ネーナ・トリニティに憑依したけど死にゲーでは? (砂岩改(やや復活))
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開始時点でほぼ詰みな件について

 どうもみなさん、ネーナ・トリニティ(仮)です。

 みなさんはネーナ・トリニティと言ったらどういう感想が浮かび上がりますか?

 民間人のパーティーにビーム撃ってルイスの腕をもいだりと個人的にはド外道の人格破綻者(でも可愛い)と言うのが素直な感想ですよね。

 まぁ、そのせいで二期ではルイスに復讐され死ぬわけですが…。

 

「鬼畜ぅ」

 

 ベットで寝転がるネーナは絶望の表情で悶える。

 まぁ、これで分かる通りネーナに憑依したわけですがタイミングが最悪だった。

 

「二期からってふざけないでよ!」

 

 ネーナの死因は主にルイスの怨恨によるもの(他にもあるが)一期終了時点で憑依しても絶望の未来しか待っていないのだ。

 

「逃げれもしないし!」

 

 実は憑依する際に与えられた2つのミッションがある。

 それもクリアできなきゃ死ぬ。

 その内容は

  王留美と紅龍の殺害

この時点で原作などをほっぽりだして雲隠れすることは出来なくなった。

 二期のネーナはこれをやっているのでこれについては原作通りやっていけば良いが問題は… 2つ目のミッション。

 アリー・アル・サーシェスの殺害

 

「無理ゲーだよぉ!」

 

 生身でもMSでも最強レベルのサーシェスを殺せと!無理に決まってるだろぉ!

 絶望しすぎで過去一叫ぶと深呼吸する。

 

(状況を整理しよう)

 

 現在は一期終了の1年後、つまり二期が始まる4年前の時間帯だ。

 この時はすでに王留美に拾われて色々とやっている状態である。

 

(つまり準備期間は4年ということか…)

 

 現在はその留美のお使い中で宇宙だ。

 引き継いだ記憶によると結構な頻度で単独任務のために奔走してたらしい。

 

(本当に使いっぱしりなんだな)

 

 まだ時間があるしもっと近辺を整理しておこう。

 

 まず王留美の殺害がミッションに入っているのならできるだげ原作は崩さないようにしなければならない。

 だがそれだけではリボンズに粛清される未来しかない。

 

(まずは味方を作らないと…)

 

 サーシェスの殺害など、個人では無理な面が目立つ。

 なら味方を作ならきゃらならない訳だが。

 

(たぶん、三兄弟以外には嫌われてるだろうな…)

 

 一期のネーナの悪行のせいで留美しか頼り先がないというのが現状だ。

 

(なんとか主人公サイドに寄れないものか)

 

 簡単に言えば刹那たちに接触するのが一番手っ取り早い。

 それならサーシェスの殺害もやり易くなる、留美たちを殺すのも裏切っていたからと言えば向こうも納得するだろう。

 それに出来れば機体も新調したい、ドライは支援機という性質上、戦闘面では劣る。

 それに5年前の兵器なんて型落ちもいいところだ、何とかしたい。

 

 だが最大のネックはそれを留美とリボンズに悟られないように上手くやる必要がある。

 特にリボンズには。

 こっちの持ってる紫ハロはリボンズの端末の1つだから警戒しておかないと。

 

(会うなら刹那かな)

 

 二期開始の四年後まで刹那は単独で潜伏していた。

 二期の1話でのアロウズの反応を見るに刹那が本格的な介入をしたのはあの時だろう。

 ならその間、何をしていたか…。

 

(GNフラッグとの戦闘で大怪我をした後、宇宙を漂流していたわけだからまだどこかで体を癒している可能性が高いな)

 

 フォーリンエンジェルス作戦の位置と付近のコロニーを含む宇宙施設を探して、その中の医療関係施設から中東系の少年、たしか17歳だったはず。

 それを探せば

 

「あは、絞れた」

 

 口調とかはネーナぽく勝手に変換されるから楽だわ。

 元々、中東系は宗教上の問題やらなんやらで宇宙に居るのが少ない…と言うか居ないかもしれないレベルだ。

 

「さっさと用事を済ませて探しに行こ!」

 

ーー

 

 フォーリンエンジェルス作戦から一年。

 ソレスタルビーイングの偽装IDのお陰で負傷した体の治療も問題なく行えた。

 実際、他のメンバーが無事かどうかすら分からないがこのまま引き下がるわけにはいかない。

 

「ふーん、案外元気そうね」

 

「っ!」

 

 とあるコロニーで潜伏していた刹那の耳に届いた聞き覚えのある声。

 とっさに声の主に銃を向けるが相手は特に驚くことなくこちらを見つめる。

 

「やっぱり相変わらず、好みの顔ね」 

 

「ネーナ・トリニティ…」

 

「上手く潜伏してるみたいだけど、一人じゃ辛いんじゃない?」

 

 刹那は警戒を続けながら逃走ルートを頭で描くが対するネーナは特に笑みを浮かべるだけでなにもしない。

 

「なにが目的だ?」

 

「貴方を助けに来たのよ」

 

「助けだと?」

 

 ネーナの言葉に困惑する刹那。

 

「まぁ、貴方には命を助けて貰ったしね。その恩返しってことで」

 

「……」

 

「この端末から私と連絡が取れるわ。まぁ、私しか繋がらないけどね」

 

「感謝する…」

 

 若干、疑っているようだが端末は受け取ってもらえた。

 

「それじゃあね♪」

 

ーーーー

 

 なんとか成功、留美に怪しまれない程度の接触で割ける時間はあの程度だ。

 

(だいぶ怪しんでたけどコネクションは繋いだ)

 

 ネーナの行いが原因であるがまさか銃を突きつけられるとは思わなかった。

 

(冗談抜きで泣きそうだったわ…)

 

 あの端末には少しお金も入ってるし何とかするでしょう。

 色々と思案しながら充電中の紫ハロを見る。

 言うなればネーナは駒、常に監視されているとは思えないがなんとも言えないのが怖い。

 

「ネーナ、予定航路から逸れているようだけど?」

 

 思案していると留美から通信が入り、心臓が変な動きをする。

 

「少しショッピングさせて頂きました、お嬢様」

 

 刹那の時もそうだが違和感なく話せていると思う。

 

「貴方ねぇ」

 

「すいません♪」

 

「…はやく帰投して」

 

「は~い」

 

 こうして波乱?の憑依生活が始まるのだった。

 

 



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俺に非はない、だって触りたいじゃん!

 

 フォーリンエンジェルス作戦をきっかけとして設立された地球連邦政府。

 そして独立治安維持部隊のアロウズの結成、そのアロウズの行動に反発的な組織カタロンの登場。

 関係性的には宇宙世紀的にはティターンズとエゥーゴなのだが。

 

「カタロン弱すぎ、旧式ばっかだし可哀想になってくるよね」

 

「ソウダナ、ソウダナ!」

 

「まぁ、弱い者苛めは可哀想だけど。仕方ないよね」

 

 周囲には大破したティエレンやリアルドが炎を上げており、周囲のキャンプも死屍累々の地獄が広がっていた。

 中東のどこか、カタロンの小さな部隊であったがこいつらが少々ヤバい情報を掴んだらしくその殲滅が命じられたのだ。

 

「まぁ、大人しく命令は聞きますよぉ。それで生きられるならね」

 

 スローネドライのステルスフィールドを使っているからこうやって堂々と作戦を進められる。

 隠密としてはスローネドライはかなり優秀なのだ。

 

「用事も済んだしさっさと帰ろぉ」

 

 こうしてスローネドライは人知れずその場を後にするのだった。 

 

ーー

 

「お疲れ様、問題なく終えたようね」

 

「はい、お嬢様」

 

 任務後の留美に対する報告を終えるともはや手慣れた声で話を続ける。

 

「お嬢様、しばらく休暇が貰えるって話。忘れてませんよね?」

 

「分かってるわ、自由になさい」

 

 やれやれと言わんばかりに通信を切る留美。

 任務さえ問題なくこなせれば後はどうでもいいということなのだろう。

 

(自分で言うのもなんだけどもっと警戒した方が良いと思うんだけどねぇ)

 

「ハロ、ドライ戻しておいて」

 

「ドコイク、ドコイク?」

 

「もちろん、スイーツに決まってるじゃない♪」

 

ーーーー

 

 元人革連領のとある都市。

 そこでネーナはかき氷を頬張っていると後ろの席に男が座る。

 

「どうだった?」

 

「まぁ、予想通りね。拷問、虐殺なんでもござれ…私が言うのもなんだけど悪どいことやってるわ」

 

「そうか…いつもすまないネーナ」

 

「私はやりたいことをしてるだけよ。貴方に感謝される必要はないわよ、刹那」

 

 二期開始の1年前。

 つまりネーナが刹那と接触して3年の時が経っていた、この頃になるとお互い見た目も二期と同じになっている。

 改めて彼の顔を見てみればネーナが刹那に惚れたのも分からんでもない。

 

「それで、エクシアはどう?あのじいさん、腕はからっきしだけど口だけは固いから」

 

「あぁ、なんとかなると思う」

 

 刹那にジャンクパーツ屋を紹介しておいて正解だった。

 こっちで物資を横流しすればいずれバレてしまう、申し訳ないがこの方法しかなかったというのが悔しいところであるが。

 

「アヘッドとか言う新型。捕まったキュリオスのデータも入れて開発されてるみたいよ。あんなエクシアで勝てるか怪しいわよ」

 

「あぁ、だが世界がなにも変わっていないのなら。他に道はない」

 

「…物好きね。アンタが死ななきゃそれでいいけど」

 

 3年という付き合いもあり、互いにほどよい関係を築けたのは最大の成果と言えるだろう。

 

「言われたものはある程度揃えておいたわ、足元のアタッシュケースね」

 

「助かる」

 

 黒いパイロットスーツに銃や爆弾。

 二期の刹那が持っていた装備一式をすべて揃えた。

 もちろん、足のつかないものしかない。

 

「エクシアを修理している間に宇宙に上がる手配をしておくわ。じゃあね♪」

 

「あぁ…」

 

ーーーー

 

(三年間尽くしてきたかいはあったな)

 

 おかけで刹那との関係性は良好、ちかくでピンチになったら気にはかけてくれるだろう。

 お互いに名前で呼び会うのがその証拠だ。

 

(ドライの方も順調だし)

 

 ここ最近、こういった裏の仕事が増えてきたためその戦闘のたびに"わざと"損傷して帰投する。

 それを繰り返していると新しい機体とはいかなかったがドライのアップデートを留美がしてくれてウハウハである。

 

(でも一対一でサーシェスとやりあうのは無理だけどね)

 

 時間があったからこそ下準備は順調だ。

 それに二期がもう始まってしまう、そうやって考えているうちに運命の二期が始まってしまった。

 

ーー

 

 そしてアロウズが反政府組織員に労働をさせているコロニープラウド、そこには偽装輸送船リィアンから刹那をナビゲートする。

 

「プラウドの見取り図と予測されるアロウズの部隊よ」

 

「すまない、助かる」

 

「じゃあ、私に出来るのはここまで。頑張ってね♪」

 

 小型の宇宙挺の確保とエクシアの搬送。

 ここ数年で培ってきた隠密スキルを十分に発揮できた瞬間であった。

 残念ながら刹那と一緒に乗り込むなんてことができないのが辛いとこであるが。

 

(かっこいいなぁ、生エクシアリペア)

 

 このティエレンパーツで補強した目とかやばくない!かっこよすぎでしょ!やばいよやばいよ!ずっと眺めていたい!

 今までフラッグとかティエレンとかジンクスとか色々ながめてきたけどエクシアは格別だよね!

 しかも触られるなんて、今までの苦労が吹き飛ばされる気分だよ。

 

 

 そうやって触っているとエクシアが静かに起動する。

 

「へ?」

 

 そしてエクシアの頭に捕まったままネーナは強制的にコロニープラウドに向かわされるのであった。

 

「うそぉぉぉぉぉ!」

 

 



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さて誰でしょう?

 

 

「ヘルメットを」

 

「えっ?ああ…」

 

 刹那に救われた沙慈が目にしたのは大破したエクシア、それを見た彼は言葉を失う。

 ガンダムによって全てを失った彼にとってこの光景は絶望しか感じなかった。

 

「うぇ…」

 

「え?」

 

「計画と違う、何をしているネーナ」

 

「じぬ…」

 

 なぜかエクシアの顔辺りで浮かんでいるネーナを見るまでは。

 

「沙慈・クロスロードは任せる。俺は外のMSを叩く」

 

「りょうかいぃ…」

 

 エクシアの急加速にやられたネーナは視界がぐらぐらとしながらも手を振って刹那を見送る。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「なんとかね」

 

 心配そうに覗き込む沙慈の顔を見ていると罪悪感が込み上げてくる。

 自分がしたことではないがネーナは沙慈にとっては仇だ。

 

「貴方もソレスタルビーイングなんですか?」

 

「まぁ、そうね。ちょっと違うけど」

 

「?」

 

 そうやって話している間に戦闘にセラヴィーが介入、ジンクスⅢが撃墜され、アロウズは撤退した。

 

「4年振りか。随分雰囲気が変わった」

 

「そういうお前は何も変わっていない。あの頃のままだ」

 

「よく言われる」

 

「このガンダムは?ソレスタルビーイングのか?」

 

「もちろんだ」

 

 戦闘後、こちらに戻ってきた刹那とティエリアは一見仲良さそうに話す。

 そんな様子を倒れているエクシアの影に隠れて伺う。

 

(ティエリアは怖いなぁ)

 

 ティエリアは他のガンダムマイスターよりこっちへのヘイトが高い、だから会わないようにエクシアリペアを愛でたら退散しようと思ってたのにしくじった。

 

(ちょっと、沙慈くん!?)

 

 それを同じく見ていた沙慈はネーナの制止を聞かずに二人の下に駆けていく。

 

「刹那・F・セイエイ!君はガンダムに乗っていたのか!?」

 

「沙慈・クロスロード」

 

「答えてくれ!」

 

 鬼気迫る沙慈を真っ正面から受け止める刹那、その様子を影からこっそり見守るネーナ。

 

「ああ」

 

「それじゃあ、5年前から武力介入を?」

 

「ああ、していた」

 

「…」

 

「わかってるのか!?君達がやった事で多くの人が死んだんだ!君達がそうしたんだ!」

 

「君達のせいで…僕の、好きだった人も傷付いて、家族や親戚を殺されて、僕の唯一の肉親だった姉さんも、ソレスタルビーイングに関わったばかりに、殺されてしまった。ルイスも、姉さんもいなくなったんだ!!何とか言えよ!」

 

「…」

 

 そして刹那から銃を奪い、銃口を彼に向ける。

 

「言えよ!!返せ!返してくれ2人を返してくれよぉーー!!!」

 

 どこにもぶつけようのない怒りが沙慈の叫びとなってその場に木霊するのだった。

 

ーー

 

「…いい加減に出てきたらどうだ」

 

「バレテマシタカ…」

 

 エクシアの影から出てきたのは紫色のパイロットスーツを着た女性。

 その声はティエリアにとっても聞き覚えがあった。

 

「貴様はネーナ・トリニティか!」

 

 ティエリアは即座に銃を向けるがそれを阻止したのは隣にいた刹那であった。

 

「やめろ、彼女は敵ではない」

 

「刹那…」

 

「彼女はあの戦いの後から世話になっている」

 

「だが警戒しておくべき人物なのは間違いない」

 

 まさか刹那がかばうとは思っていなかったティエリアは少し驚きながらも渋々、銃を下ろす。

 

「あぁ、だが彼女は王留美のエージェントだ。むやみに殺すのは得策ではない」

 

「…わかった」

 

 警戒しておく人物っていう点で刹那、肯定したよね!したよね!?

 もしかして刹那に再会したとき殺されても仕方がない好感度だったのでは!?

 改めて自分の行動がどれほど綱渡りであったというのを実感した。

 

「あぁ…そう言えばこれ」

 

「なんだ?」

 

 留美からのお使いを思いだしティエリアに端末を差し出す。

 

「二代目ロックオン・ストラトスの居場所とそのデータ」

 

 留美から渡されていたのはニール・ディランディの弟、ライル・ディランディのデータを渡す。

 

「なぜ四年前、民間人を虐殺した?」

 

「……」

 

 思わず目を逸らす…流石、ティエリア痛いところを突いてくる、アニメを見る限りで言えば特に理由はなく、気分でというのが率直な答えだろう。

 だがそんなことを口走ればティエリアがこちらの眉間に風穴を開けるだろう。

 

「……」

 

「答えられないのか?」

 

「さぁね、気分じゃないの?」

 

「貴様!」

 

 案の定、すごい剣幕になるティエリアを横目にすました顔をしてその場を離れる。

 

「じゃあね♪」

 

ーーーー

 

 ネーナが立ち去った後、刹那とティエリアはトレミーⅡに帰還、沙慈も艦内に収容し二人はブリーフィングルームで話し合っていた。

 

「よく四年もあの女と居られたものだな」

 

「最初は俺も疑っていた、だが話していくうちに彼女は違うのではないかと思った」

 

「なに?」

 

 刹那の言葉に思わず聞き返すティエリア。

 

「先程もそうだったがあの事件の話をすると必ず目を逸らす」

 

「あの女の本心ではなかったと?」

 

「分からない、だが少なからず後ろめたくは思っているはずだ。もしかしたら計画のうちなのかもしれない」

 

 確かに刹那たちとは違いトリニティたちの介入は容赦なく民間人が巻き込まれることもお構い無しの攻撃を繰り返していた。

 特にアイリス社の軍需工場は兵器工場だが働いていたのは民間人であった。

 

「だがあれはヴェーダにあるトリニティのミッションデータにも記載されてない事項だった」

 

「あぁ、分かっている」

 

「…」

 

 あの事件に関して一番、頭に来ていたのは他でもない刹那だった。

 そんな彼の言葉を頭ごなしに否定できないと言うのがティエリアの率直な感想だった。

 

「ネーナ・トリニティか…」

 

 フォーリンエンジェルスによってロックオンを失ったが彼女は家族である兄を二人も失い、そして今はたった一人で生き続けている、その胸中はどれほどのものか…。

 ティエリアはそんな考えを一瞬だけ張り巡らすがすぐに止めるのだった。

 

ーーーー

 

「こわかったぁ」

 

「マヌケ、マヌケ!」

 

「うっさい!」

 

「イテ!」

 

 なんとかリィアンに帰投し留美の下へ向かっている間、バカにしてくる紫ハロをはたいて部屋に籠る。

 

(まじで殺されるかと思った…)

 

 リアルティエリアに感動してたらあれだもんね、びっくりだね。

 

 だがこれにて刹那のお守りは完了、次はドライを強化するためにあの人の下へ行かねば!

 

 



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テンプレ展開もほどほどにして欲しい

 

 ネーナ・トリニティの主こと王留美の立ち位置は実に美味しい立ち位置と言える。

 表面上はソレスタルビーイングとイノベイターの二つの組織の中間を保っている。

 それはネーナにとっても本当に美味しい立場なのだった。

 

「~~~♪」

 

 ユニオン領某所、そこでネーナは鼻唄まじりで端末をいじり、システムを改竄していた。

 目的は一つ、とある人物のデータを頂くための下準備をしているのだ。

 

(現時点で技術面はイノベイターが遥かに上だけど…)

 

 ヴェーダはリボンズの手中、なにかデータでも取り出して悪用すればすぐにバレるに決まってる。

 だが軍用の回線なら多少いただいても気づかれる可能性は低い。

 ソレスタルビーイングやイノベイターに所属せず、高い技術力を持っている人物。

 

(初めまして、ビリー・カタギリ技術顧問♪)

 

 彼がアロウズに所属する切っ掛けはリーサ・クジョウことスメラギ・李・ノリエガの裏切り?によるものだ。

 それが切っ掛けで彼はソレスタルビーイング壊滅のためにその技術を発展させる。

 この中でも一番欲しいのが、のちのマスラオ、スサノオに搭載された奥義とやら。

 

(疑似GNドライブによるトランザムシステム、喉から手が出るほど欲しいよね)

 

 そのうち、リジェネ・レジェッタと友好的な関係を築いて新型をこっそり頂戴する手もあるが捕らぬ狸の皮算用は嫌なのだ。

 なんせこっちの命がかかっているんだから。

 

(ハッキングして彼の配属される基地を探すの大変だったんだから)

 

 だがまだビリーは配属前だ、しかしこの瞬間をネーナはずっと待っていたのだ。

 

(使っているシステムが最初からおかしかったなら異変に気づきにくい。途中で改竄すればバレる可能性が高い、だからあらかじめシステムにバックドアを仕掛けておく)

 

 かなり自由に動き回れるがところ構わず原作キャラと知り合いになってリボンズの目に止まればアウト。

 原作キャラを愛でるのはリボンズを何とかしてからだな。

 

「ネーナ」

 

「なんでしょうか、お嬢様?」

 

 調子良くやってたと思えば留美からの通信が入る。

 

「仕事よ、マイスターが収監されている施設の調査施設の見取り図も入手してきて」

 

「すぐに向かいます」

 

「頼むわね」

 

 ついに来た、アレルヤ奪還作戦。

 

(こんどはじっくり見物させてもらおうか)

 

ーー

 

「レベル2にあった情報通り、マイスターの生存を確認。アロウズも集まってます。いかがなさいますか?お嬢様」

 

 あっちへ来たりこっちへ行ったり、リィアンがあるとはいえ好き勝手に使いすぎではないかと抗議したくなる。

 でもいるわいるわ、ジンクスⅢやアヘッド、旧式のティエレンまでいるとは壮観だ。

 

「対応はこちらでします。戻って結構よ」

 

「ラジャ♪」

 

 とか言いつつ安全な場所から観察するために場所を取る。

 

(これぐらいの贅沢は許してよね)

 

 そして収監施設の見取り図をカタロンに送っておく。

 名義はドライにしておこう。

 カタロンを皆殺しにしておいて何をいうかと思うがこれもしっかりと考えあってのことだ。

 

(ま、保険ってやつよ)

 

ーー

 

「大佐、ピュラーの観測所より入電。大気圏に突入する物体を捕捉。輸送艦クラスの規模だそうです」

 

「ありえん!スペースシップごと地上に降りて来るなど、砲撃用意!モビルスーツ隊の発進準備、急げ!」

 

「あは、来た来た♪」

 

 アロウズsideの無線もばっちり確保し上空を見上げると高速で落下してくるプトレマイオスⅡはそのまま海へと落下する。

 

(海水による粒子ビームの減衰なんて古典的だけど盲点だよなぁ)

 

 というか粒子なのに水に弱いのね。

 そういえば、宇宙世紀も地上では減衰するらしいね不思議だね。

 

「ねwらwいwうwつwぜwぇ⤴️」

 

 ついに大爆笑を迎えたネーナは腹を抱えながら笑う。

 まぁ、これが聞きたくてまってたのが8割ぐらいかな。

 

 そうこうしているうちに電…ごほんごほん。

 アリオスが乱舞を見せつけソレスタルビーイングは撤退していくのを見つめる。

 

(楽しかった、撤収!)

 

ーー

 

 作戦は順調だ、しかしこれは小さな目標を達成しているに過ぎない。

 本来の目的を遂げるためにはこちらサイドからソレスタルビーイングに働きかけなければならない。

 

 それならば次の行動はカタロンだろう。

 

「さぁて、お仕事お仕事!」

 

ーー

 

「~♪~♪」

 

 鼻唄まじりでいじっていたのは50口径の大口径ライフル。

 常人の女性なら重くて運用は難しいがネーナはこれでも強化人間、問題なく楽々と持ち上がる。

 このライフルも旧式どころか骨董品レベルのライフルだが威力は折り紙つきだし、新型とかだと足がつくからこのライフルだ。

 

(信用を得るには命を張らなきゃいけないしね)

 

 このまま進めば沙慈がスミルノフ大佐にポロってカタロンの基地が襲撃される。

 MSはソレスタルビーイングに任せるが軍用オートマトンによる被害は抑えられない、ならそれを自分が引き受けてしまえばライルの好感度も上がるし他のソレスタメンバーももしかしたら…っと言う感じだ。

 なので軍用オートマトンと戦うためにこのライフルが必要なのだ。

 

「普通の火器じゃ、歯が立たないもんね」

 

 後は粘着爆弾、それと特殊な対人スーツ。

 パイロットスーツもかなり丈夫だが防弾防刃仕様のこのスーツの方がいい。

 見た目は変わらないのだが、ここで死んだらもとも子もないので使わせてもらう。

 

(王留美に頼んどいて良かった)

 

 二年ほど前に上手く言って何着か用意してもらったのが役に立つとは、何でも貰っておくものだ。

 

「ネーナ、中継をお願い」

 

「はい、何でしょうか?」

 

 ちなみにいる場所はもちろん中東、中東は連邦非加盟国に対する嫌がらせとしてGN粒子が常に散布されているせいで長距離通信が出来ない。

 なのでネーナが中継してソレスタルビーイングと連絡を取っているのだ。

 

「アロウズがカタロンの場所を特定、襲撃が予想されるわ」

 

「了解です、お嬢様」

 

 早速通信をソレスタルビーイングに送り、ネーナは息を飲みながら武器を携えて降りる。

 

「早く来てよね、じゃないと死んじゃうわよ…」

 

ーー

 

 ジンクスⅢから軍用オートマトンが射出されカタロンの基地に投下される。

 

「軍用オートマトン!」

 

「総員待避だ!」

 

 クラウスが叫ぶと同時に軍用オートマトンに搭載された機銃が発射され仲間たちがなす術もなく殺されていく。

 それを見ながらクラウスは歯噛みしながら逃げる、今はそれしか出来ない自分を呪いながら。

 

「下がりなさい!」

 

 怒号と共に重い銃声が響く、すると軍用オートマトンの一機に風穴が二つ空くと爆発する。

 

「君は!?」

 

「邪魔よ!」

 

 全身をパイロットスーツに身を包んだ人物は素早くライフルを向け2機目のオートマトンに向けて発砲する。

 その格好から彼女がソレスタルビーイングであることを確信しその場を後にする。

 

(思ってたより遥かに多いじゃない!)

 

 マガジンを交換しつつ接近してきたオートマトンに粘着爆弾を設置し起爆、これで三機目だがまだ沢山いる。

 幸いなことにヘイトはこっちに向いてるのでカタロンの避難は順調だ。

 

「うわ~ん!」

 

「え!?」

 

 すると聞こえてきたのは子供の泣き声、お約束といえばその通りだが何でいるんだよ!

 ライフルを撃ちつつ全力疾走、不用意に身を晒したせいで集中砲火を受けるが仕方ない、弾切れのライフルを捨てると同時に子供を拾い上げると同時に足を撃ち抜かれる。

 

「まず!?」

 

 倒れる前にメットのバイザーも撃たれ粉々になる。

 

(これ死んだわ…)

 

 せめてと思い抱き抱えた子供を抱き締めながら倒れると爆音が響き渡りオートマトンが次々と破壊される、上空を見ればケルディムが来てくれていた。

 

「良かった…」

 

 こうして自分は意識を失うのだった。

 

 



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イケメンムーブはイケメンにしか許されない、ハッキリわかんだね

 皆様の感想を読ませていただきまして感動しました
 皆様のご期待に答えれるように最後まで書き続けたいと思います。
 


「おい!大丈夫か!?」

 

「………」

 

 オートマトンが鎮圧された格納庫を駆けるクラウス。

 そこには子供を抱えながら倒れているソレスタルビーイングの姿があった、バイザーが割れ素顔が露になっており、それを見たクラウスは驚く。

 

「まだ若い」

 

 そこにはまだ若い女性の素顔があった。

 ひとまず子供はシーリンに預け彼女の容態を確認する、足から出血しているが弾は貫通していたため止血だけに留める。

 他に外傷はないがバイザーが破損した際に頭を揺らし脳震盪を起こしたのだろう。

 

「ふぅ…」

 

 安心したクラウスの下にケルディムから降りてきたライルが来た。

 

「ジーン1、彼女を」

 

「おう」

 

「彼女が助けてくれた、居なかったらもっと多くの仲間が死んでいただろう」

 

 ライルはクラウスからネーナを受け取ると静かに顔を見る。

 見たことのない人間だがパイロットスーツからしてソレスタルビーイングなのは間違いないだろう、別働隊がいるとは聞いていなかったが。

 そんな思考をさておき、ひとまず輸送機に連れていくのだった。

 

ーー

 

「うっ…」

 

「お、目を覚ましたか」

 

「ここは?」

 

「ソレスタルビーイングの輸送機の中だ。カタロンの連中を助けてくれてありがとうな」

 

「素直にどういたしましてと言っておくわ…っ!」

 

 体を動かそうとした瞬間、痛みで思わず顔をしかめるネーナ。

 

「無理すんな、足を弾が貫通してた。安静にしてろよ」

 

「ありがとう、確か…ライル、いやロックオンだったね」

 

「あんたは驚かないんだな」

 

「まぁね」

 

 痛む足を押さえながら椅子に座り直すネーナ。

 まぁ、正直に言えば寝起きからライルのイケメンフェイスが眼前にあったから思わず叫びそうになったが耐えたのを誉めて欲しい。

 たぶん、刹那で耐性がある程度ついたおかげだろうが。

 

「カタロンは?」

 

「あんたのおかげで沢山助かったよ。あの子供もな」

 

「良かった…」

 

 心底安心する。こんなに必死に助けて助かりませんでしたなんて言われたら精神的に死にそう。

 

「ネーナ、無事だったか」

 

「刹那…なんとかね」

 

 輸送機に乗り込んできた刹那たちガンダムマイスターはネーナを見るとそれぞれ反応を示す。

 ティエリアはやや不機嫌そうになり、アレルヤは驚いたような感じだ、ついでに一緒にいた沙慈は死んだ顔をしているが…まぁ仕方ないだろう。

 

「癪だが、貴様のおかげでこちらのスパイ嫌疑は免れた。感謝を伝えて欲しいと言われた」

 

「あらそう、良かったわね。私がいて」

 

「奇妙なものだ、虐殺者が虐殺を止めるとはな」

 

「虐殺?」

 

 ティエリアの言葉に思わず聞き返すライル。

 

「この女は四年前、スペインの結婚式場を攻撃した。ヴェーダの作戦指示記録にもない行動だった」

 

「あのニュースか…」

 

 スペインでの虐殺事件は大々的にニュースになっていたのでライルも知っていた。

 あの事件を契機にソレスタルビーイングに対するヘイトが一気に高まったのは有名な話だ。

 

「スペインの結婚式場を攻撃…君が」

 

 そして沙慈くんがログイン…あれ不味くね?

 

「そうよ、それがなに?」

 

「君が…君がルイスを!」

 

「沙慈・クロスロード!」

 

 咄嗟に刹那が反応するも既に遅し。

 沙慈が叫ぶと同時にネーナの首に掴みかかり、足を怪我している彼女はバランスを崩し倒れる。

 

「ぐ!」

 

「おいおい!」

 

「君が!君が!」

 

 まさかの行動にライルたちも止めようと動くが、当のネーナは右手で制止するようにジェスチャーをした。

 沙慈にはこうする権利があるし、気持ちも凄く分かる。

 

(殺したいよね、だって彼女の両親の仇、腕の仇がいるんだもん)

 

「うぅ…」

 

「げほっ、げほっげほっ!」

 

 マジで死ぬかと思いつつ、沙慈を見ると自分の行動に対し驚いたような顔をしている。

 まぁ、そらそうだろう。目の前にいきなり仇が現れたのだ、激昂しないわけがない。

 そのせいで恋人であるルイスはアロウズに入ったわけだし。

 

「どうしたの?せっかく殺すチャンスだったのに…げほっ!」

 

 咳が止まらないがそれ以前に口が止まらない。

 心底死にたくないのに沙慈を煽っている自分に驚きつつも言葉は留まることを知らない。

 

「ルイスって誰かな。もしかして恋人?私が殺しちゃった?アハッ!」

 

「くっ!」

 

「ほら、これ貸してあげるから殺してみたら?」

 

 自分の拳銃を沙慈に手渡し安全装置を外してあげる。

 

「狙いは額かな、脳幹だったらなお良いわね」

 

「……っ」

 

「愛しい彼女の為に私を殺して、そして仇を討ったよって報告してあげなさいよ」

 

「ネーナ、遊ぶな…」

 

「……」

 

 震えている沙慈を横目に銃を握らせてあげると刹那が横から取り上げる。

 それを見て沙慈は少し安心したように肩を落とす。

 

「ハイハイ、頭冷やしてきま~す」

 

 そう言うとネーナは片足を引き摺りながら輸送機から出ていく。

 

「あれ、本気だったぜ」

 

「あぁ…」

 

 ライルの言葉に刹那も同意する。

 

「首を絞められた時の制止、それに銃のくだり…本気だった」

 

「……」

 

 ライルと刹那を見てティエリアも流石に困惑を隠せずにいた。

 自身が描いていたネーナ・トリニティという人物像が完全に崩れてしまったからだ。

 あの状況、むしろ沙慈の方が危険な状況だった。

 体勢的には沙慈に有利だがネーナもティエリアと同じ人造人間で戦闘のプロだ。

 彼女が本気になれば沙慈は有無を言わさず殺されていただろう。

 

「なぁ、ティエリア」

 

「なんだ?」

 

「ネーナって言うんだっけ?俺は四年前の彼女のことは知らないけどよ。俺にはニュースの言ってたような大量虐殺者には見えねぇ」

 

「……」

 

 カタロンを救い、虐殺に対し避けるような言動を取る彼女を見ていると本当に彼女の本意であの事件が起きたと言う風には思えないというライルの意見は尤もだ。

 そんなライルの言葉にティエリアは何も返すことはなかった。

 

ーーーー

 

(何やってんだよもぉ!)

 

 輸送機の外、カタロンからも見えないようなところでネーナは頭を抱えて自責の念に囚われていた。

 死にたくないから必死になって頑張ってるのにあと少しで沙慈に殺されるところだったじゃねぇか!

 

「はぁ…」

 

「らしくないな」

 

「刹那…」

 

 落ち込んでいるところに来たのは刹那、流石は主人公こういうときは来てくれるイケメンムーブに惚れざる得ない。

 

「まぁ、私らしくないとは思うわよ。でもそう言うときもあるわよ」

 

「そうか…ネーナ、聞きたいことがある」

 

「なに?」

 

「アザディスタンで赤い機体を見た。外観からしてスローネ系列だと思うが」

 

「そっちが本題か…」

 

 刹那らしさを感じて思わず微笑むが本題の返答に困る。

 刹那が言っているのは間違いなくアルケーとアリー・アル・サーシェスの事だが…それとなく言っておこう。

 

「私もデータでしか知らないけどたぶんそれは刹那の言う通り、スローネの発展系のアルケー。パイロットはアリー・アル・サーシェス」

 

「アリー・アル・サーシェス!」

 

「刹那にとっても仇なの?」

 

「あぁ、奴とは決着を着けなければならない」

 

「そう、でも奴を殺すのは私。にぃにぃズの仇を、そして私が生きるためにも」

 

「そうか…」

 

 ネーナのただならぬ雰囲気に対し静かに同意するのだった。

 

 



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ひさしぶりに死ぬかと思った別の意味で


 機体のアンケート結果はスローネドライの強化とオリジナル機がトントンだったのでスローネドライを原型とした大規模改修型にします
 そして次のアンケートの正体ですが原作死亡キャラを一人だけ生存させます。候補は三人です(ほぼ確ですが)


 

 

「いてて…」

 

 刹那にサーシェスの事を伝えた後は忙しかった。

 カタロンたちを違う支部に送り届け医療品や食料品を手配したりしていたらクラウスたちにはこちらが引くぐらい感謝された。

 

「私だって殺してるのにね」

 

 命令があればなんでもする、その現状に少しだけ嫌気がさし始めた。

 汚れ仕事は一切しない王留美に対し殺意を抱く気持ちが少しだけ分かる気がする。

 彼女はソレスタルビーイングとイノベイターの二つを渡り歩き都合の良いように使い自分が漁夫の利を得ようとしている。

 だが結局ソレスタルビーイングを見捨てようとした瞬間にリボンズに見捨てられネーナに殺される。

 

「神気取りの糞やろう…」

 

 見てる分にはいいが当事者になると胸くそ悪くなる。

 

(さて、生き残る算段でもしようかしら)

 

 王留美もリボンズもしばらくはソレスタルビーイングにお熱になる。

 その隙をついてドライを何とかしなければこのままではルイスに殺される。

 

「詰んでるんだよねぇ…」

 

 そもそもルイスを突破することが大変なのだ。

 離れれば長射程の曲がるビームが襲ってくるし近づいたら変形してファングでボコボコにされる。

 まぁ、イノベイターの有効活用で瞬間学習装置を使って隙あれば戦闘データを蓄積しているが焼け石に水な気がする。

 ちなみに瞬間学習装置は人工人間とかが生まれた瞬間から話したり戦えたりするのはその装置によって学習しているからだ、それをちょっちパクって隙あれば頭に着けて戦闘技量向上に勤めているのだが…。

 

(やっぱりドライを改修しなきゃ!)

 

 と言うことで誰にもばれずに改修しなければならないのだがそれは難しい。

 実質空白の四年間はそれを探し回っていたと言っても過言ではないのだ。

 そして見つけた、(たぶん)安全な場所を!

 

「到着!」

 

 カタロンたちを送り届け辿り着いたのはとある地下工場。

 ここは金ジムことアルヴァトーレが製造された工場だ。

 そんな工場、リボンズが知らないわけがないがここは彼によって破棄された場所なのだ。

 アレハンドロ・コーナーの所有していた施設のことごとくは地下にあり、アロウズを有しているリボンズからすれば地下施設は不要な施設なのだ。

 

(まぁ、向こうは外宇宙航行艦も保有してるしな)

 

 まぁ、そんな施設をリボンズにシステム的にもバレないように改造してやっと使えるようになったのだ。

 と言っても時間は限られている、じきにメメント・モリが動き出す。

 その前にはソレスタルビーイングに王留美の付き添いで行かなきゃならない。

 ってかどっちもソレスタルビーイングってややこしいんだよ!

 

「忙しいのよ!」

 

 しばらくはドライが入院するので倉庫にしまってあった機体を取り出す。

 正直、ドライがなくてもどうにかなるのだがソレスタルビーイングの好感度イベントの為に機体が必要なのだ。

 

「うおぉぉぉぉ!」

 

 正直なところドライをどういう風に改造して良いか分からんので全てシステムに一任する。

 自分の戦闘データを入力したら勝手に向こうがそれに応じた機体に改修してくれるハズだ。

 正直なところくそ忙しいので巻きに巻いて設定を終えると連邦軍からかっぱらってきたGNドライブを初期ジンクスに装備すると輸送機にぶちこみ早速発進する。

 

「もう!忙しいったらありゃしない!」

 

 作業を終えると急いで帰る。

 王留美がパーティーを終えればなに言われるか分からないからだ。

 

(サーシェスと刹那たちが戦うシーンに立ち会いたいけど無理か!)

 

ーーーー

 

「ネーナ」

 

「はい、お嬢様?」

 

「これから彼らの拠点に向かうわ。その時にこれを調べてほしいの」

 

 文字通り世界中を駆けずり回った後に何食わぬ顔で王留美に会うと資料を渡される。

 そこにはイノベイターの情報についての各項目があった。

 

「お嬢様がリボンズの相手をしている時に私にスパイをやれとおっしゃるのですか?」

 

「そうよ、いつも通りにね」

 

「今回は流石に私が殺される可能性高くないですか?」

 

 敵の拠点でのスパイ行為など見つかれば即射殺ものだ。

 それをネタに少し煽ってみれば王留美は不機嫌そうにこちらを睨み付ける。

 

「貴方が気にする必要はないわ。貴方は私なしでは生きられない…それは最初から変わらないわ」

 

「…そうですね」

 

 軽く笑いながら留美の話を聞き流すと部屋を後にする。

 

(まぁ、いつか殺してやるから)

 

 そんな陰口を考えながら若干スキップしながら廊下を歩く。

 王留美はこのメメントモリ建造のためにその財力のほとんどを使いきってしまう。

 それでもなお、リボンズたちの側につけば旨みがあると思っていたようだが結果的に使い捨てられる形になった。

 王留美自身もリボンズによってイノベイターの仲間入りを果たそうとしていたようだが。

 そもそもリボンズは人間のことを管理すべき下等種族としか見てないし。

 

(まぁ、私がぶっ殺すんだけどね)

 

 とてつもなく邪悪な顔をしていたのは秘密だ。

 

ーー

 

 そして時と場所が変わりソレスタルビーイング。

 留美を送り届けた後、目を盗んで輸送機から潜入。

 適当なサーバーを見つけてヴェーダのアクセス権を駆使して潜入する。

 王留美の頼まれた内容を片手間に本命のデータを探る。

 

(あるかな…)

 

「何してんだい?」

 

「っ!」

 

 深くまで探りをいれていて気づくのが遅れる。

 

「よっ!」

 

「アリー・アル・サーシェス!」

 

 この展開は知っていたが対応が遅れたことを悔やむ。

 

(アクセスしてると周囲の状況が見えなくなるのが欠点ね)

 

「どこかであったか?あぁ、どこかで見たことがあると思ったら、あの時の嬢ちゃんか。めっきり女らしくなっちゃって」

 

「サーシェス!」

 

 拳銃を向けるも持っていた右手ごと掴まれ逆に首に銃口を突きつけられる。

 ワンチャンここで殺せたらと思ったが無理だったか…。

 

「俺とやり合う気か?やめとけよ、せっかく拾った命、散らすことになるぜ」

 

「少なくとも相討ちにはなるんじゃない?」

 

「…なるほど。やるじゃねぇか嬢ちゃん」

 

 ネーナの左手にはデリンジャーが握られその銃口は金的に向けられていた。

 

「ここは手打ちってことしにしない?お互いのためにさ」

 

「悪くねぇ」

 

 お互いに銃を納めて一歩下がる。

 

「全く、ソレスタルビーイングにはおもしれえやつばかりだな」

 

「あんたみたいな狂犬に誉められても嬉しくないわね」

 

 予想外の行動にサーシェス自身もニヤケが止まらない。

 さらに目の前の女は絶対零度の笑みを浮かべながら堂々と椅子に座る。

 そんな姿を見た彼はさらに笑みを深くした。

 

「気に入ったぜ。次に会えるのが楽しみだ」

 

「次会ったときはぶっ殺してやるから感謝しなさいよ」

 

 お互いに笑いながらサーシェスはその場を後にしたのだった。

 

ーー

 

(死ぬかと思ったぁぁぁぁ!)

 

 コンソールの前でorzするネーナ。

 原作の展開を知ってたから予備の銃を用意していたが役に立ってくれて助かった。

 小説版ではここでサーシェスに◯◯◯されるらしいのでめちゃくちゃ必死だったよぉ。

 

(良かったぁ…)

 

 自分の綱渡り具合に涙を禁じ得ない。

 

「っ!」

 

「あ、ありがとう…」

 

 そして部屋の奥から現れたのは赤と紫に染められたトリィ。

 紫ハロは大分前にスクラップにした。あいつ大人しくしてたのなら甘く見てやったのに動き回るわ付きまとうわでこっちの邪魔ばかりしてきやがったのでバラバラにしてやり新しくトリィMarkーⅡを作っておいたのだ。

 ちなみにこのトリィは完全スタンドアローンなのでハッキングの恐れはない。

 

(中のデータもしっかりと回収したしね)

 

 紫ハロの中には疑似太陽炉やジンクスのデータ等が納められていたため、念のためにバラす時に回収したのだ。

 

(ただでやられるとは思わないでよね)

 

 気を持ち直したネーナはインカムを耳に着けて音声を聞き取る。

 

《言いつけ通り、探し回ってみたが、それらしいのはいなかったぜ、大将》

 

《そうかい、ならいいんだ。手間を掛けたね》

 

《俺のクライアントは大将だ。好きに使ってくれていい》

 

《お詫びのつもり、というのもなんだけど、君も見ていくといい》

 

《なんだい?》

 

《きっと楽しめると思うよ》

 

 サーシェスに着けた盗聴機。

 この時代からしてみれば化石みたいな代物だが逆にこのような機械の方がリボンズには察知されない。

 アナログって大切だなと身に染みる。

 目的の音声を手に入れればもう用はない、早々に輸送機に引き返すのだった。

 

「こっからが本番ね!」

 

 



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わりと刹那との友情イベントは走りきった感はあると思う

 

 

「始まったわね…」

 

 メメントモリによる中東最大の国家スイールに対する大出力レーザー照射。この映像と同時にメメントモリの構造データ、おまけとして少しリボンズたちイノベイドについても情報を添えておき、刹那に送りつける。

 一つのメッセージを添えて。

 

ーー

 

「これは、衛星兵器」

 

「おそらく、太陽光発電を応用したものだと思われます。入ってくる情報は少ないですけど」

 

「どこが狙われた?」

 

「中東、スイールです」

 

「スイールが」

 

 ネーナがデータを送る少し前頃、ソレスタルビーイングでもメメントモリについて議題に上がっていた。

 

「これがアロウズ…いや、リボンズ・アルマークのやり方なのか?」

 

「スメラギさん」

 

「ええ。補修が終わり次第、トレミー出港。連邦の衛星兵器破壊ミッションに入ります。各員持ち場に」

 

「待ってくれ!その前にみんなに話しておきたいことがある。連邦を裏から操り、世界を支配しようとする者たちがいるんだ」

 

「なに?」

 

「支配だと?」

 

「ネーナ…」

 

 ティエリアの言葉に全員が注目する中、刹那はネーナに渡された端末が震えるのを感じ中身を確認する。

 

「これは…」

 

ーー

 

「よし、ステルスモードで待機してる間にジンクスに長射程用のバレットを換装しておいて」

 

「トリィ!トリィ!」

 

 早速次の準備に取りかかるネーナだが王留美が動かねばこちらは動けない。

 

「とっとと帰ってきなさいよ。アバズレ」

 

ーー

 

「それでどうした?」

 

「珍しいね、君が僕たちを呼ぶなんて」

 

「すまない、あまり人に聞かれなくなかったものでな」

 

 刹那はガンダムマイスター四人を誰にも聞かれないように個室に集めていた。

 

「ネーナの件だ」

 

「あの女がどうかしたか?」

 

 ちなみにネーナの存在はスメラギすら知らない四人の秘密となっている。

 なぜか?それはネーナの存在は他のメンバーにとって最悪だからだ。

 輸送機で起きた件も含めて四人はネーナの評価を内心改めようとしているがそんなことを知らない他のメンバーからしてみれば彼女は悪女以外の何者でもない。

 

「あいつから来たのは先程の衛星兵器のデータとティエリアが言っていた黒幕の情報だ」

 

「なに?」

 

 ティエリア自身もあまり知らない情報をネーナが先に調べていた。そんな行動にティエリアはネーナの評価をさらに改める。

 

「これは王留美からの情報と言うことにしていてくれ」

 

「分かった、そうしよう」

 

「まぁ、彼女も実際には王留美の下で働いてるんだから嘘ではないから」

 

 アレルヤのやや言い訳のような言葉にらしさを感じ少し微笑む刹那だが肝心なのはここからだ。

 そして刹那は静かに送られてきたメッセージを三人に見せる。

 

ー裏切り者がいる 気をつけてー

 

「裏切り者だと!」

 

「っ!」

 

「……」

 

 まさかの言葉に一番反応したのはティエリアだが動揺していたのはライルだった。

 だがすぐに気を持ち直す、あくまでライルはカタロンの諜報員だ、このメッセージはおそらくアロウズ又はイノベイターのスパイと言うことだろう。

 

「おそらくネーナはそのスパイが誰か探ってる」

 

「それまで彼女の存在を秘匿する必要があるから呼んだのか」

 

 ティエリアは納得する。

 ネーナと言う存在はこちらからしてもイレギュラーな存在だ、だからこそ彼女にしかできないことができる。

 

「分かった」

 

 ライルとアレルヤも同意する。

 話がうまく纏まったところで一息つく一同だったがそれと同時に基地に衝撃が走る。

 アロウズによる攻撃が始まったのだった。

 

ーー

 

「お帰りなさいませ、お嬢様!何かあったのですか?」

 

「いくら上位種とはいえ、男の嫉妬(しっと)は見苦しいということよ。それで、戦況は?」

 

「プトレマイオスによる衛星兵器への攻撃は、まだ行われていないようです」

 

「そう…慎重なことね」

 

 やっと帰ってきたと思えば紅龍が留美のぶたれた顔を見て騒ぎ立てる声が聞こえてきた。

 当然ながら無視しつつ暇すぎてやり始めた爪の手入れを続行する。

 

「ネーナ、目的は果たせたの?」

 

「半分ほど」

 

「なんでのこのこ帰ってきてるの!」

 

「あれ以上してたらバレてましたよリボンズに」

 

「くっ…」

 

 悔しそうにする留美の姿を見て少しだけスッキリしたネーナはやっと二人を送り届け急いでメメントモリに向かう。

 

「やっぱりあの女が居るから私が忙しくなるのよ!」

 

ーー

 

そして時と場所が変わりメメントモリ攻防戦。

 

「あれが、電磁場光共振部、チャンスは一度…!」

 

「ロックオン!」

 

「ライル」

 

「ロックオン!」

 

「ロックオン・ストラトス!」

 

「その名の通り、狙い撃つぜぇっ!」

 

 メメントモリの崩壊と共にリント少佐が乗艦する艦も爆発に巻き込まれる。

 

「衛星兵器の破壊、確認しました!」

 

「トレミー速度を維持したまま、現宙域より離脱ダブルオーライザーに後退を!」

 

「了解ですぅ!」

 

「後退了解」

 

「よくもぉっ!」

 

 メメントモリが破壊されたことに憤るヒリング、それを長距離用バレルを装備したジンクスが狙う。

 

「イノベイドって言っても足元がお留守よ♪」

 

「何、援軍?ああっ!」

 

 突然の狙撃に対応できずガデッサの左肩に被弾する。

 

「トリィ!トリィ!」

 

「やった、私原作より上手くなってるんじゃない!」

 

「邪魔してぇ!」

 

「このタイミング、ネーナか!」

 

 ガデッサの反撃にネーナは急いで退避するもバレルが破壊される。

 

「やばっ!」

 

 バレルがやられた時点で速攻逃げ出すネーナ、凄く小物っぽいが仕方がない。

 

「危ないわねぇ」

 

ーー

 

「ネーナ…」

 

「ハァイ、ちょっとお茶しない?」

 

「…分かった」

 

「え、思ったより素直?」

 

 刹那とプトレマイオスⅡの合流地点に待っていたのはネーナであり二人は無事に合流したのだった。

 

「プトレマイオスは?」

 

「地球よ、この戦闘データを見て」

 

 輸送機にダブルオーとジンクスを積んで地球に向かう途中に刹那にデータを見せる。

 

「中東のここら辺を中心に探した方が良いわね」

 

「助かる」

 

「いいのよ、それより気をつけてもしもの時は直ぐに連絡して。念のために医療キットをダブルオーに積んでおいたわ」

 

 本当は刹那に最後までついてあげたいがこの後は刹那がイノベイターに覚醒するための重要イベントがある。

 その上、まだリボンズに自分の存在をバラすわけにはいかない。

 

「ネーナ」

 

「ん?」

 

「お前も無茶をするなよ。何かあれば俺を呼べ」

 

「…ありがとう」

 

 そう言ってダブルオーに乗り込み地球に降下する刹那、それを静かに見送るのだった。

 

ーー

 

 そして同じ頃、ソレスタルビーイングのとある施設ではある人物が静かに起き上がり大きく背伸びをする。

 

「アハッ♪」

 

 そして自身に用意された機体を見上げ満面の笑みを浮かべるのだった。

 

 



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うわ、自分ってこんなに性格悪かったけ?

 

「アフリカタワー・軌道ステーションを占拠した反政府勢力から、犯行声明、および連邦議会への要求が届きました

要求は、ステーションに在住する市民の開放と引き換えに、連邦議会の解散、反政府活動家4万5,000人の釈放…ですが、連邦政府は要求に応えることも、テロに屈することもありません。すでに独立治安維持部隊を現地へ派遣し、事件の早期解決を」

 

「始まったわね」

 

 後にブレイクピラー事件と言われるアフリカタワーで起きたこの事件によって一般市民がアロウズによって大量虐殺される。

 

「……」

 

 ドライの改造は間に合わなかったがこの事件は見逃せないと思っていたのだが。

 

「ネーナ、何してるの?」

 

「いえ、なんでもありません…」

 

 この○○女のせいで介入できなくなった。

 なぜか知らないが近くで見物できるところまで足に使いやがったのだ。

 

「……」

 

 今、ぶっ殺して援軍に向かっても良いがそれだと流れが崩れる。

 出来るだけシナリオ通りに持っていかないと余計な介入が入る可能性だってある。

 

(あぁ!新しいドライも取りに行きたいのにぃぃ!)

 

 それからは原作通りにことは進んだ、刹那のメメントモリ迎撃失敗とそれに伴うアフリカタワーの破片落下、全軍を挙げての迎撃作戦。

 それを私はこの王留美の横でただ見つめるしかなかったのだ。

 

ーー

 

「はぁ…無力なのを改めて実感した。最悪な気分…」

 

 そんなローテンションの中、隙を見つけてドライの下へと向かうとネーナはさらに絶叫した。

 

「私のドライはどこに行ったのよぉぉぉぉ!」

 

 なんと改造を終えたドライが姿を消したのだった。

 

「嘘でしょ!」

 

 急いで施設内の防犯カメラ映像を確認する。

 自分のバイオメトリクスがなければ起動すらできない代物を警報なしにどうやって盗み出したと言うのだ、ここまで順調だったぶん、焦りが頭の中を支配する。

 

「わ、私…」

 

 そこに映っていたのは間違いなくネーナ・トリニティそのものだった。

 いや、拡大して確認すると少しだけ幼さが残っている感じがする。

 

「なんで私がいるのよ!」

 

 こんな芸当ができるのはリボンズだけ、まさか今まで手のひらで踊らされていたと言うのか?

 ならなぜ生かされている?なんでもう一人の私を作り直したのか?

 疑問が溢れてくるがコンソールを操作してると奇妙なカウントダウンが三つ現れる。

 

「これって…」

 

ーー

 

「君か、リボンズが用意した新入りは」

 

「どうも♪」

 

 アロウズの制服に身を包んだネーナはいつも通りの笑顔で睨み付けるリバイバルに対し手を振る。

 

「あんな旧式の改造機なんてね、私たちみたいに貰えなかったの?」

 

「リボンズはこの個体は興味深いとか言ってたがどれ程のものか」

 

 フォーリンエンジェル以前に世界の変革の犠牲として設計された旧式のイノベイターに対しリジェネは興味津々と言った感じだがリバイバルにとっては不思議でならなかった。

 

(リボンズはいったい何を考えているんだ)

 

ーー

 

 そしてアロウズ所属の艦の艦内、ブレイクピラーで父親を殺し、煮えきれない感情を持っていたアンドレイにルイスは賛辞の言葉を投げ掛けていた。

 

「昇進されて、中尉になられたそうですね」

 

「どうやら、ブレイクピラー事件でわたしが撃墜した機体が、クーデターの首謀者のものであったことが判明したらしい。それが上層部に認められたようだ」

 

「おめでとうございます、中尉」

 

「まさか、君に祝辞をもらえるとは」

 

「実の父親を殺して昇進する気分は最高よね!」

 

「?」

 

「誰だ?」

 

 複雑な表情をしていたアンドレイは突然拍手しながら現れた赤毛の女性に対し警戒する。

 

「ネーナ・トリニティ。新たに配属されたライセンス持ちよ。それより、身内を殺して昇進なんて素敵なことよね!流石はアロウズの精鋭!」

 

「だまれ!」

 

「本当なんですか中尉?」

 

 ネーナの言葉に激昂するアンドレイを見て驚くルイス、それに対して彼は言葉を失う。

 

「父親を殺したって…」

 

「父は反乱分子に加担していた。わたしは軍務を全うしたまでだ」

 

「お父様だと知っていて討ったんです!?なぜです!?」

 

「平和のためだ!」

 

 アンドレイはルイスの目を見ずに叫ぶように言葉を連ねる。

 

「紛争をなくしたいと願う、人々のためだ!軍を離反し、政権を脅かす者は、処断されなければならない!せめて肉親の手で葬ろうと考えたのは、わたしの情けだよ!」

 

「そんな…そんなこと」

 

「同じ状況になれば、君はどうする?」

 

「うっ…それは…」

 

「他人の命は奪えても、肉親はできないというのか!?」

 

 完全に冷えきった空気の中、ネーナ・トリニティだけが笑みを浮かべたままその様子を見ている。

 

「アハッ、父親殺しの男と、家族の敵を討とうとする女。お似合いよ、あんたら」

 

「っ!」

 

 ネーナは睨み付けるアンドレイの肩に腕をのせると顔をこれでもかと近づける。

 

「あんた、彼女のこと大好きなんでしょ?」

 

「……」

 

「でも彼女の大切な大切な彼氏はソレスタルビーイング 」

 

「なに?」

 

「もう殺すしかないわよねぇ。ア・ナ・タの大好きな平・和の為にねぇ…アハ 」

 

 完全に言葉を失ったアンドレイを見てネーナは満足したのか離れ部屋から出ていく。

 

「元凶がよくもヌケヌケと」

 

「楽しいから良いのよ」

 

 リバイバルの言葉にネーナは笑みを浮かべたままその場を去るのだった。

 

ーー

 

 そしてブレイクピラー事件の4ヶ月後、ソレスタルビーイングは無事にメメントモリ二号機を撃破、そして王留美ら再びリボンズの下へと向かうことになった。

 

「~♪」

 

 王留美がソレスタルビーイングを裏切りリボンズとつるんでいた資料は出来たのでこれで裏切り者粛清の大義名分が出来た。

 銃の手入れを終えると大きく息を吸う。

 

「さぁ、正念場よ!」

 

 ネーナは気合いを入れ直す。

 謎のネーナが現れた以上、こちらのシナリオは崩壊したと言っても良い。

 なら、こちらも好き勝手にやらせて貰う。

 堪え忍ぶ段階はとうに終えた。

 

「待ってなさいよ、王留美」

 

 



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