ロゼリアート・オンライン (ユイトアクエリア)
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オリ主たちの会合

オリ主たちの誕生日を変えるのはめんどくさいので、7/22に統一しております。
というわけで、ちょっとした企画を。

本編と後書きで詳細は乗っけるので、とりあえずどうぞ。


7月某日。

とある共通点を持った三人は、何もない部屋に集められていた。

 

唯斗「ここ、どこだよ」

綾乃「さぁ?......こんなこと、前もあった気がする」

海音「俺まで呼ばれたの、なんで?」

 

と、突然部屋内に男の声が響き渡る。

 

「あ、あー。お三方、聞こえる?」

 

突然聞こえた声に当然三人は警戒し、辺りを見渡す。

しかし何もないことを悟ったのか、三人はそれぞれ上に向かって叫ぶ。

 

唯斗「なんだお前」

綾乃「どちらさん?」

海音「斬る?」

 

流石腐っても戦闘狂の三人である。

......ではなくて。

 

「こいつら揃って殺意強くない?まぁいいや。今回君らに集まってもらったのは、君たちに対する質問を募集したいからなんだな」

 

言うと、途端に三人は興味を無くしたように吐き捨てる。

 

唯斗「じゃあ一人でやりゃいいじゃん」

綾乃「同感。じゃ、解散」

 

そのまま出ていこうとするので、必死に呼び止める。

 

「わぁー待った待った!君たちが必要なんだよ!」

 

言うと、真ん中の男が口を開いた。

 

綾乃「......じゃあ、一億歩譲って協力してやるから、名乗るか顔見せるかしろ」

 

......まぁ、名前で譲歩してもらおう。

 

「うーん......それで協力してくれるんだったらいいか。俺はユイト。そこにいる彼とは別だから混同しないようにね」

 

 

唯斗「なんだ偽物!!」

 

ほら、言わんこっちゃない。

俺は片仮名で、彼は漢字表記なんだから。

 

 

「いやいや、だから違うんだって。君みたいに可愛い彼女もいなければ、君みたいにゲームが強いわけでもないんだから」

 

自虐も混ぜて否定してやる。

 

唯斗「あぁ、じゃあ違うな」

綾乃「失礼すぎるだろ」

海音「なんでもいいから本題に入れよ」

 

俺の中じゃ三男にあたる海音が一番怖い。

というか、うちの子って言うけど実際産んだわけじゃ......いや産んでるんだけど。

......わけわかんなくなってきた。

 

まあいいか、本題に入ろう。

 

 

「じゃあ、お言葉に甘えて。読者の皆様、ごきげんよう。この小話の感想欄に、私の子どもたちへの質問を募集します!内容は何でもOKです!好きな食べ物を聞くもよし、彼女の好きな部分を聞くもよし。ほんとになんでも、大丈夫です!」

 

 

唯斗「場合にもよりけりだけど、あまりに倫理観に欠ける質問はやめてほしいな」

綾乃「俺が言えた義理じゃないけど、R18な質問は控えてくれ。答えに困るからな」

海音「......なんでこの状況飲み込めてるの......?」

 

 

海音、お前が正しいよ。

おかしいもん、さっきまでつんつんしてたのにいきなり悠長に企画説明し始めるのは。

 

まぁでも、こいつらの思考は全部、俺の指先一つで変えられるんだけどさ。

 

 

 




はい、というわけで、うちの子への質問コーナーを行いたいと思います。
早いもので創作活動は初めて一年経ってるんでね、そろそろこういうのもやりたいと思いまして。

では、概要説明を。

この話の感想欄に質問をください。
それか、ハーメルンのメッセージ機能を使用して質問を送っていただいても大丈夫です。
あとは、https://twitter.com/novelYuito にDMで送っていただいても大丈夫です。

質問の内容は彼ら三人に対する質問でも、私に対する質問でも構いません。

募集期限は誕生日前日、7/21までとさせていただきます。


では、皆様の質問、お待ちしております。(マジで待ってます。よろしくおねがいします)


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嘘と偽りの質問コーナー

唯斗「さて、偽物に呼ばれてここに来たわけだけど......」

 

 

綾乃「誰もいないな」

 

 

海音「帰りたい」

 

 

綾乃「言ってやんなよ、アイツもアイツなりに企画、とか言って頑張ってんだろ」

 

 

唯斗「偽物風情が」

 

 

綾乃「お前はなんでそんなに対抗心メラメラなんだ」

 

 

「さてさて、みんな集まってくれたね」

 

 

唯斗「出たな偽物!」

 

 

「だから偽物じゃないってば。君みたいに可愛い彼女もいないし君みたいにゲームが強いわけでもないって言ったでしょ?」

 

 

綾乃「気にしてやんなよ。おんなじ名前のやつがいたら対抗心燃やすだろ?」

 

 

「それもそうだ」

 

 

海音「で、俺らは結局何のために呼ばれたの?」

 

 

「うん。じゃあ、企画説明と行きますか!」

 

 


 

 

「というわけで、小話、DM、その他諸々で募集した質問について答えてもらおうと思います!」

 

 

唯斗「それ誰から来てんの?」

 

 

「え?そんなの俺のたっくさんいる友達に決まってるじゃないか」

 

 

綾乃「嘘は見苦しいぞ」

 

 

「うえ、手厳しい。うちの子怖い」

 

 

綾乃「誰がお前の子だよ」

 

 

唯斗「偽物から本物が生まれるわけないでしょうが!」

 

 

「はぁ......」

 

 

海音「......偽物さん、困ってる。やめよう」

 

 

「偽物さんって......まぁいいか。始めるよ」

 

 

 

「じゃ、まずは最初の質問!」

 

 

Q.唯斗君に質問です。初めて触ったゲームのジャンルは?

 

 

唯斗「俺か。えー......っと、初めて触ったゲームのジャンル......」

 

 

唯斗「ん~......初めてゲームしたのが、確か5歳とかで......あ~......」

 

 

「思い出した?」

 

 

唯斗「あれだ。マ〇オ」

 

 

「ってことは、ジャンル的にはアクションになるね。というわけで唯斗君が初めて触ったゲームジャンルはアクションでした!」

 

 

唯斗「......んで、結局こんなのでいいの?」

 

 

「あぁ、構わない。次行こう。また次も唯斗君宛だけどね」

 

 

Q:唯斗さんは好きな人とやることやったの?

 

 

唯斗「おいテメェ顔出せ表出ろぶっ殺してやる」

 

 

「わぁまったまった!考えたのは俺じゃないんだって!」

 

 

綾乃「答えてやれよ唯斗~」ニヤニヤ

 

 

唯斗「うるせぇぞテメェ!」

 

 

海音「うるさいなぁ。教えてやったらいいじゃんそれくらい」

 

 

唯斗「ぐっ......あぁ分かった!教えてやるよ!!」

 

 

「おぉ!?それではどうぞ!!」

 

 

唯斗「......なんもしてねえよ」

 

 

綾乃・海音「え?」

 

 

唯斗「だから、付き合ってからは......何も、して......」

 

 

綾乃「いやいや嘘だろ!?流石に、ほら。キスぐらいは......」

 

 

唯斗「ま、まぁ、それくらいなら......」

 

 

「よーしこの話終わり!閉廷!!!!」

 

 


 

 

Q.今更だが名前の由来は?

 

 

唯斗「そういや聞いたことねえ」

 

 

綾乃「生まれた時女顔っぽかったからだって」

 

 

海音「クルアがつけてくれた。特に意味はないんじゃない?」

 

 

 

Q.今何歳?

 

 

唯斗「16、高校1年」

 

 

綾乃「18、高校3年」

 

 

海音「......幾つだっけ?」

 

 

Q.彼女いる?いるなら誰?

 

 

唯斗「燐子先輩」

 

 

綾乃「ましろ」

 

 

海音「......彼女って、何?」

 

 

Q.今何かにハマってる?

 

 

唯斗「最近はALOで一人ジェットコースターしてる」

 

 

綾乃「ましろとスマ〇ラ」

唯斗「夜の?」

綾乃「いっぺん死ね」

 

 

海音「新しい刀作り。使い勝手のいい奴が作れると楽しい」

 

 

Q.将来の夢は?

 

 

唯斗「ゲームクリエイター。まあ難しいって言うし、SEかな」

 

 

綾乃「俺は......特にはないかな」

 

 

海音「世界が平和になれば、それでいいかな」

 

 

Q.メタな話、イメージCVは?

 

 

「唯斗と海音はこうありたいという自分の妄想なので、私がイメージする中では私の声が一番しっくり来ます。ただそれでは脳内変換できないので、唯斗→内山昂輝さん、綾乃→櫻井孝宏さん、海音→島崎信長さんという風にイメージしております」

 

 

Q.キャラデザとかは考えてるの?

 

 

「それっぽいものはあったりなかったりしますが、私が赤、青、黒、白、オッドアイが好きということもあり、黒ベース青メッシュに黒と青の目が唯斗、暗めの赤に白メッシュ、青目が綾乃、黒髪赤目が海音となっております」

 

 

Q.唯斗の妹ってかわいい?

 

 

唯斗「身内だしひいき目になるけど、フィルターなくてもかわいいんじゃないかな。正直俺より全然できてる子だからね」

 

 

Q.綾乃くんへ、世界かましろどっちを救いますか?

 

 

綾乃「ましろ」

 

 

「即答じゃん、すご」

 

 

Q.海音、世界が消える前にしたいことは?

 

 

海音「それを止める」

 

 

「あまりにも勇者過ぎる」

 

 

Q.いつも読んでくれてる人たちに一言ずつ!

 

 

唯斗「最近ちょっとログインできてないけど、これからまたよろしく!」

 

 

綾乃「最近はあんまり小話出せてないけど、そのうちまた出るから、そこんとこよろしく」

 

 

海音「......そろそろ、決着つくから。よろしく」

 

 

「よーし!みんなありがとう!!これで誕生日記念として出せるよ!!」

 

 

唯斗「それは良いけど。お前時計見てみ」

 

 

「え?12:01がどうしたって?」

 

 

綾乃「あ......7/23の12:01、今02になったけど」

 

 

「......やっちゃったぜ」

 

 

海音「やっちゃったじゃないでしょうが」

 

 

「ま、いいや!これからもよろしくな!!」

 

 

唯斗「締め方雑かよ」



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LIVE Report:Weißklee 出発から物販まで

さて、初めての試み。
私事ですが、先日Roseliaさんの単独ライブ、Weißkleeに行ってきました。
なので、ライブレポートがてら、主人公唯斗君に、私を追体験してもらっています。
あまりに長いとダレるので、まずはここまで。
多分後で結合編でもあげますが、とりあえずここまで楽しんでいただければなと思っています。

そして、あくまでロゼリアート時空ですので、声優さんは(表向きには)出てきません。
全てキャラが喋ってる設定で執筆しておりますので、解釈不一致と言う方は回れ右でお願いします。
一応注釈程度にルビ振りしてはあります、ご理解ください。

それでは、どうぞ。


唯斗「これは......やってんなぁ」

 

俺がそう呟いた理由は、今日という日と、今の時刻にある。

本日、5/21は、Roseliaのライブだ。

そして、俺が今握っている携帯に表示されている時刻は10:04。

世に言う、寝坊というやつだ。

完全にやらかしてしまった。

本当ならこの時間は、八王子から大月行きの電車に揺られているはずだったのに。

 

唯斗「はぁぁぁぁ......どうしよ......」

 

と言ってはいるが、現状を打破する術を俺は持たない。

リセットでもポーズでも使えればよかったのだろうが、あいにく俺は命の管理者でもなければ、ゲーム会社のCEOでもない。

そもそも世界線が違うからな、出来るわけなかろうて。

と、うだうだ言ってる間にも時間は過ぎていく。

まあぶっちゃけ開演は17:00からだから問題はないんだが、どうやらオープニングアクトを高校生がつとめるらしく、しかもその高校生たちは全国数多ある高校の軽音楽部の頂点に立つ高校生達。

それは是非とも聞いてみたいものである。

というわけで、俺は一刻も早く準備しなければいけないわけだ。

 

唯斗「......っし!」

 

頬を叩いて眠気を無理やり追い出し、昨日用意していた服に着替える。

何も食ってないが歯を磨き、顔を洗う。

 

前回のライブビューイングで買ったリングライトを鞄に放り込んで、モバイルバッテリーとコードも放り込む。

 

財布と携帯をポケットにしまい、雨が降るという予報を信じてポンチョを入れておく。

 

唯斗「行ってきます」

 

居間でテレビを見ている親にそう言ってから、耐水靴を履いて外に出る。

以外にもそこまで寒くなく、ちょうどよい気温だった。

しかし、雨が降っている。

そして、俺の持っている傘はとても小さい。

まぁ、大きいのを持っていって盗られても困るが。

 

ふと、嫌な予感がして、鞄を漁る。

俺が入れたコードは、本当に俺の携帯に対応しているのか?

もし対応しているものであれば白いコードがあるはずだ。

 

唯斗「.......最っ悪だ」

 

見えたのは黒いコード。

故に、これでは充電できない。

いくらモバイルバッテリーが優秀だろうが、繋ぐものが非対応なら意味がない。

 

唯斗「節電しよ......」

 

携帯のバッテリーセーバーをつけ、ポケットにしまい直す。

駅までの道のりなんて、つまらなすぎるからカット(書かない)

 


 

さて、無事に最寄りに到着。

現在時刻は11:01。

電車が出発する時間は11:07なので、もうちょっと時間がある。

が、すでに各駅停車の電車が止まっている。

遅く着くののは問題があるが、早く着くのに越したことはない。

というわけで各停電車に乗って、まずは乗り換え先までのんびりと行こう。

 

 

......座れなかったのは、予想外だったけど。

 

 

さて、無事に乗り換え先の駅に到着。

ICカードを改札に押し付け、小田急線の改札を出て、JRの改札にカードを押し付け入場。

次の電車は快速。

まぁ、時間はあるから問題ない。

 

......すでに遅刻はしてるけど。

 

唯斗「......こういう時、一人でよかったって思うわ」

 

まあ別に、誘う相手もいなければ、ゲームの友人ぐらいしか友人もいないので、実質こういうライブに行くのは俺ぐらいしかいない。

 

よく言えば自分で時間設定ができるが、悪く言えば時間にルーズになりがちになる。

 

と、快速電車がやってきた。

この電車には終点まで乗る。

 

というわけで、カット。

 


 

さて、電車を降りたら、いったん階段をのぼり、中央線に乗り換える。

JR内直通だから、改札を通すのは無し。

今いる駅は八王子。

そのまま快速で大月まで目指す。

まぁ、また終点まで乗るだけなんだけどね。

 

と言ったところで、快速が到着。

終点まで、カット。

 

 

 

 

 

 

というわけで、大月到着。

あとはこの駅から富士急行に乗り換え、目的地を目指す。

 

その目的地とは、Roseliaだけでなく、ポピパ(Poppi'n Party)RAS(RAISE A SUILEN)モニカ(Morfonica)などがほぼ年一でライブをする会場。

すなわち、富士急ハイランド・コニファーフォレスト。

 

と言っても、電車から降りたらコニファーフォレストと言うわけではもちろんない。

ま、「富士急ハイランド駅」という名の駅がある通り、そこの駅は電車から降りたら富士急ハイランドと言うのはあるが。

 

で、しかもこの会場のやらしいところは、富士急ハイランド内に存在しない所だ。

富士急ハイランドの敷地外にあるものに、その冠詞をつけてもよいものだろうか。

まぁ、そんなことはどうでもいい。

俺が今この一人語り中にしれっと河口湖行に乗ってたことぐらいどうでもいい。

 

さて、富士山駅で外の確認。

 

唯斗「あちゃー......だいぶ降ってる」

 

傘とポンチョのダブルで正解だな。

と、車内を見ると、これからライブに行くであろう人間が二人ほど見つかった。

なんでわかったかって、Tシャツにでっかく友希那先輩とリサ先輩の顔が印刷されてりゃな。

 

さっきも言ったと思うが、俺が今日行くライブはRoseliaのライブ。

 

今まで幾回とライブをやってきたあの集団だ、当然ファンも多い。

 

ガールズバンド総出のライブだけじゃない、自分たちのワンマンライブだって何回もこなしてきて、RASと対バンだってしてる。

そんなバンドが、不人気なわけがない。

 

しかし、こんな時間に来る人間もいるのか。

物販とかは売り切れが続出してそうだが。

 

ま、それはそれ。

 

と、富士急ハイランド駅に到着。

 

車内の8割の人間がぞろぞろと降りていく。

 

一人で来るのはこれで二回目か。

 

 

そんなことを考えながらICカードを押し付けて、改札を出る。

出るついでに「特別記念乗車券」というのをもらった。

効能はないため、観賞用だが。

 

しかし先輩方、いい感じにデフォルメされている。

 

さて、ライブ会場に到着するまで、カット。

 


 

唯斗「雨は弱いけど......とりあえず雨宿り......」

 

ライブ会場、及び物販会場に到着。

現在時刻は2時半。

 

物販に入るためには整理券を取る必要があり、その整理券の番号は10番刻みで呼ばれている。

そして、俺の番号は2532番。

今呼ばれているのは2400番のため、前回の経験からすると呼ばれるのは30分後とかになりそうだ。

と言うわけで、木陰で傘を差しながら待つこととしよう。

 

が、意外とすぐ呼ばれた。

時間にして10分ほどだろうか。

列整理のスタッフに整理券を見せ、列に並ぶ。

雨は多少弱まってはいるが、まだ傘は閉じれなそうだ。

しかし、この待機列。

列に並んでからも相当待つようだ。

前に来た別ユニットのライブはそこまで待たなかった記憶がある。

まぁ、あの時と違うのは、太陽が出てないことで、気温が低いということだろうか。

長袖を1枚プラスで着ていてよかった。

パーカー一枚では今頃凍えていた。

 

昨日の俺の服チョイス流石、とか考えるうちに音楽が聞こえてきた。

この音楽はリハーサルでとかではなく、単に待機列のスピーカーから流れているものだろう。

今流れているのは、たしか『ZEAL of proud』だったか。

と、それに交じって声が聞こえる。

これまたスピーカーからだが、どうやらグッズの宣伝をしているようだ。

 

唯斗「......友希那先輩?」

 

スピーカーから聞こえるのは友希那先輩(相羽さん)紗夜先輩(工藤さん)の声だ。

......あの人たち、そんなことするんだなぁ。(声優とキャラのギャップが激しいのは、Roseliaファンの皆様ならご存じかと。)

 

その放送を聞いているうち、だんだん待機列の最前列が近くなってきた。

あと一回ぐらいの案内で物販に並べそうだ。

 

......物販に並ぶ前に、待機列があるのは十分に留意しておいてほしい。

 

列に並んだらすぐに買えるわけじゃないってことだ。

これがざらに1時間とかかるからな、早く着くに越したことはないって言ったのは、そういうことだ。

 

「お待ちのお客様、奥の方までお願いします」

 

と言う待機列整列スタッフの声で、待機列が動く。

あと1回ぐらいの案内で物販カウンターに並べるだろう。

その間、公式のツイッターで売り切れ情報のチェックをしておく。

 

唯斗「リフレクターバンドもほぼ売り切れ......あとはフルカラーTシャツかなぁ......」

 

お目当てはもちろんTシャツなのだが、Roseliaの人気ぶりを考えると売り切れてもおかしくないだろう。

とりあえず今回のライブタイトルが書かれたタオルとシリコンバンドがあればいい。

あわよくばTシャツ、もしくはリフレクターバンド。

 

あ、リフレクターバンドって言うのはいわゆる反射材みたいなやつだ。

太陽光とか照明とかを受けてそれが虹色にきらきらするやつ。

 

それが売ってればそれも。

で、雨が心配なのでレインポンチョも。

 

......とは言ってるが、目の前で売り切れたら全部おじゃんだ。

 

と、また待機列が動く。

俺は無事待機列から抜け出し、物販カウンター列に並ぶことに成功した。

奥の方からと言われていたが、奥の方はどこも4,5人待っている。

まあどこでもいいかと、ぱっと見少なそうなところに並ぶ。

この間にも、まだ雨は降っている。

それどころか、もっと強くなってきた。

 

唯斗「うわ、まじか」

 

欲しいものは続々と売り切れ、雨は強くなっていく。

最悪と言う他、なにがあろうか。

 

と、俺の番が回ってきた。

 

一応Tシャツはあるか確認したが、今日分はもうなくなったと言われたので、ですよねと返す。

 

とりあえずタオルとシリコンバンドを確保し、残っているであろうリフレクターバンドと、ポンチョを購入。

 

合計5,500円。

 

あれ、こんな安かったっけなぁ。

まあいいか、全額使うよりはましだ。

 

まぁ、6日後には口座が潤っているのだが。

 


 

とりあえず欲しいものは購入できたが、願わくばと思っていた、いわゆる推しのグッズはすべて売り切れ。

 

恨むべきは、早起きしなかった自分。

購入品をもらった袋に詰め、自前のポンチョを着ながら入場ゲートに向かう。

 

......推しって誰かって?

 

そりゃ、わかるだろ?(言いたくないから察しろ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さて、ライブ本編を書き上げます。
明日か明後日、記憶が薄れないうちに書きますので、しばしお待ちを。


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LIVE Report:Weißklee オープニングアクトから撤収まで

ライブレポ後半。
やっぱ難しいね、こういうのは。
設定とかに齟齬がありまくりですが、それはそれ。
気にしては負けというものです。

そして、曲に対しての理解が浅いせいでしっかりとした考察ができてない、申し訳ない。


それでは、どうぞ


さて、無事に(?)欲しいものが買えた俺は、現在電子チケットアプリを開きながら入場待機列に並んでいる。

どうやら入場ゲート近くになると携帯のつながりが悪くなるらしい。

今のうちに開いておけと言うことらしい。

 

4列で並んで待機列を作る。

これは物販待機列と違ってすぐに入場できそうだ。

と、列が大きく動く。

入場ゲートが見えたが、列は止まることを知らない。

どうやら、このまま入場できそうだ。

まず、検温をするゲートをくぐり、その後にチケット確認のゲートをくぐる。

チェック項目に同意し、顔写真と照合し、問題なしとしてそのゲートを抜ける。

抜ける直前に袋を渡されたが、これは後で確認することにしよう。

 

ステージが見えてきた。

俺の運命力と財力のなさでプレミアムシートとはいかなかったので、一般指定席になる。

 

唯斗「C6の99......」

 

足元のプロック名を確認しながら進む。

 

C6の文字が見えたところで、とりあえず一番後ろから席を確認。

後ろの列は150とかだったので一列づつ前に行って確認。

と、一番右の席に98番席を発見。

 

唯斗「ってことは......あっちか」

 

俺の席はC6ブロックの前から4列目の一番左。

前回の6ユニットLIVEの時もそうだったが、そこそこいい席が取れている気がする。

俺に働く運命力はそこまで悪辣なものではなさそうだ。

というわけで、とりあえず荷物を置いて一息。

自前のポンチョから、買ったポンチョに着替え、下半身の雨具を履く。

これで雨で濡れた座席に座っても大丈夫になった。

座席に荷物を置き、買ったグッズをつけながら、傘を座席下に置いて、さっきまで来てたポンチョでカバンを包んで足元に置く。

 

と、一通り準備が終わったところで、時刻は4時前。

開演まであと一時間あるが、席を立つ気にもなれず、ツイッターを見て時間を潰す。

俺がさっき買ったグッズは売り切れていたりいなかったりなので、やっぱり早く来るに限るなあなんて思ってしまう。

この際前日の夜行バスで会場に午前入りとかでもいいかなぁなんて考えてしまうが、予約とかめんどくさいからやっぱり当日に早起きするに限る。

 

まぁ、それができなかったのが今日なんだけど。

 

と、ステージからギターとベースの音が鳴る。

まだ時刻は4時半前。

ステージを見るとスタッフでもRoseliaメンバーでもない人が楽器を触っている。

彼らがオープニングアクトの高校生だろうか?

 

と、試し弾きが終わったのか、そのままはけてしまった。

 

と言うか、さっきから会場で流れているCMがやたらと情報量が多い。

 

人間は涎を1日の内に1L流すだとか、人間に食われる豆になるために頑張っているだとか。

 

はたまた別セカイのCDの宣伝だったり、別ユニットのカバーソングCDの宣伝だったり。

 

Roseliaのミニアルバムの宣伝だったり。

やたらと盛りだくさんな映像になっている。

 

あとはカードゲームの宣伝だったりしたかな。

 

それらの映像が3ループぐらいした後、アナウンスが聞こえてくる。

 

傘は差すなだとか、改造ペンライトは使うなだとか、まぁ色々諸注意ってやつだな。

 

守らないとLIVEが中止になるからなと言うわけで、しっかり守ろうと思います。

 

と、またアナウンスが流れた後、アナウンスとは全く違う声で、「こんにちは~!」と聞こえる。

 

ステージを向くとマイクを持った女性が出てきた。

 

唯斗「確か......レイヤさん?」

 

ステージに立っていたのは、RAISE A SUILEN:ベースボーカルのレイヤ(Raychell)さん。

 

どうやら高校生バンドの案内に来たようだ。

 

観客の拍手と共に、優勝校のバンドが出てくる。

総勢で15人ほど。

大所帯だ。

 

レイヤ(Raychell)さんが曲紹介をする。

高校生たちが所定の場所に着き、合図をしてから演奏を始める。

 

演奏が始まった瞬間、圧倒された。

 

高校生のレベルではない。

勿論、いい意味で。

演奏技術が高すぎる。

そして、こんなレベルの高校バンドが、全国にいることに驚く。

 

唯斗「高校生バンド......恐ろしい」

 

......と言うか、Roseliaも高校生バンドだった。

 

やっぱり、高校生って何かとおかしい気がする。

 


 

演奏が終わり、高校生たちがはけて、レイヤ(Raychell)さんもはける。

 

現在時刻は17:10。

やや遅れているが、問題はないだろう。

 

と、聞き慣れた声で、アナウンスが流れる。

 

友希那先輩の声だ。

 

ということは、もうすぐ始まるのだろう。

 

と、ステージのモニターに映像が流れる。

ライブタイトルのロゴと、Roseliaのロゴ。

Weißklee(シロツメクサ)の映像が流れ、ステージ袖から友希那先輩が現れた。

 

そのまま息を吸って、歌いだした。

 

 

唯斗「......っ!」

 

曲名は、確か「雨上がりの夢」だったか。

友希那先輩が「Future World fes.」に出るためのメンバー集めをするため、打ち込みなどを駆使した曲だと、紗夜先輩に聞いた覚えがある。

 

いつの間にか、雨は止んでいる。

それどころか、太陽が顔を出している。

さては、狙ったのだろうか。

 

歌い終わると、Roseliaメンバーがすでに配置についており、そのまま演奏が始まる。

 

友希那先輩の「舞う」で始まる、「Proud of oneself」。

FWFの予選で披露していたと聞いた。

 

ステージモニターには曲のMVも流れている。

これが二曲目......かどうかは聞いている人次第だが、俺は少なくともこれを一曲目として聞いている。

しかし、運動量がすごそうな曲が一曲目だ。

 

演奏が終わり、メンバー紹介が挟まった。

 

どうやら、このライブは「これまで」のRoseliaを振り返るライブらしい。

そして、明日の「Rose」は「これから」のRoseliaを。

と、理解した上なら、この選曲は天才と言う他無い。

 

ギターが入るイントロ、「BLACK SHOUT」だ。

勿論、リサ先輩の「OK」もちゃんと見た。

初期からある曲だ、完成度が桁違い。

長年やってると、演奏も洗礼されてきて、かっこいいではなく、美しいと感じる。

 

そして、フェードアウトと同時に遠くからドラムの音。

このパターンは「Re:birth day」だったか。

 

......やばい、なんかうるって来た。

 

まだほんとに序盤なのに。

コーレスはできないから、右腕を振る。

周りに合わせてやるだけで、一体感がすごい。

 

 

 

音楽が止み、拍手が巻き起こる。

MCで笑いを拍手をこぼしつつ、次の曲の考察をしてみたりする。

 

と、燐子先輩がキーボードを弾き始める。

それに合わせて友希那先輩が歌う。

いわゆる、アコースティックと言う奴だろうか。

メンバーとの掛け合いも、コーラスもない。

友希那先輩が一人で歌う「約束」。

 

正直、これだけでも涙腺に来るのに、2番で全員が演奏、コーラスに入った後、ラスサビ前で友希那先輩とリサ先輩が「約束だよ」なんて言うんだから、もう泣くほかない。

 

そして、その後の曲の入りがまたいい。

曲名は「"UNIONS" Road」。

約束の続きのような曲をこの並びでやるのは、ファンを殺しに来ているのではないか。

燐子先輩とあこが途中途中歌うのがまた素晴らしいんだ。(推しは燐子)

ラスサビ前のコーラス、全員で小指をあげた。

これも一種のコーレスだろう。

「私たちは五人で私たちになる」だって、泣かないわけなくない?

 

 


 

唯斗「......なんか芸人みたいなことしてんな」(キャラくずです)

 

どうやら、過去の映像を振り返って、過去の言動を当てるクイズをしている。(キャラくずの映像を見て、過去のツッコミを当てるだのなんだのしてました)

 


休憩を終えるとメンバーが着替えて出てきた後、MCを挟んで「LOUDER」が始まった。

 

もう、喋るのはやめだ。

これは、もう原点と言ってもいい、これこそ「これまでのRoselia」を体現する曲だ。

演奏技術が今までのどの曲よりも高い気がする。

それほど、この曲が支えてきたのだろう。

 

そして、そのままの流れで「Neo-Aspect」。

Roseliaが一つ(新たな姿)になった曲。

ひたすらにかっこいい。

もう、何も言えない。

 

だって、次の曲が分かるから。

「Song I am.」だから。

FWFで披露した、「これから」を体現した曲。

先の2曲ともつながっている部分もあり、この3曲は切り離せない。

いや、切り離してはいけない曲だ。

 

余談だが、FWFで友希那先輩は「LOUDERは今日で最後」と言ったらしい。

だから、この曲の最後に「LOUDER LOUDER!」とあるのだろう。

 

そして、MCが挟まる。

正直、余韻がすごくてあまり耳に入ってなかったが、このライブもあと少しで終わってしまうとは言ってた気がする。

 

その流れで始まる、「FIRE BIRD」。

Roseliaを代表する曲と言っても差し支えないほどの曲だ。

FIREとあるように、サビに合わせてステージから火柱が上がる。

一般席の前の方であれば、温風が吹いてくる。

この時は寒かったから、ちょっとありがたかった。(実話)

ラスサビ前のソロパートが良いんだなぁ。

観客のペンライトも、オレンジ色が回って綺麗だ。

 

フェードアウトし、力強いドラム。

「overtuRe」だ。

FWF予選で演奏した曲。

「Proud of oneself」とは違うが、各自のソロパートがBメロに入っている。

「歌声は剣となり 絆は盾に」という歌詞が大好きなんだ。

あと、単純にメロディがかっこいい。

 

そんな演奏が、スパッと止まるんだから、拍手も大きくなるというもの。

MCで、次で最後、と言った。

今までの曲から、メンバーを象徴する曲はない。

故、限られてくるのはこの間の新曲か......

 

という思考を、キーボードとベースがが打ち破る。

 

この、「R」とも違うベースの感じ、「ZEAL of Proud」だ。

サビ前にソロパートがある、俺が好きな曲。

歌詞の中の「1,2」に合わせて指を立て、振る。

正直、右腕はもう限界が近い。

 

 

しかし。

 

......友希那先輩、よくあんな高い声が続くよなぁ。

 

なんて考えも、メンバーがはけてから初めて考えた。

 


唯斗「あ、後半だ」(キャラくずです)

 

点数はそこそこ拮抗しているが、クイズの方はどうなんだろうか(クイズの正答率もキャラの保持率も低めでした。キャラくず本編は円盤で見てね。出るの来年とかだろうけど)

 


 

映像が終わり、ライブタイトルのロゴが表示される。

観客が、一定の節で手拍子を始める。

アンコールだ。

声が出せないから、こうやっている。

しかし、これは人間の本能的に仕方ないのだろうが、手拍子をだんだん早くしてしまってバラバラになっていくこの現象は、どうしたらいいんだろうな。

 

そして、重なってはバラバラになる手拍子を2分ぐらいやっただろうか。

 

ステージの照明が点き歌が聞こえる。

「ONENESS」だ。

「おねねす」じゃないぞ、「ワンネス」だ。

 

「一致・調和」の意味を示すONENESS。

 

これに関しては振り付けも好きだ。

「夢、会い、世界、未来」で友希那先輩がメンバーそれぞれを指さすところが。

 

 

終わって、拍手が鳴る。

そして、ちょっとしたMCを挟み、その中で「その先へ」と発言したことで、最後の曲の候補は絞れた。

 

FIRE BIRDに似たイントロ。

しかし、どこか違うイントロ。

新曲「ROZEN HORIZON」だ。

FIRE BIRDのアンサーソング、その先を行く曲。

 

その証拠に、FIRE BIRDでは吹き出ている火柱が赤だったが、この曲では青い火柱に変わっている。

 

もう腕も動かないが、どうせなら振り切って筋肉痛にしてでもいいから帰ろう。

 

曲の終わり、「最後はみんなで飛ぶ」という合図でジャンプ。

瞬間に、横で大花火。

ちなみに銀テープも飛んだが、正直いつ飛んだか覚えていない。

それぐらい、熱く、また素晴らしいライブだった。

 


 

規制退場と言うわけで、ブロックごとに退場していく。

まぁ、結局は入場ゲート付近でつまるのだけど。

しょうがない。

なんせ5桁はいるだろうから。

ゆっくりと退場していく。

正直、このまま帰らず二日目も参加したかったが、日曜に遅く帰るのは月曜に響くし、何よりまずチケットがないので一日目のみの参加というわけで、晴れてライブ初参加となった。

 

帰りは、電車の会社側が臨時急行という形で電車を出してくれ、それに乗り大月まで戻る。

途中、何回か意識を失いかけて、ひざが何回かカクっとして白い目で見られたような気がするが。(実話)

そんなこんなで、無事大月到着。

そういえば言い忘れていたが、富士急ハイランドはガールズバンド7バンドとコラボという形で、富士急行の電車はラッピングされているらしい。

それらの写真を一通り撮って、八王子行きの電車に乗り換える。

 

少し遅延して、10時前ごろ電車が到着。

それに乗り、八王子を目指す。

 

 

そろそろ足が限界だ、座りたい。

 


 

さて、八王子から最寄りまで行くのに、もう一回乗り換える必要があるが、一本目の電車で運よく座れたので、そのまま帰り道のルート確認をしながら、少しだけ意識を手放す。

 

次に起きた時は乗換駅だったので、降りて乗り換える。

 

各駅停車の終点が最寄の電車に乗り、なるべく携帯の電池を使わないようにボーっとする。

(ライブレポート前半の400字ぐらいは電車内で書いてた)

 

親にもうすぐ着くとメッセージを送り、最寄りに到着。

 

ここから家までの道のりなんてつまらんだろうからカット。

 

最後に。

 

Roseliaのライブ、めちゃめちゃ楽しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




楽しかった、本当に。
めちゃめちゃ盛り上がったし、銀テも独占せずに周りに回すやさいせいかつ。
いやぁ、バンドリ現地あったけぇ。

機会があれば、またこういうの書きたいですね。

ライブレポ風小説、いかがだったでしょうか。
ぜひ、感想などいただけたら嬉しいです。

それでは。


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月イベント
番外 Happy Birthday,RinRin.


推しならやらねば、ということで。
実際そこまで熱が入りきってないのもありますが、Roselia全員は厳しいかなと思いつつ、頑張ってみようと思います。
次は友希那さんだけどきついなぁ

燐子呼びは仕様です


L「ねえユイト!明日は何の日!?」

 

 

レアスキルがばれてから、自分のホームで隠居していた俺のもとに、リサが突撃してきた。

 

 

Yu「あ~...横浜で初めて上水道が開通した日だったかな?」

L「へぇそうなんだ...じゃなくて!」

Yu「何だよ」

 

 

ちなみに上水道が開通したのは1887年の出来事な。

 

 

L「明日は!燐子の誕生日だよ!」

 

 

誕生日ねぇ。

 

 

Yu「りんの?ふーん」

L「ふーんじゃないでしょ!?なんか準備しなよ!」

 

 

準備、とな。

 

 

Yu「そうは言ってもなぁ。この世界で何あげろって言うんだよ」

L「...レアな装備?」

 

 

なんでさ。

 

 

Yu「もうちょい女子っぽいもんチョイスしろよ...」

L「そういうユイトは何かあるわけ?」

 

 

なんか逆ギレされているような気がするが、まあいいか。

ウィンドウからアイテムを出して、リサに渡す。

 

 

Yu「ん」

L「何、これ?」

Yu「アクセアイテム」

L「見ればわかるけど...どうしてこんなもの持ってるの?」

Yu「モブのレアドロ。売るのももったいないから持ってた」

 

 

落としたのは67層にいるアストラル系のモブ。

あいつら幽霊のくせにかわいいもん落とすんだ、レアドロだけど。

 

 

L「...これ渡すの?」

Yu「ダメか?」

L「モブ品って知ったら悲しむよ...?」

Yu「言わなくていいだろ」

 

 

まぁ、本命は別にある。

言わなくていいだろ、はダブルミーニングというわけだ。

 

 

Yu「で、リサは用意してんの?」

L「これ!」

Yu「なん...むぐっ...」

 

 

いきなり俺の口に何かが突っ込まれた。

咀嚼してみると、ぽそぽそしているような、ふわふわしているような。

 

 

Yu「...パンか?」

L「そう!あとは...これ!」

Yu「だからいきなり口にっ...クッキーか」

L「こっちの方が自信作だよ!」

 

 

なるほど、食べ物で祝う、という手があるか。

まあ、やるけど。

 

 

L「じゃ、明日だから準備しといてね~!」

Yu「はいよ」

 

 

明日、と言ってももう1時間ぐらいしかないわけだが。

ま、どうにかするか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

10/17、12:00

 

 

R「ユキナさん...緊急の招集って...?」

Yu「どうしたよ、普段お知らせをまともに使わないユキナが」

A「でも、リサ姉がいないよ?」

Yk「リサは...少し遅れると...」

S「ユキナさん、嘘が下手ですね」

 

 

まあ、緊急の招集というのがそもそも嘘なんだ。

りんの誕生日を祝いたいが、面と向かって言えないから、あるいはりんにバレないように「緊急の招集」というので包んでみんなを呼び出した。

そしてリサはきっと、昨日俺に食わせたパンだのクッキーだのを作っているのに時間がかかってるんだろう。

 

 

Yu「(なぁ、あこ)」

A「(どしたのユイトさん)」

Yu「(今日何の日かって、みんなわかってんだよな?)」

A「(たぶん)」

Yu「(大丈夫かそれ)」

 

 

ふと不安に思い、ユキナとサヨに個人メッセージを送る。

 

 

『今日、何の日かわかってるんだよな?』

Yk「『燐子の誕生日よ、忘れてるわけないじゃない』」

S「『燐子さんの誕生日です。当然わかってます』」

Yu「...はぁ...」

 

 

とりあえずこの場にいるやつら全員が分かっているようだ。

ということは、リサが来たら始めるのか。

 

 

L「みんなごめんね~!それでどうしたのユキナ?緊急って?」

Yu「(リサ、察しろ)」

L「あぁ...オッケー!じゃ、始めよっか!」

 

 

クラッカーをオブジェクト化し、紐を引く。

 

 

Yk,S,L,A,Yu「燐子(りんりん)(りん)、誕生日おめでとう(ございます)!!」

R「うえ...?あ、ありがとうございます...」

Yu「急にやるから呆気に取られてるよ」

L「さ、ユイト!渡しちゃってよ!」

 

なんでトップバッターなんだ。

そして手渡しはなんか気恥ずかしい。

 

 

Yu「俺からか...りん、ギルドタブ見て」

R「これは...アクセサリーアイテム...?」

Yu「俺からってことで」

A「かわいい!ね、りんりん!つけてみてよ!」

R「え、えぇ...いま...?」

 

 

R「へ、変じゃないですか?」

Yu「...ん、似合ってんじゃない?」

 

 

俺があげたのは、髪を束ねるヘアゴム(のようなもの)。

これがモンスタードロップだというんだから驚きだ。

さらにつけてるだけで暗視効果が付く優れもの。

 

 

R「何か...いつもより視界が明るい気が」

Yu「暗視効果付き。暗いとこでも安心よ」

R「...ありがとうございます、ユイトさん」

Yu「ん、どうしたしまして」

 

 

まいったな、ここまで喜ばれては本命を出すまでもないじゃないか。

ま、それはそれでいいさ。

 

 

他のギルメンを誕プレを渡し終え、後はリサだけになった。

 

 

L「じゃあアタシからは...これ!」

 

 

と言うと同時に、目の前のテーブルが一瞬で埋まる。

 

 

R「こ、これは...?」

Yk「...クッキー、ね」

S「これは...パン、でしょうか」

L「ユキナにサヨ、大正解!燐子のだから、食べちゃっていいよ!」

R「あ、ありがとうございます...いただきます」

 

 

りんがパンを一個掴み、小さく一口。

 

 

R「リサさん...とてもおいしいです!」

L「よかったぁ...どk...味見を任せた甲斐があったなぁ~...」

Yu「毒見させんな人にあげるパン」

L「さ、クッキーも食べちゃって!」

Yk「いただくわ」

Yu「今手の速さ見えなかったんだけど」

 

 

リサが許可を出すか否かのときにユキナの手がクッキーをひったくってった。

クッキー好きなのかな。

 

 

Yk「違うわ。私はリサの作るクッキーが好きなの」

Yu「告白ですか?」

L「ユキナ~!恥ずかしいから~」

Yu「恥ずかしがるのかよ」

R「ふふっ...うふふ...」

 

 

りんが笑い出した。

 

 

Yu「どした?」

R「いえ、その...現実に戻ったみたいで」

A「去年もこうやってお祝いしたもんね!りんりんのだけじゃなくて...みんなの分も!」

R「ふふっ、そうだね...」

 

 

このゲームに閉じ込められて2年が経とうとしているが、最前線は74層。

それでも、クリアに向かおうとしてるのは確かだ。

 

 

R「...?どうかしましたか?」

Yu「いいや、何でもない」

 

 

そう言いつつ、あらかた片付いたテーブルにあるものをオブジェクト化する。

 

 

Yu「目、閉じてくれるか」

R「は、はい」

Yu「耐久値は...まだ余裕あるか」

L「えぇ!?これユイトが作ったの!?」

S「男性はこういうのは苦手だと思っていました...」

A「すごいすごーい!すっごい大きいよ~!」

Yk「上出来ね」

R「あ、あの...?皆さんだけで盛り上がらないでください...」

Yu「あ、悪い、目開けていいぞ」

R「そ、それじゃあ開けます...!...これは...?」

 

 

テーブルに置いたのはでっかいケーキ。

俺作。

一人で、誕生日会1時間前からコツコツと。

一人で作った。

 

 

R「これを、ユイトさんが...?」

Yu「さっきのアクセアイテムはジャブ程度のつもりだったんだけど...思いのほか喜ばれちゃったし...」

R「これを...えっと、私に?」

Yu「一人で食える?みんなで分けたら?」

R「じゃあ、そうします。ありがとうございます、ユイトさん!」

Yu「喜んでくれたようで何よりだ。HappyBirthDay,RinRin.」

 

 

そう言ってギルドホームから出る。

後はお仲間で楽しんでほしいから。

まあ、他にも理由はあるけど。

その一つとして...

 

 

Yu「何だよあの顔...可愛すぎるだろ...!」

 

 

...どうやら俺は、強めの魅了に掛かったようだ。

 




あとがき、読了感謝です
まさか2日連続投稿するとは思わなかったでしょう、俺も思わなかった。()
いやまあね、ぶっちゃけこんな性癖だだ漏れの駄文なんてね存在価値ないですけどね、えぇ。
最推しタイの燐子ぐらいは書かないとだめよなあと思って、ね。
まあ、いろいろとカオスだけど、これからもお読みいただければ、と思います。

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閑話休題 唯斗と燐子のバレンタイン

興が乗って書いてみました。
後悔も反省もしていません。

あ、ALOクリア後時空です、ご理解の程を。


Yu「...んー...この時間じゃ誰もログインしてねえかぁ...」

 

現在時刻、AM9:00。

健全で健康な人間ならもう起きている時間であるが、あいにくと俺はその部類ではない。

しかし、この時間に、俺が起きている理由は...

 

Yu「今日が楽しみで、寝れなかったなんて...」

 

真に情けない理由を暴露すると、チョコがもらえるのが楽しみで起きてた。

というか、寝れなかった。

本当にそれだけ。

 

Yu「...だって年齢=彼女無しの人間だしさぁ...こういうのはワクワクするでしょうが...」

 

...誰に向かって弁明してるんだろうか俺は。

まあいいか。

ぶっちゃけここにいるのなんて俺だけだろうし。

 

R「私も...いますよ...?」

Yu「うおっ!?」

 

びっくりした。

隣にいつの間にか現れていた。

気配遮断EX+持ちだろうか。

 

R「ふふっ...ずっと前からいましたよ...?」

Yu「えっと...ずっとって...どこから?」

R「「今日が楽しみで、寝れなかったなんて...」あたりかな...?」

Yu「えっと...それ最初の方では...?」

R「ふふっ...」

 

意味深な笑顔を浮かべるRinRin(彼女)

ちょっと怖い。

 

R「ふふっ...怖がらないでください...そんなに逃げると...チョコ、あげませんよ?」

Yu「えっ!?...あぁ、いや...えっと...その...ごめんなさい」

R「冗談です。ちゃんとあげるから...」

 

俺の焦った顔を見て、笑ってからウィンドウを開く。

りんがウィンドウを閉じた後、俺の視界の左の方で、新着メッセージを受け取った旨のアイコンが光った。

見てみると、目の前にいるりんからのものだった。

 

『Circleで、待ってます』

 

それを見て再び顔を上げた時にはもう、りんの姿はなかった。

 

Yu「直接言えばいいのに...」

 

人にはそう言うけど、自分でやるとなれば、自分もこうするだろうなと秘かに考えたが、その考えは考えないことにした。

 


 

唯斗「さて...来たわけだけど...」

 

現在時刻、AM11:30。

近くに人影は無し。

というか、人ひとりいない。

一応ここはライブハウスだというのに。

と、思ったら、目線の先に走ってくる人影。

 

燐子「はっ...お待たせ、しました...」

唯斗「そんな急がなくても...俺も今来たところなんで...」

 

一応は公共の場なので、年上と話すモードに切り替える。

 

燐子「...わざわざ口調直さなくてもいいのに...」

唯斗「いや...一応は先輩なので...」

燐子「むう...気にしなくていいのに...まあいいか...」

 

向かいの席に座った彼女は、手提げのバックから箱を取り出して、こっちに置いた。

 

燐子「は、初めて、作ったので...うまくいってるかは、わかりませんが...味は、保証します」

唯斗「うん、ありがとうございます」

 

箱を受け取り、笑いかける。

いかんせん、初めて貰うから作法というか、とにかく正しい受け取り方を知らない。

 

燐子「ふふっ...よかったら、今食べてみてください」

唯斗「え、いいんですか?」

燐子「もちろんです。君の反応が、見たいなぁ...」

 

そこまで期待されているなら、食べてみよう。

丁寧に包みを開き、一つとって食べる。

 

唯斗「いただきます...ん...ふふっ...」

燐子「ど、どうですか?」

唯斗「めっちゃおいしいです。俺、幸せですね」

燐子「ふふっ...ありがとう、唯斗君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




バレンタインって、これであってる?


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閑話休題 お返しホワイトデー

連続投稿でびっくりしただろう?
俺もびっくりした()

バレンタインかいたならホワイトデーも書かなあかんやろっていうわけで。
引き続きALO脱出後時空で。


3/12。

 

唯斗「あ...どうしよ...」

 

彼は今、非常に悩んでいる。

一か月前、彼女である白金燐子に、バレンタインとしてチョコレートをもらった。

というわけで、今度は彼の番だ。

彼の番、なのだが...。

 

唯斗「あぁ~!マジ決まんねぇ!!何あげりゃいいんだよこういうのって!!!」

 

彼は今、とても、それはもう本当に悩んでる。

なぜなら、年齢=彼女いない歴の彼である。

友チョコとか義理チョコには既製品で返してきた彼である。

しかし今回は手作り、しかも彼女からの一品。

これに既製品で返すのはあまりにも品がない。

そしてもったいない。

何より彼女からのプレゼントを無為にできない。

なのだが...

 

唯斗「下手なもんあげて嫌われたくないうわぁどうしようわぁぁ!!!」

 

これである。

率直に言おう、うるさい。

そして嫌われるという可能性を考えているあたり、こいつは彼女を乗り換える先がある人間と思っている。

ヘタレであり、クズ野郎である。

万に一つも、彼女が彼を嫌う要素はないというのに。

 

唯斗「はぁ...もらったときに何が欲しいか聞いとくべきだったか...」

 

それでは意味が無いだろう、というツッコミは抑えてほしい。

全ては自分が何をあげるか考えるのが面倒なためこうなっている。

彼女にあげるプレゼント、しかもホワイトデーならお菓子でいいだろうというツッコミも、抑えてもらいたい。

彼はそういう人なのである。

どうか、目を瞑ってほしい。

 


 

ALO内、3/14。

彼は、イグドラシルシティの宿屋にいた。

 

Yu「はぁ...大丈夫。ただ渡すだけだ。何も緊張することはない。大丈夫、大丈夫」

R「何が大丈夫なの?」

Yu「ぴゃっ!?」

R「わっ...そんなに、驚くこと?」

 

誰だって後ろからいきなり声かけられたら驚くだろ!

というツッコミを抑え、

 

Yu「いや、その...」

 

と、どもる彼。

ヘタレである(二度目)。

 

R「どうしたの?『イグシティに来てほしい』って?」

Yu「あー...えっと...」

 

ここに来てまでしどろもどろになる彼、本当に救いようがない。

 

Yu「あー...先月、さ。もらった、じゃん」

R「?」

Yu「ほら、その、チョコ」

R「あぁ...うん。それがどうかしたの?」

Yu「で、ほら。今日、ちょうど一か月後じゃん?」

R「そうだね...?」

Yu「だから、えっと...お返し」

 

そう言って、袋を渡す。

その中身は...。

 

R「わっ...これ、カップケーキ?」

Yu「作って、みた...どうかな?」

R「とってもきれいで、おいしそう...食べてもいい?」

Yu「あぁ、もちろん」

 

そう言って、彼女は一口含む。

 

R「...!んっ...ふふっ...おいしいよ、ユイトくん」

Yu「...はぁ~...良かった...」

 

料理スキルでいくらでも補正できるといえ、見た目が同じでも味が全く違うものができるなんてざらである。

彼は試作過程で何回か試食しているが、そのたびに、「なぜかしょっぱい」「なぜか辛い」などと、様々な挫折を繰り返している。

 

R「ふふっ...おいしかった。ごちそうさま、ユイトくん」

Yu「あぁ、うん。おいしそうに食べてくれて、ありがとう」

R「でも、どうしてカップケーキ?...こっちで渡したのは、どうして?」

 

彼女の質問はごもっともである。

彼女のチョコレートは現実にてプレゼントしたもの。

現実で返すのが礼儀であるが。

 

Yu「あ~...その...実は、さ。送ろうと思ったんだ、現実で、カップケーキ」

R「うん」

Yu「けど、思ったより難しくてさ、全部、灰に...しちゃった...んだけど、カップケーキは贈りたいから、その、こっちで、用意したんだ。...あ、その、ごめん」

R「...ふーん」

Yu「あ...えっと...怒ってる、よな。うん。俺も、同じこと、されたら、怒る、もんな...はぁ...」

 

救えない、この男。

何を言っても謝罪が付いて回り、ため息までついてしまうんだから、もう救えない。

 

R「はぁ...。ユイト君、別に私怒ってない」

Yu「...え?」

 

予想とは違う答えに、固まる彼。

 

R「ユイト君がお返しくれただけで、幸せだよ?」

Yu「え、あ、そう、なの?」

R「うん。後、カップケーキって、「あなたは特別な存在です」って意味でしょ?」

Yu「何だ、バレてたのか...」

 

彼の思惑まできっちり当ててしまった彼女。

こうなったら、もうお手上げである。

 

R「ちゃんと調べてくれたんだ。ふふっ...嬉しいなぁ」

Yu「当たり前でしょ。...嫌われたく、ないし」

R「?嫌われる?」

Yu「いや、その...」

R「ふふっ、おかしいの。唯斗君を嫌う要素なんて、どこもないのにね?」

Yu「...へ?」

 

素っ頓狂な彼の返しを待たずして、彼女は彼を押し倒す。

 

Yu「あの、燐子さん?」

R「...現実でも、くれるんでしょ?」

Yu「いやあの、さっき言ったじゃん...灰になったって...」

R「...せっかく、食べられると思ったのに...本物の、ゆいくん手作りケーキ...」

 

上目遣い+猫なで声。

落ちない男はいないだろう。

 

Yu「...明日まで、待ってて。ちゃんと、作るから」

R「うふふ、楽しみ」

 

...どうやら、彼のホワイトデーは明日のようだ。

 

 

 

 

 




はーい駄文。


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監視対象 progressive
前編 剣聖、異世界転生。


どーも、ユイトです。
少し前に砂糖のカタマリ様の小説、『監視対象と約束された日々』とコラボさせていただきました。
この小説は、そのコラボ小説より前の話、いわゆる前日譚となっております。
「」の前にだれが喋っているかの表記がないですが、そこは文脈から感じ取っていただければと思います。

時系列的には74層突破後です。

それでは、どうぞ


「ん...あ...寝ちまってたのか...?」

 

 圏内エリアで寝落ちしていた俺は、起きた時の多少の不快感よりも、周りの景色が気になった。

 ──ポリゴンには見えない。

 現実と比べれば大いに差があるだろうが、SAOのポリゴンより質がいい。

 

「ここは...一体?」

 

 起き上がって周りを歩いてみる。

 起き上がった時の感触や、歩いているこの感覚は、SAOと何ら変わらない。

 ポリゴンに見えないのは、この世界に慣れすぎていて、ここは新マップかなにかなのかという考えも、すぐに消えた。

 

 ──ウィンドウが出ない。

 

 いや、出るのだ。しかし。

 正確には、あの慣れ親しんだSAOのウィンドウが出ない。

しかし。

 

「名前も...レベルも...変わってない。」

 

 装備品、異常なし。

 武具類、異常なし。

 ステータス値、異常、あり。

 

「...んだこのステータス!?」

 

 まず驚いたのは、HPが明らかに多くなっている。

 そしてその下、MPという表示。

 古くからあるRPGゲームには、物理と魔法が存在するが、SAOに魔法というものはなかった。

 マジックアイテムというものはあったが、あくまでそれは結晶の類。

 大人数に効果をかけられるような、そんな大それたものではない。

 しかしこのMPゲージ。

 

「色といい、名称といい...マジックポイント、だよなぁ...」

 

 さっきまでやってたゲームに存在しないものがあるだけで、人はこんなに戸惑うのか。

 

「っつってもなぁ...詠唱とかわかんねえし...」

 

 とりあえず周りにだれもいないことを確認して、一つ、息を吐く。

 

『フレイム』

 

 と呟いた瞬間、掌から火の玉が生まれ、すぐ近くに着地し、小さく爆発した。

 

「うおっ!?」

 

 出ると思ってなかった俺は、思わず驚いた。

 

「はっ...面白れぇ!!」

 

 魔法が使えることに楽しさを見出したが、ふと、ここでは俺の扱いはどうなってるのかが気になった。

 さっき見た感じだと、名前も用意されているし、レベルやHPも(だいぶ異常な数値だが)存在している。

 しかし、俺はこの世界から見れば異邦人だ、だとするならば。

 はやる気持ちでウィンドウを出し、とあるボタンを探す。

 もちろん、ログアウトボタン。

 

「あった...!」

 

 震える指でそれをタップする、が。

《現在は使用できません》という簡素なメッセージが一つだけ。

 

「はぁ...そんなに甘くねえか...」

 

 まあでも、ログアウトボタンがあると分かっただけでも十分収穫だと自分を納得させる。

 

「ま、ログアウトっていう文字があるだけで精神的に安らぐなぁ...」

 

 今まで自分がやっていたデス(人生)ゲームは改めて異常なんだと理解した。

 

「現実、か」

 

 あっちでは俺が突然いなくなってパニックを起こしているだろうか...

 いや、俺がいなくなったとしても、戦力がちょっと消えたぐらいに思っているだろう。

 

「Roseliaには、迷惑かけるなぁ...」

 

 このゲームから出れる時が来たら、精いっぱい恩返ししてやろうと、心に誓った。

 

 ────────────────────────────────────────

 

 ──一週間後

 

 いまだ脱出の糸口はつかめていない。

 それどころか、手詰まりが増えた。

 

「どーすりゃいいんだよ...」

 

 この一週間で使える魔法もだいぶ増えた。

 ただ、長ったらしい詠唱は覚えていられないし、どうせこの世界を出たら使わないものだ。

 

「あ、そういえば...」

 

 あの世界で通用した俺の剣技がこっちでも使えるかを試していなかった。

 あまり期待はしないが、物は試しだ。

 とりあえず試しに、右手を剣ごと引き、左半身を前に出す。

 片手突進技《レイジスパイク》の構えをとる。

 

「はぁっ...はっ!」

 

 左足で地面を蹴った瞬間、体が勝手に加速した。

 右手に持った剣も、心なしか光っている。

 間違いない、『システムアシスト』に『ライトエフェクト』。

 

「マジか、すげえな...」

 

 この世界には、ソードスキルが存在している。

 

「なら、やることは一つだよな...!」

 

 まずは手馴らしに《ホリゾンタル》と《バーチカル》。

 そのままの流れで《ホリゾンタル・アーク》と《バーチカル・アーク》。

 少し体が温まってきたので《シャープネイル》と《サベージ・フルクラム》。

 いい手ごたえを感じながら《ホリゾンタル・スクエア》と《バーチカル・スクエア》。

 少し息を吐いて集中を解き、また入りなおす。

 

「はっ...!」

 

 7連撃《デッドリー・シンズ》、8連撃《ハウリング・オクターブ》。

 そして10連撃、《ノヴァ・アセンション》。

 驚いたことに、今までの行ってきたソードスキルは、すべて実装されていた。

 

「おぉ...」パチパチ

「?...あんたがた、どっから湧いたの?」

 

 気づいたら囲まれてた。

 どうやら俺の、どこまでソードスキルを使えるかという実験を、剣舞かなんかだと感じ、見に来たのだろう。

 

「あ、あぁ..なるほどねぇ...(こん中に俺がSAOから来たって言って信じるやつが...いねえだろうな)」

 

 観衆ををどかすのもなんか申し訳ないので、どうせならと思い、もう一本剣を取り出す。

 本来なら、この装備はイレギュラーであり、スキルは当然出せない。

 しかし、このSAOとは違う世界なら。

 

「はぁっ!」

 

 右足で地面を蹴ると、体が勝手に動く。

 

「(行けるっ...!)」

 

 二刀流突進技、《ダブル・サーキュラー》。

 そのままそこで二刀同時斬り、《エンド・リボルバー》。

 

「くっ...おおおっ!!!」

 

 止まりそうになる体を無理やり動かす。

 これぞ二刀流奥義、《スターバースト・ストリーム》。

 星の瞬きのような16連撃を出し切ると、また周りから歓声が湧く。

 

「あはは...どうもどうも...」

 

 ──────────────────────────────────────────────────

 

 観衆の輪から抜け出し、誰もいない平野で体を倒して伸びていた。

 

「SAOじゃないこの世界で...ソードスキルが使えるとは...」

「あ、あの...?」

「ん...?」

 

 どこかで聞き覚えのある声だ。

 凛としててか細い、しかし確かに芯のある声。

 

「りん!?」

「わっ...!ビ、ビックリした...」

 

 起き上がってみると、赤い装備で一式を固めた、黒髪ロングの女の子がいた。

 

「(りんなのか...?)えーと...どうしたんです?」

「さっきの剣舞、凄かったなって...それで、えっと...」

 

 この話し方、このどもり方、そして話している時の視線の合わなさ。

 間違いなく俺が知っているりんにそっくり、いやむしろ本人と言っても差支えはない。

 

「さっきの...あぁ、あれか」

「その...現実で、何かやられてるんですか...?」

「いや、そんなことは...」

 

 とそこまで言ってから、ふと考える。

 SAOはもう一つの現実、そしてこの世界の人間たちにはソードスキルが剣舞に見えた。

 つまり...何かやってると言っても差し支えない...?(あります)

 と、そこまで考えてから頭を振ってその考えを追い出す。

 

「いや、なんもやってないよ。中学ぐらいまでは運動部入ってたけど、今はさっぱり」

「そ、そうですか...()()()()()()()()()()...()()()()()...動体視力がいいんですね...」

 

 待て、今なんて言った?

 キーボード操作?

 ということはこの世界は、()()()()()()()()()()()()()()()()のか?

 危険はあるが、確かめるしかない。

 

「あ、あのさ」

「?はい」

「俺がもし、現実じゃない他の世界から来たって言ったら、信じるか?」

「それは...今話題の、SAOのような?」

 

 言葉を使わず、頷いて肯定する。

 

「それは...信じることはできません。ごめんなさい」

「まぁ、そうだよなぁ...」

「仮に、あなたが...SAOから来ていたとしても...それは証明できるものではないですから」

 

 なるほどなぁと大きくため息をついてから、再び座り込む。

 

「いきなり変なこと言って悪かった。じゃあ、俺はこれで」

 

 とにかく、もっと情報を集めなければ。

 

「ま、待ってください...!」

 

 か細い声に呼び止められる。

 

「よ、よかったら、フレンド登録、しませんか?」

「...俺が何者かもわかんないのに、いいんですか?」

「...悪い人では、無いのはわかります。それに、初対面なのに、なんか知ってる感じが、するんです」

「...フレンド、しましょうか。俺も、知ってる感じがします」

 

 まぁ、知ってるも何も、ギルメンなんだけど。

とは言わない。言ったってしょうがない。

 

「さて...と、あ、そうだ。あなた、名前は?」

「私、ですか?『RinRin』と、言います」

「俺は『Yuito』だ。よろしくりんりんさん」

 

 




とりあえず前日譚前半はこんなもんで、また次回という感じで。



あ、そういえば、UA5000、お気に入り50件突破ありがとうございます。
記念と言っては何ですが、頭を使わなくても読めるようなイチャイチャ回というか、そういうものを書きたいと思っています。
もしよければ、活動報告の方にリクボックスを置いておくので、書いていただけると幸いです。
リクエストボックス→ https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=270470&uid=220152


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中編 剣聖、対人戦。

コラボ前日譚中編。
…書きたいもん多すぎて、3つに分けちゃった。
初めてのスマホ執筆で、分からないことが多すぎて、読みずらいのは申し訳ない。
それでは、どうぞ。


俺がこの世界に来て1週間と少し、りんりんさんともう一人、あこさんという人と仲良くなった。

 

 

...この世界のあこも、元気な子らしい。

 

 

聖堕天使あこ姫「ねーねーユイトくん!」

Yu「何でしょうあこさん」

聖堕天使あこ姫「ユイトくんは、決闘の経験って、ある?」

Yu「(決闘、デュエルのことかな)まあ、経験がないわけじゃないけど…」

聖堕天使あこ姫「あこね、この前弟子と決闘したの!」

Yu「で、弟子?…そんなシステム、あるの?」

RinRin「ううん。あこちゃんは、makoくんっていう子を弟子って呼んでるの。そういうシステムがあるわけじゃないよ?」

 

 

なるほど、つまりあこさんは弟子と戦ったわけだ。

 

 

Yu「で、その決闘はどっちが勝ったんです?」

聖堕天使あこ姫「もちろんあこだよ!って言いたかったなぁ…」

Yu「と、いうと?」

RinRin「makoくんと、あこちゃんの大技がぶつかったときに、パソコンが落ちちゃって…」

Yu「なるほど、処理落ちか」

 

 

大技ぶつけたごときで落ちるパソコンとは。

 

 

しかし。

 

 

Yu「そのmakoくんっていう人、気になるな」

聖堕天使あこ姫「弟子にはあげないよ!?」

Yu「いらない...じゃなくて。makoくんと、デュエルしたいなって」

聖堕天使あこ姫「えぇ!?なにそれ!?面白そう!」

 

 

気になるんだ。

 

 

そのmakoという人物が。

 

 

RinRin「明日は学校もないし、練習も午前中までだから、帰りに誘ってみようか?」

聖堕天使あこ姫「そうだね!…ユイトくん!その決闘、あこたちも混ざっていい?」

Yu「あぁ...3対1かぁ...問題ないですよ。やりましょう...ちなみにmakoくんって、どんくらい強いんです?」

RinRin「私と同じか、それ以上かな...」

Yu「…わかった。じゃあ明日、闘技場で待ってます。じゃ、俺はやることあるんで」

 

 

暫定明日、makoとの決闘が待っている。

 

 

その前に、やれることはやっておきたい。

 

 

この世界には魔法、というか遠距離攻撃がある。ということは、近距離戦に持ち込む必要がある、という事だ。

 

 

件のmakoは、あこの弟子、つまりネクロマンサーである可能性が高い。

 

 

そしてりんりんさんはウィザード。

 

 

誰一人として、近距離戦をやっては来ない。

 

 

ならば。

 

 

『今日16:00~20:00まで、闘技場内でデュエル相手募集。勝者にはレアアイテム譲渡。』

 

 

こんなもんでいいだろ。

 

 

よし、挑戦状は出した、あとは来るのを待つだけだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

Yu「うお、すげえ人。レアアイテムって響きだけでつられちゃうのか…」

 

 

闘技場にはすごい人だかり。

 

 

レアアイテム欲しさに集まったのなら、すごい執念だな。

 

 

Yu「えぇっと…とりあえず…あの張り紙をしたのは俺だ。自信のある人からどうぞ?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

100ぐらいから数えるのをやめたが、おそらくそれぐらいの戦闘をこなした。

 

 

「何なんだ…無茶苦茶だ、あの強さ…」

「ありえねえよ…()()()()()()()()...」

Yu「当たり判定がある技ならどんなもんでも防げるし、相殺できる」

 

 

わかったことは、大体の魔法は消せる。

 

 

それがどんな属性のものであれ、だいたいは消せる。

 

 

もちろん例外はある。

 

 

召喚系の魔法は防ぎようがない。

 

 

まあそこはプレイヤースキルでどうにかしよう。

 

 

Yu「今日は皆様、参加ありがとう。せめてものお気持ちですが、受け取って頂けると」

 

 

そう言いながら、革袋をオブジェクト。

 

 

中身は例のアイテムから金貨から何までたくさん。

 

 

Yu「じゃあ、俺はこれで」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

Yu「疲れた…」

 

 

流石に4時間、対人というのは骨が折れる。

 

 

というか、みんなキーボード操作なのにうますぎる。

 

 

フルダイブでやっと追いつけるスピードって…

 

 

Yu「これ、勝てるかな」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

RinRin『もうすぐ到着します』

Yu「そろそろ、か」

 

 

翌日、ウィザードとネクロマンサーを侍らせながら来たそいつは、異質な雰囲気を纏っていた。

 

 

Yu「やぁ、はじめまして」

 

 

やはり初対面の印象は大事だと思う。

どうもと力なく返す彼は、周りを見てから言った。

 

 

mako「全部そちらのギャラリーか何か?」

Yu「うーん、どうだろうね。気づけばこんなにたくさん」

 

 

どこから漏れたのか、本当にわからない。

 

 

というかこのmakoというプレイヤー、何かわからないものを感じる。

 

 

それならば、少し煽ってみようか。

 

 

Yu「そこの二人だけじゃ不安か?」

 

 

そう言うと、彼の雰囲気が変わった。

 

 

mako「…あんま調子に乗んなよ」

Yu「(こりゃ、腕がなるな)俺も本気で楽しめそうだ…!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ここがSAOなら、相当不謹慎だろうが、俺は今、すごく楽しんでいる。

3対1という状況のデュエルも、遠距離属性攻撃が飛んでくるこの感じも、バリアを張られる感じも。

 

 

何もかもが新鮮で。

 

 

Yu「(超楽しい…!)」

 

 

ここがSAOではないからかは分からないが、久しぶりに死の恐怖に怯えず、対プレイヤーを楽しめている気がする。

 

 

それでも、負けたくはない。

 

 

少し早いが、奥の手を使うとしよう。

 

 

Yu「じゃあ、そんなmakoさんにはいいものを見せてあげよう」

 

 

取り出したのはサブで使っている直剣。

 

 

それを構えて。

 

 

 

 

 

 

無防備に突っ立っているmakoくんの腹を切った。

 

 

Yu「ソードスキル《ホリゾンタル》」

 

 

しかし、HPを削りきった感触はなかった。

 

 

防御バフの恩恵だろうが、固すぎる。

 

 

Yu「それでも仕留めきれなかった、か」

mako「さっきのは......」

 

 

ここなら、ちょっと調子に乗ってもいいだろう。

 

 

Yu「何が起きたかわからないって顔だな、教えてやるよ。こいつはソードスキルって言って、まあこの世界には存在しない技だな」

 

 

実際出せたけど。

 

 

mako「お前......どっから来やがった......!」

Yu「......さぁ?」

 

 

答えるのも野暮だろう。

 

 

そう言うと、彼は新しい武器を、あこさんは白くなる。

 

 

mako「さぁ、やろうか剣聖」

聖堕天使あこ姫「ここからは第2ラウンドだよ!」

Yu「そうこなくちゃ、面白くねぇなぁ!」

 




後編へ続く。

砂糖のカタマリ様 《監視対象と約束された日々》→ https://syosetu.org/novel/251752/



新しく置いたやつ→ https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=270470&uid=220152


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後編 剣聖対戦士、決着。

コラボ回後編!!
まじで書きたいものを全部書いた。
それでは、どうぞ

5,000字とか行っちゃった、ユルシテ


新たに斧を持った彼、mako君と、《聖堕天使》と呼ばれる形態に変化したあこさん。

 

さっきは調子に乗ってそう来なくちゃ面白くないとか言ったが、1対3である都合上、こちらが不利だ。

 

 

 

mako「なら、その数分で終わらせます!」

 

聖堕天使あこ姫「了解!」

 

 

 

どうやらあの変化は時間制限があるらしい。

 

それなら、まだ勝機はある。

 

 

 

Yu「...来いっ!!」

 

 

 

mako君が斧を振るって向かってくる。

 

 

 

mako「カースロンド!!」

 

Yu「《バーチカル》ッ!」

 

 

 

mako君の斧、ものすごい質量だ。

 

片手剣一本では押される。

 

 

 

聖堕天使あこ姫「セイントリィー!!!」

 

 

 

Yu「(今の一瞬だけで詠唱を終わらせたのか!?)《シャープネイル》ッ...!」

 

 

 

左手に剣を出現させ、今の体制から取れるソードスキルを出す。

 

聖堕天使、とんでもない力だ。

 

火力が上がったうえ、詠唱の短縮も備わっているとなれば、先に術者を潰すほかない。

 

 

 

あこさんのセイントリィーを相殺し、そのまま右の剣を担いで、あこさんに接近する。

 

 

 

Yu「ソードスキル...《ソニック・リープ》!」

 

 

 

初動が早めの技、故に確実に入ると思ったのだが。

 

 

 

mako「させっかよっ!!」

 

Yu「(あの距離から一瞬で!?)」

 

 

 

mako君は俺の真後ろにいた。

 

その場所から回りこんで、俺のソニック・リープを真正面で弾いて見せた。

 

 

 

mako「あいつの攻撃は俺が引き受けます!師匠は構わず打ち続けてください!!」

 

Yu「(こりゃ、昨日の自分をひっぱたく必要がありそうだ...)こうなったら...借りるぞ、お前の技...」

 

 

 

両手に剣を持って、再び構える。

 

元の世界にいる、黒いあいつを模倣して。

 

左の剣を突き出して、そのまま体制を低く。

 

 

 

Yu「ソードスキル...《ダブル・サーキュラー》...!」

 

 

 

右足を踏み切って、左の剣で斧ごと貫き、体勢を崩す。

 

続いて右の剣をmako君の首に...

 

 

 

RinRin「真言くんに防御バフを付与!」

 

聖堕天使あこ姫「詠唱短縮...デッドリィー!!」

 

Yu「ぐっ...(っぶねぇ...)」

 

 

 

どうにか身を捻って躱したが、直撃していたらあの斧が降ってきていたことだろう。

 

いくらここがSAOの世界じゃなくたって、HPが0になる光景は見たくない。

 

第一、目の前の相手に現実じゃないからと言って手を抜くのはあまりにも失礼だ。

 

なら、出来ることすべてをやる必要があるだろう。

 

そう思い思考を切り替えて、目の前で考え事をしているmako君にアタック。

 

  

 

Yu「考え事か?」

 

 

 

そう言いながら、右から左から、剣の猛襲を浴びせる。

 

それにしても、mako君の斧、すごい硬さだ。

 

まぁ、武器である以上は、絶対的な弱点があるんだけどな。

 

今まで俺の剣を受け止めてきたmako君の斧、そう長くは持つまい。

 

だから、ここで決める。

 

 

 

 

 

Yu「ソードスキル」

 

mako「きや...がれぇっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

彼はモンスターでもなければ、PK常習犯でもない。

 

しかし、ここで負けるわけにはいかない。

 

なぜか?剣士のプライドがそうさせるんだ。

 

《選定の剣士》なんて呼ばれてる、俺のちっぽけなプライドが。

 

 

 

 

 

Yu「《スターバースト・ストリーム》...!」

 

 

 

 

 

星の瞬きの名を持つ、16連撃のソードスキル。

 

初見では絶対に防御に回る。そして、mako君は見事に策にはまってくれた。

 

そしてメインアームの斧を盾にして。

 

PvPっていうのは、相手の出方を読んで、それが当たった時が、本当に気持ちがいい。

 

 

 

 

 

Yu「武器破壊(アームブラスト)

 

mako「え.........」

 

 

 

 

 

俺の放った15連撃目で、彼の斧は耐久値を全損させ、砕け散った。

 

続く16連撃目で、彼の胸元を貫く...予定だった。

 

 

 

 

 

RinRin「くっ...うっ...」

 

Yu「嘘だろ...防がれた...!?」

 

 

 

 

 

mako君を貫くはずだった剣はRinRinさんを貫き、しかし彼らのHPはいまだに5割を維持している。

 

 

 

 

 

ソードスキルのクールタイムが、今になって牙を向く。

 

後一撃、いや二撃当てれば、mako君を止められるのに...。

 

硬直を食らっている間に、mako君はRinRinさんを連れて飛び退り、代わりにあこさんが詠唱を始めている。

 

詠唱が聞こえた瞬間に、体に掛かる重みが消える。

 

 

 

 

 

Yu「逃...がすかぁっ!!」

 

 

 

 

 

すでに距離を取られているが、味方の詠唱の関係もあって近づけないだろうと踏み、一気に突っ込む。

 

 

 

 

 

RinRin「アイスバーン!」

 

Yu「チッ!」

 

 

 

 

 

氷塊が足元で邪魔をする。

 

 

 

 

 

mako「定命の円環を逸脱せし常闇の使徒に我命ず、其の闇の力をもってして彼の古の戦士たちを深淵より蘇らせたまえ!...ウォーリアーズ!!足止めを!!」

 

 

 

 

 

例の骸骨どもだ。

 

周りを囲んでいる。

 

突破口は開けるだろうが、出れたとしてもあこさんの魔法から逃れられるとは思えない。

 

だけど、ここであきらめるわけにはいかない。

 

俺が、あの世界でただ一人使えた、ソードスキルを...!

 

二振りの剣を収納し、天に向かって手を掲げる。

 

その手を軽く握り、何かを掴む。

 

本来ならばソードスキルだが、この世界じゃ、きっと魔法扱いだろう。

 

 

 

 

 

Yu「我が体内に存在する魔力を以て、聖剣の完成とする...!」

 

 

 

 

 

瞬間、手の中に確かな重量が加わる。

 

それと同時に、周りを囲んでいた骸骨どもが消え失せる。

 

この聖剣を以て、すべてを終わらせよう...!

 

 

 

 

 

聖堕天使あこ姫「ラグナロク・ゼロ!!

 

 

 

 

 

 

 

Yu「エクス...カリバッー!!!

 

 

 

 

 

二つの光が交わる──ー

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

Yu「...うわ...立ってられんのもやっとのはずだぞ...」

 

 

 

 

 

膝をついている者の前に、守るようにして立ちふさがる男が一人、mako君だ。

 

 

 

 

 

Yu「さすがにこれは...正面から受けて耐えきれる技じゃねえんだけどな...」

 

 

 

 

 

ましてや、メインアームがぶっ壊れた彼では。

 

 

 

 

 

RinRin「あと...は...お...ねが...い」

 

Yu「一人で耐えきったんじゃ、なさそうだ。ただ、いくらHPと魔力をもらったからって無傷じゃないはずだ。立ってられるのがやっとのはず...」

 

 

 

 

 

そう言ったとき、彼を取り囲むオーラが変わったように見えた。

 

いや、実際、変わっている。

 

黒い灰が、彼の周りを漂っている。

 

それと同時に、彼の雰囲気も変わった。

 

 

 

 

 

mako「黒き兵ども 黒き灰となりて 再びその命散らすとき 闇より暗い黒き神 顕現する」

 

Yu「まだ、やる気かよ...」

 

 

 

 

 

二振りの剣を再び呼び出して、攻撃に備える。

 

 

 

 

 

mako「黒き無念 黒き執念 黒き憎悪 抑えることなかれ 全てを開放し 彼の者に」

 

 

 

 

 

彼の周りの黒い灰が、空中に浮きあがる。

 

そして、mako君がその中心まで浮き上がり...

 

 

 

 

 

mako「繝ッ繝ャ繝ッ繝ャ繝弱ぞ繝??繧ヲ繝イ」

 

Yu「...なん...だ...!?」

 

 

 

 

 

なんて言ったかは聞き取れなかったが、mako君が黒い灰に飲み込まれていく。

 

 

 

 

 

Yu「(...この感じ...フロアボスか...!?いや、それ以上だ...相手はプログラムじゃない、人間だ...!クォーターのボスより、絶対に厄介だ...!)」

 

 

 

 

 

mako「繝?繧ッ繝ュ繝弱き繝溘?倥こ繝ウ繧イ繝ウ縲」

 

 

 

 

 

黒い灰は、明確な形を持って、彼の周りを漂う。

 

そこに現れた形は、髑髏だった。

 

そしてその骸骨の上にHPバーが表示される。

 

 

 

 

 

Yu「ムクロ、ノ、カミ...骸骨どもの残滓か...?」

 

 

 

 

 

顔を上げないと全体が見えないなんて。

 

 

 

 

 

Yu「フロアボスみたいな感じ出してんな...骸の神...なるほどな...」

 

 

 

mako「ムクロノカミ」

 

 

 

Yu「!!」

 

 

 

mako「〘セイサイ〙」

 

 

 

 

 

そう唱えた、いや呟いた瞬間に、骸骨の右手が降ってくる。

 

しかし、その右手はまともに食らえば一発死。

 

かすり傷でもHPを2割持っていかれた。

 

 

 

 

 

Yu「(グリームアイズの時見たく、受け流すことはできねえか...!)ぐっ...!」

 

 

 

 

 

右手がゆっくりと戻っていく。

 

このスピードなら、懐に潜り込めそうだ。

 

 

 

 

 

mako「〘セイサイ〙」

 

Yu「は!?」

 

 

 

 

 

ものすごいスピードで二撃目、三撃目、四撃目と続く。

 

まともに当たらないように避けるだけでも手いっぱいだ。

 

この威力の腕振りが通常技判定なら、ぶっ壊れもいいとこだ。

 

しかし。

 

 

 

 

 

mako「がっ...!」

 

 

 

 

 

という声とともに、mako君のHPゲージが1割減る。

 

魔力だけではなく、文字通り力を出し切ってまで、俺を倒すつもりでいるらしい。

 

でも、ただ避けているだけじゃ、この勝負は終わらない。

 

 

 

 

 

mako「〘セイサイ〙!!」

 

Yu「(ここっ!)今!」

 

 

 

 

 

骸骨の腕に乗り、駆け上る。

 

おそらくmako君がいる胸の中心が、弱点に位置する部分だろう。

 

 

 

 

 

Yu「ソードスキル...!?」

 

mako「ムクロノカミ〘シデ〙」

 

 

 

 

 

詠唱とともに、俺の足に何かが引っ付く。

 

短くて細い腕が、俺の足を掴んでいる。

 

やむなく彼の右腕ごと切り落とすが、そこで判断を間違ったことに気付いた。

 

俺が着地したとき、すでに彼の腕は再生してある。

 

故に、腕の振り降ろしがまともに当たる。

 

 

 

 

 

Yu「あっ...がっ...な...に...を...!」

 

 

 

 

 

mako君が俺を持ち上げている。

 

しかし、ここで降参を宣言するほど、俺は大人じゃない。

 

あるいは、ここで負けを認めるほど、出来た人間じゃない。

 

 

 

 

 

Yu「ま...だだ...!負けちゃ...いない...!」

 

mako「ムクロノカミ〘シンジ──ー」

 

 

 

 

 

そう言った瞬間、彼の体が崩れた。

 

咄嗟に彼のHPバーを見る。

 

残り数ドット。

 

彼の骸骨は、その形を無に帰していく。

 

ここで決める。

 

防御バフなんか関係ない。

 

俺が今出せる、最高で最大火力の技を、最後にぶつけるんだ。

 

それで、お別れしよう。

 

 

 

 

 

Yu「《ジ・イクリプス》ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

骸骨のコアごと、彼を斬る。

 

崩れ落ちる骸骨を見ながら、mako君と目が合う。

 

彼は笑っていた。

 

自分が負けたにも関わらず。

 

それは、この世界がゲームだからであろうか?

 

いや、きっと彼は、そういう人間だからだ。

 

心優しく、しかし本気になるときはなる。

 

そんな、俺より人間らしい奴だった。

 

ともあれ、これで決着がついた。

 

mako君のHPは0、俺のHPは少しだけ残っている。

 

もしmako君にMPが少しでもあれば、魔法を打たれて俺も死ぬだろうが。

 

まあ、そんなことはしないだろう。

 

 

 

 

 

mako「俺のターンはな?」

 

 

 

 

 

そう言ったとき、骸骨の影でタイミングを計っていたあこさんと、目が合った。

 

mako君は、彼が出しうるすべての力を、文字通り振り絞って、俺の足止めをしたんだ。

 

俺のHPをぎりぎりまで削って。

 

だとすれば、彼のHP切れも計算のうち、だったのだろうか?

 

 

 

 

 

聖堕天使あこ姫「喰らえっ!!デットリィィィィーーー!!!」

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あこさんのデッドリィーを食らって、地面に落ちる。

 

左上にある俺のHPは、もうなくなっている。

 

 

 

 

 

Yu「(俺、負けたんだな...)俺の、負けだ」

 

 

 

 

 

3人であるということを失念していた、俺の意識配分の問題だな。

 

でも、こうやって対プレイヤー戦をやったのなんて、初めてだった。

 

楽しかった。

 

 

 

 

 

mako「...お前、本当は何者なんだ?」

 

 

 

 

 

mako君がそう聞く。

 

ぶっちゃけ答える気も失せていたが、最後に交わす会話として、それはあまりにも味気ないから、答えることにした。

 

まあでも、明確な答えは言わない。

 

 

 

 

 

Yu「俺はYuitoだよ。この世界じゃ、あんたもmakoなんだろ?それでいいじゃねえの」

 

mako「そう...だな」

 

 

 

 

 

男二人、闘技場の真ん中で仰向けに倒れながら会話を紡ぐ。

 

いつの間にか湧いていたギャラリーは、誰一人としていなくなっていた。

 

 

 

 

 

mako「あぁ...くっそ疲れた...。二度とお前とは戦いたくねぇ...」

 

Yu「(そんな悲しいことい言うなよ)...俺も、当分いいかな...」

 

mako「なぁ...他にもいろいろ聞きたいことあるんだけど...!?」

 

 

 

 

 

mako君が俺の方を見て言葉を止めた。

 

見ると、俺の体は青く光り、腕や足にはヒビが入っている。

 

 

 

 

 

mako「お前、それ...!?」

 

Yu「(時間、ってやつかな)あ...もう、か...」

 

 

 

 

 

最後ぐらい、真正面から顔を見てやろう。

 

...意外とイケメンだな、mako君。

 

 

 

 

 

Yu「ありがとな、mako。おかげで、久しぶりに...いろんな制約に縛られず...本気で楽しめた...」

 

 

 

 

 

mako君は何も言わない。

 

最後は笑顔で。

 

悲しい別れには、しなくないから。

 

それに、()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

Yu「...じゃあな...!」

 

 

 

 

 

ポリゴンの結晶になる間際、彼に送ったフレンド申請は届いただろうか。

 

まぁ、届いていても、届いていなくてもいい。

 

彼のことは、決して忘れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

「...さん....トさん...」

 

 

 

 

 

誰かが呼んでいる。

 

 

 

 

 

R「ユイトさん...起きてください...」

 

Yu「ん...ぅ...」

 

 

 

 

 

隣には見知った格好のRinRinさん。

 

ウィンドウを開いてみると、慣れ親しんだ音と共に、見慣れたウィンドウが開いた。

 

そして、当然のごとく無いログアウトボタン。

 

 

 

 

 

Yu「...帰って、来たんだな...」

 

R「...大丈夫、ですか?」

 

Yu「あ、あぁ...平気。ちょっとリアルな夢を見てたみたいだ」

 

R「リアルな、夢?」

 

Yu「そう。気になるなら、少し語ろうか?」

 

R「はい、お願いします...」

 

 

 

 

 

なぁ、mako。

 

makoがこっちにいたら、めちゃめちゃ強いと思う。

 

でも、どうか。

 

makoには、その世界で、斧を振り回しててくれ。

 

俺の大事な人にそっくりな、その人を守るために。

 

 

 

 

 

Yu「そんじゃまぁ、語るとするかぁ...!」

 

 

 

 

 

大事な人を護る、俺の知る限り、最強の戦士、mako(神代真言)の話を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読了感謝!
書いてるうちに、「あれ、これってプログレッシブ的なあれじゃね?」とか考えた私は、ちょいちょい台詞改変したりしてやってます。
Yuito目線のVSmako君ということで、一つ。
というわけで、コラボをしてくれた砂糖のカタマリ様、本当にありがとうございます!!
それプラス前日譚、後日譚を書くことを快諾してくれて、マジでありがとうございました!!
監視対象も大詰め、というかラスト1話!(マジで終わってほしくないけど応援する)
またいつか、彼が現実に帰ってきたとき、合間見えると信じて。


砂糖のカタマリ様:小説『監視対象と約束された日々』→https://syosetu.org/novel/251752/



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Neo Fantasy Online(swordman VS necromancer)
序 剣聖、NFOを始める。(狂戦士の記憶が消える)


朝方にひっそり投稿。


思いついたらやるしかない、けれどなんかシリアスにもしたい。
せや、記憶消すべって感じで消してます。不憫だね。

お名前は出てきませんがとある投稿者様のお話を使わせていただいております。

それでは、どうぞ。


Yu「じゃ、お疲れ」

Roselia「お疲れ様(でした)」

 

 

唯斗「は、ぁ......」

 

大きく息を吐き出して、体をくねらせる。

傍から見たら気持ち悪いけど、俺としては凝り固まった体をほぐすにはちょうどいい運動なんだ。

 

唯斗「よしっと......ん?」

 

携帯の通知ランプが光っている。

内容を見てみると、メッセージアプリのアイコン。

開いてみると、彼女からだった。

 

 

『明日の土曜日、1日暇でしょうか?』

 

唯斗「明日は......『はい、暇ですが』っと」

 

『それなら、明日は1日付き合っていただけないですか?』

 

唯斗「『わかりました、楽しみです』......これ、デートって解釈でいいのか?」

 

『詳しいことはあとで纏めて送ります』

 

唯斗「まとめて......というか、相変わらずメッセージになると流暢に喋るよなぁ......」

 

 

顔が見えてない状態だと、俺の彼女はよくしゃべる。

まぁ、それはリアルを知ってる人間じゃないと分からんことだけどね。

で、そのギャップはとてもかわいい。

ま、先輩だけど。

 

で、このメッセージの数分後、めちゃめちゃ纏められた資料が届いたのは驚いた。

 


 

唯斗「待ち合わせ場所は......ここでいいんだよな?」

 

昨日届いた資料を見ながら、待ち合わせの場所に到着した。

現在時刻は9:30。

17:00ぐらいまで予定がびっしりだった気がするけど、とりあえず起きれてよかった。

 

燐子「ゆ、ゆい、くん......?」

唯斗「あ、おはようございます、燐子先輩」

燐子「むう......今は、学校じゃないんだよ?」

 

やらかした。

学校以外じゃ先輩と呼ばれることを嫌がるんだった。

 

.....いや、むしろ学校でも嫌がってるような気がするけど。

 

 

唯斗「......わかった。りん、おはよう」

燐子「うん、おはようゆいくん」

 

お互いにはにかみながらあいさつを交わす。

 

燐子「じゃあ、行こっか」

唯斗「了解......で、どこ行くんだっけ」

燐子「読んで、無いの?」

唯斗「そもそも書いてなかったんだけど?」

燐子「あっ......えへへ、忘れてた。今日はね、ネットカフェに、行きます」

唯斗「ネットカフェ......」

 

ネットカフェと言うと、めちゃめちゃ高機能なパソコンを使えるあそこだろうか。

 

燐子「まぁ、大体合ってるけど......今日は、ゲームをしようと思って」

唯斗「ゲーム?」

燐子「うん。今日やるのは、NFO(ネオファンタジーオンライン)、だよ」

 


 

NFOという名前は、前にも聞いたことがあった。

あことりんが良くやってるゲームだと聞いている。

あと、紗夜先輩も。

 

あの人、ゲームとかハマるんだな。

 

それは置いといて。

 

NFOって確か、PCゲームだった気がするんだけど。

 

燐子「......どうしたの?」

唯斗「あー......その、俺、コマンドゲー苦手で」

燐子「え?」

唯斗「いや、NFOってPCゲームでしょ?そりゃ当然覚えなきゃいけない色々があるわけで......」

燐子「ふふっ......そう言うと思った。それくらい知ってるよ」

 

 

りんは俺の前に出ると、不敵に笑って見せた。

 

 

唯斗「知ってる......?言ったっけ、俺」

燐子「うん。コマンドゲームは苦手って聞いてたから、私が教えようかな、って......」

 

 

顔を赤らめて背けた。

 

......うん、可愛い。

 

 

唯斗「ありがと、りん。じゃ、ご教授に与ろうかな」

燐子「ふふっ。お姉さんに、任せて。......なんて」

 

 

やっぱ可愛い。

 


 

そんなわけで、無事にネットカフェに着いた。

 

唯斗「う、わぁ......でっけえし、ひろ......」

燐子「ゆいくん、受け付け終わったから、行くよ」

唯斗「了解」

 

俺とりんは隣同士の部屋に入った。

ただ、いちいち戻ったり行ったりも面倒ということで、りんと通話しながら、やり方を教わる寸法だ。

 

『あー......聞こえる?』

唯斗「ばっちり。で、どうすればいいの?」

『まずはNFOを起動して、新規登録ってところをクリック』

唯斗「......ユーザー登録って出たけど」

『うん、それでいいの。そしたら、名前とパスワード入れて』

唯斗「名前は......Yuito、パスは、まぁ、これで。入れたよ」

『じゃあ、そのまま登録完了押して、中で待ってて』

唯斗「了解。......リンク・スタート、なんつって」

『ふふっ。ゆいくんらしいね』

 

 

 

 

 

 

 

Yu「ここが......」

 

周りに広がる草原。

あたりに建つ建物。

廃墟や、酒屋や、宿屋に小屋。

どれもフルダイブとは違うけど、モニター越しにもわかるグラフィックの良さ。

モニター越しに見る世界も、きれいだ。

 

R『お待たせ』

Yu「そんな待ってないから大丈......夫......?」

 

りんの姿を見た途端、強烈な既視感に襲われた。

赤いローブを纏った、ウィザード職の彼女。

確か、どこかで。

 


 

 

???「全部そちらのギャラリーか何か?」

???「セイントリィー!!」

???「逵溯ィ?縺上sに防御バフを付与!」

???「螳壼多縺ョ蜀?腸繧帝?ク閼ア縺帙@蟶ク髣??菴ソ蠕偵↓謌大多縺壹?∝?縺ョ髣??蜉帙r繧ゅ▲縺ヲ縺励※蠖シ縺ョ蜿、縺ョ謌ヲ螢ォ縺溘■繧呈キア豺オ繧医j陂?i縺帙◆縺セ縺!」

 

 

???「繝?繧ッ繝ュ繝弱き繝」

 


 

 

Yu「思い、出した」

 

これは、アイツとの記憶だ。

忘れちゃいけないはずの、アイツとの記憶。

俺と同じ彼女(白金燐子)を愛しく思い、死んでも守る覚悟を持って斬り合った、異世界のアイツ。

けど、名前だけ思い出せない。

何でだ?

 

R『だい、じょうぶ?』

Yu「あ、あぁ......平気」

 

嘘だ。平気じゃない。

平気なわけがない。

そんな大事なやつのこと忘れて、何が平気だというのだ。

 

R『ほんとに、平気......?』

Yu「ごめん、嘘ついた。全然大丈夫じゃないや。忘れちゃいけない奴、忘れた」

R『そ、れは......?』

Yu「別世界の、記憶」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




狂戦士ってわざわざ文字化けさせたのに使いどころなくなっちゃった。

...これ、本元にバレたらなんて言われるのかな()


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破 剣聖、死霊使いになる。

タイトル回収はだいぶ後半になってから。


ーーそれは、いつかの物語。

誰かに語られたはずの、魔法の世界の話。

そこで出会った、狂戦士の話。

 

R『あっ、一回聞いたね。夢かもしれなくて、そうじゃないかもって話』

Yu「うん。そっちにもRoseliaがいた。で、そいつはRoseliaを護ってた」

 

ダメだ。姿は出てくる。

声も出てくるのに、名前だけ出てこない。

むず痒い。

そして、ふがいない。

忘れていいわけない名前だったはずだ。

なのに、何故?

 

R『夢だったら、おぼろげになるのも......』

Yu「だとしたら、尚更思い出したい。夢で終わらせたくない」

 

これは俺のわがままだ。

 

R『......そっか。じゃあ、探そっか』

Yu「......!いいの?」

R『うん。実は、私もあんまりよく覚えてないの。だから、一緒に探そう?』

Yu「......うん」

 


 

まず覚えているのは、この世界で初めてソードスキルを発動させた木の下。

この付近で倒れていた俺は、アインクラッドじゃないことに気付いてすごく焦った記憶がある。

 

Yu「......っ!!」

 

木の幹にソードスキルを打ち込む。

あの時と同じ順番で。

二本目の剣まで抜いて、撃てる技をすべて打った後、体に残る違和感に一種の安心感を覚えた。

 

()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()

 

今までの動きは再現しているだけ。

限りなく本物に近づけていたって、所詮は模倣。

それ以上は、行かない。

 

Yu「はぁっ......はぁっ......」

R『どう......?何か、思い出せた?』

Yu「いや......さっぱり。無駄に疲れただけだ......?」

 

この感じ。

俺が芝に倒れ、りんがそれを見下ろしてる図。

俺があの世界のりん(繝舌?繧オ繝シ繧ォ繝シの彼女)と始めた話したときの感じにそっくりだ。

 

Yu「......よし、移動しよう。もうちょいで、何かつかめるから」

R『うん』

 


 

次にやってきたのは、闘技場。

どうやら今は、レアアイテムをかけてタイマンのデュエルを行ってるようだ。

飛び込み参加も可能と書いてある。

 

R『やりたいの?』

Yu「......なんか、見覚えがあってね。いい?」

R『ゆい君、今自分の状況、わかってる?』

Yu「......あ」

 

忘れてた。

この世界はSAOでもなければ、旧ALOでもない。

つまり、今の俺はレベル1。

いわば、雑魚キャラだ。

 

R『アーマーぐらいならあげるけど......本当にやるの?』

Yu「ありがとう。......行ってくる」

 

そう言って、闘技場に上がる。

 

「お、兄ちゃんやるかい?」

Yu「あぁ。よろしく」

「みたとこレベル低そうだからなぁ......どうだい、ハンデで俺は魔法しか使わねえ」

Yu「......わかった」

「おっしゃ。制限時間は1分。時間になった時にHPが多い方が勝ちだ。回復魔法とかもありだからな。さ、準備は良いか?」

Yu「あぁ。いつでも」

「じゃあ、行くぞ......!」

 

対よろ、と心の中で言い、剣を抜いて床を蹴る。

ハンデで魔法しか使わないのなら、距離を取るのは間違ってる。

なら、直線状に突っ走る!

と、相手の手がきらめく。

咄嗟に横回避を入れたおかげで助かったが、入れていなかったら今頃の俺の体は丸焦げだったろう。

 

「おう、よく避けたな。じゃあ、こいつはどうかなっ!?」

Yu「っ!?」

 

今度は足元が凍った。

1秒遅ければ俺の足は凍結されていた。

 

「ほぉ、兄ちゃん反射神経良いな。リアルでなんかやってんのか?」

Yu「あいにくと俺は、ゲームだけが生きがいなもんでな......っ!」

 

飛んでくる魔法を避けつつ、接近を試みるが、近づくと大範囲の炎攻撃が来る。

まるでボスの思考ルーチンだ。

幸い距離は短いので、ちょっとバックステップを入れれば目の前で消えるのだが、後ろに下がると今度は追尾式の闇攻撃が来る。

 

「お、残り10秒だな。俺のMPもそろそろ尽きちまいそうだ」

Yu「......っ!」

 

別に、この試合の勝敗に意味はない。

ただ、勝たなきゃいけない気がする。

元『選定の剣士と呼ばれる俺のちっぽけなプライドが、そうさせるんだ。』

 

また、なにか思い出した気がする。

 

......そうだ。

 

ーー別に避けなくたっていいじゃないか。

 

そう考えた俺は、まっすぐ突っ込む。

速度の関係上、間に合わないと踏んだ相手は、扇状の大範囲炎魔法を放つ。

さっきまでなら、ここで後ろに下がっていたが。

 

Yu「()()()()()()()()()()()()()()()

 

剣を横に薙ぐ。

炎はそれだけで消え去り、俺の目の前は開けた。

 

Yu「はぁぁぁ!!!」

「っ!?」

 

再び、俺の目の前に炎魔法が展開される。

 

Yu「もう、効かねぇ!!」

 

魔法ごと、相手の腹を切り裂く。

残念ながら、深い傷とはならなかったが、俺が勝利するHPの減り方はした。

俺の方が、多く残ってる。

 

「兄ちゃん、やるな」

Yu「ありがとう。......これは」

「俺に勝った報酬だ。持ってけよ。使えるかどうかは、兄ちゃん次第だがな!がはは!!」

 

俺の肩を叩いて、上機嫌に去っていった。

アイテムボックスに送られていたアイテムは武器のようだった。

 

R『お疲れさま。すごかったね』

Yu「うん、疲れた......当分PvPは良いかなぁ...」

R『そういえば、何をもらったの?レアアイテムって?』

Yu「あぁ、見てみようか」

 

ストレージを展開し、「???」となっているアイテムを取り出そうとして、エラーが出る。

 

R『あ、この武器。ネクロマンサー専用みたいだね。ゆいくん、クラスチェンジしよっか』

Yu「あぁ......まぁ、レベル2だし、いっか」

 

一旦始まりの村に戻って、りんに言われた通りの手続きを教会で行うと、俺の姿はナイトから黒いローブを羽織ったいかにもという格好になった。

 

R『ふふっ。似合ってるね』

Yu「そうか?......なんだか悪趣味に見えるぞ......?」

R『それより、これでさっきのアイテムが見れるよ』

Yu「そっか、それじゃあ......」

 

ストレージを操作。

「???」をタップし、装備を選択。

俺の右手に、デカすぎる斧が現れた。

 

Yu「重っ......何だ、これ」

R『えっと......アイテム名、出てると思うよ』

 

装備欄を見る。

 

『ソウルミノタウロスの斧』

 


 

Yu「武器破壊(アームブラスト)

???「え.........」

 


 

Yu「あっ......あぁ......!!」

R『どう、したの......?』

Yu「そうか、そうか......!これは......じゃあ、アイツは......!」

R『もしかして......』

 

デュエルが終わってから、初めて彼女の顔をまともに見た気がする。

 

Yu「全部、思い出した。この世界に来たことも。俺が忘れてたアイツの名前も」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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急 剣ノ神VS骸ノ神 Returns

とりあえず、やりたいことはできたので。




どうして、忘れていたんだろうか。

思えば、初めて「ここはどこ?」となっていたはずの話だったのに。

 

異世界のりんと会って、Roseliaに会って、ソイツに会った。

名を、「mako」と言った。

リアルネームは知らない。

いつか現実で会えたら、なんて言ったが、そもそも不可能だ。

俺とアイツじゃ、住む世界が違う。

いや、決して中二病的なあれじゃなく、物理的に。

俺には俺の世界があり、アイツにはアイツの世界がある。

この斧を握って、すべてを思い出した。

 

これは、俺があの時ぶっ壊した斧だ。

キリトの技を借りて、15連撃までを受けきったこの斧。

16連撃目は向こうのりんが身を挺して受けたっけ。

 

R『あ......私も、思い出してきたかも』

Yu「良かった。とりあえず、これはしまって......」

 

ネクロマンサーにクラスチェンジをしたばかりなので、まだレベルが足りていない。

さっきからずっと地味にHPが削られていたのはここだけの話だ。

 

R『......?』

Yu「ん、どうした?」

R『いや、なんか、声が......』

Yu「......怖いのだめだからな、心霊とか」

R『ううん、違う。もっとこう......』

 

そう言われたとき、何か嫌な予感がして、咄嗟にりんを抱えて横回避。

 

R『何!?』

Yu「なんかわかんねえけど......なんか、いる」

 

予想通り、俺のさっきまでいた場所には砂埃が立ち、中に影が見えている。

人型の影。

 

俺の予想通りなら、こいつは......

 

Yu「......よぉ」

???「......あぁ、お前もか」

 

そう呟く影は、だんだん影ではなくなっていく。

砂埃が止み、姿が明らかになる。

 

Yu「久しぶり、でいいのかな?」

???「あぁ、いいんじゃないか?もっとも、俺は今最高に苛立っているが」

Yu「何でだよ。剣と斧交えた仲だろ?」

???「どいつもこいつも、燐子先輩とイチャイチャしやがって......!」

R『え、私?』

Yu「いいじゃねえかよ。めでたくお前も付き合ったんだろ?」

 

そう言うと、そいつの顔は少しだけ柔らかくなった。

 

???「まぁ、そうだけど」

Yu「一緒に歌ったりもしたんだろ、しかも文化祭で。羨ましいなぁ」

???「だろ?......じゃ、なくてだな」

 

 

???「いつまで俺の名前秘密にしとくつもりだよ」

Yu「は?」

???「いや、こっちの話だ。わかってんだろ、今書いてるお前は」

 

そいつは空を指さしながらそう言う。

 

???「俺をここに呼んだのも。ユイトともう一回会わせたのも」

Yu「呼ばれた......てことは、今度はそっちから来てくれたのか」

???「あぁ。ちゃんと生み親に許可取ってな。ま、フリー素材って言われたのは堪えたけど」

Yu「そりゃ気の毒に。......んで、お前も斧持ってんなら、やることは一つ、だよな」

???「あぁ。武器は一緒。積み上げてきた戦闘経験もトントン。互角って言っていいんじゃないか?」

Yu「俺はレベル1だけどな。りん、下がってて」

R『うん......頑張って、二人とも』

 

そう言って、その場から去る。

 

???「やる気出てきた。俺のところじゃないけど」

Yu「俺もだ。......行くぜ、Mako(バーサーカー)!」

 


 

あの時と同じように、互いの武器をぶつけあう。

俺は剣じゃないし、makoはちょっと動きが鈍いように感じる。

お互いがお互い、全力ではないのは、手ごたえで分かった。

 

mako「腕落ちたんじゃねえのか!?この前のあれはどうした!?」

Yu「二刀じゃねえし剣でもねえから動けねえんだよ!!」

 

しかもレベル1だし。

 

mako「3対1の時のあれはどうしたんだよ!!もっと強かっただろうが!!」

Yu「......言って、くれんじゃねえかっ!!!」

 

言い訳なんて見苦しい。

こいつがここに来たからと言って、接待する必要なんて絶対ない。

むしろ、ズタボロにして送り返してやるんだ。

 

Yu「うぉぉぉぉ!!」

mako「そう、来なくっちゃなぁ!!」

 

技なんて知らない。

ただがむしゃらに振り回すだけ。

ソードスキルみたいに補正はしてくれないけど、光るし音もなる。

ならば、技はできている。

あとは、当てるだけ。

ま、それがむずかしいんけど。

 

mako「見切れるなぁ!!当たらねえぞユイト!!」

Yu「......っおぉぉぉぉ!!」

 

向こうの斧をいなして、そのままの勢いで横腹にぶち当てる。

 

mako「ぐっ......いいねぇ、面白くなってきた!」

Yu「余裕綽々なのがむかつく......ぜってぇぼこぼこにしてやるかんな......っ!」

 


 

NFO内の日が沈む。

二人のネクロマンサーの斧が火花を散らす。

お互いの斧の耐久値はもう3桁を切っている。

そして、お互いのHPはもう2桁だ。

 

mako「なぁ!今日は、楽しかったよ」

Yu「何だいきなり!俺もだよ!でもせめて、お前をぶっ飛ばしたかったんだけどなぁ!!」

mako「同文!ならせめて、今出せる一番の技、ぶつけようぜ!」

Yu「......いいぜ、今、覚えたからな」

 

言いながら、距離を取る。

 

Yu「我が命を以て、現れよ」

 

自身を依り代にする召喚術。

makoが時折召喚するデッドウォーリアーズを倒しながら貯めた経験値が俺のレベルをそこまで引き上げた。

 

Yu「我が命 我が体 全てを捧げ 現れよ 現れよ 偉大なる王よ」

mako「黒き無念 黒き執念 黒き憎悪 抑えることなかれ 全てを開放し 彼の者に」

 

makoも詠唱を始めるが、俺の方が早く終わる。

故に、俺の方が有利だ。

 

Yu「《ソウルミノタウロス》 顕現せよ 我が体 かの王に」

mako「繝ッ繝ャ繝ッ繝ャ繝弱ぞ繝??繧ヲ繝イ」

 

一度だけ見た、アイツの骸骨。

それが出来上がる前に、俺は斧の元持ち主の体を借りて(になって)、叩き潰す。

 

Yu「異世界カラ来た戦士ヨ、立チ去レ!!!」

mako「ムクロノカミ〘セイサイ〙」

 

奴の骸骨の方が大きい。

けれど、力はこっちの方が上だ。

なぜなら、俺はフロアボスだから。

骸骨の右腕を受け止め、砕く。

 

けれど、一行動につき持ってかれる体力・魔力も相当だ。

だから、ここで決め切るしかない。

 

Yu「行くぞmako(バーサーカー)!!しっかり食らいやがれぇ!!」

mako「ムクロノカミ......」

 

牛は飛び上がる。

骸骨はチャージを終える。

 

Yu「バーチカル・スマッシュ!!!

mako「ムクロノカミ〘シンジツ〙!!!

 

放たれたものは、確かに雄牛を捉えた。

けれど、止まらない。

そのまま、文字通り頭蓋骨を叩き割った。

 


 

Yu「はぁっ......はぁっ......」

mako「チッ......2連勝と行きたかったんだけどなぁ......」

 

俺のHPは2。

makoは0。

つまり、俺の勝ち。

けど、俺もmakoも限界。

 

Yu「今回は、俺のフィールドだったからな......」

mako「〘シンジツ〙突き破ってくるとか......脳筋かよ」

Yu「お前だけには言われたくなかった」

 

言いながらmakoを見ると、オレンジの光が漏れていた。

時間切れ、と言う奴だろう。

 

mako「あ、今回は俺なのか......」

Yu「そう何回もあるもんじゃないけどな、これ」

 

だんだんmakoの体が薄くなっていく。

その前に、聞いておかなければ。

 

Yu「なぁ!お前の名前、現実じゃなんて言うんだ!?」

mako「......神代、真言」

Yu「俺は蒼闇唯斗だ!......覚えたよ、真言!」

mako「絶対会うことはないだろうがな」

 

そう言い残して、消えた。

けれど確かに残っているものは。

 

R『......すごい、戦いだったね』

Yu「熱中しすぎた。ごめん」

R『ううん。......あれ?メッセージ来てるよ?』

Yu「ん?......っは。あいつめ......」

 

 

『makoが貴方のフレンド申請を■■しました』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とりあえずNFO編として、これにて終幕としましょう。
単独でNFOにする案がどうしても思い浮かばなかったもので、結果的に他人の子を借りる結末になってしまった。
申し訳ない。

そんな中、使用許可を出してくれた砂糖のカタマリさんには足向けて寝られません。
感謝の意を込めて、すでに完結した作品ではありますが、真言くんの出てくる話、
『監視対象と約束された日々』のURLを貼らせていただきます。

この作品よりも何倍もいい作品ですので、ぜひご覧ください。

では。

砂糖のカタマリ様→https://syosetu.org/user/336026/

『監視対象と約束された日々』→https://syosetu.org/novel/251752/


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Sword Art Online:Aincrad
0話 そもそもYuitoって誰よ


サブタイの通りです。
ま、ゆるーくみてつかあさい
後、右手のやけど云々は関係ないです


プレイヤー名:Yuito

 

所持スキル:片手剣《1000》、索敵《520》、追跡《290》、料理《780》、隠蔽《920》、暗視《500》、《選定の騎士》、《騎士王》

 

SAOクリア時ステータス:レベル《19》(代償により8割減少、本来は97)、HP《15980》、STR《12931》、AGI《2591》(代償により8割減少、本来は12955)

 

所属ギルド:Roselia

 

主要武器:《アニールブレード+8(2S1Q3A1H1D)》《カリバーン》

 

一人称:俺

 

呼び方:プレイヤー名(+さん)

 

容姿:黒髪、黒目の高身長。前髪は長め。装備は黒青の二色。

 

性格:自分よりステータスが高い、強い相手だと荒くなる。

   基本的にはそこまで荒くない。

   女性プレイヤー相手には2割増しで厚かましい。

 

 

 

 

 

 

本名:蒼闇 唯斗(あおやみ ゆいと)

 

出身校:花咲川学園1年

 

一人称:俺

 

呼び方:名字+さん、目上には名字+先輩。友人には名前

 

性格:社交的ではなく、いわゆる陰キャというやつ。

   友人は深く狭くという関係で、少ない。

  

 

 

 

人物詳細

 

生月日:7月22日

身長:179cm

体重:67kg

血液型:A型

性別:男

好きなもの:(慈愛に満ちた)笑顔、甘いもの、温かいもの

嫌いなもの:(皮肉に満ちた)笑顔、権力

 

容姿

 

長めの黒髪、一部分に青のメッシュ(地毛)、黒と暗めの青のオッドアイ。

制服はきっちり着るタイプ。私服はモノトーンか暗めの青系。

半袖を着ると右腕にやけど跡が見える。

右腕の角度が少しだけおかしい。

前髪で青目側を隠している。

 

 

詳細

 

生み親は既に他界しており、現在母の姉の家で暮らしている。

育て親は母の姉とその旦那。

家族構成は従妹(15)がいる。

他人にそこまでの興味はなく、親でも妹でも変わらない態度をとる。

3歳のころに親を亡くし、現在の家に引き取られる。

生まれた時から右腕が原因不明の変形をしており、それを気味悪がった生み親が炙ったというのがやけど跡の正体。

こんな生い立ちをしてはいるが、ラックは高い方。

顔は良い部類に入るが、性格がそこまでよくないという噂のため、友達は少ない。

心を開くのはRoseliaの前のみ。

 

 

呼び方 括弧内はゲーム内

 

友希那先輩(ユキナ)

紗夜先輩(サヨ)

リサ先輩(リサ)

あこ(アコ)

りん、燐子先輩(りん)

和人、キリト(キリト)

アスナ(アスナ)

エギルさん(エギルさん)

クラインさん(クラインさん)

 

 

 

呼ばれ方(ゲーム内、現実)

 

友希那→ユイト、唯斗

紗夜→ユイトさん、唯斗さん

リサ→ユイト、唯斗

あこ→ユイ兄、唯斗兄

燐子→ユイト君、唯斗君(ゆいくん)

キリト→ユイト

アスナ→ユイト君

エギル→ユイト

クライン→ユイト

 

 

 




ゆるーく見てくれたかな


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1話 これはゲームであっても、遊びではない。

この回では、ヒロイン及びヒロインが所属するバンドは出てきません。
主人公(オリ主)がただひたすらSAOのシステムについてくっちゃべるだけです。
あしからず。

アップデート(追記):原作1巻を読み直しながら、明らかにおかしいであろう点を改修しました。


今日は待ちに待ったソードアート・オンライン…長いからSAOって呼ぼう、の正式リリース日!

正直俺はこの日のために生きてきたといっても過言ではない。

というか、発売日が休日で本当に良かった、平日ならとっくに売り切れていたことだろう。

ま、俺はβテスターだから関係ないんだけどな!

さて、そろそろ良い時間だろ、ログインするか。

ナーヴギアと呼ばれるヘッドセットをかぶり、目を閉じる。

そのまま異世界に行くための呪文を唱える。

 

「リンク・スタート!」

 

意識がいったん落ちて、また上がってくる。

脳への信号がどうのこうのという工程をいくつも抜けて、いったん足が地に着く。

しかしそこはSAOの地ではなく、セットアップステージ。

いわゆるユーザー名やパスワードの設定、自分のアバターの見た目を決める画面であるが、テスターであった俺は、≪βテストの時のデータが存在します。そのまま使用しますか?≫という問いに迷わず≪YES≫と答え、次に進む。

少しすると≪welcome to Sword art online!!≫という文字が俺の後ろを通り抜けていく。

 

無意識に閉じていた目を開けると、そこはレンガが敷き詰められた床。

視線を上げれば噴水が存在し、周りを見渡せばおそらく現実とは違う顔をしているであろう何千のプレイヤー。

俺は改めてSAOに、『アインクラッド』に帰ってきたんだと実感し、小声で「帰ってきたぁ...」と呟いた。

きっとこれが聞かれていたら、あいつは変な奴だと噂が立ったことだろう。

 


 

βをやっていたとはいえそれは何か月も前の話。仮想世界にもβのサービスが終わってからは全く行ってなかったので、少し体を慣らすついでに武具屋にひとっ走りする。

その店で一番安い剣を買うと、ステータス画面から今の武器を右手部分にもっていき、装備状態にする。

そのまま路地を抜けてフィールドに出ると、背中に背負ってあった今さっき買った剣...『スモールブレード』を抜いて構える。

構える、といっても剣道のようなきっちりとした構えではなく、両腕からできる限りの力を抜いた脱力状態を作る。

そこから目の前にいるイノシシ(フレンジー・ボア)をまっすぐ見据えながら、右手を引いて左半身を前に出す。

俺がターゲットしたイノシシは俺のことを視界にとらえると、一つ大きなうなり声をあげこちらに向かってきた。

イノシシの突進がいい距離感になったところで、右手の剣を思いっきり突き出す。

すると体は勝手に動き、剣には青みがかったエフェクトがかかる。

この現象こそSAOにおける固有のアクション、≪ソードスキル≫だ。

ある程度の型を取っていれば後は勝手にシステムが動きをアシストしてくれるので、ある意味ではこの世界で武器を振るうのでは楽といえる。

しかし、ソードスキルを発動した後には硬直時間(クールタイム)というのが存在し、少しの間だけ動けなくなる。

俺が今使ったのは≪レイジスパイク≫という基本の突進技で、さほどの時間も食わないが、もっと上の上級スキルになってくると、もっと時間を食ってしまうので、スキルの選択は慎重に、しかし大胆にせねばいけない。

 

「...ふぅ...」

 

仮想世界の動きにもだいぶ慣れてきたが、いきなり戦闘はやっぱり負担がデカかったか。

近くの意思に腰掛けながらそう思った。

おっと、今更ながら名乗るのを忘れていた。

俺はユイト、ここじゃリアルネーム、つまり自分の本名を出すのはタブーだから、こう名乗らせてもらうよ。

...って俺、誰に話してるんだ。まあいいか。

 

「今のイノシシのドロップ...うぇぇさすがSAO界のスライム...ドロアイテムしょっぺぇ...」

 

まあ、ここの第一層、レアドロップなんて聞いたこともないし、出てくるのはさっきのスr...イノシシだけだから、ドロップ品がしょぼいのも仕方のないことだ。

そのままもう一体イノシシを狩ろうとしたところで、ふともう一度メニュー画面を開く。

時刻は午後五時半過ぎ。そろそろ夜飯作りの手伝いをしろと母親に呼び出されそうだということを思い出し、一番下のログアウトボタンを押そうとして、ふと違和感を覚えた。

 

ーーおかしい。

 

()()()()()()()()()()()。いや、ログアウトボタンがあった形跡があるのだが、≪log out≫の文字がない。

ほかのプレイヤーもその事態に気付いたのか、パーティの仲間とウィンドウを見せ合ってみたり、目をこすったりしているようだが、結果は同じ。

 

「これは...一体...」

 

ゲーム側の不具合?もしくはそういうイベント?

そう考えた瞬間、俺の体は青い光に包まれた。

 

「強制転移!?」

 

転移というのは、特定の場所で、あるいは特殊なアイテムを使って「転移:どこどこ」と唱えればそこに移動するようになっている。

しかしここは一層で、なおかつ転移アイテムもない。何より俺は、転移コマンドを唱えていない。

それなのに転移は実行され、数時間前にログインした場所に転移している。

周りを見ずとも、ほかのプレイヤーによる不安や泣き言が聞こえる。おそらく、この場所に今SAOにログインしているプレイヤー全員が集められたのだろう。

ゲームマスターが出てきて説明するか、それともプレイヤー全員の強制ログアウトか、はたまた告知なしイベントの始まりか。

少し経つと、誰かが「空が!」といった。その声につられた空を見ると、≪system alert≫の文字が六角模様に広がる。

そして、その六角形の間から、血のような赤いどろっとした液体が流れ落ち、地面に垂れーーず。

空中で浮遊し、その液体はフードを被った人間のような形を作った。

しかし、フードの中には暗闇が存在するだけ。顔がない。それが、いっそう赤ローブの不気味さを際立たせた。

 

『プレイヤーの諸君、私の世界にようこそ。』

 

その挨拶が、このSAOを、デスゲーム(現実)とする、合図だった。

 

 

 

 




ヒロインは未定、出てくるバンドはRoselia、タイトル変更済み。
タグにもヒロインの名前が入ります。よろしくお願いします。
読んでもらった通り駄文でございますが、これからもよろしくお願いします。


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2話 青薔薇は剣を取る

今回はRoselia顔見せ回です。りんりんによるSAOレクチャーです。
ユイト君は出てきません。いつもの通り、駄文です。
それでは、どうぞ。


side 燐子&あこ

 

『もうすぐだよりんりん!SAOの正式リリース!』

「うん。楽しみ、だね。」

『あこ、もうドキドキが止まらないよ~!』

「うん...私もだよ...。」

『あ!いつでもログインできるように準備しとかなきゃ!』

「あ、そうだね。私も、用意しておこう...」

『じゃありんりん!また向こう側(アインクラッド)でね〜!』

「うん。またね、あこちゃん。」

 

携帯をベットの上に置き、ナーヴギアをもって一息つく彼女。

彼女の名は白金燐子。Roseliaと呼ばれるバンドのキーボード担当。

彼女が電話していた幼さが残る声をしていた彼女は宇田川あこ。同じくRoseliaのドラム担当。

2人はSAOのβテストに運よく当選しており、優先購入権を獲得していた。

最初は2人だけ、という話だったのだが、あこが、

 

「みなさんもやりましょうよ!きっと楽しいですよ!」

 

と、半ば強引に誘った結果、SAOをRoselia5人でプレイすることとなった。

 

「皆さん、大丈夫でしょうか...」

 

事前にグループチャットの方で、

 

『ログインが完了したら、噴水の近くにいてください』

『私とあこちゃんは、現実と同じような見た目をしているので、すぐ分かると思います(*^^*)』

 

と送ってはいるが、心配なのは噴水に集まれるか、では無くログインが5人でできることである。

βテスターでは無い他の3人は、ゲームという文化にあまり触れてきていないため、そこが1番の懸念点だ。

 

「あっ、時間が...」

 

時計を見ると、1時になる二分前だった。

ナーヴギアを被り、目を閉じる。そして自分を異世界の住人へと変化させる言葉を唱える。

 

「リンク・スタート」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

side友希那&リサ&紗夜

 

「リサ、これはここに入れるのであっているのかしら。」

「うん、OKだよ!それと紗夜、前はこっちね?」

「わ、わかっています。ですが、何分初めて触るものなので...」

 

Roselia、非βテスター組は、リサの家に集合し、SAOをプレイするための初期設定を行っていた。

 

「それにしても、不思議ね。」

「え?何が?」

「頭を覆うだけなのに、自分の体を触らせられるなんて。」

「キャリブレーション、と言っていましたからね。調整する、の意の通り、自分のアバターが違和感なく動くようにするための工程なのでしょう。」

 

紗夜の博識っぷりに感動を覚えてからふと時計を見ると、あと1分で1時になるというところだった。

 

「あ、やば!そろそろログインするよ!」

 

リサの声に3人はいっせいにナーヴギアを被って、言葉を放つ。

 

「「「リンク・スタート!」」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あっ...」

 

目線を上げる。そこにはβの時と変わらない景色があった。

アインクラッドの地を再び冒険できる、とある種の感度を覚えていると、

 

「りんり〜ん!!」

 

向こうの方から、名を呼びながら駆け寄ってくる女の子...《Ako》がいた。

 

「あこちゃん。さっきぶり。」

「うん!友希那さんとかはまだかなぁ?」

「もう少ししたら来るよ、きっと。」

 

伝え忘れていたが、彼女の名前は《RinRin》。

あこの方は、本当は別のゲームで使っている名前にしようかと考えたそうだが、漢字が使えず、長くなってしまうのでこの形に落ち着いたようだ。

 

「あなたが、《RinRin》?」

 

ふと、背中の方から声が聞こえた。

身長は同じぐらいの女性。見覚えがないので首を傾げていると、その女性を追いかけてきたであろう2人と目が合った。

 

「わぁ〜!そんなそっくりにできるんだ〜!」

「想像以上に似ていました、驚きです。」

「あ、もしかして、湊さんに氷川さん、今井さん、ですか?」

「そうだよ〜☆あ、でも、ここじゃリアルネーム禁止なんだよね。」

 

ということはさっきの女性が友希那ということになる。

 

「ここでの名前は《Yukina》と言うわ。こっちは《Sayo》、こっちは《Lisa》よ。改めて、よろしく。」

 

ーーここでのとか言うけどリアルネームそのままなのはどうかと思います。

とは言わない。自分の親友もそうなのだから、そこを付かれてしまったらいけない。

 

現実とは違うが、それでも美しい声で自己、他己紹介を済ませ、RinRinの指導の元フレンド、パーティ登録を済ませる。

 

「それじゃあ、みなさん集まったので、簡単なところからレクチャーしたいと思います。(`・ω・´)」

「この世界の攻撃システムはめちゃめちゃわかりやすいから、見てればみなさんすぐ理解できると思います!」

「まずは、さっき買ったレイピアを、右手の装備欄に持っていってください。それで、装備された状態になります。」

「RinRin!質問!」

「はい、どうぞいm...Lisaさん。」

「これ絶対装備しなきゃダメ?」

「装備していないと、ソードスキルが発動しないんです。だから、必ず装備しておきましょう( *˙ω˙*)و 」

「はーい!」

 

それから小1時間、RinRinによるレクチャーを受けた3人は、フィールドに出てモブを倒した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「意外と疲れるのね、これ。」

「精神面に疲労が溜まっている気がします。」

「時間的にそろそろ落ちよっか?私お風呂入りた〜い」

 

と、Lisaが言った時の時刻は5時半の五分前。

 

「じゃあ...今日はこの辺りにしておきましょうか。」

「はーいわかりました!」

「私とAkoちゃんは、9時辺りにもう1度、ログインする予定なので、もし時間があれば、一緒にやりましょう!」

「えぇ。」

「わかりました!」

「今日はありがとね、2人とも☆」

 

メインメニューを開いて、《log out》のボタンを探す...が、見つからない。

 

「ねぇRinRin?ログアウト、あった?」

「ううん。皆さん、ログアウトのボタンは...」

「ないわね」

「見当たりませんね」

「う〜んないね〜...」

 

そう言いながらLisaはGMコールを試している。

 

「ダメ、繋がんない。」

 

そう言った瞬間、体が青い光に包まれた。

 

「うわっ!なにこれ!?」

「これって転移の時の!?でもAko、コマンド言ってないよ!?」

 

そうして光が収まった頃には、噴水の近くに戻っていた。

 

「強制転移...説明かな...」

 

この状況下でもRinRinは、なぜ転移したのか状況を整理、推理していた。

しかし、それに気を取られ、空の様子が変わったことに気づいたのは、他のプレイヤーより遅れてだった。

空に浮かぶ、赤ローブ。顔がなく、どことなく不気味だ。

 

「RinRin...」

「大丈夫だよ、Akoちゃん」

 

『プレイヤーの諸君、』

 

「...!?」

 

誰かが息を飲んだような気がした。

 

『...私の世界へようこそ。』

 

その日、青薔薇はデスゲームに遭遇した。




はい、いかがだったでしょうか。
思いのほかレクチャーの描写で尺を取りすぎて、GMに満足にしゃべらせてあげられてないと言う。
1話2話でプレイヤーの諸君、私の世界へようこそしか言ってない。GMの影が薄い。

評価、お気に入り登録、感想ありがとうございました。
モチベの維持、向上に繋がるのでこれからもよろしくお願いします。
それではまた。


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3話 βプレイヤー、青薔薇と出会う

3話です。早くないかと思いますが、青薔薇とユイトくんの遭遇回です。
キャラの若干の解釈違いが起こりそうですが、そこは飲み込んでください、よろしくお願いします。
現在、オリ主にユニークスキルを付与するか否かのアンケートを実施しています。
ご協力よろしくお願いします。
それではどうぞ。


赤ローブが言ったことを、俺はもうあまり覚えていない。

はっきり残っているのは、「ここは現実である」「HPが無くなれば本当に死ぬ」「クリアの条件は100層まで登り詰め、ラスボスを倒すこと」

正直言って無謀だと思った。βの時は1000人しかいなかったとはいえ、最前線は6層だった。

それが1万人になったところで、最前線が60層まで行くかと言われれば、NOであろうと言ことは、バカの俺でも分かった。

正直βテスターたちは、MMOゲームというジャンルをフルダイブでやりたかったと考えていた、いわゆる廃人ゲーマーだった。

もちろん、俺もそのひとりではあるが、そんな人間が1000人集まって6層までしか行けなかったのだ。

ゲーマーでもない、フルダイブゲームが初めてなんていう人だっていっぱいいるだろう。

故に、動き出す様な人間は、βテスターかつ廃人ゲーマーか、初心者のくせに妙な自信を持って散っていくような人間しかいないと思った。

しかし、実際は広場にいたプレイヤーのうち、半分ほどがフィールドに出て、モンスターを狩っていた。

 

「うわ...みんな腐ってもゲーマーなんだなぁ...」

 

おめえそれブーメランじゃねえかというセルフツッコミを飲み込み、目指すべき村を探す。

村の名前は《ホルンカの村》。

クエストを受けて、クリア出来れば《アニールブレード》という4層上ぐらいまでは余裕で前線を張れる武器が貰える。

そこに向けて1歩踏み出した直後、後ろから声がかけられた。

 

「あの...βテスターの...方ですよね...?と、突然呼び止めてごめんなさい...」

 

驚いた。向かっている方向だけで、β経験者だと見抜いたのだ。

 

「はい...あなたも、ですよね。」

「はい。えっと...良ければ、一緒に行きませんか?戦力としては、十分だと思うので...」

 

そう言いながら、彼女は自分の後ろの方に目をやる。

彼女を含めて5人、レベルは考えない事として、武器が標準的な剣士にレイピア使いが2人、話しかけてきた彼女ともう1人は盾を持たない剣士スタイル...

見た感じ、AGI型が2人、STR型が2人、標準型が1人...バランスのいいパーティだ。

俺はといえば、STRとAGIを7:3で割り振っている。

 

「うーん...」

「あ、あの...無理にとは言いませんので...」

「いや、一緒に行きましょう。」

「そうですよね...って、え?」

「一緒に行きましょう。目的地は一緒だし、6人なら対多数でも有利だと思うのですが。」

「あ、は、はい。宜しく、お願いします。」

 

彼女は戸惑ってはいたが、直ぐにパーティ申請を送ってくれた。

挨拶と同時にパーティ参加申請に《OK》と答え、左上をちらっと見る。

俺の名前の下、1番上がRinRin...きっと声をかけてくれたプレイヤー、その下にYukina、Sayo、Lisa、Akoと続いている。

 

「Yuito...ユイトさん、でいいですか?改めて、よろしくお願いします。」

「りんりんさんでいいのかな。こちらこそよろしく。パーティのみんなも、よろしく。」

 

パーティメンバーの皆さんはとても気楽に話せる人たちで、りんりんさんとフレンドにもなった。

やっぱMMOの醍醐味って多人数攻略だよなぁとかぼんやり思いつつ、雑談を混じえながらゆっくりとホルンカの村へと向かった。

 




はい、読了ありがとうございます。
今回なんか短くない?と思った方、大正解でございます。
実は今回の話、1300字ちょいとかなり少なめです。
1話2話は2600ぐらいはあったので、それぐらい書いてもいいかなとか思ったのですが、
ホルンカに行く、青薔薇と会わせる、花付きを倒してどうのこうの、キリトをどうとかと考えたら3話だけで5000とか行っちゃうなとか思ったので、ここまでです。申し訳ない。

話は変わりますが、私事で先日、Roseliaの映画のサントラをぽちりました。
映画はほんとによかったので、近くにイオンシネマがあるという方は是非とも鑑賞してほしいところです。

評価、感想、お気に入り登録ありがとうございます。
こんだけ淡々と書いてると、「それ定型文だろ!」とか言われそうですが、心の奥底では元気に飛び跳ねております。はい。
なので感想はじゃんじゃんください。読みます。
評価なんてされたらそれはもう発狂します。えぇ。


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4話 βプレイヤー、βプレイヤーと手を組む

タイトル通りになるのは後半からです。前半はひたすらクエストの概要を話しているだけです、よろしくお願いします。
待ってたかわからないけど、ブラックソードマンが出るよ。
それでは、どうぞ。


Roseliaはユイトというプレイヤーと一緒に、ホルンカの村を目指している。

ホルンカの村には報酬で「アニールブレード」という剣をもらえるクエストがあり、それさえゲットしておけば、攻撃面では3,4層でも十分戦えるようになる。

ただ、クエストのクリア条件が、

 

 

「リトルネペントの胚珠ドロップ、だもんなぁ...」

 

 

厳密にいえば、ドロップした胚珠をクエスト依頼主NPCに渡すことがクリア条件ではあるものの、さしてそこは問題にはならず、確率勘定には入れないこととしたようで、RinRinと全く同じことを考えていたYuitoが、大きなため息をつく。

聞くだけだったら、モンスターを倒して手に入るドロップ品をゲットすればクリア、という風だろうが、この《リトルネペントの胚珠》というのは、レアドロップ品というものであり、ごく低確率、何百、何千分の1という確率でしかドロップしないものである。

 

 

「確かにβの時の一層ボス攻略の時は半分ぐらいのやつが報酬の剣使ってた気がするけど...」

「ドロップ率、ナーフされててもおかしくないですからね...」

 

 

今度はYuitoとRinRinが同時にため息をつく。

いくら入手方法が分かっていても、自分の幸運パラメータが機嫌を損ねていれば、それはもう大変な道のりになる。

 

 

「ドロップ率が変わってなきゃ、100倒せば1個は確実に出るから...400は覚悟しといたほうがよさげかな...」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「到着っと。ここがホルンカの村だ。」

「なんというか...あまり大きな村ではないですね...」

「そりゃあまぁ、デカすぎると街とかになっちゃうからね。それより、クエスト受注しに行こう。」

 

観光もそこそこに、一行はクエストを始めるためのキーNPCを求め、一軒の家に入った。

 

「勝手に入ってよろしいのでしょうか...?」

「Sayoさん...だっけ?この世界で勝手に入れないのはプレイヤーが所持してるプレイヤーホームだけなんだよ。」

「それでは、それ以外の家には勝手に入れると?」

「乱暴に言っちゃえばそうだね。もっとも、クエスト以外で入ろうとは思わないけど。」

 

Yuitoはそう言うと、部屋の奥にいた女性NPC...もといお母さんと目を合わせた。

その行動を不審に思ったYukinaが、RinRinに尋ねる。

 

「りんk...RinRin、彼はいったい何をしているの?」

「NPCをターゲットして、話をしようとしているんです。このクエストは、向こうから話しかけられないと始まらないので...」

 

するとYuitoの思惑通り、向こうから声がかかってきた。

 

『こんばんは、旅の剣士さん。お疲れでしょう。お食事を出してあげたいけれど、今は何もないの。出せるのは、一杯のお水ぐらいのもの。』

「ありがとうございます、それで大丈夫ですよ。」

 

Yuitoはお母さんから水を受け取ると、椅子に座ってから少し息をついてその水を飲みほした。

Yuitoがコップをテーブルに置くかどうかのタイミングで、隣の部屋から、せき込む音が聞こえた。

 

「え、今の誰?風邪?」

 

どうやらさっきの咳をプレイヤーの誰かだと勘違いしたらしいLisaが、心配の声をかける。

 

「クエストの進行度が進んだ合図だよ、Lisaさん。隣の部屋に娘がいる、っていう設定なんだ。」

 

俺は見たことないけどな、とYuitoが付け加え、βの時には入れなかったので、とRinRinも注釈を入れる。

 

咳が聞こえたタイミングで、お母さんの頭の上に黄色い?マークがついた。クエストを受けられるあかしだ。

それを見たYuitoが、定型文を投げかける。

 

「何かお困りですか?」

『えぇそうなんです、娘の病気が治らず...特効薬に元になるものさえあれば...』

 

お母さん曰く、

『自分の娘は重病に侵され、市販の薬では延命はできても完治までには至らない、特効薬は森に出る怪物が持っている胚珠だというが、胚珠は花付きしか持っておらずそのうえ必ずとれるとも限らない。だから代わりに取ってきてくれれば先祖代々伝わる宝剣を御礼にしたいと思う』

ということだった。

 

Yuitoはその話を二回ほど意識を飛ばしながら聞くと、「わかりました」といって、その家を飛び出した。

そして、またお母さんの挙動が元に戻ったところで、今度はRinRinが声をかける。

その次がAko、そのまた次がSayoといった具合で、計四人が、アニールブレード入手クエ、もとい「森の秘薬クエスト」を受け、すぐそこにある森に消えていった。

 

「...Lisa、私たち、どうしましょう。」

「あはは...おいてかれちゃったね...ま、じゃあゆっくり待ってよっか。」

「えぇ、そうね。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「二時方向に『実付き』!」

「五時方向に『花付き』。どうするK()i()r()i()t()o()?」

「ほっとく分には問題ないから、先に花付きをやるぞ!」

「了解!」

 

...え?お前ソロじゃなかったのかって?

まあ聞けよ、これには理由があるんだ。

森の秘薬クエを受けた俺は、一心不乱にリトルネペントを屠っていた。

花も実も持たない、いわゆるノーマル個体というやつは、クエストMobではないので、無視していてもいい。

しかし、ノーマルを狩ってれば花付きのポップ率も上がるので、戦闘自体は無意味じゃない。経験値もらえるからレベルも上がるしな。

ただ戦闘をすれば剣の耐久値は減るわけで。そうそう長くもやってられないわけっすよ、えぇ。

そこで出会ったのがKiritoってわけだな。

現在俺とKiritoは、互いの胚珠ドロップを邪魔しないという条件の下、リトルネペントを手あたり次第切り捨てている。

それでさっきの会話に戻るわけだ。

 

「ちなみにKirito、お前ラックは?」

「ゲームでもリアルでも、ビギナーズ以外は悪いよ、すこぶるな。」

「じゃ、俺がとどめさしとくよっ...と!」

 

花付きの脳天(植物にも脳天があるかは別として)を叩き切り、ドロップを確認する。

 

「うへぇ...まだ落ちねえのかよ...やっぱナーフされただろ...」

「文句垂れてないで、もっと行くぞ」

「へいへい」

 

それから10分ぐらい血眼でリトルネペントを狩りまくった結果、無事に胚珠を確保できましたとさ。

あれ、そういやRinRinさんたちどこ行ったの?(←あなたが置いていきました)

 

 

 

 




はい、あとがきです。
読了ありがとうございます。
着実ながらUAがふえ、お気に入り件数も上がっていくのがうれしいです。

オンラインカードショップでMorfonica×RAISE A SUILENのヴァイスシュヴァルツブースターを買ったんですね。
とりあえず高レアに該当するRRの七深とチュチュが二枚当たったのですが...
ましろはどこに行ったんでしょうか。私の推しは、何処に

感想、評価、お気に入り登録をすると主が飛んで喜んで発狂します。



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5話 青薔薇、βとはぐれてピンチになる

Yuito君は先に走って行ってしまいましたからね、ピンチです。
4話まで置いておいたアンケート、ご協力ありがとうございます。
今回から、新しいアンケートを実施しているので、回答にご協力いただけたらなと思います。
それでは本編、どうぞ。


「ど、どうしよう...見失ってしまいました...」

 

RinRinとAko、Sayoは森の秘薬クエストを受諾後、リトルネペントがポップする森へダッシュしていくYuitoを追いかけて、同じ森までやってきたのだが...

 

「うだが...Akoさんの言っていた食虫植物のようなモンスター、なかなか見かけませんね...」

「それに、この森に入っていったYuitoさんも見当たりません...」

「う~ん...もう森の中なんだから、出てきてもおかしくないと思うんだけどなぁ...」

 

三人が頭を抱えだした瞬間、近くでモンスターがポップする音が響いた。

 

「...!皆さん、構えてください!!」

「これが、リトルネペント...」

「気を付けてくださいSayoさん!あいつ、武器が壊れやすくなる液吐いてくるので!!」

「それと、あのモンスターは、口と茎の接合部が弱点になってます!!」

 

リトルネペント総ポップ数、6。さっきまでのパーティであれば一人一体相手をすればよかったが、YuikinaとLisaはさっきの家で留守番をしているし、Yuitoに至っては先に飛び出してしまった。

 

「皆さん!ここは一体ずつ抑えましょう!」

 

RinRinの号令で、三人はそれぞれ違う個体に向けて走っていく。

 

「はぁっ!!」

 

気合の入った声を発しながら、RinRinは単発水平切り《ホリゾンタル》をリトルネペントの弱点に当てる。

弱点というだけあって、ほかの部位より与えられるダメージが多い。場合によっては一撃即死というのも十分にあり得る。

 

「...!三割弱...!」

 

 

しかし、それはあくまで敵Mobよりレベルがはるかに高ければの話。この場にいるプレイヤーの今のレベルは1。対してリトルネペントは3。

 

「あと二回で、いける!!」

 

しかし、裏を返せばレベル差があってもそれだけ与えられるということ。

RinRinは弱点だけを正確に切り、残りの手付かずのネペントたちのほうに向かう。

近づいてホリゾンタルのモーションを取ろうとしたが、直前で固まった。

 

ーー増えてる...それに実付きまで...!

 

実付きとは赤い風船のような実が口の後ろから伸びた部分についているネペントの呼称。

戦闘力的にもノーマルと大差ないので倒そうと思えば倒せるのだが、その実がただの飾りじゃないことをRinRinはよく知っている。

あの実を割ると、周囲から来れるだけのネペントが大量に来てしまうのだ。

別に実を割らずに倒せばいいのだが、意図的に実を割らせようとしてくる動きをしてくるため、不用意に近づけない。

と、その時、誰かが走ってくるような音が聞こえた。

 

「......!そいつは......!」

 

誰かの忠告する声が聞こえる。

その声を無視して、人影は飛び上がる。

剣の向きは横ではなく、縦。

つまり、あの人影は実付きに向かって垂直切りを放とうとしている。

 

「ダメ...!」

「うぉらぁっ!!」

 

RinRinが叫ぶのと、人影が気合を入った声を上げるのは、ほぼ同時だった。

その後、少し遅れて届いた着地音が、RinRinの意識を引き戻した。

 

「残り4体...数が多いわ...」

 

そうぼやきながら立ち上がったのは、さっき家を全力疾走で飛び出していったYuitoだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そういやRinRinさんたち置いてきちゃったんだっけ、と考える間にも、俺の足は走り続け、俺の腕はホリゾンタルの構えを取り続けては切り捨てていく。

 

「おぉ...お前器用だな...」

 

隣にいたKiritoがつぶやく。

今の俺のソードスキル発動状態を見てのことだろうが、別にこれは難しくない。

俺だけはぐれてパーティメンバーがモンスターに群がられてる時によくやったものだ。

と、そんな話ではない。

現在俺たちは行く当てもない...わけではないが、森を走り回っている。

自分たちの分の胚珠は既に取れているので、さっきの家に戻れば報酬はもらえるのだが、わざわざパーティを組んでもらったのに自然解消的な感じで別れるのもどうかと思い、現在はフレンドマップを見ながらRinRinさんのもとに向かっているっていう話だ。

 

何体目かのネペントを切り捨てていくと、視界が開け、そこに五体、俺らに後ろを向けているネペントを確認した。

リトルネペントは人間でいうところの『目』に該当する部分がなく、バックアタックや奇襲は成功しない。

 

「そのままそっち向いててくれよなぁ...頼むぜ...?」

 

まあ誰かがタゲ取ってなきゃの話だけどな!!

ゆえに俺は、今出せる最高のスピードで距離を詰めて、ジャンプして飛び上がり、ホリゾンタルではなく片手垂直切り《バーチカル》のモーションを取る。

 

「あっ...!バカ!そいつは実付きだ!」

 

俺のバーチカルの構えを見てKiritoが叫ぶ。

実がついている奴にバーチカルは禁忌といってもいい。

いくら頭の後ろに実がついてるとはいえ、垂直切りでは実にもカスってしまいかねない。

しかも今俺が切ろうとしているのは、実付きの真後ろ。

つまり、超危険ってわけだ。

 

「へっ!そんなこと、わかってらぁに!!」

 

もちろん、ネペントをタゲっているプレイヤーにも、もちろん俺にも、危害が加わらないように実付きを倒す術はある。

()()()()()()()()()()()()

 

「うぉらぁっ!!」

 

実にぎりぎり当たらない部分を始点として、根元のほうまで一直線を描く。

実を割らず、さらに弱点を切れて、なおかつ重力加速度によるパワーの増加。

後は単純に作業ゲーと化したネペント狩りによるレベル差。

速度の乗った俺のバーチカルは、実付きを一発で屠った。

 

「残り4体...数が多いわ...」

 

今まで何百体ものネペントを切り捨ててきたのに、四体ごときで何を言っているんだと、自分で自分を突っ込みたかった。

 

 

 

 




はい、あとがきです。
今回、同じ時間を別の視点で描いてみるという試みをしてみたのですが、いかがだったでしょうか。
まあこれは個人的にやりたかったことなので、たぶん次の話でもやります、きっと。

皆様はRoseliaの映画のテーマコレクション、買いましたでしょうか。
私はあれを聞きながら執筆したり、ゲームをしてたりしていたのですが、捗ることこの上ないということでね、えぇ。一種のエナジードリンクですね、これは。()

捗るは捗るのですが、2日に1話ペースだといつか失踪しそう(はい、あるとじゃないと)なので、今日から週一ペースでやっていこうと思います。
ご理解の程、よろしくお願い致します。

ということで、読了ありがとうございました。
お気に入り、感想、評価をすると、主が飛び上がライズします。

後、前書きに書いたとおり、新しいアンケートにも、ご協力をお願いいたします。


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6話 ソロとβと青薔薇と

駄目だ、タイトルが思いつかん。
それはそれとして、今回からだれが喋ってるか表記してみました。
Yk→友希那
S→紗夜
L→リサ
A→あこ
R→燐子
Yu→ユイト
K→キリト
という感じです、よろしくお願いします。(好評だったらこれからも付けます。)

アップデート(追記):時系列がだいぶおかしいです、原作勢の方は違和感があります、ご注意ください。



Yu「ダメージ平気?毒とか貰ってない?」

 

YuitoはRinRin達の方に振り返ってHP回復ポーションを投げながら言う。

 

R「は、はい。大丈夫です。Yuitoさんこそ、無事...ですか?」

Yu「俺もあいつも平気、とりあえず残りのネペント狩っとくぞ」

 

Yuitoはそう言うと低い体制のダッシュをしながらホリゾンタルのモーションをとる。

弱点だけを正確にターゲットしながら、確実にホリゾンタルを当て続ける。

そこまで多くなかったネペントが、一瞬にしていなくなる。

 

Yu「ふぃ~、終わったぁ~...」

K「おう、お疲れ。」

R「お疲れ、さまでした...あの、あなたは?」

 

RinRinはKiritoのほうを向いて尋ねる。

 

Yu「こいつはKirito。俺らと同じβ上がりで、俺等より先にここにいたやつだよ。」

K「Kiritoだ。よろしく。」

R「は、はい。よろしく...お願いします。」

 

Kiritoが差し出した手をおずおずと取ったRinRin。

とりあえずここで争いが生まれることはなかったようだ。

 

A「あ!Yuitoさん!探しましたよ~...」

S「とりあえず見つかってよかったですが...Kiritoさんは、一緒に来てくれるのですか?」

K「いや、俺はアニールもらったら行かなきゃいけない所があって...」

Yu「ならいいか、俺らも行くとこあるからさ。」

 

Yuitoは一呼吸置くと、こう言った。

 

Yu「ボス部屋攻略会議、俺はKirotoもそこに行くと読んでるんだけど?」

K「すごいなYuitoは...その通りだよ、俺も会議に参加する。」

Yu「じゃあ、俺のパーティメンバーの残りがきっとさっきの家にいると思うからさ、一緒に行こうぜ。」

K「OK。フレンドとパーティ申請やっておくよ。」

 

Yuitoは自分のフレンド、および視界の左上に《Kirito》の名前が追加されたことを確認すると、

 

Yu「改めてよろしく、キリト。」

K「あぁ。こちらこそな、ユイト。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

L「あっ!お帰りみんな~!...と、そっちの人は?」

K「キリトです、よろしく。」

L「うん、よろしく!あたしはLisa。こっちの子はYukinaね!」

Yk「...よろしく。」

 

とりあえず全員と自己紹介を終えたので、とYuitoが口を開く。

 

Yu「うし、とりあえず報酬だけ受け取っちゃおうぜ。」

 

という言葉でクエストに挑んでいた五人がそれぞれ胚珠をクエストNPCに渡す。

 

K「やっぱこのステータスの武器がクエストとはいえ一層でもらえるのはさ...」

R「ちょっとバランスが...」

A「おかしいよね~...」

 

Roseliaのβ経験組とKiritoがそれぞれの感想を言っている間、Sayo一人がステータスに驚いていた。

 

S「さっきの剣の3倍以上の数値...!?」

Yu「あはは、俺のリアクションそっくり。最初もらったときは、俺も目を疑ったよ。」

 

一層にあるどんな武器屋に行ってもここまでの性能の武器は置いていない。

そのくらいの性能を持つアニールブレードは、見た目こそ微妙であるが、十分に通用する武器だ。

 

Yu「よし、みんな装備OK?」

 

Yuitoは声をかけながら、周りを見る。

Yuitoと目が合ったプレイヤーから、うなずき返されるのを見たYuitoは、大きく息を吸い込んだ。

 

Yu「よし!ボス攻略会議の開催場所、《トールバーナ》へ、出発!!」

 

RoseliaにYuito、新たにKiritoを加えたパーティは、トールバーナへ出発した。

 

 

 

 

 




あとがき~
読了ありがとうございます。
今回も短いです、キリトと青薔薇を組ませる回だったので。ごめんなさい。
そしてボス攻略会議ってだいぶ後ですよね、めちゃめちゃ違和感あってごめんなさい。
週一投稿にした結果執筆する腕まで鈍るとは。(五話だしたらすぐ書いてたくせに何を言うか。)
というわけでこんな感じの駄文が週一間隔で出されていきます。
そして投稿期間をかけている間にRoseliaのバンスト3章が来ていた。
執筆を終えたのはだいぶ前で、この部分は後付けです。7話のあとがきでちょろっと私の進み具合を報告してます。(誰得情報)
そういえばちょっと目を離したすきにUAが800に到達していて「わあ」ってなりましたね、ほんとにありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。

お気に入り、評価、感想されたら私のテンションが聖刃抜刀します。


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7話 βの信用は危険?

ゆるゆるのスパンで7話です。
そしてごめんなさい、オリ主がやばいことしてます。
まだ7話だと思うかもしれませんが、大丈夫です。8話も書いてます。
それでは、どうぞ。


S「ここがトールバーナの街...町というだけあって、大きいですね。」

 

森の秘薬クエ時に生まれた即席パーティ一行は、トールバーナへ到着した。

 

Yu「みんな、レベル大丈夫そう?」

 

本来ほかのプレイヤーにレベルを聞くのは禁忌だが、会議への参加条件が『安全マージンと十分に取ったレベルであること』であったから仕方ない。

 

A「マージンっていくつだっけ?」

K「この層だったら11あればいいのか?」

S「でしたら皆さん、昨日のうちに越えていますね。」

L「あたしとユキナは結構ぎりぎりだけどね~...」

 

安全マージンとは、その層で動いていても問題ないぐらいのレベルをしていること。

基本的にマージンは、『今いる層をn層とした場合、(n+10)レベル』といわれている。

 

Yu「参加条件満たしてるならセーフセーフ。もうちょいで始まるから早く行こうぜ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Yu「へぇ...意外と集まるもんなんだなぁ...」

R「βじゃここまで、来ませんでしたからね...」

K「というか、βの時がみんな血走りすぎたんだよな...あんときは2か月しかなかったからな。」

S「仮にも自分の命がかかっているのにもかかわらず、ここまで集まるのは...」

Yu「生粋のゲーマーか、死ぬってことを信じてないバカたちか、ここを早く出たいやつら、だな。」

 

Yuitoが言い終わると同時に、広場のステージ部分にプレイヤーが現れた。

 

「みんな、今日は集まってくれてありがとう!」

Yu(よくもまあ知らないやつがこんなに前にいる中でしゃべれるよなぁ...)

ディアベル「俺は、ディアベル!職業は...気持ち的に、ナイトやってます!!」

 

ディアベルがそう言った瞬間、周りから笑いが生まれた。

それと同時に、突っ込みも入った。

 

「ジョブシステムなんてねーだろーよ!!」

「ほんとは騎士(ゆうしゃ)って言いたいんだろ!」

 

S「一瞬で場を掌握するあの能力、リーダーに向いていますね...」

Yu「ギャグを混ぜつつ自分に注目を集める技術、さぞプレゼンがうまかったんだろうな。」

 

いまだ笑いが起こる広場を、ディアベルを手を挙げることで止めた。

そして、さっきまでとは変わり、真面目な口調で概要を説明し始めた。

 

ディアベル「今日、俺たちのパーティはこの層のボス部屋を発見した。このペースといえ、一層のボス部屋を見つけることができた。ということは、いつかこの城を完全クリアできる日が来るっていうことだ!そうだろみんな!!」

 

みんなが歓声を上げる中、一人、納得いかない顔で挙手しながら、

「ちょおまってんか、ナイトはん。」

と声を上げたプレイヤーがいた。

 

Yu「...?」

R「βプレイヤー、でしょうか?」

Yu「いや、むしろ逆だ。あの雰囲気、きっと...」

 

ディアベル「何かな。意見があるときは、プレイヤー名を名乗ってからにしてほしいな。」

キバオウ「わいはキバオウってもんや。ワイはボスに挑む前に、一つはっきりさせなあかんことがあると思っとる。」

 

A「はっきりさせること...?」

 

キバオウ「この場にもいるんやろ、ニュービーを見捨てて自分たちだけ強なりおった、この場の全員に謝らなあかん奴らが!!」

ディアベル「その「奴ら」というのは、βテスター、のことかな。」

キバオウ「そうや!少なくとも、βどもが持っとる金とアイテムを全部回収せんと、わいは命預けられん!!」

 

それが言い終わらないうちに立ったのは、Yuitoだった。

 

R「ユイト、さん?」

Yu「俺はユイトです。発言、いいですか?」

ディアベル「ああ、どうぞ。」

 

Yuitoは一呼吸置くとキバオウと同じ段に降りて、キバオウに向き合った。

 

Yu「では。キバオウさん、あなたはβテスターたちの所持するものを巻き上げて何がしたい?」

キバオウ「そんなん、わいらよりたんまり持っとるアイテムやら金やらをニュービーに分けるんや!」

Yu「βテスターがみんながみんな、そんなにアイテムを持ってると思ってるんですか?」

キバオウ「なっ...どういうことや!!」

 

そう言うとYuitoは一歩下がって、自分の足元に自分が今持ってるアイテムを片っ端からオブジェクト化し始めた。

 

Yu「これが、元βテスターの俺が持ってる全アイテムです。」

 

そこにあったのは、耐久力が残り二桁のスモールソードに、わずか500コルが入った袋()()()()()

 

そんなことを、キバオウや、反βテスター組が信じるはずがなかった。

 

キバオウ「そんなんはったりや!まだ持ってるに決まって...!?」

 

キバオウの言葉が途中で止まったのは、Yuitoが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

Yu「さすがに元βテスターでも、ウィンドウの中身を偽造することはできません。これで信じていただければ、幸いなのですがね。あ、それとそのアイテムたちはどうぞ。あなたに全アイテムをあげて、信用をいただければ、と思います。」

 

そういいながら、Yuitoは席に戻る。

 

L「うわぁ~...すっごい博打...」

Yk「うまくいく保証はなかったのに、なぜやったの?」

Yu「βテスターでも無力な奴がいるって、理解させられたら良かったんだけど。」

 

そう言いながらユイトはトレード画面を開いて、()()()()()()()()()()()()()()()()()をウィンドウに入れている。

 

R「驚き、ました。まさか、他人にアイテムを預けるなんて...」

 

実はユイト、キバオウが反β組と即座に見抜き、Roseliaに自分が持ってる中で重要度の高いアイテムを預けたのだった。

 

ディアべル「それじゃあ、早速だけど。6人組のパーティを作ってくれ!」

 

その声と同時に、周りがパーティメンバーを求めて動き回る。

 

Yu「6人だと、1人余るな。」

K「どうしようか...」

 

と、顔を隠したプレイヤーを見つけたユキナが言った。

 

Yk「あそこにいる人、1人かしら。」

L「ほんとだね。あ、そうだ!あたし達があの子と組むから、ユイトとキリトで組んじゃいなよ!」

 

正直このふたりは戦力的にオーバーキルが過ぎる。

故にユイトは、青薔薇側の戦力を気にかけた。

 

Yu「戦力、平気そうか?」

R「ボスレイドまでは、2週間ありますから...そこでちゃんとレベリングすれば...」

Yu「OK、それで行こう。キリトも、それでいいか?」

K「あぁ、わかった。スイッチ、覚え直さないとな。」

 

こうして森の秘薬即席パーティから、ユイトandキリトチーム(溢れ組)と、青薔薇+1というチームが誕生した。




あとがきです。
読了ありがとうございました。
始まってますね、Roseliaのバンスト3章。
自分は初日に報酬を全回収したのですが、その時点で1300位程でした。
他のイベントだったら、余裕で3桁いってると思います。Roseliaやべえ。

課題だのレポートだのに追われてあまり筆は進んでいませんが、週一ペースにしたらだいぶ時間が出来たような。
ちゃんと完結まで行きます。少なくともアインクラッドまでは!絶対に!
UAが1000を超えました、本当にありがとうございます。
頭のネジをもっと飛ばした何かゆるゆるな回でも書けたらなと思います。
それでは、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
お気に入り、評価、感想などを書いたりなんだりしてくれると、主がオーバーフローします。

コラボもしたい...実は2件ほど決まっていたりするけど...ちゃんと描きますので...


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8話 一層ボス攻略、幕開け

おっそいですねぇ...まだ8話ですか。どこぞの小物も「まあいいでしょう」とは言わないよさすがに。
というわけで、新キャラ、フードを被ったレイピア使いの女の子。
表記は『As』ですのでよろしくお願いします。
...あこちゃんと被っちゃった...。
それでは8話、よろしくどうぞ。


二週間後、俺とキリトは敵の攻撃にソードスキルを合わせて無理やり隙を作り、控えのパーティがその隙を狩るという技、《スイッチ》の勘を取り戻し、ボスレイド戦に向けて準備を合わせた。

どうやらRinRinたちのパーティに入ったのはアスナという女性プレイヤーらしい。

装備がレイピアということで、ユキナやリサと同じビルドらしい。

ただ、一突き一突きが見えないぐらい早いらしい。

 

 

...全部「らしい」で片づけて申し訳ないが、俺が自分で見たわけではないので、こうなることを許してほしい。

 

 

そして俺らといえば、剣と自分のSTR値にものを言わせて上から一撃でぶっ叩くというザ・脳筋戦法を取っている。

キリト曰く、「だってその方が体力とかにも気使わなくていいじゃん。」だそうだ。

俺もその意見には賛成で、スイッチなんて技術を覚えたはいいが、結局自分が一撃で仕留めた方が効率的にも一番いいのだ。

とまあこんなことを言ってはいるが、実際にスイッチは重要な技術であるし、これから初対面のプレイヤーとパーティを組むかもしれないこともないとは言い切れないが故、覚えるのは必須というわけだ。

とまあ長々喋ったが、現在地はボス部屋前。

ボスの特徴とその取り巻きの確認中だ。

 

 

ボスの名前は《イルファング・ザ・コボルドロード》で、主武器は斧。

ハルバート装備の《ルインコボルト・センチネル》と呼ばれる取り巻きが初期ポップで三体。

コボルドロードの体力ゲージを1本削る度、センチネルが三体プラスされる。

そして、残り1本になると武器を曲刀カテゴリ、タルワールに持ち替える...が、俺は持ち替えた先の武器はβとは違うもんだと思っている。

...隣の黒髪のパーティメンバーはどう考えてるか知らないけど。

ちなみにRinRinさん主導のパーティはボスに少なからず攻撃を与えられるが、俺とキリトのパーティはセンチネルの消化だ。つまり、ゴミ掃除。

ま、2人ならしゃあなしかと、2人して笑った。

ボスの確認が終わった時、ディアべルが顔を上げて言った。

 

 

ディアべル「みんな、今日は集まってくれてありがとう!!正直、あの会議から、誰一人欠けることなく、集まってくれるとは...実は思ってなかったんだ。でも、こうして集まってくれた。信用しきれなかったんだ、すまない。」

ディアべル「この場にいる44人!レイド上限には足りないけど...」

 

 

その言葉を聞きながら、小声で横の男に確認する。

 

 

Yu「行けるか、キリト。」

K「あぁ、大丈夫だ。」

 

 

それと同時に、ボス攻撃に参加できるレイドも確認する。

 

 

R「皆さん、大丈夫ですか?」

A「ばっちりだよ!」

L「こっちもオッケー!ユキナは?」

Yk「私も大丈夫よ。」

S「私も平気です。...あなたは?」

As「大丈夫。」

 

 

確認が終わった瞬間、ディアべルが大きく息を吸った。そして、

 

 

ディアベル「みんな、そろったな?それじゃあ...勝とうぜ!!」

レイド「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

 

 

レイド全体の叫び声と共に、ボス部屋を開けた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

一層ボス攻略レイドの構成は、一番先頭に、ディアベル率いるシールド装備のA隊、その左後ろを斧を持ったプレイヤー率いるB隊、右後ろにはディアベルの仲間たちのC隊、その横に片手剣使い率いるD隊、そのまた後ろにキバオウ率いるE隊と、長柄武器使い率いるF隊、そしてRoselia+アスナのG隊。

そしてユイト&キリトのあぶれ組。

 

 

A隊がタゲを取りつつ、B、C、D隊がボスに攻撃を仕掛ける。

E、F、G隊がセンチネルを相手取っている間、ユイキリタッグは取りこぼしたセンチネルを叩き斬る。

 

 

コボルドロードのゲージは既に二本と半分を超えており、POTローテ(回復ポーションローテーション)や、アタッカーとディフェンダーのスイッチもうまくいっている。

 

 

Yu「チッ...抜けなかった!」

K「下がれユイト!スイッチ!」

 

 

このあぶれ組もうまくやっているようだ。

 

 

そうこうしているうちにコボルドロードのゲージは三本目を散らした。

コボルドロードがひときわ高く、大きく吠えた。

吠えると同時に装備していた斧と盾を投げ捨てて、腰の柄を握った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

K「あっ...!」

Yu「まずいっ...!」

 

 

俺とキリトが同時に喘ぐ。

なにかはわからないが、何かが引っかかる。

その引っ掛かりはすぐに解消された。

コボルドロードが引っ張り出した武器は、タルワールより細く、しかしβより輝きが幾度も違う。

モンスター専用の武器カテゴライズ。あれは、何だったか...

 

 

そんな物思いを吹き飛ばすかのように、キリトがロードに向かっていくプレイヤーに叫ぶ。

 

 

K「だめだっ!全力で後ろに飛べーーっ!!」

 

 

しかし、その声は届かない。

コボルドロードがソードスキルのモーションを取る。

水平回転斬り、プレイアブルソードスキルの名前だったら、旋車(ツムジグルマ)

知らないソードスキルをまともに食らったC隊のHPが半分に割り込む。

 

 

Yu「...っ!スタンか!!」

 

 

C隊全員の頭の上に黄色いエフェクト。

こうなってしまうと一定時間は動けない。

しかしスタンの効力は持って十秒。

回復手段が極めて少ないが、それでもほかの状態異常よりは怖くないーー

しかしコボルドロードにとっては、その十秒で事足りた。

旋車の硬直から解除されたロードは、続けざまにソードスキルを放つ。

地面ぎりぎりの高さからタルワール(ノダチ)を跳ね上げるスキル。名を浮舟(うきふね)

それの餌食になったのはスタン中のC隊...ではなく、タンク役のB隊...でもなかった。

 

 

Yu「...!!ディアベルッ!!」

 

 

C隊よりも前で倒れていたディアベルが、ロードのスキルによって浮かされる。

さほどダメージはないはずだったが、ボスのソードスキルはこれで終わらなかった。

 

 

Yu「体を丸めろーーっ!!」

 

 

精一杯の声で防御しろというが、届かない。

むしろ彼は、続けざまに来るロードのソードスキルを相殺しようとしている。

しかし、彼の持つ剣に光は灯らなかった。

反対に、ノダチに光を灯したコボルドロードは、浮かんでいるプレイヤーに上から、下からと攻撃し、一泊おいての突きを、すべてクリティカル攻撃として叩き込んだ。

 

 

Yu「...はぁっ!!」

 

 

その光景を見た俺は、目の前にポップしたセンチネルの頭蓋をバーチカルでたたき割ると、ディアベルの下に駆け寄った。

 

 

ーー今からでも遅くないっ...!

 

 

そう考え、ポーションを持って動かした俺の右腕を、ディアベルはそっと押しとどめた。

そしてかぶりを振ると、俺にしか聞こえない声で、こう言った。

 

 

「ユイトさん、ボスを、倒...」

 

 

そこまで言ったところで、彼の仮想体(アバター)は、ポリゴンの欠片と化した。

 

 

ーーこの瞬間、この世界のどこかにいる、ディアベルと名乗っていた人間の脳がナーヴギアによって焼かれたのだろう。

 

 

その時の俺は、そんなことを考えられるぐらいには、冷静でいた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ディアベルの死によって、ボス部屋の中にいるプレイヤーは、一気に戦意を失った。

プレイヤーの死は避けなければならなかったのに、よりによってそれがレイドのリーダーたるプレイヤー。

そんなもの、誰もが絶望するに決まってる。

けれど、ディアベルの遺言を聞いたプレイヤーと、そのコンビ相手(パートナー)は違った。

 

 

Yu「全員、ポーションを飲みながら出口方向に下がれ!!」

 

 

そう言うと同時に、幼いながらも芯のある声の持ち主が叫んだ。

 

 

A「囲まなきゃ範囲攻撃は来ないから、回復してからスイッチで攻めるよっ!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

K「LA、取り合いな?」

 

 

ここまで来てゲーマー魂がうずいているキリトが、俺に言う。

その提案を飲むのと、お前には負けないという意思も込めて、こう返す。

 

 

Yu「あぁ、勝負だっ!!」

 

 

俺とキリトは、コボルドロードに向かって走る。

β時代の記憶を引っ張り出しながら、ボスのソードスキルを相殺しつつ、的確にこちらのソードスキルを叩きこむ。

 

 

俺もキリトもカタナmob相手は散々やってはいたが、そんな奴らより攻撃速度もリーチも、もちろんパワーも桁違いだ。

ソードスキルを自分の体の動きでスピードを上げないと、あいつの攻撃は捌ききれない。

かといって、あまりにそれが無茶苦茶すぎる動きだと、ソードスキルを失敗(ファンブル)しかねない。

 

 

Yu「せやぁっ!!」

 

 

12回目のノックバック。

ロードのスキルの初動を見切り、奴のノダチに最大火力のソードスキルを叩きこみ続ける。

その生じた隙に、キリトが攻撃を入れる。

だが、それでもゲージは8割を割ったところ。

 

 

Yu「このままじゃ...キリがねぇよっ!!」

 

 

13回目。

いつも通りスイッチに入ったのはキリト...ではなく、緑髪のプレイヤーだった。

 

 

Yu「!Sayoさん!?」

S「自分のHPはきちんと管理してください!」

 

 

そういわれて後退しつつ自分のHPを見る。

もう少しで赤くなる割合まで食い込んでいたゲージをポーションで緑まで戻すと、すぐに前線に復帰する。

Sayoさんがノックバックを取ったことを確認すると、そこの隙間に割り込む。

 

 

Yu「Sayoさんこそ、HP管理しっかりしてくださいね!!」

 

 

ポーションを後方に投げつつ、単発斜め切り《スラント》をクリティカルで決める。

その攻撃でロードのHPが半分を切る。

 

 

Yu「みんな!!あと半分を切った!!士気を下げるな!ここを耐えれば勝てる!!」

R「さっきまでの戦法で大丈夫ですから...!」

 

 

士気を下げないように叫ぶと、いつの間にか隣にRinRinさん率いるG隊がいた。

 

 

Yk「私たちが支えるわ。遠慮せずに攻撃しなさい。」

L「ユキナがそれ言ってどうするのさ...まあともかく、遠慮せずにガンガン行っちゃって!!」

Yu「...了解!!」

 

 

タゲ取りをG隊に一任し、俺とキリトはボスに向き直る

 

Yu「...行くぞっ!」

K「OK!!」

 

 

G隊がタゲを取ってる間にホリゾンタルやバーチカルを打ち込み、タゲがこっちを向いたら相殺しつつ反撃を取る。

 

 

Yu「これでっ...!」

K「終わりだぁっ!!」

 

 

俺とキリトのスラントを食らった一層を守っていたボス(イルファング・ザ・コボルドロード)は、その体を青い破片に変えた。




あとがきです。
読了感謝です。
実はプロット時点では約6千字ありました、ええ。
それでは読みにくいだろうと思って、どうにかボスを倒すとこまでで完結させたのですが、それでも四千字という。本当にごめんなさい。
残りの約二千字は、まあ、追々どこかで。
皆さん、初のチームフェスライブやってますでしょうか。
私はまたも推しがガチャ産なので発狂しております。
というわけで、今回はこのあたりで。
お気に入り登録、評価、感想をいただくと、私がイニシャライズします。


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9話 一層ボス攻略、その後

九話のスパンが異常に短い。
それはそうさ、前回削った約二千字をそのまま持ってきて、加筆しただけ!
そりゃスパンも短くなるさ。
さて、九話です、どうぞ。


ポリゴンの破片が飛び散ってから、レイドの歓声が上がるまで、そう時間はかからなかった。

 

K「お疲れ、GJ(グッジョブ)。」

Yu「そっちもな。LA、とられちまった。」

 

今頃キリトのウィンドウには《You got a Last Attack bonus!!》という文字列の下に、LAボーナスのアイテム名が表示されていることだろう。

 

エギル「congratulation!!これはあんたらの勝利だ。」

Yu「B隊のリーダーさんか。ありがとう。タンク、助かった。」

 

俺はエギルと拳を合わせた後、G隊に向き直り、頭を下げた。

 

Yu「G隊のみんなも、タゲ取りありがとう!」

R「い、いえ...。こちらこそ、ダメージディーラーとタンクを兼任させてすみません...。」

Yk「でも、気持ちのいい勝利だったわ。」

L「ほんとだねぇ...。えっと、こういう時は...GJ、だっけ?」

A「うん!GJ、だね!!」

S「...」

 

G隊とキリトをねぎる中、一人、大部分のレイドのほうを見つめて不安げな顔をするプレイヤーがいた。

 

Yu「ん?サヨさん?どうかしたんですか?」

S「いえ、あの方の顔、どう見ても喜んでいるようには見えないので...」

 

視線の先にはE隊リーダーのキバオウ。

Sayoの言うとおり、不満げな顔をして立っていた。

 

ーー彼のことだ、何かいちゃもんを付けるに決まっている。

 

その予感は、すぐに当たった。

 

「なんでや!!」

 

キバオウが叫ぶ。エギルとあぶれ組、G隊はそちらを振り向く。

それを意に介せず、むしろそれが狙いだったかにように、続けて叫ぶ。

 

「なんでっ...なんでディアベルはんを見殺しにしたんや!!」

Yu「み、見殺し...?」

「そうやろが!!ジブンら、ボスの使う技知っとったやないか!!なんであの情報を一緒に教えへんかったんや!!」

 

ーーいちゃもんもいいところだ。

 

俺は呆れ、ため息と一緒に言葉を吐き出す。

 

Yu「ボスの使うソードスキルは、初動と一緒に攻略本に乗ってたはずだけど。」

 

そう言うと、キバオウ含めレイドの大部分が黙る。

しかし、その沈黙を破るかのように、誰かが叫んだ。

 

「あの本が嘘だったんだ...!嘘の情報を載せたんだ!βテスターがそんな易々と情報を売るわけがなかったんだ!!」

Yu「...お前、それ以上は...!」

 

それ以上の言葉を紡ぐ前に、キリトが俺の前に出て、俺と肩を組みながらこういった。

 

K「元βテスターだってさ、ユイト。あんな奴らと一緒にされたくないよな。」

Yu「キ、キリト...?」

 

キリトの目線は「俺と合わせろ」なのか、「俺の言葉を切ってくれ」なのかわからなかった。

 

ーーキリトだけにこの状況負わせてどうすんだよ。

 

Yu「あぁ、そうだな。」

 

だから俺は、それだけ言った。

キリトの芝居に乗ってやる。

 

K「βテストに当たった1000人、そのうちの大多数は、レベルの上げ方も知らない初心者(ニュービー)でさ」

Yu「ここにいる40人ちょいの人たちのほうがよっぽどいい動きしてたよ。」

K/Yu「でも、俺らは違う。」

 

今更ながら少し後悔しているが、もう後には引けない。

 

Yu「俺たちは、誰も登れなかった層まで登った。ボスの使うスキルが分かってたのは...」

K「その層で散々同じような武器を使うやつと戦ったからだ。」

 

たぶん俺は今、とびきりの悪役顔をしてると思う。

 

Yu「ほかにもいろんな情報を知ってるよ。情報屋、しばらくは必要ないぐらいにはね。」

 

話し終えると、さっきまで叫んでいたやつが震えだした。

 

「そ、そんなの...テスターでも何でもない...」

キバオウ「チートや...チートやチーターやそんなん!!」

 

ーーああ、愉快愉快。

 

K「チートだってさ。俺ら、何のずるもしてないぜ?」

Yu「持ってた知識をフルで活用しただけだからなぁ?」

 

チートだのチーターだので騒がしい元ボス部屋は、やがて《ビーター》という奇妙な響きとなって騒がしくなった。

 

Yu「ーーへぇ。」

K「ビーター、いい呼び名だ。」

 

俺らがつぶやくと、辺りはまた静まり返る。

 

K「そうだ。俺たちはビーターだ。」

Yu「ニュービーテスターとは、一緒にしないでほしいね。」

 

そういうとキリトは、LAドロップであろうコートを着用して、ボス部屋奥の階段に歩いていく。

俺は特にドロップしてなかった...いや、何かあった。

さっとウィンドウを眺めると、買った覚えのない剣がウィンドウにあった。名を《カリバーン》。

どうせならと思い、これを装備してキリトの後を追う。

G隊やエギルに向かって少し目を伏せて、それから笑って見せた。

彼女らはわかってくれただろうか...。

 

K「二層の転移門は、俺が有効化(アクティベート)しておいてやるよ。」

Yu「初見のモブだから、付いてくるなら死なないようにね。」

 

そうして俺とキリトは二層に登った。

それと同時に、俺たち《ビーター》が、2度と前線で張っているギルドやパーティには入れてもらえなくなりそうだ。

 

そんなことを考えていると、メッセージアイコンが光った。

同じ層にいなくてもメッセージが届いているということは、相手はキリトではないということ。

一体誰から...とメッセージを見ると...

 

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From:RinRin

To:Yuito

 

一層ボス攻略、こう言っては何ですが、楽しかったです。

 

二層のボス攻略も、一緒にしましょう。

 

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Yu「ははっ...ビーターだぞ、俺は。」

 

そう言いつつ、メッセージ上では『わかった。また二層で会おう。』と書いているのは秘密にしておきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき、読了ありがとうございます。
気づいたらお気に入りが20件を超えて...UAも1500に行って...頭ゆるゆるな会、そろそろ書きたいなあと考えているユイトです。
さて、彼らはビーターとなり、プレイヤーから嫌われる覚悟で、テスターを庇いました。
ビーターは一人にしときたかったけどYuito君もビーターにしとけば強くなる。と思って。
Yuito君にもLA的何かを持たせたかった。その結果がカリバーンはやらかしたか?なんて考えもしますが、後々のユニークに関わるので...
というわけで、今回はここまで。
次回はあのギルドです、よろしくどうぞ。
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10話 クリスマスプレゼントはビーターが

10話です。
今回はあのギルドの話ですが、あのギルドは開始100字ぐらいで壊滅してます、ご了承ください。
ユイトくん視線で物語は進んでるので、すみません。
それではどうぞ。


『俺、ギルドに入った。』

 

というフレンドメッセージを寝起きに見たときは幻覚でも見てるのかと思った。

徐々に覚醒していく意識で、もう一度メッセージを見たときにも、まったく同じ本文が記されていることから、幻覚じゃなかったことを安堵半分、不安半分の気持ちで落ち着かせると、『そのギルドの名前、教えてよ。』と送り返す。

返信はすぐに来た。そのギルドの名前は『月夜の黒猫団』。

 

ーーそれが、半年後に壊滅する、ギルドの名前だ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

太陽が沈み、月が真上に存在するような真夜中。

現在の最前線は49層。今俺がいる場所は46層で、最前線より3層下、十分前線と言える場所。

そんな場所に、しかも真夜中に俺がいる理由は、経験値稼ぎ...いわゆるレベル上げだ。

俺の向かう先には、昆虫型、というかアリ型モンスターが通常より多く湧く、通称『アリ谷』がある。

今解放されてる49層の中で、最も効率のいいとされている湧き場である。

 

 

1層ボス攻略の際、俺は(本当は俺とキリトなのだが、)自分をβ上がりであることを告げ、情報を独占する悪者のβテスター、それにずるをする人間という意味で使われるチーターを合わせた侮蔑的名称、ビーターであるということをそこで公言してしまった。

こうなることを予知してなかったのかと言われれば嘘になる。

ビーターの生みの親ともいわれるような俺が、全線でパーティないしはギルドに入れるわけないので、こうしてソロで経験値稼ぎをしている。

 

 

Yu「...ん?」

 

 

ふと、見知った後ろ姿を見かけた。

それは、こんな前線にいれば見知った、それに似ているような後ろ姿のプレイヤーなんてそこそこいるだろう。

でも俺は、あの姿は絶対にあいつだという確信があった。

 

 

Yu「キリト、おひさ。」

K「ああ、ユイトか。久しぶりだな。」

Yu「アリ谷をソロ狩りとは...随分と無茶しやがるね、ビーターさん。」

K「それ、ブーメランだぞ。」

 

 

 

久しぶりに会った俺のタッグパートナーは、心身ともにやつれているように見えた。

 

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Yu「お前、ずっとここやってんの?」

K「まあな。」

Yu「レベル、どんだけになった。」

 

 

本来他プレイヤーにレベルやステータスを聞くというのは禁忌であるが、キリトは満更でも無さげに答えた。

 

 

K「さっき上がって69だ。」

Yu「あ、抜かれた...さっき上がって68なのに...」

K「てか、そんな無駄話するために俺の後追っかけてきたのか?」

Yu「うわお、手厳しい。...ま、本題はそれじゃない。《背教者ニコラス》の話だよ。」

 

 

背教者ニコラスというのはクリスマスイヴの夜、つまり12月24日の深夜12時ちょうどに、フィールドのどこかの森にあるモミの巨木の下に現れる伝説の怪物、の名を被ったフラグMobがポップする。

 

 

Yu「『ニコラスの袋の中身にはたくさんの財宝が入っている、もし倒すことができれば、その財宝を手にできるだろう』...か。」

K「ああ。で、その中には...」

Yu「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()...蘇生アイテムの話は俺も聞いた。でも、これはさ...」

K「お前もガセだって言う側か?」

Yu「悪かったな。夢物語は好きだけど、あのチュートリアルを聞いてなお、蘇生できるとは、俺は思ってない。」

 

 

そう。あの時確かに言った。『この世界でHPを0にして死んだプレイヤーは、現実世界でも脳を焼かれて死に至る』と。

そう考えていると、キリトがでも、と言った。

 

K「この世界で死んだ後、現実でどうなったかなんて、ここにいる人間は知らないんだ。」

Yu「現実とのコンタクトが取れない以上、確かにそうだ。」

 

 

ーーだけど、これで死んでった人間が現実で生きてたら、とっくに俺らのナーヴギアは外されているはずだ。

 

 

とは言えなかった。

頓知的に考えれば、『この世界でHPを0にした人間は』と言っていた。

つまり、この世界で死んだプレイヤーに限り、蘇生の可能性があるのではないか。

反対に、この世界で死ぬ以外の要因でこの世界を去った場合、蘇生の猶予はない。

なんて考えてから、いやないなと呟いた。

 

 

K「お前の考えてること、大体わかる。俺もそうだって、信じたい。」

Yu「俺が言えたことじゃねえけど、お前もたいがい夢想家だな。」

K「俺もそう思うよ。」

 

 

キリトは薄く微笑みながらそう言った。

とりあえず俺も笑い返してから、真面目な口調で続ける。

 

Yu「で?ニコラスが出てくるとこ、見当ついてんの?」

K「とぼけんなよ。俺がボスの出現場所の情報を買ったっていう情報、お前買っただろ。」

Yu「あらま、ばれてたか。というか情報を買ったっていう情報買うって、お前金余り過ぎでは?」

K「経験値だけ落とすわけじゃないんだ、コルも溜まるさ。」

 

そう言うとキリトは、アリ谷に戻っていった。

 

Yu「...気をつけろよ。」

K「...あぁ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

5日後、12/24。

俺はとある層に来ていた。

迷いの森がある、ここは35層。

目の前には馬鹿でかいモミの木。

こここそ、背教者ニコラスが現れるとされる最も有力な場所だ。

 

Yu「きっと、あいつも来る。」

 

全身を黒で固めたかつての相棒も、きっとそこに行くと、謎の確信があった。

 

 

時を進めて、23:30。

俺は迷いの森の目の前に立っていた。

後ろでワープ音が聞こえたのを合図に、俺は後ろを振り返る。

そこにいたのは黒衣の剣士...ではなかった。

 

Yu「何しに来たのさ、ビーターが一番乗りに来るような場所に。」

L「いやぁ~...RinRinから頼まれちゃってさぁ...」

Yu「俺の監視?あの人も趣味が悪いね。」

L「あはは...」

Yu「...?Lisa、下がって。」

 

俺はリサを後ろに下がらせて、臨戦態勢をとる。

ぶっちゃけフラグボスなんか誰もが狙ってるもんだし、ここでいがみ合ってもしょうがない...

という俺の考えは、ワープゾーンから出てきた黒髪の少年の顔を見たことにより、すべて飛んで行った。

 

K「お前もここにかけたクチか?」

Yu「まあな。ゲーマーの勘がそう言ってた。」

K「へぇ...。それで、そこの人はお前の連れ?」

Yu「いや、尾けられた。」

 

という会話の直後、またワープしてくる影が30体以上。

 

Yu「尾けられてたの、キリトもだったな。」

K「そうみたいだ...!」

L「え、あれ《聖竜連合》じゃないの!?」

 

攻略組、最前線に拠点を構えるギルド、聖竜連合。フラグボスなどの珍しいMob狩りには一時的に犯罪者プレイヤー(オレンジプレイヤー)になってもいいと考える連中。

 

Yu「キリト、先行ってろ。俺もあとから行く。」

K「...!」

 

キリトは最後のワープ場所に飛び込んだ。

それを横目で確認すると、剣を抜いてギルドのやつらを牽制する。

 

Yu「リサ、俺が合図したら、すぐにそこにワープ場所に飛び込め。」

K「で、でも君は...!」

Yu「RinRinさんに伝えといてくれる?「49層のボス攻略、頑張ってくれ」って。」

 

俺は返事を待たずにギルドのやつらに突撃する。

 

Yu「うおおおおっ!!」

 

ソードスキルなんて必要ない。

ここでこいつらの動きを止めるだけ。少し装備の耐久値を削ってやるだけ。

頭じゃそんなことを考えているのに、体はこいつらを殺すために動いていた。

 

「さばききれねえぞこの攻撃!!」

「ひっ!タワーシールドが...!」

「死にたくねぇよぉ...!」

 

その言葉で、俺の本能に任せた行動は止まった。

その場で一度息をつくと、俺はそのままモミの木へのワープゾーンに入る。

入る途中で連合のやつを見たけど、あいつらはもう、フラグボスを狩る気など、一ミリもなさそうだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

深夜12時から5分遅れでニコラスを見た俺は、想像以上の大きさに身をすくめた。

しかしその震えを無理やり抑え、ニコラスに突貫する。

 

Yu「せぇりゃぁっ!!」

 

ニコラスにノックバックを押し付け、叫ぶ。

 

Yu「スイッチっ!」

K「おおおっ!!」

 

型もローテもくそもない、たった二人のパーティで、ニコラスのHPを削る。

 

 

戦利品がウィンドウに入っているのに気づいたのは、ニコラスのHPがなくなってから少し意識を落とした後だった。

 

Yu「はぁ...はぁ...」

K「......!!」

 

キリトは目当てのアイテムを見つけたようだ。

震える指先があいつの動揺を示している。

しかし次の瞬間、そのアイテムを投げ捨て、何度も踏みつけ始めた。

 

Yu「キ、キリト...?」

K「...あぁ...悪い。」

 

そう言うと、キリトは顔に影を落としたまま、迷いの森を出た。

俺はキリトが投げ捨てたアイテムを拾い上げ、情報を見る。

 

『《環魂(かんこん)聖晶石(せいしょうせき)》:このアイテムのポップアップメニューから使用を選ぶか、手に保持したまま、『蘇生:【プレイヤー名】』と発声することで、対象プレイヤーが死亡してからその光が完全に消滅するまでの間(約十秒間)であるなら、そのプレイヤーを蘇生させることができます。』

 

()()()()。そのプレイヤーが死んでから、たった十秒。

この世界でHPを0にしてから、現実の脳を焼くまでの時間。

その時間の中でしか、この世界にそのプレイヤーの脳データは残らない。

 

Yu「は...ははっ...」

 

さすがに俺も乾いた笑いしか出ない。

俺ですらこのリアクションなのだから、キリトの心の内は想像に堪えない。

 

Yu「とりあえず戻るか...」

 

ワープゾーンをくぐってさっきまでの場所に出ると、キリトのコートの裾にカタナ使いらしきプレイヤーが縋り付いていた。

 

「キリト...キリトよォ...オメェは...オメェは生きろよぉ...!!」

K「...じゃあな、クライン」

 

そう言ってキリトはどこかに転移してしまった。

 

Yu「ほんと、冷たいやつ。」

 

あのギルドの中に、キリトの心の支えになるような人間でもいたのだろうか。

それが分かったのは、キリトが50層のボス攻略会議で、「ようみんな!」と笑顔で言った後のことだった。

 

 

 

 

 

 




あとがき、読了感謝です。
今回は黒猫団の話でした。
まずごめんなさい。原作順守のために黒猫団は犠牲になりました、ほんとごめんなさい。
斬り方がぶつ切りなのはほんとにすみません。
週一投稿するとか言っといてこれはキレます、私が。
次回はあのテイマーの話です、きっと。
私事ですが、先日から夏休みに入りましたので、できるだけ投稿してみようと思います。
ただ、投稿間隔はばらつきます、ご了承ください。
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回想 ビーターの独白

はい、黒猫団壊滅の一部始終を聞いたユイトくんが語り部です。
ビーターの独白と言いつつ、ユイトが喋ってるのは...まあ、いろいろあります。
というわけで、今回はユイトくん視点でお届けします。


K「初めは、ほんとに支えるだけっていうつもりだったんだ。」

 

 

キリトが一時的に所属していたギルド、『月夜の黒猫団』は、五人組のギルドだった。

そのうち前衛を一人で受け持つメイス、盾使いのプレイヤーだけで、後は後衛にひっこんでいたそうだ。

その編成のまま、後退をしているパーティを見かねたキリトは、リーダー使いに声をかけ、一時的に前衛を二枚にしたそうだ。

でも、キリトは、自分がハイレベルプレイヤーであるがゆえに、後衛の4人、そして横にいたプレイヤーの視線を恐れた。

だから、使ったソードスキルを初歩的なものに縛り、時間をかけて倒したそうだ。

 

 

Yu「まあ、そうだよな...気持ちはわかるよ。」

 

 

一般的にハイレベル帯のプレイヤーが下の層まで来て狩場を荒らすのはマナー的によろしくない。

そのプレイヤーにも事情があるから一概には言えないだろうが、一般的にいい顔はされない。

 

 

Yu「ビーターであることがばれるの、怖かったんだよな。」

K「...あぁ、その通りだ。」

 

 

助けたプレイヤーに礼を言われないことはしょっちゅうあったりするが、嫌な顔をされるのはほんとに心に来る。しかも自分が悪い立場にいるというならなおさらだ。

 

 

K「そのあとだな、俺がこのパーティを助けたいって思ったのは。」

 

 

モブ群を倒した後、前線ではボス戦以外では考えられないほどの歓声を上げたという。

それに圧倒されつつ握手を返したキリトは、紅一点の黒髪プレイヤーを見て、他プレイヤーより強くてよかったと、初めて思ったそうだ。

助太刀に入ったキリトは、「残りのポーション量が心もとない」という嘘を、そのパーティのリーダー...ケイタはその嘘を疑うことなく飲み、ダンジョン出口まで同行した。

 

 

K「今思えば、あそこで明かしておけばよかったかなぁ...」

 

 

キリトの表情には薄い笑みが、しかし言葉には悲しみが含まれていた。

...話を戻そう。

ダンジョンを抜けた一行は、酒場で一杯やりましょうという言葉で、そのまま酒場に直行した。

自己紹介を終えると、ケイタはキリトのレベルを聞いたという。

 

 

Yu「ま、当然だな。いくつって言った?」

K「えっと...40ぐらいだったかな」

 

 

その時の俺のレベルは59だった、そのペースでレベルが上がっているなら、キリトは俺と同じだったか60ほどだったと予想できる。

その時の黒猫団の平均レベルは37ほど、少し高いだけというなら不信感は残らない。

本当のレベルの20も下を言うのは自分に靄が残る。とても気持ち悪い。

ともかく、レベルを聞いて驚いたケイタはキリトをギルドに勧誘したそうだ。

その理由はいろいろ、まずはキリトのレベルと卓越した技術。

前衛を増やすためのコーチ役。

それらを諸々キリトは了承し、キリトは「月夜の黒猫団」に所属した。

 

 

Yu「...なんか、俺らより楽しんでそうだったな、SAOを。」

K「あぁ。俺はあの雰囲気が、心地よかったんだ。」

 

 

キリトを加えた黒猫団は、一週間後には急速な成長を遂げ、狩りをするフロアを一層上げたそうだ。

キリトのスキルに、『戦闘時回復(バトルヒーリング)』というものが存在する。

戦闘時に負っているダメージを一定間隔で回復するスキルだ。

もしそれを付けたままにしていたなら...

 

 

K「つけてたよ。でも、俺がコートが特別製なんだって言ったから...」

Yu「...信頼されてたんだな。」

 

 

良くも悪くも人を疑うことも知らない人たちだなと、他人事かつ当事者じゃないから、今なら言える。

そんなあるとき、ケイタはいつかは攻略組に入りたいという夢を語った。

攻略組に必要なものをキリトに聞き、その質問をした当事者は意志力が大事だといったそうな。

曰く、仲間を守り、全プレイヤーを守る意志の強さ。それが結果的に危険なボス戦に勝ち続けていられる理由だと、彼は語ったそうだ。

 

 

Yu「まあでも、実際は...」

K「俺らもそうなんだけどな...」

 

 

攻略組がボス戦に勝ち続け、常に最前線にいる理由は、今存命しているプレイヤーの中で、最強の剣士でありたいという自己顕示欲だけだった。

攻略組を増やすんだったら、彼らが持っている情報を、中層プレイヤーに提供してやればいい。

それをしないのは、攻略組(俺らも含めて)が常に最強でいることにこだわるからだ。

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

 

黒猫団はキリトを加えたことにより、中層プレイヤーの平均レベル(ボリュームゾーン)から頭一つ抜けた。

コルもたまり、ギルドホームを買うことも視野に入っていた。

ただ、長槍使いのサチを盾持ち剣士に転向させることだけは、うまくいかなかったという。

そんな時、サチが姿を消した。

ギルドメンバーならマップで姿を追えるが、マップ上に点がなかったという。

ギルドメンバーは迷宮区を探しに行ったが、キリトは一人『追跡』を使用し、サチの居場所を特定した。

 

 

Yu「ストーカーと同じだぞ、それ。」

K「俺もそう思うよ。けど...あれ以外に方法がなかったんだ。」

 

 

サチはキリトに言ったそうだ。

「なぜゲームから出れないのか、この世界を作った萱場という人間は何をしたいのか、そもそも、こんなことに何の意味があるのか。」

キリトはこう答えたそうだ。

「意味なんてない。誰も得なんてしない。この世界ができた時、大事なものは全部消えた。」と。

実際は嘘である。

得をしている人間なんて全然いる。それこそ、攻略組がいい例だ。

それでもキリトは、「君は死なない、黒猫団は十分に強い、だから死なない。」と、確証を持てないことを言ったそうだ。

 

 

Yu「安心させるんだったら、もっと違う言い方があっただろ。」

K「不器用なんだよ、俺はいつも。」

 

 

それから宿に戻ったキリトたちは、サチの剣士転向を急ぐ必要がないことを説明したそうだ。

前衛は俺一人でやるから、問題はないと、そういったらしい。

その代償というわけではないが、サチがキリトのベッドに潜り込んで、一緒に寝るようになったという。

 

 

K「毎晩、「君は死なない」って...」

Yu「今考えたらそれ、洗脳じみたことしてるぞ。」

 

 

今はこうして話していられるが、壊滅した当時のキリトだったら、きっと俺を切り殺していただろう。

そのくらいの話の重さなのだから、話せていることは、本当に奇跡だ。

 

 

K「でも結局...」

Yu「なんとくなく察するが、最後まで聞くよ。」

 

 

その日、リーダーのケイタが、ギルドホームを売り出している不動産仲介プレイヤーのところに出かけていた。

メンバーの一人が、「ケイタが帰ってくる前に金を集めて、家具をそろえておこうぜ」といったらしい。

そこで黒猫団が選んだのは、当時の最前線から、三層下の迷宮区だった。

順調に歩を進めていた黒猫団だが、道中で宝箱部屋を見つけた。

 

 

K「止めたんだ、やばそうだからって...」

Yu「そこの層から、トラップのレベル上がるからな。」

 

 

キリトの予想を裏切らず、その部屋はトラップ部屋だった。

しかも、その部屋は結晶無効空間、つまりは、転移結晶が使えないという絶望的状況だったらしい。

最初に、宝箱を目を付け、開けたシーフビルドのプレイヤーが死んだ。

次に、メイサーのテツオがやられた。

その次は、ランサーのプレイヤーが。

ここまで来たキリトは、今まで使ってこなかったソードスキルを連発し、モンスターを切り伏せた。

しかし、ポップする数が異常だった。

これじゃあ宝箱を壊せない...と考え、前を見た瞬間、サチがモンスターに波に呑まれるところを見た。

サチはHPを0にする瞬間、キリトに向かって右手を伸ばし、口を開いた。

しかし、口が言葉を発する前に、サチのHPは尽きた。

 

 

K「守れなかった...」

 

 

慰める言葉を俺は持ち合わせてない。

目の前で死んだ人間を見た人間に、声をかける術を俺は持たない。

 

 

キリトは、その部屋を脱出し、ケイタに報告をしに行くまで、全く記憶がないという。

ケイタにあらゆる物事を報告すると、「ビーターのお前が、僕たちにかかわる資格なんてなかったんだ。」と一言言って、アインクラッドの外周から飛び降りたという。

 

 

Yu「ここまで聞いてあれだけど、蘇生アイテムを求めた理由は?」

K「サチが...最後に言いかけた言葉を聞くために...」

 

 

そして、あのクリスマスイヴの夜につながる。

 

 

あの後のキリトと言えば、どうやって戻ったか自分の宿にいた。

その時の思考と言えば、起きたらこの層のフロアボスと戦い、勝てたなら次の層のボスに、それも勝てたなら足を止めずに次の層のボスに。

ということを考えていた。

そんな時、キリトのウィンドウに録音結晶が届いた。

差出人はサチ、時間指定でウィンドウに届いたものだった。

 

 

K「これが...その時に届いた結晶だよ」

 

 

そこに記録されていたのは、これを残そうと思った経緯、キリトの本当のレベルを知っていること。

生きてほしいという意思を残した彼女は、最後に『赤鼻のトナカイ』を歌った。

優しい声だった。

当事者じゃない俺でさえ、目頭が熱くなってしまう。

最後に、「ありがとう、さよなら。」という言葉で、その結晶は再生をやめた。

 

 

Yu「優しい人、だったんだな。」

K「あぁ...俺にとって、大事な人だ。」

 

 

きっと今のキリトがあるのは、サチというプレイヤーがいたからであろう。

彼女は、キリトの心の中で生き続ける。

それはきっと、永遠に。

 

 




あとがき、読了感謝です。
プロットだと11話ってことにしてたんですけど、10.5ていうことにしました。
これが話の内の一話だと気持ちがよくないので、回想みたいな形でまとめさせていただきました。
というわけで、次はテイマーの話だと思います。
最近青薔薇の出番がないですが...私の文才不足で、ほんとごめんなさい。
次は出します。



もしかしたらバンドリキャラが出てくることをいいことに、NFO回も書いちゃったりするかも知れません。
...はい。

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11話 ビーター、テイマーと遭遇。

はい、こんにちは。
一週間近く投稿を開けたこと、本当にごめんなさい。
夏休みだから執筆意欲も上がるかと思ったんですが、そんなことはありませんでしたね。
というわけで、テイマーの登場です。一話にまとめることが難しかったので、分割しています。今回は前編といったところでしょうか。

新キャラ会話頭文字→Si

それでは、どうぞ。

アップデート(追記):誤字修正をしました


Yu「ここ抜けたらフィールドに戻れっかなぁ...」

S「まったく。何が「地図なんかいらねえだろ!」ですか。」

L「あはは...しっかり迷ってるね...ユキナ連れてこなくて正解だったかも...」

 

はい、今何をしてるかっていうと...絶賛迷子中です。

ここは35層にあるマップ、『迷いの森』。

察しのいい人はわかるかも知れないけど、クリスマスイヴにニコラスと戦ったあのマップだ。

俺はほんとは一人で来ようと思った。実際、付いてきてる二人の使っている剣には全く関係ない素材ばかり取れる。

のだが、ニコラスの時に、リサが伝える情報をミスったようで、りんりんさんから「単独行動は控えてください...!!みんな、心配します...」と釘を刺されてしまった。

いやまあ別に、あの戦いは正直死んでもおかしくなかった。

そう思ったからリサに、「49層のボス攻略、頑張ってくれ」って言うように言ったんだけど。

そしたら余計なこと付け加えたみたいで、俺が最前線の宿に帰ってわずか二秒で家凸されて3時間ぐらい5人に説教されました...

...え?美少女から説教とかご褒美だろ悲しんでんじゃねえぞクソアマだと?

優しい人が怒ったら怖いって知ってるか?

そん時のりんりんさん、マジで般若だった。

マジで怖かったんだからな!?

 

 

S「馬鹿なこと考えてないで、早く出口を探してください。」

Yu「はい...すみませんでした...」

L「ユイト...将来苦労しないでね...」

 

 

30分後、俺たちは出口...ではなく、二つの人影を見つけた。

 

 

S「あのシルエットは...」

L「キリト...だねぇ...」

Yu「んで...あのちっちゃい子は...迷子...じゃなさそうだな。」

 

 

黒いコートに黒髪で、片手剣にしては割と長い部類の剣を持ってる男プレイヤー。

ほぼ確実にキリトだ。

そして、おそらく中学生ぐらいのあの子は一体...?

と考えていると、キリトがこちらを振り返った。

 

 

K「ん?ユイトと...サヨさんにリサさんか。」

Yu「よぉ、キリト。おひさ」

L「えーと、その子は?」

 

 

リサが小さい子を見ながら言う。

 

 

K「この子はシリカ。ここで迷子になってたみたいで...」

Si「し、シリカです!はじめ、まして。」

Yu「初めまして、俺はユイト。こっちがサヨで、こっちがリサ。」

S「よろしくお願いします。」

L「よろしくね~☆...で、二人はここで何を?」

 

 

リサがそう言うと、二人は顔を曇らせた。

 

 

L「うわ、アタシなんか聞いちゃいけないこと聞いた!?ごめんねっ!?」

Si「い、いえ、ごめんなさい...。実は...」

 

 

シリカは涙ぐみながらここにいた理由を話し始めた。

どうやらここにはパーティメンバーと一緒に入ったが、そのうちの一人と喧嘩別れをし、勢いでこの森を抜けようとしたらしい。

その道中で、大事なテイムモンスター、フェザーリドラ(ピナ)を亡くしてしまい、ここで絶望していたところをキリトに助けられた、というわけだそうだ。

 

 

Yu「それは...残念だったな...」

Si「いえ...あたしがバカだったんです...一人でこの森を抜けられるなんて思いあがったから...」

 

 

そう言って再びシリカは何かを握りしめたまま涙をこぼす。

 

 

S「...?あの、シリカさん。」

Si「は、はい。」

S「その、右手に握っているものは、何でしょうか...?」

 

 

そういえば彼女は俺たちがここに来た時からずっと何かを持っていた。

手の中に納まるなら武器の類じゃない、なら何が...

 

 

L「わぁ...きれいな羽だね...」

Si「ピナが...遺した羽です...」

Yu「アイテムを遺した...?」

K「その羽...アイテム名、設定されてるか?」

 

 

その言葉を聞いたシリカが、羽をシングルタップする。

ウィンドウをのぞかせてもらい、名前を見る。

《ピナの心》。

ウィンドウにはそうあった。

 

 

ーー心...どこかで...。

 

 

Yu「心があるなら...蘇生の可能性が...」

K「やっぱり、お前も知ってるか。」

Yu「あぁ。キリトが知ってるってことは、この話はマジってことでいいんだな?」

K「俺の目的も、それと似たようなもんだからな。」

 

 

キリトは何か意味深なことを言いながら、シリカのほうに歩く。

 

 

K「シリカ。心アイテムがあるなら、使い魔を蘇生できるk」

Si「ほ、ほんとですかっ!?」

 

 

シリカはキリトに詰め寄りながら叫ぶ。

 

 

Yu「47層のフィールドダンジョンに、《思い出の丘》ってところがある。」

K「最近出た情報だからあまり知られていないけど、使い魔用の蘇生アイテムがあるっていうのは本当だ。」

Si「本当に...でも...。」

 

 

ここは35層。

狩場をここから±2層とした場合、この子のレベルは推定45か6ほど。

このデスゲームじゃ、安全マージンは階層+10レベル必要なのだから、この子が47層に行けるのは、早くても3日か4日。

 

 

Si「情報、ありがとうございます。でも、レベルが足りないので...いつか、挑戦しようと...」

K「それは無理だ。」

S「キリトさん!?それは直球すぎます!」

Yu「サヨ、それにシリカ、こいつの言い方が悪いんだ。」

Si「えっと...どういう...」

Yu「心アイテムっていうのは、入手してから三日以上たつと形見アイテムに変化する。そうなると、もう二度と...」

 

 

そう。心アイテムがいつまでも心アイテムであるわけではないのだ。

形見アイテムとなってしまったら、奇跡が起こらないこんな世界じゃ、もう二度と使い魔モンスターとの再会は望めない。

 

 

Si「...?あ、あの?」

 

 

シリカが戸惑いの声を上げる。

みると、キリトがウィンドウを操作していた。

あの形からして...トレードウィンドウか。

キリトは自分の持ってるレア度が高い装備を、シリカに押し付け...あげているようだった。

 

 

K「この装備で5,6レベルぐらいは底上げできる。あとは俺も一緒に行くよ。」

Yu「...キリト。この子めっちゃ怪しんでるけど。」

 

 

それはそうだろう。

この世界はリソースの奪い合い。

甘い話には裏があるとはよく言った話だ。

 

 

Yu「...まあでも、キリトはそういうやつじゃないから。安心していいと思うぞ。」

Si「そ、そうなんですか?」

Yu「1層からの付き合いの俺が保証するよ。」

K「証人ありがとうユイト。」

Si「あの、何から何まですみません...。あの、これ、全然足りないと思うんですけど...」

K「お金は大丈夫だよ。余ってたものだし。」

Si「えっと、なんでそこまでしてくれるんでしょうか...?」

 

 

それは最もだ。

この世界に無償の善などほとんど存在しない。

さっきも言ったとおり、リソースの奪い合いだからだ。

キリトは聞かれると、顔を背けながら少し小声で言った。

 

 

K「笑わないでくれよ...?君が...妹に、似てるから。」

S「妹...?」

L「似てるんだね...」

Yu「クッ...アッハハハハハハハハハ!!!」

K「な!?笑うなって言っただろ!?」

Yu「いやぁ...アハハ!つい笑っちまった。悪意はねえから許してくれよ。あー、腹痛い...」

K「こいつの前で言うんじゃなかった...」

Yu「でもシリカちゃんも笑ってるぞ。」

Si「ふふっ...ごめんなさい...」

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき、読了ありがとうございます。
とりあえず迷いの森脱出前まで。
次回はどこまで行けるかわかりませんが、まあ頑張ります。


話は変わって。
わたくし、ついにコラボが実現しましたありがとうございます!!
コラボ相手は『砂糖のカタマリ』様、コラボ先小説は『監視対象と約束された日々』でございます!!
割と初期のほうに絡みがあり、私の方からコラボを持ちかけたところ、引き受けて下さいました、本当にありがとうございます!!
コラボ先の小説には、うちの子Yuitoが猛威を振るっておりますので、そちらも確認して頂けたらと思います!!

お気に入り登録、評価、感想などをいただくと、主がフォースライズします。

砂糖のカタマリ様 『監視対象と約束された日々』→https://syosetu.org/novel/251752/


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12話 《思い出の丘》攻略前夜

月曜投稿と意気込んでいた私はどこに行ってしまったのか。
ま、そんなことは言ってないんでセーフですね、週一は守ってるので()
というわけで、森を抜けた後の話です。


12話、どうぞ。


しばらくして笑いが収まったころ、俺たちは迷いの森を抜けた。

 

 

Yu「やーっと出れたー!!」

L「いやぁ~出れてよかったね~!」

S「前準備は必要だと、いい教訓になりました。」

K「あんたら、迷ってたのか...」

 

 

そういえばそうだった。

迷いの森の定型句通り、迷っていたのだった。

それでいくと、キリトに会えたのはかなりの幸運と言える。

 

 

Si「あの、皆さん。ホームはどこに...?」

Yu「俺は今49層にあるけど...」

S「私たちは40層に。森から出れたので、帰ろうと思っていたところです。」

L「ユイトはどうするの?一緒に帰る?」

Yu「いや、キリトの方に付いてくよ。悪いね。」

 

 

キリトがなにかよく分からないことを言っていたのも気になるし。

 

 

S「それでは、私たちはこのあたりで。」

L「じゃあね~!ユイトもたまには、顔見せてよね!」

Yu「はいはい。」

K「あれ、ユイトもここに泊まるのか?」

Yu「その花っていうの、気になるし。それに...」

Si,K「それに?」

Yu「いや、何でもない。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

主街区に戻ってきた俺たちは、シリカに集まるプレイヤーを見て少し引いていた。

 

 

Yu「あの子、人気者なんだな。」

K「あんな小さい子、しかもモンスターテイムに成功したプレイヤーなんて貴重だからな...」

Si「ごめんなさいっ!あたし、この人たちとしばらくパーティ組むので...」

 

 

ということが聞こえ、気づいたらシリカに手を引っ張られて移動していた。

 

 

Yu「随分と人気者なんだな。フリーになったのなんて、ついさっきの話のはずなのに...」

Si「マスコット代わりに誘われてるだけなんです。でもあたし、それで思い上がっちゃって...」

K「大丈夫、絶対に生き返らせるさ。」

 

 

と、キリトがいったところで、宿の隣の道具屋からパーティと思わしき五人組が出てきた。

そのパーティの最後尾の赤髪の女性プレイヤーがこっちを振り返った。

それを見たシリカが、少しだけ足を速めた。

 

 

「あら、シリカじゃない。」

 

 

声をかけられてシリカは立ち止まり、どうもと返す。

 

 

「へぇ...森から脱出できたんだ。よかったじゃない。でも、今さっきアイテムの分配終わっちゃったわよ?」

Si「いらないっていったはずです!...急ぎますから」

 

 

再び宿の方に向かおうとするシリカを、そのプレイヤーはまだ開放する気はなかった。

 

 

「あら?...あの青いトカゲ、どうしちゃったのかしら?もしかして...」

Yu「...ヤな奴

Si「死にました...でも!必ず生き返らせます!」

「ってことは...《思い出の丘》に行くつもり?でも、あんたのレベルで攻略できるの?」

 

 

反抗したのは、シリカではなくキリトだった。

 

 

K「できるさ、そんなに難しいダンジョンじゃない」

 

 

赤髪のプレイヤーはキリトと俺を見ると目を細めて、

 

 

「あんたたちもその子に誑し込まれた口?見た感じ、そこまで強そうには見えないわね」

K「...行こう」

「ま、せいぜい頑張ってね」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

Yu「あ~!ムカつくあの女!」

K「なんでお前がキレてんだよ」

Yu「何だあの言い方!皮肉混ぜるにもほどがあんだろうが!」

Si「ま、まあまあ落ち着いてくださいユイトさん...」

 

 

俺たちは宿屋の一階で、パーティ結成記念と称して、夜飯を摂っていた。

 

 

Si「なんで、あんな言い方するんだろう...」

Yu「自尊心の塊みたいなやつだったからな、あの女。自分中心に世界回ってるとか思ってそうだ」

K「まあ、この手のゲームだと性格変わる奴なんてそこそこいるしな...」

 

 

キリトの顔が曇る。

 

 

K「この世界で悪事を働く奴は、リアルでも腐ってるやつだと思ってる」

Yu「まあ、なりたい自分になれるっていうのがこういうゲームの特徴だしな。それにしたって、だけど。」

K「こんな異常事態なのに、他人の不幸で飯がうまいなんて言ってる状況じゃ、ないのに...」

Yu「ま、俺らも人のこと言えた義理、無いけどな。」

K「そう、だな。だとしたら、俺らも...」

Si「そんなこと、無いですっ!」

K,Yu「!?」

 

 

急に大声を出したシリカは、俺たちの手を取って握りしめた。

 

 

Si「キリトさんはいい人です。そして、ユイトさんもいい人だって、信じてます。」

Yu「慰められてるぞ、俺ら」

K「そうだな...ありがとう、シリカ」

 

 

キリトがそう言った瞬間に、シリカはすごい勢いで手を離し、その手で顔を覆った。

 

 

K「ど、どうした...?」

Si「な、なんでもないです!あ~!デザートまだかなぁ~!」

Yu「誤魔化し方どうなってんだよ...

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

夜飯を食べて俺とキリトは同じ部屋に、シリカは別の部屋にそれぞれ入って、「明日に備えて今日は早めに寝よう」ということで一時解散した。

まぁ、隣の部屋がシリカの部屋なんだが。

 

 

Yu「ふぁ~あ...」

K「眠いなら寝たらどうだ?」

Yu「いや、もうちょい起きてるよ。それよりも、お前なんか気になること言ってたよな」

K「気になること?」

 

 

森で会った時、キリトはシリカに装備を渡すとき、「目的も似たようなもの」と言っていた。

つまり、キリトにも《思い出の丘》に向かう何かしらの理由があるということ。

それが気になってしょうがない。

それを問い詰めてみると、

 

 

K「今話すとややこしくなるからさ、現地でいいか?」

Yu「それで俺が理解できるんだったら、それでいい」

 

 

と言ったところで、ドアが軽くノックされる。

 

 

K「あれ、シリカ?寝たんじゃなかったのか?」

 

 

Si「あ...えっと...」

 

 

シリカは口をもごもごさせるだけで言葉を発さない。

しょうがないな...

 

 

Yu「キリト、47層のマップ、頭に入れといたほうがよくねえか?」

K「え?なんでだ?」

Yu「いやほら、俺とキリトは言ったことあるからあれだけどさ、シリカにとっては初めての、しかもマージンぎりぎりの場所だ。知らん場所に連れてって死なれても困るだろ?」

 

 

俺にしては饒舌に論破した方だと思う。

俺の弁論にキリトは、それもそうかと納得の意を見せた。

 

 

K「それじゃあ、階下に行くか?」

Si「えっと、よかったら、お部屋で...」

K「え?」

Si「ほ、ほら、貴重な情報、誰かに聞かれたら困りますし!」

K「まあ、そうだな...」

 

 

キリトはそう言うと、ドアを大きく開け、シリカを中に入れる。

 

 

Yu「じゃ、俺はちょっと外出てるよ。お二人でごゆっくり~」

K「お、おいユイト!」

Yu「ちょっと小腹すいたから飯食ってくるだけだよ~」

 

 

と言って、部屋から出る。

10分ぐらいすれば話も終わるだろうと、軽く見積もって下に降りる。

シリカがイケると言っていたチーズケーキを二個ほど食べ、そろそろ戻るかと上に登ったところで、おかしな人影を見た。

ドアに耳を付けて、何かを聞いている人間、おそらく男のプレイヤー。

通常、ドアに隔たれた部屋の中の音声は、ノックした後の10秒間を覗き、誰にも聞こえないものだ。

しかし、《聞き耳》スキルを相当に上げていれば、盗聴も可能だ。

そして、その盗聴している部屋は、さっきまで俺がいた部屋。つまりキリトとシリカが47層について話している部屋だ。

ゆえに、行動すべき選択肢は一つ。

 

 

Yu「おい」

 

 

そのプレイヤーの肩に手を置き、少し力を入れながら呼びかける。

そいつは一瞬驚いて、俺につかまれた肩を無理やり動かし逃亡する。

 

 

俺が「待て!」と言うのと、キリトが「誰だ...!」と言いながらドアを開けるのは同時だった。

 

 

Yu「わりぃ、逃がした。」

K「俺の不注意だ...姿、わかるか?」

Yu「黒ローブで顔見えず、髪形だけだな、見えたのは。ツンツンしてたぜ」

K「そうか...ちょっとメッセージ打つ。」

Yu「了解...って、シリカ寝てんじゃん。」

K「寝る場所どうする?」

Yu「俺床で寝るよ、キリトは椅子にでも座りな」

K「じゃあ、それで...」

 

 

ほどなくして、俺もキリトも眠りに落ちた。

 

 




あとがき、読了感謝です。
また中途半端なところで終わってしまった。
原作読み返しながら書いてるんですけど、キリトがメッセージ送ってる相手って誰なんですかね。
そこだけが分からない。
次回でテイマー編完結かなぁ...頑張ります。
ほんとこの小説タイトル詐欺が過ぎると思うわ、だってロゼリア出てこない話のほうが多いってどういうことよ。


コラボ先小説のほうは読んでいただけたでしょうか、まだという方はぜひに。
コラボ先小説、『監視対象と約束された日々』コラボ回→https://syosetu.org/novel/251752/46.html

前日、後日談をこっちでも書きたいなと考えているので、よろしくお願いします。


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13話 《思い出の丘》攻略、そしてイレギュラー。

消えてたので再投稿!
物語自体は変わってないはずなので。
では、どうぞ。


システムによって設定された優しめの音色が、俺の意識をゆっくりを引き上げる。

 

 

 

少々乱暴なタップでアラームを止め、そのまま上体を起こす。

 

表示されたウィンドウを寝ぼけ眼で確認する。

 

 

 

Yu「6時半...ちょっと早すぎたか...」

 

 

 

ルームメイトはまだ寝ている。

 

まあ、寝てる場所が場所だが。

 

一層から大体一緒にいるパートナーはベッドに上半身を寝かせ、そのベッドには昨日パーティを組んだばっかりの小柄な女の子が寝ている。

 

 

 

昨日の夜時点では付いてなかったアイコンが付いている。

 

 

 

Yu「誰からだっと...またか...」

 

 

 

メッセージの相手はりんりんさん。

 

 

 

Yu「『リサさんとサヨさんから47層のフィールドに出ると聞きました。そこらへんはPKが出没するらしいので、気を付けてください。』...か。『了解』っと...」

 

 

 

PKの狙いは大体アイテム狙い。

 

まあそのほかにも殺しがしたくてPKやってるイカレてる野郎もいるけど、それはまあいい。

 

と、考えていると、ベッドのほうから音がした。

 

そっちを見ると、シリカが起床したところだった。

 

 

 

Yu「おはよう、シリカ」

 

Si「ふぇっ!?...あ、そっか...昨日...お、おはようございます、ユイトさん。」

 

 

 

シリカを俺を見て顔色を目まぐるしく変えた後、消え入るような声であいさつをした。

 

昨日の状況の理解が早くて助かる。

 

ほどなくして、キリトも起きた。

 

 

 

Yu「おはよ、キリト」

 

Si「おはようございます、キリトさん」

 

K「おはよう。ユイト、シリカ」

 

 

 


 

 

 

朝飯をしっかりと食べた後、表の通りに出て、道具屋に寄ってポーションを買っておく。

 

転移門に着いた時、シリカが言った。

 

 

 

 

 

Si「あ、あたし、47層の街の名前、知らないや...」

 

K「いいよ、俺が指定するから」

 

 

 

と言って、キリトがシリカの手を取る。

 

 

 

K「...ほら、ユイトも」

 

Yu「え?...あぁ、そっか」

 

 

 

グループで転移するときは体の一部を触れさせてないとできないんだった。

 

さすがに手を取るのは妙に恥ずかしいので、キリトの肩に手を置く。

 

 

 

K「転移!フローリア!」

 

 

 

キリトが叫んで、青い光が目の前に広がり、その光が収まったときには、一面花でいっぱいになっていた。

 

 

 

Yu「うわ、何度来ても慣れねえな、ここ」

 

 

 

47層は通称《フラワーガーデン》と呼ばれている層で、街だけではなくフロア全体が花で満ちている層だ。

 

デートスポットとしても使われるらしいが、まあ、それはいつかの楽しみに取っておくとしよう。

 

男2女1で来るところでは、絶対になかった。

 

 

 

Yu「装備がガチすぎると、俺ら浮くな、これ」

 

K「そうだな...シリカは楽しんでるみたいだけど」

 

Yu「女の子なら花好きだろ。まあ、周りを見てどうリアクションするかだけどな」

 

 

 

ふとシリカが立ちあがって、周りを見渡した。

 

するとシリカは、なぜか早口で、

 

 

Si「さ、さあ、早くフィールドに行きましょう!」

 

 

 

とまくしたて、キリトを急かす。

 

 

 

K「わ、わかった」

 

Yu「これは気づいたかなぁ...」

 

 

 


 

 

フィールドに向かう最中で、ふとシリカが口を開いた。

 

 

 

Si「あの、キリトさん。妹さんのこと、聞いてもいいですか...?」

 

K「急にどうしたんだ?」

 

Si「妹さんにいてるって言ってたから、気になって...」

 

 

 

Yu「キリトの妹、気になるな」

 

 

 

通常、この世界で現実の話はしない方がいい。

 

現実があると少しでも思えば、この世界で死んだところで元の世界に戻れると考えてしまうからだ。

 

しかし、この世界での死は現実での死、つまりはほとんど現実と相違ない。

 

そう考えながら、キリトが話すのを待った。

 

やがて、小さく口を開いた。

 

 

 

曰く、本当は従妹であること。

 

そのせいでキリトから距離を開けていたという。

 

キリトとその妹は、祖父の教えで剣道をやっていたが、キリトはやめてしまった。

 

妹がキリトの分まで頑張ると、キリトの祖父を説得したそうな。

 

 

 

Yu「いい子だな、妹さん」

 

K「あぁ。だから、なんだけどな。ずっとあいつに引け目を感じてた。あいつにも、やりたいことがあったんじゃないかって。勝手にやめた俺を恨んでるんじゃないかって。そう考えたら余計に避けちゃってさ...仲直りなんてこともせずに、ここに来てしまった」

 

キリトは言葉を止めると、シリカの顔を見た。

 

 

 

K「だから、君を助けたのは、俺の自己満足で...妹への罪滅ぼしをしてる気になってるのかもしれない。ごめん」

 

Si「いえ、私のほうこそ...色々聞いちゃってごめんなさい。でも、妹さん、好きだから剣道続けてると思います。キリトさんのこと、恨んでないと思いますよ」

 

K「なんか、慰められてばっかりだな...ありがとう、シリカ」

 

 

 


 

 

 

いつの間にか、フィールドの入り口まで来ていた。

 

 

 

Yu「さて、こっから攻略開始なわけだけど...」

 

 

 

俺は言葉を切って、小さめのポーチを実体化させ、シリカに渡した。

 

 

 

Si「ユイトさん、これは...?」

 

Yu「救急ポーチ。ポーションとか結晶の類とか入ってる」

 

Si「え、えっと...そんなの受け取れ...」

 

シリカの言葉をさえぎって、俺はポーチごとシリカの手を握った。

 

 

 

Yu「俺は仲間に死なれたくない。その装備と君のレベルだとしても危険がないわけじゃない。だからだ」

 

Si「は、はい...」

 

Yu「キリトか俺が、今すぐ離脱しろって言ったら、その中にある転移結晶で、どこでもいいから逃げてくれ。俺らのことは気にしなくていい。間違っても、戻ってこようなんて考えないでくれ」

 

Si「わ、かりました...」

 

 

 

とりあえず念は押した。

 

後は俺らがバックアップすればいいだけだ。

 

許してほしい、こんな言い方になったことを。

 

 

 

K「それじゃあ行くか」

 

Si「はい!」

 

 

 

...と、元気よく挨拶して走り出した彼女だったが...

 

 

 

Si「ぎゃああああ!!!なにこれええええ!」

 

Yu「...どうしてこうなった...」

 

 

 

シリカは今、植物型モンスターに足を取られている。

 

しかも、逆さ吊りで。

 

 

 

Si「キ、キリトさん助けて!!ユイトさんも!!」

 

K,Yu「いや、ちょっと無理かなぁ...」

 

 

 

いや、絶対に助けに行った方がいいのだ。

 

しかし、そうできない理由がある。

 

俺はさっき、シリカは逆さ吊りされているといった。

 

そしてシリカの装備はスカート。

 

...あとはわかるね?

 

 

 

Si「いい加減に...しろっ!!」

 

 

 

ポリゴンの破壊音が聞こえた後、シリカの着地音が聞こえ、俺たちはようやく目元から手を外した。

 

 

 

Si「...見ました...?」

 

K,Yu「いや、見てない」

 

 

 

といった具合の戦闘を何度もこなしていく。

 

基本的には俺たちは手を出さず、シリカにダメージディーラーを任せる。

 

そうすればシリカの経験値が多くもらえる。

 

実際、この戦闘中にレベルが一つ上がったようだった。

 

まあでも、楽じゃなかったよ。

 

途中にいたイソギンチャクみたいなぬるぬるしてたやつは俺でも少しきつかった。

 

 

 

モンスター群を抜け、ふと目の前が開けた。

 

道が一本、その先には小高い丘。

 

 

 

K「あれが《思い出の丘》だよ」

 

Yu「一本道だから迷いはしないだろうけど、モンスター量きっついからな。気を付けていこうぜ」

 

Si「はい!」

 

 

 

一本道に足を踏み入れた瞬間、わんさか敵が湧いてくる。

 

シリカの短刀が思いのほか威力が高く、俺らが手伝うまでもなく最初のモンスター群が消える。

 

ただもちろん何回も現れるモンスター群は対処できそうもないので、俺らも参加する。

 

そして、何回かの戦闘を終え、丘の頂上にたどり着く。

 

 

 

Si「ここに...その花が...?」

 

K「あぁ。真ん中あたりに岩があって、そのてっぺんに...」

 

 

 

キリトの説明を聞かず、シリカは駆け出していく。

 

しかし、岩を覗いていたシリカがこちらを振り返って叫ぶ。

 

 

 

Si「ない...ないよ、キリトさん!!」

 

K「そんなことは...いや、見てごらん」

 

 

 

キリトがもう一度見るように促すと、芽が一つ、生えていた。

 

その目はどんどんと成長していき、鈴の音を一つ鳴らして、花を咲かせた。

 

 

 

Yu「おぉ...」

 

Si「キリトさん、これ...」

 

 

 

シリカの問いかけにやさしくうなずくキリト。

 

シリカは花に手を伸ばし、優しく摘み取る。

 

 

 

Yu「これでシリカのペットは生き返るのか?」

 

Yk「ところで、これどうやって入力するのかしら?」

 

K「あぁ。花にたまった雫を《心》アイテムに振りかければ生き返る。でもここは強いモンスターが多いから、街に戻ってからにしよう」

 

Si「はい...ようやく、ピナ...」

 

 

 

丘を降りて橋を渡ろうとした時、ふと嫌な予感がして、足を止める。

 

キリトも同じものを感じたのか、林のほうに向けて鋭い目線を向けている。

 

 

 

Si「あ、あの...二人とも...?」

 

K「そこにいるやつら、出て来いよ」

 

 

 

とキリトが言うと、赤髪の女プレイヤーが姿を現した。

 

それは昨日、シリカをいびっていたプレイヤーだった。

 

 

 

Si「ロ、ロザリアさん...!どうして...?」

 

ロザリア「アタシのハイディングを見破るなんて、高い索敵スキル持ちね。侮ってたかしら?」

 

Yu「そんなんじゃ誰でも気づく。もうちょっと鍛えなおした方がいいぜ、アンタ」

 

 

 

ロザリアは俺の言葉に少し嫌な顔をすると、シリカに目線を向けて笑顔でこう言った。

 

 

 

ロザリア「その様子だと、首尾よく《プネウマの花》をゲットできたみたいね。おめでと、シリカちゃん」

 

 

 

そして、同じ調子でこう続けた。

 

 

 

ロザリア「じゃ、さっそくそれを渡してちょうだい」

 

 

 

すると、キリトが口を開いた。

 

 

 

K「そうはいかないな、ロザリアさん...いや、犯罪者(オレンジ)ギルド、《タイタンズハンド》のリーダーさん、と呼んだ方がいいかな?」

 

Yu「...リーダーがグリーン...そういうことか...」

 

 

 

犯罪者(オレンジ)、というのはその名の通りの総称。

 

普段はグリーンで、人に対して何かしら害のある行動を起こしたときにオレンジに変化する。

 

 

 

Si「ロザリアさんはグリーンで...」

 

Yu「オレンジギルドって言われてはいるけど、全員が全員オレンジだったら行動しにくいんだ。一人二人グリーンがいた方が、都合が良かったりするんだよ」

 

Si「そんな...じゃあ、二週間一緒のギルドにいたのは...」

 

ロザリア「そうよォ?おいしくなるのを待ってたのに...一番楽しみだったアンタが抜けちゃうんだもの。でも聞いてたら蘇生アイテム取りに行くっていうじゃない?今が旬なのよ、《プネウマの花》」

 

 

 

ロザリアは言い終えるとキリトと俺を交互に見つめ、わざとらしく肩をすくめた。

 

 

 

ロザリア「それが分かっててその子に付き合ったなんて、バカなの?それともほんとに体で誑し込まれちゃった?」

 

Yu「悪いが、キリトはそういうやつじゃない。こっちもアンタが目的だった。」

 

ロザリア「どういうことかしら?」

 

 

 

ぶっちゃけ、これは丘に登るときの、シリカが離れたタイミングで初めて聞いた。

 

レアアイテムを狙うオレンジギルドがいて、そいつが今度はシリカ、及び花を狙っている、と。

 

 

 

K「十日前、アンタのギルドは38層で《シルバーフラグス》ってギルドを襲ったな」

 

ロザリア「あぁ、貧乏だったわね」

 

K「そのギルドのリーダーは、泣きながら最前線の転移門前で仇討ちをしてくれる人を探してた。殺せ、じゃなくて黒鉄宮の牢獄に入れてくれって。あんたに、その人の気持ちがわかるか?」

 

 

 

キリトの言葉に、ロザリアは鼻を鳴らしてこう言った。

 

 

 

ロザリア「わかんないわよ。ここで人を殺そうが、どうもならないでしょ?現実でも罪にならないし。これはゲームなのよ?マジになっちゃって、バカみたい。で、まんまとエサにつられたのは認めるわよ。けど、あんたたちたった三人で、勝てると思ってんの?」

 

 

 

ロザリアは右腕を掲げて指を鳴らす。

 

すると木の影から10人ほどのプレイヤーが飛び出してきた。

 

 

 

Si「人数が多すぎますよ...脱出しないと...」

 

Yu「キリトは強いからな。俺もそこそこ強い自信はあるから、結晶だけ用意してそこで見てな」

 

 

 

俺とキリトはシリカの前に立ち、そのまま前に進む。

 

 

 

Si「キリトさん...ユイトさん...!!」

 

 

 

すると、オレンジのプレイヤーたちがシリカの言葉を聞いて顔色を変えた。

 

 

 

「キリトに、ユイト...?」

 

「どっちも盾なし片手剣...?」

 

「《黒の剣士》に...《選定の剣士》...?」

 

「や、やべえ...ロザリアさん...こいつらビーターの攻略組だ...!」

 

ロザリア「攻略組がこんなところにいるわけないじゃない!それに二人ぐらい余裕よ!!」

 

「そ、そうだ!!攻略組なら金とかアイテムとかたくさん持ってるに決まってる!!」

 

 

 

ロザリアの圧に押され、オレンジプレイヤーが次々に俺たちに切りかかる。

 

一応剣は抜いてはいるが、斬るつもりもない。

 

隣に立っているパートナーは剣すら抜いてない。

 

そして、俺たちの現状と言うと、同時に9発ほどの攻撃を食らっている。

 

 

 

Si「いやあああ!!やめて...やめてっ...!!二人とも、死んじゃうよぉ...!!」

 

 

 

後ろでシリカの絶叫が聞こえる。

 

しかし、心配する要素はどこにもない。

 

 

 

「おい、こいつらどうなってんだ...?」

 

「こんだけ攻撃してんのに...なんで死なねえんだ...!?」

 

 

 

やがてプレイヤーたちの攻撃が止む。

 

 

 

K「10秒当たり400ってとこかな...それが9人で与えられる俺たちへのダメージ総量だ」

 

Yu「俺のレベルは77、HPが13800、戦闘時回復(バトルヒーリング)(偽)で500回復するから...」

 

K「俺のこともユイトのことも、何時間やったって倒せないよ」

 

 

 

バトルヒーリングスキルは本来、戦闘中に致死量ダメージを食らい続けなければならないスキルで、あげるのは相当に難しい。

 

しかし俺の(偽)は、剣さえ抜いていれば自動的につくスキルだ。

 

これこそ本当に、「俺じゃなくて武器が強いんだよ」状態だ。

 

 

 

Yu「なんか申し訳ねえな。レベルが上がるだけでこんなに差が付いちゃうんだから」

 

 

 

俺がそうつぶやくと、ロザリアは腰からクリスタルを掴んだ。

 

 

 

Yu「転移はさせねえぞっ...!」

 

 

 

距離を詰めてクリスタルを叩き落とす。

 

そのまま首根っこを掴んでオレンジ集団の真ん中に放る。

 

 

 

「どうするつもりだ!畜生!!」

 

 

 

オレンジの一人が叫ぶと、キリトが転移結晶より色の濃い結晶を掴みだした。

 

 

 

K「これは、依頼主が財産をはたいて買った回廊結晶だ。黒鉄宮が出口になっている。これで全員牢獄に飛んでもらうから、後は《軍》のやつらに面倒を見てもらえ」

 

Yu「あぁ言っとくけど、拒否権はないぞ。全員麻痺毒でしびれさせてから放り込むから」

 

 

 

...こう言えって言われたんだ。決してイキってるわけじゃない。

 

 

 

K「コリドー・オープン!」

 

 

 

結晶が砕け、そこに空間が出現する。

 

その空間にオレンジの9人が入っていき、盗聴役のグリーンプレイヤーも入った。

 

その場にはロザリア一人が残された。

 

 

 

ロザリア「しびれさせるんだろ?やってみなよ。そしたら、アンタもオレンジに...」

 

 

 

挑戦的な態度のその女に、俺は今までの怒りが爆発した。

 

 

 

Yu「うるせえな。別に俺はオレンジでも構わねえ。とっととコリドーに入れ」

 

 

 

女をコリドーに投げ入れる。

 

その時に何か言おうとしていたようだが、知ったことではない。

 

 

 

K「...ちょっと乱暴なんじゃなかったか?」

 

Yu「わりぃ、キレてて周り見えてなかった」

 

 

 

少し反省し、シリカのもとに戻る。

 

 

 

K「ごめんな、シリカ。君を囮みたいにしてしまって。俺たちのこと、言おうと思ったんだけど怖がられると思って、言えなかった」

 

Yu「生き返らせてやろう、街まで帰ろうぜ」

 

Si「あ、足が...動かないんです...」

 

 

 

どうやらびっくりして腰が抜けたようだ。

 

俺はシリカをおぶって、街に戻った。

 

...さて、攻略組の猛者たちにはこの無断休暇をなんて説明しようか..

 

まあ、なんて言おうが、怒られることには変わらないと思うが。




後書きです。

バックアップはマジ偉大。
無かったら萎えてたわ。


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14話 青薔薇、結成。

お久しぶりです皆さん。
というわけで、タイトル通りです。
ちなみに時系列的には、キリトがリズとドラゴン倒しに行った辺りなので、次キリトが出てくるときは、あの水色の剣を携えていることでしょう。
というわけで、本編どうぞ。


アップデート(追記):大幅添削。


Yu「素材も順調...ドロップもおいしい...マッピングもそこそこ...これ以上クソドロになる前に帰るかな...」

 

 

俺は今、最前線に出てきた。

この前の《プネウマの花》事件で無断欠席したことが響き、しばらくレベルを上げておくように言われた。

しかも、最前線で。

そりゃ無茶だろうとか思ったけど、これが意外と効率がいい。

最前線なのだから当然経験値が一番おいしいし、何より攻撃パターンが割と単調だ。

...まあ、死人は一桁出た気がするけど。

単調なだけで、別に火力がないわけじゃないからね。

話を戻そう。

今日のノルマも終わったし、と転移門へ歩いていると、メッセージアイコンが光った。

差出人は《RinRin》さん。

ぶっちゃけもうメル友だ。(死語)

 

 

『今日のノルマが終わった後でいいので、こちらのホームに顔を出していただけませんか?よろしくお願いします。』

 

 

うーん、俺何かしたかな。

というのも、俺とのメッセージは大体一個や二個顔文字がついてることが多い。

でも、今回に限ってそれがない。

 

 

Yu「...速攻で行こう。うん、そうしよう」

 

 

俺は走りながら、『わかりました、すぐに行きます』と片手間に打ち、幅跳びの要領で転移門にダイブし、そのホームに向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

Yu「...スキルが増えた?」

Yk「えぇ。何か知らないかしら?」

 

 

ホームに飛び込んで最初に言われたのは、そんな言葉だった。

なんでも、ユキナさんのスキルが増えたらしい。

 

 

R「『チャント』...見たことないスキルだったので...」

Yu「この世界のスキルって、意外と和訳したらそのままだったりするから...」

 

 

と言うと、サヨさんが考え出した。

 

 

S「チャント...確か意味は...『詠唱』...」

A「え!?じゃあユキナさん、魔法使えるんですか!?」

S「いえ...一定のリズムと節を持ったというような意味だったような気もするので...意味合い的に『唄う』というほうが近いかと」

Yu「唄う...ユキナさん、そのスキルが出た時、何してました?」

Yk「その日は...特に何もしてないわ。いつものようにこのメンバーでレベル上げをして、夜は一人で歌ってただけよ」

 

 

あまりに平然と言うから聞き逃しかけたけど「一人で歌ってた」と言った。

多分これが答えだ。

 

 

Yu「その独唱、人が聞いてたりしますか?」

Yk「えぇ。いつも聞いてくれる人がいるわ」

Yu「じゃあ、誰でもできる技じゃない。そして現状、そんなスキル聞いたことがないから、きっとユキナさんのそれは、『ユニークスキル』だ」

 

 

ユニークスキルは、この世界で一人しか持ってないであろうスキルの総称。

通常、スキルは武器に多く割り振られており、片手剣だとか両手斧だとか、いろんな武器ジャンルに応じて、スキルがある。

スキルのレベルが上がれば、使える武器やソードスキルも増えるし、ソードスキルの失敗(ファンブル)率も下がる。

ごく稀に、一つのスキルを上げ続けていると、『エクストラスキル』というものが出てくる。

手ごろなもので言えば『カタナ』スキル。

これは武器ジャンルの『曲刀』をずっと練習していれば出てくる。

まあ、エクストラスキルもそこまで苦戦を強いられて取れるものではない。

ここからが本題だ。

ユニークスキルは、エクストラスキルの中でも持ってるプレイヤーがいるかどうかという非常に稀なスキル。

プレイヤーが普段やってる行動に紐づいて出てくるらしいが、詳しい出現方法はわかってない。

そのくらい、希少なスキルだ。

 

 

Yu「ユキナさん、それタップできる?」

Yk「こうかしら...」

Yu「ちょいと失礼...えっと...?」

 

 

『スキル:吟唱(チャント)

効果:効果範囲内にいるプレイヤーにランダムバフ付与。効果範囲内にいる敵エネミーからのヘイト増加。』

 

 

Yu「...だいぶ挑戦的なスキルだ。攻略には...やめておこう」

Yk「結局、これは強いのかしら?」

R「歌っている間も動けるなら、タンク役には向いていますが...」

A「ユキナさんのビルド、AGI型だから...」

S「むしろ、ユキナさんを守りながら戦う、というイメージでしょうか」

 

 

どうやら、このパーティの生存方針は決まったようだ。

ただ、一個だけ。

 

 

Yu「なありんりんさん。ギルドでも組めばいいじゃないか」

R「...6人からしか組めないって、知ってるはずですよね?」

Yu「あ、そっか」

 

 

ギルドは6人以上で初めて組める。

このパーティは五人。

あと一人、足りない。

 

 

A「だったら、ユイトさんがここに入ればいいんだよ!!」

Yu「...へ?」

 

なんてことを言い出すんだこのツインテールは。

 

 

S「そうですね。戦力的にも、連携的にも心配なさそうです」

L「それにほら、男の子が一人でもいればさ。...その、ナンパ除けにもなるし」

Yu「おい待て。人を虫コナーズみたいに扱うな」

Yk「入ってくれないのかしら?」

 

 

ユキナさんの圧が強い...

でももっと後ろにもっと強い圧放ってる人いる...

 

 

R「一層からの仲ですし...それに、ユイトさんがギルドに属さない理由も知っています」

Yu「...」

R「その上で、お願いしたいんです。一緒にギルド、組みませんか?」

 

 

正直、怖い。

キリトの前のギルドの例もあった。

この人たちが俺より弱いことは知っている。

だから、守りたい気持ちと、守れなかったらきっと後悔するという二つの気持ちが存在している。

 

 

Yu「あぁでも、そっか」

 

 

少々自分勝手だが、ぶっちゃけ割り切れる。

初期からの仲だ。

多少自分勝手でも、融通は効くだろう。

 

 

Yu「一応聞いとくが、俺は攻略組だ」

R「はい」

Yu「帰ってこない日もざらにある」

Yk「えぇ」

 

 

本当に。

 

 

Yu「結構自分勝手な行動をするかもしれない」

S「それは、分かりきってますね」

 

 

この人たちは。

 

 

Yu「そんな俺をギルドに入れて、たぶん後悔するぞ」

L「迷惑なんて被りあってなんぼじゃない?」

 

 

バカなんだろうなぁ。

 

 

Yu「それでも、俺を誘うか?」

 

 

許してほしい、こんな言い方になったことを。

 

 

R「はい。ぜひ、お願いします」

Yu「わかった。よろしく、みんな」

 

 

Yu「...で、入ったはいいけど、名前とか決めてんの?」

A「もちろんですよ!」

L「それはもう、一択じゃない?」

S「えぇ。私たちに、それ以外ありえませんから」

R「私たちと言えば、みたいなところはありますね」

Yu「決めてんだ。なら、その名前は?」

Yk「私たちのギルド名は...

 

 

『Roselia』よ」

 

 

Yk「ところで、これどうやって入力するのかしら?」

Yu「...リーダー、りんりんさんのほうがいいんじゃねえの...?」

 




あとがき、読了感謝です。
...やっと出番がきたね、Roselia。
たぶんオリジナル構想が初なので、時間と字数かかってます。(言い訳)
これから彼女たちの出番は増やします、絶対。
増えなかったらタイトル変えよう、うん。
Roseliart Onlineやぞ、Roseliaって入ってるんだから、ええ。
まあそういうわけなので、これからもこの駄文をよろしくお願いします。
後、リバイス面白いから見てください、YouTubeで2話まで配信してるので()

お気に入り登録、評価、感想などいただけると、主が一人でリミックスします。


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15話 何でもない、平穏な日

日常回。
ただそれだけ。


時は流れ、現在の最前線は74層。

もはやβ時代の知識などほぼ意味をなさないような場所に来ている。

現在俺は、《リザードマンロード》というトカゲ頭みたいなモンスターと剣を交えている。

向こうの装備は円盾(バックラー)に曲刀という剣士スタイル。

対して俺は、盾を使わず、剣だけ装備して奴と対峙している。

 

 

「ぐらぁっ!」

 

 

トカゲが叫ぶ。

曲刀なんて使ったことがないからソードスキルの名前なんて全く知らないが、突進系であることは確かだ。

どれくらいの間合いかなんて知らないから、とりあえず跳んでよける。

偶然として後ろを取れたので、そのまま片手水平四連撃《ホリゾンタル・スクエア》を放つ。

奴は今後ろを向いているので、盾による防御も、剣による相殺だってできない。

そして俺の四連撃をきれいに食らったトカゲ頭のモンスターは、その体をポリゴンの欠片にして消滅した。

 

 

Yu「はぁ...付いてねえなぁ...」

 

 

俺がこうやってこぼすのは、さっきの戦闘はやりたくてやったわけじゃなく、走った先にたまたまさっきのモンスターがポップしたから戦闘を行っただけだ。

かといって、俺にターゲットがついたまま、出口まで向かってしまえば、モンスターを引き連れたまま迷宮区を出ることになってしまう。ただ、迷宮区でポップしたモンスターがフィールドに出てくることはない。

しかし、もし出口の前にプレイヤーがいたら、それは《トレイン》行為と呼ばれ、こういう類のゲームでは非常に失礼に当たる。まあ、それを狙って起こし、MPK(モンスタープレイヤーキル)、つまり自分は手を汚さず、あくまでモンスターにプレイヤーを殺させるという姑息な手段もなくはない。

...まあ、こんな状況下で、マナーもへったくれもないけど。

 

 

Yu「それができるのはよっぽどの手練れだよなっと...」

 

 

スピードを落とさずそのままフィールドを突っ切り、転移門がある圏内の街まで一直線に駆ける。

 

 

Yu「転移、フローリア」

 

 

そう言うと、俺の体は青い光に包まれて、目を開けた次の瞬間には、ギルドホームのあるフローリアの街が広がっていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

Yu「だぁー!疲れたぁっ!!...ってあれ、誰もいないのか」

 

 

ここはギルド「Roselia」のギルドホーム。

成り行き、と言っては失礼だが、俺も一応Roseliaの一員だ。

 

 

普段なら誰かしらいるんだが、今日は留守みたいだ。

 

 

Yu「ま、ちょうどいいか」

 

 

と言って帰りがけに狩った牛の肉をオブジェクト化させ、キッチンに立つ。

こう見えて料理スキルは500を超えているので、Cランクぐらいの食材だったら大体扱える。

と、ホームのドアが開く。

 

 

L「た、ただいまぁ...」

A「りんりん、スパルタすぎるぅ...」

Yu「お、お帰り。随分と疲れ切ってんな」

L「それが聞いてよユイト~!燐子ったら...」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

Yk「ユイトのレベルに追いつく?」

R「はい。ユキナさんがユニークスキルを持っている今、私たちはユキナさんを守る必要があります」

S「確かに、ユイトさん一人に任せてしまいがちですからね」

L「でも燐子?今のユイト、どれくらいなの?」

R「聞いてみましょうか...」

 

 

ユイトにメッセージを送り、わずか数十秒で帰ってきた内容に固まるりんりん。

 

 

A「あの、りんりん?どうしたの?」

R「いえ、やりましょう」

L「なんかスイッチ入ってる!?」

S「聞かぬが仏、というやつだったのでしょうか...」

 

 

向かったのは高効率の狩場。

まだ一人何時間まで、という制限がついてない狩場だ。

 

 

R「今からここでレベリングをします」

 

 

りんりんが提案したレベリング方法は二人一組。

 

 

R「組み方としては、あこちゃんとユキナさん、サヨさんとリサさんでお願いします」

A「あれ、りんりんは?」

R「レベル差が付きすぎているので、今日はお休みします」

A「(絶対夜中行くやつだ...)」

 

 

最初に狩場に入っていったのはユキナ&あこ。

 

 

A「ユキナさん、とりあえず目の前のモブを倒すことだけ考えてください」

Yk「わかったわ。あこは平気なの?」

A「何とかなるので大丈夫です!」

 

 

そして、一時間後、彼女らはげっそりして帰ってきた。

 

 

Yk「燐子...これだいぶ効くわね...」

A「ユキナさんのリカバー、めっちゃ大変なんですけど...」

L「これ、あたしたち平気かな?」

S「下手な動きをしなければ、大丈夫だと思います」

 

 

そして彼女らも、狩場に入って一時間後、げっそりして帰ってきた。

 

 

L「も、もうだめ、ギブ...」

S「効率もいいし、レベルも上がる...ただ...しんどいですね」

 

 

その後も、体力や組変えをしながら約4時間、この狩りをやり続け、Roseliaのレベルは全員が70を超えるという、中層にいるべきではないレベルになった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

L「ってことがあって...」

A「りんりん、ユイトさんのレベル見てからなんかスイッチ入ったみたいで...」

S「今、いくつなんですか?」

 

 

Yu「...93」

 

 

Yk「...ごめんなさい、慣れないことをしすぎて耳がおかしいの。もう一回言ってくれるかしら?」

Yu「...93」

L「...わお」

A「りんりんが燃えるのも、なんかわかった気がする...」

 

 

Yu「追いつくのは嬉しいんだけどさ...ここまでくるとKoBとかに目付けられそうで怖いんだよな」

R「血盟騎士団が...どうしてですか?」

Yu「あそこって選りすぐりのプレイヤー集めた最強集団だろ?とくにりんりんさんとかは強いしさ」

 

 

一番恐れるべきなのは、Roseliaから引っこ抜いてくること。

ギルドの複数加入はできないし、一度入ってしまうと抜けるのにまた面倒になる。

それだけは避けたい。

 

 

Yk「それなら、一番警戒するのはユイトじゃないかしら?」

S「そうですね、この中で一番強いのはユイトさんですし」

Yu「いや俺はほら、ビーターだし。あいつらにとっちゃゲームクリアのために生かしてるようなもんでしょ」

R「そんなこと...ないとおもいます」

Yu「本当にそうかな。今度KoBの連中に聞いてみるといい。『ユイトは好きか?』ってね」

 

 

忘れちゃいけない。

俺はビーター。

βテスターに向けられる悪意は、俺が背負わなきゃいけない。

そうじゃなきゃ、テスターの立つ瀬がない。

 

 

Yu「...さて、ちょっと明るめの話題を振ろう。ご飯食べようか」

Yk「ユイトが作ったの?」

L「...」

Yu「おいリサ、俺が作ったからって露骨にまずそうみたいに考えるな。というか顔に出てる」

L「いやいや思ってない思ってない...まあ、ちょっと心配だけど」

A「この世界の料理って、スキルが上がれば上がるほどおいしくなるから、たぶん平気だよ!ね、りんりん!」

R「...そう、だね」

 

 

飯を食った後でも、りんりんさんの顔はずっと沈んでいた。

 

 

Yu「俺、どうしたらいいんだ」

 

 

 




あとがき、読了感謝です。
最近は...書いてはいるけどネタが思いつかん感じで、まあスピードが下がってます。
次か次の次辺りでグリームアイズ戦したく思うので、よろしくお願いします。










ウマがね、楽s((


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16話 隠し事と惚気と軍と

16話!

そろそろユイト君には恋愛という隠れステータスにも自覚してほしいですね()
解放軍も登場します。
ボス戦まではやりません。
サブタイのクオリティがクソ



今日も今日とて、最前線の迷宮区に潜る。

ぶっちゃけ、それ以外することがないんだ。

ただひたすらにレベルを上げて、クリアを目指して...

 

 

Yu「クリアしたら...何が残るんだ?」

 

 

このゲームのクリア、つまりこの世界から出るということは、ここで得たものはすべて無に帰るということだ。

 

 

Yu「いや、違う...」

 

 

非現実的なゲームがしたくて、この世界に入った。

でも蓋を開けたら、こっちが現実になった。

現実と同じ顔で、現実と同じ暮らし。

でも、本当の現実世界に戻ったら、レベルなんてなくて。

剣も持っていなければ、どこかの街の名前を叫んでもワープなんてしない。

 

 

Yu「何だ...現実のほうがよっぽどクソゲーじゃねえか...」

 

 

...でも。

帰りたいと思えるのは、いまだ現実に未練があるから。

 

 

Yu「...よし、もうちょいやったら帰るかな」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

Yu「レベルは96...最大体力値も2万超えたし...次のボス戦あたりで使えるかな...」

L「なーに呟いてんの?」

Yu「うおぅ!?」

L「あはは!何その驚き方!」

 

 

しまった、ついソロと同じ感じで独り言を喋っていた。

ギルドに所属しているし、ギルドホームにいるのだから、以後気を付けるべきだな。

 

 

R「さっきの声、なんですか?」

L「あ、聞いてよ!後ろからユイトに話しかけたらさ、「うおぅ!?」だって!」

R「うふふ...」

Yu「二人とも笑うなよ...」

 

 

とは言いつつも、俺はりんりんさんが笑っていることに、よかったと感じている。

なんせ、俺が嫌われているかもしれないという話で、ずっと沈んていたから。

なぜそこまで他人の評価にこだわるのかは謎だが、まあいいだろう。

 

 

雑談もそこそこに、リサが作ったご飯を食べ、5人は寝室へ、俺はリビングで寝袋を使って寝る。

 

 

R「あの、ユイトさん...起きてますか...?」

Yu「ん?ふぁ...りんりんさんか。どうしたの?」

 

 

どうやら、何か深刻な顔をしている。

 

 

R「晩御飯前に呟いていた、レベルとか体力とか...あれって、どういうことですか?」

Yu「どうって?今の現状確認だよ」

R「だとしたら、リサさんに話しかけられて、あんなに...びっくりしますか?」

Yu「後ろから声かけられたら誰でもびっくりするでしょうよ」

R「それでもです。あの驚き方は...少しおかしいです」

Yu「不自然だったかなぁ...」

 

 

別に俺は自分のステータスぐらいなら話しても問題ないと考えている。

けど、このスキルだけは。

絶対に隠し通さなきゃいけない。

少なくとも、俺が使うまでは。

 

 

Yu「...確かに俺は、何か隠してる」

R「はい...なんとなく、分かってました」

Yu「でも、今は話せない」

R「今は...?」

Yu「いつか話すから...それでいいかな」

R「...わかりました。待ってますね?」

 

 

そう言って彼女はニコッと笑う。

 

 

ーーきれいだな。

 

 

初めて女の顔を見て、そう思った。

 

 

R「?どうしました?」

Yu「あ、いや、何でもない。」

 

 

見惚れてた、なんて言えるか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

L「いや~!晴れたねぇ~!」

Yu「あと2分もしないうちに暗いとこ入るけどな」

L「もー!そういうこと言わないの!こういうのは雰囲気なの!」

Yu「そーですか...」

 

 

俺たちは74層の迷宮区に来ていた。

新種のモブに慣れておこうという触れ込みだが、実際はボスの姿を見ておこうというちょっとした好奇心。

要は偵察だ。

 

 

S「それにしても、ボス部屋に入らずボスの姿を見るなんて、できるのでしょうか?」

R「理論上は、平気だと思います。ボスは、ボス部屋から、出てこないので...」

 

 

Yu「あれがリザードマンロード。剣と盾持ちの剣士タイプのモブだ。結構強いから頑張れよ」

Yk「任せて頂戴」

 

 

迷宮区の通路で、トカゲ頭狩りを敢行して10分ほどたったころだった。

一本道の向こう側から、ものすごい絶叫が聞こえてくる。

 

 

A「あれって...」

L「キリトに...」

Yu「アスナ、だな」

 

 

二人は俺らの前を通り過ぎると、安全地帯に座り込んだ。

 

 

Yu「何してんの、お前ら」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

K「いやぁ、ボス部屋覗いてボスの顔見た瞬間逃げてきた」

Yu「うわぁ...」

 

 

驚いた、俺らと同じことを考えるやつもいたもんだ。

キリトはともかく、アスナまでそんなことをするのはちょっと予想外かも知れない。

 

 

K「...言っとくけど、言い出したのはアスナだからな」

Yu「うわあちゃれんじゃー」

R「ユイトさん、脳死で会話しないでください...」

 

 

...危ない、危うく意識を落として接続不安定(disconect)になるところだった。

とか考えてたら、二人で仲良くサンドイッチシェアして食い始めた。

 

 

Yu「これで付き合ってないは嘘だろ

R「私も、そう思います

 

 

と、半ば愚痴っていたら、索敵スキルに反応。

 

 

Yu「誰か来る」

K「...っ!」

Yu「うわすげえアジ」

 

 

ーー補足しておくとアジとはアジリティのことだーーということは置いといて、肩を寄せ合うのがそんなにまずいのか、と考えた瞬間。

 

 

「おうキリト!久しぶりだな!」

K「クライン。まだ生きてたか」

クライン「相変わらず愛想がねえなぁ。珍しく大御所じゃねえ...か...」

 

 

このプレイヤーは見たことあった。

いつだかのクリスマスの時に聖竜連合を足止めしていたギルドのリーダーだ。

で、そのキリトの知り合いはキリトの右側...アスナのほうを見て固まっていた。

 

 

K「ボスレイドで顔合わせてるだろうけど、一応紹介しておくよ。こいつは《風林火山》のクライン。こっちが《血盟騎士団》のアスナ。で、そっちにいる6人が新しく結成したギルドの《Roselia》。数があれだから自己紹介は各自でしてくれ...って...」

Yu「クラインさん?ラグりました?」

 

 

と聞いた瞬間、クラインさんはいきなり上体を勢いよく90度折った。

 

 

クライン「ここここんにちはククククラインと申します二十四歳独身」

K「変なことを口走るなっ...!」

L「うわ痛そう」

 

 

どうやらクラインさんの脇腹にキリトが一発入れたようだ。

だが、それが分からなくなるぐらいのスピードで《風林火山》の残りのメンバーがアスナに自己紹介を始めた。

 

 

Yk「...必死ね」

S「わかりませんね...」

 

 

こちらの真面目組は呆れているようだ。

まあわからなくはない、大人(かどうかわからないけど)が我先にと自己紹介してるんだから。

 

 

A「ユイトさんはいいんですか?」

Yu「...アスナとは知り合いだから問題ないよ」

L「ユイトにはいるもんね~?」

Yu「...ノーコメント」

 

 

という問答のうちに、風林火山メンバーのアピールも終わったようだ。

 

 

K「ま、まあ悪い奴らじゃないから。...リーダーの顔はともかk...イテっ」

Yu「やり返し食らってんじゃん」

 

 

少し和んだところで、また索敵に反応。

風林火山の時とは違う、嫌な予感がする。

 

 

Yu「下がれ」

A「え?なんでですか?」

K「いや、なんかやばい」

 

 

俺とキリトが正面に立って向かってくる集団への威嚇体制をとる。

見たところ12人2列編成のようだ。

 

 

Yu「あの統率の取れ方...不自然だな」

K「...軍だ。さっき、迷宮区に入る前に見た」

 

 

《軍》とは、1層の黒鉄宮あたりを陣取り、あれやこれやと指示を飛ばしながら情報を取得し、攻略を目指す巨大集団だ。

かすかに休め、という声が聞こえると、11人が一斉に床に座り込み、先頭左にいた男がこちらに近づいてきた。

 

 

コーバッツ「アインクラッド解放軍所属、コーバッツ中佐だ。」

Yu「中佐、ねぇ

 

 

軍、と呼んでいたのは俗称だったのだが、いつの間にか公式認定されていたのか。

 

 

K「キリト。ソロだ」

Yu「ユイト。ギルドRoselia」

コーバッツ「君たちはこの先も攻略しているのか?」

K「ボス部屋手前までは」

コーバッツ「ふむ。では、そのデータを提供していただきたい」

 

 

なんて挑戦的なのだろうか。

そのうえ、コーバッツという男の顔はくれるよな?と言わんばかりの顔だ。

 

 

Yu「少し、虫が良すぎるんじゃないかな」

コーバッツ「...なんだと?」

Yu「新規迷宮区のマッピングデータっていうのは貴重なデータだ。それを提供だって?マッピングの苦労、知ってます?」

コーバッツ「我々は、君たち一般プレイヤーの開放のために戦っている!故に、君らが協力するのは当然の義務である!」

 

 

困った。

別のデータを持っているのは俺ではないが、いささかイラつく。

 

 

K「...まあいいさ。どうせ街に戻ったら公開しようと思ってたデータだ」

クライン「そいつは人が良すぎるぜキリトよぅ」

K「これで商売する気はないからな」

 

 

本当にいい奴だ。

キリトがデータを送ると、中佐は感謝など微塵も感じない声で「協力、感謝する」と言うと、仲間の元に戻っていく。

 

 

K「ボスにちょっかい書けるなら、やめた方がいいぜ」

コーバッツ「それは、私の判断だ」

K「仲間も随分消耗してるじゃないか」

コーバッツ「私の部下はこれぐらいで音を上げるような連中ではない!貴様らさっさと立て!!」

Yu「うわあブラックだなあ...」

 

 

そして軍は、12人2列編成で、ボス部屋に向かって行ってしまった。

 

 

Yu「...なんも起こんねえといいけどな」

R「...何か、嫌な予感がします」




あとがき、読了感謝です。

次回、キリト&ユイト、ユニークスキル披露。
お楽しみに。

悪魔の囁きがCallingして深夜の1時に書いてます()
早急に息づいてほしいですね()

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17話 《黒の剣士》《選定の剣士》、覚醒

過去一ノリノリで書いてたかもしれない。
途中のソードスキル連携は自分の体を動かしながら無理ないようにつなげたつもりです。
というわけで、ビーターの彼らは守りために自身の秘密にしていたスキルを開放します。

では、17話どうぞ。


Yu「...ここまで見なかったな、軍のやつら」

クライン「あいつらもう結晶使って帰ったんじゃねえか?」

K「いや、どうだろうな」

 

 

クラインさんはこう言っているが、この場を歩いている14人は、それはないと考えているだろう。

そして、その考察を裏付ける小さい声が聞こえてきた。

 

 

あああああああぁぁぁぁぁぁ...

Yu「モンスターのじゃねぇ...人の悲鳴だ!」

K「だとしたらやばい...急ぐぞ!!」

 

 

自分のギルドメンバーを置いていてしまう格好にはなったが、後で謝ることとし、大扉の前までパラメータぎりぎりのスピードで走る。

すでに大扉は開いており、大きな影が蠢いている。

それを見たアスナが、さらにスピードを上げたのを見た後、俺とキリトもそれに追髄する。

すでに離れたギルドメンバーが、さらに離れていくが、この際それは無視する。

 

 

K「おい!大丈夫か!」

 

 

ボス部屋に半身を入れ、叫ぶキリト。

その反対側から部屋の様子を見渡す。

こちらに背を向け中央で屹立する人型。

カーソルを見る。

 

 

ーー《The Gleameyes》。

 

 

輝く目、という名を持った山羊頭のボスは、右手に持った大型の剣を縦横に振り回している。

その下には小さい人型、軍の連中だ。

しかし、数が合わない。

二人ほどいない。

 

 

Yu「二人足りないぞ...!」

K「何してるんだ!早く転移結晶を使え!!」

 

 

キリトが俺たちの近くに倒れてきたプレイヤーに叫ぶ。

しかし、そのプレイヤーは首を横に振った。

 

 

「だめだ...!く、クリスタルが使えない...!」

Yu「《結晶無効化空間》...!?」

 

 

たまに、迷宮区のトレジャーボックスエリアで設定されていることがあるという。

キリトが前いたギルドの壊滅原因も、そのエリアだ。

 

 

コーバッツ「何を言うかッ...!我々解放軍に撤退の二文字はない!戦え!戦うんだ!!」

Yu「そんな意地張ってる場合か!!」

 

 

遅れてやってきたRoseliaと、風林火山のメンバーが、部屋の中を見て顔を青くする。

 

 

R「ひ、ひどい...」

クライン「どうなってんだ!!」

Yu「何とか、できないか...!」

 

 

俺らが飛び込んでも、軍のやつらの撤退が間に合うかどうか。

14人では、あまりにも攻略には向かなすぎる。

 

 

コーバッツ「全員...突撃...!」

K「やめろっ...!」

 

 

10人のうち8人が隊列を組み、悪魔に突撃していく。

しかし、仲間の剣が邪魔しあって満足にダメージを与えられていない。

悪魔は仁王立ちになり、雄叫びと噴気をまき散らす。

その息にもダメージ判定かあるようで、8人が一瞬止まる。

その隙に大剣が突き立てられ、そのままプレイヤーを一人巻き込んで跳ね上げる。

それはボスの頭を超えて、俺たちの方に。

落下してきたのはコーバッツだった。

虚空を見ながら、口を戦慄かせる。

その口は、「ありえない」と言っていた。

そして、その体は、ポリゴンの欠片となって、不快な音を響かせながら消えた。

 

 

As「ダメ...もうダメ...!」

Yu「アスnーー」

As「ダメーーーーッ!!」

 

 

腰からレイピアを抜き放ち、目にも止まらぬスピードでボスに突っ込む。

 

 

K「アスナッ!」

クライン「どうとでもなりやがれ!!」

 

 

そこにキリトとクラインさんも続く。

 

 

Yu「俺たちも行くぞ!」

S「はい!」

 

 

俺たちもボス部屋に突撃する。

アスナの特効がクリーンヒットしたが、ろくな減り方じゃない。

軍のやつらが30分ほど粘って3割削ったかどうかなんだ、一人で減る量なんて1ドットもいいとこだろう。

アスナの攻撃によって体の向きを変えたボスは、そのままの勢いで大剣を振り下ろす。

AGI形なだけあってステップで避けてはいるが、衝撃波によってその場に倒れこむ。

 

 

K,Yu「アスナッ!!」

 

 

俺とキリトがアスナの目の前に立ち、ボスの剣を受け止める。

 

 

Yu「く...そ...弾けねえ...!」

 

 

刀身で滑らせてどうにか耐えるが、すぐ横に穴が開く。

とんでもない威力だ。

その威力の剣があり得ないスピードで降ってくる。

避けるだの受け止めるだので躱してはいるが、衝撃によってHPが8割を切る。

風林火山とRoseliaのみんなが軍の連中を外に出そうとはしているが、俺らの攻防の場所が悪く、あまり進んでいない。

 

 

K「ぐっ...!」

 

 

という声が聞こえ、音源のほうを見ると、HPゲージをぎりぎりイエローで保っているキリトがいた。

そのキリトに気を取られ、俺も吹っ飛ばされる。

さっきまで8割あった俺の体力も、今の一撃だけで4割まで減っている。

 

 

Yu「やべぇぞ...どうする...?」

 

 

どう対処しようか思案する俺の耳に歌、口にポーションが突っ込まれる。

 

 

Yk「少しだけ、時間を稼ぐわ」

R「少しだけ、ですけど」

 

 

ユキナのチャントスキルでボスのヘイトを集めつつ、りんりんさんがユキナへの攻撃を相殺している。

ここであの二人に甘えてるようじゃだめだ。

あの人たちを守る。

絶対に、だから。

 

 

Yu「頼む二人とも!!あと5秒だけ頼む!!」

R「わかりました...!」

 

 

もう隠し事なんてしてられない。

隠さなきゃいけないものがあったとしても、死んでしまったら何も残らない。

 

 

Yu「スキル設定...武器セット...補填準備...!」

K「スイッチ!!」

 

 

キリトがりんりんさんとスイッチした。

そしてキリトは左手にも剣をもって、猛攻を仕掛け始めた。

 

 

K「スターバースト...ストリームッ...!」

 

 

今まで見たことのない技を存分に振るうキリト。

HPの減り具合的に、30連撃ぐらいはあったのだろう。

しかし、まだ倒れない。

 

 

Yu「...俺がやるんだ...!『かの剣は我が手にあり!かの盾は我が手にあらず!かの鎧は既に無き物となり!!』」

Yk「...!?」

R「...あれが...!」

 

 

視線を感じるが、構っていられない。

詠唱を止めたら、すべてが無になる。

 

 

Yu『我が天命の8割を以て盾と鎧の代わりとし、其れを以て、聖剣の完成とするっ!!

 

 

瞬間、左上に見える俺のHPゲージが徐々に減り始める。

キリトがボスのHPを残り1ゲージまで削ってくれたんだ。

だから、ここで攻め切る。

形が変わりつつある愛剣を握りしめ、ボスに向かて一直線に走る。

 

 

Yu「キリト!」

K「...っ!スイッチ!」

 

 

少し距離が開いてしまったが、それでもいい。

片手剣突進技、《ヴォーパル・ストライク》で、距離を縮めつつダメージを与える。

しかし、この技は硬直時間が長い。

 

 

K「ユイトっ!!」

Yu「()()()()()()

 

 

降ってくる大剣を弾き、そのまま垂直四連撃技、《バーチカル・スクエア》を食らわせる。

そのまま切り下ろした勢いで三連撃技《シャープネイル》を発動させ、大剣を相殺しつつダメージを重ねる。

 

 

Yu「ぐっ...!はぁっ!」

 

 

斬り下ろす腕を無理やり止め、そのまま水平四連撃技《ホリゾンタル・スクエア》を無理やりつなげる。

まだできると自分を洗脳しながら、三連撃技《サベージ・フルクラム》を放ち、三撃目の突きでボスとの距離を離す。

そして、この瞬間に、犠牲にしていた体力の減少が止まった。

つまり、準備完了というわけだ。

距離を離した勢いでバックジャンプし、すでに両手剣サイズとなった聖剣を握りこむ。

 

 

Yu「これで終わりだヤギ!!」

 

 

聖剣を振りかぶり、真正面のボスに向かって振り下ろす。

 

 

Yu「エクスッ...カリバーッ!!!!

 

 

刀身がまばゆく光り、光の剣としてボスを切り裂く。

ボスは大剣で受け止めている、が。

 

 

Yu「そんなんで抑えきれるかよォ!!!」

 

 

さらに力を込める。

直後、ボスの大剣は折れ、光の剣に飲み込まれた後、その体を飛散させた。

 

 

Yu「はぁ...キッツ...」

 

 

悪魔が消えて、ウィンドウに表示されたのを薄目に見ながら、俺は意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき、読了感謝です。

いやぁ、意外と文字数すくねえなおい。
体感的に6千ぐらい書いてた気がする。
しかし現実は3千ちょい。びっくりだ()

ユイトの謎スキルについては次話の後書きにでも乗せようかと思います。
よろしくお願いします。
...たぶんアインクラッド編25話ぐらいで終わるな(それはそれでアニメ一期とリンクしていい感じ)

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18話 まだ付き合ってないです

どうしたサブタイ
スキル説明はあとがきのほうに。
それでは、どうぞ


R「...トさん...!ユイトさん...!」

 

 

誰かが俺の名前を呼んでいる。

 

 

As「キリト君!」

 

 

別の呼び声も聞こえる。

何とか起き上がることはできそうだと、自分の体をゆっくりを上げる。

 

 

Yu「...あれ...?」

R「...!ユイトさん...!」

Yu「うぇ!?」

 

 

起き上がった瞬間に、りんりんさんに抱きしめられる。

視界の奥で、キリトもアスナに同じことをされているようだ。

 

 

K,Yu「ずっとそうされてると、俺のHPがなくなるよ」

 

 

偶然にも俺とキリトの言動が一致し、目を合わせて笑う。

直後、聖剣を振るう前と同じ味の液体が喉を流れる。

 

 

クライン「生き残った奴らの回復は済ませたけど...コーバッツと後二人、死んだ」

K「...ボス攻略戦で犠牲者が出たのは67層以来だな...」

Yu「こんなの、攻略って言えないでしょ...中佐もバカだなぁ...」

 

 

ボス討伐の功績が欲しいなら、ちゃんとレイドフルメンバーで行って、LAボーナスだけかっさらえばいいのに、とか考えた瞬間、クラインさんの「そりゃそうとよ!」という大声で俺の考えが消し飛んだ。

 

 

クライン「キリトにユイトよぉ!おめえらなんだよあれ!」

Yu「...言わなきゃダメでしょうか」

クライン「ったりめえだ!見たことねえぞあんなの!!」

Yu「...俺のは説明に時間食うから、キリトからでいいよ」

K「俺に振るなよ...エクストラスキル《二刀流》」

 

 

おぉ...という声が薄く広がる。

 

 

クライン「しゅ、出現条件は」

K「わかってりゃもう公開してる」

クライン「まぁそうだろうなぁ...」

 

 

相変わらずお人好しだなあと、そう思う。

大方片手剣スキルの完全習得と、利き手と反対の手でのモブ討伐とかだろうかと考え、俺もやってみようかななんて思っていると、

 

 

クライン「じゃ、じゃあおめえのは」

 

 

と、クラインさんが俺を指す。

 

 

Yu「...武器の固有スキルで、《選定の騎士》、そこの派生のエクストラスキル、《騎士王》」

 

 

再びおぉ...という声。

 

 

クライン「出現条件は...その剣の獲得とかか?」

Yu「まあそれが第一条件でしょう。あとは...片手剣スキル完全習得とか...STR型にしておくこととか...」

 

 

候補としてはきりがない。

しかし、片手剣の完全習得とともに、新スキル開放と出たので、前者は間違いない。

 

 

クライン「水臭えなお前ら...そんなすげえの黙ってるなんてよぅ...」

Yu「二刀流はともかく、俺のなんて武器固有ですから...武器奪取なんてされたら終わりですし...」

K「珍しいスキルってだけで色々聞かれるだろうし...」

 

 

この世界で一番怖いのは嫉妬による殺害行為。

つまるところは、どんなボスモブや強力なモンスターよりも、プレイヤーが一番怖い。

キリトの答えを聞くと、クラインさんはうなずきながら言った。

 

 

クライン「ネットゲーマーの嫉妬は怖えからなぁ...俺は人間ができてるからともかく...妬み嫉みはあるだろうし...」

 

 

と、いったん言葉を切り、俺とキリトの肩を軽くたたいてからまた続けた。

 

 

クライン「ま、苦労も修行のうちだと思って頑張りたまえ、若者たちよ」

Yu「いやどういうことですか...」

「あ、あの...ありがとうございました...」

 

 

目線を上げると若い軍の生き残り。

 

 

Yu「気をつけて帰ってください。あと...上の人にこのことはきっちりとお伝えください」

「は、はい....!」

 

 

そう言った彼を筆頭に、次々と結晶でテレポートしていく。

 

 

クライン「さて、と...俺たちは75層の転移門の有効化(アクティベート)に行くけど、どうする?お前らやるか?」

Yu「俺は...遠慮しときます。しばらくは、動けそうにないんで...」

K「俺もパス...もうヘトヘトだ...」

クライン「そうか...気ぃつけて帰れよ」

 

 

クラインさんは去り際に親指を立てて、次層の階段へ向かっていった。

 

 

Yu「...はぁ...もう動けねぇ...」

K「俺もだ...もう転移して帰りた...のわっ!?」

 

 

キリトの声が不意に途切れたと思ったら、アスナに再度抱きしめられているところだった。

 

 

Yu「...なんか青春してんなぁ...」

L「君まだ若いでしょうよ...」

 

 

回復を終えたRoseliaメンバーがぞろぞろと寄ってくる。

 

 

Yu「さて...帰りますか」

Yk「そうね。でも...」

Yu「?」

S「あぁ...そうですね。ユイトさんは自分のホームに戻った方がいいかと」

Yu「いやなんでさ」

L「さっきキリトが言ってたでしょ?色々聞かれるだろうからって」

Yu「あぁそういう...じゃあそうしようかな」

A「一人で帰るのが寂しいなら...りんりんも付けちゃう!」

Yu,R「アコ(ちゃん)!?」

 

 

...ということで、りんりんさんは俺のホームがある49層までついてきてくれた。

本当にいい人だ。

 

 

Yu「...無理して付いてこなくてもよかったのに...」

R「ううん...私がしたくて、そうしたから...それに...」

Yu「それに?」

R「あ...何でもない...」

Yu「...そうですか...」

 

 

不思議だ。

不思議と、帰したくないって思ってしまう。

 

 

Yu「あの、さ」

R「...?」

Yu「俺、作るんで。飯とか、どうですか...?」

R「ふふっ...ごちそうになります」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

R「そういえば」

Yu「なんでしょ」

 

 

料理スキル600にしては手の込んだ料理を食べているとき、りんりんさんはそう言った。

 

 

R「どうして...私だけさん付けなの?」

Yu「あ~...その...失礼なんですけど...さん抜きでは呼べなくて...その...名前がね?」

 

 

俺がりんりんと呼ぶには、いささかハードルが高い。

たんに俺の気恥ずかしさの問題が大きい。

だからさんを付けていたのだが、何か問題があるのだろうか。

 

 

R「ほかの人は呼び捨てなのに...私だけ...」

 

 

そこまで気にしてたのか...だったら。

 

 

Yu「...りん」

R「え?」

Yu「りん、じゃ、だめかな。りんりんって呼ぶのは、周りの目が気になるから...」

R「ふふっ...じゃあ、それで」

Yu「ほ...良かった」

 

 

さっきまで浮かんでいた不安げな顔が消えた。

とりあえず、これで前より呼びやすくなった。

連携もとりやすくなるだろう。

 

 

R「仲良くなった、感じがする」

Yu「...そうですね」

 

 

誰とも仲良くするつもりなんてなかったから、ビーターなんて悪名を被った。

ま、今は今で悪くないから、問題はないけどね。

 

 

 

 




スキル説明
《選定の騎士》
片手直剣武器《カリバーン》を装備している者にのみ有効
モブ討伐時の獲得経験値1.1倍
モブ討伐時のレアドロップ確率1.2倍
行動不能系スキルの拘束時間0.8倍
硬直時間0.9倍
クールタイム0.9倍
戦闘時回復(バトルヒーリング)(偽)(10秒間あたり500回復)付与
STR値1.05倍
AGI値1.05倍


《騎士王》
《カリバーン》装備状態で詠唱後、スキル効果発動
《選定の騎士》スキル効果とは重複しない
《代償》レベル、経験値、STR値、AGI値、HPのいずれかを8割消費
30秒間、効果発動
《The》が付くモブに対してのダメージ量2.0倍
《The》が付くモブから受けるダメージ量0.5倍
それ以外のモブから受けるダメージ量1.5倍
それ以外のモブに与えるダメージ量0.7倍
《代償》に指定したステータスを減少後の数値の10倍(レベルを指定した場合は無し)
硬直時間0.1倍
クールタイム0.2倍
30秒後、ソードスキル《エクスカリバー》を発動
《エクスカリバー》発動後、10秒の硬直時間付与



設定はこんなとこかな...
では、また次回


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19話 《黒の剣士》、最強とデュエル

さ、ここまで来ました。
この後の展開はまあ想像通りですが、まあご覧あそばせ。
では、どうぞ。


Yu「キリトとKoBの団長がデュエルだぁ?どうなってんのそれ?」

 

アスナが俺のホームに入ってきた第二声が『うちの団長とキリトがデュエルする』だった。

 

 

As「私も止めたんだけど...キリト君が喧嘩買っちゃって...」

Yu「あの団長のことだから『アスナが欲しけりゃ俺と勝負しろ』って言ったんだろ」

As「団長、普段そういうこと言わないんだけど...」

Yu「で、そのおもろい試合はどこでやるの?」

As「え?」

Yu「神聖剣VS二刀流!面白くないわけがないだろ?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

というわけで、75層《コリニア》にある、コロシアムにやってきた。

 

 

「火吹きコーン10コル!10コル!」

「黒エール冷えてるよ~!」

Yu「...うわぁ...金取に使われてんなぁ...って、キリト」

K「...なんでいるんだ」

Yu「相棒が最強プレイヤーと戦うっていうから見に来たんだろうが」

K「...こんな大ごとになるなんて思ってなかった...」

 

 

戦う前から疲れ切っているキリト。

まあこんなに担ぎ上げられたら逃げるにも逃げられないだろうし、まあ疲れるよなと思う。

 

 

K「アスナ、そこでチケット売ってんのKoBのやつじゃないか!?」

As「ダイゼンさん...しっかりしてるなぁ...」

 

 

チケットを買って帰ってきたときには、キリトとアスナは腹が出てるプレイヤーと一緒にいた。

 

 

ダイゼン「いやーおおきにおおきに!キリトはんのおかげでえろう儲けさせてもろてます!」

Yu「自分のとこの団長ダシに使って金稼ぐのかKoBって」

ダイゼン「人聞きの悪いこと言わんでもろていいですか~?」

 

 

...ダメだ、やりずらい。

 

 

ダイゼン「ささ、控室はこっちですわ。どうぞどうぞ」

Yu「じゃあなキリト、俺は観客席から見てるから」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

Yu「...よっと」

 

 

件のキリトVSヒースクリフにはまだ時間があるようだから、少し情報を整理する。

ヒースクリフは《血盟騎士団》の団長。

ユニークスキル、《神聖剣》を持ち、装備は剣と盾。

そして、あの男には伝説が一つ。

それは、H()P()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

正確には、HPゲージがイエローに行ったところを見たことがない。

少なくとも、他プレイヤーがいるところでイエローまで割り込むところを見られていないということ。

かなり異常だ。

もしこのゲームにGMがいたなら、今すぐ神聖剣、ないしはヒースクリフにナーフをかけているところだろう。

 

 

Yu「まぁ...GMはいないしな...」

 

 

いるとするならばこのゲームが始まった初日に出てきたあの赤ローブだが、あくまであれは説明用のアバターだろう。

 

 

「うおおおおおおお!!!」

Yu「うわびっくり...お、始まるみたいだな。」

 

 

両側からプレイヤーが出てくる。

方や、赤の甲冑を纏い、巨大な盾を持った魔術師のような男。

方や、全身を黒でまとめた、男にしては小柄な男。

双方が闘技場の中央で向き合う。

観客席からは「斬れー」「殺せー」などと物騒な単語が飛び交っている。

まあ、娯楽の少ないこのゲームじゃ、これも一種の娯楽なのだろう。

ヒースクリフもキリトも、闘技場を見渡しては互いに苦笑いを浮かべている。

キリトはともかく、ヒースクリフは予想していなかったのだろう。

すると、ヒースクリフはウィンドウを操作し、操作を終えるとキリトも操作をし、それを終えた。

二人の間に《Heathcliff VS Kirito》と表示され、60秒からカウントが始まる。

二人は剣を静かに抜き、どちらも半身で構える。

飛び出したのはカウントが0になるのと同時だった。

 

 

キリトは二刀流特有の突進技でヒースクリフに迫るが、盾と剣による防御で弾き飛ばされた。

弾き飛ばされたところにヒースクリフが盾を水平に構えて突っ込む。

 

 

Yu「あれにもスキルがあんのか...」

 

 

神聖剣のスキルは知っているが、効果は初見だ。

盾を二刀で防御したキリトに再度突っ込むヒースクリフ。

神聖剣のソードスキルを何とか捌いているように見えるキリトだが、アスナからこういうスキルだとレクチャーを受けたのだろう。

キリトはヒースクリフの8連撃目を左手ではじくと、そのまま右手で突進技《ヴォーパル・ストライク》を発動させる。

盾に弾かれているが、ヒースクリフのHPが少しだけ減る。

しかしそれもせいぜい5%ほど、初撃決着では決まらない。

 

 

K「........!!」

ヒースクリフ「......!」

 

 

ここからじゃ観客の声に紛れて聞こえないが、彼らが楽しんでいることは緩んだ口元を見ればわかる。

そこからの互いの攻防はお互いにクリティカルは出ず、致命傷もない。

かすり傷や弱攻撃の当たりだけだが、徐々にお互いのHPが5割に届き始める。

そこで、キリトが一段階スピードを上げたように見えた。

ヒースクリフの顔が、徐々に焦りを含み始める。

その瞬間、キリトの二刀が光る。

確か、《スターバースト・ストリーム》だったか。

16連撃の二刀流専用ソードスキル。

剣や盾を使い防御するヒースクリフだが、キリトのソードスキルの奔流によって盾が右に、剣が左に流れ、正面ががら空きになった。

そして、キリトのスキルはまだ終わっていない、16撃目が、ヒースクリフの左脇腹に...

 

 

Yu「...は?」

 

 

当たらず、盾に弾かれた。

そして、スキルでも何でもないヒースクリフの単調な突き攻撃が、キリトのHPをぴったり5割にし、それでデュエルは終わった。

 

 

Yu「何だったんだ...今の動き...」

 

 

盾は明らかに届かない範囲にあった。

振られた盾をその場に戻すには相当な負荷がかかる。

俺も一時期タンク職をやっていたからわかるが、振られた盾というのは相当重い。

それを振られた状態から初期位置に戻し、さらにキリトの剣を弾く位置まで持っていくのに1秒と掛かっていない。

あまりにもおかしい速度、何かきっと裏がある。

 

 

Yu「GMだったり...はあり得ねえか」

 

 

とりあえず違和感は仕舞っておくこととして、俺は帰ることとした。

キリトが純白のコートを羽織り、俺が爆笑するのは、別の話である。




後書き、読了感謝です。
この後の話の流れは
キリト殺害未遂→キリアス結婚→75層ボス戦→ラスボス戦→現実へ帰還
という流れになるので、どこかにRoselia及びユイト君を突っ込めたらなと思います。
結婚させるのは同タイミングになりそうだなぁ...

では、また次回。
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20話 ビーター、KoBとの合同演習に参加する

祝、二十話。
さて、待っている人は待っているであろう、殺害未遂事件です。
例によってユイトがなぜか参加するご都合主義展開ですが、どうかお気になさらず。(というか、それをしとかないと一生ユイトがヒロインとくっつきません、ごめんなさい)


それでは、どうぞ


Yu「あっはは!なんだそれ!」

K「隊服なんだからしょうがないだろ...アスナ、これホントに一番地味なやつなのか...?」

Yu「それで一番地味なやつなの!?」

As「これでも十分地味よ!うん、似合ってる!」

 

 

ここは50層アルゲード、エギルさんの店の二階。

そこで俺が大爆笑した理由は、キリトが真っ白だったからだ。

キリトと言えば《黒の剣士》。

それが真っ白になったら...

 

 

Yu「ひぃっ...ダメだ腹いてぇ...!」

K「...お前もKoBに入れてやろうか」

Yu「あ、俺はRoselia所属なんで。浮気はしない主義ですので。つかヒラのお前にそんな権限ないだろ」

K「うるせぇ、ビーターのくせに」

Yu「お前それブーメラン。...まあいいんじゃねえの。ソロだと限界来るとこだろ」

K「まぁ、いい機会だったな...目的は、達してるし」

Yu「惚気るな」

 

 

ここのところのキリトはすぐアスナとの話をしたがる。

まあ1層からの相棒だから、他人と仲良くしてるのは良い。

それが女ならなおさら良い。

でも。

 

 

Yu「(ここまで惚気といて互いの気持ちに気付かないなんてことあるのか...)」

 

 

アスナもキリトも、互いを見るときの目線が少しばかり熱い。

なんでこれで気づかないのかびっくりだ。

 

 

Yu「(ま、しばらくは進展ないだろうなぁ...)」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

KoBの少数メンバーにキリトを加えたパーティで55層の迷宮区を突破するという実践訓練を行うらしい。

 

 

Yu「え?俺も出んのそれ?」

As「ごめんねユイト君。巻き込んじゃって」

 

 

そしてなぜかそれに俺も参加することになった。

なんでだ。

 

 

Yu「...というわけだ」

S「なぜか、と言われれば理由は大体見当が付きます」

L「まぁ...そうだよねえ」

Yu「え、わかるもんなの?」

A「ユイトさんのでっかい光の剣が原因だと思います!」

R「ユニークスキル使いの、実力を知らないと、統率が崩壊する可能性が...あるからでは...?」

 

 

俺の力を知ることで75層のボス戦に挑もうという訳か。

 

 

Yu「まぁ、そういうことならいいか。じゃ、行ってくる。」

R「あ、あの...!き、気を付けて...」

Yu「...あぁ、わかってる」

 

 

Yu「(りんのやつ、なんで顔赤かったんだ)」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

Yu「...で、このメンバーなのは良いけど。こいつ反省してんの?」

 

 

俺が目線を向けたのはクラディールというプレイヤー。

74層ボス戦前に、キリトと一発やり合ったらしい。

まあその理由が、護衛という言葉に隠れてアスナのストーキングしてたからなんだが。

アスナを連れてこうとしたキリトに、キレてデュエルを申し込んだわけだ、負けたらしいけど。

 

 

ゴトフリー「君たちの事情は十分承知している。が、これからは同じギルドとして過去のことは水に流してはどうかな?」

 

 

ガッハッハと豪快に笑うプレイヤーはさておき、問題はキリトとクラディールの雰囲気だ。

何をするかわからないと考えていると。

 

 

クラディール「先日は...ご迷惑をおかけしまして...二度と無礼な真似はしませんので...許していただきたい...」

K「あ、あぁ...」

Yu「えぇ...?」

 

 

キリトから聞いていた性格と180度違う態度で俺もキリトも口を開けたまま気の抜けた返事しかできなかった。

 

 

ゴトフリー「よしよし、これで一件落着だな!」

 

 

とりあえず仲直りが終わったようなので、早速迷宮区に向かおうとすると、野太い声に止められる。

 

 

ゴトフリー「待て。今日の訓練は実戦に近い形式として、結晶の類は預からせてもらう」

K「転移結晶もか?」

ゴトフリー「うむ」

Yu「うわぁ...マジか」

 

 

転移結晶、というより結晶の類は今の現状じゃ生命線だ。

そう簡単に渡すわけにはいかないが...

 

 

Yu「(クラディールも他のやつらも渡してるのか...仕方ないか)はい、終わったら返してくれるんだよな?」

ゴトフリー「もちろんだ。...念のため、ポーチの中身も見せてもらおう」

Yu「ポーションは許してくれよ」

 

 

全員の確認終わったようで、「では、出発!」との声が上がる。

 

 

Yu「走っちゃいけないのか?」

K「あの図体見ればわかるだろ?」

Yu「OK、察した」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

途中のモンスター群は、キリトが一刀で切り捨てたので、俺らの出番は微塵もなかった。

しばらく歩くと、灰色の建物が見えてくる。

55層迷宮区のお出ましだ。

 

 

ゴトフリー「よし、ここで一時休憩!」

Yu「キリトはともかく...いいや、どうせ聞かねえだろうし」

 

 

一気に迷宮を突破して、一刻も早くギルドホームに帰りたかったが、あいにくとそれはパーティリーダー様が許してくれなそうだ。

 

 

ゴトフリー「では、食料を配布する」

 

 

革の包みが2つ、こちらに投げられる。

一つをキリトに回し、もう一つを自分で開ける。

中身は固そうなパンと水の瓶。

隣の相棒を見るとがっかりした顔をしている。

いつものこの時間なら、アスナがキリトにバゲットサンドをあげているところだろう。

かくいう俺も、リサが作った弁当を食べている時間だ。

リサのほうが俺より料理スキル値が高いんだ、任せるのは当然になってしまう。

 

 

Yu「(帰ったらなんか作るか...)...このパンまっず...」

 

 

あまりのおいしく無さに、水を(あお)ろうとして、ふと向こう側に座っているクラディールと目が合う。

心なしか、目線が仄暗い。

一人革の包みには手を掛けず、じっとこちらを見つめて...

それに気づいた瞬間、体から力が抜ける。

そして、自分のHPゲージの周りに黄色が灯る。

麻痺毒だ。しかも相当強いやつ。

 

 

Yu「(早く...解毒を...!?)」

 

 

解毒結晶はゴトフリーに預けたままだ。

まずい。

 

 

Yu「解毒結晶を...!」

 

 

ゴトフリーは腰のポーチを探ろうとするが。

 

 

クラディール「ヒャッ!!」

 

 

奇声をあげたクラディールがその手を蹴り飛ばし、ポーチの中身をすべて自分のポーチに移してしまった。

 

 

クラディール「ゴトフリーさんよぉ...前から馬鹿だ馬鹿だと思ってたが、アンタは筋金入りの筋肉脳味噌(ノーキン)だなぁ!!」

ゴトフリー「ぐはっ!」

 

 

クラディールがゴトフリーの口を蹴り飛ばし、それによってゴトフリーの体力は少し減り、クラディールのカーソルがオレンジに変化する。

 

 

クラディール「あんたにいろいろ言いたいことはあるけどよぉ...オードブルで腹いっぱいになっちまうからなぁ...」

 

 

そう言いながら両手剣を引き抜く。

装飾が煌びやかな、実に脆そうな剣だ。

 

 

ゴトフリー「ま、待てクラディール!お前は...何を言ってるんだ...これも何かの訓練なのか...?」

クラディール「うるせぇ、もういいから死ねや」

 

 

両手剣を頭に掲げ、体をいっぱいに逸らす。

それを、躊躇いなく、ゴトフリーの体に突き刺した。

 

 

Yu「なっ...!?」

ゴトフリー「ぐあああああああ!」

クラディール「ヒャアアアアアア!!」

 

 

ゴトフリーの悲鳴に被せるように、奇声を上げるクラディール。

ゴトフリーのHPゲージは傍から見ていても確実な速度で減っている。

そしてーー

 

 

ガラスの破片が砕け散る音と共に、ゴトフリーはその場から消えた。

 

 

Yu「な、仲間を...」

K「た、躊躇いもなく...?」

 

 

クラディールは体を少し震わせると、ゴトフリーの反対側にいたプレイヤーに首だけ向ける。

 

 

クラディール「お前にゃ何の恨みはねぇけどな...俺のシナリオじゃ生存者は俺一人なんだよなぁ...」

 

 

先ほどと一緒で、クラディールは両手剣をプレイヤーの背に突き刺す。

何もできないのが悔しくてしょうがない。

解毒の手段もクラディールが握っている。

 

 

Yu「(いや...まだある...!)」

 

 

あのプレイヤーには申し訳ないが、クラディールの目線がこちらにない今を利用するしかない。

肘から下だけで、どうにか背中の剣を掴み、引き抜く。

そして抜剣した状態で逆手で握る。

バレたら終わりだ。

 

 

クラディール「いいかぁ?俺たちのパーティーはァー」

 

 

一回。

 

 

クラディール「荒野で犯罪者プレイヤーの大群に襲われェー」

 

 

二回。

 

 

クラディール「勇戦空しく四人が死亡ォー」

 

 

三回。

 

 

クラディール「俺一人になったものの犯罪者群を撃退して生還しましたァー」

 

 

四回目の突き刺しでそのプレイヤーのHPは0になり、死んだ。

ガラスのが割れる音のような音は何度聞いても気持ち悪い。

が、クラディールは別の何かに聞こえているようで、ゴトフリーの時よりも体の痙攣が激しくなっている。

 

 

クラディール「よォ」

 

 

首だけを動かしてこちらを見る犯罪者(クラディール)

俺らの前にしゃがみ込み、シナリオを語ってた時とは違い、囁くような声で近づいてくる。

 

 

クラディール「お前らみたいなガキ二人のためによォ、関係ない奴を二人も殺しちまったァ」

Yu「その割には...随分と嬉しそうだったじゃねえかよ」

K「お前みたいなやつが...なんでKoBに入った...」

クラディール「ケッ、決まってんじゃねえかよ、あの女だよ」

 

 

あの女、とはアスナのことだろう。

キリトに聞いたストーキングの話も、しつこく護衛していた話も、これで納得がいった。

しかし、これが分かったところでどうにもならない。

 

 

Yu,K「お前...!」

クラディール「揃ってコエェ顔すんなって。たかがゲームだろ?」

 

 

そこで言葉を切ると、キリトを見ながら言う。

 

 

クラディール「おめぇの大事な副団長様もォー」

 

 

言葉を切って、俺を見ながら言う。

 

 

クラディール「オメェの大事なギルメンだってェー」

 

 

また言葉を切り、少し下がってしゃがみ込みなおす。

 

 

クラディール「俺が大事にしてちゃぁんと面倒見てやるからよ。いろいろ便利なアイテムもあるしなぁ?」

 

 

そう言って俺たちがさっき飲んだ水瓶をチラつかせる。

 

 

Yu「KoBより、オレンジギルドのほうが似合ってるよ、アンタ」

 

 

少しでも時間を稼いで、麻痺毒が早く切れるのを願う。

 

 

クラディール「ヒャッ!面白いこと言うなオメェ!」

Yu「見て思ったことを言っただけだ」

クラディール「いい目してるって、褒めてんだぜ?」

 

 

クラディールは左腕のガントレットの装備を解除した。

そしてインナーをめくり、そこにあったエンブレムを見た瞬間、俺たちは絶句した。

棺桶が縁どられ、棺桶には笑う目と口だけが書かれ、ずれている蓋の中の棺桶からは腕がはみ出したマーク。

 

 

Yu「笑う棺桶(ラフィン・コフィン)...!?」

 

 

ラフィン・コフィンとは、今はもうない最凶最悪の殺人(PK)ギルド。

リーダーの戦略が冷徹、かつ狡猾で、三桁に登る死者を出している。

攻略組で、ラフィン・コフィンの討伐作戦も開かれたほどで、その時の人数はボスレイド並みだった。

結局は壊滅させたが、奇襲を行うも失敗に終わり、大混戦の中、相手ギルドのプレイヤーを3人ほど殺害してしまったことは記憶に新しい。

 

 

K「これは...復讐か?お前は...ラフコフの生き残りだったのか...?」

クラディール「ハッ、ちげえよ。そんなダセェことしねえよ。俺もラフコフには最近入れてもらってなぁ。あぁ、精神的にな。この麻痺テクも...と。やべえやべえ」

 

 

喋るのをやめると、キリトのほうに向かい、再び剣を構えた。

 

 

クラディール「しゃべるのもこの辺にしとかねえと...毒が切れちまうからなぁ...」

 

 

クラディールはおおきく振りかぶって剣を構えている。

その時、俺の右側から、何か銀色のものが飛び、クラディールの左腕に突き刺さる。

投擲武器だ。

 

 

クラディール「ってぇな...」

 

 

少し顔を歪めただけで、足を止めずにキリトの右腕に剣を突き刺す。

 

 

K「っ...!」

 

 

クラディールは暢気にストレージを開き、短剣をオブジェクト化すると。

 

 

クラディール「おめえもだよォ!」

Yu「くっ...!」

 

 

俺の腹に突き刺した。

刺し武器の痛みの感じは気持ち悪い。

この世界ではほとんど痛みは感じないが、そのせいで、痛みが余計に気持ち悪く感じる。

 

 

クラディール「おめえら教えてくれよォ...もうすぐ死ぬってどんな感じなんだァ...?」

 

 

キリトの右腕に刺していた剣を、左足に刺し変え、俺の方に刺さってる短剣はもっと深く押し込まれる。

 

 

クラディール「死にたくねえって叫んでくれよぉ...泣いてみろよぉ...!」

Yu「くっ...」

K「っ...!」

クラディール「おいおい何とか言ってくれよぉ...ほんとに死んじまうぞォ...?」

 

 

クラディールはキリトに刺した剣を腹を刺し直すと、キリトはその刀身を掴んだ。

 

 

クラディール「お、お?まだ死にたくねえってか...?」

K「そうだ...まだ、死ねない...!」

 

 

クラディールは体重をかけて、キリトは左腕だけで。

その剣は、キリトの体の方へ刺さっていく。

キリトの体力は一割弱。

しかし、これ以上減ることはもうない。

 

 

Yu「...はぁっ!」

クラディール「ぐぉ!?」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

クラディール「テメェ!!なんで動けてんだよぉ!」

Yu「俺のスキルだよ。正確には武器スキルだけど」

 

 

俺のスキル、《選定の騎士》には『行動不能系スキルの拘束時間0.8倍』という効果が付いている。

クラディールに盛られた毒は5分、つまり300秒のもの。

0.8倍すると240秒、つまり人より1分早く動けるというわけだ。

本当に、「俺じゃなくて武器が強い」んだ。

 

 

クラディール「クソガキがぁ...!」

 

 

クラディールが目を丸くさせ、充血させながら俺を睨み、突撃してくる。

 

 

Yu「くっ...!」

クラディール「守ってばっかじゃ勝てねえぜェ!?」

 

 

とはいえ、まだ体の反応は鈍い。

昔、麻酔を入れられて、回復したときに、こういう感覚になったことを思い出した。

 

 

クラディール「おら死ねぇ!死ねガキィ!!」

Yu「っ...!」

クラディール「死ねぇぇぇ!!」

 

 

大きく跳ね飛ばされ倒れこんだその直後、俺とクラディールの間に風が吹き抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき、読了感謝です。

行動不能系スキルの拘束時間0.8倍の設定、うまくいかせて良かった。
というか、この展開がしたかったからこの設定入れたところはある。

オリ主優遇ムーブしたかったから、許してください。
すごい適当なアンケートも置いておくので、よければ投票お願いします。


お気に入り登録、評価、感想頂けると嬉しいです。


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21話 人肌が恋しい

サブタイの方向性が行方不明です

そして本編も行方不明

うーん、クソ文

それでは、どうぞ


俺とクラディールの間を割って入ってきたのは、赤白と黒の旋風だった。

 

 

R「はぁっ...はぁっ...」

As「間に合った...間に合ったよ、神様...!」

 

 

黒の風は俺の方を見て笑顔を一つ、赤白の風はキリトのそばで崩れ落ちている。

 

 

Yu「アスナに...りん...?」

As「二人とも...生きてるよね...?」

K「あぁ...生きてるよ」

Yu「俺は、どうにか動けるから...先にキリトの治療してやってくれ...」

R「無理、しないでください...!」

 

 

そういうとアスナはキリトの胸に、りんは俺の腹にピンク色の結晶を押し当てると、同時に「ヒール!」と叫んだ。

結晶が砕けると同時に俺たちのHPが全回復する。

 

 

As「待っててね...すぐ終わらせるから...」

R「行きましょう...アスナさん...」

 

 

りんとアスナは立ち上がり、殺人者(クラディール)を見据える。

 

 

クラディール「ア、アスナ様に...Roseliaの...そ、そう!これはその...事故で!訓練で事故が...ぶあっ!」

 

 

クラディールの言い訳を聞かず、アスナはクラディールの口を切り裂いた。

口元を抑えてこちらを見るクラディールの目は、憎しみで埋まっていた。

 

 

クラディール「このアマどもがァ...ケッ、ちょうどいいや、お前らも殺ってやろうと...」

 

 

そのセリフも、最後まで言えなかった。

アスナとりんの剣が、右から左から、上から下から迫りくるおかげで、クラディールは攻撃を一切できてない。

 

 

Yu「奇麗だ...」

 

 

場違いにもそう思った。

見とれるほどに、美しかった。

そしてクラディールのHPゲージが赤くなったところで、クラディールは剣を投げ出し頭を地面に擦り付けた。

 

 

クラディール「わ、わかった!俺が悪かった!悪かったよ!ギルドはやめる!もうアンタらの前に現れねぇ!!」

 

 

叫び声とも聴けるその反省を、アスナもりんも、黙って聞いていた。

しかし、アスナは右に持ったレイピアを逆手に持ち、振り上げた。

りんも同じ構えをしている。

そしてレイピアが下げられた瞬間。

 

 

クラディール「ひぃぃ!!死にたくねぇーーーっ!!!」

 

 

という叫びで、二人の剣の動きが止まった。

この世界でプレイヤーが死ぬことは、現実のどこかでそのプレイヤーを操っていた人間が死ぬことを意味する。

つまり、プレイヤーを殺すと、殺したプレイヤーは間接的に殺人を犯したことになる。

二人の剣の動きが止まった理由は、想像できる。

 

 

ーー止まれ、りん。

ーーそのまま振り下ろせ、りん。

 

 

二つの考えが同時によぎり、とっさに後者を叫ぼうとした時、這いつくばっていたクラディールが、叫んだ。

 

 

クラディール「ヒャァァァァッ!」

 

 

クラディールは握りなおした大剣でアスナたちの剣を弾いた。

 

 

As「あっ...!」

R「うそ...!」

クラディール「アァァァ甘ぇーーーーーんだよてめえらァァァァァ!!」

K「う...おおおぉぉぉぉ!!!」

 

 

麻痺が解けたキリトが、叫んで飛び出す。

 

 

Yu「はぁぁぁぁ!!」

 

 

その叫びにかぶせるようにして、俺も飛び出す。

クラディールの大剣を横っ腹から叩き折り、その勢いでクラディールを蹴り飛ばす。

 

 

Yu「キリトッ!」

K「あぁぁぁっ!!」

 

 

黄色く光り、クラディールの腹を貫いたキリトの右腕は。

赤色に割り込んでいたクラディールのHPを、残さず消し飛ばした。

 

 

クラディール「この...人殺し野郎が...」

 

 

最後にキリトに何か言っていた気がしたが、呪詛か何かの類だろう。

そしてクラディールは、その存在をポリゴンの欠片として消滅した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

しばらく、俺たちは動けなかった。

もう少し毒の時間が長かったら。

もしアスナやりんが助けに来てくれなかったら。

 

 

ーー俺は、死んでいたのだろうか?

 

 

そんなことを考えて寒気を感じる体を縮こませ、顔を下げた。

横の方から近づいてくる足音、少しだけ目線を横にやると、黒い脚が見えた。

りんだ。

 

 

R「...ごめんなさい、ユイトさん」

Yu「なんで、りんが謝るんだ」

R「だって...ユイトさんのことっ...」

 

 

続くはずの言葉はきっと、「殺しかけた」だろうが、りんの性格上言えないのは知ってる。

だから、そっとりんの腕を握る。

 

 

R「...?」

Yu「気にすんなよ。俺でよかったと思ってる」

R「なんで、ですか?」

Yu「俺だからこの場でHPを減らされてたけど、りんだったら...」

 

 

この続きを、俺は言えなかった。

恐ろしくて。もしそうなってしまったら怖くて。

怖かったから、反射的にりんを抱き寄せる。

 

 

R「あの...ユイトさん...?」

Yu「ごめん、りん。今は、こうさせてほしい」

 

 

ふと目線をキリトの方にやると、アスナの肩にキリトが顔を埋めていた。

 

 

R「帰りましょうか...」

Yu「...わかった」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ギルドホームに戻ると、Roseliaの面々から口々に心配された。

何とかまだ持ちこたえている精神で、大丈夫だと答えると、

 

 

L「燐子、ユイトと一緒にいてあげて」

R「え...?」

L「いやほら、そんなことがあった後じゃ、ね?」

R「わ、わかりました...ユイトさんは、それで平気ですか...?」

Yu「あぁ、大丈夫...」

 

 

というやり取りがあって、今現在ギルドホームに二人きり。

他のメンツは俺のホームに行ったようだ。

 

 

Yu「逆のほうが良かったんじゃないかな...」

R「動かない方が...いいんじゃないかっていう、判断の元なので...」

Yu「まあ納得」

 

 

しかし、何もする気が起きない。

 

 

Yu「...寝ていいかな」

R「は、はい。おやすみなさい、ユイトさん」

 

 

普段使わない、客室用の部屋(客なんて来ないから実質空き部屋)に入る。

装備を簡易的なものにして、ベッドに飛び込むと、戦闘の疲れや精神的疲労もあって、すぐに意識が落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...目が覚めた時、隣に装備全解除のりんがいたのは、別の話だ。




後書き、とりあえずここまで書けたことに褒めたい。

近いうちにコラボ回の前日譚を書こうかと思ってるので、よろしくお願いします。

結婚文句アンケ、ありがとうございました。

また別のアンケートも置いてあるので、よろしくお願いします。

それでは、また。


追記(アップデート):装備全解除に至るまでの話→ https://syosetu.org/novel/264952/1.html


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22話 関係、進展。

やっとだよクソ!
失礼。クソとか言っちゃいけないね。
さて、彼らはどう進むかな。


Yu「...寝ちまってた...のか」

 

 

ベッドから身を起こす。

隣には装備全解除の女性が一人。

うん、まぁあれだ。営みというやつだ。

決して襲ったわけではない。

お互いの合意の上だ。

 

 

Yu「よっ...と」

 

 

ベッドから降りて、ランタンを付ける。

人工的なオレンジ色の明かりだが、白い光よりは全然目にやさしい。

 

 

Yu「よく...できたな」

 

 

ベッドで寝ているりんを見て、そう呟く。

ネットで齧った知識だけで、よくできたものだと自分を褒めたい。

まぁ、俺から誘ったわけではないから、そこはあれだが。

 

 

R「...ん、んぅ...」

 

 

りんが寝返りを打つ。

さっきとは違い、背中が露わになる。

 

 

Yu「肌、白いな」

 

 

無感動にもそう思った。

もちろんここはポリゴンの世界で、肌の白さが現実と直結していないのだが、彼女に褐色は合わないだろうなと、そう思った。

 

 

R「ん...あれ、ユイトさん...?」

Yu「悪い、起こしたか」

R「いえ...その、体は、大丈夫ですか?」

Yu「まあとりあえずは。そっちこそ、大丈夫?」

R「はい。ありがとうございます」

 

 

天使の笑顔という形容が一番合うような、彼女の微笑み。

本当にかわいい。

 

 

R「それにしても...どうしてユイトさんが...狙われたんでしょうか...?」

Yu「レアスキル持ちはそういう定めなんだよ。困ったもんだ」

 

 

それに、もともとあいつはキリトに執着していたように思う。

アスナを取られた恨みか、あるいはデュエルで見世物にされた雪辱を果たしたかったか。

あるいは両方。

なんにせよ、こればっかりは巻き添えを食らった、と思いたい。

 

 

R「でも、本当に...無事で、よかったです」

Yu「りんが来てくれなかったらピンチだったよ、ありがとな」

R「いえ、私も、アスナさんに...つられてきたので」

Yu「アスナ、すごいな」

 

 

あの時ばかりは本当に死を覚悟した。

怖いと感じたのは、これが初めてだ。

 

 

Yu「...なんか、前線に出る気分になれないな」

R「そう、ですね。もともと私たちは...攻略組では、ありませんから。少し休んでも、平気な気がします」

Yu「...しばらく、休むか」

R「はい」

 

 

ここで会話を終わらせちゃいけない。

続けろ。

彼女が俺から離れないうちに。

 

 

Yu「あ、のさ」

R「...?」

Yu「実は、最近、47層にさ。いい家を見つけてさ」

R「...はい」

Yu「周りは花でいっぱいだし、ちっちゃいけど、その、湖だってあるんだ」

R「...はい」

Yu「二人でさ、その...そこ、引っ越さないかって、思って」

R「いいと、思います」

 

 

ここまでは良い。

この先だ。

 

 

Yu「それでその...えっと」

R「...焦らないで、いいですよ」

 

 

彼女に落ち着かされているようでは、とても言えそうにない。

 

 

Yu「ごめん、ヘタレで」

R「大丈夫です、私もそうですから」

 

 

 

Yu「...よし。りん、言いたいことがある」

R「はい、なんでしょう?」

 

 

言え、俺。

 

 

Yu「俺と...その...結婚、してください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

R「...はい...!」

 

 

ふわりと、彼女が笑う。

それだけで、もう十分だ。

興奮冷めやらぬうちに、プロポーズメッセージを送る。

『相手が結婚を受諾しました』というメッセージを、まさか自分の目で見れる日が来るとは思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、無事にくっつきましたね。
やっとここまで書けたよ、マジで長いね。

UA5000、ありがとうございます。
1000行けばいいなとか思ってけど、話数重ねたら10000ぐらい行ってほしいなとか感じてしまっている私がいる、怖い。



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23話 新婚生活は終わりを告げる

結婚したのが前の回。
新婚生活を書いてるのがこの回。
そして終わるのもこの回。
うーん、新婚生活とは()


Yu「...微妙に現実味がないな」

R「私と結婚したのが...夢だと...?」

Yu「あぁいや、その...おんなじくらいの異性と一緒に暮らすってのが、想像できなかったからさ」

R「そう、ですね。私も、同世代の男性と暮らすのは、想像したこと、無いですから...」

 

 

隣にいるりんの肩に頭を預けながら、ゆったりとした時間を過ごす。

自分の知り合いには結婚したことを伝えている。もちろん、キリトにも。

「早くくっつかないかなと思ってた」や「お似合いだと思ってた」とか。

みんな口々に祝福してくれた。

まぁ、キリトの、「なんというか、お揃いだな」というメッセージには驚いたが。

まああの二人のことだ、くっつくのもそう遠くはなかっただろう。

...って、あいつらも思ってたのかな。

 

 

Yu「...なんか、ギルドのやつらにはすごい顔されたけど」

R「どうして、でしょうね」

 

 

開口一番に「やっと?」なんて言われたからね、口ポカーンでしょ。

 

 

Yu「まぁ、あれだ。しばらくは...その、ゆっくりしよう」

R「はい、そうですね...」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

花が咲き誇る47層、フローリアの街。

人はまあそこそこいるが、それ以上に花がきれいな場所だ。

めでたく結婚をした俺たちは、隠居とまではいかないが、しばらく攻略を休んで、ここの家で過ごしている。

 

 

Yu「ふぁ...あ...はぁ~...つっかれたぁ...」

R「お疲れ様、です。...お茶、入れますね」

Yu「さんきゅ」

 

 

と、まあ、こんな感じだ。

え、惚気るなって?

まあいいだろ、こんな日があったって。

 

 

R「はい、どうぞ」

Yu「お、来た...このクッキーは...」

R「リサさんに、作り方を教わりました...」

Yu「ほぉ...じゃおひとつ...あむ...」

R「どう、ですか...?」

Yu「...めっちゃうまい」

R「...!良かった...」

 

 

嫁が可愛くてつらい。

 

 

R「きゅ、急にそういうことは...言わないでください...」

Yu「おっと漏れてた。いいじゃん、事実だし」

R「そういうところ、嫌いです」

Yu「ごめんな、りん」

 

 

とまあこんな感じで、ほのぼのとした日常を送ってるんだよ。

送ってるんだけど、さ。

まぁ、平和も続けば、突然終わることだってあるわけで。

なんで今、ってタイミングだよ。

 

 

Yu「...?キリト...?」

 

 

どうやら、メッセージのようだ。

惚気話だったら既読スルーでもしてやろうと思ったが、どうやら違うようだ。

 

 

Yu「...!『75層のボス部屋が見つかった、装備出来次第コリニアまで』...」

R「ユ、ユイトさん!」

Yu「行くしか、ないんだろうな」

R「はい、行きましょう...この生活も、名残惜しいですけどね」

Yu「...すぐ終わらせて、帰ってこような」

R「...はい」

 

 

フローリアの転移門に立ち、手をつなぎながら、叫ぶ。

 

 

「「転移、コリニア!!」」

 

 

 

 

 

 

 




さて、いよいよ75層ボス戦が始まります。
...こんだけしか言うことないな。

それでは。


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24話 私たちは、6人で

75層ボス戦、開幕。


コリニアに転移すると、大勢のプレイヤーが集まっていた。

 

 

Yu「...緊張感が違うな」

R「はい...」

 

 

ふと横を見ると、見知った顔が四人。Roseliaのメンバーだ。

 

 

L「燐子にユイト!やっほー!元気?」

Yu「もちろん。Roseliaが無事で何よりだよ」

Yk「ここにいるということは...」

S「ボスレイドに参加するんですか?」

Yu「わざわざ冷やかしに装備してここまで来ないさ。な?」

R「はい。私たちも、戦います」

 

 

クォーターポイントのボス戦前に、再び「Roselia」となる。

と、後ろから聞きなじみのある声が聞こえた。

 

 

クライン「なんだってことはねぇだろうよぉ!」

エギル「今回は苦戦しそうだって聞いたから、商売投げ出して加勢しに来たんだろうが。この無私無欲の精神を理解できないたぁ...」

 

 

そんな声が聞こえたので、黒コートの肩から顔を出して言う。

 

 

K,Yu「無私の精神はよーくわかった(わかりました)。それじゃあ、今回の戦利品の分配からは除外していいのな(いいんですね)、エギル(さん)?」

 

 

意図せず息ぴったりにエギルさんに問いかけて、黒コート...キリトと目を合わせて笑う。

 

 

エギル「い、いやぁ...それはだなぁ...」

Yu「口ごもるのはどうしてですか...」

 

 

呆れながら笑う。

他のプレイヤーも俺たちの茶番を見て笑いをこぼす。

固まっていた空気が少しずつほぐれていく。

しかし、転移門から出てきた数名のプレイヤーの登場により、空気が一層引き締まる。

全員白の甲冑で固めたプレイヤー。

KoBのプレイヤーだ。

先頭に立っているのはKoB団長、ヒースクリフ。

ヒースクリフは周りを一瞥すると、声を上げる。

 

 

ヒースクリフ「欠員はないようだな。よく集まってくれた。状況は、知っての通りだ。厳しい戦いになるだろうが、君たちなら乗り越えられると信じている。解放の日のために!!」

 

 

「おぉー!」という歓声の中、ヒースクリフは俺とキリトを見てこう言う。

 

 

ヒースクリフ「君たち二人とも、頼りにしている。《二刀流》に《騎士王》。存分に振るってくれたまえ」

Yu「了解」

 

 

俺は答え、キリトが頷く。

 

 

ヒースクリフ「では出発しよう。ボス部屋前までコリドーを開く」

 

 

さっきと違うニュアンスの「おぉ...」という声が響く。

コリドー、とは回廊結晶(コリドークリスタル)によってつくられるワープホールのようなもの。

回廊結晶自体簡単に手に入るものではない。

ゆえに、早々目にするものではない回廊結晶だが、それをあっさり使うヒースクリフにも驚く。

 

 

ヒースクリフ「コリドー・オープン。...それでは皆、付いてきてくれたまえ」

 

 

ヒースクリフの後に続いてKoBの団員が、精鋭ギルドの一員が、エギルが、風林火山が入っていく。

キリトとアスナが入っていった背中を追うようにして、俺たちも入る。

 

 

Yu「行くぞ、皆」

Roselia「了解」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

まぶしい光を相殺するため目を瞑り、開けた時にはボス部屋の扉が目の前に位置していた。

 

 

Yu「さすがクォーター...禍々しいな」

R「そう、ですね」

As「何か...やな感じ、だね」

K「あぁ...」

 

 

これでも74個、ボスの扉を見てきたが、0が付いた層のボス部屋はそこそこ重たそうな扉をしていたし、クォーターポイント、つまり25層と50層のボス部屋の扉は煌びやかな装飾があったりした。

この層もクォーターの例に漏れないが、装飾がかえって不気味に思える。

 

 

Yu「緊張、してるな」

 

 

このボスレイドの人数は総勢38人。

上限には足りないが、一人一人がハイレベルプレイヤーだ。

しかしそんな集団が、口を縫い合わせたように固く閉ざし、目は所在無さげに震えていたりする。

 

 

Yu「わりぃ、皆、ちょっと」

Yk「何かしら?」

Yu「なんか、がらにもなくさ、震えてきちゃって」

 

 

さっきからずっと右手が小刻みに震えている。

しかし、その右手に温かさが乗る。

 

 

R「大丈夫です」

 

 

りんは俺の手に自身の手を重ねると、皆さん、と呼びかける。

 

 

R「円陣、しませんか?」

L「そういえばいままでやってなかったね?よし、やろっか!」

A「緊張なんか吹き飛ばしちゃえ!」

S「なるべく静かにやりましょう。空気を乱さないように」

Yk「そうね。やりましょう」

 

 

5人ですっと円になる。

現実でもやってきたんだなと思わせる、そんな動きだった。

 

 

R「ユイトさん、こちらに」

Yu「混ざっていいのか、俺が」

Yk「今は、6人でRoseliaなのだから」

Yu「...わかった」

 

 

りんとユキナの間に混ぜてもらい、6人で円になる。

 

 

R「(ロゼリア、ファイティーンで、手をあげてください)」

Yu「(了解)」

Yk「みんな、行くわよ。」

 

 

Roselia「ロゼリア、ファイティーン...!」

 

 

言い終わると同時に、ガチャンと大きい音が聞こえる。

ヒースクリフの盾の音だ。

 

 

ヒースクリフ「みんな、準備は良いかな。今回、ボスの攻撃パターンに関して一切情報がない。KoBのメンバーが前衛で攻撃を受け止める。その間にパターンを可能な限り見切り、対処してほしい」

 

 

37人、全員が首を縦に振る。

 

 

ヒースクリフ「では、行こうか...」

 

 

ヒースクリフがボス部屋の扉に手を置く。

 

 

Yu「みんな、生きて帰るぞ」

Yk,S「えぇ、もちろん」

L,A「もちろん!」

R「必ず...無事に」

 

 

...頼もしい返事だ。

 

 

K「お前ら、死ぬなよ」

クライン「へっ、お前こそ」

エギル「今日の戦利品で一儲けするまではくたばる気はないぜ」

 

 

ボス部屋の扉が、重々しい音を響かせながら開く。

プレイヤーたちが次々に剣を抜く。

俺も自身の愛剣を抜き、両手でしっかりと持ちながら、一つ息を吐く。

 

 

ヒースクリフ「戦闘、開始!!」

 

 

全員がボス部屋の中に走り出す。

後ろで扉が閉まった音が聞こえた。

陣形を固めて床を見るが、何も起こらない。

誰かがしびれを切らしておいと言ったその時、耳に異質な音が届いた。

 

 

Yu「上だ!!」

 

 

見えたのは白いムカデのようなボス。

よく見ると白い部分は骨にも見える。

どの脚も鋭く、頭の方に向かうにつれてだんだんと脚と体が太くなっている。

頭頂部は大きく伸び、目は四つ付いている。

そして、腕に相当する部分に、大きな鎌が付いている。

黄色のカーソルの上に、名前が表示される。

 

 

ーー《The Skullreaper(ザ・スカルリーパー)》、骸骨の刈り手。

 

 

ヒースクリフ「固まるな!距離を取れ!!」

 

 

呆気に取られていた俺たちはヒースクリフの声により正気を取り戻し、急いで距離を取る。

しかし3人ほど、飛び退るのが遅れた。

右に左に視線を動かし、上を見たまま固まっている。

 

 

Yu,K「こっちだ!!」

 

 

同時に叫ぶ。

その声でこちらを向いた3人は、こちらに走り出す、が。

そのすぐ後ろで骸骨が着地し、その振動で三人がよろける。

そこに向かって、右の鎌が振られる。

3人はそれにより吹き飛ばされ、その威力でHPが減っていき、そして。

 

 

ーー空中で静止し、砕け散った。

 

 

Yu「たった...一発だぞ...!?」

 

 

レベルが上がれば体力も上がる。

そして少なからず防御力も上がる。

まして装備などもあの3人は固い方だった。

何よりハイレベルプレイヤーなのだ。

それが。

 

 

As「こんなの...無茶苦茶だわ...」

 

 

掠れ声を聞きながら、どうしたらいいか必死に思考を回す。

その間にも、骸骨は新しい獲物を見つけては、鎌を振り回そうとする。

俺の思考が一時的に止まったのは、鎌と何かがぶつかる音がしたからだ。

見ると、ヒースクリフが鎌を抑えている。

しかし、鎌は二本。

反対側の鎌を、一団に振り下ろそうとしているのを見て、無我夢中で駆け出す。

 

 

Yu「ぐぅっ...!」

 

 

重い。とてつもなく重い。

自身の剣が眼下に迫ってくる。

と、その時、割り込む影が二つ。

キリトとアスナだ。

 

 

K「ここが俺たちが抑える!みんなは側面から攻撃を頼む!!」

Yu「っ...!了解っ!」

 

 

鎌の下から離脱し、足を集中的に狙う。

しかしその直後、骸骨が雄叫びを上げる。

骸骨の尻尾が攻撃を始めた。

 

 

Yu「チッ...!」

 

 

鎌をさばいている方を見るが、余裕はなさそうだ。

ダメージディーラーは、俺がやるしかない。

 

 

Yu「やるしか、ないんだ...!我が経験(レベル)の8割を以て、顕現せよ!伝説の聖剣よ!

R「ユイトさん...!」

Yu「30秒、行ってくる...!」

 

 

骸骨の尾をいなしながら、高火力のソードスキルを叩きこむ。

しかし、所詮は片手剣。二刀流ほどの火力はない、が。

《The》の付く敵には2倍火力が乗る。

その恩恵もあってか、さっきまで数ミリずつしか削れなかかったゲージを、1ゲージ丸々削り取ることができた。

その瞬間、骸骨がぐたりとし始める。

その隙を逃さず、叫ぶ。

 

 

Yu「叩けっ!!」

 

 

防戦一方だったプレイヤーが、側面や尻尾にソードスキルをぶつける。

それでもゲージは8割強残っている。

 

 

Yu「ユキナ、チャント頼む」

Yk「わかったわ。~♪」

 

 

バフが付いた時には、骸骨が起き上がろうとしていた。

 

 

Yu「30秒...!死に晒せ骸骨!エクス...カリバッーーー!!!!

 

 

聖剣を以てしても、ゲージは2本と1割。

まだあと1本と9割残っている。

 

 

Yu「まだいけっ...ぐっ...!」

 

 

10秒の硬直。

骸骨は再び起き上がり、ディーラーである俺の元に突っ込んでくる。

 

 

Yu「ぐっ!がっ!」

 

 

バトルヒーリングとチャントのリジェネが効いているおかげか、そこまで痛手にはなっていない。

文字通り肉壁として、仕事しているわけだ。

 

 

Yu「俺がっ...ぐっ...やられてるうちにっ...うっ...叩けっ!!」

 

 

しかし、《騎士王》発動状態とは違い、ダメージは等倍。

このままでは、いつか死ぬ。

そう思ったとき、遠くから叫びが聞こえた。

 

 

K「うおぉぉぉぉ!!」

 

 

横から突っ込んできたのは黒の二刀流剣士。

骸骨をふっとばしながらスキルを叩きこんでいる。

 

 

K「今のうちに回復しとけっ!!はぁぁぁ!!!」

 

 

ポーチに手を突っ込んで、ポーションを取り出して呷りながら走り出す。

 

 

Yu「...聖剣よ、顕現せよ...!...っ...うおぉぉぉぉぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




To be continue.


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25話 世界の終焉

...Roseliaの影うっす。
ホントにこれRoselia主役?
いやまぁ、主役はユイト君なんだけどね?()
はい、グダってもしゃあないんで行きます、どうぞ。


Yu「っはぁ...はぁ...あぁ...」

R「終わり...ました...?」

 

 

ボス戦は一時間に及んだ。

あの後も、俺は何度も聖剣を顕現させては聖剣を振るった。

ボスの体がポリゴン片に変わり、《congratulation!!》という文字が出ても、誰一人として歓声を上げる者はいなかった。

 

 

クライン「何人...やられた...?」

 

 

掠れ声でそう聞かれた。

マップを出して、赤い点を数える。

最初にいた人数から逆算して...

 

 

Yu「14人...死んだ」

 

 

自分で言っておいて、信じられなかった。

この上にあと25層もあるのに。

このペースで死人が出ていたら、100層に登るころには三桁を切ってるんじゃないのか。

 

 

Yu「まぁでも...」

 

 

ボス部屋の真ん中で、ただ一人佇む男を見ながら、そう思う。

紅衣の男、ヒースクリフはHPをぎりぎり5割にまで減らしておきながら、悠然と立っている。

 

 

Yu「タフだなぁ...KoBの団長様は...?」

 

 

おかしい。

キリトとアスナのHPを見る。

アタッカーも兼任していたとはいえ、二人とも5割を切っている。

ヒースクリフはタンクに徹していたが、それでも5割でぎりぎりというのも引っかかる。

 

 

ーー一体、こいつは何者なんだ。

 

 

瞬間、キリトとヒースクリフのデュエルとの出来事を思い出した。

最後の一瞬の盾の速度。

 

 

ーーまさか。

 

 

R「ユイト、さん...?」

 

 

という声が聞こえたが、今は返せるような思考を残してない。

右足で地面を蹴って、ヒースクリフに一気に近づく。

隣の黒コートと一瞬目が合った。

どうやら、キリトと考えることは一緒のようだ。

片手垂直斬り《バーチカル》。

当てたところで殺すリスクはない。

ヒースクリフが俺を見て驚愕の顔を浮かべる。

しかし、さすがの反応速度で盾で俺のバーチカルを防ぐ。

その瞬間に、キリトがヒースクリフの腹にレイジスパイクをぶつける。

 

 

ぶつかる直前に、何かに吹き飛ばされた。

ヒースクリフを見ると、明らかにスキルではない紫色のバリアを周りに出現させ、キリトが穿つはずだった場所には《Immortal Object》というメッセージ。

 

 

Yu「何だ。グリーンゾーンから変わらないのって、そういうことかよ」

As「システム的不死...って、どういうことですか、団長...?」

 

 

システムに保護され、何をしようが絶対に死なない最強のプレイヤー。

 

 

Yu「なんかの雑誌か、動画で見たよ。『他人のやってるゲームを、傍から見るほどつまらないことはない。』って」

K「あんたの正体は、茅場明彦なんだろ」

 

 

ヒースクリフはそれには答えす、俺の方を見てそう言った。

 

 

ヒースクリフ「なぜ気づいたのか、参考までに教えてくれるかな...?」

Yu「ボス戦が終わったときの俺らに向ける顔、どう見たって同じプレイヤーのツラじゃなかった。疲弊しきってるはずなのに、顔色一つ変えないで突っ立ってる。タンクやってたら、体力もそうだし、精神も持ってかれる。それで立っていられるのは、ものすごい精神か、あるいは...()()()()()()()()()()()()()()()()か、どっちかだと思ったから」

 

 

俺が言い切ると、ヒースクリフは一つ頷いた。

 

 

ヒースクリフ「なるほど...確かに私は茅場明彦だ。付け加えるなら、このアインクラッド最上層のボスでもある」

Yu「趣味悪いな、アンタ。最強の味方が最凶のラスボスってか」

ヒースクリフ「いいシナリオだろう?君とキリト君は不確定なところが多かったが...まさかここで見破られてしまうとは」

 

 

そう言って笑うゲームマスター。

 

 

ヒースクリフ「全十種類あるユニークスキルの中で、《二刀流》は魔王に対する勇者の役割を。《騎士王》には勇者が倒れた時のサポートの役割を担ってもらうつもりだった。まぁ、後者はともかく、前者は貴重だよ、キリト君」

「...貴様...貴様ぁぁ!!!」

 

 

ヒースクリフの演説終了とともに、右側から斧を持って殴りかかろうとする男。

しかし、その男は突如地面に伏し、動かなくなった。

 

 

R「あっ...!」

Yu「りん!?...あっ...くっ...」

K「ユイト!?...っ!アスナ!」

 

 

麻痺だ。

しかも、茅場が仕掛けた麻痺。

絶対に解けることはないだろう。

 

 

K「何のつもりだ。ここで全員殺して隠ぺいする気か?」

ヒースクリフ「まさか。そんな理不尽な真似はしないさ。しかし、こうなってしまっては仕方ない。予定を早めて私の最上層の《紅玉宮》で君たちを待つとしよう。だが、その前に...」

 

 

ヒースクリフは右手の剣を床に突き立て、なぜか俺の麻痺を解除すると、言葉を続ける。

 

 

ヒースクリフ「キリト君、それにユイト君。君たちには私の正体を看した報酬(リワード)を与えなければな。私と戦い、勝てばゲームはクリアされ、全プレイヤーがログアウトできる。どうかな?」

 

 

R,As「だめです(だよ)、ユイトさん(キリト君)!」

 

 

後ろで声が聞こえる。

 

 

Yu「悪い、りん。それにRoseliaのみんな。俺は、こいつを、許したくない」

K「ごめんな、ここで逃げるわけには、いかないんだ」

Yu,K「決着をつけよう、茅場」

 

 

K「悪いが、一つだけ頼みがある」

ヒースクリフ「なにかな?」

K「負けるつもりなんてないが、もし俺が死んだら、しばらくでいい。アスナを自殺させないようにしてくれ」

ヒースクリフ「よかろう。彼女の座標をセルムブルグで固定しよう。...君は良いのかな、ユイト君?」

Yu「りんは、俺が死んだぐらいで動じないさ。負けるつもりも毛頭ない。...でも、心配だな。言いたくはないが、Roseliaのこと、よろしく頼む」

ヒースクリフ「いいだろう。フローリアで座標固定しておこう」

 

 

ヒースクリフは頷き、左手でウィンドウを操作する。

俺とキリト、ヒースクリフのHPが同じになった。

そしてヒースクリフの紫のバリアに【changed into mortal object】と表示され、バリアが消える。

この瞬間、ヒースクリフは俺たちと同じ存在になった。

 

 

Yu「2対1だけど、勝てるか?」

K「勝てるか、じゃない。勝つんだ」

Yu「...了解」

 

 

ヒースクリフは突き立てた剣を抜くとこちらを冷たく見据えた。

俺もキリトも、剣を構えなおす。

茅場の言葉を借りて少しもじるなら、『これは決闘であってもデュエルではない』というところか。

一つ息を吐き、スイッチを入れなおす。

これはクエストじゃない。

ましてやデュエルでもない。

命のやり取りだ。

 

 

K,Yu「殺すっ...!」

 

 

俺とキリトは同時に飛び出した。

キリトが右、俺が左から攻撃を仕掛けるが、剣と盾で受け止められる。

相手はこのゲームの創生者、故にソードスキルは使えない。

だから、己の力だけで戦うしかない。

 

 

K「うぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

キリトが叫ぶ。

その二振りの剣に光が宿る。

今までの攻撃より格段にスピードが上がる。

しかし、その攻撃はシステムに乗せられただけのもの。

そんなものをゲームマスターとの対決中に使ってしまえば...

 

 

茅場はキリトの攻撃をすべて捌いている。

動き回る二人を追うのは至難の業だ。

ここで茅場の後ろから攻撃できればどれだけ楽か。

不意に、ぱきんっという音が響く。

キリトの水色の剣が、砕けた音だった。

 

 

ヒースクリフ「さらばだ、キリト君」

 

 

ヒースクリフは剣に赤い光を宿し、振り下ろそうとしていた。

 

 

Yu「さ...せるかぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

叫び、レイジスパイクで強引に間に入り込むと、ヒースクリフの剣を弾く。

そのまま突進技を出そうとしたところで、腹に衝撃が走った。

 

 

Yu「っ...?」

 

 

 

 

 

 

 

見ると、十字の盾が、俺の腹を貫いていた。

 

 

ヒースクリフ「寂しい退場だ、ユイト君」

 

 

無感動にそう言うと、盾を振って俺を投げ飛ばした。

壁に背中を叩きつけられて、うつ伏せに倒れこむ。

左上のHPゲージを見る前に、目の前に【You are dead】の文字が赤く表示される。

 

 

Yu「(俺は、死ぬのか?ゲームで強いだけで、ボスの正体を見破って、持論を垂れてイキっただけで、死ぬのか?)」

 

 

体の感覚が薄れていく。

文字通り体も薄くなっていく。

 

 

Yu「(まだ、死ねないのに。やりたいこと、いっぱいあったのに。)」

 

 

しかし、その願いはもう叶わない。

 

 

K「ユイトっ!」

Yu「(...最後まで、俺の身を、案じてくれる。優しい、奴だ。)」

R「ユイトさんっ...!」

Yu「(人が、好きじゃ...なかった...そんな俺が、唯一、愛せた人。幸せに...生きて...)」

 

 

もう、終わりだ。

HPはない。

体の感覚も残ってない。

主人公なら発動するお得意の主人公補正だって、この世界には存在しない。

だから、せめて。

 

 

Yu「キ、リ、ト...これ...使って...」

 

 

ありったけの力で、キリトにカリバーンを投げ飛ばす。

最後は、俺とキリトの力で。

なんていう、そんなことが言いたかった。

けど。

もう。

無理だ。

 

 

Yu「(さよなら、皆。)あ、り...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、アインクラッドから消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒い剣と金色の剣を持ったプレイヤーは、薄れゆく意識の中、金色の剣を持った手を、軽く上に掲げる。

 

 

K「勝ったぜ、ユイト...!」

 

 

 

ゲームはクリアされました。

ゲームはクリアされました。

ゲームはーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





















































「...助けて、ユイト君...」


鳥籠に入った黒髪の妖精は、今日もそう呟く。
届きもしない声を、何度も。


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ALfheim Online:Fairy dance
26話 帰還、そして手がかり


ALO編、開幕。
(とは言ってるがALOにはダイブすらしない)
初回からスピード感がえぐいですが、それは二次創作ゆえのスピード感ってことで
楽しんでってくーさい


目を開ける。

視界が徐々に開いていく。

体が思うように動かない。

ここはどこなのだろう。

そう思い、腕を上げようとするが、うまく上がらない。

やっとの思いで上げた右腕は、細々としていた。

人差し指と中指をそろえて下に軽く下ろす、が。

いつもは軽快な音と共に出るはずのウィンドウが出てこない。

何度やっても同じ。

左でも試したが、同じ。

つまり、ここはSAOではない。

となれば、ここは一体どこなのだろう。

とりあえず軽く息を吸おうとして、喉に痛みが走る。

痛みで咳き込んでから、口を開けた時に何かが顎に引っかかる感覚。

手探りで顎に当たっていた何かのロックを外す。

ロック部分の紐から手探りで頭に着けていたものの輪郭をなぞる。

なぞってみるに、ヘルメットかヘッドギアの一種らしい。

どうにかして、それを外す。

青みがかった視界が戻る。

 

 

「...?」

 

 

濃い青のヘッドギア。

それを、俺はよく知っている。

ナーヴギア。

仮想世界に行くための、インターフェース。

今、それが俺の手の中にある。

と、言うことは。

 

 

「(ここは、現実なのか...?)」

 

 

きっと、ではなく、そうなのだろう。

ここは現実だ。

 

 

「かっ...えって...き...た...?」

 

 

帰ってきたのだ。

現実に。

でも、なぜ?

俺はヒースクリフによってHPをゼロにされ、死んだはずだ。

ヒースクリフ、いや茅場は、『この世界でHPを0にしたプレイヤーは死ぬ』と言っていた。

そして、『この世界で死んだプレイヤーは、現実でも死ぬ』と。

だとするならば、俺はどうして生きているんだ。

いや、きっと。

キリトが、やってくれたんだ。

俺の脳が焼かれる前に、やってくれたんだ。

 

 

「...G...J」

 

 

意識が落ちる。

ドアの向こうから慌ただしい音が聞こえる。

でも、そんなことはどうでもいい。

けど、一つだけ。

 

 

「...り......ん」

 

 

叶うなら、もう一度。

あいたい。

かのじょに。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「...あ...ゆめ...か」

 

 

どうやら、退院したばっかりのころの夢を見ていたようだ。

 

 

「...Roselia...りん...」

 

 

もう一度、会いたい。

赤の他人になってしまったとしても。

もう一度。

 

 

「...はぁ...病院、行くか...」

 

 

俺が愛した女性が、そこで眠っている。

まだ、戻ってきて来てない。

そう言ったのは、とあるお偉いさんだった。

詳細は省くが、重要なことが一つ。

彼女だけじゃない。

300人のプレイヤーが、まだ帰ってきてない。

 

 

簡単に着替えて、外に出る。

退院したころよりは肉はついたものの、まだ貧弱なこの体が、弱々しく見えた。

その体に嫌悪感を抱きながら、病院に向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おはよう、りん」

 

 

病衣を纏うその姿は、妖精のようにも見えた。

頭に、濃い青のヘッドギアさえついていなければ。

そのヘッドギアは、今もなお電源は消えず、彼女の魂をどこかの仮想世界へと閉じ込めているのだろう。

SAOがクリアされたのなら、ナーヴギアを外しても、何の障害も起こらないはずだ。

でも、その選択をできるほど、俺は偉くない。

俺は。

 

 

「ただの...イキリゲーマー、だからなぁ...」

 

 

かりそめの剣を握り、巡礼の旅すらせず聖剣を乱暴に振るその姿は、調子に乗ってると言う他無い滑稽でシュールな光景だろう。

そんな姿を、ゲーム内とはいえ結婚を受けてくれた彼女には、返しきれない恩がある。

それを、返したいのに。

 

 

「長居しちまったか...りん...また、来るよ」

 

 

「まってるよ」とも「もうだいじょうぶ」とも聞こえない病室を、俺は後にした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『助けて...ユイトくん...』

 

 

「っ...りん...?」

 

 

また、夢か。

何度目だろう。

ずっと、こんな夢ばかり見る。

彼女に必要とされたくて見る夢なんだとしたら、俺はとんだ自信家だ。

俺はただの高校生、りんを縛り付けている相手はゲームのサーバー。

救う手段を何一つも持ってない俺が、救えるはずがないんだ。

 

 

ピコンと、親のおさがりのパソコンが音を出す。

ああそっか、出かける前につけっぱだったっけ、消しとかないとなぁとか考えながら、通知欄を開く。

 

 

「...エギル、さん...?」

 

 

差出人にはエギルと書かれ、件名に『Look at this』とだけ書かれた、本文がないメールが届いていた。

 

 

「これを見ろ...添付ファイルか」

 

 

添付ファイルを開く、拡張子を見る限り、画像らしいが...

 

 

「っ!?」

 

 

そこに移っていたのは黒髪に翅を生やした妖精の画像。

拡大したらしく、画質が荒い。

しかし、この姿に見覚えがある。

すぐにそのメールに返信をする。

すると、帰ってきたのはメールではなく電話のコール音だった。

 

 

「もしもし、エギルさん!?あの写真は一体...」

『ユイトか。少し長いから、店まで来れるか?』

「ダイシー・カフェ、でしたよね。行きます」

 

 

昼頃とはいえ1月、絶対に寒い、というか寒かった。

 

 

「さっきまで着てたのでいいか」

 

 

というか、現在進行形で着ている。

通学に使っていた自転車を2年ぶりに引っ張り出して、マップを調べながら目的地に向かった。

 

 

 




初回はこんなもん。
ALOにダイブするのは3話あたりかな
次回もお楽しみに


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27話 再会、黒の剣士

ALO編2話。

彼と再会します。
まぁ、そこまで感動的じゃないけど。


自転車を漕ぐこと約10分。

俺はとある店の前に来ていた。

店の名前はDicey Cafe。

 

...実は入ったことがない。

 

ドアを開けると、カランと言う音と共に、カウンターの奥から声が聞こえる。

 

 

E「おう、いらっしゃい」

Yu「お邪魔します、エギルさん」

 

 

そこまで広くない店に、テーブルが少しと、傘置き用の樽があるだけ。

それだけなだけに、固定客も多いんだろう。

2年前から営業していたと聞いたから、きっと誰かしらの助力あってこそなんだろう。

 

 

E「なんか飲むか?」

Yu「...未成年でも飲める奴で」

 

 

少しして出てきたのは黄金色の液体。

ジンジャーエールという奴だろう。

飲むとピリッと辛い。

どうやら市販のやつより辛いらしい。

 

 

Yu「...で、あの写真は...」

E「あぁ、それなんだけどな、もうちょっと待ってくれるか。もう一人、呼んでるんだ」

Yu「もう、一人?」

 

 

と言い切ると同時に、カランと音が鳴る。

 

 

黒の髪、黒の目、黒い服を着て入ってきたその男は、俺の目の前にいるマスターに、

 

 

K「相変わらず不景気な店だな。よく2年も潰れずに残ってもんだ」

 

 

と言った。

それに対してマスターも、

 

 

E「うるせぇ。これでも夜は繁盛してんだ」

 

 

と返す。

このやり取りだけでこの二人の仲の良さが伝わる。

と、いうことは。

 

 

K「...もう一人いると思ったら、お前か」

Yu「久しぶりに会った相棒に、「お前か」はねえだろ、キリト」

 

 

いつだかの浮遊城で、1層からほぼずっと一緒に旅をしてきた黒いやつ。

それがいま、現実にいる。

 

 


 

 

K「...で、ユイトもいるってことは、あの写真、見たんだな」

Yu「あぁ。あれは間違いなく...」

 

 

K,Yu「アスナ/りん、だ」

「「...え?」」

 

 

無理もない。

どう見たってりんに見えた写真が、こいつにはアスナに見えている。

幻覚見すぎじゃないか?

と思ったら、カウンターの向こう側から、写真が二枚出てきた。

 

 

E「キリトにはこれを、ユイトにはこれを送った。」

 

 

出された二枚の写真の片方は、俺が送られてきたものだったが、キリトの方に提示されていたのは、確かにアスナに似た人だった。

 

 

Yu「アスナ、だな」

K「りんりんさん、だな」

 

 

お互いの写真を見ながら、お互いが口走ったことを理解する。

 

 

K「で、これはどういうことなんだ」

 

 

キリトがエギルさんに問う。

返答として出てきたのは、一本のゲームソフトだった。

最初に目に入ったのは、タイトルではなく見慣れないハードロゴだった。

 

 

 

Yu「《AmuSphere》...アミュ、スフィア...?新しいゲームハード...?」

E「俺たちが向こうに行ってる間に開発された、ナーヴギアの後継機だそうだ」

K「後継機、ねぇ...」

 

 

ロゴから目を離し、タイトルを見る。

《ALfheim Online》と、パッケージの大きさにしては控えめに書かれていた。

 

 

Yu「アルフ...いや、アルヴヘイム、か?」

E「その通り、妖精の国って意味の、アルヴヘイム・オンラインってゲームだ」

K「妖精...ほのぼの系か?」

E「いや、そうでもないらしい。えらいハードだ」

 

 

妖精にいい思い出はないが、ハードと言うのも、まあ納得はする。

 

 

E「どスキル制。PK推奨。プレイヤースキル重視」

K「ど...」

Yu「PK...推奨...」

E「いわゆる《レベル》は存在しないらしいな。スキルは反復練習で上昇。あんまりHPとかは増えないらしい。魔法あり、剣技(ソードスキル)なしのSAOってとこだ。グラフィックとかもSAOに迫るものらしいぜ」

K「へぇ...そりゃすごいな」

Yu「(魔法あり、剣技なしのSAO...どこかで...)つか...あんなことがあってまだVRMMOやろうなんてやつ、いるんだな」

 

 

SAOに迫るものがあるグラフィック。

裏を返せば、それはSAOからの帰還者しか知りえない情報。

腐ってもゲーマーしかいないんだなと、改めて感じた。

 

 

Yu「PK推奨って、何ですか?」

E「プレイヤーはキャラメイクで種族が選べるんだが、異種族間だとPKがありらしい」

Yu「そんなゲーム、人気ないんじゃ...」

E「それがそうでもないらしい。理由は、《飛べるから》だそうだ」

K,Yu「飛べる?」

E「妖精だから、羽がある。フライト・エンジンとやらで、慣れるとコントローラーなしで行けるそうだ。ただ、制御は相当難しいらしいぜ」

 

 

とりあえず、このゲームについては大体わかった。

妖精になって、飛び回れるゲーム。

 

 

K「本題に戻るが、この写真は何だ」

 

 

自分の目の前にある写真は、りんによく似たプレイヤーが印刷されている。

それはキリトにあるのも同じ。

印刷されているのが、りんかアスナかの違いだ。

 

 

E「どう思う」

Yu「似てますよね、どう見ても」

E「やっぱりそう思うか。ゲーム内のスクリーンショットだから、解像度が足りなくてな」

K「早く教えてくれ。ここはどこなんだ」

Yu「このゲームの、中」

 

 

考えるよりも早く、口から漏れた。

じゃなかったとしたら、わざわざやってないゲームの説明なんてするはずがない。

 

 

E「ユイト、ご名答だ」

 

 

エギルさんそう言いながら、パッケージをひっくり返す。

裏側にはいかにもな説明とマップ。

そこの真ん中にある樹を指さして、説明を始めた。

 

 

E「プレイヤーは、この世界樹の上にある城を目指すんだ」

K「目指すって、飛んでいけばいいじゃないか」

E「滞空時間てのがあってな、その時間ないじゃこの樹の一番下の枝にすら届かない。でもどこにでも馬鹿なことを考えるやつはいるもんで、体格順に肩車をして、多段ロケット式で木の枝を目指した」

Yu「へぇ...それで、その結果は?」

E「結果としちゃ、かなり枝まで近づいてな。それでも枝には届かなかったみたいだけど、近づいた証拠にと、写真を何枚も撮った。で、その中の一枚に奇妙なもんが写り込んでいた。枝からぶら下がる、鳥籠が二つ」

Yu「鳥籠...嫌な雰囲気だな」

E「で、その写真をぎりぎりまで引き延ばしたのが、その写真達ってわけだ」

K「...?」

Yu「キリト?」

 

 

キリトがパッケージを取り上げて見ている。

運営元は大手のはずだ。

なら、そこで疑う余地はない。

とか考えていると、キリトの雰囲気が変わった。

 

 

K「エギル。このソフト、もらってってもいいか?」

Yu「...え?」

E「構わんが、行くつもりなのか」

K「この目で確かめる」

Yu「ハード、どうすんの」

E「ナーヴギアで動くぞ。...ま、もう一度あれを被る勇気があるならな。ユイトもいるか?」

Yu「あるなら、欲しいですけど...って、あるんすね」

 

 

エギルさんは笑いながら、カウンターの下から2本目のソフトを取り出す。

それを渋々受け取りながら、ジンジャーエール分のお金を出す。

 

 

Yu「ありがとうございました、エギルさん」

K「ごちそうさん、またなんかあったら情報頼む」

E「情報代はツケといてやる。必ず救い出せよ」

Yu「わかってます」

K「あぁ、いつかここでオフをやろう」

 

 

りんがいるはずの、ALOと言うゲーム。

必ず、救い出す。

そして、もう一度、彼女に会うんだ。

 

 

 

 

 

 




後書き
りんりんのこと大好きすぎるでしょ
依存してねえか()


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28話 Dive to ALfheim Online

ALO3話。
ついにダイブします。


家に帰り、エギルさんからもらったパッケージを開ける。

中身はSAOと同じ感じのメモリーカード。

ベッド横に置いてあるナーヴギアを手に取ってから、しばし迷う。

本当に、これをもう一度被っても問題はないのか。

また、ログアウトができない死のゲームになるのではないか。

いや、それはない。

このゲームのユーザーのほとんどはアミュスフィアというセキュリティ強化がされたフルダイブ機器によるダイブをしている。

故に、そんな心配は必要ない。

意を決して、ナーヴギアにメモリーカードを入れ、ナーヴギアを被る。

バイザーを下ろすと、視界の端っこに時刻が見える。

そのまま、目を瞑り。

もう一度、あの世界で。

 

 

Yu「リンク・スタート!!」

 

 

『ようこそ、アルヴヘイム・オンラインへ!まずはキャラクターネームを決めてください』

 

 

ログイン画面を手慣れた操作で通過して、合成音声の指示に従い、名前を「Yuito」と入力する。

ユイトなんてそこら中にいっぱいいるだろうし、俺自身、そこまで俺が人気者だとは思ってない。

 

 

『次に、あなたのアバターの種族を決めてください』

 

 

Yu「サラマンダー...シルフ...有名どこだな...?プーカ...レプラコーン...?知らないのもあるけど...」

 

 

俺はウンディーネを選択した。

なんとなく、青い初期衣装が気に入ったから。

まぁ、この際プーカとやらでもよかっただろう。

どうせ、真面目に攻略する気はないんだ。

 

 

『すべての初期設定が完了しました。これより、選択した種族の領地へ送られます。幸運を祈ります』

 

 

合成音声の声が途切れると、体を浮遊感が包む。

目を開けると、見えるのは三日月状になっている池と、その中央にある城。

どうやら、ここがウンディーネの領地らしい。

 

 

Yu「よっ...と」

 

 

意外にも落下の最後は緩やかになってくれたので、足から着地する。

見渡す限り、まばらに人がいる。

ウンディーネは人気のない種族なのか、それとも大型のクエストが動いているのか。

なんにせよニュービーの俺には関係のないことだ。

とにかく、世界樹とやらに行かなければ。

そのためには、仮想世界の動きの勘を取り戻さなければいけない。

おぼつかない足取りで領地外に出て、装備を確認する。

回復主体とはいえ、武器に剣はさすがにあるよねとか考えつつ、ウィンドウを開く。

 

 

Yu「...?俺、このゲーム前にやってたか?」

 

 

そう言わざるを得ないステータスが、眼下に広がっていた。

 

 

片手剣《1000》、索敵《520》、追跡《290》、料理《780》、隠蔽《920》、暗視《500》、《驕ク螳壹?鬨主」ォ》、《鬨主」ォ邇》

 

 

二個ほど文字化けはしているが、初心者とは思えないスキル熟練度だ。

それにステータスも。

STR値が1万を超えて、HPも1万5千に入っている。

どう見たって異常だ。

ストレージを見ると、これまた文字化けの羅列。

 

 

Yu「一体、誰の...」

 

 

そう言いかけてから、はっとする。

片手剣マスター、料理が780。

見覚えがある。

ということは、この文字化けは。

だとすれば、誰の、ではない。

 

 

Yu「ははっ...()()データかよ、これ」

 

 

間違いなく、SAOの時のデータがまんま引き継いである。

しかし、これはどういうことなんだろう。

まあいい。

もとより真っ当にゲームをする気はなかった。

強くてニューゲームが出来るなら、喜んで甘えようじゃないか。

 

 

しかし、このゲーム、やけに見覚えがある。

魔法が使えて、剣技がないSAO...

 

 

Yu「あっ」

 

 

今は無き浮遊城74層にて、圏内フィールドで寝落ちした際、夢に見た、あるいは実際に降り立ったかもしれないあの場所。

俺が知らないRoseliaと、俺の知る限り最強の戦士(バーサーカー)がいたその場所。

そこに近い。

ともすると、その場所かもしれないが。

まあなんにせよ、一刻も早く世界樹とやらにたどり着かなければ。

とりあえず名残惜しみながら文字化けの羅列をデリートし、初期武装だけにする。

 

 

Yu「スモールソード...弱そうだし...軽いし...」

 

 

あの浮遊城でも、1層の売店で売ってたスモールソードはちゃっちかった。

しかしそれは、俺がレベル1だったからそれ相応だったこともあって、今の俺のSTR値はレベル換算で97,8のそれだ。

もはや、こんな剣など、その辺に落ちてる木の枝に近い。

...まあ、この世界に木の枝なんてものは落ちてないけど。

 

 

Yu「とりあえず真ん中付近に歩いてみっかね...飛ぶって言うのもなんかわかんねえし」

 

 

スモールソードを片手に、俺は世界樹に向けて第一歩を踏み出した。

 




打ち切りマンガの終わりみたいになっちゃった
しかしまだまだ続くよ


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29話 魔法とPvP

今日は短め。
千字ちょいっていう。
まあ、どうぞ。


Yu「なんでこうなったんだっけ...!」

 

 

俺は今、重装備のスプリガン二人に追われていた。

 

 

「チッ!こいつ...!」

「ニュービーの癖に...!」

Yu「どこもかしこも...初心者狩り流行ってんのかよ...!」

 

 

ちなみに俺が喧嘩吹っ掛けたとか、そういうのじゃない。

向こうが因縁つけてきただけだ。

俺は全く関与してない。

 

 

Yu「重装備のやつらが、なんでこんなニュービー追っかけまわしてるわけ!?」

「オメェがこっち入ってきたのが悪ぃんだろうが!」

 

 

前言撤回、どうやら俺が地雷だったようです。

その言葉に気を取られて、相手の剣の間合いに入ってしまう。

 

 

Yu「だったら「ここはこっちの領地だ帰れ」って言ってくれればいいだろうが!なんでいきなり切りかかってくんだよっ...!」

 

 

いくら俺がSTR値97,8相当だからって、所詮この世界では初心者。

対して向こうはたぶんこのゲームをやって何年か経つであろう古参勢。

鍔迫り合いにもっていくだけでも相当な努力と言えよう。

 

 

「ニュービーには体に教えてやんねえとなぁ!!」

「今後スプリガン見た時に一生頭下げる体にしてやるよぉ!!」

Yu「男の調教たぁ...いい趣味してんね、あんたらっ!!」

 

 

向こうの剣を跳ね上げて、腹に一発。

そのままAGI値にものを言わせてウンディーネ領まで逃げ帰る。

しかし。

 

 

「追いついちまうぜぇ!?」

Yu「(聖剣の代償か...)ちっ!」

 

 

やむなく体の向きを反転させ、スプリガンを見据える。

見たとこ、さっきの腹の部分はアーマーがないようだし、そこを弱点としてみれば、どうにかダメージは入るだろう。

ただ。

 

 

Yu「(この剣じゃなぁ...)」

 

 

そう。めっちゃ軽い。

さっきの腹の一発でも、向こうのHPは1割だって減っちゃいない。

別に彼らを倒す必要性は微塵もないのだが、PvPってことで一つ、予行練習しておこう。

 

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

Yu「のわっ!?...飛んで来やがった...」

 

 

忘れてた。

この世界には羽があって飛べるんだっけか。

しかも、今の彼、左手が開いていた。

ということはコントローラーを出さなくても飛べるということだ。

 

 

Yu「これじゃジリ貧だな...」

「まだまだ行くぜっ!!」

 

 

と言うと、唐突に距離を取った。

 

 

「Ek fleygja þrír geirr muspilli(我、三つの炎槍を放つ)!」

Yu「魔法かよ...!(いやでも、待て)」

 

 

このような対峙は、前にもあった。

魔術師と戦う場面だって、何度も経験した。

なら、出来るはずだ。

 

 

Yu「せやぁっ!!」

 

 

炎槍を切った。

 

 

「え、えぇ...?」

「うわ、マジ...?」

 

 

魔法を弾いたことに度肝を抜かれたのか、スプリガンはそれ以上何もして来ず、元居た場所に帰って行った。

 

 

Yu「役に立ったな...でも、詠唱が違ったな。エック...何とか。いったん落ちて調べるか」

 

 

一旦領地に戻り、ログアウトして、魔法の詠唱について調べることにした。

 

 

 

 

 

 




まーじ短い。
まあこんな日があってもいいでしょう。


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30話 合流、影と風と水妖精

結局合流させちゃったよ。
一人で行かせる予定だったんだけどね


ーー数日後、7時半ごろ。

 

 

何度か死にかけながら、高山だの湿地だの砂漠だのの地帯を、随意飛行とやらで飛び回り(というか飛んでたらこっちに来てた)、そろそろポーションだけじゃなくて魔法での回復も欲しいなぁ、ついでに剣も欲しいなとか考えて、ちょうど飛行時間の限界が来て、これまたちょうど見えた中立の村で見るからにでかくて重そうな剣を買って、これまたお腹がすいたなあとか考え、宿屋に入り、いったんログアウト。

 

 

部屋に持ち込んだ夜食用のパンをつまみながら、ALOのファンサイトなるもので、魔法のスペルの確認をする。

 

 

唯斗「þú fylla heill austr(汝は満たされる、癒しの水)...回復魔法か」

 

 

ウンディーネである種族柄、回復魔法は覚えておくべきだろうと、すごい親切に回復魔法のスペルが書いてあるサイトを見ながら発音の練習をしていた。

 

 

唯斗「þú fylla heilaqr austr brott sudr bani(汝は満たされる、聖なる水。冷たい死を遠ざける)...なーんか英語の暗記だなぁ...」

 

 

とりあえず攻撃魔法は後々覚えることとしよう。

今は回復だけでいい。

そう思ってもう一回ギアを被ろうとした際、ふと思った。

 

 

唯斗「キリトも、いるんだよな」

 

 

そう思って、電話をかけてみる。

 

 

和人『ユイトか?』

唯斗「キリト、今平気か?」

和人「あぁ、でもあんま長電話はできないぞ。」

 

 

と、いうわりにはのんびりした口調。

 

 

唯斗「そんな長話をするつもりはないさ。...キリトも、やってるんだよな、ALO」

和人「あぁ。丁寧な子が道案内してくれるって言っててさ。鉱山洞窟に入る前にローテアウト中」

 

 

子ってことは女の子か、とか考えそうになった頭を、無理矢理今さっき自分が落ちた場所のことを考えることにシフトさせる。

 

 

唯斗「鉱山洞窟...近いな」

和人「ユイト、今どこにいるんだ?」

唯斗「シルフ領の近くにある中立村でアウト中」

 

 

俺がそう言うと、キリトはお。と声を漏らす。

 

 

和人「じゃあ、ガイドの子にちょっと待っておくように言っておくか」

唯斗「いいのかよ、待たせて」

和人「まあ、いいだろ。世界樹の上に行くことをグランド・クエストっていうらしいけど、それには異種族混合で挑むのが理想とか言われてるし」

唯斗「へぇ...まあいいか。詳しいことは中で話そうぜ」

和人「了解。すぐ来いよ」

唯斗「任せろ、2分で行ってやらあ」

 

 

そう言って電話を切る。

 

 

唯斗「さて、と。キリトにああ言った手前、遅刻はできねえよな。よし」

 

 

唯斗「リンク・スタート」

 

 


宿屋にて起きた俺は、時刻を見ながら、翅の光度を確認する。

 

 

Yu「よし...翅もオッケーかな...」

 

 

全回復には及ばないが、それでもシルフ領の上を飛び越して、鉱山洞窟とやらに行けるぐらいの回復はしたはずだ。

 

 

Yu「全速力で...!」

 

 

村から飛び出して、あらん限りの力で翅を羽ばたかせる。

 

 

Yu「お、あれか...?」

 

 

シルフ領を飛び越して一分後、明らかに高すぎる山の下に、緑と黒のオブジェクト。

プレイヤーだ。

 

 

Yu「ふっ...!」

 

 

そこにめがけて急降下、そのままランディングして安全に着地。

翅の光度はちょうど失われた。

 

 

K「お、来たな」

Yu「約束通り、二分で来たぜ」

K「惜しいな、三分だ」

Le「ね、ねぇ。この人が、キリト君が言ってた?」

 

 

あの頃に戻った感じで軽口をたたき合うと、隣のシルフが俺とキリトの顔を交互に見ている。

 

 

K「あぁ、紹介するよ。ユイト、昔から同じゲームやってる友達だ。こっちがリーファ。俺のガイドをしてくれるって言ってくれた子だ」

Yu「よろしく、リーファさん」

Le「うん。よろしく、ユイト君」

 

 

とりあえず初対面同士で握手を交わす。

 

 

K「ユイトは...何だ、それ」

Yu「ウンディーネ、だったかな。回復主体だけど、そこまで使わないかも」

Le「男の人でウンディーネって、珍しいね」

Yu「そうか?そこそこいたぞ」

 

 

やっぱ男はアタッカーがいいのかなぁなんて考えながら、キリトを見る。

あの頃とあまり変わらない背丈に、あのころとは違う髪形。

 

 

Yu「懐かしいなぁ...」

Le「なにが?」

Yu「あぁいや、なんでも...な...」

K「...なんかいたよな」

Le「え?誰もいないよ?」

 

 

違和感を感じて振り返ったが、そこには誰もいなかった。

しかしこの世界では魔法がある。

対象にプレイヤーを追跡する魔法とやらも存在するだろう。

 

 

Yu「魔法の類かもな。追跡系の」

K「調べたのか?」

Yu「いやただの勘」

Le「実際にトレーサーっていう、追跡魔法は存在するよ。でも、こんなフィールドじゃ見つけにくいね」

K「ま、気のせいかもしれないしな。先を急ごう」

 

 

そう言って地面を蹴る。

山の中腹あたりに開いている穴に入る。

 

 

Yu「随分と不気味だけど...ここ、名前あるの?」

Le「ルグルー回廊って言うのよ、確か。ルグルーって言うのが、鉱山都市の名前」

K「へぇ...そういや昔のファンタジー映画に、こんな展開が...」

Le「あいにく、ここに悪魔型モンスターは出ないわよ。オーク型は出るけど」

Yu「じゃあ、オークはキリトに任せるわ」

K「いやフォワードは交代だろユイト!」

Yu「悪いな、見ての通り俺は魔法主体なんでな。前衛は任せた。暗視もかけといてやるから」

 

 

さっき覚えた暗視魔法をすらっと唱えると、視界が明るくなる。

 

 

Le「うわぁ、ウンディーネって暗視もかけられるんだ...」

Yu「主体は魔法だから行けるかと思ったら、いけたな。さ、行こうぜ」

 

 

 

 

 

 




すごい打ち切りみたいな終わり方。
まだまだ続くよ!


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31話 魔法は覚えるのは一苦労

アール・デナ・レイで始まる魔法ってなんなんだろうね


K「うえーと...アール・デナ・レ、レイ...?」

Le「ダメダメ。そんなにつっかえたらちゃんと発動できないわよ?スペル全体を暗記するんじゃなくて、それぞれの《力の言葉》の意味を覚えて、魔法の効果と関連付けるようにして覚えるの」

K「まさかゲームの中で英単語の暗記みたいなマネをすることになるとは...」

 

 

キリトが苦言を呈しながら、リーファがそれを指導しながら、そして俺はマニュアルを見て高位の攻撃魔法とか蘇生魔法とかを覚えている。

現在地はルグルー回廊と呼ばれる鉱山都市山脈の洞窟の中。

 

 

K「うぇぇ...俺もうピュアファイターでいいよ...」

Le「泣き言言わない!ほらもう一回」

Yu「なんか勉強しろって叱る親みたいだな」

Le「だってキリト君ったら、全く覚えようとしないのよ!?ダメだと思わない?」

Yu「いや別に俺もピュアファイターのつもりだったんだけどな...」

 

 

なんせこのゲームの前にやってたのがSAOとかいう魔法なしでプレイヤースキルがん振りRPGだったわけだし、キリトの泣き言もわかる分にはわかる。

 

 

Le「え、じゃあさっきの暗視スペルは?」

Yu「マニュアル見てそれで覚えた」

K「お前適応早くないか...?」

 

 

マニュアルを引き続き見ながら蘇生スペルの暗記をする。

その暗記の頭を止めたのは、リーファのメッセージが入ったという声だった。

 

 

Le「なんだこりゃ」

K「どうした?」

 

 

キリトが事情を聴こうとした時、キリトの胸ポケットから小妖精が顔を出した。

 

 

「パパ、接近する反応があります。プレイヤー...12人です」

Yu「十二...?」

 

 

古参のリーファの顔を見るに、PKである可能性が高い。

 

 

Le「ちょっとヤな予感がする。隠れてやり過ごそう」

K「隠れるったって...どこに...ユイト?」

Le「わお...もう隠蔽覚えたんだ...」

Yu「(リーファ、ご名答)」

 

 

俺が今使用している魔法は隠蔽魔法。

近くの背景に擬態するカメレオン的な魔法だ。

プレイヤーのエンカウントかトレーシング・サーチャーと呼ばれる魔法で看破されない限りはどうにかなる。

...って、書いてあった。

リーファたちも隠蔽をかけ終わってうまく隠れているようだ。

 

 

Yu「(...なんだ...?)」

 

 

目線の先に何か見える。

 

 

Yu「(赤い、コウモリ...?)...サーチャーか...!」

 

 

隠蔽を解除して高威力の魔法を飛ばしてサーチャーを潰す。

 

 

Yu「キリト!リーファ!逃げるぞ!!」

 

 


 

 

ルグルーの中立都市までもう少し。

洞窟の一本道を走り抜ける。

視界が開けて洞窟が終わる。

遠くに街が見え、目の前が湖が広がる。

 

 

Le「油断して落っこちないでね。湖の中、モンスターいるから」

 

 

そうリーファが言った瞬間に、後ろから何かが飛んでくる。

苦し紛れに打った球か、それとも別の目的か。

後者だと踏んで、攻撃魔法の準備。

着弾する。

起こったのは爆発ではなかった。

 

 

Yu「っ...!」

 

 

準備した魔法を打つ。

が、着弾した場所からせりあがった何かに阻まれた。

 

 

Le「土魔法の障壁だね...攻撃魔法いっぱい打たないと壊せないけど...」

K「その余裕はなさそうだな...」

 

 

障壁を背に向き直る。

赤色の鎧を着たプレイヤー集団がこちらを見据えている。

 

 

K「飛んでは、無理か。湖に飛び込むのは?」

Le「水中保護、出来る?」

Yu「あいにくと覚えてるのはヒールと氷矢と蘇生だけだ。介護はできない」

 

 

キリトだけ逃がすこともできたが、俺は介護魔法を覚えてない。

 

 

Yu「どうしたらいい...!?」

 

 

赤い鎧で固めた、重武装の集団12人を見て、どうしたらいいのかわからなかくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




打ち切り感が否めない
週一に間に合わせていった結果こうなった。
...いつか加筆するかも


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断章 妖精妃ティターニア

...なんか某型月のソシャゲのタイトルみたいにになったけど、気にしない
そしてそれを意識したせいか、アンケがとてつもなくギャルゲ感。
アンケート、気軽にお願いします。


R「...ずっと、変わらない...」

 

 

鳥籠の中で、黒髪の妖精が寂しく呟く。

 

 

「う~ん...ティターニアは二人いてもいいねぇ...」

As「ティターニアなんて名前じゃないわ。それに、ティターニアは二人も存在しないのよ」

「ここに二人いるじゃないか~?黒髪と栗毛のティターニアがねぇ...?」

R「私たちは、ティターニアなんて名前じゃ...ないです...!」

「つれないなぁ?僕は妖精王のオベイロン。君たちは妖精妃ティターニア、それでいいじゃないか?」

 

 

妖精王と名乗る男は、世界樹の上の()()()()()()()()()で妖精妃二人の体に触れる。

妖精妃二人の嫌悪も気にせず、男は彼女たちの顔や体を撫でまわす。

やがて、栗色の髪の妖精が「やめて」と声を出すと、男はわざとらしい顔をしながら手を引っ込めた。

 

 

「まあいいさ。どうせ君たちの方から僕を求めるようなるんだ。それまでの少しの辛抱だと思えば...ん?」

 

 

男は何かを感じ、左手を振ってウィンドウを出す。

そしてそれに向かって「今行く、指示を待て」と言うと、そのウィンドウを閉じた。

 

 

「と、いうわけで少しばかりのお別れになってしまうが、まあいい。次に会うときはもう少し従順であることを願うよ、ティターニアたち」

 

 

そういって、男は鳥籠から出ていった。

 

 

R/As「絶対、あきらめない」

 

 


 

 

数日後、やはり妖精王は妖精妃二人の体に触れて愉しんでいた。

男はどうやら、妖精妃が反抗するのを待っているらしい。

反抗したのを見てから、システム的に束縛するつもりなのだろう。

しかし、いつまでも反抗しようとしてこない二人を見て、妖精王はやれやれといった表情で手を引いた。

 

 

「君たちも強情だねぇ...どうせ仮初の体なんだ。少しは楽しもうって気にならないのかい?」

As「体が仮想かどうかなんて関係ない」

「心が汚れるとでも言いたいのかな?...まあなんにせよ、僕が地位を固めるまでは君たちはここから出られないし、今のうちに楽しみ方を学んだ方が良いと思うよ?」

R「余計な...お世話です...!それに...きっと...!」

「そうその目!それが見たかった!...で、それにってなんだい?」

 

 

黒髪の妖精が反抗的な目で見ると、それを待っていたかのように妖精王は声をあげる。

しかし、その次の言葉が気になり聞き返す。

が、その返答がないのを見て、何かを察したように言葉を続ける。

 

 

「あぁ...もしかして、助けに来ると思ってる?何と言ったかなぁ...英雄キリト君」

 

 

「キリト」というワードに、栗毛の妖精が反応する。

 

 

その反応を見た男は、愉しむように語り始める。

 

 

「彼、たしかキリガヤ君と言ったかな、本名は。この前、会ったよ。君の病室でね!...あぁそれと、僕の仲間がね...そうそう。君の病室でアオヤミ君という子に会ったと言っていてね?」

 

 

「アオヤミ」というワードには何も感じなかったが、キリトの話題と共に出したことから、ユイトのことであると予想した黒髪の妖精は、身を強張らせる。

 

 

「寝てる君の前で、来月彼女と結婚するんだって言ったときの顔ったら...もう傑作だったよ!骨を取られた犬だってあんな顔はしないさ!!...で、君はそんなガキが助けに来ると信じてるわけだ...そっちの君も?賭けてもいいよ?あのガキどもにはもう一度ナーヴギアを被る度胸なんかありゃしないよ!!...まぁ、アオヤミ君とやらは見たことないけれど...ま、英雄キリト君と同じようななりをしているに違いない!!どうせ二人そろって貧弱なゲーマーなんだろうよ!!」

 

 

二人の反応を見て饒舌に語った妖精王は、鳥籠の扉に向かう。

 

 

「その時はカメラを切っていたから動画を持ってこれなかったけど、次の機会があれば試みるよ。では、明後日まで寂しいだろうが、耐えてくれたまえ」

 

 

そういって、妖精王は出ていった。

 

 

しかし、二人の妖精の心は折れるどころか、火が付いたようだった。

 

 

R/As「...ユイトさん/キリト君は...生きてる...っ!!」

 

 

そして、この二人の妖精がこの鳥籠の脱出を実行したのは、また別の話。

 

 



 

 

K「君の腕を信用してないわけじゃないんだけど...リーファ、君にはサポートに回ってほしい。その方が、俺も全力で戦えるし...」

Le「...うん、わかった」

 

 

そういって、リーファは飛び退り、後方に回った。

 

 

K「ユイトは...あ~...外からチクチクやっててくれよ」

Yu「それは俺の剣の腕が信用ならないって、そういう意味か?」

K「違う違う!えーと...なんて言ったらいいかな...なんというか...とにかく、前線にはあんまり出てほしくなくて...」

Yu「(どうしようか...)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読了ありがとうございます。
この回、午前4時に書いてます(バイト6時間終わりが12時、そっから眠気来なくてこんな時間、そして今日もバイト)
ま、そんな私のどうでもいいプライベート事情は置いといて。
ぶっちゃけこの回は先にあるアンケを貼りたいがための章なんすよ()
まぁ、一週間ぐらい貼り付けておくので、気軽に答えてくださいませ。
それでは、また。


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32話 包囲網を突破せよ

いやぁ...う~ん...

う~ん...なんかねぇ...

あの...うん。


K「違う違う!えーと...なんて言ったらいいかな...なんというか...とにかく、前線にはあんまり出てほしくなくて...」

 

 

キリトの心配は最もだが、そんなことを言われて引き下がる俺ではない。

 

 

Yu「前衛は交代なんだろ?俺も出るよ」

K「え?いやあれはオーク型の話じゃ...?」

Yu「相手がモンスターだろうがプレイヤーだろうが関係ねえだろ」

 

 

相手はサラマンダー隊12人。

見るからに重そうなやつが前に、軽そうなやつが後ろにいる。

 

 

K「一緒に叩くぞ」

Yu「OK。合わせるよ」

K「せー...のっ...!!」

 

 

剣を振りかぶり、前にいるサラマンダー6人と鍔迫り合いをする...と、思っていた。

なんと前衛の6人はタワーシールドに身をひそめて、俺たちの攻撃を耐えたのだ。

シールドにぶつかってノックバックを食らった俺たちは吹っ飛ばされる。

そこに立て続けていくつもの光の玉が俺たちの周りを取り囲んで爆発する。

 

 

Yu「っ...!」

K「ぐっ...!」

 

 

何とか耐えた。

が、きっと次はないだろう。

それに、あの完全な防御陣形。

 

 

Yu「(俺たちの剣の威力を知ってのことだろうな...)」

 

 

自分で言うのもあれだが、俺は割と腕っぷしは強い方だ。

そしてそれはキリトも一緒。

つまり、俺たちの剣による攻撃を耐えきってさえすれば、後はやりたい放題できるというわけだ。

 

 

Le「þú fylla heilaqr austr brott sudr bani!」

 

 

後ろからリーファの回復スペルが聞こえ、俺たちの体力がほぼ全快した。

 

 

Yu「サンキューリーファ!せやぁっ!!!」

 

 

今度は単身で突っ込んでみるが、結果は一緒。

 

 

Yu「どうすりゃいい...!?」

 

 

方法はあるにはある。

俺が魔法を打って相殺し合う手が、一番有効な手だ。

しかし、俺のMPが心もとない。

俺はもともとピュアファイターであったため、覚えている魔法が回復寄りで、攻撃魔法の威力が端的に言えばゴミなのだ。

そして、向こうの軽装備のやつはきっとメイジ。

MP極振りのやつらに、剣士ごときのMPが絶対に勝てない。

 

 

 

もう一つの方法に関しては、半ば賭けだ。

魔法を切る。

というか、弾いて別の場所にいなす。

これに関しては俺の目と腕次第だ。

キリトやリーファの方に飛ばしてしまってはダメだし、俺自身もHPがないと割と危険だ。

 

 

Yu「(でも、やるしかねぇ...!)」

 

 

ここを突破できなきゃ、りんには会えない。

それに、プレイヤー同士の戦いなら、こっちの方に分がある。

向こうには数で負けるが、質ならこっちの方が断然上だ。

命がかかってたPKなんて。あいつらには到底想像できまい。

死んでもいいゲームなんて、気楽にやれる。

 

 

K「ちっ...!」

Le「もういいよキリト君!!またスイルベーンから飛んで...!」

 

 

ちょうど爆風から姿を現したキリトに、リーファから声がかかる。

 

 

K「嫌だ」

 

 

リーファの「諦める」という単語に、キリトが反応する。

 

 

K「俺が生きてる間は、パーティメンバーを殺させはしない」

Yu「(まったく、カッコつけちゃって)キリト。下がれ」

K「断る」

 

 

少なくともキリトの目から、ここから引かないという意思は伝わる。

 

 

Yu「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

K「...!」

Yu「下がってリーファの回復を受けてくれ。俺はメイジの方を潰す」

K「...わかった」

 

キリトがリーファのほうまで下がったのを確認して、大剣を構える。

 

 

Yu「行くぞメイジ共!!」

 

 

地を蹴って前進する。

タワーシールドに弾かれ弾かれる。

そしてメイジたちが詠唱を始める。

ここまでは予定調和。

ここからだ。

 

 

ふっとばされた体を剣を突き立てて無理矢理立て、火の玉が落ちてくる場所を観る。

 

 

Yu「(ここだ...!)はぁっ!」

 

 

一つ。

 

 

Yu「やぁっ!」

 

 

二つ。

 

 

Yu「おらぁっ!」

 

 

三つ。

 

 

流石に全てとはいかなかったが、全弾直撃の時よりもHPは大幅に残った。

 

 

「お、おい...あいつ、魔法を...」

「いやまさか、そんなわけ...」

 

 

サラマンダーの方から動揺の声が上がる。

と、後ろの方で詠唱が聞こえる。

少し高めの男の声。

キリトだ。

あの詠唱は、洞窟で教えられながらしていたものだったか...。

そして、詠唱を終えると、キリトは闇に包まれた。

 

 

Yu「うぉ...」

 

 

ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!

 

 

端的に言おう。

キリトがボスになった。

 

正確には、ボスのような見た目をした化け物になった。

化け物はサラマンダー隊に突っ込んでいくと、まず前列のシールド隊を、そして後ろのメイジ隊をちぎっては投げ、とりあげては食ってを繰り返している。

 

 

Yu「うわぁ...グロテスク...」

 

 

化け物になったキリトの虐殺っぷりを見て、思わず呟いた。

見ると、リーファが生き残りのサラマンダーに事情聴取を行おうとしていた。

そのリーファの横に化け物からもとに戻ったキリトが肩を組みに行き、何やらにやけている。

 

 

Le「なんか男って...」

「身も蓋もないですね...」

Yu「...キリトが特別なだけだと思うぞ...」

 


 

事情聴取の結果、どうやらメイジ隊のリーダーの強制召集の下、俺たちを12人で狩る作戦だったらしい。

俺たちを狙った理由が、サラマンダーの上の方の人間による作戦の邪魔になるという理由らしい。

なんとも理不尽だ。

だとしたら、その12人もそこに加えてやればいいじゃないかとか思うのだが、それは上の人間にとっては邪魔にしかならないのだろうか。

そんなことを考えながら、中立都市「ルグルー」に到着した。

 

 

K「そういえばさぁ、サラマンダーズに襲われる前、なんかメッセージ着てなかった?」

Le「ん?あ...忘れてた...あれ、落ちてる」

Yu「落ちて確認してきなよ。俺たちが見張ってるから」

Le「了解。あたしの体に変なことしないでよね」

K/Yu「しないよ」

 

 

 

 

 




ん~...雑だね



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33話 洞窟内を走り抜けて

洞窟チェイスは良いよね。
あの中は走り抜けたい。


リーファがメッセージの相手と連絡を取ると言って、いったんログアウトしてから5分が経った。

俺は、リーファがいなくなった瞬間に見えた武器屋に直行し、今振るっている剣より重い奴を買った。

二刀にする気は毛頭ないし、新しい方を使うのは世界樹に行ってからだ。

で、今は試し切りというか素振り中。

 

Yu「ふっ...!はっ...!」

K「お前も物好きだなぁ。「もっと重い剣が欲しい」って」

Yu「仕方ねえだろ。...あの世界じゃ、もっと重い剣振ってたんだ」

K「こいつ、使うか?」

 

そう言って、キリトは自分の背にある剣を指さす。

 

Yu「あいにくと俺には人の剣を借りるようなことはしないんでな。ま、緊急時には借りるさ」

K「はいよ。...お。帰ってきたみたいだぞ」

 

キリトの声に目線をあげれば、リーファの目が開くところだった。

 

Yu「おかえり」

K「お帰り、リーファ」

 

しかしリーファは、少し目線を逸らして申し訳なさそうな顔をした。

そして。

 

Le「キリト君、ユイト君。ごめんなさい」

 

俺らに向かって頭を下げた。

 

K/Yu「え?」

 

当然リーファに謝られることをされてない俺らは困惑。

 

Le「あたし、急いでいかないといけない用事ができちゃった。説明してる暇もないし、ここにも戻ってこれないかもしれない」

K「そうか。じゃあ、移動しながら訳を聞くよ」

Le「え?で、でも...」

Yu「どっちみちここは飛べないなら、足使うしかないしな?」

Le「...うん、わかった。じゃあ、走りながら説明するね」

 


 

リーファの話を簡単にまとめよう。

リーファの種族である風妖精(シルフ)と、猫妖精(ケットシー)の領主が会談を行う。

その会談の内容は、シルフ・ケットシー間の同盟。

しかし、その会談を炎妖精(サラマンダー)が邪魔しに来るというのだ。

しかもその情報源はシルフにいたサラマンダーのスパイからだという。

 

 

K「質問、いいか?」

Le「どうぞ」

K「サラマンダーにとって、同盟を邪魔するメリットはどこにあるんだ?」

Le「シルフから漏れた情報で領主を討たれたら、ケットシー側はたまったもんじゃないよね。最悪シルフとケットシーで戦争になるかもしれない。シルフ・ケットシー軍になったら、サラマンダーより多くなるし、強くなるだろうから、それは阻止したいんだと思う...」

Yu「戦力の増強の阻止、あわよくば他種族の潰し合い...」

Le「それに、領主を討つって、それだけでボーナスがあるの。まぁ、そんなことはめったに起こらなかったんだけどね」

K「そうなのか」

Le「だから、二人とも。これはシルフの問題だから、これ以上君たちがかかわることはないよ。会談場に行ったら生きて帰って帰れないだろうし...また戻ってくるまで時間がかかるし...ううん、もっと言えば」

 

リーファのスピードが少し落ちた。

 

Le「世界樹の上に行きたいっていうキリト君の目的のためには、サラマンダーに協力した方が良いと思う。スプリガンなら傭兵として雇ってくれると思うし...それにユイト君も、もしキリト君と同じ目的なら...ウンディーネでも、メイジ隊ぐらいには...」

 

そういうリーファの声は、震えていた。

かつての剣の世界、β版のSAOで俺は、パーティをとっかえひっかえしながら攻略に励んできた。

ゲーマーの考えに則り、こっちよりあっちのパーティの方が、なんて理由で。

その際に捨ててしまったパーティメンバーの声に、よく似ていた。

 

K「所詮ゲームだから何でもありだ。殺したきゃ殺すし、奪いたきゃ奪う。そんな風に言うやつは何人も出くわしたよ。昔は、俺もそれは真実だと思ってたよ。でも、仮想世界だからこそ、どんなに愚かしく見えても、守らなきゃいけないものだってある。俺はそれを、大切な人に教わった...」

 

Yu「...俺も同意見だな。追加意見になるが、ロールプレイにおいて、普段の人格と大きくかけ離れた人格は演じれないんだ。仮想だからってやりたいことやってたら、それは現実でもいつかやらかす。俺もキリトも、こんなに優しくしてくれたリーファを無視してまで、世界樹には行けないよ」

 

Le「二人とも...」

 

 

リーファが完全に停止する。

それにつられて、遅れて俺らも止まる。

 

Le「...ありがとう」

 

今まで聞いた中で、一番気持ちのこもった感謝だと思う。

そう思っていると、キリトが頭を搔きながら言った。

 

K「ごめん、偉そうなこと言った。悪い癖なんだ」

Le「ううん、嬉しかった。...じゃあ、洞窟出たところでお別れだね」

K「や、一緒に行くよ、もちろん」

Le「え?」

Yu「ここまで聞いといて、後は頑張ってって言うのは後味悪いしな」

Le「え、え?」

K「...しまった。結構時間使っちゃたな」

 

キリトは胸ポケットの小妖精に声をかけると、リーファの手を掴む。

 

K「ちょっとお手を拝借」

Le「え、あの...!?」

 

瞬間、キリトが消えた。

正確には、今までとは比にならないスピードで走りだした。

 

Yu「はっや!?」

 

旧SAOにあった聖剣による代償で、俊敏性を8割型失くしている俺が追いつけるわけがなかった。

 

Yu「でも、この世界には魔法がある...!」

 

現実の自分じゃ絶対に言えない速度でスペルワードを二文唱え、速度と筋力を上げる。

 

Yu「...行くぞ...っ!」

 

脚に力を籠め、蹴り出す。

体が軽い。

景色が流れる。

 

Yu「...!見えた...!」

 

黒と緑の背中が見えた。

このまま追いつく。

しかし、洞窟の横からポップしたモンスターに視界を遮られる。

 

Yu「オークなんか...知るかっ!」

 

片手間に詠唱した氷槍を放つ。

まともに食らえばノックバック。

脚などに当たればそこが凍るという便利な代物だ。

幸いマナにはまだ余裕がある。

向かってくるオークには氷槍を当て、当てきれなかった分は叩き割ろう。

 


 

K「おっ、出口かな」

 

キリトのその声が聞こえるのと、俺の足元から地面が消えるのは同時だった。

慌てて羽を広げ、滑空体制を取る。

 

顔を上げた先には大きくそびえる巨大な樹。

あれが世界樹というものなんだろう。

 

距離の関係上か、件の鳥籠は見えない。

 

Yu「あの、向こうに...」

 

りんは、いる。

だから。

必ずたどり着く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、熱出してぶっ倒れて更新遅れたユイトです。
とりあえず某感染症じゃないことは報告しておきます。

...さて、34話はいつ仕上がるのやら。(この回も一日で書き上げて出してます)

新アンケート置いてます、好きな方に投票ください。


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34話 会談強襲

勢いあまってユージーン戦決着まで書きあげてしまった。

まぁ、ゆっくりご観覧ください。


怒涛の洞窟チェイスを超えて、現在は《アルン高原》と呼ばれるフィールドに出た。

 

K「リーファ、会談ていうのはどのへんで行われるんだ?」

Le「ええと...今出てきたところが円になってる山脈で、場所が《蝶の谷》...だから、あっちにしばらく飛んで行った方だと思う」

K「了解。時間は?」

Le「二十分」

Yu「結構ぎりぎりだな...サラマンダーのアクセス方法は《竜の谷》から...てことはあっちからくるんだろうなぁ...向こうの方角は警戒しておくよ」

K/Le「了解」

 

それにしても、ここはフィールドだというのにモンスターを一匹も見かけない。

もしかして、ここでモンスターは湧かないのだろうか?

 

K「それにしても、モンスターを見かけないな?」

 

...どうやら、元相棒だけあって思考は大体一緒らしい。

 

Le「あ、ここはモンスターは出ないようになってるの。だから会談をこっちでするんじゃないかな?」

K「なるほど、大事な会談の時にモンスターが出ちゃ興ざめだしな...でも、この場合はありがたくないな」

Yu「と言うと?」

K「さっきみたいにモンスターを引っ張って、サラマンダー隊にぶつけてやろうと思ってたんだけどな」

Yu「...その軍勢がこっちに牙を向いた時をことを考えてくれよ、全く...」

 

訂正:キリトの考えてることはやっぱり読めない。

 

キリトがうーんと言いながら顎を撫でたその時、キリトの胸ポケットから顔を出した小妖精が声を上げる。

 

「前方に大集団...68人、これがおそらくサラマンダーの強襲部隊です。さらにその向こうに14人、シルフ・ケットシー同盟会談の出席者と予想します。双方が接触するまであと五十秒!」

 

その声が終わるとともに、前に今聞いた大部隊が低空飛行しているのが見えた。

そして、もう少し先には長テーブルとイスの簡単な会談場。

 

Le「...間に合わなかったね」

 

確かに、絶望的な状況だ。

 

リーファは俺たちの前に浮いて、俺たちの手をそっと取る。

 

Le「ありがとう、二人とも。ここまででいいよ。君たちは世界樹に言って...短い間だったけど、楽しかった」

 

涙をにじませながら、そう言った。

 

Yu「...諦めるのは、まだ早いんじゃない?」

Le「...え?」

K「ここで逃げ出すのは、性分じゃないんでね...!」

 

そう言うと、キリトは会談場に向かって鋭く飛び込んでいった。

 

Le「ちょ、ちょっと!何よそれ!!」

Yu「リーファは領主さんたちに避難指示を。サラマンダーは俺たちがどうにかするよ」

 

そう言って、俺も飛び込む。

後ろでリーファがなんか言ってるが、気にしない。

 

俺より先に飛び込んでいるキリトが、ものすごい勢いで地面に着地した。

そして、ゆっくり体を上げて...

 

 

 

K「双方、剣を引けっ!!

 

 

上空の俺でさえビリビリするような声量で、そう言った。

 

 

キリトが一瞬こっちを見たような気がした。

まだ降りるなと、そういうことだろうか。

 

K「指揮官に話がある!」

 

そう言うと、サラマンダーの隊が割れ、一人、大柄な男が出てきた。

そいつはゆっくりと下降し、キリトの前に立った。

 

会話は小さすぎて聞き取れない。

 

Yu「...?」

 

キリトがまたこっちを見た。

なるほど、そういうことか。

 

キリトの横にゆっくりと降りる。

 

K「護衛じゃないが、ウンディーネ側の大使ならいる」

Yu「どーも、サラマンダーのお頭さん」

 

「...ふん。大使二人、護衛も付けず同盟の話か」

K「ああそうだ。この場にはシルフ・ケットシーとの貿易交渉に来ただけだからな。だが、会談が襲われたとなればそうはいかない。四種族で同盟を結び、サラマンダーに対抗することになるだろう」

 

 

サラマンダーの頭はそれを聞いて少し考えると、

 

 

「たった二人、護衛を付けず、大した装備でもないお前たちの言葉を信じるわけにはいかないな」

K「...まぁ、そうだろうな」

 

するとサラマンダーの頭は、背中から剣を抜いた。

 

「どっちでもいい。俺の攻撃を30秒耐え抜いたらお前たちを大使として認めてやろう」

 

K「どっちでも、ねぇ...ユイト、どうする?」

Yu「俺に行かせたら、お前の出番無いよ?」

K「それで済むなら、それでいい」

Yu「了解。...手分けで聞いてただろうけど、俺が出るよ」

 

一歩前に出る。

サラマンダーの頭が浮いたのを見て、俺も同じ高さまで浮き上がる。

 

少し距離を離してホバリングし、剣を構える。

 

少し息を吐いて集中を入れなおす。

 

これまでのPvPとは違う緊張感が、体を駆け巡る。

 

雲が太陽を遮り、再び太陽が顔を出した瞬間。

 

一直線に飛んできた。

 

Yu「...っ!」

 

剣を掲げて受け止める。

...つもりだった。

 

Yu「がっ...!」

 

俺の胸板を斜めに切りつけた剣は、()()()()()()()()()()()

俺の剣より、相手の剣が俺の手前側に存在していた。

ダメージを受け、そのまま吹っ飛ぶ。

後ろの岩で受け身を取り、そのまま一直線に飛び込む。

 

「ほう、よく生きてたな」

Yu「何だよ今の!」

 

言いながら剣を叩きつける。

しかし、全て受け止められ、カウンターの軽い一撃が細々と入り、俺のHPは危険域まで迫っていた。

 

Yu「くそ、当たらねぇ...おい!もう30秒たっただろ!」

 

そう言うと、そいつは笑いながら、

 

「悪いな、やっぱり切りたくなった。首を取るまでに変更だ」

 

と言った。

 

Yu「手合わせ中にルール変えんなよ...っ!」

 

再び打ち合う。

が、俺があいつの首を取るには、どうにかしてあのすり抜け攻撃を避け、振り抜いた隙を突くしかない。

 

しかし、さっきから打ってる氷槍魔法も、空しく砕かれていくだけだ。

 

Yu「っ...!ぐ...!」

 

押される。負ける。

このゲームは死んでも死なない。

また領地かどこかで生き返るのだろう。

けれど、それだけは嫌だ。

戻ってくるのが面倒とかじゃない。

負けて、死ぬ。

その事実が、何よりも嫌なのだ。

だから。

 

Yu「ま、けねえぞ...俺は...っ!!」

 

相手の剣を振り払い、最近覚えた煙幕魔法で目つぶしをする。

 

その隙にアイテムボックスを漁る。

なんでもいい。

奴の隙を作れる、何かがあれば。

 

 

 

 

 

「時間稼ぎのつもりかァ!!」

 

奴が煙幕を振り払う。

しかし、周りに俺はいない。

 

「どこにいる!!」

Yu「こっちだよっ!!」

 

太陽側から突進をする。

光が強すぎると、人間は反射的に光を避けようとするらしいが、奴は俺の方にまっすぐ突っ込んできた。

 

俺の剣と奴の剣はぶつかる瞬間、奴の剣は透過する。

そして、剣をすり抜けたころ、その剣は実体化し、俺の首を切り取るーーー

 

Yu「...やらせ、ねぇよっ!!」

 

俺は()()に装備した剣で相手の剣を弾いた。

 

「!?」

Yu「うおらぁっ!」

 

左手の剣を突き刺し、右の剣を叩きつける。

まともに食らった奴の姿を追いかけて、横から上から、剣の猛襲を浴びせる。

当然向こうも黙ってなく、透過攻撃を繰り出そうとするが、連続での透過ができないのだろう、左手の剣によって全て弾いた。

 

「う...おおぉっ!!」

 

強者の維持と言わんばかりに、奴が雄叫びを上げる。

瞬間、奴の鎧から炎のエフェクトが出て、少しだけノックバックを食らう。

その隙を見て、奴が俺の真上から透過攻撃を仕掛けようとしてくる。

しかし、そんなことは当然わかっている。

 

 

Yu「...遅いっ!!」

 

 

透過が始まる前に左手で弾き、その巨体に右の剣を突き刺す。

右方向に振り抜いてから、その勢いで水平切りを四発、腹に叩き込む。

 

Yu「...終わりだ」

 

奴の姿は、炎となって消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ルート分岐アンケート、ありがとうございました。
とりあえずユイト君が今回やりましたけどね、キリト君だったらつまらなかったと思いますよ、なんせユイトは見てるだけですから()



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35話 デュエル後、平和な時間

今回詰めすぎで5,000字とかになっちゃった。
ま、どうぞ


Yu「勝った...」

 

そう言うと同時に、下から低めの女性ボイスと次いで高い女性ボイスが聞こえてきた。

 

「見事、見事!」

「すごーい!ナイスファイトだヨ!」

 

それを金切りに、拍手と声援や止まなくなった。

 

俺はそれらに手を上げることで答え、続いて奴の炎に蘇生魔法をかける。

人の形を取り戻すと、奴は地面に降りた。

次いで、俺も地面に降りる。

 

Yu「...気分はどうです?お頭さん」

「悪くない。しかし、見事な腕だな。今まで見た中で最強のプレイヤーだ、貴様は」

Yu「サラマンダーの頭に褒めてもらえるなんてな...で、俺らの話、飲んでくれるか?」

 

俺がこいつとやり合ったのはあくまで俺の、というかどうにかしてキリトの話を通して、会談を襲わせないようにするためだ。

 

サラマンダーの頭はなおも目を細めつつ黙りこくっている。

すると、サラマンダーの前衛隊から一人、長槍を携えた奴が出てきた。

 

「ジンさん、ちょっといいか?」

「カゲムネか、なんだ?」

 

...あとで教えてもらったが、カゲムネというのはキリトとリーファが初めて会った場所で、リーファを追っていたサラマンダー隊の隊長だそうだ。

 

「昨日、俺のパーティが全滅したのは知ってると思う」

「ああ」

「その相手、そこにいるスプリガンなんだけど。確かに連れにジンさんと戦ったそいつがいた」

 

Yu「(おうおう。すげえことしてやがんな)」

 

まさか自分の部隊の頭に嘘をつくとは。

 

 

「それに、エスの情報でメイジ隊が追ってたのもその男だ、確か。どうやら撃退されたらしいけど」

 

 

カゲムネというプレイヤーが話し終わると、サラマンダーの頭はカゲムネを見て、軽くうなずいた。

 

「そうか。...そういうことにしておこう」

 

そして次はキリトに向き直って言う。

 

「確かに現状で、スプリガン、ウンディーネとも事を構えるつもりは俺にも領主にもない。この場は引こう。...しかし、お前たちとはいずれもう一度戦うぞ」

Yu「勘弁してほしいけどね」

K「望むところだ」

 

向こうから出された拳に、控えめに拳を当てる。

そのままサラマンダーは、元来た方向に帰って行った。

 

 

Yu「...あぁ~!」

K「なんだうるさいな」

Yu「あいつ強すぎるよ!属性的には俺の方が有利だろうがよ!」

K「いや知らねえよ」

Yu「相棒が辛辣で俺辛い。...というか、こうなったのキリトのせいだよな!?お前が下手に俺をウンディーネ側の大使とか言うから!!」

K「いやぁ、引いてもらうにはそれしかないかなって...サラマンダーにも話が分かる奴がいてよかったじゃないか」

Yu「よくねえよ!危うくこっちは死にかけたんだよ!他人事みたいに言いやがって...」

 

とまぁ、こんな口喧嘩をしちゃいるが、ぶっちゃけ空中戦のデュエルは楽しかった。

 

Le「あんたたち、ほんとムチャクチャだわ」

 

俺らの口喧嘩が止んだのを見て、リーファが声をかけてくる。

 

Yu「こいつはいつもそうだよ」

K「よく言われるよ」

 

乾いた笑いをしていると、リーファの後ろの方から軽い咳払いが聞こえた。

 

「すまんが、状況の説明を頼む...」

 


 

リーファが説明を終えると、シルフ・ケットシーの全員がそろってため息を漏らした。

 

Yu「今のリーファの話を聞いて、ちょっと疑問に思ったことがあるんだけど」

Le「ん?」

Yu「その...シグルドってやつは、なんでスパイなんかやってたんだろうな」

 

そう漏らすと、シルフの領主が入ってきた。

 

「君は、次のアップデートを知っているか?」

Yu「アップデートとスパイに関係が?」

「あぁ。どうやら《転生システム》が実装されるらしい」

 

転生システム。

きっと別の種族に転生できるシステム。

それとスパイ。

 

Yu「なんとなーくわかった。シルフの領主の首を持ってくれば転生させてやるって口か」

「そうだろうな。君は頭が回るな」

Yu「人の闇には多く触れてますから」

 

自虐交じりに返す。

 

K「...プレイヤーの欲を試す陰険なゲームだな、これ」

 

キリトも苦笑をにじませて言う。

 

Yu「デザイナーはヤな性格してんな」

Le/K「ははっ」

 

ひとしきり笑うと、シルフの領主...サクヤさんが隣のケットシーの領主...アリシャ・ルーさんに声をかけた。

 

サクヤ「ルー。確か闇魔法スキルを上げていたな?」

アリシャ「うん。何かに使うの?」

サクヤ「あぁ。シグルドに《月光鏡》を頼む」

アリシャ「いいけど、夜じゃないからあんまり長く持たないヨ?」

サクヤ「構わん、すぐ終わる」

 

そう言うと、アリシャさんは一歩下がって高く澄んだ声でスペルの詠唱を始めた。

詠唱が終わると、周囲が暗くなり、真上から月の光のような、黄色の光が降り注いだ。

その光は、アリシャさんの前に、液体のように溜まっていき、円形の鏡を作った。

そしてその鏡の表面が波打って、別の場所の風景を映し出した。

 

鏡に映ったのは、どこかの一室。

そこにある机に脚を投げ出して座り、腕を頭の後ろに組んで、いかにも偉そうな男。

あれがシグルドというやつなんだろう。

初対面だが、俺は既にそいつのことが嫌いだ。

 

サクヤさんは鏡の前に立つと、一つ呼びかける。

 

サクヤ「シグルド」

 

そう呼ぶと、鏡の向こうのシグルドはまずはっとした顔をして、続いて飛び起きて、サクヤさんと目を合わせて硬直した。

 

「サ...サクヤ...?」

サクヤ「あぁそうだ。残念ながら、まだ生きている」

「な、なぜ...い、いや、会談は...?」

サクヤ「無事に終わりそうだ。条約の調印はこれからだがな。ああそうそう。予期せぬ客があったぞ」

「きゃ、客?」

「ユージーン将軍が、君によろしくと言っていた」

「な...!」

 

スパイがバレて絶句をしているシグルド。

シグルドは目線をサクヤさんから外すと、後ろにいるリーファとキリトを捉えた。

 

「リー...!?」

 

会談の場所にリーファがいるのが不思議だったのだろう。

驚きの声を漏らしてから、端正な顔を歪めながら机をたたいて唸った。

 

「無能なトカゲ共め...で?どうする気だサクヤ?懲罰金か?執政部から追い出すか?だが、軍務を預かる俺がいなければ...」

サクヤ「いや、シルフでいるのが耐えられないのなら、その望みをかなえてやることにした」

 

そう言うと、サクヤさんは手を振って、ウィンドウを出した。

一般プレイヤーと作りが違うから、たぶん領主用のやつなんだろう。

そのうちの一枚のタブを引っ張り、指を滑らせて、向こうのシグルドの前にウィンドウが現れる。

そのウィンドウを見たシグルドが、顔色を変えて叫んだ。

 

「貴様ッ...!正気か!?俺を...この俺を追放するだと!?」

 

追放。

先のシルフでいられないのならという発言と、今の発言が意味するところは、シルフの領地からいなくなることか、それともシルフではなくなるのか。

なんにせよ、もしこれから自分の種族の領主に会うことがあったら、機嫌を損ねないようにしようと思った。

 

サクヤ「そうだ。レネゲイドとして中立域を彷徨え。いずれそこにも新しい楽しみが見つかることを祈っている」

「う...訴えるぞ!権力の不当行使でGMに訴えて...!」

サクヤ「好きにしろ。...さらばだ」

 

サクヤさんが指を滑らせると、鏡の向こう側のシグルドは消えた。

やがて、鏡が砕け散った。

 

サクヤ「私の判断が間違ってたのかは、次の領主投票で問われるだろう。ともかく...礼を言うよ、リーファ。執政部への参加をかたくなに拒み続けた君が救援に来てくれたのはとてもうれしい。それにアリシャ、シルフの内紛のせいで危険にさらしてしまった。すまない」

アリシャ「生きてれば結果オーライだヨ!」

Le「私は何もしてないもの。お礼ならそこのお二人にどうぞ」

 

リーファがこっちに目線を向ける。

釣られて二人の領主もこっちを向く。

 

サクヤ「そういえば...君は一体...」

アリシャ「ねェ君たち?スプリガンのウンディーネの大使ってホントなの?」

 

俺とキリトは目を合わせて、そろって、

 

K/Yu「もちろん嘘だ(です)」

 

と言った。

領主二人は絶句していた。

 

サクヤ「無茶な男たちだな...あの状況でそんな大法螺を吹くとは...」

K「手札がしょぼい時はとりあえず掛け金をレイズする主義なんだ」

Yu「俺、被害者。手札がしょぼかったら勝負は降りる人間ですよ」

 

真逆のことを言っているが、俺もキリトもゲーマーなので、自分より強い相手と戦いたいと思うのはゲーマーの性である。

 

アリシャ「おーうそつきにしてはキミ、随分と強いネ?」

 

アリシャさんが俺の方に向かってくる。

 

アリシャ「知ってる?さっきのユージーン将軍はALO最強って言われてるんだヨ?それに正面から勝っちゃうなんて...ウンディーネの秘密兵器?」

Yu「いやいや!俺が勝てたのは単なるまぐれで...それに、ほら!そっちの黒いののほうが俺よりもっと強いですから!」

 

アリシャさん、ボディタッチが激しい。

女性耐性がない俺にとってはSAN値ががりがりと削られていく。

 

...それに、向こうに押し付けようにも、向こうにも先客がいる。

 

サクヤ「ふむ、君も相当に強いということだな。...キリト君と言ったかな?どうかな、個人的興味もあるのでこの後スイルベーンで酒でも...」

K「いやあの...えっと...」

 

キリトはサクヤさんにくっつかれている。

...サクヤさんは、なんというか...あれだ。

いろいろとボリュームがすごい。

そのボリュームがキリトの腕に押し付けられ、形が変わっているように見える。

...キリトには彼女がいるんだからもう少しデレデレしないでほしいものだが。

 

Le「二人ともストップ!二人は...私の...」

 

リーファが俺たちの襟首を引っ張りながら叫ぶ。

しかし、私の、で止まってしまった。

 

Yu「あ~...その...俺もキリトも彼女にアルンまで連れてってもらう約束をしているので...」

 

そう言うと、領主はそろって肩を落とす。

 

サクヤ「アルンに行くのか。物見遊山か?それとも...」

Le「領地を出る...つもりだったけどね。いつになるかわからないけど、きっとスイルベーンに帰るわ」

サクヤ「そうか。ほっとしたよ。必ず帰ってきてくれよ、彼らと一緒に」

アリシャ「途中でうちにも寄ってね、歓迎するヨ!」

 

アリシャさんが言い終わると、サクヤさんが改まって頭を下げた。

 

サクヤ「今回は本当にありがとう、リーファ、キリト君、それにユイト君。今回の件で、何か礼がしたいが...」

Yu「いや、そんな...頭は下げないでください...」

 

それがそう宥めると、リーファが何か思いついたように言った。

 

Le「ねぇ、サクヤ...アリシャさん。今度の同盟って、世界樹攻略のためなんでしょ?」

サクヤ「あぁ、まぁ...究極的にはな。二種族共同で世界樹に挑み、双方ともにアルフになれればよし、そうでなければ次のグランド・クエストも共に挑む...というのが条約の骨子だが」

Le「その攻略に、私たちも参加させてほしいの。それも、出来るだけ早く」

 

そうリーファが言うと、領主たちは顔を見合わせた。

 

サクヤ「同行は構わない。むしろ、こっちから頼みたいほどだよ。しかし、なぜ?」

 

リーファが俺たちの方を見る。

 

K「俺たちがこの世界に来たのは、世界樹の上に行きたいからなんだ。そこにいる人に会うために...」

サクヤ「人?妖精王オベイロンのことか?」

K「いや...リアルで連絡が取れないんだけど...どうしても会わないといけないんだ」

アリシャ「それって運営サイドの人?なんだかミステリアスな話だネ?」

 

と言った後すぐに、アリシャさんの耳と尻尾が垂れ下がる。

 

アリシャ「でも...攻略メンバー全員の装備を整えるのにしばらく時間がかかりそうなんだヨ...一日二日じゃとても...」

Yu「いや、それはそうだ...十人二十人とかそういう規模じゃないだから...あ、そうだ」

 

俺はウィンドウを出して、革袋をオブジェクト化する。

それに習ってキリトも同じことをした。

 

Yu「よかったら、資金の足しにしてください。いらなかったら...まぁ皆で分けてもらって」

 

そう言いながら、サクヤさんに革袋を手渡す。

サクヤさんは少しよろけ、持ち直した。

アリシャさんも、キリトから同じものをもらったらしく、中身の確認をしている。

 

アリシャ「サクヤちゃん、これ...」

サクヤ「あ、あぁ...これは...」

 

出てきたのは青いコイン。

 

サクヤ「十万ユルドミスリル貨...これ全部...?...いいのか、君たち?一等地にちょっとした城が建つぞ?」

Yu「大丈夫です。俺らには必要ないので」

 

そう言うと、領主は自分のウィンドウに革袋を収納した。

 

アリシャ「これだけあれば、目標金額にかなり近づけると思うヨ!」

サクヤ「大至急装備をそろえて、準備ができ次第連絡させてもらう。...しかし、この金額を抱えてフィールドをうろつくのはぞっとしないな。マンダー連中の気が変わる前にケットシー領に引っ込むとしよう」

アリシャ「そうだネー。領主会議の続きは帰ってからだネ」

 

そう言って、アリシャさんは後ろの護衛っぽい人に合図する。

すると、長テーブルだの椅子だの諸々が片付けられていく。

 

サクヤ「何から何まで世話になったな。君たちの希望に極力沿えるよう努力するよ」

Yu「役に立てたなら、幸いです」

Le「連絡、待ってるわ」

 

サクヤさんと握手を交わす。

 

アリシャ「アリガト!また会おうネ!」

 

そう言うと、俺の腕に尻尾を巻き付けて俺の頬に唇を触れさせてきた。

 

 

...これがりんにバレたらどうなるんだろ、俺。

 

 

 

そう思いながら、シルフとケットシーを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読了感謝です。

なんだか迷走してる気がする...気のせい?


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36話 仲良しって良いな

ゆるめ。
前回が5000とかだったんで、今回は1000。
どうぞ


Le「...行っちゃったね」

K「あぁ...終わったな」

 

ルグルー鉱山前でキリトたちと合流し、その先でサラマンダー隊と戦闘し、シルフ・ケットシー隊を助けるため洞窟チェイスしたのがほんの1,2時間前だとはとても思えない。

 

Yu「何か...どっと疲れたな...」

 

力が抜け、その場に座り込んだ。

 

「全くもう、浮気はだめって言ったです、パパ!」

Yu「!?」

 

驚いたが、その声の正体はキリトの胸ポケットに入ってた小妖精だ。

毎度毎度突然よくわからないタイミングで出てくるから驚くが、その正体はキリトの娘、ユイである。

 

旧SAOの22層で倒れていたという彼女は、実はMHCP(メンタルヘルスカウンセリングプログラム)という、簡単に言うと心を病んだ人間のケアをするプログラムらしい。

それがどういうわけか少女の実体を持ってフィールド内に現れ、それを見つけたキリアス夫婦が引き取り、どういうわけか自分がAIであると悟ったユイは、カーディナルプログラムによって消され...る直前にキリトが《ユイの心》としてユイを切り離した...と、長くなってしまったが、ざっくり言うとユイはキリトたちの義理の娘であり、AIである。

だいぶ紹介が遅れてしまったが、まあいいだろ。

 

Yu「言われてんぞキリト。浮気だって」

K「し、してないって!大体ユイトだって...」

ユイ「ユイトさんは硬直してました。パパみたいにドキドキしてなかったです!」

Yu「ほら、2対1だぞキリト。娘の権力は強いぜ?」

K「ぐっ...」

 

数有利を取られ、押し黙るキリト。

やってやったと思った直後、リーファが言った。

 

Le「ね、ねぇユイちゃん。私は大丈夫なの?」

ユイ「リーファさんはだいじょうぶみたいです」

Yu「と、言うと?」

K「うーん...リーファはあんまり女の子って感じしないんだよなぁ...」

 

言った。

こいつ言ったぞ。

女の子に対して女の子じゃないって。

流石無自覚女キラー、考えることが違うぜ。

 

Le「ちょ、ちょっと!それってどういう意味よ!」

K「いや、親しみやすいっていうか...いい意味でだよ、たぶん」

Yu「なんで自分の発言に確証が持てねえんだよ...」

K「そ、そんなことよりとっととアルンまで飛ぼうぜ、日が暮れちゃうよ!」

 

キリトは早口で言うと、すっと飛び上がった。

 

Yu「リーファ、あいつ逃げるぞ」

Le「え?あ、こら、待ちなさい!」

 

キリトを追ってリーファが飛び上がる。

 

Yu「あいつら、本当に初対面か?」

 

そう呟きながら、緩やかに二人の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読了感謝です。
短めというのはやっぱり素晴らしいもので、書くカロリーが少なくて済むんですわ。
まぁ、亀更新、カロリーもクソもないですが。


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断章 妖精妃、脱走

さて、断章挟んで世界樹攻略っすわ。

...あ、ヨツンヘイムはカットします。
トンキーの話は、またいつか、することがあれば。


今日が何日で、今が昼か夜かなんて言うのはわからない。

だって、ここはゲームの中なんだから。

 


 

今は、アスナと共に無機質な廊下を歩いている。

鳥籠のパスワードはアスナが突破してくれた。

自分は役にたっていないのだから、置いて行ってくれと言ったが、アスナは一緒に出ようと言ってくれた。

 

R「なにも、ない...ですね」

As「そうね...」

 

本当に何もない。

この脱出を妖精王が知ったらどうなるだろうか。

おそらく、いや絶対に怒り狂い、実験とやらに使われるのだろう。

それは嫌だ。

しかし、ここで引き返せば、一緒に出ようと言ってくれたアスナにも申し訳が立たない。

それに、この世界にいるであろうユイトにも。

だから。

 

R「...行きましょう」

As「えぇ、行きましょう」

 

目の前のドアを、またしてもアスナが操作し、ドアが開く。

ドアをくぐると、そのドアは消えてしまった。

戻るつもりのない場所ではあるが、退路を消されたのは痛い。

 

ドアの先は、緩やかなカーブになっていた。

自分もアスナも、右側の壁に寄って歩くことにした。

しばらく歩いても、何もない。

ここはもしかして、円形の通路で、ひたすらぐるぐるさせられているのか。

あるいは、妖精王は自分たちが脱出を試み、ここで詰ませるように設計したのか。

と考え、後者はあり得ないと捨てた。

後者なら、最初からパスコードを扉の外側に設置して置くだのしておけば最初から出れない。

 

R「...?アスナさん、あれ...」

As「...?」

 

目に入ったのは一枚のポスター。

それを見てみると、《ラボラトリー全図 フロアC》と書かれている。

しかし、このフロアは円形の通路以外は何もないようだ。

下のフロアBや、フロアAに行けば様々な施設が存在しているようだ。

フロア間の移動はエレベーターで、そのエレベーターの行く線をたどって下に目線をずらしていくと、《実験体格納室》と書かれていた。

 

As「実験体...」

R「格納室...」

 

妖精王のアバターを操っている何者かが非合法な実験をやっていることはこれで確定した。

確かに合理的だ。

仮想世界なら、どんなことをしたってボタン一つでデータ消去など容易い。

そして、《実験体》という言葉。

ここに、自分たちと同じく、旧SAOから出られなくなった約300人ほどのプレイヤーがいるのだ。

少し悩み、足早にエレベーターの方へ向かう。

すると、右側に三角印を付けたスライドドアが現れた。

下向きの三角を押すと、即座にドアが開いた。

それに乗り込み、一番下のボタンを押す。

すると、エレベーターが下がるときに味わう独特の下降感が身を包んだ。

そして、減速感が身を包み、完全に制止すると、目の前の壁に縦線が入り、それが左右に開いた。

 

R「...!」

 

どうやら、エレベーターから直通で実験室ではないようだ。

伸びている無機質な廊下を、また右に寄って歩く。

今度は一直線で、向こうには扉らしきものが見えている。

 

R「...人、いないですね」

As「警戒、されてないんでしょうね。実際、ここから絶対出られる保証もないですから」

 

そう小声で言いながら、ドアに近づいていく。

もしこのドアがロックされていたら、上の回でログアウトできるツールを探そう...そう考え、ドアに近づいた瞬間に、音もなくドアがさっと開いた。

続いて強烈な光が目に入り、急いで手をかざして光を緩和する。

だんだんと光に慣れてきたその目に入ったのは、巨大な部屋だった。

イベントホールのような、いつかのピアノの発表会で行った時の会場のような、そんな部屋だった。

その中には、等間隔で柱のようなものが設置されており、視野に入る中でも100はありそうだった。

その柱のうち一本に近づく。

思いのほか太さはそこまでではなく、高さもそこまでではなかった。

しかし、柱の上、平面の上に浮かんでいるものは...。

 

R「うっ...」

 

人間の、脳髄だった。

理科か何かの資料でしか見たことはないが、脳髄は確かこんな形をしていたと思う。

それが等間隔で並んでいる柱の上全てに浮いている。

もちろん本物ではない。

ホログラムで構成された、仮想の脳髄だ。

 

R「...?これは...」

 

脳髄の下にある、謎のグラフ。

そのグラフの横に、詳細なログが流れていく。

《Terror》《Pain》《flee》などの英単語が流れていく。

 

この脳の持ち主は、苦しんでいる。

直感的にそう思った。

 

As「待っててね...すぐ助けるから...」

 

そう言った直後、人間のモノとは思えない声が聞こえ、さっと身を潜めた。

柱の陰から、声がした方向を覗き見る。

 

R「...!?」

As「...!」

 

目線の先にいたのは、ナメクジによく似た生物だった。

旧SAO61層は、《むしむしランド》と呼ばれていた。

その名の通り、虫系モンスターが大量に出てくる層だった。

突破するまで自分はユイトの後ろに隠れてやり過ごしたものだが、そんなことは今は良い。

その61層にいたナメクジ系のモンスターにそっくりな2体は、一つの脳髄を見てなにかを言い合っている。

 

「オッ、またこいつスピカちゃんの夢見てるよ。B13と14がフィールドがスケールアウト。16もかなり出てるねぇ...大興奮」

「偶然じゃないのか?まだ三回目だろ?」

「いやいや、感情誘導回路形成の結果だって。スピカちゃんは僕がイメージを組んで記憶領域に挿入したのに、この頻度で現れるのは閾値を変えてるでしょ」

「うーん、とりあえず継続モニタリングサンプルにあげとくか...」

 

明らかに人とは思えない会話に、仮想世界なのに思わず鳥肌が立つ。

一つ、また一つの柱を経由するうち、最深部が見えてくる。

黒い立方体。

おそらくあれがシステムコンソールと呼ばれるものだろう。

コンソールの周りには遮蔽物はもうない。

 

R「...」

As「...」

 

アスナと息を合わせ、コンソールに向けて走り出す。

足音は出さず、しかし最速で。

後ろから声がかかるかもしれないという恐怖が、足を重くする。

コンソールにたどり着くと同時に、ナメクジの方を見る。

幸い、まだ気が付いていない。

コンソールに刺さっているか-度を祈りながらスライドさせる。

ポーンという音と共に、ウィンドウが開く。

開いたウィンドウは英語がびっしりとある。

端から確認し、《Transport》の文字を見つけ、タップ。

どうやら、広すぎるこの部屋の各所に飛べるものらしいが、もうここに用はない。

別の場所かと戻ろうとすると、アスナが何かを見つけ、それをタップする。

 

 

Execute log-off sequence?(ログオフを実行しますか?)

 

 

その下に表示されているOKに触れようとした時、後ろから何かに引っ張られた。

 

R/As「...!!」

 

必死にOKをタップしようとするが、引っ張られている力が強く、一向に押せる気配がない。

 

「あんたら、誰?こんなとこで何やってんの?」

As「ちょっと下ろしてよ!私たちは須郷さんの友達よ。ここを見学させてもらってたんだけど、もう帰るところよ!」

「へぇ?そんな話聞いてないなぁ?お前なんか聞いてる?」

「いやなんも。てかこんなとこ、部外者に見せたらヤバイだろ」

 

アスナの言い訳空しく、自分たちはナメクジに絡めとられてしまった。

 

「ん?...いや待てよ?」

 

ナメクジが自分とアスナの顔を交互に覗き見る。

 

「あんたらあれでしょ。須郷チャンが世界樹の上に囲ってるっていう」

「あー。聞いたなそんな話。ずるいなぁ、ボスばっかこんなかわいい子たちを」

R「...!」

 

足を伸ばしてタップしようとしたが、届くかどうかの時に、ウィンドウが消えた上に足まで絡まれてしまった。

 

「こらこら、暴れちゃだめだよ」

As「痛っ...やめて...離してったら、この化け物!」

「あーひどいなぁ。これでも深部感覚マッピングの実験中なんだぜ?」

「そうそう。この体操るの結構苦労するんだよ」

As「貴方たちも科学者なら、こんな非合法的な研究に手を貸して、恥ずかしいと思わないの!?」

「んー。実験動物の脳を露出させて電極刺すよりは人道的だと思うけど?」

「そうそう。たまにすっげえ気持ちい夢とか見せてやってんだぜ?あやかりたいぐらいのもんさ」

R「...狂ってます...!」

 

二人で睨んだところで、どうしようもないのはわかっているが、これくらいしかできることがない。

 

「ボスは出張中なんでしょ?お前、向こう行って指示聞いてきてよ」

「えー?しょうがねえなぁ。ヤナ、この子よろしく。一人で楽しむなよ?」

 

そう言って、一体のナメクジが消えた。

それを見て、再び暴れるが、それも空しい行動にすぎない。

 

As「離して!離してよ!ここから出して!!」

「ダメだよぉ。ボスに殺されちゃうよ?それよりもさ、二人も共、こんななんもないところにいたら退屈でしょ?一緒に電子ドラッグプレイしない?僕も人形相手は飽き飽きでさぁ...」

 

そう言いながら濡れた触手が近づいてくる。

必死になって追い払おうとするが、手足が封じられているうえ、着ているものがワンピースと非常に薄着のため、簡単に服の中に侵入されてしまう。

不快感をできる限り我慢し、抵抗する気力を無くしたように見せ、反撃する機会を狙う。

触手の一本が口元に近づいてきた。

唇を割って侵入してこようとするので、逆に口を開けて思い切り嚙みつく。

 

「ギャッ!?いだだだだ!!」

 

痛がっているところに、ナメクジが戻ってきた。

 

「お前なにやってんの?」

「なんでもないっす。それよりボスは?」

「怒り狂ってたよ。今すぐ籠の中戻して扉のパス変えてずっと監視しとけって」

「ちぇ、せっかく楽しめると思ったのになぁ」

 

そう言って、ナメクジの目線が二人から外れた瞬間に、アスナが足でカードを抜き取った。

 

「ほらほら、暴れちゃだめだよ」

 


 

「またねー。チャンスがあったらまた遊ぼうね」

R「もう、勘弁してほしいです」

 

ナメクジが戻っていくのを確認した後、アスナが抜き取ったカードキーを見る。

今のところ、これが最後の希望だ。

 

As「...きっと、来るよね」

R「はい。きっと来ます」

 

あの人たちは、きっと来る。

だって、私たちの、英雄(ヒーロー)だから。

 

 

 

 




ナメクジのシーンって、若干凌辱だよね。
あれ、見るの結構つらかった。


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37話 青薔薇、邂逅

やっとRoseliaを出せる。
正直ALO編で出る枠無いとか考えてた人間だから()


side青薔薇

 

 

燐子とあこを除いたRoselia3人が、CIRCLEのカフェテリアに集まっていた。

 

 

友希那「...今日で、一週間ね」

紗夜「...そうですね」

 

 

彼女たちがSAOから解放され、燐子が目覚めないまま過ぎた時間だ。

 

 

リサ「なんで、燐子だけなんだろうね...」

友希那「というよりリサ、あこは?」

リサ「ちょっと遅れるって...あ、噂をすれば」

 

 

リサが目線を送った先には、走ってくるあこの姿。

 

 

紗夜「遅刻とは感心しませんね、宇田川さん」

あこ「さ、紗夜さん、ごめんなさい...でも、これ、皆に見てほしくて...」

 

 

あこが見せたのはスマホのスクリーンショット。

 

 

友希那「これが、見せたいもの?」

あこ「ここ、何かあるんです」

 

 

あこが拡大したその場所には、ぶら下がる金の鳥籠らしきもの。

そして、その中に入っている人物が...

 

 

リサ「これ、さ」

紗夜「似て、いますね」

あこ「で、ですよねっ!?」

友希那「三人とも、どうしたの?」

 

 

唯一状況が分かってない友希那に、あこがもう少しだけきれいなスクリーンショットを見せる。

 

 

あこ「友希那さん、これ、見覚えありますよねっ!?」

友希那「誰に似ていると...!?」

 

 

綺麗な黒髪を伸ばした、羽が生えたようなアバター。

 

 

 

 

 

 

 

友希那「燐子...!?」

 

 

そのアバターは、バンドメンバーの白金燐子に、とても良く似ていた。

 

 

あこ「そうです!りんりんが、この中にいるんです!!」

リサ「で、でもあこ?ここってどこなの?」

紗夜「見てくれはSAOのようなポリゴンゲームのようですが...」

 

 

その紗夜の問いに、あこはゲームソフトを出すことで答えた。

 

 

あこ「これです!アルヴヘイムオンラインっていうゲームです!」

紗夜「それは、純正のゲームですよね?」

あこ「え?それはもちろんそうですよ?あこも昨日、いつも行くゲーム屋さんで買ったんですから」

紗夜「なら、どうして純正のゲームに白金さんらしき人が...」

 

 

 

 

あこ「あこ分かりました!きっと、悪~い闇の王様が、りんりんをお嫁さんにしようとしてるんだ!」

友希那「そんなことあるわけないでしょう」

 

 

あこの中二的考えは、友希那にバッサリ切られてしまった。

 

 

紗夜「そうですね、ありえません」

リサ「あはは...あこ、それはさすがに...」

あこ「う~ん...こんな時にユイトさんがいてくれればなぁ...」

 

 

あこは目の前で消滅した、親友の恋人の名を出す。

 

 

紗夜「そうですね...彼なら、なんとかしてくれたかもしれないですが...」

リサ「言いたくはないけど...ね?...あれ、友希那?」

 

 

リサが呼び掛けた先には、友希那が電話をかけていた。

 

 

友希那「一つだけ。私は、ユキナよ」

 

 

そう言って、友希那は電話を切った。

 

 

リサ「ゆ、友希那?誰から?」

友希那「誰から、ではなく、私からかけたわ。私たちにとって、一番頼りになる人よ」

紗夜「そんな人、いましたか?」

友希那「もうすぐ来るわ。きっと」

あこ「誰なんですか、その人?」

 

 

あこがそう言った瞬間に、目線の先に走ってくる影。

そして、その人影は呼び出した本人をフードの影から見ると、ため息交じりに言った。

 

 

「よく名前だけ言って来てくれると思ったねユキナ」

友希那「実際来たじゃない」

「行けば分かると思ったからね」

 

 

あこ「え...?」

リサ「いや、え?」

紗夜「確かに、あの時...」

 

 

「あ~...まぁ、そうだよな。そういう反応になるわ」

友希那「まぁ、死んでいると思ってもしょうがないもの」

「しゃあない。自己紹介しておくよっと...」

 

 

人影はフードを取る。

 

 

唯斗「Yuitoこと、蒼闇唯斗だ。初めまして、そして久しぶりです、Roseliaの皆様」

 

 

あの世界の時と変わらないさわやかな笑顔で、そう言った。

 

 

彼がこの場所に来たのは、少し前にさかのぼる。

 

 


 

 

Le「...世界樹...」

K「や...!」

Yu「やぁっと出れたぁーーーー!!!」

 

歓喜の声をあげながら、辺りを見渡す。

つい先ほどまで光も何もない洞窟、というか別マップにいたからこんなに明るい場所に出たのは割と久しぶりかもしれない。

 

数時間前、俺たち3人はモンスターの擬態だった宿屋にまんまと釣られ、ヨツンヘイムと呼ばれる地下マップに強制移動させられた。

そこで見かけた邪神モンスター2体のうち、人型にいじめられていたクラゲ型を助け、そのクラゲ型の背に乗り、さらにそのクラゲ型が進化して、地下世界を飛んで移動し、地上へとつながる階段まで乗せてくれて、今に至る。

 

と、過去を回想していると、午前4時から定期メンテナンスを行うという趣旨のアナウンスが流れた。

 

Le「...今日はここまでだね。一回宿屋でログアウトしよっか」

K「メンテってのは何時まで?」

Le「今日の午後3時までだよ」

Yu「そっか...」

 

再び物思いに耽る。

あの樹の上に、りんがいる。

そう思うだけで、暴走しかねない。

そのとき、不意にキリトが言った。

 

K「さ、宿屋を探そうぜ。俺もう素寒貧だから、あんま豪華じゃない所が良いな」

Yu「調子乗って全額渡すからだろ?俺はもう少し手持ちあるから...ユイ?」

ユイ「あっちに激安の宿屋がありますよ!」

Yu「げ、激安...まぁいいか」

 

キリトがすたすたと歩いていくので、やむなく着いて行き、チェックインして部屋に入った瞬間、猛烈な眠気を感じ、即寝落ち(ログアウトし)た。

 


 

昼頃、携帯が鳴った。

 

唯斗「...もしもし?」

「ユイト、かしら?」

唯斗「はい、確かに唯斗ですが...」

 

電話をかけてきたのは女性。

どうやら俺のことを知っているようだ。

 

「誰かわからないって声してるわね?」

唯斗「...それはそうでしょう」

「疑われるのも仕方がないわ。だから、証明がしたい」

唯斗「証明?」

「ええ。今、暇かしら?」

唯斗「とりあえずは...」

「じゃあ、CIRCLEのカフェテリアで、待ってるわ。あと一つだけ、私は、ユキナよ」

 

そう言って電話が切れた。

 

唯斗「ユキナ...か。行ってみれば、わかるかな」

 


 

そして、彼が来た辺りに遡る。

 

唯斗「この際、なんでユキナが俺の番号知ってるかなんて野暮なことを聞くつもりはない。なんで呼んだ?」

あこ「これです!」

 

あこは携帯のスクリーンショットを見せる。

 

唯斗「あぁ。()()()()()

リサ「し、知ってる?」

紗夜「それはどういう...?」

唯斗「そのままの意味だよ。それはりんで、ALOっていうゲームに閉じ込められている」

 

彼は自分の知りえる情報を話した。

 

唯斗「それと、俺は今、そのゲームをやっている」

友希那「...目的は?」

唯斗「野暮だな。もちろん、りんを助けるためだよ」

 

彼は、自分に救出する意図があることを話した。

 

唯斗「俺はりんを必ず助ける。それだけは、皆に誓うよ」

友希那「その言葉、嘘はないわね?」

唯斗「あぁ。もちろん」

友希那「なら、お願いするわ。私たちの、大事な仲間だから」

唯斗「わかった。必ず」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やけに斜に構える唯斗君。
偉そうだね()


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38話 アルン、そして世界樹

サブタイなんて意味ないんすよ()

それでは、どうぞ


さて、午後3時までやっていたメンテナンスが終わり、俺は今ALOに再びログインしている。

昼頃のユキナたちとの邂逅は少し驚いたが、彼女らにりんは救うと覚悟した手前、下手なことはできない。

 

Yu「さて、頑張るか」

 

そう呟くと、隣に人影が出現した。

俺の相棒、キリトだ。

 

K「ん?早いな」

Yu「ALOプレイヤーが目指すところの都市だから、ちょっとワクワクしちゃってな」

K「...そうか」

Yu「...目的は、忘れちゃないさ」

K「...あぁ」

 

重苦しい雰囲気になった時、キリトの隣に人影が生まれた。

現れたのは俺らのナビゲーター、リーファだ。

しかし、なんだか表情が重い。

 

Yu「...どうした?」

Le「あ...あのね...あたし...失恋しちゃった...」

Yu/K「...」

 

何も言えなかった。

俺らと違ってリーファは女の子だし、おそらく年もそこまで離れてない。

きっと恋だって普通にしてたはずだ。

すると、キリトはリーファの頭に手を乗せて、軽くなでた。

 

K「向こうでもこっちでも、辛いときは泣いていいさ。ゲームだから感情を出しちゃいけないなんて決まりはないよ」

Le「キリト君...」

Yu「(...隣に俺いるの、忘れてないよな?)」

 

そう思ったが口に出さないのは、リーファが負った心の傷の深さを理解できるから。

 

Yu「(しばらく、そっとしておくか)」

 

キリトの胸に頭を預けるリーファを見ながら、そう思った。

 


 

一つ、鐘の音が聞こえた。

その音と同時に、リーファは体を起こした。

 

Le「もう大丈夫。ありがとう二人とも。優しいんだね」

Yu「俺もキリトも反対のことはずいぶんと言われたけどな...」

K「今日は落ちる?俺たちだけでも、どうにかなると思うし」

Le「ううん、ここまで来たんだもん。最後まで付き合うよ。さっ、行こ!」

 

リーファはベッドから飛び降りて、こっちに向かって笑いかけた。

 

Yu「(辛いのは、リーファが一番だろうに...)OK、行こう」

K「...ユイ、いるか?」

ユイ「ふわぁ...おはようございます...」

 

どうでもいいことだが、妙に気になったので、さっきの重い空気を晴らすがてら聞いてみた。

 

Yu「ユイって、寝てるのか?」

ユイ「まさか、そんなことないですよ。でも、パパがいない時は入力データを遮断して蓄積データの整理や検証をしますから、人間の睡眠に近い行為をしてると言ってもいいかもしれませんが...」

Yu「あぁ...そういうことか」

Le「何が?」

Yu「ユイが出てくるときの欠伸って、キリトの真似してるのかもなって。こいつ、欠伸長いし」

K「余計なこと言うな。行くぞ」

 

キリトとリーファが愛剣を吊ったのを見て、それに習い、宿を出た。

 


 

宿を出た時間は現実では3時を少し過ぎたごろだが、ALOの時間設定は現実にはリンクしてないらしく、太陽がちょうど真上に存在していた。

 

周りを見渡してみると、異種族で仲良くしてるプレイヤーたちが見えた。

中立都市、しかも世界の中心にある都市だからだろう、いろんな種族が入り乱れている。

 

Yu「さすが...というべきかなぁ...」

K「圧巻だな...」

 

そのまま目線を奥にずらしていく。

 

Yu「でっけぇ...」

 

目線の奥には、世界樹。

幹から派生している枝の一本すら、雲に隠れて見えない。

そんな巨大な樹。

 

Yu「あの樹の上に、街があって...」

K「妖精王オベイロンと、光妖精のアルフがいて...」

Le「王に最初に謁見できた種族が全員、アルフになれるって言われているわ」

Yu「あれ、外側からは登れないの?ロケット式で上行こうとした人がいたって聞いたけど」

 

ずるできないか聞くと、リーファは笑った。

 

Le「あぁ、あれね。枝までもうちょっとだったらしいけど、GMも慌てて修正入れて。今は雲の少し下に障壁があるんだって」

K「へぇ...とりあえず根元まで行ってみるか」

Yu「OK」

 

そう言って、根元に近づく。

その時、キリトの胸ポケットにいるユイが、頭を出して上を見つめだした。

 

Yu「ユイ?」

K「どうした?」

 

問いかけると、小さくかすれた声で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユイ「...ママが...ママがいます...」

 

 

Yu「ママ...まさか...!?」

 

ユイ「はい...このIDは、ママの物です...座標は、この真上に....!」

 

そう言った瞬間、キリトは空を仰ぎ、目を血走らせ、強く歯を噛んだ。

そして、次の瞬間、キリトがものすごいスピードで飛んだ。

 

Le「キリト君!?」

Yu「リーファ、追うぞ!!」

 

そう言って、俺たちも上昇する。

 

Yu「(ママ...ママってことは...この真上に、アスナがいる...?)」

 

ユイが、母親として認識している人物は、アスナ一人のはずだ。

だとすれば、この上にアスナがいる。

そして。

 

Yu「(そこには、きっと...!)...っ!!」

Le「ユイト君も!?」

 

スピードを上げる。

一刻も早くそこに着きたくて。

会いたくて。

しかし。

 

目の前まで迫っていたキリトの背中が、突如落ちてきた。

 

Yu「キリト!?」

 

見ると、そこはさっきリーファが言っていた障壁のようだった。

しかしキリトは、そんなことは関係ないと言わんばかりに、障壁に向かい続ける。

思わずキリトの腕を掴んで叫んだ。

 

Yu「やめろキリト!さっきも言ってただろ!こっから上には行けないんだ!」

K「離せユイト!!行かなきゃいけないんだ!お前だって...!」

 

言い合っていると、ユイが出てきた。

システム上、プレイヤーではないユイですら、その障壁は弾いた。

しかし、ユイは声を上げ続ける。

 

ユイ「警告モード音声なら...!ママ!私です!ママー!」

 


 

当然、声は帰ってこなかった。

それはそうだ。

どんなに目を凝らしたって、枝一つ見えやしない。

さらに、そんな枝のさらに上に鳥籠があるんだっていうなら、聞こえなくても当然だ。

と思っていると、上に何か光っているものが見えた。

 

K「あれは...?」

 

その光はどんどん大きくなり、やがて長方形のモノだと分かった。

そしてそれは薄く、まるでカードのようだった。

 

Yu「...なんかのカード...?けど、タップしても何も出ない...」

 

すると、ユイがそれに触れ、驚きながら言った。

 

ユイ「これは...!システム管理者用のアクセス・コードです!!」

Yu「じゃ、じゃあそれを使ってズルみたいなことは...?」

ユイ「いえ...これを使うには、対応したコンソールが必要で...」

Yu「...人生、うまくいかねえか...」

 

しかし、これが降ってきたということが、大きな収穫だ。

少なくとも、そんな大それたものが降ってくるからには、イベントではないのだろう。

しかも、普通のプレイヤーはそれが何か分からないから、絶対にイベントではない。

だとしたら、ユイの声を聞いたアスナが、これを落としたのか。

 

Yu「...キリト」

K「...何だ。考えること、一緒じゃないか」

Yu「...いや、俺は魔法職だし、死んだキリトを蘇生しなきゃいけないから、ソロで行って来いよ」

K「...わかった。リーファ、ゲートっていうのはどこに?」

Le「え?...えっと、樹の根元にあるけど...で、でも、いくら二人でも無理だよ?」

K「行かなきゃいけないんだ、無理だってわかってても。まぁ、もし死んだら...」

Yu「俺が死なせねえっつうの」

Le「え、ちょっと、本当に行くの...?」

 

Yu/K「あぁ、もちろん」

 

俺たちは、息を合わせてそう言い、ゲートに向かった。

 


 

Yu「...お前が入ってから1分後、お前が生きてようが死んでようが入る」

K「あぁ、わかった」

 

キリトと拳を合わせ、俺はキリトにありったけのバフをかける。

 

K「サンキュ。じゃ、行ってくる」

Yu「あぁ。...気をつけろよ」

 

キリトがゲートの前に立つと、システム音声が聞こえる。

 

『未だ天の高みを知らぬ者よ、王の城へ至らんと欲するか』

 

キリトが操作し、ゲートの扉がゆっくり開く。

 

『さればそなたが背の双翼の、天翔に足ることを示すがよい』

 

その声が聞こえ終わると、ゲートが完全に開く。

それと同時に、俺の相棒は、そのゲートの中に飛んで行った。

 

Yu「頑張れ、キリト」

 

...何もできない、自分を妬みながら、そうやって呟いた。

 




読了感謝です。

プロットが書きあがらない、そんな日です。


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39話 運命は、残酷に

見ればわかるだろう。
さぁ、苦しめ()


...キリトがゲートをくぐってから一分が経った。

もちろん、アスナを助ける目的で入っていったのだから、戻ってくるはずがない。

しかし、ダメだったと言って帰ってくるほど、落ちぶれた奴でもない。

 

Yu「生きてろよ、キリト」

 

ゲートの前に立つ。

キリトの時にも聞いた、システム音声が降ってくる。

 

『未だ天の高みを知らぬ者よ、王の城へ至らんと欲するか』

 

目の前に表示されたウィンドウの、『YES』をタップする。

 

『さればそなたが背の双翼の、天翔に足ることを示すがよい』

 

ゲートが開く。

 

Yu「はぁ...はあっ!!」

 

飛び上がり、まずはキリトを探す。

パッと見、人型は白いのしかいない。

その白いのは、不快な声を上げながら俺に突っ込んでくる。

 

Yu「うるせぇ!」

 

一体、二体と切り捨てる。

目線の先に、黒い炎が見えた。

あれはエンドフレイムと呼ばれるものだろう。

プレイヤーの残滓。

 

Yu「...届く...!」

 

エンドフレイムを左手で支え、剣を持ってる右手で蓋をする。

 

Yu「ぐっ...」

 

後ろから何かに貫かれた気がしたが、振り向かない、気にしない。

そのまま空きっぱなしのゲートに滑り込む。

 

Yu「ぐあっ...」

Le「ユイト君!?」

 

ゲート前の石畳に顔から激突し、いささか重傷を負ったが、キリトのエンドフレイムが無事なのを確認し、ほっと一息つく。

そのままそれに蘇生魔法をかけ、自分にヒールをかける。

 

Yu「収穫は?」

K「...次は行ける」

Yu「無理すんな。あのガーディアンの強さは質じゃない、量だ。そんなのを一人で突破するのは無茶だよ」

K「それでも、行かなきゃいけないんだ」

Le「...キリト君!」

 

リーファがいきなりキリトに抱き着いた。

 

Le「もうやめてよ、二人共...いつもの二人に戻って...!」

Yu「リーファ、キリトは止められない。俺でも無理なんだから」

K「よくわかってるな」

Yu「何年、一緒にいると思ってるんだ?一人でダメなら、二人で行くだろ」

Le「どうして、そんな無茶するの...!?」

K「助けたい...もう一度、会いたい人がいるんだ...」

 

K「もう一度、アスナに...」

 

キリトがそう言うと、リーファはキリトから離れ、口元を抑えた。

 

Yu「...?どうした?」

Le「い、今...なんて...?」

K「あぁ、アスナ。俺の探してる人の名前だよ」

 

その瞬間、理解した。

きっとキリトは、リーファの地雷を踏んだんだと。

 

Le「でも...だって、その人は...」

 

尚も狼狽えるリーファ。

何も分かってないキリト。

 

Le「お兄、ちゃん、なの?」

 

そう言った瞬間、キリトもすべてを察したように、掠れた声で呟いた。

 

K「スグ...?直葉...?」

 

その名前を呼んだ瞬間、リーファは石畳に崩れ落ちた。

 

Le「酷いよ...こんなの、あんまりだよ...!」

 

そう言って、リーファはその場から消え(ログアウトし)た。

 

呼び止める暇もなかった。

その場に待機状態にあるアバターでさえ、今のリーファの心情を表してるように思えた。

 

Yu「キリト、直葉ってのは、お前の妹か?」

K「あぁ...そうだ」

Yu「前にも聞いたな。本当は従妹だって」

K「...あぁ」

Yu「行って来い、キリト。今のリーファの傷は、お前が付けたものだ」

K「...わかった」

 

そう言って、キリトもログアウトした。

 

おそらく、リーファのリアルが好きになった人っていうが、キリトのリアル。

でもキリトのリアルは、アスナが好き。

それをどこかのタイミングで目にしたリーファは、あの時「失恋しちゃった」と言った。

そして、リーファは新たにキリトを好きになろうとした、というかなった。

しかし、その想い人は現実では自分の兄であり、キリトだった。という話。

 

Yu「兄貴を好きになって、けどその兄貴には好きな人がいて、じゃあゲームで好きな人作ろうってなって、惹かれた人間が兄貴とは...」

 

人の色恋沙汰には興味もないし、俺の従妹はゲームなんてしないから実感はわかないが、リアルバレというのはこんなにも残酷なんだと、目の前で思い知らされた。

 

Yu「神様っていうのは、つくづく試練を作るよなぁ...」

 

待機状態にある風妖精と影妖精を見ながら、そう呟いた。

 

 

 

 




何よりも辛い。
アニメで見ると一二を争うぐらい辛い。


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40話 再び、世界樹へ

仲直りしたときのお互いへの謝罪って妙に気恥しいよね(深夜テンション)


Yu「はぁ...」

 

世界樹ゲートの近くにあるベンチに座り、深いため息をつくこと数十回。

俺は今、どうしていいかわからなくなっていた。

世界樹までのナビゲート役だったリーファと、俺の相棒であるキリトは、血はつながってないとはいえ兄妹関係になり、それがきっかけで兄妹喧嘩のような状態になっている。

それに付き合った俺は、キリトを慰めて来いと追い出して、今一人この場にいるわけだが...

 

Yu「あいつら、帰ってくるかな」

 

少なくとも、キリトは帰ってくる。

問題はリーファだ。

想い人が、他の好きな人に首ったけで、目もくれない状況なのに、彼女は戻ってくるだろうか...?

そんなことを考えていると、目の前が輝き、黒い人影が現れた。

 

Yu「よぉ」

K「あぁ」

Yu「仲直りは済んだか?」

K「いや、まだ。あいつの剣を受けて、謝ろうと思ってる」

Yu「そうか。俺はもう少しここにいる。全部収まったら戻って来い」

K「わかった」

 

そう言って、キリトは飛び上がった。

奥に少し見える、北側のテラスに飛んで行ったのだろう。

 

Yu「...相変わらず、不器用なやつ」

 

あいつはそんな奴だった。

今更気にすることでもないけれど。

 

Yu「はぁ...」

 

ため息の回数がそろそろ30に達するかというところで、もう一体、影が現れた。

 

Yu「...よぉ、リーファ」

 

俺が声をかけると、少し怯えながらも「うん」と言った。

 

Le「お兄...キリト君は?」

Yu「キリトならあっち行ったよ」

Le「...ありがとう」

 

そう言って、彼女も飛び立った。

 

Yu「...せめて、決着ぐらいは見届けるか」

 


 

北側のテラスに向かうと、一組の男女が抱擁を交わしていた。

緑と黒の妖精、間違いなくキリトとリーファだ。

愛情確認というよりは、謝罪を込めたものに見える。

 

...というか、そうでなければ困る。

ここでいちゃつかれては非常に居心地が悪い。

 

少し目線をずらすと、黒い大剣と白い長刀が遠くに刺さっていた。

キリトは妹の意見は剣で受けると言っていた。

だとしたら、全く同じことを考えたということになる。

 

Yu「血は繋がってなくても...ってことか」

 

飛びながら二振りの大剣を回収し、抱擁が終わったタイミングで話しかけに行く。

 

Yu「信頼を取り戻すハグは終わったか、お二人さん」

K「あぁ、もう大丈夫だ」

Le「うん。ごめんね、取り乱しちゃった」

Yu「そいつは良かった。ほれ」

 

剣を返す。

 

Yu「さ、二人の仲直りも終わったことだし、どうする?」

K「そりゃ当然、リベンジしに行くだろ」

Le「そうだね。頑張ろう」

 


 

ゲート前に戻ると、辺りをきょろきょろしてるシルフの男がいた。

 

Le「げっ」

Yu「知り合い?」

K「スイルベーンから飛ぶときに一回見たな」

 

その男はこっちを見ると、犬のごときスピードで寄ってきた。

 

「リーファちゃん!...と、ウンディーネも増えてる?」

Yu「どーもウンディーネです...君は?」

「レコンって言います!それで...それで...えっと、リーファちゃんのかr、ぐぼぁ!!」

Le「何言おうとしてんのこのアホチン!!」

Yu「苦労もんだなぁ...」

 

リーファのボディブローをクリティカルで食らい、腹を抑えて悶絶している彼を見て、そう呟いた。

 

レコン「で...何がどうなってるの?」

Le「世界樹を攻略するの。この人たちと、あたしで」

レコン「そ、そうなんだ...あ、あのさ!僕も...」

Yu「人数が増えるのはありがたいな。キリトとリーファさえ良けりゃ俺は良いよ」

K「俺も同感」

Le「戦力的には増えるから、まあいいわ。その代わり、変なコトしないでよ?」

レコン「わ、わかってるよ」

 

さっきよりも戦力が3倍になっているが、キリト換算だと戦力は2倍と少しぐらいだろうか。

 

Yu「二人には後方支援を頼みたい。俺とキリトで強行突破するから」

Le「りょーかい。任せて」

レコン「頑張ります!」

Yu「いい返事で助かる。...さて」

 

二体の石造の前に立つ。

一回息を吐いて、集中する。

 

ゲートが開く。

 

Yu/K「...行くぞっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




文才がないし、原作を見てるのにクソ文になってる


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41話 鍵は既に、その手に

サブタイはもう訳分らんものだっていう風に妥協しないとね()
さて、そろそろ終わりが近づいてきていますよ


掛け声と同時にゲートの中に入る。

俺とキリトをアタッカーに、リーファとレコンをバッファーにして、世界樹の中を飛び上がる。

横の穴から白い騎士が大量に出てくる。

 

Yu「っらぁ!!」

K「はぁッ!!」

 

二人で上昇しながら切り伏せる。

が、しかし。

俺らのキル数より、相手のスポーン数の方がどう考えても多い。

 

Yu「マジでっ...キリがねぇ...!」

 

そう言ったとき、後ろの方で爆発音がした。

リーファかレコンが爆発魔法を使ったんだろうが、威力がすさまじい。

そっちの方に目線を向けると、そこにいたであろう白騎士共が消えていた。

...それと、レコンも。

 

Yu「爆発じゃなくて、自爆魔法だったか...」

 

もちろん、覚えようとはしたが、デスペナルティが重いと聞いてやめたこともある。

しかし、彼はこの大一番で大魔法を展開した。

その犠牲を無駄にしてまで退却は許されない。

 

Yu「はぁっ!!!」

 

目の前の白騎士に剣を叩きつけ、振り抜く。

その速度のまま団子状になっている白騎士共を切り捨てる。

キリトの背中側に立ち、背中合わせになる。

 

Yu「...キリト、いいか?」

K「何だ」

Yu「二刀、使っていいか?」

K「俺のじゃないし好きにしたらいいよ」

Yu「...サンキュ。キリト」

 

上を見る。

白いものが蠢いている。

あれがすべて白騎士だと思うとおぞましいが、そんなことは言ってられない。

弱気になりそうな心を叱咤し、上昇スピードを上げる。

 

前衛の騎士の後ろで、耳障りな声で詠唱が聞こえる。

遠距離魔法は喰らうとめんどくさい。

先に術者を潰しておくことは大事だ。

 

Yu「...どけぇ!!」

 

前衛騎士を振り払い、術者を潰していく。

こんなのに詰まっていちゃ、助けになんていけない。

しかしいかんせん、数が異常すぎる。

と、後ろから熱波が吹いた。

 

Yu「炎まほっ...いや...何だあれ...!?」

 

銀色の、竜の、群れ。

武装した龍が、後ろから迫ってきている。

その先頭にはシルフ・ケットシー会議で見たケットシー領の領主、アリシャさんがいた。

 

アリシャ「お待たせ二人とも!調整に時間かかっちゃったヨ」

Yu「アリシャさん!...ありがとうございます!」

 

後ろを振り返れば竜種のほかに緑の服のプレイヤーが見える。

そのプレイヤー全員が、刀身に緑色の光を纏わせている。

 

アリシャ「ファイヤブレス、撃て──────!!」

サクヤ「フェンリルストーム、放てっ!!」

 

二人の領主が号令を放つと、後ろから炎と緑の閃光が伸びて、広がる。

瞬く間に目の前の白騎士が消え、ぽっかりと穴ができた。

 

ーーこのチャンスを無駄にしない!!

 

Yu「行くぞっ!!」

 

開いた穴を埋めるように、白騎士共が押し寄せる。

その埋まろうとしてる穴を飛び出して、一個上に出る。

一個抜けた先の光景は異常だった。

さっきよりも倍のスピードで白騎士が生み出され、一瞬でドームらしき部分が見えなくなる。

 

Yu「...行くぞ、キリト!」

K「あぁ!」

 

新たに握った左の剣を構え、右の剣を握りなおす。

 

Yu「うぉぉぉ!!」

 

ドームに続く道に群がる騎士共を左右の剣で切り払う。

キリトも同様に、薙ぎ払っていく。

そのキリトの左手にはリーファの握ってた長刀が握られている。

 

K「はぁぁぁ!!」

 

右の剣を振り払ったとき、天板のゲートが見えた。

十字に組み合わさった、石のようなゲート。

そこに向かって手を伸ばす。

手をつける。

が、開かない。

 

Yu「っ!?」

 

キリトも同じようにするが、同じ。

ユイが触れると、驚いた顔で叫んだ。

 

ユイ「この扉は...クエストフラグでロックされてません!システム権限によってロックされているものです!」

Yu「じゃあ、この扉は...!?」

ユイ「プレイヤーには、絶対に開けられません!」

 

馬鹿馬鹿しいと思った。

これだけの白騎士を配置し、さらにスポーン数を無制限に、秒速何十体と生み出し、それを抜けた先には絶対に開かない扉。

このゲームのグランド・クエストである、「世界樹の上にある空中庭園にたどり着く」、「妖精王に謁見し、上位妖精になれる」というものは、全くのデマだったというわけだ。

 

Yu「ここまで来て...それはねえだろっ!」

 

システムによってロックされた扉。

 

Yu「(いや、待て。あの時...)っ!キリト!カードだ!」

K「!?」

 

キリトがポケットからカードを取り出す。

アスナが落としたとされる、システムに干渉できるかもしれないカード。

それにユイが触れると、ユイの体に光が走る。

その光がゲートに移ると、突然光り始めた。

 

ユイ「転送されます!捕まって!!」

K/Yu「...!!」

 

ユイの手をキリトが、そのキリトの肩を俺が掴む。

俺たちの異変に気付いてか、白騎士共が切りかかってきたが、その剣は俺たちを素通りした。

そしてそのまま、意識を吸われていった。

 

 

 

 

 

 




今回も短いですね。
まぁ、虫戦で長く書くつもりではおりますので、お楽しみに。


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42話 偽りの空中都市

随分とかかってしまったね。
まだ、戦わない


Yu「...っ...?ここは...?」

 

意識と体のコントロールが戻ってきて、一番最初に見えたのは無機質な廊下だった。

今まで見てきたどの町にもあった豪華な装飾もなく、ただ真っ白い壁と床に覆われた廊下。

 

Yu「キリト?ユイ?」

 

二人の姿もなかった。

相棒も、ナビピクシーもいない。

ここに来れるのは一人だけだったのだろうか?

いや、そもそも俺たちプレイヤーが来れる場所ではないのだから、人数制限なんて考えるのは野暮か。

 

Yu「キリトー?ユイー?」

ユイ「はい、ユイトさん」

Yu「良かった、ユイはいた。キリトは?」

ユイ「パパの座標データが確認できません...」

Yu「...とりあえず、アスナとりんを探しつつ、キリトも探そう」

ユイ「はい。ママの座標は...こっちですね」

 

ユイの後をついて行く。

座標データだけを辿っているが果たしてたどり着けるのか...。

いや、たどり着けなかったとしたらたどり着くまで探し回るだけだ。

借りを返して、感謝を伝えるために。

...こう思ってはいるが、実際アスナとりんが一緒にいるかなんて確証はない。

鳥籠は二つあったし、その間の距離なんて計り知れない。

 

ユイ「もうすぐ...すぐそこに...」

 

エレベーターらしきものに乗ったりしたが、あれが本物のエレベーターだったとしたら、ここはどこなのだろうか?

ここは、現実に限りなく近い気がする。

ゲーム内に創られた、現実に近い場所。

 

Yu「考えても仕方ない、か」

ユイ「ユイトさん?」

Yu「いや、何でもない。アスナの場所は?」

ユイ「すぐ、そこに...!」

 

そう言いながらユイは俺の手を取って走り出す。

しかし、走り出して少しした後、行き止まりが俺たちの道を塞いだ。

 

Yu「行き止まり、だけど」

ユイ「いえ、この奥に、通路が...」

 

そう言って、ユイは壁をなぞる。

すると、壁に青い光が走り、その壁が消えた。

消えた壁の奥に、通路。

 

ユイ「...っ!」

 

手の引きが一層強くなった。

この先にいることを確信しているかのような走りと、引きの強さ。

少し走ってまた壁が現れたが、ユイは止まらず、そのままの速度で走り、左手で壁を押し開いた。

 

Yu「っ...!?」

 

赤い光が、俺の視界を染めた。

回復した俺の眼に映ったのは夕日だった。

しかし、夕日が少し低く感じる。

それはそうだ、今いるところの高さがとんでもなく高いのだ。

風が強い。

ちゃんと立っていなければ落ちてしまいそうになる。

 

Yu「...ッ...ここまで、来たんだ」

 

足元には、もう白い床はない。

大樹の枝に立っている。

後ろを振り返ると、どこまでも伸びる大樹の幹。

そして、無数に伸びる枝。

 

Yu「...空中都市なんて、存在しないぞ」

 

道中の白い通路が空中都市だったなってオチであれば、クソゲーもいいところだ。

というかそもそも、ここに入るまでのゲートがシステムロックな時点で、プレイヤーの侵入は想定されていないだろう。

空中都市もなければ、そこにいるはずの妖精王もいない。

なら、妖精王に謁見して上級妖精に転生できるなんてこと、大嘘だ。

 

Yu「ふざけんなよ...こんなクソゲー....!」

 

そう言うと同時に、握られている手に力が籠る。

 

Yu「...悪い、行こうか」

 

ゲームに文句を言ってもしょうがない。

というか、元よりそんなつもりは毛頭ない。

俺は、りんを助けるためにここにいる。

いくつもの小道を通り、木の葉群を潜り抜けた先に、きらりと光るものが見えた。

金色の何か。

きっと、俺らが求めていたもの。

 

Yu「あっ...!」

 

見つけた。

鳥籠だ。

鳥を閉じ込めることもできないような、大きすぎる鳥籠。

エギルさんに見せてもらった、鳥籠の中身。

 

Yu「っ...!行くぞ...!」

 

俺とユイは一気に鳥籠までの道を行った。

その音に反応してか、鳥籠の中の人影がさっと顔を上げる。

そして、こちらを見たように感じた。

 

Yu「アスナ、りん...」

ユイ「ママ...!ママー!」

 

俺とユイは鳥籠までの道を走る。

ユイが右手を振り上げると、右手が青く光る。

その手を振り払うと、鳥籠のドアが吹き飛んだ。

そのままの速度で、ユイはアスナに抱き付く。

 

As「ユイちゃん!!」

Yu「...っ...」

 

母子の感動を見ていて危うく泣きそうになったが、俺の本題はこっちじゃない。

視線を反対側に向けると、黒い髪をを揺らした妖精がこちらを見つめている。

 

Yu「...悪い、随分と遅くなった」

R「ううん。...ずっと、信じてたよ...っ」

 

崩れる彼女の体を抱きとめ、彼女の涙を拭いながら、俺はしばらく、この時間を嚙み締めた。

 

 




妖精王戦に時間に割きたいので、ここで一回切ります。


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43話 偽りの騎士王

やっと書けた。
これ書き始めたのは三月の初めぐらいなんだけど、7千とか行っちゃったもんで...
しかも3/4の分でストック尽きちゃったしやべえやべえと思いながら書いておりました。


Yu「...さ、帰ろう」

 

俺とりん、アスナとユイは手をつないで、とりあえず鳥籠から出る。

 

Yu「ユイ、ここからアスナとりんのログアウト、出来るか?」

ユイ「いいえ、この二人のステータスは複雑なコードで拘束されています。解除するにはシステムコンソールが必要です...」

Yu「コンソール...そんなのあったか...?」

 

ユイと歩いてきた道の中にはそんなものはなかった。

 

R「あ、あの...ラボラトリーで、それらしきものを見ました...」

Yu「ラボラトリー...白い通路のこと?」

R「はい...。もしかして、そこを通りましたか?」

Yu「通ったけど...?」

R「何か...ナメクジみたいなの、いませんでした?」

Yu「ナメクジ?いや、見てないけど...」

R「もしかしたら...オベイロンの手下の人たちがうろついてるかもしれなくて...」

 

話が呑み込めない。

オベイロンの手下?

そもそもここにはプレイヤーは入れない。

 

Yu「...だからか」

R「え?」

Yu「この空間、実は俺らは入れないんだ」

As「え?」

Yu「ユイの協力とアスナの落としてくれたカードがあって、初めて入れたんだけど...」

 

本来プレイヤーが入れない場所。

そんな場所に見回りは必要ないが、誰かが脱走したから見回り、徘徊をしている。

そして、徘徊の目的はもっと他にある。

まぁ、そんなことを考えるのは、ここを出た後だ。

 

Yu「とりあえず下に降りよう。下には降りれるはず...っ!」

 

突如、世界が重くなった。

しかし、ラグとかそういう類の重さではない。

体だけ、突如重くなった。

 

Yu「アスナ!りん!ユイ!無事か!?」

ユイ「ママも私も大丈夫です!」

りん「私も、平気...!」

 

姿が見えたがいずれも苦しそうだ。

そして、そういう彼女たちの声は、少し歪んで聞こえた。

この状態における専用のデバフだろうか。

いや、この状態は人為的なものだ。

そう思っていると、突然ユイが苦しみだした。

 

ユイ「あ...っ...皆さん...気を付けて...何か、よくないものが......!」

 

そう言うと、ユイは消えた。

 

Yu「ユイ!?」

As/R「ユイちゃん!?」

 

キリトがいない間、せめて俺が二人を守らねば...。

そう思い、二人の体を抱き寄せようとした時、後ろの方から笑い声が聞こえた。

 

「やあ、どうかなこの魔法は。次のアップデートで実装予定なんだけどねぇ...ちょっと効果が強すぎるかなぁ?」

 

笑いを含みながらそう言う奴の姿を見る前に、アスナが嫌悪感丸出しの声で叫んだ。

 

As「...須郷!」

「チッチッ、ここでその名前はやめてくれるかなぁ?せっかくお客様も来てるんだ、自己紹介をしておこう。僕の名前は、妖精王オベイロンさ」

Yu「妖精王...オベイロン...あんたが?」

 

そいつの姿を見て、これほど作り物みたいな顔を見たことがない、と思った位には端正な顔立ちだった。

 

オベイロン「そうさ、僕こそがこの世界の神さ。あぁ、そうか、君がアオヤミ君...いや、ユイトくんと呼ぶべきだろうねぇ...」

 

綺麗な顔を歪めながら俺のリアルネームを呼ぶ。

 

Yu「あんた、なんで俺の名前知ってんだ...!」

オベイロン「調べればいろいろと出てくるものさ...まぁ、それはそれとして...妙のプログラムが動いてたな...」

 

そいつは口の端を歪めながら、青いウィンドウを眺めていたが、やがて鼻を鳴らしてそれを閉じた。

 

オベイロン「逃げられたか。あれは何だい?そもそも、どうやってここまで来たのかな?」

Yu「飛んできたんだよ...あんたが作ったこの翅でな...」

オベイロン「...ふん、まあいい。君の脳に直接訊けばいいことだ」

Yu「...は?」

オベイロン「僕はね、こんな仕掛けを酔狂で作ったわけじゃないんだよ...」

 

そう言うと、そいつは手を広げて演説をするかの如く語り始めた。

 

オベイロン「約300人の元SAOプレイヤーの皆さんの献身的な協力によって、思考・記憶操作技術の基礎研究は8割がた終了している。かつて誰も為し得なかった人の魂の直接制御という神の業を、僕はもう少しで我が物にできる!そのうえ、本日めでたく実験体を手に入れたわけだ!いやぁ、楽しいだろうねぇ!!君の記憶を覗き、感情を書き換えるのは!!考えただけで震えるねぇ!!...まぁ、あの英雄キリト君じゃないのが残念なところだけど...」

Yu「人の記憶を弄る...?そりゃ、確かに神業だな...!」

 

演説じみた台詞を聞きながら、高重力の中で何とか片膝立ちにはなる。

足を払われたらまた崩れ落ちるだろうが、とりあえずは抗う準備はできた。

 

オベイロン「君、性懲りもなくナーヴギアで接続してるんだろう?それなら立場はほかの被験者と一緒じゃないか?まったく、子供は馬鹿だねぇ!子犬だって一回蹴っ飛ばせば、しちゃいけないことぐらい覚えるだろうに!」

Yu「はっ...生憎とゲーマーっていうのは、そういう人種なんでな...!」

 

口から出まかせを言わなければ、この空間に押しつぶされそうになる。

心に余裕がないと、この雰囲気に負けそうになる。

 

As「ユイト君!今すぐログアウトして、現実世界で須郷がしていることすべてを暴いて!!」

Yu「...っ!...でも...いや、わかっ...?」

 

アスナに言われるがままに、左手の指二本を下に振った。

しかし、ログアウトボタンどころか、ウィンドウすら、出てこない。

 

オベイロン「アハハハハ!!ここは僕の世界だ!誰一人逃すものか!」

 

そう言うと、妖精王は左手を掲げ、指を鳴らした。

すると、上から輪が付いた鎖が四つ降りてきた。

そのリングをアスナとりんの手首に取り付ける。

 

As「きゃっ!」

R「っ...!」

Yu「やめろっ...!」

 

鎖が上に巻きあがり、二人の体が宙に浮く。

手だけで吊り上がってるため、二人の顔が歪む。

 

オベイロン「いいねぇ...やっぱNPCの女じゃのその顔はできないよねぇ...」

 

そいつはアスナの後ろに回り、髪を触って息を吸い込んだ。

その一連の動作がとても慣れているように思えて、嫌悪感を出さざるを得なかった。

 

オベイロン「うーん...いい香りだ。現実のアスナ君の香りを再現をするのに苦労したんだぁ...病室に解析機まで持ち込んだ努力を評価してほしいねぇ...」

 

恍惚に浸りながらアスナの髪を梳くオベイロン。

 

Yu「アスナから離れろっ!」

オベイロン「はぁ...やれやれ、観客はおとなしく、這いつくばって居ろっ!!!」

Yu「がっ...!」

 

オベイロンに足を払われ、うつ伏せにされる。

そのまま俺の背中にある剣を抜き、俺の背中に突き刺した。

 

Yu「ぐっ...」

 

刀身の中腹あたりが俺の胸辺りにあるのを感じる。

鉄の塊が体を貫いている感覚が気持ち悪い。

 

オベイロン「システムコマンド!ペイン・アブソーバ、レベル8に変更!」

 

オベイロンがそう言うと、俺を貫いている剣の痛みが増した。

 

Yu「ぅ...っ...!」

オベイロン「くくく、まだツマミ二つだよ、君。段階的に強くしてやるから楽しみしていたまえ。レベル3以下になると現実でもショック症状が残る恐れがあるらしいけどねぇ?...さて」

 

手を叩きながら向かった先は、黒髪の妖精の方。

 

Yu「や...めろ...!」

 

オベイロンは俺の抗議にも耳を貸さず、りんのことを弄り始める。

 

オベイロン「君のことはよく知らないけど...まぁ、可憐な子だねぇ...」

R「やめて、ください...」

Yu「離れろ...離れろ...っ!!」

 

俺を留めている杭は、一向に抜ける気配がない。

しかし、一刻も早くこれを抜かなければ、りんを助けることも、あいつを殴り飛ばすこともできない。

どうにかして、抜けなければ...

 

R「だい、じょうぶ、です、ユイトさん。こんなことで、傷つけられたり、しませんから」

オベイロン「くっくっくっ...そうでなくっちゃねぇ...君たちがその誇りをいつまで保てるか、楽しみでしょうがない...三十分?一時間?なるべく長く楽しませてくれたまえよ...この愉しみをっ...!」

 

そう言うと、オベイロンはアスナとりんのワンピースにある胸元のリボンを引きちぎった。

 

Yu「っ...!...やめ、ろぉ...!!」

 

二つのリボンは俺の眼の前に落下し、引きちぎられたワンピースからは素肌が覗く。

オベイロンはりんの顔に手を這わせながら、アスナの顔に自分の顔を寄せ、そのまま舐め始めた。

 

オベイロン「くくっ...僕が今考えてることを教えてあげようか...この場所でたっぷり楽しんだら、君の病室に行く。ドアをロックして、カメラを切ったら、あの部屋は密室だよ、君と僕、二人きりさ。そこに今日の録画を流しながら、君ともう一度じっくり楽しむ。君の、本当の体とね。あぁ、もちろん君もあとで、たっぷりと愉しむさ...。まず心の純潔を奪い...しかるのちに体の貞節を汚す!面白い、実にユニークな発想だと思わないかい!?」

 

声が裏返り、狂ったように笑うそいつを見ながら、俺はただただ地面に伏しながら、手を握りしめていた。

 

何もできない。

俺はプレイヤー。

あいつはゲームマスター。

神を自称するだけあって、この世界を思いのままにすることができるあいつと、何もできない俺。

惨めで、矮小な虫、それが俺。

ただ、悔しかった。

恋人が辱められているのに、目の前にいるのに何もできない無力さに腹が立った。

 

 

ーーそれだけで、俺がゲームマスターに反逆する理由になりえた。

 

 

ゲームマスターはいまだアスナの顔に舌を這わせ、涙を舐め取っている。

 

オベイロン「あぁ、甘い甘い!もっと僕のために泣いておくれよ!!」

 

握り拳を開いて、床に手を突く。

 

Yu「ふざ、けるなよ」

オベイロン「えぇ?」

 

背中から剣を無理やり引きはがし、上体を起こす。

 

Yu「アスナは、お前のものじゃない」

オベイロン「はっ!キリト君には言ったけどねぇ、僕はアスナ君と結婚する運びなんだよ!」

Yu「...だとしたら、婚約者にする態度じゃねえよ、それ」

 

足裏を地面につけ、剣を拾い上げて対峙する。

 

Yu「重力魔法、掴んだよ」

オベイロン「ははは!!魔法一個掴んだぐらいで...調子に乗るなっ!!」

Yu「ぐっ...」

 

重圧がさらにかかる。

立っていられなくなる。

しかし、ここで折れるわけにはいかない。

ここで折れてしまっては、何のためにここまで来たのかわからない。

 

Yu「...こんな、所で...寝て、られっかよ...っ!!」

オベイロン「ほぉ...さすがゲーマーだねぇ...その根性だけは認めよう」

 

オベイロンはようやく二人から手を離し、俺に向き合った。

重力魔法を掴んだとはいえ、体にかかる重力は変わらない。

立っていられるのがやっとの状態で、奴と向きあう。

 

Yu「はっ...」

オベイロン「くっくっ...その状態で僕に挑むのかい?無謀だねぇ!」

Yu「っ!」

 

奴の蹴りをすれすれで避ける。

死角から飛んできた拳をどうにかしてずらす。

 

オベイロン「はっ!腐ってもゲーマーだね!どこから飛んでくるかだけ考えて生きてるんじゃないのかい!?」

Yu「うるせぇ!」

 

しかし、これでは防戦一方だ。

奴の攻撃をかわすだけでは有効打がない。

そもそも、あいつにHPという概念があるのかさえ怪しい。

 

オベイロン「ははは!避けてるだけじゃないか!どうしたんだい!?」

Yu「ちっ...!」

 

あいつの攻撃が特別早いなんてことはない。

俺が、回避がぎりぎり間に合うぐらいの速度でしか動けないのだ。

それで攻撃するなんて、もってのほかだ。

 

Yu「だから、どうした...っ!」

 

剣を横に振る。

その反動で体がよろける。

当然当たらない。

 

オベイロン「お?...何だい、動けるのか」

Yu「っ...」

 

目の前の端正で歪んだ顔を見つめる。

反吐が出るほど作り物だと分かる顔だ。

だからこそ、吐き気がする。

知らぬ間に止まってた息を吐き出す。

俺の攻撃には当たらないと踏んで目の前にいるそいつを、思いっきり殴り飛ばす。

 

オベイロン「がっ!」

 

頬を抑えてなおこちらを見るオベイロンに、剣の横薙ぎを食らわせようとしたところで、甲高い声がその動作を止めた。

 

オベイロン「システムコマンド!オブジェクトID《ブラックプレート》をデリート!」

 

そう言った瞬間、俺の手から剣が消えた。

 

Yu「は...?」

オベイロン「ははは...ははははは!!!言ったろう!?僕は神なんだ!この世界の神だ!この世界にある物体ぐらい、僕の自由で消したりできるさ!!」

 

しかし、俺は剣が消えただけ。

あいつは剣すら持ってない。

なら、殴り飛ばせばいい。

しかし、続けて詠唱を始めた。

 

オベイロン「システムコマンド!オブジェクトID《エクスキャリバー》をジェネレート!!」

 

そう言うと、オベイロンの手の中に、黄金の剣が出現した。

 

オベイロン「知ってるかい?これはエクスキャリバーと言ってね?この世界で一本しかない、最強の武器なんだよ!」

Yu「そんな剣がコマンド一つで出せるんだから、世も末だな...」

オベイロン「いやしかし、最強の僕と丸腰の虫では戦力差が明らかだねぇ...あぁそうだ!システムコマンド!オブジェクトID《カリバーン》をジェネレート!」

 

オベイロンの左手に、右の剣とは違う輝きの剣が現れた。

その剣を俺側に放る。

 

オベイロン「使えよガキ。それは偽剣カリバーンと言ってねぇ、これに似せられて造られた何の価値もないクズ武器さぁ!!」

Yu「クズ武器、ねぇ...」

 

放られた剣を拾う。

しっかりとした重み。

あの世界(SAO)でも、この世界(ALO)でもよく持った、この感じ。

あいつはこれをクズ武器と言った。

確かに、一般プレイヤーからしたらこれは偽物で、つくりものの剣なんだろう。

しかし、俺は違う。

この剣が《カリバーン》であることだけでいい。

この剣が、あの愛剣と名前が一緒なら、それでいい。

 

オベイロン「ひっひっひっ...ステータスは見たかい?さっき君が使ってた武器の方が強いんだよ!だけど、剣があるだけありがたいと思えよガキ!!」

Yu「あぁ、感謝するよ」

オベイロン「仕方ないからハンデをくれてやろう。重力魔法を切ってやるよ」

Yu「あぁ、助かるよ」

 

勝利を確信したような笑みで、こちらを見る妖精王。

その笑みすらも、負け惜しみにすら思えてきた。

 

オベイロン「さあ来いよガキ、先手はくれてやる」

Yu「じゃあ、遠慮なく」

 

足を踏み込む。

さっきとは比較にならないスピードで、体が流れる。

そのまま、右から左に一薙ぎ。

奴はスピードにビビって仰け反り、足がもつれる。

 

オベイロン「な、なんだ、その速さっ...!」

Yu「あんたがゲーマーごときで乏した、俺の2年の速さだよ。GMアカウントでしかログインしたことないような奴には、たどり着けない速さだ」

 

 

「そうだ。お前がやってきたことは、ただの盗みだ」

 

オベイロン「何っ...!?」

Yu「あっ...!」

 

俺の後ろから声を上げ、歩いてきたそいつは、俺の肩を叩いてこう言った。

 

K「行くぞ相棒」

Yu「あぁ、やるぜ!」

オベイロン「なぜ、なぜお前がここにいる!?」

K「裏技ってやつだよ。あんたに教える義理は、毛頭ないけどな」

オベイロン「ぐっ...!システムコマンド!オブジェクトID《エクスキャリバー》をジェネレート!!」

 

しかし、何も起こらない。

 

Yu「聖剣二刀流とか、頭悪」

オベイロン「システムコマンド!言うことを聞けこのポンコツが!!神の、神の命令だぞ!!」

K「神...?違うな、あんたは盗んだんだ。この世界も、住人も。盗んだ玉座の上で、ただ踊り狂ってただけの、泥棒の王だ」

オベイロン「この、ガキども...後悔させてやるぞ...その首そろって刎ねて飾ってやる...!」

 

奴は自分の権限がプレイヤーと同じになっているにも関わらず、大口を叩いている。

キリトは自分の剣をオベイロンに突き付けた。

 

K「決着をつけよう、泥棒の王と、鍍金の勇者、それに...」

Yu「偽りの騎士王...とな」

K「システムコマンド、ペイン・アブソーバをレベル0に」

オベイロン「な、何...?」

 

8にした時ですら、割とリアルな痛みだったのに、0にしてしまったらどんな痛みが襲うのだろうか。

 

Yu「キリト、準備は良いか(聖剣、解放)

K「あぁ、行くぜ相棒(時間稼ぎは任せろ)。逃げるなよ須郷。あの男はどんな場面でも臆したことはなかったぞ。あの、茅場晶彦は!」

 

その名を聞いた瞬間、オベイロンの顔色が目に見えて変わった。

 

オベイロン「か、かや...茅場、ヒースクリフ...!アンタか、またアンタが邪魔をするのか!死んだんだろ!くたばったんだろアンタ!なんで死んでまで僕の邪魔をするんだ!アンタはいつもそうだ!いつもいつも、いつだって何でも悟ったような顔をして!僕の欲しいものを端から攫って!!!...お前らみたいなガキに何が分かる!!アイツの下にいるってことが、アイツと競わされるのがどういうことか、お前らに分かるのかよ!!」

K「わかるさ、俺もこいつも、あの男に負けて家来になったからな。...でも、お前と違ってあいつになりたいとは思ったことはないぜ」

オベイロン「ガキ...この...ガキ共がァァァァ!!!」

 

オベイロンが聖剣を振り回し向かってくる。

キリトがそれを受け止め、奴の剣を払うと同時に、奴の頬に切っ先が触れた。

 

オベイロン「アツッ!い、ああああ...」

 

さっきまでの態度とは裏腹に、弱腰で涙ぐむ妖精王は、俺に目には不快なものとして映った。

その考えはキリトも同じだろう。

そのままの動作で、奴の左手を切り落とした。

 

オベイロン「痛っ...!」

 

その一言は、キリトの逆鱗に触れた。

 

K「痛い...だって?...お前がアスナたちに与えた痛みは、こんなもんじゃない!」

 

そのままキリトは、奴の体をこちらに蹴り飛ばす。

 

Yu「全部もってけ、俺のマナ...聖剣、顕現...!」

オベイロン「何だよそれ、知らないぞ!僕の世界に、そんなもの...」

Yu「この世界は、あんたのものじゃない!」

オベイロン「黙れっ!!このガキィ!!!」

 

無策のまま突っ込んでくるオベイロンを、柄で止め、グーで殴る。

 

オベイロン「ぐっ...」

Yu「痛がるなよ。あんたがやってきたことの痛みは、こんなもんじゃ済まされないからな...!」

 

言い終わったとき、手の中の聖剣が一段と眩く光る。

 

Yu「(この戦いが終わったら、ちゃんとしたルートで、お前を迎えに行く。だから、力を貸せ、カリバーン)...来いよ、神様ァ!!!」

オベイロン「あぁぁぁぁぁ!!」

 

()()()()()()本物の聖剣を振り回して向かってくるオベイロン(泥棒虫)

しかし、()()()()()の、本物の聖剣には、意味を成さない。

偽物では、あるが。

 

オベイロン「死ね!ガキィ!」

 

 

 

 

Yu「エクス...カリバー!!

 

 

 

振り下ろした光の剣を、奴は必死に抑えている。

しかし、勝敗はついた。

光の剣は、徐々に高度を低くしていく。

 

オベイロン「嫌だっ!!僕が、この僕がっ!こんな奴らにっ!!」

 

何か喚いているが、もう遅い。

 

Yu「いいから、とっとと...くたばりやがれぇ!!!

 

オベイロン「アァァァァァァ......」

 

 

 

光の剣は、オベイロンを白い炎に変え、それが消えると同時に、光度を失い、そして砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とりあえず、虫と決着がつきました。
駆け足な上にごちゃごちゃな気がするけど、そこは二次創作という風に見逃してほしかったりします。



...今後に関するアンケート張り付けておくので、軽く答えてくれたらうれしいです。


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44話 全ての終わり(始まり)

ようやくここまで行くことができた。
今まで読んでくださった皆様には感謝しかないです、本当にありがとうございます。
それでは、どうぞ。


Yu「っ...はぁ...っ...!」

 

アイツを倒すために振り絞った力が、すべて消え失せた。

体一つ満足に動かせず、地に全身をつけたまま、何もできずにいた。

視線だけをどうにか動かして、アスナたちの方を見る。

キリトが彼女らを縛り付けていた鎖を切り、キリトはアスナと抱擁を交わしている。

 

Yu「ぁ...俺も、いかな、きゃ」

 

どうにか体を持ち上げて、なんとかりんの元に行く。

 

R「あっ...ユイトさん...わっ...!」

Yu「...っはは...だっせぇ、俺」

 

力が抜けて、りんにもたれかかっている俺。

 

R「そんなことは、ないです。ユイトさんは、私たちを、守ってくれました」

Yu「...守って、ないじゃん...!りんも、アスナも...あんなに...!...っ?」

R「自分を責めないでください。私もアスナさんも、無事ですから...」

Yu「...っ...!」

 

りんの言葉で、今まで溜まってたものが、目から滴って吐き出されて行く。

どうにか嗚咽だけは押さえて、声は殺した。

 

R「大丈夫です。あなたは、よく頑張りましたから...」

Yu「...これ、以上...甘やかさないでくれ...これ以上、りんの前で...泣きたくない...」

 

頭を撫でられて、耳元で甘やかされているのに、泣かない男はいないと思う。

 

K「あー...お二人さん、そろそろいいか?」

Yu「...ん、悪い...ありがと、りん。もう、大丈夫」

 

キリトに声を掛けられ、ようやくりんから離れられた。

 

K「とりあえず、帰ろうか」

Yu「あぁ。...けど、俺らって自分の意思で帰れるのか?」

K「そこは、俺の裏技だ。...と言うか、たぶんユイトは帰れるぞ」

 

そう言われて、左手を振ると、慣れ親しんだウィンドウが現れた。

ログアウトボタンを探すと、ちゃんと光っている。

 

Yu「あ、マジだ。...りんがログアウトしたの見てから、俺も帰るよ」

K「了解。...じゃあまずは、りんりんさんから」

R「はい...」

Yu「りんがログアウトしたら、俺もすぐ落ちる。すぐに、会いに行く」

R「はい...!待って、ます...」

 

りんの腕に、キリトの青い指先が触れると、りんは青い光に包まれ、足先から消えていった。

 

Yu「じゃあ、キリト、アスナ。また、後で...になるのかな?」

K「多分な。アスナとりんりんさんの病院一緒だし、たぶんかち合いそう」

As「そうだったら、後でユイトくんも来てね」

Yu「...了解」

 

左手を振り、ウィンドウを出す。

出てきたログアウトボタンを押す。

 

Yu「じゃあ、後で」

K「あぁ」

As「うん」

 


 

唯斗「...ん...?」

 

多少の眩暈を覚えながら、ナーヴギアを外す。

 

唯斗「何してんだ、結奈」

 

俺の布団の上に乗ってたのは、義妹の結奈だった。

 

結奈「だ、だって...お兄ちゃん帰ってこないし...」

唯斗「悪かったよ、ゲーマーの兄貴で」

結奈「それは知ってるから大丈夫だよ...えっと...好きな人は、助けられたの?」

唯斗「うん...今からその人のとこ行ってくる」

結奈「ん、行ってらっしゃい」

 

...本当にいい妹だ。

とりあえず外は寒そうなので、アウターを着て外に出る。

寒そうって言ったけど、訂正。

絶対に寒い。

だって、雪降ってるし。

 


 

唯斗「はぁ...さっむ」

 

病院までの道のりを小走りで行く。

俺はまだ、あの世界でりんを助けたことを現実と思えていない。

いや、現実ではないからおおむね間違っていない。

正確には、事実だと思っていない。

俺はただ偽りの妖精王と切り合ってただけで、束縛を開放したのも、ログアウトさせたのもキリトだ。

正直、俺なんかが会いに行っていいものかとも思う。

 

唯斗「...関係ねえよ、そんなこと」

 

俺が会いたいから会いに行くんだ。

そこに理由なんか必要あるか。

そう自分を騙し、病院への道を急ぐ。

このスピードで行けば、ギリギリ面会ぐらいはできるだろう。

そう考えているうちに、病院が見えてきた。

少し駆け足で、敷地内へ急ぐ。

正門を潜り抜け、さらにスピードを上げようとした俺は、なぜかわからないが足を止めた。

何か、寒気がした。

この先、俺のちょうど真横に存在する白いバンを超え、一歩でも踏み出せばやばいと、体がそう忠告していた。

俺が止まると、

 

「あれ~?なんでバレたのかなぁ...あと、来るのが遅いねぇ...僕が風邪ひいちゃったらどうするんだい?」

 

と、声が聞こえ、一人の男がバンの影から出てきた。

唯斗「あ、あんたは...オベイロン...?」

 

目の前に現れた男は、髪が乱れ、ネクタイが解けかけ、その解けているシャツからは何かの跡が浮かんでいる。

それに、この声。

あの樹の上で聞いた声と同じ。

ならば、今ここにいるこいつはオベイロンで、須郷という人間なんだろう。

 

須郷「そうだねぇ...僕はオベイロンだったよ...お前達ガキのせいでそうではなくなったけどねぇ...!」

 

そう言うと、須郷はポケットからカプセル入りの瓶を取り出し、そのカプセルを口に入れると、かみ砕きながら言った。

 

須郷「まだ痛覚が消えないよ...ま、いい薬があるから構わないけどさ...」

唯斗「あんた、まだなんか企んでんのか」

須郷「当然さ!まぁ、もうレクトは使えないけどね。僕はアメリカに行くよ。僕を欲しいって企業はたくさんある、今までの実験で蓄積したデータだってある、あれを使って研究を完成させ、僕は...現実世界の神になる!...あぁ、まぁ、片付けることはいろいろとあるけどね。とりあえず、君は殺すよ、ユイトくん」

 

そう言い終わるや否や、銀色の物体を持ってこちらに向かってくる。

当たればまずいことになると思い、咄嗟に身を捻って回避したが、バランスを崩したせいで、腕がその物体に掠る。

 

唯斗「...?...っ」

 

その物体に当たった場所が熱い。

見ると、その部分のアウターが千切れている。

いや、切られている。

その部分から何かが流れている感覚。

これは、血だ。

とすれば、須郷が持ってるその物体は...。

 

唯斗「あんた、病院になんてもん持ち込んでんだ...!」

須郷「ほら、立てよ」

 

俺の脇腹あたりに、須郷の尖った靴が蹴りこまれる。

蹴られた部分と、切られた腕が痛覚を送ってくる。

それより、こいつは殺すと言っていた。

須郷の右手に握られているのは、大ぶりのナイフ。

こいつは、これで俺を刺し殺すつもりだろうか。

それとも、首を搔き切って殺すつもりなのか。

前者なら簡単だ、心臓を貫けばそれで終わり。

後者は難しいが、俺を抑え込めばどうにかなる。

故に、この状態は非常にまずい。

 

須郷「ほら、立てよ、立ってみろよ。お前、あっち側で散々調子に乗ってたな?2年の結晶だとか?魔法を掴んだだとか?わかってんのか?お前みたいなゲームしか能のないガキは、本当の力なんて何も持っちゃいない、すべてにおいて劣ったクズなんだよ。なのに...僕の、この僕の足を引っ張りやがって...その罪に対する罰は、当然死だ。死以外ありえない!」

 

須郷が俺の腹の上に足を乗せる。

継続的に、腹と腕から痛覚が送られてくる。

目線をそいつの足から顔の方に移すと、右手を大きく振りかぶっていた。

その手の中には、あのナイフが。

 

唯斗「っ...!!」

 

無意味と分かっていながらも、反射的に目を閉じた。

すると、耳元で金属が当たる音がした。

それと同時に、頬を切られたのか、熱を帯びている。

そっちの方を見ると、ナイフがコンクリートを数ミリ抉っている。

そんな威力で降り下ろされたら、俺の顔はどうなってしまっていたのか。

そんなことを考えている間にも、須郷の右腕はもうさっきの場所にはない。

また、大きく振りかぶっている。

 

須郷「あれ、おかしいな...ちゃんと狙ったはずなんだけど...まぁ、いいや」

 

ナイフの切っ先が、さっきの衝撃で少し欠けている。

そんな些細なことはどうでもいい。

ここらは逃げる術を探さなければ。

そう思ったとき、ふと腹の重みが消えてることに気付いた。

須郷の足が俺の腹の横に移動している。

チャンスは今しかない。

 

須郷「死ね、小僧ぉぉぉ!!!」

 

ナイフが下りてくる。

人間は死の狭間で走馬灯を見るという。

一説によると、今までの経験から、どうにかその死を回避する方法を脳内検索しているとのことだ。

なんでもいい、この状況を打破する何か。

方法は...!

 

 

 

ーー頭の中に、無意味な(浮遊城:アインクラッドにいた時の)映像が流れてくる。

内容は、最近押し倒してくるエネミーが多いから、それの対処法を考えようというものだった。

そう言えば俺も、それに参加して。

なんか有効打を見つけて。

そんな会話が、あったような...

 

 

 

 

唯斗「...!!」

須郷「ぐっ!...何!?」

 

俺は右足を思いっきり叩きつけ、その反動で体を浮かせながら、左足で須郷の背中に蹴りを入れた。

 

右足は痛むが、この程度、動じるほどじゃない。

対して、俺が避けたことに対し、動揺半分、怒り半分で表情でこちらを見つめる須郷。

 

唯斗「ほんとの力は何も持ってない...それはそうだよ。俺はまだ学生だし、その手の習い事もしてない。けどさ、あんたはどうなんだよ、須郷さん。あんたは、ナイフ術の訓練でも受けてるのか」

須郷「はっ!うるさいねぇ!ガキが僕に説教なんかしてんじゃないよぉ!!」

唯斗「論点ずらすなよ...この、クズ野郎っ!!!」

 

俺は怒りのまま、須郷に突撃し、ナイフを持ってる腕ごと掴み、そのまま押し倒した。

ショックでナイフを手放した隙に、それを掴んで突きつける。

 

須郷「ひぃっ...!」

 

形勢が逆転したことで、須郷から余裕が消え、代わりに恐怖が現れた。

ナイフをちゃんと握り、そのまま奴の首まで持っていく。

 

須郷「ヒィッ!!ィィィ!!ヒィィィィ!!!」

 

奴の奇声で、自分が今何をしようとしているかを理解した。

このままこいつの首を切って殺してしまっては、俺はこいつと一緒、あるいはそれ以下になる。

正当防衛という言葉もあるが、別に俺は瀕死になったわけでもない。

殺すのは過剰防衛になって、それは罪になる。

それだけは、越えてはいけない一線だから。

 

須郷「ヒィィィィィィ...」

 

俺の下で、奇声が止んだ。

顔を叩いてみても、反応がない。

あまりのショックで気を失ったらしい。

これ以上乗りかかる理由もないので、とりあえず降りて、ナイフをバンの上に置く。

奴の首からネクタイを取り、手首同士を交差させ、その状態で縛る。

病院側から見えるように寝かせ、一息つく。

この時間ではもう面会の時間は過ぎてしまっただろうか。

そう思ったとき、後ろから足音がした。

 

和人「...唯斗」

唯斗「何だ、和人か」

 

そういえば、こいつも面会に行くと言っていたか。

 

和人「お前、その傷...」

唯斗「...須郷に、やられた」

和人「っ!?大丈夫なのか!?」

唯斗「脅したら気失って倒れたよ。そこで寝てる」

 

バンの方を指さすと、和人は顔を歪めた。

 

唯斗「...とどめさそうとか、考えんじゃねえぞ」

和人「...いや、バレたか」

唯斗「二年一緒にいれば、わかるさ。憎い奴を殺したい衝動ぐらい、抑えろよ」

和人「わかってるよ...」

唯斗「さ、二人を迎えに行こうぜ。今頃起きて待ってるよ」

 

そう言って、自動ドアをくぐる。

 

唯斗「あの...まだ面会って、大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。何号室でしょうか?」

 

この場面で、頬の傷に触れられないのは、ありがたかった。

 


 

エレベーターを一番上のフロアで降り、和人と途中まで同じ道を行く。

 

唯斗「アスナは...そっちだっけ」

和人「あぁ。...またあとで、になるのか?」

唯斗「今日は遅いし、リハビリの時にでも見学しに行くよ」

和人「わかった。アスナにも言っとくよ」

 

そう言って、ちょうど現れた分かれ道を、俺は左に、和人は右に。

 

病院内は走ることを禁止されているが、今くらいは目を瞑ってほしい。

早く、一秒でも早く。

彼女の元にたどり着きたい。

 

視線を名前のプレートのところで固定しながら、小走りで抜けていく。

 

唯斗「...ここだ」

 

『白金燐子』と書かれたドアの前で止まる。

ドアの右側に設置されたスリットにカードを通し、ドアのロックを解除する。

 

アンロック状態であることを意味する緑色のランプが光ると、ドアが開く。

何かの花の香りがする。

この香りは、確か薔薇だったか。

嗅いだことは数えるぐらいしかないが、なぜかそう思った。

 

室内の照明はすでに消え、雪の名残で白い光が外の窓から差し込んでいる。

その部屋の中を、一歩一歩、地面を踏みしめるようして歩く。

 

カーテンの目の前までたどり着いた。

 

けれど、ここから腕が伸びない。

 

カーテンを開けて、なおナーヴギアを被っている姿を見るのが、何よりも怖い。

何度も見てきたその光景を振り払い、腕を伸ばしてカーテンを掴む。

そのまま、一気に開けた。

 

 

 

 

 

唯斗「っ...あ...」

 

上体を起こし、濃い青のヘッドセットを膝に乗せ、外を眺める少女。

今まで望んでいた光景が、今目の前に広がっている。

 

唯斗「...りん」

 

小さく、囁きかける。

黒髪の少女はその言葉に反応して肩を震わせ、続いてこちらにゆっくり振り返る。

まだ、どこにも焦点が合ってないような眼が、俺を捉える。

そして、彼女の口が小さく震える。

 

燐子「ゆいと、さん」

 

あの世界でずっと聞いた、けど響きの違う声が聞こえる。

左腕をこちらに伸ばしているが、その腕は細く、弱々しい。

その手を支えるように腕を持ち、そのままりんの方へ歩く。

 

唯斗「全部、全部、終わったよ...」

燐子「はい...あまり、聞こえないけど...ユイトさんのこと、わかります」

 

右手が俺の頬に触れ、指が俺の傷の上を往復する。

 

燐子「終わったん、ですね...全部...」

 

弱い力で、抱きとめてくる彼女に従って、りんの肩口に顔を埋める。

抑える間もなく、涙がこぼれる。

止まらないそれを、どうにか拭って、りんの顔を真正面で見つめる。

 

唯斗「自己紹介、しておこう?」

燐子「...はい」

 

息を吐いて、緊張を無くす。

 

唯斗「...俺から。蒼闇、唯斗」

燐子「私、ですね。白金、燐子です」

 

どっちからともなく笑いかけ、互いを抱きしめ合う。

 

唯斗「お帰り、燐子」

燐子「はい...!ただいま、唯斗くん...!」

 

目を閉じると、金の剣を背中に吊った男と、白い剣を腰に吊った女が、手をつなぎ、向こうへ歩いて行った。

 

唯斗「...これで、終わった。何も、かも」

燐子「終わって、無いですよ...?ここから、始めるんですから」

唯斗「あぁ、そっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前書きでも本編でもこれで終わりみたいな感じ出したけどね、まだ一話だけあるの。ごめんね。


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45話 平和の象徴

二話続けてカロリーが高すぎたので、この回はゆるっと。
あと申し訳ない、前回あと一話だけって言ったけど、訂正。
この回含めてあと三回、やらせて。


ーー数か月後。

 

とある学校にて、授業終了の時間を知らせるチャイムが鳴った。

 

「それでは、今回はここまで」

 

 

その言葉で、教室の空気が弛緩する。

そそくさと荷物をまとめる俺に、友人が話しかけてきた。

 

 

「あ、蒼闇。食堂行く?」

唯斗「え?いや、今日は...」

 

 

俺が言いどもると、別の友人が割り込んでくる。

 

 

「無理無理。剣士様は今日青薔薇園に行くんだからよ」

唯斗「剣士様ってやめろよ...ま、そういうわけだ。じゃ」

 

 


 

 

唯斗「...てか、青薔薇園ってなんだよ...」

リサ「あ、ユイト!こっちこっちー!」

 

 

う~ん...準備が早いこと...

 

 

友希那「遅いわよ、何をしていたの?」

唯斗「え、今さっき終わったばっかですけど...?と言うか皆さん、やけに早い気が...」

紗夜「学年が一番上ですからね」

唯斗「それ理由になるんすか」

リサ「まーあたしたちは空きコマだったんだよ~」

唯斗「...あこも同じ理由か?」

あこ「そうだよ!」

 

あぁ、そうなのね。

 

唯斗「というか、それなら先に食べてればいいのに...」

リサ「え~?なんでそんな寂しいこと言うの~?」

紗夜「...今井さんがそれを言うのは違う気がします」

リサ「...あ!...許して、燐子」

燐子「わ、私は別に...」

唯斗「何だ、そういうことか」

友希那「...あんまり見透かした態度取ってると、嫌われるわよ」

唯斗「...それ、友希那()()には言われたくなかったですわ」

 

まぁ、理由は察した。

 

唯斗「すみません、皆さん。俺の配慮が足りてませんでした」

リサ「ちょっ!?大丈夫だって!誰も怒ってないよ!ねっ!?」

紗夜「...そこまで畏まられると、こっちが逆に困るというか...」

唯斗「目上には敬意を払えって、生みの母さんのお言葉なんで」

燐子「ふふっ...いいお母さんですね。じゃあ、皆さん...」

 

6人「いただきます!」

 


 

リサ「そういえばユイト、徹底してるよね」

唯斗「何がです?」

 

リサの言葉に、覚えがない俺は首を傾げた。

 

リサ「ここじゃ一応さ、キャラネームで呼ぶのはだめってことになってるでしょ?」

唯斗「それは、そうですね」

リサ「だからほら、ユイトはキリトのこと和人って呼んだりしてるし」

唯斗「...ネットネームで呼ばないのって、常識じゃ...」

リサ「ん?」

 

ずらした目線の先に、元気よくミニハンバーグを頬張るあこが見えた。

 

唯斗「...例外も、いるけど」

リサ「あはは...」

 


 

6人「ごちそうさまでした」

 

手を合わせ、空の弁当箱に向けて頭を下げる。

 

燐子「...ユイトさん、作法がしっかりしていますね?」

唯斗「あ~...今の親の影響かも」

 

物心ついたころからやってたんだよな、これ。

「ご馳走様」はこれを作ってくれたすべての生物に対しての感謝だから、お礼はちゃんとしろって言われたような気がする。

 

友希那「...ユイト、放課後、時間はあるかしら?」

唯斗「えっと...今日は大丈夫、ですけど」

友希那「なら、講義が終わったら一緒に来なさい」

唯斗「...了解」

リサ「なんで了解?」

唯斗「いや、なんとなく」

燐子「逆らったら怖いから、ですよね?」

唯斗「は!?え、えっと、いや、そんなことは全然ないんで...え、え~...失礼しますっ!!」

 

友希那さんの眼が怖い。

これ以上追及される前に俺はその場から全力離脱を試みた。

結果:成功。

とりあえず、講義に遅れないようにしよう。

 


 

唯斗「ふぁ...」

 

午後の講義は眠くなるよな?

飯を食って腹を満たしたことで安心したから、眠くなるそうだ。

俺は後ろの席だから、バレるリスクは少ない。

が、寝ないに越したことはない。

 

「では、ここを...蒼闇、解いてみろ」

唯斗「...はい」

 

欠伸がバレたか知らないが、講師に指名された。

立ち上がって問題を見る。

 

問題は確率。

2個の賽を同時に投げ、和が7になる確率を求めろというものだった。

 

...正直言って、簡単すぎる。

 

一応は俺も高校生だったわけだし、これくらいはわかる。

 

唯斗「6通り。なので、回答は1/6」

「正解だ、座っていいぞ。なるべく講義中に欠伸はしないように」

唯斗「すみません」

 

...やはりバレていたようだ。

周りに軽く笑われながら席に着く。

 

唯斗「(でも、それは)」

 

...ある意味で、幸せなのかもしれない。

だってこれが、学生の本分だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ゆるっと書いてみた。
学生生活ってこんなだよね。
さ、あと二話、頑張ります。


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46話 驚異の演奏技術

さて、初めて歌わせたよ。
お楽しみに。




講義終了を知らせるチャイムが鳴った。

 

「それでは、今日はここまで。課題28をアップロードしておくので、確認して提出するように」

「起立、礼」

 

「ありがとうございました」

 

唯斗「はぁ...」

 

5限の講義が終わり、弛緩した空気の中で、いつもは頭を休ませるために少しだれるのだが、今日はそうはいかない。

友希那先輩...というより、Roseliaと約束がある。

 

「あれ?今日用事?」

唯斗「あぁ、そんなとこ」

「呼び出しか~?」

唯斗「...大体合ってる、じゃ」

 

これ以上友人との会話には時間は割けない。

カバンを持って教室を出る。

最上学年の授業も、最下学年の授業も終わっているはずだ。

...遅刻で怒られるのだけは、避けたい。

 


 

唯斗「っはぁ...はぁ...」

リサ「お、来たね。...って、そんな急がなくても...」

唯斗「いや、だって...」

リサ「友希那が怖い?」

唯斗「まぁ、はい」

リサ「ふーん。だって、友希那」

唯斗「っ!?」

リサ「冗談、冗談だって!そんな目で見ないでよ~...それに、そこに剣はないよ」

 

言われて気付いた。

肩の上、背中側に右手を握りながら置いていた。

かつての仮想世界(SAO,ALO)で、剣を吊っていた場所。

そこに無意識のうちに手を動かすようになってしまったら、この習慣を直すのは大変だろうなぁなんて考えてた時もあった。

けど、こんなに早くボロが出るとは。

 

リサ「あー...やっぱり、抜けない?」

唯斗「...はい」

リサ「まぁ、少しずつ抜いていけばいいんじゃない?」

燐子「そうですね。...私も、頑張りますから」

唯斗「...頑張るって、何を?...というか、いつからそこに?」

紗夜「ユイトさんが剣の構えを取った時からですね」

友希那「ユイトを待ってるからとリサが言ったのに、リサも戻ってこないから...」

唯斗「あー...えっと...すみませんでした」

友希那「まぁ、二人とも無事ならいいわ。行きましょう」

 

...ちなみに、この時の俺は、何も知らされてない。

 


 

Roselia一行と5分ほど歩いて、たどり着いた先は、ライブハウス「Circle」。

 

唯斗「ライブ、ハウス」

友希那「一度だけ、呼んだことがあるけど。覚えてないかしら?」

唯斗「あ、ここだったのか...それで、皆さんはここに何をしに?」

友希那「もちろん、ライブハウスなのだから」

唯斗「ライブ?」

友希那「...そうね。ミニライブ、にはなるけれど」

唯斗「ミニ?...まあいいか」

 

ここで聞くのもなんだしと思い、一緒に中に入る。

 

「いらっしゃい!」

友希那「16時からの予約だけれど、少し早めに入ってもいいかしら?」

「うん、今は3番が開いてるから、そこを使ってね。2時間でいいんだよね?」

友希那「はい、大丈夫です。...じゃあ、行くわよ」

 

友希那さんの後を追って、大きめの部屋に入る。

 

唯斗「うわ...広めのカラオケルームぐらいあるな...」

リサ「気分はそんな感じかなぁ。割と防音してくれるから、ほんとにカラオケルームかもね」

友希那「気分はそれでも、バンドとして遊びで曲をやってるわけじゃないわ。私たちは、本気でやっているから」

唯斗「本気度は伝わりますよ。...お遊びじゃないことぐらい、俺でも」

紗夜「さすが、本気で命を懸けてた人が言うと説得力がありますね」

唯斗「...紗夜先輩、そんないじりする人でした?」

燐子「ふふっ...」

あこ「りんりん、笑ってる!」

燐子「えっ?」

唯斗「おいあこ、こっち見んな...なんでみんなしてこっち見てんすか」

 

いつの間にかRoselia全員の目線が俺に向いてた、怖い。

 

紗夜「今の白金さんの笑顔があるのはあなたのおかげですから」

リサ「そーそー。ユイトのおかげなんだから、もうちょい自信持ってほしいなぁ~」

唯斗「いや、俺はそんな人間じゃないですから...」

あこ「りんりんね、暇があればすぐにユイ兄の話をするの!」

燐子「あ、あこちゃん...」

友希那「けれど、ユイトのおかげで燐子の演奏技術が上がったように聞こえるわ。この前の練習だって、調子が良かったように聞こえたわ」

燐子「あ、あれは、あの時...その、たまたまで...」

 

しどろもどろになる燐子先輩。

彼氏としては助け舟を出すべきなんだろうが、この5人の輪の中に入るのはちょっと気が引ける。

 

燐子「ゆ、唯斗さん...助けてください...」

唯斗「何をどうしろと...?...というか友希那さん、練習しなくていいんですか?」

友希那「そうね。燐子のことも気になるけども、それはまた、今度にしておきましょう。じゃあ、ユイトはそこに座って」

唯斗「はい...座りました」

友希那「準備はできたわね?」

 

Roseliaの眼が変わる。

 

友希那「じゃあ、行くわよ...!」

 


 

Blessing Chord/Roselia

 

(Ha ah...)

 

幾つもの足跡や 想いが貴方を象る

それは唯一無二の色で 輝き放ちLiving,living

手のひらの爪痕や 噛み締めた唇の痛みが教えた(生きること)

大切に抱きしめていよう

 

 

瞳や背中が物語る これまでの道のり

戦い続けてきた 貴方へ送る(La la la)

祝福の鐘(La la la)

最上に美しき この瞬間

(Congratulate)

 

Splendid life

顔上げて 誇れ自分を!(Shine to the world)

純白の光が満ちて!(Shine to the world)

天より今(Bright)舞い落ちる

幸せの花びらたちが

Ride on life!

気高さは心にある!(Shine to the world)

胸を張り 進み続けて!(Shine to the world)

大丈夫よ(Bright)貴方なら

何処まででも行けるから!

最後はHappily ever after!!

 


 

 

唯斗「...す...げぇ...」

 

圧巻だった。

ベースとドラムの安定感、ギターの疾走感、キーボードの躍動感、そしてそのすべてをまとめて有り余る圧倒的な歌声。

 

メインボーカルは友希那先輩だったけれど、他のメンバーも歌っていた。

語彙が消滅してすげぇとしか言えない。

 

友希那「...ふぅ...どうだったかしら?」

唯斗「何か...何かわかんないですけど...感動、しました」

友希那「そう。...それは、よかったわ。この曲は、あの世界のことを歌ったものだから...」

唯斗「...SAOのこと、を?」

友希那「えぇ」

 

道理で少し情景が浮かんだわけだ。

納得がいった。

 

友希那「それに、この曲の作詞は、燐子が少し手伝ってくれたの」

唯斗「...と言うと?」

友希那「...あとは、二人で話し合ったらいいんじゃないかしら?」

唯斗「丸投げかよ...まぁいいけど」

 

とりあえず、彼女があの世界を悪く思ってないことは分かった。

と、俺の携帯が鳴る。

 

唯斗「ちょっと失礼...あ?和人?」

 

連絡してきたのは和人。

とりあえず電話に出る。

 

唯斗「どうした?」

和人『どうしたって...お前、今日の集まり忘れたわけじゃないだろうな』

 

その言葉で、俺はルーム内の時計を見る。

5:21。

 

唯斗「...あ」

和人『その様子だと忘れてたみたいだな...』

唯斗「Roseliaの皆と一緒にいんだよ」

和人『ならそのまま連れて来いよ。6時だからな』

唯斗「ちょっと遅れるけど、いいか?」

和人『リズとかには言っとくよ』

唯斗「サンキュ、助かる。じゃ、後で」

 

電話を切る。

 

燐子「何の要件、ですか?」

唯斗「6時からSAO完全クリア記念のオフ会。俺も呼ばれてたんだけど、すっかり忘れてた」

 

すると、あこが食い気味で聞いてきた。

 

あこ「楽しそう~!ねね、あこたちも行きませんか!?というか、行っていい?」

唯斗「和人は連れて来いって言ってたけど、パーティとかそういうのが嫌いって言うなら全然」

リサ「アタシは平気だし、あこも大丈夫そうだけど...友希那と紗夜は?」

友希那「私は遠慮しておくわ。...あまり気乗りしないし」

紗夜「私も遠慮しておきます」

 

2人参加、2人不参加。

じゃあ、後は一人だけ。

 

唯斗「了解。...燐子先輩、どうする?」

燐子「え、私...?」

唯斗「人混み苦手って言ってたし...」

燐子「ううん...唯斗君が一緒なら、大丈夫、だと思います」

唯斗「OK。じゃあ3人は、後で俺と一緒に会場に行くよ」

リサ、あこ、燐子「了解(です)!」

 


 

 

友希那「それじゃあ、3人を頼んだわよ」

紗夜「怪我とかさせたら...わかりますね?」

唯斗「...肝に銘じておきます」

 

Roseliaの練習風景の見学を終え、俺はリサ先輩、燐子先輩、あこを連れ、パーティ会場である「Daicy Cafe」に向かう。

 

オフ会の開始時間はもう過ぎているが、和人が融通を利かせてくれることを祈る。

 

リサ「そういえば唯斗の髪ってさ」

唯斗「あ、なんかついてます?」

リサ「そうじゃなくて、ちょっと青いよね?」

あこ「さっきは気づかなかったけど、外に出るとよくわかるね!」

燐子「そう、ですね...地毛が、青なんでしょうか...?」

唯斗「あぁ...そうだね。生み親の遺伝でちょっと青いかも」

 

そんな他愛もない話をしながら、会場に向かっていく。

 

唯斗「さ、着いたぞ」

 

「本日貸切」と書いてある札が掛かってるドアを開ける。

 

 

 

「お!来たわね?もう一人の主役が!」

「それじゃあキリトさんと一緒に祝っちゃいましょう!」

「それじゃあ行くわよ?せーのっ!」

 

 

 

キリト、ユイト!SAOクリア、おめでとーっ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




...この回で終わらせようと思ったのにもう一話増えちゃった。
申し訳ない。


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47話 新生

...長かった。とっても長かった。

ここまで完走できたのも、みてくれていた皆様のおかげです。
本当にありがとうございました。

後書きにお知らせがあるので、最後までご覧ください。

それでは本編、どうぞ


Yu「お、おぉ...ありがとうございます...」

K「俺まで祝われたんだが...?」

 

Daicy Cafeにいるほぼ全員から祝福されながら店内に入った俺たちは、突然のことで言葉が出なかった。

 

「はいはい、主役は座って座って!」

「キリトさんも隣に!」

K「ええと...リズ?これはどういう...?」

 

リズベット「はーい!じゃあ全員いることだし、自己紹介、始めましょうか!まずはアタシね!あたしはリズベット!本名は篠崎里香ね、よろしく!」

 


 

リズベット「はい、じゃあ全員終わったし、次は今日のメイン二人ね!まずはキリトから!」

 

リズに押されながらステージに上がったキリトは困惑気味にマイクを持った。

 

K「えっと...キリトです。名前は、桐ケ谷和人。ソロ、でした」

「ソロ"でした"ってどういうことだよ~!教えろよ~!」

K「えっと...いや、黙秘権で」

Yu「まぁ、そうだよなぁ」

リズベット「はいじゃあ次、ユイト!」

 

キリトからマイクを強奪したリズはそのまま俺に押し付けた。

そのままステージに押される。

 

Yu「あ~...えっと、ユイトです。蒼闇唯斗。ギルドは...Roselia」

「え!?あのRoselia!?」

Yu「そうなる」

リズベット「よしこれで自己紹介終わったね!次は今日の主役の二人にスピーチしてもらおうと思います!」

K/Yu「...え?」

 

俺はともかく、キリトまで疑問符を浮かべているのはなぜだろう。

 

Yu「おい、なんでお前まで「え?」って言ってんだよ

K「しょうがねえだろ、こんなのプログラムに無かったんだ

リズベット「ほらほら二人ともこそこそしてないで!行った行った!」

 

再びリズに押され、ステージに立つ。

 

Yu「あー...えっと...今日は俺たちのために...でいいのかな?集まってくれて、ありがとう」

K「その、俺も正直動揺してるんだ。正直な話、こんなのプログラムに無かったし...」

Yu「あ...まぁ、とりあえず、今日は、楽しみましょう!...で、いいかな」

K「ばっちりじゃないか?よし、それじゃあ改めて...」

 

 

K/Yu「乾杯!!

 


 

Yu「はぁ...疲れた...」

エギル「おう。主役だからな。なんか飲むか?」

Yu「...のどに優しい奴で」

 

俺がそう言うと、隣にキリトが座り、

 

K「マスター、バーボン、ロックで」

 

と、訳分らん注文をし始めた。

エギルさんはそれを聞くと、俺とキリトに全く同じ飲み物を出した。

 

Yu「...?エギルさん、これ」

K「...何だ、ウーロン茶じゃないか」

エギル「...未成年に酒なんか出さねえよ」

Yu「まぁ、ですよね...」

 

そう言った時、俺の隣に細い人影が現れ、

 

「エギル、俺には本物くれ」

 

と言いながら、座った。

 

Yu「いいんですかクラインさん?この後仕事って言ってませんでしたっけ?」

クライン「へっ。残業なんて飲まずにやってられっかっての。...それにしても、いいねェ...」

 

...ここにはSAOプレイヤーしかいないし、見知った顔だからわざわざ本名呼びしなくてもいいだろう。

 

クラインさんは座る向きを180度変えて、女性陣の方を向き、顔をだらけさせながら、鼻の下を伸ばしている。

 

すると、キリト側の隣にも人影が現れた。

クラインさんとは違い、きちっとした印象を受ける。

確か、名前はシンカーだったか。

軍の指揮官だった男で、前線に出るように指示した男ではない方...とキリトから説明を受けているが、何が何だかさっぱりわからない。

まぁ、彼の人柄から、前線に特攻して無駄死にさせるような人間でないことは分かった。

しかも、同じ軍のユリエールというプレイヤーと入籍したそうだ。

 

Yu「ゲーム婚ってあるんだなぁ...」

K「俺らも似たようなもんだけどな」

Yu「まぁ、そうだな。...あ、そうだ。教えろよ、お前の言う『裏技』ってやつ」

K「あぁ。..じゃあちょっと長くなるけど、話そうか」

 


 

あの時、ユイによってコードを転写されたキリトは、俺らとは違う別の場所に転送されたそうだ。

まぁ、転送バグも、人為的に起こされたものらしいが。

 

それを起こした人物は、ヒースクリフこと、茅場晶彦。

 

茅場は、キリトのみを別空間に呼び出し、自分の全てを預けたそうだ。

 

具体的に言うと、『ヒースクリフ』のアカウントデータと、『世界の種子』なるもの。

キリトはヒースクリフのデータを使い、オベイロンのシステム行使権を無くし、代わりに自分にそれを付与した。

それにより、彼は聖剣二刀流ができなくなったり、キリトがペイン・アブソーバを自由に操れるようになったわけだ。

アスナやりんのログアウト権限も、彼が預けたものだ。

 

Yu「...こうやってまとめると、GMアカウントってめちゃくちゃなことさらっとできんだな」

K「あぁ...俺も正直ビビったよ。コマンド一つで思いのままだからな」

 

...こういうのを聞くと、一回でいいからGMアカウントを使ってログインしたくなってしまう。

まぁ、その要望はたぶん一生叶わない願いだろう、胸の内に仕舞っておこう。

 

Yu「...んで、その『世界の種子』ってやつは何なんだ?」

K「見りゃわかるよ。ユイトも、Roseliaに伝えとけ。『11時、イグドラシル・シティ集合』ってな」

Yu「了解。...というか、ALO消えないんだな」

K「あぁ。ALOだけじゃないぞ。いろんなサーバが立ち上がって、いろんなゲームができ始めてる」

Yu「そりゃすげぇ。とんでもないもん預けてくれたな、あの男は」

K「全くだ」

 

二人で顔を見合わせて、軽く笑った。

 


 

『今日の11時前ぐらいからALOにログインできて、なおかつ二次会に参加予定の人間は、11時、イグドラシル・シティ迄』

 

『参加希望、不希望問わず、返信不要』

 

という文面を一次会の時にできた『Roselia』グループチャットに打ち込み、新たに購入したアミュスフィアを頭に装着し、目を閉じる。

 

あの世界に、もう一度。

 

唯斗「...リンク・スタート!!」

 

Yu「...ふぅ...」

 

降り立った場所は世界樹の根元。

アイテム欄とステータスをチェックし、()()()()()()()ことを確認して、ウィンドウを閉じる。

そのまま世界樹の上に新設された《本来の空中都市》、イグドラシル・シティまで飛ぶ。

今までのALOには10分の滞空制限があったが、これからのALOにはそれがなくなった。

上級種族アルフにのみ許されていた《無限の滞空》が全プレイヤーに解禁されたのだ。

 

まぁ、この距離、10分もかからないけど。

 

Yu「っと、お待たせ」

As「あれ、キリト君は?」

Yu「知らね。というか、アスナはウンディーネなんだな」

As「だって、いつも遊ぶ友達はみんなアタッカーでしょ?一人ぐらいヒーラーがいないとね?」

Yu「なるほど、道理だ」

 

SAOでもKoBの副団長として指揮を執ってただけはある。

 

R「...ゆ、ユイトさん」

Yu「お、来た来た。待ってたよ、りん。それに、あことリサ」

L「ごめんね~。どうしてもユキナとサヨは連れてこれなかったよ~」

A「みんなでやった方が楽しいからって誘ったんですけど...」

Yu「まぁ、それは仕方ないよ。...りんはウンディーネで...あこはインプ...で、リサは...プーカ、だったか?」

R「はい」

L「でも、どうしてここなの?」

Yu「...時間だ。飛ぶぞ」

L「え、ちょっと、あたしの質問には?」

Yu「飛べば分かる。行くぞ」

 

俺を先頭に、イグドラシル・シティに集まった幾多のプレイヤーたちが上空に移動する。

そして、月が真正面で見える位置で静止する。

 

Yu「さ、来るぞ」

 

そう言った時、涼やかな鐘の音が聞こえた。

午前零時を知らせる鐘だ。

 

鐘が鳴った瞬間に、月が欠けた。

正確には、月より前に、何かのオブジェクトが移動してきている。

最初にくさび型の何かが、そのあとには丸みを帯びた何か。

頂点には城のようなものが見えるような気もする。

 

...まぁ、全て知っている。

 

謎の物体は、月をすべて覆い隠し、その時に重々しい鐘を鳴らした。

どこかで聞いた、懐かしいような鐘。

 

月明かりがだんだんと強くなり、その全貌が明らかになる。

 

L「あ、あれって...?」

A「うわぁ!で、でも、どうして...?」

R「アイン、クラッド...!?」

Yu「完全再現だよ。あの世界の、あの城をな。今度こそ、全層クリアして、あの城を我が物にするんだ。前は、俺クリア前に死んでるし」

 

おちゃらけながら浮遊城に向かう。

 

R「今度は、死んでも生き返れますけど...なるべく、死なないようにしましょうね...?」

Yu「あぁ、わかってるよ。あいつの意思、だからな

R「...?何か...?」

Yu「いや、何でもない。行こう、りん。俺、弱くなっちゃったしさ」

R「...うん。今度こそ、皆で...!」

Yu「...しゃあ!!行くぞ皆!!」

 

 

 

ウオオオオオオオオオオオ!!!!!!!

 

 

...こうして、新生アインクラッド攻略が、始まった。

 

 

 




はい、まずは感謝を。
ここまでの読了、そしてこの小説を読んでいただき、ありがとうございます。
思えば自己満から始まったこの小説、二次創作ゆえのガバと意識等々ありましたが、どうにかアニメ一期までの完結を迎えることができました。

どれも、読んでくれている皆様のおかげです。
本当にありがとうございます。

さて、ではお知らせを。

ご存じかと思われますが、この小説、バンドリ公式様のガイドラインにめちゃめちゃ触れております。それはもうがっつりと。
バンドリキャラとバンドリキャラ以外のキャラを絡ませるな(意訳)みたいなことが書いてあるので、めちゃめちゃこの小説、違反です。

しかし、だからと言って、この小説を消してしまうのは、生みの親としては苦しい、そして悲しいので。

とりあえず様子見として、チラシの裏投稿とさせていただきます。
というか、この小説の更新は非常に不定期になります。
SAO:Ⅱからの展開、書きづらかったりなんだりするので、時間が...
まあ、という言い訳はさておき。
真面目な理由としては、リアルの忙しさもありますが、一番の理由として、オリ作品を書きたいと考えているためです。

オリ作品も完全な自己満足小説となってしまうのですが、書きたいものを書いてく精神で、これからもやっていきます。

それでは、ここまでのロゼリアートオンラインの読了、本当にありがとうございました。

次会う時は、オリ作品か、それともここか。



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???
??? 世界の裂け目


完全なおまけ回です。

ゆるっと見てね


Yu「...ん、ここは...」

 

目覚めたのは何もない場所。

SAOでも、ALOでもないこの場所。

 

証拠に、ウィンドウも開かなければ、服装もSAOのものでも、ALOのものない。

 

Yu「まじで...ここどこ...?」

「...あれ、見ない服装してるね」

Yu「...!?...誰だ!?」

 

声を掛けられて振り向くと、腰に刀を吊った男が立っていた。

 

「やぁ」

Yu「...誰だ?」

「俺は、刀遣いだよ」

Yu「刀...遣い...?」

 

そんな役職は聞いたことがない。

 

「はは。ゲームの役職とかじゃなくて、本当にやってるよ。刀も本物だし。触るかい?」

Yu「...いや、やめておく。それより、ここはどこなんだ?」

「おや、フラれたな、手厳しい。で、ここはどこか...ここは、どこでもあって、どこでもない場所だ」

Yu「どこでもあって...どこでもない...」

 

そんな場所に迷い込んでしまったのか、俺は。

 

「あぁ違う違う。俺が呼んだんだよ」

Yu「何の、ために」

「君の実力を、図りたくてね」

Yu「は...?」

 

そう言うと、そいつは刀を抜いた。

釣られて、俺も剣を抜こうとするが。

 

Yu「...ここじゃ、だめだ」

「あぁ...なら、これを使うといい」

 

そう言って差し出してきたのは一本の剣。

俺の愛剣にそっくりの、金の剣。

 

Yu「...これなら、戦えるな」

「そうかい?なら、始めようか?」

Yu「いつでも来い。...まぁ、実力に沿えるかは、わかんないけど、なっ!!」

 


 

「はぁっ!!」

Yu「うぉぉぉ!!」

 

剣と刀を打ち合う。

どちらかのモノから何かが欠け、火花が散る。

しかし、そんなことを気にする暇もない。

 

Yu「ソードスキル:《バーチカル》!」

「それが君の世界の、業か...!」

Yu「そうだ...これが、俺の力だ...!」

 

横に一閃、あいつは剣に刀を滑らせ、受け流して見せた。

 

「では、今度はこちらの番かな...!」

Yu「(来るっ...!)」

「『業火』!!」

Yu「ぐっ...!!」

 

炎を纏いながら突撃してきたそいつを、どうにかして受け止める。

 

「驚いた。初見で止めるとはね...」

Yu「その割には、平然とした顔してやがんなっ!」

「まぁここまでは、想定内だからね」

 

そのまま俺の剣を絡めたまま刀を地面に突き刺す。

 

「『豪氷』!!」

Yu「なっ!正気か...!」

 

やつは俺の剣と自分の刀を凍らせた。

 

「でも、俺は動けるんだな...っ!」

Yu「くっ...」

 

やむなく凍った愛剣を手放し、後ろに飛ぶ。

俺がいた場所には、凍って刀身が少し伸びた刀が一閃していた。

 

Yu「あぶねぇ...けど」

「丸腰と戦う気はないさ、ほれ」

Yu「...随分と優しいのな」

 

投げられた剣を握りなおし、まっすぐに見つめる。

 

Yu「...不気味なやつだな」

「何がだ?」

Yu「命かけてんだ、なんでそんなに冷静なんだよ」

「んー...まぁあれかな。踏んでる場数の問題じゃない?」

Yu「はっ...俺の方が、踏んでるよ...っ!」

 

Yu「ソードスキル:《バーチカル・スクエア》!!」

「さっきも見たぞ、その構え!」

 

一発目は止められ、二発目は流された。

 

Yu「終わっちゃ...ねぇ...!」

 

三発目は掠った。

 

Yu「うぉぉぉぉ!!」

 

四発目を腕に当て、腕を斬り飛ばす。

 

「く...あはははは!!」

Yu「...何がおかしい?」

「いやぁ...さすが()()()()と言ったところだねぇ!」

Yu「は?何言って...」

「おや、そろそろ時間のようだよ」

 

言われて、体が薄くなっていることに気付いた。

 

Yu「あ、なんだ、これ」

「今までお疲れさま。あとは任せてくれたまえ」

Yu「...何、言って...」

「あぁ、そうだね...とりあえず、『完結おめでとう』と言っておこうか」

 

言われている間に、奴の言葉は遠くなり、意識は薄れていく。

 

Yu「待て...最後に...名前、を...」

「あぁ、言ってなかったね」

 

 

「俺はカイト。刀遣いのカイトさ」

 

Yu「カイ、ト...おぼ、えたぞ...!」

「すぐ忘れるだろうけどね」

 

 

 

「...さて、彼は帰ったかな...」

 

 

「やぁ、読者の皆様。とりあえず、彼は安全に帰ったことを伝えておこう。まぁ、いろいろあって彼はしばらく隠居でもすると思う。彼が再び上がってくるときまで、俺がどうにかしてつなぐからさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「やぁ、あとがきにまで侵入してごめんよ。いやぁ、宣伝する場所的にはここが一番手っ取り早いかなと思ってね。まぁ、出しゃばったことは謝るよ。...まぁ、とりあえず、これを読んでくれたらうれしいな」

新作→https://syosetu.org/novel/283420/


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LIVE Report:Weißklee

と言うわけで、謎時空から前後編結合版をお送りいたします。
最後まで読んでもらえるとちょっとしたおまけがついてるので、それも是非。


唯斗「これは......やってんなぁ」

 

俺がそう呟いた理由は、今日という日と、今の時刻にある。

本日、5/21は、Roseliaのライブだ。

そして、俺が今握っている携帯に表示されている時刻は10:04。

世に言う、寝坊というやつだ。

完全にやらかしてしまった。

本当ならこの時間は、八王子から大月行きの電車に揺られているはずだったのに。

 

唯斗「はぁぁぁぁ......どうしよ......」

 

と言ってはいるが、現状を打破する術を俺は持たない。

リセットでもポーズでも使えればよかったのだろうが、あいにく俺は命の管理者でもなければ、ゲーム会社のCEOでもない。

そもそも世界線が違うからな、出来るわけなかろうて。

と、うだうだ言ってる間にも時間は過ぎていく。

まあぶっちゃけ開演は17:00からだから問題はないんだが、どうやらオープニングアクトを高校生がつとめるらしく、しかもその高校生たちは全国数多ある高校の軽音楽部の頂点に立つ高校生達。

それは是非とも聞いてみたいものである。

というわけで、俺は一刻も早く準備しなければいけないわけだ。

 

唯斗「......っし!」

 

頬を叩いて眠気を無理やり追い出し、昨日用意していた服に着替える。

何も食ってないが歯を磨き、顔を洗う。

 

前回のライブビューイングで買ったリングライトを鞄に放り込んで、モバイルバッテリーとコードも放り込む。

 

財布と携帯をポケットにしまい、雨が降るという予報を信じてポンチョを入れておく。

 

唯斗「行ってきます」

 

居間でテレビを見ている親にそう言ってから、耐水靴を履いて外に出る。

以外にもそこまで寒くなく、ちょうどよい気温だった。

しかし、雨が降っている。

そして、俺の持っている傘はとても小さい。

まぁ、大きいのを持っていって盗られても困るが。

 

ふと、嫌な予感がして、鞄を漁る。

俺が入れたコードは、本当に俺の携帯に対応しているのか?

もし対応しているものであれば白いコードがあるはずだ。

 

唯斗「.......最っ悪だ」

 

見えたのは黒いコード。

故に、これでは充電できない。

いくらモバイルバッテリーが優秀だろうが、繋ぐものが非対応なら意味がない。

 

唯斗「節電しよ......」

 

携帯のバッテリーセーバーをつけ、ポケットにしまい直す。

駅までの道のりなんて、つまらなすぎるからカット(書かない)

 


 

さて、無事に最寄りに到着。

現在時刻は11:01。

電車が出発する時間は11:07なので、もうちょっと時間がある。

が、すでに各駅停車の電車が止まっている。

遅く着くののは問題があるが、早く着くのに越したことはない。

というわけで各停電車に乗って、まずは乗り換え先までのんびりと行こう。

 

 

......座れなかったのは、予想外だったけど。

 

 

さて、無事に乗り換え先の駅に到着。

ICカードを改札に押し付け、小田急線の改札を出て、JRの改札にカードを押し付け入場。

次の電車は快速。

まぁ、時間はあるから問題ない。

 

......すでに遅刻はしてるけど。

 

唯斗「......こういう時、一人でよかったって思うわ」

 

まあ別に、誘う相手もいなければ、ゲームの友人ぐらいしか友人もいないので、実質こういうライブに行くのは俺ぐらいしかいない。

 

よく言えば自分で時間設定ができるが、悪く言えば時間にルーズになりがちになる。

 

と、快速電車がやってきた。

この電車には終点まで乗る。

 

というわけで、カット。

 


 

さて、電車を降りたら、いったん階段をのぼり、中央線に乗り換える。

JR内直通だから、改札を通すのは無し。

今いる駅は八王子。

そのまま快速で大月まで目指す。

まぁ、また終点まで乗るだけなんだけどね。

 

と言ったところで、快速が到着。

終点まで、カット。

 

 

 

 

 

 

というわけで、大月到着。

あとはこの駅から富士急行に乗り換え、目的地を目指す。

 

その目的地とは、Roseliaだけでなく、ポピパ(Poppi'n Party)RAS(RAISE A SUILEN)モニカ(Morfonica)などがほぼ年一でライブをする会場。

すなわち、富士急ハイランド・コニファーフォレスト。

 

と言っても、電車から降りたらコニファーフォレストと言うわけではもちろんない。

ま、「富士急ハイランド駅」という名の駅がある通り、そこの駅は電車から降りたら富士急ハイランドと言うのはあるが。

 

で、しかもこの会場のやらしいところは、富士急ハイランド内に存在しない所だ。

富士急ハイランドの敷地外にあるものに、その冠詞をつけてもよいものだろうか。

まぁ、そんなことはどうでもいい。

俺が今この一人語り中にしれっと河口湖行に乗ってたことぐらいどうでもいい。

 

さて、富士山駅で外の確認。

 

唯斗「あちゃー......だいぶ降ってる」

 

傘とポンチョのダブルで正解だな。

と、車内を見ると、これからライブに行くであろう人間が二人ほど見つかった。

なんでわかったかって、Tシャツにでっかく友希那先輩とリサ先輩の顔が印刷されてりゃな。

 

さっきも言ったと思うが、俺が今日行くライブはRoseliaのライブ。

 

今まで幾回とライブをやってきたあの集団だ、当然ファンも多い。

 

ガールズバンド総出のライブだけじゃない、自分たちのワンマンライブだって何回もこなしてきて、RASと対バンだってしてる。

そんなバンドが、不人気なわけがない。

 

しかし、こんな時間に来る人間もいるのか。

物販とかは売り切れが続出してそうだが。

 

ま、それはそれ。

 

と、富士急ハイランド駅に到着。

 

車内の8割の人間がぞろぞろと降りていく。

 

一人で来るのはこれで二回目か。

 

 

そんなことを考えながらICカードを押し付けて、改札を出る。

出るついでに「特別記念乗車券」というのをもらった。

効能はないため、観賞用だが。

 

しかし先輩方、いい感じにデフォルメされている。

 

さて、ライブ会場に到着するまで、カット。

 


 

唯斗「雨は弱いけど......とりあえず雨宿り......」

 

ライブ会場、及び物販会場に到着。

現在時刻は2時半。

 

物販に入るためには整理券を取る必要があり、その整理券の番号は10番刻みで呼ばれている。

そして、俺の番号は2532番。

今呼ばれているのは2400番のため、前回の経験からすると呼ばれるのは30分後とかになりそうだ。

と言うわけで、木陰で傘を差しながら待つこととしよう。

 

が、意外とすぐ呼ばれた。

時間にして10分ほどだろうか。

列整理のスタッフに整理券を見せ、列に並ぶ。

雨は多少弱まってはいるが、まだ傘は閉じれなそうだ。

しかし、この待機列。

列に並んでからも相当待つようだ。

前に来た別ユニットのライブはそこまで待たなかった記憶がある。

まぁ、あの時と違うのは、太陽が出てないことで、気温が低いということだろうか。

長袖を1枚プラスで着ていてよかった。

パーカー一枚では今頃凍えていた。

 

昨日の俺の服チョイス流石、とか考えるうちに音楽が聞こえてきた。

この音楽はリハーサルでとかではなく、単に待機列のスピーカーから流れているものだろう。

今流れているのは、たしか『ZEAL of proud』だったか。

と、それに交じって声が聞こえる。

これまたスピーカーからだが、どうやらグッズの宣伝をしているようだ。

 

唯斗「......友希那先輩?」

 

スピーカーから聞こえるのは友希那先輩(相羽さん)紗夜先輩(工藤さん)の声だ。

......あの人たち、そんなことするんだなぁ。(声優とキャラのギャップが激しいのは、Roseliaファンの皆様ならご存じかと。)

 

その放送を聞いているうち、だんだん待機列の最前列が近くなってきた。

あと一回ぐらいの案内で物販に並べそうだ。

 

......物販に並ぶ前に、待機列があるのは十分に留意しておいてほしい。

 

列に並んだらすぐに買えるわけじゃないってことだ。

これがざらに1時間とかかるからな、早く着くに越したことはないって言ったのは、そういうことだ。

 

「お待ちのお客様、奥の方までお願いします」

 

と言う待機列整列スタッフの声で、待機列が動く。

あと1回ぐらいの案内で物販カウンターに並べるだろう。

その間、公式のツイッターで売り切れ情報のチェックをしておく。

 

唯斗「リフレクターバンドもほぼ売り切れ......あとはフルカラーTシャツかなぁ......」

 

お目当てはもちろんTシャツなのだが、Roseliaの人気ぶりを考えると売り切れてもおかしくないだろう。

とりあえず今回のライブタイトルが書かれたタオルとシリコンバンドがあればいい。

あわよくばTシャツ、もしくはリフレクターバンド。

 

あ、リフレクターバンドって言うのはいわゆる反射材みたいなやつだ。

太陽光とか照明とかを受けてそれが虹色にきらきらするやつ。

 

それが売ってればそれも。

で、雨が心配なのでレインポンチョも。

 

......とは言ってるが、目の前で売り切れたら全部おじゃんだ。

 

と、また待機列が動く。

俺は無事待機列から抜け出し、物販カウンター列に並ぶことに成功した。

奥の方からと言われていたが、奥の方はどこも4,5人待っている。

まあどこでもいいかと、ぱっと見少なそうなところに並ぶ。

この間にも、まだ雨は降っている。

それどころか、もっと強くなってきた。

 

唯斗「うわ、まじか」

 

欲しいものは続々と売り切れ、雨は強くなっていく。

最悪と言う他、なにがあろうか。

 

と、俺の番が回ってきた。

 

一応Tシャツはあるか確認したが、今日分はもうなくなったと言われたので、ですよねと返す。

 

とりあえずタオルとシリコンバンドを確保し、残っているであろうリフレクターバンドと、ポンチョを購入。

 

合計5,500円。

 

あれ、こんな安かったっけなぁ。

まあいいか、全額使うよりはましだ。

 

まぁ、6日後には口座が潤っているのだが。

 


 

とりあえず欲しいものは購入できたが、願わくばと思っていた、いわゆる推しのグッズはすべて売り切れ。

 

恨むべきは、早起きしなかった自分。

購入品をもらった袋に詰め、自前のポンチョを着ながら入場ゲートに向かう。

 

......推しって誰かって?

 

そりゃ、わかるだろ?(言いたくないから察しろ)

 

 


 

 

さて、無事に(?)欲しいものが買えた俺は、現在電子チケットアプリを開きながら入場待機列に並んでいる。

どうやら入場ゲート近くになると携帯のつながりが悪くなるらしい。

今のうちに開いておけと言うことらしい。

 

4列で並んで待機列を作る。

これは物販待機列と違ってすぐに入場できそうだ。

と、列が大きく動く。

入場ゲートが見えたが、列は止まることを知らない。

どうやら、このまま入場できそうだ。

まず、検温をするゲートをくぐり、その後にチケット確認のゲートをくぐる。

チェック項目に同意し、顔写真と照合し、問題なしとしてそのゲートを抜ける。

抜ける直前に袋を渡されたが、これは後で確認することにしよう。

 

ステージが見えてきた。

俺の運命力と財力のなさでプレミアムシートとはいかなかったので、一般指定席になる。

 

唯斗「C6の99......」

 

足元のプロック名を確認しながら進む。

 

C6の文字が見えたところで、とりあえず一番後ろから席を確認。

後ろの列は150とかだったので一列づつ前に行って確認。

と、一番右の席に98番席を発見。

 

唯斗「ってことは......あっちか」

 

俺の席はC6ブロックの前から4列目の一番左。

前回の6ユニットLIVEの時もそうだったが、そこそこいい席が取れている気がする。

俺に働く運命力はそこまで悪辣なものではなさそうだ。

というわけで、とりあえず荷物を置いて一息。

自前のポンチョから、買ったポンチョに着替え、下半身の雨具を履く。

これで雨で濡れた座席に座っても大丈夫になった。

座席に荷物を置き、買ったグッズをつけながら、傘を座席下に置いて、さっきまで来てたポンチョでカバンを包んで足元に置く。

 

と、一通り準備が終わったところで、時刻は4時前。

開演まであと一時間あるが、席を立つ気にもなれず、ツイッターを見て時間を潰す。

俺がさっき買ったグッズは売り切れていたりいなかったりなので、やっぱり早く来るに限るなあなんて思ってしまう。

この際前日の夜行バスで会場に午前入りとかでもいいかなぁなんて考えてしまうが、予約とかめんどくさいからやっぱり当日に早起きするに限る。

 

まぁ、それができなかったのが今日なんだけど。

 

と、ステージからギターとベースの音が鳴る。

まだ時刻は4時半前。

ステージを見るとスタッフでもRoseliaメンバーでもない人が楽器を触っている。

彼らがオープニングアクトの高校生だろうか?

 

と、試し弾きが終わったのか、そのままはけてしまった。

 

と言うか、さっきから会場で流れているCMがやたらと情報量が多い。

 

人間は涎を1日の内に1L流すだとか、人間に食われる豆になるために頑張っているだとか。

 

はたまた別セカイのCDの宣伝だったり、別ユニットのカバーソングCDの宣伝だったり。

 

Roseliaのミニアルバムの宣伝だったり。

やたらと盛りだくさんな映像になっている。

 

あとはカードゲームの宣伝だったりしたかな。

 

それらの映像が3ループぐらいした後、アナウンスが聞こえてくる。

 

傘は差すなだとか、改造ペンライトは使うなだとか、まぁ色々諸注意ってやつだな。

 

守らないとLIVEが中止になるからなと言うわけで、しっかり守ろうと思います。

 

と、またアナウンスが流れた後、アナウンスとは全く違う声で、「こんにちは~!」と聞こえる。

 

ステージを向くとマイクを持った女性が出てきた。

 

唯斗「確か......レイヤさん?」

 

ステージに立っていたのは、RAISE A SUILEN:ベースボーカルのレイヤ(Raychell)さん。

 

どうやら高校生バンドの案内に来たようだ。

 

観客の拍手と共に、優勝校のバンドが出てくる。

総勢で15人ほど。

大所帯だ。

 

レイヤ(Raychell)さんが曲紹介をする。

高校生たちが所定の場所に着き、合図をしてから演奏を始める。

 

演奏が始まった瞬間、圧倒された。

 

高校生のレベルではない。

勿論、いい意味で。

演奏技術が高すぎる。

そして、こんなレベルの高校バンドが、全国にいることに驚く。

 

唯斗「高校生バンド......恐ろしい」

 

......と言うか、Roseliaも高校生バンドだった。

 

やっぱり、高校生って何かとおかしい気がする。

 


 

演奏が終わり、高校生たちがはけて、レイヤ(Raychell)さんもはける。

 

現在時刻は17:10。

やや遅れているが、問題はないだろう。

 

と、聞き慣れた声で、アナウンスが流れる。

 

友希那先輩の声だ。

 

ということは、もうすぐ始まるのだろう。

 

と、ステージのモニターに映像が流れる。

ライブタイトルのロゴと、Roseliaのロゴ。

Weißklee(シロツメクサ)の映像が流れ、ステージ袖から友希那先輩が現れた。

 

そのまま息を吸って、歌いだした。

 

 

唯斗「......っ!」

 

曲名は、確か「雨上がりの夢」だったか。

友希那先輩が「Future World fes.」に出るためのメンバー集めをするため、打ち込みなどを駆使した曲だと、紗夜先輩に聞いた覚えがある。

 

いつの間にか、雨は止んでいる。

それどころか、太陽が顔を出している。

さては、狙ったのだろうか。

 

歌い終わると、Roseliaメンバーがすでに配置についており、そのまま演奏が始まる。

 

友希那先輩の「舞う」で始まる、「Proud of oneself」。

FWFの予選で披露していたと聞いた。

 

ステージモニターには曲のMVも流れている。

これが二曲目......かどうかは聞いている人次第だが、俺は少なくともこれを一曲目として聞いている。

しかし、運動量がすごそうな曲が一曲目だ。

 

演奏が終わり、メンバー紹介が挟まった。

 

どうやら、このライブは「これまで」のRoseliaを振り返るライブらしい。

そして、明日の「Rose」は「これから」のRoseliaを。

と、理解した上なら、この選曲は天才と言う他無い。

 

ギターが入るイントロ、「BLACK SHOUT」だ。

勿論、リサ先輩の「OK」もちゃんと見た。

初期からある曲だ、完成度が桁違い。

長年やってると、演奏も洗礼されてきて、かっこいいではなく、美しいと感じる。

 

そして、フェードアウトと同時に遠くからドラムの音。

このパターンは「Re:birth day」だったか。

 

......やばい、なんかうるって来た。

 

まだほんとに序盤なのに。

コーレスはできないから、右腕を振る。

周りに合わせてやるだけで、一体感がすごい。

 

 

 

音楽が止み、拍手が巻き起こる。

MCで笑いを拍手をこぼしつつ、次の曲の考察をしてみたりする。

 

と、燐子先輩がキーボードを弾き始める。

それに合わせて友希那先輩が歌う。

いわゆる、アコースティックと言う奴だろうか。

メンバーとの掛け合いも、コーラスもない。

友希那先輩が一人で歌う「約束」。

 

正直、これだけでも涙腺に来るのに、2番で全員が演奏、コーラスに入った後、ラスサビ前で友希那先輩とリサ先輩が「約束だよ」なんて言うんだから、もう泣くほかない。

 

そして、その後の曲の入りがまたいい。

曲名は「"UNIONS" Road」。

約束の続きのような曲をこの並びでやるのは、ファンを殺しに来ているのではないか。

燐子先輩とあこが途中途中歌うのがまた素晴らしいんだ。(推しは燐子)

ラスサビ前のコーラス、全員で小指をあげた。

これも一種のコーレスだろう。

「私たちは五人で私たちになる」だって、泣かないわけなくない?

 

 


 

唯斗「......なんか芸人みたいなことしてんな」(キャラくずです)

 

どうやら、過去の映像を振り返って、過去の言動を当てるクイズをしている。(キャラくずの映像を見て、過去のツッコミを当てるだのなんだのしてました)

 


休憩を終えるとメンバーが着替えて出てきた後、MCを挟んで「LOUDER」が始まった。

 

もう、喋るのはやめだ。

これは、もう原点と言ってもいい、これこそ「これまでのRoselia」を体現する曲だ。

演奏技術が今までのどの曲よりも高い気がする。

それほど、この曲が支えてきたのだろう。

 

そして、そのままの流れで「Neo-Aspect」。

Roseliaが一つ(新たな姿)になった曲。

ひたすらにかっこいい。

もう、何も言えない。

 

だって、次の曲が分かるから。

「Song I am.」だから。

FWFで披露した、「これから」を体現した曲。

先の2曲ともつながっている部分もあり、この3曲は切り離せない。

いや、切り離してはいけない曲だ。

 

余談だが、FWFで友希那先輩は「LOUDERは今日で最後」と言ったらしい。

だから、この曲の最後に「LOUDER LOUDER!」とあるのだろう。

 

そして、MCが挟まる。

正直、余韻がすごくてあまり耳に入ってなかったが、このライブもあと少しで終わってしまうとは言ってた気がする。

 

その流れで始まる、「FIRE BIRD」。

Roseliaを代表する曲と言っても差し支えないほどの曲だ。

FIREとあるように、サビに合わせてステージから火柱が上がる。

一般席の前の方であれば、温風が吹いてくる。

この時は寒かったから、ちょっとありがたかった。(実話)

ラスサビ前のソロパートが良いんだなぁ。

観客のペンライトも、オレンジ色が回って綺麗だ。

 

フェードアウトし、力強いドラム。

「overtuRe」だ。

FWF予選で演奏した曲。

「Proud of oneself」とは違うが、各自のソロパートがBメロに入っている。

「歌声は剣となり 絆は盾に」という歌詞が大好きなんだ。

あと、単純にメロディがかっこいい。

 

そんな演奏が、スパッと止まるんだから、拍手も大きくなるというもの。

MCで、次で最後、と言った。

今までの曲から、メンバーを象徴する曲はない。

故、限られてくるのはこの間の新曲か......

 

という思考を、キーボードとベースがが打ち破る。

 

この、「R」とも違うベースの感じ、「ZEAL of Proud」だ。

サビ前にソロパートがある、俺が好きな曲。

歌詞の中の「1,2」に合わせて指を立て、振る。

正直、右腕はもう限界が近い。

 

 

しかし。

 

......友希那先輩、よくあんな高い声が続くよなぁ。

 

なんて考えも、メンバーがはけてから初めて考えた。

 


唯斗「あ、後半だ」(キャラくずです)

 

点数はそこそこ拮抗しているが、クイズの方はどうなんだろうか(クイズの正答率もキャラの保持率も低めでした。キャラくず本編は円盤で見てね。出るの来年とかだろうけど)

 


 

映像が終わり、ライブタイトルのロゴが表示される。

観客が、一定の節で手拍子を始める。

アンコールだ。

声が出せないから、こうやっている。

しかし、これは人間の本能的に仕方ないのだろうが、手拍子をだんだん早くしてしまってバラバラになっていくこの現象は、どうしたらいいんだろうな。

 

そして、重なってはバラバラになる手拍子を2分ぐらいやっただろうか。

 

ステージの照明が点き歌が聞こえる。

「ONENESS」だ。

「おねねす」じゃないぞ、「ワンネス」だ。

 

「一致・調和」の意味を示すONENESS。

 

これに関しては振り付けも好きだ。

「夢、会い、世界、未来」で友希那先輩がメンバーそれぞれを指さすところが。

 

 

終わって、拍手が鳴る。

そして、ちょっとしたMCを挟み、その中で「その先へ」と発言したことで、最後の曲の候補は絞れた。

 

FIRE BIRDに似たイントロ。

しかし、どこか違うイントロ。

新曲「ROZEN HORIZON」だ。

FIRE BIRDのアンサーソング、その先を行く曲。

 

その証拠に、FIRE BIRDでは吹き出ている火柱が赤だったが、この曲では青い火柱に変わっている。

 

もう腕も動かないが、どうせなら振り切って筋肉痛にしてでもいいから帰ろう。

 

曲の終わり、「最後はみんなで飛ぶ」という合図でジャンプ。

瞬間に、横で大花火。

ちなみに銀テープも飛んだが、正直いつ飛んだか覚えていない。

それぐらい、熱く、また素晴らしいライブだった。

 


 

規制退場と言うわけで、ブロックごとに退場していく。

まぁ、結局は入場ゲート付近でつまるのだけど。

しょうがない。

なんせ5桁はいるだろうから。

ゆっくりと退場していく。

正直、このまま帰らず二日目も参加したかったが、日曜に遅く帰るのは月曜に響くし、何よりまずチケットがないので一日目の参加というわけで、初参加となった。

 

帰りは、電車の会社側が臨時急行という形で電車を出してくれ、それに乗り大月まで戻る。

途中、何回か意識を失いかけて、ひざが何回かカクっとして白い目で見られたような気がするが。(実話)

そんなこんなで、無事大月到着。

そういえば言い忘れていたが、富士急ハイランドはガールズバンド7バンドとコラボという形で、電車にラッピングされているらしい。

それらの写真を一通り撮って、八王子行きの電車に乗り換える。

 

少し遅延して、10時前ごろ電車が到着。

それに乗り、八王子を目指す。

 

 

そろそろ足が限界だ、座りたい。

 


 

さて、八王子から最寄りまで行くのに、もう一回乗り換える必要があるが、一本目の電車で運よく座れたので、そのまま帰り道のルート確認をしながら、少しだけ意識を手放す。

 

次に起きた時は乗換駅だったので、降りて乗り換える。

 

各駅停車の終点が最寄の電車に乗り、なるべく携帯の電池を使わないようにボーっとする。

(ライブレポート前半の400字ぐらいは電車内で書いてた)

 

親にもうすぐ着くとメッセージを送り、最寄りに到着。

 

ここから家までの道のりなんてつまらんだろうからカット。

 

最後に。

 

Roseliaのライブ、めちゃめちゃ楽しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

おまけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月曜日、学校が終わり、放課後。

俺は家に帰って課題をし、大方終わったところで日が沈んで、時刻は6時前。

散歩がてらコンビニに行くとしよう。

徒歩二分圏内の、品ぞろえが豊富なコンビニに到着。

ドアが開くと明るい声が耳に入ってくる。

 

リサ「いらっしゃいませー!......あれ、ユイトだ!」

 

続いて俺の名前を呼んだので、顔をそちらに向けると、見知った人がカウンターの奥に立っていた。

 

唯斗「ん?あ、リサ先輩。こんばんは」

 

挨拶を返しつつ、いつも飲んでる飲み物の補充と、糖分補給のためのチョコをかごに入れる。そのまま総菜コーナーに足を向けると、いつの間にか後ろに回り込んでいたリサ先輩が、

 

リサ「夜ご飯弁当で済ませようとしてない?ダメだよ?」

 

と言ってくる。

多少驚きはしたが、別に弁当を買いに来たわけではないので

 

唯斗「こう見えて自炊ぐらいしますよ。今日なんかは特に、親いないんで」

 

と返す。

すると、悪だくみするような顔で

 

リサ「そうなの?今度見せてほしいなぁ......なんて」

 

なんて言ってくるから、

 

唯斗「何がなんてですか。燐子先輩にバレたら殺されますよ、俺たち」

 

と、つい正論で返してしまった。

 

リサ「あはは......そうだね」

 

これにはリサ先輩も苦笑いと言った感じで、何でもない会話をしながらレジに通してもらう。

 

唯斗「じゃ、俺はこれで」

 

と言って帰ろうとすると、「あ!」と呼び止められた。

 

リサ「......後、えっと......3分ぐらい待っててもらっていい?」

唯斗「何でですか?」

 

訊くと、

 

リサ「途中まで一緒に帰らない?」

 

と言われる。

ここで顔を赤らめるのはなんかおかしい気がするし、リサ先輩は俺が彼女持ち(彼女はメンバー内)ということを知っているはずだ。

 

しかし、女性の頼みは無下にはできないので、

 

唯斗「......燐子先輩への説明は先輩からお願いしますね」

 

と、遠回しに承諾。

それもリサ先輩も察してくれたようで、

 

リサ「りょーかい!」

 

と返してくれた。

 

 

......ちなみに、燐子先輩に隠してるのは罪悪感がすごかったので、メッセージを送ろうとしたところ、リサ先輩が俺のスマホで「リサ先輩に送ってくれ、って言われたから途中まで帰る」と打って送ってしまった。

 

 

唯斗「何やってんすか」

リサ「いいじゃん別に。でもマメだねぇ。燐子、怒ると怖い?」

唯斗「怒ったとこ見たことないんで、わかんないです。怒らしちゃいけないのは、わかってるんで」

リサ「うんうん。ユイトに燐子任せて正解だなぁ。ちゃんと幸せにしてやってよ?」

唯斗「もちろんです」

 

 

帰ってきたメッセージには「今井さんをよろしくね」と来ていた。

 

顔文字とかがついてないのが、ちょっと怖いけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




おまけ回と言う名のちょっと書きたかった「浮気じゃないけどほかの女の子と一緒に帰る」シチュ。

こいつあれだね、見方変えたら全員から好感度高めのハーレム野郎だよね、羨まし


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番外 Roseliaとカードゲーム

何も考えない回を書いてもいいと思った。
今回作中で、「XENO」というカードゲームをやっています。
めちゃくちゃに面白いからみんなやってほしい。

簡単なカード説明とルールはあとがきに書いとくので、それ見て理解してくれたらなと思います。

では、どうぞ。


今、俺とRoseliaの面々は、俺の家にいる。

 

 

Yu「えーと...とりあえずみんな、俺のわがままに付き合ってくれてありがとう」

Yk「構わないわ、もともと今日は休みだったのだし」

L「それに、ねぇ?」

R「い、今井さん...!こっち見ないでください...!」

 

 

リサに流し目で見られ、りんが顔を赤くする。

今日もかわいくて素敵です()

 

 

S「今日は何かゲームをすると言っていましたが?」

A「でもその割にはゲーム機とか何もないよね?」

 

 

カードゲームっていう文化がないのかと時々心配になる。

まあ、元々やってたゲームがNFOとSAOだけってのもあるし、納得はする。

 

 

Yu「あぁ。今日はデジタルゲームじゃない」

R「ということは...ボードゲームですか?」

Yu「まあ、そんなとこ。やるのはこれ」

 

 

俺が取り出したものに少し顔を近づけて訝しげな目をするリサ。

 

 

L「『XENO』...?ゼノ、かな?」

Yu「そう」

 

 

リサ、よく読めたなぁ。

ちょっとびっくりしてる。

 

 

S「これはどういう目的のゲームですか?」

Yu「簡単に言えば、相手を負かすゲームだ」

A「面白そう!」

 

 

面白いのは間違いないさ、だって俺がはまったゲームなんだし。(作者も体験済み、なお本品は未所持)

 

 

L「えっと...それは二人用?」

Yu「まあ多人数でもできるけど、タイマンにほうがおもろいから、タイマンにしよう」

Yk「今時タイマンなんて言わないわよ」

 

 

とりあえずユキナの突っ込みは無視。

タイマンで伝わるんだから別に問題ない。

 

 

S「では、誰からやりましょうか」

L「とりあえずユイトは確定でしょ?」

 

 

本当は解説側に回りたかったんだが、まあいいだろう。

 

 

A「はいはーい!!あこやりたーい!」

R「じゃあ、最初はあこちゃんから...私たちは、後ろで決めましょうか」

 

 

面白いから一番最初にやる思考はよくわかる。

...泣かさないようにすることだけ、気を付けるか。

 

 

Yk「そうね」

Yu「じゃあ、みんなはチャレンジャーってことで、5回やるから...3回勝ったら勝ちかな?」

L「あ、こっち燐子最後にするからさ、最終戦は5点にしようよ!」

 

 

なんだ、そのバラエティのクイズ番組みたいなシステムは。

この手のゲームは手加減しないぞ。

それが友人、彼女ならなおさらだ。

いっそう、手は抜かない。

だから、本当に楽しみだ。

 

 

Yu「いいぜ、楽しみだ」

 

 

心の声が漏れだすぐらいには、楽しみだ。

たぶんきっとこの時、俺の口は片方吊り上がっていたことだろう。

 




後書き。
さて、これは序章です。
誰の話が来るかは、皆さんの投票次第です。
では、また。



XENO:ルール説明(今回はタイマンでのルール)

1.1~8のカードを2枚、9,10のカードを1枚ずつ入れた計18枚のカードをよく混ぜ、山札とする。

2.互いに一枚カードを配り、それを手札とする。

3.山札から一枚取り、裏向きのまま山札の一番下に90度ずらして入れる。(以後、この札を《転生札》と呼ぶ)

4.先攻後攻を決め、先攻からカードを一枚引き、カードの効果を使う。先攻ターンの後、後攻ターンを始める。

5.4を繰り返し、脱落させた方が勝ちとなる。

カード説明

1:少年《革命》、1枚目は何も起きない。2枚目を出した方のプレイヤーは、公開処刑を使える。(ただし、この効果で英雄は処刑されない)

2:兵士《捜査》、相手の手札の数字を言い当てることができれば、相手は脱落する。

3:占い師《透視》、相手の手札を見る。

4:乙女《守護》、相手からの自分に対する効果を無効にする。

5:死神《疫病》、相手に一枚引かせ、裏向きのまま一枚捨てさせる。

6:貴族《対決》、相手と手札を見せ合い、大きい数の方が勝利する。

7:賢者《選択》、次ターン開始時、3枚引き、その中から1枚選べる。ほかの二枚は山札に戻す。

8:精霊《交換》、相手と手札を交換する。

9:皇帝《公開処刑》、相手に一枚引かせ、表向きにさせ、一枚捨てる。

10:英雄《潜伏/転生》、このカードは場に出せない。9以外の効果で脱落させられた場合、転生札を使い復活する。


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番外 VSあこ

というわけで、序章の通り、最初はあこちゃんとです。
それでは。


VSあこ

 

 

Yu「こっから一枚引いてくれ。数が書いてあるから、それが大きい方が先行にしよう」

A「じゃあこれ!」

 

 

あこの数字は7。

 

 

Yu「俺が4だから、あこの先攻だな」

 

 

先攻後攻を決める札を山札に戻し、新たに1枚ずつ配る。

 

 

A「一枚引いて、こっち!」

 

 

出されたのは1。

 

 

Yu「何もなしだな、じゃあ俺だ」

 

 

引いたのは7、もともと持っていたのは10だから、引いた方しか使えない。

いかに平静を装って出すか。

 

 

Yu「んー...じゃあ7かな」

A「じゃあ次はあこの番ね!これだ!」

 

 

出されたのは2、俺の手札を当てられる確率は1/14とかなり低確率。

 

 

 

A「うーん...9!」

Yu「その心は?」

A「ユイ兄すごい悪い顔してたから!」

Yu「残念、外れだ。じゃあ、俺の番だな」

 

 

7の効果で三枚引く。

出てきたのは4,8,3。

その中で俺は3を取り、残りを山札に戻す。

 

 

Yu「あこ、これ混ぜて」

A「はーい!」

Yu「んー...どうすっかなぁ...」

 

 

と表上は悩みつつも、手札は3と10なのだから一択だ。

 

 

Yu「じゃあこれで。あこ、お前の手札を見させてもらう」

A「はい!」

 

 

あこの手札は6。

とりあえずこれであこはよっぽどの考えがなければ次に6を使う。

 

 

A「じゃあ、これにしよう!」

Yu「...マジか」

 

 

出されたのは5。

 

 

Yu「ほい。どっちか選べ」

A「じゃあ左!」

 

 

場に出たのは1。

首の皮は繋がったが、依然こちらが有利だ。

 

 

Yu「俺のターンだな...ッたぁ...運がねえなぁ...」

 

 

引いたのは7。

悪くはないが、2が欲しかった。

 

 

Yu「じゃあ、次のターン3枚で。あこ、どうぞ」

A「我のターンだ!ドロー!...ふっふっふ...ユイ兄の攻撃は我には効かぬ!!」

Yu「引き運よ」

 

 

出されたのは4。

これで俺はこのターン、あこに一切攻撃ができない。

 

 

Yu「俺のターンだなっと...」

 

 

7により3枚引く。

出てきたのは4,9,8。

この状況下ではいいとは言えない、しかし9を取られてしまえば俺は死ぬ。

ならば。

 

 

Yu「これで」

 

 

4には4を返すのが流儀だ。

4は自分に対するあらゆるを無効にするため、相手からなにもされないと無駄切りになるのだ。

 

 

A「うぅ...じゃあこれ使えない」

 

 

と言いつつ出したのは2。

6を出しておけばまだわからないが、このゲームから2がなくなったため、6を覚える理由もなくなった。

 

 

Yu「じゃあ、俺の番だな」

 

 

引いたのは3。

あこの手札は6と知っているし、見る必要もないのだが、もう一枚は10なのでな。

 

 

Yu「見せてもらおうか、君の手札を...って、まだ6持ってたのか」

A「10が来たら勝てるから...」

Yu「じゃあ次に来るといいな、お前の番だ」

 

 

10は一生来ない、なぜなら俺の手元にあるから。

 

 

A「でもね、ユイ兄。もしユイ兄が10を持ってたら、あこがもらうからね!」

 

 

出したのは8。

これにより、あこの6と、俺の10は入れ替わった。

 

 

Yu「まずいな...」

 

 

これは次引くカードに掛かっている。

9なら勝利、8はほぼアウト。

場を軽く見渡す。

1,2,3,4,7は既に存在せず、5,8はあと1枚。

9はまだ山札に存在し、10はあこの手の中。

9が引ける確率は1/4、高くはないが低くもない。

 

 

Yu「来いっ...!」

 

 

引いたのは8。

今の手札なら最悪だ。

交換して、あこのターンに9を引かれたら終わりだ。

でも、相手の手中に10がある以上、8しか手はない。

 

 

Yu「これで元通りだな」

A「あこが9を引いたらあこの勝ちだね?」

Yu「そうなるな」

 

 

確率は1/2。

さあ、どうなる。

 

 

A「...わぁ~!!負けたぁ~!!」

 

 

出されたのは6。

 

 

俺が10、あこが6で俺の勝ち。

 

 

S「接戦でしたね」

L「どっちが勝つかわかんなかったよ...」

Yu「正直、俺も怖かった。ありがとな、あこ」

A「うぅ...次は勝つからね!」

Yu「ははっ、楽しみだ」

 

 




さて、アンケートタイム!
三人の中からだれとの対戦が見たいかを選んでくれ!!
1週間とか放置して、一番票が多かったことの対戦を書くぜ!

※作中の対戦は、主が実際に対戦したものをそのまま書き落としてます


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Sword Art OnlineⅡ:Phantom bullet
1話 お偉いさんの日雇いバイト


さて、オリジナルを綴る傍ら、こっちもこそこそと書いていました。

では、SAO:Ⅱの世界に、ようこそ。


唯斗「はぁ......なんだよここ。めっちゃ都会じゃん......」

和人「そら都会だろ。銀座だぞ?」

 

(Yuito)和人(Kirito)は今、銀座を歩いている。

 

何でかっていうのは、俺も知らない。

俺の横で歩いている黒い服のやつ以外は。

俺はこいつに付いて来いって言われてきてるから、まったく事情を知らないんだ。

 

唯斗「......で?そろそろ教えてくれてもいいんじゃないの?俺を拉致った目的」

和人「拉致ったって......人聞きが悪いなぁ。ただ高いスイーツが話聞くだけでタダで食えるからって言っただけじゃないか」

唯斗「やめろ。語弊しかない。なんかの詐欺じゃねえかよ。今時の動画サイトでもなかなか聞かねえぞそんな文句」

 

軽口を叩きながら、和人が足の向きを変えたのはいかにも『高い店』ということを前面にアピールしたかのような店だった。

あまりにも和人が慣れた感じで入っていくので、置いてかれそうになりながらも二人そろっての入店に成功した。

 

「いらっしゃいませ。お二人様でしょうか?」

 

と頭を下げるウェイターさんに、「待ち合わせです」と答えた和人。

その瞬間に、左奥の方から「おーいキリト君!こっちこっち!」と大声で聞こえた。

店内の世間話が一瞬止み、声の方に目線半分、こちら側に目線半分となり、その場にいたたまれたくなって急いで声の主の方へ向かう。

 

視線が集まるのを感じながら、気にしないようにその席に座る。

 

「ここが僕が持つから、何でも好きに頼んでよ」

和人「言われなくてもそのつもりだ。ユイトも好きに頼んでいいぞ。減るのは俺らの税金だからな」

唯斗「え、え?えっと、どういう......?」

 

状況が読み込めない。

目の前に座ってるのは、スーツを着た男性。

いかにもかっちりしてて、お偉いさんって感じの、年上の人。

そんな人相手に、和人がタメ語でしゃべって、しかも支払いが俺らの税金とか言っていた。

実は和人、そのナリ、その歳で国家の偉い人......?

 

和人「えっと......パルフェ・オ・ショコラ......と、フランソワズのミルフィーユ......に、ヘーゼルナッツ・カフェ。ユイトも、それでいいか?」

唯斗「あぁうん、それで......」

「かしこまりました」

 

いつの間にか呼ばれていたウェイターさんが下がった後でも、俺はどういう訳なのか全くわからずにいた。

 

和人「あんたが呼べって言ったんだろ、自己紹介くらいしろよ」

「おっと失礼、これはすまない。いや、でも君とは一回会ってる」

唯斗「会って......?あ、あの時の!」

 

俺と和人にアスナとりんが、もっと言うと300人のプレイヤーがいまだに帰ってきてないことと、りんの居場所を教えてくれた人。

名前は、確か......

 

「あの時はバタバタしていたからね、改めて自己紹介しようか。僕は菊岡誠二郎。所属は長いから言わないけど、呼称としては《仮想課》だね。フルダイブゲームの問題解決を基に発足したグループだと思ってくれていい」

唯斗「菊岡、さん。で......仮想課。あ、えっと、お久しぶり、です」

和人「こんなキョドってるユイト初めて見た」

 

だってお偉いさんじゃん本当に!!とは言えず。

 

和人「ま、いいや。それで?俺たちを呼び出したのは?どうせバーチャルがらみなんだろうけどさ」

菊岡「おぉ、キリト君は話が早くて助かるなぁ」

 

そう言って、菊岡さんはアタッシュケースからタブレット端末を取り出して、数回突きながら言った。

 

菊岡「ここに来てバーチャルスペース関連犯罪の件数が上がっててねぇ......」

和人「具体的には?」

菊岡「仮想世界内での被害による届け出が百件以上、そのうち現実にまで被害が及んでるっていうのが十三件で、うち一件は知ってると思うけど、新宿駅で西洋剣振り回して二人殺したってやつね。うひゃー、刃渡り百二十センチで重さ三.五キロ......こんなの良く振れたね」

唯斗「それって確か、ドラッグ使って錯乱してたってやつだったような。いやでも、十三件あってそれだけなら......」

 

そう言うと、菊岡さんは「その通り」と言って、俺を指さした。

 

菊岡「言っちゃなんだけど、この程度でVRMMOゲームが社会不安を醸成しているなんて結論は出やしない。でも、前にキリト君に聞いたけど......」

和人「VRMMOゲームは、現実世界で他人を物理的に傷つけることへのためらいを低くするんだ」

 

そう言い終わった時、ウェイターさんが滑らかに登場し、テーブルの上に新たに皿が四つと、カップが二つ並べられた。

 

「以上でお揃いでしょうか」

 

という問いに俺と和人はほぼ同時に頷くと、伝票を裏向きにしてテーブルの端に置き、また滑らかに去っていった。

伝票が少し浮いて、裏から数字が透けている。

 

唯斗「(4、いや5桁......!?)」

 

少々動揺したが、目の前に官僚がいるという事実を思い出すと、話のスケールが追いつかなくて逆に冷静になった。

とりあえずナッツの香りがする液体を一口すすって、話の続きを促す。

 

和人「一部のゲームじゃPKとか日常茶飯事だしな。先鋭化したゲームじゃ腕を斬られれば血は出るし、腹を切り裂けばはらわたは出てくるし......」

唯斗「和人、めっちゃ見られてるから......」

 

忘れちゃいけないのは、ここはお高い店であること。

ということはちょっと小綺麗にしたマダムが集まる店ということ。

まぁ、そんな人じゃなくてもスイーツ食ってる時に18Gな話は聞きたくない。

 

和人は一度軽く咳払いしてから、小さめの声で続けた。

 

和人「ともかく、あんな事毎日やってりゃいっちょ現実でもやってみようなんてやつが出てくるのも不思議じゃない。何らかの対策は必要だろうけど、法規制は無理だろうな」

菊岡「無理かな?」

和人「無理だね」

 

和人はそう言ってミルフィーユを食べた。

俺もそれに倣って一口食べる。

フランソワズというのは全くわからないから、おいしい......?っていう感想しか出てこない俺は、たぶん今後一生高い店に行かない方が良いだろう。

 

和人「......ネット的に鎖国でもしないとな。VRMMO回線にかかる負荷だけ見ればかなり軽い部類にはいるし、国内で取り締まっても無駄だろうけど」

唯斗「まぁ、だろうなぁ。金さえあれば海外に逃げてやり続けるだろうし」

 

俺と和人(ゲーマー共)がうんうんと頷いていると、向かいの菊岡さんが和人のミルフィーユを見ながら言った。

 

菊岡「そのミルフィーユおいしそうだね、一口くれないか」

 

和人はこの店に入ってから2か3回目のため息をつくと、ミルフィーユの皿をそっちに押しやった。

嬉々とした顔でそれを受け取ってから、和人の一口の約2倍ほどを口に含んだ高級官僚は、それを飲み込んでから、「しかしねぇ」と切り出した。

 

菊岡「僕は思うんだよ。どうしてPKなんかするんだろうねって。みんな仲良くした方が楽しいだろう?」

和人「あんたもALOやってるんだからわかるだろ。フルダイブとか関係なく、MMORPGっていうのはリソースの奪い合いなんだよ。さらに言えば、エンディングがないゲームにユーザーを向かわせるモチベーションは、優越感を求める本能的な衝動なんだと、俺は思う」

 

そう言うと、菊岡さんはケーキを口に含んだまま眉を持ち上げた。

和人が4回目高のため息を漏らすので、俺が代わりに出る。

 

唯斗「ゲームに限るから分かりづらくなってるんですよ。周りにいませんか?自分よりいい大学出て、その学歴だけで自分よりいい役職取ってる人とか。反対に、自分を謙ってくれる人とか。劣等感と優越感のバランスというか。要は、人より上に立ちたい、っていう考えだけなんですよ」

菊岡「キリト君とは違ってずっと敬語なのは気持ちがいいねぇ。ま、それは置いといて。君たちはそのバランス取れてるのかい?」

和人「......まぁ、一応彼女もいることだし」

菊岡「君は?」

唯斗「右に同じ」

菊岡「その点においては、君たちが非常に羨ましい。今度ALOで女の子を紹介してくれないか?あのシルフの領主さんなんて、好みだね」

 

優越感の話をしていたはずなのに、どうしてこの人の恋愛相談を受けてるんだろう。

 

和人「で、優越感の話だけど。現実で手に入れるのは難しいよな。いい成績とか、スポーツがうまくなるとか、かっこよく・可愛くなる努力とか。どれも時間を掛けるくせに、実を結ぶかどうかはわからない。だからこそのMMORPGだ。まぁ、時間を掛けるのは一緒だけど、絶対に目に見える結果が返ってくる。レアアイテムを引っ提げて、ハイレベルなプレイヤーが町中を歩けば、そこそこのプレイヤーはみんなそいつのことを見る。注目を集めている、と錯覚できるわけだ」

唯斗「確かに美男美女カップルは見とれるよな、わかる。でも、もっと根本だよな、MMORPGが売れる理由て言うのは」

菊岡「と言うと?」

和人・唯斗「《強さ》、もっと言うと《力》」

 

意図せず同時に言い、また意図せず同時にコーヒーを啜る。

それを見た菊岡さんが、少し怪訝な顔をして、口を開いた。

 

菊岡「その《力》ってやつは、本当にゲーム内だけで済む物なのかな?」

和人「......現実に作用するかってことか?」

菊岡「そう。フルダイブが及ぼす環境について、大脳生理学のセンセイにも聞いてみたんだけどね、チンプンカンプンさ。......随分遠回りしたけど、今回の本題はこれさ」

 

菊岡さんはさっきのタブレットをもう一度取り出し、こちらに渡してきた。

受け取り、和人とともにのぞき込む。

 

唯斗「誰ですか、この人」

 

菊岡さんにタブレットを返しながら、それに表示されていた顔写真の人物を聞く。

 

菊岡「えっと、先月の......11月14日に、東京都中野区のアパートで異臭がするって大家さんが言ってね。インターホンおしても返事がないからロック解錠して部屋に入ってみたら、茂村保(しげむらたもつ)26歳が死んでいた。死後5日半だったらしい。で部屋は散らかってたけど荒らされた形跡はなく、遺体はベッドに横たわったまま、そして頭に」

和人「アミュスフィア、か」

菊岡「その通り。すぐに家族に連絡が行って、変死ということで司法解剖が行われた。結果は急性心不全だそうだよ」

唯斗「心不全ってことは、心臓停止......どうしてです?」

菊岡「解らない」

 

分からない、と言っているが、VRMMOをやっていて死亡、というのは珍しくない事案だ。

最近のVRゲームは何かを食べれば満腹感が発生し、それが数時間持続する。

けれど、当然現実の体の中には何も入っていないわけで、1日とか2日置いとけば栄養失調、酷ければ発作や餓死と言った危険もある。

 

あるのだが。

今更こんなことでニュースになるほど、VRゲームも最新鋭じゃない。

 

和人「で、なんで呼んだんだ。そんな一般論を聞かせるために来たわけじゃないんだろ」

菊岡「茂村のアミュスフィアのインストールされていたソフトは一つだけだった。《ガンゲイル・オンライン》......知ってるかい?」

唯斗「あぁ......銃ゲーか......ちょっとやってたけど酔って辞めたな」

 

ガンゲイル・オンライン、通称GGOと呼ばれるそのゲームは、端的に言えばFPSゲームだ。

けど、普通のゲームとは明確に違うのが、《プロ》が存在すること。

まぁ、いろいろあって、GGOでお金が稼げるというものだ。

詳しい説明は省くけど。

 

和人「その茂村氏......ゼクシードってやつは、死亡当日もGGOにログインしてたのか?」

菊岡「いや、どうやらそうでもなかった。《MMOストリーム》というネット放送局の番組に《ゼクシード》の再現アバターで出演していた」

唯斗「あぁ、Mストの《今秋の勝ち組さん》って番組ですね。ゲストが接続不良で番組中断って話を聞いたような」

菊岡「多分それだ。出演中に心臓発作を起こしたんだな。で、未確認情報なんだけど、ちょうど彼が発作を起こしたタイミングでGGO内で妙なことが有ったって書きこんでるユーザーがいるんだ」

和人「妙?」

菊岡「MMOストリームはゲーム内でも見られるんだろう?GGO世界の首都《SBCグロッケン》という町の酒場で、おかしな行動をしたプレイヤーがいたらしい。なんでも、テレビに映ってるゼクシード氏の映像に向かって、『裁きを受けろ』『死ね』等々叫んで銃を発砲したらしい。で、その後に発作を起こしたと」

 

裁きを受けろ......死ね......

どうも嫌な響きだ。

そして、こんな話を俺たちにする真意が少し読めた。

 

唯斗「......」

菊岡「おや、どうしたんだい?」

唯斗「いや、わざわざVR事件の専門科が俺たちに接触してきて、こんな話をする真意が読めて、今すぐ帰りたいなって思っただけですよ」

菊岡「......ほう?その心は?」

唯斗「俺とキリトどっちか、もしくは両方に、その銃を発砲したプレイヤーに打たれて来いってことですよね。自分の身が可愛いから、俺たちを盾に」

菊岡「あ~......半分正解だけど、半分間違ってるな。この発砲事件、もう一個あって、共通してるのはどっちも名が知れてるプレイヤーなんだ。つまり、強くないと撃ってくれないんだよ」

和人「だったら尚更だろ。ユイトはともかく俺はペーペーだぞ?」

 

俺も強いわけじゃないんだけどなぁ、と訂正したい気持ちをぐっと抑える。

 

唯斗「プロがいるゲームで、強くならなきゃいけないって相当ですけど......」

 

俺は、一歩間違えたら恐喝......いや間違えなくても恐喝になるようなことを口走った。

 

唯斗「仕事としてなら、受けますよ」

菊岡「......いやぁ、ユイト君が振ってくれてよかった。僕もね、ただで行かせようとは思ってなかったさ」

唯斗「......え?」

 

どうやら、俺はとんでもないことを言ってしまったような気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あぁ、長くなってしまった。
しかもRoselia出てこない。
でも、安心してください、次はデート回ですので()


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2話 幸せな時間の流れ

やっと書けた。
オリジナルほったらかしよくない!!
さて、そろそろアンケートも締め切りますので。




練習課題曲、最後のシンセサイザーの音がフェードアウトする。

それと同時にスタジオ内の空気が弛緩し、後片付けに入る。

その中で、キーボード担当、白金燐子は誰よりも早く片づけを終えた。

 

燐子「じゃあ、お先に、失礼します」

 

お辞儀をして出ようとすると、ベーシストから声がかかる。

 

リサ「おつかれ~!あ、ユイトによろしくねっ☆」

燐子「え、えっと、はい......」

 

それに恥じながら答えると、ドラマーから弄られる。

 

あこ「あ~!りんりん顔真っ赤!」

燐子「あ、あこちゃん......」

 

それに、ギタリストが制止をかける。

 

紗夜「宇田川さん、あまり弄ってはだめですよ」

友希那「そうよ。それに、仲間の春だもの。それも、あの『聖剣使い』とね?」

 

ボーカルがそう揶揄うと、キーボーディストはさらに顔を真っ赤にした。

それを見て他のメンバーが笑う。

 

リサ「ま、いいや!行ってらっしゃい、燐子!仲良くね!」

燐子「......はい、行って、きます......!」

 


 

さて、菊岡さんの「GGOに行って死銃(デス・ガン)なるプレイヤーに打たれて来い(意訳)」という話を、諭吉さんをうん十人という話で受けた俺たちは、とある場所に二人で向かっていた。

だが、俺はどうしても違和感が拭えなくて、歩きながら訪ねた。

 

唯斗「なぁ」

和人「何だ?」

唯斗「なんで俺がデートの約束取り付けたの知ってるんだよ。で、あとなんでダブルデートなの?」

 

俺は一昨日ぐらいに、勇気を出して(メッセージで)デートの約束を取り付けることに成功した。

自分から声をかける(メッセージを打つ)のにかなりの勇気とかなりの覚悟が必要だったが、先輩は快く承認してくれた。

の、だが。

和人によって拉致られた俺は、高いケーキ屋から出るときに、しれっと「今日のデート先変更な」と言われたのだ。

 

 

和人「そりゃ、俺たちが一緒にいるからだろ」

唯斗「それも答えになってない気がするけど......じゃなくて、場所の問題だよ。なんで外苑なんだ?」

和人「主な理由はさっきの野暮用。メインはちょっとした豆知識をだな......お、着いたぞ」

 

和人が指を指した先には、赤白の服に身を包んだ茶髪の少女、アスナとモノトーンで固めた黒髪の少女、燐子先輩がいた。

偶然にも、装いがSAOのころにそっくりだ。

 

明日奈「現実と仮想世界の違いってなんだろうね」

燐子「そう、ですね。強いて言うなら......」

 

美少女二人が会話しているだけで華やかだ。

目の保養とはこのことだろう。

しかし、その花畑を無遠慮に荒らす奴が一人。

全身を黒で固めた、少し線が細い少年。

「黒の剣士・キリト」こと、和人だ。

 

和人「情報量の多寡だけさ」

明日奈「わっ!?」

燐子「わっ......キリトさんに、ユイト君......こんにちは」

 

正直、女性の肩からいきなり出てくる男の顔は恐怖でしかないだろう。

 

唯斗「アスナに燐子先輩、こんにちは。申し訳ない、俺の連れが」

明日奈「ほんとだよ~。いきなり現れるんだもん。転移結晶でも使った?」

和人「場所も時間もぴったり。いきなりってことはないだろ」

唯斗「いやいきなりだぞ?少なくとも肩から喋りかけるのはおかしいからやめような?」

 

 

ーー余談だが、俺がアスナを先輩付けしないのは気心が知れた仲かつ友人の彼女だから。

ならどうしてりんを先輩付けするのかというのは、単純に気恥ずかしいから。

 

 

 

話を戻そう。

 

どうやら和人はアスナ相手だと常識というか、倫理観が吹っ飛ぶらしい。

すると、苦笑を浮かべていた和人の顔が真顔に戻り、自分の彼女の恰好を上から下まで見始めた。

 

唯斗「おい和人。彼女とは言えそんなやらしい視線を送るな。パブリックスペース、OK?」

和人「ち、違うよ。その......なんか、思い出すなぁって」

 

アスナは自分の恰好を見下ろし、和人の言ったことを理解したようだった。

そして、左腰に手を置いてから、懐かしむように言った。

 

明日奈「細剣(レイピア)はないけどね。そういうキリト君も、今日はずいぶんと黒いね?」

和人「二刀はないけどな。いやあ、いつもなんとなく上下黒は回避してるんだけど、今朝スグがまとめて洗濯したもんだから、これしかなくて」

明日奈「洗い物貯めるからそうなるんだよー?けど、今日は四人揃って『あのころカラー』だね?すごい偶然だなぁ」

唯斗「燐子先輩はそうかもしんないけど、俺そんなにか?」

和人「あぁ。腰の金とか、それっぽい」

唯斗「それカリバーンだろ。あとお前が言うと馬鹿にしてるようにしか聞こえないからあとで切るわ」

和人「やめてくれ、あれ捌くの苦労するんだ」

 

という与太話はさておき、本題に入るとしよう。

 

唯斗「で、なんで今日のこれが4人でかつ、外苑でなんだ?」

明日奈「それは私も思ってた。キリト君、歴史好きなんだっけ?」

和人「や、そういう訳じゃないよ。主な理由としては......まあ、それは後で説明するけど。それはそれとして、皇居ってちょっと面白いと思わないか?」

燐子「面白い......?」

和人「南北に約2キロ、東西に1.5キロ。北の丸公園や外苑合わせると230万㎡で、千代田区の20%を占めてる。平面だけじゃなくて、地下鉄は通ってないし、上は飛行機すらも飛べない。つまりこの場所は東京のど真ん中を貫く、巨大な侵入不可エリアってわけだ」

唯斗「確かにすげえけど......その口上、昨日必死に考えたか?」

和人「え、なんで?」

唯斗「ALOじゃまともに詠唱すらできなかったお前が、やけにすらすらとしゃべるなぁって。そう思っただけだ。今思いついたんなら謝るよ。けど、ここに指定したんなら、考えたんだろ?」

 

和人はちょっと顔をしかめて、「なんでネタバラシするかなぁ」とボヤくと、「まあいいか」と言って、続けた。

 

和人「んで、この中心は、物理・情報的にも遮断されてる。いわば旧ALOの世界」

唯斗「和人、ストップ」

和人「......悪い。嫌なこと思い出させたか」

 

隣の彼女を見ると、いかにも「大丈夫」と言った顔で首を横に振っていた。

 

......俺の彼女、強くない?

流石トップを走るガールズバンドのキーボーディストだよ。

で、前を見るとこれまたアスナも「大丈夫」と言っていた。

流石閃光様だ、お強い。

 

唯斗「んで、物理はわかるが、なんだ情報的に遮断って」

 

言うと、和人は立ち止まって、いろんな場所を見る。

そして、気の方を指さして言った。

 

和人「そことか、あそこもだな。監視カメラがあるだろ?今時のセキュリティシステムはスタンドアローンで、外部からは一切接続できないようにネットワークが組まれてるんだ」

燐子「へぇ......変わった形の、カメラですよね」

唯斗「見てくれは街灯っぽいもんな。こんだけ厳重にやってるのは、実験チックな感じもするけど」

和人「実際そうだって噂も聞いたことあるけどな。こんだけ隔離されてたら、東京の中心は《異界》って感じするだろ?」

明日奈「それはちょっと言いすぎな気もするけどね」

 

再び歩く。

こうして四人で歩くことは初めてだが、いつもこうしてたんじゃないかとさえ思えてくる。

と、突然和人と明日奈が走り出すので、慌ててついていく。

 

二人とすれ違った夫婦がカメラを和人に渡し、写真を撮っている。

 

I'll take pictures of you, too.(あなたたちも撮ってあげるわ)

和人「Thank you.」

 

と、4人で一枚撮ってもらった。

どうやら外国人の観光客のようだったが、連れている双子の姉妹が可愛らしかった。

 

燐子「ふふっ......」

唯斗「どうした?」

燐子「ううん。子供って、見てるだけで癒されるよね」

唯斗「めっちゃわかる」

 

言いながら、再び離れていった和人たちに追いつく。

 

和人「まあ、その......妹ができたら、ユイも喜ぶよ」

唯斗「昼間っからなーに言ってんだ」

和人「あたっ!いや今のは違くて......」

 

こうしていると、和人と攻略をサボっていた時のことを思い出す。

ダンジョンからこっそり抜けて、二人して芝生で横になってたところをアスナとりんに見つかって、怒られながら渋々戻る、そんな日々を。

 

知らず知らずのうちに、りんの手をキュッと握っていた。

 

燐子「......?ゆいくん?」

 

言われたけど、無視して握り続ける。

 

この瞬間が、愛おしくて。

ずっと、こうしていたい。

 

和人「あ......でも、あれだな......」

明日奈「キリト君?何か用事あった?」

和人「いや、その、今夜は大丈夫なんだけど......」

 

俺の方を見るので、「は?」と声に出る瞬間に、思い出した。

 

唯斗「しばらくALOにはログインできないな」

和人「そう、だな」

燐子「どうして、ですか?」

和人「俺たち、実は......ちょっと野暮用で......ALOのアカウント、他のゲームにコンバートさせるんだ......」

 

 

明日奈・燐子「......え、えぇぇぇぇ!?

 

 

 

 

 

 

 

 




デート回って難しいのね。
私デートなんてしたことないからわからんわ。


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3話 Ready to Dive to GGO

オリ作品が全く書きあがらないまま三話目。
これが上がった時点でアンケート締め切ります。



明日奈「え、えぇ!?二人とも、ALO、辞めちゃうの......?」

燐子「せっかく、皆で遊べるのに......どうして、ですか?」

 

美少女二人が涙目になって上目遣いをしている。

この状況がどれだけ異常かというのは、俺たちにしかわからない。

 

唯斗「ち、違います!!」

和人「ほんの数日だよ、すぐ再コンバートするから!じ、実は......ちょっと訳アリで、他のVRMMOの調査をしなきゃいけなくなって......」

明日奈「様子見?それなら新規でアカウント作ってやってるでしょ?なんでわざわざコンバートまでしなきゃなの?」

和人「それは、その......例の、総務省、メガネの......」

唯斗「伝えづらいのはわかるがあからさまに口ごもるな。怪しいのは同感だけど」

燐子「確かに、あの人には、お世話にはなりましたが......私、あまり......その、信用してはいけないように、思うんです」

唯斗・和人「それは同感」

 

話したのは初めてだが、話し方がどうにも胡散臭かった。

それでもGGOへの潜入依頼を受けたのは、一概にお金のためかと言われれば、それは否定できないが。

アスナは和人の手を握って言った。

 

明日奈「できるだけ、早く帰ってきてね。私たちの家は、たった一か所なんだからね」

和人「もちろん。すぐに戻ってくるよ。《ガンゲイル・オンライン》ってゲームの内情を、ちょっとリサーチするだけなんだからさ」

 

アスナは和人の手を離して、俺の肩をしっかり掴んだ。

 

唯斗「いっ......何......?」

明日奈「キリト君が無理しそうだったら、すぐに引き戻してね!唯斗君だけなんだよ、キリト君を止められるのは!」

燐子「でも、無理はしないでくださいね......何かあったら、すぐに連絡してください......」

唯斗「......了解。ブレーキ役、請け負った」

 


 

という、約1週間前の会話を思い出しながら、今は病院内を和人と共に歩いている。

菊岡さんから和人に送られてきたメールの内容に軽く目を通しながら、目的地に向かう。

この病院は、俺や和人、それ以外数多くの元SAOプレイヤーが、身体能力のリハビリを行ったリハビリステーションに併設されている場所だ。

まぁ、正確に言うと、リハビリステーションの方が併設しているのだが。

 

入院病棟三階、ネームプレートに記載がない部屋。

そこのドアをノックして開ける。

 

「おっす!桐ヶ谷君に蒼闇君、お久しぶり!」

唯斗「......あ、安岐さん。ご無沙汰してます」

和人「ど、どうも安岐さん。ご無沙汰してます」

 

目の前にいるナースは安岐さん。

俺と和人のリハビリ期間の多くをお世話になった看護師さんだ。

と、いきなり腕が伸びてきて、俺と和人の二の腕を握る。

 

和人「わぁ!?」

唯斗「っ!?......あの、なにしてるんですか?」

安岐「おー、結構肉ついたねぇ。蒼闇君の方がちょっとマッシブかなぁ。でもまだ足りないよ、ちゃんと食べてる?」

和人「食べてます食べてます!というか、安岐さんが何でここに?」

安岐「あのメガネの役人さんに頼まれてね~。リハビリ中の桐ヶ谷君と蒼闇君の担当だった私に声がかかって、今日はシフトから外れたんだ~。これからまたよろしく、桐ヶ谷君、蒼闇君」

和人・唯斗「よろしくおねがいします」

 

と、挨拶してから、そのメガネの役人さんがいないのに気づく。

 

和人「で、そのメガネの役人さんは来てないんですか?」

安岐「うん。なんか大事な会議があるらしくてね。伝言預かってるよ」

 

渡された茶封筒を開け、中の紙を見る。

手書き、しかも走り書きっぽい。

 

『報告書はメールでいつものアドレスに頼む。諸経費は任務終了後、報酬と合わせて()()()()()()()支払うので、請求すること。追記ーーー美人看護婦を若い衝動で襲わないように』

 

唯斗「......ごめん和人。安請け合いしたの、ミスったかもしれない」

和人「ほんとだよ。お前の分ちょっと貰うからな」

 

言いながら、茶封筒ごと握りつぶしてポケットに突っ込む。

 

和人「あぁ.......じゃあ、早速ネットに繋ぎますんで......」

安岐「あ、はいはい。準備できてるよ」

 

そう言いながら案内されたジェルベッドと、その横に並ぶ物々しい機器の数々。

そこに横たわろうとすると、「まったまった」と制された。

 

安岐「じゃあ二人とも、脱いで」

和人「はい!?」

唯斗「んぇ!?」

安岐「電極貼るから。どうせ二人とも全部見てるんだし今更恥ずかしがらなくてもいいよ~」

和人「あ、あの、上だけでいいですか......?」

安岐「よろしい」

 

と、いう訳で上裸になり、電極を貼りつけられて、そのままアミュスフィアを被る。

 

安岐「これでOK......っと。いつでも行けるよ」

 

その言葉で電源を入れる。

 

和人「じゃあ、行ってきます」

唯斗「4時間ぐらいは潜りっぱなしだと思いますが......」

安岐「はーい。二人の体はしっかり見てるから、安心していってらっしゃい!」

 

目を閉じて、同時に聞こえたスタンバイ音で息を一度吐く。

そして。

 

和人・唯斗「リンク・スタート!」

 

三個目の異世界へ、いざ。

 

 

 




タイトルもそこそここだわってるから英訳アプリかなんかにかけてほしいね。
では、そういうことで


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4話 降り立った新たな世界

こっちの方が筆進むのヤベーイ!!
思いついたら即出すスタイルなのでね、不定期更新ですわ!!

さて、アンケートの結果は
友希那:0
紗夜:9
リサ:4
あこ:3
燐子:7
ソロ:4

というわけで、紗夜さんとりんりんの参戦です。
では、どうぞ。



コンバートしたデータ確認を終え、世界に降り立つと、違和感を感じた。

 

Yu「......ここ、は」

K「ここが、GGO、だな」

 

違和感の正体は、空一面が夕日に照らされているかのように赤かったからだ。

確かGGOの設定として、『最終戦争後の地球』というものがあったはずだ。

それの影響によるものかもしれない。

と、ここでまた違和感。

 

Yu「キリト、お前声高くね?」

K「あぁ、そういえば。近くに鏡かなんかは......えぇっ!?」

Yu「いやキリト、そんな願望が......?」

 

キリトが叫び、俺が妙に納得した理由は、キリトの格好にある。

まず、背が低い。

SAOでもALOでも、身長は若干俺より低いぐらいだった。

それが、俺の肩ぐらいに頭のてっぺんがある。

そして、全体的に華奢だ。

ともすれば、その辺にいる女性プレイヤーよりも。

 

K「いや違う違う!というか、VRで性転換するのはいろんなとこかゆくなるんだぞ!?」

Yu「......へぇ」

K「あっ!お前はめたな!?」

Yu「さぁ?どうだか」

 

と、俺の姿はと言うと、こちらは一般体系の男性プレイヤーだった。

身長もさほどリアルと変わらず、動かしやすい。

と、後ろから「おぉっ!?」と声が。

見ると、俺より身長が低いプレイヤーがキリトをナン......失礼、交渉していた。

 

「お姉さん運がいいね!そのアバターF1300番系でしょ!今なら始めたばっかだろうからさぁ、アカウントごと売らない?2メガクレジット出すよ!」

 

2メガ、と言うと、2の後に0が六つ、つまり200万でアカウントを買い取るというのか。

よっぽどレアなのか、あの姿。

いやしかし、Fということは女アバターであり、キリトは男である......と言っていた。

キリトは自分の胸をまさぐって、ないことを確認した後、「悪いけど、俺男なんだ」と、声変わり前の男の声のような高さでそう言った。

すると、男は一層目を輝かせ、

 

「じゃ、じゃあ、それM9000番系かい!?す、すごいな、それなら4、いや5メガ出す!売ってくれ、ぜひ売ってくれ!!」

 

どうやら、先のF1300とやらの2倍金額を出すほど、M9000というのはレアらしい。

ちゃんと男判定なんだな、あれで。

 

K「えーと、これ初期キャラじゃなくて、コンバートなんだ。だから売れない、悪いね」

「そ、そうか......あ、でも噂じゃ、その手のレアアバターはコンバートする前のアカウントのプレイ時間が長ければ長いほど出やすいらしいんだ。参考までに、前のアカのプレイ時間、教えてくれないかな?」

K「ぷ、プレイ時間?えーと.......いちま......」

Yu「キリト、1年ぐらいって言っとけ

 

馬鹿正直に答えようとするキリトを何とか止める。

SAOプレイヤーかつ、そのままALOなど、他のVRゲームを地続きでやってるプレイヤーは、最低でもSAOの中だけでも2年換算である。

しかし、SAOができたのは今から約3年前、故に、2年はおかしい。

 

K「い、いや、普通に1年ぐらいだよ。やっぱ偶然じゃないかな」

「うーん、そうか。あ、そっちのお兄さんもいいアバター引いたね!」

Yu「お、俺?」

「そう!出現率はそんなに低くないんだけどね、さわやかなイケメンってだけでレアなんだよ、というわけで、そうだな......50キロで、どうかな?」

Yu「あ、あー......俺も、その、コンバートなんだ。すまない」

「うーん、残念。ま、気が変わったら連絡してよ!それじゃ!」

 

そう言って、男は俺たちに透明なカードを押し付けて帰って行った。

 

Yu「レアアバターって高値で売れんだな」

K「いや、勘弁してほしい」

 


 

Yu「なぁ、俺たちの目的ってなんだっけ」

K「忘れたのか?」

Yu「違うって、確認だよ。今日から開催の大会に出て、死銃(デス・ガン)の正体を掴む、でいいんだよな?」

K「あぁ」

 

初期スポーン地点、最大の都市《SBCグロッケン》の隅の方のベンチで今回の目的を確認した後、俺はふと最悪の可能性を感じ、ステータスを開いた。

そして、キリトに問いを投げた。

 

Yu「そういや、お前武器どうすんの?」

K「え?いや、普通に銃で......あ」

Yu「気づいた?」

K「あぁ」

 

コンバートの利点は、ステータスを引き継ぐこと。

逆に言えば、それ以外は引き継がない。

例えば、アイテムやお金。

全て預けるなりしておかないと、コンバート時にすべて消える。

ので、俺たちは今、何に悩んでるかと言うと......

 

Yu・K「お金、ないじゃん」

 

ということだ。

 

初期の所持金は1000クレジット。

下調べした感じ、この金額では新品の物は安すぎるものしか買えない。

 

Yu「どーしようかぁ......」

 

この際分かりやすくおろおろでもしてみようか、隣に女(実際は男)もいることだし、最悪キリトだけでも銃は買えるだろう。

そう思い、ベンチから立った瞬間。

 

「見た目は違っても、動きは一緒ですね」

「そうですね。ちょっと面白いです」

 

と、後ろから声がした。

 

Yu「......誰よ、あんたら」

 

一人は淡いピンクの髪をまとめて肩にかけ、もう一人は黒のショートヘアのプレイヤー。

どちらも女性プレイヤーらしいが。

 

Yu「動きは一緒って、あんたら、俺たちのこと知ってるのか」

「そちらの女性は知りませんが、貴方ならよく知っていますよ」

Yu「こいつは女じゃない、こんな見た目をしているが男だ」

「あら、それは失礼しました」

「まぁまぁ、そんなに怒らないで?」

 

そう言って、ピンク髪が俺の肩に触れる。

普通なら嫌だが、どうも嫌だとは思わない。

 

Yu「知ってるって言ったな、俺もあんたらを知ってるか?」

「もちろんです。こちらをどうぞ」

 

目の前に現れた2枚の透明カード。

さっきの男が出してきた奴と一緒だ。

とすると、これはプロフィールカードとなる。

メニューから《address》をタップ。

そこに表示されている名前は《Sayo》と《RinRin》。

 

Yu「......え?」

R「心配だから、きちゃいました」

S「私はしろ......燐子さんの監視です、勝手な真似をしないようにと」

K「なぁユイト、誰なんだ?」

 

メニュー画面を可視化し、キリトに見せる。

 

Yu「......こういうことだよ」

K「......これ、アスナ来たらヤバいなぁ......」

Yu「まぁ、大丈夫でしょ、根拠はないけど。とりあえず二人とも、またよろしく」

R・S「よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こっちの世界での紗夜さん、りんりんの見た目ですが、

ストレア(CV.志崎樺音さん)
プレミア(CV.工藤晴香さん)

でイメージしてます。

どちらも原作には出てこないので、支障はないかと。



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5話 それができれば苦労はしない

タイトルが思いつかない。


さて、俺たちの監視の名目でわざわざ新規アカウントを作成し、ダイブしてきた二人(紗夜、燐子)と共に、まずはガンショップに向かった。

 

R「それで、お金がなくて困ってる、と」

Yu「要約した挙句出たのがそれですか......」

 

今までの経緯を軽く説明したらこう帰ってきた。

どこかどころか大幅に抜かしている要約は要約と言えるのか。

 

R「賭け、ですが。もし自信があるなら、あれに挑戦してみては?」

 

と、りんが指さしたのはガンショップの一角を占領する......ゲームのようなものだった。

 

K「あれは?」

S「ギャンブルゲーム、と言う奴ですね。20メートル先にいるガンマンに触れれば勝ち、と言う奴です」

Yu「勝ち、か。......面白そう」

 

と、そのゲームに挑戦するプレイヤーが一人。

 

ゲート前にプレイヤー、そのゲートの上にカウントが表示され、それが0になった瞬間にゲートが開いた。

そして、まっすぐ数メートル走ったかと思いきや、体を横に伸ばす運動のような格好で止まった。

この男は芸をしてる余裕すらあるのか、と思った瞬間、男の顔と腰の横、股の下を銃弾が通って行った。

 

Yu「分かってたのか......?」

R「『弾道予測線』というものです。本人にしか見えないものですが」

Yu「......へぇ」

 

また数メートル進んだ後に、今度は足を大きく開き、上半身を前に折った。

すると、その背中の上を2発、股の下を1発、銃弾が通過した。

 

Yu「なるほど、な」

 

十メートルを突破する......と思ったところで、NPCガンマンは変則三点バーストに切り替えた。

最初の二発をジャンプで避けた後、バランスを崩した男のベストに遅れた1発が当たった。

それにより、ガンマン上部に表示された金額が500上昇した。

 

S「と、言う感じですね。正直言って、挑むのは無謀かと」

Yu「......仕組みは理解した。行ってくる」

S「え、ちょっと!?」

 

サヨの警告は聞いた上で、俺はやることを選択した。

攻略法はある。

ゲート横のパネルに手を当てると、レジのような音が鳴り、ガンマンが喋る。

 

「おいおい、ビギナーが挑戦かよ」

「ついでだし、ちょっと見ていくか」

 

周りの音がだんだん消えていく感覚。

目の前でカウントが始まる。

 

Yu「はっ......」

 

息を吐き出し、集中する。

反応じゃない。

()()んだ。

 

ゲートが開く。

ALOで鍛え上げたステータスの名残で、一発目が来る前から5メートル地点に到達。

そこに、俺の頭と腰と脚に赤い線が伸びる。

それを微かに横に避けながら、前進する。

7メートル地点で、例の変則三点バーストが飛んでくる。2発目迄を左に、3発目は右に避けてまた前進。

さらに5メートル進むと、三点バーストがもっと変則的になって飛んでくる。

ほぼ勘だけで避けて、さらに前進。

15メートル地点では、リボルバー式とは思えない速さで6発を打ってくる。

それを前転しながら避ける。

 

Yu「弾切れ、だろっ!」

 

確かに6発を打ち切ったはずなのに、何かある気がして上に飛ぶ。

俺がさっきまでいた場所は、レーザーによって焦げていた。

 

Yu「(あぶな!?)俺の、勝ちだ」

 

そう言って、ガンマンにタッチ。

 

オーマイ、ガーーーーーーー!

 

その叫び声が終わると、後ろの家らしき背景の窓から玄関から、金色の物が降ってくる。

それをすべてストレージに突っ込んで出ると、ガンマンはまたプレイヤーを煽る決まり文句を言っていた。

周りのどよめきを受けながら、3人の元に戻る。

 

K「すげえな、どうやったんだ?」

Yu「キリトならできると思うよ。飛んでくる弾の向きを、目で予測するだけ」

R「え、えぇ......?」

S「忘れてましたが......無茶苦茶ですね......」

 

この時の俺は、店中のプレイヤー全てからの目線を受けていた気がする。

 

 

 




ここまで書くとシノンだして絡ませるタイミング分かんねえな


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6話 銃の世界に来たのに

Yu「とりあえず、買える分の資金はゲットできたな」

 

手に入れたのは今までありとあらゆるプレイヤーが挑んできた総額。

50万ほどだろうか。

 

K「そうだなぁ......」

 

と、俺を見ながら並んでいる銃を見物するキリトに疑問をぶつける。

 

Yu「......おい、もしかしてこれ、二人で分けろってのか?」

K「いや、それ以外に方法ないだろ?」

Yu「いやまそうだけど......二人で分けたら25万ずつ......どうにかできるのはメイン武装だけじゃないかなぁ......」

R「安く済ませるのも手ですが......それはそれで、ダメージが大きいですからね」

S「安い武装は帰って痛手を負います。ギリギリ妥協できるラインを見定めましょうか」

Yu「......はぁ、了解」

 

というわけで、俺が手に入れた500Kは二人で250Kずつ使うこととなった。

 


 

Yu「マシンガンにグレネード......一発か連射か......うーん......」

R「悩んでるね」

Yu「いや、実を言うと前ちょっとやってたんだけど......その時のステの振り方と違うからさ、前と同じ戦法は使えないし......そういえば、りんのビルドは?」

R「とりあえずAGI型かな......その次は、うーん......STR?」

Yu「で、使ってるのは?」

R「マシンガン」

Yu「もっといいのあったでしょ」

 

りんの話を聞きつつ、店内の物色を続ける。

どうにも、前のアカで使ってた武器は今の俺には合わない......というか、必要値を十分に超えているから軽すぎて弾がどっか飛んでいくんだ。

軽すぎて銃を振り回せるのは問題だし。

と、ふとショーケースの一番上、筒のようなものが目に入った。

 

Yu「......ん?」

R「どうしました?」

Yu「いや、こんな銃、あったっけ」

R「これは......ふふっ、ユイト君、好きそう」

Yu「好きそう?」

 

というか、よく見たら銃じゃない。

銃口もなければ、トリガーらしきものも存在せず、スライド型のスイッチがあるだけ。

 

R「『フォトンソード』、通称『ビームサーベル』、ですね」

Yu「って、ことは、剣?」

R「ですね」

Yu「......面白ぇ」

 

目線を下に戻して、濃い青を選択して『BUY』をタップ。

するとものすごい勢いで某宇宙戦争のR2何とかみたいなNPC店員がすっ飛んできて、手をかざすように指示してくる。

さっきのゲームと同じような感じで手をかざすと、またレジの音が鳴り、俺の手の中にはその筒があった。

 

R「買っちゃいましたね」

Yu「キリトも同じ思考だと思うんだよなぁ。剣があればそれで突っ込むだろ、アイツ」

R「ふふっ、噂をすれば、ですね」

 

りんが指刺した方向には小走りで走ってくる、キリトとサヨ。

 

K「......やっぱそうだよなあ」

Yu「......色は?」

K「黒で」

Yu「OK」

 

黒色を選択し、再び「BUY」。

さっきと同じことをし、現れた黒の筒をキリトに渡す。

 

K「サンキュー」

Yu「これあれだな。装備とか諸々一緒かもな」

K「むしろその方が良いんじゃないか?」

Yu「こういうゲームでゴースティングってどうなんだろうな」

K「ダメじゃね?」

Yu「じゃあだめじゃん」

 

とまぁ、ゲーマーっぽい会話をしながら、防具を揃える。

俺のは肩パッドと膝パッドがついて、薄いけどブレストアーマーがついてるやつ。

キリトはブレストアーマーをつけつつ、軽いジャケットのようなものを購入。

 

R「二人とも、予備でハンドガンぐらいはあった方が良いよ?」

Yu「て言っても、もう残金あんまないんですけど」

S「あのあたりに安めの銃がありましたから、そこで決めましょう」

 

ハンドガンと言っても、いろいろ種類があるんだなとショーケースを見て回る。

 

Yu「......お、良さそう」

 

しかし、少しお高め。

キリトのが決まらないと買えるかどうか怪しい。

 

Yu「決まったか?」

K「これにするよ」

 

比較的小さめで、取り回しがよさそうなハンドガン。

名前は『ファイブセブン』。

5.7ミリ口径だからだそうだ。

 

Yu「ほい」

K「サンキュー。ユイトのは?」

Yu「お前が決めないと買えないんだよ。でも......お、足りるな」

 

選択したのは『プロキオンSL』。

トリガーを引きっぱにしておけば勝手に弾が出るフルオートシステムとやらがついてるハンドガン。

少々大きくて重いが、「持ってる」感が出て良いだろう。

 

Yu「これで、揃ったかな?」

K「あぁ。いざ、BoBへ!」

S「盛り上がってるとこと申し訳ありませんが、締め切りまであと10分ですよ」

K/Yu「えっ!?

 

 

 

 

 

 




プロキオンSLですが、『ソードアート・オンライン フェイタルバレット』というゲーム内に登場するハンドガンです。
TRIALVersionを最近遊んでいるのですが、楽しいですね


オリジナルほったらかしよくない、よくないのに...


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7話 まさか銃ゲーの中でレースゲームやるとは

このままだとシノンさん微塵も出てこないんだけど、どうしたらいい?


Yu「早く言ってよサヨさん!?」

S「いえ、あまりにも盛り上がってたようなので、一応のつもりだったのですが......」

 

にしたって警告が遅いよ。

という言葉をどうにか飲み込む。

 

K「間に合うか!?」

 

そういう間にも、ショップから出て、総督府に向けて走り出す。

 

R「大会エントリー用の端末、入力に最低3分はかかるそうなので......多く見積もってもあと5分ほどで総督府に戻らないと......」

 

何か、嫌な単語が聞こえた。

 

Yu「戻る?今、戻るって......」

R「はい。さっきのガンショップ、真反対に位置しているので......今から全力ダッシュでも、間に合うかどうか......」

 

ここで間に合わなかった、なんて言ったら謝罪じゃ済まない。

 

Yu「と、とにかく走るぞ!!」

 


 

ショップから出て1分、全力ダッシュをしているが、いまだに建物の影が見えない。

 

Yu「はぁっ......はぁっ......まだ見えねえ......」

 

と、キリトが何かを見つけ、俺の袖を軽く引っ張る。

 

K「......ユイト!バギーだ!」

Yu「......了解!りん、乗って!」

 

彼女に手を引いて後ろに乗せる。

パネルに手を押し当て、バギーの使用権を買う。

 

R「え!?ユイト君、乗れるの!?」

 

当然の疑問だ。

俺はまだ免許証を取っておらず、何なら二輪車の運転経験は自転車のみだ。

しかし、これはフルダイブゲーム。

経験ぐらい、他のゲームでどうにかなる。

 

Yu「レースゲームなら何度かね!しっかり捕まってて!!」

R「わっ!?」

 

柵を飛び越え、道路に着地してスピードを上げる。

 

S「っ!これは......後ろでも、なかなかな風圧ですね......!」

 

何か言ってる気がするが、後ろにいるかつこの風音の中では聞き取れない。

そんなことは些細な問題だと、もっと踏み込む。

 

Yu「この速さならっ......うおっ!」

 

横で走ってバスが車線変更をしてきた。

慌ててバスがいた方に変更して、スピードを上げる。

 

K「もっと飛ばせ!」

 

そう聞こえた気がして、聞こえないだろうけど返事をする。

 

Yu「了解!!」

 


 

総督府タワーに、バギーを横に滑らせながらその近くに止まり、時間を確認すると、3時まであと6分、というところだった。

 

R「あそこの端末でエントリーです!」

Yu「了解!......あれ、りんは来ないの?」

R「サヨさんに、止められてしまって」

S「死人が出るかもしれないのに、それに参加させるわけないでしょう

Yu「......それは正しい。じゃ、エントリーしてきます!」

 

タッチパネルに触れ、メニューを起動。

『第三回バレット・オブ・バレッツ予選エントリーフォーム』なるメニューを見つけ、タップ。

驚くべきことに、俺のプレイヤーネームは既に入力されており、その下に名前や職業といった入力フォームがずらっと並ぶ。

 

入力すべきかどうか悩んでいると、上の方に注意書きを見つけた。

 

 

Yu「『現実の自分のデータを入れとけば、順位に応じて景品がもらえるよ』、か......。景品......いや、だめだ」

 

俺の、いや俺たちの目的はデス・ガンに接触し、その正体を暴くため。

勿論このゲームを楽しみたい気持ちもあるが、それは今度、いつか機会があればやることにしよう。

 

というわけで、現実世界関連のフォームを空欄にしたまま、一番下の『SUBMIT』をタップ。

 

SUBMITって、提出とか服従とか言う意味だったような......。

 

Yu「キリト?間に合ったか?」

K「あぁ、何とか。......お前、全部埋めた?」

Yu「いや、空欄にした。......正直、景品には惹かれたけど......」

K「どこで俺たちの情報が見られてるかわかんないからな。用心しようぜ......っと、お前どこブロック?」

 

自分がエントリーを終えた端末には、『あなたはFブロック、12番です』と書かれていた。

 

Yu「Fの12。お前は?」

K「えっと......Fの37だから......お、当たるなら決勝だな」

Yu「当たるに決まってんだろ。勝とうぜ」

K「あぁ」

 

互いに笑いながら、互いの拳を軽く当てた。

 

 

 

 

 

 

 

 




......いっそ出さないのも、一個の手かもしれない


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8話 BoB、開幕

シノンさんの出し方が雑い雑い。
シノンさん→So

二次創作の難しさ、出てますね()


K「とりあえず予選エントリはーできたはずだけど......会場はどこなんだ?」

Yu「あそこのエレベーター、それっぽいけど」

 

指さした先にあるのは、いかにもという形のエレベーター。

まぁ、ゲームに合わせてカスタマイズされてはいるが。

思い出したくはないが、旧ALOの《偽》空中都市にあったエレベーターの方が、よっぽどエレベーターしていた。

 

Yu「とりあえず、行ってみるか。プレイヤーと鉢合わせたらそこで聞けばいいさ」

K「そうだな。行くか」

 

エレベーター内に入って、とりあえず1番下っぽいB20と書かれたボタンを押す。

扉が閉まって、緩やかな下降感が訪れ、到着と同時に押し付けられる感覚。

扉が開くと、そこは広場になっていた。

 

Yu「う......わぁ」

K「すごいな......こんだけ人がいるとは思えない静かさだ......」

 

それもそのはず。

先ほどからずっと、目線がこちらに向いている。

きっと、俺たちがどういうプレイヤーかの品定めと言う奴だろう。

 

PvP戦に特化しきった奴らの目は、一周回って変態と一緒だ。

気持ち悪い。

 

 

Yu「とりあえず着替えよう。控室みたいのなのは......どこ?」

「こっち」

Yu「え、あ、どうも......」

 

後ろから声をかけてきたプレイヤーの気配に全く気付かなかった。

それはキリトも同じ。

 

「何してるの?」

Yu「あ、いやなんでも。すみません、案内ありがとうございます」

「彼氏なら、彼女のエスコートぐらいしたら?」

K「あ、俺、男で」

「えっ!?」

 


 

と、俺たちをめちゃくちゃ渋い顔で見ながら、渋々道案内してくれたのは『シノン』という女性プレイヤー。

今は、ボックス席に俺とキリト、向かい側にシノンさんという形で座っている。

で、ある頼みごとをするがてら、俺たちの動向を話した。

 

So「......で、右も左もわからないビギナーが、コンバート初日でBoBって......」

 

と言いながら、再び頭を抱える少女。

 

Yu「いやその、すみません......ごく最低限のことだけ教えてくれたらいいので」

So「はぁ......わかったわ。乗り掛かった舟だしね。あの子のモニターの数字、あれが0になったら、プレイヤーはみんなどこかのフィールドに転送される。そのフィールドでは、自分と相手二人だけ。それに勝ったらここに戻ってきて、負けたら1階に戻ってくる。自分の試合が終わって、次の試合の対戦相手が決まってれば、すぐに2回戦、3回戦と続く。......Fブロックは64人、だから5回勝ったら本試合に出れるよ」

 

すらすらと彼女の口から説明が流れる。

それを聞き逃さないようにしながら、脳内でメモを組み立てる。

 

Yu「ありがとうございます。助かりました」

 

そう言うと、彼女は何回目かのため息をついて、

 

So「まったく。下調べぐらいしてきなさいよ。こんなに教えてくれる人なんて普通いないわよ?」

 

と言う。

 

Yu「いやもうほんとにその通りで」

So「で、そっちの人は何してるの?」

 

と、キリトを指さした。

 

Yu「おい、寝てんのか?」

K「......っ!あ、いや、なんでも......」

Yu「寝てたな。しっかりしろ」

K「あ、あぁ、悪い」

So「......あなたの相方、ほんとにBoB出場者なの?」

Yu「一応は。これでも強いはずなんですけどね。それ以外がポンコツなだけで」

K「あのな......」

 

とキリトが言いかけた瞬間、待機ロビーに流れていたBGMが鳴り止んだ。

それと入れ替わるように、エレキギターによるファンファーレが鳴りだした。

それに乗せて、柔らかい声でアナウンスが流れる。

 

『プレイヤーの皆様、大変お待たせいたしました。只今より、第三回バレット・オブ・バレッツ予選トーナメントを開始いたします。エントリーされたプレイヤーの皆様は、カウントダウン後に予選一回戦のフィールドに自動転送されます。幸運をお祈りいたします』

 

So「......始まったわね。一応、頑張ってと言っておくわ。けど」

 

シノンは俺とキリトを手を銃の形にして交互に指さし、言葉を続ける。

 

So「必ず本選まで上がってきなさい。その体に風穴開けてあげるわ」

Yu「......分かりました。レクチャーの借りは返します」

 

そして、俺たちはどこかのフィールドに飛ばされた。

 

 

 

 

 




絶対解釈違いなんだよね、このシノンさん。
絶対やらないもんこんなこと。


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9話 飛び道具捌くのって本当にしんどい

何にしてもそうですよね、近距離アタッカーって言うのは遠距離には弱いんですよ()


Yu「っと......フィールド、着いたな」

 

転移が完了したようだ。

とりあえず周囲を見渡す。

目線の先は荒野、しかし自分の周りは森林と、異様なフィールドだった。

しかし、今のところは警戒する必要もないだろう。

流石に運営も、隣合わせにプレイヤーを配置はしない。

故、少し散策してみることにした。

 

Yu「森林と言うか......こりゃ樹海だな、ハイディングにはちょうどよさそうだ。開けてる側は......なんもない荒野だ。それはそれでおもろいけど......」

 

と、嫌な予感がして、上体を背中側に逸らす。

すると、俺の鼻先すれすれを銃弾が通って行った。

 

Yu「......っぶねぇ~......」

 

どうやら、フィールド把握はさせてくれないようだ。

俺は、腰からビームサーベル......失礼、フォトンソードを取り出し、スイッチを入れる。

ブォンという音と共に、青色の円柱の刀身が現れる。

それを体に前に構え、目を閉じる。

 

Yu「(音だ。聞き分けろ)」

 

周囲の雑音をシャットアウトし、明らかに異音となっている音を探る。

SAOでもこれはずいぶんと役にたった。

今みたいな状況で、隠れるのが得意なモンスターと出くわした時、音を聞いてそこを叩く、もぐらたたきのようなことをした。

しかし、今の状況はもちろん違う。

相手は人、武器はおそらくスナイパーライフル。

遠くからでも俺の頭か心臓部を狙い打てば勝ちになる。

と、左斜め後ろの方から、微かに音が聞こえた。

 

Yu「そこっ!」

 

一直線に突っ込むと、人影が見えた。

そいつは慌ててライフルを引っ込めると、代わりにハンドガンを取り出し俺に向けた。

 

Yu「遅い!!」

 

目の前まで距離を詰めれば、ハンドガン一発でも致命傷になりかねないが、逆に外せば大きい隙となる。

赤く伸びる弾道予測線(バレットライン)を肩あたりに受けながら、俺は《バーチカル》の構えで斬りかかる。

奴がトリガーを引くのと、俺がそいつの腕を斬り落とすのは、ほぼ同時......いや、俺の方が若干早かった。

 

「ぐっ!」

Yu「もらった!」

 

右手を銃ごと切り落とし、怯んだ隙に心臓部を一刺し、ついでに頭部も一刺し。

そうすると、奴のアバターから力が抜け、アバターの上にドクロマークと共に『DEAD』と表示された。

と、同時に上空で『congratulation』の文字が浮かんだ。

これで一回戦は突破のようだ。

しかし、相手が連射型では無くて助かった。

フルオート射撃とやらは、秒速10発飛んでくるらしい。

願わくば、この感じの相手があと4、いや3回来てくれれば......

 

俺はそう願いながら、待機ロビーに戻された。

 


 

しかし、あるいはやはり、そう簡単にはいかなかった。

2回戦の相手はフルオート式機関銃をメインに立ち回る相手だった。

情けない悲鳴をあげながら柱の陰に身を隠しつつ、こちらもフルオートでと、腰に下げたプロキオンを抜く。

そのままトリガーに指をかけると、目の前に緑の円が拡大縮小を繰り返しながら縦横無尽に動き出した。

これはきっとこの中に銃弾が飛んでいくんだろうと思う。

息を吐き、集中を入れなおす。

銃を構え、物陰から飛び出る。

すると、前方から無数の赤いラインが飛んでくる。

時計回りに飛んでくる赤いラインをフルオートで迎撃する。

7発に2発は相殺、残り5発は体にあたるが、いずれも軽傷で済ませながら、強引に突っ込む。

フォトンソードのスイッチを入れて、弾切れになった相手の機関銃ごと貫く。

 

Yu「はぁ......つら......」

 

頭上に表示されている『congratulation』の表示を見ながらつぶやく。

 

これがあと2回。

 

Yu「こりゃ、今日の睡眠はとれなそうだなぁ......」

 

その呟きは、転移音によってかき消された。

 

 

 

 

 




2回戦突破、後は2回やってキリトと斬り合いですね(ネタバレ)


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10話 銃ゲーなのに銃は切り札

ようし、10話行ったぞぉ!!


...オリジナル、また止まってるよ


3回戦。

今回は何と機関銃とスナイパーの二丁使いだった、びっくり。

遠くから撃たれて、よしこいつはスナイパーだとか思って近づいてったら、ハチの巣にされて体力半分消えました。

その後何とか牽制射撃しつつ勝利を収めましたが、あのまま行ってたら俺は3回戦落ちでしたね、危ない。

続く4回戦。

なんだか火縄銃のようなデザインの銃だった。

銃口までが長い、祭りなどで見るコルク銃と言った方が近いだろうか。

ともかく、そんな奴と当たった。

 

......いやまぁ、何もないけど。

 

普通に勝ったよ。

銃身斬り飛ばして喉笛掻き切って勝ったわ。

 


 

さて、4回戦を終えロビーに戻るはずの俺の体は、そのままフィールド転移待機場所に飛ばされた。

どうやら、俺の対戦相手はもう決まってるらしい。

ま、そんな奴一人しかいないけど。

 

Yu「......剣同士のPvPは......ユージーン将軍振りか」

 

あれはそこそこしんどかった。

と言うか、それ以来PvPしてないのか。

 

Yu「ま、気張っていくか」

 

そう言った瞬間に、転移が始まった。

 

舞台は廃線になった道路。

道路に廃線とか存在するのかわからないけど、まぁ、雰囲気はそんな感じ。

バスがあったり、ひっくり返った車。

うん、道路だ。

そんな道路のど真ん中を、無防備で歩いていく。

もし仮に俺の予想が外れ、あがってきたのがあいつじゃないとしたら。

俺のアバターには風穴があいたことだろう。

しかし、現に俺のアバターは五体満足。

そして、向こうに人影が見えることから、俺の予想は的中したと言って良くなった。

 

Yu「......待機ロビーぶりだな、キリト」

K「あぁ」

 

銃ゲーの道路のど真ん中で、銃を構えずお互いを見据える。

観客は困惑していることだろう。

しかし、これが俺たちの流儀(スタイル)なのだ。

 

Yu「せっかくだし、デュエル形式でやるか?」

K「あぁ。半分切った方の負け、でいいな?」

Yu「OK」

 

言うと、キリトは銃を抜き、一回引いて、空の弾薬を取り出した。

 

K「これを弾いて、落ちた瞬間にスタートだ」

Yu「分かった。銃は?」

K「状況に応じて。基本は使わないかな」

Yu「了解」

K「じゃあ、行くぞ」

 

キリトが弾薬を放る。

俺たちは互いの剣のスイッチを入れ、キリトは半身で構え、俺は剣道の構えに似た構えを取る。

弾薬はいまだ上昇を続けている。

キリトは強い。

それは、この世界でも損なわれることはないだろう。

現に、こうして決勝まで上がってきている。

目を閉じ、息を吐く。

もう弾薬は見えない。

あとはただ、落ちた音に合わせてダッシュするだけ。

 

けど、直感で分かった。

もう、地面すれすれに弾薬があると。

そして、控えめに澄んだ金属音が鳴った。

 

Yu「っ!!」

K「はっ!!」

 

俺とキリトは同時に飛び出し、フォトンソードをぶつけあう。

2度。3度。

俺もこいつも一歩も引かない。

ならばと、右足を伸ばしてキリトの腹を蹴る。

ノックバックしてうずくまったのを確認し、距離を詰めて剣を振り上げる。

左わき腹から右肩にかけての《スラント》。

それをまともに喰らって、キリトのHPが9割になる。

 

Yu「火力!!」

K「フォースで強化すんだよ!」

 

と言って俺の胴を斬るキリト。

勿論、9割までしか減らない。

ならばと、いったん距離を取って、剣を突き出してダッシュ。

《ヴォーパル・ストライク》だ。

まぁ、ソードスキルを使っているわけではないから、威力は落ちる。

けど、その後の硬直はない。

しかし、あれだけSAOで多用していた技だ。

「硬直がある」という固定概念は、なかなか消えない。

 

故に。

 

俺がキリトの横をすれすれで突進し、すぐさま振り返って足を斬りつける。

それでHPが7割になるのを確認したら、振り返った時の反動で後ろにある左足で地面を蹴り、《バーチカル》の構えで反転突進する。

 

Yu「うおぉぉぉ!!」

K「やら......せねぇ......!!」

 

しかし、さすが黒の剣士。

俺のバーチカルもどきを受け止め、開いてる左手で腹パンをかましてくる。

これもソードスキル風に言うと《エンブレイザー》となるのだろうが、プロテクターがあるうえ、スキルによる威力補正もないので、マジでただの腹パン。

ちょっと痛いし、HPも8割5分まで減る。

 

Yu「まさか腹パンは予想できないって」

K「俺もヴォーパル・ストライクにバーチカルは予想外だった。......しかし、さすがに長いな」

 

試合時間は既に3分は経過している。

打ち合うゲームならそろそろ決着がつくころだ。

今頃ロビーから見ている観客たちは困惑その他諸々の感情によってどうにかなっているだろう。

 

Yu「......よし。俺今からこいつの全弾フルオートで撃つから、HPが5割より上で捌き切れたらお前の勝ち、そうじゃなかったら俺の勝ちって、どう?」

K「......わかった、やろうか」

 

決闘スタイル変更。

俺でできたんだから、こいつでも行けるはずだ。

腰のホルスターからプロキオンSLを抜き、キリトに標準を合わせる。

残弾は20ほど。2割ほどのHPなら消し飛ばせる。

 

Yu「......行くぜ?」

K「あぁ、来い」

 

その言葉で、俺は引き金を引いた。

フルオートなため、反動を抑えながらキリトから外れないように標準を調整するので精いっぱいだ。

 

残弾をすべてを使い切ったことを確認し、キリトのHPを確認。

表示はグリーン。

つまり、5割以上は残っている。

 

K「ノーダメ、俺の勝ちだな」

Yu「......20発全部捌いたの?......そりゃ俺負けだわ」

 

歓喜半分、困惑3割、呆れ2割で呟くと、俺は上空に向かって、「リザイン!」と叫んだ。

それにより、勝者はキリト、よって優勝はキリトとなり、準優勝は俺となった。

 

 

 

 




キリト、チート疑惑()


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11話 大事なことはちゃんと伝えよう

皆も、隠し事とかはだめだぞ?()


BoB予選から一夜明け、いつものようにRoseliaメンバーと共にライブハウスに向かい、練習を見学していた時。

少し長めの休憩の時に、リサ先輩が悪そうな顔をしながら近づいてきて、少しヤな予感がした。

 

リサ「ねぇユイト?最近ALOやってないよね?どうしたの?」

 

馬鹿正直に「死ぬかもしれないVRゲームに潜ってます」とは言えず、適当に答える。

 

唯斗「あー......えっと、最近課題がたまり過ぎちゃってて......」

 

嘘ではない。

けれど、すぐ消化できるほどの量だ。

 

リサ「ふーん?その割にはここに来る時間はあるんだね?」

唯斗「いやその、これは日課ですし......」

 

......少しだけ、悲しくなったのは内緒にしておこう。

 

リサ「じゃあ、これはどういう説明をするのかな?」

 

そう言って先輩が見せてきた携帯の画面には、『第3回《バレット・オブ・バレッツ》本大会出場プレイヤー三十人決まる』と書かれた「MMOトゥモロー」のニュース画面。

先輩が指を指しているのはFブロックのTOP2が載っている。

1位には「Kirito」の文字、そして2位に「Yuito」の文字列。

 

唯斗「......あ~......同じ名前の人ですね~......いるんですねぇ、そういう人~......」

 

目を右往左往させながら事実の捻じ曲げを試みる。

 

あこ「ユイ兄、嘘下手......」

リサ「これは、ユイトだよね?」

 

再度詰められる。

口ごもって再度事実の歪曲を試みる。

 

唯斗「結わえる都と書いてゆいとかもしれないですし......一概には言え......」

 

後ろから殺気。

恐る恐る振り返ると、飲み物を買いに出ていった友希那先輩と紗夜先輩が立っていた。

 

友希那「仲間に何も知らせず、一人で何をしているのかしら?」

紗夜「それが命の危険があるゲームだなんて、知ったら悲しむでしょうね?」

 

と、周りを見ると「噓でしょ?」みたいな顔をして囲まれていた。

 

友希那「それは、どういうことかしら?」

リサ「え、ほんと?」

あこ「えぇ~!?」

紗夜「ちゃんと、説明しましょう」

唯斗「......はい」

 


 

流石に先輩相手に「先に説明しといてくれ」とは言えず、自力で説明を始めた。

 

リサ「うわぁ......それ、ホントに大丈夫?」

唯斗「病院からダイブして、一応心拍も計測してもらっているので、平気だと思います......多分」

 

説明を終えて、俺がそう返すと、友希那先輩が苦い顔をして口を開いた。

 

友希那「それは......必ずユイトがやらなきゃいけないことなのかしら?」

唯斗「え?」

 

友希那先輩にしては弱気な意見だ。

 

友希那「もしかしたら死ぬかもしれないのでしょう?」

 

その後に続く言葉を聞きたくなくて、俺は食い気味に謝罪をねじ込んだ。

 

唯斗「ごめんなさい、先輩。これは、俺たちにしかできないことです。俺たちが、解決しなきゃ、いけないんです」

 

そう言い切ると、後ろから肩に手を置かれる。

 

燐子「友希那さん、唯斗君を、信じて、あげてください」

 

燐子先輩だった。

 

友希那「......燐子が言うなら、信じるわ。けれど」

 

言葉を切って、俺の目を真っすぐに見つめる先輩。

 

友希那「絶対に、無事に帰ってきなさい。燐子を心配させるなんて、以ての外よ。そして、貴方もいて『Roselia』であることを忘れないように」

唯斗「......はい。必ず、戻ってきます」

 

 

 


 

 

という会話が、3時間前。

今日はBoB本戦。

時刻は午後5時。

本戦開始は8時からであるが、早めに入ってエントリーだの射撃練だのやってた方が精神衛生上よろしいということで、今現在病院にいる。

指定された病室に入ると、昨日と同じ安岐ナースが病室の椅子に座り、本を読んでいた。

そして、先客。

先にアミュスフィアを被ってGGOにダイブしているであろう和人。

 

唯斗「こんにちは。安岐さん」

安岐「や、君も早いね。桐ヶ谷君も随分と早く来たよ」

 

ちらっと和人の方を見て言う。

 

唯斗「あいつはあれで色々心配症ですから。まぁ、俺もですけど」

安岐「大会は8時からだって言ってたね。モニターはそこからでいい?」

唯斗「はい。ホントすみません」

安岐「大丈夫。いくらでも付き合っちゃうよ」

 

謝ると、ケロっと言い返してくる。

 

ダイブ前の精神統一として、軽く深呼吸。

ぶっちゃけ、死銃(デス・ガン)が、リアルのプレイヤーを殺せるとは、9割信じていない。

その9割は、元々心臓に持病を持ってて、その時にちょうど死期だった、というとんでもなく不謹慎な考えで。

残りの一割は、昨日の和人と会話をしながら考えたことだ。

 


土曜日、BoB予選後。

病院からの帰り道、和人は異様に暗かった。

 

唯斗「なぁ、和人。どうした?そんなに暗い顔して」

和人「......SAO生還者(サバイバー)に、会った」

 

俺は、一瞬だけ安堵した。

けれど、それなら和人の暗さが説明できないと、それをかき消して訪ねた。

 

唯斗「......《ラフコフ》の、生き残りか?」

和人「あぁ。そして、たぶんそいつが死銃だ」

 

サバイバーにして、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の生き残り。

それが、死銃の正体。

 

唯斗「なんでわかったんだ、そいつがサバイバーだって」

和人「腕の内側に、あのマークをつけてた」

 

あのマークとは、棺桶から腕の骨が見えているようなデザインの、不気味なエンブレムのことだ。

俺は、半ば無意識的に口を開いた。

 

唯斗「......まだ、殺人を楽しんでるのかもな」

 

それを聞いた瞬間に、和人は俺に掴みかかったが、

 

和人「そんなこと......!あり得る、のかもな」

 

そう言って、俺から手を離した。

 

唯斗「悪い、配慮がなかった」

和人「いや、俺も。引っかいたりしてないか?」

唯斗「あぁ、平気だ。けど、その元気があるなら、明日の本選も平気そうだな」

 

唇を歪めてそう言うと、和人も同じく薄く笑って、

 

和人「あぁ。......約束を、果たさなきゃいけないからな」

 

と、決意を固めた顔でそう言った。

 

唯斗「そうだな。死銃倒して、ちゃんと借り、返そうぜ」

 

そう言って拳を合わせ、お互いの帰路に着いた。

 


 

 

唯斗「はぁ......よし」

 

ベッドに横たわり、アミュスフィアを被る。

 

安岐「おや、桐ヶ谷君とは違って悩みとかはなさそうだね?」

唯斗「もちろんあります。けど、こんなところでいちいち悩んでたら、出来ることもできなくなるので」

 

俺の声色を見てか、それ以上の追及はしてこなかった。

 

安岐「うんうん。でも、ため込みすぎには注意してね?たまには美人ナースを頼ってくれてもいいんだよ?」

 

そうやってウインクされると、年上耐性があまりない俺にはどうしていいかわからない。

......嘘だわ、いつも関わってる過半数先輩だった。

まぁ、いいか。

 

唯斗「あはは......その時は、よろしくお願いします」

 

そういい、肩の力を抜いて、ベッドに全体重をかける。

 

唯斗「じゃあ、行ってきます。ーーリンク・スタート!!」

 

 

 

安岐「はいな、行ってらっしゃい。《聖剣使い》さん」

 

ーー今、何て?

 

と聞こうとしても、既に俺の意識はGGOに吸い込まれて、聞けなかった。

 

 

 



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12話 本戦前

皆様、お久しぶりです。

といってもこっから投稿頻度は上がるわけではなく、どっちかというと生存報告という側面が近いです。

「お前絆10サーヴァント週1で書いてんじゃねえか!」と言われれば弱いです、ごめんなさい。

ただ、「こっちも書いてるから!」という表現のための12話です、だから短い。

でも、生きてるから。という証明です。

どうぞ




Yu「は......ぁ」

 

GGOの最大都市、《SBCグロッケン》の総督府タワー近くの路地。

そこに俺、Yuitoは降り立った。

 

BoB本戦まであと2時間はある。

銃弾補給とバレットサークル......トリガーに手をかけた時に出てくる円のことだが、あれの精度を高めるための射撃訓練でもしようか。

いや、その前にまずエントリーだけ済ませてしまおう、ギリギリで滑り込むのはまずい気がする。

現にそれやって予選には危うく遅刻しかけたし。

そう考え、総督府に向かった。

 


 

受付を済ませたが、なんだかやけに視線を感じる。

視線の方を向くと、数人の男がこちらを見ている。

目が合うと、うすら笑いを浮かべながらひらひらと手を振っている。

と思ったら、隣の男に口を寄せ、こちらを見ながら何かを話している。

よく耳を澄まして聞いてみると、「あれが噂の」だの「銃ゲーなのに剣で」だの、総括したらよくない話だった。

聞くんじゃなかったと肩をすくめ、射撃訓練場に向かおうとした俺の足を、女声が止めた。

 

Yu「......ん?」

R「はぁ、はぁ......追いついた......」

Yu「メッセージぐらいくれればこの辺で待つぐらいしたのに......」

 

俺がそう言う間にもりんは距離を詰めてくる。

 

Yu「あの、りん......っ!?」

 

抱きしめられた。

 

R「絶対、無事で戻ってきて」

 

若干涙声だったような気もするが、顔は見れないので、軽く背中を叩いてやる。

 

Yu「言われなくても、帰ってくるよ。必ず」

R「うん。待ってる、から」

 

それだけ言って、りんは目の前から消えた。

ログアウトしたのだろう。

 

Yu「さて......頑張るか」

 

頑張るか、というのもおかしい話だ。

俺たちの目的は、死銃と接触することだから。

 


 

Yu「っ......!」

 

フルオートの射撃は、ほぼフルで使い切ることはないにしろ、牽制には十分使える。

なんせ、俺のスタイルは片手剣特攻型、一回でもとちればHP全損なんてザラだ。

そのためのこの銃ではあるが、なんか使わない気がしてきている。

それならいっそ装備を軽くするためにとか思ったが、そもそも剣一本でどうにかするやつが装備重量なんか考えても仕方ない。

この世界の剣は軽いし、どうせ持ち物は剣一本と銃一丁だけなんだから。

 

Yu「良しっと......」

 

銃の感覚も掴んだ。

エントリーも済ませてある。

替えの弾薬も買った。

 

Yu「行くか」

 

呟いて一旦屈伸。

体を伸ばしてから、総督府の待機ホールへと向かった。

 

 

 

 




最終投稿日3か月前て。
やってるよマジで。

はい、ぼちぼち執筆してますので、よろしくお願いします。

評価とお気に入りと感想くださいなんていわないので
評価とお気に入りと感想ください。(矛盾のかまたり)

では、次はどの作品で出会うかな。


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