脳内妄想無双は好きだが実現するのは違うと思う (大鷹とび)
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原作開始前
1話 俺が当事者になるのは違うと思う


もう一つの小説が進んでいないのに新しい小説を書き始めてしまった大鷹とびです。

完全に息抜きで書いているのでチート、ご都合主義等なんでもござれな状態になっています。

それでもいい方はぜひ楽しんでいただければと思います。


俺の名前は『武藤(むとう) (かい)』漢字の読み方的にぶとうかいって読めることで陽キャによくいじられる顔面偏差値中の下、運動神経、頭の良さ共に中の中のオタクで、妄想の中で無双するのとラノベとアニメが大好きな高校3年生の18歳だ!

今日は俺の大好きなアニメの劇場版が公開される日だからそりゃもうウッキウキよ!

 

「楽しみだなぁ!オイ!」

 

楽しみ過ぎて思わず口に出てしまったぜ…周りの視線がアイタタタ…でも映画館まで一直線だ!

 

『プーッ!プーッ!』

 

なんかクラクションみたいな音がするな?

まあここは割と都会だからいつもの事だわさー...ってなんか女の子が飛び出してるーっ!?!?

このままじゃえらい事になるじゃん!?俺も映画どころじゃなくなるって!一番近いのは俺かよ!

 

「くっそ...!」

 

とりあえず女の子を助けないと!俺も飛び出して女の子を突き飛ばして…あれ?これ俺はどうなるん?女の子が轢かれそうになったから突き飛ばして女の子のいた位置に俺がいる訳だから...

 

「あ...」

 

俺は視界が真っ暗になって意識を手放した...

 

———————————————————————

 

「あれ?」

 

目を覚ましたら俺は真っ白な空間にいた。

なんだここ?

 

『目が覚めましたか?』

 

うぉ!?なんか脳内に直接語り掛けてくる感じの声が聞こえる!?

 

「えっと...え?」

 

『目が覚めたみたいですね』

 

なんか起きたら目の前にめちゃくちゃ神々しい人がいるー!?

 

「あーえっと...どちらさまでしょうか?」

 

とりあえず聞いてみよう、こうゆう時はなるべく下手に出て聞くのが一番!

 

『私はあなた達の世界では神とか女神と呼ばれている存在です』

 

「まさかの神様!?どっどどどどうして!?」

 

『貴方は本来あの女の子を助けて車にも轢かれずに生きている筈でした、そして助けた女の子の家族からとても感謝され最終的に助けた女の子の姉と結婚して順風満帆な人生を送り最後は老衰で安らかに人生の幕を閉じる予定だったのです』

 

なんか早口で俺の未来全部言われたー!?え?何?俺ってそんなに充実した人生を送れる人間だったの!?趣味が趣味だし絶対に天涯孤独のまま一生を過ごすと高校生ながら思っていたのに...

 

『しかしこちらのミスで貴方は死んでしまいました...なので補填として貴方に第二の人生を歩んでもらう為にこうして貴方を呼んだのです...』

 

あっ...薄々気付いてはいたけどやっぱり俺死んでるのね...改めて言われると結構ショック...

それにしても第二の人生ってなんだ?まさか転生ってやつ!?俺その類のアニメとか

ラノベとか大好きでよく読むけどまさか自分が当事者になるとは...

とりあえずどうなるかは分からないから神様に聞いてみないと...俺脳内妄想でよく無双するけど

実際に争いをするのは嫌だし...

 

「それで俺はどうなるんですか?」

 

『貴方には元々いた世界とは別の世界で新しい命をもらい新しい人生を歩んで貰います、行先の世界はこちらで決めさせてもらいますが、貴方の要望はある程度叶えます』

 

行く世界決められないのか...戦争のある世界とかバイオなハザードが起きてる世界だったら嫌だなぁ...

 

「行先の世界が分からないと要望も出せないんですけど自分はどんな世界に行くんですか?」

 

『そうですね...こちらの都合で申し訳ないのですが、貴方にはIS(インフィニット・ストラトス)の世界で第二の人生を歩んでもらいます』

 

がっつり戦うし差別ある世界じゃないですかやだー...設定とかは俺も好きな本だけども途中で読むの辞めちゃったから知識は穴空きだし登場人物の内何人か目を付けられたら終わりレベルがいるし、地雷だらけの世界じゃん...

まじかー...まあこの際覚悟するしかないか...いや!まだ原作と関わると決まった訳じゃない!

もしかしたら死ぬ前に送るはずだった人生を過ごすだけで済むかもしれない!

 

『あ、ちなみに主人公と同等の重要な存在になることは確定ですので、それを踏まえたうえで私に要望を言ってくださいね?』

 

終わった...俺の希望はわずか5秒でなくなりました...戦うの嫌だよ...怖ええよ...

 

『どうかしましたか?』

 

「イエ...ナンデモナイデス」

 

『考える時間はたっぷりありますからゆっくり考えてください』

 

「ハイ、ワカリマシタ...」

 

いやどうすんだよマジで...原作を知っているとはいえ俺が入っていく時点で崩れるだろうし、チートみたいな能力をもらって好き放題するのも好きじゃないんだよ...俺は努力系主人公の方が好きなんじゃ!ん?努力?あ...そうだ!勉強とか運動とかをした時の成長率とか吸収力を高めにしてもらおう!そうすれば原作に関わるとはいえちゃんと努力すれば死なないだろうし、本当にやばくなったら途中で努力をやめて弱くなれば離脱出来るのでは!?我ながら名案だ!それでいこう!

 

「えーっと...決めました神様。」

 

『分かりました、では貴方は何を望むのですか?』

 

「ちょっと言葉にするのが難しいんですけど成長率とか技術とかの吸収力を高めにして欲しいんです!1を聞いて10を知るみたいな!」

 

『なるほど...分かりました...他にはもうありませんか?』

 

「もうありませんよ、俺は目立つようなことをしたいわけではありませんから」

 

『ではこれで完了ですね...次に目を瞑れば貴方の新しい人生が始まります、もちろん名前や記憶はそのままで生まれ変わりますから安心してください』

 

「色々ありがとうございました!神様!」

 

『貴方が幸せに生きていけることを祈っていますよ』

 

とうとう転生するのか...まあまずは神様に頭を下げて...よし!行くか!えっと目を瞑ればいいんだよな...?ん?なんか瞑った瞬間に眠気が...あ...だめだ...落ちる...

 

俺は一瞬で意識を手放した...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それにしても成長率だけでいいなんて、今まで色んな方を見てきましたがこんな人は初めて見ました...もっとこう...「世界一強くしてくれ!」とか言われると思っていたのに...そうゆうのを叶えるつもりだったのでなんだか申し訳なくなってきてしまいました...あの子の記憶から読み取って幾つか私からのプレゼントということでサービスしておきましょうか』

 




自分の脳内妄想をそのまま小説にしているような内容ですが楽しんでいただけたでしょうか?

投稿ペースは不定期になりますが気長に待っていただけると嬉しいです。

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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2話 その量の特典はおかしいと思う

筆が乗って書き溜めが出来た大鷹とびです。

この小説では原作突入前もある程度の改変をしているので10話ほど原作前の話が続きます。

原作に入るまで少し時間がかかりますが、楽しんでいただければ幸いです。


 

---とある病院

 

「ん...」

 

あれ?俺どうなったんだっけ?車に轢かれて...神様に会って...なんか転生しますよーみたいな話をして...

 

「海!ママでちゅよー!」

 

「パパもいるぞー!」

 

うん、無事に転生したらしい。つまり今の俺は赤ん坊な訳だ.....

自覚したらクッソ恥ずかしいんだが!?18歳の精神をもっているのに「ばぶー」と「だあ」と泣くことしかできないとかどんな拷問だよ!でもこればっかりはしょうがないか...

それにしてもなんか顔面偏差値の高い両親だな...やっぱりラノベが元の世界だから平均値が高いのかな?まあとりあえず今俺に出来ることはないし、とりあえずこの状況に身を委ねることにしよう。

 

———————————————————————

 

---武藤家自分の部屋

 

俺が転生してからなんだかんだ歳月が経って小学1年生の6歳になりました。名前は前世と同じで、精神年齢的には18+6で24歳です。自分の同級生のストレートすぎる下ネタが非常に辛いです、はい。

まあそれはそれとして、転生の時に神様からもらった高い成長率はきちんと持ってて、どんな分野でも参考書とかを一通り読めば理解出来るし、バク転とかも少し映像を見てから練習し始めて3日で出来るようになりました...

 

「やっちまったなぁオイ!」

 

充分チートだよこの能力!何が努力しなかったら大丈夫だろ...だよ!三日坊主じゃなくて三日習得ってなんだよ!1を聞いて10を知るどころか1000ぐらい知っちゃってるよ!

極めつけは神様に勝手に追加された特典だ...学校の宿題をやっている時に気付いたら机の上に手紙が置いてあってそれには恐ろしい事が書いてあった...

 

『私です。無事に転生出来たみたいで私も安心しました、何故このタイミングで私が手紙を寄こしたのか気になっていると思いますので説明しますね。まあ簡単にいうと私が貴方を個人的に気に入ったので、貴方の記憶を読み取って役に立ちそうなものの特典を追加しておきました』

 

という文のあとに

 

・俺がISを使えるのは確定しているので、専用機を用意して更にもう一台この世界で専用機が作られるように仕向けていること(つまり専用機2台持ち)。

・専用機に搭載されている装備を使えるように能力を付与したこと(ニュータイプ、真のイノベイターと同等の能力と並列演算、並列思考が出来る能力)。

・付与された能力は、成長していくにつれてだんだんと解放されて使えるようになること。

 

ということが書いてあった...うん...

 

「神様のバカやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

「海!?大丈夫?どうしたの?」

 

「あ...ごめん母さん、大丈夫だよ。ちょっとゲームで上手くいかなくて...」

 

「そう?ならいいんだけど...」

 

思わず叫んでしまったよ...、だって思いっきりチートじゃんこんなの!俺チート無双好きじゃないんだって...まあもうあるものはしょうがない...手紙と一緒に置いてあったこの青と白のラインが入った腕輪はどう考えたってISの待機状態だろうし...捨てる訳にもいかないから持っておくしかないじゃないか...。時間があるときに一応このISを確認しておかないと...まだ『白騎士事件』も起きてないのにISを持ってるとはこれ如何に...

 

「はぁぁぁ...先が思いやられるなぁ...」

 

ってなったのが1か月前で未だにISは起動してません...だって怖いし、小学生だから中々一人になれないし、夜も早いんだもん!

 

———————————————————————

 

---放課後の小学校

 

神様から手紙を貰ってから幾つか経って小学2年生の7歳になりました。流石に同級生の下ネタにも慣れて何とか平静を装いつつ生活出来るようになってきましたよ、ええ...。でもね、別の問題が発生してるんですよ!それも特大の!というのも...

 

「海!遊びにいこうぜ!」

 

はい、我らが主人公の織斑一夏君です。去年の時点で気付いてましたが、同じクラスで思いっきり隣の席で、仲良くなってよく二人で遊ぶようになってました。普通にいいやつなんだよこいつ...。

主人公の親友ポジみたいになったことで最後の薄い希望も打ち砕かれましたがね!ハッハッハ!はぁ...

 

「海~?きいてんのか~?」

 

「ああ、悪い、何処に遊びに行く?」

 

「そうだなー...」

 

今は学校が終わって廊下で歩きながら遊び場所を考えてる最中です。

 

「俺の家にするか?一夏ならいつでも遊びにきてねって母さん言ってたし」

 

「じゃあ海の家にしよう!ん...?」

 

「どうした一夏?」

 

「なんか声がする...けんかしてるみたいな」

 

「そう?でも確かによく聞いてみれば聞こえるかも...」

 

って言ってる間に一夏君走り出してるー!?ちょっと待ってー!置いていかないでー!早くない!?俺も全力疾走なんだけど!?あ、止まった...あそこで何か起こってる訳だ...ってああ...そういうことね...

 

「やーい男女ー!」

 

「お前変なんだよ!」

 

「暴力女ー!」

 

3人の男子が教室の隅にいる一人の女子を囲んでなにやら暴言を浴びせかけている光景が見えるなぁ...。これあれだわ、ファースト幼馴染こと篠ノ之箒と一夏が仲良くなるきっかけになったやつだわ...、横にいる一夏は今にも飛び込んで行きそうだし、囲まれてる子は見たことあるポニーテールだし...、まあ俺もこうゆうのは大っ嫌いなんで一夏と同じなんですけどね!なに?原作改変?俺がいる時点で原作もへったくれもあるか!

 

「海!」

 

「おう!」

 

一夏と同時に飛び込んでいってそれぞれ暴言を吐いていた男子に向かって顔面P★U★N★C★Hで吹っ飛ばしてやったぜ!

 

「な、なんだよお前ら!この暴力女の味方すんのかよ!」

 

「女の子をいじめるようなやつを許せるもんか!」

 

「一対多で強くなった気になって、人を傷つけるお前らみたいなのは大嫌いでね!」

 

「このー!ふざけやがってー!」

 

「大真面目だよ!行くぞ一夏!」

 

「よっしゃ!」

 

最初に2人吹っ飛ばしていたこともあって俺と一夏は勝利したのだった。

 

———————————————————————

 

---職員室

 

俺達と篠ノ之さんをいじめていた3人は職員室に呼ばれて教師から説教をくらっている。篠ノ之さんは教室の外で待っているようだ、めんどくせぇなぁ...大体俺と一夏はいじめを止めたんだからお咎め無しにしろよなぁ...、説教の内容も暴力はいけませんとかそんなんばっかりだし、そもそも教師がしっかり仕事をしていじめを防がないとダメだろうに...

 

バァン!!

 

「海!?」

 

あ、なんか俺の両親が職員室に入って来た。あー、これはめっちゃキレてますよ二人とも...

 

「先生?これはどういうことですか?」

 

「これはですね、海君と一夏君が篠ノ之さんを守るためとはいえ暴力を振るったので...」

 

「女の子をいじめから守った二人を指導するんですか?それよりも女の子をいじめていたそこの三人をしっかり指導した方がいいと思いますけど?」

 

やばい、これは母さんマジでキレてる。普段は優しいけど曲がったことが大嫌いなんだもんな父さんも母さんも。

 

「それでも暴力はですね....」

 

「それよりもやっちゃいけないことをやってる子がいるだろうがよ!!」

 

「はいぃぃ...」

 

あーあ、父さんもガチギレだこりゃ、先生までビビってら。

 

「海、一夏君帰るぞ。あとは大人に任せなさい」

 

「はーい、一夏帰るぞ。父さんと母さんが来たから家まで送ってくれるよ」

 

「お、おう...」

 

一夏もビビっちゃって、まぁ当たり前か、誰だってビビるわあんなん。まあとりあえず帰りますか。

 

そう思って一夏を引っ張りながら職員室を出ると篠ノ之さんが出て直ぐ正面にいた。どうしたのかな?

 

「えっと...その...」

 

「どうしたの?」

 

「あ、ありがとう...!」

 

成る程、お礼が言いたくて待っていた訳だ、律儀だね~、まだ小学2年生なのに。

 

「気にしなくていいよ、俺達がやりたくてやったことだから、な?一夏」

 

「そうだな、これからも困ってたら俺達を頼ってくれよ!」

 

「うん!」

 

こうやって一夏君は無自覚に女の子を落としていったんですね分かります。

 

「ふんふん...いっくんと君が箒ちゃんを助けてくれたんだね!いっくんはちーちゃんの弟だからもちろん知ってるけど君の名前は?」

 

急に篠ノ之さんの近くにいた女の人が話しかけてきたぞ。ってあれ?この人...もしかして...。

 

「あ、はい、武藤海です」

 

「かーくんだね!うん!束さん覚えたよ!これからも箒ちゃんと仲良くしてね!」

 

「わ、分かりました!」

 

「うんうん、じゃあ箒ちゃん帰ろうか!」

 

「はい!姉さん!二人もまた!」

 

「おう!またなー!」

 

「また明日ねー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拝啓、神様へ

篠ノ之束にこの時点で名前まで覚えられたんですけどどうしてくれるんですか!

 




いきなりの原作改変&介入&オリ主チート確定ですw

まあこの小説自体も私の脳内妄想みたいなものなのでこれからもバンバンご都合主義で進めていきます!

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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3話 この関わり方はヤバいと思う

仕事が嫌になって来た大鷹とびです。

この小説の篠ノ之束は天災ですか少しポンコツぎみです。それをオリ主がカバーしたりすることが多くなると思います。

そろそろISがでてくるかもしれません。楽しんでいただければ幸いです。


---篠ノ之道場

 

ファースト幼馴染こと篠ノ之箒と天災こと篠ノ之束と知り合いになってから1週間が経ちました。

今俺は、箒と一夏に誘われて箒の実家である篠ノ之神社に来て剣道を見学しています...俺、実は武道あんまり好きじゃないんだよなぁ...なんというかこう固いイメージが抜けないというか、めんどくさそうなのが先行しちゃって。

 

「どうした?海」

 

「あぁ...いや、ちょっと身体の動かし方について考えてた」

 

「剣道を初めて見たのにもう身体の動かし方を考えているなんて海は凄いなぁ...」

 

「そんなことねぇよ、ただ気になって考えてるだけだし」

 

一夏が急に横から話しかけてきたのでとりあえずごまかしたけど、これいつかバレそうだなぁ...

決まったものは仕方ないし、真剣にやるか!

 

「とりあえずこれで一区切りだが一夏君、海君、どうだい?やってみないか?もちろん無理にとは言わないが」

 

気持ちを切り替えてたら、ちょうど箒の父であり篠ノ之道場の当主でもある篠ノ之柳韻さんが声をかけてきた。

 

「俺、やります!俺も強くなって千冬姉を助けられるようになりたい!」

 

「俺もやります。今の一連の動きを見ていてとても興味が湧きました」

 

「そうか、なら本格的な稽古は明日からにしてとりあえず今日は触ってみることと基本的なところをやっていくことにしよう」

 

あ、早速今日からやっていく感じなんですね...

 

「「分かりました!」」

 

「では最初に好きに振っていいから模擬戦をやってもらおう。箒、相手をしなさい。一夏君、海君、道具はこちらにある」

 

「父さん、いきなり未経験の二人に試合をさせて大丈夫なのですか?しかも私が相手なんて...」

 

「箒、柳韻さんにもきっと考えがあってのことだと思うよ、それになんか一夏は竹刀を持ってからなんかうずうずしてるみたいだし、一回実力差を教えるのも兼ねてるんじゃないかな?」

 

「そうか...なら私も遠慮なくやらせてもらおう。海も覚悟しておけよ?」

 

「お手柔らかに頼むよ」

 

一夏は防具も付けて準備万端って感じだけど、あれは絶対浮ついてるでしょ...左手グーパーする癖出てるし、一回箒にボコされろ。

 

「最初は一夏君からかな?では二人とも位置に着きなさい」

 

柳韻さんが促すと二人が向き合って位置に着いた。箒は所作が様になっているけど一夏はなんだかおぼつかない感じだ。まあ当たり前か。

 

「始めっ!!」

 

「うおおおおお!」

 

あ、一夏突っ込んでった、そしてさらっといなされた、んで面を一本と...

 

「そりゃそうだわ...」

 

経験者相手に闇雲に突っ込んでいっても、いなされてやられるに決まってるでしょうに...盛大にずっこけまでしちゃってまあ...

 

「一夏ー?大丈夫かー?」

 

綺麗に一本取られてずっこけた一夏を起こしてやった。

 

「痛ってぇぇぇぇ!」

 

とても痛そうにしていけど、自業自得だからフォローはしてやらんぞ。

 

「お前が竹刀持っただけで、調子に乗って突っ込むからだろうが」

 

「でもよぉ...」

 

「まだまだって事だよ、それを柳韻さんは教えたかったんだと思うぞ」

 

「成る程な...そこまで分かってるなら海は別に模擬戦やらなくてもいいんじゃないか?」

 

「いや俺もいい経験だと思うからやらせてもらうよ、と言う訳でよろしくな箒」

 

「ああ、分かった!」

 

防具を付けて竹刀を持って位置に着いてと...神様から貰ってしまった能力の所為で、最初の一連の動きは一回見ただけで出来るようになってしまっているし、実は箒の動きの癖なんかも分かっちゃってるんだよね...

 

「では...始めっ!!」

 

まあ一夏みたいに突っ込んでいくのは無いからまずは様子見しよう、そうしよう。

 

「成る程、やはり海は慎重だな。なら私からいくぞ!」

 

「おっと!」

 

箒が面を狙って竹刀を振るってきたので俺もそれに合わせて竹刀を振って打ち払う。

持ったばかりの初心者がいきなりこんなことが出来たらおかしいと思われそうだけど、そこは見よう見まねで出来ましたと説明しよう。なにより負けたくないんだよね!

 

「やるな海!初めてとはとても思えないぞ!」

 

「ありがと...なっ!」

 

箒と会話をしながら攻撃をいなし、打ち払い、受け止めてなんとか耐えていく...いやいやとても攻めに転じることができないんですけど!防御が精いっぱいだよ!これ終わりが見えないぞ...学習能力は高いけど身体能力は普通だから現状耐えるしか出来ないよ...

 

「やあぁぁ!」

 

俺が防戦一方でいると箒が攻め方を変えてきた。一撃の重さに優先するような攻め方で初心者にはとても捌けるような攻撃じゃなさそうだ。

 

「ぐっ...」

 

「これなら流石の海も耐えられないだろう!」

 

きっついなぁ...流石に無理だよこれ。どうすっかなぁ...

 

「そこまで!」

 

どうするか考えていたら柳韻さんから終了の声がかかった。いやぁ、よかったよかった。あのままだと俺確実に負けてましたわ。ん?なんか柳韻さんが俺の事をじっと見ながら何か考えている?

 

「海君、君は何か武道を習っているのかい?」

 

あぁ、俺の動きが初めて竹刀を握ったものにはとても見えなかったから気になってる訳だ。

 

「いえ、実は自分の中で武道って何処か固いイメージがあって敬遠してたのでそういったものは一切経験がないですね、今回の剣道が初めてです」

 

ここは本当の事を話しておこう、きっとここで変にごまかしても見抜かれるに決まってる。

 

「ふむ...そうか...」

 

俺が答えると柳韻さんは顎に手を当てて少し考えた後に口を開いた。

 

「海君、君さえよければ剣道ではなく剣術を習ってみないか?より本格的なものになるが君なら自分のものに出来るだろう」

 

「な...父さん、まだちょっと体験しただけの海に篠ノ之流剣術を教えるのですか!?」

 

「彼には千冬君と同等かそれ以上のものを感じる...きっと損はしない筈だ」

 

「海がそこまでの才能を...」

 

「すげぇな海!千冬姉と同じのを教えてもらえるなんて!」

 

なんか一夏と箒がめっちゃキラキラした目で見てきてるよ...まあ俺としてもより実戦に近いものを教えてもらえるのはありがたいし素直に教わることにしよう。

 

「是非お願いします、柳韻さん」

 

「うむ、では海君は明日からの修練は別のメニューを行うようにする。今日はもう終わりにするから片付けはこちらにまかせて帰りなさい」

 

「分かりました、では明日からよろしくお願いします」

 

俺はしっかりと腰を曲げて頭を下げてから帰宅することにした。一夏は箒が少し話がしたいと言っていたのでもう少し残るようだ。

 

「先に帰るぞ一夏」

 

「おう、じゃあなー」

 

———————————————————————

 

---篠ノ之神社地下の秘密ラボ

 

先に帰るといったな、あれは嘘だ!

 

今、俺は絶賛束さんに捕まっています。はい、どうしてこうなったかというと。

 

「トイレ行きたくなったな...」

       ↓

「お、あんなところに束さんが!」

       ↓

「どうも束さんトイレを探してるんですけど何処ですか?」

       ↓

「お!かーくんじゃないか!トイレならこっちにあるよ!」

       ↓

「ありがとうございます!」

 

っていう会話の後に付いて行って気づいたら、束さんのラボに到着していました...どうゆうことなの...

 

「束さん、俺トイレに行きたかったんですけど、どうしてこんなところに?」

 

「ふっふーん、それはねー、かーくんにこれを見てほしかったからなのだ!」

 

束さんがそう言いながら何かのスイッチを入れるとラボの照明が付いて奥にある何かが照らし出された。

 

「これは?」

 

「これはね『インフィニット・ストラトス』通称ISだよ。宇宙空間での活動を想定して作られたマルチフォーム・スーツなんだ♪」

 

あ、僕に見せてくるんですね。これは千冬さんが使う予定の白騎士ですね思いっきり...

まあそれはそれとして。

 

「かっけぇ...」

 

「さすがかーくん!分かってくれるね♪」

 

いやこれを見て興奮しない男はいないでしょうよ、何より転生する前はガンダムとかをメインで好んでいたオタクが興奮しない訳ないんですよ!

 

「でもあと少しって所で止まっていてね...」

 

「そうだったんですね、何が出来ていないんですか?」

 

「え?それは保護機能かな、武装と同時に保護機能が作動するとエラーが出て強制停止しちゃって...」

 

「成る程、えっと構築プログラムって見せてもらえませんか?」

 

「べ、別に構わないけどかーくんじゃとても分からないと思うよ?」

 

まあ束さんの言うことも当然だわな、だけど俺は元々新しい知識を得るのは転生前から好きだったから、転生してからは隙を見つけては本を読んで学習能力を活用してプログラミングやら電子工学やらを覚えまくったんですな。もう開き直って能力フル活用ですよ。

 

「これだけのものを構築してるんだからプログラムもきっと凄いんだろうなっていう興味本位ですよ。もちろん束さんが嫌なら大丈夫です」

 

「むう...そう言われると見せない訳にはいかないね!はいこれが構築プログラムだよ!」

 

束さんは俺に大き目のタブレットのような物を渡してくれたのでそれを受け取り画面を見てみると独自開発の言語でそりゃもう複雑なプログラムが構築されていた。難しいけど一応理解は出来るな、こりゃもう神様に何も言えないわ。

 

「なるほど...独自開発の言語、しかも一人でここまでの物を構築しているなんて流石束さんですね!」

 

「かーくん理解出来るの!?」

 

「はい、まあ完全にでは無いですけど、図書館とかにあるようなプログラミングとか電子工学の本とかもう大方読み終わって覚えてしまったので...それでこの部分に少し違和感があるんですけど...」

 

「えっ!?どこどこ!?」

 

めっちゃ近いよ束さん...びっくりするから...

 

「この部分です。ここの処理で保護機能を動かしていると思うんですけど、この中でバッティングを起こしてエラーになっているんだと思います」

 

「あ!本当だ!束さんがこんな凡ミスをするなんて...いや、でもだからこそ気付かなかったのか...とにかくありがとうかーくん!かーくんのおかげで完成したも同然だよ!」

 

「いえいえ、俺も力になれて嬉しいです!それに宇宙での活動を想定したパワードスーツってめちゃくちゃロマンあって素敵だと思います!宇宙は俺も行ってみたいですし!」

 

「そっか...かーくんも束さんと同じ夢を見ていたんだね...よし決めた!学会への発表が済んだらかーくんにISを作ることにするよ!」

 

「えっ!?いやそんな、俺は見せてもらえただけでも満足ですよ!?」

 

「いーのいーの、束さんが作りたいって思ったんだから!」

 

「そ、そうですか...」

 

「うん♪出来たら連絡するね♪」

 

「わ、分かりました、その時はお願いします...ではそろそろ時間も遅いので帰りますね」

 

「分かった!またねかーくん♪」

 

「はい、束さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?これでISが完成したってことはもしかしてもうすぐ『白騎士事件』起きるんじゃね...?




というわけでオリ主がIS完成の最後のピースをはめてしまいました。

この出来事はオリ主の中で一つ大きな要素となっていく予定です。

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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4話 もう取り返しがつかないと思う

小説を書いている時が一番楽しくなってきた大鷹とびです。

今回主人公の機体の内の一機が登場します。これでやっとタグの一つが回収できる...

それでは楽しんでいただければ幸いです。


 

---とある山奥

 

束さんにISを見せてもらってから2週間程経った。今日は剣術の練習も学校も休みの日なので俺は一人で誰も来ないような山奥に来ています。何故かって?そんなん俺がIS完成の最後の一押しをしちゃったせいで白騎士事件が起きるまでもうすぐだからですよ!原作では確かに白騎士は2000発以上のミサイルを全部撃ち落としたし200機以上の戦闘機を一人の犠牲者も出さずに無力化したかもしれないけど俺が居る所為でこの世界ではどうなるか分からないし自分でやったことは自分で責任取るのが常識ってもんでしょうよ...(早口

 

「ここなら誰も来ないよな...よし!」

 

きちんと声に出して確認しないとね!指さし確認もして...ヨシ!

 

満を持して俺は一年間一度も起動することが無かったISの待機状態...青と白のラインが入った腕輪をはめて心の中で起動するように念じてみる...

 

すると腕輪が発光して俺の身体を覆い、直ぐに収まったかと思えばどこかで見たことがあるような装甲が目に入ってきた。

 

「なんかめっちゃガンダムなんですけど...」

 

俺の全身を覆ってるこの装甲はどうみてもガンダムだねこれ、腕の形状からすると『ガンダムエクシア』か...?自分が纏ってるもんだから全身が確認出来ないな...

 

≪SYSTEM ALL GREEN≫

≪GN-GX-001 XEXIA START UP≫

 

俺の視界になんか英語で出てきたね、これが一次移行(ファーストシフト)かな?

 

「うおっ!?なんか頭にいっぱい情報が流れてくる!?気持ちわるっ!」

 

自分の頭の中に急に色々流れてくるとは思わなかったな...でも気持ち悪いのは最初だけでもう慣れちゃった。これはニュータイプとかイノベイター的な覚醒をしてる可能性あるな...

 

んでもってこの機体の正体が分かったわ。これあれだわ、ISの規格に合わせてハイパーセンサーとかPICとかが搭載されてたりして少し違うところはあるけど、俺が転生前に作ってたオリジナルのガンプラの一機目だわ...さっき見た起動コンフィグに『XEXIA』って書いてあったもんな...

 

とりあえずちゃんとこいつの事を整理しないとな、機体名は『ガンダムエクスエクシア』。俺が好きなガンダムシリーズの主人公機である『ガンダムエクシア』と『ガンダムX』を組み合わせたら強いしかっこいいだろ、という安直なコンセプトから生まれた機体だ。

 

んで、こいつのスペックは...おお!スペック見たいと思っただけで視界に詳細なスペックや武装一覧が出てきた!凄いなこれ!

 

「ふむふむ...」

 

一つ一つ確認していくと...ヤバいですよこれは...俺がガンプラとして組み上げた後に後付けした設定どおりの性能してるわ...

 

トランザムシステムもフラッシュシステムも搭載していてサテライトキャノンも発射可能!?武装もISになっているから拡張領域(バススロット)にエクシアとXの武装が全部搭載されてる...とんでもない代物ですよこれは...この時点で原作に登場するどのISよりも性能高くないか?

 

「どーすんだこれ...」

 

オーバーテクノロジー過ぎるだろ...こんなの世の中に公開してみろ、戦争が起こるぞ...

 

≪CAUTION CAUTION≫

 

「どわぁ!?びっくりしたぁ!なんだよもう!あと分かるけどめんどいから日本語で頼むよ!」

 

≪警告 各国の軍事基地から日本に向けてミサイルが発射されました 30分後には日本各地に着弾します≫

 

「なんてこったい!白騎士事件じゃん!早く言ってよ!」

 

危惧してたけどまさか今日だとは思わなかったよ!ぶっつけ本番だけどいけるか?

 

「あぁ!もう!やるしかないだろ!こちとらまだ小2なのによ!」

 

そして俺は憧れだったガンダムの発進シーケンスをイメージして...飛んだ。

 

———————————————————————

 

---太平洋沿岸

 

いきなり動かした割にはスムーズに動くエクスエクシアを纏い俺は海の上を飛んでいた。

 

「ミサイルは?どこだ!」

 

≪5キロメートル先に接近する飛翔物有、ミサイルと思われます、数3000以上≫

 

「3000以上だぁ!?原作より多いじゃねぇか!」

 

≪飛翔物が一部撃破されました、接近する不明機有、5秒後に接触します≫

 

「えっちょ...それ絶対白騎士...待って...」

 

どうしたらいいか迷ってる間に俺の目の前に2週間前見た白騎士が飛んできて止まった。

 

「おい、お前は誰だ?なぜそんなものを持っている?」

 

めっちゃ警戒心マックスじゃん千冬さん...まあ俺の顔見えてないし当たり前か。山で起動したときに変声機能があるのは確認してるからそれを使ってとりあえずやり過ごそう。

 

『今はそんなことよりミサイルを落とすのが先決じゃないか?』

 

「くっ...全部終わったら付いてきてもらうからな!」

 

『それでいい...こちらもミサイルを落としにきた』

 

よしよし、とりあえずやり過ごせたな、千冬さんもミサイルの方に行ったし俺もミサイルをなんとかしないと...

 

「この機体はエクシアメインだから射撃武装は...やっぱり少ないよな」

 

右腕にガンダムXのシールドバスターライフル、左腕には何も持たずにGNバルカンを撃ちやすいようにしよう。あとどんな影響があるか分からないからGN粒子は散布しない様に、バルカンのみ使用してXのバーニアで機体制御しよう。

 

「よし...行くか!」

 

千冬さんは既に荷電粒子砲でミサイルを撃墜しまくってる、俺はいらないんじゃないかな?

 

「しまった!?」

 

なんて思ってたら撃ち漏らしましたね、俺も必要みたいです、はい。

 

撃ち漏らしのミサイルに狙いを定めてライフルを撃つ、すると一発で命中しミサイルは爆発した。

 

「成る程、結構なんとかなるもんだな」

 

機体の照準装置のおかげで上手く当てることが出来た。そのまま白騎士の横に並ぶ。

 

『まだまだ来るぞ、気を付けろ』

 

「くっ...分かっている!」

 

そこから俺はライフルとGNバルカンで、千冬さんは白騎士の荷電粒子砲でミサイルを破壊しまくった。

 

———————————————————————

 

---海上

 

10分後、俺と千冬さんは全てのミサイルを撃墜した。

ミサイルはなんと全部で4500発もあり、原作の倍近い数だった...

 

「さあ、全部終わったぞ、私に着いてきてもらおう」

 

『分かった、こちらに交戦の意思は無い』

 

「では...ん?どうした束?何っ!?そうか...分かった」

 

『どうした?』

 

「ここに近くの米軍やら自衛隊やらが向かって来ているらしい、安全に撤退できるように撃墜するしかない」

 

『なら手伝おう』

 

「そうしてもらえるとありがたいが、一つ言っておく。誰も殺さずに落とすんだ」

 

『分かった、死者を出さないように撃墜しよう』

 

千冬さんは俺の返事を聞くと既に視界に入ってきている戦闘機に向かって飛んで行った。じゃあ俺も行くとしよう、GNバルカンを単発で出力を最低に、そして翼を損傷させれば爆発させずに無力化出来る筈だ。

 

俺は飛んで行った白騎士を追って速度を上げた...

 

———————————————————————

 

---とある山林地帯上空

 

全ての戦闘機や軍艦を無力化し俺は今千冬さんの後ろに付いて行っている。

お互いにステルスモードがあるのでバレる心配はない。

しばらく飛んでいると千冬さんから声をかけられた。

 

「到着だ。ここの真下に降りてくれ、そこで話を聞かせてもらうぞ」

 

『分かった』

 

俺は千冬さんに促されるまま地上に降りるとそこには束さんが立っていた。

 

まあそりゃいますよねー...

 

「ちーちゃんお疲れ!おかげさまで被害は0だよ!よかったよかった!で...お前...束さん、ISは白騎士しか作ってないのにそれはなんだよ!そもそもお前誰だよ!」

 

「少し待ってください、今解除しますから」

 

俺は変声機能を切ってからISを解除する旨を二人に伝えた。

 

「ん?今の声凄く聞き覚えがあるような...」

 

束さんはやっぱりなんとなくわかるようだ、とりあえず解除してしまおう。

頭の中で解除と念じると白い光に包まれてエクスエクシアは解除され元の腕輪に戻っていた。

 

「あー!?!?かーくん!?!?」

 

「なっ!?海!?どうしてお前が!?」

 

二人ともびっくりしちゃってまあ...束さんはもちろんだけど、千冬さんも一夏繋がりと篠ノ之道場での剣術修行で良くしてもらってるので顔なじみだ。

 

「すいません...束さん、千冬さん。これに関して説明するのはかなり長くなります...」

 

右腕に付けている腕輪を触りながら、この二人には自身の秘密を全て話すと俺は決心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにこれら一連の事件を世界では後に『白騎士・蒼機兵(そうきへい)事件』と呼ばれ、ISがこれまでの兵器に代わりパワードスーツとして世界で運用されることとなる。また、ISの『女性のみにしか操縦出来ない』という欠点により各国は『女性優遇制度』を制定、世界は女尊男卑の世界へとなっていくこととなる。

 




この小説での白騎士事件は主人公が加わって名前が変わっているのと束が引き起こしたわけではないのが大きな違いです。

オリ主機はかなり強いですがそうそう使うことは無い予定です。

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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5話 こうなったらやるだけやるしかないと思う

沢山のUAとお気に入り登録ありがとうございます!大鷹とびです。

今回で原作とは根本的に違う部分が出てきます。
かなりご都合主義で書いてますがそれでも楽しんでいただければ幸いです。



 

---とある山の中

 

束さんと千冬さんに自分がどういう存在なのか、なぜISを持っているのかを俺は包み隠さずに全て説明した。流石にこの先何があるのかを知っている事までは原作崩壊も発生している以上話さなかったが...

 

「かーくんが別の世界からの転生者なんてねー」

 

「私は未だに信じられないがな」

 

「まあ信じられないのも当たり前ですけど、こればっかりは信じてもらうしかないですね」

 

「束さんは信じるよ。そもそもかーくんのISは、ぱっと見ただけでも今の束さんじゃ作れない技術の塊だったし」

 

「束がそういうなら間違いないんだろうな...」

 

どうやら信じてくれるみたいだ、なんかこの世界の束さんは俺の知っている原作の篠ノ之束よりも常識があるようで、今回の事件も原作のように束さんが各国のコンピューターをハッキングして起こしたのではなく、束さんのISを世の中に引きずり出すために第三者が引き起こした超大規模のテロだった。

束さんが発見した時にはミサイルは発射されていて他に手段が無かったので、白騎士を千冬さんが使ってミサイルを撃墜した、ということらしい。もう原作も何もないなこりゃ。

 

「束さんはどうするんですか?ISが表舞台に、しかも最強の兵器という形で引きずり出されちゃいましたけど...」

 

「うーん...こればっかりは仕方ないからISを世界に発表しようと思うよ、さっきコアを解析した時に分かったんだけど、ちーちゃんが最初に使ったのが原因なのかはたまたそれ以外なのか分からないけど、多分ISは女じゃないと動かせなくなってる...かーくんのISを除いてね」

 

「成る程、女性しか使えないなら兵器として利用されるのも渋られるだろうってことですね」

 

「薄い望みだけどね...ISの中核であるコアも沢山作らなければそうそう大戦になることもないだろうし...」

 

「そうですか...分かりました。俺はこのことに関しては何も言えませんし束さんにお任せしますよ、お願いしたいこともありますし」

 

「ん?どうしたのかな、かーくん」

 

「俺の機体、エクスエクシアっていうんですけど、白騎士と同じように束さん作製の試作機ということにして情報の開示は一切しないと発表して欲しいんです、こいつには今の人類には持て余すほどの技術が使われています、有益に使えれば宇宙へぐっと近づくようなモノですが、今世界に公開しても争いしか生まないと思うんです...それにISは女性しか使えないものになるなら男の俺が使えるというのも問題でしょう」

 

「そうなんだ...そうだね!分かったよかーくん、束さんにお任せあれ!」

 

「ありがとうございます束さん!そうだ、束さんなら信用できますし、この機体の技術を一部データ化して送りますね、全部は見せられませんけど」

 

「わぁお!いいのかいかーくん?」

 

「いいですよ、そのかわり束さんもこの技術を宇宙進出のためにしか使わないことを約束してください」

 

「もちろんそのつもりだよ!元々ISだって宇宙に行くために作ったんだから!」

 

「じゃあ安心ですね!」

 

うん!この束さんはとってもいい人だわ!原作知識だけで偏見を持っていた自分をぶん殴ってやりたい。

 

「話は済んだようだな、私も聞いていたし束も覚悟は決まっているようだ、私も覚悟を決めよう」

 

「千冬さんもご迷惑をお掛けします」

 

「お互い様だろう、これは私達3人の秘密だ」

 

「そうですね!」

 

なんとか一段落といったところだろうか、時間的にはまだ16時だし千冬さんに手伝ってもらえば親に心配をかけることも無さそうだ。

 

「じゃあ帰りましょうか、すいません千冬さん、俺の両親への言い訳になってもらいたいので家まで付いてきてもらっていいですか?」

 

「そのぐらいかまわないぞ、なにせ海は私の弟弟子だからな!」

 

「ありがとうございます!」

 

こうして束さんの端末にGN粒子に関する一部のデータを送信したり、束さんから連絡用の端末を貰ったりしてから3人で帰路に就いたのだった。

 

———————————————————————

 

---武藤家宅前

 

「海をわざわざ送ってもらって悪いわね、千冬ちゃん」

 

「いえいえ、私も一緒に練習していて有意義ですから、このくらいはなんてことはありません」

 

俺は千冬さんのおかげで親に怪しまれずに帰ることが出来た。千冬さんには感謝しかないな。

 

「では、私はこれで」

 

「ありがとうね千冬ちゃん、これからも海が迷惑をかけるかもしれないけどよろしくね?」

 

「もちろんです。じゃあな、海」

 

「はい、千冬さんも気を付けて」

 

千冬さんを見送って俺は家の中に入り、そのまま自分の部屋に入るとベッドに倒れこんだ。

仰向けに寝転んで自分の手を見ると小刻みに震えていた。

 

「手がずっと震えてら...いくら精神年齢が25歳だって言っても、ミサイルやら戦闘機と戦うのは怖かったな...緊張の糸が切れて安心したらもう...」

 

精神的にも身体的にもISを使っていきなり戦闘をするのはかなりの負担だったようだ、俺はそのまま気絶するように眠りについた。

 

———————————————————————

 

---小学校教室

 

『白騎士・蒼機兵事件』から2年が経ち、俺達は小学4年生になった。

この2年の間に世界はすさまじく変化した...。

 

これまでの全ての兵器を凌駕するISは世界に衝撃を与え、各国はすぐさまISの研究と導入を決定。しかしISには幾つもの問題があった。まず、『女性しか搭乗出来ない』というもの。次に核となる『ISコア』が解析不能で量産が出来ない事。そして、その『ISコア』が全部で467個しかないこと。

開発者の束さんの発表によってISの性能はある程度の理解が進んだものの、肝心の問題は解決出来なかった。

国の暴走や混乱を避けるために国連は新たに『IS委員会』を設立。ISの軍事利用を禁止し、日本への情報開示と共有を定めた『アラスカ条約』を締結。同時にISのパイロットなどISに関連する人材を育成する『IS学園』を設立、日本が運営する。あらゆる国家機関に属さず、学園の関係者に対して一切の干渉が許されないという国家規約が付けられた。

 

事件時に使用されたIS『白騎士』は事件後に解体と初期化された後、企業などに情報公開され第一世代ISの開発基盤となった。しかしもう一方の『蒼機兵』であるエクスエクシアは束さんの作った2機目のISとして発表されるも、不具合によりコアを含めて封印中ということしか発表されなかった。

 

開発者である束さんの家族は、束さん以外は政府の重要人物保護プログラムにより離散し、監視付きで各地を転々とさせられる事となった。

 

つまり俺と一夏は箒に連絡を取ることが出来なくなった訳だ。政府が一切知らせずにやりやがったから知れたのは箒が転校すると言われた後だった。

一夏なんてえらい落ち込んだんだぞ...慰めるのに俺がどれだけ苦労したと思ってるんだ...

 

ちなみに篠ノ之道場は柳韻さんがいなくなったので閉じてしまったが、柳韻さんがいなくなる前に篠ノ之流剣術を教わり切ることが出来たのは不幸中の幸いと言えなくも無い。今でも一人で鍛錬は欠かさないしね。

 

「皆さん、今日は新しいお友達を紹介します。中国からの転校生の「(ファン) 鈴音(リンイン)」ちゃんです」

 

「こ、こンニちは。凰鈴音デス。よ、よろシクおねがイします...」

 

頭の中でここ2年の内容を整理していたら先生が転校生を紹介していたようだ...ってセカンド幼馴染こと「凰 鈴音」じゃないか!そういえばもうそんなタイミングか...

 

「転校生か、海!あとで話に行こうぜ!」

 

「おーう、分かったー」

 

休み時間になると転校生の下にクラスメイトが集まった、その中にはもちろん一夏と俺もいる。

 

「俺は織斑一夏って言うんだ、(ファン)だっけ?よろしくな」

 

「俺は武藤海。よろしく、凰さん」

 

2人で転校生の前に立ち自己紹介をした。

 

「アの...エっと...」

 

あーいきなり大勢に囲まれて緊張しちゃってるし困ってる訳だ。ここは人助けをしておきますか。

 

『いきなり大人数で囲ってごめんな、みんな凰さんと仲良くなりたいんだよ』

 

『きみ中国語話せるの!?』

 

『まあ、少しな、困ったことがあったらいつでも聞いてくれ』

 

『分かった!ありがとう助けてくれて』

 

『おう、これからもよろしく』

 

俺と鈴さんが中国語で会話をしている一部始終を見て、一夏を含むクラスメイトはポカンとしていた。

 

「みんな、凰さんは緊張してうまく喋れなかったけどこれからよろしくって」

 

「ちょちょちょ待ってくれ海!なんでお前中国語を喋れるんだよ!」

 

一夏が我に返り驚きを隠せないまま俺に聞いてくると、他のクラスメイトも同じように俺に質問してきた。

 

「あー、図書館とか本屋とかいって中国語とか英語の本読みまくったからだと思うわ、皆でも出来ると思うよ」

 

「「「「出来るか!」」」」

 

なんか皆から総ツッコミを貰ってしまった...ほんとに本見て勉強しただけなのに...

 

「ま、まあ海がなんかおかしいのは今に始まったことじゃないし、改めてよろしくな凰さん!」

 

「ウ、うん、ヨろしク!」

 

うんうん、仲良きことは美しき事だな、色々あったけどまだまだ充実した学生生活が送れそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっふっふ...束さんは約束を絶対に忘れないのだ!時間はかかっちゃうけど待っててね、かーくん!」




前回の後書きでも書きましたが、この小説での白騎士事件は第三者によって起こされたテロということになっています。あと束さんは原作よりはかなりまともな設定です。

次回、とうとうアレを使うかも?

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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6話 覚悟を決める時だと思う

いつも見てくれてありがとうございます!大鷹とびです。

今回とうとう代名詞が出てくるかも?それと主人公にちょっとした変化が?

それでは楽しんでいただければ幸いです。



---中学校からの帰宅路

 

世間では女性優遇制度の影響で女尊男卑が進んで色々と問題が起きているが、俺の周りでは特に

女尊男卑は進んで無かった。まあ俺は一夏、(ファン)さん、そして中学に入ってから意気投合した五反田(ごたんだ)(だん)の4人で過ごしていることが殆どだから気付かなかっただけかもしれないけども。

凰さんは良くつるむようになって呼びやすい様に(りん)と呼ばれるようになった。

 

「一夏!海!今日も遊ぶわよ!特に海!今日こそ負けないんだから!」

 

「はいはい、ごくろうなこって、また俺の家か?」

 

「そりゃそうでしょ、あんたの家が一番ゲーム揃ってるんだから。」

 

「当たり前のように言うなよな、まあうちの両親は鈴達がえらくお気に入りみたいだからいいけどさ」

 

「じゃあいいじゃない、さあいくわよ!」

 

「おい待てって、海、鈴!行くぞ弾!」

 

「おうよ!」

 

まあこんな感じで俺は転生前よりもずっと平和で明るい学生生活を過ごすことが出来ている。

だが問題が一つだけあった...それは一夏が原作通りの超が付く程の唐変木だったからだ。

一夏のフォローでいっぱいいっぱいで俺は自分の事なんてとても考えてられなかった。

付き合ってくださいと言われてなんで買い出しと毎回勘違いするんだよ...こいつほんとに男かよ...

 

余談だが俺も両親の遺伝でそれなりに顔は整っているのだが一夏のフォローで忙しく他の女子に告白されることも無かった。というか一夏とセットで「光と闇の女たらしコンビ」なんて噂されているのを聞いてしまった...

告白もされていないのに女たらしはひどすぎませんか?しかも闇ってどうゆうことだよ...俺そんなに暗くないだろ...

 

まあそれでも俺は今の日常が大好きでいつまでも続いて欲しいと思っている。

 

「楽しいよ...本当に」

 

俺は他の3人に聞こえない様に呟いた。

 

———————————————————————

 

---束さんの秘密ラボ

 

ある週末休みに俺は束さんに呼び出されて束さんの秘密ラボに来ていた。

 

「やぁやぁかーくん!いらっしゃい!元気してる?」

 

「おかげさまで充実してますよ、束さんは...元気じゃ無さそうですね...目の下にすっごい隈が出来てますけど...」

 

「一日を35時間生きる束さんにとってはこのくらいなんてことないのだ!」

 

「はいはい、またご飯作ってあげますからそれ食べたらちゃんと寝てくださいね」

 

「わぁい♪かーくんのご飯がまた食べられるー♪」

 

「それで、今日は何の用ですか束さん」

 

こうやって束さんに呼び出されることは今回が初めてではなく、今まで人命救助やら研究の手伝いやらで何度も呼び出されてきたのですっかり慣れたものだ。

 

「それはね...まずはこれを見てほしいんだ」

 

急に束さんが真剣な表情で俺を見ながらタブレットを渡してきたので俺は少し身構えながら受け取り表示されている情報を見た。

 

「これは...そんな...」

 

そこに表示されていたのはISをより効率的に、かつ強力な兵器として使う為にIS本体ではなくパイロットを弄ろうとしている研究のデータだった。

 

『人工子宮による遺伝子強化試験体を生み出す実験』

 

これは原作のラウラ・ボーデヴィッヒが生まれることになった実験か...元々強力な兵士を生み出すための実験をそのまま転用したらしい。

 

だがそれよりも俺に衝撃を与えたデータがあった。

 

『未成熟の人間とISコアを直接接続した場合の実験結果』

 

文章だけでも恐ろしい事がよく分かるものだった。簡単に言ってしまえばまだ小さな子供の心臓部に直接ISコアを埋め込んで制御させようとしたり、起動しているISと子供の脳を直接接続することでより直感的に操縦させようとしたりなど想像するだけでもおぞましい実験の結果の数々がそこに書かれていた。

 

「人間のやることじゃない...」

 

俺はデータを見た後思わず口に出していた。

 

「束さんこれは...」

 

「これはドイツ軍が秘密裏に進めていた実験の一部だよ...2年前から始動してたみたいだね」

 

「こんなことが許されて良い訳ないですよ!」

 

「その通りだよかーくん、それでその研究を行っている施設を見つけたんだ、束さんはこれからその施設を破壊しに行く、かーくんには着いてきて欲しいんだ。そこにはまだ実験に巻き込まれた罪のない子供たちが沢山いるはずだから、その子たちの救出を手伝って欲しいんだよ」

 

「分かりました。でも救出だけでいいんですか?俺のエクスエクシアはステルス機能も確かに万全ですけど」

 

「うん、施設の破壊をするのは束さんだけでやるよ、かーくんには手を汚してほしくない...それは私だけでいいんだ...」

 

「束さん...分かりました!ただし無理はしないでくださいよ!束さんに何かあったら箒だって悲しむんですからね!」

 

「もちろんだよ!じゃあ行こうか!」

 

「はい!行きましょう!」

 

そして束さんはにんじんの形をしたロケットに乗り込み、俺はエクスエクシアを展開してドイツに向かった。

 

———————————————————————

 

---ドイツの山奥の研究施設

 

施設のあちこちからビーッビーッビーッと警告音が聞こえる中、束さんは素性がばれないようにいつの間にかさっきのロケットとは別の兎のようなロボットの上にいて上空から施設を爆撃していた。

 

ちなみに俺が施設に侵入し被害者の子供がいない事を確認した部屋から順に爆撃していっているので今の所巻き込まれた子供はいない。俺がしっかり離れてから爆撃しているあたり相当束さんが俺に気を使っているのがよく分かった。

 

「この部屋が最後なのでここを確認したら脱出します」

 

『りょーかい、気を付けてねかーくん』

 

束さんに通信してからこの施設の最後の部屋の扉の前に立ちGNソードを展開して扉を切りつけて破壊する。

 

「なんかこの部屋の扉だけ妙に厳重にしてあるな...GNソードにとっては紙も同然だけど」

 

入った部屋を確認するために俺は持ってきていた明かりをつけて部屋を確認した。

 

「こ、これは、うっぷ...」

 

思わず吐きそうになったのをこらえながら顔を上げてもう一度部屋を確認すると、そこには大きなガラス管が大量に並んでいてその中に四肢が無い子供、片目が潰れている子供、胸部が開いて中が見えている子供など、この世の物とは思えない光景が広がっていた。

 

「なんで同じ人間に...しかも罪のない子供にこんなことが出来るんだよ!!」

 

胸糞悪いなんともんじゃない、今この施設の人間を見つけたら思わず殺してしまいそうだ。この様子では生きている子供もいないだろう...

 

「本当に胸糞悪い...ん?」

 

部屋の最奥に近づくと女の子が横たわっている。

部屋の状況からハイパーセンサーを付けていても辛くなるだけだから切っていたが、女の子の様子を見る為に再度ハイパーセンサーを起動する。

 

「まだ生きてる!かなり衰弱しているから急がないと!」

 

女の子を慎重に抱きかかえて俺は直ぐに部屋を飛び出し、束さんに通信を繋げた、部屋にはもう生存者がいないことはハイパーセンサーで確認済みだ。

 

「束さん!一人だけですが生きている女の子がいました!今俺が抱えているのでそちらに合流しますね!」

 

「了解!ナイスだよかーくん!かーくんが脱出したらすぐに吹っ飛ばしちゃうから!」

 

「分かりました!もうすぐ合流します!」

 

通信で会話している間に束さんが視界に入りあっという間に俺と束さんは合流した。

 

「束さん、この子をよろしくおねがいします!」

 

「もちろんだよ!今回のかーくんの仕事もこれでおしまいだね...ってどうしたのかーくん?」

 

「最後の攻撃は俺がやります...施設の中で見た子供達を弔ってあげたいのもありますし、地下シェルターのような場所に隠れてる人間がいるのも確認しました...全部まとめて吹き飛ばすつもりなので手を汚さないっていう束さんとの約束を破る事にもなってしまいますけど...これは俺が終わらせたいと思った事なんです!」

 

俺は束さんの目を真っ直ぐ見て自分の意思を伝えた、これは紛れもない自分の意思だ。IS完成の最後の一押しをした人間として、蒼機兵として世界を変えてしまった責任は取らないといけない。

 

「分かったよかーくん...でもかーくん一人で抱え込んじゃだめだからね...」

 

「ありがとうございます束さん...じゃあ離れていてください、エクスエクシアの最大火力を出します」

 

「うん...気を付けて...」

 

そういうと束さんは俺から離れてある程度の所で止まった、どうやらしっかりと見届けるようだ。

 

「まさかこんなところでこいつを撃つ事になるとは思わなかったな...」

 

今は夜で空には雲一つなく綺麗な満月が浮かんでいる。

 

「フラッシュシステム、トランザムシステム同時起動!サテライトキャノンをGNドライブに接続!マイクロウェーブ来る!」

 

神様は本当に準備が良いな...まさかこの世界の月にマイクロウェーブの送信施設まで用意してくれてたのか...

 

「エネルギーチャージ100%!GN粒子の圧縮完了!」

 

発射準備は整った...これで引き金を引いたら俺はもう戻れないだろう...手が震える...でもこの世界を変えた人間としての責任から逃げるつもりはない!

 

「っ...!サテライトGNキャノン発射!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、ドイツの秘密研究施設の一つが丸ごと地球上から消滅したのだった...。




主人公がとうとうぶっ放しましたね最強の兵器を!

と言う訳でご都合主義+神様転生チートで送信施設まで用意されてます。
サテライトGNキャノンは青とピンクの極太ビームが螺旋状に回転しながら飛んできます。威力はサテライトキャノン+ガンダムヴァーチェのGNバズーカバーストモードぐらいだと思ってもらえれば...

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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7話 覚悟は決まったから思うより行動する事にした

いつも見てくれてありがとうございます!大鷹とびです。

今回から主人公の心境に合わせてタイトルの付け方を変えました。

それでは楽しんでいただければ幸いです。


---束さんの秘密ラボ

 

月のマイクロウェーブ送信施設は光学迷彩でこちら側から操作して隠すことが出来た。

束さんとラボに戻った後は、束さんが女の子の事を診ている間に約束だったご飯を作ることにした。

正直長時間のISの稼働でとても疲れているし、今すぐにでも帰って寝てしまいたかったが、約束を守るのと自分が人を殺めてしまったことへの気持ちの整理も兼ねて他の事をして落ち着こうと思った。今でも大きなガラスケースに入っている無惨な姿の子供達が頭から離れない...

 

「束さん、ご飯できましたよ!長距離移動で疲れているのと深夜なので食べやすいようにうどんにしました」

 

「おおー!ありがとうかーくん!」

 

俺が少し大きめの声で束さんを呼ぶと直ぐに束さんは近くにきて俺の作った夜食をキラキラした目で見ている。

 

「いただきまーす!」

 

「はい、どうぞー」

 

俺が束さんに会うようになってからいつの間にか用意されていた食卓でお互いに向かい合うように座り、うどんを啜る。

 

「束さん、救助した女の子はどうでしたか?あ、口の中が空いてから喋ってくださいね」

 

「んんっ!ごくんっ!ぷはっ!なんとか峠は越えたよ!一安心だね!」

 

「そうですか!良かった!」

 

「でも施設での実験でハイパーセンサーと同じ機能を持った目を移植されていて、しかも過剰適合しているみたい...日常生活に支障が出ちゃうと思う...」

 

「そんなことまでしていたなんて...」

 

「とりあえず、クーちゃんは束さんのところで預かることにしたよ!かーくんは安心してね!」

 

「分かりました。ところでそのクーちゃんと言うのは?」

 

「施設のシステムをハッキングしたときに見つけたんだよ、クロエ・クロニクルって名前をね。一緒に保存されていた資料も合わせて確認したからそれがあの子の名前で間違いないよ」

 

「そういうことでしたか。とりあえずあの子は束さんにお任せしますね、俺も時々様子を見に来ます」

 

「分かったよー、それでかーくんは今日はどうするの?」

 

「幸い今日は日曜日ですし少し寝てから帰りますね。また部屋を借ります」

 

「りょうかーい、あとの処理は束さんに任せてねー、おやすみかーくん」

 

「はい、おやすみなさい束さん」

 

俺は流石に限界が来たのでフラフラと束さんから休憩用の場所として借りているラボの一室に入り、そのまま倒れこんで眠った。

 

———————————————————————

 

---第2回モンド・グロッソ会場

 

一夏達と学生として生活しながら束さんと蒼機兵として各地の非人道的な実験施設を潰す活動をしている内に俺は中学2年になった。

 

今日は一夏と第2回モンド・グロッソの会場に来ている、千冬さんに招待されているのでVIP席の一番いい所で見ることが出来るそうだ、正直VIP扱いって憧れてたから興奮してます!

でも一夏誘拐事件が起きるから多分見れないんだろうなぁ...てか俺はどうなるんだこの場合。

 

「...い...海!」

 

「うおっ!なんだよ一夏」

 

「さっきから呼んでるのにお前が気付かなかったんだぞ?で、決勝前に一度トイレに行かないか?」

 

「ああ、悪い悪いちょっと考え事してたわ、んでトイレだっけか、そうだな先に済ませておくか」

 

俺は一夏と観客席を出てトイレに向かった。

 

「なんか妙なぐらい人がいないな」

 

「そうだな、さっさと済ませて席に戻ろうぜ」

 

トイレに向かう途中で俺は他に誰もいないことに気付いた。これ確実にここで誘拐されるな...さっきから妙な気配は感じるし、何故かとても嫌な予感がするし...

 

「あそこがトイレだな、早く行こう一夏」

 

「お、おう...」

 

俺は一夏の腕を掴みトイレに早歩きで向かった。トイレまであと5メートルというところで男が二人出てきて俺達の前に立った。

 

「なんでしょうか?俺達はトイレに行きたいのでどいてもらえませんか?」

 

男達を避けてトイレに入ろうとした所で俺達は囲まれていることに気付いた。

 

「...一夏、俺が合図したら走るぞ」

 

「えっ!?お、おう」

 

一夏に声をかけて俺はこの状況から脱出することにした。俺と一夏が会話している事に気付いた男たちはなにやらスタンガンのようなものを取り出し俺達に襲い掛かって来た。

 

「行くぞ一夏!」

 

「うおおおおお!」

 

俺は靴を片方目の前の男にぶつけて走り出し一点突破しようとした、俺の考えた通りに男は怯み突破することが出来たと思ったが、急に目の前にISが現れた。

 

「あ、IS!?」

 

「マジかよ...」

 

ISに逃げ道を塞がれて止まった瞬間に後頭部に激痛が走り俺は意識を失った...

 

———————————————————————

 

---とある倉庫

 

「っ...」

 

俺が目を覚ますとそこは倉庫のような場所で俺は縄で椅子に拘束されていた。俺の隣では一夏が同じように拘束されていてまだ目を覚ましてはいないようだった。

 

周りに見張りらしき人間はいるが俺が目を覚ました事には気付いて無いみたいだな...これならエクスエクシアを展開すれば何とかなる!

緊急事態だから展開と同時にトランザムを起動...見張りを無力化して一夏の拘束を解除して脱出...これでいこう。

 

「うーん...ここは?」

 

「!?(なんでこんなタイミングで目を覚ますんだよ一夏!見張りがこっち向いたじゃねえか!)」

 

「よお、二人ともお目覚めみたいだな」

 

「なんだよこれ!?どうゆうことだよ!?」

 

「お前らには悪いが織斑 千冬にはモンド・グロッソを2連覇されると困るんでな、人質になってもらった」

 

「なっ!?なんでそんなことするんだよ!」

 

「落ち着け一夏、ISっていうものには色々と国の事情が絡んでたりするんだよ...」

 

「そうゆうこった、そっちの坊主は随分と冷静だな」

 

「もうここ何年かで人間の暗い部分をとことん見てきたんでね、慣れた」

 

一夏から俺に注目が集まるように見張りの男と会話していると、部屋にISを纏った女が入って来た。

 

「何をしているの!人質なんて一人いればいいじゃない!千冬様の弟じゃない方なんて殺せばいいのよ!」

 

典型的な女尊男卑主義の人間か...なんでこういう人間って絵に描いたようなことしか言わないのかね。

 

「おいおい、そのブリュンヒルデにこいつも招待されている時点で関係者に決まってるだろ、俺達だって命は惜しいぞ」

 

「うるさい!男なんて汚らわしい!消えてしまえばいいのに!」

 

おうおう、キーキー喚いちゃってまぁうるせえのなんの...

 

「おい、ブリュンヒルデがこっちに向かってるらしいぞ、当初の目的は達成したしこれでずらかるぞ!」

 

「私に指図するな!この男はさっきから目が気に入らないのよ!」

 

そう言うなり女は俺の顔をIS用のブレードで切り付けてきた。

 

「っ...」

 

「海っ!」

 

とっさに目を閉じたから失明はしなかったが右目の上から斜めに切られて血が流れた。

 

「おいっ!もうすぐブリュンヒルデがくるってのになんてことしてんだ!」

 

「うるさいうるさいうるさい!」

 

この女ヒスってら...一夏がいるからエクスエクシアは最終手段にしたいしどうすっかなぁ...正直頭にきてるし今すぐ使いたいんだよなぁ...

 

バゴォン!!

 

「一夏!海!無事か!」

 

「「千冬(姉、さん)!」」

 

「ブリュンヒルデ!?もう来たのか!とっととずらかるぞ!」

 

千冬さん来た!これで勝つる!一時はどうなるかと思ったぜ...

 

「海!?貴様ら...許さんぞ!」

 

「千冬様!?私は貴女の為に!ぐぎゃっ!」

 

あ、千冬さんが俺の怪我見てキレた...千冬さん原作だとブラコンだったから一夏さえ怪我してなきゃ大丈夫だと思ったけど俺も千冬さんの弟分みたいなもんになってたかー

 

「一夏、海、大丈夫か!?」

 

流石千冬さん、強いなぁ...もうあのクソ女と周りの男たち無力化し終わってる...

 

「千冬姉!俺は大丈夫だけど海が!」

 

「海!直ぐに止血しないと!」

 

「大丈夫ですよ千冬さん、顔を切られましたが傷は浅いですし失明はしてません、運が良かったです」

 

「今も血が出続けてるじゃないか!直ぐに病院に行くぞ!」

 

「すみません...お言葉に甘えさせていただきます...それと、一夏を守れなくて申し訳ないです...」

 

「いいんだ...お前のおかげで一夏は無傷だ...お前ももっと自分を大切にしろ...」

 

 

その後、俺と一夏は千冬姉に連れられて病院で治療を受けた。一夏には何の問題も無かったが、俺は失明こそしなかったものの、右目の少し上から外側に向かって斜めに傷跡が残ってしまった。

まあこれはこれで男の勲章だと思っておくことにしよう。

 

ちなみに第2回モンド・グロッソ決勝戦だがこの事件により千冬さんが不戦敗と言う結果になってしまった。また、俺と一夏の誘拐場所の情報を見つけだしたドイツに、千冬さんは見返りとしてISの教官をする為に1年間出向く事となった。

 

あとは...俺の怪我の事を知った何処かの兎さんが焦っていなければいいけど...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かーくんが怪我したって!どうしようクーちゃん!?」

 

「落ち着いてください束様!直ぐに情報を集めましょう!」




第2回モンド・グロッソまで来ましたね!原作突入もそろそろかも?

少しほのめかしていましたが、オリ主のもう一つの機体もちゃんと出てきますので楽しみにしていてください!

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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8話 友の恋路は黙って応援する事にした

いつも見てくれてありがとうございます!大鷹とびです。

今回でやっと原作スタートが見えてきます。

それでは楽しんでいただければ幸いです。


 

---武藤家宅リビング

 

第2回モンド・クロッゾでの誘拐事件こそあったが、その後は俺も一夏も平和に過ごすことが出来た。俺と一夏が誘拐され更に俺が怪我したことを知った束さんによってまあひと悶着はあったのだが。

それも俺達を心配しての事だったので特に問題にはならなかった。ちなみに今はいつもの

メンバーで集まりいつもの様に俺の家でゲームをしている最中である。

 

「だーっ!海!あんた強すぎるのよ!」

 

「そんなことはないぞ?俺は相手が嫌がることを思いつく順に実行してるだけだ」

 

「それが強いって言ってんのよ!」

 

「まだまだ負けられないな」

 

「うが―っ!」

 

今は俺と鈴が『IS/VS』で対戦していて俺が5連勝中だ、鈴は中国代表の機体を使い続けているが、俺は1戦ごとに機体を変えているのでくるくる変わる戦術に対応が出来ないらしい。

 

「そろそろ交代するか、ほい一夏」

 

「おう!ありがとな!」

 

「弾!私も交代!海と対戦するのは疲れるわ...」

 

「はいよ!勝負だ一夏!」

 

弾は俺に次いで強いから一夏をボコボコにした後、俺と勝負して逆にボコボコにされるのがいつもの流れだ。でもなんか今日はいつもと空気が違うような...

 

「海、ちょっと相談したいことがあるんだけどいい?」

 

「ん?どうしたんだ?別に構わないぞ?」

 

「ありがと...それで少し外に出たいんだけど...」

 

「分かった、じゃあ近くのコンビニまでアイスでも買いに行くか、一夏、弾、アイス買ってくるけど希望はあるかー?」

 

「「海にまかせるー」」

 

「はいよー、じゃあいくか、鈴」

 

「うん」

 

俺は鈴と一緒に家を出て近くのコンビニまで歩きながら話すことにした。

 

「それで?相談ってなんだ?」

 

「えっと...私、一夏に告白しようと思うの...」

 

「やっとか」

 

「いきなりこんな...は?やっと?」

 

「今まであんなに分かりやすい態度取ってて気付かないのはそれこそ一夏ぐらいのもんだ、それで?どうやって告白するんだ?」

 

「なによ!気付いてたの!?それならもっと早く助けなさいよ!」

 

「やなこった、ただでさえあの唐変木の世話は疲れるんだ」

 

「はぁ...そういうことね...」

 

「そういうことだ」

 

俺がどれだけ苦労したと思ってるんだ...「光と闇の女たらしコンビ」の闇の方にされてるんだぞ...

 

「まあ、海の苦労は分かったわ。それで私ね、来月中国に戻ることになったんだけど、その時に告白しようと思うの...」

 

「こりゃまた急だな、どうして戻ることに?」

 

「ちょっと家庭の都合でね...学校にはもう話を通してあるしあとは一夏達に言うだけだったのよ...」

 

「そうか...じゃあ俺達はお前が中国に帰る時に見送りをするとしよう。その時に俺と弾はタイミングを見計らって離れるからその時に告白するといい、でも中国に帰ることはちゃんと直接一夏達に言うんだぞ?」

 

「うん、それでいいわ、ありがとう海!」

 

「いいって事よ。鈴は大事な親友だからな、しっかり応援させてもらう」

 

人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られてなんとやらっていうしな、あとは鈴がストレートに伝えてくれれば上手くいくだろうが...まあそこまではいらぬお節介だろう、大分原作と違うし、もしかしたらがあるかもしれないからな

 

 

この後アイスを買って俺の家に戻り鈴がポロっと中国に帰る事を言ったので色々と大変だったが俺がなんとか収拾して落ち着けたのだった。

 

———————————————————————

 

---空港、エントランス

 

あの出来事からあっという間に1か月が過ぎて、鈴が中国に戻る日の当日になってしまった。俺と弾は手筈通りに一夏を鈴の所に置いてトイレだと言って一夏と鈴を二人きりにすることに成功している。あとは鈴が告白するのを見守るだけだ。

 

「しっかしよー、ちゃんといえるのかね鈴は」

 

「そこは鈴次第だろ?俺達がどうにか出来ることじゃないぞ?弾」

 

「それもそうだな、おっと、鈴が覚悟を決めたみたいだぞ?」

 

「じゃあ、黙って見守るとしますか」

 

一夏達からは見えない場所から俺と弾は耳を澄ませて鈴の告白を見守る。

 

『い、一夏!』

 

『ん?どうした?鈴』

 

『一夏に言いたいことがあるの!』

 

『おう、なんだ?』

 

『も、もし一夏が良ければ...私が酢豚を作るの上手くなったら毎日作ってあげる!』

 

『いいのか?じゃあ次会えたら食べさせてもらおうかな』

 

『!本当に!』

 

『おう、ってそんなに嬉しいのか?』

 

『うん!次に会う時を楽しみに待っててね!一夏!』

 

『お、おう!分かったぜ!』

 

 

「「...」」

 

「海...」

 

「言うな弾...分かってる...」

 

こんなに原作乖離を起こしてるのにここは変わらないのかよ...もう鈴がめちゃくちゃ可哀そうだよ...

 

「あいつ、いつか後ろから刺されて死ぬかもな...」

 

「俺はもう知らん...」

 

 

鈴の告白が終わった後、俺と弾は二人の所へ戻って鈴を三人で見送った。俺達はそれぞれ鈴に贈り物を渡したが一夏はリボンを渡していた。そういうところだよほんと...

 

「一夏、弾、海!三人とも元気でね!」

 

「お前もな!鈴!」

 

「偶にゃこっちにこいよー!」

 

「体に気を付けてなー!」

 

鈴は俺達が見えなくなるまでずっと手を振っていた。俺達も鈴が見えなくなるまで手を振り続けた。

 

「行っちまったな...」

 

「ああ...寂しくなるな...」

 

「まあ、きっと直ぐに会えるさ」

 

「そうだな!」

 

 

こうして鈴が中国に戻ってから少し経って、俺達は中学3年になったのだった。

 

———————————————————————

 

---藍越学園受験会場

 

中学3年になってからは時間の流れがとても早かった。相変わらず束さんに呼び出されることはあっても、中2までで世界中の非人道的な実験をしていた施設はほとんど壊滅させていたのでご飯を作りに行ったり、ISの開発や研究を手伝うことが殆どだった。もちろん『白騎士・蒼機兵事件』の黒幕といつ対峙するかも分からないので訓練も欠かせない。そうして日々を過ごしている内にあっという間に受験シーズンになった。俺と一夏は学費が安く、就職率の高い藍越学園を受験することにしている。俺は他の高校を受験することも出来たし、親も学費は心配するなと言っていたが単純に一番近いのが藍越学園だったから受ける事にした。移動で時間を取られるのが一番嫌いな俺としては家から自転車で20分程度で通学できるのが非常に有難かった。そのほかの高校は電車で30分以上かかるので論外である。

 

「一夏おせぇな...」

 

今現在俺は藍越学園の受験会場にきて、一夏を待っている所だ。しかし待ち合わせの時間になっても一夏が来ない。

 

「せっかく勉強教えてやったのにパァじゃねえか...」

 

道にでも迷っているのだろうか?もう時間もないので俺は会場内に入ることにした。

 

「一度経験しているとはいえ試験ってのは嫌なもんだな...」

 

俺は愚痴をこぼしながら目の前の事をきちんと終わらせるために藍越学園の受験会場に入った。

同時刻に一夏が世の中を大きく動かす事件を起こしていることをすっかり忘れたまま...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あわわわわ...どうしようクーちゃん!いっくんがISを起動しちゃったって!束さんも想定外だよ!どうしたらいいの!?」

 

「この光景どこかで見たような...とりあえず落ち着いてください束様!まずは一夏様の安全の確保と海様に協力を仰ぎましょう!」

 




一夏がISを起動する所まできました。

ここからオリジナルの展開をいくつか挟んで原作と同じ時系列になります。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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9話 俺の覚悟を見せつける事にした

いつも見てくれてありがとうございます!大鷹とびです。

今回は大きく原作と違う部分が出てきますが大筋は原作に寄せつつハッピーエンド目指して進めていくつもりです。

それでは楽しんでいただければ幸いです。


---武藤家宅玄関

 

藍越学園の受験を無事に終わらせて家に帰ると母さんがとても慌ててわたわたしていた。

 

「海!一夏君が大変な事になってるよ!」

 

「どうゆうこと?」

 

「とにかくテレビを見て!」

 

「分かったー」

 

母さんにせかされてリビングでテレビを見るとそこには

 

『史上初の男性IS操縦者見つかる!』

 

とテロップに表示されアナウンサーが

 

「繰り返しお伝えします、本日都内で行われていたIS学園の試験会場に誤って侵入した男性がISを起動したとのことです。」

 

「起動したのは第1回モンド・クロッゾ優勝者である織斑千冬さんの弟である織斑一夏さんであるとの情報が入っています。今後も確定情報が入り次第お伝えします。」

 

忘れてたぁぁぁ!

 

そうだよ!藍越学園の受験当日っていったら原作のスタートである一夏がISを起動する日じゃねえか!やべぇよ...完全に忘れてたよ...どうしよう...これを切っ掛けに全国で男性に対するISの適性検査が行われるから俺も引っかかったらアウトだ...

 

俺が頭を抱えていると束さんから貰った連絡用の端末が震えたので自分の部屋に行き直ぐに出た。

 

「もしもし!かーくん?いっくんがIS起動しちゃうなんて束さんもびっくりだよ!そっちは大丈夫!?」

 

「束さん!俺は大丈夫です!その口ぶりだと束さんも想定外みたいですね、とりあえず話し合いをしたいので直ぐに合流出来ますか?」

 

「りょうかーい!じゃあ座標を送るからそこで合流しよう!」

 

「分かりました、お願いします!」

 

通話を切って直ぐに母さんに出かける旨を伝えて俺は束さんから送信されてきた座標に向かった。

 

———————————————————————

 

---人気の無い公園

 

目的の場所に着くとそこには既に束さんが待っていた。

 

「束さん!」

 

「かーくん!大丈夫かい?」

 

「俺は大丈夫です、道中もかなり気を付けてきましたし、エクスエクシアのセンサーも使ってましたから。」

 

「なら安心だね!それでいっくんの事なんだけど...」

 

「千冬さんがいる限りは安全は確保されていると思います、しかし世界中から狙われるのも事実ですし確実にIS学園に強制入学でしょうね。」

 

「だよねぇ...束さんが言おうとしてたことと全く同じだよ...それとかーくんも他人事じゃないよ?」

 

「ええ...それは分かっています、そこで束さんに提案なんですけど...」

 

「うん?何かなかーくん。」

 

「いっそ表舞台に出ませんか?束さん」

 

「ん?どうゆうこと?」

 

「束さん自身で会社を立ち上げてしまえばいいんですよ、それで一夏と俺をその会社の企業代表にしてしまえば一気に色んな問題が解決します。」

 

「成る程...確かにそうすればかーくんもいっくんも確実に束さんが保護することも出来るし専用機の開発も出来るね...でも散々束さんのこと嘲笑って、ISが出た瞬間に手のひら返して私の本当の夢を微塵も理解もしてくれなかったやつらの前に顔を出すのは嫌だなぁ...」

 

「大丈夫ですよ束さん、俺がサポートしますから!それにまだこの世界には束さんの夢を理解して応援してくれる人もたくさんいると思います!」

 

「かーくん...よし!分かった!束さんがしっかり向き合わないといつまでたっても夢は叶わないもんね!決めたよ!企業を起ち上げてかーくんといっくんを企業代表にする!そうと決まればさっそく会社作っちゃお!」

 

「なら俺も全力でお手伝いしますね!」

 

「うん!お願いねかーくん!」

 

俺の提案を束さんが承諾してくれて本当に良かった...原作乖離もいい所だが束さんが本当に夢を叶えるには必要な事だと思う。いくら原作よりも束さんがいい人でもこれから何年も人の悪意に晒され続ければ歪んでしまうのは当然だろう...それならそれを超えるぐらいの善意や好意に触れられるようにしてしまえばいい、少なくとも俺は束さんの夢を応援しているし、これから賛同してくれる人もきっと出てくる筈だ。なにより俺は全員生存ハッピーエンドが一番好きだしな。

 

「よし!会社が出来たよかーくん!」

 

「早くないですか!?」

 

「日本のサーバーにアクセスして会社を一つ作るぐらいは束さんには朝飯前なのだ!」

 

「流石ですね...それで社名はどうしたんですか?」

 

月兎(げつと)製作所って名前にしたよ!束さんは兎が大好きだし最終的には宇宙を目指すって事で月の兎をストレートに名前にしたんだ!」

 

「いい名前じゃないですか!宇宙を目指してるってことも分かりやすいですし!」

 

「ふふん♪かーくんはやっぱり分かってるねぇ♪じゃあ早速月兎製作所社長と月兎製作所企業代表としてひと仕事しようか!あ、かーくんにはエクスエクシアのカモフラージュも兼ねて専用機をもう作ってあるからあとでそれを渡しておくね!」

 

「はい!...ってえぇぇぇぇ!?いつの間に作ってたんですか!?」

 

「かーくんが白騎士完成の最後のピースをはめてくれた時に約束したでしょ?あれからずっと進めてたんだ♪」

 

「あの時から!?俺がエクスエクシアを持っている事を束さんと千冬さんに話すよりも前じゃないですか!」

 

「束さんは約束は絶対に守るのだ!それにかーくんがあの時私の夢を応援してくれた事はとっても嬉しかったからどうしてもお礼をしたかったんだ...」

 

「束さん...」

 

束さんは俺と向き合うとじっと俺の目を見たあとなにやらもじもじし始めた。

 

「えっと...その...」

 

「どうしました?」

 

「こ、これからもよろしくね!///かーくん!」

 

「もちろんです!こちらこそよろしくお願いします束さん!」

 

 

俺は束さんと握手を交わして改めて覚悟を決めた。

 

———————————————————————

 

---都内某所とある施設

 

今俺はとある施設のスペースで束さんと一緒にすさまじい数の報道陣の前に立っている。いきなり束さんが企業を起ち上げて二人目の男性操縦者を連れてきたなんていったら大混乱になってしまう為、束さんは変装して東雲兎子(しののめとこ)という偽名を名乗ってはいるが...それでも今まで全く日の目を浴びていない企業が急に男性操縦者を見つけたという発表をするのだから大騒ぎになっている。

 

「それでは月兎製作所の緊急記者会見を始めさせていただきます。」

 

束さんが前に出て記者会見の開始を宣言すると報道陣のフラッシュが大量に炸裂した。俺も束さんと一緒に前に出たから眩しくて仕方ない...束さん大丈夫かなぁこうゆうの苦手だと思うんだけど...

 

「先日世界初の男性IS操縦者として織斑一夏君が見つかったと報道されていますが、実は我が社の社員であるこの武藤海君は3年前に我が社の試作ISを起動していました、つまり本当の世界初の男性IS操縦者は彼と言うことになります。」

 

束さん!?俺は二人目ってことで発表するんじゃないの!?いくらなんでもその言い方は爆弾発言過ぎでは!?ほら会場騒然だよ!?

 

「皆さんが驚くのも無理はありません、しかし女尊男卑の思想がある世の中でまともな備えも無しに発表すれば相応のリスクが伴うと判断しました。そのため私達は発表を控えていましたが織斑一夏君が見つかり、更に高校進学をするこのタイミングで発表したのです。」

 

「何故高校進学のタイミングなのでしょうか?」

 

「それは月兎製作所の企業代表として武藤海君をIS学園に入学させる予定だからです。」

 

束さんの今回の発表についての考えを聞いて報道陣は納得したように頷いて手元のメモやタブレットに各々情報を書き込んでいる。まあこれ以上ない正当な理由なので否定も出来ないだろう。

 

「成る程、確かに男性操縦者ともなればいつどのような危険に襲われるか分かりませんからね。今回の発表については納得しました。それでは武藤海君、男性操縦者になったという事だけど何か意気込みややりたいことはあるのか聞かせてもらえるかな?」

 

あ、ここで俺に振るのね...まあ言うことは大体決めてたしサクッと答えてしまおう。

 

「そうですね...こうして世界に二人しかいない男性操縦者になったことには驚いていますが、なったからには全力を尽くしたいと思います。最終的にはISで宇宙に羽ばたくのが自分の夢ですので」

 

俺が質問に対して答えてから真っ直ぐ報道陣を見るとフラッシュの激しさが増して大量にシャッターが切られていることが分かる。俺そんなに変わったこと言ったかなぁ?まあ明日の新聞の一面とか雑誌の表紙とかは今撮られてるこの写真になるんだろうなぁ...

 

「他に質問はありますでしょうか?」

 

束さんが進行して俺が質問に答えるのを繰り返している内に時間が経ち記者会見は終了した。

 

 

「ふぅ...流石に疲れましたね、たb..東雲さん」

 

「そうだねぇ...じゃあ会社に戻って色々と準備しようか」

 

「はい、帰りましょうか」

 

俺と束さんが撤収しようと色々と作業をしてふと報道陣に背を向けた時に俺は殺気を感じて即座に振り向いた。

 

「男がISを起動するなんて許されないのよ!死ね!」

 

俺が振り向いた瞬間に会見に紛れ込んでいたであろう女尊男卑主義の女がナイフを持ってこっちに真っ直ぐ突進してくるのが見えた。

 

「危ないっ!」

 

誰かが叫んでいるが俺はそれよりも早くISを部分展開してそのまま武器である大型のナイフをコールし女のナイフを打ち払いながら女の足を払って転ばせてからナイフを突きつけて抵抗出来なくする。

 

「何かが起こるとは思っていたけどまさかここまで直接的なものだとは思わなかったな...それにせっかく俺の為に作ってくれたこのISの最初の仕事がこんな事になるとは...」

 

「大丈夫ですか!?」

 

「俺は大丈夫です、既に犯人はこうして無力化していますので警察へ引き渡しをお願いします。」

 

「わ、分かりました...」

 

焦ったぁ...殺気を感じて身構えていたから良かったものの間に合わなかったと思うとぞっとするな...それにしても殺気で分かるなんてもう完璧に神様から勝手に付与されたニュータイプやらその他諸々の能力が開花してしまったな...

 

「はぁ...」

 

「どうしたんだい?随分とお疲れだねかーくん」

 

束さんが周囲に悟られない様にしながら俺に声をかけてきた。

 

「そりゃ疲れますよ...命を狙われたんですから...それと...戻ったら俺のBT兵器の適性を調べてみてもらっていいですか?」

 

「そういえばまだやってなかったね、じゃあラボに戻ったらさっさとやってしまおうか。」

 

「はい、お願いしますね。」

 

俺と束さんはISの話や今後について話しながら帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---その後束さんのラボにて

 

「凄いよかーくん!BT兵器の適性Sって出てるよ!あとついでにやってなかったからIS適正も見てみたけどこれもSって出たよ!これはちーちゃんと同等だ!」

 

「なんかもうそんな気はしてました...また考えなきゃいけないことが増えるなぁ...」

 

「束さんの開発したかーくん専用機ならBT兵器も使えるしあの子も喜ぶと思うよ?」

 

「そう思うことにしますよ...あとはIS学園でデータを取りながらぼちぼちやっていきます。」

 

「うんうん、頑張ってねかーくん、あといっくんのスカウトもよろしく!」

 

「はぁ...了解です束さん。」

 

 




というわけで束が企業を起こしてオリ主はその企業代表という事になりました。
かなり原作と違いますが大筋は寄せていくつもりです。

そしてなにやらフラグが立ったような気がしますねー

この後入学試験を挟んで原作突入の予定です。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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10話 何かやらかした気がした

いつも見てくれてありがとうございます!大鷹とびです。

今回は主人公の無双回みたいなものです。

楽しんでいただければ幸いです。


---IS学園

 

世の中を騒がせた男性操縦者発見のニュースから1週間が経ち、俺は入学試験を受ける為にIS学園に来ていた。

 

「でけぇなぁ...」

 

海に囲まれているのに全寮制をとれる程の施設の数と大きさに俺は開いた口が塞がらなかった。

 

「おい、こっちだ海」

 

俺がIS学園を呆然と眺めているといつの間にか千冬さんが目の前にいた。

 

「あ、お久しぶりです、千冬さん。」

 

「久しぶりだな、元気そうで何よりだ。」

 

「まさかこんなことになるとは思いませんでしたけど。」

 

「それはこちらもだ、一夏がISを起動した時は仕事が増えてそれどころでは無かったがお前のことも心配したんだぞ?」

 

「まあ一悶着ありましたけどなんとかなりましたよ、それで試験後に色々と話をしたいことがあるのですがお時間大丈夫ですか?」

 

「もちろんかまわないぞ、試験が終わったら迎えに行こう。」

 

「分かりました、よろしくお願いします。」

 

「では私は試験の準備があるからもう行くぞ、また後でな海。お前なら大丈夫だと思うが試験も油断するなよ?」

 

「ええ、もちろんです。また後で会いましょう。」

 

俺との会話を終えると千冬さんは試験の為にまた学園の中に戻っていった。

 

「じゃあそろそろ時間だし俺も頑張りますかねー」

 

腕に付けている時計を見ると試験の開始時間が迫って来ていた為、俺も会場へと向かった。

 

———————————————————————

 

---IS学園教室内

 

現在俺はIS学園の二つの入学試験のうち一つ目である筆記試験を受けているのだが実はあっという間に解き終わって時間を持て余していた。

 

(ISの問題は基礎中の基礎しかなかったし、普通の教科もなんてことなかったな...)

 

IS学園の筆記試験は教科毎にテストは分かれているが手元の端末で受ける為に教科毎で時間が分かれておらず、長時間でまとめて受ける方式が採られていた。俺は休憩を挟んで3時間ある試験時間の内の前半の1時間半で全部解き終わってしまい、とにかく暇なのであった。流石にこのままと言う訳にもいかないので教室の前にいる監督官の先生らしき人に手を上げて質問する事にしよう。

 

「はい!どうかしましたか?」

 

俺が手を上げるとその先生は直ぐに気付いて近くまで来てくれた。それにしてもこの人でかいな...どこがとは言わないが...

 

「えっと、全てのテストを解き終わってしまったので回答を提出したいのですがいいですか?」

 

「ええっ!?まだ半分しか経ってないのに6教科全部終わったんですか!?」

 

「はい、なので提出して早めに退出したいのですが...」

 

「わ、分かりました、名前を確認してそこのボタンをタッチしてください。」

 

俺は言われたとおりに名前を確認して指定されたボタンをタッチする。

 

「これでいいですか?」

 

「はい、大丈夫です。不正防止の為にこの教室にはもう入れませんけど大丈夫ですか?」

 

「それで構いません、ではありがとうございました、失礼します。」

 

俺は早々に退出して学園を見て周る事にした。

 

———————————————————————

 

---IS学園構内

 

「しっかし広いなぁ...」

 

俺の実技試験までは大分時間があるため俺はそれまでの間IS学園のうろちょろすることにした。

 

「まあ世界で唯一のIS操縦者育成をしている学校だし色々あって当たり前か...」

 

一人でぶつぶつと呟きながら廊下をだらだらと歩いているとふと後ろから人の気配を感じた。これは俺の事を尾行してる?

 

「どなたかは存じませんがそんな後ろからコソコソしなくてもちゃんと話しかけてくれたら対応しますよ?」

 

後ろに人がいるということは確実に分かっているのでとりあえず声をかけてみた。

 

「あららまさかこんなに早くばれちゃうとは思わなかったわ。」

 

声が聞こえてから振り向くとそこには水色の髪と赤い眼の女性が立っていた。まあ原作を知っているからもちろん誰かは分かっているが...

 

「自分に何の用でしょうか?IS学園現生徒会長更識楯無さん。」

 

「あら?私のこと知ってたのね?おねーさん嬉しいなぁ。」

 

「学園のホームページやらパンフレットに乗ってますしISに関わっている以上ロシア代表である貴女が分からない方が問題だと思いますけどね。」

 

「そうかしら?入学前にそこまで調べている人も中々いないものよ?」

 

「そうですかね?まあ誉め言葉として受け取っておきますよ。」

 

「うんうん素直な子はおねーさん好きよ?」

 

うーん...もっと話しててもいいけど流石に入学すらしていないこの状況で束さんとの関係やら専用機の情報を渡すわけにはいかないから牽制だけして実技試験の会場に戻ろう。

 

「まあ、俺の背後関係やら専用機やらが気になるのは分かりますけど入学すれば分かりますから焦る必要はないと思いますよ?」

 

「っ!?」

 

「それでは」

 

少し驚いた様子の生徒会長を確認して俺はその場から立ち去った。

 

———————————————————————

 

---IS学園アリーナ内

 

なんだかんだで時間が経って俺の実技試験の時間がやってきたので俺は控室で待機している。

 

「武藤海君、試験を開始しますのでアリーナに出てきてください。」

 

放送で呼び出されたので俺は束さんから渡された専用機を起動する。

 

「いこうか...夢幻(むげん)

 

俺は0.5秒と掛けずに自身の専用機を纏う。

 

カラーリングは白と青と緑の三色で肩から腕に装甲はなく脚部はスラスターが付いているものの既存のISよりはコンパクト、背部のカスタムウィングも小型の物が2枚あるのみで、肩部付近にはこの機体最大の特徴である箱型の非固定浮遊部位(アンロックユニット)が浮いている。

 

これが俺が束さんから託された特殊第3世代機『夢幻』だ。ちなみに待機形態は眼鏡型の端末である。

 

そしてそのままカタパルトに乗りアリーナに向かって飛び立つ

 

「武藤海、夢幻、出撃する!」

 

 

アリーナに飛び出していくとそこには倉持技研の第二世代量産機である『打鉄』を纏った千冬さんがいた。

 

「まさかとは思いますけど俺の実技試験の試験官って千冬さんなんですか?」

 

「ああ、その通りだ海。他の教師でも良かったんだかそれだとお前が満足しないだろう?」

 

「いやいや、別に俺は戦闘狂とか戦い好きなわけじゃないですから相手によって戦い方を変えるだけですよ...」

 

「今までお前との模擬戦は道場の時も含めて100戦50勝50敗だ、だから今日で勝ち越させてもらう」

 

「めちゃくちゃ個人的な理由じゃないですか!それがメインの理由で無理矢理出てきましたね!?」

 

「いや他にも理由はあるぞ、お前のその専用機の調査とかな、割合としては勝ちたい気持ちが7割で残りが3割だ。」

 

「半分以上じゃないですか!」

 

「うだうだ言ってないでいくぞ!はぁぁぁぁ!」

 

「ちょっ!?くそっ!」

 

俺は打鉄の近接用ブレード「葵(あおい)」を持って超高速で迫って来た千冬さんに対して夢幻の基本装備(プリセット)である大型ナイフを即座に展開して対応する。

 

「まずは小手調べだ!」

 

千冬さんは俺の背後に回り込んで葵を振るってくる。

 

「させるかっ!」

 

俺は背後に回り込んできた千冬さんに対して振り向かずに後ろ手で葵を受け止めてから振り向く勢いで弾き飛ばした。

 

「鍛錬は怠っていないようだな!」

 

「そりゃそうですよっ!どれだけ訓練してたと思ってるんですかっ!」

 

俺と千冬さんはそれぞれの得物を最大限活用して激しく打ち合いを続ける。お互いに瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使ったりととても入学試験とは思えないような激しい戦いをしてシールドエネルギーを削り続けた。

 

「そろそろエネルギーも3割を切りそうですし俺は動くことにしますよ!」

 

俺は勝負を決める為に夢幻の特殊兵装である両肩付近にある箱のような非固定浮遊部位(アンロックユニット)を自分の前に持ってきて起動した。

 

「させるか!」

 

千冬さんは俺が何かをしようとした瞬間に距離を詰めて阻止しようとしてくる。

 

「それを待っていたんだ!」

 

非固定浮遊部位(アンロックユニット)が開き俺はその中からショットガンを取り出すと目の前まで来ていた千冬さんにぶっ放した。

 

「なにっ!?」

 

零距離でショットガンを食らった千冬さんの打鉄はSEが0になり終了のブザーがアリーナに鳴り響いた。

 

「千冬さんが専用機だったら今のも躱されてたでしょうね...」

 

「いや、流石にずっとナイフで戦っていた状態からのショットガンは私も予想外だった。その非固定浮遊部位(アンロックユニット)は武器コンテナだったのだな。」

 

「まあ平たく言えばそうですね、正式名称は『夢現(ゆめうつつ)』で状況に合わせてコンテナ内で最適な武装を作成、使用することが出来る特殊兵装です。もちろん作成用の資材に限界はあるので何でもは作れませんが...」

 

「成る程、器用な海だからこそ使える兵装だな、よく分かった。試験はこれで終了だ、確実に合格ではあると思うが結果は追って連絡する。」

 

「分かりました。ではまたあとで会いましょう千冬さん。お疲れ様でした。」

 

「ああ、仕事が終わったら改めて迎えに行くから適当に時間を潰しててくれ。」

 

「了解です。」

 

俺は千冬さんに返事をすると待機室に戻り夢幻を解除して大きく息を吐いた。

 

「だぁぁ!疲れたぁ!」

 

このままここで待ってしまおうと思いベンチに座ると俺はそのままウトウトとうたた寝してしまったのであった。

 

———————————————————————

 

---IS学園相談室

 

今現在俺は千冬さんにたたき起こされてIS学園内の相談室にいる。

 

「まさか待機室でそのまま寝ているとは思わなかったぞ。」

 

「千冬さんがガチでやるからめちゃくちゃ疲れたんですよ...」

 

「まあ、それはあれだ、私も久しぶりだったからついな...」

 

「勘弁してくださいよ...そもそも俺がISは全然動かしてない場合を考えてなかったんですか?」

 

「お前の性格からしてそれは無いと確信があったぞ」

 

「変なところで信用されても...」

 

「んん"っ...それよりも私に話したい事とはなんだ?海」

 

露骨に話を逸らそうとしているよこの人...まあ話すけども...

 

「そうですね...先ずは千冬さんは月兎製作所は分かりますか?」

 

「お前が企業代表を務めている企業だろう?今まで名前を聞いたことは無かったが...」

 

「では月兎製作所の社長の事は?」

 

「名前は分かっているが...それがどうかしたのか?」

 

「あれ、変装した束さんです。」

 

「なんだと!?」

 

「月兎製作所は束さんが俺と一夏の保護と専用機開発、そして宇宙進出開発の足掛かりを兼ねて作った企業なんですよ、俺のこの専用機も束さんが作ったものですし。」

 

「そうゆう事だったのか...」

 

「あの時の黒幕に対する対抗組織という面もありますから千冬さんにも束さんから連絡が来ると思いますよ?」

 

「あの時の?ああ...成る程...まだ解決していない問題だからな...」

 

「はい...とりあえず先駆けて然るべきタイミングで一夏も月兎製作所に引き込もうと思っていますけど大丈夫ですか?」

 

「それなら大丈夫だ、束と海なら信用しているし一夏も鍛えられるだろう。」

 

「分かりました。一夏は月兎製作所に所属させることで確定と言うことで。」

 

「ああ、あの愚弟を頼むな。」

 

「一夏は俺の親友ですから任せてください!」

 

 

千冬さんに月兎製作所の事を話した後俺は真っ直ぐ帰る事にした。

 

「とうとう入学か...色々と不安は多いけどとりあえずやるしかないか...」

 

俺はポツリと未来に対して不安をこぼしながら帰路についたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇぇぇぇ!?あの子先輩に勝ったの!?このまま記録したら大事件になっちゃうじゃないですか...どうしたらいいの...」

 

今日の織斑千冬対武藤海の試合を見ていた記録・観察係のとある先生は試合の記録をどうするかで一人頭を抱えていた。

 




というわけで入学試験回でした。

オリ主と千冬は道場時代からよく模擬戦をやっていてだんだんと主人公が技術で上回った結果お互い50勝づつになっている訳です。

そして次回ついに原作突入します。設定も纏めて投稿しようと思っていますが、ストックが尽きてきたのでもしかしたら投稿ペースが落ちるかもしれませんがご容赦ください。

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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原作突入 入学・クラス代表編
オリジナルキャラクター・機体設定集


現時点での主人公と機体設定です。

これから追加、変更していく部分もありますがこれでよりこの作品を楽しんでいただければ幸いです。


オリジナルキャラクター紹介

 

武藤(むとう) (かい)

 

身長:176cm

体重:68kg

年齢:15歳(転生前を含めると33歳)

見た目:ガンダムXのガロードを日本人に寄せたような見た目

    雰囲気はガロードよりは大分暗そうな感じ

趣味:ガンプラ(ISの世界にガンダムが無いのでもう出来ない)、アニメ・特撮鑑賞、料理

誕生日:7月22日

専用機:ガンダムエクスエクシア→???→???

    夢幻

 

備考

本作の主人公で好きなアニメの劇場版を見に行く途中で車に轢かれそうになっている女の子を見つけて、身代わりになる形で女の子を助けて命を落としたが、死後出会った神によって自分の死は手違いであったことを教えられISの世界に転生し生きる事になった所謂転生者。

 

転生後は同じ名前で普通の一般家庭に生まれそれなりに幸せな時間を過ごすも小学校で原作主人公の織斑 一夏と隣の席になり改めて自分の存在の異質さを自覚し始める。一夏と仲良くなった後は原作ヒロインの1人である篠ノ之 箒を一夏と一緒に助けたり、篠ノ之道場で剣術を習うことになったりとズブズブと原作に介入していった。

 

小学2年生の時に箒を助けた後に知り合った篠ノ之 束に完成一歩手前のISを見せられて興奮してIS完成の最後のピースをはめてISを完成させてしまい、数日後に原作とは内容が違う『白騎士事件』が発生した際に神から勝手に渡された転生特典であるISとなった自身のオリジナルガンプラ『ガンダムエクスエクシア』を使って白騎士と協力してミサイルと軍を全て無力化した。

その後合流した束と一夏の姉である千冬に自分が転生者であることを明かし、束に協力して世界中の非人道的な実験を行っている研究所や施設を潰す活動をする。

 

中学生の時に第2回モンド・クロッゾを一夏と観に行ったがその際に一夏と共に誘拐され誘拐犯の1人によって顔を切られて右目の少し上から外側に向かって斜めに傷跡が付いている。

 

一夏がISを起動した後は束と一緒に月兎(げつと)製作所を起ち上げその企業代表としてIS学園に入学することとなり、その際にオーバーテクノロジーの塊である『ガンダムエクスエクシア』のカモフラージュとして2機目の専用機である『夢幻(むげん)』を束より渡されている。

 

戦闘時は常に冷静に相手を分析しながら戦うタイプであり、『夢幻(むげん)』の機体特性とはかなり相性が良い。また転生特典の桁外れの成長率と吸収力、ニュータイプ、真のイノベイターと同等の能力と並列演算、並列思考が出来る能力によって化け物じみた反応速度と対応能力をもっており現時点で千冬と同等かそれ以上の実力の操縦者になっている。

 

実は自分で0から何かを生み出すことは転生前からかなり苦手であり、転生後も何かと周りに流されがちである。また、極度のお人よしであるために他者を優先して自分が傷つく事も平気で行ってしまうタイプである。

 

機体紹介

 

機体名:ガンダムエクスエクシア

使用者:武藤 海

待機形態:青と白のラインが入った腕輪

武装:GNソード、GNロングブレイド・GNショートブレイド、GNビームサーベル・GNビームダガー、GNバルカン、GNシールド、サテライトGNキャノン、シールドバスターライフル

詳細:海を転生させた神が勝手に海の記憶から読み取ってIS化させた海が転生前に作成していたオリジナルのガンプラの一機。ガンダムエクシアとガンダムXを融合させることをコンセプトに作られた機体で、エクシアをベースにコーン型スラスターに接続できるように改良されたサテライトキャノンがバックパックとして装備されている他、動力としてGNドライブと通常電力を使用しエクシアの『トランザムシステム』及びガンダムXの『サテライトシステム・フラッシュシステム』を搭載しており、機体性能は現存する他のISとはかけ離れたものとなっている。本機最大の武装であるサテライトGNキャノンは最大出力で半径5kmの範囲を消滅させるほどの威力を有している。

 

機体名:夢幻

使用者:武藤 海

待機形態:眼鏡型の端末

武装:大型ナイフ×2、IS用ピストル『G44』×2、兵装製造コンテナ『夢現』×2

詳細:篠ノ之 束が海の為に作成した「展開装甲以外の方法であらゆる戦況に換装無しで対応できるIS」を目指して開発された機体。初期装備(プリセット)を最低限に抑えて拡張領域(バススロット)をかなり大きく設定しあり、後述の『夢現』で作成した装備を大量に格納できるようになっている他、生産用の資材を格納する役割も担っている。この機体最大の特徴である兵装製造コンテナ『夢現』は戦闘相手のデータや戦闘の状況を分析し、適した武装や操縦者の指定した装備を即座に製造することが出来る特殊装備である。小型の武装ならば2機のコンテナをそれぞれ稼働させることで大量に生産も可能であり、また大型の武装もコンテナを連結させることである程度まで作成可能。しかし拡張領域(バススロット)に格納されている資材分までしか装備は生産できない為、大型の装備を作るには資材と領域確保の為にこれまでに作成した他の装備の解体をする必要があり、常に強力な武装を生産し続けられると言う訳では無い。また操縦者があらゆる武器に対して精通していなければ意味がないため非常に扱いの難しい機体になってしまっている。

また、この機体に使用されているコア(No.099)は海が非人道的な研究所を潰している際に奪ってきた物でコア人格は自分が縁起の悪いナンバーであることと、日々の実験をISの中から見て人間に辟易していたが海によって研究所が潰され束のラボに移ってからは束やクロエ、海の生活を見て多少人間を信じられるようになっている。また、自分を研究所から解放してくれて声をかけてくれた海には特別な何かを感じており、海以外の人間に使われる事を非常に嫌がるようになっている。まだ海と意思疎通をすることは出来ないが直ぐに出来るようになると信じてコアの中で待ち続けているようである。

 



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11話 入学したけど嫌な予感がした

いつも見てくれてありがとうございます!大鷹とびです。
評価バーに色が付いて日刊ランキングに一瞬本作が乗りました!
本当にありがとうございます。

いよいよ入学、原作突入です!オリ主を加えて物語がどうなるか
楽しんでいただければ幸いです。


---IS学園1年1組教室

 

<一夏視点>

 

俺は今物凄く気まずい状況にいる...何故なら...

 

「あれが二人の男性操縦者の内の一人だよね?」

 

「けっこうイケメンだね!」

 

「話しかけてみたら?」

 

この教室にいる男子は俺一人で俺の席は一番前の真ん中でこの学校は本来女子高だからだ!めちゃくちゃ気まずいぜほんと...でもさっき女子が二人の男性操縦者の内の一人って言ってたな...

俺がホテルに監禁状態の間にもう一人見つかったのか?ホテルの中ではテレビも見れなかったからぜんぜん今の世の中の情勢が分からないんだよなぁ...

 

「皆さん揃っていますね!私はこのクラスの副担の山田真耶です!よろしくお願いしますね!」

 

「よろしくお願いします。」

 

え?山田先生に挨拶返したの俺だけ?挨拶ぐらいちゃんと返すべきだと思うけどなぁ...

 

「じゃ、じゃあSHRを始めますね、皆さんには自己紹介をしてもらいます。」

 

自己紹介かぁ...こんな状況で何て言えばいいのかなぁ...こんな時に海がいてくれたら助けてくれるんだろうなぁ...

 

「おり...くん」

 

「織斑くん!」

 

「え?あ!は、はい!」

 

「すみません、今「あ」から始まって「お」なので自己紹介をお願いしてもいいですか?」

 

「わ、分かりました...」

 

俺は席を立って前に出て自己紹介をしようとする、やべぇ緊張して頭真っ白だ...

 

「あーっと、織斑一夏です。」

 

そんなに見ないでくれよ、もうなんも思いつかねぇ...

 

「い、以上です!」

 

ズコーッ!

 

えー...みんなそんなギャグ漫画みたいにならなくてもいいじゃねえかよ...

 

バシンッ!

 

「いってぇ!」

 

「お前は碌に自己紹介も出来んのか!」

 

「え!?千冬ね」

 

バシンッ!

 

「織斑先生だ」

 

「わ、分かりました織斑先生」

 

千冬姉がここで教師をしてたなんて知らなかったな...それになんか教室の雰囲気が変わったような...

 

「「「「「きゃあああああああああ!」」」」」

 

「どわぁ!?」

 

耳がおかしくなる...

 

「本物の千冬様よ!」

 

「私ファンなんです!」

 

「生きててよかった!」

 

千冬姉ってやっぱり凄いんだな...

 

「はぁ...何故私が担当するクラスはいつもこんな奴らばかり集まるんだ...」

 

千冬姉も苦労してるんだなぁ...

 

「まずは静かにしろ」

 

まあ話進まないもんな...千冬姉が言えばみんな静かに...

 

「「「「「きゃあああああああああ!」」」」」

 

「お姉様もっと叱って!」

 

「私も罵って!」

 

「踏んでください!」

 

え?静かにならないのか!?千冬姉に言われて黙らないとか命知らずにも程があるだろ!

 

「織斑、余計なことは考えるな、あと一度席へ戻れ」

 

「は、はい」

 

千冬姉に考えを読まれたけど疲れてるのか叩かれなかったな、今度久しぶりに千冬姉にご飯を作ることにしよう...

 

「入学式早々だがこのクラスにはもう一人入ることになっている。」

 

ん?もう一人?入学式に特殊な事情で出席できなかった生徒とかか?

 

「入れ」

 

教室の扉が開くと眼鏡を掛けて少し髪が伸びているが見間違える筈の無い俺の親友がいた。なんであいつが...

 

「もうご存じかもしれませんが、男性操縦者のもう1人で月兎製作所の企業代表としてきました、武藤海です。趣味は料理とゲームです、よろしくお願いします。」

 

教室に入って来たのは俺の幼馴染で親友の海だった...

 

———————————————————————

 

<海視点>

 

「武藤海です。改めてよろしくお願いします。」

 

俺は自己紹介をして改めて頭を下げた。

 

「織斑、自己紹介とはこうするものだ、分かったか。」

 

「は、はい」

 

「2か月ぶりだな一夏。」

 

「海!どうしてお前がここにいるんだ!」

 

「なんだテレビ見てなかったのかよ、俺はもう一人の男性操縦者及び月兎製作所の代表としてここに来たんだ。」

 

「マジかよ...海もIS起動しちまったのか...」

 

急に教室が静まり返り、俺と一夏以外の生徒がぷるぷる震え始めた。

 

「「「「「きゃあああああああああ!」」」」」

 

「うわっ!」

 

「うるさっ!」

 

「明るい感じの織斑君と対になる闇がありそうな感じのイケメン!」

 

「カッコいい!」

 

「しかも織斑君とは知り合い!?今年のネタはこれで決まりね!」

 

えー...ここでも闇がありそうとか言われるのか...俺普通に話すし明るい方だと思うんだけどなぁ...あと今年のネタってなんだよ...

 

「織斑先生、何とかなりませんか...」

 

「悪いがこれは私にもどうしようもない...」

 

「そうですか...」

 

俺はため息をつきながら自分の席についた。IS学園では入学式の日から授業があるため俺は参考書やノートを出して授業の準備をした。

 

 

最初の授業は山田先生がISの基本について説明しながら進めていくものだった。山田先生の説明が分かりやすいのもあったが元より俺は束さんの所でISについては散々勉強したし、入学前に配布された参考書も全て覚えてしまったので全く問題なかった。

 

しかし一夏は...

 

「織斑君、武藤君、何か分からない所はありますか?」

 

「ほとんど全部分かりません!」

 

おいおい全部ってこたぁ無いだろ...今やってるのってめちゃくちゃ基本的な事だぞ...入学前に配布された参考書を読めば...あぁ...そういえばそうだったな...

 

「え...?ぜ、全部ですか...?」

 

「はい!全部です!」

 

自信満々に言うなよ一夏...

 

「え、えっと...織斑君以外で、今の段階で分からない人はどれくらいいますか?」

 

山田先生の問いに対してはもちろん誰も手を挙げなかった。俺も含めて。

 

「おい海!お前も分からないんじゃないのか?」

 

「残念ながら全部分かる、とゆうかこの範囲は入学前に貰った参考書に全部書いてあったぞ?」

 

「あ...あれか...」

 

参考書の事を聞くと途端に一夏が動揺し始めた。やっぱりか一夏...

 

「織斑、入学前の参考書はどうした?」

 

明らかに挙動不審な一夏に対して千冬さんが参考書について訊いてきた。

 

「古い電話帳と間違えて捨てました!」

 

バシンッ!

 

阿保ちゃう?大丈夫か一夏...そら千冬さんも出席簿アタックするわな...

 

「必読と書いてあっただろう馬鹿者が。」

 

確認は大事だと俺もあれほど言ったのに...

 

「後で再発行してやるから一週間で全て覚えろ。」

 

「え?あの分厚さを一週間はちょっと...」

 

「やれと言っている...」

 

「や、やります...」

 

千冬さんににらまれて従うしかなくなってら、まあ自業自得だからフォローはしないぞ。

 

「織斑、『自分は望んでここにいるわけではない』と思っているな?」

 

なにやら千冬さんは一夏に思うところがあるみたいだな。

 

「望む望まないに関わらず、人は集団の中で生きていかなくてはならない、それすら放棄するなら、まず人であることを辞めることだな。」

 

成程ね、今の一夏に現実を見させるにはいい言葉だ。俺もこの状況を望んでいた訳では無いけど

もう夢が出来たからな...

 

「....」

 

一夏が千冬さんの言葉を聞いて俯くと同時に終了のチャイムが鳴った。

 

「え、えっと、織斑君。分からないところは授業が終わってから放課後教えてあげますから頑張りましょう?ね?」

 

「はい...放課後にまたお願いします。」

 

「私は織斑君を応援してますから!いつでも頼ってくださいね!」

 

山田先生が一夏に声をかけてから授業終了の挨拶をして最初の従業は終わった。

 

 

「改めて久しぶりだな一夏、大丈夫か?」

 

「ああ、大丈夫だ、ありがとうな海。」

 

「これぐらい普通だ、それよりも一週間で参考書の内容全部覚えられるのか?」

 

「いや、絶対無理だ!助けてくれ海!」

 

「じゃあこの一週間の飯をお前が奢ってくれるなら助けてやろう。」

 

「なっ...足元見すぎだろ!」

 

「ふーん?また千冬さんの出席簿攻撃を食らいたい訳だ...」

 

「わ、分かったよ、俺だって千冬姉には迷惑かけたくないしそれで手を打つよ...」

 

「交渉成立だな、まいどありー」

 

俺は満面の笑みを一夏に向けてやった。たまには痛い目に遭うがいい!

 

「...ちょっといいか?」

 

俺と一夏が話していると突然ポニーテールの女子が俺達に話しかけてきた。凄く見覚えがあるポニーテールだ、なにやら周りにいる女子がざわつき始めたな...

 

「...箒?」

 

「ああ、久しぶりだな一夏、海。」

 

「本当に久しぶりだな!箒!元気にしてたか?」

 

「ああ、二人も変わりないようだな、まさかこんなところで再会するとは思わなかったが...」

 

「それは俺もだよ箒、どうだ近いうちに久しぶりに一勝負しないか?引越ししたあと剣道の全国大会で優勝とかしてたろ?」

 

「知っていたのか!?海」

 

「偶々新聞で見てね、俺も今まで鍛錬を欠かさずやって来たし一本どうだ?」

 

「せっかくの誘いだ、乗らせてもらおう。」

 

「一夏、お前も一緒に来い、中学生の時は必要費を自分で稼ぐってバイトの為に剣道辞めただろ?鍛え直してもらえ。」

 

「え!?あ、ああ、そうだな...」

 

俺と箒の武人的な会話に一夏はすっかり置いていかれていたようで、俺が話を振るとビクッと反応した後に返事をした。

 

「おいおい、大丈夫かよ一夏...」

 

「ああ...悪いちょっと考え事しててな...」

 

これは千冬さんの言葉が効いているかな?まあいい傾向だろう。

 

「まあ、とりあえずまた試合するときに連絡するよ。」

 

「ああ、楽しみにしているぞ海。」

 

そろそろ次の授業が始まるので箒は早めに自分の席に戻っていった。俺も自分の席に戻ろう。

 

次の2時間目の授業は特に問題なく進み、相変わらず一夏は首を傾げていたがノートを取ったりして何とかやっているようだ。

 

そのまま2時間目の授業も無事に終わり、一夏はまた俺の所にやって来た。

 

「やっぱ難しいぞ海...」

 

「それでも1時間目よりは頑張ってたじゃないか、良い事だぞ?」

 

俺が一夏の姿勢の変化を素直に褒めていると何やら金髪の女子がこちらに近づいてきた。

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

もちろん原作を知っていて、入学前に各国の代表や候補生を全員調べつくした俺は彼女が誰か知っているが実際に相対するとなんか、めんどくさそうな空気が漂ってきて溜息が出そうだ。

 

めんどくさいなぁ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにこの後金髪の彼女が俺の入学試験の成績を聞いて心が折れかけたのはもう少し後の話である。




というわけで原作突入・入学編でした。

一夏も箒もオリ主の影響で原作よりはまともになっています。

特に箒に関してはオリ主が篠ノ之流剣術を習って鍛錬を続けていたのもあって武人としてのライバルが増えているような感じです。

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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12話 言いたいことは言う事にした

いつも見てくれてありがとうございます!大鷹とびです。

感想、評価してくださりありがとうございます。
おかげさまでUAが1万を突破しました。
これからもよろしくお願いします!


---IS学園1年1組教室

 

<海視点>

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

俺と一夏が会話していると金髪の女子が話しかけてきた。

 

「うん?」

 

「はい?」

 

俺と一夏がその女子の方を向いて反応する。

 

「なんですのその反応は!」

 

「いや、そっちに向いただけなんだけど...なあ?海」

 

「まあそうだな、話しかけられたから対応する為にそちらの方を向いただけだ。」

 

「これだから男は!代表候補生の私が声をかけてるのですから光栄に思いなさい!」

 

一夏は代表候補生という言葉を聞いて首を傾げていた。

 

「なぁ、代表候補生ってなんだ?」

 

「はぁ?」

 

一夏の言葉を聞いた代表候補生様は訳が分からないといったような表情をしていた。

 

「一夏、そのくらい知っておいてくれよ...代表候補生って言うのはそれぞれの国にいる代表になれる候補の人間の事、つまりエリートって事だよ。」

 

「そうです、私はエリートなんですの!」

 

「ちなみに彼女はセシリア・オルコット、イギリスの代表候補生で専用機は第3世代BT兵器試用機のブルー・ティアーズ、武装についても公開されている情報は全て覚えているがここでは必要ないだろう。」

 

「あら、貴方は私の事をよく知っているのですね、よろしければ試験官を倒した私が直々にISについて教えてあげてもよろしくてよ?」

 

「いや、俺は大丈夫だし、一夏もとりあえず俺が教えることにしている、それに試験官は俺も倒してる。」

 

「そういえば俺も試験官倒したぞ海。」

 

「そりゃすげえな、後で聞かせてくれよ一夏。」

 

そんな会話をしているとチャイムが鳴って休み時間の終わりを教える。

 

「っ!また来ますわ!」

 

オルコットはそう言って自分の席に戻っていった。

 

「できればもう勘弁だな...一夏お前も戻った方がいいぞ。」

 

「分かった、また後でな海。」

 

一夏が席に着くと同時に千冬さんが教室に入って来て教卓に着くと話し始めた。

 

「授業を始める前に、再来週行われるクラス対抗戦に出るクラス代表を決めないといけないな。」

 

クラス代表ね...俺は企業代表で束さんにデータ送らないといけないからパスかな...

 

「クラス代表とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、クラス長だな。一度決まると一年間変更は無いからそのつもりで考えてくれ。」

 

相変わらず首を傾げている一夏の説明も兼ねて言ったのだろう。

千冬さんも少し一夏の方を見ていたし...

 

「自推他推は問わない、意見があるものは手を挙げろ。」

 

千冬さんがそう言うと一人の生徒が

 

「私は織斑君を推薦します!」

 

「私も!」

 

「私は、武藤君がいいと思います!」

 

「私もそう思います!」

 

「なっ!?俺そんなのやりたくないぞ!」

 

「織斑、拒否権は無いぞ大人しくしていろ。」

 

「そんなぁ...」

 

「織斑先生、俺は企業代表なのでクラス代表の仕事と予定が被る可能性を考慮すると厳しいかと思います。」

 

「副代表も決めるから大丈夫だ、そのような状況になった場合には副代表にクラス代表の仕事をやってもらえばいい。」

 

「分かりました。」

 

パスできなかったよ...責任のあることしたくないんだけどなぁ...

 

「織斑と武藤だけか?他に意見が無いなら二人から決めるが...」

 

千冬さんがそう言うとガタッ!と音を立ててオルコットが立ち上がった。

 

「待ってください、納得できませんわ!」

 

「なにかあるのかセシリア・オルコット」

 

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥晒しですわ!私に、そのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

おおう...生で聞くと中々イラっとくるものがあるなこれ...

 

「実力から行けば代表候補生の私がクラス代表になるのは必然。それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!私はこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

IS開発者も第1回モンド・グロッソ優勝者も日本人なのにまさかの猿呼ばわりですよ...しかもそのモンド・グロッソ優勝者は目の前にいるのに...

 

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ!世界一まずい料理で何年覇者だよ!」

 

一夏が売り言葉に買い言葉でオルコットに文句を言ったな...これも非常に良くない...

 

「貴方私の祖国を侮辱しましたねっ!?」

 

「先に侮辱したのはそっちだろ!何言ってんだよっ!」

 

「っ、許しません...決闘を申し込みますっ!」

 

これ以上ヒートアップするのは良くなさそうだ、ここは俺が止めておこう...

 

「一夏、一回落ち着いた方がいい、オルコットさんもだ。」

 

「何だよ海!馬鹿にされっぱなしでいいのかよ!?」

 

「だから一回落ち着けって、これ以上は良くない。オルコットさんも自分が代表候補生って分かってるか?今の発言でイギリスと日本が戦争状態になったっておかしくは無かったんだぞ?それにIS開発者と今俺達の前にいる第1回モンド・クロッゾ優勝者は何人なのか分かってるのか?」

 

俺がこの世界に転生してから散々勉強してきたからよく分かった事で、ほんの些細なことから争いは起こってしまうものだ...特にIS関連だと

 

「…自分の国が侮辱されているのに随分と冷静なのですね、ああ貴方はあの月兎製作所とかいうよく分からない企業の代表でしたものね。」

 

俺の事を散々貶すのは別に何とも思わないけど束さんの夢の一歩である月兎製作所を貶すのはちょっといただけないな...まあトラブルにはしたくないから我慢するが...

 

「会社の目標としてIS本来の目的である宇宙を目指すと言っていましたがISが兵器として使われている昨今そんなことを目指すこと自体愚かとしか言えませんわね、責任者の方もたかが知れていますわ。」

 

こいつ...あの人が...束さんがISが兵器として使われているのをどれだけ悲しんだと思ってるんだ...自分の所為で罪の無い子供を犠牲にしたっていつも泣いてたんだぞ...それを...それを!

 

「ふん、何も言い返せないようですね、そんなものでは...っ!?」

 

俺は夢幻の待機形態である眼鏡を外し、傷のついた顔をオルコットに向けて殺気を込めて睨みつけた。

 

「あの人の夢を馬鹿にすんじゃねぇよ...てめぇらみたいなISを兵器としか思ってないやつらがいるからあの人は悲しむんだ!」

 

子供を使って残酷な研究をしていたやつらを思い出して最大限殺気のこもった低い声が出る...

 

「決闘...するんだろ?好きなだけ相手してやるよ...叩き潰してやる...」

 

「っ!? のっ、望むところですわ!」

 

俺の殺気に怯みながらオルコットが食って掛かってきたが俺はそのまま睨みつける。

 

「…海」

 

俺の事を見ていた一夏は俺の発した殺気に驚いていたようだった。

 

「ふむ、勝負ということで話はまとまったな? なら1週間後、第3アリーナを使用してクラス代表を決める。それでいいな?」

 

俺の殺気に呑まれて重い雰囲気になっていた教室は千冬さんの言葉で何とか静まったのだった...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クーちゃん!クーちゃん!かーくんが私の為にこんなこと言ってくれてる!これもう告白だよね!?そうだよね!?」

 

「落ち着いてください束様いくら何でも想像が行き過ぎです。」

 




オリ主も結局のところまだ学生だと分かる回でした。

後は寮と日常回をやってクラス代表決定戦に入りたいと思います。

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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13話 とにかく会話することにした

いつも見てくれてありがとうございます!大鷹とびです。

感想、評価してくださりありがとうございます。

今回オリ主の同室の原作ヒロインが判明します!

楽しんでいただければ幸いです。


---IS学園1年1組教室

 

<海視点>

 

時間が過ぎて今は放課後、俺は教室に残って一夏に座学を教えていた。

 

「うへぇ...まだこんなにあるのかよ...」

 

「それでもやるしかないだろう?後で俺が勉強した時にまとめたデータがあるからそれも貸してやるよ。」

 

「マジか!ありがとうな海!」

 

「今更だろ?小学生の時からの付き合いだからな。」

 

そんな会話をしたところで二人で教室を出ようとすると山田先生と千冬さんがやって来た。

 

「ああ、織斑君、武藤君。まだここにいたんですね、丁度良かったです。」

 

「何かあったんですか?」

 

「はい、2人の寮の部屋割りが決まりましたので、それについての連絡と鍵の受け渡しです。」

 

「あれ?俺は1週間は自宅通学の筈じゃ?」

 

「その点は保護を優先した。なのでお前も海も今日から寮生活だ。織斑、着替えなどの必需品は私が選んでおいた、既に部屋に搬入してある。」

 

「俺の荷物はどうなってますか?」

 

「武藤の荷物については親御さんから送られていて同じく部屋に搬入してある。段ボール3つ分だったぞ。」

 

「分かりました。」

 

俺が返事をすると山田先生が説明を再開した。

 

「それで寮の部屋割りなのですが、残念な事に調整が上手くいかず2人を相部屋にすることが出来ませんでした...なので2人ともそれぞれ女の子との相部屋になります...」

 

「それって色々と大丈夫なんですか?」

 

「そこについては一夏、海、お前達を信用するしかなくなってしまった。お前達ならそういった問題は起こさないと思っている。」

 

苗字ではなく下の名前で呼んでいるので信用しているといったところだろう。

 

「分かったよ、千冬姉」

 

「流石に大丈夫ですよ千冬さん」

 

「すまないな、助かる」

 

ここでの名前呼びはずるいですよ千冬さん...

 

その後山田先生から寮の規則等を説明されて俺達は学生寮に向かった。

 

一夏の部屋の方で何やら凄い音が聞こえたが気にしないでおこう...

 

俺は自分の部屋である1035室の前に立ちドアをノックした。

 

———————————————————————

 

---IS学園 学生寮

 

<???視点>

 

私がパソコンで作業していると急にドアがノックされた、同室の人かな...

 

「…空いてる...どうぞ」

 

「失礼します、同室になった1年1組の武藤海です。よろしく。」

 

「1年4組の更識簪...」

 

ドアが開いた先にいたのは2人の男性操縦者の内の1人だった。

 

「えっと...更識さん?ベッドはどっちを使ってる?」

 

「窓側...」

 

私が作業に戻ると彼は自分の荷物の整理を始めたみたいだった。気にせずに作業を進めていたけど、ふと彼の方を見ると私が好きなアニメの一つの『機動剣士ザンガン』のDVDが全て揃っていた。

 

「それ...『機動剣士ザンガン』のDVD?」

 

「ん?ああそうだよ、元々特撮とかロボットアニメとか好きでね。」

 

もしかしたら彼とは趣味が合うかもしれない。私は少し聞いてみることにした。

 

「仮面ライダーとかも好き...?」

 

「かなり好きだね、一番好きなのは仮面ライダーアギトに出てくるG3-Xだ。もしかして更識さんも特撮とか好きなの?」

 

「うん、後【更識】って呼ばないで、そう呼ばれるの嫌いだから【簪】でいい」

 

「分かった、じゃあ俺の事も【海】でいいよ。簪さんはどのライダーが好きなんだ?」

 

「私は仮面ライダーWが一番好き。」

 

「あーWもかなり名作だよなぁ...」

 

異性で自分と趣味の合う人間とは初めて会った気がした、私の場合は避けていただけなのかもしれないけど。

 

その後、彼の荷ほどきをアニメや特撮の話をしながら手伝いシャワー等のルールを決めた。

 

もう1人の方がルームメイトじゃなくて本当によかった...【打鉄弐式】の件でうまく接することができなかったと思う...

 

荷ほどきと部屋の整理はそんなに時間が掛からずに終わり、夕食に向かった。

 

食堂では更にアニメの会話に花が咲いて久しぶりに楽しく食事をすることが出来たと思う。

 

部屋に戻ってからも少し話して消灯時間間際になってから、彼に感謝して床についた。

久しぶりに楽しいと思える時間だった。

 

———————————————————————

 

<海視点>

 

「んんっ...んーっ...」

 

今は朝の5時で俺は起きると洗面所で顔を洗い歯を磨いて完全に目を覚ました。

 

「簪さんはまだ寝てるみたいだな...」

 

俺は同居人の簪さんの方をちらりと見て寝ていることを確認してからジャージを洗面所に持って行って着替えた。

 

「それにしてもまさかなぁ...」

 

ここの扉を開けた時は本当にまさかと思った...原作を知っているからこそとても驚いたし、昨日は動揺を隠すのに必死だった...それに試験の時に牽制しておいた生徒会長様が余計に絡んでくる可能性が大幅に増えた訳だ...

 

「どうすっかねぇ...まあとりあえず日課は済ますか...」

 

俺は一人でぶつぶつと喋りながら寝間着を片付けて部屋を出た。

 

 

 

俺は一人で外に出てまずは最適なランニングコースを探すために適当に周りを走ることにした。

 

「寮の周りを一周だと大分足りないな...出来れば一周で15キロぐらいのコースを探したいところだけど...」

 

そうして色々と探索しながら走り続けて理想のコースを見つけて合計20キロ程走った所でランニングを終了した。

 

「こんなもんか...」

 

俺は少し休憩してから学園にある射撃場に向かった、夢幻の特性上俺自身があらゆる武器を使いこなせないと性能を活かすことが出来ないので重火器だけでなく近接武器も様々なものを一通り訓練している。

 

「ここには...お馴染みのアサルトライフルからハンドガン、ショットガン、スナイパー...うお!グレランまであるのか!いくら何でもおかしくないか?」

 

しかもアサルトライフルだけでぱっと見5種類以上はあった...まああるものは使わせてもらうが...

 

「とりあえず一通り撃って確かめてみよう。」

 

一時間かけてここにある銃のほとんどを試し打ちしてみたが、手入れは行き届いているし精度も良い...これからも訓練に使わせてもらうことにしよう。

 

「こりゃいいな、訓練するにはうってつけの環境だ。」

 

俺は休憩も兼ねてゆっくり歩きながら最後に近接武器の訓練をする為に学園の剣道場に向かった。

 

 

 

俺が剣道場につくとそこには先客がいた。

 

「織斑先生?」

 

「ん?ああ武藤か、どうしたこんな時間に?」

 

「いえ俺も織斑先生と同じように朝の鍛錬ですよ、ランニングと射撃が終わったので最後に近接です。」

 

「そういえばお前は篠ノ之道場に入ってからは鍛錬を欠かしたことは無かったな。今は射撃まで追加しているのか...」

 

「俺のISの特性上全ての武器を使いこなせないと宝の持ち腐れですからね。やれることは全てやりますよ。」

 

「なら久しぶりに私と打ち合わないか?私とまともに打ち合えるのも束かお前ぐらいのものだしお前もそうだろう?」

 

「まあそれもそうですね...近接だけだとまだまだ千冬さんには勝てませんしいい経験になりそうです。」

 

「では、少し準備運動したら一試合するとしよう。」

 

「分かりました、よろしくお願いします。」

 

俺は軽く準備運動をしてから千冬さんと久しぶりに打ち合ったが近接オンリーではとても千冬さんに敵わず、30分粘ったが結局負けてしまった。

 

———————————————————————

 

---IS学園 学生寮

 

朝の日課を終えて俺は部屋に戻ってくると簪さんが起きて準備をしていた。

 

「あ、簪さんおはよう。」

 

「おはよう...海、何処に行ってたの?」

 

「ああ、ここに入学する前からの日課だよ、ランニングと射撃、近接武器の訓練だね。」

 

「な、何時からやってたの?」

 

「朝の5時からだけどそれがどうかしたの?」

 

「今、8時だからほぼ3時間もやってたの!?」

 

「そうだよ?何か変かな?」

 

「へ、変じゃないけど...凄いね...」

 

「俺の専用機はあらゆる武器を使いこなせないと性能が引き出せないからね、それにこの専用機を託してくれた人の期待に応えたいんだ。」

 

「期待...」

 

「まあこれは俺の考えというかやりたいことだからまあ気にしなくていいよ?」

 

「分かった。でも参考になったよ?」

 

「そうか、ならよかった。そうだ簪さん、せっかくだから一緒にご飯行かないか?シャワーを浴びてからになるから少し待たせてしまうけど...」

 

「うん...大丈夫、待つから行こう...」

 

「よかった!じゃあさっと済ませてくるから待ってて!」

 

俺は簪さんとご飯に行く約束をして汗を流すためにシャワーを浴びに言った。

 

 

俺は直ぐにシャワーを浴びて制服に着替えると簪さんと食堂に向かった。

 

「簪さんは朝少ないんだね?」

 

「海は朝からカレーなんて食べるんだね...」

 

それぞれ注文した朝食を持って席について俺と簪さんは向かい合って話していた。

 

「かんちゃん、むっきー、おはよー」

 

俺と簪さんが会話をしていると制服の袖をダボダボに余らせた女子が簪の隣に座った。

 

「本音...」

 

「えっと、同じクラスの布仏本音(のほとけほんね)さんだっけ?」

 

「そうだよむっきー」

 

「仮面ライダーのとある人物みたいなあだ名だな、まあいいやよろしくね布仏さん。」

 

「この学校に私のお姉ちゃんもいるから本音でいいよー」

 

「分かった、本音さん。改めてよろしく!」

 

「よろしくねー」

 

「所で簪さんは本音さんと知り合いみたいだけどどうゆう関係?」

 

「私はねー、かんちゃんの専属メイドなんだよー」

 

「ほえー、簪さんってお嬢様だったのか...ん?そういえば簪さんの苗字って『更識』だから...あぁ!あの更識家か!」

 

「っ...!」

 

「あれー?むっきー知ってるの?」

 

「まあ、多少ね、この学校に入学する前に簪さんの姉であろう生徒会長に話しかけられたし...」

 

「そうなんだー」

 

「でも俺の後ろつけてきてたし、俺の専用機と月兎製作所の事を探ろうとしてたみたいだから牽制してからそれっきりかな。」

 

「ふーん、むっきーは悪い人じゃないのにねー」

 

「あれ?簪さんどうしたの?顔色が悪いけど...」

 

「え!?あ...うん大丈夫...何でもないから...」

 

「そう?ならいいんだけど、何かあったらいつでも力になるよ。」

 

「うん...ありがとう...」

 

簪さんにとって姉の話は自分の劣等感を引き起こしてしまうんだよな...なんとか力になってあげたいけど...

 

「まあとりあえず今日も頑張りますか、そろそろ時間になるよ。」

 

「あー、待ってよむっきー」

 

俺は時間を見て1時間目が近い事に気付いて直ぐにご飯を食べ終えて教室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は...私はお姉ちゃんに追いつかないといけない...だから誰にも頼らずに打鉄弐式を完成させないと...」

 




オリ主と同室の原作ヒロインは更識 簪でした。
まだオリ主とくっつくかどうかは決めていませんが...

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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14話 それぞれの確認をすることにした

いつも見てくれてありがとうございます!大鷹とびです。

感想、評価してくださりありがとうございます。

今回は一夏の専用機についてと道場での一幕です。

楽しんでいただければ幸いです。


---IS学園1年1組教室

 

<海視点>

 

色々とあった昨日に引き続き今日も授業を受けながら一夏にISの事を教えたり何かと突っかかってくるオルコットさんをあしらいながら過ごしていた。

 

「少しは理解できたか?一夏」

 

「昨日よりはな、本当に助かるよ海」

 

「飯代貰ってるしな、報酬分きっちり助けてやるよ。」

 

俺が授業の合間の時間を利用して一夏に勉強を教えていると箒がこちらに近づいてきた。

 

「どうやら海にみっちり叩き込まれているようだな一夏」

 

「箒か、そうだな、でも海の教え方は分かりやすくて助かってるよ。ところで箒は何か用か?」

 

「ああ、今日の放課後に剣道場で昨日言っていた海との勝負をしようと思ってな。」

 

「その話か、分かった、じゃあ今日の放課後に三人で剣道場に行くか。」

 

「じゃあ、また放課後にな。」

 

「おう、ありがとうな箒」

 

俺がお礼を言うと箒は頷いてから自分の席に戻っていった。

 

箒が席に着くと同時にチャイムが鳴り、教室に千冬さんが入ってくる。出席簿アタックは食らいたくないので俺も一夏も自分の席に戻っている。

 

「授業を始める前に織斑、1つお前に知らせがある。お前の使用するISなんだが、学園で使える予備機が無いため準備に時間が掛かる。」

 

「準備?予備機?どう言うことなんだ千冬ね」

 

バシンッ!

 

「織斑先生と呼べと何度言ったら分かるんだ。お前には学園から専用機が用意される事になっている。だからそれが来るまで待て。」

 

一夏は千冬さんの説明を聞いてもよく分かっていないようで首を傾げているが、専用機を持つことがどれだけ凄い事なのか分かっているクラスの女子たちが騒ぎ出す。

 

「織斑君専用機もらえるの!?」

 

「ま、まだ1年生で代表候補生でもないのに!?」

 

「いいなぁ~、私も専用機欲しいなぁ...」

 

「えっと...どうゆうことなんだ?」

 

「お前なぁ...いいか、今全世界でISの中心であるコアは467個しかなく、ブラックボックス化されてて解析が出来ず量産が出来ないんだ。だからその数少ないコアを使って研究やら開発をしている。だがそれぞれの国で決められている厳しい条件をクリアした優秀な人物には国の支援で専用機が与えられるんだ。参考書にもしっかり書いてあるからちゃんと確認しておけよな。」

 

「は~...そうなのか...」

 

「絶対に理解してないだろ...今さっき言った厳しい条件ってのが無しにお前の専用機が用意されるって事だぞ?男性操縦者でデータの収集が目的とはいえもっと事の大きさを認識しといた方がいい。」

 

一夏はとりあえずで頷いたようだがまだ疑問があるようだ。

 

「あれ?それなら海にも専用機が用意されるんじゃないのか?海だって男性操縦者だろ?」

 

「俺は月兎製作所の企業代表だから月兎製作所で作られた専用機をもう持ってるんだ。」

 

「えっ!?そうだったのか...」

 

「自己紹介の時に企業代表だって言ったじゃねえか...」

 

俺は昨日自分が企業代表であるとはっきり口にしている筈だがどうやら一夏は俺がIS学園に入学したという事実を飲み込むのに必死で聞いてなかったみたいだな。

 

「武藤君専用機もう持ってたんだ!」

 

「企業代表って言ってたけど専用機まで持ってるとは思わなかった!」

 

いや他のみんなも俺が専用機持ち思ってなかったのかよ...

 

「あら、これで少しはまともな試合になりそうですわね、専用機と量産機では性能が違いますもの。」

 

「はいはい、オルコットさんはお疲れ様。」

 

「なんですのその態度!?やっぱりこれだから男は!」

 

また適当にオルコットさんをあしらっていると千冬さんがパンパンと手を叩いた。

 

「話は終わりだ、授業を始めるぞ!山田先生、号令を」

 

「あ、はいっ!」

 

千冬さんの言葉で教室は静かになり、授業に入っていったのだった。

 

———————————————————————

 

---IS学園剣道場

 

思ったより早く時間が過ぎて今は放課後になっている。俺は一夏と箒と一緒に剣道場に来ていた。

 

「まずは一夏からだな一度手合わせして今どれくらいの実力があるのか見せてもらう。」

 

「箒...俺、中学生では3年間帰宅部だったんだけど...」

 

「いいから早く防具を付けろ。」

 

「わ、分かったよ...」

 

一夏が防具を付け終わると二人とも位置についた。

 

「海、開始の合図を頼む。」

 

「分かった...始めっ!」

 

そうして箒と一夏の手合わせが始まったが10分程で一夏はあっさりと負けてしまった。

 

「どうしてここまで弱くなっている!?」

 

「だから俺、中学生では3年間帰宅部だったって言ったじゃないか...」

 

「これではIS以前の問題だ!鍛え直すぞ!これから毎日、放課後三時間、私が稽古を付けてやる!」

 

一夏君お疲れ様です。まあ実際最初は箒に剣道を教えてもらった方が一夏は身体が動くようになるだろう。

 

「次は海だな、まさかとは思うがお前も一夏の様になっていないよな?」

 

「それはやってみてからのお楽しみって事で」

 

「それもそうだな、一夏、審判を頼む。」

 

「分かった、でも海防具はいいのか?」

 

「ん?ああ、俺は防具が無い方がやりやすいんだ、剣道じゃなくて剣術だしな。俺と千冬さんの鍛錬をみてた箒なら分かるだろ?」

 

「ああ、もちろんだ、全力で行かせてもらう!」

 

俺と箒は向かい合ってそれぞれ構える、箒は正面に真っ直ぐ構えて俺は右手に竹刀を持ち自分の前で斜めに構えた。

 

「始めっ!」

 

「やあぁぁぁぁっ!」

 

中々の気迫と同時に箒が俺の頭を狙って竹刀を振り下ろしてきた。かなりの速度だし一夏もいつのまにか集まっていたギャラリーも声をあげているのが聞こえる。

 

「ふっ!」

 

俺は冷静に右手に持っている竹刀を振り上げて箒の竹刀をはじくとその勢いのまま箒との距離をさらに詰めて身体を箒にぶつける。剣道と違い剣術は実戦を想定しているので実は剣以外の攻撃もある。

 

「くっ!?体勢が!?」

 

「狙いも剣筋も単純すぎるぞ!」

 

俺は体勢の崩れた箒の隙を見逃さずに胴を横から最小限の動きで切りつけそのまま後ろに回り込み振り向こうとした箒に竹刀を突きつけた。

 

「お前なら分かるだろ箒、勝負ありだ。」

 

「ああ、完敗だ...道場にいた時よりもずっと強くなっているな。」

 

箒を完封した俺に一夏とギャラリーは驚いているようだ。そんな大したことはしてないけどな...それにしても箒のやつ迷ってるな?

 

「箒、何があったかは聞かないけど困ってるなら人に頼れよ?」

 

「っ...!ああ...分かった...」

 

これで少しは解決すると良いんだけどな...まあそれはそれとして...

 

「さてさて一夏、お前は一週間後のクラス代表を決める試合に向けてISの練習をしないといけないところだが、お前の専用機は届くのが遅くてISの操縦訓練は出来そうにない、それなら基礎を固めるしかない訳だ。」

 

「あ、ああ...」

 

「だから身体面は箒に言われた通り放課後3時間みっちりしごいてもらえ、知識面は俺が引き続き教えてやる。しっかりやらないと恥かくことになるぞ?」

 

「お、おう!やってやるよ!」

 

「じゃあさっそく今日から勉強な、後で資料送っといてやるから今夜熟読しておいてくれ。」

 

「マジかよ...」

 

「俺は部屋に戻るわ、2人は同じ部屋なんだろ?」

 

「そうだな。」

 

「じゃあもう少し箒に見てもらうといい、箒頼めるか?」

 

「大丈夫だ、海はもういいのか?」

 

「俺はやることがあるんでな、それじゃお先に。」

 

一夏と箒を残して俺は剣道場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「束さんに箒は元気だったって連絡しておくか...まああの人の事だからもう見てるのかもしれないけど...」

 

 

「げげっ...ほぼばれてる...」




剣道場での話はほとんど原作と変わりませんがオリ主は箒の抱えているものについて感づいているのでまあ単純に相談相手になろうとしています。
また、一夏に知識面でのサポートをしているので原作よりも一夏は多少頭が良くなる予定です。

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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15話 圧倒することにした

いつも見てくれてありがとうございます!大鷹とびです。

感想、評価してくださりありがとうございます。

いよいよクラス代表決定戦に入ります!
そして小説のストックががが...

楽しんでいただければ幸いです。



---IS学園第3アリーナ ピット内

 

初日のクラス代表決めでの一悶着からあっという間に1週間が過ぎてクラス代表決定戦当日になった。俺と一夏はピットの中でISスーツを着て試合に向けて色々と準備をしていた。

 

「多少はマシになったか一夏?」

 

「なんとかな、体力に関しては箒と一緒に放課後にトレーニングしてたし、知識面は海が分かりやすく教えてくれたからな。」

 

「あれだけ教えてやったんだからちゃんと勝てよ?」

 

「おう、もちろんだぜ!」

 

一夏も気合十分といったところか。

 

「あと、今更だけど、しれっとここにいるな箒」

 

「気にするな海、なるべく近くで試合を見たかっただけだ。」

 

「関係者以外ピットに入っちゃだめだと思うぞ?」

 

「...気にするな。」

 

「いいのかよそれで...」

 

あとで千冬さんに出席簿アタックされても知らないぞ?それにしても一夏の専用機全然来ないな。

 

「おっ、織斑君!来ました!織斑君の専用機が!」

 

そう思ってたら丁度山田先生が入ってきた。山田先生に続いて千冬さんも入ってくる。

 

「随分と遅かったな、一夏の専用機。」

 

「そうだな。ちょっと不安だ...」

 

「織斑、直ぐに準備しろ。アリーナの使用時間は限られている。本番でモノにしろ。」

 

いやいやいや、いくら何でも危ないでしょうよ千冬さん、銃のセーフティの解除方法も知らない人間にいきなり銃渡して的の真ん中を撃てって言ってるようなもんだぞ?

 

俺の心配をよそにピット搬入口のハッチが開き中から灰色のISが現れた。

 

「これが俺の専用機...」

 

「はい!織斑君の専用機『白式(びゃくしき)』です!」

 

「時間が無い。直ぐに装着しろ。初期化(フォーマット)最適化処理(フィッティング)は最低でも20分はかかるぞ。」

 

「織斑先生、では俺が最初ですね?」

 

「ああ、織斑がこれだからな、悪いが頼むぞ武藤。」

 

「分かりました、何だったらしっかり20分稼いできますよ、一夏もモニターは見えるだろうからどうせなら参考にしてくれ。」

 

「お、おう。」

 

「行こうか...夢幻...」

 

俺がそうつぶやくと一瞬で俺は肩部付近に特徴的な箱型の非固定浮遊部位(アンロックユニット)が浮いているISを纏った。

 

「それが海の専用機か、なんだか変わってるな...」

 

「まあこれはちょっと特殊な機体だからな、腕の装甲もその特殊性から無い方が良いんだ。」

 

俺は一夏に軽く夢幻の事を説明しながらカタパルトへと足を乗せた。

 

「海!」

 

射出の準備が整うと一夏から声をかけられた。

 

「絶対勝てよ!」

 

「まかせとけって!」

 

視界に全ての準備が整った事を知らせるウィンドウが映り出撃待機状態になった。

 

「武藤海!夢幻!出撃する!」

 

俺は一夏の期待を背にアリーナへと飛翔した。

 

———————————————————————

 

---IS学園第3アリーナ

 

1年1組の専用機持ち同士がクラス代表を賭けて戦うという噂はあっという間に広がり、アリーナの観客席には多くの生徒の姿があった。2年生3年生の姿もちらほらと確認できる。

アリーナは上空制限とシールドバリアによって守られており、彼女たちに流れ弾などが飛ぶことはない。ふと観客席の端の方を見ると簪さんと本音さんの姿も見えた。

 

「こりゃ少しはいい所見せないとな。」

 

アリーナの上空ではIS【ブルー・ティアーズ】を展開したオルコットさんが俺の到着を待っていたようだ。

 

「恐れずに来たこと、褒めて差し上げますわ、武藤さん」

 

「そりゃどうも」

 

オルコットさんが開放回線(オープン・チャネル)を使って話しかけてきたのでそれに答える。

 

「それが貴方の専用機なのですか?随分貧相な武装と装甲ですのね。」

 

「ISを見てどんな機体かを正確に見抜けないような代表候補生様に言われる筋合いはないな。」

 

「っ!減らず口を...まあいいですわ。それより、最後のチャンスを差し上げましょう。」

 

「ん?チャンス?」

 

オルコットさんは狙撃銃【スターライトMK-Ⅲ】をこちらに向けつつ俺に問いてきた。試合開始のブザーはもう鳴っている。

 

「不様に敗北するのが嫌でしたら、今ここで謝ることですわ。代表候補生と貴方とではISの稼働時間も操縦技術も差がありますから。私は既に300時間は動かしていますもの。」

 

「まあそれはそうだな...確かに差がありすぎる...」

 

高々300時間程度で舐められたものだ...

 

「300時間のオルコットさんと24000時間の俺じゃあ...な」

 

俺は言いながら大型ナイフとピストルを展開して構える。

 

「そんな見え透いた嘘を!ではこれでお別れですわね!」

 

オルコットさんは俺に向かってスターライトMK-Ⅲを撃ってきた。俺は即座に思考のスイッチを切り替えて頭を狙った完璧な狙撃を最小限の動きで躱す。

 

「正確すぎる射撃ってのは読みやすいし躱しやすい。」

 

俺はその場から一歩も動かずにピストルを1発撃った。

 

「そんなもの当たるとでも?」

 

当たり前のようにひらりと躱される。

 

「お前がやったのは今のと同じことだ、だから...」

 

今度はピストルを2発撃つ、オルコットさんの動きを読んだ上でだ。

 

「なっ!?」

 

オルコットさんは俺の読み通りに最初の1発で誘導され次の1発に被弾した。このピストルではシールドエネルギーは10も減らせないがまあ精神的動揺は誘えただろう。

 

「偶々ですわ!これならどうです!いきなさい! ティアーズ!」

 

オルコットさんがBT兵器を展開したが正直この程度なら脅威にすらならない。

 

「あらゆる角度からの攻撃は避けられないでしょう!?」

 

「いや、何のためにISにハイパーセンサーが付いていると思っているんだ?これを最大限生かせないとIS操縦者とは言えないだろ。今は俺の左後ろから狙ってるな。」

 

俺は真上に飛翔してBT兵器の攻撃を躱した。

 

「っ!?そんな!?でも偶々ですわ!」

 

「さて、おしゃべりとアドバイスは終わりだ、後はデータ採りの時間を稼がせてもらう。」

 

俺はブルー・ティアーズの性能データを全て取り終わるまでの時間と一夏の準備が終わるまでの時間を稼ぐためにひたすら牽制と逃げに徹することにした。

 

「くっ...何故当たりませんの!?」

 

「正確すぎる射撃ってのは読みやすいし躱しやすいって言ったろ?数が増えても同じことだ。」

 

俺はハイパーセンサーから読み取れる情報からBT兵器と狙撃を全て予測し躱しながら視界の隅にあるタイマーと解析ゲージを確認する。

 

「一夏の準備もブルー・ティアーズの解析も終わったか...」

 

「解析!?何のことですの?」

 

「この夢幻の特殊兵装を使う為の準備だ...『夢現』起動。」

 

肩部付近の非固定浮遊部位(アンロックユニット)が稼働し二つの箱からモーターのような音が鳴り始める。

 

「させませんわ!」

 

「遅いな、もう完成している。」

 

オルコットさんがレーザーライフルを俺に向けて撃ってきたが夢現が開いた瞬間に何かによってレーザーがかき消された。

 

「なっ...それはBT兵器!?なぜイギリス以外の機体で!?」

 

俺の周りにはオルコットの物よりも小型でブレードが付いたBT兵器(一番近いのはダブルオークアンタのソードビットだがそれよりも更に小型)が6機浮いている。

 

「俺のISの特殊兵装『夢現』はいわば小型の製造工場だ...戦った相手のデータを収集、解析し同様の武器や効果的な装備を瞬時に製造、使用することが出来る。」

 

「なっ!?そんな装備が存在しているなんて聞いたことありませんわ!?」

 

「今俺がこうして実際に使っているんだから信じるしかないだろう?それにもう十分に時間は稼いだ...ここからは...圧倒させてもらう!」

 

俺はダガ―ビット(今命名)を操作しながら右手にナイフ、左手にショットガンを展開しつつオルコットさんに接近する。

 

「BT兵器を操作しながら自分も動く!?私でもまだ出来ていないのに!?」

 

「これくらいは普通に出来ないと国家代表なんて夢のまた夢だ。」

 

「くっ...でもまだですわ!ティアーズ!」

 

「いや、もう終わりだ。」

 

「なっ!?きゃあ!?」

 

俺はオルコットさんがBT兵器を動かそうとした瞬間にダガ―ビットで切り裂き全て機能停止にした、もちろん隠し玉としているミサイルビットの存在も解析と事前調査で分かっているのでしっかり攻撃して機能停止にしている。

 

「これで降参してもらえるか?」

 

「降参?するわけがありませんわ!インターセプター!」

 

オルコットさんは既にかなりの距離まで接近している俺を迎撃するために近接武器をコールしてきた。

 

「そうか...じゃあこれでチェックメイトだ!」

 

俺は瞬時加速を使い一気にオルコットさんに接近、右手のナイフですれ違いざまに切り付けてからPICで勢いを殺しつつスラスター操作で即座に反転し至近距離でショットガンを三連射、あっという間にブルー・ティアーズのSEを0にした。

 

『ブルー・ティアーズSE残量0!試合終了!勝者、武藤 海!』

 

アナウンスが流れた瞬間に観客席が大いに沸いた、まあ急に出てきた男性操縦者が代表候補生を無傷で圧倒したんだからそりゃそうか...

 

「ふう...やっぱBT兵器の制御は少し疲れるな...甘いものが食べたい...」

 

俺は地面に降りて少し愚痴ってからオルコットさんの元に近づいた。

 

「オルコットさん大丈夫か?」

 

「ええ...大丈夫ですわ...とても強いのですね...海さんは...」

 

「俺は強くなんかないさ...自分の持った力の責任すら負えなかったろくでなしだよ...そんなことより立てないようなら手を貸そうか?俺も少しやり過ぎたし...」

 

「ではお言葉に甘えさせてもらいますわ。それと私の事はセシリアと呼んでくださいまし。」

 

「ああ、分かったよセシリアさん。」

 

俺が手を差し出すとセシリアさんはしっかりと俺の手を取って立ち上がったので、俺はそのままセシリアさんと一緒にピットに戻った。

 

「俺は...責任を取らないといけないからな...」

 

「何かおっしゃいましたか?海さん?」

 

「いや...なんでもないよセシリアさん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---秘密ラボ内

 

「いやぁ、さっすがかーくんだね!既に稼働率65%も出てるよ!普通だったら10%も行かないからねー、これならコア人格と対話できるのも直ぐかな?まあコアNo.099(あの子)はかーくんとの相性最高だったしかーくん以外の人を絶対に相棒と認めたくないって言ってたからこれも必然かもね!」

 

「とても嬉しそうですね束様。」

 

「そりゃそうだよクーちゃん、99っていう縁起の悪い数字で落ち込んでたコアNo.099(あの子)はかーくんのおかげで救われたんだもの!」




と言う訳でオリ主VSセシリアでした。
戦闘描写が得意なわけではないので上手く書けているか分かりませんが
楽しんでいただけたなら幸いです。

余談になりますが本小説の書き溜めがほぼ終わってしまったので、もしかしたら投稿ペースが更に落ちるかもしれません。ご了承ください。

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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16話 熱い戦いを楽しむことにした

いつも見てくれてありがとうございます!大鷹とびです。

感想、評価してくださりありがとうございます。

これが最後のストックです...

楽しんでいただければ幸いです。


---IS学園第3アリーナ ピット内

 

セシリアさんを反対側のピットに送った後、自分のピットに戻ると初期化(フォーマット)最適化処理(フィッティング)が完了した白式を纏った一夏がなにやらキラキラした目で俺を見ながら近づいてきた。

 

「海!凄いなお前のIS!それに海自身もあんなにISの操縦が上手いと思わなかったぜ!」

 

「まあ俺のISは長時間の戦闘と1機であらゆる戦況に対応出来るように作られてるからな、操縦に関してはまあ...慣れだ。」

 

「成る程なぁ...やっぱ海はすげぇよ!でも俺も絶対追いついて見せるからな!」

 

「おーう気長に待ってるわー」

 

一夏と他愛もない会話をしていると向こうの準備が整った事を知らせるアナウンスが流れた。俺も直ぐに修理が出来るように極力重要な部分は避けて攻撃していたのできちんと直ったようだ。

 

「次は一夏の番だぞー、頑張れよー」

 

「おう!勝ってくるぜ!海!」

 

一夏は俺に向かってグッとサムズアップした後、カタパルトに乗って飛び出して行った。まあぶっちゃけ勝敗は見えてるけど一夏には頑張って欲しいもんだ。

 

「箒、どうしたんだ?ぼーっとして」

 

「ん?ああ...海があんなにISの操縦が出来るなんて知らなくてな...いつの間に練習したんだ?」

 

「あー、それについては企業秘密で頼むわ箒、別にやましい事は何一つしてないから安心してくれ。今は一夏の試合を見ようぜ?」

 

「そうか...分かった、そうすることにしよう。」

 

そうして俺は箒とピット内のモニターで一夏対セシリアさんの試合を見ることに集中することにした。

 

 

一夏対セシリアさんの試合はまあ俺の予想通り一夏の惨敗だった。原作ではセシリアさんが油断

していた上に初期化(フォーマット)最適化処理(フィッティング)が済んでいない状態で戦って、途中で一次移行(ファースト・シフト)が間に合った

からそこそこの試合になっていたが、俺が最初に戦ったことによってセシリアさんの油断は消えて

かつ土壇場での一次移行(ファースト・シフト)によるSE回復も無かったことから遠距離から狙撃とBT兵器による攻撃で蹂躙されて終わった。

 

「何もできなかった...ちくしょう...」

 

ピットに戻って来た一夏は分かりやすくへこんでいた。

 

「まあ最初はそんなもんだ、むしろブレードしかない機体で遠距離主体の代表候補生に5分持ったんだから誇ってもいいぐらいだぞ?」

 

「でもよぉ...」

 

「うじうじすんなって、そこは練習してけばいいんだからな、それよりも次は俺と試合だぞ?いいのかそんなんで?」

 

「そうだな!よし!海!お前には絶対勝ってやる!」

 

「その調子だ、まあ勝たせはしないけどな。」

 

俺は一夏に勝ちを譲るつもりはない意志を伝えてからもう一つのピットに移動した。

 

 

俺が移動してから待機していると一夏の補給が終わった事を知らせるアナウンスが流れた。俺も夢幻を纏って出撃の準備をする。

 

「さて、今の一夏がどれほどが見せてもらうとしますかねー、武藤海、夢幻、出撃する!」

 

俺は調子よくバレルロールをしながらピットに飛び出すとほぼ同時に一夏もピットから出てきた。

 

「海!思いっきり行かせてもらうぜ!」

 

どうやら一夏はやる気満々みたいだから今回は俺も男同士の真っ向勝負に興じるとしますかね。

 

「分かった、じゃあ俺も真っ向勝負で行かせてもらう!」

 

俺は言い切ると同時に夢幻の大型ナイフを両手に展開して構える、向こうも武器を展開して構えている。

 

『ビーッ』

 

試合開始のブザーと同時に俺は一夏に向かって突っ込んだ、一夏も予想通り俺に向かって真っすぐ突っ込んできている。

 

「うおぉぉぉ!」

 

一夏は勢いそのままに『零落白夜(れいらくびゃくや)』を発動したのだろう、刀身からエネルギーの刃が発生している、実際に見るとビームサーベルそのものだなあれ...

 

「千冬姉と同じ力で俺はお前に勝つぞ!海!」

 

真っ直ぐ俺の脳天に向かってブレードを振り下ろしてくる一夏だが甘いと言わざるを得ない。

 

「そんなんじゃまだまだ当たってやれないな!」

 

俺は一夏の懐に潜るように自ら距離を詰めてからナイフを交差させて零落白夜の発生していない部分を受け止めた。

 

「なっ!?」

 

「いくら一撃必殺の武器を持っていたとしても当てる技術が無ければ宝の持ち腐れだぞ一夏!」

 

受け止めた刀身をナイフを振り上げながら弾き返して、そのまま当身をして一夏の体勢を崩す。

 

「圧倒させてもらうぞ!」

 

体勢を崩した一夏に振り上げたナイフを振り下ろしてX型に切り付けてSEを削った。とりあえず先手は俺が取ることが出来た。

 

「くっ...!零落白夜の消費分も含めてもう3割も減ったのか...!」

 

「まだまだいくぞ!」

 

一夏に零落白夜を使わせない様に二本のナイフでラッシュを仕掛ける、俺のナイフは一撃の威力とリーチでは一夏に劣っているが、一度至近距離に持ち込んでしまえば手数で圧倒出来る。

 

「くそっ!攻撃出来ないっ!」

 

「守ってばかりでは俺には勝てないぞ一夏!」

 

俺がナイフでの連撃を続けていると一夏は体勢を整えようとしているのか俺から離れようとしているのが丸見えだ。

 

「一度体勢を整えないと!って言っても海が逃がしてくれる訳ないか!」

 

「いや、むしろ手伝ってやるよ!」

 

俺は一夏が後ろに下がろうとしているのに合わせて思い切り回し蹴りを食らわせた。クリーンヒットしたようで一夏は面白いように吹っ飛んでアリーナのシールドに激突して大きくSEを減らしたようだ。

 

「降参するか?」

 

「まだまだぁ!」

 

直ぐに立ちあがり俺に向かって突っ込んでくる一夏を見て俺は勝ちを確信した。身体の軸をずらしながら躱しつつ攻撃して決めることにしよう。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

「っ!?」

 

俺は勝ちを確信して少し油断したのを後悔した...一夏が俺の想定よりずっと早い速度で迫って来ていたからだ。まさかこんなに早い段階で瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使ってくるとは思わなかった。

 

「食らえっ!」

 

「させるかっ!」

 

俺はナイフで一夏の零落白夜を受け止めた、エネルギーを無効化できるとはいえ刃の部分が実体のナイフを貫通することは無いようだ。それにしても危なかった、俺の予想よりもずっと一夏は適応能力が高いみたいだ。

 

「もう千冬姉に守られてばかりいるのはやめたんだ!」

 

成る程...右も左も分からない状態でも気合と自分も強くなりたいという気持ちで瞬時加速を成功させた訳だ...流石は主人公...

 

「だが...譲れないものは俺にもあるんでね!!」

 

鍔迫り合いをしている状態からナイフを量子格納して両手を自由にする、もちろん急にナイフが消えたから一夏はバランスを崩してきたがそれでも無理矢理俺に向かって零落白夜を振り下ろそうとしてきた。

 

「そこだっ!」

 

「なっ!?おわぁ!?」

 

一夏の腕を掴んでから腕を捻り上げると同時に足払いをかけて一夏の体勢を完全に崩す、そして...

 

「おりゃあぁぁぁ!」

 

ISのパワーを使って浮いた一夏を思いっきり地面に投げ飛ばした。ドンと大きな音と土煙と同時に試合終了のブザーが鳴った。

 

『白式SE残量0!試合終了!勝者、武藤 海!』

 

「くそぁ!勝てなかった!」

 

「でもよくやったと思うぞ、まさか瞬時加速を使ってくるとは思ってなかったしな。」

 

「瞬時加速?なんだそれ?」

 

「お前分からないで出来たのかよ、怖いわ...」

 

地面に仰向けで倒れている一夏の手を掴んで立たせながら俺は瞬時加速について説明した。

 

「最後の方でお前が俺に向かって凄い速度で向かってきたやつがあったろ?あれが瞬時加速だ、簡単に言うと溜めダッシュみたいなもんだな、本来そう簡単に出来るもんじゃないぞ?」

 

「なるほどなぁ...それってきちんと使えるようになったら俺の必殺技になるか?」

 

「ん?そうだなぁ...一夏には零落白夜があっても今はそれをうまく当てることが出来ない状態だから瞬時加速が使いこなせるようになれば零落白夜と合わせて必殺技足りえるかもしれないな。」

 

「マジか!なら練習したいから付き合ってくれ海!」

 

「いいけどとりあえずピットに戻ろうな、汗もかいてるしさっさとシャワー浴びたい気分だからな。」

 

「そうだな!疲れたしさっぱりしたいぜ!」

 

 

俺と一夏はこうして会話しながらピットに戻った。その会話を聞いていた箒が自分も練習に参加するといって一悶着あったのだがまあなんとかなるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---秘密ラボ内

 

「おっ!いっくんも将来有望だね!慣れていないから稼働率は仕方ないとしてコアとの同調率が平均的な数値と比べてずっと高いよ!さすがちーちゃんの弟なだけはあるね!」

 

束が見つめるモニターには白式と夢幻のリアルタイムのデータが映し出されていてそれを見ながらうんうんと頷いていた。

 

「きっと私の夢を最初に実現してくれるのは二人だね!楽しみになってきたなぁ!」




オリ主との戦いや特訓によって本作では原作よりも一夏は強化する予定です。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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17話 主人公を観察することにした

いつも見てくれてありがとうございます!大鷹とびです。

感想、評価してくださりありがとうございます。

なんとか一本間に合いました!

楽しんでいただければ幸いです。


---IS学園1年1組教室

 

「1年1組のクラス代表は織斑君に決定です!あ!1繋がりで良い感じですね!」

 

「山田先生質問です。何故海にも、オルコットにも負けた俺がクラス代表になってるんですか?普通海がなる筈では?」

 

「俺は辞退したからだよ一夏、織斑先生は一度も『勝った奴がクラス代表』とは言ってないぞ?」

 

「なっ...じゃあオルコットは?」

 

「私も辞退させていただきました。()()さんはこの中の誰よりも経験を積んだ方がいいと思いましたし、何よりも皆さんの前であんな事を言ってしまった私にクラス代表になる資格なんてありませんもの...」

 

セシリアさんは立ちあがりクラスの皆に対して頭を下げた。

 

「皆さん、この場を借りて謝罪をさせてください...この前はあんなことを言ってしまい申し訳ありませんでした!」

 

「大丈夫だよー、セッシ―」

 

「ちゃんと謝ってくれたんだし改めて仲良くしてね?」

 

セシリアさんも色々とあったんだな、まあきちんと謝ってるし、クラスの皆も許してくれているから今後空気が悪くなるということは無くなるだろうな。

 

「一夏、こうゆうことだ。分かったか?」

 

「あ、あぁ...分かったよ、その代わりちゃんと訓練に付き合ってくれよ?」

 

「それはもちろんだ、代表は降りたが副代表は俺がなることにしたからな。セシリアさんにも承諾してもらったしこれからは俺とセシリアさんでお前を鍛えてやる。「まっ!待て!わたs」箒も参加していいから、とゆうか訓練の予定は教室に貼るようにするからもし訓練機を借りれた人で専用機持ちからアドバイスを受けたいとか模擬戦がしたいって人は参加してみてくれ。というわけだ箒」

 

「そういうことなら...」

 

「そんだけ考えてるならやっぱり海が代表やった方がいいんじゃないか?」

 

「お前に経験を積ませるってセシリアさんも言ってたろ?」

 

「そうですわ!一夏さんは磨けば光るものがありますから沢山経験を積んでくださいまし!」

 

「わ、分かったよ海、オルコット」

 

「私の事はセシリアと呼んでください。」

 

「わかった、セシリア、これからよろしくな。」

 

一夏とセシリアさんが話しているのを箒が不機嫌そうに見ているが...まあ大丈夫だろう。

 

「さて、話が纏まったことだし授業を始めるぞ。」

 

今までクラスの経緯を見守っていた千冬さんがが教壇について、授業が開始された。

 

———————————————————————

 

「半年スイーツ食べ放題...織斑君には絶対勝ってもらわないと!」

 

「武藤君やオルコットさんがサポートするから大丈夫だよ!」

 

授業の合間の休憩時間ではクラス対抗戦の賞品【スイーツ半年フリーパス】についてクラスの皆が盛り上がっていた。授業中に千冬さんがポロっと話したからだ。

 

「いいねぇスイーツ、一夏を鍛える理由が増えるってもんだ。」

 

「武藤君もスイーツ好きなの?」

 

「簡単な物なら自分で作って食べるぐらいには好きだね。BT兵器を使った後なんかは糖分欲しくなるから余計に」

 

俺の近くにいた相川さんが話し掛けてきたからそれに返した。俺の話を聞いた相川さんは驚いたようにこちらに顔を向けてきていた。

 

「え!?武藤君お菓子作れるの!?」

 

「入学式の日に料理が趣味って言ったろ?お菓子作りももちろん含まれてる。」

 

なんかクラス中の視線が俺に一斉に向いたような...

 

「ど、どんなお菓子が作れるの!?」

 

相川さんが俺にグッと近づいて聞いてきた、急に近づいてくるもんだからびっくりしたな...

 

「よ、よく作るのは簡単にできるチョコムースだけど...」

 

「それって今日の休み時間にこのクラス分作って間に合う!?」

 

「器と材料と...あとは食堂のキッチンを貸してもらえれば間に合うとは思うけど...」

 

「武藤君お願いします!材料とかは全部確保するからそのチョコムース今日の夜に食べれるように作ってください!」

 

「そりゃまた急にどうして?」

 

「今日の20時から、織斑君のクラス代表就任記念パーティーやるの!お菓子とかある程度用意したんだけどもう一種類何か欲しくて...」

 

「今日代表が決まったのに随分用意がいいな、まあそうゆう事なら一肌脱ぎますか!相川さん今から材料をメモって渡すから昼休みまでに用意出来る?」

 

「元々誰かが代表になったらやるつもりだったからね!材料に関しては皆で何とかするから任せて!」

 

「分かった、全部揃ったら連絡入れてくれ、メモに俺の連絡先も書いておくから。」

 

俺は直ぐにメモを書いて相川さんに渡した。後は一夏に一応言っておくか。

 

「一夏、聞いてたとは思うけどお菓子作りで今日の放課後の練習は少し遅れるかもしれないから、俺が遅れてたら先にセシリアさんと始めててくれ。」

 

「分かった、相変わらず料理には凝ってるんだな。」

 

「それはお前もだろ一夏、今度なんか一緒に作ろうぜ。」

 

「おう、とりあえず今日は頑張れよー」

 

「お前もセシリアさんにみっちりしごいてもらえ。」

 

一夏とお互いにからかいあったところで丁度次の授業の呼び鈴がなったので俺達は自分の席に戻った。

 

———————————————————————

 

---IS学園 食堂

 

俺は授業が終わってから直ぐに食堂へ向かった。

 

「失礼します。1年1組の武藤海です。」

 

「あんたが設備を使いたいって子だね、話は聞いてるよ。あそこ一帯を空けてあるから自由に使っておくれ。あとあんたのクラスの子が冷蔵庫に材料を入れていったからね。」

 

「分かりました。わざわざありがとうございます。」

 

俺は食堂の人に頭を下げてからチョコムース作りに取り掛かった。

 

「これだけ大きい調理器具と設備があれば30人分ぐらいは直ぐだな、材料も多めに確保してもらったし沢山作っておこう。」

 

チョコを湯煎で溶かしたり生クリームを泡立てたりして大体1時間ぐらいで作業を終わらせて人数分冷蔵庫に入れることが出来た。

 

「今は16時半だからこれならきちんとパーティーまでに固まるな、じゃあ一夏達の所に行きますかねーっと」

 

冷蔵庫にきちんと仕舞ってあることを確認してから俺は最初に話をした食堂の人に声をかけた。

 

「設備を貸していただきありがとうございました。冷蔵庫の一番上の段のチョコムースはもしよければ食堂の方々で分けてください。」

 

「あら、良いのかい?じゃあ後で遠慮なくいただくよ。」

 

「はい、それでは20時にまた来ますね。」

 

俺は調理場の出口で頭を下げてから準備をする為に自分の部屋に向かった。

 

「ついでに簪さんの分を部屋の冷蔵庫に入れておかないとな。」

 

せっかくだから同室の簪さんにも食べてもらおうと思って夢幻の拡張領域に入れてある

チョコムースの事を考えながら廊下を歩いていると向かいから本音さんが歩いてきた。

 

「あー、むっきーだー、もうチョコムース出来たのー?」

 

「本音さんか、もう出来たよ、パーティーまでにはしっかり固まってると思うからそれまで待っててくれな。」

 

「楽しみだなぁ、むっきーのチョコムース。」

 

「まだまだ時間あるから適当に時間潰してた方がいいと思うよ?」

 

「は~い、あ、そうだむっきー、明日の放課後って空いてる~?」

 

「明日?まあ一夏の特訓以外に予定は無いから大丈夫だと思う。時間が掛かりそうな事?」

 

「うぅん、多分10分20分ぐらいで終わると思うよぉ」

 

「それなら大丈夫、何処に行けばいい?」

 

「生徒会室ー、明日私が案内してあげるねー」

 

生徒会室ってことは確実に生徒会長さん出てくるじゃないですかー...

 

「それってもしかしなくても生徒会長さんが呼び出してるってことだよなぁ...」

 

「うん、詳しくは言えないけどそうだと思うよー」

 

「入学試験の日に思いっきり牽制しちゃったからめちゃくちゃ気まずいんだよなぁ...」

 

「多分大丈夫だよー、むっきーは悪い人じゃないっていうのは私がよく分かってるからね~」

 

「それでも気まずいもんは気まずいんだよなぁ...まあとりあえず分かったよ、明日の放課後またよろしく。」

 

「うん、じゃあね~むっきー」

 

本音さんはダボダボの制服の袖をパタパタと振りながら歩いて行った。いきなり明日生徒会長と対面することになるとは...

 

「とりあえず部屋に行ってムース仕舞って準備しないと...」

 

俺は少し速足で寮の部屋に向かって歩いて行った。

 

———————————————————————

 

---IS学園 アリーナ ピット内

 

俺が準備を終えてアリーナのピットに着くと既に一夏とセシリアさんがアリーナで模擬戦をしていた。よほどしごかれたのか、それとも一夏の飲み込みが早すぎるのかどっちかなのかは分からないがクラス代表決定戦の時よりも一夏の動きはまともになっている。それでもセシリアさんにはまだまだ敵わないようだが...

 

「とにかく待たせてるのも悪いから合流しますかね、行こうか!夢幻!」

 

俺は夢幻を纏ってアリーナに出て行った。

 

「お!海来たか!思ったより早かったな!もっとかかると思ってたぜ。」

 

「海さんお疲れ様です。丁度一夏さんとの模擬戦も一区切りついた所でしたわ。」

 

「二人ともお疲れ、悪いな初日から遅れることになって。」

 

「いいって、海が昔から頼まれたら断れない性格だっていうのは分かってるし、何より海の作るもんは上手いしな!」

 

「調子良い事言いやがってこのやろ!」

 

「私も海さんのチョコムース楽しみですわ!」

 

「セシリアさんもか...まあいいや、とりあえず模擬戦やってみて一夏はどうだった?」

 

「そうですね...やはり直線的な動きが多いので読みやすく攻撃パターンも少ないですわね...対応力には目を見張るものがありますからそこから伸ばしていけばいいとは思いますけども。」

 

「成る程ね、ちなみにとりあえず何を教えたんだ?」

 

「それがよ聞いてくれよ海、セシリアの教え方って細か過ぎて全然理解出来ないんだよ...」

 

「そんなことありませんわ!私はきちんと数値や理論を交えて教えていますもの!」

 

「んー...じゃあちょっと瞬時加速についてどうやったら出来るのか今一夏に説明してみてくれる?」

 

「もちろんですわ!いいですか一夏さん、瞬時加速と言うのはそもそもISの後部スラスター翼からエネルギーを放出、その内部に一度取り込み、圧縮して放出、その際に得られる慣性エネルギーをもって爆発的に加速する技術の事で...」

 

「あー...セシリアさんストップ。」

 

「なっ!?どうして止めるのですか海さん!」

 

「こいつは論理立てて説明するよりも感覚的に教えた方が理解しやすい人間だから、今のセシリアさんの説明だと多分ほぼ理解できてないと思う。」

 

「そんな...私は丁寧に教えていたつもりでしたのに...」

 

「まあ人に教えるっていうのは分かっているだけじゃ出来ないからね、こればっかりはしょうがない、と言う訳で一夏、瞬時加速については俺が教えてやるよ。」

 

「頼むぜ海!俺の必殺技になる技術だからな!早く習得したいんだ!」

 

一夏は俺に向かってキラキラとした目を向けながら近づいてきた。

 

「分かった、分かったからそんな近づくな!」

 

「おっとわりぃわりぃ!」

 

ほんと分かりやすいやつだな一夏は...まあそれがこいつのいいところでもあるが...

 

「まあ、教えるって言っても俺が言う事は少しだな。」

 

「そうなのか?」

 

「ああ、中学生の頃によくやってた『IS/VS』覚えてるだろ?あれで散々使ってた溜めダッシュみたいなもんなんだ瞬時加速は。」

 

「まじかよ!?あんな感じなのか?」

 

「そうだ、だからとりあえず頭の中で『IS/VS』の溜めダッシュをイメージしながらやってみるといいぞ。そもそも『IS/VS』でもそれの事を瞬時加速って言ってたしな。」

 

「そうと分かれば早速!」

 

一夏は俺の話を聞いてイメージが分かるなり早々に俺達から離れて瞬時加速をやろうとしている。

 

「まあイメージを聞いただけで一発で成功したら相当にセンスあるな。」

 

「そうですわね。」

 

俺とセシリアさんは流石に一発では成功しないだろうと思って気を抜いていた。お互いに向き合って肩をすくめあうぐらいには...

 

ドゴォン!!

 

「「!?!?」」

 

すさまじい音がしたかと思えば一夏が俺達とは反対側のアリーナの壁に激突していた。

 

「あいつ一発で成功させやがった...止まれなくて壁に激突してるけど...」

 

「びっくりしましたわ...でも一回で成功させるなんて一夏さんは本当に感覚派なのですね...」

 

「そうだな...とりあえず一夏の所にいこうかセシリアさん、アリーナの壁へこんでるし...」

 

「分かりましたわ...織斑先生にも報告が必要ですわね...」

 

俺とセシリアさんは壁にぶつかって伸びている一夏に向かってとりあえず飛んでいった。

 

———————————————————————

 

---IS学園 食堂

 

相川さんの言っていた通り20時から食堂の一角を貸し切って一夏のクラス代表就任記念パーティーが行われていた。お菓子屋やらジュースやらがテーブルの上に大量に置かれている。

 

「今日の主役が来たぞー!」

 

「織斑君、乾杯の挨拶して!」

 

クラスメイトに囲まれながらパーティーの主役として挨拶をするよう言われた一夏が口を開いた。

 

「かっ、乾杯!」

 

「「「かんぱーい!」」」

 

皆で乾杯してから直ぐに俺は調理室にチョコムースを取りに向かった。

 

「おまたせ」

 

俺はチョコムースの上に最後の仕上げとして生クリームを絞ってみんなの所に持って行った。

 

「こ、これが武藤君の作ったお菓子...」

 

「貴重な男性操縦者の作った貴重なお菓子よ...」

 

なんでみんなそんな生唾飲み込みながら見つめてるんだよ...そんな大したもんじゃないのに...

 

「おおっ!これ美味いな!海!今度教えてくれよ!」

 

「ああ、いいぞ、そのかわりお前もなんか俺の知らない料理教えてくれ。」

 

「おう!もちろんだぜ!」

 

俺と一夏のやり取りを切っ掛けにクラスの皆も続々とチョコムースを食べ始めた。

 

「めちゃくちゃおいしい!」

 

「なめらかでしっかりとした味なのになぜかどんどん食べれちゃう!」

 

「むっきーのチョコムースおいしー」

 

「武藤君!これどうやったらこんな味が出せるの!?」

 

「特に特別な事はしてないぞ?」

 

「うっそだー!絶対隠し味とかコツとかあるでしょ!?」

 

うーん本当に特別な事はしてないんだよなぁ...それこそ本に書かれてるようなレシピの通りにやってる筈だけど...

 

「どうもー!新聞部の黛薫子でーす!今話題の男性操縦者とその対戦相手に取材しに来ました!はい!これ名刺!」

 

「あ、わざわざありがとうございます、一応自分も名刺持ってるのでどうぞ。」

 

俺は企業代表としての名刺があるのでそれを取り出して黛先輩に渡した。

 

「おっ!名刺持ってるなんて流石だね!これは大切に保存させてもらうね!」

 

「俺なんかの名刺でよければどうぞご自由に。」

 

「じゃあ挨拶も済んだところで早速質問したいんだけど...先ずは織斑君!「クラス代表になって一言」お願いします!」

 

「あー...えっと、頑張ります?」

 

「え~そこは『俺に触れるとやけどするぜ』とかないの?」

 

「自分不器用ですから...」

 

「わぁ...前時代的...まぁいいや、適当に捏造しておくから」

 

捏造するのかよ...だったら聞く意味無いだろ...

 

「続いてセシリアちゃん!」

 

「そうですわね、私が代表を「長くなりそうだからいいや」ちょっとどうゆうことですの!」

 

セシリアさんは思いっきり端折られてる...そして次は流れ的に俺だな...

 

「最後に武藤君!クラス代表戦から色々な噂が立ってるけどその中でも「一年生最強なのでは?」という噂に対して一言!」

 

「そうですね...まあ俺は企業代表として訓練も積んでいますし所属している月兎製作所の為にも負けるわけにはいかないのでこの時点で強いという評価を頂けているのは素直に嬉しいですね。」

 

「おー!クラス代表戦で『圧倒させてもらう!』なんて言うだけはあるね!ちなみにIS操縦時の動きがかなり慣れているような感じだったけど何時間ぐらいISを動かしてるのかな?」

 

「それについては企業秘密で」

 

「えー!ちょっとぐらいいいじゃない?ね?ね?」

 

「申し訳ありませんが今はダメなんですよ、いつか話せる時が来ると思うのでまたその時に」

 

「うーん...残念だけどそういうことなら今回は諦めるわ...じゃあ気を取り直して最後に3人の写真撮るからもっと寄ってね~はいチーズ!」

 

黛先輩がシャッターを切った時にはクラスの皆が周りにいて集合写真の様になったがまあこれはこれで絵になるからと黛先輩も満足して食堂を出て行った。クラスの皆もそれぞれのグループにまた戻っていったので俺はそれに合わせて食堂を出ようとした。

 

「あれ?海どっか行くのか?」

 

どうやら一夏が俺が出ていこうとしたのに気付いたようで話しかけてきた。

 

「ああ、ちょっと夜風に当たってくるわ。」

 

俺は一夏にそう言ってから食堂から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---IS学園 学生寮から少し離れた地点

 

「あーもう!第一職員室ってどこなのよ! 事務の人ももうちょっと詳しく教えてくれたっていいじゃない!てかこの学校広すぎんのよ! 世界のどこにこんな広い高校があんのよ!」




一夏はこの時点でなんと瞬時加速を成功させてしまいます。

今後の一夏にも期待しててください!

オリ主がお菓子を作るのは作者の自分も趣味で作るからですw

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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18話 ポジションが決まった気がした

お久しぶりです。大鷹とびです。

感想、評価してくださりありがとうございます。

期間が空いて申し訳ありません。仕事等私生活が忙しく中々執筆が出来ませんでした。

また少しづづ再開していきますので宜しくお願いします!


---IS学園 学生寮から少し離れた地点

 

俺はパーティを抜け出して夜風に当たっていた。このくらいの時期の風は丁度いい温度で心地が良かった。

 

「なんだかんだで流され続けてるな...俺は...」

 

ふと自分が転生者で原作の知識をある程度持っていることを思い出す。今更どうこう出来る訳では無いがこうしてふと思い出した時に言いようのない罪悪感に襲われる。

 

「考えていてもどうしようもないか...」

 

今頭に浮かんでいることを振り払うように頭を軽く振ってから俺はパーティー会場に戻ろうと学生寮に足を向けた。

 

「広すぎるのよこの学校!第一職員室って何処に行けばいいのか全然分かんないじゃない!」

 

なんだかとても聞き覚えのある声が聞こえる、どうやら声の主は道に迷っているようだ。俺の予想が間違っていなければ彼女だろうし、ここは助けに行くべきだろう、そう思って俺は声のする方を見た。

 

「もうここで野宿するわ!やってらんない!」

 

特徴的なリボンと栗色のツインテールでIS学園の制服を着た女子がボストンバッグを持ちつつ、自暴自棄になっていた。女子高生が野宿はどうなんだ...

 

「こんなところで何やってんだ...鈴...」

 

中学2年の時に転校して中国に帰ってしまった友人の鈴がそこにいたのだった。

 

「おーい、りーん!」

 

「え?」

 

俺は鈴が分かりやすいように手を振りながら近づいて行った、俺の事を見た鈴はとても驚いたような顔をしていた。

 

「あんた...もしかして海?海なの!?」

 

「おう!久しぶりだな鈴!」

 

「そういえば話題になってたわね、あんたが2人目としてIS学園に入学したって...まあそれはそれとして久しぶりね。海。」

 

「まあとある人との相談の結果そうなったんだ。鈴はこのタイミングでIS学園に転校してきたってことは国からの指示か何かか?」

 

「ええ、こうみえても中国の代表候補生なのよ、私」

 

「鈴が転校したのが中2の時だから1年ちょっとで代表候補生になったのか、そりゃ凄いな」

 

「いきなり企業代表になって初戦でイギリスの代表候補生を圧倒したあんたが言う?まあ素直に受け取っておくわ、ありがとね。」

 

「流石に世界中で話題になってるよなぁ...まあ今更気にしないよ、企業っていうバックがあるから俺は無事でいられる訳だしな。それよりも鈴、お前道に迷ってたんじゃないか?」

 

「あ!そう!そうなのよ!第一職員室って一体どこにあるの!?広すぎて分かりゃしないもの!」

 

「俺が案内してやるよ、流石に女子高生が野宿はまずいだろ...」

 

「助かるわ!ありがとう海...ってさっき叫んでたの聞かれてたのね...」

 

「あんだけ大声で叫んでたからな...まあ俺の最初の頃迷ってたしよく分かるよ。とりあえずついてきてくれ。」

 

あ...これ時間的に鈴を案内したらパーティはお開きになってるだろうし部屋に戻るのもかなり遅くなるな...一夏とあと簪さんにも連絡を入れておかないと...でも簪さんの連絡先持ってない...しょうがないか...戻った時に寝てたら明日の朝に謝っておこう。

 

「とりあえず一夏にメッセは送ってと...」

 

「ん?どうしたの海?」

 

「一夏に今日はもう合流出来ないからってメッセ送ってた。」

 

「成る程ね、まあ一夏には明日私も会えるでしょうしまたそこで話をしましょ?」

 

「そうだな。」

 

それから俺は鈴を案内して寮の部屋に戻ったが案の定消灯時間ギリギリになってしまった。部屋に戻った時簪さんはまだ起きて何か作業をしていたが俺が戻ってから直ぐに寝てしまった。作業している時の顔色がとても悪かったので明日聞いてみることにしよう。そう思いながら俺はそのまま床に就いた。

 

———————————————————————

 

---IS学園 学生寮 1035室

 

一夏のクラス代表就任パーティーの翌日、俺はいつもの日課の訓練を終えて部屋に戻ってきていた。これからシャワーを浴びて着替えてから朝食に向かう予定だが、いつもは起きている筈の簪さんがまだ寝たままだった。起こすのはなんだか悪いが、このままだと授業に遅れてしまう可能性もあるだろうし、起こすことにしよう。

 

「簪さん?そろそろ起きないと...」

 

「んぅ...」

 

俺が声をかけると簪さんは声を漏らしながら少し怠そうに身体を起こした。

 

「おはよう簪さん。」

 

「おはよう...」

 

簪さんが起きたのを確認してから俺はシャワーを浴びにシャワー室に入った。

 

「先に食堂で席取ってるから...」

 

「分かった、ありがとう。昨日は遅くに戻ってきて申し訳ない。」

 

「いい、気にしないで」

 

シャワー室の横の更衣室の洗面台で顔を洗った後簪さんが先に食堂に行っているとシャワー中の俺に話しかけてきたので返事をしておいた。IS学園に入学してから1週間ちょっと経ったが簪さんと本音さんが先に食堂で席を取っていてくれるのがいつもの流れになっている。

 

「ふぅ...」

 

シャワーを浴び終わって更衣室の方を確認すると既に簪さんは食堂へ向かったようなので俺はシャワー室から出て髪を乾かしたり水気をふき取ってから着替えて直ぐに食堂に向かった。

 

それにしても簪さんは大丈夫だろうか?起きた時に目の下の隈が凄かったし、明らかに体調が悪そうだった。倒れたりしなければいいけど...

 

———————————————————————

 

---IS学園1年1組教室

 

「隣の2組に転校生が来たんだって!」

 

「この時期に?珍しいね転校生なんて」

 

今1組では転校生の話題で持ちきりになっている。俺はその転校生が鈴だと分かっているので聞き流す。

 

「2組かぁ...どんな奴なんだろうな。海、知ってるか?」

 

「んぁ...?あぁ...分かんないけど会ってからのお楽しみって事にしておけばいいんじゃないか?」

 

「そっか、それもそうだな!」

 

すまんな一夏、本当は誰か分かってるけど正直に言ったらクラスの皆に囲まれるのは目に見えてるからそれは避けさせてくれ。

 

俺が一夏の質問に対して返答するとまたクラスの皆の会話が聞こえてきた。

 

「転校生って事はISの操縦とか上手だったりするのかな?」

 

「でも織斑君は専用機持ちだし、4組の専用機持ちの子は出ないらしいからスイーツは貰ったも同然でしょ!」

 

「その情報、古いよ!

 

声のした方を見ると教室の入り口に昨日会った鈴が仁王立ちしていた。一夏は鈴を見るなり立ちあがって近づいて行った。

 

「鈴...?鈴じゃないか!」

 

「久しぶりね、一夏!」

 

久しぶりに好きな人に会えたから鈴も内心嬉しいのだろう。心なしか声が弾んでいるように聞こえた。

 

「転校生ってお前だったのか!」

 

「そうよ!そして私は中国の代表候補生でもあるのよ!」

 

「マジかよ!中2の時に転校したから1年で代表候補生になったのか!?凄いな鈴!」

 

「ふふん!そうでしょう!あ、海も昨日はありがとね!」

 

「おうよー、お前が一夏とそうやって話せてるだけでも助けた甲斐があったってもんだ。」

 

「お礼は今度するわ!昼にまた話をしましょ。」

 

「おうよー」

 

鈴が俺を見つけて昨日の事について礼を言ってきたので返事をしておいた、まあ本当に鈴が一夏と話が出来ただけでも助けた甲斐があったってもんだ。

 

「一夏...誰だその女は?随分と仲が良いようだが...?」

 

「oh...」

 

やべぇ...すっかり箒のこと忘れてた...箒は入れ替わりで転校してきた鈴の事はもちろん知らないし、何より自分の想い人が他の女と親しげに会話していたら面白くないのは想像に難くないな...

 

「誰よアンタ?私は一夏と話してるんだから邪魔しないでくれる?」

 

「貴様こそ別のクラスの者だろう?さっさと自分のクラスに戻るべきじゃないのか?」

 

ヤバいって...一夏もなんかわたわたしてるだけだしどうやって解決したらいいんだこの状況...

 

「おい、何をしている貴様ら」

 

「何よ!」

 

鈴が背後から聞こえた声に対して強気に振り返るとそこには千冬さんが立っていた。

 

「ちっ...千冬さん...」

 

「織斑先生だ、鳳、二度目は無いぞ?さっさと2組に戻れ、授業開始の時間だ。」

 

「すっ...すいません...一夏、海、後でね!」

 

千冬さん本当に!本当に!ありがとうございます!

 

「貴様らもさっさと席につけ!授業を始めるぞ!あと武藤、織斑先生だ。」

 

千冬さんにナチュラルに心を読まれた後、号令と共にクラスの全員が席について今日の授業が開始されたのだった。

 

———————————————————————

 

---IS学園 食堂

 

昼食の時間になり、俺は一夏、箒、セシリアさんと共に食堂に来ていた。

 

「待ってたわよ!一夏!」

 

大きな声のする方を向くとラーメンを乗せたお盆を持って鈴がまた仁王立ちしていた。

 

「鈴...そこにいると他の人が食券買えないから先に座っててくれ...」

 

「わ、分かってるわよ!アンタ達が来るのが遅いから待ってたんじゃない!」

 

一夏と鈴がやり取りしている間に食券を買ってしまおう...今日は何食べようかなぁ...

 

「唐揚げ定食か...美味そうだな!これにしよう!」

 

「あっ!海!なにしれっと先に食券買ってんだ!」

 

「お前たちが痴話喧嘩してるのいちいち終わるまで待ってらんねぇよ...あ、これお願いします、特盛で」

 

「はいよー、いつもありがとねー、この前のチョコムースも美味かったよ。」

 

「口に合ったようなら良かったです、また何か機会があったら調理場お借りしますね。」

 

「あんたならいつでも歓迎するよ!唐揚げ定食が出来たら呼ぶからそれまで待ってておくれ。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

食券を出してから鈴が取っていてくれた席に座る、箒とセシリアさんも食券を買って出してきたようだ。

 

「ほら、一夏も何か言いたそうな顔してないで早く買って来いよ。」

 

「わ、分かってるよ!」

 

「鈴も早く席についてそのラーメン食べた方がいいんじゃないか?伸びちまうぞ?」

 

「分かってるわよ!」

 

俺がそれぞれ促すと一夏は食券を買いに、鈴は座ってラーメンを食べ始めた。ラーメンも美味そうだな...明日はラーメンにしよう。

 

「んでいつまで箒は鈴を睨みつけてるんだよ、疲れるだろうが...」

 

「しっ...しかし」

 

「しかしもお菓子も無いの!一夏が説明するから待ってればいいだろ?「○○番の唐揚げ定食特盛あがったよー!」お、俺のやつがきた!俺は自分の飯取りに行くけどそれまで口論とか起こすなよ?」

 

ずっと鈴の事を睨みつけている箒に釘を刺しておいて俺は自分のご飯を取りに行った。一夏も食券を出し終わったのかこっちに向かってくる。

 

「おい一夏、俺が飯取りに行ってる間に簡単に鈴達に説明しとけ、じゃないと面倒なことになるぞ。」

 

「え?どうゆうことだそれ?」

 

「いいから説明しとけ!」

 

「お、おう...」

 

これで多少はまともになるだろ...今は何より飯が食べたいしな!んでこれが唐揚げ定食か!

 

「おお!めちゃくちゃ美味そう!」

 

山盛りのカラッと上がった唐揚げからいい匂いが立ち上っている!これは期待できるな!早く持って行って食べよう!

 

「か、海!助けてくれ!」

 

「はぁぁ...分かってた...分かってたさ...」

 

せっかく唐揚げを楽しもうとしたところで一夏が俺に助けを求めてきた、案の定鈴と箒の二人を落ち着かせることは出来なかったようだ。

 

「お待たせ!早く食べようぜ!」

 

俺はあくまで自然に席に戻ってテーブルの全員に声をかけた。

 

「あ、ああ...そうだな、せっかくのご飯が冷めてしまう。」

 

「私はもう食べ終わったから待ってるわね。」

 

「そうか、悪いな鈴...おい一夏!いつまでも突っ立ってないで飯取って来たなら早く食べようぜ!」

 

「お、おう!そうだな!」

 

まず話の席についてもらう事には成功したな...ここからが本番だ。

 

「鈴、とりあえず自己紹介はしたのか?」

 

「え?ああ...そういえばまだだったわ...じゃあ改めて、私は鳳 鈴音、中国の代表候補生よ。」

 

「篠ノ之 箒だ。」

 

「セシリア オルコットですわ、イギリスの代表候補生をしています。」

 

「俺と一夏は今更自己紹介は必要ないだろう、んで鈴と箒にそれぞれを説明しておくと箒は俺と一夏の小学4年までの幼馴染で、鈴は箒と入れ替わりで転校してきて中学2年までよく遊んでた幼馴染って訳だ。」

 

「ふーん、成程ねぇ、だからファースト幼馴染とセカンド幼馴染って言ったのね...」

 

一夏ぁ...分かっちゃいたけどお前なぁ...もうちょっとうまく説明してくれよ...

 

「とりあえずここまでで鈴と箒がお互いに気になってたことは解決したか?」

 

「ああ」「そうね」

 

「ならよかった、じゃあさっさとご飯を食べよう、俺はもう正直腹が減って腹が減って我慢が出来ないんだ!いただきます!」

 

俺は鈴と箒にそれぞれの問題が解決したかどうか確認して『パンッ』と勢いよく手を合わせてから唐揚げを頬張り始めた。

 

「うん!美味い!肉にしっかり味が付いているし、ジューシーに揚がっている!これはご飯が進むな!」

 

俺がご飯を食べているのを見て一夏達も余計に腹が減ったのかそれぞれ目の前のご飯を食べ始めた。良かった...これで平和的解決だな!

 

「そういえば一夏、もしアンタが良ければISの操縦とか私が見てあげてもいいわよ?」

 

...いやぁぁぁぁぁぁ...また火種がぁぁ....いやここは俺が先んじて解決を!

 

「おい!待っ...「鈴、悪いが今一夏には俺とセシリアさんが特訓を付けてるんだ、こいつはクラス代表戦があるからそれが終わるまでは待ってくれないか?今朝の口ぶりだと鈴が2組の代表を

変わってもらったんだろうし対戦相手に戦術を見られる訳にもいかないからな。クラス代表戦が

終わったら一緒に訓練しようぜ!」

 

箒がまた何か言おうとしたが俺が遮らせてもらった。箒には悪いがこれ以上飯の邪魔されるのは勘弁だ。

 

「そうゆうことなら仕方ないわね...その代わりクラス代表戦が終わったら私と戦ってもらうわ!海!」

 

「なんで一夏の訓練の話から俺に飛び火するんだよ...まあいいけどな、クラス代表戦が終わったらまた話しよう。箒も一緒に訓練に参加するといい」

 

「海がそういうのなら私も退こう、その代わり私とも戦ってもらうぞ」

 

「箒もかよ...なんで二人ともそんなに俺と戦いたいんだ?」

 

「私の当面の目標は海だからな!」

 

「私は純粋に海の強さが気になるからね!一夏とはクラス代表戦でやれるし!」

 

なんなんだこの武人たち...まあ俺も人の事は言えないか...

 

「分かったよ...それぞれ一回づつ模擬戦をしよう、クラス代表戦が終わったらな。さて、飯飯!」

 

「...なんか、お疲れ様ですわ、海さん...」

 

「...ありがとうセシリアさん...」

 

もう大丈夫だろ...これ以上フォローは絶対にしないかな!俺は心にそう決めて唐揚げを口に運んだ。

 

———————————————————————

 

---IS学園 廊下

 

俺は昨日約束した通り本音さんに案内されて生徒会室に向かっていた。

 

「はぁ...やだなぁ...牽制した人にもう一回会わないといけないのって拷問以外の何物でもないよ...」

 

「大丈夫ー、私も生徒会室に残るから安心してー」

 

「本音さんの優しさが骨身に沁みるよ...」

 

本音さんから後光が差してるように見える...ああ、神様仏様本音様...

 

「むっきーなに拝んでるの?あ、ここが生徒会室だよー」

 

「ありがとう本音さん。とうとう着いてしまったか...ええい!南無三!」

 

俺は覚悟を決めて生徒会室の扉を叩いた。

 

「失礼します。」

 

「どうぞ」

 

返事が返って来たので俺は扉を開けて中に入った。

 

入って直ぐ長机に置かれた【生徒会長】と書かれたネームプレートが視界に入った。

 

入学試験の時に俺をつけてきていた水色の髪の女生徒が更識 楯無、この学園の生徒会長だ。また、彼女の後ろには眼鏡をかけた真面目そうな感じの女生徒がいた。リボンの色が赤色なのでおそらく3年生だろう。

 

「入学試験の時以来ですね、改めまして武藤 海です。」

 

「そんなにかしこまらなくても大丈夫よ、こちらこそ改めて、生徒会長の更識 楯無よ、楯無でいいわ、海君。たっちゃんでも可よ♪」

 

「布仏 虚です、初めまして、こちらへどうぞ。」

 

虚先輩に座るように促されて俺は来客用の椅子に座った。楯無先輩は俺の向かいに座った。

 

「それで自分に何の用でしょうか?専用機のデータも自分が所属している月兎製作所のデータも入学したのでちゃんと学園に提出されていると思いますけど...」

 

「そうね、そのあたりについては問題は無いわ、今日は別の事を聞きたいのよ」

 

「別の事とは?」

 

「貴方は簪ちゃんにとってなんなの?」

 

「...はい?」

 

あ、そうだった、この人シスコン拗らせてるんだった...完全にISと企業の事だと思ってたから思わず変な声が出てしまった。とりあえず正直に答えておこう。

 

「何かと言われるとルームメイトですね趣味の合う友人だとも思ってます」

 

「はぁ!?あんなに可愛い簪ちゃんがただのルームメイトですってぇ!?可愛いからぺろぺろしたいとか手を出したいとか思わないわけぇ!?」

 

急にぶっ壊れたよこのシスコン生徒会長...どうすりゃいいんだ?なんか扇子を開いたと思ったら【殺】とか書いてあるし...

 

「えーっと...織斑先生が自分達の事を信用して今の寮に入れてくれた訳ですからその信用を裏切る訳に行きませんし、簪さんに関しては友人として接することはあれどそこまでは思って無いですよ、そもそも常識的にいきなり手を出そうとするような人なんでただの変態でしょう?」

 

「なに!?貴方は簪ちゃんに魅力が無いって言いたいの!?はっ!?もしかして海君はホモなの!?」

 

「違いますね、いい加減やめてくれませんか?一夏の特訓もあるので戻りたいんですけど...」

 

「すみません武藤君、お嬢様、落ち着いてください」

 

「落ち着けるもんですか! 可愛い簪ちゃんと同じ部屋なのに!やっぱりホ...ひぐぅ!?」

 

「お嬢様...」

 

楯無先輩が急にへんな声を出したと思ったら虚先輩が強めのツッコミをしていた。痛そうだなあれ...

 

「ふぅ...ごめんなさいね海君取り乱しちゃって...」

 

「まあ大丈夫です...」

 

その後再度自己紹介をしてから会話を再開した。

 

楯無先輩はIS学園の生徒会長でロシアの【国家代表】でありこの学園最強だと。

 

虚先輩は彼女の従者だと。妹と同じだと言っていたが本当に姉妹なのかと思うくらいしっかりしていると思った。

 

そして楯無先輩から俺がここに呼び出された理由を聞いて俺は大きな溜息をついてしまった。

 

呼び出された理由は簪さんについての確認だったからだ。もう手遅れだろこのシスコン生徒会長...

 

何でも今日の夜から少しの間学園を離れるらしい、そのためにルームメイトである俺に彼女の現状を確認したかったようだ。何を食べてるとか何をしてるとかその他諸々聞かれた。

 

「成る程、簪ちゃんの今の状況はよく分かったわ、ありがとう海君」

 

「いえ...妹の事が心配になるのは仕方のない事だと思います」

 

「本当にわざわざすいません武藤君」

 

「虚先輩も大変ですね...」

 

「そう言ってもらえるだけで助かります...」

 

虚先輩は本当に頑張っていると思う、こんな人の従者やってるんだから心労も半端じゃないんだろうな。

 

「最後に一ついいかしら海君?」

 

「なんでしょうか?」

 

「貴方は何が目的でISを使ってるの?」

 

「...夢を叶えることと責任を取るためですよ、では自分はこれで失礼します。楯無先輩、簪さんを心配するのもいいですけどまずはちゃんと面と向かって話をするべきだと俺は思いますよ?」

 

「っ...そうね...」

 

「では失礼しました。」

 

俺は頭を下げてから生徒会室から出て一夏達が訓練しているアリーナへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば結局本音さん生徒会室に入ってきてねえじゃん!」

 

俺は廊下でふと思い出してついツッコんでしまった。周りの人に見られて恥ずかしい思いもしたので本音さんには今度仕返ししよう。

 




オリ主は苦労人ポジションがすっかり板についてしまいました。

今後どうなっていくのか予想しながら待っていただければ嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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19話 お節介は焼くだけ焼くことにした

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

もう完全にオリ主が原作に介入していますが後悔はしていません!(今更)

これからもガンガン介入させていきます!


---IS学園 学生寮 1035室

 

生徒会室で生徒会長との話を終えた後、俺はアリーナで一夏、セシリアさんと訓練をした。特に問題なく終わったし一夏も確実に強くなっているのでクラス代表までにはある程度ものになるだろう。

 

今はすっかり外も暗くなっているが現在俺は何をしているかと言うと寮の自分の机で今日の特訓で夢幻に蓄積したデータを確認している。

 

「成る程...得意な距離が正反対かつ設計思想も真逆な2機と戦い続けるとこんなデータになるのか...」

 

夢幻に蓄積されたデータは一夏の白式とセシリアさんのブルーティアーズの両方と同時に戦えるような中距離で一番効果を発揮する武装案が多く纏まっていた。

 

「このアサルトライフルは使いやすそうだ、明日にでも夢幻で製造しておこう」

 

他にもおもしろそうな武装のデータが沢山あった。これは戦術の幅がかなり広がりそうだ。

 

俺が一人で満足気な顔をしながらぶつぶつ呟いていると部屋の扉が開いて簪さんが入って来た。

 

「あ、簪さんお疲れ様」

 

「海...お疲れ様...」

 

簪さんの方を向いて労いの言葉をかけたがやっぱり随分と疲れているように見えた、目の下の隈は更に酷くなっているし何より足元がおぼつかない。

 

「簪さん大丈夫?なんだか疲れているように見えるけど...」

 

「大丈夫だから私の事は放って置いて...」

 

「そうゆう訳にもいかないよ、そんな疲れた顔をしている人を放って置けるほど俺も薄情者じゃないからね、とりあえずベッドに座ってて」

 

俺は簪さんをベッドに座るように促して部屋の簡易キッチンへホットミルクを作りに向かう。ついでにこの前のチョコムースも一緒に出そう。

 

「楯無先輩をひたすら追ってるんだろうな...やっぱり...」

 

食堂で話をした時の反応、俺や一夏が出てきたせいで開発が止まった自身の専用機、そして優秀で既に国家代表にまでなっている自身の姉...

 

「これだけヒントがあれば誰だって簪さんが追い詰められていることが分かるよなぁ...」

 

俺は作ったホットミルクと冷蔵庫から取り出したチョコムースを持って簪さんの所に戻る。

 

「はいこれ、ホットミルクとチョコムース、甘いもの食べてまずは落ち着こう?」

 

「あ、ありがとう...このチョコムースは海が?」

 

「ん?ああ、昨日クラスであったパーティの為に作ったんだけどどうせならと思って簪さんの分も作っておいたんだ」

 

俺が作ったと知ると簪さんは少し驚いたような表情をしたが、チョコムースを一口食べると少し口元が緩んだように見えた。

 

「これ、おいしい...」

 

「なら良かった、落ち着いたところでゆっくりでいいからどうしてそんなに無茶をしているのか話せるかな?」

 

「...私が自分の専用機を一人で組み立てようとしてることは知ってる?」

 

「ああ、大方一夏が出てきたからその専用機の開発に人員を割かれて簪さんの機体は開発が止まったのを引き取って一人で組み立ててる感じかな?」

 

技術者の風上にも置けないような事をするよ倉持技研は...

 

「そこまで分かってるんだ...」

 

「日本人でIS学園に入ることになったら自分の国の代表候補生の事ぐらい調べるさ」

 

「海...もしかしてストーカー気質...?」

 

何故そこでそうなる!?直ぐに訂正しないと!

 

「いやいや相手になる可能性のある人間の機体やら癖やらをあらかじめ予習しておいてるだけでそれ以外の意図は無いよ...」

 

「あっ...その...ごめんなさい...」

 

「大丈夫大丈夫、悪気は無かったんだろうしとりあえず話を続けて?」

 

「うん...それで私が一人で専用機を組み立ててる理由だけど...海はこの学園の生徒会長の事は分かる?」

 

「分かるよ、今日呼び出されて会って来たから」

 

「っ...えっとその生徒会長が私のお姉ちゃんなの...」

 

「そうみたいだね、苗字同じだし結構簪さんと見た目が似ている部分が多かったし」

 

「その私のお姉ちゃんはロシアの国家代表で、学園で最強の人間がなるっていう生徒会長もやっててとても優秀な人なの...私の目標でもあった」

 

「あった?どうして過去形に?」

 

「お姉ちゃんが更識のトップになって少し経った時に言われたの「貴女は何もしなくていいの、お姉ちゃんが守ってあげるから」って...」

 

「...」

 

「更識でいくら頑張ってもお姉ちゃんと比べられて、まともに見られることも無くなってそれ以来私は決めたの、お姉ちゃんと同じように一人でISを組み立ててお姉ちゃん追いついて見せるって...」

 

「成る程ね...でも最近になって無茶をしてる理由は別にあるんじゃないかな?」

 

「それは...」

 

「あくまで俺の予想だけど俺や一夏が思ったより結果を残してることから国の担当の人に急かされてる...とか?」

 

「...ほぼ正解、少し前に国の担当官の人に言われたの「いつになったら専用機は完成するんだ、男性操縦者の二人の方が結果を残しているぞ」って...」

 

開発が凍結されたのも知っておいてよく簪さんにそんなこと言えるな...

 

「この国も墜ちたもんだ...簪さん...俺でよければ専用機の開発を手伝わせてくれないかな?俺も思うところがあるし、なにより今にも倒れそうだった簪さんを放って置くことは俺には出来ないから」

 

「でも一人で完成させないとお姉ちゃんには...」

 

「そのことについて今日聞いてみたよ、一緒にいた虚先輩も話してくれたけど実際の所楯無先輩は一人では専用機を組んで無いって」

 

実は生徒会室での一件の時にさりげなく聞いてみたのだがやはり楯無先輩が一人で自分の専用機を組んだというのは嘘だった。

 

「え...?じゃあお姉ちゃんが一人で自分の専用機を組み立てたって話は...」

 

「国やら色んな所が宣伝の為に誇張して流した噂だろうってさ」

 

「そうだったんだ...」

 

「それに今はすれ違ってるかもしれないけど楯無先輩は誰よりも簪さんの事を大事に考えていると思うよ」

 

「それは...」

 

「まあ今は無理でもいつかきちんと向かい合って話せる時はくるさ、とりあえず簪さんの専用機の開発は手伝ってもいいかな?専用機が出来たタイミングなら楯無先輩とも話せると思うし」

 

「...うん、そうだね...分かった!こちらこそよろしくお願いします!」

 

簪さんの顔つきが変わった、これなら大丈夫だろう、俺みたいな人間のお節介が役に立って良かった...

 

「じゃあ今日は無理せずに寝た方がいいね」

 

「あ、うんそうだね、じゃあおやすみなさい...」

 

「おやすみなさい簪さん」

 

簪さんが自分のベッドに入ったのを確認した後俺も自分のベッドに入りそのまま眠りについた。

 

———————————————————————

 

---IS学園 整備室

 

今日の授業もあっという間に終わって放課後になり、俺は簪さんの専用機開発を手伝う為に整備室に来ていた。もちろん一夏達には連絡済みだ。特訓に遅れたり行けないばかりで申し訳ないので明日はみっちり一夏に特訓を付ける事にしよう。

 

「あ、むっきーこっちだよー」

 

「本音さんも来てたんだな」

 

「私は整備課志望だからねー、それにかんちゃんに呼ばれたから」

 

「成る程」

 

本音さんと軽く会話しながら先に作業していた簪さんの方に向かった。奥の方に簪さんの姿が見えたので声をかけながら近づく。

 

「簪さん!手伝いに来たよ!」

 

「海、本音...改めてよろしくお願いします。」

 

簪さんは深々と頭を下げながら俺達に改めてこれから一緒に開発をしていく意思を伝えてきたのでそれに返した。

 

「もちろんだよ!まかせて、かんちゃん!」

 

「俺もだ、出来ることがあれば何でも手伝うからガンガン言って欲しい。」

 

「本音も海もありがとう、じゃあまず現状の説明なんだけど...」

 

簪さんから端末で【打鉄弐式】のデータを表示しながら説明を受けた。

 

「成る程...現状の完成度は全体で見て3割程度、出来ていないのは武装と本体の制御系統のシステムか、そして武装に関しては全く手つかずと...」

 

「うん...だからまずは本体の方を優先して本体がほぼ完成してから武装の開発に手を付けようと思うの」

 

「分かった、じゃあ本体の制御システムから取り掛かろうか...っとこれは」

 

「どうしたの?海」

 

「ああ...武装一覧の対複合装甲用の超振動薙刀の名前が『夢現』だからつい反応しちゃってね」

 

「そういえば海のISの特殊兵装の名前も夢現...じゃあ名前変えておいた方がいいかな...?」

 

「いや、そのままで大丈夫、俺のISに搭載されてる夢現とは別物だし一緒でも困らないと思うよ。簪さんが変えたいならそれでもいいけど」

 

「そういうことなら変えないでおく...じゃあ作業始めるね...」

 

「ふぉいとーおー」

 

「本音さんがいうと逆に力抜けるな...」

 

 

そこからは三人でひたすら開発作業を進行していった。簪さん達にはもちろん言っていない事だが俺はISの生みの親である束さんの元で小学生の時からみっちりISのノウハウを教わっていたので元々プログラミングが得意だった簪さんと協力して制御プログラムはあっという間にほぼ完成といったところまで持っていくことが出来た、もちろん実際に動かして何回もテストしないといけないのでまだまだやることは多いが確認した限りではバグ等は発生せずに正常に動くプログラムが出来たので今日一日でここまで進んだなら大満足の結果だろう。

 

「私一人でやっていた時は全然取れなかったバグがこんなに簡単に解消できてしかもほぼ完成まで持っていけるなんて...」

 

「簪さんの組んでいたプログラムがしっかりしていたし見やすかったから俺はバグを取っただけだよ、ほとんど簪さんが完成させたようなものだ」

 

「それでも私一人だったら絶対に今日一日でここまで進まなかった。それに海が凄くISの構造やプログラムに詳しかったから何とかなった...」

 

「月兎製作所の技術者の人にみっちり教えてもらったんだよ、それまでは俺もちんぷんかんぷんだったからね」

 

「そうだったんだ...そんなに凄い人ならぜひ一度会ってみたい...」

 

「うーん...中々アポが取れる人じゃないから機会があったら話してみるよ」

 

「分かった、ありがとう、今日はもう時間だから解散だね」

 

「そうだな、俺はちょっと購買で買いたいものがあるから簪さんは先に戻ってて」

 

「うん、じゃあお先に」

 

「じゃあねーむっきー」

 

流石にもういい時間だったので今日の作業は切り上げて解散した。俺は購買で少し食べ物を買おうと思っていたので簪さん達には先に戻ってもらった。

 

「急にガムでも噛みたくなってきたな、ついでに買うか...」

 

俺は財布の中身を確認しながら一人で購買に向かった。

 

———————————————————————

 

---IS学園 廊下

 

購買で目当ての食材やお菓子、それに懐かしいガムを見つけて買うことが出来て俺は上機嫌で廊下を歩いていた。

 

「めちゃくちゃ懐かしいなこのガム!俺しか好きなやつがいなくてなんか食べてると変わった目で見られたっけ」

 

作業の時に食べるのが楽しみだと思いながら寮と本校舎の境目のスペースに置いてある自動販売機を見ると自販機の横に一人で蹲っている人を見つけた。

 

「大丈夫ですか?体調が悪いなら保健室まで連れていきますけど...って鈴?」

 

「...海?」

 

体調が悪いのかと思って声をかけて見れば鈴だった。俺の声に反応してこちらに顔を向けてきたがその目元は赤く腫れていて泣いていたようだった。

 

「どうしたんだよ鈴、こんな時間にこんな場所で...」

 

「一夏が...」

 

「一夏が?」

 

「あの時の約束...」

 

「あ...大体分かった、無理に全部言わなくて大丈夫だ、あの時俺と弾も協力したからちゃんと覚えてる」

 

「毎日酢豚を奢るってどんな覚え方してたらそうなるのよ...これじゃあ期待してた私が馬鹿みたい、一夏ならきっと覚えててくれると思ってたのに...」

 

「今だから正直に鈴に言うけど俺と弾は鈴が一夏に告白したあの時確実に一夏は勘違いするだろうって思ってたよ...」

 

「じゃあ私一人だけ浮足立って喜んでたっていうの...もうバッカみたい...」

 

「でもな鈴、あの一夏だぞ?お前からの気持ちもそうだがもちろん他の女子からの好意にも1ミリも気付いてないんだ、だったら今こうやって落ち込んでいないで誰よりも先にあいつに鈴の気持ちをぶつけた方が良いと思わないか?」

 

「それは...そうだけど...」

 

「なにか切っ掛けが欲しいなら5月のクラス代表戦で一夏に自分の気持ちを伝えればいい、どうだ?」

 

「クラス代表戦...そうね!そうするわ!ありがとう海!いつもあんたには助けられてばっかりね」

 

「吹っ切れたみたいで良かったよ、それに俺達は友達だろ?だったら助けるのは当たり前だからな」

 

「じゃあクラス代表戦までにしっかり一夏を鍛えてやってね!弱すぎたら話も出来ないんだから!」

 

俺は自分が買った物が入ってる袋からウーロン茶の缶を取り出して鈴に投げ渡しながら答えた。

 

「おう!任せとけ!じゃあな鈴!」

 

俺は今の鈴ならちゃんと自分の想いを一夏に伝えられるだろうと確信を持てたので鈴に別れを告げて自分の部屋に向かって再び歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やべぇ...鈴と一夏が初戦で当たらないとほぼ不可能な事に今更気付いちまった...直ぐに千冬さんに相談しに行かないと...」




更識 簪の悩みを早々に解決するオリ主、開発でもそのチートスペックを発揮してしまうのかは次回以降で

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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20話 物語が変わった気がした

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回と次の話でかなり物語が動く予定です。

楽しんでいただければ幸いです。


---IS学園 第2アリーナ 観客席

 

簪さんの専用機開発と一夏の操縦訓練を手伝っている間にあっという間に5月になってしまい、とうとうクラス代表戦当日になってしまった。時間が経つのは早いな...

 

ちなみに今俺は簪さん、本音さん、セシリアさん、箒と一緒に観客席で一夏の出番を待っている。

 

「凄い人だな...1年生だけじゃなくて2、3年生もほとんど見に来てるんじゃないか?」

 

「代表候補生の専用機持ちと世界で2人しかいない男性搭乗者の1人が戦うんだから当たり前ですわ」

 

「簪さんの弐式も間に合ってれば参加出来たんだけどね...」

 

「流石に今日までに完成するとは思ってない...でも本体は8割方完成してるし武装も順調に出来てるから」

 

「弐式本体ならある程度は動かせるようにもなったしな」

 

「うん、本音と海のおかげ」

 

「えへへー」

 

こんなぽやぽやした本音さんがあんなに整備の腕がいいとは俺も思わなかった。実際に見た時はギャップが凄くて開いた口が塞がらなかった。

 

「海がよく訓練に遅れてやってくることは私たちも連絡を受けていたから知っていたが、まさか日本の代表候補生の機体開発を手伝っていたとはな」

 

簪さん達と話をしていると俺の後ろに座っていた箒が話しかけてきた。

 

「まあ色々と思うところがあってね、手伝ってるんだよ。それでも一夏は結構まともになったろ?俺が訓練メニュー作って渡してあったし」

 

「そうですわね、一夏さんが一番力を入れて練習していた【必殺技】は完成していますし」

 

箒に返答したら箒の隣のセシリアさんも会話に参加してきた。

 

「まあそれでも鈴はかなりやる気だしISも厄介だ、正直厳しいところではある」

 

「いかにして零落白夜を直撃させられるかが鍵ですわね」

 

「そうだな...」

 

「そんな拗ねたような顔してないで一夏を応援しようぜ箒、色々気になるのは分かるけどさ」

 

一夏と鈴の関係やらがまだ気になっているのか睨むような表情をしている箒に声をかける。

 

「わ、分かっている!それに一夏にそうそう負けてもらっては困る!」

 

「お、おう...なんか...頑張れ一夏...」

 

俺はピットで準備中であろう一夏に向けてエールと同情を送った。

 

———————————————————————

 

『織斑一夏、白式いきますっ!』

 

一夏が白式を纏ってカタパルトから飛び出してきた。既にアリーナには自身の専用機である【甲龍(シェンロン)】を纏った鈴が浮遊している。

 

『来たわね、一夏!今日は勝たせてもらうわ!』

 

一夏はアリーナ中央へ向かい鈴と向き合うと雪片弐型を展開して構えた。

 

『来たぜ鈴。でも勝つのは俺だ!勝った後に約束の事、ちゃんと教えてもらうからな!』

 

『嫌よ、説明なんてしたくないわ!』

 

『だから言ってんだろうが! 教えてくれりゃあ謝るって!』

 

『うるさい!この朴念仁!』

 

「何痴話喧嘩してんだ...あいつら...」

 

「まったくですわ...」

 

『誰が朴念仁だ!この貧乳!』

 

『言うに事欠いて貧乳!?もう絶対に許さない!絶対に許さないんだからぁぁぁ!』

 

鈴が叫ぶと同時に試合開始のブザーが鳴った。

 

両手に2本の青竜刀【双天牙月】を持って鈴は一夏に突撃していった。

 

『うおっ!?でも負けないぜ!』

 

一夏も手数で不利な相手に対して捌いてよく耐えている、多分タイミングを窺ってるんだろう。

 

『吹っ飛ばしてやるんだから!』

 

鈴が一度距離を離したとおもったら甲龍の非固定浮遊部位(アンロックユニット)の装甲部分が開き、内部に光が奔り同時に一夏が何かに殴られたかの様に吹っ飛ばされた。

 

『っ!?これが海の言ってた【衝撃砲】か!?』

 

一夏は体勢を何とか立て直して大き目に鈴から距離を取った。

 

鈴のISの事はもちろん調べていたので俺は一夏に衝撃砲の事を伝えていた。この装備は空間に圧力による砲身を作成して、衝撃を砲弾として打ち出す兵器である。まあ言ってしまえば兵器レベルにまで強くした空気砲なのだがこれが非常に厄介なもので弾丸から砲身まで全て空気なので全く見えない、つまり射撃位置の予測が不可能という代物だ。

 

『やっぱり海なら一夏に衝撃砲の事を教えてると思ってたわ、でもいくらこの武器の事が分かってても見えない攻撃を躱すことは出来ないでしょ!さっき貧乳って言ったこと後悔させてあげる!』

 

『そう簡単にはいかないぜ!』

 

一夏はスラスターを噴かして鈴に接近しようとする。おそらく散々練習したアレを決めるつもりだろう。鈴も一夏の軌道を予測して衝撃砲で妨害しようとしている。

 

会場のボルテージが最高潮になった瞬間、アリーナに突如【真っ赤な光】が降り注いですさまじい衝撃が走った。

 

———————————————————————

 

アリーナに降り注いだ【真っ赤な光】と衝撃によって瞬く間にアリーナは恐怖とパニックに包まれた。

 

「今のはビーム兵器!?しかもあの色は!?」

 

自分が見たビームの色にいやなものを感じながら俺は周りを見て箒達の安否を確認する。

 

「皆無事か!?」

 

「大丈夫ですわ!」「こちらも大丈夫だ!」「私とかんちゃんも無事だよ!」

 

「よしセシリアさんと簪さんと俺でISを展開して観客席の皆を守りながら避難誘導しよう!」

 

俺は専用機持ちの二人に指示を出しながら攻撃の正体を探ろうと空を確認した。

 

「マジかよ...」

 

そこには本来この世界には存在しない筈の機体、ガンダムOOに登場した擬似太陽炉搭載型の量産型モビルスーツGNX-603T【GN-X(ジンクス)】とガンダムXに登場した量産型モビルスーツNRX-009【バリエント】が5機づつ計10機存在していた。だが大きさはISと同じでありモビルスーツでは無いことが見て取れた。

 

「なんでGN-Xとバリエントが...」

 

もしかして束さんがまたやらかしたのか!?と思っているとバリエントは5機全てが一夏の方へ向かって行った。

 

「バリエントは一夏を狙ってるのか?じゃあGN-Xは?」

 

俺がそこまで口にした時何とも言えない悪寒と【俺がビームで狙われているビジョン】が見えた。

 

「っ!?」

 

俺は即座に夢幻を展開、新しく作成していたタワーシールドを展開し簪さん達の前に立って防御態勢を取った。

 

バシュウゥゥゥ!

 

その直後にビームが飛来しシールドに直撃して不快な音を立てた。

 

「怪我は...無いな良かった...」

 

「だ、大丈夫...ありがとう海」

 

「悪いけど簪さんはセシリアさんと皆を守りながら避難誘導をお願い、後これ使って!」

 

俺は夢幻の拡張領域から今自分が使っているタワーシールドよりは一回り小さいシールドを取り出して打鉄弐式を展開し終わった簪さんに渡した。

 

「使用許可はもちろん出してあるから!あとは頼むよ!」

 

「海さん!私も援護致しますわ!」

 

「ダメだ!奴らの狙いは多分俺だ!セシリアさんは簪さんと一緒に少しでもはやく避難が完了するように動いてくれ!」

 

なによりGN-Xのあの真っ赤なGN粒子は初期型の疑似太陽炉...強力な毒性がある...つまり奴らの武装で怪我をしたら100%そこから細胞異常が発生して命に関わってしまう!そんな状況下でセシリアさん達を戦わせる訳にはいかない!

 

「なんでこんなもんが...通信?千冬さんか!」

 

俺はGNーXの注意を引くためにアリーナの観客席から飛び出してアサルトライフルを展開、そのまま牽制射撃して空へ上がり通信を受けた。

 

『こちらは第2アリーナ管制室の織斑だ!武藤、どうするつもりだ!』

 

「敵の狙いは俺です千冬さん!それに敵の攻撃は簡単にアリーナのバリアを貫くだけの威力がある!だから俺が敵を引き離します!」

 

『勝手な事を!お前は危険に晒され続けるんだぞ!』

 

「それは分かってますけど皆を守るためにはこうするしかないんです!それと...ご迷惑をお掛けします!」

 

GN-Xが隊列を組みながらGNビームライフルをこちらに撃ってくる、正確な射撃だが躱せない事はない!

 

『くそっ!絶対に無事に帰ってくるんだ!分かったな!海!』

 

「了解ですっ!」

 

俺は千冬さんとの通信を切って戦闘に集中する。

 

「確かにGN-Xは性能は高い...それでもっ!」

 

俺はビームの嵐を大きく回り込むように避けながら少しずつ距離を詰めていきある程度まで近づいた所でグレネードを展開しビームにわざと当たるように放り投げた。

 

俺の予想通りにグレネードにビームが直撃して大きな爆発が起きて俺の姿を一瞬隠す、その間にショットガンを展開して一気に肉薄する、これでまずは1機だ!

 

しかし俺が倒そうとした機体はライフルを量子変換するとGNビームサーベルを展開し俺に向かって振り下ろしてきた。

 

「なっ!?なんて反応速度だ...だが武器を量子変換したという事はISという事は確定か...」

 

ショットガンを身代わりにして何とか避けることが出来たがこの反応速度では次のチャンスは中々来ないだろう...5機のコンビネーションが絶妙で中々隙が見つからない。それに原作だとこの出来事では敵は無人機の筈だけどこいつらはどうなんだ?確信が持てないのは辛いな...

 

「これはあいつに頼るしかないか?でも今世の中に晒すわけには...」

 

『海!聞こえるか!』

 

突然一夏から通信が入った。もしかしてバリエントにやられそうなのか!?

 

「どうした!?」

 

『こっちは三人で協力してなんとか2機は倒したぞ!あとそいつら機械だ!人が乗ってない!』

 

これはいい情報を聞いた...何とかなるかもしれない!

 

「分かった!サンキュー一夏!そっちも気をつけろよ!」

 

『おう!』

 

無人機と分かればこっちのもんだ、今持ってるもん全部くれてやる!

 

「夢現リミッター解除...全武装展開!」

 

俺は夢現にかけてあるリミッターを解除し現時点で作成してあるすべての武装を展開した。

 

「フルバーストは男のロマンだ!遠慮せずに全部持ってけ!」

 

俺が叫ぶと同時に展開されている全ての武装が火を噴いた。ミサイルは撃ち落とされていたがスナイパーなどは躱し切れていないようで少しずつ当たっているようだった。

 

「これでラストぉ!」

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

 

最後にグレネードランチャーを展開してありったけ撃ち込んだ、これで今あるまともな武装は全部弾切れだ、もうシールドとピストルとナイフしか残っていない。ダガ―ビットは他の武器の資材取りの為に解体したし、ピストルではほぼダメージは通らないだろう...実質攻撃手段はナイフだけだ。

 

「頼むからやられててくれよ...」

 

爆発の煙が晴れたので確認するとそこには2機のGN-Xが無傷で佇んでいた。

 

「もしかして残りの3機を盾にして防いだのか!?」

 

俺がシールドを構えたまま相対していると急に2機のGN-Xはアリーナに向かって飛んで行った。

 

「なっ!?待てっ!」

 

俺はGN-Xを追いかけてアリーナに向かって飛んだ。同時に束さんに通信を入れて今更だが機体について確認する。

 

「繋がった!束さん!あいつら何なんです!束さんが作ったんですか!?」

 

『かーくん!?束さんはあんな機体作ってないよ!分かったのはかーくんのエクスエクシアに酷似した動力源を積んでるってことと無人機ってこと!それとやつらが動き出したって事だよ!』

 

「なっ!?じゃあなんとか倒して調査用にパーツ持っていきます!それとエクスエクシア使うことになると思うので後で色々手伝ってください!」

 

「なっ...かーくんそれはまずっ...」

 

俺は束さんからの通信を切って、自分の手首についている腕輪を確認した。

 

「ごめんなさい束さん...今度ご飯作りますから!」

 

———————————————————————

 

<一夏視点>

 

俺と鈴と途中で援護に来てくれたセシリアの3人でなんとかあのよく分からない無人機を2体倒すことが出来たけどまだあと3機も残ってる...

 

「あーっもう!こいつらちょこまかしすぎて攻撃当たんないじゃない!」

 

「この速度ではティアーズも当てるのは難しいですわ...」

 

「くっ...どうすりゃいいんだ!」

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

 

「なっ何!?」

 

少し離れた上空から大きな爆発音が聞こえた、これは...海か!

 

「多分海だ!あいつは1人で戦ってるんだ!俺達も負けてられないな!」

 

それに今の爆発に反応してあいつら動きが少し鈍ってる!

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!」

 

俺は零落白夜を起動して一気に距離を詰めて3機の内の1機に切りかかった。当たると思ったけど寸前で躱されちまった...

 

「ここからだぞ!鈴!セシリア!」

 

「分かってるわよ!」「もちろんでしてよ!」

 

数の上では同じになったんだ絶対に勝てる!

 

「行くぞ!」

 

スラスターを噴かしてまた距離を詰めようとした瞬間視界が真っ赤になり俺は吹き飛ばされていた。

 

「なっ...何が...」

 

全身が痛いけどSEは無くなっては無い...なんとか空を見ると海が戦っていたはずのやつらが2体こっちにきて攻撃してきた。まさか海がやられたのか!?

 

「く...くそっ...」

 

鈴とセシリアも同時にやられたみたいだ...なんとかしないと...俺は守るって決めたんだ...!

 

「一夏ぁ! 男なら...男なら!そのくらいの敵に勝てずしてなんとする!」

 

アリーナのスピーカーから箒の大きな声が聞こえてきた。

 

「なっ!?箒!?どうしてそんなところに!」

 

箒の大きな声にあいつらも気付いてしまった。5体が一斉に箒のいる管制塔にライフルを向けているのが見えた。

 

「箒ぃ!逃げろぉ!」

 

俺は瞬時加速を使って箒の所で向かうがこのままじゃ間に合わない!ライフルに光が集まっていくのが妙にゆっくりに見えた。

 

「やめろおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

精一杯手を伸ばしても届かない...俺は誰も守れないのか?そう思った瞬間ハイパーセンサーが何かの反応を捉えた。

 

「させるかぁぁぁ!」

 

———————————————————————

 

<海視点>

 

GN-Xに追いついたと思えばバリエントとGN-Xがとある一点に武器を向けて発射しようとしているのが見えた。

 

「あそこに何かあるのか?っ!?箒!?」

 

ハイパーセンサーで確認すると残りの5機が武器を向けている先には箒がいることが分かった。

 

「エクスエクシアに切り替えてる時間は無い!だが妨害するための射撃武装も無い...庇うしかないか!」

 

俺は唯一残ったシールドを持って箒と敵の間に突っ込む。

 

「させるかぁぁぁ!」

 

俺がシールドを構えた瞬間に5機のビームライフルが正確にシールドの1点に直撃した。しかもシールドを貫通させようとしているのか連続で撃ち続けてきた。

 

「ぐっ...うおぉぉぉぉぉ!」

 

既にシールドが融解し始めて持ち手の部分もかなりの温度になっていた、命に関わるようなものでもないので絶対防御も起動せず、俺はジリジリと肌を焼く熱に耐えづづけた。

 

「おぉぉぉぉぉ...!」

 

実際には10秒ほどだったが永遠にも思えるような時間が経って俺はなんとか耐えきることが出来た。

 

「はぁ...はぁ...」

 

しかし唯一残っていたシールドは融解して使い物にならなくなり、両手の手のひらも大やけどで皮膚が剥がれている。それに最後の0.1秒で一瞬シールドをビームが貫通して左の脇腹に当たったのでそこも結構やられているようだ。絶対防御も起動しているが貫通したらしい...

 

「夢幻の...シールドエネルギーも...無くなったか...」

 

なんとか浮いていたが今地面に降りて丁度エネルギーも無くなったようだ...ごめんな夢幻...

 

《気...し..で...》

 

幻聴が聞こえるレベルで俺もヤバいようだ...それでもまだやるべきことは残っている...

 

「エクスエクシア...起動...」

 

俺は久しぶりに【蒼機兵】、エクスエクシアをその身に纏った。一瞬夢幻を解除したことによる左脇腹の激痛が俺の意識を刈り取ろうとして、更にGN-Xとバリエントが俺に向かって襲い掛かってくる。

 

「トラン...ザム...」

 

俺はトランザムを起動し一気に向かってきた5機を2本のGNブレイドで切り裂き爆散させた。いくつかパーツも回収する。

 

「後は...セキュリティを...」

 

俺が意識を手放してもエクスエクシアは誰にも渡せない...セキュリティを強に設定して一時的に俺の腕から離れないようにしておく。

 

「これ...で...」

 

なんとか設定し終わった直後にエクスエクシアは解除され俺は意識を失って地面に倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---秘密ラボ内

 

「くーちゃん!ヤバいよ!?何がヤバいってやばいんだよ!?かーくんがヤバいんだよ!?」

 

「深呼吸してください!束様!とにかくIS学園に向かって海様の治療をするべきです!」

 

「すーはー...そうだね!直ぐに行こう!直ちに行こう!今すぐ行こう!」

 

 




無人機騒動をかなり変えてみました。自分はガンダムが好きなのでガンダム寄りの話になっていくと思います。

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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21話 自分の運命が決まった

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回は色々と話が動くので最後まで見ていただけると楽しめると思います。

真の敵は一体何なのか?見ていただければ幸いです。


---IS学園 保健室

 

<一夏視点>

 

あれから俺達は海を保健室に連れて行って保健の先生に預けてからそれぞれ事情聴取を受けた。特に詳しく聞かれたのはあのよく分からない無人機の事と何故海が夢幻とは別のISを使ったのかということだった。

 

今は皆事情聴取を終えて保健室で海が目を覚ますのを待っている。箒だけは数日間の謹慎になってしまいこの場にはいないが...

 

「それにしても海のあのISはなんだったんだろうな?」

 

「そうですわね...急に全身が赤く光ったと思ったらあれだけ私達が苦戦した無人機を一瞬で5機撃破してしまいましたし、なによりあれは『白騎士・蒼機兵事件』の蒼機兵そのものでしたわ...」

 

「やっぱりそうよね...どこからどう見ても散々教科書や資料で見た蒼機兵だったわ...でも『白騎士・蒼機兵事件』は私たちが小2の時に起きてるのよ?私達と同い年の海が当時から使っているとはとても思えないわ...」

 

「でも当時から使ってるんだったら海のあの強さにも納得がいくぜ?」

 

俺がそこまで言ったところで皆黙り込んでしまった...正直俺もあいつのことがよく分からなくなってきた...

 

「っ...んっ...」

 

「海っ!目が覚めたのか!」

 

俺達が下を向いて黙り込んでしまったタイミングで海が目を覚ました。とりあえず無事でよかった...

 

「ふぅ...悪いな一夏、心配かけて」

 

「ほんとだぜ!もう勘弁してくれよ海!」

 

海は自信の腕についている腕輪を確認して安心したような表情をしていた。

 

「な、なあ海「失礼するぞ」」

 

「あ、織斑先生お疲れ様です...」

 

「千冬姉...」

 

「織斑先生だ、まあ今はいい、お前たち悪いが席を外してくれないか?これから武藤にも事情聴取をしないといけないのでな」

 

「分かりました、一夏行くわよ?」

 

「あ、ああ、分かった」

 

俺は海の事が最後まで気になったが千冬姉に言われたので保健室から出て別の場所で事情聴取が終わるのを待つ事にした。

 

———————————————————————

 

<海視点>

 

「お疲れ様です織斑先生。こんな状態で申し訳ないですけど...あと人払い感謝します」

 

「それは大丈夫だ、しかし...」

 

「使ってしまったことは謝ります、それでもあの状況ではああするしかありませんでした」

 

「だがこれでお前は更に世界中から狙われることになるんだぞ!それでいいのか!?」

 

「俺の事は大丈夫です、それに俺が注目されて一夏がその分平和に暮らせるならそれが一番なんですよ」

 

「お前の...お前自身の幸せは何処にあるんだ?」

 

「世界を今の歪みだらけの状態に変えてしまった俺に幸せを求める権利はありませんよ、あ、織斑先生、束さんが来るみたいです」

 

「なっ!?ちょっと待て!?そんな急にあいつに来られたらこちらはこm「かーぁぁぁぁくぅぅぅぅん!」束!」

 

俺が来ると言った3秒後には束さんが窓に張り付いて俺の名前を連呼していた。窓を開けるとあっという間に入ってきて束さんは俺に飛びついて抱きしめてきた。

 

「かーくん大丈夫!?あーもう...こんなにボロボロになっちゃって...ダメだよあんな無茶したら!ほら!腕も脇腹も治してあげるから上の服脱いで!」

 

「たばっ...苦しいですっ...束さん、言う事聞くんで離してくださいっ...」

 

「またお前は急に...せめて私にも連絡を入れておいてくれ...」

 

「やっほーちーちゃん、悪いけど今回は緊急だったからね大急ぎで来させてもらったよ」

 

俺は束さんに言われた通りに服を脱ごうとする。

 

「あっ...いててて...」

 

「そうだ、かーくんは両手のひらが大やけどで皮膚がはがれちゃってるから服が脱げる訳ないね...ちーちゃん、悪いけどかーくんの上脱がせてあげて」

 

「あ、ああ...」

 

「すいません織斑先...千冬さん...」

 

「大丈夫だ...だが無理はしないでくれ...お前だって弟の様に思っているのだから...」

 

「善処します...」

 

「さてさて、じゃあ束さんがぱっぱとかーくんを治してあげよう!」

 

束さんはどこからか取り出した小型のスキャナーのようなものを俺に当ててきた、どうやら俺の身体のチェックをするらしい。

 

「うんうん、この傷なら束さんが開発したこのナノマシンで直ぐに治るね!」

 

束さんは有無を言わせずに俺にナノマシンを注射してふんすっとドヤ顔していた。

 

「相変わらずですね...まあ治療してもらってる身ですからこれ以上何も言いませんけど...」

 

「ふふん、束さんに不可能は無いのだ!あとは軽く全身のチェックをしておいて...って...え?」

 

「どうかしましたか束さん?」

 

「何これ...かーくんの脇腹の傷から細胞異常が起こってる...こんなの見たこと無いよ!現時点で完治は...不可能!?そんな!このままじゃかーくんが...」

 

やっぱりGN粒子の毒性は残ってたか...箒を庇った時に脇腹に食らったビームライフルからやられたらしい。

 

「あー...束さん...その細胞異常、原因は分かってるんです...そしてあのビームで直接怪我をした以上こうなることも分かってました。」

 

「なっ...どうゆうことなのかーくん!」

 

「あの無人機は俺が転生する前の世界で俺が好きだったアニメに登場していたロボットなんです、まあエクスエクシアも同じですけど...それであの赤いビームを撃っていた方の機体が出していた赤い粒子...あれはエクスエクシアと同じGN粒子なんですがエクスエクシアの物と違い強い毒性を持っています、それこそテロメアを破壊したり細胞異常を引き起こすような...」

 

「そんな...でもかーくんが知ってるってことは治す方法も知ってるんでしょ!?それを束さんに教えてくれればどんなに難しくても再現して治せる筈だよ!」

 

「それが駄目なんですよ...確かにそのアニメで細胞異常になった人は主人公の力と機体によって治りました、でもアニメ特有のオカルト現象のようなもので治っていたので正確な方法は分からないんです...俺のエクスエクシアと同じGN粒子が高濃度に圧縮された状態で空間に広がった時に治ったという曖昧なことしか分からないんです...」

 

「それでも私は諦めないよ!かーくんは私と一緒に夢を叶えるんだからこんなところで死んで良い訳が無いんだ!」

 

「束っ!行ってしまった...」

 

「まあ束さんですから...それに俺も駄目とは言いましたけど、なんだかんだで天災の束さんに頼って期待してしまっているのは事実ですし...あ、ナノマシンのおかげで明後日には授業に復帰できると思いますけど細胞異常の事は一夏達には秘密でお願いします。」

 

「海...分かった...だがこれ以上の無茶はするな...ただでさえエクスエクシアを世の中に晒してしまって世界中のお前に対する注目度が上がって危険なんだ...各国から情報開示の要求も来ている」

 

「それはもちろん手伝いますし対応しますよ、もちろんデータを渡すことはしませんが」

 

「そうだな...お前の機体は私にも分かるぐらい今の世界には早すぎる代物だ...」

 

「すみません...ではそういうことでお願いします...ちょっと疲れてきたので一度寝ますね...」

 

「ああ、今はゆっくり休んでくれ...海...」

 

俺はそのまま気絶するようにまた眠りに着いたのだった...

 

———————————————————————

 

---IS学園 地下

 

<三人称視点>

 

千冬と麻耶は特定の権限を持つ人間しか入れないIS学園地下の解析専用区画にいた。

 

「解析は終わったか?」

 

「はい、2種類の無人機の内片方の動力源がどうやら電波をかく乱する効果があるようで苦戦しましたが何とか解析が終わりました。」

 

メンテナンス用の台座に置かれている2種類の無人機の残骸を千冬は恨みの籠った視線で見ていた。

 

「この無人機のコアなんですが、疑似コアともいえるようなものでした」

 

「何っ!?ではこれはISではないのか!?」

 

「いえ...コア以外は正真正銘ISと呼べるものでした、疑似コアも一定時間しか動かない事を除けばほぼ本来のコアと言っても遜色ないものですし」

 

「こんなものが出回ったら最悪戦争だな...」

 

千冬はここから先の事を考えて溜息をついた。

 

自分の弟弟子を傷つけたこんなものを作ったやつらには今すぐ報復してやりたい...一瞬そんな思考に駆られたが...

 

(お前が責任を負うというなら私もそうしよう...私も世界を変えてしまった一人なのだから...)

 

無人機の残骸を見ながら千冬は一人決意するのであった。

 

———————————————————————

 

---IS学園1年1組教室

 

<海視点>

 

クラス代表戦から数日後、未確認機の襲撃についてIS学園では箝口令が敷かれていた。

 

しかし、俺の【蒼機兵】ことエクスエクシアについては一部の目撃者から情報が既に漏れていたようでIS学園に対してあらゆる国から俺の情報を開示するように求める要求が再三来ていた。

 

まあそれも束さんの「これ以上かーくんに迷惑かけるなら世界中のISコアを止めるから」という声明により来ることは無くなったが...

 

ちなみにこれで俺が束さんと関係を持っていることが世間に知られたため俺の家族を人質に俺を介して束さんを確保しようとする国も現れたがもちろん対策済みである。俺の家族は束さんの協力で新しく建てた月兎製作所の施設内にとっくに引っ越しているのだから。

 

なお俺の家族を人質にしようとした国は束さんが「おしおきー!」とか言いながらその国のただでさえ数の少ないISコアを停止させた為、再び動かしてもらう為に日本を通じて平謝りしながら莫大な金を支払ったとかなんとか...

 

学園内については千冬さんが動いてくれたようで今の所接触されるようなことは無かった。

 

それで現在俺自身はと言うと...

 

「周囲の視線が痛い...」

 

怪我から復帰してクラスに戻ったのはいいが俺があの【蒼機兵】であることがほぼ確定したのでなんだか距離を置かれている。ちょっと寂しい...

 

「おっす!怪我治ったみたいだな海!」

 

「なんとかな...心配かけて悪いな...」

 

周りが俺への対応に困っている中一夏はいつもと変わらない調子で俺に話しかけてきた、こうゆう時の一夏はほんと良いやつだな...心に沁みる...

 

「みなさん、おはようございます。」「おはよう」

 

俺が一夏という存在のありがたさを噛み締めていると山田先生と千冬さんが教室に入って来た。

 

「では朝のホームルームを始めようと思いますが、その前に転校生を紹介します!しかも2人です!」

 

あ、そういえばクラス代表戦の後ってあの2人が転校してくるんだっけか...俺自身が怪我してて一杯だったから忘れてたな...

 

もう原作知識なんてほとんど当てにならないけどあの2人は原作と比べて変わってたりするんだろうか?...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-- ???

 

「大将、やっこさんあんたの計画通りに細胞異常に罹ったみたいだぜ?」

 

「手間をかけさせたね、報酬は振り込んでおくよ」

 

「大将は俺の大事なスポンサーだ、好きに使ってくれ」

 

「そうだったね、まあこれからしばらく動くつもりは無いから好きにしているといいよ」

 

「分かったぜ大将」

 

「さあ、この世界で今度こそ始まるよ...本当の人類の未来が...」

 

「君達兄弟も好きに動くといい、僕が全面的にバックアップしてあげよう」

 

「フッ...癪に障る言い方だが遠慮なく頼らせてもらうとしよう、我々も動くぞ弟よ」

 

「そうだね兄さん、これは僕らが求めた戦争だ」




というわけで主人公には細胞異常を患って貰いました。

主人公がチートでも怪我はもちろんしますしこれから先負けないとも限りません。

最後のやり取りは分かる人なら一瞬で分かった筈!

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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学年別トーナメント編
22話 主人公の身代わりになった


いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

お気に入り登録500件ありがとうございます!

今回から学年別トーナメント編に入ります。ここから話の流れも原作との相違点が結構出てくると思いますが楽しんでいただければ幸いです。


--- IS学園1年1組教室

 

急に転校生が来るということでクラス中が一気にザワついた。まあそりゃそうだろうな。気にならない方がおかしいわ。俺も原作を知ってるから落ち着いてるだけで知らなかったら気になるもんなぁ...

 

ただ知っているからこそいくら千冬さんが担任をしているとはいえ専用機持ちを1組に集中させているのはいかがなものかと思うが...

 

「失礼します」「.........」

 

俺が思考の海に浸っていると転校生の2人が教室に入って来た。

 

1人は金髪で中性的な見た目をしていて、もう1人は銀髪で眼帯をしたクロエに似た美少女だった。

 

「フランスから来ました、シャルル・デュノアです。日本では色々と不慣れな事も多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」

 

最初に金髪の中性的な子が自己紹介をして頭を下げた...まあ男子用の制服を着てるから今は美少年という事にしておこう...

 

でも肉の付き方とかやっぱり男っぽくないよなぁ...

 

「おっ、男……!?」

 

少しの沈黙の後、相川さんが声を出した。

 

「はい、既に僕と同じ境遇の方が2人いらっしゃるとの事でこちらに...」

 

「やっべ...」

 

俺は来るであろう衝撃に備えて耳をふさいだ。その直後...

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

「男子!男子よ!織斑君、武藤君に続く3人目!」

 

「王子様系きたぁ!守ってあげたくなっちゃう!」

 

「優しいイケメンの織斑君、闇ありクールイケメンの武藤君、そして守ってあげたい王子様イケメンのシャルル君!」

 

「勝った!第三部完!」

 

相変わらず凄い盛り上がりようだな...俺そんなにクールで闇ありそうか?あと最大のフラグ立てたの誰だ?それマジで回収されんぞ?大体3人目の男性操縦者なんて出たら速攻で世界中に話が広まってるだろうに...

 

「静かにしろ」

 

千冬さんの一声でクラスメイトの女子達の完成は一瞬で静まった。千冬さんはまた溜息をついている、本当にお疲れ様です。

 

「それでは自己紹介のほうお願いしてもいいですか?」

 

「......」

 

銀髪眼帯美少女は山田先生の言葉を無視して無言で突っ立っていた。

 

「挨拶をしろ、ボーデヴィッヒ」

 

「はい、教官」

 

千冬さんの声に銀髪眼帯美少女は佇まいを直して敬礼を向ける。流石軍人だ、様になってるな。

 

「ここではそう呼ぶな、私は教官ではない。それにお前もここでは軍人ではなく代表候補生、そして一介の生徒だ、私のことは織斑先生と呼べ」

 

「了解しました」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

そして再び口を閉じる。彼女の様子に山田先生は混乱しているようだ。

 

無言のままラウラはクラスを見回してきた、そして俺と目を合わせると一瞬彼女の顔に怒りが浮かんだように見えた。

 

そしてそのまま、真っ直ぐ俺の方にやってきた。

 

「貴様が、武藤海か?」

 

「確かに、俺が武藤海だが初対面の人間にいきなり貴様呼ばわりはどうかと思うぞ?」

 

そして俺は目の前の少女から振るわれた右手を掴んで受け止めた。

 

「くっ...貴様は力を持っていながら教官の弟を守れなかった!だから教官は2連覇を逃したんだ!私はお前を絶対に認めない!」

 

成程...俺が【蒼機兵】であることがばれた結果、当時からISを持っていたにもかかわらず一夏ともども誘拐された俺に矛先が全部向いたわけだ...まあ原作と違って一夏が過ごしやすくなるならいいか...

 

「お前もISを扱う軍人なら当時の状況を理解できると思うけどな...」

 

「やめろボーデヴィッヒ、武藤もあまり煽るな、各自着替えて第2アリーナに集合しろ。今日は2組との合同のIS操縦訓練だ、織斑、武藤、デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」

 

「分かりました」

 

千冬さんの言葉でクラスの皆はそそくさと授業の準備を始めて、ボーデヴィッヒも俺の事を睨みながら離れていった。

 

「あいつ本当の事も知らないで...大丈夫か?海」

 

「大丈夫だ、それよりも早く行こうぜ、じゃないとまた囲まれて遅刻して怒られる3連コンボだぞ?」

 

「それもそうだな、早いとこアリーナに向かうか」

 

「君達が織斑君に武藤君?初めまして、僕はシャルル...」

 

「自己紹介は移動した先で聞くよ、急ぐぞ一夏!」

 

「おう!」

 

「俺が先行するから一夏はデュノアを頼む!じゃあ行くぞ!」

 

俺達は学園中の女子生徒を躱しながらアリーナに向かった。

 

———————————————————————

 

---IS学園 第2アリーナ 更衣室

 

途中で2年生の先輩方に囲まれそうになったものの何とか俺達三人はアリーナの更衣室に着くことができた。

 

「なんとか授業には間に合いそうだな...」

 

「そうだなぁ...流石に慣れたけど疲れるもんは疲れるよなぁ...」

 

「ふ、二人とも凄いね...授業の度にこんなことしてるの...?」

 

「まあISの操縦訓練の時はいつもこうだな、なぁ一夏?」

 

「そうだな、早いとこ慣れないと大変だぜ?」

 

「わ、分かったよ...」

 

会話しながら着替えて俺達は何とか授業に間に合わせることが出来た。ちなみに一夏が上の服を脱いだのを見た時の反応が俺から見ると明らかに女子だったのでやはりシャルル・デュノアは女で確定だろう。今のうちにさん付けを意識しておこう。

 

———————————————————————

 

---IS学園 第2アリーナ

 

「全員揃っているようだな」

 

今は織斑先生の前に整列して待っている。女子の中で2人だけ男子が混ざってると流石に目立つな...

 

「では、本日から格闘及び射撃を含む本格的な実戦訓練を開始する」

 

「「「はい!」」」

 

「今日は戦闘を実演してもらう。丁度専用機持ちが複数人いることだしな。凰!オルコット!あと武藤!」

 

何故か俺も呼ばれたな...てっきり原作と同じように山田先生対鈴とセシリアさんになるものだと思い込んでいたから少しビクッと反応してしまった。もしかして俺が一人でやるパターンか?

少し大変だな、まあ負けることは無いだろうけど...

 

「武藤はISを展開せずに少し待て、凰!オルコット!まずはお前達からだ!...もう少しお前達二人はやる気をだせ、あいつに良いところ見せるチャンスだぞ?」

 

俺は待機らしい、いったいどうゆう意図があるんだろうか?それに織斑先生はわざわざ二人に近づいて何を言ったんだろうか?

 

「分かりました!覚悟はいいですか鈴さん?」

 

「セシリアこそ油断して私に叩き落されないようにね!」

 

急に鈴とセシリアさんがやる気出したな、十中八九一夏がらみだなこりゃ...

 

「慌てるな馬鹿共。対戦相手は...」

 

「よ、避けてくださぁぁい!」

 

山田先生の声が上から聞こえると思ったらラファール・リヴァイヴに搭乗した山田先生が降ってくるのが見えた。どうやら体勢を崩してこちらに落ちて来ているようだ。このままだとこっちに突っ込んでくるので正直かなり危ない。だが夢幻ではスラスターを噴かしながら飛んでくるISを受け止めるだけのパワーは無いし...

 

「はぁ...情報を渡さないと決めたばかりでこれか...」

 

俺はエクスエクシアを瞬時に展開、パニックになっている山田先生を受け止めて地面に着地して直ぐにエクスエクシアを解除した。

 

「大丈夫でしたか?山田先生」

 

「はっはい!大丈夫です!ありがとうございました武藤君」

 

「なら良かったです」

 

俺は山田先生が無事な事を確認して元の場所に戻った。エクスエクシアを使ったことで皆驚いていたがあの状況では仕方なかっただろう。

 

「問題はあったが授業を再開するぞ、凰とオルコットは山田先生と1対2で戦ってもらう」

 

「え?流石にそれは...」

 

「安心しろ小娘共、今のお前たちなら直ぐ負ける」

 

織斑先生の挑発が見事に決まり鈴とセシリアさんはかなりやる気になったようだ。こちらにも届くような闘志を感じる。

 

「では...開始!」

 

号令と同時に鈴とセシリアさんが飛翔する。山田先生も空中へと躍り出た。

 

「さて、今の間に...デュノア、山田先生が今使っているISの解説をしてみろ」

 

「分かりました。山田先生の使用されているISはデュノア社製のラファール・リヴァイヴです。第二世代機としては最後期の機体ですがその特徴は...」

 

シャルルさんのラファール・リヴァイヴの説明を聞きながら上空の戦いを見ていたが結果は原作と同じだった。

山田先生の射撃に誘導されたセシリアさんが鈴と激突、そこに山田先生がグレネードを投擲、セシリアさんと鈴が煙の中から地面に落下と山田先生の完勝だった。

 

負けた二人はお互いに「無駄に衝撃砲を撃つからいけないのですわ!」「何ですぐにBT兵器を出すのよ!エネルギー切れ早いし!」とそれぞれのミスを指摘しながら言い合いをしていたが織斑先生が出席簿アタックで両成敗して止まった。

 

「これでIS学園の教師の実力は理解出来ただろう。以後は敬意を持って接するように。さて次は武藤だが、お前には山田先生、凰、オルコットと3対1で戦ってもらう、機体は蒼機兵を使ってくれ」

 

あっ...まさかまさかの3対1パターンですか...きっと各国から圧力がかかったんだろうな...束さんがあれだけの宣言をしたのに勇敢な事で...

 

「すまないな武藤、今回でちょっとした戦闘データさえ取れれば圧力をかけてくる国を黙らせることが出来るから今回だけ手伝ってくれ」

 

どうやら俺の予想はドンピシャだったみたいだ...千冬さんにも迷惑かけちゃってるなぁ...

 

「そうゆう事なら仕方ありませんね、他の皆はこの模擬戦は記録媒体等でデータを取ることは遠慮してくれ、もっとも織斑先生以外は記録すら取れないだろうけど」

 

俺は周りの人間全員に軽く牽制してからエクスエクシアを即座に展開した、もう殆ど自分の身体の一部と言っても過言ではないほど使っているので展開には0.5秒もかからないぐらいだ。

 

「遠巻きに見たことはあったけどこの距離では初めて見るわ...それが蒼機兵...」

 

補給から戻って来た鈴が俺の事を何とも言えない表情で見てくる、セシリアさんや一夏、山田先生も同じような表情で見てきていた。

 

「GNシステムリポーズ解除...GN粒子の散布開始...各武装をリミットモードに設定...いつでも大丈夫ですよ、織斑先生」

 

「分かった、残りの3人も準備は良さそうだな...では...開始!」

 

俺は号令と共に一気に飛び上がり、山田先生、鈴、セシリアさんも着いてきた。

 

「いくら海さんと蒼機兵といえども第一世代機、そしてこちらは3人で山田先生もいますわ、流石に勝てないのでは?」

 

「心配ご無用だ、セシリアさん、いつでもどこからでもかかって来てくれ、それと...見失うなよ?」

 

「それはどうゆう...」

 

「オルコットさん攻撃を!」

 

流石に山田先生は即座に反応したようだが本人が反応できなければ意味はない...俺はスラスターを一気に噴かしてセシリアさんに接近、喉元にGNビームサーベルを突きつけた。距離的に山田先生は間に合わず、鈴は反応が完全に遅れたようだ。

 

「はい、セシリアさん一回アウト」

 

「なっ...早すぎてハイパーセンサー越しでも反応出来なかった...これが蒼機兵...」

 

「だから言ったろ?見失うなよって、次からは当てるからちゃんと連携して対応して?」

 

俺はセシリアさんから離れながら警戒するように注意した。

 

「分かりましたわ、これからはしっかりお二人と連携して本気でいかせてもらいます!」

 

「それでいい...負ける気は無いけど...」

 

そこから激しい戦いが始まった。遠距離からセシリアさんが攻撃してきて、近距離で鈴がプレッシャーを与えてくるのを山田先生がフォローしてくる。普通の操縦者と機体ならあっという間に落とされるような連携が出来上がっているが、残念ながら相手はキャリア7年でオーバーテクノロジーの塊を動かしている俺だ。

 

「くっ...3人で攻撃してるのに全然当たる気配が無いじゃない!どうなってんのよ!」

 

「流石は蒼機兵といったところでしょうか...オルコットさん、鳳さん!私が一度かく乱しますので一瞬下がってください!」

 

山田先生が前に出ておそらく目くらまし目的であろうグレネードランチャーを撃ってきた。

 

「成る程、確かに理に適っている...でもそれじゃあ俺に隙は作れませんよ」

 

GNショートブレードを即座に装備しあらかじめ来る気配が分かって(・・・・・・・・・・・・・・)かつ意識を感じた(・・・・・・)場所に振るうとグレネードランチャーの弾が真っ二つに切れて俺の後ろで爆発した。

 

「なっ...グレネードランチャーを接触起爆させずに切るなんてなんて切れ味...それに撃たれる場所が分かってたみたいな太刀筋...」

 

鈴は俺の行動に驚いているようだ...正直自分自身でも驚いているが...今の俺はXラウンダーとニュータイプとしての能力が強いみたいだ、これだと戦闘力は高いけど細胞異常は治せないだろうな...

 

「くっ...ティアーズで牽制を!」

 

セシリアさんが少し焦ったのかBT兵器で俺を包囲しようとするがブルー・ティアーズから展開されたBT兵器はいつもよりかなり動きが鈍かった。

 

「ティアーズが動きにくい!?どうして!?」

 

イメージインターフェイスでも無線兵器はそれなりにGN粒子の影響受けるんだな...初めて知った。

 

「悪いけどそれは企業秘密、それとまずは一人目!」

 

俺は姿勢制御とスラスターを駆使しながらGNソードを展開しつつセシリアさんに接近し一閃、そのまま蹴り飛ばして地面に叩き落した。

 

『ブルー・ティアーズSE残量0!』

 

「そこですっ!」

 

山田先生が隙を狙って背後からアサルトライフルを撃ってきた、これはエクシアの装甲なら全くダメージにはならないが数発は当たってしまうしSEは減るな...仕方ないトランザムを見せるよりはこっちを一瞬見せる方がマシか...

 

GNフィールドを展開して銃弾を弾いてから俺はGNソードをライフルモードにして振り向く

 

「防御フィールド!?そんなものまで付いてるんですか!?」

 

「流石山田先生ですね、次はこっちから行きます」

 

GNソードライフルモードからビームを撃ちながら左手にシールドバスターライフルを展開し更に手数を増やしていく。流石に元代表候補なだけあってしっかりと反撃しながら回避してくるが想定内だ。

 

「中々の弾幕ですが対応は出来ます!鳳さん!今のうちに接近戦を!」

 

「わ、分かりました!」

 

山田先生の合図で鈴が接近してくる、しかしそれも織り込み済みで俺は既に背部のサテライトGNキャノンを起動して構えた。この武装は月が出ていなくてもGNキャノンとして使用できる。

 

「もっと早くに接近戦を仕掛けるべきだったな」

 

俺は接近してくる鈴と山田先生が丁度重なるタイミングでサテライトGNキャノンを構えた、もちろん出力はかなり抑えてあるので危険はない、それでもSEはほぼ無くなるだろうけど...

 

「なっ...変わったカスタムウィングだと思ったけどそんな武装まであったなんて...」

 

「山田先生と鈴には悪いがこれでチェックメイトだ」

 

俺はそう言ってサテライトGNキャノンを発射した。

 

放たれたピンク色の奔流が鈴と山田先生を飲み込みアリーナのシールドに当たって弾け飛んだ。

 

『甲龍、ラファール・リヴァイヴ共にSE残量0!』

 

俺が3人を圧倒して模擬戦を終わらせた時、アリーナは鈴達の時のような歓声ではなく、誰かが息を飲む音だけが聞こえる静寂に包まれていたのだった...

 

———————————————————————

 

模擬戦の後、専用機持ちをリーダーとしてグループに分かれてISへ搭乗、歩行の実習を行うことになった。一夏とシャルルさんの所に多くの女子が集まり千冬さんが一括して散らせていた。

ちなみに俺の所にも来る人は来ていたがどうもさっきの模擬戦で2組の女子からは畏怖の対象になってしまったらしい...分かっていたけどちょっとショック...

 

「よろしくね~むっきー」

 

「私もよろしく!武藤君!」

 

「よ、よろしく...」

 

俺のグループの人も本音さん含めて全員集まっていたので実習を始める事にした。1組と2組半々で俺に対する反応も半々といった感じだ。

 

「まずは使うISを持ってくるけど打鉄とラファールならどっちがいい?早めに決めないと他のグループに持っていかれちゃうから」

 

「じゃあ使いやすいから打鉄で!」

 

「はいよー」

 

俺はささっと打鉄を荷車から回収してグループの前に置いた。ちなみに今は夢幻を纏っている、襲撃事件で一度SEが空になり武器もほとんど無くなったものの、本体に大したダメージは無かったので動かしても問題は無かった。もちろん今日の放課後にメンテナンスをする予定だが...

 

「じゃあ出席番号順にやっていこうか、まずはISに搭乗してみて?」

 

「分かった!」

 

ISに乗ってもらった後は俺が手を引いて一緒にグラウンドのコースをぐるっと歩いて一周した。

 

「どうだった?ISに乗った感想は?」

 

「うーん、初めてだったからなのもあるけど難しかったなぁ...」

 

「まあ最初はそんなもんだよ、だんだん慣れてくるから大丈夫」

 

「そうゆうものなんだねー、じゃあ私は降りて次の人に変わらないと!」

 

「あ、降りるときは片膝をついてしゃがんでから...って遅かったか...」

 

「え?どうしたの武藤君?」

 

「学園の訓練機は待機形態に出来ない様になってるから降りるときはしゃがんで降りないと次の人が乗れなくなっちゃうんだよ...」

 

「あー...ごめんね...」

 

「さてどうしたもんか...」

 

俺が棒立ち状態の訓練機を見ながら考えていると後ろから歓声が聞こえたので振り向くと同じように棒立ちになっている訓練機に乗ろうとしていた女子を一夏が抱きかかえて乗せているのが見えた。

 

「マジか一夏...」

 

訓練機の方に向き直ると主に1組の女子が俺の事をキラキラした目で見てきていた。

 

「悪いけど人数的にギリギリだからみんなが期待してることはしないよ?夢幻の夢現を台にすれば高さは十分足りるから実習続けるよ?」

 

俺に期待していた女子はがっかりしていたが実習を授業の時間内に終わらせることが優先なので譲れない。そして本音さん、君もそんな顔するんじゃない...

 

「ほら次の人どうぞ?」

 

俺が促してから実習は次々と進んで、俺の班はなんとか時間内に全員終わらせることが出来たのだった。

 

———————————————————————

 

実習が全員終わり、訓練機を片付けたあと織斑先生が解散の号令をかけて授業が終わったので訓練機を片付けて俺達は更衣室に向かおうとしていた。

 

「海、シャルルお疲れ、次もあるしさっさと着替えに行こうぜ」

 

「そうだなー、さっさと行くか」

 

「あ、僕はちょっと自分の機体を調節したいから先に行っててよ」

 

「そっか、分かった、行くぞ一夏」

 

「いや、俺は待ってても大丈夫だぞ、待つのは慣れてるし」

 

「シャルルさんが先に行っててくれって行ってるからこうゆう時は素直に先に行くもんだぞ、ほら」

 

俺は一夏を引っ張り更衣室に向かった。女の子と一緒に着替えさせる訳にはいかない。

 

「うおっ!?お、おい!引っ張るなよ海!」

 

「じゃあまた後でなー」

 

「あはは...また後でね...」

 

更衣室に着いて着替え始めると一夏が少し不満そうな顔をしていた。

 

「どうした一夏?そんな顔して」

 

「海が無理矢理引っ張ってくるからだろ!」

 

「まあまあそういうなって、お前昼は箒や鈴達と約束してたんじゃないのか?」

 

「そうだったぁ!サンキューな海!でもそれなら早く言ってくれよぁ...」

 

「お前の用事なのに俺がいちいち指摘してたらおかしいだろうが...分かったらさっさと行くこった」

 

「おう!ありがとうな海!」

 

着替えが終わって二人で更衣室を出た後、一夏は箒達を探しに足早に教室に向かって行った。俺は俺で簪さん達の所に行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本音...どうしよう...私まさか海が蒼機兵だなんて思わなかった...」

 

「ん~?それは私もそうだけどかんちゃんどうしたのー?」

 

「だって蒼機兵は私の憧れで...目標で...それが実はルームメイトで...」

 

「あ~そういえばかんちゃんあのロボット見たいな見た目で凄い好きになってたもんね~」

 

「今日もこれから海とご飯だけど私どんな顔して海に会えばいいの!?」

 

「今までと同じじゃだめなの~?」

 

「それが出来たら苦労しないよ!」




オリ主には一夏の代わりにラウラに憎まれる対象になってもらいました。

どんどんストレス溜まるなこのオリ主...

このオリ主に対する環境がどんな影響を与えてくるのかは今後をお楽しみに!

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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23話 忘れた頃に油断した

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

最近見てくれる人が増えて嬉しい限りです!

今回は主に簪との話になります。


---IS学園 食堂

 

俺は一夏と別れた後食堂ですっかり定着した面子である簪さんと本音さんとご飯を食べていた。

 

「簪さん、今日の弐式の開発作業の事なんだけど...どうしたの?」

 

「なっなんでもないっ!」

 

「本当に?さっきから目を合わせてくれないし...俺簪さんの気に障るようなことしちゃってたかな...」

 

「ちっ違うの!そうじゃなくて...えっと...その...」

 

「その?」

 

「サインください!」

 

簪さんは突然俺に向かってマジックと色紙を何処からともなく取り出して突き出しながらサインを求めてきた。いや何故?

 

「...どうして急に俺なんかのサインが欲しくなったの?」

 

俺は止まりかけた脳を何とか動かして簪さんに聞いてみた。

 

「...なの...」

 

「え?」

 

「蒼機兵は今の私の一番の憧れなの!」

 

「ヴぇっ...!?」

 

「あ、むっきーが珍しく固まっちゃった」

 

俺は簪さんの急なカミングアウトに思考が完全に停止し情けない声と共に固まってしまった。

 

「おーい、むっきー大丈夫ー?」

 

本音さんが俺の目の前で手を振っている。

 

「...っは!?」

 

「あ、戻って来た」

 

「ごめんあまりにもびっくりして固まっちゃった...えーっと簪さんの今の憧れが蒼機兵で、つい先日篠ノ之博士からの発表もあって俺が蒼機兵であることが判明したから簪さんは俺に話しかけづらくなって何とか話したけど思わずサインを求めてしまったと...」

 

「そ、そんなに事細かに口にしないで...恥ずかしいから...///」

 

「あ...ごめん簪さん、でも俺...蒼機兵に憧れるのはやめた方が良いよ...」

 

「えっ...?どうして?」

 

「簪さんみたいな真っ直ぐ生きている人が憧れていいような存在じゃないんだ...蒼機兵も...俺も...」

 

「で、でも...」

 

「俺なんかよりもっと簪さんのヒーローにふさわしい人間はいるさ...さて改めて今日の弐式の開発作業についてなんだけど...」

 

簪さんの話を切って俺は別の話を始めた。俺みたいな血濡れの人間は誰かの目標にも憧れにもなっちゃいけない...

 

———————————————————————

 

---IS学園 整備室

 

午後の授業は座学だったため特に問題なく終わって俺は簪さんの弐式の開発の為に整備室に来ていた。

 

「昼に言った通り悪いけど俺は夢幻の整備をするから少し時間を貰うよ」

 

「うん、分かった...」

 

まず俺は昼に二人に伝えた通りに夢幻の整備を始めた。夢幻の待機形態である眼鏡型端末を整備用の台座にセットすると夢幻が展開された。

 

「さてさて、待たせて悪かったな」

 

俺はコンソールに表示されるデータを確認しながら夢幻の頭辺りをポンポンと軽く叩いた。

 

「えーっと...ソフトウェア面では特に問題なさそうかな?ん?なんだこれ?」

 

夢幻のフラグメントマップのデータを確認しているとバグとも何とも言えないデータが隅に少しあった。

 

「こうゆうのは何か起こる前に削除した方がいいだろうな...」

 

俺はキーボードを操作してそのデータを削除しようとしたが...

 

「削除できない?うーん...後で聞いてみるか...」

 

とりあえず今すぐに何か起こるという事ではなさそうだったのでとりあえず放置して俺はハード面の整備に取り掛かった。

 

「まあこっちは武器とSEこそあの時無くなったけどそれ以外は特に問題なさそうだな、武器に関してはまた作り直したし後は装甲を磨いて終わりかな」

 

一通り問題がない事を確認して俺は夢幻の装甲を用意していた布で隈なく磨いてメンテナンスを終了した。

 

「ふう...終わった終わった...また頼むぞ夢幻!さて簪さん達の所に行くか...」

 

自分の作業を終えて簪さん達の所に行くと簪さんが何か難しい顔をしていた。

 

「お待たせ、なんか難しい顔してるけどなにかあったの?簪さん」

 

「あ、海、お疲れ様。何かあったというか詰まっちゃったんだけど...後これさえ出来れば完成なのに...」

 

簪さんが悔しそうにしながら見ている画面にはマルチロックオンシステムのソースコードが記述されていたが、どうやら上手くいっていないようだ。それでもそれ以外を完成させているのだから充分凄いと思うんだけどなぁ...

 

「成る程...マルチロックオンシステムか...見せてもらってもいいかな?」

 

「うん...お願い...」

 

簪さんから端末を借りてソースコードを見てみると、かなり複雑なプログラムが組まれていて一筋縄ではいかなそうな事が一目で分かった。

 

「これは中々...でも何とかできないことは無いかな?」

 

「ほんと!?」

 

「でもデバッグしながらじゃないと出来ないから簪さんには弐式を使ってアリーナで実際に『山嵐』を撃ってもらうことになるけど大丈夫?」

 

「だ、大丈夫!そのぐらいだったらいくらでもやるから!」

 

「分かった、じゃあアリーナの予約が取れた日に他の項目の最終確認も兼ねてやることにしよう」

 

「う、うん!、良かった...やっとここまでこれた...」

 

「良かったねぇ、かんちゃん...」

 

簪さんは弐式の完成が見えてひとまず安心したようだ。これなら俺も手伝った甲斐があるな。

 

「じゃあとりあえず今日はこれで解散かな?」

 

「うん、じゃあまた今度よろしくね」

 

「もちろん」

 

外も暗くなり始めていたので今日の作業は切り上げて俺は簪さんと部屋に戻った。

 

———————————————————————

 

---IS学園 学生寮 1035室

 

<簪視点>

 

今日の弐式の開発作業を終えて私と海は自室に戻って少し弐式の資料やプログラムの整理をしてから、そのままゆっくりと過ごしていた。

 

「あ、簪さん、この前時間ある時にクッキー焼いたんだけど食べる?」

 

「そうなの?じゃあ少しもらってもいい?」

 

海はこうやっていつの間にかお菓子を作っていていつも私に食べさせてくれるから、本音程じゃないけど私も結構海のお菓子に懐柔されちゃってるような気がする。

 

「じゃあ飲み物と一緒に持ってくるから少し待ってて」

 

海はそう言って簡易キッチンに向かって行った。

 

「どうして自分に憧れちゃだめなんて海は言ったんだろう...」

 

海がクッキーを取りに行っている間に私はふと今日の昼の会話を思い出した。

 

蒼機兵の正体が明らかになった今、海に接触しようとする人間も多いだろう。もちろん自分の利益になるからという理由だけで近づく人間が8割だろうけど...『白騎士』とは違ったロボットアニメの主人公機のような見た目の機体に惹かれて純粋にファンだという人間もいるから...

 

私もその一人だし...なんなら蒼機兵をモチーフにしたアニメは全部見てるし円盤もコンプリートしてる。海本人もまるでアニメの主人公みたいに強いし、なんでも出来て優しくて...この前襲撃の事件の時も守ってくれて...

 

「私何考えてるんだろ...」

 

「どうしたの?簪さん」

 

「なっなんでもない...」

 

「そう?ならいいけど」

 

ほんとに何考えてるんだろ私...最近海を見るとなんかもやもやするし...今は弐式の事に集中しなきゃ...

 

「クッキーとココア持ってきたからどうぞ?」

 

「ありがとう、いただきます」

 

海が自分で作ったクッキーをテーブルの上に置いてくれたので声をかけてから一つ食べた。

 

「うん、やっぱり海の作るお菓子は美味しい...」

 

「それなら良かった、そう言ってもらえると作り甲斐があるよ」

 

海のクッキーを食べたら落ち着いたし弐式が完成したら少し余裕も出来るだろうからその時に改めて海の事は考えよう!

 

「よし!」

 

「急にどうしたの?簪さん」

 

「私個人の事だから気にしないで」

 

「分かった」

 

そうして私は海のクッキーとココアを完食した後また明日に向けて床に着いた。

 

———————————————————————

 

---IS学園 第3アリーナ

 

<海視点>

 

「OK、簪さん、ある程度飛行してから訓練用ターゲットに山嵐を撃ち込んでみて?」

 

「分かった!」

 

あれから2日後に打鉄弐式の最終テストの為にアリーナを借りることが出来たので俺と簪さん、本音さんはアリーナにいる。今は山嵐のテストの真っ最中だ。

 

「前にもテストしたから飛行は問題無し...ここからか...」

 

「ターゲットロック...山嵐発射!」

 

弐式から発射された大量のミサイルはそれぞれロックオンした目標へ向かって飛んでいき見事に命中した。

 

「やった...!」

 

「よしっ!」

 

色々と苦労したが夜なべして作った甲斐あってマルチロックオンシステムは無事に完成したようだ、これでまずは一安心出来そうだ。

 

≪ビーッ!ビーッ!≫

 

「えっ!?なっ何!?」

 

突然簪さんが見ていた弐式のコンソールから警告音が鳴ると弐式はPICが切れたのか、動力が切れたのか、急に力が抜けたように失速して地面に落下し始めた。

 

「かんちゃん!?」

 

「マジかよ!?ここから復旧は...間に合わない...くそっ...」

 

俺は持っていたタブレットを放り投げて簪さんの方に向かって走った。

 

「夢幻っ!!」

 

ISを受け止めるには夢幻よりもエクスエクシアの方が良かったがそんなことを考えている余裕も無かった。

 

「簪さんっ!」

 

俺は即座に夢幻を身に纏って最速で飛び立ち落下中の簪さんに向かって手を伸ばした。

 

———————————————————————

 

<簪視点>

 

「エラーが取れない!?このままじゃ...」

 

私は真っ逆さまに落下している中で何とか復旧しようとプログラムを操作したが間に合いそうには無かった。

 

「いや...死にたくないっ...」

 

せっかく弐式の完成手前まで来たのに...やっとお姉ちゃんに追いつけると思ったのに...

 

「もっと海と話とかしたかったのに...」

 

「簪さんっ!」

 

「っ!?海!?」

 

「しっかり掴まってて!」

 

そういって海は私と速度を合わせた後に体勢を変えて私を抱きかかえた。

 

「止まってくれよ!夢幻!頼む!」

 

海の専用機である夢幻がスラスターを逆噴射して速度を殺していく、いつの間にか特殊兵装である夢現も追加ブースターの様になっていてすさまじい勢いでエネルギーを噴射していた。

スラスターを全開で噴射した甲斐あってか私と海が落ちる速度はだんだんとゆっくりになってそして地面に着く頃には停止してゆっくりと着地することが出来た。

 

「間に合って良かった...」

 

私は海にそっと降ろしてもらうとそのまま弐式を解除して地面にへたり込んでしまった。

 

「かんちゃん!むっきー!大丈夫!?」

 

「俺は大丈夫!簪さんは!?どこか怪我したりしてない!?」

 

「わ、私も大丈夫、びっくりして腰が抜けちゃっただけだから...」

 

「そうか...良かった...」

 

海は安心したような表情をした後、急に私に向かって土下座してきた。

 

「俺の確認不足だ!申し訳ない!簪さん!」

 

———————————————————————

 

<海視点>

 

「俺の確認不足だ!申し訳ない!簪さん!」

 

弐式の突然のトラブルによって簪さんが地面に激突しかけたのを何とか止めることが出来た俺が次にしたことは簪さんへの謝罪だった。

 

「なっ!?海は悪くないよ!だからそんな土下座なんてしないで!」

 

「いや俺が悪いんだ!もっと念入りにデバッグするべきだったんだ...飛行中に使用したら発生するエラーを見つけられなかった俺の落ち度だよ...」

 

この世界に転生してきてなんでも出来るようになって油断していた...こんな分かりやすいエラーを見逃すなんて...だから俺は...

 

「誰にでもミスはあるし海は直ぐに私を助けてくれた...だからもういいよ?」

 

「でも...」

 

「なら、少しでも早く弐式が完成するように頑張ろう?それでいいから」

 

「分かった...全力でやらせてもらうよ!」

 

 

それから俺は簪さんの弐式を完成させるために今までより早く、かつ隅々まで確認しながらプログラムを打ち込み、なんと今日の内に弐式を完成させることが出来た。

 

「完成したな...」

 

「完成したね...」

 

俺は完成した弐式を纏っている簪さんを見ながら、簪さんは自分が纏っている弐式を見ながらしみじみと言った。

 

「「やったぁぁぁ!」」

 

俺達はぴょんぴょんとジャンプしながら喜んで簪さんに至っては弐式を解除して俺に抱き着いてきた。

 

「本当にありがとう!海がいなかったら絶対に完成してなかったと思う!」

 

「そんなことないよ、簪さんの努力の結果だ」

 

俺も簪さんも弐式完成の興奮のまま会話していたのだが...

 

「かんちゃんとむっきーは本当に仲が良いんだねぇ、そんなにくっついちゃって」

 

「え?」「は?」

 

本音さんの言葉に冷静になって俺と簪さんは自分たちの状況を自覚した直後にぱっと離れた。

 

「ひゃあ!」

 

「ごごご、ごめん!」

 

「だ、大丈夫!私も弐式が完成して嬉しくてつい...」

 

「と、とりあえず今日はもう時間もギリギリだし部屋に戻ろうか!」

 

「そ、そうだね、弐式も完成したから今日はもう休んだ方がいいかも」

 

「そういうことでお疲れ様本音さん!」

 

「じゃあね本音!」

 

「かんちゃん!むっきー!いっちゃった...結局部屋は同じなんだからあれじゃ意味無いんじゃないかなぁ...まあいっか~」

 

こうして俺達はそそくさと寮の部屋へと戻っていったのだった。

 

———————————————————————

 

---IS学園 学生寮 1035室

 

「「気まずい...」」

 

弐式を完成させて戻って来たのはいいものの俺も簪さんも部屋が同じであることをすっかり忘れて部屋に戻り、お互いに一瞬硬直したのちいつもの順番でシャワー等を済ませて今に至っている。

 

「「あの...」」

 

「「あ...」」

 

「海からどうぞ...?」

 

「いや、ここは簪さんから...」

 

「「...」」

 

「ふっ...」「くすっ...」

 

「「あっはっは!」」

 

「なんだか気まずくなってたのがバカみたいに思えてきちゃった」

 

「俺もだよ、簪さん、とりあえず弐式完成おめでとう!」

 

「ありがとう!海!これから私も訓練に参加できるからよろしくね!」

 

「もちろん!じゃあ今日は弐式完成記念ということで2人だけだけどぱーっとやろうか!」

 

「いいの?やったぁ!」

 

簪さんも同じように思っていた良かった、気まずかった雰囲気も無くなったし今まで作り溜めてたお菓子を大量に放出してパーッとやることにしよう!

 

「かっ海!助けてくれ!」

 

「きゃあ!」

 

俺がお菓子や飲み物を用意しようと立ちあがった瞬間に部屋の入り口の扉が急に開いて一夏が入ってきてそれに簪さんが驚いて声を上げた。

 

「一夏お前なぁ、人の部屋に入るときは絶対にノックしろって散々小学生の時から言ったろうが!簪さん大丈夫!」

 

「う、うん、びっくりしたけど転んだりはしてないから...」

 

「わ、悪い海...」

 

「はぁ...この事は千冬さんに報告しておくとしてどうしたんだ?そんなに焦ってるってことは何か問題があったってことだろ?」

 

「そっそうだ!そうなんだよ海!」

 

「具体的には何があったんだ?」

 

「ここじゃ言えないからとりあえず俺の部屋に来てくれ!」

 

「はぁ...分かったよ...簪さん、悪いけど少し待ってて、遅くなりそうなら連絡入れるから」

 

「うん、分かった」

 

「じゃあ行くぞ一夏」

 

「ありがとう海!」

 

簪さんに断ってから俺は一夏の後に続いて歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---秘密ラボ内

 

「クーちゃん!クーちゃん!あの女かーくんのお菓子いっぱい食べてるし仲良くしててずるい!何よりハグしてた!!ずるい!!消してもいいかな?」

 

「落ち着いてください束様そんなことをしたら一発で海様に嫌われてしまいます」




と言う訳で弐式はこの段階で完成させました。そして束さんよりも強いフラグを立ててしまったかもしれない簪との関係はどうなるのか、それはまだまだ先の話です。

オリ機体の設定は出来てるのに中々出せないのがもどかしい...

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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24話 自分の責任を再確認した

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回はオリ主がかなり暴れる回となっています。

楽しんでいただければ幸いです。


---IS学園 学生寮 1025室

 

「ここが俺の部屋だ入って来てくれ、海」

 

「お邪魔しまーす」

 

俺が部屋に入ると窓側のベッドにラフな格好をしたシャルルさんが座ってこちらを見ていた。その胸部は男子にはないはずの膨らみがあった。

 

「成る程な...」

 

「え、俺まだ何も言ってないぞ海」

 

「いや、そこにいるシャルルさんを見て大体分かった、まずいつ部屋替えになったのかは分からないけど一夏とシャルルさんは男同士という事で同室になった、まあ俺には直接関係無かったから俺に話が来ないのも当たり前だな」

 

「お、おう、その通りだ」

 

「そして同室で生活している中で今日一夏が何かしらやらかして身体を見てしまったとかそのあたりだろう?」

 

「そ、その通りです...」

 

「武藤君凄いね...ほぼ完璧な予測だよ...」

 

「こいつが異性がらみでやらかしそうなトラブルなんで大体予測出来るからね、俺はシャルルさんが女だって思って生活してたし」

 

「えっ!?いつから?」

 

「最初の操縦訓練の時から」

 

「そんな最初の時点でバレてたの!?」

 

「まあ俺にはね、それに織斑先生も分かってたと思うよ」

 

「そんなぁ...」

 

「ならなんで海はずっと黙ってたんだよ!」

 

「わざわざ男装してIS学園に来る時点で趣味でもない限り何か小さくない問題を抱えてるのは確定なのにわざわざ首を突っ込む訳無いだろうが」

 

「で、でも...」

 

「でもも何もねぇよ!さてシャルルさん、君が男装してここに来た理由は多分俺と一夏だよね?」

 

「うん、武藤君の言う通りだよ...僕は男性操縦者のデータ...一夏か武藤君のデータを手に入れる為にここに来たんだ...お父さんに言われてね...」

 

「シャルルさんのお父さん...つまりデュノア社か」

 

「な、なんで俺達のデータが必要なんだよ?」

 

「大方第3世代機の開発に手間取ってそれを打開する為に俺達のデータを使おうって魂胆だろう、デュノア社は第2世代機のラファール・リバイブで大きなシェアこそ誇っているが今IS業界の中心は第3世代機だ。全世界で第3世代機のトライアルが始まってるのにいつまでも第2世代機しか開発出来ない会社に金を出すほど国も甘くない、そうでしょ?シャルルさん」

 

「武藤君の言う通りだよ...だからお父さんは僕を使って打開しようとしたんだよ、いつでも尻尾切り出来る僕を使ってね...」

 

「尻尾切りって...シャルルはそのデュノア社の社長の実の娘なんだろ!?簡単に捨てるなんてそんなことある筈が...」

 

「僕はね一夏、社長と愛人との子供なんだよ...」

 

「成る程な...」

 

原作を知っているので分かっていたことだがあくまで知らない風を装って俺は話を聞き続けた。

 

「始めてお父さんの本妻の人に会った時いきなり叩かれて「この泥棒猫っ!」って罵られたよ...それからなし崩し的に適性検査して、適性が高かったからずっとテストパイロットをして...最後にはこうなってる...僕には自由なんて無いんだよ...」

 

「そんなのおかしいだろ!」

 

「でも現にそうなってる、こればっかりはどうしようもないよ...」

 

「何とかならないのかよ...そうだ!学園の規約に『IS学園の関係者はどのような国家、組織の干渉も受けない』ってあった筈だ、それで何とかならないのか!?」

 

「いや、無理だな...それはあくまで『普通の生徒』に対して適用されるのであって代表候補生として来ているシャルルさんは国から呼び出されたりしたら応じなきゃ一発で怪しまれるからアウトだ、それでバレたらどちらにしろ確実に牢屋行きだろうな」

 

「じゃあどうすればいいんだよ!海もさっきから否定ばかりで何も解決策だしてねえじゃねえか!シャルルが牢屋に行くのを見過ごせるかよ!」

 

「それはお前のお節介ばっかり出てきてシャルルさんが一言も自分の意思を話してないからだろうが!ただその時の流れに流れされてる人間を助けたって最後には破滅すんだよ!お前はどうしたいんだ!シャルル...いやシャルロット・デュノア!」

 

思わず強い言い方になってしまったが一夏の人間性的にこのぐらい言わないと黙らないだろうしシャルルさんも自分の意思を話さないだろう。ちなみに原作知識として知っている本当の名前を呼んだがデュノア社を調べる過程でデータとしても知っているので後で何故知っていたか聞かれても問題は無い。

 

「僕だって...僕だって普通の女の子として生きたいよっ...友達と遊んだり、普通にお洒落したいよ...誰か...助けてよぉ...!」

 

「ちゃんと言えるじゃんか、最初からそうやって言えば良かったんだ。んじゃ後は任せてもらおうかな」

 

「助けて...くれるの...?」

 

「そうゆうこと、一夏もお前のその優しさは大事だけど優しいだけじゃダメってこともあるっていい勉強になったろ?」

 

「お、おう...」

 

「んじゃ、サクッと終わらせちゃいますか!」

 

「ま、待ってくれ海!お前だって「わざわざ首を突っ込む訳無いだろうが」って言ってたのにどうゆう風の吹き回しだよ!それに国ぐるみの問題なんだろ!?俺達みたいな一生徒にどうにか出来る問題じゃ...」

 

「お前なぁ...俺は世間じゃなんて言われてる?」

 

「え...?2人目の男性操縦者?」

 

「そのあとに意図せずお前らも知らなかった事がバレたろ?」

 

「ッ...『蒼機兵』か...」

 

「そうゆうこと、本当は別のタイミングで言うつもりだったんだけどな、それでその蒼機兵に関して声明を出したのは誰でしょうか?」

 

「束さん...だよな?」

 

「当たり!この時点で俺が普通の生徒とじゃないって分かったろ?んじゃそうゆうことで」

 

わざとらしく一夏にクイズ形式で説明しながら俺は携帯を取り出しとある人物に通話をかけた。

 

「もすもすひねもす?みんなのアイドル束さんだよーん!」

 

「あ、もしもし束さん?すいませんね、こんな夜中に」

 

「かーくんならいつでもOKなのだ!それで状況は大体把握したけど束さんにどうして欲しいの?束さんとしてはかーくんの細胞異常を治すための研究が最優先だからその女はどうでもいいんだけど...」

 

「まあそう言わないでくださいよ、必要な情報やらなんやらは既に俺が集めてそっちに送信してありますから束さんにはそれを使ってデュノア社を買収して欲しいんですよ、優秀なテストパイロットも手に入りますし悪くないと思いますよ?」

 

「うーん...もう一押し!」

 

「じゃあ追加で俺が最近ハマってる料理とデザートを今度全部束さんに作るというのはどうでしょう?」

 

「乗った!データは確認したから後は束さんがやっておくね~、何かあったらまた連絡するから!じゃあねかーくん!バイビー!」

 

「はい、ありがとうございました、束さん」

 

束さんと話し終わって通話を終了すると一夏とシャルルさんが口をポカーンと開けてこちらを見ていた。

 

「ん?どうしたの二人とも?」

 

「今武藤君が電話してたのってISの生みの親の篠ノ之博士だよね?」

 

「そうだけど?」

 

「デュノア社を買収するとか言ってたよな?」

 

「言ったけど?」

 

「改めて武藤君って一体何者なの...?」

 

「デュノア社を買収ってどうなってるんだよ...」

 

「俺はただの1人の高校生だぞ、さっきも言ったけどちょっと普通じゃないのは自覚してるけどな!はははっ!」

 

俺は笑いながら冗談めかして二人の問いに対して答えた。すると...

 

「「そんな高校生がいるわけない(よ)だろうが!」」

 

2人に声をそろえて突っ込まれてしまった、まあ束さんがポロっと言っていた俺の細胞異常の事は聞かれなかったようなので大丈夫だろう。

 

———————————————————————

 

---IS学園 学生寮 1035室

 

結構話をしたので時間が掛かったと思ったがまだ30分しか経っていなかったので俺は部屋に戻って簪さんと改めてお菓子を楽しんでいた。

 

「割とすぐに戻ってきたけど結局何があったの?」

 

「うーん、プライベート的な事だから詳しくは言えないけどまあいつもの一夏の鈍感トラブル体質が招いた事故みたいなものだったよ」

 

「そうなんだ、お疲れ様」

 

「いつもの事だよ、簪さんこそ一夏が入って来た時大丈夫だった?弐式の事もあったし良く思ってないんでしょ?一夏の事」

 

「うん...でも今は弐式も完成したし前よりは大丈夫...だと思う...」

 

「あいつもデリカシーがありえないほど欠如してはいるけど悪い奴じゃないからそのうち仲良くできるとは思うよ?俺と同じで仮面ライダーとか好きだし」

 

「そうなんだ...じゃあいつか話してみるね...」

 

「まあいつかで大丈夫だよ、今はお菓子を食べながらゆっくりしよう」

 

「そうだね、せっかく海が用意してくれたんだし」

 

そう言ってから簪さんはクッキーを食べてからココアを一口飲んで一息ついた。その時の表情がとても素敵で俺は思わずドキッとしてしまった。

 

「どうしたの海?急に私の事じっと見て」

 

「いっいや、なんでもないよ...お菓子は口に合ったかな?」

 

「うん、全部美味しいよ、ココアにも合うし」

 

「なら良かったよ」

 

簪さんの事を見ていたら本人に疑問に思われてしまったので俺はなんとかごまかして少し顔を逸らしたのだった。

 

ちなみに夜になって床に着いても簪さんの表情が忘れられずに中々眠れなかった。

 

———————————————————————

 

---翌日 IS学園 整備室

 

俺は完成した弐式の微調整について簪さん、本音さんと話し合う為に整備室に来ていた。

 

「簪さんはこれから戦いの感覚を取り戻すのとコアへ学習させていく意味も兼ねて俺達の訓練に参加するってことで大丈夫だよね?」

 

「うん、それで大丈夫」

 

「それでメインの整備は私が担当するね~」

 

「よし!じゃあ俺は操縦面でも整備面でも二人のサポートをしていくことにするよ、しばらくはこの体制でやっていけば大丈夫そうだね」

 

3人で弐式の運用に関しての持ち回りを決めて少し雑談に入ろうとしたところで

 

「むむむ武藤君!」

 

同じ1組の鷹月さんがとても焦った様子で整備室に入ってきて俺に声をかけてきた。

 

「鷹月さん?どうしたの?そんなに焦って」

 

「だ、第3アリーナでラウラさんがセシリアさんと2組の鳳さんに急に戦いを仕掛けて戦闘になって!織斑先生も他の子が呼びに行ったけどその前に2人が危なそうで!」

 

「マジかよ...やりやがったあの銀髪眼帯チビ...」

 

「か、海...?」

 

思わず普段言わないような悪口が飛び出したのを聞いて簪さんが恐る恐ると言った感じで話しかけてきた。

 

「ごめん!簪さん、本音さん!俺ちょっと第3アリーナに行ってくるから待ってて!」

 

俺は簪さんの返事を待たずに整備室を飛び出した。

 

———————————————————————

 

---IS学園 第3アリーナ

 

俺がアリーナに着いた時に見えた光景はラウラ・ボーデヴィッヒが既にボロボロのセシリアさんと鈴の首を掴み上げて締め上げているものだった。

 

『これで見せしめになるだろう、そのまま無様な顔を晒し続けるんだな、武藤海をおびき出す餌にもなるだろう』

 

分析するまでもなく二人のISは機能停止直前であることが分かった。このままでは命にも関わるだろう。だがそんなことよりも...

 

「あんの野郎...!」

 

俺はエクスエクシアを瞬時に展開、GNソードを全力でアリーナのバリアに振り下ろした。GNソードはGN粒子を纏わせて切断力を増し、表面にGNフィールドをコーティングする事で他のGNフィールドの対流に割り込む事が可能であるためアリーナのバリアなら簡単に切断することが出来た。

 

「何やってんだこのガキがぁ!」

 

「っ!来たか!武藤海!」

 

俺がGNソードで切りかかるとラウラ・ボーデヴィッヒは腕部プラズマブレードで受け止めた。

 

「待っていたぞ!武藤海!私と戦え!」

 

「黙ってろ!」

 

俺は奴を思いっきり蹴り飛ばして距離を離すとボロボロになっている2人に駆け寄った。

 

「セシリアさん!鈴!大丈夫か!?」

 

「もう...し...わけ...ありま...せん...」

 

「なっ...によ...わた...しは...」

 

2人とも命に別状は無さそうだが怪我だらけだし今にも意識を失いそうな状態だった。今すぐにでも目の前にいるこいつを叩きのめしてやりたかったが俺は口を開いた。

 

「おい...お前が許せないのは俺だけだろう...なんで2人をこんなに痛めつけた...?」

 

「力の意味を知らない、力も持たない雑魚を叩きのめしただけだ、丁度いいから貴様を呼ぶ為の見せしめにもなってもらった、さあ私と戦え!武藤海!」

 

ISは力じゃない...翼なんだ...それに2人を...見せしめ?力を持たない?ふざけるなよ...

 

「...」

 

「どうした!来ないならこちらから行くぞ!」

 

「もう...喋るな...」

 

瞬時加速でこちらに接近してきたヤツに対して個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)を使って背後を取った。

 

「なっ...個別連続瞬時加速だと!?世界で数人しか使えない技術を何故お前ごときが!」

 

「喋るなって言ったろ...トランザム...」

 

俺はトランザムを起動してヤツに一気に接近、ヤツは停止結界(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)を使って俺を止めようとしてきたがトランザム中のエクスエクシアを捉える事は出来ずGNソードで切り上げて空中に打ち上げてからは一方的な蹂躙だった。

 

「なっ!?がはっ!?」

 

そこから俺が行った攻撃はアニメでガンダムエクシアが初めてトランザムを起動した時と同じような連続攻撃であり、まともにくらったヤツはボロボロの状態で地面に落下した。

 

「これがお前がやったことだよ...」

 

俺は少し冷静になり後で千冬さんに怒られるなぁなんて考えられるようになったところで地面に降りた。

 

「まだだ!私は...私は負けられないんだぁぁぁぁ!」

 

かろうじて立ち上がったラウラ・ボーデヴィッヒが叫ぶと同時に機体から【黒い泥】の様なものが溢れてきた。

 

「あれは...VTシステムか!全部潰したと思ったけど残ってやがったか!」

 

俺が再び臨戦態勢を取ると目の前には黒い『暮桜』が立っていた。

 

「モンド・グロッソ優勝時の千冬さんのコピーって事か...楽には抑えられそうにないな...」

 

トランザムを使ってしまったエクスエクシアは出力が落ちてしまっている為夢幻にどうにか切り替えなければいけない事もあって正直かなり厳しそうだ。

 

「ふざけんなあああああああっ!!」

 

「なっ!?一夏!?なんでここに!?」

 

急に一夏の声が聞こえたと思ったら俺と同じような方法で白式を纏った一夏が、アリーナのバリアを切り裂いて黒い暮桜に突っ込んでいった。そのまま【雪片弐型】で黒い暮桜を攻撃したが、いなされてカウンターを食らい吹っ飛ばされた。

 

「おい!一夏!くそっ!」

 

僅かに出来た時間を逃さずに俺はエクスエクシアから夢幻に機体を変更してから吹っ飛ばされた一夏を受け止めて支えた。

 

「なんでいるんだよ一夏!それにもう少し冷静になれ!」

 

「離してくれ、海! あいつのあの剣...あれは千冬姉の剣なんだ!」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!多分もう少しで俺とあいつの戦いの騒ぎを聞きつけた千冬さんや教師部隊の人達が来る!」

 

「千冬姉の剣は千冬姉のものなんだよ!だから俺がやらないと!」

 

「何だよそれ!千冬さんにこだわるのはいいけど今は退かないと死ぬぞ!冷静になれ!」

 

「っ...悪かった海...でも俺があいつを止めたいのは変わらない、だから手伝ってくれ!頼む!」

 

「だが...」

 

『タス...ケ....』

 

「「っ!?」」

 

「あーっもう!しょうがねえなぁ!一夏!俺が隙を作るから、その間に零落白夜であの偽暮桜切り裂いて中からアイツを引っ張り出してやれ!分かったな!」

 

「お、おう!ありがとうな!海!」

 

「こうなったらアイツもお前も共犯だ!全部終わったら一緒に千冬さんに怒られに行くから直ぐに終わらせるぞ!」

 

「分かった!頼むぞ!」

 

「よし!行くぞっ!」

 

俺は隙を作るために先行して偽暮桜に向かった。

 

「全盛期の千冬さん本人ならまだしもデッドコピーに負けるかよ!」

 

偽暮桜は俺が近づくと反応して射程内に入った瞬間に凄まじい速度で俺に黒い片雪を振り下ろしてきたが俺は両手にナイフを展開してそれを受け流した。

 

「デッドコピーとはいえやはり千冬さんか!凄まじい剣速だ!」

 

俺の受け流しに即対応して返す刃でそのまま切り付けてきたが白羽取りの要領でナイフを交差させて挟み取り、弾き飛ばしてそのままムーンサルトキックの要領で蹴り上げた。

 

「一夏ぁ!」

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

俺がムーンサルトで浮かび上がった下をくぐるように一夏が偽暮桜に接近し零落白夜を起動した雪片弐型を振り下ろして切り裂くとそのまま切り口に腕を突っ込んで中から小さな身体を引っ張り出した。

 

「よっしゃ!ナイス一夏!」

 

地面に着地しながら一夏の方を確認するとアイツは一夏が抱えて専用機であるシュヴァルツェア・レーゲンは待機形態であろうレッグバンドに戻っていた。

 

「一夏、大丈夫か?」

 

「ああ、こいつも気絶してるみたいだ、迷惑かけたな海」

 

「いや、元はと言えば俺が蒔いた種だ、謝るのは俺の方さ...悪かったな一夏...」

 

「海...」

 

「さてと、俺達二人ともアリーナのバリアぶち破ってしかも大暴れしちまったし、千冬さんの所行って怒られに行くぞ!」

 

「お、おう...マジかよ...」

 

「その必要は無い」

 

「「千冬(さん)姉!」」

 

「織斑先生だ、さて...二人とも事の顛末は他の生徒から聞いたが、いくらオルコットと鳳を助けるためとはいえバリアを破ってアリーナに侵入し戦闘行為を行ってお咎め無しと言う訳にはもちろんいかない、織斑に至っては既に武藤がボーデヴィッヒを制圧していたのにそのあとに暴走したISに突っ込んでいったと聞いている、よってそれぞれ追って処分を言い渡すのでそれまで自室で待機しているように!」

 

「分かりました!」

 

「は、はい!」

 

「だが...二人とも無事で良かった...私の教え子が迷惑をかけたな...」

 

「いえ...俺にも原因はありましたから...」

 

「海...俺は...」

 

「まあ過ぎた話だ、一夏部屋に戻ろう、織斑先生、失礼します」

 

「ああ、分かった」

 

俺は千冬さんに頭を下げてアリーナを後にした、世界を変えた自分の罪を再認識して歯を食いしばりながら...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-- ???

 

「君はどこまで追い詰めれば覚醒するのかな?武藤 海...人類最初の<<神格者(ディバニテイター)>>として」

 

「大将、俺がその覚醒ってやつを早めるのはどうだい?」

 

「そうだね、それも良さそうだ、ならIS学園の臨海学校の時に仕掛けるといい、サポートもしよう」

 

「流石大将だ!やっと戦争屋の仕事が出来るってもんだ!」




と言う訳でシャルロットの問題とラウラの暴走をまとめて片付けました。

今回の主人公はちょっと乱暴だったと思いますがエクシア乱舞がやりたかったから後悔はしてません!

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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25話 話せばわかり合えた

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回はラウラとの一幕になります。

楽しんでいただければ幸いです。


---IS学園 保健室

 

<ラウラ視点>

 

「っ...」

 

目を覚ますと私はベッドの上で寝ていた。薬品の匂いがする事や周りの状況からどうやらここは保健室らしい。

 

「ぐっ...」

 

身体を起こそうとすると全身の筋肉が悲鳴を上げて激痛が走った。自分の身体を確認するといたるところに包帯が巻かれていた。

それでも無理矢理身体を起こすと同時にカーテンの仕切りから織斑教官が入って来た。

 

「目が覚めたようだな、ラウラ」

 

「教官...」

 

「機体に無理矢理動かされた所為で全身の筋肉がボロボロだ、しばらくは安静にしていろ」

 

「教官...私は...」

 

「【VTシステム】は知っているか?」

 

「はい...過去のモンド・グロッソの部門受賞者の動きをトレースするシステムで、アラスカ条約で現在どの国家・組織・企業においても研究、開発、使用全てが禁止されているモノだと認識しています」

 

「そうだ、それがお前のISに搭載されていた」

 

「っ...!?」

 

「ドイツに確認したがお前のISの開発者陣も知らなかった、どこかのタイミングで秘密裏に搭載されていたようだ。責任者は既に行方不明になっていて責任の取らせようもないし、お前のISに外部からシステムに干渉して強制起動させた痕跡があった、極力お前に責任がいかない様に努力はするつもりだ」

 

教官はため息を付きながら私に説明してくださった。

 

「私は...何もできなかった...」

 

「ラウラ?」

 

私は自分の無力さに下を向くしかなかった、目から涙がポタポタとベットのシーツに落ちて染みを作った...

 

「失礼します、武藤と織斑です」

 

私が俯いていると保健室の入り口のドアがノックされて私が憎んでいた人物の声が聞こえてきた。

 

「着いたか、入っていいぞ」

 

———————————————————————

 

<海視点>

 

「「失礼します」」

 

俺と一夏は保健室のドアをノックして中から織斑先生の声が聞こえたのを確認してから中に入った。

 

「自分たちの処遇は決定しましたでしょうか?」

 

「まあ待て、まず言わねばならないことがある」

 

「「?」」

 

織斑先生はベットにいるアイツに身体を向き直すと口を開いた。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒッ!」

 

「っ!?」

 

ベットで俯いていたアイツが驚いて顔を上げて織斑先生を見た、どうやら泣いていた様だった。

 

「お前は何者だ?」

 

「わ、私は...」

 

「分からないならこれから答えを見つければいい、此処でな」

 

「これから?此処で?」

 

「ああ、誰かに与えられた任務ではなくお前自身の意思でお前の道を選ぶんだ、そうすれば自分が何者なのか自ずと答えは見つかるだろう」

 

「私の道...」

 

織斑先生は言い終わった後に俺達の方を指して更に続けた。

 

「周りに頼ることは何も悪いことではない、私だって色んな人間に助けてもらっているしな、だがそのためには周りの人間との関係が大事になってくる、今のお前に必要なのはまず謝罪だな。きちんと謝ればきっと皆力を貸してくれるはずだ」

 

そう言って織斑先生はアイツから離れてこちらに歩いてきた。

 

「さて、待たせたな、武藤、織斑」

 

「いえ...必ず必要な事だったと思います」

 

「千冬姉...」

 

「だから織斑先生だと...まあいい、お前達への処分だが武藤は今回の事故処理の事を加味して反省文10枚、織斑は武藤に協力したとはいえ個人的な乱入をしたということで反省文20枚だ、何か質問はあるか?」

 

「いえ、寛大な処分感謝致します」

 

「だ、大丈夫です...」

 

「ならいい、私は職員室に戻るから明日の放課後までに反省文は提出しに来い、分かったな」

 

「「分かりました」」

 

織斑先生は俺達に処分の内容を伝えると保健室を出て行った。今保健室にいるのは俺と一夏、そしてベッドにいるアイツだけになってしまった。

 

「「...」」

 

俺と一夏は特に喋ることも無いので無言のままでいるが、気まずいので一夏と一緒に保健室を出ようとした。

 

「ま、待ってくれ...」

 

「何か用か?」

 

俺達が保健室を出ようとすると呼び止められたので振り向く。

 

「その...VTシステムから助けてくれた事、感謝する。それと...すまなかった!」

 

「VTシステムから救ったのはあれが危険なシステムだから一刻も早い処理が必要だっただけだ、礼を言われるような事じゃない、それでその謝罪は何の謝罪だ?」

 

「私の一方的な考えでお前を憎んでいたこと、お前の友人を傷つけてしまった事、他にも沢山ある...本当にすまなかった...」

 

そう言うとアイツ...いや、ラウラ・ボーデヴィッヒは痛む体を押して俺達に頭を下げてきた。

 

「俺は別に憎まれてたわけじゃないしそれで構わないけど海はどうするんだ?」

 

「俺も大丈夫だ、謝られても許せなくなるような事は起きてないしな、その代わり復帰したらクラスの皆と鈴とセシリアさんにもちゃんと謝ってくれ」

 

「もちろんだ...」

 

「ならそれで手打ちにしよう、心からの謝罪だって分かったしな...これからはちゃんと名前で呼ぶことにするよ、ボーデヴィッヒさん」

 

「武藤...海...感謝する...それとラウラでいい...」

 

「分かった、じゃあ改めてよろしくなラウラ」

 

「ならこれで一件落着だな!そうだ海!せっかくだから俺達が誘拐された時の事についての誤解を解いておこうぜ!」

 

「別にいいだろ...俺がお前を守れなくて千冬さんが不戦敗になった事実は変わらないんだしな...」

 

「それでもだ!ラウラも知りたいだろ?海がいなかったら俺は死んでたかもしれないし、千冬姉だって今みたいにはなってなかっただろうしな」

 

「何?それはどうゆう事だ!織斑 一夏!」

 

「海が興奮した誘拐犯の女から庇ってくれたから俺は無傷で助かったんだよ、でも俺を庇った海は顔に消えない傷跡が残っちまった...海、眼鏡を取って前髪を上げてくれ」

 

「はぁ...分かったよ一夏...」

 

俺は一夏に言われて渋々夢幻の待機形態である眼鏡型の端末を外して前髪をかき上げて誘拐事件の時に付けられた傷跡を見せた。

 

「こんなもん見せたって過去は変わらないだろうに...」

 

「それでもだ...今でこそ蒼機兵って知れ渡ってるけど当初は普通の中学生として生活してたんだぜ?それなのに海は生身で俺を庇ってくれたんだ...」

 

「そうだったのか...そんなことも知らずに私は...」

 

「気にするなよ、このことを知ってるのは当事者と俺の怪我を見た医者ぐらいだ」

 

「それでもだ...改めて謝罪する...」

 

「いいさ、過ぎた話だ。さて一夏、そろそろ部屋に戻って反省文書かないと寝れなくなるぞ」

 

「そうだった!じゃあなラウラ!」

 

「しっかり休んで早く復帰してくれよ」

 

俺達はそれぞれ一言づつラウラに声をかけて保健室を出て行った。

 

「悪くないものだな...」

 

保健室を出る直前にラウラの独り言が聞こえた、あの様子なら確実に大丈夫だろう。

 

———————————————————————

 

---IS学園 1年1組教室

 

昨日はラウラの暴走事件とその反省文で大変だったが俺は何とか反省文を書き上げて寝ることが出来た。俺が整備室を出て行った後の事も簪さんに確認したが特に問題も無かったみたいで一安心だった。

 

「おはようございます」「おはよう」

 

山田先生と織斑先生が教室に入ってきていつものホームルームが始まった。連絡事項が山田先生から伝えられ何の問題も無くホームルームが終わった時席に座っていたラウラが手を挙げた

 

「山田先生、織斑先生、少しお時間を頂いてもいいでしょうか?」

 

「え?あ、はい大丈夫ですよ」

 

ラウラは山田先生が大丈夫であると言ったのを確認すると立ってこちらに身体を向き直してから深々と頭を下げた。

 

「皆、これまで突き放すような言動や行動をして済まなかった...今更だが、許してくれるのならこんな私でも仲良くしてくれると嬉しい」

 

急にラウラがクラスの皆に向かって謝罪したので皆ポカーンとしていたが直ぐに一人が口を開いた。

 

「別に私達怒っては無いよ、訓練の時はちょっと怖かったけど今ラウラさんが謝ってくれたから大丈夫、これから沢山仲良くしよう?」

 

「そうだね!」「一緒にご飯食べたりしようよ!」

 

1人が口を開くと次々にラウラに向けて声がかかった。これでラウラもこのクラスに馴染むことが出来るだろう。

 

「皆、ありがとう...それと...後もう一つ...織斑一夏!」

 

「お、おう!どうした?」

 

ラウラは急に一夏の名前を呼ぶとスタスタと一夏に近づいて目の前に立った。そして一夏の頭を掴むと...

 

「んっ...」

 

「んむっ!?」

 

「おお!」

 

ラウラは一夏にキスしたのだった、俺も思わず声が出てしまった。

 

「お、お前は私の嫁にする。決定事項だ。異論は認めん!」

 

「「「え、えええええええ!?」」」

 

「は?はぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「ぷっくっくっく」

 

「おい、海!笑ってんじゃねえよ!」

 

「いや、済まな...はっはっは!」

 

「それと武藤海!」

 

「んえ!?」

 

「貴方の事を尊敬しています!だからお兄様と呼ばせてください!」

 

「ヴぇっ!?」

 

「「「お兄様!?」」」

 

 

こうしてVTシステム暴走事件の騒動は一先ず幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---秘密ラボ内

 

「束様、私も海様の事を『お兄様』と呼んだ方が良いでしょうか?」

 

「束さん的にはクーちゃんの『お兄様』呼びはかなりの高威力だろうけどかーくんにはどうかな?」

 

「じゃあ今度試してみます」

 




せっかくのコミュ力お化けの原作主人公なのでオリ主とラウラの確執を取り払ってもらいました!

後々しっかりと戦いの面でも原作キャラもしっかり活躍させる予定ですのでそれまで待っていただければ嬉しいです。

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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26話 目標にされるのも悪く無いと思った

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回は学年別トーナメント前の話となります。

楽しんでいただければ幸いです。



---IS学園 保健室

 

一悶着あったホームルームから午前中の授業が終わって昼食の時間になり、俺と一夏とデュノアさんは鈴とセシリアさんのお見舞いの為に保健室に来ていた。

 

「失礼します。鈴、セシリア、来たぞ、怪我はどうだ?」

 

「一夏と武藤君から話を聞いたよ、二人とも災難だったね」

 

「お見舞いと糖分補給って意味でクッキー焼いてきたから二人とも食べてくれ」

 

俺は鈴とセシリアさんにそれぞれクッキーを渡してから近くにあった椅子に座って自分の食事を取り出して食べ始めた。

 

「相変わらず凄いわね...海の作るお菓子...」

 

「わたくし、海さんに女子力で負けている気がしますわ...」

 

「そうか?俺も海もこのぐらい普通だぞ?」

 

「そうゆうのを余計な一言っていうんだぞ一夏」

 

俺は一夏の頭を軽くチョップしながら注意した。

 

「いてっ!そうなのか?」

 

「そうゆうもんだ、お前は頼むから空気をもう少し読めるようになってくれ...」

 

「そうだね...一夏はあまりにも空気が読めなさすぎだと思う...」

 

「海さんってほんとに苦労人ですわね...」

 

「昔からだけどね...いつも一夏のフォローしてた結果二人で『光と闇の女たらしコンビ』って言われてたんだから」

 

「ふぐっ...今更俺の心の傷を抉らないでくれよ鈴...」

 

「あははっ、悪かったわね海、まああんたの苦労は私たちが知ってるから安心していいわよ?」

 

「どう安心したらいいんだよ...」

 

「なんなんだ?そのなんとかコンビって...」

 

「お前は知らなかったんかい...」

 

こうして鈴とセシリアさんのお見舞いがてら談笑していると急に地震でも起きたのか少し振動を感じた。

 

「なっなんだ!?地震か!?」

 

一夏がそう言った直後に文字通り保健室のドアが吹っ飛び、同学年の女子生徒がなだれ込んできた。

 

「織斑君!」

 

「デュノア君!」

 

「武藤君!」

 

「「「私と組んで!」」」

 

「ちょちょちょ...」

 

「なっなにっ!?」

 

「なんだぁ!?」

 

「このプリント見て!」

 

俺は自分の目の前にいた女子からプリントを渡されたのでそれに目を通した。

 

「えっと...『今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を行うため、二人一組での参加を必須とする。なお、ペアができなかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。』成程、そうゆうことか」

 

「そうゆうこと!だから!」

 

「私と組もうよ!織斑君!」

 

「私と組んで!デュノア君!」

 

「力を貸してください!武藤君!」

 

つまりここに来た女子生徒全員が俺か一夏かシャルルさんの三人の内一人と組みたくて来たわけだ...とりあえずプリントの最後まで目を通しながら考えようとプリントに視線を戻すと、一番最後に注意書きがあった。

 

『なお、1年1組の武藤 海については特例として一人での参加とする』

 

俺一人で参加って書いてあるんですけど...しかもこれ直接表現してないだけで強制だろ...今度は絶対エクスエクシア使わないからな...

 

「頼んできた人には申し訳ないんだけど、プリントの一番最後に俺は一人で参加しろって書いてあるから...」

 

「えっ!?」「ほんとだ!」「そんなぁ...」

 

俺と組もうとしていた女子生徒達はがっくりと肩を落としていた。

 

「織斑君!私と組んで!」

 

「ちょっ...ちょっと待ってくれ!お、俺はもうシャルと組むって決めたんだ!」

 

「えっ!?」「そんなぁ...」

 

おそらく一夏も咄嗟に言ったのだろうが男装の件もあるし一夏とシャルルさんが組むのは最適解だろう。

 

「うーん、残念」「でも二人が組むならしょうがないね...」

 

それぞれ思い思いに口にしながら、彼女達は保健室を出て行った。

 

「嵐の様だったな...」

 

「ああ、びっくりしたぜ...」

 

「何事かと思ったよ...」

 

俺達は椅子に座り直して溜息を吐きながらそれぞれ愚痴をこぼした。

 

「ちょっ...わ、私と組みなさいよ!」

 

「いえ!わたくしと組んでくださいまし!」

 

「ダメですよ二人とも」

 

保健室に山田先生が鈴とセシリアさんに注意しながら入ってきた。

 

「お二人のISのダメージレベルがCを超えているので、当分は修理に専念しないとISの修復に支障が出て元通りにならなくなる可能性があります。トーナメントへの参加は許可できません」

 

山田先生にそう言われて2人とも悔しそうにしながら引き下がった。

 

「どうして、ダメなんだ?」

 

いまいち理解出来ていないのか、一夏は首を傾げていた。

 

「ISのダメージレベルがCを超えた状態で起動をすると、不完全状態でのエネルギーバイパスを構築しちゃうんだ、それが平常時での稼働に悪影響になるから良くないんだよ、要は骨折してるのに無茶したら筋肉とか痛めるのと同じかな」

 

俺が説明する前にデュノアさんが説明してくれた。これは助かる。

 

「まあ色々あったけどとりあえず鈴とセシリアさんは山田先生の言う通り今回は機体も自分自身も休憩って事だな」

 

「悔しいけど仕方ないわね...」

 

「無念ですわ...」

 

「二人の分まで俺達が頑張って優勝してくるから見ててくれよ!」

 

「無理ね(ですわね)」

 

「なっ...なんで即答するんだよ!」

 

「だって...ねぇ?」

 

「そうです...ね...」

 

鈴とセシリアさんが遠い目をしながら俺の事を見てきた。

 

「いくら特例で2対1になっているって言われても元代表候補生の山田先生と現代表候補生の私達2人を同時に相手して圧倒した規格外がそこにいるわけで...」

 

「一夏さんやシャルルさんには申し訳ありませんけど海さんが一人で優勝するビジョンしか見えませんわ...」

 

「そ、それでも俺は海に勝ってみせるぞ!」

 

「まあ期待して待ってるよ一夏、今月開催だからあんまり時間も無いだろうしシャルルさんと今日の放課後から特訓したらどうだ?」

 

「そうさせてもらうぜ!首を洗って待ってろよ海!」

 

「う、うん、まあ何かあったら武藤君にも連絡するね」

 

「まあ焦らずにな、さてそろそろ昼休みも終わりそうだし教室に戻るか」

 

「そうだな、海、シャル行こうぜ、鈴とセシリアはお大事にな」

 

「ありがとね、三人とも」

 

「感謝致しますわ」

 

2人から感謝された後俺達は保健室を出て午後の授業に向けて教室に向かった。

 

———————————————————————

 

---IS学園 第3アリーナ

 

「学年別トーナメントに向けて皆張り切ってるなぁ...ま、俺は一人ですけどね」

 

放課後になり俺は学年別トーナメントで2対1の戦いを複数回やらなければいけないだろうと予測を立てて万が一に備えての訓練の為にあらかじめ予約していた第3アリーナに夢幻を纏い立っていた。

 

「海?なんで明後日の方向を見ながら独り言言ってるの?」

 

「ん?ああ、ごめん簪さん、今度の学年別トーナメントが俺だけ特例で一人で出場だからちょっと達観してた」

 

後ろから簪さんにツッコまれて俺は我に返って振り返り簪さんの方を向いた。一人でアリーナを使うというのももったいなかったので、簪さんも一緒である。ちなみに誘ったのは俺で少し寂しかったから、というのは秘密だ。

 

「配布されたプリント見たら名指しで書いてあったから私もびっくりした。せっかくなら私と組んでもらおうと思ったのに...」

 

「こればっかりは学園から指定されちゃったからね...まあいろんな国の思惑も絡んでるだろうし、その通りにやらされるのも嫌だから夢幻の新武装のテストも兼ねて学年別トーナメントは夢幻で出場する予定だよ」

 

「そうなんだ...いいの?私に話しちゃっても...トーナメントで当たるかもしれないし」

 

「その時はその時になんとかするよ、簪さんは言いふらすようなことはしないだろうしね、ところで簪さんは誰と組む事にしたの?」

 

「私は本音と組む事にした、専用機は無いけど整備志望だから知識は深いし、ああ見えて一応私の従者でもあるから一通り戦えるし」

 

「成る程ね、それなら大丈夫そうだ」

 

「私達なりに海対策もしてる...だから負けるつもりは無いから!」

 

「こりゃ本番が大変そうだ...俺の事を警戒していないペアはいないって考えた方が良さそうだな」

 

「当日を楽しみにしてる...そろそろ訓練はじめよう?」

 

「そうだね、じゃあ最近夢幻で戦ってなくて一応慣らしから入りたいからシューター・フローで円状制御飛翔(サークル・ロンド)付き合ってもらってもいいかな?」

 

「もちろん、私も弐式で色々試したいことあるし時間の限り付き合うよ」

 

「じゃあ行こうか!簪さん!」

 

「うん!」

 

俺達はお互いに確認してから一気に飛翔して訓練を始めた。ちなみに訓練の様子は遅れてやってきた本音さん曰く...

 

「かんちゃんとむっきーが組めないのがもったいないぐらい息ピッタリな動きだったねー」

 

とのことだそうだ。簪さんは顔を真っ赤にしながら本音さんをぺしぺしと叩いていた。

 

———————————————————————

 

---IS学園 1年1組教室

 

学年別トーナメントまであと3日と迫ってくる中、学園ではとある噂についての話題で持ちきりになっていた、その噂とは...

 

『学年別トーナメントで優勝したら男性操縦者の内の誰か1人と付き合える』

 

と言うものだった。

 

「人の噂も七五日とはいうけど全く尽きる気配が無いな...一夏はともかくとしてあからさますぎてあっという間に俺の耳にも届いてきたし...」

 

今こうして教室で座っているだけでも、「誰と付き合いたい?私は織斑君かなぁ」「私は武藤君一択ね!」とか「そもそも武藤君に勝てなくない?」とか聞こえてきている。もうどうしようもないなこりゃ...

 

「海!昼飯食べに行こうぜ!」

 

「おーう、さっさと行くか」

 

噂について考えていたら一夏から昼食に誘われたので席を立つ。

 

「最近俺がどうとか海がどうとか聞こえるんだけど何なんだろうな?」

 

食堂に向かいながら一夏と話していると一夏がそんなことを言い出した。お前はやっぱり気付いて無いのね...

 

「なんだろうな?まあいいんじゃないか?気にしなくても」

 

「それもそうか!」

 

もうお前はそのままでいいよ...自分で気付けたら成長するだろうし...

 

「さっさと食堂にいくか」

 

そう言って話を切り上げて食堂に向かおうとすると後ろから声がした。

 

「織斑君!武藤君!良かった...やっと追いつきました...」

 

「山田先生?どうしたんですか?」

 

「お2人にいいお知らせです!やっと調整が出来たので3日後の学年別トーナメントの放課後から男子の大浴場の使用時間が確保されました!」

 

お、マジか!日本人たるものやっぱり湯船に浸からないとなぁ...

 

「本当ですか!やったぜ!」

 

一夏もテンション上がってるなぁ...

 

「俺も嬉しいです、ありがとうございます」

 

「時間等は追って連絡しますからデュノア君にも伝えておいてくださいね?」

 

「「分かりました」」

 

「では!」

 

山田先生は俺達に連絡事項を伝えると速足で教員室に戻っていった。忙しいんだろうな...

 

「3日後が待ち遠しいぜ!」

 

「風呂はいいけど学年別トーナメントちゃんと集中しろよ?」

 

「分かってるって!飯行こうぜ!飯!」

 

「ほいほい」

 

俺はテンションの上がった一夏に引っ張られるように食堂へ向かったのだった。ちなみに「あれ?ひょっとして一夏とシャルルさんの混浴イベントに巻き込まれる?」と一瞬思ったが流石にそんなことは無いだろうと直ぐに考えるのを辞めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---秘密ラボ内

 

「かーくんに全然会ってないぃぃぃ...かーくんのご飯食べたいよぉぉぉぉ!」

 

「落ち着いてください束様、今度の臨海学校までの辛抱ですから」

 

「そうだけどぉ...かーくんのエクスエクシアの為に私が開発したこの『GNアーマー TYPE-EX』で今すぐ飛んでいこうかなぁ...」




と言う訳で学年別トーナメント前のそれぞれのキャラ同士の絡み回でした。

最後の最後に束さんがぽつっと言っていたとんでもない単語については臨海学校編までお待ちください!

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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27話 トラブルが尽きなくて困った

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回は学年別トーナメント回となりますが原作とはかなり変更しています。

楽しんでいただければ幸いです。


---IS学園 第3アリーナ 更衣室

 

いよいよ学年別トーナメント当日となり俺達は男子更衣室に備え付けられたモニターで観客席やアリーナの様子を見ながら待機していた。

 

「すげぇ人数の観客だな...」

 

「そりゃそうだろ、今年は俺達男性操縦者がいるから余計に多いだろうな」

 

「まあ、そんなことは気にしないぜ!俺は海に勝つ事だけを考えてきたからな!だろ?シャル」

 

「そうだね、僕たちなりに武藤君対策はしてきたから油断禁物だよ?」

 

「期待して待ってるよ、さて、そろそろトーナメント表が発表されるみたいだぞ?」

 

そう言って画面の方を見ると丁度モニターがトーナメント表に切り替わった。

 

『学年別トーナメント 一回戦第一試合 織斑一夏&シャルル・デュノアペア対篠ノ之箒&ラウラ・ボーデヴィッヒペア』

 

「海とは当たらなかったか...それにラウラと箒が相手なら最初から全力でいかないとな!」

 

「ラウラはISの修理間に合ったんだな、まあそこはいいとして...一夏!」

 

「ん?なんだ?海」

 

「俺の自惚れでなければラウラは一年生の中では俺に次いで強いし、箒の接近戦の強さは言わずもがなだ、頑張れよ?」

 

「おう!行こうぜ!シャル!」

 

「うん!武藤君も頑張ってね!」

 

「もちろん」

 

一夏とシャルルさんは更衣室を出てピットに向かって行った。

 

「さてさて、お手並み拝見と...『ドクンッ』っ!?」

 

更衣室の椅子に座ってモニターを見ようとした時に『赤と緑のビームが大量に飛んでくるビジョン』が頭の中をよぎった。

 

「今のは...嘘だろ!?」

 

今俺が感じたものが事実なら観客もいるアリーナがとんでもない事になる!

 

「くっ...間に合うか...!?」

 

俺は急いで更衣室を飛び出して先生達のいる管制室に向かって走り出した。

 

———————————————————————

 

---IS学園 第3アリーナ ピット

 

<一夏視点>

 

俺はシャルと一緒にピットの中でISを起動して待機していた。

 

「いよいよだな、ラウラも箒も強いけど頑張ろうぜ!」

 

「うん!僕たちのコンビネーションを武藤君達に見せ付けようよ!」

 

ビーーーッ!

 

『試合開始5分前です。各選手はISを装着のうえ、カタパルトへ』

 

「よし!行くか!」

 

俺とシャルはそれぞれカタパルトに乗って準備する。

 

『試合時間1分前です。各選手はアリーナへ』

 

「織斑一夏、『白式』出ます!」

 

「シャルル・デュノア、『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』行きます!」

 

 

アリーナへと飛び出すとラウラと箒は先に待っていた。

 

「ラウラ、機体の修理間に合ったんだな」

 

「ああ、織斑先生や色んな人が手伝ってくれてパーツをドイツから取り寄せられたんだ、その人達の為にも今日は負けるわけにはいかないぞ、嫁よ」

 

「成る程な、でも俺だって海が見てるんだ、負けるわけにはいかないぜ!それに箒にも練習の成果見せないとな!」

 

「私だって専用機は無いが私なりにやれることはやってきたんだ、そうそうやらせんぞ?」

 

「みんなやる気十分だね、もちろん僕もだけど!」

 

『試合時間まであと5秒。4、3、2、1−−試合開始!』

 

ついに始まった!海に少しでも成長してる所見せないとな!

 

———————————————————————

 

---IS学園 第3アリーナ 管制室

 

<海視点>

 

管制室前に到着した俺は直ぐにドアをノックした。

 

「すいません!武藤です!織斑先生はいますか!」

 

「武藤君!?何故管制室に?更衣室で待機していないと...」

 

「緊急事態なんです!織斑先生はいますか!?」

 

「えっ!?わ、分かりました!」

 

「なんだ?どうした武藤?」

 

山田先生が部屋に戻って千冬さんを呼ぼうとすると既に千冬さんはこっちに来ていた。

 

「織斑先生!直ぐにアリーナの観客を避難させてください!この前の無人機乱入と同じような事が起きます!」

 

「なんだと!?事実なら確かに直ぐ避難を開始しなければならないが...何故そんなことが分かる?」

 

「確証は出来ません...でも確信出来たんです...頭の中にアリーナが攻撃される光景が急によぎって...」

 

「そんなことが...<ピリリリリリ>誰だこんな時に私の携帯にかけてくるのは...」

 

携帯が急に鳴り千冬さんが取り出して直ぐに音を消そうとして画面を見た瞬間に表情を変えて俺達から離れて電話に出た。

 

「今取り込み中だぞ?...何!?それは本当か!?分かった、ならお前達を信じるとしよう」

 

「織斑先生?いきなり焦ったように電話に出られましたけど何かあったんですか?」

 

「山田先生、直ぐに全教員に緊急事態対応の準備とアリーナの観客の避難誘導を連絡してください」

 

「そ、それは武藤君の言っていたことが本当だという事ですか!?」

 

「そうです、この責任は私が取りますから直ちに対応をお願いします!」

 

「わ、分かりました」

 

山田先生は千冬さんに言われて直ぐに連絡の為に動き始めた。

 

「さて、お前にも動いてもらうぞ武藤」

 

「もちろんです、俺が言ったから始まった事ですし、何よりまたあの無人機が来るのであれば一夏達にはまだ荷が重いと思いますから...」

 

俺と千冬さんが話している間に山田先生は管制室から出て俺と千冬さんだけが残っていた。

 

「今なら話せるか...さっきの電話は束からだった、お前の身体の事と前回の無人機襲撃からひそかに学園の周りを監視していたことを伝えられたよ」

 

「俺の身体の事はいいとして、その監視網に無人機らしき反応が引っかかったということですね?」

 

「その通りだ、束の言う通りならあと5分もしないうちにこちらに来て攻撃が始まるらしい」

 

「じゃあ俺が先行して時間を稼ぎます、その間に観客の避難と専用機持ちへの連絡を」

 

「なっ...!?前回の様に無茶をすることは許可出来んぞ!」

 

「大丈夫です、元々トーナメントで使う予定だった対多数用の重武装パッケージがありますので。それを撃ち切ったら直ぐに戻って他の専用機持ちと一緒に対処するつもりですから」

 

「その言葉信じるぞ?」

 

「千冬さんに対して嘘なんてつけませんよ」

 

俺は肩をすくめながらあえて先生ではなく千冬さん呼びをした。

 

「はぁ...分かった、今度は無傷で帰ってこい、いいな?」

 

「もちろんです、では直ぐに出撃します!」

 

俺は千冬さんに頭を下げた後一番近い出口に向かい、管制室を後にした。

 

———————————————————————

 

---IS学園 第3アリーナ

 

<一夏視点>

 

「うぉおぉぉぉ!」

 

俺はラウラに向かって雪片弐型を振り下ろした。

 

「甘いぞ嫁よ!」

 

ラウラはプラズマ手刀で受け止めて即座に距離をとりレールガンを撃ってきた。

 

「危ねっ!」

 

俺はそれを間一髪で躱してラウラと再度向き合って機会を窺う。

 

「中々やるなかなりの訓練をしてきたようだ!」

 

「海に勝つって宣言したからな!俺だってやられてばかりじゃないぜ!」

 

「私も負けるわけにはいかない!お兄様に勝ちたいのは私も同じだからな!」

 

ラウラも海に勝ちたいのは同じみたいだ、それでもあいつとは長い付き合いだし絶対に決勝まで行って見せるぜ!

 

「じゃあ正々堂々勝負だ!ラウラ!」

 

「もちろんだ!いくぞ嫁よ!」

 

『緊急事態の為、現在試合中の専用機持ちに連絡する!』 

 

再度俺とラウラがお互いの武器で打ち合おうとした瞬間にプライベート・チャネルで千冬姉から通信が掛かって来た。緊急事態?どうしたんだ?

 

「緊急事態?どうゆう事ですか織斑先生」

 

俺達から少し離れて戦っていたシャルと通信を聞いて止まっていてシャルは千冬姉に質問していた。

 

『前回のクラス代表戦の時と同型と思われる無人機がまたこちらに向かってきているらしい、既に観客には詳細を伏せたうえでアリーナの機器のトラブルの対応という事にしてパニックにならない様にしつつ避難誘導を開始している。』

 

「な、なんだって!?それは本当か!?千冬姉!」

 

『だから織斑先生だと...まあいい、信頼できる筋からの情報だ、既に武藤が単身で出撃し先制攻撃を仕掛けに行っている』

 

「また海は一人で!?」

 

『今回は対多数用のパッケージを用いて先制攻撃後にこちらに合流するそうだ、だから前回の様にはならないだろう、でなければ私も出撃を許可せん』

 

「そ、そうなのか...」

 

『お前達は海が倒し切れなかった無人機と戦闘出来るように準備をしておくように、職員部隊も既に準備して出撃待機状態だ』

 

「分かりました」

 

ラウラは直ぐに返事をして自分の機体のチェックを始めていた。流石軍人だなぁ...

 

「っとと、俺も準備しないとな、前みたいに海が大けがしたら大変だ...」

 

俺も直ぐに機体のチェックを始めてこれからの戦いに備える。

 

「無理しないでくれよ海...」

 

遠くの空を見ながら俺は一人で戦いに行った親友の無事を願った。

 

———————————————————————

 

---IS学園 30km地点 上空

 

<海視点>

 

俺は自分が見た光景と感じている感覚、そして出撃した後に束さんが送ってくれた情報を頼りに無人機が通るであろうポイントで待ち伏せていた。

 

「こんなトラブル下じゃなくて試合でお披露目して皆を驚かせたかったんだけどな...仕方ない...重武装パッケージ『泡影』展開!」

 

俺は空中で重武装パッケージの『泡影』を展開する。このパッケージは機動力を犠牲に火力を推力を可能な限り高めるための装備で学年別トーナメントの為に毎日夢現で少しづつ作成していたものだ。

 

両肩部ミサイルランチャーや両腕部ガトリングガンなど全身に強力な火器を装備し、背部には追加スラスターを4つ装備することで推力も上げている。また、このパッケージ使用中は夢現を給弾システムとして運用し、夢現の中で弾薬を生成しつつ各武装に供給するため、武装のオーバーヒートを加味しても約5分間打ち続ける事が出来るため今回のような状況にぴったりな装備だ。

 

「簪さんとか好きそうだな...これ...」

 

こんな状況でそんなことを考えてる場合ではないんだろうけどふとそんなことを考えているとハイパーセンサーに反応があった。

 

「おいでなすったか!GN-Xやバリエントはまだあいつらには荷が重いだろうしここで一気に殲滅させてもらう!」

 

俺はだんだん近づいてくる機体を確認しながら各武器のチェックをしていつでも撃てるようにしておく、そして改めて敵機を確認するとそれは前回のGN-Xやバリエントとは違う事が分かった。

 

「あの機影は...GN-XⅡにドートレス・ネオ!?前より強化された機体!?」

 

ISからの情報越しに俺の目に映し出された機影は、ガンダムOOのGN-Xの後継機であるGN-XⅡがGN-XⅡキャノンとGN-XⅡソードと通常の形態の機体が各2機づつ、ガンダムXで新地球連邦軍がドートレス直系の後継機として開発した機体であるドートレス・ネオが6機の計12機だった。

 

「くっ...よりによって強化されてるのかよ!学園には行かせねぇぞ!各武装オールグリーン!敵機射程内に侵入!再三の警告無視を確認!」

 

こっちの射程内に入った瞬間にGN-XⅡキャノンのGNキャノンが飛んできたので、俺はシールドを展開しそれを防いだが、流石の威力と言うべきか一撃でシールドが駄目になってしまった。

 

「チッ!こちらへの敵対行動確認!全弾発射する!」

 

俺はGN-XⅡとドートレス・ネオに向けて『泡影』の全武装で攻撃を開始した。装備されたガトリングやミサイルが一気に火を噴く。

 

「当たったかどうかの確認なんてしないぞ!全部打ち切ってやる!」

 

とにかく撃ち続けてガトリングの砲身が焼き付き、ミサイルの弾薬が尽きるまで目の前の空間を焼き払った。

 

「これで撃ち止めだ...出来れば全滅...最低でも半分は持っていけてれば...」

 

俺はハイパーセンサーに注視して結果を確認した、もしほぼ墜とせていなかった場合は即座に撤退して防衛戦の準備を整えないといけないので少しの変化も見逃さない様にしないと...

 

「ッ!!やっぱり全滅は出来なかったか!それでもセンサー反応が6つ...最低値は取ったな!よし、本当は詳細に確認したいけど離脱が最優先だ!」

 

敵機の反応が6つに減っていることを確認して即座に反転、ブースター以外の泡影の装備をパージし最大出力で学園へと撤退する、ちなみにパージした泡影のパーツは自動で爆発し、チャフをまき散らすようになっているので即座に追いつかれて反撃という可能性も低いだろう。何より重武装を支える為の補助ブースターを身軽な状態で移動に使うのだから追いつける訳も無い、学園まで30kmだが5分とかからずに戻れるはずだ。

 

「ここからが正念場だな...一夏...箒...簪さん...皆は俺が守る...命を賭けてでも...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---秘密ラボ内

 

「情報はかーくんに送ったし向こうは任せるしかない...でもこっちは束さんの仕事だね!今度こそ尻尾掴んでやる!クーちゃん!サポートよろしく!」

 

「かしこまりました束様」

 

「絶対逃がさないぞ!かーくんのご飯を私から遠ざけた罪は重いのだ!」




と言う訳で学年別トーナメントと言う名の2回目の無人機襲撃の導入でした。

主人公の機体の名前を決めてからずっと出したかった装備をやっと出すことが出来ました。イメージはガンダムヘビーアームズ改(EW)が一番近いです。

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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28話 全員守りたいと思った

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回は学年別トーナメント編最終回の予定です。

楽しんでいただければ幸いです。


---IS学園 第3アリーナ

 

<一夏視点>

 

俺達が準備を終えて海を待っているとハイパーセンサーに反応があった。

 

「この反応は...お兄様の夢幻か!」

 

俺が口を開く前にラウラが海がここにいる皆に知らせるように海が戻ってきたことを伝えた。

 

「無事に戻って来たみたいだな、前みたいにならなくて良かった...」

 

「前?前に何があったのだ嫁よ」

 

「それはまた今度話すよラウラ、それよりも海がアリーナに着陸したぞ、話を聞きに行こう!」

 

「そうだね、まずは状況確認からかな」

 

海に話を聞きに降りてきた海に俺とラウラとシャルルの3人で近づいていくと、海はらしくないような焦った顔をしていた。ちなみに箒は専用機持ちではないので下がっている。

 

「海?どうしたんだ?そんな焦った顔して、海らしくないぜ?」

 

「っ一夏か!今からくる敵は前のよりやばい!ラウラやシャルでも危ないかもしれないんだ!お前は下がった方が良い!」

 

「なっ!?いきなりどうしたんだよ?俺だって白式があるしSEだって充分にある!戦えるぞ!」

 

「そうゆう問題じゃない!近接攻撃しかない白式じゃかえって足手まといになる可能性がある!そのくらい危険な相手なんだ!」

 

「そう言って前みたいに一人で戦ってまたお前がボロボロになるんじゃないのか!」

 

「俺はいいんだよ!お前に何かあったら千冬さんに顔向けできねぇよ!」

 

「それはお前だって同じだろ!」

 

「ほんとお前は...はぁ...シャルルさんこいつに一本ライフル貸してやってくれ、多分元々タッグ戦の戦略に組み込んでたろ?」

 

「う、うん分かったよ武藤君」

 

シャルのライフルを俺に?海は何を考えているんだ?

 

「今から俺が考えた無人機の迎撃に対する作戦を伝えるぞ、ラウラとシャルルさんも聞いてくれ、いいか一夏、もう下がれとは言わない、その代わりそのライフルでお前もラウラとシャルルさんと一緒に後方から援護してくれ、俺が一人で前線でかき回すから3人は援護、もしくは牽制を頼む」

 

海が一人で前線?前よりやばいやつが来るって海自身が言ってたのにそれじゃあ何も変わらないじゃないか!

 

「海!それじゃあ結局変わらないじゃないか!一人で戦ってるのと一緒だ!」

 

「おいおい、後方からの援護があるのと無いのとじゃかなり違うんだぞ、それに前回は俺自身ギリギリの状態でやったからああなっただけで今回は俺は万全なんだ、それに...」

 

海は一度喋るのをやめると纏っていた夢幻を解除して蒼機兵に切り替えた。

 

「この防衛戦は絶対に負けるわけにはいかないんだ、最初から全力でいくさ、それでも俺の事が信じられないか?」

 

「海...」

 

昔から海はこうゆうやつだったな...お前が俺の事を理解してくれてたんだ...俺も信じなきゃな!海が本気を出したら絶対に負けないって!

 

「分かった!俺も海を信じるぜ!だから絶対に負けるなよ海!」

 

「誰に言ってんだ?当たり前だろ?一夏」

 

海は俺に向かって拳を突き出してきたので俺はそれに自分の拳をぶつける。

 

「さてそろそろ敵さんご登場だ!3人とも手筈通りに頼む!」

 

「おう!」「うん!」「分かった!」

 

俺達の返事を聞くと海は無人機が来る方向に振り向いた。

 

———————————————————————

 

<海視点>

 

<<戦闘BGM 機動戦士ガンダムOO FIGHT>>

 

一夏を説得して全員が纏まったので俺はエクスエクシアのセンサーをフル稼働させてこちらに向かってくる敵機の情報を確認する。

 

「あと1分もしないでこっちにくるぞ!皆構えてくれ!」

 

俺がそう叫ぶと一夏達は一斉に武器を構えて引き金に指をかけた。

 

そしてふたたび情報を確認する。どうやら天はこちらに味方したみたいだ。

 

「一番厄介なGN-XⅡキャノンを2機とも墜とせてたのはラッキーだったな!残りの6機もライフルや腕を破損してる機体がいるみたいだ、これならトランザムで一気に片付けられる!」

 

そうしているうちに視界に敵機が入って来たのでオープン・チャネルで3人に呼び掛ける。

 

「3人とも敵機が射程に入ったら当てなくてもいいから直ぐに撃ってくれ、その間に俺が一気に近づいて撃破する!」

 

「分かったぜ海!」「うん!」「了解!」

 

俺が振り向かずに伝えるとそれぞれ返事が返ってきた。これで万端だ。

 

「敵機レンジ内まであと5秒!4、3、2、1...来たぞ!」

 

俺が大声で敵機の接近を伝えると同時に後ろの3人の武器が火を噴き上空の敵機を襲った。弾幕と言うには薄いので躱されてはいるが、動きを鈍らせるには十分だ。

 

「行くぞ!トランザム!」

 

トランザムを発動してシールドバスターライフルとGNソードライフルモードを撃ちながら一気に接近していく、手負いのドードレス・ネオに直撃して1機墜とすことが出来た。

 

「うおぉぉぉぉ!」

 

俺は反撃で飛んでくるワイヤード・ビームライフルとGNビームライフルを避けながらGNビームダガーをGN-XⅡに投げて直撃させる。

 

「後4機!」

 

センサーの反応で背後から切りかかってくるGN-XⅡソードのGNバスターソードをGNソードで受け止めて鍔迫り合いになるが俺は即座に両腰のラッチのGNロングブレイドとGNショートブレイドの刀身を前方に回転させ両腕を切り落としてGNソードで切り裂いた。

 

「後3!」

 

GN-XⅡソードを撃墜した瞬間にドートレスネオとGN-XⅡが左右からビームライフルで、GN-XⅡソードが上からGNバスターソードで同時に攻撃してきた。

 

「このぉぉぉ!」

 

俺はGNシールドを展開してGN-XⅡソードに切らせて爆発させる事でおとりにしてサテライトGNキャノンを構えながら一気に距離を取り発射体勢に入った。

 

「圧縮粒子解放!これで終わりだぁぁぁぁ!」

 

サテライトGNキャノンからピンク色の強力なビームが放たれて残りの3機を飲み込み跡形もなく消し飛ばした。

 

「はぁ...はぁ...今度はちゃんと守れたな...」

 

丁度トランザムが限界時間で終了し、俺は周囲を確認してからアリーナに着地した。

 

———————————————————————

 

---IS学園 学園長室

 

防衛戦の処理等が終わり俺達は事情聴取の為に学園長室に来ていた。

 

「事態の対処に当たった、4名を連れてきました」

 

「分かりました、入ってください」

 

「失礼します」

 

織斑先生に続いて俺達は学園長室に入るとそこには齢70近いであろう初老の男性がいた。

 

「あれ?IS学園の学園長って女の人だったような...」

 

一夏がその男性を見ていきなりそういったので織斑先生が一夏の頭に軽く拳骨を落としながら謝るとその男性は少し苦笑いしながら口を開いた。

 

「それは私の妻ですね、こんな世の中ですから表向きは私の妻を学園長という事にして実務に関しては私が担当しているのです」

 

そうして一夏の疑問に対して答えるとその男性はそのままこちらに視線を向けて口を開いた。

 

「改めまして、この学園の運営に関しての実務を取り仕切っている、轡木(くつわぎ)十蔵(じゅうぞう)と申します。今回は学園の危機を救ってくださってありがとうございます、今後の為にも改めて何があったか当事者のあなた達に聞きたいのですがいいですか?」

 

丁寧に自己紹介されたのでこちらも会釈を返しながら頷いて事情聴取に応じた。一通りの事を全員話した後、これで大丈夫だという事で学園長室を出ていこうとしたときに呼び止められた。

 

「あ、すみません、織斑先生と武藤君は残ってくれますか?もう少し聞きたいことがあるので」

 

「分かりました、武藤も大丈夫だな?」

 

「はい、大丈夫です」

 

俺と織斑先生だけという事で少し驚いたが、特に問題も無いので大丈夫だと返して学園長室に残った。

 

「さて織斑先生と武藤君に残ってもらった理由ですが、今回の襲撃は最初に武藤君が知らせて織斑先生が自身の責任の下指示を出したと聞いています」

 

学園長...いや轡木さんと呼ぶことにしよう、轡木さんは一夏達が部屋を出てから改めて口を開いた。

 

「はい、武藤が私に直接伝えに来たので私はそれを信じて指示を出しました」

 

「何故武藤君は無人機の襲撃が分かったのですか?」

 

成程、轡木さんはどうして俺が早い段階で無人機の襲撃が分かったのか疑ってる訳だ、まあ当たり前だよな...ちょっとショックだけど...

 

「織斑先生にも言いましたが、確証に至る情報や物はありません、ただ自分の頭に無人機から攻撃されるアリーナの光景がよぎってそれが本当に起こると何故か確信出来たんです、それ以外何もありません」

 

「そうですか...にわかには信じられませんが確かに嘘をついている顔ではありませんね...では次に織斑先生にお聞きしますが、武藤君から襲撃を知らされた後、自身にかかって来た電話に出てから武藤君の言う事が真実だと言って指示を出したと山田先生から聞きました。つまりその電話で武藤君の言っていたことが真実だと確信した訳ですよね?その電話の相手とは誰でしょうか?」

 

「それは...」

 

『そこから先は束さんが説明するよ~』

 

織斑先生...いや千冬さんが言い淀んでいると学園長室にあるモニターが勝手に付いて束さんが映し出された。

 

「なっ!?貴女は...篠ノ之博士!?何故貴女が!?」

 

『はいはい今更私の事なんてどうでもいいからちゃっちゃと説明だけするよ、まずちーちゃんの電話相手だけどそれはこの束さんだよー、かーくんが前回の襲撃で傷ついてからIS学園の周辺を私独自で警戒してたらその警戒網に今回の無人機が引っかかったから連絡したよー』

 

「な、成る程...」

 

『あとはかーくんがなんで無人機襲撃があらかじめ分かったかについてだけど...そこのジジイがかーくんを疑ってたから仕方なく説明するね、かーくんの身体を束さんが調べ続けた結果、かーくんは通常の人間と比べて脳の使用領域がずっと広かったし脳波の形状も全然違ったんだ、だから色んな気配にも敏感になっていたし、未来予知のようなものも見えたんだね!さっすがかーくん!凡人とは一味も二味も違うね!』

 

「そ、そうでしたか...篠ノ之博士がそういうのであれば武藤君はそうゆうことなのでしょうね...」

 

『ちなみに脳の使用領域が広い事は使用領域を2種類に分けて『ニュータイプ』と『Xラウンダー』、そして特殊な脳波の事は『脳量子波』と呼ぶことにしたよ!人類史に残る研究成果だね!』

 

「束さん...説明してくれたのはありがたいですけど突然出てきてジジイ呼ばわりはひどいでしょう...」

 

『えー、だって束さんのかーくんが疑われるなんて気に食わないんだもん!』

 

「いつ束さんのものになったんですか...まあ俺の身体の事はまた改めて聞きますね、とりあえず学園長、聞きたいことは以上でしょうか?」

 

「あと一つだけあります、篠ノ之博士に聞きたいのですが大丈夫でしょうか?」

 

『えー?嫌だよ、なんで束さんがお前みたいな凡人の説明に答えなきゃいけないんだよ』

 

「束さん、次のご飯作りませんよ?」

 

『むーっ...分かったよ...ほら何が聞きたいか早く言ってよ』

 

「貴女は今回の襲撃の犯人についてご存じなのででしょうか?」

 

『それは束さんも現在進行形で調査中だよ、それだけ?じゃ、ばいばーい』

 

そう答えるとモニターがブツっと消えて静かになってしまった。

 

「相変わらず自由な人だな...すみません学園長、以上で大丈夫でしょうか?」

 

「はい、大丈夫です...それにしても本人から宣言があったとはいえにわかには信じられませんでしたが本当に武藤君は篠ノ之博士と知り合いなのですね」

 

「ええ、まあ昔から良くしてもらってます」

 

「では自分達はこれで失礼します、行くぞ武藤」

 

「分かりました、失礼します」

 

こうして束さんが出てきて一悶着あったものの学園長からの事情聴取は終わったのだった。

 

———————————————————————

 

---IS学園 学生寮 1035室

 

事情聴取が終わった後、生徒はそれぞれ自室で待機と言う指示が出ていたので俺は寮へと戻って来ていた。

 

「簪さんは大丈夫だった?」

 

「うん、私にも弐式が完成して正式に専用機持ちだったから他の生徒の安全を確保するように指示は貰ったけど無人機と戦うような事は無かったよ」

 

「それなら良かった」

 

俺が部屋に戻った時には既に簪さんが部屋にいたのでアリーナの外の様子などを簪さんに聞いたりして過ごしていた。

 

「海の方は?無人機は海が全部倒したんでしょ?」

 

「まあ最初は夢幻の重武装パッケージで先制出来たし、その後も一夏とラウラとシャルルさんの援護があったから苦戦はしなかったかな、一応こうして夢幻と蒼機兵のチェックはしてるけど」

 

「夢幻はともかく私の前で蒼機兵のデータなんて開いて良いの?私日本の代表候補生だけど...」

 

「簪さんの事信頼してるからね、今こうして話しててもこっそり写真に撮ったりしないでしょ?」

 

「海って偶にさらっと凄い事言うよね...」

 

「そんな凄い事言ったかな?」

 

「無自覚なんだ...」

 

簪さんと会話しながら夢幻とエクスエクシアをパソコンに接続してコンソールで情報を確認しているとおそらく無人機との戦闘中に新しく受信していたであろうデータをエクスエクシアの中に見つけた。

 

「なんだこれ...」

 

受信したデータを確認するとテキストデータの様だった、ウイルスの類も無く安全な事が確認出来たので開いて中身を見てみることにした。

 

<<神格者(ディバニテイター)...武藤海、君を倒し、世界を作り直して我々は自信の存在意義を証明する...>>

 

「ディバニテイター?なんだそれ...でもこのメッセージを送ってきたやつらが真の敵って事か...」

 

「海?どうしたの?突然黙り込んで」

 

「ああ、ごめん簪さん、なんでもないよ」

 

「そうなの?」

 

「うん、心配かけてごめんね」

 

「分かった、私に手伝えることがあったら言って」

 

「ありがとう、簪さん」

 

俺は簪さんと会話しながらまだ正体の分からない敵の事を考え続けていた...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-- ???

 

「万全な状態の彼なら既にGN-XⅡとドートレス・ネオでは相手にならないか...次はどうするか」

 

「次の臨海学校であの男の部下が仕掛けるみたいだからその時にまた様子を見ようよ兄さん」

 

「そうか...ならその時まで待つとしよう、彼のような選ばれし者を倒してこそ我々の存在が証明されるからな」

 




と言う訳で2回目の無人機襲撃の戦闘回でした。

どうしても主人公にトランザムを使わせてガンダムOOのBGMをバックに戦わせたかったので今回の様になりました。ガンダムを語るうえでBGMは外せませんよね!

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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29話 自分の役目

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回からタイトルの付け方を少し変えていきます。今後も主人公の心境等に合わせて変化させていく予定なのでご了承ください。

今回を学年別トーナメント編の最後にして次回から臨海学校編に入る予定です。
俺はハッピーエンドが好きだが曇らせが無いとは言ってない(暗黒微笑)

それでは楽しんで頂ければ幸いです。


---IS学園 学生寮 廊下

 

自室で待機してきた俺だが夕方になると待機命令が解除されたので大浴場の使用について山田先生に聞いたところもう使えるとのことだったので俺はそのままの足で大浴場に向かっていた。もちろん一夏達には連絡済みだ。

 

「今日は疲れたしゆっくり浸かって疲れが取りたいっすね~っと」

 

おちゃらけた独り言を言っている内に大浴場に着いた。もちろん独り言は誰にも聞かれていない。

そのまま扉を開けると誰もいなかったので俺が一番乗りという事だ。

 

「一夏じゃねえけどやっぱ日本人なら湯船に浸からんとなぁ」

 

さっさと服を脱いで脱衣所から浴室に入る。あまりの大きさにぐるっと頭を動かして見渡してしまった。

 

「こりゃ大きいな!これだけの広さの風呂を独り占めはテンションが上がる!」

 

すっかり上がったテンションのまま俺は身体と頭を先に洗ってしっかりと汚れを落とし浴槽に浸かった。

 

「あ”あ”あ”あ”ぁぁ~...い”き”か”え”る”う”ぅぅぅ....」

 

肩までしっかりとお湯に浸かるとそれはもう疲れが溶けていくようで思わずおっさんのような声が出てしまった。やっぱり風呂最高!たまんねぇ!

俺がすっかり蕩けた顔で湯船に浸かっていると...

 

「やっぱり先に入ってたんだな、海」

 

浴室の扉を開ける音と一緒に一夏の声が聞こえた。

 

「お~う一夏、先に入ってるわ~、やっぱ風呂はいいぞ~」

 

「はははっ!なんだよ海だってめちゃくちゃ風呂楽しんでるじゃねぇか!」

 

「別に山田先生に言われた時も嫌いとは言ってなかったぞ~、ただ、久しぶりに入ってあまりの気持ちよさに完全に取り込まれただけだ~」

 

「海のそんなだらけ切った声初めて聞いたぜ?これは期待できそうだ」

 

俺と会話している内に一夏は身体を洗い終わって湯船に入って来た。

 

「おーっ!こりゃいいな!海の言う通りだ!」

 

「だろ?今まで入れなかったのが悔しく思えるレベルだわ...」

 

一夏は俺の向かい側に座るとテンションを上げながら楽しそうにしていた。

 

「ふぅ...海...話したいことがある」

 

「どうした急に?」

 

「真剣な事なんだ」

 

「そうか...分かった」

 

一息ついたところで一夏が真剣な表情で俺に話をしてきたので俺は体勢を直して向き合った。

 

「今日ラウラと戦ったりお前と無人機の戦闘を見て思ったんだ...俺はまだまだだって...このままだと何も守れないって」

 

「...」

 

「だから海...幼馴染としてのお前じゃなく...この世界で最もISを動かしている『蒼機兵』として俺を鍛えて欲しい!」

 

「成る程な...一つ聞いて良いか?一夏」

 

「お、おう...なんだ?海」

 

「お前は『何も守れない』って言ったけどその守りたいものってのは何なんだ?」

 

「それは......それは...」

 

「あー...大丈夫だ一夏、高1で即答出来るやつなんて普通はいねぇよ...だからそんな落ち込んだ顔すんな...」

 

俺だって根本は何かを守ろうとして戦ってる訳じゃないしな...

 

「でもそれが答えられないと鍛えてくれないんだろ...?」

 

「そうとは言ってねぇよ、ちゃんと鍛えてやる、その代わり...」

 

「その代わり?」

 

「どれだけ時間が掛かってもいい、絶対に自分の守りたいものを見つけて俺に教えてくれ、それが条件だ」

 

俺がそう言うと一夏は一度深呼吸すると俺の目を見ながら答えた

 

「分かった、絶対に見つけてみせる!俺の守りたいものを!だから俺を鍛えてくれ!海!」

 

「それで大丈夫だ、明日以降出来るタイミングでガンガン鍛えてやるからそのつもりでいてくれ」

 

「おう!」

 

俺は一夏を鍛える約束をした、俺と違って一夏は真っ直ぐだから直ぐに自分の守りたいものも見つかるだろうな...

 

「さて、今はゆっくり風呂を楽しもうぜ?一夏」

 

「そうだな!せっかくの機会だし」

 

話がひと段落着いたところでもう少し風呂を楽しもうと一夏を話をしたところで...

 

「お、お邪魔しまーす...」

 

浴室の扉を開ける音と一緒にシャルルさんの声が聞こえた...って...は?

 

「シャル!?今男子の時間だぞ!」

 

「だ、大丈夫!今僕は男子だから...」

 

「シャルルさん!?俺もいるんだけど!?」

 

「武藤君がいることも分かって来てるから...」

 

なんてこったい...山田さんから話を聞いた時に立てたフラグを思いっきり回収しちまったじゃねえか...

 

「いぃぃぃ今すぐ上がるから!」

 

「お、おい待てよ海!」

 

俺はトランザム発動時が如く目を閉じながら素早く浴槽から上がりさっさと大浴場を出ようとした...

 

「待って!」

 

出ようとした俺の腕をシャルルさんに捕まれた...あぁぁぁ!手が柔らかい近い目が開けれん!今までやること多くて全く意識してなかったから大丈夫だったけど俺前世から続いてまともに女子と触れ合ってないし当たり前に童貞なんだよ!

 

「さっき武藤君の所属してる月兎製作所がデュノア社を買収したってニュースが流れたよ...それから武藤君の所属してる月兎製作所からテストパイロットの案内も来たんだ...武藤君が手をまわしてくれたんだよね?」

 

「全部俺がやったわけじゃない...」

 

「それでも武藤君が動かしてくれたからだよ...本当にありがとう...」

 

「礼なら一夏に言ってやってくれ、俺が動いたのもアイツが切っ掛けだからさ...それと...これから同じ会社の所属になるから、よろしくたのむよ」

 

「うん!」

 

「じゃあ俺はこれで」

 

シャルルさんが手を放してくれたので俺は脱衣所に戻った。後は原作と同じようなやり取りを一夏とするだろう...

とにかくシャルルさんが離してくれて良かった...あのままだったら絶対キャラ崩れてただろうな...

 

———————————————————————

 

---IS学園 学生寮 屋上

 

「デュノア社の件はありがとうございました。それで...俺の身体を調べてたらしいですけどどうでした...?束さん」

 

大浴場から出た後、事情聴取の時に言っていた俺の身体の事を詳細に聞くため学生寮の屋上で俺は束さんと電話していた。

 

『分かった事については今日言った『ニュータイプ』『Xラウンダー』であること、『脳量子波』が出ている事、そして...』

 

「そして?」

 

『細胞異常はかーくんが怪我してから直ぐに全身に広まっていて少しずつ身体を蝕んでいる事...かーくんはこのままだとIS学園卒業ぐらいまでしか持たない事...あの赤いGN粒子を含む攻撃をまた食らったら更に悪化する事...』

 

聞くだけ聞くと束さんの言っていることは絶望でしかないが...まあ分かっていたことだ...束さんには申し訳ないけど...

 

『最後に...まだ治療法が見つからない事...』

 

「そうですか...まあ今すぐに症状が出る訳じゃ無さそうなんで引き続き誤魔化しながらやっていきますよ」

 

『かーくん!君はどうして...どうしてそんなに冷静なの!?このままだと死んじゃうんだよ!』

 

「束さん...俺は元々この世界の人間じゃないって前に言いましたよね?」

 

『う、うん、あの時に話してくれたね、それが?』

 

「あの無人機とか正体不明の敵とか俺の存在の所為で現れていると思うんですよ、だからそいつらを倒したら俺も死のうと思ってたんです、丁度良かったんですよ」

 

『...』

 

「その証拠に俺『ニュータイプ』と『Xラウンダー』の能力は高いですけど『脳量子波』は制御出来ないんですよ、自分の元の世界のアニメでは『脳量子波』を制御できる人間を『イノベイター』って言ってたんですけど俺はイノベイターにはなれない可能性が高そうです、そのイノベイターがアニメの中で細胞異常を治したんですけどね...あ、ちなみに『ニュータイプ』と『Xラウンダー』もアニメで存在してたんで元々束さんに教えるつもりだったんですけど自分で見つけちゃうなんて流石ですね!」

 

『...ない』

 

「束さん?」

 

『そんなの絶対許さないから!かーくんが自分で死のうとしても束さんがかーくんを絶対に死なせない!』

 

「束さん...でも俺はいわばイレギュラーなんですよ...」

 

『そんなの知らない!どんな敵が出てきたって私が倒す!かーくんがどんな病気になったって私が治すの!』

 

貴女はどうしてそこまで...ああ...そうゆう事ですか...気付くのが遅くてごめんなさい束さん...でもその想いには応えられませんよ...

 

「分かりました...でも俺以外の事もちゃんとやってくださいね?」

 

ごまかして悪いけどここではこう言うしかなさそうだ...

 

『かーくん...良かった...じゃあ束さんもやること多いからもう切るね!かーくんがそう言ってくれたから箒ちゃんの専用機作ったりしなきゃ!じゃあまた今度!ご飯楽しみにしてるよー』

 

「えっ!?ちょっ束さん!?最後にしれっと何を!?切れてる...」

 

結局箒は束さんに専用機を頼んだのか...今日の無人機襲撃で自分は一夏と並んで戦えなかったのが心残りだったとかそんな感じだろうな...

 

「はぁ...いったいどうなることやら...」

 

俺は自分一人しかいない屋上で大きな溜息を付きながら先の事を案じた。

 

———————————————————————

 

---IS学園 1年1組教室

 

昨日の無人機襲撃事件は一回目の時とは違い先に観客の避難が済んでいた為大事にはならなかった、タッグトーナメントは中止になってしまったがそれもアリーナ機器の重大なトラブル等によるものというアナウンスがされている。

 

「織斑君と付き合うチャンスが...」

 

「武藤君が離れていく...」

 

「デュノア君が遠い...」

 

例の噂がどうにもならなくなったクラスの女子達は項垂れているが...

 

そうこうしている内にチャイムが鳴ったがシャルルさんがまだ席にいなかった、まあ女子だったということをばらすのであろう、もう問題は解決したからな。

 

「み、みなさん、おはようございます...」

 

声に元気が無く、どこかふらふらとしている山田先生が教室に入って来た。

 

「ええと...今日は皆さんに転校生を紹介します。転校生というか既に紹介は済んでるというか...えっと...」

 

山田先生の訳の分からない説明にクラスがざわつき始めた。

 

俺は察しているのでまあ冷静だが...

 

「見てもらった方が早いですね...入って下さい」

 

「失礼します」

 

そう言って教室にシャルルさんが入って来た、女子の制服を着て

 

「理由があって男として過ごしていましたが、それが解決したので改めて自己紹介します。シャルロット・デュノアです、今は武藤君と同じ月兎製作所の企業代表になってます、皆さんよろしくお願いします」

 

そう言って一礼するシャルル...いやシャルロットさん。

クラス全員が時が止まったようにぽかんとして固まっていた。

 

「デュノア君はデュノアさんでした、ということです。はあぁ...私の睡眠時間が...」

 

大きな溜息をしている山田先生には同情するしかない、ほんとお疲れ様です...

 

「え?デュノア君が女...?」

 

「ワケガワカラナイヨ!?」

 

「ガッデム!?」

 

教室内が一気に騒がしくなった。まあそりゃそうだろなぁ...

 

「ちょっと待って!昨日って確か、男子が大浴場使ったよね!?」

 

「織斑くん同室だし、気付かなかったってことは無いわよね!?」

 

「まさか武藤君も!?」

 

誰かが発した一言によりピキッっと空気に亀裂が入ったような音が聞こえた気がする。

 

「殺気!?」

 

俺のニュータイプの感がひしひしと隣のクラスから発せられた殺気を伝えてくる。

 

「い~ちぃ~かぁ~!!!」

 

教室のドアが勢いよく開き俺が感じた殺気の正体が現れた。まあ分かり切っていたけどそれは鈴だった。ISを纏って双天牙月を構え一夏を睨みつけている。

 

「何か言い残すことはあるかしら?」

 

『甲龍』の衝撃砲が発射準備完了なのか空間が歪んでいる。

 

「ま、待ってくれ鈴!話せば!話せば分かる!シャルロットさんとは何もないって!」

 

「そ、そうだよ鳳さん落ち着いて!」

 

「なんであんたが庇うのよシャルル...いやシャルロット!庇うって事はほんとに何もなかったの!?こいつのラッキースケベに巻き込まれなかったの!?」

 

一夏を庇ったシャルロットさんに対して鈴はそんな質問を興奮交じりに投げかける。

 

「...」

 

鈴の質問にシャルロットは顔を赤くしながら沈黙した。まあそうよな...一夏ラッキースケベでシャルロットさんの裸見てるし...

 

「...一夏のえっち」

 

「シャルぅぅぅ!なんでそれを今言うんだよぉぉぉ!」

 

頼みの綱のシャルロットさんに裏切られて叫ぶ一夏、あと殺気がもう一つ増えた...さよなら一夏...いいやつだったよ...

 

「よし殺す」

 

鈴が双天牙月を構えて一夏に近づいていく、シャルロットさんはもう鈴に道を譲っていた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

一夏は教室から何とか逃げようとするが進行方向を青い何かが立ち塞がる。

 

「あら?一夏さん。どこへ行かれるのですか?私、少し一夏さんにお聞きしたいことがありますのに...」

 

今までで一番稼働率高いんじゃないかと思わせるレベルでBT兵器を動かしているISを纏ったセシリアさんがこれまたゆっくりと一夏に近づいていく。

 

「あ、そっかぁ...」

 

「な、なにが『そっかぁ』なの武藤君!?」

 

この後庇ってくれるラウラが既に諸々の事件を解決させて、俺達と一緒に教室の隅に避難している事を考えると誰が代わりに一夏を庇うのだろうかと少し考えて...自分しかいないと思い立った末に口からポロっと出た言葉なのだが、近くにいた女子が必死の形相で俺に問いかけてきた。

 

「とりあえず、織斑先生呼んできて」

 

「りょ、了解!」

 

俺がそういうと丁度扉に一番近かった相川さんが教室を飛び出して行った。

 

「あとは頑張れ一夏...」

 

織斑先生がくればまあ解決するだろうって感じで俺は一夏に声をかけた。

 

「無茶言うなよ海!どうすりゃいいんだ!」

 

ちなみに織斑先生の名を聞いてセシリアさんは踏みとどまったようだが...

 

「千冬さんか...じゃあさっさとしないと...」

 

鈴には逆効果だったようだ、既に双天牙月を振りかぶっている。

 

「箒ぃ!海ぃ!助けてくれぇ!」

 

「断る」

 

箒は即答である、俺はISを展開して千冬さんに怒られるのが嫌なので一応どうするか考えている。庇ってやるのは確定だろうけど...

 

「せめてもの情けよ、苦しまずに逝けるよう1発で仕留めてあげる」

 

鈴は振りかぶった双天牙月を振り下ろそうとしているので思いついた事をとりあえず実行する。

 

「そぉい!」

 

俺は近くにあった椅子を持ち上げてから鈴に向かってぶん投げた。飛んで行った椅子は鈴の手に直撃してガンッと鈍い音を立てて...

 

「...あれ?」

 

「へ?」

 

一夏と鈴の間の抜けた声が聞こえた。俺の投げた椅子によって鈴の狙いがずれて一夏の頭の横10cmの壁に双天牙月が刺さっていた。

 

「お...おぉぉぉ...」

 

俺が椅子を投げて鈴を妨害出来たことに一部の女子がパチパチと混乱したまま賞賛の拍手をしていた。

 

「さ、サンキュー海...助かった...」

 

「なんであんたが邪魔するのよ海!」

 

「いや...ISの無断展開ダメだし...普通に一夏死にそうだったし...」

 

「こんな時に変に真面目ね!」

 

いや、あれマジで普通に一夏死んでたろ...ここまで話が変わってもこういう部分は原作と変わらないのな...

 

「お前達何をしている!」

 

俺と鈴が話している内に相川さんに連れられて織斑先生が教室にやって来た。

 

「ISの無断展開は厳禁だぞ!そんなことも分からないのか!」

 

 

その後は織斑先生の一喝によりなんとか騒動は収まった。鈴やセシリアさんは織斑先生に引きずられて行った。

昼食の時に親の仇でも見るような目で睨まれたが知った事ではない。

 

「今日もIS学園は平和です...」

 

襲撃事件はあったがこうやって馬鹿が出来てる間は平和だとしみじみ俺は感じた...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---秘密ラボ内

 

「かーくんのトンデモ発言については言質取ったし今は愛しの箒ちゃんの為に頑張りますかね!」

 

「束様、手が震えていますが私の方で海様の観察もとい監視は続けておきましょうか?」

 

「クーちゃぁぁぁん(泣)おねがぁぁぁい(泣)」

 

「この分では海さまからお願いされたデュノア社の管理等も私がしばらくやった方が良さそうですね...」

 

自分に縋り付いて泣きじゃくっている恩人を見てクロエはそう思った...

 




と言う訳で学年別トーナメント後の男同士の裸の付き合い(混浴イベント巻き込まれ)+
覚悟ガンギマリオリ主の束さん曇らせフラグでした。
これからオリ主は一体何人曇らせるのか...

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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臨海学校編
30話 親と恩人


いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

寝落ちして一日遅れてしまった...申し訳ないです...

今回から臨海学校編に入っていきます、といっても最初は臨海学校とは関係ないオリ主の両親との話と新しい武装の回です。

楽しんで頂ければ幸いです。


--某所 月兎製作所施設

 

学年別トーナメントが終わって1日空けた平日、俺とシャルロットさんは公欠を取って月兎製作所の施設に一緒に来ていた。

 

「ここが月兎製作所の施設なの?結構大きいね...」

 

束さんと話し合いながら内容を決めて最終的に束さんがハッキングと金に物を言わせて建てた月兎製作所の施設を見上げながらシャルロットさんは感想を言う。

 

「ISの開発施設だけじゃないからねここは...だから土地を確保するために本土じゃなくて大き目の無人島に出来てる訳だし...あ、もちろん政府の認可は得てるからね!」

 

「な、なるほど...」

 

シャルロットさんに軽く説明しながら施設の中に入っていく、ちなみにここまでは束さんがあらかじめ用意してくれたプライベートジェットで来ている、本当ならいつぞやのすさまじく早いロケットの予定だったのだが、それだと国にバレてしまいそうなので普通の移動手段にしてもらった。

 

<<生体チェックを開始...完了...おかえりなさいませ海様、ようこそシャルロット・デュノア様>>

 

「お疲れ~」

 

「い、今のは?」

 

「この施設に入った人間全員にされる生体チェック、一瞬で終わって登録されてない人間が入ったら自動で警備システムに拘束されるようになってるよ、ちなみに管理してるのはほぼAI」

 

「凄いね...」

 

「シャルロットさんはもう登録してあるから安心してね、それとちょっと寄っていきたいところあるんだけど大丈夫かな?」

 

「え?あ、うん大丈夫だよ、何か用?」

 

「ここに俺の両親も住んでるんだ、IS学園に入学してから連絡はしてたけど一回も会えなかったし蒼機兵ってことも隠してたから...」

 

「そうだったんだ...」

 

俺はシャルロットさんに断ってから施設内の居住区に向かった、そこには俺の両親が住んでいて、俺は久しぶりに会いに行こうと思った。色々と説明もしないといけないし...

 

「ここだ...悪いけどシャルロットさんはここで少し待っててくれないかな?」

 

「うん、分かった」

 

「喉が渇いたりしたらその辺の警備ロボットとかモニターに話しかければ対応してくれるから!それじゃ」

 

俺はシャルロットさんを居住区手前のエントランスに待たせて父さんと母さんのいる部屋に向かった。

 

 

「はぁ...殴られるのぐらいは覚悟かな...」

 

今の両親は2人とも優しいけどとにかく真っ直ぐで曲がったことが大嫌いな人間だからきっとテレビで俺が蒼機兵だったって事を知って相当にびっくりしているだろうし、怒っている筈だ...何より急に引っ越ししてもらったわけだし...

 

<ピンポーン>

 

俺はチャイムを押して父さんが母さんが出てくるのを待った。今日帰る事は連絡済みだけど何故かとてもドキドキする...

 

『はーい』

 

扉越しに声が聞こえ、その直後に開いて母さんが出てきた。

 

「ただいま...母さん」

 

「待ってたわ...お帰り、海」

 

1、2か月離れただけなのに随分と会っていない様に感じた...

 

部屋に入っていくと父さんが椅子に座っていた、俺の事を待っていたみたいだ。

 

「おう、お帰り、海、まあ荷物おいて手洗ったら座れや」

 

「ただいま父さん、分かった」

 

俺は言われた通りに荷物を置いて手を洗ってから父さんの対面に座った。

 

「まあまずは色々と大変だったな...海」

 

「まあ、ね...IS学園には俺と一夏しか男いない訳だし...それでも友達は出来てるから楽しく過ごせてるよ」

 

当たり障りのない会話をしていると母さんがいつの間にか麦茶をコップに入れて出してくれていたので俺はそれを少し飲んでから話を続けた。

 

「それで、さ...ニュースとかでは流れたと思うけど父さんと母さんはどこまで見た?」

 

「そうだな...海があの『白騎士・蒼機兵事件』の蒼機兵って事はニュースで見たな、映像とかは流れていなかったがあの篠ノ之博士が直々に声明を出したのも聞いた...あの事件の時お前は小2だったろ?なんで黙ってたんだ...?」

 

「それについては今から話すよ...父さん...今から話すことは信じられないような事だけど全部真実で、絶対誰にも話さないで欲しいんだ...」

 

「分かった...母さんと二人で墓場まで持っていくことを約束しよう」

 

「ありがとう父さん...」

 

そして俺は『白騎士・蒼機兵事件』の時に束さんと千冬さんに話した時と同じように自分がどういう存在なのか、なぜISを持っているのかを自分がこの世界を元々創作物として知っている事と束さんの事、白騎士の正体は隠しつつ話した。

 

「成る程な...小さい頃から随分物分かりが良いというか頭が良いとは思っていたがそうゆう事なら納得できる」

 

「そうね...本当に手のかからない子で篠ノ之さんを助けた時とドイツで誘拐された時ぐらいしか大きく記憶に残ってる事件は無いけどそうゆう事だったのね...」

 

「父さんも母さんも信じるの?俺自身言っておいてなんだけど精神異常者と取られてもおかしくないような事言ってたと思うんだけど...」

 

「親が一番に子供の事を信じてやらなくちゃダメだろ?」

 

「そうよ、たとえ元々違う世界で生きていたとしても別の記憶を持っていたとしても海は私がお腹を痛めて生んだれっきとした私達の子供なんだから」

 

「父さん...母さん...ありがとう...」

 

やばい...泣きそうだ...この世界に転生してずっと気を張り続けてたけどそれが途切れてしまいそうだ...

 

「いつでもここに帰ってきなさい、世界が海の敵になっても父さんと母さんはずっと海の味方だからな」

 

「分かった...」

 

こうして俺は自分の正体や転生について親に話すことが出来た、少し肩の荷が下りたがせっかく決めた覚悟が揺らぎそうだった。

 

<ピンポーン>

 

「あら?今日は海以外にここに人が来る予定は無かった筈だけど...社長さんかしら?」

 

チャイムが鳴って母さんが玄関の方へと歩いて行った、シャルロットさんには部屋番号は言ってないしほんとに誰だろうな?とゆうか母さんの口ぶりからして束さんはちょくちょく父さんと母さんに会いに来てたのか?

 

「お邪魔します」

 

俺が思考の海に沈んでいると聞いた事のある声が聞こえて顔を上げると東雲兎子として変装した束さんが部屋に入ってきた。

 

「社長さん今日はどうしたんですか?急にいらっしゃって大事な話があるって...」

 

「はい、海君もいるのでどうしても話しておきたいことがありまして...」

 

母さんに促されて俺の隣に座った束さんは開口一番にそう言った、そんな予定あったかな?束さんは何を言うつもりなんだ?

 

「今まで騙していて申し訳ありません...私、本当は篠ノ之束と申します」

 

俺が束さんの事を横目で見ていると急に束さんは立ちあがってどうやったのか一瞬で変装を解き父さんと母さんに向かって頭を下げた。

 

「えっ!?ちょっ!?束さん何やってるんですか!?」

 

何をするかと思えば急に一般人である俺の両親に束さんが正体を明かしたのだからびっくりして俺も立ち上がってしまった。

 

「息子さんが今世間から狙われてしまっているのはISを作った私の責任です...だからどうしても謝りたかった...」

 

「貴女が篠ノ之博士だったんですね...何か隠しているなとは思いましたが流石に驚きましたよ...」

 

父さんが頭を下げ続ける束さんに向かってそう言った。束さんは一度頭を上げて再び口を開いた。

 

「私の夢に唯一共感してくれたのが海君だったんです...そして海君はその優しさから私と同じ夢を持ってくれています...だからこそ私は大人として海君を守ると誓いました...でも現状守り切れていないんです...本当に申し訳ありません!」

 

そして束さんは再び頭を下げた。

 

「頭を上げてください、社長さ...いえ篠ノ之さん」

 

父さんに促されて束さんは頭を上げた。そのまま父さんが続ける。

 

「確かに海が今色々な事に巻き込まれていることに関しては思うところはありますが、貴女の夢に海が共感したのも、今海がISを使っているのも全部海が自分の意思でやっている事の筈です、そうだろ?海」

 

「え?ああ...それはもちろんだよ父さん」

 

「海が自分の意思でやっているなら私達は何も言いません、それに貴女は海の優しさに付け込んで悪用するような事はしていないしする気も無いでしょう?」

 

「それはもちろんです!」

 

「なら大丈夫ですよ、これからも海の事をよろしくお願いします、篠ノ之さん」

 

父さんはそう言って束さんに頭を下げた。

 

「ありがとう...ございます...」

 

束さんの方を見ると目尻に光るものがあったが束さんがまた頭を下げたので見えなくなった。

 

「...」

 

俺は後の2年と半年...もしかしたらそれよりももっと短い時間が経った時、いったい何人の人間を悲しませてしまうのかと考えて...直ぐにその思考を振り払った...

 

———————————————————————

 

--月兎製作所 廊下

 

「いやぁ...かーくんには恥ずかしい所を見せちゃったねぇ...あはは」

 

「そんなことないですよ...それに...ありがとうございます」

 

「んー?束さんはそんなお礼言われるような事してないよ~」

 

俺の両親の部屋を出てからISの開発施設にシャルロットさんと合流しつつ向かう為に俺と束さんは施設の廊下を話しながら歩いている。

 

「俺の事をかってくれている事をあれだけ真っ直ぐ父さんと母さんに言ってくれましたし...まああんまり言うと俺も恥ずかしくなっちゃうんで言いませんけどとにかく嬉しかったんです」

 

「束さんは世界中から追われてる犯罪者みたいなものだけどそれでも絶対に筋は通したかったんだ、だから今回のは人として当たり前の事をしただけだよ」

 

「じゃあそうゆう事にしておきますね」

 

これ以上言うと束さんが真っ赤になってしまいそうだったのでそこで話を切り上げることにした。丁度シャルロットさんが見えたことだし丁度良かった。

 

「シャルロットさんお待たせ!」

 

「ううん、全然だいじょう...ぶ...って篠ノ之博士っ!?」

 

「あ、変装忘れてた」

 

「...まあもういいんじゃないですか?シャルロットさんも月兎製作所所属でどこかの国にどうこうしなきゃいけない訳じゃないですし、そもそもデュノア社買収と同時に束さんがコアを一つぶん投げてフランス黙らせたじゃないですか」

 

「そうだったそうだった、じゃあそれでいいや、というわけで僕っ娘、私がIS生みの親で月兎製作所の社長の正体の束さんだよ~、よろよろ~」

 

「え!?あ、はい!よろしくお願いします!ぼ...僕っ娘...

 

なにやら少しショックを受けているようだがシャルロットさんとも合流出来たのでそのまま施設内の開発施設へと向かった。

 

 

「と言う訳でここが月兎製作所のIS開発施設でーす!じゃーん!あ、言い忘れてたけどそこの僕っ娘は束さんの事も含めて個々の事は秘密だからね?」

 

「は、はい、もちろんです」

 

「じゃあ改めてごあんなーい!」

 

何故かハイテンション気味になっている束さんに着いて行くと段々と地下に入っていき、開けたと思えばそれこそ漫画にでも出てくるような馬鹿みたいに広くてロマンの溢れる空間が広がっていた。(まあこの世界自体が元々小説の世界だけど)

 

「これはまた、盛大にやりましたね、束さん...」

 

「ふふん!凄いでしょ?学園で普段クールなかーくんもこれには大興奮じゃないかな!」

 

「束さん...流石です!正直入った瞬間に声が出そうになりました!なんですかこれ!男の夢の塊みたいな空間じゃないですか!」

 

それはもう端から端まで駆動している機械やらホログラムやらを見て興奮しない男はいないだろう、そのくらい凄い空間だと思った。

 

「武藤君って本当はあんなキャラだったんだ...」

 

「っ!?」

 

後ろから聞こえたシャルロットさんの声を聞いて俺はゆっくりとシャルロットさんの方を向く。

 

「今の...絶対に誰にも言わないでね...?」

 

「ひっ!?言いません!絶対に!」

 

どうしてそんなに怖がっているのだろうか?そんなに睨んだりしたつもりは無いのだが...

 

「さてさて、改めて今日かーくんを呼んだのはね、この奥にあるものを見せるためだよ!」

 

そう言って束さんが指さしたのはこれまたISサイズに収縮されたガンダムに出てきそうなハンガーのような空間だった、奥にあるものが暗くて良く見えないが...

 

「ではでは!ごたいめーん!」

 

束さんが言うと同時にハンガーのライトが付き奥にあるものが照らし出された。そこにあったのは...

 

「GNアームズ!?どうしてここに!?でも武装が違う?」

 

「おろ?かーくんにはここで初お披露目だから知らない筈じゃ...いや、成る程ね...とにかくこれについて説明するね」

 

束さんがいつの間にかタブレットを取り出し操作するとガンダムOOで見たGNアームズへの合体モードへと変形した。

 

「これはかーくんのエクスエクシアと合体して運用するエクスエクシア用長距離移動・高火力モジュールの『GNアーマー TYPE-EX』だよ!武装はこんな感じかな」

 

束さんが俺にタブレットを渡してきてくれたのでそれを受け取り表示されている武装を確認して俺は目を見開いた。

 

「束さん...これやりすぎじゃないですか?宇宙開発の為にしか技術使わないでっていったのにその範疇超えてません?」

 

「いやいや、これは既存のISの宇宙での活動時間を延ばしたりするためのパッケージの試作版って事で開発してるから約束は守ってるよ、それに束さん気付いちゃったけどかーくん専用に作るのなら全く問題ないよね!束さん天才っ!ぶいっ!」

 

「そうですけど...GNキャノン、GNミサイル、大型GNビームサーベル、GNツインライフル...極めつけにエクスエクシアのサテライトGNキャノンと接続して発射可能な大口径ビッグキャノンって...世界征服でも企んでます?」

 

「そんなことないよ~、そろそろやつらも本格的に動いている事だしこっちも準備が必要かなって」

 

「そうでしたか...それなら次に奴らが動いたら一夏達にも声をかけないといけないかもですね...」

 

「出来ればそうはなって欲しくないけどね~」

 

「あの~...さっきから何を...」

 

「近いうちにシャルロットさんにも教えるから今は気にしないでいてほしいな、ごめんねシャルロットさん...」

 

「わ、分かった...まだ僕には教えられない企業秘密って事にして気にしないでおくね」

 

「ありがとうシャルロットさん」

 

シャルロットさんはほんと物分かりが良くて助かるな...正直シャルロットさん以外のいつものメンバーだったら絶対追及してくるだろうな...

 

「じゃあさっそく試験運用と行こうか!あ、僕っ娘、フランスにコア投げるついでにお前に渡される予定だった防御寄りのパッケージを貰って来たからそれインストールしてかーくんの試験相手になってね♪インストールは束さんがやっておくから♪ほら専用機渡して?」

 

「え...?えっ!?」

 

「ごめんシャルロットさん...ちゃんと調整して加減するから」

 

「えーっ!?」

 

このシャルロットさんの叫びを聞いて今度シャルロットさんに色々と奢ってあげたりしようと俺は決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--- IS学園

 

「「「「へっくしゅん!」」」」

 

俺がGNアーマーの試験をしている時、IS学園では何故か一夏、箒、セシリアさん、鈴の四人が同時にくしゃみをして不思議がられていた。




と言う訳でオリ主の家族との会話とオリジナルGNアームズが登場する回でした。
戦闘で使うのは臨海学校になる予定ですのでもう少しお待ちください。

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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31話 友達かそれ以上か

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回は臨海学校前の簪との一幕です。楽しんで頂ければ幸いです。


---IS学園 第2アリーナ

 

「あ」

 

「海?急にどうしたの?」

 

「ん?ああ、簪さん...いや臨海学校が近いけど水着とか俺持ってないなって」

 

「そうなんだ...あ、私も水着持ってない...」

 

現在俺はアリーナでいつもの専用機持ちメンバーに簪さんを加えた面子で操縦訓練をしていた。ちなみに今は交代で俺と簪さんは休んでいて、アリーナではでセシリアさんとシャルロットさん、ラウラと一夏、鈴と箒がそれぞれ戦っている。

簪さんと箒達の顔合わせは気付いたら終わっていて何故かすんなりと受け入れられていた。

一夏とはまだ少し距離があるがそれ以外のメンバーとは割と話しているのを見かける。

 

「どうするかなぁ...」

 

「私は水着とかいいかな...」

 

「そうなの?せっかくだから着たらいいのに?」

 

「海は私の水着見たい...?」

 

「そ、そう聞かれると返答に困るけど正直に言うと見たい...かな?」

 

「そうなんだ...分かった...」

 

「え?な、なにが?」

 

「海はこの前公開したあの仮面ライダーの10周年記念の完結編の映画は見た?」

 

む、無視...いや、観に行きたいけど中々忙しくて行けなくてね...でも明日は丁度行けそうだから観に行こうかと」

 

「私も一緒に行っていい?その映画私も観てなくて...」

 

「あ、そうだったんだ!簪さんさえ大丈夫なら構わないよ!じゃあ今のうちにチケット取っちゃおう、あの映画人気だから早めに取らないと」

 

俺はオタク仲間とあのライダーの完結編を見れるという事に喜びつつ、スマホを夢幻の拡張領域から取り出し、近くの映画館を検索して11時から上映でど真ん中の一番いい席が空いていたので速攻で押さえる。

 

「レゾナンスの中にある映画館で11時からの上映分をど真ん中の一番いい席で確保できたよ!」

 

「じゃあ明日の9時に駅でいい?」

 

「簪さんに合わせるよ」

 

「それじゃあ明日の9時に駅で」

 

「うん、分かった」

 

そうしてお互いの予定を確認した後、次に休憩するメンバーのセシリアさんとシャルロットさんが戻って来たので俺と簪さんはISを纏ってアリーナに飛び出した。

 

「...あれ?これってデートになる?」

 

アリーナに残っていた一夏と模擬戦をしている最中にそんなことが頭をよぎって、一瞬隙をになり、一夏が瞬時加速で一気に近づいてきたが攻撃の意識が相も変わらず隠せていないので、攻撃の軌道を読んでちょっと引いて躱してからショットガンを撃ったら吹っ飛んで悔しそうに唸っていた。

 

「異性と二人で映画鑑賞ってやっぱそうゆうことだよな...」

 

流石に今回は思考を振り払うことが出来ず、俺は残りの時間全部をもやもやした気持ちで過ごすことになったのだった。

 

———————————————————————

 

---モノレール駅 IS学園前

 

結局一度意識しだすとどうしようもなく、眠れなかったので簪さんを起こさない様に注意しながら夢幻とエクスエクシアのデータ整理で一夜を過ごし、シャワーを浴びてから身だしなみを整えて俺は早めにモノレール駅に着いていた。

 

「今は8時半か...少し早すぎたかな...」

 

腕時計を見て時間を確認すると予定よりも40分早かったので俺は携帯を取り出しニュースを見ていた。10分経つか経たないかぐらいすると学園の方からこちらに向かってくる人影が視界に入った。

 

「早いんだね...海」

 

「簪さんだって早いよ、俺だってついさっき来たばっかりだ」

 

それは簪さんだった、確かに真面目な簪さんなら予定の30分前に来ていておかしくないと思ったがまさかほぼ同じタイミングで合流するとは思っていなかったので思わず少し笑ってしまった。

 

「どうしたの?笑ってなんているけど」

 

「いや、おんなじこと考えて駅にくるタイミングまでほぼ同じだったから少しおかしくてね」

 

「そう言われれば確かに」

 

「まあいいや、もう合流出来たことだしレゾナンスに行こうか」

 

「うん」

 

そう言って俺と簪さんはホームに入った。

 

「あ、簪さん」

 

「ん...何?」

 

「服、似合ってるよ」

 

今の簪さんの服装は赤いスカートに白のカーディガン、スカートに合わせた赤いベレー帽を被っていた。簪さんの雰囲気とマッチしていて正直とても似合ってるしかわいい。

 

「っ...//ありがとう」

 

似合っている事を俺が言うと簪さんは顔を赤くしながら下を向いてお礼を言ってきた。そんな仕草もかわいい。

 

「でも...俺は...」

 

「海?何か言った?」

 

「いや、なんでもないよ簪さん、モノレール来たし、乗ろうか」

 

「うん」

 

いけない...俺は全部片付けたら死ぬんだから...こんな気持ちを持ったら...死にたくなるだけだ...大体...束さんと簪さんの二人にこんな気持ちを抱いてる時点で俺は最低の男なんだ...こんな気持ちは押し殺して...『敵』を倒すことをメインに考えないと...

 

———————————————————————

 

---レゾナンス ショッピングモール

 

「いやぁ...ほんと...いやぁ...しんどい...」

 

「理解は出来る...出来るけど...あんなのってないよっ...」

 

今、俺と簪さんは映画を観終わってレゾナンスの中のカフェで見てきた映画のラストがあまりにも衝撃的で心中穏やかでない状態を落ち着かせるために休憩していた。

 

「しんどいしか言えない...」

 

「私本当にあのライダー好きだったのに...」

 

はたから見れば二人の男女が表情をころころ変えながらため息を吐き続けている異様な光景に見えるのだろうが、生憎俺達に周りの目を気にする余裕は無い...俺ですらこのダメージなのだからハッピーエンドが好きな簪さんにはかなりのダメージだろう...

 

「「はぁ...」」

 

かれこれ30分はこのままなのだから俺達二人の精神的ダメージに関しては察して欲しい...でもそろそろ切り替えないと余計に傷つきそうだ...

 

「簪さん...」

 

「何...?」

 

「気持ち切り替える為にウィンドウショッピングでもしてどこかでご飯食べない?このままだと余計に傷つきそうだ...」

 

「そう...だね...私もそろそろ出た方が良いかなって思ってた...」

 

「じゃあ出よっか...」

 

俺と簪さんは立ち上がりカフェを後にした。未だに足取りは重いがいつまでもいる訳にもいかない。歩きながら簪さんに話しかける。

 

「ウィンドウショッピングでもとは言ったけど簪さん何か買い物はある?あるならそっちを優先するよ?」

 

「あ...なら丁度いいから臨海学校用の水着を...」

 

「あれ?簪さん別に要らないって言ってなかったっけ?」

 

「せっかくレゾナンスに来たからついでに買えるならその方が良いと思って」

 

「それもそうか、じゃあ水着売り場に行こう」

 

「うん...!」

 

簪さんの言う通りついでに買えるなら買っちゃった方がいいな...このご時世だから男物の水着が見つかればいいけど...

 

そう思いながら俺は簪さんとレゾナンスの水着売り場に向かった。

 

 

「ここか...とりあえず俺は男物の水着を探しに行くけど簪さんはどうする?」

 

「私も探しに行く...でも海の意見も聞きたいからある程度絞ったら連絡するね」

 

「俺の意見が役に立つとは思えないけど...分かった、じゃあまた後で」

 

簪さんと別れて俺は男物の水着売り場を探して店の奥の方へ進んだ。

 

「やっと見つけた...やっぱり中々無いもんだな...」

 

何分か歩きまわってやっと男物の水着の棚の前に到着したので少ない種類の中から自分好みのものを選んで手に取る。

 

「これにするか...まあ黒なら無難だろう、とゆうか他のがブーメランパンツと派手な色しかないから実質これともう一つの白いやつしか選択肢が無い...」

 

そうして自分の水着を選んで会計に持っていこうとした時に声が聞こえた。

 

「そこの貴方」

 

「?」

 

振り返るといかにもな化粧をした女性が立っていた。明らかにこちらを見下しているような表情で。

 

「そこの水着、片付けておいて」

 

女性が指さした先には大量の水着が山の様に置かれていた。

 

「(典型的な女尊男卑に染まった人間か...怠いな...)」

 

俺は無視して会計に行こうとする。

 

「ちょっと!貴方に言ってるのよ!あの水着片付けなさい!」

 

俺が無視して歩いて行こうとするとその女に肩を掴まれてキーキーと喚き始める。

 

「自分で出したものぐらい自分で片付けるべきでしょう?そんな事も出来ないんですか?」

 

「男のくせにうるさいわね!さっさとやりなさいよ、警備員呼ぶわよ!?」

 

「はぁ...脅したくは無いですけど...やめた方が良いと思いますよ?俺の事を知らないならそれはそれで別の手段はありますけど...」

 

俺はそう言って変装の為にサングラスになるようにレンズの色を変えていた夢幻の待機形態を外す。

 

「あ、貴方は...武藤海!?二人目の男性操縦者の!?」

 

「知っているなら分かりますよね?俺自身貴女をどうするつもりもありませんけど...」

 

俺がそういうと女は一気に血相を変えて離れていった。

 

「結局逃げるならISパイロットでもない癖に偉そうにすんなよ...はぁ...」

 

溜息を付きながら改めて会計に水着を持って行き購入した。丁度水着を買い終わったタイミングで簪さんからのメッセージが届いた。

 

『幾つか選んだから海の意見が聞きたい』

 

「成る程ね、『了解、そっちに向かうね』っと」

 

俺は簪さんからのメッセージに返信した後にそのまま簪さんの所に向かった。近い所にいたので直ぐに合流することが出来た。

 

「簪さんお待たせ」

 

「ん、大丈夫...とりあえず2つまでしぼったから海の意見が欲しい...」

 

そう言って簪さんが俺に見せてきたのは、オレンジのワンピースタイプ、レースの付いた黒いビキニタイプの水着だった。

 

「うーん、簪さんにはどっちも似合ってると思うけど、俺は簪さんの綺麗な白い肌が映える黒いビキニタイプの方がより似合ってると思うよ?」

 

「分かった...じゃあこっちにする...」

 

俺が答えると簪さんは速攻で黒いビキニタイプの水着を持って会計に行った。

 

「即決だったな...」

 

あっという間に簪さんが決めたことに驚きつつとりあえず簪さんが戻ってくるのを待っていると...

 

「あれ?海?お前も来てたのか!」

 

後ろから聞き慣れた声が聞こえ振り向くと一夏とシャルロットさん、そして何故か千冬さんもいた。

 

「簪さんと映画を観に来たついでに...でも一夏とシャルロットさんは分かるとしてどうして千冬さんも?」

 

「私も水着を持っていなかったから買いに来たんだが、そうしたら偶々こいつらを見つけてな、丁度いいから一夏に水着を選んでもらって買った所だ」

 

「成る程、そうゆうことでしたか」

 

「海、お前こそどうしたんだ?更識簪と映画観に来たついでと言っていたが...」

 

「言ったとおりですけど...何か変な事言いましたかね?簪さんと一緒に仮面ライダーの映画を観に来ただけですけど...簪さんとは趣味が一致しているのでよく会話もしますし、ルームメイトでもありますから」

 

「成る程な...悪いな呼び止めたりして...これは話をするメンバーが増えたな...

 

「?まあ、自分も簪さんを待っているところでしたので大丈夫ですよ、ほら、噂をすれば」

 

丁度いいタイミングで簪さんが会計を終えてこちらにやってきた。俺が誰かと話しているのを見つけて不思議そうな顔をしている。

 

「お待たせ、海、誰と話して...って織斑君...と織斑先生!?あ、あとデュノアさんも...」

 

「すまんな更識、海を見つけてつい話込んでしまった」

 

「い、いえ大丈夫です...」

 

「私はこれで帰るとしよう、あとは学生で楽しんでくれ」

 

「分かりました」

 

「もう帰るのか?千冬姉」

 

「ああ、一夏、お前ももう少し気を配れよ、色々とな」

 

千冬さんは一夏にそう釘をさして歩いて行ってしまった。

 

「俺達は後ご飯でも食べてって思ってたんだけど海達はどうするんだ?」

 

「ん?まあ同じくって感じだな...」

 

「じゃあ俺達と一緒に食べに行かないか?と言ってもこの辺の店が全部満員だったから弾の所に行こうと思ってるんだけど...どうだ?」

 

「そうだなぁ...簪さんが大丈夫ならって所だな」

 

「ん...私はそれで大丈夫...」

 

「じゃあ決まりだな!久しぶりに行こうぜ!」

 

「そうだなぁ、IS学園に入学してから行ってないしな」

 

俺は一夏の言葉に返事をしながら簪さんにプライベートチャネルを繋いだ。

 

『簪さん本当に大丈夫?無理してるなら今からでも断れるけど...』

 

『大丈夫...いつまでもうじうじしてる訳にもいかないし...』

 

『分かった、まあ一夏がまた空気読めなかったら俺が何とかするから』

 

『うん...ありがとう』

 

簪さんの意思を改めて確認してプライベートチャネルを切ると一夏が話し掛けてくる。

 

「おーい、早く行こうぜ」

 

「分かってるって」

 

俺と簪さんは一夏を追いかけるように歩いて行った。

 

———————————————————————

 

---五反田食堂

 

「こんちはー!」

 

「厳さんお久しぶりです」

 

「あっ!?一夏と海!?」

 

「こ、こんにちはー」

 

「こんにちは...」

 

五反田食堂に一夏に続いて入っていくと弾が驚いていた。まあIS学園に入ってからは俺達の情報はほとんど一般の人には分からない様になっているから急にきたらそりゃびっくりするだろうな...

 

「久しぶりだな、弾、飯食いに来たぞ」

 

「久しぶりなのに相変わらず海は冷静と言うかマイペースというか...」

 

「そういうなよ弾、俺も海も大変だったんだぞ?」

 

「分かった分かった、所で後ろにいる娘達は?」

 

「ん?ああ、同級生だよ、買い物した帰りに海達に偶々会ってせっかくだからって事で一緒に飯食いに来たんだ」

 

「成る程な、じゃあそこのテーブル席に座ってくれ」

 

「分かった、あ、俺はいつもの油淋鶏定食大盛りな」

 

俺は椅子に座りながら弾に昔からいつも頼んでいた定食を注文する。

 

「海はほんと好きだよなそれ、あ、俺はかぼちゃの煮物定食で」

 

一夏も座りながら弾に注文する。

 

「あ、えっと僕達は何にしたらいいかな...」

 

「ここのおすすめは業火野菜炒め定食かな結構おいしいと思うよ」

 

「じゃあ僕はそれで」

 

「私も...」

 

シャルロットさんと簪さんはそれぞれ一夏と俺の隣に座ってから俺に勧められた業火野菜炒め定食を注文した。

 

「了解!じゃあ出来るまで待っててくれ!じいちゃん!注文入ったぞー!」

 

「おう!早く伝票もってこい!」

 

奥から弾の祖父である厳さんの声が聞こえて弾は奥に引っ込んでいった。入れ替わりで弾の妹の蘭がお冷を持って出てきたのだが...

 

「えっ!?一夏さんと海さん!?」

 

俺と一夏を見て相当に驚いていた。まあ蘭ちゃんは一夏の事が好きなのは一夏以外分かってるし、IS学園に行ってほぼ会えなくなったと思っていた想い人が急に来たらびっくりするわな、ちなみに俺は蘭ちゃんの相談によく乗っていたりする。

蘭ちゃんはお冷を俺達の前に置いた後で直ぐに奥の方へ引っ込んでいった、多分弾に一夏が来ているなら言ってくれと文句を言いに行ったんだろうなぁ...

 

「なんだか賑やかなところだね」

 

「ん?ああ、そうだろ?俺と海は良く食べさせてもらってたし沢山遊びにも来てたしな」

 

「ここが海の思い出の一つ...」

 

「まあ幼馴染で悪友の店だからね」

 

一夏はシャルロットさんと俺は簪さんとそれぞれ話していると着替えておめかしした蘭ちゃんが定食を運んできてくれた。

 

「油淋鶏定食大盛りとかぼちゃの煮物定食、業火野菜炒め定食2つです」

 

「お!ありがとう!あれ?着替えのか蘭ちゃん?」

 

「あ、はい!お久しぶりです一夏さん」

 

「元気そうでよかったよ」

 

「一夏さんもお元気そうで何よりです」

 

一夏と話している時の蘭ちゃんの表情が完全に恋する乙女だ...そしてシャルロットさんが明らかに警戒している...

 

「関わらんとこ...いただきまーす」

 

俺は自分の前に置かれた油淋鶏を食べ始める

 

「うん!美味い!」

 

「これ...美味しい...!」

 

俺の横で簪さんが業火野菜炒めを食べて驚いていた。

 

「口に合ったみたいなら良かったよ」

 

「うん、今日は楽しかった...また...機会が会ったら一緒に出掛けたい...」

 

「そうだね、機会があればまた映画とか観に行きたいね」

 

俺が簪さんと会話しているとそれはそれでシャルロットさんの何とも言えない視線を感じたが反応しないことにした。

 

 

その後、弾と厳さんのいつもの喧嘩のようなやりとりがあったり蘭ちゃんがらみで色々とあったがまあいい思い出という事で...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---IS学園 学生寮 1035室

 

「今日は楽しかったね」

 

「うん...映画も内容はともかく観れて良かったし...」

 

「次は臨海学校があるから分からないけどまた行きたいね」

 

「うん...!」

 

「臨海学校か...覚悟決めないとな」

 

「海?どうしたの?」

 

「なんでもないよ簪さん」

 

軍用ISの暴走事件...どうなることやら...




と言う訳で簪とのデート回でした、意外とムッツリだなこのオリ主...

でも死ぬ気なので誰かの好意に答える気は無いみたいです...

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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32話 海と安心

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

忙しくて期間が空いてしまいました...

不定期の更新にはなりますがこれからも楽しんで頂ければ幸いです。


---臨海学校へ向かうバス内

 

「海だぁぁぁ!」

 

臨海学校へ向かうバスの中でクラスの皆が盛り上がっていた。天気は快晴、絶好の海水浴日和だ。

 

「綺麗なもんだ...ねむ...」

 

俺はクラスの皆の声で一瞬起きて景色を見てその後直ぐに寝た。バスとか車とかの長距離移動になると何故かすぐに眠くなる体質なのでまだ眠くてしょうがないのだ...

 

「海!って寝てるのか...昔から長距離移動の時だけは直ぐに寝ちまうもんな...」

 

なんだか一夏の声が聞こえたような気がするがもう半分意識を失ってるので返事もせずにそのまままどろんだ。

 

 

「そろそろ目的地に着く。全員ちゃんと席に座れ」

 

織斑先生のの言葉で目を覚ますとどうやらもう着く直前のようだ。

クラスの全員がそれに従い、静かになった直後にバスは目的地である旅館の駐車場に到着。

それぞれのバスからIS学園1年生がワラワラと出て来て整列した。

 

「それでは、ここが今日から3日間お世話になる『花月(かげつ)荘』だ。全員、従業員の方々に迷惑をかけないように注意しろ」

 

「「「よろしくお願いします!」」」

 

織斑先生の言葉の後に、全員が挨拶をする。この旅館には毎年お世話になっているらしく、着物姿の女性が丁寧にお辞儀をした。

 

年齢は...幾つなのだろうか?大人の雰囲気を漂わせているが仕事柄笑顔が絶えないからなのか、その容姿はとても若々しく見える。

 

「あら、こちらが噂の...?」

 

俺達の存在に気付いた女性が織斑先生にそう尋ねる。

 

「ええ、まあ...今年は2人男子がいるせいで浴場分けが難しくなってしまって申し訳ありません」

 

「いえいえ、そんな。それに、良い男の子達じゃありませんか。2人ともしっかりしてそうな感じを受けますよ」

 

挨拶をするならこのタイミングだな、企業代表でもあるし名刺は必要だろうか?とりあえず一歩前に出て挨拶をしよう。

 

「武藤海です、月兎製作所の代表を務めています。これから3日間よろしくお願いします。これ一応自分の名刺です」

 

制服の胸ポケットから自分の名刺を取り出して渡す。

 

「お前も挨拶をしろ、馬鹿者」

 

一夏は織斑先生にグイッと頭を押さえられる。なんか悪いな一夏。

 

「お、織斑 一夏です。よろしくお願いします」

 

「うふふ、ご丁寧にどうも。清洲 景子(きよす けいこ)です」

 

そう言って清洲さんはまた丁寧なお辞儀をする。良かった...名刺も受け取ってもらえたし間違ってはいなかったみたいだ。

 

「それじゃあ皆さん、お部屋にどうぞ。海に行かれる方は別館で着替えられるようになっていますから、そちらをご利用なさって下さい。場所が分からなければいつでも従業員に訊いて下さいね」

 

俺達以外の女子生徒ははいと返事をして直ぐに旅館の中へと向かっていった。取り敢えず荷物を置いて、各々自由時間で海を満喫するつもりだろう。

ちなみに初日は終日自由時間だ。昼食は旅館の食堂にて各自取るようにとのこと。

 

「おりむー、むっき~」

 

「本音さん?どうしたの?」

 

「2人の部屋ってどこ~? 一覧に書いてなかったから教えて~」

 

「そういえばそうだった、でも俺まだ何も聞かされてないから分からないんだよね、一夏は何か聞いたか?」

 

「いや俺も何も聞いて無いぞ?どうするんだろうな」

 

事前に山田先生から俺達の部屋は別の場所が用意されるという事はきいていたのだが詳細には聞いていないのでまだ分からない。

 

「織斑、武藤。お前達はこっちだ、ついてこい」

 

俺と一夏が顔を見合わせて話していると織斑先生から呼ばれた。

 

「は、はい」

 

「分かりました、じゃあそうゆう訳だから本音さんまた後で」

 

「分かった~、後でね~」

 

本音さんと別れて織斑先生について歩いている途中で一夏が織斑先生に話しかける。

 

「えーっと、織斑先生。俺達の部屋ってどこになるんでしょうか?何も聞かされてないんですけど...」

 

「そう急くな、もうすぐ着くからな」

 

織斑先生は一夏の問いに答えて数歩歩いた後女子生徒の部屋とは結構離れた部屋の前で立ち止まった。

 

「着いたぞ。では、お前達2人の部屋割りを伝える。織斑は私と同室だ。武藤はその隣の部屋を使ってもらう」

 

「え?ちふ...織斑先生と同室ですか?」

 

「隣の部屋ですね、俺は1人ですか?」

 

「そうだ、本来は2人とも別の部屋だったのだが、それだと絶対に就寝時間を無視した女子が押し掛けるだろうということになってだな...」

 

「何と言うか...お疲れ様です...でもなぜ俺は1人なんですか?その理由だとてっきり山田先生辺りと同室かと思ったんですが...」

 

俺の質問を聞くと織斑先生が溜息をついて答えてくれた。

 

「本当は私達も山田先生を同室にしようと思ったんだが、その話を始めた瞬間に私の携帯やら職員室の電話やらが一斉に鳴り響くという怪奇現象が起きて断念した」

 

「...申し訳ないです」

 

俺は織斑先生の言葉から察して謝罪した。

 

「とりあえず、これなら、女子もおいそれとは近付かないだろう」

 

「分かりました、ご迷惑をお掛けします」

 

「よし、ではもう1つ伝えておく。個室には浴槽が付いている。一応、大浴場も使えるが男のお前達は時間交代だ。本来ならば男女別になっているが、何せ1学年全員だからな。お前達2人のために調整をするのは無理だ。よって、一部の時間のみ使用可だ。深夜、早朝に入りたければ部屋の方を使え」

 

「「はい」」

 

朝風呂がしたかったがまあしょうがない、個室のも充分だろうしそれで我慢しよう。

 

「さて、今日は1日自由時間だ。荷物を置いたら、好きにしろ」

 

「分かりました、一夏、皆待ってるだろうしさっさと海に行こうぜ」

 

「そうだな!荷物置いたら更衣室に行って着替えよう」

 

一夏と会話をしてから俺は自分に宛がわれた部屋に入ったが、自分が思っていたよりも豪華な部屋に一人でテンションが上がってしまったのは誰にも見られていないと信じよう。

 

———————————————————————

 

俺は部屋に荷物を置いてから水着等の必要な物だけ取り出して部屋を出ると一夏も丁度同じタイミングで部屋を出てきたのでそのまま2人で更衣室のある別館へ向かった。

 

「なあ海、『アレ』ってまさか...」

 

別館に向かっている途中で一夏が何かを見つけて俺に聞いてきたので一夏の向いている方向を見ると何故か道端に兎の耳が生えていた。まあ兎の耳と言っても本物のものではなくバニーガールが付けているようなヤツだが...

 

しかもご丁寧に『引っ張って下さい』と張り紙がされた看板まで立っている。

 

「はぁ...一夏先に行っててくれ」

 

「いいのか?どう考えたって『アレ』は...」

 

「ああ、大丈夫だ、俺なら多分何とかなる」

 

「それでも俺も付き合うよ」

 

「そうか、俺は良い親友を持ったよ...」

 

俺は一夏にまるで死に別れる直前のような言葉をかけた後兎の耳を引っ張った。

 

「これ自体には何もなかったか...まあISでスキャンしてたから分かってはいたが...という事は...」

 

キィィィィン……

 

「一夏、下がろう」

 

「俺も同じことを考えてたよ海」

 

何か飛行機のようなものが高速で向かってくるような音が聞こえた瞬間に俺と一夏はその場から即座に距離を取った。

 

ドカーーーーーンッ!!

 

距離を取った瞬間に謎の飛行物体が盛大に地面に突き刺さった。見た目はデフォルメした人参のようだった。

 

「あっはっはっ!引っ掛かったね、いっくん!かーくん!ってあれ?引っ掛かってない?なんか冷静に距離取られてる?」

 

「こんなことをするのは束さんだけですから最初の段階でほぼ確信してましたよ...ちゃんとその地面元に戻さないと駄目ですよ?」

 

「えーっと...お久しぶりです束さん...」

 

「二人ともテンション低いよー!せっかく束さんが華麗に登場したっていうのに...おっと束さんは箒ちゃんに会わないと!じゃあね!いっくん、かーくん!」

 

捲し立てるように一息に喋り切ると同時に束さんはビュンッと音がしそうな速さで俺達の前から消えてしまった。

 

「相変わらず嵐のような人だったな...束さん...」

 

「それについては完全に同意だな、まあ箒の所に行ったなら極端に暴走することは無いだろうし俺達はさっさと更衣室に行って海に行こう」

 

「そうだな、行こうぜ、海」

 

俺は肩をすくめながら一夏と更衣室に向かった。

 

———————————————————————

 

更衣室で俺と一夏は早々に着替えて海へ出て行った俺達が感じたのは沢山の女子生徒からの視線だった。

 

「あ!織斑君と武藤君だ!」

 

「えっ!?ほんとっ!?私の水着変じゃないよね!?」

 

「わぁ!2人とも身体凄い!織斑君は細マッチョでイケメンって感じで、武藤君は織斑君より2周りぐらいがっしりしてて男らしくて逞しいって感じ!」

 

「はぁ...分かっちゃいたけどな...」

 

大量の視線にさらされて思わずため息が出る。

 

「海...改めてすげぇ筋肉してんな...」

 

「お前まで何言ってんだよ...毎日ランニングと射撃訓練と近接格闘訓練してんだからこんぐらいついて当たり前だ、お前も俺が渡したメニューちゃんとやってれば嫌でもこのぐらいつく」

 

「そ、そうか...確かにお前がくれたメニューキツイもんな...ありゃ鍛えられるよ...」

 

「言っとくが俺のメニューの2分の1の量だからな?ある程度こなせるようになったら量を増やしていくぞ」

 

「マジかよ...」

 

「強くなりたいって言ったのはお前だからな?厳しくいくぞ?今更やっぱりやめたは無しだ」

 

「も、もちろんだ!風呂で聞かれた質問の答えだって見つけて見せる!」

 

「そうか、なら大丈夫だな、さて、鈴とかセシリアさんとかこっち来たみたいだから俺は別の所に行くわ」

 

「ん?どうしてだ?俺達と一緒に遊ばないのか?」

 

「悪いが先客がいるんだ、お前もたまには鈴達の事を察してやれ」

 

「?よく分からないけど分かった、何かあったら連絡する」

 

「おう、後でな」

 

俺は一夏達から離れて約束していた人物を見つける為に歩き出した。

 

———————————————————————

 

目的の人物と合流するために砂浜を途中で話しかけてくる女子生徒を適当に相手しながら歩いているとそれらしき人影を見つけたので近づいて行った。

 

「お待たせ、本音さん、簪さん」

 

「あ~むっきーだ~、かんちゃん、むっきー来たよ~」

 

「えっ!?ちょっ...待って...上着脱がそうとしないで本音!」

 

「あーっと...もしかして今近づかない方がいい?」

 

「ううん、大丈夫だよ~かんちゃんがせっかくむっきーの選んでくれた水着を着てるのに恥ずかしがっちゃって上着で隠してるから脱がそうとしてるだけ~」

 

のんびりとした口調話しながら的確に簪さんの上着を脱がそうとしていらっしゃる...本音さん恐ろしい子...

 

「じっ自分で脱ぐから...離してっ...」

 

「ほんとに~?」

 

「本当だからっ...」

 

「分かった~」

 

本音さんはそういうと簪さんの上着を掴んでいた手を離した。

 

「うぅ...でも見てもらう為に買ったんだし...

 

簪さんは顔を赤くしてボソボソ何かを喋りながら着ていたパーカーの上着を脱いだ。

 

「か、海っ!ど、どうかな...?」

 

俺が選んだ黒いビキニタイプの水着を着た簪さんは恥じらいながらも俺に感想を求めてきた、此処で俺が言うべき事は...

 

「うん、良く似合ってる、俺の思った通りだったよ」

 

「っ~~~///」

 

「ほら、むっきーなら大丈夫って言ったのに~、でも良かったねかんちゃん!」

 

「うっうるさい!本音は黙ってて!」

 

「まあまあ、せっかく海に来たんだし遊ばない?」

 

「さんせーい!」

 

「本音っ...!もうっ...!」

 

「簪さんもどうかな?」

 

「はぁ...分かった、本音には後でお仕置きするとして今は遊ぶ...」

 

「OK!じゃあこれをどうぞ」

 

「これは...シュノーケルと水中メガネ?」

 

「あくまで素潜りだから他の道具は無いけどこれだけでも結構海の中を楽しめると思うしどうかな?」

 

「良いと思う...私も海の中をゆっくり見たいと思ってた」

 

「じゃあしっかり準備体操したら潜ろうか、ある程度楽しんだら他にも用意してるものがあるからそれもやろう」

 

俺と簪さんと本音さんはしっかりと準備体操をしてから海に潜って海中の景色を楽しんだ。ちなみに転生前も含めてここまで綺麗な海に潜ったのは俺も初めてだったので内心ウッキウキだったのは秘密である。

一通り海の中を見てまわった後は用意していた道具一式を使って釣りも楽しんだ。拡張領域様様である。簪さんと俺は色んな魚を釣り上げたが最後の最後でまさかの真鯛を釣り上げた本音さんには正直びっくりした。

真鯛は俺に譲ってくれたのでクーラーボックスに入れて拡張領域にしまって後で調理して色んな人に配ることにした。

 

そうしてやりたいこともやったので3人で休んでいると...

 

「あ!武藤君いたいた!今みんなでビーチバレーやってるんだけど一緒にやらない?織斑君チームに勝てなくて、武藤君ならどうかなって」

 

同じクラスの女子生徒が1人俺をビーチバレーに誘ってきた。

 

「成る程...ビーチバレーもあったか...俺としてはやりたいところだけど...」

 

「私もやる~、かんちゃんもやろう?」

 

「えっ?私は...」

 

「私とかんちゃんとむっきーでチームになればいいんだよぉ、ほらぁ~いこうよぉ」

 

「もう...分かった、私も行く」

 

「よし、じゃあ俺達もいくよ!」

 

「良かった!じゃあこっちに来て!」

 

そうして着いて行くと一夏と鈴とセシリアさんがチームを組んでいて最後の1点を決めて勝っている所だった。

 

「おう一夏、随分勝ってるみたいじゃないか、俺も相手してくれよ?」

 

「海か!いいけど他にチーム組んでくれる人はいるのか?」

 

「もちろん!本音さんと簪さんがチームさ」

 

「よっしゃ!じゃあ勝負といこうぜ!普段は負けっぱなしだけどこんな時ぐらい勝ってやるからな!」

 

「こんな時でも負けてられないな!簪さん!本音さん!頑張ろう!」

 

「分かった~」「う、うん!」

 

 

散々ビーチバレーをやった後丁度夕方になっていたので俺達は着替える為に一度解散した。

ちなみにビーチバレーは一夏達に対して俺と簪さんの連携が刺さり、本音さんの的確なサポートもあって圧勝した。その後、仕事を終わらせてやってきた織斑先生ともやることになるとは思わなかったが...

織斑先生との対決は織斑先生が身体能力に物を言わせてスパイクを撃ってくるので俺しか受けられず、ほぼ俺と織斑先生のタイマンになり、最終的に3個のビーチボールが犠牲になった...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が一夏達とビーチバレーをしていた頃...

 

「箒ちゃん♪箒ちゃん♪ちょっと見ない間に可愛くなっちゃってぐへへへへ....」

 

「何故真夏なのに寒気がするんだ...?」

 

どこぞの天災は実の妹をステルス迷彩を無駄遣いして舐め回すように観察していたらしい...




と言う訳で臨海学校一日目の話でした。海でオリ主たちがやったことは自分がやりたいことを代わりにやらせただけですw

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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33話 恋と好意

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

遊戯王にかまけていて時間が掛かったので初投稿です。

楽しんで頂ければ幸いです。


---花月荘 食堂

 

着替えて食堂で一夏達と合流し適当に座った後織斑先生から軽い説明があり、夕食となった。

 

ちなみに座っている順番は俺が端の席に座ると何故かその隣に一夏が座り、一夏の横をセシリアさんが速攻で確保、その後は本音さんが俺の前に座り箒やラウラ、鈴やシャルロットさんが一夏の正面や近くに座った。簪さんは4組なので別の部屋だ。

 

席が決まった後各々目の前の食事を食べ始めたのだが...

 

「おお!一夏この刺身きっと今日揚がったばっかりの魚しか使ってないぞ!わさびもほんわさだ!うまい!」

 

「マジか!?んっ...ほんとだ!すげぇ!そうそう食えるもんじゃないぞ!」

 

「ほんわさ?」

 

「ん?ああこの皿の端っこの方にある緑色の塊だよ」

 

「じゃあ僕も...」

 

「シャ...シャル!?」

 

一夏がシャルロットさんにわさびについて説明するとシャルロットさんはわさびだけを箸で全部摘まんで口に入れてしまった。

 

「ッ!?んっ~~~~!?」

 

「だ、大丈夫か?シャル、ほら水」

 

「ら、らいじょうぶ、風味がよくておいひいよ」

 

「無理しなくていいよ、これはこうやって刺身に少しだけつけて食べるものなんだ」

 

「そうだったんだ...」

 

「わさびをこうやってつかうのは日本だけだもんなぁ...(もぐもぐ)」

 

「そうだねぇ...(もぐもぐ)」

 

ちなみに俺と本音さんはそんな一夏達を尻目に夕食をどんどん食べ進めていた。

その後は会話が盛り上がったタイミングで正座が辛そうなセシリアさんに一夏が「食べさせてやろうか?」なんて爆弾を投下して織斑先生に一喝入れられるという一幕もあったが楽しく夕食の時間は終了してそれぞれ部屋に戻っていった。

 

———————————————————————

 

---花月荘 個室

 

夕食が終わった後俺は花月荘のスタッフさんにお願いして厨房を借りて昼に釣った魚を下処理して幾らかの料理をこしらえてから部屋に戻った。作った料理と残りの魚は夢幻の拡張領域に入れてあるので鮮度もばっちりだ。

 

「さて、後は風呂に入るくらいか?」

 

俺一人しかいない部屋で確認するように次の行動を声にしていると部屋のドアがノックされた。

 

「海ー!なんかちふ...織斑先生が呼んでるぞー」

 

「分かったー、サンキューなー」

 

「おーう」

 

何やら織斑先生が呼んでいるらしいので一夏に返事をして隣の部屋に行こう。

 

 

「失礼します」

 

隣の部屋に入ると織斑先生の他に、箒、セシリアさん、鈴、ラウラ、シャルロットさん、簪さんといつものメンバーが全員揃っていた。

 

「何でしょうか?織斑先生」

 

「いや、大したことではないのだがな、これから女子会としゃれこむのだが何かつまみが欲しいと思ってな、何か持っていないか?もちろん金は出すぞ、ちなみに一夏は何故か卵焼きを作って持ってきてくれた」

 

「そうゆうことでしたら今日の昼間に釣ったアジを刺身となめろうにしてあるのでどうぞ、あと一夏から言われてると思いますがお酒はほどほどにしてくださいね?」

 

俺は拡張領域から作っておいたアジの刺身となめろう、醤油と人数分の箸をおきながら千冬さんに釘を刺した。

 

「分かっている、お前たちは2人そろって心配性だな、まあとりあえず感謝する、一夏がお前と風呂に入りたがっていたから後は一夏の所に行ってやってくれ」

 

「分かりました、では失礼しました」

 

俺はさっと部屋を出て行った。女子同士でしかしにくい話もあるだろうしこうゆう時はさっさと出て行くに限る。

 

———————————————————————

 

<簪視点>

 

織斑先生に呼ばれて部屋に入るといつも訓練してるメンバーが全員揃っていた。

 

「よし、全員揃ったな」

 

「お、織斑先生私たちはどうして呼び出されたのでしょうか?」

 

「ん?なぁに別に説教しようって訳じゃない、とりあえず飲み物でも飲め、後ろの冷蔵庫にあるから好きなのを飲むと良い」

 

「わ、分かりました」

 

そうして皆が飲み物を取り出して一口飲むと...

 

「飲んだな?これで共犯だ」

 

織斑先生はそういうとビールを冷蔵庫から取り出して飲み始めた。

 

「ぷはぁ!美味い!ん?どうした?そんな驚いたような顔をして」

 

「いや...あのイメージと」

 

セシリアが私の思っていたことを代弁してくれた。結構びっくりした...

 

「私だって人間だぞ?ガソリンでも飲むと思ってたのか?まあいい...なにかつまみが欲しいな、一夏と海に持ってこさせるか」

 

そういうと織斑先生は携帯を取り出して織斑君に連絡したみたいだった、それから5分もしないうちに織斑君がやってきて卵焼きを置いて行って、そのあとに武藤君が同じように来て昼に釣ったアジを刺身となめろうにして持ってきてくれた。

 

「さて...あいつらもしばらくここには近づかないだろうし...お前ら、あいつらのどこが良いんだ?」

 

織斑先生の言葉を聞いた瞬間に私は一瞬ビクッと反応してしまった。

 

「わ、私は別に...以前より腕が落ちているのが腹立たしくて鍛えてるだけですので...」

 

お茶のペットボトルを見つめながら箒がそう答えた。

 

「あたしは、腐れ縁なだけです...」

 

スポーツドリンクを一口飲んだ後ボソボソと言う鈴。

 

「わ、わたくしはクラス代表としてしっかりして欲しいだけです」

 

紅茶のボトルを円を描くようにしながら揺するセシリアがそう答える。

 

「ふむ、そうか。そうゆうことなら一夏に伝えておこう」

 

シレッとそんなことを言う織斑先生に、3人はギョッとしてから一斉に詰め寄った。

 

「「「言わなくていいです!」」」

 

織斑先生はその様子を笑い飛ばしながら2本目の缶ビールを開けた。

 

「僕...わ、私は一夏の優しい所です...」

 

シャルロットは恥ずかしそうに言いながらも芯が通っている意思を感じるような雰囲気だった。

 

「成る程、しかしなぁ...あいつは誰にでも優しいぞ?それにお前は武藤に気がありそうだと思っていたが?」

 

「そ、そうですね...。そこがちょっと、悔しいかなぁ...後、武藤君には色々助けてもらって凄く感謝してるんですけど...えっと言葉にするのが難しいな...なんというか一夏とは違う意味で一緒にいて安心出来るというか...」

 

「シャルロットよそれは多分私と同じだ、きっとお兄様に父性のようなものを感じてるんだ」

 

「ふ、父性!?でもそう言われるとしっくりくるなぁ...」

 

シャルロットがラウラに言われて納得するとそのままラウラが続けた。

 

「私は嫁の強い所に惹かれました」

 

「強い?そうか?ISの強さだけで言うなら武藤が飛びぬけていると思うが」

 

「もちろんISでの強さはお兄様が一番だとは思います、それでも私は嫁の意思の強さに惹かれたんです」

 

「ふむ...そうか」

 

はっきりと言い切ったラウラを私含めて全員で赤い顔で見つめていると織斑先生が口を開いた。

 

「まあ、無自覚たらしなのは置いといてだ。あいつは役に立つぞ。家事も料理もなかなかだし、マッサージだって上手い」

 

織斑先生の言葉にばっと顔を向ける私以外のメンバー...勢いが凄くて少しびっくりした。

 

「というわけで付き合える女は得だな。どうだ、欲しいか?」

 

え!?と箒・鈴・セシリア・シャルロット・ラウラが目を見開き、声をハモらせた。

 

「「「「「くれるんですか!?」」」」」

 

「やるかバカ」

 

その瞬間に5人が落胆してがっくりと肩を落とす。

 

「女ならな、奪うくらいの気持ちで行かなくてどうする。自分を磨けよ、ガキども」

 

実に楽しそうな表情でそう言いながら、3本目のビールを取り出し口をつける織斑先生。

 

「さて、最後は更識妹だな」

 

急に私に話が振られたのでまたビクッっと反応してしまった。

 

「わ、私...ですか...?」

 

「お前はこいつらと違って武藤一筋みたいだからな」

 

そして部屋中の視線が私に集まってくる...正直こうゆうのあんまり好きじゃないから困る...

 

「えっと...海とは初めて会った時に趣味の話で気が合うなって思って...」

 

「それで?」

 

「弐式の開発も手伝ってくれて...危なくなった時も助けてくれて...私にとってヒーローで...」

 

「うんうん」

 

「それでこの前一緒に映画を見に行った時に確信したんです...私この人の隣にいたいって」

 

「「「「「...」」」」」

 

私の話を聞いた5人は何とも言えない顔をしながら私の事を見てきた。なんでそんな顔をしてるんだろう?

 

「どうやらこの中で一番進んでるのは更識妹の様だな、だがあいつ...武藤の隣に行くのは簡単じゃないぞ、あいつは一夏のように鈍感では無いが、一夏以上に世界中があいつを狙ってるし何より...すさまじい壁があるからな」

 

「それでも、私は諦めるつもりはありません」

 

「そうか、それなら最後まで横に立てるようになるまで諦めんようにな」

 

「はい」

 

私がそう返事をすると織斑先生はいつもは見せないような柔らかい表情で私を見てきたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---花月荘 露天風呂

 

「露天風呂は最高だな海!ぶぁっくしょい!」

 

「それはそうだが湯に浸かりながらくしゃみなんて調子が悪いのか一夏?」

 

「いや、そんなことはないけどなぁ」

 

「誰かが噂でもしてるんだろ?ぶぇっくしょい!」

 

「海もか?なんなんだろうな?」

 

「さぁ?」




今回は女子メンバー+千冬の女子会がメインの回でした。簪は天災を乗り越えるのかそれとも...

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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34話 期待と脅威

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

仕事が忙しくて時間が掛かったので初投稿です。

楽しんで頂ければ幸いです。


<海視点>

 

臨海学校2日目、今日は専用機持ちは丸一日各種装備試験運用とデータ取り、一般生徒はISの操縦訓練という予定になっている。

専用機はそれぞれ国や企業の機密の塊なので、俺達専用機持ちは他の生徒とは離れた場所で作業することになる。

 

「さて、これで専用機持ちは全員集まったな」

 

運動用のジャージを着た織斑先生が言ったとおりこの場には1学年の専用機持ちが全員集まっている、+αで箒もいるが...まあ十中八九束さんが箒の専用機を持ってきたのだろう。

 

「織斑先生、彼女は専用機を持っていないはずでは?」

 

案の定セシリアさんが疑問に思って織斑先生に質問している。

 

「ああ、それは...」

 

「ちーちゃ~~~~~~~ん!!!」

 

凄まじい勢いで砂煙を上げながらこちらに向かってくる人影、それは自分がこの世界に来てから世話になりっぱなしの人の姿をしていて...

 

「「束(さん)...」」

 

「会いたかったよー!ちーちゃん!さあ久しぶりにハグしよう!束さんと熱いほうよ...う゛っ」

 

飛び掛かって来た束さんの顔面を片手で掴みそのまま容赦ないアイアンクローをかます織斑先生、痛そうだな、あれ...

 

「武藤の時と言い先日の件と言い...いい加減にしろ束」

 

「容赦ないアイアンクローだね!流石ちーちゃん!なんかミシミシいってるからそろそろ止めて欲しいなぁなんて...でちゃう!束さんの脳みそ出ちゃうから!」

 

「お、織斑先生...流石にそのあたりで...」

 

「はぁ、仕方あるまい、海に感謝するんだな束」

 

俺が恐る恐る言うと織斑先生はため息を吐きながら手の力を緩めた。

 

「あ゛あ゛~、危ない所だったよ、ありがとうかーくん!」

 

「俺も束さんはもう少し落ち着いた方が良いと思いますけどね...」

 

「がびーん...」

 

ふと残りのメンバーの方を見ると妹である箒と既に面識のあるシャルロットさんはまだしもセシリアさんや鈴、簪さんは目の前のやり取りについて行けずポカンとこちらを眺めてきていた。

 

「ぐすん、ちーちゃんもかーくんもひどい...」

 

「自業自得だ。それより自己紹介しろ、周りを見ろ、お前の事が分からん奴らが口を開けたまま止まっているだろう」

 

「えー...めんどくさーい、私が束さんだよ~、よろよろ~」

 

そう言って手をひらひらさせる束さん。今まで呆気に取られていた鈴、セシリアさん、ラウラもその正体を知って驚きの表情を浮かべていた。

 

「それで束。ここに来たという事は例の件か?」

 

「そのとーり!と言うことで、皆さん大空をご覧あれ!」

 

格好つけながらビシッと直上を指さす束さん。その通りに全員が空を見上げると...

 

ズズーンッ!

 

「わあっ!?」

 

いきなり空から大きな金属の塊が落下してきた。大きな長方形のそれは地面に着地して直ぐにこちら側の面が外れてバタリと倒れその中身を俺達に見せる。その中には...

 

「じゃじゃーん! これぞ箒ちゃんの専用機こと『紅椿(あかつばき)』! 束さんお手製の第4世代ISだよ!」

 

真紅の装甲に身を包んだその機体は、束さんの言葉に答えるかのようにクレーンアームによって外へ出てくる。

 

とゆうか第4世代って...ここは原作通りとはいえISに深く関わっているから改めてこの機体がとんでもないのが分かるな...

 

「だ、第4世代!?」

 

セシリアさん達が思わず声を出して驚いてるな...

 

「これが紅椿...私のIS...」

 

「そう!正真正銘箒ちゃんだけの機体だよ!でも...この機体を渡す前に一つだけ...」

 

「なんですか姉さん」

 

「作った私が言うのもなんだけど力はただ力だよ箒ちゃん、それだけは忘れないで...」

 

束さんは諭すように箒に忠告した。

 

「何にせよ、これはやりすぎだバカ」

 

「にゃはは~、可愛い妹を思ってアレコレ付け足してたらつい...さっ、お話はここまでにして早速フィッティングとパーソナライズを始めよっか!」

 

そんなことを言う束さんに頭が痛くなってきたのか、織斑先生は目頭を押さえて溜め息を吐いた。

 

「あ、そうだかーくん!アレももってきたからかーくんは最終チェックやっちゃおうか!と言う訳で皆さん今度は海の方をご覧あれ!」

 

再度格好つけながらビシッと海上を指さす束さん。その通りに全員が海を見ると...

 

「アレってアレですよね...」

 

「うん!そうだよー!」

 

「アレって...ひぃ!?」

 

飛んできた機影を見てシャルロットさんが試験を思い出して震えてる...俺も頭が痛くなってきた...

 

「束さんがかーくんのエクスエクシアの為に開発した長距離移動・高火力モジュールの『GNアーマーTYPE-EX』!前の試験から調整して後は最終チェックだけだからね!」

 

束さんが言い切ると同時に青と白のカラーリングの戦闘機のような機体が砂浜に着陸した。

 

「蒼機兵用のパッケージ!?とゆうか蒼機兵の正式な機体名初めて聞いたわよ!?」

 

いきなり億単位の価値がありそうな情報が大量に入ってきて鈴が顔色を変えながら叫んでいる。

 

「さあさあ!紅椿のフィッティングとパーソナライズ、GNアーマーの最終チェックやっちゃうよ!」

 

言うが早いか、束さんはコンソールをいじって紅椿の装甲を開放し、装着するよう箒を促しつつGNアーマーもドッキングモードに変形させていた。

 

「ということで、篠ノ之はこれからフィッティングとパーソナライズの作業に、武藤は専用パッケージのテストに入る。お前達もそれぞれ送られてきた専用パーツのテストだ。解散!」

 

織斑先生の合図とともに皆解散して各々自分の作業を始めていった。

 

「かーくんはドッキングした後各種チェックして自由に飛んでみて?それで異常が無ければもう大丈夫だから」

 

箒のフィッティングとパーソナライズを進めながら束さんが俺に最終チェックについて教えてくれたので俺は言われた通りにエクスエクシアを展開してGNアーマーとドッキング、各種機能や武装のチェックを始めた。

 

「ドッキング完了...GN粒子の供給開始...セルフチェック開始...各部異常なし...オールグリーン...束さん!セルフチェック大丈夫だったんで飛んできます!」

 

「は~い、かーくんいってらっしゃい!」

 

俺は束さんに声をかけてからエクスエクシア改め『GNアームズTYPE-EX』で一気に空に飛び立った。

 

「大きいから小回りは効きづらいけどやっぱりこの推力は凄いな」

 

加速して速度を確かめたり用意されたターゲットドローンに軽く武装を撃ち込んで一通りの動きをした後に最後にバレルロールして俺はまた砂浜に着陸した。どうやら俺が飛んでいる間に箒の紅椿の一連の作業も終わって動かせるようになったようだ。

 

「束さん、問題なく終わりました、これで完了ですね」

 

ドッキングを解除してGNアーマーを待機状態にして俺は束さんに声をかけた

 

「こっちも丁度箒ちゃんの紅椿のフィッティングとパーソナライズその他諸々が終わったところだよー」

 

「じゃあついでに夢幻に関して聞きたいことがありまして...大丈夫ですか?」

 

「もちろん!束さんにお任せあれ!」

 

「ありがとうございます!これなんですけど...」

 

俺が束さんに前に夢幻のフラグメントマップのデータで見つけた削除できないデータを見せようとした時、大きな声が聞こえてきた。

 

「たっ、た、大変です! お、おお、織斑先生!」

 

何事かと顔を向けて見れば山田先生が血相を変えて走って来ていた。

 

「どうした?」

 

「こ、こっ、これをっ!」

 

渡された小型端末の、その画面を見て織斑先生の表情が一気に曇る。

 

「特命任務レベルA、現時刻より対策を始められたし...」

 

「?ちーちゃん?どうかしたの?」

 

「これを見てみろ」

 

「っ、これは...」

 

織斑先生から端末を渡された束さんも険しい表情へと変わった。

 

「山田先生、他の先生達にも連絡をお願いします」

 

「わ、分かりましたっ!」

 

「今日のテスト稼働は中止だ!専用機持ちは全員集合しろ!それと束...お前の力も貸してくれ」

 

「もちろんだよ!」

 

先生達のあの慌てようは...

 

「いよいよ始まっちゃったか...」

 

「海?何か言ったか?」

 

「いや、なんでもない、早く行こう。もちろん箒もな」

 

「ああ、そうだな」

 

原作をある程度知っているからこそ、これから起こる事件に俺は覚悟を決めて織斑先生の元へと向かって行った。

 

———————————————————————

 

---花月荘 風花(かざばな)の間

 

「では、現状を説明する」

 

旅館の最奥に設けられた宴会用の大座敷・風花の間では、俺達専用機持ち全員と教師陣、そして束さんが集められた。

照明を落とした薄暗い室内には大型の空中投影ディスプレイが浮かんでいる。

 

「2時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第2世代型の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走。監視空域より離脱したとの連絡があった」

 

「(軍用IS...俺がいてもそこは変わりないか...)」

 

俺は内心世界に溜息をつきながらしながら織斑先生の説明を聞いた。いきなりの説明に、一夏は面食らってポカンとしている。まあこの反応もしょうがない。一夏はIS学園に入る前までは一般人だったし、軍用ISが暴走したという連絡をなぜ自分達にするのか。混乱するのも仕方ない。

 

箒も真剣な表情こそしているが恐らく命を賭けるほどの覚悟は決まっていないだろう。

 

だが他のメンバー達は事態を理解しているようで、全員が全員、厳しい顔つきになっていた。

一夏や箒とは違う、正式な国家代表候補生なのだから、こういった有事に対する訓練も受けているに違いない。シャルロットさんも今は月兎製作所の企業代表だが元国家代表候補生だし、俺は原作を知っている事はもちろんだが、そもそも小2の頃から実戦経験がある。

 

「これをさらに束が調べた結果、このISは現在何者かのハッキングを受けているそうだ。それも、操縦者を乗せたままでな...」

 

ここまで説明されれば原作を知っていなくても俺達にどうして欲しいのか完全に分かってしまうが...

 

「衛星による追跡で『福音』はここから10キロ先の空域を通過することが分かっている。時間にしてあと50分。学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処する事になった」

 

淡々と続ける織斑先生。その次の言葉は、予想通りだった。

 

「教員は学園の訓練機を使用して空域及び海域の封鎖を行う。よって、本作戦のメインである『福音』との戦闘は専用機持ちに担当してもらう」

 

俺達1年生の専用機持ちで暴走した軍用ISを止めろという命令が下ったのだった。

 

「それでは作戦会議を始める。意見があるものは挙手するように」

 

「はい」

 

早速、セシリアさんが手を挙げる。

 

「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」

 

「分かった。ただし、これらは2ヵ国の最重要軍事機密だ。けして口外はするな。情報が漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と最低でも2年の監視が付けられる」

 

「了解しました」

 

未だ状況が飲み込めずにいる一夏をおいて、俺達は開示されたデータを元に相談を始める。

 

広域殲滅(こういきせんめつ)を目的とした特殊射撃型...私のブルー・ティアーズと同じく、オールレンジ攻撃が行えるようですわね」

 

「攻撃と機動の両方を特化した機体ね。厄介だわ。しかも、スペックではあたしの甲龍を上回ってる...」

 

「この特殊装備が曲者って感じはするね。この前月兎製作所からリヴァイヴ用の防御パッケージを持ってきてるけど、連続しての防御は難しい気がするよ」

 

「しかも、このデータでは格闘性能が未知数だ。持っているスキルも分からん」

 

「それに、データと実物とでは大きく変わってくる可能性もある。先生、偵察は可能ですか?」

 

「無理だな。この機体は現在も超音速飛行を続けている。アプローチは1回が限界だろう」

 

「音速を出せるのか...それだと全員で包囲するのも難しいな...」

 

「1回きりのチャンス...ということはやはり、一撃必殺の攻撃力を持った機体で当たるしかありませんね」

 

山田先生の言葉に、その場の全員の視線が一夏、そして俺へと向けられる。

 

「海、あんたの夢幻で一撃必殺の遠距離武器って作れる?」

 

「作れない事は無いが、流石に遠距離かつ一撃でシールドエネルギーを削り切るような武器をこれから作るのは材料的にも時間的にも無理だな」

 

「じゃあ前に私と山田先生に撃ってきた蒼機兵のデカいキャノンは?リミッターを外せば相当な威力が出るでしょ?あれ」

 

「確かにあれはリミッターを解除すれば相当な威力が出るけど、あれも所謂広域殲滅...大量破壊兵器だから直撃させたときに操縦者への被害が無いとは言い切れないんだ」

 

俺と鈴のやり取りを聞いてその場の全員の視線が改めて一夏へと向けられた。

 

「え...?」

 

「一夏、あんたの零落白夜で落とすのよ」

 

「それしかありませんわね。ただ、問題は...」

 

「どうやって一夏をそこまで運ぶか、だね。エネルギーは全部攻撃に使わないと難しいだろうから、移動をどうするか」

 

「しかも、目標に追いつける速度を出せるISでなければいけないな。超高感度ハイパーセンサーも必要だろう」

 

「そうなると機体は...」

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ! お、俺が行くのか!?」

 

「「「「「「「当然」」」」」」」

 

全員の声が重なった。この中で操縦者に被害を与えずかつ一撃必殺を狙えるのは一夏の白式が持つ零落白夜以外には無いだろう。

 

「織斑、これは訓練やルールに護られた試合ではない。軍用機を相手にする実戦だ。もし覚悟が無いなら、無理強いはしない」

 

織斑先生にそう言われて、僅かに及び腰になっていた一夏は意を決した表情で口を開いた。

 

「やります...俺が、やってみせます!」

 

「よし。それでは作戦の具体的な内容に入る。現在、この専用機持ちの中で最高速度が出せるのはどれだ?」

 

「それなら、かーくんのエクスエクシアが断トツじゃないかな?丁度おあつらえ向きに長距離移動・高火力モジュールがあるわけだしね!速度も束さんのお墨付きだよ!」

 

「なら織斑を運ぶのは武藤で決まりだな、武藤いけるか?」

 

「分かりました、ただ俺と一夏の二人だけではイレギュラーが起きた時に対処しきれない可能性もあるのでもう一人か二人は欲しいですね、一応自分のモジュールはあの大きさなので一夏と更にもう1人運ぶことは可能ですが...小回りが利かないので随伴員がいると安定するかと」

 

「ふむ...オルコット、確かお前にはイギリスから強襲用高機動パッケージが届いていたな。それはどうだ?」

 

「現在量子変換(インストール)中ですが、まだ完了していません。作戦の開始までには間に合わないかと...」

 

「そうか...」

 

「じゃあ箒ちゃんの『紅椿』を加えたらどうかな? 展開装甲を調整すればGNアームズにも追いつけるはずだよ」

 

「束、その調整に掛かる時間はどれくらいだ?」

 

「7分あれば余裕だね」

 

「よし...では...」

 

「織斑先生、一点大丈夫でしょうか?」

 

「なんだ武藤」

 

「先ほど自分のモジュールでもう1人運べると言いましたがその人員も連れて行ってもよろしいでしょうか...?」

 

「確かに人数は多いに越したことは無いと思うが...誰を連れて行くんだ?」

 

「自分は簪さんが適任だと思っています」

 

「わ、私!?」

 

「簪さん、山嵐の弾頭の中にスモークとかチャフってあったよね?」

 

「う、うん、好きなように切り替えて撃てるように搭載してあるよ」

 

「織斑先生、スモークとチャフが使える簪さんがいればより安全に作戦を遂行出来ると思います」

 

「成る程...更識妹、いけるか?」

 

「わ、分かりました...やるだけやってみます」

 

「よし!では本作戦では織斑・武藤・篠ノ之・更識妹の4名による追跡及び撃墜を目的とする。作戦開始は30分後。各員、直ちに準備にかかれ」

 

織斑先生が手を叩きそれを皮切りに俺達は作戦の準備に取り掛かるであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見てるだけじゃつまんねぇよなぁ!やっぱ戦争は、白兵でねえとな!」

 

 




今回は紅椿登場+福音事件の発生回でした。そして最後の台詞...果たして主人公たちに太刀打ち出来るのか...

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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35話 燃えた白と堕ちた蒼

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回も難産でしたが自分が特に書きたかった部分の一つだったので何とか完成させました。

楽しんで頂ければ幸いです。


作戦会議から30分後、俺達は砂浜に並び立ち、それぞれISを起動した。

 

「来い!『白式』」

 

「行くぞ!『紅椿』」

 

「お願い...『打鉄弐式』」

 

「『エクスエクシア』起動...」

 

全員がISを纏った後、俺は更にドッキングモードにしていたGNアーマーとドッキングする。

 

「全システムオールグリーン...一夏、簪さん捕まってくれ」

 

「おう、よろしく頼むぜ、海」

 

「私もよろしく...それにしてもIS2機を牽引して飛行できるなんで凄いモジュールだね...」

 

「そりゃあ束さんが開発してるからなぁ...二人とも離さないように気を付けてくれよ」

 

「(それにしても...)」

 

横に視線を向けるとそわそわと落ち着きのない箒が映る、使い始めてからまだ半日も経っていないのにいきなり実戦投入されれば落ち着かないのも納得だろう。

 

《海...箒が...》

 

一夏も箒の様子を見て心配したのか個人間秘匿通信(プライベート・チャネル)で声を掛けてくる。

 

《ああ、分かってる》

 

一夏に短く返事を返してから俺は箒に話しかける。

 

「箒、大丈夫か?」

 

「あ、ああ...私は大丈夫だ...」

 

「気休めかもしれないけどその機体を作ったのは天災ことお前の姉だし、此処にいるのは原初のISの一機の蒼機兵だからな、遊覧飛行して戻ってきたら美味い魚食べたいなぁぐらいに思ってくれて大丈夫だ、帰ったら一夏の好みの料理のレシピも教えてやるから」

 

「な、なんで俺の好みの料理の話が出てくるんだ!?」

 

「お前には一生分からんわ唐変木」

 

「ひでぇよ海...」

 

俺に言われてがっくりと肩を落とす一夏。箒はそれを見て肩の力が抜けたのかさっきより幾分マシな顔つきになっていた。

 

「ふふっ、そうだな。帰ってきたら海にレシピを教わるとしよう、ありがとう、海、一夏」

 

「どういたしましてだ」

 

「おう!」

 

箒のケアが終わったタイミングで開放回線(オープンチャネル)から織斑先生の声が聞こえてくる。

 

「織斑、武藤、篠ノ之、更識妹、聞こえるか?」

 

「こちら武藤、大丈夫です、問題ありません」

 

全員聞こえているようなので俺が代表して返事をすると織斑先生が続ける。

 

「よし、ではこれより、対『銀の福音』作戦を開始する!全機発進しろ!」

 

織斑先生の声と同時に俺達は飛び立った。まずは上昇してある程度の高度に達したところで一夏と簪さん、箒に声をかける。

 

「よし、ここから飛ばすぞ、簪さんも一夏もしっかり掴まっててくれ、箒もしっかりついてきてくれよ、目標は俺のレーダーで捉えてる」

 

「分かった」「おう!」「ああ」

 

3人から返事が返っていたので俺はスラスターを吹かし目標へと加速していく、ハイパーセンサーで横を確認すれば箒もしっかりと着いてきている。

 

「今1.5キロ圏内だ会敵まであと1分も無いぞ...ッ《ビーッ!ビーッ!》ロックオン!?っ!GNフィールド展開!」

 

急なロックオン警告に簪さんと一夏を乗せている以上無理な軌道で回避も出来ないのでGNフィールドを展開すると真っ赤なビームがフィールドに当たる。

 

「きゃあ!」

 

「な、なんだ!?」

 

「赤い長距離粒子ビーム...これは...福音じゃない!3人ともイレギュラー発生だ!箒は一夏を福音の所まで俺の代わりに運んでくれ!簪さんは俺と一緒にここで未確認機への警戒を!」

 

「わ、分かった!行くぞ一夏!」

 

「待てよ!4人で戦った方が良いんじゃないか!?」

 

「本来の任務は福音の対処だ!白式のエネルギーを使うわけにはいかない!それにあの色の攻撃は前にも見たろ!あれの専門家は俺だ!何とかなる!」

 

「くっ...ちゃんと無事に戻って来いよ海!箒頼む!」

 

「ああ!」

 

「お前もな!一夏!簪さん!警戒と山嵐の準備を!」

 

「分かった!」

 

一夏と箒は福音に向かって飛んで行き、俺は簪さんとこちらに接近してくる未確認機を警戒する。レーダーとハイパーセンサーで確認してはいるが詳細に確認することが出来ない距離から攻撃された事に嫌な予感がするが確認できない事にはどうしようもない。

 

「未確認機を目視で確認...何あの機体...あんな機体見たことが...」

 

「あれは...なんで...なんで!」

 

「海?あの機体を知ってるの?」

 

簪さんが俺に話しかけてくるが俺の意識は完全に目の前の機体に奪われていた。

 

「アルケーガンダム...なんでお前がここにいる!アリー・アル・サーシェス!」

 

「さぁ!始めようぜ!この世界のガンダムさんよぉ!ガンダム同士によるとんでもない戦争ってやつをなぁ!」

 

———————————————————————

 

<一夏視点>

 

「見えたぞ、一夏!」

 

「ッ!あいつが福音か!」

 

海と簪さんは大丈夫なんだろうか...そう考えかけて俺は直ぐにその思考を振り払った。

 

「行くぞ一夏!3!2!1!」

 

「うおおおおっ!!」

 

零落白夜を発動させて同時に瞬時加速(イグニッション・ブースト)を行って『銀の福音』との間合いを一気に詰める。

 

「これでっ!」

 

零落白夜が『銀の福音』に当たる瞬間、お互いこんなに早く移動しているのに福音はいきなりこっちに振り向いてきた。

 

「なっ!?でもこの距離なら!」

 

俺は無理矢理押し切ろうと零落白夜の刃を振り下ろす。

 

「敵機確認。迎撃モードへ移行。『銀の鐘(シルバー・ベル)』、稼働開始」

 

開放回線(オープンチャネル)から機械音声がが聞こえたと思えば俺の零落白夜は福音にあっさりと避けられる。

 

「なっ!?ならもう一度だ!箒、援護してくれ!」

 

「分かった!」

 

時間がかかると俺達の方が不利になるから早く勝負を付けないと...

 

「こいつ...早すぎる!」

 

俺と箒の攻撃は、ヒラリヒラリとまるで踊っているかのように紙一重の回避をされてしまう。

 

「くっ!こいつっ!」

 

「一夏!不用意に近づいては!」

 

俺は勝負を決めようと大きく振りかぶって一撃当てようとする。

 

「La...♪」

 

甲高い機械音声がまた聞こえたかと思えば福音は自身の銀色の翼を広げるように開いた。

 

「まずい!一夏避けろ!」

 

「ぐぅっ!?」

 

まるで嵐のような量のエネルギー弾が俺に襲い掛かって来た。

 

「これじゃあ近づけない!」

 

「私が隙を作る!」

 

箒が福音に突撃して高速で移動しながら二刀で斬り付けていく、福音の攻撃も凄いけどこれなら...あれは...船!?福音の攻撃が飛んで行ってる!あのままじゃ当たる!

 

「うおおおおっ!!」

 

「一夏!?どこへ行くんだ!?」

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)と零落白夜。その両方を最大出力で行い、1発の光弾に追い付いた俺はそれを斬り飛ばす。

 

「何をしている!? せっかくのチャンスに――」

 

「船がいるんだ! 海上は先生達が封鎖したはずなのに!多分密漁船だ!」

 

「何!?」

 

キュゥゥゥン...

 

「くそっ!エネルギー切れか!」

 

「一夏!これでは作戦失敗だ!どうするんだ!」

 

「犯罪者とはいえ俺は見殺しにできない!っ!?箒後ろ!」

 

「LaLa...♪」

 

箒の背に向かって福音が攻撃を再開する。何故か俺には一切攻撃はこない...くそっ...俺はもう眼中に無いって事か...

 

「くっ...」

 

福音から放たれる光弾が箒の腕に触れ、爆発する。その爆風で取り落としてしまった刀が空中で光の粒子となって消えた。

 

「まさか...箒もエネルギー切れ!?」

 

「La...♪」

 

動けなくなった箒に福音が攻撃しようとしているのが見えた。あのままじゃ箒が!

 

「箒ぃぃぃっ!!」

 

俺は最後のエネルギー全てを使って瞬時加速、箒を庇うように抱きしめる。その直後俺の背中に衝撃と焼けるような痛みが襲ってきた。

 

「ぐあああああっ!!」

 

「一夏っ、一夏っ! 一夏ぁっ!!」

 

「ほ...う...き......」

 

俺は今にも泣きそうな声で俺の事を呼ぶ箒を見て意識を失った...

 

———————————————————————

 

<簪視点>

 

「なんでお前がここにいるんだ!アリー・アル・サーシェス!」

 

「気づいたらこの世界に来ちまっただけだ!そんなことよりてめぇのガンダムはクルジスの兄ちゃんの最初に乗ってたやつにそっくりだなぁ!えぇ!」

 

私の隣にいる海が前にいる赤い機体を見ながら叫んでいた。表情は見えないけどきっと海は目の前の赤い機体を睨みつけている。赤い機体からは意に介さないような男の人の声が返ってきている。

 

「海はあの機体の事知ってるの?それにあの声...男の人の声だったけど3人目の男性操縦者がいたなんて...」

 

「そんなことを言ってる場合じゃない!簪さんは今すぐにスモークとチャフを撃ってから一夏達の方に行ってくれ!」

 

急にいつもとは違う強い口調で海に言われて私は驚きながらも理由を聞いてみることにした。

 

「ど、どうしたの?そんな強い言い方で...それに2対1なんだからこのまま対処した方が...」

 

「あいつはとにかく危険なんだ!今のうちなら簪さんはギリギリ逃がせるけど戦い始めたらその機会も失われる...だから簪さんは直ぐに逃げてくれ!俺も時間を稼いだら合流するから!」

 

「わ、分かった...海も気を付けて!」

 

「そらぁ!」

 

赤い機体はいきなり私たちに向けてビームを撃ってきた。

 

「ちぃ!簪さんまたあとで!」

 

「うん!海も絶対戻ってきてね!山嵐発射!」

 

私はなんとなく嫌な予感を感じながらもスモークとチャフ弾頭のミサイルを山嵐から発射すると同時に後退した。最後に見えたのは赤い機体に向かって突っ込んでいく蒼機兵...海の姿だった。

 

———————————————————————

 

<海視点>

 

「スモーク?チッ!」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

俺は簪さんが一夏達の方へ向かったのを確認したのちスモークの中の赤い機体...アルケーガンダムへとGNソードで切りかかった。奇襲気味に切りかかったにも関わらずGNバスターソードで受け止められ鍔迫り合いになる。

 

「ハッ!そっちから突っ込んできてくれて助かったぜガンダムさんよぉ!」

 

「さっきの質問に答えろ!アリー・アル・サーシェス!」

 

「んなこと知るかよ!気づいたら大将や訳わかんねぇ兄弟連中と一緒にこの世界に居たってだけだぁ!!7年前になぁ!」

 

「リボンズ・アルマークまで来てるのか!?しかも俺が初めてエクスエクシアを起動した年から!」

 

「訳わかんねぇ世界に一文無しで放り込んだツケを払えや!てめぇの命でなぁ!」

 

「そんなそっちの都合でやられてたまるか!」

 

GNソードを振りぬいて一撃与えようとしたが振りぬく前に距離を取られて空振りに終わる。

 

「行けよ!ファングぅ!」

 

奴の両腰部のスカートアーマーから牙のようなものが射出され高速でこっちに向かって飛んでくる。

 

「くっ...やっぱり使ってくるよなっ!」

 

俺は今まさに自分に牙を剥いている武装について前世の知識として知っているが実際に対面するとその速さと複雑な軌道に翻弄される。

 

「本物はこんなに早いのかよ!」

 

ファングの突撃とビームを何とか躱していくが自分の見ていたガンダムの主人公達のようにはうまく躱せず、姿勢が崩れた瞬間にGNソードにファングが直撃して爆発する。

 

「くそっ!躱しきれない!」

 

失ったGNソードのかわりにシールドバスターライフルとGNシールドを展開して応戦するが相手は作中で最強クラスのパイロットだった男だ。普通に撃ちあっているだけではこちらが不利になっていくのは明白だった。

 

「それでも負けるわけにはいかないんだ!」

 

「御託はァ!たくさんなんだよォ!」

 

ファングのビームがシールドバスターライフルに直撃して爆発する。

 

「一度距離を取らないと...」

 

「逃がすかよぉ!ちょいさぁ!」

 

爆発に乗じて距離を取ろうとすると煙を突き破って突撃されバスターソードの直撃を食らってしまう。

 

「ぐっ...一撃でSEが危険域かよ...」

 

畳みかけるように追撃が飛んでくる。流石といったところだろうか...

 

「それでも...負けられないんだぁ!トランザムッ!」

 

俺は一気に勝負を決める為にトランザムを発動して追撃を躱して背後に回り込みGNブレイドで切りかかる。

 

「これでぇ!」

 

「ところがぎっちょん!」

 

GNブレイドの一撃が当たる瞬間にアルケーガンダムがエクスエクシアと同じピンク色に染まり、俺の一撃は空を切った。

 

「トランザムってなぁ!」

 

「なっ!?」

 

アルケーガンダムはトランザムは使えないと思い込んでいたが、確かに前世では一部のゲーム等の媒体でヤークトアルケーガンダムがトランザムを使用していた。

最初の長距離ビームはヤークトアルケーガンダムのGNランチャーで発射したものだと簡単に予想出来た筈だし設定上は普通のアルケーガンダムでもトランザムを使える可能性があると分かっていた筈なのに、熱くなってトランザムは使われないと思い込んでしまっていた。

 

「こいつはすげえ!初めて使ったが凄すぎて戦争にならねぇかもしれねぇなぁ!」

 

「っく!早い!」

 

俺の攻撃を躱した隙に収納されたファングが再び射出され襲い掛かってくるがトランザムの恩恵を受けて更に速度が上がっている。

 

「トランザムのアドバンテージも無くなった...限界時間まで粘れる相手でもない...このままじゃ対処しきれない...!」

 

「機体は良くてもパイロットはイマイチのようだなぁ!ええ?ガンダムさんよぉ!」

 

ファングとアルケーガンダムが同時に襲い掛かってくる。サテライトGNキャノン以外のまともな射撃武器を失っている俺は正直ジリ貧だ。

 

「正直賭けだが...やるしかないっ!『夢幻』部分展開!エクスエクシアとコアネットワークで接続...並列処理開始...『夢現』起動...ぐっ...」

 

ファングとアルケーガンダムからの攻撃をGNシールドを囮にして何とか避けながら必要なデータを設定してもう一機の相棒である夢幻の夢現を部分展開...大量の情報が頭に流れ込んできて酷い頭痛がする。

片方は部分展開とはいえISを2機同時に使用するなんて事は誰も試したことは無いだろうが、エクスエクシアのデータを夢幻に流して夢現でエクスエクシアの武装を作る、俺がイノベーターだったら問題なく使えたんだろうかと一瞬思ったがどちらにしろ今はこうするしか道はない。

 

「逝っちまいなぁ!」

 

「ぐぅぅ...うおぉぉぉぉ!」

 

ファングとアルケーガンダムがビームを連射してくる、高密度の射撃で俺の目の前の空間が真っ赤なビームで埋まっている。殺意の塊のようなビームの雨が俺に迫ってくるのを俺は頭痛に耐えながらなんとか夢幻の拡張領域に格納されていたタワーシールドを展開してギリギリで耐える。

 

「仕留め損なったか...しぶてぇ野郎だぁ!」

 

一向に治りそうにない頭痛とエクスエクシアのSE残量、そしてトランザムの残り時間からタイムリミットを察して俺は一気に攻勢に出ることにした。相手は作中最強クラスのパイロット、正直勝てる見込みは薄いがせめて相打ちまでもっていかないと俺以外の専用機持ちは一瞬で蹂躙され他の同級生や先生も皆殺しにされる可能性がある。

 

「あぁぁぁぁぁぁ!」

 

丁度夢現で作っていた武装...対ファング用の散弾バズーカとサブマシンガンが完成したので即座に展開して撃ちながらアルケーに接近する、自分の身体への負担をすべて無視して全力でXラウンダーとして未来を読み、ニュータイプとして殺気を感じ、スラスターを全開で吹かし機体を振り回す。

 

「なんだ...あの動きは...!?」

 

「っ!!」

 

視えた未来に従ってバズーカとサブマシンガンを連射しファングを撃ち落とす。アルケーに搭載されたファングは全部で10基、GNソードを破壊した時に1基爆発して残りは9基だったが今の射撃で全て撃ち落とすことに成功する。

 

「どんな手品か知らねえが!」

 

今までやったことのないISの同時使用とトランザム中の高軌道により脳と全身にかなりの負荷がかかり、視界の端に映るウィンドウには自身の身体が既に危険であることを示す情報が大量に表示され、自分の目と鼻から何か流れ出ているような感じがするがすべて無視してGNブレイドでアルケーと鍔迫り合う。

 

「っっっ!!!」

 

「なんだぁ!?なんなんだこりゃあ!!」

 

鍔迫り合いの状態から二重瞬時加速(ダブルイグニッション)とPICをフル活用して一気に背後を取る。そしてそのまま決めようとGNブレイドを力の限り振り下ろそうとした...がその直前に体に衝撃が走り、何故か体が動かなくなる。

 

「御臨終だ」

 

「な...にが...」

 

力が抜けて振り上げた腕が垂れ下がる、自分の胸を見ると全部破壊したと思っていたGNファングが絶対防御を貫通して後ろから突き刺さり俺の胸から飛び出ていた。

 

「な...く...そ...」

 

「ハッハ、あばよ!」

 

GNファングはそのまま俺を貫いて胸から飛び出し、アルケーガンダムのスカートアーマーに格納されアルケーガンダムはそのまま飛び去ってしまう。

 

「ま...て...」

 

SEもトランザムも切れたエクスエクシアが解除され落下していく中、手を伸ばそうとするがどんどん離れていく奴を見ながら俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海?」

 

一夏と箒と合流した簪は負傷した一夏を運んでいるときに何か嫌な感覚を感じ海が戦っている方向を向いたのだった...

 




今回は福音事件の戦闘回でしたがいかがでしたでしょうか?

まああのアムロ(別)にして「人間の域を超えている」と評される程の男ですからかなりの強敵になってもらいました。
果たしてオリ主は勝てるのだろうか...

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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36話 決意の紅と怒りの青

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

筆が乗ったので比較的早く仕上げることが出来ました。

楽しんで頂ければ幸いです。


<簪視点>

 

海と別れて箒と織斑君に合流しようと飛んでいるとハイパーセンサーに二人の反応が引っ掛かった。既に戦闘は終わっているみたいだけど何かがおかしい...

 

「こちら簪、箒、織斑君、状況を報告して」

 

「一夏が...一夏がぁ...」

 

「織斑君がどうしたの!?」

 

「私を庇って...」

 

箒の様子から私は作戦が失敗したことを察する。そしてハイパーセンサーでボロボロになった織斑君を支えながらフラフラと飛んでくる箒が見えた。

 

「福音の反応は無い...箒!早く織斑君を!」

 

私は箒と一緒に織斑君を支えながら花月荘へと撤退したのだった。

 

———————————————————————

 

---花月荘

 

私達が旅館の近くの砂浜に着陸すると既に山田先生が待機していて一緒にいた他の先生達が担架で織斑君を運んで行った。私達は一度報告の為にブリーフィングで使った風花の間に向かった。

 

「失礼します...織斑先生...報告が...」

 

「ああ、分かっている...既に状況は把握済みだ」

 

「織斑君達が撤退したので武藤君にも撤退の指示を!未確認のISと一人で戦ってるんです!」

 

「それも分かっている。今束が武藤に撤退指示を...」

 

私の連絡やそれぞれのISの状況から織斑先生は状況を把握していたみたいで冷静に対処している。後は海が戻ってくれば...

 

「かーくん!?返事をしてかーくん!!」

 

「どうした束!」

 

「かーくんが!かーくんがぁ...」

 

「落ち着け!武藤に何があったんだ!」

 

急に篠ノ之博士が大きな声で武藤君を呼んだので織斑先生が確認しようとする。あの篠ノ之博士の焦りようは...まさか...

 

「かーくんの...エクスエクシアの反応とバイタルが...き...消えたの...」

 

今、篠ノ之博士はなんと言ったのだろうか...海がやられた?

 

「何だと!?あの武藤がやられたというのか!っく!山田先生!捜索班を今すぐに編成して武藤の捜索をしてくれ!」

 

織斑先生と篠ノ之博士の尋常じゃない様子から海がやられた事が事実なのだと無理矢理にも実感させられる。

 

「し、失礼します...」

 

私は未だに現実を信じられないというふわふわとしたような感覚と否応にもそれは現実だという重い絶望感のまま部屋を後にした。

 

———————————————————————

 

<箒視点>

 

ベッドで横たわる一夏のそばで私はずっと項垂れていた。目の前の一夏は数時間たっても未だに目を覚ます様子はない。身体中に包帯を巻かれて痛々しい姿は私に嫌でも現実を痛感させる。

 

「(私の所為だ...)」

 

もっと私がしっかりしていれば...私がもっと強ければ...

 

ギュウっとスカートを握り締める。とにかく強く握り締める。自らを戒めるかのように。

 

「(私は...無力だ...)」

 

千冬さん達の話では海までやられて行方不明になっている...

 

無人機が襲撃して来た時も、自分の行動が裏目に出て却って一夏達を危険に晒して、海を怪我させてしまった。

今回も、自分のミスによって一夏は大怪我を負ってしまい、こんな時に声をかけてくれていた海は行方不明となってしまった。

 

「(私がISを持ったところで...)」

 

紅椿の待機形態である金と銀の鈴二つがついた赤い紐を腕から外そうとした瞬間...突然襖が乱暴に開け放たれる。

 

バンッ!という音に遠慮なく入って来た女子は、私の隣までやってくる。

 

「あーあー、分かりやすいわねぇ」

 

部屋に入ってきたのは――鈴だった。

 

「あのさぁ」

 

鈴が話し掛けてくるが、私は答えない。答え...られない。

 

「一夏がこうなってんのアンタの所為なんでしょ?海もアンタに一夏の援護を頼んで未確認のISと戦って帰って来ない」

 

「っ...!」

 

思わず顔を俯かせたままビクリと反応してしまう。

 

「一夏はアンタのことを庇って。海は作戦を成功させるためにアンタと一夏を行かせて、簪すら逃がして謎の未確認ISと戦って1人残ったきり帰って来ない」

 

「...」

 

「で、落ち込んでますって?――っざけんじゃないわよ!」

 

突然烈火の如く怒りをあらわにした鈴は、私の胸倉を掴んで無理矢理に立たせてくる。

 

「やるべきことがあるでしょうが!今!戦わなくてどうすんのよ!」

 

「わ、私...は、もうISは...使わない...」

 

「ッ――!!」

 

バシンッ!

 

頬を打たれ、私は床に倒れる。

鈴はそんな私を再度締め上げるように振り向かせた。

 

「甘ったれてんじゃないわよ...!専用機持ちっつーのはね、そんな我儘が許されるような立場じゃないのよ!例えそれが望んでなろうが、望まずしてなろうがね!海はもちろん一夏だって!それを分かった上で戦ったんでしょうが!!それともアンタは――」

 

鈴の瞳が、私を真っ直ぐ見つめてくる。そこにあるのは怒りにも似た、燃え上がるような赤い感情...

 

「好きな人や親友がやられた時にすら戦えない、臆病者なの!?」

 

その言葉で私の奥底の闘志に火がついた。

 

「――ど...」

 

口から漏れたか細い言葉は、鈴と同じ感情を纏って強く大きなものへと変わる。

 

「どうしろと言うんだ! もう敵の居所も分からない! 戦えるなら、私だって...私だって戦う!!」

 

私が自分の意志で立ち上がると、鈴はふぅっと溜め息をついた。

 

「やっとやる気になったわね。ふぅ...あーあ、めんどくさかった」

 

「な、なに?」

 

「場所なら分かるわ。今ラウラが――」

 

言葉の途中でちょうど襖が開く。そこに立っていたのは、端末を片手に待ったラウラだった。

 

「出たぞ。ここから30キロ離れた沖合上空に目標を確認した。ステルスモードに入っていたが、どうも光学迷彩は持っていないようだ。衛星による目視で発見した」

 

そのまま部屋に入ってくるラウラを、鈴はニヤリとした顔で迎える。

 

「さすがドイツ軍特殊部隊。やるわね」

 

「ふん...。お前の方はどうなんだ。準備は出来ているのか」

 

「当然。甲龍の攻撃特化パッケージはインストール済みよ。シャルロットとセシリアの方こそどうなのよ」

 

「ああ、それなら――」

 

ラウラが襖の方へと視線をやる。そして、それはすぐに開かれた。

 

「完了済みですわ」

 

「準備オッケーだよ。いつでも行ける」

 

それぞれの面々が揃うと、それぞれが箒へと視線を向けた。

 

「で、アンタはどうするの?」

 

「私...私は――」

 

ギュウッと拳を握りめ私は覚悟を決める。

 

「戦う...戦って、勝つ! 今度こそ、負けはしない!一夏の仇は私が討つ!」

 

「決まりね」

 

ふふんと腕を組み、鈴は不敵に笑う。

 

「ステルスモードで静止しているということは、恐らく福音は自己修復を行っているのだろう」

 

端末の画像をズームさせながらラウラは告げる。

 

「多少はダメージを負わせてたってことね...」

 

「よし...じゃあ、作戦会議よ。今度こそ確実に墜とすわ」

 

「待って...」

 

声が聞こえた方に視線を向けるとそこには簪が襖を開けて立っていた。

 

「簪...」

 

「私も行く...」

 

「大丈夫なの?」

 

「私は大丈夫...それにあの未確認ISが来たら私がいないと撤退も出来ないだろうし...なにより...私も海の仇を...!あの赤い機体を...!」

 

簪の赤い瞳は怒りからなのか憎しみからなのか普段よりも深い色に染まっているように見えた。

 

「改めて...2人の仇を取りに行くわよ」

 

———————————————————————

 

---???

 

<海視点>

 

「どこだここ...俺はファングに貫かれて堕ちた筈じゃ...」

 

ふと目を覚ますと、俺は草原のような場所に1人で立っていた。

目の前には湖があり、辺りを見回すと木々が360°草原を囲むように生えている事から

森の中にある湖のような場所にいることが分かった。

空はとても綺麗な夜空になっていて、大きな満月が湖に映って辺りを照らしていた。

 

「いつの間にこんなところに...早く戻らないと...」

 

「やっと気が付いた...」

 

急に後ろから声をかけられて振り返るとこの世界では自分の記憶の中にしか存在しないはずの人物がそこには立っていた。

 

「フェルト・グレイス!?でも服装と髪色が違う?」

 

俺の目にはガンダムOOに登場したキャラクターの1人であるフェルト・グレイスが映っていた

服装はソレスタルビーイングの制服ではなく、ワンピースのようなものを着ていて髪の色が俺と同じような黒色になっているが...

 

「この姿は貴方の記憶から読み取って再現しているだけ...だから私は貴方の知っている人物じゃないよ」

 

「確かに...劇中の本人とは雰囲気も違う...君は一体...」

 

「貴方は優しくて流されやすいから、この世界を元に戻したらイレギュラーである自分は命を断つことで消えようとしてる」

 

「なんでそれを!?誰にも話してない筈だ!」

 

「そしてアルケーガンダムとアリー・アル・サーシェスがこの世界に存在しているのを見て自分の周りの人間を突き放なす覚悟も決まってる」

 

俺の目の前にいるフェルト・グレイスと瓜二つの人物は、俺が心の中で秘めていて一言も口にしていない覚悟を知っていた。

 

「知ってるよ、全部...いつも一緒にいて相棒って呼んでくれて...大事にしてもらったから私が目覚めたの...クラス対抗戦の時に」

 

「クラス対抗戦...あの時の幻聴...君は...夢幻...なのか?」

 

「そう、そしてさっきの戦闘でより強く繋がったからこうしてコアネットワークの意識空間に貴方を呼ぶことができたの」

 

「そうか...悪いな、最近お前と一緒に飛んでなくて...」

 

「ううん、大丈夫、私も貴方の事はちゃんと理解してるから...」

 

彼女は慈しむような表情で俺を見つめながら答えたのであった。

 

———————————————————————

 

<三人称視点>

 

花月荘から30キロ離れた沖合上空。海上400メートル。そこで静止していた福音は、まるで胎児のような格好でうずくまっていた。

 

――?

 

不意に、福音が顔を上げる。

 

次の瞬間、超音速で飛来した砲弾が頭部を直撃し、大爆発を起こした。

 

「初弾命中。続けて砲撃を行う!」

 

5キロ離れた場所に浮かんでいる【シュヴァルツェア・レーゲン】を纏ったラウラは、福音が反撃に移るよりも早く次弾を発射した。

 

その姿は通常装備と大きく異なり、80口径レールカノン『ブリッツ』を2門、左右それぞれの肩に装着している。

さらに遠距離からの砲撃・狙撃に対する備えとして、4枚の物理シールドが左右と正面を守っていた。

 

これが、砲戦パッケージ『パンツァー・カノニーア』を装備した【シュヴァルツェア・レーゲン】である。

 

「流石にそう何度も当たってはくれないか!ちっ!速いな!」

 

初弾こそ命中したものの、それ以降の砲撃は踊るように躱され福音はラウラとの距離を詰めてくる。

 

そしてラウラとの距離が100メートルを切り福音がラウラへ直接攻撃を開始しようとした瞬間、上空から降り注いだ一筋の光が福音へと直撃して福音の動きが止まる。

 

「狙い通りですわ!」

 

強襲用高機動パッケージ『ストライク・ガンナー』を装備してステルスモードで上空に待機していたセシリアが高高度から大型BTレーザーライフル『スターダスト・シューター』で福音を打ち抜いた。

 

『敵機Bを認識。排除行動へ移る』

 

「させないよ」

 

高度を下げながら狙撃してくるセシリアの射撃を避けながら攻撃に移ろうとしている福音の真後ろからステルスモードのシャルロットが至近距離でショットガン2丁による射撃を浴びせる。

一瞬福音の体勢が崩れるが、すぐさま立て直しシャルロットに対して『銀の鐘(シルバー・ベル)』による反撃を

開始した。

 

「悪いけど、この『ガーデン・カーテン』はそのくらいじゃ落ちないよ!」

 

【リヴァイヴ】専用防御パッケージは、実体シールドとエネルギーシールドの両方によって福音の弾幕を防いだ。そのシルエットはノーマルの【リヴァイヴ】に近く、2枚の実体シールドと同じく2枚のエネルギーシールドがまるでカーテンのように全面を遮っていた。

 

防御しつつ射撃を行うシャルロットとそれぞれ別方向から狙撃や砲撃を行うセシリアとラウラにより3方向からの攻撃が加えられ流石の福音も徐々に押され始める。

 

『……優先順位を変更。現空域からの離脱を最優先に』

 

隙を作り出すために全方位にエネルギー弾を放った福音は、次の瞬間に全スラスターを開いて強行突破を計る。

 

「逃がすものかぁっ!」

 

海面が膨れ上がり、飛び出してきたのは真紅のIS【紅椿】と、その背中に乗った【甲龍】であった。

 

「逃げられる前に叩き落す!」

 

紅椿の背中から飛び降りた鈴は、機能増幅パッケージ『崩山』を戦闘状態に移行させる。

両肩の衝撃砲が開くのに合わせて、増設された2つの砲口がその姿を現す。

計4門の衝撃砲が一斉に火を噴いた。

 

『!!』

 

衝撃砲による弾丸が一斉に福音に降り注ぐ。しかしそれはいつもの不可視の弾丸ではなく

赤い炎を纏っていた。しかも、福音に勝るとも劣らない弾幕。増設された衝撃砲は言わば

『熱殻拡散衝撃砲』と呼ばれるものだった。

 

「やったか!?」

 

「箒、それはフラグ...」

 

「っ!――まだよ!」

 

『拡散衝撃砲』の直撃を受けてなお、福音はその機能を停止させてはいなかった。

 

「やっぱり...でもこの調子で攻撃を続ければいける...!」

 

専用パッケージこそないが最後の仕上げと保険の為に戦場から少し離れた位置でステルスモードで待機しつつ索敵や戦場の情報収集をしていた簪が箒の言葉に思わず割り込むが同時に福音の情報からもう少しであることを全員に知らせる。

 

「よしっ!このまま...っ!?」

 

勢いのまま福音に再度接近しようとした鈴の目の前を掠めるように真っ赤なビームが通り過ぎる。

 

「今のは!?」

 

「あれが海と簪が戦った未確認ISか!?」

 

全員がビームが飛んできた方を見ると全身装甲の赤い機体がこちらに銃口を向けていた。

 

「嬢ちゃん達にゃ悪いが、そいつに今墜ちられるとうちの大将が困るんでなぁ!行けよ!ファングぅ!」

 

アルケーガンダムのスカートアーマーから10基のGNファングが射出され、鈴達に襲い掛かる。

 

「BT兵器!?でも早すぎる!!」

 

全員に攻撃する為に1人につき2基に分散されていてなおファングに5人が翻弄されてしまう。

 

「やぁぁぁ!!」

 

「おっと!あのガンダムと一緒にいた嬢ちゃんか...」

 

アルケーの背後に簪の駆る【打鉄弐式】が急接近し超振動薙刀『夢現』を振り下ろすも振り向かれてGNバスターソードで受け止められる。

 

「海は...海をどうしたのっ!」

 

「海?ああ、あのガンダムのパイロットのことか...」

 

バスターソードを振りぬいて打鉄弐式をアルケーが弾き飛ばす。

 

「奴さん死んだよ...俺が殺した。ご臨終だ」

 

「っ...!許さないっ!」

 

再び夢現で攻撃を仕掛けようとする【打鉄弐式】に対してアルケーガンダムはバスターソードのライフルモードで攻撃し近づけさせない。

 

「戦争で敵を殺すのに嬢ちゃんの許可がいるのかよぉっ!」

 

「くっ...!」

 

「嬢ちゃんも同じところに送ってやるよぉ!」

 

ファングで他の5人を翻弄しながら簪を相手取るアリー・アル・サーシェスは装甲の下で獰猛な笑みを浮かべながら簪に襲い掛かるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---???

 

「貴方は...それでいいの?」

 

「ああ...もう決めたことだ...」

 

「分かった...私は貴方に付き合うよ、でも諦めないから」

 

「ありがとうな、夢幻」




今回は一夏とオリ主撃墜後からリベンジ戦でした。

次でオリ主のセカンドシフト後の期待を出す予定です。

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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37話 進化する白と変革する蒼

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

ワンピースの映画を見たり青い地球を守ったりしていたので期間があいてしまいましたがなんとか書き上げることが出来ました。

あとこの話の最後の方はガンダムOOのPrototypeを流していただければと思います。

GN合唱団の方お願いします!


---???

 

<海視点>

 

「彼女達、貴方ともう1人の敵討ちの為に出撃したみたい...」

 

「なっ!?福音はともかく、アルケーが来たらやられるぞ!」

 

俺の目の前にいる夢幻のコア人格から外の状況を伝えられて俺は焦りを隠せなかった。

 

「何か手段は無いのか...何か...」

 

「あるよ...第二形態移行(セカンドシフト)...私が貴方をここに呼んだのはそれを教える為だから」

 

「なら早くっ...!」

 

「その前にひとつ聞かせて...」

 

俺が急かそうとすると夢幻は俺に近づいてから目を閉じて俺の胸に手を当てた。

 

「貴方はさっきの戦いで傷ついてもう身体の中も外もボロボロになってる...外の傷は私が治したけど中の細胞異常は私の力だけじゃ治せない...」

 

「それは分かってるさ、外の傷を治してくれただけでも充分だよ」

 

本心からの言葉だった、ファングに貫かれてほぼ死ぬのが確実だった所を治してくれたのだから感謝しかない。

 

「そうじゃない!そうじゃないのっ!」

 

夢幻が俺の胸に当てていた手でそのまま俺の服を掴んで慟哭する。

 

「貴方とずっと一緒だったから全部分かるっ!クラス代表戦の時の怪我で身体に入り込んだ疑似太陽炉のGN粒子の毒性の所為で、唯でさえあと数年しか持たない状態だったのにさっきの戦闘で更にGN粒子が身体に入り込んでもうあと1年も持たない状態なんだよ!?やっとパートナーの貴方と意思疎通が出来るようになったのに...既に死に体の貴方を戦わせるなんて私には出来ない!貴方はもう戦うべきじゃない!」

 

気付けば夢幻は両手で俺の服を掴み、俺の胸に顔を埋めるようにして泣いていた。

 

「私に人間の温かさを教えてくれた貴方を失いたくないっ...失いたくないのっ...」

 

専用機のコア人格にここまで言ってもらえたのは操縦者冥利に尽きるが、既に俺の腹は決まっている。

 

「夢幻...それでも俺は進むよ、俺はこの世界を変えてしまった責任を取らないといけないし...何よりみんなが生きてるこの世界が好きだから守りたいんだ、命を賭けてでも...」

 

俺の覚悟を伝えると夢幻は顔を上げた。

 

「貴方は...それでいいの?」

 

「ああ...もう決めたことだ...」

 

「分かった...私は貴方に付き合うよ、でも諦めないから...貴方は私が...私達が死なせない」

 

「ありがとうな、夢幻」

 

「ううん、いいの、貴方の覚悟は絶対に折れないって分かったから」

 

「じゃあよろしく頼むな、ユメ」

 

「ユメ?」

 

「そのまま夢幻って呼ぶよりもせっかくだから名前を付けようと思ってな、嫌だったか?」

 

「ううん!気に入った!ありがとう海!」

 

「俺の事やっと名前で呼んでくれたな」

 

「これからよろしくね海!」

 

「ああ、こちらこそだ!ユメ!派手に行こうか!」

 

———————————————————————

 

<簪視点>

 

あの赤い機体が来てから私達は一方的にやられていた。箒たちは赤い機体のBT兵器に翻弄され同時に復活した福音にSEを徐々に削られていき、私は赤い機体と直接戦っているけどこっちの攻撃がまるで当たらず、こちらだけが消耗させられている。

 

「それでも...貴方だけは絶対に倒す...!」

 

「おうおう、お元気なこってぇ」

 

読まれないように何とか戦いながらデータを直接入力して山嵐の準備をする。いくら強くても人間ならこれは避け切れない筈...

 

「準備完了...これでっ...!」

 

私は山嵐を発射...48発のミサイルが複雑な軌道を描きながら全て赤い機体に向かって飛んでいく。

 

「甘ちゃんにしちゃ頑張ったが...まとめて焼き払ってやろうじゃねえか!」

 

赤い機体は右肩に大きなキャノン砲のようなものを展開した次の瞬間には真っ赤なビームを発射して私のミサイルを全部薙ぎ払ってしまった。

 

「そんな...」

 

私の決死の攻撃も簡単にいなされてしまった。

 

「もう戦争はおしまいかぁ?」

 

「きゃあっ!」

 

赤い機体はそのまま私に銃口を向けてビームを連射してくる。狙いも正確で何発か直撃して機体維持警告域(レッドゾーン)一歩手前までSEが減少してしまう。

 

「そろそろ勝ち鬨を上げようじゃねぇか!」

 

ビームを食らった私に赤い機体が一気に接近してくる。

 

「やだっ...死にたくないっ...」

 

「ハッハ、あばよ!」

 

「助けて...海...」

 

私は恐怖で思わず目を閉じて好きだった人の名前を呼んだ、もういないと分かっていたのに...

 

ドバァン!!

 

「もう大丈夫!心配させてごめん簪さん!」

 

海面が爆ぜるような音と同時にやられた筈の海の声が聞こえて目を開けると、赤い機体の大きな剣を受け止めている蒼機兵と似た蒼い機体が私の目に映った。

 

———————————————————————

 

<海視点>

 

<<戦闘BGM 機動戦士ガンダムOOセカンドシーズン OO GUNDAM>>

 

「お前に簪さんはやらせない...アリー・アル・サーシェス!」

 

俺は第二形態移行(セカンドシフト)して新しくなった専用機...【OOガンダム TypeDB】のGNソードⅡの切っ先をアルケーに向ける。

 

「へっ!今度はクルジスの兄ちゃんの2番目の機体とそっくりだなぁ?ガンダム...いや、蒼の兄ちゃんよぉ?ならもう一度お前から墜としてやるよっ!いけよファングぅ!」

 

箒たちに向けられていたファングが全て俺に向かって飛んでくる。狙い通りだ。これなら...行ける!俺はGNソードⅡを腰部のホルダーに固定し大腿部にあるGNビームピストルⅡを両手に1丁づつ持った。

 

「背中に訳わかんねぇ戦闘機がついてなきゃその機体も大したこたぁねえだろっ!」

 

「それはお前の世界の話だっ!」

 

俺は四方八方から飛んでくるファングの突撃とビームをハイパーセンサーで確認しながら避け、両手に持ったGNビームピストルで撃ち落とす。

 

「おらおらおら!たらふく食らっていけや!」

 

アルケーのスカートアーマーからファングが次々と射出されていく、落とした端から補充されていくのでキリがない。

 

『海、あれは見た目こそアルケーガンダムで性能も再現されてるけどMSじゃなくてISだよ、だから...』

 

「成る程...拡張領域にファングを大量に格納していたのか...だったら10基以上あるのも納得...」

 

ユメがアルケーの事を分析してくれているので俺は戦いながらそれに答える。

 

「何ブツブツ言ってんだ!ちょいさぁ!」

 

大量のファングの仕組みを理解した所でアルケーが接近戦をしかけてくる。

 

「やっぱり機体は良くてもパイロットはイマイチのようだなぁ!蒼い兄ちゃんよぉ!」

 

「まああの人たちに比べたらそうだろうけど...これは狙い通りだ」

 

俺はGNビームピストルⅡを即座に格納してGNソードⅡを引き抜いてアルケーの剣撃を受け止めながら答える。

 

「何?じゃあ何だってんだ!」

 

「この世界で男性操縦者は俺だけじゃないってことだよ」

 

そう言って俺は鍔迫り合いながら顎で箒達と福音が戦っている方を指す。

 

「誰一人傷つけさせないっ!皆の笑顔は俺が守るっ!」

 

そこには福音の攻撃から箒を守る純白の機体。

 

【白式】第二形態【白式・雪羅】を身に纏った一夏の姿があった。

 

「これで福音は一夏達がやってくれる、今あれに墜ちられたら大将さんが困るんだろ?」

 

「ちっ...!」

 

「そして...ここからは俺も全力だ!ユメ!頼む!」

 

『分かった!』

 

俺が叫ぶと俺の真下の海面が爆ぜて戦闘機のような機体が飛び出してくる。

 

「させるかっ!」

 

「おいおい、合体中に攻撃するのはご法度だろ?」

 

俺は腰のGNビームサーベルを投げ、そこにGNビームピストルのビームを当ててビームを拡散させファングとアルケーガンダムを近づけさせない。いわゆる『ビームコンフューズ』だ。

 

「ドッキングセンサー!」

 

『【ガンライザー】ドッキングモード!』

 

【OOガンダム TypeDB】に【ガンライザー】がドッキングされ俺の専用機が真の姿になる。

 

「これが俺達の【ダブルオーガンライザー】だ!」

 

「幾ら機体が良かろうがっ!」

 

俺をドッキングさせてしまったことに焦ったのかアルケーがピンク色に染まりこちらに突撃してくる。疑似太陽炉で2回トランザムが使えている事は疑問だが今は...

 

「ISは...お前の...お前らの戦争の道具じゃないっ!『TRANS-AM-FX』始動!」

 

ダブルオーガンライザーが通常のトランザムとは異なりピンク色ではなく真紅に染まる。

 

「はあぁぁぁ!」

 

手に持っていたGNビームピストルを大腿部のホルダーに固定し腰部のGNソードⅡを抜いてトランザム状態のアルケーと何度も何度も切り結び、すれ違う。

 

「ちっ!当たらねえっ!」

 

「そこだっ!」

 

俺は一瞬の隙を突いてすれ違った直後にPICを用いて反転、そのまま両肩部の『GNツインドッズキャノン』を発射する。1発がアルケーのGNキャノンに命中して爆発する。

 

「くそったれがぁ、やってくれるぜ...!ん?ちっ...時間切れか...」

 

GNキャノンの爆発を盾にアルケーは突如反転して撤退を始めた。

 

「待て!アリー・アル・サーシェス!」

 

「命あっての物種ってなぁ!」

 

追いかけようとしたが置き土産にファングが突撃してきたので『GNツインドッズキャノン』とGNソードⅡライフルモードで迎撃する。

 

「逃げたか...これからが大変だな...」

 

俺はトランザムを解除して簪さんの打鉄弐式へと近づく。

 

「大丈夫?簪さん」

 

「う、うん...本当に海?海なの?」

 

「ん?ああ、ごめんごめん、ちゃんと生きてるし正真正銘、武藤 海だよ?ほら」

 

俺はダブルオーガンライザーの頭部装甲を解除して自分の顔を簪さんに見せる。

 

「本当に海だ...良かった...生きててよかったよぉ...」

 

俺の顔を見た簪さんは緊張の糸が切れたのか目尻に涙を浮かべていた。

 

「心配かけてごめんね簪さん、話したいことは山ほどあるけどまずは一夏達の援護に行かなきゃ...

簪さんはSEが少ないみたいだからゆっくり来てね、それまでに俺が一夏達を援護して終わらせてくるから」

 

「うん...気を付けて...」

 

「簪さんもね」

 

俺は再び頭部装甲を展開して一夏達の位置を確認、全速で向かう。

 

「福音の機体形状が変わってる?第二形態移行(セカンドシフト)か...でも一夏達が優勢だな、それなら!」

 

あっという間に俺は一夏達を目視で確認できる距離まで近づき、状況を確認する。どうやら後1歩足りない状況ではあるが全体的に一夏達が押しているようだ。ならばと自分のやるべきことを整理して準備をする。

 

「ユメ、キャノンパーツをパージ、その後サーベルを発振して福音の翼を一気に切り裂く、パイロットを傷つけないように出力調整は任せた!」

 

『了解!いつでもいけるよ!』

 

「よし!突っ込むぞ!」

 

ユメに出力調整を任せて俺は光の翼の様にも見える巨大なビームサーベルをキャノンパーツを外したツインドッズキャノンから発振させ福音に突撃する。丁度福音は一夏達を近づけさせないように立ち回っているようだ。

 

「タイミングばっちりだ!うおぉぉぉぉ!」

 

俺は福音の後ろをすれ違うように飛びながらバレルロールして翼にビームサーベルを当て福音の戦力を根こそぎ奪い去った。

 

「なっ!?なんだあのISは!?」

 

「今だ!!一夏!決めろ!」

 

「海!?なら...信じるぜ!チャンスは今しかない!」

 

一夏は雪片弐型で零落白夜を起動し二重瞬時加速(ダブル・イグニッション)で一気に近づいて福音を切り裂いた。

 

「よし!」

 

福音が解除されてパイロットが落下する。

 

「やべっ!」

 

「よっと」

 

あらかじめ準備していたので俺がさっと福音のパイロットを受け止めて回収する。

 

「ふぅ...最後の詰めが甘いんだよ一夏」

 

「わ、悪い...でも海!なんだよそのIS!」

 

一夏がダブルオーガンライザーを見て当たり前の言葉を投げてくる。鈴や箒達も近づいてきて聞きたいといった顔をしている。

 

「それはお前の白式も同じだろ?まずは旅館に戻ろうぜ?皆一緒にな」

 

「それもそうだな!俺なんだか腹減っちまったし」

 

「奇遇だな、俺も腹ペコだ」

 

「あ、そうだ箒」

 

「ん?なんだ?海」

 

「一夏からの誕生日プレゼントはもう貰ったみたいだから俺からはこれだ」

 

そう言ってから俺は拡張領域から30センチくらいのラッピングされたを箱を取り出して箒に渡した。

 

「ISの装甲材と同じ金属で作った包丁と俺秘伝のレシピ本だ」

 

「ふっ...海が小さい時から私にくれるプレゼントにはいつも驚かされる」

 

「そういってもらえたなら用意した甲斐があったよ」

 

俺達は会話をしながらも意識を失っている福音のパイロットを慎重に扱いつつ皆笑顔で旅館の方に撤退した。

 

———————————————————————

 

旅館近くの砂浜に着陸すると織斑先生...千冬さんが立って待っていた。

 

「作戦完了――と言いたいところだが、一時行方不明になっていた武藤以外は独自行動により重大な違反を犯した。意味は分かるな?」

 

織斑先生の言葉に俺以外のメンバーの顔色が真っ青になる。

 

「帰ったらすぐ反省文の提出と懲罰用の特別トレーニングを用意してやるから、そのつもりでいろ」

 

腕組みで待っていた織斑先生に追撃され更に真っ青になる一夏達。ISを解除して一度旅館の大広間に戻った後、俺と一夏は精密検査になったが、それ以外のみんなは全員正座させられていた。

ちなみに一夏は俺より先に精密検査を終わらせて、その後に正座させられるらしい。

 

「ご愁傷様だ...一夏」

 

俺は山田先生に精密検査してもらっている途中で正座している一夏の姿が浮かんで思わず憐れんだのだった。

 

その後俺の精密検査が終了して大広間に行くとまだ皆が正座させられていてそれを束さんと織斑先生が見ていた。

 

「ちーちゃん。もうその辺にしてあげなよ」

 

「け、けが人もいますし...みんな一応診断がありますから...」

 

「ふん...仕方ないこの辺にしといてやろう、正座を止めていいぞ」

 

織斑先生の言葉に皆正座を崩すが慣れていたであろう箒と簪さん以外はしびれているのか足をガクガクさせて悲鳴を上げていた。

 

「た、立てませんわ...」「ビリビリするぅ」「き、キツイね...」「こ、このくらい」

 

左からセシリアさん、鈴、シャルロットさん、ラウラである。

 

「...しかしまあ、よくやった。全員、よく無事に帰ってきたな」

 

「え?」

 

「(素直じゃないなぁ千冬さんは)」

 

照れ臭そうな顔をしている織斑先生だったが、すぐ俺達に背中を向けてその表情は見えなくなる。

 

なんだかんだで俺達の身を案じてくれている織斑先生に心の中で感謝を告げた。直接言うと、本人は嫌がるだろうしね。

 

「一夏、俺たちは出ていこうぜ、女子の診察の時に俺らがいたら診察を始められないだろ?」

 

「そうだな」

 

俺と一夏は廊下に出て部屋の襖を閉じてから一度顔を向かい合わせて会話を始める。

 

「流石に疲れたな...」

 

「そうだな...」

 

俺達はため息をつきながら疲れを吐露する。

 

「...なあ、海」

 

「どうした?」

 

「ちゃんと守れたんだよな。俺達」

 

「そうだな...俺も、お前も、守れたから皆生きてる、話せてるんだ。ちゃんと守れた証明だろ?」

 

俺は一夏の問いに答えながらも内心いずれ訪れる皆を突き放すだろう日の事を考えてしまうのであった。

 

———————————————————————

 

「ねぇねぇ、結局なんだったの? 教えてよ~」

 

「最低でも2年は監視がつけられてプライバシー皆無の生活がしたいなら教えてもいいけど?」

 

座敷に座って夕食を食べている俺の所に何人かの女子が数名寄ってきて、昼の事を聞いてきたので俺は作戦前に織斑先生に言われたことをそのまま引用する。他のテーブル席や座敷でも専用機持ちは皆質問攻めに遭っていた。

 

「いやー、それは嫌かな...」

 

「ならこの話は終わりだね。ほら、皆織斑先生に怒られる前に自分の席に戻った方がいいよ」

 

「分かったー」「はーい」

 

皆俺に促されて自分の席に戻っていったのを確認してから俺は目の前にある刺身を口に運び味わった。

 

「ふぅ...美味いな...」

 

———————————————————————

 

夕食が終わった後、俺は束さんにセカンドシフトについての話とついでに初日に釣った鯛の料理を作るために旅館から出て少し歩いたところにある岬に来て束さんを待っていた。

落下防止の策に寄りかかりながら俺はふとユメに声をかける。

 

「ユメ、聞いていいか?」

 

『大丈夫だよ!何でも聞いて?』

 

「『ダブルオーガンライザー』にセカンドシフトしてから直ぐに戦ったからその時は考えてなかったけど『夢幻』と『エクスエクシア』が何故か融合して『ダブルオーガンライザー』になったよな?待機形態も青と白のラインが入った縁の眼鏡型端末になってエクスエクシアの腕輪は消えてるし」

 

『そうだよ、今の私は世界で唯一の『ツインISコアシステム』と『ツインドライブシステム』を搭載したISになるかな?世代で言うと...第20世代ぐらい?とにかく今の世界のISと比べたら隔絶

された性能の機体になってるよ』

 

「『ツインISコアシステム』は『ツインドライブシステム』を元に、2つのISコアを同期させることで2倍ではなく、2乗の性能...ISコアならPICとかが相当な出力って解釈でいいんだよな?」

 

『その通りだよ!』

 

「じゃあさ...『エクスエクシア』のコア人格は出てこないのか?」

 

『それは...彼女はまだ出てこれないの...でも私と融合して消えたわけじゃないから安心して?』

 

「そうか、分かった、それならいいんだ」

 

俺の疑問が解消した所で丁度束さんとその後ろから千冬さんが歩いてやってくる。

 

「やぁやぁかーくん!ご飯食べにきたよ!あとかーくんのISも見せて見せて!」

 

「束...海だって疲れている筈だぞ?」

 

「俺は大丈夫ですよ千冬さん、もう下ごしらえは済んでますし束さんお願いします」

 

「もっちろん!というわけでどーん!」

 

束さんがどこから取り出したというサイズのドアを目の前に置く。まあ言うなれば某青いネコ型

ロボットのどこにでもいけちゃうドアの簡易版である。俺の料理を食べたくて我慢の出来なかった束さんが拡張領域を応用してキッチンとテーブルのある空間を格納してどこでも料理が出来るようにしてしまったというわけだ。

 

「ちーちゃんもどうぞ!」

 

「束お前は...はぁ...もういい私もご相伴にあずかるぞ海」

 

「もちろんですよ」

 

俺と束さんと千冬さんはドアをくぐって中に入り、俺はそのまま調理を始めて料理を作り二人に振舞った。

 

「ふぅ...流石だな、一夏に負けず劣らずいい腕だ」

 

「かーくんの料理は世界一ィィィィ!」

 

「満足してもらえたようで何よりです」

 

料理を食べ終わった後、岬に3人で戻ってきてお茶を飲みながら駄弁っていた。

 

「それにしてもかーくんのISはすごいことになっちゃったねぇ...『ツインISコアシステム』と『ツインドライブシステム』、コア人格との相互コミュニケーションも出来るようになったなんて...」

 

「そうですねぇ...当事者の自分が言うのもなんですけどますます世間に気を付けないといけなくなったなぁ...と」

 

「そこは私の方でもなんとかサポートはするが...本題はそこじゃないんだろう?海」

 

「お見通しですか...じゃあ本題に入りますね...っとその前に...ユメ出てきてくれるか?」

 

『はーい!』

 

俺がポケットから小さい三角形のガジェットを取り出しユメを呼ぶとそこにユメが投影される。このガジェットはダブルオーガンライザーの『とあるシステム』を使って作ったものだがまあ今は説明が先だ。

 

「今回の事件の犯人の正体が自分の中ではっきりしたのでそれを話そうかと思いまして...ユメ、俺の記憶からガンダムOOと...ガンダムXに関するデータを表示できるか?」

 

『分かった!今表示するね!』

 

ユメに情報の表示を頼むと返事をした2秒後には必要な情報が全て俺の前の空間に投影された。

 

「福音の暴走、俺達を襲った正体不明の敵は両方とも1つの勢力によるものだと思っています」

 

「なんだと!?」

 

「束さんでもやっと尻尾が掴めるか掴めないかぐらいの所だったのに...」

 

「今の敵の組織名は分かりませんが元々は2つの勢力が合併しているのだと俺は考えています、それが『イノベイド』と『フロスト兄弟』です、詳細はユメの出してくれた情報を見れば分かると思います」

 

俺が二人に話すと束さんも千冬さんも食い入るように投影された情報を見てから俺の方に向き直る。そして千冬さんが先に口を開く。

 

「敵については分かった、だが本来アニメのキャラクターであるはずの人間が実在していてこの世界に居るのはどう説明するのだ?」

 

「そうだね、敵の情報についてはかーくん達が出してくれたもので理解できたけど根本的にそこが証明できないよね?」

 

「それに関しては別の世界からの転生をしてここにいる俺がいる時点で今更だとは思いますけど...」

 

「そういえばかーくん転生者だったね、束さんはかーくんと過ごした濃い時間のおかげでそんなことすっかり忘れてたよ!」

 

「うむ...確かに海は元々別の世界の人間かもしれないが一度死んで生まれ変わってここにいるんだろう?輪廻転生という言葉もあるくらいだしそれならなんとか納得出来るがアニメのキャラクターがそのままいるというのはどうしても理解できんな...」

 

千冬さんの言葉に俺は覚悟を決めて話を切り出す。

 

「束さん、千冬さん、俺の転生に関して実は1つだけ2人にはもちろん誰にも話していないことがあります、それがアニメのキャラクターがこの世界にもいることに繋がってると思っているのでそれを今二人に話します、ただ...」

 

「ただ?」

 

「今から話すことは一夏達俺と同級生の専用機持ち以外には絶対に誰にも話さないでください、一夏達にも話していいのは俺に何かあって死んだ時だけです...そう約束できないなら話せません」

 

「なっ...そこまでの内容なのか...」

 

「分かった、束さんはその約束を守るよ、絶対に」

 

千冬さんは俺の話した約束に動揺していたが束さんは即答で守ると言ってくれた。

 

「分かった...お前もそれほどの覚悟を決めているということだろう、なら私も墓までもっていくことにする」

 

「ありがとうございます、では話しますね俺の転生...いや俺の元々生きていた世界について...」

 

俺は一呼吸置いてから7年前から隠していた真実について話しはじめる。

 

「俺がいた世界では...この世界もアニメの世界でした、『インフィニット・ストラトス』という名前の...」

 

「な...」

 

「うそ...」

 

俺の言葉に2人は言葉を失った。

 




今回はオリ主と一夏のセカンドシフト覚醒回でした。

オリ主の新機体はAGE2ダブルバレットのストライダー形態のようなOライザーと
OOガンダムがドッキングしたようなものだと思ってください。
後日機体設定等も上げる予定です。

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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38話 現実と真実

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

最近筆が乗ったので投稿を再開したいと思います。

楽しんでいただければ幸いです。


「俺がいた世界では...この世界もアニメや小説の世界でした、『インフィニット・ストラトス』という名前の...」

 

俺の言葉に束さんと千冬さんは信じられないといった表情をしていた。

 

「い、いくら何でも冗談が過ぎるよかーくん、そんな事あり得るわけ...」

 

「信じられないかもしれませんが事実なんです、もちろん俺が元居た世界での『インフィニット・ストラトス』とこの世界はかなりかけ離れ始めていますけどね...それでも今のところ大筋は一緒でした」

 

「だ、だが...証拠は無いだろう?証明は出来るのか...?」

 

「物的な証拠は確かにありません、でも俺はこれから何が起こるのか、そして今までもどのタイミングでどんなことが起こるのか、会ってきた人物は何者なのかほぼ全て分かっていました」

 

「な...」

 

「例えば...一夏と千冬さん、貴女達の出生に関しても分かっています」

 

「っ!?」

 

「それは全世界で束さんとちーちゃんしか知らない筈の秘密なのに!?」

 

俺が出生の秘密を知っていると言うと千冬さんの顔から血の気が引いて真っ青になった。まあそれも無理は無いだろう。

 

「第2回モンド・グロッソの時に俺と一夏を攫った奴らの大元の組織も分かってます、もちろんその組織の主戦力がどんな人間か、どんなISを使っているかも全て」

 

「うそ...」

 

「ここまで話したらお二人なら理解できると思います、俺がこの世界にとってどれほどのイレギュラーなのか...」

 

「「...」」

 

二人とも理解は出来たが認めたくないといった様子で俯いている。

 

「だから俺は俺のせいで発生したこの世界のイレギュラー...さっき情報を出したあいつらを全部消して...俺も消えます」

 

「そこまでしなくてもいいじゃん!元々かーくんのいた世界とは変わり始めてるんでしょ!?ならもうこの世界はかーくんを認めてるんだよ!やばいやつらだけ消してかーくんは今まで通り束さんと宇宙を目指そうよ!」

 

「束さんにそう言ってもらえて本当に嬉しいです...でも俺にはもう時間がありませんから...ユメ、頼む」

 

『いいの?見せても』

 

「遅かれ早かれこの二人にはすぐにばれることさ、束さんはもう半分把握してるしな」

 

『分かった...』

 

ユメに頼んで俺自身の身体データ、そしてGN粒子の毒素の浸食具合を示すデータを表示してもらう。そこには俺の身体は既に手遅れなレベルまで毒素に浸食されていることが表されていた。

 

「これは...こんな...」

 

「前の無人機襲撃の段階では数年は持つ状態でしたが、今日の戦闘でまた赤いGN粒子の攻撃を受けてしまいました...しかも胸のど真ん中に...俺はもう1年も持たずに死にます...」

 

「っ...武藤、いや...海...お前は...」

 

「束さん、千冬さん...今の世界は楽しいですか?」

 

俺は原作で束さんが千冬さんにこの場面で投げかけた質問を二人にぶつける。

 

「何故そんなことを...」

 

「かーくん...」

 

「俺はいたって真剣ですよ」

 

二人の事を真っ直ぐ見つめながら俺は答えを待つ。

 

「今の世界は...それなりに楽しめている、お前達のおかげでな...」

 

「束さんは...楽しいよ、かーくんのおかげでね...」

 

「そうですか...それなら、俺もこの世界に生まれた甲斐がありました...」

 

原作では束さんはこの世界がつまらないと千冬さんに答え後々とんでもないことを起こしていたから俺のおかげで束さんがこの世界に意味を見出してくれているならそれだけでも俺がいた意味はあっただろうと思う。

 

「そんな遺言みたいなこと言わないでよ!まだまだかーくんと一緒にやりたいこと沢山あるのに!」

 

「ありがとうございます束さん、俺みたいな人間に好意を持ってくれて...」

 

「っ...」

 

「武藤...お前気付いてたのか...」

 

「ええ...束さんの気持ちも、簪さんの気持ちも...でも死ななきゃいけない人間と一緒になっちゃいけないんです、二人とも...」

 

「かーくんのバカっ!もう知らないっ!」

 

束さんは俺の言葉を聞いた直後に目尻に涙を浮かべながら走り去ってしまった。

 

「束っ!行ってしまった...」

 

「今日はこれで解散にしましょう千冬さん、約束通り俺の転生のことと俺が1年も持たないこと誰にも話さないでくださいね」

 

「海...」

 

俺は千冬さんの返事を待たずに旅館の方に戻った。

 

———————————————————————

 

翌朝。朝食を終えて、すぐにIS及び専用装備の撤収作業に当たる。

 

そうこうして10時を過ぎたところで作業は終了し、全員がクラス別のバスに乗り込む。昼食は、帰り道のサービスエリアで取るとのことらしい。

 

「あ~...」

 

座席にかけた一夏がゾンビのような呻き声を上げる。しかも、その様相は明らかにゲッソリしていた。

 

どうしてそうなっているのかは分からないが、俺が束さんと千冬さん話している間に一夏達にもなにかあったらしいことだけは分かった。

 

「一夏、なんでそんなに疲れてるんだ?」

 

「まあ、色々あって...」

 

「そうか...」

 

まあ一夏も一夏で大変なのだろうと思って気にしないことにする。

 

「スマン...誰か、飲み物持ってないか...?」

 

一夏が飲み物を求めて声をあげると箒、セシリアさん、ラウラ、シャルロットさんがぴくっと反応する。

 

「しんどいなぁ...」

 

「「「「い、一夏っ(嫁よっ)」」」」

 

「んぁ?」

 

4人同時に立ち上がり、声に呼ばれた一夏が振り向く。それと同じタイミングで、車内に1人の女性が入ってきた。

 

「ねえ、織斑 一夏くんと武藤 海くんはいるかしら?」

 

「あ、はい。俺が織斑 一夏ですけど」

 

「武藤 海は俺です」

 

名前を呼ばれたので俺と一夏は素直に返事を返した。

 

その女性は、恐らく20代前半、少なくとも俺達よりは確実に年上で、鮮やかな金髪が夏の日差しを浴びて眩しく輝いている。

 

「君達が...へぇ」

 

女性はそういうと俺達の事を興味深そうに眺めてくる。

 

「あ、あの、あなたは...?」

 

「私はナターシャ・ファイルス。『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』の操縦者よ」

 

「え――!?」

 

予想外の言葉に困惑している一夏の頬に、いきなりファイルスさんの唇が触れた。

 

「チュッ...。これはお礼。『あの子』を止めてくれてありがとう、白いナイトさん」

 

「は?え、あ、う...?」

 

目を白黒させている一夏から顔を離したファイルスさんは、次に俺へと視線を向けてくる。未だに混乱している一夏に対して俺はいたって冷静だと思う。

 

「あの『蒼機兵』にも会えるなんて光栄だわ、貴方も助けてくれてありがとうね、キスは...止めておきましょう、私は消し炭になりたくはないもの」

 

そういってファイルズさんは俺に右手を差し出してきたので俺はその手を握り返す。

 

「貴方のようにISを相棒や大切な存在だと思ってくれる人が増えてくれればもう少し世界は平和なんですけどね...まあ消し炭にはさせませんから安心してください」

 

「それを聞いて安心したわ、機会があればアメリカにも是非来てね!じゃあ、またね。バーイ」

 

「「は、はぁ...」」

 

ヒラヒラと手を振ってバスから降りるファイルスさんを、俺達は手を振り返して見送る。

 

ゾワッ!

 

濃厚な殺気を感じて振り向くと...

 

「浮気者め」

 

「一夏ってモテるねえ」

 

「本当に、行く先々で幸せいっぱいのようですわね」

 

「夫の目の前で堂々と浮気か」

 

顔は笑ってるのに、目がまったく笑っていない。あぁ...ご愁傷様だ一夏...

 

「「「「はい、どうぞ!」」」」

 

「ぶへぁっ!?」

 

投げつけられた500ミリリットルのペットボトル×4本が直撃し、一夏が俺の足元に倒れる。

その一連の流れがニュータイプの能力なのかスローモーションに見えた。

 

「南無三...」

 

「なーむー」

 

俺といつの間にか俺の隣にいた本音さんは一夏に向けて合掌したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-- ???

 

「すまねぇな大将、しくじっちまった...」

 

「いや、当初の目的は達成されたよ、それどころかいいものを見せてもらったからね、報酬も上乗せしておこう」

 

「そいつはありがてぇ」

 

「ふん、次は我々の自由にさせてもらうぞ」

 

「好きにしたらいい、僕達の目標は同じなんだからね」

 

「では、そうさせてもらおう...さて貴様はどうする?武藤海...」




今回はオリ主の転生の秘密告白回でした。
余命1年未満覚悟ガンギマリオリ主はどうなることやら...

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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39話 革命と運命

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回からストーリーを少しオリジナルルートに寄せたいと思います。

楽しんでいただければ幸いです。


8月某日。臨海学校から数日経って夏休みまでもう少し、かつ休日ということもありなんだかふわふわした雰囲気の学生寮の食堂で俺は1人で食事を摂っていた。

 

一夏は第二形態移行(セカンドシフト)した白式の調査の為に不在、簪さんもやっと完成した弐式での代表候補生の仕事で不在、その他メンバーも何かしらの用事があって不在と珍しく俺一人だけが残っていたのだった。

 

「なんか平和だなぁ...」

 

限定メニューのざるそばをすすりながらつかの間の平和を享受しているとふと食堂に備え付けられたテレビで流れているニュースが目に留まる。

 

「臨時ニュースです、先ほど『ワールド・イノベイション社』が新たに発売する製品についての情報が入ってきました」

 

ワールド・イノベイション社はここ1~2年の間に急成長を遂げた兵器開発を主とした軍需企業で社長や役員の詳細が何故か一切不明という変わった企業だ。そんな会社が一体何を開発したのだろうか?

 

「資料によりますと男性でも使用できるパワードスーツとのことでこれよりワールド・イノベイション社の代表より新製品に関して発表があるようです、現場と中継が繋がっています」

 

男性でも使用できるパワードスーツ!?まさか...

 

「会場にお越しの皆様、中継をご覧の皆様、初めまして、今回我が社の新製品の解説・発表をさせていただくシャギア・フロストと申します、横にいるのが進行を務めます弟のオルバ・フロストです」

 

「よろしくお願い致します」

 

「マジかよ...ユメ、ネットからでも何でもいいあの2人の情報の収集、あと今流れてるあのニュースの録画頼む」

 

『分かった』

 

俺はテレビに映った2人の人物を見て即座にユメにニュースの録画と情報収集を頼む。サーシェスの言葉からあの兄弟の存在は予想していたがまさかこんな堂々と表に顔を出すとは!

 

「今回我々が発表するのは『MS(モビルスーツ)』...男性でも問題なく使え、ISに比肩する性能を持つパワードスーツです、皆様後ろのアリーナをご覧ください!」

 

シャギアが記者たちに後ろを見るように促しテレビのカメラが後ろを向くと広々とした空間が映り、そこには赤い機体と銀色の機体がそれぞれ浮遊していた。

 

「赤い機体がバランスの取れた武装を備え高軌道戦闘が行える『アヘッド』、銀色の機体がレーザーや実弾射撃に対する高い防御力を持ち、近接戦で無類の強さを発揮する武装を装備した『クラウダ』です、ISのようなSEはありませんがそれぞれ装甲や防御兵装もありますので耐久面でも問題ありません」

 

「「おおー!」」

 

会場で感心するような声が上がる。確かにISに比肩する性能で誰にでも使えるパワードスーツが急に出来れば誰だって感心する。

 

「見てもらえれば分かると思いますが、2機とも地球の重力下でも飛行可能であり空中戦も可能です、更に...」

 

カメラに映った画面の奥の方から別の機体が飛んできてアヘッドとクラウダに随伴するように隊列を作って空中で静止する。

 

「今飛んできてアヘッドとクラウダにそれぞれ随伴したのが無人MS『GN-XⅢ』と『ドートレス・ネオ』です、プログラムによりそれぞれ設定された有人機のサポートをするようになっています」

 

記者は一心不乱にメモを取りカメラで撮り続けている。

 

「無人機もアヘッドやクラウダと同様に空中戦が可能で武装も充実しています、ではデモンストレーションを行いましょうか」

 

画面に映るアヘッドとクラウダが動きだし、用意されていたターゲットドローンをそれぞれの武装で撃ち落としたり切り裂いていく、パッと見た感じでもISと遜色ない機動性と火力、原作とほぼ同じ武装、それに加えて有人機の動きを一切邪魔せずに的確な援護を行うあの無人機がついてくるのだから相当厄介だろう。今まで苦汁を嘗めさせられた男性...特に軍人なんかが操縦訓練して練度を上げたら十分ISとも渡り合えそうだ。

 

「ISだって無敵じゃない...戦車砲でもアサルトライフルでも食らえばSEは減るし、SEが尽きたら搭乗者がハチの巣になって終わりだ...」

 

俺が呟くと同時にデモンストレーションが終了し、記者からの質問がありそれにシャギアが答える。

 

「今世界はISの開発に躍起になっていて通常兵器にはほとんど手を付けていない現状ですが、どうしてこのようなものを開発できたのでしょうか?」

 

「それに関しては企業秘密でお願いします。またそれぞれのMSの動力に関しても企業秘密となっていますので購入の際には動力部を分解・解析等行わない誓約書を締結していただきます、また対策として分解等を行おうとした瞬間に内部回路等が全て焼き切れるセキュリティが組み込まれています。しかし修理については全てこちらでサポートさせていただきますし、ISコアとは異なり我が社で常に生産していますので不足したり、早い者勝ちになるといったこともございません。動力部以外であればご自由に分解・改造・解析していただいて結構ですし武装等の増設も出来ますので後日情報を開示致します。」

 

「本当に男性でも操縦可能なのでしょうか?あの機体がISという可能性は?」

 

「ああ、まだ搭乗者の方の紹介がまだでしたね、感想を聞くついでに降りてきてもらいましょうか」

 

アヘッドとクラウダが地面に降り立ち前面装甲が開いてそれぞれ中からがっしりとした体格の男性が出てくる。

 

「彼らはISの普及に伴って職を失った元軍人です、これで証明になりましたでしょうか?」

 

「は、はい、大丈夫です、ありがとうございました」

 

その後搭乗者の男性2人の感想を記者が聞き、比較的操縦にすぐに慣れることが可能だということが更に分かる。

 

「ではこれにて我が社の新製品『MS』の発表会見を終了させていただきます、先ほど申し上げましたが、ご購入の際は我が社に連絡をお願い致します、企業、国家、個人等誰でも購入は可能ですのでお待ちしております」

 

記者会見は終了してニュースも通常の放送に戻った。食堂の中ではぽつりぽつりと事の重大さに気付いた生徒もいるようだ。

 

「これは...下手すれば戦争になるぞ...」

 

ISの登場、導入によって女尊男卑になり職や地位、家族を失ったり、ひどい場合には冤罪を賭けられて逮捕された男性は世界中にごまんといる。動力が分からなくてもISに対抗できる力が金で手に入るのであれば直ぐにでも手を出すだろう。

 

想定外のタイミングでの想定外の仕方で世間に介入してきたフロスト兄弟に対して俺は思わず歯噛みした。

 

———————————————————————

 

--生徒会室

 

昼にニュースを見てから俺は速攻で楯無先輩に連絡してアポを取ったところ休日ということもあり、直ぐに話が出来るとのことだったので、生徒会室に向かった。

 

「失礼します」

 

「はーい、なんだか久しぶりね海くん。蒼機兵ってバレてから全然会話してなかったけど急にどうしたの?あと臨海学校ではお疲れ様」

 

「ありがとうございます。話なんですけど...楯無先輩はさっきのニュースご覧になりましたか?」

 

「ええ、見たわよ」

 

「なら分かるでしょう、暗部の長の貴方なら余計に...IS学園が火の海になる可能性だってある」

 

「それはこちら側でも既に警戒済みよ、国内でMSを購入しようとしてる企業や団体なんかはもう監視してるし他にも対策は準備中」

 

「そうですか...それなら今直ぐに問題にはならなそうですね」

 

流石は暗部の長をやっていることはある、動きが早い。

 

「それで?それだけの為に話に来た訳じゃないでしょう?」

 

「ええ、俺も蒼機兵として独自に動く可能性があるのでそれも一応お知らせに」

 

MSがこの世界に広まってしまう以上、俺は真っ先に動く必要があると考えた。生徒会長である楯無先輩に伝えておけばIS学園内の問題や俺自身の不在にも対応してくれるだろうと思っていたので話に来たのだ。

 

「独自にって...いったい何をするつもりなの?」

 

「MSとISによって戦争が起こるなら...それを止めるために戦います。俺1人でも」

 

「1人でなんていくら貴方が蒼機兵で機体が第二形態移行してても無茶よ!」

 

「あくまで可能性の話ですから頭の片隅に置いておいてください、基本的には学園の防衛等に専念しますから」

 

「そう...分かったわ、くれぐれも無理はしないでね」

 

「もちろんです、では失礼します」

 

俺は頭を下げてから生徒会室を出て廊下を少し歩いて人気がなくなったところで立ち止まる。

 

「ゴホッ!ゴホッ!思ったより早いな...」

 

口を押えた俺の手には血がべったりと付き、刻々とタイムリミットが迫っていることを示していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かーくん...私は絶対に諦めない...君を絶対に助けてみせるから!」




今回はMSがISの世界に解き放たれてしまう回でした。

虐げられてきた人間の多いこんな世界でこんなものがでたら向かう先は...

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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40話 思いと想い

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回から夏休み中の海の動きを数話投稿していく予定です。

それでは楽しんでいただければ幸いです。


--某所 月兎製作所 居住区

 

『ワールド・イノベイション社』による『MS』の発表から数日、思ったより世界は大きな動きを見せず、IS学園は夏休みに入った。

 

俺は夏休み初日に両親の居る月兎製作所の居住区に帰った。まあつまるところ里帰りである。

 

「クロエ、束さんはどうだ?」

 

「臨海学校の日からずっと研究室に籠ったままです、食事を摂りに出てくることもありませんし私も声をかけたのですが...」

 

「そっか...ごめんな、俺の所為でクロエにまで迷惑かけて...」

 

「大丈夫です、人間誰にでも秘密があると認識していますし海様にもそれはあるのでしょう?」

 

「ああ、理解が早くて助かるよ」

 

今はクロエに束さんの状況を聞いている最中だがやはり臨海学校から戻ってから様子は変わらないようだ。

 

「俺も様子を見に行ってみるよ、ありがとうなクロエ、デュノア社の管理とかもやってもらってるのに」

 

「私は大丈夫です、私に出来ることをやっているだけですから」

 

「そっか、それでもありがとうクロエ...」

 

俺は衝動に駆られて思わずクロエの頭を撫でる。

 

「んっ...」

 

「おっと...嫌だったか?」

 

「いえ、また今度撫でてください」

 

「ならよかった」

 

クロエと会話した後、束さんが籠っている研究室に向かう。

 

「束さん、俺です、海です...」

 

研究室の扉の前に立つとノックしてから声をかけて返事を待つ。5秒、10秒、それ以上経っても返事は返ってこない。

 

「ちょっと話しませんか?2人だけでちょっとしたものでもつまみながら...」

 

臨海学校の夜、俺が一方的に突き付けた事実をきっと束さんは信じたくないのだろうと...そう思って束さんとはもっとゆっくり話す必要があると俺は思った。

 

5分、10分経っても俺は扉の前で待ち続ける。

 

「俺は...」

 

束さんに言うつもりもない独り言を呟こうとした瞬間に研究室のドアが開いて伸びてきた手に腕を掴まれて中に引き込まれる。

 

「おっ...と」

 

研究室の中に引き込まれた後、掴まれた腕の先を見ると、数日間風呂に入らず、食事も摂っていなかったのであろう髪がボサボサでやつれた束さんが居た。

 

「束さんを信じてね...かーくん」

 

束さんはそう言うと掴んだ俺の腕に注射器で何かを注入する。拒否も出来たけど俺は束さんの言う通り信じてそのまま受け入れる。

 

「えっと...束さん...これは何か教えてもらってもいいですか?」

 

「それはかーくんの身体を蝕んでるGN粒子の毒素による症状の進行を少し遅くする薬だよ、三日三晩調べ続けてなんとかこれは作れたんだ...」

 

「それは...ありがたいです、ありがとうございます、束さん」

 

「でもその薬を使っても...なんとか1年持たせるのがギリギリなの...それにまたあいつらの攻撃をくらったらかーくんは確実に...いや、そうじゃなくても...」

 

「それは分かってます、でもあいつらは多分直接表に出てくる事はしばらくなさそうですし、助かりましたよ」

 

「かーくん...」

 

束さんは俺を今にも泣きそうな目で見てから俺の腕をぎゅっと掴んでくる。

 

「言いたいことは色々あると思いますけど先ずは...お風呂に入ってきてください束さん、入ってる間にご飯、用意しておきますから」

 

「うん...」

 

束さんは素直に頷くと研究室を出て行った。

 

束さんが研究室を出たのを確認してから備え付けられたほぼ俺専用の厨房に入って束さんと自分の分のご飯を用意する。

 

「きっと籠りっぱなしで何も食べてないだろうから胃に優しい物が良さそうかな...うどんがあるからうどんにしよう、少し薄めの味付けで」

 

独り言で作る料理を決めて調理に取り掛かる。といってもうどんなので比較的直ぐに出来るだろう。

 

「トッピングは束さんの希望に沿えるように用意して...あとはうどんを茹でるだけだから束さんにお風呂の状況を聞いてから茹で始めよう、ゆっくり入っていてほしいし」

 

束さんに『あとはうどんを茹でるだけなのでお風呂上がる10分前ぐらいに教えてください』とメッセージを送る。

 

すると直ぐに返信がきて『もう茹でちゃって大丈夫だよ~』とのことなのでうどんを茹で始める。

 

「俺は...はぁ...」

 

うどんを茹でている鍋の前で1人、頭に浮かんだ思考を吐露しようとして飲み込んで代わりにため息を吐く。

 

「かーくん、上がったよー」

 

「はーい、もう少しで出来るんで待っててください」

 

束さんがお風呂から出てきたので器にスープを注いでうどんを入れて持っていく。

 

「束さんの事だから飲まず食わずで研究続けたでしょうから胃に優しいうどんにしましたよ、一応薬味とか卵とかは用意したんでお好みで」

 

「うーん...流石かーくん、束さんの生活周りについてはすっかりお見通しだ」

 

束さんはそう言いながらちゅるちゅるとうどんを啜っていく。

 

「食べながらでいいので話を進めましょうか」

 

「ん...そうだね」

 

俺もうどんを時々啜りながら話を始める。

「えっと...まずは束さんの状況から確認したいんですけど大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だよ、えっとね、かーくんの身体を蝕んでるGN粒子の研究だけど、さっきかーくんに打った薬が物的な最新成果で、データ的には完全治療までこぎつけてるんだ」

 

「え?本当ですか?」

 

「うん、でも治療を実践するのに必要な準備が束さんでも最速で1年ギリギリかからないくらいの時間が必要なんだ」

 

「だからこそのあの薬ってわけですか」

 

「そうゆうこと、だから...準備が終わるまで絶対に無茶しないでね!」

 

「約束は出来かねますけど...善処します」

 

俺はずいっと顔を近づけてきながら俺に無茶をしないように釘を差してくる束さんに返事をしながら次の話を切り出す。

 

「次は俺の報告ですね、奴ら...まあ俺が打倒すべきだと思ってる『敵』ですがしっかりと表舞台に出てきました」

 

「束さんもみたよ、『MS』だっけ?動力部はブラックボックス化してるけどそれ以外は改造・分解自由、大量生産出来てISにも匹敵する性能、そして男でも使えると...」

 

「楯無先輩が国内の購入企業や団体を監視してるみたいですけど全世界で大量に購入されるでしょうね、そして...」

 

「ISに恨みつらみ積み重ねてきた人間が復讐を始めると」

 

「戦争が始まりますよ、もう...一夏達にも伝える時でしょうね...」

 

「案の定そうなっちゃったか...ISの生みの親としては悲しい限りだよ...男性用ISも研究してたんだけど...」

 

「遅かれ早かれこうなっていたでしょう、戦いを引き起こすのが奴らの目的でしょうし、いくら束さんが男性用ISを研究していたとしても、直ぐに実物が出来ないならと信じてくれないのが世界...いえ世論や大衆というものです」

 

「...」

 

「それでも...血が流れるような事はあっちゃならない...そうでしょう?束さん」

 

「うん、そうだね!世界を変えちゃったなら責任を取らなきゃ!」

 

「じゃあ俺達も準備をしましょう、MSが本格的に普及しきるのは早くてもIS学園の夏休み明けになるはずです、それまでにやれることを」

 

「まずは束さんは防衛システムを作るよ、どこにでも簡単に構築出来て防御力があって非殺傷の!差しあたってはMSのデータがあると完璧なものが作れるんだけど...」

 

「それなら...ユメ、束さんの手元にある端末に俺のまとめておいたデータ送ってくれ」

 

『分かった、はい、送ったよ!』

 

ユメに頼んであらかじめまとめておいたMSのデータを束さんの手元にあった端末に送信する。

 

「今データを送ったので見てみてください」

 

「ふむふむ...えっ、これスペックデータどころかブラックボックス化されてた動力のデータ、予想される改造パターンやバリエーション機まで全部網羅されてる!?どうやってこれを...」

 

「前に言ったじゃないですか、元々あいつらは俺の世界ではアニメの存在だって...俺結構コアなファンだったので完璧に覚えてるんですよ」

 

「これならかなり有効な対策が取れそうだね!ありがとうかーくん!」

 

「ちなみに赤い方のMSの疑似太陽炉は改良型なので毒素は無いと思います。ここは一つ安心ですね、それでは俺は一夏達に話すための資料でもまとめてから説明することにしますよ」

 

「分かった、じゃあお互い頑張ろうかーくん」

 

「束さんも気を付けて」

 

「絶対に、ぜーったいに無茶しちゃだめだよ?」

 

「分かってますって」

 

お互いにうどんも食べ終わって食器の片付けも終わったので、束さんが最後まで俺に無茶しないように言ってくるのに返事しながら研究室を出る。

 

「五体満足で勝てればいいけど...そんなに奴らは甘くない...だから俺も...」

 

俺の覚悟は長い廊下に吸い込まれて消えていった...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君がこちらの事を知っているように僕達も君の事を知っているんだよ、武藤 海」




今回は一途な束さんのオリ主への想いと曇りまくってるオリ主の心情を表した回でした。

そして最後のセリフの意味とは...?

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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41話 打算と真意

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回は簪絡みで話を進めていきます。

楽しんでいただければ幸いです。


--某所 月兎製作所 研究棟

 

有事に備えて俺は早朝から束さんと色々準備を進めていた。

 

「ん?着信?この番号は...簪さんか、束さんちょっと失礼します」

 

「はーい」

 

一緒に作業していた束さんに一言断りを入れてから俺は研究棟から出て電話を取る。

 

「もしもし?簪さんどうしたの急に」

 

『あ...海?急にごめんね、今日って予定空いてるかな?』

 

「多分大丈夫だと思うけど、何かあったの?」

 

『弐式の事なんだけど、マルチロックオンシステムって途中から海がメインで作ってたよね』

 

「そうだね、それで?」

 

『あの...倉持技研のプログラム担当の人がシステムのソースコードが全く理解できないから今後のメンテナンスのためにも開発者の人に説明か技術協力して欲しいって言ってて...私が説明するって言ったんだけどどうしてもって...』

 

「ふーん...倉持技研がねぇ...」

 

簪さんを放置した癖に機体が出来たらすり寄って、しかも分からないから教えろってか...簪さんが説明出来るって言ってるのを聞かない時点で、蒼機兵である俺から色々抜き出してやろうって魂胆が筒抜けなんだよ...ちょっとお灸を据えてやろうかな。

 

『か、海?』

 

「あぁ、ごめんごめん、今日なら大丈夫だよ、何時ぐらいに行けばいいかな?場所は倉持技研でしょ?」

 

『昼ぐらいで大丈夫だと思う、ごめんね、夏休みなのに』

 

「このくらい大丈夫、じゃあまた後で」

 

『うん、待ってる』

 

時間と場所を簪さんに確認してから電話を切る。

 

「束さん、申し訳ないですけど今日は予定が出来たので昼頃は出かけますね」

 

「んや?どうしたの急に?」

 

「前に専用機開発を手伝った同級生絡みですけど倉持技研がちょっと調子乗ってるんで...」

 

「成る程ねぇ...まあ、束さんもあの対応には技術者として思うところがあるし、かーくんの好きなようにやっちゃってちょーだい!あいつと話すチャンスでもあるか...

 

「(最後の方聞き取れなかったけどまあいいか...)ではお言葉に甘えて好きなようにやらせてもらいますね、何か問題があれば直ぐに連絡しますから」

 

「はーい、でもとりあえずこれ手伝ってもらってもいいかな?防衛システムの根幹部だから1人だとちょっと大変で...」

 

「もちろんです、まかせてください」

 

俺は束さんの開発作業を手伝いながら今日の昼に倉持技研をどう料理してやろうか考えて、いたずらをしかける子供のような笑みを思わず浮かべてしまった。

 

———————————————————————

 

--倉持技研 本部

 

「うちほどじゃないけどそれなりの規模だな」

 

俺は簪さんとの約束通りに昼頃に倉持技研のIS開発施設の本部に来ていた。

 

「海!」

 

「お疲れ様簪さん、待たせちゃった?」

 

「ううん、私も今来たところだから」

 

「(今のやりとりちょっとデートっぽい)」

 

別にデートのつもりで来たわけではないのだがあまりにもベタなやりとりにそんな感想が頭に浮かんだ。

 

「じゃあ簪さん道案内お願いしてもいいかな?」

 

「もちろん、着いてきて海」

 

「分かった」

 

簪さんに道案内をお願いして着いていくと、開発室であろう場所に着いた。

 

「ようこそいらっしゃいました!私、倉持技研IS開発研究部の伊藤と申します!蒼機兵である武藤 海さんにお会いできて光栄です。」

 

そこで倉持技研の人間に迎え入れられて応接室のような場所に簪さんと通された。

 

「本日はご足労いただきありがとうございます。既に簪さんから聞いてはいると思いますが、今回お越しいただいたのは簪さんの打鉄弐式のマルチロックオンシステムについてなのですが...」

 

「マルチロックオンシステムが何ですか?」

 

「システムが複雑過ぎてその...出来れば技術提供かご教授をいただきたいなと...」

 

「システムが複雑過ぎる?確かに完成させたのは自分ですが、元々は簪さんが作っていたものです、簪さんも理解していますから俺に聞かなくとも大丈夫ではないですか?」

 

「そ、それは...」

 

「簪さん、マルチロックオンシステムの俺が書いた部分のソースコードも理解出来てるよね?」

 

「うん、海が説明してくれたから直ぐに理解できたし、ちゃんと内容も把握してるよ」

 

「ほら、こうして簪さんは完全に理解している、なのに何故専門家である貴方達がシステムの解析も出来ないのですか?」

 

「うっ...」

 

「正直見え見えなんですよ、簪さんと俺に接点があるのをいいことに蒼機兵である俺に近づいてよしんば俺の専用機のデータでも抜こうとしていたんでしょう?」

 

「そ、そんなことは!」

 

「はぁ...見え透いてるんですよそちらの考えていることは、もう少しまともであってほしかった...俺が貴方達に技術を提供することも何か教えることも絶対にありませんのでこれで失礼させていただきます」

 

「なっ...お待ちください!」

 

「あぁ...1つ言い忘れてました」

 

「なっなにを...」

 

「俺は貴方達に失望しました。さっき言った通りもう少しまともならこれで終わりでしたが...勉強代を頂いていきますよ」

 

「勉強代?(プルルルル)し、失礼します」

 

俺の言葉に伊藤と名乗った倉持技研の人間は頭を傾げるが、電話がかかってきたのでそれを取った。

 

「もしもし?伊藤です...はい...はい...なっ!?」

 

「か、海?何をしたの?」

 

俺の隣に座っていた簪さんが恐る恐るといった感じで話しかけてくる。

 

「ん?ああ、そんな大それた事はしてないよ、ただ...」

 

「打鉄弐式に関する権利が全て買収された!?そんな馬鹿な...!」

 

「って事、日本の代表候補生周りに関する部分はそのままで整備とかは自由に出来るようにしただけだよ。簪さんもその方がいいかなって思って」

 

「海...」

 

「という訳で勉強代も頂きましたのでこれでお暇させていただきます。行こう簪さん」

 

「う、うん」

 

俺は慌てている伊藤さんを横目に簪さんと一緒に施設を出て行った。

 

———————————————————————

 

--とある公園

 

倉持技研の施設を出た後、俺と簪さんは少し歩いたところにあった公園で話をしていた。

 

「ごめんね簪さん、色々と巻き込んじゃって、急な事でびっくりしたでしょ?」

 

「びっくりしたけど、正直すっきりした、私も思うところはあったから...」

 

「そっか...それなら良かった」

 

簪さんの返事を聞いて俺は肩を撫でおろす。

 

「こんなことになっちゃったから整備の為の施設とかは俺が何とかするよ、ちょっと待ってて」

 

「そこまでしてもらう訳には...」

 

「いいからいいから」

 

俺はそう簪さんに言ってから束さんに電話をかけた。

 

「もしもし?」

 

『もすもすひねもす?頼れる大人の束さんだよー、電話をかけてきたってことは終わったみたいだね』

 

「はい、しっかりお灸を据えてきましたよ、後は帰るだけなんですけど1つお願いがありまして」

 

『ん?何かな?』

 

「倉持技研へのおしおきで俺の同級生の専用機のライセンスを全て買い取ったんですけどその同級生に整備施設を使えるようにしてあげたいのでこれからそっちに連れていきたいんですけど大丈夫ですか?」

 

『成程ね、OK分かったよ、かーくんの方で監視システムに登録はしておいてね』

 

「分かりました、じゃあこれから帰りますね」

 

『はーい、気を付けて帰ってきてね』

 

「ではまた後で」

 

俺は電話を切って簪さんの方に振り向く。

 

「という訳でこれから月兎製作所に行くんだけど一緒に来てくれる?」

 

「えっ!?」

 

「もしかして予定とかあった...?」

 

「そ、それは大丈夫だけど...い、いいの?企業秘密とかあるんじゃないの?」

 

「その辺はちゃんとしてるから大丈夫!」

 

「じゃあ...お言葉に甘えて...」

 

「OK、じゃあ早速行こうか!」

 

俺は簪さんを連れて月兎製作所の施設に向かって歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いけど...試させてもらうよ、更識 簪。お前がかーくんの隣に立つだけの資格があるのかどうか...」

 




今回は海が簪に代わって倉持技研にしっぺ返しを食らわせた回でした。

束が言っていた簪を試すとは...?

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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42話 隠す海と知る簪

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回は簪視点で話を進めていきます。

楽しんでいただければ幸いです。


--月兎製作所 整備棟

 

「ここがうちのIS開発。整備施設だよ、もう許可は取ったから簪さんも遠慮なく使っていいよ、でもここの情報は誰にも秘密ね」

 

「凄い...IS学園以上の広さのアリーナに、最新の施設や道具が全部ある...!」

 

束さんから許可がもらえたので俺は簪さんを連れて月兎製作所の整備棟に来ていた。最新の設備に簪さんは目をキラキラと輝かせている。

 

「あとは...スタッフだけど...」

 

束さんに弐式の整備を手伝ってくれるかどうか頼みに行くか悩んでいると整備棟の自動ドアが開いて変装もなにもせずに束さんが入ってきた。

 

「かーくんお疲れー、束さんも倉持の奴らの焦った顔見てすっきりしたよー」

 

「えっ!?篠ノ之博士っ!?」

 

ISの生みの親の突然の登場に簪さんが驚く。まあ俺が束さんと関係があることは全世界に知れ渡っているがここにいることはまだバレてないから驚くのも当たり前だろう。

 

「はろはろ~、君がかーくんの言ってた同級生の子だね~」

 

「は、はい」

 

俺や千冬さん、一夏を除けば興味を全く持たず関わることはまずしない束さんが簪さんを見るとそのまま話しかけた。

 

「束さんが俺達以外の人にまともに話しかけてる...」

 

「むーっ!失礼しちゃうな!束さんでも普通に人と会話ぐらいするんだからね、かーくん!まあそれはそれとして1回君とは話してみたかったんだよ」

 

「わ、私と?」

 

「そうそう、だからちょっと借りてくねかーくん」

 

「これまた急ですね、まあ簪さんがいいならいいんじゃないですか?」

 

「私は一応大丈夫です...」

 

「おっけー、じゃあ向こうで話そうか!飲み物もあるし」

 

そのまま束さんは簪さんを連れて整備棟を出て行ってしまった。こうなってしまうと待つしかないので俺も整備をしながら待つことにした。

 

———————————————————————

 

<簪視点>

 

篠ノ之博士に連れられて私は休憩所のような会議室のような部屋に通された。

 

「まあまあ、とりあえずそこに座ってよ」

 

「は、はい」

 

促されるまま私が椅子に座ると対面に篠ノ之博士が座った。

 

「さて...」

 

次の瞬間には篠ノ之博士の纏う雰囲気が一変して空気が張り詰める、私は思わず息を呑んでしまった。

 

「お前...更識 簪とかいったっけ?面倒くさいから早速聞くけど、お前かーくんの事好きだろ?」

 

「えっ...!?あっ...その...そうです...けど」

 

突然篠ノ之博士に海が好きかどうかを聞かれ私は思わず正直に返してしまう。

 

「まあ、色々監視してたから知ってたし確認以上の意味は無いけど...」

 

「監視?篠ノ之博士が私なんかを?」

 

確かに海には弐式の事とか色々と手伝ってもらってるし仲良くしてると思うけど何故...

 

「お前かーくんが好きって自分で肯定したじゃんか、恋敵が出来れば監視するのは当たり前のことだと思うけど?」

 

「恋敵...?えっ!?じゃあ篠ノ之博士も海を...」

 

「そうだよ、私もかーくんの事が好き、もちろん1人の女としてね...だからこそ聞きたかったし、試したかった」

 

「試したかった...?」

 

篠ノ之博士も海の事が好きだったなんて...でも試したかったってどうゆうことなんだろう?

 

「今から話すこと、そして見せるデータは絶対に口外したりしないこと、他の誰かに言ったりしたら私がお前を殺す」

 

「っ...」

 

「かーくんを好きになってずっと隣にいるって事はこのぐらいの覚悟が必要な秘密をかーくんと一緒に抱えて生きるって事、その覚悟が無いならここで話を切り上げる、そしてかーくんの事は諦めた方がいい」

 

私は篠ノ之博士の言葉、そして鋭い眼差しと雰囲気に逃げたくなってしまうが、その瞬間に海と弐式を開発したことや相談に乗ってもらったこと、そして一緒に映画を見に行った時のことを思い出して...覚悟を決めた。

 

「分かりました...私にも...話してください!」

 

「ふぅん...覚悟はちゃんと本物みたいだね、じゃあ話すよ、この世界で私とちーちゃんしか知らない、かーくんの抱えてる秘密...そして覚悟を」

 

そして私は篠ノ之博士から海の抱えている秘密、そして覚悟を聞くことになった...

 

———————————————————————

 

篠ノ之博士から全ての話を聞いた後、私は篠ノ之博士と一緒に海のいる整備施設へ戻った。

 

『かーくんは現在進行形でGN粒子の毒素に身体を蝕まれてる、そしてそんな身体を押してかーくんはこの世界に生まれてしまった『敵』を全て消し去ろうとしてるの、自分ごと...』

 

少なくとも私と一緒にいるとき海はそんな素振りは全くしていなかった。きっと私や皆の前では我慢し続けていたんだろう。

 

『そして...この世界にかーくんが本当の意味で心を許せる人はきっといない...私を含めてね...かーくんはずっと孤独なんだよ...自分の事を異物だと思い続けてる...』

 

海は元々は別の世界の人間で生まれ変わってこの世界に来ているのだと篠ノ之博士は言っていた。そして海の世界では私達のいるこの世界はアニメとして存在していて、海は私達の事をアニメのキャラクターとして無意識に線を引いて接しているのだろうとも...

 

「っ...」

 

ともすれば私は泣いてしまいそうだった。

自分は世界の異物として本当に信じられるものは何1つ無く、1人孤独に戦い続ける事がどれだけ過酷で苦しい事なのか...私には想像することも出来なかった。

 

「簪さん大丈夫?」

 

「っ!?だ、大丈夫だよ...」

 

海に声をかけられて私は我に返った。

 

「なんか考え事してたみたいだから...」

 

「何でもないよ、心配かけさせてごめんね」

 

「そう?ならいいんだけど、束さんとは何を話してたの?」

 

「それはねー、かんちゃんのISの整備は束さんが手伝ってあげるよって事と先んじて『敵』の事を言っちゃいました!てへぺろ★」

 

「しれっととんでもない会話俺抜きで進めないでくださいよ...しかも簪さんの事名前呼びになってるし...」

 

私が言い淀んでしまう前に篠ノ之博士が割り込んでごまかしてくれた。海は色々と鋭いから危ないところだったかもしれない。篠ノ之博士が私に話してくれたことは『敵』の事以外は本来誰にも教えちゃいけないと海に言われている事だったのだから...

 

「束さんが話しちゃったなら俺から伝えることはあんまりないかなぁ...まあ一応資料は作ったし、一夏達にも休み明けに話すつもりだけど」

 

「あのMSって技術的に凄いなって思ってたけどまさか危険な裏があるなんて思わなかった...」

 

MSに関しては本当に素直に凄いなと思っていたけど話を聞いてはっとさせられた。

 

「あとは『アレ』をどうするかだけど...まあそれは皆に説明が終わってからでいいか」

 

「『アレ』って何のこと?」

 

「うーん...企業秘密」

 

海が意味深なことを言っていたので何のことか聞いてみたけどはぐらかされてしまった。

 

「さて、話をしている間にかんちゃんの弐式のメンテ終わったよー、はいどうぞ」

 

「えっ!?早過ぎる...」

 

「まあIS生みの親の束さんだからなぁ...」

 

私と海が少し話している間にメンテナンス用の台座に展開していた弐式を篠ノ之博士があっという間にメンテしてしまった。

 

「さて、今日の所はここまでかな?」

 

「そうですね、簪さん帰りは大丈夫そう?」

 

「うん、大丈夫、道は覚えてるし教えてもらったマップデータのダウンロードも終わってるから」

 

「なら大丈夫だね、あっと、1つ聞き忘れてた!簪さん明日は空いてる?」

 

「え?多分大丈夫だと思うけど...」

 

「明日箒の実家で久しぶりに夏祭りやるからもしよかったら一緒にどうかなって、一夏達にも合流しようぜって言われてるし」

 

「ん...分かった、私も行く」

 

「良かった!集合場所とかは後で送るね!」

 

「うん、私も楽しみにしてる」

 

海と夏祭りに行く約束をした後に私は月兎製作所の施設を出て帰路に着いた。誰にも見られてないと思うけど帰ってる時の私の顔は真っ赤だったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「青春だねぇ~束さんもそんな高校生活が送りたかったよ~」

 

「にやにやしながらねっとりいうのやめてください...」




今回は束が簪に海の秘密を話して簪が真実を知ってしまう回でした。

オリ主の真実を知った簪はどうするのか...

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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43話 想いの熱と甘い夏

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

仕事が忙しくて先週は投稿できませんでした...
なるべく頑張って投稿するので気長に待っていただけるとありがたいです。

今回は夏祭りの話になります。

楽しんでいただければ幸いです。


--篠ノ之神社前

 

<海視点>

 

「ほんと久しぶりの夏祭りだな...重要人物保護プログラムで出来なくなってたから小学生の時以来だもんな...」

 

現在俺は篠ノ之神社の前で簪さんを待っている。一夏達もまだ来ていないのでどうやら俺が一番乗りの様だ。

 

「海!お、お待たせ!」

 

「ああ、簪さん、俺も今さっき来たところ...」

 

簪さんの声が聞こえたので返事をしながら顔を上げると明るいオレンジ色に桜の柄の浴衣を着た簪さんが視界に入って思わず返事が途中で止まった。

 

「か、海?どうしたの?」

 

「あ、いや...に、似合ってるよ...浴衣」

 

「っ///ありがとう///」

 

簪さんの着ている浴衣は簪さんの青い髪との対比が綺麗で本当によく似合っている。ただ...

 

「(何とか褒められたけど...これ以上が続かない!)」

 

この状況を打開する為にもまずは声を...

 

「「あの!」」

 

いつぞやのように簪さんと全く同じタイミングで声が被った。

 

「「そっちから...」」

 

更に被る、どんどん泥沼に...

 

「おーい!海!簪さん!」

 

空気が微妙な感じになりかけたところで一夏達が俺たちに向かって叫びながら歩いてくるのが見えた。

 

「「...」」

 

「いつぞやもあったよねこんなこと」

 

「うん...私も凄いデジャヴった」

 

「一夏達も来たし行こうか、簪さん」

 

「分かった」

 

後で一夏には何か奢ってやろうと思いながら俺は簪さんと一夏達の方に向かって歩いて行った。

 

———————————————————————

 

一夏達と合流したあと俺達は屋台を色々吟味しながら夏祭りを楽しんでいた。

 

「祭りの屋台で買って食べる焼きそばとかたこ焼きとかってほんとおいしく感じるな」

 

「同感、なんでこんなにおいしんだろう?あ...」

 

食べ歩きを楽しみながら金魚すくいやら型抜きやらの屋台もあるなと色々と見ていると、ふと簪さんが足を止める。

 

「簪さん?どうしたの?」

 

「あの射的の景品のフィギュア...人気過ぎて直ぐに予約が埋まって手に入らなかった限定品...」

 

簪さんの視線の先を見ると射的の屋台の景品が置いてある棚にかなり大きめなロボットのフィギュアの箱があり、『特賞』の紙が貼られていた。

 

「あれは...『Blue machine soldiers』の主人公機の限定フィギュアか...元ネタの人間としてはなんとも言えない感情になるな...」

 

『Blue machine soldiers』は読んで字のごとく蒼機兵を元にしたロボットアニメであり戦争とは何かを視聴者に問いてくるこの世界ではガンダム的ポジションのアニメの1つだ。

 

「どうしても欲しかった...!今この機会を逃す手は無い...!」

 

そう言って簪さんは真っ直ぐに射的の屋台へと向かった。

 

「一夏!他の皆と先行っててくれ!俺は簪さんの方に行くから!」

 

「おーう!分かったぜ!」

 

一夏達を先に行かせて俺は簪さんを追いかけようと振り返るとその時には既に簪さんは射的の屋台でコルク銃を構えていた。

 

「当てる...」

 

俺が横に来ても気付かない程の集中力で簪さんが特賞の的を狙っている。

 

「っ!」

 

そして簪さんの撃った弾は見事に特賞の的の上部、一番倒れやすいところに当たった、だが特賞の的は微動だにしなかった。

 

「くっ...」

 

そのまま簪さんは同じように撃ち続けて全弾完璧に当てていたがそれでも的は全く動かなかった。

 

「(おそらくあの的はあのコルク銃で普通に撃ったんじゃ絶対に倒れない重さになってるんだろうな...)」

 

「全然倒せない...どうして」

 

簪さんが3回目の挑戦も失敗した所で俺は声をかける。もっと早くに声をかけるべきだとも思ったがあまりの集中力に声をかけられなかったの内緒だ。

 

「ちょっと俺もやってみていいかな?おっちゃん!2回分の料金出すから弾一度に貰える?」

 

「海?」

 

「おう、いいぞ!でも特賞はそうそう取れないぞ?」

 

「分かってるって!じゃあ遠慮なく」

 

俺は銃を持って1発弾を込めた後更にもう1発押し込んで装填し構えて特賞の的に向かって撃った。これは小学生の頃俺が良くやっていたテクニックで、射的の屋台の銃はバネで弾を押し出して発射するものだが、1発目を押し込んで少し隙間を空けて更に2発目を詰め込む事で1発目を犠牲にして2発目の威力を空気圧と1発目の勢いで上げるという裏技のようなものだ。銃に負担がかかるから基本的に禁止されてる技で今回も2発目はこっそり詰め込んでいたりする。

 

「揺れた!?」

 

「これならいけるか...じゃあガンガン行きますか!」

 

俺は的が揺れることを確認すると残りの弾を全て左手に持って2発込めと早撃ちの併用を開始する。

 

「よっ...と!」

 

「海...凄い!」

 

引き金を引いた瞬間に左手で2発そろえて持っていた弾を込めて直ぐに銃のレバーを引き、直ぐに次弾を発射する。それを5回繰り返すと弾が当たるたびに大きく揺れていた特賞の的が観念したようにパタリと倒れた。

 

「こりゃ参った!見事な早撃ちだ!もってけ兄ちゃん!」

 

そう言って屋台のおっちゃんは俺にフィギュアを大きな袋に入れて渡してくる。

 

「はい、簪さん、欲しかったんでしょ?これ」

 

俺はそのフィギュアを簪さんに渡した。

 

「え!?良いの?」

 

「うん、簪さんにあげるつもりで取ったし」

 

「ありがとう...!」

 

簪さんは大事そうにフィギュアを抱えながら満面の笑みを浮かべていた。これなら取った甲斐もあったかな。

 

「さて、一夏達に先行ってもらってるから合流しよう、行こうか簪さん」

 

「うん...!」

 

———————————————————————

 

射的でフィギュアを取った後、一夏達に合流してそのまま俺達は神楽舞を見ることにした。今年はなんと箒が踊るということで元々皆で見ようということになっていた。

 

そして神楽舞が始まると皆驚き半分、感動半分といった表情で神楽舞を踊る箒に釘付けになっていた。途中でチラッと一夏の方を見たが何やら少し赤い顔で箒の事を見ていたのでこの唐変木も少しは成長したのだと思おう。

 

「箒...凄い綺麗...」

 

「そうだなぁ...俺もびっくりだ...」

 

あっという間に神楽舞は終了して後は花火を残すのみとなった。

 

「お前は箒を待つんだろ?一夏」

 

「おうなんか皆『今回は箒に譲る』って言ってどっかいっちまって」

 

「そうか、花火を見るなら第1スポット譲ってやる」

 

第1スポットというのは俺と一夏が小学生の頃駆け回って見つけた花火が最高によく見えるポイントである。

 

「いいのか?」

 

「ああ、俺は第2スポットに行くから」

 

ちなみに第2スポットもある、第1スポットより行くのが少し大変だが同じく花火が最高によく見える。

 

「んじゃ、ちゃんとやれよ」

 

「?あ、ああ」

 

「という訳で簪さん着いてきて」

 

「わ、分かった」

 

俺は一夏に別れを告げて、箒に色々と成功を祈りつつ簪さんとその場を離れた。

 

「これから花火が良く見える場所にいくけどちょっとだけ行くのが大変なんだ、大丈夫かな?面倒くさいなら適当な場所で見るけど」

 

「ううん大丈夫」

 

「分かった、じゃあ改めて着いてきて」

 

簪さんからOKも出たので俺は神社の本堂の横にある小道に入る。一応道にはなってるから簪さんの浴衣が引っ掛かるということも無いだろう。

 

「凄いところだね...ちょっと怖い」

 

「それでも苦労する甲斐はあるよ...よし到着」

 

小道に入ってからほんの少し...2分ほど歩いたところでひと際大きな木の根元に着く。

 

「そしてこれを...よっと」

 

俺はその辺の草むらに隠してある脚立を引っ張り出して木に立てかける。

 

「あそこに伸びてる太い枝が人2人ぐらいなら余裕で支えられて花火が良く見えるんだ。簪さんは浴衣だから登るの大変だけど見える景色は保証するよ」

 

「登るのは大丈夫だけど...脚立はこの格好じゃ登れそうにない...」

 

「うえっ!?ミスったなぁ...もう少しで花火始まっちゃいそうだし...じゃあ俺が簪さんを背負って上まで一緒に運ぶよ、それでどう?」

 

「えっ!?」

 

「嫌だった?」

 

「嫌じゃない...嫌じゃないけど大丈夫?」

 

「そんなやわな鍛え方してないよ、安心して任せて!ほら!」

 

俺は簪さんに背を向けてしゃがんで待つ。

 

「じゃ...じゃあ、お願いします...」

 

そう言って簪さんは俺の背中にもたれかかって腕を首に回す。

 

「よし、じゃあ登るからしっかり捕まっててね?」

 

「う、うん///」

 

簪さんをしっかりと支えながら俺は脚立を軽々と登っていく。極端に高いところに登る訳でも無いのであっという間に上までついた。

 

「到着!簪さん気を付けて降りてね」

 

「うん...っ!」

 

簪さんが下りて安全なのを確認してから俺は立っている枝の上に腰掛ける。

 

「簪さんも座って大丈夫だよ、ここの景色は中々でしょ?」

 

「びっくりした...!こんなによく見える場所があるなんて」

 

「小学生の頃一夏や他の奴らと見つけた場所なんだ、お、花火始まったよ簪さん」

 

ヒュ~~~~...ドパァン

 

撃ちあがる音が聞こえた方を向けば夜空に大きな花が開いて辺りを綺麗に照らし出した。

 

「綺麗...」

 

「気に入ってもらえたならよかったよ」

 

簪さんは目の前の光景に目を奪われていた。これだけしっかり見てもらえるなら連れてきた甲斐があったというものだ。

 

「...空に上がって綺麗に光った後は消える...か...」

 

ふと自分も花火のように消えていくのだろうかと思って呟いた言葉は花火が開く音にかき消されて夜空に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「MSの供給数有人機、無人機合わせて5000機を突破...あと少しで始まるな、我らの戦争が...」

 

「僕らの機体もあと少しで完成だよ、兄さん」

 

そう話す二人の男の前には赤と黒のISが鎮座しているのだった...




というわけで今回は夏祭りを楽しむ日常回でした。

オリ主達が思い出を作っている間に着々と進むMSの供給...

それでは次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
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学園祭編
オリジナルキャラクター・機体設定集2


臨海学校編までの機体・オリキャラ設定

 

〇武藤 海

 

身長:176cm

 

体重:68kg

 

年齢:15歳→16歳

 

趣味:ガンプラ(ISの世界にガンダムが無いのでもう出来ない)、アニメ・特撮鑑賞、料理

 

誕生日:7月22日

 

専用機:ガンダムエクスエクシア→ダブルオーガンライザー→???

 

    夢幻

 

備考

臨海学校で束と千冬に自分の秘密を全て打ち明けた本作の主人公。

アリー・アル・サーシェスとの戦いにより、クラス代表戦で負った疑似太陽炉のGN粒子による細胞異常が更に進行しており、束に打ってもらった薬でなんとか1年持つか持たないかレベルの重症になっている。

 

福音事件の際に夢幻と深く繋がったことによりISのコア人格との会話が可能になっているが、現時点ではダブルオーガンライザーのコア人格であるユメとしか会話をしていない。

 

Xラウンダーとニュータイプとしての能力は更に強力なものとなり、戦闘ではほぼ未来予知に近いレベルの動きが出来るようになっているが、真のイノベーターとしての能力は未だに予兆が無く、既に諦めている。

 

また、束より細胞異常の治療の準備が終わるまで無理をしないように言われているが、自分の命を捨ててでも敵勢力を根絶しようとしているため、無意識に焦りが生じて戦い方が少し攻撃的になっている。

 

束、簪が自分に抱いている思いについても分かっていて答えないようにしている。

 

〇ユメ

 

見た目:ガンダムOOのフェルトを黒髪にして少し幼くしたような感じ

 

備考

福音事件の際に海と深く繋がったことによって海との会話が可能になった夢幻のコア人格。

 

海の身体の事や覚悟を知ったうえで最後まで付き合うとしながらも実は秘密裏に束に海の体調のデータを送信したり、コアネットワークを使って治療法を模索したりしてなんとか海を生かそうとしている。

 

ダブルオーガンライザーに第二形態移行後はガンライザーの制御及び戦闘中の海のサポートもしておりエクスエクシアとの融合も相まって凄まじい能力を発揮する。

 

機体紹介

 

機体名:ダブルオーガンライザー

 

型式番号:GN-0000DB+GNR-010/DB

 

使用者:武藤 海

 

待機形態:青と白の縁の眼鏡型端末

 

武装:GNビームピストルⅡ×2

GNソードⅡ×2

GNビームサーベル×2

GNツインドッズキャノン×2

GNビームソード×2

GNマイクロミサイル

 

詳細:夢幻が第二形態移行・エクスエクシアと融合することで生まれた機体。

 

本体である【OOガンダム TypeDB】とその支援機である【ガンライザー】によって構成されている。元々は海が転生する前に頭の中に構想だけで存在していた機体であり、その性能は現存する全てのISと比較しても隔絶されたものとなっている。

 

【OOガンダム TypeDB】はOOガンダムをベースにケルディムガンダムサーガのGNビームピストルⅡを大腿部に装備し、射撃向けの調整が施され、【ガンライザー】はオーライザーをベースにガンダムAGE-2ダブルバレットのストライダー形態を参考にした装備になっている。

 

名前こそダブルオーザンライザーと対をなすようになっているが合体時はダブルオーライザー同様にサイドバインダーを両肩に装着することでガンダムAGE-2ダブルバレットと同様の形式でGNツインドッズキャノンが使用できるようになっている。

 

戦闘中に自由に分離合体が可能であり、その際にはコア人格であるユメがガンライザーの制御を行う。トランザム及びFXバーストが可能であり、両システムを同時に使用する『TRANS-AM-FX』では機体が真紅に染まり、通常時の5倍の性能を発揮する。

 

また、サテライトシステムとフラッシュシステムはオミットされたものの、夢幻の兵装製造システムである夢現を取り込み発展させた『AGEシステム』が使用可能になっており、戦闘中の弾薬や装備の生成や戦闘以外でもツールの作成が可能になるなど1機のISであらゆる状況に対処可能である

 

ちなみにライザーシステムも搭載しておりライザーソード等の使用も可能だが、原作のダブルオーライザー同様にダブルオーガンライザーのツインドライヴが生み出すGN粒子が、操縦者の遺伝子にも影響を及ぼし、人間が遺伝子レベルで眠らせている能力の発現を促す力を持っているかどうかは不明。

 

機体名:アルケーガンダム(ヤークトパッケージ装備)

 

型式番号:GNW-20000/J

 

使用者:アリー・アル・サーシェス

 

待機形態:不明

 

武装:GNバスターソード

GNファング

GNビームサーベル

GNランチャー

GNミサイル

 

詳細:ISの世界に来たリボンズ・アルマークらイノベイター勢力が開発したISサイズまでダウンサイジングされたアルケーガンダム。

 

ISの技術を使用することで本来出撃時に装備し戦闘中はパージすることが出来なかったヤークトアルケーの装備をパッケージ化することで戦闘中に自由に装備を展開・切り替えすることが可能になり戦術の幅が大きく広がった。

 

また、拡張領域内に大量のGNファングを格納しており、原形のアルケーガンダムを大きく上回る量のファングを展開することが可能になっている。

 

TRANS-AMも使用可能で福音事件の際には海のエクスエクシアのTRANS-AMに対抗する形で発動し海を驚かせた。ちなみにTRANS-AM使用後も拡張領域に格納してある予備の疑似太陽炉を使用することで性能を落とさずに戦闘を継続、及び再度TRANS-AMを使用可能になるなどMSの時と比べて継戦能力も大きく向上している。



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44話 未熟な一夏と生徒会長

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回から学園祭編に入っていきます。
学園祭編から物語を大きく動かしていければと思っています。

楽しんでいただければ幸いです。


---IS学園 第2アリーナ

 

夏休みも終わりIS学園も2学期が始まった。始業式の日からいきなりISの訓練があったので俺はISスーツに着替えて第2アリーナに来ていた。

 

「一夏はまだ来てないか...まあ理由は分かってるけど...」

 

授業開始時間になっても一夏が来ていないので織斑先生からの出席簿が確定したわけだが一夏が遅れた理由は...

 

『2学期から私も一夏君に接触しようと思うからよろしく♪ byたっちゃん』

 

とのことだ。まあ俺の訓練メニューで一夏は基礎能力は入学当初と比べてかなり伸びているが、技術的なものはまだまだ甘いので現国家代表の楯無先輩に見てもらえるなら更に成長できるだろう。

俺が教えてもいいが俺の戦い方は特殊過ぎるから楯無先輩の方が向いているだろう。

 

「す、すいません...」

 

今しがた遅れてやってきた一夏を織斑先生が睨みつける。

 

「ほう、遅刻するとはいい度胸だな」

 

「いや、その、あのですね。見知ぬ女生徒が──」

 

「そうか。お前は初対面の女子との会話を優先して授業に遅れたのか」

 

「ち、違います...」

 

有無を言わさない織斑先生に一夏は出席簿を警戒して1歩後ずさる。

 

織斑先生は溜息を吐き──

 

「織斑、話はそこまでか?」

 

「え?」

 

「デュノア。高速切替(ラピッド・スイッチ)の実演をしろ」

 

実質的な処刑宣言...

一夏の顔から血の気が引くと同時に目が据わっているシャルロットさんが前に出る。

 

「海、データは取らないからあの大きいライフル貸して?」

 

「えっ?わ、分かった」

 

急に話しかけられた俺は部分展開でGNツインドッズキャノンを2つ取り出してシャルロットさんに使用許可を出して渡してしまった。ちなみにGNツインドッズキャノンは本体にGN粒子を貯蔵することが出来るのでそれだけでも10発程度なら発射出来るようになっている。

 

「あ、あのシャルロット?」

 

「何かな?織斑くん(・・・・)

 

一瞬一夏が全てを諦めたような表情を見せた後、シャルロットさんがラファールを展開した3秒後、辺りには一夏の絶叫が響き渡ったのだった。

 

———————————————————————

 

---IS学園 廊下

 

「それで、あれは誰だったんだ?」

 

今日の授業も全部終わった放課後、俺と一夏は廊下を歩いていると一夏が俺に話を振ってきた。

 

「水色の髪の2年生だろ?」

 

「そうそう!なんで分かったんだ?まだ何も話してないのに」

 

「俺達の身近に似たような人がいるだろ?」

 

「似たような?ああ、確かに言われてみれば簪さんに似てたような気が...」

 

「そこまでいけば答えだよ、一夏が会った人の名前は──」

 

俺が言おうとした時、目の前から歩いてくる人影が俺達の前で止まった。

 

「──更識楯無。この学園の生徒会長よ」

 

自分達の目の前にいる水色の髪の少女──もとい楯無先輩を見た一夏はぽかんと口を開いている。噂をすればなんとやらだ。

 

楯無先輩は笑顔で一夏に近付き、観察するように彼を見ていた。

 

「ふむふむ、成程ね〜。休み中もちゃんと鍛錬してたようね」

 

「分かるものなんですか?」

 

「当然よ、だって私は──」

 

「この学園で最強だから、ってな」

 

「んもう!なんで大事な決め台詞取っちゃうのよ海くん!」

 

「なんとなくですね」

 

本当になんとなく悪戯心が掻き立てられたからセリフを取っただけだ。未だに一夏はぽかんとしてるが...

 

「覚悟っ!!!」

 

不意に大きな声と共に楯無先輩の背後に道着を着た女生徒が襲い掛かる。

 

が、楯無先輩はそれをほとんど動くこと無く受け流し、いなして、最後には転ばせて無力化する。

 

その直後に竹刀を持った別の女生徒がまた楯無先輩に襲い掛かる。

 

「覚えておくと良いわ。一夏くん」

 

「ちょっ!?危ない───」

 

襲い掛かってくる女生徒には目もくれず、楯無先輩は一夏に告げる。

 

「IS学園の生徒会長はね、ある1つのことを意味するのよ」

 

振り下ろされる竹刀をスレスレで躱し女生徒の懐に入り込んだ次の瞬間には楯無先輩の手に竹刀が握られ、女生徒は床に転がっていた。

 

「まあそうゆうことだよ一夏」

 

「どうゆうことなんだよ...」

 

楯無先輩はドヤ顔で扇子を開いて書かれている『最強』の文字を見せてくる。一夏の方を見ると頭の上に?マークが見えそうな程訳が分からなそうな表情をしていた。

 

「えっと...それでその生徒会長が俺に何の用ですか?」

 

「固いな〜。楯無さんでも良いわよ?たっちゃんでも可♪」

 

一夏に対しおちゃらけた様子で接する楯無先輩。相変わらずの人たらしぶりだ。

 

「率直に言うとね。君のコーチをしようと思ってきたの」

 

「悪いですけど、コーチなら間に合ってます。IS操縦においては最強の人間が俺の真横にいるので───どうして突然そんなことを?」

 

「そんなの簡単だよ。君が弱いから」

 

ムッと一夏の顔が不満に染まる。まあそりゃそうだな。ISじゃなくたってそう言われれば誰だってムッとする。

でもまだ基礎作りしかさせてないとはいえ俺の教え方が悪いみたいでちょっと癪に障るが...まあここは静観だ。

 

「それなりに弱くも、ないつもりです」

 

「弱いよ。滅茶苦茶弱い。海くん...『蒼機兵』に教わりながら他の専用機持ちに負け越してるようじゃ全然ダメ、何よりその海くんの足を引っ張ってるじゃない」

 

分かり切った挑発だが一夏は流すことは出来ないだろう、男として引けないのもあるし、何よりも...

 

「お断りします、確かに俺は海の足を引っ張ってるのかもしれないけど...約束したんです。」

 

守りたいものが何なのかそれを見つけて俺に教えるという約束が俺と一夏にはある。

 

「未熟なのに頑固ね。弱いままでいいのかしら?」

 

「未熟なのは認めます。けど、だからって会ったばかりの人に弱いって言われて『はいそうです』って言えるほど素直じゃないんですよ俺は」

 

一夏は自分の弱さは自覚しているのだろう。タッグトーナメントや臨海学校を通じて痛感している筈だ。一夏の複雑な思いがこもった楯無先輩は少し表情を柔らかくした後、扇子で口元を隠しながら提案をしていた。

 

「ふふ、それなら良いわ。勝負しましょう」

 

「勝負?」

 

「そ。互いが勝った方の言う事を聞く。簡単で良いでしょう?」

 

楯無先輩が扇子を開くと『必勝』と書かれていた。

 

一夏の表情は険しいものになる。多分舐められていると理解したのだろう。

 

「分かりました。それでいいです」

 

こうして一夏は楯無先輩との勝負に乗った。

 

———————————————————————

 

一夏と楯無先輩、そして何故かいる俺の3人は柔道場に来ていた。

 

楯無先輩と一夏は柔道着に着替えて向かい合っている。俺は端っこで見学だ。

 

「ルールは簡単、一度でも私を床に倒せたら君の勝ち。逆に君が続行不能になったら私の勝ち──それでいいかな?」

 

「それは──」

 

楯無先輩の言葉に一夏は困惑した表情を見せる。

 

「大丈夫。私が勝つから」

 

そう楯無先輩に言われた一夏はスイッチが切り替わったのか先ほどまでとは表情が変わり引き締まる。

 

そして勝負が始まり一夏が距離を詰めるが──

 

次の瞬間には一夏が投げられていた。

 

「どうする?まだ続ける?」

 

「当たり前ですっ!」

 

一夏は直ぐに起き上がり先ほどとは違った攻め方を試みる...

 

 

そうして一夏が楯無先輩に投げられ、倒され続けること十数分。

 

俺の目の前にはふらふらで何とか立っている一夏と始めたころと全く様子の変わらない楯無先輩が映っていた。

 

「どう?降参する気になった?」

 

「まだまだ!」

 

「うん。頑張る男の子は好きよ?」

 

ふらつく身体を押して前に出る一夏が見せたのは火事場の馬鹿力のようなものから繰り出される渾身の踏み込みだった。

 

「!」

 

勝負が始まってから初めて一夏が楯無先輩に触れた。そしてそのまま投げようと一夏が力を込めた瞬間に...

 

「あら?」

 

「ぶっ!?」

 

楯無先輩の道着がはだけて胸の谷間が、そして下着が少し見えてしまう。

 

「うわあぁっ!?」

 

「一夏くんのエッチ!」

 

わざとらしい悲鳴をあげながら楯無先輩はうずくまり、一夏は飛び退いたが、楯無先輩のあれは演技だろう。こんな状況でニュータイプ能力を使って人の感情を察するのは無駄遣いな気もするが...

 

「ねぇ、一夏くん」

 

一夏にさっと近づきながら楯無先輩が口を開く。

 

「──おねーさんの下着姿は高いわよ?」

 

その次の瞬間、一夏の身体は悲鳴とともには宙を舞ったのだった。

 

 

「さてと...」

 

楯無先輩が何故か俺の方を見てくる。

 

「次は海くんね」

 

「俺もですか?やる必要あります?」

 

「もちろんあるわよ、海くんには簪ちゃんの事について根掘り葉掘り聞く必要があるもの」

 

「はい?」

 

もしかしてまた発動しやがったか?このシスコン...

 

「最近海くんの事を見る簪ちゃんの視線に熱がこもってたり、海くんと話すときの簪ちゃんの表情が色っぽい事について聞かせてもらうわ!」

 

「やっぱりかよ!このシスコン!仲直りしたんだから直接聞けや!」

 

思わず敬語が崩れるが...

 

「問答無用!」

 

この後、俺はほぼ本気で襲い掛かってくる楯無先輩をXラウンダーとニュータイプ能力を駆使しながらなんとかいなして黙らせるのに2時間かかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楯無さん俺とやってる時は滅茶苦茶手加減してたんだな...とゆうか海も楯無さんもなんつー動きだよ...」

 

俺と楯無先輩が戦っている間、完全に蚊帳の外になっていた一夏はその壮絶な戦いに唖然としていたのだった。

 




シスコンをさばくのに能力をフル活用するオリ主でした。

そして原作通り始まる生徒会長による一夏のコーチング。

今後も楽しみにしていただければと思います。
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45話 夏に付く楯と海を思う簪

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回は楯無参加後の訓練、更に曇る簪、学園祭について...
の三本でお送りしていきます。

楽しんでいただければ幸いです。


---IS学園 第3アリーナ

 

柔道場でのやり取りの後、俺達はそのままアリーナに行って操縦訓練を始めたのだが...

 

「おい海!あれはいったいどうゆうことだ!一夏にはお前が訓練を付けているんじゃなかったのか!?」

 

「そうですわ!それにあれは生徒会長ではありませんか!いったいどうゆうことですの簪さん!?」

 

いつもは俺が一夏のコーチをしていたのに今日突然一夏とともに生徒会長が現れ一夏のコーチをする事になったと告げられ、訳が分からないと俺と簪さんに箒達が詰め寄ってくる。

 

「た、確か織斑君が勝負に負けたからコーチしてもらう事になったって...」

 

「そ、それは分かっていますわ!問題はそちらではなく───」

 

「皆落ち着けって..」

 

俺は簪さんに迫るセシリアさんや俺の目の前にいる箒を宥めようとするが...

 

「簪よ!あの人はお前の姉なのだろう?これは一体どういう事なのだ!?」

 

「コーチングするのは分かるけどあんなにくっつくのはおかしいよ!」

 

「一夏もなんか鼻の下伸ばしてるしどうゆうことよ!」

 

更に3人が俺達に迫ってくる。

 

楯無先輩が一夏にえらくくっついたりそれとなくきわどい体勢をしながらからかったりしているのだ。練習内容こそしっかりしているし説明も分かりやすく効率もいいが...

 

訓練内容云々ではなく楯無先輩の一夏をからかう行動に気が気でないようだ。

 

「お前らほんと一回落ち着けって、簪さん怯えちゃってるだろ」

 

「海...!」

 

簪さんが縮こまりながら俺の後ろに移動する。なんだか小動物みたいで可愛い...

 

箒達はハッとなると一夏と楯無先輩の方を向いて様子を見始める。

 

「たしかに少し取り乱し過ぎたか...。だがいささか距離が近すぎるぞ...」

 

「楯無先輩っていっつもあんな感じだから慣れた方がいいぞ」

 

「精神的に休まらないね、それ...」

 

シャルロットさんが苦笑いを浮かべ、他のメンバーも不安そうな表情をしている。

 

「えっと...お姉ちゃんが迷惑かけてごめんね?」

 

簪さんが楯無先輩に代わって謝罪をする。ちなみに夏休みの間に簪さんは楯無先輩とサシで話をして仲直り出来たそうだ。よかったよかった。

 

「別にそういう訳ではありませんのよ?何と言うかその────」

 

「簪、実際どうなんだ?お前の姉は嫁のことが好きなのか?」

 

申し訳なさそうにする簪にセシリアは慌てて弁明する。

そんな中思っていた事をラウラはストレートに疑問にする。その瞬間一同の視線が簪に集まる。

 

「お姉ちゃんからそういう話は聞かないけど、見た感じだと純粋にリアクションを楽しんでるみたい」

 

「そ、そうかならいいのだが...それにしても海、お前はいいのか?一夏に訓練を付けていたのは元々海だろう?」

 

箒が俺にふと思ったのだろう疑問を投げつけてくる。まあそれも最もだろう。

 

「ああ、体力やら筋力やら基礎的な部分から俺が鍛えてやってたからな。でももう基礎トレーニングは一夏1人でも出来る。それに俺はISも戦い方も普通のISと比べるとかなり特殊だろ?」

 

「それは...そうだな...」

 

「だから操縦技術的な部分は楯無先輩に任せることにしたんだ。俺は俺でやることあるしな」

 

「成る程、そうゆうことでしたのね」

 

俺の返答に箒やセシリアさん達は納得したように頷いた。

 

「さて...みんなが納得した所で簪さん、ちょっとこれ見てくれない?」

 

そう言って簪さんに今日の柔道場で襲われた時の録画データを送信する。

 

「これは...はぁ...お姉ちゃん...」

 

「簪さんからが一番ダメージ大きそうだからちょっとお灸を据えといてくれるとありがたいんだけど」

 

「ん...分かった...私に任せて...」

 

「助かるよ、ありがとう簪さん」

 

操縦訓練が終わった後、楯無先輩を恐ろしく号泣させたと簪さんから部屋に戻った後話をされたので俺は非常にすっきりした。

 

———————————————————————

 

---IS学園 学生寮 1035室

 

ちょっとしたトラブルもあったが今日も無事に操縦訓練を終えて俺は簪さんと飲み物を飲みながら反省会をしていた。

 

「簪さんは山嵐さえ使えればほぼ必勝パターンだからそこに持っていくまでに...どうしたの?」

 

ふと簪さんの方を見ると少し俯いて物憂げな表情をしていたので声をかける。

 

「えっ?あ、ううん何でもないよ...ごめんね」

 

今日の楯無先輩の事があって疲れたのだろうか?

 

「今日は楯無先輩が来たりしてたしいつもと色々と違ったから疲れたんじゃないかな?反省会はここまでにして寝ようか」

 

「うん...そうするね」

 

「じゃあ先にベッドに入ってて、俺は一杯水を飲んでから寝るから、明かりは俺が消しとくね」

 

「分かった、おやすみ...」

 

「おやすみ...簪さん」

 

簪さんがベッドに入ったのを確認して俺は明かりを消し、洗面所に向かう。

 

洗面台の鏡に映った自分を見ていると...

 

「ゴホッゴホッ...」

 

急に胸が苦しくなりせき込むと口を押さえた手に以前より多い血が付いていた。

 

直ぐに手を洗ってコップに水を汲み一気に飲み干す。

 

「はぁ...はぁ...束さんの薬ではあくまでも1年持たないのがギリギリ1年持つようになっただけ...何とか隠しきらないと...」

 

俺は鏡に手を突きながら息を整えて洗面台から血の痕跡が残らないように処理をする。

 

その時、後ろから俺の事を見ている視線に気づくことは出来なかった...

 

———————————————————————

 

楯無先輩が一夏の訓練を見るようになった次の日、突然体育館に集められたかと思えば壇上に上がった楯無先輩から学園祭の説明がされた。

 

それ自体は何ら変わったものではなく俺も一夏もも楽しみだと思いながら聞いていた。

 

『以上の通り、今年の学園祭は投票制にて1番を決めるものにします。売上は別枠で例年通りにランキングするから、そっちも頑張ってね。ちなみに投票制の方で1位になった部活には───織斑一夏を生徒会権限で強制的に入部させる事を約束するわ』

 

突然投下された爆弾。

 

俺の横にいる一夏が呆気に取られて口を半開きにしてる。

 

そして俺はそんな一夏を見て笑いをこらえるのに必死だ。ちなみに俺はどうしてこうなっているのか理由を全て知っているのだが――

 

 

事の発端は全世界にMSの発表がされた後、俺が生徒会室に行ったときまで遡る。

 

「海くん、貴方生徒会に入らないかしら?」

 

「それはまた突然どうして?」

 

MSに関する会話が終わった後、楯無先輩は俺を生徒会に勧誘してきていたのだ。

 

「だって貴方部活に入ってないわよね?この学園の校則では生徒は必ず何かしらの部活動をしなければならないのよ」

 

「俺、部活入ってますよ?」

 

「え?」

 

「模型部に入ってます、一夏の訓練やら企業代表の仕事やらで幽霊部員一歩手前ですし、模型部自体かなりひっそりと活動してましたから気付かなかったかもですけど...」

 

「嘘...」

 

別に隠している訳でも無かったが、俺は模型部に所属している。といっても操縦訓練や、企業代表としての仕事という名の束さんのお願いを優先しているため、月に何度か顔を出しつつ隙間時間に作った作品を部室に展示する、という形式をとってもらってはいるが...

 

「嘘ではないですよお嬢様、武藤君は確かに模型部に所属しています」

 

「そ、それでも生徒会は兼任も可能だからいつでも待ってるわ!じゃあせめて一夏くんを...

 

「分かりました。まあ協力出来そうならしますから楯無さんも頑張ってください。

ご愁傷さまだ一夏...

 

 

というやり取りがあったのだ。一夏は部活動には入っていなかったし、校則の事も忘れていただろうから見事に策力に嵌ったのだろう。そして生徒会に取り込まれるところまでは見えている。

 

賞品として自身の名前がいきなり挙がった一夏は理解が及ばずぽかんと口を半開きにしたまま動けないでいるようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで海くんが作っている模型ってどんな物なのかしら?」

 

「現物が見たければ模型部の部室にありますけどとりあえずこんな感じです」

 

俺は携帯で撮った写真を楯無先輩に見せる。

 

「え!?な、なにこれ!?学生が作るレベルのものじゃないわよ!?」

 

「そうですかね?まあ趣味が高じてってやつです。」




恋は盲目...一夏ラヴァーズはどうするのか?

そしてとうとう見られてしまった海は...

今後も楽しみにしていただければと思います。
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46話 学園祭と遠い海

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回は学園祭の出し物とダブルオーガンライザーの性能、日常の訓練
の3本です。

楽しんでいただければ幸いです。


---1年1組教室

 

全校集会の後、教室に戻るとそのままクラスの出し物を決める事になった。

 

織斑先生はクラス代表である一夏にその進行を放り投げると、職員室へ戻ってしまった。

 

生徒間で決めるものである為、別段おかしくもない。

 

山田先生が見守る中、一夏は前に出て案を募った。

 

そうしていくつか案が出揃ったのだが───

 

「ウチのクラスの出し物の件ですが────全部却下!!」

 

「「「えええー!」」」

 

「ダメに決まってるだろ!こんなの!」

 

声を荒らげながら、一夏は電子黒板を指差す。

 

そこに書かれていたのは、一部の欲望に忠実なものばかりであった。

 

『男子2人のホストクラブ』

 

『男子2人とツイスター』

 

『男子2人とポッキーゲーム』

 

『男子2人と王様ゲーム』

 

男子が2人いるというアドバンテージを活かす気満々なのはいいが...

 

「ハハッ...なんかもう笑えて来る...はぁ...」

 

「おい、海!ため息ついてる場合かよ!何とか反論してくれ!」

 

「今考えてる...」

 

俺がそういうと一夏は山田先生の方へと顔を向けた。

 

「山田先生もこんなの駄目だと思いますよね!?」

 

「えっ?私は3番のポッキーゲームとかが良いかなぁなんて」

 

「え...」

 

「あれっ!?駄目なんですか?」

 

何故といった感じで困惑の表情を露わにする山田先生。

 

そういえば山田先生は女子校出身だったのを思い出した、何処かズレている。

 

溜息をつきながら、一夏はクラスメイトの方へ向き直る。

 

「大体誰が喜ぶんだよ!こんなもん!!」

 

「私は喜ぶけどなー。断言する」

 

「そーだそーだ!女子を喜ばせる義務を全うせよー」

 

「はぁ!?」

 

楽しげに反論する女子達に一夏はますます困惑する。

 

『織斑一夏並びに武藤海は1組の共有財産である──!』

 

そうだそうだー!と女子達は盛り上がる。

一夏の苦言など聞く耳持たず1組女子の盛り上がりは最高潮にまで達しようとしている。

 

ボルテージが最高潮まで上がりきる直前に俺の頭にとある疑問が浮かんだ。

 

「ところでこれ、俺と一夏はいつ学園祭まわれるんだ?後、さばける客の人数に限界あるだろ?」

 

「確かに、言われてみればその通りですね」

 

「「「え〜、そんなぁ...」」」

 

「ナイスだ!助かったぜ海!」

 

ホッと胸を撫で下ろす一夏。

 

山田先生の同意により、女子達の希望は潰えた。ギリギリセーフである。

 

現実的な話になると問題だらけの案であり、半分目を背けていた女子達も改めてそれを直視し、机に突っ伏した。

 

「じゃあ他の意見は無いか?なるべく普通ので頼む!」

 

「普通というと?」

 

問いかけるクラスメイト達。

 

言うからには自身も何か案を出さねばと一夏は顎に手を置き、一瞬考える。

 

「喫茶店とか?」

 

「普通過ぎるー!」

 

「じゃあお化け屋敷とか?」

 

「IS学園と合わなくない?」

 

普通過ぎる、会わないと否定され一夏が溜息をつく。

 

「いいだろうか?」

 

クラスの視線が一斉に声のもとへ向けられる。

手を挙げ、意見を述べようとしていたのはラウラであった。

 

「メイド喫茶はどうだろうか」

 

「は?」

 

「これは珍しい...」

 

意外な人物からの意外な提案に俺と一夏はおもわずリアクションしてしまう。

 

「嫁の言っていた喫茶店というのは悪くない。経費の回収も可能だからな。ただインパクトに欠けると思って一捻り加えさせてもらった」

 

「織斑君と武藤君はどうするのー?」

 

「男子2人は執事の格好をして貰うなんてどうかな?2人とも料理も上手だし、厨房もやって貰うとかどう?」

 

「いいねそれ!」「賛成!」

 

シャルロットさんの案にクラスの皆が目を輝かせる。

 

一度決まってしまえば後は早いもので服の調達や料理のメニュー等の話も、トントン拍子に進む。

皆積極的に役割を申し出る事もあり、かなり細部までの話が纏まった。

 

『御奉仕喫茶』──1組の出し物はそれに決まった。

 

一夏はそうしてまとめられた案を紙に纏めて職員室にいる織斑先生に出しに行った。

 

それにしてもこんなメイド喫茶みたいな案は普通は俺達男子が出して女子に否定されるみたいなものではないのだろうか?

 

「まあ元々女子高のIS学園でそんなことを気にするだけ無駄か...」

 

「どうしたの?むっきー」

 

「いや、独り言だから気にしないで」

 

「分かったー」

 

———————————————————————

 

---IS学園 第1アリーナ

 

『武藤、準備はいいか?』

 

「いつでも大丈夫です」

 

ダブルオーガンライザーを纏い俺は貸し切り状態のアリーナ上空にいた。

 

織斑先生が言うには学園側としてISのスペックデータは取る必要があるとのことで俺はスペックデータぐらいならと承諾して今に至る。

 

『では開始しろ、まずは機動性のデータからだ』

 

「分かりました」

 

俺はスラスターを蒸かしアリーナを飛び回る。

 

バレルロールや急制動、瞬時加速を織り交ぜ複雑なマニューバをこなしていく。

 

『これは...凄いですね...あんな複雑な軌道をしているのにスラスター音がほとんどしていませんし、武藤君もさも当たり前といった感じで動いています』

 

『スラスター音に関しては副次的なものだが武藤のISの特徴の1つだ、そして簡単にやっているのはあいつの努力の結果だろう、武藤!次は武装データの確認だ、ターゲットドローンを射出する。各武装を使用して攻撃してくれ』

 

「了解です」

 

俺は指示通りにGNビームピストルⅡから順番に武装を使い的確にドローンを攻撃していく、GNツインドッズキャノン、GNマイクロミサイル、GNソードⅡライフルモードまで撃った後は格闘用の武装を使用してドローンを切り裂き、最後にGNビームソードで10機のドローンを纏めて切り裂いたところでアリーナの地面に着地する。

 

「これで大丈夫でしょうか?一応搭載されてる全武装は使用しました」

 

『武装データはこれで大丈夫だ、だがまだ使っていないシステムがあるだろう、臨海学校の時に使用していたシステムだ』

 

「さて?なんのことでしょうか?」

 

『とぼけなくていい、既に更識妹の戦闘ログで把握している』

 

「はぁ...分かりました。ターゲットドローンの射出をお願いします、量は...設定できる最大量で」

 

『分かった、準備はいいか?』

 

「いつでも大丈夫です」

 

『では射出!』

 

織斑先生の合図で無数のドローンが射出される。

 

「ふぅ...『TRANS-AM-FX』始動...」

 

俺が呟くと同時にダブルオーガンライザーが真紅に染まり、地面から飛び上がると爆発的なスピードでドローンとドローンの間を縫うように飛び、GNソードⅡですれ違いざまに切りつけながらもGNツインドッズキャノンで別のドローンを撃ち抜く。

 

『凄い...』

 

山田先生の感嘆するような呟きが通信越しに聞こえた時には既に全てのターゲットドローンを落として俺は地面に降りていた。

 

『3分で500機のターゲットドローンを一発も外さずに墜とすか...凄まじい性能だな...』

 

「必要なデータは取れましたか?」

 

『ああ、充分だ、もう上がっていいぞ』

 

「分かりました、失礼します」

 

織斑先生に確認してから俺はアリーナからピットに入りそのままダブルオーガンライザーを解除して出て行った。

 

「ふぅ...少し疲れたな...でも一夏達の所にもいかないと...購買でお菓子でも買ってから行くか」

 

俺は購買に寄り道をしてから一夏達の居る別のアリーナに向かった。

 

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---IS学園 第4アリーナ

 

俺が一夏達の居るアリーナに着くと丁度一夏と箒が模擬戦をしているところだった。

 

上空で激しく切り結び、叩き付けられる金属の音が辺りに響いた。ぶつかり合いにより火花が散っている。

 

「はぁっ!」

 

「くっ!」

 

箒が二刀を振るい、それを一夏が雪片弍型で弾く。

 

「2人とも気合入ってるな」

 

俺が2人の戦う様子を見ながら呟くと前にいたセシリアさんやラウラ達が振り向く。

 

「あ、海戻ってきてたのね、無事に終わったの?」

 

「ああ、まあ普通に動かしてデータ取ってもらったら終わりだったからな、今訓練はどんな感じなんだ?」

 

近くにいたが鈴が話しかけてきたのでそれに答えつつ今の状況を確認する。

 

「楯無さん指導の下私たちが交代で一夏の相手をしてるって感じね、それで今は箒の番ってわけ」

 

「成る程な、一夏も頑張ってるようで何よりだな、ところで購買でプリンとか買ってきたけど皆食べるか?」

 

「いいの?じゃあ貰うわね」

 

「わたくしも頂きますわ」

 

「お兄様がそういうなら遠慮なく頂きます」

 

「僕ももらうね、ありがとう武藤君」

 

「私も...」

 

皆それぞれ俺の持っている袋から好きなスイーツを取り出して食べ始める。

 

「さて、一夏達は...っと丁度終わったみたいだな」

 

「はぁぁぁぁ.....疲れたぁぁって海?戻ってきてたのか!」

 

「ついさっきな、一夏も箒もお疲れ様だ、購買で甘い物買ってきたから食べていいぞ」

 

「お!サンキュー!」

 

「私も頂くとしよう」

 

疲れた様子の一夏と箒にスイーツを渡していると楯無先輩も近づいてきた。

 

「あら、海くんもデータ取りは終わったのかしら?」

 

「ええ、スムーズに終わったので購買に寄って皆に差し入れでもと思いまして。楯無先輩もどうぞ」

 

「じゃあ遠慮なく頂くわね」

 

楯無先輩にスイーツを渡しながら俺は訓練の様子を質問する。

 

「一夏の訓練はどうですか?」

 

「まあまあね、まだアリーナの使用時間は残ってるし...海くん、一夏くんの相手お願いできるかしら?」

 

「えっ!?海と1対1で...」

 

実は第二形態移行してから俺と一夏は1対1でまともには戦ったことがない為楯無先輩の言葉に一夏は困惑する

 

「分かりました、俺は大丈夫です、戦い方はどんな感じにすれば?」

 

「海くんの1番やりやすいスタイルでいいわ、今の段階では一夏くんは海くんに太刀打ちできないだろうけど戦う事で得られることは多いもの」

 

そうゆうことなら全力で協力しよう、まあ流石にTRANS-AM-FXまでは使わないが...

 

「や、やってやる!行くぞ海!」

 

「気張りすぎなくていいぞ、肩肘張らずに出来る事全部試すつもりでこい」

 

俺と一夏はそれぞれISを展開してアリーナに飛び出す。

 

一夏の絶叫が響き渡ったのはその10秒後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄まじいですわ...」

 

「え、えげつないわね...」

 

「あれが第二形態移行したお兄様の実力か...」

 

「凄く遠く感じるよ...」

 

「海...」

 

「私達も頑張らないとな...」

 

上からセシリアさん、鈴、ラウラ、シャルロットさん、簪さん、箒である。

 

男同士が戦っている様子を見ながら彼女達は『蒼機兵』との距離を感じて覚悟を再度固めるのだった。




原作通り学園祭の出し物はご奉仕喫茶になりました。
まあ、オリ主も料理は出来るのでこれは最初から決定事項でした。

そして圧倒的なダブルオーガンライザー...

その性能は今後何を齎すのか...

今後も楽しみにしていただければと思います。
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47話 執事と羞恥

明けましておめでとうございます!大鷹とびです。

今年もよろしくお願いします!

そして10万UA突破ありがとうございます!今後とも本小説をよろしくです!

それでは今回は学園祭の話となります。

楽しんでいただければ幸いです。


---1年1組教室

 

やることが決まってしまえば後は本番に向けて準備するだけでそれは思いのほかスムーズに進んでいる。

 

メイド服や執事服に関してもクラスに以外にもコスプレが趣味の女子がいたこともあり、その女子を中心に手先が器用なメンバーでクラス全員分の服を縫い上げてしまった。

 

趣味の面でもレベルが高いのか...IS学園恐るべしである。

 

提供する料理に関しては俺と一夏主導で細かくレシピを纏めて本番で誰でも作れるようにする。

俺や一夏以外にも料理が得意な女子も多かったため、様々な意見を取り入れてブラッシュアップしていった。

ちなみに前に俺が作ったチョコムースもメニューに入れることになったのだが、レシピ通りに作っても何故か俺と同じ味が出せないと言われて俺が全て担当する事になった、何故なのか...

 

残りのメンバーは教室の装飾やその他諸々の部分を決めたりしていた。

何やら女子たちの争うような声が聞こえたが気にしないことにする。

 

「ねぇねぇ!一度一夏君と海君に執事服着てほしいんだけどいいかな?とゆうか着て!」

 

「え?わ、分かった...」

 

「まあ衣装合わせは必要だしな、必要な事だろう」

 

「やった!じゅあこれ衣装ね!はい!あ、海君はこれ使って髪をオールバックにしてきて!じゃあよろしく!」

 

「「お、おう...」」

 

あまりの気合というか迫力に俺と一夏は同じ反応をしながら衣装を受け取って空き教室に着替えに行く。

 

「凄い迫力だったな...」

 

「そうだな...」

 

先ほどの裁縫担当の女子の推しの事を話しながら執事服に着替える。

 

「俺は着替え終わったけど、海はどうだ?」

 

「まだ髪のセットが終わってないから先に行っててくれ」

 

「分かった、先に言って待ってるなー」

 

先に着替えの終わった一夏は1人で教室に向かっていった。

 

「なんで俺はオールバックなんだ?」

 

疑問に思いながらも渡されたワックスを使って髪をオールバックにして再度おかしいところが無いか確認してから教室に向かった。

途中で感極まったような女子の悲鳴が聞こえたのがとても嫌な予感がするがどうすることも出来ないのでそのまま教室に入る。

 

「なんか悲鳴みたいな声が聞こえたけど...」

 

「お、海も来たんだな、なんか皆俺を見たら悲鳴を上げててよくわかんねぇんだよ...」

 

「それはお前...『キャアァァァァ!』おわぁ!」

 

この唐変木にお前の執事服姿にクラスのみんなは悲鳴を上げているんだと言おうとした瞬間に再び悲鳴が俺と一夏の耳を突き刺した。

 

「海君の執事服もやばい!」

 

「優しそうなイケメン執事の一夏君とは対極のワイルドなイケメン執事の海君!いい!」

 

「オールバックがやばい!もう何がってとにかくやばい!顔の傷跡も相まってやばい!壁ドンして欲しい!」

 

クラスの皆が興奮してまくしたてているのに思わず俺と一夏は後退る。

 

「な、なんで皆こんなに騒いでるんだっ!」

 

「今ばっかりはお前に同意するよっ!」

 

教室の後ろの方に下がると丁度そこにはいつものメンバーがいた。

 

「わぁ!似合ってるよ2人とも!」

 

「馬子にも衣裳だな」

 

「オルコット家に執事として迎えたいぐらいですわ」

 

「悪くないな...」

 

シャルロットさん、箒、セシリアさん、ラウラが俺達を見てそれぞれ感想を述べる。

 

「良かったな一夏、似合ってるってよ、じゃあ後は頼む」

 

「ちょっ...海!ずりぃぞ!」

 

俺は一夏を生贄にクラスの皆の間をスルスルと縫って一度教室から出た。

 

「ふぅ...大変だった...」

 

俺は廊下の壁にもたれかかり一息つく。

 

「か、海...?なんでそんな格好を?」

 

声を掛けられた方を向けば自分のクラスの出し物に使うであろう荷物を持った簪さんが俺を見ていた。

 

「ああ...簪さんか、俺達のクラスはご奉仕喫茶をやるんだけどそれの衣装合わせで着させられてね...」

 

「そうなんだ...でも凄く似合ってるよ...!かっこいいと思う」

 

「そう言ってもらえたなら本番も安心できるよ」

 

「じゃあ私はこれで...」

 

「分かった、また訓練で」

 

俺と少し会話した後、簪さんは自分の教室の方へ戻っていった。

 

「さて、流石に一夏の所に戻ってやるか...」

 

一息ついた後、俺は生贄にした一夏を助けてやろうと教室に再度入っていったのだった。

 

———————————————————————

 

あっという間に時間が経ち、学園祭当日。

ここまでクラス全員で準備をしてきて、この日の為に備えてきた。

接客、提供するメニュー、内装、不安な要素は無いと言っていいだろう。

だが――

 

「嘘!?1組であの織斑君と武藤君の接客が受けられるの!?」

 

「しかも執事服よ!」

 

「この機会を逃す手は無いわ!」

 

こんな感じで世界に2人しかいない男性操縦者の姿を一目見ようとする客が内外問わずに押し寄せているからだ。

 

代表候補生のセシリアさんやラウラ達がメイド姿だというのも人気に拍車をかけている。

 

「幾ら何でも凄すぎないか...」

 

「俺、チョコムース300個用意したんだけどこれ一瞬で終わるな...」

 

前もって作る必要のあるチョコムースは俺が気合で300個用意したのだが、既に100個売れている。

このペースなら速攻で売り切れるだろう。

 

ちなみに『ワイルド系執事の甘いチョコムース♪』というメニュー名で売られており最後にホイップクリームを絞るのだがそれは俺が客の前でやるという事になっている。

その作業のおかげで俺は教室内を慌ただしく動き回り、一夏もパンケーキにクリームを絞ったりしているので俺と同じくらい忙しそうにしている。

目が回るような忙しさの中、入り口から見知った顔が入ってきた。

 

「弾と蘭!来てくれたんだな!」

「おー、2人ともありがとうな!弾はどうしたんだ?」

 

「こんにちは!一夏さんに海さん!凄い人気ですね!兄のことはお構いなく。自業自得なので」

 

幼馴染の五反田兄妹が来てくれたので俺と一夏は忙しい合間を縫ってなんとか会話する。

 

「じゃあとりあえず蘭からだな!お嬢様。お席に案内させていただきます」

 

「お、お嬢様!?あ、お願いします!」

 

大方一夏目的で来たのであろう蘭は一夏に案内されて満足そうに座席に向かっていった。

 

「弾、大丈夫か?」

 

「悪い...そっとしておいてくれ...どうせ俺は駄目な奴なんだ」

 

「何があったかは聞かないぞ、うちのクラスの女子に案内してもらってくれ」

 

「海くーん!指名入ったよー!」

 

「直ぐに参ります!じゃあな弾、元気出せよ」

 

俺に指名が入ったので弾に一声かけてからそちらに向かう。

 

 

「お待たせしましたお嬢様...って簪さん?」

 

「えっと...来ちゃった」

 

「それは全然大丈夫だよ、えっとご注文はいかがなさいますか、お嬢様」

 

「じゃあ、『ワイルド系執事の甘いチョコムース♪』と『執事のご褒美セット』で」

 

「それ入れちゃうかぁ...かしこまりました。少々お待ちください」

 

俺は簪さんに注文されたチョコムースとポッキーを持っていく。

 

「では最後の仕上げをさせていただきます」

 

俺は簪さんの目の前でチョコムースにホイップクリームを絞る。

 

「どうぞ、お召し上がりください」

 

「ン...おいしい、前に食べたのと同じ味...後は、『執事のご褒美セット』もあるから海も座って...」

 

「では...失礼しますお嬢様」

 

「は、はい!あーん!」

 

簪さんがポッキーを持って俺にあーんしてくる。正直言ってめちゃくちゃ可愛い。

 

「美味しいです、お嬢様」

 

簪さんのあーんに過剰反応しないように抑えながらポッキーを全部食べ切った。

 

「えっと、この後って時間空いてるかな?」

 

「1時間後だけどそこならシフトが空くよ、今は一夏の休憩時間だから」

 

「ん、それで大丈夫、もしよかったら一緒に学園祭回らない?」

 

「分かった、じゃあまた1時間後に」

 

「うん、また後で」

 

一緒に学園祭を回る約束をした後簪さんは自分のクラスに帰っていった。

 

「さて、もうひと頑張りしますか」

 

俺は再度気合を入れて執事の仕事に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずるいずるい!私も執事服着たかーくんにご奉仕されたい!」

 

「落ち着いてください束様...今度直接頼めばいいのでは?」

 

「じゃあそうしよっと...執事なかーくん...じゅるり」




という訳で学園祭の準備と当日の一幕でした。

一夏は優しいイケメン執事だったのでオリ主はその逆のワイルド系にしたかったのでそうしました。理由はただそれだけですw

そして次回は簪と?

今後も楽しみにしていただければと思います。
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48話 学園祭デートと占い

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回は簪との学園祭デート回です。

楽しんでいただければ幸いです。


---1年1組教室

 

その後俺は一夏が休憩で抜けた穴を埋める為に教室にあるテーブルをひたすらぐるぐると回り続け、接客し続ける事1時間...

 

一夏が休憩から帰ってきた。

 

「海!戻ったぞ!休憩に入ってくれ」

 

「お~う...後は頼むわ一夏...」

 

俺はほとほと疲れ果て、一夏と後退してから水分を取り教室を出た。

 

「あ、お疲れ様、海」

 

教室の前には簪さんが待ってくれていた。

 

「ああ...簪さん待っててくれたのか...」

 

「凄い疲れてるね、大丈夫?」

 

「大丈夫...でも最初はちょっと軽食取りながら休める場所がいいかな...」

 

「ん...分かった、じゃあ2組が丁度いいと思う、すぐ隣だから」

 

「ああ...簪さんの優しさが沁みるよ...」

 

簪さんの気遣いで最初は2組の中華料理を食べに行くことにした。

 

「席空いてるかな...?」

 

「おーう...来たぞ...」

 

ぶっちゃけ幾ら疲れても接客という仕事をしている以上、顔に出すわけにもいかなかったので思ったよりも疲れている、それはもうキャラが崩れかけるぐらいには...

 

「あら、簪に海じゃない、席なら幾らでも空いてるわよ、1組のおかげでね」

 

2組に入ると直ぐに鈴が反応して俺達を席に案内しながら皮肉ってくる。

 

「悪かったよ...でもこっちはこっちで地獄だったんだ...いっぱい注文するから許してくれ...という訳で酢豚とチンジャオロース2人前づつ、あと白米山盛りで...」

 

「私はゴマ団子を...」

 

「簪は普通だけど海あんた本気?注文通りに持ってきたら4人分はあるじゃない、食べきれるの?」

 

「朝から準備が忙しすぎて何も食ってないんだよ...ちゃんと食べきるから出してくれ...」

 

「残すんじゃないわよ?」

 

「分かってるって」

 

「じゃあ持ってくるわね、少し待ってなさいな」

 

そう言って鈴は奥の方に引っ込んでいった。

 

「凄い量食べるんだね...」

 

「ん?ああ、普段も結構食べてると思うけど今は特にお腹減っちゃって」

 

「言われてみれば確かに海が食べてるご飯って絶対大盛り以上だった気がするし、操縦訓練の休憩中にもほぼ間食してたような気も...」

 

「食べないと持たなくて...食べた分トレーニングやISの操縦で消費出来てると思うから太ってはいないし」

 

俺がそういった瞬間に何故か簪さんが一瞬怪訝そうな目で俺を見てきたような気がする。

 

「そうなんだ...」

 

他愛もない会話をしているうちに鈴が大きな皿を運んできた。

 

「はい、酢豚とチンジャオロース2人前づつ、あと白米山盛りね、簪のゴマ団子もあるわよ」

 

「おお!待ってました!いただきます!」

 

「いただきます...」

 

「うん!美味い!中学の時から腕を上げたな!」

 

「当たり前でしょう!努力の成果ってやつよ!」

 

「しかし酢豚を食べると例の事件を思い出すな...」

 

「例の事件って?」

 

「そそそ、それはいいじゃない!さっさと食べなさいよ!」

 

「はいはい、簪さん、悪いけどこれは鈴にとっての死活問題だから触れないでやってくれ」

 

「わ、分かった」

 

その後、結局俺は4人前の料理を食べきり会計したのだが鈴を含めた2組の女子が引いていた。解せぬ...

 

———————————————————————

 

お腹を満たし、すっかり復活したので俺は改めて簪さんと学園祭を回った。

 

「ISの歴史か...しかしこうやってでかでかと自分の事が書かれているとムズムズするな...」

 

「それは仕方ないと思う、海は最初期のISのうち1機を所有していて白騎士と違って素性もハッキリしているから...」

 

「それでもこそばゆい!」

 

ISの歴史を纏め、教室いっぱいに様々な資料を展示しているクラスを見に行ったり...

 

「何故学園祭で爆弾解除なんだ?」

 

「ふっ...このくらい余裕...」

 

「簪さん早っ!」

 

爆弾解除のアトラクションを体験したり...

 

「お点前頂戴致します...」

 

「流石更識家のお嬢様...様になってるなぁ...」

 

「ちょっ...急に言わないで///」

 

実はラウラが所属していて織斑先生が顧問の茶道部に行ってお茶を頂いたりと、様々なものを見たり体験することが出来た。

 

「さて...時間的に次がラストだけど...簪さんは行きたいところある?」

 

「えっと...個人で出してて結構当たってるって評判の占いしてる先輩の所に行きたいんだけど...」

 

「占いなんて珍しいね、じゃあその先輩の所に行こうか」

 

簪さんの希望通りに占いをやっている先輩の居る教室へと向かう。

校舎の端の方の教室だったので少し歩いたが教室の扉の前まで着いたので扉をノックをすると

 

「はーい、どうぞ」

 

返事が返ってきたので扉を開けて教室に入ると、暗幕でそれっぽい雰囲気になった教室の真ん中にテーブルと椅子に座っている噂の先輩がいた。

 

「これはこれは珍しいお客さんだ、お二人さんも占ってもらいに?」

 

「えっと...よく当たるって聞いたので...」

 

「自分で当たるよ、とは言わないけどそれなりに評価はしてもらってるかな?まあ、とりあえず二人とも私の前にどうぞ座ってもらって」

 

「あ、はい、失礼します」

 

先輩に促されて椅子に座ると先輩はタロットカードを裏向きで机に広げて混ぜ始める。

 

「タロットカード占いなんですね」

 

「そうだよー、まあガッチガチにやると時間かかるから簡単にだけどね、じゃあ何について占おうか」

 

「えっと私と海それぞれ総合的に見てもらうことって出来ますか?」

 

「OKOKじゃあカードを並べたからこの中から4枚選んで表にしてみて?まずは簪ちゃんからかな」

 

「分かりました」

 

簪さんは先輩に言われるまま4枚のカードを選び表にする。

 

「星の逆位置、死神の正位置、審判の正位置、そして聖杯2の正位置か...」

 

「ど、どうですか...?」

 

「近々物凄く苦労する上に現実を見させられて悲観しちゃうかもって出てるね、その上で何かがスッパリと終わるような感じ?」

 

「そ、そんな...」

 

「でもこのカード、審判の正位置と聖杯2の正位置が出てるでしょ?だからその苦労さえ乗り越えられれば恋愛含めて色々と上手くいく、頑張ってよかったって思える時がくるかも」

 

「そうなんですね...ならちょっと良かったかな、気を付けて生活します」

 

「まあ、あくまで占いだから参考程度にね、じゃあ次は武藤くんね、もうカードは混ぜて並べなおしてるから4枚めくってみて?」

 

「じゃあ遠慮なく...」

 

俺も先輩に促されて4枚のカードを捲る。

 

「塔の正位置、棒5の正位置、棒10の正位置、そして...お、また聖杯2の正位置が出たね!それにしても...」

 

「えっとどうしたんですか?」

 

先輩の反応に俺は何となく嫌な予感がする。

 

「聖杯2の正位置以外の3枚、結構壮絶なものが出てるかも...」

 

「えぇ...」

 

「まず、今海くんが頑張っていることに関して精神的プレッシャーを感じる逃げられない場面が訪れる上に、結果の出ない不毛な争いが続き、心も体も疲労困憊してしまうって出てるね...」

 

「ま、マジですか...」

 

「うん、その上で予想していなかった出来事が起こって、ビックリしてしまうかも」

 

「うへぇ...」

 

「でもそれを乗り越えれば簪ちゃんと同じようにドキドキするような、恋の甘いロマンスが訪れるかもよ?」

 

「恋のロマンス!?簪さんの時には言ってなかったような...」

 

「まあ細かいことは気にしない気にしない!あくまで占いだから、ね?」

 

「わ、分かりました」

 

俺と簪さんは占いの結果を聞いた後席を立つ。

 

「じゃあ2人とも来てくれてありがとうね」

 

「いえ、とても参考になりました。こちらこそありがとうございました」

 

占いをしてくれた先輩にお礼を言って俺と簪さんは教室を出た。

 

「なんか、私も海も苦労しそうだね...」

 

「まあ、先輩もあくまで占いだからって言ってたし、少し気を付けて生活してれば大丈夫だと思うよ」

 

「うん...そうだね、じゃあ私はクラスに戻るけど海は?」

 

「俺も戻るよ、そろそろ一夏が限界を迎えてそうだ」

 

「分かった、じゃあね海」

 

簪さんと別れて俺は1組の教室へと向かった。

 

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1組の教室に戻り仮設バックヤードに入ると一夏が死にそうな顔で休憩していた。

 

「一夏、戻ったぞ」

 

「かっ海!助けてくれ!もう限界なんだ!」

 

「分かった分かった、ここまでありがとうな一夏」

 

「海君、さっそく3番テーブルからオーダー入ったからお願い!あと一夏君も一緒に行って!」

 

「分かった!すぐに出るよ!」

 

呼ばれたので3番テーブルに一夏と向かうとそこには...

 

「はーい楯無先輩参上!」

 

何故かメイド服を着た生徒会長が座っていた。

 

「どうしたんですか?楯無先輩、あと何故メイド服を?」

 

「ああ、なんか楯無さんは海がいない間に途中で来て手伝ってくれたんだよ、何故かは分からないけど...」

 

「そうゆうことか...」

 

「相変わらずつれないわねー、海くんは、まあ聞いてくれてるだけいっか、とりあえず二人とも君達の教室手伝ってあげたんだから、生徒会の出し物にも協力しなさいな」

 

「俺がいない間に進んだ話に勝手に巻き込まれた件について」

 

「まあまあ、そう言わずに生徒会の出し物、観客型参加演劇に協力してくれるとおねーさん助かるなぁ」

 

「は?」

 

「絶対碌でもないからな一夏」

 

「とにかく行くわよ! ゴーゴー!!」

 

「おわぁ!?」

 

「逃げてぇ...」

 

楯無先輩は俺と一夏を引っ張って何処かへ連れて行こうとする。この先どうなるかは原作知識で分かっているが自分が当事者になると考えるとため息が止まらくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ...一夏君と海君がいないと困るのに...」

 

「これ大丈夫なのかな...」




学園祭での簪とオリ主のデート回でした。

占いの部分は調べて書きましたけど何か間違っていたらすいません。

次回は原作でもあったシンデレラの回になる予定です。



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49話 2人の王子と6人の灰被り姫

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回は演劇シンデレラの回となっています。

楽しんでいただければ幸いです。


---IS学園 第4アリーナ 男子更衣室

 

楯無さんに引きずられ俺達は劇の衣装を渡されたのち第4アリーナの男子更衣室に放り込まれた。

 

「この衣装...一体何なんだろうな」

 

一夏は童話でよく見るような青い上着に白のズボンという典型的な王子様スタイルで俺に話しかけてくる。

 

「それを言うなら俺の方が謎だよ...」

 

一方俺の服装は一夏のような王子様スタイルにも見えるのだが色が全体的にダークだった。あと無駄にマントが長くてかっこいい

 

「闇墜ち王子みたいな?」

 

「謎過ぎるだろ...」

 

お互いの衣装に疑問を感じながら着替え終わったタイミングで更衣室の扉が開く。

 

「一夏くん、海くん、ちゃんと着たー? 開けるわよ」

 

「開けてから言わないで下さいよ!」

 

「楯無先輩俺努力はしますけど消し炭にされても知りませんからね...」

 

扉を開けてから確認を取る楯無先輩にため息を吐く俺と一夏。

 

「なんだ、ちゃんと着てるじゃない。おねーさんがっかり」

 

「何を期待してたんですか、あなたは」

 

「はぁ...俺1人で逃げりゃ良かった...」

 

「そしたら校内放送で呼び出してたわよ、そういうシンプルなの効くでしょ?波風立てる訳にいかないものねぇ」

 

「後で簪さんに言いつけますから覚悟しておいてください...」

 

「そ、それだけはやめて...海くんが絡んだ時の簪ちゃんのお仕置きシャレにならないんだから...

まあいいわ、はい、王冠。大事なものだから、なくさないでね?」

 

「あの、楯無さん。俺達脚本とか台本とか一度も見てないんですけど...」

 

「全部アドリブでやれと?」

 

「そうよ、基本的にこちらからアナウンスするから好き勝手動いて頂戴」

 

それは劇として成立するのだろうか...やっぱり逃げたい...原作内容的にも俺が専用機組に狙われる可能性皆無だし問題ないのでは?

 

「因みに一夏くんが第一王子、海くんが第二王子ね」

 

「俺が第一王子?」

 

「何故第二王子の服の色合いがダークなのかは教えてくれます?」

 

「何となくよ、何となく、それじゃあ二人とも、頑張ってねー」

 

俺と一夏は不安な表情を浮かべながら第4アリーナに入る。

 

 

「す、すげぇセットだな...」

 

「金かかってそうだな...」

 

俺と一夏が入った第4アリーナは完全に様変わりしていて、アリーナの限界まで高くそびえ立った西洋風のお城、地面には芝が生え揃い、赤絨毯が敷かれている。

 

どうやってこれほどのクオリティのセットを用意したんだろうか...

 

『さあ! 幕開けよ!!』

 

楯無先輩の声が響くと同時にアリーナのドームが閉じて、辺り一面が真っ暗になった。

そしてステージの中央らしき場所にライトが集中した、俺達はそこに行けという事だろう。

誘われるがまま、ライトの中心に立つと、客席から歓声が巻き起こった。

 

「一夏、やばくね?」

 

「そ、そうだな...」

 

「とりあえず手でも振っておくか...」

 

「お、おう...」

 

俺達が手を降ると、客席からの更に歓声が沸き上がった。

 

「一夏ぁぁあ!!海ぃぃぃぃい!! へますんなよぉぉおお!!」

 

何処かから聞き覚えのある声が聞こえた。あいつらも見ているのだろうか?

 

と思っていると...俺達を照らしていたライトが落ち、代わりに巨大なホログラフィック・スクリーンが現れた。

 

『むかしむかし、あるところに。シンデレラという少女がいました』

 

「あれ?意外と普通――」

 

一夏が意外だと口にしようとしたが...

 

『否、それはもはや名前ではない』

 

もちろん 普通ではなかった。

 

楯無先輩のモノローグと共に、スクリーンの泣いていた少女が、剣や重火器を持つドレスのお姫様に変わる。

 

「「は?」」

 

『幾多の舞踏会を潜り抜け、群がる兵士を薙ぎ倒し、灰塵を纏うことさえ厭わぬ地上最強の兵士達、彼女らを呼ぶに相応しい称号...それがシンデレラ!』

 

カッと、ステージ全体がライトアップされ、舞踏会エリアに立たされる俺達が再び照らされる。

 

「は?」

 

「終わった...」

 

『今宵もまた、血に飢えたシンデレラたちの夜が始まる。王冠に隠された軍事機密を狙い、舞踏会という名の死地に少女達が舞い踊る!!』

 

「はあ!?」

 

「もう嫌...」

 

シンデレラはそんな殺伐とした物語だっただろうか?訳が分からないと頭を抱える一夏ともうやってられんと目からハイライトを消し項垂れる俺。

 

「貰ったぁぁぁ!!!」

 

雄叫びと共にそんな俺達の頭上に何かが舞い降りてきた。

 

「危ねえ!!」

 

「巻き込まんでくれ...」

 

先程まで一夏が居た場所に刃が降り下ろされる。そこには白地のシンデレラのドレスに銀のティアラを被り中国の刀、青竜刀を手に持った...

 

「り、鈴!?」

 

鈴の姿があった。

 

「王冠、寄越しなさいよ!」

 

柱を背に立つ一夏をキッと睨んでから、すぐさま中国の手裏剣である飛刀を投げてくる。

 

投げられた飛刀は真横の柱に見事突き刺さった。

 

「ヒィっ!?ば、馬鹿!死んだらどうするんだよ!?危ねぇ!?」

 

即座に投げられる飛刀を避ける中、楯無先輩の呑気なアナウンスが鳴った。

 

『大丈夫よー。ちゃんと安全な素材で出来てるから』

 

「信じられねぇ!?」

 

慌てながらも一夏はその場にあった蝋燭台で飛刀を防ぐ。だが鈴は直ぐ様それを蹴り上げ、そのまま踵落としを決めてきた。

 

「わあ、馬鹿!パンツがっ」

 

「はあっ!」

 

床が陥没する程本気の踵落としにドン引きすると、一夏はあることに気付く。

 

「って、おい!ガラスの靴履いてんのかよ!?危なすぎるだろ!?」

 

「大丈夫!強化ガラスらしいから!」

 

「どっちにしろ死ぬわ!」

 

「死なない程度に殺すわよ!!」

 

「意味が分からん!」

 

そう言ってから逃げようとする一夏の眼前を何かが掠めそのまま地面に当たり弾痕が付く。

 

「おわぁ!?狙撃!?セシリアか!?」

 

ビスッビスッと立て続けに一夏の近くの床に空いた弾痕から逃げ出すべく一夏は第4アリーナを飛び出していった。

 

「疲れた...」

 

完全に蚊帳の外になっていた俺はゆっくり歩いて一夏とは別の方向から第4アリーナを出て行った。

 

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<簪視点>

 

「今回、一夏くんと海くんの王冠を手に入れたシンデレラには、本人との同室同居権を与えるわ」

 

私達専用機持ち達は更衣室にいたお姉ちゃんの現実場馴れした言葉にきょとんとした。

 

「た、楯無様?そんなことが可能なのですか?」

 

「大丈夫、生徒会長権限で可能にするわ」

 

というお姉ちゃんの言葉に私以外の全員が奮い立った。

 

「ただし、手にいれる王冠は間違えないこと、じゃないと、お目当てじゃない人と同居しちゃうことになるから、気を付けてね♪」

 

にっこりと笑うお姉ちゃんの言葉に専用機持ちの目の色が更に変わる。

 

私を除いて...

 

「あの、お姉ちゃん...」

 

「簪ちゃんも頑張ってね!」

 

「頑張ってと言われても...私入学してから海と同室のままだし...」

 

「なら余計に頑張らなきゃ!一定時間経ったら他の生徒も参加できるようになるから海くんの王冠も奪われちゃうかもしれないわよ?」

 

「えっ...」

 

「そうなったら簪ちゃんと海くんは同室じゃなくなっちゃうわねぇ」

 

「それは...嫌!」

 

こうして、結局私も焚きつけられてしまったのだった。

 

———————————————————————

 

<海視点>

 

鈴達に襲われて出て行った方向とは別の出口から出た俺は特にあてもなく廊下を歩いていた。

 

途中で『王子様にとって国とは全て。国の未来を左右する重要機密が隠された王冠を失うと、自責の念によって、電流が流れまぁーす!』

 

というアナウンスがされたが知ってしまえば解除すればいいと思いフラフラと彷徨いながらゆっくり王冠を解除できる場所を探していた。

 

「専用機持ちは大概一夏狙いだし平和なもんだ」

 

時折すれ違う人に好奇な目で見られながらも歩き続けていると...

 

「あ、海...」

 

「んえ?簪さん?」

 

俺の目の前にシンデレラのドレスを着た簪さんが現れた。よく似合っている、かわいい。

 

「簪さんはもしかして...俺の王冠が欲しかったりする?」

 

「う、うん...出来れば渡してくれると嬉しい」

 

「渡したいのは山々なんだけど、流石に電流で痺れたくはないから外すための手伝いしてくれないかな?」

 

「ん...分かった、どうすればいい?」

 

「丁度そこに空き教室があるからそこに入ってどうゆう仕組みで電流が流れるか見てくれないかな?」

 

「了解...私に任せて、すぐに助けてあげるから...」

 

「ありがとう簪さん」

 

俺と簪さんは空き教室に入り、俺は簪さんに王冠がどうなっているか調べてもらった。

 

「これは頭から外れるとセンサーが反応して電流が流れるようになってるから、持っている手から痺れる仕組み...つまり絶縁体を手に付けて外せば痺れずに脱げるはず...」

 

「成る程...意外とシンプルに出来てるんだな、じゃあ丁度良く教室の掃除用具ロッカーに入っていたゴム手袋を付けて外せば...」

 

簪さんに言われた通りに俺は教室の掃除用具ロッカーからゴム手袋を取り出してそれをはめてから王冠を頭から外した。

 

想定より強い電流だったのかゴム手袋越しでも少しパチッとしたが静電気レベルだったのでそのまま完全に脱ぐことが出来た。

 

「ちょっとパチッとしたけど...無事に脱げたよ、という訳で簪さん、はい、王冠」

 

俺は脱いだ王冠を簪さんに手渡す。

 

「あ...ありがとう」

 

「いやいや、俺もなんか巻き込まれてよく分かんないまま彷徨ってたし簪さんのお陰で痛い目に合わずに済んだよ」

 

簪さんは何故か少し顔を赤くしながら俺の渡した王冠を大事そうに抱えているが気にしないでおく。

 

『パンパカパーン!更識 簪!見事第二王子武藤 海の王冠をゲット!コングラッチュレーション!!流石簪ちゃん!私の妹は世界一ぃぃぃぃ!』

 

会長の個人的な感想の混じったハイテンションな放送が流れる。

 

「さて...俺達の出番はもう終わったわけだし、せっかくだからここでこのまま休憩してようか...」

 

「うん...私も少し疲れた...」

 

『さあ!ここからはフリーエントリー組の参戦です!王子様の王冠は残り1つだけになりましたが、皆さん、がんばってくださいねー!』

 

簪さんと会話していると再度楯無先輩のアナウンスが聞こえた後、廊下を大量の女子生徒が一夏の事を叫びながら走り抜けていった。

 

「うわ...ご愁傷様だ...」

 

「流石に織斑君に同情する...」

 

俺と簪さんはこれから一夏に襲い掛かるであろう悲劇を想像して心の中で手を合わせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの人は本当何を考えてるんだー!」

 

俺達が休んでいる頃、一夏は予想通り、大勢の女子生徒に追われながら叫んでいるのだった。




という訳で学園祭での生徒会の出し物、シンデレラの回でした。

次回から原作より大きくずれていく予定です。

満を持してあの機体達が登場するかも?

それでは今後も楽しみにしていただければと思います。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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50話 襲撃と迫り来る巨大な力

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回は学園祭襲撃事件の話となっています。

タイトルで分かる人は分かるかも...

それでは楽しんでいただければ幸いです。


楯無先輩の放送という名の一夏の悲劇の始まりから少し時間が経った後、俺と簪さんは相変わらず空き教室で駄弁りながら休憩していた。

 

「しっかしまあ、一夏もよく後ろから刺されないよなぁ...」

 

「むしろここまで無事に成長できたことが奇跡だと思う...」

 

「それは俺と弾の血と汗と涙の元成り立ってる平和があったからなぁ...」

 

「苦労してたんだね...」

 

一夏の女難を話のタネに簪さんと談話を続けていると...

 

ウーーー! ウーーー! 

 

IS学園全体にサイレンが鳴り響いて警告を示す赤いホロウィンドウがそこかしこに出て火災と表示される。

 

「なっ...何!?」

 

『ただいまロッカールームにて火事が発生しました。お客様はホログラムガイド及び教職員の指示に従って避難をお願いします。繰り返します...』

 

「ロッカールームで火事なんて...あ、そっかぁ...」

 

「ど、どうしたの海?」

 

「いや、何でもな...『全員、聞こえているか?』通信?織斑先生か!」

 

簪さんに聞かれて誤魔化そうとしたタイミングで織斑先生から通信が入る。

 

『時間がないから手短に伝えるぞ。今発している火災警報はダミーだ。現在第4アリーナのロッカールームで未確認のISと織斑が交戦している』

 

「テロリスト...だよなぁ...」

 

「全員、即時ISを展開!状況に備えろ!」

 

「了解です」

 

織斑先生の指令と同時に俺はダブルオ―ガンライザーをを展開。

簪さんも同様に打鉄弐式を展開した。

 

ハイパーセンサーに反応があることから他の専用機持ちの皆も同様にISを展開したようだ。

 

「篠ノ之、オルコット、凰は哨戒につけ! デュノア、ボーデヴィッヒ、更識妹は学園内を警戒。来場客と一般生徒の避難をフォローしろ!武藤は織斑の援護に向かえ!まあ既に応援は向かわせているが念の為だ」

 

「了解!ダブルオーガンライザー目標に飛翔する!簪さんまた後で!」

 

「うん!海も気を付けて!」

 

俺達はそのままそれぞれ目標へと向かうために教室を飛び出していった。

 

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一夏の援護の為に第4アリーナのロッカールームへ向かっている途中、白式の反応が消えたと思えば、その近くに別のIS反応が現れた。

 

「この反応は...楯無先輩の霧纒の淑女(ミステリアス・レイディ)か...という事は原作通りなら一夏は白式を引っ剥がされた後か...」

 

ハイパーセンサーからの情報と自分の知識を照らし合わせて状況を整理する。

 

「この分なら俺の出る幕は無いかな...」

 

ロッカールームまでの距離と現在の状況から俺が着くぐらいで戦いは終わっているだろうと予測する。

 

「言ってる間に白式の反応確認...そしてロッカールームで大きな爆発を確認...」

 

『こちら生徒会長よ、一夏くんの救援に成功したわ、でもテロリストは逃亡中よ!見つけ次第捕らえて!』

 

『こちらボーデヴィッヒ、逃亡中のテロリストを発見、現在AICにて拘束中』

 

『よくやったわラウラちゃん!そのまま押さえてて頂戴!』

 

逃げたテロリスト...まあ十中八九亡国機業のオータムだろうが、ラウラに捕らえられたようだ。

 

『皆さん、聞こえますか!誰か応答を!』

 

『セシリア?どうした?』

 

オープン・チャネルから聞こえてきたセシリアさんの焦るような声にラウラが返答する。

 

『所属不明の一機を逃しました!間も無く学園に到着する頃かと』

 

『なんだ...』

 

ラウラが確認しようとした瞬間にバチィとオープン・チャネル越しでラウラが何かに撃たれた音が聞こえた。

 

ハイパーセンサーで確認すれば現時点で1番ラウラと近い位置にいるのは俺だった、既に所属不明機が目を凝らせば肉眼で見える位置にいる。

 

「そう問屋は卸しませんよ亡国機業さんや...」

 

ダブルオーガンライザーのサイドバインダーを後ろに向け、爆発的な加速力で一気に距離を詰める。

 

グングンと距離を詰めていく途中で見えたのはこの十数秒でボロボロになったラウラにレーザーが向かっていく光景だった。

 

———————————————————————

 

「ぐっ!」

 

「これで終わりだ」

 

ハイパーセンサーでラウラと侵入者の会話も直接拾える距離になったところで俺はFXバーストを使用しGNフィールドを展開しながらラウラとレーザーの間に一気に割り込む。

 

GNフィールドにレーザーが当たり甲高い音を立てながら掻き消えた。

 

「何ッ!?」

 

「お兄様!?」

 

「随分好き勝手やってるな亡国機業のMさんよ」

 

「貴様...蒼機兵...武藤 海か、何故私の事を知っている」

 

FXバーストを解除し、GNソードⅡの切っ先を向けながらあえてここでは俺が知りえない筈の情報を握っている事を漏らして注意を引き付ける。

 

「さあ?どうしてだろうな?聞きたきゃ後でゆっくり話してやるよ、お前を捕まえた後でな、そのサイレント・ゼフィルスもイギリスに返してやんな」

 

「ほざけ!」

 

Mが口を開くと同時にサイレント・ゼフィルスのビットと手に持っているスターブレイカーからレーザーが発射される。

 

レーザーは俺の目の前で曲がり、取り囲むような軌道を取りながら俺に襲い掛かる。

 

「危ない!」

 

俺に襲い掛かる複数のレーザーを見てラウラが叫ぶが...

 

「え...」

 

「ッ...貴様のISは一体どうなっているっ!!」

 

再び展開したGNフィールドによって全てのレーザーが弾かれ、見ていたラウラとMの顔が驚愕に染まる。

 

「ズルだとは思うが...テロリスト相手に手加減してやるほど俺は甘くないんでね」

 

「くっ...まだだぁっ!」

 

今度はスターブレイカーを高出力モードに変形させ強力なレーザーを放ってくる。

 

俺はそれを上に飛んで回避するとレーザーは俺を追いかけるように曲がってくる。

 

「これは防げまい!墜ちろぉっ!」

 

「【ドクンッ...】いやそうでもないんだなこれが!」

 

俺は視えた未来に従ってGNソードⅡを振るうとレーザーが切り裂かれ拡散する。

 

「なっ...!?レーザーを切っただと!?」

 

「お前じゃどうやっても俺には勝てない」

 

「だまれぇっ!!」

 

激高しながら再度俺に銃を向けてくるM、それに対して再び警戒した瞬間に...

 

「【キュルリィィィン!】っ...!?殺気!?」

 

濃密な殺気を感じて即座にその場から飛び退くと俺がいた場所に見るからに強力なビームが上空から降り注いだ。

 

「今のビーム...GN粒子のビームじゃない...まさか!」

 

俺は直ぐにハイパーセンサーで上空を索敵する。拡張された視覚は上空にいた『2機』を詳細に捕らえた。

 

「ガンダムヴァサーゴ・CBとガンダムアシュタロン・HC!?だが細部が違う!!」

 

上空にはこの世界ではアルケー同様俺の記憶の中にしか存在しない筈の2機のガンダムがこちらを見下ろしていた。

 

「本腰入れてきたって事か...来るっ!!」

 

2機がそれぞれの射撃武器を俺に向け、そのまま連続で撃ってくる。

 

「精度がっ!チッ...!」

 

襲い来るビームの雨を避けようとするがやはりパイロットの質が違うのか5発目には直撃コースに追い込まれ、更にラウラが射線上にいた為GNフィールドを使わされる。

 

「やっぱりそういう事か...分かってても対処は出来なかったし、しょうがないか...」

 

俺がGNフィールドでラウラと自身を守っている間にオータムをMに回収され、2機のガンダムも引き撃ちをしながら撤退していく。攻撃によって巻き上がった土煙が晴れたころには完全に逃げられていた。

 

「ラウラ!海!大丈夫か!?」

 

「一夏か、ラウラも俺も無事だ、敵には逃げられちまったけどな」

 

一夏が焦りの表情を浮かべながら飛んできたので俺の後ろにいるラウラを親指で差しながら無事を伝える。

 

「そうか...良かった...」

 

一夏が安堵の表情を浮かべているとその後ろから楯無先輩がやってくる。

 

「武藤君はラウラちゃんを守りながらも無傷みたいね、流石、蒼機兵の名は伊達じゃないわね」

 

「まあ今回は単純に機体の性能差がありましたからね、あの程度のレーザーならなんてことはありません。でも...」

 

途中で現れた2機のガンダムの事を考えながら俺は続ける。

 

「最後に現れた2機は...俺から説明したいと思います...サイレントゼフィルスの方は先輩からお願いします」

 

「分かったわ、後で関係者や専用機持ちを集めて話をしましょう、まずはラウラちゃん達のメディカルチェックがあるからそれが終わったらね」

 

「もちろんです」

 

ついに、俺が持ち込んでしまったこの世界を歪ませている『敵』について話す時が来たのだと...俺は改めて覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かーくんはいよいよ話すみたいだね...じゃあ束さん達も行こっか」

 

「はい、束様」

 

「世界を変えた責任は私も取るよ、かーくん1人で背負い込む必要は無いからね...」




という訳で学園祭襲撃の話でした。

ヴァサーゴとアシュタロンはチラ見せでしたが本編より強化されています。

次回以降オリジナルストーリーを展開していく予定です。

それでは今後も楽しみにしていただければと思います。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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51話 変わりゆく世界

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回は学園祭襲撃事件後の話となっています。

ここから大きく物語が動いていきます。

それでは楽しんでいただければ幸いです。


ラウラ達のメディカルチェックが完了するまでの間、俺を含む残りのメンバーは会議室で待機していた。

 

「専用機持ちに話って何なのよ?」

 

俺が待ち時間で今回の戦闘のデータを整理していると鈴が話しかけてくる。

 

「今回の襲撃についてだ、俺からも皆に話さないといけないことがある」

 

「成る程ね...」

 

俺が答えると鈴は納得したのか元いた椅子に座った。

 

「皆すまない」

 

「お待たせしましたわ」

 

タイミングよくメディカルチェックを終えたラウラやセシリアさんが会議室に入ってくる。

 

「2人とも大丈夫だったか!?」

 

「問題ありませんでしたわ、かすり傷適度でした」

 

「私もだ、レーゲンはこっぴどくやられたがな」

 

「ならよかった...」

 

一夏が心配そうに戻ってきた2人に様子を聞いていたが特に大きな怪我はしていないようだ。俺としても心配していたので安心した。

 

「全員揃っているな?では更識姉、頼むぞ」

 

「分かりました織斑先生」

 

少し間を置いて織斑先生と楯無先輩が会議室に入ってきて、そのまま今回学園を襲撃してきた敵の正体について説明が始まる。

 

「皆座ったわね?じゃあ今回学園を襲撃してきたテロリストについて説明するわ...まず、テロリストの正体は『亡国機業(ファントムタスク)』という組織よ」

 

「亡国機業...」

 

「第二次世界大戦中に生まれて以来ずっと活動してると言われているけどその活動目的は現時点では不明よ、世界の裏で戦争を操ってきたとか世界征服を企んでるとか色々考えられるけど、どうとも言えないわ、ただ1つ言えるのはここ最近あらゆる国のISを強奪しているということよ」

 

「あ、ISを強奪!?」

 

「そう、とにかく警戒するに越したことは無いわ、現に一夏くんは白式を奪われかけた訳だしね」

 

楯無先輩の言葉に一夏がぐっと手を握りしめるのが見えた。よほど悔しかったのだろう。

 

「今後も襲撃が予想されるからあなた達専用機持ちは有事の際に動けるようにしておいて頂戴」

 

楯無先輩の説明が終わると会議室は静まり返っていた。

 

「じゃあ、続きは任せるわ海くん」

 

「分かりました」

 

俺は楯無先輩と入れ替わる形で前に立つと皆に向かって口を開く。

 

「楯無先輩からの情報で正直混乱してると思うけど俺の話も聞いてほしい、今から俺が話すことは、これからの世界においてとても重要な事なんだ、専用機持ちの皆なら絶対に無関係じゃいられないことだ」

 

「か、海?どうゆうことだ?それは」

 

皆にそう告げると一夏が思わず俺に問いかけるが俺はそれを制するようなリアクションを取ってから薄い三角形のデバイスを取り出して教壇の上に置く。

 

「皆に説明する上で紹介しておきたい人?でいいのかは分からないけど知っていてほしい奴がいるんだ。ユメ、出てきてくれ」

 

俺が声をかけると三角形のデバイスからユメが投影される。

 

『初めまして、私は海の専用機、ダブルオーガンライザーのコア人格のユメです』

 

デバイスから映し出されたユメが自己紹介をしてからペコリと頭を下げると教室全体が一度スッと静かになり、次の瞬間...

 

「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」

 

専用機持ちの皆が椅子から転げ落ちるように驚いていた。

 

「ほ、本当にコア人格はあったんですの!?」

 

「前代未聞だぞ!?」

 

「コア人格!本当にあったんだ!!」

 

皆三者三様のリアクションを取って驚いていた。簪さんは...うん、何となくわかってたよ、好きだもんなこうゆうの。

 

「皆びっくりしただろうけど改めて彼女がダブルオーガンライザーのコア人格であるユメだ、第二形態移行に伴って会話が出来るようになっていたんだ」

 

「い、今更だけどもう何でもありねアンタ...」

 

「そう言われても鈴、なんか話せるようになったからとしか言えないしなぁ...まあ今回言いたいことはこれが本題じゃないんだ、ユメ、『敵対組織XOO』のデータを出してくれ」

 

『分かった』

 

全員から見える位置に大きめのホロウィンドウが現れて臨海学校で俺達を襲ってきた

アルケーガンダム、そして今日の学園祭で俺の妨害をしてきたガンダムヴァサーゴ・CBと

ガンダムアシュタロン・HCが表示される。

 

「っ...その赤い機体は、臨海学校で一度海を墜とした...」

 

「ああ、その通りだよ簪さん、そして今回学園を襲撃して最後に現れてサイレントゼフィルスを援護したあの2機と臨海学校で俺達を襲ってきた赤い機体は同じ組織だと考えてる、そして亡国機業とは協力関係にあると見ていいと思う」

 

「なんだと!?」

 

「奴らの目的は正直何とも言えない、でも...」

 

続きを話そうとして俺は口をつぐんだ...MSは既にこの世界に普及してしまっているからそのことに関しては問題ない、だがアルケーやアシュタロン、ヴァサーゴはおそらくISだろう、MS型ISともいえるかもしれない、そしてそれは俺のダブルオーガンライザーにも言えることだ。

つまり、それを話すと何故俺のISと奴らのISが何故似ているのかという事になるし、何より俺の転生の事に近付きかねない。

 

「どうしたの?海くん」

 

「そこから先はこの私が話そう!とうっ!」

 

楯無先輩が疑問に思って俺に声をかけた直後に何処からともなく聞き覚えのある声が聞こえたかと思えば、束さんが部屋の後ろでヒーロー着地的なポーズをとっていた。

 

「はぁ...束、いい加減にしろ」

 

織斑先生が溜息を吐きながら束さんを臨海学校の時のように鷲掴みにしようとするが...

 

「おっと、ちーちゃん、悪いけど今回は束さんも大真面目なんだ、だからまずは話を聞いてほしいな」

 

「ふむ...いいだろう」

 

「じゃあ、という訳で...こほん」

 

束さんが俺の隣に立つと胸の谷間から小型のデバイスを取り出しユメのデバイスに接続する。わざわざそこから出す理由はあったのだろうか?

 

「ユメちゃん、今接続したデバイスからMSの普及率と各国の動向のデータを表示してくれる?」

 

「分かりました!お母さん!」

 

束さんがユメに声をかけるとホロウィンドウに現在、世界でどのくらいMSが普及しているかのデータと本来極秘であろう各国の方針に関するデータが表示される。しれっとユメが束さんをお母さんと呼んでいたのは置いておくとしよう。

 

「これを見てもらえれば分かると思うけど、大体一か月前に発表されたMSは驚異的な普及率を見せていて、現在は全世界でなんと有人機無人機合わせて10000機が購入されてる、それに伴ってISの保有台数が少なかった国では既に主戦力をISからMSへ転換して女性対男性で紛争が起きかねないような所もある」

 

「ISの代わりが出てしまったからもしやとも思ったけど...」

 

「そう、これから第三次世界大戦が起こるといっても過言ではないよ、いやもう起きてしまっているといってもいいかも、アメリカみたいなISの保有台数の多い大国はISとMSの同時使用をすることで均衡を保ってるけどドイツを中心とした一部の国はMSを中心にすることを決定、アラスカ条約の脱退、女性優遇制度の撤廃を直ぐにでも宣言しようとしてる」

 

「なっ...ドイツが...」

 

「そしてこれこそが奴らの狙い...MSの普及による女性対男性の戦争を起こすこと...束さんはそこまでたどり着いたよ、つまりワールド・イノベイション社が奴らの隠れ蓑だったってことだね」

 

「戦争...」

 

束さんの話を聞いた皆は驚きの表情を隠しきれないでいるようだった。特にドイツの代表候補生のラウラはショックが大きいようだ。

 

「な、ならそのワールド・イノベイション社をなんとか抑えれば!」

 

シャルルさんが声を上げるが束さんの反応は芳しくない。

 

「残念ながら既にワールド・イノベイション社は存在していないよ、MSの修理キットや整備方法その他諸々はしっかりとばらまいといて既に代表の2人は雲隠れしてる」

 

「そ、そんな...」

 

がっくりとシャルルさんが肩を落とす。他の皆も更に気落ちしている様子だ。そんなみんなの様子を見て俺は口を開く。

 

「そして世界をこんな風に貶めている元凶があの赤い機体や今回襲撃していた2機の機体のパイロットって訳だ。俺はまだいるとは思っているが...」

 

「で、でもよ海、その組織がMSを普及して戦争を起こそうとしてる理由は何なんだよ?」

 

「それはまだ分からない...でも俺達が生きてる世界を戦火で染める訳にはいかない、だから俺は蒼機兵として独自に動くことにする」

 

「なっ...武藤、そんな事駄目に決まっているだろう!」

 

織斑先生が俺の言葉に驚きながら即座に止めてくる。それもそうだろう。専用機持ちや千冬さん、束さんで頭数を揃えてから何とかするものだと俺が入学した時にした話で千冬さんは想像していたのだろうから。

 

「俺は...大丈夫です。それに代表候補生の皆も近いうちにそれぞれ自分の国から帰還命令が出ると思います。だから結局散り散りになるのは決まっているかと...」

 

俺が答えると織斑先生は口を噤んだ。改めてみんなの方を見回してから俺は口を開く。

 

「これから世界は大変なことになっていくと思う、でも皆は自分を見失わないで貫き通してほしい、危なくなったら直ぐに俺が飛んでいくし、束さんと協力して奴らの居場所を見つける。だからそれまで絶対にやられないでくれ!頼む!」

 

「海、とにかく悪い奴らがいてそいつらと戦うために今は準備が必要って事だろ?」

 

「まあ、簡単に言えばそうだけど...」

 

「なら、大丈夫だ!なんかあっても俺達は自分の身は自分で守れるしなんとかする!」

 

「一夏...」

 

一夏の言葉に他の専用機持ちの皆も頷く。

 

「皆...ありがとう」

 

俺は皆に頭を下げる。束さんが協力してくれたのもあるが、急にこんな話をした俺を信じてくれたからだ。そんな皆には俺は筋を通すのが当然だろう。

 

「そうと決まれば俺から皆に渡すものがある」

 

俺はダブルオーライザーの拡張領域から片手で持てるぐらいの大きさの立方体を取り出し専用機持ちの前にそれぞれ一つづつ置いた。

 

「海?これは何だ?」

 

皆首を傾げながら立方体を持ちまじまじと見たりしている中、箒が俺に立方体の正体を聞いてくる。

 

「それ1つでラファールの半分程の拡張領域を持っているデバイスだ、その中にはそれぞれ皆に対応した必要な『もの』が入ってる。ただし今はロックがかけてある。それぞれ皆にとって本当に必要な時にロックが解除される筈だ。だから今は俺を信じて皆のISの拡張領域に仕舞ってほしい、かなり小さめにしてあるし、ISの装備扱いじゃないから一夏の白式の拡張領域にもギリギリ仕舞える筈だ」

 

「分かった、海を信じて仕舞っておくとしよう」

 

箒の言葉に皆それぞれ立方体を仕舞った。

 

「皆、聞いてくれてありがとう!これから大変だと思うが決して自分を見失わずに頑張っていこう!」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

こうして俺達は解散して会議室を出てそれぞれの部屋へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして学園祭襲撃事件から丁度1週間後、世界は過激派の男性を中心とするMS派と女尊男卑を掲げる女性を中心とするIS派に分かれ、後にMSIS戦争や男女戦争とも呼ばれる第3次世界大戦が勃発したのだった...

 

IS学園の生徒もそれぞれの母国の招集に応じ帰国、有事に備えるようになった為IS学園は一時休校となった。

 

「人類はよほど戦いが好きと見える、まあそう仕向けたのは僕達だけどね、さあ君はどうする?武藤海...」




という訳で学園祭後の会話でした。

世界にMSが普及してこれから一気に世界中で戦いが増えるようになります。

ガンダム要素というかオマージュ等を取り込みながらオリジナルの展開にしていく予定です。

それでは今後も楽しみにしていただければと思います。
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オリジナル展開 蒼機兵介入編
52話 蒼としての覚悟


いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回から完全にオリジナルの話で進行していきます。

ガンダム的要素を散りばめつつオリ主とそれぞれ1回づつは絡めていく予定です。

それでは楽しんでいただければ幸いです。


学園祭から1週間、世界は男性中心のMS派と女性中心のIS派に分かれての争いが始まっていた。

 

日本やアメリカなどはMSもISも導入し男女を平等に扱うようにしたことで国内で大きな戦闘を

発生させずに済んだが、元々ISの保有台数の少なかった小国ではISからMSの転換を決定、それに反対するISパイロットがクーデターを起こしたり、また別の国ではMSというISに対抗できる力を手に入れた一部の男性が暴走し、無差別テロを起こすなど既に世界各国のあらゆる場所で血が流れていた。

 

IS学園ももちろん無関係という訳にはいかず、代表候補生はそれぞれの国から招集がかかり、それに伴って休校、一般の生徒も帰省または寮で待機という事になった。

 

「束さん、世界情勢はどうなっていますか?」

 

「リアルタイムで全世界の動向を監視してるけどそれは酷いものだよ、まず中東やアフリカでは既に小規模な戦闘は勃発しているし、世界の株価やらも軒並み暴落、極めつけは空路も海路も戦闘が始まってからほぼ使えなくなったことだね、後おまけに中国もISからMSに転換しようとする動きがあるよ」

 

今現在俺は束さんと月兎製作所のラボで世界情勢を確認していた。現時点で世界は予想よりもかなり悪い方に進んでいる。このままでは本来無くていいはずの犠牲が増えることは確実だろう。

 

「案の定こうなっちゃいましたか...やっぱり動くしかなさそうですね...」

 

「それは...そうだけど...でもやっぱり駄目だよかーくん!かーくんが1人で世界中の戦闘に介入するなんて!」

 

「今一番動きやすい立場なのは俺なんです、俺が動かないとそれだけ多くの血が流れることになる、それだけは絶対にダメだ」

 

束さんの目を真っ直ぐに見ながら俺は束さんの説得に答える。何の因果か、俺はガンダムOOのソレスタルビーイングと同じように各地の戦争に介入しようとしているのだ。

 

「それでも!そんなことをしたらかーくんは世界中から狙われるようになる!かーくん1人で戦わなくたって...!」

 

「この世界にあいつらやMSが出来てしまったのは俺の所為なんです、だから俺が責任を取ります!」

 

「分かったよ...でもサポートはさせてね?」

 

「ありがとうございます!」

 

俺はお礼もそのまま部屋を飛び出してダブルオーガンライザーを纏い、研究用アリーナの窓から外に飛び出す。

 

「ユメ、コアネットワーク経由で束さんからの情報と照らし合わせながら世界中の情報を集めてくれ、ドイツと中国の情報は最優先で頼む」

 

『分かった、でもいいの?いくらお母さんが薬を打ってくれたとはいえ無理すると海の身体は...』

 

「MSとIS両方と戦う事になるから両方の事が分かる俺がやった方が早いだろ?、それにこの状況になったのは俺の所為だ、だから俺がやらなきゃいけないんだ、例えこの身が壊れたとしても...」

 

『海...』

 

「頼む...!ユメ...!」

 

『第二形態移行の時、私は貴方に付き合うっていったでしょ?だからずっと一緒にやるよ、早く済ませてサクッと帰るぐらい気概でいるから!』

 

「ああ...!頼りにしてる!」

 

『という訳でさっそくだけどドイツの情報が分かったよ、海が心配してるのはレーゲンの操縦者の事だね?』

 

「そうだ、俺が一方的に知ってて申し訳ないがラウラは普通の生まれじゃない、だからドイツがISからMSに主戦力を転換したら戦うために生み出されたラウラみたいな存在はどうなるかなんて火を見るより明らかだ!」

 

『海の推測は残念ながら大当たりだよ、代表候補生として従わざるをえない帰還命令を出してドイツに戻した後、ISを没収されて幽閉されてる。動きも早くて明後日には秘密裏に処分が決定してるよ、レーゲンからSOSが来てたから応答して情報を貰ったんだ』

 

「さっそくやったか...人間っていうのは俺も含めてとことん愚かだな!ユメ!ここからドイツまで全力で飛ばして間に合うか?」

 

『ダブルオーガンライザーはGN粒子をSEに変換して補給し続けられるから休みなしで飛び続けられるよ!今から飛ばせば余裕で間に合う!』

 

ユメの返事を聞いて俺はドイツの方向を見ながら心の中で改めて覚悟を決め直す。

 

「よし!今からラウラ救出ミッションを開始する!」

 

『了解!』

 

自分の覚悟が完了したことへの確認も含めてこれから行動を開始する旨を声にするとユメが返事をしてくれた。

 

本当に頼れる相棒だ...

 

———————————————————————

 

---ドイツ国内 ドイツ軍施設 牢獄

 

<ラウラ視点>

 

帰還命令に従ってドイツに帰った私を待っていたのはレーゲンの没収と黒ウサギ隊全員の投獄だった。無論私達の前に現れた上層部の人間に反論はしたが返ってきたのは

 

「お前達の役目は終わったという事だ、これまでご苦労だったな、お前達の『処分』は追って通達する」

 

という冷たい言葉だった。

 

「申し訳ありません隊長...私も何も聞かされていなくて...」

 

「お前は何も悪くないぞクラリッサ、正直...篠ノ之博士の話を聞いた時から予想していたことだ...」

 

「な...それならば何故隊長だけでも逃げなかったのですか!」

 

「隊長が部下を置いて逃げる訳にはいかないだろう?私が1人で逃げていたらそれこそお前達の命が危なかっただろうからな」

 

「隊長...それでも明日には私達は処分されてしまいます、ISも無いのにどうすれば...」

 

クラリッサは俯きながら私に如何したらいいのかと問うてくる。それに対して私は...

 

「うむ、現状私達に出来ることは何もないな」

 

「なっ!?それなら隊長はこのまま何もせずに消されるのを待つというのですか!」

 

「そう焦るな、現状と言ったのだ」

 

「それなら隊長には何かこの状況を脱する手段が?」

 

クラリッサの疑問に対して私は胸を張りながら堂々と答える。

 

「ああ、私のお兄様がきっと来てくれる」

 

「隊長のお兄様というのはまさか...!」

 

「そう、そのまさかさ」

 

私は暗い牢獄の中でお兄様が来るのを信じて待ち続けるのだった。

 

———————————————————————

 

<海視点>

 

「既にドイツの領空か...まあGN粒子は散布してるしかなり上空にいるから直ぐに見つかるという事は無いだろうが...さてラウラの居る施設は何処だ?」

 

ラウラ救出の為に休憩なしで飛び続けた俺は既にドイツの領空に侵入していた。上空からユメと一緒にラウラのいる施設を確認して作戦を立てる。

 

「俺としてはなるべく波風立てずに行きたいからやっぱりステルスモードとGN粒子を駆使して隠密に終わらせたいところだな」

 

『海、残念ながらその時間は無いみたい、処分の予定が変更になって、もう連れ出されてる!今から5分後には実行される!』

 

「っ!時間に余裕があるから見つかりにくいこの位置に来たのが仇になっちまったか!ユメ!ラウラの位置とシュヴァルツェア・レーゲンの詳細な位置を今直ぐ調べてくれ!」

 

『了解!』

 

ユメが返事をした5秒後には俺の視覚に位置データが表示される。それを確認した後、俺は施設に向かって急降下を始める。

 

「全速力で向かう!『TRANS-AM-FX』始動!」

 

ダブルオーガンライザーが真紅に染まり、爆発的な加速で目標に向かう。

 

『ハイパーセンサーで目標を確認!っ!MSの火器でやる気!?なんて悪趣味な...』

 

ユメの言葉にハイパーセンサーで地上を確認すると、ラウラの他に複数人に対してアヘッドとGN-XⅢがそれぞれの武器を向けているのが見えた。

 

「このままMSの武装を撃ち抜きながら突っ込む!」

 

GNツインドッズキャノンとGNソードⅡライフルモードで3機のMSの武装を撃ち抜きながら俺はMSとラウラ達の間に降り立つ。

 

「罪の無い命を好き勝手する権利なんてこの世界の誰にもねぇぞ、ドイツ軍さんよ」

 

俺はGNソードⅡの切っ先を向けながら自分への戒めも込めた言葉を目の前にいるMSと偉そうな格好をした人間に投げかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かーくんがいる時には言えないし無理はしてほしくないけど...何今の!?めちゃくちゃかっこよくない!?ねえ!?くーちゃん!上空から敵の武器だけを撃ち抜きながら降り立ってGNソードの切っ先を向けて啖呵切るなんてもう主人公だよ!?あんな事されて守られたら女だったら誰でも惚れるって!」

 

「落ち着いてください束様、興奮しすぎてかなり早口になってます」




という訳でMSの登場で処分されかけたラウラを救う回でした。

ラウラの恋愛対象は一夏から変わることは無いのでご安心?を

最後のシーンはエクシア初登場時とフリーダムの有名シーンを足して2で割ったような感じをイメージしました。
いいですよね...舞い降りる剣のフリーダム...

それでは今後も楽しみにしていただければと思います。
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53話 ラウラの意志

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回はアツい展開!かも?
今後の流れの指標的な話にもなっている筈です。

楽しんでいただければ幸いです。



<<戦闘BGM 機動戦士ガンダムOOセカンドシーズン O-RAISER>>

 

俺はMSから視線を話さずに『TRANS-AM-FX』を解除しつつ拡張領域から小型の端末を取り出し、後ろにいるラウラに投げ渡しながら話しかける。

 

「その端末にレーゲンの位置情報が入ってる、お前の部隊の隊員は俺がキッチリ守ってやるから早く相棒を迎えに行ってこい!」

 

「っ!感謝します!お兄様!」

 

端末を受け取って俺の話を聞いたラウラはそのまま走ってレーゲンを取りに行った。少し心配だがラウラなら大丈夫だろうと直ぐに切り替えて、目の前のMSに集中する。

 

「蒼機兵...武藤海!何故男性操縦者の1人が我々に敵対する!」

 

「何故って...今さっき言ったばっかりじゃねぇか、『罪の無い命を好き勝手する権利なんてこの世界の誰にもねぇぞ』って」

 

俺の前に言える偉そうな格好をした奴が分かり切ったことを聞いてきたのでそれに返答してやる。そしてそのままMSのパイロットに俺は質問を投げかける。

 

「MSのパイロットさんよ、あんたらも本心であんな年端も行かないような女の子達を殺せって命令する奴に従ってんのか?」

 

「っ...俺達だってこんな事したくないさ...でもやらないと俺の、俺達の家族を食わせられなくなるんだ!仕方ないだろ!」

 

俺の問いに対してアヘッドのパイロットは感情を吐き出すように声を荒げる。

 

「でも、ここであいつらを殺して...それでアンタは家族に胸張って生きていけるのか?」

 

「そんなこと...分かってんだよ!俺だって!」

 

目の前のアヘッドのパイロットは感情的になり俺に怒りをぶつけるようにGNビームサーベルを抜いて向かってくる。

それをGNソードⅡで受け止めて鍔迫り合いになり、そのままMSのパイロットは俺に自身の怒りを吐露し続ける。

 

「MSが出て、これでやっとあんな子供じゃなく俺達が直接守れる、あんな小さな子供を戦わせずに済むって思って訓練し続けたのにMSによる最初の任務がこれだぞ!」

 

「そうか...」

 

俺は腰にマウントされている2本目のGNソードⅡを抜きアヘッドのGNビームサーベルを弾き飛ばし、思いっきり蹴り飛ばした。

 

「今の世界が歪んでいると思うなら一度0から考えてみろ、答えが出た時にまた会えるといいな」

 

「ぐっ...蒼機兵...」

 

加減していたとはいえISのパワーで蹴り飛ばされた衝撃は相当なものだったのだろう、MSのパイロットは地面に叩きつけられた後、気絶したようだ。

 

「それで?あんたはどうするんだ、ドイツ軍のお偉いさん」

 

俺とアヘッドが戦っている間に何やらこそこそやっていたドイツ軍のお偉いさんの方を向いて声をかけるとびくっと身体を跳ねさせてこちらを向くが直ぐにこちらを嘗めているような表情で浮かべた。

 

「どうするかだと?そんなのお前とその後ろの奴らを纏めて消せばいいだけだ、もうすぐここにMS100機の大部隊がくるんだからなぁ!」

 

お偉いさんが叫ぶと同時に残っていたGN-XⅢが俺の後ろにいる黒ウサギ隊の隊員達に残っていた装備のGNビームライフル攻撃してきたので、俺は即座にGNフィールドを展開してそれを防御し、即座にGNソードⅡをライフルモードに切り替えて打ち返し2機を破壊する。

アヘッドと異なりGN-XⅢは無人機なので遠慮なく胴体を撃ち抜いて破壊した。

 

『海!こっちに向かってくるMSを捕捉!アヘッド10、GN-XⅢ90の大部隊だよ!』

 

「分かってる!どうとでもしてやる!と言いたいところだけどラウラの仲間を庇いながらだとちと厳しいな...」

 

「お兄様!」

 

俺がどうやって戦うかを考えているとレーゲンを纏ったラウラがこっちに向かってきていた。どうやら上手く取り戻したようだ。

 

「ラウラか!相棒は取り返せたみたいだな!」

 

「おかげでなんとか!でもこの状況...どうすれば...」

 

真っ直ぐこちらに向かってくるMSの対処を考えているラウラに俺は口を開く。

 

「まずラウラはお前の仲間を安全な場所まで避難させてくれ、それまでの足止めは俺がしておく」

 

「なっ...!いくらお兄様でも無茶です!1人で100機のMSを相手にするなんて...」

 

「そう思うんだったらささっと避難させて戻ってきてくれ!どっちにしろ非武装の人間を守りながら100機のMSを相手にするのは無理なのは分かるだろ?」

 

「っ...!分かりました!すぐに戻ってきますから!」

 

流石軍人という事もあってラウラは俺の話を聞いて一瞬迷ったような表情をしたものの、直ぐに切り替えて自分の仲間を連れて離れていった。

 

「さてと...ユメ、さっきのアヘッドのパイロットみたいな人間もいるから出来ればアヘッドは無力化でいきたいんだが...バスターライザーソードってぶっ放したら有人機無人機関係なく消し炭だよな?」

 

『そうだね、ISと違ってMSは装甲で受けるしかないから確実に消し炭になるかな、でも『TRANS-AM-FX』でここまでぶっとばしてきた関係でまだ粒子のチャージ終わってないよ』

 

「なら普通に戦った場合で考えた時の粒子残量はどうだ?」

 

『アヘッドは無力化、残りは撃墜で考えるとちょっと厳しいかもね、分かってるだろうけどただ破壊するより手加減する方が難しいから、戦う事は出来るけど途中で粒子のチャージが間に合わなくなるかも』

 

「そうか...でもやるしかないよな!付き合ってくれ!」

 

『もちろん!』

 

ユメに状況を聞いた後、俺はMS部隊が飛んでいる高さに合わせるように飛び立ち、戦力差100対1の戦いに飛び込んでいった。

 

———————————————————————

 

<ラウラ視点>

 

全員揃っているな!ここまでくれば安心だ。

 

私はお兄様に言われた通り、黒ウサギ隊の隊員を安全な場所に避難させた。そしてそのままお兄様の元へと向かおうとする。

 

「待ってください隊長!そのまま彼の元に向かうつもりですか!」

 

「そうだ!1秒でも早くお兄様の元へ向かわなければ!こうしている間にもお兄様は1人で100機のMSを相手に戦っているんだ!」

 

隊員の1人が直ぐにでも飛び立とうとした私を引き留めてくる。

 

「ですが...分かっている筈です!隊長が参戦しても100対1が100対2になるだけ...それなら隊長だけでも...」

 

「それだけは絶対にダメだ!お兄様は私を信じて1人でMSの相手を引き受けたんだ!ここでお兄様を放って逃げ出すのは私が私としている意味が無くなる!これからもお前達やお兄様、嫁や皆と一緒に生きていく為に、ここで逃げるのは絶対に駄目なんだ!」

 

一緒に逃げようと提案してきた隊員に、私が私である為の決意をぶつける。これが私なのだと感情を口にすると...

 

「た、隊長!レーゲンが!」

 

「なっなんだ!レーゲンが光って...VTシステムはもう搭載されていない筈!」

 

突然私の纏っているシュヴァルツェア・レーゲンが強く輝きだし私はそのまま光に飲み込まれた。

 

 

「ここは...」

 

気が付くと私は見たことのない場所に立っていた。戦後の様で周りにある建物は崩れているが、所々に植物が生えていて気持ちのいい風が吹いていた。

 

「ここはコアネットワークの意識空間です。マスター」

 

私の後ろから声が聞こえて振り向くとドイツの軍服を着た、私と同じ銀髪の女が立っていた。

 

「コアネットワークの意識空間だと?じゃあお前は...」

 

「はい、私はシュヴァルツェア・レーゲンのコア人格です、そしてここへ呼んだのは第二形態移行の為です」

 

「第二形態移行だと?」

 

「マスターの自分が自分としている意味と意思が確固たるものになった事で私との繋がりが強くなった今なら第二形態移行出来るということです。蒼機兵...お父様が下さったデバイスの中にあった情報と物資のお陰でマスターに完全に適合した機体になることが出来ます」

 

私の前にいるシュヴァルツェア・レーゲンのコア人格だという女はそう説明してきた。お兄様の事をお父様と言っている事は今は気にしないでおこう。

 

「そうか、なら頼む」

 

私は2つ返事でレーゲンに第二形態移行を頼む。

 

「その前に、1つ...このまま第二形態移行してお父様に協力すればマスターは確実にドイツにはいられません、帰る場所もなくなりますが...」

 

レーゲンは心配するような試すような表情で私に質問ともいえない事実を投げかけてくるが...私の答えは決まっている。

 

「帰る場所ならある、それはもうドイツじゃない私が私でいられる仲間の所だ、その仲間を守る為にお前の力が必要だ、レーゲン...一緒に戦ってもらうぞ」

 

「充分です、共にまいりましょうマスター」

 

「ああ!」

 

そして私の視界はここに来る前と同じ光で埋め尽くされ...

 

 

「た、隊長?その姿は...」

 

「戻ってきたか...」

 

私に呼びかける声で現実に戻ってきたことを確認してそのまま自身の纏っているレーゲンを確認すると...

 

「これが第二形態移行したレーゲン...いやシュヴァルツストライクか...これなら!」

 

「隊長が第二形態移行...」

 

私は一度黒ウサギ隊の全員を見てから声をかける。

 

「これから私はお兄様...蒼機兵の援護に向かう!すぐに戻ってくるから安心して待っていてくれ!」

 

「「「はい!」」」

 

仲間達の力強い返事を背に私はお兄様の元に飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うぉぉぉ!これアツい!アツいよ海!』

 

「アツいってなんだよ!まだ無人機20機しか墜としてねぇんだから気合入れてサポートしてくれユメ!」




という訳で急に変わった世界に苦悩する人間がいることと...
ラウラ覚醒回でした!

シュヴァルツェア・レーゲンの第二形態移行は名前で元ネタ分かっちゃう人も多いかもしれませんね!

それでは今後も楽しみにしていただければと思います。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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54話 黒ウサギの攻撃

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

今回は正真正銘アツい展開!ってやつです!

楽しんでいただければ幸いです。


「流石にきっつい...なあっ!!」

 

後ろから近づいてくるアヘッドやGN-XⅢをGNツインドッズキャノンの砲塔を後ろに向けて撃つことで牽制しながら右手にGNソードⅡ、左手にGNビームピストルⅡを持ち、正面の敵に突っ込み、1機のGN-XⅢにタックルしてそのままGNビームピストルⅡを至近距離で連射して撃墜する。

 

「今のでGN-X20機目か...アヘッドは避けて先にGN-Xからやってるけどそれでもまだ80対1...Xラウンダーの先読みはまだしもニュータイプの殺気読みは無人機には意味ないから頼れるのは俺の技量だけだ!持ってくれよ俺の身体!」

 

『うぉぉぉ!これアツい!アツいよ海!』

 

「アツいってなんだよ!まだ無人機20機しか墜としてねぇんだから気合入れてサポートしてくれユメ!」

 

『だからアツいんだって!これでなんとかなるかも!』

 

「どういう意味だよ!ちっ!...来るっ!」

 

正面からGN-Xがこちらに突っ込んできたのを捉えて俺は即座に迎撃しようとした時...

 

「下からISの反応!?これは...」

 

<<BGM 機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER STARGAZER 星の扉>>

 

俺が下から接近してくるISをセンサーで捕捉したと同時に攻撃が飛来し、俺の正面にいた2機のGN-Xに直撃してそのまま撃墜された。

 

「遅れて申し訳ないお兄様!ラウラ・ボーデヴィッヒ、シュバルツストライク、これより参戦する!」

 

「ラウラ!その姿は...そうか...第二形態移行したんだな、お前がお前である理由、そして意志は決まったみたいだな」

 

「ああ、私はお兄様と...いやこれまで出会ってきた仲間全員と生きていく!これまでも、そしてこれからも!だから今はこの戦いに勝つ!」

 

「よし!なら一緒に戦うぞラウラ!」

 

「もちろんだ!お兄様!」

 

俺とラウラは互いの背中を預けるように背中合わせになり俺達を包囲しているMS部隊と対峙する。

 

「残りの敵は全部で78機...その内有人機のアヘッドが10機だ、なんとかしてアヘッドは撃墜せずに無力化したいんだが...」

 

「それなら私に任せてくれお兄様、私のシュバルツストライクの単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)なら対処出来る筈だ、だから有人機と無人機を分断したい、いけるか?お兄様」

 

「任せろ!直ぐに始めるぞ!ユメ!チャージは?」

 

『まだ完了して無いけど『TRANS-AM-FX』の発動なら10秒間までなら支障はないよ!』

 

「よし!3カウントで始める!ラウラ、準備はいいか!」

 

「いつでも大丈夫だ!お兄様!」

 

「3...2...1...『TRANS-AM-FX』始動!」

 

3カウントの後、俺は『TRANS-AM-FX』を発動し敵の視線を一気に集める、膠着状態から急に動き出したのでMS部隊は焦って俺を集中砲火するが狙い通りだ!

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

俺は急制動や急加速を多用し機体を振り回す、ラウラが来る前に無人機は有人機に追従ではなくAIが判断して自動的に行動している事が分かったので、俺は人間とAIの反応速度の差を利用してアヘッドとGN-Xの距離をどんどんと開けていく。アヘッドと距離の近いGN-Xは隙を見てGNソードⅡで切り裂く。

そしてアヘッドとGN-Xの間に出来た空間に飛び込む。アヘッドには背を向けてGN-Xだけを見る。

 

そのタイミングで『TRANS-AM-FX』は終了し、10機のアヘッドは俺の背中に一斉に武装を向けるが———

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー) 慣性制御空間(イナーシャル・コントロール・エリア)発動!」

 

ラウラの単一仕様能力によって1機残らず完全に動きを止められる。ラウラはそのまま俺の横に並び立つ。

 

「それがラウラの単一仕様能力か」

 

「ああ、慣性制御空間(イナーシャル・コントロール・エリア)...慣性停止能力(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)が進化したものだろう、レーゲンの時よりも広範囲かつ強力な結界を展開することができ、空間に展開する分、以前ほど集中しなくても即座に発動が可能なようだ、それにコントロールエリアの名の通り慣性を停止させるだけではなく更に強くする事も出来る...使い方次第でかなり応用が利きそうだ」

 

「それは凄いな、俺でも手を焼きそうだ」

 

単一仕様能力について会話をしながら俺とラウラはGN-Xと対峙する。

 

「後はGN-Xを全滅させるだけだが...ラウラ!単一仕様能力はどれくらいもつんだ?」

 

「そうだな、一度発動してしまえば私の意志で解除しない限りそこに意識を集中していなくても5分はもちそうだ」

 

「2人で60機のGN-Xを5分以内に撃墜か...いけるよな?ラウラ」

 

「もちろんだお兄様、あの有人機の無力化の時間も必要だし、今の私とお兄様のコンビなら3分で片付けられるだろう」

 

「よし、じゃあぶちかますぞ!」

 

俺の掛け声と同時に2人でGN-Xに突っ込んでいく。こうなってしまえば後は殲滅するだけだ、手加減は要らないだろう。俺はGNツインドッズキャノンをパージして両手に保持し、GNビームソードを発振して暴れまわる。

 

「流石お兄様だ!」

 

「ラウラも第二形態移行したてでよく使いこなしてるな!」

 

俺が暴れている間にラウラも第二形態移行したばかりの機体を使いこなしてGN-Xを蹂躙していた。

第二形態移行したラウラの機体はどうやらストライクノワールをベースにラウラ合わせた装備や調整になっているようだ。今も非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)になっている二対のレールカノンで打ち抜きながら腕からワイヤーを射出して敵を絡めとり、そのまま振り回して一気に多数のGN-Xを撃墜している。

 

「相性がいいであろう機体のデータと資材をそれぞれ渡したけど...ラウラはストライクノワールベースになったか...まあ黒いし、ワイヤー使うし、レールガンもあるし...なんとなく予想はついてたな」

 

戦いながらラウラの第二形態移行について考察する。見た目は俺の転生前にあったMS少女のような感じだが、色合いや武装は細部は違えどストライクノワールである、何故ガンダムを知らない筈のラウラのISがガンダムの機体をベースに第二形態移行したのかは前に俺の渡したデバイスにある。

 

学園祭襲撃事件の後の専用機持ちを集めて行った会議の際に俺が皆に渡したデバイスにはそれぞれと相性が良さそうなガンダム作品の機体のデータとなるべくそれに近いもので用意が出来た資材を詰め込んであった。ロックが掛けてあったが、それぞれのISのコア人格とのシンクロが深まった場合に解除される仕組みだ。

 

ラウラに渡したデバイスにはストライクノワールを始めSEED系の機体のデータが入ったものを渡していた。

 

「お兄様!」

 

お互いに20機づつ撃墜した所でラウラが俺の近くに来て話しかけてくる。

 

「残り20機...一気に片付けてしまった方が良いと思うのだが...どうだろうか」

 

「そうだな、2人でぶっ放せば20機ぐらいだったらサクッといけそうだ」

 

「なら決まりだな、丁度残りの奴らは固まってこちらに向かってきている」

 

ラウラの言う通り残りのGN-Xは話すために少し距離を置いた俺達に対して、一塊になって突っ込んて来ていた。

 

「タイミングは俺がラウラに合わせる!いつでもいいぞ!」

 

俺はGNツインドッズキャノンをサイドバインダーに装着し、両手にGNソードⅡをライフルモードで持ち、全砲門をGN-X部隊に向けて照準を合わせる。

 

ラウラもレールカノンを敵に向け腰部にマウントされていたビームライフルショーティーを両手に持ち、構える。

 

そしてすぐさまラウラが叫んだ。

 

「今だ!お兄様!」

 

「よし!全部もってけ!」

 

ラウラの合図と同時に構えていた射撃武装を一気に撃ち放つ、途中でGNマイクロミサイルも撃って目の前の空間を全て焼き払う。ラウラもレールガンとビームライフルショーティーを連射して的確に敵機を撃墜していく。

 

シールドを構えて防御しようとする機体もいたがGNマイクロミサイルが当たり、シールドを破壊された後、ラウラのレールカノンで貫かれてそのまま撃墜される。

 

撃ち続けて20秒もしないうちにあっという間にGN-Xは数を減らしていき、ほぼ撃墜が完了した。

 

「センサーには後2機映っているが...っ!ラウラ!」

 

「大丈夫だお兄様、分かっている」

 

残っていた2機が弾幕を無理矢理突破してラウラに突っ込んできたので俺が撃とうとするがその前にラウラが1機をレールカノンで撃ち抜き、もう1機を単一仕様能力で停止、左手でフラガラッハ3 ビームブレイドを抜刀し停止させたGN-Xに突き刺して右手に持ったビームライフルショーティーを至近距離で連射して完全に破壊する。

 

「(これゲームでよく見たやつだ...)」

 

俺はラウラのGN-Xの撃破の仕方を見て、暢気にも転生前にやっていたデフォルメされたMSで戦う戦略シミュレーションゲームの戦闘アニメと全く同じ動きをしているなと思ってしまった。

 

「これで全部だな、お兄様」

 

「ん?、ああ!そうだな、お疲れ様、ラウラ」

 

「お兄様こそ、1人で100機のMSを相手にしていたんだ、お疲れ様だ」

 

「まあ、それはあれだ、俺が蒼機兵だからな、何とかなるだろって思ったんだよ、ぶっちゃけキツかったけどな、ラウラが来てくれて助かったよ」

 

「なら私も頑張った甲斐があったというものだ...それとお兄様...」

 

「どうしたラウラ?」

 

「えっと...その...ただいま!」

 

「ああ...おかえり、ラウラ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ユメ、私もお父様とお話したいのですが...』

 

『機会があればね?私はパートナーだから呼び捨てだけど私以外のコア人格全員が海の事父親呼びしてるの知らないからびっくりしちゃうかもだし...あ、呼び方は前のレーゲンのままでいい?』

 

『そうですか...お礼がしたかったのですが...あ、呼び方はレーゲンで大丈夫ですよ』

 

『そのうち機会は来ると思うから大丈夫だよ、レーゲン』




という訳でラウラのパワーアップ初戦闘兼オリ主との共闘でした。

パワーアップまたは乗り換え後の戦闘でBGMバックに無双するのはロマンだよなぁ!

という理由で書きましたw後悔はしませんし、今後も書きます!

それでは今後も楽しみにしていただければと思います。
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55話 広がる憎悪

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

先週は忙しくて投稿できませんでした...

成るべく週一投稿は守れるように頑張りますのでこれからも本作をよろしくお願いします。


「という訳で適当に軍用機を奪ってそっちに向かわせたのでお迎えだけお願いしてもいいですか?護衛にはラウラが付いてますから道中も大丈夫だと思います」

 

ラウラと一緒にMS部隊を退けて有人機であるアヘッドも無力化してパイロットも離れたところに放った後、その辺にあった軍用機を奪ってラウラの仲間達を乗せ日本に向かわせて、俺は束さんと連絡を取っていた。

ラウラの仲間の1人が軍用機を操縦出来て本当によかった。

 

『おっけー、かーくんはもしかしなくてもそのまま近くの国でもう一仕事するつもりだね?』

 

「はい、さっき束さんからもらった情報通りならアイルランドがMSとISの戦闘が始まっててやばそうなので、ちょっと行ってきます」

 

『分かった、ただしそれが終わったら必ず帰ってくる事!それ以上の無茶は束さんが許さないんだからね!』

 

「分かってますよ、じゃあラウラ達の迎えはお願いします」

 

『もちろん!束さんにお任せってね!』

 

「助かります、ではまたあとで連絡しますね」

 

『うん、気を付けてね』

 

束さんとの通信を切って俺はそのままアイルランドの方向に向かう。日本からドイツへの移動と比べたらずっと短い時間で済むだろう。

 

「それにしてもアイルランドか...」

 

『アイルランドに何か思い入れなんて海にあったっけ?』

 

アイルランドに向かう道すがら、ぽつりと呟くと不思議に思ったのかユメが声をかけてくる。

 

「ん?ああ、ユメだから話せるけど、今この世界にはアリー・アル・サーシェスやらフロスト兄弟やらいるけど、なんでガンダム世界で主人公と敵対してた人間ばっかりいるのかなと思ってな、アイルランドはガンダムOOのロックオン・ストラトスの出身地だからふと頭をよぎったんだよ。1人ぐらいこっちに味方してくれるガンダムの登場人物でも居ないかなって」

 

『あー...確かに...でもなんでなんだろうね?私には分からないや...あの子なら、エクスエクシアのコア人格なら分かるかも...』

 

「でもまだエクスアクシアのコア人格はまだ出てこれないんだろ?」

 

『そうなんだよね...だから現状知りようがないの』

 

「じゃあこれ以上考えてもどうしようもないな、今ある問題を解決することに集中しよう、という訳でちょっと飛ばすぞユメ!」

 

『了解!』

 

考えても解決しなさそうなので俺は切り替えてアイルランドに向かって飛んで行った。

 

———————————————————————

 

情報を基にステルスモードでアイルランドに侵入し、そのまま戦闘が起きている地域へ向かった。

 

『ハイパーセンサーで戦闘中と思われる反応を捉えたよ...ってなにこれ...』

 

「ユメ?どうしたんだ...っ!これは」

 

ユメの反応に疑問をぶつけようとした瞬間にハイパーセンサーからもたらされた情報で俺はユメが驚いた理由を理解した。

 

『これは...酷い...』

 

「遅かったか...畜生...」

 

更に近づいてはっきりと見えてきた景色に俺は間に合わなかった事に後悔する。

 

「俺が...俺がこの世界に来たから...」

 

俺の目の前に広がるのは辺り一面に燃え広がっている炎と崩れた建物、そして地面に横たわったり、ひどく損傷してしまったりしていた大量の亡骸だった。

 

「くそっ...『いたいよぉ』なんだっ!?」

 

突然頭の中に直接響くような声が聞こえて辺りを見回すが俺以外には何も無く、誰もいない。

 

いやだぁ!』『死にたくな...』『おかぁさぁん!

 

周りに誰も居ない筈なのにまた声が聞こえる。老若男女問わず断末魔や悲鳴のような声ばかり俺の頭に響いて段々大きくなる。

 

「ぐっ...残留思念が...俺がニュータイプだから...ぐぁぁぁぁ!」

 

『海!?大丈夫!?海!』

 

「頭が...割れそうだ...!」

 

頭を万力で締め付けられながら内側をかき回されるような痛みに思わず顔が歪む。

 

憎い!』『許さない!』『殺せ!

 

悲鳴が怨嗟の声に変わり、俺自身が復讐心にまみれそうになる。

 

殺す...コロセ、ころせ、死ね...殺せ殺せ殺せ殺せ!

 

「ぐがあぁぁぁぁ!はぁ...はぁっ...」

 

『か、海?』

 

ただならぬ俺の様子にユメが心配そうに声をかけてくる。

 

「ユメ...戦闘は...どうなってる...?」

 

『え?あ...えっとテロリストのMS40機をアイルランド軍のISとMSで押さえてたんだけどアイルランド軍はIS1機とMS1機まで減らされちゃったみたい...テロリストはまだ30機健在だからこのままだと危ないと思う』

 

俺がユメにまだ続いている戦闘の状況を尋ねると、ユメは困惑しながらも状況を教えてくれる。

 

「この惨状を引き起こしたのはそのテロリストで問題ないんだな?」

 

『う、うん、少し前から一部の過激派の男性グループが画策してたみたい...』

 

「それが分かればいい...制圧しに行くぞ」

 

『わ、分かった...』

 

俺は一直線に戦場に向かう。

 

数分もしないうちにアイルランド軍とテロリストが視界に入り、俺はその間に割り込む。

 

「なっ...蒼機兵!どうしてここに!」

 

「アイルランド軍へ、こちら蒼機兵、武藤海だ、残りのテロリストは俺が片づける、死にたくなければ俺の前に出るな、以上だ」

 

テロリストもアイルランド軍も驚いている間に俺は一方的に背後のアイルランド軍に警告を送る。そしてテロリストを正面に捉える。

 

「クラウダ5機、ドートレス・ネオ10機、アヘッド5機、GN-XⅢ10機か...『TRANS-AM-FX』始動...『ライザーシステム』起動...」

 

『海!?バスターライザーソード使うの!?』

 

「ああ、あいつらはテロリストだ、ドイツ軍のMSパイロットと違って罪の無い人達を沢山殺してる、もう情状酌量の余地は無い、ここで消し飛ばす...」

 

『っ...分かった...ライザーシステム起動、GN粒子のチャージ完了...いつでもいけるよ』

 

ユメから準備完了の報告がきたのでGNソードⅡとGNツインドッズキャノンを正面に構える。察したテロリストが俺を攻撃しようとするがもう遅い...

 

「お前らは取り返しのつかないことをしたんだ、だからここで吹き飛べぇぇぇ!!」

 

俺が叫ぶと同時にダブルオーガンライザーから極太のビームサーベル発振され、射線上にいたMSは跡形もなく消し飛んだ。なんとか避けた機体は左右に分かれるように距離を取ろうとするが...

 

「逃がすわけ...無いだろぉぉぉ!」

 

両腕を開くように動かすと極太のビームサーベルは左右に分かれ、その同線にいた残りのMSは全て薙ぎ払われる。

 

ダブルオーガンライザーは原型機であるダブルオーライザーと比較してライザーソードを発生させる軸の武装がGNソードⅡの他にGNツインドッズキャノンもある為、ライザーソード2本を発振可能であり、更に右手と右肩、左手と左肩のそれぞれのGNソードⅡとGNツインドッズキャノンで発振している為、今のように分けることで左右同時に薙ぎ払うことも可能だ。威力が高すぎるので今まで使うことは無かったが...

 

『正面のMS反応、すべて消滅...生体反応も同様に無し...テロリストは全員死んだよ、海...』

 

「そうか...」

 

ユメに返事をしてそのままその場に滞空する。自分が自分で無くなったような感覚が収まるまで動けそうになかった...

 

「蒼機兵、武藤海聞こえますか?我々の救助及びテロリストの制圧感謝致します、状況が状況ですから我が国への不法侵入等に関して不問にすると政府から通達されました。拘束等一切しないとお約束致しますので少しお話させていただければと思うのですが...」

 

アイルランド軍のISから通信が届き我に返る。悟られないように俺は直ぐに通信に返答する。

 

「こちら蒼機兵、了解した、そちらの提案を呑もう」

 

通信してきたISの誘導に従って地面に降りてISを解除する。そのまま同様にISを解除したアイルランド軍の女性隊員についていくが、途中で唯一残っていたMSのパイロットも合流した。

 

「あ、ディランディ大尉お疲れ様です」

 

俺はずっと自分を襲っていたあの感覚について考えていたが女性隊員の言葉に思わず前を向いて合流したMSパイロットを見て驚きが隠せなかった。

 

「嘘だろ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かーくんの脳波が大きく乱れてる!かーくんに何かあったんだ!くーちゃん!ドイツからの娘達を迎えに行った後私は別行動でかーくんの所に向かうから色々と頼んだよ!」

 

「分かりました、こちらはお任せください束様」

 

「待っててねかーくん...」




という訳でちょっと寄り道してオリ主にはテロリストの制圧がてらニュータイプおなじみの被害に遭ってもらいました。

そして最後のあからさまな名前は...!

それでは今後も楽しみにしていただければと思います。
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56話 予想外の出会い

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

期間が空いて申し訳ないです。

仕事で精神をやられまして...

今回は読者の皆さんも気になっていると思うので楽しんでいただければ嬉しいです。


アイルランド軍のISパイロットがディランディ大尉と呼んだ男の見た目は完全にガンダムOOに出てくるロックオン・ストラトスと同じだった。

 

「嘘だろ...」

 

あまりの衝撃に思わず言葉をこぼしてしまう。

 

「どうかしましたか?」

 

「...いえ、あのMSパイロットと会話は出来るのかなと」

 

「元々、ディランディ大尉には同席頂く予定でしたので出来ますよ、何か気になることでも」

 

「ええ、まあ...」

 

「大尉は凄いんですよ、まだ配備されて間もないMSを見事に乗りこなしてあっという間に大尉の座まで上り詰めてMSの専用機まで頂いてるんです、特に狙撃の腕が凄くて!」

 

「そうですか」

 

ISパイロットの言葉から目の前にいるのはニール・ディランディだろうと判断する。

 

「おいおい、エイミー、そんなに色々話すなよ、一応国家機密だぞ?」

 

「えー...だってお兄ちゃんの事自慢したかったんだもん!」

 

「自慢って...お前が案内してる人間はもっとすごい人間だろうが...」

 

2人の会話から俺を案内していたパイロットがまさかのOO劇中では自爆テロによって死亡していた妹だという事も分かった。

 

「あ、すみません蒼機兵さん!」

 

「いえ...ご兄妹なんですね」

 

「はい!自慢の兄なんです!あ、この建物の中でお話出来ればとの事ですので少々お待ちくださいね」

 

歩いているうちに大きな建物の前に着くと、そう言ってISパイロット...エイミー・ディランディは建物の中に入っていき、俺と...ニール・ディランディらしき男が残された。

 

「明るい妹さんですね」

 

「ん?ああ、ちょっと明るすぎるがな、でも仲良くやってるよ、蒼機兵...あんたに兄妹は?」

 

「俺は一人っ子ですね」

 

「そうか、ところで蒼機兵さんよ、なんか俺について気になることがあるみたいだが...」

 

先ほどの会話を最初から聞いていたのか、俺に対してニール・ディランディが何が気になるのかと聞いてくる。向こうから聞いてくれるならありがたい。

 

「じゃあ自分達2人しかいない今のうちにまずは確認を...まずは、貴方はニール・ディランディで間違いないですか?」

 

「ん?またフルネームは名乗ってない筈なんだけどな、まあそうだ、俺はニール・ディランディで間違いないぜ」

 

「では次に...『ソレスタルビーイング』、『GN粒子』、そして『ロックオン・ストラトス』この言葉に聞き覚えは?」

 

「っ!?...お前、一体何者だ...!」

 

俺の言葉に驚愕して警戒するニール・ディランディ、概ね満足な反応が得られたので俺はそのまま言葉を続ける。

 

「俺が何者かは後で教えます、そのかわり今日出国の準備をしておいてください」

 

「んないきなり言われたって...!」

 

「俺は元の世界で貴方が死んだ後、世界がどうなったかほぼ全て知っています」

 

「何ッ!?」

 

「それも含めて全てお話します、ただ貴方以外の人に...アイルランド政府やら色んな所に聞かれるわけにはいかないんです、だから俺と一緒に日本に来てください、『蒼機兵と篠ノ之束から技術の提供で受け取りに自身が指定された』とでも言えば許可は下りる筈です、必要なら俺も政府に交渉しましょう」

 

「はぁ...オーライ、分かったよ、その代わりちゃんとこの後の話し合いでウチの政府の高官連中を説得してくれよな」

 

「もちろんです、丁度妹さんも戻ってきたみたいですしね」

 

タイミングよく建物から手を振りながらエイミー・ディランディが出てくる。

 

「お待たせしました~!準備が出来ましたのでこちらにどうぞ~!」

 

肩をすくめながらニール・ディランディは建物に入っていき俺も続いて入る。

 

応接室のような部屋に案内されると既に部屋の中には政府の高官らしき人間がいて、とても丁寧にもてなされ、机を挟んで高官と対面で座り、軍属のディランディ兄妹はボディガードも兼ねている為なのか立って控える。

俺が座って一呼吸置くと高官が口を開いた。

 

「今回は助けていただき大変感謝しています」

 

「いえ...こちらはこちらの目的の為に動いただけですから...」

 

「それでも結果的に我が国のIS・MS部隊は全滅せずに済みましたから、救っていただいたことに変わりはありません」

 

当たり障りのない会話を続けながら俺は高官の狙いを探っていた。

 

「(感情や考えに悪意はない...狙いは弱体化した防衛力を何とか補強したいという事か...自分の国を守りたい一心の行動...政府の人間がみんなこんな人間ならな...)」

 

少し集中すれば目の前にいる高官の心の内が手に取るように分かった。死者の残留思念に囚われかけたのはどうやら悪い事だけではなかったみたいだ、もう二度とごめんだが...

 

「貴方さえよろしければもう少しアイルランドに滞在してISパイロットに指導等を行っていただきたいというのが本心ですが...助けていただいた上にそんな失礼な事は言えません、せめて滞在中は最大限おもてなしさせていただきます」

 

「(自身の思惑すら隠さずに曝け出すか...)ありがとうございます、申し訳ありませんが自分はこのあと直ぐに日本に帰ることになると思います、ですが技術提供をさせていただきたい」

 

「え!?よ、よろしいんですか!?」

 

「はい、その代わり日本でしか自分達の技術は渡せません。なので日本政府への交渉と、受け渡し担当として彼...ニール・ディランディを日本に同行させたいのです」

 

「分かりました、その条件を吞みましょう、日本政府への交渉も直ぐに対応致します、ディランディ大尉も直ぐに準備をお願いします」

 

「了解致しました」

 

高官の指示にニール・ディランディは直ぐに返事と敬礼を返し、部屋を出ていく。

 

『(海、そろそろお母さんが到着するよ)』

 

「(やっぱりか、束さん心配してきちゃうと思ったんだよなぁ、分かった、ありがとうユメ)」

 

「すいません、迎えが来たようです、また不法侵入してしまうことをお許しください」

 

「いえいえ、技術提供をしていただけるのですからそのくらいは全く問題ありません」

 

俺が高官に再度の不法侵入を誤り、問題ないと返事をもらった瞬間にズドーンと大きな音と振動がする。

 

「何だ!?何が!?」

 

高官の人と部屋に残っていたエイミー・ディランディが混乱している間に部屋の天井から束さんが派手に降りてきて俺に飛び付いてくる。

 

「かーくん大丈夫!?頭痛くない!?気分は!?」

 

「束さん、大丈夫ですから一度離れてください...他の人もいますから...」

 

「し、篠ノ之博士...」

 

「あ?なんだよお前、束さんとかーくんの時間を邪魔したら殺すぞ」

 

「ひっ...」

 

「束さん、駄目ですよそんなこと言ったら、せっかく色々気を利かせてくれたし、真に国の事を考えてるこの世の中じゃ絶滅危惧種みたいなものですよその人は」

 

別に束さんに声をかけるつもりでもなかったであろう高官の人は束さんに凄まれて怯えてしまったので俺が束さんを宥める。

 

「ふーん、まあいいや、早く帰ろうかーくん、戻って色々診ないと...」

 

「束さん申し訳ないんですけど帰りに人間1人とMS1機追加で載せられますか?」

 

「んー?直ぐにかーくんを診れるように改良型人参ロケットできたから積載量もたっぷりで全然余裕だけどどうして?」

 

「(プライベートチャネルで話しますけど自分達に味方してくれそうな向こうの世界の人間を偶々見つけました)」

 

「(成る程、それは是非ともお話と協力を仰ぎたいね)」

 

「(技術提供の受け渡しの担当として俺から指定したのでもう準備してくれてます、後はこの国は今回の戦闘で戦力がかなり落ちてしまっているのでこの前完成した対MS用の防衛システムを一台置いていきたいんですけど...)」

 

「(丁度もしもの為に一台持ってきてあったからそれを置いていこうか、解析すれば量産は出来るだろうし非殺傷で転用も出来ないだろうからね)」

 

「(ありがとうございます)」

 

プライベートチャネルで数秒で束さんとの会話を済ませる。

 

「じゃあ帰ろうかかーくん」

 

「分かりました、じゃあ自分達は帰ります、もちろんディランディ大尉も連れていきますのでご安心を」

 

「わ、分かりました。本日はありがとうございました」

 

「あ、対MS用の防衛システムも置いていきますので有効に使ってください、技術提供の一環という事で」

 

「は、はい...」

 

防衛システムを置いていくことを伝えて俺は束さんと建物を出て外に行くとそこには記憶になる人参ロケットを4倍ぐらいにスケールアップしたものが地面に突き刺さっていた。

 

「どおりで振動と音がでかいと思った...」

 

俺が人参ロケットを見上げているとMSを運搬用の車両に乗せてニール・ディランディがやってきた。

 

「どぉわぁ!何なんだこりゃぁ!」

 

車から降りて人参ロケットを見て驚いている間に束さんがサクッとMSをロケットに搬入していた。

 

「君がかーくんの言ってた人だね、ほらほら早く乗って!防衛システムはもう置いてきたしサクッと帰るよ!」

 

そう言って束さんは俺とニール・ディランディをロケットに放り込むと自分もさっとロケットに乗り込んであっという間に飛び立つ。

 

「おい待て説明を...おわぁぁぁぁ!」

 

「いつものだぁ...」

 

俺はロケットの中でニール・ディランディの反応を楽しみながら空の旅を楽しむのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--ロケット機内

 

「そういえば束さん」

 

「ん?どうしたんだいかーくん」

 

「ユメが束さんの事をお母さんって呼んでたんですけど、コア人格は皆束さんの事を母親だと思ってるんですよね」

 

「そうだね、皆いい子たちだよ」

 

「まさかと思いますけど俺の事父親って思ってたりしないですよね...」

 

「サア、ドウダロウネー」

 

「カタコトになってますよ...」




という訳でまさかの初代ロックオン・ストラトスことニール・ディランディとの邂逅でした。この世界ではちゃんと家族も無事です。

この出会いがどんな展開を齎すのか...

それでは今後も楽しみにしていただければと思います。
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57話 世界の裏

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

また期間が空いて申し訳ないです。

転職したりしていたので中々執筆が出来ませんでした...



---IS学園 第3アリーナ

 

<一夏視点>

 

学園祭から12日ぐらいが過ぎて...俺はアリーナと寮を往復する生活を続けていた。

 

「はぁ...」

 

「どうしたのだ一夏、そんなに大きなため息など」

 

俺が大きなため息を吐くと一緒にいた箒に聞こえていたらしく、どうしたのかと聞いてくる。

 

「いや...世の中がこんな状況だから皆自分の国に帰らないといけなかったのも俺達が寮とアリーナの往復だけの生活になるのも分かるんだけどよ...」

 

「そうだな、既に第三次世界大戦が始まっているとも言われている」

 

「どうしても海の事が気になってしょうがないんだ、あいつは蒼機兵として動くって言ってたけど、クラス対抗戦の時みたいにまた1人で全部解決しようとしてるんじゃないかって...」

 

「今回は姉さんも一緒だから大丈夫だとは思うが海の性格上確かに心配だな...」

 

「連絡しても全然反応してくれないから余計に気になってさ、ラウラや鈴の返事が無いのも気になるし」

 

あれからちょくちょく海や他の皆には連絡をいれているのだが、ラウラ、鈴そして海からは全く返事が無いのがとても気になっていた。

 

「それなら私が直接姉さんに確認してみよう、海は姉さんがサポートしている筈だし私からの連絡なら直ぐに出てくれる筈だ」

 

「悪いな箒」

 

「礼には及ばん、私も気になっていたところだったからな」

 

俺が感謝を伝えるとそう言って箒はそのまま紅椿で束さんに連絡を取り始めた。

 

———————————————————————

 

--月兎製作所

 

<海視点>

 

アイルランドから戻った俺は月兎製作所の施設に到着するやいなや、束さんによって人間ドック的な機械に放り込まれた。

 

「現時点で脳に関する異常は無し...なんか普通の人間ではほぼ使われていない部分が活性化しているからそれが原因?でも今回の事でそうなった可能性の方が...」

 

検査は既に終わって今はベッドに座っている俺の横で束さんがブツブツと呟きながら俺が死者の残留思念に囚われた事象について整理していた。

 

「束さん?俺は大丈夫ですから...確かにちょっと大変でしたけど怪我の功名というかなんというかお陰で他人の思考が多少分かるようになりましたし...」

 

「確かに今は数値上の異常は無いけど束さんは心配だよかーくん...また無理して束さんが細胞異常を治す前に何かあったら...ん?」

 

束さんが心配そうな顔をしながら俺に声をかけてきている時に何かあったのか束さんが反応した。

 

「箒ちゃんから連絡が来たよ、珍しいね、どうしたんだろう?」

 

箒から連絡が来たらしく、束さんは珍しいと言いながらそのままスピーカーで電話に出た。

 

『もしもし姉さん、箒です、今大丈夫ですか』

 

「箒ちゃんならいつでも大丈夫だよ!それでどうしたのかな?箒ちゃんから連絡なんて」

 

『そちらに海はいますか?一夏が連絡しても返事が無いと心配していて』

 

どうやら箒は一夏が俺に連絡が付かないと言って心配していたのを束さんに確認しようとしているのだろう。

 

「俺ならここにいるぞ、どうしたんだ?」

 

『やはり姉さんと一緒にいたか、いや一夏がお前やラウラ、鈴と連絡が付かないと心配していてな』

 

「悪かったよ、連絡は確認してたんだけど忙しくて返事が出来なくてな。今さっきやっと落ち着いたんだ」

 

『そうだったのか、だが一言ぐらい反応してやってくれ、一夏が訓練に身が入ってなくてかなわん』

 

「分かった分かった、次から気を付けるよ、ところでラウラも一緒にいるけど声聞くか?」

 

『何?何故ラウラが海や姉さんと一緒にいるんだ?』

 

「あーっとそれは色々とあってだな」

 

俺が言葉を濁しながら答えつつ束さんの方を見ると頷いたので俺はそのまま続ける。

 

「理由については今から話す、その前に一夏はいるか?」

 

『一夏なら今は私の隣にいるぞ、一夏、海がお前にも会話に参加して欲しいそうだ』

 

箒が一夏を呼んで直ぐに一夏が会話に参加してくる。

 

『なんだか久しぶりな感じがするけど...どうしたんだ?海』

 

「お前を呼んだのは俺やラウラ、鈴がお前の連絡に返事が出来なかった理由を説明する為だ、結論から言うとラウラはMSの台頭によってドイツに用済みとされ消されかけてた、それを阻止して救助する為に俺は動いてたって訳だ、鈴に関してもラウラ程ではないにしろ現在は軟禁状態にあるだろうと予測している」

 

『なっ...!?』

 

「ラウラや鈴だけじゃない、世界中でMSによるテロやMSとISの戦闘が起きて沢山の人が危険に晒されている、俺はこの目で実際に見てきたんだ、テレビだと報道規制されてるみたいだけどな」

 

『そんな...』

 

俺の話を聞いた一夏や箒は声を聞くだけでも驚きを隠せていないのが分かった。

 

「俺は準備が完了次第、鈴の救助に向かう、そのあとは各地のテロや戦闘に介入して少しでも被害を抑えられるように戦い続ける」

 

『な、なら俺も...』

 

「お前は関わらせるわけにはいかない、もちろん箒もだ」

 

『んなっ!?どうしてだよ!』

 

「お前らは世界から束さんの関係者と完全に認識されていてほぼ独立した勢力と扱われている俺と違って立ち位置があやふやなんだ、そんな状態で中国に侵入して戦闘行為してみろ、日本と中国で戦争が始まりかねないんだ」

 

『っ...』

 

「だからお前らを関わらせるわけにはいかない」

 

『でもっ...それでもっ!』

 

「大丈夫だ、束さんもいるし、今回はラウラも協力してくれる、そうだろ?」

 

「ああ、鈴の救出作戦には私も参加する、だから心配するな嫁よ、お兄様の援護は任せてくれ」

 

俺の言葉にいつの間にか部屋に入ってきていたラウラが会話に入ってきて頼もしい言葉をくれた。

 

『ラウラ!?お前だって海に助けてもらったばっかりなんだろ!それにドイツが...!』

 

「私はもうドイツに未練はないさ、なんせ用済みと言って殺そうとしてきたんだからな、今の私はただのラウラ・ボーデヴィッヒだ。第二形態移行もしたし安心してくれ。それにお兄様も準備が完了次第と言っていただろう、今すぐにという訳じゃない」

 

『ラウラ...』

 

「まあそういう訳だから心配するなとまでは言わないが鈴の事は任せてくれ、無事に取り戻してくる、それに今回は波風立てる気は無いからな」

 

『分かった...鈴を頼むぞ海』

 

「ああ!ある程度落ち着いたら会おうぜ」

 

『もちろんだぜ!箒もありがとな!』

 

『い、一夏が訓練に集中できてないと私も困るからやっただけだ!海、ラウラ、姉さんも無理はしないでくれ、それでは切るぞ』

 

「善処するよ」

 

「もちろんだ」

 

「はーいじゃあね箒ちゃん」

 

そう言って箒から通話が切れて、部屋に一瞬の静寂が訪れるも直ぐに束さんが口を開いた。

 

「さて箒ちゃんといっくんとの会話も終わったところで丁度話に出てた中国娘の現在が色々と確定したよ」

 

「俺の事診てた筈なのにいつの間にやってたんですか...」

 

「そのくらいのマルチタスク束さんにとっては朝飯前なのだ!という訳でほいっと」

 

束さんが空間投影ディスプレイを起動すると目の前に情報が表示される。

 

「これは...思ってたより深刻だな」

 

表示された情報を見て俺は思わず顔を顰めた。

 

「ISは取り上げずに病気の治療中の父親を実質的な人質にほぼ休みなく試作MSの仮想敵及び小さな内紛に投入して使いつぶしてる...か」

 

「即座に消し去ろうとしたドイツがまともに見えるな、まあそれでも戻る気は微塵も無いが...」

 

俺の隣で同じように情報を見ていたラウラが呟く。

 

「らうちゃんの時と違って直ぐに殺される心配は無いけどどっちにしろ時間は無いだろうねぇ、このデータの通りならもうすぐ潰れちゃうよ?この中国娘」

 

「そうですね...ってらうちゃん!?束さんがラウラの事を名前呼び!?」

 

「むーっ!前にもこんなことあった気がするけど失礼しちゃうな!束さんでも普通に人と会話ぐらいするんだってば!それにらうちゃんもコア人格と会話出来たみたいだしね、それだけで束さんの信頼度はぐーんと上がるのだ」

 

「こ、光栄です...」

 

「固い!固いよらうちゃん!もっとやわらかーくいこうぜぃ!もう軍人でもないんだしさー」

 

気を許した相手には急にダル絡みを始める束さんは置いておいて鈴救出の為の作戦会議を始める。

 

「とりあえず束さんは置いておいて今回は目標が2つあるから手分けして当たった方が良さそうだな」

 

「ああ、人質の父親も同時に救助しないと何をされるか分からないからな、分担はどうするのだお兄様?」

 

「その前にもう少し情報を...父親が人質なのは分かったが母親は...」

 

『甲龍の操縦者のお母さんなら今は日本にいるみたいだから大丈夫だよ海』

 

「そうか、ありがとうユメ、なら鈴の父親の救出をラウラに頼みたい、行けるか?」

 

「もちろんだ、任せてくれお兄様」

 

「ありがとうラウラ、必要な装備については全部用意する、一切悟らせずに連れだしてくれ、中国政府が勘付く前に全て終わらせる」

 

ちょっと不謹慎だけど作戦の準備でリーダーっぽいことするの楽しいな...

 

「俺は鈴の救助に向かう、軍の施設から戦場まで様々な場所にいることが想定されるから色々と応用が効いて直ぐに離脱も出来る俺の方がいいだろう」

 

「最低でも丸1日は休まないとだめだよかーくん、らうちゃんもね!」

 

「もちろんです、流石に疲れましたし...決行は明後日の早朝からにする予定ですよ、今日はご飯食べて寝ましょうか、という訳でこれからご飯を作ります、ラウラ手伝ってねー」

 

束さんの忠告通りに今日明日はしっかり休むのがいいだろう、なんといっても今日は色々ありすぎて疲れが...まあご飯は作るんですけどね。

 

「わーい!かーくんのご飯だー!」

 

「お、お兄様!私はあまり料理が...」

 

「大丈夫大丈夫!花嫁修業だと思って!ほらほら!」

 

「持ち上げないでくれお兄様!自分で歩ける!」

 

その後はなんやかんやで楽しい食卓を囲めたことを伝えておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラウラ、包丁を使うときは切りたいものを猫の手で押さえるんだ、じゃないと料理が鉄の味になるぞ」

 

「な、成る程...猫の手...猫の手...」

 

「かわいい...」




次は鈴を助けに行く話の予定です。この世界の政府なら用済みなら使い潰すぐらいしそうだなと...

それでは今後も楽しみにしていただければと思います。
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58話 増える悪意

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

この世界はどんどん酷くなっていきます。ガンダム取り込んでるから当たり前ですね!


---中国国内

 

<鈴視点>

 

「はぁっ...はぁっ...」

 

政府の指示によって帰国した私を待っていたのは地獄だった。

病気の治療中で動けないお父さんを実質的な人質にされ、国内の紛争の制圧と開発中の試作MSの相手を強制される。

紛争の制圧はまだしも試作MSの相手が本当に辛い、甲龍を倒すことだけを考えているような重装甲、長距離戦闘用のMSが何機もいて私にレーザーや実弾を撃ってくる。

衝撃砲は通らないし、弾幕が厚すぎて近づけない。

 

「なんなのよっ...っく...はぁっ...はぁっ...」

 

何発か食らってSEがギリギリになったところで試験は終了する。

 

『1時間後に紛争の鎮圧に向かえ』

 

「はぁっ...はぁっ...了解...」

 

紛争の鎮圧だって身体的に試作MSの相手より楽ってだけで毎回犠牲になった人達の亡骸を見るのは慣れないし、いつも吐きそうになる。ただでさえ少ない食事が喉を通らなくなった。

ボロボロの身体を引きずってあてがわれた狭い部屋に戻るとそのまま私は床に倒れて気絶するように眠った。

 

「皆...一夏...」

 

———————————————————————

 

--月兎製作所

 

<海視点>

 

アイルランドから戻って2日後の早朝、予定通り俺とラウラは鈴の救出作戦を開始すべく準備をしていた。

 

「という訳だ。ステルスシステムの使い方はこれで大丈夫かラウラ」

 

「ああ、問題ないぞお兄様、それにしてもGN粒子というのはかなり万能なのだな、MSの動力という事しか分からなかったが...」

 

「まあそりゃあなぁ...今でこそMSの動力の1つとして世に出回ってるけど、前までは俺のダブルオ―ガンライザーにしか使われてなかったからな、使い方は俺達以外ほぼ分かってないのも当然だ。でもなラウラ、お前のシュバルツストライクの装甲材...VPS装甲もかなりのオーバーテクノロジーだ、ドイツに残らなくて良かったよ」

 

ラウラのシュバルツストライクの装甲材は調べてみたらしっかりVPS装甲だった。本来高重力下でしか作れない装甲材を作ってしまうISはやばいなと改めて思った。

 

「一定の電圧の電流を流す事で相転移する効果を持った特殊金属でできた装甲...物理的な攻撃はほぼ無効にできるあたり私も反則に近いなと思ってしまう...エネルギー切れの時に装甲の色が灰色に変わって敵に悟られてしまう可能性があるのが弱点だが、そもそもISはSEが切れたらどちらにしろ終わりだ。まあ燃費はかなり良い様だから心配もないだろうが...」

 

「そういうことだから色々と気をつけてな、捕まるのはもちろん何か残すのもアウトだ」

 

「分かっているお兄様、迅速かつ一切の痕跡を残さずに鈴の父上を救助する」

 

「頼りにしてるぞ!という訳で準備完了だ。束さん!海、ラウラ両名準備完了しました!これより鈴の救出作戦を開始します!」

 

「りょうかーい!中国には直ぐに着くだろうし、状況は常に束さんがモニターしてるけど万が一があるから気を付けてねー」

 

「ありがとうございます!ダブルオ―ガンライザー 武藤 海 出る!」

 

「シュバルツストライク ラウラ・ボーデヴィッヒ 発進する!」

 

こうして俺とラウラは朝日が昇り始めている空へと飛び立つ。

 

「ステルスシステム起動確認!お兄様!」

 

「よし!掴まれラウラ!『TRANS-AM-FX』始動!」

 

あらかじめ渡しておいたステルス装置をラウラが起動して俺達の姿を隠し、俺は移動に全てを回してラウラを運ぶことでラウラはエネルギーの節約になるし、最高速度が速い俺がラウラを運ぶことで移動時間も短縮できる。

 

「改めて体感すると早いな...お兄様のISは」

 

「その辺のISとは一線を画してるからなぁ...まあ30分もせずに目標ポイントに到達するから準備していてくれ」

 

「了解した!」

 

「潰れるなよ、鈴!」

 

俺は鈴の身を案じながら中国に向けて速度を上げた。

 

———————————————————————

 

---中国国内 某所

 

<鈴視点>

 

「話が...違うじゃない!」

 

1時間気絶するように眠った後、向かった紛争地域は今までの歩兵中心、あっても戦車が1~2台の小規模の戦闘ではなく大量のMSが好き勝手に暴れていた。

 

「まともに戦えるのは私だけ...」

 

他のISはそれぞれ別の紛争の制圧に行っていて今ここに存在しているISは私の甲龍だけ...

 

「私以外の政府軍は...っ!げほっ!おえぇぇぇ...」

 

私以外に戦力がいないかハイパーセンサーで探すとすぐ近くに人間だったもの(・・・・・・・)がこちらを見ていた、首から上だけで...

 

「はぁっ...はぁっ...」

 

胃の中のものをひとしきり吐いた後、再度センサーを確認するとMSが最低でも30機、こちらに向かってきているのが分かった。

 

「こんなところで死ねない...私はまだ一夏に気持ち伝えてないんだから!」

 

覚悟を甲龍のスラスターに込めるように吹かして私は一気に近づいてくるMSに接近する。甲龍は燃費は良いけど遠距離戦は不向き...接近してかき回しながら戦うしかない!

 

「なんだ!?」「ISがくるぞ!」「撃て撃て!」

 

私の接近に気付いた何機かが撃ってくるけどそんな射撃当たらない!

 

「このぉぉぉ!」

 

反応が遅れていた1機に双天牙月を思いっきり振りかぶって渾身の一撃を食らわせる。

 

「まず1機!」

 

衝撃でパイロットが気絶して地面に墜落したのを確認すると同時にその場を即座に離脱するとさっきまでいた空間にビームが通り過ぎる。

1機墜としたところで戦力差は最低でも29対1...ここからが本番...

 

「死ぬもんですか!それに...あんた達に何があったかなんて知らないけど、罪の無い人を巻き込むんじゃないわよっ!」

 

「俺達はこのMSでお前ら女に復讐する!皆殺してやる!」

 

私の前にいるMSのパイロットはそう叫ぶ、完全に復讐することに囚われているみたいだった。

 

「何が復讐よ!あんた達のやってることはただのテロよ!関係ない人達まで殺して!」

 

降り注ぐビームの雨を回避しながら再度接近する。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

叫びながら私は双天牙月を握りしめ戦い続ける。たとえ助けが来なくても、国に使い潰されようとしていてもこいつらだけは行かせちゃならない...そう思ったから...

 

———————————————————————

 

---中国国内 上空

 

<海視点>

 

「予定通りだ、このままステルスを維持しながら海上に降下し、そのあとはそれぞれ目標に向かう」

 

「了解したお兄様」

 

『かーくんかーくん!大変だよ!』

 

「何かあったんですか?束さん」

 

「目標の中国娘がテロリストのMSと戦闘してる!頑張って5機は墜としたみたいだけどまだ25機残ってるし機体のSEが危険域だよっ!」

 

「マジかよ...束さん座標を!」

 

「もう送ったよ!急いで!時間がもう無い!」

 

「了解!ユメ!全エネルギー、粒子をスラスターに回してくれ!ラウラ!ここで別れるぞ!そっちは任せた!」

 

『分かった!』「了解!」

 

「間に合ってくれよ!鈴!」

 

束さんから送られてきた座標を確認すればダブルオーガンライザーの全速で飛ばせば5分もかからずに行けると分かり俺は全力で鈴のいる戦場へと向かう。今いる高度なら誰かに見つかることもない。

 

3分程全速力で進むと眼下に映る景色が自然の緑から戦いの赤に変わり俺の頭の中にアイルランドの時と同等かそれ以上の怨嗟の声が響き始める。

 

「ぐぅっ...これは...あの時より人が死んでるな...くそっ...」

 

『海?大丈夫なの?』

 

「ああ、一度経験してるからなんとかな...それでも頭が割れるように痛いが...」

 

『無理しないでね?』

 

「善処はするよ...ってあれは...鈴っ!」

 

ユメと話しているとハイパーセンサーが多数のMSと戦っている鈴の甲龍を捉えた。既にボロボロでSEも残り僅かだろう。今この瞬間にも攻撃され続けている。あと一発攻撃を食らえばISの展開そのものが解除されるだろう。

 

「やめろぉぉぉ!」

 

俺はツインドッズキャノンをMSに連射しながら鈴とMSの間に割り込んだ。

 

———————————————————————

 

<鈴視点>

 

「やめろぉぉぉ!」

 

満身創痍で戦っていた私の耳に急にこの場にいない筈の海の声が聞こえたかと思えば、上空からビームが降り注いで私を追いかけてきていたMSの武装が破壊されて、その直後には私の目の前に海のダブルオーガンライザーが存在していた。

 

「鈴!大丈夫か!」

 

「な、んで...どうして海が...」

 

「お前とラウラに関しては国がMSを主力にした時点で危ないと踏んでた、ラウラの方が緊急性が高くなったから先にラウラを助けてたんだ、遅くなってごめん!」

 

「そう、なんだ...私助かるの?」

 

「ああ!もう大丈夫だ!お前をちゃんと一夏に会わせてやる!」

 

「で、でも私はお父さんを人質に...」

 

「それも大丈夫だ!今ラウラが...っ!そうか!じゃあラウラはそのまま離脱してくれ!丁度今ラウラから連絡があった、鈴のお父さんは無事に救助出来たみたいだ!」

 

私がお父さんを人質に取られている事も分かって海は助けに来てくれたんだ...

 

「私...また一夏に会えるの?」

 

「そうだ!だからもう少しだけ頑張ってくれ鈴!」

 

もう二度と会えないと思っていたのにもう一度一夏に会える...それが分かっただけで身体が羽のように軽くなった気がした。

 

「何故男性操縦者の内の1人である貴様が俺達の邪魔をする!武藤海!」

 

「当たり前だろ!罪の無い人間を殺すテロリストの邪魔することの何が悪いってんだ!」

 

海が私を庇いながらテロリストと戦っている。このままじゃ私は足手まといだ。

 

「俺達は今まで女共に虐げられてきた男達の無念を晴らすために戦っているんだ!何故それが分からん!」

 

「何が無念を晴らすだ!関係ない人達まで巻き込んで!」

 

海1人に全部やってもらって助かるなんて...私にはなにも出来ないなんて...

 

「全てISとISによって増長した女が悪いのだ!俺達はISと女を粛正する!」

 

「自分達の八つ当たりの責任を擦り付けてんじゃねぇよ!」

 

「そんなの絶対に嫌!」

 

私が叫んだ瞬間、私の身体は眩い光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ISが悪い...ね...」

 

「束様?大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だよ、くーちゃん...ただしっかり責任は取らなきゃなって再確認しただけ」




という訳で鈴救出作戦でした。ガンダムっぽくするなら世界の闇は深くないと!

次回は鈴の覚醒回の予定なのでお楽しみに!

それでは次回も楽しみにしていただければと思います。
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59話 嵐纏う神龍

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

FF16楽しいですよねー...すみませんでした。

今回は鈴の覚醒回になります。


思わず叫んだあと、私の身体が強烈な光に包まれたと思えば、何時の間にかさっきまで戦場にいた筈なのに何故か私の家によく似た建物の中にいた。

 

「やっとここに呼べた...全く、遅いのよ」

 

「っ!誰!」

 

後ろを振り向くと私に似ているけど何処か雰囲気の違う女が腕を組んで立っていた。

 

「今回はお父さんが助けに来てくれたから何とかなってるけど次同じようなことがあったらあんた死んでるわよ?」

 

「お父さん?てかあんた誰よ!知ったような口を利いて!」

 

「あら?全部知ってるわよ?ずっと一緒にいたんだから。今は絶賛ボロボロね」

 

「まさか、甲龍?」

 

「そうよ、あんたが現在進行形で纏ってるその甲龍よ」

 

海のISのコア人格であるユメちゃんを見たことがあるから今更コア人格には驚かないけどまさか甲龍にもあるなんて...

 

「まさか自分のISにもコア人格があるなんてって思ってるわね」

 

「なっ!?どうして思考が!」

 

「ここコアネットワークの意識空間よ?ましてや私を纏ってるんだからあんたの思考なんて筒抜けだわ、そんな事よりもいいの?ずっとここで話をしていて」

 

「はっ!そうだわ!現実では海が1人でMSの相手をしてるの!」

 

「それで?どうしたいの?分かってるだろうけどあんたは戦える状態じゃないわ」

 

「それでも!海に任せっきりなんて出来ない!一夏にも会いたいし、海にもお礼言いたいし、みんなともっと色々したいんだから!こんなところで止まれないのよ!」

 

私が思っていたことを全部吐き出すように口に出すと、甲龍のコア人格はため息を吐きながら口を開く。

 

「はぁ...流石私の操縦者様だわ、筋鐘入りね。分かったわ、じゃあ戻るわよ、第二形態移行してね」

 

「第二形態移行!?出来るの!?」

 

「ここに呼んだのもその為だもの、それにお父さんが渡してくれたデバイスのお陰で捗ったしね」

 

「分かった!細かいことは良いからやって!」

 

「はいはい、これからもあんたの事は見てるからちゃんとやりなさいよ」

 

「分かってるわよ!」

 

返事をした瞬間、私の視界はまた光に埋め尽くされた。

 

———————————————————————

 

<海視点>

 

俺の後ろにいた鈴が叫んだかと思えば辺りが眩い光に覆われた。

 

『これまたアツいやつだよ!海!』

 

「ユメがそのテンションってことはそういう事だろうな」

 

鈴を中心に辺りを照らす光に目が眩んでいるMSから視線を切らないようにしつつ、ハイパーセンサーで鈴を確認する。

 

「な、なんだ!この光は!?」

 

テロリストは急に鈴が光った事に驚いて動かない。そして光が収まると今までの甲龍とは明らかに違う装甲を纏った鈴がそこにいた。

 

<<BGM 新機動戦記ガンダムW JUST COMMUNICATION>>

 

「これが私のっ!神龍(シェンロン)(コウ)よっ!」

 

2本の青龍刀を構えながら鈴が進化した自身のISの名を叫ぶ。

 

「なっ...何だというのだ!何故機体が復活しているんだ!」

 

復活した鈴の姿を見て明らかに動揺するテロリスト達。その間に俺も鈴の姿を確認する。

 

「(予想通りシェンロンガンダムを基に二次移行したか、見た目はラウラと同じようなMS少女、色は原型機のような青と白メインではなく二次移行前の甲龍と同じ赤、あの青龍刀はEW版のタウヤーを改造した物だな、2本持っている事から恐らく連結する事も出来るだろう。何よりあの龍の頭を模したような非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)はドラゴンハングだろうか?腕部の装備じゃないから違うか?あれは鈴が使っているところを見ないと全部の機能は分からないな)」

 

「あんた達が何をしようと知らないけど...関係無い人達を巻き込んでんじゃないわよっ!」

 

「お前には分からんだろう!ISパイロットのお前には!虐げられてきた我々の憎しみが!」

 

叫びながらMSの1機が鈴に突っ込んで行く、あれはクラウダか!俺は察知は出来たが、目のMSの対処で動けなかった。

 

「鈴!」

 

「大丈夫よ!」

 

鈴が向かってくるクラウダを正面に見据えてから一呼吸置いた瞬間、鈴に向かっていったクラウダが突然上から殴られたように地面に叩き落された。

 

「今のは...単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)か?」

 

「どぉりゃあああああ!」

 

俺が鈴の機体について考察していると、よろよろと立ち上がるクラウダに向かって鈴が突っ込み、タウヤーを叩きつけた。

 

「がっ...!?」

 

鈴に攻撃されたクラウダは壊れてこそいないものの相当な衝撃だったのだろう、胸部の装甲がかなり凹み、パイロットが気絶したのかそのまま動かなくなった。

 

「重装甲がウリのクラウダをパイロットの気絶とはいえ一撃で倒すか...相当なパワーだな」

 

「海!早く手伝いなさいよ!さっさと片づけるわよ!」

 

「分かった!」

 

俺は鈴と合流する為に目の前の空間にGNマイクロミサイルを撃ちこみつつ即座に後退して鈴の横につく。

 

「少し離れてた奴らも合流してきたから残り38機って所か、有人機は10機それ以外は無人機だ、俺としてはこんなテロを起こした時点で有人機も容赦なくやるべきだと思うが...」

 

「なら私が有人機をやるわ、さっきみたいに中身を気絶させて叩き落せば文句ないでしょ」

 

「そうか...なら何も言わない、俺が無人機を全部引き受ける、データはコアネットワークで共有したから確認しながら戦ってくれ」

 

「ええ、任せたわ、終わらせて早く行きましょ?どうせ私はもうこの国には居られないんだし」

 

「そうだな、終わったら飯食うか、俺が作るよ」

 

「それは楽しみね!じゃあいくわよっ!」

 

俺と鈴は同時に突撃する。

 

俺はドッズキャノンで牽制しながら敵に接近して無人機のみをGNビームサーベルで切り裂き破壊する。

 

「はぁぁぁ!」

 

声が聞こえて鈴の方を確認するとさっきのクラウダと同じように鈴と戦っていたアヘッドが突然上から殴られたように地面に叩き落されそれに鈴がタウヤーを叩きつけて気絶させていた。

 

「私の単一仕様能力、嵐龍(フェンロン)はそう簡単に躱せないわ!」

 

「一定範囲内なら自由に衝撃砲を生成して撃てる能力か?今までより更に読みにくくなったな」

 

自分の周囲の敵を両肩からビームソードを発振して薙ぎ払いながら言うと直ぐに鈴から言葉が返ってくる。

 

「それだけじゃないけどね、今はこの使い方が一番やりやすいからそうしてるわ」

 

「成る程な、頼もしい限りだ」

 

鈴はテロリストの乗っているMSを次々叩き落してあっという間に残り2機まで減らしていた。

 

「俺も片付けるか、FXバースト起動!」

 

FXバーストを使い、俺は蒼い光を纏いながら無人機を端から切り裂いていく。今この場にダブルオーガンライザーの速度についてこれる機体はいないだろう。28機いた無人機はあっという間にスクラップになった。

 

「これで最後よ!」

 

鈴が叫ぶと龍の頭を模した非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)が稼働し鈴の両手に装着される。

 

「いっけぇぇぇ!」

 

残りのMSに向けて腕を伸ばすと原作と同じようにアームが伸びて龍の頭が敵に向かって飛んで行き片方は加えていたタウヤーを叩きつけ、もう片方は噛みついてそのまま地面に叩き落とした。

 

「成る程、延長する為のアームが拡張領域から展開されるのか...あれならかなりの射程があるな...」

 

第二形態移行した鈴の機体を分析して俺がぶつぶつ言っているとWガンダム系特有のガキィン!というカッコいい音を鳴らしてドラゴンハングが鈴の手元に戻り龍の頭が外れて元の位置に戻った。そしてそのまま俺の方へ来る。

 

「海!全部終わったわ!助けに来てくれてありがとう!」

 

「当たり前の事をしただけだ。遅くなって悪かったな鈴」

 

「ううん、海が来なかったら今頃私死んでた...だから本当に感謝してもしきれないわ」

 

「残りの話は安全な場所に戻ってからだ、機体はまだ飛べるよな?」

 

「ええ、問題ないわ、それよりも気絶させたテロリストはどうするの?」

 

「そのまま転がしておけば大丈夫だろ、国が勝手にやってくれるさ」

 

「...そうね、行きましょ」

 

俺が先にその場から飛び立つと鈴は自分が叩き落した有人MSを少し見てから俺に続いて飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば第二形態移行した時にコア人格と会話したんだけど...」

 

「だけど?どうしたんだ?」

 

「お父さんのお陰で助かったって言ってて、そのお父さんってどう考えても海なのよね...」

 

「いやぁ...どうゆうことだろうなぁ...」

 

「あんたも大変そうね...」




という訳で鈴の覚醒回でした。

感想でほぼ当てていた方がいましたが鈴の機体はシェンロンガンダムが元になっている機体に二次移行しました。

それでは次回も楽しみにしていただければと思います。
よければ評価や感想、誤字報告などいただけると励みになります。


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60話 束の間の平和

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

ちょっとルビコン3で燃え残った全てに火をつけて燃やし尽くした後に
ガンプラに嵌ってました...

今回は鈴救出後の話になります。

楽しんでいただければ幸いです。


鈴の救出に成功して、俺達は日本の月兎製作所のラボに戻ってきていた。

 

「改めて、ありがとね海、あんたが来てくれなかったら私死んでたわ」

 

「まあ、友達だからな。助けないって選択肢は無かったぞ、後ラウラも鈴のお父さんの救助をやってくれたんだ。礼ならあいつにもな」

 

「もちろん後で言いに行くわ。それにしても...海、あんたは一体どこに向かってるのよ...」

 

「ん?どういうことだ?」

 

「これよこれ!」

 

鈴が俺の作った料理を指さしながら言ってくる。どこに向かうも何も約束通り料理を作っているだけなのだが...

 

「あんな戦いをした後だから簡単な麺類とかそういうのかと思ってたらなんでこんな豪華なもの出てくるのよ!」

 

「なんでって言われても...そんな大したもん出してるつもりないんだけどなぁ...」

 

「タンドリーチキンとかサーモンのマリネとか出しておいて大したことないって何よ!」

 

「タンドリーチキンはあらかじめ漬けておいたのを焼いただけだし、サーモンのマリネだって切って盛り付けてソースかけるだけだぞ?」

 

「まだまだ他にもいっぱいあるじゃない!」

 

「どれもあらかじめ仕込んどいたものや簡単に出来る料理ばかりだ、なんてことはないさ」

 

「私色々と負けた気がするわ...」

 

「何言ってんだ?」

 

何故か項垂れている鈴を横目に俺は最後の料理をテーブルの上に並べる。

 

「おー!今日はなんだか豪勢だねかーくん!いい事でもあった?」

 

いつの間にか束さんが俺の近くに来て並べられた料理を見ていた。

 

「まああらかじめ仕込んでたっていうのと鈴と約束してたのとひと段落したから一度パーッとやろうって思ってたって感じです」

 

「成る程ねー、じゃあ今日はパーッといこうパーッと!」

 

束さんがテンションを上げながら皆を呼びに行ったので俺はそのまま残りの料理を作って並べる。

 

「鈴、悪いけどちょっと手伝ってくれ」

 

「あーもう!分かったわよ!」

 

鈴に手伝ってもらって俺は大量の料理を作り切ってテーブルに並べた。

 

———————————————————————

 

料理を作り終わった後、束さんがラボにいたメンバーを丁度集めてきたので皆で食卓を囲む。メンバーは束さん、クロエ、ラウラ、鈴、シャルロットさん、そして俺だ。

 

「いやぁ、やっぱりかーくんのご飯は最高だね!」

 

「なんだろうこの敗北感...」

 

「その気持ちよくわかるわシャルロット...」

 

「流石はお兄様だ」

 

「私もこのレベルになってみせます...!」

 

それぞれが料理を食べながら色々と話している。二名ほど何故か項垂れているがまあ大丈夫だろう。

 

「シャルロット様、少しいいでしょうか?」

 

「大丈夫だけどどうしたのクロエちゃん」

 

「デュノア社の社長...シャルロット様のお父様から連絡がありまして」

 

「っ...うん、それで?」

 

「こんな状況で申し訳ないがどうしても渡したいものがあるからフランスまで来てほしいとのことです」

 

「フランスに...」

 

クロエの話を聞いたシャルロットさんは困っているようだった。まあ急に言われても困るだろうな。でもこれは行くべきだと俺は思う。何故なら...

 

「俺は行くべきだと思うよシャルロットさん」

 

「武藤君...」

 

「色々な事があってシャルロットさんは親としばらく話せてないだろ?だったら一度会って顔を合わせてしっかり話し合うべきだよ」

 

「親と話が出来ないまま色々と抱え込む辛さは俺も分かるつもりだよ、シャルロットさんの方が俺よりずっとつらいだろうけど...」

 

「...そうだね、僕は一度お父さんに会って話がしたいその為にもフランスに一度戻ってみるよ!」

 

俺の意見を聞いて決心したのかシャルロットさんはフランスに一度戻る事にしたようだ。

 

「こんなご時世何かあってからじゃ遅いからね、しっかり話した方が良いと思うから良かったよ」

 

「うん!ありがとう武藤君!」

 

「では後程日程等共有致します、シャルロット様」

 

「クロエちゃんもありがとう!」

 

「私はやるべきことをやっただけですから」

 

「んじゃあついでにラウラと鈴についてもここで話しておくか、2人はIS学園に戻ってそっちで生活してもらうことになった」

 

「まあ急にぶっこんでくるわね...」

 

「久しぶりに嫁に会えるな」

 

「今のIS学園は休校しているが寮に残っている生徒もいるからな、幾ら千冬さんがいるとはいえ専用機持ちが一夏と箒だけだと緊急時に少々心許ない」

 

「そこで私たちって訳ね」

 

「第二形態移行した専用機持ちが2人いればかなり固くなるからな」

 

「戦力的に見たら過剰なぐらいだな」

 

「まあそこは用心しすぎなぐらいが丁度いいだろうと思ってな、もう千冬さんに話は通してあるから準備が出来次第2人はIS学園に向かってくれ」

 

「了解した」「分かったわ」

 

「さて話すこと話したし皆お腹も膨れたみたいだから今日はこの辺でお開きにするか、鈴は特に疲れてるだろうからゆっくり休んでくれ、今は大丈夫でも後でどっと疲れが襲ってくるぞ、部屋まではその辺のロボットに案内してもらうかその辺の壁を触ればマップが出せるからそれで行ってくれ」

 

「お言葉に甘えてゆっくりさせてもらうわ、じゃあね」

 

俺が鈴に休むように言うと鈴は素直に返事をして部屋を出て行った。

 

「じゃあ俺も片付けをして...まだ食べてるんですか束さん...」

 

「久しぶりのかーくんのご飯食べられるときに食べられるだけ食べないと!」

 

もぐもぐと音が聞こえるほどの勢いで束さんは俺達が話している時から今に至るまでご飯を食べ続け、最終的にテーブルに残っていた全ての料理を食べ尽くしたのだった。

 

———————————————————————

 

翌日、俺は束さんに呼ばれてラボのメディカルルームに来ていた。

 

「進行も想定内、うん!今の所大丈夫そうだね!」

 

呼ばれた理由は定期健診、つまるところ俺の細胞異常の検査だ。

 

「今回は攻撃は全部躱しましたし、そこまで負荷がかかるようなこともしてませんから、そんなに心配症にならなくても...」

 

「駄目だよ!かーくんは直ぐに無茶するんだから!かーくんは束さんが常にモニターしてるしユメちゃんにも協力してもらってるからね!」

 

束さんに無茶はするなと念を押されてしまう。戦う事に関して実力は心配されていないようだが、傷つかないようにすることに関しては信頼が0のようだ。

 

「急務だった鈴とラウラの救出も完了しましたし、もうそうそう無理や無茶をするようなことは起きないと思いますけど...」

 

「そういうこと言うとフラグが立っちゃうでしょ!」

 

「そう言われましても...」

 

俺は肩を竦めながら検査の為に寝ていたベッドから降りる。

 

「とにかく無茶はしない事!」

 

「善処します...」

 

「そこは約束して欲しいなぁ...」

 

束さんが呆れながら渡してくれた上着を着る。そしてそのままメディカルルームを出た。

 

「お前さんも不器用だな、刹那とは違うタイプの不器用だ」

 

「ディランディさん...」

 

メディカルルームを出るとニール・ディランディが立っていた。

 

「よっ!」

 

「どうかしたんですか?」

 

「いや俺の機体は今試運転が終わって調整中でな、ちょっとお前さんの顔を見に来たんだよ、あとニールでいいぞ」

 

「そうでしたか...じゃあニールさんで。俺の事も海で大丈夫です。それにしても俺が不器用とは?」

 

まさかあの初代ロックオン・ストラトスから直接不器用だと言われるとは思っていなかった。

 

「話すのは簡単だ、でもお前のその不器用さは俺じゃ治せないし無理して治すものでもない、だから自分で気付けるまでがんばるこった」

 

「どういうことなんです?」

 

「俺から言えるのはもっと周りに頼れって事だ、じゃあな」

 

言うだけ言ってニールさんは行ってしまった。俺が不器用で周りにもっと頼れとはどういう事だろうか?既に束さんにはお世話になりっぱなしだしラウラや鈴も第二形態移行してかなり頼もしくなっている。

 

「それでももっと周りに頼る?どういうことだろうか?」

 

俺はニールさんの背中を見ながら色々と考えてみたが、結局分からないままだった...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつの不器用さは筋金入りだな、刹那とタイプは違うがどことなく思い出すぜ...」

 

格納庫に来たニール・ディランディはとある機体が格納されているハンガーの前で1人呟く。

 

「まあ、俺達大人がしっかりしないとな...頼むぜ相棒」

 

そう言って見つめる先には嘗ての愛機に酷似した機体が存在しているのだった。

 




という訳で料理と今後の展開とオリ主が初代ロックオン・ストラトスにアドバイスされる回でした。

後になりますがロックオンの機体も出したいなと思ってます。

それでは次回も楽しみにしていただければと思います。
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61話 友の為に

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

RG デスティニーインパルスを確保してほくほくしてましたw

今回は今後の動向についての一幕になります。

楽しんでいただければ幸いです。


---IS学園 会議室

 

鈴の救出作戦から数日、俺は鈴やラウラ達と一緒にIS学園に戻った。

 

鈴達は諸々の手続きの為に職員室へ、俺は千冬さんと話すために会議室へ来ていた。

 

「それで、話とはなんだ武藤」

 

「鈴とラウラの処遇と今後の動向についてお話しようと思いまして。楯無先輩もありがとうございます」

 

「まあ私も聞いた方が良さそうな内容だったからね」

 

会議室には千冬さんの他に楯無先輩も来ている。暗部の長として頼りにさせてもらおう。

 

「この部屋に盗聴等の心配もないことは確認できてますし、話しますね、まずは鈴とラウラについて」

 

「IS学園に置いてくれという事だがどういう事だ?もちろん問題は無いから電話で聞かれた時は大丈夫だと言ったが...」

 

「あの2人はそれぞれの国に帰っていた筈よ?それがどうして...」

 

「鈴とラウラはその国に裏切られたんですよ、お2人もご存じの通りラウラはその特殊な出生から主戦力をMSに切り替えたドイツから用済みとされ銃殺刑にされる寸前。

鈴に至っては国に病気の父親を人質にとられ、試作MSの仮想敵を実弾で務めたり国内のテロの制圧をほぼ休みなしで強制されもう少しで潰れるところでした」

 

「なっ...!」「嘘...」

 

俺の言葉に千冬さんも楯無先輩も驚きを隠せないでいる。

 

「2人とも何とか救助に成功しました。それぞれの専用機が第二形態移行したのもあって何とか事なきを得ましたが今の鈴とラウラの立ち位置は非常に不安定なものです」

 

「だからひとまずIS学園に置いてほしいという訳か...」

 

「その通りです、今のあの2人は戦力的にはかなりのものですが何処かの国家所属という訳では無くなっています。今のIS学園を守るにはうってつけの人材だと思いませんか?」

 

「お前の言いたいことは理解できた、だがあの2人がそれぞれの国から表立って指名手配されたりする可能性は無いのか?学園でも指名手配犯は匿えんぞ」

 

「その点なら大丈夫です、ラウラと鈴がされてきた事については映像付きで証拠を押さえてますし、自分の国の黒い部分を曝け出そうとはしないでしょうから」

 

俺の話を聞いて千冬さんは少し考えると口を開く。

 

「分かった、ラウラと鈴については学園で預かろう」

 

「ありがとうございます、ではそのまま今後の動向についてもお話ししますね。まず楯無先輩、以前お話しした国内でMSを購入しようとしてる企業や団体の調査はどうでしょうか」

 

「幾つかは特定して内部から圧力を掛けさせたりして購入を阻止できたけど全てでは無いわ、国内でもMSを所持している勢力は存在している状態よ」

 

「分かりました。織斑先生、現在世界は女尊男卑によって怒りを爆発させた男性の一部がテロリストと化し世界のあちこちで紛争が起きているような状態です。そんな状態ではこのIS学園も狙われる可能性も高い...防衛体制は万全にお願いします」

 

「分かった。学園の防衛についてはしっかりと準備して不測の事態に備えておく」

 

「では次に、俺の次の予定としてシャルロットさんと一緒にフランスに向かう予定です」

 

「フランスですって?どうして急に...」

 

楯無さんが聞いてきたのでそのまま理由を話す。

 

「シャルロットさんのお父さん...デュノア社長からシャルロットさんに渡したいものがあると連絡がありまして、特に問題があるという訳ではありませんが一応の護衛という事で俺が着いていきます」

 

「成る程ね...」

 

「シャルロットさんの護衛が完了した後はシャルロットさんには1人で日本に戻ってもらい、俺はそのままイギリスに向かう予定です」

 

「イギリスだと?デュノアの護衛としてフランスについていくのは分かるが何故イギリスにも行くのだ?」

 

「一夏から話を聞いているので無事なことは確認していますが一応セシリアさんの様子も見に行こうと思いまして...」

 

「無事が確認できているなら大丈夫だろう?」

 

「そう単純じゃないんですよ、イギリスは主戦力をISのまま据え置きにしているんですが、世界でのMSの台頭、そして男性のテロによって国内で女尊男卑の風潮がかなり高まっています」

 

「成る程...鈴やラウラの様にはなっていないが様子を見に行くに越したことは無いという事か」

 

「そういう事です、まあ戦闘になるような事は流石に無いでしょうし自分もセシリアさんに会えたら直ぐに戻ってくる予定です」

 

「分かった、他には何かあるか?」

 

「いえ、後は個人的な用事ぐらいなので大丈夫です、ありがとうございました」

 

「武藤も気を付けろよ?お前に何かあったら何がどうなるか分からんからな」

 

「善処します。さて、楯無先輩、個人的な方の用事が楯無先輩にあるので歩きながら話しませんか?」

 

「ええ、いいわよ?」

 

「ありがとうございます、では失礼しました。織斑先生」

 

千冬さんに頭を下げてから楯無先輩と会議室を出て廊下を歩く。

 

「色々とありがとうございます。楯無先輩」

 

「いいのよ、暗部の長としてやるべきことをしただけだから。それで?個人的な用事って何かしら」

 

「簪さんの事です」

 

「簪ちゃんの?何かあったの?」

 

「問題があったという訳ではありません、現状簪さんは実家と弐式のメンテナンスの為に月兎製作所の施設を中心に行動しています」

 

「そうね、武藤君からも簪ちゃんからもそう聞いているわ」

 

「申し訳ないんですけど簪さんは学園に戻って生活してくれるように計らってくれませんか?」

 

「あら?それはまたどうして?」

 

「世界中でMSによるテロが激化しているからです。日本でも起こる可能性が高い、そうなったら日本の代表候補生である簪さんも連中のターゲットにされる可能性は高いでしょう、お2人の実家なら暗殺の類は心配ないでしょうが、複数のMSを迎撃できるような装備は流石に用意されていないですよね?」

 

「まあ...それはそうね、流石にMSやISの攻撃に耐えられるような家じゃないわ」

 

「なので施設がそろっているかつ、第二形態移行した専用機持ちが2人来ることになる学園にいる方が安全かと、簪さんの弐式は山嵐で援護も出来ますし」

 

「成る程、一理あるわね...分かったわ、簪ちゃんが学園に戻れるように手続きして説明しておくわね」

 

「ありがとうございます。なるべく急ぎでお願いしますね、なんだか嫌な予感がするので...」

 

「それは前に篠ノ之博士の言っていた『ニュータイプ』や『Xラウンダー』としての勘ってやつかしら?」

 

「そう捉えてもらって大丈夫です」

 

「武藤君の予感は当たるからいやねぇ...」

 

「自分でも本当にそう思います...」

 

楯無先輩と同時にため息を吐きながら廊下を歩いていると向かい側から一夏が歩いてくるのが見えた。

 

「あ!海と楯無さん!おーい!」

 

一夏は俺達に気付くと手を振りながら速足で近づいてきた。

 

「海!話し合いは終わったのか?」

 

「ああ、今日から鈴とラウラが学園に戻ってくるからな」

 

「おう、昨日貰ったメッセージでも確認したよ、ありがとな海」

 

「俺お前に何か礼を言われるような事したか?」

 

「ラウラと鈴を助けてくれたことだよ、俺には何も出来なかったから...」

 

「何だ...そういう事か、それなら礼は要らないぞ一夏、俺は俺に出来ることをしただけだし、同じ釜の飯を食った友達を見殺しにするような事は絶対に無いからな。だからお前も何も出来なかったなんて言うな一夏」

 

「海...」

 

「お前は俺が前に出した宿題の答えをちゃんと出してくれ、その時にはきっとお前にしか出来ないことがある筈だ」

 

「おう!見つけてみせる!俺が本当に守りたいものを!」

 

「じゃあラウラと鈴にしっかり鍛えてもらえよー、2人とも第二形態移行してワンオフアビリティもあるからかなり強くなってるぞー」

 

「マジかよ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んーっ!いいわねぇ、男の友情って!青春って感じ!」

 

一緒にいた筈の楯無先輩はいつの間にか気配を消して俺と一夏の会話を聞きながら何故かにやにやとしていた。




という訳でオリ主や一夏、ヒロイン達の今後の予定諸々をまとめた回でした。

次の覚醒はシャルロットの予定です。

それでは次回も楽しみにしていただければと思います。
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62話 家族とは

いつも見てくださってありがとうございます。大鷹とびです。

遅くなりましたが最新話になります。

SEEDFREEDOM最高でした!今度3回目を見に行きます!


--IS学園 校門

 

「準備は大丈夫?シャルロットさん」

 

「うん、問題無いよ」

 

俺は予定通りシャルロットさんと一緒にフランスに向かう為に校門の前で待ち合わせをしていた。

 

「じゃあ予定通りフランスに行こうか、もうチケットは押さえてあるからこれから空港に向かおう」

 

シャルロットさんと合流してそのままフランス行きの飛行機に乗るために空港へ向かう。

 

「あれ?武藤君荷物はどうしたの?手ぶらだけど...」

 

「荷物なら拡張領域に仕舞ってあるよ、その方が身軽だしね」

 

「その手があったね!じゃあ僕もしまっちゃおっと!」

 

そう言ってシャルロットさんも持っていたキャリーケースを自身のISの拡張領域に仕舞った。

 

「じゃあ改めて空港に行こうか、IS学園から空港までは直ぐだけど」

 

「そうだね、まあ世界中からいろんな人が集まるからこそ空港が近いここにあるんだろうね、IS学園も」

 

「そう言われたら確かに、ずっと日本に住んでたから気付かなかったよ」

 

他愛もない話をしながら、俺はシャルロットさんと空港に向かった。

 

———————————————————————

 

--フランス行 飛行機 機内

 

あれから空港に着いた俺とシャルロットさんは諸々の手続きを済ませてフランス行きの飛行機に無事に乗り込んだ。

俺は世界中に注目...というか警戒されているような人間だから周りの視線がちょっと気になったが、まあ特に問題も無かった。今は既に空の上だ。

 

「武藤君ちょっといいかな?」

 

「ん?何かあったの?シャルロットさん」

 

窓から空を見ていると俺の隣の席に座っていたシャルロットさんが話しかけてきた。

 

「お父さんが僕をフランスに呼び出してまで渡したいものって何なのかなって...聞いても教えてくれなかったし」

 

「うーん...でも今更騙すような事はないだろうし、シャルロットさんにとっていい影響のあるものだとは思うけど...」

 

俺も渡されるものについては詳細を聞いていない為、シャルロットさんと一緒に考えてみるが検討がつかない、久しぶりに前世でISの小説を途中で読むのをやめたことを後悔した。

 

「分からないけどお父さんを信じて行ってみようとしか...」

 

「そうだね、少し気が楽になったよ。ありがとう武藤君」

 

「礼には及ばないよ」

 

そうしてシャルロットさんとの会話が終わったので再び窓から空を見ようとした瞬間...

 

「全員動くな!!」

 

後ろから大きな声が聞こえて、数秒遅れて悲鳴が機内に響いた。声の聞こえた方を見れば銃を持って覆面で顔を隠した男達が数人確認できた。

 

「今からこの飛行機は我々がジャックする!」

 

運が悪いとしか言いようが無いが、どうやらこの飛行機にはハイジャック犯も乗っていたようだ。トラブル続きでつくづく嫌になる。

 

「我々はこの腐った世界を変える為に集まった!諸君らには同士を開放する為の人質になってもらう!」

 

テロリストが能書きを垂れている間に俺はシャルロットさんにプライベートチャンネルを繋げる。

 

『シャルロットさん聞こえる?』

 

『うん、大丈夫だよ』

 

『代表候補時代に訓練はしただろうから出来る前提で進めるけど、今から非殺傷武器をユメに頼んで作ってもらう。それとISを使ってテロリストを制圧するよ、緊急時だからしっかり展開して行動開始、シャルロットさんは他の乗客を守るためにシールドの用意もお願い』

 

『分かった、気を付けてね!武藤君』

 

『それはお互いにね』

 

『海!非殺傷の武器が完成したよ!スタンガンを拡張領域に入れたから使って!電気を直接弾丸にしているから撃って当てるだけで動けなくなる程度の電流を流せるよ!あとスタングレネードも作ったから!周りの人に配慮して閃光だけにしてあるよ!そのかわり5秒ぐらいは光るから食らったら視界は完全に塞げる!』

 

『ありがとなユメ、という訳でシャルロットさんにも、はい』

 

拡張領域からユメが作ってくれたスタンガンを1丁取り出してそっとシャルロットさんに渡す。

 

『今ユメが言った通り撃って当てるだけでいいから』

 

『うん、タイミングはどうするの?』

 

『3カウントでスタングレネードを投げるからそれと同時に状況開始するよ』

 

『了解!』

 

『じゃあ行くよ!3、2、1...今!』

 

「何だ...ぐわっ!?」

 

カウントと同時にスタングレネードをハイジャック犯の足元に転がし、同時にISを展開しながら立ち上がり、破裂音に合わせてスタンガンを構えて的確に撃ち込んでいく。もちろん俺とシャルロットさんはあらかじめハイパーセンサーの設定をいじってスタングレネードの閃光は防御している。

 

「ぎゃっ!」「ひぃ!?」

 

スタングレネードの閃光が完全に消えた頃には俺とシャルロットさんによってハイジャック犯は全員痺れて動けなくなっていた。

 

「ひとまずは制圧完了、シャルロットさん一般人への説明とパニックになってる人を落ち着かせてあげて!」

 

「分かった!武藤君は?」

 

「俺は別のブロックにいるハイジャック犯の制圧をしてくる」

 

「気を付けてね」

 

シャルロットさんには他の乗客の事を頼んでから俺は操縦室へと向かう。

 

「まずは操縦室...その後は他のブロックの制圧だな、GN粒子を全身に散布、ステルスシステム起動...」

 

鈴を救出するときに使ったステルスシステム...前は速度を重視する為にラウラに使ってもらったが今は俺が持っているので使用して光学迷彩を起動、透明になり俺はハイジャック犯を制圧していった。

 

———————————————————————

 

--フランス 空港

 

「本当にありがとうございました!」

 

「いえいえ、やるべきことをやったまでです」

 

俺とシャルロットさんはテロリストを拘束して空港でフランスの警察当局に引き渡し、調書の為に少し取り調べとISの戦闘記録映像の提出を行った後、職員と警察の人にお礼を言われながら空港を後にした。

 

「まさか同じ飛行機にテロリストが乗ってるなんて思わなかったね」

 

「まあたまたま俺達がいたから犠牲者も出ずに解決したけど今のご時世こんなことばっかりだからなぁ...」

 

歩きながら制圧したテロリストの事をシャルロットさんと話す。

 

「空港まで迎えが来るって話だったよね?」

 

「その筈だけど...ああ、あれじゃないかな?おっと...これはびっくり...」

 

あらかじめ聞いていた場所と特徴に合致した車を見つけてシャルロットさんにも分かるように指さした後で俺は車の近くにいた人物を見て思わず驚きを口にする。

 

「どうしたの武藤くん...あ...」

 

車の近くにはデュノア社長、シャルロットさんのお父さんがいた。

 

「既にご存じかとは思うがデュノア社社長のアルベール・デュノアだ。今日は遠いところをわざわざご足労頂き感謝する」

 

「初めましてデュノア社長、本日はシャルロットさんの護衛で参りました、武藤海と申します」

 

「此処ではなんだ、車に乗りたまえ、此方に来る機内でトラブルの対処をしたと聞いている、疲れているだろうし車内で座りながら話すとしよう」

 

「そうさせてもらいます」

 

デュノア社長に促されて俺は車に乗り込んだ。

 

「お、父、さん...」

 

「すまなかった...シャルロット...」

 

「え...?」

 

「続きは着いてから話そう、お前も車に乗ってくれ」

 

「う、うん...」

 

———————————————————————

 

--デュノア社

 

迎えの車の中ではデュノア社長がテロリスト制圧の事を労ってくれたり世間話をしたのだが...

 

「あ、えと...」

 

「どうした?」

 

「あの...いえ...何でもありません...」

 

「そうか...」

 

みたいなぎこちなさ過ぎる親子会話が続いて俺はなんとも気まずい気分になりながらちょくちょく話を繋げたりしていた。そうしているうちに車がデュノア社の本社ビルの前で止まった。

 

車から降りて伸びをしていると続いて降りてきたデュノア社長が話しかけてきた。

 

「やっと着いたな、すまない武藤君、気まずい空気にしてしまって」

 

「いえ、自分は大丈夫ですよ、それよりも...」

 

「それよりも?」

 

「シャルロットさんとちゃんと話してくださいね?親子がすれ違ったままなのは悲しいですから...」

 

「もちろんだ、今日来てもらったのはその為でもあるのだから...」

 

「なら自分から言う事は無いですね、色々と上手くいくことを祈ってます」

 

「感謝するよ武藤君、さあ2人ともついてきたまえ、これからデュノア社のIS関連施設に向かうぞ」

 

「どうしてそんなところに?」

 

「そこに渡したいものがあるからだ」

 

そう言ってからデュノア社長は歩き始めたので俺達はそのままついていく。

 

途中エレベーターに乗ったりしていたがその道中はとても静かだった。

 

「さあ、ここだ」

 

なにやら頑丈そうな分厚い鉄の扉の前で止まるとデュノア社長がコンソールを操作して扉を開ける。重く鈍い音がなり扉が空くと視界に眩しい光が入り目が眩む。

 

そのまま真っ直ぐ部屋の中に入ると広い空間が広がっていて、IS用のハンガーや機器があることからここが言われた通りISの関連施設だという事が分かった。

 

「あれは...」

 

シャルロットさんが見ている方を向いてみれば一番目立つところにあるハンガーに見たことがない形状のISが鎮座していた。そしてその近くにはとても技術者には見えない高貴な雰囲気の女性がいた。

 

「あれがお前に渡したかったもの...第三世代機『コスモス』だ...そして、すまなかった...シャルロット」

 

ISの近くまで来るとデュノア社長はシャルロットさんに頭を下げた。

 

「お父さん...」

 

「全てはお前を守る為だったとはいえ、許されないことをした...だから殴ってくれてもかまわない、話だけは聞いてくれないだろうか...」

 

「殴ったりなんてしませんから...話、聞かせてくれますか?」

 

「...ありがとう」

 

そこまでの会話を聞くとコスモスの近くにいた女性がデュノア社長と並んだ。俺は邪魔になるだろうから少し離れておこう。

 

「だから言ったじゃないですか、マリーの子よ?」

 

「ロゼンタ、だ、だが...」

 

「大体貴方が纏めて私たちを娶ってくれれば良かったのに変な所でヘタれなければこんなことにはならなかったのに...私だって皆で暮らすつもりだったんですから!」

 

「す、すまん...」

 

すっかりデュノア社長が委縮した所でロゼンタと言われた女性がこちらに向き直り口を開く。

 

「私からも本当にごめんなさいね...いきなり罵ってビンタしてくるような女なんて一生許せないでしょうけど...」

 

そう言ってシャルロットに対して頭を下げた。

 

「大丈夫ですから...」

 

そう言ったシャルロットさんの顔は納得がいってないような表情だった。

 

「マリー...お前の母親は本当に強い女性だった...」

 

そんなシャルロットさんを見てデュノア社長はポツポツと語りだした。

 

———————————————————————

 

<シャルロット視点>

 

お父さんが話した内容は僕にとって衝撃的なものだった。

 

お父さんとお母さん、そしてロゼンタさんは私が生まれる前から仲が良くて、お母さんとロゼンタさんはお父さんを取り合ってはいたけどもお互いに認め合っていた事。

 

お母さんが病気で亡くなった後、お父さんとロゼンタさんは僕を密かに支援してくれたり、見守ってくれていた事。

 

静かに暮らす僕を邪魔する気は無かったがデュノア社の中でお父さんと対立する派閥に僕の存在が察知されてしまった為、やむを得ず僕を引き取った事。

 

お父さんが僕にスパイを命じて冷たく当たったり、ロゼンタさんが僕を罵って打ったのは僕に情が無いように見せて派閥争いには使えないと思わせるという理由があった事。

 

IS学園に送ったのは僕を守るためで僕が学園にいる3年間で全てを片付ける予定だった事。

 

月兎製作所に買収されて派閥争いが片付いた今こそ、僕の力にしてほしいと開発していたISであるコスモスを渡そうと思ってフランスに呼んだ事。

 

そして...全ては僕のお母さんの「シャルロットを見守ってあげて」という遺言を守る為だった事。

 

「お母さんっ...」

 

「本当に済まなかったシャルロット...今更家族に戻れるとは思っていないが...コスモスだけは受け取ってくれないだろうか?必ずお前の力になるはずだ」

 

「そんな事言わないでくださいお父さん...僕...私はお父さんとも、ロゼンタさんとも家族でいたいです....」

 

「シャルロット...」

 

「お父さん...ありがとう」

 

僕はこちらを向いて頭を下げ続けているお父さんに近づいて、抱きしめる。

 

「私からも...ありがとう、シャルロット...」

 

ロゼンタさんが僕とお父さんを抱きしめてくれる。

 

「ああ...シャルロット、ロゼンタ、マリー...」

 

温かいな...そうか、僕が欲しかったのはこの温もりなんだ...

 

僕の心に何か足りなかったものがすっとしみ込んだような感覚を覚えた瞬間、ハンガーに鎮座していたコスモスが強くて優しい光を放ち始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「父親ってのはいつも一言足りないもんだな」

 

『でも和解出来てよかったねぇ、それにこういうパターンも熱いよねっ!』

 

「なんでユメは皆の第二形態移行間近になるとテンションおかしくなるんだ?」




という訳でシャルロットの家族についての話と強化フラグ回でした。

次の回で強化機体はお披露目予定です。

それでは次回も楽しみにしていただければと思います。
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