トリコの世界の力でハンターになる話 (ゼパル・ガルベスク)
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第1章:物語の始まり!グルメ大冒険
第1章のキャラクター情報録


ポンズ、可愛いよね……ほんと、なんで死んでしもたんや……そう思い続けてようやくね、書いなのよ。

亀投稿だから、期待しないでね?


それと、メッチャ短いです。




○主人公

名前:メイン・サーキン

年齢:14歳

性別:男

念の系統:強化系

見た目:トリコと同じ青い髪に黒い眉毛、顔には三本の傷が付いている。オレンジ色のズボンとジャケットを着込んでいる。

設定:HUNTER×HUNTERの世界に異世界転生した少年、プロの賞金首(ブラックリスト)ハンターである師匠に拾われて育てられる。念の存在を知らない為にある程度の時までは念の力を転生特典だと思っていたが、今後の話で存在を知る事になる。命を大事にしない者を赦さないトリコと同じ感性の持ち主で、嗅覚も発達しており凝を使えば更に強力になる。

因みに名前の由来はメインは『メインディッシュ』、サーキンは『三鬼』となっている。三鬼はトリコの中にあるグルメ細胞の悪魔をモチーフにしてる。

■念能力

美食の小刀、美食の四ツ又槍(ナイフ&フォーク)

ナイフ型のオーラとフォーク型のオーラを生み出して攻撃する単純な念能力。マナー通り右手でナイフを、左手でフォークを出せば性能は上がる。

釘連打撃(釘パンチ)

念を腕に込め溜め込み、相手に放つ事で釘を打つ様に衝撃を浸透させて対象を破壊する拳。拡散型と集中型の二つがある。

 

○パートナー

名前:ポンズ

年齢:この小説内では14歳

性別:女

念の系統:不明

見た目:原作と変化無し

設定:HUNTER×HUNTERの原作キャラ、薬品の調合に使う材料を採取中にメインと遭遇し行動を共にすることになった今作のヒロイン。

生物系のインセクトハンターと幻獣ハンターを目指しているのと、薬品を扱う事から動植物の知識がありメインとは大体話が合う。シビレヤリバチと言う特殊な昆虫を操り身を守る。

■念能力

未定の為、記載は無し

 

○オリキャラ

名前:バジリスタ・モンオーレン

年齢:35歳

念の系統:特質系

見た目:赤いウエスタンハットに緑色のネクタイを引き立たせる白色のバーテン服とフォークとナイフを重ねたドクロのペンダントをつけている。

設定:メインを拾って育てたプロの賞金首(ブラックリスト)ハンター、約束事には凄くうるさく1分でも遅れたら拳骨を浴びせてくるが面倒見はかなり良い方で口では面倒くさがってもなんだかんだ言って頼まれたら大体は受け付けてしまう。

彼の師匠はハンター協会の立場が高い人でメインと関わりは深いが、メインにとってはその人物は愛する家族、そして彼自身は非常に仲が良い兄貴分だと考えている。

■念能力

ネタバレ注意報により、また後日ということで……悪しからず

 

 

○※トリコの改変キャラ

名前:ココ・ベノムフォース

年齢:27歳

念の系統:変化系

設定:見た目は原作通り

設定:登場してから書きます。

 

 

 

 

 

○登場予定のトリコのキャラクター

ウーメン梅田

十夢

ヨハネス

ティナ

クルッポ

次郎

ゾンゲ

子分1

子分2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回からは第一話の始まりです、トリコを知っていればわかるかもね…因みにHUNTER×HUNTERの原作開始前の話です。


それでは、バイチャラバ!!



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第1話:美食屋、メイン‼︎

突然非公開にして申し訳ありません、コメントで小説無しだと消される可能性があるとの事で急遽非公開にしました。

とりあえず区切りが良いところまで書けたので投稿します、続きを楽しみに待っていて下さい。



ある大都市に巨大な建物がある、その建物の名は『HOTEL GOURMET』…この世界においてハンター協会の派生組織『国際グルメ機関(IGO)』の直属の最高級の食材を持ってお客に絶品な料理を提供する事で有名な高級ホテルだ。そこの会議室では3人の人物が話し合っていた。

 

「ン〜〜〜、わかってると思うけどサァあ。シェフ…今度のグルメパー()ーには各国の首脳を始め、ハンター協会のお偉いさんやうちの会長(ボス)も出席するワケよ。それなのにメイーンディッシュが白毛シンデレラ牛のヒレステーキてアンタ…庶民がグルメガーデンで飲み会してんじゃないんだからサァ、もっとインパクトが欲しいワケよ()ンパクトが!

 

わかる?と2人の人物、ホテルのオーナーとシェフにクレームを入れるのはIGO事務局長のウーメン・ウメダ、その癖の強い言い方に戸惑いながらもシェフは言葉を漏らす。

 

シェフ「は…はぁ………一応、うちで用意できる最高の肉ですが…」

 

ウーメン「ガララワニの肉を…出せないの?

 

オーナー「ガ…ガララワニ…!?」

 

シェフ「世界最高ランクのワニ肉ですか!!」

 

『ガララワニ』…ウーメンの口から出たその単語に2人は驚くが、オーナーはすぐに冷静さを取り戻しウーメンにその答えを告げる。

 

オーナー「お言葉ですが局長、それはムリな注文です。料理がではなく、()()()調()()がです…!」

 

ウーメン「…ン〜〜〜確かに……ガララワニの危険生物としての総合ランクはC -…しかも捕獲レベルは5は確定している。戦車を要請してもはたして仕留められるかどうか…」

 

その言葉に辺りは沈黙に包まれる、危険生物の総合ランクでDはかなり下の方に分類されるが捕獲レベルと言うのはその対象をハントする難しさを現している…並大抵の者では相手にすらされないレベルなのだ。

 

 

ウーメン「…………仕方ないわね…多少、お金はかかるケド…ハンターに、それも“美食屋”に依頼しましょう」

 

オーナー「ま…まさか…ガララワニ級を仕留める美食屋と呼ばれるハンターと言うとッ!!」

 

シェフ「メ、メイン・サーキンですか…!!」

 

 

 

***

 

場所は変わりとある森の中、そこでは1人の少女がある光景を眺めていた…その少女の名前はポンズ、プロを目指しているアマチュアのハンターだ。そんな彼女が眺めているモノ…それは……

 

ポンズ「(ど、どうなっているの……?)」

 

 

1人の少年だった、背中しか見えないが青い髪に自分より少し上であろう身長の少年が太い鉄の棒に分厚い縄を巻き付け、その先端に大きなバッタを括り付けて釣りをしていた。

 

ポンズ「(あの虫…確かヤマゴエバッタ!?とても凶暴な肉食性を持つ反面滅多な事では見つけられない珍虫なのに…!!)」

 

《がぶりゅっボリボリ、ボリボリ》

 

そんな事は知らんとばかりに少年はクーラーボックスから大きなエビを引き摺り出し甲羅ごと噛み砕く、さらに50度あるバーボンを取り出すも底を手刀で切り裂き一口で飲み干す。

 

ポンズ「(あれ…もしかして年上……?)」

 

怒涛の展開に脳が麻痺してきたポンズは見当違いな所に目を向けていた、そんな間に少年はタバコの代わりにもなる葉巻木の枝を口に咥え指に力を込めて指パッチンの要領で火をつけた。

 

《バチィッボウ!》

 

ポンズ「わあっ!!」

 

「…ん?何だ?……誰だ、お前?」

 

ポンズ「あ…いや…その…(指パッチンで火がついたー!!てか気づかれてもいなかった…)」

 

 

 

〜数分後〜

 

ポンズ「メイン!?あなたがあの!!?」

 

メイン「そうだよ、俺がメインだ。美食屋って言った方が有名かな?と言っても俺自身は全く隠してないんだけどな。まあメディアとかめんどくさいから全然出てねぇし当然か……」

 

少年、メインはポンズと話し合い意気投合していた。お互いに似た様なハンターを目指している為、話が合うのだ。先程のバッタを使って釣り上げたザリガニフィッシュとそれを狙った五ツ尾オオワシを捕獲して丸焼きにしている。

 

ポンズ「でも本当にやる気なの?ガララワニの捕獲なんて…」

 

メイン「おう、見栄を張りたいらしくてな…今度のパーティーでメインディッシュとして生け捕りにして欲しいらしい。まあその場合報酬は倍にしろってふっかけてやった」

 

ポンズ「2倍でも割りに合わないわよ…例えシングル持ちのハンターでも拒否するわ」

 

ポンズがそう言うのも無理はない、捕獲レベル1で猟銃を持ったプロの狩人(ハンター)が10人がかりでやっとで仕留められるレベル…それが今回はその5倍…とてもじゃないがまともな依頼とは言えない。

 

メイン「あぁ…そーとータフな仕事になる、俺がさっき釣りに使った釣り竿…76ミリの鉄筋にエレベーター用のワイヤーを巻き付けてある。限界張力は約40トン…!小型のクジラだってワケなく一本釣りに出来る!」

 

ポンズ「(というか……そんなモノ振り回すあんたの腕力の方がスゴイでしょ…)」

 

しらーっと見つめるも内心では「でも、メインの狩り(ハント)を直に見れてちょっと感激…」と思うポンズにメインはちなみにと話を続ける。

 

メイン「ガララワニはこれを割り箸のようにヘシ折る!オマケにかなりの大食漢で獰猛さもズバ抜けている、捕らえるのは容易じゃない。でもハンターとしてはかなり燃えるだろう?」

 

ポンズ「う………」

 

彼女からしてもガララワニはハントしてみたいとは頭を一瞬よぎる程度には考えていた、ポンズも一応はハンターだ。アマチュアとは言えハンターを名乗るのなら大物を相手にしたいとは考えるモノだ。

 

メイン「…ま、善は急げだ。明日、出発する」

 

 

 

 

 

 

 

Menu 1.

「ガララワニ」

 

 

 

 

***

《SIDE:メイン》

 

俺の名はメイン・サーキン、実は俺は転生者だ。

 

俺はかなりの漫画オタクで、もしも生まれ変わるなら好きな作品のトリコの世界に行きたいなと思っていた。でもここはHUNTER×HUNTERの世界みたいだが…はっきり言って俺はHUNTER×HUNTERをよく知らない。作者の冨樫さんはちょくちょく休載をしていて暗黒大陸編のところで漸く完結してない事を知ったくらいだ。

 

でも、この世界も悪くないかなって思えてる。トリコの世界の人間もチラホラいるし赤ん坊だった俺を拾って育ててくれた人達の活躍を見てたら俺もハンターになろうと思った…トリコがこの世界に居ないのは残念だけどな……でも、美食のカリスマが居ないなら…俺がなればいい!!

 

その信念のもと活動を続けてたら、不思議な出会いがあった。

 

 

メイン「えーー!?お前も来るのかポンズ!?」

 

ポンズ「え、えぇ…ごめんなさい…どうしても気になって…」

 

彼女はポンズ、薬草の採取に来たら俺が居たそうだ。彼女の見た目とトリコの世界で見かけなかった事からHUNTER×HUNTERの世界の住人なんだろう…俺は原作ブレイク反対派だが、こうなっては仕方がない…でも……

 

 

メイン「これからどこ行くかわかってるよな?」

 

ポンズ「もちろん…バ…バロン湿原…危険指定区域でしょ?」

 

メイン「…………遺書は書いたか?」

 

ポンズ「遠回しに死ぬって言われた!?」

 

おぉ、小松と同じ様なセリフだ…感激。でも実際危険なんだよな、いくら彼女が一般人ではなくハンターといえどあくまでもアマチュアハンター…まぁ俺も何だけど遺書は残して問題はない。俺も最初書いてた…

 

メイン「やぁートム!いつも悪いな!」

 

十夢「ホントだぞ!即諾で船出せる程こっちも暇じゃねーんだぞ」

 

彼は十夢、トリコの世界ではトリコの親友ポジションだった卸売商だ。トリコの世界の食材や人物がこの世界にも存在してると分かった時から探し出してコネクションを作っておいた相手だ。実際彼には何度も助けられてる。

 

メイン「悪いとは思ってるよ、今度何か売りに行くから…ところでさ、奥さんは元気にしてるのか?」

 

十夢「あーあーやめてくれ、税金がまた値上がりするってんでプンプンだよ…」

 

メイン「ハハハ、そりゃ怖いな…よっ」

 

何かあれば奥さんの話をすれば一発だ…

 

 

十夢「言っておくがバロン諸島の南岸までしか行けねーぞ!いいか?」

 

メイン「十分だ…ああそれと、客が1人いるんだ。おいポンズ!来るなら早く来いよ!!置いてっちまうぞ?」

 

ポンズ「え、ちょっ、遺書はどうすれば…」

 

メイン「船で書けばいい!!」

 

 

まぁいい…旅は道連れ世は情けと言うし?せっかく出来た縁は大切にしておきたい。彼女が小松の代わりなら、今後も何かしらのアクションがあるだろう…そう思った俺は速いスピードで突き進むエンジン音をBGMにシャンパンを開ける。

 

《ボポポンッジュワ〜〜》

 

メイン「んぐっんぐっ…ぷはー!」

 

トリコみたいに3本同時飲みは出来ないがこの世界では飲酒の概念があやふやなのは助かった、高級食材の中にはアルコール度数がバカ高いのもあるからな。IGOに加盟してればアマチュアでも危険区域に行けるし酒も飲める、良い事づくしだな。

 

十夢「オイオイ仕事前からシャンパンか?14歳のくせに贅沢しやがって!俺にも飲ませろ」

 

メイン「…ふぅっただの食前酒さ、これから朝食だ。てか飲酒運転になるだろが、我慢しろよ」

 

全く、隙あれば毎回要求するよな…

 

十夢「ハッハッハ!一本取られたよ!!ところでメイン、誰なんだそこの嬢ちゃんは?物好きな依頼人がなんかか?」

 

あぁ、そう言えば紹介してなかったな…

 

メイン「彼女はポンズ、俺と同じアマチュアハンターで命よりも好奇心が勝っちまったハンター中毒者だ」

 

ポンズ「いや!命の方が大事だからね!?」

 

ナイスツッコミ、小松ポジション確定だ。

 

 

十夢「ハンター中毒者!?わっはっは、そんな症状は聴いたこともねぇが物好きもいたもんだな。ケガしても労災も何も降りねーぞ嬢ちゃん!危険区は保険適用外だからな、死んで当然自殺と同じだ」

 

ポンズ「ヤ…ヤバイ…ホントに遺書書いとこ…てか連載1話目から死ぬ準備って……」

 

メイン「お前は勇敢だった…って遺族に言っとくよ」

 

ポンズ「やめてよ!?まだ死んでないから!」

 

可愛い…はっいかんいかん…このまま弄り続けたら嫌われてしまうかもしれない……ここはトリコ定番のアレで行こう。

 

メイン「ごめんってば、それより朝食どうだ?その様子じゃ腹減ってるんだろう?」

 

ポンズ「いや、特に食欲は《くぅ〜〜》…///」

 

えっ可愛い… HUNTER×HUNTERにこんな可愛い子いたなんて知らないぞ…なんで知らなかったよ俺!!*1

 

メイン「ほ、ほら!フルーツ梅干し入りのおにぎりあるぞ、他にも沢山あるし食っとけって!!」

 

ポンズ「う、うん…《もぐ…》美味しい…」

 

うんうん、誰かが何かを美味しそうに食べてると俺も嬉しくてますます食欲が進むな!!俺もストライプサーモン食うか!!

 

メイン「んがーーーーー《がぶりゅ》んおーーー!うんめぇえ〜〜〜!んまい!脂乗りすぎ!!やばい!」

 

ストライプサーモンは俺が見つけた食材の一つ、ぷりぷりの身にたっぷりな脂!死ぬ気で探し出して良かった!!

 

ポンズ「(ストライプサーモンの骨ごと食べてるし…てかもしかして中身全部食べ物なの?昨日から食べてばっかりね…)」

 

メイン「ところでポンズ、仕事するにあたってどんな種類の薬を使うんだ?神経毒?睡眠薬?参考までに教えてくれよ」

 

ポンズ「え…?あ…うん…えっと…………あれ?私が薬を使うって、なんでわかったの?言ってなかったよね?」

 

ふふふ、驚いてる驚いてる…良い反応だ。

 

メイン「お前の体…主に手から薬品の匂いがするんだよ、ほぼ毎日調合してなきゃ染み付かねー匂いだ。それに植物や虫なんかの匂いもする、まず薬剤師で間違い無いだろう…種類はアゲアシトリカブトの根、オヤスミミズの体液、ハバネロサソリの毒にイカリ茸の胞子…どれもこれも薬の調合でしか使えない代物だからな」

 

ポンズ「す、スゴイ……」

 

十夢「はっはっは!メインの嗅覚は警察犬をも凌ぐらしーぜ!」

 

どうもこの世界に来て、美味いもんをたくさん食べて鍛えたらいつの間にかトリコの様に嗅覚が良くなっていた。臭いモノにはだいぶ振り回されたが他にもトリコの力を手に入れる事ができた、嬉しい事だ。

 

 

十夢「おーい!島…見えたぞ」

 

十夢の呼びかけで意識を戻すと不気味な雰囲気の島が見えた…目的地のバロン諸島の最南端の島、ババリア島だ!!

 

 

さぁて、楽しみだ!!

 

 

 

 

 

*1
ポンズはキメラアント編で退場してる事を知らない




主人公の記憶ではHUNTER×HUNTERの知識はにわか程度にしかなく、トリコの記憶も薄れています。だからオゾン草の事とかメテオガーリックの事とか色々どんなのだっけと言う感じです。

次回からバロン諸島に入りますので、待っていてください。


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第2話:轟けメインの武器、ガララワニを捕獲せよ!

遅くなりました、申し訳ない……ケータイの機種変してました。画面バッキバキにしちゃって…トホホ

だいぶ長文になったのでゆっくり読んでいって下さいね、皆さんの感想は励みになってます。ありがとうございました。


メイン「見ろ、ポンズ…」

 

ポンズ「え?あれってフライデーモンキー…なんでこんな岩礁地帯に、一生を洞穴で過ごすほど臆病なので有名な猿なのに」

 

バロン諸島に無事に辿り着けたメイン達は辺りの観察を行っていた、そして周りにいるフライデーモンキーと言う猿を見て疑問を抱いていた。

 

十夢「到着!ここがバロン諸島唯一の入り口、通称『鬼の口』と呼ばれるマングローブのトンネルだ…!」

 

目の前にはマングローブによって薄暗く、そして奥の光景が見えない不気味な自然のトンネルが存在していた。ここに入ったら生きて出られる保証は無いと言わんばかりの威圧感が充満している。

 

十夢「さぁ一気に突っ切るぞ!「トム!()()()()()いい!ボートを出してくれ!」あ?どーした急に?」

 

メイン「島の様子がおかしい…匂いがするんだ……トラブルの匂いだ…」

 

十夢を止めたメインの表情は今までの穏やかなものではなく、非常に厳しく冷たいものになっている事が、その場にいる2名に静かに脅威を感じ取らせた。

 

 

***

−ん〜〜、ねェえメインちゃん。知ってると思うけどサァあ…野生の動植物にIGO(うち)が定めてる()()()()()…まさに、その獲物を仕留める“難易度”を表すものだけど…

 

−知ってるよ、けどいくらガララワニの捕獲レベルが5だからってkg(キロ)単位20万じゃ割りに合わねーよ。

 

−…そうなんだけど

 

−?

 

−ついさっきね…気になる情報が入ったの…ガララワニのこと…

 

−ガララワニがどうしたんだ?乱獲か?

 

−いや、それだったらまだ対処は簡単だからいいの。問題は通常100年近く生きると言われるガララワニだけど、歳とともに“食欲”や“獰猛さ”も比例して強くなる特徴があってね…もともと繁殖力が弱い反面…種の保存のためか個体の寿命が年々延びてきてるデータがでたそうよ…今では300年以上生きているガララワニがいると…!!

 

−……ッ!!300年だと?

 

−データが正しければ特徴上そのガララワニは…おそらく捕獲レベル5ではきかない…!!だからメインちゃんの報酬は倍でかまわないけど、そのデータだけは頭に入れておいてね…?

 

 

 

 

メイン「なーんて、話があってな」

 

ポンズ「なんでもっと早く言わなかったの!?」

 

マングローブのトンネルを小型のボートで進む中、気になったポンズに質問されてメインはウーメンに言われた情報を話していた。通常よりも強い個体のガララワニがいるかもしれないとか言われたら…まあブチ切れるだろう。

 

ポンズ「あぁあぁあぁ…捕獲レベル3でも怪しいのに…5より上って…ああ…あああ……もうおしまいよ……」

 

メイン「諦めんなよ、美食屋って言われてる俺が金目的でこんな依頼受けると思ってんのか?他に狙いがあるのさ」

 

ポンズ「狙い?何よそれ……」

 

メイン「おう、なんと言っても…おっもう着いたみたいだな。降りるぞポンズ」

 

そうこうしている内にボートは岸にたどり着いた為、2人はガララワニの生息するバロン湿原へと歩を進めた、鳴り止まない猛獣達の鳴き声…もともと熱帯地域でバロン諸島だけで約20万種の生物がいる事を淡々と伝えていた。

 

 

ポンズ「…キャッ!」

 

メイン「どうしたポンズ!」

 

ポンズ「な、何かが首筋に…」

 

メイン「見せてみろ!」

 

メインはポンズの髪を掻き分け首筋を見ると、そこにはデカくブヨブヨとした身体を持つバロンヒルがくっついていた。

 

メイン「バロンヒルか…マングローブの葉を絞って雫を一滴つければ追い払えるな、引っ張るなよ?下手に取ったら傷口が広がるからな」

 

ポンズ「う、うんわかっ…ッ!?メイン後ろ!」

 

メイン「ムッ!!」

 

 

 

「コロロロロ……」

 

ポンズの呼びかけによってポンズを抱えて避けると、そこにいたのはバロン諸島の固有種のバロンタイガーだった。サーベルタイガーに似た姿の捕獲レベル3の哺乳獣類の猛獣だ。

 

ポンズ「バロンタイガー…!バロン湿原の奥地に生息する筈なのになんでこんな入り口近くに!?」

 

メイン「フライデーモンキーと言いバロンタイガーと言い…こりゃ300年説が有力候補になってきたな、バロンタイガーは群れで狩りをする猛獣なのに単独で気配を消して襲いかかるとは…餌が無くなってきてるのか?」

 

バロンタイガー「ガアァァ!!」

 

メイン「俺と…戯れ合うか…?

 

バロンタイガー「っ!?」《ビュッ!!》

 

 

よほど空腹だったのか威嚇しながら襲い掛かろうとするも、メインの威嚇に脅威を感じてバロンタイガーは踵を返して逃げ出していった。

 

メイン「ふぅ…大丈夫かポンズ?」

 

ポンズ「あ、うん、私は大丈夫。でも、その…」

 

メイン「何だ、何処か怪我したのか?」

 

ポンズ「その…胸に…当たってる、手が…///」

 

そう、ポンズを抱えて避ける時にメインはポンズの胸を鷲掴みにしてしまったのだ。それも右手でがっしりと……

 

メイン「ハァッ!ご、ゴメン!!!!///」

 

ポンズ「だ、大丈夫、だから…///」

 

その後2人はバロンヒルを追い払い、赤面しながら湿原の手前まで黙々と進んでいった。なんとまぁウブな2人であろうか…

 

 

***

《SIDE:ポンズ》

 

メイン「よし、ヘビガエルの丸焼き一著上がりっと」

 

辺りはすっかり暗くなり私たちは夕食を食べていた、焼いているのはヘビガエルという捕獲レベル1の猛獣。私でもこれくらいの相手なら簡単に仕留められる。

 

ポンズ「にしても、中々血が止まる気配が無いわね…まだちょっと気になるわ」

 

メイン「蛭は血を吸う時に『ヒルジン』って言う物質を出すからな、血の凝固を抑制してるんだ。まぁそのうち止まるだろ」

 

そのうちっていつよ…私の自業自得だけどさ、蛭除けの薬で持ってきとけば良かったわ。それにしても…

 

ポンズ「周りの鳥獣達はなんなのかしら……?襲うつもりは無いみたいだけど…」

 

メイン「腹が減っておこぼれをもらうつもりなんだろ、バロンタイガーで予想はしてたが案の定エサの豊富なはずのこの島で食料不足ってワケだ」

 

たしかによく見てみると動物達は種類もバラバラ、共通しているのはみんな疲れ切っていて涎を垂らしながら恨めしそうに眺めている事…よく見ると少し痩せかけている動物もいるわね……

 

メイン「ガララワニは雑食な上に大食漢、IGOのデータが正しいなら島のこの島の状態は間違いなく例の300年生きたガララワニの仕業とみていいだろうな。バロン湿原どころか…バロン諸島全体の動物を食い荒らす可能性も低くない…」

 

肉を頬張りながらワインを飲むメインも表情を曇らせている…確かにあまり悠長にはしていられない問題だわ、20万近くの種がたった1匹の生き物に絶滅させられかけているんだもの。いや、ちょっと待って…!

 

ポンズ「ガララワニって海水にも適応できたわ!島にエサが無くなったら今度は海を渡って…「しっ、静かに!」?どうかしたの?」

 

メイン「…………」

 

メインの反応に遅れるように周りの動物達が顔を上げると一目散に離れていく…それを確認したかのように私達の近くにある沼から気泡が現れ大きな揺れが発生した。

 

《コポッ…コポコポ…》

 

《ざばああああっ!!》

 

 

「ギャーーース!」

 

沼から現れたのは大きな白い蛇だった…ってこの蛇は!!

 

メイン「ん………何だっけコイツ?」

 

ポンズ「沼蛇よメイン!!捕獲レベルはガララワニと同じレベル5!!沼の中に限ってはガララワニでも迂闊に手が出せない強敵よ!!」

 

メイン「沼蛇だと?…バカな、むっ」

 

私は薬を構え…メインは前向きになって戦闘態勢に入る、でも痙攣した沼蛇は舌を出して地面に倒れてしまった。

 

ポンズ「え…?死んでる?」

 

メイン「ポンズ、これを見てみろ!」

 

 

私はメインに言われた所を見る、何これ…大きく抉られたような傷がある…

 

メイン「見たかポンズ…この傷は一撃でつけられた物だ、しかし沼蛇は警戒心が高く捕食時以外は滅多に水面には出てこないはずだが……ん、これはバロンヒル!」

 

メインが傷口から見つけ、沼蛇の身体についていたのは昼間に私の首にくっ付いていたバロンヒルだった。

 

メイン「そうか、コイツに血を吸わせてその匂いをたどったのか」

 

《ズシンッ…ズシンッ!!》

 

何…この振動は…?私は後ろを振り返り…言葉を失った。

 

メイン「…そういえばポンズも血を吸われていたっけ、あの時からもう俺達は既にお前のターゲットだったワケか…そうだろ、ガララワニよッ!」

 

 

 

ガララワニ「カロロ…《グジュ、グジュル》」

 

 

私達の背後にいたのはとんでもない生物だった、全長20mの身体と八本の足、鋭い牙と爪、そしてバロンタイガーすら丸呑みにしてしまいそうな大きな顎…あれが…ガララワニ!?

 

ポンズ「こんなのもう猛獣じゃない……怪獣!!」

 

私は唖然とし、そして察した…こんなのどうやっても勝てない…!

 

ポンズ「メイン逃げましょう!!」

 

私はメインに声をかける、けどメインはガララワニを見て微動だにしない。

 

ポンズ「メイン、速く逃げま「なあポンズ、ガララワニって長生きすればするほど強さは増して行く。だがコイツはそれ以上だ、おそらく倍の300歳は生きている、それって肉が熟成されてるってことだよな?」何を言って……!?」

 

私がメインに振り返るとそこには先ほどまでのメインはいなかった、目がまるで捕食者のように血走り鋭く光っていた……

 

 

メイン「離れてろ、ポンズッ!!」

 

怪獣が2頭ッ!!!

 

 

ガララワニ「ギュアアァアアア!!」

 

ポンズ「ヒッ!!イヤアァァァ!!?」

 

メイン「嬉しいねぇ、いつぶりだろうなぁ…俺にケンカ売ってくる猛獣なんてよ……楽しみだ!!」

 

情けなく悲鳴をあげてその場を離れる私を戦いのゴングと認識したかのようにガララワニはメインにその大きな口で咬み殺そうと飛びかかるも、メインはその場で回転し突撃を回避して頬の部分に拳をぶつける。

 

メイン「オラァあ!!!」《ドッ》

 

ガララワニは焦る様子もなく太い尻尾をメインの横腹に叩きつける、メインはそれを掴み背負い投げのように地面に投げ捨てる…もう怪獣2頭が捕食しあってるだけの光景よ……!!

 

ガララワニ「グガァァァァ……」

 

ポンズ「ひッ……!」

 

ガララワニが口を開けるとそこには大量のバロンヒルが蠢いていた…何アレ…どうなっているの!?

 

メイン「ガララワニはバロンヒルを飼っていたのか、得物の血を吸わせ血の匂いを嗅ぎ捕食する、血の匂いに反応して瞬時に攻撃してくる訳か、コイツは長引くとやっかいだな……使うか、アレを!」

 

 

この日のこの瞬間、私は理解した…メインはたった今初めて臨戦態勢に入ったことに。その瞬間に遠くから猛獣達の鳴き声と鳥達の羽ばたく音が離れていくことから島の生物全てが故郷(その場)を捨てて逃げた事が分かる、ガララワニが逃走しなかったのは島の王者としての“プライド”ではなく300年の間に命の危機を味わった事がない故の“無知さ”だった。

 

メイン「・・・・・・ガララワニよ… その硬い鱗、強靭な牙、鋭い爪、そして三tはあるだろう顎の力…まさにバロン諸島の王者に相応しいその風貌……お前に敬意を払い、お前に見せよう…」

 

 

 

 

 

 

 

人間の武器を!

 

 

第三者の私にも伝わるイメージ…赤い体に満面の笑みを浮かべる鬼がナプキンを首に巻き、ナイフとフォークを持ち皿の上のガララワニを眺める様子を。その光景にガララワニ自身も困惑し、私は歯をガチガチと鳴らしながら粗相をしてしまった…そんな事は知らんと言わんばかりにメインは両手からギャリンと金属音を出して手を合わせる。

 

さっきまでの余裕な感じを無くしたガララワニは叫びながら垂直に飛びかかり、その自慢の顎でメインを食い殺そうとする。

 

メイン「この世の…すべての食材に感謝を込めて…いただきます」

 

ガララワニ「ギュアアアアァァ!!」

 

メインが左手の親指を引っ込めて残りの指に隙間を作るとフォークのようなイメージが左手に重なる。

 

メイン「『フォーク』!《ズボァ》ぬああああ!!」

 

ガララワニ「ッ!!」

 

残った右手を手刀にすると今度はナイフのイメージが右手に重なった。

 

メイン「『ナイーフ』!!《ズシャッ》」

 

そしてメインは右手をガララワニ目掛けて振り下ろした、すると一瞬の内にガララワニの首が切断され二つに分かれた。

 

《ギュリン!ギュリン!》

 

メイン「ごちそうさまでした」

 

轟音と共に落ちるガララワニの亡骸を背に一言告げるメインは、鬼神の様な恐ろしさが嘘だったかの様に消えていた。そしてメインは腰を抜かす私の元に歩を膝をつく。

 

 

メイン「ようポンズ、大丈夫だったか?」

 

ポンズ「あ、その…」

 

いつものメイン、私が初めて会った時と同じ顔のメイン・サーキンそのものだった…でも、私は別の事を考えていた。

 

ポンズ「わたし…もう、ハンターやめようかな…」

 

メイン「え、なんで?」

 

ポンズ「…なんで?」

 

なんて残酷な事を聞くんだろう…そんな事はもう決まっているのに。

 

 

ポンズ「私が今回した事ってなんだった?あなたに助けてもらって、ビビって、漏らして、怖がって、ただ見てただけじゃん。そんなハンターいらないよ…」

 

罠を張るくらいなら手伝えるとたかを括っていた、自惚れていたんだ…こんな情けないハンターはいる必要はない…

 

 

メイン「ポンズ……」

 

ポンズ「……なに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メイン「気にすんな、よくある事さ!」

 

 

ポンズ「・・・・へあ?」

 

メイン「はじめての狩り、レベル1の赤毛豚のハントに俺は失敗してボコボコにされた事がある。その後も何度も挑戦してやっとクリア出来たんだ、本格的なハントはこれが初めてなんだろ?良かったじゃん、デッカい失敗する前に学べて」

 

ポンズ「え…」

 

メイン「そんな事よりも食おうぜ、ガララワニ!」

 

黄金の様な輝きの笑顔を向けながら私を励ます彼の言葉に嘘は感じなかった…嬉しさも安堵から私の目からは涙が溢れて止まらなかった。美食屋メインの存在の全てを私は垣間見た気がした…そして…私達は味わった……極上の味を…

 

 

 

***

《SIDE:第三者》

 

ポンズ「ほ、本当にいいの?」

 

メイン「えぇ?なにが?」

 

ポンズ「いや…依頼された獲物をここで食べちゃって…」

 

メイン「いいんだよ、どのみちこんなデッカいやつ全部持って帰れねーだろ。それよりホラ焼けたぞ♡」

 

ポンズ「わああ……!」

 

ガララワニを解体したメインは持って帰る数を減らす為にその場で食べようとしていた、肉はこんがりと焼かれ香ばしい匂いが2人の嗅覚を刺激する。

 

 

メイン「それじゃ、全ての食材に感謝をこめて……」

 

「「いただきます!!」」

 

メイン「見ろ…霜降りの脂がキラキラ光ってまるで宝石ような肉だ」

 

ポンズ「ホントにスゴイ…本来のワニ肉は少し透明感がある鶏肉のような見た目で臭みはまったくなく、食感は鶏肉に似ていて初めて食べると『ジューシーな鶏胸肉』や『脂がのった鶏ササミ』といった感想を持つ人が多いようだけど。コレには全くその要素が無いわ…」

 

2人は焚き火の光を反射する肉を手で掴んで口の中に頬張る、その瞬間口の中に大量の肉汁が溢れ出て口内を侵略し始めた。

 

ポンズ「凄い!噛んだ瞬間に蕩けるような甘い脂が口いっぱいに広がった!噛んでも噛んでも肉汁が溢れてくるわ!」

 

メイン「すげえジューシィで噛めば噛むほど肉汁が溢れる…まるで肉汁の噴水だぜ!!」

 

「「うまーーい!!」」

 

 

 

 

「・・・誰だ、アイツら?」

 

しかし、その光景を見ているものがいた。黒いローブで姿を隠してはいるが鋭い眼光が只者ではない事を静かに告げていた。

 

ローブ「どうやらこの世界は…『トリコ』と別の世界が混じり合った世界の様だな、と言う事はあの2人が()()()()()()の代わりと言うことか……」

 

その人物は知っていた、本来ここにいるのはメインとポンズではない事を…

 

その人物は理解した、あの《伝説》の食材も存在しており、それを巡って大きな戦いが起こる事も…

 

その人物は決意した、メインとポンズの2人を見守る事を…

 

 

ローブ「…次はあの果実か、アレは美味い。楽しみだ」

 

 

 

そう言ってその人物は密林に入っていった、伝説の果実の情報を手に入れる為に……

 

 

 

 

 

 

 

 




ローブ「ここでは次回予告をしようと思ってるらしい、アンケートを貼るからみんな参加したければ参加してくれ。え?俺が誰かって?それは次回まで待て」

期間はハンター試験編の直前までよ、あとお気に入りが100人行きましたありがとうございます!!!

あ、次回もお楽しみに!



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第3話:揃う三人、虹の実を手に入れよ!!

〜前回の小話〜

ポンズ「って全部食べちゃダメでしょ!?」

メイン「バカだなぁ〜ちゃんと残してるよ、ホラ!」

ポンズ「口の中のヒルでしょうが!!」

メイン「もうコレで良くない?」

ポンズ「絶対ダメだから!!」


その後、再びガララワニを探して2人はヘロヘロになりながらハントを成功させたとかさせなかったとか。なんで前回のラストでこのくだり入れなかったのとか言うやつは明日のディナーにするとかしないとか。


ローブ「昔最強ジャンプでやってた『激辛!カレー王子』の主人公のカレー王子かお前は……てか誰も知らなくない?」



とある平野に不思議な家がある、それはお菓子の集合体の様な家で屋根にドーナツが乗せてあり、壁はビスケットで出来ている。この建物はお菓子の家(スウィーツハウス)、天然物のお菓子を使って作られた法的に許された食べられる家である。*1

 

『MEIN』と書かれたポストを通り過ぎ、開けっ放しの窓を潜って部屋にあるチョコレートの柱に一匹の蝉が止まる。熱で溶けかけたチョコがくっついてしまったのか助けを求むように鳴き声をあげる。

 

《ミーン!ミーン!ミーン!》

 

メイン「ん〜〜〜…!ふぁ…うるせぇー、もうチョコ食いゼミが鳴く季節か」

 

その部屋の主人であるメインはセミの鳴き声で起きるとチョコの柱を手で掬って食べたりと建物内にある物を食べながら朝の準備をして外に出る、ポストの中に入っていた新聞を読むとその内容に思わず青筋を立てた。

 

メイン「なになに…今日のグルメニュース『ガララワニの品種改良に成功!』だと?IGO(あいつら)め俺に依頼しておいて…」

 

メイン達はガララワニを捕獲した後、前書きにもあった様にガララワニを食べ尽くしてしまった。それで(特にポンズが)慌てて別のガララワニを捕獲したのだが…その後日にガララワニの品種改良に成功したとは本人からしてはあの頑張りは何だったんだと言わんばかりである、全部食べといてなんだが…

 

メイン「ま、しょうがねぇか…気を取り直してしゃくれくんでも捕まえるかね。賑わうといいな、市場!」

 

 

 

***

 

ところ変わって、ここはグルメ中央卸売市場…肉、魚類、野菜、果物、穀物、飲料、調味料と種類問わず一般から高級までありとあらゆる食材が集まる通称『世界の台所(ワールドキッチン)』である。1日に入荷される食材の量は実に90トン、連日1兆円もの大金が動くモンスター市場である。

 

 

「ヘイ600万!!」

 

「650万だ!!」

 

「660アルよ!!」

 

「670!!」

 

「プリーズ700!!」

 

「ヘーイ、ヘイヘイ700万きたぁ!!さぁーーーヘイ他ないかい!?他は!?……ヘーーーイ『白銀タラバ』200kg個体700万!!No.502、築地のバティさん持ってけぃ!!」

 

「「「オオオオオオオ!!!」」」

 

「ヘイヘイ続いて『ツチノコ亀』10万から!」

 

「12万!!」

 

「15万アルよ!!」

 

 

 

 

ポンズ「ふふ、相変わらずスゴイ賑わいね」

 

そんな市場にいたのはポンズ、前回メインとともにガララワニ捕獲に出向いた若きアマチュアハンターである。

 

「私としてはあまり望ましくはないがね…十万単位の食材の価値が数百万にも跳ね上がる競売行為はそれそのものの価値を大きく壊してしまうからね」

 

ポンズ「でも誰にも必要されずに、ダメになるよりはいいんじゃないですか?ヨハネスさん」

 

「そう言われると何も言えないな」

 

その近くには身だしなみを整えた黒髪グラサンの男性がいた、彼の名はヨハネスと言いIGO開発局食品開発部長て、ポンズに依頼し食材の確保にやってきていた。

 

ヨハネス「ところでそろそろ我々の所属ハンターになる気は無いのかね?我々としては優秀な人材ならライセンスを持ってなくてもスカウトしたいところなのだが…」

 

ポンズ「私はまだまだですから… あれ、何でしょう?」

 

ヨハネス「何やらトラブルのようだね」

 

ポンズが視線を向けた先を見ると、ピンク色のスーツを着た女性が丸い鳩と共に商人と言い争っているのが見えた。

 

 

女性「ええ、何度でも言ってあげるわ!このピスタチウオ、口が開いてる…新鮮じゃない証拠!こんな物放送しても視聴者を一グラムも感動させられない!」

 

鳩「クポー!」

 

商人「何だと、店のもんにケチつける気か!大体コイツはな、口が開いた時が食べごろなんだ、全くこれだから素人は…」

 

「中々いい目してるじゃねえか…ピスタチウオは確かに口が開く時が食べごろだが市場じゃ悪手だ、風味が落ちちまう。調理するくらいに開くのがいいくらいだな」

 

商人「何だと…ってウオォッ!?」

 

するとそこには黒いローブで姿を隠し、鋭い眼光を輝かせている人物が青い身体のガララワニに牛の蹄と角を足したような生き物を引きずっていた。

 

女性「アレってガララワニ!?でも色々違うような…」

 

商人「そ、そいつはガララブルじゃねぇか!?水辺がない環境に適応した結果牛のような姿になったガララワニより強い猛獣!!しかも完全に綺麗な状態でノッキングされてやがる!!」

 

ローブ「おい、もしもまだ口が開いてないピスタチウオがあるなら…そいつを出しておきな。口が開いちまったやつは調理して食えるようにして周りに食わせてやれ…そうすればピスタチウオの旨さに惹かれた奴らが買い取ってくれる筈だぜ?」

 

商人「お、おぉ、ありがとよ」

 

商人はローブの人物に言われるままにピスタチウオを持ってスゴスゴと去っていった、ローブの人物はそれを見送ると何事もなかったようにその場を去ろうとする。

 

女性「待って待って!私はティナ、この子は伝書風船鳩のクルッポーっていうの」

 

クルッポー「クポー」

 

ティナ「私、グルメTVで世界中のあらゆる食材を紹介するグルメキャスターなの!ねえ是非取材させてくれない?」

 

その女性、ティナはマイクをローブの人物に向けてパートナーのクルッポーと共にズイズイと近づいていく。しかしローブの人物は鬱陶しそうにマイクを手で押しのける。

 

ローブ「悪いが個人的なビジネスがある、帰れ」

 

ティナ「え、ちょっと!!」

 

 

ローブの人物は無理矢理進むとポンズを見つけ、彼女に近づいていく。え、と呟く彼女の前にガララブルを置くとローブの人物は目の前に立ち塞がった。

 

ローブ「訳あって正体は明かせないが俺はカンタローと名乗っている者だ、お前は美食屋メインのコンビであってるか?」

 

ポンズ「え、コンビ…?」

 

ローブ「そうだ、偶々お前らが一緒にいるのを見つけてな。そうかと思って近づいた…実力のあるメインと未来有望そうなお前、是非とも見届けたくてな?コイツは前払いの報酬だ」

 

そう言って右親指でガララブルを指す、どうやら彼はポンズとメインの活動に手を貸したいようだ。

 

ヨハネス「困りますね、ガララブルはガララワニよりも高価な食材…それをチップ代わりにすると価値が揺らいでしまう」

 

カンタロー「美食屋メインほどのハンターの前払いにはまだ足らんと思っているのだが…お前はどう思う?」

 

ヨハネス「…なんとも言えませんね…」

 

ヨハネスは困ると文句を言うが、カンタローに一蹴される。するとポンズが言いにくそうに手をあげて物申す。

 

ポンズ「あの…いいですか?」

 

カンタロー「ん?どったの?」

 

ポンズ「私、メインと会ったの前回で初めてなの…」

 

カンタロー「…マジで?え、でもバロン諸島で仲良しそうにガララワニ食べてたじゃん?」

 

ポンズ「見てたの!?」

 

カンタロー「300年生きたガララワニの噂を聞いてね、熟成されてさぞかし美味かろうと様子見がてら足を運んだ」

 

 

 

 

 

「へぇ…ハンターとしての情報収集力は凄いな」

 

「久しぶりだな嬢ちゃん!無事で何よりだ」

 

ポンズ「あっ…!メイン!!トムさん!!」

 

すると前回ともに旅をしたメインと案内をしてくれた十夢が現れた、メインの後ろにはシャクレノドンと言う翼竜獣類の猛獣が倒れ込んでいる。

 

メイン「俺がメインだ、カンタローだっけ?何が目的だ?」

 

カンタロー「フッ…美食屋と呼ばれるお前に頼む依頼なんて決まっているだろう。ざっくり言うとな、美味いもん食わせろやコラって事だ」

 

メイン「何様目線だよ!?まぁいいけどポンズとはコンビってほど付き合いは無いぞ?なんでこだわる?」

 

メインはジロリとカンタローを睨む、幼いながらにして中々の気迫を感じるメインにカンタローは内心喜びながら振り向きポンズを見る。

 

カンタロー「色々な出会いのせいか、お節介な奴らの悪癖がついちまってな…ほっとけないんだよ、お前ら。ある程度まで見届けたくなった」

 

メイン「…嘘偽りは?」

 

カンタロー「騙す理由が見つからない」

 

暫く静寂が続くとメインはニカッと笑って右手を差し出す。

 

メイン「なら良いぜ、“思い立ったが吉実、その日以降はすべて凶日”だ。コレからよろしくなカンタロー!ポンズ!」

 

カンタロー「おう、よろしこ」

 

ポンズ「え、私も含まれてるの!?」

 

メイン「なんだよ、嫌なのかよ」

 

ポンズ「あ、嫌とかそう言う訳じゃ…」

 

カンタロー「気にするな、ギャグパートでは話がポンポン進む事はよくある事だ。今の内に慣れとけ」

 

ポンズ「いまってギャグパートだったの!?」

 

「「セリフばっかだしそうじゃね?」」

 

ポンズ「ハモった!!」

 

 

 

いきなりな展開に驚くポンズ、作者もここまでで全然タイトル回収できてない事に内心焦っている。いやマジでいつのまにか3000字行ってるよ…ヤバいよヤバいよ…

 

「「「お前が一番メタいよ!!」」」

 

はい、すみません。ヨハネスさんお願いします。

 

ヨハネス「え!?あ、はい。メインさん…ガララワニの捕獲お疲れ様でした。流石は四天王…()()()()()にも少しはあなたを見習ってハンターとして活動してもらいたい物ですね」

 

ヨハネスはいきなり話を振られてメインに話しかける、ホントにごめんねヨハネス…私は結構好きよ。

 

カンタロー「話進まないから黙ってろ」

 

メイン「兄貴達も基本的には自由人だからな、IGOの望んでる活躍は期待するだけ無駄だと思うぜ?」

 

ヨハネス「それはそうと、丁度依頼したい仕事が一つあるのですが…」

 

メイン「またかよ、IGOにはお抱えのハンターがいるだろう?何で俺にそんな話ばかり持ってくるんだ」

 

ヨハネス「虹の実がなりました」

 

メイン「何…?」

 

ポンズ「虹の実!?虹の実ですって!?」

 

ヨハネス「ちょっ…声がデカいぞポンズくん!!」

 

カンタロー「そりゃデカくもなるだろう…なんてったってあの伝説級の食材なんだからな」

 

 

虹の実…それは気温や湿度によって七色に味を変えると言われる幻の木の実で、25メートルのプールに虹の実の果汁をほんの1滴垂らすだけでプール内の水すべてが濃厚で芳醇なジュースに変化する程の果汁濃度の濃い果実なのだ。それ一つで一生を遊んで暮らせる値段で取引される最高級食材なのだ。

 

十夢「しかし、自然界ではもはや絶滅したというウワサもあるが…本当なのか?」

 

カンタロー「いや、虹の実を実らせる虹の樹はは確かに落雷とかにゃ弱いがそこまでヤワな植物じゃない。それは一部のグルメ資産家が実の値段を上げる為に流したブラフだ」

 

ヨハネス「先日我々IGOの“庭”で実をつけるのに成功しました、勿論天然とは言えませんが……」

 

メイン「オタクらお得意の品種改良かよ…」

 

カンタロー「しかしそれだけならメインに頼る必要はないんじゃあ無いか?何かトラブルでも起きたってか?」

 

ヨハネス「はい、トロルコングが虹の樹に巣を作ってしまい誰も近づけません…!!」

 

ポンズ「トロルコング…?」

 

カンタロー「噂で聞いたな、確かIGOが品種改良で作り出した哺乳獣類で推定捕獲レベルは9…4本の腕で敵を挽肉にしちまう凶暴なヤツだ」

 

ヨハネス「先日、一両20億するグルメ戦車を出動させましたが……見事ひっくり返されました……重さ40トンの戦車がです」

 

それ言葉にポンズはガララワニ以上のレベルに顔を青ざめ…十夢はその強さに戦慄して顔を曇らせる、カンタローは無言を貫きメインは呆れながら頬をかく。

 

メイン「全く変ものばっかり造りやがって…」

 

ヨハネス「報酬は後程…開けてくれますか?」

 

メイン「ったく……しゃーねーな!俺も食ってみたいし行ってみるか、懐かしき庭によ!!2人共行くぞ!」

 

カンタロー「あぁ、了解だ」

 

ポンズ「えっ」

 

こうして、流されるままポンズはメイン達と共に新たな冒険に出かけた…

 

 

 

Menu 2

「虹の実」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…聞いたクルッポー?こんな美味しさてんこ盛りのニュース、逃す手はないわ!」

「クルッポー!」

 

 

 

 

*1
実際にお菓子で家を作るのは建築基準法に引っかかるが、この世界は特別なのである。




謝罪します、ワクチン接種で体調崩してました。

本当に申し訳ない…連休で色々投稿する予定だったのに…マジつらたんですわ。次回はメインの目標とポンズのオリ設定に触れます、お楽しみに!!


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第4話:語り合う夢、メインのフルコースとポンズの継承とカンタローの約束

最近、ポンズ関連の小説が見つかるので他にも書いてみようかな〜って思いはじめました今日この頃。このままポンズを流行らせたいと企んどります。

取り敢えず書く順番とかを次のアンケートでやりたいなって思ってるので投稿頑張ります…………ハス。

それと評価のバーが黄色になってて嬉しかったです、投稿待ってますと言うメールも貰ったので気合を入れなければ……!!


※ポンズにオリジナル設定を付け加えました。


周りに何も無い荒野、遠くに山が見えるだけの道路を一台の白いリムジンが走っていく。そこにはメインとポンズとカンタローの3人が乗り合わせていた。

 

メイン「むほぉ〜〜〜♡見ろよ2人とも、トムが虹の実ゲットを祈願して『金色イクラ』を100キロもくれやがった♡」

 

ポンズ「わあ!キラキラ光って綺麗!」

 

カンタロー「金色に光るストライプサーモンの卵…金色イクラ、それだけで食べても美味いが俺が取ってきたガララブルの肉を中心の部分以外はほぼ火が通っている状態の“ミディアムウェル”で焼いて、それを極楽米の上に並べる。そして真ん中に金色イクラを乗せて…ほい、特別スタミナ丼!お上がりよ!」

 

「「わー!いただきます!!」」

 

2人はカンタローが作った丼物に思わず笑みを浮かべる。

 

ポンズ「これ、ソースに醤油バッタとわさび血醤油を混ぜてあるのね。醤油バッタは成虫だと捕獲レベルが高くて大変だし…わさび血醤油はクセが強すぎて食材の良さを消しちゃうのに全然邪魔してない!」

 

カンタロー「おうともさ、ほんの少しだけ減塩作用のある飲める泥水の酒『減塩泥水酒』を混ぜて臭みを消す果実『リフレッシュレモン』の皮を細かく振りかけたからな。意外と合うのさコレが!金色イクラのプチプチ食感の2段攻撃にジューシーなガララブルの噛みごたえ、そこに極楽米の甘味はやめられないとまらない味わいが「丼物おかわり!!」はえぇな!?まだ短くても30秒くらいだぞ!?」

 

カンタローはメインの早食いっぷりに驚くも、すぐにご飯を装って食材を乗せていく。そこでポンズは気になっていたことをメインに聴いた。

 

ポンズ「ねぇメイン、一つ気がかりなんだけど。トロルコングが真っ先に虹の実を食べちゃうってことはないの?」

 

もしも虹の実が既にトロルコングに食べつくされていたら、行く意味がなくなってしまう…ポンズはそれが心配だった。しかしメインは大丈夫大丈夫と言いながらどんぶりを受け取って再び掻き込む。

 

メイン「トロルコングは動物の肉しか食べないんだ、虹の実の香りに誘われて寄ってくる動物を捕食するのが目的なんだろう」

 

カンタロー「虹の実の絶滅説が出回ったのもそれが一因だ、辺境で強い生物に守られてる所為で何処にも出回る事が無くなったからな」

 

ポンズは2人の言葉に成る程と呟く、しかしまだ疑問は払拭されなかった。

 

ポンズ「でもそんな危険なゴリラがいて近づく動物っているの?いくら虹の実が実ってるからって…」

 

ヨハネス「近づく動物は後を絶ちませんよ」

 

すると運転席でリムジンを運転しているヨハネスが話に入ってきた、物凄く前屈みになり、ハンドルの上の部分に手を添えて運転している。

 

ヨハネス「反射神経に近い…野球でバックネットにファールボールが飛んだ際、客は必ず避けようとするでしょう?『網がある』と理解しているのに反射的に避けてしまう、つまり虹の実の匂いを嗅いだ動物は反射的に『食べたい』という食欲に支配されてしまうんです。例え猛獣に襲われても虹の実を食べるのを止めない動物も多いですからね」

 

理性をも忘れてしまうほどの魅力的な果実と認識し、ポンズは思わず唾を飲む。するとカンタローがコップを用意して中にジュースを注いだ。

 

 

 

カンタロー「なあ、どうせだしなんか喋ろうぜ?各々の目的とかよ。もちろん話せる範囲で構わんが……」

 

メイン「おっ、いいね!じゃあ俺からな?俺の夢はもちろん人生のフルコースを完成させる事だ!!」

 

ポンズ「フルコース?」

 

フルコースとは、主に西洋料理の正餐で供される一連の料理のこと。基本的にメニューは順番に前菜(オードブル)、スープ、魚料理、肉料理、主菜(メインディッシュ)、サラダ、デザート、ドリンクの8つである。

 

メイン「俺はそれを完成させてみんなで食べたいんだ、1つは決まってる。でも今回の虹の実でデザートが決まるかもしれないんだ」

 

ポンズ「め、メインのフルコースメニュー……!?スッゴく食べたいよそれ!!あ、でもすごく高いんだろうな……」

 

カンタロー「まあ虹の実よりも捕獲レベルの高い食材は沢山あるが、虹の実を基準にしたら億じゃ計り知れんかもな。因みに俺にもフルコースはある」

 

「「マジで!?」」

 

カンタロー「まぁな、人間界じゃ食えんものばかりだが…」

 

前菜(オードブル)大帝油蟹(グランドオイルシザーズ) 捕獲レベル測定不能

スープ:バカンスープ 捕獲レベル測定不能

魚料理:大魔王イカ 捕獲レベル測定不能

肉料理:激闘牛 捕獲レベル測定不能

主菜(メインディッシュ):メモリアル 捕獲レベル測定不能

サラダ:カインド 捕獲レベル測定不能

デザート:ティアーズドロップ 捕獲レベル測定不能

ドリンク:エデン 捕獲レベル測定不能

 

ポンズ「どうしよう…全部知らない」

 

メイン「カンタロー…もしかして全部グルメ界の、暗黒大陸の食材なのか?これ全部が!!」

 

カンタロー「あぁ、メモリアルからエデンまではちょいと訳ありだが基本的にグルメ界で手に入るものだ。測定不能なのは人間界のレベルじゃ比較にならないからだ」

 

グルメ界…またの名を暗黒大陸、人間が最も触れてはならないと言われる人類最大禁忌にして絶対不可侵領域である。数多のハンター達が足を踏み入れるも帰って来れなかった脅威的な大陸、世界地図の外側の部分である。

 

ポンズ「カンタロー…行ったことあるの?暗黒大陸に!!」

 

カンタロー「あぁ、行ったよ。仲間と一緒にな…楽しかったものだ、と言っても俺と仲間達が目をつけてたのはグルメ界の部分であって暗黒大陸の文明や薬草なんかは興味なかったがね(そもそも、グルメ界には入ったが暗黒大陸なんて微塵も知らんがね)」

 

メイン「…その事を聞いてもいいか?」

 

カンタロー「今はダメだ、お前じゃそこの動物達に軽傷を与えられてもすぐに殺されて終わりだ。それ以前に環境が基本的に天災だからな、苛烈な自然環境にそこに適応した動植物…そこに住む知的生命体や先住民達の残したトラップ…いくらお前が、いやお前らが気をつけていても意味が無い場所だ。まあグルメ界じゃなくても美味いものは沢山ある。地道に行け地道に…」

 

普段の…といっても短い付き合いだが、カンタローらしくない厳しく険しい目つきをしていた。

 

カンタロー「俺はお前らに強くなって欲しい…でもそれ以上に俺に頼って欲しいんだ。俺のかつての仲間は殆どがバカみたいな優しいお人好しで誰かに頼るのが下手なヤツばかりだった、だから俺はこれからの冒険で軽いサポートしかしない。切羽詰まった緊急時は手を貸すがそれ以外では手は出さない…約束してくれ、俺はお前らに甘えるがお前らも俺に甘えると!」

 

「「・・・・・」」

 

あまりにも矛盾した願い、そして想いに2人は思わず絶句してしまった。しかしそれ以上に彼の願いが深く伝わった、彼は…カンタローは誰も失いたくない。そして誰かに必要とされたいのだと!

 

メイン「…俺達仲間だろ?じゃあ助け合うのは当然さ、なあポンズ?お前もそう思うだろう?」

 

ポンズ「うん、ただでさえ2人とは比べ物にならない弱さなのに頼って貰えるのは嬉しいかな…もしもの時はよろしくね?」

 

メインとポンズはただ真っ直ぐにカンタローを見つめて応える、アッサリと出てきたその答えにカンタローは眼を白黒させながらも感謝の意を伝える。

 

カンタロー「おう……よろしこ」

 

メイン「さーてと、続いてポンズさん!貴女の夢を言っちゃって言っちゃって!!」

 

ポンズ「ちょっと!言いにくい雰囲気にしないでよ!!」

 

メインをポカポカと叩くポンズはひと段落つくと、フゥと息をついて語り始めた。

 

 

 

ポンズ「私の父の名前は小松、ホテルグルメ…前にメインにガララワニ捕獲の依頼をして来たレストランで料理長を勤めていた料理人よ」

 

「「ッ!?小松だって!!」」

 

メインとカンタローはその名前に驚きを隠さずにいた、メインにとって小松は自分の目標であるトリコの最高のコンビであったから。そしてカンタローも動揺を隠さずにポンズに問いかける。

 

カンタロー「小松……平凡な料理人だったらしいがとある事件を解決した奇跡の料理人として語られた有名人、だったよなたしか」

 

ポンズ「うん、レストランの近くで毒ガスによるテロがあったの…その毒は薬膳餅って特殊調理食材でしか治せない特殊な兵器だった。何百人もいる患者に医療機関は選別の用意をしようとした、でもお父さんはその人達全員分の薬膳餅を作り上げて生き絶えた…髪も眉毛も肌も白くなって、調理場を綺麗にした状態で死んでいたって……」

 

メイン「…そうか(もしかしたら、小松はこの世界では元々グルメ細胞を持っていたのか?そしてその力に体が耐えきれずに死んでしまったのか!?)」

 

グルメ細胞…トリコの世界に存在する特殊な細胞で食材に使えばその食材をより美味いものへと昇華させ、その細胞を持つものが食事をすれば力が溢れると言われる特殊な細胞。しかし体が耐えきれないと死ぬか、もしくは怪物のような見た目になってしまう。

 

カンタロー「ならなんで…ハンターを目指すんだ?」

 

ポンズ「お父さんに沢山の食材を届けるのが夢だったの、元々動物が好きなのもあったけど…お父さん自体も生の生きた状態の食材を見てみたい!その生物本来の元気な姿を見てみたい!って言ってたから。だからね、意思を継いであげたいんだ…お父さんの為にも」

 

そのポンズの決意あふれる言葉にメインは感銘を受けた。自分と対して変わらない歳の少女でありながら、彼女はハンターとして気高い精神を持っているのだ。実際隣のカンタローは眼を隠しながら号泣している…涙脆いというレベルでは無いが彼もメインと同意見なのだろう。

 

カンタロー「なんか…グスッあれだな、頑張ろうな!!」

 

メイン「泣きすぎだろ…まぁ気持ちはわかるよ。立派だもんなポンズの夢……俺も協力したいと思う」

 

ポンズ「ありがとう…最後はカンタローだけど大丈夫?」

 

カンタロー「大丈夫、言える、んんっ!失礼した」

 

カンタローは涙をとめてコップの中身を飲み干すと息を吐く様に答えた。

 

 

 

 

カンタロー「俺は見ての通り、そして知っての通り秘密しかない…今の状況で言えるのはまず一つめ。()()()()()()()()

 

「「ッ!?」」

 

カンタロー「正確に言えば人間だった、しかしある事情で人間から別の生き物へと姿を変えて生きている…もう寿命なんて推定でしか分からんくらいにな」

 

ポンズ「寿命が推定でしか認識できないって…そんな生き物いるの?」

 

メイン「姿を変える……進化したって事か?」

 

カンタロー「その通り、100万点くれてやる」

 

メインの答えにパチンと指を鳴らして答えるカンタロー、人間とは成長や学習に特化して道具や知恵を駆使する事によって繁栄してきた生物だ。進化したらどうなるのかと言う疑問は挙げられているがその行き着く先は退化なのか絶滅なのか体の一部が膨張するのかまるで分かってない、一説によると人類の生物学的進化には現時点で約80年程必要になるのだ。*1

 

カンタロー「まあ話せば長いし、クソッタレな話だから省略させて貰うが俺は長年生きてきたせいで多くの出会いと別れを経験した。みんな面白くていい奴らだったよ、側から見たらただの変人集団だけど」

 

ポンズ「変人…って…」

 

カンタロー「事実だからな…そして俺はとある夢がある、それは俺の大好きなヤツに満足のいく死を与えたい。この世に生まれ、成長して、友達ができて、恋人ができて、飯を食い、学びと遊びを楽しみ、よく眠り、時に喧嘩して、別れては泣いて出会っては笑って、結婚して子供を作り、歳を取り、皆で笑い合い、そして最後には皆に囲まれてこう言って死んでほしい…」

 

 

 

 

 

 

 

カンタロー「『良い人生だった』……とな」

 

そう告げるカンタローの瞳は再び悲しそうにしていた、おそらく彼の願いは叶う事もあったのだろうがその逆も然り…叶わずに別れてしまった友もいる事を示していた。そんな様子を見て2人はお互いに顔を合わせ、力強く頷いた。

 

メイン「大丈夫だカンタロー!遺書は書いてあるが死ぬつもりなんてかけらもねぇからよ!一緒に頑張ろうぜ!!」

 

ポンズ「私も、死にたくはないから!!」

 

カンタロー「・・・ありがとう」

 

ヨハネス「お話中に失礼します皆さん、見えてきましたよ、目的地である『庭』が……」

 

 

 

***

《SIDE:ポンズ》

 

ポンズ「なんて大きな壁なの…」

 

 

私達は車を降りてまず目にしたのがとてつもなく大きな壁だった。どれぐらいの高さがあるんだろう?それにビオトープって書かれてるけどがこれが『庭』という事かしら…

 

 

「「ご馳走様です、メイン様!」」

 

メイン「止めろよそのアイサツ、何も奢っちゃいねーよ」

 

 

入り口らしき場所に立っていた門番と思われる二人の男性がメインに謎の挨拶をする。

 

 

ポンズ「ビオトープガーデン…?ビオトープって?」

 

メイン「人工的に作られた動植物の生息区間の事だよ、限りなく自然に近い状態で動物達を放し飼いにしているんだ」

 

カンタロー「IGOはこのビオトープ内でグルメ動物の生態調査等を行っているって訳だ」

 

ポンズ「そうなんだ」

 

私の疑問にメインとカンタローが答える、ここはIGOが作った人工の猛獣が放し飼いにされている場所なんだ。そう言う場所が存在するとは聞いていたけどここまで大きいなんて…

 

 

ヨハネス「じゃあゲートを開けてくれないか?」

 

門番A「それが…」

 

 

《ドドドドンッ!!ドドドドドンッ!!》

 

 

ポンズ「わ!?何?雷!?」

 

ヨハネス「ぐッ、この音は!?」

 

 

突然雷のような轟く音が響き私は思わず耳を塞ぐ、今の音は?

 

 

門番A「研究所の監視塔からの連絡ですでに一頭のトロルコングがゲート裏に…」

 

ヨハネス「待ち構えているのか!?」

 

ポンズ「えっ!ほ、本当ですか!?も…もしかして今の音って…中から門を…ドンドンって」

 

ヨハネス「いえ、それはないでしょう。ゲートの裏には深い“掘”がある、そこを超えてゲートを叩くことは出来ないハズ」

 

《ドォンッ!!!》

 

ポンズ「きゃっ!!」

 

ヨハネス「ひっ!?」

 

また大きな音が鳴り響き何事かと思い振り返ると、メインが自分の胸を叩いていた。先程のトロルコングと同じ様な音を出せるのは凄いと思うけど…

 

ポンズ「め、メイン!ビックリさせないでよ!何なのよ今の音!?」

 

メイン「『ドラミング』、ゴリラ特有の威嚇のポーズ、さっきの爆音はトロルコングが胸を叩いて威嚇した音だ。庭の王者が俺に入るなと忠告したんだ」

 

カンタロー「トロルコングは意外と警戒心が強いからな、気配ダダ漏れで動いてるとアッサリ探知される……しかしメイン、ゴリラのドラミングは本来握り拳じゃなくて掌で叩くんだぜ?」

 

ドラミング…確かにマウンテンゴリラが調査に来た人間に対し行ったりしたと言う報告があるけど、こんなに高くて分厚いコンクリートの壁を越えて聞こえて来るなんて…

 

メイン「かまわねぇ、ゲートを開けてくれ」

 

門番A「ここ『第8ビオトープ』ではゲートから5㎞圏内に捕獲レベル5以上の猛獣がいる場合ゲートを開ける事はできません」

 

メイン「…なるほど、ならゲートの5㎞圏内にトロルコングがいなければいいんだろう?つまり()()()()()()()()()()()()()()()良いわけだ」

 

門番A「え?」

 

カンタロー「まさか…アレをやるつもりか?」

 

そう言ってメインは壁に近づき拳を構える、それに対しカンタローは期待に満ちた眼でそれを見つめる。

 

メイン「ゴリラはドラミングの他に何かを投げたり近くのものを壊したりするというが…今度は俺が威嚇する番だ」

 

門番B「え!?め、メインさん!?」

 

ポンズ「一体何を…」

 

カンタロー「来るぜ…下がってな!」

 

メイン「『3連釘パンチ』ッ!!!」

 

《ドドドンッ!!》

 

メイン「1……」

 

《ビシィィィ》

 

ヨハネス「わあああぁ!!」

 

メインが拳をぶつけたと思ったら衝撃が3回重なった様な轟音と共に現れ、時間差で壁が凹んでしまう…今の技は一体!?

 

カンタロー「『美食の小刀、美食の四ツ又槍(ナイフ&フォーク)』と対をなすメインの必殺技…その名も『釘連打撃(釘パンチ)』!数回のパンチを同時にブチ込む大技でパンチの回数分、釘で打ったかの様に衝撃を内側へと送り込む破壊の技だ。この目で見られるなんてレアだぜ?」

 

ポンズ「釘パンチ……」

 

ガララワニの皮膚を貫き両断したナイフとフォークって技だけでも凄かったのに、まさかこんな豪快な技を持ってたなんて!!

 

メイン「2…3…開通だ」

 

《バガアアアアアン》

 

メインが呟くと同時に壁が爆散してポッカリと穴が開く、メインはそれをなんとも思わず「おじゃまー」と言いながら通っていく…

 

カンタロー「全く、無茶すんじゃねぇよメイン」

 

ポンズ「あ、確かにコレはヤバいんじゃ「来るなポンズ!攻撃されている!!」え?」

 

メインの叫びに思わず動きを止めてしまうと、突然黒い影に覆われてメインと一緒に穴まで戻される。そこで目にしたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大量の毒蛇に噛みつかれたカンタローの姿だった……

 

 

 

 

 

 

 

*1
作者個人で調べた結果、作者はこう言う結論に至りましたがハッキリと断定は出来ません。もしかしたら違うかも




予告な様なモノですが、ハンサイクロペディアみたいなのをやろうと思います。名付けて『メインとポンズのハンサイクロペディア』です、いつやるかは未定です。


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