陛下の友人は躊躇を忘れました (扶桑畝傍)
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その①

さて、

どこから手を付けようか?

今、俺が居るこの『土地』は

なんにもない荒野

この見える範囲と、山の麓までが『俺の土地』

辛うじて雑草が生え、ぽつぽつと木が少し

「ふむ、

 先ずは『土精霊から』呼びますか。」

そうここは異世界

理由は解らないが、

この近くにある街道に倒れていて

丁度、視察帰りの『国王陛下の車列』が俺を見つけた

最初は街道脇に放り投げられたけど

「ぐぇっ!?」

って、声をあげたから助かった

陛下は優しくて、「良かったら家に来ないか?」

って言うもんだから「はい、このままじゃ野垂れ死ぬので。」と

転がり込んだ

そうこうしている内に陛下と和気あいあいし、

色々法律やら兵站についても話し込んだ

事務総監に「夜更けまで何やってるんですか!!」って、

怒られたりもした、だって陛下、面白いからね~

んで、『魔法』についても色々話し込んでたら

『いつの間にか使えるようになっていた』

うん、正直どして?って思ったけど、

陛下自身が『魔力スポット』で、

近くに居る人物は魔法の才能が開花するか、

それに準ずる能力に目覚めていたらしい

「『土精霊さん、来てくれないと・・・』」

〈んな脅しするなよ!!怖いわっ!!〉

って、来てくれる

「お、キミが代表?

 この一体の『酸性濃度』を知りたいんだけど、

 それと、水精霊にも声掛けといてくれる?」

〈酸性濃度?なんだそりゃ?

 水精霊はこの近辺は居ないぞ?地下水もそんなに多く無いし〉

ありゃ?困ったね

「そっか、あの山の麓まで俺の土地になったからさ、

 開墾して良いよって言われたんだけど、

 先ずは畑かな~って考えてたけど、先に水源確保か~。」

〈ぁ~、陛下の友人って、アンタの事だったのか〉

「おう、ヨロシク。」

妖精界隈では陛下の友人で俺は知れ渡っているらしい

「んで、あの山には水源あるかな?」

〈・・・ど~だろ、

 行った事ないし、ここまで水を引くにも遠すぎないか?

 地上じゃ蒸発してここまで川として引っ張れないだろうに〉

確かに、日差しは強い

「ま、色々あるんだよ、行った事ないんだね?」

〈あぁ、今、土精霊連絡で聞いてるけど、

 ・・・あ、居た居た、なんでも、山の向こう側には

 でっかい湖があって、反対側に流れてるって〉

なるほど

「そこの水資源って、分けて貰える?」

〈え?いや、どうだろ〉

「水精霊いるんでしょ?」

〈・・・水神なら居るって〉

「ぁ~、湖だもんね、いるか、

 なにか困って無いか聞けるかな?」

〈え゛っ!?水神様に?無理無理、

 水精霊が最低1000年経って、

 水神になれるかもしれない存在に、土精霊の俺が声かけても

 返事なんてして貰えないぞ?〉

なるほど、んじゃ直接聞きに行くか

「うし、とりあえず、農地に仕えそうな土を選定しといて。」

〈ちょ、おい、どこ行くんだよ?〉

「水神とこ。」

〈まてやっ!!〉

《はぁ》

水神になれたのはいいけど、

この水量、どんどん増えてるのよね

麓へ流すのは良いけど、やり過ぎちゃうと

下流の街とか森を押し流しちゃうのよね

どうしたらいいかしら

「こんちゃ~っす、

 ここに水神さんいますか~?」

《へ?》

「あ、流石に服着て下さい。」

《きゃぁ~っ?!》

《もぅ、お嫁に行けない》

「え?水神さんにも、そう言う概念あるんですね。」

《・・・言葉のあやよ、それで?なんの用かしら?》

「単純に水資源を分けて貰えないかな~って。」

《え?貴方、この川の下流の人間でしょ?》

「いいえ、こっち側、山の向こう側です。」

《どうやって来たのよ》

「『アレで飛んで来ました』」

そこには『宙に浮かぶ鉄?の塊が浮いていた』

《・・・そぅ、(見なかった事にしよ)

 それで、どうやって水を山の反対側へ流すつもりかしら?

 (山を越えるなんてもってのほかだし、

  地下水もこの土地の性質上、水を通しにくいし)》

「あぁ、こう言うのと、地下ダムで作ります。」

この人間はよくわからないけど、さいふ?おん?方式?とかで、

山を越える大きな筒で水を反対側に流しだし、

地下に土精霊達を呆れさせながら

『ダム』とか言うのを作り上げた

自然流下式なるもの?で、

溢れた分だけ下流に流せるシロモノらしい

なるほど、これなら麓の街や森を押し流しそうな分、

こっちに流れ込み流水量を抑え込めると、

なるほど、これは他の水神達に教える必要があるわね!

「うし、地下トンネルも問題無し、後は運河か・・・うし、

 そろそろ土精霊の選定も終わってるだろうし

 そろそろ帰りますね。」

《え?あ、うん、あの》

「なんでしょう?」

《いえ、貴方が造る町?

 出来たら遊びに行っていいかしら?》

「えぇ、まだ暫く掛かりますけどね。」

えぇ、1000年と言う自負があるからこそ、

油断してたわ、後で聞いたけど、

あの『陛下の友人』だったそうで、

それからたった一年で形になるなんて想像すらしてなかった

 



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その②

「っと、ただいま~、

 水を分けて貰える事になったよ~。」

〈は?まだ半日も経ってないだろ?〉

「兎に角急げ急げ、もう水は流れて来るからさ。」

〈はぁっ!?冗談だろ?〉

「運河はそこまで造って来たからさ、

 それで、農地向きの地区はありそう?」

〈・・・それが、あんまり向いてないんだ、

 他所から持って来ようにも遠すぎるし、

 地下も向いてない、水の保持力が少ないんだ〉

「そっか、まぁ、それはそれで目途が立つ、

 海までの距離はこっちの方が遠いんだよな?」

〈ん?まぁ、そうだけど、

 なんで『遠回り』を選ぶんだ?〉

「内緒、そうすると・・・。」

なぁ?こうして喋ってるじゃん?

コイツ、喋りながら『魔法』でどんどん造成してやがるんだ

なんだか白っぽい土?を創り出して

溜池造ってるし、うわ、水通してねぇなんだコレ、

こんくり?なんだそれ?もるたる?は?わからん

んで?なんだそれ・・・はぁっ!?『糞尿の塊と石灰!?』

臭ぇってば!!

あ、コイツオカシイ、全部混ぜやがった上に、

畑?にするとか言った土地にソレを全部混ぜやがった

おぃいいっ!!

は?これで栄養価が高い土が出来るだ?んなアホな

水も撒きだしやがって、俺の通り名が『糞かぶり』になったら、

コイツ埋めてやるからな・・・

一週間して、オドロイタってのと、呆れた

用事があって少しここから離れてたら

『町』が完成してた

と、言っても建物はまだないけど、

道、巨大運河、畑群、え?なにをどうしたらこうなるの?

道は、『こんくり』で出来た街道で、

コイツが倒れていた場所で国の街道と合流してて、

微妙に斜めになってて、両脇に『側溝』なるものがあって、

雨水はそこに流れ込んで、『こんくり』の下に、

雨水洞って言う専用の通り道があるんだと、

これも、用水路に繋がってて、畑に回せるそうだ

んで、畑はマジで驚いた、

ほんとに栄養たっぷりで、すげぇ事になってた

ただ、糞尿・・・どうなったんだ?

ん?『ワールドワームの幼虫じゃねぇか!!』

なにぃい!?コイツ等がこの土に変換しただってっ?!

コイツ等、砂漠だと巨大化して人間とか魔物を普通に襲うのに

なんでだ?コイツ等『小さいままだぞ?』

はぁっ!?『栄養』が足りてれば『小さいまま』だとぉっ!?

つまり?糞尿が『栄養』として充分で、

その出て来たモノで土が良くなる・・・やべぇ、革命じゃねえか!!

んで?

なんだこの運河?

真ん中の高いとこに小さめの水路と、

両脇のこの『デカすぎる空堀』は?

え?コレでいいの?は?小さめの水路からあふれた水が

この空堀・・・じゃない?え?海まで繋がってる運河なの?

あ、そ、

『航路用運河・空堀運河・水路・空堀運河・航路用運河』と、

全部で5本で形成されてるとかデカすぎだろ!!

え?絶対必要になる?ほんとかよ?

まぁいいや、『ワールドワーム』のコレはマジ革命だ、

大至急他の奴らに伝えなきゃ!!

そんなこんなで半年、

陛下の友人は派遣されて来た農民達と収穫を楽しんでいる

はぁ、土精霊の本懐だな、

やっぱ、人間が喜ぶ顔は何よりの褒美だ

ん?水精霊から?は?山で凄い雨だと?

〈おい!!なんかヤバいぞ!!山で大雨だって!!〉

「来たか、

 水神さんとこ行ってくる、お前は念の為、

 運河に盛り土出来るように準備しててくれ。」

〈いや、だからまてやっ!!〉

《あわわわっ!?なんでこの雨止まないの~っ!?

 湖があふれる~!!》

「水神さん!!

 地下ダムの切り替えをするからこっち来て!!」

《あぁ!!陛下の友人さん!!たすけて~っ!!》

《どどどうするの!?》

「どうって、ほら、教えたでしょ?」

《これ?》

ただの歯車だが、水車式歯車で、ここに水を流せば稼働する

《ん~、わかんないけど、流すね?》

既にダムの上からは溢れた水が流れている

そして、

更にその勢いが増して行く

《えぇえっ!?どうなってるのっ!?》

「可動式止水板、普段は閉じてるけど

 増水時はここも解放して流水量をあげられるんだ。」

《ほぇ~》

轟音でほとんど聞こえてなかったけど、

これで湖が溢れる心配もないね♪

《でも、これって、こっちの運河は大丈夫なの?》

「あぁ、たぶんな、

 今回が初稼働だ、ついでだ、見に行ってみるか?」

《え?いいの?》

「あぁ。」

溢れ出た水は、巨大運河へ流れ込み、

『空堀へ流れ込んで行く』

《うわ~!!凄い凄い!!》

「うし、大丈夫そうだな。」

可動式止水板が動くと、

航路用水路、水路に繋がる道を狭め、

空堀へ向かう水路を大きく開ける動作を連動させていた

「この空堀が海まで繋がっている、

 因みに俺の街に『警報』も鳴る様に連動している、

 早々被害は出ない筈だ。」

《はぇ~、友人さんは凄いね~》

「雨はどうだ?止んだか?」

《う~ん、まだ掛かりそう、

 てか、これを予測してこれだけの設備を?》

「まぁな、

 たぶん、向こう側は『雨季』だろ?

 湿気った空気が山に当たると、そこで雨雲に変化するんだ、

 そこで豪雨となる、当然湖に流れ込むし、

 『底に土が溜まる』

 定期的に掘り出して山に戻すか、家にくれないか?

 山の栄養を含んだ土は新しい開墾地に使えるからさ。」

《え?底に溜まってるの?》

「知らないのか?」

《知らない》

「・・・よく1000年生きてたな。」

《そうなの?》

「まぁ、雨季が終わってからだな、じゃなきゃ深くて難しい。」

《へ~》

「・・・上手くいけば『より強い水神になれるかもな』」

《え?ほんと?》

「試してないなら、結果がどうなるかわからん、

 ま、そこは土精霊と話といてくれ、俺は街に戻る、

 そっちがきちんと稼働してるか確認しなきゃな。」

《わかった、たぶん冬季の手前が一番少なくなる筈だから

 その時声かけるね?》

「あぁ、雨が止んで水量が減ったらちゃんと元に戻せよ?

 窯の底に穴が開いてるようなもんなんだからな?」

《そ、それは怖いわね、ちゃんと見て判断するわ》

「ただいま~・・・おぉ、すげぇ。」

泥水が勢いよく流れており、空堀運河は

その能力を遺憾なく発揮している

「まだまだ水位に余裕があるな、

 うし、当面は何とかなりそうだな。」

〈盛り土必要ないじゃん〉

「無い方がいいよ、

 あるとしたら天変地異クラスだ。」

〈・・・勘弁してくれ〉

「向こう側の雨季が終われば

 底に溜まる土砂を回収して畑に使えるし、

 運が良けりゃ『魚』も流れ着いてるだろ。」

〈なるほど、それで妙な溜池造ってたのか〉

「あぁ、養殖して魚を増やせるし、

 国内に売れば金も動く、これで漸くスタートラインだ。」

 



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その③

王宮

「ほぉ~、養殖の目途が立ったか、早かったの。」

「陛下の御友人、一体何者なんですか?」

「なに、この国の利益になるならそのままでよい、

 下手に勘繰ると逃げ出しかねん。」

「むぅ、そうですね、既に税収も増加傾向、

 転領希望の者も増える一途、

 他領主から恨みを買わねば良いのですが。」

「ソレに関しては我らが動かねばならんだろ?

 アイツは、俺に信頼を寄せてくれている、

 なら、それに応えてやらねばならん、

 隣国との戦争も『陣形・攻め方・守り方』も舌を巻く、

 おかげで被害は最小限で大勝したのだ、

 本来なら『領主』の地位でもいいのだが、

 あくまで『臨時領主』だ、平民からの領主へなるには、

 他貴族の婿養子になるぐらいしかない。」

「そうですね、貴族制度は『悪くない』と言っておりましたが、

 『準貴族』を創ってもいいかもしれないとも。」

「そうか、それの法案も色々大詰めだったな。」

「はい、冬季の手前には可決、発布となります、

 功績を挙げた兵士に勲章以外にも名誉を与えられますし、

 小さいながらも『自分の土地』を持つのは、

 国からの信頼の証になります。」

「自分の土地を持たせ、家庭を築かせれば、

 国外への流出を減らせるし、人口増加も期待できる、

 いやはや、人質を取る様に見えてしまうな。」

「陛下。」

「すまぬ、しかし、本当に、アイツは何者なんだろうな?」

「そうですね、

 国の利益の為、手放したくは無いんですけどね。」

〈お~い、ご友人、水精霊から連絡だぞ~〉

「お、なんだって?」

〈そろそろ冬季の手前だと〉

「うし、また行って来る。」

〈うぉい!!〉

「こんちゃ~・・・さぶっ!?」

慌てて毛皮のフードを被る

《ぁ、あぁ、いらっしゃい》

えぇ、水神も寒いって感じるんだ

「兎に角暖まりましょうか。」

《そうね》

焚火を焚きつつ湖を見ると

「かっちこちですね。」

《そうなのよ・・・っしゅん!?

 ぁ゛~寒い、急に寒くなってね、一晩でこの様よ》

「うぬぅ、氷は割らないと・・・あ!!」

何かを思いついたのか、

山にある空洞に

湖の氷を切り出し、枯草を間に挟みながら

どんどん積み上げていく

「氷室って言ってな、上手く行けば、

 『夏季』でも涼しくて『かき氷』も食べれるぞ?」

《いま冷たい話題は要らないけど

 かき氷はちょっと楽しみね》

「さてと、土精霊『来てくれな』〈いるよ!!〉あ、いた。」

〈貴方の『来てくれないと』って、

 マジで怖いからやめてよ!!普通に出て来るからさ!!〉

「はいはい、

 それでさ、地下であったかい場所ない?」

〈あったかい場所?

 ん~・・・熱すぎる『溶けた土』ならあるけど〉

「・・・はい?」

《あぁ、なんか妙に熱い場所あるのよ

 ここからそう離れて無いけど》

あぁ、コイツ、ほんとなんなんだろ?

ま、『温泉』はマジ助かるから良いけど

《はぁ~、生き返る~》

〈は~、こんな楽しみ方があるなんてな~〉

「いや、こんな近くにあるのはマジでヤバイ土地だなここ、

 陛下に言ってここも家の土地にしてくれないかな・・・。」

さくっと底に溜まってた土を回収し、

湖底が更に深くなった

《お~、なんか身体が軽くなった感じがする》

〈湖底に、こんな栄養が豊富な土があるなんて

 いや、考えて無かったわ〉

「ただ、取り過ぎても良くないから、

 10年に一回ぐらいかな、

 ただ、土砂崩れとかで流れ込んだら例外だけど。」

〈それは大丈夫だよ、

 俺達がちゃんと補強してるからな!

 ドライアド達も協力してくれてな、

 頑丈な土地になってるぜ!〉

「そのドライアドなんだけど、水中植物はまた別なのか?」

〈水中〉《植物?》

〈ソレに関しては、親戚のような者ですよ?〉

「おぉ、冬季前なのに、大丈夫なのか?」

既に反対側が透けて見えるぐらい薄い

〈えぇ、冬季は眠るだけですので

 あんまり姿をさらさないだけですわ〉

「なるほど、

 んで、親戚って事は、会話も?」

〈えぇ、ですけど既に冬眠しているようで、

 返事はありません、正直、私も眠いですけどね〉

あふぁ、と、欠伸をするドライアドさん

「すいませんね、

 ドライアドさん、来春、起きられましたら

 連絡をお願いします、

 湖底の土はどのぐらいの頻度が最適か、確認したいので。」

〈わかりましたわ・・・あふぅ、

 それでは・・・来春、ま、た、おあい、しましょ。〉

温泉に浸かる水神と土精霊を放置して帰って来た

「いや、マジでどうしてこうなった?」

冬季を目前に控えての『住民の急激増加』は、

正直、胃が痛くなるが、

身ぐるみそのままで領地から逃げ出して来たのがほぼ全てで、

圧制もあるし、迫害も

「何とかするよ。」

あぁ、泣いちゃって、まぁ。

仕方ない、『解禁』するか

両手をパンと合わせ

「せ~の。」

一気に集合住宅を『錬成』し仕上げる

( ゚д゚)

って、みんな固まってるけど

「はい、これで当面の住居は勘弁してくれる?」

コクコク

「食糧は王都にも支援を要請しとくよ。」

流石に2万人近い住民が一気に押し寄せて来るなんて

考えてなかったので、陛下に国庫から出して貰おう



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その④

この世界の大きな利点は

『誰でも魔力を持っている事』

魔力無しは1億分の一に居るかどうかで、

妊娠期間中の外的要因か、栄養不足における

身体成長に影響があるかだ、

そして、徐々に魔力を蓄積し、成人(16)になる頃には、

ギリギリ日常生活に支障が出ない程になる

「このボタンを押すと。」

扉が開き

「この中にある階層数字を押すと

 そこに到達して、扉が開くんだ。」

はい、エレベーターですね

ただ違うのは、下から押し上げるリフトタイプで、

各階層にロック機構、万が一のリフトが墜ちた場合

エレベーター本体に歯車式ブレーキがあり、

ゆっくり降りて最寄りの階層に止まる

そしてそのリフトを駆動させる動力は

『魔力を注ぐ事』で、重量に応じて少し消費量が上がる

最長5階で、高層マンションには向かない

集合住宅は、

リビング、寝室、子供部屋、キッチン、風呂場、トイレを完備

これで一家族分で、一階層10部屋、5階層

50世帯住めるのが、2万人近い住民を賄うだけ建っている

「圧巻だな。」

〈いや、こんだけを一気に錬成して

 疲れ一つ見せないお前が化け物だよ〉

「そうか?」

高台に建築(錬成)した団地群は、

あるゲームからの応用だ、さらには浄水棟完備で、

雨水も蓄えて風呂場、トイレに使える。

〈これ、絶対異世界の代物だろ〉

「何を今更ww」

躊躇してたら共倒れが目に見えてるし

他の領主から、住民を返せとか五月蠅くなって来た

んじゃ、家より良政でも施行したらっていったらブチ切れられた

〈んで?〉

「んで?って、落とし穴。」

〈この領地を丸々囲う空堀を落とし穴って言うお前って〉

はい、めんどくさいので、全部囲いました

他の領兵が( ゚д゚)としてますが

幅2kmの空堀が珍しいのでしょうか?

あ、その余った土は『新しい開墾地』にまぜまぜしてます。

運河に触らない様に『有刺鉄線』&『電気』流れてます

あ、誰か感電して落っこちた

「ぁ~、可哀そうに。」

運河の高さは30mはあるので普通に上るにも鬼きついです。

〈しかも、外付け階段しかない様に見えるけど、

 中の点検通路からエレベーターがあるって言う非道〉

「はっはっは~、褒めたら、また何か出来るかもね~ww」

〈これ、陛下に言ってあるの?〉

「もち、承認済み。」

〈陛下ェ~〉

「へっぶし。」

「陛下?」

「いや、噂だよ、

 しかし、随分領民が移動したようだね。」

「はい、把握しているだけで、

 国の4割がご友人の領地に身ぐるみのまま移動、

 その件で陛下に国庫の解放要請書が来ています。」

「いいよ、承認しよう、国民を餓えさせるのは国の恥だからね」

「わかりました、

 直ぐに準備致します、そして、

 エレベーターの件は、如何なさいますか?」

「秘密通路の方に設置しよう、

 あそこなら、アイツの領地に繋がる地下通路に近い。」

「・・・万が一の首都転換の為ですね?」

「あぁ、隣国は、連合を組んで来た、

 我が国も連合を組もうにも、

 背後は山ばかりで、小規模国家と言えは聞こえはいいが、

 所詮、その土地に住む先住民達の集まりだ、

 軍なんて持っていない。」

「はい、頭が痛い案件です。」

コンコンコン

「ん?入れ。」(はて?今日は誰も来ない筈)

「よ、陛下。」

「おま、どうやって・・・。」

「どうって、外見ればわかるよ。」

「そと?」

宙に浮かぶ鋼鉄の巨体は幾つかの大砲を積んでいた

「・・・アレは?」

「あれ?アレで『駆逐艦』」

「くち、く?よくわからんが、なぜアレを?」

「精霊連絡網で聞いた、相手、連合を組んだって?」

「はは、精霊には嘘を付けないか、

 しかし、お前に従軍指示は来ていないだろ?

 それに領地に他の領兵が来ていたのではないか?」

「あぁ、空堀に首だけ出して埋めて来た。」

「・・・まぁ、妥当な刑罰だろうな、

 しかし、解放期限は決めているのだろう?」

「え?」

二人「え?」

「いや、家の領地に攻めて来たんだし、『内戦扱いでしょ?』」

「おま、ぁ~、すまん、

 解放してやってくれないか?流石に彼等にも家族は居るだろうし。」

「はは、そう言うと思って『駆逐艦』にぶら下げて来た、

 今、降ろしてるとこ。」

「ぶ・・・まぁ、よい、

 これに懲りてくれればいいが、

 先の戦術構想で話した国だ、

 そこと、さらには山岳地方の国だ。」

「ぁ~、なるほど、丁度いいや、

 その山岳地方の国、俺が攻め落としても?」

「いや、ご友人?なにを言っているのですか?」

「いや、『鉱物資源』が必要なんだよ、

 『錬金術』だって、限度はある、

 『創り代える』のが錬金術で、無からは作れないんだ。」

「詳しく聞こう。」

「陛下!」

「極論だけど、『魔法』も『錬金術』に近いんだ、

 『周辺魔力と自身の魔力』を

 発動する術式に変換している、

 『錬金術』は、物質を別の物質に変換している、

 どちらも『中核となる物質』が必要なんだ。」

「確かに、我が国には『鉱山』と呼べる規模の物が無い、

 いいだろう、従軍を許可する、

 と言っても『単独で動く方が都合が良いのだろう?』」

「流石陛下、わかってる、せめて『国旗』を貸してくれないか?」

「そうだな、我が軍の所属だとわかるように目立つ所にな?」

「了解、んじゃ行って来るぜ。」

「あ、待ってくだ・・・いってしまわれた。」

「ふぅ。」

「陛下、なぜ単独で動く事を?」

「あんなものが上をうろついて見ろ、地上に集中出来るか?」

爆音を上げ上昇していく『駆逐艦』

「無理ですな。」

「それと、これだ。」

「コレは?」

「あの『駆逐艦』の仕様書らしいが、

 ふざけた能力だと思わんか?」

「・・・装甲が『星の加工金属』ですと?

 ごくまれに隕石が落着しますが、

 あれから造られる武器は『神話級』の代物ですよ?

 それが・・・。」

「しかも、動力は魔力に頼っていない、

 宇宙と呼ばれる、空より先の空間、

 その中に飛び交う『粒子』なる物を収集、

 武器にも転用出来る物らしい。」

「・・・味方で良かった、と言うか。」

「あぁ、とんだ劇物だ、

 取り扱い注意の特別に不味いものだ。」

「会議を開きます、

 アレが我が軍の物であるが故に、

 各国に喧嘩を売り兼ねません。」

「すまぬ、主要な役職は全員を集めるように。」

「はっ。」

「さてと、

 衛星からの情報は?」

【連合軍と思しき熱源を感知、解析します】

駆逐艦はオレンジ色の鼻先をしたあの航宙駆逐艦で、

支援用AIを追加した

【完了しました】

歩兵およそ3万

騎馬兵2000弱

補給部隊1万

「なるほど、オーバースペックだね。」

【はい、主砲も必要ないかと】

「パルスレーザーで、どれだけ吹き飛びそう?」

【2km周囲は熱変換で焼失し、

 3km範囲は爆風でなぎ倒されるでしょう】

「・・・ま、いいか。」

【よろしいので?】

「家に攻めて来てるんだよ?

 なら迎え撃つ、それだけ。」

【(絶対過剰防衛ですね)射程圏内です。】

「警告射撃、それでも退かなければ『殲滅』で。」

【了解、撃ちます】

 



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その⑤

 

《貴軍等は

 我が国の国境を無断で横断しようとしている、

 これは警告である、即刻進軍を中止し、話をしよう》

 

なんなんだアレは?

遥か彼方から轟音と共に現れた巨大な鋼鉄のモノは

『これから進軍する国の国旗を掲げていた』

 

「如何致しますか。」

「今止めて何になる?」

「では。」

「うむ、『魔導士』達へ

 上空の鋼鉄のモノへ攻撃魔法を、

 周辺歩兵は、魔導士を護衛せよ、

 あれだけ大きなモノだ、

 『余程無茶をしている筈だ』簡単に墜とせよう。」

 

妙な陥没痕があったが、

まさかアレが撃ちだせる訳があるまい

 

【警告、無視されました】

「国境は?」

【超えています、幾つかの集団へ隊列を変更、

 光学反応、魔法が放たれました】

「艦橋波動防壁出力全開、先ずは耐えて見よう。」

【防壁最大出力、艦全体をカバーします】

 

波動防壁、これを最大出力にすると、

『主砲』へ動力を回せなくなるけど

パルスレーザーで過剰防衛だしね

 

ただ、威力が足りないのか、

距離が遠過ぎるのか、『魔法』は届かず霧散した

 

「バカなっ!?」

アレの高さは、飛竜よりも高いと言うのか!!

「王子!!

 魔導士達に動揺が広がっております!!指示を!!」

「むむむ・・・。」

「上空のモノより光源ふ」

 

 

 

「はっ!?

 どうして馬に乗せられているのだ?」

「王子!!意識が戻られましたか!!」

「なぜ・・・撤退しているのだ?」

「・・・王子、我々は負けました。」

「なんだとっ!?」

「あのモノから撃ちだされる光源が、

 瞬く間に周辺を焼き払い、

 『人間が蒸発していきました』」

「・・・蒸発、ありえるのか。」

「王子、事はただ負けただけではありません。」

「まだあるのか?」

「・・・生き残りは、ここに居る、近衛兵20人だけです。」

「・・・20人、だと。」

「はい、皆、王子を逃がす為に『消えていきました』」

「4万も居た将兵達が・・・20人。」

あはは、コレは悪夢だ、きっと私はまだ夢を見ているのだろう

「王子!!首都見えます!!」

「おぉ、我がしゅ・・・と。」

 

上空にあの鋼鉄のモノが浮いていた

 

「我が国の・・・首都が。」

 

城壁は無残にも砕け、奇怪な形に溶けていた

 

城下町から幾つもの黒煙が立ち昇る

 

そうだ、父上達は大丈夫だろうか

 

あぁ、我が王城が

 

 

瓦礫の山をかき分け、会談の場所を造る

 

「さ、国王陛下、どうぞお座りください。」

「ぅ、うむ。」

我が国は、滅ぶのか

「まずは、今後の『復興』に関する取り決めから行きましょう。」

「なに?」

「国王陛下、この国は残って貰わないと色々面倒なんですよ、

 山と言う天然の城壁こそありますが、

 その向こうには『戦争中の国家が幾つもあります』

 それらの牽制役として、国を存続して貰います。」

「なんと、山の向こう側は戦争中だったのか。」

「知らなかったのですか?」

「うむ、元々国交も無い、

 辛うじて旅商人が年に数回立ち寄るだけだったのだ。」

「そうでしたか、

 恐らくこの数年は向こう側から難民が押し寄せるでしょう、

 その彼等を『我が領土における労働者』として、

 支援して欲しいのです。」

「無理だ、これだけ破壊された城下町を復興するにも、

 何年かかるか・・・それに、

 田畑も去年に比べ不作でな、国庫にも余裕は無い、

 それらも相まって貴国に攻め入ったのだ。」

「そんな事しなくても『開国』してくれれば、

 素直に食糧は輸出致しましたのに、

 只の骨折り損のくたびれ儲けじゃないですか。」

「今となってはな、

 して、開国しても我が国に食糧は無い、売る物など。」

「ありますよ、

 家の領地に隣接している山腹一帯に

 埋まっているのですよ、『鉱物資源』がね。」

「『鉱物資源』か、しかし、我が国では石炭こそ使うが、

 それ以外となると、我が国に精通している者がおらん、

 此度の甲冑防具なり魔導士が使う『ワンド』は、

 ここから3週間程南に向かった国からの輸入品だ、

 それに、その国もこの開戦で国交を閉ざしてしまったのだ。」

「・・・俺がテコ入れします、

 兎に角早急に復興、山岳地帯の状況把握、

 難民受け入れの為の地区を開墾して下さい。」

「お前ひとりで?」

「ま、見ればわかりますよ。」

両手をぱん、瓦礫にぺたし

「『復元』」

自分で壊した建物を全て元通りに『錬成』する

「はい、住居は戻しました、

 さぁ、国王陛下、今度は貴方の番ですよ?」

「父上!!ご無事ですか!!」

 

 

「国王陛下、彼は?」

「私の忘れ形見だ、妻はもう居ない。」

「・・・そうですか、では『殺せませんね』

 王子殿、とっとと所帯を持って国王陛下を

 安心させるといいですよ?」

「・・・か、寛大なるご配慮、

 至極感謝致します。(さ、逆らったら死んでしまう!!)」

「では、当面は『無償で食糧』を輸出します、

 期限は次の作付けの月までで?」

「・・・わかった、

 しかし、翌年もまた不作の場合は。」

「ま、田畑もテコ入れしますよ、滅ばないで下さいね?

 もしそうなったら、『アンデッド』にでもして、

 永遠の時を『生かし続けるのでよろしく』」

「っ!?生命への冒涜だぞそれは!!」

「それが何か?」

「貴様。」

「・・・人間が居るから争いは生まれる、

 なら、滅ぼせば争いは無くなるのか?」

「それは。」

「精々50年~70年、

 人間はそんなもんです、

 『魔物や、飛竜、竜王種、海竜』などは、

 100年1000年はざらです、

 彼等にも争いはあります。」

「・・・同じだと?」

「いえ、『違う生き物を物差しにしないで下さい』

 我々は何代も世代を得て今があります、

 今後も残すのであるならば、

 『滅ばない道を模索し続ける事です』

 国王陛下、先ずは王子の嫁探しから始めてみては?

 食糧に関しては今『駆逐艦』から降ろしますので、

 輸出第一陣は2週間後に到着します、

 もし『攻撃された場合』は、おわかりですね?」

「わ、わかっておる、街道には、

 盗賊討伐の軍も出撃させる、これでいいか?」

「えぇ、それと。」

「まだあるのか?」

「・・・いえ、コレは俺が口だしする物では無いでしょうし。」

「なんだと言うのだっ!!言え!!」

「・・・『奥さん、双子だったんですよね?』」

「なに?」

「は、母上が双子?父上?ご存知で?」

「いや、初耳だ。」

「・・・城下町の外れ、

 この道沿いに行けば恐らく会えるでしょうね、

 ただ、そこから先は、貴方達次第です、

 俺はやる事が山積みなので、もう帰りますね。」

 



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その⑥

王宮執務室

 

「こら。」

「何ですか陛下?

 俺が墜として良いって言ったじゃないですか~。」

「属国化は聞いておらんぞ?

 しかし、次の作付けまでは解るが、この税率は・・・。」

「そうですよご友人、

 幾らなんでも『10倍』は厳しすぎます。」

「そうですか、じゃぁ、10乗で。」

二人「ダメ。」

「ちぇ~、

 それと、試掘が済んで、

 今、駆逐艦のコンピューターで解析しています。」

「恐ろしいな、駆逐艦は。」

「言っときますけど、

 これで『最下級』ですからね?」

「出さんでいい、

 貴族共を黙らせるにも骨が折れる。」

「あ、やっぱり『進撃』を?」

「勿論言い出したさ、

 だが、食料品の自給率がまだ安定しない、

 それに『駆逐艦』はお前の『個人所有物』だ、

 国の物では無い。」

「そうですね、で、誰ですか?言い出したのは?」

「まっ、待ってください!!

 幾ら攻戦派でも我が国の貴族なのですよ?」

「要らない戦費を跳ね上げる貴族は

 穀潰しと思った方がいいですよ?

 戦争における徴兵、

 それらを維持する為に『金・食糧・武器』が

 湯水のように消えて行きます、

 そして今の我が国にそんな余裕は無い。」

「わかっておる、

 だからこそ、再三の使者を送り会談を設けようとしている。」

「・・・往復十日、でしたね。」

「あぁ、無事に帰って来てくれれば良いが。」

あぁ、ワカルダロウ?

海岸の攻めて来ている国は我が国の使者を

『ワイン樽に纏めて返して来たのだ』

「陛下、これは黙っていられません。」

「しかし。」

「陛下、再三の使者が『殺されたのです』ご決断を。」

冬季本番を前に国民全体が殺気立っていた

当然だ、

使者に付きそう従者は

平民からの『志願』だったのだ

30人、10人を三回

一回目は馬車の荷車にバラバラ

二回目はご丁寧に『棺が10個』

三回目が、ワイン樽に詰め込まれた10人

しかも、『一つの大樽に』

流石に俺もキレた

陛下は余り戦争自体をしたがらない

コレがかつては『豪将』と言われた

なんの切っ掛けか、

前陛下を『公然で抹殺しクーデターを成功』

今の我が国を30年近く『戦争から遠ざけた』

「友よ。」

「はい、陛下。」

「可能な限り死者を減らしてはくれまいか?」

「・・・国民が納得する答えが欲しいですね。」

わかってる

陛下はその切っ掛けで『大事な親友を亡くしている』

 

『我が民達よ』

『戦争は友人を殺す』

『この僅かな瞬間にも』

『敵国はその友人を殺した』

『怨むなとは言わぬ』

『しかし、同じ事をしてしまえば

 只の畜生に成り下がってしまうだろう』

『不殺を願いたい』

『だが、戦争には当てはまらない』

『民達よ、

 仇を撃ちたいのは重々わかっている、

 しかし、『同じように報復で殺しては駄目なのだ』』

『皆が言うのもわかる

 だが、

 この30年の『戦争が無い時代』を、

 私はキミ達に提供した』

『わかるだろう?

 『戦争経済』では、いずれ滅ぶのだ』

『知恵を貸して欲しい』

『民達よ、『経済で敵国を陥れようでは無いか』』

『例えば食糧の輸出入だ、

 海産物こそ手に入りにくくなるが、

 我が友人が、山岳地帯の国を属国化し、

 『新たな市場が開けたのだ』』

『つまり、海産物にこだわる必要が無くなったのだ』

『皆であの国を『包囲しよう』』

『そして、『餓え』に苦しませるのだ』

『他の連合を組んでいる国家にも使者を送り、

 『我が属国の山岳地帯の物を売り込むのだ』』

『更に、地下資源の新たな開発が

 冬季に置ける収入となるだろう』

『我が国で冬季の時は、西の国では『火季』なのだ』

『ならば、『冷たいモノを売り込もう』』

『熱いモノを買おう』

『そうすれば『海産物の国に頼らなくとも』

 西の国は潤うし、我が国も潤う』

『まずはそうした『貿易』によって弱らせるのだ』

『それでも『戦争』にすがるのならば

 『我が国全戦力を持って迎え撃とうでは無いか!!』』

『立てよ国民よ!!

 我らには我らの戦い方があるのだと!!

 立てよ国民よ!!

 海があるだけで舞い上がる国に

 我らが鉄槌を思い知らせるのだ!!』

いや、最後・・・まぁ、いいか

「陛下、防衛のみに?」

「すまぬ。」

「いえ、勉強になります。」

「その様なお考えをお持ちだったのですね?」

 

「陛下?」

「陛下?如何されましたか?」

「いや、思い付きで言っただけだ、

 中身はこれから考える。」

 

 

「ご友人、国境を護り切れる戦力の配備をお願いします。」

「了解しました、事務総監殿。」

「お、おい、二人共?」

「陛下は『おひとりでお考え下さい』」

「そうですよ、それに俺の『私設軍なんですから』

 陛下の采配権限は無い筈ですよ?」

「そ、それは・・・。」

二人「言い出しっぺが責任取らなくてどうするんですか?」

「ア、ハイ。」

 

まぁ、国境防衛で

『敵国の負傷者数が鰻登りなのは』言うまでもない

 



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その⑦

海岸の国

 

「陛下、山側の国との戦闘での

 『死者数は今日もゼロ』です。」

「信じられんな、

 既に6度も攻め入って居るというのに

 『国境』から一歩も攻め返して来ないなんて。」

「はい、

 あの『豪将』の策略とは思えません、

 代替わりしたのか、

 『別な指導者』が居るのか、

 間者達も送っては居るのですが、

 『誰も帰って来ていません』」

「死んだ、か。」

「恐らく。」

「大臣よ、国庫の使用状況はどうかね。」

「はい、既に『半分を割りました』

 このまま続ければ

 『もって2年』足らずで底を尽きます。」

「・・・切り詰めてもか。」

「申し訳ございません、

 既に『切り詰めて』の状態です、

 特に『穀物類』が不足しており、

 海風の影響で、塩に強い食物しか育たないわが国では、

 腹を満たせる食物が生産できません。」

「・・・軍の士気は。」

「負傷者が増えるに比例して、

 下がっております、

 これ以上の戦闘は国民の反発を促し、

 デモが行われてもおかしくない状態です。」

「西の国はどうかね?穀物の輸入再開の目途は。」

「残念ながら、

 輸入は受け入れるが、『輸出は出来ない』と。」

(他の周辺小国も輸入を断られ、

 輸出しようにも、海産物は輸出に向かない)

「『御武家殿は?』」

「・・・先日、危篤状態が続き、

 『昨夜、お亡くなりになりました』」

「ご高齢だったからな、お悔やみ申し上げる、

 葬式は明日、執り行おう。」

「陛下、もはや国は限界です、

 山側の国に、『和平』を申し上げては?」

「・・・『白旗と使者を』

 頭を下げよう、そして、

 『属国化し、民を生きながらえさせよう』」

「陛下、御決断、感謝致します。」

「・・・それと、身柄の保障を和平に入れて置いてくれ、

 民には、恨まれてるだろうからな。」

「はい、必ず、

 使者は、私が向かいます。」

「・・・すまん。」

「『ばーか、友達だろ?』」

「『あほ、親友だ』」

 

 

山側の国と海岸の国 国境付近

 

「な・・・なんだ、アレは。」

 

報告に受けてはいたが、あのようなモノが浮いているなんて

にわかに信じられない

 

「『白旗』を知ってるなんてな、

 『転生者』でも居たのか?」

「あ、貴方は?」

「あぁ、俺が山側の国の代表、

 陛下の友人ってヤツ、

 『答えろ』転生者は居たのか?」

「・・・二週間程前に、

 病気で亡くなられた、ご高齢もあって、

 治療も追いつかず、申し訳ない。」

「そっ、か、

 会えたら話せただろうに、

 ま、いいや、『無条件降伏』でも?」

「そっ!?それは!?」

「あのなぁ?そっちから仕掛けて来て

 『こっちは反撃だけ』

 攻め入って無い、これだけで

 『どちらが下か解るだろうに』」

「この命一つでおこがましいのは承知の上、

 どうか、我が国の飢えを救っては頂けないだろうか、

 そして、我が友人の身柄の保障をどうか。」

(あっさり頭を下げる、か、

 その亡くなった転生者の教えが

 良い方に残ったんだな)

「はぁ、わかったよ、

 詳しい取り決めは事務総監と話してくれ。」

「え?よ、よろしいのですか?」

「なにがだよ?」

「て、停戦、和平の交渉を受けて下さると?」

「あぁ、それの問題があるのか?」

「そちらの将兵を傷つけたのですぞ?」

「戦争だからな、当然だ。」

「国費を使ったのに?」

「国の民を守る為に使うのが国費だろうが。」

「・・・どうして。」

「『同じように殺して返したら』

 報復の連鎖は止まらない、

 『殺さず、経済で報復する道を陛下は選んだ』

 なら、俺も『不殺』を通すまでだ。」

「・・・『どうして、御武家様と同じ事を』」

「なぁ、その転生者、いや、『転移者』は、

 『刀』を持っていなかったか?」

「な、なぜその事をっ?!」

「あんた達の『国旗に掛かれている剣がその証拠だ』

 『日章旗に刀と剣がクロスした国旗』

 俺には解る、『日本から来た武人だったんだろ?』」

「で、では、貴方も?」

「日本人だ、

 ま、時代の違う日本人だけどな、

 ほれ、とっとと話しを進めろ、

 他の環状商業連合との会談も控えてんだ、

 ったく、頭つかうの嫌なのに・・・。」

「か、環状商業連合?」

「あぁ、海岸の国の周囲の国同士で結んだ

 『輸出入優先貿易連合』の呼び名だ、

 ホントは一周するのが環状って言うんだけどな。」

(か、勝てない、

 時代が違う日本人とは、こうも知力が違うのか)

「あぁ、そっちの陛下は退任させないからな?」

「え?」

「『国を残すからな』

 お前らの国の民まで面倒見れないし、

 自力で防衛してくれ、

 食糧の無償輸出はするけど、

 あくまで『次の作付け』までだ、

 それ以降は畑にテコ入れして、

 『自国食糧生産能力を底上げして貰う』

 冬季は目前、

 冬を乗り越えなきゃ『全員飢え死にだ』

 それだけは避けてくれよ?」

「・・・もっ、勿体無きお言葉、感謝致します。」

「けっ、戦争に手を出すからこうなるんだよ、

 先ずは交渉からやれ、いいな?」

 



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