Reborn in ポケットモンスター (カチドキホッパー)
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1話

初心者ですのでお手柔らかにお願いします
完全に自分の好きなものぶち込んでるだけなので至らない点多いと思います


虹の代理戦争が終わって1ヶ月が過ぎたある夜、眠りについていたボンゴレ十代目候補沢田綱吉は突然の招かざる客の声で目を覚ます。

 

 「ヤッホー綱吉くん、ちょっと世界救いに行かな…痛い、痛い!アイアンクローやめてぇ⁉︎」

 

 「オイコラ白蘭このヤロー、今が深夜3時でここがおれんちの2階の部屋で何普通に羽出して飛んできてんだ。」

 

来客の名は白蘭、かつてのミルフィオーレファミリーのボスであり、マーレリングの適合者だ。

綱吉はかつての敵が、磯野野球行こうぜ感覚で夜中に訪ねてきたので、条件反射でアイアンクローを決めていたのだ。

 

 「で、世界がなんだって?並行世界含めて支配しようとしてたおまえがどうしたんだよ?」

 

代理戦争後から普通に遊びに来ていたため、白蘭に対する警戒が解けていた綱吉は直感的に面倒事だと悟りながら聞いた方が早いと思い切りました。

 

 「あ、それね。

  他のパラレルワールドで時空が捩れちゃって、このままいくと他のパラレルワールドも含めて崩壊しちゃうんだ。

  僕1人じゃ手に負えないから助けてよ♪」

 

 「行きゃぁいいじゃねーか。

  白蘭、ツナ以外には連れて行けねーのか?」

 

横でなぜか黙っていた聞いていた家庭教師の赤ん坊リボーンは行くことは決定かのように疑問を聞いていく。

 

 「ごめんね、トゥリニセッテの大空しか連れて行けないんだ。

  さすがにユニを連れて行くのはね?」

 

世界のバランスを保つ至宝トゥリニセッテの一角、ボンゴレリングのホルダーである綱吉しか連れて行けないというのは別の世界へ行くルールのようだ。

ユニは大空のおしゃぶりというトゥリニセッテのホルダーであるが戦闘力は皆無のため仕方がない。

 

「なるほどな、よしツナ、ちょっと世界救ってこい。」

 

「なっ⁈」

 

絶句する綱吉を瞬時に抱えた白蘭は「じゃ、綱吉君借りるねー」と簡単にいうと目の前に次元の穴へと飛び込んでいった…

 

穴の中は宇宙空間のようなくらいがさまざまなところに色とりどりの光が見える広大な空間だったが白蘭は迷いなく進んでいく。

 

「なぁ白蘭、向かう世界ってどんなところなんだ?」

 

「あぁ、言ってなかったっけ?

自然豊かなところなんだけど、僕たちの世界と違うのはポケモンと呼ばれるいろんな生き物がいるところさ。

イメージとしては君のナッツみたいなボックスアニマルが野菜でいっぱいいるかんじかな?」

 

白蘭の説明で自分のボックスアニマルの天空ライオンを思い浮かべた綱吉は

 

「なにそれ⁈めっちゃ物騒じゃん⁈」

 

と慌て始めるが

 

「大丈夫だよ、向こうでは犬とか猫みたいに家族やパートナーとして浸透しているし、自分のポケモンを鍛えてバトルもしてるよ。

そんなこと言ってるうちにもうつきそうだね、あの虹色の穴がその世界の入り口だよ。」

 

「ところでその空間のねじれの原因って…

 なにかくる⁈」

 

目的の世界へ入る直前、何もない空間から突然黒い大きな鉤爪のような手が白蘭を掴む。

 

「なんだこいつ⁈

 仕方ない、綱吉くん。

 向こうで合流しよう。きっと会えるさ!」

 

そう言って白蘭は虹の穴に向かって綱吉を放り投げた。

 

「ちょ、え、白蘭⁈」

 

黒い手に引き摺り込まれる白蘭の姿を最後に綱吉は意識を失った。

 



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ホウエン編 翡翠の炎と古代の胎動
2話


第二話です
誤字脱字ご容赦ください


沢田綱吉は夢を見ていた。

10年バズーカで未来に行ったら時のことだ。

暗闇に閉じ込められてやっとの思いで抜け出したら棺桶に入っていたことで知った未来の自分の死。

後で偽装とわかっても、あの時の恐怖は拭えなかった。

自分の死に様を想像して怯えない日はなかった、何度も銃弾が自分を貫く様を夢にみた。

そしてまた今日も銃弾が自分の脳天に−

 

 ガクン

 

「痛え!」

 

強かにうった顎をさすりながら、あたりを見回すと鬱蒼とした木々に覆われた森の中だった。

 

『どこだここ…?

 パラレルワールドの並盛の近くかな?』

 

そんな考えに浸っていると、

 

「たっ、助けてくれぇ〜⁉︎」

 

おじさんの叫び声が聞こえた。

 

『こういう時って普通女の子助けて知り合いにってのが定石じゃないかなぁ』

 

などと心の中で毒づきながらも声の主を助けに走った綱吉。

開けた場所まで走り抜けると白衣を着た中年の男が尻餅をついて後退り、その男の視線の方をみるとー

 

「お、狼⁈

 いや、なんか知ってるのと微妙に違うような…?」

 

成犬よりちょっと小さいくらいの狼のような生き物が男に牙を剥いていた。

それくらい追い払えよ…と一瞬思いながらも狼だしなと思い直し、自分の武器であるグローブと死ぬ気モードになるための丸薬ー死ぬ気丸に手を伸ばそうとすると

 

「な、ない⁈

 やべえ、部屋に置いてきちゃったぞ…どうしよう、リボーン⁈」

 

いつもの癖で振り返るも頼りの家庭教師はいない。

そうだナッツは…と思い肌身離さずつけているVG(ボンゴレギア)大空のリングverXをみると

 

「なっ⁈」

 

指にはまっていたのは原型と呼ばれる本来の姿のボンゴレリングで、リングと一体化したナッツがいなくなっていた。

戦う手段がないことに気づいた綱吉は慌てて何かないかと必死に考えを巡らしていると

 

「そこに私のカバンがある!

 その中にモンスターボールが入ってる!」

 

地面を見ると肩掛けカバンが落ちていた。

モンスターボールってなんだよ⁈と思いつつも状況が打開できるならとカバンを開くと上半分が赤色、下半分が白色のピンポン玉くらいのボールが3個入っていた。

なんだこれ?この世界の匣(ボックス)兵器か?と疑問を感じながらも目の前の匣に死ぬ気の炎をいれるため、覚悟を炎に変えボンゴレリングに橙色の青空の炎を灯した。

 

「ゆ、指輪が燃えてる⁈」

 

驚く男を放置して直感で一つのボールを取り出すと中心の出っ張った部分にリングを当てると、ボールは拳代の大きさまで大きくなり中心から開いて光が溢れると…

そこには橙色の大きなヒヨコがいた。

 

「ってヒヨコデカっ!」

 

思わずつっこんでしまう綱吉だが、大きさは目の前のオオカミと同じくらいだしなんとか戦えるか?と考えていると

 

「そのアチャモは攻撃はたいあたりとひのこを覚えているぞ!」

 

と男が教えてくれる。

アチャモってこの鳥だよな?指示出せってことか?と思い

 

「え、えっと、たいあたり!」

 

と言ってみるとヒヨコ、もといアチャモは目の前のオオカミにぶつかっていった。

 怯んだ狼を見てすかさず

 

「ひのこだ!」

 

するとアチャモは口から小さな火の玉を吐き出し狼に当てた。

狼はフラフラしながら森の中へ帰っていったのだった。

綱吉は男に手を伸ばしながら

 

「あのー、大丈夫ですか?」

 

と声をかけると男がその手を握り返したのでそのまま立たせた。

 

「いやー助かったよ、ありがとう!

 まさかポチエナが襲ってくるとはね!

 私はオダマキ、ポケモン博士をしている者だよ。

 ところで君はなんでパジャマなんだい?

 それに、指輪が燃えていたのは…」

 

このオダマキという人は白蘭から説明のあったポケモンの博士らしい。

 

「おれは沢田綱吉っていいます。

 質問の方はなんとはなしたものやら…」

 

困っているとオダマキが

 

「なら近くに私のオフィスがあるからそこでゆっくり聞こう。

 あまりの服でよければ、それに着替えればいいさ。

 それに、アチャモを休ませてあげないとね?」

 

気づけば自分の足に頬擦りしているアチャモを見てふと思った疑問を聞いてみる。

 

「あの、アチャモってどうやってボールに仕舞えばいいんですか?」

 

オダマキは一瞬怪訝そうに顔をしかめるも

 

「あぁ、それならボールをアチャモにむけるんだ」

 

言われた通りボールを向けると赤い光がボールから伸びてアチャモを包め込み、気づくとアチャモは消えていた。

 

「さぁ、ボールに収めたことだし、歩きながらでもゆっくり聞こうか。

 この辺は草が多いけど、スリッパで大丈夫かい?

 オフィスに使ってない靴があるからちょっと我慢しておくれ」

 

なんでもあるなこの人のオフィス、と心の中で突っ込みながら一緒に歩いて自分が別世界の人間であること、つれとはぐれてしまったこと、生体エネルギーを死ぬ気の炎としてリングに灯したことを説明した。

 

「さ、ここが我がオダマキ研究所だ!

 今聞いた話はもっと詳しく聞きたいけど、まずは森の中にいたしシャワーを浴びて着替えておいで。

 アチャモは私の方で休ませておくよ。」

 

ここは博士の好意に甘えようと思い、着替えを受け取りシャワールームに向かった。

 

 




一話目ではポケモン要素ほぼありませんでしたが、最初の舞台はホウエン地方です。
手持ちポケモンは考えながら随時出していこうと思います。
携帯でやってるので一話がかなり短くなっております。
お目汚し失礼しました。


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3話

投稿スピードが遅くてごめんなさい
ぼちぼちやろうかなと思うので気長にお付き合いください


着替えた服は灰色のズボン、黒色のパーカー、赤色のジャケットと初代ルビーサファイアの主人公に似た服装だったがそんなことは誰も知らない。

 

「すみません博士、こんないい服までいただいて。」

 

綱吉は博士に服のお礼を伝えると

 

「いや、助けてもらったお礼の一つだからね。

 サイズがあってよかったよ。」

 

博士は笑顔のまま話を進める。

 

「それで綱吉くん、君の話をまとめると

 ・君は違う世界の人で、特殊な預言者みたいな人とこの世界を救いにきた。

 ・一緒に来た人とは離れ離れになっている。

 ・君が使った炎は死ぬ気の炎で、生命エネルギーを炎にしたもの。

ってことだよね?」

 

博士が自分の話を信じてくれたことに驚きながらも

 

「そ、そうです。

 まさか信じてもらえるとは思いませんでしたけど…

 なので、一緒に来た真っ白い男、白蘭って言うんですけどそいつを探しながらその異変とかを探りたいと思ってます。」

 

博士は笑いながら

 

「そりゃ信じるよ、私を助けてくれたし君の目は嘘をついてないからね。

 私が力になれることがあれば力になろう。

 私は新しく旅に出る子供に最初のパートナーとなるポケモンを渡す役目もあってね、君にも渡そうと思うんだ。

 そこの机の上に3つのボールがある。

 中には草タイプのキモリ、君がさっき一緒に戦った炎タイプのアチャモ、水タイプのミズゴロウが入っているよ。

 タイプっていうのはそのポケモンごとにあってね、この三つは基本のタイプで三すくみの関係なんだ。

 炎は草に、草は水に、水は炎に強いって感じだね。

 さあ、どの子にする?」

 

問いかけられた綱吉がどの子がいいんだろうと頭を悩ませていると

 

「お父さん?お母さんがご飯できたから呼んできなさいって」

 

「え⁈」

 

綱吉は研究所に入ってきた女の子を見て空いた口が塞がらなかった。

なぜなら、知っている姿よりも髪は伸びているがその顔は見間違いようも

なく…

 

「きょ、京子ちゃん⁈」

 

綱吉の想い人、笹川京子の姿だったからだ。

 

「なんだキョウコ、綱吉君と知り合いなのか?」

 

「ううん、初めて会う人だよ?

 でもなんだろ、すごくあったかい感じがする。」

 

2人のやりとりをよそに綱吉はどういうことなんだ⁈と頭を抱える。

 

「そうか、彼は沢田綱吉くん。

 なんというか…私の手伝いで旅をしてもらおうと思っている子だ。

 綱吉くん、この子は私の娘でキョウコ。

 年も君と同じで14歳だ。

 本当は10歳になるとポケモンをパートナーにして旅立つのが慣わしなんだが、この子は体が弱くてね?

 今年ようやく旅に出ることになってるんだ。」

 

どうやらパラレルワールドの京子はオダマキの娘らしいということがわかりようやく一息ついた綱吉だった。

多分異世界とか説明できないから博士の助手ポジションとして説明してくれたんだろう。

 

「はじめまして、オダマキキョウコです!

 同い年なんだね! 

 ツナヨシくんも、今年初めて旅に出るの?

 わたしもなんだ!

 ちなみにパートナーはミズゴロウだよ。」

 

「は、はじめまして…

 友達はおれのことツナって呼ぶんだ、だから君には…そっちで呼んで欲しいかな。

 パートナーはまだ決めてないんだ。」

 

「わかったよ、ツナくん!」

『なんでだろう、初めて会ったのにこの呼び方の方が落ち着く…』

 

不思議な感覚を覚えたキョウコだが、この世界でも天然なので深く気にしなかった。

 

「そうだ、綱吉くん。

 君も何も食べていないだろう、パートナーはゆっくり決めるとして一緒うちでご飯食べようじゃないか!」

 

唐突な博士の誘いでオダマキ家の食事に招かれた綱吉。

 

そして食事後、研究所にキョウコも含めて3人で戻った。

 

「さあ綱吉くん、君の答えを聞かせておくれ!」

 

博士に促されてモンスターボールの前に立った綱吉、すると

 

ポン⭐︎

 

「キャモ!」

「チャモ!」

「ゴリョ!」

 

キモリ、アチャモ、ミズゴロウがボールから飛び出して綱吉の足にしがみついたのだった。

 

「んな⁈」

 

驚いて倒れ込む綱吉にの顔めがけて飛び込んだ3匹はじゃれつき始めた。

 

「こりゃ驚いたな。

 一緒に戦ったアチャモが懐くのはわかるけど、他の2匹まで…

 でもなぁ、基本1匹しか渡してないんだよなぁ…」

 

驚く博士だが困ったなという顔でその光景を見つめているのであった。

だがそのとき

 

「ミズゴロウは私のパートナーだもん!

 ツナくんにあげないんだから!

 おいで、ミズゴロウ!」

 

涙目で頬を膨らませこっちをじーっと見るキョウコがいた。

それを見て慌ててキョウコの腕の中へ飛び込むミズゴロウ。

それをみてやっぱり可愛いなと思って顔を赤くする綱吉だった。

 

「あちゃー、キョウコにミズゴロウを引き合わせたけど渡すのすっかり忘れてたんだった。

 綱吉くん、お詫びにというわけじゃないんだが、キモリとアチャモ2匹とも連れて行ってくれないかい?

 博士としても個人としても、そんなに懐いているのに引き離すのは心苦しいのでね。」

 

図らずも2匹のパートナーを得た綱吉。

 

「ありがとうございます!

 よろしくなお前たち!」

 

そう言って2匹を抱きしめる綱吉に博士が赤い長細い機械を渡してきた。

 

「そいつはポケモン図鑑、出会ったポケモンを自動的に記録したりしてくれるハイテクなアイテムだ、君の役に立つだろう。 

 それから旅をするならジムに挑んでみるのもいい。

 8つのジムを攻略して、その先のポケモンリーグに挑むものも多いし、ジムリーダーたちなら君の探していることについて何か知っているかもしれないよ?

 とにかくこのホウエン地方を隅々回ってみてくれ!」

 

博士から図鑑を受け取り、旅立つことを決めた綱吉。

ここから冒険が始まる!

 

 

 

 




3話目ですね
いろいろ悩みましたが、最初はキマリとアチャモの2匹体制です。
ちょくちょく原作とは違う展開になりますのでご容赦ください


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4話

数名の方にお気に入り登録いただいたようで、非常に励みになります。
また手探り状態でやってますのでご意見などいただげれば幸いです。


2匹の相棒を得た綱吉。

キモリにはヴェル、アチャモにはアルとそれぞれニックネームをつけた。

 

「綱吉くん、いろんなところにポケモンセンターという赤い屋根の建物があるから、何かあればそこから研究所へ連絡するといい。

 気をつけてね。」

 

「ありがとうございます。

 何から何まで…

 それじゃ行ってきます!」

 

そして綱吉は研究所を出て101番道路を歩き出した…が!

 

「やべぇ!どこへ向かっていけばいいのかわかんねえ⁈

 そういやここ異世界じゃん、土地勘ないじゃん…」

 

一時間歩いてそのことに気がつき途方に暮れていた綱吉だが、その時耳元で

 

「まっすぐ北に抜けるとコトキタウンがあるから、まずはそこに行こ?」

 

と、声がしたものだからビビリの綱吉は悲鳴をあげながら振り向いた。

 

「き、君は…⁈」

 

そこにはいたずらが成功して喜んでいるキョウコの姿があった。

 

「ツナくんひどいんだもんなー。

 私を置いて研究所飛び出しちゃうんだもん。」

 

「え、ご、ごめんね?」

 

綱吉が慌てて謝ると

 

「あのあとね、お父さんにツナくんについて旅するって言ったの。

 お父さんったらツナくんなら安心みたいですぐOKしてくれたから慌てて準備しておいかけたんだよ?」

 

どうやらこの世界のキョウコは少しヤンチャなようだ。

 

「それにしてもよくおれの場所が分かったね?

 キョウコちゃんエスパー?」

 

ふと疑問に思ったことを聞いてみると

 

「それはね、この子のヒレがレーダーになってるんだ。

 だからすぐいる場所がわかったよ。」

 

いつのまにか抱き抱えていたミズゴロウがどうやらレーダーがわりになっていったらしい。

 

「じゃあツナくん行こ?

 私タウンマップ持ってるから案内できるよ?

 それとも私と一緒の旅は…嫌、かな?」

 

涙目上目遣いのコンボに勝てるはずもなく、別世界のキョウコと綱吉の世界の京子は見た目も同一人物、効果は抜群だった。

 

「そ、そんなまさか!

 すごくうれしいよ!」

 

そう答えるとキョウコは満面の笑みで綱吉の手を引っ張り歩き出したのだった。

 

「ツナくんはポケモンの捕まえ方って知ってる?

 私捕まえたい子がいるからちょっと付き合ってくれないかな?」

 

当然そんなことを知るはずもない綱吉は見学することにした。

 

「確かこの辺に…いた!」

 

どうやら目当てはポチエナだったみたいだ、このポチエナお腹のところの毛がイナズマみたいな模様になっているちょっと変わったやつだった。

 

「ビリー、捕まえにきたよ!

 今日こそは仲間になってよね!行ってズーちゃん!」

 

ミズゴロウを戦闘に出したキョウコ、どうやら前から知っていたのか捕まえる前にニックネームをつけていた。

ビリーと呼ばれたポチエナは嬉しそうに尻尾を少し振って、ミズゴロウとバトルを開始したが噛み付く時に牙が光っていた。

 

「かみなりのきば⁈やっぱりすごいわね!

 ずーちゃん、かわして水鉄砲だよ!」

 

ミズゴロウはかわして背後に回り込み、口から水を飛ばした!

ポチエナは避けることができず直撃しふらついた。

そのタイミングを逃さずキョウコはモンスターボールをポチエナに投げるとボールが三回ほど揺れたあとカチッと音がして動かなくなった。

 

「やったよツナくん!

 ポチエナのビリーくん、ゲットだよ!」

 

「おめでとうキョウコちゃん!

 おかげでおれも捕まえ方がわかったよ!」

 

そしてコトキタウンのポケモンセンターで手持ちを休ませている間に博士に電話をかける。

 

「あ、綱吉くん、キョウコとは会えたかい?

 捕獲用のモンスターボールと旅に入りそうなお金を預けているからまたもらってね。」

 

「博士ありがとうございます、ところで良かったんですか?

 俺みたいなのと年頃の娘さんが一緒に旅だなんて…?」

 

綱吉は気になっていたことを思い切って聞いてみた、すると

 

「私もそう思ったんだがね?

 キョウコがどうしてもと譲らなくてね、あの子があれだけ自分のお願いを言うのは珍しいし、誰かと一緒の方が安全だと思ったからね。

 それに、あれだけポケモンに懐かれる綱吉くんだから安心して任せれるんだよ。 

 あと君、キョウコに何かあったら一生この子を守りますとかいうタイプだろうからねぇ。

 旅先で変な虫がつくより安全ってもんだよ。」

 

あまりにも本音で話をされたからちょっと困ったがそれでも綱吉は

 

「あはは…

 何かあっても死ぬ気でキョウコちゃんは守ります。

 おれの誇りにかけても!」

 

なら安心だと笑って博士は電話を切った。

だが綱吉は知らない。

後ろにいたキョウコが実はそれを聞いて顔を真っ赤にしているのを。

 

「ごめん、おまたせ。

 ってどうしたの?」

 

綱吉は自分の方をあえて見ないようにしているキョウコを見て不思議に思った。

 

「べ、べつにぃ?

 今日はもう夕方だしポケモンセンターに泊まろ?

 トレーナーは無料なんだよ?」

 

キョウコはさっきの綱吉の言葉が嬉しすぎてニヤけるのが止まらず恥ずかしくて顔を直視できなかった。

それはそれとして、すでに日暮れを迎えていたこともあって、別々の部屋で夜を明かしたのだった。

 

翌朝−

 

「おはよう、ってまだ寝てる!

 起きて!ツナくん」

 

朝からキョウコに起こされるツナ。

 

「母さんあと5分…じゃない、キョウコちゃん⁈

 あ、そっか、ここホウエン地方だった。」

 

そして身支度をして次の目的地トウカシティヘ向けて出発した。

 

「この102番道路を越えたらトウカシティなんだね、ほんと自然豊かだなぁ」

 

綱吉は都会に来た田舎学生のようにあたりを見回しているのを見てキョウコは内心可愛いと思いながら笑っていたり

そうすると短パンを履いた男の子がツナに走り寄ってきた!

 

「こんな可愛いこと旅なんてうらや…じゃなかった!

 目と目があったらポケモン勝負!」

 

「ツナくん、売られたバトルは買うのが礼儀なんだよ!」

 

キョウコの言葉に驚きながらもボールを構える綱吉。

男の子はポチエナをだしてきた!

 

「ならオレは…君の力を見せて、ヴェル!」

 

綱吉はまだ戦ったことのないキモリで戦うことにした。

 

「ツナくん、図鑑で自分のポケモンの覚えている技がわかるよ」

 

「な、なに⁈お前ら図鑑ホルダーなのか?」

 

驚く男の子を放っておいてヴェルが覚えている技を調べる綱吉。

 

「ならこれだ!ヴェル、はたく!」

 

ヴェルのしっぽではたくこうげきはポチエナの頭に当たり、一撃で戦闘不能にした。

 

「おれの負けだ、はいこれが賞金だよ」

 

綱吉は150円を受け取った。

どうやらバトルの勝者はお金がもらえるらしい。

 

「ヴェルおつかれ!

 ところでキョウコちゃん、図鑑ホルダーってなに?」

 

「この世界ではね、旅立つ時にポケモンはみんなもらえるんだけど、図鑑は必ずもらえるわけじゃないんだ。

 各地方のポケモン博士から認められたトレーナーだけが持ってるから、

ちょっとだけ選ばれた者って扱いなんだ」

 

キョウコの説明に納得したが自分のどこに認められる要素があったのかわからない綱吉。

 

「お父さん旅立つ前に言ってたの。

 ツナくんは誰よりも優しい、大空のような人だと思うって。

 ポケモンたちがあんなに懐いたのを見て、図鑑を託そうと思ったんだって」

 

綱吉は博士がそんなことを思っていたとは知らず改めて図鑑を大事にしようと思ったのだった。

 

 

 




ヴェルはイタリア語で緑のヴェルデから
アルはイタリア語で橙色のアランチョからそれぞれとってます。
バトル描写が稚拙な感じになっちゃってますが、これは今後の課題にしようと思っています。
さて、次回の展開はトウカシティですのでお楽しみに。


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5話

暑い日が続いて伸びかけてます。
執筆にあたりまた一からゲームしないとダメだなーと感じています。
そんなこんなで書いていますので第5話をどうぞ。


「ま、街だー‼︎」

 

ようやく102番道路を超えて街に着いた喜びからついつい叫んでしまう綱吉。

綱吉とキョウコがついたのはトウカシティ、最初にたどり着いたジムのある街だ。

二人の目的は最初のジムリーダーに会うことだ。

そしてトウカシティジムは意外なほど簡単に見つかった。

街のど真ん中の一番大きな建物だからだ。

ジムは自動ドアだった。

ポケモンセンターもだったし、モンスターボールといいこの世界の科学力は案外侮れないらしい。

 

中にいたのは屈強な壮年の男性だった。

 

「ん?

 君はオダマキのところの…キョウコちゃんじゃないか‼︎

 久しぶりだね、大きくなったね。

 横の彼は…ひょっとしてボーイフレンドかい?」

 

「セ、センリおじさま、つ、ツナくんはそんなんじゃ…///」

 

顔を真っ赤にして否定するキョウコを見て涙目になる綱吉

 

『そんなに否定しなくても…』

 

どうやら超直感は色恋沙汰にはとんと役に立たないらしい。

 

「初めまして、沢田綱吉くん。

 私はトウカジムのジムリーダーセンリ。

 オダマキとは古い馴染みでね、君の裏の事情も聞いているよ。

 ちょっと込み入る話もあるからキョウコちゃんは外で待っていてくれないか。」

 

渋々退室したキョウコ。

 

「さて、オダマキから聞いてはいるが、にわかには信じ難くてね。

 証拠じゃないが、君の死ぬ気の炎とやら、見せてはくれないかい。」

 

センリは明らかに綱吉を値踏みしようとしている。

しかし、綱吉もここで引けない。

この世界に来て数日だが、守りたいものができたからだ。

そう思うと自然にリングに炎が灯った。

混じりっけのない純度の高い大空の炎だった。

 

「ほぅ、これが…

 君には失礼なことをした、すまない。

 私で力になれることは力になろう。」

 

そう言って頭をさげるセンリ。

 

「い、いえ‼︎

 信じてもらいづらい話だとは自分でも思っていますので。

 頭を上げてください。」

 

慌てる綱吉、どうやらセンリは熱い男のようだ。

 

「しかし、この世界の崩壊の危機と言われても思い当たるものがなぁ…

 強いて言うなら、伝説のポケモンの存在かな」

 

初めて聞く伝説のポケモンの存在、それ以前に綱吉はもともとゲーム大好きな中学生だ。

伝説と言うワードだけでテンションが自然と上がってしまうのは仕方ないことだった。

どうやらこの地方に限らず、各地方に伝説と呼ばれるポケモンがいるらしい。

その力はとても大きいと伝えられていて、正直現実離れしているので暴走すれば世界が崩壊とまでは言えないかもしれないが甚大な被害が出るのではないかと言うことだった。

 

「私もこの地方の伝説についてはそこまで詳しくない。

 確かなことは対となるポケモンが陸と海を司っていると言うことだけだ。

 伝説については私の方でも調べておこう。

 それともし、君とキョウコちゃんが私のジムに挑戦するならジムバッチを4つ手に入れてからにしたまえ。

 なに、物事には順序ってものがあるんだ。

 その時もし私に勝てれば君達に渡したものがあるのでね。」

 

意味深に微笑むセンリ、綱吉は礼を言ってジムを後にした。

 

「遅かったね、叔父様なんて?」

 

ジムの外で待っていたキョウコに聞かれ綱吉はごまかしながらジム挑戦の条件を告げられたことを伝えた。

 

「ふーん、それならこの先のカナズミジムが最初の挑戦かな?

 そこのジムリーダーは岩タイプの使い手で私たちと同じくらいの女の子なんだって。」

 

そして次の目標はカナズミシティに決まったのだった。




毎度拙い文章ですみません。
ですが順次更新して生きたと思っていますのでよろしくお願いします。


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6話

原作プレイ中ですが懐かしさが半端ないなと感じる今日この頃です
さてということで6話です。


鬱蒼としげる木々に覆われたトウカの森、ここは多くの野生ポケモンの住処になっていた。

 

「ほんとにここ通らなきゃダメ、だよね?」

 

薄暗い森の中が恐ろしくて早く出たい綱吉。

 

「そうだよ!

 それにここにはいろんな子たちがいるんだから!」

 

キョウコは逆にテンションが高くなって辺りを見回していた。

そうすると草むらからガサガサ物音がした、

 

「ひっ」

 

瞬間的にビビる綱吉。

この男、マフィアの次期ボスである。

そんな綱吉のことをものともせずキョウコは目を輝かせていた。

 

「あ、キノココ!

 草タイプの子欲しかったんだ!」

 

キノココと呼ばれた草タイプのポケモンは一瞬ギョッとしたものの、キョウコの言葉がわかったのか足に擦り寄ってきた。

そのままボールを触れさせて無事ゲットしたのだった。

 

「イェーイ!

 キノココのキーちゃん、ゲットだよ!」

 

喜ぶキョウコを見てやっぱ可愛いなと頬を赤くする綱吉、すると

 

ばざばさ

 

肩に何かが止まったのでみてみると

 

「スバァ!」

 

ツバメのような少し大きい鳥が止まっていた。

 

「あ、その子スバメっていうんだよ。

 野生の子は結構警戒心が強いんだけど、もしかしてゲットされたいのかな?」

 

「え、お前俺ときたいのか?」

 

「スバァ!」

 

どうやらキョウコの言う通りらしい、ボールを恐る恐る近づけると、自分からボールに触れたスバメ。

そのままボールに収まり、無事ゲットとなった。

なんかあっさりー⁈と内心突っ込みながら綱吉の初ゲットとなった。

 

「2人とも手持ち増えたねー!

 カナズミジムは岩タイプのところだから、草タイプほしかったの!」

 

「え、ジムによってタイプって違うの?」

 

どうやらジムによって担当するタイプが違うらしい。

キョウコの説明だと、ジムリーダーはそれぞれのタイプのエキスパートのようだ。

そんな話をしていると先の方から男の悲鳴が聞こえた。

 

「また悲鳴?

 この世界悲鳴多くないか…?」

 

小声で呟きながらほっておけず、走って声のする方まで向かう綱吉とキョウコ。

そこには白衣の男から書類カバンを奪おうとする青と白のボーダーのシャツを着た男がいた。

 

「なにしてるんだ!」

 

と声をかけるとボーダーの男は綱吉たちを見て存在に気づいたようだった。

 

「けっ、邪魔すんじゃねーよ!

 女の前でカッコつけてーのか?

 ちょうどいい、俺たちアクア団にポケモンを渡してもらおうか。

 ついでにそこのお嬢さんももらっていくぜ!」

 

書類カバンを奪い取り、キョウコへ手を伸ばすアクア団を名乗る男だったが、綱吉がその手を掴んで止めた。

 

「な、なにしやがる!

 はなしやがれ!」

 

振り解こうにも簡単には解けない、綱吉は数ヶ月前まで命懸けの戦いに身を投じているし、その後もリボーンのトレーニングは続いていたのだからなんの訓練を受けてない者など腕力では相手にならない。

さらに言えば沢田綱吉という男が力を振るうのは誰かを守る時だけだ。

アクア団の男は知らず知らず綱吉の逆鱗に触れていた。

 

「その子に手を出すな!

 キョウコちゃんはおれが守るって誓ったんだ!」

 

「へ、かっこいいねぇ王子様、

 ならポケモンバトルだ!」

 

そう言ってポチエナを繰り出すアクア団の男、綱吉もアルを繰り出して応戦する!

 

「ポチエナ、体当たり!」

 

「アル!

 かわしてひのこだ!」

 

アルはポチエナの動きを見切ってかわすとひのこで攻撃した。

実は森に入る直前に野生のポケモンやトレーナーとバトルをしていた綱吉の手持ちのレベルはかなり上がっていたため、ポチエナは一撃で倒された。

 

「こ、この坊主、強すぎる…

 わかったよ、荷物は返してやらぁ!

 お、おぼえてろ。

 カナズミシティにも目的のものはあるからこんなもの、別にいらないぜ!」

 

そう言ってカバンを放り投げるとアクア団の男は走って逃げていった。

 

「アル、お疲れ様」

 

そういってアルを撫でたあとボールに戻して、カバンを白衣の男へ届けた。

 

「ありがとうございました!

 これお礼のスーパーボールです!

 モンスターボールより、ちょっと性能が上なんですよ!」

 

そう言って2人にスーパーボールを渡した白衣の男はお礼を言って森の出口の方へ走っていった。

綱吉も歩き出そうとするとさっきから黙っていたキョウコが綱吉の服の裾を摘んで引き止めた。

 

「どうしたの?」

 

「ツ、ツナくん…助けてくれてありがとう。

 そ、その…カッコよかったよ、さっきのツナくん…」

 

顔をを真っ赤にして伝えてくるものだから綱吉も顔を真っ赤にした2人はちょっと緊張しながら森を抜けたのだった。

そしてカナズミシティへ到着した2人!

 

「でけぇ!

 都会ダァ!」

 

これまで訪れたどの街よりも発展した街の様子に興奮する綱吉。

いよいよカナズミシティジムへ挑むこととなり、ジムの扉を潜る綱吉とキョウコ。

 

「あなたたちがジムへの挑戦者ですね!」

 

そう言って奥から声をかけてきたのは女性だったが、ライトの逆光でその姿は見えなかった。

しかし綱吉は

 

『なんだろう、すごく懐かしいような気がするなこの声』

 

と首を捻っていた。

 

「はい、ミシロタウンのオダマキキョウコです!

 こっちの男の子がサワダツナヨシくんです!」

 

「キョウコさんにツナヨシさんですね、

 申し遅れました、私このカナズミジムのリーダー代理をしております…

 

 

 

 ミウラハルです!」

 

「えぇ、ハルゥーー⁈」

 

ジムリーダー代理と名乗った女性は元の世界で綱吉に好意を寄せてくれていた女の子三浦ハルだった!

 

「ハヒ!

 ツナヨシサンはハルとどこかで会ったことがあるんでしょうか?」

 

「あ、すみません!

 知り合いに似ていたのでつい…」

 

こっちの世界のハルはジムリーダー代理というポジションのようだ。

そして綱吉とハルのジムバトルが始まる!

 

 




はい、ということで、ジムリーダーを変えてみました。
ジムリーダー代理というオリジナル設定にした理由についてはそのうち明らかにする予定ですので気長にお待ちください。
さて、次回はジム戦回ですのでお楽しみに。


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7話

初のジム戦回です。
小出しにしてすみませんがお付き合いください。


「それではカナズミジム戦を行います!

 使用ポケモンは2体、入れ替えはチャレンジャーのみ可能です。」

 

審判からルール説明を受ける綱吉。

いよいよジム戦が始まる!

 

「それでは試合開始!」

 

「行きますよ!

 イシツブテ、頑張ってください!」

 

ハルが出してきたのはイシツブテ、たいする綱吉は

 

「負けないぞ、ハル!

 いけ!ヴェル!」

 

キョウコから事務の情報を押さえてもらい事前対策をしていた綱吉の一体目はキモリのヴェルだった。

 

「ヴェル、メガドレインだ!」

 

これまでのレベルアップで会得した新技、メガドレインを支持するが…

 

「遅いです!

 イシツブテ、岩石封じ!」

 

イシツブテの技の方が早かった!

大ダメージを受けるヴェル、しかしそのとき、ヴェルが全身に緑色のオーラを放つ。

それを見たハルが焦りだす。

 

「ハヒッ、あれはキモリの特性のしんりょく?

 だったらまずいのです!

 イシツブテ、たいあ_」

 

「負けるなヴェル!

 メガドレイン!」

 

しんりょくは体力が減ると発動する特性、その力は草タイプの技の威力が上がるというものだ。

威力が底上げされたメガドレインはイシツブテの体力を根こそぎ奪い、ヴァルの体力を回復する。

 

「イシツブテ戦闘不能!」

 

審判のジャッジが告げられる。

 

「大丈夫かヴェル⁈」

 

技で回復はしたものの、ヴェルは若干ふらついていた。

それでもヴェルは綱吉に目で訴える、まだやらる、と。

その思いを察したから綱吉は引き続きヴェルで戦うことに決めた。

それを見てハルは

 

『ポケモンとの強い信頼関係…とっても素敵です!

 でも、バトルは負けてあげませんよ!』

 

「最後の1匹ですけど、この子は強いですよ!

 ノズパス!」

 

ノズパスを繰り出してきた。

綱吉は回復であり、最大の攻撃であるメガドレインを支持し、相手のノズパスにクリーンヒットしたが…

 

「た、倒れない⁈

 弱点のはずなのに…」

 

「この子は鍛えていますので、弱点だけでバトルは語れませんよ!

 ノズパス、岩石封じ!」

 

「ヴェル、よけ、」

 

綱吉の指示よりも早く攻撃は直撃し、

 

「キモリ戦闘不能!」

 

無常にもジャッジがジムに響く。

 

「おつかれ、ヴェル」

 

そして綱吉は2匹目を出す。

 

「頼むぞ、アル!」

 

アチャモのアルがフィールドに舞い降りた。

 

「炎タイプは岩タイプと相性最悪です!

 タイプの相性がわかっていないんだったら後でスクールでお勉強ですよ!

 それに、勝ち目のないバトルに出させられるその子が可哀想です!」

 

ポケモンスクールの講師も兼ねるハルは綱吉があるを繰り出したことを非難した!

だが綱吉は、

 

「知ってるよ、でもこいつならきっと勝ってくれるって信じてるんだ!

 おれの直感がそう言ってる!

 それに、一緒に戦ってきたヴェルが負けたのを見てこいつから感じるんだ、負けたくない、こいつにだけは勝ちたいんだって思いを!」

 

誰よりも2匹のことを知る綱吉だからこそ言える言葉だった。

 

「アル、ひのこ!」

 

「ノズパス、岩石封じ!」

 

ノズパスの岩石封じをギリギリでかわしひのこをぶつけるアル、しかし効果は今ひとつで、一瞬怯んだだけだった。

 

「相性の壁は変えられません!

 岩石封じ!」

 

無常にも今度の岩石封じは直撃した。

 

『可哀想ですけど、これで終わりですね…』

 

効果抜群の技が決まり、状況を判断したハル…しかし、

アルはボロボロになりながら立ち上がった!

 

「ハヒッ!あ、ありえません!

 効果抜群の技を、あんなにクリーンヒットして立ち上がるなんて!」

 

『アル、お前…

 わかるよ、死ぬ気で勝ちたいんだよな!』

 

アルの立ち上がる姿に綱吉も奮い立つ!

 

「アルー!

 ハルに見せてやれ!おまえの、死ぬかの覚悟を!」

 

思わず出た言葉だったがアルには伝わったのだ。

綱吉からの信頼を!

そして限界を超えたからこそ、届く奇跡があった。

アルの体が白く輝きだす…!

そして、

 

「シャモー!」

 

「このタイミングで進化⁈

 アンビリーバボーですぅ⁈」

 

ハルが驚きの声を上げた瞬間綱吉のポケモン図鑑が起動する。

 

『ワカシャモ、アチャモの進化系。

 1秒に10発のキックを繰り出す足技の持ち主』

 

アルが新たな力を得たことを知った綱吉、そして図鑑は同時に新技を会得したことを知らせていた。

 

「アル、ニドゲリだ!」

 

岩タイプに効果抜群の格闘タイプの技で二回連続攻撃のニドゲリが決まった瞬間、ノズパスは崩れ落ちた。

 

「ノズパス戦闘不能!

 よってチャレンジャーの勝利!」

 

綱吉の勝利が決まった瞬間だった。

 

「やったぞ、アル!」

 

アルを抱きしめる綱吉、そこへ、

 

「ほんとにアメイジングなトレーナーさんです!

 これがストーンバッジです、お渡ししておきますね。」

 

ハルからジム戦の勝者の証、ジムバッジを受け取った綱吉。

そして、なぜかハルに両手を握られた。

 

「え、ハ、ハル?」

 

「最後までポケモンを信じ抜く姿、そして奇跡を起こして圧倒的不利から逆転するつよさ!

 ハルは、綱吉さん…いえ、ツナさんに惚れてしまったようですぅ。」

 

頬を真っ赤にしてもじもじしながら爆弾発言をするハル、異世界だろうとまったく変わらないハルだった。

デジャブを感じる綱吉

 

『やっぱこの子ハルだ…』

 

さらに腕を絡めてくるハル…

 

「ちょ、やめろってハル…」

 

女の子は振り払えない綱吉、そこへ

 

「次は私のジム戦だよ!」

 

キョウコだった。

 

「はひっ、ごめんなさい!

 すぐに用意しますね!」

 

「キョウコちゃん、頑張ってね」

 

エールを送る綱吉だが、キョウコはジト目で綱吉を見たあと

 

「ツーン」

 

ツンツンに立ち去っていった、

 

『え、おれなにかしたー⁈』

 

悶える綱吉だった。

 

キョウコのジムさんはギリギリなところで勝利に終わった。

そしてジムを出る頃には夕方になっていた。

 

「ジム戦お疲れ様

 あのぉ、おれなんかした、かな?」

 

恐る恐る尋ねる綱吉。

 

「…キョウコ」

 

「えぇ⁈」

 

「ジムリーダー代理のハルさんのことは呼び捨てなんだから、私のことも呼び捨てにしてくれないと嫌!」

 

どうやらヤキモチを妬いてたらしい。

 

「う、うん…キョウ、コ?

 これでいいかな?」

 

しどろもどろになりながらなんとか呼び捨てで呼ぶ綱吉、するとキョウコは

 

「うん!

 ありがとうツナくん!

 あ、遅くなったけどバッジゲットおめでとう!」

 

太陽のような笑顔だったと、のちに綱吉は語る。

 

あ、それと、とキョウコは人差し指を綱吉の唇に当て

 

「ツナくんの旅のパートナーは私なんだから!

 忘れちゃダメだからね!」

 

『ど、どういう意味ー⁈』

 

女心に疎い綱吉はしばらく悶々とすることになるのだった…




ジム戦終了です!
なんかこのキョウコは本編の京子と比べてツンデレというか、ちょっとだけ性格の違うキャラになります。
異世界の同一人物ですのでご容赦くださいね。


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8話

また、森の中を進む。

それだけで綱吉の気分は憂鬱だった。

ジム戦の翌日、街を出ようとした綱吉たちは森で助けた白衣の男に出会った。

彼はデボンという会社の社員で、助けてもらったとことを報告したら何故か社長が会いたいと言い出したそうな。

そして面会した社長からムロタウンの息子へ手紙を渡してほしいとことづかる。

そしてムロヘ向かうため、トウカの森を戻った先にいるハギというおじいさんの船に乗せてもらう段取りになったのだ。

そうして現在へ至るわけだ。

 

「入って一時間たつけど、出口が見えねぇ⁈」

 

虫ポケモンに挑まれるわ、虫取り少年に挑まれるわ、出口は見えないわでやけくそ気味に叫ぶ綱吉。

 

「イライラしたらダメだよ?

 次のジムに向けて手持ちも鍛えれているし、結果オーライじゃない?」

 

キョウコのフォローでなんとか落ち着こうとしたが、それでも綱吉は森の中が嫌なのだ。

次のムロジムは格闘タイプの使い手、その弱点として綱吉が鍛えているのは

 

「ネロ、だいぶ強くなったんじゃないか?」

 

「すばぁ!」

 

森の中で捕まえていたスバメだった。

なかなかに素早いネロはここまで一撃たりとも食らわずに来ていた。

 

「あ、出口が見えたよ」

 

森を抜けて、一番近くの民家を目指す。

そこがハギ老人の家だった。

 

「ごめんください、沢田といいますが…

 デボンの社長に頼まれた件できました。」

 

「おう、お前さんらか!

 出港するぞ、早く乗れ!」

 

船に乗り気づいたらムロについていた。

 

先に用事を済ませることにし、町外れの洞窟へ進む。

奥には巨大な壁画が描かれていた。

それは大きな怪獣を思わせるポケモンと、大きなシャチのようなポケモンが描かれていた。

 

「すげぇ、こんなポケモンっているのかな…?」

 

綱吉が思わずつぶやくと、それに応えるような声が後ろから聞こえた。

 

「ふふ、そこに描かれているのは神話のポケモン。

 名はグラードンとカイオーガ。

 グラードンは大地を司るといわれ、カイオーガは海を司ると言われているよ。」

 

「あなたは?」

 

「これは失礼、レディ。

 僕はダイゴ、歴史と石を研究する者だ。」

 

なんと目的の人物が自らやってきた。

 

「あなたがダイゴさんなんですね。

 俺は沢田綱吉、彼女はオダマキキョウコ。

 あなたのお父さんから手紙を預かってきたんです。」

 

「親父から?」

 

手紙を渡して要件をすませた。

そしてその場を立ち去ろうとすると

 

「待って、綱吉くんと言ったかな?

 君の手の指輪を見せてはくれないかい?」

 

突然の申し出に驚きながらも、何故かその言葉に従ってしまう綱吉。

恐る恐る疑問をぶつけてみた。

 

「あのぅ…俺のリングが何か?」

 

「あぁ、すまないね。

 研究者として珍しい石には目がなくてね。

 詳しくはわからないがその石は特別なようだ。

 大事にしたまえ…では、また会おう!」

 

そして綱吉とキョウコは洞窟を出て行った。

その後ろ姿を見ながらダイゴは呟く。

 

「なんだあの石は…

 あれから感じる力は…まさか、ね?」

 

そして自分の胸に刺していた輝く石をはめた装飾品に無意識に手を触れていたのだった。

 

場面は変わってムロジム。

 

「極限待ちわびたぞ、キョウコ!

 そっちの男は、親父から聞いている!

 極限に忘れたがな!」

 

ジムに入って早々に熱烈な歓迎をうけていた。

ジムリーダーの名はオダマキリョウヘイ。

自分の晴れの守護者がまさか異世界ではジムリーダーだとは思わず頭を痛める綱吉。

 

「ごめんねツナくん。

 お兄ちゃん、細かいこと覚えるの苦手で悪意はないの…」

 

「あぁ、それは大丈夫…

 よく知ってます…」

 

キョウコの謝罪を聞きつつ、この人は自分が知る人とは別人なんだと思い直す。

 

「俺は沢田綱吉、妹さんと旅をさせてもらっています!

 あなたとジムバトルをしたくてきました!」

 

名乗りを上げた綱吉、リョウヘイは不敵な笑みで返す。

 

「ほぅ、熱い男は極限大歓迎だ!

 妹を守れる男なのか、試させてもらうぞ、沢田ァ!」

 

ジム戦は2対2のバトル、リョウヘイはワンリキーを繰り出してきた。

 

「頼むよ、ネロ!

 翼で打つ!」

 

ネロの先制技が決まる!

効果は抜群!のはずだが、

 

「なんの!

 ワンリキー、けたぐりだ!」

 

ワンリキーもすかさず反撃する!

これはネロも面食らい直撃する。

しかしこれでは終わらない!

 

「ワンリキー、ビルドアップ!からの地球投げ!」

 

能力アップしてからネロを掴み空中で回転し、下に叩きつける!

 

「このワンリキーは俺に似ていてな、習得の難しい地球投げを気合で習得したのだ!」

 

手持ちを自慢するリョウヘイ。

負けじと綱吉もつばさでうつを放つようネロに指示する。

ネロの一撃はワンリキーを吹き飛ばし戦闘不能にしたが、ネロもかなりのダメージを喰らっていた。

 

「ぬぅ、やるではないか!

 男の勝負はここからだぞ、沢田!

 マクノシタァ!」

 

相撲取りのようなポケモン、マクノシタがリョウヘイの二番手だった。

綱吉の直感が囁く、こいつは強い、タイプ相性をものともしない、と。

 

「ネロ、迂闊に近づくな!

 動きながら翼で打つ!」

 

直感に従い指示する綱吉、ネロも着実にダメージを与えていくが、

 

「うおぉぉぉぉ!

 マクノシタ、カウンターだ!」

 

とうとう捕まりカウンターを喰らい戦闘不能となる。

 

「戦略は悪くない。

 が!それで勝てるほど甘くはないぞ!」

 

自らの肉体で逆境を砕き、ファミリーを明るく照らす日輪。

世界は違えど己の使命を体現し、タイプ相性すら覆したリョウヘイ。

だが綱吉は引かない。

元の世界で了平から教わったこと、それは自分の誇りを信じて進み続けること。

そして綱吉の誇りは仲間だった!

 

「まだだ、まだ終われない!

 負けるもんか、俺にはまだ仲間がいる!」

 

そして綱吉の二体目はヴェルだった。

 

「む?キョウコからワカシャモが手持ちにいると聞いていたのだが…

 できればそいつと拳を合わせてみたかったのだがな。」

 

残念そうに呟くリョウヘイ。

 

「たしかにアルの方が今は強い。

 だけどヴェルから感じるんだ、死ぬ気で勝ちたいって気持ちを!

 だから俺はこいつを信じる!」

 

その覚悟に応えるように体からエネルギーを放出し…ついに…

 

「な…この土壇場で、ジュプトルに進化した、だとぉ⁈」

 

あまりの出来事にうめくリョウヘイ。

だが綱吉は驚かない。

そして一瞬綱吉の目がオレンジ色に輝いたのをリョウヘイは見逃さなかった。

 

「やるぞヴェル!

 れんぞくぎり!」

 

ヴェルの素早い動きを止めることのできないマクノシタ。

 

「ぬぅ、マクノシタ!

 はっけいだ!」

 

マクノシタの一撃に大きくよろめくヴェル。

 

「次が最後の一撃になりそうだな…

 だが、俺は極限に!

 こんな熱い戦いを待っていたのだ!

 行くぞ沢田!

 マクノシタ、極限はっけいだ!」

 

これまでにない迫力の一撃がヴェルに迫る。

しかしヴェルも特性しんりょくが発動し緑のオーラを放つ!

 

『ヴェル、お前もいっぱい鍛えたもんな。

 今のお前なら行けると思うんだ、新技が!」

 

「ヴェル、リーフブレードだ!」

 

ヴェルは手首の葉を剣にして相手を切り裂く技、リーフブレードを放つ!

そして2体は交差し…

 

 

 

「ふっ、極限に…

 

 

 

 俺の負けだ。」

 

マクノシタは崩れ落ち、ヴェルが拳を突き上げる。

こうしてジム戦は幕を閉じた。

 

 

そしてリョウヘイからバッジを受け取る綱吉。

 

「うむ、ナックルバッジだ。

 そしてお前を試したことを詫びよう。

 お前は強い!

 キョウコを任せるに値する男だ、胸を張れ沢田!」

 

「ちょ、お兄ちゃん…!」

 

京子は真っ赤になっているが、何はともあれ無事終了した。

続くキョウコのジム戦では、なんとミズゴロウが進化してヌマクローとなら危なげなく勝利した。

 

そして兄妹水入らずでリョウヘイの家で語り明かしていたので、綱吉は1人ポケモンセンターで眠りについた…はずだった。

 

気がついた時、綱吉は真っ白な場所に立っていた。

多分夢だ、10年後の未来に行った時に見た夢と同じ…

『…くん

 綱吉くん。』

 

夢の中に出てきたのは、はぐれていた白蘭だった。

 

「白蘭、お前無事なのか…?

 っていうか今どこに⁈」

 

『うん、あの黒い手のやつにパワーを吸われたみたいで今日まで連絡できなかったんだ。

 だから、回復した今でも夢の中であまり長くは話せないんだ。

 僕は今君とは違う地方にいるけど、人里離れた場所みたいでどこかまでははっきりわからないんだ。

 だけど飛ばされた場所には必ず意味がある。

 僕と君、それぞれにいる場所の問題を解決するんだ。

 多分世界崩壊につながる問題は一つじゃない…

 おそらく、その鍵は各地方の伝説のポケモンにあるんだ。

 大丈夫、僕も君もリングに選ばれたんだから。

 最後には引き合うよ」

 

そして白蘭は伝えることだけ伝え光の中に消えていった。

 




白蘭については別地方にいるという設定にしています。
今のところジムリーダーはリボーンキャクターと入れ替えていますが、必ずしも全てそうなるわけでもありませんので今後もお楽しみに!


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9話

綱吉は白蘭の所在が気になってはいたが、この地方の問題を解決するために一旦置いておくことにした。

そしてハギがデボンの社長から、カイナシティヘ荷物を届けるようことづかったらしい。

リョウヘイに別れを告げ、キョウコと船に乗りカイナへ向かった。

 

カイナは港町で海に囲まれていた。

 

「潮風が気持ちいいね!

 この先のキンセツシティに次のジムがあるよ!」

 

「ならお使いを早く済ませちゃわないとね」

 

お使い先は海洋研究所、そこの博士に渡せばクリアだ。

 

「お邪魔します。

 デボンの社長からのおつかいですー。」

 

「あ、待っていたよ。

 このパーツがないと潜水艦ができないからなぁ。」

 

荷物を渡した瞬間、

 

パリィーン

 

窓ガラスが割れて2人の男が侵入してきた。

その姿はトウカの森でみた…

 

「お前たちは確かアクア団!」

 

綱吉は思わず叫んでいた。

 

「へぇ、ご存知じゃないの。

 おれらはそこの荷物を回収できればいいんだけど…

 お前さん、トウカの森で邪魔してくれた坊やかい?

 仲間から聞いてるよ、たっぷり礼をしないとな。

 たしか、とんでもない可愛い子も連れてるとか…

 荷物のついでに奪って楽しむか」

 

アクア団はキバニアを出して下卑た笑いを浮かべながらキョウコを見る。

キョウコもただの子供ではない、捕まれば何をされるか想像して青ざめる。

 

「いゃ…」

 

そしてキョウコにアクア団が触れようとした時、

 

「おい…

 お前たちの相手は俺だ、集中しろ。」

 

綱吉がアクア団の手を掴んでいた。

その隙にヴェルが一撃でキバニアを倒す。

 

「ツナく…え?」

 

キョウコもヴェルもアクア団も呆然とする。

なぜなら…

 

綱吉の額にオレンジ色の炎が灯り、瞳もオレンジに変わっていたからだ。

 

「ひっ、化け物…⁈」

 

アクア団の2人は怯えて逃げ出した。

綱吉がふぅっと深い息を吐き出すと炎は消え、いつも通りの綱吉がそこにいた。

 

「ごめん、驚かしちゃったね。」

 

綱吉が触れようとするとヴェルは怯えた。

 

「そう…だよね…ごめん。」

 

そういって綱吉はヴェルをボールに戻さず走って出て行ってしまう。

 

「ツナくん…」

 

キョウコは黙って綱吉の後ろ姿を見ることしかできなかった。

 

あれからどれだけ走ったのか…気づけばカイナの灯台の下に来ていた。

時間は夕暮れ、多くの船が浮かぶ姿は夕日に映え絶景だった。

そんな景色も、綱吉の心は癒せない。

 

『そりゃ普通怖いよな

 頭から火が出る人間、しかも性格も変わって見えるらしいし…』

 

綱吉の脳裏に焼き付くのは先程の光景自分を見るヴェルの、キョウコの、目、そしてアクア団の怯えた目だった。

すると突然ボールからアルが出てきた。

 

「ワカシャ…」

 

綱吉の肩に手を置くアル。

 

「そっか、アルは初めて戦った時に死ぬ気の炎見てるもんな。

 でもやっぱり怖いと思うんだ普通は。

 だからもし、ヴェルとキョウコがもう一緒に旅をできないというんならそれでもいいと思うんだ。

 アル、ネロもだけど怖かったら俺とこなくてもいいんだぞ?

 世界はなんとかするから、さ?」

 

泣きそうなのを堪えて綱吉は笑ってみせる。

だがアルは首を振り綱吉にしがみつく。

そして後ろから、

 

「サワダツナヨシィ!」

 

振り向くとそこには…

 

「な…キョウコ…ヴェル…」

 

キョウコとヴェルが立っていた。

そしてキョウコの顔は超直感を使うまでもなく…

過去最高に激怒していた。

そしてツカツカと近寄り

 

「ツナくんのバカァ!」

 

精一杯怒鳴りつけ、そして…

抱きしめられていた。

 

「なんでみんな一緒に旅してると思ってんの!

 みんなツナくんが好きだから旅してるの!

 そりゃびっくりしたけど、私も!ヴェルくんも!

 あの程度のことであなたのこと嫌いになんてなってあげないんだから!」

 

ヴェルもその通りだと頷く。

綱吉は気付けば泣いていた。

 

「おれ、いいのかなぁ?

 みんなと旅して?」

 

「当たり前でしょ!

 私はツナくんのパートナー、この子達はあなたのポケモンなの!

 次そんなこといったら許さないんだから!」

 

こうして絆を深めたのだった。

そしてキョウコやヴェルたちに死ぬ気の炎や死ぬ気モードについて説明はしたが、異世界から来たという話はしなかった。

綱吉なりにこれ以上混乱させたくないから、という思いからだった。

 

「今まで自分で死ぬ気モードになったことって片手で数えるくらいしかなくて…まさかあのタイミングでなるとはね…」

 

自嘲気味に告げる綱吉。

 

「それだけ必死だったってことなら嬉しいんだけど…

 いつもと雰囲気違うのはびっくりしちゃったけど。」

 

そう言って笑うキョウコを見て、この子を怖がらせるものがないようにもっと強くなろうと誓う綱吉だった。

 

 

一方アクア団のアジトでは

 

「なにぃ⁈

 頭が燃えたガキに邪魔されてパーツを奪えなかっただぁ?

 馬鹿にしてんのか!」

 

「すみませんボス!

 でもほんとなんですよ!」

 

綱吉にやられたアクア団たちがボスと呼ばれる男に叱られていた。

 

「ふん、なんにしろガキに舐められたまんまじゃ俺らの名前に傷がついちまう。

 しかしそいつ何者だ?」

 

動き出すアクア団、沢田綱吉というイレギュラーを内包したまま物語は進んでいく…

 




初の超死ぬ気モード登場でした。
ストーリーの性質上基本自信で戦わないのですけど、こっからどんどん絡めていければなと思います。


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10話

キンセツシティ、そこは電気タイプのジムリーダーに率いられるハイテク都市。

街全体を一つの建物とした、ある種のユートピアである。

当然ジムに挑む綱吉達。

が、ジムリーダーのテッセンが使うコイル、レアコイルとの戦いはアル、そしてキョウコのズーちゃんとの相性が良すぎたのか瞬殺してしまったのだ。

2人の次なる目的地はハヂヅケタウン、りゅうせいのたき。

そこに伝説の手がかりを探しに向かう途中だった。

というかむかっていたはずだった。

 

「ここどこぉ⁈」

 

綱吉の叫びが砂嵐に吸い込まれる。

話は一時間ほど前に遡る。

 

「え、ほのおのぬけみちが崩落した?」

 

「キョウコ、ほのおのぬけみちってなに?」

 

純粋に土地を知らない綱吉が尋ねる。

 

「ハジツゲタウンに行くのに通る道だよ。

 とても暑くて炎ポケモンがいっぱいいるんだ。

 そうなると…111番道路を通るしかないね。」

 

「よくわかんないけど、道はあるんだね?」

 

「そうだけど…」

 

歯切れの悪いキョウコの返事に違和感を持ちながらも、111番道路に足を踏み入れた。

しかしこの道は広い砂漠なだけでなく常に砂嵐が吹き荒れていて視界も悪いので、とてもではないが前を向いて歩けない。

 

「すごい砂嵐だ…キョウコ、だいじょう…ぶ?」

 

振り向けば綱吉は一人ぼっちだった。

 

「うそぉ⁈

 おれ方向とかわかんないよ⁈

 いや、でも超直感が…

 仕事しねえ!

 どうなってんだこの呪われた血は!」

 

やけになりすぎて日頃の鬱憤が爆発した。

 

そして現在…

 

「どうすんだよこれ…

 獄寺くん、山本ぉ

 せめてグローブがあれば空を飛べるのになぁ…」

 

泣き言を言う綱吉、だが

 

くぃくぃ

 

突然ズボンが引っ張られた。

 

「えっ、君誰?」

 

アルマジロのようなポケモンがズボンの裾を引っ張っていた。

 

「ついていけばいいの? 

 てか図鑑は…

 君はサンドっていうんだね。」

 

どうやらサンドが道案内してくれるらしい。

ついていくと5分ほどで道は開けた。

そして、

 

「おーいツナくん!

 はぐれた時は心臓止まるかと思ったよ…

 え、なにその子達は野生の子?」

 

キョウコもいたが、その言葉に引っかかる。

 

「ん?その子…達?」

 

足元には案内してくれたサンドしかいないし、自分の手持ちは外に出していない。

と、思ったらサンドの反対側にもう1匹いた。

青い四足歩行のやたら顔のでかいポケモンが。

 

「この方どなたぁぁぁ⁈」

 

「ナァゥ」

 

慌てて図鑑を見るとナックラーと表示されるポケモン。

しかし、図鑑のナックラーは色が茶色なのだ…

 

「…ツナくん、その子色違いのナックラーだよ。

 めちゃめちゃレアなポケモンだよ。

 もしかして、2匹ともついて行きたいのかな?」

 

「え、そうなの?」

 

2匹は綱吉のズボンにしがみついていた。

離れたくなさすぎるのがよくわかる。

ということで一気に手持ちが増えた綱吉でした。

 

そして灰が積もる道を抜けハヂツゲタウンに着いた。

りゅうせいのたきにつくまでにたくさんバトルした。

主に山男と。

滝の入り口に着いたとき綱吉はキョウコに慰められていた。

 

「怖い…山男怖いィィ。」

 

「全部の人がそうじゃなかったでしょ?

 そのぉ、あの2人は特殊だったんだよ。」

 

街から滝に着くまで山男との遭遇数は10人なのだが…

そのうちの2人が綱吉を見た途端

 

「はぁはぁ…

 君かわいいねぇ…

 おじさんと一緒に、いこうよぉ。

 こんな可愛い男の子見たことないなぁ」

 

鼻息荒く詰め寄られたのだ。

最初こそキョウコが言い寄られてると思い死ぬ気モード手前になっていた綱吉だが、狙いが自分だと気づくと死ぬ気になれず震えながらバトルしていた。

別に愛の形は人それぞれだというのが綱吉の持論だ。

その男たちのつめより方があまりにも強引で怖かっただけなのだ。

そうしていると洞窟の奥から争っているような声が聞こえた。

頭を切り替えて洞窟に入るとどこかで見たような光景が広がっていた。

白衣の男とアクア団が言い争っていたのだ。

 

「その隕石を返せ、研究に必要なんだぞ!」

 

「あぁん?

 そんなに大事なもんなのかこれ?

 だけどよぉ、おれらの計画にも必要なんだわ。

 これは返してやれねぇなぁ。」

 

言いながら入り口の綱吉たちに気づくアクア団。

 

「お、おめえは!

 頭の燃えたガキンチョ!」

 

「分かりやすい覚え方をありがとう。

 また悪さしてるなら懲らしめるぞ。」

 

しかし奥からやってきた男の登場で空気は一変する。

 

「ほぅ。

 そいつがお前らがコテンパンにされたガキか。

 俺はアオギリ、恥ずかしながらこいつらのボスなんかをやらせてもらってるもんだ。

 てめぇ、名は?」

 

「沢田…綱吉。」

 

「なるほどな、聞けよ沢田。

 俺たちはな、海を広げて水タイプのポケモンが住みやすい世界を作りたいって理想を持ってんだ。

 おめえにはただ悪事を働いてるように見えるかもしれんけどな、他ならぬポケモンのためにやってんだわ。

 だからよ、邪魔はやめてくんねえか?」

 

アオギリの放つ覇気に飲まれかける綱吉、だが、

 

「あなたたちの理想や目的はわかりました…

 でもあなた達はおれの友達を傷つけようとした!

 おれが戦う理由はそれで充分だ!」

 

「へぇ、なかなか良い覇気じゃねえか。

 報告は受けてるぜ、うちのバカどもが隣の嬢ちゃんにちょっかいかけたらしいな。 

 それに関しちゃおれの監督不行き届きだ、詫びるぜ。

 だが、次に邪魔してみろ。

 容赦はしねぇ。」

 

そういってアクア団たちはいなくなった。

 

「あいつら、あの隕石を使ってえんとつ山で何かする気なんです!

 トレーナーさん止めてください。」

 

白衣の男から頼まれた綱吉。

急ぎ向かうえんとつ山にもう一つの脅威が迫っていた。

 

「リーダー、アクア団が隕石を手に入れてえんとつ山に向かったようです。」

 

「そうですか…それでは我々もそろそろ動きましょう。

 この母なる大地のために、ね。」

 

 




アオギリ結構好きなんですよね。
初代サファイアの方ですけど。
さて、ツナの手持ちですが6匹以上になる予定です。
ホウエン編が終わるまでに何匹になることやら…


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11話

えんとつ山に登るためロープウェイまで辿りついた綱吉達。

てっきり警戒してここも見張りがあるものかと思いきや…

 

「誰もいないや。

 楽に登れるならそれに越したことはないけどね。」

 

無事ロープウェイになった2人、だが…

なにこれ⁈

めちゃめちゃ遅いんですけど…

2人の心の中で突っ込むほど、すごーく遅かった。

 

『はぁーあ、これがデートだったらもっといい雰囲気なのになぁ。」

 

「ひゃう⁈」

 

突然叫んだキョウコの方を恐る恐る見ると…

真っ赤だった、そりゃもう見事に。

これまさか…

 

「えっと、もしかして口に出てました?」

 

顔に手を当てながら目を逸らすキョウコ。

対照的に綱吉の顔はどんどん青ざめていく。

 

『やってもうたぁ⁉︎』

 

頭を抱える綱吉、するとキョウコが綱吉の服を引っ張る。

 

「あのね、ツナ君…」

 

その時爆発音が鳴り響く。

いつのまにか頂上についていたのだが、外の爆発が中まで聞こえてきていた。

慌てて外に出てみると…アクア団と赤いフード付きの上着をきた一団がそこかしこでバトルしていた。

 

「邪魔するなマグマ団、我らアクア団の悲願を!」

 

「うるさい!

 我らにも悲願ならあるのだよ!」

 

会話から敵対組織同士の抗争だと判断した。

この世界まで来てどんぱちかよ!

頭を抱える綱吉だが

 

「てめぇら団服着てねえがどこのもんだ?

 まさかスパイか?」

 

そんなことを言いながらアクアとマグマが襲いかかってきた。

キバニアとドンメル、それぞれの団らしいポケモンだ。

慌ててボールを構えようとする綱吉だが、

キョウコが一歩前に出ていた。

その表情は能面のように何も感じさせないがいつもの太陽のような雰囲気ではない、覇王のオーラをたぎらせていた。

 

「ツナくん、ちょっとこの人たち黙らせるから。

 先に行ってくれる?」

 

あまりの雰囲気の違いに思わず「この方どなたぁ⁈」と叫びかけたがなけなしの理性を振り絞り、頷いて先は走っていった。

 

「…せっかくツナくんといい雰囲気だったのに、許さないんだから!

 ずーちゃん!キーちゃん!」

 

ボールから出てきた2匹は主人の怒りのオーラを見てビビるも戦闘態勢に入った。

そして一撃で全て終わったのだ。

メガドレインと水鉄砲の効果抜群の技を受けて即瀕死となったのだ。

 

「あら、何かしらこの小娘。

 あたしはアクア団の幹部、イズミ。

 邪魔なマグマを倒してくれたのはいいけど、うちの下っ端もなんて。

 どこの馬の骨か知らないけど、お姉さんが大人の厳しさ、教えてあげる。」

 

アクア団の幹部を名乗る女はグラエナを出してきた。

 

「幹部ってすごく強そう…でもね、私決めたの!

 ツナくんを傷つけようとする人たちや、私たちの邪魔をしてくる人は私が全部倒すんだから!」

 

キョウコの覚悟が新たな力を呼び覚ます。

キョウコの隣に立ったポケモンは…進化したキノガッサだった。

 

「キーちゃん、やるよ!」

 

「ガッサ!」

 

グラエナはスピードで翻弄するかのように動き回るので、なかなか攻撃にうつれない。

その強さと速さで幹部まで上り詰めたのがこのイズミだ。

だが、キョウコもこれまで綱吉と旅をしてきたのだ。

そこいらのトレーナーとは経験値が違うのだ。

 

「!そこ!

 キーちゃんマッハパンチ!」

 

グラエナの脇腹にモロに入った。

 

『経験でわかるわ…こういう子はスイッチが入ったらやばい。

 早めに倒したいところだけど、相性が悪すぎるわ…』

 

「よくわからないけど、お嬢ちゃんの邪魔をする気はなかったのよ。

 ごめんなさいね。 

 このままやっても勝ち目はないから退散するわ。

 次にあったらリベンジ、ね?」

 

そういってイズミは姿を消した。

 

「はぁ、疲れちゃった。

 ツナくんを追いかけようにもすぐには無理かな?」

 

元々病弱だったのだ、旅で多少体力はついたにしろ連戦は向かない。

 

「ツナくん、無理しないで…」

 

 

火口付近にはアオギリと赤い服を着た男が立っていた。

 

「マツブサァ、まさかてめーまで来てやがるとはな。」

 

「その隕石を使い火山を刺激する、そして地下で眠るカイオーガを起こすといったところでしょう?

 させませんよ、目覚めるべきは我らが悲願のグラードンなのですから。」

 

ようやく辿り着いた綱吉を見てアオギリが笑う。

 

「よう沢田!

 追いかけてきたところ悪いが実験は最終段階だ。

 ちなみにそこにいるのはおれらと敵対しているマグマ団のリーダーマツブサだ。

 おれはてっきり炎といいマツブサの手駒かと思ってたんだが、どうも違うらしい。

 一体なんなんだおめーはよ、今更ただのトレーナーですとは言わせねえぞ?」

 

答えに詰まる綱吉、この場合なんと答えるべきか迷った。

 

「まぁ、いい。

 あとは機械がやってくれるからおれも手ぶらだ。

 その間遊んでやるよ。

 邪魔すんなよマツブサ。

 いけ、サメハダー!」

 

対抗する綱吉はヴェルを出す。

 

「ほぅ、ジュプトル…なかなかに鍛えておいでだ。

 アオギリが並のトレーナーではないというのも頷けますね」

 

マツブサは冷静にバトルを観察している。

 

アクアジェットとリーフブレードがぶつかり合う、その衝撃で飛ばされそうな綱吉。

見ると押し負け何度もアクアジェットでぶつかられるヴェルの姿があった。

 

「へっ、やるじゃねえか。

 だがレベルの差ってのは怖いよな。

 相性の悪い技でぶつかってんのにダメージはテメーのジュプトルの方が受けちまってるんだからよ」

 

アオギリの言葉でハッとなる綱吉。

ヴェルは深緑を発動できないほど弱っていた。

 

「沢田、おれの下につけ。

 おれはオメーのこと気に入ってんだ。

 このままバトルしたらそいつ、最悪ダメージの負いすぎで死ぬかもしれねーぞ。

 おれもそういうのは嫌なんだよ。

 それとも、もっといたぶってやんねーと現実が見えねえか?」

 

思わずヴェルに駆け寄る綱吉、その顔は死人のようになっていた。

 

『おれのせいだ、俺があいつの部下になれば…』

 

しかし、ヴェルは立ち上がる。

綱吉を邪魔だとばかりおしのけてでも。

そして真っ直ぐに綱吉の目を見返す。

その瞳を見て骸と戦った時にリボーンに言われたことを思い出す。

 

『てめーはどうしてーんだ?

 吐き出したその答えが、ボンゴレの答えだ。」

 

「まだやれるかヴェル?」

 

綱吉の質問に当然だと頷くヴェル。

 

「アオギリ、誘いは断る。

 お前にだけは負けたくないんだ!」

 

そう言って振り返る綱吉の額には死ぬ気の炎が灯っていた。

 

 



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第12話

すみません
ちょっと間が空きましたが、再開です!


『ほんとに頭が燃えてやがる。

 飛んだびっくり人間がいたもんだな。』

 

部下から報告を受けていたアオギリだがやはり実物を見ると驚かずにはいられない。

それ以上に感じたのは綱吉の覇気だった。

 

「炎以上にてめーの雰囲気がさっきまでとは別人だ。

 二重人格ってやつか?

 まぁどうでもいい、おれに楯突いたことを後悔しながらイっちまいな。」

 

アクアジェットの高速移動により何匹ものサメハダーが当たりを泳いで食らいつくように見える、獲物に喰らいつく肉食魚の群れのようだった。

しかし綱吉は  

 

「ヴェル、左後ろにリーフブレード」

 

サメハダーの動きを捉え確実な指示を出した。

綱吉の死ぬ気モードに呼応するようにヴェルもしんりょくをはつどう、左後ろに渾身のリーフブレードを放ち、飛びかかる寸前のサメハダーにぶちかました。

吹き飛ばされたサメハダーは隕石が設置されたマシンに直撃、そのまま倒れた。

 

「はっ、やるじゃねえか!

 てめえが燃えるとポケモンの動きも段違いだな。

 今日はこいつしか連れてきてねえから、おれの負けだ。

 ここでの実験も済んだし目的も達成だ。

 だがな沢田、まだ立ちはだかるってんならアクア団のボスとしてテメーを潰す。

 仲間になりたきゃいつでも言えよ、おれは個人的にてめーのことは気に入ってんだ。」

 

そう言ってアオギリは立ち去っていった。

 

「やれやれ、行きましたか。

 しかしあのアオギリに一目置かれるとは、君もなかなかやりますねぇ。

 私はマツブサ、マグマ団でリーダーをしています。 

 アクア団とは目的の違いから対立しています、何せ我々は陸を増やし、生物の生きる環境を拡大させるのが目的だからです。

 君はどうやら特別な力をお持ちのようだ、もしまた縁があればお会いしましょう。

 その時敵となるか味方となるか、楽しみですね。」

 

そういって意味深な笑みを残してマツブサも姿を消した。

超直感でわかったことがあった。

それは間違いなく敵として再び2人と出会うこと、そしてまだ本気をかけらも出していないこと。

もっと強くなることを決意した綱吉はキョウコの元へ走り出した。

 

 

「へぇ!

 あのアオギリさんのポケモン倒しちゃったんだ!」

 

ことの顛末を伝えるとキョウコは驚いていた。

 

「え、あいつのこと知ってんの?」

 

「私もついさっき思い出したんだけどね、15年前くらいの記事だったかな?

 リーグ四天王クラスの実力者特集に載ってたの!

 荒波の男、紫のサメハダーを持ってて当時少し有名だったんだよ。

 あ、四天王ってのはこの地方のチャンピオンに次ぐ実力者のことね!」

 

綱吉は話を聞いて自分が戦ったサメハダーは青色、つまり本気の相棒を使ってなかったということを実感した。

 

「もっと強くならなきゃ…」

 

「まずは山を降りてフエンジム戦だよ。

 炎タイプのアスナ、新人ジムリーダーだけどすでに難関って言われてるんだけど、どう戦うつもりなの?」

 

「まぁ、見ててよ。

 こんなところで止まってられないんだから。」

 

そしてフエンジム、ジムの前には赤い髪の女性が待ち構えていた。

 

「沢田綱吉くんとオダマキキョウコちゃんね?

 あたしはアスナ、ここのジムリーダーよ。

 あなたたちのことはリョウヘイから聞いたわ。

 そろそろ来るころだと思って待ってたのよ。

 さっ、バトルしましょ!」

 

どうやらキョウコの兄、リョウヘイとは仲がいいらしい。

そして綱吉のジム戦がはじまった。

いつも通り2対2のバトル。

マグマックという溶岩とカタツムリをミックスしたポケモンを出してきた。

 

「なら、頼むよジャラ!」

 

綱吉はサンドのジャラでたいこうする。

マグマックはかえんほうしゃを放ってくるが、もともと素早いジャラは難なく避ける。

 

「ジャラ、穴を掘る!」

 

ジャラはモグラ叩きのモグラのように何箇所かから顔を出した後、マグマックの真下から飛び出し強烈な一撃を与えた。

マグマッグが戦闘不能になったがアスナは余裕の笑みを絶やさない。

 

「なかなか面白い戦いをするね

 期待以上だよ、この子に勝てるか楽しみだ!」

 

アスナの2匹目はコータス、カメのようなポケモンだった。

 

「コータス、のろいだ!」

 

コータスの動きが急に遅くなり、チャンスと思い仕掛ける。

ジャラの穴を掘るが決まって倒れる、かと思いきや

 

「そんな、あんまりきいてない⁈」

 

「のろいはね、早さの代わりにそれ以外の力をあげるのさ!

 さてこっちの番だ、コータス、穴の中にかえんほうしゃ!」

 

ジャラが開けた穴から炎が噴き出る。

当然中に潜っていたジャラは燃えながら飛び出てきた。

 

「決めるよ、オーバーヒート!」

 

炎タイプの大技オーバーヒート。

タイプ相性の有利を無視し、ジャラは戦闘不能に追い込まれた。

 

「ちなみに言っとくけど、水タイプのポケモンですらこの子に勝つのは難しいよ。

 リョウヘイから聞いたけど、キミジュプトルとワカシャモがいるんだって?

 悪いけどその子達じゃ、私には勝てないかなー。」

 

絶望的な一言にキョウコは戦慄する。

だが綱吉は目を伏せ、そして

 

 

瞳をオレンジに染めていた。

 

「アスナ、たしかにジャラはやられた。

 リョウヘイと戦った時の手持ちでは勝てないだろうな。

 あの時のままならな。

 見せてやるぞ、スピル!」

 

そして出てきた2匹目は、オレンジ色のビブラーバだった。

 

「色違いのビブラーバ⁈

 初めて見た…でも珍しいってだけじゃ勝てないよ!」

 

「スピル!

 ちょうおんぱからの、すなじごく!」

 

コータスは混乱し砂地獄に囚われる。

 

「まじ⁈

 コータス、オーバーヒートで吹き飛ばせ!」

 

しかし混乱して自分に向けた技を放つコータス。

そして…

 

「スピル、穴を掘るだ!」

 

渾身の穴を掘るがコータスに直撃、じわじわ削られていたところにとどめの一撃、流石にコータスも耐えれず戦闘不能となった。

 

「うはぁ、参った!

 いやぁ、あのリョウヘイがバカに褒めるからどんなパワー馬鹿かと思ったらめっちゃ戦略家じゃん。

 はい、ヒートバッジ。」

 

無事バッジを手に入れた綱吉。

キョウコも苦戦しながらもラグラージに進化するという奇跡を起こし無事バッジを手に入れた。

 

「これで四つ、ってことは次はセンリさんとのバトルか」

 

いよいよセンリとのバトルがはじまる…



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深海篇 プロローグ

ちょっと思いつきのストーリーやろうと思います。
他の方々みたいに毎話タイトル考えれるほど頭も良くないので、長編やらはこんな感じでいこうと思います。


「だっはっは、まじあいつ面白え。

 敵でも味方でもな、あんなびっくり人間そうそういねえ。

 にしてもイズミ、この堅苦しい格好まだしないといけねえのか?」

 

アクア団ボス、アオギリは上機嫌だった。

えんとつやまでの沢田綱吉とのバトル、本気ではないにしろ敗れたのだ。

本来であれば機嫌も急降下するはずだが、滅多にいない獲物を見つけた感覚、それがアオギリを上機嫌にした理由だ。

そのアオギリの服装はというと、滅多に見ないスーツ姿だ。

その人相の悪さからマフィアのドンと間違われても仕方がないレベルだ。

 

「我慢してくださいボス。

 高速船でミナモシティに戻るんですから、表の顔でパス取ってるんですよ。

 露骨にアクア団なんて名乗れないんですから。」

 

「では、次の団体様は…

 お、これはこれは。 

 海洋生物保護団体アクアの皆様ですね。

 いつもご活動拝見させていただいてます。

 どうぞ!おくつろぎください。」

 

船の受付に言われたのが表の顔である保護団体の名前だ。

そして様々な企業と提携を表では結び、裏ではアクア団としての活動の傍ら企業の依頼を受けて裏の仕事を行なっている。

 

「イズミ、ウシオとシズクのチームの進捗はどうなってる?」

 

船が出発してしばらく経ってからおもむろにアオギリが口にだしたのは他のアクア団幹部の名前だ。

現在はイズミが秘書兼務し、他の2人は別々の任務に当たっている。

 

「…あまり芳しくはないようです。

 2人とも部下だけ休ませて自分たちは休まなく働いています。」

 

「ふん、なら定時連絡があったらそれぞれに休みをくれてやれ。

 こんをつめてもどうにもならんこともある。」

 

アオギリは悪の組織のボスという点を除けば理想的な上司ではある。

部下の仕事の進捗を調整し休みも取らせる。

 

「わかりました…と、噂をすればシズクからですね。

 えーと、え⁈」

 

「はっ、どうしたイズミ。

 てめーらしくもねえ反応しやがって、愛の告白でもされたかぁ?」

 

部下の珍しい反応を見て面白がって茶化すアオギリ、しかし次の報告を聞いて血相が変わった。

 

「…シズクの部下が全員殺されました。

 おそらく対象に気づかれたようです。

 シズクもかなりの重傷です。

 そして報告では奴ら、マーレ・プロフォンド、mpの目的地は捨てられ船とのことです。」

 

「…そうか、奴らとうとうかつての同胞すら始末するのか。 

 しかし捨てられ船に一体なんのようが…奴らのアジトか?

 いや、まさか、やつら…魔神を起こす気か⁈」

 

「ボス!何か知ってるんですか?」

 

「ここじゃ話せねぇ。

 イズミ、アジトに戻り次第全員に緊急招集をかけろ!

 ウシオのチームには悪いが休みは延期だ。

 あと各員に手持ちのケアと武装を徹底させろ。

 最悪の場合、殺し合いになるかもしれん。」

 

アオギリの顔はかつて見たことがないほど張り詰めていた。

 

「元アクア団過激派集団にして特殊暗殺部隊、深海の名を持つやつらだ。

 今度こそ、おれの手でケジメをつけてやる。

 それこそ死ぬ気でな。」

 

アオギリは綱吉の口癖を無意識に呟いて遠くを見つめていた。




という感じでちょっと長い話やろうかなと思います。
導入部分だけで雰囲気感じてもらえると嬉しいです。
このタイミングでこの話を入れるのは書き始めた当初から考えていたのですが、なかなかまとまらなかったもので、のんびり書きますので暇な時に覗きに来てください。


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深海篇 1

初の長編ですのでお手柔らかにお願いします。


カイナシティまで戻ってきた綱吉たち。

そこにはハギが待っていた。

 

「おー綱吉くんはやかったのぅ。

 もう一週間はかかるかと思ってたがなぁ。

 わしなら近くに別荘みたいなもんがあるから気にせんでもよかったのに、たまにはデートでもしたらどうじゃ?ん?」

 

「待たせて申し訳ないなと思ってましたので、ジム戦だけしてきました!

 そ、そんな、で、で、で、デートだなんて…」

 

2人とも顔真っ赤です。

 

「んじゃいじりも終わったし帰るとするかい、っと。

 あぶねえあぶねぇ、ジジイは忘れっぽくていけねえや。」

 

「何かあったんですか?」

 

「なに、ちょっと用事を頼まれて欲しいのよ。

 昔ワシが乗ってた船にな、置き忘れてきたものがあってな。

 それをとってきて欲しいんじゃよ。

 これはツワブキの社長とワシからの頼みじゃ。」

 

ハギを待たせていたこともあるし、何より送り迎えをしてもらう恩もある。

 

「分かりました。

 その船はどこに泊まってるんですか?」

 

「海の真ん中じゃ」

 

「はぁ⁈まさか沈没船…」

 

「違う違う、まだ沈んではおらんよ。

 放置されてから長すぎて野生のポケモンの住処になっとってな。

 ワシみたいな弱いのだと入り口にも辿り着けんのじゃ。

 ちなみに奥にあるのはな、海図と古びた瓶というかツボというか、そんな感じなもんじゃ。

 んじゃ今から向かうから頼んじゃぞ?」

 

キョウコの話では綱吉の手持ちのアル、ヴェルももう一段階上の進化が存在する。

センリとの戦いでは今のままではかてないだろうというのがキョウコの見込みだ。

ついでに修行だと思えば悪くない提案だった。

 

いざ着いてみると

 

「…ハギさん、これ沈ん」

 

「ええ角度で浮いとるだろう!」

 

どうやらこのタイタニックの二の舞になりかけている船を沈みかけとは認めたくないのが船乗りとしてのプライドのようだ。

船についていた救命艇でどうにかなれそうなところを見つけた綱吉たちは恐る恐る船の甲板を目指した。

時刻は夕暮れ、ヤミカラスたちが飛び交うので、元の世界のゲームのバイオでハザードなのを思い出してしまう。

船頭までたどり着くとそこには…

 

鮮やかな夕焼けが輝いていた。

 

「ツナくん、ちょっと上で見てくる!」

 

「え、ちょ⁈」

慌てて追いかけるとキョウコは船頭の鉄板で両手を広げて立っていた。

夕陽が彼女の茶髪に映え、異国の姫君のように見えた。

それは一瞬で微妙にフラフラしているように見えて危なっかしくてしょうがないので綱吉はキョウコを後ろから抱きしめる形で支えた。

 

「やばいこれ、なんか恥ずかしいね。」

 

綱吉は高鳴る鼓動を誤魔化すように冗談めかしてみる。

しかしキョウコは

 

「…もうちょっとだけ、このまま…」

 

夕陽のせいだろうか、彼女の顔が赤く見えたのは。

 

そして日が暮れ、夜には満点の星空が広がる。

 

「遅いし、ここで野宿にして明日から本格的に探そうか。

 ハギさんも二日後に様子を見に来るって言ってたし。」

 

気をきかしたつもりのハギは近くのムロタウンで時間潰すそうだ。

 

「ちょっと怖いけど大丈夫だよ、ツナくんがきっと守ってくれるからね。」

 

寝る前にキョウコはそう呟いた。やっぱり廃墟同然の場所にいるというのは当然不安なのだろう。

 

「キョウコ、前にも言ったけど君だけは守ってみせるよ。

 おれの命に変えても。」

 

「もぅ〜、ツナくんずるい!

 もう寝る!」

 

顔を真っ赤にしながら反対側を向いて寝袋で寝るキョウコ。

自分の言ったことの恥ずかしさを今更ながら思い出して赤面する綱吉。

その夜みた夢は最悪だった。

10年後に飛ばされて最初に10年後の京子に会う夢だった。

 

「怖いよ、ツッくん」

 

守らなければ、どんなことになっても彼女だけは!

そして死ぬ気モードになって過去からきた京子を助けて目が覚めた。

 

「…なんで今更あんな夢…」

 

あたりを見回すとちょうど夜明けの時間帯だった。

日の出を見たら喜ぶかなとキョウコを起こそうとした。

出来なかった。

なぜなら横にいたはずのキョウコは寝袋から姿を消していた。

もしかしてトイレとか…そんな期待を裏切るのは超直感だ。

さっきから頭の中で鳴り響く。

この船にいる何かに連れ去られたと。

キョウコの3匹の手持ちはボールに入ったままベルトにセットされていた。

 

「やばい、やばいやばいやばい!

 おれは武器もない、もし何かあってもおれ自身が戦えない!

 もしもの時は…みんな!力を貸してくれ!」

自分の手持ちが頷くのを感じた。

 

 

 

「ここ…どこ?

 なんで私、縛られてる⁈

 ズーちゃんたちは…いないよね。」

目を覚ましたキョウコ。

そこはどこまでも広がる暗闇の中だった。

 



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深海篇2

ここはアクア団のアジト。

全員が表、裏と関わらず働いているため全員に緊急招集がかかるなど前代未聞の事態だ。

そして壇上にはアクア団のボスアオギリが立っていた。

 

「野郎ども、緊急事態だ。

 かつてアクア団の中でも過激派と呼ばれていた特殊暗殺部隊

 マーレ・プロファンド、通称mpのことは知ってるな?

 知らないやつはこのあとすぐ調べろぉ!

 そいつらは過激派と呼べば聞こえはいいが、カイオーガを使って世界を海の底に沈めこの星をリセットするとかいう破滅主義者の集まりだ。

 そいつらが動き出した。

 そんでもって、おれらの同志5名が殺された。

 奴ら、とうとう一線を越えやがったんだ。

 そして奴らの次なる目的は、捨てられ船に潜むと噂される魔神を目覚めさせ、魔人の力でカイオーガを呼び覚まさせると思われる。

 一見問題ないように思えるが、残念なことにまだ制御の手段が見つかってねぇ。 

 つまり、奴らは呼び出したカイオーガを暴走させ世界を滅ぼすことにある。

 元々あいつらはおれらと同じアクア団だ。

 元だろうが身内は身内!

 落とし前はおれらでつけるぞ、いいなテメェら!」

 

アオギリの演説に士気をあげる団員たち。

 

「悪いなあウシオ。

 せっかく休みをやるつもりだったんだが…」

 

「気にすんな兄貴。

 おれはあんたに惚れ込み、ついていくと決めたんだ。

 この命はあんたに助けてもらったときからあんたの物だ。

 遠慮なく使ってくれ。」

 

「恩にきるぜ。

 これが終わったらしばらく休みをくれてやる。

 待ってる家族がいるんだ、死ぬんじゃねえぞ。」

 

ウシオは幹部で唯一の家族もちだ。

自分の仕事も妻や娘には秘密にしている。

そして娘が生まれた時にアオギリには組織を抜けろと言われていた。

ウシオは幹部の中でも特に忠誠心の熱い男だ。

家族も、兄貴も部下も守る。

それが幹部のなかでボスの右腕と言われる所以であり、組織内で絶対の信頼を寄せられる理由だった。

 

「mp、お前らだけはゆるさねぇ。

 そして、兄貴の手も汚させねぇ。

 お前らのケジメはおれがとる。」

 

ウシオが密かに決意した頃、少し離れたボスの執務室では…

 

「なんて、ウシオのやつは考えてるんだろうなぁ。

 イズミ、元mpのお前さんだ。

 お前さんらの部隊で先行して、やれるのなら構わん、殺せ。

 ウシオに、自分の弟を殺させるなよ。」

 

「かしこまりましたボス。

 元mpの副隊長として隊長は、いえ、ワダツミとウシオの弟カイリは私が葬ります。」

 

「頼むぜ。

 しかしこの一件、なぜか沢田と会いそうな気がするんだよなぁ」

 

 




短めですが、アクア団もマフィアみたいなもんなんでこんな感じかなという妄想です。


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深海篇 3

「イズミ隊諸君、我々は他の団員に先行してmpの掃討作戦を行う。

 相手は少数であるがかつてはアクア団の特殊暗殺部隊として名を馳せた猛者だ。

 油断することは許さん。」

 

アクア団幹部イズミは部下たちに檄を飛ばす。

普段はボスの秘書として活動しているが、そのイズミは元mpの副隊長、つまり現在暗殺などの汚れ仕事はイズミの部隊の仕事となる。

そして普段はイズミが現場で指揮をとり部隊全員での出動など過去ありえない事であった。

それほどmpという元同志は強敵ということがわかった。

 

「隊長、今回総出動となっていますし、ボスの演説でミッションの重要性は把握しているつもりですが、敵のデータを教えていただけませんか。

 皆が最も疑問に感じているのは我々の部隊だけ手持ちポケモンを全て持たずに、本来の武器いかんを問わず銃火器を携行する指示が出たことなのですから。」

 

イズミの部隊の副官、ミズキが疑問を口にする。

さすが隊一の頭脳と呼ばれる才女と言われるだけはあるなとイズミは感心していた。

 

「そうね、まず手持ちポケモンを連れていかないことについては連れて行っても意味がないからよ。

 mpの術士カイリは機械などの動作を封じる術があるのよ、よってモンスターボールが使えないの。

 ポケモン出してぞろぞろ行ったら目立って暗殺なんてできないわ。

 そして全員に銃火器を携行させているのは、言い方は悪いけど今回近接戦闘が意味をなさないからよ。

 何人かは、ナイフや拳を武器にしているのは知っているわ。

 だけどね、ボスのワダツミの剣を前にしては網にかかりに行く魚のようなものよ。

 あいつの剣は腕が立つなんてなまっちょろいもんじゃないの。

 これは元副隊長として断言するけどこの地方にあいつに勝てる剣士はいないわ。」

 

何人かの部下は戦慄する。

イズミ自身が相当な剣の使い手と知っているし、彼女は自他共に評価には厳しいため過大評価ではないということが分かったからだ。

自分たちが殺しにいく相手は化け物、最悪やられるという言葉が全員の頭をよぎっていた。

そんな緊張感のなか、ボスのアオギリが入ってきた。

 

「おうお前ら、隊長から話は聞いたか❔

 今回の任務は比喩でもなんでもなく命懸けだ。

 ただ死ぬことは許さん。

 全員で生きて帰ってこい、これは命令だ。」

 

ボスの檄に隊員たちは奮い立つ。

そんな時イズミは以前からの疑問をぶつけてみた。

 

「ボス、彼らは何をする気なんですか❔

 カイオーガを呼び出すのにその魔人とやらの力を使うということでしたが、いったいその魔人とはなんなのですか。」

 

「そうかイズミにはまだ話してなかったな。

 この場にいる奴らにも行っとかねーとな。

 世の中には幻のポケモンと呼ばれる連中がいる、全てのポケモンの祖先ミュウ、ジョウトの時を渡るセレビイとかな。

 こいつもその分類になる。

 奴の名はフーパ、光輪の魔神と呼ばれ捨てられ船の奥、もはや海の底と呼んでも差し支えない場所に封印された怪物だ。

 フーパのやべえところはな、その輪っかをありとあらゆる空間に繋いでしまうことなのさ。

 伝承によれば奴が悪戯で伝説のポケモンを呼び出し、それに怒り狂った伝説のポケモンたちによっていくつかの都市が滅びたそうだ。

 そして自身の故郷の砂漠の都市をも滅したやつはいつしか世界を流れ何かしらの理由で封じられた。

 その封印した道具に酷似したものが捨てられ船の調査法報告書の写真にあったが俺は手を出さなかったんだ。

 伝承通りなら、やつは気分屋で制御できなければ、この地方が滅びると思ったからな。

 だからその報告書も俺の私室に保管して他のものの目に触れないようにしていたんだが、その調査に行ったのがワダツミだからな。

 どこかでフーパの話を聞いたんだろうな。

 あいつらの性格上無駄なことはしねえ。

 あの船に向かう理由なんざ他に見つからねえよ。」

 

「ボス、あの人は敵に容赦のない人ではありましたが、破滅主義者ではありませんでした。

 どうして、あの人は変わってしまったんでしょうか?」

 

イズミは副隊長として間近でみていたのに彼らを止めることができなかったことをいまだに後悔していた。

 

「さあな。

 俺もあいつのことはよく知っているつもりだったんだがな。

 おそらく、お前以外のmpメンバーで当たらせたカイオーガに関する調査ミッション、あの時何かがあったんだ。

 じゃなきゃお前以外のリーダーを含めたmpメンバー3人が全員いなくなるなんてあり得ねえ。

 しかもそのうち1人は気が狂って死んじまってんだからな。」

 

アオギリはそういうと作戦室を出て行った。

 

『ワダツミ、カイリ。

 あんたらには聞きたいことが山ほどあるんだ。

 あんたらはあたしが必ず...』

 

そしてイズミの部隊は目的地に向けて出発した。

 

 

 




更新遅くてすみません
スランプ気味です。


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深海篇4

「キョーコ、いたら返事して!」

 

暗い船内に綱吉の声が響く。

綱吉の光源はペンライトしかないがそれでも十分に明るいと思えるほど船内には陽の光が入らなかった。

万が一転落の可能性を考慮しキョーコのズーちゃんと自身のネロに船外を捜索させているが、ハギからの依頼もあるためどのみち船内の詮索はしなくてはならないのだ。

 

『こっちに来る前にやってたのが豪華客船のゾンビ退治ゲームなんだよな..

 まじ怖すぎだろこの船|

 ヒィィ、ほんとは行きたくない』

 

大事なことなので言っておきますがこの男、世界最大規模のマフィアのボスになる予定です。

そして各客室を探すが何一つ手がかりは得られなかった。

思い切って一つ下のフロアの客室を開けてみると

 

「え、何これ?」

 

何かが暴れたような爪痕が残っていた。

所々ボロボロになっており床まで穴が空いている有り様だ。

しかしかろうじて残っている机の上にあったのは

 

「あ、これが例の地図かな?

 とりあえず持って帰ろう。」

 

綱吉はポーチの内側に地図をしまうと、急に客室の扉が開いた。

 

「え」

 

「これは驚きましたねぇ。

 この捨てられ船に人がいるとは。

 何か探し物ですか?」

 

突然現れたのは黒地に青のラインが所々に入ったコートを纏った2人組だった。

綱吉に話しかけてきたのは180センチくらいの紺色の髪のイケメンだった。

もう1人も170センチくらいの男だとは思うが目深くフードをかぶっているためその素顔はわからなかった。

 

「えぇ、旅の仲間と探検にきたんですが逸れちゃいまして。

 俺と同じ歳くらいの女の子ってみてないですか?

 あ、俺は沢田綱吉と言います。」

 

「これは丁寧にどうも。

 僕はワダツミ、横にいる彼はカイリでこの船を研究対象にしているものです。

 先ほど船に着いたばかりなのですがあなた以外に人は見ていませんね。」

 

「そうですか…

 親切にどうもありがとうございます。」

 

「もし良ければ我々も探すのを手伝いましょうか?

 1人で探すよりも断然効率がいいと思いますので。」

 

そう言って捜索に助力を申し出て右手をさしだすワダツミ。

その手を握ろうとした綱吉だが直後に超直感が警報を鳴らす。

 

『なんだこの人の感じ…

 嫌な、そう初めて骸と出会った時のような違和感がする。

 うまく言えないけど、この人は危険だ。』

 

「ありがとうございます。

 でもお仕事の邪魔しちゃ悪いし、もう少し頑張って探してみますね。」

 

そう言って2人の横をすり抜けようとした瞬間、超直感が最大レベルの警報を鳴らし横に飛ばないと死ぬことを直感したため迷わず飛んだ。

そして、入ってきた扉の綱吉の首くらいの位置が切れた。

 

「な⁈」

 

「ほう、今のを避けますか。

 人は見かけにはよりませんね。」

 

そう言ってさっきと変わらない微笑みを浮かべるワダツミの左手には日本刀が握られていた。

 

「君はもしかしてこちら側の人間ですか?

 ならばちゃんとした自己紹介をしなくてはなりませんかね?

 元アクア団特殊暗殺部隊マーレ・プロフォンド隊長のワダツミといえばお分かりになりますかね?

 おや、その表情では何も知らないようですね。」

 

綱吉は混乱していた。

先ほどまでの好青年ぶりはなりを潜め冷たい殺気だけを出す殺し屋がそこにいたからだ。

 

「元?

 アオギリの命令で俺を襲っている訳じゃないのか?」

 

「ほう、アオギリさんと因縁があるのですか。

 私と彼は元同志、それだけの関係です。

 さて、正体を明かしてしまった以上死んでもらうしかありませんね。」

 

一度は避けれたものの真正面から二度目の攻撃を避ける自信はない。

目の前の刀は相当にキレる刀だというのがかろうじて分かった綱吉は対抗策を頭の中で考える。

 

『ヴェルのリーフブレードなら受け止められるか…

 運が良ければ相手の刀を弾けるかもしれない…』

 

モンスターボールに手をかける綱吉だが

 

「ボールが起動しない⁈なんで⁈」

 

モンスタボールはスイッチを押しても小さいままだ。

 

「あぁ、手持ちに頼ろうとしても無駄ですよ。

 横にいるカイリにボールが使えない結界を張らせていますので。

 じゃあ、これでさよならですね」

 

 

そういうとワダツミは予備動作などなく刀を横凪に振るった。

そして綱吉は

 

「ぐぅぁぁl!」

 

吹き飛ばされ床の穴へと落ちていき水飛沫の音が遠くで聞こえた。

 

「さすがです隊長、相変わらず剣の切れはすさまじいですね。」

 

後ろに控えていたカイリが賞賛を送る。

 

「いえ、どうにも…

 しかし彼は身を守る道具はなかったはずなのにあの手応えはなんなのですかね?」

 

そう言いながら綱吉の落ちた穴を覗き込むワダツミ。

 

「とはいえ彼が落ちた先は暗すぎて見えませんが助からないでしょう。

 この船は半分浸水していますから水面に叩きつけられたようですが、もう助かりませんね。

 さて、不確定要素の排除は終わりましたので魔神様を探すとしましょう。

 あぁ、まもなくですよ…!

 この星は、真に美しい水の星へと変わるのです!」

 

そう言って歓喜に震えるワダツミの瞳は深い蒼に輝いていた。




おきにい入り登録してくださった方々ありがとうございます。
ワダツミたちのコートはイメージ的に10年後ヴァリアーのものです。
ワダツミのヴィジュアルは山本とザンザスを足して二で割ったような感じです。
こういう時イラストが描けないのが残念でなりません。


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深海篇 5

冷たい、どこまでも沈めそうな暗闇。

遠くから声が聞こえる。

あぁ、そうだ俺はあの子を探して…

 

「ツナくん?」

 

キョウコの声で目が覚めたが目の前にいたのは

 

「赤鬼ぃ⁈」

 

頭の両脇にツノの生えた生き物が目の前にいた。

 

「あ、目が覚めたんだね。

 半日も寝てたから流石に心配したよ⁈」

 

キョウコの慌てぶりからすると本当に心配してくれたらしい。

 

「あ、この子はフーパ君。

 この船に住んでるポケモンなんだって。

 この子すごいんだよ、輪っかでいろんな空間を繋げれるんだって!」

 

「フーパすごいだろ!

 ツナ褒めてもいいゾ!」

 

「えぇぇえ!ポケモンなのっていうか喋るの⁈

 というかなんて俺パンツ一丁⁈」

 

いろんなことで驚きすぎて疑問があふれだすが自分が半裸の状況が一番理解できない綱吉。

 

「えっとね。

 この子は何百年も生きているから言葉覚えたんだって。

 それから私がここにいるのは寝ぼけて歩いているときにフーパくんが寝ぼけて繋げた空間がたまたま私の足元だったらしくて、落ちちゃったみたい。

 その後輪っかで手を縛られたみたいになってだいぶ大変だったんだよ。

 それでツナくんそこの浸水しているところから流れ着いてたから服濡れてて…剥いちゃった…」

 

てへぺろ!

 

「いやてへぺろじゃないから、女の子が剥いたとか言っちゃいけません。」

 

俺お母さんかよと内心突っ込む綱吉…

 

服は乾いたようで横に畳まれていたので着替えた。

 

「そういえばここ電気が通っているんだね。

 照明のおかげで普通に見えるのってかなりありがたいや。」

 

「うん、フーパくんがいうには自家発電システムが生きているからつくらしいよ。」

 

キョウコの説明に納得する綱吉。

 

「ツナ、フーパと遊べ!」

 

こいつランボみたいだなと思いつつも慣れているため一緒にあそぶ綱吉。

それを微笑ましげに眺めたキョウコは

 

「ちょっと奥に水汲めるところがあるから行ってくるね。」

 

と言って奥へ歩いて行った。

 

「なぁフーパ、この船にはどのくらいいるんだ?」

 

「50年くらい住んでる。

 この船、動いてる時からいた。

 フーパここからでれない、封印されてる。

 でもいい、フーパ封印解けたら大事なもの滅ぼしてしまう。

 それならこのままでいい。」

 

フーパの発言に驚く綱吉。

 

「でもフーパ寂しくない。

 友達いる。

 キョウコとツナも友達。

 離れていても、ずっと。

 だからツナにこれあげる。」

 

差し出されたのは金色の腕輪だった。

 

「これフーパの力込めたもの。

 ツナの強い思いに反応してどこにあるものでもお取り寄せできる。

 でもいっかいだけ。」

 

「ありがとうフーパ。

 大事にするよ。

 封印が解けたらどうなるの?」

 

綱吉はもらった腕輪を右腕に嵌めながら聴いたみた。

 

「本当の姿戻る。

 フーパもっと大きい。

 でも一緒に封じた邪悪な心蘇る。

 封印される前フーパ色んなところで力使った。

 大事なもの全部死んだ。

 だからこのままでいい。」

 

無理に笑顔を見せるフーパに心が痛む綱吉。

 

「なぁフー」

 

「おや、こんなところでまた会えるとは思いませんでしたよ。

 沢田綱吉くん。

 もしや一緒にいるのは魔神様ですか。

 あの時殺してなかったことを神に感謝したいくらいですねぇ。」

 

「ワダツミ…!

 魔神様ってフーパのことか?」

 

突然現れたワダツミに警戒心を高める綱吉。

 

「おや、ご存知ありませんでしたか。

 そこにいるのは光輪の魔神フーパ。

 かつてその力でいくつかの都市を滅ぼしたとの伝承を残す幻の存在。

 そして、我らが悲願を達成するための御神体です。」

 

「悲願?

 フーパに何をさせる気なんだ⁈」

 

綱吉はフーパを背に庇いながら問う。

 

「ふふ、伝説のポケモンカイオーガ。

 かの神を召喚することこそが我が悲願の第一歩です。」

 

「カイオーガを捕まえて何をする気だ⁈」

 

そこでワダツミは微笑むのをやめた。

そして目が蒼く輝き出した。

 

「勘違いしているようですが、捕まえる気はありません。

 ただ眠りを妨げカイオーガの怒りを買い、この世界を海の底に沈め美しい青い星を作り上げる。

 それが私たちの目的です。」

 

「な⁈

 そんなみんな死んじゃうじゃないか⁈」

 

「えぇ、それが何か?

 世界は一度リセットされた方がいいんです。

 そして美しい紺碧の海の中で死ねるのです、こんな美しい終わり方他にはないでしょう?」

 

当然のことの様に話すワダツミ、正直イカれている。

 

「さてフーパ様、こちらにきていただきましょうか。

 あなたの封印を解かねば流石に呼べますまい。」

 

「ふざけんな!

 フーパは道具じゃない!

 お前らなんかに渡すわけないだろ!」

 

叫ぶ綱吉だがワダツミの声は冷静に強要してくる。

 

「図に乗るなよ若造が。

 確か君、連れの女の子を探していましたよね。

 1人で歩かすのは良くないですね。」

 

「そんな…まさか」

 

もう1人のカイリが気絶したキョウコを抱き抱えてやってくる。

 

「君が私たちに勝てるわけがないんですがね、大人しくフーパ様に儀式に参加していただける様人質を取りました。

 さあきていただけますね。」

 

「ツナ、もういい。

 キョウコ助ける。

 フーパ最後にツナとキョウコ出会えてよかった。」

 

そう言ってワダツミたちのところへ行くフーパ。

 

「待て、フーパ!」

 

呼び止める綱吉に

 

「そういえば私、食べ残しはしないタイプなんですよね。」

 

とワダツミの蹴りが鳩尾に刺さる。

 

「がはぁ」

 

綱吉は自分が流れ着いた浸水ポイントギリギリのところまで吹き飛ばされる。

 

「君がどうやって私の剣から逃げたのか、あの手応えの正体が知りたかったんですが開花ぶりだった様ですね。

 あちらで先にゆっくりしてください。」

ワダツミはその場から動かなかったが腰元の刀が青く輝く。

そしてワダツミが抜刀すると、

その軌跡に沿って床が抉れ一瞬のうちに綱吉は浸水している海面へ叩きつけられた。

綱吉がいた場所は衝撃の強さを物語るように崩落していた。

 

「やれやれ、私としたことから熱くなりすぎましたね。

 こんな沈没寸前の船で力技を使うと我々も海の藻屑になりそうだ。

 さてあそこまで吹き飛べば、生死の確認はできませんが儀式の邪魔はされないでしょう。

 さようなら、沢田綱吉くん。」

 

そう言い残してワダツミはフーパを掴み船の奥に向かった。

 

綱吉は沈んでいた。

ワダツミの攻撃で2回とも死なずに済んだのはとっさにリングの炎で斬撃の威力を弱めたからだ。

伊達に修羅場は潜っていないが、綱吉の意識は朦朧としていた。

そして時刻は夜中、海水が綱吉の体温を奪っていく。

 

『流石にもうダメだ…』

 

どこに泳げばいいのかもわからない。

そんな時海面の方から一瞬光が漏れ、右腕の腕輪が鈍く輝く。

 

『ツナの強い思いに反応してどんなものでもお取り寄せできる。

 でも一回だけ。』

 

思い出すフーパの言葉。

 

『俺はまだ…死ねない。

 死ぬ気でやればどうにかできるかもしれない…!

 どうかフーパ、力を貸してくれ!』

 

そう願うと腕輪が輝きだし、綱吉の右手はその場から消えた。

意識が遠くなっていく綱吉がその場に存在しなくなった右手のことに気づかず、手に掴んだものは綱吉の手に馴染んだものだった。

 

『これって…!』

 

 

捨てられ船の奥にある祭壇。

その中心部には縦長の壺があり、それを中心に魔法陣が描かれていた。

 

「さてフーパ様、今この戒めの壺から解放して差し上げますよ。

 おっと妙な気は起こさないでくださいね。

 カイオーガを呼び出せばこの娘は返しましょう。」

 

フーパはキョウコを盾にされ手が出せずにいた。

カイオーガを呼び出しキョウコを連れて逃げることしか考えられなかった。

綱吉のためにもキョウコだ毛でも助けねばという思いがあったからだ。

キョウコはカイリの後ろで寝かされていた。

 

「ではカイリ、儀式を」

 

「待て!!」

 

扉が開き入ってきたのは死んだはずの綱吉だった。

 

「バカな、なぜお前が生きている⁉︎

 それもこんな短時間で水の中からどうやって。」

 

さすがのワダツミとカイリも動揺が隠せていない。

だから気がつかなかった。

綱吉がさっきまで持っていなかったヘッドホンと27と書かれた手袋を身につけていることに。

綱吉は手に持った錠剤を飲み込む。

そして綱吉の額と拳が燃え上がる。

 

「な⁈」

 

カイリから驚きの声が漏れると同時に綱吉の手刀がカイリの延髄に直撃しその場に倒れ込むと同時にキョウコとフーパを遠くへ移動させる。

動揺していたワダツミは綱吉の動きが捉えられなかった。

そして振り向いた綱吉の瞳はオレンジ色に染まっていた。

 

「ワダツミ、お前を倒さなければ死んでも死にきれねえ!」




見返してみると誤字多いですね。
気づき次第修正していますがご容赦を!


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深海篇 6

色々考えていたら遅くなりました。
頭の中で悩むと延々ループ指定しまいますね。


『ありえない…カイリは腐っても暗殺者だぞ⁈

 なぜ、なぜ⁈』

 

ワダツミの思考はまとまらなかった。

自分が殺したはずの少年が現れ、部下を一瞬で倒してしまったこともそうだが、その目の前の少年が

 

『何より…あの炎はなんだ?

 奴はなぜ平気でいられる?』

 

綱吉の額と両手にまとう炎、何よりも自分の知る少年の雰囲気との違いが疑問を加速させていた。

 

「どうした、暗殺部隊の隊長がこの程度で驚いているんじゃ拍子抜けだぜ。」

 

綱吉は冷静だった。

同時にワダツミは未来で戦った幻騎士クラスの実力を持っていることを直感していたことから相手の動きを伺っていた。

 

「はぁ、君には驚かされてばかりですよ。

 殺したと思えばあっさり出て来て、私の部下を瞬殺してしまった。

 おまけに何ですかその炎は。

 君は実はポケモンだったりするんですかね?」

 

剣士は冷静さを欠いたら負ける。

これはワダツミの剣の師匠の口癖である。

ワダツミは自身の冷静さを取り戻しつつ、相手の正体を探りに行く。

 

「俺は人間だが、この炎は俺から出ているものだ。

 これ以上は教えてやらないぜ。」

 

「おや、ケチですね。

 では君をなぶった後に答えを聞きましょうかね。」

 

ワダツミは言いながら刀を抜いた

その刀身自体が青く鈍い輝きを放っていた。

しかしその後すぐ綱吉の表情は一変した。

刀身が青い光をまとい出したからだ。

 

「な、雨の炎⁈」

 

「雨の炎?

 あぁ、刀の光のことですか?

 私は教えてあげますが、この刀で本気で切ると決めた相手を前にするとこの光を纏うんですよ。

 この刀、銘を始海牙(しかいが)と言いますがこれは特殊な素材で作っていましてね、カイオーガのことを調べる段階で見つけた藍色の勾玉という宝具です。

 その勾玉を手にいれたときに私は出会ったのですよ、神にね。」

 

ワダツミは一瞬全身に赤いラインのような光を浮かべた。

 

「はぁ、儀式を邪魔したことについては不問にいたしましょう。

 君を切って、その血を我が神と魔神に対する供物としましょう!」

 

上段から振り上げた刀をグローブの甲で受け止める綱吉。

そのまま2、3度拳と刀の応酬が続く。

 

「やはり君、一般人じゃないですね!

 私とこれだけ打ち合えるとは、久しぶりに切りがいのある獲物だ。」

 

そういうとワダツミは低く踏み込んで右手に持った刀を下から切り上げた。

とっさにかわす綱吉だが振り上げたワダツミの右手に刀はなく

 

「な、がぁ⁈」

 

左手の刀が綱吉を捉えるが間一髪のところでグローブで受け止めるが壁際まで吹き飛ばされる。

 

『何だこの技…これじゃまるで…』

 

綱吉は先ほどのワダツミの技について最悪の想像をしてしまう。

綱吉は迷いを振り切るように拳に炎を灯し、逆噴射して一気にワダツミとの距離を詰めて行く。

しかし途端にワダツミのいた場所に水柱が何本も上がり、綱吉の拳は空を切る。

どころか水をかぶった瞬間に浅い斬撃が体をかすめた。

そして急に体が重くなりその場でひざまずく。

 

「あぁ、言い忘れましたがこの光は実態の水と同じようにできるんですよ。

 僕の扱う技とこの刀の相性は抜群でしてね。

 君に万に一つも勝ち目はないですよ。」

 

体にかかる負荷に苦戦する綱吉に告げるワダツミ。

しかし綱吉の思考は別の問題を捉えていた。

 

『そんな…ありえない!

 だってこの技を使える奴がいるなんて……』

 

そして綱吉の直感は最悪の形で裏付けられることとなる。

 

「そうだ、裏の名前だけは名乗りましたが本気であなたを切ると決めた以上剣士として名乗らないといけないのがうちの流派のしきたりでしてね。」

 

やめろ、聞きたくない!

そんな綱吉の願いは無残にも砕かれた。

 

「僕はワダツミ。

 時雨蒼燕流の10代目の継承者です。」

 

 



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深海篇7

遅筆で申し訳ないです
もう何話かで終わりますので気長にお待ちください


時雨蒼燕流

それは戦乱の世に多くの人間を葬ってきた暗殺剣。

その流派は常に流派を越えようとすることから完全無欠最強無敵の剣と謳われ、事実雨の守護者山本武は別の継承者を倒した剣士を新たな技を生み出して倒したほどだ。

綱吉が最もよく知り、また頼りにしている流派の名を目の前の敵が口にしたのだ。

自分はその継承者であると。

異世界の剣術の継承者が敵として現れるなどイレギュラーすぎる。

 

「さて、流派を名乗る以上はあなたをいきてかえすつもりはありません。

 死んでいただきましょうか。」

 

そしてワダツミは刀を鞘に納め、腰だめに構える。

綱吉は気づいた。

これは山本の得意技時雨蒼燕流八の型

篠突く雨

相手の懐に入り込み上方に鋭い斬撃を放つ技だ。

なら対応策は一つ低空飛行で距離を取ること、グローブから炎の逆噴射で距離を取る綱吉。

しかし

 

「そんな逃げ方でいいんですか?

 なら、こちらも

 時雨蒼燕流攻式八の型…

 

 秋雨!」

 

ワダツミは5メートル以上離れていた綱吉の後ろに刀を振り抜いた姿勢で立っていた。

炎でガードしていたもののダメージそのものは防ぎきれなかった。

 

『秋、雨?

 あの構えは篠突く雨のはず…

 それにその名前どこかで…?』

 

そこで気づいた綱吉

それはボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアーとのボンゴレ継承者の座を賭けたリング争奪戦の雨の守護者戦で、敵の守護者スペルビ・スクアーロの言葉だった。

山本の父とは別の継承者が生み出した型の名前。

それこそが、秋雨…

 

「篠突く雨?

 そんな型はありませんよ。

 ですが君は五月雨や逆巻く雨を知っていた…

 なんとも不思議な話ですが…関係ありませんね。

 君は危険だ、残りの型で消えてもらいましょうかね。」

 

そういって牙突のような構えをとるワダツミ。

 

「攻式9の型、春雨」

 

綱吉は次の瞬間10ヶ所以上から血を流し倒れていた。

 

「秋雨は必殺の居合い斬りで、威力が高い。

 しかしそれもわずかと言えガードしてしまう君を倒しきれないならば、威力は低いが最速で連撃の突きを放つ秋雨で散ってもらう方が効果的でしたね。」

 

血まみれで倒れる綱吉を見下ろしながら淡々と語るワダツミ。

そこには勝利の喜びもない。

自らの責務を果たしたかのような当たり前とすら言いかねない表情だった。

 

「さて、邪魔者も消えましたし。

 魔神様、儀式へ戻りましょうか…

 おい、女。

 魔神様をこちらに渡せ。」

 

振り返ったワダツミが見たのは恐怖で話せないもののフーパを渡すまいと必死に抱きしめるキョウコの姿だった。

 

「い、いやよ!

 ツナくんが体を張ったんだもの、何もせずあなたにフーパくんを渡したらそれこそ死んでも死に切れないわ!」

 

「なら、刀の錆となれ。」

 

上段から一気に刀を振り下ろすワダツミ。

覚悟を決めて目を瞑るキョウコ。

次の瞬間痛みと血飛沫が…

 

 

いつまでもやってこなかった。

 

「えっ?」

 

そこには体を震わせながらグローブで刀を受け止める綱吉が立っていた。

 

「ツナ君、やめて!

 それ以上戦ったらほんとに…」

 

「キョウコ、世界が変わってもいつだって俺が守るよ。

 俺の命に変えても!」

 

綱吉の覚悟に呼応するように純度と出力が増す死ぬ気の炎。

 

「あぁ、やっぱり君はここで殺します。

 秋雨と春雨を受けて生きている人間は君が初めてだ。

 だから、私の型で葬って差し上げますよ。

 光栄に思ってください、この技を見せるのはあなたが初めてです。」

 

そう言って刀身に左手を添えるワダツミ。

始海牙から青いオーラが溢れ出し超圧縮され9つの水の玉が周囲に浮かぶ。

 

『多分これがやつの奥義…

 なら、アレしかない!』

 

「オペレーションX」

 

そう呟くと綱吉は後方に右手の炎を逆噴射し左手の握り拳を構える。

 

「わかりますよ、それがあなたの最大の奥義ですね?

 それでこそ斬り甲斐があるというものです。

 行きますよ!

 終の型、根源の雨・波動斬り!」

 

ワダツミは水の玉を高速で突き、袈裟がにその場で刀を振り抜くとそれぞれの水の玉から鋭い斬撃が飛び出し最後の一太刀と合わさって巨大な圧縮された水の斬撃になる。

それに対して綱吉も

 

「Xバーナー!」

 

左拳に貯めた高圧の死ぬ気の炎を放つ

二つの攻撃がぶつかり合って…

その場を光が包み込んだ。

 

 

 

気がつくと綱吉は暗い洞窟の中にいた。

死ぬ気モードが解けていたが、直感でこれは夢だと感じる。

 

『お前さんが今代の時の王の眷属か。

 なるほど、前任者とそっくりだな。

 あいつ同様、強い力を秘めてるのがわかる。』

 

声の方を見るとデカくて青いシャチがいた。

 

「えっ!

 魚がしゃべった…」

 

『誰が魚だ!

 我が名はカイオーガ、海と雨を司る王だ!』

 

 

 

 



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深海篇 終

「カイオーガって、あのアオギリがいってたやつー⁈」

 

夢の中に出てきた伝説のポケモン、突然の出来事に処理の追いつかない綱吉。

 

『かっかっかっ、ワシは刀の材料に宿っていた力の残留思念みたいなもんじゃ。

 本体はまだ海の底で眠っとるよ。

 しかしお主、ワダツミに勝つとはやるのぉ。

 彼奴と真っ向でやれるやつがおるとはな。』

 

「ワダツミはあなたを甦らせて暴れさせるのが目的って言ってますけどそんなことできるんですか?」

 

綱吉は思い切って聞いてみた。

 

『まぁ、ホウエンは沈むだろうなぁ。

 わしは力を発するだけで災害的な雨を降らせるからのぅ、暴走すれば将来的には無理じゃないのう。 

 じゃから起こすでないぞ。』

 

何事もないように恐ろしいことを口にする伝説の存在。

 

『ワダツミもええ子なんやけどなぁ。

 ワシの力で破滅主義に傾いてしもうたからな。

 坊主、悪りぃが刀折ってくれ。 

 ついでに浄化してワシの思念消しといてくれや。

 お前さんの炎ならできるじゃろ?』

 

「えぇ、ワダツミそんな感じなの⁈

 てか、なんで俺の炎のこと知って…いや、それよりけしちゃっていいんですか?」

 

綱吉は殺し、滅ぼし、消すことを嫌う。

思念とはいえ躊躇いも生まれる。

 

『構わんぞ。

 あの子を暴走させ取るのはグラードン憎いと思うとる負の感情じゃ。

 別に消したところでわしは死んだらさんから安心せい。

 それでお前の力のことは…おっと、時間じゃ。

 頼むぞ、時の眷属、大空の御子よ…』

 

そうして夢は醒めていく…

 

 

 

目を覚ますとXバーナーに焼かれたワダツミがかろうじて立っていた。

 

「この、世界を…美しい海に」

 

うわごとのように呟くワダツミに近づき刀に手を添え大空の炎で浄化していく。

刀を覆うオーラを浄化し切ると手刀で刀を叩きおった。

 

「これで、カイオーガから頼まれたことは全て…な⁈」

 

折れた刀から青黒い水が浮かび上がり凶悪な魚の形を作り出す。

 

「浄化しきれない負の感情か。

 水を纏っているならこっちのもんだ。

 死ぬ気の零地点突破・初代エディション」

 

綱吉が触れた水の魚は徐々に凍りつき、地面に落ちて砕け散った。

その時部屋の外から足音が聞こえ、アクア団のイズミが入ってくる。

 

「な、アンタは沢田綱吉⁈

 ワダツミは…焦げてる⁈

 え?え?」

 

混乱するはずだ。

目の前にいるのは炎を額に灯しているがか弱い少年、しかし倒れているのは暗殺部隊最強と言われた男、理解できるわけがない。

 

「ワダツミは俺が倒した。

 死んでないから仲間なら助けてやれ。

 これ以上攻撃してくるなら相手になるぞ」

 

グローブに炎を灯し問いかけてみるがイズミは首を振り後から来た部下にワダツミとカイリを回収させる。

 

「あんたには元とはいえうちのもんが迷惑かけたね。

 この男は昔のあたしの同僚でね、あたしがけりをつけるつもりで来たんだけど、借りができちまったね。

 この借りはいつか返すよ。」

 

そういってイズミは船を後にした。

綱吉は次に戒めの壺を浄化し、砕いた。

 

「フーパ、これでお前はどこにでも行ける。

 心配ない、キョウコを助けてくれようとした今のお前なら、何も傷つけたりはしないさ。」

 

そう綱吉が言うとフーパは笑ってリングを広げて綱吉とキョウコを甲板まで連れて帰ってくれた。

 

「ツナありがと。

 フーパ旅してみる、困ったらいつでもよべ!

 友達助ける!

 それじゃ、バイバイ!」

 

そしてフーパはどこかへ飛び去っていった。

そんなタイミングで目を覚ましたキョウコ。

 

「あれ、ここ外?」

 

寝ぼけたキョウコをかわいいと思いながら綱吉は笑顔で伝える。

 

「全部終わったよ。

 フーパも世界を見に飛び出したよ。

 俺たちも行こう!」

 

そして甲板から降りると予定より早くハギが迎えにきていた。

 

「お二人さん、予感がしたから迎えにきたぜ。

 お、おつかいも無事達成してくれたみたいだね。

 君たちに頼んでよかったよ」

 

頼まれていた荷物を渡すとハギはそう言った。

もしかして

 

「あいつの呪いは解けましたよ。

 これから世界を見て回るそうです。」

 

そういうと、ハギは一瞬だけ驚いて

笑顔に変わった。

 

「そうかぁ、そうかぁ。」

 

ただ満足そうに笑い舟を発進させた。

これで、とある魔人の物語はおしまい。



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第13話

深海の暗殺者を倒して二日が過ぎた。

いよいよ綱吉のトウカジムへの挑戦が始まる。

 

「待っていたよ綱吉くん。

 約束通りジムバッジ4つ手に入れてきたんだね。

 約束通り真剣勝負と行こうじゃないか。」

 

ジムリーダーセンリとの勝負、一つの大一番であることは間違いない。

センリの一匹目はヤルキモノ。

2本の爪が輝くノーマルタイプだ。

こちらの一匹目は

 

「アル、いくよ。」

 

二日の鍛錬でレベルアップは果たしたもののワカシャモのままのアルだった。

 

「ヤルキモノ、ビルドアップ」

 

「上がり切る前に倒せ、二度げり‼︎」

 

アルの二度げりが急所に当たったヤルキモノは壁際まで吹き飛ぶ。

一気にトドメを刺すべく迫るアル、だが

 

「ヤルキモノはかいこうせん」

 

カウンターの破壊光線が決まる。

 

開始1分も経たないうちに両者ボロボロ、残り一撃がやっとの状態だ。

 

「一匹目から燃える戦いをさせてくれる…

 だが1勝目はいただく。

 ヤルキモノ、気合パンチ」

 

ヤルキモノが一気に距離を詰める、が。

早さならば

 

「アル、ニトロチャージ」

 

もうかも発動したアルに追いつけるものはいない。

 

ヤルキモノ戦闘不能。

これが意味することは二匹目、エースの登場。

キョウコのデータによればセンリのエースはケッキング。

指示を怠けることもあるらしいがその攻撃力、防御力は高い。

一撃一撃が致命傷となりうるポケモンだ。

だがセンリが出してきたのは

 

「さて、二匹目か。

 久しぶりに暴れろ、ミミロップ‼︎」

 

「な、事前情報と違う⁈」

 

思わずうめく綱吉、その言葉を聞いてセンリは落胆する。

 

「綱吉くん、君はデータがないと熱い戦いができないトレーナーなのか?

 他のジムリーダーから聞いた話とは随分違うな。

 聞いたのは最後まで諦めない土壇場で奇跡を起こす熱いトレーナーの話だ。

 だが君にその気がなくてもこちらは全力を出さねばならない、これはそういう試練なんだよ。」

 

そしてセンリは右袖をめくり腕のバングルを天に掲げる。

 

「俺のキーストーンよ、我が友と結びし絆をここに示せ‼︎

 メガ進化!」

 

バングルのストーンとミミロップの持つ石が光で繋がり

新たな姿を浮かび上がらせる。

 

「メガミミロップ、悪いが俺の最強の相棒だ。

 君に勝ち目は、ない。」

 

次の瞬間メガトンキックがアルの腹につき刺さり戦闘不能になる。

 

「く、ヴェル‼︎」

 

ジュプトルのヴェルで勝てるのか?

その一瞬が命取りだった。

 

「君の迷いが手に取るようにわかるよ。

 そんな心で俺に勝てるとでも?

 舐めすぎだよ、冷凍ビーム。」

 

効果抜群の攻撃、しかもメガ進化状態の一撃。

詳しくはわからないが間違いなく強化されていることは一目瞭然だ。

 

『だめだ。

 勝ち目が…ない。』

 

思考を放棄し虚になった目が捉えたのは前線で相手を睨みつける相棒だった。

そして綱吉を睨みつける。

俺はまだやれる、勝つための指示をくれ。

相棒の心が伝わってくる。

 

『そうだこのまま諦めて負けたんじゃ』

 

「死んでも死に切れねぇ‼︎」

 

そして額に、リングに炎が灯る。

ヴェルも氷を振り払い、新緑を発動させ最高の一撃を放つ用意をする。

 

「これを待ってたんだよ、メガトンキック」

 

「ヴェル、リーフブレード‼︎」

 

渾身の一撃がぶつかり合い

 

 

 

 

ヴェルが倒れた。

センリの勝利が叫ばれた瞬間自分が負けたことを悟る。

 

「最後は悪くなかったが、まだまだ未熟すぎる。

 友を信じられない奴にトレーナーを名乗る資格はないし、その程度じゃ俺のメガミミロップは倒せない。」

 

その酷評を聞き終えた途端目の前が真っ暗になった。

目を覚ました時はポケモンセンターのベッドだった。

 

「あ、起きた?」

 

横にはキョウコが座っていた。

あの後のことを聞くとセンリが運んでくれたらしい。

アルとヴェルは今は回復中だそうだ。

キョウコはジム戦を勝利したそうだ。

キョウコの時はケッキングが出てきたそうで、理由を聞いたが「そういう試練だから」としか言われなかったらしい。

悔しかった。

初めての敗北だった以上に途中で諦めたことと信じきれなかったことが悔しかった。

 

「くっ」

 

涙が止まらなかった。

今だけはキョウコに見られたくなかったし、慰められたくもなかった。

出ていってくれと言おうとした時

 

「おや、泣いてばかりなんかビューティフルじゃないね。」

 

「そうったい、男なら負けん気出さんとね。」

 

2人組の男女が入ってきた。

男の方は続け様にこういった。

 

「僕の父さんは強かったろ。

 だけど負けたまんまでいられないっていうなら、僕たちが君の先生になってあげよう。」

 

「あのあなたたちは…」

尋ねようとするとキョウコがようやく口を開いた。

 

「お姉、ルビーさんなんでここに⁈」

 

「え、知り合い⁉︎」

 

そういうと男女は自己紹介を始めた。

 

「僕の名前はルビー、お察しの通りジムリーダーセンリの息子だ。

 彼女はサファイア、僕の奥さんでキョウコちゃんのお姉さんだよ」

 

「え、え、えぇぇぇぇぇ⁈」




ポケスペの彼らとは関係ないです。
パラレルワールドの別人感覚です。
年は2人とも21歳でポケスペ同様80日間でそれぞれの目標をクリアしています。


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第14話

確かに似てるけど、名前のセンス違いすぎない?

綱吉が最初に抱いた疑問はそこだった。

上からサファイア、リョウヘイ、キョウコ

思い切ってキョウコに聞いてみると母親が外国の人のようでキョウコのみためで白髪青目らしい。

目の色だけはサファイアにしか遺伝しなかったようで生まれた瞬間目を見た母がサファイアと決めたらしい。

そんなオダマキ家の隠れエピソードを聞きちょっと満足した綱吉。

そんな中ルビーが切り出す。

 

「具体的な修行は明日からだけど、第一段階として君の相棒たちをジュカインとバシャーモに進化させる。

その中で戦い方と技を僕たちから盗むんだ。

今日はしっかり休んでね。」

 

そして2人は部屋を出て行った。

 

「キョウコ、あの2人強いよね?

 しかもめちゃくちゃ」

 

「お姉はホウエンのジム攻略最速記録を持ってるし、ルビーさんは同じかそれくらい強いよ。」

 

今度こそセンリに勝つ、そのための修行が始まる。

 

「まずはあたしと修行ったい!

 妹を任せられるか、みせてもらっとよ!」

 

どうやら負けられない戦いがここにもあるみたいだ。

アルとヴェルをだす。

修行の効率を考えてダブルバトルだ。

お姉さんはバシャーモとボスコドラを出してきた。

どっちもヴェルには苦手なタイプだが、強い相手じゃないと修行にならない。

 

「…そう、この修行は進化だけじゃない。

 君が燃えたとき、相棒たちも最高のパフォーマンスに達する。

 それを自分で引き出すのがここでの目標だ。」

 

ルビーはセンリとのバトルを見ていた。

その中で父が今までのバトルとは違う意味で本気であることを感じた。

それを試練と言った父の胸中はわからないが、どうせなら自分が試練を受けるものを仕上げてみたい。

そう思ってしまうのがかつてホウエンのトップトレーナーとして名を連ねたルビーとサファイアだった。

そして待ち望んだその時がやってくる。

バトルの中でシンリョクとモウカを発動していた2匹のオーラが爆発的に高まり、

 

新たな姿をその場に晒す。

ジュカイン、バシャーモ。

修行の第一段階を達成した瞬間だった。

 

「ヴェル、アル、やっぱお前らすごいよ。

 動きも昨日のバトルとは段違いだ。

 これで次のバトルは!」

 

「悪いけどまだったい。

 ルビー、こっからは本気出してもええんね?」

 

サファイアの質問をルビーが頷くだけで返す。

その瞬間、サファイアの覇気が段違いになる。

 

「ツナくん、あんたに妹を任せるにはまだ足りん。

 だからこの第二段階の修行は、あんたも死ぬ気になりんさい!」

 

そしていつの間にか腕に装着されていたセンリと同じバングルが輝きを放つ。

その深いサファイア色の瞳の中に溢れんばかりの光が瞬く。

 

「メガ進化!

 メガバシャーモ、加減はいらん。

 ブラストバーン!」

 

メガバシャーモから溢れんばかりの熱気を感じた。

直感が告げる、これをまともに受けたら瀕死どころじゃすまない。

そして直撃の爆風が辺りの木を蒸発させていく。

 

「ちょ、お姉!

 これはやりすぎ!

 そんなんだからホウエンの爆炎姫とか呼ばれるんだよ!」

 

「キョウコ!

 言ってええことと悪いことがあるとよ!

 それに、あんたも究極技は覚えんといけんから人ごとやなかとよ!

 それに…え、」

 

サファイアは驚愕した。

直撃の爆心地、そこには2匹が傷一つない姿で座り込んでいた。

そしてその前には、死ぬ気モードの綱吉が立っていたのだ。

 

「…これはどう言うことだ、修行の威力とは思えないぜ。」

 

流石に綱吉も言わざるを得ない威力だった。

そこはルビーが近づく。

 

「へぇ、やっぱり君も戦えるんだね。

 サファイアが言ったはずだよ、第二段階は君も死ぬ気になれと。

 次の修行は君自身がその状態でメガバシャーモと戦ってもらう。」

 

 

 



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第15話

「どういうことだ、俺とメガバシャーモが戦っってもなんの修行にもならないぞ?」

 

綱吉はルビーから告げられた第二段階の修行について理解できなかった。

 

「そんなに難しいことではないよ。

 昨日のジム戦やさっきのサファイアとのバトルでも思ったけど、君の中での戦いのイメージとポケモンたちの戦いのイメージが一致していない。

 そこいらのトレーナーとなら勝てるだろうけど、これから君が戦う相手たちを考えるともっと強くならないと戦えないよ。

 そして君が炎を灯す姿を見て確信したんだ。

 君は特殊な能力を持っていて君自身もこと近接戦闘においては相当な経験値を持っている。

 だから2匹、特にバシャーモには君の戦いを見てもらって戦い方をトレースさせたいんだ。」

 

ルビーから語られた修行の目的について綱吉も思うところがないではなかった。

確かに近接戦闘では自分の思い描くバトル展開をできていないがトレーナーが想いを押し付けてはいけないとあえて言わず、逆に成長して行く二匹の癖を理解して行くつもりでいた。

しかしトレーナーだけが優秀でもポケモンだけが優秀でもダメなのだ。

 

「…わかった、始めよう。」

 

そして綱吉とメガバシャーモのバトルが始まる。

 

「火炎放射」

 

メガバシャーモからはかれる極炎の吐息が綱吉を焼こうと迫るが、綱吉は炎の逆噴射による高速移動によって避ける。

 

「早いね、アル、ヴェル。

 君らのためにトレーナーが体を張っているんだよ。

 目にやけつけなよ。」

 

ルビーは綱吉の手持ち二匹に語りかける。

彼らが動きをものにしなくては無意味なのだ。

ルビー自身ポケモンとトレーナーを戦わせるという無謀、というより非常識な修行を考えたことがない。

だが綱吉自身が戦える以上、彼らの先頭のイメージは限りなく近づけたい。

綱吉は高速移動を繰り返すがメガバシャーモの特性は加速、徐々に速度がおいつき、殴り合いを演じることになった。

 

『早い、それにパワーもかなり強い。

 バージョンボンゴレギアのグローブじゃないと引き離せない…』

 

そう、綱吉のボンゴレリングはこの世界に着いたときに見てみるとボンゴレギアではなく、ボンゴレリングに戻っていて、同化したはずのナッツは行方不明となっていた。

だが、今綱吉には手持ちポケモンという別の仲間がいる。

彼らも綱吉の勝利を望んでいる。

メガバシャーモが加速の勢いを利用してブレイズキックを放ってくる。

ルビーが綱吉の負けを予想した時、仲間の絆が奇跡を起こす。

 

「決まった…なんね、これ?」

 

メガバシャーモのブレイズキックがヒットする直前に綱吉のグローブから虹色の光が巻き起こり、放出の勢いでブレイズキックをせき止めていた。

 

「この光、やはりあの指輪は…」

 

ルビーは光の正体にある程度予想がついたが、このバトルだけは予想できなかった。

そして光は収束した炎すらも消しとばす。

 

「…この炎は」

 

綱吉にはこの新たな力の正体はわからなかったが、確かに感じるのはこの力がボンゴレギアに勝るとも劣らない力であるということだ。

 

「おい、最初に放ったわざと俺のとっておきで勝負だ。

 オペレーションX」

 

綱吉はブラストバーンを正面から打ち破るためにXバーナーの体制にはいる。

 

「よかよ、受けてたつったい‼︎

 ブラストバーン、フル、パァワァー‼︎」

 

「Xバーナーァ‼︎」

 

二つの巨大な炎が真正面からぶつかり合う。

だが、綱吉の炎を後からおうように虹色の光がグローブから放たれ……



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第16話

第二段階の修行から1週間が経過した。

 

「待っていたよ、綱吉くん。

 それで?

 強くなったから再戦しにきたのかい?」

 

ツナヨシの目の前に立つセンリが挑発的に訪ねてくる。

綱吉も既に臨戦体制なのか額に炎を灯している。

 

「あぁ、この間の俺たちと同じに見えるか?

 見せてやるぜ、俺たちの死ぬ気をな」

 

そして2人はヤルキモノとバシャーモのアルを出してジム戦が始まった。

 

「この1週間で進化させたか

 確かに見違えたな。」

 

「変わったのは見た目だけじゃないぜ。

 アル、フェイントからのブレイズキックだ」

 

アルはジグザグと奔放な動きでヤルキモノを惑わせブレイズキックを叩き込むとあっけなくヤルキモノは戦闘不能になった。

 

「おいおい

 桁違いなんてもんじゃないぞ。

 君一体どんな修行をしてきたんだい?」

 

ヤルキモノも通常のジム戦においては難敵として認識されており、前回の戦いではワカシャモだったアルと互角の戦いを演じていたのだ。

それが進化したからといって、一撃で倒されるなどあり得ない。

 

「さぁどうだろうな。

 それより早くメガミミロップを出せよ。

 リベンジしたがっている奴がいるんだ。

 そうだろ、ヴェル?」

 

綱吉はアルと交代でヴェルを出した。

ジュカインに進化しただけでは説明が付かないほどの覇気を感じさせるその姿にセンリは認識を改める。

 

「やはり君は試練を受けるべき人間みたいだね。

 なら沈めてくれよう、我が絆の力で‼︎

 メガ進化‼︎」

 

メガミミロップとヴェルのリベンジマッチが始まった。

二匹とも高速で移動し、すれ違いざまにメガトンキックとリーフブレードがぶつかり合う。

 

「早いな、だがいつまで持つかな。

 そこだ、冷凍ビーム」

 

ヴェルが立ち止まったのを見逃さずセンリが冷凍ビームの指示を出す。

 

「ふっ、待っていたぜその技を。

 ヴェル、タネマシンガンで足場を崩せ。」

 

ヴェルのタネマシンガンがメガミミロップの足元に打ち込まれ地面が沈む。

そしてその反動で口元にためていた冷凍エネルギーを噛み砕いてしまい、大ダメージを受けるメガミミロップ。

 

「おいおい、今の口ぶりだとまるで狙っていたかのようじゃないか。」

 

「狙っていたんだよ、実際に。

 前回のバトルでも弱点の氷タイプの技を仕掛けてくるのは目に見えていたんだ、対策くらいしているさ。」

 

「ほぅ、ならこれは対策できたのかな?

 炎のパンチ」

 

まう土煙の中からボロボロのメガミミロップが燃える拳を打ち込んでくる。

咄嗟のことに反応の遅れたヴェルはクリーンヒットをくらいフィールドに沈み込む。

 

「対策は結構。

 だが俺たちは対策されているなんて日常茶飯事なんだよ。

 一つ技を攻略したくらいで勝った気になられては困るな。

 しかも君の相手はメガ進化したポケモンだ、簡単に勝てると思うなよ。」

 

センリがプレッシャーをかけながら綱吉に凄む。

しかし綱吉は

 

 

 

 

 

 

 

ー笑っていた。

 

「で、なくっちゃな。

 この程度で勝てるなら拍子抜けだぜ。

 そうだろ?アル」

 

綱吉の手にはモンスタボールが握られていた。

そしてフィールドにヴェルの姿はなく、代わりに空中を舞うアルの姿があった。

そして空中から逆さまに落下しながら左手で後方に向けて炎を放つ。

それは支えるための柔の炎、放つべき炎は右拳に灯される。

 

「なんだその技は‼︎

 打ち砕け、破壊光線」

 

「アル、見せてやろうぜ。

 俺たちのとっておきをな

 

 ブラストバーン‼︎」

 

そして右拳から放たれる極大の炎が破壊光線すら飲み込み、メガミミロップを焼き尽くした。

アルはそのまま地面と激突した。

 

「おいアル、せっかく技が決まったのそれじゃカッコつかないだろ」

 

そう笑いながらも綱吉は新技を決めた相棒を誇らしく感じていた。

そしてメガミミロップは

 

 

気絶して、メガ進化が解除されていた。

 

「まさか究極技を習得していたとはね。

 ということは君たちを鍛えていたのは、ルビーだな?』

 

勝負が終わりセンリと握手を交わす際にそんなこと聞かれた。

 

「そうですよ父さん。

 本来僕のキャラじゃないんですけど、未来の義弟への先行投資と思って鍛えたんですよ。」

 

そう言いながら観客席から拍手を送ってくれたのはルビーとサファイアだった。

それを聞いて笑いながらセンリはバランスバッジを綱吉に差し出した。

 

「まずはジム戦勝利おめでとう。

 これがバッジだよ。

 そして試練を乗り越えた報酬を渡そう。

 着いてきなさい。」

 

センリに言われるがままジムの奥へと足を進める綱吉。

奥には祭壇があり一つの木箱が置かれていた。

しかし木箱の中心に小さな焼け焦げた跡があり穴が空いていた。

 

「今こそ君に継承しよう、若きボンゴレ。

 時の王の眷属、大空の御子よ。」



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第17話

「な、なんでセンリさんがボンゴレのことを知っているんですか⁈」

 

ジム戦の後、試練の報酬を渡すと言われジムの奥へ連れて行かれた綱吉…

しかしそこでセンリから語られた言葉は本来この世界では誰も知らなはずの事実、綱吉がボンゴレ十代目であることだった。

 

「そうだな、どこから語ろうか。

 まずは渡すものを渡してからだな。

 この木箱を君に。」

 

センリから渡されたのは奥に安置されていた真ん中が焼け焦げた木箱だった。

綱吉がそれを開けると中には

 

「…なんで

 なんでなんでなんで⁈

 どうしてオリジナルボンゴレリングがここにあるんだ⁈」

 

そこには大空を除くすべての属性のボンゴレリングが収められていた…

 

「正確にはボンゴレリングではないんだ。

 それはメガボンゴレリングと言って、私のメガバングルと同じようにメガ進化に使うことができる。

 それと同時にこの世界に調和をもたらす至宝でもある。

 そしてその至宝は君の指にもはまっている。」

 

思わず自分のリングを見つめる綱吉。

 

「実はね、君がこちらの世界にやってきたと予想される時間にね、突然その大空のリングが燃え出してどこかへ飛び去っていったんだ。

 そのリングの存在は私しか知らないから最初は焦ったけどね、数日後に君がリングを持って現れたからとても驚いたよ。

 オダマキから炎を灯したと聞いてまさか本物の継承者が現れて、リングをその見つけていたのだからね。」

 

そしてセンリは語り出す。

 

「君の疑問に応えよう。

 まず私はボンゴレファミリーのものではない、がボンゴレに関わってはいる。

 私たちの一族はこの指輪を表れた継承者に渡す役目をあるものから預かっているのでボンゴレのことも知っている。」

 

「センリさん、そのあるものって誰ですか?」

 

綱吉は思わずと言った様子で訊ねた。

 

「その者の名前はジョット。

 またの名をボンゴレ一世。

 彼もまた、この世界へ招かれた者だ。」

 

綱吉は混乱する。

家庭教師のリボーンから指導の過程でボンゴレ一世の歴史については教えられてきたが異世界へ渡ったなんて話は聞いたことがない。

しかし、目の前の7つのリングがそれを事実だと裏付けている。

 

「私も聞いていた伝承を語っているに過ぎないのでね。

 ここからは奴に話してもらうとしよう。

 おい、そこにいるんだろ。

 出てきて話せよ、ジョーカー‼︎」

 

その声に反応して奥の闇から1人の女が歩いてきた。

見た目黒づくめのスーツを着た、なんとなく30手前くらいまで成長したユニに似た黒髪ポニーテールの女性だ。

 

「よく気づいたねセンリ。

 初めましてボンゴレの継承者、君は何代目になるのかな❔」

 

「俺は沢田綱吉、一応十代目になります…」

 

いや、一応だから

俺はボスになんてならないから‼︎

 

「ふぅん

 ジョットに瓜二つで引くわ〜」

 

そう言いながら急に笑い出す女性

え、なにそれ怖い

 

「私はジョーカー、そうね、この世界の歴史の管理者って言っても分かりづらいか…

 君の知っている川崎のおじさんとかユニの先祖のセピラの同族とでも言えばわかるかしら?」

 

川崎、セピラ

この2人は遥かな昔、人類誕生以前に地球に生きていた純粋な地球人のことだ…

川崎はまだ生きていてトゥリニセッテを管理している。

 

「話を続けるわ。

 その昔、今から三百年くらい前だったかしら。

 ジョットもこの世界そのものに呼び出されてあなたと同じように世界を救ったの。

 その時も別の地方の伝説のポケモンの暴走を鎮めたのよ。

 だけど今回はその時とレベルの違う脅威が迫っている。

 だから発展途上のあなたや海の適合者、確か白蘭だったわね、2人にこの世界にきてもらったのよ。」

 

「ま、待ってください。

 一世が立ち向かった脅威より凄いものに俺が立ち向かえるわけが…」

 

びびる綱吉にジョーカーはただ淡々と語る…

 

「ごめんなさい、でもどうしようもないの…

 それに貴方は災厄を一つ既に払い除けているのよ。

 ワダツミの暴走、あれは本来正しい歴史には存在しない事件なの。

 本来のこの地方での災い、グラードンとカイオーガの復活はセンリの息子とその妻が払い退けていたはずなの。

 だけど…」

 

そして言葉を継ぐようにセンリが語り出す。

 

「俺たちにその記憶はないんだ。

 そしてその後やってくる天空からの脅威、巨大隕石を打ち破った記憶もないんだ。」

 

「ありがとうセンリ。

 そう、なぜか歴史が書き換えられているの。

 だから貴方たちにお願いしたいのは、その指輪を用いて、再び繰り返されようとする災いを跳ね除けてほしい。

 可能ならば歴史が消されている原因も突き止めてほしいの。

 それに、ホウエン地方を超えた先にあるシンオウ地方の災厄は白蘭では止められない。

 そこに迫る災厄、時の王ディアルガを止めることができるのは同じく時を司るボンゴレリングの継承者として時の王の眷属になっている貴方だけだから。」

 

そこで綱吉は思わず尋ねる

 

「え、この地方以外でも脅威が?

 それならジム戦なんかしている場合じゃ…」

 

「いえ、貴方にはこの地方でジム戦をすべて攻略してその頂点であるホウエンポケモンリーグで四天王を倒し殿堂入りをしてもらいます。

 地方で殿堂入りっていう経歴があれば他の地方でも動きやすくなるからね。

 ちなみに今白蘭もイッシュ地方で各地を回ってもらっているよ。

 彼が打ち倒すべき災厄は…彼自身と引き合っているようだし。

 そして君も、この災厄を払う鍵と引き合っている。

 陸と海、それらと対になるのは空。

 天空の龍神レックウザ、かの龍神を君の仲間にすることが大空の力を持つ君にしかできない仕事だ。」

 

「それは俺にできるんでしょうか…

 俺はダメツナで、今までもファミリーのみんながいたからなんとかなったって言うか…

 今この地方では俺1人だし、正直自信がないです…」

 

そう言って自嘲する綱吉に、ジョーカーはため息を吐く…

 

「やっぱりね…

 そういうと思って、君の家庭教師くんからメッセージを預かっているよ…

 『おいダメツナ、前にも言っただろ…

  てめーはヒーローや英雄にはなれねーんだ。

  京子を守る時、初めて炎を灯したときに何を思ったんだ。

  今そばに守りてー奴は居ねーのか?

  オメーは何度も不可能を超えてきたんだぞ。

  俺たちだって救ってくれたじゃねーか。

  だから、死ぬ気で世界救ってこい』

 だってさ。

  私からも聞くね、今貴方が守りたものはこの世界にないの?」

 

そんなの…

アル、ヴェル、手持ちのポケモンたち、ルビー師匠、サファイア師匠、オダマキ博士それに…

 

『ツナくん‼︎』

『ツナくんの旅のパートナーは私なんだからね』

 

「キョウコ…

 俺が守りたいものなんて決まってる…

 みんなを、守りたいんだ‼︎」

 

覚悟にリングが応え、大空の炎を灯し…

さらに虹色の炎が大空に混じる。

 

「その炎は…⁈

 君の大空の炎と、メガ進化のエネルギーが混じりあっているのか…

 私からの餞別だ、この立ち枯れと下火、引き潮の石を渡そうかね。

 君とキョウコくんのポケモンたちをメガ進化させるための石だ。

 私も力になるが、どうかこの地方を救っておくれ。

 ボンゴレ10代目」

 

ジョーカーから託されたメガストーンを手にした綱吉。

やることは決まった、誰かを傷つける災厄なんて俺がぶっ壊しやる。



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第18話

一年ぶりです。
最近SVよりもやっぱりGBAやDSの作品が最高だったなと懐古厨になりつつあるカチドキでございます。
ぼちぼちやって行こうと思いますのでお付き合いくださいませ。


メガボンゴレリングを継承したツナ。

 大空以外のリングはジョーカーから渡された特別性のチェーンに嵌め込み、リング争奪戦の時のように腰につけていくことにした。

 チェーン自体は特殊な技術で作られているので、外すときは大空の炎を込めなければ外せないのでこの世界ではツナ以外に取り外しは不可能だ。

 そして、コトブキタウンを抜けラグラージに川を渡してもらい、キンセツシティの西方である118番道路を超えて119番道路の天気研究所の近くまで来ていた。

 

「何この雨、雷鳴ってますけど⁈」

 

 降りしきる雨と時折響く雷鳴に、元来ビビりなツナは震えていた。

 そしてキョウコはというと、

 

「もうくすぐったいよ、ビリビリしちゃうなぁ。」

 

 さっきから野生のラクライにひどく懐かれていた。

 ラクライは本来警戒心が強いポケモンらしいのだが、なぜかキョウコには懐き度マックスの状態でついてきている。

 しかもボールに入らず。

 

「一緒に旅したのかな?

 じゃあ君はボルト君だ。」

 

 そう聞くとラクライはうなずき、モンスターボールに入ったので野性のラクライ改め、ボルトと名付けられた。

 そうこうする内に大きな研究施設へたどり着いた。

 

「あ、ツナ君。

 ここは天気研究所だよ。

 世界中の天気について研究してるんだ。

 なんでもここには、天気によって姿を変えるポケモンがいるらしいから見ていこうよ。」

 

 当然異論はなく、ツナもそのポケモンに興味があったので寄ることにした。

 思えばこれが全ての始まり、ツナは己のこの時の判断の結果の是非を旅の間中問い続けることとになる。

 

 

「こんにちわ。

 あれ、声が聞こえないな。」

 

 自動ドアをくぐり抜けて挨拶をするも返答は帰ってこない。

 恐る恐る奥を覗くツナ、そこには、

 

『アクア団⁈

 縛られてる人って研究所の人か⁈』

 

 アクア団と縄で縛られた白衣の男がいる姿が見えた。

 向こうには人質がいる、慎重に動かないと。

 そう思った矢先だ、キョウコの足先が周囲に落ちていた金属に触れ高質な音を響かせる。

 

 「誰だ‼︎」

 

 腹を括ることを決めたツナ、ジュカインとなったヴェルのボールを構える。

 そして飛び出そうとしたその時、突如として天地がひっくり返った。

 地面を見つめながらまとまらない思考で答えを導き出す。

 あぁ、俺棒か何かで殴られたんだ。

 

 「ツナ君‼︎」

 

 キョウコの叫びが辺りに響きわたる。

 

 大丈夫だよ、今すぐ立って…あれ?

 体に力が入んないや…

 

 脳を揺らされた影響から立てないツナ。

 そこへゆっくりと忍び寄るアクア団の下っ端の姿が見えた。

 

「へへ、お嬢ちゃん。

 君が余計なことしなければボーイフレンドも傷つかずに済んだんだ。

 同志が目的を果たすまで、俺と楽しく遊ぼうぜ。」

 

 下卑た視線がキョウコを舐め回す。

 14歳の女の子がこの状況で何かができるわけがない。

 立ち尽くすキョウコのベルトから、ラクライのボルトが飛び出す。

 しかし

 

「はっ、引っ込んでろちびすけ。

 ハスブレロ、ハイドロポンプだ。」

 

 ハスボーの進化系、ハスブレロの大技をくらい壁に叩きつけられてしまった。

 

「ボルト君‼︎」

 

 駆け寄るキョウコに下っ端は容赦のない言葉を浴びせる。

 

「あーあ、君が弱いから。

 守ってくれるポケモンもそんなに傷ついちゃってねぇ。

 お兄さんが教えてあげるよ、世の中には強いものが勝つってルールがあるのさ。

 そういう強い相手に抵抗するのは無駄な努力ってもんさ。

 そこの坊主も、そこのポケモンにもこれ以上痛い思いさせたくなかったら俺に従うんだな。」

 

 どこまでも勝手な言い分、リーダーのアオギリは筋の通った男だが、全ての団員がその理想に殉じているわけではない。

 行き場のない半グレ達を拾っているのも事実だ。

 しかし、その言葉を聞いて怯えているほどオダマキキョウコはか弱い少女ではない。

 ツナはキョウコから初めてナニカが切れる音を聞いた気がした。

 

「許さない、あなた達だけは‼︎」

 

 キョウコから噴き出る覇気が下っ端のニヤニヤ顔を凍り付かせる。

 ただただ恐怖しか感じないほどの圧に思わず後ずさる下っ端。

 ツナも思わずビビってしまう。

 

 そして横にいるボルトがその覇気に呼応するかのように、自身の体から稲妻を放ち新たな力を手に入れる。

 ライボルト、それがキョウコの覚悟に応えたボルトの新たな姿だ。

 それを見た研究員が自らの白衣のポケットから丸い弾を取り出す。

 

「お嬢ちゃん、これを‼︎」

 

 そして投げられて飛距離が足りずボルトの足元まで転がったその球は黄色い球だった。

 

「それはライボルトナイト、メガ進化に必要な球だ‼︎」

 

 研究員からの贈り物を咥えるボルト、そしてそれに呼応するようにツナの腰から光が放たれる。

 

「これって、まさか雷の炎⁈

 キョウコとボルトの覇気と覚悟に共鳴してるのか…」

 

 ツナの腰に収まっている雷のメガボンゴレリングから、虹色の炎と純度の高い翠の雷、雷の炎が放たれる。

 つまりこれは、リングが持ち手としてキョウコ認めたことに他ならないい、だがリングを手に取れば守護者の一員となることは避けれない。

 しかし、この状況を打開して全てを守れるのはキョウコだけだ…

 そして全てを察したのかキョウコがツナに手を伸ばす。

 

「ツナ君、そのリングを私に‼︎」

 

 迷っている暇はなかった。

 ツナは朦朧とする頭で覚悟を炎にかえ、雷のリングに触れる。

 するとリングはチェーンから外れた拍子に床に落ちて、跳ね返りキョウコの手に収まる。

 そしてキョウコは右手の中指にリングをはめる。

 その瞬間までとは比べ物にならない雷の炎が噴き上がる。

 雷のメガボンゴレリングの守護者・オダマキキョウコ誕生の瞬間だった。

 

 そしてリングの光とライボルトナイトが結び合う。

 激しい一撃を秘めた雷電に相応しいポケモン、メガライボルトが眼前のアクア団を閃光のように蹴散らしていく。

 最後にハスブレロとそのトレーナーのアクア団を前にキョウコが言い放つ。

 

「あなたは私の逆鱗に触れたの。

 ボルト君、ワイルドボルト‼︎」

 

 ボルトのワイルドボルトが全てを焦がし、アクア団達は研究所の壁ごと吹き飛ばされてしまった。

 研究員が恐る恐る近寄る。

 

「君たちありがとう、壁のことは気にしなくていいよ。

 それよりも彼と君をヒマワキのポケモンセンターに搬送しなくてはね。」

 

 ツナはその会話を聞いたのを最後に意識を飛ばした。

 キョウコを、自らの業に巻き込んだことを悔やみながら。

 



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