般若†無双 ドキッ!情報戦で有利を取ろう!カヤクもあるよ (ハエ缶)
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第一話


作者原作を詳しく知らないので正史演義要素含みます。



 

此処は洛陽。

今現在目の前には、跪いている部下から報告を受けている。

 

「報告!敵連合軍が汜水関前に布陣が完了しているとのことです!」

 

「ん、先鋒は?」

 

「はっ!申し上げます。旗には『公』と『劉』の文字を確認。その麾下である、関羽に張飛並びに趙雲の旗も確認できます。」

 

知っていた対董卓連合軍の先陣は孫堅だった筈なのに、気付けば公孫瓚と劉備軍。更には既に伏龍と鳳雛の両軍師が参陣しているらしい

 

「...ん。確かこちらからは、華雄将軍に張遼将軍。副将に李粛、胡軫、趙岑を配置してる筈だよな」

 

それに対して、此方からは華雄だけでなく張遼まで守備に就いている。

胡軫が副将という事は演義基準かと思えば張遼の存在で違う。

 

「はっ!その通りでございます。」

 

あの張遼がいるならって思えるが、どう考えてもこの華雄は守城向きじゃ無いだろうに....

 

「ご苦労さん。下がって休んでな、どうせ直ぐまた仕事を申し付けられるよ」

 

....董卓軍は人材不足で後々裏切りが多発するからネ

 

 

 

__________________

 

「かっくんいるー?」

 

部下と別れて、軍師様がいる部屋へ向かう。

 

「だから!ボクの名前は賈駆だって言ってるでしょ!?」

 

返事を返してくれるのは、賈駆で字は文和。

後にある人物より【打つ手に失策が無く、事態の変化に通暁していたと言ってよい。前漢の張良や陳平に次ぐ】と評価し、またある人は【悪の権化である董卓が獄門台に曝され、ようやく中原が平和になろうとしていたのに、災いの糸口を重ねて結び直し、人民に周末期と同じ苦難を強いたのは、全てカクの片言に拠るものではないか】と評価される。

良くも悪くもといった人物であれども、いま目の前に居るのは不運続きで策も裏目に出るという幸が薄い人物である。

 

「それで自分は何すれば良いの?軍師殿」

 

軍師殿のリアクションは受け流し、待機命令が出ていたが敵先鋒の話を聞いては居ても立っても居られないといった感じでここまで来たのだ。自分にも何か命令が下る筈だ

 

「...はぁ。あんたは裏切り者の粛清を、対象はあんたの集めたモノを駆使して判別なさい。」

 

「....了解」

 

授かる命令は裏方作業。裏切り者なんて粛清していったらキリがないのに、不承不承ながらの頷き返す。

 

「それと、この後の事はあんたに掛かってるんだから、必ずやり遂げなさい。最悪の場合は、霞や恋を使ってでもボクを切り捨てたとしても月だけは無事に守り抜きなさい」

 

返事を返したところで、前々から言われていたことに関しての念押しが来る。

 

「重ねて了解。そうならんようにやり遂げてみせるさ

じゃあ行ってくるよ、ご武運を軍師殿」

 

これ以上釘を刺されても刺さるとこが無いため、退室するため振り返る。

 

「えぇ、そっちもね」

 

賈駆の言葉に不安の色を感じながらも、振り向きはしなかった。

 

 

 

__________________

 

「へい!誰かいる?」

 

賈駆の部屋を退室した頃には既に帷は落ちていた。

 

洛陽の城の隅に移動し虚空に向かい声をかける。

 

「はっ!」

 

返事と共に部下が姿を表す、対してリアクションはせずに要件だけを伝える。

 

「取り敢えず、集まれる人間だけ集めてきてよ。集まったら命令を出すからさ」

 

「はっ!」

 

再び返事を返し、虚空へと解けていく部下を見送る。

その後月が見える縁に移動し、部下たちが揃ったのを確認して声をかける。

 

「揃ったね。軍師殿直々に仕事さ、十常侍の首並びに首領の張譲と趙忠を捕らえる。首領の張譲と趙忠だけは自分がやる。残りの十常侍は、全員殺してきて。殺り方はいつも通りに、向こうさんの斥候がいたら見易くしてあげてね」

 

「はっ!」

 

「ん、それで何か報告はある?」

 

部下たちの返事を聞き、何か前線の情報が有ればと報告を促す。

 

「はっ!前線部より報告。

敵連合の先鋒にて、更に『孫』の文字を確認しました」

 

報告を聞き再び思考の海に浸かる。

 

「孫の文字...」

 

そういえば、ここでは既に孫堅に代わって孫策が台頭してきていたな。

しかし、華雄は孫堅に討ち取られたり、麾下一党を討ち取ったり。若しくは関羽に討ち取られたりもするけど何かと孫家因縁があるはず。

この世界では胡軫が副将になってたりするけど、孫家との因縁があるならば孫策もそれを知らない訳も無く、利用しない訳もない。

 

「確か華雄ちゃんと何らかの因縁があったな。報告確かに聞いたよ、この命令を終えたら自分は泗水関に向かう。

君達はこの事を含め、軍師殿に報告しといて。以後は軍師殿に従うように

以上、散開!」

 

その後は特に報告すべきことはなかった為、仕事に向かわせた。

先の報告は軍師殿にも聞かせるべきと、報告してきた部下に報告を命令する。

もう一度自分自身が賈駆に会うべきかと思いながら、2人を捕らえるべく移動を開始する。道中で、彼女を見つけることが出来れば良いのだが....

 

 

 

 

__________________

 

「や!かっくん!」

 

命令されていた捕獲をこなして、2人を地下牢に繋ぎ軍師殿が居る部屋へと戻る。作戦の道中に彼女に会えたので、独断ではあれど命令を伝えておいた。

 

「やっと終わったの?十常侍の方はとっくに報告を受けたというのに遅かったわね。あんたの部下から聞いてた報告じゃあ、終わり次第直接泗水関の方に向かうって聞いてたけど?」

 

少し言葉に棘を感じながらも、此方の報告を済ませる事にする。部下の報告通り泗水関に向かう必要があるからだ。

 

「そっちはこれから向かうよ。此処には追加の報告をしに来ただけ、首領と趙忠は地下牢に詰めておいたよ。

それと、確実な証拠は挙げれなかったけど李傕と郭汜には注意しててね。独断ではあるけど、徐栄の軍をここの守りに着くように言っておいたけどもね」

 

「はぁ。あんたと話してると溜息を吐く回数が増えるわ...ボクの方でもその2人が怪しい気がしてるけど、そこまでする必要があるのかしら?

彼女は実力ある立派な勇将よ。そんな彼女を守りに付けるなんて、勝てる戦を捨てるような物じゃないの。

それより、あんたが先に切れば早いと思うけど?」

 

報告を受け、賈駆は溜息を吐きながらも疑問を提示する。

彼女というは徐栄の事であり、徐栄と言えばあの曹操をも撃退する程の勇将である。

 

「疑わしきは罰せず。確証が無いんだから捕らえることは出来ないよ、それに2人は無能じゃないから洛陽の守りには重要だよ。董卓軍の人材は万年枯渇中なんだし。

それに何かが起こるより先に自分がやり遂げればそれで良いし、間に合わなければ自分の兵と徐栄がいれば最悪の事態は防げると思うから」

 

賈駆の疑問に対する答えを伝えながら、自分の考えも伝える。

 

「あんたが言うならそれで良いわ。

趙忠らは時が来れば各々の役目を全うしてもらうから、気にしないで。

泗水関が落ちれば、虎牢関しか止めることが出来る場所はない。全てに於いて肝心なとこはあんたに掛かってるんだから、用件が済んだなら早く行きなさい」

 

「了解。それじゃ次は、董卓様を交えて...ね」

 

 

 

 

 

__________________

 

この三国の世でありながら、メインとなる武将、軍師たちが女性になってしまっている世界で己の主を生かす為に彼女は行動する。

 

 

 

 






文句等は受け取りませんが
誤字脱字報告感想は是非是非お願いします


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第二話

改めて正史や中国史読んでて思ってたケド


泗水関って無くないですか!?


部屋を出て、最早お決まりとなりつつある城の隅に集まる。

 

「王方!」

 

「はっ!」

 

呼び掛けに答えるのは、部下の中でも部隊長にあたる者。

正史、演義ともに目立った活躍は無い。それどころか、部下に加えるまで目立った功績もなかった。

それでも女性としてこの世にいる、それだけでこの世では活躍するかも知れないと思い部隊を率いる際に部下として引き取った。

 

「配下100連れて着いてこい!俺たちの足ならば、1日と掛からん!

周毖、お前は200連れて兵糧、武具を虎牢関に運び続け防御を固めろ!」

 

名を周毖、字は仲遠。彼女はそれなりに記述が残っていたが、活躍は無い。

それでも王方と同じく、女性としてこの世を生き名前を残している為期待が出来た。

 

「「はっ!」」

 

2人の返事を聞き、全体に声をかける。

 

「これより我等は、泗水関に向け夜が明ける前に発つ!」

 

猪武者である華雄を殺しては、後の計画に支障が出る。

急がなければならない

 

 

__________________

 

「程遠志様、虎牢関を抜けましたのでそろそろ泗水関が見えてくるかと!」

 

俺は今、程遠志を名乗っている。

演義オリジナルであれど、かつては五万の兵を率いてはたった五百の劉備率いる義勇軍に負け、関羽に斬られた将軍であり関羽の強さを引き立たせる役目を無事?果たした将軍である。

この世でも存在していたらしいが、案の定関羽に斬られている。

 

「ん、なら華雄将軍若しくは、張遼将軍に伝令を出せ。虎牢関が無事だったという事は、未だに泗水関の防衛が成功しているという事だ。虎牢関にも通過する旨の伝令を出せ」

 

虎牢関には現在、人中の呂布と陳宮その下に高順、魏続、侯成や宋憲が詰めている。まず安泰だろう。

 

「はっ!かしこまりました。伝令、急げ!」

 

伝令を見送り、王方に声をかける。

 

「王方、斥候を何人か放て。敵が泗水関を抜ける以外にも、洛陽へと抜ける道が無いとは限らない。陳宮が手を打っていないとは思わないが、万が一がある。それと敵連合、各々の軍の布陣が気になる。」

 

「かしこまりました、人選は如何に?」

 

「お前に任せる」

 

「御意に」

 

王方の返事を聞き、王方が斥候の人選を始めると別の斥候が戻ってくる。

 

「報告!」

 

「畏まるな、走りながら話せ!」

 

跪こうとする部下を立たせて走らせる。時間が惜しい

 

「はっ!現在泗水関には華雄様の旗が確認出来ましたが、張遼様の旗を確認出来ず、胡軫様を除き李粛様趙岑様の旗を確認出来ず、既に討ち取られたと思われます!」

 

考る限りでは最悪の一歩手前か、王方に間道を探らす斥候を放つのをやめさせ、代わりに張遼への伝令を出させる。

 

「....という事は、現在泗水関を守護しているのは華雄将軍と胡軫殿だけか...報告ご苦労、皆に告げる!速度を上げる、弱音は許さん!俺の背中だけを見て着いて来い!」

 

「「はっ!」」

 

 

__________________

 

場所は変わり泗水関

 

「華雄様、洛陽方面からの伝令が届いております」

 

華雄と呼ばれた女性、髪は短く銀髪に身の丈程度ある戦斧を持つ。

 

「洛陽からという事は、張遼ではないな。賈駆からか?」

 

この状態の我等に対しての策を持ってきたのかと思えば、副将である胡軫は否定。誰からか問いかけてみれば答えを渋りつつ胡軫は答えた。

 

「いえ、程遠志と名乗る者からです」

 

胡軫の表情は冴えず、どちらかと言えば曇っていた。程遠志と言えば先の黄巾どもの乱にて名の上がっていた為、その時から副将であった胡軫はその事に気付いているのだろう。

 

「そうか、ご苦労。伝令は馬で来ていたか?」

 

「いえ、馬で無く走ってきたものだと思われます」

 

という事は、黄巾供とは違う。私と同じ名無しの奴であろう。

 

「そうか、先程から表情が冴えんがどうしたのだ?」

 

「申し訳ございません、少し思うところがありまして.....」

 

「構わん、言ってみろ」

 

「はっ、程遠志といえば先の黄巾の首領として、一党を指揮していたと記憶にありますがどういった関係で?」

 

案の定、程遠志を知っておりその関係に疑問を持っていた。

問う胡軫の表情は優れず、どうにも此方を疑う表情だ。

 

「胡軫よ、私が裏切りを企てようとしてるとでも?」

 

「そういう訳では無いのです!

ただ此度の戦では、どうも華雄様らしく無いと言いますか...」

 

それもそのはず。華雄と言えば猪武者だと言われる位に吶喊を繰り返し、野戦で尚且つ攻めに回れば、あの呂布にも引けを取らないという武勇を持つとも言われるが、今回のような受けで守りには向いていなかった。

 

それでも開戦から既に3日。ここまで泗水関が保っているのは、華雄が吶喊をせずに固く門を閉じ守りに専念している事が大きかった。

 

「なに、私もただの猪では無かったという事だ。程遠志に関しては心配せずに良い、胡軫が考えているような黄巾の首領とは違う。少なくとも、味方である事は違いない」

 

「は、出過ぎた前をしました」

 

華雄はこれに手を振る事で返事とし、洛陽方面に視線を向けた。

 

「なに、どうせすぐに会う事になる。それに見てみろ、到着したようだ」

 

 

「よ、華雄ちゃん。お待たせ」

 

視線を向ければ、人を不愉快にさせるには十二分な笑顔を貼り付けた少女が片手を上げながら立っていた

 

 

__________________

 

「こ、この者が程遠志....?」

 

泗水関に着き、華雄ちゃんの気配を辿り声をかければ威厳たっぷりのお爺さんに怪訝そうな目で見られた。そんな目で見ないでも胡軫くんとは初対面で無いのに。

 

「ん、もう聞いてたみたいだね。久しぶり、胡軫くん。元気にしてたかい?色々聞きたい事があるだろうけど、それはこっちも同じなんだ。

華雄ちゃん、グダグダしていたら夜が明けてしまう。その前に情報のすり合わせといこうよ」

 

取り敢えず、胡軫は放置で後から華雄にどうにかして貰えればいいだろう。何より戦況を把握し、今後の対応について考えることを優先したい。

 

「わかった、胡軫お前は兵を2班に分け片方を休ませ、もう片方を見張りにあたらせろ。この3日間まともに攻めてこなかった所を見れば、今夜夜襲をかけてくる可能性が高い」

 

「御意に」

 

「王方、俺たちの部隊は斥候部隊が帰ってくるまでに、荷物の整理現場の把握に努めろ。斥候が戻り次第報告し、その後は体を休めよ。明日は今日より激しいぞ」

 

「はっ!」

 

華雄に続き部下に指示を出し、華雄に向き直り再び笑顔を作る

 

「華雄ちゃん、案内を頼むよ」

 

「分かっている、着いてこい」

 

そんな笑顔を無視して華雄は歩を進めた。

 

 

__________________

 

「それで敵さんは?」

 

泗水関内の一部屋に入り、先に座っていた華雄の対面に座る。

座る際に華雄が嫌そうな顔をしたのは見なかった事にした

 

「最初の報告通り、公孫賛と劉備軍。

さらに袁術軍の孫策軍が先鋒で攻めてきている。

斥候の報告では、孫策軍が間道の存在に気付き2日目からは部隊を分け、黄蓋が別働隊を率い攻めてきた為、李粛と趙岑が対応していしたが、両方討たれた。よって今は霞が対応している筈だ」

 

李粛と趙岑が死んだのか、趙岑は兎も角李粛が死んだのは驚きいた。そういえば男だったから仕方ないのか。

間道に関してはやっぱりって感じだな、張遼が対応しているなら安心ではあるが。更に聞く限りでは、御使いが出て来ている報告はない。

 

「成程ね、こっちで放っていた斥候によれば、御使い君も参陣していると報告を受けていたが姿は表していない様だね。

それで、泗水関の方での華雄ちゃん達はどういう対応を?」

 

「そうだな、御使いと呼ばれる奴は見ていないな。聞けば、曹操軍に拾われたらしいな。それは置いておき、我等の対応といえば、固く門を閉じては隙を見て胡軫若しくは私が吶喊。相手の陣形を崩しては、戻り防御を固める。と言った感じか」

 

曹操軍ねぇ...それにしても、華雄ちゃん吶喊って....悪くは無いんだろうけど、今まで関羽に討ち取られなかったのは奇跡に近いと思うよ

 

「猪僻は完治してた訳じゃないんだね....まあいいか。それでは、今後についてどう考えてる?」

 

「ねねの話では袁紹は落ち着きがなく、忍耐強く無く更には自信過剰と聞く。泗水関に3日も掛かってる状況なら、明日からは自分が軍を率いるか、追加で後詰の部隊を前に出すだろうさ」

 

袁紹に関しては正しい、だがそれだけで終わる筈がない。斥候の報告と合わせればそうじゃない筈だ

 

「陳宮が言うなら間違いないだろう、斥候の報告でも袁紹の人柄は聞いていたからな。でもって、自分が率いてくる事は無いだろうさ。ああ見えて臆病者だろう、でなければ最初から出て来る。俺の予想では、曹操軍辺りが加わるだろうよ」

 

「ほう、その心は?」

 

「簡単だよ、曹操軍と袁紹軍のみが攻城兵器を持ってきていたからさ。袁紹軍はさっき言った様に出てこない、よって明日は曹操軍が出てくる筈さ」

 

それに、三羽烏の内の1人がカラクリ弄りが好きだった筈、ならば自信満々に使ってくるだろうな。まあ、壊せば良いだけだろうけどね

 

「ふむ、お前が言うならその通りになる。それを見越して行動するさ。お前も曹操軍が出てくると言う事は、この戦の前に言っていた様に行動するのだろう?」

 

「そうだね、俺からすれば天子がどうだとか興味もないからね。主君と軍師殿が無事ならそれで良いさ。張遼には既に聞いといたけど、華雄はそれで良いの?」

 

これが重要なとこになる。もし華雄が反対だったのなら、この時この場で斬られても仕方ないだろう。状況次第では裏切り者になる可能性があるから

 

「愚問だ。寧ろ私は月様と詠の為に戦っている。その為ならば、誇りもプライドも捨てれるさ」

 

流石華雄、一切悩まずに決断しやがった。

これで性別が男のままだったら惚れてたよ

 

「....そう、なら俺はやり遂げるさ。死ぬなよ」

 

「ふっ....お前に心配されるとはな、私に真名があれば預けたくなる」

 

「お互い真名無しなんだ、出来ない事は言うまいよ」

 

「お前の場合は名前すら偽っている様だがな」

 

「さて、外が騒がしくなってきた。孫策軍の御出ましかも知れんなぁ!」

 

 

 

 

 

 

 




王方
肩上で切り揃えた暗い青色の髪
外見イメージはワートリのカトリーヌ

周毖
黒髪の子
外見イメージはシャーマンキングのジャンヌ



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第三話


今に思えばるろ剣どこ?般若要素どこ...?

主人公の頬骨砕いて、瞼と唇焼いて鼻と耳削ぎ落とすしかないのか



言っては見たけど、兵を見るに本当に孫策軍っぽいな

という事は、元は江賊である鈴の甘寧に、孫権の親衛隊で隠密もこなす周泰この2人がこの機を逃すわけがない。

 

「華雄ちゃん、俺の推測が正しければ表は囮。本命は敵の隠密による将軍首だろうね、俺に考えがある」

 

もう一度華雄を連れて、先程の小部屋に戻り向き直る。表情は極めてまじめに告げれば、華雄も表情を正す。

 

「わかった。要点だけ話せ」

 

「さっすが華雄ちゃん!話がわかるねぇ。ならば、———————————、——————」

 

「面倒だが、それで良いのか?それは敵が此方のことを知らない事を前提としている様だが?」

 

「俺を舐めるなよ。何とでもなるさ」

 

 

___________________________________

 

 

「明命、ここから別行動だ。華雄の首を獲り次第、火をつけて撤退する」

 

明命と呼ばれるのは、姓を周、名を泰、字を幼平。黒髪で額に鉢金を巻く少女。背中の長刀 銘を【魂切】を背負い直して返事をする

 

「わかってます、思春さんもお気を付けて」

 

対して、周泰に声をかけ、返事を受けたのは、姓を甘、名を寧、字を興覇。幅広刀である【鈴音】を持ち、鈴音に付けている鈴を軽く鳴らして意識を切り替える。

周泰と別れ甘寧が廊下を進んでいるその時...

 

「お姉ちゃん誰?」

 

不意に声をかけられた。此方を見るのは、髪を肩下までの銀髪。活発そうな印象を与える12,3歳位の少女だった。

 

「...!?」

 

「お母さんの部下の人?」

 

(敵陣地で警戒を怠る事はなかったというのに、この子は私に気づいたというのか!?)

 

「....お姉ちゃん?」

 

「あ、あぁすまないな、考え事をしていた。お母さんと言うのは華雄将軍のことで間違いないか?」

 

「うん!お母さんはすっごいんだよ!今じゃこの関を守る将軍様なんだって!」

 

「あぁ、華雄将軍の武勇は遠くでも聞ける位に広まっているからな。

そうだ、ちょうど良かった私も華雄将軍を探していてな、よければ案内してくれないか?」

 

「うん!お母さんはこっちだよ!」

 

少女は笑顔で先導してくれているのを追いかける

 

「ありがとう、そう走らずに大丈夫だ。急ぐと転ぶぞ」

 

(馬鹿な子だ、お前の判断で母が死に、軍は滅ぶのだよ)

 

「近いから大丈夫!.....ここだよ!お母さん!お母さんに会いたいって人を連れてきたよ!」

 

そのまま少女は扉を開けて、中にいる華雄に声をかける。

 

「誰が来たんだか、瑠華?」

 

甘寧は、瑠華と呼ばれた少女を背に隠すようにして華雄に前に立つ。

 

「私だよ、華雄。久しいな...変な事はするなよ、少しでも怪しい動きをすればこの子の首を刎ねる」

 

鈴音を逆手に持ち、少女の首に充てがい華雄と向き合う。

 

「甘寧!貴様か!瑠華から離れろ!」

 

「騒ぐな華雄、それにしてもお前に子供がいたとはな。顔は似てないが、お前譲りの銀髪か?」

 

甘寧は瑠華を見て高笑いをあげ、華雄に向き直る。

 

「瑠華は関係ないだろう、目的は私の首の筈!瑠華を解放しろ!」

 

「そう冷たい事を言うなよ、ここまで案内してくれたのはこの子だ。武将の子であるならば危機感を持つべきだったな。

さあ、華雄大人しく縄に着け。貴様の死をもって虎の子は猛虎に至る!」

 

私は意気揚々に華雄に近づき、後一歩のところで意識を失った。最後に耳に残ったのは、瑠華と呼ばれた小さな少女の声だった。

 

「貴様らは虎というより飼い猫だろ」

 

________________________

 

「上手くいったかな、華雄ちゃん?」

 

意識を失った甘寧を縄で亀甲縛りにし、床に放置。

笑顔で華雄に振り向けば、そこには顔を顰め、考え事に耽る華雄がいた。

 

「成功はしたが、私が結婚しているという事はそんなに笑う事か?」

 

結婚していたというより、子がいた事に驚いていた様な感じだったんだけど言わぬが華かな...華雄ちゃんだけに

 

「.....俺は可笑しくないと、思うナァ」

 

「はぁ...例え心にも思ってなくても目を見てから言ってくれ」

 

「....あーい」

 

気不味い空気を切り裂く様に、1人の伝令兵が飛び込んでくる。

 

「報告!」

 

「...ん?なに?」

 

見たことない顔...それに女性兵か?

 

「はっ!...?申し訳ございません、華雄様。程遠志殿は何処に?」

 

「へぇ...俺だよ。程遠志は俺のこと」

 

これは....

 

「...は?...はっ!申し訳ございません!程遠志殿は顔に傷がある、大柄な男性だと聞いておりまして...」

 

アウトだ、んでもって退場処分だ。

 

「んーん、大丈夫。

でも、報告の前にちょっと寝てて貰っていい?...王方!」

 

呼び掛けと同時に、廊下側から王方が飛び出し兵士を押さえ付ける。それと合わせて、首を絞め意識を奪う。

 

「ふぇ?!」

 

華雄ちゃんってば結構可愛い声も出せるんだね。結婚も難しく無さそうだけど、相手が大変そう...

 

「申し訳ございません、般若様。

中々の手練れだったようでして、結界を抜かれたようでして...担当の者は私の方から処分を下しておきます」

 

王方のいう結界というのは、俺の部隊でよく行う陣形を指し、基準を設定して四隅を部下が警戒する。外から来る者は通さず、出ようとする者は気付かせない。近付くものには警戒を怠らず監視する様にするものであり、監視と包囲を目的としている。

今回は他者を近付けず、周辺警戒が目的だった。

 

「問題ないよ、それは俺が指示して緩くしてたからね。

拘束し終えたら、そこの甘寧ちゃんと一緒に牢に縛って入れといて。これ以上に手出しないでね。

そんなことより、ご苦労様」

 

「はっ、有難きお言葉です」

 

程遠志が王方に、担当者に対するお咎めは無しにと伝え労う。傅ずく王方を尻目に華雄が待ったを掛けた。

 

「待て待て!まずは説明をするべきだろう!

なぜその伝令は捕縛する必要があるんだ!?」

 

あらら、華雄ちゃん。猪僻は収まっても思慮が浅かったかな?

 

「王方、俺が説明しておくから意識を取り戻す前に、武器を奪って縛り付けておいて」

 

「はっ!了解しました」

 

先に王方の方に指示を出し、退出させ華雄と向き合い苦笑いを向けた。

 

「華雄ちゃん、素直は美徳だけど疑わなきゃダメだよ。さっきの伝令が言ってた、傷顔で大柄の男はどう見ても俺じゃ無い。

傷顔大柄男は前に黄巾狩してた時に、孫策軍に出会った時の格好。俺はこの砦に来る前から、ずっと小柄の少女の格好だったのに間違えようが無いでしょ?」

 

程遠志は、戦が始まれば変装、終われば変装と言ったように変装を戦を境に繰り返し、そこに性別、体格、声色は問題にならず変装をこなしていた。

そのため、董卓軍内でも兵は程遠志を名乗る者は複数名いると勘違いし、将でも同様だった。

程遠志が変装の名人であり、1人だと知っているのは董卓と賈駆、張遼、華雄、呂布(匂いで気付いた)、陳宮(呂布から聞いた)のみだった。

 

「た、たしかに、今は傷顔でも大柄でもましてや男ですらないな...。だが、その時を境にお前を見ていなかった可能性もあるだろう?」

 

そんな機会は無いデショ...仮に見たことない兵士がいたとしても、男の程遠志が黄巾狩で孫軍と出会ったのはかなり前。それから何回変装し直したと思っているのさ

 

「少なくとも、俺の部下に俺を見抜けない馬鹿はいないよ。

それに、華雄ちゃんが率いて出陣した配下の将兵の顔と名前は位は覚えているから、間違いようが無いよ。言うならば、さっきのが理由でこれが根拠かな」

 

ここまで言って、華雄は漸く理解した様に顔をあげた。

 

「なら、さっきの伝令は...?」

 

「十中八九、孫軍の隠密頭にして孫権の親衛隊...周泰で間違い無いだろうね」

 

それに、女性兵士は念入りに調べてたから、他に女性兵士がいると知っていたら覚えていないはずがないもんね...

そんなことは華雄ちゃんには言えないケド

 

「さあ、華雄将軍。夜も更けてきた、敵軍の夜襲は囮とは言え此方の兵が無為に減らされるのは避けたい。

華雄将軍は手勢を率いて、散らして来てくれるかな?その隙に予定より早いが、俺は曹孟徳に接触する!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ご感想ありがとうございます!
やる気(尻)に火がつき全力で描きあげました

評価して貰えたら幸いです!

因みにご相談ですけど、文章的には短いですかねぇ...?

次回漸く曹操さんを出せます!...多分。


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第四話

誤字報告ありがとうございます、危うく自分が低学歴だとバレてしまう(既に手遅れ)時でした

誤字報告や感想、評価等には名指しで感謝を述べるのが良いのか、はたまた嫌がる人もいるのか...

感想評価、お気に入りに誤字報告等も毎日1時間置き位で確認しております、凄く支えになっておりますので是非是非どんどんお願いします!



外伝ネタばっかり思いつく、早く進めて外伝が描きたい...


「華雄隊以下500名、配置に着きました」

 

華雄隊の動きを聞き、自分の部下を整列させ順次命令を下していく。

 

「...ん。んじゃあ、俺たちの仕事及び命令を告げる。

華雄隊が敵軍に吶喊すれば王方以下第3小隊計10名で、甘寧及び周泰を連れて孫軍本陣に向かってくれ。

その後は捕虜にこの手紙を持たせ、孫策に渡すよう伝えて解放せよ。

最後に、孫軍内部が慌ただしくなれば二型を用意し、泗水関両側の崖上に待機せよ」

 

「はっ!」

 

「楽印以下第4小隊は辛紀以下第5小隊と共に合計20名は周毖の到着次第、周毖と合流して合流地点の守備を固めろ」

 

「了解致しました」

「了解しました」

 

「椻己以下第6小隊は張静以下第7小隊、仲胤以下第8小隊、遼蓀以下第9小隊、公孫以下第10小隊の合計50名で胡軫副将の援護を任せる」

 

「はっ」

「....はい」

「かしこまりました」

「御任せを...」

「了解です」

 

「双淵以下第2小隊計10名で、公孫瓚と共闘している義勇軍を指揮している軍師共のこれからの作戦を探れ」

 

「はっ....必ずや」

 

最後に、周倉以下第1小隊は俺と共に曹操軍本陣に向かう。

道中で詳しくまた説明する」

 

「応っ」

 

全隊に命令し終えた時に、先程とは別の伝令が駆けてくる。

 

「報告!」

 

「聞こう」

 

「華雄隊が吶喊しました!」

 

華雄ちゃん猪癖本当に治ってるの?嫌な予感がするなぁ...間に合えば良いのだけれどもさ

 

「早いなぁ...皆の衆聞いたな!最後に全体に命令だ。各々の命令を忠実に、死ぬ気でこなせ!

...そして、必ずまた会おう!解散!」

 

「「「はっ!」」」

 

________________________

 

場所は変わり、第一小隊と共に曹操軍の本陣目指して駆けていた。

 

「程遠志様、もう直ぐ曹操軍本陣です」

 

「...ん。周倉、ちょっと曹操軍伝令兵から装備一式“譲って”くれる様頼んで来てよ」

 

報告を受け、周倉に頼みを告げる。

周倉とは昔からの付き合いであり、器用で多芸多才。この手の頼み事には一番向いていると言って過言では無いだろう。

 

「応っ」

 

周倉が抜け、第一小隊の半数であり、より足が早く現状分析得意な5人を指名し命令を出す。

 

「姜才、桓信、慶垂、紀了、劉千。嫌な予感がする、手は打ったが万が一がある。華雄ちゃんが深追いする前に、時を見計らい撤退させてくれ。場合によっては一型の使用も許可する」

 

「「「はっ」」」

 

これに対し、指名した5人が全員返事を返すが、姜才が質問をする。

 

「しかし、一型は特に数が少なかったと思いますが宜しいので?」

 

「姜才の言うのもごもっともだ、元々二型の残りで作ったから仕方ない。

使用は姜才の判断に一任する、猪癖が出て来ていた華雄ちゃんが素直に止まってくれたら御の字だ」

 

「了解しました」

 

姜才の返事を聞き、5人が離れる。

 

「残りは周倉の戻り次第、この近くで待機を。

日の出を過ぎても俺が戻らない様だったら全隊泗水館を放棄し、董卓様の警護をしなさい。

護るべきは董卓様であり、それを害する存在は全て滅ぼせ」

 

俺の命令に対し誰もが声を発せずにいる中で、残っている4人の内の1人である亜水が声を捻り出す。

 

「.....そ、それはどういうことでしょうか?」

 

「大丈夫。あくまで保険だ、日の出までには戻る。

返事が聞こえないが、それは俺の命令には従えないということかな?」

 

ここまで言えば亜水も渋々ながらも返事をする。

 

「いえ、了解致しました」

 

「涼崇、超経、彭扇もいいな?」

 

残る3人にも確認するように念を押せば、納得して無さそうではあれど返事をする。

 

「「「はっ」」」

 

返事を聞き終えたところで、伝令兵の装備一式を持って周倉が戻ってくる。

 

「程遠志様、快く譲って貰えましたよ」

 

装備を確認しながら、周倉を労う。

それにしての、少し血の汚れが僅かながらも確認できた。

 

「ご苦労、譲ってくれたからにはしっかり休んで貰えたのだろう?」

 

「えぇ、勿論。今頃冷たい布団の中でしょうね」

 

「重ねてご苦労。後は亜水等と待機をしてくれ」

 

亜水達にしたような説明はせずに、本陣に忍び込むべく着替えて骨格を弄っていく。周倉は忠誠心が強いが、些か強すぎる。きっと順調にはいかなくなってしまう。

 

「応っ」

 

________________________

 

今の程遠志の姿は、曹操軍の伝令が着込む冑を纏う青藤色の髪を肩口で切り揃えた男。

 

「伝令!敵華雄隊が退却を開始いたしました。並びに、董卓軍より使者が来ております」

 

「そう...やけに引き際が見事ね、昔の華雄なら深追いしてそこで討ち取られていたのに。

まあいいわ、それで使者というのは?」

 

引き際についてはそりゃあそうだろう。猪である華雄がまだ本当に引き上げたとは思えない。勘違いして貰えているのは儲け物だろう。

 

「はっ、直ちにお呼び致します」

 

そう言っても程遠志は一切動こうとせず、その場で傅いたままの姿勢を保ち、それを不満に思う筈の曹操の次の句を待つ。

 

「どうしたのかしら?」

 

少し声に不機嫌さが混じり、低くなったのを見計らい発言する。

 

「はっ、恐ればせながら進言致します!」

 

そうして口を閉じてゆっくりと立ち上がり、冑を脱ぐ。真っ直ぐ曹操を見て、目が合うのを確認して相手より先に言葉を再び発する。

 

「もう少し、せめて本陣周りだけでも防諜体制を厳重にした方が良いかと思いますよ....曹操さん?」

 

言い切れば、天幕内の人間の顔は悉く呆けていた。

 

「「「!?」」」

 

皆が呆けている間に、曹操から視線を外し天幕内の人間を見渡す。曹操の左側に夏侯惇、その隣には王佐の才を持つ荀彧。右側には夏侯淵、その隣には曹操軍内にしては珍しい男の姿があった。

彼が例の御遣いで間違いないだろう。

 

そこまで考えていて、此方に近づいてくる夏侯惇の存在に気付くのが遅れてしまう。

 

「貴様!何者だ!?」

 

ズドンッ!

 

と言っても避けれない訳でなく、紙一重に避け叩きつけられた武器に足を乗せ力を込める。

 

「なぁ!?」

 

避けられたことに対してか、武器が抜けない事に関してなのかは置いておき間抜けな声をあげる夏侯惇を尻目に、曹操へと向き直り質問をする。

 

「え...っとぉ、ココって突然斬りかかる事を挨拶にしてたりする?

もし、そうだとしたら...お返ししないとねぇ」

 

質問をすれど別に答えに関しては期待していなかった為、聞くだけ聞いておき、拳を握りしめて力を込め振り被る。

 

「やめなさい!」

 

その一声により、天幕内に静寂が訪れ、再び夏侯惇により破られる。

もちろん程遠志は拳を振り被ったままの体勢である。

 

「しかし、華琳さま!」

 

「春蘭、控えなさい。使者である貴方も、何をするつもりだったのかは知らないけれど使者として来ているのであれば、ここは私の顔を立てて引いてもらえないかしら」

 

そこまで言われれば、といった形で渋々と拳から力を抜き姿勢を正す。

 

「そういう事に致します。

それでは改めまして、董卓軍所属、程遠志と申します。どうぞ御見知り置きを」

 

この自己紹介に関しては、最早お決まりといった形で諸将が様々な反応を示す。

曹操、荀彧が落ち着いたままに此方を探るような視線を向け、夏侯淵と御遣い君が驚き、慌てふためく。夏侯惇はあまりピンっと来ていない様で、慌てる夏侯淵と落ち着いている曹操を見比べて呆けている様だった。

 

「そう、貴方が程遠志ね」

 

一番先に納得し、程遠志だと認める発言をする曹操に対して、信じられないモノを見るかの様に食らい付くのは夏侯淵だ。

 

「お、お待ちください、華琳様!程遠志といえば、小柄で烏羽色の長髪を持つ少女と聞いております。この男は体格こそは似ておりますが、髪色は青藤色ですし、髪型も違います。偽物だと思われます!」

 

慌てる夏侯淵に対し、その逆に落ち着いている曹操は諭す様に夏侯淵に言葉を返す。

 

「落ち着きなさい、秋蘭。

董卓軍の程遠志といえば、見た目や声色が千変万化すると聞くわ。最早、その名を出されれば此方に疑う事は出来ない。そうでしょう、桂花」

 

曹操から話を振られたのは夏侯淵ではなく、荀彧だ。

荀彧と言えば、若いことから才名をうたわれ「王佐の才」とも称揚されるネコミミ軍師だ。そう、ネコミミだ。肉球と尻尾をつけてあげたい。

 

「はい、華琳様。私が袁紹の下にいた頃でも、程遠志という者に対する噂は良く聞こえておりました。

曰く、戦毎に容姿を変え名すらも変える。

曰く、程遠志は名ではなく号であり、代々受け継がれる。

曰く、初代程遠志死んでいる。

など、名家間での繋がりの話題でも、程遠志本人の正体を知ることが出来ておりませんので、今現在疑う事は出来ないかと」

 

荀彧の説明は的を得ていたが、別に死んでもないし受け継がれもしないだろうが...

 

「そういう事よ、秋蘭。彼が程遠志を名乗るならば、彼こそが程遠志本人だという事よ。これで納得してくれるかしら」

 

最後は再び曹操が締め、夏侯淵を諭す。

 

「はっ。横槍を入れる形になってしまい、申し訳ございません。程遠志殿も疑ってしまい申し訳ございません」

 

「私からも部下の非礼を謝罪するわ、私の部下が連続して粗相をしてしまったわ」

 

夏侯淵と曹操より謝罪をされるが、別に気分を害した訳でもないので重く受け止めるのでは無く、軽く冗談を交えながら返答する。

 

「お気になさらずに結構です。しかし、二度も曹操殿を謝らせるという快挙を成したということでその謝罪をお受けします」

 

「へぇ、良い性格してるわね。そういえばまだ、名乗って無かったわね。

もう知っていると思うのだけれども、姓を曹、名を操そして字を孟徳。気軽に名前を呼ぶのは辞めて頂けるかしら、程遠志殿?」

 

良い性格と褒められたかと思えば、そう言う訳でなくトゲのある言葉遣いで距離を取られる。それに対し、御遣い君は未だに程遠志を指差しては表情を曇らせ、晴れたと思えば曇るを繰り返している。

これ以上拗れさせては話すが進まないということで、こちらから話を切り出す。

 

「それは失礼致した、曹孟徳殿。互いに名乗り合ったところで、本題に入りたくございますがよろしいでしょうか」

 

「えぇ、構わないわ」

 

「有難く。では手短に、今宵私は曹操軍に対し降伏勧告に参りました」

 

その発言の直後に、天幕内にいる曹操、程遠志以外の者達、挙動不審だった御遣い君を含めて全員が殺気を振り撒く。軍師である筈の荀彧ですら、殺気を込めて程遠志を睨み付けていた。何よりも長く感じた一瞬の間を置き、夏侯惇が獲物を抜き斬りかかりかけた時...

 

「鎮まりなさい!程遠志殿も冗談を言いにここまで来たのかしら?」

 

再び曹操の言葉で静寂が訪れたが、これを破ったのは程遠志だった。

 

「まさか、冗談ではございません。兵力差も見ての通り。いくら勇将、猛将を取り揃えようとも勝てる見込みは薄い。だからと言っても、ただ逃げるわけにいかないでしょう?」

 

ここまで言い切り、これに対し返答を出したのは曹操ではなかった。

 

「貴様!華琳様に董卓軍に降れと申しているのか!」

 

完全に頭に血が上った夏侯惇に対し、冷静に対応していた程遠志は呆れながらも返事を返す。

 

「はぁ?誰がその様な事を申しておるのでしょうか、夏侯元譲殿。先程から降伏勧告に来...た、勧告?....失礼、条件付きでの降伏しに来たんだ!」

 

「はぁ?!」

 

次は曹操が呆ける番だった。

僅かな時間で回復した曹操は、矢継ぎ早に質問を行う。

 

「貴方さっきから何を言っているのか、よくわかっているのかしら。

兵力差云々については?」

 

「明らかに此方が不利である」

 

「勇将、猛将云々については?」

 

「此方に、呂布や張遼、華雄がいたとしても、この兵力差は覆せず不利である」

 

「よって?」

 

「条件付きで降伏したい」

 

「断れば?」

 

「各軍の要人を悉く暗殺し、烏合の衆と化せば圧倒的強さを持つ人中の呂布、神速の張遼。噛ませの華雄で殲滅する」

 

さりげなく、噛ませ犬の立ち位置である華雄を出してみても何も言われない。

 

「その条件とは?」

 

「董卓様と賈駆様の無事」

 

「此方にメリットは?」

 

「人中の呂布、神速の張遼、噛ませの華雄。更にはこの大陸一の隠密を得る事が出来る」

 

ここまで質疑応答を繰り返せば、一旦質問が終わり思案顔になる曹操。その近くでは荀彧と御遣い君の表情も固く曇っていた。

 

「ふぅん...悪い話では無いようだけど、今この大陸では悪虐非道で知られる董卓を抱え込むにはデメリットの方が大きいわ。メリットよりもデメリットが大きいのに対しては?」

 

この件に関しては前々から準備をしており、賈駆とも共謀して元々董卓様の顔を知るものは少ない。

 

「董卓様の名前を捨て別名を名乗り、別人に成り済まして頂く。更には此方で偽物の首を用意し、曹操軍率いる曹孟徳が討ち取ったことにすれば良いのでは?あの三姉妹のように」

 

三姉妹というのは、先の乱の首謀者である者達のことだった

これを触れられた曹操の表情がまた一段と曇る。

 

「流石は大陸一の隠密を名乗るだけの事はありそうね、更にはこの私に脅しをかけているのだもの。誇って良いと思うわ」

 

素直に賛辞を受け止めておく。

 

「お褒めいただき光栄です」

 

程遠志のこの対応に対し、少し不愉快そうに顔を顰めて言葉を紡ぐ。

 

「ふん、たしかに貴方の意見ならデメリットは薄まり、貴方の提示したメリット以上に栄誉を得ることが出来るわ」

 

「では、交しょ「でも」」

 

「でも、それで受け入れてしまってはいけない私の誇りが許さないわ」

 

「はぁ...誇りですか?」

 

「えぇ、今回で私の本陣に入り込み、警備にケチをつける。そして二度私から謝罪を受ける。そんな貴方を私がただ同然に受け入れては誇りが許さない。」

 

「...では、どういうおつもりで?」

 

その後の曹操の提案を聞き、最後の一言で目の前が一瞬真っ暗になってしまう。

 

「そうね...ではこうしましょう。

明日、私達が先鋒として泗水館を攻めるわ。そして、貴方達を捕縛するわ。華雄も張遼も呂布も貴方も、そして賈駆や董卓すらも。その際に殺してしまっても仕方がないことでしょう?」

 

殺す。ねぇ....ここまで言われては黙っておくわけにはいかなった。

 

「へぇ...では、我々が曹操軍を跳ね返した場合、更には今この場にいるいない限らず曹操軍の諸将を討ち取ったとすれば?」

 

挑発には挑発で返す。

それに対し、あくまで自然に落ち着き払った声で返すのは曹操。しかし眉間には青筋が薄ら浮いていた。

 

「もし跳ね返されたとすれば貴方の条件を呑みましょう。無いと思うけれども討ちとれたならば、その席をそのまま貴方にあげるわ。死んでしまうとするならそれまでだったということしょう」

 

これに対し、空気を和らげるために軽く笑いながらつげていく。

 

「ははは、最後は冗談として、私からも曹孟徳殿の言葉無かった事にしましょう。そうで無ければ降った際に私の肩が狭くなり過ぎる、それでは無事を約束される董卓様や賈駆様に迷惑がかかるかも知れませんので」

 

「ふぅん。面白いわね、明日は本気で行くからせいぜい殺されないようになさい」

 

「えぇ、殺し過ぎないよう気を付けます。ではまた、明日の戦場にてお会い致しましょう」

 

互いに認め合う様な発言をした直後、鋭く高い音が響く。

 

『パンッ!』

 

「「「!?」」」

 

合図はなかった。しかし、この音は姜才に持たせていた一型癇癪玉である。

 

「ちょうど華雄隊も引き上げる様です、私もこれで...「待ちなさい!どういう事か説明を」それでは!」

 

説明を望む曹操を無視して、煙玉と掛け合わせて作った三型煙癇癪玉を勢い良く叩きつける。

 

パンッ!

 

煙がはれれば説明をそこに程遠志の姿はない

 

「春蘭」

 

曹操は夏侯惇に声をかけ、程遠志の姿を探させる。

 

「はっ!直ちに!」

 

春蘭が出ていくのを確認して、夏侯淵に最後に程遠志が告げた情報の正誤を取るために兵を放たせる。

 

「秋蘭!」

 

「確認をしてまいります!」

 

曹操と荀彧、御遣いを残し2人は退室していった。

 

________________________

 

その頃曹操の天幕から抜け出し、周倉達と別れた場所に戻ってきていた。

 

「周倉、我々も引き上げるよ」

 

「応、それといくつか確認したいことが」

 

もちろん周倉目は笑っておらず、黒に染まった瞳で此方を見ていた

 

「ちゃんと戻って来たから勘弁してくれ。

それより、華雄隊についての報告を聞かせてくれよ」

 

 

 

 




思いっきり長くなってしまった。
最後のあたりは寝落ちしながらだったため誤字があるかも...?


そういえば、評価バー色が!!
皆様におかげです、ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします


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第五話

毎回月曜午前1時投稿目指してたのに前話は描き終えたのが1時38分でした...
それでいて思うのは、その時間に目を通してくれている人が多いんですけど何時に寝てるのだろうか...




泗水関に戻れば、気を立てている華雄がおり怪我はなく無事だった。

 

「や、華雄ちゃん。今回も猪っぷりが流石だったね!」

 

「煽るな。私はこれでも今は気が立っているんだ、お前が相手をしてくれるならそれに付き合っても構わんがな」

 

声からも不愉快だと伝わってくる華雄を放置して、近くに待機しているはずの部下の姿を探し声をかける。

 

「それは面倒だから良いや。楽印、周毖は?」

 

「はっ、陳宮様よりこれ以上は不要との報告を受け、余剰分の兵糧と武具を手勢100と共に先程到着した様です。

今は辛紀と共に倉庫の方に運びこんでおります」

 

返事を聞き、それが終われば周毖に対し直接報告に来る様にと伝言を頼み、伝言を伝えるべく立ち去る楽印を見送り華雄と共に泗水関に戻っていた姜才に声をかける。

 

「姜才、華雄ちゃんの誘導はご苦労様。双淵の小隊から何か連絡は来てる?」

 

「はっ、ありがとうございます。双淵の小隊からは何も連絡はございません」

 

「...ん。あいつ等に限っては、何も心配は要らないだろうけど連絡がないのは珍しいな。紀了に連絡し、双淵以下第2小隊に戻ってくるように伝令を出せ」

 

「はっ、了解しました」

 

姜才の返事を聞き、涼崇と彭扇を伴いあてがわれていた部屋に戻る。

部屋に着けば涼崇と彭扇に部屋の外にて待機を命じ、部屋に入れば亜水が室内にて書簡の整理をしており新しく届いたであろう竹簡を差し出して来る。

 

「程遠志様、張遼将軍より竹簡が届いております」

 

文遠からとするなら内容は明日に関する事だろう、正直なところ文遠は嫌いでは無いが苦手にしている相手だ。

 

「...んぇ...。後で見るから持っておいて良いよ」

 

「....よろしいので?」

 

「内容は想像出来るからね...若しくは、その辺に適当に放置してて良いよ」

 

内容が予測出来るため、中身を見ることは無いだろうけど...

 

竹簡を机の上に置く亜水を見ていれば、竹簡の差出人が姿を現した。

何時もの様にサラシ一枚で胸を覆い、露出度の高い袴を履いた侠客の様な女性。

 

「何してんねん!ちゃんと読まんかい!」

 

名を張遼、字を文遠。現在は董卓軍の客将であり、一宿一飯の恩を返す為にと今回の戦に参戦している。

文遠の登場により、亜水を下がらせる。

 

「亜水、下がって良いよ」

 

亜水は俺と文遠との関係を知っている様で、渋りつつも命令通りに退室していく

 

「....はい、失礼します」

 

張静が退室するのを見送れば、文遠に向き直る。少し酒臭いな...

 

「やあ、文遠。良い歳して腹出してちゃあ、今後に響くんじゃないかな。それとも、そうでもしないと男がやって来なかったりしたのかい?」

 

「うっさいわ、久しぶりに会ってそうそうに言うことやないやろ。それに露出度が高いんわ漢人の特徴やろ」

 

「そんなことはどうでも良くて、そろそろ本題に入りたいんだけど?」

 

「遠やんが、話ずらしとったやないかい...まあええ、この部屋は今んとこ遠やんだけ?」

 

人払いが必要な程の話題か...

 

「涼崇、彭扇。許可が出るまで部屋に誰も近付かせるな、お前達も離れていろ」

 

「「はっ」」

 

2人の返事を聞き、文遠に目で続きを促す。

さすれば文遠の纏う雰囲気が先程から打って変わり、トゲトゲしい雰囲気になる。それに伴い視線や表情も鋭いものに変わる。

 

「アンタが何考えとるか知らん訳やないけどなぁ...ウチに黙って曹操んとこに降伏しに行ったらしいな」

 

「あぁ、俺にとって優先するのは勝利でも名誉でも無い。董卓様を護る、それが出来るなら何だってするさ。護ること以外は全て取るに足らず小事だ」

 

言い切るとともに、文遠が俺に胸ぐらを掴み凄んで来る

 

「....なに勝手なことしてんねんや、ワレェ。何時からウチがアンタの下におんねん、あんま調子に乗るようやったら先にその首叩き落とすで」

 

あえて同じ舞台に立たずに冷静に言葉を返す

 

「そう凄むな、君があくまで客将であり董卓様の部下でも、ましてや俺の部下でも無いという事は重々承知している。

直接会ってみて曹孟徳が気に入らない様だったら、全てが終わった後に立ち去ればいいじゃないか」

 

「アンタ、何も分かってないんやな。ウチは強いヤツと戦って、自分が一番強いっちゅーのを証明したいだけや!それを邪魔するなゆーてんねん」

 

「そんな事は知らないし興味もない。自分の武を証明したいだけだったら、呂布に闇討ちでも仕掛けて敵と認識させてから、叩き斬られてしまえば良いだろう。董卓様の為でなく、自分に為にと戦うというのならさっさと消えろ。貴様を見るに丁原の旦那の下にいた時から一切成長していない」

 

「はぁ?本当に成長してないんかどうか、今ここで試してみるかぁ?好き勝手言うけど、そっちかて仲間殺しの賊崩れの分際がっ!?」

 

文遠の発言を遮る様に、殺気と気当てを混ぜ合わせて威圧する。

 

「....黙れよ。それとも今ここで、貴様の希望通りに一戦構えてそのまま死ぬか?」

 

ここまでして漸く文遠は冷静になれたのか、胸ぐらを掴んでいた手を離し一歩下がり視線を俺からずらして声を振り絞る。

 

「すまん...遠やん、ウチが言い過ぎたわ...」

 

これに対して先程まであった威圧感を消して、極めて冷静に忠告する。

 

「文遠、酒を控えろ。口は災いの元とも言う、俺の部下の前でその発言をすれば死体すらも残らないぞ。ついでに、次に同様の発言を俺の前ですれば酔っていようと関係なくその首を落とす」

 

「分かってる...完全にウチの失言やったわ。

本当に話したかった事は、先の竹簡に書いとるからまた明日の朝話そうや」

 

「あぁ、そういう事なら目を通しておく。

だが、命令は部下を通して伝えるから出撃の合図が出るまでに頭を冷やしておけ。彭扇!涼崇!」

 

呼び掛ければ直ぐに、扉の向こうから声が聞こえる。

 

「彭扇、張遼将軍をお送りして差し上げろ。大分酒を飲んでいるようで訳も分からん事を発言するだろう、聞き流せ」

 

「はっ。張遼様、お送り致します」

 

「おおきに、それじゃあ帰るわ」

 

文遠の退室を見送り、竹簡に目を通していく。

内容はやはりと言った感じで現存兵力と武装に関して、そして明日以降の動きをどうするのかという事だった。

 

竹簡を読み終えた所で、外の涼崇の声が聞こえる

 

「程遠志様、双淵がそろそろ戻って来る様です」

 

涼崇に対し、双淵が戻って来れば呼んでくるように伝える。

 

「双淵、戻りました」

 

少し待てば、ドアの向こうから双淵の声が聞こえ、入室するよう返事を返す。

 

「ご苦労、報告を聞こうか」

 

「はっ、本日は劉備軍では戦功を立てようと躍起になっていた様ですが、上手く行かなかった様です。

更に、先程作戦会議中に曹操が訪ねて来ており、明日は曹操軍が主攻を担う事を伝え劉備軍は後方待機するよう一方的に宣言し、袁紹からの正式な辞令を置いて出て行きました。

その後は、命令通りに陣を後方に移し作戦会議もそのまま終了しました。

よって、明日以降は明日の結果次第で行動するようで明日は完全に待機する様です」

 

報告を聞き、劉備軍の明日以降に動きがない事を知り劉備軍の評価を少し下げる。

伏龍と鳳雛を傘下に置きながらもこの程度とは、聞いていたより面白くはない。

 

「...ん〜、そうね...そう。了解した。

明日は、辛紀にも伝えて欲しいのだけど第2小隊に加え第5小隊を加え間道にて待機。曹操軍が来た場合はすんなり通して差し上げろ、盛大な歓迎と共にな」

 

明日は盛大に負けて頂かねばならない。

うろ覚えではあるが、後の戦で徐栄ちゃんに負けて連合脱退。その後に、なし崩しの様に連合が解散していくようでは遅過ぎる。明日には退場して頂かねばならないのだ。

 

「はっ!」

 

「敵将軍は討ち取らずに捕らえてね、殺してはその後に差し支えるからさ」

 

「重ねて了解しました。

それでは日の出と共にここを発し、歓迎の準備をします」

 

「ん、期待してるよ」

 

「必ずや」

 

この返事を聞き、退室行く姿を見送る。

 

それから一時経ち、再び扉の先に気配を感じれば声をかけられる。

 

「程遠志様、周毖参りました」

 

「ん、おかえり」

 

周毖を迎えいれれば、虎牢関からの伝令を受けろる。

 

「はっ!ただいま戻りました。陳宮様より書簡を預かって参りましたので、お目通しをよろしくお願い致します」

 

「受け取ったよ。周毖は明日、楽印達と協力して敵が坑道を掘って来ないか警戒してちょうだい。明日は周りがうるさいだろうけど、掘削音を聞き逃さないようにね。

対処法は手筈通りに、その後はこちらから連絡するよ。

そして、これを彼らに渡して欲しい。

 

「了解致しました」

 

明日は彼等の力が必要となるだろう、曹操軍を正面から叩き潰すために彼らの力が必要になるはずだから

 

 

 

 

 

 

 




伏線を張れる分だけ貼ったつもりだけど、しっかり作動させる事が出来れば良いのだけれども。。。

次はいよいよ開戦です!(多分)


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幕間•1

曹操陣営で一刀視点でいきたいと思います。

次回は開戦と言ったな...それは、来週デス


時間は程遠志が現れては破裂音を残し嵐の様に去っていき、各々が華琳の命により部屋を出ていった時に戻る。

 

今この場所には、俺と華琳、そして華琳の命により残っている荀彧だけが残っていた。

なぜ残されたのか分からないが、そんな事よりも俺には確かめなければならない事があった。

 

「なあ、華琳。

さっきの使者は本当に程遠志で間違いないのか?」

 

俺の知る限り程遠志と言えば警戒する価値もない様な将軍なのだから

 

「えぇ、私や桂花が言ったように程遠志だと彼が名乗った限り、彼が程遠志だと言うことは確かでしょうね」

 

「それは信じていいのか?」

 

華琳の説明を聞いても、それでも信じる事が出来ずに念を押す感じでもう一度聞いても華琳の答えは変わる事はなかった。

 

「信じるも何も、本人以外に好き好んでその名を騙るような人は居ないわ」

 

華琳の言う通りなら、あまり好まれていない名前なのだろう。言い方からしても、それについて言及しても成果は得られそうになかった。

それでも、俺の知る程遠志といえば演義オリジナルの武将であり、更にいえば今の泗水関の守護に着いている華雄に比べるよりも噛ませ犬のような武将だった筈だ。

 

「なぁ、荀彧が言っていた今の程遠志が二代目説は有力なんじゃないのか?

俺の知る程遠志といえば、五万の黄巾族を率いていたが関羽に一太刀で斬り捨てられた筈だぞ」

 

華琳の話を聞いても信じきれずに、荀彧が言っていた名士間での推察の一つ。二代目説を、俺の知っている話通り混ぜて説明する。

 

「たしかに、黄巾族の中に程遠志を名乗る者がいた話は知らないわ。でも、五万以上の黄巾族を討ち滅ぼしたっていう話は聞いたわね...確か、その時対応したのは董卓軍の呂布だった筈ね。

貴方が、何を心配して不安になっているのかは知らないけれど、私の覇道を阻む者がいるのであればそれが誰であろうと関係ないわ。全てを打ち砕き、踏み潰すそして私は覇道を進む。そこに何の心配や不安があるのかしら?」

 

華琳の言葉に対し、荀彧が同意を示す様に頷き、感動に打ち拉がれているのを確認する。

俺の知る歴史とは大分変わってしまったけど、華琳なら問題なかった訳か...俺もくよくよしている訳にいかないな。

 

「そうか...なら今後はどうするんだ?

程遠志に対して、あそこまで啖呵を切ったんだ。何か考えがあるんだろう、俺だって出来る限りの事はやるつもりだ!」

 

「格好付けるのは良いのだけれど、戦場に出るのなら少なくとも春蘭以上に武勇が無ければダメよ?程遠志はきっと春蘭より強いわ」

 

「華琳様の言う通りよ!それに華琳様を勝たせるのは私たち軍師の仕事よ!軍略も武力も無いなら後で引っ込んでなさい!」

 

散々な言われ様だ...でも、華琳達の言うことも強ち間違いじゃない。俺は春蘭に武では敵わない。それは智略、軍略に関して荀彧に勝てないのも同じだろう。

だけど、だからといって何もしないで良い訳がない!

 

「確かに、春蘭の様な武勇は無いし荀彧の様な知勇もない」

 

「その理屈なら、勇は完全にない様だけどね」

 

この際、華琳の一言には聞こえなかった事にして言葉を続ける

 

「それでも!俺にだってやれる事はある筈だ、華琳の元で数ヶ月。俺だってただ寝てただけじゃ無いって事を見せてやるさ!」

 

「ふふっ...期待してるわよ、一刀。何時の日か話していた様な、勇無き獅子にならない様にこの後始まる軍議にもこのまま参加しなさい。貴方の力が必要になる時が来るかも知れないわ」

 

「あぁ、もちろんだ!」

 

返事を返すと直ぐに遠くの方からドタドタと走る音が聞こえる。

 

「全く、こんなに大きな音を立てながら向かって来るのは春蘭だけね。桂花、秋蘭が戻り次第軍議を開くわ。

柳琳に栄華、凪達を呼んできてくれるかしら」

 

「はっ。かしこまりました」

 

荀彧が退室し、代わりに春蘭が部屋に戻ってくる。

 

「華琳様申し訳ございません!私が表に出た時には既にあの男の姿は無く、捕まえることが出来ませんでした!華琳様の剣としてはあるまじき失態!この夏侯元譲、如何なる処分も受け容れる所存でございます!」

 

「あら春蘭、よくそんな難しい言葉知っていたわね。

それにそんなに気にしなくて良いわよ、例え孫策が率いる隠密集団でも彼を尾けることは難しい。更にいえば捕まえるだなんて言語道断でしょうね」

 

「しかし、それでは私の立つ瀬が無くなってしまいます!」

 

春蘭が言いすがるが、それを華琳は取り合うことはしていなかったが、それでもと縋る春蘭に根負けする形で折衷案を出す。

 

「わかったわ。そう言うことならこうしましょう。秋蘭が戻り、皆が揃い次第に明日に関しての軍議を開くわ。元より剣で捕縛しようとするのが間違いだったのよ。春蘭、貴女が私の剣だと言うのであれば、明日は貴女の誇りにかけて誰よりも敵を斬り、私の覇道を阻む者を打ち砕きなさい」

 

「はっ!この春蘭めにお任せください!」

 

「えぇ、頼りにしてるわよ」

 

この後、秋蘭が戻り程遠志が先程述べたように華雄は退却していたそうだ。

並びに孫策軍の方にも、程遠志の部下を名乗る女が自軍の隠密衆であり親衛隊でもある部下を返しに来たらしい。

秋蘭の報告を聞き終えた頃に、柳琳や曹洪等を引き連れて荀彧が戻り軍議が始まった。

 

決まった作戦内容はこうだった。

本軍を四軍に分ける。

第一軍は、春蘭が率いて正面から攻撃する部隊。

第ニ軍は、秋蘭が率いて昨日まで孫策軍別働隊が攻めていた間道を攻める部隊。

第三軍は、真桜を副将に、凪が率いる。工作兵を中心とし、泗水関内部に対して坑道を掘り奇襲する部隊。

最後第四軍は、直接華琳自らが率いる主力軍だ。

 

第一軍は囮であり主攻ということで、真桜が開発したという半自動衝車を使い正面から門を撃ち破る気らしい。更には乱戦になっても対処できる様にと春蘭の他に、季衣と沙和が追随することになっている。

 

第二軍は秋蘭が率い、別働隊として間道を進軍する。間道には密林が存在するらしく、それを伐採する為人員が必要とするわけで、武も智も必要としない即ち俺が警備隊の面々と共に第ニ軍に組み込まれる形となった。

 

第三軍は元々義勇軍を率いていた経験があり、隊を率いることに長けている凪が率い、坑道を掘るためにも必要となるだろうという訳で真桜が副将に着いている。

 

第四軍に関しては言うまでもなく、華琳自らが率いているため問題は無いだろう。

 

今までも俺の知る歴史から離れる事はあっても、ここまで完璧に違う状態だってのは初めての経験だった。何とも言えない居心地の悪さはあれど、負けたくない、負ける訳にはいかないのだから。

 

だが、嫌な予感がする。華琳や秋蘭達を信じていない訳でないが、歴史書には存在しなかった程遠志の存在が不安を煽っているのかも知れない...

 

 

 




曹操陣営サイドは描いてて楽しいけど、一刀くんってどういう風に話すのかわからない...

次週こそは開戦します!


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第六話

今更思ったんですけど、ドキッ!ってカヤクもあるよ の前に来るべきでは?




そんな時もあります(断言)



太陽が顔を出し始める前の朝ぼらけ

部屋から起き出て、華雄との話や甘寧を騙し討ちした部屋に移る。

 

「おはようございます、程遠志様」

「おはよう周毖、ちゃんと寝れたかい?」

 

部屋には既に周毖が部屋の竹簡を整理しており、俺に気付けば手を止めて挨拶を交わす。

そして、他愛無い会話をしながらお茶を淹れてくれる。

 

「そう言えば程遠志様、洛陽の裴元紹より早馬が竹簡を持って来ておりました」

「...ん、部屋に置いてあったっけ?」

「いえ、早馬が到着した時間は先程でしたので代わりに受け取っておりました。竹簡はこちらに。

使者の方は到着し竹簡を渡した後に、すぐ気絶してしまいましたので今は休ませております」

 

竹簡を受け取りつつ、淹れてくれたお茶に口を付ける。

洛陽の裴元紹といえば、洛陽の警護に着いている徐栄とは別に賈駆と董卓様の護衛を命じていた筈。昨晩は洛陽の状況について徐栄からも使者が来ていた、その時には特に問題が無いと聞いていた。....二人に何かあったと考えるべきか

 

「......ッチ。周毖、徐栄からの使者の名は覚えているか?」

「徐栄将軍直轄の者だったかと....申し訳ございません、名前までは聞いておりませんでした」

「いや、大丈夫だ。直轄となると移動手段は馬だな、裴元紹からの使者は?」

「李思蔡が来ております」

 

李思蔡という事は、馬で無く走って来ているということ。時系列は特におかしくない訳で、徐栄の裏切りは薄い。事態は悪いが間に合えば良いが...

 

「周毖、華雄と文遠を叩き起こして来てくれ。そして、公蓀に虎牢関に伝令を出す様伝えてくれ。状況が変わった、時は一刻を争う」

「はっ!かしこまりました」

 

俺の言葉の意図が伝わったのか、顔を険しくさせ返事をすれば退室するのを見送る。冷めてしまったお茶を飲み干せば、もう一度竹簡の中身を読み直す。

 

李傕と郭汜、李儒、牛輔らが謀叛を起こし、宮廷に攻め込んだ。

董卓様は裴元紹ら護衛部隊により、賈駆は徐栄将軍により護られたが、守りが薄くなった所を狙われ献帝が攫われた。更に裏切り者共は、長安に逃げ込んだというものだった。

 

くっそ...孫堅は出てこないし、華雄ちゃんは生きてる。陽人の戦いどころか虎牢関、泗水関すら抜かれていないのに遷都するつもりか。

李儒は演義で、牛輔に至っては正史で董卓様の一族に加わっていた筈じゃないか...

 

不意に扉が叩かれ、周毖の声が響く。

考え初めてから、周毖が退室して戻って来れる程に時間が経っていたのか。

 

「程遠志様、両名をお連れ致しました」

「あぁ、入ってくれ」

 

周毖に続いて、華雄と文遠が入ってくる。

 

「だいぶ早いな、何かあったのか?」

 

「それとも昨日の事を掘り起こそういうんか...?」

 

華雄は、寝起きなのか少し目元を解しながら入ってくるのに対し、文遠は顔を引き攣らせながら周毖に対して露骨に距離をとっていた。それに対して、華雄は珍しいものを見た様な反応を、周毖は特に反応をせずに、自分と俺の湯呑みにお茶を淹れなおしていた。

 

「そう警戒するな文遠。

今は詳しく言えないが事態が急変した、昨日話した作戦とは少し変更を行う。

間道側はそのまま文遠が直轄兵3000で担当しろ。作戦は開戦直後に敵陣に突撃しろ、森に入る前に敵の士気を挫く。

適度に散らせば偽装だと気付かれんように退け、あとは俺の部下が受け持つ。事が済めば関に戻り好きに動けば良い、どうせ間道は通りは勿論近付けすらせん」

「了解や」

 

返事をする文遠に、不安も緊張も感じさせない雰囲気を放っている。先程まで、部下にビビっていたとは思えない姿がそこにあった。

 

「泗水関では、華雄が直轄兵と胡軫隊を含め、守備兵を除き3500の兵を率いて突撃をかけろ。兎に角、敵将とは戦わずに兵を減らすつもりで突撃を繰り返せ。曹操の陣を抜ければ、我武者羅に合流地に向かえ」

「いいだろう、了解した」

 

対する華雄も、不安や緊張を感じさせず堂々とした姿だ。

さっきまで眠そうにしていたというのに、噛ませ犬でなければ頼もしい姿だったというのに。今回も亜水等を護衛に着かせることを決めた。

 

「虎牢関には既に伝令を出した、奴等も時期に動き出すだろうさ。

もし、敵将に遭遇しても殺すな、そして殺されるな。出来そうであれば生きたまま捕縛し連れてこい。

最後にだ、繰り返すが状況が変わった。ハッキリ言って予想より早まり悪化していると言っても良いだろう。よっては短期決戦だ。作戦開始の合図は此方から送る。気付けませんでしたは効かないからな。

速攻でケリをつける。決戦準備だ、気合い入れていけよ?」

「「おう!」」

 

 

________________________________________________

 

 

完全に太陽が顔を出し、大地を照らし出した頃。

曹操陣営内に置いては、後軍となる第4軍を率いる曹操に対して荀彧が話しかけていた。

 

「華琳様、全隊布陣に着きました。何時でも始めれます」

「そう...では、始めるとしましょうか。始まりにして終わりになるこの戦を...春蘭に合図を送りなさい!」

「はっ、直ちに!」

 

荀彧の返事と共に合図が送られていき、それはやがて第1軍を率いる夏侯惇にまで伝わった。

夏侯惇は愛刀、七星餓狼を抜き放ち剣先を泗水関に向けて声の限り叫ぶ。

 

「曹操軍先鋒・夏侯元譲より全兵に告ぐ!!

 

我等曹操軍はこの戦をにて董卓軍の全士気を削ぐ!

 

この戦で董卓軍は!董卓は滅ぶ!!

 

この戦は間違いなく!深く!歴史に刻まれることに違いない!!

 

この対戦を終わらせるのは我等が華琳様だ!!

 

「地を揺るがすのは誰だ!!」

 

「「「曹操軍!」」」

 

「天を揺るがすのは誰だ!」

 

「「「曹操軍!」」」

 

「華琳様の覇道、その戦端を我等が切り開く!!」

 

「全軍!「突撃だ!!門を開けぇい!!」はぁ!?」

 

__________________________________________

 

「ーーーっぐぅ!ーーーくさをーーー」

 

曹操軍の方より何か、鼓舞と思われる声が聞こえるが幾分距離があるので良く聞こえない。聞こえないなら仕方ない。下で準備を完了させておこう。

 

「華雄ちゃん、準備しておいてよ。朝以降で変更はないとは言え、油断しないでよ?」

「わかっている。私とて、まだ命が惜しい。無理はしないさ、だからお前も必ず勝利を掴め。戦が終われば会って飲むぞ」

「夜は寝たいんだ。飲むなら、余り深酒しないようにな」

 

返事を聞けば、華雄は笑顔でサムズアップをしていた。

 

「ーーーのは、ーーーーーだ!」

「ーー軍!ーー軍!」

 

「外の方では騒がしいね、少し早くなるけど此方も準備しとこうか」

「はっ!」

 

周毖に声をかけ、俺たちも持ち場に戻る。

外からはまだ士気を上げる為の声が聞こえていた。

 

「ーーー開く!」

「ー軍!「突撃だ!!門を開けぇい!!」」

「「おぉ!!!!」」

 

.....は?

 

「程遠志様、華雄軍が突撃を開始しました」

「はぁ?出たの?このタイミングで??」

「はい」

 

はぁ、猪を御する事は誰にでも無理か...

 

「周毖、此方も合図を送る準備をしてくれ。タイミングは華雄が接敵する時だ」

「はっ」

 

視線を華雄軍に戻せば、門は既に開いていた。更には既に華雄軍が演説中に邪魔され呆けていた夏侯惇軍に接敵する瞬間だった。

 

「周毖!」

「ピィィィイイイ!!」

 

合図と共に周毖の笛が鳴り、次の瞬間には

 

ドォン!!!

ドォン!!!

ドォン!!!

ドォン!!!

 

曹操軍の第1軍と第4軍の間に伏せてあった攻城兵器、全てに火薬と油更には火が投げられ盛大に爆発した。

 

「でかした」

「ありがとうございます」

 

後方では爆発が、前方には士気が最高潮の華雄軍。

対するは士気を完全に上げれずに、爆発で混乱している夏侯惇軍。

結果は火を見るより明らかだろう。

 

「周毖、工作隊として出ていた王方隊が戻り次第俺のとこまで来る様伝えてくれ。その後はそのまま楽印達と合流し、坑道に気を配れ」

「かしこまりました、御武運を」

「あぁ、俺が前に出る事になったとすれば後がない状況になってるという事だろうけどね。何はともあれ、お前も気を付けろよ」

 

周毖とはそのまま別れて、裏に周り虎牢関に伝令に出ていた公蓀を待つ。その間でも、正面や文遠のいる筈の間道からの声は常に響いていた。

 

 

 

 

 

 




寝落ち&寝坊しました。。。

今回は会話の行間を詰めてみたんですが、こっちの方が読みやすいのかな?


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第七話

時は少し遡り、間道待機中の張遼軍に移る。

張遼に話しかけているのは、張遼の副官であり名を祖雛という。

 

「張遼様、程遠志殿の部下より敵意のこもった視線を感じているのですが...」

「あぁ...気にせんといてや。十中八九ウチの過失やから仕方ない、作戦の立案は遠やんやったから作戦中は安心しとってええから」

「そういう事でしたら...「張遼将軍」」

 

ウチが祖雛と話しとったら、後ろから声をかけられる。

声をかけて来たのは...

 

「確か双淵やったな?」

「はい、程遠志隊第二小隊を率いています、名を双淵と申します」

「ちゅうことは、向こうで準備しとるんが第五小隊を率いとる辛紀でええんか?」

「はい、間違いありません」

「んで?何の用やったん?」

 

ちょっと挑発を混ぜつつ問うても、向こうはのらりくらりと躱して何食わぬ顔で返事を返してくる...やらしいなぁ。遠やんのとこのやから弱い事はないやろけど、これといって強者っちゅう雰囲気もない。

 

「作戦の確認を」

「ふぅん?確認する程あったん?」

「この密林の中を進んで来るであろう敵に対し、将軍が先制攻撃を仕掛ける手筈になっております。護衛に我隊の輪楊を預けますので良い様にお使い下さい、彼は我等の中でも一番弓が上手いので役に立つかと。それとは別に攻めいるタイミングと、その後の偽装撤退のタイミングをお教え願います」

 

偽装撤退(戻ってくる)タイミングを聞きたいっちゅうんはわかるんやけど、攻め込むタイミングを知りたいんは何でや?....え、ウチらも巻き込まれるん??

 

「...?

将軍を巻き込むには目撃者が多すぎますので、安心して下さって大丈夫ですよ?」

「!?」

「しょ、将軍!お下がりを!?」

 

と、当然の様に言いおった!アカン!冗談やないで、祖雛も本気で受け取りおった。このままやったら内部崩壊まっしぐらや!

 

「御乱心ですか?」

 

な、何でそんな普通のことのように真顔で普通に言えるんや!?

 

慌てて祖雛の前に飛び出して、祖雛を背に隠す。そのまま双淵の肩に手を置いて、圧をかける。

 

「アカンアカン!!祖雛下りや、双淵も冗談やんな?な!」

「.....「な!!」はぁ、そうなのかも知れません」

 

「な!な!双淵も冗談やって、祖雛も納得してちょっと離れとき?な!」

 

双淵の言葉が免罪符って事で、祖雛を引き離そうとするけど...アカンわ、全然納得してそうにない...

 

ドォン!!!

ドォン!!!

ドォン!!!

ドォン!!!

 

「!?な、なんと音や!」

「将軍!合図です!これが程遠志様からの合図です!早急に出陣を!!」

「なんやて!?祖雛!準備は?」

「無事完了しておりますが、些か先程の轟音により浮き足だっております」

 

チィ!双淵が出撃のタイミングを気にしてたんはこれがあったからか!ウチが空回ってただけやないか....

 

「静聴!出るで!どうせ全責任は程遠志が持つ!ウチらはウチらで好きにやるでぇい!.....突撃やぁ!!」

「「「おぉ!!!」」」

 

______________________________

 

どれくらいたった...後どれくらいで接敵するんや

 

「将軍!敵影を確認、敵将の姿は見れません!敵その数約2000!」

「よし来た!敵の横っ腹を食い破んでぇ!根性見せろや!」

「「「おぉ!!!」」」

 

まずは陣形を作らせる前に突撃する。

数を減らすんやない、浮き足だった敵を更に浮かせて反転してただただ....殺すんや。

 

「な!?接敵だ!旗は張旗!張遼だぁぁぁ!!」

「気安く呼ぶなや、死んどきや」

 

通り過ぎ様に一閃。これで、5人目か

チィ!それにしても、もう気付かれてもうたか...奇襲かけた言うんにタイミングが悪かったか、敵の横陣を期待してたんに単縦陣。悔やんでも遅いか

 

「全員、ウチに着いてこい!」

 

一度斜めに抜けて再度突撃かける!その後適当に引き付けながら下がんで...

 

「祖雛!前列を後ろへ回しぃ、回復させるんや。祖伏!中列、後列を持ってこいや」

「「はっ」」

 

四半刻掛からん位で、列を入れ替え終わる。

その時間にも、曹軍別働隊は段々と立て直し始めていた。

 

「祖雛、敵将の姿は見れんかったんよな?」

「その様でしたが...?」

「ふぅん、旗は夏侯淵のモノだけやったけど...御使いでも混じってんか?」

「将軍、入れ替えが完了しました」

 

見れば、完全に入れ替え終わっていた。

御使いがおんのやったら、長居は良くないなぁ...

 

「第二突撃に入んでぇ!気ぃ抜くなやぁあああ!」

「「おぉ!」」

 

数が減ったんがよぉ分かんで、でも...

 

「誰かウチを止めてみぃ!!」

 

止められる訳にはいかんねん

 

ヒュン!

 

サッ!

なんや今の!避けれたんは偶然やで....

 

「ほぉ、避けたか。死にたがりかと思っていたが違ったらしいな、だがここ迄だ!神速の張遼だな、華琳様の命により貴様を捕縛してこの間道を抜かせて貰うぞ!」

「夏侯淵やな、ウチのことを知ってる何てウチも有名になったもんやで。捕縛される訳にも、抜かせる訳にもアカン。ちっとここで退かせて貰うで....退却や!活路を開いて関に戻んで!」

「逃すとでも?」

「押し通ったるわ!輪楊!」

 

急いでんねんからまともに殺り合う訳無いやん。

 

ヒュン!

 

「な!?」

「勝負はお預けや!急いでんねん!」

 

合図を出し、輪楊の矢に夏侯淵が怯んでいるのを確認し横を走り抜けた。

 

____________________________________

 

現在我々は既に密林の中に、仕掛けを配置しており後は将軍が戻ってくるのを待っている状態でした。

近くに我々の他に、第五小隊の面々と...あれは周倉ですか?

なぜここに周倉がいるのかは分かりませんが、我々の出来ることをやりましょう。そういうの時にちょうど良く、物見に出ていた部下の飛賤が戻ってきました。

 

「双淵隊長、張遼軍が戻って来ています。その後ろを追いかける夏侯淵の姿も目視出来ます」

「わかりました、夏侯淵さんを殺すには後が良くないです。夏侯淵さんが抜け切った瞬間を狙いましょう、辛紀さんに伝令を。あと近くに周倉さんの気配がありますので、捕縛は任せてしまいましょう」

「はっ。それと御使いの姿も確認出来たそうですが、夏侯淵だけ生かすと言う事でよろしいのでしょうか?」

「えぇ、構いません。程遠志様より、『殺すも生かすも殺すも自由にしろ。殺した場合は褒美を出そうと思っている。あくまで強制ではない、殺すも生かすも殺したっていい』と言われている。進んで殺そうとしなくて良いが、生かそうとせずとも良い。生きるも死ぬも奴次第です」

 

ここまで話せば、納得したのか飛賤が辛紀の元へ向かって行くのを見送ります。

 

それから半刻程で、ここからでも将軍等が密林を抜けるのが見えます。

後少し...張遼将軍が抜け、配下の兵が抜けるのが見えて、夏侯淵さんが今抜けそうです。

 

「作戦は必ず成功します、我等が勝利を近づけましょう。

さあ、合図を!」

 

ドォン!

 

それは一瞬で爆発し、一気に燃え広がりました。

合図で起爆し、要所要所に仕掛けていた火薬や枯草に燃え広がりました。今ではもうすでに止め処無く燃えあがり、轟々と音を立てています。

あの中に取り残された者が居るのですれば、誰も生き残れていないでしょう。

 

視線を夏侯淵さん等の方に戻せば、周倉が気配を更に薄め唖然と火を見つめる夏侯淵さんを捕縛しているとこでした。

如何に夏侯淵さんと言えども、まだまだ経験が足りない様ですね。この程度で呆然としていれば後が困るでしょうに...

 

「皆さん、周倉が夏侯淵さんを捉えた様です。

我々も下がりますよ、こんな死に方では程遠志様に合わせる顔がありませんよ。辛紀のとこにも、一度泗水関に戻る様伝えて下さい」

「はっ!」

 

あぁ...今度こそ程遠志様は褒めて下さるでしょうか、先の諜報では良い情報を持ち帰れなかったとはいえ今回は上出来の筈....

 

「田維、張遼将軍には今後の我々が一度戻る事と、後は自由にするよう伝えて来て下さい。ついでに輪楊の無事の確認もです」

「はっ」

 

「双淵隊長、辛紀隊長より伝令が」

「聞きましょう」

「御使いの身柄を拘束したとの事です」

 

聞いた瞬間に疑いたくなりましたが、我々は程遠志様の部隊でも1、2を争える程に諜報に優れている。これを疑う事即ち程遠志様の泥をつける事と同義、認めねばならないでしょう...認めますとも

 

「そう、ですか...良いでしょう、我等は程遠志様の元へ急ぎましょう」

「はっ」

 

それでも、褒めてもらえれば良いのですが....はぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第八話

近況報告みたいなのってみてる人いるのかしら?


週1投稿と言ったな!アレは嘘だ.....
まさか盆休みが全て仕事になるなんて思わないじゃないか...



ドォン!!

 

「程遠志様、間道からの様です」

「....ん。みたいだね、双淵達が上手くやったんでしょ。最悪でも夏侯淵だけでも連れてきてくれたら良いけどね、俺らも準備しようか」

「はっ!」

 

部下の言う通り、間道の方から薄らと黒煙が見えている。周倉隊、双淵隊、辛紀隊が戻り次第で漸く、俺たちも動ける。

華雄隊も既に敵第一陣を突破する頃だろう、無理に足を揃える必要が無くなったのは大きいにだが....時間的猶予が少ないな。

 

「報告!虎牢関より呂布全軍が出陣したとの事、呂布将軍が率いる第一軍がもう後一刻程で到着する模様!」

「流石、行動がはやいな。その速度なら敵連合軍が知る前に合流できそうだ、受け入れ準備と我が軍の出陣用意を。呂布将軍との話が終わり次第で俺達も出るよ」

「はっ!」

 

報告を聞き終え、視線を虎牢関へと向けて目を凝らせば報告通り遠くに赤揃えで統一された集団が見える。

あの中に飛将軍、人中の呂布が率いており、更には陥陣営の高順がいるのだろう。味方である事は頼もしいが、敵からすれば一溜りも無いだろうな。

出迎える為に、下に降りれば既に目を凝らす必要の無い距離に確認できる。

 

「遠、お疲れ様」

「奉先もね」

「私達はどうすれば良い?」

「敵陣に突撃してくれたら良いよ、その後は前に伝えていた事と変わらないよ。それと出来る限り敵将は殺さない様にして捕らえてくれたら嬉しい。適当に動けなくしてくれるだけでもいいよ、移送や捕縛は俺の部下を何人か付けるから自由に使ってくれ」

「ん、わかった.....高順」

「はっ!全軍突撃用意!!」

 

返事を返した奉先は、話を終わらせると副官とも言える高順に声をかける。高順は配下の兵に命令を下せば、睨むように此方に視線を向けてくる。

 

「門を開けろ!」

 

俺の命令でゆっくりとだが門が開き、門近くにいた曹操軍が此方に気付く。最初こそは喜色を浮かべたが、赤揃えを見た途端に顔を青くさせた。

 

「...出る」

「全軍将軍に続けぇい!」

 

短く冷静に出陣を告げる奉先に対して、熱を込め号令を下す高順。それに従う兵は冷静だが士気は高く、それに相対する敵兵は既に腰が引けて立つのもやっとの様だった。

 

「りょ、呂布が出たぞぉ!」

ある兵は叫びを挙げた瞬間に縦に裂かれる

 

「止めろ!これ以上進ませるな!」

周りの兵に命令を下す指揮官は胴と別れを告げていた

 

「ちゃんと敵将を殺さないでいると思う?」

「将軍が無理でも、高順様辺りが捕縛してくれるのではないでしょうか」

 

などと、奉先の戦いを見ながら部下と話していれば双淵が戻っていた。

 

「ただいま戻りました」

「お疲れ様。で、戦果は?」

「はっ、夏侯淵は勿論、御使いの両名を捕縛して参りました。今は、周倉と辛紀が見張っています」

「御使いも生かしたのか、まあ良い。此方の被害は?」

「張遼将軍の配下に被害があった事は聞きましたが、我が隊は勿論周倉隊、辛紀隊に被害はありません」

「流石だね。捕虜の方には、尋問や拷問でもして敵の狙いを聞いても良かったけど、此方にも時間がない。何人か見繕い、俺たちが脱出したタイミングで曹操さんのとこへ返しに行こうか」

 

かしこまりましたと返す双淵の頭を、軽く撫でてやれば嬉しそうに頬を緩ませる。そんな双淵の頭から手を離し、戦場に視線を戻す。

華雄隊は既に敵陣を抜けており、華雄ちゃんは戦線を離脱。胡軫くんが撹乱の為に背後から曹操軍本陣に突撃を仕掛けていた。呂布軍は夏侯惇率いる軍勢を蹴散らし、此方に戻ってくるのだろう既に反転し終えていた。

 

「....遠、お土産」

 

戻ってきた奉先の後ろには夏侯惇を背負った部下、更に李典を背負っている部下の姿もある。李典といえば曹操軍内で工作兵を纏める将だった筈、ならば坑道を掘って来る可能性は益々低くなったな。

 

「流石〜おかえり、奉先。

双淵、多分坑道を掘って来る事はもう無いだろうから、周毖達に作戦変更を伝えて来て。それだけで周毖には伝わる筈だからその後は周毖に従って」

「はっ、ご武運を」

「わかってるよ、双淵も気を付けてね。

奉先は捕虜達全員を縄で縛ってから、楼門の中に置いて来てよ。その後は胡軫くんを助けてあげてよ、その後は合流地点まで撤退していいからさ」

「....遠はどうするの?」

「俺達は適当に工作活動しながら、適当に嫌がらせして適当な時を見計らって合流するよ」

「分かった。また会おうね」

「勿論。武運を祈っているよ、奉先」

 

奉先と別れて城壁の上に移動する。

 

「お持ちしました、程遠志様___

 

____木砲です」

 

木砲とは、樫などの硬い丸太の真ん中をくり抜き、砲身を作成し周囲を竹の輪で締め付け補強する。最後に縄で砲身を巻き、更に補強して作られたものである。

 

それを今回は10砲準備している。基本的に、2,3発撃てれば良い方で、それ以上撃てば砲身が破裂する危険性すらある。

 

「ありがとう、周毖。砲手は楽印隊に任せるよ。撃ち終えれば、中に火薬詰めて放置してあげてよ。鹵獲される前に爆発させて嫌がらせしようか、楽印達は終わり次第撤退してくれ」

 

周毖と共に木砲を運んで来ていた楽印達にも号令を出しておく、楽印が返事をすれば隊員が準備を始める。それを確認して周毖と共にその場を去る。

 

今泗水関に残っていて待機中は、周倉と辛紀、双淵の隊か。

泗水関から虎牢関までの道はほぼ直線、虎牢関はもぬけの殻。どうせ一番乗りしたがるのは袁家位だろうな.....燃やすか。

 

「周毖、周倉と辛紀、双淵に伝言をお願い。

虎牢関までの道でちょっかい出すよ、残りの火薬全てと藁全て、火矢を準備して伏せておくように。一番乗りが袁家のモノだったら燃やして良し。出来た場合も、出来なかった場合も虎牢関に入る姿を見たら撤退する様に伝えててね」

 

________________________________

 

「報告!呂布軍が再び突撃を敢行!既に第一軍残党部隊を突破されており、本陣に接敵するのも時間の問題かと!」

 

状況は最悪だ。今現在で、春蘭に秋蘭、真桜挙句には北郷まで捕らわれてしまっている。

間道では火計により全滅。

正面では華雄軍の吶喊により隊列を崩されれば呂布軍により完全に壊されてしまった。今現在も華雄軍別働隊による本陣に対する攻撃にあい、柳琳率いる虎豹騎が対応している。そんな時に呂布軍の再突撃。

 

「凪と沙和を呼びなさい!

両軍が揃うまでは虎豹騎以外の残存兵で対応するわよ!」

「曹操様!呂布軍が逸れていきます!」

「敵軍の狙いは!」

「はっ!方向からすれば、華雄軍別働隊の対応をしている虎豹騎です!」

「何ですって!?至急、柳琳に伝令を出しなさい!桂花、凪と沙和にはここに来たら本陣の守備をさせなさい!華侖、季衣は私について来なさい!」

「なぁ!?華琳様お待ちください!」

 

最後、桂花の声が聞こえたけど聴こえない。即対応出来たのは華侖と季衣を除けば数名だ、天下最強と名高い呂布軍と相対するには心細い数字でしかなかった。

 

「華琳さまー!兵が少ないですよ、これじゃあ柳琳さまのとこに向かう途中で呂布軍と接敵しちゃったら一溜りもないですよー!」

「その時は私や皆を守ってくれるんでしょう?」

「うー...そうですけどー!」

「ふふふ、少し意地悪だったかしら?

季衣の言う通りね、少し落ち着きましょうか。既に柳琳には伝令を出してるわ、柳琳も馬鹿じゃない。率いている兵も柳琳の指揮下でなら士気は高く我が軍でも一二を争う武勇持っている。例え相手が呂布でも、倒せずともされるがままにはならない筈よ...」

 

終わりになるにつれ、まるで自分に言い聞かせるように尻すぼみになっていく。普段から堂々として、焦りや緊張を見せない姿から一転し不安や余裕のない様子を見せる華琳に驚く華侖と季衣だが状況が状況だ。時は一刻を争う、華琳が止まったおかげで着々と兵が集まって来ており、今は1000はいるだろう。

 

「華琳ねーさま!兵ももう十分な位集まってるっす!」

「....え、えぇ、そうね。行くわよ、私に続きなさい!」

 

華侖の声で我にかえった華琳、今一度命令を下して別働隊と呂布軍と相対している筈の柳琳の元へと急いだ。

戦場に着けば、そこには柳琳と僅かな虎豹騎しか居なかった。

 

「柳琳!」

「お姉さま!?」

「無事のようね、戦況の報告をして頂戴」

 

柳琳の説明を聞けば、呂布軍は交戦する事なく華雄軍別働隊と合流し泗水関とは違う方向へと撤退。それで終わる訳が無いと、虎豹騎を何組かに分けて周囲の探索に向かわせたとの事だった。

その後も、周囲の探索を行ったが敵影を発見するに至らず、本陣に戻ることになった。

 

「私とした事が取り乱してしまい迷惑をかけたわね、謝罪するわ」

「いえ、元はといえば狙いは本陣だと思い、敵の真意に気づけなかった我々にも責任がありましたので...」

 

謝罪を口にすれば、代表として桂花が返事を返してくる。これ以上この話題を続けても不毛、切り替えるべきだろう。

桂花の戦況報告を聞けば、今現在の残存戦力は第一軍の残党部隊約千、第二軍は全滅、第三軍五百、第四軍千五百の計三千。

対する泗水関防衛軍の戦力は数は不明ながらも、華雄軍、呂布軍は既に戦場を脱している。泗水関に篭っているのは程遠志が率いる部隊、そして行方が掴めていない張遼軍。

 

「戦力差が明らかで無い今、敵軍の動きからして敵は決着を急いでおります。それは虎牢関を守護していた呂布軍を此方に呼び寄せ、作戦に組み込むと言う事で解ります。更に、呂布軍を喚んだ事で虎牢関はもぬけの殻でしょう。華雄軍、呂布軍が戦場から脱した事から我々連合軍を殲滅する事よりも、我等曹操軍を破ること目標としているのでしょう」

 

桂花の言う通り、敵軍の動きは何か急いでいる様だった。基本的に守城戦では城に引き篭もるのが鉄則だろう。それなのにも関わらず、初手からの吶喊。何か目的があるのかと思えば、まともに打ち合う訳で無くそのまま戦場から脱し、その崩れた陣形に対して呂布軍を呼び寄せそのまま戦場に突込ませている。

間道では、此方の部隊を殲滅したと思えばそのまま放置して張遼軍は姿を眩ませていること。今は焼けて使用出来ないだろうけど、別道を使って此方に急襲を掛ける事もできた筈だ。

敵の真の狙いがわからない...

 

「...そう。それで我軍の攻め手は何が残っているのかしら」

「はい、秋蘭率いる第二軍が攻めていた間道が今も尚燃え盛り、使用は難しいでしょう。第三軍が建設中でした坑道も完成に至る前に真桜が捕縛されており、完成の見込みはないでしょう」

 

聞く限りで絶望的ね...どの戦場も十分に成果を挙げることが出来ず、それでいて将を捕縛されている。

 

「...それで、桂花はどう作戦を立てれるのかしら」

「はい、前述したように敵は時間に追われており、急いております。よってここはまともに相手をせず、公孫瓚や孫策軍と連携するのは如何でしょう」

「...桂花、貴女の言いたい事は分かるわ。我軍の兵力は少なく正面から攻めようモノなら、これ以上の被害を被るでしょう。でも他軍から援軍を受けるのは難しいでしょう。白蓮は昨日までの攻城戦で兵が疲弊してるでしょうし、雪蓮の方には昨日程遠志の方から使者が送られていたとの報告があがっていた事から、何らかの秘密条約が結ばれている可能性が高いわ」

 

そう、私のとこに程遠志が来た様に、雪蓮の元にも使者が来たとの報告を受けている。それからは雪蓮も大人しくなり、軍議で私が攻める旨を伝えた際も特に反論をする事も無かった。秘密条約を結んだと見て間違い無いでしょう。

 

「真桜の攻城兵器はまだ残っていたかしら」

「はい....たしかまだ一台残っていたと....まさか華琳様!?」

「えぇ、最後よ。これで最後、予備兵力も全て総動員して正面から攻めるわよ」

「ですが、華琳様!未だに張遼軍の所在を掴めていません、それに背後から華雄、呂布軍の急襲があれば今度こそ我軍は全滅してしまいます!」

 

桂花の言う事もその通り、それでも取れる策はそれだけ。この曹孟徳に二言は無い____

 

「____曹孟徳に二言は無いわ。あの時の様にここで私達が戦わなければ、私の誇りが許さない。たしかに戦況は不利よ、それでも貴女達はついてきてくれるかしら?例えそれが沈むのを待つ泥船だとしても、最後の反撃に力を貸してくれるかしら」

 

その後、我軍の兵力は残り1割以下になる程の負け戦を味わう事になった。

 

 

 

 




盆明けからも仕事が忙しくなる為、投稿できないかも知れないです

豪雨により被災された方々には、心からお見舞い申し上げるとともに、復興に尽力されている皆様には安全に留意されご活躍されることをお祈り致します。



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第九話




曹操さんの話し方がわからない...


グラブルで3等以上が引けた人はO☆HA☆NA☆SI☆しませんか?


「曹操軍の壊滅を確認しました。木砲に火薬を詰めて、撤退準備も整いました」

 

全ては一瞬。

攻城兵器と共に攻勢を掛けてきた曹操軍に対し、ありったけの鉛玉を食らわせるだけ。報告をしてくれた周毖の顔は顔は変わらず無表情であり、特に関心は薄い様で既に興味を失っている様だった。

 

「木砲の方も試し撃ちをしていなかったにも関わらず、内部破裂する事なく撃ち出すことが出来たのは良かったですね。あの様子でしたらまだ2発は撃てたでしょうし、廃棄するには勿体無いのでは?」

「かも知れないね、重要なのは正常に撃てるかだったからこれで良いよ。それに撃てたとしても弾が無いし、アレ持って撤退するには速度が落ちるよ。捕虜もいる事だしね」

 

それもそうですね、と返す周毖を横目で見つつ捕虜の輸送を周毖に、撤退の指示を周倉に任せ泗水関を脱した。

 

_____________________________________

 

「これはこれはこっ酷くやられましたわね、華琳さん!」

 

これ以上に無い程の敗戦を味わった私たちは、この地に集まった時の場所に戻っていた。最初の頃よりも大分少なくなった兵達を纏め、野営地の設営をしている時に麗羽がやってきたのだ、やってきて早々に発言したのが先の言葉だった。

 

「えぇ、そうね。驕っていたつもりはなかったのだけれど、私達もまだまだってことでしょうね」

「おーっほっほっほっ!まさか華琳さんが素直に負けを認めるなんて、こんな事もあるんですわね!いいでしょう、明日はこの三国一の名家であるこのわたくしが率いる軍勢で攻め落として見せますわよ!」

「そう、そこまで言うのだったら見せて貰いましょうか」

「えぇ!名家の戦い方というモノをとくとご覧に入れてみせますわ!おーっほっほっほっ!」

(と言っても、先に白蓮と桃香が攻めていた状態に私達が攻め、既に泗水関には華雄も呂布もいないわ。最後の反抗作戦の時に、張遼軍が出てこなかった事からして張遼もいない可能性だってある....麗羽に美味しいところを持っていかれるのは癪だけれど仕方がないわね。後は捕虜になっている筈の春蘭達と共に、程遠志がいつ合流するかよね)

 

高笑いをあげながら自陣に戻る袁紹を見送りながら、側に控えていた桂花に声をかけた。

 

「ねぇ、桂花。最後に程遠志軍が使っていた兵器に対して、何か知っている事はあるかしら?」

「いえ...私も初めて見ました。恐らく、真桜が作成した自動衝車のようにかの軍にも、新兵器を作成若しくは開発する事が出来る者がいるのでしょう。それに、程遠志軍が使っていた爆発物に関しても同様の考えでございます」

「そうね、取り敢えずは明日以降も程遠志軍がどこまで耐え切れるかが肝になるわね。あの時にしっかり期日を設けて置くべきだったわ、これで麗羽の軍に殺されてしまったら元も子もなくなってしまうのですから」

「そう、ですね...敵軍は予備戦力すらも出し尽くさん勢いで攻めていましたので、明日以降の戦いが気になりますね。今回の戦では我々の策に対して全てに、対応策が練られており、終わってみれば全てが掌の上という感覚を与えられたモノでした」

「そうだったわね...いいわ。話はこれで終わりよ、各隊に今日はもう休む様に告げなさい。どうせ明日以降も私達に出番はないわ、名家の戦とそれに対応する程遠志軍を見るだけになるでしょうね」

 

顔を顰め、苦々しい声色で告げる桂花に今日は休む様伝えて、自分も自分用に建てられた天幕に戻る。

身体や精神は疲れている、しかしすぐに眠れる様な心境ではなかった。それでも体を休める為にも、横になって目を閉じた。明日の戦で程遠志が負けることが有れば、捕虜として捕らえられた者達がそのまま死んでしまう可能性がある。死ぬ事が無かったとしても、程遠志と繋がっていた事を知られれば裏切り者として連合軍と戦になる。そうなれば勝ち目はほぼ無いだろう、明日がなれば私達の命運も尽きるだろう。

 

「春蘭...秋蘭....真桜に北郷.....」

私らしく無いのかも知れない。そう思いつつも呟いてしまった、心の何処かでは寂しいのかも知れない....本当に私らしくないわ...「勝手に私の心情を語らないでくれないかしら?」え、もしかしてあってたの?」

「そういう話をしてるわけじゃないわよ!」

 

私の返答が気に入らないのか、首を傾げながらニヤニヤしているのは昨日会った時と同じ格好の程遠志だった。

 

_________________________________________

 

天幕の中に忍び込めば、捕虜として捕らえている者たちの名前を悲しげな声色で呟いているのが聞こえてしまった。どうしてそんなに悲しげなんですかね?

 

「まあまあ、曹孟徳さん落ち着いて下さいよぉ。そんなに騒いだら外に聞こえてしまいますって、どーしてそんなに悲しげに呟いてたんですかー?」

「貴方ねぇ!一々煽らないと気が済まないのかしら?」

「煽ってるのではなくて馬鹿にしてたんですけどねぇ....まあ、そんな事は良いじゃないですか。....本題に入っても?」

 

声を荒げて苛ついているのが伝わる曹孟徳に対し、本題に入る為に落ち着いて貰うべく至って真面目に声を掛ける。

 

「............。えぇ、聞きましょうか」

 

それに対し、雰囲気が変わった事に気づいたのだろう。曹孟徳は、ため息を一つ入れて表情を切り替えたのに対して——

 

「勝ちましたけどぉ?」

「は?」

「勝 ち ま し た け ど ?」

 

——全力で煽った。

そう勝ったのだ。壊滅状態の曹操軍に対して、此方(程遠志)の軍は怪我人はいても死者は出ていない。完全勝利なのである。

 

「....それで?それで何をして欲しいのかしら。言っておくけれど連合軍を敵に回す事も、関を強行突破して直接救出に行くってのも無理よ。武器もですけど、何より兵が足らないわ」

 

明らかにこめかみをヒクヒクさせながら、此方を見ている曹孟徳は明らかに的外れな事を言っている。情報封鎖をしていたつもりはなかったのだが、洛陽の情報は何一つ入手出来ていないらしい。既に董卓様とかっくんは長安を脱しており、今頃は俺の領地に匿っているというのに。

 

「話が早くて助かる。しかし、まず最初に言っておきたいけど、謝る事はしねぇぞ。殺さなきゃこっちが殺されていた、俺のした事は間違っているとは思っていない」

「見縊られないで貰えるかしら。こちらとしても、殺すつもりで戦ったのだからそこに関しては言うことないわ」

「...そ。なら良いけど。何かしてほしい訳じゃないんだ、俺が最初に来たとき何しに来たか覚えているだろう?それを正式に受け入れて欲しい」

 

俺の宣言に対し、曹孟徳は非常に不愉快だと言わんばかりに此方を睨め付ける。別に見縊ったつもりなど無いのだが...そこは別に良いのだ。重要なのはその次、先日の約束を受け入れて貰う必要がある。曹孟徳がごねる様であれば、曹孟徳に二言は無いと宣言した事を深くしつこく追求するだけなのだから。

 

「あぁ、たしかにあったわね。それで、良いのかしら?

私としては多少の不利益はあれど、利益の方が大きいわ。でも、貴方そうじゃないでしょう?」

「覚えていないのか?俺にとっては、董卓様と賈駆様の無事以外は全て取るに足らぬ小事だ」

「.....言ったかしら?」

 

どうやら覚えてないらしい。張遼にも言ったが...張遼には言ったのか、という事は曹孟徳には言ってないな。

 

「.....言ってないかも知れん」

「はぁ。良いわ、要するに私が治める国で匿えば良いのよね?」

「あぁ、そうしてくれ。ついでに俺達もな」

 

先日の約束事に付け足しをしておく、どうせ自分の領地に戻った所で出来ることなんて高が知れている。それに奉先を養うなど無理に決まっている。

 

「貴方達は私の軍で、一兵卒と何も変わらない扱いで良いのよね」

「好きに使ってくれ」

 

俺の返事を聞いた曹孟徳は、引き締めていた表情に加えて覇気を纏い、威圧感を与える目で俺の目を真っ直ぐに見ていた。まるで逸らすことを許さぬかのように。

 

「私に忠誠を尽くせるのかしら?あの両名以外は小事だと言い切る貴方は、もし私が死ねと言えば死ぬのかしら。私が貴方の率いた兵を取り上げ、貴方を閑職に追いやったとしても?」

「曹孟徳。君の覇道が続く限り、俺は君に忠誠を捧げよう。例え、その過程で俺が死んだとしてもだ。俺の部下が君の采配で死のうとだ。それが覇道の過程で必要だったというのであれば、それに従おう。その時その場で、どんな状況だろうと君を恨みはしない」

 

俺の返事を聞いてからも未だ此方を睨んだままの曹孟徳は、数秒の後に満足したのか先程まで纏っていた覇気を霧散させた。

少しだけ軽くなった空気の中、またここで一つ曹孟徳は疑問を提示した。

 

「何が貴方にそうさせるのかしら?」

「君の覇道の行く末が見たい。君が真に覇道を行くのであれば、それを見届けたい。君が覇道を持って築くであろう、君の治める世界を見たいのだ」

「.....死んでも私に忠誠を誓いなさい。

そうすれば、貴方にも私の覇道の行く末を見る権利をあげるわ」

「我的大王」

 

その対応に満足したのか、見るからに鼻歌でも歌いそうな程の上機嫌な曹孟徳は次言葉で不機嫌さを取り戻した。

 

「でも、真名の預け合いはしませんのでご了承下さい」

「は?」

 

そうして曹孟徳の軍勢に加えてもらえたのだが、真名の交換は断った。理由はあるにはあるにだが、特に答える程のことでもない為兎にも角にも嫌だとごり押しした。

結果的には曹孟徳が折れたのだが、真名交換しないのであれば軍権を委ねたりはしない。との事で、俺は軍権を失った....

 

「それで、貴方が捕虜にしている子達は無事何でしょうね?」

「無事ですよ。周毖」

「はっ!」

「は?」

 

呼び掛けに応じて現れた周毖に対して、驚きを隠せない曹孟徳だったがそれを無視する様に周毖は部下に命令を出す。

 

「亜水、連れて来なさい」

「此方に」

「ありがとう、二人とも下がって良いよ」

 

四人を縛ったままの状態で床に放置して立ち去り、曹孟徳は瞠目したまま動きそうにない。四人とも此方に連れて来る際に、意識を奪った為に今も意識なく床に倒れたままだった。

 

「生きてるのよね?」

「御使い君は殺しても良いかな、と思ってましたけど生かしたままです。他三人は意識を奪っているだけで、特に手を出しておりません」

 

曹孟徳の問いに対し、極めて笑顔で御使い君を蹴りながら返事を返す。その様子に何か思うとこがあるのか表情が暗い。

 

「...そう。貴方は、北郷に何か恨みでもあるのかしら?」

「種馬に董卓様が孕まされでもしたら....自分がどういう行動に出るのか、全く想像も出来ませんので」

「私からもきつく言っておくわ...」

 

俺の言葉を聞いて、ますます意気消沈気味に拍車がかかる曹孟徳に対して何食わぬ顔で対応している。一応主君となるのだから、蹴るのを止めておく。

 

「そういえば、明日の事は貴方知っているのかしら?」

「名家(笑)が攻めて来ること?」

「えぇ、貴方がどうするのか分からないけれど、泗水関に戻るのなら何か対応策を用意するべきよ」

 

少し心配する様に提案してくれるのは嬉しいのだが、数だけの敵にまともに対応する必要性が見出せない。後ろに守るものも何もないのだから、別に相手をせずに反乱軍の相手をさせても構わんのだけれども。

 

「別に素通りさせても良いのですけれど、あそこまで主君を馬鹿にするのですから痛い目に遭って貰っても構いませんよね?」

「好きになさい。そうは言っても貴方が命をかける必要はないわよ、別に麗羽がどうなっても構わないけど無意味に部下を死なせるのは面白い話じゃないわ。と言うよりこの貴方は何処から見てたのかしら?」

「常に、三人は曹孟徳の側に部下を付けていたよ。こんなとこで死なれたら、今までの苦労が水泡に帰すからね」

 

何とも言えない表情になる曹孟徳を放置して、俺は退室する事にする。勿論捕虜達の縄を切り、御使い君を片手で抱えた状態(お米様抱っこ)でだ。

 

「では、俺は帰るよ。御使い君は適当に兵舎の前に置いておくんで、曹孟徳もゆっくり休んでおきなよ。目が覚め、いつもの状態になる頃には既に袁紹軍も壊滅してるからさ」

 

翌日、物音一つしない泗水関に疑問を持った袁紹軍の軍師である、田豊、沮授が怪しみ斥候を送り確認させた。

斥候の答えはもぬけの殻。

それを聞くや否、軍師達の静止を振り切り袁紹軍は進撃を開始した。そうして袁紹軍の最後尾が関を潜った瞬間に、轟音と共に関は崩壊し退路を断たれた瞬間に四方からの火矢が放たれた。火が建物に引火し燃え盛る炎は火薬に火をつけ、更なる爆発により兵は混乱。

その混乱に乗じて名も無き指揮官を暗殺、指揮系統を失った袁紹軍だったが顔良、文醜更には総大将の袁紹により混乱は抑えられたが、隊列を整える前に虎牢関より進軍していた魏続、侯成や宋憲らによる急襲を受け名家袁紹軍が率いる軍勢は、虎牢関に辿り着く前に壊滅した。

 

「以上が、今回の袁紹軍の顛末になります」

 

そう締めくくったのは荀文若。今この場には、俺を含め曹孟徳と三人しかいない。俺の姿を見た瞬間に、持っていた竹簡やらを投げ付けられたがここは大人の対応として水に流してあげた。

荀文若は曹操軍の軍師をしているらしい。全て逆手に取られて壊滅状態になったのに、クビにされずに軍師役って可笑しいね。それに対して敵を壊滅状態にしたのに、軍権を奪われたのっておかしいよね?おかしくないはずが無いよね??曹孟徳はといえば荀文若の話を聞いて「そう」と返せば、俺を睨んでらっしゃる。なんで?

 

「それで程遠志、何か言う事はあるかしら?」

「...例えば?」

「貴方のおかげで、我が軍と麗羽の軍は壊滅。それによって麗羽は自国に戻ると告げたせいで連合も自然消滅よ、貴方の話を聞けば元董卓軍一派が帝を奪取し、都で好き放題してるそうじゃない。貴方はどう落とし前をつけるのかしら」

「別に?帝を救出に行きたいなら行けばいいじゃないか、恩を売るには格好の機会だからね。奴らの諜報部隊は全滅させておいたから、奴らが知るのは虎牢関は健在。袁紹軍は壊滅、連合は解体されたことだけ。油断してるだろうし、当然慢心している。少数の兵だろうとも策を労せば勝てるでしょ、そこの軍師は天才軍師様でしょうから」

 

ここで一度話を区切り、荀文若を見れば恨めしそうに此方を睨むだけ。ちょっとした愉悦感に浸り、曹孟徳を見れば早く続けろと言わんばかりに睨まれる。睨まれてばっかりだな、俺。

 

「まあ、時間の問題でしょうけど。虎牢関守備隊がいない事が奴等が知れば絶対に逃げるよ。洛陽を焼き払い長安に行くだろう、そしてそこでまた同じ事を繰り返すだろうさ」

 

これで締め括れば、曹孟徳は実に面白く無さそうに此方を見るだけ。それに対して荀文若は、顔を真っ赤にして叫びだした。

 

「だから!その対応策を聞いているのよ!此方の兵力が無いことも!反董卓軍がやろうとしてる事もわかってるの!私じゃ何も思い付かないからアンタに聞いているのよ!」

 

「再び連合を組めば良いじゃ無いか」

 

それに対して冷静に返した俺は少しだけ笑っていた。

 

 

 




誤字報告ありがとうございます!
何度北郷と打っても本郷になるのはバグのせいです。
嘘です、ごめんなさい


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第十話

 

「...連合?」

「あぁ、連合。本当に反乱軍を撃退し、帝を救うことが目的だと言うのであれば、手柄云々より救出が優先されるなら連合を組むべきだ」

 

俺の言葉に対し、荀文若は信じられないようなものを見る目をして、曹孟徳は納得出来ないと言わんばかりの表情だ。

 

「それは...私達が、手柄に固執してると言いたいのかしら?」

「違うと?」

「程遠志!言葉を慎みなさい!華琳様に失礼でしょ!」

 

言えって言ったから言ったのに....2人して険悪な表情になってるのはどうしたものか、ふぅん....

 

「失礼、言葉が過ぎました。俺個人として思うことを別に帝生かす必要は無いかと、宦官らの行いによってここまで天下が荒れたと言いますが、それを自由にさせたのは帝でございます。

いくら歳若いといえども言い訳に過ぎませぬ、生まれ落ちたその日から帝になる事が決まっていたのですから、何らかの手を打つべきだったと思います」

「あんた何言ってるのかわかってるの!?」

 

荀文若がほえるかかるが無視をする。今ここではっきりさせておくべきだからだ。

 

「打つべき手が打てず、手遅れだと言うのなら滅ぼしてしまえは良い。曹孟徳、俺はあの時言った通り君の作る世界が見たい。それが早まるなら帝など見殺しにして、漢帝国を滅ぼすべきだ」

「それは、この先この世の中がどうなるか分かって言ってるのかしら?」

「治める主を失った国は、やがて新しく主を求める。よって、内乱が起きる。漢帝国で言うならば、再び群雄割拠の時代が来るだろうな」

 

荀文若が曹孟徳に対し、言葉を荒げながらも意見をしているが曹孟徳は聞く耳を持たず、面白いものを見つけたように楽しそうな顔をしている。

 

「待ってくれ、華琳!」

「北郷...?」

 

は?はぁ!?何で御使い君がここにいるんだ、結界は確かに命令してた筈だぞ。御使い君のせいで、曹孟徳が周りの話を聞く体勢になっている。やってらんないぞ...

 

「そうですよ、華琳様!帝を蔑ろにするのは、漢帝国の臣民にあるまじき行為です!他国に知られれば、今度は我々に対して連合軍が組まれてしまいます!ここは程遠志の策通り連合軍を組んで帝の救出に参りましょう!」

「桂花....」

 

あぁ....荀文若の言葉にも反応してしまった。

 

「程遠志、貴方の言いたい事は伝わったわ。今ここで漢帝国を裏切るのは簡単、でも桂花の言う通り次は私達に対して連合軍が組まれる可能性があるわ。そうなれば国力や兵力を見ても、私達が不利でしょう。

よってここは、最初の策であったこちらで連合を組むようにしましょう。連合軍は貴方が選別しなさい、勧誘は私が行うわ。反董卓連合が解散した今、各軍は自領に戻っていくでしょう、時間がないわ」

「でしたら、公孫瓚、馬超、劉備、孫策軍をお声掛けください」

 

まあ、そうなるよな。取り敢えずほしいのは速力、次に兵力。

戦うと決まったからには負けるわけにはいかない。

 

「いいでしょう。けど、雪蓮は未だ袁術軍傘下。確実に参陣するとは言えないわよ」

「結構」

 

それは予想通り。

貸し借りはもう無い為、来るかどうかは天に任せるしかない。

 

「良いわ。桂花、今名前の上がった軍に伝令を!内容は待機、話がある為戻るのをやめるよう伝えなさい。その後は再びここに戻って、程遠志と策を煮詰めなさい」

「はっ!」

 

曹孟徳と荀文若は既に退席し、この部屋には俺と御使い君だけが残った。

御使い君はと言えば、気不味そうに辺りを見回しながらも俺にチラチラと視線を向けている。こきは無視でも良いが、結界を抜けてきた事に関しては疑問が残っている。

 

「こうやって話すのは初めてかな、はじめまして天の御使い殿。俺は程遠志だ、好きに呼んでくれ」

「あ、あぁ。俺は北郷一刀、姓が北郷で名が一刀なんだ。華琳から聞いたけど、真名交換はしないんだろう?気軽に北郷とも一刀とも好きな方を呼んでくれ」

 

俺の自己紹介に対して、御使い君も自己紹介を返してくる。その中で重要だったことは、曹孟徳が俺に関しての話をしている点だろう。天幕に行った時もそうだったが、思ってた以上に2人の仲は深いらしい。

 

「よろしく頼むよ、北郷君。ところでこの部屋に入る時に、何か止められたりはしなかったのかい?」

「こちらこそ。それに関してではあるが、特に止められたりはなかったぞ。衛兵なんかも特にいなかったから....なにかあったのか?」

「いや、なかったならいいんだ」

 

俺の反応に不安感を覚えたのか、途中から不安そうな反応をしていたが不安なのは此方も同じだ。俺の命令に背くとは思えない、という事は緊急事態に見舞われたのかも知れないな。

 

「周毖」

「はっ。申し訳ございません、私が通しました。何時でも首を差し出す所存でございます」

「...ん、なら良いよ」

 

呼び掛けに応じ、姿を表す周毖。表情に翳りが見えるが、責めるつもりはない。周毖が通したという事は、何か思う事があったのだろう。

一連の流れに、驚いた表情をしていた御使い君は今では興味深そうに此方を見ているが、情報を漏らすわけないので無視。

 

「首は要らない。亜水に王方達を呼び戻すよう伝えてくれ、辛紀には俺に付くよう。双淵には再び洛陽に向かい様子を探るように伝えて、周倉には曹孟徳の警護を命令してくれ」

「かしこまりました」

 

周毖の姿が再び消えれば、御使い君が興味深そうにしたまま話しかけてくる。

 

「程遠志って軍権を持っていないのに、そんな自由にしていいのか?」

「アイツらは俺の部下であり、家族だ。それを他人にとやかく言われる筋合いは無い。家族とどう行動しようと俺の自由に決まっているだろう」

「いや、そうじゃないんだ。そういう風にしていたら、謀反を疑われても仕方ないんじゃないか?」

「....?無能の代わりに仕事して、誰が困るんだ。悪いのは無能だろう?有能な人間が、当たり前に仕事して疑われるのが仕方ないなら、その国は滅ぶだけだろう。漢帝国みたいにな」

 

ここまで言えば、返答に困ったのか困り顔をしたまま、御使い君は硬直した。周毖は何を考えて通したのだろうか、そのまま意識から御使い君を外しこの後のことに関して考える。

 

曹操軍では軍権が確かに無いが、俺の個人の軍を率いて援軍として駆け付ければ問題はない。

問題があるとすれば俺の兵がまともで無いこと。

更にそれを率いるという事は反乱を起こさないか疑いをかけられてしまうことだろう。

 

そんな事を考えていれば荀文若が戻ってきた。それに気付いたのか、御使い君はそそくさと退出していく。

それを視界に一度納めては、意図的に逸らした荀文若に対して少し意外に思い話を切り出す前に、荀文若が口を開いた。

 

「さっきアンタの部下を見たけど、今度は何を考えているの?」

「曹孟徳の作る世への過程かな」

 

俺の答えを納得出来ない表情だったが、それも束の間。

 

「そう、まあいいわ。それよりも、アンタの変化が気になるわ」

「と、いうと?」

「アンタの雰囲気に違いを感じるってことよ」

「そりゃあ、いつまでも同じだと俺を勘付かれるでしょ。諜報役として生きてる訳で、潜伏するにあたって俺が俺だと気付かれる訳にはいかないからね」

「今のアンタもそうだと?」

「俺を知るのは俺を知っている奴だけだよ」

 

ふと荀文若の方を見れば、何とも言い難い表情をしてらっしゃる。

怒りとも哀れみとも取れる、しかしその中には納得と理解も感じるような表情だった。

 

「何その顔」

「別に...何も無いわよ。もう良いから、華琳様に言われていたように策を考えるわよ」

「何も策が浮かばないからって俺に泣き付いてたくせに」

「はぁ!?男の分際でちょっと戦上手だからって、言って良いことと悪いことがあるでしょ!」

「は?」

 

こ、このネコミミ女は何を言っているんだ?変装も控えめにしているのに、気付いてないとか有り得るのか?だから兵を全滅寸前にまで追い込まれるんじゃ無いか?

 

「何よ!言いたい事があるんだったら言いなさいよ、ちょっとは認めてあげなくも無いかなって思ってたのに、蓋を開けたら所詮は男ね。ガッカリよ、ホントに!」

 

呆けていたら追い討ちの罵倒を受けてしまった、元々毒舌だとは聞いていたがここまで酷いか。そりゃあ御使い君も逃げるわ、文官すらも寄り付かないって話は事実だな。

 

「おい荀文若」

「何よ、声を女性のモノにしても無駄よ。話しかけないで貰えるかしら?華琳様はああ言ってらしたけど、策の内容は私一人で考えるから出て行って」

 

こいつは軍師クビになれば良いのに....

 

「おい!荀文若!」

「な、何よ早く出ていけって「俺の性別はじゃねぇ!」はぁ!?」

「確かにおちょくったし、性格もお世辞でも良いとは言えない!だが男じゃねぇ!」

 

未だ呆けている荀文若に対し、上着を肌蹴させサラシを取り払い胸部露出させる。

 

「はぁ!?あ、アンタ何脱いでるのよ!」

「作り物じゃないぞ!自前だ、何なら荀文若、お前よりある!」

「そ、そんな事は良いから!早くしまいなさい!」

 

未だ強調させた胸部に対し、荀文若が服の乱れごと直すため掴み掛かってくる。軍師如きに遅れを取るほど鈍っていない為、荀文若の手を掴み返して自分の胸部にあてがう。

 

「どうだ!本物だ、勘違いも解けただろ。謝れ!」

「わかったから!分かったから離しなさい、こんなとこ誰かに見られ「あら、楽しそうな事になってるわね。二人共」.....たら、「どうなると言うのかしら?」」

 

曹孟徳の乱入により、場の空気が冷水を掛けられたように静まった。それと同時に俺自身も冷静になり、荀文若の手を離すも今度は荀文若が俺の手を掴み、離す気配がない。

 

「おい、荀文若。解放しろ、今ならお前が色欲に煽られた所為に出来る。早く俺を解放しろ」

「ははははは離す訳無いじゃない!これも全てアンタの所為でしょ!アンタが服を脱いで、私の手を無理矢理に掴んでアンタの胸を触らせて来たんじゃない!」

「おい、変な言い掛かりはよして貰おうか。俺にそんな趣味はない、お前が無理矢理俺の服に手をかけた。そしてそのまま、あれよあれよでこの状況じゃないか」

 

良い加減に服を着たいんだ、離してくれ荀文若。荀文若もしつこいが、曹孟徳を見ればにこやかな笑顔の裏に見えているドス黒い何かも不安を煽ってくる。

更に曹孟徳の後ろに控えている、周毖のハイライトの消えた目が特に嫌な気配がある。何をどうすればあのオーラを醸し出すというんだ。

 

「あら、程遠志ったらあれよあれよでその状態だと言うのなら、次は貴女を夜伽に呼びましょうかしら?」

 

特大の油が注がれた。

その一言で荀文若が暴走し、周毖だけに飽き足らず辛紀や周倉もやってきた。唯一周倉だけは、これを好機と捉えたのか披露宴は任せろだの調子に乗った為、辛紀と周毖によって袋叩きにされていた。

荀文若の拘束が解かれたことで、サラシを巻き直して衣服の乱れを直しておく。その頃には、曹孟徳によって荀文若の暴走も収束に向かっていた。

 

「曹孟徳、その手の冗談はよしてくれ。俺の初めては、賈駆か董卓様と決めている。いくら君が相手でもそこを譲る気はない」

「程遠志様、後でお話しがあります」

 

この宣言に対し、未だハイライトが戻っていない周毖が、辛紀を伴い優しい口調で告げて来たのだが不安しかない為やめてほしいところだ。

 

「そんな事はどうでもいいのよ。まさか二人して遊んでいるとは思っていなかったわ、先に私の方から報告しておくけれども、やっぱり雪蓮の方はダメだったわ。その代わりに、白蓮と桃香、馬超率いる涼州軍が参加してくれたわ」

「...ほぉ、孫策ら飼猫軍は最初から期待して無かったが、涼州軍の参加は大きい。なら、作戦の第一段階は決まったな。荀文若、俺が粗方の作戦概要を説明する。それを添削して煮詰めてくれ」

「良いけれど、煮詰めている間アンタは何をするのって言う訳?」

「それは後だ。時間は限られているからな」

 

曹孟徳の報告通りなら、俺の概要を煮詰めれば上手くいく。伏龍と鳳雛を持つ劉備義勇軍もいて、王佐の才の荀文若がいるのだから。

渋々と言った感じで頷く荀文若をよそ目に、曹孟徳は続きを促す。

 

「第一段階では、公孫瓚が持つ白馬義従と涼州騎馬隊で洛陽まで駆け、包囲する。この第一段階では本軍が来るまで包囲し続ける必要がある、本軍が来るまでに包囲を抜けられようモノなら全てが無に帰るだろう。問題は反乱軍の攻撃を一手に引き受ける為、兵の損傷が激しいことだろう。それにより、出し惜しみをされた場合は一気に瓦解するだろう」

 

それ以外にも白馬義従はあくまで弓兵なのだ。近接戦に持ち込まれでもしたら、苦しいのは此方側になるだろう。

 

「そうでしょうね、確かに涼州軍の騎馬隊は速度がある。それについて行くならば白蓮の白馬隊くらいでしょうね、両方とも両軍の柱になる存在よ。出し惜しみしても仕方ないでしょうね、それに対しては?」

「ない。そこは大将たる君が考えてくれ」

 

最初納得し掛けた曹孟徳も、流石にこれには難色を示した。だがこれしかないのだからいい頑張ってもらいたい。

 

「そういう顔はしないでくれ、曹孟徳たる君にしか出来ない事だ。そして第二段回だ。これに関しては力技のみだろう。各軍本隊が到着次第一気に攻勢に転じる必要がある、この時の問題は軍が足りない事。涼州軍、公孫瓚と義勇軍、そして曹操軍。これだけでも足らないのに、曹操軍は根本的に兵が足りない」

「解決策は?」

「俺の部下に華雄軍と呂布軍、更に俺の隊を呼びに行かせた。呂布軍は動かないだろうし、華雄軍は賭けになるだろう。俺の隊はそのまま曹操軍に加え周倉が指揮を取る」

「それでも兵が足りないじゃない」

 

俺の答えに荀文若が噛み付く、だがそれは俺にとって援護射撃となった。

 

「そう。だから曹孟徳に提案だ。俺はそれに合わせて、俺の私兵を呼び寄せたい」

「それでどうなるというのかしら?」

「俺の私兵は8000だ、それも俺の隊の人員とは別でだ。それを今後も曹操軍として扱わずに、俺の私兵として扱いたい。曹操軍としては軍権を失ったのは確かだ、それでも荀文若の言ったように軍がいない。兵が足りないのだ。曹孟徳に対し牙を剥くことはないと誓おう、許可をくれ」

 

このやりとりに荀文若は絶句しているが、曹孟徳は深く考える素振りをみせていた。

 

「断れば?」

「作戦を練り直す時間が足りず、我々の動きを捕捉され洛陽が火に包まれ、同じ被害を長安も味わうだろう」

 

俺の返答で、再び馬が静まり返った。

 

その沈黙を破ったのは、曹孟徳だ。

 

「いいでしょう。そちらは好きにやりなさい、早速桂花は煮詰めて報告しなさい。こちらの作戦はこちらで行うわ、程遠志は貴女の出来る限りの準備をしなさい」

 

返事の色は良い、あとはあいつらを興奮させないように持ってくるだけ。それが一番不安なのだが、何とかする他に無いだろう。

 

一度領地に戻る為退出する途中で、周毖と出会した所為で出立が遅れたのは俺のせいでは無い....

 

 

 

 

 

 



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