とあるterrarianのお話 (何気あるかもしれない薫製肉)
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プロローグ 竜との邂逅、厄災の始まり
プロローグ
ここは、どこだ。
あたりを見渡す。
あたりには広大な平原が広がっていた。
ふむ。こんな風景は知らないな。
私はつい先ほどまでゴーレムを狩って、Treasure Bagから
何かやらかして死んだ記憶もないし、仮に死んだとしても、家にリスポーンするようにしているはずなのだが。
何より、こんな風景に見覚えはない。
広大な平原をゆっくりと歩きながら、周りの風景を確認する。
いくら歩いても、スライム1匹居ない。
仮にここが別のworldだとしても、初期リスにガイド1匹居ないのは異常事態だ。
とりあえず、インベントリからCelestial Starboard*1を取り出して、空から辺りを見渡す。
…どうやら随分とこの平原は広いようだ。ここまで広い平原バイオームを見るのは初めてだな。
空を優雅に飛行しながら、地上を見下ろす。
特に変化もなく、のどかな時間が流れる。
平和だ。おそらくここは私のいたworldではないな。
hard突入前のworldなんだろう。
ガイドがいないのもおそらく特殊なseed値を引いてしまっただけなのだろう。
しばらく飛行していると、平原の向こう側で、大きな爆発が起きているのが見えた。
…なんだあれは?誰かがExplosives*2でも踏んだか?と思いながらそこへ向かって接近する。
爆発の跡が見えてきた。
…まるで隕石でも落ちた後のような惨状だな。
ん?
…?でかいカエルのような者に誰かが集られているな。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その日、俺は二人の頭のおかしいやつと出会ったんだ。
いや、片方の頭のおかしさは、しばらく経つまで分からなかったんだが。
その日、俺は、パーティーメンバーの募集に引っかかった、名前のおかしい紅魔族のアークウィザードを連れて、ジャイアントトードの討伐に来ていたんだ。
「『エクスプロージョン』っ!」
平原に、人類が使いうる最大にして最強の魔法の光が煌めく。
目を開けていられないほどの閃光。
一瞬の間を置き、体がビリビリと震えるほどの轟音が鳴り響く。
その圧倒的暴力は、カエルージャイアントトードを灰も残さず消滅させる。
「すっげー。すっげー!これが魔法か!すげーよめぐみん!」
この時、俺は、こんなに強力な魔法を使える奴が仲間になるなら、魔王討伐も現実味を帯びるな、と思ったんだ。しかし、頭のおかしい紅魔族には、一つ欠陥があったんだ。
魔法の音で目覚めたのか、次々とカエルが地中から這い出てくる。
「お、おいめぐみん。一旦離れるぞ。距離をとってから攻撃を…!」
昨日の悪夢が蘇りかけて、めぐみんの方を振り向きながら、そう言おうとして、絶句してしまった。
めぐみんが、完全に体を脱力させて、倒れていた。
「ふ、我が奥義たる爆裂魔法。その絶大な威力と引き換えに、消費魔力もまた絶大。具体的に言うと、限界を超えて魔力を使ったので、身動き一つ取れません。カエルが湧きだすとか予想外です。…不味いです。このままだと食われます。すいません助け…ひゃあっ!」
「め、めぐみーん!?」
「ちょ、ちょっとカズマさん!?私も食べられそうなんですけどー!」
ぱくっ。
「アクア、何食われとんじゃぁ!」
さらにに数匹のカエルが湧き出て、死を覚悟したその時。空から銃声が鳴り響いた。
硝煙の匂いが薄っすらと辺りに漂う。
空を見上げる。
そこには、銃を片手に持った女が此方を見下ろしていた。
「ふむ。そこな御仁。無事か?すぐに片をつけるからそこで待っていろ。」
素早い動作で銃弾を装填したかと思うと、目にも止まらぬ早打ちで、全てのジャイアントトードを片付けてしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ふむ。
弱いな…だが、normalモードの敵にしては少し耐久が高い…ジャングル地下の敵と同レベルぐらいか?
懐に忍ばせておいたPhoenix Blaster*3
ででかいカエルを撃ち抜く。
3〜5発で沈むか。まあまあだな。
カエルを全て片付け、体内から二人のにんげん…いや、片方からは神性を感じるな。…頼むからCalamity世界*4に来ちゃったとかやめてくれよ…!
さて、先程唯一食われていなかった少年に話しかける。
「すまないが、道に迷ってしまってな。ここはどこだ?」
テラリア楽しいよみんなやろうぜ
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冒険者登録
主人公の名前はterrarianです。
もっきゅもっきゅ。
酒場の中で、ひたすらカエルの唐揚げを口に放り込む。
噛むごとに、
ふむ。美味いな。
自分のworldではPumpkin Pie*1ばかり食べていたからな。肉など、かなりの貴重品だったからな。BaconやGolden Delight*2をごく稀に食べるぐらいだったからな。いい世界だ。
元いた世界のコインが使えなかった時は焦ったが、大量にある宝石が換金できてよかった。危うく無一文だったぞ。
「ふぅ。ご馳走さま。…美味いな。ここの飯は。」
「あ、あぁ。それは良かった。にしても滅茶苦茶食べるなこいつ…。」
取り出したSilkで口の周りを拭きながら、目の前にいる男ー食事をしている時に聞いた自己紹介によるとカズマと言うらしいーに話しかける。
「で、だ。先程カエルに襲われていた経緯だったが…。」
「あぁ。そうなんだ。俺とアクアはまだ冒険者になりたてでさ、二人じゃクエストをクリアできなかったんだ。だからめぐみんをパーティーに仮採用したんだけども」
「一発火力のピーキーな性能をしていたと。それはご愁傷様だな。」
「む、なんですか。爆裂魔法に文句をつけるのですか!?」
めぐみんが犬歯をむき出しにして唸る。
「いや、そう言うわけでも無いんだが、魔法は使い所を考えた方がいいぞ。」
「別の魔法は使いたく無いんです!」
うわっ。どこぞのショートソード狂人みたいだな。*3
「はぁ。なぁ、えーと、terrarianだったっけな?」
む、名前で呼ばれるのは新鮮である。
お、アクアが野菜を残しているな。いや、格闘しているのか?生きている野菜か。珍しいな。
Flintlock Pistol*4で野菜を撃ち抜いてやる。あ、間違えてLuminite Bullet*5を使ってしまった、机に穴が空いたが、あとで新しいの作ればいいか。
アクアが息を呑んで震えている。どうした?食べないのか。貰うぞ。
奪った野菜を口に放り込みながら話に答える。
「なんだ?」
「あっはい。あー、もしよければなんだが、俺のパーティーに入ってくれないか?あ、いや、一時的なものでもいいんですけども…」
これは…引かれているな。別にさっきのはわざとと言うわけでは無いんだがな…
思考を切り替える。
ふむ。パーティーか…マルチプレイということだな。楽しいそうじゃないか。アクアと言う奴に食事の前に酒場の裏に呼び出された時の話によると、多分私はしばらく元の世界に帰れなさそうだし、いいかもな。
あ、だが一つ問題があったな。
「なぁ、カズマ。パーティーに入るのはいいんだが…冒険者とはなんだ?話を聞いてる限りは何かの職業なんだろうが…」
「「「え?」」」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ふむ。受付嬢。この水晶玉に触れればいいのだな?」
「あ、はい。これに触れて貰えれば。」
カズマたちに連れられて、酒場に併設された、冒険者ギルドのカウンターへ向かい、そこで冒険者になる手続きをする。
水晶玉か。Wizardを思い出すな。
手のひらを水晶玉に乗せる、
…Crystal Ballのように魔法バフがかかったりはしないようだな。
「はい。ありがとうございま…す。え、何ですか、何ですかこれは!?職業が最初から固定されている!?しかも六つも!?」
酒場がざわつく。
事前の説明によれば、職業業は基本一つのようだからな。どう言うことだろうか。バクか?またバグ*6か。
「どうやら大きい一つの職業と五つの言わば副職業のようなものがあるようですね。ええと、the terrarian に、melee、range、magic、rogue、summon、のようですね。聞いたこともない職業ですね。」
うーむ、どこかで聞き覚えが…
ここでterrarianの脳裏にとある思い出が思い浮かぶ。
…そういえば、guideが、ジャングルの暴君の住まう地、calamity の世界には、五つの職業があると言っていたな。
あれ?
あれっ?
おい、待て。嘘だろう。この世界が、calamity に連なる何かだとか言うんじゃないぞ!
伝承でしか聞いたことはないが、修羅の世界だと言う。何でも彼のMoon Lordが前座扱いされるような世界だと聞く。
Empress of Lightを優に超える密度の弾幕を張ってくる者が居ると聞く。
…アクアの話ぶりからすると、この世界は、hard coreらしい。
あぁ、絶望だ。
「よかったじゃないか、terrarian!やっぱお前強いんだな!心強いぜ!」
…いや、これが良くないんだよ!
この後、何度かのクエストを経て、女騎士が仲間になったりするのだが、特にcalamity の影は見えなかった。
よかった、杞憂のようだな。
…今は、その問題よりも、女騎士がすぐに突撃する問題、アークウィザードがバンバン平原に穴を開ける問題の方が大変だな。
特にめぐみん。整地は大変なんだぞ!Shroomite Digging Claw*7持ってきてないから一回一回地ならしするの疲れるんだぞ!dartもそんな在庫無いし!
好きな武器は何でしょうか?作者はやっぱり銃推しです。
…え、別作品完結させろって?ごめんなさい。最終局面なせいですごい時間がかかるんです。息抜きさせて下さい。
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キャベツ狩りをするterrarian
テラリア知識はpc(1.4)とcs版、あとはcalamity とthorium modぐらい
WiiUをテラリアのやりすぎで壊して、それでpc版を購入したと言う経緯があります。
カズマのパーティーに入って数日が経った。
その中で、ダクネスというドM変態女騎士が仲間になったりと、様々な出来事があった。
そこそこ、この世界の仕組みも理解出来たと思う。
それにしても、どんなスキルも習得できる冒険者か…私の職業は、ほぼスキルを習得できなかったからな…羨ましいぞ。
さて、こうしてこの世界にも順応してきたと思った矢先に、とんでもない出来事に遭遇してしまった。
キャベツが…飛んでいるな…
つい先ほどまで、冒険者ギルドで、Sake*1と、カエルの唐揚げ片手に駄弁っていた。しかし、緊急クエストが発生したということで、急いで装備を固めて、外に出てみれば、キャベツが群れをなして、空を飛んでいるというのだ。
訳がわからない。昼間のEmpress of Light並みに意味がわからない。
「可笑しい、何でキャベツが飛んでいるんだ、何が悲しくてキャベツ相手に死闘を繰り広げなければならないんだよ!」
カズマがそう叫ぶ。
…まぁ、雪だるまだのどんどん増殖するでかいウサギ*2だのかぼちゃだの汚染された動物だのと戦ってるわたしからすれば今更だな。…流石にキャベツは初めて見たが。
「あー、ね。カズマたちは知らないんでしょうけどね?この世界のキャベツは、収穫の時期が近づくと、収穫されてたまるかと言わんばかりに、飛んで逃げようとするのよ…」
アクアが申し訳なさそうにそう言ってくる。
「なんでや!」
ひとりの男が咆哮をあげる。
わかる、わかるぞその気持ち。キャベツが飛んでるなんて驚きだ。キャベツはUnderground Jungleのmobがドロップするアクセサリーのはずなんだがな…*3この世界に元いた世界の常識は通用しないな…。
「はぁ。馬小屋に帰って寝ようかな…」
カズマが疲れ切った顔でそう言う。
ふふ、ふふふ!
「いや、カズマ!寝るなんて勿体ないぞ!知らないmob!通用しない常識!最高じゃないか!」
「お、おい!急にどうしたterrarian!」
「行動パターンは?能力値は?ドロップアイテムは?気になるじゃあないか!刈り尽くしてやる!」
取り出したThe Rotted Fork*4を頭上で振り回す。
「ひゃっはー!狩りの時間だー!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
いやぁ、狩った狩った。楽しかったぞ。
報酬もたんまりだ。
ギルドの酒場で、Grape Juice*5片手にキャベツの炒め物をつまむ。
いやぁ。美味いな。
生命力にあふれている味だ。いやまぁ、さっきまで暴れまわっていた物を炒めたのだからそれはそうか。
キャベツ相手に数時間の激闘を繰り広げて疲れた体に、キンキンに冷えたGrape Juiceの冷たさと、キャベツの炒め物の甘さと、ほんの少しの塩辛さがしみる。
元いた世界には、ほんの少し前までまともな食事が無かったからな…。やはりこの世界は素晴らしい。
「何故たかがキャベツの炒め物がこんなにも美味いんだ…納得がいかねぇ。」
?カズマ、食べないのなら貰うぞ。
「いや、食べないとは言ってねーよ。それよりもお前そのジュースどっから取り出した。」
「ポケットからだが?」
「いやお前のポケットは四次元ポケットかよ!」
お前は一体何を言っているのだ?あ、そう言うことか。
「Grape Juiceは無いが、Milkshake*6ならあるぞ。飲むか?」
「いやそう言うことじゃねーよ。」
カズマが呆れた顔でそう言ってくる。でもやっぱり飲むんだな。
「なんだ、この懐かしい味は…!マックを思い出す!」
それにしても、今回のクエストは楽しかったな。モンスターは初めて見るし、大規模戦闘は初めてだし、飯は美味いし、報酬は高いらしいし。
いやぁ、良かった良かった。
ここからストーリーに mod色が強くなります。
でも最後まで主人公はバニラの人間だっ!
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墓場の前で
街から外れた丘の上。
キャベツ狩りから数日後、そこにある共同墓地へ、私たち一行は来ていた。
何のために来ているのかと言うと、共同墓地に湧くアンデッドの討伐の為だ。
何でも、ゾンビを生成するアンデッド、ゾンビメーカーらしき影が確認された為、そいつを討伐してほしいとの事だ。
そして、夜を待つために、私たちは墓地の近くでキャンプをしている。
ふむ。graveyard、と言うわけでは無さそうだな。
特に霧も出ていないし、異常にゾンビが湧いているわけでもない。
至って普通の場所だな。
…だとしても、うちの仲間は皆、緊張感がなさすぎではないか?
「ふははははは!アクア!初級魔法の恐ろしさを思い知ったか!」
「ぎゃああああ!目が、目があああ!」
突風を発生させたカズマが、手のひらに盛られた土をアクアにぶつける。
うわぁ。Darkness*1が発生しそうな恐ろしい事をしてやがる。
「おい、カズマ、やめてやれ。アクアに当たるぐらいなら私に当たれ。仲間を守るのが、聖騎士の本望だ。」
「黙れドMクルセイダー」
「はうあっ」
「何でカズマは本職よりも上手く魔法を使いこなしているのですか…」
…流石に気が抜けすぎだろう。
アクアが可哀想だったので、Water Gunを目に当てて砂を洗い流してやる。
アクアが無言で痛がっていたが、気のせいだろう。あれにダメージはないはずだ。
「魔法といえば、そういえば、terrarianは何か魔法を使えたりするのですか?」
めぐみんがこっちへと寄って来て、質問を投げかけてくる。
「魔法か…ちょっと待ってろ。」
さて、どの魔法にしようか…そうだ!やっぱここは威力や使い勝手よりも、カッコいい物を見せた方がいいよな!
ふふっ。爆裂とかが好きならこれを見せればきっとめぐみん驚くぞ…!
ポケットから杖を取り出す。
「唸れ、Meteor Staff!」
杖を振りかざす。
凄まじい爆発音とともに、数発の小さな熱を持った石が天より降り注ぐ。
「え…な、なんですか今のは!」
あたりに火の粉が撒き散らされる。
衝撃で、ダクネスの持ったコーヒーカップがブルブル震える。
カズマたちも口を開いて唖然としている。
「ふふ。今のはMeteor Staff。隕石を降らせる杖だ。使い勝手は微妙で、威力もそこまで高くはないが、見た目はかっこいいだろう?」
「い、隕石?」
「まぁ、星を降らせてると思えばいい。」
「か、か、…」
めぐみん、どうした?
さっきから震えているが。怖がらせてしまったか?
「カッコいいです!何ですか今のは!?紅魔族的には満点ですよ!ええ!最高です!」
「おお、分かってくれるかめぐみん!だろう、やはり魔法はロマンだろ!」
「せっかくなので、詠唱考えましょう詠唱!」
うわぁ、中二病がなんか盛り上がってるよ、みたいな目でアクアたちが見てくるが気にしない。
「でも、攻撃魔法か…俺もザ・魔法みたいなの使ってみてぇなぁ。」
「カズマは冒険者なんだろう?教えてもらえればどんな魔法でも習得できるんだろう?」
ダクネスがそう言うが、どうやらそこまで自由な訳でもなく、強力なもの程、指数関数的に本職と比べたスキルポイントの必要量も増えるため、何でもと言うわけにもいかないらしい。
「それに、terrarianの魔法って、明らかに何か特殊なものだろ?そういうのは特に必要ポイントが増えるんだよな…うわっ。Meteor 必要ポイント100だってさ。」
「…ちょっとまて。私の魔法が習得できるのか?」
あれは装備由来の技だから、無理だと思っていたのだが。
「あぁ。でも、必要ポイントが多くってなぁ。」
カズマが、少し残念そうな顔で言う。
そんな顔されたら、どうにかしたくなるじゃないか!
「よし、なんとか習得出来そうな魔法がないか探してやる。ちょっとこい。」
「え、ちょ、terrarianさん?ちょ、ま」
「ふふふ、仲間強化イベントか、楽しくなって来たぞ…!」
数十分後。
いやぁ。うん。まさかここまでポイントが多いとは。だが、三つだけ、習得させることはできたぞ…!
「ありがとな、terrarian。お陰で魔法らしい魔法が使えるようになったぜ!」
「ねー。どうだったのカズマー?ヒキニートのカズマの事でしょうし、無理でもしょうがないから気にしないよーにねー」
「いつものカズマさんならここでブチ切れてるとこだが、今は魔法が習得出来て気分が良いから許してやろう。」
ダクネスがコーヒー片手にこちらへ寄ってくる。
「で、カズマ。どうだ?どんな魔法が習得出来たんだ?」
「ふふ、見て驚け…!Sparking!」
カズマの手から火の粉が勢いよく放たれる。割と眩しい。
Wand of Sparking*2を基にした魔法。序盤の武器だから派手さはないが、安定性はあるぞ。
「えー。地味じゃない?」
「んじゃまぁ、もひとつ。summon little bee!」
カズマの手から、とても小さな蜂がほんの数匹放たれる。
Bee Gun*3を基にした魔法。いまのカズマでは連射は出来ないが、数匹召喚するぐらいなら出来る。
「ちょ、カズマさんカズマさん、地味にチクチクしていたいんですけど、ちょっとやめてほしいんですけど!?」
「誰の魔法が地味だって?」
「ちょ、謝るから待って、謝るから待って!」
「そ、そのプレイをぜひ私に!」
そして夜が来る。
You feel an evil presence watching you
魔法武器で一番好きなのは、Meteor Staff!
ところで、Calamity modって、ストーリーがめちゃくちゃ作り込まれてますよね。
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vs.Eye of Cthulhu
「や、やめやめやめて!誰なの?いきなり現れて、どうして死者を成仏させる私の魔法陣を壊そうとするの!?」
「うっさい、黙りなさいこのアンデッド!リッチーのくせに生意気よ!そういうのはこのアークプリーストの私がやるから、あんたは周りの魂ごと成仏しなさい!」
「えぇ、ちょ、やめ!」
黒いローブを着た女性とアクアが、掴みあって暴れている。
それをカズマが止めに入るが、アクアは杖を振り回して抵抗しようとする。
いや、うん。ゾンビメーカー討伐のはずだよな。なんでこんな事になってるんだ?
事の発端は、ほんの数分前に遡る。
夜になったため、共同墓地へ乗り込み、ゾンビメーカーを討伐しようとしたのだが、そこにはゾンビメーカーの影も形もなく、その代わりに、怪しげな魔法陣の前でなにかをしている女性がいたのだ。
私たちは、一旦様子見をしようとなったのだが、アクアが突然、「リッチーがこんなところに!?成敗してくれるわ!」と言って、突撃してしまったのだ。
そのまま、取っ組み合いの争いになり、今に至ると言うわけだ。
なんでアクアはすぐ色んなトラブルを持ってくるのだろうか。
それはそうとして、なぁんか、さっきから何かに見られている気がするんだよなぁ、
カズマとダクネスがようやく、アクアと、女性を引き離す事に成功する。
「はぁ、はぁ。おい、大丈夫か、あんた。リッチー、でいいのか?」
「これは、危ない所を助けていただき、ありがとうございます。おっしゃる通り、リッチーのウィズと申します。」
「それにしても、なんだってあんなことを?アクアの言うことを借りるわけじゃないが、あんなこと街のプリーストに任せておけばいいんじゃないか?」
アクアがそうよそうよ!と言うが、とりあえずWooden Sword*1で軽く叩いて黙らせる。
無言で睨んでくるが、気にしない。
「いえ、その…良くも悪くも、この街のプリーストは皆拝金主義で…ええと、その…」
アークプリーストのアクアの手前、言いにくそうにしているが、まぁそれは事実としてあるだろう。
「この墓地の魂が、迷わずに天に還ってもらえれば、私もここにくる理由は無くなるのですが…」
パーティの皆んながアクアをじーっと見る。
「おい、アクア」
カズマがアクアをじっと見つめる。
「わかった、やればいいんでしょやれば!」
アクアが嫌々ながらもやることを了承してくれたおかげで、この問題もなんとかなりそうだ。
…なぁ、めぐみん、さっきから私の服の袖を掴んでどうしたんだ?
「あの、terrarian。さっきから宙に、でかい目玉が浮かんでる気がするのですが、気のせいでしょうか?」
eye of cthulhu has awoken
「な、なんじゃありゃああああ!?」
でかい目玉の様なモンスターが宙にふわりと浮いていた。
その目玉をこちらが認識すると同時に、その体が回転して、大きな口へと変貌する。
eye of cthulhu*2だ
と!?しかも最初から第二形態か…
「ちょ、ウィズ!あれもあんたの仕業なんでしょ!?」
「し、知りませんよ!」
アクアがウィズの首を絞めて詰問する。
「おい、そんなことしている場合か!?くるぞ!」
eye of cthulhuが、悍ましい叫び声を上げながら、突進してくる。
ガキン!
ダクネスが、大剣を盾の様に構えて、その攻撃へ割り込む。
「あぁ、弱い、弱すぎるぞ!もっと強く、もっと強くぶつかってこい!」
…なんか大丈夫そうだな。
「皆さん!下がっていてください!『カースド・クリスタルプリズン』!」
eye of cthulhuの体が、獄氷の檻にとらわれる。
体を捩らせ、無理やり脱出するが、その体からは、おびただしい量の血を噴き出させていた。
「これで終わりです!『カース・オブ・セイバー』!」
ウィズが、その右腕から、プラズマで構成された、光の剣を射出し、eye of cthulhuの体を貫く。
うわっ瞬殺。
「お、おい。これなんとか友好的に済んだから良かったけど、アクアがあのまま戦っていたら俺たち死んでたんじゃ?」
…メカニカルボスよりは強そうだな。というかあの威力の魔法連発はズルだろズル。
「少なくとも私とカズマは死にますね。リッチーって伝説級のアンデッドですよ?」
「まじかよ…」
…おかしい。何かから見られている感覚が消えない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここより遥かに上空の謎の空間にて、ひとりの男が機械を操作する。
「やはりあの程度では、この世界の住人のレベルを図ることは出来ないか…おい、ドレイトン、あれを使え」
「御意。」
ドレイトンと呼ばれた男が機械を操作する。
同時に、地上のeye of cthulhuの死体に、変化が起きる。
「さぁ、Retinazerよ、存分に暴れてくれたまえ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「なぁ、このよくわからないモンスターが、ゾンビを呼び出していたってことにすれば、ウィズのことを隠して報酬も貰えるんじゃないか?」
急に現れた巨大なモンスターに一瞬慌てるも、ウィズの超火力によってことなきを得たので、依頼についてちょっと話していた時のことだ。
eye of Cthulhu の死体が脈動する。
なんだ、何が起きている!?
まさか復活でもするのかと思い、死体をInferno Fork*3 で焼き尽くそうとするが、僅かに遅く、謎の金属によってその死体が覆われる。
「お、おい、terrarian。何が起きてるかわかったりってしないか?」
「こんなことは想定外だしなんならこんな現象は見たことがない。」
なんとなく次に何が起こるかが想像ついたので、hard*4レベルの武器を構え、金属に覆われた死体を睨みつける。
金属に覆われ、球体となった死体は高速で回転して、一つの形へと変貌する。
「Retinazer…だと!?しかもまたいきなり第二形態じゃないか!」
「皆さんすいません。さっきの様に簡単には行かなそうです。」
あたりの空気が急速に冷える。
「ちょっとterrarianさん?あれなんなのよ…?」
通常個体とは違い、周りに謎のドローンを浮かべ、その体をバリアーで守るRetinazer*5が、こちらへビームを放ってきた!
ウィズは多分これぐらいは出来る。というか肉壁ぐらいまでなら一撃必殺出来ると思う。
このプレイヤーはなんとゼニス以外の武器は全て所有しています。
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vs.???製のRetinaizer
両手に持った銃器ーUzi*1とMegashark*2で、Retinazerの体を穿とうとする。
「ちっ、バリアーを剥がさなきゃ本体にも攻撃は通らないか…!」
素早く弾倉を取り替えて、今度はドローンの方を攻撃する。
「『カースドライトニング』『インフェルノ』!」
ウィズも魔法で加勢する。
これほどの超火力を食らえば、ドローンも壊れるだろうと思ったが、そこには何一つ変わった様子がないドローンが浮遊していた。
「ちっ、こいつらも無敵か…何か条件が?」
Retinazerが、お返しと言わんばかりにレーザーを放ってくる。
「まぁ、その動きは何万回も見たから回避は余裕なんだけどな。」
レーザーとレーザーの間を縫う様にして攻撃を回避し、Retinazerに肉薄する。
ウィズの方は、おそらく自分ではったであろう魔法障壁によって弾いている。
Celestial Starboardに乗って、高速飛行によりRetinaizerの攻撃を避けながら、さまざまな武器による攻撃を試すが、全て不発に終わる。
ちっ、レーザーのダメージも、かつて戦った者よりも上がっているな…
「『ライトニング・ストライク』!」
ウィズが、両手を天に掲げると、Retinaizerの体に雷が落ちる。
その時、私の両目が、とある情報を捉えた。
「ウィズ、攻撃を続けろ!1ダメージだが、雷による攻撃は効いている!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
目の前では、ウィズとterrarianが、目玉型の機械と激戦を繰り広げている。
目玉の放つビームは、禍々しい赤い光を放ちながら天を引き裂き、ウィズの魔法が強烈なエネルギーを放つ。
terrarianは、どこから取り出したのか、大量の武器を目まぐるしく入れ替えながら、なんとかしてRetinaizerにダメージを与えようとする。
「すげえな、異世界。」
悍ましくも幻想的な情景に、目を奪われながらも、カズマは考える。
カズマは、アクアの言う通りヒキニートだったが、バカではない。
今までやってきた数多のゲームの中に、何かヒントがあるはずだ。
ダクネスの陰に隠れながら、二人と1匹の動きを観察する。
視界の端で、アクアがビームの流れ弾に当たって慌てているが、気にしない。腐ってもあいつは女神だ。少なくとも、あの程度の攻撃は耐えるだろう。
「おい、アクア!お前女神なんだろ!あのバリアをはがしたり出来ないのか!?」
「無理よ。あのバリアは多分周りに浮いてるやつが生きてる限りは剥がれない、そう言う概念を付与されているわけ。だから無理よ」
バリアを剥がせばめぐみんやあの二人の超火力で吹っ飛ばせると思ったんだけどな…
さらに観察を続ける。
ちょうど今、ウィズが、周りに浮いているドローンに雷を命中させた。
…おい、ほんのちょっとだけど、効いてないか!?
でも、ゲームで言うところの1ダメージとかそこらしか効いていない様に見える。
機械は電気に弱い。よくある設定だ。
でも、ドローンの表面で殆どの電気が霧散してしまい、内部までダメージが通って無いのだろう。
内部に直接高圧の電流を送り込めればな…
こう言う時は、水をかけて、っのがあるあるだけども、結局表面で霧散するだけだからな。金属に水が染み込む訳でもねぇし。
考えている間にも、ダクネスの体にビームが何回も命中するが、ぴんぴんしている。…ドMだけど、やっぱ頼りになるな。とか思って見たり。
余計な思考を振り払いながら、もう少し観察する。
…そうか、機械ならどこかに排熱機関があるはずだ!そこから電流を流し込めば!
「おい、アクア、ドローンを包み込む様に水を流せたりしないか!?お前、なんちゃらの女神なんだろ!」
「水の女神よ!任せておきなさい、大洪水でもなんでも起こしてあげるわ!」
アクアがドヤ顔で杖を取り出す。
なんか湿度が上がってきてねぇか!?あいつ、なんかやらかすぞ!
「バカ野郎!それじゃ意味ないんだ!あんま多すぎず、少なめでいいから!」
「分かったわよ!『セイクリッド・ウォータージェイル』!」
Retinaizerの周りに浮遊した、ドローンの体が水浸しになる。
「今だ!ウィズ!terrarian!でかい雷をお見舞いしてやれ!」
「任せてください!『カースド・ライトニングストライク』!」
ウィズの体の周りがバチバチと放電する。
あまりの魔力の高まりに、周囲の空間が歪む。
天から、目も開けていられないほどの光が、機械の体を穿つ。
バリアに、ヒビが入る。四機のうち、三機のドローンが崩壊する。
「壊れろ!Electrosphere Launcher!」
terrarianの持つ武器から、強力な電気が放たれる。
青白い光が周囲に満ちる。
バリアが壊れた。
「めぐみん!」
「最高のお膳立てありがとうございます!
ー黒より黒く、闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!
踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり。万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!これこそが究極の攻撃魔法、エクスプロージョンっ!」
Retinaizerの真上に、多重に展開された魔法陣が現れる。
一条の光。
一瞬ののちに、爆音が響き渡り、爆風が大地を巻き上げる。
めぐみんは、満足そうに、地面に倒れ伏した。
やったか?誰もがそう思った。
だが、あれだけでは、まだ、削りきれていない!
土煙の中から、ひときわ強力なビームが、めぐみんめがけて放たれる。
まずい、間に合わん!
めぐみんにビームが当たろうとした時、カズマが間に割って入る。
「これが、俺の三つ目の魔法だぁ!『クリエイト・ice block』!」
Ice Rodを元に、私がついさっきカズマに教えた魔法。それは氷のブロックを作るだけの魔法だが、防御性能と、出の速さは、ほかの魔法よりも速い。
よくやった、あとは、私の出番だ!
「よくやった、カズマぁ!あとは、私に、任せろ!」
「ちょ!?」
ウィズが一瞬止めようとしてきたが、止まらない。
バリアが剥がされた今、あいつはただの、金蔓だ!
Retinaizerが発狂して、360度、あらゆる方向へビームを放つ。
知らない動作、知らない技。
どれも初見で回避するのは難しいが、一流のterrarianにもなれば、その程度、造作もない事だ!
adrenalineが、溜まる。闘いのボルテージは最高潮だ。
攻撃が緩んだ今が、チャンスだ!
adrenalineを、解放する。
かつての最強の弓を構える。
Tsunami。とある海の公爵が落とす、波のごとく矢を放つ弓。
引き絞って—射出。
数十の、威力が拡大された弓が、Retinaizerの体を粉砕した。
お気に入りが増えると、作者は喜びます。
感想が来ると、狂喜乱舞します。
評価がつくと、もうすごいうれしい。
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休足
謎のRetinaizerを討伐した日の翌日の朝のことー
ああ、いい。すごくいい。
朝から入る風呂は最高だな、他の客も居ないし。
それにしても、ここまででかい風呂を作るという考えはなかったな。私が元いた世界にも風呂はあったが、基本的にBathtubの様な一人分のサイズのものしか無かったからな。
ゆったりと、風呂を楽しむ。
静かな浴場に、くぐもった音が響く。
アクア達が先に上がってから入ったので、完全に一人だ。
体に溜まった疲れが流れ落ちる。
ふと自分の足を見る…一人で入って良かったな。
Celestial Shell*1を外し忘れていたせいで、お湯に浸かっている部分がマーフォークになってるじゃないか。
アクセサリーを外してしまった後、少し風呂で泳いでみたりして、風呂を楽しむ。
しばらくした後、体をよじりながら大きな伸びをして、風呂から上がる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
普段着のKimono*2に着替えて、カズマ達の待つ酒場へと入る。
せっかくTraveling Merchant*3から買った異国の服装なので、服装に合わせて腰にMuramasa*4を腰に差しておく。
うん。バッチリ決まっているな。
酒場の中に入る。
まだ朝だというのにそこそこの数の冒険者が、酒瓶を片手に駄弁っている。
ひょっとするとこいつらGuide*5よりも働かないんじゃないか?
カズマ達は、…あそこか。
カズマはどうやら別のパーティーのメンバーと何やら話しているらしい。
「おーい。カズマ。なんの話をしているんだ?」
「ん?ああ、terrarianか。…着物に、刀!?カッコいいなそれ、どこで買ったんだ?」
「ふふ、どうだ、かっこいいだろう。旅商人から着物は買って、Muramasa はDungeon*6から手に入れたぞ。」
「へえ。やっぱ異世界。ダンジョンとかあるのか…村正!?」
カズマと話していた男からしゅわしゅわを一杯手渡される。あぁ、ありがとう。
感謝を伝えると、男は無言でサムズアップしてきた。
「で、カズマ達は結局何の話をしていたんだ?」
「あぁ。なんでも、こいつがいうには街はずれの古城に、魔王軍幹部がやってきたらしいんで、その話をしながら駄弁ってた。」
「ま、俺たち弱小冒険者には関係のないことだがな。」
男とカズマがガハハと唾を飛ばしながら笑う。
「魔王軍幹部か…ちょっと様子でも見に行こうかな?」
懐に常に忍ばせてあるPsycho Knife*7を左手で弄りながらそう呟く。
一瞬空気が凍った後、おい馬鹿やめろと、カズマ達に止められる。
ちぇっ。つまんないな。
男に礼を言って、カズマとともにアクア達のいる席に向かう。
男には、しゅわしゅわの礼に、Super Healing Potion*8を渡しておく。まぁ、うまく使ってくれたまえ。
特にすることも無いので、アクア達のいる席に戻る。
あー…うん。アクア達拗ねてるな。
カズマが、ダンジョンに落ちていたラブコメなる漫画の様になっているが、そっとしておこう。
次回で、結構terraria色出せるといいなー
感想、評価、お気に入りありがとうございます!めちゃくちゃ励みになります!
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閑話ーGlowing Mushroom 1
仕事が…ないっ!
酒場の、クエスト掲示板の前で立ち尽くす。
簡単なクエストが、一個も貼られていないのだ。
原因は、確実に魔王軍の幹部が、街の周辺にやってきたからだろう。
そのせいで、弱いモンスターが隠れてしまい、結果的に高難易度なクエスト以外無くなってしまったのだ。
ろくなクエストもないので、ダクネスは実家に帰って筋トレを、アクアはバイトをしている。カズマとめぐみんはどこかへ出かけてしまった。
うーん。どうするべきか。
正直、高難易度クエストも、ソロでクリア出来るだろうが、難易度hard coreな世界で危ない橋は渡りたくない。
だれか、臨時パーティでも組んでくれないだろうか?
…あ、そういえば。
酒場の方を見る。
いつも隅っこで座っている少女。噂では、上級職のアークウィザードらしい。
「ちょっと、いいか。」
む、反応がない。
「そこの、トランプタワー作ってるお前、ちょっといいか?」
「はっ!はいっ!な、なんでしょうか……?」
うおう。目の前の少女が勢いよくこちらを見る。
あぁ、トランプタワーが倒れてしまう。もったいない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「え、私と臨時パーティを組んでほしい、ですか!?」
「あぁ。パーティメンバーが皆、用事があってしばらくクエストに行けなくてな。少し手伝ってほしいクエストがあってな。」
「え、私なんかでいいんですか…?」
「アークウィザード、なんだろ?心強い。それに、うちのアークウィザードと違って、悪い噂は聞かないからな。もしよければ、一週間ほどパーティを組んではくれないか?」
「いいんですかありがとうございますじゃあさっそくいきましょうどんなクエストにしますか」
うおういきなりグイグイ来るな。顔が近い近い。
「あ、あぁ。このクエストを手伝って欲しくてな。近隣の山の中腹にある洞窟内部で起こっている異変の調査だ。」
「いきましょう。今すぐにでも行けますよ。」
「ああ。terrarianという。よろしく頼む。」
「ゆんゆんです。不束者ですが…」
「いや、それは違うと思う。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
クエストを受注し、目的の山へ向かって、歩き始める。
何にも汚染されていない空気*1が体に染みる。
美しい空だ。
「terrarianさんは、地図もないのに、よく道に迷いませんね。」
「まぁ、Terrarianとしての、技能のようなものだな。脳内に地図のようなものを作れて初めて一人前のTerrarianだからな。」
「すごいですね!」
ゆんゆんと、他愛もない話をしながら平原を歩く。
見通しの良い平原では、特にモンスターと出会うこともなく、穏やかな時が流れる。
うーむ。このままだと山に着くのに数日はかかるな…よし。
「ゆんゆん。歩きだと時間があまりにもかかりすぎるから、少し乗り物に乗るぞ」
「え?」
ポケットからアイテムを取り出す。
Witch's Broom*2をすぐさま展開して、ゆんゆんを私の後ろに乗せる。
「じゃあ、発進…!」
「ひゃ、ひゃあああああああ!?」
凄まじい速度で飛行する。風景を置き去りにする。
「ひゃっはああああああ!」
高速飛行は最高だな!機動力こそ至高なり!
「速いって、速すぎますってぇえええええええ!」
ゆんゆんの悲鳴が虚空へと吸い込まれて、消えていった。
森林地帯へと差し掛かる。
あまり手がつけられていないのか、木々は生い茂り、先ほどとは打って変わって、陰鬱な雰囲気を醸し出していた。
「terrarianさん…」
ゆんゆんが怨みがましい目で見つめてくる。
「なんやかんや行って後半はゆんゆんも楽しんでたじゃないか。やっぱ空を飛ぶのはいいだろう、最高だろう?」
「でもですねぇ…」
森の奥へと移動する。ここを抜ければ目的地の山が見えてくるのだが…
暗い、な。
ふと、木の表面が気になり、撫でて見る。
青白い…胞子のようなもの、か?
「terrarianさん、見てください、これ。」
ゆんゆんが、青白く輝くキノコを渡してくる。
…Glowing Mushroom*3じゃねえかこれ!?
よくよく見ると、目的地への方角にある森は、全て青白く輝いているように見える。
一体何が起こっているんだ…?
terrariaのnpcって個性強いのよね…
terrarianの切り札は、1.4時代の装備。
Calamity などのmodはあくまで1.3時代。どこまで抗えるかな?
感想、とても励みになります!ありがとうございます!
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閑話ー???との邂逅
「ゆんゆん、右だっ!」
体に青い菌糸を纏うマンティコアとグリフォンをFetid Baghnakhs*1で細切れにしつつ、ゆんゆんに指示を飛ばす。
「はいっ、『ライトオブセイバー』!」
光り輝く魔法の刃が、右側より現れた一撃熊を一刀のもとに斬りふせる。
菌糸に覆われた森に入ってまだ数分にもかかわらず、すでに殺したモンスターの数はゆうに40を越えている。
「ちっ。何が起きているんだ」
「一度、この辺りに来たことはありますが、青い菌糸に覆われてはいませんでしたし、モンスターもそこまで凶暴ではありませんでした。」
進行方向を塞ぐように出て来た、菌糸に覆われた甲羅を持つ亀を、Rocket Launcher*2で爆散させる。その死体の中から湧いて来た、同じく菌糸に覆われた虫を、ゆんゆんが焼き払う。
光を捉える暗い森の中を魔法の光がてらす。
あたりに胞子が漂う。
体が重い。
「一体一体は雑魚だな…どうする、ゆんゆん。依頼の、洞窟内部の調査は出来ていないが、一旦引き返すか?」
迫りくるモンスターを切り捨てながら話す。
「…行けるところまで行きましょう。その気になれば、テレポートで帰還することも出来ますし。」
「そうか。そうするか。」
菌糸に覆われた森を進む。
…Mushroom Biomeかとも思ったが、違うな。
何か、こう、異物が混ざっているような感覚を覚える。
「terrarianさん。なんでしょうか、これ?」
「見せてみろ。…何かの金属のかけら?見たこともない金属だな。」
軽く叩いてみる。大体鉄と同程度の能力、だな。
先へ進む。
奥に行くへ連れて、モンスターの襲撃は激化して行く。
それに比例して、落ちている金属片の数も増える。
「はぁ、はぁ、幾ら何でもおかしいですよ!?一つの森にいていいモンスターの数じゃありません!」
ゆんゆんが、菌糸に覆われたワイバーンを蹴り飛ばしながら叫ぶ。
「本当に、多いな!ブラッドムーンでもここまで酷くないぞ!」
Starlight*3で、トレントの群れを破壊しながら答える。
全てのモンスターを片付けた、そう思った時のことだった。
なにかを引きずるような音とともに、今まで殺したはずのモンスターたちが起き上がる。
いや、今まで気づいていなかっただけで、今まで殺したつもりだったモンスターの中にも死体が紛れ込んでいたのかもしれない
「おいおい、まじかよ…」
そりゃ、モンスターの数が減らないはずだ。
動き上がった死体は、その濁った目で、こちらを睨みつけ、再び襲いかかって来た。
ー何かに見られている気がする。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ひゃっはー!死体は焼却処分だ!」
片手にFlamethrower*4とElf Melter*5を持ち、森ごとモンスターを焼く。
「ちょ、terrarianさん、落ち着いて落ち着いて!」
「死体ごと焼けばもう蘇る心配もない!最高じゃないか!」
…それに、おそらくいかなる手段を用いても、この森をもとに戻すことは不可能だろう。
真紅の地や、不浄の地のように、侵食もしているようだし、ここはいっそのこと焼却処分すれば良いのではないだろうか?
火炎放射器を両手に抱えて進軍する。
あたりに灰が飛ぶ。
ようやく目的地へたどり着くことができそうだ。
ようやく洞窟も見えて来た頃のことだ。
空が、赤く染まった。
あたりの空気が暖かくなる。
燃えるような気配。
一瞬の閃光。
のちに大きな轟音がなる。
「は、え、は…?」
目の前の洞窟が崩落する。
…いや…山ごと崩れている!?
「ゆんゆん、飛ぶぞ!」
すぐさまwingを展開して、ゆんゆんを抱えて飛ぶ。
目の前の山が崩壊して、森ごと潰し、押し流す。わずかに残った森が、燃える。
山が溶ける。
めぐみんの、爆裂魔法では比べ物にならないほどの爆発。
一体なにが起きている…!
燃え盛る火炎は、竜巻を形成し、空を飲み込む。
その火炎の中に、Moon Lord ー彼の月の王を超える強大な気配を感じた。
「ゆんゆん、お前は先に逃げろ!」
ゆんゆんの口に、無理矢理Recall Potionを含ませる。
「え、ま、まっt」
ゆんゆんの姿が消える。
一瞬だけ、火炎の竜巻が消える。
その中にはー1匹の、竜がいた。
圧倒的な気配で、息がつまりそうになる。
汗が止まらない。
「あ。」
気付かれた。
「…ん?人間、か。はぁ。ドレイトンの糞が。実験をするなら、ほかに見られないようにしろと言っただろうが…!まぁ、殺せば問題ないか。」
竜が吠える。
火炎の旋風が迫る。
無理矢理回避するが、体の近くを通る火炎の熱量だけで、命が削られる。
「くそったれが…っ!」
口に無理矢理バフポーションを全て含む。
装備をすぐさま、本当に本気の時の装備へと換装する。
魔法系最上位装備。Nebula Armor。星雲の力を宿し装備に身を包み、その手に最後の三角錐を握る。
最初の一撃で死ななかった私に苛立ったのか、全方位を囲むように火炎弾を発射してくる。
翼の機動力を生かし、なんとか回避を続けるが、その熱は確実に、私の体力を奪っていく。
「付き合っていられるか…!」
最強の魔法兵器ーLast Prismを両手で掲げる。
魔力が満ちる。
より苛烈さを増していく攻撃を避けながら、攻撃のチャンスを伺う。
数分間の回避の末、一瞬だけ相手の攻撃が途切れた。
今だ…!
Last Prismから、極太のレーザーが放たれた。
火炎の竜巻を貫き、竜の体を貫いた。
…かに見えた。
そこにあったのは、今だ一切の傷を負っていない、竜の姿であった。
ー何かに見られている気がする
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Detonating Flames
嘘…だろ…
今の自分が出せる最高火力。
それでもあの竜の身に傷をつける事は叶わないというのか…。
「はぁ。俺の攻撃を、数分回避し続けたから、久しぶりに楽しめると思ったんだがな…もういい。『焼け死ね』。」
竜の翼が赤く輝き、私の周囲を囲うように火炎の竜巻が展開される。
「さぁ、終わりだ。」
竜が吠える。
空気が燃える。
空が橙色に染まる。
そして…急に、竜が動きを止めた。
竜の体を覆っていた鱗が、数枚剥がれ落ちる。
Last Prismによる一撃は、たしかに竜の身を、傷つけていた。
それは、竜の体から感じ取れる膨大な生命力ー数値にして約400万ーそれからすれば、微量ではあるものの、ダメージを与えることができた。
「ふふ、はははははは!
ふはははははははははははは!」
竜が心底楽しそうに笑う。
「退屈な仕事だと思っていたら、なかなかどうして…!最近は神喰らいのやつともやりあえて無かったからな、久方ぶりに楽しめそうだ!」
こっちは全く楽しくないんだよ!
竜が吠え、竜巻が体を押しつぶそうとする。
空へ向けて飛翔する。
体にまとわりつくような、重い空気を切り裂きながら、Last Prismの力を放ち続ける
竜は動かない。
その身にLast Prismの光線を受けながら、微動だにしない。
紅蓮のごときその眼でこちらを睥睨する。
竜が吠えると、たちまち空気が発火し、100を超える火球が放たれ、移動を制限するように火炎の竜巻が発生する。
一つ一つの攻撃を何とか回避しつつ、反撃を続ける。
傷が付くなら殺せるはずだ。
数時間にも感じるほど長い一瞬。
だんだんと、周囲の空気の温度がより高くなっていく。
崩れた洞窟の残骸は融解を始め、周囲の景色が、まるでMirage Dye*1のように歪む。
体はもう疲れ切っているはずなのに、動きはどんどんとキレを増して行く。
adrenalineが体に満ちる。
ああ、楽しい、楽しい!
Last Prismを天に掲げる。
今までは全く回避行動を取ろうとしなかった竜が、流石に不味いと思ったのか、こちらへ突撃してくる。
Last Prismは、収束して最大威力を発揮するまでに時間がかかる。その隙に、殺してしまおうという算段だろう。
隙をそのままにしておく義理も理由も無いんだがな。
竜が自身の目の前まで迫った時。竜の体を太陽の鎖が捉えた。
発動するかはわからなかったが、うまくいった…!
terrarianが手に握っていたのは、terraria世界のアイテムではなく、この世界のアイテム。
使い切りだが、使用すると、盗賊専用スキルの「バインド」を発動するというもの。
この前知り合ったリッチーから押し付け…譲って貰ったものだが、発動して良かった!
竜の体を、Solar Eruption*2が絡め取る。
「小癪な…!」
竜の口から炎が放たれる。
それがわたしに命中する寸前ー膨大なエネルギーが解き放たれる。
adrenaline
普段の数十倍の威力を秘めたLast Prismが、竜の体を貫く。
さぁ、このまま死ね、死んでしまえ!
月の王ですら一瞬で溶けるような高火力。
圧倒的エネルギーの奔流。
右腕に激痛が走る。
武器が地面へと落下する。
「あ、え?」
肩から下が無くなっている。
傷口が炭化し、断面は硝子のように溶けている。
流れ出る血が蒸発する。
次の瞬間、左腕も消し飛んでいた。
肉を咀嚼する音がする。
竜が、私の腕だったものを、食べていた。
天に、太陽と見間違えるような熱量を持った火球が現れる。
「さよならだ。久方ぶりに、楽しめたぞ」
竜が嗤う。
「最後に、名前を教えといてやろう。名も知らぬ人間よ。我が名はYharon。もう2度と会うことも無いだろうがな」
太陽が、落ちる。
その閃光の中に、一本の、剣の姿を見た気がした。
「Yharonーーーさまがーーよー。」
「calーか。ーーーーはーーーーー。」
「どうせーーー中でーきてー。筈がーーー。時間のーー。」
「それーーーだ。大ー災ー。」
(実は竜のHPは半分も削れていない)
感想ありがとうございます!励みになります
次回は、作者がデスモでスライムゴッドを倒したら投稿されます
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Silence after the storms
暗く、暗く、また暗く。
暗闇の中。
だれかが見ている。
不定形の何か。
その存在から感じる気配は、まさに災厄そのものだった。
その何かが私に近づいてきて、頭を覆う。
何かが入ってくる。
鮮烈なイメージ。
地獄の中で、1匹の竜が、主人を救おうと生まれた話。
全ての厄災は、ここより始まった。
視界が真っ赤に染まる。
っ……!
「あ゛あ゛あああああああああああ!はぁ、はぁ、はぁ。」
飛び起きる。
悪夢でも見た後のように、汗だくになって目覚める。
ここは、どこだ…?
あたりを見渡す。
森の中。
何で、こんなところにいるんだ…?
腕をついて起き上がろうとするが、腕が空を切り、倒れこむ。
あぁ、思い出してきたぞ。確か、わけのわからない強さをした竜と戦闘になって、そして、巨大な火球を食らって。
…そこから先の記憶がないな。死んだと思っていたのだが…
何で私は生きているんだ…?
腕に包帯も巻かれているが、誰が…?
自分の体を見ると、腰に、ボロボロになって炭化したMaster Ninja Gear*1が巻き付いていた。そうか、こいつが守ってくれたのか…
体を捩らせて、無理矢理起きようとすると、いつのまにか近くにいたゆんゆんが駆け寄ってくる。
「あぁ、あぁ!目が覚めたんですね!」
「ゆんゆんか。…無事ポーションの効果が発動したようで良かった。」
「はい、あの、terrarianさん…」
ゆんゆんが何か言いたそうにしているが遮る。まずは腕をなんとかしないことには始まらないからな。
「とりあえず、そこに落ちてるVoid Bag*2からちょっと取り出して欲しいものがあるんだが…何せ腕がないもんでな。」
まぁ、死ななければポーションで治せるから何の問題もないんだがな。
「っ…。私が、あの時私が、探索を続けようといったばっかりに!ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめn」
ゆんゆんの目からハイライトが消える。
そうだこっちの世界だと部位欠損が治るようなポーションは超貴重品なんだった!
「おーい戻ってこーい。壊れたGuide*3みたいになってるぞ?」
足で器用にMegaphone*4を持ち、ゆんゆんの耳元で叫ぶ
「ひゃあっ鼓膜がっ!」
「よし、戻ってきたようで何より。とりあえずVoid bagからポーションを取り出して欲しいんだが」
うおっとまたハイライトが消えたぁ?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ー30分後ー
やっとポーションを取り出してくれたか…心がThin Ice*5で出来てるのかと思ったぞ…?
取り出してもらったGreater Healing Potionをなんとか飲み干す。
腕に激痛が走る。
それと同時に、断面から、新しい手が生えてくる。
「…ん、く、ふぅ。」
いやぁ、ここまで手酷くやられたのはいつぶりか。
「…よし、と。ゆんゆん。街に帰るぞ。」
「え、腕が生えてきた!?」
あ、ちなみに作者はスライムゴッドに勝てませんでした。
感想、ありがとうございます!励みになります!
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Calamity in the…?
ドラゴンの痕跡がないか探そうということになり、徒歩でアクセルまで帰ることになった。
その帰り道のことだ。
…檻に入ったアクアをカズマ達が運んでいるのを見つけた。
何があったのかを聞こうとカズマ達に駆け寄ると、ゆんゆんがめぐみんへ突進する。
それと同時にカズマが私に話しかけてくる。
「おい、terrarian!何処行ってたんだよ!お前がいない間大変だったんだぞ!魔王軍の幹部は襲来してくるし、仕事がないからって、向かった湖の浄化依頼では、なんか湖が血みたいに赤く染まってたし、アクアが湖を浄化してたらクソでかい脳みそが襲ってきたで、地獄だったんだぞ!」
カズマに詰め寄られる。
…話を聞く限り、湖が真紅化*1してるじゃないか!
「よく生き残ったな。」
「周りに浮いてた変なのを倒したら、あとはめぐみんの爆裂魔法で1発だったぞ!それにしても、あの小さな奴らの打撃は、なかなかの…」
ダクネスが恍惚とした表情で戦闘の詳細を教えてくる。肝心のめぐみんはどうやら向こうでゆんゆんと話し込んでいるようで。
「まぁ、私の方はなんともなかったな。一撃で山を溶かすドラゴンに両腕をもがれて殺されかけたぐらいだな。よくあること*2だな。」
「…冗談だよな!?頼むから冗談であってくれよ!?」
「冗談だ。…なんともなかったという部分だけはな。運が悪ければ今頃灰になってたな。…ところでアクアはいつまでそうしているつもりだ?」
アクアが檻の中で縮こまって哀愁漂う歌を歌っている。何か大きい力で歌が聞き取れなくされているな。*3
アクアは結局機嫌を直すことなく、街についてしまった。
「ゆんゆん、街に着いたらとりあえずあのドラゴンのことを報告しなければならないと思うんだが…」
ゆんゆんと、あのドラゴンの話をしながら街を歩いていると、気づいたらカズマ達の姿が消えている。
…ほんの数分前まで近くにいたはずなのだがな…。どうやら話に集中しすぎていたようだ。
あたりを見渡し、カズマたちを探す。
後ろを振り向くと、カズマ達が全身から、俺は勇者だ!というオーラを放つ青年に絡まれていた。
どうして彼らは毎回面倒ごとに絡まれるんだろうか…ゆんゆんを先にギルドへ向かわせ、カズマ達と合流する。
「おい、ダクネス。カズマは一体何をしているんだ?というかこいつら誰だ?」
見た感じは…決闘か?*4あ、カズマが青年の剣を奪った。なかなかやるな。
「あぁ、terrarian。実はカクカクしかじかで…」
青年の取り巻きの少女達が卑怯者ー!と叫んでいるのを尻目に、ダクネスから事情を聞く。
「つまり、勘違いをしたあの青年に、カズマが決闘を挑まれたというわけだな…はぁ。」
初心者狩りか…それはマルチプレイで一番やってはいけないことだろう…それに、万が一hard coreの世界でカズマが死にでもしたらどうする?ほんとうに、苛々するなぁ。カズマにも非はあるとはいえ、ムカつくなぁ…
なら、殺してしまっても、構わないんじゃないかしら?
っ…。一瞬頭痛が…。思ったよりドラゴンから受けたダメージが大きかったか?まぁいい。ちょっと手を出すとしようか。
カズマから持ってた剣を奪い取り、青年に投げ渡す。
「おい、terrarian!何するんだよ!」
「なぁに、少し痛い目を見せてやろうと思ってな。どうせ、卑怯な手で負けたならノーカンとか考えているんだろう。」
「そこの君、剣を返してくれたのはありがたいが…」
青年は困惑している。
無理もないだろう。卑怯な手で自分の剣を奪った男の一味が、急にその剣を返してきたのだから。
「どうでもいいから、さっさと剣を構えろ。」
「え、えぇ?」
困惑している青年に倒して、取り出した剣で軽く斬りかかる。
「Excalibur*5。早く反撃してこないとその綺麗な顔に傷がつくぞ?」
「エクスカリバーだって!?君も、転生者なのか?」
「何を言ってるんだお前は。」
困惑している青年を蹴り飛ばし、そのまま連続で斬りかかる。
ただ素早く斬りかかっているだけにもかかわらず、青年は防戦一方…ダメだな。
この調子じゃ、Excaliburどころか、Copper Shortsword*6でも問題ないな。
Copper Shortswordに持ち替え、青年の懐に潜り込み、連続で打突を喰らわせる。
流石の青年も、その頃にはなんとか私の攻撃を避け、反撃をしようとしてくるが、そんな殺意すら乗らない、弱い攻撃では、私には当たらない。
鎧のお陰で大したダメージにはなっていないが…あのままExcaliburを使っていたら、10回は死んでいるぞ?実力と武器の質が釣り合っていないな。
あの鬱陶しい神どもが用意した転生者とやらもこの程度…期待はずれね。こいつでこの調子なら、誰もあのお方には敵わない。全員、殺してしまいましょう?
くっ…また頭痛が…。
短剣で、青年の腹を軽く突き、気絶させる。
「はぁ。つまらん。終わりだ。」
剣を逆手に持ちかえ、振り下ろそうとする。
「…!それはまずいだろ!『バインド』!」
追撃を加えようとした私を、カズマが私をロープで縛って止める。
取り巻きの少女達が青年を抱えて、どこかへ去ってゆく。ちゃっかり剣も忘れずに持っていってしまった。
ダクネスがロープをちぎって、追いかけようとする私を地面に組み伏せて止める。
「おい、今日のterrarian、おかしいぞ…?」
「あぁ、たしかに変だ。おい、terrarian。俺たちと合わない間に、一体何があったんだ…?」
スライムゴッドは水中KBFで倒した(小並感)
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Writing Too Late
「俺たちと合わない間に、一体何があったんだ…?」
カズマが心配そうに質問を投げかけてくる。その頃には頭痛も治り、意識がはっきりとしてきていた。
「何かあったかと言われれば、菌糸に汚染された森に行ったりドラゴンに死ぬ一歩手前ぐらいまで痛めつけられたりと色々あったが…そういうことを聞きたいんじゃないってことはわかるぞ。」
「これはいつも通りのterrarianですね。間違いありません。」
おいめぐみんそれはどういう意味だ。
「そういえば、ゆんゆん、あなたterrarianと一緒にクエストに行っていたんですよね?何かわかるんじゃないですか?」
「そんなこと言われても…」
記憶を一つ一つ思い出そうと、ゆんゆんがうんうんと唸っているが、特に何も思い当たる節はないようだ。
めぐみんたちが話している中、急にアクアがこっちへ向かってきて、頭に手を当ててくる。
「おい、アクア。どうした?」
「ちょっとだけじっとしてなさい。」
アクアが私の頭に触れている手に力を込める。
頭に激痛が走る。頭の中に鋭い鉄の棒が差し込まれたかのような感覚。急に眩しい光がアクアの手から放たれ、何も見えなくなる。
っ…!何かが頭の中で蠢いたかのような感覚が…ぁ…。
「…ぃ、おい、今何をした、アクア。」
「いや。さっきのterrarianからよくない気配を感じたから、何か憑いて精神に干渉しているんじゃ無いかって、確かめてみたのよ。
この世界には精神に干渉するモンスターもいるのか…それは恐ろしいな。
「私も、特に
「ふーん。ならきっと興奮しているだけでしょ。」
「そういえば、激しい戦闘のあとは気分が高揚してテンションがおかしくなるっていうからな」
「なんだよそれ、バーサーカーかよ」
少し話した後、
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
湖の浄化クエストの報告をしているカズマたちの隣で、今回のクエストであったことを報告する。
隣でアクアがぎゃーぎゃー騒いでいるが、気にしない。
「…はい。確認しました。山を溶かすほどのブレスを吐くドラゴン、ですか…にわかに信じがたいですが、嘘を感知する魔道具にも反応は無いようですし、幻惑魔法にかかった痕跡もない…それに、菌糸に森が覆われていたと。前回派遣した冒険者からの報告では汚染されていたのは洞窟の内部だけでしたのに…」
受付嬢は、何やら魔道具を操作したり、書類にメモをしたりと、忙しない。
「あぁ。森は真っ青に染まっていたぞ。まぁ、それもドラゴンに山ごと破壊されたがな。」
「はい。私がterrarianさんを助けに行った時、山の方に少し行きましたが、山がそれこそ硝子のように溶け出していました…」
ゆんゆんが少し震えながらも、そのことを受付嬢に話す。
「そうですか…まるで伝説に出てくる竜のようですね…」
「伝説って?」
「…この手配書を見てください。」
「なんだ?…竜のシルエット?」
「この手配書は、数百年前に栄華を誇った魔導大国を、一夜にして灰へ帰した竜の手配書です。…といっても、一回も存在が確認されていないため、もはや形骸化していますが。」
…その魔導大国とやらがどれほどのものかは知らないが、国一つ一夜で燃やし尽くす竜か…月並みな感想でしかないが、恐ろしいな。
「全く姿を見せないせいで、そもそも竜の存在は伝説で、機動要塞デストロイヤーが本当は魔導大国を滅ぼしたのが真実だ、というのが通説になっていますがね。」
ゆんゆんが落ち着かない様子で手に持った短杖を弄りながら答える。
「この手配書を制作したのは、命からがら魔導大国から逃げ延びた旅人の制作したものなのですが、その方はこんな言葉を残しているんです。
『その竜、紅蓮の炎を身にまとい、空を引き裂いて現れん。彼の竜が吠えるとき、空は燃え、地は溶け出す。一言で言うと俺のいた国一撃で滅ぼされたんだけどなにこれ無理ゲー?』
と。terrarianさんがであったと言うドラゴンは、まるでその話に出てくる竜のようですね。」
「途中まで伝説っぽかったのになんだ最後の一言。」
これまたつなぎ回。多分次の話から6話ぐらいは戦闘回が続く気がする!
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魔王軍幹部 ベルディア
魔王軍幹部 ベルディア
それはカズマ達が湖の浄化をして、terrarian達が竜に襲われてからから数日ー3日もたっていない時のことだ。
terrarianが金属を加工して、大きな蛇のような機械を作っていた。
近くではカズマが赤い宝石のはまった板のような物をその機械に貼り付けている。
「ん。カズマ、そこにあるスパナをとってくれ。」
「ほい」
歯車のような機構を弄っていたカズマがterrarianにスパナを投げて渡す。
それを使って謎の金属に包まれた機械を弄る。
「ふぅ。一応形にはなってきたな。それにしても…すまないな、付き合わせてしまって。」
「いや、俺もterrarianに制作スキルを教えてもらったって言う恩がないこともないしな、気にするな。」
カズマが手に持った銃を指でくるくる回しながら答える。
鈍い金属の光を放つ銃。重厚感のあるその銃の形状は、一般的にマグナムと呼ばれるものと酷似していた。
「それにしても…terrarian。何を手伝ってるのかは聞いてなかったし、わからなかったけど、何作ってんだ?」
「あぁ、これか。」
terrarianが後ろにある機械を撫でながら答える。
「ドラゴンに負けたのが悔しかったんでな、切り札になりうるものを作らせてもらった。私の故郷にいた、『全てを破壊するモノ』さ。あとは、兵器として使えそうな奴も幾つか。」
「随分と仰々しい名前だな…」
「さて、あとはこのSoulをぶち込めば…」
手に持った青い靄のような物を機械に入れたその直後の事だった。
けたたましいサイレンの音が町中に響き渡る。
不安を煽るような音と共にアナウンスが流れる。
『緊急!緊急!冒険者の皆さんは直ちに武装して、正門前に集まってください!…特にカズマさん達一行は今すぐに来てください!』
「…おい、カズマお前なんかしたんじゃないだろうな…!?」
「いや、知らん知らん!とりあえず急ぐぞ!」
作業着からすぐさまHallowed Armor*1に着替え、正門前前へ急行する。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
全速力で正門に向かい、着いた頃にはチラホラと冒険者達が集まってきていた。
羽根による超機動の私、軽装のカズマとアクア、めぐみんはすぐに集まったが、ダクネスはまだ来ていない。
「おっと…?またあいつかよ。」
カズマがため息をつきながらボソッと言う。
その目線の先には、全身から怒りのオーラを放つアンデッドがその背後に数十の朽ちた鎧をきた魔物を引き連れて仁王だちしていた。
全身が腐り、もはや何も移すことのないその眼孔からそれらがアンデットであることがわかる。
…今は昼間だぞ?それにここは墓場でもないと言うのに。
「おいカズマ。さっきの、…『またあいつかよ』とはどう言うことだ…?」
「ああ、それはな…」
カズマが、どうしてあのアンデットーデュラハンがこの街を襲いにきたかの経緯を説明してくれる。
その間に、ゆんゆんやダクネスも集まってきて、この街の冒険者が全員集まったんんじゃないかと言うぐらい人が増えてきていた。
説明を聞いている途中のことだ。
集まってきていた冒険者達がざわめく
「おい、あいつやりやがった…」
全てを浄化する、神の光。理に反する命はたちまち天へ召されるであろう清浄なる光が、デュラハンの体を直撃していた。
何と、アクアが何も考えずデュラハンに向かって魔法を放っていたのだ。
「な、何やっとんじゃああああ!?」
カズマが悲鳴じみた絶叫を上げながらアクアに駆け寄る。
「カズマさん、カズマさん、こいつらおかしいわ!?魔法が効かない!?」
「もういい、アクアお前余計なことするな!」
カズマが懇願するが、アクアはいうことを聞かない!*2
デュラハンが言い放つ。
「本当に…!最近の人間というやつは…!この前城に押しかけてきたよくわからん研究者もそうだが、全く話を聞かん!だいたい、奴がいなければ後3日は早く来たというのに…まぁいい、アンデットナイト達よ、やれ。
皆殺しだ。」
デュラハンーカズマが言うにはベルディアと言う名前らしいーが腕を振り下ろすと、それを合図にアンデットナイト達が襲いかかってきた。
「ゆんゆん、いるか?」
「はい、ここにいますけど」
「これを受け取れ。」
terrarianがゆんゆんに金属でできた筒を渡す。
「万が一近接戦になった時は使え。」
準備は終わった。武器の貯蔵も十分、コンディションもこの上なく良い。
あのデュラハンからは、Duke Fishron*3と同等の威圧感を感じるが…まぁ、問題はないだろう。
さぁ、戦闘開始だ
見せてもらいましょうか。terrarian。貴女がかの王に届きうるか。
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アクアはちゃんと次回か次次回で活躍しますから…
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この街の運命をかけた戦い
魔王軍幹部、ベルディアとの戦いは、途中までは上手くいっていた。
何故かアクアに集るアンデットナイトをめぐみんが爆裂魔法で一掃したところまでは良かった。
だが、その後。ベルディアが自ら動いた辺りから全ては変わった。
ベルディアを取り囲んでいた冒険者達が一斉に切り掛かった瞬間、ベルディアが頭を宙に放り投げた。
やつを取り囲んでいたモノ達の体が中を舞う。
自分が死ぬだなんて微塵も考えていない。そんな顔をしたまま死んでゆく。
「さぁ、次は誰が死にに来るか?」
糞が…!貴様らがいくら束になったところで勝てるわけがないことぐらいわかっていたことだろうが…!
Flying Dragon*1を十字に振るうと同時に、全力で駆け出す。
デュラハンは斬撃波を腕で握り潰し無力化する。
化け物が…!死に晒せ!
斬撃波を握りつぶした際にできた一瞬の隙にRocket Bootsのブースト効果で加速した回し蹴りを喰らわせる。
そのまま懐に入っているGladius*2で追撃、最後の一撃のノックバック効果で後ろに飛び退き、Rocket Launcher*3の一撃を喰らわせる。
黒い煙が舞う。
土埃が巻き起こる。
攻撃が途切れた一瞬の隙。そのタイミングでベルディアが土煙の中から飛び出してくる。
目の前まで不死者の剣が迫る。
「terrarianっ!」
すぐそばまで迫っていたダクネスが間に割り込み、盾のように構えた大剣で相手の攻撃を防ぐ。
ガキン!
激しく金属と金属がぶつかり合う音がする。
ダクネスの両腕の筋肉が盛り上がる。
「っああ!」
ダクネスが全力の力を込めてベルディアを弾き飛ばし、大剣を抱え込むようにして構えてタックルをかまし、全力で宙にかちあげる。
空中でバランスを崩したベルディアは転びそうになるが、そこはさすが魔王軍幹部といったところか。すぐさま体勢を立て直し着地しようとする。
「create ice block!」
カズマがベルディアが着地しようとした地点に小さな氷のブロックを作成して、着地を失敗させる。
「『カースドライトニング』!」
遠くで様子を伺っていたゆんゆんが魔法を放つ。赤黒い閃光が不死者の体を穿つ
それを合図に生き残った冒険者達がさまざまな魔法をはなち、矢を放つ。
その多くが中級魔法などの初歩的な攻撃魔法がだったが、その中にはこの街の立ち位置に見合わない上級魔法も混ざっていた。
様々な属性の魔法が入り混じり、空に美しくも恐ろしい光景を作り上げる。
「ダクネス、これを奴にぶち当てろ!」
terrarian達もこれに混ざり、Boulder*4をその筋力を生かしてぶん投げる。
「あぁ、冒険者どもがわらわらと…!『汝らに死の宣告を、お前らまとめて5秒後に、死に晒せ』えええ!」
ベルディアの指先から黒い光線が放たれる
「『セイクリッド・プロテクション』!残念だけど、私いる限り、そんなちゃちな技は効かないわよ!」
「小癪な…!」
ベルディアが吠え、頭を宙に放り投げる。
ベルディアの近くに残っていたダクネスと私に全力で斬りかかる。
ダクネスがその自慢の防御力で、terrarianは鎧のスキルも活用して何とか凌ぎ切るが、大きな隙が生まれてしまう。
このタイミングでベルディアはダクネス達の足に全力の薙ぎ払いを喰らわせ、弾き飛ばしてくる。
そしてベルディアは私たちを置いてアクアに向かって全力で突撃して、首を切り落とさんと迫る。
アクアと目の鼻の先まで迫った時。
「『バインド』っ!」
カズマがベルディアをロープで縛る。
「俺に拘束系スキルは効かないぞ!魔王様の加護があるから…な…っ!?なに!?」
何やら守りがあったらしいがそれを突破してカズマのロープがベルディアに絡みつく。
「これはterrarianからもらったTitanium Bar*5製で、しかもアクアの浄化を受けた特別製だ!そう簡単には破れないぞ!」
普通なら、この程度のスキル、ベルディアなら簡単に避けただろう。だが、アクアしか見ていない、そのタイミングで今まで雑魚だと思って気にもかけていないただの
「アクア!」
「完成したわ!『セイクリッド・サンクチュアリ』!」
アクアを中心に光り輝く魔法陣が展開される。
邪なるものの存在を許さない聖域。ただの不死者であったなら一瞬で浄化されてしまうほどの輝き。
だが、その中でもベルディアは少し体を重そうにするだけで、存在を保っていた。
「ゴミどもがぁ…!」
赤黒いオーラを纏い、ベルディアが吠える。
ロープが嫌な音を立てて切れ始める。
「今なら!『セイクリッド・ターンアンデット』!…これでもダメなの!?」
聖域の効能により倍化された魔法を喰らってもなお存在を保つ。
「糞っ!だったら少しでも嫌がらせしてやる!summon little bees!アクア!」
「『エンチャンテッド・ホーリー』!」
聖なるオーラを纏った蜂がベルディアの鎧の中に入る。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!お前ら…!」
「からのー!『クリエイト・アース』『クリエイト・ウォーター』『ウィンドブレス』『フリーズ』っ!」
蜂の嫌がらせによって一瞬ロープを破ろうとする手止まった隙に、泥水を顔面にぶっかけ、凍らせることによって視界を奪おうとする
「…!糞がっ!」
それを避けようとするが、聖なる力で弱められ、今までのダメージもあり、ロープで縛られた体では上手く避けられず、顔の半分が凍りついてしまう
ベルディアの体がびくんとはねる。
「隙ありっ!」
ダクネスが全力でベルディアを蹴り上げ、terrarianが落下してくるベルディア目掛けて飛び上がり、トンボギリ*6で串刺しにしようとする。
「糞が、クソガクソガクソガクソガクソガクソガ!」
宙から落ちてくるベルディアが、どこからともなく飛来してきた濃い緑色の魔力の塊に当たったかと思うと、体を肥大化させ、ロープを破り去り、terrarianを迎撃しようとする。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
両拳を握り、terrarianをトンボギリごと殴り飛ばす。
トンボギリの穂先が折れる。
terrarianの被っていた兜が砕け散る。
「糞が…っ!」
穂先を片手で握り、ベルディアの体に差し込む。
毒が…効かない…!
ドレイトンが…!余計なことしやがって…!
落下していく時、視界の端に次元を引き裂いてどこかへ消えていく男の姿が見えた気がした。
うん、やっぱり戦闘シーン難しい…
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The Plaguebringer
ベルティアの体を毒々しいオーラが覆う
「ひょっとして、第二形態ってやつか!?」
「arrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrra,,,,,!!!!」
ベルディアが意味をならない叫びごえをあげる
「『ナnじらに…核と疫病の宣kうヲ』おおお!」
ベルディアが天に向けて剣を掲げる。
「ま、、、まずいわ!『セイクリッド・プロテクション』!」
アクアが守りを張るが、近くにいたカズマを除けば、いわゆる上位職などの一定以上の実力を持つ者以外の冒険者が次々と倒れふす。
血を吐き、体が痙攣している人間があたりに散らばる。
「aaaaaaaaaaaa!」
ベルディアがダクネスに向けて大きく大剣を振るう。
ピシッ
ダクネスの剣にヒビが入り、そのまま砕け散る。
そして、そのままダクネスの後ろの城壁が粉々に砕け散る。
「おい、嘘だろ…!」
誰かがボソッと呟く。
そのまま雄叫びを上げながらダクネスに向けてベルディアは剣を振るう。
「くそっ!ダクネス!」
カズマは、ロープの残骸からその場で組み立てたTitanium Repeater*1でベルディアを狙撃するが全く相手にされない。
「『オールヒール』『セイクリッド・リーンフォースシールド』!ダクネス!耐えて!」
アクアが魔法でダクネスを支援するが、徐々に押されていく。
「私たちもやるわよ!」
わずかに残った戦える冒険者達が遠距離攻撃でダクネスを支援するが、ベルディアは止まらない。
「止まれっ!」
terrarianがTerra Blade*2でベルディアを止めようと凄まじい速さで切りかかるが、ベルティアは、ダクネスに攻撃を加えながらその攻撃をいなす。
「うっtオおしいゾぉ!gおミがぁ!」
ベルディアがterrarianに手を翳すと、その腕から理解できない光が溢れ、terrarianを吹き飛ばす。
吹き飛ばされる直前にSolar Flare Armorに着替えたため生きてはいるが、その身に、Ankh Shield*3では防ぎ切れない多大な毒を浴びてしまう。
トドメだと言わんばかりに、ベルディアがterrarianに向けて、どこからともなく現れたミサイルのようなものを当てようとする。
「『狙撃』っ!」
カズマがその手に持った銃ーマグナム*4から銃弾を放つ。
この場で生き残った狩人から教わったスキル、『狙撃』。それにより放たれる正確な一撃は、ミサイルを放とうとしていたベルディアの腕の方向を変え、攻撃は明後日の方向へ飛んでいった。
「terrarianさんに、手を、出すなあああああ!」
そして、ゆんゆんが、勢いよく飛び出して、懐から武器を取り出す。
戦いが始まる前にterrarianから渡されていた武器。Phasesaber*5を展開し、それを軸に、魔法を放つ。
「『カース・オブ・セイバー』ああああああ!」
Phasesaberの青い刀身が勢いよく伸び、数十メートルに及ぶ光の剣へと変貌する。
ブォン
光の剣が振り下ろされる。
ベルディアは剣を落とし、両腕でその一撃を受け止める。
「aaaaraaaaaaaaaaaaaaa!!!」
その口の端に血の泡を浮かべながらベルティアその攻撃を受け止める。
「潰れて…ください…!」
「Heat Ray!*6」
terrarianもそのタイミングで魔法の一撃を喰らわせる。
2条の光の光線を喰らい、ベルディアの顔が歪む。
「未だ!はなてえええええ!」
冒険者達が全ての力を振り絞り、最大の一撃を喰らわせる。
「『インフェルノ』!」
「『クリスタルプリズン』!」
「『エアカッター』!」
「『連続狙撃』!」
「『ライトニング』!」
「『ウォーターランス』!」
ウォーターランスの、水の槍による一撃を食らったタイミングで、ベルティアが一瞬光の剣に押し込まれる。
「もしかして…」
カズマは、前世で聞いた、デュラハンの設定を思い出す
デュラハンは、確か、川を渡ることができない…もしかしてだけど、ヴァンパイアとかと同じように、水が弱点なんじゃないか!?
「アクア!お前、水の女神なんだろ!ベルディアに、思いっきり水を食らわしてやれ!」
「よくわからないけど、任されたわ!」
そうこうしているうちに、ゆんゆんの光の剣が破壊され、殴り飛ばされそうになる。
「ゆんゆん!」
terrarianがRod of Discord*7のワープでゆんゆんを回収して、守る。
「やれ!めぐみん!」
terrarianは、城壁の近くにいるめぐみん目掛けて叫ぶ。
その周りには、数十本のポーションの空き瓶が落ちていた。
「詠唱は破棄します!
穿て、『エクスプロージョンっ』!」
terrarianより受け取ったマナポーションにより魔力を回復させためぐみんが爆裂魔法を放つ。
「カズマ、今の爆裂は!?」
「あぁ、満点だ!!
アクア!今だ!やれっ!」
めぐみんのポーションの副作用で威力が下がったとはいえ、神にすらダメージを与える一撃が、ベルディアの体を穿ち、ベルディアの動きが目に見えて鈍くなる。
「わかったわ!
この世に散る我が眷属よー」
異常を感じ取ったベルディアが、アクアを斬り殺そうとする。
「ちっ!未完成だが、現れろ!
『The Destroyer』!」
terrarianが、ついさっき完成させた切り札を切る。
世界を食う掘削機が目覚め、ベルディアを噛み砕こうとせまる。
未完成なため、ビームを放つことも、プローブを召喚することもできないが、今はほんの数秒だけ、足止めが出来ればいい!
ベルディアがThe Destroyerの両顎を持って引き裂こうとするが、聖鉄はそう簡単に砕けない。
「aaaaaaaaaaa!」
ベルティアがThe Destroyerの口の中に核と疫病の一撃を喰らわせる。
The Destroyerは、腹から爆散してしまったが、最後にベルティアの右肩に大きなダメージを残していった。
「水の女神たるアクアが命ずるー
周囲の空気が振動し、水滴が宙に浮かぶ。
あたりの湿度が上がり、アクアを中心に風が吹き荒れる
ベルディアがアクアの魔法を止めようと剣を投擲する。
「create ice block!」
カズマが、terrarianが召喚した氷によって阻まれる。
魔法が完成した。
「『セイクリッド・クリエイト・ウォーター』!!!!!!!!!!!!!!!!!」
次の休みまで書けないから駆け抜けたぜ…
感想、評価ありがとうございます!励みになります!
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The absolute rage
あれは一体なんだったのだろうか?
「『セイクリッド・クリエイトウォーター』」
アクアの体が宙に浮くと同時に視界が真っ白に染まるほどの魔力の奔流であたりが満たされる。
魔力が、弾けた。
アクアの足元から洪水のように水が溢れ出す。
全てを洗い流す浄化の裁き。
「ちょ、アクアやりすぎぼぼぼぼぼぼぼ…」
全員を巻き込んでその魔法は放たれた。
水が全て消え去ったあと、そこには体をドロドロに溶かしたベルディアが大剣を支えにして起き上がっていた。
「aaaaaaaaaaa!raaaaaaaaaaaa!」
ベルディアは雄叫びを上げ、自分の体が溶け出した原因のアクアに向かって突撃するが、その速度は先程までと比べて目に見えて遅くなっていた。
「アクア!やれ!」
起き上がったダクネスがベルディアを羽交い締めにして、動きを止める。
「言われなくても!『セイクリッド・ターンアンデット』!」
ベルディアの体が灰になり始める。
極光があたりに満ち、それが晴れた時には、鎧がボロボロに朽ち果て、全身がドロドロに溶け出したベルディアが立っていた。
最後の力を込めてベルディアがダクネスを弾き飛ばそうとする。
「おい、アクア!倒し切れてないぞ!」
「いや、ベルディアはたしかに昇天したわ!」
「じゃあ、あそこにいるのは一体なんなんだ!」
ダクネスは弾き飛ばそうとしてくるベルディアに抵抗するが、文字通り命を削った馬鹿力には抗えず、負けてしまう。
ダクネスの体が弾丸のようにふきとばされ、地面に叩きつけれ何度かバウンドして止まる。
「『インフェルノ』!」
ゆんゆんが最後の魔力を振り絞って魔法を放つが、ベルディアだった者が吠えるだけでかき消されてしまう。
その攻撃が原因なのか、ベルディアはゆんゆんを補足する。
一陣の風が吹く。
次の瞬間にはベルティアがゆんゆんの前に迫っていた。
「あっ」
鮮血が舞う。
「無事か、ゆんゆん」
ギリギリでワープしてterrarianがゆんゆんを庇う。
肩から腹の辺りまでバッサリとベルディアに切り裂かれている。
そして、terrarianが、自らの体にめり込んだ剣を全力で掴んで、ベルディアの手から振り落とし、後方に思いっきりぶん投げる。
その瞬間ベルディアはすぐに武器を諦め素手で殴りかかってくる。
両腕から放たれるラッシュを、Shield of Cthulhuで腕に噛み付くことで止める。
「捕まえたぞ!」
Shield of Cthulhuは、ベルディアの腕をガッチリと掴んで離さない。
ベルディアが吠える。
噛み付かれた腕を軸にした回し蹴り。
「『狙撃』!」
水によって脆くなったベルディアの足が、カズマが放った弾丸によって千切れ飛ぶ。同時に、カズマが手に持っていた銃が弾け飛ぶ。
腐った血があたりに舞う。
その血を全身に浴びながら、terrarianは、懐からとある剣を取り出した。
With your absolute rage!
何かが語りかけてくる。
自分の心が燃え上がる。
Rage
思い描くは光の中で見た一本の剣。
「Terra Blade!」
世界の名を冠する剣が、ベルディアの体を切り裂く。
反撃と言わんばかりに、全身から濃い瘴気を放ってくる。
あと 9
それを切り裂くは次の剣。
「Meowmere!」
回転切りを放ち、ベルディアの鎧を破壊すると同時に、放たれた大量の猫の頭部が瘴気を吸い込み、ベルディアの頭を食う。
不死者はその体から核の光を放つ。
毒の光に目が焼かれる。血管が沸騰する。
想像を絶する痛み、だが、絶対的な怒りは、倒れることを許さない!
あと 8
「ああああああ!Star Wrath!」
星で鍛え上げられた大剣が、terrarianの腕の中に現れる。
両手で柄を握りしめて、ベルディアの体を一刀両断せんとする。
デュラハンは、その攻撃を甘んじて受け入れる訳がなく、瘴気で剣を練り上げ、その一撃を受け止める。
星の希望と、疫病の絶望がぶつかり合う。
凄まじい破壊のエネルギーが辺りの地面を抉る。
「あああああああああああああああ!」
「aaaaaaaaaaa aaaaaaaaaaa!」
terrarianの周りに星が降り注ぎ、ベルディアの体を抉る。
傷が増えていく体とは対照的に、ベルディアの力は強まっていく。
徐々に押し返されていく。
命を燃やした一撃は、絶望に届かない。
「『エンチャント・ホーリー』!」
アクアがterrarianの剣に加護を授ける。
威力が増し、わずかに押し返す。
「『クリエイト・ウォーター』!」
「『ライトニング』!」
カズマが水を放ち、ゆんゆんがもう一分さえ魔力が残っていないはずの体から魔法を放つ。
凄まじいスパークが発生し、僅かにベルディアの体が揺らぐ。
また少し押し返す。
「『デコイ』っ!」
ダクネスがスキルを発動する。
一瞬とは言え、ベルディアは意識を外に向けてしまう。
その間にさらに押し返す。
力が拮抗する。
だが、わずかに足りない…!
…めぐみん!
「魔法使いだからって、舐めないでください!」
いつのまにかベルディアの後ろまで移動していためぐみんが、全力でベルディアの足を殴り飛ばす。
非力な魔法使いの一撃とはいえ、全ての意識を剣と剣のぶつかり合いに割いているベルディアとっては完全に意識外からの一撃となるため、僅かにダメージを受けてしまう。
しかも、先程カズマに片足を吹き飛ばされているため、不安定になっているその体は、わずかに揺らいでしまう。
ー今だっ!
この瞬間に、全てを、全ての力をかける!
「ああああああ、らああああああ!」
瘴気で練り上げられた大剣ごと、ベルディアの体を真っ二つに切り裂く。
「aaaaaaaaaaa aaaaaaaaaaa!」
切断面から光が溢れ、ベルディアの体が爆散する。
空が晴れ渡り、あたりに満ちていた瘴気は消え去った。
最後に、彼の目に正気が戻ったような気がした。
決着。
次回はドレイトンの研究ノートでちょっと裏で何が起きていたかやろうかな…?
感想、評価ありがとうございます!めちゃくちゃ励みになります!
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ドレイトンの研究ノート
それを少し覗いていこうか。
ー月ー日
さて、例の魔導大国を滅ぼして…二百年?三百年だったか?が向こうの世界では経っているはずだ。
あの研究者め…趣味に極振りしたような意味不明な兵器ばかりを作っていたくせに、我々を元の世界に放逐するとはな…
だが、あの世界の座標は特定した。再び舞い戻るとしようか。
やつも、機動要塞デストロイヤーに施した細工のせいで死んでいる筈だ。Terrarianなき世界に置いて我々の敗北はない。
それにしても、奴はネーミングセンスはいいようだな。私の作った全てを食う掘削機と同じ名前ではないか!
ー月ー日
ふむ。やらかしたな。
この世界でもポーションを量産できるよう、洞窟にGlowing Mushroomを植えたまでは良かったが、完全にやらかした。
この世界の生命力をなめていた。すごい勢いで侵食していくな。
本当にどうしようか…興味深い結果にはなったが…
ー月ー日
ふむ。やはりYharonのブレスは強力だな。クローン計画には失敗したが、Calamitasの経験を生かしてもう一度行えないだろうか?まぁ、我が王は彼を愛しているから許しは出ないだろうがな…
さて、Yharonに山ごと証拠隠滅してもらった訳だが。興味深い物を見れた。
この世界にも、Terrarianが居たのだ。
この世界には、Terrarianだったりクラフターだったりビルダーだったりに準ずるものはすでに居ないと思っていたが…彼女がそうなのだな!Yharonに一矢報いるとは、なかなかやるな。生きていればいい実験体となったんだろうが…
ー月ー日
この前のTerrarianは勿体なかったな。今は自分の実験に集中することにしよう。
…探査機を一個無駄にしたことどうやって隠そうか…
ー月ー日
この世界の人間は頭がおかしいのか!?平原にばんばん戦略級魔法をうっていやがる!?
追記:例の件はバレた。我が王が笑って許してくれたから良かったが…なんで洞窟の中に置いて行ってしまったんだろうか…今頃ドロドロに溶け出しているだろな…
ー月ー日
はは、ははははははは!
彼女は、彼女は生きていた!
このことは誰にも言うまい!行ってはDOGやYharonに取られてしまうからな!こんな貴重な実験体、戦闘狂どもに取られるわけにはいかんわ!
ー月ー日
やはりこの世界の人間は頭がおかしい!
魔王軍の城をそうと認識せずに爆撃してるぞ!?
さて、その件の城にいる幹部、なんとかして彼女にぶつけることは出来ないだろうか?
ちょうどここに新型のナノマシンがある。
ジャングルの呪いと核の力を混ぜ合わせた一品だ。これを幹部に打ち込めば、それはそれは素晴らしいものになるだろうな…!
ー月ー日
ああ、幹部なめてた。派遣したアンドロイドが全滅した。
まぁいい。元々奴は彼女のいる街に攻め入る予定だったらしいからな。強いとはいえ、あの程度のやつがTerrarianと呼ばれる者たちに勝てる訳がないからな、追い詰められるだろうし、タイミングを見計らってやつにこのナノマシンを含んだ魔力弾を打ち込めば…!
ー月ー日
上手くいった。
さて、後でこの録画した映像を見返すとしようか。
勿論、奴らにはバレないようにしないとな。
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エピローグ
誤字報告ありがとうございます!
星の剣が、疫病の剣を切り裂き、そのまま不死者の体を、断ち切った。
切断面から光が溢れ出し、当たりを満たす。
光が、疫病を浄化し、戦場を満たす。
そして、光が晴れる。
雲の間から光が差し込む。
先程まで毒素の影響で倒れ伏していた冒険者たちが次々と立ち上がる。
「やったんだ、俺たち、やったんだっ…!」
誰かが、誰にともなく呟く。
「私たちが、私たちが、魔王軍幹部を…倒したのよ!」
続けて女の弓使いが叫ぶ。
うおおおおおおおおおおお!
先程まで戦場だった当たりを、冒険者たちの叫び声が満たす。
あぁ、やったんだな…
同時に、terrarianは、地に倒れ伏した。
「terrarianさん?ちょっと、terarianさん!」
誰かに呼びかけられた気がした。
視界が徐々に狭まる。
とぷん。
奈落へと沈んでゆく。
ドロドロとした水の中に落ちてゆく。
体に絡みつく闇が心地よい。
しばらく闇に身を任せていた。
一瞬かもしれないし、数年かもしれない。
認識できない時間が経ったのち、
人型のシルエット。
女性的な印象を覚える。
あなたなら、破壊の連鎖を止められるかもしれない
手を頭に押し付けてくる。
あなたなら、私の基を、殺せるかもしれない
手が頭に入ってくる。
さぁ、起きなさい。あなたが相応しいか、見極めさせてもらうわ。幸い、まだ時間はある
闇の中から、意識が浮上する。
瞼の隙間から、光が差し込む。
「起きたか、terrarian。」
誰かが話しかけてくるが、目の焦点が定まらない。
目を光にならす。
「…ダクネスか。」
「…起きてくれて、本当によかった。丸一日眠っていたんだぞ!」
ダクネスが手に持っていた本を置いて畳みかけるように話す。
「そうか…心配をかけたな。そうだ。ベルディアはどうなった?」
「無事、討伐することが出来たぞ。お前のお陰だ。今は、多分ギルドで報酬の話が…ってどこにいく!terrarian!」
「ちょっとギルドまでな」
羽をはためかせ、窓から飛び出しギルドへと向かう。
汚れのない綺麗な空気を吸い込む。
あぁ、この世界、やはり魔境だな、そう思いながら空を飛んだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ギルドへと入る。
「きたわ、主役のお出ましよ!!」
ギルドの中で、昼間からすっかり出来上がっているアクアが叫び、冒険者たちが盛り上がる。
「随分と歓迎してくれているな」
「ええ、だってベルディアにとどめを刺したのはあなたなのよ!あなたじゃなきゃ、出来なかったことよ!」
「どうだかな…」
ギルドの真ん中あたりのテーブルを囲んで座っているカズマたちの隣に座る。
ベルディアに勝ったことをゆっくりと噛み締めている時、ちょうどギルドの職員がやってきた。
ギルドの職員が次々と冒険者たちに報酬を配っていき、歓声が上がる。
そして最後に、カズマの元へとやってきた。
「はい、カズマさんたちのパーティですね。まずは、そちらの方々に報酬です。」
そう言って、職員がいつのまにか追いついてきていたダクネスや、ゆんゆんたちに報酬を渡す。
「…あの、ですね。カズマさんたちのパーティには特別報酬がありまして…」
「なに!?」
カズマの目の色が変わる。
「俺たちだけに!?いいのか!?」
「お前らがいなかったら、勝てちゃいねーよ!」
酔っ払った冒険者が叫ぶ。
「カズマさんたちのパーティには特別報酬として、3億エリスが、振り込まれます」
冒険者ギルドが沸き立ち、盛り上がる。
中には奢れという者も混ざっている。
「…あの、ですが、今回、アクアさんの召喚した水が、ベルディアの攻撃もあると思いますが、城壁を完膚なきまでに破壊してしまって、弁償額が…その…4億エリスになりまして…」
ギルドが静まり返る。
アクアが逃げ出そうとするのをカズマが引き止める。
「…おい。」
「なんでしょうか、terrarianさん」
ギルド職員が申し訳なさそうに聞いてくる。
「仮にも魔王軍幹部討伐の過程で生まれたダメージだ。あそこでやつを殺せていなかったら、この街は滅んでいたぞ?」
「そうはいわれましても…」
ちっ…こういう時の復興費用は領主が払うことになっている筈だろうが…!この前、本で読んだぞ!
「これで冒険者はのやる気が削げるとか考えなかったのか?そうか。結局はこの街の領主はどこまでいっても愚かな金の亡者という訳だな。領主呼んでこい!魂ごとこの世から存在を抹消してやる!」
テーブルを思いっきり叩く。
命をかけて街を守ったカズマに残ったのが一億の借金…これでは救われないじゃないか!
領主についてのよくない、碌でもない噂を思い出しながら叫ぶ。
「…あまり滅多なことは言わない方がいいと思いますよ…?」
「ちょっと、terrarianさんがいうと冗談に聞こえないわよ!」
アクアが止めてくる。
はぁ、仕方ない。私が人肌脱ぐとしよう。
「職員。私の口座に1億ほど入っている筈だ。それを全額借金の返済に当ててやれ。ーまさか横領しようなどとは思うまいな?」
「terrarianさん…!」
アクアがキラキラした目で見つめてくる。
「何、これで私も素寒貧だがな!」
「おい、本当にいいのか…?」
カズマが申し訳なさそうに聞いてくる。
「ああ、いいとも。少なくとも、私はお前らのことを仲間だと思っているつもりだからな。」
「…お前って、やっぱいい奴だな。」
冒険者達の、絶望との戦いは、一旦休みを迎える。
すぐそばまで、破壊が迫っていることを知らずに…
terrarianさんは、宝石とかいっぱいあったので、お金がいっぱいありました。
あと、某領主の死亡フラグが凄い勢いで増えていきます!やったね!あと、悪魔の力はより強い相手には効きづらいらしいね!終わったね!
一章、どうでしたか?面白くかけたかな…?
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!まだまだ続きます!
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雪原を切り裂くは氷の刃
雪精討伐
間違えて、没にした方投稿してしまいました
許してくださいなんでもしますから
ということで再投稿
すいませんでした…!
2章開始です!2〜3部構成になりそう
あたり一面の銀景色。
前を見ても横を見ても、雪。雪。雪。街から遠く離れた平原地帯に、雪精*1の討伐依頼を受けたカズマ達一行はやってきていた。
ベルディア戦ですっかり貯金もなくなり、このままだと冬を越せない!となって、冬の高難易度依頼ばかりの中から唯一危険度の低そうな依頼をカズマが見繕って受けることになったのだ。
…最終手段ではあるが、いざとなれば街の地下深くに家でも建てるか?*2そんなことを考えながら依頼をこなす。
「おい、カズマ、そっちいったぞ」
「お、わるいな。Sparking!」
ふわふわと浮遊している雪精をカズマが魔法で溶かして討伐する。
後ろでアクアが網を片手に雪精を捕まえて回っている。
今討伐している雪精というのは、一体討伐するたびに冬が10日縮まると言われている精霊種らしい…冬って一体なんだ?*3
…雪精の主食は雪と氷らしいが、Red Ice BlockとかPink Ice Block*4とかあげたらどうなるんだろうか?そんなくだらないことを考えてくるとアクアがこちらへ話しかけてくる。
「いやぁ、それにしても、terrarianさん、その鎧、あったかそうね。」
雪精を持っている瓶一杯に捕まえて満足したのか、アクアが近寄って来て、私の鎧をツンツン触る。熱かったのかすぐに指を離したが。
「これか?Loki’s armor*5と言ってな、いわゆる創造主とか創造神とか…そういう奴らが装備していた鎧だな。」
「やっぱterrarianおかしいわ。なんでそんなもの持ってるのよ…」
某ジャングルの守護神を狩り続けてたら集まるからとしか言いようがないが…そういえばこの世界に飛ばされる直前まで奴を狩り続けてた筈だが…なんでこの世界に飛ばされて来たんだろうか?未だに分からん。
その後も報酬を増やすために雪精を狩り続けていると、1匹の雪精が、私の方に攻撃する意思を見せるわけでもなく近寄ってくる。
試しに手のひらを差し出してみると、その上にストンと乗っかった。
…なかなか可愛いな。殺すのはもったいない気がして来た。
そうね。勿体ないしペットにしましょう
おい今の誰だ。
しばらく手の平に載っている雪精をもふもふする。
もふもふ。もふもふ。
急に、手のひらに乗っていた雪精が飛び出し、ギリギリ補足できるぐらいの速さで飛び出していく。
急にどうしたんだ?
まるで誘っているかのように奥へ奥へと雪精は飛んで行く。
それを追いかけて、私も飛んで行く。
雪原を奥へ奥へと進んでいくにつれて、降り注ぐ雪の量は増え、肌を切る風は鋭くなってゆく。
数百メートルぐらい進んだ頃には、なんとか先へ進む雪精の姿を視認するので精一杯なぐらい視界は真っ白になっていた。
Loki’s armorの下にMolten Armorを着込んでいなければ一瞬にして凍死してしまいそうなほど周囲の温度が下がっていく。
周囲の水分は凍りつき、きらきらと輝いていく。
雪精は一体どこを目指しているんだ…?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「おい、terrarianどこ行った!?」
ここまで読んで頂きありがとうございました!
感想くれると作者は泣いて喜びます
赤字の中身もう感のいい兄貴姉貴にはバレてそうだな…
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だいたい一時間ぐらい前の話
…一応まだ土曜日だからセーフセーフ
Side-冬将軍
その日は、いつものように宙に浮く雪精たちを眺めながら宙に揺蕩っていた。
雪に閉ざされた平原の中で自身の守るべき存在である雪精を眺めていた。
そうしていると、自分たちの住処に人間が侵入してくるのを感じた。
獣や素材採取に来る分なら追い出したりはしないが、無闇矢鱈に雪の精霊を討伐したり、捕獲するのであれば話は別だ。
いくら雪精が死してもいずれ復活するとはいえ、見過ごす訳にもいかない。
刀を手に取り、侵入者の気配を探る。
すぐに気が付いた。
侵入者は、雪精を次々と捕獲し、一部は殺害している。
今すぐにでも辞めさせなければならない。
しかも、だ。その侵入者の魂は、救いようが無いぐらいどす黒く染まっている。
一度だけ見たことのある悪魔よりも黒く、暗く染まっている。
きっとこの魂の持ち主は、笑いながら生命を弄び、魂を愚弄し、自然さえ玩具にするような奴だろう。
住処を守るため、何より『大精霊』として、侵入者は確実に殺す。
刀に殺意をみなぎらせ、侵入者の元に向かう。
数分もしないうちに、侵入者を見つけることが出来た。
そいつは、白衣に身を包み、顔をよくわからない金属製のフルフェイスヘルメットで覆っていた。
周りには金属でできた二対の目玉、4本の腕の先端に兵器を取り付けた金属製の頭蓋骨、そして金属製のミミズのようなものを周りに侍らせていた。
「ほうほう、ほうほうほう。ようやく大精霊のお出ましか。待ちくたびれたぞ。」
侵入者の話など聞く価値もない。
抜刀。そして一閃。
予備動作すらなく一瞬で侵入者に接近し、首を飛ばそうとする。
逆にこちらの刀が欠ける。
どうやら頭蓋骨が放った腕に防がれたようだ。
すぐさま二の太刀三の太刀と連撃を加えていくうちに攻撃を防いでいた腕にヒビが入り始める。
「なかなか生きがいいなぁ。まぁ、貴様が強ければ強いほど儂に取っては好都合なんだがな。」
侵入者が腕を振るう。
次元が裂け、その間から先程まで奴の周囲を旋回していた目玉が現れる。
一瞬にして距離を詰められた。
片方は呪いの火を放ち、もう片方は光でできた矢のようなものを放ってくる。
精霊としての権能で瞬時に周囲の空気を凝結させ攻撃を防ぎ、出来上がった氷の壁を蹴って侵入者の腕を狙う。
その一撃は、今度は次元を裂いて現れた金属製のミミズに阻まれる。
それは私の腕を締め上げ、潰そうとしてくる。
すぐに自分の腕を切り落とし、周囲の冷気を集め再生、刀を広い、四方八方に斬撃波を放つ。
いつまでも余裕そうな侵入者に不気味な感覚を覚える。
斬撃波を掻い潜り攻撃を仕掛けてくる4本の腕をいなしつつ、精霊の力で生み出した小さい山ほどの大きさがある氷を目玉に向けて射出することで封殺し、時々地面から、中から、あらゆるところから突撃してくるミミズは空気の揺らぎを察知して回避することで無力化する。
一見冬将軍が負ける要素は皆無に見える。
「 やれ。」
侵入者が地面に剣を突き刺すと、そこから私に向かって地割れが発生し、その割れ目を中心に爆発が起きる。
横に飛びのいて避けるが、爆風で体制を崩しそうになる。
完全な隙。
そのタイミングで冬将軍目掛けて10を超える金属製のミミズが押し寄せる。
まずい…1匹では…なかった…の…か…
「なかなか手こずらせてくれたなぁ。その分貴様には働いて貰うからな。
…これで、terrarianのだいたいの力の底が見えれば良いがな。」
誰か…やつを…殺して…くれ…
目玉=ツインズ
頭蓋骨=スケルトロンプライム
ミミズ=デストロイヤー
侵入者=例のやばい研究者
ここまで読んでいただきありがとうございました!
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氷の牢獄との戦い
さらに吹雪の中を進む。
5分ほど経ったあたりで、雪精が急に止まる。
そして、吹雪が一瞬強まり、完全に視界が真っ白になる。
そして、吹雪が晴れた瞬間、数本の氷でできた刀が空気を裂いて飛んできた。
「うおっと!」
Bone Wand*1を取り出し簡易的な防壁を築いて防ぐ。
カカカカッと小気味良い音を立てて骨でできた防壁とそれにぶつかった氷の刀が砕け散る。
「一体何なんだ…」
刀が飛んできた方向を見る。
氷でできた放射状構造体。その中には白い甲冑を着た何かが取り込まれていた。
そして、その構造体の周りには、数十本の氷でできた刃が、本体を守るように浮遊していた。
Cryogen was awoken !
「で、雪精、お前は私にこいつを倒してほしいって訳か?」
雪精は肯定するように周囲を飛び回る。
ドレイトンの奴…あの術式を精霊に使用したわね…
雪精は最後に少し震えたあとどこかへと消えていった。
「あ、あいつ逃げやがった…っ!」
ズガガガガッ!
殺気を感じて飛び退くと、先程までterrarianのいた場所を十数発の氷の弾丸が抉り取っていた。
そのまま反撃する暇は与えないと言わんばかりに氷の弾丸による狙撃を繰り返してくる。
一定間隔で打ち出してくる氷の弾丸は、かなりの精度を誇るため、常に動き回っていなければ命中してしまう。
…常に動き回っていないと行けない上に、辺り一面雪だから弾丸を視認することが難しい。厄介だな。
牽制のために数発Quad-Barrel Shotgun*2を打ち込むが、氷の刃に阻まれる。
低威力な武器ではそもそもまともにダメージすら入らないか。何より攻撃の一部が何かしらの力でカットされている感覚があるな。
とはいえ、動き回っているだけで避けられる攻撃なら、もう慣れてきたしそこまで脅威ではないな。ここは一つ攻めてみると…するか!
動きながら少しずつ高度を上げていき、敵を空中に誘導する。
一定以上空まで上がったタイミングで弓を構える。
取り出した弓はAerial Bane*3。
敵の周りを囲む氷の刃のうち、本体の真上にある刃を狙撃する。
矢が刃に命中したタイミングで、着弾点からさらに5発の矢が炸裂する。
その矢に当たった氷の刃が次々と砕けていき、刃の真下にある本体にも命中していく。
反撃に飛んでくる氷の弾丸は全てHero Shild*4で防ぐ。
…?このまま普通に勝ててしまいそうだが?
弓を撃ち続ける。氷の弾丸は盾で弾いていれば大した問題にはならない。
時折本体が突進してくるが、クトゥルフの目玉より遅いため大した問題ではない。
このまま押し切れるか?
余りにも手応えが無さすぎて油断していてタイミングで、本体の中にいた甲冑姿の人物の目が光る。
一閃。本体を中心に斬撃波が放たれる。
Hero Shieldが真っ二つに割れる。
「あぁ、もう予備ないのに!」
なんか腕が曲がっちゃいけない方向に曲がった気がするけど誤差だよ誤差!*5
というか、やはりあの程度で終わる訳なかったな…第二形態*6と言ったところか?
衝撃波により削れた地面の氷は三種類のモンスターへと変貌する。
一体は氷柱のような見た目であり、もう一体はGranite Elementalのような見た目のモンスター、最後の1匹は氷でできたディスクのような見た目をしている。
それらがこちらへ向けて飛来し、妨害を繰り返す。
一体一体はデストロイヤーにおけるプローブのように大した強さでは無いが量が多い。
それに先程の斬撃を境に本体の攻撃も変化していた。
着弾時周囲に氷の弾丸をばら撒く爆弾、先程までよりも速度の上がった弾丸に、最初に飛ばしてきた氷の刀のようなものも使ってくる。
攻撃のレパートリーも多く、慣れたと思ったらすぐにパターンが変わってしまう。
今はなんとかポーションや装備によって耐えているが、ここからさらに攻撃が激化したらどうなるか…
ああ、いいぞ、いいぞ!もっとこい!
ボス戦はやはりこうでなくてはな!
攻撃を止める。
動きを見極めるのに脳の全てを割く。
ただ一心に敵と向き合う。
Terrarianは知っている。あらゆるボスの攻撃にはパターンが有ると。
見つめる。見つめる、見つめる。
そして、見つける。
凍えるような寒さの中、攻撃を喰らう度に体に蓄積されていく裂傷を気にすることもなく全ての攻撃を頭に叩き込む。
今にも死にそうにー数値にしてHPが残り100もないーなった辺りで、気付く。
あ、見切った。
攻撃の一切が当たらなくなっていることに。
そして、30秒が経過する。
体に何かがみなぎる。
そして、一つの言葉を発する。
「adrenaline」
terrarianの体を赤いオーラが覆う。
取り出す武器はBreaker Blade *7。
それを全力で本体目掛けてぶん投げた。
その攻撃力は、数値にして43000。*8
その圧倒的な一撃が、氷の牢獄を、貫いた。
but_ Cryogen doesn’t died!
Cryogen is derping out!
周囲がシアン色に輝く。
崩れ落ちかけた氷の牢獄は、甲冑姿の武士へと姿を変え、一本の刀を手に、こちらへ斬りかかってきた。
ギリギリのところで後で食べようと思って懐に入れていたバナナ*9
で刀を受け止める。最初は拮抗していたが、adrenalineが解けたタイミングで押され始める。
氷の牢獄からは大気さえ凍りつく冷気が放たれる、関節が凍り始める。
なんとか押し込まれないようにしていたが、急に相手が刀から手を離したことによりバランスを崩す。
そして首に向けて刀を勢いよく振るう。
一撃目はたまたま首につけていたShark Tooth Necklace*10にあたり防ぐことができたが、すぐさま武士は左手に持った小太刀で目を貫こうと狙ってくる。
くそっ!口の中にイコルでも含んどけばよかった!と訳のわからない後悔をする。
正直どう足掻いても攻撃は避けれそうにないのでこの一撃を食らってすぐにポーション飲んで反撃しよう。Terrarianは脳漿ぶちまけた程度じゃすぐは死なないし*11。
そう思い、すぐに攻撃に移れるように腰に手を伸ばしたタイミングで、何故か武士は小太刀を横に向けて振るう。
矢のようなものを切り裂いた…?
飛んできた方向をみると、Titanium Repeaterを構えたカズマがいた。
「よくわからんけど、terrarian!やれ!」
カズマが矢を連発して武士を牽制する。
Titanium Repeaterには奴を止めれるほどの威力はないはずだし、おそらくアクアによって矢が強化されているのだろう。実際矢は光り輝いている。
「助かったぞ!カズマ!じゃあ、死ね!」
腰のポーチから取り出したのは8本のSticky Dynamite*12。それを全て投擲し、自分はダッシュでそこから離れる。
「3、2、1、ファイアー!」
雪原に紅蓮の花が咲く。
氷の牢獄は、打ち砕かれた。
多分、雪将軍と普通に戦った方が苦戦する…と思う。場合によりけり。
感想、評価などありがとうございます!励みになります!
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実験ー1
※雪将軍は、そのままの方が全然強いです
ダイナマイトが起爆し、Cryogenの体が粉々に砕け散る。
あたり一面に氷のカケラが飛び散り、空を舞う。
爆風によって雪が舞い上がる。
「ふぅ。何とかなったか。」
ポーションを口に含み、一息つく。
爆風によって舞い上がった雪煙が晴れると、その中には純白の甲冑を身に纏った者が刀を支えに立っていた。
「はぁ!?あれ受けてもまだ生きてんのかよ!?」
カズマが驚いたように言う。
「いや、カズマ。あれは多分…さっきまで戦っていた氷の化け物とは別の何かだな。氷の化け物の中にこれとよく似た何かが囚われているのを見た。」
多分雪精が解放して欲しいと訴えかけていたのはこいつのことだろう。
甲冑の側へ近寄る。
「お、おい!」
カズマが引き止めるが気にしない。
ある程度近づいてきた時、頭の中に声が流れ込んできた。
『人の子よ…大地に愛されし者よ。感謝しよう』
聞き慣れない声だったので、周囲を見渡して、これは甲冑から出ている声だと気がつく。
「こいつ…脳内に直接!?」
…カズマにも聴こえていたのか。
『このままでは、守らなければならないこの土地を自らの手で滅ぼしてしまうところだった。これも全て…奴の悍ましい術式に囚われていたからなのだ』
甲冑がわなわなと震えながら語る。
…そういえば。
「あー。ちょっといいか。とりあえず、名前だけ聞いておきたいのだが。」
『我々精霊は名を持たぬ。ただ、人には雪将軍、と呼ばれているがな。話を続けていいか?』
「あぁ。もちろん」
『…続けよう。この土地に、白衣を纏った男が現れたのだ。その周りに金属でできた悪魔を侍らせながら。そいつは、雪精を次々と捉え、その魂を破壊していた。それを止めようと立ち向かったのだが…駄目だった。』
…こいつの言う術式に囚われていたとはいえ、さっき戦った感触では少なくともプランテラ以上の強さは感じたのだが…それでも勝てない相手か。油断しないようにしなくてはな。
『そいつは…』
「こんな見た目をしていた、のではないかね?」
聞き覚えのない声が聞こえた。
全身の毛が逆立つような感覚。
思わず全力でその場を飛びのいてしまう。
「ふ、ふ、ふ。驚かせてしまったかな?」
白衣を纏った、顔を金属製のフルフェイスヘルムで覆った男が両手をポケットに入れて宙に浮かんでいた。
『こいつだ…こいつが、こいつが!こいつは、全てを破壊する者だ!こいつは、全てを弄び、犯し、壊し、狂わせる!』
ドレイトン…!あの屑が…!まだ、まだ早いのよ…!
雪将軍の怒りと、自分の中に蠢く何かとが共鳴する。
『今代の
「おやおや、怒らせてしまったかな?」
この男を見ていると、ただただ気持ち悪い、嫌悪感しか浮いてこない。
「まぁ、実験体の君たちを逃す意味も理由も無いんだがね。まぁ、きなさい」
『言われなくとも!』
雪将軍が、音を置き去りにする程の速さで男の側へ近寄り、刀を振るう。
見えなかった…!私の目でも、一切捉えられなかった
それほどの速さで振われた刀は、男が突き出した指一本で止められていた。
「どうだね?私が開発した新しいパワードスーツの防御力は?」
そのまま男は指を思いっきり振る。
雪将軍の刀が嫌な音を立てて折れ、そのまま勢いよく吹き飛ばされる。
脳の理解が追いつく間もなく、男は次の行動を起こす。
男が両手をパン!と叩くと背後から2体のThe Destroyerが現れる
まるで展開についていけない…いけないが…こいつを殺さない限り逃げることもままならないだろうな。先程から携帯電話*1も反応しない。
「雪将軍!これを使え!」
刀が折れ消し飛んだのを見たので、雪将軍が吹き飛んだ方向へFrostbrand*2を投げる。
そして続け様にカズマに弓を投げて渡す。
「カズマ!お前弓使えただろ、Daedalus Stormbow*3とHoly Arrow*4だ!デストロイヤー、一体は任せたぞ!」
「え、ちょ、ま!」
カズマが何か言っているが、正直気にしている余裕がない。
「そっちがこの気ならこっちもやるまで!現れろ!デストロイヤー!」
こちらもベルティア戦の後も開発を続けていたデストロイヤーを呼び出し、残り一体のデストロイヤーに当たらせる。
質量と質量、暴力と暴力がぶつかり合う。
「ふむ。一騎打ち、と言うことかね?」
横を見ると、雪将軍がカズマの援護をしている。一人では荷が重かっただろうから助かるな。
「あぁ、そういう、ことだ!」
バックから取り出したInflux Waver*5を全力で振るう。
男は避けようともしなかった。
(クライオジェンは、本来より滅茶苦茶強化されています)
感想、評価ありがとうございます!励みになります!
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白衣の化け物
火星人の技術を持って作られた剣は、厄災の技術には及ばず、切りつけたこちらの刃がかけてしまった。
「クソがっ!Butcher's Chainsaw!」
狂った肉屋の電動鋸と、研究者の鋼鉄の腕が拮抗する。
刃が擦れる。甲高い耳障りな音が、雪原に吸い込まれる。
火花が散る。
「技術力は、そこそこ…と。」
白衣の化け物が軽く腕を振るう。Butcher's Chainsawが弾け飛び、その勢いでlifeが200は吹き飛ばされる。
軽く腕を振っただけでこの威力…!頭おかしいんじゃねえか!
Super Healing Potionを素早く飲み干し、空いた瓶をToxic Flaskに変換して投擲する。
撒き散らされる毒素は、何も影響を与えることは叶わない。
「確か…貴様らterrarianのポーション酔いの時間は45秒…それが終わるまで 耐 え ら れ る か な ?」
白衣の化け物が指を鳴らすと、私を囲うようにして、四方八方に小型のRetinazerが現れ、一斉にビームを放ってくる。
「壁よ!」
攻撃の予備動作の間に自分の周りを最低限囲うようにしてLuminite Brickを設置する。
致死の弾幕が最硬の壁に阻まれる
「Valhalla Knight armor!」
異界の地の戦乙女の装束を身にまとい、壁の外に向かって杖を振るう。
「Rainbow Crystal Staff!焼き払え!」
七色の極光を乱射するクリスタルが三機、壁を囲むように召喚され、敵を薙ぎはらう。
これならやれる…!そう思った瞬間、嫌な予感がして咄嗟に防壁から脱出する。
先程までこもっていた防壁目掛けて、凶器を先端に取り付けた鋼鉄の腕が数本突撃してきていた。
やっぱ、ツインズとデストロイヤーときたらこいつも来るか…!
白衣の化け物を中心に8本の腕が浮遊している。
…こういうのは、まとめて薙ぎ払うに限る!
「Nebula Armor!Last Prism!」
竜の王にさえ一矢報いた、世界の輝きが腕と残った目玉ごと白衣の化け物を薙ぎ払う。
光を浴びながら、化け物は腕を振り上げて…一閃。
光を引き裂きながら直進する衝撃波は、私のすぐ横を通り過ぎて行った。
…やはり本体の硬さは異常、か。
ポーションを開け、連続してLast Prismを放とうとした時、空から流星が降り注ぎ、白衣の男を穿つ。
それに続けて化け物の放った衝撃波に勝るとも劣らない規模の斬撃が3発放たれる。
カズマと冬将軍か…!向こうも終わったのか!
「やれやれ、君たちは関係ないのだがね…」
再び白衣の化け物は指を鳴らす。
今度は4匹の掘削機が地底より現れる。
『そいつはーーーすでに見切った』
雪将軍が刀を鞘に収め、抜刀。
刹那、掘削機は活動を停止する。
「…ほう?急造の劣化品とはいえ、仮にも聖鉄製の掘削機を一撃で…面白いな」
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