 

「んー……そうか?そんな感じはしなかったけどな…」

 

「何か……鋭い視線を感じたのじゃが……いや、気にしすぎじゃろうな。すまない蓮太郎、忘れてくれ。」

 

「お、おう……」

 

 

 

 

「………やっぱり、そうだったのですか。」

 

匂田公立大学病院の地下室。私、徳崎 心音はここの主、室戸 菫を訪ねていた。

 

「あぁ。君にしたことに、今でも罪悪感を感じているようだ。その罪滅ぼしと称し、プロモーター無しに闘っている。」

 

「どうして……そんなに背負うのでしょうか?」

 

「さぁねぇ。彼は素直じゃないんだろうね。思っていることを言いたいけど、変に気遣って言えない…」

 

ビーカーでコーヒーを飲む室戸先生。

 

「……気遣う必要なんて無いのに…。」

 

何でなの?真……。

あなたに罪は無い。あなたは正しかったのに。何故そこまで……?

 

ーブーッ、ブーッ。

 

携帯電話の振動音。室戸先生の物だった。

 

「私だ。……そうか、分かった。すぐに向かわせよう。」

 

室戸先生は電話を切り、私の方を見た。

 

「君の所の社長からだ。市街地にガストレアが出現。ステージ4の、モデル・ケルベロスのようだ。」

 

「ステージ4⁉︎」

 

かなりの規模だ。早く行かないと。

 

「既に現場に社長本人とイニシエーターはいるようだ。早く行きたまえ。」

 

「はい!」

 

私は部屋を出ようとノブに手をかけた。

 

「……先生。」

 

「何かな?」

 

「……ありがとうございます。」

 

そう言い残し、私は部屋を飛び出した。

 

 

その頃、市街地では。

 

「てやあああっ‼︎」

 

イニシエーターの実緒、そのプロモーターであり、社長の明崎 信也が、ガストレアステージ4、モデル・ケルベロスと交戦中だった。

実緒の振るうランスが空を切る。ケルベロスは軽々とかわす。だが、着地の一瞬、スキが生まれる。

 

「そこだぁっ‼︎」

 

着地と同タイミングで、ガストレアの右脚にランスを突き刺す。そしてそのまま、突き飛ばす。

ガストレアは距離を取る。右脚からは紫色の血液が流れ出る。狙いは正確だ。

実緒はモデル・ワスプのイニシエーター…スズメバチの能力を備えたイニシエーターだ。狙った獲物の弱点を突く戦法を得意とする。

 

「……社長。こいつ、中々強いですよ…」

 

「落ち着け。慎重にいけば勝てる。」

 

「……はいっ。」

 

「ひとまず、弾幕を俺が張る。その間に奴の背後に周り、ランスで一発かます……いけるか?」

 

「……やってみます…‼︎」

 

「よし、行くぞ‼︎」

 

明崎はマシンガンをケルベロスの足元に放つ。煙が起こり、辺りは白くなった。その間に実緒は路地を利用し、ケルベロスの後方に回り込んだ。

物陰から、頃合いを待つ。煙が収まるまでランスを構え、待機する。

だんだんと煙が薄れていく。

 

「……今だ‼︎」

 

明崎の言葉と共に、実緒はランスを前に突き出し、突進した。

 

「はああああああっ‼︎」

 

しかし。

 

「グルオオオオオッ‼︎」

 

ケルベロスの咆哮。それが辺りを包んでいた煙を掻き消し……

 

「っ‼︎」

 

ケルベロスは実緒に襲いかかる。

まずい‼︎

実緒が思った、その時だった。

 

「グルゥッ⁉︎」

 

「‼︎」

 

ケルベロスの頭部に弾丸が撃ち込まれた。怯むケルベロス。その弾丸の主は……

 

「おまたせ‼︎」

 

心音だった。

 

 

「こ、心音さん‼︎」

 

「心音‼︎ 時間は許容範囲だ。一気に責めろ‼︎」

 

「了解‼︎」

 

私は腰の刀を引き抜き、駆け出した。

 

社長のマシンガンがケルベロスを捉える。怯ませ、その隙に私と実緒で仕掛ける‼︎

ケルベロスが怯んだ。

 

「そこだああああっ‼︎」

 

「これで、終わりっ‼︎」

 

実緒と私が同タイミングで、ケルベロスを切り裂いた。

ケルベロスは断末魔の叫びを上げ、飛散した。

 

「任務、完了。」

 

真………。

私は、大丈夫だから。

今度は、私があなたを……護るから。

 

 




いやぁ、安定の可愛さだぜ、延珠♫
その内延珠と実緒の絡みなんて書いてみたいなぁ…なんて(笑)


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第4話〜空腹と暗躍〜

今回は戦闘はありません。なんだかほっこりするお話になっちゃいました(笑)


モデル・ケルベロスの撃破後。

私たち明崎民間警備会社社員は、オフィスに戻っていた。

玄関に入る。

 

「はぁー…疲れましたぁ…」

 

「お疲れ、実緒。」

 

「あ、実緒お姉ちゃん…心音お姉ちゃん…お帰りなさい……」

 

リコちゃんが出迎えてくれた。その頭を撫でる。

 

「ただいま。」

 

「お外……大丈夫だった?」

 

「うん、もう大丈夫だよ。」

 

実緒が笑顔で言う。

 

「さて、夕飯の支度しなきゃね‼︎」

 

私は手を洗い、エプロンに着替えてキッチンに入った。

 

「あれ……?」

 

そう言えば、社長がいない。

 

「ねぇ、実緒。社長は?」

 

明崎社長は夕飯だけは食べる。しかし、今晩その姿は見当たらなかった。

 

「あー、なんかお偉いさんの接待みたいです。言ってました。」

 

「接待……?」

 

誰かしら……?

私はフライパンに油を引きながら考えた。

 

 

「………何度も言わせるな。俺は、民警には戻らない。」

 

俺、小鳥遊 真を訪ねていたのは……俺がかつて所属していた民警の社長、明崎 信也だった。

 

「そう言うなよ。銃弾と抑制剤、いつも送ってやってるじゃないかよ。」

 

「それとこれとは話が別だ。」

 

「頑固だなぁ……何でだよ。何がそこまでお前をそうさせんだ。」

 

俺は……俯いた。

 

「……今日は帰ってくれ。頼むよ。今は…話したくないんだ。」

 

俺は扉を閉めた。

 

 

「やれやれ………」

 

あの頑固さをなんとかしないことには、分かってくれなさそうだな。

ガストレアがここ最近強くなってきている。更に組織を強くせねばならない。

それに……

 

「真………お前がいないと、心音が………いつも……」

 

俺は真の家を後にした。

 

 

「……旨いなこれ。」

 

昼間に買った麻婆豆腐に舌鼓を打っていた俺である。

 

「……まぁ、でも…こんなもんだろうな。」

 

やっぱり、何か物足りない気もする。

 

「心音………」

 

俺はふと、頬杖を着いて思い出してみた……………。

 

 

ある日の夕飯だった。

 

「はい、真用の麻婆豆腐‼︎辛さ控えめの甘口‼︎」

 

「なっ、うるせぇ‼︎俺だって、辛いの食えるっての‼︎子供扱いすんな‼︎」

 

見栄を張っていた。俺は大の甘党なんだ。

 

「ほっほーう?じゃ、私の食べる?激辛麻婆豆腐。」

 

「お、おう。よ、余裕だよ、よゆー。」

 

「はい、じゃあまず一口あげる。はい、あーん…」

 

心音はやたら俺にこれをすることが多かった。恥ずかしかったりした。

 

「じっ、自分で食べるっての‼︎」

 

「何よ〜、ホントは怖いんじゃないの〜?ん〜?」

 

「ぬぁ〜‼︎もうっ‼︎」

 

差し出された一口にぱくつく。

 

「………もぐふぉっ⁉︎ ちょ、辛っ‼︎水っ、水ーっ‼︎」

 

「あはは‼︎もう、だから言ったじゃない。どうするの?辛いの食べる?」

 

「……甘い方で。」

 

「うむ、素直素直っ。」

 

 

「………あれ?」

 

頬が濡れていた。

泣いている……?

 

「何で……泣いてんだ……?」

 

俺は………戻りたいのか?民警に。

心音と一緒に……また生活したいのか?

いや、そんなことはない。俺は決めたんだ。民警には戻らない。心音を傷付けた俺に、戻る資格なんてないんだ。

 

「………………」

 

俺は夕飯をかき込んだ。だが、全然と言っていいほど腹は満たされていなかった。

 

「………ちっ。」

 

俺は家を出た。

 

 

結局、社長の接待の詳細も分からず、時計は11時を指した。実緒とリコは一時間も前に寝た。私はパソコンで報告書を作成していた。今月で会社が撃破したガストレア、その被害、イニシエーターの状態などを打ち込む。

 

ピーンポーン………

 

「? 誰かしら…」

 

こんな時間に…社長かな?

私は玄関に向かい、ドアを開けた。

 

「はーい………⁉︎」

 

そこにいたのは……

 

「真………⁉︎」

 

何で………?

 

「真……」

 

「飯、あるか?」

 

真は目を逸らしながら、聞いてきた。

 

「……え?」

 

「なんか……食い物。」

 

あぁ、そういうことか。なんだ。

良かった、相変わらずみたい。

 

「……上がりなよ、とりあえず。」

 

「……わり。」

 

私は真を上げた。

キッチンに入る。今日の肉野菜炒めは辛うじて一人分残っていた。即席で味噌汁を作り、保温していたご飯と一緒に器に盛り付けた。

真はテーブルに着いた。

 

「……はい。」

 

真の前に肉野菜炒め、ご飯、味噌汁を並べ、箸を手元に置いた。

 

「………いただきます。」

 

真は黙々と、食べ始めた。

私はその向かい側に座る。

 

「………やっぱ旨いわ。」

 

「え?」

 

「……お前の飯、やっぱ旨いわ。」

 

私の方を向いて、言ってきた。

 

「そっ……か。」

 

自分でも口元が緩んでいるのが分かった。

 

「……何笑ってんだよ。」

 

ほら、やっぱり。

 

「嬉しいんだから、笑うのは当然でしょ?」

 

「……知るか。」

 

食べ続ける真。私は言ってみた。

 

「ねぇ、真。」

 

「ん?」

 

「どうして、戻ってこないの……?」

 

真は……ご飯を味噌汁で流し込み、口を開いた。

 

「……社長も今日、俺のとこに来てそんなこと聞いたよ。」

 

「え?」

 

じゃあ、社長は真を訪ねていたってこと?

 

「………今は話したくないんだ。悪ぃけど。」

 

「そっか。」

 

真は食べ終え、皿を重ねた。

 

「ごちそうさま。……じゃ、帰るな。」

 

そして、立ち上がり玄関へ向かった。

 

「真!」

 

私は玄関まで見送る。

真はドアノブに手をかけて止まっていた。

 

「……私、待ってるから。今度は、私があなたを護るから。」

 

「………………。」

 

何も言わず、真はオフィスを去った。

 

「真……。」

 

待ってるから。あなたとまた一緒にいられる、その日まで……。

 

 

日にちは変わっていた。俺は暗い路地を一人歩いていた。

 

「………誰だ。」

 

背後から気配がした。俺は立ち止まり、振り返る。

 

「気づいていたとは……流石、モデル・ホークの能力は侮れないな。」

 

暗闇から現れたのは一人の男と一人の少女。男の方は長身でタキシードを見にまとい、シルクハットにマスケラという格好をしていた。

少女の方は、腰には小太刀、青い髪に赤い瞳……イニシエーターか?

 

「初めましてかな、小鳥遊 真くん。」

 

「……何故俺を。」

 

「民警に関わっていれば有名さ。死を運ぶ鷹よ。」

 

「貴様……誰だ。」

 

「すまない。自己紹介が遅れたよ。私は蛭子 影胤。そしてこれが私の娘でありイニシエーター……」

 

「モデル・マンティス、蛭子 小比奈。」

 

親子か。

 

「貴様……民警か?」

 

「いや、元・民警だ。君と同じ立場さ。」

 

「………何の用だ。」

 

その男…影胤のマスケラから、黄色い瞳が見えた。

 

「……私の仲間にならないか?」




ほっこりからのシリアスドーン‼︎(笑)
蛭子親子いいですよね。影胤さんが明らかすぎる生存フラグで笑ってしまいましたよ、こないだ(笑)


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第5話〜生き甲斐と変異〜

普段から小説を書くも、アイデアが即座に浮かばない僕なのですが、この作品はとてもスイスイ書けちゃいます(笑)
最近リア友から「将来作家なれば?」とか言われたりします(笑)
そんな大層な文章書けないのに…(笑)


「私の仲間にならないか?私と君には、何かしらの運命を感じるんだが……」

 

マスケラ越しに、影胤は話す。

 

「運命……だと?」

 

「同じ、民警から去った者同士だろう?丁度同じような同胞が欲しい…というのも本音だ。」

 

こいつ……人間か?話し声から人ならざる何かを感じる。

 

「……あんたの目的は?」

 

「その前に一つ問おう……君の生き甲斐は、どこにある?」

 

俺の、生き甲斐……?何を言い出すと思えば。

 

「……ガストレアと戦うこと。それがどうした。」

 

「その戦いは、君の純粋な気持ちから生まれたものかい?」

 

「……何が言いたい。」

 

「君は戦いの中でしか生きることが出来ないのだろう?」

 

戦いの中でしか……生きられない……?

 

「私はね、力が、戦いが全てを支配する世界を望んでいるのだよ。弱いものは消え、力あるものが頂点に立つ………素晴らしいとは思わないかい?」

 

………なるほどな。

こいつは戦いの中でしか生きられない。それを受け入れて、自分にこんな仕打ちを強いたこの世界に歯向かい、従わせ、支配したい……と、いったところだろうな。

 

「………悪いが、俺は支配者になるつもりはない。」

 

「ほう……?」

 

「……俺は…この世界を恨んでもいないしな。俺はただ、自分が護りたいものがある。だから戦うだけだ。」

 

「ほう……中々いいことを言うじゃないか。」

 

「あんたが支配者になりたいなら好きにするといいさ。俺はそれを止めもしなければ、協力もしない。俺は護りたいもののために、戦う。支配なんて……する必要もない。」

 

「なるほど……残念だ。しかし、君はいい人だ。気が変わったらいつでもいいぞ?」

 

引き下がらないのか。ま、それもそうか。

 

「オマケに、俺は今の所は一人が心地良いんでな。」

 

「あくまでも孤高のイニシエーターを続けるか。まぁ、いいだろう。だが気をつけたまえよ?いつか君と戦うかもしれないのだからね。」

 

全く、言うと思ったぜ、その言葉。

 

「その時は……相手になるさ。」

 

「ふっふっふ……いい言葉だ。分かったよ、すまなかったね。ここで失礼するよ……行くぞ、娘よ。」

 

「はいパパ………」

 

立ち去ろうとする親子。娘の方が俺に問う。

 

「ねぇ、お兄さんは強いの?」

 

俺は微笑み、答えた。

 

「……想像にお任せするよ、お嬢さん。」

 

「じゃ、楽しみにしておくね……ふふっ。」

 

親子は暗闇の中へ消えていった。

 

「あんなやつも、いるんだな。」

 

俺は悟り、帰路を進んだ。

 

 

「生き甲斐……か。」

 

次の日の朝。

ソファに寝転び、影胤の言葉を思い出してみた。俺の生き甲斐は……戦い。護るための戦い。護りたいもの……

 

「心音………」

 

……今度は、私があなたを護るから。

 

「あいつも、か……?」

 

あいつは新米の時からずっと言っていた。自分が民警に入ったのは、ガストレアから人々を護りたいから……と。

あいつは高校生時代に、家族をガストレアに奪われた。それからあいつはプロモーターの養成所に入り、自分の力に磨きをかけプロモーターとなり、俺と組んだ。

もう2度と、自分と同じような被害者を出さないためにも。

 

「俺には……親すらいなかったな。」

 

俺は両親を知らない。俺は赤子のときに捨てられたようで、「呪われた子供たち」を保護する宗教団体に拾われ、その孤児院で育った。だが、その孤児院は経営難で破綻。そんな俺を一人さまよっていたところを拾ってくれたのが、明崎 信也……社長だった。

社長は俺にイニシエーターの道を示してくれた。俺はイニシエーターの養成所に入り、正式にイニシエーターになった。だが、立て続けにプロモーターを失い、心音を傷付けしまった……。

 

「………俺は…イニシエーターになってよかったのか?」

 

俺は……イニシエーターとして、誰かに必要とされたか……?

 

「………心音…。」

 

やっぱり、あいつに辿り着く。俺は心音から頼りにされていた。1番、俺のことを頼りにしていただろう。

そうでなければ、あんなことを俺に言わない。

………待ってるから。

少し胸が痛くなった。あいつの気持ちを無下にしているようで。

だが、俺は戻らない……俺は独りでも戦う。プロモーターは要らない。

 

「あんな悲劇は……もうごめんだ。」

 

俺は武器をバッグに家を出た。ガストレア狩りの時間だ。

 

 

時計は朝の9時を指していた。

俺は森の中を歩く。ライフルのグリップを握り、辺りを警戒する。

 

「……………妙だな。」

 

ここら辺にはガストレアがどこから湧き出ているのかと思うほど現れるはすだが、今日は少ない。それどころか、さっきから見つかるのは、ガストレアの死骸ばかり。どの死骸にも噛みちぎられた後がある。

 

ー……ガルルル……

 

「?」

 

遠くの方から、獣のような呻き声。その方へゆっくりと足を進めた。

足を進める程、呻き声が大きくなるとともに、肉が千切れる音もした。まさか、ガストレアがガストレアを食べているのか…?

俺は木の陰に隠れ、覗いた……。

 

「⁉︎」

 

考え難い、信じ難い光景だった。本当に、ガストレアがガストレアを食べていたのだ。

しかもだ。食べている側のガストレアは、通常ではあり得ない容姿をしていたのだ。

顔はライオン、尾はサソリ、足はチーター、背中はカメ、鼻の部分がサイの角のようになっている。

顔がライオンだとすると、元はモデル・ライオンのガストレア。今となってはその原型はほぼ無い……「変異体」と呼ぶに相応しいだろう。

俺はライフルの銃口を、その変異体に向けた。

狙うはまず頭部。

 

「‼︎」

 

トリガーを引いた。

銃弾はガストレアの頭部にヒット。

……したように見えた。

 

「⁉︎」

 

そのガストレアはこちらが放った弾丸を、その牙で受け止めたのだ。

 

「ガルルル………グオオオオオッ‼︎」

 

咆哮する変異体。俺は再びトリガーを引く。銃撃は全てかわされた。

 

「くそっ……‼︎」

 

こいつはまずい……‼︎

俺は手榴弾のピンを抜き、ガストレアの足元に投げつけて、辺り一面の視界を真っ白にし、その場から一時撤退した………。




大ピーンチ‼︎お決まりの大ピーンチ‼︎(笑)
自分で書いていてもドキドキのワクワクだぜっ‼︎(笑)


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第6話〜本音と未来〜

ようやく大学の講義の資料が出来上がった……もう眠いよ………wwww
眠いのにめっさ書いちゃったよ……wwww


かなりキツい状況だ。森の奥にある大樹の裏で辺りを警戒する。

変異体のガストレアは、他のそれでは話にならない程の力を備えていた。優れた視界や嗅覚、弾丸を口で受け止めてしまう程の洞察力と瞬発力、そして、あのスピード……。

 

「かなりヤバい状況だぞ、これ……」

 

………グルルル…

 

不味いな。近づいてきている。こちらの匂いを嗅ぎ付けているのか?どうする。このまま奴の前に飛び出し、目か脚を狙うか。もしくは背後から接近し、ショットガンを0距離でぶち込むか。どっちにしろ、失敗すれば終わり。

……試行錯誤していたそのときだった。

 

「てやぁあああっ!!」

 

変異体に攻撃を仕掛ける者が現れた。それは……俺が暴行を受けていた少女を民警に預けたときに出てきた、黒髪のツインテールの少女だった。イニシエーターだったのか。ランスを変異体の脚に突き刺し、そのまま突き放す。変異体は突き放されるも体制を立て直した。イニシエーターはランスを前に突き出し、駆け出した。

 

「くらえぇえええ!!」

 

ランスの先は変異体の右目を捕らえた。イニシエーターはそのままランスを押し込む。

 

「グルオオオオ!!」

 

苦悶の声をあげる変異体。脚に攻撃を食らったせいか、動けなかった。今回はあの少女に手柄はやるか……そう思った時だった。

 

「……!!」

 

変異体の尾部………サソリのような尾が上にあがり、先端から液体を出していたのだ。

 

「おい!!離れろ!!」

 

「えっ!?………!!!」

 

一瞬だった。尾はイニシエーターの脚部を狙っていた。尾が動き出すほんのコンマ二秒ほど。彼女は直ぐ様察知し、ランスを引き抜いて後方に跳んで、見事に躱したのだ。

 

「グルアオオオオ!!」

 

変異体がイニシエーターへ駆け出した。不味い。

俺はすかさず手榴弾のピンを抜いた。

 

「伏せろ!!」

 

イニシエーターにそう叫ぶと同時に、俺は変異体に手榴弾を投げつけた。手榴弾は変異体に当たると同時に爆発。変異体は怯んだ。

 

「こっちだ!!」

 

俺はイニシエーターに呼びかける。彼女はこちらへと駆け出した。そして、俺は彼女の手を引いて、森の奥へと入っていった。

 

 

「………ダメだ。」

 

無線がつながらない。森の中で、明崎 信也は彷徨っていた。

謎のガストレアが森にいるという報告を受け、明崎とそのイニシエーター、川野 実緒が現場へ向かった。だが、遭遇したガストレアは強力でかなりの苦戦を強いられた。このままでは全滅する。そう判断した信也は、実緒に二手に別れ、後で河口で落ち合うよう指示したのだ。

なんとかガストレアからは撒く事が出来た信也である。

 

「とりあえず……進むしか無いようだな。」

 

信也は辺りを警戒しながら河口を目指した。

 

 

森の奥にある、巨大なコンクリート製の土管の裏に隠れている俺と、黒髪ツインテールのイニシエーター。辺りを見渡す……まだ嗅ぎ付けられてはいないようだな。

 

「しばらくは大丈夫そうだな……」

 

「あ、あの……」

 

「ん?」

 

少女が俺を見上げる。

 

「あの、以前にリコちゃん……女の子を助けてくださった方、ですよね……?」

 

「あぁ、そうだな。あの子は元気かい?」

 

「は、はい。今、わたし達が責任を持って保護しておりますっ。」

 

「なら、良かった。」

 

「あ、あのっ、も、申し遅れましたが私、明崎民間警備会社のイニシエーター、モデル・ワスプ、川野 実緒と言います!」

 

ビシッと敬礼をしてきた。

 

「あ、あぁ。丁寧にどうも。……モデル・ホーク、小鳥遊 真だ、よろしく。」

 

「え……!?まこと………って……まさか!!」

 

少女……実緒は聞いてきた。

 

「あなたが……心音さんの、元・イニシエーター……!?」

 

「……あぁ。」

 

俺は答えた。少し口調が重くなってしまった。

 

「………そう、でしたか………申し訳ありません………」

 

頭を下げる実緒。

 

「謝る必要は無いさ。」

 

「…………あの、少し聞いてもいいですか?」

 

少し怖い気がしたが、俺は頷いた。

 

「何かな?」

 

「真さん…………あなたにとって、心音さんはどんな人ですか?」

 

どんな人…………か。

 

「……護りたい、人かな。」

 

「だったら、何でですか?」

 

「え?」

 

実緒の目は、どこか悲しげだった。

 

「何で……心音さんの側にいてあげないんですか?」

 

一瞬、喉の奥が詰まったような感覚がした。俺は口を開いた。

 

「………俺に、その資格が無いからだ。」

 

そう言った時だ。すかさず、実緒は言い放った。

 

「違いますよね?」

 

「…………」

 

「私、見たんです。こないだ、真さんが心音さんのご飯食べているのを、たまたま。」

 

見ていたのか。俺は何も言わない。

 

「あなたは分かっているはずです。心音さんがあなたを待っているってこと。心音さんはあなたともう一度生活したいと望んでいる。あなたがした事も気にしていない。むしろ感謝している。あなたは……本当は戻らなきゃいけないんじゃないんですか?彼女を護りたいのなら……あなたは民警に戻るべきなんじゃないんですか?」

 

鋭いなこの娘………その通りだ。俺は本当は………民警に戻るべきなんだろう。そうでないと、心音は護れない。だけど……

 

「……実緒ちゃん、だっけ。君は、自分がもしガストレアになったらって……考えたことはあるか?」

 

「え?」

 

「………俺は心音を傷つけた。けど、あいつはそのことは気にしていない……そんなことは分かっている。俺が怖いのは……俺がガストレアになった時に心音を傷つける事なんだ。俺に優しくしてくれた心音をまた傷つけるのが……俺の意識が消えた状態でそうしてしまうかもしれないのが………怖いんだ。」

 

初めて、誰かに話した。これが俺の本音だった。

 

「……真さん。」

 

実緒ちゃんは……俺の手を掴んだ。

 

「怖いのは……私も一緒です。けど、私はだからといって、プロモーターを護るために離ればなれになるのは……嫌です。私は、絶対生き残ります。それが、私を拾って育ててくれた…信也さんへの恩返しですから。」

 

「実緒ちゃん………」

 

「強がりなのは分かってます。でも、強がってないと……護りたいものも護れない………そう思ってますから。」

 

………凄いな、この娘は。その勇敢さに心を打たれた俺だった。この娘は逃げていない。明るい未来を信じて突き進んでいる。それに比べて俺は……ダメだな。逃げているだけじゃないか。

 

「……ありがとう、実緒ちゃん。」

 

空いている手で、彼女の頭を撫でた。

 

「真さん……。」

 

「決めたよ。俺も、絶対に生き残る。」

 

「……はいっ。」

 

実緒ちゃんははにかんだ。

 

………グオオオオオ………!!

 

「!?」

 

変異体の鳴き声……結構近づいて来たな…。

 

「ど、どうしましょう……!?」

 

俺はバッグの中を開いた。

 

「………!!」

 

俺は咄嗟に作戦を思いついた。そうだ、これだ。これなら……いけるかもしれない。

 

「ま、真さん?」

 

「………実緒ちゃん。」

 

俺は彼女の方を真っ直ぐ向いた。

 

「ちょっと、手伝ってもらえるかな?」

 

 

 

 




ヘタレ、解除!!そんな話になってしまった。ようはガストレアとして心音を傷つけたくないから、民警から手を引いていた、ということです。しかし、実緒がこんなに勇敢なキャラになるとは……我ながらビックリwww
今のところ、実緒の台詞が一番かっこいい気がしますwwww


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第7話〜作戦と陰謀〜

台詞の方が多い気がするぞ、この作品wwww
ダメだと思いながらも書き上げた私は、悪い子いらん子……www


森の裏手にある河口付近。明崎 信也はそこで、イニシエーターの川野 実緒を待っていた。

 

「実緒…………」

 

大丈夫だ、あいつは……そんな柔なやつじゃない。そう信じていた。とにかく、この後どうするか……あのガストレアが来る前に考えねばと、彼は頭に手をやった。

 

 

「…………かなり近づいてきたな……。」

 

モデル・ホークの能力があれば、双眼鏡やスナイパーライフルのスコープは必要ない。かなり、遠く……1キロ先まで鮮明に見渡すことが出来る。普段は目が疲れるので、戦闘の必要最低限の時しかこれは使わない。

大体700メートルだろうな……変異体のガストレアがそこまで来ていた。土管の近くから捕捉する。

 

「よし、俺が10歩進んだら撃つ。そうしたら打ち合わせ通りに……頼むぞ。」

 

「了解です……」

 

土管の裏にいる実緒に告げる。彼女は俺のボストンバッグを、両手でしっかりと抱えていた。

俺はゆっくりと歩き出す。1………2……3…………4…5、6……7……8……

 

「グルルルル……」

 

変異体が通常の肉眼でも確認出来る距離に現れた。

……9…………10!!

俺は変異体に引き金を引いた。弾丸は躱される。こちらに気づいた。向かってくる。

 

「走れ!!」

 

俺はそう叫び、走り出す。同時に実緒が走り出したのも確認。よし。さて、と。俺は走りながら、時計を見る。13時12分。時間は15分間。その間、俺は囮だ。奴は俺を追っている。ここまでは計画通りだ。あとは……

 

「俺の体力が持つか……だろうな。」

 

 

 

森の林を駆け抜けて、私……川野 実緒は河口に出た。そしてバッグを開く。

 

「よし………」

 

5分かかったから、あと10分。

それまでにこれをしかけて……

 

「実緒!!」

 

遠くから声………信也さんだ。

 

「信也さん!!無事でしたか!」

 

「お前もな……ガストレアは!?」

 

「今、真さんが囮になって時間を稼いでいます!」

 

「真!?何があったんだ!?」

 

「話は後です!!信也さん、ちょっと手伝ってください!」

 

私は信也さんにバッグの中身を見せた。

 

「これは…………爆弾?」

 

 

 

数分前の土管の裏にて、私と真さんは作戦の打ち合わせをしていた。

 

「爆弾?」

 

「あぁ。奴を倒すには、不意を着いた爆破が効率がいいはずだ。」

 

真さんはフリスビー位の大きさの、丸い円盤状の物を取り出した。これが爆弾なのだろうか。

 

「こいつは遠隔操作でオンオフが出来る。今はオフだから……落としても爆破しない。」

 

地面にそれを1つ落としながら説明する。確かに爆発しなかった。

 

「こいつが今10個ある。奴を河口におびき寄せこれを爆破させる。これを地面に埋めて、奴がこいつの真下に来たところでリモコンでオンにして、爆破する。」

 

「なるほど……でも、どうやって仕掛けるんですか、爆弾。」

 

「……実緒ちゃんは先に河口に行って、これを仕掛けてもらう。」

 

「そ、それって……まさか!?」

 

「……俺が奴の囮になる。」

 

「そんな、危険ですよ!」

 

「大丈夫だ、俺はやられない。」

 

「でも……」

 

真さんは、私の頭を撫でた。

 

「強がってなきゃ、護れないものも護れない………だろ?」

 

私が言った言葉だった。

 

「安心しろ……俺は死なない。俺も生き残るんだからな。」

 

「……はい!!」

 

「よし。」

 

真さんは地図を出した。

 

「今はここ。河口は走って5分程度でつく。河口に着いたら爆弾を10個、一カ所にまとめて埋める。最低でも10分でこれをやってほしい。だから15分間俺は奴を引きつけておく。俺と河口で合流してから、タイミングを合わせて爆破してくれ。」

 

「分かりました…!」

 

「頼むぞ。」

 

「………はいっ。」

 

 

 

「残り2分……」

 

もう少しだ。俺は変異体と交戦していた。とは言っても、銃弾で牽制しつつ攻撃を躱すだけのことだった。

脚がそろそろ限界かもしれない。痛みまで伴ってきた。もう少し耐えろよ、俺の体。

 

「そろそろだな……こっちだ!」

 

俺は変異体に手榴弾を投げつけ怯ませ、走り出す。河口に向かって。

 

 

「……よし!!」

 

「終わったか?」

 

「ばっちりです!!」

 

私と信也さんは真さんの爆弾を地面に埋め、100メートル程離れた所へと待機した。あとは、真さんが来るのを待つだけ。あと一分程……。私は爆弾のリモコンを握りしめる。

 

「生き残るんだ……絶対に。」

 

色んな人と交わした約束。民警の皆や、私を支えてくれている人たちと。真さんともだ。

 

「………!!」

 

向こうから走ってくる人影……真さんだった。

真さんは私たちの元へ。膝に手をつき、激しく息を荒げている。

 

「はぁ……はぁ……しんどい………」

 

「真さん!」

 

「あぁ、もうすぐこっちに来る……爆弾は!?」

 

「ばっちりです!!」

 

「グルオオオオ!!」

 

ガストレアがこちらに向かってくる。あそこだ。少し砂利が盛り上がっている所。そこにあいつが来た時に………!私は爆弾の電源をオンにした。

ガストレアは……その地点に差し掛かった。

 

「行っけぇえええええっ!!!」

 

私は爆破のスイッチを押し込んだ。

激しい爆音が鳴り響き、爆風が吹き荒れる。

 

「きゃあっ!?」

 

「うわっ!!」

 

爆風が収まる。

 

「………」

 

真さんは爆破地点に歩み寄る。

 

 

 

変異体は……爆発で内蔵が飛び出ていた。再生していないところを見ると、どうやら死んだようだ。

 

「作戦、成功だな。」

 

「真さん!!」

 

実緒と社長が駆け寄る。

 

「やりましたね!!」

 

「あぁ……君のおかげで、な。」

 

実緒の頭を撫でた。

 

「真……」

 

社長は俺の方を見る。

 

「……じゃ、俺はここで。」

 

俺は立ち去ろうとした。

 

「待ってくれ!!」

 

社長は叫んだ。

 

「………民警に戻ってきてくれ…か?」

 

後ろを向いて、その顔を見る。社長は力強く頷いた。俺は……脚を進める。

 

「……検討しとくわ。」

 

俺はそう言い残し、その場を後にした。

 

 

「真さん……!!」

 

その言葉に嬉しくなった私だった。

 

「全く……」

 

信也さんの顔も笑っていた。

 

「よし、俺たちも帰るか。」

 

「そうですね。」

 

私たちは帰還の準備をした。

 

「ねぇ、信也さん。真さん……戻ってきてくれますよね?」

 

その質問に信也さんは答えた。

 

「……きっと、な。」

 

 

 

「あーあ、私の『キマイラ』がやられるとは……」

 

モニターで森の戦闘を監視していた者がいた。彼の周りには……体中を改造されている動物達が、ホルマリン浸けにされていた。

 

「まぁでも、予想を越えた良いデータが取れた。彼らにはもう少し、私の実験動物の相手をしてもらいたいな……イニシエーター達、には。」

 

椅子から降り、白衣をたなびかせる男。

 

「最強の新人類を産み出すために……ね。」

 

彼は怪しげな笑みを浮かべた。その手に握られていたのはレポート。タイトルは……

 

『ガストレア・ヒューマン計画』

 




民警に復帰か真!?謎の白衣の正体は!?彼の計画とは……って、大体わかるかな?wwwww
とにかく盛り上げてみたつもりな回でした。


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第8話〜祝福と笑顔〜

今日は少しクールダウン回です。実緒ちゃんがメインになっています。彼女の過去を書きました。コメントに『蛭子親子と片桐兄妹を出して』といただきました。タイミングを見つつ、出していこうかなと思います。


「ふぅむ……」

 

勾田公立大学付属病院の地下……室戸 菫先生を訪れていたのは、明崎民間警備会社の社長の明崎 信也と私………イニシエーターの川野 実緒だった。部屋の中央のスペースに乗っているのは……私たちが倒した、ガストレア変異体の死骸だった。爆撃を受けたため、至る所が黒く焦げている。

 

「どうだい、ドクター。」

 

「……この変異は…ガストレアウイルスによる物ではないね。」

 

「何!?」

 

「ど、どういうことですか、先生?」

 

「……普通ガストレアウイルスに感染すると生物そのものの遺伝子が書き換えられるんだが、これは……ガストレアの再生能力と凶暴性だけを上手く取り込んでいる。」

 

「で、でも!ガストレアは成長するごとに色んな動物を取り込むんですよね!?それなら……」

 

「残念ながら、これの体自体はガストレアウイルスによる物ではない……ウイルスに感染する前から、この体は完成している。いや……」

 

先生は頭に手をやり、言った。

 

「『改造』された。とでも言うべきかな。」

 

「ということは……このガストレアの元の動物は……」

 

「人工的に作り出された……と考えるべきだろうね。」

 

人工的に改造された動物をガストレアにする……。

 

「一体、誰が?」

 

信也さんの問いに先生は……首を横に振った。

 

「………探すしかないか。」

 

「何か森に証拠があると思うよ。探してみるといい。」

 

「そうだな。じゃあ失礼するよ、ドクター。」

 

信也さんが立ち去ろうとする。

 

「あ、信也さん。私、汚染度チェックした後、少し外出してもいいですか?」

 

「おお、分かった。夕方の6時までには帰ってこいよ。」

 

「分かりました。」

 

「じゃ、これで。」

 

信也さんは部屋を出た。

 

「じゃあ、先生。」

 

「あぁ、分かった。測定を始めようか……」

 

 

「よっこいしょ……」

 

明崎民間警備会社オフィス……の、キッチンで作業しているのは私、徳崎 心音。何をしているかというと……生クリームをかき混ぜていた。電子レンジの中では丸い円盤のようなものがクルクルと回り、リコちゃんがその中を覗き込んでいる。

 

………………チンッ。

 

「出来た!」

 

「どれどれ……」

 

生クリームの入ったボウルを置いて、レンジを開ける。スポンジケーキが出来上がっていた。

 

「わぁ〜!」

 

リコちゃんの瞳が輝く。

 

「よし、クリームも丁度出来たし……」

 

そこへ……

 

「ちっすー。」

 

社長が帰ってきた。

 

「あ、お帰りなさい。」

 

「おう……うん?心音、何してんだ?」

 

「何って……ケーキ作りですけど?」

 

「な、何故に……あぁ、そうか。」

 

私は微笑んだ。

 

「実緒の誕生日でしょ?忘れてました?」

 

 

 

「……汚染率、26.7%。特に問題はない。」

 

診断書を渡された。私は一礼する。

 

「ありがとうございました。」

 

「……実緒くん、君は……今日誕生日なのかな?」

 

「あ、はい。そうですけど……」

 

今日は7月26日。私の11歳の誕生日だ。

 

「丁度良かった。プレゼントだ。」

 

小さな箱が差し出される。私は受け取った。

 

「こ、これは?」

 

「開けてみるといい。」

 

私は箱を開けた。その中に入っていたのは……懐中時計だった。

 

「わぁ……いいんですか?」

 

「あぁ、君に何かしらの時にあげようと思って、私がネットで買った物だからね。」

 

あ、買いにいったんじゃないんだ、やっぱり。

 

「ありがとうございます。大事に使います。」

 

「おめでとう。用事があるんだろう?早く行きたまえ。」

 

「あ、はい。失礼します。」

 

私はその場を後にした。

 

 

 

「はぁっ!!」

 

引き金をひき、ガストレアを狙い撃つ。弾丸はステージ2、モデル・モスの身体を貫通し、飛散させた。

 

「今日は少ないな……」

 

森でガストレアを狩る俺、小鳥遊 真はバッグにライフルを収めた。森を出る。

あの変異体の出現以来、森のガストレアは減少しているように思える。いや、それ以前にガストレア化する可能性がある因子……動物も減っている……。

 

「調べてみるべきなんだろうが……」

 

今日はもうやめておこう。本音を言うと、疲れた。

俺は森を出て、麓の墓地の方を向いた。

 

「ん?」

 

そこの墓地に……一人の少女がいた。黒髪のツインテール。

 

「実緒ちゃん?」

 

俺は墓地に脚を踏み入れ、実緒ちゃんに歩み寄った。彼女は墓前の前で目を閉じていた。

しばらくして、彼女は目を開いた。

 

「……あ、真さん。」

 

「よう。」

 

「今日もガストレアを?」

 

「少しな……実緒ちゃんは?墓参り?」

 

「はい……私がいた孤児院の、呪われた子供達の……」

 

俺は墓を見た。英語で書かれてあったが、その下に和訳が。

 

『幼き呪われた子供達、ここに眠る。 川野孤児院』

 

「川野……って…!」

 

「……私が名乗ってる名字です。川野孤児院出身なんです、私。」

 

「そう、なのか。」

 

「……この孤児院は、呪われた子供達を……奪われた世代も、無垢の世代も関係なく、預かっていたんです。」

 

そんな孤児院はよくあるからな。俺もそうだった。

 

「ただ、ある日の事でした。いきなり、過激派の集団が孤児院を襲撃したんです。子供も大人も、皆、撃ち殺されたんです。」

 

「君は……生き残った訳か。」

 

「私は孤児院の地下室に、シスターのおばさんと一緒に逃げ込んだんです。他の皆は逃げ込む前に……。」

 

「その、シスターさんは?」

 

「分かりません……その後、孤児院から逃げた時にはぐれてしまって……孤児院があった所に戻っても、孤児院は燃やされてしまっていた。居場所も無くて、ふらふらしていたそんな時に…」

 

「社長に拾われた訳か。」

 

実緒ちゃんは頷いた。

 

「……ホントに、残酷ですよね。この世界。」

 

「………いつか、報われる日が来るといいな。」

 

俺は彼女の頭に手を置いた。

 

「……はい。」

 

「……じゃ、俺はこれで。」

 

立ち去ろうとした時。

 

「あ、真さん!この間の変異体のガストレア、先生が調査したんですけど……」

 

「菫先生が?」

 

俺は脚を止める。

 

「はい、実は……」

 

実緒ちゃんは俺に話した。

 

「……人工的に作られた生物をガストレアに…か。分かった。明日少し調べてみるか。ありがとうな。」

 

「いえいえ、こちらこそです。」

 

「じゃあ、これで。」

 

俺は帰路に着いた。

 

「……人工的に………か。」

 

一体、誰が?

疑問を胸に、俺は脚を進めた。

 

 

 

「ただいま戻りましたぁ!」

 

オフィスに入った途端。

 

パーン!!パパーン!!

 

クラッカーが鳴り響く。

 

「おかえり、実緒!ハッピーバースデー!!」

 

心音さん達が笑顔で出迎えていた。

 

「……え?」

 

私は、呆然としていた。

 

「ほら、早く上がる!今日はお祝いよ!!ケーキも作ったんだからね!!」

 

「料理は俺も作ったぞ!グラタンだけな!!」

 

「実緒お姉ちゃん、食べよっ。」

 

私は……とても嬉しくなった。

 

「はいっ!!」

 

孤児院の皆。

今、私は皆の分まで、生きてます。

これからも生き続けます。

私の、いや。

皆の望んでいた世界を夢見て。

 

私、川野 実緒は今日も笑顔です。

 

 




ここまで書くと挿絵が欲しいですねwww どなたか、どなたか書いてくださるお方はおりませぬか……っ!?
ちなみに筆者は、絵の才能0ですwww


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第9話〜実験と始動〜

新キャラ出ますよ〜。まぁ、7話でちょいだしした人ですがねwwww
そして、一番多い文字数の話になってしまった事に気づいた私!!wwww


ベランダからシャボン玉を飛ばしてみる。晴れた青空。シャボン玉の1つ1つは太陽に照らされて、輝く。こうするだけで自然と心が落ち着く俺、小鳥遊 真だった。

俺はシャボン玉が大好きなのだ。孤児院にいたとき、そこのシスターが俺にシャボン玉セットをプレゼントしてくれたのが始まりだった。

 

「何かあったらシャボン玉を飛ばしてみて。心が落ち着きますよ。」

 

というシスターの言葉を今でも覚えている。

ボトルに詰めたシャボン液が無くなった。1日1本と自分で決めているのだ。今日はこれで終わりだな。

 

 

変異体の出現から一ヶ月が経とうとしていた。あれ以来ガストレアの出現する頻度が多少減少したかのように感じる。

森の調査もしたが、特に何も分かった事は無かった。

このまま減ってくれれば……世界は落ち着くだろうな。

……と、思っていた俺は甘かった。

 

 

 

明崎民間警備会社。会議用の机を囲むのは、社長の明崎 信也、イニシエーターの川野 実緒、プロモーターの私、徳崎 心音。

変異体ガストレアの出現から1ヶ月。あれから森を調べるも証拠は何も出ず、未だ詳細の分からないあのガストレア……。

謎は闇に包まれたままだった。

そんな中行われるこの会議……何だろうか?

 

「では、始める。まず、これを見てくれ。」

 

ホワイトボードに張り出されたのは………この周辺の地図だった。

至る所に赤のバツが描かれている。

 

「このエリアのこの罰点の場所において、ここ1ヶ月の間に、行方不明になっている人間がいる。」

 

「え?」

 

「誘拐……ですか?」

 

「一般の警察の調査によると、近頃怪しい人影の出入りを見かけるという証言が出てきた。それに関連すると考えられるのが・・・・・・近頃のガストレアの減り具合だ。」

 

その場の空気がより張りつめる。

 

「……いずれにせよ、ガストレアが絡んでいる可能性が0ではない以上、調べる必要がある。よって今夜、市街地のパトロールを行う。」

 

「了解!」

 

私は社長を見て頷いた。

そして、日が落ちる18時30分頃。

私たちはパトロールを開始した。

 

 

 

「…………」

 

今日は市街地の方を回っていた。森のガストレアは少ない。こちらに来る事もないだろう。

俺は公園に入る。夜の公園は、静まり返っていた。俺はブランコの方を見た。

 

「………?」

 

そこには………ブランコを小さく漕いでいた白衣に身を纏った眼鏡の男がいた。

 

「………」

 

俺はその男に近づく。

 

「…………静かだ。こういう夜は素敵だとは思わないかい?」

 

男はブランコから降りて、棒付きキャンデーを口に咥えた。

 

「……あんた、こんな所で何を?」

 

「んー……少しね。実験体の回収をしている。」

 

「実験体…………?」

 

「まぁ、集めているのは私ではなく、私の作品だがね…。」

 

さっきから何を言っているんだ、この男は。作品……?

 

「作品って何だよ?」

 

「………私の作った、改造兵士さ。」

 

「なっ!?」

 

改造兵士…………!?

 

「貴様……何者だ!!」

 

俺はすかさずライフルを構え、銃口をその男の額に向けた。男は表情を変えない。

 

「やだなぁ……そんな物騒な物引っ込めておくれよ。」

 

両手を上げる男。俺は銃を降ろした。

 

「私は烏丸 凌馬(からすま りょうま)。生物学者だ。君はイニシエーターだろう?先日は、私のキマイラがお世話になった。」

 

「キマイラ………っ!? まさか!!」

 

「そう、あれは私が産み出した実験生物さ。ライオンをベースに、あらゆる動物の身体を移植。そしてガストレアウイルスから再生能力と凶暴性のみを抽出し、それを与える……。」

 

こいつが作ったものだったのか………!!

 

「貴様、何を企んでいる!?」

 

男……烏丸は答えた。

 

「私の考案する、地球救済プロジェクト……『ガストレア・ヒューマン計画』。」

 

笑う烏丸。その表情は……不気味だった。

 

 

 

その頃、市街地では。

 

「本当に何かあるんでしょうか?」

 

私は、実緒と一緒に行動していた。

 

「何とも言えないわね……ん?」

 

曲がり角の先。二つの人影が軽トラックに何かを運んでいた。

 

「これで10人か。よし、これだけ被検体があれば十分だろ。」

 

物陰から男の声を聞く。被検体……?

 

「よし、早く行くぞ。民警が動き出したらしいからな。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

何かある。そう確信した。実緒も頷く。私たちは物陰から出てきた。

 

「待ちなさい!」

 

男二人がこちらを向いた。

 

「ん……?おお、何だお前ら?」

 

「民警よ!そのトラックに何を載せてるの!?」

 

「おい、ここは俺が止める。行け。」

 

男一人が軽トラに乗り、走り去っていった。

 

「っ、待ちなさい!!」

 

追いかけようとするが…

 

「おっとぉ……行かせねぇぜ?」

 

もう一人の男が道を塞ぐ。

 

「追いかけたけりゃあ、俺を倒してからにしてもらおうか………っ!!」

 

男の右腕が……怪しく蠢いている。

 

「!? 実緒!!」

 

「はい!!」

 

私はハンドガンを、実緒はランスを構えた。

 

「うううう……っ!!うあああああっ!!!」

 

男の右腕は……鋭い爪を持った虎の腕へと変貌した。

 

「!?」

 

その瞳は、赤く光っていた。

 

「うおらぁっ!!」

 

襲いかかる。私と実緒は避け、実緒は駆け出す。

 

「てやあぁっ!!」

 

ランスと爪が接触する。激しい競り合いが始まる。

 

「そらそらあぁっ!!」

 

男が実緒の腹部に蹴りを入れる。実緒は壁に叩き付けられた。

 

「きゃあっ!!」

 

「実緒!!このぉっ!!」

 

私は引き金を引いた。銃弾は、男の肩を貫通した。

 

「ぐおああああ!!」

 

男が肩を抑える。

 

「く、くそお………なーんてなっ!!」

 

男の肩は……傷が完治していたのだ。

 

「!? そんな……!? まさか……ガストレア!?」

 

「ほらよぉっ!!」

 

爪を振るう男。私は躱し、再びを銃弾を放つも弾かれた。

 

「ハッハー!笑わせてくれるなぁ!!民警なんざこの程度かい?」

 

「くっ……!!」

 

私は刀を引き抜く。

 

「くくく……安心しな…てめぇは特別に、俺様の餌にしてやるからよぉ!!」

 

男の爪に刀で応戦するも、力が強すぎる。

 

「くっ!!」

 

どうすれば……社長…………真!!

 

 

 

「!?」

 

遠くの方で銃の音が。

 

「どうやら民警に見つかったか……まぁいい。実験体集めはここらでやめておくかな。あれだけいれば足りるだろう。」

 

男は立ち去ろうとする。

 

「お、おい、待て!!ガストレア・ヒューマン計画って何だ!!?答えろ!!」

 

「計画が本格始動すれば知る事になる。知りたいのなら明日の夕方、山のダムに来たまえ……」

 

ダム……だと?

 

「早く行かないと……被害が増えるだけだぞ?ん?」

 

不適な笑み。こちらに敗北感に近い何かを感じさせる笑みだ。

 

「……クソっ!!」

 

俺は銃声の鳴った方へと走り出した。

 

 

 

その直後の公園。軽トラが公園の入り口に停まる。烏丸はそれに歩み寄る。

 

「タイガーが今、民警と交戦している。一応、10人だ。」

 

「十分だよ……さぁ、戻ろう。」

 

助手席に乗った烏丸。

その軽トラは走り去っていった……




急展開ですよ!!心音&実緒大ピンチ!!
そして次回、あいつらがついに動く……!?(意味深www)


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第10話〜遊びと負担〜

真くんのドS回になってしまった(笑)
てか、真くんの台詞が某サイヤの王子と被ってしまった(笑)
そして、リクエストにお応えして、蛭子親子を少しですが出しました‼︎


「はぁ………はぁ………っ‼︎」

 

私と実緒は追い詰められていた。

 

「ハッハー‼︎どうしたぁ?終わりかぁ?」

 

右腕が鋭い爪の生えた虎のようになっている男。明らかに人間ではない。その力は恐らく、ガストレアに匹敵する。更にあの再生力……バラニウムによる損傷を回復した…。

 

「くっ………‼︎」

 

ここは一旦退くべきなのかしら……。

 

「心音さん……‼︎」

 

隣で膝をつく実緒。彼女のダメージもかなり大きなものだった。

万事休す……なのか。

 

「さぁ……まだ俺は遊び足りねぇぜ?もっと楽しませてくれよぉぉおおっ‼︎」

 

男が駆け出す。

その時だった。

 

「っ⁉︎」

 

男の背後から弾丸が飛んでくる。そして、その弾丸は男の右肩と右手首に命中した。

 

「‼︎」

 

「……お前か、改造兵士とかいう奴は。」

 

その銃撃の主は……真だった。

 

「ま、真‼︎」

 

「てめぇ……‼︎」

 

男は真の方を向いた。

 

「……心音。実緒ちゃんと一緒に隠れてろ。こいつは俺が倒す。」

 

「真……。分かった‼︎」

 

私は実緒を負ぶって、物陰に退避した。

死なないでね…真。

 

 

「なんだ?今度はお前が俺様と遊んでくれんのか、ああ?」

 

右腕が虎の男が爪を鳴らす。重い金属音が鳴る。

 

「あぁ、感謝しろ。お前みたいなモブを、俺が相手してやるんだからな……」

 

俺は両手にマシンガンを構えた。

 

「ほざけぇぇええ‼︎」

 

男は駆け出し、襲いかかる。動きが単純すぎる。

爪を振りかざしたところを横にかわす。そして。

 

「はっ‼︎」

 

男の横腹に蹴りを入れる。

 

「っ⁉︎ ぐほっ………‼︎」

 

その場に崩れ落ちる男。

 

「この程度か?」

 

俺は男を見下すような視線を向けた。

 

「く………‼︎こ、この…」

 

「お前の行動は読みやすい……『このガキ』とでも言いたいのだろう?」

 

「っ‼︎ ぬああああああああっ‼︎」

 

起き上がりざまに爪を足元に振るう。怒りで我を忘れているようだな。

俺は飛び上がってかわし、距離を置く。

 

「はぁっ‼︎」

 

マシンガンの銃口を男に向け、引き金を引く。

俺は男の両肩、両足首、両太ももに銃弾を浴びせる。

 

「ぐああああああっ‼︎」

 

男は防ぐ間も無く、その場に崩れ落ち、更に両手をついた。

俺はマシンガンを下ろし、ショットガンに持ち替えた。

 

「どうやら、バラニウム製の複数の傷の治りは遅いようだな。」

 

あの変異体ガストレア……キマイラと同じだった。記憶は朧げだが、1箇所のバラニウム製による傷は治るのが早かった。だが、爆発のように全体に傷を伴うような攻撃にたいする回復は遅かったため、回復する前に死んだ。

 

「だったら、こいつで葬ってやる。」

 

俺はショットガンの銃口をを男の後頭部に当てた。

 

「っ‼︎」

 

「ジ・エンド。」

 

ショットガンが火を吹いた。何度も引き金を引く。男は声を上げることも出来ず、血みどろになり動かなくなった。

 

「……ふぅ。」

 

俺はショットガンをバッグに収めた。そして、心音と実緒ちゃんに歩み寄る。

 

「真……」

 

「無事か?」

 

「え、えぇ。なんとか、ね。」

 

「そうか………。」

 

俺は烏丸 凌馬のことを話そうとしたが、巻き込む訳にはいかないと思い、立ち去ろうとした。

 

「真‼︎」

 

心音が呼ぶ。

俺は足を止めた。

 

「……ありがとう。」

 

その一言だった。俺は……口元をほんの少し緩めた。

 

「おう。」

 

ただ一言。

そう言い残して、俺はその場を後にした。

 

 

「真………。」

 

真の背中が見えなくなった。

 

「実緒?大丈夫?」

 

「……………」

 

実緒は……私の背中で眠っていた。

疲れたのでしょう。時間も遅いしね。

 

「よいしょ……っと。」

 

私は実緒を負ぶったまま立ち上がり、その場を後にした。

 

 

「………っ……‼︎」

 

男は……まだ息の根があった。うつぶせに倒れながら、息をしていた。

 

「くそ……あの、ガキ……っ‼︎」

 

その時だった。

 

「っ⁉︎」

 

男の背中に突き立てられたのは……2本の黒い刃。

 

「おじさん、もう疲れたでしょ?だから……眠って?」

 

そして………

 

「あ…………」

 

男は声もなく、黒い刃を突き立てられた少女に引き裂かれた………。

 

 

「このくらいすれば、生き返ったりもしないだろうな。」

 

引き裂かれた男のそばに立った、マスケラの男……蛭子 影胤。

 

「パパ……これ何なの?」

 

引き裂いた本人……蛭子 小比奈は父親を見上げる。

 

「新しい人類と言っているが、これは気に入らないな……人間がガストレアの能力を手にするなど、ね。」

 

「じゃあ……こいつらは、壊していいの?」

 

「勿論だよ、我が娘よ。ただし、程々にな。」

 

「ん……分かった。」

 

小比奈は両手の小太刀を腰に収めた。

 

「帰ろ、パパ?」

 

「あぁ、そうだな。」

 

親子は暗闇に消えた。

 

 

「汚染被害は無い。戦闘による疲労が大半だ。問題は無い。」

 

大学病院の地下。私は室戸先生に、実緒を診てもらっていた。

実緒はベットで寝息を立てている。

 

「良かった……ありがとうございました。」

 

「礼には及ばないよ。それよりも、だ。」

 

室戸先生はビーカーにコーヒーを入れた。

 

「人間がガストレアのような能力を得て、尚且つバラニウムに対する治癒力を備えていた……。」

 

「はい………その、今までこんなケースって……」

 

「無いな。まさか、バラニウムに対する治癒力を備える敵が存在したとは……彼は何か知らないのか?」

 

「え………?」

 

「ことりあそび君だよ。あの、男イニシエーターの。」

 

「真が………?」

 

……そう言えば。

何かを言おうとしたけど、その場を後にした。

あえて追求しなかったけど……。

 

「……何か隠してそうだったかい?」

 

「………はい。」

 

私の返事に、ため息交じりに室戸先生が言った。

 

「やれやれ、今度は何を背負っているのやら……。」

 

「………真…。」

 

何故なの、真?

何故、あなたはそんなに、一人で背負うの?

私は……心配なの。

 

 

 

「よしよし………いいじゃないか……‼︎」

 

手術台の上に乗った、100人ほどの人間。その身体の一部は……改造されていた。

 

「さて、あのイニシエーター………ここが分かるかな……?」

 

まぁ、あの少年は中々見所がある。上手くいけば、私の元へ引き込むことが出来るかもしれないな。

 

「お手並み拝見といこうか。」

 

烏丸 凌馬は、不敵に笑った。




背負う真くん、心配する心音……交錯しますねー、それぞれの思い(笑)
急展開真っ只中なこの作品も、ようやく一週間が経ちました。
皆様、ありがとうございます。
これからも、よろしくお願いしますね(^ ^)


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第11話〜世界とエゴ〜

クレイジーな生物学者という、ありきたり設定ですね、はい(笑)
心音の件でご感想を頂きましたが、この作品は全て意図してやっていることで構成されています(笑)
よって、ミスではないですよ、本当に(笑)


「よし。」

 

身支度を整える。銃を詰めたバッグを背負い、俺…小鳥遊 真は家を出た。

目的地は山裏にあるダム。そこにあの男…烏丸 凌馬がいるという。罠かどうか疑うよりかは、実際に行った方が確実だ。

 

「ガストレア・ヒューマン計画……」

 

俺は足を進めた。

 

 

「………よし。」

 

真の後ろをつけているのは私…徳崎 心音だ。向かっているのはいつもの山。

真が何を隠しているのか……それを知るべく、私は尾行することにしたのだ。

 

「真……」

 

彼に対して失礼なのは承知の上だ。

でも……私はこれ以上、あなたに背負って欲しくない。

私は真の尾行を開始した。

 

 

 

「本当に来るのか?」

 

とある研究室。知恵の輪を解いている男が、烏丸 凌馬に問う。

 

「あぁいった目付きの人間は来るんだよな、これが。私の経験上、ね。」

 

「来たらどうする?」

 

「手荒な真似はしないさ。彼には全てを話す。その上で、私の力になってもらおうかな。」

 

「もし、断ったら?」

 

「そうなったら、断れないようにするだけさ。彼には力になってもらいたいからね。」

 

不敵な笑みを浮かべ、モニターを見た烏丸。

そのモニターには……真が映っていた。

 

 

ダムの周辺を調べながら歩く。

 

「何処かに入口が………。」

 

歩いていると………何かに躓いた。

 

「っと。危な……ん?」

 

足元を見る。盛り上がっていたコンクリートの角。俺はしゃがみ、泥を払う。

マンホールの蓋のような物が出てきた。

 

「これは……」

 

俺はそれを外す。底の方に光が見えた。ここだな、間違いない。

俺はマンホールに入っていった。

 

 

「………何よこれ…」

 

マンホールに真が入った後、私もそこへ向かう。そこの方を覗く。真がいなくなった。よし。

私も、真の後を追うようにマンホールに入っていった。

 

 

「来たな……嬉しいよ………イニシエーター君。」

 

さぁて、お出迎えの準備をせねば。

烏丸は実験室へと移動した……。

 

 

「………」

 

静かに進む。いかにも隠れ家という感じがする。怪しげな雰囲気だ。気味が悪い。

そして………。

 

「………ここか?」

 

鉄の扉の前に立つ。扉に手をかけた。俺は扉を開いた。

 

「……ようこそ。イニシエーター君。」

 

烏丸 凌馬……彼が出迎えた。俺は扉を閉め、烏丸を見つめる。

辺りは薄暗かったが、烏丸が部屋の電気を付けた。辺りが明るくなる。

そして、俺の目に映ったのは………

 

「⁉︎ これは………⁉︎」

 

壁一面にびっしりと飾られていた透明の容器。その中には……あらゆる改造されたのであろう生物達。人間もいた。

 

「私の作品だ……素晴らしいだろう?まぁ、この状態にウイルスを組み込めば、更に素晴らしく仕上がるが、ね。」

 

容器を撫でながら言う。

 

「貴様……自分が何をしているのか…分かっているのか⁉︎」

 

「仕方が無いだろう…地球を救うのだよ? この犠牲が。」

 

「何……?」

 

地球を……救う?

 

「君……名前は?」

 

「小鳥遊……真。」

 

「小鳥遊くん。君には教えてあげよう……私の掲げる地球救済プロジェクト、『ガストレア・ヒューマン計画』を……‼︎」

 

 

「ガストレア・ヒューマン計画……?」

 

私は扉に耳を当て、中の話し声を聞き取る。盗み聞き……になるか。

しかし、地下にこんな設備を設計するなど……何を企んでいるのだろうか?奇妙すぎる。意図があるのだろうが分からない。

とにかく、情報が必要だ。私は話に集中した。

 

 

「私は生物の遺伝子学を研究していてね……あらゆる動物を研究していた。そして、ガストレア大戦の時。私は素晴らしい生命体……ガストレアを見た…。」

 

歩きながら話す烏丸。俺はただ、その場に立って話を聞くのみだった。

 

「私は彼らに心を奪われた……驚異的な再生力、感染力、そして、高い運動能力………私は彼らに心を奪われたのだ……あぁ、素晴らしい‼︎ 君も思わないか?ガストレアという生命体は素晴らしいと‼︎」

 

狂ったように声を荒げる。

 

「……………。」

 

「そして……私は彼らに一つの可能性を見出した。我々人類が彼らの力を得ることにより、この汚れてしまった地球を浄化し、美しい地球を取り戻す……そうだ。ガストレアの力こそ、地球を救うと‼︎」

 

「⁉︎ 貴様……人類を根絶やしにするというのか‼︎」

 

俺はライフルを取り出した。

 

「違うなぁ? 私は、人類にガストレアの力を与えるだけ……」

 

「同じことだ‼︎ ガストレアになることと……一緒だ‼︎ 人類を皆殺しにすることと一緒だ‼︎」

 

「では、君たちは何なのだ?」

 

俺は銃口を烏丸に向けた。

 

「何?」

 

「君たちイニシエーターはどうなのだ?ガストレアウイルスを身体に宿し、自らがガストレア化するかもしれないという恐怖を抱きながら、プロモーターの道具として扱われている、君たちは? 呪われた子供達は世界からどう見られている?ガストレアと同じ扱いだろう?」

 

「俺は………俺は、生きている‼︎」

 

「所詮は道具なのだよ……君たちイニシエーターなんて物は。私の掲げる理想は違う。ガストレアという素晴らしい生命体の力を得た人類こそ、この地球にいるべきなのだ‼︎」

 

「貴様は……ただ逃げているだけだ‼︎」

 

烏丸が足を止め、表情を変えた。

 

「………何だと?」

 

「気に入らないこの世界という檻の中にいるのが嫌で、自分のエゴを通そうとしているだけだ‼︎ お前がやろうとしているのは……ただの殺戮だ‼︎ お前もガストレア大戦を見たんだろう‼︎ あの惨劇でどれほどの人が苦しんでいると思っている⁉︎ 悲劇を繰り返しても……世界は何も変わらない‼︎」

 

烏丸は……大きく溜息をついた。

 

「はぁ………残念だよ、小鳥遊 真くん。君とは私の力になって欲しかったが………それは無理なようだねぇ…‼︎」

 

烏丸は……注射器を取り出した。

 

「これはガストレアの再生力と運動能力、更に私の作ったバラニウム抑制ワクチンを混合した、ウイルス……」

 

そして、傍らにあった巨大な容器を開けた。中にいたのはオオカミをベースに、身体を改造されていた動物だった。

 

「ふん‼︎」

 

烏丸はその動物に注射器を刺し,ウイルスを注入した。

 

「……‼︎ ウウウ……ッ‼︎アオオオオン‼︎」

 

その動物は瞳を赤にし,吠えた。

 

「フハハハハ‼︎ さぁ、行け‼︎」

 

烏丸はその場を去った。

 

「‼︎ 待て‼︎」

 

「グルオオッ‼︎」

 

ウイルスを注入された実験動物が襲いかかって来た。俺はかわし、ライフルを構えた。

 

「くっ………‼︎」

 

『おっと、言い忘れていたが……更に実験動物をプレゼントだ‼︎フハハハハ……』

 

どこからかマイクを通じて烏丸が言う。

すると………

 

「グルルル……‼︎」

 

「シャアアア……っ‼︎」

 

新たに2体……ヒョウの改造動物とヘビの改造動物が、瞳を赤にし、奥の方から現れた……。

 

「マズイな……。」

 

どうする………このままでは……‼︎

 

 




大変なことになったぜ!どうなる真‼︎
そして次回、遂に……⁉︎


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第12話〜再起と相棒〜

アニメでいうところの『神回』を意識した今回です!!
ショタコンにはたまらない描写もあり!?wwww


「真…!!」

 

扉の前で話だけを聞いていた私は、武器を手に扉を開けようとした。

その時だった。

 

「何をしている?」

 

後ろから声。しまった、新手!?

私は振り返り、銃を構える。

そこには……少年の姿があった。両手は黒い手袋をしている。

 

「……撃ちたきゃ撃てよ。」

 

「え………?」

 

「あんたが俺を殺したいなら、好きにすりゃいい。だが、俺は無駄な殺生はしない主義でな。」

 

この子……味方?

私は銃を降ろした。

 

「……あんた、何でここに?」

 

「追ってたの……真、ここに来た…」

 

「あのイニシエーターか……なるほど、まぁいい。それよりも、早く逃げた方がいいぞ。」

 

「え?」

 

その少年は……表情を変えずに言った。

 

「ここ、もうすぐ爆破されるから。」

 

 

 

「くっ!!」

 

実験動物は強かった。その力はガストレアのステージ3と互角……いや、それ以上か?いずれにせよ、俺は苦戦を強いられていた。

なんとか蛇の実験動物の撃破には成功したが、あと2体……狼と豹の実験動物の連携に苦しめられていた。体液は注入されていないものの、右脚と左腕から血が流れていた。爪で斬られた。

 

「ウウウウ………ッ!!」

 

「フシー……ッ!!」

 

なんとか攻撃を躱すのが精一杯なのが今の現状だ。

 

「このままじゃ…………っ!!」

 

 

 

「ば、爆破!?」

 

「烏丸はここに用は無くなった。証拠の隠滅さ。早くした方がいいぞ。」

 

「で、でも!!」

 

真が……危ない!!

 

「………イニシエーターを助けたいのか?」

 

少年が私を真っ直ぐ見た。

 

「え…………?」

 

「……あいつが戦ってる実験動物は、首をかっ切れば黙る。」

 

少年は手袋を外し……

 

「っ!!」

 

少し顔を歪ませ……右手をカマキリの腕のようなものに変貌させた。

 

「!?」

 

「ふん!!」

 

床の金網を剥がし、その下にあったパイプの表面を斬り抜いた。

 

「……ここから、外に出られる。奴を助けてここを出たいなら、そうした方がいい。早くしろ。あと10分で爆発するぞ。烏丸はもう避難したからな。」

 

少年はそう言ってその場を去ろうと振り返った。

 

「あ、待って!!」

 

少年は立ち止まる。

 

「……ありがとう。」

 

私は一言言った。

 

「ふん………」

 

少年は高くジャンプし、地上へ上がっていった。

 

「さて……」

 

私は武器を構えた。

 

 

 

「くそ……」

 

残りの弾丸も少ない。急所を狙っても動きが早く、狙いが定まらない。

 

「グロロロォ!!」

 

「シャアアッ!!」

 

襲いかかる実験動物。くそ……ここまでかよ……!!

 

……ダァン!!ダァン!!

 

鳴り響く銃声。実験動物は銃弾をくらい、後ずさる。俺は振り返る。

その銃弾の主は………

 

「……大丈夫?真。」

 

心音だった。

 

「バカ!何でここに!?」

 

「あんたをつけてたのよ。今度は何を隠しているのかと思ったら、こんな大変なこと隠してたなんて……」

 

歩み寄り、俺の頭を撫でる。

 

「これを、一人で解決する気だった訳?」

 

図星だった。

 

「全く、何でそんな無茶するかなぁ……心配するじゃん。」

 

「……逃げろ。これは…」

 

「あんたの問題じゃない。私たちの問題でもあるのよ。『相棒』のピンチに、背中見せて逃げられるわけないでしょ?」

 

「!? あい……ぼう………?」

 

心音は……俺に手を差し出した。

 

「真を死なせたりなんかさせない。ガストレアにもさせない。これからも、私はあなたを支えるから。これからも……あなたは私の『相棒』だから……ね?」

 

「………」

 

涙がこぼれ落ちた。俺は………最低だ。

俺のことをこんなにも大切に……かつて傷つけられた奴にここまで言ってくれるなんて。まだ…『相棒』と呼んでくれるなんて。こんなに、こいつは受け入れようとしてくれていたのに。俺が拒んでいただけだったのか……。

 

「………っ!!」

 

俺は心音の手を握った。そして立ち上がった。

 

「真……!!」

 

涙を拭い、ライフルを構えた。

 

「……行こうぜ、心音。」

 

心音は、それに答えた。

 

「うん!!!」

 

刀を抜き、逆手に持つ。

実験動物が吠える。

 

「真。さっき、ここにいた男の子から聞いたんだけど……あいつら、首を切り裂けば倒れるって。」

 

小声で囁く心音。

 

「だったら、俺が奴らを足止めする。隙が出来た所を切り裂く。それがベストだな。」

 

「OK。」

 

実験動物が様子を伺う。

 

「……はっ!!」

 

俺はライフルで足下を狙う。実験動物達が躱す。躱した所に再び放つ。

 

「グルルッ!」

 

「フシッ!」

 

2体共に隙が生まれた。

 

「今だ!!」

 

心音が高速で駆け出す。

 

「せぇぇえええええいっ!!」

 

そして、すれ違い様に……2体の実験動物の首を切り裂いた。

 

「ふう……やったね、真!!」

 

刀を収め、こちらに駆け寄る心音。

俺も…………あれ…?

視界が……ぼんやりと…………あ……

 

 

……バタッ!!

 

「真!?」

 

私は倒れた真を揺さぶる。

 

「ま、真!! しっかりして!!」

 

『危険です。危険です。爆発まで、1分30秒です。』

 

マズい!!

私は真を負ぶい、真のカバンを持って駆け出す。

そして、あの少年が作ってくれた道……パイプの中へ飛び降りる。人が2人ほど通れる広さだった。走ることも出来る。私はパイプの中を道なりに進む。

 

『残り、30秒。』

 

「はぁ…はぁ……!!」

 

光が見えてきた……出口だ!!

私は走る。

 

……ドォォォオオオン…ッ!!

 

「!!」

 

爆発の音。そして……

 

「きゃあぁっ!!」

 

後ろから爆風が吹く。私はそれに押され、外に出た。

 

「!!」

 

辺り一面の緑。下を見るとそこにあったのは……

 

「………………え?」

 

川。しかも、流れの速い。

 

「きゃあああああ………」

 

私は、真を負ぶったまま川へ真っ逆さまに落ちていった……。

 

 

 

「ん…………?」

 

気がつくとそこは……河口だった。

私は辺りを見渡す。すると……

 

「!」

 

真が……私の隣で、私に抱きついている形で眠っていた。寝息を立てている所からすると、無事のようだ。ただ、傷が酷い。私は腰のポーチから消毒液とガーゼとテープを取り出し、傷の手当をした。真はまだ目覚めない。疲れたのかな。

 

「真……。」

 

私は……真を抱きしめた。

 

「お帰りなさい。」

 

「ん……心音………すぅ……」

 

夢でも見てるのかな?全く、相変わらずなんだから。

私は会社に連絡し、迎えを待った。

 

 




そういえば、アニメの主題歌がもうすぐ発売ですね!!
早くFULLが聞きたいぜ!!
アニメって原作のどこまでやるのかな?
ちなみに私は4巻までは読んでます。


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〜改造されし肉体〜
第13話〜復帰と並行〜


主に話し合いのみで終わってしまった(笑)
まぁ、箸休めってことに……して欲しいなぁ…(笑)


「……と言うわけで、今日から俺達の仲間になるイニシエーター…小鳥遊 真だ。」

 

明崎民間警備会社のオフィス。俺は拍手を受けた。

俺はあの後、ここで目が覚めた。傷の手当ては済んでいた。そして社長と話し、再び民警のイニシエーターとして心音と組むことになった。IP序列は7500位からのスタートだった。ちなみに、社長と実緒ちゃんは190位である。

 

「小鳥遊だ。ま、改まって挨拶する必要は無いよな……よろしく。」

 

「やった‼︎これで2ペア出来ましたね‼︎」

 

「以前よりもガストレア討伐の効率が良くなることだろう……頼りにしてるぞ、心音、真。」

 

「ふふ…任せてくださいよ‼︎ 私たちがタッグを組めば、それこそ鬼に金棒‼︎最強ですっ‼︎」

 

心音が俺の肩に手を置きながら言う。

 

「ね、真‼︎」

 

「……かもな。」

 

俺は少し微笑んだ。

 

………ピーンポーン…

 

ベルが鳴る。

 

「? 早速仕事かな?」

 

実緒ちゃんが言う。

 

「私出ますね。」

 

心音は玄関へと向かった。

 

 

 

「はーい…」

 

ドアを開けるとそこには……黒髪の女性と、金髪のブロンドの少女がいた。

 

「社長はいらっしゃいますか?」

 

「え、あぁ、はい……社長‼︎」

 

私は社長を呼ぶ。直ぐにこちらに来た。

 

「はいはーい……って、おお‼︎木更じゃねーか‼︎」

 

「久しぶりですね、信也さん。」

 

「ん……その金髪の子は?」

 

「あぁ、私の新しいイニシエーターです。」

 

金髪のブロンドが頭を下げる。

 

「ティナ・スプラウトです。よろしくお願いします。」

 

「おう、よろしく。それで?何用かな?」

 

「仕事の話です。上がってもよろしいですか?」

 

「おう、わかった‼︎心音、お茶入れてくれー。」

 

「あ、はい……」

 

私はお茶を汲みに戻った。

 

 

 

心音が戻る。

 

「客か?」

 

「えぇ、しかもプロモーターとイニシエーターの、ね。仕事の話、って言ってたわね。」

 

「なるほどな……」

 

「失礼します。」

 

黒髪の女性と金髪のブロンドの少女が入ってきた。俺は椅子を引き、二人をそこに座らせ、反対側に立つ。心音がお茶を差し出す。

 

「おぉ、すまないな心音。」

 

社長が二人の向かいに座った。

 

「あぁ、紹介が遅れたな。実緒は知ってると思うが、心音と真は初対面だったな。彼女は天童民間警備会社の社長の天童 木更。そのイニシエーターのティナ・スプラウトちゃんだ。」

 

「よろしくお願いします。」

 

二人は頭を下げる。

 

「んで、この2人がうちの新しいペアだ。」

 

社長が俺と心音を指した。

 

「プロモーターの徳崎 心音です。よろしくお願いします。」

 

一礼する心音。俺もそれに続いた。

 

「イニシエーターの小鳥遊 真だ。よろしく頼む。」

 

「よろしくお願いします、真さん。」

 

金髪のイニシエーター……ティナが俺の方を見た。

 

「それで?仕事の話ってのは?」

 

社長が切り出す。すると、木更は写真を取り出し、テーブルの中央に置いた。

 

「‼︎ これは……」

 

それに写っていたのは……体の一部が獣のようになっている人間……間違いない、烏丸 凌馬の実験体だ。

 

「これは先日、私の部下であるプロモーターからの写真です。彼のペアはこの人間に奇襲を受け、何とか撃退しました。」

 

「奇襲?」

 

俺はふと聞いた。

 

「えぇ、背後から。彼のイニシエーターが危険を察知して、大事にはならずに済みましたが。」

 

今度はイニシエーターを………いや、単に実験体のテストか?

 

「その人間は室戸医師が調査をしました。その結果ですが……あなた方の倒したガストレアの変異体…それと同じような身体をしていたとのことです。」

 

つまり、予め改造された人間にガストレアの再生能力と凶暴性と運動能力、更にバラニウムによる損傷を軽減する物質を注入した……という訳か。

 

「なるほどな……お前達もそいつらに出くわした、という訳か。」

 

「えぇ………そこで、なのですが……今回この件について、天童民間警備会社と明崎民間警備会社……共同での任務が、聖天使様から直々に来ました。」

 

「聖天使様が⁉︎」

 

その一言に周りは一瞬で張り詰めた。

聖天使……この東京エリアの三代目統治者…そんな彼女から?

 

「この、人間がガストレアの力を得てしまった……それの元凶を突き止めて欲しいとのことです。」

 

「それならもう分かっているぜ。」

 

俺は一言言った。

 

「え……⁉︎」

 

木更は目を丸くした。

 

「人間を改造し、ガストレアの力を与えた張本人……俺と心音は知っている。」

 

「いや、私は計画の名前しか知らないから……詳しいことは真…彼が。」

 

「あなたが……?」

 

木更は俺を見つめた。

 

「……そいつの名は烏丸 凌馬。生物学者だ。そいつはあらゆる動物を改造している……人間も含めて。」

 

「何だと……⁉︎」

 

社長と実緒も驚く。そうか、話していなかったな。

 

「やつはガストレア大戦を体験している。そして、ガストレアに魅入られた奴はガストレアの力を人間に与える計画を考えた……それがやつの計画、『ガストレア・ヒューマン計画』。」

 

「そんなことが………」

 

「俺はこの目で見た。奴の実験場には多くの実験生物。そして、注射で凶暴化した動物……。」

 

「そ、その実験場は⁉︎」

 

そこで心音が言った。

 

「残念ながら………そこはもう要らなくなったと、爆破されてしまって……」

 

行方はわからない……と。

 

「そう、ですか………」

 

「………とにかく、この改造生物と接触したのは我々のみ。他の民警にも動くように頼む必要があるな。もちろん、ガストレアとも戦わなければならない。この事実を聖天使様に報告すべきだな。」

 

社長が腕組みをして言う。

 

「よし。とりあえず引き続き、ガストレアの討伐もしつつ、烏丸 凌馬の居場所を突き止めることも並行することにしよう。」

 

確かにそれが最善策だな。

 

「そうですね。わかりました。お騒がせしてすみません。」

 

木更が頭を下げた。

 

「大丈夫だ。じゃあ、詳細の報告は俺達でやっておく。」

 

「わかりました。よろしくお願いします。」

 

木更とティナは立ち上がる。

 

「では、失礼しました。」

 

「何かあれば、お互いに連絡をしよう。その方が色々といいだろうしな。」

 

「そうですね、よろしくお願いします。では。」

 

そう言い残し、木更とティナはその場を後にした。

 

「………と言うわけで、心音、真。報告しに行ってもらえるか?」

 

突然社長が俺たちに視線を向けた。

 

「え?報告?」

 

「誰にだよ?」

 

その答えに……俺たちは驚愕した。

 

「聖天使様にだよ。」

 

 




今回木更さんとティナを出してみましたが……一応木更さんは心音と信也よりは年下ってことになってますから、終始ほとんど敬語でしたが……なんかこう、表現出来ているか心配ですな(笑)


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第14話〜矛盾と希望〜

聖天使様と真君の対談です。少し謎を投げかけておきます!(笑)


私は、震えていた。

高価そうなリムジンの中で、縮こまっていた。

 

「………心音。」

 

いつも着ているスーツがキツく感じる……あれ?おかしいな……あ、脚も震えてきた。

 

「おーい、心音。」

 

手に汗が落ちてきた。あぁ、どうしよう……あぁ……。

 

「おい、心音っ。」

 

真が私の肩を叩いた。

 

「はっ⁉︎なっ、何っ‼︎」

 

何かあったのか焦り、周囲を見渡す。

真が溜息を着く。

 

「着いたぞ。」

 

真が指差した先に……聖天使様の邸宅がそびえ立っていた。

 

 

 

「聖天使様。たった今、徳崎 心音とそのイニシエーター、小鳥遊 真が到着したもようです。」

 

「分かりました。こちらへ案内をお願いいたします。」

 

やってきた警備隊の男が一礼し、部屋を出る。

 

「……小鳥遊 真さん…。」

 

椅子に腰掛けているのは人離れした美貌を持つ、東京エリア統治者……聖天使。

その隣には他の警備隊の面々が。

 

「聖天使様、一つよろしいですか?」

 

「何でしょう?」

 

「わざわざ、プロモーターとイニシエーターを呼ぶなど……直接報告せずとも、我々を介して頂ければ…」

 

「真実は、本人の口から伺うことに意味があると思います。それに……気になるのです。」

 

「気になる……?」

 

聖天使は、手元のデータに目を落とした。

 

「……あの、唯一の少年のイニシエーターが。」

 

 

 

「広いな……」

 

リムジンを降り、聖天使の邸宅に入った俺と心音。聖天使に、烏丸 凌馬の計画を報告するためだ。心音は俺の隣でビクビクしながら歩いている。

俺たちは警備の男に案内をしてもらっている。

 

「………なぁ、心音。」

 

「な、何っ……?」

 

声が引きつってやがる。やれやれ。

 

「はぁ……ちょっとは落ち着け。何そんなに緊張してんだ。」

 

「き、緊張するわよっ……だって、あの聖天使様よ⁉︎あの、ど偉い政治家よ⁉︎ なんかヘマすれば、何されるかわかんないのに……」

 

やれやれ………何故にそこまで。

 

「着いたぞ。失礼の無いようにな。」

 

「あっ、ありがとうございましちゃっ‼︎あぅ……噛んじゃった……」

 

俺は溜息を着いた。恐らく、今日だけで6回目だ。

警備の男は扉を開けた。

 

「…………」

 

「お待ちしておりました。徳崎 心音様、小鳥遊 真様。」

 

部屋の椅子から立ち上がり、頭を下げたのは言うまでもない……聖天使だった。

 

「しっ、失礼します‼︎」

 

心音が部屋に入る。俺はそれに続く。

 

「どうぞ、お座り下さい。」

 

「はっ、はいっ‼︎」

 

俺たちは椅子に腰掛ける。心音は異常に姿勢が良かった。……テンパりすぎだろ。

テーブルには紅茶が置かれていた。

 

「お忙しい中、お呼びして申し訳ありません。明崎様よりお話は聞いております。元凶は分かっていると。」

 

「あぁ、その通りだ。」

 

俺は紅茶を啜り、言った。……良い香りだな、これ。

 

「ちょっ、真っ!」

 

「では、お話頂けますか?」

 

聖天使は表情を変えずに俺の方を見つめる。

 

「あぁ………」

 

 

 

それから20分程。俺は聖天使に報告した。烏丸 凌馬と、彼の計画『ガストレア・ヒューマン計画』。それの実験台として作られている、実験動物について。

 

「烏丸 凌馬……。」

 

表情を変えず、聖天使は俺の話を聞いていた。

 

「彼の居場所を突き止める必要がありますね。わかりました。あなた方の他にも、彼の居場所を捜索させることにしましょう。」

 

「助かる。」

 

隣で心音は、ポカンとしていた……って、イニシエーターの俺の方が喋ってどうすんだ。

 

「では、二人ともご苦労様でした。引き続き、ガストレア討伐、並びに烏丸 凌馬の捜索をよろしくお願いいたします。」

 

「はっ、はいっ‼︎しっ、失礼しますっ‼︎」

 

心音が立ち上がり、一礼する……だから、落ち着けっての。

 

「じゃあ、失礼する。」

 

立ち去ろうとしたその時だった。

 

「小鳥遊様は残っていただけますか?少し聞きたいことが……。」

 

「? 俺だけに、か?」

 

「はい。」

 

何だろうか……まぁいい。

 

「わかった……心音。入口のとこで待っててくれ。」

 

「う、うん………」

 

心音は先に部屋を出た。

 

 

「もう、真ってば。聖天使様にタメ口って……」

 

確かに、私は聖天使様よりは年上だ。けど、相手は政治家だ。そんなお方に………

 

「……………あれれ…?」

 

辺りを見渡す。ここ、どこ?

 

「………迷った…っ。」

 

私は愕然とした。

とりあえず、近くにいた警備員に案内してもらい、外へ出た……。

 

 

 

 

「俺の……両親?」

 

「はい、ご存じないのですか?」

 

聖天使の質問は、「俺の両親の行方」だった。

 

「あぁ……というより俺、親とかいないんだわ。気がついたら孤児院に拾われていて、そこにいたっていうか……。」

 

「そう…なのですか。…申し訳ありません。」

 

「謝る必要はねぇよ。知る由もないんだし。」

 

聖天使は顔を上げる。

 

「ただ、なんでそんなことを?」

 

「………小鳥遊様は、自分の存在が少し矛盾していると感じませんか?」

 

矛盾……?

 

「どういうことだよ?」

 

「……あなたは、周りからどんなイメージを持たれていると思っていますか?」

 

イメージ………か。

 

「……唯一の男イニシエーター……ってところかな?」

 

「それなんです。」

 

「…………え?」

 

「男のイニシエーター………普通、イニシエーターは女子がその力を得るのです。ですが、小鳥遊様は男子。男子がイニシエーターの能力を得たというケースは、これまでにありません。というより、『あり得ない』のです。」

 

「何………⁉︎」

 

俺の存在が………あり得ない?

 

「ガストレアは、生物の遺伝子を変える能力があります。ですから、呪われた子供達は全て女子のはずなのです。それが、何故かあなたは男子でありながら、ガストレアウイルスを身体に宿している……。女もあれば男もある。そう考えるのが自然になっていますが、本当はそれはあり得ないのです。」

 

「………なるほどな。だから、俺の親を探すことで、事実上あり得ない存在である、男イニシエーターの詳細を知りたかったと………。」

 

「………そう言うことです。」

 

やれやれ…そういうことか。

俺は脚を進めた。

ドアノブを握り、聖天使に振り返る。

 

「………俺は、過去をグジグジ見つめないことにしてるんだ。あんたは気になるかもしれない。けどな、俺は生きる。生きるために、俺は未来を見つめることにした。俺の存在が矛盾しようが、そんなことは関係ない。俺は俺だ。俺は、護りたいモノがある。そのためにガストレアを倒す。それだけだ。」

 

俺の言葉に聖天使は……微笑んだ。

 

「……とても、前向きな考えですね。」

 

「褒め言葉、感謝するぜ。じゃあ、烏丸の捜索、よろしく頼むな………『聖天使様』。」

 

俺はそう言い残し、部屋を出た。

 

「………笑うんだな、聖天使も。」

 

 

 

そして、俺は入口に戻ってきた。心音が待っていた。

 

「真!」

 

駆け寄る心音。

 

「何の話してたの?」

 

「まぁ、色々な………心音。」

 

「ん?」

 

俺は……心音に拳を突き出す。

 

「これからも……頼むぜ?」

 

俺の存在の矛盾? そんなの知らないな。

俺はこうして生きている。それだけで十分だろうが。

 

「………うんっ。」

 

心音は、俺の拳に自身の拳をぶつけた。

 

「じゃ、帰ろっか!」

 

「おう。今日晩飯は?」

 

「ふっふーん……真の復帰祝いで、すき焼きだよ!」

 

「おっ……やった。」

 

そうさ。

俺は生きる。

ガストレアを倒し、滅ぼした後に見えるはずの。

『希望』を信じて。




真、変わったよなぁ……(笑)
すごい前向きになりましたよね……って、俺の作ったキャラだっての(笑)


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第15話〜装備と力〜

久々に戦闘シーン書いて、色々盛り込んだら長くなった………(笑)

「そんな感じで大丈夫か?」

大丈夫だ、問題ない……多分。


「はぁっ‼︎」

 

プロモーター、徳崎 心音の振るう刀が、改造された人間の腕を切り裂く。

 

「ちっ……‼︎」

 

「それが余所見だっ‼︎」

 

すかさず、改造人間の脚にも弾丸を撃ち込むイニシエーターの俺、小鳥遊 真。

 

「ぐぉっ‼︎」

 

「心音っ‼︎」

 

「うん‼︎」

 

俺たちは駆け出す。俺はライフルの先端に、新たに取り付けたナイフの刃を出す。

 

「はああっ‼︎」

 

「せりゃあああっ‼︎」

 

俺と心音の刃は、改造人間の両腕を切り落とした。

 

「ぎゃあああああっ‼︎」

 

叫び、倒れる改造人間。俺はそいつに歩み寄る。

 

「………烏丸 凌馬はどこにいる。」

 

「しっ、知るかよ……っ‼︎ 貴様らになんか……教えたくもないっ‼︎」

 

俺はそいつを踏みつける。

 

「うごっ⁉︎」

 

「………脚も切り落とされたいか?」

 

「ま、ままっ、待ってくれっ‼︎ 俺は本当に知らない‼︎ 確かに、凌馬様は俺を改造して下さった‼︎けど、場所は知らないんだ‼︎俺は………っ⁉︎」

 

突然、改造人間の身体が跳ねた。

 

「うぐぅっ⁉︎ があああっ‼︎ くっ、苦しいっ……‼︎」

 

俺はそいつから距離を置く。『また』か……っ‼︎

 

「ごはあああっ‼︎」

 

そいつの身体は溶け出し、肉片だけが残った。

 

「こいつも、か……」

 

「真………」

 

心音が俺の肩に手を置いた。何も焦ることはない。そう言いたいんだろうな、この目は。

 

「……帰るか。」

 

「うんっ。」

 

俺たちはその場を後にした。

 

 

 

ここ一週間は、烏丸 凌馬により作られた改造人間による被害が増えている。詳細を知らない民警も多くないため、苦戦を強いられているペアも少なくない。

よってここ最近は、改造人間の撃退は明崎民間警備会社と、天童民間警備会社のプロモーターとイニシエーターに任されていることが多い。

 

「ただいま戻りましたー。」

 

俺と心音は事務所に戻ってきた。

玄関で出迎えていたのはリコちゃん……俺が助けた少女だ。

 

「おかえりなさい、心音お姉ちゃん!」

 

随分と元気になったな。良かった。

俺たちはオフィスに入り、机に座る。

 

「おお、おかえり。ご苦労だったな。」

 

「烏丸の居場所は掴めなかったがな。」

 

あの改造人間が溶けていく現象……ここ最近はあればっかりだ。どうやら、問い詰められたときの証拠隠滅が目的だろう。仕組みは分からないが、な。

 

「……あ、そうだった。心音。紅音から連絡があったぞ。真とお前の新装備が出来たらしい。」

 

「え、お姉ちゃんから?」

 

「もうすぐ、それを持ってトラックで来るみたいだ。」

 

……ピーンポーン…

 

「噂をすれば……ですね。」

 

実緒がタイミングよく言った。

心音が玄関に向かう。

 

「はぁーい……」

 

「はいはいはい‼︎どくどくどく‼︎」

 

ズカズカとオフィスに入って来たのは、徳崎 紅音(とくさき あかね)。心音の姉で、徳崎重工の社長にして職人だった。

 

「信くぅーん‼︎ 会いたかったよ〜‼︎」

 

紅音は社長に抱き着く。そう、紅音は社長にぞっこんなのだ。

 

「あー、分かった。それで、新装備ってのは?」

 

「あ、下にトラックに積んでるよ‼︎でも、その前に皆の武器、メンテしたいんだけど…大丈夫?」

 

「是非頼むよ。心音、真、実緒。」

 

俺たちは武器を取り出す。

紅音は手に持っていたツールボックスを開けた。俺たちは彼女の近くに武器を置いた。そこに、社長も武器を置いた。

 

 

 

そして、10分後。

 

「完璧ね。変わった異常も無いし、ちゃんと手入れしてるみたいね、良かった。」

 

武器が戻される。

 

「あ、大切なこと……忘れてた…」

 

紅音は社長を見つめた。

 

「信くん、あのね……私のココロのメンテもして欲しいの……ダメ?」

 

「んで、新装備は?」

 

紅音スルー。見事なもので、いつものことだった。

 

「あ、心音とマコちゃんのね‼︎ 2人とも、来てくれる?」

 

「マコちゃん言うな‼︎」

 

紅音はいつも俺のことをそう呼ぶのだ。

紅音と俺たち2人は、トラックに向かった。

 

 

「っしょ……はいこれ。心音の分。」

 

心音に渡されたのは中サイズのアタッシュケース。

心音はそれを開けた。

 

「‼︎ これって……」

 

それは、バラニウム製のアンクレットだった。

 

「最近、改造人間が多いでしょ?射撃だけよりも格闘も備えた方が良いわよっ。おまけに、あんたハイキック得意でしょ?」

 

「なるほどね……ありがとう、お姉ちゃん。」

 

「ちょっと、着けてみて。」

 

そう言われ、心音はそのアンクレットを両足に取り付け、軽く脚を上げた。

 

「すっごい!あんまり重さを感じない‼︎」

 

「けど、硬さはそのままよ‼︎ホント、空気含有量かなり調節したのよー。」

 

紅音の作る武器は、全てハンドメイド……彼女のお手製なのだ。

使用者のことを第一に、それが彼女のモットーなのだ。

 

「あんたの脚力が上がれば、かなりの威力を発揮するわよっ。」

 

「うん、ありがとう‼︎……それで、真のは?」

 

「ふっふっふ……マコちゃんには、私の最高傑作をプレゼントしちゃうわよ…‼︎」

 

「最高傑作……?」

 

紅音はトラックから……俺の身長と同じくらいのケースを取り出した。

 

「ケースも特注で作ってもらったのよ〜。」

 

そのケースを、地面に置く。

 

「開けてみて‼︎」

 

俺はケースをあける………

 

「‼︎ これは………‼︎」

 

ケースの中には……折りたたみ式のライフルが入っていた。俺はそれを持ち上げる。中々の重さだ。

 

「銃身が折りたたみ式なの。グリップのとこに、ロック解除のボタンがあるから、押してみて。」

 

これか。俺はボタンを押した。すると。

 

「っ⁉︎」

 

銃口が伸び、俺の身長の1.5倍ほどの長さのライフルになった。鍛えているものの、かなり重い。

 

「すごい……‼︎」

 

「これは、レールガンユニット『天の梯子』を基に、負担を最小限に、威力をそのままに…とは言っても若干おちるけど、ギュッと凝縮した最高傑作‼︎」

 

「あ、天の梯子を⁉︎」

 

天の梯子。ステージ5のガストレアも葬り去ることの出来る、東京エリア最強の兵器だ。それを凝縮したとなると……最小限とはいえ、かなりの負担が来るだろう。

 

「凄いわ、お姉ちゃん……」

 

「どうかな、マコちゃん?」

 

「………そうだな。」

 

持った感じは悪くない。少し重い程度だが、さほど問題はない。折りたたみもするしな。

 

「弾丸は、いつも使ってるやつでも大丈夫なように設計したから‼︎ あ、あと、名前は…マコちゃんが決めて。」

 

名前か………天の梯子の力をこの手に。そして……中々の黒さだな。こいつ。

 

「……『ノクターナル・ホーク』。」

 

「え?」

 

「………夜行性の鷹…俺のことだ。こいつには俺の呼び名が相応しい……。まぁ、普通にライフルとしか言わないと思うけど。」

 

「クスッ……マコちゃんらしいね。」

 

「………マコちゃん言うな。」

 

「じゃ、私はこれで‼︎信くんによろしくねっ‼︎」

 

「うん‼︎ お姉ちゃんありがとう‼︎」

 

紅音はトラックに乗り込み、走り去った。

 

「よっし、良かったね真‼︎」

 

「お前もな。」

 

俺たちは武器をケースに収め、オフィスに戻った。

 

「……俺のケースデカッ…」

 

取手があって助かった。

 

 

 

「もう少しだ………」

 

薄暗い実験場。試験管でウイルスの研究をしているのは、烏丸 凌馬。

 

「もっとデータを集め、最強の生物を生み出す。そして、私のウイルスを更に強力にし、注ぎ込む………。フハハ…考えただけでも昇天してしまいそうだ…っ‼︎」

 

それを影から見ていたのは……黒手袋の少年。

 

「……………っ。」

 

その瞳は……何処か悲しげだった。

 

 




黒手袋の少年ですが、名前はちゃんとあります‼︎モブじゃないよ、ホントだよ‼︎(笑)
真の新装備ですが、次回恐らく、皆さんの予想している通りの事が起きます‼︎(笑)


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第16話〜練習と同業者〜

原作アニメ6話を見ました。
蓮太郎に餌付けされるティナちゃんにhshsしてしまった(笑)
可愛すぎるよティナ。ティナ、マジ天使。
もう、ロリコンでいいやwww


久々のガストレア戦だった。

ステージ3のモデル・スパイダー。お決まりのやつだった。

市街地に現れ、俺と心音は現場に向かった。

 

「あれね。真、どうするの?」

 

物陰に隠れ、作戦を練る。

 

「少し試してみるか……」

 

俺は背中に背負った新装備の大型ライフル『ノクターナル・ホーク』……通称『NHライフル』を展開した。

 

「だ、大丈夫なの?」

 

「モノは試しって言うだろ?俺がこいつをチャージしている間、時間を稼いでくれ。練習がてら……頼む。」

 

「……分かった、無茶しないでね。」

 

「あぁ……‼︎」

 

俺はNHライフルを構え、チャージを開始した。

心音は駆け出し、モデル・スパイダーに銃弾を放つ。反撃とばかりに、脚を突き出すモデル・スパイダー。脚による攻撃は、刀と脚に装備したアンクレットで弾く。かなり有効活用してるな。

 

「残り、15秒…………‼︎」

 

14…13…12…11…

 

「心音、下がれっ‼︎」

 

心音はライフルの射程から離れた。

 

…7…6…5…4…

 

ガストレアが怯んでいる。ダメ押ししてやるぜ。

 

3…2…1…‼︎

 

『発射可』

 

「はあぁっ‼︎」

 

俺はトリガーを引いた。

 

「っ⁉︎ どわぁっ⁉︎」

 

俺は発射とともに、反動で体が後ろに吹っ飛んだ。

 

「ぐはっ‼︎」

 

そして、壁に叩きつけられた。

放たれた弾丸は、モデル・スパイダーを粉砕し、跡形も無く消滅させた。

 

「凄い……」

 

心音は呆然と立ち尽くしていた。

威力はかなりのものだ。しかし、反動が半端じゃ無い。力を入れてなかったら、肩が外れていただろうな。

 

「っつつ……」

 

俺は立ち上がり、NHライフルを折りたたんだ。

 

「だ、大丈夫、真?」

 

「あぁ………何とかな。」

 

「お姉ちゃんも凄いもの作ったわね……でも、さっきのって、最小力の攻撃でしょ?」

 

「あぁ、そうだな。最小力でこれは……少し鍛えないとな。」

 

NHライフルは、チャージの時間によって、威力を3段階に変更が出来る。早い順に、3分、5分、10分だ。時間をかければかけた分威力は上がる。わかりやすい武器だった。

 

「とりあえず、戻るか。」

 

「う、うん………」

 

俺たちはその場を後にし、会社に戻った……。

 

 

 

その日の深夜だった。

私は目が覚めた。

 

「真………?」

 

となりのベッドに……真がいなかった。

 

「‼︎」

 

私は起き上がった。枕元のケータイを見る。

 

「メール……?」

 

『ちょっと、鍛える。朝飯までには帰る。』

 

真からだった。

 

「もう………」

 

私は安心して、再び眠りについた。

 

 

 

「はぁ………はぁ…………っ‼︎」

 

いつもの森。ガストレアがいない河口付近にて、俺はトレーニングをしていた。

いつもの倍の筋トレ。いつもより、走り込んだ。そして、何よりNHライフルに耐えるためのトレーニングだ。

なんとか、5分チャージまでは吹っ飛ばされないようになった。

だが、10分チャージ……最大出力は無理だった。中出力の5分で、ようやく吹っ飛ばなくなったくらいだ。

大抵のガストレア、ステージ4までは対応できるが、問題はステージ5。

これが天の梯子をそのまま凝縮したというのなら……ステージ5のガストレアを葬り去ることが可能だ。

 

「はぁ………あと一回……。」

 

NHライフルのチャージを始める。

もちろん、10分チャージだ。

脚に力を入れる。腰にも力を入れる。

銃口は川を狙っていた。

 

そして、10分後。

 

『発射可』

 

俺はトリガーを引いた。

 

「っ、ぐあっ‼︎」

 

俺は吹っ飛び、地面に叩きつけられた。

放たれた弾丸は水面に着弾し、巨大な水飛沫を作った。

 

「っ、つつ………」

 

最初よりも吹っ飛ぶ距離は縮まった。これを続ければ…吹っ飛ばなくなるはずだな。

俺は立ち上がり、ライフルを折りたたんだ。

丁度朝日が登る。

 

「帰るか。」

 

俺はその場を後にした。

 

 

 

「ただいま……」

 

事務所に戻り、中へ。キッチンに心音がいた。

 

「おかえり、真っ。」

 

笑顔を向けた。分かっている、そんな感じだ。

 

「卵焼き、もうすぐ出来るからちょっと待ってね。」

 

「甘いやつか?」

 

「もちろん。」

 

俺は実緒とリコを起こしに行った。

 

 

 

「相当、肩に負担をかけたみたいだね……」

 

その昼頃。俺は匂田大学付属病院の地下……室戸 菫先生を訪ねた。定期的な身体検査だ。

 

「今朝、新装備の練習を…。」

 

床に置いた、NHライフルのケースを指差しながら言った。

 

「軽量化した天の梯子か……確かに負担も相当だろう。ステージ3を跡形も無く消滅させる程なのだろう?」

 

「そうですね………。あの、先生。」

 

「何かな?」

 

「俺の存在って……矛盾してるんでしょうか?」

 

先日、聖天使に言われたことを、彼女にも話した。

 

「まぁ、確かに私もそう思った…。しかし、君はちゃんと生きている。イニシエーターとして、ね。」

 

「……それを聞いて安心しましたよ。」

 

「まぁ、烏丸 凌馬のこともあって大変だろうが、しっかりやりたまえよ。」

 

「はい。それじゃ。」

 

俺は部屋を後にした。外で心音が待っていた。

 

「お待たせ。」

 

「うん、じゃ、戻る?」

 

「そうだな。」

 

地上へ上がろうと、階段に向かうその時だった。

 

「あ……。」

 

「あ、真さんに、心音さんじゃないですか。」

 

金髪のブロンド、ティナ・スプラウトが階段から降りてきた。

 

「あら、ティナちゃん。室戸先生のとこ?」

 

「はい。真さんもですか?」

 

「俺は、今さっき終わった。」

 

「そうなのですか……あの、心音さん。真さんをお借りしても良いですか?」

 

「え?どうして?」

 

「少し、真さんと話してみたいんです。よろしいですか?」

 

「真、どうする?」

 

心音は俺の方を向いた。

 

「俺は構わねぇぞ?」

 

「うん、わかった。よろしくね。じゃ、真、私先に戻るから。」

 

「おう、悪りぃな。」

 

「ありがとうございます、心音さん。」

 

ティナは頭を下げた。

 

「いえいえ。じゃ、夕飯までには帰ってきなよ?あと、浮気しちゃダメだよ?」

 

「なっ、何だよ浮気って⁉︎」

 

「冗談よ。けど、ティナちゃんに変なことしないこと‼︎」

 

「しねぇよ‼︎」

 

ったく……。

 

「じゃ、ティナちゃん、真をよろしく〜。」

 

心音は去って行った。

 

「……いい相棒ですね。」

 

ティナが俺の方を向く。

 

「………まぁな。」

 

俺は少し微笑んだ。

 

「菫先生のとこ、早く行けよ。ここで待っとくから。」

 

「はい、すみません。少々お待ちを。」

 

ティナは菫先生の元へ向かった。

俺は廊下の壁に寄りかかる。

 

「ティナ・スプラウト……」

 

噂には聞いている。かつては単独のIP序列二桁のスナイパーだったと。聖天使を暗殺しようとしたものの、現在は天童民間警備会社のイニシエーターとして、俺と同じように戦っている。

 

「色々と話が合うかもな、同業者として。」

 

俺は廊下の壁に寄りかかったまま、ティナを待った。




次回は真とティナちゃんの対談です‼︎
え、フラグ?何のことカナー?(すっとぼけ)(笑)


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第17話〜優しさと頼み〜

ティナが可愛すぎて辛いこの数日間です。
そろそろ新しい作品も書いていこうかなんて思ってます。


俺とティナは喫茶店に来た。

病院で話すのもなんだと思い、俺から提案した。

 

「真さん、コーヒーがお好きなのですか?」

 

「コーヒーってか、喫茶店が好きなんだ。理由は特に無いけどさ。」

 

俺たちは店に入り、席を確保した。

 

「先に頼んでこいよ。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

ティナはレジに向かった。

俺はケータイを見る。

ん………心音からメール?

 

『真〜‼︎私の以外の女の子と初デート、ファイトっ‼︎心から祈ってるよっ(笑)』

 

「あいつ………っ。」

 

やれやれ、そんな感情持ってすらねーよ。

あくまでも、同業者としてだ、これは。

おまけに、俺はそんな色恋沙汰に興味はない……多分。

 

「お待たせしました。」

 

ティナが戻ってきた。

 

「おう…………⁉︎」

 

俺は、ティナが片手に手にしているものに驚愕した。それは……ブラックコーヒー。

ティナはそれを飲む。その姿を口をポカンと開けて見つめる俺。

 

「? 真さん?頼まないんですか?」

 

「あっ、あぁ……」

 

俺は立ち上がり、レジに並ぶ。

どうする、どうするんだ俺。

俺より年下であろう女子がコーヒー……ミルクも砂糖も入れていない、正真正銘のブラックコーヒーを飲んでいる。

心音の前や、一人の場合はいつもカフェモカ……の、ミルク多目に砂糖プラスを飲んでいる俺。

しかし、この状況でそれを飲むことは、恥ずかしい……っ‼︎

どうする、強がってブラックか……いや、無理だ…苦過ぎるのは苦手だ。というか、無理だ。

どうする……どうするの、俺っ⁉︎

 

「カフェモカミルク多目、あとチョコパフェ。」

 

俺は敗北感に近い何かを感じた………。

 

 

結局、カフェモカミルク多目とチョコパフェという、いつものパターンだった。

俺は席に戻る。

そして、パフェのアイスを食べる。

 

「真さんって、甘党ですか?」

 

「……だったら何だよ。」

 

ティナはコーヒーを飲みながら言った。

 

「なんか……可愛いですね。」

 

「……どういうことだよ。」

 

「そのままの意味ですよ?」

 

……何故だろう、こいつには言葉という武器では勝てない気がする。

 

「ま、いいけどさ。」

 

「………真さんは、どうしてイニシエーターに?」

 

突然の質問だった。俺は答える。

 

「……昔いた孤児院が潰れて、フラフラしてたところを社長に拾われて、養成所に入って……そんな感じかな。」

 

「噂には聞いています。かつては……」

 

「『死を運ぶ鷹』……だろ?」

 

俺はバナナをフォークに刺して口に運んだ。

 

「………すみません。」

 

「謝ることはねぇよ、事実だしな。ま、今は違うと思いたいけど。」

 

「心音さんはどんな人ですか?」

 

どんな………か。

 

「………良いやつさ。俺はあいつを傷つけた。けど、あいつは俺が悪いなんてこれっぽっちも思ってなかった。そして、俺が一人で戦っているときも、あいつは俺のことを『相棒』って言ってくれた。ホントに……その通りさ。」

 

「……良い人ですね。真さん、蓮太郎さんとお話が合いそうですね。」

 

「蓮太郎………?」

 

「私のいる民警のプロモーターです。里見蓮太郎さん。彼は私を助けてくれました。そして、大切なことを教えてくれました。今の私がいるのも、蓮太郎さんのおかげです。」

 

里見…蓮太郎………か。

 

「……いつか、そいつとも話してみたいな。」

 

「良いお話が出来ると思いますよ。蓮太郎さんと真さん、どこかにている感じがしますから。」

 

「そうか………そのうち、な。」

 

その後も、他愛のない会話を続け、俺たちは喫茶店を出た。

 

 

 

天童民間警備会社の前まで、ティナを送った。

 

「わざわざありがとうございます。優しいですね。」

 

「そうでもないさ。」

 

「今日は楽しかったです。蓮太郎さんと一緒にいた時くらいに楽しかったです。」

 

「そうか、よかった。」

 

「また、機会があれば…」

 

「あぁ、その時は頼むな。」

 

「では、失礼します。今日はありがとうございました。」

 

ティナは頭を下げ、建物に入っていった。

 

「………俺も帰るか。」

 

夕焼けを見ながら、俺は帰路を辿った。

 

 

 

 

とある実験場。烏丸 凌馬は水槽を眺める。

 

「………何をしているのだ?マンティス……」

 

物陰から、マンティスと呼ばれた黒手袋の男が現れる。

 

「別に………」

 

「そうか…………よし、明日はこれとこれを町に放つとしよう……ふふふ……。」

 

「………なぁ。何故実験体を放つ必要がある?イニシエーターもプロモーターも、奴等を倒している。このままじゃ、こっちの実験体が死んでいくだけじゃないのか?」

 

その問いに、烏丸は答えた。

 

「私はただ、データを集めているだけだよ。」

 

「データ……だと?」

 

烏丸は少年に歩み寄る。

 

「イニシエーターとプロモーターの戦闘データさ。彼らのデータを取り、研究することによって彼らを翻弄するだけの力を、私のウイルスに取り入れる。そうすれば、私の研究は更に素晴らしいものに仕上がる‼︎」

 

「……………」

 

少年は振り返り、足を進める。

 

「どこへ行くのだ?」

 

「……散歩だ。」

 

少年は外に出た。

 

 

 

 

「今日の夕飯はシチューっ、ルンラランっ。」

 

私、徳崎 心音は買い出しの帰り道だった。

 

「もうそろそろ、真が帰ってきたかな?」

 

時計を見る。夕方の6時。ま、もう帰っているかな。

 

「………ん?」

 

川の岸の芝生の上に寝転がっている少年。

黒い手袋……あの子は……!

 

「確か、烏丸 凌馬のとこにいた…‼︎」

 

私は彼に歩み寄った。

少年は私に気付く。

 

「お前は……あの時の。」

 

「あ、あの時はありがとう。おかげで助かったわ。」

 

お礼を言えてなかった。私は頭を下げる。

 

「………敵の俺に頭を下げるとはな……」

 

少年は身体を起こし、私の方を向いた。

 

「でも、あなたは味方な気がする。」

 

「………根拠は?」

 

「無い、けど………えへへ…。」

 

少年は表情を変えない。

 

「……あ、まだ名前言ってなかったね………私、徳崎 心音。君は?」

 

「…………東 雫(あずま しずく)。」

 

「雫くんね、よろしく‼︎ ところで、何をしているの?」

 

「散歩だ。ここに来ると、なんか落ち着くんだ。」

 

「そっか。」

 

私は雫くんの隣に座った。

 

「………ねぇ、雫くんは、烏丸の計画をどう思っているの……?」

 

馬鹿げた質問だが、私は聞いてみた。

 

「………正直、潰れて欲しいと思ってる。」

 

「え………?」

 

私は雫くんを見つめた。

 

「烏丸の改造と洗脳で、理不尽に命が失われている。俺は無駄な殺生をしたくないし、そんな風に命が奪われるのも嫌なんだ。」

 

「雫くん………」

 

「………なぁ、頼みがある。烏丸の計画を止めてくれ。」

 

「え?」

 

雫くんは立ち上がる。そして、私の方をまっすぐ向いた。

 

「街の外れの廃ビルの地下。そこがアジトだ。やつの計画はもうすぐ最終段階に入る。明日の夕方にでも乗り込めば、計画は潰せる。」

 

「雫くん………」

 

「………頼む。」

 

雫くんは去っていった。

 

「………うん。」

 

分かったよ、止めてみせる。

これ以上命は奪わせない……あなたを悲しませないから。

 

「今日の夕飯は、作戦会議も込みかな。」

 

私は駆け足で、事務所に戻った。




え?終わるの⁉︎ そう思うかもしれませんが……
『終わらないよ、どこまでも。』
あ、後ろの平仮名は冗談です(笑)
次回からしばらくは戦闘ばっかだと思います。
原作キャラも活躍しますので、ご期待下さい‼︎


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第18話〜洗脳と突入〜

タイトルの通りです、突入!!
しばらくは戦闘ばっかですが、キマイラ戦より長くなりそうで、なんかちゃんと書けるか不安……www


この実験場は暗すぎる。そう思いながら、東 雫は廃ビル地下にある烏丸 凌馬のラボに戻ってきた。

 

「おやマンティス、意外と早かったな。」

 

烏丸はコーヒーを飲んでいた。

 

「丁度いい時に来た……見たまえ。」

 

雫はモニターを見た。それは今彼らがいる階よりも更に下の階のカメラの映像だった。

 

「…………!?」

 

雫は驚愕した。そこに映っていた檻の中にいた『怪物』に。

 

「何だよ……これ……!?」

 

「素晴らしいだろう?私の最高傑作さ。まさか人間をここまで美しい姿に仕上げるとは……名前をつけよう。そうだな……ガストレア・ヒューマン『タイタン』……うむ、いい名だ。そうは思わないかね、マンティス?」

 

雫はモニターから目を逸らした。

 

「……知るかよ。」

 

「………やれやれ…。」

 

烏丸は立ち上がる。

 

「君もいつかは……あれになるんだよっ!!」

 

「!!?」

 

烏丸は注射器を雫に突き刺した。そして、中の液体を注入する。

 

「貴様…………!!」

 

「これは洗脳用のウイルスだ。私を裏切る等…できないのだよ。」

 

「っ………。」

 

雫は倒れた。

 

「ククククク………さぁ、私の計画もフィナーレだ……!!」

 

 

 

 

日没後の18時ジャスト。

俺たち明崎民間警備会社と天童民間警備会社のプロモーターとイニシエーターは、街外れの廃ビルの前にいた。目的は「烏丸 凌馬の実験施設への突入」。そして、その身柄の確保だ。

昨日の夕方。心音が烏丸の旧実験施設にいたという改造人間の少年……東 雫からの情報で、ここに実験施設があると判明。よって昨日、作戦会議が2社の間で行われた。

そして本日。

俺たちは各自、武器の調節等をしていた。

 

「延珠、大丈夫か?」

 

「安心しろ蓮太郎!妾は大丈夫だ!」

 

天童民間警備会社のペア、里見 蓮太郎と藍原 延珠。俺がこいつらを見たのは二回目だった。以前俺は彼らの戦闘を目の当たりにしていた。昨日の会議の後、俺は彼らと会話をした……。

 

 

 

「あぁ、商店街の近くのガストレアか……もう一ヶ月前の話だな。それがどうした?」

 

会議の後のベランダで、俺は里見 蓮太郎と藍原 延珠と話していた。

 

「その時に戦闘を拝見させてもらった。物陰からな。」

 

「なっ!?お、おぬし、妾達の戦いを!?」

 

「あぁ。」

 

「蓮太郎……妾があの時、気のせいと言っていた見られている感覚というのは……!」

 

「俺だった、かもな。」

 

俺は延珠の方を向いて言った。

 

「むぅ…おぬし、趣味が悪いぞ。」

 

「まぁ、手を貸す程でも無かったろ?所詮はステージ1だしな。」

 

「ふん!まぁな!」

 

腰に手を当て、胸を張る延珠。そこへ蓮太郎が口を開く。

 

「それより、烏丸 凌馬のことだが……本当なのかよ?やつの計画。」

 

「あぁ、間違いないだろう。お前らも出くわしたんだろう?あの改造人間に。」

 

天童民間警備会社の、烏丸の改造人間に襲撃されたペアというのは彼らの事だったのだ。

 

「あぁ……許せねぇ。ガストレアの力が世界を救うなんて馬鹿げてる。罪の無い人まで巻き込んで……!」

 

拳を固める蓮太郎。

 

「……真。」

 

「皆まで言うな。」

 

俺は片手を上げる。蓮太郎はそれに微笑んだ。そして、俺たちはお互いの手のひらをぶつけた。

 

 

 

 

「……っし。」

 

弾薬も十分。いつもの銃一式も問題なし。唯一問題があるとすればそう……NHライフルだった。5分チャージは問題ないものの、それが効かない相手には必然的に10分チャージが必要となる。だが、俺はまだそれを使いこなせていない。一応、保険として折りたたみ式の補助用の台座を用意した。これで吹っ飛ばされる距離は最小限で済む……と、思いたい。

 

「真……大丈夫?」

 

心音が俺の隣でアンクレットを装備していた。

 

「あぁ……多分な。」

 

「無理しないでね?NHライフル、かなり負担きてるんじゃないの?」

 

「10分チャージを使う場面が出ない限りはなんとかなるさ。」

 

俺はNHライフルを背中に背負った。

 

「準備はいいか?」

 

社長が問う。俺たちは立ち上がる。

 

「よし、全員で一気に突入する。何が起こるかは分からん……細心の注意をしてもらいたい。最後に言わせてくれ……死ぬな。それだけだ!!」

 

ありきたりなこと言いやがって……当然だ。

 

「では……作戦開始!!」

 

俺たちは動き出した。

 

 

 

社長と実緒のペアを先頭に廃ビルへ。二手にわかれ、実験施設への入り口を探す。

俺と心音ペアと天童木更とティナペア、連太郎と延珠ペアと社長と実緒ペアという分かれ方だ。

辺りを警戒するプロモーターの2人。俺とティナは両方とも視界の優れたイニシエーターだ。入り口らしきものを探す。

 

「……真さん。」

 

「あぁ……。」

 

分かりやすく、地面のタイルが浮いている。暗くて肉眼では見え辛いだけだった。

俺は無線で社長に通信を送る。

 

「こちら小鳥遊。ビルの奥の倉庫らしき部屋の中に入り口らしきものを確認。突入する。」

 

『分かった、こちらも後を追う。』

 

通信を切る。

 

「心音、あったぞ。」

 

「天童社長、ありましたよ。」

 

「あ、うん。」

 

俺たちは奥の部屋へ。俺はタイルを持ち上げる。梯子が立てかけられていた。いかにも入って頂戴と言わんばかりに、な。

 

「………よし。」

 

俺が先に入る形で、俺たちは梯子を降りていった。

 

 

 

 

「んー?」

 

烏丸の見つめたモニターに四人の人影。

 

「嗅ぎ付けられたか……まぁ、いいか。肩ならしに数体くらいに相手をしてもらおうかな。」

 

烏丸は水槽のロックを外し、改造された人間を彼らの元へ向かわせた……。

 

「予想より早い介入だなぁ……まぁ、いいか。急ピッチで作業を始めよう。」

 

烏丸は地下へ降りていった……。

 

 

 

 

「っし……全員だな。」

 

俺たちは梯子を降り、脚を進めた。

 

「気味が悪いですね……」

 

ティナが一言。それに心音も。

 

「ダムの時よりも、かも……」

 

「……!?」

 

遠くから足音。俺は脚を止めた。そして、マシンガンを両手に。

 

「真……!?」

 

「来るぞ………!!」

 

「………はあぁっ!!」

 

暗闇から襲いかかってきたのは……改造人間だった。

俺は瞬時に躱す。そして、暗闇から次々とその姿を現す。その数、5人。

 

「悪いが、ここから先は凌馬様のラボだ……貴様らを通す訳にはいかんのでなぁ!!」

 

俺に2人、他の3人にも襲いかかる改造人間。

俺たちはそれぞれ応戦した。

 

「邪魔だっ!!」

 

俺は0距離で2体の改造人間にマシンガンを放つ。

 

「ごあああああっ!!」

 

二体は倒れる。俺は右手のマシンガンをホルスターに戻し、背中のNHライフルを空いた手で構え、チャージを開始。心音の援護に回る。

 

「く……っ!!」

 

ティナが膝を着いていた。危ないと思ったその時。

 

「天童式抜刀術……弐の型!!」

 

改造人間の足下を刀で斬り裂いた木更。なるほど、あれが噂に聞く天童式抜刀術か。

改造人間は足下をすくわれ、不安定になる。

 

『発射可』

 

「伏せろ、皆!!」

 

俺はNHライフルを放つ。

放たれた3分チャージの弾丸は、その場にいた改造人間を一掃した。

 

「凄い……」

 

ティナと木更が呆然としていた。

 

「次が来ないうちに行くぞ!!」

 

俺たちは走り出した。

走りながら社長に通信を入れる。

 

「社長!!突入したが、改造人間が早速出迎えだ!!」

 

『分かってる!!こっちもだ!!』

 

「え………!?」

 

 

 

「地上の方もやばいんだよ………!!」

 

私…川野 実緒と信也さんのペアと里見さんと延珠ちゃんのペアは囲まれていた。

改造人間の集団に。

 

「くそっ!なんでこんな時に!!」

 

「とにかく、全滅させるぞ!!」

 

私はランスを振るい、改造人間を倒していく。

 

「真さん……!!」

 

どうか、無事でいて………!!

 

 

 




だんだんと文字数が多くなっているような気が……まぁ、大丈夫だろwwww
よし、頑張ろう!!


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第19話〜苦戦と共闘〜

戦闘です。めっちゃ戦闘です。
夢のドリームタッグを再現しました。
ハレルゥゥウウヤァァッ‼︎な、あの人を出しました(笑)


「おい、おい‼︎くっ‼︎」

 

通信が切れた。

 

「大丈夫なの信也さん達……‼︎」

 

木更が心配そうな声を上げる。

 

「大丈夫よ、社長も実緒ちゃんも。蓮太郎くんと延珠ちゃんだって、そう簡単にやられたりしないでしょ?」

 

心音が木更の肩を叩く。

 

「心音さん………」

 

「大丈夫だ。俺たちは俺たちが出来ることをしよう。」

 

そうだ。烏丸を止める。

その思いを胸に、俺たちは走り抜けた。

 

 

 

「てやぁああっ‼︎」

 

一体一体確実にランスで突き刺す。しかし、再生力が早いため、一度に多数のダメージを与えなければいけない。

 

「おらあっ‼︎」

 

背後から飛びかかってきた。しまった……‼︎

 

「はあああっ‼︎」

 

延珠ちゃんが飛び蹴りで、その改造人間を蹴り飛ばす。

 

「大丈夫か、実緒‼︎」

 

「あ、ありがと延珠ちゃん‼︎」

 

「うおおおっ‼︎」

 

里見さんの拳が改造人間を吹っ飛ばす。

数は減ってはいるもの、まだまだ多い。

 

「くっ………埒があかねぇ‼︎」

 

「どうすれば…………⁉︎」

 

その時だった。

 

………ダァン‼︎ダァン‼︎

 

「ぐおあああっ‼︎」

 

どこからか銃撃。私は辺りを見渡した。

 

「‼︎ あれは……⁉︎」

 

満月をバックに立っている二つの人影……

 

「苦戦しているようだねぇ……里見くん?」

 

「⁉︎ その声………まさか⁉︎」

 

その人影はこちらに向かってくる。タキシードとシルクハット、マスケラを身につけた男と、青い髪をした少女……。

 

「久しぶりだねぇ……。」

 

「蛭子 影胤………‼︎」

 

「な、何故お主達がここへ⁉︎」

 

里見さんと延珠ちゃんは驚いていた。

 

「お、お前達は……⁉︎」

 

信也さんが問う。マスケラ越しに蛭子という男は答えた。

 

「安心したまえ………今回は君たちの味方さ。」

 

「何だと⁉︎」

 

「パパは、これが気に入らないの。」

 

「烏丸 凌馬を捕まえるのだろう?早く行きたまえ。」

 

蛭子は銃を、そのイニシエーターの少女は小太刀を構えた。

 

「てめぇ……何のつもりだ‼︎」

 

里見さんは叫ぶ。

 

「小比奈が言っただろう?私は気に入らないのだよ、ガストレアの力を人工的に人に宿すなど、ね。」

 

「…………」

 

里見さんは、少し間を置いて言った。

 

「………明崎さん、先に行って下さい。ここは、俺たちで片付けます。」

 

「な、なにっ⁉︎」

 

「こいつ一人だと、何をするかわかりません。もしものことを考えて、ここは俺と延珠を残して下さい。明崎は、木更さん達をお願いします。」

 

「………信也さん。」

 

私は賛成だった。恐らく、蛭子は里見さんにとって、宿命の相手……そんな感じがする。そんな人をほっておくのは出来ない。そういうことだろう。

 

「………分かった。行くぞ、実緒。」

 

「はい‼︎」

 

私と信也さんは、その場を里見さん達に任せた……。

 

 

 

 

「まさか、お前らと共闘とはな…」

 

蓮太郎は銃を構えた。

 

「ククク………今日だけさ。これが終われば、後々君を殺しにかかるかもしれないからねぇ?」

 

「そん時は、またぶっ飛ばしてやるよ。」

 

「フフフフ……それは楽しみだねぇ……。」

 

蛭子も両手に銃を構えた。

 

「延珠、分かったか?」

 

「あぁ……こいつら、頭を落とせば早く終わるぞ。実緒と明崎の戦闘はそうだった。」

 

「じゃあ、沢山斬り落とせるね‼︎ ねぇ、全部斬っていいよねパパ⁉︎」

 

小比奈は可愛らしい声で恐ろしいことを言う。

 

「もちろんだよ、我が娘よ。油断はするなよ?」

 

改造人間達は立ち上がり、蓮太郎達に向かって駆け出す。

 

「行くぞ‼︎」

 

蓮太郎達も、改造人間達に向かって行った。

 

 

 

「はぁっ‼︎」

 

通路を塞ぐ改造人間達を、NHライフルの3分チャージで一掃する。そして、走り出す。

そして、モデル・ホークの遠視能力で先を見る。

200メートル先に鉄のドア。間違いない、あそこだ。

 

「もうすぐだ‼︎」

 

 

 

 

「ヒヒヒヒヒっ‼︎ 素晴らしきかな我が人生‼︎ハレルゥゥウウヤァァッ‼︎」

 

奇声を上げながら、改造人間の身体に無数の弾丸を浴びせる。

 

「アハハハハッ‼︎ 面白いくらい斬れるー‼︎」

 

素早い動きで、改造人間の首を斬り裂く小比奈。

 

「あいつら……躊躇いもなく……」

 

蓮太郎は改造人間を銃で牽制しつつ、蛭子たちを見ていた。

 

「蓮太郎、仕方が無い。彼らはもう、人ではない。悲しいが……倒して、眠らせてやるしかない。」

 

延珠も、悲しげな顔をした。

 

「悪いのは烏丸 凌馬とか言う奴だ‼︎ 捕まえて天誅を下すのだ、蓮太郎‼︎この者達のためにも‼︎」

 

「延珠……‼︎」

 

蓮太郎は襲いかかってきた改造人間に蹴りを入れ吹っ飛ばす。

 

「………あぁ‼︎そうだな‼︎」

 

 

 

 

 

俺たちはドアの前……実験場の入り口に到着した。

 

「ここ、だね……。」

 

心音が言った。

 

「よし………。」

 

「おーい‼︎」

 

背後から声。社長と実緒だった。

 

「地上は?」

 

「里見さん達と、蛭子っていう人とそのイニシエーターが共闘しています‼︎」

 

「蛭子⁉︎」

 

「蛭子……だと⁉︎」

 

俺と木更が声を上げた。

 

「とにかく、上は大丈夫です‼︎」

 

「話は後でじっくり聞かせてもらうわよ……里見くん…‼︎」

 

俺はドアに手をかけた。

 

「行くぞ……‼︎」

 

俺はドアを開けた。そして、中に入る。広い空間だ。辺りを見渡す。薄暗さは、ダムの時と同じだ。

 

「烏丸‼︎ どこだ‼︎」

 

『おやおや……もう来たのかい。』

 

頭上のモニター……そこに、烏丸が写っていた。

俺たちはそれを見上げる。

 

『ま、想定内ではあるか。少し、彼と遊んでおいてくれたまえ………出番だ、マンティス‼︎』

 

足音が響く。すると、暗闇から出て来たのは……両手がカマキリの腕のように改造された少年。

 

『そいつらの相手をしてやりなさい。では、頼むよ……』

 

モニターが消える。

 

「くっ………行くぞ心音‼︎」

 

「⁉︎ そ、そんな……⁉︎」

 

心音は、膝をついた。

 

「おい、心音⁉︎どうした⁉︎」

 

「…………雫…くん?」

 

「え………⁉︎」

 

あの少年が………心音にここの場所を教えた、改造人間…‼︎?

 

「‼︎」

 

雫という名の少年が斬りかかってきた。

 

「危ない‼︎」

 

社長が前に出て、両手に構えた剣で防ぐ。

そして、弾く。雫は距離を置く。

 

「おい‼︎ 君が雫くんなのか⁉︎ならば、君は私たちの味方ではないのか‼︎」

 

「…………」

 

雫は何も言わない。

 

『無駄だよ、彼の洗脳は完璧さ。』

 

烏丸の声がスピーカー越しに響く。

 

「どちらにしろ、戦うしかないわね‼︎はぁっ‼︎」

 

木更が駆け出し、斬撃を放つ。雫は飛び上がり躱し、鎌を彼女に急降下して振り下ろす。

 

「‼︎」

 

そこへ、ティナが銃撃を叩き込む。雫は弾丸をくらい吹っ飛ばされるも、態勢を立て直して着地する。

 

「強い……」

 

「おい、心音‼︎ しっかりしろ‼︎」

 

心音はようやく我に返った。

 

「ご、ごめん……‼︎」

 

心音は刀を引き抜いた。

その隣で俺はNHライフルのチャージを開始。

 

「なるべく疲弊させてくれ‼︎」

 

「う、うん……‼︎」

 

心音は駆け出した。

 

「心音……‼︎」

 

 

 

「よし、こんなものかな。」

 

地下の檻の中に眠る、『タイタン』。

烏丸はそれの最終調整をしていた。

 

「この力を使い、私は実現させる……私の計画を‼︎」

 

檻を出た烏丸。

その檻の中で、壁の鎖に繋がれた巨大な改造人間。

その瞳が………赤く光った……。

 




ハレルゥゥウウヤァァッ‼︎

やってみたかった(笑)

ブラック・ブレッドのアクションフィギュア出ないかな?出たら絶対買う(笑)


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第20話〜涙と傑作〜

遂に20話まできてしまったぜ、おい(笑)
そろそろオリジナルも書かねば……アイデアが思いつかない……(T . T)


「うおおおっ‼︎」

 

地上の改造人間は全滅。

蛭子は銃を収めた。

 

「まぁ、こんなものだろう…。里見くん。後は任せたよ。」

 

「………お前、何がしたかったんだ?」

 

蓮太郎も銃を収める。

 

「別に。敵の敵は味方……それに基づいただけだよ。それに、私がいて助かっただろう?」

 

「………確かにな。今回ばかりは礼を言うぜ。」

 

「おや、いつになく素直じゃないか?」

 

「知るかよ……行くぞ延珠。」

 

「あ、あぁ‼︎」

 

蓮太郎と延珠は、地下へと向かった。

 

「パパ………烏丸って人の所には行かないの?」

 

「そこまで民警の手助けをする必要はないさ……帰るぞ我が娘よ。」

 

「ちぇー、もうちょっと斬りたかったのにぃ。」

 

蛭子親子は暗闇に消えていった。

 

 

 

 

「てやああっ‼︎」

 

心音の刀が空を斬る。それを躱す、改造人間…東 雫。

 

「ふんっ‼︎」

 

雫は心音を蹴り飛ばす。

 

「くっ‼︎」

 

着地し、膝を着く心音。

俺はNHライフルの照準を雫に合わせる。

 

『発射可』

 

5分チャージ完了。

 

「くらえっ‼︎」

 

俺は引き金を引く。弾丸は雫を目掛けて飛んでいく。

 

「はっ‼︎」

 

しかし、弾丸は躱された。早い………これが改造人間の本当の力なのか?

 

「隙ありっ‼︎」

 

「はあああっ‼︎」

 

実緒と木更が同時に斬りかかる。

しかし、雫はその攻撃を受け止める。

 

「おおおおっ‼︎」

 

そして両手の鎌を振るい、2人の武器を切断した。

 

「えっ⁉︎」

 

「バラニウムを斬り裂いた⁉︎」

 

『対バラニウム用のコーティングさ‼︎ある程度のバラニウム製兵器は、このコーティングには効かない‼︎』

 

烏丸のマイク越しの声。

 

「うおおおっ‼︎」

 

そして二人は蹴り飛ばされ、壁に叩きつけられる。

 

「きゃあっ‼︎」

 

「くあっ‼︎」

 

「はあああっ‼︎」

 

実緒の方に追い打ちをかけようと、駆け出す雫。彼の前に社長が立ちはだかり、両手の剣で雫を受け止める。

 

「くぅっ………‼︎」

 

「まだまだ………っ。」

 

木更は立ち上がるも、その場に倒れた。ティナが彼女に駆け寄る。

 

「木更さん‼︎」

 

マズイ……‼︎

 

「ティナ‼︎ ここは退け‼︎」

 

俺は叫ぶ。

ティナは頷き、木更を負ぶってその場を後にした。

 

「ぐああああっ‼︎」

 

社長が吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

「うおおおおおおおおっ‼︎」

 

吠える雫。

 

「くっ……‼︎このままじゃ……‼︎」

 

「…………っ‼︎」

 

心音は立ち上がり、再び駆け出す。

 

「‼︎ 心音⁉︎」

 

「ぐおおっ‼︎」

 

雫は心音に鎌を振るう。それを心音は受け止めた。

 

 

 

「雫くん………私が分かる?心音だよ。あなたが助けてくれた……」

 

私は一か八かの賭けに出た。雫くんは洗脳されている。よく漫画であるシチュエーション……声をかけつづれば、目を覚ましてくれる。

アホらしいかもしれない……それでも、私は信じたかった。

 

「ぐぅうう…っ‼︎」

 

鎌に入る力が強まる。

 

「雫くん………烏丸の計画を潰すってお願い、私たち……叶えて来たんだよ?雫くんの願いでしょ?」

 

「ううう……っ‼︎」

 

雫くんの表情が歪む。

 

「雫くん……私ね。あなたの瞳を見たとき、思ったの。この人は……味方だって。そして、その通りだった。だから……私はあなたを信じる。あなたは操られているだけ……。無駄な殺しはしないんでしょ?だったら……もっと自分を強く持って……‼︎ 私は……あなたを人殺しにしたくない‼︎」

 

「ぐっ………⁉︎」

 

雫くんは……その場に崩れ落ちた。

 

「ぐああああっ‼︎ぐぅっ…⁉︎あああああっ‼︎」

 

 

 

「こ、これは…⁉︎」

 

心音が………心音の声が…届いた⁉︎

 

「うぐああああああああああああっ‼︎」

 

雫は声をあげ、項垂れた。

俺は心音と雫に駆け寄る。

 

「雫くん‼︎」

 

雫の瞳から……赤色が消えた。

 

「ここ……ね……。」

 

「‼︎ 雫くん‼︎」

 

「す…まない………。」

 

「ううん………大丈夫だよ。」

 

心音の表情は暖かかった。誰にでも優しいのだ、こいつは。

 

「あーあ………つまらないなぁ。」

 

暗闇から声。そして、姿を現したのは……

 

「‼︎ 烏丸……‼︎」

 

「マンティス………何故私を裏切る?私は君の命を助けた……恩を仇で返すというのかい?」

 

「違う………お前はただ…俺を騙して……利用した、だけ……‼︎」

 

「やれやれ……幼い死にかけの君を助けたのは間違いだったようだね……。」

 

幼い……死にかけ?

 

「助けた……だと?」

 

俺は問う。

 

「あぁ、彼はね。幼くしてガストレアに両親を奪われている。そして、彼はガストレアの襲撃をまぬがれたものの、死にかかっていた。私はそれを見て可哀想と感じたよ……。私は彼に延命措置を施した………改造さ。しかし、彼は私には懐かなくてね…。今の今まで耐えていたわけさ。」

 

何て奴だ……狂ってやがる……‼︎

 

「貴様……‼︎」

 

「だが、もういい。ここで死ぬがいい。」

 

烏丸は銃を向ける。雫の前に、心音が立ちふさがる。

 

「そんな、生きる価値も守る価値の無いものの盾になるとは………君も好きものだね。」

 

「……そんなの、あなたが決めるものじゃない‼︎」

 

「心音……‼︎」

 

俺はマシンガンを構えた。

 

「‼︎」

 

烏丸が引き金を引く。

銃弾は………雫の心臓部に当たった。

即座に心音を庇ったのだ。

 

「⁉︎」

 

「っ……かはっ……‼︎」

 

血を吐き、雫は倒れた。

 

「雫くんっ‼︎」

 

「やれやれ……ま、結果オーライか。」

 

「てめぇっ‼︎」

 

俺はマシンガンを烏丸に放つ。烏丸は走って躱す。

そして、奥の方へ逃げていく。

 

「く……っ‼︎ 待てっ‼︎」

 

俺は烏丸を追った。

 

 

 

 

「雫くん‼︎ 雫くん‼︎」

 

私は彼を揺さぶった。雫くんは目を開ける。

 

「はは……やっちまったぁ………っ。」

 

「雫くん⁉︎」

 

「俺さ…………民警になりたかった。家族の仇を……討ちたかった…………っ。」

 

その目からは、涙が流れていた。

 

「……………まぁ、でも、いいかな……?」

 

「雫くん………?」

 

雫くんは………力無く言った。

 

「最後に……命が守れてよかったから……さ……っ。」

 

雫くんは………目を瞑った。

 

「雫……くん?」

 

返事がない。動かない。

 

「そんな………っ‼︎」

 

私の涙が、彼の胸に落ちた。

 

「心音さん………。 」

 

実緒ちゃんと社長が、私の肩に手を置いた。私は、声を押し殺して泣いた。

 

 

 

 

「烏丸っ‼︎」

 

奥に階段があり、それを下り地下へ。

檻が並んだ部屋だった。

 

「何処だ‼︎」

 

………ウオオオオッ…。

 

「⁉︎」

 

呻き声。しかも、かなりの大きさの。

俺は奥の方へ……巨大な檻の前に烏丸がいた。烏丸は、その檻の鍵を外した。

 

「君たちには感謝しているよ……興味深い戦闘データを提供してくれてね。」

 

「何だと⁉︎」

 

檻の扉が開く。そこから出て来たのは……

 

「⁉︎ 何だよ……これは……っ⁉︎」

 

人型の化物………体調は3メートル程はある。全身にあらゆる動物や、兵器を宿している。

 

「これが、私の最高傑作……ガストレア・ヒューマン『タイタン』だ‼︎」

 

タイタン……そう呼ばれた怪物の瞳が赤く光った。

 

「さぁ、タイタンよ………手始めに彼らを潰せ‼︎」

 

マズイ‼︎

俺は駆け出し、階段を登った。

 

何てことだ……あんな化物を生み出すとは……‼︎

 

 

 

 

「雫…くん。」

 

私は立ち上がり、涙を拭った。

 

「心音…。」

 

「すみません、社長…。」

 

そこへ、真が戻ってきた。

 

「真⁉︎ 烏丸は…」

 

「逃げろ‼︎」

 

………ドゴォォオオン‼︎

 

「⁉︎」

 

地面が破壊された。そこから何かが出てくる。それは……巨大な人型の怪物……‼︎

 

「な、何よこれ……‼︎」

 

「これが奴の最高傑作らしい……。」

 

「そう‼︎ガストレア・ヒューマン『タイタン』さ‼︎」

 

怪物の足元に烏丸が歩み寄る。

 

「美しいだろう?人はここまで力を得られるのだよ‼︎」

 

烏丸は高々と言い放つ。

 

「さぁ、タイタン……奴らを蹴散らせ…」

 

タイタンは……烏丸の身体を握って持ち上げた。

 

「うおおあっ⁉︎お、おい‼︎違う‼︎私ではない‼︎あっちだ‼︎」

 

言うことを聞いてない……?

タイタンは……その巨大な口を開けた。

 

「や、やめろ‼︎私は食べても美味しく……ぎゃああああ………」

 

そして、自らを作り上げた人物を口に含み、そのまま噛み砕き、飲み込んだ。

 

「そんな……⁉︎」

 

嘘でしょ……⁉︎

こんなやつと……どうやって戦えば……っ‼︎

 

 




大ピンチ‼︎ てか軽くグロ表現出しちゃったよ(笑)
雫くんは正直長生きさせたかったけど、そうなると色々と狂ってしまう……(笑)
余力があれば、彼のスピンオフも書きたいなぁ…


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第21話〜無茶と崩壊〜

とんでもなく盛り上げたつもりの今回。
そろそろガストレア・ヒューマンの回もクライマックスかな。


「うおっ⁉︎」

 

地面が揺れる。

蓮太郎と延珠は地下に到着したと同時に、揺れを感じた。

 

「‼︎ 蓮太郎さん‼︎」

 

木更を負ぶったティナが、蓮太郎たちに駆け寄る。

 

「ティナ‼︎木更さん‼︎」

 

「気を失っているだけですが……とりあえず、地上へ向かいましょう‼︎」

 

「あ、あぁっ‼︎」

 

「何が起きているのだ…⁉︎」

 

「わかりませんが…ここは一旦退いた方が懸命です。」

 

蓮太郎は木更を負ぶって、地上へと戻った。

 

 

 

 

「グオオオオオオッ‼︎」

 

咆哮するタイタン。人型でありながら、血に飢えた野獣の様な叫びを上げる。

 

「この化け物っ‼︎」

 

社長は両手の銃を放つ。

しかし、タイタンには意味が無かった。弾丸は手で弾かれる。

 

「何っ⁉︎」

 

「せやぁっ‼︎」

 

実緒が飛び上がり、ランスを肩に突き刺す。だが、タイタンは二本指で実緒を摘み、そのまま壁に投げつけた。

 

「かは……っ。」

 

実緒はそのまま気を失った。

 

「実緒‼︎」

 

「このっ‼︎」

 

駆け出した心音は刀をタイタンの足元に振るう。しかし、傷つけられてもタイタンは怯むことをせず、片足を上げた。

 

「‼︎ 貰った‼︎」

 

『発射可』

 

俺は5分チャージのNHライフルを放つ。

 

「っ‼︎」

 

タイタンは吹っ飛ばされ、地面に倒れた。

重い音と共に、振動が走る。

 

「真‼︎」

 

心音は俺に駆け寄った。社長も、実緒を負ぶってこちらに来た。

 

「どうするの?」

 

「……社長、実緒の手当てをしてくれ。」

 

「⁉︎ お前……まさか‼︎」

 

その通りだ。あいつは……俺が倒す。

 

「……使いたくはなかったが…NHライフルを10分チャージを叩き込めば、勝機はある。」

 

「無茶だ‼︎ お前の身体がどうなるか知らんぞ‼︎」

 

「無茶でもなんでも、やらなきゃいけないだろ‼︎」

 

社長は俺の顔を見つめる。

 

「……お願いだ。このまま何もしなければ…皆死ぬかもしれない。」

 

「社長、私からもお願いします。」

 

タイタンが立ち上がる。こちらにゆっくりと足を進める。

 

「く………っ‼︎死ぬなよ……‼︎」

 

社長は実緒を負ぶったまま、その場を退いた。

 

「………心音。」

 

「時間稼ぎ頼む………でしょ?」

 

流石俺の相棒……分かってんじゃねぇか。

 

「ただ、無理はするな。お前を死なせるわけにはいかないからな……。」

 

「あら、心配?優しいわねっ。」

 

「うるせーよ。」

 

タイタンが近づく。俺は後ろに下がり、NHライフルにスタンドをセット。チャージを開始した。

心音も刀と銃を構え、身を低くした。

 

「はぁっ‼︎」

 

心音は駆け出し、タイタンに攻撃を仕掛けた。

それに反撃するタイタン。しかし、心音はそれを身軽に躱す。

 

「これ以上……死なせない‼︎」

 

 

 

 

「はぁ……はぁ………‼︎」

 

信也は地上に上がり、実緒を地面に寝かせた。気を失っているだけのようだ。

 

「明崎さん‼︎」

 

近くにいた蓮太郎たちも駆け寄る。

 

「皆、無事か‼︎」

 

「木更さんが気を失っているだけですが……そんなことより、真と心音さんは⁉︎」

 

「………あいつらなら、大丈夫だ。」

 

信也は拳を固め、言った。

 

 

 

 

「くっ………‼︎」

 

巨体のくせに何でこんなに素早いの⁉︎

私はかわしながら、タイタンに銃撃と斬撃で牽制する。しかし、私の行動パターンが読めるようになってきたのか、私はさっきからギリギリで躱している。

 

「はぁっ………はぁっ……‼︎」

 

息が上がってきた……そろそろ、不味いかも。

ダメだ、真のチャージが終わるまでは…‼︎

 

「っ⁉︎」

 

私は躓いてしまった。

タイタンは私に手を伸ばす。

 

「‼︎ きゃあっ⁉︎」

 

私はタイタンに握りしめられた。

 

「くっ……‼︎」

 

 

「‼︎ 心音‼︎」

 

『発射可』

 

俺はタイタンの頭に狙いを定めた。

 

「うおおおおおおっ‼︎」

 

俺は脚に力を入れて踏ん張り、トリガーを引いた。

 

「っ⁉︎ ぬわあああっ‼︎」

 

俺は吹っ飛び、壁に叩きつけられた。

 

「っ‼︎」

 

弾丸はタイタンの頭部を貫き、吹っ飛ばした。心音が離れ、そのまま地面に倒れる。

 

「きゃっ‼︎」

 

タイタンは壁に叩きつけられた。

辺りに静寂が広がる。

 

「っつつ………」

 

俺は立ち上がり、心音に駆け寄る。

 

「大丈夫、か?」

 

「うん、大丈夫………。」

 

俺たちはタイタンの方を見た。

 

「やったの………?」

 

「………多分な。」

 

安堵した……その時だった。

 

「………‼︎」

 

首の無くなったタイタンの死体の腹部が………怪しく蠢く。

 

「なっ⁉︎」

 

「そんな……まだ生きているの⁉︎」

 

蠢いていた腹が………食い破られた。

 

「キシャアアアアアアアアッ‼︎」

 

そこから出てきたのは……ガストレアだった。そのガストレアはその巨体さ故に天井を突き破った。

 

「きゃあっ‼︎」

 

天井が崩壊したことで、揺れが酷くなる。俺は心音の腕を掴んだ。

 

「上に登るぞ‼︎」

 

俺たちは地上へ向かった。

 

 

 

「な、なんだ………⁉︎」

 

突然の大きな揺れ。すると、床にヒビが。

 

「‼︎ 逃げろ‼︎」

 

信也の指示に従い、その場にいた全員は廃ビルを出た。

 

「な、何だよ今度は⁉︎」

 

廃ビルが崩壊していく。そこから出てきたのは……

 

「キシャアアアアアアアアッ‼︎」

 

「⁉︎ 馬鹿な…ガストレア⁉︎」

 

しかも、かなりの規模だ。かつて、蓮太郎と延珠が倒したステージ5…スコーピオンと同じ程の大きさ。

もはや生物の原型すらとどめていない。

 

「こいつは……‼︎」

 

 

 

「社長‼︎」

 

良かった、廃ビルから避難したみたいだ。俺と心音は社長たちに駆け寄る。実緒と木更は気を失ったままだった。

 

「真‼︎ 心音‼︎ あれは一体⁉︎」

 

「わからねぇ……ただ、タイタンは恐らくウイルスに汚染されていたんだろう。人にガストレアの力を人工的に宿す……やはり無理だったんだ。」

 

ガストレアは市街地に目を向けた。そしてゆっくりだが、その液体と固体の混合物のような身体で脚を進める。

 

「このままでは街が……‼︎」

 

「……っ‼︎」

 

俺はNHライフルのチャージを始める。

 

「⁉︎ おい、まさかそれを⁉︎」

 

「………10分チャージでタイタンの首を飛ばした…。おまけに、こいつのマックス威力は10分じゃない…。」

 

「…………‼︎ 真……まさか‼︎」

 

俺は走り出した。

 

「ま、真‼︎」

 

 

 

 

俺はガストレアを横目に走る。恐らく、こいつがここから市街地まで到達するのにかかる時間は……30分。

そして、マックス威力………そう、NHライフルにはリミッターがあった。これは恐らく、紅音の気遣い。もしもの時以外は外すな………そういうことかな。

だが……‼︎

 

「今は、そのもしもなんだよ‼︎」

 

俺はリミッターを解除した。残り時間が表示される。残り22分。

やってやるよ……‼︎俺は走る速度を上げた。

 

 




次回の話が終わると、しばらくクールダウンの期間に入るかと。
うん、このパターンで行こうかな(笑)


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第22話〜一瞬と記憶〜

少し間が空いてしまいましたが……久々?の投稿です。
一応、ガストレア・ヒューマン編は完結です。


「あのバカ……っ!!」

 

社長は拳を固める。

 

「ど、どうすんですか!?」

 

「……人命に被害が出ないよう、一般人を避難させる!!里見くん、延珠ちゃん、手を貸してくれ!!今から車で市街地に向かう!!」

 

「はい!!行くぞ延珠!!」

 

「あぁ!!」

 

「社長!私たちは!?」

 

私は訪ねた。

 

「実緒と木更を頼む!!安全な所へ!!」

 

社長達は走り去っていった。

 

「心音さん。」

 

ティナは実緒を負ぶった。

 

「少し離れた所に、小さい小屋がありました。そこに行きましょう。」

 

「う、うん!」

 

私は木更さんを負ぶって、脚を進めた。

 

「真…………!!」

 

お願い、死なないで。

私は………あなたを失いたくないの。

 

 

 

 

 

「ここがベストかな……。」

 

見上げたのは、廃ビル地帯と市街地の丁度境界線に位置する高層ビル。14階建てだ。

俺はガストレアの方を向く。恐らく……あと10分でここを通過する。

NHライフルの解除チャージ……30分チャージまで、残り8分。

 

「やってやるよ……!!」

 

俺は駆け出し、階段を上がった。

 

 

 

 

市街地はパニックになっていた。突如現れた超大型ガストレア……その姿に市民達は怯え、平常心を失っていた。

 

「落ち着いて避難しろ!!」

 

蓮太郎たちは市民を避難地まで誘導する。

ガストレアが市街地に到達するまで、残り5分。

既に大方の避難は完了していた。

 

「明崎さん!!この辺りは大丈夫です!!」

 

「分かった……!!」

 

信也はガストレアの方を向く。距離は遠いもの、その巨体ははっきりと見える。

 

「真………!!」

 

 

 

 

 

 

「これでよし。」

 

実緒の手当を済ませ、木更さんが目を覚まし、彼女に今の状況を説明した。

 

「そんなことが……不甲斐ないです。何も出来ないなんて……」

 

「大丈夫です、木更さんのせいじゃないですよ。」

 

私は彼女の肩を叩いた。

 

「徳崎さん……」

 

「……優しいんですね。」

 

ティナちゃんが私に言う。

 

「…………そう、かな。」

 

私は小屋の外を覗いた。

 

「真………。」

 

私はただ、祈るしか無かった。

真が、無事な事を。

 

 

 

 

巨大ガストレアは目と鼻の先にいる。

チャージ完了まで残り2分。

 

「キシャアアアアアアッ!!」

 

奇声を上げ、ゆっくりと進んでくる。

俺は狙いを定める。

 

「俺は……これ以上失うつもりは無い………!!」

 

グリップを握る手に力を込める。

 

「俺は………生きるために戦う…。」

 

残り1分を切った。俺は脚を踏ん張る。

 

「この身が壊れても……護りたいものがある!!」

 

ガストレアが近づいてきた。間もなくこのビルと接触する。残り30秒。

 

「…………人間は確かに愚かかもしれない……けど、愚かだからこそ、変わろうと努力するんだ……。烏丸…………お前の理想は……叶わなかったな。」

 

残り10秒。

 

 

 

 

 

「く………このままじゃ市街地に!!」

 

ガストレアが近づいていた。もうすぐ市街地に侵入される。

 

「真……!!」

 

信也は拳を固め、祈った。

 

 

 

 

「…………」

 

「心配なのでしょう?真さんの事。」

 

「え?」

 

ティナちゃんが歩み寄る。

 

「行ってください。実緒さんは私と天童社長におまかせください。」

 

「で、でも!!」

 

「大丈夫です…あとで、追いかけます…!」

 

木更さんとティナちゃんの目は、力強さを感じた。

 

「……はい!!」

 

私は駆け出した。市街地のガストレアに向かって。

 

 

 

 

『発射可』

 

「うおおおおおおおっ!!」

 

俺は引き金を引いた。

 

「っ!!?うわああああああああああっ!!」

 

俺は反動で、ビルの屋上から放り出された。

そして、そのまま飛ばされ、宙を舞い……

 

「ぐはっ………!!」

 

地面に叩き付けられた。

 

「く……っ」

 

意識が………遠のいて…………………

 

 

 

 

 

放たれた弾丸は……ガストレアの身体を貫通した。

ガストレアは叫びを上げる事無く、爆発して肉片へと化し、溶けていった。

 

 

 

「!?ガストレアが……!!」

 

延珠は目を見開く。蓮太郎が一言呟いた。

 

「天の梯子の凝縮版……その通りだな。」

 

「真……やったか。」

 

信也は微笑んだ。

 

 

 

 

「!?」

 

ガストレアがいない。という事は、真が勝ったのか。

 

「真!!」

 

私は、人民の避難した市街地を走り回った。

 

「真!?どこ!?」

 

NHライフルの反動で、飛ばされているはず。どこまで飛んだのかを予測しつつ、探す。

 

「心音さん!!」

 

遠くから、社長達が駆け寄る。

 

「皆さん!真は!?」

 

「分からん……とにかく手分けして探すぞ!!」

 

 

 

 

「何ですって!?分かったわ、そっちに向かうわ。」

 

木更は蓮太郎からの電話を切った。

 

「真くんがいないらしいわ。探しにいくわよ!!」

 

「はい。」

 

ティナは実緒を負ぶって、木更と共に小屋を出た。

 

 

 

 

「真!?いるなら返事して!!」

 

どこなの……真!!

 

「………!?」

 

交差点の真ん中。NHライフルが地面に突き刺さっていた。私はそれを引き抜く。

 

「重っ……」

 

この辺りにいるはずだ。私はライフルを肩に掛けて走る。

 

「真……きゃっ!!」

 

躓いてしまった。立ち上がろうと起き上がる。

 

「……!!」

 

いた。ガラスの破片に囲まれ、倒れていた。

私は真に駆け寄った。

 

「真!!?」

 

抱える。胸に耳を当てた。鼓動は聞こえる。

気を失っているだけのようだ。

 

「よかった…………!!」

 

私は通信で皆を呼び、真を連れて病院へ向かった。

 

 

 

 

室戸先生の所に真は寝ていた。

搬送されてから3日間。真は目を覚まさなかった。室戸先生曰く、脳にも衝撃の影響が出ているらしい。そもそも生きているだけで奇跡だと。骨折もあったようだがある程度治っているらしく、本当に身体的な異常は無いとの事だ。

私はあれからずっと、真の側にいる。

 

「……真…。」

 

ベッドで眠る真の手を握っていた。

温かさは感じる。

 

「………ん……。」

 

「!」

 

真の瞳が開いた。彼は身を起こす。

 

「真……!!よかった、目が覚めて…」

 

「………君は?」

 

…………え?

 

「君は……誰?」

 

「な、何言ってるの………?私よ!?心音!!あなたの相棒!!」

 

「相棒………?」

 

「やはりか……」

 

室戸先生が歩み寄る。

 

「恐らくと思っていたが……予想通りだったな。」

 

「予想……?」

 

「ことりあそび君は……記憶を失ってしまったようだ。」

 

私はその言葉に……肩を落とした。

窓の外は、大雨。

私がその場に崩れ落ちたと同時に……雷鳴が鳴り響いた。




ありがちな展開ですが、やってみたかったwwww
最近いろいろと心がモヤモヤします……はぁ、なんだろうなこの感覚。
とりあえず、頑張ってみますwwwww


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第23話〜記憶と恋〜

しばらくほのぼの感満載のお話が続きます(笑)
5話くらいほのぼので行く予定です。早まる可能性も(笑)


烏丸 凌馬の事件から、早一週間が経とうとしていた。

 

あれから真は、病院で精神面の治療を受けたが、あまり効果は無く、記憶を失った状態で退院……という形になった。

今日がその退院日である。私は真を迎えに行った。

室戸先生の部屋に、真はいた。もう既に身支度は済んでいるようだ。

 

「すまない。記憶が戻るのは時間の問題だ……。君が側にいてあげてくれ。そうすれば、何か思い出すだろう。」

 

室戸先生はコーヒーを啜りながら言う。

 

「わかりました。ありがとうございます。」

 

私は真に歩み寄った。

 

「真……?」

 

「こ、心音、さん……。」

 

オドオドしたような口調で話す。本当に人が変わったみたいだ。

 

「もう……心音、でいいよ。」

 

「そんな、ダメですよ。明らかに心音さんの方が年上なんですから。」

 

なんか、大人しくなっちゃったわね……。

 

「じゃ、行こ?私達の家に。」

 

「は、はい。」

 

私と真は病院を出た。

 

 

 

 

会社に戻ってきた。

 

「ここだよ。私達の家で……仕事場。」

 

「ここ……か。」

 

真は会社の看板を見つめる。

 

「どう、かな?」

 

「なんか………懐かしい感じがします。」

 

「そっか。」

 

よし。少し前進かな。

 

「じゃ、入ろっか。」

 

私はドアを開けて、真と一緒に足を踏み入れた。

そして、中のオフィスへ。

 

「心音さん‼︎真さん‼︎」

 

実緒が駆け寄る。

 

「ただいま。」

 

「真さん、大丈夫ですか……?」

 

「身体は大丈夫。記憶が戻るのは時間の問題だって。」

 

私の説明に、実緒は少し落ち込む。

 

「そうですか………。」

 

「まことお兄ちゃん……きおくそうしつ?」

 

実緒の後ろで、リコちゃんが言う。

 

「うん………そうね。」

 

「あの………この娘たちは?」

 

真が問う。

 

「あぁ、この黒髪のツインテールの娘はうちの会社のイニシエーターの川野 実緒ちゃん。もう1人の娘はリコちゃん。うちで保護してる娘よ。あなたが彼女を、暴行を受けていたところを助けたの。」

 

「俺が………そう、なんですか?」

 

「うん、そうだよ。」

 

「そうなのか……ごめん、思い出せない……。」

 

落ち込む真。実緒は真の手を握った。

 

「大丈夫ですよ‼︎焦らず行きましょうよ、ね?」

 

そして、笑顔を見せる。

 

「あ、あぁ……。」

 

やはり一度には戻らない、か。

私は昼食の支度に取り掛かった。

何にしようかな……やっぱこういう時って、真の大好物だった物を作ってあげれば…記憶が戻ったりとかって、するのかなぁ?

真の大好物……オムライス、か。

 

「よしっ。」

 

私は冷蔵庫から卵、ケチャップ、鳥肉、その他の野菜とバターを取り出し、フライパンに火をかけバターを投入し、それを溶かす。確か、炊飯器に余っていたご飯が…四人分はあったよね。

私は炊飯器を開ける。うん、あった。

私はバターで鳥肉を炒める。

 

「……………」

 

真が興味深そうにキッチンを覗き込む。

 

「? どうかした?」

 

「あの、なんか、手伝いましょうか?」

 

あ、真だ。やっぱり真だ。

真はいつも、聞いてきていた。「手伝おうか?」と。

私は少しホッとした。記憶が無くなっても、真は真なんだ。

 

「じゃあ、このボウルに卵溶いて、牛乳をこのカップにいれて、軽くでいいから混ぜてくれないかな?」

 

私は、ボウルに卵を8個、計量カップを入れ、冷蔵庫から牛乳を取り出した。

 

「あ、はい。」

 

真は卵を割り混ぜはじめ、私が指示した通りにした。

あ、手際もいい。やっぱ真だ。

私はそれをみて微笑む。

 

「? なんか、僕の顔付いてますか?」

 

「ううん、大丈夫だよ。」

 

そうこうしているうちに、チキンライスが出来上がった。

私はそれを器に移して、フライパンに卵を流し、薄焼き卵を作った。そして、それでチキンライスを包む。これを四人分………っと。

 

「出来たっ。」

 

「あ、旨そう……」

 

仕上げにケチャップをかければ…完成。私はテーブルに四人分のオムライスを持って行く。

 

「わぁ‼︎オムライス‼︎」

 

実緒とリコちゃんの目が輝く。

 

「久々に作ったわ〜。じゃ、どうぞ‼︎」

 

「いただきまーす‼︎」

 

「ほら、真も‼︎」

 

「は、はい……いただきます。」

 

私たちは椅子に座り、オムライスを食べ始めた。

真が一口、口に運んだ。

 

「どうかな?」

 

「……とても、旨いです。」

 

真が微笑んだ。

 

「っ⁉︎」

 

キューン……‼︎可愛い……っ⁉︎

 

「? 心音さん?食べないんですか?」

 

「………あ、うん⁉︎た、食べるよー?食べる食べる‼︎」

 

あれ?なんで赤くなってるの私?

もしかして……いやいや、ないない。

私はその感情を抑え込むかのように、オムライスを頬張った。

 

 

 

 

「心音………」

 

「ま、真………きゃっ⁉︎」

 

薄暗い密室。真は私をベッドに押し倒し、上に覆い被さる。

 

「ちょ、真………っ。」

 

「何だよ?」

 

「は、恥ずかしいよ……あんま見ないで?」

 

「何でだよ…?」

 

真は私の耳元に、優しく囁く。

 

「ホントは、見られたいくせによ……?」

 

そのまま、抱きつかれる。

 

「きゅ………っ‼︎キューン……っ‼︎」

 

 

 

「はっ⁉︎」

 

私は飛び起きた。

深夜の3時だった。

 

「ゆ、夢か………」

 

隣のベッドに、真は寝ている。寝顔を覗く。

可愛い……可愛い……っ‼︎

 

「………ちょ、ちょっとだけならいいよね……?」

 

私は真の顔に、自分の顔を近づけてみる。その距離、僅か数センチ。

 

「…………って。」

 

落ち着け、自重しろよ私っ‼︎

すぐ様顔を離した。

真はあくまでも相棒だ。そんな、感情……持っちゃダメっ‼︎

 

「………そんな、感情?」

 

あれ?もしかして、私。

真のことが……好き、なの、かな……?

 

「………ふにゃああああ〜……っ。」

 

私は枕に顔を埋めた。

これが……恋なのかな?

 

 

 

次の日。真は病院と言うことで昼間は先生の所へ。

私はある人物の元を訪ねていた。

 

「何だよ、聞きたいことって。」

 

里見 蓮太郎くんと藍原 延珠ちゃんだった。

 

「うん、あのさ……」

 

喫茶店で、二人に向かい合った状態で私は話した。

 

「……イニシエーターに恋愛感情を持つのって、ありかな?」

 

「…………は?」

 

「アリに決まっておる‼︎妾は蓮太郎のふぃあんせなのだからな‼︎」

 

「これは、こいつが勝手に言ってるだけだからな。勘違いするなよ。」

 

里見くんのその発言に、延珠ちゃんは頬を膨らませた。

 

「はぁ……イニシエーターに恋って………あんたも相当だよな。」

 

「うぅ………今年で24のこんな女が、10代の少年に恋するなんて……」

 

里見くんは頭を掻き、言った。

 

「………あんたがいいなら、いいんじゃないのか?」

 

「うん……そうだよね。結局は、そうなる、よね……」

 

私は肩を落とし、コーヒーを啜った。

そして、私は悟った。

私は……ショタコンであると。




そうだよ、心音はショタコンさ!(笑)
やっぱね、恋愛要素も重要だよ‼︎
延珠だって蓮太郎が大好きなんだから‼︎(笑)


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第24話〜恋と妄想〜

心音さんのリミッターが破壊されそうで怖い(笑)
自分でここまでやっておきながら、実はちょっと、いやかなり心配です(笑)


「ハハハ……死体愛好家でしかない私に恋愛相談とは……君も好き物だね…ハハ……。」

 

「わ、笑い事じゃありませんよっ。」

 

真の病院に迎えに行くついでに、室戸先生に相談に乗ってもらっていた私。

 

「それで?自分は俗にショタコンと言うやつではないのかと、不安な訳かい?」

 

「まぁ、そんな所です。」

 

「ふぅむ………俗に言うそう言った類の言葉の基準は曖昧だな。ロリコンにショタコン………幼女と少年……うーむ、基準は確かに難しいな。人によるだろう。逆に聞こう。君のショタコンの基準は、どの程度なのかな?」

 

「どの程度……ですか。」

 

真は今、15歳。私は24……その差、9つ。真が二十歳で、私は29……三十路⁉︎ 三十路の一歩手前⁉︎

 

「………年の差9つって、どうなんですかね?」

 

「………私は別にアリだと思うぞ?私的には、ショタコンとは二桁程年の差が離れた方が、それに値するかと…。」

 

「は、はぁ………。」

 

「まぁ、気長に頑張りたまえ。ただ……」

 

少し表情を硬くした室戸先生。

 

「ことりあそび君は、記憶喪失だ。あまり無理なことはしてはいけない。それを分かっておいてくれよ…?」

 

そ、そうか。やっぱり、第一にそこだよな。

 

「分かりました。」

 

「じゃ、頑張りたまえよ、恋する乙女。」

 

室戸先生は怪しげに微笑む。

私は何も言わず、病室を後にした。

病室を出た所で、真が座って待っていた。

 

「あ、心音さん。」

 

「おまたせ、真。」

 

「何の話……だったんですか?」

 

「あ、あぁ……まぁ、色々ね。真の記憶の話もだけど…他にもね‼︎私も色々有るのよ…えへへ。」

 

「あの……あまり無理しなくても大丈夫ですよ?」

 

心配そうな表情……キュン…ッ‼︎

はっ‼︎いかんいかん……‼︎

 

「大丈夫。無理はしてないよ?ホントに。」

 

真の頭を撫でる。

んもー、可愛いなぁ……。

 

「は、はい………。」

 

「よし、じゃ帰ろっか。」

 

私と真は横に並びながら帰路についた。

 

 

 

その日の夜。

夕飯を終え、風呂から上がった真はソファに座り、テレビを見ていた。

見ていたのは、ガストレアのニュースだった。

私は真の隣に座った。

 

「………俺、あんな奴らと戦っていたんですよね…。」

 

「信じられない?」

 

「はい………今の俺には…怖くてしょうがないです。」

 

ガストレアに関する記憶も無くしている……それ故の恐怖心、か。

 

「大丈夫だよ。今のあなたは、戦う人じゃないから…ね?」

 

「はい………。」

 

暗い表情………こんな真、見たことない。最早、気の弱い1人の男の子だ。

私は……真を思わず抱きしめた。

 

「え……ちょ、ちょっと…心音さん……?」

 

「大丈夫。あなたは、私が守るから、ね?」

 

……………ヤバい。

鼓動が速まっているのが、自分でもわかる。

どうする?この後……私は………‼︎

私の理性が崩壊しようとしかける寸前だった。

 

「こっ、こここっ、心音さんっ⁉︎」

 

実緒とリコちゃんが風呂から戻ってきた。

 

「あ………ち、違うの‼︎なんか…そう‼︎記憶を思い出させるスキンシップを…」

 

「心音さん…そんな大胆に…はぅぅぅ………」

 

実緒は回路がショートしたようだ。その場に倒れこむ。

 

「実緒おねえちゃん?大丈夫ー?」

 

リコちゃんが揺さぶる。

やれやれ………やっちゃったかも。

 

「リコちゃん……もう寝なさい…実緒は私がベッドに連れてくから。」

 

「はーい。」

 

リコちゃんは部屋に入っていった。私は実緒を抱え、部屋の彼女のベッドに寝かせた。

 

「実緒おねえちゃん、大丈夫かな?」

 

「大丈夫よ。じゃ、おやすみなさい。」

 

「おやすみなさーい。」

 

私は彼女たちの寝室の電気を消した。ドアを閉める。

そして、真に歩み寄った。

 

「ご、ごめんね?なんか変な感じになっちゃって……い、嫌だった?」

 

「………………」

 

真は胸を両手で抑え、うつむいていた。

 

「真……?」

 

「…………なんか、少しだけ思い出せたかもしれません。」

 

え?まさかの私のハグ、効果あり⁉︎

 

「ほ、ホントに?」

 

「心音さん。」

 

「うん。」

 

「俺たちって………」

 

「うんうん。」

 

「…………『恋人同士』…だったんですか?」

 

「………………うん?」

 

今、何て言った…?

こ、い、び、と………コイビト?

どうも、徳崎クリステルです……じゃなくて。

 

「あ、あの、真?私たちはあくまで仕事仲間だったわけでね?えっとね?まぁ、確かに私は真のことが好きだったのかも?しれないけどさ、何ていうかそれはえっと……」

 

「………っ。」

 

真は立ち上がり、私に抱きついた。

 

「ほぇっ⁉︎ ちょ、真⁉︎」

 

「………心音さん…。」

 

ま、待って待って‼︎ちょっと、真⁉︎

そんな大胆な……あぁ、いっそこのまま……ってバカー‼︎

 

「ま、待って…‼︎」

 

私は真の肩に手を置いて離す。

 

「あ………ご、ごめんなさい……。」

 

真はうつむく。

 

「あの、心音さん……。」

 

「も、もう寝るね‼︎おやすみ‼︎」

 

私は部屋に入り、ベッドに飛び込んだ。

枕に顔を埋め、タオルケットを頭から被る。

ヤバいヤバいヤバい……‼︎

どうしようどうしようどうしよう…‼︎

 

「好きになっちゃってる……私、真が好きになっちゃってる…‼︎」

 

私はとりあえず、深呼吸。そして、深呼吸しているうちに眠りについた。

 

 

 

 

「心音……。」

 

「真………。」

 

何故か向かい合っていた私たち。そして……真が小さい黒い箱を取り出し、それを開けた。中に入っていたのは…キラキラと輝く、指輪。

 

「心音……俺には、お前以外あり得ない……結婚しよう。」

 

「ま、真……そんな。こんなはしたない女より、もっと可愛い娘がいるだろうに……」

 

「はしたないわけないだろ……?俺の恋人なんだからよ……?」

 

そのまま抱きつかれる私。

 

「ま、真ぉ……‼︎」

 

「大好きだ、心音……」

 

「わ、私も……‼︎」

 

顔が近づく……あぁ……後少しで……‼︎

 

 

 

「………はっ‼︎」

 

私は飛び起きた。ゆ、夢か。しかしまぁ、なんてロマンチックな夢なんだろうか。

 

「うーん………」

 

私は、自問した。

 

「………妄想?」

 

 




そろそろ心音ヤバいかな?(笑)
ホントに、ショタコンとロリコンの定義ってなんでしょうか?僕は室戸さんの意見を支持しますけど(笑)


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第25話〜責任と裏切り〜

新展開です。
新たな敵が動き出しますよ‼︎


「はぁ………」

 

夕方のスーパーへ、私は買い物に行っていた。カゴを持ち、食材などを放り込んでいく。

 

「なんで、あんなことになったんだろう……?」

 

昨晩。私は真にハグをし、それにより真は、私と彼の関係が『恋人同士』だと思っている。

まぁ、嬉しく無いわけじゃないけどさ……。

 

「やっぱり、ちゃんとした真に戻ってから……はぅう〜。」

 

ダメだダメだ………ダメだぞ私。完璧に妄想の方に走ってしまっている。

 

「………心音?」

 

後ろから声。その主は……

 

「お、お姉ちゃん?」

 

私の姉、徳崎 紅音だった。

 

「にーはお〜。買い物?」

 

「う、うん。お姉ちゃんも?」

 

「今日アサリが安いってさー。ほら、今旬じゃん?だから今日の夕飯はボンゴレスパゲッティかなーってさ。」

 

「あ、奇遇。私もそのつもりだった。」

 

「おお〜、そうかそうか〜。」

 

私とお姉ちゃんは一緒に買い物をすることにした。

レジを済ませ、袋に詰めている時…

 

「心音……その、マコちゃん、大丈夫?」

 

心配そうな声で聞いてきた。お姉ちゃんには、私が真の事情を話したのだ。

 

「う、うん。身体には問題ないから。あとはいつ記憶が戻るか、かな。」

 

「そっか………ホント、ごめんね。」

 

「え?」

 

「私……職人として失格だよ。自分から、使用者の事を第一にとか言ってたくせに…私の武器のせいで、マコちゃんが………。」

 

かなり責任を感じているみたいね。無理もないかな。

 

「大丈夫だよ。お姉ちゃんは悪くないよ。」

 

「………ありがと、心音。」

 

少し表情が明るくなった。良かった。

それから私たちはスーパーの前で別れた。

 

 

 

 

「ただいま〜。」

 

「あ、おかえりなさい。」

 

真が出迎えた。よし、平常心平常心……

 

「あ、荷物運びますよ。」

 

キューン……じゃなくって………

 

「あ、ありがと。台所に運んどいてくれる?」

 

「はい。」

 

真に荷物を渡し,私は洗面台で手を洗ってからキッチンへ。

あくまでも、ノーマルに……ノーマルに、よ。

リビングでは真と実緒、リコちゃんがトランプをしていた。ババ抜きのようだ。

 

「よっし。」

 

キッチンの買い物袋の中身を冷蔵庫に入れ、アサリ、パスタ麺、ニンニクと、コンソメでいいかな。あとは、ほうれん草……うん、オッケー。

私は早速、ボンゴレスパゲッティの調理に取り掛かった。

 

 

 

 

「おいひー‼︎」

 

実緒が絶賛する。ボンゴレスパゲッティの出来は、我ながら見事な物に仕上がった。

 

「やっぱり、心音さんの料理は旨いですね。ホントに。」

 

キュン……っじゃあ、ないっ‼︎てやっ‼︎

 

「あっ、ありがとうね〜。」

 

よし、抑えたぞ。偉いぞ私。

 

「……そう言えば、心音さん。ここの社長さん、ここ最近見ませんよね?」

 

「あー……確かに。」

 

こんなに長い期間…一週間近くいないとは……今までなかったよね、こんなこと……。

 

「実緒、何か聞いてない?」

 

「それが……全く、何も。ちょくちょく連絡しているんですけど、返事がなくて。」

 

「どうしたのかな……」

 

少し、心配だった。

 

 

 

 

 

街外れの小さなバー。

信也はそこで、一人の女性と話をしていた。

 

「………まさか、あなたが戻ってくれるとは思ってなかったわ。」

 

「……烏丸 凌馬の件から、色々考えた結果…お前たちの考えを正しいと思ったよ。」

 

「嬉しいわ……大歓迎よ。」

 

「………感謝する。」

 

グラスのテキーラを口に含み、信也は怪しげに笑う。

 

「あなたの素性は?バレてないの?」

 

「当たり前だろ。俺の口の硬さ…知ってんだろ?」

 

「ふふ……まぁ、ね。」

 

女はUSBを信也に差し出す。

 

「これか。作戦のプロジェクトは。」

 

「えぇ、作戦開始よ。私たちは耐えてきた…その殻を破る時が来たのよ……‼︎」

 

「俺たちの逆襲ってかい。」

 

「全ては『オメガ』の為に。それじゃあ、よろしくね………『ファイ』。」

 

女はカウンターに万札を置いて去った。

 

「心音……実緒……お前たちには悪いが………。」

 

信也は冷たい表情のまま、バーを出た。

 

 

 

 

次の日の朝。

私、川野 実緒は明朝から出かけていた。

信也さんの自宅を訪ねるためにだ。

 

「信也さん……」

 

前から連絡してみたが、応答もない。

私は違和感を感じ、行動に移す。

信也さんは会社にいない時は、マンションの一室で生活している。

私はそのマンションのロビーのインターホンを鳴らす。

 

「………………」

 

いないのかな。もしくはまだ起きていないのか……。

 

「実緒…?」

 

背後から声。振り返る。信也さんが、黒いスーツ姿で立っていた。

 

「し、信也さん‼︎ 今までどこに⁉︎」

 

私は信也さんに駆け寄る。

 

「あぁ、少しな……古い知り合いがこちらに来ていてな。」

 

頭を掻きながら、信也さんは言った。

………嘘の仕草。私は一瞬で分かった。

こんな話し方……信也さんはしない。

 

「……何か隠してませんか?」

 

「……何?」

 

「いくら信也さんが会社に来る日は少ないとはいえ、一週間もいないのは不自然です。何か……何か隠していることがあるんじゃないんですか?」

 

信也さんは黙り込む。そして、顔を上げた。

 

「……やはり、お前に隠し事は無理だった…か‼︎」

 

信也さんはいきなり、私にスプレーを吹きかけた。

 

「っ⁉︎」

 

目が……っ‼︎催涙ガス⁉︎

私はその場に膝まづいた。そして、目が開くようになった時には……信也さんはいなくなっていた。

過去に貰った合鍵で部屋に入ったものの、武器やパソコンなどが全て持って行かれており、もぬけの殻だった。

 

「心音さんに伝えなきゃ…‼︎」

 

私は駆け出し、会社に戻った。

 

 

 

 

「社長が⁉︎」

 

実緒から話を聞いた私は驚愕した。

 

「はい。いきなり、人が変わったように……。」

 

「何があったのかしら……」

 

「分かりません。ただ、何かに関わってることは、間違いないみたいです。」

 

実緒は俯きながら話す。

 

「社長………。」

 

一体、どうしたんですか……?

 

 

 

 

薄暗い空間。そこに集まったのは……黒服を纏った、男5人と、女4人。

 

「これで、今の所の全員かしら?」

 

「あぁ、問題ない。」

 

セミロングの女の問いに、パソコンを片手に立っている男……信也が答えた。

 

「遂に我々の時代が来た。ガストレアの力を根絶やしにすべく、我々が動き出す時が……‼︎」

 

奥にいた強面の男が、両手を広げて大らかに言い放つ。

 

「民警の時代は終わり……ってとこかしら?」

 

ロングヘアの女が、爪にマニキュアを塗りながら言う。

 

「ようやく俺たちの自由が手に入るんすよね‼︎ ゾクゾクするっす‼︎」

 

見た目の幼い青年がはしゃぐ。

 

「俺たち……『ミュータント』が世界の救世主になる時が来た。全てのガストレア……そして、その因子を持つイニシエーター…呪われた子供を根絶やしにする…。」

 

信也は拳を突き上げ、言い放つ。

 

「全ては……『オメガ』のために。」

 

 




企画の当初から予定していました、信也の裏切り‼︎
明崎民間警備会社はどうなってしまうのか⁉︎
次回から新展開、本格スタートです‼︎


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〜VS覚醒す捨て子たち〜
第26話〜悲鳴と捕獲〜


かなりシリアスな展開になりそうです。
信也の所属している組織については、次回詳しく書く予定です。


実緒が事務所に戻った後、私は社長の会社のパソコンを開いた。だが、データはいつの間にか消えていた。

 

「ダメか……」

 

「信也さん……どうして…?」

 

落ち込んでいる様子だ。私は実緒に歩み寄り、その肩に手を置く。

 

「大丈夫よ。何かあるのよきっと。」

 

そう。いつか帰ってくる………。

そう思っていた私は、まだ知らなかった。

本当のことを……残酷な現実を。

 

 

 

 

「さぁてと……なぁ、このマンホールにいんのか?」

 

幼い見た目の青年が、マンホールの蓋を見下ろしながら言う。

 

「えぇ、ここに出入りする少女を見たわよ。」

 

その隣にいるのは、ロングヘアの大人びた雰囲気を醸し出している女。

 

「っし、手始めにやるか。」

 

青年がマンホールの蓋を開ける。そして、そこに放り込んだのは……爆弾。

二人はそのマンホールから距離を置く。

そして、10数秒後……

 

………ドオオオオン‼︎

 

爆発音が鳴り響く。マンホールの蓋が宙に浮いた。

 

「ヒャハハハハ‼︎木っ端微塵だぜぇ‼︎」

 

狂ったように笑う青年。

すると、他のマンホールから、爆発を逃れたであろう少女達が出てきた。

 

「逃がさない‼︎」

 

女はマシンガンを乱射し、逃げる少女達を蜂の巣にする。

その数、8人ほど。

一人、息がある少女がいた。

青年がその少女に歩み寄り、踏みつける。

 

「っ………っ……っ……。」

 

恐怖で震えながら、涙を流す。

 

「いいねぇ、その表情‼︎サイコーだぜ⁉︎」

 

青年は剣を持つ。そして、少女の右腕に突き刺す。

 

「っ⁉︎ あああああっ‼︎」

 

「ヒャハハハハ‼︎ほら、もっと泣けよ‼︎泣けっ、泣けぇえっ‼︎」

 

青年は少女の四肢を斬り落としたあと、胴体を細切れにした。

 

「きったねぇなぁ……悲鳴は嫌いじゃなかったがな。」

 

女は通信機を取り出した。

 

「こちら、『ラムダ』と『イプシロン』。エリアB7の呪われた子供を殲滅。」

 

『了解。引き続き任務を続行せよ。イニシエーターが襲撃してきた場合は捕獲をせよ。』

 

「了解よ。」

 

イプシロンと呼ばれた女は、ラムダと呼ばれる青年に言う。

 

「ここに用はないわ。次に行くわよ。」

 

「はっははーい。」

 

二人はその場を後にした……。

 

 

 

 

市街地。

イニシエーターとプロモーターが、黒服の男と戦っていた。

 

「ほらほらぁ?どうしたんだよ、民警さん?」

 

「くっ、はあああっ‼︎」

 

剣を持つイニシエーターが、その男に斬りかかる。剣は躱され、蹴りで弾かれる。

 

「きゃっ‼︎」

 

「このっ‼︎」

 

プロモーターが銃弾を放つ。銃弾は躱された。男はイニシエーターの片腕を掴む。

 

「くっ‼︎離してっ‼︎」

 

「‼︎ ユノ‼︎」

 

「はい、バーン。」

 

男はプロモーターの右足に弾丸を撃ち込んだ。

 

「ぐあっ‼︎」

 

「ま、マスター‼︎」

 

「ほら、静かにっ。」

 

男はイニシエーターの首元に手刀を入れ、気絶させた。そして彼女を担ぎ上げ、その場を去った。

 

「ユノ……ユノーっ‼︎」

 

 

 

 

発砲の音が近くで聞こえたため、私と実緒は外に出る。歩道の端で、足を引きずっている男がいた。私たちは駆け寄る。

 

「大丈夫⁉︎何があったの⁉︎」

 

「ユノが……俺の、イニシエーターが……連れ去られた……‼︎」

 

「え⁉︎」

 

イニシエーターが……連れ去られた⁉︎

 

「黒服の男が……いきなり襲ってきて………戦ったが強過ぎで……歯が立たなかった……‼︎」

 

「分かったわ……とりあえず、病院に……」

 

……ガシャアアァァァァアアン‼︎

 

「⁉︎」

 

事務所の窓が割れた⁉︎ そこから出てきたのは…

 

「うわあああああっ‼︎」

 

真が飛び出してきた。

 

「⁉︎ 真‼︎」

 

私は真をキャッチした。

 

「どうしたの⁉︎」

 

「黒服の男と、女が……‼︎」

 

その時、窓から2人の黒服が飛び降り、私たちの前に着地した。私は真を下ろし、少し後ろに下がった。

 

「⁉︎ リコちゃん‼︎」

 

女の方はリコちゃんを担ぎ上げている。

 

「お‼︎ そこのツインテールのお嬢ちゃんもイニシエーターかい?」

 

「⁉︎ だったら何よ‼︎」

 

「悪いが……俺らのとこに来てもらえないかね?」

 

男は刀を構えた。

 

「任せたぞ、『カイ』。」

 

女の方は、足早に去って行った。

 

「‼︎ 待て‼︎」

 

私はそれを追いかけようとするが、カイと呼ばれた男は刀を振りかざす。

 

「行かせねぇっての‼︎」

 

私は即座に片脚を上げ、刀を受け止めた。アンクレットを装備していて良かったな。

 

「実緒‼︎武器を取ってきて‼︎まずはこいつを片付けないと‼︎」

 

「は、はい‼︎」

 

実緒は駆け出した。

 

「てやぁっ‼︎」

 

私は刀を踏み台に跳び、回し蹴りを放つ。男は少し後ずさる。

 

「おっと……ははっ、やるじゃんかよ…‼︎」

 

再び刀を構えなおす男。私は真を横目に見た。心配そうな表情。私は安心させるための笑顔を見せた。

 

「そらよぉっ‼︎」

 

駆け出し、刀を振りかざしてくる。私は躱す。

 

「心音さん‼︎」

 

実緒が窓から銃と刀を投げた。私は飛び上がりキャッチ。着地と同時に銃弾を放つ。

 

「うおわっと‼︎」

 

男は尻もちをついた。が、すぐに立ち上がった。

 

「あっぶねー……なぁ‼︎」

 

再び斬りかかる男。私は刀で受け止めた。

そこへ。

 

「せやぁああっ‼︎」

 

実緒がランスを男に突き出す。男は距離を置いて躱した。

 

「ははっ‼︎ じゃ、こういうのはどうかな⁉︎」

 

男は銃を手に取った。

私と実緒は構える。

男の銃口は……

 

「ニヤニヤ…‼︎」

 

「‼︎」

 

真を向いていた。

 

「っ‼︎」

 

私は駆け出した。銃弾が放たれる。私は真をかばい、肩に被弾した。

 

「くあっ‼︎」

 

私は膝まづいた。

 

「こっ、心音さん‼︎」

 

「このっ‼︎」

 

実緒が男にランスを振るう。

 

「心音さん…血が……‼︎」

 

怯えたような表情。私は無理に笑った。

 

「大丈夫……っ。」

 

「きゃあっ‼︎」

 

実緒が蹴り飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

「実緒……‼︎」

 

「………っ‼︎」

 

真は駆け出し、事務所のビルに入っていった。

 

「ま、真⁉︎」

 

「おやおや……怖くなって逃げ出したぁ?ま、いいけどさ。用があるのはそこのイニシエーターの娘だし?」

 

男は実緒にゆっくり近寄る。

 

「実緒……っ‼︎」

 

私は銃弾を放つ。が、男は刀で弾く。

 

「もぉ……邪魔すんなよ〜……」

 

男はこちらに歩み寄る。

 

「く……っ‼︎」

 

ダメだ、力が入らない……‼︎

 

「真……っ‼︎」

 




大ピンチ‼︎ リコちゃんがさらわれてしまった‼︎
次回、遂に……‼︎


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第27話〜復活と告白〜

久々に、てかようやく仕上がった……
一番長くなった。てか、最後のシーンに尺取り過ぎやがな……
もう、恋愛ものになってるよ、うんwwwww
あと、一番の文字数だよこれwwwww


「はぁ………はぁ……」

 

俺は自分が使っていたらしいライフルを持っていた。かなりの重さだ。俺はこんな物を振り回していたのか………。

今の俺は戦う存在では無いのかもしれない。けど………

 

「心音さんが死んでしまうのは……嫌だ…!!」

 

俺はライフルのスイッチを押してみた。時間が表示される。なるほど、力を溜めて放つのか。そして、武器の入ったバッグを肩に下げ、俺は駆け出した。

 

 

 

 

「ふっふ〜ん。」

 

男は私の首元に刀を突きつける。

 

「くっ……!!」

 

「いいねぇ、その顔!その焦りを隠せない感じの表情!!見てて心地がいいよ!!」

 

男は器用に銃をクルクル回す。

肩に力が……!!刀を持っている方の手は辛うじて動く。けど、この男には隙がない。どうすれば……!!

 

「じゃ、終わりに……っ?」

 

…ダァン!!

 

男は刀で銃弾を弾いた。その弾丸の主は……脚に負傷を負っていたプロモーターだった。片足が震えながらも立っていた。

 

「君……ケガしてるのに無理しちゃダメだよぉ?」

 

「うるさい!民警として……お前を捕まえる!!」

 

「うざい。」

 

男はプロモーターの脚に更に弾丸を撃ち込む。

 

「ぐあああああっ!!」

 

男はその場に倒れてもがく。

 

「っ!!」

 

「さぁて、と……早くイニシエーターのお嬢ちゃんを…」

 

実緒の方を向くイニシエーター。実緒は立ち上がり、ランスを構える。

 

「抵抗しないでよ……ちょっと来てほしいだけだよぉ?」

 

「うるさいっ!!」

 

実緒はランスを振るう。男は刀で受け止める。

 

「あーもう!!」

 

男は実緒を蹴り飛ばした。実緒は吹き飛ばされ、壁に叩き付けられる。

 

「かは……っ!!」

 

実緒は気を失った。

 

「実緒!!」

 

「はい、じゃ、邪魔もいなくなったし……。」

 

ゆっくりと実緒に歩み寄る男。

 

「実緒……っ!!」

 

万事休す……なの!?

………その時だった。

 

「やめろ!!!」

 

「ん〜?」

 

男は声の方を向く。その視線の先にいたのは……

 

「!!」

 

「これ以上……誰も傷つけるな!!」

 

NHライフルを構えた真だった。

 

「真!!逃げて!!」

 

「嫌です!!」

 

真は銃口を男に向ける。

 

「はぁ……今度は何?もうめんどいんだけど?」

 

「真!!今のあなたは戦う人じゃない!!逃げて!!」

 

「確かに……俺は逃げなきゃいけない………けど!!」

 

真の表情は……覚悟を決めていた表情だった。

 

「大切な人を前にして……そんなこと、人として出来ない!!」

 

「真……」

 

「もう……うるさいなぁ!!」

 

男は駆け出す。

真はトリガーを引いた。

 

「っ!? うわあっ!!」

 

反動で真は吹っ飛び、壁に叩き付けられ……

 

「……っ。」

 

気を失った。

放たれた弾丸は、男の持っていたライフルを弾き、その銃身を破壊した。

 

「うおっ!?」

 

男は後ずさる。

 

「へぇ……中々の威力だけど、素人が使えば意味ないだろうね!勝手に気絶しちゃってさぁ!!」

 

「く……っ!!この!!」

 

私は駆け出し、刀を男に振るう。しかし、男はそれを受け止めた。

 

「もう……邪魔だっての!!」

 

私は男から腹部を蹴り飛ばされ、地面に叩きつけられた。

 

「くあっ!!!」

 

「もうさぁ……邪魔しないでよね?」

 

男は再び実緒に歩み寄り出す。

 

「実緒……っ!!」

 

 

 

 

 

…………あれ?

ここは……?

俺は目が覚めた。

………!?

実緒ちゃん!?

心音!?

危ない。皆が危ない。

 

「ははっ……なんか目が覚めたなぁ……!!」

 

俺は立ち上がる。

肩に下げたバッグの中から、二丁のマシンガンを取り出す。

そして、実緒ちゃんに歩み寄る男に、それを放った。

 

 

 

「!?」

 

男は刀で、飛んできた銃弾を弾く。が、しかし。

 

「ぐぅっ!?」

 

弾ききれず、右肩に被弾した。私は弾丸の飛んできた方を向く。

 

「!!」

 

「全く……ふぁあ…んー……なんかスッキリだわ。」

 

……………え!?

 

「お、心音。無事か?」

 

歩み寄った、その人物は……真だった。

 

「真……?記憶…が?」

 

「まだ頭いてぇな……さっきぶっ飛んで頭打ったからかな?ははっ。」

 

真は私に手を差し出す。

 

「立てるか?」

 

私はその手を握り、立ち上がる。

 

「真………!!」

 

「ここは俺に任せろ。あのプロモーターと実緒ちゃんを病院に運べ。」

 

「……うん!!」

 

私は実緒を負ぶって、プロモーターに肩を貸し、その場を離れた。

 

「真……!」

 

あとで言わないといけない事、ちゃんと言わなきゃ。

 

 

 

 

 

「貴様……よくも俺に傷つけてくれたねぇ?」

 

男は俺を睨み、刀を構える。

 

「てめぇがクズノロマなだけだ……あのくらい、躱せよクズ。」

 

「っ!!こん、のぉおおおっ!!」

 

男は駆け出し、刀を振るう。俺は後ろにジャンプしながら、両手のマシンガンを放つ。男は弾丸を刀では弾くが、追いついていない。遅すぎる。

 

「くっ!!?」

 

脚に弾丸が命中する。俺は弾をリロードする。

 

「どうしたぁ?こっちは寝起きで本調子じゃねーぞ?」

 

「くっ……!」

 

男は跪く。俺はゆっくり歩み寄り、ショットガンに持ち替える。

 

「!!」

 

「……安心しろ。死にはしないさ。死ぬ程痛いだけだ。」

 

俺は0距離で、男の両足に散弾を浴びせる。

男の脚の表面が抉れ、血が吹き出る。

 

「ぐああああああっ!!!」

 

男は脚を抑え、その場にもがく。

 

「……命だけは、助けてやる。」

 

俺はそう言い残し、武器のカバンとライフルを手に、その場を去った。

 

 

 

 

「くそ……っ!!」

 

脚を打たれた男……『カイ』は這いずりながら移動していた。

そこへ……

 

「へばっているようだな……」

 

一人の男が現れた。

 

「『ファイ』……!!」

 

「仕方が無い奴だ。」

 

『ファイ』と呼ばれたその男……信也はカイを負ぶった。

 

「酷い傷だな。」

 

「あのガキ……今度あったら叩きのめしてやる……!!」

 

信也……ファイはカイを負ぶったまま、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

「気を失っているだけだ。身体面の治療は施したよ。」

 

大学病院の地下の、室戸先生の部屋にいた。実緒とプロモーターはベッドで横になっている。私も先ほど、肩の治療を施してもらった。

 

「良かった……」

 

そこへ……

 

「失礼します…」

 

「!!」

 

真が来た。私は駆け寄る。

 

「真!!」

 

そして、そのまま抱きついた。

 

「ちょっ、おい!」

 

「おや、記憶が戻ったのかい?」

 

「あ、あぁ、はい。」

 

「ふふ……じゃ、私は少し外に出るよ…」

 

「え、ちょ、先生!?」

 

先生は外に出た。

私は真を見つめる。

 

「真……おかえり!」

 

 

 

 

「た……ただいま。」

 

俺は答えた。抱きつかれたまま。

 

「な、なんだよ、ニヤニヤして。」

 

「だって……不安だったんだもん…」

 

頬を膨らませる心音。な、何だ、この変な感じは……。

 

「ま、真……あのね。」

 

心音は俺から離れ、俺をまっすぐ見つめる。

 

「何、だよ……?」

 

……こいつの言う事は、大体分かってる。記憶を取り戻す前の記憶も、覚えてる。心音が……俺に顔を赤らめていた事。記憶失った俺、中々の鈍感っぷりだよな…。

 

「私……真の事がね…」

 

ちょっといじめてやるか。

 

「好きなのか?」

 

「はえっ!!?ななな、何で!?はっ!!真、もしかして……!!」

 

「……記憶失ったおれと、今の俺。どっちがだ?」

 

悩め悩め。俺は心の奥底で笑っていた。

 

「……そんなの、選べる訳ないじゃん。」

 

「…………え?」

 

心音は……また抱きついてきた。そして……

 

「……っ。」

 

「んっ!?」

 

………おい。

これは、どういうことだよ。

心音が。

俺に。

………キス、しやがった。

 

「私はもう、真の全部が大好きなんだもん……きゃっ。」

 

両手で顔を隠す。

 

「……馬鹿か。」

 

俺は微笑む。全く、こいつは……。

俺は心音を抱き寄せた。

 

「はにょっ!?ままままま、真!?」

 

俺は、耳元で囁いてやった。

 

「……同じく、だ。」

 

俺は離れ、心音を見つめる。

 

「真…………。」

 

「……約束する。俺がお前を、ずっと護る。」

 

「………うんっ!」

 

記憶を取り戻した俺は、リア充になった。

これからの戦い……辛くなるのは承知の上だ。

上等だ。俺は護り抜く。

大切な物を、この手で。

俺は心の奥で、そう誓った。

 

 




リア充になりたいぃぃぃぃぃぃいいいいいいっ!!!!!!!!!!
作者の悲痛な叫びですwwwww
二次元の嫁よ、こちらへきてよ!!!wwww


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第28話〜逃走と襲撃〜

ここ最近パッとしない話になっている気が…まっこと申し訳ないです。
次回からエンジンかけないとな…‼︎
よし、ファイトだ俺。


「準備は完了だ。」

 

信也……ファイは、カメラの前に立っていた。

 

「テレビ局と市街地のモニター全てをジャックできましたぜ。今すぐにでも……」

 

怪しげな眼鏡の白衣男が笑う。

 

「あぁ…………」

 

 

 

 

実緒ちゃんが意識を取り戻してから、俺たちは事務所に戻ってきた。今後どうするかを即座に話し合った。

まずは、敵の身元の調査。拠点への突入、捕獲されたイニシエーターの救出……そんなところだった。

 

「とりあえず、さらわれたイニシエーターのプロモーターに話を聞けば、何かわかるかもしれませんね。」

 

「そうね………」

 

心音はテレビをつけた。昼のニュースが流れていた。

 

『次のニュースです。昨晩………?』

 

…ザザザッ……ザザッ…ザッ……

 

映像が乱れている。

 

「? 故障か?」

 

「これ、まだ半年経ってないわよ…?」

 

『ちょ、ちょっと………な…………よ、こ……え……っ……』

 

ノイズが酷くなる。すると、いきなり画像が切り替わる。そこに映ったのは……

 

「⁉︎」

 

「し、信也さん⁉︎」

 

 

 

 

その頃、市街地では……

 

 

 

「? 蓮太郎。あのモニター、映像が乱れておるぞ?」

 

延珠が指差す。蓮太郎は見上げる。

 

「放送事故、か?」

 

段々とノイズが酷くなる。すると、画面が切り替わり、信也が映し出される。

 

「⁉︎ あれは……明崎さん⁉︎」

 

 

 

 

 

『東京エリアに住む、全ての存在に告げる。我々はミュータント……この世界の救世主だ。』

 

「ミュータント…⁉︎」

 

「真、知ってるの⁉︎」

 

「いや、知らん。聞いたことがない…」

 

『我々は耐えてきた。この時が訪れるまで、ずっと。今こそ、ガストレアを根絶やしにする時なのだ。真の平和を取り戻すためには、ガストレアを生み出すウイルス……そして、その因子となり得るものを排除すべきことから始めるべきなのだ‼︎』

 

「⁉︎ そ、それってまさか…⁉︎」

 

イニシエーターの誘拐は、そのために…⁉︎

 

『今ガストレアを狩っているのが、その因子を持った呪われた子供たちなのだ。しかしだ。彼らがガストレアを倒していれば、全てのガストレアが滅ぶのか⁉︎答えはNoだ‼︎ガストレアに変貌する危険性を孕んだ、そんな危険な者たちを、野放しにしておくわけにはいけない‼︎今こそ、皆様の協力が必要なのだ‼︎ただいまより、そのようなイニシエーター、呪われた子供の情報の提供を、市民の皆様にお願いしたい‼︎ 我々は約束しよう‼︎ ガストレアに脅かされることのない、真の平和を‼︎』

 

映像が戻った。

 

「なんてこった……‼︎」

 

「市民を味方につけるなんて…‼︎」

 

俺たちは驚愕した。そうする以外、出来なかった。

 

 

 

 

 

「見事な演説だったわよ?ファイ…?」

 

黒髪のロングヘアの女が、ファイに微笑む。

 

「……イプシロン…。」

 

「行くわよ、早速情報提供の嵐よ〜。」

 

イプシロンは、ファイに武器を投げ渡す。

 

「あぁ……分かっている。」

 

 

 

 

「逃げる⁉︎」

 

「あぁ、ここも危険だ。あいつら、民警がどこにいるか教えてくれって言ってるようなもんだろ!」

 

俺は急いで身支度をしていた。それに釣られ、心音と実緒ちゃんも支度を始める。

 

「とにかく、安全な場所を探そう‼︎民警が立ち寄る所は危険だ‼︎」

 

「じゃ、じゃあ、病院はアウトですか⁉︎」

 

「そうなるな……あと、なるべく戦闘は避けるべき、といったところか…」

 

心音がそこで、ひらめいた顔をした。

 

「じゃあ、お姉ちゃんの所にしよ‼︎ あそこ、民警の武器を作っていることは公表してないし、地味な場所にあるし‼︎」

 

そうか、その手がある‼︎

 

「決まりだな‼︎」

 

そして俺たちは事務所を後にし、人目を避けながら徳崎重工へと向かった。

 

 

 

 

 

「くっ………‼︎」

 

天童民間警備会社前。蓮太郎と延珠、木更とティナが、黒スーツを身に纏った三つ子の3人の男……ミュータントに囲まれていた。

 

「ヒャハハハ‼︎」

 

「大人しくしろよ‼︎」

 

「捕まえるんだからよ‼︎」

 

三つ子のミュータントは、右手に装備したクローの爪を鳴らす。

 

「このっ‼︎」

 

銃弾を放つ蓮太郎。しかし、銃弾は爪で弾かれる。

 

「遅いんだよぉぉおおっ‼︎」

 

襲いかかる男。

 

「はぁっ‼︎」

 

刀で受け止める木更。そのまま弾き飛ばす。

 

「ぎゃっ‼︎」

 

「に、兄ちゃん‼︎」

 

「ベータ‼︎」

 

弾き飛ばされた男に駆け寄るもう2人。

 

「お前ら……イニシエーターを捕まえてどうする気だ‼︎」

 

「それは捕まってのお楽しみだぜ‼︎ さっさ捕まれよぉっ‼︎」

 

3人がかりで襲いかかる。延珠が跳び上がる。

 

「お主らに……捕まるつもりはないっ‼︎」

 

1人の男の脳天に踵で蹴り落とす。

 

「ぐぉおおおおおっ‼︎」

 

「ガンマ‼︎」

 

「そこです。」

 

ティナがトリガーを引く。銃弾は真ん中の男の肩と右足に着弾する。

 

「ぐああっ⁉︎」

 

「に、兄ちゃん⁉︎」

 

「はああっ‼︎」

 

「うおおおおあっ‼︎」

 

1人に木更が刀を、蓮太郎が拳を叩き込む。

 

「のぶぅううううっ‼︎」

 

三つ子はその場に倒れた。

 

「何なのよ、こいつら……」

 

「蓮太郎‼︎これからどうするのだ⁉︎ここにいるのは危険じゃろう?」

 

「…とりあえず、人気の無い所でやり過ごすしかない。行こう。」

 

天童民間警備会社の人員も移動を開始した。

 

「真……心音さん………。」

 

 

 

 

 

「ケータイの電波で逆探知もあり得るよな……」

 

と、呟いてケータイの電源を切る。

俺たちは徳崎重工にいた。

 

「可能性としては、低くはないね。流石マコちゃん‼︎」

 

紅音がサムズアップする。

 

「その呼び方やめろ。」

 

「でも良かったわ〜、マコちゃんの記憶戻ってさ。私……どうしようかと思ったよ。」

 

「謝る必要は無いと、先に言っとくぞ。むしろ感謝するぜ。」

 

「……うん‼︎」

 

紅音は作業を再開した。

心音は今日の夕飯の支度。実緒ちゃんは窓の外で見張りをしていた。

俺はというと……パソコンの画面に向かっていた。ミュータントについて、だ。序列があれから上がったらしく、350位になったため、有る程度の情報を閲覧することが出来るようになった。データベースを閲覧する。

 

「ミュータント………あった、これか。」

 

俺はミュータントのデータをダウンロードし、開く。

 

「………なるほどな。」

 

そういうこと、か。

 

 

 

 

 

「……………」

 

ファイは檻の前にいた。檻の中には、捕まったイニシエーターが1人ずつ収監されていた。

 

「………。」

 

そこへ現れたのは……銀髪の赤い瞳を持った、無表情な少女。

 

「交代です。ファイ様。」

 

「あ、あぁ……。」

 

ファイはその場を後にした。

 

「………可哀想に。」

 

その少女は、どこか悲しげな顔をしていた。

 




銀髪の少女ですか?モブじゃないよ‼︎ホントだよ‼︎(笑)


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第29話〜思考と破壊〜

そろそろ片桐兄妹も出したいな(^ ^)
アニメにも出ましたしね‼︎


「新人類創造計画からプロジェクトの除外を受けた……?」

 

徳崎重工の社長室。モニターにパソコンの画面が映し出されている。

俺は心音と実緒、紅音に閲覧したことを話した。

 

「あぁ。ミュータントもかつて、新人類創造計画の一つのプロジェクトととして採り入れられる予定だった。だが、機械化兵士の方がスペック、汎用性が高かったため、そちらの方が採用され、ミュータントは見捨てられた存在になった………って訳だな。」

 

本当は菫先生のもとを訪ねるべきなんだろうが、今のこの状況……ミュータントが一般市民を味方につけているこの状況では、難しい。やはり、自分で調べるしか方法が無い……か。

 

「信也さんも……その計画に…。」

 

実緒が俯く。

 

「そもそも、そのミュータントって何なの?」

 

紅音が問う。俺は画面を切り替える。

 

「俗に言う、『突然変異体』…だな。ただし、ガストレアウイルスによるものではないらしい。外界から何らかの物質を浴びたり触れたり……とかの接触により、常人を超えた力を得た者達……とのことだ。」

 

「信也さんが……それに⁉︎」

 

紅音がそこで声を上げた。

 

「ちょ、ちょっとタンマだよマコちゃん‼︎ 信くんは確かに身体能力は通常値を超えてるけど、そんな変異したような形跡は無いよ⁉︎」

 

「………もう、変異してあの能力。もしくは力をセーブして戦っていた………その可能性もあるんじゃないか?」

 

「そんな…信くん………。」

 

紅音が落ち込む……無理もない、か。

 

「………とにかく、奴らの拠点を絞り込まないとな。」

 

俺はモニターに地図を映し出し、分析を始めた。

 

 

 

 

「くすん……ひっく………」

 

狭い檻の中に、リコは閉じ込められていた。

 

「しんやさん……実緒おねえちゃん……ここねおねえちゃん……真おにいちゃん………ぐすっ……。」

 

その檻の前に、1人の女が立ち止まった。その銀髪の女は赤い瞳でリコを見つめる。リコはそれに気づき、恐怖故に身震いする。

 

「………そんなに、怖がらないで下さい。」

 

無表情に言う女。リコは顔を上げた。

 

「…あなたは、イニシエーターではありませんね。」

 

「……わかるの?」

 

「イニシエーターは普段、赤い瞳を見せていませんが、あなたは常に瞳が赤い。あなたはただの呪われた子供…という、私の分析です。」

 

機械のような話し方をする。

 

「……おねえちゃんは、わたしたちをどうするの…?」

 

その問いに、女は答えた。

 

「私に与えられた任務は、処刑される予定のあなた方が脱走しないように見張ること。」

 

「それは…おねえちゃんの考え?」

 

女は無表情な顔を変えることなく口ごもる。

が、少しして口を開いた。

 

「………私はアンドロイドに改造されたミュータントです。私に、考えるという行為は必要ないと、インプットされています。与えられた任務をこなす。それが、私の使命です。」

 

少し悲しげな表情をした。リコは聞いた。

 

「……悲しそうなのは、何で?」

 

女は答えた。

 

「……悲しい…ですか。申し訳ありません。私は感情がよく分かりません。ですが、この話を…私の使命や存在、その事を話すと、どうやらこのような表情になってしまうようなのです。」

 

悲しげな表情で話す女。リコは見つめる。

 

「ねぇ、あなたお名前は?」

 

「……私の名前…私はミュータント『シグマ』。呼び名はシグマです。」

 

「シグマ……うん。わたしはリコ。」

 

「リコ様。かしこまりました。インプットしておきます。」

 

女…シグマは頭を下げた。

 

「……何故、私の名前など?」

 

「……シグマは、わるい人じゃないと思ったから…。」

 

「悪い……人……。」

 

この時から、このアンドロイドの思考回路は少し混乱していた。この思考回路が安定するのは、先のことである……。

 

 

 

 

とある研究室。ミュータントの科学班はパソコンと向き合いながら作業を進めていた。

 

「調子はどうだ?」

 

「順調です。プラン通りですよ、ファイ様。」

 

そこへ、一人の男が現れる。

 

「来ておったのか…ファイ殿。」

 

「………プサイ…か。」

 

プサイと呼ばれた忍者風の男は、ファイに歩み寄る。

 

「そなたが帰ってくるとはな。オメガ殿もさぞかし喜ぶことだろう。」

 

ファイは表情を変えない。

 

「俺は……オメガのために動く。オメガのために命を捧げる。それが我々、ミュータントの意志だ。」

 

「流石だ。よーく分かっておる。」

 

「……理不尽にガストレアに葬られた我々の同胞や家族のためにも…な。」

 

「これまでに、8人のミュータントがガストレアの被害に遭い、この世から去っておる。」

 

「……崩壊の因子は…破壊するのみだ。」

 

ファイは研究室を出た。その後、プサイも闇に消えていった。

 

 

 

 

 

「……………ダメだ。」

 

奴らの拠点を特定出来ない。まだデータが足りないな…。

時間は……もう5時かよ…。まぁ、寝ないのには慣れているからいいか。

俺は冷蔵庫に向かい、牛乳をコップ一杯飲み干した。そして、寝室に入る。心音が心地よさそうに眠っていた。

 

「心音…………」

 

そっか。俺、心音に告白……したんだよ、な?

形はどうあれ、あれは告白だ。じゃあ、今俺と心音は彼氏彼女ってわけで……だから………うん。

 

「このくらい……気休め程度なら、いいよな?」

 

俺は心音の寝顔に顔を近づける。寝息が顔にかかる。心地いいな…。

 

「むにゅ……ぅん。」

 

……がしっ。

 

「……え?」

 

心音は寝たまま、俺の肩を掴んだ。そして……

 

…がばっ‼︎

 

「うおっ⁉︎」

 

そのまま抱き寄せられる。

 

「ちょ、心音…」

 

「んー………真…………大好き…愛してりゅ……すかー……」

 

ね、寝言かよ………。

俺を抱きながら寝息を立てる心音。

あ、ヤバイ……これ気持ちいいかも。

心音………あったかい………。

俺はいつの間にか寝ていた。

 

 

 

 

「ふあああ………」

 

私、川野 実緒は目が覚めた。ベッドから出て、窓を覗く。特に異常はなしか。

 

「リコちゃん……信也さん……。」

 

その2人のことで、頭が一杯な私だった。昨日の話が私を混乱させていたのだ。信也さんがミュータントだったこと。

 

「ずっと、隠してたんだ……。」

 

信也さん……。

私は……あなたとは戦いたくない。

 

この時、私はまだ分かっていなかった。

それが、叶わない願いだったことを。




ようやく安定してきたかな。
とりあえず日曜は英検ですので、しばらく勉強しまーす(笑)


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第30話〜嘘と滅び〜

久々に更新です。かなり間が空いてしまいました……誠に申し訳ないです(~_~;)
ペース回復出来るよう、頑張って行きたいと思います。


「…………」

 

明け方の東京タワーの頂上。そこに腕を組んで立っている男がいた。

ミュータント「プサイ」。忍者のような格好をしており、彼のマフラーが風に靡く。

日が登る。

 

「おぉ……美しい…。」

 

微笑むプサイ。男は満足そうな顔をすると、隣のビルに跳び移った。

 

「この美しい地球を護るためにも、因子は消さねばならぬ……。」

 

プサイは風の如く走り去って行った……。

 

 

 

 

「…………ふぁ…。」

 

俺は目が覚めた。心音はまだ俺を抱き寄せたまま眠っていた。時間は……7時半か。

 

「心音、起きろ。」

 

俺は心音の腕をどかして、起き上がり、心音を揺さぶる。

 

「んー……真……ちゅ〜………ぐへへへへ……」

 

何の夢見てんだよこいつは……。

 

「はぁ………おい、心音っ。」

 

「ま、マコちゃん‼︎心音っ‼︎」

 

紅音と実緒ちゃんが入ってくる。心音は起きる。

 

「ふぁー……んー、何〜?」

 

「何じゃないわよ‼︎ 嗅ぎつけられたわ‼︎」

 

「……えっ⁉︎」

 

 

 

 

徳崎重工前。

3人の男が戦闘態勢になっていた。

その中には……ファイもいた。

 

「ここですか?」

 

巨大な銃砲を担いだ少年がファイに聞く。

 

「あぁ、そうだ。恐らく、イニシエーターが2人……」

 

「きっとあのマシンガンのガキだぜ‼︎ あの日の恨み…ここで返す‼︎」

 

剣と銃を構える男……カイが叫ぶ。

ファイは拡声器を手に取った。

 

 

 

 

「しゃ、社長‼︎」

 

窓のカーテンをほんの少し開けて、そこから覗き込む。

社長と、銃砲を担いだ少年。そして……俺と戦ったあの男か。

 

「やるしかないみたいだな……‼︎」

 

俺はマシンガンを腰のホルスター、ライフルを背中に担いだ。

それに続き、心音と実緒ちゃんも武器を手に。

すると、拡声器越しに社長が叫ぶ。

 

「大人しくイニシエーターを差し出せ‼︎ そうすれば命の保証はしてやる。イニシエーターを差し出せば、プロモーター、その他に被害は出さん‼︎無駄な抵抗は止めろ‼︎」

 

「そんな、信くん……‼︎」

 

今のあいつに何を言っても無駄だな……仕方が無い。

 

「心音、実緒ちゃん。下で待機だ。俺が上から銃撃する。その直後に突撃だ。その後、俺も加勢する。」

 

「わ、分かった。」

 

「了解です。」

 

2人は下へ向かった。俺はNHライフルのチャージを開始した。

 

「ま、マコちゃん、それ‼︎」

 

「大丈夫だ。3分なら吹っ飛ばない。」

 

俺は窓の鍵を開け、窓に手を掛け、チャージ完了の時を待つ。

 

 

 

 

 

「………反応無し、ですね。」

 

「待つのもめんどいな…おいゼータ、ぶっ放せよそのバズーカ。」

 

「カイ、落ち着け。」

 

三人は警戒する。動きが無い。

突入するか……と、ファイが思った時だった。

 

「っ⁉︎」

 

窓がいきなり開き、銃声。ファイ達の背後の地面に弾丸が着弾し、地面に巨大な穴が空く。

三人が後ろを向いた時だった。

 

「せやぁぁああっ‼︎」

 

「はぁっ‼︎」

 

心音と実緒が飛び出し、銃砲のミュータント…ゼータとカイに斬りかかる。

 

「‼︎」

 

ミュータント3人は後ろに跳んで躱す。

 

「‼︎ 実緒……心音………」

 

そこへ、真も駆けつける。

 

「真……。」

 

ファイは剣を両手に持つ。

ゼータは後ろに下がる。

 

 

 

「信也さん……‼︎」

 

私は信也さんを見つめる。そして、言い放つ。

 

「どうして………何があったんですか⁉︎」

 

「あぁん?なんだよこのが…」

 

「待て。」

 

信也さんは気性の荒そうな男を抑える。そして、一歩前に出た。

 

「……実緒。悪いことは言わない。心音や、お前が大事にしたい者達を護りたいのならば…大人しく、こちらに来てくれ。」

 

「イニシエーターを滅ぼすことが、真の平和に繋がる……そう言うんですか⁉︎」

 

私の問いに、信也さんは間髪入れずに答えた。

 

「そうだ。この世にガストレアウイルスが……それを身体に備えた因子があるから、烏丸 凌馬のような人間が生まれる……。俺はその時ようやく気付き、分かった。この世にガストレアの因子はあってはならないと……。」

 

「だからと言って、何の罪も無い人たちを巻き込むのは間違ってます‼︎」

 

「呪われた子供など、存在そのものが罪だっ‼︎」

 

「っ⁉︎」

 

そんな………信也さんが、そんなことを思っていたなんて………‼︎

 

「信也さん……操られているだけなんでしょう⁉︎ 私の知っている信也さんは……そんなこと言わないですよ‼︎」

 

「残念ながら。」

 

バズーカを担いだ、大人しげな少年が口を開いた。

 

「ファイさんは元からこの考えをお持ちでした。我々ミュータントは、あなた方民警を認可などしていない。彼がプロモーターとして民警に関わっていたのは、民警のスパイとして動いてもらっていたからです。そのお陰で、全てのイニシエーターの情報が得られました。」

 

そんな……っ⁉︎

私はその場に崩れ落ちた。

 

 

 

俺は実緒ちゃんを支える。そして、立ち上がる。

 

「つまり……お前は俺たちを利用していたと。民警の情報を得るために。」

 

「……そういうことだ。」

 

「全て……嘘ってことかよ。」

 

俺はライフルを背中に収め、ホルスターからマシンガンを取り出した。

 

「………そうだ。」

 

社長は……いや、信也は剣を構える。

 

「真、実緒。悪いことは言わない。世界のために……死んでくれ。」

 

「……いやだと言ったら?」

 

俺はマシンガンの銃口を信也に向ける。

 

「……力づくでも、捕獲する。」

 

「だったら……お断りだ‼︎」

 

俺はマシンガンを放つ。信也は銃弾を剣で弾きながら接近してくる。そして、斬りかかる。

 

「うおおっ‼︎」

 

「っ‼︎」

 

銃身で刃を受け止める。そのまま弾き、距離を置く。再び弾丸を放つ。

信也は躱す。

 

「ちっ……‼︎」

 

いつもと動きが違う……ミュータントの本領発揮…ってか。

 

「隙ありぃっ‼︎」

 

そこへ、気性の荒い男が俺に銃口を向けた。

 

「っ‼︎」

 

放たれた銃弾。その銃弾は……

 

「てやぁっ‼︎」

 

心音が刀で弾いた。

 

「ちっ……邪魔すんなよっ‼︎」

 

「うるさいわね……私の旦那に手を出すなんて、50年早いのよ‼︎」

 

心音は刀と銃を構える。

 

「誰が旦那だ。」

 

「真も嫁って言っていいのよ?ふふん。」

 

「お断りだ……実緒ちゃん。」

 

俺は実緒ちゃんを立たせる。

 

「す、すみません………。」

 

実緒ちゃんはランスを構えた。

 

「とりあえず、この場を乗り切るしか無いな…‼︎」

 

 

 

 

 

 

「かつての相棒との戦いか…これはいいドラマになりそうだ。」

 

巨大なモニターに写し出されている映像。それを椅子に腰掛け眺める男。

そこへ……銀髪の赤い瞳の女……シグマが入ってきた。

 

「失礼します。オメガ様。東京エリアの70%のイニシエーターを捕獲しました。処分の開始も、そろそろ開始出来るかと。」

 

「ごくろう……。」

 

「…………オメガ様。」

 

「何だ?」

 

「私に感情というものは、不要のもの……で、ございましたよね?」

 

「あぁ、それがどうかしたのか?」

 

椅子に腰掛けた男……オメガはシグマの方を向く。

 

「………私の表情…どう見えますでしょうか?」

 

シグマの悲しげな表情を見たオメガは、答えた。

 

「………悪くない、表情だ。」

 




色々とミュータント増やしてきてますよー(笑)
本当はローマ数字全員出そうとしたんだけど、心が折れてギブアップ……(T . T)
やっぱり私は、悪い子いらん子……www


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第31話〜代償と自覚〜

週一になっているぞ、無意識だけどさ(笑)
ここ最近は多忙なのです。申し訳ないです……(~_~;)


「このっ‼︎」

 

剣を持ったミュータントと戦う、この俺…小鳥遊 真。

両手のマシンガンの銃身とと、ミュータントの剣が接触し合う。

 

「お前だけはちょっと許せないんでな……徹底的にボコらせてもらうぜぇっ‼︎ 」

 

ミュータントは剣を振り払う。俺は距離を取り、弾丸を放つ。弾丸は弾かれる。

 

「うおらぁっ‼︎」

 

ミュータントが飛び上がり、剣を振り上げる。

そして、急降下して振り下ろす。

 

「っ‼︎」

 

俺は横に跳んで躱し、弾丸をリロード。

 

「ハハハ……今だゼータぁっ‼︎」

 

「……‼︎」

 

バズーカを持っていたミュータントは、俺に照準を定めていた。

 

「‼︎ くっ‼︎」

 

バズーカが放たれる。

俺は横に跳んで躱した。

 

「……ファイさんから聞いています。あなたが、男イニシエーターだと。」

 

バズーカのミュータントが、静かな声で言う。

 

「何だよ、物珍しいってか?」

 

「いいえ。あなた達イニシエーターなど、我々にとっては削除の対象……。興味など……微塵ほども湧きません。」

 

「ほう……言うじゃねぇか。」

 

そこへ、剣のミュータントが駆け出してきた。

 

「そう言うことだからよぉおおっ‼︎ 死にさらせぇええっ‼︎」

 

剣を振りかざす。俺は躱し、銃口をそのミュータントに向ける。

 

「遅い……と言っている‼︎」

 

俺はマシンガンを放つ。ミュータントの脚に弾丸が命中する。

 

「ぐあああっ‼︎」

 

ミュータントは脚を押さえる。

 

「この………っ‼︎ おい、ゼータっ‼︎」

 

バズーカのミュータントに叫ぶ、剣のミュータント。

 

「残念ながら、連射は出来ませんので。僕のバズーカは。」

 

「この役立たずがぁっ‼︎」

 

剣のミュータントは狂ったように叫ぶと……注射器を取り出した。

 

「⁉︎」

 

俺はマシンガンをホルスターに収め、NHライフルを構えた。

 

 

 

 

 

「はああっ‼︎」

 

私と実緒は、社長と戦っていた。私の刀と実緒のランスが、社長の刀と接触し合う。

 

「実緒……心音………悪いことは言わない。ここは俺の言うように……」

 

「あなたの……あなた達の考えは間違ってる‼︎」

 

実緒が叫ぶ。社長は私たちの攻撃を避け、距離を取る。

 

「イニシエーターだろうが、呪われた子供達だろうが……皆、生きているんですよ⁉︎ 生きている命を奪うなんて……そんなの間違ってますよ‼︎」

 

「社長。実緒の言う通りです。私たちが倒すべきなのはガストレアそのものです。その被害者とも言えるイニシエーターを殺すなんて………大量殺人と同じです。」

 

実緒の言葉に、私も口を開いた。社長は……全く表情を変えなかった。

 

「………俺たちは全てを奪われた‼︎ だから取り戻す…それだけだぁっ‼︎」

 

銃を乱射する社長。私は刀で弾き落とす。実緒もランスで弾く。

 

「家族も……仲間も……生き甲斐も‼︎ 全てを失った‼︎ガストレアに復讐したいがために、得てしまったミュータントの力を活かそうとしたのに……貴様らイニシエーターは、それを無にした‼︎ 機械化兵士も、イニシエーターも‼︎ この世には要らん……ミュータントこそ、世界を救うんだぁっ‼︎」

 

剣を構え、こちらに駆け出す。私は即座に銃を放つも、素早く避けられる。

 

「はあああっ‼︎」

 

「っ⁉︎」

 

刀が弾かれ、地面に突き刺さる。

 

「心音さん‼︎」

 

実緒が私の前に飛び出してきた。

社長が実緒に斬りかかる。

 

「‼︎」

 

ランスで受け止める。

 

「ふんっ‼︎」

 

社長は実緒に蹴りを入れる。

 

「っ‼︎」

 

実緒はその場にうずくまる。

 

「実緒っ‼︎」

 

 

 

 

 

 

「うぉらっ‼︎」

 

剣のミュータントは、自身の腕に注射器を突き刺した。そして、中の液体を注入する。

 

「カイ………それは最後の手段ということは、分かっていますか?」

 

バズーカのミュータントが見下すように言う。

 

「このままこのガキに何も出来ねーよりはマシだっ‼︎」

 

剣のミュータントは駆け出した。さっきよりスピードが早い。あの注射…ドーピングみたいなものか?

俺は躱す。ミュータントは先程よりは素早い刀裁きをしてくる。

 

「だが……お前のパターンはもう読めた。」

 

俺は後ろにジャンプした。

 

『発射可』

 

「はぁっ‼︎」

 

俺は5分チャージのNHライフルを放つ。

弾丸はミュータントの肩を捉えた。

 

「ぐああああああああっ‼︎」

 

ミュータントは吹き飛び、地面に叩きつけられた。

 

「くそ………がっ‼︎」

 

俺は剣のミュータントに歩み寄る。ミュータントの皮膚がボロボロに…腐敗している?

 

「ちくしょおおおおお………っ。」

 

剣のミュータントは動かなくなった。

 

「馬鹿な人だ。ま、力が伴っていなかったのが、一番の敗因ですか。」

 

バズーカのミュータントは静かな声で言う。

 

「仲間じゃなかったのかよ……その言い方は無いだろ⁉︎」

 

「私は、彼を仲間などとは思ってすらいなかったのですが?」

 

こいつ………‼︎

俺はマシンガンを構えた。

 

「全く……あれほど強化剤を使うなと言ったのに…馬鹿ですよね…。」

 

「強化剤……?」

 

「僕たちミュータントの強化剤です。一定時間、身体能力を上げることが出来ますが、その代償として、投与して5分以内に何らかの外傷、衝撃を受けた場合は身体の組織が崩壊する……諸刃の剣とでも言ったものですよ。」

 

俺はマシンガンの銃口を、そのミュータントに向けた。

 

「おや、あちらは決着がつきましたか。」

 

「⁉︎」

 

俺は心音と実緒ちゃんたちの方を向いた。

 

 

 

 

「っ‼︎」

 

社長は実緒の首筋に手刀を入れて気絶させ、実緒を担ぎ上げる。

 

「さ、させない‼︎」

 

私は駆け出したが、社長は私の足元に煙幕を張る。

 

「⁉︎ しま……っ‼︎」

 

 

 

「ここらで潮時ですね……また会いましょう。男イニシエーター。」

 

ミュータントは俺の足元に煙幕を張る。

 

「お、おい‼︎ くっ‼︎」

 

辺りが白くなる。

煙が消える頃には………

 

「……くそっ‼︎」

 

実緒と、ミュータントはいなくなっていた。

 

「そんな……実緒が……っ‼︎」

 

俺は心音に駆け寄る。

 

「心音………」

 

その肩に手を置く。

 

「社長、言ってた。私たちが、ミュータントの存在を無にしたって。」

 

「………そう、か。」

 

それ以上は何も言葉を交わさず、俺たちは重工に戻った。

 

 

 

 

 

「きゃっ‼︎」

 

私は檻の中に入れられた。そこにはリコちゃんがいた。

 

「実緒お姉ちゃん‼︎」

 

「り、リコちゃん⁉︎」

 

リコちゃんは私に駆け寄る。

 

「リコちゃん‼︎ 大丈夫⁉︎」

 

「うん‼︎」

 

良かった…無事で良かった。

そこへ………

 

「………」

 

一人の女が現れた。

私は檻越しに、彼女を見た。

 

「あ、シグマ‼︎」

 

「シグマ?」

 

「私たちを見張っているんだけど、私といつもお話ししてくれるの‼︎」

 

「……あなたは確か、ファイ様のイニシエーターの…川野 実緒様、ですか。」

 

無機質な声で、シグマという彼女は話す。

 

「……何故私を?」

 

「東京エリアのイニシエーターのデータの8割ほどは、私のデータベースに保存されています。」

 

「データベースって……あなた、ミュータント?」

 

「……アンドロイドに改造されたミュータント…といったところでしょうか。」

 

アンドロイドに改造された……?

 

「1度、死んだってこと?」

 

「わかりません。私の過去に関するデータは見つかりません。自分でも調べているのですが。」

 

自分でも……調べている?

 

「それって、自分がかつては人間だったかもしれないって、自覚はしているってこと?」

 

シグマは少し間を入れて口を開く。

 

「………よくわかりません。」

 

「そっか………」

 

私は少しだけ思った。

彼女は……敵じゃないと。

 

 




更新ペース上げたい……上げたいよぉっ‼︎
誰か私に時間とトキメキを下さいwwwww


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第32話〜本当の裏切りと平和〜

更新できた……そして、アニメ溜まってる……orz
とりあえず、翠ちゃんで癒されるとしましょうかなwww


「まさか、かつての相棒を檻に放り込むなんてねぇ?」

 

ミュータントのアジトのバーカウンターのような席に、イプシロンとファイが腰掛け、酒を嗜んでいた。

 

「………それが、オメガの意志だろう?」

 

「いいや。オメガだけじゃないさ……あなた自身の意志でもあるでしょう?」

 

ファイは……俯いて黙ったまま、席を離れた。

 

「やれやれ……やっぱ未練があるのかしらねぇ……。」

 

そこへ……白衣の男がイプシロンに近寄る。

 

「あら、オミクロン。頼んでおいたものは?」

 

「これだろ?」

 

オミクロンと呼ばれたその白衣の男は、アタッシュケースをイプシロンに手渡す。

 

「ありがと。どう?一緒に飲む?」

 

「……いただこうかな。」

 

オミクロンはイプシロンの隣に座る。

 

「テキーラ。」

 

「あんたはそればっかだねぇ。」

 

バーテンダーの男が笑うように言う。

 

「うるさいぞ……クスィー。」

 

クスィーと呼ばれたバーテンダーは、オミクロンの前にグラスを置く。

オミクロンはグラスを口に運ぶ。

 

「どうなの?イニシエーターの処分装置、それと新兵器の方は。」

 

「新兵器はもう仕上げた。後で取りに来い。処分装置はもう少しかかるが、明日までには何とかなる、とでも言ったところかな。パイとロー、タウが居ればその半分で済むけどな。」

 

「ま、死んだ奴のためにも頑張れよっ。」

 

クスィーがウインクをする。

 

「……無論だよ。」

 

 

 

 

 

ファイは檻に来ていた。捕らえられたイニシエーターは反抗することなく、大人しくしていた。

ファイは、そこに居たシグマに歩み寄る。

 

「ファイ様。」

 

「問題は?」

 

「特にありません。」

 

ファイはその一言を聞くと……実緒とリコ。二人がいる檻に歩み寄る。

 

「………実緒。」

 

「…………っ。」

 

実緒は鋭い視線を、ファイに向けた。

 

「………すまない。」

 

「え……?」

 

その瞳は丸くなった。

 

「実緒。俺は確かにミュータントだ。けど、イニシエーターを殺すことには、俺は賛同出来ない。俺は……身体はミュータントだが、心は民警として、ガストレアと戦いたい。」

 

「信也さん………。」

 

ファイはシグマを呼ぶ。

 

「シグマ………お前、ここを裏切らないか?」

 

「……裏切り、ですか。」

 

シグマはリコを見た。リコは強い視線でシグマを見ていた。

 

「…………恐らく、今の私にはこれまでにはなかった何かが芽生えようとしています。人間らしさ……もしそれが、その裏切りをすることでわかるのなら……リコ様が笑ってくれるなら、私は裏切りをしましょう。」

 

「あぁ……きっと分かる。」

 

ファイはポケットからケータイを取り出し、檻の中の実緒に渡した。

 

「いいか実緒。恐らく、イニシエーターの処刑は明日にでも始まる。その前に、何としてでも阻止する。まず、紅音にメールを送ってくれ。あいつらが来たところで、ここのイニシエーターを解放し、ここのミュータントを叩く。」

 

「信也さん……‼︎」

 

「頼む………シグマ、このことは……」

 

「わかっております。極秘ですね。オメガ様にも。」

 

「あぁ……頼む。」

 

ファイはその場を後にした。

 

「信也さん……事が済んだら、色々としてもらいますからね。」

 

実緒はメールを送った。

 

 

 

 

 

「場所が分かった⁉︎」

 

徳崎重工の地下の隠し部屋。そこで、俺たちは食事をしていたところだった。

 

「さっき、実緒ちゃんが信くんのケータイからメールして来たの。さっき電波を逆探知して、座標を特定したわ。」

 

モニターに地図が映る。赤い点が、その座標を指し示した。市街地の高層ビルの地下?

 

「信くんの作戦によれば、まず、マコちゃんと心音がアジトに突入。ミュータントが2人に押し寄せて来る。そうすれば、地下にいるイニシエーターの警備はガラ空きに。その間に信くんが檻を開け、イニシエーターを逃がして形勢逆転。一気にミュータント部隊を叩く…といったところね。」

 

「社長………よかった…‼︎」

 

心音が微笑む。

 

「じゃあ、早速…」

 

「罠の可能性は?」

 

俺が口を開く。

 

「あいつらの罠かもしれないぞ?信也が寝返ったふりをして、俺たちを誘導している……その可能性も十分あり得ないか?」

 

心音と紅音は黙り込んだ。

 

「どうなんだよ、紅音。」

 

紅音は……顔を上げて言い放った。

 

「………私は信じるよ、信くんを。」

 

「お姉ちゃん……。」

 

「確かに、信くんはミュータントなのかもしれない。けど、私は信じたいの。もし、信くんが私たちを騙していたら……責任は私が取る。」

 

力強い目つきだった。俺は口元を緩めた。

 

「……了解だ。お前の提案に乗るよ。」

 

「‼︎ 真……‼︎」

 

「それで?いつ突入すんだ?」

 

「どうやら、イニシエーターの処刑は明日にでも始めるみたい…時間があるとすれば……日付が丁度変わる時……。」

 

今から2時間後か……まぁ、不意を付いた突入には妥当な時間だな。

 

「よし、それまでにやることやるぜ……心音。」

 

「う、うん‼︎」

 

「今回のこの作戦は私も参加させてもらうよ。」

 

紅音が微笑みながら言う。

 

「お、お姉ちゃん⁉︎大丈夫なの⁉︎」

 

「一応、一通りの銃器の扱いなら朝飯前よ?それに、信くんの力になれれば…私はそれでいいから、さ。」

 

こういうところは、心音にそっくりだよな…流石は姉妹、か。

 

「おう、分かったよ。よし‼︎ とりあえず、身支度済ませるぞ!」

 

俺たちは突入の準備を始めた。

 

 

 

 

 

ミュータントのアジトの大会議室。全てのミュータントが席に座っていた。

 

「む…?ファイ。シグマはどうした?」

 

ミュータントのボス……オメガが口を開く。

 

「イニシエーターの見張りに回っている。一人、脱走を図ろうとした奴がいたようだ。」

 

ファイは冷静に答えた。

 

「そうか。では、会議を始める。諸君、イニシエーターの捕獲、ご苦労だった。だが、まだまだ東京エリアのイニシエーターはどこかに潜伏しているはずだ。引き続き、捜索を続けよ……。他に何か報告がある者は?」

 

「よろしいかしら?」

 

イプシロンが手を上げた。

 

「どうした、イプシロン。」

 

「……どうやら、私たちのこのアジトの情報が外部に漏れているようよ?」

 

その場がざわめく。ファイは冷静な表情を変えない。

 

「恐らく、この中に内通者がいるんじゃないかしら?私たちの中で、イニシエーターに情報を流しているものが。」

 

「ほう? それが誰か、察しは付いているのか?」

 

「いいえ……今のところは、わかってないけど?」

 

そこで、イプシロンはファイを一目みる。ファイの表情は……変わらない。

 

「ふぅむ……まぁ、よかろう。内通者がわかり次第、迅速に殺せ。」

 

それから少し話があり、会議は終わった。

 

 

 

 

 

ファイは会議の後、イプシロンと屋上に来ていた。

 

「ファイ。あなた……イニシエーターを消し去りたいなんて、考えてないでしょう?」

 

ファイは何も言わない。

 

「身体はミュータントでも、民警として戦いたいなんて、まだ思ってるんでしょ?無駄よ。私たちはこれまで、イニシエーターを…民警を潰すために作戦を起こしてきた。あなたをスパイとして民警に潜入させたのも、その作戦の一貫。今更、イニシエーターのあの娘に情が移ったとでも言うつもりかしら?」

 

「…………俺は、確かに一瞬、お前たちの考えを正しいとは思ったさ。けど、違った。多くの血を流してまで得た平和は……本当の平和じゃないだろう…?」

 

ファイは悲しげな表情で言う。

 

「俺たちは手を取り合うべきだ‼︎ イニシエーターとミュータント……その架け橋に俺はなりたい‼︎ ガストレアの因子を持っていようが、イニシエーターは怪物じゃない、人間だ‼︎ 生きている‼︎ 生きている命を奪うことなんて……間違っている‼︎」

 

「無駄よ……そんなのはねっ‼︎」

 

イプシロンは右手から電磁波を放った。

 

「ぐああああっ‼︎」

 

ファイはその場に倒れた。

 

「全く……本当は殺すところだけど……」

 

イプシロンはファイに歩み寄り、その頭に装置を取り付けた。

 

「少し、おもちゃにしてあげるわ。」

 

 




そろそろミュータント編もクライマックスですね。ちなみに、この後の戦闘には原作キャラはしばらく出てきません。出すなら多分後半かなぁ。


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第33話〜挑発と信頼〜

色々ありましたが投稿します。
とりあえずもっと色々勉強します。


時計は夜の0時ジャストを指していた。

俺と心音、紅音は高層ビル……ミュータントのアジトであろう場所の前に立っていた。ここの座標は紅音が特定したものだ。

物陰から、能力の視野の拡大で入口前を見る。特にセキュリティは働いていない。自動ドアのランプは消えている……。正面から突入は無理か。

 

「正面からは無理だな。裏口に回るしかない。あるかどうかは別として、だがな。」

 

「オッケー。じゃあ、行きましょうかね。」

 

心音はアンクレットを身に付ける。紅音も銃を手にした。

そして俺たちは、ビルの裏口に回った。案の定、入口があった。俺たちはそのドアから入り、階段を上がっていった。

 

 

 

「⁉︎」

 

モニターを監視していたのはオミクロンだった。すぐ様警報を鳴らし、通信で、他のミュータントに伝えた。

 

「非常階段に侵入者‼︎ このまま上がれば25階に到達する‼︎ すぐに撃退しろ‼︎」

 

『そう焦るな、オミクロン……』

 

「⁉︎ オメガ⁉︎」

 

モニターにオメガが映る。

 

『こうなることは想定内………どれ、ここらでゲームでもしてみよう。各ミュータントは配置につけ。出てきた侵入者は捕獲せよ。』

 

「ゲーム、だと……?」

 

オミクロンは困惑するだけだった。

 

 

 

「ここは25階か。」

 

階段を登り終わり、ドアの前に立つ。

 

「お姉ちゃん、ここって30階建てだよね?」

 

「えぇ、さっき確認したけど、間違いないわ。」

 

なら、この先にミュータントが待ち構えている可能性は大いにある……か。

 

「行くぞ……」

 

俺はドアに手をかけ、ノブをひねる。

そのままドアを押し込んだ。

 

「⁉︎」

 

広い空間。奥の方に階段。

その手前に立つ、3人の三つ子の男。

 

「出たな侵入者ぁっ‼︎」

 

「俺たちが嬲り殺しにしてやるぜぇ⁉︎」

 

「かかってこ……っ⁉︎」

 

その3人は、その場に崩れ落ちた。

その背後にいたのは………青いツインテールの少女。

その右手には剣が。

 

「はいはーい、ザコさんは引っ込んでてくださいねー?」

 

和ロリ……といった服装か、その少女は剣をクルクルと器用に回す。

 

「んーと……あ、そっかそっか‼︎ ファイの駒か‼︎」

 

「駒……ですって⁉︎」

 

紅音がバズーカを構える。

 

「ま、どーでもいーけど…ファイは裏切ってんのバレて、今は私たちの駒だしねー‼︎」

 

「な、何⁉︎」

 

「なんかー、何かやろうとしてー、バレたんだってー、あははー‼︎笑っちゃうよねー⁉︎」

 

その少女は嘲笑う。

 

「貴様………‼︎」

 

「と言うわけで……このあたし、デルタちゃんがお相手しまーす‼︎ どーする?サシ?それとも全員でかかってきちゃうー?」

 

足で、男のミュータントを踏みつけながら刀を構えるデルタ。

 

「この……‼︎」

 

俺が構えた時だった。紅音が一歩前に出た。

 

「お姉ちゃん……?」

 

「……わたしがやる。」

 

紅音はバズーカを下ろし、バッグからトンファーを取り出し、装備した。

 

「んー?お姉さんが相手するのー?いーよ‼︎勝つのはデルタちゃんだし‼︎」

 

挑発的な笑みを浮かべるデルタ。

 

「あんた……それ可愛いって思ってやってる?」

 

「えー?当たり前じゃーん。だってデルタちゃんは可愛いんだもんっ。」

 

紅音はその言葉に返すかのように……右手でデルタに挑発した。

 

「あんたみたいな内面クズに……負けるわけないのよ、このぶりっ子気取り。」

 

「っ⁉︎ この………デルタちゃん、おこだよぉっ‼︎」

 

デルタは駆け出し、剣を紅音に振るう。紅音はトンファーで剣を受け止め…

 

「はっ‼︎」

 

華麗にサマーソルトを決めた。デルタはよろける。

 

「いっ………てぇな、こんちくしょうがっ‼︎」

 

デルタは声を荒げ、剣を振るう。紅音は的確にそれを受け止める。

 

「甘いのよ………全部っ‼︎」

 

裏拳ばりにトンファーをシグマな叩きつける紅音。シグマは吹っ飛び、地面に叩きつけられる。

 

「かはっ‼︎ この……っ‼︎ 何でよ……ただの人間が………ミュータントに負けるなんて……っ‼︎」

 

「どうしたの?その程度?」

 

「うる……っさい‼︎」

 

そこへ………男が現れる。そいつは……

 

「‼︎ ゼータ……‼︎」

 

大人しい雰囲気を醸し出したミュータント…ゼータはデルタに歩み寄る。

 

「おや、苦戦を強いられているようですね?たかが人間に。」

 

「…‼︎うるさぁいっ‼︎」

 

デルタは強化剤を取り出す。

 

「たかが人間相手に強化剤を使うとは……あなたも落ちたものですねぇ?」

 

「……〜っ‼︎ 黙れぇぇええっ‼︎‼︎」

 

デルタは……ゼータに強化剤を打ち込んだ。

 

「んなっ⁉︎ あ、あなた、何をっ⁉︎」

 

「デルタちゃんの気に入らないものなんて……要らないのっ‼︎」

 

ゼータを斬り裂くデルタ。ゼータはその場に崩れ落ち、皮膚がボロボロになっていく。

 

「貴様ぁ……っ‼︎」

 

ゼータはそのまま動かなくなった。

 

「何してるんだよ……‼︎仲間じゃないのかよ‼︎」

 

「こんなやつ仲間じゃない‼︎デルタちゃんの仲間は、デルタちゃんのことをわかってくれる人だもん‼︎」

 

「てめぇ……‼︎」

 

俺はマシンガンを構える。

 

「面倒よ……あんたら全員、斬り刻んでやるっ‼︎」

 

デルタは駆け出し、斬りかかってくる。

 

 

 

その頃、地下牢では………

 

「……ファイ様からの指示がない…。」

 

シグマが、ファイからの連絡を待っていた。

 

「信也さん………」

 

「………………」

 

 

 

『もし、あなたのその考えが失敗したらどうするのですか?』

 

『……お前の好きにしろ。』

 

『………私に全てを任せると?』

 

『出来るさ。お前は人間だったんだろ?』

 

『………………』

 

『……信頼してくれ、俺を……実緒たちを。』

 

 

 

 

「……実緒様。」

 

シグマは……鎌を手に取った。

 

「シグマ⁉︎」

 

「……少し下がっていて下さい。」

 

「わわっ‼︎ちょ、待って待って…」

 

実緒はリコとともに下がった。

 

「‼︎」

 

シグマは鎌を振るう。全ての檻が斬られる。実緒とリコは檻を出た。それにつられ、他のイニシエーターも外に出る。

 

「武器はそこにあります。」

 

シグマの指差した先にはロッカー。実緒はそれを開く。武器が入っていた。実緒はランスを手に取る。

 

「皆は安全なところへ‼︎ あとは私達でなんとかするわ‼︎」

 

実緒は駆け出し、地下牢を出る。それにシグマも着いてきた。走りながら、実緒はシグマに声を掛ける。

 

「シグマ……あなた、ミュータントなのに…なんで?」

 

「……ファイ様は、私の好きにしろ、とおっしゃいました。その指示に従ったまでです。」

 

「シグマ……」

 

「私は、今のオメガ様の考えには賛同できません。私は悲しいという感情を感じたくありません。」

 

実緒は微笑んだ。

 

「……素敵ね、とっても。」

 

2人はエレベーターに乗り込んだ。

 

 




もうちょっと長引きそうですね……(^^;;
なんだかんだで閲覧数25000突破しました。
ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。


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第34話〜見栄と舞踊会〜

色々と詰まっていましたが、何とか復活出来そうです。忙しかったもので……( ;´Д`)


「はあああっ‼︎」

 

デルタの剣が空を斬る。心音はそれを身を低くして躱し、逆手刀を振るう。

 

「てやぁあっ‼︎」

 

剣で受け止めるデルタ。援護と言わんばかりに、俺はマシンガンを放つ。

 

「くっ‼︎」

 

デルタは距離を置き、弾丸を躱す。そこへ紅音が追い打ちにと、トンファーで裏拳を叩き込む。

 

「さぁああいっ‼︎」

 

「かはっ⁉︎」

 

デルタは吹っ飛び、地面に叩きつけられる。が、すぐに起き上がる。

 

「まだまだ……っ‼︎」

 

デルタはもうフラフラだった。こちらの勝ちは決まったものだ。

 

「まだやるのか?」

 

俺は銃を下ろした。

 

「当たり前……でしょ………っ。」

 

デルタはまた倒れ、気を失った。紅音の裏拳が効いたのだろう。

 

「こいつはもういいわね……」

 

「行きましょ。」

 

俺たちは階段を駆け上がった。

 

 

 

 

「あたしはまだ……っ‼︎」

 

デルタは剣を杖にして立ち上がろうとする。

 

「戦える……もん……っ‼︎」

 

そこへ……デルタを踏みつける男が現れた。

 

「っ⁉︎」

 

「おいおい……諦めが悪りぃなぁ……ん?」

 

「ラムダ……っ‼︎」

 

デルタを踏みつける男……ラムダは、その手に剣を握っている。

 

「ザコは引っ込んで……だろ?だったら……お前も消えないとな?んん?」

 

「ま、待って、ラムダっ‼︎ ヤダっ‼︎ 死にたくないよっ‼︎」

 

「んあぁ……っ。タマラねぇ声で泣くじゃねぇか……もっと聞かせろよぉっ‼︎」

 

ラムダは……デルタの右足を斬り落とした。

 

「っ‼︎ キャアアアアアッ‼︎‼︎」

 

「ヒャッハッハッハッハー‼︎もっとだぁ…もっと泣けよぉっ‼︎えぇっ⁉︎」

 

ラムダはそのあと、デルタの四肢を斬り落とした後、首を斬り落とし、それを肉片に変えた……。

 

「さぁてと? オミクロンから分捕ったコイツの出番だなぁ……‼︎」

 

その手に握っていたのは……ガス爆弾。地下のイニシエーターを殺すために、オミクロンが作ったものだ。

 

「ヒヒッ……世界なんてどーでもいい……俺が聞きてぇのは……悲鳴だ。」

 

ラムダは返り血を浴びたその身で、ゆっくりと歩き出した。

 

 

 

 

 

その頃の研究室。そこの壁には……

 

「……………」

 

血みどろのオミクロンが磔になっていた……。

 

 

 

 

 

「地上か……」

 

エレベーターは地上までのようだ。私…川野 実緒はシグマと共に行動していた。

 

「シグマ。ここの最上階に、ボスがいるの?」

 

「はい、間違いないでしょう。今のところ、セキュリティは働いていません。エレベーターは使えませんので、階段で駆け上がっていくしかないですね。」

 

「わかった。」

 

私たちは階段へ駆け出す。

その時だった。

 

…カツーン…カツーン……

 

足音が響く。私たちは脚を止める。

階段を降りてくるその人物……姿が現れる。

 

「おやおやぁ?何でイニシエーターが脱走してんのかなぁ? おいシグマぁ…?まさか……てめぇ…」

 

「ラムダ様………その返り血は?」

 

「へっ……ザコを消しただけさ。」

 

私はランスを構える。その隣でシグマも鎌を構えた。

 

「なんだよ、歯向かうのか?俺に?」

 

「……今の私はあなた達の考えに賛同できません。私のデータには、犠牲を払ってまで掴んだ平和は、本当の平和ではない……という考えを真として認識しております。よって、オメガ様の考えは偽と認識いたします。」

 

「この…シリコン女がぁっ‼︎」

 

その男…ラムダは駆け出し、剣をシグマに振るう。シグマは剣を鎌で受け止める。

 

「この……っ‼︎」

 

「戦闘能力はあなたより上です。」

 

鎌で剣を弾き、蹴りを入れるシグマ。

 

「ぐおおおっ‼︎」

 

吹っ飛ぶが、体制を立て直すラムダ。

 

「ぐっ……らぁああっ‼︎」

 

再び駆け出すラムダ。私はシグマの前に立つ。ラムダが剣を振り下ろす。私はランスで受け止める。

 

「この……ガキがっ‼︎」

 

剣に入る力が強くなる。私は弾き、ランスをラムダに叩きつける。

 

「てやっ‼︎」

 

「うおおおおっ‼︎」

 

ラムダが吹っ飛ぶ。起き上がり、剣を構える。

 

「何故だ……俺がっ⁉︎ イニシエーター如きにっ⁉︎」

 

「言ったはずです。戦闘能力はあなたより上なのですよ?」

 

「この……っ‼︎」

 

ラムダは自分の腕に注射器を突き刺した。

 

「⁉︎ シグマ…あれは⁉︎」

 

「ミュータント用の強化剤です。投与してから5分間は身体能力が向上しますが、その時間内に外傷や衝撃を与えられると、使用者の身体が崩壊します。」

 

「なるほど……諸刃の剣…ってやつね。」

 

「うおらぁっ‼︎」

 

剣を振り下ろすラムダ。私とシグマは躱す。そして、2人息を合わせ……

 

「はあああっ‼︎」

 

「‼︎」

 

ラムダの身体を斬りつけた。ラムダは吹っ飛び、壁に叩きつけられる。

 

「ぐおおおおおっ‼︎‼︎」

 

私はラムダに歩み寄る。皮膚がボロボロになっていく。

 

「何故だ……俺が…この、俺が………っ‼︎」

 

「あなたは強くありません。あなたは、自分より弱き者だけを相手にし、それを倒していた……。」

 

シグマがゆっくりと歩み寄る。

 

「あなたは見栄を張っていただけです。弱者を責めることしか出来ないあなたは……強者のハズがない。」

 

「くそ……が……っ。」

 

ラムダは動かなくなった。

 

「行きましょう、実緒様。これ以上……理不尽に命が消えるのは…」

 

「分かってる……行きましょ。」

 

私とシグマは階段を駆け上がった。

 

 

 

 

 

「よし……っ‼︎」

 

26階に到達。待ち構えていたのは……大人びた雰囲気を醸し出す、ロングヘアの女。

 

「あら、予想より早かったわね。所詮はデルタちゃんってわけか。」

 

女は背伸びをし、あくびをする。

 

「あ、私はイプシロン。よろしくねっ。」

 

「余裕ぶっこいてるとこ悪りぃが…そんな余裕でいいのか?」

 

俺はマシンガンを構える。

 

「えぇ。だって、余裕が無くなるのはあんたらの方なんだし…フフッ。」

 

怪しく笑うイプシロン。右手を怪しく動かし始める。

 

「出番よ……ファイ?」

 

「なっ⁉︎」

 

「⁉︎」

 

「そんな……っ⁉︎」

 

物陰から出てきたのは……信也だった。頭に奇妙な装置を付けられている。デルタの言ってたことはこう言うことか……っ‼︎

 

「裏切り者は処刑だったんだけど、殺すのも勿体無いから実験台になってもらったの……素敵でしょ?」

 

「貴様……っ‼︎」

 

「さぁ、始めるわよ……可愛いお人形さんの舞踊会を‼︎」

 

 




ヴァン○ードのペイ○ムーンみたいなセリフになっちゃったイプシロンさん(何故伏字www)。
あと4〜5話位かな…ミュータント編は。


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第35話〜恐怖と覚悟〜

そろそろフラグ回収に入りましょうかな(笑)
かなり建設しまくったからですね(笑)


「くっ‼︎」

 

襲いかかる信也。俺は躱す。躱したところに攻撃を放たれ、俺は怯む。

 

「く……っ‼︎」

 

「社長‼︎」

 

心音が駆け出し、斬りかかる。信也は剣で受け止める。

 

「目を覚まして下さい‼︎ 社長‼︎」

 

「無駄よ? 今の彼なんて、所詮は操り人形なんだしねぇ?」

 

イプシロンが勝ち誇ったように笑みを浮かべる。

くそ……どうすれば…っ‼︎

 

「信くん‼︎」

 

「きゃあっ‼︎」

 

心音が吹っ飛ばされる。紅音が駆け出し、裏拳を叩き込もうとする。

信也は剣で弾き、蹴り飛ばす。

 

「かは……っ‼︎」

 

紅音は吹っ飛ばされ、気を失った。

 

「お姉ちゃん‼︎」

 

「くっ‼︎このっ‼︎」

 

マシンガンを放つも躱される。

 

「ここで終わりよ……勇敢な民警さん達?」

 

「ふざけんな…‼︎」

 

心音が立ち上がる。

 

「真……‼︎」

 

「イプシロンっていうあいつを何とかしないと…っ‼︎」

 

イプシロンは余裕のある表情を浮かべてくる。

 

「さぁ……そろそろ終わりにしましょうか…‼︎」

 

その時だった。

 

「⁉︎」

 

イプシロンに向かって何かが飛んでくる。イプシロンは咄嗟に信也を操作し、剣で弾かせる。

飛んできた物体が、俺たちの目の前に突き刺さる。それは……実緒のランスだった。

 

「これは……っ‼︎」

 

後ろから足音。俺と心音は振り向く。

 

「……シグマ。」

 

「はい。イプシロン様がファイ様を操っているようです。頭部の装置を破壊。もしくはイプシロン様を撃破で、解除される模様。」

 

「分かったわ…‼︎」

 

俺たちの前に……実緒と、鎌を持った女が現れた。実緒はランスを引き抜く。

 

「遅れてすみません、真さん、心音さん。」

 

「ここは私たちにお任せくださいませ。後でお二方の後を追いますので。」

 

「シグマ………あんた、ホントに裏切るつもり⁉︎」

 

イプシロンの問いに、鎌の女…シグマは、無機質な声で答えた。

 

「当然です。私はあなた方の考えを偽としているわけですから。」

 

「真さん、早く‼︎紅音さんは私たちが何とかします‼︎」

 

「真。」

 

心音が頷く。よし。

 

「わかった……頼む‼︎」

 

俺と心音は階段を駆け上がった。

 

 

 

「信也さん……‼︎」

 

ランスを構え、私は彼を見つめる。

 

「あなたは私を、何度も守ってくれました。今度は……私があなたを守る番です‼︎」

 

「小賢しい…っ‼︎」

 

信也さんが駆け出し、斬りかかる。シグマは鎌で受け止め、柄で殴りつける。

 

「っ‼︎」

 

怯む信也さん。私はその隙にイプシロンのもとへ駆け出し、ランスを突き出す。

 

「‼︎ ちっ‼︎」

 

後ろに跳んで躱すイプシロン。

 

「このガキ……調子に乗ってぇっ‼︎」

 

イプシロンが銃を放つ。私はランスを振るい、弾丸を弾く。

 

「シグマ‼︎」

 

「了解。」

 

信也さんの動きが止まる。シグマは駆け出す。

 

「はぁっ‼︎」

 

私はイプシロンにランスを突き出す。

 

「ちっ……‼︎」

 

イプシロンは躱し、信也さんを動かした。信也さんはシグマの攻撃を避け、イプシロンの元へ跳んできた。

 

「こうなったら……‼︎」

 

イプシロンは……強化剤を取り出した。

 

「⁉︎」

 

まさか、信也さんに⁉︎

 

「これで攻撃出来まい‼︎くははは……」

 

 

 

 

 

その頃の地下牢では……。

 

「…………」

 

リコ達が隠れていた。リコ以外のイニシエーターのほとんどは、その場から逃げだした者たちもいた。そこにいたのは、リコを含め3人ほどだった。

 

「実緒お姉ちゃん……。」

 

リコは牢屋の中の蛇口を捻り、手に水を注いだ。

 

「⁉︎」

 

リコの中で……何かが動いた。そんな感覚を覚えたリコ。

 

「え……?」

 

リコは鏡を見た。瞳の赤さが……無くなっている。青い瞳が映っていた。

 

「何で……?」

 

「きゃあああっ‼︎」

 

「っ⁉︎」

 

イニシエーターの悲鳴。リコが振り向くと、そこには2人のイニシエーターが倒れていた。

 

「ダメではないか……牢から出てきては……。」

 

「‼︎」

 

リコの目の前に現れたのは……忍者のような姿をしたミュータント、プサイだった。

 

「こうなってしまっては仕方があるまい……その命、頂こう。」

 

プサイはリコの方を向き、刀を引き抜いた。

リコは恐怖で壁を背に座り込んでしまった。蛇口から水は出たままで、辺りが水浸しになる。リコの脚と手が水に濡れる。

 

「実緒……お姉ちゃん……助けて………」

 

 

 

 

 

 

「ここか……」

 

28階にやってきた。27階には何もなく、そのまま通ってきた。そこには……2人の人物が待ち構えていた。

 

「なぁ、ユプシロン。俺たちが最後の壁……なんだよな?」

 

男の方は手にライフルを持っている。

 

「そうだが、何か問題があるのか?」

 

女の方は腕組みをして立っている。

 

「いや、責任デカイなぁ……と。」

 

「そうやってビクビクしているから、貴様は所詮はバーテンダーに回されるんだ。」

 

「おぅふ……言うねぇ……。」

 

2人は身構えた。

 

「と言うわけでお二方? ここからは、この俺クスィーとユプシロンがお相手するぜ?」

 

「私たちと似たような戦闘スタイルね…」

 

心音が刀を引き抜く。俺もNHライフルを構え、チャージを始めた。

 

「サポートは任せろ。お前はあの女の方と戦え。」

 

「りょーかい、ダーリン。」

 

「誰がダーリンだ。」

 

「いーじゃん、嬉しいくせに〜。ん?」

 

「ったく……」

 

俺は手始めにライフルを放つ。

 

「⁉︎」

 

ミュータントは躱した。

 

「あぶねぇ……死ぬとこだったぜ。」

 

「はぁっ‼︎」

 

心音が女のミュータント…ユプシロンに斬りかかる。ユプシロンは拳で刀を受け止めた。手にはグローブが装着されていた。

 

「ふんっ‼︎」

 

心音の腹部に左ストレートが入る。

 

「っ⁉︎ かはっ……‼︎」

 

心音はその場に崩れ落ちた。

 

「心音っ‼︎」

 

「そこだなっ‼︎」

 

クスィーがライフルを心音に放とうとする。

 

「させん‼︎」

 

俺はマシンガンをクスィーに放つ。

 

「うおっ‼︎」

 

「心音っ‼︎」

 

 

 

 

「大したことはなさそうだな……‼︎」

 

私は即座に立ち上がり、ユプシロンに蹴りを叩き込んだ。

 

「なっ⁉︎」

 

片手で受け止められた。そのまま持ち上げられ…

 

「はぁっ‼︎」

 

地面に叩きつけられる。

 

「がっ‼︎」

 

私は吹っ飛ぶ。

 

「そんな……っ‼︎」

 

「どうしたの?それが本気かしら?」

 

歩み寄るユプシロン。私は……覚悟を決めた。

今までの闘い方ではこいつは倒せない。

 

「やるしかない……‼︎」

 

 

 




よしよし、いい感じ。
この調子と勢いをキープしますぞ‼︎


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第36話〜涙と覚醒〜

フラグ回収しました(笑)
いやぁ、書き過ぎて文字数が過去最高にwww


「さぁ……終わりにしてあげるわ‼︎」

 

イプシロンは注射器を振り下ろした。

 

「……‼︎」

 

「な、何っ⁉︎」

 

信也さんは……右手でイプシロンの注射器を持った腕を掴んだ。

 

「し、信也さん‼︎」

 

「イプシロン………お前の、好きには……させ…んぞ…っ‼︎」

 

「こいつっ‼︎」

 

イプシロンが信也さんに電磁波を放つ。

 

「ぐおおおおっ‼︎」

 

「このっ、離せっ‼︎このっ‼︎」

 

掴んだ腕は離さなかった。信也さんが叫ぶ。

 

「実緒っ‼︎ やれっ‼︎ 俺諸共‼︎」

 

「えっ⁉︎」

 

私は驚愕した。信也さん…諸共⁉︎

 

「今しかない‼︎ 俺の身体が、電磁波で…ぐあああっ‼︎ き、消える前に…っ‼︎」

 

「させるか、このっ‼︎このっ、このっ‼︎」

 

電磁波が強くなる。

 

「ぐあああっ‼︎ 実緒……実緒ーっ‼︎」

 

段々と、信也さんの身体が消えかかっている。

 

「実緒様……やるしかありません。仮にここでイプシロン様を狙ったとしても、盾にされる可能性があります。そうなれば元も子もありません。」

 

「シグマ⁉︎」

 

「……ようやくわかった感情を使います。辛いのは私も一緒です。」

 

無表情な顔に合わない、意思のこもった声。

 

「信也さん……っ‼︎」

 

私はランスを前に突き出したまま、駆け出す。

 

「はあああああああああああああっ‼︎」

 

ランスの先は……信也さんとイプシロンを貫いた。

 

「うあああ……っ⁉︎ ファイ…ぃいいっ‼︎」

 

「……実緒……っ…。」

 

私はランスを引き抜いた。イプシロンが倒れる。倒れそうになる信也さんを、私は支えた。

 

「信也さん⁉︎」

 

私は信也さんを揺さぶる。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……っ‼︎」

 

私は涙を流す。信也さんは力なく手を伸ばし、私の頬を撫で、指で涙を掬う。

 

「いいんだ………これで……っ……」

 

私は信也さんを抱きしめた。

 

「すまないな、実緒………。お前には色々と……迷惑を…かけてしまった……。」

 

「何言ってるんですか……私達、ペアじゃないですか。迷惑だなんて……思ってませんよ…?」

 

「優しいな………お前って、奴は………」

 

涙を流す信也さん。

 

「信也さん……」

 

「ありがとう………会社を……明崎民警を……頼む、ぞ……っ。」

 

「信也さん……?」

 

「ありがとう……実緒………っ。」

 

信也さんの瞳が閉じた。

 

「信也……さん………?」

 

私は信也さんを揺さぶる。

 

「信也さん?ねぇ……信也、さん……?信也さん…信也さん‼︎」

 

シグマが私の肩に手を置いて、悲しげな表情で言った。

 

「心拍が停止しています。残念ですが……イプシロン様の電磁波の影響が一番大きいかと。」

 

「そんな……嫌……嫌っ……‼︎」

 

私は……泣き叫んだ。信也さんの亡骸を抱きしめながら、大きな声で、涙を流しながら。

 

 

 

 

 

「さぁ……逃げ場は無いぞ…?」

 

地下牢。リコはプサイに視線を向けられていた。リコは恐怖のあまり立つことが出来なかった。

 

「実緒……お姉ちゃん……‼︎」

 

「無駄だぞ……助けなど、来ない。」

 

リコは目を見開いた。

 

「助けなんて……来ない……?」

 

「そうだ……お主に出来るか?戦うことが。まぁ、その弱腰では無理か?」

 

「私は………」

 

リコは……立ち上がった。

 

「ほう……?」

 

リコは……拳を固めた。

 

「私は………‼︎」

 

「ほう……?やるというのか…?」

 

プサイはクナイを取り出した。

 

「では……参るぞ‼︎」

 

プサイはクナイを投げる。

リコは……床を滑るようにそれを躱した。

 

「何っ⁉︎」

 

リコは身構える。その足元は……水に浮いている。まるで水面のアメンボのように…。

 

「これが……私の力……」

 

「おのれ……っ‼︎」

 

プサイは駆け出し、刀を振るう。

リコは素早く躱す。

 

「バカなっ⁉︎ 拙者の攻撃を…っ‼︎」

 

「はぁ……はぁ………っ。」

 

リコはプサイをまっすぐ見つめる。そして、武器庫を見る。一挺のハンドガン……ひとつだけ、そこにあった。

 

「この…っ‼︎」

 

プサイが再びクナイを投げる。リコは躱し…武器庫のハンドガンを手に取り、銃口をプサイに向ける。

 

「っ‼︎」

 

リコは顔をしかめ、引き金を引いた。

 

「きゃっ⁉︎」

 

反動で、リコは尻餅をついてしまった。

弾丸は天井に突き刺さる。

 

「⁉︎」

 

プサイは目を見開いた。

 

「そなた……銃を撃ったことが……?」

 

リコは……力なく言った。

 

「私は……ただの、子供………。」

 

リコは目を瞑った。殺される……そう思っていた。

 

「……すまない。」

 

プサイはリコの前で跪き、頭を下げた。

 

「え…………?」

 

「……拙者は最低だ。弱き者の命……罪のない者の命を理不尽に奪うなど……最低だ。」

 

「……あなたも、シグマと一緒?」

 

「? シグマ殿と……?」

 

「あなたとシグマ、同じ目をしてる…。」

 

リコはプサイの瞳を見つめながら言った。

 

「………気が変わった。イニシエーターに……罪は無い、と。」

 

プサイは立ち上がった。

 

「そなた、名は?」

 

「私、リコ…。」

 

「リコ殿……うむ。拙者はプサイ。」

 

プサイは頭を下げた。

 

「リコ殿。そなたには感謝したい。そなたがいなければ、拙者は間違った道を選ぶところだった。」

 

「プサイ……」

 

「この命、そなたと、そなたの大切なものに捧げよう。リコ殿は拙者がお守りいたす。」

 

「プサイ……うん、ありがとう。」

 

リコは手を差し出した。

 

「……かたじけない。」

 

その手を、プサイは握った。

 

 

 

 

「はっ‼︎」

 

クスィーの放つ弾丸を躱し、マシンガンを放つ。

 

「うおわわっ⁉︎」

 

クスィーはよろけながらも躱す。

 

「そこだっ‼︎」

 

よろけたところに弾丸を放つ。銃弾はクスィーの右脚を貫く。

 

「ぐっ⁉︎ いってぇーっ! ちょ、ヘルプ、ユプシローン‼︎」

 

「余所見をするな‼︎」

 

更に追い打ちで弾丸を撃ち込む。

 

「ぎゃーっ‼︎」

 

クスィーは脚を抑えて転がる。

 

「ちょ、無理無理……勘弁、参った、このとーりっ‼︎」

 

「……貴様、頭をぶち抜かれたいか?」

 

「ちょちょちょちょウェイティーン‼︎ 待ってくれよ‼︎ 俺はさ、しがないバーテンダーなんだよっ‼︎ 俺、戦いは得意じゃねーのよ、あはは……」

 

「……そーかよ。」

 

俺は呆れ、クスィーを放っておいた。

 

 

 

「さぁ……行くぞ‼︎」

 

ユプシロンが駆け出す。私は身構える。

 

「はっ‼︎」

 

「くっ‼︎」

 

拳を右手の刀で受け止める。そして…

 

「てやぁっ‼︎」

 

左手の拳を、ユプシロンに振るう。

 

「っ⁉︎」

 

ユプシロンは後ろに吹き飛ぶ。

 

「な、なんだ……っ⁉︎」

 

「脳ある鷹は爪を隠すけど……今の私は、そこまで脳は無いからっ‼︎」

 

私は左腕を突き出す。皮膚が剥がれ……黒く輝く腕が現れる。そう、私の…機械化兵士としての力だった。

 

「悪いけど……出し惜しみしないからっ‼︎」

 

私は左腕のバーニアを展開し、駆け出す。そして、勢いをつけて回転ばりにパンチを叩き込む。

 

「くあっ‼︎」

 

ユプシロンは地面に叩きつけられる。

 

「この……っ‼︎」

 

 

「心音っ‼︎」

 

俺は心音に駆け寄る。そして、左腕を見る。

 

「お前、それ……」

 

「あ、ご、ごめん……あのままじゃ負けちゃうから…」

 

俺は……肩を叩いた。

 

「大丈夫だ。それより……」

 

俺はユプシロンを見る。

 

「おのれぇ……っ‼︎」

 

ユプシロンが立ち上がった……その時だった。

 

「おやおや……もうここまで来たのか?」

 

「⁉︎」

 

階段の方から声。そちらを向く。

 

「命知らずな奴らだ……民警など、な。」

 

年老いたその男は余裕な表情を浮かべる。

 

「ここまで来たこと、褒めてやろう。私はオメガ……ミュータントのボスだ。」

 

「お前が……‼︎」

 

親玉自らお出ましってか……‼︎

 

「お、オメガ様‼︎」

 

ユプシロンが声を上げた……その時だった。

 

「‼︎」

 

オメガは手を突き出した。すると……そこから閃光が放たれ、ユプシロンの身体を貫いた。

 

「なっ⁉︎」

 

「お、オメガ……様……っ⁉︎」

 

ユプシロンはその場に倒れ、動かなくなった。

 

「ご苦労だった……ミュータント諸君。だが、もう良い。飽きたしな……」

 

「ひっ、ひぃいいいいっ‼︎」

 

クスィーはその場から逃げ出した。

 

「酷い……‼︎」

 

「お前……どういうつもりだ‼︎」

 

オメガは手を広げ、言い放つ。

 

「元々、私は民警潰しなど眼中に無くてな………全てはそう……全世界の支配。そのためだけの計画だ。ミュータントなど、私一人で十分……支配者は一人で十分だしな。」

 

「貴様……っ‼︎」

 

俺はライフルのチャージを開始。

 

「やるのか?やめた方がいいぞ。民警如きに、私が潰せるとでも?」

 

「あぁ……てめぇだけは、叩き潰す‼︎」

 




ミュータント編ももうすぐフィナーレです。
あと2話で終わればいいな……という説な願い(笑)


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第37話〜信頼と魂〜

ミュータント編、完結です‼︎
色々ありましたが、ここまで来れたのも皆様のおかげだと感じております‼︎(*^^*)


「はぁっ‼︎」

 

バーニアを展開し、心音がオメガに殴りかかる。オメガは素早く身を翻して躱す。

 

「そこだっ‼︎」

 

躱したところにNHライフルの3分チャージを放つ。

 

「ふん‼︎」

 

オメガは右手を前に突き出す。弾丸が…オメガの手の前で止まった。

 

「何っ⁉︎」

 

「所詮はこの程度か…ガッカリだな。」

 

握られる拳。その途端、弾丸は消滅した。

 

「くっ‼︎」

 

「君たちでは私には敵わない……言わなかっただろうか?」

 

「うるさいんだよ…っ‼︎」

 

俺は駆け出し、オメガの背後に回り込む。が、しかし。

 

「な……っ⁉︎」

 

即座に回り込まれた。

 

「遅いのだよっ‼︎」

 

背中に衝撃波をくらい、俺は吹っ飛ぶ。

 

「ぐああああああっ‼︎」

 

壁に叩きつけられる。

 

「かはっ‼︎」

 

「真‼︎」

 

心音が銃を放つ。オメガは念動力で弾丸を受け止める。

 

「そのような力で、私に敵うと思うなよ?」

 

弾丸が心音に向かってくる。心音は右肩に被弾する。

 

「くっ⁉︎」

 

「つまらないな…実に、つまらない。」

 

オメガは右手を突き出す。

 

「く……っ⁉︎」

 

心音の身体が浮き上がる。ユプシロンにしたやつか⁉︎

 

「やめろっ‼︎」

 

俺はマシンガンを放つ。弾丸は躱される。オメガは拳を握る。

 

「くっ⁉︎ くああ……っ‼︎」

 

心音が宙に浮いたまま苦しみ出す。念動力で締め付けているのか⁉︎

 

「ふはは……握りつぶしてくれる‼︎」

 

「あ………く……っ‼︎」

 

「心音っ‼︎」

 

俺はショットガンに持ち替え、銃口をオメガに向ける。しかし、オメガは念動力で、心音を盾にする。

 

「っ⁉︎ 貴様……っ‼︎」

 

「ふふふ……攻撃できまい?ベタな台詞で申し訳ないが……」

 

「くそっ‼︎」

 

どうすればいい…っ‼︎

どうすれば……っ⁉︎

……その時だった。

 

背後から銃声。その弾丸は……オメガの右手を掠めた。

 

「……?」

 

オメガは右手を引っ込める。心音が地面に倒れる。

 

「ケホッ‼︎ケホッ‼︎」

 

「心音っ‼︎」

 

俺は心音に駆け寄り、肩を貸し、立ち上がらせる。

 

「……誰だ?」

 

弾丸の飛んできた方向……その先にいたのは……

 

「大丈夫ですか? 真さん、心音さん。」

 

「遅くなって申し訳ありません。」

 

左にランス、右に信也の銃の片方を持っている実緒と、右に鎌、左に信也の銃のもう片方を持ったミュータント…シグマがいた。

 

「シグマ……何をしている?」

 

「………私は、あなたの考えに背くことにしました。あなたの考えは…間違っている。」

 

シグマは無表情に言う。

 

「やれやれ……改造したアンドロイドほど面倒なものはないと言うことか……仕方ない。貴様もここで死んでもらうか。」

 

オメガはシグマに光弾を放つ。シグマは鎌でそれを弾く。

俺と心音は2人に駆け寄る。

 

「実緒、信也は?」

 

実緒は首を横に振った。助からなかった……か。

 

「真さん、これを。」

 

実緒は2本の剣を手渡した。信也が使っていたものだ。

 

「信也さんの本当の思いを……世界を救いたいっていう願いを……‼︎」

 

俺は右手に剣、左手にマシンガンを構えた。心音にもう片方を渡す。

 

「社長……‼︎」

 

心音は剣と刀、二つの刃を構える。

 

「参りましょう。この人数、メンツなら、勝機はあります。」

 

シグマが鎌を両手で握る。

 

「小賢しい奴らめ……貴様ら如き、敵では無い‼︎」

 

オメガは無数の光弾を放つ。

俺と心音は剣で弾いて、オメガに向かって進む。

 

「心音っ‼︎」

 

「うんっ‼︎」

 

俺と心音は光弾の嵐を切り抜けた。

 

「何っ⁉︎」

 

「うおらぁっ‼︎」

 

俺はオメガの右肩に剣を突き刺す。

 

「ぐおっ‼︎」

 

「はぁっ‼︎」

 

剣を引き抜き、蹴りを入れて距離を置く。

 

「がぁっ‼︎」

 

そこへ駆け出す、実緒とシグマ。

 

「てやっ‼︎」

 

「‼︎」

 

二人は同時にオメガを斬りつける。

 

「ぬおおっ⁉︎」

 

オメガはその場に跪く。

 

「心音ぇっ‼︎」

 

心音は駆け出し、飛び上がる。

 

「せやぁぁあああっ‼︎」

 

心音の両手の刃が、オメガを捕らえた。

 

「ぐああああああっ‼︎」

 

オメガは吹っ飛ぶ。が、態勢を立て直し、着地する。傷は深いはず…なんてタフな野郎だ……‼︎

 

「この……民警風情がぁっ‼︎」

 

オメガは左手から衝撃波を放つ。俺たちは全員吹っ飛ばされた。

 

「うあああっ‼︎」

 

地面に叩きつけられる。オメガは血を流しながらも立ち上がる。

 

「あいつ……まだこんな力を……っ⁉︎」

 

「所詮は機械化兵士とイニシエーターの集まり‼︎ 私がこの程度で死ぬわけがないだろう‼︎」

 

「くそ……なんてやつだ……っ‼︎」

 

「貴様らのような弱者が世界を乱すのだ‼︎ それが何故分からん⁉︎」

 

「弱者……だと…?」

 

俺は立ち上がる。

 

「この世に必要なのは強者だ‼︎ 強者がいればこの世はそれでいい‼︎ 私が強者だ……私が強者だっ‼︎」

 

オメガが高笑いをしたその時だった。

 

「っ⁉︎」

 

オメガの左肩に……クナイが突き刺さった。

 

「ぐおああああっ⁉︎」

 

クナイの飛んできた方向……そこにいたのは……

 

「⁉︎ リコちゃん⁉︎」

 

「プサイ様……?」

 

リコちゃんの隣に、忍者のような男がいた。

 

「プサイ……貴様もか…っ‼︎」

 

「……オメガ殿。そなたの考えは間違いだ。」

 

「何………?」

 

プサイは……優しげに、力強く言った。

 

「そなたは強者などではない。自分より弱いであろう呪われた子供達を皆殺しにするなど……強者の振る舞いではない。」

 

「何だと……⁉︎」

 

「………自分より弱き者の命を奪うなど…拙者には考えられぬ。拙者は……そなたの考えに異を唱えよう。」

 

プサイは俺たちの方を向く。そして、再び口を開く。

 

「そなたは彼らには勝てぬ。そなたには、彼らには有るものが欠けておるからな。」

 

「何だと……⁉︎」

 

「その通りだ……‼︎」

 

俺はNHライフルを構えた。既にチャージはマックス状態だ。

 

「なっ⁉︎」

 

オメガは両肩に負傷を負っていたため、手が動かないようだ。

 

「プサイぃっ‼︎」

 

「てなわけだ……教えてやるよ、オメガ‼︎ てめぇに足りないもの……それはっ‼︎」

 

トリガーを引き、弾丸を放つ。俺は吹っ飛び、壁に叩きつけられる。

放たれた弾丸はオメガに命中した。オメガは吹っ飛び、壁にめり込んだ。

俺は立ち上がり、言い放った。

 

「……信頼だよ。」

 

 

 

オメガは警察に身柄を拘束され、近いうちに裁判が行われるだろう。ミュータントの潜伏していたビルには、多数のミュータントの死体が転がっていた。それらも全て警察が処理した。その中には……明崎 信也の死体もあった。

信也の死体は紅音が引き取り、事務所のすぐ近くの墓地に彼の墓が建てられた。

東京エリアを数日間だけ震撼させたミュータント事件は、「テロリストの犯行」という形で情報改竄され、幕を降ろした……。

 

 

 

そして、半月が経った。

 

「というわけで……私が新しい社長の、川野 実緒です‼︎ 改めまして…よろしくお願いします‼︎」

 

明崎民間警備会社は、川野 実緒を新社長に新体制が始まった。色々話し合ったが、社長に相応しいのは実緒だろう、という俺と心音の意見が採用された。

 

「よっ‼︎社長‼︎」

 

心音が拍手する。

 

「それから……リコちゃん‼︎リコちゃん……水瀬(みなせ) リコを正式に、明崎民間警備会社のイニシエーターとします‼︎」

 

実緒の隣にいたリコが頭を下げる。イニシエーターの教習を終えて、正式にイニシエーターとなったのだ。どうやら思考の発達が早いのと、飲み込みが早かったというので、異例とも言えるスピードでイニシエーターになったとか。

 

「み、水瀬 リコです。改めまして、よろしくお願いしますっ‼︎」

 

また拍手が起こる。随分と立派になったな…俺が助けたのも懐かしいな、ホントに。

 

「それから、2人。新しくプロモーターに雇いました‼︎」

 

2人の人物が前に出る。

 

「実緒様の秘書兼プロモーター兼事務所のメイドとして雇われました、コードネーム・シグマです。よろしくお願いいたします。」

 

何故かメイド服に着替えているシグマである。実緒のプロモーターとして、序列登録も済ませたらしい。

 

「リコ殿のプロモーターとして雇われた拙者、プサイ改め、土条寺 知哉(つちじょうじ ともや)と申す。よろしくお願い申し上げる。」

 

忍者のミュータントは本名を名乗っているとのこと。知哉は深々と礼儀正しく頭を下げる。

彼もリコとの序列登録も済んでいるようだ。

この2人も、拍手で迎えられた。

 

「信也さん…前社長の意志を継ぎ、これからも人類の自由、平和のため……戦いましょう‼︎」

 

「はいっ‼︎」

 

「ふ…了解だ。」

 

俺と心音は手を挙げて微笑む。

 

「よし‼︎ じゃあ新生明崎民間警備会社設立を祝って、今夜はパーティーよっ‼︎」

 

心音の掛け声が事務所に響き、賑やかで微笑ましい雰囲気が生まれた。

 

明崎 信也。

彼は英雄だった。その事実は変わりないだろう。

彼は、彼の魂は生き続ける。

その魂を継ぐものがいる限り、ずっと。

 




次回は少し番外編のようなポジションで書いてみます。シグマと知哉(プサイ)、それぞれが主役になる予定です。


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第37話EX①〜シグマの1日〜

番外編です。長くなり過ぎた番外編です(笑)
本編1話より長いよ…(笑)

今回はシグマが主役です。
シグマの無機質な感じが段々穏やかになっていくのが上手く表現出来ていればいいな…と思います。


時刻は午前5時30分。私は目覚めた。

私はミュータント・コード『シグマ』。現在はこの、明崎民間警備会社の社長である、川野 実緒様のプロモーター兼秘書兼事務所のメイドとして働いている。

アンドロイドだから寝ない?一応睡眠は私にも必要なのです。

さて、今日はこの私が、明崎民間警備会社の1日をレポートすることにいたしましょう。

先ずは朝。実緒様を始め、皆様を起こすことから始まります。

私は実緒様の寝室に入る。

 

「すぅ……んにゃ……」

 

寝息を立てていらっしゃる。こういう時はどう起こすべきなのか……。

そう言えば……確か、心音様のベッドの下にあった薄い漫画本には………。

 

「……ふぅー…。」

 

私は実緒様の耳に息を吹きかける。

 

「んん…ふぁ……」

 

甘い声。本でもこのような声が。

 

「実緒様、朝です。お目覚めください。」

 

耳元で囁く。

 

「ひぅっ……んん……っ。」

 

「実緒様……実緒様ー。」

 

「ふぁああ…んん……。」

 

「実緒さ……」

 

……バタンっ‼︎

 

「あ、朝から何やってんですかーっ‼︎」

 

部屋に入ってきたのは水瀬 リコ様。この事務所のイニシエーター。

 

「あらリコ様。おはようございます。」

 

「あ、おはようございます……じゃなくて‼︎」

 

……バタンっ‼︎

 

「うるさいわね‼︎ となりで変な声と大きな声出さないでよ‼︎ 私と真の神聖なる愛の儀式に集中出来ないじゃない‼︎」

 

「何お前もさらりととんでもねーこと言ってんだよ‼︎」

 

続けて入ったきたのは徳崎 心音様と、小鳥遊 真様。お二方はペアであり、恋人同士とのことです。

 

「おはようございます、お二方。昨夜は眠れましたか?」

 

「え⁉︎ あ、あぁ〜、それがねぇ〜……真が寝させてくれなかったの〜、きゃっ。」

 

「お、お前が布団に潜り込んで如何わしい本読んでぐふぐふ言ってるから起こしただけだろうが⁉︎」

 

「何よー‼︎ BL本でぐふぐふしたっていいじゃない‼︎こちとら純粋な乙女よっ⁉︎」

 

「純粋な乙女がBL本でぐふぐふするのかよっ⁉︎」

 

……とまぁ、こうやって騒いでいるといつの間にか…

 

「ふぁ……おはよ、シグマ。」

 

「あぁ、おはようございます、実緒様。」

 

実緒様は起きられます。

 

「……心音さん、真さん、朝から何を?」

 

「あ、おはよ、実緒!」

 

「おっす、実緒!」

 

同タイミング。流石は恋人同士。

 

「もう……シグマさん‼︎ 普通の起こし方しましょうよ‼︎ これじゃ色々…その……ま、マズイですから。」

 

リコ様がご指摘する。

 

「普通の起こし方ですか……分かりました、あとで心音様の私物で確認を…」

 

「ネットとかで調べてくださいっ。」

 

「……かしこまりました。」

 

真様が尋ねる。

 

「? 心音の私物?」

 

「あぁ。心音様のベッドの下にある薄い…」

 

「きぃーやぁ〜っ‼︎‼︎」

 

……明崎民間警備会社の朝は、騒がしいのです。

 

 

 

さて、皆さんが起きたら朝食です。私も一応、食事はします。この事務所の料理の担当は、主に心音様です。あらゆるジャンルの料理をこなす彼女。戦闘とは違った一面が見られますね。

 

「ふんふふ〜ん…ふふっふーん…」

 

鼻歌を歌いながら料理を作るその姿。中々良い姿です。

 

「ただいま戻った。」

 

プサイ様…改め、知哉様が帰ってきました。彼は明朝の4時からこの時間までトレーニングをしているとか。

 

「わぁ〜い、知哉〜っ。」

 

リコ様が駆け寄り抱きつく。

 

「おかえり、知哉‼︎」

 

「うむ、リコ殿。今日も修行してきたでござるよ‼︎」

 

このお二方も仲が良いです。まるで兄妹のようです。

 

「お待たせ〜。」

 

心音様が朝食を持ってきました。白米、味噌汁、卵焼き、お漬物……絵に描いたような和食です。

 

「飯〜。」

 

「いただきます。」

 

ではいただきましょう。先ずは味噌汁。

……ふむ、ベースの出汁はカツオ。そこにほんのりと昆布も入っていますね。

具は…豆腐とワカメ。合わせ味噌。

卵焼き。

砂糖と醤油と塩の含有量のバランス。完璧です。正しく黄金比というものでしょう。

 

「シグマ、美味し?」

 

実緒様が覗き込んで来ました。

 

「そうですね、塩と醤油の含有量のバランスが完璧で…」

 

「もう、単純に美味しいって言いなよ。」

 

単純に……なるほど。インプットしました。

 

「はい、美味しいです。」

 

 

 

 

朝食が済むと、それぞれの仕事が始まります。真様と心音様はパトロール。知哉様とリコ様はトレーニング。

そして、実緒様と私は書類の整理です。民警の社長は色々と大変だと、実緒様はいつも仰ります。

 

「はぁ〜、凄いよなぁ。信也さん、こんな大変なことをテキパキとこなしてたんだよなぁ……。」

 

「実緒様、お電話です。」

 

私は受話器を手渡す。

 

「はい、明崎民間警備会社社長の川野です。はい……はい………あぁ、その件についてはこちらで処理しましたので……はい、そうです。……分かりました、よろしくお願いします。…はい、失礼します。」

 

実緒様は受話器を戻した。

 

「シグマ、お使い頼みたいんだけど……今から天童民間警備会社に行って、この資料渡しにいって欲しいんだけど…」

 

封筒に資料を詰めて、私に手渡す。

 

「かしこまりました。では行って参ります。」

 

私は封筒をバッグに入れ、事務所を出た。

 

 

 

 

こんな感じでお使いを頼まれます。このメイド服で外を歩くと、色々な方々から声をかけられます。例えば…

 

「すみません‼︎ちょっと一緒に写真撮ってもいいですか⁉︎」

 

若い女性の方からは写真を求められます。私の写真など何の意味があるのかわかりませんが……まぁ、公開されても問題は無いので構いませんが。

また、ある時は…

 

「か、かか、可愛いでござるなぁ……どのアニメキャラのコスプレでごさるかっ?」

 

リュックを背負い、頭にバンダナを巻いたチェックのシャツのメガネの男性からこのような質問をされます。

 

「いえ、これは仕事着ですが……」

 

「むほっ⁉︎ し、仕事着でござるかっ⁉︎ ど、どこの喫茶の店員様でござるかっ⁉︎」

 

「いえ、喫茶店の店員ではありません。」

 

「さっ、さようでござるか……はっ、こうしてはいられん‼︎ 佐藤氏と山中氏が待っているでござった‼︎ では御免っ‼︎」

 

男性は去って行きます。不思議なお方でした。

 

 

 

そうこうしている間に、天童民間警備会社に到着。私はベルを鳴らします。

 

「へーい……」

 

スーツの男性がドアを開いた。私は頭を下げる。

 

「お初にお目にかかります。私、明崎民間警備会社の新社員、シグマと申します。今日は社長にご用事があり、こちらに伺いました。」

 

「あぁ、木更さんな。まぁ、上がれ。」

 

「はい、失礼致します。」

 

私は事務所に入る。規模は明崎民間警備会社と同じ程度でしょうか。

 

「なっ⁉︎ お、お主、その格好は……っ⁉︎」

 

ツインテールの少女が瞳を輝かせている。

 

「あぁ、私の仕事着です。お初にお目にかかります、藍原 延珠様。」

 

「? 何故妾の名を?」

 

「東京エリアにいるイニシエーターの情報は、50%程把握しております。」

 

「あぁ、来てくれたわね。えーと、シグマさんだったかしら?」

 

黒い髪の女性が歩み寄る。

 

「えぇ。あなたが天童社長でございますか?」

 

「ここの社長の天童 木更よ。よろしくね。」

 

私は頭を下げる。

 

「よろしくお願いします。実緒様のプロモーターのシグマと申します。こちらが資料になります。」

 

私は資料を取り出し、天童様に手渡す。

 

「あぁ、ありがとう。」

 

「では、私はこれで…」

 

「もうちょっとゆっくりしていって。お茶も出すし、色々と聞きたいことがあるの。」

 

すると、テーブルにお茶を置く金髪の少女が。

 

「どうぞ。」

 

私に微笑みかける。

 

「では、失礼致します。」

 

私は椅子に座る。

その向かいに天童様が座り、私たちは話を始めた。内容は他愛もない雑談、明崎民間警備会社のこと。そして……ミュータントのこと。

 

「……そうですね。もうミュータントの生き残りは、私とプサイ…知哉様のみかと。」

 

「お前はなんで裏切ったんだ?」

 

黒いスーツの男性……里見 蓮太郎様が聞いてきた。

 

「ちょっ、里見くん‼︎」

 

「構いませんよ、天童様。私はオメガ様の考えに賛同出来ない、というファイ様の考えを真とした結果の行いをしたまでです。」

 

「……信也さんの命令ってか?」

 

「……ファイ様は私に、好きにしろ、と命令なさいました。よって、その行い自体は私の意思です。」

 

「……アンドロイドも考えを持つってか。」

 

「えぇ、そう思っていただけると助かります。」

 

里見様は……微笑んだ。

 

「あんた、いい人だな。」

 

「……それは、褒め言葉でしょうか?」

 

「それ以外だったら、何だ?」

 

私は少し頭の中で処理をする。

 

「……該当するケースが見つかりません。それは褒め言葉です。」

 

「シグマは面白いのう‼︎ おっぱいも大きいし、蓮太郎をにやつかせるとは中々じゃ‼︎」

 

延珠様が私の胸を触りながら、仰る。

 

「んなっ⁉︎ アホかっ‼︎」

 

「里見く〜ん…?」

 

「お兄さん……最低です。」

 

「ごっ、誤解だっ‼︎」

 

……賑やかです、ね。

 

「あ、シグマさん…笑ってます。」

 

「え?」

 

金髪の少女…天童様のイニシエーター、ティナ・スプラウト様が私の顔を見つめる。

 

「それがきっと、楽しいっていう感情ですよ。楽しそうな顔でしたから。」

 

「楽しい……。」

 

自分でも気づきませんでした。私はこの日、楽しいという感情を覚え、天童民間警備会社を後にしました。

 

 

 

 

時刻は16時を過ぎていた。私は市街地を歩く。この街は穏やかそうでそうでない……色々と矛盾を抱えている…。

 

「…………」

 

……ガシャァァアアン‼︎

 

「うわああああっ‼︎」

 

ビルの窓を突き破り、出て来たのは……ガストレア。

クワガタムシのような姿。

 

「……‼︎」

 

その右の角には……人の腕が突き刺さり、ぶら下がっている。

私は背中から鎌を取り出し、柄の部分を引き伸ばし、刃を展開。

ガストレアはこちらに突進してくる。私は飛び上がり、ガストレアの背中に乗る。

 

「お命……頂戴いたします。」

 

鎌を振り上げ、その背中に刃を突き刺そうとした……その時だった。

 

「っ⁉︎」

 

ガストレアの足の付け根から触手が飛び出し、私に向かって四方から向かってくる。

避けられない…そう思った時だった。

 

…ザシュッ‼︎

 

触手が切り落とされ、切断面から紫色の体液が吹き出す。

私はガストレアから飛び降り、着地。

触手を切り落としたのは……実緒様だった。

 

「実緒様……?」

 

「資料、届けてくれてありがとうね。」

 

「何故ここに……?」

 

「フィーリングだよ。」

 

「……申し訳ありません。」

 

「大丈夫。シグマは悪くないよ。それより……」

 

ガストレアが再びこちらに向かってくる。

 

「…あれを倒すのが先決…ですか。」

 

「流石シグマ。わかってるじゃない。」

 

私は再び鎌を構え、実緒様もランスを構える。

 

「あぁいうタイプは両脚を落としてから胴体を切り裂いた方がいいわ。いける?」

 

「なるほど。その方向ならほぼ確実に成功するでしょう。」

 

「じゃ……行くよ‼︎」

 

「はい。」

 

私と実緒様は駆け出す。ガストレアが角を振るう。私たちはかわし、両サイドに回りこみ…

 

「てやぁっ‼︎」

 

「‼︎」

 

ガストレアの両脚を切り落とした。ガストレアは悲鳴を上げ、地面に倒れこむ。

 

「‼︎」

 

私は振り返り、鎌を横に一振り。ガストレアは横に真っ二つになり、肉片となり飛散した。

 

「お疲れ様‼︎」

 

実緒様が駆け寄る。

 

「実緒様、お怪我はありませんか?」

 

「うん、大丈夫だよ。ありがとう。」

 

実緒様は笑顔を見せた。

 

「……実緒様、今は楽しいですか?」

 

「え?うーん……ちょっと違うかな。嬉しいんだと思う。」

 

「嬉しい……ですか。」

 

「うん。シグマが無事。だから、嬉しいの。」

 

嬉しい。

インプット。

 

「そうですか……分かりました。」

 

「帰ろ‼︎心音さんがリゾット作って待ってるよ‼︎」

 

「はい。」

 

私たちは帰路についた。

 

 

 

これが、私のある日の出来事です。

この世界に、この人たちに会えて、私は色々と知ることが出来ました。

嬉しい、腹立たしい、哀しい、楽しい。

人はこの感情で出来ているようです。

感情とは、興味深いです。

 

これからも、私はここにいます。

 




とまぁ、こんな感じです。
常にメイド服姿…(笑)たまらん‼︎(笑)

次回も番外編の予定です。
今度はリコと知哉を主役にしようかと。


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第37話EX②〜水蜘蛛と忍〜

超お久にございます。遅れて申し訳ありません!!
いろいろと忙しく、更新が長引いてしまいました……
この後はきっちり、運行再開イタシマス!!!


静かな川。水面を滑らかに、軽やかに滑る。

 

「大分、動きには慣れてきたようでござるな。」

 

私、水瀬 リコは、パートナーの土条寺 知哉と一緒に、山の麓の川でトレーニングをしていた。

 

「では……用意はいいでござるか?」

 

知哉は手裏剣を取り出す。

 

「うん……‼︎」

 

私は銃を取り出す。

 

「では……っ‼︎」

 

知哉は手裏剣を放つ。

私は水面を滑り、手裏剣を銃弾で弾く。

 

私はモデル・ストライダー………水蜘蛛の能力のイニシエーターなのだ。水面を滑るように移動、地上でも跳び跳ねるように動く事が出来る。

 

全ての手裏剣を弾いた。私は銃を降ろす。

 

「うむ、見事にござる。」

 

「えへへ〜。」

 

私たちは毎日、このようなトレーニングをしています。

 

 

 

「ただいま帰りましたー。」

 

私と知哉はトレーニングを終え、事務所に戻ってきた。

 

「あ、おかえりリコちゃん、知哉さん。」

 

実緒お姉ちゃん達は……大掃除中だった。

 

「あれー?真ー、お姉ちゃんとこへの領収書ってどのファイルにしまってあったけ?」

 

「確か、緑のファイルじゃなかったかー?うわ、この非常食のパン、賞味期限今日じゃねーか!」

 

真さんは倉庫の、心音さんは本棚、実緒お姉ちゃんはデスク周辺の資料の整理をしていた。

 

「大変でござるな……民警も。……ところで、シグマ殿は?」

 

「あぁ、あいつならさっき買い出しに行ってもらってるよ。水とアイス。」

 

真さんは非常食を次々と倉庫から出していく。

 

「おい実緒!!この非常食、一体どうしたんだ!?」

 

「あぁ、確かそれ信也さんが安いからって一杯買ったやつですね……。」

 

「今日の昼と夜は、それの処分だね……ま、私の料理お休みデーってことで……あ、もしかしてダーリン悲しい?」

 

「誰がダーリンだ。」

 

これは……一日かかるな……。

 

「あ、実緒ちゃん知哉さん。申し訳ないんだけど、今日のパトロール、2人で行ってきて!片付けは私たちで大丈夫だから!」

 

「え?そんな、いいんですか?」

 

「明日にこれが縺れ込むのも面倒だし、だからってガストレアも放っておけねーからな……これ、今日の昼飯な。」

 

真さんは私に缶パンを2つ投げ渡した。

 

「承知致した。行こう、リコ殿。」

 

「う、うん。じゃ、皆さんお気をつけて……」

 

私たちは事務所を出た。

 

 

 

 

 

「うー……暑いなぁ……。」

 

市街地を回り、公園のベンチに座る。

 

「夏でござるな。リコ殿、はい。」

 

知哉が氷のたっぷり入ったオレンジジュースを手渡した。私はそれを足下に置き、真さんから貰った缶パンを開けた。

 

「はい、知哉。」

 

中身を手渡す。

 

「む、ありがたく。………おお、中々美味しいものでござるな。」

 

「どれどれ………あ、ホントだ、美味しい。」

 

缶パンって思ってたより美味しいな。私はジュースを飲む。

すると、足下にサッカーボールが転がってきた。

 

「すいませーん!」

 

子供が手を振る。私は彼らの方にボールを転がしてやった。

 

「ありがとうございまーす!」

 

子供達は駆けていった。

 

「やはり、微笑ましいでござるな。拙者はこのような美しい者を壊そうとしていたのか……なんと卑劣な。」

 

拳を固める知哉。私はその手に触れた。

 

「でも、思いとどめたから、いいんじゃないかな?」

 

「リコ殿……。」

 

知哉は微笑む。

 

「よし、じゃあもうちょっと回ろ!」

 

「心得た!!」

 

 

 

 

 

「蓮太郎!あの雲、ウサギみたいだぞ!!」

 

「おお、ホントだな。」

 

河川敷付近を歩いていたのは、里見 蓮太郎さんと、藍原 延珠ちゃんだった。偶然見かけた私は、彼らに駆け寄った。

 

「延珠ちゃん!」

 

「おお!リコではないか!」

 

「お久しぶり!蓮太郎さんも!」

 

「元気みたいだな。」

 

知哉がようやく着いた。

 

「リコ殿……この者達は?」

 

「天童民間警備会社のペア、里見 蓮太郎さんと、藍原 延珠ちゃんです!」

 

「そうかおぬしらが……拙者、新しく明崎民間警備会社のプロモーターとなった、土条寺 知哉と申す。以後、お見知り置きを。」

 

「あんたが彼女のプロモーターか。あんたも元ミュータントだってな。」

 

蓮太郎さんが知哉に歩み寄る。

 

「うむ。リコ殿のおかげで、脚を洗う事が出来たがな。」

 

「なるほどな。それで、今はパトロール中か?」

 

「うむ、そろそろ戻ろうかとしていた所でござる……」

 

「キャアアアアアアッ!!」

 

遠くから悲鳴が。私たちはその方へ駆け出した。角を曲がったそこに……

 

「キエエエエエエエエ!!」

 

ガストレアがいた。蜘蛛のタイプか。私は腰のハンドガンを構える。知哉は刀を逆手に持つ。

 

「はっ!」

 

私は跳ね、銃を撃ち込む。被弾するも、ガストレアは怯まず、爪をこちらに振るう。

 

「させん!!」

 

知哉は刀を振るい、脚を斬り落とした。

 

さらにそこへ…

 

「でやああああああっ!!」

 

延珠ちゃんがガストレアを蹴り上げ、川へと放り込まれる。私は川へジャンプ。水面に立ち、滑るように移動しながら、ガストレアに弾丸を撃ち込む。ガストレアは疲弊し、動かなくなった。

 

「でやっ!!」

 

そこへ知哉が一太刀。ガストレアは肉片となった。

 

「おーい、大丈夫かー?」

 

蓮太郎さんが岸から声をかける。私は、笑顔でそれに答えた。

 

 

 

 

 

その後、蓮太郎さん達と別れ、私たちは事務所に帰ってきた。

 

「終わっだぁ〜!」

 

どうやら終わったようだ。辺りは綺麗になっていた。

 

「お疲れさまでござるな。」

 

「そっちもな。ガストレアの方、サンキュ。」

 

「よし、じゃあ、非常食一掃しますか。」

 

「私がお湯を注いで参ります。」

 

シグマがお湯を湧かし始める。

 

「ふふ……」

 

「?いかがした、リコ殿」

 

「いや、やっぱり、落ち着くなぁって、さ。」

 

ここが私の居場所。帰る場所。

 

これからも、私はここにいたい。

 

「あ、シグマ、私も手伝う!!」

 

この幸せを、護りたい。

 




次回は、モノリス崩壊時の時間軸のお話です。
蓮太郎達がアルデバランたちと戦っているその頃、真達は……といったお話です。


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〜負の遺産 真実の箱〜
第38話 〜我儘と妙〜


久々の本編です。少し短くてごめんなさい……(^^;;


博多エリア……ここ数日、ここでは奇妙な事件が横行していた。

 

「連続殺害事件……死に方からしてガストレアによるもの。しかし、目撃証言にガストレアを見たという情報は無し……?」

 

俺…小鳥遊 真は新聞を読んでいた。

 

「これがどうかしたんですか?心音さん。」

 

ここ、明崎民間警備会社の社長である川野 実緒が、俺のパートナー…徳崎 心音に問う。

 

「うん。この被害……ガストレアヒューマンと全く同じだなって感じたんだけど……。」

 

「ガストレアヒューマンが……生きている?」

 

「馬鹿な。烏丸 凌馬は死んだ。そんなこと、ある訳……」

 

「ある可能性が強いの……これを見て。」

 

心音はパソコンの画面を見せる。そこに映っていたのは、烏丸 凌馬の経歴だった。

 

「新博多大学……烏丸はここの大学教授だった。そして、この事件が起きたのは博多エリア………。つまり、烏丸のかつての教え子達が烏丸の技術でガストレアヒューマンを作り出した……。」

 

なるほど。そういうことか……。

 

「……行くしかないみたいだな、博多エリアに。」

 

「しかし、真様。東京エリアも現在、モノリス崩壊、対アルデバランのため、そちらに行くべきなのでは?」

 

シグマが俺の方を向く。

 

「確かに……そうかもしれない。だが、ガストレアヒューマンとの交戦を多く経験しているのは俺たちくらいだ。博多の奴らも、今頃未知の敵の出現に対策を追われていることだろうし、手助けした方が事態も直ぐに収まるだろ。それに……」

 

俺は拳を固めた。

 

「烏丸の計画は……開けてはいけないパンドラの箱みたいなもんだ。絶対阻止しねぇと。」

 

シグマは……口角をほんの少し上げた。

 

「……なるほど、理解しました。」

 

「……お前も笑顔がサマになったな。」

 

「お褒めいただき光栄です。」

 

実緒が手を叩く。

 

「じゃあ、準備に取り掛かりましょう‼︎ 先ずは聖天子様にお伝えしないと……。」

 

「聖天子は俺と心音で行くよ。」

 

「えっ、私も⁉︎」

 

心音はびっくりし、俺の方を向く。

 

「この中で聖天子慣れしてるのは俺だろ?そんで、俺のパートナーはお前だろ?妥当だろ?」

 

「いや、聖天子様慣れって何よ⁉︎」

 

「じゃ、行ってくるわー。」

 

俺は事務所を出た。

 

「あ、ちょっとー⁉︎」

 

心音も俺に続いた。

 

 

 

「真お兄ちゃんたち……大丈夫なの?」

 

リコは実緒に聞く。

 

「まぁ、何とかなるよ。……多分。」

 

「ともかく我々は、博多に飛ぶ用意をしなくてはな。」

 

明崎民間警備会社は博多エリアへの移動の準備に取り掛かった。

 

 

 

 

 

「博多エリアにガストレアヒューマンと思われる被害……ですか………。」

 

聖天子の邸宅にやってきた、俺と心音。心音は相変わらず俺の隣で縮こまっている……だからいい加減慣れろや。

 

「あぁ。アルデバランの出現の方も大変だが、このまま博多の事態を放っておくわけにもいかない。それに…烏丸の遺産があるのならば、俺たちがそれをぶっ壊さなきゃいけない。ちょっと我儘かもしれないが……。」

 

聖天子は…頷いた。

 

「分かりました。あなた方明崎民間警備会社には別の要請を出しましょう。博多エリアの事件の調査、烏丸 凌馬が関わっていた場合は事態の解決。あちらの方には許可を出しておきます。明日の午前8時にヘリを手配しておきましょう。」

 

「悪いな、何から何まで。」

 

「いえ、構いません。それでは、よろしくお願い致します。」

 

「こちらこそだ。」

 

俺は頭を下げ、立ち上がる。

 

「それじゃ、明日の朝頼む。行くぞ心音。」

 

「あっ‼︎ し、失礼しました‼︎よろしくお願い致しましゅっ‼︎あぅ……」

 

だから落ち着けっての……。聖天子はそれを見て微笑む。

 

「それでは、今日はありがとうございました。」

 

「あぁ、失礼する。」

 

俺と心音は邸宅を後にした。

 

 

 

「はぁ……疲れたぁ……」

 

帰り道、心音は項垂れながら歩いていた。

 

「テンパりすぎなんだよ、お前は。」

 

「うぅ……むぅ〜っ‼︎」

 

心音はいきなり俺の首根っこを掴んできた。

 

「って、何してんだよお前⁉︎」

 

「べぇつぅにぃ〜?」

 

俺の髪をわしゃわしゃと掻き乱す。やーめーろー。

 

「真………。」

 

まるで子犬のように目を輝かせてこちらを見てくる……何だよもう……。

 

「ねぇ真………」

 

心音が俺を後ろから抱きしめる。

 

「な、何だよ………」

 

「………大好き。」

 

「んなっ⁉︎ な、な、何言っちゃってんだよお前⁉︎」

 

俺はそのまま顔を心音に向ける。

 

「あ、あっかーい。この照れ屋さんめぇ〜。にっししー。」

 

「ったく……ほら、早く帰るぞ。博多への準備しねぇと。」

 

俺は心音の腕をどけて、彼女の手を掴んで帰路についた。

 

 

 

 

その日の夜。会社の皆は全員用意を終えて、眠りについていた。

 

「…………ん。」

 

ふと目が覚めた。俺はベッドから出る。喉渇いたな…。

俺は寝室を出て、冷蔵庫に向かおうとした。

 

「あれ。」

 

「真様?まだ午前3時5分38秒ですが……」

 

シグマがパソコンに向かっていた。てか時間細けぇよ。

 

「ちょっと喉渇いてな………。お前は何やってんだ?」

 

「データの閲覧、及び私のサーバーの情報の更新です。主に烏丸 凌馬についての関連データをインプットしている最中です。現在84%のデータをインプット。推定残り時間は3分半ほどでしょう。」

 

「勉強熱心だな。」

 

シグマはパソコンの画面を見つめたまま言う。

 

「烏丸 凌馬……彼には私も興味があります。何故そこまで人間にガストレアの力を埋め込みたかったのか……その真意は博多にあるでしょう。」

 

「その答えはデータベースには?」

 

「ありません。ガストレアヒューマンタイタン……その撃破までのデータしかデータベースには存在しません。烏丸 凌馬の意思などはデータベースからは確認出来ません。」

 

「そう、なのか……」

 

俺は冷蔵庫のペットボトルの水を一気に飲み干した。

………ヤバイ、目が余計覚めちまった。寝れねぇ……。

 

「………なぁ、シグマ。」

 

俺はシグマに向かい合って座る。

 

「……何でしょうか?」

 

「シグマは、ガストレアやイニシエーターについてのデータは既に閲覧しているんだよな?」

 

「えぇ。そうですね。ただ……イニシエーターに関して一つ、妙な点が。」

 

妙……?

 

「妙………っていうと?」

 

「………小鳥遊 真様。あなたのデータが『無さ過ぎる』んです。」

 

「⁉︎」

 

俺のデータが……『無さ過ぎる』?

 

「普通のイニシエーターのデータには、出身、年齢、能力、経歴を見ることが可能です。ですが、真様のデータは、極端に少ないのです。それこそ、名前と所属しかデータに掲載されていないのです。」

 

……どういうことだ?

俺はちゃんと序列も持ってるし、正真正銘のイニシエーターだ。

何故俺のデータが無いのか……。

 

「このまま解析を続けていれば、おいおい何かわかるでしょう。その時はお教えします。」

 

「あぁ……頼むよ。」

 

俺は自室にこもり、夜が明けるまでパソコンを開いていた。




次回から博多エリアのお話です。真の真実も段々と明らかにしていきますよ。


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第39話 〜到着と自信〜

しばらく更新の時期が不規則になります……面目無い(ーー;)
久々の民警新キャラ出してみました。


 

 

午前8時。聖天子邸 屋上。俺たち明崎民間警備会社の面子は、そこに集まり、ヘリの目の前に立っていた。

 

「すごい……。」

 

聖天子は風に髪を靡かせ、言う。

 

「至急、手配させたのですが、アルデバラン戦に殆どが駆り出されてしまい、残ったのはこれくらいですが…」

 

「十分だ、感謝するよ。」

 

実緒が聖天子の前に出る。

 

「この度は私たちの我儘にご協力いただき、誠にありがとうございます。東京エリアはアルデバラン戦で混乱している中で……」

 

「構いません。あなた方のご武運もお祈りしております。心置き無く、あなた方は博多の事態の解決に尽力をお願い致します。」

 

深々と頭を下げる聖天子に、俺たちも頭を下げる。実緒が言う。

 

「では、私たちはこれから博多エリアにて、事態の調査、解決に向かいます。詳細はヘリの中、及び現地にてお伝えします。」

 

「了解‼︎」

 

俺たちはヘリに乗り込む。ドアが閉まり、プロペラの回転が早まり、ヘリは浮遊し進んだ。博多に向かって……。

 

 

 

「それで?あっちに着いたらどうするんだ?」

 

ヘリの中にて、俺は問う。シグマがタブレット端末を開き、スケジュール表を表示する。

 

「まずは、今回調査を共にする民警の事務所へ。その間にホテルの手配。そして現地調査です。」

 

「最長でも、7日間を目処に解決を目指しましょう。前回のガストレアヒューマンの時のデータと、いやらしい話が絡みますが、これの問題もありますので……。」

 

実緒は右手の親指と人差し指で丸を作る。なるほど、予算の問題か。

 

「7日間もあれば十分だろ。さっさと終わらせようぜ。」

 

「そうだね‼︎ 流石はマイダーリン‼︎」

 

「誰がダーリンだ。」

 

心音にツッコミを入れる俺であった。

 

 

 

そして、2時間後。博多エリアのヘリポートに到着した。

 

「んー‼︎ 着いたぁっ‼︎」

 

真っ先にヘリから飛び降りた心音。

 

「子供かよ……。」

 

「まぁ、滅多に民警が外に出るなんてないですからね。気持ちは分からないでもないです。」

 

俺とリコがヘリから降りる。こいつの方がよっぽど大人じゃねぇか……。

 

「それでは、先ずは荷物をホテルに運びましょう。タクシーを確保してきますね。」

 

シグマは一足早くタクシー乗り場に向かった。

 

「よし、参ろうか。」

 

知哉の言葉で、俺たちは移動を開始。タクシーに乗り込みホテルに向かった。

 

 

 

 

「3ルーム取れたなんて、最高〜‼︎」

 

ホテルに着くや、ベッドに飛び込む心音。だから子供かよっての。

俺は荷物を置く。この後昼からは、心音とリコが買い物。実緒と知哉が聞き込み。んで、何故か俺とシグマで民警へ挨拶……。ヘリの中でクジ引きで決まったのだが、心音は当然ヤダヤダと首を振ったのだが、知哉の大人の対応で丸く収まった。昼飯も各自で。あと30分ほどでシグマのところに行くとするかな……。

 

「おい心音。遊んでないでお前も用意し…」

 

「そぉれぇ〜‼︎」

 

心音は俺をベッドに押し倒した。

 

「どぉおおっ⁉︎」

 

「さぁて……まだちょっと時間があるから、今の内に真分の補給を……ハァハァ…ジュルルッ。」

 

「お、おいっ‼︎ 落ち着けこの色情魔‼︎」

 

「あぁん……もっと言って、逃げないから。」

 

「お前はいつからそんな色ボケキャラになったんだよ⁉︎」

 

俺は抜け出そうとするも、心音が手首を掴んでいるため抜け出せない。

 

「いつからかな……真が記憶失ってから? だったっけ?」

 

いや、何故俺に聞く。

 

「お願ぁ〜い。ちょっとギューってするだけだからさー。ねぇ〜。」

 

う………ちょっと可愛いと思ってしまった。はぁ……何でこう、押しに弱いところがあるんだ俺は……。

 

「だ、抱きつくだけなら……早くしろ……っ。」

 

「あー、赤くなっちゃってぇ〜。ホントはして欲しかったんでしょお〜?うりうり〜。」

 

俺の頬を突つく。やめろー。

 

「じゃ、お言葉に甘えて……ムギュウ〜。」

 

心音は自分の胸に俺の顔を埋めた。

 

「ムグフォッ⁉︎」

 

「知ってるんだよ〜?真が私の胸が好きなのはさぁ?うりうり〜。」

 

このバカ……。俺は半分呆れた。

そこへ…………

 

……コンコン

 

ノックが鳴る。

 

「むぐぐ……はっ、なれろっ‼︎」

 

俺は心音を突き放す。

 

「きゃん。いやん、真ったら大胆……きゃっ。」

 

「ちょっと自重しろよ……」

 

俺はドアを開ける。そこには荷物を持ったシグマが来ていた。

 

「真様……息が上がっていますが…」

 

「き、気にすんな。それより、もう行くか?」

 

「そうですね。マップデータもインプット済みです。行きましょう。」

 

「分かった。」

 

俺は荷物を肩に担ぐ。

 

「真、浮気しないでよ‼︎」

 

「しねーっての。」

 

ったく……。

 

俺とシグマはとある民警に向かった。

 

 

 

 

「次の門を右です。」

 

シグマのナビを頼りに、俺は道を歩いていた。博多エリアも大して東京エリアと変わらないか……そんな気がする。

 

「到着しました。こちらです。」

 

結構大きい一戸建ての家。看板には「長瀬民間警備会社」。

シグマはベルを鳴らした。

 

「はぁーいー?」

 

ドアを開けたのは……犬のような耳の生えた銀髪の少女。眠たそうな顔をしている。恐らくイニシエーターだろうな。

 

「明崎民間警備会社の者です。本日はそちらの社長様とお話がありまして、それで伺いました。」

 

「あー、なんか飛鳥言ってたね。飛鳥ぁー。お客さん来たよー。」

 

そして、1人の女性がそこに現れた。

 

「お待ちしておりました。私、長瀬民間警備会社の社長、長瀬 飛鳥(ながせ あすか)と申します。以後、お見知りおきを。」

 

お嬢様らしい立ち振る舞いで礼をした長瀬に、俺とシグマも頭を下げる。

 

「はい、こちらこそ。私は明崎民間警備会社の社長秘書兼プロモーターの、コードネーム・シグマです。」

 

「明崎民間警備会社のイニシエーター、小鳥遊 真だ。よろしく。」

 

「よろしくお願い致します。立ち話も何です。中へどうぞ。」

 

迎え入れる長瀬。俺とシグマは事務所へ入っていった。

 

「すげぇ………」

 

高そうでお洒落な部屋………お嬢様みたいだな。

 

「流石は長瀬家の娘様でございますね。本物のお嬢様は違います。」

 

シグマの一言に俺は目を見開く。マジでお嬢様だったのか。

 

「そんな。少し大きなお家に住んでいるだけです。お嬢様は言い過ぎです。」

 

テーブルに紅茶を並べる長瀬。

 

「お座りください。お昼もまだでしょう。ランチを持って来させます。」

 

「あ、あぁ、すまない。」

 

長瀬は指を弾いて音を鳴らす。すると、一人のメイドが四人分の料理の皿を持って部屋に入り、それをテーブルにサッサと並べる。パスタのようだ。

 

「博多の水菜と明太子のパスタになります。では、ごゆっくり。」

 

メイドは頭を下げると、部屋を出た。

 

「あれが本物のメイドですか。後で色々と聞いてみることにします。」

 

俺とシグマは椅子に座った。

 

「どうぞ、お召し上がり下さいませ。」

 

長瀬とイニシエーターが俺たちと向かい合って座る。

 

「あ、あぁ…いただきます。」

 

俺はパスタをフォークに巻きつけ、口に運ぶ。うわ、旨い。プロの料理人なんかが作ってんだろうな、きっと。

 

「流石は三つ星レストランのシェフのお料理ですね。」

 

「そ、そうなのか?」

 

「えぇ、長瀬家に関するデータはヘリにて確認しております。」

 

シグマの言葉に、長瀬は反応する。

 

「あら、私のことを?」

 

「誠に失礼ながら、データを閲覧させていただきました。長瀬民間警備会社社長にして、長瀬グループの第12代代表、IP位階序列395位 プロモーターの長瀬 飛鳥様と、そのイニシエーター 季崎 火乃(きざき かの)様。」

 

そんなところまで調べたのか……流石はシグマ。

 

「うふふ…構いません。改めまして、長瀬グループの代表、長瀬 飛鳥と申します。」

 

「なぁ、シグマ。長瀬グループって、博多エリアでは有名なのか?」

 

「知る人ぞ知る、大財団ですね。」

 

「そんな、言い過ぎです。」

 

口を拭きながら長瀬は微笑む。

 

「では、お食事中ですが本題に入りましょう。今回の事件……そちらの社長様から大方のことは聞いております。ガストレアヒューマンなるものらしきからの被害が、この博多エリアで相次いでいると。」

 

「あぁ。それで協力して欲しい。ガストレアヒューマンと多く交戦しているイニシエーターは俺たちくらいだ。このままじゃ、博多エリアの民警の被害が増えるばかりだ。迅速にことを解決するべく、よろしくお願いしたい。」

 

俺は頭を下げる。

 

「えぇ、協力するのは構いませ……」

 

「ヤダ。」

 

長瀬の隣にいたイニシエーター……火乃が、長瀬の言葉を遮るように言い放った。

 

「ちょっと火乃……」

 

「そのガストレアヒューマンだかなんだか知らないけど、やられたのはその辺の弱っちい民警どもでしょ、どーせ。あたしたちなら楽勝だっての。」

 

なるほど、自信家ってやつだな、この犬耳少女は。

 

「その自信は素晴らしい。けど、ガストレアヒューマンは侮れない。事実、対策前の東京エリアではかなりの被害が出た……その二の舞は避けたい。」

 

「何……あたしたちが弱いとでも⁉︎」

 

火乃がテーブルを叩く。

 

「こら、火乃……」

 

「上等よ。飛鳥、行くわよ。あんたら‼︎」

 

火乃は俺たちに指差し、言い放った。

 

「あたしたちと勝負しなさい‼︎」

 

 




辛たん……ホント辛たんwww
とりあえず頑張らないと…このくらい頑張らないと(^^;;


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第40話〜対応と我慢〜

遂に40話⁉︎
自分でもビックリだぜおい‼︎www


「はぁ………真ぉ……真分が足りない……。」

 

「ちょ、心音お姉ちゃん、大丈夫?」

 

私、水瀬 リコは心音お姉ちゃんと買い物に来ていた。ホテルの飲み物などは高いため、近くのスーパーで買った方が安上がりのため、そうすることにした。あ、もちろんお土産も探してますよ。

 

「うん、大丈夫じゃない。」

 

「いや、即答しないでよ。しっかりしてよ。ほら、今日だけだからさ、こうやってペア以外で動くのは。」

 

「分かってるよぅ…分かってますよぅ……もう、リコたんおっとな〜。」

 

心音お姉ちゃんは私を撫でくりまわす。

 

「と、とりあえず落ち着こ?私だってその、知哉と会えないのちょっと寂しいっていうか………。」

 

「むー……分かった耐えるー。帰ったらソッコー真を襲うー。」

 

「こ、怖いって………。」

 

私は苦笑いをしながら買い物を続けた。

 

 

 

 

「はぁ………何となくこうなる気はしてたんだよな…」

 

長瀬家の裏庭。そこには模擬戦用のフィールドが広がっていた。

俺…小鳥遊 真と、シグマの前には……この家の主である長瀬 飛鳥とそのイニシエーター、季崎 火乃が立っていた。

 

「あんたらが私に勝ったら、協力でもなんでもしたげるわ。あたしらが勝ったら、あんたらはこの件から手を引き、余計な真似をしないこと……いいわね?」

 

「あー、分かったよ。悪りぃなシグマ。変なときに…」

 

「いえ、問題ありません。それにこうなることを見越して、実緒様は本日の行動のペアをくじで決めたのですから。」

 

「? どういうことだよ、それ。」

 

「いついかなるときでも、その場に応じた対応が出来るかどうか……というわけです。」

 

なるほどな。確かに、実戦でも何が起こるか分からないからな。

 

「さて、じゃ……やるとしますか?」

 

俺は両手にマシンガン、シグマは鎌を引き伸ばし、刃を展開。先日、紅音に作ってもらったおNEWの武器だ。

 

「ふん‼︎ 行くわよ飛鳥‼︎ あいつらに一泡吹かせてやるんだから‼︎」

 

「もう……あまりやりたくは無いのに………仕方ありませんか。」

 

火乃は爪を伸ばし、身を低くして構える。長瀬はハンドガン程の大きさのチェーンソーを取り出し、片手に握る。

 

「じょ、序列395位、長瀬 飛鳥。」

 

「同じく、395位、モデル・ウルフ 季崎 火乃‼︎」

 

「序列325位、モデル・ホーク 小鳥遊 真‼︎」

 

「序列695位、コードネーム・シグマ。」

 

「じゃあ……行くわよ‼︎」

 

火乃が猛スピードで飛び出してきた。瞬時に俺の目の前に現れ、爪を振るう。俺は身を翻して躱す。確かに速いな。

 

「そらそらっ‼︎」

 

躱したところに再び現れる。マシンガンの引き金を引く。

 

「遅いっ‼︎」

 

爪を振るう。

捉えたとでも思ったか……

 

「甘いな。」

 

右手の銃口は振り翳した彼女の右手に、左手の銃口は彼女の心臓部に接触していた。

 

「な…………っ⁉︎」

 

「お前のスピードは確かに速い。久々に俺も能力を使ったくらいだからな。だが、お前の行動はワンパターンすぎる。それに……足元見てみ?」

 

「………っ⁉︎ ウソ……っ⁉︎」

 

彼女の右脚は黄色い塗料が付着していた。そう、俺が今回使っていたのはペイント弾。最初に引き金を引いたときにペイント弾は彼女の右脚に着弾したのだ。

 

「あの時、実戦なら勝負は着いていた。右脚を撃ち抜かれた時点で、移動はほぼ不可能……。」

 

「そんな……っ。」

 

火乃は崩れ落ちた。

俺は彼女の肩に手を置く。

 

「でもまぁ、俺も中々苦戦したよ。なんだかんだ言っても、弾が当たったのはマグレなところもあるし……集中しなきゃいけねぇから、結構キツかったぜ。お前凄いよ。あんなスピード、実際見たことなかったしな。」

 

「ふ……ふっ、ふんっ‼︎ ほ、褒めてるつもりだか知らないけど、ぜっ、全然嬉しく無いんだからねっ‼︎」

 

火乃は腕を組み、そっぽを向いた。耳と尻尾が動いている。嬉しいのが丸わかりだ。ってか、これ、狼ってよりは犬なんじゃないのか……?

 

「さてさて、あちらの方は……」

 

 

 

「っ‼︎」

 

私と長瀬様の接戦が続いていた。

お互いの刃がぶつかり合い、火の粉を散らす。

 

「流石はお嬢様ですね……何か体術をお習いでございますか?」

 

「ふふ……まぁ、色々……とっ‼︎」

 

長瀬様のハンドチェーンソーが向かってくる。私は鎌で応戦する。鎌とチェーンソーがぶつかり合い、離れた瞬間に、長瀬様の足払いが入る。私は高く跳び上がって躱し、鎌の刃の角度を90度回転し、薙刀のようにする。

 

「‼︎」

 

急降下し、武器を振り下ろす。長瀬様はチェーンソーで受け止める。

 

「くっ⁉︎」

 

チェーンソーの芯を外して狙った一撃に耐えきれず、長瀬様は膝を着いた。

 

「………勝負ありです。」

 

そのまま、鎌の刃の角度を戻した。このまま横に振り抜けば、身体は真っ二つ。

 

「お見事…です。」

 

 

 

「そ、そんな⁉︎」

 

火乃が目を見開く。

 

「どうやら、俺たちの勝ちだな。」

 

勝負を終えたシグマと長瀬がこちらに歩み寄る。

 

「お二人共お見事でした。」

 

長瀬が頭を下げる。

 

「ちょっと飛鳥⁉︎あんた、ちゃんと本気だしたの⁉︎」

 

火乃が吠える。

 

「当然よ。シグマ様は強かったわ。あなた言ってたじゃない。手加減無しって、こっそりと。」

 

「むぅ〜……」

 

火乃は腕を組み、俺たちに指差す。

 

「まぁいいわ、協力したげる。あたしらの足手まといにはならないことねっ‼︎ 分かった⁉︎」

 

「あいあい……」

 

やれやれ……こんなイニシエーター持って、大変だな、お嬢様も。

 

「では、今度改めて社長と共に挨拶に伺います。その時に詳しい対策を。」

 

「えぇ、かしこまりました。」

 

「とりあえず、何かあったら連絡する。その時は頼むな。」

 

「はい、お任せを。」

 

俺たちは彼女らと握手をかわし、その場を後にし、ホテルへ戻った。

 

 

 

「ただいま………」

 

俺はホテルの部屋に戻ってきた。

 

「だーあーりぃーん‼︎ おっかえりなのー‼︎」

 

心音が飛びついてきた。予想通りだ、ったく。

 

「はいはいはい……」

 

俺は心音の頭を撫でてやる。猫みたいにすり寄ってくる。

 

「にゃう〜ん。だーりん、だーりん、だーりんりんっ。」

 

ダメだこの相棒……色んな意味で。俺は荷物を置く。

 

「それで?水とかお菓子とかは?」

 

「うん‼︎ コンビニとかスーパーで買ってきたよ‼︎ 見て見て‼︎ 博多のひよこ‼︎帰って東京のひよこと食べ比べしようよ‼︎」

 

中身って違ったっけあれ……ま、いいか。

俺の大好きなアーモンドチョコもあるな。俺はアーモンドチョコの箱を取り、開ける。

 

「だーりん、一個ちょーだいっ。」

 

「お前自分のあるだろ?」

 

「やだやだぁー。だーりん食べさせてぇ〜‼︎」

 

この色ボケ女……はぁ。

 

「早くっ、早くっ、あーん。」

 

口を開ける。俺はそこにチョコを一粒放り込んでやる。

 

「んん〜……やっぱこれだよね‼︎」

 

どれ、俺も一粒……うん、いい甘さだ。

 

「真、まーことっ。」

 

心音は…唇でチョコを挟み、顔を近づく。

 

「なっ⁉︎ なな、何やらせようとしてんだっ‼︎ やらねーぞ‼︎ やらねーからな⁉︎」

 

「うー……んーっ‼︎」

 

「んんっ⁉︎」

 

心音は俺を押し倒し、チョコを口移しで俺に食べさせた。

 

「えっへへ……どう?キュンキュンしちゃった?」

 

「あっ、あのなぁ………」

 

心音は俺に覆いかぶさったまま、抱きつく。

 

「だって……寂しかったんだもん……。」

 

耳元で囁く。

 

「少しくらい我慢しろよ。」

 

「だって…………だって……」

 

「? 何だよ?」

 

「………何でもない。」

 

心音………何かあったのか?心音は俺にしがみつくように抱きついている。

 

……コンコン

 

ノックの音。心音が離れた。会議の時間だ。今日はこの部屋で、だな。

俺はドアを開ける。

 

「お疲れ様です。」

 

実緒とシグマ、リコと知哉が来ていた。

 

「おお、入れ。」

 

全員が部屋に揃い、ソファとベッドに座る。実緒が中央に立つ。

 

「では、博多1日目お疲れ様でした。今日はこの後、ホテルの一階で夕食です。その後は自由ですので、ゆっくり明日に備えてください。………では、各々報告を願います。先ずは、リコちゃんと心音さん。」

 

心音が立ち上がり、スマホのリストを出す。

 

「今日買ったのは主に、水分とおやつ、ね。それぞれの部屋にあると思うから、好きに食べ飲みして。あと、コンビニの店員に話を聞けたんだけど、昨晩、黒い手袋の怪しい男が店の外をフラついていて、新博多大学の方に向かったみたいよ。」

 

新博多大学……やっぱ怪しいか。

 

「了解しました。ありがとうございます。次は、真さんとシグマ。」

 

俺は立ち上がる。

 

「長瀬民間警備会社には、事件解決のため、協力してもらうことにした。明日、俺たちが新博多大学にいるときに、実緒は挨拶に行ってくれ。」

 

「あ、はい、了解しました。では……私から報告します。」

 

実緒は地図を広げる。そこには赤いバツ印が7つあった。

 

「バツ印の事件現場周辺の人達に聞き込みをしたところ、怪しいと思われる大学のサークルが判明しました。」

 

そこへ、知哉が言う。

 

「生物研究サークル………どうやらここ最近、そのサークルの部室から、夜な夜な変な音がするとのことらしい。」

 

「……調べる必要があるな。」

 

「明日は、私とダーリン、リコちゃんと知哉くんで大学の調査……ね。」

 

俺と心音が実緒を見る。実緒は頷く。

 

「明日の大学への潜入……装備は万全の体制でお願いします。………以上です。」

 

俺たちは座る。

 

「よし、では、腹ごしらえと行こう。腹が減っては戦は出来ないでござるよ。」

 

知哉は立ち上がる。

 

「そうだな。行こうぜ、皆。」

 

俺たちは夕食に向かう。心音は俺の腕を組む。

 

「ダーリン、またあーんしてっ。」

 

自重しろっての……。




次回は久々に本当の戦闘シーン入ります。模擬戦じゃないよ‼︎www
更新ペース遅くて申し訳ないです……(ーー;)
なるべく早く出来るよう善処します。


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第41話 〜尾行と不器用〜

超久々な投稿です。
色々迷走してますが、なんとか完走できるように頑張ります。
今年もよろしくお願いします。


 

「あぁ、生物学部だろ? なんか噂になってるってな。」

 

新博多大学。俺、小鳥遊 真と徳崎 心音は聞き込みをしていた。この周辺の怪しいと思われる団体、生物学部についてだ。生物学部が何やら怪しいものを作っているとの噂を聞くが、何か知らないか、と。

 

「えぇ、何か知らないかしら?」

 

「うーん……でも、あいつらそんなこと……怪物作ったりとかしなさそう…てか、出来ないと思うんだよなぁ…。」

 

「出来ない?」

 

「あぁ、生物学部って地味なことしかしないもん。今年の学祭も金魚すくいくらいだったし……。」

 

男子学生が顎に手を当てて答える。

 

「分かった、ありがとう。」

 

「すまんね、あまりお役に立てなくて。」

 

「大丈夫だよ。」

 

微笑む心音。その横で、俺はその男子学生を見ていた。

 

「そんじゃ、失礼‼︎」

 

男子学生はその場から走り去っていった。

 

「……? どうしたのダーリン。怖い顔して。」

 

「……心音。あいつ、尾行するぞ。」

 

俺は走り去った男子学生のあとを追って歩き出した。

 

「え? どうして?」

 

疑問に満ちた顔を浮かべる心音。

 

「………ヤツは、黒だ。」

 

 

 

「……そうですか。そんな事が…。」

 

私、川野 実緒は長瀬民間警備会社に来ていた。正式な挨拶のために、だ。

先ほど、社長である長瀬 飛鳥さんから、昨日の真さんたちとの話を聞いたところだった。

 

「誠に申し訳ありませんでした。うちの火乃が戦うと聞かなくて……。」

 

彼女のイニシエーターの季崎 火乃は頬杖をついて頬を膨らませている。

 

「むぅ……。」

 

「いえ、構いません。寧ろ良い訓練になりました。」

 

シグマが表情を変えずに言う。

 

「あぁ、昨日いただいたデータ…ガストレア・ヒューマン事件のデータを閲覧いたしましたが……私の予想を遥かに上回っていました。特に、ガストレア・ヒューマン タイタン……。」

 

「えぇ、真さんの捨て身の一撃でなんとかなりましたが……」

 

私のその言葉に、火乃ちゃんは驚く。

 

「あ、あいつが…捨て身⁉︎」

 

「はい、暴走したタイタンを止めたのは、データによると真様です。彼はその代償に、一時記憶を失っていたとのことです。」

 

「そう、なんだ………。」

 

シグマの言葉に火乃ちゃんが俯く。

 

「………ねぇ、火乃ちゃん。」

 

私は彼女に話しかける。

 

「私たちにとって、ガストレア・ヒューマンは最早見過ごせない天敵なの。けど、私たちの力だけじゃどうしようもならない。だから、あなたたちの力が必要なの。ガストレアの力を人工的に人間に宿すなんて……許されていい訳がない。」

 

「…………っ。」

 

火乃ちゃんは部屋から出た。

 

「か、火乃‼︎」

 

「私が行きます。」

 

シグマがその後を追った。

 

「申し訳ありません。あの子…少し不器用なもので。」

 

「いえ、大丈夫です。火乃ちゃん……大丈夫ですか?」

 

「あの子、昔からそうなんです。感情を表に出すのが苦手で……。」

 

 

 

「………。」

 

長瀬邸の庭の柵に腕を置いている火乃。彼女に歩み寄るのは……シグマ。

 

「大丈夫ですか? 火乃様。」

 

「あんたか………。」

 

火乃はシグマの方に視線を遣る。

 

「………私さ。昨日あんたらに会うまで、自分のこと最強とか思ってたんだ。ガストレアもバンバン倒して、着実に序列も上げて…………私は何でも出来るってさ、思ってたんだ。」

 

「なるほど……。」

 

「けど、違った。私は昨日……ま、真に負けた。初めてだったの、負けたの。」

 

そういう火乃の顔は、少し嬉しそうになった。

 

「でも、あいつは褒めてくれた。初めてだったんだ。飛鳥以外で私を褒めてくれたの。」

 

「火乃様は褒められるのが好きなのですね。」

 

その言葉に火乃は慌てたように言う。

 

「ちっ、違うわよ‼︎ ホントは褒めて欲しくなんかないけど、し、仕方なく褒めさせてあげてるだけよっ‼︎」

 

耳と尻尾を振りながら話す火乃。

 

「……だからさ、あいつが捨て身までしないと倒せないって分かった時さ……私、なんか情けなくなって…見てる世界が小さくてさ……。」

 

落ち込んでいるのが分かりやすく、荒ぶる尻尾が大人しくなる。

 

「………そうですか。申し訳ございません火乃様。私、このような時、なんと申せばよいのか……。」

 

「いいのよ、そんな気使わなくて。」

 

 

 

男子学生を尾行し、辿り着いたのは……生物学部棟。

 

「ここは……」

 

「ビンゴだな。」

 

生物学部棟に入る。そこには……

 

「あ、真お兄ちゃん。」

 

リコと知哉がいた。

 

「おお、真殿に心音殿。」

 

「よう。なぁ、ここに男が来なかったか?」

 

「男の人?んー……私たち10分くらい前にここに来たけど、見てないよ?」

 

リコが答える。ここには…いや。ここから入ってはいないのか……。

俺は生物学部棟の裏側に向かう。

 

「あ、真ー‼︎」

 

心音が俺に着いてくる。

 

「………ふむ。」

 

裏側には倉庫があるだけだった。

 

「何もないね……。」

 

「……心音、あの二人をここに呼んでくれ。」

 

「え………?」

 

俺は辺りを見渡す。

 

「…………嫌な予感がする。」

 

 

 

「うぃーす、お疲れっす。」

 

真たちから聞き込みをされていた男子学生が、生物学部棟の地下にある、怪しげな研究室に入る。

 

「遅いぞ、どこで道草をしていた。」

 

メガネをかけた男がキーボードを叩きながら言う。

 

「民警が来てやがったんだよ。何とかお茶を濁しといたが、一人感の良さそうな野郎がいたからな……。」

 

「貴様……嗅ぎつけられたのか?たかだか民警に。」

 

「んだよ………もしここに来たら、責任はとるよ。」

 

「やーいやーい、大貴おこられてやんのー。」

 

女子学生が舌を出す。

 

「るせぇよバカ。」

 

そこにいるのは四人の学生。怪しげな彼らは、パソコンに向かっていた。

 

『烏丸プロジェクト』

 

そう書かれたデータを見つめて……。




次回から段々と謎を明らかにしていきます。
中々困っていますが、頑張ります。

クロスアンジュのSSを近々書こうかなと考えています。キャラなどは出来ているので、こちらがひと段落ついたら書き始めようかと。


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第42話 〜迷路と予感〜

「このSSがすごい!」にて、ブラック・ブレット二次創作のページに載っていました。ありがとうございます。これも読んでくださった皆様や、感想、アドヴァイスをくださった皆様のおかげです。
更新は不定期ですが、これからも宜しくお願いします。


「一体どうしたのだ、真殿。」

 

知哉とリコが来る。俺はライフルを構え、倉庫に近づいた。

 

「真お兄ちゃん………?」

 

倉庫のドアに手をかける。そして…ゆっくりと開いた。

 

「!! ………やっぱりな。」

 

こうも勘が冴えてると、かえって我ながら恐ろしくなるぜ。

 

「真? どうしたの……!!」

 

心音たちが歩み寄り、俺の見つめる先を見る。

 

「こ、これは………っ!!」

 

倉庫にあったのは………地下へと続く階段。

 

「全く。教え子は教師に似るものなのかね………?」

 

「どうする?」

 

知哉が問う。

 

「………知哉、リコちゃん。実緒たちに連絡を入れて、ここで待機しててくれ。俺と心音で先に行く。」

 

「……大丈夫か?」

 

「あぁ、なんかあったら引き返すさ。ここは頼む。行くぞ、心音。」

 

「おっけだよ、ダーリン!!」

 

心音も武器を持つ。そして、その階段を降りて行った。

 

 

 

 

 

「ん?」

 

生物学部棟の地下室。

メガネの青年……柴谷 宏太(しばや こうや)が監視カメラの画像に目を向ける。

 

「おい、坂山キサマ………。」

 

「あらら………メンゴメンゴ、ヘマしちまった。」

 

陽気な青年、坂山 大貴(さかやま だいき)が舌を出す。

 

「あーあ、どうすんのー?扉4枚はパズルロックになってるから、そこ突破されたら保存された実験生物びっしりの、見られちゃいけないとこだよぉ?」

 

悪戯な笑みを浮かべるのは溝口 琴乃(みぞぐち ことの)。

 

「ま、並みの頭脳で解くのは無理だろうけど、運次第……ね。」

 

蒔田 美織(まきた みおり)がメガネをクイッと上げる。

柴谷は冷静に指示を出す。

 

「一応念押しに……出しておくか。溝口、『パターン03』を用意しておけ。」

 

「あいあいさー。」

 

 

 

 

「リコちゃん!知哉くん!」

 

実緒とシグマ、飛鳥と火乃がリコたちと合流した。

 

「真殿たちが先に向かっているが……どうやら電波は遮断されているようでござる。」

 

「時間はどのくらい経ったの?」

 

「15分、くらいかな。」

 

倉庫の中の階段を除く実緒たち。

 

「どうにかして、無事がわかればいいんだけど……。」

 

悩んだその時、一歩前に出たのは……火乃だった。

 

「火乃ちゃん?」

 

火乃は帽子をとり、耳に金属の棒を当てて目を瞑ってその場にしゃがみ、棒の反対側を地面につける。

 

「飛鳥様、これは?」

 

シグマはその姿を見て、飛鳥に問う。

 

「あの娘の能力の一つです。人よりも耳がいいので、ああやって遠くの音を聞くことができるんです。いつも私もあの能力に助かっています。」

 

火乃は黙ったまま、音を聞く。

 

 

 

 

「何なんだここ……。」

 

階段を降りた先は迷路になっており、途中途中にパズルでのロック方式になっているドアがある。もう既に3枚のドアを解除。迷路を進んでいた。

 

「地下にこんな広大な迷路を作るなんて……これも烏丸 凌馬の遺産………ってやつかな。」

 

「………。」

 

「? どうかしたの、真。」

 

「…………さっきから、なんか引っかかるんだ。」

 

確かに、地下に拠点を置くのはやつの趣向だ。だが、こんなに手の込んだ真似を、やつはしなかった。

 

「………またか。」

 

ドアが見えてきた。俺はパズルの解除を始める。

パズルは複雑に見えて、実際は簡単なスライドパズルだった。

 

「えっと、ここはこうで………」

 

………ガチャッ。

 

ロックが解除された。

 

「よし。」

 

俺たちは扉の向こうへ足を踏み入れた。

 

 

 

 

「!! なんか、鍵の開いた音がした。」

 

火乃が耳を動かしながら言う。

 

「鍵?」

 

「真さん………。」

 

実緒は……拳を固めた。

 

「ここで動かない訳にもいきません。突入しましょう!!」

 

「えぇ、私も今そう思ったところです。」

 

実緒の言葉に全員が頷いた。

 

「行こう!なんか嫌な予感しかしない!」

 

火乃を先頭に、彼らは地下へと向かった。

 

 

 

 

「!? ここは………!!」

 

辺りに広がる空間。

そこは………いわゆる「保存庫」だった。

壁一面にカプセルがあり、その中には………改造された人間が入っていた。

 

「やっぱりここだったか。」

 

「………! 真。」

 

心音が刀を抜く。俺たちの視線の先のカプセルが………怪しく蠢く。

 

「おいおい………勘弁してくれよ。」

 

俺はマシンガンを両手に持ち、警戒。

 

………ガチャッ。

 

カプセルのドアが開いた。そこから出てきたのは。

 

「あぅ………ぅううっ………!!」

 

両腕をカニのように改造された男だった。唸り声を出しながら、ハサミを開閉する。

 

「まずは一体ってとこだね。行くよ、真!!」

 

「あぁ!!」

 

心音が高速で男に詰め寄り、刀を振るう。刀はハサミで受け止められる。

 

「うぅ………っ!!」

 

「はぁっ!!」

 

すかさず、胴体にアンクレットによる蹴りを叩き込み、距離を取る。男はよろける。

 

「そこだ!!」

 

俺はマシンガンを放つ。

 

「うおあうおあうおあうあああああっ!!」

 

弾丸をくらい、その場に崩れ落ちる。

 

「決めろ、心音!!」

 

「でやああああああっ!!」

 

心音が刀を振るう。

 

ガキィィイイイン……ッ!!

 

「…………!?」

 

心音の刀が折れ、破片が地面に突き刺さる。

 

「そ、そんな!?」

 

バカな!バラニウムを折っただと!?

まさか………烏丸の対バラニウム用コーティングか!

 

「ううう……あうう…………オオッ!!」

 

男が心音に襲いかかる。

 

「くっ!!」

 

心音は蹴りを入れて突き放し、距離を取る。

 

「真、どうなっているの? あいつ、最初より身体が硬くなってる………。」

 

「おそらく、打たれるほど強くなる………ってやつだな。」

 

マシンガンは使えないな………俺はNHライフルを展開し、チャージを開始。

 

「あいつの動きは鈍い。チャージまでの5分、時間を稼ぐ!!」

 

「オッケー!!」

 

心音が格闘で牽制する。俺はチャージまでの時間を待った。

 

 

 

 

「おお〜、流石私のパターン3ちゃん!!攻撃すればするほどカッチカチやぞ!!ってね!!」

 

琴乃が喜ぶ。

 

「………。」

 

柴谷はモニターを凝視していた。

 

「………似ている…。」

 

彼が見ていたのは……小鳥遊 真。

 

「!!…………まさか、『ツカサ』の処分作の生き残り……!?」

 

「ん?どーした、宏太。」

 

「……いや、なんでも。」

 

柴谷は立ち上がり、部屋を出る。

 

「………まさか……あの男、本当に…。」

 

 

 

 




近々ブログを始めようかと思っています。
製作裏話とかしたいなぁ…ww


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第43話 〜質問と突撃〜

ブログを始めました。
制作裏話とかね、できたらいーなと思ってますので、どうぞいらっしゃいなのです。
↓こちらから
http://kamunemeetahonobono.blog.jp/


「!?」

 

迷路を進んでいるのは実緒たち。火乃を先頭に進んでいる。火乃の嗅覚で、真たちが通った道を正確に辿っている。

 

「火乃!?どうかした!?」

 

「激しい音がする……どうやら戦闘になってるみたいね!」

 

火乃たちは走り出す。

 

「本当に嫌な予感しかしない……。」

 

 

 

「く……しぶといし、硬いっ!!」

 

心音は改造人間に注意を引きつけていた。

 

「うう………おお………ううぅっん!!」

 

ハサミを振り回す。だが、さすがは心音。うまくアンクレットと刀で防いでいる。

 

『発射可』

 

NHライフルのチャージが溜まった。

 

「心音避けろ!!」

 

心音が避ける。俺はトリガーを引く。

 

「!!? ミギャアアアアアアアッ!!!」

 

弾丸は改造人間を粉々にした。

 

「ふぅ………。」

 

「やったねダーリン!!」

 

駆け寄る心音。俺たちは辺りを見渡す。カプセルの中を覗き込むと………体のあらゆる部分を改造された人間たちが。

 

「酷い………。」

 

「…………!?」

 

足音が響く。音の方を向いた。

 

「誰だ!?」

 

俺はマシンガンを構えた。

そこにいたのは……メガネの男。

 

「ほう……我々の実験体を簡単に倒すとは………民警も侮れんな。」

 

「貴様………誰だ!?」

 

「………柴谷 宏太。『烏丸プロジェクト』の責任者だ。」

 

「烏丸プロジェクト!?」

 

「やっぱり、今回の騒ぎはてめぇらの仕業か!!」

 

「………質問は以上か?」

 

メガネをあげる柴谷。

 

「何?」

 

「僕の質問に答えてもらおう………君は何者だ?」

 

俺を指差し問う。

 

「………俺は小鳥遊 真。イニシエーターだ。」

 

「………なるほど、やはりか。」

 

こいつ………何を考えている。

 

「………君は、小鳥遊 真…………そんな名前ではない。」

 

「な、何!!?」

 

ど、どういうことだ!?

 

「ちょっとアンタ!!何を勝手なことを言ってるわけ!?真は真よ!!私の相棒で、私のダーリンよっ!!」

 

ダーリンは余計だ、アホ。

 

「いいや。僕の目に間違いない。君は…………『ツカサ』だ。」

 

 

 

 

 

「見えた!!あれ!!」

 

火乃が指差す先にはドアが。

 

「貫くわ!!」

 

実緒がランスを構え、先頭へ。

 

「でやあああああああっ!!!」

 

 

 

 

「『ツカサ』………!?」

 

ドォォォオオオオオンッ!!

 

「!!」

 

後ろのドアが壊れる。そこから………実緒たちがやってきた。

 

「な、何でござるか、これはっ!?」

 

「まさか………これが全てガストレア・ヒューマン!?」

 

「正確にはそのベースだ。ここにガストレアウイルスの再生力と凶暴性のみを取り入れることで完成する。」

 

飛鳥の問いに柴谷が答える。

 

「おい!『ツカサ』ってなんだ!?誰だそいつは!!」

 

「ふん。知る必要はない………『ツカサ』は全て、処分あるのみ。」

 

柴谷はトランシーバーを出す。

 

「溝口、蒔田、坂山。全ての実験体のロックを解除しろ。」

 

『なっ!?正気かお前!!』

 

「さっさとしろ。この民警を潰さないと、計画に支障が出る。」

 

そういうとトランシーバーを投げ捨てた。

 

「さぁ、さっきまでのはほんの余興だ。ここからがメインだ。」

 

柴谷は去って行った。

 

「お。おい待て!!」

 

ガコン!!プシュー……

ガチャッ……

 

「うおおおおおおお!!!」

 

「ぐるるらあああああああっ!!」

 

「キュエエエエエエエエッ!!」

 

カプセルが一斉に開き、全ての実験隊が解き放たれた。その数…………推定80。

 

「マジかよ…………!!」

 

俺はライフルのチャージを開始。

 

「これは骨が折れるわね………!!」

 

心音は左手の機械の腕を露わにした。

 

「………シグマ。80人くらいかな?」

 

実緒はランスとハンドガンを構える。

 

「………確認しました。全員で88人。一人あたり11人の割り当てです。」

 

シグマは鎌を展開し、ハンドガンのホルスターを腰に装備。

 

「こんなに多いの、初めてかも……。」

 

リコはハンドガンを持ち、背中に装備したのはバックパック……水を撒くタンク。モデル・ストライダーである彼女のために設計された、紅音のハンドメイド装備だ。

 

「なに、所詮は小物の集まり。殲滅するのみよ…!!」

 

知哉はマフラーを巻き、刀と手裏剣を手に取る。

 

「………」

 

火乃が俺に寄り、爪を展開。

 

「お前………。」

 

「……とりあえず感謝してあげるわ。私の世界を広くしてくれて。」

 

「………へっ、そうかい。」

 

飛鳥が火乃の隣に。ハンドチェーンソーを両手に構える。

 

「さぁて、なかなか骨が折れますね……。」

 

静寂が走る。

 

「………そうだ、実緒。このメンツで今度、アジュバントに登録してみるか?」

 

「ふふ、いいですね。リーダーは……心音さんかな?」

 

「ふぇっ!?私!?」

 

「確かに、我々の中ではプロモーター歴の長いのは心音様でございますから。」

 

「みんなの頼れる心音お姉ちゃんだもんね!」

 

「おお、それは心強いでござる。」

 

「うふふ。では心音様。私たちに指示を。」

 

「ま、決まってるでしょ?」

 

心音は………微笑む。

 

「………うん!!」

 

そして、言い放つ。

 

「各自、前方の実験隊を殲滅せよ!!彼らはもう人ではない……せめてものの弔いだ!!」

 

………なんか口調違うな。

ま、カッコイイし、気合も入るからいいか。

 

「全員、突撃!!!!!」

 

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!」」」」」

 

俺たちは実験体の群れに突撃していった。

 

「………」

 

俺は敵を倒しながら、ある名前を思い出した。

 

『ツカサ』。

 

一体、何者なんだ………?




そろそろ真の真実が明らかになります。
恐らく、もうすぐこの物語も佳境です。
多分二部書きますwwww


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第44話 〜確保と真実〜

遂に、隠された真実がヴェールを脱ぐ!!(自分でハードルを上げるバカwwww)
原作崩壊してますし、勝手な自己解釈満載ですが、どうかご了承の上お楽しみください。


「このっ!!」

 

マシンガンを放ち、実験体を蜂の巣にする。

次々と襲いかかる実験体。1秒たりとも気を抜けない状況だった。

 

「クソ……多すぎなんだ、よっ!!」

 

『発射可』

 

3分チャージのNHライフルを放ち、2体ほど纏めて一掃する。

 

「てやあっ!!」

 

心音は左腕のスラスターを噴射し、強烈なパンチを叩き込む。

 

「クルルレエエエ!!」

 

「キモいっ!!」

 

回し蹴りでねじ伏せ、倒れたところに拳を叩き込む。

 

「やるな、心音。」

 

俺は撃ちながら声をかける。

 

「ふふ、もっと褒めていいの、よっ!!」

 

襲ってきた敵を殴り飛ばす心音。

 

「……さっさと片付けるぞ!!」

 

「ろんもち!!」

 

 

 

 

「せやあっ!!」

 

ランスを突き刺して実験体を倒していく私…川野 実緒。

 

「数が多い……っ!!」

 

「………!!」

 

軽やかなステップで鎌を振るうシグマ。まるでバレエでも踊っているかのようだ。

 

「実緒様、大丈夫ですか?」

 

「う、うん……こんなところで、やられてたまるものじゃないわっ!!」

 

ハンドガンで牽制し、一気にランスで一掃。

シグマもホルスターからハンドガンを取り出し、放つ。

 

「……実緒様。一つわかったことがあります。」

 

鎌で敵を薙ぎ払いながらシグマが言う。

 

「? 何?」

 

「戦っているのに……死ぬかもしれないというのに、負けるというケースを予測しても、そうなる可能性が0%に思えるのです。きっとこれは、私が皆様と一緒に戦っているから……それ故に…」

 

「要は安心してるってことか、なっ!?」

 

ランスを突き刺し、銃を0距離で放つ。

 

「……その通りです。」

 

「ふふ……いいじゃない、素敵なことだよ?」

 

「はい、そうですね。」

 

シグマは微かに笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

「来ないでっ!!」

 

背中のタンクから水を出しながら、素早く移動する私…水瀬 リコは、ハンドガンを放ちながら敵を怯ませる。

 

「もらった!!」

 

そこへ知哉がクナイを打ち込み、刀で薙ぎ倒す。

 

「中々良い感じでござるな、その装備。」

 

「えへへ、かなり動きやすいや。」

 

両手に銃を持ち、高くジャンプ。

 

「はっ!!」

 

上から弾丸を放つ。

 

「隙あり!!でやああっ!!」

 

怯んだところに、刀が襲いかかる。

 

「敵もだいぶ減ってきたでござる……もう一息といったところか!!」

 

手裏剣を広い範囲に投げる。

 

「知哉、行くよ!!」

 

「心得た!!」

 

 

 

 

「だあああああああっ!!!」

 

爪で実験体を切り裂いていく。私…季崎 火乃は気分が高揚していた。私は戦いが楽しいと思うほど、気分が高まり、野生に帰るような心地よい感覚に苛まれる。

 

「ハッ、ハッ……アオオオオンッ!!」

 

咆哮し、怯ませる。

そして、爪による連撃を叩き込む。

 

「火乃!!少し、暴れ過ぎよ!!」

 

飛鳥はチェーンソーで実験体を斬り裂いていく。

 

「だって久々だもん……ハァ、ハァ……やばいかも……飛鳥、帰ってあんた襲ったら…ごめんねっ!!!」

 

「もう、あんなに尻尾荒ぶらせちゃって……。」

 

飛鳥は微笑む。

 

「ホント、どうしようもない子。」

 

 

 

 

「おいおいおいおい!!これヤバいぜ!!」

 

研究室で、慌てふためく柴谷たち。

 

「巨大なやつは昨日失敗しちまったし………クソ!!積んじまった!!」

 

坂山はキーボードを地面に叩きつける。

 

「く………烏丸先生……!!」

 

拳を固め、パソコンの画面を殴りつける柴谷。

 

「あぁーもう私知らない!!人生終わり!!」

 

「あーあ、もういいや死のう………。」

 

溝口と蒔田も諦めた。

 

 

 

「うおらあっ!!」

 

「せいはあああああっ!!」

 

最後の2体を倒した。

 

「行くぜ!!」

 

俺は奥に見えたドアにNHライフルを放ち破壊した。

 

「うわああああああっ!?」

 

心音が言い放つ。

 

「突入っ!!」

 

全員で部屋に突入。そして、そこにいた4人の学生全員を確保した。

 

「フリーズよ……生物学部。」

 

飛鳥が全員に手錠をする。

俺はメガネの男に歩み寄る。

 

「く……僕らの…烏丸先生の計画が……っ!!」

 

「これで本当に終わったわね。ガストレア・ヒューマン。」

 

俺はメガネに問う。

 

「聞かせろ。『ツカサ』ってなんだ?」

 

「………ふん。そこのパソコンを持っていけ。データは消してないし、ロックもかけてない。」

 

顎を向けた先のノートパソコン。俺はそれを手に取る。

パスワードも聞き出し、あとはこいつらを警察に突き出す……か。

既に飛鳥が連絡を入れたようだ。

こうして、事件そのものは幕を閉じた……。

 

 

 

全てが終わり、ホテルに戻る。その日は長瀬家邸宅にて盛大な食事会が行われた。さらにその最中に聖天子から吉報が。なんと、東京エリアのアルデバランの殲滅に成功したとのこと。

とりあえず、こちらもあちらも一件落着……ってわけか。

 

そんな訳で、今は夜。ホテルに戻ってきた途端、心音がベッドにダイブし爆睡。相当食い呑みしてたからなぁ……。

俺はそこまで眠くはなかった。

 

「…………」

 

俺はメガネ……柴谷 宏太のパソコンを開く。

主にガストレア・ヒューマンの構造や作成方法、戦闘データなどがほとんどだったが、唯一他とは名前の違うデータが。

 

『プロジェクトに関する報告書』

 

俺はそのファイルを開いた。

 

『2024年3月21日。

本日より、明烏 省吾(あけがらす しょうご)教授と烏丸 凌馬助教授によるプロジェクトを開始。内容はガストレアウイルスから抽出した再生力のDNAによる再生治療、並びにウイルス抑制因子の人工的な生体への組み込み。

趣旨としては明烏教授の息子 『明烏 司(あけがらすつかさ)(9)』を生き返らせるという教授の意思によるもの。』

 

「!?」

 

息子………!?

俺はファイルを読み進める。

 

『4月25日。

ガストレアウイルスのそれぞれの性質への抽出に成功。早速被験体である、ガストレアウイルスの抑制因子が投与済のマウスに投与。10回中7回ガストレア化。やはり確率は低い。』

 

『5月10日。

ガストレアウイルスの抑制因子が作用するのはどうやら女体のみらしい。そこで遺伝子を組み替え、男体でも作用するようにしたところ、5匹中1匹の再生に成功。赤い瞳でありながらネズミとしての習性が備わっている。』

 

遺伝子組み替え……そんなことが…。

一歩間違えればパンデミックにもなり兼ねないというのに。

 

『7月29日。

ついに明烏 司に投与。傷や臓器機能は回復したものの、意識を取り戻すもガストレア化。実験は失敗に終わる。』

 

『9月6日。

明烏教授は事前に採取していた司のDNAを元にクローンを作成し、作成した抑制因子を組み込む。以後、実験はクローン『ツカサ』によって行われることに。』

 

「!!?」

 

嘘だろ………俺が……クローン……?

 

「ツカサの…クローン……!?」

 

『10月9日。

ツカサによる41回目の実験。なんと成功。以後、ツカサは普通の人間と同じように生活。』

 

『12月24日。

ツカサとともにクリスマスを祝う。久しぶりに教授の笑顔を見た。ツカサも明るい。』

 

『2025年1月26日

烏丸先生がツカサのクローンのデータを持ち出し、実験。より因子が強いものを組み込むことに成功。スペアとして10体のツカサが完成。』

 

『3月18日。

急性心臓発作を伴う心臓病にて、ツカサは病死。教授は全てのツカサを破棄。プロジェクトの終了を告げた。』

 

「そんな………。」

 

俺を作ったのは……烏丸とその教授だというのか……!?

 

『3月19日。

烏丸先生が新たなプロジェクト『ガストレア・ヒューマン計画』を始動。ツカサの時より効率もいい。僕は彼に着いていこう。

そういえば、ツカサの屍…いや、残骸がない。どういうことだ?』

 

『3月30日。

ツカサ達は明烏元教授の手引きにより逃げていたとのこと。烏丸先生の指示のもとサンプルに作った『キマイラ』により、ツカサ9体を排除。残り1体は行方不明。まぁ、勝手にのたれ死ぬだろう。』

 

そんな………俺は……。

 

「奇跡的に生き残った………『ツカサ』の成功作……?」

 

以前、室戸先生に身体検査をされた時に「完璧な抑制因子が働いている」と言われた。その事実とこのデータから取るに、俺はそういうことになる。

 

「俺は………作られた呪われた子供……っ!!」

 

試験管から生まれた実験動物……ガストレア・ヒューマンとなんら変わらない……。

 

「そんな………っ!!」

 

俺はその真実に、頭を抱えるしかなかった。

 




真の真実です。
この後の真の行動にもご期待ください。
制作裏話をブログにて公開する予定ですので、そちらも合わせてお楽しみいただけると嬉しいです。

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第45話 〜父と息子〜

第一部の最終話的なお話です。
皆様のお陰でここまで続けることが出来ました。
誠にありがとうございます。

第二部も引き続き閲覧いただけると非常に嬉しいです。
これからも神武音ミィタをよろしくお願いします。


「………。」

 

コーヒーを啜る、白い髭が目立つ男……明烏 省吾。

カップを手元に置くと、窓から見える景色…朝焼けに照らされた野原の様子のスケッチを再開する。

 

……ピーンポーン…。

 

「ん? お客さんか……。」

 

ペンを置き、玄関に向かう。ドアを開く。

 

「はい、どちら……⁉︎」

 

「………。」

 

目の前にいたのは、一人の少年。

鋭い目線で明烏を見ているその顔に……明烏 省吾は見覚えがあった。

 

「……つ、司……⁉︎ 司、なのか……⁉︎」

 

歩み寄ろうと、抱き寄せようとしたその時だった。

 

「………。」

 

少年……小鳥遊 真は銃を突きつけた。

 

「⁉︎」

 

明烏は目を見開く。

少年はそのまま口を開いた。

 

「……あんたが、明烏 省吾か?」

 

「あ、あぁ………何の用、ですかな…そんな物騒なものを持っていると……」

 

真は自分の身分を示す、手帳を見せる。

 

「民警だ。明烏 司について聞きたい。だがその前に…聞かせろ。」

 

目つきが更に鋭くなる。

 

「……あんたは、今は何をしている……⁉︎」

 

 

 

『明崎民間警備会社の皆へ

俺は昨日の夜、全てを知った。

俺は自分自身に決着をつけに行く。

戻ってくるかどうかはわからない。

だから、とりあえず言っておく。

今までありがとう。 ー 小鳥遊 真 』

 

「何よこれ……⁉︎」

 

心音はパソコンを開く。するとそこには……とある住所が。

 

「‼︎ ここは………‼︎」

 

 

 

「……何をしている、というと?」

 

「具体的に言ってやる……お前はまだ、生物実験をしているのか?」

 

俺は銃を下ろさない。

 

「………していると言ったら?」

 

「……あんたを殺す。」

 

「…………私は既に教授の肩書きを捨てた。今はただの、趣味がスケッチのしがない老人さ。」

 

明烏の表情が曇る。俺は銃を下ろす。

 

「………あんたの実験の記録を見た。ツカサ・プロジェクトについての報告書…。」

 

「そうか………入りたまえ。コーヒーでいいかな?」

 

「茶の方が助かる。」

 

俺は家に入った。

玄関の下駄箱の上には……写真が飾られており、そこには明烏と、俺にそっくりな少年が。

おそらく、司だろう。

俺はダイニングに入る。リビングには遊具があった。恐らく、司はここで遊んでいたのだろう。

 

「適当にかけたまえ。紅茶でいいかな?」

 

「あぁ。」

 

俺はソファに腰掛ける。至る所に司の写真。それほど愛していたのか……。

明烏が紅茶を持ってきた。

俺の向かい側に腰掛ける明烏。

 

「……司について、か。だが、君は読んだのだろう?プロジェクトの報告書を。」

 

「あぁ。だから、大方のことはわかってる。俺が知りたいのは、あんたのことだ。」

 

「私の……?」

 

俺は紅茶に砂糖を落とす。

 

「あんたはどうして…ガストレアウイルスの遺伝子操作なんて危険なことをしてまで、司を……クローンを作ってまで、蘇らせたかったんだ?」

 

明烏は……カップを置いた。

 

「……約束、だったからだ。」

 

「約束?」

 

明烏は立ち上がり、アルバムを持ってきた。俺はアルバムを受け取り開く。そこには明烏と司、そして一人の女性が。

 

「恵美子(えみこ)……妻との約束なんだ。司の笑顔を守る。」

 

「…………」

 

明烏は淡々と語り始める。

 

「恵美子は司を産んですぐに、病気でこの世から旅立ってしまった。彼女の遺言は……司の笑顔を守って欲しい、だった。私は約束した。彼女の大切なものを守ると。」

 

「…………」

 

「だが、司は事故で死んでしまった。あの……ガストレア大戦だ。逃げ惑う人混みの中、私は司と逸れてしまった。繋いでいた手を離してしまった。」

 

その瞳には、涙。

 

「その人混みに、ビルが倒れこんだ。救出された時には……司はもう……。」

 

……さぞかし、辛かったのだろうな。

 

「その後、私にある話が飛び込んできた。ガストレアウイルスの研究だ。再生医療も兼ねて研究してきた私はそれを引き受けた。そして……」

 

「ツカサプロジェクト……か。」

 

頷く明烏。話を続ける。

 

「クローンを作るのには、わたしも悩んだ。だが、そこは学者としてのプライドが、NOとは言わせなかった。だが、成功したクローンも死んでしまい、私はもう諦めた。クローン達を逃がした。だが、烏丸くんにより、殆どが殺された。自分の力の無さに失望し、私は教授を辞め、大学を去った。」

 

俺はアルバムを閉じる。

 

「………イニシエーターってのは、男は存在し得ない。それは知っているよな?」

 

そして、問いかける。

 

「……うむ。」

 

「………俺は男だ。だが、イニシエーターだ。だから、結論としてこうなる。」

 

俺は明烏の瞳を見つめ、言った。

 

「俺は……ツカサの生き残り…あんたと烏丸が造ったクローン…その生き残りだ。」

 

「………」

 

「俺は……所謂、烏丸のプロジェクトのガストレア・ヒューマンのプロトタイプ。だから、本当はイニシエーターじゃない。ガストレア・ヒューマンと……怪物と何ら変わりない。」

 

俺は……正直、頭の中が混乱していた。

 

「……俺は、どうしたらいい? ……俺を造ったあんたに聞きたい。……一応の、『父親』に。」

 

その言葉に、明烏は目を見開く。

 

「…………司…。」

 

そして、優しく俺の頭を撫でる。

 

「……自分がやりたいと思った道を進みなさい。答えは私が出すものではない…君が出すものだ。」

 

「俺が………。」

 

「君が後悔しないために……君が今やりたいことは、何かな?」

 

俺は……拳を固めた。

 

「……ガストレアを倒す。平和という、希望を信じて。」

 

明烏は俺を抱き寄せた。

 

「それでいい。子供の決断を見守り、それを理解するのも親の努めだ。」

 

変な感じだった。でも、心地よかった。

その時実感した。あぁ、この老人はホントに俺の父親なんだと。

 

「………だから、さ。あんたに言いたいんだ。」

 

俺は顔を上げる。

 

「あんたの実験は失敗していなかった。あんたの息子は……クローンとかそんなこと関係なく、こうして生きてる。あんたは、子供の笑顔を、未来を守ることが出来た。あんたはもう、何も背負う必要はない。」

 

その言葉に、明烏は涙を流した。

 

「ありがとう………本当に、ありがとう………っ‼︎」

 

 

 

「じゃあ、行くよ。」

 

玄関で靴を履く。

 

「あぁ、達者でな。」

 

「あんたもな……『父さん』。」

 

「うむ……『司』。」

 

俺は明烏家を出て、山道を下る。一人の女性とすれ違った。俺はそのまま、道を進んでいった。

 

 

「おはようございます、省吾さん。」

 

「あぁ、おはよう。」

 

女性は明烏の助手だった。

 

「あら、今日は随分と元気そうですね。あら……このカップは?」

 

その問いに、明烏は答えた。

 

「……息子が、帰ってきたのさ。」

 

 

 

「………やっぱ来たのか。」

 

山を下りてきた。麓には心音が待っていた。

 

「あんな書き置きして、来ない方がおかしいわよ。」

 

そうか、こいつはこういうやつだったな。

 

「会えた?『お父さん』には。」

 

「あぁ。もう大丈夫だ。」

 

俺は山を見上げる。

 

「……あの人はもう、何も背負う必要はない。」

 

俺は明烏 省吾を助けたかったのだ。過去の呪縛から、彼を助けたかった。

過去の過ちを背負う事の辛さというのは、俺も分かる。痛いほど、嫌になるほど。

 

「……なぁ、心音。」

 

「ん?」

 

「これからも……俺の相棒でいてくれるか?」

 

心音を見つめる。

それに応えるかのように……微笑んだ。

 

「………勿論だよ。……クローンとか、そんなの関係ないもの。真は真。これからも私の相棒…私の素敵なダーリンだよ‼︎」

 

「ふっ……そうだな。」

 

 

 

 

俺は小鳥遊 真。

ガストレアと戦う、イニシエーター。

 

例え俺が本当のイニシエーターじゃないとしても、俺の心は、本物だ。

 

俺は戦う。

これからも、ずっと……。




この後は第二部までの箸休めとして、外伝を書きます。
予定として、真&心音、シグマ、火乃、そして……ガストレア・ヒューマン編にて登場したあの少年で、4話ほど書きます。増えるかもしれません。
この後もよろしくお願いします。


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第45話EX①〜 一緒 〜

ども、外伝……というかショートストーリーです(笑)
短くてほっこりしたものが書きたかっただけなんです(笑)
決して手抜きではないですよ、いやホント。
おたのしみいただければ嬉しいです。


「なぁ、心音。」

 

「んー?なぁに、ダーリン。」

 

「……一応、俺たち任務は終わったんだよな。」

 

「そうだねー。」

 

「4日で事件解決。余った3日間は自由。博多を満喫……だったよな?」

 

「うん、そうだねー。」

 

「………何で離してくれないんだ。」

 

「嫌よ。離さないからね。」

 

俺は心音から抱き着かれていた。

新博多大学の事件は解決、東京のアルデバランも撃破。俺たちは聖天子より、休暇的なものを頂いた。折角博多に来たのだ。観光と洒落込もうと、他のみんなは出掛けたのだが、心音は俺を離してくれないのだ。

 

「心音……あの、苦しいんだが。」

 

「うっさいぞ、真に拒否権はないの。離してあげないから、許すまで。」

 

「なんか俺悪いことしたのかよ……」

 

「した。」

 

「なんだよ。」

 

「黙って出て行った……1人で。」

 

その言葉に、少しチクリときた。

1人で……その言葉に。

 

「………心配したんだよ。勝手にあんな書き置きして。どうしようかと思ったもん。真が帰ってこなかったら……私………。」

 

「………悪かった。」

 

その頭を撫でてやる。

 

「口だけならなんとでも言えるわよ……。」

 

「じゃあ、どうしろと……?」

 

「…………チューして、好きって言って。」

 

「…………お前さ。」

 

「…………何よ。」

 

「本当は、キスして欲しかっただけだろ?」

 

「…………ん。」

 

目を閉じる心音。

やれやれ。

 

「……んっ。」

 

その唇に触れる。そして、耳元で囁いてあげた。

 

「………好き…だ。」

 

 

 

 

「というわけで、何食うよ。」

 

「ラーメン食べたい‼︎ まるだやのラーメン食べたい‼︎」

 

「お前ほんとラーメン好きだよな。」

 

「あら、意外?」

 

「いーや。」

 

心音からようやく解放され、俺たちは博多エリアを散策していた。

結構賑やかだな。

 

「あったよ‼︎ あそこあそこ‼︎」

 

心音の指差した先にあったのは、ラーメン屋。

 

「早く早く‼︎」

 

 

 

 

「すみませーん、替え玉バリカタで‼︎」

 

「おい、もう3回目だぞ?」

 

「いーじゃん、お腹空いてたもん。」

 

心音はラーメンを旨そうに頬張り、替え玉をする。

嬉しそうな顔……くそ、やっぱ可愛いな……。

俺は餃子をつまむ。

 

「………心音。」

 

「ん?なぁに?」

 

「……その辛子高菜、辛い?」

 

実は最近、辛いものに挑戦している俺である。この間、ようやくポテチの辛いやつを食べられるようになった。

 

「んー……まぁ、普通かな。」

 

「そ、そうか。」

 

俺は辛子高菜をレンゲにとり、スープに浸け、口に流し込んだ。

 

「………ごげふっ。」

 

辛かった。

 

 

 

 

「いやぁー、食べたねー‼︎」

 

食い過ぎだろ……ったく。

結局6回替え玉した心音なのである。俺たちは夕方の公園のベンチに座っていた。

 

「ほら心音、お口直し。」

 

ガムを手渡す。

 

「ありがとー。」

 

2人でガムを噛む。

 

「………真。」

 

「ん?」

 

「ありがとね。」

 

「おう。」

 

「真。」

 

「何だ。」

 

「……大好きだよ。」

 

「………知ってる。」

 

俺たちは手を握り合った。

 

「真。」

 

「何だよ。」

 

「ずっと、一緒だからね。」

 

………俺は答えた。

 

「……もちろんだ。」




テーマは「一緒」です。
ポエムみたいにしたかったんです……(笑)


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第45話EX②〜微笑みのメイド〜

シグマのほんわかな(?)博多巡り1日です。
短いですが、手抜きじゃないよ‼︎本当だよ‼︎(笑)


皆様こんにちは。明崎民間警備会社のメイド、コードネーム・シグマです。

 

博多エリアのガストレア・ヒューマン騒動は解決。今は休暇中です。

そんな私は、博多巡りを満喫中です。

東京エリアとは違った文化があり、とても興味深いのです。

 

「………。」

 

商店街を歩いているのですが、楽しいです。色々なお店があります。

 

「………あれは…。」

 

湯気の立っているお店を発見。接近してみましょう。

 

「へいらっしゃい‼︎」

 

饅頭のお店でした。

湯気とともに豚肉のいい匂いもします。

 

「一つ、お願いいたします。」

 

「あいよ‼︎120円だ‼︎」

 

しかも安い。

 

「まいどー‼︎」

 

私は再び足を進める。饅頭を一口……ふむ、中々美味しい。味付けは濃過ぎず、程よいこの味付けが肉の味を引き出しているかのようです。

 

「実緒様もご一緒なら、良かったというのに…残念です。」

 

実緒様は昨日の食事会にて食べ過ぎてしまい、本日はダウンです。

 

「仕方がありません。さて……」

 

スマートフォンでマップを開く。

ここから少し行ったところに娯楽施設があるようですね。行ってみますか。

 

 

 

「ありがとうございましたー。」

 

いつものように写真をお願いされるのは、博多でも同じです。やはり、メイド服というのは珍しいのでしょうか。

そんなこんなでゲームセンターにやってきました。実は最近、実緒様には内緒でゲームセンターに来ています。

リズムゲームというものに興味があります。

特にダンスのゲーム……カメラによる判定でのゲームに、最近は没頭しています。

クレジットを投入し、ICカードを読み込み、データをロード。

曲をセレクトし、難易度は……extreme。

 

「………っ‼︎」

 

ステップや手振りを、画面に合わせて決めていく。

やはり、何かよくは分からないのですが……楽しい。

 

「……っ………っ‼︎」

 

ターンし、決める。

評価は……perfect。

 

「オオオオオオッ‼︎」

 

周りから歓声。………どこに拍手の余地が…まぁいいでしょう。

二曲目もクリアし、私がその場を後にしようとした時でした。

 

「おいおいねーちゃんよ……」

 

男の人3人が私に歩み寄り、私の肩に手を回す。

 

「なぁ、悪いことは言わねぇからよぉ、俺たちと遊ばね?」

 

「つーかメイド服とか凄くね?ねーねー、どっかのメイド喫茶の店員?」

 

「しかもいい身体してるよなぁ……ヒヒッ…。」

 

私は男の手首を掴み……

 

「うおっ⁉︎」

 

そのまま地面に跪かせ、手首を捻る。

 

「いたたたたたっ⁉︎」

 

「……私に触るのは、およしになられた方が身の為ですよ?あとついでにお答えしますと、私はメイド喫茶の店員ではございません……正真正銘のメイドでございます。」

 

そう言い残し、足を進める。

 

「……今日は休暇ですが、ね。」

 

 

 

「美緒様、ただいま戻りました。」

 

私はホテルに戻ってきた。

 

「おかえりなさい………。」

 

美緒様はまだ寝転んでいました。

 

「まだ体調は優れないようですね。」

 

「昨日食べ過ぎたから……ね……。」

 

「今日の夕食は各自ですので、あとで何か買ってきます。何か軽いものでよろしかったでしょうか?」

 

「うーん…じゃコンビニのサンドイッチ。野菜沢山なやつ。」

 

「かしこまりました。」

 

私はコンビニに向かう。部屋を出ると……リコ様とプサイ様が。

 

「あ、シグマ‼︎」

 

リコ様が駆け寄る。

 

「リコ様。プサイ様。今から夕飯ですか?」

 

「あぁ、おでんの美味しそうな店があったのでな。今から行くところでござる。」

 

「シグマもどう?」

 

「申し訳ありません。お気持ちは嬉しいのですが、美緒様の夕飯とケアをしなくてはならないので……。」

 

「そっか……美緒お姉ちゃんにお大事にって言っといて‼︎」

 

「はい、それでは行ってらっしゃいませ。」

 

去る二人に頭を下げる。

 

「私も行きましょうか。」

 

 

 

「美緒様。」

 

夕飯を買ってホテルに再び戻ってくる。

 

「ありがとシグマ……っと。」

 

起き上がる美緒様に袋を渡す。

 

「とりあえず買ってきました。食べましょう。」

 

「うん。ごめんねシグマ。私のせいで……他に食べたいものとかあったよね?ホントごめん……。」

 

落ち込む美緒様。その頭に手を置く。

 

「お気になさらず。それに……主人の体調の管理も、メイドの勤めですから。」

 

「……シグマ。いつもありがとね。」

 

微笑む美緒様。私も……微笑み返した。

 

「………こちらこそ、です。」

 

 




第2部の方もストーリーは大方出来上がりました。
あと二話ほど、EXをお楽しみください。
次回は火乃ちゃんのお話です。


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第45話EX③〜心不器用な狼〜

火乃ちゃんに関しては、二部でも活躍する予定です。



「か、火乃……。」

 

「なぁに?飛鳥……っ。」

 

「ひぅっ……止めてよ、こんなこと……んあっ…。」

 

「仕方じゃないでしょお……?我慢できないんだから……っ。」

 

薄暗い寝室。長瀬 飛鳥の上に覆い被さる私……季崎 火乃。

 

「うぅ……ん……っ。」

 

「んん……飛鳥、美味しっ。」

 

私は……飛鳥をペロペロと舐めていた。私なりの愛情表現……野生としての本能でもあるけど。

 

「もう……はたから見たら変態みたいじゃない。」

 

「大丈夫よ。この部屋は密室だし。」

 

私はベッドから降りて背伸びをする。

 

「んー……っ‼︎ 火照り取れてスッキリ‼︎」

 

「はぁ…それは良かった。」

 

「じゃ、行ってくるー‼︎」

 

私は帽子を被り、屋敷を飛びだした。

 

 

 

 

「あむ……れる………アイス旨〜。」

 

アイスを食べながら、街中を歩く。

 

「どーしよっかなー。パフェ食べよっかな。うん、そうしよう。」

 

アイスを平らげ、私は喫茶店に入る。

 

「あれ、火乃。」

 

そこにいたのは……

 

「あ!小鳥遊 真‼︎」

 

小鳥遊 真が1人、レジに並んでいた。

 

「なんだよ、お前も1人カフェか。」

 

「ま、まぁね。」

 

「折角だし、一緒にお茶しようぜ。」

 

「ん……ま、まぁ‼︎どうしてもって言うなら、い、いいけ、ど……⁉︎」

 

「じゃ、そこの席取っとくなー。」

 

小鳥遊は席へスタスタと行った。

 

「ちょ、ちょっと!少しは反応しなさいよ‼︎」

 

 

 

「なんだ、お前も甘党なのか。」

 

「ま、まぁね。」

 

お互いにパフェを食べながら話す。

 

「そういや、あんた相棒は?」

 

「心音か?今マッサージ受けてるらしい。あと30分くらい時間潰さねぇと……。」

 

「ふーん……ね、ねぇ。」

 

「んー?」

 

「あんたってさ、あの相棒のこと……ど、どど、どう思ってるの?」

 

「え?まぁ……好きだぞ、いろんな意味で。」

 

「いっ、色んな⁉︎」

 

私は思わずその場から立ってしまった。

 

「おい落ちつけ。あと顔が……」

 

「あっ、赤くない‼︎」

 

「いや、思いっきり赤ぇよ……。しかも言ってないし…。」

 

つい取り乱してしまった。

私は座る。

 

「はぁ……何、それは………恋人、とか、そんな感じ?」

 

「ま、まぁ……否定はしないかな。」

 

「そ、そっか……。」

 

ヤバい……恋バナとかしたことないから…なんか、変にドキドキする………。

 

「何?興味あんのか?そーゆー話。」

 

「だっ、誰が………」

 

そんなこと、と続けようとしたが止めた。

何でだろ……コイツがいると、何か調子狂う。

 

「……無いことも、無い…ケド。」

 

目線をそらしたその時だった。

 

「ダーリンお待たせー‼︎」

 

小鳥遊の相棒……徳崎 心音が、小鳥遊に抱きつく。

 

「どわっ⁉︎ お、思ったより早かったな…。」

 

「そーなんだよ……って、あら、火乃ちゃんだぁ〜‼︎」

 

徳崎は私に抱きつき、撫でくりまわした。

 

「はわわっ⁉︎ やっ、止めろ‼︎ 」

 

「もぉ、可愛いワンちゃんめ〜、うりうり〜。」

 

「わっ、私は狼だっ‼︎」

 

 

 

 

「ただいま……はぁ、疲れた。」

 

私は屋敷に帰ってきた。

 

「あらおかえり。楽しかった?」

 

「うん、まぁね。」

 

私は自室に入り、ベッドに飛び込む。部屋に飛鳥が入ってくる。

 

「あいつら、明日帰るってさ。」

 

「あらそうなの。じゃ、明日見送りに行きましょっか。」

 

「うん。」

 

「あら、今日は素直なのね。」

 

「まぁ、ね………。」

 

私だって気にしてんだよ。素直じゃないこと。だから、少しでも努力しようと、ね……。

 

「小鳥遊……。」

 

ヤバい……ドキドキしてきた……。

 

「うー……何でよ、もう。」

 

私は……心不器用な狼なのであった。




ドキドキしちゃう火乃ちゃんが、可愛すぎてヤバい(妄想内)。
けもみみモフモフ最高すぎる。

次回はあの少年が帰ってきます。


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第45話EX④ 〜蟷螂少年とバーテンダー〜

懐かしい2人のお話です。
少し間が空きますが、第二部もよろしくお願いします。


 

「うぅ………っ。」

 

烏丸 凌馬の潜入していた、東京エリアの町外れにある廃ビル跡地。瓦礫の中から出てきたのは……東 雫。

 

「…………ここは…そうか。」

 

死ねなかったか……。

 

「っ……。」

 

胸の部分に激痛が走る。彼は胸の部分を抑えながら、ゆっくりと歩き出した。

 

「く……っ…。」

 

しかし、その場で崩れ落ちて、倒れてしまった。

 

「…………。」

 

そのまま気を失った。

 

 

「………っ。」

 

目がさめると、雫は大人な雰囲気のある店のソファに寝かされていた。

 

「おっ、起きたか坊主。」

 

カウンターにいる男がボトルを振っている。

 

「ここは……?」

 

「俺の店、『BAR クスィー』だ。あの瓦礫の山の付近は俺の散歩コースでね。危なかったな。とりあえず手当はしといたぜ。」

 

雫は不思議そうに男を見る。

 

「……あんたは?」

 

「俺は……蒼ヶ崎 幸雄(あおがさき ゆきお)。しがないバーテンダーさ。」

 

グラスに透き通った紫の液体を注ぐ。それを雫のもとへ持っていく幸雄。

 

「アルコールは入ってないから安心しな。特製のグレープジュースだ。」

 

雫はグラスを受け取り、ジュースを飲む。

 

「……ありがとう。」

 

「礼には及ばんよ。」

 

幸雄……かつて「クスィー」と呼ばれた男はカウンターに戻った。

 

 

 

その日から雫はバーに住み込みで働くことになった。店内の清掃や、簡単な料理、ある時には客との話し相手になる事もあった。

そして、あっという間に1ヶ月が経った。

 

「どうだ?慣れてきたか?」

 

「まぁ、な。」

 

幸雄がパスタを持ってくる。

それを食べる雫。

 

「……なぁ、幸雄。」

 

「んー?」

 

「………俺、生きてていいのかな?」

 

いきなりそんな質問を受け、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする幸雄。

 

「………う、うーむ。………いいんじゃないのか?てか、どーしてそんなことを?」

 

「……幸雄。ガストレア・ヒューマンって知ってるか?」

 

「…? 一時期東京エリアで暴れたっていう、あいつらか?腕とかがガストレアの……」

 

「あぁ。」

 

雫は手袋を外すと……自身の腕を変貌させた。

 

「っ⁉︎」

 

「………俺、それなんだよ。死にかけてるとこを拾われて、身体中弄くり回されて、利用され、捨てられた。」

 

腕を元に戻す。

 

「………まぁ、でもよ。」

 

ウォッカを飲みながら、幸雄は話す。

 

「今こうして生きてるんならよ、生きてたって文句は言われないわけなんだし、生きてていいんじゃねーか?」

 

「…………。」

 

「……まぁ、俺も色々とさ…人の死は見てきたからよ………なんとなく、分かるんだよ。生きるってことがどんなに凄いことかって、さ。」

 

「………そうか。」

 

雫はパスタを平らげる。

 

「………悪いな、変なこと聞いて。」

 

「気にすんな……ほら、もう店閉めたし、さっさ寝ろ。」

 

「おう。」

 

小さなバーの中での、この出会い。

この出会いが、明崎民間警備会社を救う力になるのは、近い未来のこと……。




この二人は二部でも大活躍です。
来月になるまでには二部スタートします。


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〜崩壊せし絆〜
第46話〜立場と嬉しさ〜


第二部スタートです。
当初の予定より早く投稿しました。
久々にガストレアとの戦闘書いてみるww


月光が辺りを照らす夜。今日も俺たちは戦う。

 

「グォオオオ……ッ!!」

 

呻き声を上げる異形の怪物……ガストレア。ステージ1のモデル・エレファント。

物陰に隠れ、隙を伺う俺…小鳥遊 真は、通常のスナイパーライフルの銃口をガストレアに向けていた。

その俺の隣には、相棒の徳崎 心音。

 

「どう?なんか動きは?」

 

「今の所ない。こちらに背を見せたときに畳み掛けるぞ。」

 

「オッケ。」

 

心音が刀を逆手に持って構える。

…………ガストレアが背を見せた。

 

「!!」

 

俺は弾丸を連射。

弾丸を喰らったガストレアはこちらを向きなおすも、遅かった。

 

「ていやああああああっ!!」

 

心音の刀がガストレアの胴体を、縦に真っ直ぐ斬り裂く。ガストレアは叫び声を上げた後、体液を噴出しながら肉片へと化した。

 

「やったねダーリン!!」

 

心音が駆け寄る。

 

「おう。」

 

俺は実緒に通信を入れる。

 

「実緒、こっちは片付いた。そっちは?」

 

『今目の前にいます。ですが、すぐに片付けられますので、先にキャンプに戻っておいて下さい。』

 

「了解だ。」

 

俺は通信を切る。

 

「キャンプに戻るぞ。リコちゃんの方も大丈夫だろ。」

 

「そうだね!あれから強くなったからねー、あの二人。私たちも負けてられないね!!」

 

俺たちはキャンプに向かった。

 

 

 

 

「キシャアアアアッ!!」

 

糸を吐くガストレア…モデル・スパイダー。

それを躱し、ガストレアの胴体にランスを突き刺して、振り払って吹っ飛ばす私…川野 実緒。

 

「シグマ!!」

 

私の背後から飛び出して行ったのは、メイド服に身を包んだ私のプロモーター…シグマ。

 

「!!」

 

シグマは体を猛スピードで回転しながら突っ込み、ガストレアの右脚を全て斬り落とした。

 

「キエエエエエエッ!!」

 

体を支えることが出来なくなったガストレアは地面に倒れる。その上にシグマが立つ。

 

「……お命、頂戴いたします。」

 

鎌の刃をガストレアの胴体に突き刺し、刃を引き抜く。

 

「っ!!」

 

シグマが降りて刃をしまった時、ガストレアは飛散した。

 

「損傷0、消耗5%、タイム2分12秒53。自己評価ポイント95。……任務完了です。」

 

「お疲れシグマ。キャンプに戻りましょ。」

 

「はい。」

 

 

 

 

「てやっ!!」

 

手裏剣を投げて牽制するのは、私…水瀬 リコのパートナー、土条寺 知哉。

川の中流付近にてガストレア…モデル・イールと対峙している私たち。

 

「そこ!!」

 

水面を滑りながら銃弾を浴びせ、怯ませる。

 

「キュルルルルルッ!!」

 

「知哉!!」

 

「承知!!斬ッ!!」

 

一瞬でガストレアをバラバラに斬り裂く。肉片となったガストレアは川に流れていく。

 

「決まったでござる……!!」

 

刀を鞘に収め、一息。私は知哉に駆け寄る。

 

「やったね知哉!!」

 

「うむ。リコ殿の援護のおかげでござる。さ、キャンプに戻るでござる。」

 

「うん!!」

 

私たちはキャンプに向かった。

 

 

 

「戻ったよー!!」

 

「ちょ、心音!!戻ってきたから離れろ!!」

 

「だが断る!!私には戦闘以外はいついかなる場合でも真を愛でる義務がある!!」

 

「勝手に義務化すんな!!」

 

リコちゃん達が戻ってきた。

心音はキャンプに戻るやすかさず俺に抱きつき始めたのだ。

ここまでくると流石に少し鬱陶しくもなったりするのだが、断れずに受け入れてしまう俺がいるわけだ。

 

「あー……せ、拙者たちはお邪魔なようでござるな。社長たちを探してくるでござ…」

 

「気にすんな知哉!!ほら離れた!!」

 

俺は心音をようやく振り払う。

 

「きゃんっ……むう…真のヘタレ。」

 

「お前なぁ……。」

 

「あ、遅れてごめんなさーい。」

 

実緒とシグマが戻ってきた。

 

「あ、お疲れー。」

 

「…真様、どうなさいました?体温が高いですが……。」

 

シグマが俺を見つめ問う。

 

「き、気にすんな。それより、他のガストレアは?」

 

美緒に訊く。

 

「あ、はい。今日のところはもう大丈夫みたいです。事務所に戻りましょう。」

 

「おう。」

 

「さ、帰ったら夕飯の仕込みっ!!」

 

俺たちは事務所に戻った。

 

 

 

 

 

 

「そうですか。小鳥遊様は、ガストレア・ヒューマンのプロトタイプ……。」

 

「あぁ、そういうことだ。」

 

俺は一人、聖天子のもとを訪ねていた。会社全体としての、博多エリアにおけるガストレア・ヒューマン騒動の報告は済ませたのだが、俺の過去についての話は出来なかったのだ。

というわけで、俺は聖天子の邸宅にて自分の過去について、データと共に話をしていた。

 

「………つまりだ。あんたが今こうして話しているこの俺は、イニシエーターであってそうじゃない。ガストレア・ヒューマン……民警が排除対象としている輩の一つって訳だ。」

 

「………何を仰りたいのですか?」

 

「………俺は本当は、あんたらの敵だってことさ。あんたが命じれば、俺はすぐにでも抹殺……いや、排除の対象になる。俺を野放しにすれば、あんたは罠にかかった標的を逃したことになる。どうなんだ?あんたの意見を聞きたい。俺という存在は……この世界において、何の立場にいるべきなのかを、な。」

 

その問いに、聖天子は答えた。

 

「………小鳥遊様には、これまで通りイニシエーターとして、ガストレアの撃退をお願いいたします。」

 

「………いいのか?」

 

「……私の勘でしかないのですが…小鳥遊様なら大丈夫、と考えました。」

 

「……へっ、そうかよ。」

 

俺はカップをソーサーに戻した。

 

「それに、明崎様も生前申しておりました。『奴はどんなに謎だろうと、俺たちの会社のイニシエーターだ』と。」

 

「信也が……。」

 

それを聞いて、心が落ち着いた。俺はイニシエーターでいい。いや、そうでなくては、な。

 

「……わかった。ありがとうな。」

 

「あなたの恋人様方にも、よろしくお伝えください。」

 

聖天子は微笑んだ。

 

「おう。」

 

俺は邸宅を後にした。

 

 

 

「ただいまー。」

 

会社に戻ってきた。心音がキッチンで何やら調理していた。

 

「あ、おかえりダーリン。聖天子様、どんな感じだった?」

 

「どうもこうも相変わらずだよ……あれ、他のみんなは?」

 

辺りを見渡すも、実緒たちの姿がない。

 

「えーと、実緒とシグマが天童さんのところで、リコちゃんと知哉くんは買い出しに行って貰ってるわ。二人きりだよ、やったね!!」

 

何を言うとるんだ。俺は手を洗ってうがいをし、冷蔵庫のコーラを取り出した。

 

「………お。」

 

夕日綺麗だな。俺はベランダに出る。

 

「……俺はイニシエーターか。」

 

胸の前に拳を作って、強く握りしめる。

 

「へへっ。」

 

俺は嬉しかった。




次回から新キャラも出ます。
これからも宜しくお願いします。


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第47話〜誘拐と雨〜

4月になりましたね。
心機一転頑張ります!
今年辺りにオリジナル書きたい……‼︎


「誘拐事件?」

 

窓から日が差し込む昼下がり。

シグマがパソコンとスマホを交互に見ながら、そんな事を言った。

 

「はい。」

 

「でも、誘拐事件なんて私たちには関係ないんじゃ…?」

 

実緒の発言に答えるように、シグマがパソコンの画面をプロジェクターに映した。

 

「ここ数日、全エリアにて民警……特にプロモーターが数人ほど誘拐されているみたいです。」

 

「プロモーターを……?」

 

誰が何のために……?

 

 

 

第三次関東大戦、及びガストレア・ヒューマン事件収束の後、俺たちは平和な日々を過ごしていた。

心音は俺に引っ付き、実緒は書類の整理、シグマはその手伝いや俺たちの雑用、リコちゃんと知哉は修行……といったように、平凡な毎日を送っていた。

ガストレアも最近は少なく、出撃もほぼ無い。

このまま平和な日々が続けばいい……そう思っていた俺は甘かった。

 

 

 

 

「ダーリン、今日は何食べたい?」

 

「んー、じゃ回鍋肉。」

 

俺と心音は買い出しに行っていた。

時計は午後3時を指していた。俺はポケットに手を突っ込み、心音を見つめていた。

こいつ、買い物の時の顔も可愛いよな……。

 

「んー?どしたのダーリン。なんか付いてる?」

 

「何でもない。早く済ませようぜ。」

 

俺たちはスーパーに足を入れた。

 

 

 

「………入ったか。」

 

真と心音の二人を着けていた男。

黒いフードを深く被ったその男は、スーパーの自動ドアの陰に隠れる。

 

「………!」

 

2人がスーパーを出たその時。

 

「‼︎」

 

「きゃあっ⁉︎」

 

心音を担ぎ上げ、男が走り出した。

 

 

 

「なっ⁉︎」

 

一瞬の出来事だった。物陰から勢いよく飛び出してきた男が心音を担ぎ上げ、走っていったのだ。

 

「きゃあああっ‼︎」

 

「まっ、待てっ‼︎」

 

俺は駆け出し、男を追う。

く……っ‼︎ 速い⁉︎

だが、俺も伊達に鍛えてないんだ‼︎

 

「うおおおおっ‼︎」

 

全速力で走る。そして、心音に手を伸ばす。

 

「まっ、真‼︎」

 

「心音を……返せぇっ‼︎」

 

俺はジャンプし、距離を詰める。そして、心音の手を掴み…

 

「うおおっ‼︎」

 

そのまま手を引く。男は心音を離す。俺は心音を抱きかかえ、膝をつく。

 

「ぜぇ……ぜぇ……大丈夫か⁉︎」

 

「まっ、真………ステキ、キュンッ。」

 

真の色ボケは放っておいて……俺は男の方に視線を向ける。

 

「貴様……何者だ⁉︎」

 

俺は立ち上がり、携帯していたハンドガンを構える。

 

「ふん……その女を連れてくるように上から頼まれていてな……‼︎」

 

男は………黒光りする腕を前に突き出した。

 

「⁉︎ 機械化兵士……⁉︎」

 

「何で……⁉︎」

 

「邪魔をするのなら……容赦はしない‼︎」

 

男はローブを脱ぎ捨て、機械の四肢を露わにした。

こいつ……全身がバラニウムか‼︎

男は腕のスラスターを噴出させ、こちらに向かって殴りかかってくる。

 

「このっ‼︎」

 

俺は拳を躱し、銃弾を放つ。

しかし男は弾丸を蹴りで弾き、距離を詰められる。

 

「貰った‼︎」

 

男は俺の腹部に拳を叩き込む。

 

「っ⁉︎ がはっ……‼︎」

 

俺は口から血を吐き、その場に蹲る。

 

「真‼︎ こんのぉっ‼︎」

 

心音が立ち上がり、男に蹴りを叩き込む。

男は一歩退く。

 

「私のダーリンに、触るなっ‼︎」

 

心音は連続で蹴りを放つ。

男は蹴りを全て躱す。

 

「ふん、やはり改造無しでは……その程度かっ‼︎」

 

心音がかかと落としを決めようと脚を振り下ろした時だった。男の拳と心音の脚がぶつかり合い、鈍い音が響く。

心音の脚から……血が流れた。

 

「っ⁉︎ あああああああああああっ‼︎‼︎‼︎」

 

その場に倒れ、脚を抑えもがき苦しむ。

 

「手荒な真似はしたくなかったが、まぁいい。改造すれば一緒だ。」

 

「やっ、やめろっ‼︎」

 

俺は男に殴りかかる。しかし、男は素早く俺の後ろに回り込み、首筋に手刀を叩き込んだ。

 

「っ⁉︎」

 

俺はその場に倒れた。

 

「ふん、他愛もないな。」

 

男は心音を担ぎ上げ、その場を去っていった。

 

「ま……て…………っ。」

 

立ち去る男に手を伸ばしながら……俺は気を失った。

 

 

 

「蓮(れん)、たった今お前の欲しがっていた奴を捕獲した。今から研究所に向かう。」

 

『あっはぁ❤︎ オッケーオッケー‼︎でかしたよぉ〜‼︎』

 

陽気な声が男のケータイのスピーカーから響く。

 

「右脚を再起不能にしてしまったが、問題はなかろう?改造される身だ。」

 

『イグザクトリー‼︎ 全く、君はホントに気が利くから助かるよぉ〜。じゃ、よろしくね‼︎』

 

通話が切れ、男は車を走らせた。

 

 

 

 

「クックック……あれからもう4年かぁ…。」

 

白衣に身を包んだ女はメスをダーツ版に投げつける。

投げられたメスは的の中心を捕らえた。

 

「待ってなさいね心音……あんたは私が壊してあげるんだから…。」

 

怪しげな笑みを浮かべ、女…東條 蓮(とうじょう れん)はパソコンに視線を向ける。

 

「私なしじゃいられないカラダにしてあげる……クックック……‼︎」

 

 

 

 

「………っ。」

 

気がついた。俺は事務所のベッドに寝かされていた。

 

「真さん!あぁ、良かった……‼︎」

 

「こっ、心音はっ⁉︎」

 

俺は身体を起こす。

 

「す、すまない真殿。拙者とリコ殿で辺りを探し回ったのだが……。」

 

知哉が頭を下げる。

くそ………っ‼︎

俺はベッドから飛び出し、武器一式を持つ。

 

「ま、真さん何を⁉︎」

 

「決まってんだろ……心音を探しに行くんだよ‼︎ シグマ‼︎ 例の誘拐事件に関して、情報集めとけ‼︎」

 

「はい、かしこまりました。」

 

「待つでござる真殿‼︎ 危険な上に無謀でござる‼︎ ここは冷静に考えてから……。」

 

「動きながら考える‼︎」

 

俺は事務所を飛び出した。

 

「心音………っ‼︎」

 

曇天の下、俺は走る。

相棒を取り返すために。

 

 

 

「あら、しまったー……。」

 

バー『クスィー』。

店主の蒼ヶ崎 幸雄は倉庫を整理していた。

 

「どうした、幸雄。」

 

カウンターの布巾掛けをしているのは東 雫。

 

「あぁ雫。悪いけどさ、オリーブオイル切らしてな……いつものとこで買ってきてくれるか?1カートンほど。」

 

幸雄はクレジットカードを雫に投げ渡す。

 

「あぁ。」

 

雫は店を出た。傘を手にしたとたん……雨が降り出した。

 

「…………。」

 

 




そういえば私事ですが、ディバイン・ゲートを始めました。
えぇ、勿論ブラック・ブレットコラボ目当てです(笑)
あ、全種コンプしました。ゲリラボスの小比奈もドロップしたとです(笑)


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第48話〜雨と悔しさ〜

大学が夜間から昼間になったので、嬉しい忙しさ体感中です(笑)


「ん……っ」

 

目が覚めた。私は身体を起こそうとする。

 

「………⁉︎」

 

私の視界に入ったのは、薄暗い部屋の天井の照明。まるで病院の手術室のような…。

 

「あ、心音ん❤︎ 気が付いたぁ?」

 

白衣を纏った眼鏡の女性が私の顔を覗き込んでくる。その顔に……私は見覚えがあった。

 

「⁉︎ あんた……っ‼︎」

 

「お久ぁ〜。元気してたぁ〜? うふふ…‼︎」

 

女はメスを片手に、狂ったような表情を浮かべる。

 

「蓮………‼︎ あなた、何を…っ⁉︎」

 

「何って? 決まってんじゃーん……」

 

女……東條 蓮は私に顔を近づける。

 

「………心音んを、私のものにするの…あっはぁ…❤︎」

 

恍惚とした表情を見せる蓮は、私の口に麻酔を当てた。

私の意識は朦朧とし、再び眠ってしまった………。

 

 

 

 

「はぁ……はぁ………っ‼︎」

 

俺は雨に打たれ、ずぶ濡れになりながら心音を探していた。情報を聞きこんだものの、有力な情報が無い。

 

「くそ………っ‼︎」

 

俺はその場に膝をつき、地面を殴った。

水が跳ね、俺の顔を更に濡らす。

 

「…………お前、小鳥遊 真か?」

 

男の声。俺は顔を上げた。

 

「……⁉︎ お前は……‼︎」

 

「……大丈夫か?」

 

烏丸 凌馬に改造され、死んだと思われていたガストレア・ヒューマン……

 

「東 雫………っ⁉︎」

 

雫は肩に、何やら木箱を担ぎ、傘をさしていた。

俺は立ち上がる。

 

「お前……死んでなかったのか?」

 

「あぁ、死ねなかったようだ……」

 

俺は、くしゅん、とクシャミをした。

 

「ここじゃなんだ。場所を変えよう。着いてこい」

 

雫は脚を進める。俺はそれに着いていった。

 

 

 

 

歩くこと5分。

バー『クスィー』。そう書かれた看板の店に着いた。

雫が店の中に入る。

 

「幸雄、帰ったぞ」

 

「おう、すまんな……って、うおおおおおおおっ!!? きっ、貴様!! いつぞやのイニシエーター!!」

 

店に入るや否や、カウンターにいた男が騒ぐ。

 

「お前は……あの時のミュータント?」

 

確か、俺と心音が戦った男女二人の片割れ。名は確か、クスィー。

 

「お、おい雫! な、何でこいつがいるんだよ!?」

 

「…小鳥遊、幸雄と知り合いなのか?」

 

「知り合いってか、前に事件で少し関わったっていうか……」

 

雫は肩に担いでいた木箱をカウンターへ持っていき、開ける。中身はオリーブオイルだった。

 

「幸雄、頼まれていたオリーブオイルだ」

 

「お、おう……」

 

「小鳥遊、二階にシャワーがある。好きに使え。あと着替えもあとで出しておく」

 

「分かった、すまない……」

 

俺は階段を上り、バスルーム前へ。雨でずぶ濡れになった衣服を全て脱いでバスケットへ投げ込み、バスルームに足を踏み入れシャワーを浴びる。

 

「…………」

 

心音………っ。

俺のせいだ。俺があの時……しっかりしていれば…っ‼︎

悔しさを心の中で感じていると、磨りガラスのバスルームの扉の前に人影が。

 

「小鳥遊、大丈夫か?」

 

雫だった。どうやら洗濯機を回しに来たようだ。バスケットの中の洗濯物を洗濯機へ放り込んだのが、磨りガラス越しに分かった。

 

「あぁ、まぁな……」

 

「幸雄には話しておいた。俺とお前の関係。あいつからも色々と聞いた 」

 

「そうか……」

 

雫は洗濯機のフタを閉じ、スイッチを入れた。

 

「詳しいことは飯を食いながらにしよう。 店が開くまでは時間もあるしな 」

 

「あぁ……」

 

俺はシャワーを止め、バスルームを出る。雫から投げ渡されたタオルで身体の水滴を拭く。そして、洗濯機の上にあった着替えを持って、それを身につけた。

 

「荷物は隣の部屋にある。今日は遅い。泊まっていけ」

 

「いいのか?」

 

「お安い御用だ」

 

俺たちは店のフロアへ戻ってきた。

クスィー…幸雄がパスタを茹でながら、野菜とベーコンを炒めていた。店中にベーコンとオリーブオイルの香りが広がる。

 

「幸雄」

 

「おぉ、もうすぐ出来る。カウンター座れや」

 

俺はカウンターに座る。雫はグラスに水を注いできた。

 

「小鳥遊、何があったんだ? お前のような奴が、こんな大雨の中1人でいたんだ。とんでもないことが…」

 

俺はグラスの水を飲み、話す。

 

「心音が……さらわれた。」

 

「何……っ⁉︎」

 

「さらった奴は…身体が機械だった。恐らく、あれは機械化兵士……」

 

機械化兵士、その言葉に反応するかのように、幸雄が顔を上げた。

 

「おい待て、今…機械化兵士って言ったか?」

 

「え? あ、あぁ……」

 

幸雄はパスタを皿に盛り付け、俺たちの前に差し出す。

 

「何かあるのか?」

 

「ここ最近、そんな話をよく聞くんだわ。機械化兵士みたいなやつが、人攫いをしてるっていう話を…な」

 

スマホを取り出した幸雄は電話をかけた。

 

「今日、今から来れるか? ……分かった、頼むな」

 

電話を切る。

 

「誰にかけたんだ?」

 

「知り合いの情報屋だ。色んなところから裏情報を持ってくる、意外と便利なやつさ」

 

雫はパスタを食べる。

 

「ひとまず食っとけ。 いつでも動けるように、な」

 

雫から肩を叩かれる。それに押されたかのように、俺はパスタを食らった。

 

 

 

 

「………」

 

明崎民間警備会社の空気は、明るいものではなかった。全員が寝静まった後、シグマは一人パソコンに向かっていた。

 

「心音様のケータイの逆探知も不可能。 誘拐犯の詳細も分からない……」

 

そんな中、シグマに茶を淹れる者が。

 

「シグマ殿、無理はなさるな」

 

知哉だった。心配そうな目でシグマを見る。

 

「ありがとうございます。 助かります」

 

シグマは茶を飲み、再びパソコンに向かった。

 

「真様……心音様………」




オリジナルの方もぼちぼち書いてます。
あー、多忙(笑)


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第49話〜学友と不公平〜

心音の過去話です。
少し過激な表現がありますが……私は謝らない(笑)


店のドアのベルが、ドアの開閉とともに鳴る。

バー『クスィー』に客がやってきた。

 

「いらっしゃいませ、カウンターで宜しかったですか?」

 

一人の客を席に誘導する俺……小鳥遊 真は、本日のみのバイトをしていた。

客を席に誘導、オーダー、料理や酒を持って行き、会計のレジ……といった仕事を、雫と分担してこなす。

 

「小鳥遊、あちらの客にこれを」

 

雫がビール瓶とグラスを渡す。それを受け取り、俺は指差された奥のテーブルへ。

そのテーブルにいたのは、サングラスにハンチング帽という格好の女だった。

 

「失礼します」

 

俺は女の前にグラスを置き、ビールを注いだ。

 

「……あなたかしら? 機械化兵士の誘拐事件の行方を追っている少年というのは」

 

「⁉︎ まさか……あんたか? あいつの言っていた情報屋というのは……」

 

女はサングラスを外した。

 

「……なーんちゃって☆ お久、マコちゃん」

 

その正体は……紅音だった。

 

「あっ、紅音⁉︎ お前なんで⁉︎」

 

「あ、私ねー、裏の顔は情報屋なんだー、てへぺろ〜」

 

舌を出してピースをする紅音。

 

「ま、まぁいいや。それで? 情報っていうのは?」

 

俺が訊くと、紅音はUSBを手渡してきた。

 

「そこに奴らの詳細が書かれているわ。後で確認して。それから……今回の黒幕、それだけは先に言っておくわ……」

 

紅音はスマホの画面を見せる。そこには『研究員証』と書かれたカードが写っていた。

 

「こいつは……?」

 

「東條 蓮。医者よ。行方不明ってことになってるけど、今はどうやら、テロリストの医療班のような立場にいるらしいの」

 

「テロリスト……だと?」

 

まさか……機械化兵士でテロでも起こすつもりか?

 

「更にね……この子なんだけど……心音の、かつての学友なの」

 

「え……⁉︎」

 

 

 

 

 

「紅音さんから?」

 

「はい、先ほどメールが」

 

深夜の2時にシグマに起こされた私はメールの内容を見た。

確かに紅音さんだ。データが添付されている。

 

「……東條 蓮…?」

 

「どうやら、医師のようですね……」

 

この人は一体……。

 

「それから、真様は今バー『クスィー』にてお手伝いをしているとのことです」

 

「そっか……」

 

無事でよかった……。

 

「申し訳ありません実緒様。お疲れの時に……」

 

「いいのよ、気にしないで」

 

「明日の朝に、お店に来て欲しいともメールにはありました」

 

「じゃ、明日の朝支度して皆で行きましょう」

 

少しは安心して眠れそうだ。私は再び眠りについた。

 

 

 

 

「学友って……⁉︎」

 

紅音からその事実を聞かされ、俺は驚いた。

 

「あ、マコちゃん知らなかったんだ。心音はね、昔は医師を目指してたの……」

 

 

 

4年前。

徳崎 心音は医師を目指すべく、新東京大学の医学部に進学した。

彼女には高校時代からの親しい学友がいた。

東條 蓮。

2人は常に成績優秀。学年で毎回ツートップを飾るほどだった。

 

 

大学でのある日。

 

「うー……」

 

げんなりとした顔で教授の研究室を出た心音。

 

「心音ん、どうだった?」

 

「ダメだ……やっぱりダメなのかな……」

 

「仕方ないよ。やっぱり、呪われた子供に関したことって、取り扱ってくれる先生なんていないみたいだし……」

 

心音には夢があった。それは呪われた子供達からガストレアウイルスを取り除く手段を見つけ、彼らに向けた差別観念から解放したいというものだ。

 

「うーん……やっぱダメなのかな…」

 

はぁ、と溜息を吐く心音。

 

「どうするの心音ん。このままじゃ卒業出来ないよ?」

 

「はぁーあ。なんだかなぁー……辞めよっかな、大学」

 

その言葉に、蓮は目を見開いた。

 

「えっ?」

 

「だってなぁ……私が学びたいのはガストレアウイルスに関することなのに、全然それに関する講義がないもん‼︎ このままここに居たってなぁ……」

 

「そ、そんなこと……」

 

「蓮はいいよね、将来は外科医志望なんでしょ? はぁ……私は呪われた子供達を助ける仕事したいのに……」

 

蓮は理解出来なかった。心音が何故そこまで、呪われた子供達に拘るのかが。

 

 

 

その後日。

 

「はぁー……」

 

「またダメだったの?」

 

2人はカフェテリアで昼食をとっていた。

 

「うぅ……媚売ったけど、ダメだった……しゅん」

 

心音はスマホを見て、一言。

 

「……プロモーター、かぁ…」

 

その言葉に蓮は反応した。

 

「こ、心音、今何て……?」

 

「ん? あぁいや、さっきの教授からさ、『呪われた子供なんぞの役に立ちたいなら民警にでもなったらどうだ⁉︎』って言われちゃってさー」

 

心音が見ていたのは民警……プロモーターに関するサイトだった。

 

「へぇー、意外と人員不足なんだ……」

 

目を輝かせる心音のことを、理解出来ないでいた蓮は口を開く。

 

「ねぇ心音ん。毎回気になってたんだけどさ……」

 

前から疑問に感じていたことを、彼女は問う。

 

「なんで……呪われた子供達を助けたいの? 世間からはバケモノだって言われているのに、なんでそこまでして……」

 

「だってさ、不公平じゃない? 呪われた子供達って、ただガストレアウイルスの因子を身体に宿しているってだけで偏見差別の嵐だよ? 」

 

心音は悲しげな表情をする。

 

「呪われた子供達の中にだって、私たちみたいに勉強したいだとか思っている子がいると思うの。 私はさ、そんな子達を助けたいんだ。なんかさ……嫌なのよ、やりたいことを出来ずに悲しんでいる何かを見るのは、さ」

 

「そう、なんだ……」

 

この会話の一週間後……心音は大学に辞表を提出し、プロモーターの道を進んだ。

 

 

 

 

「…………」

 

手術室にて、蓮は心音に見とれていた。

 

「あぁ、心音……私の大好きだった心音……」

 

手術台の上で裸体で四肢に布を被された状態で眠る心音の身体を、蓮は優しく撫でる。

 

「あぁ……心音ぇ…好きっ、好きぃ……」

 

耐えきれなくなったのか、蓮は心音を抱き締め、その唇の隙間に自分の舌をねじ込み掻き回す。

 

「ふふ……心音…あなたはもう私のもの……一生、私が一緒にいてあげるからねぇ……?」

 

蓮は心音の額にパッチのようなものを貼り付け、パソコンを打ち込み始めた。

 

 

 

 

「そういうことか……」

 

俺が紅音から心音の過去を聞き終わった時には、もう幸雄が店じまいをしていた。

 

「終わったかい、お二人さん」

 

幸雄はグラスを片手に歩み寄る。

 

「えぇ。んじゃマスター、今日は私ここで寝るわ。明日ここに皆集まって作戦会議するから」

 

「お、おい‼︎ 何勝手に…」

 

幸雄の言葉を遮るかのように、紅音はそのままソファに寝転んだ。

 

「勝手な奴め……」

 

「小鳥遊、お前ももう寝ろ。上の部屋を使え。あとは俺がやる」

 

「あぁ、悪いな」

 

俺は二階の部屋に行き、ベッドに飛び込みそのまま眠りについた。




私事ですが、大学の文芸部に入部しました。
己のスキルアップのためにです。


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第50話〜鬱憤と殲滅〜

超絶お久です。
ライダーSSの方に集中し過ぎてましたm(_ _)m
なんと、50話‼︎
ありがたやありがたや(・ω・)


「おはようございまーす」

 

BAR『クスィー』のドアを開く音。それと共に、実緒たちが入ってきた。

俺と紅音と雫、クスィーは既に起きていた。

 

「真様、大丈夫ですか?」

 

シグマが無表情ながらも心配していた。

 

「あぁ、大丈夫だ。悪かったな」

 

「さっ、と言うわけで……今から作戦会議よ。心音奪還の、ね」

 

紅音がタブレットを操り、画面上に地図を表示する。

 

「東條 蓮が潜んでいる可能性の高い場所はここの廃工場よ。この周辺でプロモーターの誘拐が頻発しているみたい」

 

「そこに他のプロモーターも捕らえられている可能性もあるわけでござるな」

 

知也の問いに頷く紅音。

 

「けど、相手は機械化兵士……ですよね。心音さんがいないと……」

 

「関係ないな」

 

実緒の言葉を遮るように俺は言った。

 

「相手がなんだろうと、叩き潰す。俺のよ……相棒を拐ってタダで済ますわけにはいかねぇからな」

 

思わず嫁って言いかけちまった。

表情を変えずに誤魔化した。

 

「流石マコちゃんね。それじゃ、メンバーを決めましょう。実緒ちゃんとシグマちゃんは裏口から捕らえられているであろうプロモーターの救出。リコちゃんと知也くんは周囲の警戒。マコちゃんと私は正面から突入。こんな感じね」

 

「正面突入部隊には、俺も加わろう」

 

雫が口を開き、俺たちの視線が彼の方へ向く。

 

「雫……」

 

「……心音には借りがある。それを返す日が来た……今度こそ、俺は大事なものを守ってみせる」

 

腕を見つめながら拳を固めた雫に、俺は微笑む。

 

「あぁ、頼りにしてるぜ」

 

そして俺たちはクスィー……静雄の朝飯を食べて、廃工場へ向かった。

 

 

 

 

廃工場地下にて。

東條 蓮は改造されたかつての学友を抱いていた。

 

「心音? あなたのこ主人はだぁれ?」

 

「はい……私のご主人様は蓮様……あなたです」

 

「はぁい、よく言えたわぁ……」

 

蓮の手は心音の頭を撫でている。心音は心地好さそうに、その愛撫に身を委ねる。

 

「いい、心音? そろそろ民警のやつらがここに来るわ。そうなったら、あなたのすることは?」

 

「はい……民警の排除……特にイニシエーターの殲滅……です」

 

「頼りにしてるわよ……心音」

 

蓮と心音は深い接吻を交わす。

蓮は心音の部屋から出た。

 

「そろそろ民警が来るのか?」

 

「民警……紅音さんの考えていることなんて余裕で分かるわ。あんたも用意しておきなさい……」

 

心音を拐った男……桐生 荘司(きりゅう そうじ)は拳を鳴らした。

 

 

 

 

そして廃工場。

俺たち明崎民間警備会社のメンツプラスαは各自ポジションに着いていた。

入り口から中を覗く。心音を拐った男が仁王立ちで立っている後ろの方に捕らえられたプロモーター達が檻の中に入っている。どうやらまだ改造などはされていないようだな。更にサングラスの男が2人……。

 

「よし、行くぜ……頼むぞ、紅音、雫」

 

「任せて‼︎」

 

「あぁ……‼︎」

 

紅音がトンファーを構え、雫が右腕を変異させる。

俺は扉を蹴破った。

 

「……思っていたより早く来たか」

 

男は上着を脱ぎ捨て、黒鉄色の身体を露わにした。それに続き、近くにいたサングラスの2人の男も構える。

 

「マコちゃん、あの2人は任せて」

 

「お前はあの男を倒せ……‼︎」

 

雫はサングラスの男の方に向かっていく。

紅音もそれに続き、片割れの方のサングラスの男に向かっていく。

俺は紅音に設計してもらったブレード付きマシンガンを両手に持つ。

 

「ふん……わざわざケガしに来たのか……?」

 

「……こっちのセリフだなァ……‼︎」

 

俺は地面を蹴り、男の顔面をマシンガンをグリップ部で殴りつける。

驚いた男はよろけ、数歩下がる。

 

「別に俺としてはプロモーターの救出はオマケみたいなもんでな……本当の目的はてめーだよ」

 

俺は銃口を男に向け、言い放った。

 

「……俺の『嫁』を拐っておいて、覚悟は出来てんだろうなァアアアアッ⁉︎」

 

マシンガンが火を噴く。男は弾丸を避けるも何発か被弾する。

 

「この……クソガキがっ‼︎」

 

「ウオオオオッ‼︎」

 

弾が切れてもすぐに補充し、また放つ。

 

「小癪な……っ‼︎」

 

男は弾丸を避け、俺に接近し拳を振るう。

俺は拳を躱し、足払いをかけて男をその場に倒れさせる。

 

「く……っ‼︎」

 

銃口を男に突きつける。

 

「……殺せ」

 

「…………」

 

俺は銃口を外し……

 

「っ‼︎」

 

男の顔面に蹴りを入れ、ドラム缶の山に吹っ飛ばした。

 

「……これでてめーへの鬱憤は晴らした」

 

紅音と雫も、男をフリーズさせたようだ。

2人は俺に駆け寄る。

そこへ実緒とシグマ、リコちゃんと知也もやってきた。

 

「人質皆解放しました‼︎」

 

「外も何も問題ないよ‼︎」

 

「よし、あとは心音を……」

 

辺りを見回したその時だった。

 

「アーッハハハハハハハハッ‼︎」

 

突如響く高笑い。笑い声の先にいたのは……眼鏡に白衣の女。

 

「まんまと引っ掛かったわねぇ……バカな民警さん⁉︎」

 

「東條さん……‼︎」

 

「紅音さんお久しぶりですねェ……あとぉ……」

 

東條は俺の方を見る。

 

「君が心音んのイニシエーターくんかァ……なるほどなるほど……」

 

「てめぇ……‼︎」

 

俺はNHライフルを構える。

 

「ホントにバカよね……プロモーターは所詮囮‼︎ 私の目的は心音のみ‼︎」

 

「なんだと⁉︎」

 

「心音一人拐っても、そこのイニシエーターくんしか来ないと思ってね……他のプロモーターも誘い出せば、紅音さんも他の仲間もここに誘き出して、素晴らしいものを見せられると思ったの‼︎」

 

素晴らしいもの……⁉︎

 

「さぁ……おいで……心音」

 

「んなっ⁉︎」

 

その言葉に、俺たちは凍りついた。

そして、物陰から姿を現したのは……

 

「…………」

 

黒鉄色の四肢を持った、心音だった……。

 

「こ……心音……?」

 

嘘だろ……?

 

「お、おい、心音⁉︎」

 

心音は無表情だった。

東條は心音を後ろから抱き締める。

 

「さぁ心音……あなたの主人はだぁれ?」

 

その質問に……心音は恍惚とした表情を浮かべ答える。

 

「はい……私のご主人様は蓮様……あなたです」

 

「っ⁉︎」

 

「心音……あの男は誰かしら……?」

 

東條は俺を指差した。

 

「……イニシエーター、です」

 

心音は冷たく、突き刺さるような視線を向けた。

 

「そうね……イニシエーターはどうするのかしら?」

 

東條は腕を外す。心音は刀を構えた。

 

「イニシエーターは……呪われた子供は……殲滅」

 

心音は猛スピードで俺に駆け出し、刀を振るう。

 

「っ⁉︎」

 

なんとか躱すも、右肩を斬られる。

傷口から鮮血が舞う。

 

「殲滅……‼︎」

 

俺は一旦NHライフルを投げ捨て、マシンガンを両手に持つ。

 

「やめろ心音‼︎ 俺が分からないのか⁉︎ 真だ‼︎」

 

心音の刀を銃身で受け止める。

 

「……あなたなんて、知らない」

 

「っ⁉︎」

 

その言葉に驚きを隠せなかった。俺は隙が出来、蹴りを入れられ吹っ飛び、地面に叩きつけられる。

 

「ごはっ⁉︎」

 

口から血を吐く。

 

「ま、真さん‼︎」

 

「来るなっ‼︎ これは……俺の問題だ‼︎」

 

実緒たちに言い放ち、俺は立ち上がる。

心音は猛スピードで刀を振るう。

 

「目を覚ませ心音‼︎ おい‼︎ 相棒‼︎」

 

「相棒……?」

 

心音の刀が、俺の左手のマシンガンを弾き落とした。

 

「⁉︎」

 

「……私にそんなの、ない」

 

心音は刀を横に振るう。

刃は……俺の左眼を捉えた。

 

「っ⁉︎ ぐっ、ぐあああああああああっ‼︎」

 

俺は左眼を抑え、その場に跪く。心音は俺を廻し蹴りで蹴飛ばし、俺の身体は瓦礫に突っ込んだ。

 

「っ…………」

 

俺は霞む視界の中、心音を見つめる。

その瞳は……暗く冷たかった……。

俺はそのまま意識を失った……。




心音NTR闇落ち(笑)
さて、多忙ながらもやったるです(^^)


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第51話〜冷静と引っかかり〜

はい、狙いました(笑)


闇の中、俺は何かから逃げていた。

俺は何かに追われていた。

その何かが何者なのかは分からない。

ただ、捕まれば殺される。

それだけは分かっていた。

 

「真‼︎」

 

俺を呼ぶ心音の声。

俺はその方向へ駆け出す。

光が見える。そこに……心音がいた。

 

「心音……‼︎」

 

俺は彼女に手を伸ばす。

手が届いた……その時だ。

 

「っ⁉︎」

 

俺の腹部に激痛が走る。

心音の刀が……俺の腹に突き刺さっていた。

 

「……あなたなんて、知らない」

 

俺はそのまま真っ二つに斬り裂かれた……。

 

 

 

 

「ウワアアアアアアアアアアアアッ‼︎‼︎‼︎」

 

俺は目が覚め飛び起きた。

そこは……病院だった。

 

「ま、マコちゃん⁉︎ 大丈夫⁉︎」

 

ベッドの隣のイスに紅音が座っていた。

 

「はぁ……はぁ……っ‼︎」

 

あの時の心音の冷たい視線と言葉が蘇ってくる。俺の恐怖心を抉るように刺激してくる。

 

「っ……っ‼︎」

 

左眼の痛みを鋭く感じる。一番深手を負った傷だからだろう。

幸い利き目は右手のため、狙撃に支障はないが……モデル・ホークの能力を使うとすれば、片目にかなりの負担がかかる。

 

「左眼の回復にはもう少し時間がいるね。あと4、5日ほど……かな」

 

菫先生がこちらに来た。

 

「……じゃ、室戸先生。マコちゃんのこと、頼みます」

 

紅音が立ち上がり、頭を下げる。

 

「お、おい‼︎ どこ行くんだよ⁉︎」

 

「……心音を、助けに行くの」

 

「ムリだ……今のあいつは、ただの戦闘マシーンだ……。イニシエーターを……殺すための……っ‼︎」

 

紅音は……俺の両肩を掴む。

 

「何でマコちゃんが弱気になってるのよ……心音はマコちゃんのプロモーターでしょ‼︎ 相棒なんでしょ‼︎」

 

「け、けど‼︎ 今のあいつは……俺のことなんか……」

 

「きっと洗脳を解く方法があるはずよ‼︎ 私は諦めない‼︎」

 

紅音は病室を飛び出していった。

 

「あっ、紅音‼︎」

 

俺は肩を落とすしかなかった。

 

「詳しい話は、彼女とそちらの可愛らしい社長から聞いたよ。 東條 蓮……まさかその名前を再び聞くとは」

 

「⁉︎ 知ってるのか⁉︎」

 

「知ってるも何も……彼女に機械化兵士に関することを教えたのは……私だ」

 

何だと……⁉︎

 

「……彼女はいきなり私を訪ねたんだ。機械化兵士の手術の技術を教えて欲しいと。彼女の大学の成績は見事なものだった。私も彼女に全てを教えたのさ……しかし」

 

菫先生はタバコをふかし、頭を抱える。

 

「自分の教え子が……テロリストに加担するとは……っ」

 

「……」

 

俺には、何も気の利いた言葉をかけることすら出来なかった。

 

 

 

 

「うふふ……心音ん……」

 

東條 蓮は自身の研究室の手術台の上で、心音を抱き締め、彼女を愛する。

 

「蓮サマ……好きです……愛してます……っ」

 

「あん……嬉しいわ、心音ん……」

 

蓮が時計を見る。昼時だった。

 

「心音、ご飯にしましょうか❤︎」

 

蓮は立ち上がり、冷蔵庫の中を漁る。

 

「ご飯……?」

 

ー 真‼︎ ご飯だよ‼︎

 

「っ⁉︎」

 

心音は頭を押さえる。

 

「心音? どうかした?」

 

「……いえ、問題ありません」

 

心音は浮かない表情を浮かべ、冷凍食品を口に運んだ……。

 

 

 

 

 

明崎民間警備会社では、紅音を筆頭に心音の奪還作戦の会議が行われていた。

 

「潜伏先として考えられるのはこの9つ……」

 

「シラミつぶしには多過ぎますね」

 

シグマが冷静に答える。

 

「それでもやるしかない……私も今回は行動する‼︎」

 

「け、けど紅音さん‼︎ 真さんは……」

 

実緒の言葉を遮るように紅音が叫ぶ。

 

「今動ける人が動かなきゃダメなのよ‼︎ 」

 

「ひっ……‼︎」

 

紅音の形相にリコが怯え、知也に寄りかかる。

紅音はハッとする。

 

「ご、ごめん……」

 

リコの肩を撫でながら、知也が口を開く。

 

「紅音殿。そなたの気持ちは痛いほどわかる。自分の妹をあのように改造されてしまったことに……怒りを抑えられない気持ちもよく分かる。だが……こういう時こそ冷静に考えようぞ」

 

紅音は……自分の頬を強く叩く。

 

「……ごめん。そうだね」

 

紅音は少し落ち着き、作戦会議を進めた……。

 

 

 

 

 

「…………」

 

俺は病室に一人だった。菫先生は地下の方に戻っていた。

 

「……心音……」

 

俺は上半身を起こし、夕焼けに染まる空を窓越しに見つめる。

そこへ、ドアを開け病室に入ってきた者が。

 

「具合はどうだ、小鳥遊」

 

雫だった。

歩み寄り、椅子に座る。

 

「あぁ、左眼以外身体はもう大丈夫だ……」

 

雫は……俺の手元に何やらレーダー探知機のような機械を置いた。

 

「古い仕様の探知機だ。お前が気絶した後、俺が何とか心音に発信機を取り付けた」

 

俺は探知機の電源を入れる。機械が反応。どうやら7キロ先に潜伏しているようだ。

 

「…………」

 

「……どうした。お前なら今すぐ飛び出していくと思ったんだが……」

 

「……すまない雫。俺には……ムリだ。いくら洗脳されているとはいえ……アイツを……今のアイツとは戦えない」

 

俺は両手で両肩を抱きしめる。怖さで身体が震えていた。

 

「……何を言っている。戦う必要は、ない」

 

「え?」

 

雫は……ベットの上に何かを置いた。それは……

 

「心音の……逆手刀……?」

 

俺は手に取る。小さいながらもズッシリとした重さを感じる。

 

「……その刃で全てを受け止めるんだ。そうすれば、心音は……お前の『嫁』は帰ってくる」

 

「おまっ⁉︎ きっ、きき、聞いてたのかよ⁉︎」

 

ため息混じりに雫が言う。

 

「……あんなバカでかい声が聞こえないとでも?」

 

う……確かに。

雫は微笑みながら俺の肩を叩く。

 

「……今度はお前が行く番だ」

 

……あぁ、烏丸のダムの時のこと、か。

 

「おう」

 

俺は布団から出る。

服を着て、荷物を纏める。

 

「……サンキューな、雫」

 

「……あぁ」

 

俺は病室を出た。

 

 

 

真が飛び出ていった病室に、入れ替わるかのように室戸 菫が入ってきた。

 

「いいのかい? 1人で行かせて」

 

その問いに雫が答えた。

 

「……きっと、立場が逆でもこうなっていたさ。あの2人はそういう奴らなんだ」

 

「やれやれ……お熱いねぇ」

 

 

 

 

 

「ん……心音……っ……‼︎」

 

蓮は心音の身体を優しく弄ぶ。

 

「蓮サマぁ……っ」

 

恍惚とした表情を浮かべながらも……心音は心に引っかかりを感じていた。

昼食の時に感じた、あの感覚は?

記憶の中に、細切れになって蘇ってくる、あの情景と顔……。

 

「どっ、ドクター‼︎ 大変だ、例のイニシエーターが単身で攻め込んできた‼︎」

 

研究員が飛び込んできた。

 

「たっ、単身で⁉︎」

 

「地上で警備隊にマシンガンを乱射している‼︎ このままじゃ攻め込まれる‼︎」

 

「蓮様、私が行きます‼︎」

 

心は刀を持って地上に向かった。

 

 

 

 

 

 

「オラオラオラァーッ‼︎」

 

俺はひたすらにマシンガンを乱射する。

研究員たちに威嚇射撃を放ちまくる。

 

「俺の嫁出せぇーッ‼︎」

 

すると……

 

「っ⁉︎ あなたは……」

 

心音が現れた。

刀を抜き、敵意の眼差しを向ける。

 

「よぉ、心音……」

 

俺はマシンガンを捨て、心音の逆手刀を引き抜き、かまえる。

 

「さぁ……来いよ」




はい、狙いました(笑)
大事なことなので2回言いました。


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第52話〜幻と迷い〜

入院中からの投稿でーす(笑)
歯科矯正の外科手術です(^^;;


「来いよ……心音」

 

俺は心音の逆手刀を構える。

心音は腰に帯びた刀を抜き、構える。

 

「あなたは……何なの? イニシエーター……呪われた子供のクセに……」

 

「何って言われてもなぁ……俺はお前の相棒で……」

 

言い切る前に心音が猛スピードで斬りかかる。

 

「デタラメをっ‼︎」

 

俺は振り下ろされた刀を受け止める。

 

「うーん、こっちは大真面目なんだがな……っ‼︎」

 

刀を弾き、距離を取る。

 

「だからさ……色々と知ってんだよ、お前のことは」

 

刀を構えなおし、言い放つ。

 

「……お前が今、ご主人様って呼んでるマッドサイエンティストの何倍もな‼︎」

 

「っ⁉︎ 貴様……蓮様を侮辱したなァアアアアッ‼︎」

 

心音が接近し、刀を振るう。怒りで乱れているものの、速い。

俺は冷静に見極め、素早く躱す。

 

「……はぁ、お前はそんな騎士ってキャラじゃねぇのに……っ‼︎」

 

逆手刀で弾き、再び距離を置く。普段なら蹴りの一つでも入れて突き放すのだが、相手は心音だ。

それに……俺は戦いに来たわけじゃない。

 

「お前はどちらかというとさ、ちょっとテンションがオーバーフローした大和撫子っていうかさ……」

 

「わけのわからないことを……ダラダラと‼︎」

 

距離を詰めて横に刀を振るう。横に転がり躱す。

 

「おまけにさ……お前はそんな長刀使わねぇよ。お前自分で言ってたじゃねーか。あまり好きじゃないって」

 

「っ⁉︎」

 

心音が頭を抑えた。

 

 

 

ー…なぁ心音。なんで短い逆手刀なんだ?

 

ー…え? うーん……なんか長いのって苦手なんだよね……好きじゃないっていうか……なんかさ、逆手刀ってカッコイイじゃん⁉︎

 

 

 

「くっ……はああああっ‼︎」

 

心音が俺の逆手刀に刀を叩きつける。

刃同士が火花を散らし、金属音が鳴り響く。

 

「耳障りだ……消えろ消えろ消えろォオオッ‼︎」

 

「くっ……‼︎」

 

タイミングを見計らって、刀を弾く。

 

「はぁ……はぁ……っ‼︎」

 

「……それによ、お前……まともな飯食ったか? 顔、結構やつれ気味だぜ?」

 

「何……っ⁉︎」

 

 

 

ー…真‼︎ ご飯だよ‼︎ 今日は麻婆豆腐にほうれん草入れてみたの‼︎

 

ー…えー……ほうれん草かよ……って、旨っ‼︎ ほうれん草旨っ‼︎

 

ー…辛さも控えめで真みたいな子供でも手軽に野菜が摂れる‼︎

 

 

 

 

「く……あああっ⁉︎」

 

心音が頭を抑え、刀を地面に刺して支える。

憶えてんだな、やっぱり。

 

「……お前はスタイルいいけど、肉付きも丁度いいんだよな。だからさ、お前に抱きつかれるの、ホントは好きなんだよな……心地いいし……」

 

 

 

 

ー…だーあーりぃーん‼︎ むぎゅうぅうう〜♫

 

ー…もぶっ⁉︎ はっ、離せよおい‼︎

 

ー…まぁまぁ、そう照れるでない‼︎ んふふ〜♫

 

 

 

 

「ちっ、違うっ‼︎ これは……こんなの……っ‼︎ 私ではない‼︎」

 

目の前に幻覚を見ているのか、それを叩くように手を振る心音。

手放された刀が地面に倒れる。

俺はゆっくりと心音に歩み寄る。

 

「ひっ……‼︎」

 

心音は恐怖を感じたのか、俺から後ずさるように距離を置く。

 

「……俺がお前を避けていても、お前は俺を相棒と言ってくれた……俺を助けてくれた。だから……‼︎」

 

心音の背中にドラム缶が当たる。俺は心音に近づき、しゃがみ、彼女と視線の高さを同じにした。

 

「今度は……俺の番だ」

 

俺は心音を抱きしめた。痩せ細ったその身体の四肢は硬く冷たい。だが……胸の鼓動は分かる。

 

「あ……あああ……あああああァアアアアッ‼︎」

 

ジタバタと暴れるも、俺は心音を抑え込むように抱く。

 

「私は……ッ‼︎ ワタシ、ハ……ッ‼︎」

 

……ダァンッ‼︎

 

「っ⁉︎ がはっ‼︎」

 

俺の背後から銃声。背中に弾丸が着弾した。

発砲の主は……東條 蓮。

 

「東條……ッ‼︎」

 

「私から心音んを奪うな……この悪魔がっ‼︎」

 

続けて発砲。俺は逆手刀で弾くも、吐血し、その場にうずくまる。

 

「さぁ心音……戻っておいで? 大丈夫よ? あなたは間違ってないのよ?」

 

慈愛に満ちた瞳で両腕を開く。心音は立ち上がり、ゆっくりと、ふらふらと東條のもとへ脚を進める。

 

「蓮、様……」

 

俺は……心音の足首を掴んだ。

心音は俺を見下ろす。その表情は……迷いに満ちていた。

 

「心音……お前は……お前は……ッ‼︎」

 

俺は立ち上がり……腹の底から叫ぶ。

 

「お前は……俺の嫁だッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

「ッ‼︎」

 

心音は頭を抑え、その場に跪く。

 

「アアアッ‼︎‼︎ イヤッ‼︎ イヤイヤイヤァアアアアッ‼︎」

 

「戻れ……戻れ‼︎ 心音‼︎ 嫁ッ‼︎」

 

心音は……涙を流しながら、俺に手を伸ばす。

 

「‼︎」

 

「ま……こ……」

 

心音……‼︎

手を伸ばした。

 

……パシュッ。

 

「っ⁉︎ ……」

 

心音はその場に倒れこんだ。

 

「こっ、心音っ‼︎」

 

「はぁーあ。また調整が必要かぁ……」

 

東條が手にしていたのは……小型の麻酔銃。

 

「テメェ……ッ‼︎ 何が調整だァッ‼︎」

 

「やっぱりあんたの存在は消しとくべきね……小鳥遊 真‼︎」

 

東條は指を鳴らすと、地面が激しく揺れる。そして、地面から現れたのは……

 

「なっ、なんだこれは‼︎」

 

全身がバラニウムで出来た……蜘蛛型のガストレア‼︎ 機械か⁉︎

 

「私の……いや、私たちの兵器‼︎ メカガストレア……とでも言うべきかしら?」

 

メカガストレア……くそ、厄介なもの造りやがって‼︎

 

「さぁて……心音は返してもらうよ‼︎」

 

メカガストレアが機銃を放つ。俺は心音を抱え上げ、射撃を避ける。

 

「返してもらうのはこっちだ‼︎ こいつは俺の嫁だ‼︎」

 

俺はマシンガンを拾い上げ、メカガストレアに発砲するも弾丸が弾かれる。

 

「何が嫁よ……イニシエーターの分際で‼︎」

 

メカガストレアが迫ってくる。くそ、装甲が硬すぎる……‼︎ 一か八か……やるしかない。

心音をドラム缶の陰に寝かせ、NHライフルのチャージを開始した。

 

「ちょこまかと‼︎」

 

脚を振りかざすメカガストレア。跳び回ってなんとか躱す。

チャージは……あと2分‼︎

 

「あんたらがいるから……あんたらなんかがいるから、心音はァーッ‼︎」

 

メカガストレアがジャンプする。のしかかってくるつもりか……だが‼︎

俺は横に転んで躱し、銃口をメカガストレアにむける。

……チャージ完了‼︎

 

「ハアアアアッ‼︎」

 

トリガーを引く。反動で身体が吹っ飛ぶも、空中で姿勢をとり、着地。

放たれた弾丸はメカガストレアの頭部に着弾。爆発し、木っ端微塵になった。

 

「ハァ……ハァ……ッ⁉︎」

 

心音がいない……‼︎

東條がバイクに乗せていた。

 

「待て‼︎」

 

駆け出そうとすると地面から現れたのは……再びメカガストレア。モデルスコーピオンか? さっきのよりデケェぞコレ……‼︎

 

「そんじゃ、待たね〜♫」

 

東條は心音を連れ去ってしまった。

 

「こっ、心音ーッ‼︎」

 

畜生……っ‼︎

しかし、俺に悔しがっている暇などなかった。

メカガストレアが俺に体当たりをかましてきた。俺の体は軽々と吹っ飛ぶ。

 

「ごはっ‼︎」

 

地面に体を叩きつけられる。ゆっくりと迫り来る、メカガストレア。

 

「まだ……死ねるか……っ」

 

体に力が入らない……クソ……っ‼︎

 

メカガストレアが尻尾を振り上げた……。

 

「……ヤァアアアッ‼︎」

 

メカガストレアの尻尾を蹴りつけ、破壊する人影。その正体は……

 

「無事か⁉︎ 真‼︎」

 

「⁉︎ 藍原 延珠……‼︎」

 

印象的な二本のツインテールがたなびく。

 

「フシャアアアアッ‼︎」

 

更に爪でメカガストレアの脚を切り裂いていく……季崎 火乃。

 

「火乃‼︎」

 

「しっかりしな小鳥遊‼︎」

 

「今の真さんに、それはキツいかと……少し休んでいてください……‼︎」

 

俺の背後に立ち、ライフルを構える……ティナ・スプラウト。

 

「ティナ……」

 

「そこです」

 

ライフルを放つ。メカガストレアの頭部を射抜く。機能を停止したようで全く動かなくなった。

 

「お前たち……何で……」

 

「そちらの社長から連絡があったのよ……君を探してくれって」

 

ティナのプロモーター……天童 木更が歩み寄る。

 

「実緒が……」

 

「とりあえず……立てるか?」

 

延珠のプロモーター、里見 蓮太郎が肩を貸してくれた。俺は立ち上がる。

 

「あ、あぁ……」

 

「とりあえず、あんたのとこの事務所行くわよ。飛鳥たちが待ってる」

 

「あ、あぁ……」

 

俺たちはその場をあとにした。

 

「心音……」

 

俺は唇を噛み締めた。




引っ張るかどうか悩んだ結果引っ張った‼︎(笑)


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第53話〜死と愛〜

やっとここまで来れた気がする。



明崎民間警備会社には、実緒たちに加え、天童民間警備会社のメンツと、長瀬民間警備会社の二人が来ていた。

 

俺は傷の手当を受けながら、これまでの経緯について話した。

 

「心音さんが……そんなことに……」

 

木更が唇を噛みしめる。飛鳥がタブレットを操作し、スクリーンに資料を写す。

 

「その心音さんを改造した、東條 蓮……彼女の身元が判明しました。彼女の裏には……今、最も危険なテロリストの存在があります」

 

「テロリスト……⁉︎」

 

蓮太郎に頷いた飛鳥は、とあるエンブレムを映し出した。天使の羽を持った悪魔が十字架を掲げている。

 

「『聖なる悪魔の会』……彼らは自らのことをそう呼んでいます。今の行いは悪魔のようなことでも、後々天使として崇められるだろう……とのことです」

 

ふざけた厨二団体だな……反吐が出そうだ。

 

「その本部は?」

 

飛鳥はスクリーンの資料を消し、タブレットを仕舞った。

 

「わかりません。ですが、一つだけわかっていることは……彼らの本部は関東エリアにはない、ということのみ」

 

なるほどな……。

 

「とにかく……先ずは心音殿の救出でござるな」

 

「……あぁ、その通りだ」

 

知也の言葉に応える。

 

「……紅音、次の東條の潜伏先は?」

 

「んーと、多分……どっちかなんだよね、南の廃工場か、東の廃工場か……」

 

紅音の地図を覗き込む。南の廃工場の近くには……何もない。

東の廃工場の近く……‼︎

 

「新東京大学……‼︎ 紅音、次はここだ‼︎」

 

東の廃工場を指差す。

 

「……決まりだな」

 

蓮太郎が立ち上がる。

 

「今回は俺たちも戦う。心音さんには色々と世話になったからな」

 

「そうだな‼︎ 妾も賛成だぞ‼︎ 真のふぃあんせだからな‼︎」

 

延珠が蓮太郎に続く。一言いらねぇよ。

 

「そうね……心音さんも仲間だもの。見捨てられないわ‼︎」

 

「それに……これ以上真さんに、プロモーターを失って欲しくありませんから」

 

木更とティナも立ち上がる。そうか、ティナには話したんだっけ、呪われた鷹の話。

 

「ま、あんたのしんみりした顔なんて見ててイライラしそうになるから……仕方ないけど協力したげる‼︎」

 

「こら火乃。……でも、真様の悲しいお顔は、見たくありませんね」

 

火乃と飛鳥。火乃め、尻尾が荒ぶってやがる。

 

そして……実緒、シグマ、リコ、知也が立ち上がる。

 

「……言うまでもないです。心音さんは、ずっと戦ってきた大切な仲間ですから‼︎」

 

「心音様からお料理を習うという約束もありますので、私も賛成ですよ」

 

「心音お姉ちゃんがいないなんて……絶対に嫌だよ‼︎」

 

「拙者たちは失ってならない……大切な仲間を‼︎」

 

「……皆、ありがとう」

 

そこへ……

 

「俺も忘れるなよ」

 

雫も現れた。

 

「雫……」

 

「……聖天子からの伝言だ。『徳崎 心音を奪還するまで、東 雫を小鳥遊 真のプロモーターとする。奪還後は、東 雫に単独序列を与える。』……だと」

 

聖天子が……

 

「……了解だ。頼むぜ、雫」

 

「任せておけ」

 

そして俺たちは、東の廃工場へと向かった。

 

 

 

廃工場。

その倉庫の中で、東條は心音を眺めていた。

 

「ホントはこんなことしたくなかったけど……まぁ、仕方ないよね」

 

心音は台の上に寝かされていた。

 

「……ん?」

 

そこへ現れた一人の男……桐生 荘司。

 

「お前……まさか‼︎」

 

「あ、生きてたんだ。あぁ、これ? うん、使っちゃった……超強力な催眠剤♫ キャハッ❤︎」

 

「……俺はお前の機械化兵士の技術のみを信頼していた……だが‼︎」

 

荘司は四肢のバラニウムを露わにした。

 

「……やはり貴様は歪んでいた……いくら貴様でも、俺は許せん……薬品などに頼るなど‼︎」

 

拳を振るう荘司。しかし、それを受け止める……心音。

その眼は……濁ったように暗い。

 

「全ては……蓮様のため……全ては……蓮様のため……全ては……」

 

同じ言葉を繰り返し、バラニウムの腕で荘司の打撃を防いだ。そして……

 

「全ては……蓮様のため……」

 

……バキィッ‼︎

 

掴んだ拳を握りつぶす。荘司の右拳が粉砕した。

 

「ぐああああっ⁉︎」

 

「あははははっ‼︎ リミッターも常時解除‼︎ これで心音が最強の機械化兵士‼︎」

 

「く……っ‼︎」

 

荘司は倉庫から出た。

 

「さて、お邪魔虫もいなくなったところで……」

 

東條は心音を抱きしめた。

 

「もうこれで……あなたは私のものよ、心音」

 

 

 

「ここか……」

 

廃工場に到着した。

左目がまだ治っていないが……この際そんなことを言っている場合じゃない。

 

「行くぞ小鳥遊。今度こそ……」

 

「あぁ、取り戻してやるよ……俺の相棒をな」

 

俺たちは武器を構える。そして……雫がドアを蹴り飛ばした。

倉庫が一つ、ど真ん中にポツンと建っている。

恐らくあそこだな……‼︎

 

「よし……行くぜ……」

 

駆け出そうとしたときだった。

倉庫の扉が開く。そこから出てきたのは……

 

「⁉︎ あいつは……っ‼︎」

 

心音を拐った、あの機械化兵士。生きてたのか。ま、殺しては無いからな。

しかし、様子が変だ。よく見ると……右手首から先が無い。

 

「お前たち……」

 

俺はその男に近づく。

 

「……心音と東條はここか?」

 

「あぁ。奴は……東條はもう、歪みきってしまった。奴を……止めてくれ」

 

意外な言葉だった。

 

「……当然だ。そのために来たんだ」

 

「……だが、あの女……心音といったな」

 

その男の口から告げられた言葉は……俺を絶望に叩き落とした。

 

「……もう、間に合わない」

 

 

 

 

「ふん、今更来たって遅いっての……ねぇ、心音……」

 

虚空を見つめたような瞳をした心音を抱き寄せ、モニターから地上の様子を見る東條 蓮。

 

「……はい、そうですね」

 

「…………っ‼︎」

 

蓮はモニターを殴りつけた。

 

「違う……違うッ‼︎ こんなの……心音じゃない……ッ‼︎」

 

そして、モニターに映る一人の少年を睨みつける。

 

「小鳥遊 真……あんたのせいだ……ッ‼︎」

 

そして……ボタンを操作し、心音の手を握り、倉庫を出た。

 

 

「間に合わない……だと⁉︎」

 

「あぁ……ッ‼︎」

 

地面が揺れる。

この揺れは……まさか‼︎

地面から姿を現したのは……五体のメカガストレア。

 

「ハハハハハッ‼︎ 揃いも揃って来たわね、バカな民警ども‼︎」

 

東條 蓮が、心音の手を握りながら現れた。

 

「心音……っ⁉︎ お前、今度は何を‼︎」

 

「催眠剤を投与してやったわ‼︎ これで彼女は私のもの‼︎ もう、完璧にあんたらのことを忘れ、ただの人斬りマシーンに成り下がったわ‼︎」

 

東條は手に持ったリモコンを操作。メカガストレアが襲いかかってきた。

しかし、俺の後ろにいた民警の皆がそれを食い止める。

 

「真殿‼︎ こいつらは拙者たちに任せよ‼︎」

 

「心音さんを助けられるのは、真さんだけです‼︎ お願いします‼︎」

 

「皆……ッ‼︎ すまない‼︎」

 

俺は心音の逆手刀とマシンガンを構える。俺の横に雫も並び、両手を鎌に変えた。

 

「ふん、無駄よ。あのメカガストレアはいわば完成品……生半可な民警が立ち向かったところで、何の意味も無いわ‼︎ さぁ、心音‼︎ 」

 

心音は刀を持ち……鞘から引き抜く。

 

「はい……」

 

心音が猛スピードで斬りかかる。俺は逆手刀で受け止める。

 

「く……っ‼︎ よせ心音‼︎」

 

「全ては蓮様のため……全ては蓮様のため……」

 

くそ、完全に薬で頭が飛んでる‼︎

心音は刀を弾き、斬り払う。俺は後ろに飛んで躱し、マシンガンを放ち牽制。しかし、バラニウム製の身体は硬く、弾丸が弾かれる。

 

「このっ‼︎」

 

雫が鎌を振るう。心音は刀で受け止める。

 

「くっ‼︎ うおおおおっ‼︎」

 

なんとか押し込むも、やはりビクともしてない。

 

「……全ては蓮様のため……」

 

心音は高速で距離を詰め……雫の腹部に膝蹴りを入れた。

 

「ぐほっ‼︎」

 

口から血が流れる。その場に蹲る雫。更に心音が足で踏みつける。

 

「っ⁉︎ ぐああああっ⁉︎ あああっ‼︎」

 

不味い‼︎ 俺は心音に体当たりをかまし、雫から離す。

 

「雫‼︎おい、雫‼︎」

 

「くっ……小鳥遊、ダメだっ……強すぎ、る……かはっ‼︎」

 

「……だから言ったのだ。間に合わないと」

 

後ろから声……あの男だった。

 

「あんた……」

 

「こうなった以上、彼女には……死んでもらうしか……ッ⁉︎」

 

俺は……男の足元に発砲した。

 

「……ざけんな、そこで黙って見てろ」

 

俺は……逆手刀を構えた。

 

「小鳥遊……ッ‼︎」

 

「うおおおおおおおおおおっ‼︎」

 

俺は心音に刃を振りかざす。心音はそれを受け止め、弾く。体勢を崩した俺の左肩に……

 

「ッ⁉︎」

 

心音の刀が突き刺さる。

深々と刺さってやがる……だがっ‼︎

俺は……刀を持った手を握った。

 

「心音……ッ‼︎」

 

俺は右の拳を握りしめた。そして……

 

「うおおおおおおおおおおらああっ‼︎」

 

思いっきり、その頬を殴りつけた。

心音は吹っ飛び、地面に倒れこんだ。俺は肩に刺さった刀を引き抜く。肩から血が流れ出るも、その刀を投げ捨てた。

そして再び心音に歩み寄り、心音の身体を跨ぎ、胸倉を掴み、殴り続ける。

 

「ちょ、あんた何してんの⁉︎」

 

「小鳥遊ッ⁉︎」

 

「うおおおっ‼︎ おらああっ‼︎ はあああっ‼︎」

 

心音を殴り続ける。しかし、心音は表情を変えない。

 

「よせ小鳥遊‼︎ 貴様、心音を殺す気か‼︎」

 

雫の言葉で、一旦拳を止めた。

 

「……どっちかだよ……」

 

「何……?」

 

「……心音が死ぬか、正気になるか……どっちかに決まってんだろッ‼︎」

 

再び殴り続ける。心音の口から血が流れ出るも、俺は止めない。左肩の刺し傷が痛むも、殴る手を止めない。

 

「ちょ、あんた何してんの‼︎ 止めなさい‼︎」

 

東條は声を上げるも、脚を震わせている。

俺はその姿を見て……笑った。

 

「その程度かテメェは……‼︎」

 

「何……よ……⁉︎」

 

「心音への……愛に決まってんだろうがっ‼︎」

 

心音の瞳はまだ虚空を見つめたまんまだ。

 

「俺がお前の立場だったら……何があっても、心音を守りに飛び出す。お前はどうだ……逃げてるだけだろうが‼︎」

 

「ひっ⁉︎」

 

俺の怒号が東條を怯ませる。

 

「テメェなんぞが……心音を所有物呼ばわりするんじゃねぇっ‼︎」

 

「っ‼︎ 黙れェエエエエエッ‼︎」

 

東條は……俺の左の二の腕に弾丸を放つ。

俺は傷を抑え、その場に倒れる。

 

「はぁ……はぁ……っ‼︎」

 

「……っ」

 

心音が立ち上がった。項垂れたまま……東條のもとに歩み寄る。

 

「え……っ⁉︎」

 

「そんな……っ‼︎」

 

雫が地面を叩く。俺は唇を噛みしめる。

 

「はははっ‼︎ 私の勝ちだ‼︎ これで心音は私のものだぁ‼︎アーッハハハハハッ‼︎ アハハ……」

 

……グシャッ‼︎

 

「‼︎」

 

「⁉︎」

 

東條の持っていたリモコンが粉砕した。

 

「……え?」

 

リモコンを破壊したのは……心音の右手だった。

 

「え……っ⁉︎」

 

「……蓮。あんたの昔からの悪い癖。ツメが甘いのよ」

 

リモコンを破壊した右手が下りる。そして、その脚はゆっくりと俺に向かってくる。

 

「……それにね、私はもう……心に決めた大切な人がいるの」

 

彼女は俺を抱き寄せ、立ち上がらせた。

 

「……蓮。覚悟しなさい……‼︎」

 

「っ⁉︎」

 

彼女が……徳崎 心音は、言い放った。

 

「……私の相棒の身も心も痛めつけておいて……タダで済むとは思わないで‼︎」




ようやくここまで来たなホント。
疲れるわ〜(笑)


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第54話〜愛と人間らしさ〜

退院してからどうにもギアがかからなくて……いや、申し訳ございません。


「蓮……覚悟しなさい。私の相棒の身も心も傷つけておいて、タダで済むとは思わないで‼︎」

 

俺は目の前の現実に嬉しさを覚えた。帰らないとも思いかけたその時に、女神は微笑んだのだ……俺たちに。

 

「心音……ッ‼︎」

 

「ごめんね真……心配かけちゃったね」

 

「心音ぇッ‼︎」

 

俺は心音の胸に飛び込み抱きついた。腕は硬く冷たいものの、身体は……胸は暖かい。

 

「バカ……心配させんなよ……このぉ……っ‼︎」

 

「真……」

 

心音は俺の頭を撫でた。

 

 

 

 

「心音……!」

 

雫は身を起こし、ガッツポーズを作る。

それを見た桐生 荘司は驚きの表情を見せていた。

 

「いやはや驚いた……まさかこんな奇跡みたいなことが起きるとは……」

 

桐生は口元を緩めた。

 

「やるねぇ……」

 

「それが、あいつらなんだ」

 

桐生に肩を貸す雫。

 

「あいつらは……お互いのためならどんなことでも出来る」

 

「愛ってやつかい……へへっ、嫌いじゃねぇな」

 

桐生は……砕かれた右拳を取り外し、投げ捨てた。

 

「気が変わった。お前らに手を貸してやる。坊主、名前は?」

 

「……雫だ。東 雫」

 

「俺は桐生 荘司だ。雫、機械いじれるか?」

 

 

 

「くっ……カッテェな、コイツッ‼︎」

 

蓮太郎と延珠はメカガストレアとの交戦を繰り広げていた。致命的なダメージが与えられず、弱点であろうところもカバーで覆われている。

 

「蓮太郎‼︎ このままではキリがないぞ‼︎」

 

「あぁ……だが、ここで止まるわけにもいかないだろ‼︎」

 

蓮太郎目掛けて、メカガストレアはアームを伸ばす。

 

「……雲嶺毘湖鯉鮒ッ‼︎」

 

鋭いアッパーカットでアームを起動不能に。

 

「このままやるぞ、延珠‼︎」

 

「うむ‼︎」

 

 

 

 

「っ‼︎」

 

ティナは避けつつライフルを撃ち込む。

 

「天童式抜刀術、滴水成氷‼︎」

 

ライフルで動きが止まったところに、木更の斬撃が走り、メカガストレアの脚を切断する。

 

「ティナちゃん、大丈夫?」

 

「問題ありません。真さんだって頑張っているんです……私も、やります」

 

「そうね……その通りね‼︎」

 

 

 

「フシッ‼︎」

 

火乃がメカガストレアの攻撃をかわす。隙のできたところに飛鳥のチェーンソーが飛び込む。

メカガストレアの動きが鈍くなる。

 

「ハッ、ハッ、ハッ……アオオオン‼︎」

 

「火乃‼︎」

 

「大丈夫よ‼︎ 自重はしてる‼︎」

 

 

 

 

「奥義……閃光斬ッ‼︎」

 

知也の居合斬りが炸裂する。メカガストレアの関節部に傷がはいる。

 

「そこっ‼︎」

 

そこを目掛け、リコは新装備のウォーターキャノンを放ち機能を鈍らせる。

 

「負けられないんだ……心音お姉ちゃんと真お兄ちゃんのためにも‼︎」

 

「拙者たちは……勝たねばならぬ‼︎」

 

 

 

 

「はっ‼︎」

 

ハンドガンを放ち牽制、ランスで応戦する実緒。

シグマも実緒に合わせ、鎌でメカガストレアの体に傷を付ける。

 

「実緒様、大丈夫ですか?」

 

「全然平気‼︎ 大丈夫だよ‼︎」

 

「安心しました。それでは……」

 

「うん‼︎ ドンドンいくよ‼︎」

 

 

 

心音は俺の懐にあった逆手刀を構える。蓮はそれに対して銃を構える。

 

「心音……もう一度……私のものにっ‼︎」

 

蓮が発砲する。心音は逆手刀を斜め上に振るう。刃は……弾丸を真っ二つに斬り裂いた。

 

「くっ……このっ‼︎」

 

 

次々と放たれる弾丸。心音は逆手刀で弾丸を弾き、高速で距離を詰めた。

 

「な……っ⁉︎」

 

「‼︎」

 

蓮が銃のグリップで殴り付けようとするも遅く、心音は彼女の背後に回り、逆手刀の峰打ちを叩き込んだ。

蓮はその場に倒れた。

 

「すげぇ……」

 

これが機械化兵士の力……。

 

 

 

心音と蓮が戦っている間に倉庫に忍び込む雫と荘司。

2人はコンピュータを操作していた。

 

「見つけた」

 

「よし、電波止めろ‼︎」

 

雫はエンターキーを叩いた。

モニターに映っていたメカガストレアのカメラの映像がノイズに変わる。

 

 

 

 

「っ⁉︎」

 

突然、メカガストレアの動きが止まった。

 

「これは……」

 

シグマが停止したメカガストレアをアナライズ。

 

「……機能を停止しています。恐らく、メインコンピュータから受信していた電波が遮断されたためでしょう……私たちの勝利です」

 

 

 

 

「終わったか……」

 

動かなくなったメカガストレアを目視し、俺は地面に座る。くそ、結構深手負ったな。傷口を抑える。

 

「ありがとな心音。助かっ……」

 

振り返るその先に……心音の姿はなかった。

 

「……心音……?」

 

俺は傷の痛みを堪えながら立ち上がり、叫ぶ。

 

「心音⁉︎ どこだ⁉︎」

 

俺は走り出す。しかし、出血のせいか頭がクラクラしてきた。

 

「ここ……ね……っ」

 

俺の意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

私は倉庫を後にし、走る。

 

「ごめんね……真……」

 

涙を拭うも拭えない。私の身体は……機械になってしまったからだ。

 

「ごめんね……ごめんね……っ‼︎」

 

ここまで来ればいいだろう。私は河川敷の架線下の壁に凭れかかる。

川の水面が私の姿を映す。腕と脚は黒い鋼の色。

そこに人間らしさはなかった。

 

「私はもう……ただの機械なんだ……」

 

私は逆手刀を腰に差し、歩き出した。

雷鳴とともに雨が降り出した。

 

 

 

「……っ」

 

目が覚めた時、俺は病室にいた。胸と肩に包帯が巻かれている。

少しは治まったものの、まだ痛む。

 

「気がつきましたか?」

 

ベッドの横のイスにシグマがいた。

そして、あの後のことを報告してくれた。

東條 蓮は逮捕され、今は留置所にいるらしい。テロリストと関わっているとのことなので、慎重な取り調べで素性を暴くつもりのようだ。

そして、心音のことを聞くと……シグマは何も答えなかった。

 

「……わかった、ありがとな」

 

俺は再び眠りについた。

 

 

 

 

「……」

 

BARクスィーにて。雫と幸雄はグラスを片手に語らっていた。

 

「あのイニシエーターの坊主、これからどうなるんだ?」

 

「わからん。今は俺と仮のペアだが……あいつ次第、としか言いようがない」

 

そこへ……徳崎 紅音がやってきた。

 

「こんな真昼間からお酒?」

 

「……あいにく、ノンアルコールだよ」

 

紅音が雫の隣に座る。

 

「……心音は?」

 

「どこにもいないわ……事務所にも、重工にも」

 

差し出されたグラスを飲み干す紅音。

 

「どこ行ったのよ、心音……マコちゃんがどんなにあんたを待っていることか……」

 

 

 

「……」

 

深夜。私……徳崎 心音は信也さんの墓にお供えをする。

 

「信也さん、ごめんなさい」

 

私はもう、プロモーターには戻れません。

 

「このケリは……私がつけます」

 

私はその場を後にし、駆け出した。

 




次回、新展開です(・ω・)


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孤高 殲滅執行人 徳崎 心音
第55話〜怯えと忠告〜


ギアがかかってきました。ウェヒヒ。


留置所面会室。

そこに入れられた東條 蓮を訪ねる者が。

 

「……こ、心音……」

 

徳崎 心音が、ガラス越しに蓮の向かいに腰掛ける。

 

「……教えなさい。あんたを雇ったのは、誰?」

 

鋭い眼差しで睨みつける心音。蓮は震えながらも答えた。

 

「『聖なる悪魔の会』……そのボスよ……」

 

「聖なる悪魔の会……あのテロリスト、か……」

 

「……私は彼に雇われたの。機械化兵士を量産する目的でね。そのテスト段階として、日本でのレポートが必要で……」

 

段々と小さくなる蓮の声。心音の眼差しの鋭さは無くならない。

 

「……それで、私がその実験台になった訳か……」

 

「……ごめんなさい……ホントに、ごめんなさい……っ‼︎」

 

大粒の涙を零す蓮。心音は立ち上がる。

 

「……アジトはどこ?」

 

「っ⁉︎ まさか、心音……」

 

「当たり前じゃない。ぶっ潰しに行くのよ」

 

「む、無理だよ……ボスに……ギルモアには誰も敵わない……」

 

心音はガラスを殴りつけた。

蓮は驚き、更に震える。

 

「……今あんたが出来る罪滅ぼしは、情報の提供よ。私に許して欲しいなら、それくらいしなさい」

 

「……わ、わかった……」

 

心音は聖なる悪魔の会の本部の場所を聞き出した。

 

「……ありがとう、蓮」

 

心音は立ち上がる。

 

「心音……」

 

「……行ってくる、この事、他言無用ね」

 

そして、足早に留置所を後にした。

 

 

 

 

「……」

 

事務所のベランダでシャボン玉を吹く、俺……小鳥遊 真。

東條 蓮のプロモーター誘拐騒動から2日が経った。

俺は心音を待っていた。思い当たるところは全部探したが、やはり見つからない。今日も朝から探すも、空振りだった。

午後3時のベランダでシャボン玉を吹き、リフレッシュをする。

 

「……よう、坊主」

 

ベランダにやってきたのは……あの機械化兵士、桐生 荘司。

罪滅ぼしと称して、今はこの事務所の雑用をしている。

もとは傭兵らしい。ま、見た目的にもそうだろうな。

 

「あんたか」

 

「あんたはねぇだろ。せめて名前で呼んでくれよ……無理を承知ってわかってるけどな」

 

桐生は俺の横にやってくる。

 

「……恋人、なんだろ、あのプロモーターの嬢ちゃん」

 

「……俺の相棒で、嫁だ」

 

「……すまねぇな。口では何とでも言えるが……」

 

「あんたは悪くない。あんたは東條 蓮に言われただけだろ」

 

俺はシャボン玉を大きく膨らませ、そっと飛ばす。

 

「……あんたも被害者だ」

 

「……ありがとよ」

 

 

 

 

「……そーっと、そーっと……」

 

徳崎重工に忍び込む私……徳崎 心音。

お姉ちゃんはこの時間は営業に行っていていない。今しかない。

私はキャリーバッグに荷物を積み込み、パスポートを見つける。

よし、準備完了。

 

「……行ってきます。今まで、ありがとう」

 

私は重工を後にした。

 

 

 

 

「……これは……」

 

シグマがパソコンを前に呟く。

俺たちはそれに反応。

 

「シグマ? どうしたの?」

 

「……東條 蓮のパソコンのデータを解析。メールのやり取りから、彼女のスポンサー……聖なる悪魔の会の本拠地がわかりました」

 

「真か! シグマ殿‼︎」

 

「映します」

 

スクリーンに地図が映る。指し示したのは……アメリカの、デトロイトエリア。

 

「アメリカか……」

 

「お金があれば、行けるのですが……」

 

無理、か……。

 

「とりあえず、聖天子に報告だな」

 

「あ、私とシグマでいきますね」

 

アメリカ、か……確かに無理だよな。

……ん、待てよ……⁉︎

まさか……。

 

「……ちょっと散歩してくる」

 

俺は事務所を出た。

 

 

 

 

「ありがとうございます」

 

大学時代の知り合いに航空会社関係に勤めている先輩がおり、彼女に飛行機を手配してもらった。

 

「お安い御用よ。しかし、あんたが民警、かぁ……」

 

「今はただ、個人としてですけどね」

 

「……ま、詳しいことはいいや。武器に関してはあたしが掛け合うから、あんたはもう行きな」

 

「わかりました。ありがとうございます、先輩」

 

私は頭を下げ、手荷物とチケットと共に乗り場へ向かった。

 

 

 

 

 

留置所面会室。

俺は東條 蓮の面会室に来た。

 

「……あなたは、心音の……」

 

滅入った顔をしている。まぁ、無理もないか。

俺はガラス越しに向かい合わせで座る。

 

「……今日、ここに心音が来なかったか?」

 

「……来て、ない」

 

 

うつむき気味に言う。

 

「あとで面会履歴確認すりゃわかるからな、次嘘ついたら出所したときソッコーしょっぴくぞ」

 

睨み付けて言ってやる。怯えた東條は震えながら答えた。

 

「……来たわよ。来たけど……心音が、他言無用だって……」

 

「大体予想はつく。お前……聖なる悪魔の会のアジトの場所、教えたんだろ?」

 

「……っ」

 

図星か。視線をそらすも、俺はずっと見続ける。

 

「わ、わかったから、睨まないでよ……」

 

東條は顔を上げる。

 

「……心音は、聖なる悪魔の会を潰す気よ。多分、自分一人の力で」

 

そんな無謀な……。

 

「……止めなかったのか?」

 

「止めたよ‼︎ けど、断れなかった……情報を教える。それが『私にできる罪滅ぼし』だって……」

 

「あのバカ……‼︎」

 

俺は立ち上がる。

 

「待ってよ‼︎ まさかあんたも行くの⁉︎」

 

「……だったら何だ?」

 

「……無理だよ。相手は最悪なテロリスト……巣にかかった獲物は、確実に殺される……」

 

震えながら話す東條。

 

「……上等だ。心音をあんなんにしたお前をそうさせたやつを許すわけもいかねぇんでな。忠告ありがたいが、俺は行く」

 

振り返り、面会室を出た。

 

「あら、小鳥遊様」

 

そこでぱったり、長瀬 飛鳥と会った。

 

「飛鳥? どうしてここに?」

 

「あぁ、少し過去の事件のデータを洗っていて……そのついでに東條 蓮のところに行こうかと」

 

「それは必要ないな」

 

俺は面会のことを飛鳥に話した。

聖なる悪魔の会のアジトの場所。それを聞いた心音が単身アメリカに向かったであろうこと。

 

「アメリカですか……」

 

すると飛鳥は……携帯を取り出した。

 

「もしもし? 帰りの便をキャンセル。デトロイト行きを手配できる?……わかりました、ありがとう」

 

電話を切る。

 

「……小鳥遊様」

 

飛鳥の次に発した言葉に、俺は即座に首を縦に振った。

 

「共に参りませんか? デトロイトエリアへ」




次回から新章です。
いやぁ、楽しい(笑)


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第56話〜武運と涙〜

思いつくときに、書けるときに書きまくろうかなと、最近思う所存です。


「そんじゃ、行ってくる」

 

俺たちは新東京空港にいた。

キャリーケースを手にする、俺……小鳥遊 真と、長瀬 飛鳥と、そのプロモーター、季崎 火乃。

見送りに明崎民警のメンツと徳崎 紅音が来ていた。

 

「マコちゃん……気をつけてね」

 

「無理はなさるなよ」

 

「わかってる。あくまで俺の目的は心音を連れて帰ることだからな。テロリストはそのついでだ」

 

今回は俺一人で行くことにした。明崎民警の仕事もしてもらいたいし、正直な話……金も無いしな。

長瀬民警と関係を築けて成功だったな。

 

「じゃあ……お気をつけて‼︎」

 

「ご武運を、真様」

 

俺と飛鳥と火乃は飛行機に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

アメリカ ロサンゼルス空港から、バスに揺られ、私……徳崎 心音はデトロイトエリアに到着した。

アメリカも日本と変わらない。ただ土地の面積が広いのもあるのか、モノリスは日本のものと比べると巨大だ。

 

「さて……と」

 

私はキャリーケースを引き、予約した近くのホテルに向かった。

 

 

 

ホテルの部屋でパソコンを開き、蓮から聞き出した情報を元に、アジトの場所を特定。

 

「これは……軍事基地?」

 

軍事基地にテロリストが潜んでいる?

……民警の身分証明はあるから、いけるかな。

コーヒーを啜る。

 

「真……」

 

ダメだ。忘れなきゃ。

私にはもう……

 

「真に愛してもらう資格なんか、ない……」

 

 

 

 

 

「飛鳥……寝ちゃった」

 

飛行機内にて。あと3時間ほどでロサンゼルスに到着らしい。

通路側の飛鳥は少し前までは本を読んでいたが、寝てしまった。

 

「……」

 

「……心配、だよね。相棒のこと」

 

火乃が、俯いていた俺の顔を覗き込む。

 

「そうだな……あいつ、走り出したら止まるのに時間かかるからな」

 

「……ねぇ、小鳥遊。前から聞きたかったんだけど……」

 

頬を赤らめ、尋ねる火乃。

 

「何だ?」

 

「あんたってさ……犬派? 猫派?」

 

「……は?」

 

「いや……その、なんというか……」

 

何を聞いているんだこいつは。

ま、暇だし答えとこう。

 

「どちらかといえば……犬かな。基本嫌いな動物はいない」

 

「そ、そっか……え、えへへ……」

 

火乃は尻尾が露わになり、荒ぶっていた。

 

「おい、尻尾」

 

「はっ⁉︎ みっ、見るなスケベ‼︎」

 

 

 

 

 

 

キャリーケースの中身をクローゼットに入れ、武器の手入れをする。逆手刀を砥石で磨く。

 

「……」

 

『も……、…めっ‼︎』

 

ここ数日、頭の中で呼びかける声が響く。恐らく、私が蓮から洗脳されていたときに聞いていたものだろう。

何と言っているかは鮮明には分からないず、途切れ途切れだが……。

 

「……よし」

 

私は武器を携帯し、ホテルの部屋を出た。

 

 

 

 

 

「……」

 

機内放送の音楽番組を聴きながら、物思いに耽る。

心音のことだ。

何であのとき、あの場から去ったんだ……何も言わずに。

その理由を考えるも思い当たる節が見つからない。

 

「……はぁ」

 

考えても無駄な気がしてきた。

とりあえず、もう直ぐ到着だろう。

俺はイヤホンを外した。

 

 

 

 

その頃の日本……

 

 

 

「んー……良い天気、だな」

 

この俺……桐生 荘司は買い出しに行っていた。今日の夕飯のだ。

なんだかんだ言って平和な奴らだよな、民警って。

敵であった俺を許し、受け入れている。

 

「あの坊主……無事に着いたかね……」

 

俺は買い物を済ませ、スーパーを出る。

 

「……雨か」

 

雨が降ってくる。折り畳み傘を開き、歩く。

 

「……お?」

 

視線の先……自販機の近くで、雨に打たれ項垂れながら歩く少女が。俺はそいつに歩み寄り、傘に入れてやる。

 

「嬢ちゃんどうした。こんなとこでずぶ濡れになってると、風邪引くぞ」

 

少女は顔を見上げる。雨なのか涙なのか……少女の両眼からは一筋の水が。

 

「……何故泣いている?」

 

「……見捨てらたんです。マスターに……」

 

マスター……?

とにかく、放っておけない。

 

「……来な」

 

「え?」

 

俺は少女の手を引き、歩く。

 

「……名前は?」

 

「……ユノ。緋月 ユノ(あかづき ゆの)、です」

 

「ユノか。お前、何者だ?」

 

「マスター……プロモーターを失った、イニシエーターです」

 

イニシエーターだと?

 

「……プロモーターを失った、のか」

 

「……正確には捨てられました。君はもう要らないって」

 

酷い話だな……。俺はユノの頭を優しく撫でてやった。

 

「……とりあえず、飯食うか?」

 

ユノは頭を縦に振った。

 

 




次回より、熱くなるかな……?
いや、熱くしてみせる。


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第57話 〜後始末と邪魔〜

お久しぶりです←


アメリカ ロサンゼルス空港に到着した。俺……小鳥遊 真は長瀬 飛鳥、季崎 火乃と共に空港に待っていたリムジンに乗り込む。

長瀬が流暢な英語で運転手に話す。すげぇ、流石お嬢様だぜ。

 

「今からデトロイトエリアの問題のエリアに行きます。ここの、軍事基地です」

 

「軍事基地?」

 

軍がテロリストを庇っているのか? いや、それは考え難い。

だとすれば一体……。

 

「とりあえず、行くしかないよ。考えるだけめんどいだけでしょ」

 

火乃が俺の肩を叩く。確かにその通りだな。俺は揺れる車内で武器の整備を始めた。

 

 

 

 

「民警 ココネ トクサキ、認証した。入れ」

 

「どうも」

 

私はデトロイトの軍事基地にやってきた。一応、民警として海外の軍事基地の見学をしたいという名目のもと、外部からの見学客としてやってきている。

本当の目的は……聖なる悪魔の会の摘発だけどね。

 

「しかし……こうして見ると流石はアメリカってところよね」

 

広大な上、施設も充実している。

確かに、世界最大の経済力があると言えるわね。

この広い基地のどこかに聖なる悪魔の会のアジトが……。

 

「手当たり次第……か」

 

私は辺りを見渡し、言葉の通りに探し始めた。

 

 

 

 

「ここか……」

 

俺たちは軍事基地に到着した。飛鳥が入り口の兵士に身分証を提示すると、兵士はキレのある敬礼をした。

スゲェ……何が起きたんだ、今。

 

「飛鳥は有名だからね……私も思うわ、すごいって」

 

あっさりと言った火乃。長瀬家、恐るべし……。

 

「では行きましょうか」

 

笑顔すら怖く見えてきた飛鳥に着いて行く、俺であった。

 

 

 

 

 

「ここも何もないか……」

 

北エリアと西エリア、東エリアは回ったが、何の変哲も無い普通の軍事基地だった。

 

「残りは……南エリアか」

 

奥の方に位置する南エリア。

何かを隠す……ましてやアジトなんかを隠すなら、そこじゃないのだろうか……?

 

「考えてもしょうがないな……」

 

私は足を速めた。

 

 

 

 

飛鳥は英語で聞き込みをするも、あまり進展は無し。

北と西エリアの調査を終え、俺は東エリアの食堂でカレーを食べていた。

 

「小鳥遊様、嬉しいのかどうかは別として……情報が」

 

「? どうした?」

 

「先ほど、入場した人間の履歴を見せていただきました」

 

飛鳥は一枚の紙を取り出す。それは名前と時間が書かれたリストだった。

 

「……‼︎ 俺たちの1時間前に……‼︎」

 

いた。ココネ トクサキ。

言うまでもない、心音だ。

俺はカレーを飲むように食べ干す。

 

「あ、小鳥遊様‼︎」

 

俺は一人食堂を飛び出した。

 

 

 

「た、大変追わなきゃ……」

 

「無理よ飛鳥」

 

火乃はジュースを飲みながら言った。

 

「あいつは失いたくないんだよ。大切なものをこれ以上。あぁなったら、あいつは止まらない」

 

微笑みながら火乃は飛鳥の頬を突いた。

 

「本当に……もう」

 

飛鳥は困り顔と共に嬉しそうに笑った。

 

「……火乃」

 

「うん」

 

そして2人は、食堂を後にした……。

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……ッ‼︎」

 

何処だ、何処にいるんだ、心音。

軍事基地を走り回る。

いない、いない、いない……。

 

「心音……ッ‼︎」

 

何処なんだ……やべ、気持ち悪……カレーが出てきそうだ。

その場で膝に手をついた時だった。

 

「? 騒がしいな……」

 

南エリアの方に、兵が集中していってる。

俺はそれに着いていった。

 

 

 

 

 

 

南エリアの地下に、予想通り隠し階……アジトがあった。

襲いかかったアジトの兵士たちをなぎ倒し、その場のボスらしき人物を問い詰める。

 

「……ゴルドス・ギルモア……あなたかしら?」

 

「ち、違う……ギルモアの旦那は、昨日からいねぇ……」

 

「……どういうこと?」

 

「お、俺たちだって知らねぇよ‼︎ ただ、『後始末をしなきゃ』って……」

 

「後始末……?」

 

一体何のことだ……?

 

「それ以外に何か言ってた事は?」

 

銃を突きつけながら問い詰める。男は震えながら答えた。

 

「あ、あぁ……確か……『仕事が増えた、トウジョウめ』……って」

 

トウジョウ……蓮のことよね。

……待てよ。ひょっとして……。

 

「後始末って……まさか⁉︎」

 

蓮を始末する……これ以上情報が漏れないように……。

可能性が高い。となると、蓮が危ない。

昨日からいないとなると、既にギルモアは日本に向かっている。入れ違いだった訳か!

 

「と、とにかく……っ‼︎」

 

連絡しようとした時、我に帰った。そうだ。私はもう……明崎民警には戻れない。

 

「……っ!」

 

警報が鳴る。マズい……早く行かなきゃ。私もテロリストと間違われる。

私は物陰に隠れながら地下から脱出。物陰に身を隠しながら足早に軍事基地の南エリアを抜け出し、出口へ向かった。

 

 

 

「何だ……!?」

 

南エリアに着くや否や、警報音が鳴り響く。

兵士や他のプロモーターらしき長身たちが一斉に南エリアの倉庫の方へ向かっている。

あそこに心音が……間違いない、いるハズだ。俺は人混みを掻い潜りながら先へ進む。倉庫へ駆ける。

 

「くっ……!」

 

くっそ、人が多すぎる……‼︎

ようやく辿り着く。俺は倉庫の中に足を踏み入れる。他の捜査官達を掻い潜り、地下室へ。

既に数人の男達が拘束されていた。

男達が何を話しているのかは英語のため全くわからないが、何やら怯えている様子で話している。

ここで何があったんだ……?見渡す限り、ここで何か騒ぎがあったのは間違いない。まさか……

 

「心音……お前、ここに……?」

 

 

 

何とか出入り口まで抜け出した。急いで空港に戻って日本に帰らないと。まさかギルモアが日本に向かってたなんて……。

昨日からいないという彼の部下の話からすれば恐らく、今頃日本に着いているはず。蓮が危ない……‼︎

タクシーを捕まえようと足を進めると……

 

「っ!?」

 

私の目の前に現れたのは……長瀬 飛鳥とそのイニシエーター 季崎 火乃。

 

「飛鳥さん……火乃ちゃん……」

 

「まさかこんな形でお会いすることになるとは……お久しぶりです、徳崎様」

 

温厚な表情をしながらも、こちらを真っ直ぐに捉えた目。隣の火乃ちゃんも鋭い視線をこちらに向ける。

 

「今、基地にあんたの相棒がいるよ……あんたを探すために」

 

「真が……?」

 

すると、飛鳥さんはスマホを手早く操作する。

 

「たった今、小鳥遊様に連絡致しました。すぐに基地を出て、ここに向かうようにと」

 

「‼︎」

 

真がここに来る。

それはいけない。

私はもう、彼には会えない。私は直様逆手刀を引き抜いて構えた。

 

「なるほど……やはり私たちとは行動できないと……」

 

「……」

 

飛鳥さんと火乃ちゃんも臨戦態勢に。

 

「……そこを退いて。これは私が解決しなきゃいけないことなの」

 

「お一人でギルモアから東條 蓮を助ける……ですか?」

 

「それが私のやるべきことだから……邪魔をするなら容赦はしない……ッ‼︎」

 

私は勢いよく飛び出し、飛鳥さんに横一線で刀を振り抜く。

 

「っ!?」

 

飛鳥さんのよろめいたところに、横から火乃ちゃんが飛びかかる。

 

「このっ‼︎」

 

素早い爪の一撃を躱し、距離を置く。どうやら、彼女たちは退く気はないようだ。

 

「……ッ‼︎」

 

真に会う前にここを切り抜けないと。

これは私だけの問題。

蓮をあそこまで苦しめた、私の責任。

だから、私の手で全て終わらせる。

 

「これ以上、傷つけたくないの……‼︎」

 

私のせいで、誰かが傷つくのは……もう嫌なんだ。

私は逆手刀を持ち直し、2人へ向かって行った……。

 

 

 

「ココがニッポンか……」

 

羽田に降り立った黒スーツの男……ゴルドス・ギルモア。

 

「さてと……」

 

アタッシュケースを片手に、ケータイを耳に当てるギルモア。

 

「私だ。今からそちらに向かう。例のブツもある」

 

ギルモアの来日。

日本の民警はまだ、誰もその事実を知らない。

彼の侵略が……始まろうとしていた。



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