破壊神ゴジラvs鬼神エヴァンゲリオン~最終戦争~ (井上ああああ)
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第1話:終焉の兆し

この話でヴィレからネルフに戻っています。



2015年よりおきた使徒との戦い、エヴァシリーズによるテロ行動。

これらで世界はセカンドインパクト以来の衝撃が走った。

また、2020年に同じエヴァによるテロがおき世界中で被害がおきた。

これらをネルフの持つエヴァンゲリオンが鎮圧したことで、彼らは名声を獲得することになった。

 

 

そして、2022年。

エヴァに代わるべく生み出された巨大ロボットが各地で猛威を振るうこともあったが、平和な世界は続いていた。

まるでつかの間の平和を楽しむかのように。

かつての少年少女は若者になっていた。

 

シンジは大学生を卒業した。

音楽講師兼ネルフ職員として働いている。

 

アスカはドイツ支部での勤務をしている。

元々科学に興味があった彼女はドイツ支部で科学顧問になっている。

 

綾波レイは学者になった。

 

 

エヴァに乗りながらも、世界を守る使命を帯びながらもその人生を楽しんでいた。

パイロットたちだけではない。

彼らの友人も同じくであった。

リツコの手により、エヴァンゲリオン各機体は身長・体重が増量した。

80mだったエヴァ各機は300mに進化していた。

 

 

 

ケンスケはアスカを追いかけたままドイツ支部で正規職員となった。

ヒカリもまたネルフ職員として勤務している。

 

 

そして、渚カヲルもそうであった。

 

 

 

火星。

スペースシャトル「エンバー77」は火星に降り立った。

最新鋭のスペースシャトルであったそれは光に近いスピードを移動することができる物であった。

宇宙飛行士の中には渚カヲルもいた。

 

 

「気をつけろよ、新入り。」

 

 

持ち前の高い知能で大学を速いスピードで卒業したカヲルはNASAの宇宙飛行士となっていた。

本来であれば宇宙服など着なくても、ATフィールドの膜をはり生きることができる。

だが、建前上であれ自分は人間ということになっている。

宇宙服越しからでも火星の赤い砂の感触はわかった。

 

 

 

彼が宇宙飛行士になった理由は自分たちを産んだ第一始祖民族のことを知りたかったから…。

今回はその第一歩だ。

 

 

「先発の探検隊が回収できなかったものがある、お前はネルフのところのガキだろう?今回はお前にとってもいい勉強になるぞ。」

 

 

金髪青目をした宇宙飛行士のリーダーは言った。

特務機関ヴィレは、あまりにもネルフの名前が有名になり過ぎていることから名前を「ネルフ」に戻すこととなった。

新しい名前は定着しにくい、それが世の常と冬月は言っていた。

 

 

 

「ありがとうございます、大尉。」

 

 

「間違っても砂なんか持ち帰ろうと思うなよ。何があるかわからんのだからな。人間でも使徒でもない第三の存在がいる可能性は高いのだからな。」

 

 

大尉はカヲルを連れると、宇宙用のバギーを使い国連軍火星基地に向かっていった。

赤い砂が一面中に広がっていた。

 

 

「ふっ、緊張しているのか。」

 

 

「いいえ。」

 

 

「そうか、ならいい。だがな…今から見る物はお前をかなり驚かせるぞ。」

 

 

大尉はそういうと、バギーのブレーキをとめた。

 

 

「ここだ、あまり驚くなよ。」

 

 

そして、指を指した。

カヲルは身を乗り出してその方角を覗き込んだ。

一面中赤い砂が並んでいた、その中に大きな5kmほどあるクレーターができていた。

その中心部にはピラミッド状の物体があった。

ここにも生物がいて、文明があったということなのか?

 

 

 

「これは!?」

 

 

「わからん、だが地球外生命体の文明だ。」

 

 

そして、大尉はさらに指を指した。

その先には柿色の槍のようなものがあった。

ロンギヌスの槍ではない、もっと強いもっと大きい何かだ。

クレーンがその槍状の物体を持ち上げた…その先には白い背びれかのこぎりのような刃があった。

 

 

「なんだあれは…。」

 

 

そのエネルギーはカヲルにも伝わった。

一瞬カヲルは目がくらみかけた。

この圧力は尋常ではない。

 

 

「おい、新入り!」

 

 

大尉はカヲルを抱き起した。

 

 

「すいません、大尉…気分が悪くて…。」

 

 

「少し休もうか。」

 

 

その時、カヲルはわかった。

この世界には自分の知らない何かがまだまだある。

今回みつけたものはまだその一歩、その先に自分たちを産んだ第一始祖民族の秘密が待っているはずだ。

地球にもその答えはあるはず。

カヲルは地球をみつめた。

 

 

同じころ、南太平洋のある島。

そこは長い間破棄された島であった。

住民はほとんどおらず、かつて文明らしいものがあったそうだが結局破棄された状態が長い間続いた。

かつて大航海時代にイギリスがその島をみつけ、根付こうとしたがその島に資源らしい資源がみつかることはなかった。

したがって、イギリスも破棄した。

 

忘れられた名もない島であった。

しかし、つい最近そこを訪れた漁船があるものをみつけた。

 

 

それは大きな遺跡だった。

遺跡の奥にはなんと20m近い繭があった。

不審に感じた漁村は地域のオーストラリア軍に通報、やがてそれはネルフへと向かっていった。

 

使徒の可能性がある。

そう判断したのだ。

ヘリコプターとともに、降り立ったリツコと綾波レイはその繭へと向かっていった。

レイは生物学を専攻している。

 

 

「マグロを探していたらここにたどり着いたらしいです、近所の漁民はここが穴場なのでひそかにきてはとっているとか…。」

 

 

先頭に兵士数名、通訳、リツコ・レイ・最後尾にまた兵士の10数名はジャングルの中を突き進んだ。

やがて、マヤ文明のような遺跡を通り抜けると大きなゲートに入っていった。

 

 

「この先に繭があるとか…。恐らく魚ついでに黄金でも探したんでしょうね。」

 

 

リツコとレイは男の話に空返事を返すと突き進んでいった。

やがて、ゲートを入り突き進むと周囲は暗い闇で覆われていた。

男はライトを持つと、奥地へと進んでいった。

一行は奥に進むと階段らしきものがあった。

 

 

「こんなものがあったのに、誰も把握していなかったなんて…。」

 

 

リツコは思わず口にした。

 

 

「この辺じゃ変な噂がたっていたんですよ、食人族がいるとかテロリストが基地にしてるとか…全部まがいものだったんですけどね。」

 

 

一行が進んでいくと、そこにはより多くの兵士がいた。

リツコは気が付くと、そこは海に近い洞窟であることがわかった。

 

 

そしてそれはあった。

まるで蚕の繭がごとく。

糸で包まれた球体のものが。

横幅だけで30mはある。

どれだけ巨大なんだろう。

 

 

リツコはセンサーを近づけた。

 

 

「それは?」

 

「これを使えば使徒か否か、判明できるんです。」

 

 

センサーは反応しなかった。

使徒ではない。

だが、これはなんなのだろう。

 

 

「レイ、これは何かわかる。」

 

 

レイはふと見つめた。

 

 

「まるで蝶々の蛹か何かにみえます。幼虫が糸を巻きその中で成長を待っている。」

 

 

蝶…もしもこれが蝶の蛹であれば世界一大きな蝶になるだろう。

すると、近所に来ていた老人が声を出した。

男は繭をみて何か怯えた様子で叫んでいた。

 

 

「あの人何を言ってるのですか。」

 

 

通訳の男は老人の声を聴いて青ざめた。

 

 

 

「黒い王が四つの下僕とともにやってくるのだ。繭は黒い王と戦う白の女王のもの、でもそれだけでは勝てない…。」

 

 

リツコは首を傾げた。

老人はライトを持つと、壁に光を当てた。

そこには大きなトカゲのような怪物が人型のモノを踏みつけている画があった。

その人型のモノに見覚えがあった。

角らしきものが生えていた。

 

 

 

まるでエヴァのように。

それを踏みつけるトカゲの怪物。

 

 

リツコは老人の顔を観て言った。

 

 

 

「あなたはなんなの。」

 

 

 

すると老人はゆっくり口を開いた。

その言葉を通訳は訳した。

 

 

 

「私の祖父はかつてここに住んでいた。その時言っていたことだ。妄言だとみんなバカにしていたが…事実だった。」

 

 

 

ライトをみた。

そこには見慣れない象形文字がならんでいた。

リツコは青ざめた。

何か嫌な予感がする。

とんでもないことがおきる。

レイは繭をみつめた。

リツコと同じくその心の中には何かモヤモヤした不安がよぎっていたからだ。

 

 

 

その漠然とした不安を持っていたのはリツコだけではなかった。

第三新東京市。

 

ヴィレから、ネルフに組織名が戻ったばかりの組織を立て直していた副司令の葛城ミサトはふと夜景をみていた。

そのわきには夫の碇シンジ、もとい葛城シンジがいた。

年齢は36にさしかかったが、まだ昔のままだった。

肉体も、美貌も。

しかし、彼女は最近子皺が増えたように感じていた。

 

 

 

「どうしたの、ミサトさん。」

 

 

 

シンジはミサトに聞いてみた。

ミサトはシンジの顔をみつめた。

もう14歳の少年ではない。

ミサトと同じぐらいの身長に成長していた。

 

 

 

「いえ…。」

 

 

「なんか最近険しい顔になってるよね。」

 

 

「そんなことはないわ…。」

 

 

「いや、なってるよ。」

 

 

ミサトは内心わかっていた。

この平穏は長く続かない。

使徒、あるいはそれ以上の災厄が近づいている。

それだけではない。

 

彼にだけは言っておくか。

 

 

「私昨日夢をみたのよ、セカンドインパクトのままの夢を…。南極の氷が解けていく姿を…その中を白い巨人が進んでいくのを…。そして、父は私を助けて死んでいった。」

 

 

シンジはふとミサトをみつめた。

意外と身長が小さい。

ボクは越してしまった。

その背中は意外と広い。

 

だが、小さくみえた。

夜景のせいだろうか。

 

 

「きっと、あれと同じことがおきる。その前兆か何かよ。今度こそ世界は滅びるかもしれない。私たちは勝てないかも…。今度こそ私も殺される。不安なのよ。」

 

 

シンジはミサトを後ろから抱きしめた。

 

 

「そんなことないさ。」

 

 

「シンジ君。」

 

 

「ボクがあなたを傷つける者全てから守る。ボクと母さんの初号機がね…。」

 

 

シンジはすでに知っていた。

エヴァ初号機の中には母がいると。

全てはゼルエルとの戦いのあと初号機に取り込まれた際に母をみたのだ。

はっきりと。

 

 

 

「もう私よりも強くなったのね、あなたは…。」

 

 

 

ミサトはシンジの手をつかんだ。

 

 

 

「多分まだ敵わないと思う、ミサトさんには。」

 

 

 

そんな時だった。

シンジとミサトのケータイに同時に連絡がかかった。

招集だ。

 

 

 

「まさか使徒かな、それとも別組織のエヴァかな。」

 

 

「わからない。」

 

 

 

ミサトはケータイを取った。

 

 

 

「葛城一佐、大阪湾で武装した暴力団とテロリストと巨大ロボットが客船をシージャックした。いってこれを鎮圧してくれ。」

 

 

 

冬月総司令の声だ。

 

 

 

 

「私もですか。」

 

 

「君とシンジ君、ご指名だ。君たちの息子とペンギンのことは任せたまえ。」

 

 

「了解しました、すぐに向かいます。」

 

 

 

ふと、シンジとミサトは第三新東京市をみた。

その夜景には紫色のシグナルがともっていた。

 

 

 

「バットマンのマネしすぎじゃないあれ。」

 

 

「ボクの趣味じゃないので…。」

 

 

まあ、カッコイイからいいか。

ミサトの愛車に乗り込んだシンジはすぐさまネルフ本部に向かった。

 

 

 

 

大阪湾。

客船「サンライト」は暴力団と手を組んだ過激派団体に支配されていた。

この客船のオーナーが暴力団に対して上納金を支払わなかった。

それに対する報復であった。

暴力団に雇われた過激派団体、そして破門を喰らったチンピラ集団これらのチームが集まっていた。

 

船員や客を一人でも多く殺し、オーナーを怖がらせる。

これが目的であった。

 

 

船員や客たちは縛られマスト上に立たされていた。

 

 

白いスーツを着たリーダーの男は船長に話しかけた。

 

 

「のォ…船長さん。わしらの提案をきいてくれはせんかのォ…。この船をちょいとばかりもらえればわしらもこないなマネはせんですむんや。」

 

 

「ふざけるな!ヤクザなんぞに従わん!」

 

 

船長は叫んだ。

だが、リーダーの男は不適に微笑んだ。

 

 

 

「船長さん。根性あるのォ…ええこっちゃ。」

 

 

するとリーダーは部下を呼び寄せた。

部下は刀を持ち出した。

そして、リーダーは刀をつかむと鞘を抜いた。

 

 

銀色の刀が船長の顔をうつした。

 

 

「船長さん、チャカとだんびらどっちがつよいと思う?極道のケンカはな全部だんびらが勝つんやで…。」

 

 

リーダーは船長の胸に刀を突き刺すと引き抜いた。

船長は何も言わず、胸から血を出して息を引き取った。

 

 

 

「あらぁ?死んでしもうた。なんでやろー!?」

 

 

リーダーは不適に笑った。

 

 

「おう、そうや…名乗りをあげようか。わしは鈴原マサキ!」

 

 

マサキの白スーツに赤い血はどっぺりとついた。

 

 

 

「次はどいつにしたろかァ…そうやなあ女がいい。メス犬を連れてこいや!」

 

 

マサキの声に応じた舎弟は人質の中から女をつかむと、マサキの前にもってきた。

若い女だった。

マサキは女の腰に手を回すと耳をなめはじめた。

そして、ヤニ臭いねっとりとした唾液を巻き散らしながら言った。

 

 

 

「ええ女やのォ…ねえちゃんわしの女にならんか?それとも死ぬか?」

 

 

 

女は海の上をみた。

そこには大きなカニ型のロボットがいた。

大きさは100mはくだらない。

 

 

 

「あれが気になるか。あれはのォ…高かったんや。でも中国で安値で売られとった。向こうではごっつああいうの作られとるねんで。安い金で買って高く売る。ビジネスの鉄則や。おねえちゃんもインドネシアにうったろうかのォ…。」

 

 

 

 

「やめてください。」

 

 

 

「30万ぐらいかなあ、ってこれ高くないがな!」

 

 

 

マサキの声を聴くと舎弟はゲラゲラと笑い始めた。

女の目からは涙があふれていた。

 

 

 

「あ、アカン…泣く女みるとすっごいごっつ殺したくなってくるんや…もうアカン。殺してしまいそうや。おいコラァ!!!死んでみるか!?どやねん!!!!」

 

 

 

そんな時だった。

マサキの無線に声がした。

 

 

「侵入者が出ました!!!3名やられました!!!」

 

 

大阪府警か。

マルボーか?

こないなところでマルボーにみつかりたくはないな。

マサキは女をつかむと、マストの奥に行った。

 

 

舎弟や傭兵たちは人質たちに銃を向けていた。

 

 

 

「けっ、これだけおったら怖いものなどあるわけないわ。」

 

 

どちみち人質は皆殺しの予定だ。

楽な仕事、親分連中も耄碌したもんだ。

 

 

 

マサキはそう思い込んでいた。

 

 

ミサトはウェットスーツを脱いだ。

泳いでここまできた。

結構な距離があったが、ミサトは泳ぎここまでくることができた。

今きているのは、タンクトップとジーンズだけ。

ここに来るまで、港で3人の守衛を殺した。

 

 

「おいコラここでなにしてるんや!」

 

 

入れ墨をいれた男が銃を向けてきた。

ミサトは走り込むと男の腹部に蹴りを入れた。

 

 

「おべ!」

 

 

男は悲鳴をあげると地面に倒れた。

 

 

「こいつ…。」

 

 

男は起き上がろうとしたが、ミサトは男の頭に銃を突きつけた。

 

 

「人質はどこ。」

 

 

「ま、マストにおる。お、おれはなにもしとらん。」

 

 

ミサトはそのまま男の顔を蹴り飛ばした。

サッカーボールのように、男はそのまま気を失った。

彼女は持ってきたカバンの中から防弾ジョッキを着るとそのまま前へ突き進んだ。

 

 

作戦課長、元々は使徒に対するものだったが…最近はこういう警察や戦略自衛隊のバイトが舞い込んでくる。

これもまた資金確保のため。

自分の力が社会のためになるなら、ミサトはいくらでもする気でいた。

 

 

ゼーレが以前ほどの力がなくなった今、それよりひどい連中が世界で溢れている。

 

 

ふとミサトは周囲をみた。

中には殺されたと思われる人間もいた。

こいつら見境がない。

まるで殺しが目的のようだ。

ミサトは殺された人の瞼をつかむと目を閉じさせた。

 

 

ふと彼女の前にまた別の見張りがきた。

今度は二人、ミサトは愛用のハンドガンを手にすると二人の頭めがけて銃を撃ちこんだ。

 

 

 

「どうせあんたら、生きてても死刑よ。」

 

 

 

ミサトはそのままマストに向かって突き進んだ。

5名の男がいるのがみえた。

白いスーツを着た男の顔に見覚えがあった。

 

 

鈴原マサキ。

ヤクザの男だ。

死んだ鈴原トウジの従兄。

 

 

 

「悪党め…。」

 

 

 

ミサトは脇に隠れると銃弾をため込んだ。

 

 

 

「お前らには死刑台ではなくこの銃弾がお似合い。」

 

 

彼女は銃弾を撃ちこんだ。

その放った全ての銃弾は、またたくまに4名の男の頭を撃ちぬいた。

マサキはあまりの速さに悲鳴を上げた。

 

 

「誰や!!!」

 

 

ミサトは姿を見せた。

 

 

 

「なんや、オノレか。」

 

 

「任侠の仁義はどこへいったのかしら。」

 

 

「もうわしはヤクザやない、破門よ。ワシの子分とともに半グレやっとるんや。そんで…この船を乗っ取って船員と乗客を殺す話が舞い込んでよォ…やっとるのよ。それもこれもオドレのせいじゃボケぇ!」

 

 

「お前のような外道は地獄がお似合いよ。」

 

 

「言ってくれるのォ…姉ちゃんよチャカとだんびらやったらだんびらが勝つ。やってみるかァ!!!」

 

 

 

こいつは生かしておいた方がいいか。

殺してやりたい気分だが…。

リーダーであるから組織図もわかるはず。

 

 

 

「あんたみたいな小物があたしと勝負なんて笑わせる。」

 

 

 

ミサトは容赦なくマサキの皮靴めがけて銃を撃った。

 

 

 

「う、うぎゃああああああああああああ!!!!」

 

 

 

足の指を狙った。

恐らくかなり痛いだろう。

刀を離すと、マサキは足を抱えていた。

 

 

そのチャンスをミサトは見逃さなかった。

地面に倒れていたマサキめがけて蹴りをぶち込んだ。

マサキは口から血を拭くとそのまま気を失った。

 

 

 

その頃、シンジはネルフ専用機に吊り下げられた初号機の中にいた。

海にはカニ型のロボットがいた。

エヴァではない。

JAなどがそうであったように、巨大ロボットが作られている。

その多くはろくでもない組織に売られている。

 

 

上空900mでもその姿はみえた。

 

 

エヴァも作られているとすれば‥。

 

 

無線越しに冬月の声が聞こえた。

 

 

「みえるか、あれはカニ型ロボットだ。ああいうのが市街地に入ればろくなことにならない。破壊しろ。」

 

 

「了解。」

 

 

エヴァ初号機は世界最強の力を持っている。

その力を正しいことのために使う。

父の墓に誓ったことだ。

初号機を引き下げていたチェーンは解かれた。

 

 

初号機は小型のプログレッシブダガーを持つと、とびかかった。

カニ型ロボットは大きく後退した。

二体は海の中へもつれこむと、その先に別のロボットがみえた。

深海の中で待っていたのか。

 

 

 

120mのサメ型ロボットが3体。

 

 

 

「来ることはわかってたぜ!てめえはここで死ぬんだよ!!エヴァンゲリオン!!」

 

 

 

声が聞こえた。

相手方の無線も傍受していたのだ。

 

 

サメ型が近づいてきた。

冬月の声が聞こえた。

 

 

「あれは中に人はいない。ドローンのようなものだ。思いっきり壊してしまえ。」

 

 

初号機はダガーを持つと、襲い掛かってきたサメ型ロボットをそのまま切り捨てた。

まずは一体。

二体目が腕に噛みついてきた。

初号機は手を伸ばすと、二体目をそのまま怪力でへし折った。

そして、最後の一体をつかんだ。

 

 

「こんなのへでもないよ。」

 

 

初号機の顎が開くと、最後のサメ型ロボットはそのまま初号機にかみ砕かれた。

その時だった。

カニ型の鋏状の腕が近づいた。

そして、初号機のクビをつかみすさまじい力で締め上げた。

 

 

 

「へへへ、このまま深海のなかで死ねっ!」

 

 

 

だが、シンジの敵ではなかった。

 

 

「ごめんよ、それが君の全力なんて思わなかったんだ。」

 

 

ダガーを使い、カニ型のそれの腕を切り裂いた。

轟音をとどろかせると、カニ型の右腕がちぎれた。

 

 

「な、なんだこいつ!!」

 

 

初号機はそのまま怪力で敵の顔面をつかみ万力で締め上げた。

 

 

 

「このままへし折れば君は死ぬ。死にたいか?降参するか。」

 

 

敵機は火花を散らし、今にも壊れそうだ。

このままでは死ぬ。

流石に人を殺す気はない。

 

 

「降参しろ。」

 

 

「わかった…。俺の負けだよ。」

 

 

初号機は地面に上がろうとした。

海上には恐らく戦略自衛隊か国連軍か、何かわからないが艦艇がみえた。

 

 

 

そんな時だった。

海の中に何か悪寒を感じた。

 

 

何だ今のは…。

 

 

 

海の底に何かがいる。

まあいい、今はこいつをもっていこう。

 

シンジは海上にあがった。

そして、カニ型ロボットをつかむとそのまま艦艇に後を任せた。

ふと、船の上をみるとミサトが手を振っていた。

周囲には警官や戦自の隊員がいた。

 

どうやら事件は解決したようだ。

 

 

ミサトも無傷だった。

 

 

相変わらず戦略家として以外は大した兵士だよなあの人、無茶だけど…。

 

 

シンジはほくそ笑むとエヴァ初号機の手を伸ばした。

ミサトは初号機の掌の上に乗ると、そのまま寝そべった。

ふと、ミサトの肌の温かさがエヴァを通してわかった。

すると、ミサトが無線を通して会話を始めた。

 

 

「えへへへ、シンジ君の手の中にいる。まるで小人になったみたい。」

 

 

「どうせだから、中に入ってみる?」

 

 

シンジはふと提案した。

ミサトはキョトンとした顔から笑顔になった。

エントリープラグの中にミサトは入ってきた。

 

 

 

「ミサトさん、ここの眺めすごくきれいだよ。」

 

 

ふと、シンジには大阪の夜景がみえた。

エヴァ初号機を通して見えるようだ。

ミサトにもこの光景がみえた。

 

眠らぬ街、大阪。

その夜の明かりはシンジたちを優しく包んだ。

 

 

「奇麗。」

 

 

まるでダイヤモンドが光り輝くようだ。

 

 

「シンジ君、これがあなたのみる世界なのね。」

 

 

小さくてきらきらしてる。

でもその全てが美しい。

 

 

 

「とてもとてもきれいだわ。」

 

 

「ミサトさんもとてもきれいですよ。」

 

 

ミサトは微笑んだ。

そして、シンジの頭を指でやさしくこづいた。

 

 

「じゃあキスする?」

 

 

「いや、ここではちょっと…。」

 

 

 

そんな時だった。

冬月の咳払いが聞こえた。

 

 

「葛城一佐、調子に乗るな。帰還しにこい。」

 

 

ミサトはいたずらに微笑んだ。

シンジもそれに微笑みでかえした。

 

 

 

 

誰も知らない中、マリアナ海溝の奥では次元の亀裂が入っていた。

その亀裂は日々、刻一刻と広がっていったのだった。

 

 

その先にもう一つ世界があった。

 

そこにはいた。

破壊の神であり、あらゆる万物の王である『それ』が。

彼に付き従う四体の部下、それらに率いられる虫たちもひそかに集結していた。

 

 

破滅の王が世界にやってこようとしていたのだ。




ゴジラが本格的に登場するのはちょっとまだ先です。
お楽しみに。



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第2話:神々の侵略

本作に出てくるゴジラは神そのものなので、人間以上の知能を有しております。


ミサトと初号機が大阪で反社グループ征伐を行った数週間ほどたった後だった。

いつものようにシンジは事務上の作業をしていた。

 

ネルフでの彼の役割は戦術作戦部作戦局第一課幹部補佐というミサトの部下だった。

しかし、やることはシンクロ率のテストと各種訓練ぐらいのもの。

それが終われば彼がやることは専業主夫であった。

 

これだけでは味足りないシンジは時々チェロの講師のバイトをして食いつないでいた。

 

とはいえ、最近はミサトもほとんど仕事がないため早く帰ってくることがしばしばあった。

二人はネルフ本部で事務作業を行いながら、息子のケントをあやしていた。

彼らがネルフ本部にもいない時は冬月がもっぱら面倒を見る流れになっていた。

 

 

「あーあ…。」

 

彼のデスクはミサトの執務室内に置かれていた。

シンジはふと、自分の座椅子を倒して外の景色をみていた。

 

 

退屈だなあ。

使徒がいる時には信じられなかった。

ふと、そんなシンジをみてミサトは尋ねた。

 

 

「どうしたの?」

 

「なんか、あんなロボットばかりじゃつまらないなって思って。」

 

 

 ロボット。

 最近、様々な組織や国がエヴァのまがい物のようなロボットを生み出している。

 ミサトが加持に教えてもらった情報によれば、中国ではエヴァ以上に巨大なロボットがいるという話である。

 さらにアメリカではとんでもないものができていると…。

 

 

 

 

 

「まさか、アンタ…使徒が恋しいとでも?」

 

「そんなわけじゃないけどさ。」

 

 

ミサトは微笑むと、デスクから立ち上がった。

そして、シンジの体を包み込むように後ろから抱きしめた。

 

 

「また、そうやって面倒な事務仕事降ろうって考えてる?」

 

「いいえ、あなたを抱きしめたいから抱きしめに来ただけ。」

 

 

シンジは整った前髪をデコのあたりに少したらしていた。

雑誌でみた髪型らしい。

ふとミサトは気が付いた。

シンジはまだ、細身であるが少しだけ筋肉がついてきている。

まだ、これについてはミサトの方が勝っているが…。

 

 

「もうすっかり、大人のいい男。」

 

 

 でも声は昔の高いまま。

 それがたまらない。

 中世的な見た目も相変わらず。

 

 

 

 

「あなたは相変わらず奇麗なお姉さん。」

 

 

 シンジはミサトの顎に優しく振れた。

 今はシンジも大人、以前はミサトにされっ放しだったがもう違う。

 それにしてもやはりミサトさんは今でも美人だ。

 

 

 

「今なら冬月さんもいない、誰もいない。」

 

「邪魔者はいないわね、私とあなただけ。たっぷり時間が許す限りあなたを私だけの物にできる。」

 

 

 ミサトは微笑んだ。

 そして、いたずらにシンジの膝の上に飛び乗った。

 

 

 

「その笑顔も、すてきな目も私だけの物。」

 

 

 

 ミサトさん、まだ僕を少年扱いしてる。

 でも違う。

 

 

「もう僕は子供じゃないんだよ、ミサトさん。」

 

「だったら、大人らしいとこみせてくれる?ボーヤ。」

 

「みせてあげるよ。」

 

 

 そういい、シンジはミサトの頬にふれ口づけをしようとした矢先だった。

 

 

 

 プシュンッ

 

 

 ドアが開いた。

 その先には赤木リツコがたっていた。

 

 

 

「あら、二人とも。」

 

 

 ミサトは舌打ちをしてリツコを少し睨んだ。

 シンジは咳ばらいをして、顔を少し赤くした。

 

 

「リツコさん、お帰りなさい。」

 

「何しにきたのよ。」

 

「まあ、まあそんな怖い顔しないでよ。ああ、ミサト頼まれていたエヴァ各機のステルスモードだけどもうできたから。あとはクレーム処理よろしくね。」

 

「あっそ。」

 

 

「それ以外にも教えたいことあるの。聞かない?」

 

 

 リツコはジェラルミンケースを開けた。

 そこにはファイルがあった。

 

 

「南太平洋にいった出張、実りはあったわ。使徒ではなかったけど、それに準ずるパワーはあるわ。」

 

 

 そうか、こいつは出張にいっていたんだ。

 ミサトは思い出すと、ファイルを開いた。

 ミサトの横に立つと、シンジものぞいていた。

 そこにはオルメクやマヤ文明を彷彿とさせる遺跡があった。

 次のページを開くと、海の近い洞窟があった。

 その周囲には繭あるいは蛹らしきものがあった。

 大きさは30mほどだ。

 

 

「これは…。」

 

 

「レイ曰く、何かの蛹じゃないかって。」

 

 

「蛹?何の…。」

 

 

「一つだけいえることは、それからはパターン青は反応しなかった。その代わりに微量の放射能・電気があったってことは言えたわね。それに次の写真をみて。」

 

 

 次の写真では周囲が夜に包まれているのがみえた。

 その中を蛹は光輝いていた。

 その色は水色で美しくみえた。

 

 

 

「まるで、蛍のよう…。」

 

 

「そう、蛍…でも蛹の近くにある皮膚の1部を採取して検査してみたところ、驚くことにこれらはアダムやリリスとは違うものだったの。」

 

 

 アダム、使徒たちの父。

 リリス、我々地球生命体の母。

 

 

 

「じゃあ…これは…別の惑星の存在?」

 

 

「あるいは私たちに似た世界からきたのかも。」

 

 

 

 ミサトはファイルをみた。

 そこには壁画があった。

 大きなトカゲの怪物が数体の巨人を押さえつけ、蝶々らしきものがそれに対峙している。

 それを人々が天を仰いでいる。

 

 

 これだけならまだいい。

 

 

 そこに映る巨人はエヴァ初号機に似ていた。

 

 

 

「なにこれ、これってまさか…エヴァ!?」

 

「わからない…ただ一ついえるのはここの住民の神話の中である言葉が流れていた。」

 

 

 

 リツコはふとコーヒーを飲んだ。

 

 

『黒き王が海のなかから来る時、白き女王が立ち上がる、それに続いて巨人も立ち上がるが、黒き王に負けるであろう。やがて天から金の悪魔がやってきて、黒き王との最終戦争がおきる。かくして宇宙は再び無になる。黒き王のみが生き残る。』

 

 

 

 シンジとミサトは真剣に聞いていた。

 そんな二人をリツコは微笑みで返した。

 

 

「ただの迷信よ。」

 

 

「そうかしら。」

 

 

 シンジは考えた。

 

 大阪でのあの時、何か海の底に何か嫌なものがあるように感じた。

 遠い海の底、何かが蠢ているように感じた。

 

 

 それが何なのかわからない。

 

 

 

 

「どうしたの、シンジ君。」

 

 

「ボク…感じたんです。海の中で何かがいるって…とてつもない巨大な何かが迫ってくるんじゃないかって…。」

 

 

 

 黒き王。

 海から来る黒き王。

 もしも、それが実在してこの壁画が未来を予知するものであったのなら…。

 世界はどうなるのだろう。

 

 

 

 

「シンジ君、それは鯨か何かじゃないの?」

 

 

「いいえ、何かエヴァより大きな…使徒でもない。それより大きな何かが来そうな気がしたんです。」

 

 

 

 ふと、シンジのPCの画面にカヲルがうつるのがみえた。

 シンジは画面に駆け寄った。

 

 

「カヲル君?」

 

 

「ああ、シンジ君。今宇宙から帰ってきたところなんだ。結構すごかったよ。」

 

 

 リツコとミサトもシンジのモニターに顔を近づけた。

 カヲルはファイルを開くと、写真をみせた。

 

 

「まずはこれ。」

 

 

 そこには大きなピラミッドがあった。

 ピラミッド、なぜ火星なのにピラミッドがあるのか。

 

 

「僕たちはこのピラミッドの中に入った、すると…何があったと思う。」

 

 

 カヲルは別の写真をみせた。

 そこにはエヴァを彷彿とさせる壁画があった。

 

 

 

「ちょっと待ってこれって!」

 

 

さっきみた南太平洋の遺跡と同じもの。

 

 

 

「エヴァみたいだろ。」

 

「そのものだよ。」

 

「この宇宙には別の生命体がいるんだ、恐らくは…。」

 

 

 リツコはピンときた。

 

 

 

「第一始祖民族。」

 

 

 

ゼーレは彼らが書いた死海文書をもとに計画を進めた。

エヴァンゲリオンもその中にあったと言われている。

人類の進化のための補完計画。

本当の目的は別にあったのかもしれない。

 

 

「シンジ君、この宇宙には僕たちの知らないことが山ほどある。きっとボクたちを産んだ起源である第一始祖民族もどこかにいる。」

 

 

 カヲルはそういった。

 それにシンジは返した。

 

 

「でも、なぜそこまで大きな文明を持った彼らが滅んだんだろう…。」

 

 

 ミサトはふと気が付いた。

 

 

「滅んだのじゃなくて、滅ぼされたのじゃないの。」

 

 

 この壁画と予言はおそらく‥‥第一始祖民族が経験したこと。

 彼らの魂の1部が地球にいるのか。

 

 

 

「誰に滅ぼされたんだろう。」

 

 

 シンジは聞いてみた。

 ミサトとリツコはファイルの中にうつっていた大きなトカゲの壁画をみた。

 

 

「黒き王…。」

 

 

 考えられるのはそれだけしかない。

 4人の考えは同じだった。

 

 ミサトはふと考えた。

 私たちがようやくつかんだ情報、これらはすでにアメリカ政府や中国政府が手に入れているのではないだろうか。

 もしも、そうであるなら…私たちネルフは彼らの手で踊らされているということになる。

 エヴァと同等以上のスペックを持ったロボット兵器、これが実在するというならすべてはこの『黒き王』に対する予防策だったのだろうか。

 あるいはエヴァの建造を第一始祖民族たちが模索していた理由は、人類補完計画を行おうとしていた本当の目的はこの『黒き王』を倒してほしいからなのか。

 ミサトは腕を組んで考えた。

 

 

 

 

 一方、託児所。

 そこではシンジとミサトの子供、葛城ケントがいた。

 ケントの名前の由来はシンジがみていたアメリカンコミック原作の映画からきたもの。

 綾波レイはそこでケントの面倒をみていた。

 

 

「れいれい。」

 

 

 2歳児になったケントは歩きまわるが言葉を完全にまだ発する事ができない。

 レイはしゃがむとケントを抱き寄せた。

 ペンペンをいつも抱いているやり方でケントの尻と背中を優しくつつみこんだ。

 

 

 

「暖かい、これが生きているということ。」

 

 

 レイはシンジのことが好きだった。

 だが、シンジはミサトのことが好き。

 恐らく崩すことはできないだろう。

 このレイの胸元にいる幼児は未来をつなぐ大事な物。

 ふとレイは考えた。

 

 かつて碇司令は自分を育ててくれた。

 そこには何かしらの野心があったのかもしれない。

 だが、彼女は知っていた。

 

 碇司令は自分を娘のように思っていた。

 それが、なんであれ自分を娘のように愛してくれていた。

 

 それには今でも感謝している。

 

 

「あら、綾波さん。」

 

 

 声がした。

 洞木ヒカリ。

 今でも一緒に住んでいる、家族。

 

 

「洞木さん。」

 

「ふふ、今でも苗字で読んじゃうわよね。」

 

 

 洞木ヒカリ。

 今はネルフの託児所で先生をしている。

 本当であれば今は亡き鈴原トウジと付き合っていた、あるいは結婚していたのかもしれない。

 

 ヒカリはレイが赤ん坊を抱っこしているのをみて微笑んだ。

 

 

「抱き方が様になってきたわね。」

 

 

 ヒカリの家で何度も親戚の娘を抱っこさせてもらったその影響、それが綾波レイには出ていた。

 

 

「この子、碇君の子供。」

 

 

「そうよ。」

 

 

「碇くん、苗字は変わったけど私の中では碇くんのまま。」

 

 

「私もついついそう呼んじゃうわね。馴れって怖いわね。」

 

 

 ヒカリはレイに微笑んだ。 

 だが、レイは笑っていなかった。

 

 碇司令の息子、碇シンジ…。

 彼に優しく接された時、自分を心配してエントリープラグまで来た時胸が熱くなった。

 その時、これが恋なのだとわかった。

 だから、今でも彼のことを碇くんといってしまう。

 自分の中では、葛城一佐のことは、上司として尊敬・信頼している。

 だけど、碇くんは永遠に自分の中では碇くんなのだ。

 

 やはり、自分は今でも彼を愛している。

 

 だが、なんとなくだが、曖昧にわかってしまう。

 自分と碇くんは恋人になることはできない。

 

 

 彼女はまだ漠然とわからなかったが、どこかでシンジと自分には何かの絆がある。

 それはよくわからないが、愛し合ってはいけない絆。

 それがシンジと自分の中にある。

 もしかしたら、自分と碇くんは兄妹に近いのかも。

 だったらこの子のおばさんになる。

 

 碇司令との絆はまだ消えていない。

 私の心が尽きるまで、その絆は消えることはない。

 

 それを守ることができるなら・・・私はエヴァに乗り続ける。

 

 

「人は子供を産み、未来をつなぐ。その架け橋に私はなる。」

 

 

 レイは言った。

 ヒカリは驚いた。

 こんなにおしゃべりな綾波レイをみるのは初めてであったからだ。

 

 

 

 

 

 

 ベルリン、ネルフEU支部。

 支部長である加持リョウジはコンピューターを開いていた。

 ふと、彼のアカウントにある男からメールが届いているのがみえた。

 疎遠となったダニエル・ソーンバーグに代わる協力者のものだ。

 

 

『中国で作られている巨大ロボットの件。』

 

 

 加持はマウスを動かし画像リンクを開いた。

 そこには『金剛』と書かれた巨大な金色の鎧をつけた巨人の如き姿をしたロボットがあった。

 両腕や肩はまるで重量挙げ選手のように太く逆三角形の体をしていた。

 身長は555m 体重100万トン。

 とんでもないでかさをしているようだ。

 そして、加持はリンク付けされていた動画ファイルをクリックした。

 

 

 そこにはあのゼルエルがより巨大化したものがうつっていた。

 それの前方に金剛がいた。

 

 

「中国は使徒のクローン化まで成功していたのか。」

 

 

 加持は舌を噛んだ。

 あれほど苦労した使徒。

 なぜクローン化するんだ。

 人の欲望は尽きない。

 その欲望はいい方に行けば成功につながるが、悪い方に行けばとんでもないことになる。

 これは後者だ。

 

 

 ゼルエルは光線を放った。

 だが、金剛はびた一文ときかなかった。

 

 そしてゼルエルはすぐさま何百枚となるATフィールドを放つと、金剛を押しのけた。

 金剛は両腕をクロスするとその衝撃波に耐えた。

 やがて、金剛は信じられないスピードでゼルエルにとびかかるとその腕を振るいATフィールドを簡単に突き破った。

 やがて金剛の剛腕はゼルエルの腹部を突き刺し、バラバラに引き千切り始めた。

 

 巨体・それに似合わない異常なスピード…。

 何よりも素手でATフィールドを破れる怪力。

 

 これがもしも、実用化になればエヴァは勝てるのだろうか。

 否、最初からエヴァなど相手にしていないのかも。

 使徒でも倒せるのだから…。

 

 

 だとすれば、もっとそれ以上の敵を想定したもの。

 

 

「連中は一体何を考えているんだ。」

 

 

 ふと、加持の執務室にアスカが入ってきた。

 

 

「エヴァ二号機のステルス化成功したわ。」

 

 

 アスカは白衣を着ていた。

 元々14歳で理工学系の大学を首席で卒業した知能の持ち主、リツコのちょっとした指示があればアップグレードはアスカにも可能なようだ。

 

 

「お疲れアスカ。」

 

 

「それ、いわゆる中国の対エヴァンゲリオン兵器?」

 

 

「一応はそうだが、目的は別だろうな。」

 

 

「っていうと?」

 

 

「エヴァ・使徒…あるいはそれ以上の存在を見越してのものかも。」

 

 

「それって?」

 

 

「俺にもまだよくわからん。」

 

 

 きっと、何か使徒以上の者が迫ってきているのだ。

 今度こそ、生き残れないかもしれない。

 加持はパソコンを睨みつけた。

 

 

 

 ベルリン郊外。

 相田ケンスケとエヴァ8号機パイロットのマリが同棲している部屋。

 マリは目を覚ました。

 同じベッドの横には恋人のケンスケがいた。

 彼女はそっと恋人を起こさないようにベッドから抜けると、そのまま服を着始めた。

 そして、アイスココアをいれてバルコニーに立った。

 

 

「来る。」

 

 

 マリは思わず言った。

 何が来るかわからない。

 だが、オリジナルのマリの血が流れている自分の中で何かが蠢いていた。

 自分は所詮オリジナルではない、クローン。

 だが、わかることがあった。

 

 

 

「何かが来る。」

 

 

 終焉がやってくる。

 それは大きく巨大でとてつもなく強いもの。

 エヴァではかなわないかもしれない。

 

 

 マリの手は徐々に震えが始まっていた。

 

 

 ふと、同じくバルコニーにケンスケがやってきた。

 

 

「マリ、どうしたんだよ…。」

 

 

「わからない、でも…私の中にあるオリジナルのマリの記憶がざわざわとさわいでるの。」

 

 

「君はクローンなんだっけ?でも俺そういうの気にしないよ、マリはマリ。それ以外の何物でもないよ。」

 

 

「ありがとうケンケン。」

 

 

「そんなことより、写真撮って売っていい?」

 

 

 

 ケンスケは道化じみた顔で言った。

 だが、マリは笑わなかった。

 真剣そのもの。

 ケンスケは微笑むと、マリの手からココアを盗んだ。

 

 

「あっ!!!それ私の!!!」

 

「へへーん、いただき!!」

 

 

 マリはわかっていた、ケンスケはこうやって私を戦いから遠ざけようとしてる。

 その優しさがマリにはありがたかった。

 だが、なんなのだろう。

 この嫌な予感は。

 何かとんでもないものがせまってきているその寒さをマリは感じていた。

 

 

 

 

 

 

 彼らの答えを知る物は海の底の先にいた。

 

 

 

 

 

 マリアナ海溝。

 地下深く、誰にも見つからないそこには次元間の亀裂が徐々に深まっていった。

 最初は数m、しだいに100m、やがて6㎞まで達していた。

 その先には別の世界があった。

 

 それは現実と虚構が混じった世界であった。

 

 かつて文明があったその世界は青白い炎を吐く龍の王が昼夜問わず支配していた。

 その青白い炎の持ち主はその世界の支配者であった。

 

 

 第一始祖民族は彼らを「怪獣」と呼んだ。

 そして、彼らには支配者であり王がいた。

 

 第一始祖民族はその存在を破壊の神として恐れた。

 

 

 彼の名前はゴジラ。

 

 

 かつて彼に対抗する怪獣も多くいた。

 だがその恐怖と暴力で支配し、配下に加えた。

 長い間天敵であったギドラも殺してその死体を宇宙の果てに放り投げた。

 公害物質を吸うへドラは焼き殺して処分した。

 誰も彼に逆らうものはいない。

 

 彼は文明を嫌っていた。

 文明、その力さえなければ今ごろ自分はただの恐竜だったはず。

 それがある日違うようになった。

 

 やがて、それが知能を持つ文明を持った生命体によるものと知った。

 そして、世界中を滅ぼした。

 それ以来、彼は文明の力を嫌悪し憎悪し破壊した。

 

 

 第一始祖民族たちはそれを恐れ、彼らに対抗すべく白い虫を生み出した。

 

 

 空を飛ぶ白い虫のような怪獣がその命をかけたエネルギーを発し、ゴジラたちをこの別世界に誘い込んだ。

 罠にはまったゴジラたちが気づいた時には遅かった。

 別世界に送られていた。

 そして、のなかで46億年以上の時を過ごした。

 

 

 そして、今…天敵であった白い虫の魂は消えた。

 それは生まれ変わりを意味するものであった。

 だが、力は衰えた。

 

 

 

 

 こざかしいことに第一始祖民族もまた、自分たちが滅びる間際に二つの種を放った。

 

 

 

 この流れ着いた多元世界の先の先ではゴジラは太陽すらも焼き、月すらも破壊した。

 宇宙に並ぶ他の星々も瞬く間に破壊した。

 それらの破壊のエネルギーを捕食した。

 そして、次元間の歪みに向かって何度も何度も熱線を放った。

 

 

 

 

 その結果、彼らとは関係ない世界も複数破壊した。

 

 

 それで構わなかった。

 死んだ魂たちは支配者の胃の中におさまった。

 ガフの扉ではなく。

 

 

 ゴジラの放った死の光線は時空を超え、空間を越えた。

 そして、彼の熱線は戯れに様々な惑星・世界を破壊しその生命体の魂をゴジラに捕食させた。

 彼の胃の中に何百何万何億という魂たちが怒り・恐怖・怨念の声をあげながらこだましていた。

 

 

 

 彼の近くに茶色の肌をした同族の血を分けた部下がきた。

 バガン、ゴジラと天敵の混ざった人工生命体。

 文明を持つ輩はこのような蛭子すら生み出したのだ。

 この醜い存在をゴジラは嫌ったが、忠実であるため傍に置いていた。

 

 

 彼は後部をみつめた。

 そこには三つの怪獣の王たちがいた。

 

 無数の虫の兵士たちを持つ、女王メガギラス。

 破壊本能だけの赤い生命体、デストロイア。

 ゴジラとの血に依存した高度知能生命体の成れの果てであったオルガ。

 

 

 バガンを含めると、彼らはゴジラに使える四つの幹部。

 彼らは別に自分たちの部下がいた。

 ゴジラは王の上にたつ、王…すなわち怪獣たちの皇帝であり神であった。

 

 

 高い知能を持つ半分機械・半分怪獣のガイガンはオルガの補佐であった。

 メガギラスと忠実な子供であるメガヌロン・メガニューラたち、フェロモンに付き従ったカマキラスの群れは何万といた。

 デストロイアの分身たちはいつでも主人の指示を待っていた。

 それだけではなかった、ゴジラの破壊の力に付き従った彼らより小さな魔物・魑魅魍魎が蠢きながら皇帝たるゴジラの指示を待っていた。

 

 

 

 だが、ここにいる彼らは皆ゴジラを恐れている。

 敗北は死を意味している。

 中にはゴジラに変わろうとする野心家もいた。

 

 ゴジラはあえてその野心家たちを利用していた。

 

 

 ゴジラは天を睨んだ。

 そこには空間の歪みがあった。

 ゴジラの体の4倍はある大きさの亀裂。

 

 

 やがて見つけた別の文明を持つ世界をゴジラは滅ぼして乗っ取った。

 この先には別の文明を持った多元世界がある。

 

 

 

 滅ぼそう。

 この多元世界にわたる文明、すべてを滅ぼさない限り…我に平穏などないのだ。

 怒り・憎悪・狂気・憤怒…何億何兆という憎悪のエネルギーが無限にゴジラを満たしていた。

 

 

 ゴジラは雄たけびをあげた。

 その雄たけびは地面を揺らした。

 侵略の合図、狼煙であった。

 

 それにこたえるがごとく、怪獣・魑魅魍魎たちは雄たけびをあげた。

 あるいは殺戮のため、野心のため、忠誠心の照明のため。

 理由はあれど、破壊を求めていた。 

 ゴジラは彼らの皇帝であった。

 

 

 ゴジラの喉は震えると、口から大きな青白い光線を放った。

 光線は次元の裂け目にぶち当たると、大きな穴をひらげた。

 

 やがて、裂け目は彼ら怪獣の軍隊を迎え入れた。

 

 今かれらはシンジたちのいる世界を滅ぼそうと突き進んだ。

 その世界は第一始祖民族が我らと彼奴らの世界を融合させて生み出された世界。

 奴らは滅んだ。

 その世界も1度は滅んだ。

 

 だが、再生されて生み出さている。

 そんなことは許さない。

 あの世界は自分が住んでいた、自分が愛した世界がベースになっている。

 それを土足で踏みにじるのは許さない。

 

 

 

 今、第一始祖民族へ最後の復讐は始まったばかりなのだ。



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第3話:荒ぶる神ゴジラ

今回はエヴァ薄目です。
一応二話からは3日ほどたっている予定です。
大量の人間が死ぬ描写がありますのでご注意ください。


 ネルフ本部

 

 北川ミドリは欠伸をしていた。

 

 彼女は2年前に入ったばかりの新人。

 使徒と戦っていた時期は大学生をしていたのでよくわからない。

 仕事に対しても深い情熱はない。

 大学の頃はモデルをしていた。

 安定がほしいから、国連関係者の知り合いのコネで何とかここに入った。

 しかも、あくまで契約社員という体である。

 

 

「なんかつまんなーい。」

 

 

 1年前の新型エヴァとの抗争の時もインフルエンザにかかっていたので休んだ。

 仕事はオペレーター兼広報係である。

 

 

「なんか面白いことないの、葛城さん。」

 

 

 ミサトは苦虫をかみつぶしたような顔でミドリをにらんだ。

 

 

「あのねえ、北川さん。私はあなたより年齢も立場も上、つまりね上司なの?わかる?私はね、あなたの将来が心配だわ真面目な話。それにね、あたし達は一応軍であり研究機関であり…。」

 

 

 ミドリはミサトの話を無視するとスマホの画面に集中していた。

 そして、取り出すといきなり自撮りをはじめた。

 

 

「仕事してるなう。」

 

 

 

 ミサトは怒りで体が震えるのを抑えた。

 

 

 

 くっそーなにが広報じゃ。

 こいつスマホいじって画像投稿してるだけじゃない!!

 何よ、こいつ…。

 

 

 

「あのねぇ・・・上にいる人間の話は最後まで聞かないと…。」

 

 

 すると脇から冬月がやってくるのがみえた。

 

 

 

「葛城くん!いいかげん始末書の書き方ぐらいなんとかならんのかね!また国連からクレームがきとるよ!他人に偉そうなことを言うならまず自分から始めてみてはいかがかね。これだから最近のわかいもんは・・・私の若いころは!葛城くん!」

 

 

 

 ミサトは冷や汗をかくと小さくなった。

 

 

「すいません・・・。」

 

 

 ミドリはそんなミサトをクスクスと笑っていた。

 脇から日向がやってきた。

 

 

「北川さん、敬語は使おうよ。」

 

 

「なに、マコっちゃん。」

 

 

「マコ・・・・ちゃん?」

 

 

「うん、マコトでしょ。だからマコっちゃん。」

 

 

 

 

 日向は頭を抱えた。

 こいつどうしようもねえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃

 オペレーターの青葉シゲルはシンジとギターのセッションをしていた。

 シンジは青葉に時々こうやってギターを教えてもらうのが好きだった。

 青葉は同僚のマヤと結婚していた。

 

 

「火星からなんかでかいのがくるんだっけ。」

 

 

「そうですよ、だから技術部は忙しいとか。」

 

 

「火星人とかついてたりして。」

 

 

「タコ型みたいなの?」

 

 

「ワレワレハウチュウジンだとかいって。」

 

 

「何それ?」

 

 

 シンジと青葉は冗談を言い合いながら談笑していた。

 

 彼がカヲルの話を聞いたところには、あと数日以内に火星から荷物が届くそうだ。

 そして、今日は約束の日。

 

 もうすぐで荷物が届くだろう。

 

 

 

 

 

「ああ、そういえばマヤちゃん、最近カリカリしてんだよ。」

 

 

「女の人ってたまにそういうのありますよね。」

 

 

「シンジ君ももう20過ぎか。じゃあ色々わかってるよな。」

 

 

「青葉さんももうおじさんですね。」

 

 

「ははは!」

 

 

 青葉は笑うとスマホがなっていることに気が付いた。

 青葉は手をとめると、電話に出た。

 

 

「マヤちゃんだ。」

 

 

 シンジも手をとめた。

 青葉はそれをみると電話に出た。

 

 

「はい!」

 

 

 シンジは青葉の様子をみていた。

 

 

 

「え!?マジ!?うん、わかった!」

 

 

 シンジは青葉の顔をみた。

 

 

「マヤちゃん、妊娠だって。」

 

 

「え!?本当!?おめでとう!青葉さんもパパじゃん!」

 

 

「ははははは、まいったな。俺も父親かー。」

 

 

 

 青葉とシンジは二人で笑い合った。

 ずっとこんな平穏な時期が続けばいいのに、そうシンジは思った。

 

 

 

 中国、香港。

 そこは世界最大の都市であった。

 10億人以上が住むその街は日本はいうまでもなくアメリカすらも越えようとしていた。

 

 そこには新しく建造された超高層タワーのお披露目の式典が行われていた。

 中国の力を証明すべく作り上げられた「金龍タワー」は地上350階、高さ1500mというブルジュ・ハリファを越える大きさを持っていた。

 

 その300階ではお披露目会・プレスの質疑応答などが行われていた。

 雲がかかっているのが地下からはみえた。

 

 そのお披露目会にハリウッド俳優が多くいた。

 その中にリチャード・パーカーはいた。

 タワーのお披露目をかねて、屋上でマウスマンの上映会を夜に行うためである。

 世界中のマスコミはこの日集結していた。

 

 

「いやーん、リッチーだいてー!!!」

 

「リッチー!!!」

 

 

 リチャードは多くの女性たちの声援に金髪青目の甘いマスクで答えた。

 パーカーは19歳という若さでハリウッドのこれからを狙うとうわさされている若手俳優であった。

 パーカーの横にはヒロイを演じたジーナ・アン・J・リーンがいた。

 ジーナは整形手術とヒアルロン酸の効果で若さをキープしていた。

 

 実は、金龍タワーのオーナーである、中国の不動産王にして、世界最大の電化製品メーカー「グリフォン」の会長であるワンはジーナの恋人であった。

 少なくとも表向きは。

 ジーナの脇には身長150㎝で年齢55歳のワンがいた。

 

 

 ワンは自信満々の顔で言っていた。

 

 

「この金龍タワーは夢のつまったタワーです。これからの皆様、世界のためにも貢献することをここに誓います。そして、今ここで恋人のジーナとともに皆さんを迎えます。」

 

 だが、ジーナは内心このワンを軽蔑していた。

 汚らわしい、私は白人以外の男に抱かれたくはない。

 ましてや横にいる小さく脂ぎった豚などには…。

 

 しかし、もう35過ぎたジーナはもうハリウッドや西側社会にスポンサーなどいない。

 上院議員の総務をしている祖父も縁は切れている。

 これも一種の営業。

 マネジメント会社からの進言を受けただけのこと。

 落ち目のハリウッドスターにはこれしか道はなかったのだ。

 

 

「ダーリン、今からリチャードと大事な会議をしなくちゃいけないの。」

 

 

 ジーナはそう、ワンにいった。

 ワンはジーナの肩をなで、臀部をなでながら耳元でささやいた。

 

 

 

「いっておいで。」

 

 

 そして、頬にキスをした。

 

 

 

 タワー内部に入りエレベーターの中へと入っていった。

 向かう先は最上階テラスハウス。

 王とジーナの住む場所だ。

 ジーナは怒りに肩を震わせた。

 

 

「けっ!」

 

 

 ジジイが・・・私に気安くさわってんじゃねーよ!!!

 何さ、私は確かに落ち目のハリウッド俳優かもしれない。

 40以上でいきおくれのババアかもしれない。

 だが、かつては世界中の大スターだった。

 邪魔する人間は蹴落としてきた。

 私はハリウッドの女王アリ、あんなクソみたいななめた下劣なヤツに触られる資格などない。

 私はなんどもなんどもワンに言い寄られたが、拒絶してきた。

 ふと、エレベーターはたどり着いた。

 

 

 そこにはリチャード・パーカーはいた。

 

 

「遅いよ、ジーナ。」

 

「ごめん、リチャードまってたぁ?」

 

 

 ジーナはリチャードにとびつくとキスをした。

 彼女はリチャードの唇と舌を堪能していた。

 ワンはあくまで世間体のための彼氏、本物のボーイフレンドはこのリチャードしかいないのだ。

 少なくともジーナにとっては。

 金持ちだが、アジア系の彼氏を持っているこれだけでジーナは偉いとハリウッドの連中からは称賛されるのだ。

 そして、テラスハウスにはカメラはない。

 

 

「心配しなくてもいいわよ、ここにカメラはないから。」

 

 

「ああ、そ、そうだね・・・。」

 

 

 こわばった表情でリチャードは顔をしかめていた。

 

 

「フフーん、リッチーたんったらもう緊張してるのねぇー?でもいいのよ、アタシの溢れる愛とロマンスはあなただけのものなの。」

 

 

 リチャードは顔を少し青くした。

 

 この行き遅れババア勘違いしてんじゃねーか。

 てめェの祖父ちゃんが大物政治家だから利用してるだけだっつーの。

 20歳以上離れた女を恋人なんかにするわけねーだろ。

 現実をみろよ、頭イカレてんのか?

 何がリッチーたんだ、気持ち悪い。

 

 

 内心、毒づいた。

 

 

 リッチーとジーナは以前に共演した映画で、鉢合わせた時の仲。

 その時、リチャードは16歳でこの女は39歳だった。

 初共演した時に、その夜に一夜を強要された。

 その際に拒んだ場合は祖父に言ってこの映画業界では食えないようにしてやるとも脅された。

 それ以降、彼女には逆らえなかった。

 

 

 だが、それも終わりだ。

 ジーナにはいっていなかったが、カメラはついている。

 ワンに相談した彼はこれを録画してジーナを脅す気でいる。

 ジーナはカードキーを開けると開いた。

 

 

「んじゃー、シャワー浴びてくるからまっていてね?」

 

 

「ああ、そうするよ…。」

 

 

 

 リチャードは舌打ちをした。

 

 

 

「ジーナ、地獄へ落ちろ。」

 

 

 

 それも知らず、ジーナは呑気に鼻歌を歌いながらシャワーを浴びていた。

 リチャード、私が10代のころから目をかけていただけあっていい男になった。

 

 

「お待たせー!」

 

 

 ジーナはバスローブを着るとドアを開けた。

 リチャードはこわばった顔で彼女を迎え入れようとした。

 

 

 

 そんな世界の勝ち組がワイワイと集まりながら宴会を繰り広げている中、地上ではカップルたちがいた。

 チェンとミンは寂れた香港の場末で生活するさえないカップルだった。

 チェンは10時間勤務の中華料理店の皿洗い係、ミンはメイドであった。

 住む家は汚いマンション、ネズミやゴキブリが彼らの同居人であった。

 ミンは帰ってくるチェンを待ち、料理を作っていた。

 

 

 やがて、壊れたメガネをかけたチェンはせき込みながら帰ってきた。

 恐らく風邪をひいている。

 それを押してでも働くチェンがミンは好きだった。

 

 

「おかえりなさい、また具なしチャーハンよ。」

 

「ミンの作る料理が一番好きだよ。」

 

 

 チェンはチャーハンにスポーンをいれると口に出そうとした。

 その時だった。

 ミンはいった。

 

 

「私、妊娠したの。」

 

 

 チェンは目を輝かせた。

 

 

「本当!?」

 

 

「うん。」

 

 

 二人は抱き合って喜んだ。

 念願の子供が生まれたのだから。

 

 

 香港の街では迷子になった日本人兄弟が人ごみの中で親を探していた。

 弟は、年齢は6歳。

 そんな兄は10歳。

 兄弟仲は悪かった。

 兄は知っていた、父は借金を負っていたことを。

 恐らくは自分たちはこの外国で見捨てられた。

 

 

「泣くなよ!男だろ!」

 

 弟にそう言った。

 だれもいない、だから俺が弟を守るしかない。

 兄は誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな時だった。

 地鳴りが響いた。

 

 

 ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン…。

 

 

 

 ジーナとリチャードは地面にぐらつきそうになった。

 チェンとミンは抱き合ったまま地面に倒れた。

 日本人の兄弟は地面に倒れた。

 

 

 

 

 

 その頃、黄龍タワーにいた多くのセレブやプレスたちも大きく転倒した。

 ワンは微笑みを浮かべながら言い訳をした。

 

 

 

「お気になさらず、このタワーは地震に強いのです。日本の建築士が考えたものですからね。」

 

 

 

 

 そんな時だった。

 ワンの気休めの言葉をかき消すようにサイレンが響いた。

 夕焼けの香港の街。

 その街に大きな何かが近づいているのがみえた。

 海の方から。

 

 青白く光り輝くと、それはやってきた。

 黒かった。

 黒い岩肌がみえた。

 

 

 黒い岩肌をしたそれは、とてつもなく巨大であった。

 それは生きているように動いていた。

 ふとみると、船舶がそれを避けているようにみえた。

 

 その足元には香港国際金融センターがあった。

 高さ410mほどの…それがゴジラの腰にきていたのだ。

 

 

 

 

「なんだあれは。」

 

 

 

 ワンは思わず言った。

 すると、その言葉に反応するかのようにそれはゆっくりと迫ってきていた。

 香港国際金融センターはまるで造作もなく蹴り飛ばされて破壊した。

 そして、それは横にくねりながら、尾を持ち上げた。

 はるか遠くにあった環球貿易広場にまでそれは届いた。

 やがて、尾は激しく動き環球貿易広場を破壊した。

 

 

 

 『それ』には白い目があった。

 

 

 

 その時わかった。

 こいつ、生きている。

 恐竜のようだ。

 

 

 まるで、映画のゴジラのよう。

 否、ゴジラそのものだ。

 

 

 

 

「ゴジラ!?」

 

 

 

 ゴジラだ。

 

 黄龍タワーをみていた。

 次はここだ。

 

 

 黒い巨体は黄龍タワーよりも倍以上の大きさをしていた。

 多くの客が悲鳴を上げた。

 そして、我さきに逃げようとした。

 

 

 

 ワンもその一人だった。

 その時気が付いた。

 

 

 

「階段がない。」

 

 

 

 そう、階段を設置していなかった。

 エレベーターだけ、気が付けばエレベーターホールに人だかりができていた。

 

 

「クソ!!!どけ!!!どけぇ!!!!雑魚どもめ!!!おれ、俺様は世界3番目の金持ちだぞ!!!どけぇ!!!どくのだああああああああああああ!!!!この労働者風情が!!!!」

 

 

 ワンは群衆を押しのけた。

 こけて倒れていた人間を蹴り、踏むのがわかった。

 ワンは涙を浮かべた。

 こんなことなら階段をつければよかった。

 

 

 だが、だが仕方ないじゃん!

 経費がないもん!

 階段しようできてもつらいじゃん!

 

 

 

 

 テラスハウスにいたリチャードとジーナも同じく、その存在に気が付いた。

 

 

 ここは最上階、そして高さ1500mあるビル。

 そのはず…だった。

 黒い肌をしたゴジラはその2倍はあった。

 ジーナはその巨体に震えあがった。

 

 ゴジラはゆっくり、じっくりと距離を近づけていった。

 その足元では100mサイズの高僧ビルが次々と破壊されていくのがみえた。

 

 

 

 

 

「おわ・・・・おわ・・・おわり?せかい・・・・。」

 

 

 そんな馬鹿な。

 セカンドインパクトを生き残った。

 この私がこんなところで死ぬ?

 

 考えられない。

 否、考えたくない。

 だが、どうしようもない。

 ココには階段がないのだ。

 

 

 逃げられない。

 

 

 

「い、いや・・・いや・・・・・いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

 

 

 ジーナの悲鳴が上がった。

 ゴジラの巨体をみて、一気に髪の毛は恐怖で逆立ち白く染めあがっていった。

 

 

 

「嘘だろ、おい!!おいおいおいいおい!!!!」

 

 

 リチャードは何度何度も何度もボタンを押した。

 エレベーターが動かない。

 どうして?!

 まさか下層のゴミどもが…。

 

 

 そうだ、ここはテラスハウス。

 金ならある。

 奪って何とかしてやろう。

 リチャードはジーナの首めがけてとびかかった。

 そして両手で強く締め上げた。

 

 

「おい、ババア!金はどこだ!てめえのせいで俺はくたばっちまうんだぞ!なんとかしろ!なあ!」

 

 

 ジーナは震えあがった。

 口から泡を吹いていた。

 

 

 ちっ、ババアめ!

 

 

 リチャードは舌打ちをすると、そのままジーナの首を締め上げた。

 

 

 

 

 その時だった。

 外が暗くなっていった。

 違う、手があった。

 黒い手。

 

 

 

「あっ死‥」

 

 

 

 リチャードは何かを言おうとした。

 手遅れだった。

 

 

 ゴジラの右腕はそのまま、黄龍タワーを突き崩した。

 

 

「うわあああああああああああああ!!うわあああああああああああああああああ!!!」

 

 

 ワンは悲鳴をあげながら地面へと真っ逆さまに転落した。

 その際にリチャードとジーナが落ちてくるのもみえた。

 ガレキ、人々・・・それらはたばになり地面に落ちていった。

 

 金を集めても意味なし、死ねば金はただのクズ。

 ワンはようやく気が付いた。

 

 

 

「なんのために俺は金持ちになったんだあああああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 ワンは叫びながら地面に消えていった。

 

 

 そして、そこにいたすべての2万人以上の人間はともに犠牲となった。

 ワンの欲望も、リチャードの人生も、ジーナの野心もともにタワーとともに崩れ去っていった。

 

 

 

 その光景をみたすべての人々は悲鳴をあげていた。

 日本人兄弟の弟は目を輝かせていた。

 

 

「兄ちゃん、あれゴジラだよ!」

 

 

 

 ゴジラの白く瞳孔のない目は冷たく輝いていた。

 そして、黄龍タワーの残骸を容赦なく群衆のいる道路近くに投げ込んだ。

 

 

 

「あっ…兄ちゃん何か投げたよ。」

 

 

 弟は無邪気にいった。

 兄は黙って弟を抱きしめた。

 

 

「生まれ変わっても兄弟でいような。」

 

 

 

 80mの残骸は5千人の群衆たちに降り注いだ。

 兄弟たちもその残骸の犠牲になってしまった。

 そして、ミンとチェンも同じ光景を目の当たりにした。

 多くの人々が逃げていた。

 チェンはミンを連れて逃げようとした。

 だが、二人を容赦なく人ごみが呑み込んでいった。

 

 

 ミンは悲鳴をあげ人ごみの中へと消えて言った。

 

 

 

「ミン、どこだ!!!!!」

 

 

 

 チェンは悲痛な悲鳴をあげた。

 だが、1500m以上の身長を持つゴジラは不気味に白く輝く目を持ち人々、街をすべて潰していった。

 港から国連軍から独立した中国軍の空母は必死になってゴジラを攻撃してるのが見えた。

 アメリカ軍や日本の戦自に、海軍力だけなら勝つといわれている。

 そのはずだった。

 

 

 だが、ゴジラの前ではすべてが戯れだったようだ。

 攻撃はきいていなかった。

 

 そんな時だった。

 上空から何か来るのが見えた。

 

 金色のロボット。

 それ、チェン達のすぐそばまで来ていた。

 

 

 

「下にいる、やめろォ・・・・やめろおおおおお!!!」

 

 

 

 チェンは叫んだ。

 だが聞くこともなかった。

 ロボットはそのままチェンを踏みつぶしたのだから。

 

 

 

『金剛』

 

 

 中国軍が誇る最新鋭のロボット兵器は腕を構えた。

 パイロットのトンは鼻で笑った。

 彼は中国軍のエリート軍人。

 かつてベトナムとの間で起きた紛争でも活躍した。

 その際に日本人の女に部隊は壊滅されられた。

 その後でそいつがエヴァ関係の特務機関に所属したともきいた。

 

 

 だが、復讐など馬鹿らしい。

 なぜなら俺はエヴァを越えたのだ。

 

 

 

「最強の使徒を強化させたものですら倒せる俺らにかなうやつなどいない。あんなトカゲはでくの坊だ。爬虫類如きは故郷に帰れ。」

 

 

 

 金剛はゴジラに突進をしていった。

 そして、555mの巨体はゴジラに肩をぶつけた。

 

 トンはかつてラグビーと重量上げでアジア代表に選ばれた男。

 力には自信があった。

 ニュージーランドで鍛えたこの肩と金剛の肩ならあのトカゲを殺すことができる。

 その際に市民やビルが犠牲になったが気にしなかった。

 

 とるにたらん連中の犠牲など知らん。

 

 

 効いたはず。

 金剛の中を振動が襲った。

 

 

 トンはその時気が付いた。

 

 

 

 効いていない。

 

 

 

「バカな!!!」

 

 

 

 ゴジラは攻撃に気が付いていないようだ。

 ならば、二度目だ。

 金剛はその腕をつかい、ゴジラの顎を殴り飛ばした。

 大きな衝撃波が6㎞周囲を包み、街を破壊していくのがみえた。

 何人か市民が犠牲になっていた。

 知ったことか。

 

 

 

「いける。」

 

 

 

 だが、それはトンの勘違いだった。

 ゴジラは微動だにすらしなかった。

 

 

「いや、それならば・・・・。」

 

 

 

 トンは金剛の両腕を使うと、ゴジラの腰にしがみついた。

 そして、全力を込めて止めようとした。

 負ける?

 

 

 

 否!!!

 

 

 何百枚と張り巡らされた強化ゼルエルのATフィールドを素手で破壊できる。

 NS爆雷10000発に耐えられる。

 地形が変わっても生きられる。

 

 この、この・・・・最強ロボット金剛が・・・・。

 

 

 理屈ならエヴァより強い金剛が負けるはずがない!!!

 

 

 

 だが、ゴジラは金剛に目もくれずそのまま直進しつづけた。

 

 

 100万トン以上の力がかかっている・・・そのはずなのに・・・。

 力負けしている!?

 バカな・・・・この金剛が・・・・。

 

 金剛の体は引き摺られた。

 地面に地割れが起きていた。

 引き摺られた後で山々が削られて行くのもみえた。

 

 

 トンはようやくきづいた。

 ゴジラに金剛は引き摺られている。

 負けている。

 力で…。

 金剛の一番得意な腕力で。

 

 

 

「バカな・・・・!」

 

 

 

 ゴジラはようやく目を向けた。

 そして、金色に輝く金剛をみて見下げたような目だった。

 やがて、破壊の神はその両腕を使うと自分の腰にしがみついた金剛の腕をつかんだ。

 そして、まるで子供の手を解くように力づくで金剛の腕を振りほどいた。

 

 

「な、なんて力だ…。」

 

 

 このバケモノ、ありえない。

 何百層にもわたるATフィールドを打ち破ったこの金剛を、この腕を破るだと!?

 信じられない。

 このバケモノ…・。

 

 

 ゴジラは金剛を無表情でみつめると、やがてその両腕を使い逆に持ち上げた。

 金剛の腕はさながら両腕を縛られ吊るされたように吊り下げられていた。

 

 

 

 

「やめろ!!!やめろ!!!!!!」

 

 

 

 そして、怪力を振るうと金剛の両腕を簡単に引き千切った。

 

 

 

「うわあああああ!」

 

 

 

 金剛は神経回路が接続されている、エヴァの技術を応用したものだ。

 両腕が避ける痛みをトンも感じていた。

 

 

「いだいいだいだいだいだいだいだい、お・・・・おかあちゃーーーーーーーーーん!!!」

 

 

 

 ふと、トンはみるとゴジラの大きな腕が金剛の頭部をつかむのがみえた。

 

 

 

「わひぃ!」

 

 

 なにかよくないことがおきる。

 トンの本能が五感が悲鳴をあげた。

 

 

 

「頼むやめてくれ、そんなことされたら死ぬんだよ。なっわかるだろ。俺にも家族がいるんだよ!」

 

 

 トンは泣き叫んだ。

 だが、人間の命乞いなどゴジラに聞こえるわけもなかった。

 

 

 

 

 ゴジラはそのまま怪力で一気に金剛を持ち上げると、上空高く舞い上げた。

 やがて、100万トンある金剛の体は大気圏外に飛ばされて行った。

 

 

 

 

「ひええええええええええ!」

 

 

 

 

 やがて、ゴジラの背びれが青白いチェレンコフ光に輝くのがみえた。

 そして、口から一気に熱線が光輝いた。

 熱線の影響か、衝撃波と熱波が周囲に降り注いだ。

 光線はそのまま、延びていくと金剛の体を押しあてた。

 

 

 

「うわあああああああああああ!!!」

 

 

 金剛に乗っていたトンは最期の悲鳴を上げるとそのまま金剛とともに灰になり消えていった。

『金剛』と書かれた文字プレートが寂しく宇宙空間に浮かんでいた。

 

 

 しかし、熱線は止まらなかった。

 それどころか曲がりくねり光り輝き、土星や木星を貫き破壊していった。

 火星にいた大尉たちも例外ではなかった。

 彼らは地球にいるネルフに見つけた謎の武器を運び終えて休憩していた最中だった。

 彼は家族にメッセージを送った。

 

 

『予定より早く帰れる。』

 

 

 

 そんな時だった。

 火星を青白い光がつつんだ。

 

 

 

「なんだあれは・・・・。」

 

 

 

 それが大尉の最期の言葉だった。

 火星もまた、他の惑星と同じように青白い光線の餌食になると破壊しつくされて行った。

 彼の命も宇宙に散っていったのだった。

 

 

 

 

 香港郊外の山にいたミンはその様子を山の上からみていた。

 やがて、熱波は彼女にも届いていった。

 

 

 彼女はわかった、自分は死ぬのだと。

 

 

 

「私の赤ちゃん、あなたを産みたかった。」

 

 

 

 そう笑顔で言うと、彼女の体は熱波で一気に消し灰になっていった。

 やがて、熱波と衝撃波は中国南東部からミャンマーにかけて巨大なクレーターが生み出していった。

 やがて、一気に地面が削れて行った。

 周囲を灰が包んだ。

 世界中で大きな地震や地鳴りがおきた。

 

 ネルフ、アメリカ支部のあるサンフランシスコ。

 カヲルはピアノを弾いていた。

 その時、激しい揺れを感じるのがわかった。

 カヲルのいる部屋の本棚が激しく揺れていた。

 

 

「これは地震か?」

 

 

 そういえばかつてサンフランシスコで大地震がおきた。

 それか…。

 

 

『いや、違う』

 

 

 四号機の中にいる魂の声が聞こえた。

 

 

「じゃあなんなんだい。」

 

 

『地鳴りだ。』

 

 

「地鳴り?」

 

 

『世界中で起きている。』

 

 

 ふと、執務室にオーバーザレインボウの艦長が入ってくるのがみえた。

 かなり慌てた様子だった。

 

 

「大変だ・・・今すぐきてくれ!」

 

 カヲルはその様子に何か胸がざわつくものを感じた。

 そして、不快な何かを感じた。

 彼はふと窓のを外を見た。

 そこには青白い何かが宇宙から降ってきているのがわかった。

 

 

 

「あれは・・・・魂!?」

 

 

 まさか・・・。

 まさか!!!

 何かがおきている。

 サードインパクト以上の物が。

 世界を滅ぼす破壊の光が・・・。 

 

 カヲルはピアノから離れると艦長とともに、会議室へと走って向かっていった。

 

 

  

 ドイツ、マリは自身の部屋のなかにいた。

 ケンスケはサバイバルで身に着けた料理を今日はみせるといって買い物にでかけたきりだ。

 彼女が缶コーヒーを飲んでいると同時に地鳴りはおきた。

 マリは地面に倒れた、やがて起き上がるとバルコニーに向かった。

 そこには何万という魂が、宇宙中から地球に降り注いでいるのがみえた。

 

 

「あれは!」

 

 

 その時、彼女の体に電撃が走った。

 思い出した。

 あれは見覚えがある。

 それは、オリジナルのマリの記憶。

 

 

「おもいだした…。」

 

 彼女はつぶやいた。

 全身に追憶の電撃が走っていくのを彼女はわかった。

 この光景をまえにみたことがある。

 

 マリは震えた。

 

 世界の終焉が、第一始祖民族を滅ぼしたそれがとうとうやってきたのだ。

 彼女はそれを知っている。

 第一始祖民族の生き残りだったのだから。

 

 

 

 

 

 

 地鳴りは遠く離れた第三新東京市にも響いた。

 青葉とシンジは地面に倒れた。

 

 

「いででで・・・地震か?」

 

 

 青葉は頭を押さえた。

 シンジも同じく頭を押さえていた。

 そんな時だった。

 

 すごい剣幕の顔をしたミサトがシンジたちの元に駆け寄った。

 

 

 

「二人とも、発令所に来て!」

 

 

 あんな怖い顔をするミサトは久しぶり。

 恐らく指揮官としてのミサトだ。

 シンジたちは急いで発令所に向かっていった。

 

 

 

 その日、ユーラシア大陸の半分は消え去っていった。

 全てが消え地形も、何もかもが消滅した、ユーラシア大陸の南、その中心にゴジラはいた。 

 

 

 彼は大口を開けていた。

 自分が放った熱線で死んだ人々の魂、宇宙に向けてはなった熱線で死んだ数多くの生命体の魂。

 行き場を失い、ガフの扉に入ることもなくさまよう魂は我の物。

 それを吸収した。

 それだけではない。

 惑星破壊に生じたエネルギーあるいは、超新星爆発級のそれがゴジラの喉元に入り込んでいくのがみえた。

 衝撃・熱・鉱物の破片、そして放射能…その他もろもろがゴジラの胃の中に運ばれて行った。

 

 

 そして、ゴジラは満腹になった。

 彼の体の中に、先ほどの破壊で行ったすべてのエネルギーは入り込んだ。

 血になり、肉になり…我が体の中で怨念となり生きていく。

 

 

 満足だ。

 では、奴らを呼ぼう。

 

 

 ゴジラは一声あげると、ぞろぞろと彼の部下が近づいてくるのがみえた。

 皇子バガン、剛力と不死身の将軍デストロイア、高い知能を誇る参謀オルガ、天空を舞う野心家の女王メガギラス。

 そして無数の怪獣・魑魅魍魎たち。

 

 バガンはゴジラに首を垂れた。

 オルガがそれに続いた、デストロイアも。

 メガギラスはふてぶてしく、ゆっくりと地上に降りて首を垂れた。

 

 

 

 ゴジラは口先をゆがめ、ほくそ笑んだ。

 この地球は我らのもの。

 破壊はしない。

 

 

 奪うだけだ。

 だが、この星を拠点に多元世界中の全てを奪ってやる。

 

 

 あらゆる魂を我が物に。

 くだらぬ文明を生み出す生命体は全て死を与える。

 それに再生や転生などない。

 ただ、我の胃の中で苦しみもがき憎悪の声を上げ養分になるのみ。

 

 

 

 

 文明社会への攻撃は始まったばかりだ。




次回、ゴジラvs初号機!



登場怪獣はゴジラ・オルガ・ガイガン・バガン・デストロイア・メガギラス・カマキラス。
あとは大物怪獣二体を予定しております。



次の投稿は7/9を予定しております。


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第4話:ゴジラvsエヴァ初号機

死にネタ注意



 ゴジラの香港襲撃から30時間後。

 

 中国で起きた大破壊は瞬く間に全世界に放送された。

 世界で一番大きな超高層のお披露目とともに、おきた世界最悪の最悪。

 ユーラシア大陸の南半分が文字通り消えてしまったのだ。

 中国大陸も南部はそのほとんどが欠けた状態となった。

 

 香港からインドシナ半島までは熱風と衝撃波で壊滅的状況となった。

 台湾とフィリピンではその余波のせいで500mの津波が襲い、さらに被害を及ぼした。

 

 

 何億というヒトが一瞬で消えた。

 死ぬことすら認識できず。

 

 

 一時はアメリカの核攻撃ともささやかれたが、その全体像はようやくわかった。

 

 

 シンジはその光景を第一発令所でみてしまった。

 震えた。

 これが次の敵。

 ゴジラ、怪獣の王であり破壊神。

 

 

 

 映画の世界の中の存在であったゴジラが上陸をしたのだ。

 ゴジラ、2004年に映画製作が終了した日本を代表する怪獣映画シリーズ。

 虚構の存在だったはず。

 

 ミサトに発令所に呼び出されたシンジは大画面でその光景をみた。

 黒い岩肌の怪獣は様々な怪獣を呼び寄せていた。

 以降、映画の怪獣名に基づき名称がなされた。

 

 ゴジラの放った熱線は太陽系のほかの惑星にも降り注いだ。

 本来ならばとんでもない超新星爆発級のエネルギーが降り注ぐはずだが、ゴジラはそれを吸収したのだ。

 

 

 他の職員は顔を青ざめていた。

 恐怖、混沌…。

 それらが混ざっていた。

 誰もが同じことを考えていた。

 こいつは使徒以上だ。

 

 

 第三新東京のみを狙った使徒と違う。

 ヤツは明確に、無目的に破壊を行う。

 

 

 

 第一作戦室ではミサトが腕を組んでいた。

 

 

「ヤツは強すぎる。」

 

 

 エヴァで勝てるのか…。

 だが、今ヤツに敵う戦力はエヴァしか存在していない。

 恐らくは初号機だけ。

 

 

 会議室では冷静なリツコや冬月も顔を青ざめていた。

 もしも、碇ゲンドウが生きていれば顔を同じく恐怖で青ざめていただろうと冬月は思っていた。

 軽薄なミドリも明らかに恐れていた。

 

 

 だが、一人だけ違う人間がいた。

 日向だった。

 日向は正直、胸の高鳴りがとまらなかった。

 ミサトへの愛ではない。

 

 

 怪獣!?いるんだ!!!

 ゴジラ‥‥。

 子供のころ、親父がよく連れてってくれた。

 しかも、脇にはデストロイアがいるじゃないか!!!

 メルトダウン起こしてたゴジラに挑んでたやつ。

 

 

 モニターの中でゴジラに頭下げてるよ。

 嘘だろ?!

 宿敵じゃないのかよ。

 

 

 あ、もしかして・・・ゴジラに負けて完全降伏したとか。

 

 

 

 マジかよ…。

 でもなんで…。

 実はゴジラ大好きだったんだよ。

 映画の世界だけの存在だろ!?

 

 

 

 これってもしかして…ラドンもいる!?

 

 

 あっそうだ。

 確か世の中には「多元宇宙論」ってのがあるんだっけ。

 その中には「虚構実在論」ってのがあるらしい。

 マジ!?マジ!?マジ?!マジ!?

 

 

 

 やばいやばい、俺テンション上がってるかも。

 なんていえばいいんだろう。

 うわー葛城さんすげーカッコいい顔してるよ。

 

 

 

 やばいやばい、こういう時は深呼吸して…。

 

 

 

「そ、その赤いやつはで、デストロイアっていうんですよ!!!」

 

 

 

 会議室にいる全員は日向をにらんだ。

 

 

 

「あ、すんません。」

 

 

「じゃあ、赤いやつはデストロイアで。」

 

 

 ミサトは冷静に言った。

 冬月は尋ねた。

 

 

 

「脇にいるトンボはなんだね。」

 

 

 

「メガギラスです・・・えーそいつはメガヌロンってヤゴから成長するんですよ。でもこいつがいるとしたら厄介ですよ。こいつ人食うから。」

 

 

「なにっ!!!」

 

 

 冬月は日向をみた。

 なんで俺が怒られてるんだよ。

 

 

「ちなみに、その横にいる腕がでかいのはオルガです。こいつは超能力が使えるんですよ。」

 

 

「厄介だな…。」

 

 

 みんな真剣だよ!!!

 ちょっと・・・なんなんだよ!!!

 ミサトは真剣な表情で日向をみた。

 

 

「日向君、もし詳しいならこいつらの能力とかまとめて書類にしてくれない?それ参考にするから。」

 

 

「えっ!あっ!はい!!あっそうだ‥ゴジラは確か…強いけど色々弱点もあったりします。確か寒さが苦手だったり…。」

 

 

「日向君、そういうことをまとめて書類にしてくれる。大至急。頼りにしてるわよ。」

 

 

「は、はいっ!」

 

 

「ミドリさんも彼の手伝いお願い。」

 

 

「了解!」

 

 

 日向とミドリはそろって、作戦室から出ていった。

 冬月は苦笑した。

 

 

「君もなんだかんだで彼らをうまく扱う方法がわかってきたみたいだな。」

 

 

「え?」

 

 

「それを成長というんだよ、流石だ葛城くん。」

 

 

 冬月司令に褒めてもらえた。

 ミサトはちょっと照れ笑いをした。

 そんな時だった。

 

 

 シンジが入ってきた。

 プラグスーツを着ていた。

 

 

「やるんだよね、ミサトさん。」

 

 

「シンジ君。」

 

 

 やる気満々だ。

 目は闘志に燃えて赤くなっていた。

 

 

「待って、シンジ君。今情報を集めているから…。」

 

 

「今ヤツは香港からでて、上海近くにいる、でも日本に来るのは時間の問題だ。それに移動を開始した。知らない!?」

 

 

 シンジはスマホをみせた。

 そこにはゴジラがゆっくりと動き始めているのがみえた。

 スピードが遅いのはヤツの弱点か。

 

 

 

 

「僕はあいつより大きい相手を倒したことがある。やれるよ。今の僕は経験を積んだ。14歳の時よりはるかに強い。やるよ。」

 

 

 

 日本に来る。

 ということは、息子のケントもペンペンも餌食になる・・・。

 僕は僕の家族を守るためにやる。

 

 

「葛城一佐、ヤツを倒すんだ。今すぐに。エヴァ初号機でしかヤツは倒せん。」

 

 

 冬月は真剣な表情で言った。

 それしかないか‥。

 

 

「では、発信準備を!」

 

 

 ミサトは決断した。

 シンジは向かおうとした。

 その矢先だった。

 

 

「待って。」

 

 

 シンジは立ち止った。

 そして、振り向いた。

 ミサトはシンジに近寄り、無言でキスをした。

 

 

「生きて帰ってきて。」

 

 

「うん。」

 

 

 冬月はみていた。

 こういう時は止めないほうがいい。

 死を覚悟しているのだから。

 

 

「死ぬなよ、サード。いいやシンジくん。」

 

 

 冬月は言った。

 シンジも無言でうなづいた。

 

 

 そんなシンジをとめる男がいた。

 青葉シゲル。

 シンジの兄貴分。

 

 

「いくのか?」

 

 

 顔が心配そうだ。

 

 

「うん。」

 

 

「あいつは強いぜ。勝てるのか。」

 

 

「ボクがやらなきゃ誰がやらない、だから僕がやる。心配しないで。」

 

 

 シンジはそういい、背を向けた。

 若いスタッフの多くはシンジに敬礼をしていた。

 

 

 ありがとう青葉さん。

 心配しているんだ。

 でも、ボク以外にできる人はいない。

 

 

 シンジはケイジに向かっていった。

 

 

「シンジくん…。」

 

 

 その時、青葉は気が付いた。

 シンジは勝てない。

 恐らく、桁が違いすぎる。

 もしも俺が、彼なら泣いて逃げている。

 そうしてもいいのに、あの子は…。

 

 

 シンジは初号機に乗り込んだ。

 やがて、紫色の初号機は起動を開始した。

 エントリープラグの中でシンジは母を思い出した。

 

 

 初号機の中には母さんがいる。

 碇ユイ。

 使徒がいなくなった今でも、動いてくれるのはこのことをわかっていたからなのかな。

 

 

「母さん…。」

 

 

 シンジは初号機のプラグを優しくなでた。

 この初号機は母そのもの。

 ボクの戦いは母さんとの思い出。

 

 

「ボクは初号機パイロットだ。」

 

 

 シンジは決意した。

 この世界はボクが守る。

 

 

 S2機関を取り入れ、F型装備となった初号機。

 そして、その初号機はさらに増強した。

 身長500m以上に。

 ATフィールドも何万枚とはれる。

 腕力も600万トン以上の物を持ち上げられるようになった。

 

 

 

 ヤツに負けるはずがない。

 

 

 

 

 シンジの決断から数時間後。

 13号機の破壊で大きな傷をおった上海は2年のスピードで第三新東京を模した要塞都市に変貌した。

 しかし、相手が悪かった。

 

 

 まずはメガギラス率いる空中部隊が先陣を切った。

 100万以上あるメガニューラの群れは上海の人々を次々と食い殺した。

 また、中国軍の勇敢な兵士たちも次から次に食い殺されていった。

 彼女のフェロモンで誘惑されたカマキラスの群れは無慈悲な虐殺を楽しみ、次から次に血祭にあげていった。

 メガギラスの音速を越えたスピードは要塞都市の砲撃を翻弄、300mの巨体と鋭い爪によるショックウェーブで次々に破壊した。

 

 

 

 その後、デストロイアがきた。

 800mの剛力と巨体は、上海守護にきた巨大ロボット「金剛」の複製品を造作もなく破壊した。

 それはオリジナルより小柄で貧弱であったが、確かな強さがあった。

 そして、口から破壊光線を振るうとその猛威ですべてを破壊しつくした。

 

 

 都市部に対するハッキングをオルガは行い、電気・水道・熱をとめた。

 コレで補給はできなくなった。

 ガイガンはあとにつづくとその鋭いカマで上海の建造物を切り刻んでいった。

 

 バガンは中国軍の戦車隊をまとめて踏みつぶした。

 やがて、600mあった上海中心タワーをみると、まるで細い木を折るようにその腕力でへし折った。

 

 

 かくして、ゴジラの玉座はできた。

 

 一番遅くゴジラはたどり着いた。

 ゴジラの下僕たちは、ガレキの山と化した上海を彼らの支配者に献上した。

 

 

 だが、彼にもわかっていた。

 この地球で一番強い存在が来る。

 

 先ほどの金色の物とは倍以上の力を持った本当のこの世界での最強の存在。

 格が違う。

 

 ゴジラの中にながれるゴジラ細胞の数々は、強い存在にあわせて自己進化・強化ができる。

 来る。

 ゴジラの筋肉はより太く細かく強くなっていった。

 

 

 

 怪獣たちの支配者は雄たけびをあげた。

 

 

 

 貴様らはそこでみておけ。

 

 

 

 

 部下たちは動きをとめた。

 そして、ゴジラから離れあるものは山へあるものは海へと避難した。

 そこへ初号機は降り立った。

 

 

 

 紫色の鬼神。

 人類の守護者、そして地球最大の力をもつもの。

 エヴァ初号機は上空3㎞から降りると、片腕をついた。

 

 

 大きな地割れと地鳴りが起きた。

 ゴジラはその地鳴りに反応せず、ただ淡々と静かに初号機をみていた。

 

 

 その様子を人工衛星と撮影用のドローンでみていたネルフスタッフは誰もが感じていた。

 発令所には青葉・マヤ・日向はいなかった。

 今や管理職。

 彼らのほとんどはデスクワークになっていた。

 

 

 代わりにいるのは阿賀野カエデ・大井サツキ・最上アオイの3人。

 彼女らもかつてのオペレーターたちから技術は受け継いでいた。

 そんな彼女たちも震えあがっていた。

 

 

 ミサトは思わずつぶやいた。

 

 

 

「まるで王みたい。」

 

 

 

 土煙は消えた。

 初号機の目は赤く光輝いた。

 辺りはすっかり夜だ。

 

 

 

「お前が元凶か。」

 

 

 

 シンジはつぶやいた。

 そして、その手にはビザンオオフネが輝いていた。

 エヴァと同様に、それも強化されていた。

 1000mほどある。

 ゴジラの黒い岩肌、そして瞳孔のない白目は怪しく輝いていた。

 その大きさは初号機の3倍以上ある。

 

 

 

 その時だった。

 

 

 シンジは背後に気配を感じた。

 

 

 

 ぐぎゃあああああああああああああ!!!!

 

 

 

 赤い怪物が迫ってきた。

 その大きさは初号機の2倍はあった。

 

 

「デストロイアだわ!」

 

 

 ミサトの悲鳴が聞こえた。

 

 だが、シンジは冷静だった。

 デストロイアの攻撃を避けると、ビザンオオフネで首を切り落とした。

 

 

 

 黄色い血がデストロイアから噴き出た。

 胴体はそのまま動かなくなっていった。

 

 

 シンジはそのままゴジラをにらんだ。

 

 

 次はお前だ。

 そういわんばかりに、デストロイアの生首を蹴りとばした。

 

 

 ゴジラはその様子を黙ってみていた。

 まるで知ったことではないように。

 そして、足元に転がったデストロイアの生首を踏みつぶした。

 

 

 

「覚悟しろ!」

 

 

 

 

 やがて、ゴジラと初号機の両者の間に緊張が走った。

 沈黙が数分支配したのち、シンジは駆け出した。

 

 

 

「いくぞおおおおおおお!!!」

 

 

 そして、空中に向かく高く飛んだ。

 ヤツは生物。

 だったら目と頭が弱点のはず!!!

 

 初号機はビザンオオフネを構えると、ゴジラの頭と目めがけて切りかかった。

 

 

 ざくっ。

 

 

 音が聞こえた。

 ゴジラの目と脳味噌にビザンオオフネはあたった。

 そして、切り刻み初号機は地面に着地した。

 手ごたえはあった。

 

 

 

「やったか!」

 

 

 誰もが思った次の瞬間だった。

 シンジは気が付いた。

 そして、ようやくわかった。

 

 

 

 ビザンオオフネは割れていた。

 かけていたのだ。

 

 

 

 

「そんな!」

 

 

 ふとみると、ゴジラの頭と目にはダメージすらついていなかった。

 無傷だ。

 バカな…。

 

 

 ビザンオオフネがゴジラの目と皮膚の固さに耐えられなかったのだ。

 

 

 

 

「13号機だって傷つけたこれが…まさか…。」

 

 

 

 

 ゴジラは初号機をじっとみていた。

 まるで獲物をみる暴君竜のように。

 

 

 

「シンジ君、落ち着いて肩のパッドからインパクトボルトを出すのよ。」

 

 

 

 リツコの声だ。

 

 

 

 初号機はゴジラから距離を置いた。

 そして、肩からインパクトボルトは放たれた。

 ATフィールドを使った巨大なエネルギー兵器。

 これを実験した時、東アジア全体で停電したことがあった。

 ミサトから文句を散々言われたことがあった。

 

 

 勝てる。

 

 

 インパクトボルトの大電流光線はゴジラに降り注いだ。

 はずだった。

 

 

 

 シンジは気が付いた。

 ゴジラはそのインパクトボルトを浴びると、吸収している。

 

 

 

「効いていない。」

 

 

 

 逆にゴジラは当たったエネルギーをため込んでいる。

 白い目は冷たく輝いていた。

 

 

 

「肉弾戦しかないか。」

 

 

 シンジはつぶやいた。

 

 

「シンジ君、ステルス機能があるわ。プラグ内にある赤いボタンを押して。それを押せば五分間、あなたの姿はみえなくなる。周囲の景色と同化できる。その間にあいつをやって!」

 

 リツコはいった。

 シンジはボタンの存在に気が付くと押した。

 

 すると、文字通りシンジの姿は消えた。

 

 

 

 やがて、ゴジラから距離を置くと大きく飛び上がった。

 そして、背後を取った。

 ジャンプしてゴジラの背中にとびつこう・・・そうした時だった。

 

 

 ゴジラの尾が素早く動いた。

 目も細くなっていた。

 そして、ゴジラの初号機の5倍以上のでかさがある尾は紫色の初号機の近くまでのびた。

 

 

「気づいてる!」

 

 

 

 まずい。

 シンジは尾の一撃を紙一重でよけ着地した。

 動きが鈍いけど、カンは鋭い。

 

 

「ステルスしても意味がないわ!気づかれている!」

 

 

 リツコの声が響いた。

 

 シンジは地面に着地した。

 そして、再び赤いボタンを押すとステルス機能を排除した。

 

 

 

「嘘だろ、嘘だ。」

 

 

 

 こいつ、何なんだよ。

 シンジは困惑し始めた。

 余裕がなくなっていった。

 14歳の彼に戻っていきつつあった。

 

 

 ミサトは感じた。

 まずい。

 空気が変わっていった。

 

 

 

「シンジ君…。」

 

 

 そんな時だった。

 ゴジラが歩みを始めた。

 その動きはまるでゆっくりと、勝つことをわかっているかのような重い動きだった。

 攻撃を始める気だ。

 

 

 

「なめるなよ!!!!」

 

 

 

 

 シンジはATフィールドを全開にした。

 何万枚にも張り巡らされたATフィールドは衝撃波を起こし初号機を守った。

 

 

 その衝撃波は怪獣たちが隠れていた山に響いていった。

 発令所にいるミサトたちはやがてカマキラスの数名がその衝撃波で吹き飛んでバラバラに吹き飛ぶのがみえた。

 将軍であるバガンですら吹き飛ばされまいと必死の様子だった。

 

 

 

 だが、ゴジラは微動だにしていない。

 それどころか、その衝撃波の中を黙々と歩いている。

 まるで涼しい風のように。

 

 

 

「ちっ!!!」

 

 

 やがて、シンジはATフィールドを使い、ドーム状に囲った。

 これなら壊れないだろう。

 ドームの周囲は相変わらず衝撃波が走っている。

 初号機の周りの地面はさらに深く、クレーターになっていった。

 

 

 勝てる。

 

 そう、シンジが思い込んだ矢先だった。

 

 

 ゴジラの動きが止まった。

 

 

 

「止まった!」

 

 

 リツコは叫んだ。

 ミサトは黙っていた。

 何かある。

 

 

 

 

 ゴジラは大きな口を開いた。

 そして、咆哮をだした。

 

 

 

 グォおオオオオオおおおおおおおおおおおおんンンン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 周囲の怪獣は我さきに逃げだしていた。

 バガンもメガギラスもオルガもガイガンも。

 先ほどシンジが倒したデストロイアは複数の個体に分裂し散っていった。

 これは合図。

 今から攻撃するので、お前ら生きたいなら消えろという合図だった。

 

 

 

「まさか熱線!?」

 

 

 シンジは思い込んだ。

 だが、ちがった。

 

 

 咆哮は次第に大きくなった。

 そして、巨大な音と風のうねりを生み出すと巨大なショックウェーブがあたりをつつんだ。

 

 

 

 

 グオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおうンン!!!!!!!!

 

 

 

 

 それは初号機の物以上の衝撃波を起こしていった。

 シンジを守っていた何万体というATフィールドは窓ガラスのように壊れていった。

 

 

 

「うそだろ!?」

 

 

 

 初号機は両腕を前にして無力にカバーするしかなかった。

 ゴジラの咆哮は強すぎたのだ。

 一気に装甲を溶かすと、初号機の両腕を吹き飛ばした。

 

 

 

「う、うわああああああああああっっ!!!!」

 

 

 

 シンジの体は吹き飛ぶと海の中へと沈んでいった。

 彼は海の中で上体を起こすと頭痛に苦しんだ。

 やがて,周囲は霞んでいくのがみえた。

 

 

 強い。

 強すぎる。

 アイツは何もしていない。

 さわってもいない。

 声を出しただけ。

 

 それだけで吹き飛ぶ!?

 

 

 

 

 格が違う。

 

 

 ミサトは信じられなかった。

 初号機は最強のエヴァンゲリオン。

 さらにその強さに磨きをかけた状態。

 身長も体重も増加した、ATフィールド増加・反復・強化にも成功した。

 F型装備という特殊な装備をつけている。

 

 

 なのに・・・・それがまるでお人形扱い。

 

 

 

 

「シンジ君っ!!!」

 

 

 

 ミサトの悲鳴が聞こえた。

 シンジはようやくかすんでいった周囲が戻っていくのがみえた。

 

 

 

 

「ミサトさん?」

 

 

 

 シンジはその時気が付いた

 

 

「うおっ!!」

 

 

 腕が痛い。

 ようやくみえた。

 初号機の腕がなくなっていた。

 そんな馬鹿な・・・。

 

 

「うおおおおおおおおお!!!あああああああああああ!!」

 

 

 シンジは激痛にもだえ苦しんだ。

 

 

「嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ嘘だろ!!!!」

 

 

「現実よ!受け止めなさい!」

 

 

 ミサトは叫んだ。

 いいから気づいて。

 このままじゃ殺される。

 

 

「こんなのあり得ない…。」

 

 

「逃げて!!!!このままだと殺される!!!」

 

 

 ミサトはまた悲鳴を上げた。

 だが、遅かった。

 ゴジラの黒い腕がのびていた。

 そして、初号機の角のような頭部をつかみ軽々と持ち上げた。

 一瞬だが、シンジは雲の上まできているようにみえた。

 

 

 

 

「うわああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

「シンジくん!?シンジ君!!!シンジくうんん!!!!!」

 

 

 ミサトは何度も悲鳴を上げた。

 

 

 

 それに耳を貸したかさなかったか。

 ゴジラは初号機の角を持ち上げたまま、地面に叩きつけた。

 2000m以上の高さから。

 

 

 ぐおおおおおおおおおおおおんん!!!!

 

 

 轟音と地鳴りを響かせ初号機は陸上に着地した。

 地面に初号機は倒れた。

 その装甲はひび割れていた。

 F型装備の特殊合金はまるで古い段ボールのようにボロボロだった。

 

 

 

 

「もう、装甲が持たない逃げなさい!!!!あなたが死んだらここで終わりよ!!シンジ君!!しっかりして!!!早く逃げて!!!!」

 

 

 

 リツコさんの声だ。

 あの冷静なリツコさんが焦っている。

 

 

 

「サード!繰り返す逃げろ!逃げるんだ!!!死ぬぞ!!!」

 

 

 冬月さんの声。

 冬月さんですらも焦っている。

 

 

 足を起こそうとした。

 だが動かない。

 もう限界なんだ。

 ボク自身も。

 

 

 

 

 もうダメだ。

 勝てない。

 シンジの精神も肉体ももう限界だった。

 

 

 

 やがて、ゴジラその長い尾を使い初号機の胴と首を縛り上げた。

 そして、その怪力で締め上げていった。

 

 

 

 

「あ・・・あああ・・・・あああ・・・」

 

  

 

 

 もう、シンジは悲鳴を上げる体力もなかった。

 激痛が胴体と首に広がった。

 首も締まっていった。

 

 

 

 勝てない、負ける。

 殺される。

 死にたくない。

 助けて、父さん。助けて母さん。

 母さん、母さん。

 

 

「ミサトさん。」

 

 

 まだ、死にたくない・・・。

 気が付いた口から血がでていた。

 エヴァじゃないのに。

 

 

「ごめんね。」

 

 

 苦しさのあまり意識が薄れていった。

 思いつく言葉はそれだけだった。

 シンジはそのまま気を失っていった。

 

 

 

「シンジくん!!!!シンジくん!!!シンジくん!!!」

 

 

 

 ミサトの声が響いた。

 このままだとシンジ君は殺される。

 何もできない。

 私は…。

 ミサトの目に涙が出ていた。

 

 

 

「お願い、死なないで!!!」

 

 

 

 

 

 その瞬間だった。

 初号機の背にあったエントリープラグが放たれた。

 まるでミサトの声を聞き入れたように。

 

 

 

 

「シンジくんっ・・・。」

 

 

 やがて、エントリープラグは太平洋へと渡っていった。

 母の意志が子を守ろうとした。

 

 

 ゴジラはそれに気が付き、尾の力を緩めた。

 長年の戦いの経験か、闘争本能か。

 だが、わかった。

 あれが本体かもしれん。

 だから、ヤツは捨てたのだ。

 

 

 

 軽く叫んだ。

 

 

 

『追え、逃がすな』

 

 

 

 その声に応じるように、メガギラスは部下に命じた。

 するとメガニューラの群れは動き始め、エントリープラグを追いかけた。

 それをみていたミサトは舌打ちをした。

 

 

「リツコ、冬月司令・・・あとは任せました。」

 

 

「あんたも死んだら許さないから。」

 

 

 リツコの声を背にミサトはかけはじめた。

 シンジ君のプラグスーツについてる発信装置をたどればおいつける。

 彼だけは助ける。

 命にかけてでも・・・。

 

 

 

 

 

 発令所にいた冬月は気が付いた。

 

 

「彼女が目覚めた。」

 

 

 中にいるユイが目覚めた。

 

 

 リツコはモニターの数字に驚いた。

 パイロットは放たれた。

 だれもいない。

 そのはずなのに・・・・。

 シンクロ率は400%になっていた。

 

 

 覚醒した。

 勝てるかも…。

 

 

 ゼルエルの時と同じ、だがあの時とは違う。

 より強化されている。

 だから、勝てる。

 

 だけどなんだろう、何かまずいものが残ってるきがする。

 

 

「もしかして…。」

 

 

 リツコはつぶやいた。

 傍にいたミサトはリツコの顔を観た。

 冬月は震えていた。

 

 

「ユイ君は死を覚悟しているんだ…。」

 

 

 

 だからエントリープラグを強制的に射突した。

 息子を死なせないために。

 

 

 ゴジラは気が付いた。

 

 

 あの紫色のやつ、雰囲気が違う。

 気が付けば、腕は再生していた。

 中々面白いことをするじゃないか。

 だが、我に勝つことはない。

 

 

 ゴジラの胸には不動なる自信があった。

 そして、顔以外の装甲はほとんどとれて筋肉はむき出しになっていた。

 

 

 それを観たリツコは自分の言った言葉を思い出した。

 

 

 

「あれは装甲じゃなく拘束具だったはず、あれがとれるということはエヴァ本来の強さに戻る。しかも私はあれを肉体改造した…。もしかしたら勝てるかもしれない。」

 

 

 

 リツコの胸に安心が蘇った。

 それは冬月にも。

 

 

 

「ユイ君…。」

 

 

 勝てるかもしれない。

 恐らくユイ君は死を覚悟している。

 会えて、それを覚悟で挑んでいる。

 その意思の強さに比例してエヴァは強くなる。

 それに、以前より筋肉量は増加した…もっと強いはずだ。

 いける。

 可能性はないとはいえん。

 冬月はそう考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてそれに呼応するがごとく、初号機は雄たけびをあげた。

 

 

 

 

 ウオオオオオオオオおおおおん‥‥!!!!

 

 

 

 

 やがて、ゼルエルにしたように巨大なATフィールドをゴジラに投げつけた。

 衝撃波とともに高さ1000mほどのATフィールドの刃はゴジラに降り注いだ‥‥。

 それは確かだった。

 

 

 ゴジラは先ほどとは様子が違うことに気が付くと大きな口を開けた。

 そして、息を吸い込んだ。

 

 

 やがて、破壊の神は先ほどと同じように口を開き咆哮をとどろかせていた。

 今度は大きめだった。

 

 

 

 

 

 

 

 グおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんんンンゥゥゥゥゥンンンン!!!!!!!

 

 

 

 その咆哮は再び衝撃波となった。

 地面は先ほどと同じように削れていった。

 そして、初号機の放ったATフィールドの衝撃波とぶつかると、それに押し勝った。

 

 

 

 やがて、その勢いのまま初号機を吹き飛ばした。

 

 

 先ほどと全く同じだった。

 ただ違ったのは初号機の腕は吹き飛ばなかった。

 だが、むき出しの体から血が噴き出ていた‥。

 

 だれにもわかった。

 初号機は押し負けた。

 ATフィールドですら、ゴジラの衝撃波には通じない。

 二度も。

 

 

 

「バカな!!!」

 

 冬月は悲鳴を上げた。

 勝てない。

 あそこまでして…。

 

 

 覚醒した初号機ですら負けそうになっていた。

 

 

 

 その様子を見ていたリツコは思わず言ってしまった。

 

 

「どうやったら勝てるの…。」

 

 勝てない。

 強すぎる。

 

 強すぎたのだ。

 

 

 だが、初号機の中にいたユイはあきらめなかった。

 そうは考えていなかったのだ。

 

 シンジの生きる世界、この世界を破滅させない。

 母の愛。

 それは強かった。

 だが、それ以上にゴジラは強い。

 

 だが、諦めるわけにはいかない。

 ユイは決意を決めた。

 

 

 やがて、ユイの魂ごと初号機は獣のような唸り声をあげた。

 そして、ゴリラのようなナックルウォークをするとゴジラにむかってすさまじいスピードでとびかかった。

 ゴジラはそれもよけなかった。

 そして、その勢いのまま怪獣の支配者の首に飛びついた。

 

 

 うおおおおおおおおおンンンン!!!! 

 

 

 雄たけびをあげると何度も何度もゴジラの顔面を殴りつけた。

 1発、2発、3発…。

 殴った後からは重い衝撃波が発生した。

 

 

 だが、モニター越しにわかった。

 

 

 ゴジラは何の感情も抱いていない。

 呆れたようにただ空を見ているだけだ。

 

 

「ダメだわ…。」

 

 

 リツコにはわかった。

 初号機の腕が逆にボロボロになっていってる。

 

 ゴジラの体は初号機本来の実力をむき出しにしても勝てない。

 初号機にもそれはようやくわかったようだった。

 殴るのはあきらめた。

 痛そうに腕を抱えていた。

 

 

 と同時に、初号機の腕についた傷も瞬時に修復した。

 

 

 今度はゴジラの顎をつかむと引き裂こうと全身の力を腕にこめた。

 だが、ゴジラの顎が動くことはなかった。

 

 しばらく相手の出方を観ていたゴジラはとうとうあきてしまったのか、尾を動かした。

 そして、自身の頭部にしがみついていた初号機をまるでハエをたたくようにはたいた。

 

 

 

 がっ!!!

 

 

 

 初号機は悲鳴を上げた。

 そして、4㎞先の地面に倒れた。

 その衝撃のあまり、地面が再び地鳴りを起こすのが見えた。

 

 

 

 それを観ていた冬月は珍しく悲鳴をあげた。

 

 

 

「ユイ君!!!」

 

 

 

 がああ・・・・。

 

 

 初号機はうめき声をあげた。

 

 

 ゴジラは動いた。

 そして、片腕を使うと初号機の首をつかんだ。

 その力を強めた。

 

 オペレーターたちもあまりの光景に顔が引きつっていた。

 

 

 覚醒した初号機は両腕でゴジラの腕をつかみ、離させようともがいた。

 だが、ゴジラは強かった。

 いくら以前より強化された初号機が本来の力を解除しても・・・・勝つことは無理だった。

 もがけばもがくほど、ゴジラの腕の強さは増した。

 

 

「力負けしてる。」

 

「バカな…。」

 

「あのままだと絞め殺される。」

 

 

 初号機は苦しんだ。

 だが、ゴジラはそのまま手を離さなかった。

 初号機は空中にうかびながら足をわなわなと動かしていた。

 

 

 そして、持ち上げた。

 まるで軽量級のレスラーを重量級のレスラーが持ち上げるように。

 軽々と…。

 やがて、ゴジラは初号機の首を持ち上げるとそのまま地面に力強く叩きつけた。

 轟音と地鳴りがまたとどろいた。

 

 その音を聞いたリツコは絶望した。

 

 

「あそこまで…。」

 

 

 初号機の体重は増量した。

 そのはず。

 それが…。

 全く相手になっていない。

 

 

 

 ゴジラはほくそ笑んだ。

 

 

 

 

 その白い目は怪しく輝いた。

 初号機の赤く輝いた目は徐々に暗くなっていった。

 限界がきている。

 

 

 初号機は天を仰いだ。

 その天にゴジラはいた。

 世界最強の初号機は地面にはいつくばった。

それを冷酷にみつめたゴジラは再び初号機をつかみ持ち上げた。

 

 

 それをみつめると破壊の神は大きな口を開いた。

 そして、空中に垂れ下がっている初号機の右腕に食らいついた。

 

 

 

 

 うおおおおおおおおおお!!!!!!!

 

 

 

 

 初号機はまた悲鳴を上げた。

 だが、負けるわけにはいかない。

 初号機は踏ん張り、装甲を蘇らせた。

 そして、ゴジラの牙に対抗した。

 

 

 ゴジラは嚙み千切るのは造作もないが、それではつまらないと判断し、顎の力だけで初号機を持ち上げた。

 嚙みちぎるためではない。

 持ち上げるために。

 

 

 

「弄んでいる…、初号機を。」

 

 

 ゴジラの歯は甦った初号機の肩の装甲を一瞬で破壊した。

 そして肉を突き刺した。

 初号機のリリスの分身の右腕から噴水のような血を流していた。

 

 すると、そのアゴを振るいなんどもなんども紫色の鬼神を地面に叩きつけた。

 そのたびに発令所に無慈悲な衝撃音が響きまわった。

 

 

「ユイくん・・・もういい、やめろ。やめてくれユイ君。」

 

 

 冬月の悲壮な声が響いた。

 その時ミサトの気持ちが分かった。

 無力。

 圧倒的無力。

 大事な人間がズタズタにされるのに何もできない。

 

 

 これが無力。

 人間の限界だ。

 文明は、秩序は・・・圧倒的な混沌の前に勝つことはできない。

 

 

「ユイ君…やめるんだ!」

 

 

 ゴジラは気がついた。

 初号機の肩は外れていた。

 腕はひきちぎれていた。

 とうとう破壊神は初号機を解放した。

 まるで何かしてみろといわんばかりに。

 

 

 初号機は地面を這いながらなんとかまた再生を始めた。

 だが、いくら不死身で再生してもそのたびにうちのめされるのは目に見ている。

 それはだれもがわかった。

 周囲の怪獣はゴジラの異様さに震えあがっていた。

 

 

 もう初号機はズタズタになっていた。

 何度再生しても意味がない。

 

 そのたびにやられる。

 野生の力でもゴジラに勝てない。

 

 

 初号機のそれからは疲れ・疲労困憊・絶望の荒い息が漏れていた。

 ゴジラはそれをみつめると獣のように唸り声をあげた。

 

 

 

 これが文明に頼らない、野生の力。

 怪獣の力。

 混沌の力。

 

 

 

 それを誇示するかのように唸り声をあげ、弱弱しく息をあげるしかできない初号機をにらんだ。

 そして、腕で初号機の頭部の角を掴んだ。

 

 

 

「もうやめろ…。やめるんだ。もう十分だ!やめろ!!」

 

 

 冬月の泣く声がまた漏れた。

 リツコもゴジラの圧倒的破壊に震えるしかできなかった。

 自分たちは冷静で客観的で合理的な人間だと思っていた。

 

 

 だが、今…ようやく気が付いた。

 

 

 

 勝てない圧倒的力・暴力・破壊が世の中にある。

 それがあのゴジラだ。

 暴力、恐怖、無秩序。

 これがゴジラの強さ。

 破壊神の強さ。

 

 

 

 ゴジラは力なく垂れ下がっている初号機をみた。

 まるで糸の切れた操り人形のように力なく足は垂れていた。

 だらしなく。

 力なく。

 

 

 怪獣王は口を開けた、その先には歯が先ほどよりさらにとがっていた。

 やがて力任せに下半身を食いちぎった。

 赤い血が地面を包み込んだ。

 

 

 

 ぎゃあああああああああああああ!!!!

 

 

 初号機は悲鳴を上げた。

 下半身は食いちぎられた。

 ゴジラは初号機を食うことに興味はなかったので、ペっと吐き出した。

 そのまま、下半身は近くの海に吹き飛んでいった。

 上半身からは力なく血が垂れていた。

 

 

 

「初号機があそこまで・・・。」

 

 

 リツコは声が漏れた。

 私たちは神を作ったはずだった。

 神はいた、別世界に。

 私たちの神とは格が違う。

 世界最強の暴力の権化がそこにいたのだ。

 虚構と現実の先にいる破壊の権化、勝つことはできない圧倒的力。

 

 それがゴジラ。

 

 

 

 下半身を失った初号機は地面に倒れた。

 そして、荒く呼吸をした。

 芋虫のように地面を仰いだ。

 ゴジラはそれを追いかけた。

 

 

 その時気が付いた。

 こいつには心臓がある。

 胸のあたりに赤い球体がある。

 それを破壊すれば、死ぬ。

 

 

 

 ゴジラは初号機をにらんだ。

 そして、サッカーボールのように蹴り上げた。

 

 

 うごっ!!!

 

 

 初号機は地面を転がった。

 上半身しか残っていない初号機になにもできなかった。

 そして、天を再び仰ぐこととなった。

 

 胸の装甲はむき出しになっていた。

 コアが丸見えだった。

 

 

 

 碇ユイの魂は死を覚悟した。

 

 

『もう私じゃ勝てない。こいつは強い。』

 

 

 

 また、同じくユイは懇願した。

 シンジへの愛。

 それだけが残った。

 くだらない野心をのぞかせた。

 それが私の負けだったのだ。

 

 

 

『シンジ…お願い、生きて…。生きてさえいればきっといいことはある…。』

 

 

 

 何かできることはないだろうか。

 ヤツは私を殺す。

 次はシンジを…。

 ヤツの支配する世界では人間は生きていくことはできない。

 

 

 そうだ…私の分身。

 あの青い髪の少女。

 

 

 

『私の仇を討って。』

 

 

 

 

 ゴジラはみた。

 地面で蠢く紫色のそれを。

 そして、先ほどとは違う軽め細めでやや弱め、しかし圧倒的破壊力をこめたレーザービーム状の熱線をあびせた。

 それは的確に初号機の装甲を貫き、簡単にコアを撃ち当てた。

 

 

 初号機は腕をとめた。

 やがて、目から光は消えた。

 そして、とうとう動かなくなった。

 

 

 ゴジラは初号機の死を確認すると、大きな口を開けた。

 すると初号機の中から青白い光が輝くと、ゴジラの体内に吸い込まれていった。

 

 中にいるユイの魂はそのまま、ゴジラの体の中へと吸収されていったのだ。

 

 

 

 冬月は呆然としていた。

 勝てなかった。

 ユイ君ですらも…。

 

 

 

「初号機が負けた、完全に。」

 

 

 

 リツコは声を震わせた。

 

 

 零号機の中で待機していたレイは胸を抑えた。

 一瞬であったが、激痛が伝わったのだ。

 

 そして声にきがついた。

 

 

『私の仇を討って。』

 

 

 それは初号機の中にいる魂の声。

 それも吸い取られて行った。

 

 

 つまり、初号機がやられた。

 

 

「もうダメなのね・・・。」

 

 

 

 あの魂は死んだ。

 完全に…。

 私にもなぜかわかった。

 

 

 

「いや、まだほかに手がある…。」

 

 

 レイにはわかっていた。

 そう、私の中にあるリリスの魂。

 そして、地下にあるリリスの体に戻る。

 

 

 

 初号機はリリスをベースにしている。

 融合すれば…そうすれば、初号機は甦る。

 

 

 碇くん、悲しませない。

 決して…。

 初号機の中にいた魂よ。

 あなたを悲しませない。

 あなたの犠牲を無駄にはしない。

 

 

「碇君は私が守る。」

 

 

 レイは決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 ゴジラは上半身のみになった初号機をみつめた。

 胸には大きな穴が開いていた。

 コアは消し飛んだ。

 目から色は失せ、黒い塊になっていた。

 もうすでに魂のないものになっている。

 死んだ。

 

 

 そして、怪獣王は満足そうに唸ると上海中心タワーのあった場所に初号機を磔にした。

 エヴァの両手の掌には鉄骨を刺した。

 

 

 見せしめだ。

 文明の力は、いかに混沌の前に弱いかをみせつける。

 世界は私の物だ。

 暴力と破壊ではかなうものはおらん。

 いるなら出てこい。

 

 ふと周囲をみた。

 

 

 下僕たちはさらに恐怖の目でみているのがわかった。

 恐怖が蔓延している。

 恐怖と憎悪はゴジラを強くする。

 負の感情を吸収し、日に日に強くなっていく。

 ゴジラの体はさらに強くなっていくのを感じた。

 

 

 やがて、夜は明け朝日が差し込んでいった。

 紫色の初号機を朝日が包み込んだ。

 

 神々の戦い、鬼神は破壊神に負けたのだった。

 




次回、碇シンジ救出計画

11日に投稿いたします。
今更ですが、一応このゴジラのビジュアルはGMKゴジラと84ポスター版ゴジラが混ざったようなイメージで動いております。


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第5話:碇シンジ救出作戦

 ミサトは走っていた。

 初号機からエントリープラグは放たれた。

 ミサトにもわかった。

 それは死を意味する事。

 碇ユイは、シンジの母は息子を守ろうとした。

 

 

「シンジ君…。」

 

 

 やがて、ネルフのエアポートにたどり着いたミサトはふとみた。

 黒く光る、ネルフの専用最新鋭攻撃型特殊空中ステルス迎撃機『朱雀』。

 火炎放射器、コンラッド式ガトリングチェーンガンなど攻撃型の装備がある。

 さらにATフィールドを模したフォースフィールドまではれる。

 10トンまで持ち上げる、ロボットアームまでついている。

 

 

 あの艦長がお中元代わりに送ってきたもの。

 アメリカ製のイカレた機体。

 アメリカでは「スーパー・フェニックス」という名前だったらしい。

 冬月がそれだと、なにかB級映画臭いしアメコミでいそうだという名前で朱雀に変更になった。

 

 

 

 これしかない。

 

 

 ふと、騒ぎを聞きつけた日向がやってきた。

 

 

「なにをなさるおつもりですか。」

 

 

 ミサトは動きをとめた。

 

 

「シンジ君を助けに行くの。」

 

 

 日向は微笑むとため息をついた。

 

 この人はいつもこればかり…。

 

 

 

「あなただけでそれが操縦できるのですか?」

 

 

 

 ミサトはふと思い出した。

 自分に飛行機の運転はできない。

 恐らく向かう先には無数の小型怪獣がいる…。

 本当は私以外はいかせたくない。

 無茶はさせない。

 

 でも仕方ないか。

 

 

 

「ついてきてくれる?」

 

 

「喜んで。」

 

 

 日向だけではなかった。

 青葉もきていた。

 

 

「シンジ君を助けに行くんですか。ボクもいかせてください。」

 

 

「青葉くん?」

 

 

「彼は今まで、一人で何もかも背負いすぎた。世界を守ろうとしすぎだった。自分が、いいや!俺が彼を守ってやるのだっていいじゃないですかッ!」

 

 

 ミサトは微笑んだ。

 彼はシンジ君と仲がいい。

 

 

「いいわよ。」

 

 

 ミサトは微笑んだ。

 

 

「ひっどーーーーーい!!!」

 

 

 この声はミサトは声の主をみた。

 日向も。

 

 

「マコっちゃん!面白そうなことしてる!!ずるいずるい!!あたしもいくからね!!なんでなんで!!カッコイイこと、あたしもしたいんだけどォ!!!ひどいひどい!!!」

 

 

 北川ミドリ。

 一応広報部の人間。

 だが、日向の預かりになっている。

 

 

「ダメだ。」

 

 

 日向は即答した。

 

 

「あのさー、私こうみえても戦闘機の運転ならできるんだけどっ!ただの役立たずだったらいわないよ。銃も撃てるから、葛城さんが教えてくれたし!」

 

 

「はーっ…。」

 

 

 日向は頭を抱えた。

 そして、首を縦に振った。

 

 

「やったー!!チョーうれしーっ!」

 

 

 

 人数はそろった。

 やがて、朱雀は発進した。

 

 

 その頃、EU支部にも初号機敗北の連絡は届いた。

 アスカは唇をかんだ。

 

 あのバカ…なんで私を呼ばなかったの。

 確かに初号機は特別だ、強い。

 

 私ももうくだらないプライドに執着しない。

 ヤツは私より上だ。

 エヴァに関しては…。

 

 

 だけど…一人で突っ込むなんてバカすぎる。

 数合わせでも私はいける。

 シンジが心配だ。

 

 数少ない友人、バカな弟、マヌケな相棒。

 アスカにとってシンジはそうだった。

 

 

「バカシンジ…。」

 

 

 アスカは肩を震わせた。

 シンジ、どうか無事でいてね。

 次は私を仲間に入れて、どうかお願い。

 

 

 そんなアスカの執務室にマリが入ってきた。

 表情はかなり焦っている様子だった。

 

 

「アスカ…私全てを思い出した!」

 

 

「全て?」

 

 

「全てを!」

 

 

 アスカは身を乗り出した。

 友人は何かを知っている。

 もしかしたら、これが突破口になるのかも。

 

 

 

 

 

 南シナ海にある小島。

 そこには人は住んでいなかった。

 初号機の投げた、エントリープラグは轟音とともに、密林の中へと入りこんでいった。

 岩山を削り、密林を削りようやく地面に着陸した。

 

 だが、シンジは未だに意識を失った状態だった。

 その様子をジャングルの獣たちは心配そうにみていた。

 5mほどあるメガニューラの群れ5体ほどもそれを追いかけ、到着した。

 

 女王の命令は絶対。

 島の上空を覆いつくさんメガニューラの群れはまるで雲霞あるいはカラスの群れのごとく今か今かと先発隊を待っていた。

 女王の命令に忠実な兵士たちは、エントリープラグを囲むと唸り声をあげガシガシと手元のカマを打ち鳴らした。

 そして、アゴを震わせると獲物の前に立ちふさがった。

 

 

 空中には雲霞の如きメガニューラの群れがギャアギャアと騒ぎながら島を包み込んでいた。

 その光景にミサトについてきた3人は愕然としていた。

 

 

「あれはヤゴの怪獣メガヌロンから進化したメガニューラだ。小型に見えるが重量は1トンほどある。」

 

「えっ!そんなのいるの!?」

 

 

 ミドリは顔を青ざめた。

 想像していたものと違ったようだ。

 

「あの数を観ろ、何百じゃない何千何万だ…。」

 

 

 青葉はおもわずいった。

 気が付いていないだけありがたい。

 

 

 

 ふと、ミドリは目をやった。

 ミサトは服を脱ぎ下着姿になっていた。

 

 その体には生々しい傷が複数あった。

 そして、その体は筋肉質であった。

 まるでヒョウのようだ。

 

 

 そっか、忘れてた。

 この人軍人だったんだ。

 

 

「あの人すごい筋肉…。」

 

 

 ミサトはミドリの目を無視すると戦闘用スーツに着替えた。

 緑色の戦闘スーツはミサトにフィットした。

 アメリカで開発された薄いパワードスーツ。

 プラグスーツを模したそれは薄くしなやかだった。

 だが、一時的に装着した人間の筋肉・運動神経を10倍以上にする。

 事実上の強化人間に変える。

 その反動で、数日ほど体が筋肉痛で動かなくなるそうだ。

 

 

 相手は人間ではない。

 怪獣だ。

 こちらも人間ではなくなったほうがいい。

 

 

 それだけではない。

 

 小型レールガン、別名「IM銃」。

 これは1トンクラスの物を悠々に破壊する文字通りの危険な物。

 その気になれば、師団クラスを軽々と殲滅できる文字通りの禁じ手。

 実は冷戦時に開発されていたが、あまりの危険さから封印されたというもの。

 

 そして、格闘戦用にはUナイフを取り出した。

 山岳地帯に住む世界最強の傭兵グルカ族のククリナイフをベースに特殊合金の刃でつつんだ白兵戦兵器だ。

 

 

 これらは全て艦長の結婚祝いだった。

 またこんなことで使う時が来るとは…。

 

 

「日向君、青葉くん。応援お願い。」

 

「はい。」

 

「ミドリさんは、日向君の代わりに飛行機の運転、頼むわね。」

 

 

 ミドリは思わず息をのんだ。

 普段とは違う。

 迫力がある。

 

 

「わ、わかりました…。」

 

「ようやく敬語つかってくれるのね。ありがとう。」

 

 

 ミサトはヘルメットをした。

 これはシンジのエントリープラグの発する特殊信号を受信できるもの。

 

 

 

「じゃあ、任せたわよ。」

 

 

 ミサトはハッチを開けた。

 そして、空中から飛び降りた。

 パワードスーツはステルスモードになるとムササビのような膜をはり、地上に落下していった。

 音もなく島に侵入すると、匍匐前進でかけはじめた。

 

 

 敵の殲滅は先ではない。

 特殊信号の先を追いかけた。

 

 300m先にある。

 

 

 

 ジャングルの密林の中ミサトは進んだ。

 

 

「あった。」

 

 

 エントリープラグだ。

 周囲にはメガニューラがいる。

 プラグスーツを削ろうとしているが、削れていないようだ。

 だが、時間の問題だろう。

 悠長な時間を過ごせばプラグスーツは奴らに破壊される。

 

 

 そして、ステルス機能がもう停止になる。

 つまり、相手にみつかるということ。

 

 ミサトはIM銃を構えた。

 そして、引き金を引いた。

 

 

 

 

 ちゅどぉーん!!!!!!!!!

 

 

 

 レールガンはメガニューラを貫くと吹き飛ばした。

 その様子をみたメガニューラの一体が怒りに体を震わせ叫んだ。

 

 

 

 

 ぎゃああああああああああああああああ!!!

 

 

 

 ミサトの周囲をメガニューラの群れがかこんだ。

 10体ほど。

 ミサトはIM銃を脇に置くとUナイフを持ち出した。

 そして、一体の体に飛び乗った。

 

 メガニューラの首を斬り落とした。

 黄色い血があたりをつつんだ。

 

 

 残り9体、メガニューラは怒りの声をあげながらカマを振るおうとした。

 だが、ミサトは驚いた。

 彼らの動きが止まっているようにみえた。

 

 スロー再生したように。

 緊急時にはこうなるものなのか。

 

 

 

「すごい。」

 

 

 

 

 

 彼女はナイフを使い、メガニューラに切りかかった。

 2体をしとめた。

 そして、すぐ前方に別の一体がいたのがみえた。

 ミサトはパワードスーツで強化された腕をつかい、1トンあるトンボのバケモノに拳を突き出し粉砕した。

 

 

 面白いように気づいていない。

 時間は止まったようにみえた。

 

 残りは6体。

 

 

 ミサトの心が安定したことでパワードスーツの体感は元に戻った。

 

 

 ぎゃ!?

 

 

 気が付けば多くの仲間が殺されたことにメガニューラは驚愕の声をあげた。

 その驚いた個体の尾をつかむとミサトはジャイアントスイングのように振り回した。

 

 

「うらあああああああああっ!!!!」

 

 

 振り回されたメガニューラはカマをふりあげて、他の仲間に次々と串刺しにしていった。

 やがて、そのまま放り投げられると地面に倒れた。

 

 

 ミサトはその時、残り1体しかないことに気が付いた。

 

 

 

「悪く思わないでね。」

 

 

 レールガンを使うと、生き残った1体めがけて銃弾を放った。

 

 これで全部死んだ。

 誰もいない。

 

 ミサトは肩から荒く息を吐くと、プラグの近くにたった。

 彼女はエントリープラグのそばに立つと朱雀に向けて応援信号を出した。

 

 

 

 

 

 

 空中で待機していた朱雀はおりたった。

 その様子をメガニューラの群れは一時的にステルスモードになっていたこともあり、気が付くことはなかった。

 

 やがて、ミドリは抜け道があることに気が付いた。

 

 ここしかない。

 

 

 

「そのまま気が付かないでいてね…。」

 

 

 ミドリはレバーをひいて、ゆっくりと降下していった。

 日向と青葉は脇のシートで武器を構えていた。

 ミサトの発する信号近くまでいった。

 

 

 ミサトは無事だった。

 エントリープラグも。

 

 

「よしいい調子だね。」

 

 

 ミドリは安心した。

 そして、脇にあったロボットアーム用のレバーを押した。

 回収作業は始まった。

 

 

 だが、彼女の安心は早かった。

 

 

 メガニューラの一体は気が付いた。

 様子がおかしい。

 ふと、何かが空中を移動している気配を感じた。

 そして、その一体は地上へ降り立った。

 

 そこにはいた。

 我らの標的を横取りしようとしているものが。

 

 

 仲間に連絡をせねば。

 

 

 ぎしゃあああああああああああああああああ!!!!ぎしゃあああああああああああああああああ!!!!ぎしゃあああああああああああああああああ!!!!ぎしゃあああああああああああああああああ!!!!

 

 

 彼女たちの存在に気が付いた一体はさきほどのミサトに気づいた個体とは段違いの大声をあげた。

 

 

 

「あいつら、気が付いてたのか。」

 

 

 

 知力は人間並み。

 空間認知力は人間以上か。

 

 

 

 ミサトは舌打ちをして、レールガンを放った。

 メガニューラの体は爆破四散して、吹き飛んだ。

 だが、遅かった。

 空中で待機していた数千・数万という個体がそろって襲い掛かってきていたのだ。

 

 

 

「畜生!」

 

 

 日向は舌打ちをすると横の席のモニターからガトリングガンを操り、トンボの群れに向けた。

 

 

「これでも喰らえ!!」

 

 

 そして、メガニューラの群れを次々と撃ち落とした。

 その雄姿にミドリは思わず言ってしまった。

 

 

 

「マコっちゃんかっこいい!」

 

 

 こんなにかっこよかったんだ。

 そう言えば顔は悪くないよね。

 ・・・ありかも。

 

 ミドリはそんなことを想った。

 日向は少し照れ臭くいった。

 

 

「どうも。」

 

 

 

 ミドリはパワーアームでエントリープラグをつかんだ。

 

 

 

「つかんだよ!ハッチを開けて!」

 

 

 

「俺が行く!」

 

 

 

 青葉はそういうと、格納庫に向かっていった。

 ミサトはエントリープラグの上に飛び乗り、近づいてくるメガニューラを次々撃ち落とした。

 アームはエントリープラグをつかんでいる。

 ハッチは開くとエントリープラグを迎え入れた。

 

 

「順調ね。」

 

 

 ミサトは微笑んだ。

 プラグとミサトはやがて、格納庫に入っていった。

 

 

「青葉くん、ありがとう。」

 

 

 青葉にミサトは感謝の言葉をいった。

 その時だった。

 凄まじいスピードでメガニューラの一体が入り込んだ。

 

 

 

「か、葛城さん!!!」

 

 

 青葉は悲鳴を上げた。

 

 

 その入り込んだ一体は青葉に気が付いた。

 そして、素早いスピードで彼の胸を一突きにしてカマを抜いた。

 

 

 

 

 

「あ…。」

 

 

 

 青葉はあまりの速さに何もできなかった。

 胸の痛みが広がり、血が流れていった。

 

 

 痛い、けどもうこれ以上好きにさせるかよ!

 

 青葉は自分を奮い立たせた。

 

 だが、最後の力を振り絞りハッチのボタンをクローズにした。

 他のメガニューラが気づく前に格納庫は閉まっていった。

 

 

 

「青葉くん!」

 

 

 

 ミサトは悲鳴を上げた。

 そして、ナイフを投げメガニューラの顔に突き刺した。

 黄色い血を流しながら凶悪なトンボはうめき声さえ上げることなく絶命した。

 

 それに気づいた青葉はミサトに微笑むと地面に倒れた。

 ミサトはかけより、膝の上で青葉を抱き起した。

 

 

「青葉くん!!!」

 

 

「すんません、葛城さん。俺って役立たずっすね。」

 

 

「なにをいってるの!あなたがいなかったら彼は回収できなかった!しゃべらないで!傷口が広がるわよ!」

 

 

「俺かっこいいすか?」

 

 

「カッコいいわよ!だからお願い・・・あなたはなにもしゃべらないでっ!」

 

 

「へへ‥。」

 

 

 青葉はそのまま意識を失っていった。

 

 

 

 朱雀は発進した。

 メガニューラの群れはそれを追いかけようと何万体もかけて追ってきた。

 

 

「うわあああああああああ!!!チョーやばい!!!おねがいマコっちゃん!!!」

 

 

「任せてくれ!」

 

 

 マコトは追いかけてくるメガニューラをことごとく撃ち落としていった。

 それと同時に、朱雀は音速以上のスピードで発進した。

 何万という、メガニューラの群れは差をつけられておいぬかれていったのだった。

 

 

 

 

「やった、あいつらもう追いかけてこないよ!」

 

「ホント、きてくれてよかったよ。ありがとう、北上さん!」

 

 

 日向がそういった矢先だった。

 ミドリはマコトにとびつき彼を抱きしめた。

 

 

 

「マコっちゃんカッコイイ!」

 

「アハハ、まいるな・・・。」

 

 

 日向は照れながら周囲を見回した。

 

 

 だが、二人はようやく気が付いた。

 

 ミサトが青葉を抱きかかえながら応急処置をしていることに…。

 

 

「青葉?」

 

 

 日向は振り向いた。

 倒れている、親友が。

 血を流して…。

 日向は青葉の近くへかけよった。

 朱雀は彼らを乗せるとネルフ本部へ向かっていった。

 

 

 

 一方、上海にはメガニューラの群れが帰還していた。

 メガギラスは部下の失態を怒りで返した。

 うなだれた彼女の子供たちは地面に着陸していた。

 女王は部下であり子供であるメガニューラに怒りの声をあげた。

 

 

 人間風にいえば『それだけの数がいてなぜ、敵を捕まえられない!』というものだった。

 

 

 その様子をゴジラは見ていた。

 怪獣王をみて、メガニューラたちは震えた。

 メガギラスもそれに気が付いた。

 そして、首を垂れ部下の失態を詫びた。

 

 

 

 ゴジラは無表情だった。

 だが、周囲にいる全てのものはわかった。

 

 

 

 失敗=死

 

 

 

 

 ゴジラが絶対であり、命である。

 その命令に失敗したということは命を失うことだ。

 怪獣の王は尾を動かした。

 

 

 メガギラスは情けない声をあげ部下の助命を願った。

 

 

 

 だが、ゴジラは聞き入れなかった。

 そのまま尾を振り下ろしメガニューラの一個師団をそのまま踏みつぶした。

 

 

 メガギラスはその光景をみて震えた。

 怒り、あるいは恐怖。

 

 ゴジラはそんな彼女を無視した。

 失敗したものは死、それが当然だ。

 力こそが正義だから。

 

 

 

 すると、ゴジラの頭に声が響いた。

 

 

『我らの主よ、報告があります。』

 

 

 参謀オルガだ。

 ゴジラはオルガの方へ顔を向けた。

 そこには半分機械のガイガンが赤い目をかがかせているのがみえた。

 

 

『私めの部下であるガイガンが、あやつらの気配をおいかけました。あやつらめは巣を作っております。』

 

 

 

 ガイガンはそういうと、赤い目を光らせた。

 

 

『ガイガンを向かわせましょう。』

 

 

 ゴジラは唸り声をあげた。

 攻撃の許可だ。

 オルガは首を垂れた。

 

 

『あやつにお任せあれ。』

 

 

 ガイガンは赤い目を輝かせた。

 

 

 

 メガギラスは怒りで震えた。

 

 

 いつか、必ずこの邪悪な暴君に謀反を起こしてやる。

 

 

 部下を奪ったことではない、奴らに愛などない。

 問題は自分の所有物たる部下を勝手に葬ったことにある。

 そして、自分こそが支配者になるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネルフ本部、たどり着いた兵器は運ばれて行った。

 ロンギヌスの槍にノコギリの刃のようなものが生えたもの。

 アメリカ政府の依頼だった。

 あれを調査しろと。

 運んだ火星の宇宙飛行士たちは、この世を去った。

 

 

「あれが新しい武器か。」

 

 

 

 ネルフ技術部副長の時田はいった。

 もう中年に差し掛かっていた彼の髪には白髪が生えていた。

 白髪染めは使う気がない。

 最近は死別した女房との間にできた子供を、リツコとともに迎え育てている。

 彼女は母親としては優秀だった。

 恐らくは葛城ミサトよりは。

 

 彼の隣にリツコがいた。

 

 

「あんなものが入ったところでどうになるのか、肝心の初号機がああでは…。」

 

 

 時田は惜しそうに言った。

 彼とリツコが強化させた初号機。

 それは簡単に倒された。

 あいつらの飾り物にされている。

 

 

「いえ、希望は残ってるわ。」

 

 

 レイは即答した。

 初号機を蘇らせる手はある。

 

 

「どういうことだ?」

 

 

「私が初号機になるから。」

 

 

 時田を残し、レイはどこかへと去っていった。

 

 

 その頃、アメリカ、ワシントン。

 ペンタゴン、秘密会議室。

 大統領のジョージ・ワイゼンはつぶやいた。

 

 

「飯はまだかのう・・・。」

 

 

 脇にいた副大統領のオマラ・ノリスは呆れた目でみていた。

 本当ならこいつはやめるはずだったのに2期までやる気だ。

 こんなバカでも大統領になれる。

 アメリカという国は絶望的に愚かだ。

 

 

「もう食べたでしょ!」

 

 

 副大統領は告げた。

 

 

「誰じゃお前は…まだわしはボケとらんぞ。んで…誰じゃ?おぬしは…。」

 

 

 彼女は呆れるとSPに命じて、彼を追い出した。

 

 

「今からアイスクリームか?」

 

「はい、閣下アイスクリームです。」

 

「アイスはもういらん!お前に閣下といわれる筋合いはない!」

 

「いいえ、あなたは閣下なのです。」

 

 

 

 

 そんな時だった、国防長官に連れられたある男が現れた。

 太平洋艦隊の艦長。

 階級は准将。

 副大統領のオマラは将軍たちとともに彼を迎えた。

 

 

「よろしい、准将。結果を‥。」

 

「ネルフ本部からの連絡によると、初号機は負けました。」

 

 

 艦長はやけに暗い顔をしていた。

 

 

「やはりですか、核攻撃しかありませんね。」

 

 

 その時だった。

 会議室のドアが開いた。

 複数のSPが銃を向け騒いでいた。

 

 

「止まれ!!!大統領閣下を離せッ!!!!」

 

 

 そこには二人の男がいた。

 一人は腕を機械化させた巨漢。

 もう一人はメガネをかけた老人。

 巨漢はワイゼン大統領の頭をつかんでいた。

 

 

 ようやく正気に戻った大統領は悲鳴を上げていた。

 

 

「な、なんだお前たちは私は大統領閣下であるぞ!!!不敬!!失敬な!!!君みたいな無礼者は死刑だッ!!!!死刑だああああああああああああっ!!!!死刑!!!死刑!!!しっけい!失敬だ!!しけ・・・」

 

 

 巨漢はワイゼンを放り捨てた。

 

 

「離したぞ。」

 

 

 脇にいた老人は話し始めた。

 

 

「核?核など愚の骨頂よ。ヤツをさらに強化させる。そんなもので死ぬようなヤツではないぞ。」

 

「あなたは?」

 

 

 オマラは冷静に聞いた。

 

 

「わしはツェペリン博士、世界最大の天才。ヤツを倒す方法ならあるぞ。可能かどうかは別だがな。だが、それはエヴァにしかできんよ。そしてこいつはアーノルド・ウィルソン。」

 

 

 

 艦長はツェペリン博士と聞いて驚いた。

 あのアスカの祖父か。

 副大統領は問うた。

 

 

「あなたがたは?」

 

「我らはゼーレ、この地球の本当の守護者。」

 

 

 ゼーレ、副大統領は存在だけは知っていた。

 だが、1部の議員グループと多国籍企業の社長のみしか関与できない秘密組織だ。

 

 

「おお、そうだ君たちが隠し持っているエヴァ5号機。あれをもらうぞ。」

 

 

 エヴァ五号機、ネルフアメリカ支部が国防総省とCIAの裏工作で破滅した際にアメリカ政府が裏で回収した緑色のエヴァンゲリオン。

 アメリカはさらに開発を進め、無人操作が可能のできるダミープラグを開発した。

 そして、強化された。

 

 

 全て知っているか。

 オマラは微笑んだ。

 

 

「では、あなた方に預けます。」

 

「懸命な判断だ。」

 

 

 アーノルドはようやく口を開いた。

 

「失礼します。」

 

 

 二人の目には確信があった。

 彼らは知っていた、ゴジラの弱点。

 そして、正体を。

 

 

 駒は着々とそろっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※本エピソードに出てくるアスカの祖父とアーノルドは前作を参照してください。


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第6話:初号機復活、綾波の決断。

一応シンジ救出作戦から1日経過しております。



ネルフ本部、誰も使わない広場。

 

青葉はここでギターを弾くのが趣味だった。

観客は誰もいない。

ここは自分だけの空間。

 

そのはずだった。

ギターを弾いていた青葉シゲルは誰かの視線に気が付いた。

青葉は手をとめて侵入者に目をやった。

 

 

「ああ、例の子じゃんか。」

 

 

 

 

使徒サキエルとシャムシエルが出てきて以降、ここもあわただしくなった。

と同時に来たのがこの少年だ。

 

 

「それ、ギターですか?」

 

 

 

シンジは青葉に話しかけた。

 

 

 

「あれ?君も興味があるの?」

 

「音楽には昔から、ボクはチェロですけど。」

 

「チェロか、かっこいいな。」

 

 

ふと青葉は言ってしまった。

 

 

「え?そうですか?」

 

 

「マジで、カッコイイよ。だって、チェロってすげえ高級そうじゃん。俺そんなのできねーよ。本当すげえよ!」

 

 

シンジは少し頬を染めていた。

ヒトにこうやって褒められるのなんだかあんまり経験ないや。

でもなんだかうれしいな。

 

 

 

「そうかな?」

 

「あ、そうだ…俺は青葉シゲル。」

 

「僕は碇シンジ。」

 

 

二人は握手寸前になった。

そこで、青葉は気が付いた。

碇、この組織の司令官の苗字と同じ。

 

 

「え?もしかして…君って…碇司令の?」

 

「はい!」

 

「そうなのか…。まぁいいや、仲良くしようぜ。で、ギターやってみる?」

 

 

改めて、青葉とシンジは握手をした。

 

 

 

 

夢か。

目が覚めた。

病室。

 

 

ということは負けたのか。

 

 

なんでこんな時に青葉さんと初めて会った時のことを思い出したんだろう。

脇にはリツコがいた。

 

 

「よかった、生きてたのね。」

 

「こういう時、いつもミサトさんだけど。」

 

「ミサトはあなたを助けるために無茶なことして入院したの、ミサトは無事よ。でも…。」

 

 

リツコは目を伏せていた。

 

 

「どうしたの?」

 

 

リツコは重い口を開いた。

 

 

「初号機は奴らに奪われたまま、コアも破壊されて復帰は絶望的。あなたを助けにいった青葉くんも重傷を負ってしまった、それが今の状況。」

 

 

「そんな…。」

 

 

青葉さんがやられた。

僕のせいで重い傷を負った。

震える声をなんとか安定させながらシンジは聞いた。

 

「青葉さんは…?」

 

「まだ死んではいない、でも虫型怪獣に刺されて中々意識が戻らない。彼の体にあいつらの世界独自の病原体が移っているから手の施しようがない。現在、医療班とアメリカのハーバードから生物学者を呼び寄せて研究している最中。でもおまけに傷もひどい。正直言って絶望的よ。」

 

「青葉さんは僕を助けに行ったの?」

 

「…そうよ。」

 

 

初号機もやられた。

あのコアの中には僕の母さんが‥。

 

 

「負けたの?」

 

「残念だけど、そうよ。」

 

 

負けた、初号機が。

こんな状況は中々ない。

シンジはベッドをかきむしった。

 

 

ボクのせいだ。

僕が慢心した、そのせいで母さんや青葉さんは…。

大事な人を失ってしまった。

 

 

「ボクのせいだ。」

 

「いいえ、違う。」

 

「でもそうじゃないか…。」

 

「シンジ君、違うの。だれのせいでもない。ヤツが強すぎたってだけなの。」

 

 

強すぎた。

 

 

『お前は弱いままだなァ、シンジちゃん…哀れだぜ。お前は誰一人守ることもできねぇガキのまんまなのよ』

 

 

声だ。

宿敵コンラッド。

ヤツの魂は僕の1部になったのか。

あるいは幻影として、永遠にボクが死ぬまで残る気か。

 

 

「ボクが弱いまま…弱い男だから。」

 

「違うのよ、シンジ君。」

 

 

リツコは諭した。

何年も一緒にいた、もうシンジはリツコにとって大事な家族の一人でもあった。

母からも父からも捨てられた少年。

ミサトは母になり切れなかった、なので女として彼を愛した。

私は彼の母になろうとした。

でも…それは思い上がりだったのかも。

 

 

「いい、シンジ君。あなたは弱くないわ。」

 

「リツコさん、あなたらしくないよ。気休めは。ありがたいけど…もうやめてください。初号機を失ったのは事実でしょ。」

 

 

リツコは考えなおした。

確かに初号機を失ったのは事実だ。

 

 

「そうね…。」

 

「ボクが弱くて情けないガキのままだから…勝てなかったんだ!」

 

「それは違うわ、あいつは強すぎたのよ。シンジ君、お願い…。」

 

 

 

その時、ドアが開く音がした。

 

 

「碇君、違うわ。」

 

 

綾波レイ。

ファーストチルドレン。

 

 

「あなたは間違っている。あなたは弱くない。そして初号機は失っていない。」

 

 

レイは冷たく言った。

そこに笑顔はなかった。

あった当初の冷たい綾波がいた。

 

 

「でも‥。」

 

「それに青葉さんはまだ死んでいない。もしも死んだと思うなら、彼に失礼よ。」

 

「それはそうかもしれない。」

 

 

突き放した。

あの綾波が。

感情をみせている。

リツコは目を驚かせた。

 

 

「レイ?」

 

「赤木博士、お願いがあります…。私のわがままを聞いてください。」

 

 

この子も長い間い続けたせいで人間そのものになっている。

魂はリリス。

リリス?

地下にいるリリス。

 

まさか…。

 

 

「レイ、あなたがなにを考えているかわかるけど反対しておくわ。」

 

 

そんなことがあっていいわけない。

レイも私の家族の一人。

そんなことは許さない。

 

 

「初号機を戻す方法はこれしかありません、あれはリリスの分身。私がリリスと一つになってあれを取り返します。」

 

 

「ダメよ!できるかもしれない、でも‥そんなことをすればあなたはあなたじゃなくなるのよ!」

 

 

「方法はそれしかありません。」

 

 

リツコはため息をついた。

方法はそれしかない。

それならば…従うまで。

 

 

「わかったわ、レイ。」

 

 

シンジは呆然としていた。

 

 

「碇君、ありがとう。」

 

「綾波?」

 

 

その時だった。

レイはシンジの頬を優しく触れると、唇を奪った。

 

 

「ずっと、あなたのことが好きだった。」

 

 

シンジは頬が赤くなった。

え?え???

どういうこと?

確かに綾波はすごくきれいで美人で可愛いと思う。

でも僕にはミサトさんがいるんだよ。

 

 

「な、なにを…するんだよ。」

 

 

レイも少し頬を染めていた。

 

 

「これは私がずっとやりたかったこと。もうこの姿で会えるのは最後だから許して。」

 

 

やがて、彼女は冷静に言った。

 

 

「別れはいわない、また会えるもの。きっと、また会える。約束するわ。また会える。だから悲しまないで。」

 

 

リツコは気が付いた。

後生の別れになるかもしれない。

レイは覚悟している。

 

 

「綾波、君のいってることがわからないよ。」

 

 

「またね、碇くん。」

 

 

病室を後にしたレイは微笑んでいた。

 

 

「シンジ君、お願い。あの娘の決意をわかってあげて。事情は後で教えるから。」

 

 

リツコは静かに言った。

そして、立ち上がるとレイの後を追いかけた。

 

 

シンジは何かがわかった。

レイはレイじゃなくなる。

病室から出ようとしたが、それもできなかった。

レイが進むと、そこにはヒカリがいた。

手元にはシンジの息子、ケントがいた。

 

 

「綾波さん、どうしたの?」

 

「洞木さん、ありがとう。私はいかなきゃいけないところあるのよ」

 

 

ヒカリはレイのいっていることがわからなかった。

近頃のレイはやけにおしゃべりだ。

 

 

レイはケントに優しく振れた。

そして、抱き寄せた。

 

 

「れいれい。」

 

 

「さようならケント。」

 

 

知っている、私はこの子が私の血をわけていることを。

この子のために私は戦う。

 

 

 

レイはヒカリにケントを渡した。

 

 

 

「人は愛を紡いで歴史を作る、なら私は愛になる。」

 

「綾波さん?」

 

「恐らくこれが最後のお別れになると思う。ありがとう洞木さん。私の本棚あなたにあげるから元気でね。」

 

 

ヒカリは気が付いた。

彼女は死ぬ気だ。

 

 

「綾波さん…。」

 

 

レイは目から涙が出ていることに気が付いた。

しょっぱい、これが涙。

 

 

「レイ、怖ければやめたほうがあなたのためなのよ。」

 

「いいえ、やります。」

 

 

レイはもくもくと進んでいった。

リツコとレイの決意は固かった。

 

 

 

同病院の別室。

 

そこにはマヤがいた。

もう、青葉と結婚したことで青葉マヤに名前がかわっていた。

彼女も話では初号機が負けたことは聞いていた。

 

 

シゲルも今、手術中だ。

異次元の怪獣に刺されたことで病原体が入っているリスクが高いらしい。

 

 

シゲルもそして、このお腹にいる子の未来もまた…。

世界はどうなるかわからない。

 

 

 

ふと医師の一人が言った。

 

 

「我々はどうなるのでしょう。」

 

 

心配、確かにそうだ。

私も心配だし、怖い。

 

 

でも、彼女は信じていた。

シンジ君なら世界を守れる。

きっと、何があってもあきらめない。

どこかに希望はある、絶対に。

 

 

現に倒れたはずの初号機が戻ってきた。

希望はある。

 

 

 

「私は、初号機パイロットを信じます。」

 

 

 

マヤは言った。

 

 

 

 

その数時間後だった。

第三新東京上空には500mほどの巨大物体が降り立った。

極悪怪獣ガイガン。

 

 

戦自からの連絡は受けていたが、まさかここまで早くくるとは。

第三新東京近くに来ると聞いた冬月は部下を呼び、ミサトのペンギンを呼び寄せた。

 

冬月は顔をしかめた。

 

 

「あれは何だ?」

 

 

 

冬月はモニター上に移るガイガンをみつめた。

赤い目と人工的なフック状の腕、そして腹部にあるノコギリ。

 

 

「あれは生物か?兵器か?」

 

 

傍にいた日向はつぶやいた。

 

 

「あれはガイガンです。サイボーグ怪獣ですよ。」

 

 

日向は冷静だった。

青葉は倒れた。

あのまま死ぬかもしれない。

 

 

「日向くん、もういいのか。」

 

「青葉のところにはマヤちゃんがついてます。仕事をサボったとあったらあいつに笑われる。」

 

 

日向は久々にモニター室に座った。

ガイガンは赤い目を輝かせていた。

そして、赤い目を輝かせるとレーザー光線を街中にはなった。

 

 

 

「まだ、市民の避難は完璧にすんでいない!!!」

 

 

冬月は悲鳴を上げた。

第三新東京市は炎に包まれた。

機械音のかすれた声をあげガイガンは高笑いをした。

 

 

 

「ヤツめ、ここを狙ってきたのか…クソ…。」

 

 

 

ビルの一つに近寄ると、フック状の腕を使いビルを破壊した。

まるで、これは全ての序章といわんばかりだ。

その動きはまるで素早かった。

迎撃システムは起動していたが、全くガイガンのスピードに通用しなかった。

 

 

「こういう時、初号機があればな…。」

 

 

冬月はため息をついた。

彼はリツコに事前にいわれていた。

初号機の復活、そのためにリリスが必要。

零号機は地下でロンギヌスの槍を抜く作業に順次している。

リリスの力を解放するため…。

 

 

まずいな。

零号機が戻ってくる前にここはやられる。

 

 

 

 

冬月は天を仰いだ。

病室にいたミサトにも伝わった。

 

 

「敵襲…。」

 

 

恐らく怪獣の一体、遅すぎたか。

連中はここの存在を把握している。

ただの獣じゃない、知能を持ち行動する。

恐らくは使徒以上の…強敵。

 

 

「ウッ…。」

 

 

体が動かない。

無理をしすぎたか。

いや、少しだけなら動く。

常人であれば数日間は動かないらしい。

 

 

「あんなパワードスーツもう二度ときない。」

 

 

そんな時だった。

何か気配を感じた。

地下に何か大きなものがくる。

 

 

怪獣とは違う。

 

 

ミサトのカンは正しかった。

 

 

 

セントラルドグマ地下、リツコの立ち合いのもと綾波レイはリリスのもとにいった。

地鳴りはそこにも響いていた。

白い巨人リリス。

 

ロンギヌスの槍は零号機により抜かれていた。

 

全ての地球生命体の母。

恐らく怪獣たちは別次元の物なのでリリスとは違う始祖がいるのだろう。

 

 

「まずいわね…。早くしないとここは破壊しつくされる。」

 

 

リツコは焦っていた。

レイもその焦りは承知の上だった。

 

 

「赤木博士、付き合ってくださってありがとうございます。」

 

 

「早くしなさい。」

 

 

レイは空中に浮かんだ。

リリスの腹部は大きな穴があくと彼女を迎え入れた。

 

私は人間ではないかもしれない。

それでも愛を学んだ。

絆を学んだ。

 

 

だから私は強い。

今、これの元に戻っても私の力は勝つ。

私の意志は私だけのもの。

 

 

もう、ヒトではなくなるかもしれない。

でも、それが碇くんのためになるなら私はヒトじゃなくなってもいい。

 

 

 

 

 

『おかえりなさい』

 

 

 

そんな声がレイには響いた。

 

リリスは完全によみがえったのだった。

補完計画とは違う。

全く違う用途で。

 

 

 

 

 

 

オペレーターが叫んだ。

 

 

「地下から巨大なアンチATフィールドがきます!!!」

 

 

 

冬月は微笑んだ。

 

 

「いけるな。」

 

 

 

綾波レイ、リリスの魂を持つもの。

それが同化した。

全てのリリスの複製は今、一つになる。

それは初号機も。

 

 

 

ふと、ネルフ本部に巨大な幻影がみえた。

それは通り過ぎた。

まるで、幽霊のように。

 

それは冬月もみていた。

白い人。

 

 

 

「なんだあれは…レイ?」

 

 

 

日向は声を漏らした。

それは巨大な綾波レイだ。

 

 

 

シンジもそれに気が付いた。

 

 

 

「綾波だ…。綾波の臭いがする。」

 

 

 

もしかして、綾波は…神様だったのか?

そんなシンジを綾波の幻影はすり抜けた。

 

 

 

ガイガンもまた何かに気が付いた。

 

何かがくる。

身の危険を感じ、都市部から空中に飛びあがると海へと退避した。

彼が先ほど破壊していた都市部の真ん中をゴジラより大きな人間がすり抜けた。

まるで物理法則を無視するように。

 

彼は気が付いていた。

これは仮初の姿、ヤツは一種のエネルギーのようなもの。

あんなものに近づく気はない。

危ない橋を渡るタイプではないのだ。

しばらく海の中で様子をみよう。

 

 

 

 

巨大な綾波の幻影は世界中で目撃された。

ドイツにいるアスカやマリたちにもみえた。

 

 

 

「ファースト?」

 

 

アスカは思わずつぶやいた。

アメリカにいるカヲルは気が付いた。

 

 

 

「リリスの力を解き放った。」

 

 

 

彼女はヒトじゃなくなる。

もう、ヒトの姿じゃなくてもいいんだ。

彼女は。

 

確か初号機がゴジラに負けたと聞いた。

コアも破壊された。

恐らくは彼女は初号機のコアになる気でいるのだ。

 

 

やがて地球の大気圏外に出た巨大な綾波は地球を包み込んだ。

そして、中国大陸に向けて顔を突き出した。

 

 

それはゴジラもみていた。

近くには上半身のみの初号機があった。

 

 

ゴジラの息子バガンは悲鳴を上げた。

 

 

『父上!』

 

 

 

ゴジラは愚息の声を無視した。

目の前にリリスと一体化した綾波がみえた。

 

怪獣王は冷静だった。

そして、口を開いた。

 

 

 

物理法則を無視したエネルギー。

そんなものを破壊するのは簡単。

同じものを体内で生成すればよい。

 

 

ゴジラもまた、リリスの物と同じようなエネルギーを体内で生み出すと口から放った。

アンチATフィールドのレーザーを。

 

 

それはリリスの頭を貫いた。

 

 

 

 

ぷしゅっ

 

 

 

そんな音がすると、リリスの頭から血が噴き出た。

と同時に彼女の体は溶けていった。

そして、大きなLCLになると中国大陸に降り注いだ。

 

 

だが、綾波は笑っていた。

リリスも笑っていた。

 

 

それが策なのだ。

 

 

LCLの雨は中国大陸に降り注いだ。

 

 

 

ゴジラは一蹴した。

たわいもない。

大きさだけの存在だ。

あのような物は過去に何度も破壊してきた。

 

 

 

 

大きさだけ…?

 

 

 

ゴジラはピンときた。

 

 

手遅れだった。

LCLは初号機に降り注いだ。

そして、瞬時にコアと下半身を蘇らせた。

 

 

そして、光輝いた。

 

 

背中には12枚の翼があった。

その光の強さに流石のゴジラも一瞬、驚いた。

ただの光ではないポジティブな感情のエントロピーがある。

これはゴジラでは捕食できないものだ。

 

 

その隙を初号機は逃さなかった。

 

 

 

光輝く初号機はそのまま、光の速度で進みゴジラたちを置いて天空に舞い上がった。

まるで、シンジを迎えに行くように。

 

 

 

ガイガンはふと、海から起き上がった。

もう大丈夫だろう。

ガイガンは金属音のきしむような咆哮をあげると、起き上がった。

フック状の腕をきしませ、火花を飛ばすと近くにあったビルに向かって攻撃を加え始めた。

 

 

その様子をみていた冬月は悲鳴をあげた。

 

 

「まずい、あのバケモノが活動再開したぞ!」

 

 

ガイガンは赤い目を光らせると、荷粒子砲を起動させた。

 

 

 

 

ドォゴォーーーーン!!!!!

 

 

ゼルエルの襲来、以降大破した街を補強するために作られた金属部分は吹き飛んだ。

 

 

 

 

「まさか、この威力・・・・ゼルエル並みか!!」

 

 

最強の使徒ゼルエル。

それに劣らない威力を持つ。

昔のジオフロントでは大きな穴があった。

今や、N2爆雷にも耐える特殊合金でできている。

大丈夫だと思うが、あれが後数発あれば・・・ここも・・・・。

 

 

 

その時日向の叫ぶ声が聞こえた。

 

 

「上空から巨大なエネルギー物体が迫ってきます!!!」

 

 

「お次はなんだ…。」

 

 

「モニターでうつします!」

 

 

発令所の大画面はエネルギー物体の正体をうつした。

そこにはうつっていた『光の巨人』が。

その姿はエヴァ初号機に似ていた。

あるいは、南極のアダムに…。

 

 

「まさか…。」

 

初号機か!?

ということは・・・レイは成功したのか!!!

 

 

 

 

 

ガイガンもそれに気が付いた。

そして、荷粒子砲を放った。

はずだった!

光の巨人はそのエネルギーをまるで液体のようにとかすと、自分の物に変えた。

 

 

 

そして、巨大な電気を帯びた光線をガイガンに向けた。

ガイガンはその光線にぶち当たると、一気に海の方へと吹き飛んでいった。

だが、生きていた。

 

 

地面を前に光の巨人は着地した。

そして、光は徐々に消えていくと姿を現した。

紫色に。

 

 

 

「エヴァ初号機!!!」

 

 

その場にいるすべてが驚愕した。

ネルフ本部の近くにたった初号機は立ちはだかった。

まるで、その場にいる全てを守ろうとするかのように。

 

 

 

 

 

シンジの病室に保安部職員がきた。

 

 

「初号機パイロットお運びいたします。避難所へ。」

 

 

ボクも避難所に待機か。

ただの一市民になった。

これからは特別な人間じゃない。

ミサトさんも加持さんにとられるのかな。

 

 

 

そんな時だった。

 

 

『碇君。』

 

 

声がした。

 

 

「綾波?」

 

 

『外にいるから来て。』

 

シンジの足元に力が戻った。

綾波に何か超能力でもあるのかも。

彼は気が付くとかけはじめていた。

 

 

 

「綾波ッ!!!」

 

 

 

「どこへいかれるのですか!!」

 

 

 

「ごめんなさい!!綾波が呼んでいる!!!」

 

 

 

ミサトの体にも不思議と力が戻っていった。

彼女にもレイの声が聞こえたのだ。

 

 

 

「シンジ君!」

 

「ミサトさん!」

 

「行きなさい、あなた自身の意志で。」

 

「わかったよ!」

 

 

シンジは走り始めた。

そして綾波レイの声に従った。

 

 

シンジは外に出た。

そこには白い光に包まれた巨大な物があった。

人型。

やがて、光は抜けおちた。

 

 

 

そこにはいた。

エヴァ初号機が。

 

 

 

エヴァ初号機は戻ってきた。

人類の希望。

守護神。

あるいは鬼神。

 

 

 

 

 

 

『ただいま碇君。』

 

 

「綾波…。」

 

 

シンジは本能的にわかった。

綾波は初号機と一体化した。

自分を迎えに来たのだ。

 

 

 

「待って、二人とも。」

 

 

声がした。

リツコだ。

 

 

「エントリープラグ。」

 

 

彼女が指さす方向にはエントリープラグがあった。

 

 

 

「なかったら乗れないでしょ。」

 

 

「わかった、リツコさん。」

 

 

「あの赤い目のヤツボコボコにしちゃって。」

 

 

初号機はエントリープラグをつかむと、背中に突き刺した。

リツコにはわかった。

以前より強くなっている。

リリスと同化したのだ。

 

「さあ、いきなさい。」

 

リツコは微笑んだ。

 

 

 

初号機はしゃがむと、シンジにその掌を差し出した。

シンジはそれに乗った。

不思議と温かった。

シンジはエントリープラグに入った。

その時、シンジには聞こえた。

 

 

『おかえりなさい。』

 

 

綾波の声か、リリスか、初号機そのものか。

いずれにせよ、シンジには居心地がよかった。

父と母が生み出したエヴァ。

僕はこの世界最強の力で、悪を討つ。

 

 

 

 

ガイガンはしばらく海にいた。

 

 

何が起きたのかわからない。

だが、みればわかるが、どうやら落ち着いたようだ。

破壊された箇所は自己修復をした。

ケーブルがつながり、装甲も戻っていった。

 

 

 

彼は冷静沈着だった。

元々は第一始祖民族とは別の知能生命体が生み出した生命体。

機械と有機物の混ざった怪獣だった。

だが、運命のあの日。

彼はオルガに拾われた。

その後、オルガとともにゴジラの軍勢の仲間入りをした。

 

彼に野心も欲望もない。

ただ目の前のミッションをこなすだけ。

それ以上でも以下でもない。

だが、自分より強い存在に敵を売る気もない。

 

 

そんな彼は怒りに震えていた。

 

 

あんな奴ボコボコにしてやる。

前に帝(ゴジラ)に倒された雑魚のくせに何粋がってるんだ。

 

羽を動かすと天空近くへ舞い上がった。

そして、先ほど自分を邪魔した忌々しい光の巨人の正体を倒すために。

ビルを切り裂き、街を破壊し…とうとう初号機の前方まで近づいた。

 

 

ガイガンは金属音のきしむような声を響かせると、初号機に襲い掛かった。

そして、フック状の腕を使うと初号機に切りかかった。

どんな物体も切り刻めるガイガンのフックは降り注いだ・・・はずだった。

 

消えていた。

 

余りに一瞬のできごとだった。

 

 

いない。

 

 

 

「速い!」

 

 

冬月は叫んだ。

今の速さはどれぐらいだ…。

 

 

 

オペレーターの一人が驚愕した。

 

 

「ひ、光よりも速く動いています…。」

 

 

「何っ!」

 

 

 

 

その時だった。

外は雨は降っていなかった。

だが、天気が徐々に悪くなっていった。

そして、雷がゴロゴロと鳴り響いた。

 

 

 

「大気圏から高濃度のエネルギー反応!!!」

 

 

「なんだ!!」

 

 

「これは…。」

 

 

 

 

 

天は暗くなると一気に雷鳴が鳴り響いた。

それと同時だった。

 

 

 

 

「消えろ、バケモノ。」

 

 

 

シンジの声がした。

雷光は初号機と一体化していた。

 

 

 

「まさか!!!・・・・まさか!!!!!」

 

 

 

冬月は驚愕した。

初号機は天気すら味方にできるようになっていたのだ。

 

 

シンジは羽を使い天に舞い上がっていた。

空も飛べるようになったのだ。

さらにそれに反応するかのように、竜巻のようなものが発生していた。

 

 

これらは全てシンジ君の、初号機の力によるもの。

 

 

 

「すごい・・・。」

 

 

 

ガイガンは竜巻に押し飛ばされそうなのを耐えた。

それがやれる全力だった。

耐えること…。

 

 

やがて、竜巻が消えると上空に敵がいると感じた。

同じく飛び上がった。

 

 

 

 

やがて二体の戦いは空中に移行した。

 

 

 

 

ガイガンは鋭いフックをギラギラと輝かせ、金属音をあげながら切り裂こうとした。

初号機は睨んだ。

巨大な雷光と一体化したシンジは拳を突き出していた。

それには光と凄まじい電気が帯びていた。

 

 

ヒュンッ!

 

 

ガイガンの聞いた最後の音はそれだった。

空気が切れる音。

 

 

次に凄まじいエネルギーがガイガンを襲った。

 

ガイガンは死すら感じなかった。

敵はその拳から放たれた巨大なエネルギー波でバラバラに砕け散った。

そして、海へと吹き飛んでいったのだった。

 

 

次に巨大な地鳴りと振動がネルフ本部を包んだ。

それは勝利の証だった。

まるで雷のような音がした。

 

 

 

 

 

一撃、圧勝、粉砕。

 

 

 

光と電気と風の力は初号機に味方をした。

 

 

 

 

 

 

初号機は圧倒的に強くなっていた。

光の翼を収納した初号機はそのまま、本部へと向き直った。

人類の守護神であり、鬼神であるエヴァンゲリオンは戻ってきた。

 

 

「すごい…。」

 

 

冬月は思わず漏らした。

その力はまさしく今までの初号機をはるかに超えていた。

圧倒的力を有する、完全なる初号機。

鬼神は強くなって帰ってきたのだ。

思わずその場にいた全員は歓声をあげ勝利を喜んだ。

 

 

ミサトもようやく発令所にきた。

そこで彼女はみた。

初号機の姿を、もっと大きく強くなっていた。

 

 

勝てる。

 

 

今の初号機はリリスのエネルギーを取り入れた。

最強の機体になった。

やがて、急ピッチで街の修復は行われた。

そして、初号機の機体の回収も…。

 

 

 

しかし、その場にいる誰もがきずかなかった。

ガイガンの残骸はオルガの念力で回収されていったことを。

その光景を一体のドローンがみつめていた。

オルガはそのドローンを通して戦いをみつめていた。

 

 

『ガイガンは負けました。しかし、残骸の修復が終われば・・・いつでも再生させることができます。今度はより強化いたしましょう。より強くより大きくなったガイガンをおみせできるかと。』

 

 

 

その顔はほくそ笑んでいた。

 

 

 

『あやつめ、強くなっておりますな。』

 

 

エヴァ初号機のことか。

 

 

ゴジラもまた、その報告を聞いて口の先が歪んでいった。

笑顔である。

 

 

 

面白い、そうでなくては面白みがない。

歯ごたえがないというもの。

魂の味は苦労すればするほど旨味がます。

そして、私の養分となる。

その次はこの世界を我が物にしてやる。

 

闘争はゴジラを強くする。

特に強者との闘争はそうだった。

 

 

 

破壊神の決意は固かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は少し謎解き回を
バトル要素うすめです。


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第7話:神々の真実

昼。

高校生の碇シンジは駅で目を覚ました。

 

 

「碇くん。」

 

 

 

声だ。

目の前には幼馴染のヒカリがいた。

彼女とは長い付き合いだ。

 

 

「ヒカリ。」

 

 

「んもーう、こんなとこで寝てたら風邪ひくよ!」

 

 

ヒカリは微笑んだ。

そして、心配そうに手を出した。

シンジはその手を握り彼女を抱き寄せた。

 

 

「いつも君はかわいいよ。」

 

 

洞木は顔を赤くするとシンジの顔にタオルを投げた。

 

 

「あせくっさいんだから!それで汗ふきなよ!」

 

 

いつもと変わらぬ日常だった。

 

そんな時、空から青白い光が降り注いだ。

それは世界中を青く染めた。

やがて、世界は焼きつくされた。

地球を含め宇宙が、世界そのものが焼き尽くされた。

1兆度を軽く超える青白い高熱の光は彼らの住んでいた宇宙そのものを焼き尽くした。

 

 

やがて、シンジたちの魂は次元の間を越えて流れていった。

川の流れのように。

天の川をこえるがごとく。

 

 

 

そして、並行世界の地球。

そこには破壊の神がいた。

ゴジラ、それは大きな口を開けると彼らの魂を事極のみこんでいった。

これは破壊神の食事。

無限に広がっていく多元世界の1部を破壊し、その魂を喰らう。

怨念が、無念、憎悪、恐怖、悲しみの声がゴジラの中でこだまする。

 

 

 

 

ゴジラはふたたび天に向かって熱線を放った。

この宇宙のどこかにあるブラックホール、それを通じて並行世界へ攻撃をする。

それはその先のどこかにあるといわれる暗黒宇宙の支配者である宿敵への嫌がらせ。

 

 

『私はここにいる、かかってこい。』

 

 

というものだ。

 

 

そしてあわよくば適当な世界を破壊しそこに住んでいる者たちの魂を吸収する。

なんとここちよいことだろう。

 

 

 

 

ゴジラの青白い熱線が宇宙に延びていく光景は世界中でみれた。

だが、多くの人間がこれに何の意味があるのかと疑問になっていた。

 

 

第三新東京市、道路。

ミサトは憎々し気に空に輝くうつるチェレンコフ光をみつめた。

 

 

 

あれはゴジラのもの。

なにをやっているかはわからない。

だがいいものではない。

 

 

 

助手席にいるシンジも同じく睨んでいた。

二人はこれから出勤だ。

例え初号機が戻ってきても勝てるかどうかはわからない。

なんともいえない気持ちが二人を包んでいた。

やがて、二人はネルフ本部に到着した。

 

 

 

 

「遅いですよ、葛城さん。」

 

 

日向の声だ。

 

 

「ごめん‥。」

 

 

ミサトは軽く謝った。

作戦課会議室、そこではネット会議が行われていた。

 

 

 

「葛城くん、次遅刻したら給料から引くぞ。」

 

 

「すいません…。」

 

 

 

ミサトは冬月に平謝りをした。

ネット会議の真っ最中であった。

出席者はドイツ支部にいるアスカと加持、マリとケンスケの4名、アメリカ支部からは渚カヲル。

 

 

 

ドイツ支部のモニターからアスカたちがうつった。

 

 

 

「おひさ、みんな。」

 

 

アスカは元気そうだ。

リツコから聞いた話だが、なんでも科学者としてデビューしたらしい。

彼女の軽い指示だけで想像以上のことをするという。

エヴァがなくなっても彼女は安泰だろう。

 

 

「アスカ、お久しぶり。」

 

 

「初号機は?」

 

 

「蘇ったわよ。」

 

 

 

ただし、綾波レイは犠牲になった。

そう、リリスの体になり新しいコアとなって初号機と合体したのだ。

シンジは肩を震わせた。

そんなシンジの腕をミサトは強く握りしめた。

 

 

 

「ミサトさん…。」

 

「シンジ君…。」

 

 

ミサトにもわかっていた。

レイは初号機のコアになった。

もう彼女は帰ってこない。

 

 

そんな二人に割って入るようにマリの声が聞こえた。

 

 

「みんなに言っておきたいことがあるの。私はゴジラの過去を知っている、何が起きたのかも…。」

 

 

「え?」

 

 

その場にいた全ての人間は驚愕した。

 

 

 

「カヲル君、凄く衝撃的なことをいうかもしれない。私は第一始祖民族の分身なの。」

 

「えっ」

 

「そう、今思い出した。私のオリジナル、本物の真希波マリイラストリアスは第一始祖民族だった。私はその分身でしかないの。」

 

 

「そうだったのか、僕が探し求めていた答えがこんなにも早くみつかったとはね。今までの努力はなんのためのものだったのか。」

 

 

カヲルはため息をついた。

だが、マリは否定した。

 

 

「そうでもないよ。」

 

 

「え?」

 

 

「あなたが火星でみつけた武器、あれは第一始祖民族が残した貴重な武器。あれはゴジラの背びれと骨を使って作ったモノ。あれをうまく使えばゴジラに対抗できる。第一始祖民族はその最中に失敗したけど。」

 

 

「やっぱりそうか!」

 

 

横で見ていた日向が声をだした。

 

 

「日向君?」

 

 

ミサトは思わず振り返った。

 

 

「ゴジラの弱点リスト、できましたよ!抗核バクテリア、カドミウム弾…どれも効くかわからないけど。あと早々モスラ!」

 

 

「モスラ?」

 

 

「そう、ゴジラはモスラに勝ったことがあまりないんです!この世界にモスラがいるなら…。」

 

 

「勝てる?」

 

 

「はい!」

 

 

加持は指を鳴らした。

 

 

「おい、南太平洋でみつかったデカい蛹って…。」

 

 

ミサトは思い出した。

 

 

「そうだ、白い女王。あれはモスラなのでは…。」

 

 

 

白の女王が蘇り、黒い王と戦う。

黒い王とはゴジラのことか。

そういえば予言にはあった。

天空から別の神がふってくる。

 

 

「マリさん、あなたの記憶がある限りでいいので話を続けてもらえる?」

 

 

「はい…。私はなぜそれが起きたのか覚えてないけど、第一始祖民族は現実と虚構の世界を混ぜて新世界を生み出す一種の実験を行ったんです。その際に複数の多元世界が合体して生み出したの…一つの世界が。」

 

 

 

「どういうこと?」

 

 

「でもその世界にはゴジラや多くの怪獣たちもいた。融合した『虚構』の世界の1部にあいつらはいた。彼はそれに凄く怒って第一始祖民族の文明を破壊しつくした。もう修復できないように…。私たちは対抗するために数多くの兵器を生み出した。それがまたゴジラをさらに怒らせた。」

 

 

 

マリは震えた。

 

 

「やがて、ゴジラの存在が別の怪獣を多元世界の一つから呼び寄せた。ギドラを…。」

 

 

ギドラ。

天からくる別の神か。

 

 

「それとゴジラは激しく殺し合った。やがて怪獣たちはゴジラ派とギドラ派に分かれた。そんな中、私たちに味方をしてくれる怪獣もいた。それが…モスラ。」

 

 

「三つ巴の争いか。」

 

 

「そうか!」

 

 

日向は指を鳴らした。

 

「モスラはゴジラの天敵だ。あいつが絡むといつも負けるんだ!」

 

マリは首を傾げた。

 

「まあ、そうなのかもしれない・・かニャ?」

 

 

日向を全員がみつめた。

日向は少し顔を赤くした。

マリは話をつづけた。

 

「それが何年も続いてゴジラが勝利を収めた。ギドラはその体をブラックホールの先にある宇宙に放り捨てられた。その頃には第一始祖民族がすんでいた惑星はボロボロになっていた。生き残りも少なかった。そして、自分たちが生きた証を残そうとした。それがアダムとリリス。それが地球に迷い込んで…。」

 

「使徒と人類の戦いが始まった。」

 

 

アダム、使徒の父。

リリス、地球生命の母。

 

 

「モスラは自分の命をかけて、ゴジラたちを次元の歪みに誘い込み…そこに消えていった。恐らくモスラはそこで殺された。でも彼女の卵はアダムたちとともに地球に落ちていた。そこであのモスラは転生をする、不死身だった。でも…。」

 

 

 

リツコは聞いた。

 

 

「それはなぜ?」

 

「ゴジラをとめてほしいから。ヤツの目的はあらゆる多元世界の文明を破壊してしまうこと。そして、怪獣を中心にした単一世界を誕生させる。ヤツは魂をエネルギーを電気を熱を放射能を食えば食うほど強くなる。戦えば戦うほど強くなる。そして、多元世界を滅ぼし、自分が新しい支配者になる。事実今のゴジラは複数の多元世界を破壊して、その魂を吸収した。」

 

信じられない話だ。

だが、この話しか今わかるものはいない。

 

 

 

「だから…。」

 

 

マリが涙を浮かべた。

 

 

 

 

「だからもう今のモスラでも勝てないかもしれない。」

 

 

 

 

ミサトは思わず声を出した。

 

 

「そんな!!」

 

 

日向も同じだった。

 

 

「モスラが勝てないんだったらマジで誰も勝てるのがいないんじゃ…。」

 

「私がわかるのはそこまで。」

 

 

 

ミサトは苦虫を噛んだ。

マリはもう泣いていた、ケンスケがそれを優しく抱きしめているのがみえた。

あの子も大人になったんだな、とミサトはなぜか思ってしまった。

 

 

 

 

 

「補足しておこうか!」

 

 

後ろで声がした。

ハゲ頭の老人がいた。

 

 

「フリッツ!」

 

 

アスカの怒りの声がした。

アスカの祖父、フリッツ・ツェペリン。

 

 

「第一始祖民族はゴジラに対抗する依り代としてエヴァンゲリオンを用意した。そして全ての魂を集めてゴジラに対抗する最強の生命体を生み出そうとした…。これらを書いたのが死海文書というものだよ。」

 

 

「アンタたち!どうやってここに!」

 

 

「偽造IDなど、作るのが簡単すぎるのだよ。」

 

 

その手には偽造されたネルフスタッフID二つがあった。

 

 

「葛城ミサトォ……!!!!」

 

 

 

声がした。

野太い声。

雄々しさすら感じる声。

 

 

「アーノルド!」

 

 

アーノルド・ウィルソン。

サイボーグ戦士。

ミサトによって弟と自分の腕を奪われた男。

 

 

 

「貴様ァ…!今度こそ殺してくれるわァ!!!その首をへし折り、断罪の文字を飢えこんでくれようぞ!!!」

 

 

2mを越えた巨漢のサイボーグ戦士はミサトの首をつかんだ。

だが、ミサトは彼を冷静に睨んだ。

そして、アーノルドの手をつかんだ。

 

 

 

強い。

 

 

以前とは違う。

鍛え上げた腕があった。

その力は義手ではない方のアーノルドの力に肉薄した。

 

 

「面白いわね、やれるならやってみなさい。」

 

 

 

シンジは銃を構えた。

いつの間にかアーノルドの背後に立っていた。

 

 

 

「彼女に近寄るな。」

 

 

「小僧ォ…!!!」

 

 

 

アーノルドは怒りに顔を歪ませた。

 

 

「やめろ、アーノルド。復讐は先だ。まず世界を救え。それがお主を蘇らせたゼーレの望みだ。忘れるでない。」

 

 

 

アーノルドは鼻息をならすと冷静な表情に戻った。

フリッツは話をつづけた。

 

 

「多元世界の複数を渡り歩く装置を私は開発した。第一始祖民族の生き残りの模倣だ。なかにはそうやって逃げだしたのだろう。オリジナルの真希波マリイラストリアスもその一人だったようだ、あるいはそれもクローンだったのかもな。まあ、それについては拷問してる最中に逃げられたので詳しくはわからんが…。」

 

 

マリは睨んだ。

自分はこいつのせいで…。

何度も何度もひどいめにあった。

 

 

「アンタ…。」

 

 

「よさないか、マリよ。もう過去のことだろう?」

 

 

「ちっ…。」

 

 

「わしは多元世界の1部で完全な意味での人類補完計画を遂行しようとした。それはある意味では成功したが、失敗に終わった。あ、ここにそれを考えたバカがいたのだったけ?どうやら想い人にあいたいとかわけのわからん理由で…。」

 

 

フリッツは冬月をみつめた。

冬月は苦虫をかみつぶしたように睨んだ。

 

 

「ほほほ、まあそれについてはどうでもよい。ゴジラに対する対抗策、それは一つしかない。火星で見つけた武器、それにモスラ…そしてエヴァンゲリオン、これらを使いバケモノを打ち倒す。まあそれができるかについては微妙じゃがの。確率でいえば1割程度か。」

 

 

「お祖父ちゃん。」

 

 

アスカが声を出した。

 

 

「私はどんなに、世界を守ることに貢献してもあなたを許さない。…でも世界を守ってくれるなら私は協力してもいいわ。」

 

 

冷静だ。

もうあの傲慢なアスカはほとんどない。

ミサトは少し驚いた。

 

 

「ほう、中々できる娘になったの。アスカ。素晴らしい。」

 

 

「つまり…アンタも俺たちと共闘するってことか?ゼーレのツェペリンさん。」

 

 

加持は言った。

この男は新しいゼーレのリーダー。

ツェペリンは感心すると、言った。

 

 

「そう、ゼーレとネルフの共闘じゃ。」

 

「ずいぶんと図々しいというか、まあ‥それでもいいんじゃないかな。」

 

 

カヲルは呆れて言った。

 

だが、その心には闘志があった。

火星探査の時立ち会ってくれた大尉。

いい人だった。

彼はゴジラに殺された。

彼のためにも自分は戦う。

 

 

「あそうだ、アーノルドさんだっけ。」

 

 

アスカの声がした。

アーノルドは振り返った。

 

 

「ねねね、あんたミサトに恨みあるのよね。もしもミサトに手を出さなかったらあたしがあなたにボーナスをあげる。だから仲良くしてくんない?」

 

 

「ボーナス?」

 

 

「そう。」

 

 

「金なら間に合ってる。」

 

 

「そうじゃなくて、私お手製のチョコレート。ドイツ製のチョコレート美味しいのよ?」

 

 

アーノルドは面食らった。

そして、大笑いした。

 

 

「ははははははは!!!チョコ!?チョコか!!!たかがチョコだと!笑わせる!」

 

 

「かなり美味しいけど?」

 

 

アスカも笑顔だ。

伊達や酔狂でいってるのかもしれん。

だが、面白いこの娘。

気に入ったぞ。

 

 

「ならば我が魂、貴様のチョコレートに授ける。復讐はその先の先だ!」

 

 

「ふっふ、楽しみにしてて。」

 

 

「アスカ、なんかすごいね。」

 

 

シンジは思わずミサトに言った。

 

 

「本当、何があったのかしら。」

 

 

「俺の教育のたまものだ、葛城。イノシシみたいに『突撃!』しか言えないお前と違うんだよ俺は。」

 

 

「加持ィ!!!!」

 

 

 

アーノルドは加持の軽口をきいてさらに笑った。

 

 

 

「はははは!!お前は面白い奴だ!気に入った!全てが終われば…お前たちにあいにいってもいい!」

 

 

その時、ミサトはわかった。

加持は気を利かせている。

アスカも。

ミサトのことが心配だから。

 

 

「そういうわけで、ウィルソン大佐。今は私と協力してくれるかしら…。」

 

 

「ふん、いいだろう。だがこれとチョコレートが終われば貴様を八つ裂きにしやる!今度こそな!」

 

 

 

そんな時だった。

オペレーターのアオイが作戦室に入り込んだ。

 

 

 

「大変です!!!これをみてください!!!」

 

 

 

アオイはテレビ用モニターをつけた。

そこには映っていた。

 

 

 

ざらついた画面の中に浮かび上がっていた。

黒い影が。

アナウンサーたちの慌てる声がかすかに聞こえていた。

だが、それをかき消すように声が響いた。

 

 

『我が名はオルガ、偉大なる怪獣王ゴジラの参謀であり将軍。貴様らに命じる。今すぐ我らへの忠誠を示せ。文明機器を捨てよ。ゴジラを崇め、奉るのだ。』

 

 

アスカたちもテレビをつけた。

カヲルも。

 

 

 

『今日は諸君らに見せたいものがあると、我が主がいっておられる。』

 

 

すると、モニターはざらつきながらある映像をうつした。

そこにはミサトとシンジがいた。

だが、この世界の物ではない。

ミサトは学校の教壇にたっていた。

やがて、授業を終えたミサトはシンジに話しかけられどこかへといっていた。

 

 

「あれは私たち!」

 

 

ミサトは声を出した。

向こうの世界のミサトとシンジの会話を読唇術を使いみてみた。

 

 

「ミサト先生、ずっと好きでした。」

 

 

 

なんてこと…。

向こうの世界のシンジとミサトは笑顔だった。

 

 

他にも複数のモニターは様々なシンジの姿をうつしていた。

あるものは綾波とカヲルが仲良く談笑するもの、またあるいはアスカとトウジがお互いに喧嘩しながらも肩を寄せ合っているものも…。

 

 

「あれ私と鈴原じゃない。」

 

「あんなことしてたの?」

 

「いや、記憶にないよ。」

 

 

という事は…

恐らく別世界。

エヴァのない世界。

いわゆる多元世界か。

平和な世界。

 

 

アスカも驚いていた。

これは世界中に配信されていたのだ。

 

 

「これの映像は全部同じ世界の物なの?」

 

「わからない。」

 

 

ミサトは本能的にわかった。

あのモニターで写っているのも同じ世界の物ではない。

それぞれ別の世界。

 

 

 

『逆らえばこうなる。』

 

 

その時だった。

 

 

どごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんんん!!!!!!!!!

 

 

 

また先ほどと同じような地鳴りの音が響いた。

 

 

「まただ。」

 

「いい加減にしてほしいよ。」

 

 

そんな声が続いた。

だが、アメリカ支部にいたカヲルはふと気が付いた。

そして、窓をみた。

 

 

そこにはチェレンコフ光状の光線がまた輝いていた。

ゴジラの物だ。

まさか…多元世界へ攻撃している。

 

 

 

「あれは全部食事なんだ、ゴジラの…。」

 

 

 

カヲルは初めて恐怖の感情を抱いた。

ヤツは全てを破壊しつくすまで止まらない。

 

 

 

「みろ!」

 

 

冬月は吠えた。

すると、モニターの先にうつっていた平和な世界の数々は青白い光に包まれて行った。

ミサトはシンジを抱きしめて庇い地面に倒れた。

そして、うつらなくなった。

 

 

滅ぼされた。

その場にいる全てのものにはわかった。

 

 

やがて、以前と同じく青白い魂たちが地球におりてくるのがみえた。

複数の魂たちはゴジラのもとへいっているのだろう。

そして、捕食されてしまう。

 

 

 

 

 

なんてことを…。

 

 

『我々に逆らうモノよ、今すぐ降伏しろ。さもなくば今から3日以内に世界中を破壊しつくす。そして、いずれはお前らもああなる。抵抗するならそれでもよい。』

 

 

オルガと名乗る声が聞こえた。

そして、あの咆哮が聞こえた。

 

ゴジラの咆哮が。

 

 

 

 

 

『降伏しろ。』

 

 

 

 

オルガの声なのか、あるいはゴジラの声なのかわからなかった。

 

 

 

 

モニターの映像は消えた。

アナウンサーは驚いた表情をみせていた。

 

 

「えー、凄い映像でしたね。」

 

「はい…。」

 

「なんと!アメリカでは今『楽園の恥部』という…。」

 

 

冬月はモニターを消した。

これは宣戦布告。

怪獣たちはただの獣ではない、知恵がある。

これは心理戦だ。

 

 

 

シンジは怒りをにじませた声で言った。

 

 

「誰が降伏などするものか!」

 

 

 

それはその場にいるものすべてが同じだった。

 

 

「すべてのカオスを終わりにするわ。」

 

 

ミサトは決意した。

こいつをここで止めなければもっと被害が増える。

私たちの世界だけではない、すべての人間がいる世界を奴らは滅ぼす気でいる。

全ての文明を持つ世界を‥。

文明には闇がある、だが光もある。

そして、それの恩寵で生きているすべての人々を守るために私たちは立ち上がらないといけない。

 

 

 

 

 

上海跡地、ゴジラの喉元には何億何兆という魂がはいっていった。

多元世界の複数を滅ぼした。

その体の中で悲しみ・憎しみの声が響いていた。

 

 

オルガはそんな主人を観て楽しそうに微笑んだ。

彼のテレパス能力は多元世界すらも見通せたのだ。

そして、その中でも厳選されたものをゴジラに破壊してもらう。

オルガはそんなゴジラの血を分けて飲ませてもらう事で永遠の生を生きていた。

 

 

彼はゴジラに心酔していた。

彼への忠誠心、一種の愛情。

そして、ゴジラがいなくては生きていけないことへの恐怖。

これらがオルガの生への希望になっていたのだ。

 

 

 

そんなゴジラのエネルギーに反応するかのように、ブラックホールの先の先にいる軍勢はやってきた。

その真ん中にいるのはゴジラと別の破壊神。

先ほどのエネルギーを逃すことはなかった。

 

また、光線がのびて別の宇宙を滅ぼしたことも…。

 

 

彼は自分の帝国と艦隊とともにやってこようとしていた。

その先導には大きな竜頭を持った生物がいた。

 

ギドラ、金色の破壊神。

 

彼もまた運命のパズルピースとともにジグソーパズルに埋まっていくのであった。




冒頭に出てくるシンジとヒカリが付き合ってる世界はあくまで多元世界の一つというだけで何の意味もありません。


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第8話:最終決戦の狼煙

 人類に残された時間は少ない3日しかない。

 ミサトを含めたネルフの多くの関係者は相次ぐ段取り作業で缶詰になっていた。

 

 

「あら、お疲れ様。」

 

「お疲れ様。」

 

 

 リツコの声だ。

 彼女も少し疲れているようだ。

 目にクマができていた。

 

 

「お互い疲れるわね、本当…。」

 

 

 時間はすっかり、午後10時。

 

 ペンペンとケントもネルフ本部で過ごす日が増えていた。

 

 

 二人疲れをいやすために、ふと休憩室でテレビをみていた。

 

 夜の情報番組か。

 アナウンサーの霧島マナがしゃべった。

 この子、シンジくんと高校が同じだったわね。

 もう、テレビのキャスターなのか。

 

 

 

「現在猛威を振るっている怪獣関係のニュースです。」

 

 

 すると、番組の映像はあるものをうつした。

 そこではうつっていた。

 醜い人々の姿が。

 

 

 市民団体だ。

 虹色の旗を振ると、「怪獣と融和を!」「怪獣こそ守護神!」「怪獣のペットになろう!」という横断幕を張っている人間がいた。

 恐らくはアメリカだろう。

 

 

 アジア系のアナウンサーはデモ参加者の白人に話を聞いた。

 

 

 

「どうして、怪獣が守護者なのですか?」

 

「人類は地球を汚しすぎました。怪獣たちは怒っているのです!人類は彼らの裁きを受けるべきです!」

 

「怪獣のペットとは?」

 

「怪獣は我らの飼い主です。彼らの庇護を受けて…我々は生きるべきです。考えてください。我々は牛や羊を無意味に殺しますか!?」

 

「国連特務機関が進めているゴジラ迎撃作戦についてどう思いますか!」

 

「今すぐやめるべきです!人間の汚いエゴで怪獣たちを巻き込まないで!」

 

 

 

 ミサトは不快感にあふれた。

 手元にあるコーヒーカップを持ち震えていた。

 それはリツコも同じだった。

 彼女たちの心にあるのは憎悪だった。

 

 

「だったら、アンタらだけあいつらに助けを乞いなさい。奴隷にしてくださいっていいなさいよ。」

 

 

 ミサトは思わず言った。

 

 

「豚であることを選ぶ連中に自由を謳歌する資格などないわ。」

 

 

 リツコも言った。

 

 そんな二人を無視したテレビはつづいた。

 

 

「今現在怪獣たちが拠点にしている、上海に多くの市民が駆け付け怪獣を歓迎するような動きもでております。その中には怪獣を神と崇める団体や友人とたたえるものもいます。」

 

 

 画面は壊滅した上海のガレキの山にたたずむゴジラをみて神のように崇めている多くの人々をうつした。

 彼女たちが思っていたより、その姿は多かった。

 

 

「ホント、リツコじゃないけどブタねあいつら。」

 

「家畜になりたいなら勝手になればいいんじゃないの。」

 

 

 

 

 

 やがて、テレビは先ほどのデモ隊の映像に戻った。

 すると市民グループはネルフの旗やエヴァンゲリオンの写真、さらにはシンジやアスカを模した人形を焼いて興奮している映像をみせた。

 

 

「こいつら…。」

 

 

 ミサトは腸が煮えくり返った。

 私たちは世界を守るために戦っている。

 それなのに…。

 これがそれか。

 

 

 

 その時、気が付いた。

 シンジはそれをみていたのだ。

 

 

「シンジ君…。」

 

 

 悲しそうだった。

 

 

 

「あの人達は僕が嫌いなんだね。」

 

「シンジ君。」

 

「ボクはがんばっている、なのに…それなのに…。」

 

 

 ミサトはシンジに駆け寄った。

 そして、黙ってキスをした。

 無理矢理。

 リツコはあまりの早い行動にびっくりしていたようだった。

 

 

「み、ミサトさん…。」

 

「もう一回キスさせて。」

 

 

 リツコは呆れたように笑うと、テレビのチャンネルを変えた。

 するとそこにはバラエティ番組がやっていた。

 

 

「さあ、来週の『フェイムオアシェイム』は!…。」

 

 

 この方がマシか、リツコはテーブルに顎をついた。

 

 

 

 

 ミサトは日向のまとめた情報をもとに、すぐさま提案をした。

 

 まずはカドミウム弾、ゴジラの個体の中には体内に原発のようなものを持っているものがいるらしい。

 これが効くかわからないが、試す価値はあった。

 

 次にアブソリュート・ゼロ。

 いわゆる絶対零度で凍らしその後物理的に破壊するもの。

 再現は不可能であるが、似たものはすでにアメリカにあった。

 絶対零度砲、という日本名のがカッコいいのでそうした。

 

 もう一つ、ディオメンションタイド。

 ブラックホールを発生させるというもの、これが有効かはともかく。

 これも全く似たものがすでにアメリカで開発されていた。

 

 四つ目はファイヤーミラー。

 どうやら日向によるとゴジラの熱線を何万倍にして返すモノだろうだ。

 これは理論上不可能であったが、レーザー・熱などの攻撃を吸収してエネルギーに変えるものはすでにアメリカにあった。

 

 最後に一つ、水中酸素破壊剤ことオキシジェンデストロイヤーだが…これは倫理的問題から製造するべきではないという結論に至った。

 日向に強く言われたミサトはそれを受け、これを選ばなかった。

 

 

 アメリカ政府との交渉は加持とアーノルドが請け負った。

 アーノルドの友人にはかつてアメリカ軍で英雄といわれる将校がいた。

 この男は大統領選挙にすら影響を及ぼすほどの人気がある男で、快く受諾した。

 オーバー・ザ・レインボウの艦長が進言したことが大いに影響した。

 さらに加持はCIAの友人であるソーンバーグとともに、アメリカ政府関係者の恥部をつつき脅し取った。

 

 これらの甲斐がありやがて、これらはネルフに授けられた。

 

 時田・リツコ・フリッツの三者は電撃的な速さでアブソリュート・ゼロをエヴァ用に改造することに成功。

 またアスカはファイヤーミラーを応用化させて、シールドと銃に変換する独自の装備を開発した。

 これはすぐさまエヴァ各機に装備されることとなった。

 

 絶対零度・スナイパーライフル。

 ファイヤーミラー・シールド。

 そして、禁じ手ディオメンションタイド。

 

 

 次にアメリカ政府からエヴァ5号機は渚カヲルの元にたどり着いた。

 自動操縦型ということであるが、渚カヲルにとってはアダムの分身であるエヴァなどパイロットがいなくても操縦は可能であった。

 

 

 

 

 

 そして、初号機には火星でみつけたゴジラの背びれをつけた武器が装備された。

 

 

 

 

 

 

 

 やがて、三日の最期の日が近づいた。

 

 

 

 冬月はある場所へ訪れた。

 そこはゲンドウが眠る墓。

 形だけのユイの墓にゲンドウの灰は眠っていた。

 雨は降りしきっていた。

 

 

「レイは、初号機の中に入った。ユイ君は完全に死んだんだ…。その代わりだろう。」

 

 

 傘を差しながら冬月は言った。

 

 

 

「俺はお前の代わりにシンジ君の父になると誓った。だが、父などいなくてもあの子はすでに成長していたのだ。私の傲慢な思い上がりだったよ。」

 

 

 冬月は皮肉げにいった。

 父替わり、全く思い上がりもいいところだ。

 シンジ君はすでに成長していたのだ。

 私がいなくても…。

 やがて、彼の迎えの機体が到着した。

 

 

「人の敵は人ではなく神だったとはな。」

 

 

 皮肉気に言った。

 機体を観た冬月は静かに言った。

 

 

「また来るぞ碇。」

 

 

 

 やがて、彼は機体の中へと入っていった。

 中には日向がいた。

 

「君には迷惑ばかりだな。」

 

「そうでもないですよ。」

 

「君とこうやって話すのは久々だ。」

 

 

 今回ばかりはこいつが大活躍だった。

 この男のオタク知識がなければ、何もできずに死んだかも。

 冬月は日向を見直した。

 芸は身を助ける。

 知識もまた芸か。

 

 

「自分でもびっくりですよ!」

 

「これが終わったら…久々に京都に寿司でも食いに行くか?」

 

「いいんですか!!?」

 

「ふっ、期待しておけ。」

 

 

 冬月は久々に笑顔になった。

 ユイ君ばかりが人生ではない。

 そろそろ私も自分の幸福を探すときかもな。

 

 

 

 同じころ、アメリカ支部。

 渚カヲルがそこにいた。

 四号機も手に入れた、五号機も手に入れた。

 彼がピアノを弾いていると、そこに艦長がきた。

 

 

「君は使徒らしいな。」

 

 

 

 カヲルはピアノをとめた。

 バレたか。

 殺されるのか。

 

 

「ええ‥。」

 

 

 だが、艦長の反応は想像外だった。

 

 

「君が使徒であろうと、関係ない。君は私たち人間のようなものだ。誰であろうとね。それに…人間も使徒だったらしいからな。」

 

 

 皮肉気に艦長は言った。

 最後の使徒、それはリリン。

 人間だ。

 

 

 それに思っていた。

 人類のために戦うモノがいれば、それは立派な仲間だ。

 

 

「私たちはお互いに殺し合っただけに過ぎない。憎悪や怒りだけではあのゴジラに勝てないだろう。私は君を受け入れるよ。近いうちにすべての人々がね…きっとそうだ。」

 

 

 艦長、あなたは優しい人だ。

 カヲルは胸に誓った。

 今はいない、綾波レイ。

 彼女のためにも、彼女の代わりにリリスの子供たちを守る。

 

 

「ありがとう。」

 

 

「カウボーイの格言であるんだ、クズはクズ同士助け合う。クズらしく助け合おうじゃないか。」

 

「ええ、そうですね。そうしましょう。」

 

「生きて帰ってこい。私の姪っ子を紹介するぞ。」

 

「え!?」

 

「冗談だ。」

 

 

 カヲルは微笑むとピアノをつづけた。

 その窓の脇にはエヴァ四号機・5号機がたたずんでいた。

 

 

 

 ドイツ、ネルフ支部。

 アスカは執務室で眠っていた。

 

 

「アスカ。」

 

 

 加持の声だ。

 

 

「加持さん?」

 

 

「下の名前で言ってくれよ。」

 

 

「じゃあ、リョウちゃん。理由?ミサトがシンジにそういってるから。」

 

 

 アスカは冗談交じりに微笑んだ。

 恐らく最終決戦の時は近い。

 もう俺はこいつに偉そうな顔はできない。

 

 

「なあ、アスカ…結婚式場選ばないか。」

 

「え?」

 

「そろそろ、いいと思うんだ。」

 

「そうね…生きて帰ってきたら…。」

 

「いや、違う。今決めるんだ。」

 

 

 加持はそういった。

 その目は本気だった。

 仕方ない、アスカは笑うと式場のファイルをみた。

 

 

「パパとママも呼ぼう。」

 

「ああ。」

 

「あの人も呼ぶ?ソーンバーグさん。」

 

「いや、あいつは来ないと思う。祝儀金ってドイツでもあるのかな?」

 

 

 そんな日常と同じやり取りをした。

 別れにしても湿っぽいのはもういい加減したくないという二人の想いだった。

 

 マリもまた、覚悟を決めていた。

 恐らくオリジナルのマリはゴジラに殺された。

 その魂は今、ゴジラの中にいる。

 

「マリ!」

 

 ケンスケの声。

 彼の目は真剣だった。

 いつものジョークはない。

 

 

「なあ、マリ…お前ゴジラに挑むのか!」

 

「わからない、ゴジラなのか下僕なのか。でも怪獣を倒すのは間違いないわ。」

 

「ダメだ!!!」

 

 

 ケンスケは声を出した。

 

「なんでお前なんだよ!お前が行かなきゃいけないんだよ!俺と一緒に逃げよう!どこかで田舎で何か…してさ!」

 

 

 心配なんだ。

 ケンスケは私を心配している。

 恐らく自分の元からいなくなるんじゃないかと怖がっているんだろう。

 

「私以外にできるやつはいない。であればやるしかない。」

 

「やだ!!」

 

 ケンスケは泣いていた。

 今までの連中とは何もかもが違う。

 それを彼もわかっているのだ。

 

「死なないでくれ…。」

 

 

 マリはほくそ笑むと、ケンスケの頬をなでた。

 

「死なない、あなたのために。」

 

 

 マリはケンスケの頬をつかむと、キスをした。

 やがて、二人はソファーに倒れ込んだ。

 

 

 

 

 ネルフ本部。

 

 

 育児施設。

 ヒカリは眠っているケントをみていた。

 本当は自分が子供を産みたかった。

 鈴原と結婚して…。

 でも、それは無理。

 ないものねだり。

 

 

 ふとそんな彼女の近くに誰かが来た。

 

 

「洞木さんだね。」

 

 

 この声は聞き覚えがあった。

 

 

「アーノルドさん…?」

 

 

 いつかあった男性だ。

 やっぱりネルフの人だったんだ。

 

「覚えていてくれたか。」

 

 

 アーノルドは膝をまげしゃがんだ。

 そして、赤ん坊をみつめた。

 若き頃の弟に似ている。

 父が面倒をみない代わりに私がみていたのだ。

 

 

「この子供は…。」

 

「ええ、ミサトさん知ってます?」

 

 

 ミサト。

 葛城ミサト、憎い弟の敵。

 まさか…。

 

 

「彼女の子供なんですよ、ミサトさん仕事で忙しいから…。」

 

「そうか。」

 

 

 やはりそうか。

 あやつは人の子。

 であれば、子供を産む。

 当然だ。

 

 私はこんな子供の母を殺そうとしていたのか。

 愚かなマネをした。

 この子供が母を失えばどうなるだろう。

 

 恐ろしいことをした。

 弟がなんというだろう。

 

 

 

「人は愛を紡ぎ、歴史を作るか。」

 

 

 ヒカリはピンときた。

 綾波レイ。

 彼女が言った言葉。

 ヒカリが聞いた話では

 

 

「私の友達も同じことを言っていたわ。」

 

「ある歌の歌詞だとか聞いたぞ。」

 

「私も歴史を作りたかった、でも大好きな人は死んじゃった…。」

 

「人は失うことで得るものもある、君もいずれわかる。いつか愛を教えてくれる人が…またくるだろう。」

 

 

 アーノルドはそういうと、姿を消した。

 大事なことを学んだ。

 復讐は復讐しか生まない。

 彼は復讐をやめることにした。

 

 だが、あいつに言いたいことがある。

 それを最後にいってやろう。

 自分の子供は自分で面倒をみろと。

 

 

 リツコはいつものようにマギシステムのチェックを行っていた。

 ふと近くに時田シロウがきた。

 

 

「あの…。」

 

「整備は終わったの?」

 

「ああ、それは…。」

 

「どうしたの?」

 

「いや、その…。」

 

 時田の手元には書類があった。

 婚約届。

 リツコは顔を赤くした。

 

 

「え!?」

 

「ボクも君もそろそろ歳だろ?最後の最期と言っちゃなんだけど…。」

 

「あら…。」

 

 

 まいったわね、

 このマギには母さんがいる。

 母さんにみられちゃった。

 

 

「それに君と娘と同居して、娘があの人なら母さんでもいいよって‥。」

 

「あら…。」

 

「いいかな?」

 

「そんなのイエスに決まってるじゃない。」

 

 

 リツコは事務的に言った。

 だが内心は嬉しくて声をあげそうだった。

 

「え?!」

 

「OKってこと。」

 

 

 時田は顔を赤くした。

 

 

「あ、そうだ…これが終わったらJAを作らない?」

 

「何!?本当?」

 

「ええ、エヴァだけじゃパイロットたちが可哀想だし。エヴァに依存しない組織作りが必要。そのためにいるのはあなたのJAよ。昔の仲間と連絡とれる?」

 

「どうだろう、やってみるよ。」

 

 

 時田は頭をくしゃくしゃとかくと申し訳なさそうに外に出ていった。

 その様子を一部のスタッフは冷やかした。

 

 

 初号機のケイジにはミサトがいた。

 綾波レイ…。

 彼女は身を挺して初号機とともになった。

 立場は違えど、シンジを愛した女。

 

「レイ、あなたには感謝してもしきれない…。」

 

 思わず言ってしまった。

 シンジには女として愛した。

 アスカには姉としてふるまった。

 でもこのレイに何もできなかった。

 そして、彼女は初号機と一つになった。

 

「葛城一佐。」

 

 

 声がした。

 北川ミドリ。

 

「北川さん?」

 

「頼まれていた報告書、出来ました。」

 

 

 うーん、なんか違う。

 彼女らしくない。

 

 

「敬語つかわなくてもいいわよ、無理して。」

 

「え?マジ?チョー疲れちゃった。」

 

「あのね…。」

 

「ね、マコっちゃんのことどう思ってる?」

 

「え?…ああ‥。」

 

 日向君。

 私の部下。

 忠実な部下。

 

 

「優秀な人よ。」

 

「そうなんだ、葛城さん。あの人のあなたへの想いは気づいていないの。」

 

 あの人。

 そんな言葉を表現できるなんて中々みない。

 それに日向くんが…私が好き?

 

 

「え?」

 

「わかってないんだ、あの人あなたが好きよ。だからこうやって尽くしてる。でもあなたはもう動きそうにもないんだね。」

 

「ごめん…。」

 

「たまに彼に優しくしてあげて、あなたのために尽くす気でいるから。」

 

 

 北上ミドリはそういうと、とぼとぼと歩いた。

 日向くん、そうだったの。

 私が好きだったの。

 ごめんなさい、実は気づいていた。

 内心、利用していたのかもしれない。

 

 

「ごめんね、日向君…。」

 

 誰もいない中、ミサトはつぶやいた。

 

 

 マヤは青葉の病室にいた。

 そこにはシンジもきていた。

 

「マヤさん‥。」

 

「シンジ君、この人いつもあなたのこと言っていたわ。弟ができてうれしいって。子供の名前もシンジがいいって、それはダメだっていったの。」

 

 ボクが弱かったから青葉さんは犠牲になった。

 強ければ負けなかった。

 でも、それをマヤさんにいえばマヤさんは怒るし悲しむ。

 

 

「ボク、ゴジラを倒します。青葉さんが帰ってきた時に自慢したいから。」

 

「そうね、彼もきっと喜ぶわ。」

 

 

 マヤにはわかっていた。

 この子は繊細な子。

 それが今、気を使っている。

 大人になったのね、シンジ君。

 昔の彼だったらきっと感情をぶつけてたと思う。

 

 

「一言だけ言わせて、シンジ君。」

 

「え?」

 

「あなたは弱くない。それだけは間違いない。」

 

 

 違う。

 弱いんだ。

 ボクは弱いし子供のまま。

 自分が世界で一番強いと調子に乗っていた。

 

 だからこの兄代わりを失った。

 

 

「マヤさん‥。」

 

「あのブサイクなトカゲをボコボコにしてきて…あらやだあたし…言葉が下品になっちゃった。この人のせいだわ!」

 

 

 青葉さんの口がうつったのか。

 シンジは微笑んだ。

 

 

「はい。」

 

「彼のためにも生きて帰ってきてね」

 

 

 マヤさんのためにも僕は戦う。

 彼女の中にいる子供のためにも。

 

 

 

 フリッツはほくそ笑んだ。

 

 こやつらにゴジラ討伐・神殺しの栄光はやらぬ。

 私がこんなこともあろうかと、用意した900万のエヴァ。

 エヴァ・インフィニティ。

 今こそ、これを蘇らせる時。

 

 マイナス宇宙の中に眠るエヴァ・インフィニティどもを使い邪魔なゴジラを殺してやる。

 それまで…奴らと手を組んでおこう。

 

 

 

 

 オルガは近くにいる人間たちを集めた。

 そこにいるのは怪獣を神と崇めるものたち。

 地球の守護者と崇めるものたち。

 過激な動物保護団体・自然保護団体が多くいた。

 

 

 

「怪獣様万歳!!!」

 

「怪獣こそ地球の守護者だ!!!」

 

「WE LOVE KAIJU 」

 

「地球を怪獣の物にしよう!」

 

「ゴジラを新しい大統領に!!」

 

 

 オルガはグレーの巨体を揺らしほくそ笑んだ。

 愚かで哀れな小さきものどもめ。

 では、彼らの望むものをくれてやろう。

 

 

『諸君らは賢明な判断をした。明るい未来を与えてやろう。』

 

 

 

 オルガは念力でふと、市民団体のリーダーと思われるアジア系の女性を持ち上げた。

 そして、再び念力を振るうと自身の肉片をちぎりそのリーダーの女性の口に飢えこんだ。

 

 

「おぐっ!?おべっ!!!」

 

 

 リーダーの女は吐きそうになりながらもだえ苦しんだ。

 やがて、心臓発作を起こし地面に倒れ息を引き取った。

 

 

『弱い生命体め。次は誰がいいかな。』

 

 

 市民団体のメンバーは悲鳴をあげ我一目散に逃げようとした。

 だが、オルガは念力でその動きをとめた。

 

 

『ダメだ…。君たちは家畜になるんだ。家畜になるんだったら‥それ相当の覚悟をしてもらわんとな?だって君たちは牛や豚をどう扱っている?』

 

 

 オルガはそういうと、自身の肉片を次々と飢えこんだ。

 彼の肉片はゴジラ細胞をもっている。

 そうすることで、人間を魑魅魍魎に、オルガの忠実な兵士に変えていく。

 これで自分の軍隊はできあがる。

 

 

『お前らは私たちの奴隷だ。今日から…。』

 

 

 ふと、オルガは小太りの日本人中年男性をつかんだ。

 年齢は45ぐらいだ。

 

 

『お前、我らにあだなす愚か者たちに詳しいな。ではお前を攻撃隊長として任命する!』

 

 

「やめてくれ…。」

 

 

 男の命乞いはきかなかった。

 オルガは自身の肉片を無理矢理食わした。

 すると男の体は膨れ上がり肉片から触手が生えていった。

 

 そしてタコのような怪物になるとオルガの前にひれ伏した。

 と同時に、多くの人間が彼のような怪物になっていった。

 それは千、数万を超えていた。

 

 その横にはガイガンもいた。

 改造され強化されたガイガン。

 

 

 

 残酷な高笑いをあげたオルガは邪悪に輝いた。

 

 

 

 

 そのわきで、ゴジラは眠っていた。

 

 夢を見ていた。

 自分がまだ能力がなかったころ。

 彼はただの水棲に進化した名もない恐竜だった。

 

 それがよかった。

 

 海の洞窟の中で大王イカやクジラを食い殺しその肉を食いながら、好きな時に寝て起きてまた食う。

 そんな生活。

 

 それが、続けばどれだけよかったか。

 

 

 

 だが、運命のあの時。

 自分は力を得た。

 人間たちの科学によって出たエネルギー、それを受けた。

 

 

 そして、自分は『怪獣』になった。

 怪獣となった自分は人類たちと長い戦争に包まれた。

 

 

 それだけならよかった。

 

 だが、46億年前のあの時自分たちの生きていた世界は別の世界と統合した。

 その怒りの力が自分を『神』に変えてしまった。

 自分の宿敵たちはひざまずき首を垂れ忠誠を誓った。

 

 

 しかしそれではなにも足りない。

 

 

 欲を言えば、自分の子供を持ち育てたかった。

 それもかなわぬ夢。

 

 

 

『父上。』

 

 

 声がした。

 まがい物の息子。

 

 

『みながあなたを待っております。総攻撃命令を。』

 

 

 こいつとも長い付き合いだ。

 これが終われば息子として向き合おう。

 

 

 

 怪獣の長はそうおもいながら、海に山にいる部下に命令をだした。

 

 

『攻撃せよ!!!』

 

 

 

 何千万といる部下は咆哮を上げて、それぞれの場へと向かっていった。

 

 

 オルガと彼に付き従う複数の魑魅魍魎は日本へ。

 デストロイアとメガギラスと彼女の軍勢はアメリカへ。

 バガンは欧州へ。

 だが、女王メガギラスに抱いた野心と皇帝たるゴジラへの不信感はぬぐい切れなかった。

 

 

 決戦の時は近い。

 

 

 ゴジラには本当の闘いがくることがわかっていった。

 そして、宇宙から迫りきつつある旧敵にも…。

 

 彼もまた、動きを始めた。

 中国の北、北京へと向かい始めたのだった。

 

 

 

 ネルフ本部、そこではサイレンが鳴り響いた。

 

 

「中国にいる怪獣たちに動きがありました!進軍ですっ!!」

 

 

 日向はボタンを押した。

 怪獣たちがそれぞれ、分断して行動している様子がみえた。

 赤い怪獣デストロイアはすさまじいスピードで太平洋に向かっていった。

 それにメガギラスと彼女の軍隊たちもついていった。

 茶色いバガン大西洋に向かっていった。

 

 

 

 そして、灰色の怪獣オルガは日本へ。

 これらが意味することはそれぞれの国に進撃を行い、総攻撃を行うという事…。

 

 ただの獣ではない。

 人間以上の知能を持っている証拠。

 

 

「ここは私たちの生きる世界、怪獣たちには怪獣たちの世界にお引き取りねがいましょう。」

 

 

 ミサトはそういった。

 恐らくここも攻撃される。

 ここから指令をだしていることに、怪獣は気づいている。

 じゃなかったらガイガンを送ってこない。

 

 

 ミサトは別のモニターを起動した。

 EU支部とアメリカ支部にいるパイロットにつないでいる。

 

 

「アスカ、マリ…二人にはバガンを迎え撃ってもらう。あいつはかなりやばいわよ。戦い方はあなたたちに任せるから。」

 

 

 アスカとマリは微笑んだ。

 

「任せておきなさい、私は過去・現在・未来においても最高なのよ!」

 

「がってんでい!」

 

 

 

 次はアメリカ支部。

 

 ネルフの最後の切り札。

 初号機とはまた別の意味での『最強』。

 それが渚カヲル。

 最後の使徒はミサトの指示を待っていた。

 

 

「カヲルくん、あなたにはデストロイアをお願い。四号機と五号機、そしてあなた自身の最強のATフィールドがあれば倒せない相手ではないはずよ!」

 

 

「任せておきなよ。」

 

 

 

 さあ、最後に一人だけ残されている碇シンジ君。

 ミサトはシンジに向き直った。

 

「次はあなたよ、シンジ君。」

 

「待って、日本にも怪獣が来てるんじゃないの?」

 

 シンジは心配そうに尋ねた。

 ミサトはうなづくと、脇から時田がやってきた。

 

「心配する事はない、碇君。私がこんなこともあろうかと零号機を独自に改造していた。オートメーションで動くんだ。マギシステムの搭載した人工知能で動くのさ。マギシステムは心で動く。」

 

「じゃあ、ボクは…。」

 

「ゴジラを叩きのめしてくれ。」

 

「わかった。」

 

 シンジは時田に手を差し出した。

 

「握手だよ。」

 

「そうか、喜んで。」

 

 時田の泥だらけの手は光って見えた。

 この人も先ほどまで作業をしていた。

 みんな頑張っている。

 それぞれのやり方で世界を救おうとしている。

 

「シンジ君。」

 

 ミサトの声だ。

 シンジは振り向いた。

 ミサトは頬に優しくふれると、唇を吸い寄せた。

 シンジはそれに強く反応し、逆に強くやりかえした。

 

「帰ってきてね。」

 

「ああ。」

 

 

 シンジはミサトにそれだけいった。

 日向はそれを見つめていた。

 彼の手はミドリの手を強く握っていた。

 

 

「マコっちゃん…。」

 

「僕もいつまでも葛城さんをみてたらダメだよな。」

 

 

 シンジはそれを少しみた。

 日向は敬礼で返した。

 ミドリもそれにきがつくと大声でいった。

 

「あのバケモノ、ボコボコにしちゃって!」

 

 

 

 シンジは少し苦笑いをすると二人に敬礼を返した。

 彼はケイジへ向かっていった。

 多くの若い兵士は敬礼を返した。

 

 

「碇くん!」

 

 

 声がした。

 ヒカリの声だ。

 

 

「ケント君に挨拶して。」

 

 

 彼女はケントを抱き寄せている。

 ボクとミサトさんの子供。

 想えばほとんど育児放棄をしていた。

 ヒカリに全部任せていた。

 ペンペンも気が付けば近くにいる。

 

「彼にもね。」

 

 ヒカリはペンペンをみて、言った。

 シンジはケントを抱き寄せた。

 肌がまだ柔らかい。

 

「ペンペン、ケント…生きて帰ってくるよ。そしたらまた楽しいことをいっぱいしような。」

 

「それでよし。」

 

「ありがとう、委員長。」

 

「昔と変わらないわね。」

 

「ああ。」

 

 シンジはケントをヒカリに手渡した。

 ペンペンは退屈そうにタブレットとPCを開いていた。

 テキストファイルを開いていた。

 

 

『いきろ』

 

 

 あいつ、PCできるんだな。

 

 シンジは驚いた。

 そして、シンジは突き進んだ。

 ネルフ、それは以前と変わっていた。

 国連軍も戦略自衛隊も完全に味方になった。

 彼らから出張した兵士や技術者たちがシンジに敬礼をしていくのがみえた。

 

 

 シンジもそれに返した。

 

 

 そして、向かっていった初号機ケイジ。

 そこには初号機がいた。

 コアの中にいるのは綾波レイ。

 

 

「綾波、待たせた。」

 

 

 初号機の中にいる綾波にいった。

 これでボクと綾波は永遠にタッグを組む。

 実はミサトさんにもリツコさんにも内緒で彼女のデータを観るためにマギ端末をハッキングした。

 マギにはリツコさんの母親の精神がある。

 彼女は僕にあえて真実をみせてくれたんだろう。

 

 初号機と母さんのシンクロの結果、生み出された母さんとリリスの分身。

 それが綾波。

 

 ボクにとって綾波は妹。

 でも、彼女はボクを兄ではなく異性としてみていた。

 

 彼女への愛に答えられない。

 ミサトさんがいるから。

 

 

 だから、ボクは兄として家族として綾波を愛する。

 生涯にかけて。

 だから初号機に乗る。

 

 シンジはエントリープラグの中に入ると小さく言った。

 

 

「いくぞ、綾波。」

 

 

 

 かすかに声が聞こえた。

 

 

『碇くん、気張らないでね。』

 

 

 綾波も大人になったか。

 

 

「初号機、行きます!!!」

 

 

 

 シンジは出発した。

 

 

 

 

 

 ネルフEU支部。

 弐号機のケイジに入る前にアスカは自身のSNSにある投稿をした。

 数秒の動画だった。

 偏屈な人間たちがネルフに反感を持ち、怪獣を地球の守護者と大きな勘違いをしている。

 彼女はそれが気になった。

 

 彼女のフォロワーは9000万人近くいた。

 自分がいえばかなりの影響力はある。

 彼女はスマホを持つと、語りかけた。

 

 

「私は惣流・アスカ・ラングレーです、みんな知ってるよね。1部の人たちが怪獣は地球の守護者だって言ってる。でもそんなのはうそっぱちよ。本当に守護者ならなぜ何億人も殺したの?いい加減目を覚まして。今は人類みんなでたたかう時なの。それにゴジラは他の怪獣たちを使って私たちの世界を破壊しつくす気でいるの。それをとめるために私たちはみんなのために戦う。だからみんなも他の人のために戦ってあげて。以上、みてくれてありがとう。」

 

 

 それをケンスケはきっちりとカメラで録画していた。

 アスカはスマホで、ケンスケはノートパソコンですぐさま投稿した。

 

 

 

 すぐさま電撃的に拡散された。

 

 

「ケンケン。」

 

 

 アスカがその言葉で自分を呼ぶのは初めてだった。

 

 

「ありがとう、きっと鈴原もいてくれたら協力してくれたのにね。」

 

「ああ、あいつがいたこの世界のためにも俺は出来ることはなんでもするさ。」

 

「ええ、マリは私が守る。あなたの前に連れて帰ってくるように努力する。」

 

「頼むぞ、アスカ。」

 

 

 もう子供じゃなかった。

 二人はいい歳をした大人同士。

 そこには恋愛ではない、強い友情があった。

 

 

 

 彼女の動画を見ているものは多くいた。

 アメリカ西海岸、ロサンゼルス。

 怪獣の察知を知った軍はサイレンを鳴らしていた。

 

 多くの市民は避難したが、残っているものもいた。

 

 そこは昔から二つの犯罪組織がシノギを削って殺し合っていた。

 

 赤いカラーの「ローズ」、青いカラーの「ブルー・シャーク」

 

 ローズのリーダーであるヒスパニック、ホセ・ラミレスは長年対立していた組織のアジトの近くにきた。

 彼は赤色が好きで、アスカのフォロワーでもあった。

 彼女の投稿をみて、ある事を思いついた彼はライバルのアジト前まできた。

 

 ブルー・シャークのリーダーは黒人のランバート。

 

 

「こんなところへ何のようだ。」

 

「おまえと手を組みにきた。」

 

 

 ランバートは目を泳がせた。

 

 

「何ほざいてンだお前‥。」

 

「ここに怪獣が来る。小型の群れだ。そいつらにここは誰の街か教えてやる必要がある。」

 

 ランバートは苦笑した。

 だが、その通りだ。

 俺たちは長い間憎しみあった。

 

 

 だが、今日和解する時だ。

 

 

「いいだろう、だがこれで許したわけじゃねえ。」

 

「かまわねえさ。」

 

 

 ランバートとラミレスは握手をした。

 何百人といる組織は銃をかかげてそれを祝った。

 

 

「ロスは俺たちの街だ!!!」

 

 

 

 その声に便乗するようにギャングたちは銃を抱えた。

 

 

 

 テキサス、とある田舎町。

 そこにもカマキラスの群れがやってくるというアナウンスが流れた。

 ここでは白人至上主義者とメキシコ系ギャングが長い間抗争をしていた。

 南軍旗を掲げた白人至上主義者のリーダー、ジョゼフは6人の子供がいた。

 

 彼は末子のスマホである動画をみせられた。

 アスカの動画。

 

 

 ジョゼフは考えた。

 こいつは俺の長男より年下だ。

 なのに、戦っている。

 

 俺たちのために…。

 

 

 ジョゼフは帰還兵だった。

 彼の妻も。

 そして、5人の息子たちもいた。

 

 

「どうするの?」

 

 

 妻は聞いた。

 

 

「仲間を例の場所に呼べ。俺は先に行く。」

 

 

 

 ジョゼフは大きな銃を構えるとジープに乗って向かっていった。

 今も昔も変わらない。

 ジョゼフは仲間は国のために戦う。

 

 

 そこにメキシコ系たちがいた。

 天をみていた。

 

 

「よう、不法移民。」

 

「白野郎、何に来た。」

 

「なーに、お前らと同じことだ。ここは俺たちの場所だってなあいつらに教えてやるのさ。」

 

 

 メキシコ系のリーダーは笑った。

 目的は同じか。

 

 

「じゃあ今日は同盟を組むか。」

 

「ああそうだな、俺の仲間もくる。」

 

「パーティーだな。」

 

「そうだ、トルティーヤもつけるぜ。」

 

 

 ジョゼフは銃を構えた。

 ここは俺たちの世界、誰にも渡さない。

 

 

 

 アルカトラズ島。

 そこには暗殺者のコズロフ三兄弟がいた。

 

「兄貴、ここに怪獣がくるとよ。小型のやつ。」

 

 セルゲイはそう言った。

 

「ふん、では誰がこの世界の主か。なめた怪獣どもに教えてやるか。」

 

 イワンは自信満々に言った。

 3mある弟のアンドレイも続いた。

 

「あんどれ、つよーい!」

 

 看守チームやほかの受刑者たちも続いた。

 

 

 

 オーバーザーレインボウも同じだった。

 艦長は兵士を並べて演説していた。

 

 

「今日、諸君らに私は『死ね』というだろう。だがそれはなぜか!この世界に重大な危機がきている。使徒ではない。異次元の神々だ!」

 

 

 空気が張り詰めている。

 多くの兵士たちが艦長をみている。

 

 

 

「あるものはヤツを英雄というだろう。あるいは守護者だと。」

 

 

 艦長は大きな声で否定した。

 

 

「だが、俺はそんなものは信じない。私は人の力を!知恵を信じる!ここに怪獣が来る!お前らにできることはなんだ!」

 

 

 ある兵士が叫んだ。

 若い黒人の兵士。

 最近娘が生まれたばかり。

 

 

「戦いだッ!!!!!!」

 

 

「そうだ!戦いだ!諸君らとともに私は戦う!例えこの身がくだけようとも!!!」

 

 

 

 

 兵士たちは歓声を上げた。

 彼らも死ぬ気でたたかう。

 

 

 カヲルはそれをみつめていた。

 

 

「リリンは凄い。」

 

 

『だが、我々も負けない。』

 

 

「そうだ‥四号機。」

 

 

 リリス、綾波レイ。

 君が身を捧げて守ろうとしたこの世界はボクが守る。

 エヴァに破れて散っていったアダムの使徒たちのためにも…。

 

 

 

 

 

 アメリカだけではなかった。

 日本、第二テレビ。

 そこでは、アナウンサーの霧島マナがいた。

 

 

 シンジとは高校の同級生。

 彼女はシンジが好きだった。

 ずっといえなかった・・・。

 気が付けば年上の女と結婚していた。

 

 そして、ネットで先ほどエヴァ関係者の動画が拡散されていた。

 みんな戦っている。

 恐らくシンジ君も。

 

 意を決した。

 生中継中だが、現行を読む気はない。

 

 

「みなさん、大事なことをいいます。私はエヴァ初号機パイロット碇シンジの友人です。彼は世界を守るために苦労をしました。大事な人も失いました。それでも必死に戦っています。なぜ彼を非難し、怪獣を守護者というのですか!」

 

 

 ディレクターがいった。

 

 

「どうしますこれ。」

 

 

 プロデューサーは止めなかった。

 

 

「続けろ。」

 

 

 マナはつづけた。

 

 

「怪獣は別次元からきました。あなた方の友人でも守護者でも英雄でもありません、侵略者であり破壊者です!1部の人がシンジ君を嫌うかもしれません。でも、私は彼を信じます!みんなを守るために彼は戦っているんです!どうか、みんな彼に声援を!」

 

 

 その場にいるすべての人間はマナに拍手を送った。

 彼女は勇気を出した。

 シンジ君、もう私を覚えていないかもしれない。

 でも、忘れないで。

 私はあなたの味方。

 世界を守る、あなたのためになれるなら…。

 

 

 第二新東京。

 教会。

 そこで神父をしていた男がいた。

 リー。

 彼の母国はゴジラにより壊滅させられた。

 もうあの国に愛などない。

 だが…自分はあそこ、香港で生まれ育った。

 

 今、第三新東京に怪獣の群れが迫っていると聞いた。

 そしてここにもくるだろう。

 

 

 

「男になるときだよ、リー。」

 

 

 

 彼は自分を奮い立たせると青龍刀を持った。

 

 

 

 インド、そこにもメガニューラの一団が迫っていた。

 そこには守護者が二体いた。

 

 8m1トンの世界最大のトラはうねった。

 ここに自分のナワバリを侵すものがくる。

 許しはしない。

 

 

 同じ志をした人間がいた。

 かつてインド最強の殺し屋といわれたラー・シン。

 彼も動いた。

 

 サーベルを持ち、深呼吸をした。

 インド最強の虎拳、それをみせる時はきた。

 

 

 

 

 人々は今、怪獣を前に団結しようとしていた。

 それは大きな希望となり、ポジティブな感情を結束させていた。

 

 と同時に、ある生命体も活動を始めた。

 

 

 

 南太平洋。

 ゴジラたちの進撃を感じ、ある生命が繭から動き始めた。

 それは守護者。

 エヴァとは違うものだった。

 ゴジラたちを封じたことのある白の女王、モスラだった。

 破壊神を封じるために、女王が転生をした。

 彼女はただゴジラを倒すためではない、その悲しみと孤独を知っていた。

 それがゴジラの最大の弱点だったのだ。

 

 それをあのリリンたちに教えれるなら、手を貸そう。

 私の中で動く魂たちがそれを望む。

 

 

 

 

 決戦の時は近かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回以降、最終決戦開始。


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第9話:ゴジラvsエヴァ 最終決戦 パート1

タイトルには『ゴジラvsエヴァ』とありますが、本格的にゴジラと戦うのは次回以降になります。


 フランス、パリ。

 

 かつてイギリスと100年にわたる戦争を行ったその国では破壊神ゴジラの息子であり、怪獣たちの皇子であるバガンが暴れていた。

 バガンはかつて第一始祖民族がゴジラと宿敵を掛け合わせ生まれた人工生物であった。

 しかし、まだ幼体のころに、あまりの戦闘力の高さから第一始祖民族に封印されてしまった。

 やがて、ゴジラが彼の泣き叫ぶ声を聴きとげ彼を解放した。

 それ以降、自分の血を分けたゴジラを父として慕い、今日まできた。

 トリケラトプスを思わせる三本の角を額、鼻…それぞれにはやし兜のような背びれをもっていたバガンは角と背びれに黒い雷を負おうと、破壊光線を放った。

 

 

 そんな時だった。

 天から赤い物体がふってきた。

 あれは父上が以前、倒したものと同じもの。

 赤い巨人。

 巨人は左腕からシールドを展開すると、バガンの光線を吸収した。

 

 

 

「お生憎様…アンタの熱線は私のファイヤーミラーで吸収されるの。」

 

 

 アスカの声だった。

 アスカはシールドをブラスターに変化させると、バガンに向けてはなった。

 

 

 

「どぉラァ!!!」

 

 

 

 理屈状ならファイヤーミラーは数万倍にして攻撃を返す。

 はずだった。

 バガンは通じていない。

 数値は正しく数万倍に変化させたと出ている。

 

 

 まず間違いはないだろう。

 

 

「ってことは、アンタもしかして…エネルギー攻撃に耐性もってるってことか?」

 

 

 アスカは瞬時にわかった。

 これも彼女が科学者としての才覚を見出しているから。

 

 

「じゃあ、肉弾戦しかないか。」

 

 

 バガンも同じくわかった。

 ゴジラ族に受け継がれるエネルギー光線攻撃。

 これがこいつには通じない。

 肉弾戦なら体格で有利なこちらに勝機がある。

 

 

 アスカはJAから受け継いだ超電磁ハンマーを取り出した。

 そして、バガンの腹部めがけて叩きつけた。

 

 

 どおおおおん!!!

 

 

 凄まじい衝撃音と衝撃波があたりを包んだ。

 

 

 バガンはたじろいた。

 なかなかやるじゃないか。

 

 

 だが、傷はついていない。

 

 

 アスカは驚いた。

 

 

「全然効いてない!」

 

 

 バガンはその大きな腕で弐号機につかみかかった。

 

 

 

「接近はさせない!!!」

 

 

 アスカはATフィールドを開いた。

 急激なATフィールドの壁は衝撃波を起こし、バガンの1000mはある巨体をたじろかせた。

 だが、バガンは徐々に前に進んでいった。

 中和されているわけではない。

 こいつにATフィールドはない。

 効いていないんだ。

 

 

「…劣勢ね。」

 

 

 アスカは口ではそういったが微笑んでいた。

 こっちは力で負けても手は山ほどある。

 バガンの背後にはエヴァ8号機がいた。

 それを確認すると、アスカはATフィールドをひっこめた。

 

 事前に考えていた策通り。

 相手が接近戦をしている間に、もう一方が狙撃する。

 

 

 

「喰らえ!!!」

 

 

 マリはそういうと、絶対零度・スナイパーライフルを放った。

 バガンの体一瞬で凍り付いた。

 

 

 

「やったか…。」

 

 

 

 バガンの凍り付いたはずの体がビキビキと音を立てて割れていくのがみえた。

 これは氷結させて粉砕する。

 その兆候か?

 

 

 

「違う。」

 

 

 

 バガンは氷の結晶の中から姿を出した。

 大声をあげながら…。

 

 

 

「効いてないんだ。」

 

 

 

 マリとアスカは絶望した。

 こいつには通じない。

 氷結もエネルギーも怪力も…。

 

 どうすりゃいいの。

 

 

 バガンはほくそ笑んだ。

 次は俺の番だ。

 彼の長い腕は弐号機と8号機の首をつかみ、ひょいと持ち上げた。

 そして、剛力・怪力とともに強く強く締めあげた。

 

 

「うああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

「あああああああああああああああん!!!」

 

 

 二人は悲鳴をあげた。

 やがて、市街地の近くについた。

 凱旋門はバガンの足で崩された。

 二体はピンチに包まれていた。

 

 

 

 弐号機はやがてエッフェル塔まで投げ飛ばされた。

 8号機もまた、ルーブル美術館のそばまで放り投げられた。

 

 

 

「うそでしょ。」

 

 

 効いていない。

 こいつは強い。

 圧倒的に強い。

 こんなにこいつが強いなら、これを支配してるゴジラは…どれだけ強いんだ。

 

 

「…姫、ディオメンションタイドある?」

 

「あるよ。」

 

「私、特攻するから…。」

 

「は!?」

 

「撃って、私引き寄せるから。」

 

「アンタバカぁ!?」

 

「バカでもいいから、それしかないから…。」

 

「待って…まだ早いよ。」

 

 

 アスカの手元にはカドミウム手榴弾があった。

 日向の言うところではゴジラの弱点の一つに体内の放射能を下げるカドミウムがあるそうだ。

 あいつがもしも、ゴジラの血を継いでるなら…効くはず!

 

 

「ディオメンションタイドを使うより、使えるものがある。こっちのほうがいいよ。」

 

「んじゃ、私が特攻してやつの口を開かせるから…。その間に放り込んで。」

 

「了解。」

 

 

 マリは8号機を起き上がらせた。

 バガンはそれを赤い目で睨みつけた。

 

 

「裏コード、ビースト…タイガー!」

 

 

 マリはそういった。

 やがて、8号機は地面に四つん這いになった。

 そして、咆哮をあげた。

 

 8号機は顔面に亀裂が入るとアゴのようなものが生えていった。

 その中には牙があった。

 腕も人のそれから獣のそれのごとく鋭い爪がはえていた。

 

 まるで虎のようだとアスカは感じた。

 ビーストモード。

 アスカは聞いていたが、まさか実在するとは…。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

 

 

 

 

 虎のような爪と牙をはやした8号機はバガンの前に駆け出した。

 そして、素早いスピードでとびかかった。

 バガンはそれをみると、尾を使い跳ね飛ばした。

 

 

「うあっ!」

 

 

 マリは悲鳴をあげ地面に倒れた。

 装甲が危険値になっている。

 

 

 きつい…。

 

 

 でも負けない。

 だってケンケンがいるから。

 私は負けられない。

 

 マリは立ち上がった。

 

 

 

「まだまだ…。」

 

 

 8号機は鋭い爪をとがらせバガンにまたとびかかった。

 先ほどとは段違いのスピードで。

 8号機の鋭い爪はバガンの肩の皮膚を切り裂いた。

 

 

「ようやくダメージを与えられた!」

 

 

 だが、アスカのそれはぬか喜びだった。

 バガンの皮膚はすぐさま再生した。

 それは1秒ですらなかった、0.5秒。

 

 

「ちっ!!!」

 

 

 マリは舌打ちをした。

 やがて、素早く走り込むとバガンの背部にまわりこんだ。

 

 

「裏コード、ビースト!ゴリラ!」

 

 

 8号機の腕の筋肉が膨れ上がった。

 虎の次はゴリラか。

 やがて、8号機はその怪力でバガンの口を無理矢理開けさせた。

 

 

 これ、知ってる。

 映画のキングコングだ。

 こうやってキングコングはティラノサウルスを倒した。

 

 だけどもアスカは知っていた。

 例え8mのゴリラがいても、ティラノサウルスに勝つことはできない。

 映画の世界だから勝てただけ。

 これは映画の世界ではない。

 

 

 マリにもそれはわかっていた。

 

 

 

「姫!早く!」

 

 

「わかった。」

 

 

 

 

 弐号機の腕を使い、カドミウム手榴弾をアスカはバガンの口めがけて放り投げた。

 見事に当たった。

 バガンはそれを飲み込んでいった。

 

 

「これ以上はもたない!」

 

 

 マリはすぐさまバガンから離れた。

 スピードに関してはこちらのが分がある。

 とはいえ、いつまで続くか…。

 バガンの口から煙があがった。

 

 

「やったか!」

 

 

 マリは言った。

 だが、アスカは冷静だった。

 

 

「いや、やっていない。」

 

 

 まだ続く。

 

 

 

 バガンは起き上がると、怒りの声で震えていた。

 だが、肩の傷は広がっている。

 やはり、効いている。

 有効か。

 

 

 

 だが、それは床喜びであった。

 

 

 すると、バガンは頭を真正面に振りかざすとすぐさま突撃を繰り出した、

 

 速いっ!

 一瞬だった。

 

 

 バガンの鼻の大きな角は弐号機に当たった。

 

 

 

 腹部に激痛が走った。

 アスカは気づいた。

 突き刺さっている。

 バガンの角が。

 

 

 やがて、凄まじいエネルギーが角を通じて繰り出された。

 突き刺された上、焼かれている。

 まるで焼き鳥のように。

 

 

 

「ああああああああああああああああっ!!!」

 

 串刺しだ。

 そして嬲られている。

 

 

 

「アスカ!!!」

 

 

 マリはとびかかろうとしたが、バガンの長い尾は8号機の首に絡みついた。

 そして、万力とともに強く締め上げた。

 マリはゴリラの力でなんとか尾を引き離そうとしたが、ゴリラの怪力が推し負けた。

 

 

「こんなところで…。」

 

 

 マリの意識が遠のいていった。

 劣勢・敗北・・・・そして死。

 

 二人の中でその文字が浮かんだ。

 

 

 

 欧州で二体が苦戦する中、アメリカでは別の戦いが起きていた。

 

 

 アメリカ、シアトル。

 

 

 

 銀色の四号機、緑色の5号機。

 そして、渚カヲル。

 彼にとって、エヴァは体の1部。

 簡単に動かせる、エントリープラグの中にいなくても…。

 

 

 

 その前に赤い怪獣デストロイアはやってきた。

 その姿は悪魔に似ていた。

 赤い悪魔。

 デストロイア。

 

 

 

 悪魔は雄たけびをあげると、エヴァ二体と最後の使徒相手に戦いを挑んできた。

 

 

 

「行くよ…。」

 

 

 カヲルはそういった。

 ここは僕たちの世界。

 怪獣の住む世界ではない。

 お前らは虚構の世界に変えるんだな。

 

 

 赤い怪獣デストロイアは口からまずミクロオキシゲンを電流とともに放出した。

 それはまるで光線のように…。

 

 

 

「ちっ!」

 

 

 

 カヲルは地上最強のATフィールドを持っている持ち主。

 細かいATフィールドを何珀枚もはりめぐらせ全力をこめてカバーをした。

 

 

「くうう・・・・。」

 

 

 

 カヲルの腕に激痛が走った。

 

 

 ボクのATフィールドが推し負けている…。

 相手のが力が上なのか。

 

 

 

 

「でもね、それは想定の範囲内なのさ。」

 

 

 

 脇から四号機と五号機はとびかかってデストロイアの体につかみかかった。

 ミクロオキシゲンは上空に向かった放出した。

 そして、そのまま二体に押し倒され地面に倒れた。

 

 

 四号機はマゴロクソードをデストロイアの腹部に刺した。

 五号機も同じく。

 

 

 

「おっと、君の弱点は・・・低温?違ったかな。じゃあたっぷりと味合わせてあげるよ!!」

 

 

 

 カヲルはそういうと、四号機に命じた。

 そして、四号機はキャノン砲を使い・・・絶対零度砲を放った。

 

 

「お別れだ。」

 

 

 カヲルはそういった。

 その時だった。

 デストロイアは自身の尾を引きちぎるとそのまま放り投げた。

 そして、自身はそのまま絶対零度で氷漬けになっていった。

 

 

「なぜ自身の体を引きちぎったんだ。」

 

 

『みろ!』

 

 

 四号機の中にいる魂が気が付いたことでその答えはすぐにでた。

 引き千切れた尾はすばやく複数の分裂体を産んでいた。

 そして、市街地の方へと向かっていった。

 

 

 まだ避難民がいる。

 

 

 

「まずい!」

 

 

 

 カヲルはすぐさま、尾を追いかけた。

 四号機と5号機も…。

 分裂した個体はやがて合体すると、より大きな中間型に変化した。

 

 その姿は蜘蛛に似ていた。

 

 

「あいつは不死身なんだ!」

 

 

 だが、今のままなら勝てる。

 

「これを人前で使うのは嫌だったが、今は仕方ない!」

 

 

 

 カヲルは指をパチンと鳴らした。

 中間型デストロイアは虚数空間の中に入るとそのまま溺れて消え去った。

 

 

「はあ…。」

 

 

 彼はため息をついた。

 

 

 

 

 カヲルは気が付いた。

 そして、遅かった。

 

 背後からバキバキという音がすると、氷漬けになったはずのデストロイアの体が蘇っていたことに気づくのはだいぶ遅かったのだ。

 さらに、尾も再生していた。

 

 

 

 デストロイアは弱点だった低温も克服していたのだ。

 死んだふり。

 ハメられていたのはこっちだった。

 

 

 

 

 

「まずい!」

 

 

 

 やがて、デストロイアは大きな角からミクロオキシゲンの塊と真空波を放った。

 それは三日月状に光輝いた。

 超高層ビルをいくつも破壊していた。

 

 

 中にコアのある四号機は気が付いた。

 だが、5号機は避けることができなかった。

 

 

 ざっくり。

 

 

 音が響くと超高層ビルとともに真っ二つになった五号機のそれがあった。

 

 

 

「あっ!」

 

 

 

 カヲルは悲鳴をあげた。

 なんてことだ。

 ボクのミスでこいつは死んでしまった。

 再生したデストロイアの尾は四号機をつかんだ。

 

 

『うわああああああっ!!!』

 

 

 そして地面に押し倒した。

 圧倒的な怪力で。

 

 

 

「四号機!!!」

 

 

 

 カヲルはその時気が付いた。

 デストロイアの顔がのびていた。

 そして、自分の近くにきていた。

 

 

「ちくしょう!」

 

 

 カヲルはATフィールドを出した。

 

 

「うぬうううううううう!!!」

 

 

 鼻息を荒くした。

 先ほどより強くした。

 

 

 はずだった。

 

 遅かった。

 デストロイアはアゴの力だけでATフィールドをかみ砕くと、そのまま、フィフスチルドレンであった渚カヲルを飲み込んだ。

 まるで豆粒を飲む人のように…。

 

 

 

『フィフス!』

 

 

 

 四号機の魂は悲鳴をあげた。

 だが、何もできなかった。

 デストロイアの怪力はすさまじいものがあった。

 まだ自分の名前も言っていなかったのに・・・四号機は後悔した。

 

 

 

 それだけではなかった。

 太平洋の空を覆いつくしていたメガニューラたち、それは米軍・国連軍の合同部隊の戦闘機を次々と落としていた。

 だが、メガニューラたちも何度もやられていた。

 

 

 オーバー・ザ・レインボウも戦っていた。

 艦長は部下たちに命じた。

 

 

 

「撃ち方用意!!!」

 

 

 艦長の声が響いた。

 いつだろう。

 戦闘は…。

 ガギエルの時か?

 まあいい、いつであろうと…死ねば無駄になる。

 

 

 

「はじめっ!!!」

 

 

 

 艦長の声とともに砲撃は行われた。

 雲霞のごとき、メガニューラの群れに砲弾はぶち当たった。

 何体かは効果があったらしく、死体がふってきた。

 

 だが、それでも足りない。

 このままでは負ける。

 

 

 

「死ぬまであがいてみせる。人間の強さを思い知れ!」

 

 

 

 艦長は微笑んだ。

 そんな時だった。

 

 

「怪獣が!!!戦艦内に侵入しました!!!」

 

「なに!」

 

「デストロイアの分身どもです!」

 

 

 怪獣どももめ!

 でかいのと小型を同時進行形で派遣させたか…。

 なめたことを!

 

 

「連中め。、なめたことを!」

 

「どうします。」

 

 

 艦長は決意した。

 その手には銃があった。

 かつて、彼はベトナムの地で多くのベトコンを殺した。

 恐らく無実の人間もいた。

 それを今でも恥じている。

 あの戦争、負けるべくして負けたのだ。

 

 

「白兵戦は久々だな。」

 

「やりますか?」

 

「うむ、総員死を覚悟せよ!」

 

「あいつらに人間の恐ろしさを教えてやりましょうや!」

 

 艦長たちはやる気であった。

 人間の力をなめるなよ。

 バケモノ風情が。

 彼は強気であった。

 

 

 

 

 

 アメリカ各地をカマキラスは襲っていた。

 テキサスの田舎町。

 そこをカマキラスの3体ほど襲撃していた。

 大きさは50mほどだった。

 

 

 弱い生命体ども、何匹殺しても飽き足りない。

 殺すのは楽しいことだ。

 

 カマキラスはカマをカチカチと鳴らすと、人々の恐怖を楽しんだ。

 それを黙って見過ごす人間だけではなかった。

 

 

 そこにけたたましい音楽が鳴り響いた。

 

 

 

「ここは俺たちの国だあああああああああああああっ!!!!」

 

 

 

『なんだあれは。』

『わからん。』

『なんだあいつら。』

 

 

 3体のカマキラスは顔を見合わせた。

 そこに数百・数千というギャングたちがやってきていた。

 彼らの手には特殊な銃が様々あった。

 対立していたはずの白人至上主義者・不法移民たちは徒党を組んでいた。

 

 

「あのバケモノどもに思い知らせてやれええええ!!!」

 

 

 白人至上主義者のリーダー、ジョゼフはトラックからロケットランチャーを取り出した。

 そして、カマキラスの一匹にあてた。

 それは呆然としていたカマキラスに当たった。

 

 

 ばごぉおおんん!!!!!

 

 

 轟音とともに、カマキラスは炎に包まれた。

 カマをなんどもなんどもならしながら地面に倒れ苦しんだ。

 そして、カマキラスは死んだ。

 彼の仲間たちは恐怖した。

 

 

 

 こいつら、もしかして・・・強い!?

 

 

 

 男たちは火炎瓶を持つとカマキラスに放り投げた。

 一体はすぐさま逃げた。

 残された一体は火炎瓶の犠牲になった。

 

 

「お前ら、今だ!叩きのめしちまえ!」

 

 

 不法移民の集団はさらに火炎瓶を投げつけた。

 白人至上主義者たちは手榴弾を。

 それはカマキラスにとって貧弱であったが、精神を攻撃するにはとっておきだった。

 

 ジョゼフは告げた。

 

 

「みんな下がれっ!」

 

 

 

 彼はRPGを再び放った。

 哀れなカマキラスはそれの犠牲となってしまったのだった。

 

 

 生き延びた一体は仲間たちに連絡した。

 

 

『人間は予想以上に強い!』

 

 

 

 彼はそのまま南の方へと逃げ去ろうとした。

 だが、それをみていたジョゼフの妻は逃がさなかった。

 

 

「チキン虫が!!!」

 

 

 彼女はトラックに隠していた対戦車ライフルを使うと、カマキラスを狙った。

 そして、撃ち落とした。

 カマキラスであったそれは、地面へと崩れ去っていった。

 

 

 一方ロサンゼルス。

 ラミレスとランバートもいた。

 軍関係にいたメンバーがあるものをもってきた。

 M-1銃、レールガン。

 それは10機ほどあった。

 

 かつて対立しあうギャング同士であった彼らは怪獣を前に結集していた。

 

 

 

「ここは俺たちの土地だあああああああああ!!!!なめんな!!!!!」

 

 

 

 ランバートは叫んだ。

 ラミレスも続いた。

 

 

「連中を追い出せっ!!!!!」

 

 

 

 彼らの前方にはメガニューラの群れがいた。

 ラミレスの部下はトラック運転手を集めて使っていた。

 運転手はほくそ笑んだ。

 

 

「虫よォ・・・・人間を舐め腐らねえー方が身のためだぞおおおおおおおお!!!」

 

 

 

 

 メガニューラたちは何が起きているか理解できなかった。

 その前方には10トン以上ある改造トラックが迫ってきていたのだった。

 やがてトラックはメガニューラを弾きつぶした。

 

 

 

 

「ひゃっほーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

 

 運転手は嬌声をあげた。

 そして狂喜乱舞して次々と地上にいたメガニューラを弾き殺した。

 トラックは一体だけではなかった。

 次から次へと襲い掛かったのだ。

 

 

 

「ぶっ殺せええええええええええええええええ!!!!」

 

 

 

 ギャングたちは銃を乱射しながらカマキラスを追いかけていた。

 カマキラスは人間の狂気に押し負け、逃げていた。

 

 

「殺せ!!!殺せ!!!!殺せ!!!!」

 

 

 やがて、カマキラス数体で固まるとギャングたちの前に出てきた。

 リーダーのラミレスはほくそ笑んだ。

 

 

「そうかそうか、じゃあレールガンでも喰らえ!!」

 

 

 

 M-1式レールガンはカマキラスの群れを次々と殺害していった。

 さらにメガニューラたちも。

 それにライバルであったランバートも続いた。

 

 

 

「てめえらなんぞよりな、イタ公やロシア人のがこえええんだよおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 

 

 彼らはM-1式レールガンをメガニューラたちにぶち当てた。

 

 

 

 彼らだけではなかった。

 

 

 

 

 

 

 メガギラスは空中にたたずみ、それをみていた。

 彼女は90万いたエリートのメガニューラたちとともにそれをみていた。

 

 彼女には目的があった。

 別の。

 

 他の200万いる雑魚ども、そして10万のカマキラスに任せていた。

 彼女は虎視眈々と狙っていた、野心の成就を…。

 

 

 

 

 一方、日本では。

 オルガと彼に率いられた複数の異形の人間ミュータントがきていた。

 人間であったそれらはナメクジとイソギンチャクとタコの混ざったような姿になっていた。

 肉塊の上に触手が生えているだけの人間もどき。

 ブクブクのそれどもは、第三新東京市に到着した。

 

 

『愚かな人類よ、今すぐ降伏せよ!』

 

 

 

 オルガはその場にいるすべての人間にテレパシーを送った。

 

 

 だが、ネルフ本部の人間の意志は一つになっていた。

 冬月は険しい顔でいった。

 

 

「うだうだ言わずにさっさと帰れ。お前の居場所はここではない。汚くてバケモノだらけの地獄にでもおちるんだな。」

 

 

『それが貴様らの答えか。』

 

 

 

 

 オルガの命令とともにミュータントの怪物たちは触手をクモのようにうねらせながら突き進んだ。

 それは何万といた。

 オペレーターの何人かがトイレに駆け込むのを冬月はみた。

 冬月も正直びびっていた。

 

 

 

「待ったァ!!!!!」

 

 

 ミサトの声だった。

 

 

 ミサトは先ほどの薄いパワードスーツを着て立っていた。

 またこれを着る羽目になるとは…。

 だが、この地に戦える人間は自分しかいない。

 ペンペンと息子を救うために彼女は立ち上がった。

 

 

 

「かかってきなさい。」

 

 

 ミュータントたちは人間らしき顔がかろうじて残っていた。

 それらは意識も本能も残っているかは知らなかった、だが人型の頭部からはよだれのようなものがでていた。

 使徒もグロテスクだったが、こいつらはやばすぎる。

 ミサトの胃の中でむかむかする何かがこみあげてきそうだった。

 

 

『一人で来るのかね?』

 

 

 

 オルガは嘲笑った。

 以前自分はこいつらより高度の文明を持っていた。

 原子サイズの生命体も開発できない。

 宇宙にいったとしてもせいぜい太陽系レベル。

 彼からすれば、全部お遊戯会の工作程度のものだ。

 そもそも程度の低い哺乳類がなにをほざく。

 

 

『たった一人で何ができる。』

 

 

「怪獣のくせにべらべらとしゃべる舌ね。」

 

 

 

 随分と強気なメスサルだ。

 まあいい。

 オルガは空中に漂っていたが、腕をひねった。

 

 

 

 

『お前の相手は私ではない、こいつらだ。せいぜい玩具にされて死ね!』

 

 

 

 

 それとともに複数のミュータントたちは雄たけびをあげながら迫ってきた。

 ミサトはナイフとレールガンを持ち、彼らの前におどりかかった。

 特殊ククリナイフはミュータントたちの体を引き裂き、レールガンは細切れに粉砕した。

 だが、数が多い。

 ミサトにはわかっていた。

 

 引くわけにはいかないのだ。

 

 

 

 

 オルガはミサトを放置するとそれ以外のメンツの心に話しかけた。

 

 

 

 

 

『貴様らの弱点…それは文明に頼っていることだ。』

 

 

 

 オルガは念力を使うと、彼の脳内で生み出したウィルスをマギの中にばらまき始めた。

 すると、ネルフのありとあらゆる機械システムが異常をきたした。

 そして、自爆プログラムが起動した。

 

 

「マギの自爆プログラムが起動しましたあああああ!」

 

 

 

「なにっ!!」

 

 

 冬月は顔をしかめた。

 

 

「まさか…。」

 

 

 リツコは気が付いた。

 コイツはここを直接攻撃するんじゃない。

 こうやって、搦め手を使うんだ。

 イロウルの時も勝てた。

 今度も勝てる。

 彼女は発令所を抜けて、地下深くのマギ端末の元へと向かっていった。

 

 母さんが生み出したマギ。

 あんなバケモノどもの好きにはさせない。

 彼女はたどり着いた。

 

 

 彼女はノートパソコンを手に持っていた。

 これを使えば、こういう時のために反ウィルスプログラムを起動させる。

 電源は立ち上がった。

 そして、フォルダーを開いた。

 これでいける!

 

 

 

 はずだった‥。

 

 

 

『させんよ。』

 

 

 

 オルガは微笑んだ。

 再び腕をあげた。

 すると、と同時にマギ端末の何本かのコードが切れた。

 そして、まるで蔓か何かのようにリツコの足に絡みついた。

 

 

 

「え?!」

 

 

 複数のコードがリツコの首・腕・足に絡みついた。

 

 

 

「ううっ!!!」

 

 

 

 そして、リツコを強く縛りあげた。

 

 

『そこでいろ。』

 

 

 オルガの声が聞こえた。

 リツコは無念さに顔をしかめるとそのまま気を失っていった。

 

 

 

『次はお前たちだ。』

 

 

 心がある。

 知恵がある。

 それは武器になる。

 だが、弱点にもなる。

 

 

 オルガは指を鳴らした。

 

 

 

 冬月の頭に声がした。

 次の瞬間。

 冬月の頭に極度の電撃がはしった。

 

 

「おうおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

 

 

 

 そして、同時に声がした。

 

 

『冬月先生…。』

 

 

 ユイ君!?

 なぜだ。

 

 

 

『なんで私を止めてくれなかったんですか?』

 

 

 いや違う、ユイ君はそんなことをいわん。

 ふざけるな。

 すると、ユイの声はしなくなった。

 

 

『冬月。』

 

 

 この声は…碇?

 まさか…。

 碇まで真似るのか。

 

 

『お前は所詮選ばれなかったんだよ。俺に及ばん。ユイは俺を選んだ。』

 

「やめろ‥‥。」

 

『60超えて経験無しか?哀れだな。』

 

「やめろ!やめろ!!!やめろ!!!!!!!」

 

 

 

 碇は…そんなことを考えてない。

 声だけ真似た下劣な輩め…。

 だがどうすることもできない、冬月は苦悶し悶えた。

 

 

 

 他のメンバーにも声が聞こえた。

 それは日向の頭にも。

 

 

『日向君。』

 

 

「葛城さん?」

 

 

 ミサトの声だ。

 

 

 

『アンタみたいなキモイオタクは、私の駒なのよ。』

 

 

 

 違う、葛城さんはこんなことをいわない。

 お前は別だ。

 消えろ。

 

 

「お前は違う!葛城さんじゃない!」

 

 

『そうなの?』

 

 

 別の声。

 まさか、シンジ君?

 

 

『ごめんね、日向さん・・・ボクのほうがあなたより上だね。』

 

 

『おやおや、相手にされなかった負け組が何か言ってるよ。葛城のナニを知っているんだろう?』

 

 

「やめろ・・・やめてくれ!!!」

 

 

 日向の頭にもまた頭痛が響いた。

 それは他のメンバーも同じだった。

 オルガにはわかった。

 全員が苦しんでいる。

 苦しみの声。

 苦悶の声。

 美しい…。

 

 

『君達にはほかに仲間がいる。そうだね…。なら…。』

 

 

 オルガはアゴに手を振れ、指を鳴らした。

 すると、ドイツにいる加持の脳内にも聞こえてきた。

 

 

 

「うぐ!」

 

 

 加持は片膝をついた。

 そして、頭痛に苦しんだ。

 

 

「加持さん!?」

 

 ケンスケの心配する声が聞こえた。

 だが加持にはどうすることもできなかった。

 

『兄ちゃん、なんで見殺しにしたんだよ…なんで裏切ったんだよ。』

 

 

 弟の声だ。

 なぜこんな時に、そしてこのヒドイ頭痛はなんなんだ。

 

 

「まさか!!これは…連中、わかってるのか。」

 

 心を攻撃してきている。

 いや、心だけじゃない。

 脳を攻撃しているんだ。

 心理戦か?

 

 

 今まで経験したことのない頭痛に加持は苦しんだ。

 ケンスケも加持を心配している場合ではなかった。

 

『ケン坊』

 

 パパの声!?

 なんでこんなところにいるんだ?

 

 

『ケン坊、いい歳こいて玩具の銃で遊ぶのは流石にないぞ。』

 

「ほ、放っておいてくれ!!!」

 

 

 ひどい!!

 パパはこんなことをいわないよ!!!

 でもなんだ、頭が痛い。

 ケンスケも頭を抱え苦しんだ。

 

 

 オルガは苦しむ人間の姿を見て高笑いをした。

 

 

 

 どいつもこいつもバカばかり。

 人類を征服するなどたやすいこと。

 彼は嘲笑した。

 以前の自分のような弱い知的生命体を。

 

 だが、彼はある存在を忘れていた。

 

 

 

 ペンペン。

 温泉ペンギン。

 彼の知能は格段に上がっていた。

 人間の3歳程度から8歳程度に。

 

 

 何だよどいつもこいつも俺の存在を無視しやがって。

 なんだよなんだよ。

 ご主人は冷たいし、赤い姉ちゃんがいなくなってからお風呂は一人で入ってるし。

 

 

 ペンペンを鼻をくんくんとさせた。

 

 

 この臭い臭いはあれだ、あの金髪女。

 じゃれつけば魚くれるかな。

 人間、特に女はちょろいもんなー。

 

 

 金髪女の臭いをたどると、ペンペンは気が付けば地下にきていた。

 ペンペンの思った通りだった。

 金髪女ことリツコがいた。

 

 

 

 何だなんで寝てるんだ。

 まだお昼寝じゃないだろ。

 魚ちょうだい。

 おなかすいたよ。

 

 

 ペンペンは気が付けば手元に人間が使うノートパソコンがあるのがみえた。

 

 あっこれって…。

 

 

 ペンペンはふと思い出した。

 ご主人様とペット2号(シンジ)と一緒にみた映画。

 確かあいつらはこれでかっこいいことをしていた。

 俺もやりたい。

 かっこいいことしたい。

 

 

 ペンペンは無邪気にキーボードのエンターを押した。

 それは逆転の合図だった。

 

 

 その時だった。

 ペンペンには他意はなかった。

 

 オルガのハッキングプログラムは邪魔をされた。

 リツコが作ったそれはただのプログラムではなかった。

 零号機の中に眠る魂を完全に開放するもの。

 長い間のリツコの悲願であった。

 

 

 新型零号機、それは人工知能で動くものであった。

 青い零号機の中にいる魂は目覚めた。

 魂の主はマギにアクセスをした。

 射出の命令を出した。

 

 

 単眼のサイクロプスが如き零号機はすぐさま外に出た。

 それは第三新東京市が使徒迎撃要塞であったころの名残であった。

 

 オルガはその存在にふと気が付いた。

 そして、ネルフのコンピューターシステムにハッキングできなくなったことにも気が付いた。

 

 

『なんだ貴様…』

 

 

 オルガは焦りの声を出した。

 零号機の単眼はギラリと光った。

 

 

 

 

 

 

 その頃、人間まがいの魑魅魍魎たちとミサトは死闘を繰り広げていた。

 魑魅魍魎たちに飛び掛かり、奴らの肉にナイフを突き刺していた。

 レールガンを乱射して、連中を肉片に変えていた。

 

 

 何体か数は減っていた。

 その時だった。

 

 

「うう!」

 

 

 首に何か絡みついた。

 それは赤かった。

 触手。

 かつて人間であった物たちのもの。

 

 ミサトの首を強く締め上げた。

 

 

「うっ!」

 

 

 それが彼らの反撃ののろしだった。

 ミサトは腕と足を触手で縛られて行った。

 ねっとりとした粘液がミサトの体を這いまわるのをパワードスーツ越しに感じていた。

 

 

 気が付くと、何体かが本部に入っていくのがみえた。

 

 

「ダメッ!!!」

 

 

 

 あのままでは息子が!ペンペンが!

 

 ミサトは精神力を統一させるとパワードスーツの力をあげた。

 そして、触手を引きちぎり魑魅魍魎たちを切り刻んでいった。

 

 だが、相手は多かった。

 

 触手たちはミサトの首と体に再び絡みつくと、圧倒的多数でミサトを壁に押し付けた。

 ミサトの体中に触手はまとわりつくと、万力を込めて締め上げた。

 

 

 

 魑魅魍魎たちは職員を何人か殺すとそのまま突き進んでいった。

 

 

 

 その先には託児所があった。

 職員の多くが子供を庇っていた。

 そんな職員の一人にヒカリはいた。

 彼女は銃を構えていた。

 

 

「この子たちは私の子供でもある!お前ら如きに手出しは…させない。」

 

 

 こんなバケモノどもがなんだ。

 もう怖くはない。

 ・・・だが、相手の数が多い。

 それに銃の撃ち方は正直わからない!!!

 ヒカリが焦っていたその時だった。

 

 

 

 魑魅魍魎たちと思われる悲鳴があがった。

 彼らは引き裂かれ、ちぎられ死んでいった。

 その中を大男が蠢いていた。

 

 

 

 

 アーノルド…。

 

 

 

「おじさん?」

 

 

 その姿は恐ろしかった。

 まるで阿修羅のよう。

 

 

「その子に手を出すな!!!!」

 

 

 

 アーノルドはそういうと、オルガの放ったミュータント兵士たちを押し出していった。

 やがて、彼はガレージの近くにきた。

 そこではミサトが触手にまみれ窒息死されそうになっているのがみえた。

 

 

 

「消えろッ!!!!」

 

 

 

 

 機械仕掛けの剛腕は魑魅魍魎たちを引き裂いた。

 ミサトを縛り締め上げていた数体はアーノルドの剛腕と怪力で引き千切れて行った。

 彼女はようやく気が付いた。

 

 

 

「あなたは…。」

 

「おまえを殺すのは俺だ。」

 

 なんて臭いセリフ。

 でも言われるとちょっとうれしいかも。

 

 

「それにお前は他人に頼りすぎだ。自分の手で子供を愛せ。」

 

 ケントのことか。

 いわれてみればそうだ。

 

 

「いわれなくても…。」

 

「だったらこれが終わればあいつを抱いてやれ。お前は母になのだ。母になるという事は強さだけではない優しさも必要なのだ。」

 

 畜生いってくれるわね。

 

 その時であった。

 複数の魑魅魍魎たちは退散をし始めた。 

 

 

 

 

 

 

 中国、北京。

 

 ゴジラは中国軍を蹂躙し、首都を破壊していた。

 やがて、中国の要請によりアメリカ軍も攻撃に参加した。

 だが、ゴジラをとめることすらできなかった。

 人類の攻撃など彼にとって無に等しかった。

 

 

 韓国、ソウルで待機していた米軍の戦艦二隻はあるミサイル数発を放った。

 それは最新鋭のN2爆雷。

 北京を吹き飛ばすことなど造作でもなかった。

 威力で言えば、ツァーリ爆弾級の物だった。

 ついでにバンガーバスター数発。

 

 

 ゴジラは嘲笑した。

 

 

 まだこんなものでどうにかなるとおもっているのか?

 彼は迎撃もしなかった。

 

 

 やがて、北京の街は一気に破壊されたはずだった。

 その破壊に生じたエネルギーをゴジラは全て吸収した。

 そして、逆にソウルにいる戦艦に向けて解き放ったのだった。

 ソウルの街ごと、戦艦数隻は吹き飛んでいった。

 

 

 ゴジラはふと、天をみた。

 海から巨大なエネルギーを持った物体が来るのも感じていた。

 彼の近くには改造され強化されたガイガンがいた。

 怪獣の王はガイガンに目をやると、小さな声とともに命令をだした。

 

 

『やってこい。』

 

 

 ガイガンは金属音のかすれた咆哮をあげた。

 

 確かにさきほどはやられた。

 だが、今回は違う。

 強化され、貴様らの『チェーンソー』を腕につけた。

 帯電性のために電力吸収装置もつけた。

 

 

 そんな彼の前方に巨大な巨大な竜巻があるのがみえた。

 高さ3000m近くはくだらない。

 その中に紫色に光るものがあった。

 

 

 この竜巻はエヴァ初号機が起こしているものだった。

 

 

 そんなものの中で引きこもっているのか。

 笑わせる。

 

 

 ガイガンは腕の1部からチェーンを解き放った。

 やがて、チェーンは竜巻の中にからみついた。

 そして、ガイガンを引き寄せた。

 ガイガンはあえてわかっていて巻き込ませた。

 

 

 竜巻の中ではすさまじい風の圧力を感じた。

 車、ガレキ、その他もろもろが渦巻いていた。

 その中心で凄まじい雷とともに初号機はいた。

 さながらギリシャ神話のデウスが怒り狂うか、あるいは風神雷神の怒りのごとく…。

 

 

 ガイガンはそれを観てもおじけづくことはなかった。

 チェーンはサイボーグ怪獣の天敵に絡みついていた。

 

 

 

 

 ここにいる宿敵よ、お前が俺に恥をかかせたことを後悔させてやるぞ!

 

 

 ガイガンは両腕についたチェーンソーを起動させた。

 そして、初号機に踊りかかった。

 

 

 シンジはガイガンをみつめた。

 

 

「下がれ。」

 

 

 

 ガイガンは止まらなかった。

 当然だ、怪獣に人間の言葉など通じない。

 

 

「仕方ない。」

 

 

 ガイガンはシンジの100m前まで近づいた。

 次の瞬間だった。

 シンジは以前と同じように拳を突き出した。

 そして、以前と同じように一瞬でガイガンの顔面を粉々に粉砕したのであった。

 

 

 

 

 

 シンジは竜巻の力を解放した。

 そして、複数ある翼を使いパラシュートのように降下した。

 市街地に近くなると、その真ん中にゴジラが立っていた。

 

 

 

 拳を地面にを突き出した姿勢のまま着陸した。

 轟音と衝撃波があたりを包んだ。

 ゴジラはたじろく素振りもせず、淡々と静かにみていた。

 

 

 逆にシンジは睨んだ。

 コイツは母を奪った。

 憎い怨敵。

 そして、第一始祖民族を滅ぼした使徒を地球に追い込ませたすべての諸悪の根源。

 

 

「お前は強いかもしれない。でもやるぞ。」

 

 

 シンジは孤独に決意した。

 ゴジラは動かなかった。

 シンジとゴジラはお互いをにらみ合った。

 

 

 

 今、人類の命運が決まろうとしていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次の更新は来週水曜を予定しております。
私用により、更新が少し遅れます。
申し訳ありません。


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第10話:ゴジラvsエヴァ 最終決戦 パート2

 北京。

 初号機に乗ったシンジとゴジラは睨み合った。

 

 

 

「いくぞ。」

 

 

 シンジはそういうと、それまで晴天であった天気を曇り空に変えた。

 初号機は天気すらも操れるようになったのだ。

 リリスと一体化したことで、初号機は最終形態に変化し全知全能の力を得た。

 天気を操る能力もその一つだ。

 彼は全身の力を掌の中に集中すると電撃を解き放った。

 

 黒い怨敵、ゴジラは口を開けてその電撃を吸収しまるでコーラを飲む子供の用に飲み干した。

 エネルギー攻撃は効かない。

 

 

「くそっ…。」

 

 

 このままでは以前と同じか。

 

 

「ならっ!!!」

 

 

 シンジは空中に飛び上がった。

 そして、先ほどと同じく高さ3000mほどある竜巻を起こした。

 

 

「これならどうだ!!!」

 

 

 ゴジラはすると再び雄たけびをあげた。

 その衝撃音で竜巻は吹き飛んでいった。

 エヴァ初号機も一瞬大きくよろめいた。

 

 

 

「こいつっ…。」

 

 

 なんだってできるのか。

 仕方ない。

 奥の手を使うか。

 

 シンジは背中に構えていた武器に目をやった。

 カヲル君がみつけた、ゴジラの背びれが混じった槍。

 これなら、ヤツを傷つけることができる! 

 

 

「いくぞ。」

 

 

 陸上選手のやるクラウチングスタートを真似た動きをすると、シンジは走り始めた。

 時間は静止したようにみえた。

 だが、違う。

 リリスと一体化した初号機は光の速度以上に素早く動けることができたのだ。

 シンジの体は電流を帯びると、一歩一歩と光以上の速度で動いた。

 

 

 あいつは動きがのろまだ。

 僕の動きに気が付くわけないだろ。

 シンジは高をくくっていた。

 そして、背中のパッドにつけていた槍を取り出しゴジラに飛び掛かろうとしたその時だった。

 

 

 ゴジラの目が動いていた。

 眉間がじわりとまるで、スロー再生するように動いた。 

 そして、じっくりじっくりと初号機を睨みつけていくのがみえた。

 

 

「まさか……。」

 

 

 こいつ、気が付いている!? 

 光の速度で動く自分がみえているんだ!! 

 やがて、ゴジラの尾が動くのがみえた。

 

 

『碇君逃げて!』

 

 

 綾波の声。

 次の瞬間、時間が元に戻ったように動きはじめた。

 そして、光の速度以上に素早く動けるはずの初号機の腕にゴジラの尾は蛇のように絡みついた。

 

 

「うわっ!」

 

 

 そして、ゴジラは力を入れた。

 シンジは右腕を抑えながら痛みに苦しんだ。

 やがて、シンジはゴジラ討伐の手がかりになるはずだった槍を地面に落としてしまった。

 

 

 

「うわああああああああああっ!!!!」

 

 

 

 ボキッ。

 

 

 折れた。

 初号機の腕が。

 シンジは腕を抑えると、地面に倒れもだえ苦しんだ。

 

 

 その様子をゴジラは冷たくみつめた。

 そして、初号機の顔面をその足でけりとばした。

 

 

 

「あぐっ!!!!!」

 

 

 紫色の守護神はまるでサッカーボールのように地面に転がっていった。

 人民大会堂を破壊し、周囲の建物を巻き込みながら初号機は地面に倒れた。

 

 

「……バカな……。」

 

 

 初号機は強くなった。

 そのはずなのに…………負ける!? 

 また!? 

 シンジの心が揺らぎ始めた。

 圧倒的な自信が。

 

 

 

「あ、ああ…………。」

 

 

 さっきのはただの蹴り。

 なのに、もう立ち上がれない。

 シンジは天を仰いだ。

 すると、ゴジラは地面に倒れた初号機の腹部軽く踏みにじった。

 

 メリメリ…。

 

 地面が割れている。

 クレーターができている。

 

 

「あ……あが……あが……。」

 

 

 シンジは初号機の手を使い必死でもがいた。

 激痛と絶望が広がっていく。

 

 

 そんな時だった。

 ゴジラの顔に何かが当たるのがみえた。

 光線。

 

 

 ゴジラはふと、後部をみつめた。

 すると地平線のかなたに数万ともいえる巨人がせまってくるのがみえた。

 シンジはようやくゴジラから解放された。

 

 

 

「初号機パイロット。」

 

 

 この声、フリッツのものだ。

 音声回路を使っている。

 

 

「実にご苦労だった。だが、下がれ。お前の出番ではない。」

 

 

「なに!?」

 

 

「わしとエヴァインフィニティが…こやつを倒す!!! ネルフ本部を襲撃するとわかってたわしは、先に逃げていた。そしてこのエヴァインフィニティどもの準備をしていたのさ!」

 

 

 エヴァインフィニティ? 

 シンジはみつめると、髑髏状の顔をした無数のエヴァたちが地平線を覆いつくしていた。

 その姿はゴジラに並ぶほど大きかった。 

 その数は観た感じ数千万はくだらない。

 エヴァインフィニティと名乗るものと並んで戦艦が6隻ほど浮かんでいるのもみえた。

 これもアスカの祖父の技術力か。

 

 

 アスカの祖父フリッツは名古屋のとある廃墟にいた。

 注文していたひつまぶしを食べながら、パソコンを使いエヴァインフィニティを操作していた。

 

 

「まあ、わしがいれば全部解決じゃ。」

 

 

 

 フリッツはボタンを押した。

 そこで、エヴァインフィニティと空中に浮かぶ戦艦から無数の光線と砲弾を放った。

 

 

 

「死ね!!!!! ゴジラ!!!!!! わしこそ多元世界の支配者になるのだああああああああ!!!」

 

 

 

 すると数千万のエヴァインフィニティから放たれた光線と砲弾の雨はゴジラを包んだ。

 シンジはATフィールドを覆って身を隠した……はずだった。

 ゴジラは光線の雨を飲み込んでいた。

 当然砲弾はゴジラに通じるわけもなかった。

 

 

 

「バカな!!!」

 

 

 フリッツは驚愕した。

 すると、ゴジラは口から光を放つと周囲に軽く熱線を放った。

 数千万ほどあったエヴァインフィニティと空中戦艦は一気に吹き飛び消し飛んでいった。

 すると、地平線は再びもぬけのからになった。

 

 

「……あ……。」

 

 

 シンジはあまりの光景に目を白黒させた。

 あんなにいたエヴァの群れが一瞬で消し飛んだ。

 

 

「ちくしょう!!!!!!!!! このためにどれぐらいの金と年数をつぎ込んだとおもっている!!!!!!!」

 

 

 

 フリッツの声が聞こえた。

 シンジはその隙に腕を治した。 

 不死身のS2機関のたまもの。

 そして、槍を再び手にした。

 ゴジラは自分の功績に酔いしれるように隙ができている。

 

 

 今がチャンス。

 

 

 

 

「くらええええええ!!」

 

 

 

 シンジは大きく飛び上がると槍を抱えゴジラの首に飛び込んだ。

 だが、ゴジラは鞭のように尾をひねりそれをはねとばした。

 

 

「ぐわああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 シンジの胸に激しい激痛が走っていった。

 彼は再び目にした。

 コアがむき出しになっている。

 勝てない。

 あいつは強すぎる。

 

 

 

 

「あ……ああ……。」

 

 

 シンジは地面にまた倒れた。

 このままだと殺される。

 僕だけじゃない。

 ヤツに綾波を殺される。

 

 

 

「綾波は……せめて綾波は……。」

 

 

 

 シンジはまるで命乞いをするように呻き声をあげた。

 

 

 

 圧倒的な絶望感がシンジを襲う中、アメリカ西海岸では四号機がデストロイアに苦戦していた。

 デストロイアの尾の先についた鋏は四号機の首をギリギリと締め上げた。

 そして、渚カヲルはデストロイアに呑み込まれた。

 

 

 胃の中、カヲルは目を覚ました。

 ヤツに食われた。

 胃液がずきずきと僕の体を溶かしていく…。

 このまま負けるのか…。

 

 

 自分たちを産んだ第一始祖民族。

 それは怪獣たちに滅ぼされた。

 アダムとリリス、それを産んだ理由は生命に生きてほしいからだったんだ。

 今ならわかる。

 

 

「もうおしまいか……。」

 

 

 いや、まだある。

 僕はタブリス。

 最後の使徒。

 そして、すべての始まりだったアダムでもある。

 今こそ戻ろう。

 シンの自分に…・。

 

 

 カヲルは全ての力を込めて、指に力をいれた。

 そして鳴らした。

 

 

 パチン…。

 

 

 デストロイアの胃の中でそれは響いた。

 

 

 

 赤い怪獣の将軍は自分の胃の中で何かが膨らんでいくのに気が付いた。

 これはなんだ。

 よくない。

 そして、激痛が広がった。

 

 

 やがて、デストロイアは気が付いた。

 自分の肉が…飲まれて行く!!! 何かに!!! 

 まさか、体の中から何かが自分を飲み込んでいく…・。

 

 

 

 四号機の魂は気が付いた。

 

 

 これはディラックの海。

 だが、その大きさは尋常ではない。

 強さも…。

 そして、これを使えるのはたった一人。

 

 四号機はデストロイアの尾を力づくとへし折った。

 

 

 

『フィフス!』

 

 

 

 次の瞬間だった

 デストロイアの腹部から白い光がのびていくのがみえた。

 そして、大きく破裂した。

 巨大なATフィールドが爆発を起こしたのだ。

 

 

 それは…彼の目に見覚えがあるものだった。

 渚カヲル。

 

 

 それだった。

 

 

 

「この地上は僕たちのものだ。」

 

 

 カヲルはそういった。

 

 

 デストロイアの肉片はやがて、自身の腹部から開いたディラックの海へと吸い込まれて行った。

 その時、彼は自身の敗北を感じるとそのまま虚数空間の中へと溺れていったのだった。

 

 

 四号機はその掌に主を迎え入れた。

 カヲルも疲労のあまり、四号機の掌の上で眠っていったのだった。

 

 

 

 日本、第三新東京市。

 オルガは目の前にやってきた零号機に驚いていた。

 

 

『貴様一体何者だ』

 

 

 すると零号機の単眼は光輝いた。

 そして、オルガに向かってとびかかった。

 やがて、オルガの顔につかみかかるとその剛腕を振るい一気に叩きのめし始めた。

 その時だった。

 

 オルガの意識は二つに割れた。

 戸惑いが生まれた。

 と、同時にオルガの驚異的なテレパス能力に揺らぎが生じた。

 

 

 ネルフ本部、EU支部…それぞれにいる人間たちはようやく激しい頭痛と脳内に入る不快な声から解放されたことに気が付いた。

 

「なにがおきた。」

 

「今のはなんだ?」

 

 人々の心に浮かんだのは疑問だった。

 

 

 時田はリツコを探し、セントラルドグマの中を探し回っていた。  

 やがて、マギ端末近くにいることを知ると彼女を抱き起していた。

 そして、彼女を縛っていたコードを引きちぎるとリツコをその膝の上で寝かさていた。

 目を覚ましたリツコは上体を起こすと、そこには時田とペンペンがいた。

 

 

 

「なにがおきたの?」

 

 

 

「時田さん?」

 

 

「君は縛られていたんだ。」

 

 

「そういえばそうだったわね。」

 

 

 

 リツコはふとペンペンをみた。

 パソコンをみている。

 その液晶状には零号機が暴れているのがみえた。

 

 

 

「まさか…。」

 

 

 あれはただの起動スイッチではない。

 中にいる魂のコアを目覚めさせるもの。

 その中にいるのは…それは…。

 

 

「母さん!?」

 

 

 零号機の中にはずっと赤木ナオコの魂がいた。

 マギシステムの前でリツコは告白をされた。

 幸が薄そうだが、真面目そうな何よりも地味で娘のいうことをきくおっさん。

 時田シロウに。

 

 ようやく、私たち親子が幸せを勝ち取れそうなのに…………邪魔をする!? 

 

 

『許せない!!! 許せない!!! 許せない!!! 許せない!!! 許せない!!! 許せない!!! 許せない!!! 許せない!!! 許せない!!! 許せない!!! 許せない!!! 許せない!!! 許せない!!! 許せない!!!』

 

 

 オルガはたじろいた。 

 彼のハッキングを邪魔したのはこいつ。

 そして、あまりにも力強い。

 気が付けばオルガは押し倒され、顔を何度も何度も殴られていた。

 彼はようやく念力を使い、零号機をなんとか押さえつけた。

 

 

『なんてヤツだ! だが、それももうおしまいだ。死ね!』

 

 

 だが、止まらない。

 零号機の拳はまだふりかかっていた。

 ナオコの怒りはオルガの念力をはねのけたのだ。

 

 

 

『も、もうやめてくれ……やめてくれええええええええええ!!!』

 

 

 オルガは泣き叫んだ。

 だが、零号機は止まらなかった。

 その中にいる赤木ナオコも。

 

 

『私の娘に手を出すな!!!』

 

 

 ナオコはオルガの胸をその拳で貫いた。

 

 

「ポジトロンライフルをっ!!!」

 

 

 冬月は叫んだ。

 と、同時に零号機の近くにあったビルからライフルが出てきた。

 零号機はそれを取るとオルガめがけてライフルを放った。

 オルガはそのエネルギー量に耐えれずバラバラに吹き飛んでいったのだった。

 

 

 同じころ、フランス

 そこでではバガンの角に刺さった弐号機がもがいていた。

 8号機も同じくバガンの尾で首を締め上げられていた。

 8号機の中にいたマリはわかっていた。

 痛いのも苦しいのも楽しいはず。

 でも、これは違う。

 絶望。

 

 

 

「アスカ……。」

 

 

 私の首も限界。

 あのゴジラ細胞が自分の物になれば…。

 マリがそう思ったその時だった。

 

 そうだ。

 これしかない。

 

 

「裏コードビースト、ウニ。」

 

 

 8号機の体に大きな針ができるとバガンの尾を串刺しにした。

 バガンは獣のような悲鳴をあげると8号機を締め上げていた尾の力を緩めた。

 

 

「裏コードビースト、ティラノサウルス!」

 

 

 そういうと、マリの乗っていた8号機の顔が大きくなっていた。

 やがて、顔に亀裂が生えるとアゴができていった。

 そして、鋭い牙が生え尾も生えていった。

 

 

 ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!! 

 

 

 咆哮をあげると、恐竜モードになった8号機は鋭い牙をはやしてバガンの足の肉を食いちぎった。

 バガンは激痛に足に気がとられてが、瞬時に再生していった。

 不死身のゴジラ細胞が効果的にはたらいたのだ。

 そして、8号機をその強い脚で蹴り飛ばしたのだった。

 

 

「うわあああ!!!」

 

 

 マリは地面に倒れた。

 その時だった。

 マリの顔は笑っていた。

 策だ。

 ヤツの肉を食いちぎり、ゴジラ細胞を手に入れる。

 

 

「裏コードビースト…………ゴジラッ!」

 

 

 

 8号機の体はもりもりを大きくなっていった。

 そして、背中と肩についていた桃色の装甲ははげ落ちると、黒い岩肌がみえていった。

 背びれも生えた。

 

 

 バガンはその様子を見て驚愕した。

 

 

 まさか、こいつ……俺の中にあるゴジラ細胞を得て、父上や私を真似ているのか!! 

 

 

 

 先ほどまでバガンの半分以下程度の大きさしかなかった8号機は大きくなった。

 やがて、バガン並みに。

 そして、大きな咆哮をあげた。

 

 

 ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおんんんんんんんんんん!!!!! 

 

 

 

 角に刺さり、電撃を受けていた弐号機にも聞こえた。

 ゴジラの咆哮。

 8号機はゴジラになったのか。

 

 

「ダメ、マリ…人間をやめないで。」

 

 

「ごめんね。」

 

 

 マリはそれだけいった。

 次第に彼女の精神もゴジラ細胞と同化していった。

 ゴジラ8号機はバガンを睨みつけた。

 そして、咆哮をあげるとバガンの頭につかみかかった。

 

 

「うわああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 8号機の腕はバガンの角をつかむと怪力とともにつかんだ。

 

 

「アスカヲ……離せ!!!」

 

 

 やがて8号機の怪力は強く強く働いた。

 そして、その勢いのままバガンの角をへし折った。

 バガンは悲鳴を上げ地面に倒れた。

 

 解放された弐号機はなんとか余力を使いたちあがった。

 もう装甲ももたない。

 

 8号機はそのままバガンにつかみかかるとしっかりと押さえつけた。

 そして、 マリはつぶやいた。

 

 

 

 

「アスカ…ディオメンションタイドヲ使って。」

 

 

 

 

「でも、マリ!!!」

 

 

 

 マリの様子がおかしい。

 確かにゴジラ細胞に乗っ取られ本当に怪獣になってしまうのかも。

 そうなれば、私とマリが殺し合うことになる。

 

 

 

「このママだト…ゴジラ細胞に頭ヲノットラレル!!! そうなる前にお願い!!!」

 

 

 

 弐号機には人工衛星の起動スイッチがあった。

 それはブラックホール砲ことディオメンションタイドのもの。

 マリはバガンを押さえつけている間にそれを使えということか。

 

 

 世界を救うため。

 アスカは決断した。

 

 

 

「マリ、大好きだよ。」

 

「ケンスケニ、ありがとうと言って…。」

 

「アンタのこと、忘れない。」

 

「アリガトウ…トモダチ…。」

 

 

 アスカは人工衛星の起動ボタンを押した。

 そして、やがてそれは動いていった。

 弐号機は大西洋に避難すると、パリの街に落ちてくるブラックホールをみつめた。

 それは8号機とバガンを包むと全てを飲み込んでいったのだった。

 

 

 

「さようならマリ…。」

 

 

 私の相棒。

 友人。

 真希波・マリ・イラストリアス。

 彼女はブラックホールの中でゴジラの息子とともに消えていった。

 アスカは大西洋に倒れた。

 そして、そのまま気を失った。

 

 

 

 中国。

 絶望を感じていた初号機の前に立ちはだかったゴジラはある事を感じた。

 

 なくなった気配が。

 バガン。

 愚かな同族の気配がなくなった。

 

 死んだのだ。

 

 

 だったら、もう世界の支配はやめだ。

 滅ぼそう。

 この多元世界全てを。

 私の炎で、破壊の光で包み無にしてやろう。

 

 

 ゴジラはそう決意し、雄たけびをあげた。

 怒りの雄たけびであった。

 

 

 

『碇くんみて……あいつの怒りが強くなっていく‥‥。』

 

 

 ゴジラの目の周囲が赤くなっていた。

 背びれも…。

 目は白いままだった、だがその周囲は赤く輝いていた。

 赤い血管が浮き出ていた。

 

 

 どくどく…。

 

 血管を赤い光が伝っていた。

 ゴジラの怒りの炎が彼の血を燃やしていた。

 全身に憤怒と憎悪が溜まっていくのをゴジラは感じた。

 

 

 ゴジラの瞳孔のない目は赤くまるで、マグマのように輝く血管がどくどくと動いていた。

 背びれも、そして肉体を走る血管の1部1部もマグマのように赤くはれ上がっていた。

 

 

 

 シンジにもわかるレベルで音が響いてきた。

 血の色じゃない。

 あれはマグマの色。

 こいつは、まるで歩く火山だ。

 いや、それ以上だ。

 

 

「なんであいつキレてんだ…。」

 

『セカンドがあいつの息子を倒したからよ。』

 

「やばい…。」

 

 

 

 シンジは顔を青ざめた。

 やばい。

 こいつはやばい。

 絶対にやばい。

 恐ろしいことが起きる。

 世界を焼き尽くしてしまうぞ。

 

 

 

「なんなんだあいつ…。」

 

 

 

 ようやく心理攻撃から解放された日向は発令所のモニターをみてうめき声をだした。

 

 

「背びれが赤くなってる……それはあいつが怒っているということだ。」

 

 

 そして、ゴジラは大きな咆哮をあげた。

 それは熱波を放った。

 それは巨大なフレアーだった。

 そこから発生する巨大な爆音が響いた。

 

 

 

 

 

『逃げて!!! 碇くん!!!』

 

 

 

 

 

 

 ふと、周囲の建物が朽ち果てていくのがみえた。

 その熱で。

 

 シンジは慌てて逃げ始めた。

 だが、それを追いかけるように熱波は迫ってきた。

 光の速度で動く初号機を熱波は追いかけるように。

 

 

 

 

「クソ!!!クソッ!!!!!!」

 

 

 

 シンジは走って逃げた。

 こんなの知らないぞ。

 なんでこんなに強いんだ。

 勝てない。

 なんで…。

 

 

 

 

 北京の街は一瞬で焼け吹き飛んだ。

 やがて、衝撃波と熱波は初号機の背中近くまでついてきた。

 

 

 初号機の背中が熱くなった。

 

 

「うっ!」

 

 

 

 その衝撃波と熱波は逃げ回る初号機を追い詰めた。

 やがて、その熱は初号機にも襲い掛かった。

 初号機の装甲を、その熱波は一瞬で溶かしてしまったのだった。

 衝撃波は初号機を吹き飛ばした。

 まるで爆風に吹き飛ばされるハリウッド映画の主人公のように、初号機は中国大陸から吹き飛ばされた。

 

 

 

「うわああああああああああああああ!!! うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 全身が焼かれる思いに襲われたシンジは悲鳴をあげた。

 衝撃波で全身に激痛が走る想いがした。

 

 

 ネルフ本部にいるオペレーターが悲鳴をあげた。

 

「中国から強大なエネルギーが…………1兆度あった13号機の9000万倍以上の熱量あります!!!」

 

 

 冬月は震えた。

 1兆度の9千万倍以上。 

 その熱が解き放たれればどうなる。

 宇宙は滅びる。

 その熱で。

 発生する衝撃波で。

 

 

 

 ビッグバンだ。

 

 

 

 いや、もっとすごいかも。

 これがゴジラのいう多元世界の統一。

 世界を焼け野原にするんだ。

 そこには何も残らない。

 あらゆるものと熱と衝撃波で包み破壊しつくし、無に帰す。

 そして憎悪と憤怒があらゆる魂を焼き尽くす。

 

 

 ゴジラは生き残るだろう。

 それでも…。

 

 

 

 

「世界が終わる…。」

 

 

 

 装甲が溶けた初号機も太平洋に落下した。

 もうおしまいだ……。

 世界は終わる。

 シンジは海の中へと沈んでいった。

 

 

 

 名古屋にいたフリッツにもそれはみえた。

 自分が多元世界の闇の中で隠していた数千万のエヴァインフィニティも倒された。

 まるで一瞬で。

 

 

「もう終わりだ…。」

 

 

 

 どの多元世界に行っても同じ。

 奴は世界を焼き尽くす。

 あの炎は全てを焼く。

 

 

 

 ネルフ本部でオルガの兵士たちと戦っていたミサトにもみえた。

 赤い光がネルフ本部を覆っていた。

 熱い…。

 世界が焼き尽くされて行く。

 

 

「シンジ君…。」

 

 

 オーバー・ザ・レインボウ内で白兵戦をしていた艦長もみえた。

 楽天的な彼でもわかった。

 

 

「負けた。」

 

 

 

 ゴジラの怒りの炎と光はすぐさま地球全体を包み込んだ。

 そして一瞬であらゆる物質を焼き尽くした。

 衝撃波でバラバラに砕いた。 

 憎悪のエネルギーで魂すらも焼き尽くした。

 

 

 宇宙を包んだ。

 あらゆる宇宙を、多元世界をその怒りのフレアーは焼き尽くした。

 ファイナル・インパクトがおきたのだ。

 それはビッグバン以上のものだった。

 

 

 

 そして、無になった。

 

 

 

 

 はずだった。

 

 

 

 その時、世界が逆転した。

 ゴジラの周囲の炎と光は逆行していった。

 時間が逆流していった。

 そして、ゴジラの怒りの炎は何かに吸収されていった。

 

 

 

 

 ゴジラは何事かと目を凝らした。

 

 

 

 

 そこにはいた。

 メガギラスが。

 虫の女王はゴジラに襲い掛かってきたのだ。

 彼女はゴジラの胸にその鋭い尾を突き刺した。

 

 

 

『者ども、かかれ!』

 

 

 

 メガギラスの指示のもと、数万体のメガニューラたちが襲い掛かってきたのだ。

 そして、数万のメガニューラはゴジラに尾の針を突き刺すと怒りと狂気と憎悪の熱エネルギーを吸収していった。

 

 

 

『世界の支配者になるべきなのは私だ! お前は私の兵士を奪った! あれは私の所有物だ!』

 

 

 

 メガギラスは叫んだ。

 ゴジラの怒りは失望に変わった。

 そして、ため息のような咆哮を叫んだ。

 それは巨大な衝撃波になった。

 メガギラスとメガニューラの群れはその衝撃波で吹き飛ばされ、塵になって死んでいった。 

 

 

 

 彼女たちが吸い込んだゴジラのエネルギーはそのまま浄化し、何かに吸い込まれて行った。

 ゴジラはそのエネルギーを浄化した主をみつめた。

 

 

『お前だけではないな、メガギラス。お前に時間を逆行する・停止するという能力はない。何よりも余の怒りの力を浄化させるなどできぬ。』

 

 

 ゴジラは別の気配を感じた。

 

 

 

 その気配の主は時を逆転させて、元に戻した。

 ゴジラが中国大陸を焼き払うその数秒前に。 

 彼に怒りを奪い、失望のエネルギーを飢えこんだ。

 怒りは失望に打ち消された。

 

 

 そこにはいた。

 ゴジラの本当の天敵、モスラが。

 

『なあ、我が天敵よ。』

 

 

 白の女王がとうとうきたのだ。

 

 

 



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第11話:ゴジラvsエヴァ 最終決戦 パート3

ゴジラとモスラが怪獣語でしゃべるのは「三大怪獣 地球最大の決戦」へのオマージュです


 海。

 シンジの目の前に海が広がっている。

 

 

「シンジ……。」

 

 

 声がした。 

 低い声だった。

 

 

「父さん?」

 

「よく来たな、シンジ。」

 

 

 父ゲンドウだ。

 彼は麦わら帽子をかぶり釣竿を持っていた。

 

 

 

「困っているのか?」

 

「うん、強く強くてどうしようもない相手がいるんだ。そいつに勝てないんだ。」

 

「暴力と破壊で勝とうとしていないか?」

 

 

 暴力と破壊? 

 でも、それ以外でどうやって勝てっていうんだよ。

 シンジは父に問いかけた。

 

「でもそれ以外で勝つ方法なんてある?」

 

「あるさ、勝つ方法はいくらでもある。例えば、相手の心に働きかけるなんていうのはどうだ?」

 

「心?」

 

「そう……、でかくて強いやつほど心は寂しく孤独なもんだ。その孤独をつけば勝機があるかもな。」

 

 

 ゲンドウは釣り竿をつかんだ。

 そして強く引いた。

 

 

「ふっ、またハズレだ……。」

 

 

 ゲンドウが釣ったのは魚ではなく長靴だった。

 

 

「釣りだよ、気になるかな? これも力ではない。魚を釣るのは力ではないんだよ。海に裸で挑むのはバカのすることだ。シンジ……。」

 

 

 シンジの目の前の父はそういった。

 

 

「激しい力には力で挑んでも意味がない。忘れるな。」

 

 

 初号機は太平洋の近くに沈んでいった。

 その傍らにはカヲルたちが火星でみつけた『武器』があった。

 まるで、主人の命令を待つかのように。

 

 シンジは未だに意識を失っていた。

 深い海の闇の中へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 地上ではゴジラと宿敵モスラがにらみ合っていた。

 

 

 白の女王モスラ。

 世界の守護者。

 ゴジラの天敵。

 

 だが、モスラはゴジラにこれ以上の破壊を行ってほしくはなかった。

 もう今度こそ止められない。

 こいつは暴走する。

 

 そうなる前に…説得はしておきたい。

 モスラは鱗粉を使い、ゴジラの脳内に語り掛けた。

 

 

『やめなさい。』

 

 

 ゴジラは驚いた。

 こやつ、我が脳内に語り掛けてきたか。

 

 

『そうです。あなたにはこうするしか勝ち目はありません。』

 

 

『無駄なことを…。なぜ人間を庇うのだ。』

 

『この世界の人間は無関係ですよ。』

 

『否、こやつらも同じことをしでかすかもしれぬ。汚らわしい文明の申し子どもは余が破壊してやろう。邪魔するなら貴様もだ。もう話しあうのも面倒だ。死ぬがいい。』

 

 

 両者はお互いの心で罵倒しあっていた。

 人間たちにはわからぬものだった。

 

 

 

 白の女王モスラはとうとうこの場にたどり着いた。

 ネルフ本部のドローンはその様子を撮影していた。

 

「モスラ…。」

 

 日向はつぶやいた。

 映画の中では毎回ゴジラに勝つ生かすかない虫。

 でも今回は救いの主だ。

 

 

 巨大なカイコガに虹色の模様が浮かんでいるそれはゴジラと比較しても大きさはあまりなかった。

 せいぜい、80mほど。

 

 

 だが、そのまばゆい光は世界中を包んでいた。

 ゴジラでさえも目を細くしていた。

 そのまばゆい光はゴジラの黒い岩肌も白く輝かせていた。

 

 その光は太平洋上に浮かぶオーバーザレインボウからもみえた。

 艦長とその部下たちは、小型のデストロイアの一団をようやく殲滅させた。

 アルカトラズ島でカマキラスを倒したコズロフ三兄弟にも。

 インドにいたメガニューラの一団を倒した虎やシンたちにも。

 第三新東京市のはずれの教会でシスターを守ったリーにも。

 

 

 そして、オルガが残した魑魅魍魎たちに追い詰められていったミサトにもみえた。

 その光は彼女たちにも力を与えた。

 

 

 ドイツにいる二号機にも体力が戻ってきた。

 長い間気絶していた四号機も同じくだった。

 

 

 

 ネルフ本部にいた冬月は少し希望を感じた。

 

 

 

「弐号機と四号機をモスラのサポートにつかせろ。」

 

 

 冬月は日向に告げた。

 

 

「はい。」

 

 

 

 先ほどゴジラが放ったビッグバン以上の怨念と憎悪のまじった破壊エネルギーの火球は全てモスラに吸収された。

 それは1度、彼らの世界を焼き尽くしたはずだった。

 モスラは時間をゆがめ、戻したのだ。

 そして、ゴジラに恨みを持つメガギラスを使い彼のエネルギーを吸収させた。

 

 

 冬月にもそれはなんとなくわかった。

 

 

「怪獣との共闘だ。」

 

 

 モスラは虹色に輝く鱗粉を体中に漂わせていた。

 ゴジラはモスラをにらむと、青白い熱線を口から吐いた。

 だが、モスラのそれはゴジラの憤怒と憎悪のこもったマイナスエネルギーを吸収した。

 守護神の持つ優しさ・希望のポジティブなエネルギーの前に打ち消されていった。

 

 

 虹色の鱗粉はそれどころか、熱線を逆流させ希望のエネルギーでゴジラを攻撃しはじめた。

 ゴジラはたじろいた。

 天敵モスラ。

 つくづく憎い敵だ。

 モスラの持つエネルギーはゴジラでは吸収できない。

 

 

 モスラは鱗粉をさらに放った。

 それは金色の物になっていた。

 ゴジラの喉をその鱗粉は刺激し始めた。

 そして、体内にある魂や憎悪を徐々に浄化した。

 

 

 ゴジラは睨みつけた。

 

 俺を弱体化させる気か。

 よかろう、羽虫め。

 相手になってやろう。

 お前はもうすでに倒している。

 忘れるなよ。

 

 

 モスラの触覚がうねると、そこから緑色の光線を出した。

 ゴジラは避けなかった。

 あえてその攻撃を受けた。

 そして、ゴジラ細胞にモスラの攻撃を学習させた。

 

 

 ゴジラは対抗し、背びれをチェレンコフ光で輝かせるとモスラに浴びせた。

 モスラの緑色の熱線は迎撃せんと、ゴジラの物にぶつけた。

 そして、激しいスパークが起きモスラの体は吹き飛んでいったのだった。

 力負け。

 ゴジラの熱線の威力のが強かったのだ。

 

 

「ああっ!!!」

 

 

 冬月は悲鳴をあげた。

 

 

 大陸から離れ、モスラは海へと逃げ込んだ。

 やがて、翼を斜め状に細くたたむと水中形態に変化した。

 ゴジラもモスラを追いかけ水中の中へと入りこんだ。

 それを追いかけるためにネルフのドローンもまた、水中に入り込んだ。

 

 モスラの泳ぐ速度は速かった。

 一瞬で、海底へと向かっていった。

 ゴジラも負けていなかった。

 破壊神はそれをみると、歩行速度のそれとは考えられないスピードでモスラを追い詰めていった。

 

 

「畜生!」

 

 

 冬月は地団太を踏んだ。

 ネルフのドローンは置いてけぼりを喰らった。

 

 

 

「人工衛星に変えろ。ヤツを逃がすな!弐号機と四号機は何をしておる!遅れれば解雇処分にするぞ!」

 

 

 

 モスラはマリアナ海溝へと逃げ込んだ。

 ゴジラはそれを逃がさなかった。

 我々が来た次元の裂け目があった。

 もう必要ない。

 あれ事消えてもらおう。

 

 ゴジラは熱線を放った。

 モスラはそれを数秒の差でよけた。

 かろうじで。

 

 

 熱線は次元の裂け目を焼きつぶし、破壊した。

 モスラはかろうじて避けれたことを幸運に感じた。

 

 

 先刻の時間操作で膨大なエネルギーを消費した。

 避けるので精いっぱいだ。

 

 

 ゴジラはモスラを追いかけて突き進んだ。

 やがて、両者はマントルを突き進みながら追いかけ合った。

 マグマが地表がモスラの体を削っていったが、ゴジラはそんなものに動じなかった。

 

 

 

 やがて、戦いは太平洋から突き進んでアメリカのフロリダの地下に代わっていった。

 

 

 周囲はもう夜になっていた。

 

 

 フロリダでは香港の金龍タワーに対抗した、ジェネシス・タワーが建設されていた。

 高さ1000mあるそれは金龍タワーなき後、世界一高い超高層ビルの一つになろうとしていた。

 

 

 フロリダの海からモスラは何とか逃げ出してきた。

 それをゴジラは追いかけた。

 陸上に浮かび上がったモスラは天空高くつきだした。

 ゴジラはそれをにらんだ。

 

 

 モスラの白い光が暗い闇の中で輝いた。

 ゴジラはそれを逃がさなかった。

 

 ジェネシスタワーでみていた観光客の一団がゴジラをみるとスマホで写真を撮り始めた。

 その光に気が付いたゴジラは唾を吐くように熱線を吐いた。

 そして、その軽い熱線はジェネシスタワーを一瞬で砕いた。

 

 

 鬱陶しい光どもめ。 

 

 人々の悲鳴が聞こえた。 

 ゴジラは無視した。

 やがて、フロリダの市街地に上陸すると背びれを紫色に変えた。

 そして、ガス状の熱線はフロリダの街中を一瞬で包んだ。

 人々はうめき声をあげながら紫色の熱線で包まれ焼け死んでいった。

 

 

 

 

 モスラはそれを観て焦った。

 このままだと無駄に死ぬ。

 生命が…。

 

 

 彼女はゴジラの頭の中に再び語り掛けた。

 

 

『もうやめて!』

 

『断る。』

 

 

 彼女はゴジラの中に残る良心を信じてまた話しかけた。

 

 

『あなたには良き心があります。それをお忘れですか。我らが周回した世界の一つには地球を守るために戦ったこともあったはずです。その時の記憶は消えてしまったのですか。良心を取り戻すのです。』

 

『そんなもの知らぬ。』

 

 

 ゴジラは白い目をギロリと睨ませた。

 そして、咆哮をあげ衝撃波とともにモスラを吹き飛ばそうとした。

 だが、モスラは素早かった。

 彼女もまた、光と同じほど早く動けたからだ。

 やがて、モスラも突風を起こすとゴジラの衝撃波と相殺した。

 

 

『いいえ、残っております。血のつながりの薄いとはいえ、息子。あれを育てたのはあなたの中に愛があるからです。』

 

『それで余を説得できるとでも、貴様はそのように思っておるのか?』

 

『私とともにもう一度やりなおしましょう。』

 

『断る。それにな、貴様が嫌いなんだよ。昔からな』

 

 

 ゴジラは呆れの感情とともに熱線を放った。

 モスラは急いで避けようとしたが、完全にできなかった。

 よけきることができなかった。

 とうとう、ゴジラは彼女の想定していた以上に素早く対処できるようになっていた。

 守護者の羽を突き刺した。

 

 彼女は悲鳴をあげると、都市部の中へと墜落した。

 ビルの破片がモスラの体という体を突き刺している。

 以前からそうだった。

 モスラの弱点、それは耐久力にあった。

 

 ゴジラはそんなかつての天敵を睨みつけた。

 

 

 

 

『安らかに眠れ。』

 

 

 

 ゴジラはそういい、口を開けたその時だった。

 空から何かが落ちてくるのがみえた。

 新手の客か。

 

 

 

「やめなさい!!」

 

 

 

 アスカだった。

 弐号機は巨大なパラシュートとともに大西洋に降下した。

 冬月の命令。

 モスラを守れ。

 遂行してやる。

 

 

 ネルフのドローンもかすかに近づいていった。

 人工衛星もゴジラをうつしていた。

 

 

 

「アンタにこの世界を壊させない。」

 

 

 

 アスカは上空からロンギヌスの槍を叩きこんだ。

 来ているのは二号機だけではなかった。

 西海岸からきた四号機もいた。

 彼もロンギヌスの槍を投げ飛ばした。

 リツコが作った複数の複製されたロンギヌスの槍。

 それはまとめて降り注いだ。

 

 

 だが、ゴジラは微動だにせず尾の一撃でそれを跳ね飛ばした。

 まるでハエを叩き落とすがごとく…。

 

 

 

「ちっ!」

 

 

「ちくしょう!」

 

 

 カヲルとアスカは舌打ちをした。

 

 

「二人ともけがはない?」

 

 

 リツコの声だ。

 彼女も無事だった。

 アスカとカヲルに安心がさしこんだ。

 

 

「シンジと初号機は?」

 

「わからない…。」

 

「やられたのね…。」

 

 

 アスカは舌打ちをした。

 

 

「仇はとるわ。」

 

「僕も手伝うよ。」

 

「あいつを海に呼び寄せよう、そこでアブソリュートゼロを撃って氷漬けにする。」

 

「そして、ディオメンションタイドを撃つ。」

 

「挟み撃ちね!」

 

「サンドイッチだよ!」

 

 

 四号機のアブソリュートゼロを乗せたキャノン砲は光った。

 ゴジラはそれを黙ってみつめた。

 

 5号機にコアはあった。

 だが、そこに魂があったのかわからない。

 もしもあったのなら、自分の過失。

 

 だから負けた。

 自分が世界で一番強いとカヲルは思い込んでいた。

 慢心でデストロイアに5号機をやられた。

 カヲルは四号機に乗り、フルパワーを使いゴジラに挑むことにした。

 

 

 

 そして、四号機は怪獣の王であり破壊の神であるゴジラをにらんだ。

 

 

 

 

「これ以上無駄で美しくない破壊でこの世界を汚すのやめてくれないか。」

 

 

 カヲルの言った言葉などゴジラには通じなかった。

 ゴジラが何を考えているかも、カヲルにはわからなかった。

 だが、あの警戒すらしない立ち振る舞いはこっちをなめてる証拠だ。

 

 

 なめやがって。

 

 

 こんな感情が生まれるのもリリンと長くいたせいかな。

 まあいい。

 どうでも…。

 

 

 

「氷漬けになれ!」

 

 

 カヲルのキャノン砲は光を放った。 

 絶対零度砲、別名アブソリュートゼロはゴジラに降り注いだ。

 そして、一瞬で氷漬けにした。

 

 

「やれ、セカンド。」

 

「任せて!」

 

 

 アスカはチャンスを逃がさなかった。

 そして、ディオメンションタイドの起動ボタンを押した。

 

 

「発射!!!」

 

 人工衛星は起動した。

 そこから放たれた巨大なブラックホールは氷漬けになったゴジラに差し込んだ。

 そして、ゴジラを飲み込もうとした矢先だった。

 

 

 

 ビキビキ…。

 

 

 氷の結晶が割れていく音が聞こえた。

 

 

 そして、次の瞬間。

 

 大きな青白い光が闇夜を包んだ。

 その衝撃波で弐号機と四号機は吹き飛んだ。

 

 

 

「うわああああっ!!!」

 

 

 カヲルはATフィールドを何とか張った。

 だが、飴細工のように吹き飛んでいった。

 

「ぐっ!!!!!!!!」

 

 

 悲鳴をあげカヲルは吹き飛んでいった。

 この衝撃波だけで装甲がかなりダメージを受けている。

 弐号機に至っては、かなりダメージがひどい。

 もう立つことはできない、起き上がるので精いっぱいだ。

 

 

「あが・・・・。」

 

 

 二号機は立とうとした、だが足の装甲が抜けていくのを感じた。

 そして、アスカは目を凝らした。

 その中に、白い光が二つうかんでいた。

 

 ゴジラの目だ。

 

 

 

「あ・・・・ああ・・・・・・。」

 

 

 

 まさか・・・。

 まさか!!!

 

 

 

「ブラックホールを熱線で破壊した!!!」

 

 

 

 

 破壊神はそこにいた。

 

 絶対零度で凍らせた。

 とどめにブラックホールで吸い込んだ。

 

 

 ブラックホール、宇宙の神秘。

 マイクロとはいえ、ブラックホールであった。

 それをたやすく破壊するなんて…。

 

 

 

 

「くそっ・・・・。」

 

 

 カヲルもボロボロになった四号機をようやく持ち上げた。

 彼らしくもない暴言を吐いた。

 

 

「どうすれば・・・。」

 

 

 だが、それは次に恐怖に代わっていった。

 ゴジラはその白い穴ボコのような目で二体をにらんでいた。

 

 

 

「あ・・・あ、あ・・・・・あああ・・・・・。」

 

 

 恐怖、絶望。

 その二文字。

 一気に二人は自信を砕かれた。

 

 

「勝てない。」

 

 

 アスカは思わず言った。 

 カヲルも同じことを考えた。

 そんな時だった。

 天空から何かがふってきた。

 

 

 青いエヴァ零号機だ。

 

 

 ふと、アスカは零号機の存在に気が付いた。

 

 

「あれ?零号機?」

 

 

「零号機?ファーストは確か初号機と同化したはず。」

 

 

 

 カヲルはふとつぶやいた。

 リツコはそれに返した。

 

 

「あれは人工知能で動いてるの。気にしないで。」

 

 

 地面に降り立った零号機は強化されたポジトロンスナイパーライフルを放った。

 ゴジラの顔面にそれは当たった。

 だが、ダメージ一つなかった。

 

 

 効いていない。

 

 

 ふと、カヲルは資料で観た壁画を思い出した。

 ゴジラの前に倒れる四体の巨人。

 それはまさか・・・・これを予言したもの。

 初号機はいなかったが・・・。

 

 

 

「あいつには何をやっても勝てないのよ。」

 

 

 アスカはそれらしくない言葉をいった。

 

 

「なにをやっても・・・・。」

 

「なにをいってるんだ、セカンド!!!」

 

「でも、あなただってそう思ってるんでしょ?」

 

 

 図星だ。

 絶望・恐怖…。

 零号機の中にいるナオコの魂もまた感じていた。

 二人と同じ感情を。

 

 

 

 

 

 

 そんな時だった。

 空に雲がかかっていくのがみえた。

 そして、大きな雷が発生していた。

 やがて、大西洋から何かが浮かび上がるのがみえた。

 それは雷を吸収していった。

 

 

 それは空中高く飛ぶと、大気圏外に飛んでいった。

 紫色の光だった。

 

 

「エヴァ初号機。」

 

 

 カヲルは告げた。

 アスカは喜んだ。

 

 

「シンジ!!!生きてたの!!!」

 

 

 

 紫色の初号機は12枚の翼を開くと、月の近くに飛んでいった。

 そして、太陽の力を吸収した。 

 

 

「いくぞ。」

 

 

 シンジは太陽光をため込んだ斧を突き出した。

 やがて、地面に向かって降り注いでいった。

 大きな衝撃音と振動を起こし地面にまるで隕石のように降り注いだ。

 大量の電撃を帯びて…。

 

 

 

「これでも喰らえ!!!!」

 

 

 シンジは雄たけびをあげ、槍の先についたゴジラの背びれを振りかざした。

 

 

 

 

 これはヤツの骨でできている。

 ならば、ヤツを殺せるはず。

 

 だが、ゴジラはそれでも笑っていた。

 上空に目をやった。

 破壊の神の背びれが光っていた。

 

 

 

 

「いいぞ、やってみろ!」

 

 

 

 シンジは微笑んで強気で煽った。

 もしも、コイツの骨でこれができているなら。

 あいつの吐きだすエネルギーを吸収できるはず。

 守護者であるシンジはそのように考えていた。

 

 

 

 シンジの考え通りに事は動いた。

 ゴジラは青白い熱線を口から放った。

 

 

「くっ」

 

 

 腕が熱い、焼けそうだ。

 

 

 まるでこっちの肌にもヤツの熱線で焼かれるような思いがする。

 シンジは怖かったが、目をつぶらなかった。

 ありのままを受け止め、熱線をその武器で吸収していった。

 

 

 

 

「いける!!!」

 

 

 発令所で観ていた冬月は叫んだ。

 多くのオペレーターもそうおもっていた。

 ただ一人、日向は違った。

 彼は冷静にことのなりゆきをみていた。

 

 

 

 そして、ゴジラの口の近くまでたどり着いたその時だった。

 

 

 

 ビキッ…。

 

 

 槍が音を立てて崩れ始めていった。

 

 

 

「え…。」

 

 

 

 そして、ゴジラの背びれをもじた刃が吹き飛んでいった。

 シンジは地面にたどり着くと目の前で起きたことが信じられなかった。

 

 

 

「まさか。」

 

 

 

 シンジはゴジラをみた。

 傷は一つついていない。

 以前のように冷たい瞳孔のない目でシンジを見下したようにみている。

 

 

 

「強すぎたのか…。」

 

 

 

 ゴジラは強くなっていた。

 その熱線の力に負けてしまったのだ。

 受け止められなかったのだ。

 

 

「バカな…。」

 

 

 シンジはだしぬけに言った。

 

 

 

「シンジぃ!!!!!」

 

「シンジ君!!!!!」

 

 

 呆然としていた初号機の顔をゴジラの腕がつかんだ。

 やがて、ゴジラの手は再び初号機を地面に叩きつけた。

 

 

 どぉおおおおん!!!

 

 

 轟音が響いた。

 

 

 

 マイアミの市街地があったそれは、大きなクレーターとなっていた。

 弐号機と四号機はその光景をみつめるしかなかった。

 

 

 

「シンジ。」

 

「シンジ君。」

 

 

 

 無力にみるしかできなかった。

 

 

 クレーターの中心に初号機はいた。

 天を仰ぎ、倒れていた。

 ゴジラは倒れた初号機をゴミのような目でみた。

 

 

「う・が・・・。」

 

 

 

 シンジのうめき声があがった。

 ゴジラは背びれを光らせると、再び熱線を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴジラの放った熱線は初号機の腹部にあたった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあああああああああああああああああああああああ!!!あああああああああああああっ!!!!」

 

 

 

 シンジは悲鳴をあげた。

 

 

 その時だった。

 

 地球に大きな穴が開いた。

 その穴は初号機を巻き込み、地中を掘り進んだ。

 そして、コアの近くへと到達した。

 その影響で、胸の装甲が溶けつくしていった。

 綾波レイがその身を捧げたコアも無惨に割れ始めた。。 

 

 

 

 

 

 

 衝撃音が再び鳴り響いた。

 世界中で。

 

 

 世界中で大きな地震がおきた。

 ネルフ本部も、インドも、アルカトラズ島も…・。

 マグニチュード5の地震が襲った。

 

 

 オルガの放った兵士と戦っていたミサトも足を崩した。

 本体が倒れても、彼の魂が死なない限り永遠に終わらないのか。

 ミサトの中に絶望が生まれた。

 

 

「シンジ君。」

 

 

 ミサトはただそれをいうだけしかできなかった。

 そんな彼女も体力の限界がきていた。

 もう倒れそうだ。

 強化人間の兵士アーノルドもまた息切れをし始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 地球地下深く。

 大きな穴が開いたそこでは、初号機がマントルに呑まれて行った。

 上海でゴジラに倒された時のように、目に光りはなかった。

 初号機の上半身と下半身はバラバラに吹き飛んでいた。

 

 

 

 死。

 

 

 

 

 

 ゴジラはため息をついた。

 

 

『お前がどのように、そして…どんなに強くなっても無駄だ。私はその倍以上に強くなるのだよ。』

 

 

 

 ふと、彼は目をやった。

 そこには初号機の持っていた槍らしきものがあった。

 

 

 

 まあ、ここまでやったことは称えよう。

 その勇気に免じて、これをこいつにくれてやるか。

 

 

 ゴジラは尾でその槍をつかんだ。

 

 

『ッ!』

 

 

 

 その時、尾に少しばかりの痛覚が走った。

 どうやら、嘘偽りではない。

 だったら猶更だ。

 こんなものは、こいつにくれてやろう。

 

 

 

 大きくあいた地表の穴の中に槍を放り込んだ。

 初号機と槍はそのまま、地底のマグマの中に消えていった。

 

 

 

『安らかに眠れ。』

 

 

 

 ゴジラはしつこく挑んできた敵に敬意を示した。

 

 

 

 アスカとカヲルはそんな圧倒的な強さを観て心の奥底から恐怖した。

 

 

 

 

 

 

 

 勝てない。

 強い。

 

 

 

 

「あ…。」

 

 

 

 

 そんな彼らを嘲笑うかのように、ゴジラは口を開けた。

 青白い光が輝いていた。

 明らかに狙いは…アスカたちだった。 

 

 

 

 

「私たちを狙っている?!」

 

「もうダメだ…。」

 

 

 そんな時だった。

 市街地から白い光が降り注いだ。

 そして、金色の鱗粉も…。

 

 

「モスラだ。」

 

 

 アスカはつぶやいた。

 その時であった。

 

 

 

 モスラはゴジラの光線の前に立ちはだかった。

 まるでエヴァを守るように。

 

 

 

『興味深い、弱いものたちを守るというのかね。』

 

 

 

 モスラはその体の性質を変えた。

 体を硬化させると、鎧のようなもので肌を覆った。

 鱗粉の1部が二号機にふりかかった。

 

 

 

 

『この世界を守って。』

 

 

 

 アスカに声が聞こえた。

 その声はマリに似ていた。

 

 

 

「マリ?」

 

 

 

 マリに似た声が聞こえた。

 

 

 

 

 モスラは覚悟を決めていた。

 説得が通じないなら、死んでもらうしかない。

 

 

 

 鎧の体、これは死を覚悟したモスラの最終形態だ。

 彼女は鎧形態に虹色のエネルギーをためこんだ。

 

 

 

 そして、音がした。

 

 

 ひゅんッ!!

 

 

 

 虹色のエネルギーが降り注ぎ、モスラの体は光よりも速く動きゴジラを切り裂こうととびかかった。

 鎧モスラ、ゴジラの熱線それらはぶつかった。

 

 

 

 はずだった。

 

 

 

 その光線はモスラを貫き一瞬で粉みじんに破壊した。

 彼女の体は金色の鱗粉のみになった。

 二体の周囲を金色の雪のような鱗粉が包んでいた。

 

 

 まるで金粉だ。

 それも輝いている。

 

 

 

 

「モスラが死んだ…。」

 

 

 アスカは絶望の表情を浮かべそういった。

 鎧モスラの皮膚すらもゴジラの熱線に負けてしまった。

 

 

「あれはただの鱗粉じゃない、モスラの魂だ。」

 

 

 

 モニターでみていた日向は告げた。 

 彼にはわかった。

 最初からモスラは自分がゴジラに敵わないとわかっていたんだ。

 その魂をかけて、賭けに出た。

 それは失敗した。

 

 

 ゴジラは二体をみつめると、その青白い死の光を向けた。

 二号機と四号機は震えあがった。

 

 

「みんな逃げて!!!」

 

 

 リツコの悲鳴がとどろいた。

 

 

 

 

「どうする?」

 

「逃げ場などないさ。」

 

 

 カヲルはそういった。

 諦めだった。

 もう何をしても意味がない。

 

 

「そうよね。」

 

「死ぬなら、戦って死ぬのを選ぶよ。」

 

「戦士は戦って死ぬべき、か。」

 

「いい言葉だね。」

 

「私の言葉じゃあないわ。」

 

 

 

 カヲルは零号機に目をやった。

 

 

 

「零号機の中にいる人は?」

 

『私の娘に手出しはさせない!』

 

「なるほどね、じゃあいこうか。」

 

 

 

 

 全員は死を覚悟した。

 そして、それぞれの武器を持った。

 

 

 体力も精神力も限界まできていた。

 エヴァの装甲も。

 だが、彼らの決意は同じだった。

 

 

 最後まで戦おう。

 死を覚悟して。

 いつものように…。

 

 

 

 

 その様を見てゴジラは歓喜で震えた。

 

 

 

『見事だ、素晴らしい。』

 

 

 

 勝てぬとわかっているのに闘争をやめない。

 人間は文明に依存しなければ、その闘争本能は彼を歓喜させるものがあった。

 これはその典型例。

 

 

 たいていの人間の場合はゴジラを前にすると恐怖で震えてしまう。

 だが、こやつらは恐怖を混沌を意思で抑えようとしている。

 

 

『弱いからこそ、強いのだ。心で知恵で狂気で恐怖をごまかす。』

 

 

 

 ゴジラは目の前にいるエヴァたちに敬意を表した。

 弱いものにもプライドはある、維持はある。

 守らねばならぬものがある。

 だからこそ戦う。

 

 

 

『闘争こそ、我が喜び!我が喜びの炎で焼かれるがいい!汝らの死は美しいのだ!』

 

 

 

 炎で肉体を焼いたあと、魂を食ってやる。

 こやつらの魂が欲しい。

 

 

 

 

『さあ、我が前で安らかに眠るがよい!』

 

 

 

 

 

 ゴジラは青白い光を放とうとした。

 その影響か、人類全体に絶望が広がっていった。

 

 

 

 終焉が始まろうとしていたのだ。

 

 




最終決戦はあと二回ほどで終わるはずです。(予定)
少し用事が忙しいので次の更新は8月になると思います。


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第12話 ゴジラvsエヴァ 最終決戦 パート4

なんとか7月中に間に合いました…。


 地球、コア近く

 ゴジラの熱線はコアを地表を貫き、大きな穴を開けた。

 

 モスラはエヴァ各機を庇い、死んだ。

 多元世界の守護者であるモスラの魂は金の鱗粉になった。

 それはあるものに注いでいった。

 地表の穴を抜けていき、マントルの中で眠るもの。

 

 

 それはエヴァ初号機だった。

 

 

 初号機であったそれは、マントルの中で力なく漂っていた。

 かろうじて、コアは残っていたが他はもうボロボロだった。

 そんな初号機に金色の雪のような鱗粉がふりかかっていった。

 モスラの魂たちが、初号機にふりかかっていたのだ。

 

 だが、 初号機の中にいるシンジもその心臓の鼓動をとめつつあった。

 死にかけていた。

 

 

『言ったはずだ、シンジちゃん。お前じゃヤツに勝てねえのさ。』

 

 

 宿敵コンラッド。

 彼の消えたはずの魂の1部の声が響いた。

 そして、あの高笑いも。

 

 それも消えていった。

 もう何も聞こえない。 

 感じない。

 

 

 

 マントルの中で初号機とともに息絶えようとしていた。

 意識はかろうじであった。

 

 

「ごめん、ミサトさん。」

 

 

 

 彼はそう言い、事切れようとした。

 その時だった。

 

 

 

『碇君。』

 

 

 

 声がした。

 シンジは少し目を開けた。

 すると、体中に金色の何かがふりかかるのがみえた。

 

 

 まるで金粉のよう。

 

 

 

 と、同時にシンジの中で何かが蘇る気がした。

 体力・気迫・精神力…。

 それはシンジだけではなかった。

 

 

『碇くん。』

 

 

 綾波の声だ。

 コアが再生していってる。

 エヴァ初号機も。

 元々エヴァには自己修復機能があったが、これはそれ以上だ。

 

 

 

『まだあきらめないで。』

 

 

 綾波の声、シンジは目を覚ました。

 

 

 やがて、シンジの体にかかっていた金色の粉は、白色に輝いた。

 まるで蛍の群れがシンジにかかるように。

 それは心地よかった。

 

 

 その時だった。

 

 頭に声が聞こえた。

 

 

 

『シンジくん。』

 

 

 この声に覚えがある。

 確か。

 マリだっけ。

 

 

「マリさん?」

 

『そう、でもあなたが知ってるそれは分身。私はホンモノのマリ。私たちはモスラの中で生きていた。』

 

 

「モスラも魂を取り込めることができるのか。」

 

 

 シンジはため息をついた。

 力が戻っていくのを感じる。

 だが、勝てない。

 

「無理だよ。もう何をやっても勝てない。」

 

『お願い、諦めないで。』

 

「どうしろってんだよ!!!何度も何度もあいつにやられて痛い想いをしてきた。そのたびにあいつは強くなっていく一方だ。互角ですらない。一方的だよ。そんなのにどうやって…。」

 

 

 シンジは14歳の少年の時に戻ろうとしていた。

 今まで経験していた全てが無意味だったのだ。

 

 

『武器ならあそこにある。』

 

 

 初号機はふと、そばにある槍をみた。

 

 それはマグマを吸収し、モスラのエネルギーも吸収し大きくなっていったのがシンジにはわかった。。

 ゴジラの背びれをもした刃の形も長く、大きく伸びていった。

 形状ももはや、槍ではなくなっていった。

 それより大きなバスタードソードあるいは、バスタードソードのような大型剣になっていくのがシンジにはみえた。

 

 

『その中に、全ての希望のエネルギーがある。』

 

「希望?」

 

『ヤツはこの世の全てを喰らいつくす。熱・毒・衝撃・放射能・光・電気、それだけじゃない。感情すらも食べるの。特に憎悪と怒りの感情を喰らう、悲しみも絶望も恐怖も…。でもたった一つだけ食えないものがある。希望よ。ヤツには暴力だけでは勝てない。希望を、込めてヤツにそれを叩きつけて。』

 

 

 これなら奴を倒せるのか。 

 シンジは手に持った。

 そのエネルギーの重さに思わず腰が抜けそうになった。

 

 

「重っ。」

 

 

『モスラの魂が、そして私たちの魂が…あなたとその武器を蘇らせた。あなたはモスラと一つになったのよ。私たちの知恵と魂をあなたにあげる。絶対に勝てるわ。』

 

 両手でしっかり持つと天に掲げた。

 白い光に包まれたそれはシンジに自信を取り戻すには十分であった。

 

 

『チャンスは一回しかない。このエネルギーは一時的な物。だから大事にして…これが割れたり壊れれば…次こそあなたは死ぬから。』

 

 

 

 この剣がヤツの心に忘れていた愛を思い出させるのなら。

 希望のエネルギーが溜まった物であれば…。

 ヤツにそれを植え付けてやろう。

 どういう形であれ、ヤツを倒すにはそれしかない。

 

 

「やってやるぞ。」

 

 

 シンジは天を見つめた。

 大きな穴が開いていた。

 ここから自分は降って来たんだ。

 

「ゴジラを倒すしかない。」

 

 

 彼は思いを込めた。

 そして、12枚の翼を開いた。

 その両手には大剣が構えていた。

 それは白い輝きに満ちていた。

 初号機は天に上りかけあがっていった。

 

 

 

 地上、二号機・四号機・零号機の前に破壊神はやってきた。

 黒い岩肌の中にうかんだ目は瞳孔がなく、白く不気味に輝いていた。

 口元は青白いチェレンコフ光で輝いていた。

 

 

 このままだとやられる。

 動かなくては。

 それぞれが武器を構えていた。

 

 まず最初に動いたのは四号機だった。

 四号機は、手をかざした。

 

 

「この世界から、消えてもらおう。」

 

 見栄を切ると、指を鳴らした。

 そして、デストロイアにしたときとは比べ物にならない大きな強大なディラックの海を召喚した。

 あれはあらゆる物質を飲み込む、そして虚数空間は別の宇宙である裏宇宙につながっている。

 

 ゴジラはふと、足元をみた。

 そして、微笑んだ。

 

 

『面白い。』

 

 

 その体は底なし沼にのまれるが如く、飲まれて行った。

 だが、抵抗をしているようにはみえなかった。

 

 

「まるで無関心か。」

 

 

 まるでカヲルすらも嘲笑うかのように冷たくみつめていた。

 やがて、ゴジラの頭の先まで飲まれていった。

 そして、虚数空間は一つの球体になり消えようとした矢先であった。

 

 

「あぐッ!!!!」

 

 カヲルの右腕に激痛が走った。

 そして、手を抱え地面に倒れ込んだ。

 

「どうしたの!!」

 

 アスカの声とともに二号機は駆け寄った。

 

 

「やられる!」

 

 

 その時だった。

 

 その中に、白い光が二つあった。

 ゴジラの目だ。

 

 

 

「ヤツにはきかないんだ。」

 

 

 カヲルは腕を抑えながら言った。

 その言葉には絶望がこもっていた。

 ブラックホールも破壊するなら、虚数空間も破壊する。

 ヤツはすさまじく強い。

 

 

 

「ちっ!!!」

 

 

 アスカはキャノン砲を構えた。

 絶対零度砲を放とうとした。

 零号機もポジトロンライフルを抱えていた。  

 

 

 だがどれも通じる可能性はない。

 彼女たちの手は震えていた。 

 恐怖に…。

 

 

『何度やっても同じこと、貴様らはまとめて我が胃の中に納まればよいのだ。』

 

 

 ゴジラはエヴァたちをみていた。

 そして、ゆっくりとゆっくりとのそりのそりと近づいてきた。

 その目は白く不気味に輝いていた。

 口元は青白い輝きで満ちていた。

 まるで彼らを死で包もうとしていたのだ。

 

 

 その時だった。

 

 

「みんな待ってくれ。」

 

 

 シンジの声。

 生きていたのか。

 

「シンジ!?」

 

「シンジ君!?」

 

 

 二人は気持ちが高ぶった。

 生きていた。 

 死んではいなかったんだ。

 生きていた。

 

 

「僕に考えがあるんだ。二人とも絶対零度砲があるだろ?それを使ってヤツを足止めしてくれ。その隙に僕が一撃をくれてやる。」

 

 

 二人の中で希望が広がった。

 

 

「無事なの?」

 

「ああ…。」

 

 姿は見えない。

 だが、初号機は無事。 

 シンジも生きている。

 アスカの心の中に安堵が広がっていった。

 

「まるで神様になっちゃったみたいね。」

 

「頼む、いいからやってくれ。」

 

「わかったわかった。」

 

 

 カヲルとアスカはいわれたように、絶対零度砲を構えた。

 

 

「零号機、君も手伝ってくれ。ファイヤーシールドを頼む。」

 

 

 カヲルの言葉に従うように零号機は二体の前に踊り立った。

 そして、装備していたファイヤーシールドを展開した。

 

 

 ゴジラは青白い光を放った。

 ファイヤーシールドはそれを受け止めた。

 その手が震えているのがカヲルにはわかった。

恐怖か、力負けか、カヲルはその両方だとわかった。

 

 カヲルはすぐさま、ゴジラの脇に移動すると絶対零度砲を放った。

 別の方角から二号機も放った。 

 黒い岩肌の破壊神の体は再び氷漬けとなった。

 

 

 

「今よ!」

 

 

 アスカは声を出した。

 すると、地中の裂け目から大きな光り輝くものがあがったきた。

 カヲルもアスカもそれを目を凝らしてみた。

 

 光は収まると、大きな太く長い物に代わっていった。

 剣だ。

 まるで、西洋のクレイモアかバスタードソードのようだ。

 アスカが日本にいたころ、みていたファンタジー漫画の主人公がつけていたものに似ていた。

 

 

「ドラゴンころし、ならぬゴジラころし…。」

 

 その大剣を抱えているものがあった。

 それはエヴァ初号機。

 

「シンジ!」

 

 

 その様子をネルフ本部にいた冬月もモニター状でみていた。

 

 

「シンジ君!」

 

 よかった生きていた。

 死んでいなかった。

 そして、冬月はモニター状に広がる光に思わず目を背けざる負えなかった。

 光輝くそれを抱えている初号機は勇ましく誇らしく冬月にはみえた。

 

 

 初号機は大きく飛び上がった。 

 氷漬けになったゴジラの氷の音がビキビキとしていた。

 割れている。

 そして、青白い光が輝いた。

 

 

 

 氷が解けていった。

 ゴジラがまた目覚めたのだ。

 足止めは短い時間にしかならなかった。

 

 

 アスカは悲鳴を上げた。

 

 

「あいつが目覚める!」

 

 

 やがて、光に包まれた大剣を抱えた初号機がおりたった。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 

 14歳の時とはけた違いに成長していたシンジの雄々しい声がアスカに聞こえた。

 

 

 ゴジラは氷の結晶を砕くと、ふと天をみた。

 そこには初号機がいた。

 

 

『お前!!』

 

 

 だが、前回と違う。

 あふれる希望のエネルギーはゴジラを突き刺すようにじわじわと差し込んでいった。

 

 ゴジラは青白い熱線を放った。

 だが、大剣はその熱線を弾いた。

 

 破壊の神は気づいた。

 こいつ、もしかして…モスラのエネルギーを吸収したのか。

 ということは我が肉体にもダメージはいきわたる。

 

 その時、ゴジラに頭に焦りが浮かんだ。

 白い瞳孔のない目は大きく見開いた。

 そして、天から落ちてきた初号機はその大剣を使いゴジラの頭めがけてふりかざした。

 

 

 ゴジラは頭を横にそれ何とか避けた。

 だが、その剣はゴジラの肩に激突した。

 そして、深々と胸まで突き刺さっていった。 

 ゴジラの皮膚を大きな斬撃が突き刺した。

 

 

 

 ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!

 

 

 その時、彼は感じた。

 痛み。

 もう何億年以上も経験していないそれがゴジラの中に蘇ってきた。

 そして、口と傷口から噴水のような大量の血が噴きでていったのだった。

 

 

 

 ゴジラの強固な皮膚と岩肌をえぐり、肉をそぎ落とすとそれは心臓にまで達した。

 手ごたえはあった。

 シンジは微笑んだ。

 初号機を通して、ゴジラの心臓の鼓動がわかったのだ。

 

 

「やった…。」

 

 

 だが、違った。

 大剣が動かなくなった。 

 ゴジラの心臓の鼓動が激しくなっていくのを感じた。

 

 

 

「まさか…。」

 

 

 シンジは絶望した。

 死んでいない。

 それどころか、心臓の鼓動だけで剣を抑えている。

 まさか…。

 

 

 

『貴様に礼をいおう…。気づかせてくれた。』

 

 

 シンジの頭に声が響いた。

 人間の物ではない。

 まさか、モスラのテレパス能力が僕に受け継がれたのか。とシンジはわかった。

 

 

『俺は甘かった。最初から怒ればよかったのだ。』

 

 

 シンジの心に蘇った。

 恐怖が。

 

 

 ゴジラの背びれは赤く輝いていた。

 毒々しく。

 

 シンジにわかった。

 ゴジラは怒ったのだ。

 それは宇宙の終焉を意味している。

 

 

「あ、ああ・・・・あああ・・・・・・。」

 

 

 シンジの心に恐怖があがった。

 彼だけではない。

 そこにいるすべての者が恐怖に包まれた。

 

 赤い色、怒りの色。

 ゴジラはそれに包まれていた。

 

 

 本気になった。

 

 

 ゴジラの瞳孔のない目の周囲、その筋肉を赤いマグマのような血管が浮かび上がっているのがみえた。

 そして、片手を使い大剣を引き抜いた。

 力づくで。

 

 

 ぐきっ!!!!

 

 

 音が響いた。

 

 ゴジラの剛力は大剣すらもへし折った。

 もう希望のエネルギーですらも、このバケモノをとめられない。

 

 

『こんなもので俺を倒すことはできん。』

 

 

 ゴジラはそれだけいうと初号機を振り払った。

 初号機は地面に倒れた。

 シンジは思わず腰が抜けた。

 

 

「あ・・・・ああああ・・・・・。」

 

 

 

 

 そして、ゴジラの大きな足が降り注いだ。

 初号機の上半身は一気に足に踏みつけられた。

 

 

「あああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 シンジは悲鳴を上げ苦しんだ。

 

 

「やめろ!」

 

 

 

 そんなシンジを助けるべくカヲルは激痛をこらえて指を鳴らした。

 ゴジラの周囲に複数の虚数空間が出てきた。

 

 

 そして…。

 

 

「喰らえ!!!」

 

 

 

 複数のロンギヌスの槍が降り注いだ。

 それはかつてネルフ本部にやってきた量産機が持っていたもの。

 10体以上の槍はゴジラの傷跡や頭部に降り注いだ。

 

 

 ざくっ

 

 

 鈍い音が響いた。

 脳に刺さった。

 効果は・・・・。

 

 ゴジラは動いている。

 きいてなかった。

 刺さっているが、まるで痛みなどないように突き進んでいる。

 

 

「バカな・・・・。」

 

 

 カヲルは絶望の表情を浮かべた。

 効かない。

 ゴジラの動きは止まらなかった。

 ロンギヌスの槍はゴジラに効果がなかったのだ。

 

 

 

『愚か者がッ!!!!』

 

 

 ゴジラは怒りのあまり、鼻息を鳴らした。

 その鼻息は衝撃波となり、3体を地面に引き倒した。

 

 

「ああああああああああああああああ!!!!」

 

「うわあああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 モニターで見ていた冬月は顔を青ざめた。

 同じく発令所にきていたリツコも顔を青ざめた。

 

 

「これではあの壁画と同じ…。」

 

 

 モスラが倒れる、四体の巨人が倒れる。

 第一始祖民族が警戒していたシナリオ通りになった。

 

 

 

「宇宙空間から巨大なエネルギーが!!!」

 

 

 

 オペレーターが叫んだ。

 すると、冥王星にある人工衛星の1部がうつしていた。

 宇宙空間を無数の物体が包んでいた。

 

 

 その真ん中に金色の生命体がいた。

 それは東洋の龍のような姿をしていた。

 日向にはわかっていた。

 

 

 

「ギドラだ。」

 

 

 宇宙空間に漂っていられる金色の龍は太陽より大きかった。

 まるで太陽系を食いつくそうとのびていた。

 

 

「あの壁画と同じ…。」

 

 

 リツコは絶句した。

 すべては予言の通りになった。

 モスラが倒れ、エヴァが倒れ、ギドラがやってくる。

 それを迎え撃つゴジラが立ち上がる。

 そして始まるのだ、ラグナロク。

 神々の最後の戦いが。

 

 

 

 ゴジラは初号機を踏んだまま、睨みつけた。

 宇宙の先にいる。

 自分の最後の宿敵が。

 奴も皇帝になり、自身の軍隊を率いているのだろう。

 だが、それも無意味なことだ。

 

 

 ふと、ゴジラは目の前で力なく踏まれている初号機をみた。

 彼が支配する世界では彼は王であり帝であり、神であり、処刑人でもある。

 処刑を行う時がきた。

 そして、処刑はゴジラにとって食事でもあったのだ。

 

 

 破壊神は初号機に食らいついた。

 そのまま轟音とともに初号機の上半身に食らいつきそのまま食いちぎった。

 そして、上半身のみが持ち上げられた。

 

 

「うがあああああああああああっ!」

 

 

 シンジは何もできなかった。

 もはや、避けることもできなかった。

 最後の時がきた。

 彼は確信した。

 

 

「ごめん、みんな。」

 

 

 音声回路を使い、最期の言葉をいった。

 後生の別れ。

 最後まで付き合ってくれた友人たち、シンジは心からの感謝を述べた。

 

 

「さよなら。」

 

 

 ゴジラはそのまま初号機の上半身を一瞬で嚙み砕いた。

 ばらばらになった破片や肉片はそのままゴジラに呑み込まれて行った。

 食い殺されたのだ。

 

 

 

「シンジくん!!!」

 

 

 リツコは悲鳴を上げた。

 

 

 初号機の生体反応がなくなった。

 死んだ。

 恐らくシンジの魂も。

 食われた。

 

 

 

「シンジ…。」

 

  

 アスカはその光景をみていた。

 その時、何かがキレるのを感じた。

 

 

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 

 弐号機は雄たけびを上げATフィールドを放った。

 そして、それはすさまじい衝撃波となった。

 

 

「このトカゲがあああああああああああああああ!!!!」

 

 

 カヲルは目を赤く輝かせた。

 完全に彼はリリンそのものになっていた。

 そして、怒りとともに全身の力を振るい、ATフィールドをぶつけた。

 

 

 

 だが、それらは怒りの衝動に任せた悪あがきに過ぎなかった。 

 ゴジラは彼らの怒りよりもはるかに強い怒りで彼らをにらんだ。

 

 

『邪魔だッ!!!!』

 

 

 だが、ゴジラの怒れる咆哮はそのATフィールドを突き破るほどの衝撃波を発生させた。

 それは弐号機・零号機・四号機を包むと一瞬で破壊していった。

 アスカもカヲルも零号機の中にいたナオコも…すべてが滅び去った。

 塵となった。

 

 

 

「あんたたち…。」

 

 リツコは惚けなく言った。

 エヴァ各機の生体反応がなくなっていった。

 全部砕けた。

 死んだ。

 まるで造作もないように。

 

 

 冬月はある言葉を思い出した。

 ロバート・オッペンハイマー。

 原爆の父といわれた男の言葉。

 

 

 

「ヒンドゥー教の聖典『バガヴァッド・ギーター』の一節にこうある。『ヴィシュヌは王子に義務を果たすよう説得するため恐ろしい姿に変身し、『我は死神なり、世界の破壊者なり』と語った』と。」

 

 

 ゴジラは水爆で生まれた。

 それがすべての始まりだった。

 今考えればそれが世界の終焉の序章に過ぎなかったのか。

 

 

「私たちは間違ったことをしたのだ。」

 

 

 

 ゴジラは邪魔者を排除した。

 一瞬で。

 そして、天を睨みつけた。

 

 

『さあ、始めようか。我が旧友よ。我が宿敵よ。お前を最後に殺してやる。この世界とともに!!!』

 

 

 そして、赤い光に包まれていった。

 

 

「さっきと同じ…。1兆度の何万倍のエネルギーだ。宇宙は終わる。」

 

 

 日向は沈黙した。

 世界は終わる。

 焼かれてしまう、全て。

 何も残さず。

 

 

「先ほどと違うのはもうモスラはいない。さっきはモスラがいたから時間を逆流させられた。でも、もう…。」

 

 

 日向の表情は曇った。

 冬月も同じだった。

 リツコも。

 

 

 もう打つ手はない。

 勝てないのだ。

 なにをやっても。

 

 

 ネルフ本部のゲート前。

 ミサトは圧倒的な敵の数の前に倒されて行った。

 無数の触手はうねり、ミサトの体をまるで磔のように吊るしていた。

 首を締め上げ、両腕両足を縛り上げていた。

 

「う・・・あう・・・・。」

 

 

 ミサトは小さくうめき声をあげるとそのまま気を失っていった。

 

 

『こいつを知っている、俺はこいつに偉そうに指示されていた。年下の分際で!』

 

 

 魑魅魍魎のリーダーが告げた。

 彼は名もなきネルフスタッフの成れの果てだった。

 じわじわとなぶり殺してやる。

 殺した後は死体で遊ぶとしよう。

 

 

 ミサトと共に戦ってたアーノルドも限界だったのか、片膝をついていた。

 

 

 その時だった。

 赤い光が彼らを包んでいった。

 幸運にも死を感じる事もできずミサトも魑魅魍魎たちも冬月たちも、この世に生きるすべての者たち、存在するすべてがことごとく焼かれていった。

 

 

 ゴジラの口から赤い怒りの灼熱光線が放たれた。

 口だけではなく背びれからも熱線と衝撃波は放出された。

 それは一瞬で全てを破壊した。

 怒りと憎悪のエネルギーに満ちた熱線は…全てを焼き破壊した。

 巨大な重力と衝撃波が発生した。

 

 

 世界中で赤い絶望の光と高熱は世界中を焼いていった。

 そして、あがく人々を飲み込んだ。

 シンジたちの抵抗むなしく、地球は一瞬で焼き尽くされた。

 

 それはやがてその爆炎と衝撃波は宇宙空間にも延びていった。

 そこではギドラとその帝国の臣民たちが艦隊を率いていた。

 だが、彼らは一瞬でその身を焼かれていった。

 地球を破壊し、太陽系を飲み込み…宇宙全体が包まれた。

 

 

 それはシンジたちの世界だけではなかった。

 複数の多元世界が呑み込まれた。

 そこで生きる無数の生命・物体・存在は焼かれ衝撃波で潰され、圧倒的な憎悪のエネルギーで魂が潰されていった。

 

 

 何万という多元世界の多くの碇シンジは焼かれた。

 彼らの魂も、すべての能力も、知恵も…。

 一瞬で抵抗すら許されず呑み込まれた。

 多元宇宙を飲み込んだファイナル・インパクトは発動した。

 彼の怒りの炎は全てを飲み込んだ。

 

 

 そして、世界は一つになった。

 その中心にゴジラがいた。

 彼の元に無数の魂が降り注いだ。

 

 

 彼は満足した。

 そして、しばらく寝る事にした。

 

 

『万事よし。』

 

 

 

 だが、彼にはわかっていなかった。

 それは虚無の世界でしかなかったことに。

 

 

 死すらも許されない永遠の孤独が彼を待ち受けることも。

 

 

 生命すらいない、無の世界で孤独な王は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦闘はゴジラの圧倒的勝利で終わりました。
しかし、ストーリーはまだ終わりではありません。
もうちょっとだけ続きます。


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第13話 破壊と創造

シン・エヴァ要素あります。

次回、エピローグです。
近日中に投稿します。






 ゴジラは虚無の中で目を覚ました。

 そこにはなにもなかった。

 何もない空間の中をゴジラは浮かんでいた。

 

 

『何もない…。』

 

 

 どれだけ時間がたったのだ。

 彼にはもう、わからなかった。

 具体的にはわからないが、何億年と寝ている気がする。

もはや、彼には誰もいなかった。

 何もない世界で浮かぶたった一人だけの神。

 

 

 あらゆる次元を、複数の次元に浮かぶ何万、何億という多元世界は今ゴジラの究極の破壊によるその全てが滅びた。

 呑み込まれた。

 火で、光で。

 

 彼の怒りはありとあらゆる多元世界の海を破壊しつくしてしまった。

 ゴジラの怒りの炎は宇宙に生きるすべての生き物を破壊し、呑み込んだ。

 

 その結果は虚無だったのだ。

 そこには無だけしかなかった。

 すべての存在を破壊し焼き尽くすゴジラ。

 彼の破壊に耐えれるのは彼自身しかいなかったのだ。

 

 かつてビッグバンがそうであったように、生命が生まれると思い込んでいた。

 違ったのだ。

 自分の行う破壊は圧倒的すぎた。

 生命も、あらゆる存在も戻ってくることはなかったのだ。

 

 

『私は愚かだった…。』

 

 

 すべてを破壊しつくしたあとには無しかなかった。

 生命すら生まれ得ない虚無。

 その中でゴジラは一人、孤独にたたずんでいた。

 破壊の先には何も生まれない。

 

 

『これが私の望みだったのか。何もない世界が…。』

 

 

 一人で寂しく告げた。

 

 

 かつての天敵は全て殺した。

 憎たらしい文明も。

 その代わり、配下も全て死んだ。

 子供といえるものも死んだ。

 もう誰も自分にはいない。

 

 

 あらゆる文明の破壊を、世界の破壊を望んだ。

 自分をただの恐竜ではなくさせた文明を持つすべての者を憎み殺すことを望んだ。

 これがその末路だったのか。

 

 

 気が付いてしまった。

 ゴジラ、世界の破壊者。

 破壊の神。

 怪獣の王。

 

 彼はあらゆる万物を破壊できる力があったが、なかったのだ。

 創造する力が。

 文明とは破壊もあるが、創造も兼ねているのだ。

 

 今思えば、あふれる憎悪と憤怒の身が私を突き動かしていた。

 周囲の恐怖がそれを支えた。

 だが、逆を言えば…恐怖と破壊するものがなければ自分には意味などないのだ。

 

 

『こんなことは求めていなかった。』

 

 

 ゴジラはずっと憎悪と憤怒に狂っていた。

 すべての文明を破壊し、怪獣たちの世界を作ろうとした。

 

 

 だが、それも彼以外は死んだことでできなくなった。

 そして、自分は死ぬこともできぬ、ただ虚無の世界を眺めることしかできないのか。

 

 彼の体の中に浮かび上がった。

 悲しみが。

 孤独が

 

 それは長い間、彼が失っていたものだった。

 

 

 だが、ゴジラは気づいていなかった。

 彼は孤独ではなかったのだ。

 

 無敵であることがあだとなった破壊神の体内である存在が目を覚ました。

 

 

「あれ?」

 

 碇シンジは目を覚ました。

 肉体はない。

 なのになぜ目を覚ますんだろう。

 

 

「あ、そうだ…。」

 

 

 ゴジラに殺されたんだ。

 そして、肉体は消えてしまった。

あいつの歯でズタズタにされた。

 エヴァ初号機とともに。

 

 負けた、そして死んだんだ。

 情けないことに自分は負けた。

 でもなぜ生きているんだ。

 

 

『碇くん。』

 

 

 声がした。

 

 

「え?綾波?」

 

『私たちは死んだのよ。』

 

「そうか、君も死んだのか。」

 

『ええ。』

 

 シンジは後悔した。

 自分は世界最強だと思い込み、傲慢になっていた。

 力を正しく使っているそんな気でいた。

 

 

「ごめん、綾波。」

 

『あなたのせいじゃないもの。そんなことより、なぜ私たちはこうやって自我を保てるかわかる?』

 

「え?」

 

『最初に彼らの声を聴いてごらんなさい。』

 

 

 シンジの魂はかすかに残っていた聴覚をいかした。

 魂だけになっても感覚はあることにシンジは驚いた。

 

 声が聞こえる。

 何だろう…。

 

 

『ツライ。』

 

『クルシイ。』

 

『ウランデヤル!!』

 

『ニクイ…!!』

 

『コロシテヤル!!!』

 

 

 シンジはぞっとした。

 憎悪や後悔、憤怒といった声が聞こえた。

 怨念だ。

 

 

「まさか…。」

 

『これがヤツの力の原動力よ。この中では正常な精神を保てない。当然よね、死んだんだもの。みんな憎悪や後悔、苦しみに呑まれて怨念の力に変わっていくの。』

 

 

 ゴジラに破壊された世界の複数の生命体すべてが飲まれて行った。

 その魂が。

 それらは怨念の声を吐き、呪いの言葉を叫びながらゴジラを生かしていた。

 正常を保つこともできず、怨念のみが残っている。

 

 

「なぜ僕らはここまで正常な精神を保てるんだ。」

 

『モスラの力よ。』

 

「モスラか…。」

 

『碇くん、私はモスラの魂と一体になったことで全てがみえたの。みせてあげる。』

 

 

 すると、シンジの魂にある光景がうつった。

 赤い海その中で父とシンジが対話をしていた。

 そして、赤い海からすべての生命が帰っていくのがみえた。

 やがて、シンジはマリとともに別世界を創造した。

 ここで視界の映像は止まった。

 

『あなたがみているあなたはあなたであってあなたではない、別世界のあなたよ。』

 

「これは?」

 

『アディショナルインパクト、現実と虚構を混ぜる禁断の行為。多元世界を上書きし新しい世界を創造する行為よ。エヴァのない複数ある多元世界ネオンジェネシス、その一つを作るため。』

 

 

 シンジにはわかった。

 ようやく。

 そうか、これか…。

 これが原因でゴジラはこの世界に来てしまった。

 

 

『そして、この結果生まれたのが第一始祖民族よ。それが今の私たちを産んだ。』

 

「そうか…。」

 

『すべては別の円環の理から逃れるための緊急避難、誰かが幸せになる頃に誰かが泣くことになる。その泣いた魂たちがゴジラに神の力を与えている。』

 

 

 彼も来たくて来たわけじゃない。

 純粋に破壊を楽しみたいわけじゃない。

 犠牲者じゃないか。

 

 

「誰も悪くはないんだよ。」

 

 

 

 恐らくはこれを行った別世界の僕もきっと逃げたかったんだ。

 仕方ない。

 誰も悪いわけじゃないんだ。

 誰も悪くない…。

 

 だったら…。

 

 

 

「だったら、ゴジラだって犠牲者じゃないか…。」

 

『よく気が付いたわね。』

 

「助けてあげないと…。でも、どうすればいいんだろう。」

 

『アディショナルインパクトの逆転を行うの。』

 

 

 逆転。

 でもそんなことができるのか。

 

 

「どうやってできるの?」

 

『あなたと私に受け継がれたモスラの時間逆転を使う。そうすれば世界が戻る。あらゆる多元世界が解放される。でもそれだけじゃ器ができただけで意味がない。そこで、ゴジラに頼んであらゆる魂を吐き出してもらうの。』

 

「でも、それだけ許してくれるかな。」

 

『この世界の一つには、人間がいない世界がいる。そこはきっと彼も気に入ると思う。』

 

 

 そうか、文明がない世界。

 そこではきっと、彼も平和に生きられる。

 許してくれるかもしれない。

 

 

『説得するのよ。彼を。それしかもうないわ。』

 

「僕に…できるかな。」

 

『やってみる価値はある。モスラはゴジラの心に話しかけられる。その力はあなたにあるの。あなたを信じてるわ、碇くん。だからあなたも彼を信じてあげて。彼の中にある残された善意と希望に…。』

 

 

 ミサトさんがいっていたな。

 奇跡を待つより捨て身の努力。

 やってみよう。

 シンジは決意した。

 そして、シンジの魂は光輝いた。

 

 

 

 そこにゴジラの魂がみえた。

 悲しみの紺色のオーラがにじみでている。

 

 

 

「あいつ、寂しがっているんだ。」

 

 

 

 シンジにはわかった。

 見知らぬ天井、それをみつめ孤独に耐える日々が続いた。

 気が付けば孤独になれてしまった。

 

 だが、ミサトさんにあって孤独は消えていった。

 アスカやカヲルくんにもあった。

 綾波にもリツコさんにも、青葉さんにも。

 だから孤独じゃなくなった。

 

 

「ミサトさんに会う前、僕もああやって孤独だったな…。」

 

 

 ゴジラの気持ちがなんとなくわかる。

 孤独はやっぱ悲しいよ。

 シンジは思い切って話しかけた。

 恐怖が立ち上がるのを感じたが、抑えた。

 肉体がなくなっても、感情は残っていることにシンジは驚いた。

 

 

「ねえ。」

 

 

 シンジはゴジラの脳内に話しかけた。

 すると、ゴジラの目は見開いた。

 

 

『何だ?私以外にも生命がいたのか。なぜ話しかけることができるのだ。』

 

 

 驚きだ。

 まさか声を掛けられるとは思っていなかったんだろうな、とシンジは感じた。

 

 

「違う、僕は君の中にいる魂だよ。」

 

『なに!?』

 

「君と戦ってた紫色のアレ覚えてないですか?アレですよ。アレの中にいる人間です。」

 

 

 ゴジラはふと黙った。

 そして思い出した。

 何度も何度も倒したアレか。

 あのしつこい奴。

 倒しても倒しても何度も何度も蘇るヤツ。

とうとう、体の中から話しかけてくるとは…。

 

 

『あのしつこい奴か。』

 

「しつこくてごめんね。」

 

『何をしに来た。』

 

「放っておけないから来ました。」

 

 

 破壊神はため息をついた。

 この期に及んでまだ食いつくか。

 一度やると決めると諦めぬたちか。

 

 

『お前は本当に、本当に…しつこいやつだ。何度殺しても戻ってくるとは‥。ここまでしつこいのは初めてだ。』

 

「でも、寂しいんじゃないですか?」

 

 否定できない。

 素直に認めるのは吉か。

 

 

『そうだ。』

 

「あなたの話を聞かせてください。」

 

 

 ゴジラは驚いた。

 話を聞く?

 人間が?

 

 

『私は元々、海の底で眠っていた。心地よかった。時々起き上がりクジラやダイオウイカを食う日々であった。毎日がゆっくりとしていた。だがある日大きな光が上がった。』

 

「水爆実験だ。」

 

 

 ゴジラは水爆実験で蘇った。

 この世界のゴジラもそうなんだ。

 

 

『それがすべての始まりだ。』

 

 

 そうだったのか。

 恐らくそこでこいつはあらゆる力を吸収して強くなるミュータントになったんだ。

 あらゆる破壊の力を吸収する。

 だから何度死んでも死んでも蘇る。

 

 

『我が肉体は醜く大きくなってしまった。私を倒すために人間はあらゆる兵器を生み出した。そこで争いの日々が始まったのだ。』

 

「あなたは争いが好きじゃなかったの?」

 

『好きだったさ、だがそれ以上に憎かったこの世の全てが…そしてある日。我が力はさらに強くなった。その代償として我々の住んでいた世界は消えてしまった。』

 

 

 それで第一始祖民族と繋がったのか。

 現実と虚構を統合させるアディショナルインパクト。

 それはこのような歪みを産んだのだ。

 

 

「その時にあなたは神の力すらも吸収した。」

 

『そうだ。』

 

「あなたは何を望むんですか?」

 

『平穏だ、誰にも邪魔されぬ世界。子を作り、妻を持ち家族を作りたい。それが望みだ。』

 

 

 平穏。

 恐らくそれは僕の考える物とは違うだろう。

 彼の望む平穏、それは人類のいない世界。

 誰も阻害されることなく自由に生きられる世界。

 そこで家族を作りたいんだ。

 

 

「破壊の神、ゴジラ…。偉大なる万物の王よ。あなたにいっておくことがあります。」

 

『なんだ。』

 

「その原因になったのはあなたの考える通り、人間だ。恐らくは別世界の僕だ。」

 

 

 ゴジラは黙った。

 ふつふつと怒りが上がっている。

 元凶か。

 シンジは話をつづけた。

 

 

「だが考えてくほしい。あなただって関係のない世界を多く滅ぼした。それは誰かにとっての世界なんだ。それを忘れないでくれ。」

 

『貴様、喧嘩を売りに来たのか?それならば今すぐ、魂を吐き出してもよいぞ!!!それとも…憎悪に焼かれて死ぬか!?』

 

 

 ゴジラの目が赤く輝いた。

 怒りだ。

 シンジは怖気つかなかった。

 元から死んでるんだ。

 死ぬことなんて怖くない。

 

 

「でも事実ですよ。あなたが文明を許さない。だから破壊の力で世界を焼き尽くした。それについて、僕は許すことはできない。だけど怒りや憎悪じゃ何も変わらないんだ…。」

 

 

 ゴジラの怒りは冷めた。

 確かにこやつの言ってることは正しい。

 我が破壊は無益なものであった。

 怒りでは何も解決できぬ。

 孤独をいやすことはできぬ。

 

 

『そうだ、お前の言う通りだ。』

 

「僕は‥ただ家族の元に行きたい。友達の元に。だからあなたと話をしに来たんだ。」

 

 

 家族か。

 私が真に欲したもの。

 求めたもの…。

 

 

『そうか…。だが、もう手遅れだったな。我はここで孤独に生き続けるしかないのだ。』  

 

「いや、まだ遅くはないんだ。今からでもやり直せる。お願いです。力を貸してください。」

 

『何をしてほしいのだ。』

 

 

 シンジは叫んだ。

 もう体はなかったが‥。

 

 

「僕と一緒につぐないをしてくださいッ!!!」

 

『つぐない?』

 

 

 驚いた。

 人間の口からつぐないの声が出た。

 

 

 

「僕はモスラの力を得た、時を逆転させることができる。だからあなたは僕たちを解放してください!すべての魂を吐き出してください!この世界には文明も人もいない世界がある!そこを戻すことができるんだ。」

 

 

『…そうか。』

 

 

 世界があれば、そこに魂を戻すこともできる。

 虚無に落ちることもない。

 元に戻るわけだ。

 

 

「世界をもう一度分断するんです、あなたの世界と僕の世界を。」

 

 

 分断か。

 まあ、悪いことばかりではない。

 

 

『できるのか?』

 

「できるはずです。」

 

 

 ヒトのいない世界。

 それはどんなものだろう。

 俺の心の中にいるのだ、嘘はつけない本音か。

 こやつは嘘がつけぬのだ。

 知恵に依存した人間にあるまじき存在。

 

 

「ただ、お願いがあります。僕は時を戻す。だからあなたの中にいる魂たちを解放してください。世界を戻すことにご助力お願いします。」

 

『それがそなたの望みか?』

 

「はいッ!」

 

 

 ゴジラはふと考えた。

 ヒトのいない世界。

 それがどのようなものか、考えたこともない。

 だが、いけるのであればいってみたい。

 何よりも孤独は耐えがたい。

 

 

『手を貸そう。』

 

「ありがとう!」

 

『知恵あるものを許したわけではない、だがお前は好きだ。』

 

「本当に…ありがとう。」

 

 

 シンジは考えた。

 彼に謝らなくてはいけない。

 人類を代表して。

 

 

「ごめんなさい、あなたを傷つけてしまったすべての人たちに代わってあなたに謝りたい。」

 

 

 怪獣の王は黙ってその謝罪を受け入れた。

 どこまでも純粋なやつだ。

 嘘をつけぬヤツは嫌いではない。

 

 

『その言葉を…聞きたかった。たった一度でも。』

 

 

 そんな中ゴジラはふと思い出した。

 

 

『我々の住む世界とお前たちの住む世界を分断するのであればその前に我が宿敵・古き友であるギドラを葬らなければいけない。ヤツは我が蘇らなくてもお前たちの世界を滅ぼすだろう。』

 

「ギドラ。」

 

『お前が我が体を剣で切ったその瞬間に戻ろう。あそこがちょうどいい頃合いになろう。』

 

「はい。」

 

 

 少しシンジは考えた。

 なんだかまるで父さんみたいだ。

 彼は子供が欲しかった。

 だから僕たちはある意味ではお互いを欲しがっているのかもしれない。

 内心では‥。

 

 

 

「じゃあ、いきますよ。」

 

『ああ。』

 

 

 

 シンジの魂は光輝いた。

 モスラとともになったことで得た超能力が輝いた。

 時間を逆流させたのだった。

 

 

 その逆流は第一始祖民族が行ったアディショナルインパクトの巻き戻しでもあった。

 ゴジラも雄たけびをあげ大きな体内放射を行った。

 それは彼の周囲の何もかもを逆流させた。

シンジの行うアディショナルインパクト、ゴジラの体内放射で発生するエネルギーこれらは混ざり合うと複数の世界を生み出し、ゴジラの中にいた魂たちは解放されていった。

 

 

 その中で彼はある世界をみつけた。

 そこに間違いなく人のいない世界はあった。

 シンジの言う通りであったのだ。

 

 

『これがそうか。』

 

 

そこではゴジラと同族の生命体もいた。

その時、彼は気が付いた。

自分は間違ったことをしていたのだ。

彼らの魂すらも吸っていたのだ。

 

 

『私は間違っていたのだ。』

 

 

ゴジラは反省した。

 

 まだまだ時間はさかのぼった。

 両者の力は混ざり合い、宇宙の再生と再創造を行っていった。

 

 

 ゴジラは逆流する時間の中で、シンジの魂の1部に触れた。

 そのシンジも意図的ではないが、世界を滅ぼしてしまったのだ。

 彼は察して、言葉を出した。

 

 

『忘れるな、若者よ。お前ひとりのせいではない。』

 

 

 なぜか、わからないがシンジは救われる気がした。

 こういってもらってほしかったんだろう。

 気休めでもいい言葉が。

 

 

 その時、世界が光で包まれた。

 再創造が終わった。

 

 

 まばゆい光に包まれるとシンジは空中に浮かんでいることに気が付いた。

 体がある。

 初号機もある。

 

 

「もどった。」

 

 

 元に戻った。

 モスラの時をかける能力で…戻ってきたんだ。

 できたんだ!

 

 

『碇くん、彼との約束忘れてあげないでね。』

 

 

 綾波もいる。

 シンジはその体の存在に心躍りそうになったが耐えた。

 その両腕には大剣があった。

 シンジは雄空中の中で、剣を背中のパッドに抱え込んだ。

 そして、そのまま地面に着地した。

 

 

 ふと海を見つめると弐号機も四号機も零号機もいた。

 

 

「みんな無事だ。」

 

 

 ゴジラにあの時の記憶はあるだろうか。

 彼は横にいるゴジラを見た。

 彼は上空をみていた。

 その目は怒りに包まれていない。

 

 

 という事は…僕を許している。

 

 

 

「僕を信じてくれてありがとう。」

 

『約束を果たそう。』

 

 

 

 

 ゴジラは雄たけびをあげた。

 青白い光は天高く飛び上がった。

 大気圏外に延びると、その光は曲がりくねりながら黄金の破壊神であるギドラに延びていった。

 ギドラの体は爆破四散すると、その艦隊を巻き添えにして宇宙空間に散っていった。

 

 

「すごい…。」

 

 

 シンジはその動きに圧倒されていた。

 なんて強さだ。

 まるで圧倒的。

 これを神というのか。

 

 

 

 攻撃がやんだゴジラは初号機に向き直った。

 初号機も彼をみつめた。

 

 

 ふと、シンジは気が付いた。

 ゴジラの存在が消えかかっている。

 アディショナルインパクトの逆転の影響だ。

 あらゆる怪獣たちが、ゴジラとともに人のいない世界に行くのだ。

 

 分離していく。

 一つになった世界が再び分かれていく。

 元の世界に帰っていく。

 すべてが…元に戻っていく。

 

 

 そして、ゴジラの中にあった魂たちが光り輝きながら宇宙に消えていくのがみえた。

 残っていた魂たちがあるべき世界に戻っていくのだ。

 

 

『シンジ…。』

 

 

 声がした。

 綾波に似ている。

 でもこれは違う。

 別だ。

 

 

『ありがとう、シンジ…。』

 

「母さん?」

 

 

 母さんだ。

 母さんも解放された。

 ようやく、戻っていった。

 恐らくは父さんのいる世界にいくんだろう。

 

 

「ありがとう、母さん。」

 

 

 シンジの背中に安堵が走っていくのを感じた。

 喜びが心の中を駆け巡っていく。

 成功だ。

 

 

『若者よ、目を閉じよ。』

 

 

 ゴジラの声だ。

 シンジは彼の言う通り目を閉じた。

 そこには赤い海がみえた。

 

 

『そなたの決断のおかげで他の世界でも生命が戻っていくのだ。』

 

 

 赤い海はやがて液体から人や生命体、ペンペンを作っていくのがみえた。

 これは夢ではない

 別世界の現実。

 そこにはシンジとアスカがいた。

 14歳のままの姿。

 

 

 

『我が破壊した世界も戻っていくのだ。』

 

 

 シンジにはみえた。

 彼が破壊した世界の全てが戻っていく。

 シンジとヒカリが付き合っている世界、トウジとアスカが付き合っている世界。 

 光とともに彼らが戻っていくのがみえた。

 どこかの村にいるケンスケたちの世界。

 それらは戻っていった。

 

 

『そなたの父と母の魂はガフの扉の先に逝く。それはそなたらが天国というものだ。いずれはそなたも行くことになる。今ではないがな、その時をそなたの父は待っておるはずだ。』

 

 

 シンジは瞼を開けた。

 

 

「ありがとう。」

 

 

 ゴジラの存在は薄れていった。

 消えかけていた。 

 まるで砂が風に吹かれていくがごとく。

 存在が消えていきかけていた。

 それと同時であった。

 世界中で猛威を振るっていった怪獣たちは姿を消していった。

 メガニューラも、デストロイアも、オルガの放った兵士も、カマキラスも。

 ゴジラに誘われるがごとく、あらゆる怪獣たちは人のいない世界へと誘導されていった。

 

 

『我が友よ、ともにゆこう。』

 

 

 現実と虚構を統一させるアディショナルインパクト、その逆をいったのだ。

 これにより、ゴジラの住む世界は別次元のものになった。

 

 

 

『すまなかったな、人間よ。』

 

 

 謝罪の言葉だ。

 気が付けば朝になっていた。

 

 

『忘れるな、この世界はお前たちだけのものではない。我のようなものがまだどこかにおるかもしれぬ。その時、世界を守れるのはお前だけなのだ。』

 

「はい。」

 

『もう会うこともないだろう。』

 

 

 シンジにもわかった。

 もう、会うことはない永遠の別れだ。 

 

 

「お元気で。」

 

 

 シンジは天敵にそう告げた。

 ゴジラは少し表情が柔らかくなると、シンジに返した。

 

 

『ありがとう。』

 

 

 それを最後にゴジラは完全に消えていった。

 それは複数の世界に別れて消えて言ってるようにみえた。

 ゴジラもまた複数の多元世界のそれが混ざった生命体であることをほのめかすように。

 まるで砂埃のようになると、空中へ天高く舞い上がった。

 ゴジラは消えていった。

 完全に。

 

 

「もうあうことはない、か。」

 

 

 シンジは疲れに襲われた。

 

 

 その頃、ミサトは自身を縛り上げていた触手の持ち主が消えたことが気が付いた。

 その横では彼女への復讐に狂っていたはずのアーノルドが手を差し伸べていた。

 和解の証だ。

 ミサトはその手をつかんだ。

 

 

「ありがとう。」

 

「お前を許したわけではない・・・だがもう会うことはないだろう。せいぜい長生きをして死ね。」

 

 

 彼はそのまま背を向け去っていった。

 ミサトは微笑んだ。

 

「あなたもね。」

 

 

 

 彼女だけではなかった。

 

 

 アルカトラズ島でたたかうコズロフ三兄弟も。

 オーバーザレインボウの艦長も。

 ロサンゼルスやテキサスのギャングたちも。

 第三新東京の外れに住むリーすらも。

 皆が勝利を喜んだ。

 人類は勝ったのだ。 

 

 

 破壊の神は消えた。

 ゴジラは去った。

 世界の破壊は防がれた。

 

 

 

「はあ…。」

 

 

 

 初号機はフロリダの海に浮かんでいた。 

 ふとみると、アメリカの人々がシンジに声援を送っているのがみえた。

 彼は照れ臭く笑った。

 

 

「シンジ!?」

 

 

 アスカの声だ。

 

 

「アスカ?」

 

「なんでアイツ消えたの?」

 

「彼らだけが住む世界にいくように時間を逆転して、多元世界の上書きの上書きをしたのさ。」

 

「え?」

 

「また、説明するよ。」

 

 

 シンジはふと思い出した。

 

 

『激しい力には力で挑んでも意味がない。』

 

『でかくて強いやつほど心は寂しく孤独なもんだ。その孤独をつけば勝機があるかもな。』

 

 

 全部あの夢の中で父がいっていた言葉。

 それを使っただけ。

 あれが本当の父かどうかわからない。

 だが、虚構であっても魂だけであったとしても父さんが助けてくれたことに変わりはない。

 

 

 

「何をしたかわかっているよ、シンジ君。」

 

 

 カヲル君の声。

 彼も無事だった。

 

 

「まあ、なにもいわないでおくよ。」

 

「やっぱ、すごいねカヲルくんは。」

 

 

 二人は冗談をいった。

 そんな時だった。

 

 

「あんたたち…!」

 

 

 リツコの声だ。

 生きていた。

 

 

「リツコさん。」

 

「本当に、バカね。」

 

 

 シンジは照れ臭く笑った。 

 こういう時のリツコさんは照れ隠しをしている。

 

 

「バカは世界を救うんですよ、リツコさん。」

 

「その通りね。」

 

 リツコ。

 声が元気そうだ。

 相変わらずで何より。

 

 

「ミサトさんは?」

 

「無事よ、ペンペンもあなたの子供も。」

 

「よかった…。」

 

 

 みんな無事だ。

 

 

「シンジ君、今回もやってくれたな!」

 

「日向さんも無事だったんだ。」

 

 

 日向さんの声だ。

 一度聞くと忘れられない高い声をしている。

 

 

「多分何回か死んだと思うけど蘇ったよ。」

 

「はは、そうかそうか!生きていて何よりだ!」

 

 

 何か日向さん上機嫌だな。

 今回は大活躍だったし、まあいいかな。

 

 

「流石だ、みんな。」

 

 

 冬月の声だ。

 彼も生きていた。

 

 

「あーっと、ちょっと待ってくれ。少し席を外す。」

 

 

 冬月は一旦席を外れたようだ。

 

 

「はあ、今度という今度はやばかった…。」

 

 

 シンジはため息をついた。

 長かった。 

 何回死んだんだろう今回。

 3回ぐらい死んでるよな…。

 流石に本当にやばかった。

 

 

「地球が滅びるとか人類が絶滅するとかならわかるけど、宇宙が滅びるってスケールが違うよなあ…今回、いくらなんでもバカげているよ。」

 

 

 シンジの出し抜けに言った言葉に思わずその場にいたすべては笑い転げた。

 だが、実際にあったことだ。

 

 

「まあ、もう二度と経験したくないよね。」

 

 

 アスカが締めの言葉を言ったその時だった。

 

 

「なに!?本当か!!!」

 

 

 冬月の焦る声が聞こえた。

 何事だろう。

 

「なんだろう。」

 

「何かな。」

 

 冬月の声はより強くなった。

 

 

「よく聞け、サード!青葉くんの意識が回復したそうだ!」

 

 

「本当!?」

 

 

 

 青葉さん。

 怪獣に刺されて意識を失った青葉さん。

 怪獣の存在が消えたことで、毒も消えたのだ。

 

 

 

 

「ああ、本当だ。よかったな。」

 

 

 冬月の声は震えていた。

 流石に心配だったんだろう。

 

 

「よかった、本当によかった。」

 

 

 シンジの目に涙が浮かんだ。

 安心の涙、彼が今まで経験したことのないものだった。

 

 

「みんな生きててよかった。」

 

 

 彼は涙を流し終えるとため息をついた。

 ふと、ネルフの専用機がエヴァを回収していくのがみえた。

 

 

「あーあ、もう疲れた…。」

 

「今度ばかりは流石の僕も何回か死ぬんじゃないかと思ったよ。」

 

「あたしも…。」

 

 

 アスカとカヲルは愚痴をいいあっていた。

 彼らは勝ったのだ。

 朝日は、シンジたちを差し込み勝利で祝うかのように輝いた。

 零号機はそんな彼らを冷ややかに単眼でみていた。

 

 

 

「みんな無事だ…よかった。」

 

 

 シンジはふと天をみあげた。

 あの先にゴジラも生きている。

 僕も生きている。

 

 それぞれが生きている。

 別々の世界で。

 それでいいんだ。

 

 

 シンジは目をつぶり勝利を感じた。

 

 

『碇くん、おめでとう。』

 

「ありがとう、綾波。君のおかげだ、ありがとう。」

 

 

 世界を救った救世主は勝利を祝った。

 

 

 




エヴァはゴジラには勝てなかったけど、それぞれ別の世界に行くことで和解したということです。
一応、本作のギドラは元々ゴジラたちとは違う次元の存在だったのでアディショナルインパクトの書き換えをやっても存在し続けているので、倒しておかないとやばいという設定です。


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最終話:さらば、ゴジラとエヴァンゲリオン

これで終わりです。


 ゴジラとシンジの最後の戦いが終わった。

 シンジは結局、ゴジラに勝つことはできなかった。

 だが、和解はできた。

 そして、世界は二度目の破壊からなんと再生することができた。

 

 リツコは時田と結婚をすることとなった。

 彼女らしく、結婚式は身内だけで行いおごそかなものになるとシンジは聞いた。

 時田と彼女はジェットアローンの量産化に乗り出すそうだ。

 エヴァに依存せず、街の防衛をするため。

 あるいは、それを売ってネルフの予算を増やすため。

 

 オーバー・ザ・レインボウの艦長もカヲルとともに健勝であるそうだ。

 カヲルはこの世界を守り続けると覚悟は固かった。

 

 冬月も、噂に聞くとミサトの伯母と縁談をするらしい。

 実現できるかは不明だと、シンジは思った。

 シンジもあったことはあるが、ミサト以上の怪人だ。

 

 綾波は初号機にいたままだ。

 最近、ケントは初号機に近寄ると「れいれい」と呼びかける。

 綾波が初号機の中にいることがわかっているのだ。

 

 

 しかし、失ったものもあった。

 ゴジラによって命を奪われた人々の存在が戻ってくることはなかった。

 魂が解放されただけで、死そのものはそのままだった。

 

 中国大陸やマイアミで死んだ人々はそのまま死んだままだった。

 マリはその一つであった。

 

 数週間後のドイツ。

シンジは仲間たちともに、真希波・マリ・イラストリアスの葬儀にきていた。

 彼女は第一始祖民族のクローンだった。

 ゴジラの息子であるバガンを巻き添えに、その命を散らした。

 

 彼は気が付いた。

 相田ケンスケがいた。

 彼はマリと付き合っていた、目を赤くしていた。

 

 普段ケンスケに冷たいアスカもその日ばかりは同じく泣いていた。

 アスカとバディを組んでいたのだから、それもやむないとシンジは思っていた。

 葬儀にはネルフの面々、艦長を筆頭にした国連軍の関係者、さらにヒカリもきていた。

 どうやら、マリとヒカリには面識はあったようだ。

 

 葬儀は一通り終わった。

 ミサトは息子を連れ先にホテルへといったようだ。

シンジは友人たちのことが気にかかり、教会に残った。

 そこにはシンジだけではなく、アスカやヒカリ、加持たちがいた。

 背中を丸め大きな声で泣き叫ぶケンスケをシンジはみつめるしかできなかった。

 

 加持はそんなケンスケをみつめ言った。

 

 

「あいつはお前を守って死んだんだ、お前の命は何があっても絶対に粗末にするんじゃない。お前の命はあいつの命でもある。それを絶対に忘れるな。お前とあいつが生きていた記憶と一緒にそれはあるんだ。あり続けるんだ。絶対に…絶対に忘れるんじゃないぞ。」

 

 

 加持なりの気遣いだろう。

 昔は遠回しで気障な言い方が多かったが、最近は直接的にいうようになった。

 あれが本来の彼なんだろう。

 加持さんはケンスケに自分を重ねてるんだ。

 セカンドインパクトで失った弟を重ねてるんだ。

 ほんのちょっとだけケンスケが羨ましくシンジにはみえた。

 

 

「わかってる。」

 

 ケンスケは小さく言った。

 加持はシンジに目をやった。

 そして、立ち上がり教会のドアに近づくと小さく告げた。

 

 

「シンジくん、あいつを元気づけてやってくれ。あと…クリスマスに送るのはスイカにしてくれ。」

 

 

 それだけいうと、加持さんは姿を消した。

 シンジはケンスケに近づくと、その肩を叩いた。

 

 

「ケンスケ。」

 

「シンジ。」

 

 

 ケンスケは肩を震わせて言った。

 

 

「大事な人を失うってこんなにつらいんだな。」

 

「そうだよ。」

 

「俺、どうしたらいいんだろう。」

 

「彼女を忘れないことが一番大事だと思う。」

 

 

 父さんも死んだ。

 その時、僕は悲しかった。

 今、僕にはケンスケのそばに立ってやるしかできない。

 それしかできない。

 

 

「人は多くのこと忘れる、でも忘れちゃいけないことがある。」

 

 

 父が言った言葉だ。

 自分に。

 今はケンスケにいってやろう。

 

「忘れるわけないだろ、忘れられねえよ。そんなの。あいつ冷えたココアが好きだったんだ。一緒にあいつとバルコニーに立って飲むんだよ、ココアを…。それがあいつ好きだったんだ。」

 

「ケンスケ…。」

 

「俺、日本に帰るよ。ここには楽しかった思い出が多すぎる。今度ばかりはもう俺はダメだよ。悪い…シンジ。」

 

「でも…。」

 

 

 すると、ケンスケの近くにヒカリがよってくるのがみえた。

 

 

「相田君、私も鈴原を失って悲しかった。辛かったよ。今でも悲しい。大好きな大好きな人を失うって辛い事なんだよ…。」

 

 

 そうだ、委員長はトウジを失った。

 永遠に。

 死んだ人間は帰ってこない。

 

 

「どうすりゃいいんだろう。」

 

「今は泣きましょう。あとで思い出して笑ってあげればいい、あたしはそうした…。鈴原の時。」

 

「委員長…。」

 

「あなたが大好きだった人が笑った世界を大事にしてあげて、それが精いっぱいの恩返しになるんだからっ。」

 

 

 ヒカリはケンスケを強く、強く抱いていた。

 

 

「だから、いくらでも泣いていいわ。」

 

 

 ケンスケはヒカリの胸の中でおいおいと泣き叫んでいた。

 ヒカリはそんな彼を優しく抱き寄せていた。

 アスカはそんな二人を優しくみた。

 彼女はシンジに微笑んだ。

 

 

「外にでない?」

 

「いいよ。」

 

 

 アスカはシンジを連れて教会の外に出た。

 

 

「今日は来てくれてありがとう。」

 

「ああ。」

 

「マリ、あいつも喜んでると思う。」

 

「彼女とは面識が少なかったけど、大事な仲間だよ。」

 

「ええ、そうね。」

 

 

 アスカはシンジをつれ、外に出た。

 ふと気が付いた。

 アスカの指には指輪がついていた。

 

 

「気になる?これ?」

 

「うん。」

 

「加持さんからもらったの。」

 

 

 今のアスカは落ち着いていた。

 非常に冷静だ。

 

 

「結婚式やるからきてね。」

 

「アスカ、大人になったね。」

 

 

 シンジの誉め言葉を聞くとアスカは笑顔になった。

 シンジは、すごく美しい笑顔だと少し思った。

 アスカは何かを思い出したように掌を打ち付けた。

 

 

「ああ、そうだ。」

 

「どうしたの?」

 

「うん、あの片腕のおじさんがこの前家に来てさ。チョコレート食べにきたよ。本当に来たよあいつ。」

 

 ああ、あいつか。

 アーノルド。

 

「え?マジ?」

 

「なんか、変なとこ正直だよね。」

 

 

 シンジとアスカは笑いあった。

 もう長い仲だ。

 最高の親友だ。

 

 

「あ、そうだ。」

 

 

 シンジは指を鳴らした。

 

 

「アスカのお爺ちゃんが手紙を渡された、これをアスカに渡せって。」

 

「え?あの人はどうなったの?」

 

「結局、アメリカ政府に連行されちゃった。死刑になるのは変わらないって。」

 

「そうか…。」

 

 

 アスカは少し残念そうにみていた。

 シンジにはわかった。

 彼女は祖父との和解がしたかった。

 それはかなうことはないだろう。

 

「で、手紙って?」

 

「これだよ。」

 

 

 シンジは手紙を手渡した。

 アスカは急いでその手紙を取った。

 

 その手紙にはこう書かれていた。

 

 

『アスカ、我が孫よ。お前の戦いをずっとみていた。残念ながらもう私は勝てぬとわかったよ。お前とお前の母キョウコは強いのだ。私はもう敵わないだろう。敗北を認める、おめでとう。私はお前と会うことはできないだろう。だが、お前ならきっと我らの血を強くできる、そう信じている。健勝であれ。』

 

 

 アスカはその手紙を握った。

 祖父フリッツ。

 悪人であった。

 強欲で冷酷な祖父だった。

 その祖父は私を認めた…。

 

 

「きっと、君のお祖父ちゃんはどこかしらで愛情があったのかもしれない。じゃなかったらこんな手紙を残さないよ。僕も内容は読んでないけどね。」

 

 

 シンジはようやく気が付いた。

 アスカの目に涙が出ていた。

 

 

「アスカ…。」

 

「本当、あいつ…どこまでも卑怯な爺よね。こんな手紙をよこしちゃって…。」

 

 

 アスカの祖父は悪人だった。

 

 

 シンジが聞くところにはカヲルは連行する前に彼の話を聞いたらしい。

 キール・ローレンツ、今は亡きゼーレのリーダー。

 彼が言うにはシンジの祖父であるそうだ。

 事実はわからない。

 そして、そんなキールについて、フリッツはカヲルに言ったそうだ。

 

 

『渚カヲル、キールはお前を守るために月で育てた。お前を狙うものが多くいたからだ。』

 

 

 その時彼は気づいた。

 キール議長がカヲルを育てたのはただ、利用するだけではなかったのかも。

 そこには何かしら特別の感情があったのだろう。

 嘘偽りだけではない、何かが。

 彼はそれを知るために、それがなんなのかわかるためにエヴァに乗り続けるそうだ。

 

 シンジはカヲルの本音を聞くことができる数すくない一人。

 使徒の生き残り、渚カヲル。

 人間も使徒リリンなら、彼と変わらない。

 シンジにはそう思えた。

 

 

 シンジはアスカをみつめた。

 もう彼女は14歳のわがままな少女ではなく、大人の女になっていた。

 

 

「でも、ありがとうシンジ。」

 

 

 アスカは涙を拭いていた。

 そして、ふと思いだした。

 

 

「あなたが初号機パイロットで本当によかった。あなたとあえて本当によかったと思う。本当に…。」

 

「なんで?」

 

「あなたのやさしさよ。きっとゴジラはそこが好きになったのよ。あなたは大したやつよ。」

 

 

 アスカが褒めてくれる。

 なかなかないな。

 

 

「ありがとう…。」

 

 

 そろそろ時間だ。

 彼女と長く話をしたいけど、そうはいかない。

 時間だから。

 

 

「またね、アスカ。」

 

「年末にまた遊びにいくわ。」

 

「うん、そうだ…ケンスケのことよろしく、あいつ相当凹んでるから。」

 

「うん、ここに残るように説得するわ。彼も私たちの友達だもの。」

 

「ありがとう。」

 

 

 アスカは手を振った。

 シンジはそれに応じると、車に乗った。

 

 

「よお、シンジくん。」

 

 そこには青葉がいた。

 彼が運転手だったようだ。

 彼は無事だった。

 シンジは彼が無事だったことが1番嬉しかった。

 

 

「もういいのか?もっと話してあげてもいいんじゃねーの。あのメガネの子、シンジ君のツレだろ?」

 

 

 青葉はシンジにそういった。

 

 

「いいんだよ。」

 

 

 ケンスケは弱い男じゃない。

 僕があいつを良く知ってる。

 乗り越える。

 

 

「なあ、シンジ君。」

 

「何?」

 

「君のおかげで俺は生きていられる、当たり前だけど中々言えなかったことだけどさ…ありがとうな。」

 

 

 青葉はその長い髪をくしゃくしゃと書くと照れ臭く笑っていった。

 シンジも青葉に褒められて少しうれしかった。

 

 

「なあ、シンジ君。俺実はネルフやめるんだ…。」

 

「え?!」

 

「実家の母さんが戻ってこいって、ずっと迷惑かけてきてたから親孝行してやろうと思って。それにさ…。」

 

 青葉は手を震わせていた。

 そして、声を震わせて言った。

 

 

「子供ができたし。俺が死んだらこの子はどうなると思って怖くなったんだ。わかるだろ。」

 

「わかるよ。」

 

「この君の運転手としての仕事が最後のネルフの仕事だ。」

 

「これが!?」

 

 

 当たり前の話だ。

 僕を助けるために来て、怖い思いをした。

 辞めたくなるのも無理ないよ。

 でも寂しくなるな。

 

 

「…寂しくなる。」

 

「遊びに来てくれよ、俺の故郷、横浜。海がきれいなんだ。日向は来た事あるんだぜ。あいつ、図々しいんだよ。3日もいやがって…。」

 

 

 日向さん、彼は今回の騒動で一番株を上げた。

 ゴジラ討伐に貢献したことで昇進したそうだ。

 おまけにピンク色のミドリさんと付き合うことになったらしい。

 

 

「日向さんに言ったの?」

 

 

 本部で冬月さんと仲良く待機中の日向さん。

 

 

「あいつ、泣いてたよ」

 

「さみしくなるな…。」

 

 

 シンジはポツリといった。

 その時、青葉は車を停めた。

 

 

「ごめんな、シンジ君…ごめんな。」

 

「うん。」

 

「俺もずっと、いてやりたい。けど…ダメなんだ。」

 

「いいんだよ、青葉さん。」

 

 

 ずっと長い間一緒だった青葉さん。

 大事な僕の兄貴分。

 それもいなくなる。

 とうとうその時がきたか。

 楽しいことは永遠に続かない。

 当たり前だ。

 みんな前進して進んでいく。

 未来へまっすぐ。

 

 青葉さんの逃げはただの逃げじゃない。

 子供のために向き合うために前進した、それだけなんだ。

 

 

「そうだ、日向さん、昇進するらしいよ。」

 

「ずっと昔から思ってたけど、あいつハゲるぜ。」

 

 

 シンジは大いに笑った。

 青葉も笑っていた。

 こうやって笑い合える。

 そんな場をこの人は与えてくれた。

 

 

「僕も気を付けないと。」

 

「多分シンジ君もハゲると思う。」

 

「そういう、青葉さんだってハゲるかもしれないよ。」

 

「俺はハゲないってマヤちゃんが言ってた。」

 

「へー‥そうなんだ。」

 

「なんだよ!」

 

 

 そうだ、マヤさん。

 青葉・マヤ・日向。

 この3人が並ぶこともみかけなくなった。

 マヤは青葉と結婚した。

 

 

「マヤさんもやめるの?」

 

「うん…。」

 

「寂しいな。」

 

「俺も寂しいけど、仕方ないよ。」

 

 

 海か。

 父さんは釣りをしていたな。

 いつか父さんが生きていたら釣りにいきたかった。

 

 

「釣り、行きたいな。」

 

「あ、いいな。」

 

「青葉さん、釣竿買ってね。」

 

「シンジ君のが給料いいだろ?」

 

 

 シンジと青葉はお互いに笑い合った。

 こうやって笑い合えるのも最後。

 

 

「な、シンジ君。お酒飲もうぜ。」

 

「いいよ、ミサトさんよりも僕のが強いと思うけどお酒…それでもいいの。」

 

「ほーう、じゃあみせてもらうぜ。」

 

 

 

 二人はホテルに戻ると、大いに酒を飲み交わした。

 これが恐らく最後の夜。

 彼とは長い付き合いだが、これが最初で最後の飲酒だった。

 青葉は酒にすぐに酔った。

 そして、みているすべてのみんなの前でシンジはいかにすごいか、そして理想の弟かをご高説披露した。

 二人は過去の話で盛り上がった。

 日向さんがつまらないジョークを言ってリツコとミサトをドン引きさせたこと、ネルフが停電になったこと…。

 全て全ていい想いでだ。

 シンジにとっても人生のピース。

 大事な思い出だった。

 それはおそらく青葉も同じだ。

 

 

「ねえ青葉さん、生まれ変わったら何になりたい?」

 

「シンジ君は?」

 

「普通の人。」

 

「俺は・・・女子更衣室の監視カメラだな!」

 

「そんなのあるの?」

 

「ネルフにはある。」

 

 そんな会話をしていると、数時間が過ぎた。

 やがて、青葉は酔いつぶれてそのまま眠っていった。

 ミサトで酔っ払いになれていたシンジは青葉を背負うと、マヤとの部屋に連れてきた。

 もう、彼を背負えるほど身長は高くなっている。

 

 

「シンジ君…やだ!!連れてきてくれたの!!!本当にいい子なんだから…。」

 

「マヤさんもネルフやめるんですよね。」

 

 

 マヤともお別れだ。

 あとからリツコさんに聞いた話だったが、マヤさんは僕とミサトさんが付き合うことを嫌悪していたらしい。

 潔癖症だったとか。

 

 

「そうね、これでお別れ。」

 

「青葉さんをよろしくお願いします。悪い人じゃないですよ。」

 

「わかってるわ。」

 

 

 マヤは一瞬表情が曇った。

 だがすぐに笑顔になった。

 

 

「って、それじゃ…あなたがこの人のお嫁さんみたいじゃない!」

 

「え?」

 

「あははははは!」

 

 

 マヤさんは笑っていた。

 こんな彼女をみるのは中々ない。

 笑顔はみたことがあるが、笑っているのは初めてだ。

 

 

「ね、シンジ君。」

 

「はい。」

 

「今までありがとう。今でも生きているのはあなたのおかげだから…。ずっとずっと言いたかった事よ。あなたがエヴァに乗ってくれて使徒を倒してゴジラもなんとかしてくれて感謝しても足りないわ。本当にありがとう。」

 

 

 シンジはマヤをみつめた。

 もうこの人とあうこともないだろう。

 

 

「マヤさんもどうか、お元気で。」

 

「それじゃ、もう会えないみたいだから。さようならにしましょう。きっとまたどこかで会える。その時のために…。」

 

「さようなら。」

 

「さようなら、シンジ君。」

 

 

 マヤは手を振った。 

 そして、ホテルのドアは閉じられた。

 

 

「もーう!!ゲロ吐いちゃって!!!」

 

 

 マヤの悲鳴が聞こえた。

 本当いい母親になるよ。

 ゲロにドン引きしないなら昔の潔癖症じゃない。

 

 

「さよなら、マヤさん…。」

 

 

 これが青葉さんとのお別れ。

 もう会えないかもしれない。

 でもそれでもいい。

 楽しかった思い出があるから。

 

 

「さようなら、青葉さん。」

 

 

 そういうと、シンジは青葉の部屋を後にした。

 少し、彼の目に涙が浮かんだ。

 大人になった証なんだろう。

 シンジはそう思うことにした。

 

 

 やがて、彼はミサトとの部屋にたどり着いた。

 ドアを開けると、ミサトは息子のケントを抱きながら月をみていた。

 月の光でミサトはより美しくみえた。

 

 

「おかえり。」

 

「ただいま。」

 

 

 バルコニーにいた。

ケンスケは言ってたな、こうやって外にでるのがマリさんが好きだったって。

 シンジは少し思い出した。

彼はマリがミサトにだぶってみえて、駆け寄った。

ミサトさんはなぜかいつも死神に狙われているようにみえる。

 優しく優しく抱きついた。

 

 

「ミサトさん…。」

 

 

 ミサトはその腕を優しくつかんだ。

 

 

「いでっ!!」

 

 ひねられた。 

 シンジは抱擁を解いた。

 

 

「大人になってからの方が甘えん坊ね。」

 

「悪い?」

 

「いーえ、全然。もっと甘えてほしいわ。」

 

 

 ミサトは笑っていた。

 この笑顔、シンジはこれがみたかった。

 だからエヴァにも乗る、ゴジラとも戦える。

 

 

「ねえ、シンちゃん。」

 

「なに?」

 

「私ね、二人目…できたの。」

 

 

 シンジは目を見開いた。

 二人目、それは…子供ということか。

 

 

「本当!?」

 

「知ってるでしょ、アタシは嘘つくの下手なの。」

 

「ああそうだね、でも僕もそうだ。」

 

 

 ミサトは微笑んだ。

 お互いに嘘をつくのが下手。 

 だから愛し合える。

 

 

「だから、ビールも控える。しばらく育児休暇ももらうの。」

 

「そうか…。」

 

「私いなくても、戦闘は自分で動けるでしょ?」

 

 

 ミサトは少し悲しそうだった。

 彼女は息子をベビーベッドに寝かせると、シンジをみた。

 シンジは首を横に振り、ミサトの手に触れた。

 

 

「ミサトさんがいないと、戦闘した気になんない。」

 

「え?」

 

「だって、いざ死ぬ時ミサトさんがみてくれていないと死んでも死にきれないよ。」

 

「シンジ君。」

 

 

ミサトは頬を染めた。

 男らしいこと言う生意気な大人になっちゃって…。

 

 

 

「それに。」

 

「それに?]

 

「僕のカッコイイ所を特等席で世界で一番大好きなあなたにみてほしいんだ。」

 

 

 ミサトはさらに余計に顔を赤くした。

 

 

「あ、あのねえ…。」

 

 

 シンジは微笑むと、ミサトを抱き寄せた。

 

 

「あとついでに言うとあなたをもう一度抱きたいから、世界を巻き戻した。」

 

「し、シンジ君。」

 

 

 昔は私がこの子を赤くしてたけど、最近は違う。

 してやられることが多い。

 これも大人になった証か。

 少しの沈黙の後ミサトはシンジを抱く力を強くした。

 

 

「それは、嬉しい。」

 

「僕も。」

 

 

 ミサトとシンジは目線をからませ合った。

 沈黙が二人を支配した。

 ふと、シンジは新聞が目についた。

 

 

『LA二大ギャング、怪獣を前に歴史的和解そして解散。』

 

『差別主義者と不法移民、共闘して怪獣を迎撃…ともに警備会社を設立する。』

 

『有名な人食い虎、大カマキリを食う!?』

 

『インド最強暗殺者が人々を守る!?』

 

 

 テレビをみると、日本に住んでいる中国人牧師がインタビューに答えていた。

 シンジはほくそ笑んだ。

 これが僕の守った世界。

 みんなそれぞれの事情で生きている。

 

 

 

 

「あと、加持くんが次の子供は俺の名前を付けてくれって。」

 

「・・・まあ、考えておこうか。」

 

 

 加持さんにはお世話になってるし、悪い人ではないの間違いない。

 可能性としては悪くはないかな。

 

 

「ねえ、シンジくん。」

 

「ん?」

 

「ゴジラと話をしたの?」

 

「うん。」

 

「なんて言っていたの?」

 

 

 シンジは破壊神が言った言葉を思い出した。

 この世界にはゴジラと同じような存在が多くいる。

 あるいはその中にはゴジラよりたちの悪い邪悪な存在もいるかもしれない。

 

 

「この世界には自分と同じような存在がいる。君たちだけの世界じゃないんだって。そして、自分に似た存在が来るかもしれないって…。」

 

「なのかもね。」

 

 否、くるだろう。

 近いうちに。

 

 ミサトは加持の友人のCIAからアメリカ政府の1部の高官はゴジラの存在をすでに把握していたと明かされた。

 中国も。

 13号機も金剛もゴジラに対抗するべく作られたもの。

 特に13号機はゴジラ細胞の1部と異次元の生命体を混ぜて生み出された生命体だった。

 

 

「この世界にはまだ謎が多い。彼がいうならきっといつかそいつらがくるんだろう。いつか必ず…。」

 

 

 ギドラはそうだった。

 ゴジラは自分とモスラがいなくなってもヤツは存在するとわかっていたから、ギドラを倒すことを提案した。

 遅かれ早かれ、ギドラはこの世界に襲来する予定だったんだろう。

 

 

 

「ゴジラは…憎かったんだと思う。自分を産んだものが。世界中の全てを否定したんだ。でもその先にあったのは孤独な闇だけ。無の世界だった。だから僕は説得をしたんだ。復讐や憎悪の先に待っていたのは孤独な闇。それが彼に耐えられなかったんだよ。」

 

「そうよ、シンジ君…。復讐は新しい復讐を産むの。」

 

 

 

「もしかしたらあのゴジラはあらゆる次元のゴジラの記憶や魂が一つになったモノなのかもしれない‥。勝てなくても当然だね。」

 

 

 ミサトはふとシンジをみた。

 そんな奴の心もとかしてしまう。

 本当の怪物はこの子の人たらし的なところなのかも。

 

 

「私も、あなたにあうまでは復讐しかなかった。戦場でいっぱいいっぱい殺して…大好きなあなたの手を血で染めさせてしまった。そのことを一生かかってつぐないたい。そのためなら…私はなんでもするわ。」

 

 

 ミサトはシンジの手を握った。

 まだ強い。

 握力ではシンジは今でも勝てないだろう。

 だけど、握り返した。

 

 

「僕も、あなたにあうまでずっと一人だった。あなたを失いたくはなかった。」

 

 

 ミサトはふと考えた。

 シンジと自分はお互い足りないところを補うパズルのピース。

 電池のプラスとマイナス。

 二人そろって初めて一人前なのだ。

 

「ゴジラはもしかしたら、僕たちの憎悪そのものなのかも。」

 

「そうかもしれないわね。」

 

「彼と僕たちの世界はそれぞれ分割された、きっと…どこかで彼も幸せになっているといいな。」

 

「きっと、その世界のとは別の世界の先でマリさんも生きているんじゃないかな。私そう思うの。」

 

「だといいね。」

 

 

 ミサトとシンジは肩を寄せ合い、月をみた。

 二人目が生まれる。

 それなら、余計に世界を守らなくてはいけない。

 エヴァ初号機の中にいる綾波も同じことを考えているとシンジはわかっていた。

 

 

「僕は僕が生きるこの世界を守り続けるよ。」

 

 

 シンジはミサトにそう言った。

 そして、肩の力を強めた。

 月明りは二人を包み込んだ。

 

 そんな時だった。

 シンジのスマホが鳴り響いた。

 ネルフ本部に待機していた冬月のものだ。

 

 

「サードか?葬式の最中、悪いな。アメリカ国防総省から通報があった。人工知能で作られた巨大ロボット軍団がカナダの街を破壊している。人類に対して報復するそうだ。エヴァ初号機でこれを鎮圧してくれ。」

 

 

「わかりました。」

 

 

 シンジは微笑んだ。

 ミサトはそれに微笑みで返した。

 

「行くの?」

 

「ああ、僕の仕事だからね。」

 

「いってらっしゃい。」

 

 

 

 シンジはすぐさま走っていった。

 その先には日向とミドリの乗ったVTOL機があった。

 ミサトはホテルの屋上でそれを見送った。

 足元には同席していたペンペンもいた。

 

 

「やっちゃって。」

 

 

 ミサトは小さな声で言った。

 

 

「いってきます。」

 

 

 シンジは微笑んだ。

 この世界に悪は消えない。

 多国籍企業、邪悪なヤクザ・マフィアや半グレ、破壊主義者やテロリスト…。

 

 もしかしたら…

 ミュータント怪獣、巨大な暴走ロボット。

 あるいは別の惑星や多元宇宙からの侵略者。

 

 あり得ない話ではない。

 

 それらの起こりえるかもしれない悪を倒すためにエヴァは存在し続ける。

 シンジは戦い続けることを選んだ。

 彼を天は優しく見守っていた。

 

 その先の宇宙ではまだ、多元世界が広がっていった。

 その多くには人が戻ってきていた。

 

 ゴジラが破壊したはずの世界の多くも時空が戻り、魂が戻り文明が再会していた。

 これらは今日も広がっていった。

 

 

 そんな多元世界の海にある世界。

 

 そこの海底の洞穴にはある生命体の一家が住んでいた。

 かつて多元世界を破壊し、何億という魂を食い殺した怪獣王。

 その姿があった。

 

 

『父上!』

 

 

 声がする。

 ゴジラは目を覚ました。

 

『何の用だ。』

 

『もう朝です!』

 

『もうそんな時間か…。』

 

 

 人のいない世界。

 ゴジラがたどり着いた世界はただ『人がいない』だけではなかった。

 そこは恐竜・怪獣が多く住む世界だった。

 そして、さらにそこにはゴジラと同族が多くいた。

 

 アディショナルインパクトの逆転、その結果彼は多くの能力を失った。

 恐らくもう世界最強ではないかもしれない。

 ただの恐竜、それでもよかった。

 

 やがて、メスをみつけつがいとなったゴジラは子供を産んだ。

 まだ幼いが勇敢な子供であった。

 ゴジラは生まれた子供にバガンという名前をつけた。

 彼がかつて世界でゴジラの息子として面倒を見ていた怪獣の名前だ。

 

 海底にはかつてデストロイアだった甲殻類が魚を仲良く食べていた。

 空をメガニューラだった虫が飛んでいるのもみた。

 カマキラスのような3mほどのカマキリもいた。

 

 

 彼らは転生をしたようだ。

 その多くは特殊能力などもうないだろう。

 

 

『父上、東の沖にティラノサウルスがおります。奴らは魚の群れを不必要に食っております。この海は誰のものか目に物みせてやりましょう。』

 

『よかろう。』

 

 

 またやつらか。

 懲りぬ奴らだ。

 協定を破り、この地に踏み込んだか。

 海と海岸は我らのもの、草原と山々は奴らのもの。

 それで話は済んだはず。

 

 

 ゴジラは起き上がった。

 バガンを連れ、陸に上がった。

 その大きさは以前とは違い、50m程度になっていた。

 それでもこの恐竜ばかりの世界ではかなり強い方になる。

 

 

 ゴジラは起き上がり雄たけびをあげ、ティラノサウルスの群れに牽制をした。

 

 

『この世界は我の物。消えるがよい。』

 

 

 支配者は大きく気高く叫んだ。

 その咆哮は哺乳類がまだ弱者のままでいる世界に大きく響いた。

 暴君竜の群れは真の支配者に首を垂れると、そのまま去っていった。

 ゴジラはその光景をみて心の奥底から微笑んだ。

 そして、遠い先のシンジに心の中で言った。

 

 

『ありがとう、人間よ。』

 

 

 ゴジラはふと山をみた。

 雷龍の群れがゴジラをみつめていた。

 空には翼竜の親子の群れが。

 鎧竜がゴジラに感謝するかのように一声をあげた。

 この海の近くに住んでいるのだ。

 

 

 この世界の支配者は、ゴジラだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一応このシリーズはこれで終了ということになります。
三部作ということで区切りがいいので終了いたします。
今考えている新作のプランについてですが、多元世界ということでエヴァのない世界を舞台にしたものか、あるいは別ジャンルの作品も考えております。


完結記念ということで来週以降のタイミングで登場人物・機体・怪獣の紹介解説を投稿すると思います。
それをもって、完結済みに致します。



最後まで読んでいただきありがとうございました。


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完結記念 登場人物・機体・怪獣紹介

登場人物紹介

 

葛城シンジ(22)

 

本作の主人公。

かつての碇シンジ。

上司であったミサトに惚れて、結婚して婿養子として葛城家の一員になった。

息子ケントと妻ミサトのために、そしてエヴァの力を正義のために使うために戦うことを決めた。

それまで世界最強の力の持ち主であると思い込んでいたが、自身をはるかに超えた破壊の力を持ったゴジラに苦戦を強いられる。

何度もゴジラに挑むがそのたびに死ぬ想いをして、最終的に1度は完全に初号機ともども殺されたが魂を食い自分の栄養源にするゴジラの特質を利用し、体内から彼を説得。

世界の再創造に成功する。

その際に、ゴジラとお互いの苦しみを理解しあい和解した。

そして、ゴジラにこの世界にはもっと様々な生命体がいることを教えられる。

無論その中には悪意もあることも。

そう言った者たちから愛するものを守るため、世界に秩序を与えるためシンジはエヴァに乗り続けることを選ぶのであった。

世界を守る鬼神はまた立ち上がるのである。

 

 

 

葛城ミサト(37)

 

本作のヒロイン。

ネルフの作戦課長であり、副司令を務める女傑。

その戦闘力は常人であれば最強レベルである。

29歳のころより体を鍛えまくっており、戦闘能力は以前とは倍以上に強くなっている。

作戦を立案するよりも自身が兵士として出向く方が向いているのは自他とともに認める事実。

部下であり夫であるシンジを強く愛していおり、彼のために命を投げ出すことも躊躇しない。

二人だけにになると一気にのろけたり、シンジに甘えたりしている。

なお、上司である冬月から常日頃から小言を言われ怒鳴られ、部下のミドリからもなめられている悲しい中間管理職である。

自身の宿敵であるアーノルドと和解した。

そして、ケントに続く二人目を妊娠中。

 

 

 

 

惣流・アスカ・ラングレー(22)

 

エヴァ二号機パイロット。

ネルフドイツ支部の科学顧問も兼ねている。

ドイツ支部長の加持とは縁談の真っ最中。

今回ばかりは格上のゴジラとバガンに苦戦する。

傲慢な性格は鳴りを潜め、年齢相当の落ち着いたものになっている。

それどころか人心掌握術も持っている。

相棒のマリを失うことになったが、祖父とは最後の最期に和解できた様子。

シンジとの仲は良き友人。

 

 

 

綾波レイ(22)

 

エヴァ零号機パイロット。

シンジへの愛情は強く残っており、彼を導くためにリリスと合体、初号機に降り注ぎ真の姿になった。

ミサトとと結婚したとはいえ、シンジのことは想っており「碇君」と呼び続けている。

シンジの息子ケントからは「れいれい」といわれていることから、彼からは無意識的に血縁者であることに気づかれている。

 

 

 

 

 

渚カヲル(23)

 

エヴァ四号機パイロット。

シンジの親友でもある。

ネルフアメリカ支部兼NASAのパイロットとして活躍するフォースチルドレン。

国連軍艦隊艦長から息子のように愛されており、その愛情を自覚して人間としてこの地上に行き守ることを決意する。

長い間第一始祖民族のことを探していたが、意外な形でその真実を知る。

怪獣将軍デストロイア相手に苦戦するが何とか破る。

だが、ゴジラ相手には打つ手がなかった。

キール議長が自身に思い入れがあったことを知り、その感情とは何かを知るためにエヴァに乗り人類を守る予定。

 

 

 

 

真希波・マリ・イラストリアス(23)

 

エヴァ8号機のパイロット。

アスカの数少ない友人で相棒。

実は第一始祖民族の生き残りのクローンで、ゴジラと遭遇したことでその記憶を取り戻す。

相田ケンスケとは恋人同士であった。

アスカとともにバガンに挑むが、苦戦を強いられる。

だが、ゴジラ細胞と同化することで互角になる。

しかし、自身がゴジラ細胞に侵され暴走することを恐れ最終的にはブラックホールに捨て身で捧げ、バガンと相打ちとなった。

オリジナルのマリはすでにモスラと同化していた。

ミサトは彼女の魂が別の世界で生まれ変わっている可能性に言及している。

その可能性は高い。

 

 

 

 

冬月コウゾウ(69)

 

ネルフ総司令。

シンジの父替わりであった。

ミサトに対しては厳格な上司としてふるまい、彼女の失敗をチクチク攻めることがある。

実は近々引退を考えており、ミサトにその後を継いでほしいため厳しく接している。

シンジのことを強く信頼し、彼を「サード」と呼ぶ。

趣味は将棋。

ミサトの伯母との縁談を進めているが、成功するかは不明。

組織名をヴィレからネルフに変更したのは彼の判断。

その理由は、スポンサーからのクレームである。

 

 

赤木リツコ(38)

 

ネルフの科学顧問。

ミサトとは対照的な合理的冷静な性格をしていたが、シンジたちに感情移入をしておりミサトとあまり変わりない性格になっている。

シンジからも身内の一人として扱われており、もうミサトには言えなくなった感情も彼女にはぶつけている。

ある意味ではシンジの精神的な母親の一人。

ミサトとは違い、シンジの感情に対して感情をぶつけず現実を突きつけながら優しく諭す。

同僚の時田シロウと結婚する予定。

 

 

 

日向マコト(33)

 

ネルフ作戦課の課長代理補佐。

オペレーターは卒業し、ほとんど事務職をしている。

ずっと上司のミサトに惚れていたが、ひょんなことからミドリに惚れられ彼女と付き合うことになった。

隠れ特撮オタクでゴジラの弱点を把握していたが、内心では通用しないのではないかと危惧していた。

本作の解説役・コメディリリーフ。

 

 

 

 

青葉シゲル(33)

 

ネルフのオペレーターをしていた一人。

日向同様今は事務職であった。

シンジにとって兄貴分であり、親友の一人であった。

そんな彼を助けるために出向いたが一時死にかけた。

妻であるマヤと生まれる子供のためにネルフを引退。

シンジとは酒を飲み別れた。

 

 

 

 

青葉マヤ(33)

 

かつての伊吹マヤ。

リツコの部下であったが、彼女に対する執着は薄れ青葉と結婚して子供を宿している。

シンジとミサトの付き合いには好意的ではなかった。

最終的には二人を認めた様子。

青葉とともにネルフを引退する。

 

 

 

時田シロウ(恐らく50前後)

 

リツコと同じく科学顧問をしている。

彼女と結婚を考えている。

ちなみに彼の娘もリツコになついている様子。

JA計画の再編を考えており、エヴァに頼らない新しい第三新東京市をリツコとともに模索していく様子。

 

 

加持リョウジ(38)

 

ミサトの元カレ。

そしてネルフドイツ支部の支部長。

アスカと結婚予定である。

前回は主人公であった彼も今回はほとんど活躍の場はなかった。

それほどゴジラは圧倒的であり、彼のような人間でも残念ながら蚊帳の外になっている。

ケンスケのことを冷たく扱っていたが、別に嫌っているというわけではなかった。

むしろ彼に弟を重ねていた。

 

 

 

艦長(70ぐらい)

 

オーバー・ザ・レインボウの艦長。

ネルフアメリカ支部に協力的な数少ないアメリカ側の男性。

部下を率いて怪獣を迎撃しようとするなどその根はかなり豪胆である。

階級は准将。

 

 

北川ミドリ(27)

 

ネルフの広報担当、日向の預かりになっている契約社員。

だが、ミサトからも注意されるほど、軽薄な性格をしている。

ついでに遅刻も多く敬語も使えない。

しかし、戦闘機を操れるなど地味に技量も持っている。

結局はミサトの実力を知り、彼女に敬意を示すようになる。

面倒を見てくれる日向に昔から惚れており、彼と付き合うことになる。

日向同様のコメディリリーフ。

 

 

相田ケンスケ(22)

 

ネルフドイツ支部のオペレーター。

真希波・マリ・イラストリアスと付き合っている。

心優しく、マリの全てを愛していたが…彼女を失うというハメになってしまった。

おそらくドイツ支部も離れ日本に戻る可能性が高い。

洞木ヒカリとの仲は・・・???

 

 

洞木ヒカリ(22)

 

ネルフの託児所で働く職員。

シンジたちの同級生でもあった。

ほとんど育児放棄気味のミサトに代わり、ケントの面倒をみている。

綾波レイとは友人同士であった。

ケンスケを慰めていたが、その仲は・・・・???

 

 

ペンペン(??)

 

ミサトのペット。

当たり前のようにネルフ本部にいる。

それはミサトでは面倒をみれないと判断した冬月とリツコの采配によるもの。

パソコンを使えるようになるほど成長している。

人間の小学生レベルにまで知能が上がっている。

シンジのことは餌係にしか思っていない。

リツコのことは変な頭した気前のいい奴にしか思っていない。

 

 

 

碇ゲンドウ(享年・48)

 

シンジを庇い死亡したシンジの父。

かつては人類補完計画を考えていたが、シンジがミサトを愛するその健気さに心打たれ改心。

その後はシンジの心の中で幻影となり。助言していた。

幻影の発言が世界を救うことになる。

これが本当の幻影か、それともシンジの前におりてきたゲンドウの魂か。

不明であるが、いずれにせよシンジにはゲンドウが内心では深く彼を愛していることはわかっている模様。

 

 

 

碇ユイ(享年・27)

 

シンジの母。

かつて、コンラッドに誘われ初号機の中に取り込まれてしまった。

シンジへの愛情が強く。

ゴジラに勝てないことがわかるとプラグを排出。

ゴジラに挑むが、相手にならず魂すらも吸われてしまった。

しかし、ゴジラの手で開放された。

その後はガフの扉の中にある魂の1部になりゲンドウと再会したものとおもわれる。

 

 

 

 

 

 

オリキャラ紹介

 

フリッツ・ツェペリン(70代)

 

アスカの祖父。

マッドサイエンティストで、多元世界を見て回ってきた。

かつて世界同時攻撃を模索した凶悪な人間であったが、アスカのことを認めるように変わるなど柔軟な性格になっている。

ひそかにエヴァインフィニティと呼ばれる独自のエヴァや空中に浮かぶ戦艦を開発していたが、ゴジラの前に葬り去られるのであった。

その後、以前の罪を問われそのまま死刑になる様子。

ゼーレの臨時リーダーとなっているが、死刑になることは彼はもうリーダーでもなんでもないということになる。

 

 

アーノルド・ウェイン(55)

 

かつてミサトに弟を殺された傭兵。

強化細胞とサイボーグ手術を得て蘇った。

かつてミサトを植物人間状態に追い込んだ過去がある。

ゼーレにその身を預けており、フリッツを解放し彼と行動を共にしていた。

その後、ミサトに子供がいることなどから彼女を許すことにした。

ヒカリやアスカのことを気に入っている。

全てが終わった後、アスカとの約束を果たすために彼女の元を訪ねた。

その後の動向は不明、恐らくは争いから離れ放浪の旅に出たと思われる。

 

 

葛城ケント(2)

 

ミサトとシンジの間に生まれた子供。

ヒカリにもレイにも冬月にもなついている。

ネルフ内にある託児所に預けられている。

シンジが亡きあとは恐らく彼がエヴァ初号機の後を継ぐと思われる。

 

 

マーカス・コンラッド(享年・42)

 

シンジ・ミサト共通の宿敵。

碇ユイをかどわかして、初号機に乗せた諸悪の根源。

彼のトラウマは、シンジの魂の1部に残っている。

それが彼の魂なのか、それは不明である。

 

 

ジョージ・ワイゼン大統領(80)

 

アメリカ大統領。

かなり、ボケている。

ほとんどの業務は副大統領がしている。

自分の身に危険が生じた時だけ正気に戻る。

 

 

オマラ・ノリス(55)

 

アメリカ副大統領。

ボケてるワイゼンに代わって業務をしている。

性格は堅物にみえてやや柔軟。

 

 

 

鈴原マサキ(38)

 

かつてミサトと対峙した元・暴力団構成員。

今は亡き、鈴原トウジの従兄。

だが性格は真逆の悪人である。

かつては尼崎にある日本最大の暴力団の一員であったが、破門されている。

だが逆に言えばヤクザという枠組で縛ってきていたものが解放されてしまったことを意味する。

さらに破門された身でありながら暴力団上層部と縁がある。

親分衆は彼に資金と技術を渡し泳がせることで彼を利用している。

その目的は次の犯罪のためのデコイ。

この事から彼が偽造破門で表向きいなくなった存在というのがわかる。

大阪でテロを起こすが、ミサトの相手にならず倒されてしまった。

 

 

 

 

 

登場怪獣

 

 

破壊神ゴジラ

 

怪獣たちの支配者であり、皇帝であり神である存在。

その圧倒的暴力と破壊の力で他の怪獣たちを支配している。

次元の間との間に割れ目が生じたことをきっかけに侵略を開始した。

その実力は多元世界を軽く破壊できるほど。

大きさも相手に合わせて変換できることができる。

なぜ虚構の存在であるはずの彼がこの世界にきたのかというと、それは第一始祖民族=並行世界のシンジたちが行ったアディショナルインパクトに原因がある。

現実と虚構の世界が混じった結果、彼の存在もシンジたちの住む世界と統合されてしまったことがきっかけで世界を破壊するようになる。

第一始祖民族を滅ぼしたのも、彼が原因である。

自身を怪物にした水爆実験、神に変えたアディショナルインパクトを起こしたこの世界の文明全てを憎み、破壊しつくした上で支配しようとする。

弱肉強食を徹底しており、失敗したものには情けをかけることはない。

だが、一方で自分の血を色濃く受け継ぐ怪獣バガンには愛情を傾けている。

その圧倒的破壊・暴力でエヴァ初号機を何度も何度も戦闘不能に追い込む。

吐く熱線の一撃で簡単に世界を破壊できるほどの能力がある。

だが、怒ったときにその本当の実力が発揮されその力であらゆる並行世界を破壊しつくすほどのエネルギーを放出する。

これを『ファイナルインパクト』あるいは『ラグナロク』と呼ぶ。

やがて、世界を二度にわたって破壊するが1度目はモスラにより防がれ二回目は彼女の能力を引き継いだ初号機により再創造の道を選ぶ。

破壊を行うことはできるが、創造は出来ない様子。

圧倒的な戦闘力・耐久力を持っているが、その反面精神面で甘さ・弱さが目立つ。

最終的にはアディショナルインパクトの逆転で発生した世界に他の怪獣たちを連れ住むことになった。

その先で家族を儲けている。

 

 

 

守護神モスラ

 

ゴジラの宿敵であり天敵。

彼女の中にはゴジラに殺された第一始祖民族の魂や知恵がある。

その中にはオリジナルのマリもいた。

彼女の存在もまた、アディショナルインパクトで呼びよされたものであるが彼女の場合はそれ以上に多元世界の守護神としてふるまっている。

多元世界を破壊しつくすゴジラに対抗するために蘇る。

不死身の生命力を持っている。

過去の戦いでもゴジラを誘い込み、次元の間に落とすなどの活躍をしていたが1度目の死亡を経験する。

その後、アダムやリリスとともに地球に流れ果てる。

その地が決戦の舞台になることもわかっていた。

ゴジラを封印する際にに独自の念力でゴジラのいる世界との間に一種の膜を張っていたが、それが弱まったことで二度目の再生を果たした。

だが、それでもゴジラには及ばず命を散らした。

その後、その魂は初号機に降り注ぎ彼にその知識と生命を与えた。

現在でもその魂は、シンジの中にいる。

 

 

 

豪将怪獣バガン

 

ゴジラとキングギドラのDNAを掛け合わせて生み出された人口怪獣。

ゴジラのことを父上と呼び慕う。

したがって彼に対する忠誠心も四将軍の中では一番強い。

他の怪獣たちが策略を弄するのに対して彼は真正面からのぶつかり合いを好む。

隠れた武人肌である。

その実力は弐号機・8号機がタッグを組んでも相手にならないほど高い。

最終的にはマリの犠牲とともにブラックホールの中で散っていった。

その死を悟ったゴジラは一度多元世界を破壊するほどの怒りで包まれた。

この事から彼からも実は愛されていたことがうかがえる。

他の将軍とは違い、独自の部下はいない。

ゴジラにとっても思い入れがあるのか、転生した世界では息子にバガンの名前を与えていた。

それが転生した彼の姿か、別かは不明。

 

 

暴将怪獣デストロイア

 

以前はゴジラの天敵であったが、敗北したうえで彼の家臣になった怪獣。

複数の個体に分裂し戦う怪獣。

事実状、分裂した体がある限りは不死身である。

極めて狂暴で、かなり戦闘本能の激しい生命体。

その実力は高く、一撃で5号機を破壊したり四号機は事実上手も足もでなかった。

また、知能も高くとっさの判断で尾をもぎ取り生き延びるほどである。

彼の存在もアディショナルインパクトで起きた上書きによって呼びよされたものである。

自身の分身たちを連れ、アメリカの地に降りたち善戦していたがカヲルの放った虚数空間に落ちたことで死亡。

自身の分身たちもゴジラとシンジによって起こされたアディショナルインパクトの逆転で発生した別次元へとそのまま吸収・転生された。

そこでは恐らくもう不死身でも怪獣でもなくただの甲殻類になっている。

 

 

知将怪獣メガギラス

 

メガニューラ族の女王。

彼女もまた、ゴジラと敵対していたが敗北して家臣になった。

しかし、彼女の場合はひそかに裏切りを模索しておりゴジラもわかっていたうえで利用していた。

知能が高く、一旦ゴジラの攻撃命令に従うふりをみせながらエリート部隊とともに彼の命を狙っていた。

しかし、ゴジラには及ばず全滅してしまった。

だが、彼女の子供であるメガニューラの1部はゴジラとシンジによって起こされたアディショナルインパクトの逆転で発生した別次元へとそのまま吸収・転生されたことでただの昆虫になっている。

戦闘力よりもその知能・組織力を買われていた節がある。

部下は転生したが、メガギラス単体は転生していない。

 

 

 

邪将怪獣オルガ

 

ゴジラに心酔する極めて凶悪な知的生命体。

かつては第一始祖民族とは別の知能生命体であったが、ゴジラの存在を知り彼の強大な生命力を得るべく彼に従った。

その結果、怪獣となった。

それにすらも感謝している、極めて狂気的な存在。

また、非常に残酷であり相手が苦しむこと、ゴジラにその実力を評価されることを至上の喜びにしている。

自分の肉片をちぎり、相手にうえつけることで「魑魅魍魎」に変化させる。

他の怪獣とは違い、元々第一始祖民族と同じ世界にいたもの。

人間以上の知能を持っている。

高いテレパスとサイコキネシスなどの超能力を有しており、これを中心に戦う技巧系。

特にテレパスは世界中の人類の脳内に悪影響を及ぼすことができる。

ゴジラ以上に人類を苦しめるが、覚醒した零号機により死んだ

恐らく他の怪獣たちと違いそのまま消滅したと思われる。

配下の魑魅魍魎たちも自身の中にあるゴジラ細胞が消えたことで消滅していった。

彼らも転生はしていない。

 

 

 

参謀怪獣ガイガン

 

オルガのベースとなった知的生命体が生み出したサイボーグ怪獣。

知能も高く、無駄な戦いをしないクールなタイプ。

ネルフに強襲をしかけ、苦戦をさせるが蘇った初号機に滅ぼされた。

その後、改造を施し再び初号機に挑むが相手にならずまた敗北した。

一応はオルガ直属の部下であるが、その役割はほとんどパシリ扱いである。

他の怪獣たちとは違い、どこかでこっそりその情報が人間に捕まれている可能性がある。

 

 

 

怪獣兵士カマキラス

 

メガギラス預かりの昆虫怪獣。

その実力は非常に弱いが、数は多い。

また非常に賢い。

そのほとんどはゴジラとシンジによって起こされたアディショナルインパクトの逆転で発生した別次元へとそのまま吸収・転生した。

 

 

 

 

邪神ギドラ

 

ゴジラの存在に呼びよされた別の破壊神。

かつての戦いではゴジラと長期間にわたって争い合うライバルであったが、結局破れてしまった。

その結果、ブラックホールの先に放り投げられて、裏宇宙まで追放された。

もはや現在ではゴジラにはかなわない。

だが、その組織力はゴジラ以上の物があり文明を持った裏宇宙の生命体を支配下に加えている。

この事から彼が文明を嫌悪するどころか利用するので非常にゴジラより高い知能があることがうかがえる。

ゴジラの熱線を撃ち込まれその存在を認知し攻撃を加えた。

だが、それがあってもなくても早い段階でシンジたちの存在に気が付き攻撃を加えようとしていた。

元々ゴジラとは別次元に存在しており、アディショナルインパクト関係なしに元からいた。

ゴジラがあってもなくても、シンジたちのいる世界を狙っていた。

宿敵の手で今度は部下揃って再び地獄へと葬られた。

 

 

最強生命体強化・ゼルエル

 

最強の使徒であったゼルエルの改造・強化バージョン。

ひそかに中国政府が開発していたもの。

ネルフ本部にひそかに残っていたゼルエルの1部を回収したもの。

オリジナルよりはるかに強くなっており、何百枚というATフィールドを張ることができる。

その光線も強化されている。

エヴァ対策のため、あるいはその映像をみせてネルフを脅すためと思われる。

しかし、金剛によって撃破されてしまった。

 

 

 

 

 

 

登場機体

 

エヴァンゲリオン初号機

 

シンジ専用機。

F型装備をベースにしており、シンジが14歳のころよりも強化・巨大化が行われている。

これについては初号機だけではなく他の機種も同等に行われているが、初号機は他のエヴァと比較しても比類なき耐久力とスペックを持つ最強のエヴァンゲリオンとなっている。

すなわち地上最強の存在。

しかし、それはあくまでゴジラを除いた話である。

別次元から侵略してきたゴジラに戦いを挑むが結局最初から最後まで防戦一方であり、二回ほど戦闘不能に追い込まれた。

最初のゴジラとの対決ではボロ負けした上コアの中にいた碇ユイすらも死亡する事態になった。

レイやリリスと融合したことで天気すらも操れる超能力を有するが、これでもゴジラには及ばず再び戦闘不能となった。

さらにモスラと融合し、火星にあったゴジラキラーを使いゴジラに傷を負わせるものの致命傷に至らずとうとう宇宙事滅ぼされた…かにみえたが、シンジの精神力と包容力でゴジラを抱き込んだ結果再生に至った。

ゴジラにはかなわないだけで、ガイガンやデストロイアよりもはるかに強い。

 

 

 

 

エヴァンゲリオン弐号機

 

アスカ専用機。

相変わらず健勝であり、今回はフランスでバガンを迎え撃つ。

しかし、バガンのパワーに苦戦を強いられる。

なんとかマリの犠牲でバガンを倒す。

その後ゴジラと交戦するが、これには手も足もでなかった。

弐号機が弱いのではなく相手が悪すぎた。

 

 

 

 

エヴァンゲリオン零号機

 

綾波レイ専用機であったが、綾波レイが初号機と一体化したことでパイロットを失う。

リツコの手で全自動で動くようになり、中にあるコアの魂も蘇らされる。

その中にいたのはなんとリツコの母ナオコであった。

オルガの前に現れ母の愛の強さで圧倒、殲滅に成功する。

だが、ゴジラには手も足もだすことができなかった。

初号機同様リリスをベースにしているが、その実力は初号機のが上。

 

 

 

 

エヴァンゲリオン四号機

 

渚カヲル専用機、しかしデストロイア戦ではミサトの発案でバラバラになり戦闘することとなった。

カヲルはアダムそのものであることから、四号機を動かすことができる。

しかし、デストロイアに手も足も出すことができなかった。

ゴジラにも挑むが、やはり今回ばかりは相手が悪かった。

コアの中にいる魂は何者であるか不明、しかし男性であることは間違いない。

 

 

 

エヴァンゲリオン五号機

 

アメリカ政府が独自に開発していたエヴァ。

コアに魂がいないことから、人工知能で動く予定になっていた。

フリッツはその存在を知っており、アメリカ政府から譲渡される。

しかし、デストロイアの前では手も足もでず一瞬で破壊された。

 

 

エヴァンゲリオン8号機

 

マリ専用機。

コアの中にいるのはマリのクローン。

したがって、マリは特別な技術がなくても手足のように動かせる。

この機体のみビーストといわれる裏コードがある。

虎・ゴリラ・ウニ、恐竜がある。

バガンの皮膚を食いちぎったことでゴジラ細胞まで取り入れた。

しかし、自我の崩壊・浸食を恐れたマリとともにブラックホールの中へきえていった。

 

 

 

エヴァ・インフィニティ

 

フリッツが開発していたエヴァ。

別次元のエヴァを参考にしており、そのコアは別次元の人間をそのまま使っている。

何千万という数がいて、ゴジラを数の暴力で押し通そうとするがかなわず全滅した。

 

 

 

 

金剛

 

中国で開発されていた巨大な人型ロボット。

エヴァに対抗するために生み出されていた。

非常に怪力で、強化されたゼルエルを一瞬で殲滅する能力を持っていた。

しかしながら、ゴジラの相手ではなく赤子の手をひねるがごとく一方的に破壊された。

だが、その能力はエヴァ初号機以外ではほとんど勝つものがいない。

この事から非常に戦闘力は高かったことがうかがえる。

 

 

シザーハンマー

 

ヤクザのマサキが所有していたカニ型ロボット。

ただの反社でも所有できることから、この世界は使徒や怪獣、ゼーレとは関係ない別の悪が複数存在していることがわかる。

シンジたちのしばらくの間の敵は彼らのような悪意を持つものが生み出したロボットになる。

大阪でサメ型ロボットとともに初号機を迎えうつが、相手にならずに負けた。

 

 

サベッジ・ジョー

 

カニ型ロボット同様のサメ型ロボット。

初号機を迎え撃つが、相手にならず破壊された。

全自動型で動くのでパイロットはいらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これで完了です。
この投稿をもって本作品のタグに『完結済み』をいれます。
本作で疑問に感じたこと、質問などがあれば感想あるいはメッセージなどで投稿してください。
ブログ更新のネタになるので作者が喜びます。

もう一度になりますが、最後まで読んでいただきありがとうございました。


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おまけ:遠い先のその先に

おまけです。
pixivであげたものをこちらでもアップしました。



 マリは目を覚ました。

 

 

 そうだ、自分はバガンとともにブラックホールの中に8号機とともに消えた。

 そのはずなのに。

 

 

 ふと自分の肌を触った。

 暖かい。

 生きている。

 なぜだろう。

 

 そうか、ここは天国。

 自分は死んだんだ。

 だから、ここは天国なんだ。

 砂の感触を感じる、妙に冷たく柔らかい。

 そして、何かもぞもする。

 

 

 そんな時だった、

 彼女の背中に電撃が走った。

 

 

「痛い!」

 

 

 痛い?

 砂の中にいる虫が自分を噛んだんだ。

 天国にいるならなぜ、痛みを感じるのだ。

 

 

 ふと彼女は気が付いた。

 ここは天国ではない。

 

 

「だとしたら…。」

 

 

 

 マリはふと周囲をみた。

 人がいる。

 彼女をいぶかしげにみるものもいた。

 ふと、標識をみた。

 ドイツ語だ。

 そうか、ここはドイツ。

 

 

 考えられるのはブラックホール砲でバガンとともに消えたあの時、自分は次元をワープして別の場所へ飛ばされたのだろう。

 こんな何も知らない場所でどうすればいいのだろう。

 マリはふと考えた。

 そこにキオスクがあるのがみえた。

 何か仕事を探そう。

 新聞の求人広告でもみよう。

 

 

 マリはなぜかプラグスーツの中に入っていた財布の存在を思い出し、小銭を持ち出した。

 

 待て、ここと向こうの世界は違うはず。

 だったら通貨も違うはずだ。

 

 

 プラグスーツの姿をみてキオスクの老人は気持ち悪そうにこっちをみた。

 

 

「すみません、これでいいですか。」

「ああ、いけるよ。」

 

 

 マリは老人の視線を無視した。

 貨幣は同じ物が使えるのか。

 その時だった。

 マリの心の中に何かが蠢くのを感じた。

 

 

 貨幣が同じ、人間もいる。

 

 

 

 だとすれば別の世界に行ったという自分の考えは間違っているのではないか。

 

 

「まさか…。」

 

 

 新聞を開いた時、それは現実になった。

 写真に写るのはエヴァンゲリオン二号機。

 アスカがインタビューにうつっていた。

 

 

『英雄アスカ・ラングレー、自身を語る。』

 

 

 

 マリはふと何かを思いついた。

 

 

 

 その頃、ベルリンのマンションではケンスケが荷物整理の準備を始めていた。

 マリと住んでいた一室。

 ココには思い出が多すぎる。

 思い出してもつらい事。

 もう二度と思い出したくない。

 

 

 一緒に暮らしていたマリは死んだ。

 何をどうしても死んだ人間は帰ってこない。

 奇跡は起きない。

 テラスに立ったケンスケはメガネを外してヨゴレを拭いた。

 

 

 ここであいつとよくココアを飲んだな。

 もうツライ思い出でしかねえな。

 ケンスケは自嘲的に笑うと、窓を見つめた。

 

 

 電話の着信がなった。

 加持さんからだ。

 もう彼も僕の上司じゃない。

 色々パワハラされたけど、一応お世話になったから最後の挨拶にでもいくかな。

 とそんなことを想っていたケンスケは加持の電話に出た。

 

 

「もしもし加持さんですか?」

「お前辞めるって本当なのか。」

 

 

 お前呼ばわりか。

 

 

「ここにいてもつらい事しかないですよ。」

「そうか、まあ…日本に帰ったらシンジ君によろしくな。」

「ええ。」

「愛する人を失うのはつらいことだ、お前のやることは逃げなんかじゃない。それだけ伝えたいんだ。」

「そうですか。」

 

 

 ケンスケはもう力はなかった。

 

 

「お世話になりました。」

「ああ、また会おう…次の月曜日にな。」

「何を言ってるんですか?」

 

 

 そんな時だった。

 向かい側のビルに加持が双眼鏡をもって手を振っているのがみえた。

 彼は笑顔だった。

 窓から顔を出すと大声で叫んだ。

 

 

「後ろを観ろ!!!」

 

 

 ケンスケは加持の言ったこと真に受け振り返った。

 

 

 そこには立っていた。

 誰かが。

 眼鏡をしていないのでよくみえない。

 

 

 彼は改めてメガネをつけると、その相手を確認した。

 背が高い。

 眼鏡をしている。

 青い目。

 

 

「マリ?」

 

 

 ケンスケは目の前にいる彼女を抱きしめた。

 マリは微笑み彼を抱き返した。

 

 

「ただいま。」

「おかえりなさい。」

 

 

 二人は抱擁をしあいながら耳元でささやき合った。

 

 

 

 

 マリは気が付いていなかった。

 だが、ゴジラとシンジが起こした現実再改変のエネルギーはマリが死んだ世界にも波及がおよんだ。

 そして、生きている世界線と死んだあとの世界戦が統合されたことで彼女は甦ることに成功したのだった。

 

 

 

 

 マリはふと天をみつめた。

 そこには一つの蝶々が空を舞っていた。

 その姿はモスラにもみえた。

 

 

 

 蝶々は空高く舞い上がるとそのまま、マリたちの前から去っていったのだった。

 

 



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