ハジケリスト世代だろ! (完結) (零課)
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王道な手段ですねわかります

 ゴルシ世代の作品を書いてみたくてトライ。考えてみるとボーボボな馬にジャンプ愛の詰まった馬に、タックルをよくしていたお嬢様な馬がいたり、三冠馬同士の激突があったりするわ2015年にはダートにもゴルシそっくりな奴が出てくるわしかもその馬アメリカでゴジラのあだ名をもらってクソコラ作られたり。


 次世代ではキタサンブラックにサトノダイヤモンドと超大物歌手やあのゲーム会社に関わる馬が出ていたりと本当に濃いメンバーだらけですよねえ。実績も込みで。


 「馬ってさ・・・いいよね」

 

 

 「いいよな・・・で、あんた誰」

 

 

 日本の神様は八百万。そんで観音様も馬だけじゃなくて畜生の守護仏がいる。なんだったら世界中の神様が訪れるコンビニがある国だ。緩い。とにかく緩いぜ。でもさー神社で健康祈願した後に絵馬眺めていたらまさか急に出会うとは。神様のような方に。

 

 

 「私? あーうん、日本の馬の神様」

 

 

 「ほんほん・・・じゃあお布施に・・・」

 

 

 訳の分からない空間に自分を連れて、性別もどうにも読み切れない柔和な感じ。人の姿だけど人を外れたような雰囲気を纏っているのは確か。お供え物と、趣味で読んでいたSCP-Jの対処法ということで持っていた野菜チップスを渡す。

 

 

 「え? いいの? お菓子もいいけどこういうヘルシーなもの貰えるなんてマジ感激。でさーちょっち君に頼みたいことあるのねん」

 

 

 「はぇ? んっ、おかのした。で、なんです?」

 

 

 なんか軽い神様に頭下げつつ耳を聞いているとまさかのお願い。神様からの依頼とかDQとかファンタジーの世界の・・・いや、転生系のテンプレのシチュの中ですし最近は多いか。

 

 

 「私ね。日本の馬の血筋でもっと活躍してほしいの。今の時代を築いたお馬さんたちの努力と素質は素直に称えるけど、ロマンを欲しいのね」

 

 

 「ほうほう」

 

 

 「だから君は浪漫を追いかけてほしい。というわけで馬になるよ。ハイよーいスタート」

 

 

 「はえ?」

 

 

 「ちゃんと面白いことになると思うよ。あ、あと、お布施の分良いものあげちゃう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 というわけで、うん。馬になっちゃった☆ いやーあっははは! これはどうしたらいいのだ? とりあえずすっごくヌメヌメするのと生暖かい息と舌の感触がすごくてなにこれエロゲ? いや、馬って全裸だしますます・・・滾るわけないかあ。

 

 

 周りじゃあ立て立つんだよお! やれるやれるやればできる! と炎の妖精っぽいことまで言うし。しゃーねーなー・・・立つか。よいしょ。おお、ふらつく・・・、

 

 

 「え? 早くね?」

 

 

 「まだ10分くらいですよ?」

 

 

 ええー・・・立ったらドン引きされたでござる。多分今生まれたてなんだろうけどさ、立った赤ちゃんの俺に言うのそれ? 祝福どころかドン引きで始まるってあのリアルあしたのジョーしていたサンデー大先輩くらいじゃねえーの?

 

 

 何でか馬になった人生ならぬ馬生スタート。少しくらい応援受けていいじゃん? 一応神様に頼まれての再スタートだぞ? サイコロの旅だってここまで滅茶苦茶なイベントと目を用意せんわ。

 

 

 んはぁー・・・腹減ったあぁあ・・・俺を生んでくれたお母さん。ミルク頂戴~

 

 

 「あ。そっぽ向かれましたね」

 

 

 「しょぼくれちゃっていますよ・・・」

 

 

 生まれたての俺は牧場関係者にドン引きされ、母親に育児放棄されたでござる・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『たーのーしー!!』

 

 

 あの後なんやかんや親に育児放棄された悲しみはあったけど牧場の皆が支えてくれたのと人メンタルで持ち直した俺は元気に牧場を走り回っていた。

 

 

 馬になってから知能下がっているのと、羞恥心というか色々削ぎ落とされた気がするけどまあいいや。走れるのがすげえ楽しい。馬の本能なのかなあ。あ、ちなみに性別は牡。ナウい息子♂も搭載済みよ。

 

 

 「おー今日も元気に跳ねているなあ」

 

 

 柵の中をずっと走り回っている俺を見ているのは厩務員の兄ちゃんで名前をトモゾウ。目の前にミルクを見せて飯だと教えてくれたので急いで俺も走っていく。なんやかんや馬になる前は20代の阿呆野郎だけど身体がミルクを求めるんだすぐさま柵についてミルクを飲む。

 

 

 うまい! これは俺の好きなミルクだ!

 

 

 「よしよし。もう少ししたら休もうな」

 

 

 馬鹿言ってんじゃないよ馬だけに! アニメ見させろ! 休憩所で見られるんだからよぉー! 飲み終わったところで哺乳瓶を吐き出してから助走をつけて大きくジャンプ!

 

 

 「ぬおっ!? ま、待てクロス!」

 

 

 フハハハハハ! 俺の幼名で呼ぼうと知るか! 昼の再放送アニメを見るんだよぉお! この身じゃ娯楽が少ないんじゃ―! そしてこの程度の柵で止められんぞおー!!

 

 

 あ。あと俺の幼名は流星が十字架を思わせるくらい整ったものだからそうなった。

 

 

 「あらぁー来たのクロスちゃん。今からアニメ始まるわよー」

 

 

 「ヒィン」

 

 

 「お、女将さんすいません。あの柵も低くはないはずなんですが・・・」

 

 

 休憩所のテレビが見える窓の方から顔をにゅっと出せばここの女将(おかみ)さんと呼ばれるおばちゃんも馬好きで、よくお邪魔してることと俺を気に入ってくれているから俺用の座布団を出してくれて、人参を4等分したスティックをくれる。座布団に顎を乗せ、座りながらポリポリと人参を齧るのが日課。

 

 

 やっぱゴリラ局長かっこいいわあー。にんじん美味いわぁん。ミルク離れしつつ貰えた食事だけど馬に人参ぶら下げれば走るってあながち嘘じゃないのね。

 

 

 「この子のお父さんもこういうことをよくしたようだし、血筋なのかもね。それにまあ、可愛いじゃない。人参齧りながらアニメを見る馬なんて。アニメを見たがる犬とかもいるみたいだし今更今更」

 

 

 「そうなんですがね・・・仔馬の時点で人を怖がらずに済むのはありがたいですが、こうも人間臭いと馬と思えなくなりますよ。しかも好きなのが〇魂とか、こ〇亀とか、ボー〇ボとかで・・・」

 

 

 面白いのは事実なんだししょうがない。んふぅー・・・唇を使って二本目のカット人参をポリポリ。水も持って来れればいいけどそういうのないしなあ。

 

 

 「トモゾウ君たちが見ていたケーブルでの再放送を見てそれ以来ずっとだものね」

 

 

 「俺としては小さい甥っ子にジャンプ勧めた気分ですわ。ほれ。終わったし行くぞ」

 

 

 あ、ちょっと待って! 次のアニメの放送スケジュールとか見させて・・・! くそっ! コノヤロー、トモゾウ許さん! テレビの電源消しやがって! 藤波張りの頭突きを喰らえ!

 

 

 「うおっ! ぐはっ! た、たいむ! タイムだクロス! うぬあ!」

 

 

 そんで自分で自分の場所に帰るわ! 悔しかったら追いかけみろやーい!

 

 

 「そんで自分で戻るのかよ! しかもまた柵越え・・・! あいつ、障害物競走とか馬術に出したほうがいいんじゃないですか?」

 

 

 「ふふふ。もしかしたらそうなるかもねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日も今日とて元気に放牧されて元気に驀進中。走るのが一番楽しいし、しばらく経って肉体が出来てくると飯をたくさん食べられるようになって、その分走りたい。走るだけ走ってから疲れたら水飲みつつアニメを見させてもらうのが日課でござる。

 

 

 ・・・あれ? 何だったらアニメと走るという娯楽もしつつこれだし前世よりエンジョイしていないかこれ? そうなると俺の人生って・・・い、いや歴史とか調べるのはほんと楽しかったし負けていないはず・・・だ。

 

 

 「おおー今日も元気だなあ。クロス。ほれ、りんご食べるか?」

 

 

 「あ、おやっさん!」

 

 

 そんな俺を観察しつつ寝床の藁を敷いてくれていたトモゾウに頭を下げていたら渋いイケおじが登場。インチキおじさんじゃないぞ。このおっさんがこの牧場のオーナーさん。名を利褌(としみつ)さんというらしい。俺がしょっぱな今生のお母さんにミルク貰おうとしたのを無視されてしょぼくれていたらヌメヌメして気持ち悪いはずの生まれたての俺を慰めてくれたナイスガイだ。

 

 

 俺の好物もよくわかっているので会うたびにリンゴを渡そうとしてくれるので大好きだ。イヤッホォー! リンゴだぁー!! うまい・・これはうまい! ただ、丸いから人参みたいに咥えてポリポリといけないのが欠点だね。これも4等分カットされていたらなあ。

 

 

 「相変わらずお前はイケメンだねえ。本当親に似たよ。柔らかさも含めて」

 

 

 「体格だけは規格外ですがね。イケメンというかナイスガイ?」

 

 

 「カリカリ・・・ヒィン?」

 

 

 首を傾げてみると二人とも面白そうに笑いつつ撫でてくれる。あーそこそこ・・・痒かったのよ。

 

 

 そういえばちょこちょこ話される俺の家系だけど、父親があのトウカイテイオー。母親はミホミサトという名前で地方でちょっと勝てたくらいの馬で乗馬用だったのだけど、その父親、つまり俺の母父はミホシンザン。シンザンの直系の家系なんだよね。テイオーのお父さんはルドルフだし、すげえ血統。更に言うとテイオーの母方のご先祖様には昭和12年に日本初のダービー牝馬になったヒサトモの血も入っている。

 

 

 だから俺の血筋は古の日本産競馬の血筋を引き継いでいるのと、あの最強の戦士の血を母方からとはいえ持っている。

 

 牧場主のおやっさんとトモゾウの会話を聞いていると今の時代だと競馬界はSS、ブライアンズタイム、タマーキ・・・じゃなくてトニービンたちの子どもたち、一族だらけの中で純潔の日本馬だから血を薄めたりとかするために生まれたのが俺みたいだわ。

 

 

 ブラッドスポーツと言われる競馬だからこそ濃すぎる血はやばいという訳よ。人間でも中世の貴族での血筋濃くし過ぎた結果がAGO☆な一族が生まれたりしたようにね。血もカルピスも黒酢も程よく濃すぎず。中道を行くとはこのことだなあ。

 

 

 小さな牧場で生まれた俺だけど血筋ゆえに今の時代の肌馬を選ばず相手しやすいし、中央のレースには出すけど結果がどうであれ引退した後はキングヘイローよろしくお安い種付け料で稼ぐのと、血筋はいいけど未勝利で終わった牝馬たちと掛け合わせて次代を狙うとかそんなプランらしい。

 

 

 まさかのお手軽プランだけど日本のロマンを詰め込んだ血。無事是名馬が俺の目標だけど、馬相手にオッキしちゃ~うか分からんぞ? 後、イケメンかは知らんが馬基準だと俺の顔面偏差値低いかもわからんし。

 

 

 「ブフ・・・(お礼。乗ってく?)」

 

 

 「お。それじゃあ頼むよ」

 

 

 「いつの間に!? もう乗せてしまうんだもんなあ・・・お前、人懐っこいのか悪戯好きかわからんよ」

 

 

 で、まあ柵のカギを開けてからリンゴくれたオーナーのそばで寝転がってからオーナーを待つ。んで、オーナーも俺の上に乗ってくれたのでよいしょと体を起こしてぽっこぽっこと休憩所を目指す。

 

 

 この馬体。まだ生まれて数ヶ月だけどなんでもすんごいデカい。しかも丈夫らしい。一応もう少ししたら馬具とかつけて練習する歳だけどそれを差っ引いても早いとかなんとか。

 

 

 シンザンとか、テイオーは平均からやや小柄な部類だし、これが神様の言ういいものあげちゃうっていうやつかしら。そしてトモゾウ。バカやろう、美味いおやつくれた俺にとってもおやっさんみたいな人には礼を尽くすのが男だろうが!

 

 

 GⅠ馬ですら行方不明になるような世界の中で種牡馬ほぼ確定。ネイチャ大先輩のおかげでそれを引退しても安心できるような状況にしてくれた恩人にゃ報いるんだよぉ!

 

 

 「よーしよし。下ろしていいぞ」

 

 

 そんで無事に休憩所に着いたのでオーナーを下ろして、そのまま窓側に移動してアニメを見るために位置取り完了。

 

 

 「お。お父さんにクロス。来たのね。はい、人参」

 

 

 おお。ありがとうございやす。そんじゃ人参は・・・食べすぎもいけないらしいし、今日は半分でいいかな。お腹は空くけど、飼料と牧草あるし。

 

 

 で、今日のテレビ・・・の前にニュースか。ほんほん。今の年は2009年か。ってことはあの伝説ディープインパクトは3年前の有馬記念で引退して種牡馬入り。あ、馬のニュースもある。ドリームジャーニー今年の最優秀古馬候補筆頭かあ。

 

 

 オルフェーヴルとの兄弟対決も見たかったなあ。ナリタブライアンとビワハヤヒデの再現みたいな感じだったし・・・あ・・・? 2009年生まれの俺で中央競馬には行くみたい。最近聞いた話だとおやっさんたち含めた一口馬主さん達も集まったそうだし・・・あれかあ・・・あーあれかあ・・・。

 

 

 つまり俺の同期ってあのゴールドシップ、ジャスタウェイ、ジェンティルドンナ、フェノーメノにストレイトガールにディープブリランテとかがいるし、芝路線だとマジで当たるよな。同世代以外にもエイシンフラッシュやトーセンジョーダンやオルフェーヴルも来るのか・・・え? これ勝てる? 人によっちゃ98世代よりも強い、濃いと言われるし、息も長い名馬だらけの中よ? 

 

 

 でも、すっげえ!あの面白メンバーと戦えるのは良いな!

 

 

 「ブフゥー!」

 

 

 「あらあら。クロスが興奮しているわ」

 

 

 「馬のニュース見て興奮しているな。レースに出たいのかね?」

 

 

 「美人な牝馬とか誘導馬に発情したんじゃないんですか?」

 

 

 トモゾウ、後で頭突きの刑な!




 はい。まさかの三作目のウマ娘作品です。最初の作品もしっかり完走させてせていきますので皆様どうかよろしくお願いします。


 よければ感想、評価をよろしくお願いします。作者のモチベーションにつながります。


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俺の名前は。

ウマ娘のネット配信とかもそうですが、アグネスデジタルあたり引退した後トレーナーになりながら推しのウマ娘たちの本とか、珍行動、名場面集みたいな本作ったりして一大ブーム起こしてそう。カンムリワシの名前を関する元世界ボクサーとか、ガッツなあのボクサーさんの本みたいに。


 俺の同期があのやたら濃いメンバー勢揃い。そうじゃなくても上を見ても下を見ても濃い奴らしかいない。ほんと笑うしかないのと同時に楽しみである。

 

 

 ゲームがリリースされる前に転生しちったがウマ娘プリティーダービーという時代を彩ってきた名馬たちを擬人化したあのゲームの中でも本当に濃いメンツが多いのだ。ゲームでも史実でも問題児かつネタ筆頭のゴールドシップがいるし、2015年には砂にもゴルシみたいなやつが出てくるのだ。

 

 

 例え中央に俺が行けずとも、地方でダート馬になったとしても是非一度は馬の彼らに会って話をしてみたい。とはいえ、まあー今は無理だけどね。年齢的にも。生まれてから早1年。春に生まれた俺もすくすく成長。無事に馬体重が600キロ超えました。でも足元もかなりがっちりしていて多分サラブレッドの平均をそこでも大きく超えるくらいには身体も足も太い。

 

 

 うん。・・・俺の体重重すぎぃ!! トモゾウも驚いていたし、おやっさんに至っては『お前いつの間にかすり替わったんじゃないよな?』と言われたわ。ふざけんなよおやっさん。俺みてえな流星早々ねえっての。罰として俺のボロを牧草にくるんでシュート!してやった。

 

 

 これ以外にも雪の中に身を突っ込んでラッセル車よろしくひたすら走り回ったり、雪を食べようとしたり、スシウォークを練習しようとしたり、いろいろ楽しい時間だったと思うわ。

 

 

 「ビヒィ・・・ブフゥー・・・」

 

 

 そして今は筋トレの最中。無論自主トレである。調教とか、馬具をつけるのは面倒臭いので早めに済ませ、空いた時間を使っておやっさんとか女将さんのいる大きな部屋にこっそり移動。何回か脱走して牧場内をグルグル散歩したり、鹿を追いかけたりしつつ見つけたこれ。

 

 

 「ブフゥウ・・・」

 

 

 「・・・なんでクロス、チューブトレーニングしているんだ? しかも首を鍛えているみたいだし」

 

 

 「さあ・・・・・止めようとしたら追い払おうとするわ噛みつこうとしてきたので相当楽しいんでしょうね。一応見ていますが激しく動かさずゆっくり戻していますし、痛めた様子もないので問題はないかと」

 

 

 自転車の空気を入れるゴムと、チューブトレーニング用のゴム。女将さんの使わなくなったダイエット器具であったのでそれをもらって柵にくくってから自分は前歯と奥歯の間にゴムを噛んでから引っ張って、ゆっくり戻るのを繰り返す。

 

 

 首のパワーも競馬とか見ているとぶんぶん首を振る馬多いし、風の抵抗を減らしたほうがいいのかねえって。スーパークリークとか、すげえ首していたしさー邪魔しようとしてきたトモゾウにはガンギマリな目を演出しつつ噛みつくふりをしたら逃げて遠巻きに観察。そうそう。今日は首のトレーニングの気分なんだ。馬装練習も終わらせたし好きにさせろい。

 

 

 「テレビ見ているうちに覚えたかねえ。ああ。そうだクロス。お前の名前が正式に決まったぞ」

 

 

 お? 幼名クロス卒業か? どんな名前だ、おやっさん。

 

 

 「本当賢いな・・・ま、祝いにリンゴでも齧りつつ聞け。お前の名前はケイジだ。名前の通りでっかく育ったし、これからも目出たいことをどんどん見せてくれ」

 

 

 リンゴうまーそして俺の名前はケイジか。あれだなー由来は多分『慶事』出産とか結婚の目出度いことにも使うがそれ以外でも祝い事に使う。この牧場に、一口馬主さんらに目出てえことを運んでほしいという意味。

 

 

 後は多分おやっさんとトモゾウが読んでた漫画『花の慶次』の前田慶次だろ。俺がガタイいいからあっているけど、父親のテイオーに似た小柄だったら名前負けするところだったわ。にしても良い名前でよかった。「オマワリサン」ならぬ「リョウツカンキチ」とか「オオハラブチョー」とかつけられたら俺レース出る度に後ろから追いかけてくる馬たちに『部長~勘弁してくださーい』とか追いかける馬に『両津の馬鹿はどこ行ったあ!!』なリアクション取らないけないのかと思ったし。

 

 

 ある意味じゃ、赤子の時期は卒業。進学・・・もとい、いよいよ競走馬として鍛えて次に進むため、新しい俺の誕生日の代わりのリンゴってことか。味わい深いぜ・・・まあ、いつか大勝ちしまくって山のようにリンゴを俺に渡してもらうけどな!

 

 

 「よかったなあ。いい名前になって。よろしく。ケイジ」

 

 

 「ぶふ・・・」

 

 

 「おお。いい食いっぷりだ。そしてもう少しでお前も中央に預ける。頑張るんだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あっという間に時間は流れて2010年梅雨の時期。俺はいよいよもって調教師の所に引っ越す。馬になってからだが尚更に時間の流れが速く感じるわ。

 

 

 「ケイジ! 思いきり頑張って来いよ!」

 

 

 「ただし脱走芸と顔芸は控えめにな」

 

 

 うるせいトモゾウにおやっさん。一緒に笑っていたじゃねえか。そんでありがとよ! 

 

 

 「ケイジを頼みます。久保さん。変なことをするやつですが頭はいいですし、自主トレするようなやつなので名馬になれる資格はあると思います!!」

 

 

 変な事じゃねえぞおやっさん。脱走芸は頭の体操で、横ステップ蟹歩きをひたすらやっていたのは脚の鍛錬よ。ちゃんとリンゴ出したら止まったじゃあないの。そして名馬とか言うねえおやっさん。俺はにっこり久保さんも微笑んでくれてる。

 

 

 「ええ。必ず名馬にして見せます」

 

 

 手綱をひかれずとも馬運車に乗り込んでいく俺。この1年ちょいだが、俺の面倒を見てくれた牧場の皆には返し切れるかわからん恩がある。何かのきっかけで肉になりかねない経済動物に生まれた俺で、しかも血統はたどれば名馬のそれだがテイオーの産駒は走らない。走っても気性がやばかったりでセン馬になったりで血筋を残せていないし、母の方も地方のレースに1,2回勝てた程度ですぐさま乗馬用になっていたのをいいことに安く種付け出来た。

 

 

 今の特定の血統が多いという状況故に一縷の望みと肌馬を選ばなくて済むというのをセールスポイントに引退後もどうにか生き残れるように取り計らってくれたというのは本当にありがたいとしか言いようがねえ。

 

 

 「ケイジちゃ~ん元気でね~!! お腹壊さないでね~!」

 

 

 「うぅ・・・ケイジ~!! 必ず勝って俺にまた世話させてくれよ~!」

 

 

 女将さんが手を振って見送り、ちょっと涙ぐみながら手を振ってくれるトモゾウ。おうよ! 競馬界の皇帝と帝王、神讃、の末裔だってのを見せつけられるように、そんで思いきり競馬を楽しんでくるわ。見る方でも賭ける方でもなく走るほうだがな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 馬運車に揺られてとことこ。のんびり車の旅を過ごして着いたでござる。俺の出身は北海道なので栗東所属の調教師の下に預けられるんだとさ。おやっさんは下のほうとはいえ社爛グループにはいる方なのでそこ関連の施設で預けてもらえるそうな。

 

 

 運転中わざわざ窓を開けてエアコンの風を追加しつつ久保さんが教えてくれた。やっぱ馬に携わる人っていろいろ話してくれるんだなあ。ラジオも聞けて退屈せんかったし、運転席のエアコンの風追加で涼しかった。

 

 

 そして着いた場所はなかなか奇麗だしいい場所。おやっさん。金大丈夫かねえ? 知ってるんだぞこの前女将さんに内緒で俺の一口馬主代表になれるくらいには貯え使って怒られたっての。夜にこっそり脱走した際聞こえたし、お小遣いしばらく無くなったって俺に零していたし。

 

 

 「久保君お疲れ様。どうだい。ケイジの様子」

 

 

 「お、テキお疲れ様です。大丈夫ですよ。疲れている様子もないですし、運転中も暴れたりする様子もなかったですし」

 

 

 「そうか。にしてもでかいな・・・」

 

 

 調教師のおっちゃんは。ほんほん。のんびりとしていそうな少し細・・・いや、お腹は栄養状況が問題なさげな50になるかどうかのおっちゃんだわ。

 

 

 そしてでかいというがテキ。後から出てくるショーグンというもっとすげーやつもいるぜ? まあ、俺も成長次第でどうなるかわからんが。

 

 

 「よく見ると体重とかの割にかなり足もがっしりしているし、肉体もいい感じだ。長旅も苦にならないのは良いな」

 

 

 「ダイワメジャーとか大変だったみたいですしねえ。なんやかんや父に父父に母父、その上は有名処ですし、素質はあるはずです」

 

 

 「既に1歳馬と思えないほどの体格に筋肉、落ち着きを見せているからなあ・・・俺にもツキが来たか。ケイジ。俺も頑張るからお前も頑張ろうな」

 

 

 ははは! おやっさんらにも恩を返さにゃいかんからな。当然よ。でも、脳みそは一応人なんだ。楽しくやらせてくれよ! でなきゃ俺も飽きちゃうかもだからよ。

 

 

 「表情豊かだなあ・・・ここまで笑ったりする馬初めてだ」

 

 

 「牧場でもよく変顔していたそうですよ」




 このくらいの文字数くらいがちょうどいいのかしらん。


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ウマ娘エピソード 1 トリックスターと傾奇者

ゴルシのどんなネタを振っても大概は噛み合っちゃうキャラ性の広さは何なんでしょうかね


 ウイニングライブ。ウマ娘とファンのレースにおける終着点。レースに参加したウマ娘が応援してくれたファンへの感謝の気持ちを示すライブであり、レースの上位入賞者が入るもの、レースの規模によっては1位の子が行うライブだ。

 

 

 レースももちろん熱いものだし、勝負服に身を包んだウマ娘たちの全身全霊、命を懸けていると言っても過言ではないレースに燃える観客はもちろんだが、やはり応援が熱をあげるのはその後のウイニングライブあってこそ。

 

 

 燃え滾るレースを味わい、推しのウマ娘たちの歌い、踊る姿を見る。これに誰もが熱狂するもので、トゥインクルシリーズの大舞台となればファンの数もライブの規模の大きさもとんでもないもので人気の大きさと動くお金のでかさを物語る。

 

 

 国の一大事業であり、その頂点で戦うウマ娘たちは国でもトップのアスリートであり、アイドル。だからこそシンボリルドルフ会長は『ウイニングライブを疎かにする者は学園の恥』と言い切ってみせる。

 

 

 中央トレセン学園にいる2000名の学生ウマ娘、そこに入れなかったウマ娘たちに、夢破れて学園を去っていったウマ娘たち。彼女らを退け、勝利したものが手にできる夢の舞台。

 

 

 だからこそ大きな怪我や疲労がない限りはライブもしっかりとやらないといけないし、悪評一つ飛ぶだけで場合によってはちょっとのことで億単位の金が飛ぶ。それを知っているからこそ皆ライブの練習とレースの練習どちらも手を抜かず全力で行い、見目麗しいだけではなく美声を誇るウマ娘たちはそれにかまけず日々鍛錬を積む。

 

 

 しかしまあ、そんなウイニングライブにも癖の強い子が多いウマ娘たちの中には良くも悪くもぶっ壊す者がいるもので。今回のライブはまさにそんな感じだった!

 

 

 「「アンコールはコントで決定!! さあいくぞお前らー!!」」

 

 

 華やかなアイドル衣装に袖を通さずスーツに身を包み、サングラスをかけてライブの予定をその場でぶち壊してマイクを握るのは、葦毛で流れるような銀髪をした、一見見目麗しい美人、しかし中身は奇人変人なウマ娘、その名をゴールドシップ!

 

 

 「燃えて萌えての時間はここまでよ! 今度はアタシらで笑ってけー! ウイニングライブこそ何でもあり!! 一世一代ウマ娘の花舞台!!」

 

 

 「おうよ歌と踊りだけじゃつまんねえよなあ!?」

 

 

 そしてその隣で派手な男物の着物に身を包み、2メートル越えの肉体。ドォン! とステージが揺れそうなほどの足踏みをしてマイクを握ってパフォーマンスを見せる、同じくサングラスをかけて鹿毛の長い髪をポニーテールでまとめた美ウマ娘。ケイジ。

 

 

 「ゴ・ル・シ! ゴ・ル・シ!」

 

 

 「ケ・イ・ジ! ケ・イ・ジ!」

 

 

 二人の行うライブ。華やかな美少女の歌でもなく、バリバリのロックでもないまさかのコントという異色なもの。ただ、この二人の行うライブの滅茶苦茶加減はいつものこともあって観客は大盛り上がり。あちこちで二人を呼ぶコールが響き、歓声で会場が割れんばかり。

 

 

 「コントチーム、パーフェクト『ウーマ』ンズ!!」

 

 

 「みんなー! 映像に合わせてコールしろー!! さあ行くぜ! 3!! 2!! 1!!」

 

 

 ダンスがさらに過熱していくタイミングに合わせて後ろの大画面スクリーンの映像が変化してカウントダウンに変更。そしてそこに合わせてケイジが観客に声を出せと言う。美少女アイドルというよりは別のライブになっているのだがそれがいいと興奮は盛り上がる。

 

 

 「キャァアー!!! ゴルシちゃ~ん!! ケイジちゃーん!! 素敵よぉお!!!」

 

 

 「な、なんなんですのこのウイニングライブ・・・」

 

 

 「くぅぁあああ!! かっけええ!!」

 

 

 このライブに二人の親友は興奮した黄色い声をあげて千切れんばかりに手を振り、同じチームのマックイーンは茫然。ウオッカは二人のウイニングライブの常識外れとしか言えない二人のライブに感動して目を輝かせる。

 

 

 平成きっての名馬であり迷馬ゴールドシップ。競走馬きっての皇帝の一族である傾奇名馬ケイジ。二人はウマ娘になってもやりたい放題を行い、それであって尚多くの人を惹きつけ今夜のライブも大盛況となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、あのバカどもはまたこんなライブを・・・というか、アンコールとはいえ一緒にいた3位以下のウマ娘たちはどうしたんだ!?」

 

 

 「逃げたかもしれないな。最前列でそれらしい子たちがいるぞ?」

 

 

 場所は変わってトレセン学園の学生寮。そこでトレセン学園生徒会長、『皇帝』シンボリルドルフと副会長『女帝』エアグルーヴ。二人はライブ配信でやりたい放題。もはや二人のステージになってしまったアンコールライブの大暴れっぷりを見ていたがエアグルーヴが耐えきれずに怒声を出し、一方でシンボリルドルフは苦笑していた。

 

 

 「良いのですか会長!? ライブのアンコールでウマ娘たちが逃げ出すなどあってはならないはずです!」

 

 

 「しかしなあ・・・・・まあ、それも事実なのだがこのライブの在り方でウイニングライブも幅を持たせられるようになったのも確かだし、レベルが高いのも確か。ちゃんと他の子たちが歌い終わってのアンコールでこの二人になったからこそこの騒ぎともいえる」

 

 

 基本生真面目であり自他ともに厳しいエアグルーヴからすれば歌や踊りも課題曲以外を平然とする。曲は変えずともブレイクダンスをしたりアクロバティックすぎるオリジナルの振り付けであまりにも注目を奪いすぎたりと悪目立ちもする二人にはほとほと困り果てていた。月に何回かの割合で呼び出して説教をすることも珍しくない二人の奇行を止めようとしていた。

 

 

 だが止まらない。地頭もよくレースの実力もあれば踊りを覚えるのも早い。模範的行動をとってくれれば自分たちの後釜に据えてもいいと自分も内心思っているし、シンボリルドルフも生徒会、リギルの中では度々そう零す。

 

 

 「う・・・確かにそうですが」

 

 

 「マジック、トークショー、特技を活かしたパフォーマンスを使用して踊りを覚えるのが出来なかった、歌やダンスが苦手な子たちの活路を開いているのも事実。やりすぎなら、レベルが低いのなら戒めるが、客も盛り上がっているし、この入り用なら恐らくURAファイナル、WDTのライブに負けないほど入っているんじゃないか?」

 

 

 動画のコメントを見れば優に20万オーバーの観客が入り全員がエンジョイし、そして今はコント芸を始めたことで笑いの声が混じり始めていく。

 

 

 『ゴルちゃんいつものやったげて!!』

 

 

 『おう聞きたいかアタシの武勇伝!』

 

 

 『その凄い武勇伝言ったげて!!』

 

 

 『それならお前も追加!! アタシらの伝説ベスト10!!』

 

 

 『レッツゴー!!』

 

 

 『レースでむしゃくしゃ舌を出してのごぼう抜き!!』

 

 

 『なんとぉ! タブーを踏み抜き大勝利!!』

 

 

 『武勇伝武勇伝!! 武勇伝デンデデンデン!!』

 

 

 コントのキレの良さもあって客の合いの手の入れ方も様になっており、どんどん武勇伝。というよりはネタ、奇行、もしくは変な事故がノリノリで語られ続ける映像と横で流れるコメントもアイドルのライブがコントライブショーに変わったのに対して『まあゴルシだし』『まあケイジだし』『あの二人だしなあ』というコメントと笑いの声で埋め尽くされている状況。

 

 

 さり気なくこの二人がレースに出ると、他のウマ娘たちはいかにしてアンコールの際に逃げるかを相談しているという書き込みがあり、エアグルーヴが後日今回のレースに参加した子たちに問い質すのだがそれは別の話。

 

 

 ちなみに背後のスクリーンもその武勇伝の際の映像が映されることもあって尚更ネタが光る。

 

 

 『怪我とは無縁のウマ娘!!』

 

 

 『ワオ! 周囲に舐めプと言われだす!!』

 

 

 『武勇伝武勇伝! 武勇伝デンデデンデン!』

 

 

 『記者から雄たけびリクエスト!!』

 

 

 『スゴイ! 記者の鼓膜とマイクがパーン!!』

 

 

 『武勇伝武勇伝! 武勇伝デンデデンデン!!』

 

 

 とうとう声量が大きいことで有名なケイジにネタにしようと記者がマイクでケイジに雄たけびを頼んだ結果その大音量で観客は全員耳を押さえ、ケイジを囲んでいた記者たちは軒並み鼓膜破裂と気絶。録音機やマイクを壊したものさえも使いだす。ちなみにケイジとゴルシも気絶。見事なまでの自爆と巻き添え。

 

 

 「はぁー・・・」

 

 

 「ふふふ。あの事件は未だに耳から離れないからなあ。しかし用意のいいことだ」

 

 

 「その手回しの熱意を普段の生活にできれば私もいいのですが」

 

 

 目の前でコントが終わり退場の際は映画ラッシュ〇ワー3のラストあたりのシーンを真似して陽気に退場していく二人。終始彼女たちが注目を集めて暴れに暴れたライブは割れんばかりの歓声があふれ、野太い応援の声や客層の広さから見ても幅広い人気がわかる。

 

 

 「さて、明日は労いの言葉を用意しないとな」

 

 

 「それと注意もですがね・・・ライブ参加権利を得たウマ娘が最悪ライブ前に逃げ出すようなネタの暴走など言語道断ですから!」

 

 

 「う、うむ・・・そこの注意は頼むよ」

 

 

 恐らく強く注意を言うことがないであろうシンボリルドルフの様子に頭を抱えるエアグルーヴ。実際に実力はある上にそのレース運びも人によってはマジック、エンターテイメントと言われてレース素人にも受けがいい。そして本人らの性格もあってシンボリルドルフ、オグリキャップ、スペシャルウィークとは別のベクトルだが老若男女を問わずの大スターの一角なのは確か。トゥインクルシリーズの大立者。

 

 

 それを差し引いても目の前の皇帝はケイジに甘い。シンボリルドルフにべったりのトウカイテイオーに負けない、あるいはルドルフ自身から動いて声をかけたりするところを見れば一番甘やかしているのだ。

 

 

 代わりに自分が怒ることで示しをつけるかと内心考えている時点でエアグルーヴも優しいともいえるのだが。

 

 

 「しかし・・・ふふ・・・WOMANではなくUMANか・・・これは一本取られた」




 ケイジ 普段もふざける時があるがゴルシと一緒にレースに出れば一緒に、さらにふざけ倒しつつもクオリティーの高いアドリブとネタを披露するので周りのウマ娘たちは大体脱出術披露して逃げる。アンコールになるとそそくさと逃げられる。馬時代やっていたことをウマ娘になってもやっていたことが恒例になって記者に頼まれてやった結果大惨事を引き起こし、ネットでは素材になる。


 ゴルシ 言わずと知れたネタ満載の宝船であり浮沈艦。一番楽しかったアンコールからのライブはケイジがアグネスタキオンの飲めば身体が七色に光り輝く薬を飲んでからスパンコールマシマシの衣装を着けて頭にミラーボールつけて踊るケイジをバックにブレイクダンスたりデュエットかましたとき。おふざけアンコールのためにケイジと一緒のレースになれば本気出す。


 シンボリルドルフ 馬時代のケイジが血筋的に孫なのもあって甘々。ウマ娘になってのケイジの実績とネタの暴走。つまらない性格と言われる自分とは真逆の振る舞いで時代をけん引するのもあってますますゲロ甘。コンビを組んではしゃぐゴルシも一緒に優しく接する。ただしバイト禁止は解かない。


 エアグルーヴ 何かと普段変な行動をするケイジ達を怒る一方で実力とケイジ、ゴルシのある一面を知っているゆえになんやかんや手のかかる後輩として対処する。それはそれとしてタイキシャトルとエルコンドルパサーに変なことを吹き込まないでほしい


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身体はでかいが安心してください

この作品は先に私が書いているウマ娘の作品を終えてから本格的にやっていく感じです。その後に二つの作品を頑張ってちょこちょこできればなあと。


 『ほいほいほい。・・・・・ほいほいほいほい』

 

 

 うんうん。脚の不安もないし横も問題ないし、やっぱ体格的にも問題ないわ。これなら色々やりたいこともできるだろ。

 

 

 「お前どんだけ元気なんだケイジ。すでに過密トレーニングしているってのに・・・」

 

 

 『牧場で柵越えをやりまくって夜も走り回っていたりしていたからなあ。テキの鍛えでより効率よく体動かす方法覚えたからそのせいかも?』

 

 

 調教センターに来てかれこれ一か月。もう夏真っ盛り。ゲームのイベントもビールの売り上げも学生たちも盛り上がる暑い季節。すっかり厩舎の藁に馴染んで毎日グースカ爆睡とテキのトレーニングをしている俺。

 

 

 でまあ今はテキのメニューを全部終わらせてサイドステップの練習と間食中。横の脚の筋肉も鍛えないとねー。ボディバランスって大事よ。後楽しい。クロスステップでルンルンルーン。ギンシャリ先輩バリの強さを手にしないとなあ。テキのおっちゃんの練習も面白いからどんどん覚えていけているしね。

 

 

 「うーん・・・これ以上走らせても関節とか怖いが・・・プール行くか? ケイジ」

 

 

 んっぐんぐ・・・水ウマー。で、テキ。プールか? よっしゃ! 行くぜ!! こんなクッソあちいなか俺の馬体じゃ扇風機一つなんぞでは全っ然冷えないし俺もまだまだいけるからもう一つ行こうぜ。馬になっての本能もあってか走る楽しさと色々やってみるのが面白い。

 

 

 待ってろよテキ。ハグハグもぐんぐ・・・・ゴッゴッゴッゴ・・・・・ぶはー・・・よっしゃごっそさん久保さん。行ってくるぜ!

 

 

 「うおっ・・・マジか飼料も水ももうな・・・ああ! 待てケイジ! 手綱テキに持たせてやれー!!」

 

 

 「ぬぉ! ほんとお前プール好き・・・場所覚えているなこいつ!」

 

 

 ふははははは! 夏場のプール程心地いいのはそうそうねえぜ! 坂路も5本かまして飯食ってひとっ風呂の前にクールダウンとアイシング代わり。夏の醍醐味よぉ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ヒヒィーン~♪」

 

 

 「おうおう。気持ち良さそうに泳ぎやがって。1歳半とは思えないほどの肉体の仕上がりと落ち着き。練習も密度高めでこなして飯を食う。ほんと元気だし前田慶次の愛馬になれそうな奴だなあ」

 

 

 ああ”ー肉がほぐれて冷やされるのが気持ちいいんじゃぁー最高なのは温泉の中で泳ぐのが一番だけど馬の俺じゃあ出来ないなあ。はぁー頭も冷やしたいし潜水するかあ。鼻先と耳を器用に出しつつ潜水じゃー。

 

 

 うーん。やっぱプールトレーニングは俺にあっているな。どうしたって体格がでかすぎるし、タフな肉体に柔軟性あるから疲れづらいけど骨とかは別。関節とか痛めずに程よく骨と筋肉を鍛えるこれがありがたい。

 

 

 テキ。もとい葛城のおっちゃんもそう思っているらしく二日に一回。多いときは三日連続で入れてくれたりもする。ある意味第二のお風呂だしほんと助かるぜ。

 

 

 「ケルピーみたいなことするなあ。お前の親父さんもプールトレーニングで鍛えたそうだし、今後ライバルになりそうなステゴ産駒たちの父親(ステイゴールド)も泳ぎが上手かったと聞くしな。名馬たちの肉体を鍛えるのにいいもんだし、こんだけ頑張るのならどんどんやるか?」

 

 

 そしてテキも久保さんも俺によく話しかける。ここ最近は特にそうだ。多分だけど俺が人間の言葉をなんとなく理解していると思っていて。それでまあ色々話してくれるんだろうな。有名なのだとメイショウドトウかな。基本おっとり優しく人懐っこい彼だけど。オペラオーの名前を出すと拗ねちゃう。その理由が厩務員とかテキが落ち込んだりしながら話す様子を覚えているから気を遣うのと申し訳ないからって説が出てくるくらい。……なお、ドトウは実際に引退式も込みでテイエムオペラオーと顔を合わせたことが何度かあるらしいが、目の前にいる馬と「オペラオー」という単語が何故か繋がらなかったらしい。そのせいなのか、オペラオーとドトウは実は仲が良かったという。……うーん、知らぬが仏とはこういうことかもしれん?*1

 

 

 でまあ、この世界での俺の親父になるテイオーも滅茶苦茶人付き合い選んだり、怒った牧場スタッフにはしばらく無視決め込んだりしたらしく、公の場ではキリッと決めるけどプライベートは我儘。祖父に当たるルドルフに至っては厩務員とかスタッフからライオンと呼ばれるくらいだとか。それの子どもで孫だからわかっているってのと、信頼を築くために努力する。本当におやっさんやトモゾウ、女将さんもそうだがすげえなあ。

 

 

 「ブルルッ・・・・・」

 

 

 テキの提案にも顔を出してコクコクと頷いておく。それにちゃんと絞るところ絞らないと俺の場合は体重がなあ。親が親な分、見た目は頑丈だけど脆さを受け継いでいるかもだし。

 

 

 あとそろそろ上がるわあ。風呂とプールはマナーを守ってこそ。大衆浴場ならぬプールだしなあ。エチケットよ。江戸っ子も道産子も傾奇者だって場を弁えらぁ。

 

 

 綱を噛んで軽くグイグイ引っ張り終了の合図。テキと俺で決めた合図を出せばテキも察してくれるからありがたい。この後は一緒にプールトレーニングを出て久保さんに洗ってもらって飯を食う。さっき飯食ったろって? 動いたら腹減るのとぶっちゃけ他の馬基準で、大型馬基準で出されても足りないんだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなでかれこれもう冬。時間過ぎるの早いわ。そして夏は汗かく分腹減るが、冬は冬で過ごしやすいけど寒さに対抗するためにカロリー使うから腹が減る。久保さーんおかわりー!! 飼い葉大盛り水もくれー! 飼料を入れる容器を咥えてガンガン鳴らして飲み終わった容器を合わせておく。

 

 

 「まだ食うのか!? お前腹とか弛んで・・・ないなあ・・・まあ、あんだけ走っていたら腹も減るか・・・でもなあー・・・」

 

 

 「ヒヒン」

 

 

 馬鹿野郎、俺の爺さんは人間年齢で80後半代でも現役張りの肉体していたルドルフだぞ? そんで先祖にヒサトモ。体質的遺伝もあるのならそう易々弛むかっての。ちゃんと高密度のトレーニングしまくって。他がへばる中走っているわい。ただなあー・・・なんやかんや暇なのよ。飯ぐらいしか娯楽ねえわ。テレビのある場所分からないのもそうだけど馬を使っての併せ練習がない分練習がどうしても減るんだよな。

 

 

 ねぇ、久保さんよお。何で俺だけ併せしないの?? 割とマジで。他の馬の会話聞いてみてももうみんな……場合によっては俺より後の子たちでもみんな併走とかしているみたいなんだけど?

 

 

 首を傾げると久保さんも何となく気付いたのか飯のおかわりをくれつつ話してくれる。

 

 

 「あー・・・練習の件ねえ。それテキとも話しているんだけどさ。お前とのパートナーで難航しているんだわ」

 

 

 ええ~? なんだって1歳ちょい。もうじき2歳とはいえレースすら出ていねえガキ相手に練習相手探すだけで何苦労してんだよ。ここ中央だろ?

 

 

 「そんな風に首を傾げてもなあ。ケイジがでかすぎて周りの同期みんなビビるし、3歳でも怖がるやつがいたりで誰にしようかで難航しているんだってよ」

 

 

 「ふぶ・・・」

 

 

 うーん。まさかここにきて俺の馬体と体格が問題になるか。まあ、そりゃあ闘争心とか養う前の子どもたちにこんなデカブツ相手にしたらそりゃ駄目か。俺の体重は現在615キロ。ちゃんと過密トレーニングやしっかりクールダウン代わりのプールトレーニングを週3で追加して尚脂肪を削ぎ落したりしていくよりも肉がつきました。

 

 

 だからみんな敬語なのねー、気にしねえでもいいってのに。傾奇者の名前をもらっちゃーいるがそこかしこで喧嘩売ることはしねえよ? 売られたら買取して蹴りに行くかもだが。

 

 

 「まあ、なんか最近馬体もでかくて大人しい子が見つかったからその子と併せするってさ。追い運動とか、色々練習できるし、お前も次のステップへ行けるぞ」

 

 

 「ヒィン」

 

 

 『要はまあ、俺ひたすら基礎練、筋トレだけしまくっていた感じなのか。はぁーメシウマ』

 

 

 いろいろ理由が分かったので飯の方に意識の比率を傾ける。しかし、2010年冬でデカい馬体かあーショーグンか? それとも別の子? 大人しいって言っていたしなあ。まあ、ようやくいろいろ勉強できるステップに行けた俺。それはいいことだわ。

 

 

 すっかりミホノブルボンみたいだと言われるくらいには鍛えに鍛えたけど実戦で使っていないからねえ。見せ筋になっちまうとこだったよ。あーそれにしても飯がうまいけど・・・やっぱコロッケとかキャベツとか、いろいろほしいなあー・・・あ。馬ってキャベツダメだったっけ? くふぁー今度頼んでみるかリンゴ寄越せよって。もう安く出回っている季節だろう? 蜜のじゅわじゅわなかった良いリンゴくれよ久保さぁん。脱走して他の厩務員にボディチェックしてもらいに行ってもいいんだぞこちとら。

 

 

 「食ってるなあケイジ。久保。お前も食事と休んできたらどうだ? どうせおかわりの用意していたんだろ?」

 

 

 「テキ。ありがとうございます。あーそれと併せの件どうなりました? ケイジもやっぱり周りがしているのに自分がしていないのを気になっているようでして」

 

 

 「あーそれか。それなら無事に相手も決まったぞ。いいガタイしていたし性格ものんびりおっとり。でも賢い目つきをしていたし問題なさそうだ」

 

 

 ほうほう。そいつはよかった。脚質とかもそうだけど、色々一緒に走るの楽しみだったしなあ。

 

 

 「明日のお昼にあっちもちょうど時間が空いていたからやるそうだ。ケイジも今日はゆっくり休めよ」

 

 

 「よかったなケイジ。相性が良ければ今後のパートナーになるかもだ」

 

 

 飯が少なくなってきて容器に頭を深く入れている俺の首を撫でてくれるテキと久保さん。うんうん。それにどうにも聞くように同期っぽいなあ。誰だろ。ジェンティルドンナか? 女の子だし当たるにしても3歳の年末くらいになるだろうし。でもあの強気でタフな娘がおっとりとかちょっと想像できんな。

 

 

 ま、今は休んで明日に備えろってのが正しいわ。その前に飼い葉おかわりくれねえか久保さん?

 

 

 「・・・・・・・うーん。食べ過ぎが怖いんですが・・・」

 

 

 「デザートに別のものあげて抑えさせろ」

 

 

 何だとぅ!? 明日のためのエネルギーくれってことだろうがよお。そいつはねえぞ?

 

 

 「あーこれやるから落ち着けケイジ」

 

 

 これは・・・海パン刑事の必須アイテムバナナ! おおーならいいわ。これデザートにして昼寝するわ。くれくれー。

 

 

 「よしよし。今剥くからなー明日の練習前の英気を養おう」

 

 

 皮を剥いてくれたバナナを唇で器用に咥えて全部口に運んでいただきます。リンゴとはまた違うまろやかな甘味がたまらない。蒸したかぼちゃとかそんなのもないかねえ。あー・・・うまい。うまいけどその分人の食事も恋しいわあぁん。

 

 

 「うまそうに食うなあケイジ。そういや、リンゴが大好きなんだっけな。今度もってくるよ」

 

 

 『モグモグ・・・マジか! っしゃ! これは張り切りが増すぜ!』

 

 

 ただまあ、飯食ってからとりあえずお昼寝タイム。久保さんも俺の飯に付き合わせた分休んでいねえし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日になって葛城のおやっさんと一緒にパカパカ歩いて辿り着いたは調教スタッド。ここで待ち合わせらしいなあー。どんな奴なのやら。この時代、大概キャラ濃いしなあ。トーセンジョーダンとか来たりして。

 

 

 「お。茄子さーん。お疲れ様です。今日はお世話になります」

 

 

 「お待たせしました葛城さん。いえいえ。此方もこちらでまさかこの子以上に大きな子と併せの練習が出来るとは思いませんでしたよ。言うこと聞いて大人しい子ですから改めてそういう子とも練習させたいと思っていたので渡りに船です」

 

 

 そうこう考えていたら歩いてきたおっちゃん。うん・・・大変見覚えがある方が来て。その人が手綱を曳いているのは確かに大きい馬体で、そして芦毛なのだが既に白みがかっているのが特徴で、そんで鼻先がピンク色。

 

 

 「わはは。ゴールドシップだけにですかな? いやしかし、本当に落ち着いていますし大きいですな」

 

 

 「いやいや。こっちのゴールドシップも大きいはずなのにケイジを見ると霞みますよ」

 

 

 やっぱりゴルシじゃねーか!!! ゴルシのテキのおっちゃんあんたぜってえ1年ちょい後にはやべえことになるぞ!!

 

 

 『オイラ、ゴールドシップ。長いしゴルシって呼んでね』

 

 

 『おうよ、よろしくゴルシ。俺はケイジ。楽しくやろーぜ』

 

 

 こうして平成最強の名馬にして迷馬がまだ学級委員長。お母さんに似ていると言われている頃のゴルシに会ったのだった。まあ、3歳になったら突然グラサンつけて、金髪アフロになるほどの変貌を遂げるし、ウマ娘になったら芦毛真拳継承者にしてメジロ真拳マックイーン流の正統継承者になってしまうんだがなあ。かわいそうにテキのおっちゃん。今のうちに手を合わせておくか。馬だから頭下げるしかないけど。

*1
なお、2023年になってからメイショウドトウが「オペラオー」と思い込んでいた相手が騎手だと発覚するが、ケイジはそれを知る前に転生した。




 まだ1歳の仔馬たちにこんなでかぶつ併せたら怖がったりレースを嫌がりそうよねって。スパーリング相手にいきなり2メートル越えのやたら頭いいキン肉マンくるようなものですし。


 神様からのプレゼントの一つは体と胃袋の頑丈さ。大概のものは食べちゃえます。普通の馬の倍以上はご飯をもりもり。


 ケイジ もうすぐ2歳。馬の本能と筋肉もりもりマッチョを目指して坂路走りまくりプールも泳ぎまくる。すでにムッチムチのムキムキ。いつかコロッケときんぴらごぼうを食べたい。後フランスパン。


 久保 ケイジの厩務員。ケイジが人の言葉を理解しているのを察しているのでラジオを置こうか考えていたりいろいろ話してくれる。飯の食べる量がすごいのでちょっと休憩時間が減った。シャワー好きなので念入りに洗っている。でもケイジが何だか息子に思えているので苦にならない。


 葛城 ケイジの担当調教師。頭の良さと泳ぎの上手さからトウカイテイオーやシンボリルドルフを思い出したりしつつも人懐っこさと練習をさぼらないので安心。結構ハードな調教メニューを課しているのだがケイジがどんどん覚えていくのでそれにアイシング替わりの意味も兼ねてプール調教くわえたのだが問題ないのに驚いている。


 茄子 ゴルシの調教師。将来ゴルシに振り回される人筆頭。今はまだ大人しいので安心。ケイジのでかさを見て改めて驚く。


 ゴルシ まだ性格がお母さんに似ているころ。あと一年後にはハジケリストになります。この世界ではケイジの影響で強化入るかも。


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俺たちマブダチよ

 個人的にウマの際のゴルシの声のイメージはCV小野坂昌也 様 ケイジの声のイメージはCV山寺宏一 様 なおウマ娘ではじける時とかふざける時にこの声を出す。首領パッチとジーニーがコンビ組んで暴れます。それを見て同世代のウマ娘は絶不調か絶好調のどっちかになる。


 『ゴールドシップかあ。いい名前してんねえ!』

 

 

 『そうでしょそうでしょ。かっこいい感じするよねー』

 

 

 併せ馬をしてのんびり互いに併走。テキたちはどうにも話を聞くと第三コーナーから少しづつ速度を上げて第四コーナーで仕掛けるやり方を覚える。ロングスパートを仕掛けてからの最高速度を第四コーナーで出すようにしているようだ。

 

 

 というのもまあ。これは俺たちの馬体に関係している。俺もテキ曰く瞬発力。末脚は悪くないらしい。そしてゴルシを知っているのなら皆さんご存じだと思うがマックイーン譲りのスタミナと体格。ステゴ譲りの頑丈さと末脚を両方もらっているまさしく三冠馬を狙える。次代の担い手の一頭だ。

 

 

 俺の一族は末脚勝負は日本競馬界屈指、ステゴは世界で連勝しゴルシもその足を受け継いでいる。けれど身体が大きく重い分瞬発力を持ってもどうしたって軽量の馬たちの加速力には負ける部分はある。なのでまあ前以て加速をすることでよーいドンのコーナー勝負にさせずに有利な展開を作り続けるようにしているみたい。

 

 

 「よし。行くぞケイジ」

 

 

 テキの合図が入って一気に加速を速める。よいしょお! 坂路とプールで鍛えた末脚見せたらあ!!

 

 

 「うっお・・・! こいつは予想以上・・・だ!?」

 

 

 体内時計で測ってもいい加速のはずなのに、そこにひょっこり並ぶはゴルシ。ウッソだろお前! 俺より仕掛け遅かったじゃーん!

 

 

 『おお! 来やがったなゴルシ!』

 

 

 『速いねえ。でも負けないぞ!』

 

 

 これがGⅠ6勝、毎年確実に勝ちを取ってきていた名馬。それが真面目に走れば1歳ちょいの時点でもすげえんだなあ! 面白い。やっぱいいやつだわゴルシ!

 

 

 『そんならぁああ・・・!!』

 

 

 『いよいしょぉおおお!!』

 

 

 負けじと二枚腰を使っての加速を仕掛けるけどゴルシもそれについてくる。マジかよそこらへんの2、3歳馬に負けない程だぞこれ。ぬぅう・・・なんのぉお・・・届け俺の身体。でかい体は最後の競り合いにも輝くためでしょうが。頑張れ俺の身体。毛先でいいから先に届けえ!!

 

 

 「どうどう・・・ふぅ。ケイジがどうにか勝てたか」

 

 

 「凄まじい加速でしたね。この脚は親譲りでしょうか?」

 

 

 最終的に先着は俺。まだゴルシはスタミナが出来ていなかったというか、脚使いが幼かった分二枚腰を活かせた俺がなんやかんや馬身差をつけて勝利。でも、この時点でこの強さで、更には滅茶苦茶な動きをしての勝利。うーんこれはいいなあ。俺も頑張る上でいい友達になれそうだわ。

 

 

 併せを終えて俺も感じられたがなるほど併走して勝利しようと頑張る馬とジョッキー。背後から迫るプレッシャーは今までの練習では分からなかったし身につかなかった経験だ。これを学んで慣らせていかないと怖い子たちはビビって脚が鈍って逆噴射したりしちゃうんだろうなあ。逆に怖いから捕まりたくなくて先へ先へと行ったのがツインターボとカブラヤオー。

 

 

 『いやーまさか追いつくとはな。俺の方が一歩の大きさもあるのに』

 

 

 『ケイジ速かったね。オイラも頑張ったのになー』

 

 

 『坂路とかプール頑張ったしな。プールはいいぞゴルシ。汗かいた後にこれを浴びてからシャワーで流して食べる飯はもう最高なんだぞ』

 

 

 『あ、わかるわかる。プールいいよね。伊馬波のおっちゃんもオイラが泳いでいると嬉しそうに笑うんだよ~』

 

 

 ゴルシも素直だなあ。今の時点では。そしてやっぱ泳ぎうまいのかー

 

 

 『頑張れよゴルシ。俺とお前はライバルになると思うけど、お前さんが元気に過ごして、頑張れば皆喜ぶし、何かあったら正直に伝えるんだぞ』

 

 

 『おーそれがいいのかあ。ありがとうケイジ。お前はいいやつだなあ』

 

 

 それがいいよゴルシ。馬や動物は痛みとかを我慢する時がある。野生では弱みを見せたらそこから切り捨てられる。脱落する部分があるゆえにそういう部分があるけど競走馬ではそれを診てくれるお医者さんがいるんだ。だからまあ自分が体調悪いと思えばアピールして、遊びたい時は遊びたいと言えばそのほうがいい。

 

 

 遊んで身体を動かしたほうが馬の身体の構造的にもいいし。

 

 

 『いやいや。俺もゴルシはいいやつだと思うし、一緒にレースできれば楽しいだろうからねえ。だから体調管理は気をつけるんだぞ~』

 

 

 『お~ところでさーケイジはにんじん派? バナナ派? リンゴ派? 最近なんだか色違いのにんじんをテレビで見て気になっているんだけど』

 

 

 『リンゴ派だなあ。でも、機会があればかぼちゃとかマンゴーとかも食べてみたい。あとかぼちゃの煮つけ』

 

 

 この後もう二本併走。休憩時間にはゴルシと走り方を意見交換しつつ水ウマウマして帰ることに。帰り際に前足上げてふりふりしてバイバイしていたらゴルシも返してくれた。何でもこの後もうしばらくここで調教をした後に福島の牧場に行ってから函館競馬場でデビューしていく予定だそうな。

 

 

 流石ドリジャにオルフェと名馬ぞろいのステマ配合で一番の悪魔合体をしたであろうゴルシ。気合入っているなあ。あちらの陣営からしてもおっとり優しい、パワーあふれる優等生だし大事に、しっかりと予定組んでいるんだろうね。

 

 

 まあ、性格は後にいろいろな意味で裏切られるけどな!

 

 

 「いい子だったなあゴールドシップは。油断できないぞケイジ」

 

 

 「ヒィン」

 

 

 『応とも』

 

 

 そりゃあそうよ。だからこそ掴む勝利に、手柄に尚更価値があるってもんよ。頼むぜ葛城のおっちゃん。久保のにいちゃんよ。

 

 

 「お。おいおいくすぐったいよケイジ。シャワーには今から行くしちょっと待ってなさい」

 

 

 「初併せおめでとうケイジ。祝いにリンゴ用意したから後で食べような」

 

 

 マジで! いよっしゃー! 祝いじゃー! 初併走の祝いじゃー! 飼い葉も多めで!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 年が過ぎて2011年。俺も無事健康体で2歳になりまだまだ肌寒いが春の足音を感じる季節。

 

 

 『うわあぁあああ!!? なんだなんだ!? じ、地面が揺れ・・・!』

 

 

 『怖い怖い怖い・・・! いやだぁああ!! 厩務員さーん! 助けて、誰かきてぇえ!!』

 

 

 『ああ・・・この日が来たか・・・おやっさんたち大丈夫かな?』

 

 

 地面が大きくうねる。固いコンクリートがまるで別物みたいに揺れる。その強さに。自然がもたらす脅威に厩舎の馬たちがみんな普段の元気さとかそういうのを捨てて怯えている。地球が揺れる。いや実際にこの星が揺れるほどの強いものだった。

 

 

 2011年 3月 11日 日本に起きた大きな、とてもとても大きな地震。東日本大震災が起きたのだ。今の時代にも大きく爪痕を残す前代未聞と言っていいほどのもの。日本人のみならず世界にも不安を抱かせて心に影を落として、悲しみを生んだもの。その日が来てしまったのだ。

 

 

 「ケイジ! 皆いるな・・・よしよし。落ち着け・・・落ち着くんだ。いいな? 俺たちが誘導するし、そこで一時避難させる。わかったか?」

 

 

 「ヒヒン。・・・・・・ビヒヒィィ!!!」

 

 

 『落ち着けお前ら! 俺たちのお世話をしてくれる皆が助けてくれる! 今は身体をケガしないように地面に伏せてしばらく待つ。ふせぇい!!』

 

 

 そんな、ここ東京ですら震度5前後でただいま揺れている中なのに久保さんは来て俺たちのために落ち着くように声をかけている。久保さん自身も今すぐ情報を見たいだろうし、何より興奮している馬たちがいて危ないのに俺たちが興奮してケガしないようにと命を懸けてくれる。なら俺が応えないといけねえ。

 

 

 思いきり声を張り上げて嘶けばみんなも落ち着いてくれた。よしよし。

 

 

 『足を畳んで頭を下げる! 立っていたらあちこちに身体をぶつけてしまうしもっと危ないぞ。いいな!』

 

 

 『け、ケイジさん。はははははハィィイ!!』

 

 

 『あぁあ”あ”あ”。りょうかい・・・りょうかぢ・・・噛んだ』

 

 

 「お・・おお。みんな落ち着いて・・・・・ケイジがしてくれたのか?」

 

 

 「フゥ?」

 

 

 『久保さんじゃねーの? なんて』

 

 

 久保さんが来てくれたから俺の言葉にも説得力がついたしな。殊勲者、皆を落ち着かせるために身を投げ出しての行動大儀である! ってね。さてさて。揺れもおさまったか・・・しっかし・・・やっぱ長かったし揺れも凄い・・・本当にこれは規模が違うし、俺の本能でもガンガンやべえぞやべえぞと訴えてきた。人の理性と知性、経験もってこれだ。同じ厩舎の馬たちの怯えようは見た目以上だろうなあ。

 

 

 ゴルシのやつも福島にいるし・・・大丈夫かなあ。

 

 

 「よしよし・・・落ち着いてくれたか・・・ありがとなケイジ。俺はテキやほかの皆とどうするか相談しに行くからちょっと待っててくれよ? 待ってくれたらにん・・・お前はリンゴか。それやるから」

 

 

 そういってすぐさま出ていく久保さん。

 

 

 ・・・俺たちはどうしたって経済動物だし、出てくるレースも賭け事。ギャンブルなのは変わらない。だけどまあ、そうだなあー夢や元気を与えられるような。そんな風に頑張れたらいいな。最強を越えて次の時代を作った祖父のように。何度骨折しようが戦い続けて奇跡を起こした親父のように。

 

 

 背負うつもりはなかったがあんな風に怯える馬やそれを宥めようと頑張っている久保さんを見て思ったね。馬でも日本に元気を与えられる。その一因となれるように頑張ろう。ゴールドシップに、まだ見ぬジャスタウェイやジェンティルドンナ。そいつらに負けねえくらいに戦って、戦い抜いてやる。

 

 

 そのために心底レースを楽しんで、日常もやりたいことやって思い切り走りぬいてやらあ。

 

 

 『・・・だからまあ、ゴルシに皆も、どうか無事でいてくれ』

 

 

 小さく呟いた声はサイレンとニュース速報の嵐に消され、厩務員さんらの声で上書きされた。




 ゴルシって地味に被災馬なんですよねえ。そのせいで今でもサイレンを聞くと落ち着かなくなってそわそわしちゃうとか。地震とサイレン。人の慌てて動くさまを見ていろいろ心に刻まれちゃったんでしょうね。


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新馬戦よん

 三冠馬のなかでも最軽量級のオルフェーヴルが頑張っている時期に今度は歴代最重量級のショーグンが生まれていたり、そしてメロディレーンがいたりでここ最近の馬たちの体格差がすごい。テイオーがウマ娘になると150センチ。メロディレーンだとウマ娘になると130ちょいあればいいくらいなのでしょうかね。


 一応念のためですが主要馬以外は架空馬だったり、名前を変えていたり少しマキバオー的なノリも入れると思いますのでご了承くださいませ。


 あの東日本大震災の爪痕。その衝撃は今も尚ニュースで連日連夜報道され、久保さんや葛城のおやっさんも俺に話しかけてきている。ゴルシは無事だったようで新馬戦のために入厩準備は続行しているとか。

 

 

 東北に元気を。日本に元気をとみんながスローガンを掲げてあの目を覆いたくなるような災害の後でも立ち上がろうと気炎を吐く。この災害があっても立ち直る強さ、災害大国日本ということがあってもこの強さ、逞しさと輝きは本当にすごいの一言だ。

 

 

 ただ、やっぱりというかこの災害の影響は大きくてオルフェーヴルも挑戦するスプリングSの開催地であった中山競馬場は使用出来ずに阪神競馬場になったりと本当にドタバタしている。『俺の担当しているお前が新馬でよかったよ。レース場の調整でどこも大変そうだ』と俺に零したテキの顔でもう察した。

 

 

 「まあ・・・どうにかなってよかったよ。お前もこれで晴れてデビュー戦。阪神競馬場で芝2000メートルだ。がんばろうな」

 

 

 そして季節は2011年夏。俺らのデビュー戦である。うん。時の流れは速いなあ。すでにオルフェーヴルは二冠を手にしているのと。ゴルシも函館の方で入厩したそうだけど、なんでも『常に二足歩行を繰り返す化け物みたいな芦毛の馬が来たからみんな気をつけろ』と現場のスタッフの方に言われたそうな。

 

 

 すでにハジケリストとしての才能を開花させているとは。やるな。俺も頑張るか。

 

 

 「テキ。車の準備できましたよ」

 

 

 「おう。そんじゃ、行くかケイジ」

 

 

 「ヒン」

 

 

 『いよっし。ちゃんと身体も軽いし、うんうん。いい具合』

 

 

 そんで馬運車を運転できる久保さんの用意が出来たので一緒に移動して車に入ってとことこ。久保さんなんでも昔はトラックのドライバーとか、工事現場の作業員とかいろいろ仕事していたみたいだけどどれも合わず。ギャンブル抜きで馬が好きだったから一念発起してここに来た厩務員だとか。

 

 

 だからガタイもよければ馬運車の免許もすぐにゲッツ。趣味で漫画を描いているんだけど俺らをモデルに何か描けないかと思案中。多芸すぎませんかねえ?

 

 

 「涼しいかケイジ。暑くはないか?」

 

 

 「ヒィン。ひん」

 

 

 馬運車ってのは俺達馬を運ぶための車で、最近のだとクーラーも付いていてほんと快適。とはいえ狭い場所に馬を入れて運ぶし車酔いとかもあったりで馬にとっては慣れないと辛い。前の時代だとエアコンもないから扇風機で誤魔化したりしたそうだけど基本寒冷地域育ち、狭い場所はストレス感じる馬にはほんと辛いようで。

 

 

 そこらへん俺は人の時代から車酔いはしなかったしエアコンもまた運転席の方を開けてそっちの風も入るので快適だのなんだの。ゆっくり車の床で寝そべって仮眠をとることに。

 

 

 「寝ているようだぞ久保」

 

 

 「大物ですねえ。デビュー戦だってのに」

 

 

 「傾奇者にとっちゃ初陣も楽しむ場所でしかねえのかもなあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ケイジ。降りろーついたぞ」

 

 

 あいよテキ。あー車の旅も心地よかったわ。程よく揺られてエアコンの涼しい風が最高よ。え? ならはかた号に乗れって? この歳でおじさんになっちゃうのはちょっと・・・お尻の肉取れちゃう夢は見たくないよ。

 

 

 「お久しぶりです葛城さん、久保さん。そしてケイジ」

 

 

 「お久しぶりです前田さん。友蔵さん」

 

 

 降りて俺たちを出迎えてくれたのは一口馬主代表。俺の生まれの牧場主の前田さんことおやっさん。そんでトモゾウ。わざわざ阪神まで来て俺の初陣を見に来てくれたようだ。そういやトモゾウも俺の馬主になるために貯金一部使ってまでおやっさんと同じ代表馬主になれるくらい突っ込んだんだっけ。

 

 

 一口馬主さんにゃ俺がレースに出るたびに出走手当と手にした報奨金のうち何割かが来る。で、更に言えばテキや久保さんにもそっからボーナスというかお給料が来たりする。そんな色々背負っている馬。もとい俺の初戦だ。応援と期待を乗せてきたんだろう。

 

 

 任せてくれい。今からデビューの若造だがやれるだけやってきて必ず懐潤わせてやるからよ。

 

 

 とりあえず久しぶりに会えた故郷の皆に頭を下げて笑うとおやっさんもトモゾウも笑ってくれた。

 

 

 「旅疲れはなさそうですね」

 

 

 「この通り元気そうですよ。それに状態もいい」

 

 

 「ヒヒィン」

 

 

 「いやーでかくなったが相変わらずみたいだなお前は。頑張って来いよ。無事に走ってくれればそれでいいんだ。な?」

 

 

 首をなでなでしながら微笑んでくれるトモゾウ。わはは。ありがとよ。でもまあ、種牡馬として・・・おっき出来るかは不明だが色々期待されているのは知っている。それに応える義理と筋がある。だから頑張ってくるぜ。

 

 

 この後幾つか談笑を交わしてから前田のおやっさんもトモゾウも帰っていった。流石に長く牧場を空けられないらしくまた週末くらいにレース見に来るんだって。ヘルパーさんの依頼料高いもんなあ。しょうがないよね。

 

 

 で、俺の新馬戦は見習いというか卒業ほやほやの騎手が乗るとか。まあそりゃそうだわ。テイオー産駒の子たちもなんやかんやサンデー大正義の時代の中でGⅠに行けたやつらがいる。けどセン馬だったり牝馬がメインでオッスの馬は気性難だったりで大変。

 

 

 更に言えば俺の母親は地方で勝てたかどうかで更には乗馬用として過ごしていた分栄養云々の質から考えてもしっかり繁殖として飼育されている馬たちとは色々違う。そこから生まれた俺だし、競馬の時代からしてみてもディープインパクト、オルフェーヴルと軽量級の馬たちが昨今の時代を作っている中で600キロ越えの大型馬。親のテイオーは骨折しやすかったことを考えればテイオーよりもはるかに重い俺なんてすぐ骨折引退とみられている部分があるのだろう。

 

 

 育成の部分もあるが、さほど期待もされていない部分があるのも確か。乗り手が捕まらなかった部分もあるんだろうなあと。一人そう考えているとテキが優しく撫でてくれた。

 

 

 「大丈夫だケイジ。騎手はド新人だがお前を信じてくれているしお前の強さはお前を知るみんなが知っているからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「新馬戦芝2000メートル。あの大震災から早数か月の時が過ぎ、日本を元気づけようと、エネルギーを見せつけようと若き駿馬たちが揃いました」

 

 

 「騎手が、陣営が、馬がこのターフの中で全身全霊をぶつける長くも短い戦い。そこに身を投じる馬たちが来ましたが、いやはや一頭凄い子がいますねえ」

 

 

 「早速二足歩行していますが大丈夫でしょうか? ケイジ。馬体重はなんと驚異の630キロ。父親はなんとあのトウカイテイオー。帝王の子どもはどうやら傾奇者のようで」

 

 

 うまいこと言うじゃないのアナウンサーのおっちゃん。おうさ俺がテイオーの息子よ。みんなよろしくなー

 

 

 「こらっケイジ! 歩くのをやめろ! 周りの馬たちもドン引きしているじゃないか」

 

 

 えー30メートル行けたしもう少しやりたいが・・・しゃーねーか今パドックだし。よいしょっと。んーいい感じに後ろ脚がほぐれてあったまったな。さてさて。お客さんは・・・少ないねえ。やっぱブーム過ぎているのとあの地震の後だもんなあ。しょうがねえわ。

 

 

 「父ちゃん! この馬すっごく大きいし歩いていたよ!」

 

 

 「ほんとだなあ。でも、この馬はなあ・・・」

 

 

 お、親子連れか。まあ競馬ってご飯美味しかったりするから100円とか500円くらい賭けてから馬の戦いを生で見れるからなんやかんやちょっとした動物のイベントとしても見れなくはないんだよね。よろしくな~

 

 

 「頭下げて手を振ってくれたよ! じゃーねケイジ~!」

 

 

 「自由さはともかく賢い子だねえ・・・あの馬の息子らしい。うーん。ばあさん。久しぶりにちょこっとだけ賭けていいかい?」

 

 

 「ふふ。おじいさんルドルフとテイオー好きでしたものねえ。いいですよ。3000円までです。私は個人的にこの前のオルフェーヴルとゴールドシップが期待しちゃう。あの名優マックイーンの子でしょう?」

 

 

 おー老夫婦も。しかも俺の爺様と親父を生で見ていたっぽいぞこれ。あの時代ってどこのチャンネルでも名勝負は取り上げたり、女性客も競馬に多くいたっぽいしそこで恋が実ったパターンかね。馬券当てるの狙いつつ恋を的中させちゃったと。あ。スマホ向けている。はい。ポーズ!

 

 

 「ぬぉお! やめろケイジ!」

 

 

 「ビヒィ」

 

 

 『了解了解。そんじゃ行きますかね』

 

 

 無事に写真も撮ってもらえたので久保さんの所に戻ってとことこ移動。俺の行動にビビっている奴はいれどもやる気燃やすやつらは少ないねえ。むしろ除外して互いに警戒している感じだわ。

 

 

 そういえば倍率はどうなっているかなーと見れば・・・12頭中10番人気のオッズ45倍か。頑張って俺を応援してくれた人たちにボーナスをプレゼントできるようにしましょうかね。

 

 

 『さあいよいよ阪神競馬場5レース、芝2000メートル、2歳新馬戦12頭のデビュー戦はまず1番4枠のクイーンカメハメハが誘導を受けて入っていきます』

 

 

 いよいよ始まる戦いの始まり。この瞬間から俺がGⅠに進むための戦いが、駿馬たちによる戦いの旅が始まる。長いような短いような。いつ転んで終わるかもわからない戦いが。だがまあ、不安よりも昂ぶりと楽しさがずっと強い。

 

 

 馬としての生を受けてひたすらこの時のために過ごしてきたし、その価値があるほどの戦いへの挑戦の切符を求めての。己が命を輝かせて、見ている人たちに元気を与えるチャンスが来たのだ。張り切らないでどうする。気合が入らないでどうする。一生に一度の大舞台で燃えなくては勿体ない。

 

 

 『最後に12番12枠ケイジが大外枠に入り・・・・・スタートしました』

 

 

 よっしゃ! まずはこのやり方でやってやるぜ! ゴルシら相手に鍛えられた技の一つを見やがれ!

 

 

 『サウスカウボーイがまずま・・・いや! ケイジが弾丸スタートのまま前に出ました! ハナを奪いそのまま先頭第一コーナーを過ぎました』

 

 

 『2馬身、4馬身とグイグイ先へ先へと逃げていきますケイジ。掛かっているのでしょうかハイペースです。騎手も今日が初出場。掛かってしまっているであろうケイジと折り合いをつけて一息付けていくべきでしょうか』

 

 

 掛かっている? んにゃわけない。今日のコーナーは・・・っし。行けるな。それじゃ息を入れつつ・・・コーナーで加速すっか! 脚の動きをちょいと変えて体の動きも遠心力でぶれねえように・・・

 

 

 スタンドから聞こえる歓声が心地いい。勢いが落ちていないからね。第二コーナーからの長い直線でペース変えてのコーナリングで加速を決めて第三コーナーで勝負を仕掛けていく。

 

 

 『第三コーナーに入っても尚ケイジと後方の差は埋まらない! 15・・・いえ、馬身差で表すのが厳しいほど! 後方も仕掛けますがコーナーで減速をしているというのにケイジだけ足が鈍らない! 止まらない!』

 

 

 『ケイジ独走状態、一人旅で第四コーナーを一人先に過ぎて最後の直線! これが新馬なのか! 持っているエンジンが違う! 逆噴射もなしにケイジさらに伸びる伸びる!!』

 

 

 コーナーも過ぎて最後の直線に入ったから走り方を直線用にシフトチェンジ。いや、この際はギアチェンジでいいのか? それをしてから更に仕掛けていく。余力もまだあるし脚も使える。後ろの馬たちの足音が遠ざかるのが心地いい。

 

 

 『残り200メートルさらにケイジの加速は続いていく!』

 

 

 『後続馬誰も届かない! 皇帝の孫、帝王の息子が格の違いを見せつける!』

 

 

 最後はちょっと息を抜いてクールダウンしつつゴール。ふぅぃ~いい感じだったぜ。毎日頑張った成果は確かに出ているな。

 

 

 『持ったまま今ケイジがゴールイン! 勝ち時計は1分56秒ジャスト。レコードです!! 格を見せつけるがごとき大差勝ちを見せましたケイジ! 凱旋です! 競馬界の皇帝の一族、その中の傾奇者がここ阪神競馬場で一族復活の狼煙をあげました!!』

 

 

 お。レコードマジか。思った以上にこの身体のパワーと体重を乗せた加速は速度が出るっぽいな。毎日坂路と2日に一回はプール調教していたからぶっちゃけどれほどまで走れるか分からんかったし新鮮。他のやつらにドン引きされた目を向けられつつも気にしなーい気にしなーい。

 

 

 んじゃ、ずっと考えていたことをするために皆走り終わったしポコポコと移動。騎手が手綱引いてくるが我慢しろっての。振り落とすぞ?

 

 

 『おおっとケイジ。ウィニングランでもするのでしょうか? 大きな馬体がゆっくりとターフの上を歩いてスタンドのある場所の真ん中で止まりました』

 

 

 ここらへんでいいか。それじゃ。思いきり息をスゥーっと吸い込みつつ首を下げて・・・・・・

 

 

 「ビヒヒィイイィイィィ!!!!!(いぃよっっっしゃぁああああああああああ~~~~!!!)」

 

 

 初勝利じゃぁああああああ!! 見ておけよここの皆! こっからもおもしれえ戦いになれるよう頑張るからよお!!

 

 

 『ケイジが吼えた! 漢ケイジ勝鬨を! この阪神競馬場で手にした初手柄を手に遠くにいる祖父シンボリルドルフに、ミホシンザンに、父トウカイテイオーに届くよう高らかに勝鬨をあげました!! 二歳新馬戦! 早くもこの時代の最強候補にケイジ名乗りを上げたか!』

 

 

 あほか実況! 俺だけじゃねえ。最強格がたくさんいるからこの時代が面白くなるんだ。俺が挑みに行くんじゃい!! まあいいや。後はさっさと撤退じゃーい。老夫婦も親子も儲かったのなら孫と飯食いに行くなり玩具買ってやんなよ。若しくは震災募金にお財布の小銭、お釣りでも可! じゃばっははーい。

 

 

 『やることはやったとケイジが計量室へと入っていきます。やることはやった。後は悠々帰る。いやはや。今後が楽しみな一頭です』

 




 レコードを0,1秒更新。630キロの馬体でサイレンススズカやツインターボ張りの大逃げかましたら迫力ありそうですよね。


 ケイジの咆哮は勝利したら毎回します。ケイジなりのパフォーマンスです。


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ウマ娘エピソード 2 学園の顔役

 架空馬がどれもこれも面白く素晴らしい。いやほんと皆さん文才凄すぎる。


 ウマ娘世界ではケイジが自由に動けるために色々歴史展開が歪んで&強化されております。そして基本ウマ娘回のBGMはこち亀。


 「ふふふ・・・」

 

 

 「会長。如何しましたか?」

 

 

 朝。それも早朝もいい時間生徒会室で書類仕事を終え、一息ついているシンボリルドルフとエアグルーヴ。二人とも自主練を終え、食堂が開く時間直後に来て朝餉を済ませて生徒会の仕事を授業。他の生徒たちが食事を済ませている間にこなしていたのだ。

 

 

 普通の生徒ならまだまだ寝ていたいだろうし、食後もあって眠いとぼやいたりだるいだのと歓談しながら校舎に向かい子がちらほらいるか。そんな時間であっても二人は眠気も疲れも気だるさも見せずに仕事をこなして紅茶を飲んで優雅なモーニングティーを味わっている。

 

 

 永遠なる皇帝。それに相対できるほどの数少ない相手であり女帝。その二人の持つ実力はウマ娘としても、そして学生、いや既に学園やウマ娘業界にも影響を持つ二人の実力は社会人としても洗練されているもの。

 

 

 エアグルーヴ自作の茶葉の香りを楽しみつつ笑みを浮かべているのはシンボリルドルフ。彼女の持つ新聞と机にあるまだ新しい本を見てリギルでも早々見せない程にほほを緩めているのだ。

 

 

 「いやあ・・・相変わらず自由だなと。そして羨ましく愉快だよ彼女たちは」

 

 

 「ああ・・・この新聞ですか。なるほど確かに」

 

 

 新聞の見出しには『ジャスタウェイドバイDF制覇! 最強の一角と世界が評価』『最強にして最遊、最凶世代たる証明を見せたジャスタウェイ。白金の末脚を世界に見せつける』と綴られた新聞の数々・・・とそこの写真に写る胴上げされる鹿毛を肩にかかるくらいまで伸ばし、美しい流星が特徴的。ゴールドシップに近い長身グラマーな美少女ジャスタウェイ。

 

 

 そのジャスタウェイを胴上げしているメンバーはケイジ、ゴールドシップ、ジェンティルドンナ、オルフェーヴル、ホッコータルマエ、ラニ、ヴィルシーナたちだ。

 

 

 最強にして最悪世代。日本へ多くの栄冠、次のステージへ押し上げると同時に問題を運ぶクレイジー集団。彼女たちの様なウマ娘であれ。誰もが認めるほどの強さと実績を見せて日本の強さを。あの大震災後の日本を盛り上げに盛り上げ続けたウマ娘。

 

 

 千代田区のさる御方から直々に勲章をもらい、国民栄誉賞をもらうと同時にそれが取り消されるかもというも話があり得るほどの暴れっぷりを見せた世代が彼女たち。

 

 

 「しかし・・・何度も言いますが問題行動がないわけではないのですよ会長・・ラニもケイジがいなければあれですしオルフェーヴルもスイッチが入れば怖い・・・まともなのはヴィルシーナくらいです」

 

 

 「そうは言うがな。見ていてこうも面白い時代を、流れを見せて日本に元気を届けた。新しい時代を作った彼女たちは応援したくなる。縦横無尽にして快刀乱麻の大立ち回り。認めなければ嘘だろう」

 

 

 「それはそうなのですが・・・クレームの数も同時に歴代最高ですからね」

 

 

 「ふふふ。だがこの時代はそのクレームすらも笑いに変えるだろう」

 

 

 糠に釘、暖簾に腕押し。今日のルドルフには何を言ってもこれだろうとエアグルーヴは重い息を少し吐くだけにとどめて紅茶で残りを飲み込んでおかわりを注ぐ。実際そうなのだ。

 

 

 ケイジ、ゴールドシップを筆頭にダートGⅠ12勝を果たした砂の絶対強者ホッコータルマエ。ティアラ三冠、ドバイSCを手にした最強の女皇ジェンティルドンナ。クラシック三冠ウマ娘。凱旋門賞2戦2位のオルフェーヴル。アメリカにて三冠を手にしたラニ。そして先日にドバイDFを優勝。この時代をもってして世界最強の一角と認めさせたジャスタウェイ。ジェンティルドンナに食らいつき2位を連発。ヴィクトリアマイル連覇のヴィルシーナ。

 

 

 リギルですら未だ手にできていない世界のレースでの勝利を幾つも手にし、クラシック、ティアラ、アメリカ三冠を同時期に手にし、凱旋門賞に挑んでここにありと示した強者たち。ホッコータルマエに至ってはGⅠ勝利数はルドルフの倍近い数を手にしている。

 

 

 学園最強はチームリギル。それはすなわち日本最強のウマ娘のチームはリギルと言えるのだが今は違う。スピカ、そしてケイジとジェンティルドンナ率いるシリウスこそ学園最強のチーム。世界有数の怪物たちという声も珍しくない。

 

 

 「この本も見たがまあ愉快でな。冗談のような事実がいくつもあるわ、本人たちのコメント、彼女らの反応がもう・・・くく・・・」

 

 

 「な・・・い、良いのですか会長・・・」

 

 

 「ここまで来てしまったというのもあるし、おおよそ世間の声も受け入れているようでな。私も楽しんでいくとするよ」

 

 

 「それでケイジ達がつけ上がらないかが私は不安なのです!」

 

 

 ただまあ、同時に問題児なのは言わずもがな。ゴールドシップの予想もつかない悪戯と暴走の数々に加えて、それに付き合える上に本人も問題行動多数のケイジ。身内には優しいが一度キレると手に負えない。レースとなれば猛獣という表現ですら生ぬるいほどの戦意を見せるオルフェーヴルとラニ。ラニに至ってはアメリカで怪獣王のあだ名をもらう始末。

 

 

 名家の出身にして本人の美貌もウマ娘の中でも一つ抜けた美少女。だというのにレースではタックルをするわ身体を強引にウマ娘の間の中にねじ込んでこじ開けるという強引さ、パワフルさを見せ、それを勝負事だと言い切る、そのパワーも規格外のジェンティルドンナ。ロコドルとして苫小牧アピールをどこでも行い一国の大統領でも国王でもPRを欠かさずやりまくった結果「TOMAKOMAI」を世界共通の日本ワードにしてしまうホッコータルマエ。

 

 

 優等生に見えて芦毛フェチ。レース場で事あるごとに写真を撮り、場合によってはレース前後で口説き始めさえする。ハジケリストコンビの暴走も『あの二人だし』とメロメロで制御をあんまりしない、ただしキレると二人以上に暴れるジャスタウェイ。

 

 

 一癖二癖どころではない。この中央トレセン学園の問題児全員を集めても張り合えるくらいの濃いメンツ。それがスピカとシリウスに集結し、ゴルシとケイジを中心に問題行動を起こしまくる。エアグルーヴからしてみればどうすればいいのだと思う毎日である。

 

 

 世界に日本の強さを見せ、日本国内ではそのエネルギーを見せつけて震災後の日本に元気を与え、支えた英雄たち。だがその英雄たちが問題児過ぎてそのエピソードをまとめたそれなりに分厚い本が出る始末。理事長とたづなさんもどんな顔をしたのやら。

 

 

 「あの大会を制した後のインタビューや諸々の準備でジャスタウェイは遅れますがケイジ、ゴールドシップらは今日から登校。全くいったい何をしでかすのやら・・・」

 

 

 「ああ、そういえばそうだったか。ふふふ。土産話が楽しみだ。何でもあちらのチョコや銘菓をくれるそうだ」

 

 

 「朝から小難しい顔をしているなエアグルーヴ。軽食でも食べるか?」

 

 

 「お、早くから珍しいなブライアン。その包みは?」

 

 

 帰ってきてから起こす珍騒動と問題行動よりも土産話に微笑むルドルフとは対照的にどんどん疲れた表情を見せるエアグルーヴ。そんな中に珍しく朝から生徒会室に顔を見せるナリタブライアン。片手には何やら小さなものを包んだ紙。そしてウマ娘には少し足りないが一般の男性には満足。女性では少し余るかもなボリューミーな弁当をビニール袋に入れてきていた。

 

 

 「ああ。この前ジャスタウェイがドバイDF優勝しただろう? その祝いだと言ってケイジさんがくれたんだ。特製ジャスタウェイ飴だと。そしてこれは優勝祝いスペシャル弁当」

 

 

 どかりとソファーに身を沈め、小さな飴を包んでいる紙を取れば。そこにはデフォルメされたジャスタウェイの顔が描かれた金太郎飴。そして肉マシマシ、白米の部分には見事に彩られたこけしに手を付けて何というかなんとも言えない顔をしたものがキャラ弁よろしく描かれたインパクト抜群の弁当を見せた。

 

 

 「早弁にはちょうどいいと思って買ったがこれで450円は安い。コンビニの弁当よりずっとあるぞ」

 

 

 「ほうほう。これは中々・・・私も昼ご飯に買いに行こうか」

 

 

 「・・・まてブライアン。ケイジが作っていたのか? そこにゴールドシップはいなかったか?」

 

 

 「ああ。いたぞ? 校門前でメンチ切って楽しそうにしていた」

 

 

 「・・・ま・た・か・・・ぁああ!!」

 

 

 「ー・・・ああ。ちょうどいい。一つ頼み事でもするとしよう」

 

 

 勝手に紅茶を自分のカップに注いで弁当を食べ始めるブライアン。そしてケイジが作った飴にこれと来ればやたらと弁当を売ったり焼きそば、お好み焼きと商売を良くするケイジの相棒にしてライバル、ゴールドシップをすぐ思い浮かべる。

 

 

 なんやかんや彼女らの作る弁当、料理は好評でエアグルーヴもルドルフも認めていた。そして二人の大親友ジャスタウェイの優勝祝いとやったのだろうが・・・帰って早々学生が学問にいそしむ前に弁当を学校前で売り始めるという珍騒動。しかもゴールドシップ程の美少女かつ高身長、怪力を持つ相手に威圧などされれば怯える人は多いだろう。

 

 

 いよいよ我慢ならないと、この問題児どもに今度こそお灸を据えようと生徒会室を豪快に開け放っていき、ルドルフも様子が気になるのと弁当を買うために後を追う。

 

 

 「うーん。この味の良さは中々・・・お。この大根もいけるな。さてと・・・」

 

 

 弁当に舌鼓を打ちつつ、ブライアンはあの様子を見てどうここまで引きずってくるか生徒会室から眺めるために場所を移して窓から校門前を眺める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ゴールドシップぅう! ケーイージーィイ!! 貴様らドバイから帰ってきて早々なにを・・・?」

 

 

 鬼気迫る表情で校門前に走るエアグルーヴ。そしてついた校門前ではやっぱりというかケイジとゴルシがいたのだが、制服姿で校門前に座り込み、メンチ「カツ」を切り、大変手慣れた手つきで次のメンチをあげていた。何でかサングラスをつけて変顔とも威圧とも取れる顔をしながら。

 

 

 「あぁ~ん? おおーエアグルーヴじゃーん! どうよゴルシちゃんたち特製弁当のメンチカツ! 黄金色で稲荷様もよだれを垂らす絶品だぜ~?」

 

 

 「ジャスタウェイ優勝記念特別弁当黄金屋特別販売~安いよ~美味しいよ~」

 

 

 そしてケイジは駅弁売りのための道具に弁当を敷き詰め、売上金を入れるための小箱を抱え、チンドン屋を思わせる派手派手なスパンコール大量な、法被を思わせる衣装に身を包み、頭には白鳥の被り物をして自身の頭と白鳥の頭に『ジャスタウェイおめでとう!』と書かれた鉢巻きを締め、背中に『ジャスタウェイドバイ勝利の手柄取ったり!!』と書かれた旗を指している。とどめに白鳥の口にもケイジの口にもキセルが咥えられておりモクモクとオレンジ色の香りの煙をまき散らす。

 

 

 「あ。ジャスタ先輩勝利記念飴はここっすー5個セットで50円。大玉サイズは6個で100円。弁当とセットだと564円でお茶も付いてきます。あ、どうもどうも。毎度ありー」

 

 

 ゴルシの横では屋台が出来ておりオルフェーヴルが売り子をしており弁当の盛り付けはホッコータルマエが機械のような速さと正確さで次から次へと作っている。

 

 

 「なんだこの光景は・・・」

 

 

 熱でも出たか。そう言いたくなるような光景に思わず眉間に指を寄せてうなだれるエアグルーヴ。風邪をひいたときでもこんな絵面は見ないぞと毒を吐き、しばらくして天を仰いでさんさんと照り付ける太陽の日差しとそれをまぶしいと思う自分の感覚が現実だと再確認させられた。

 

 

 日本国内のウマ娘にとっての最高学府であり最難関校。日本のトップアイドルでありアスリートウマ娘を育てる2000名以上のエリートたちが過ごす学び舎。そこで最強と呼ばれる実績を世界に見せつけたメンバーたちの行動がこれ。

 

 

 「お。おっちゃんら仕事だろ? そんなら大サービスの550円でサービスだい! なに? 14円しか違わないだと? わははは! 何を言いやがるよ14万円引きの間違えだろ~赤字だぜこの色男ども、憎いね!! お! ほーん。現場の皆の分も買うのかい? そんなら大サービス、500円でお茶と飴もサービスしてやるよ。オルフェ~! お茶の補充あるか~!!」

 

 

 「問題ないっす~あ。でもそろそろ売り切れなんでお茶サービスはそろそろ切りますよー」

 

 

 「おーう問題ねえ。売り切れなかった分はアタシが買って食べるからよ。よっしゃ。今日も仕事頑張ってきな色男ども! みんなを振り向かせるような美人な建物と仕事ぶり見せてきてやんな!」

 

 

 工事現場に向かう男性らと楽しげに談笑し、割引などをしつつ軽快に笑う。そこだけ見れば社交性のある女性だが外見と行動する時間が何もかもずれすぎている。

 

 

 「おあちゃぁアアアア~~~!! 口と鼻に油があああ!!!」

 

 

 「あ。ルドルフ会長。えーとスペシャル弁当で。はい。ピッタリすっね。ってゴルシせんぱーい! 水、これ水っす!」

 

 

 「・・・あらー? 大丈夫ですかエアグルーヴ副会長?」

 

 

 すぐそばでゴルシが跳ねた油と衣カスのせいでのたうち回り、ルドルフは弁当を買ってホッコータルマエはようやくエアグルーヴに気づいて首をかしげる。ブチン。と何かが切れた音が響いた。

 

 

 「おールドルフ会長にエア副会長。お二人さんどうだ? 特製弁当! いやーゴルシのやつと一緒に揚げ物修行して免許皆伝もらった甲斐があったぜ」

 

 

 「なぁーにをしているのだ貴様らぁああああ!!!」

 

 「おぶぐっ!?」

 

 

 機関車のようにキセルからオレンジの香りの煙を振りまき、煙のわっかを出しつつ笑顔で歩いてくるケイジにむかってエアグルーヴ渾身の浴びせ蹴り。2メートル越えのケイジの頭に見事にクリーンヒットして吹っ飛ぶさまは後にエルコンドルパサーに『あれはまさしくルチャの神髄デース!』とほめたたえられ別の意味でも尊敬されるきっかけとなったのは別の話。

 

 

 「学校に登校する生徒を横に弁当売りにいそしむ阿呆が何処にいる! もう許せん!! 貴様先に説教をしてやる!」

 

 

 「ぐはぁああ!! 優しく! そこは優しくお願いしますぅう!!? 縄が食い込んでケイジの胸があふれる! こぼれちゃうから!」

 

 

 「うっひょー! ケイジの緊縛だぜ! 撮れ高だああ!!」

 

 

 浴びせ蹴りからの荒縄を用いての緊縛。器用に縛るせいでケイジの肉体のくびれが露になりなんでか親友のピンチにカメラを向けて舌を出しながらシャッターを切りまくるゴルシ。

 

 

 「よーし撤収しましょっかホッコー。弁当も飴も売り切れっす」

 

 

 「じゃあみんなで山分けだね~これで今度一緒にファインちゃんとかファルコちゃんと一緒にラーメン行きたいなあ」

 

 

 先輩たちの行動などわれ関せず。若しくはそうするように前もって頼まれていたか屋台の片づけをてきぱきとしていくオルフェーヴルとホッコータルマエ。

 

 

 「さあついてこいケイジ! 今度という今度は逃がさんぞ!!」

 

 

 「いやぁああ~~~!! ゴルシ、ゴルシいぃぃ~~!!」

 

 

 「いやだぁあああ!! ケイジ、いかないでケイジ~~!!」

 

 

 身動きを取れなくされたケイジがズルズルと学園に引きずられ、ゴルシとケイジが互いに涙を流しながら手を伸ばし、ケイジが速攻で手を振り払った。

 

 

 「ヒロインは私のものよー!! 」

 

 「「「「えええー!!?!?」」」」

 

 

 「あーんエアグルーヴ!! ケイジ怖かったんだから~!」

 

 

 (((あれれー!? そっち行っちゃうのー!!?)))

 

 

 突然のヒロイン宣言と縄を自力で引きちぎってエアグルーヴにダイブしに行くケイジ。

 

 

 「お前のようなヒロインがいるかぁあーーー!!!!」

 

 

 「ぐわぁあああああ!!!」

 

 

 「ケイジ~!! 変な音がしたが大丈夫か!?」

 

 

 「こんなUMAの回収で驚かないでください会長!!」

 

 

 「UMAでありUMA娘・・・くくふっ。流石だエアグルーヴ」

 

 

 しかしエアグルーヴのタワーブリッジを喰らって沈黙。全身をグルグル巻きにされ、白目をむいたケイジを心配そうにルドルフが見つめるなか今度こそ校舎内に入っていく生徒会コンビと傾奇者ハジケリスト。心なしか白鳥の被り物もぐったりしている。

 

 

 「ケイジ~! ・・・・・・しょうがない。後で焼きそば奢って慰めるか♪ おーいオルフェー、ホッコー。後でスピカ行って駄弁らねえか?」

 

 

 「いいっすよ。ケイジ先輩もすぐ戻ってくるでしょうし」

 

 

 「賛成ー」

 

 

 一緒に弁当売りをして、涙を流して遠ざかるケイジを見ていたゴルシだがその涙はなんだったのかと言わんばかりにけろりとして明るく振る舞うゴルシの提案に二人して即答。しばらくして校舎内に「やめてー! 誰かーー!! 男の人呼んでーーー!!!」というケイジの無駄にハスキーボイスが大音量で響き渡る。

 

 

 しかしこんな珍騒動は学園周辺では日常茶飯事。声の主がケイジでありゴルシたちの弁当販売の事もあって今日も平和だ。くらいにしか思われなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あづづ・・・で・・・アタシに説教って何するんだよこんなヒロインを生徒会室に連れ込んで一体何を・・・は・・・もしや・・・」

 

 

 「お前の考えているような事なぞせんわケイジ!! 全く・・・頭が痛いがお前の力を借りたいらしい・・・生徒会長と理事長からな・・・はぁ・・・」

 

 

 芋虫のようにロープでぐるぐる巻きにされて生徒会室まで連れてこられたケイジ。しょうがないからと右へゴロゴロ左へゴロゴロしながら話を聞いているとルドルフの頼みだと聞いて視線が真面目なものに変わる。

 

 

 「うむ。ケイジ。君の人脈を借りたいのだが。少しばかりトレセン学園内のレース場と野外ステージの整備に人手を都合してくれないか?」

 

 

 「おいおい。何の冗談だよお二人さん。中央トレセン学園のお抱えの園芸会社や建築、リフォーム会社なら一流どころだし人手も問題ないだろ」

 

 

 思わぬ頼みごとに首をかしげるケイジ。様々なレース場を再現したコースグラウンドがいくつもあり、ダート場、ウッドチップ。そして野外ライブステージも2、3個ある超弩級の敷地を持つこのトレセン学園。国の一大事業であるトゥインクルシリーズ。ウマ娘たちの日本最高峰のレースを行う名選手たちを送り出す学校だけあって資金は潤沢。管理に関わる会社もどれもこれもが日本どころか業界では世界にも名の知れた園芸や建設関連会社が関わる。

 

 

 そこで人手不足だから一学生。問題児のケイジに力を貸してくれとかの皇帝と理事長が頼むなど何事だと流石にケイジも疑問符が浮かぶ。

 

 

 「それなんだがな。今やこの学園の門をたたく生徒の数は中等部高等部を問わずに過去最高。前例がないほどに多く来ている。そのためにテストをするため、あるいは入学できた子たちのレースや練習でレース場の荒れるペースがあまりにも早い」

 

 

 「それにあらゆる設備、特に野外施設は常にだれかが予約していることもあってなかなか点検整備が出来ずじまいだったのだ。なので、近々大々的に学園内のレースコースの一斉整備を行うこととした」

 

 

 「だが・・・ちょうど今は春。GⅠレースが多く開かれるうえにクラシック、ティアラ三冠もある。天皇賞も、多くのレースが始まるウマ娘たちのためにも、デビュー戦などもあって関連会社の方もこちらに人が割けずにレース場を1つどうしても頼んだ期限内で整備できないと言われてな。時期を伸ばしてもいいと頼んだがそうすると今度は社員の体力と気力がもたないと言われてしまったのだ」

 

 

 「あー・・・」

 

 

 芝の交換と整備の予定が余りにもありすぎて手が回らない。だからトレセン学園お抱え以外の会社でどこか、ケイジが信頼できる場所はないかということだろうか。実際ケイジの人脈は広い。あちこちでいろんなことに関わり、騒ぎ起こしたりしている分そっちの情報も広い。

 

 

 トレセン学園の拾い切れていない場所から人手が欲しいということなのねとケイジも理解。

 

 

 「予算というかお礼はしっかり出すの?」

 

 

 「当然。割り増し手当もある」

 

 

 「個人も呼ぶからどれくらい出せる?」

 

 

 「・・・これくらいだな」

 

 

 メモで書いたルドルフの限度予算額を見て問題ないかなと目算を立てたケイジ。大きく息を入れて身体中の筋肉を躍動。

 

 

 「フン”ッ!!」

 

 

 ブヂブヂィ!! と荒縄を力づくで引きちぎって全身の拘束を振りほどき、足首を縛るロープはキセルで大きく息を吸い込んでからミカン色の炎をキセルから出してロープを焼き切って火種を手で握りつぶす。

 

 

 「そんなら下町に良い園芸会社を知っている。シルバー人材の受け皿だがこの会社のおやっさんがいい人でな。本人も特撮作品の製作や園芸に関わった。規模は小さいが名の知れた腕利きぞろいだ。で・・・この一人親方の数名が現場の経験豊富で重機の取り扱いもできるし、この人は関西で名うての人。ちょっと待ってな。アタシが渡りつけるから」

 

 

 「相変わらずの剛力だな・・・あと、そのキセルと煙、大丈夫なんだろうな?」

 

 

 「柑橘系アロマの煙だし身体に無害。お口ケアにはいいぜ。少なくともタキオンの薬よりは体にいいだろうぜ。かかか。お! つながった。おー源さん久しいな。前の茶うまかったぜ。お、ゴルシの焼きそばのソースをばあさんが知りたいって? ははは、今度遊びに来たらアタシがマッサージつけるぞと言ってくれ。で、ちょいと仕事の件でなあ。おうよ、アタシの学校のグラウンドでちょいとな」

 

 

 すぐさまスマホで連絡を取り、スピーカーにしてルドルフやエアグルーヴ達にも聞かせていくケイジ。しばらくの雑談と依頼料。こっちからも力ある連中を寄越せると伝えてのやり取りを経てしばらく。

 

 

 「うっし、この会社の方は問題なし。ただしルドルフ会長、今回の件は特例でしょうがなかったとここのお抱え園芸会社に伝えてくれよ。シェアがとられると不安がられちゃやべえ」

 

 

 「問題ない。あちらからもむしろ申し訳ないと言っていたからな。言質もたづなさんと取っている」

 

 

 「あいよ。そんじゃ・・・ちょいまち」

 

 

 その後一人親方らに連絡を取って協力を取り付けたケイジ。ただあちらも力があるメンバーが欲しいという意見をもらい、とりあえずその日はくるということで電話も終了。

 

 

 「うーん・・・よし、会長。学園直々の短期バイトってことで力出せて小遣いほしいウマ娘ら日雇い、もしくは会社の方から日雇いってことで頼む。タマモとアイネス、何名かに連絡取っておくから」

 

 

 ぱっぱと予定を済ませ、そして一通り必要な資料と手順を書いてからひらひらと手を振っていくケイジ。

 

 

 「ほうほう・・・ふふ。これはいいな。よし、早速この形でたづなさんや理事長、会社の方と連絡をしよう」

 

 

 それを見てルドルフは嬉しそうに笑い

 

 

 「いつもこのキレを見せてくれればなあ」

 

 

 頭のキレる変人の落差に渋い顔をするエアグルーヴ。




 改めて思う。なんだこのメンツ。あまりに濃すぎませんかね。記録でも記憶でも。しかも大体史実というね。


 このメンバーのうちスピカ所属はゴルシとジャスタウェイ。シリウスはケイジ、ジェンティルドンナ、オルフェーヴル、ホッコータルマエ、ラニ、ヴィルシーナ。スピカはみんなが主人公気質ならシリウスは全員がギャグマンガのキャラクター。ここに下手すればライスシャワーがシリウス入り。


 ケイジのプロフィール

 身長 210センチ

 体重 理想的(背丈のせいで重いんだよ)

 スリーサイズ B 115 W72 H 120

 足のサイズ 両方とも31センチ

 CVイメージ 瀬戸麻沙美様&山寺宏一様(はじける時に山ちゃんボイスに)



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AIBO☆ゲットだぜ!

 今更ながらに思うとディープインパクトやらダイワメジャーやウオッカたちと本当に今の時代へと高い質の名馬たちがたくさん出るようになっているってすごいですよねえ。同時にネタ枠も増えているのは気のせいではないはず。


 『テイオー産駒ケイジ、デビューでスーパーレコードをたたき出す!』

 

 

 『勝利の雄たけびで阪神競馬場を震わせた傾奇者。日本をにぎわせていくか?』

 

 

 『日本よ元気出せや!! ケイジ渾身の雄たけび』

 

 

 新聞の見出しがまた派手に煽っているわいるわ。まあこれで競馬ブーム起きたり、みんながテレビでレース見てお馬さんを応援してくれればいいんだけど。

 

 

 「ヒヒ・・・ぃ?」

 

 

 『おージャスタウェイにフェノーメノも評価高いわ。流石ハーツクライとステイゴールドの子どもたち。あ、そう言えば銀魂見れていないなあ』

 

 

 「・・・テキ。俺、新聞読む馬をマジで初めて見ました」

 

 

 「俺もだよ・・・」

 

 

 今は新馬戦の戦い終わって数日後。テキや久保さんが持っていた新聞を見たくなったから新聞寄越せと駄々を捏ねてヘドバンして、新聞貰ってからこの前の調教で拾っておいた木の枝を咥えて新聞をぺらり。文鎮がないから俺が枝で押さえつつ新聞読まないとだけどそこは馬の視界の広さ、顔を横向けようと読めるのがいいね。

 

 

 「あーでも確か牧場の方でもトモゾウさんがジャンプ読んでいたらケイジも見て、以降休憩時間とかには一緒にジャンプ読んだり、アニメを見ながら人参食べていたと言っていましたね」

 

 

 「中身に人が入っているか人間の脳みそに覚醒したんじゃないんだろうなそれ」

 

 

 「さあ・・・? でも、俺の絵を見たり、ジャンプを一緒に馬と読めるとは思わなくて楽しいです」

 

 

 ジャンプおもしれーもんな。でも出来ればまたボーボボとか作者すらも理解できないようなハチャメチャギャグとか、ジャガーさんとかマサルさんとかのギャグもまた見たい。あ、見終わったから返すよ。新聞畳んで、涎つけすぎないように端を咥えてほい。

 

 

 「ありがとよ。ああ、そうだケイジ。ようやくお前の主戦騎手が決まってな。あのレースから引く手数多だったが、お前にはあの騎手がいいかなと思って」

 

 

 『おーまじで? ようやく俺も騎手持ちかあ。嬉しいねえ。でも、誰じゃろ』

 

 

 テキがくれたニュースに馬房から顔を出して頭を振って首を傾げる。

 

 

 「おはようございますテキ、久保さん!」

 

 

 噂をすればなんとやら。元気な声で挨拶してきた男性。背丈は、167くらい? ジョッキーの中じゃやや大きい方か。なんかどっかのマイクよりも鍬とか振るう方が多いアイドルグループのリーダーみたいなイケメンだけど落ち着く風貌。

 

 

 「おお、来たか。よろしくね。ケイジ、この人がお前と今後一緒に戦ってくれるジョッキー、松風守君だ」

 

 

 「はい、松風守といいます。ケイジもよろしくね」

 

 

 ・・・・・ケイジ()にいいってそういう意味かよ!! ケイジ(慶次)と松風ってマジであのコンビじゃねーか! 馬と人の名前逆だけど! なるほどなあ~面白ぇじゃねえの。近代競馬の中にあって戦国時代コンビで戦いを挑むってそりゃ笑えるわ。

 

 

 俺の父方の血を辿ればヒサトモ、つまりはまあ競馬どころか軍馬、月友関連の血も入っているからな。古代の血筋&戦国コンビで現代競馬の化学や組み合わせに噛みついていく。わはは、いいじゃんいいじゃあ~ん!

 

 

 おうよ。ということで俺も頭を寄せていけば松風君も俺の鼻筋を撫でてくれる。パリィ! と何か電流が来た感じもするがこれが運命というやつかね? ちょこちょこ名馬たちのエピソードで聞くけど。

 

 

 「しかし・・・でっかいですねえケイジ」

 

 

 「サラブレッドの平均体重の1,5倍の重さ、それに比例して普通の馬以上に太く頑丈だからな。以前ばんえい馬を見たことがあるがそれとサラブレッドのハーフかと思ったよ」

 

 

 あーあれな。実際あれはパワーが違うからなあ。本当に同じ馬と思えない程だよ。あれ、かっけえよなー。

 

 

 「悪戯よりも人懐っこいし、脱走はしょっちゅうするけど基本練習好き。ルドルフやテイオーに似ていて賢いけど気性難はそこまで強くないようで。あ、そういえば近々厩務員見習いもここで預かるんすけど。テキ、あの子ケイジに預けたらどうっすか? 最初にケイジなら大怪我もせずに馬の世話を学べそうですが」

 

 

 「そうするかあ。何でかケイジがここの厩舎のボスになっているそうだし」

 

 

 え? 俺の厩務員さらに増えるの? まーいいけどさー。しかし俺が大人しいねえ。定期的に脱走して一緒にアニメ見たり、ジャンプ読んだり久保さんの漫画見たり、ゴルシたちに挨拶に行ったり喧嘩仲裁したり何でかトーセンジョーダンに絡まれたりとかされているが・・・もしかして久保さんとかテキには暴れたり悪戯していないからかねえ。

 

 

 で、うーん。そうなんだよな。何でか俺、ここのボスになった。地震の際に俺が一喝してみんなを落ち着かせたからかね。以来ここの厩舎のみんなとも併せが出来るようになったから俺も練習が捗るのなんの。

 

 

 気持ち早く立て直してからレースに用意できるようになったせいか、ここ最近ここの厩舎のみんながGⅡ、GⅢを連勝。俺より先輩たちだがいい感じに稼げているから引退後も安心だってよ。このご時世の中で景気のいいこった。

 

 

 「聞いていますよ。何でもケイジが叫んでみんなを落ち着かせて寝転がるようにしたとか」

 

 

 「俺も見ていたがケイジだけ落ち着いていたからなあ・・・東京の海岸部じゃ液状化現象も起きるくらいの大地震だったってのに、人よりもどっしりしていたよ」

 

 

 まあ、なんやかんや二度目なのと経験しているからなあ。それに馬のパワーと体重でパニクって馬房内で暴れて怪我とかあったら大惨事だ。これからレースのシーズン幕開け。その前にケガしてしまうのはな。

 

 

 「さて、積もる話もあるだろうが移動しながら話そう。今日の併せの時間もあるしな。行くぞケイジ」

 

 

 「ヒヒン」

 

 

 テキが扉を開けてくれたので出てきて馬装を済ませて松風君を乗せて調教スタッドに移動。今日は誰が相手かねーっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 到着しましたは調教スタッド、のウッドチップコース。砂より足を取られないし、芝以上に反発力はなく衝撃を殺してくれるので馬の脚に負担を与えないのには持って来いな、足元の練習での故障を防ぐための場所。

 

 

 ダイワスカーレット? あの子は別の場所のケガとほんと事故だから・・・なんやかんやあの子もテイオー張りにケガに泣かされているよなあ。そう言えば今は繁殖牝馬だけど何頭目の子供産んだんじゃろ。

 

 

 「おお、よろしくお願いします。しかしまあ、本当に見事な仕上がりですねえ」

 

 

 「そちらこそ。ケイジのレースは見ていて震えましたし、今回は胸を借りさせていただきます。ジェンティルドンナも今日は機嫌がいいようですし」

 

 

 今日やってきた子は女の子で同世代。だけど体格はそれなりだし、何より鹿毛の馬体に宿るオーラと勝気な空気がそりゃあもう並じゃない。

 

 

 『あら・・・? 貴方がわたくしの相手ですの? ま、多少大きいみたいですが先にへばらないでくださいね』

 

 

 『あいよ、よろしくねジェンティルちゃん』

 

 

 馬の身体になってかれこれ2年ちょい。肉体に精神が引っ張られているせいか相手の子が普通に魅力的に見えるねえ。流石は貴婦人の名を冠する名馬か。今は貴婦人というよりはかわいいお嬢様だけど。

 

 

 『あら、案外見た目の割には優しい殿方でして。確か帝王の子どもでしたっけ?』

 

 

 『そうだねえ、そんな感じよ。あんたこそ貴婦人の名に恥じない美貌、大事にされてんだな』

 

 

 『フフン、そうでしょうそうでしょう。わたくしのお父様はかの日本最強の天馬。それに負けない実力はあると自負していますわ』

 

 

 実際ジェンティルドンナはやばい名馬だからなあ。GⅠ7勝。場所も選ばずにあちこちで戦い尽くしたし、オルフェーヴルすらも弾き飛ばす貴婦人タックル。何よりいろんな場所で、更には遠征してドバイでも栄冠をつかんだところを見ると戦闘スタイルの幅広さはウオッカが上だけど場を選ばずに成果を出せるという意味ではジェンティルドンナ。ほんと女傑らはおもしれーやつらが多いねえ。

 

 

 「おや、早速仲良くなっていますよケイジとジェンティル」

 

 

 「馬っ気も出していませんし、互いに会話しているように鳴きながら頭を上げ下げ・・・なるほど賢いというのは本当のようですね」

 

 

 本能優先で流石にんなことするかバカヤロー。首のスイングで勢いもつけてジェンティルのテキに唾をペッ!

 

 

 「ぬおっ! 悪い悪い、お前はちゃんと場を弁えていたな。悪かったよ」

 

 

 そうだぞこのやろー、んな猿以上に節操ねえことするかっての。しかしすぐに頭を下げるあっちのテキも俺が怒ったのを分かったようだ。

 

 

 『ちょっと! 私のテキに何しているんですの!』

 

 

 『俺がお前に発情してないとか言いやがったからだよ。そういうのは場を弁えるわい』

 

 

 『・・・紳士ですのね?』

 

 

 『女の子は大切にしろと教えられたからな。レースじゃ勝利は貰うが』

 

 

 とはいえぶつかるのは3歳クラシック、ティアラを終えてから。もっと言えば俺も負けじと稼いでからじゃないとできないだろうがな。そういう意味でも未来の最強お嬢様にいっちょもんでもらうのは本当にありがてえ。にんじん一本あればお礼にあげたいくらいだ。久保さん持ってこないかね。

 

 

 あっちの方も話が済んだようだし、さてさて。練習としゃれこみますかね。ジェンティルちゃんも何かボーッとせんでほれいくぞー。




 貴婦人様ここで登場。ディープ産駒の中でも最大級の活躍を見せた。まさしく最強格の名馬。オルフェ、ゴルシとの関係が面白すぎるんですよね。


 ケイジ 厩舎のボスになった。けどいじめもしないし基本談笑。穏やかな厩舎。最近テレビと新聞とジャンプ(ヤング含む)も見れるようになったのでウキウキ。同世代最強の一頭とまた出会えたのを面白がっている。


 久保(CVイメージ KBTIT 様) 厩務員。ケイジと一緒にマンガを読んだり愉快に過ごしているアラサー。基本怒っても軽い頭突きやつば程度。謝れば許すケイジの性格を理解して新人厩務員見習いをつけようかと提案。ケイジがマンガを読めるようにトングをプレゼントした。


 葛城(CVイメージ 野沢那智 様)ケイジの頭の良さとまさかの趣味に内心アニメを好む犬の話を思い出していた。なんやかんや厩舎のまとめ役のケイジを気に入っており最近はゴルシ以外の併せが出来る相手が出来てほっとしている。


 松風(CVイメージ 竹内順子 様)騎手人生3年目の新人。それなりに勝ち星をあげてはいるが中の中という感じ。ただいろんなタイプの馬とレースをしている経験を見込まれて(あと名字で)ケイジの主戦騎手に。ケイジと触れあった瞬間未来での勝利のイメージが見えたとか。規格外の馬体のケイジに慣らすことを目下の課題にしている。


 ジェンティルドンナ(CVイメージ 遠藤綾 様)当代最強お嬢様。この後にアーモンドアイが出るとかウッソだろお前! 少々ヒスっぽい部分がありイライラすると厩務員やテキに当たったりするがなんやかんや大事にしている。ぼちぼち同世代たちが繁殖期を迎え始めるのもあって視線が変わったのを嫌がっていたがそれをしないケイジに興味を持つ。


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次の目標

 ゴルシが猫や犬の降参のポーズを横向きでしている写真がすごく面白かったです。


 一応検索には出ていないのにこの評価にお気に入りをしてくれると皆様豪気すぎぃ!! 本当にありがとナス。 これからもどうかよろしくお願いします。


 『おどきなさい! そのでかい体が邪魔ですわ!』

 

 

 『いやーだね! 後ろ走るか横から抜くかするんだな!』

 

 

 ただいま絶賛併せ馬中。今回はどうもまず普通に走る。で、今度はジェンティルが俺を追う。その後に俺がジェンティルを追う形をしていくとか。

 

 

 あちらさんのテキ、騎手さん、厩務員曰く『この子は牡馬だろうと怯まない強さと爆発力がある。ウオッカの再来。それ以上も目指せる』ということで牡馬の体格差、威圧感に負けないために選ばれたのが俺。ちなみに他の子たちともしたそうだけど。

 

 

 ゴルシ→おっとりしすぎて覇気をあんまり感じない。強いから経験は貰えた。 ジャスタウェイ→優等生過ぎて練習だとわかって気を遣いすぎ、ジェンティルの方は手を抜いていると思って怒った。

 

 

 こんな感じだったそうで今度はやたら人間臭いとここ最近噂の俺になったとか。そして今は内ラチ求めてコーナリング中。手を抜いているけどコーナリングには定評があるんだ。ちょいと速度を上げていくか。

 

 

 『待ちな・・・さいっ!』

 

 

 『む・・・! 甘いな! ほいさ!』

 

 

 『なっ・・・ええ? ええ~~!?』

 

 

 そんで普通なコーナーで速度は落ちるもんだけど落ちないどころか加速していく俺にタックルかましてくるジェンティル。だけどまあ。うん、遠心力で外に膨れるのに無理くり内ラチの俺にタックルしたって効かんよ。せめて俺と同じコーナリング技術磨きなって。

 

 

 「うおっ・・おっ、おっとと・・・よし。行くぞケイジ!」

 

 

 直線に入って一呼吸遅れちゃうのは俺の相棒となった松風君。鞭を振るうけど弱いし仕掛けるタイミングが遅い。コーナリングで体の制御し辛かったのと俺の体格が大きい分いつもとは姿勢も違う&経験したことない速度でのカーブに振り回されているかあ。

 

 

 頑張れ松風君。あと数年くらいすれば俺の半分くらいの体重で走るややステイヤー気味の子が出てくるし良い経験だぞ。

 

 

 そして結局俺のゴール。ジェンティルは無理なコーナーでのタックルと驚きで加速が鈍っていたのに思った以上に差がついていない。あの勝負強さと場を選ばない脚質。加速力はこの時点からついていたんだなあ。

 

 

 「ありがとうケイジ。落とさないでくれたんだな、悪かったよ」

 

 

 「ヒヒン」

 

 

 『おうよ。本気で走って脚の故障は怖いし練習ならんし、あんたも慣れてもらわにゃね』

 

 

 とりあえず小休憩がてら松風君は降りて俺に礼を言い、水を飲みに行く。俺もてこてこ扇風機のそばに。あー涼しいー・・・後でもういっちょ松風君に練習させなければなあ。

 

 

 お、ジェンティルもど・・・おーおー騎手と折り合いついてねえな? 荒れてやがる。うん、涼んだし場所開けて扇風機の当たる場所にジェンティルが来るように、と。

 

 

 『はぁー・・・涼しい・・・もう! 何ですの!? 何なんですのよあの騎手! あの程度の揺らぎから仕掛けが鈍ってしまうなんてダメダメよ!』

 

 

 『コーナーでタックルしたお前さんも悪い。あんな場所で普通仕掛けねえよ』

 

 

 『そういうあなたこそなんでコーナーで加速できるんですの!? 私の後ろにいたはずなのに気が付いたら内ラチで私の先にいるんですのよ!? 止めたくもなりますわ!!』

 

 

 その手段がタックルな時点でマジで脳筋お嬢様代表格じゃねーかこの子。姫〇亜弓とかお蝶〇人かよ。でも、ほんとコーナーで俺に食らいつきつつタックル仕掛けるくらいには身体の使い方が上手いし強いんだよなあー。

 

 

 『あー、俺の持ってる脚使いに加えて坂路頑張ったから出来ているのよあれ。あと、タックル仕掛けるよりは思いきり前に走るよう足使ったほうがいいぞ??』

 

 

 『貴方の技・・・お父様の追い込みみたいなものですか。そして何でです? ヨレた他の馬が後ろの馬のコーナー塞いでくれる間に仕掛けられるではないですか』

 

 

 『お前さんはそれをしないでも強いし、思い切り前に出て自分一人の強さをみんなに見せつけたり、優雅に勝ったほうがらしいんじゃないの』

 

 

 オルフェーヴルや、やる気ノリノリのゴルシ、あの時代の牡馬相手にああも渡り合える時点で怪物だもんよ。タックルに足も体力も使わずに進められたらもっと速く・・・なる・・・かも??

 

 

 『そういうものですの?』

 

 

 『先輩のダイワスカーレットとか、逃げと先行の天才だったぞ』

 

 

 『うーん・・・先行は出来ますし、頑張ってみますわ』

 

 

 まあ、ステイゴールドとか内ラチに身体ぶつけながらブーストしたりとかすんげえ変則戦法を仕掛けるやつもいるがな!! ちなみにその親父はもっとヤバいヨレ具合をかましながらケンタッキーダービー勝利した模様。しかし改めて親友同士の血の繋がりが日本最強格を生み出すとか本当運命だよなあ。負の運命を蹴り殺して掴んだ旅路だよ全く。

 

 

 「うーむ・・・何度見てもあの走りは凄まじい。コーナーでああも内につけながらの加速。そして直線からすぐさま切り替えて走れるとは並じゃないですよ」

 

 

 「ケイジのやつでかい体していますが、今も柵越えするくらいには身体が柔らかいんですよ。その上好き放題暇な時間はわちゃわちゃ動かすので体の使い方も上手いのかと」

 

 

 「それは僕も感じました。ケイジの馬体だと足が広がる分姿勢が変化するのですが、あの速度で落馬せずに最後は持ち直せるくらい安定した走りでした」

 

 

 「・・・コーナーであの速さと脚の切り替えはサンデーサイレンスの戦いぶりでしたし、トウカイテイオーに近い柔らかさであの筋肉の躍動。骨も文句なしに強い・・・なるほど新馬くらいでは相手にならないですな」

 

 

 「しかしそれについてくるジェンティルドンナも並ではない。あれは牝馬三冠はおろか世界でも狙えるのでは?」

 

 

 それな。マジで俺の加速について行きつつタックル仕掛けてのロスを即リカバリーとかどうなってんだ。あと、やっぱみんな気付くか俺の戦闘スタイル。コーナリングで加速できるし、その上で外に膨らみにくい。大逃げ以外にも幅を増やす、息を入れるタイミングを用意できるようにじっくり仕込んでいたけど様になってきたみたいね。

 

 

 陸上選手のアップよろしくサイドステップ。欽ちゃん走りの練習したり二足歩行で歩いたり。左右に旋回しまくって脚の動きや独立した動きをできるよう鍛えていたのよ。やっぱレースに来るお客さんを楽しませる技で楽しませるものを見せるようにしないと傾奇者の名が廃る。大舞台を盛り上げて、笑いも歓声も出してこそよ。

 

 

 『お、ジェンティルちゃん世界取れるかもってよ。お前の親父さんが取れなかった大舞台も狙えるとは流石流石』

 

 

 『ありがとうですわ。ところ、サンデーサイレンスって誰ですの?』

 

 

 『お前のお爺ちゃん。アメリカ最強候補で日本のお馬さんのたくさんのお父さんしていたすげえ馬だよ』

 

 

 98世代がまさしく兄弟というか一族対決多数。今でもお孫さん同士で大激闘しているんだからほんと凄いよねあの馬。本人の血は母方の能力というか潜在能力をブーストさせるような役割になっているのも面白い。・・・・・・・・あれ? そういう意味ではゴルシはステゴからその血を継いでマックイーンに似たし、サイレンススズカはお母さんの血をブーストさせた結果あの気性難代表格のサンデーから人間大好き、人懐っこさがまず特徴に出るあの子が生まれたのかね。

 

 

 「おーい、二人ともーそろそろもう一本走るぞ。今度はケイジが追い込み、ジェンティルドンナは先行、逃げの練習だ」

 

 

 「ヒ~ン」

 

 

 『あーいよー』

 

 

 『今度は私が前ですのね。そのまま逃げ切ってさし上げましょう』

 

 

 『おうよ。その可愛いお尻追いついて、俺も差し返すからなあ? 頑張ろうぜ』

 

 

 『も、もう・・・可愛いだなんて』

 

 

 『わはは、今の内に慣れておきな。俺に慣れれば他の女の子の体格や威圧に怯まないだろうよ』

 

 

 休憩時間も終わって練習再開。扇風機に当たって汗も引いたジェンティルちゃんともう一本練習開始。実際有難いよなあ。性別の壁関係ないとばかりに暴れられる女傑と練習できるんだから。お互いに戦線がかみ合ってぶつかるとしても早くて朝日杯。そうじゃなければ一年ちょい後のジャパンカップ、有馬記念辺りになるだろうから互いに手札を見せ合いとか調子云々気にせずに併せられるのが大きいのかもだけど。

 

 

 ゴルシ? あいつとはどうせクラシックまで俺が頑張れば嫌でもずっと戦うし気にしない。もっと言えばその頃には今の面影は人懐っこい部分以外多くが宇宙に放逐されるから・・・

 

 

 さあさ。未来の三冠、世界最高峰のレースも征する天才の走りを、技術を盗めるいい機会。思いきり楽しんでいきまっしょい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ゼー・・・ゼーー・・・い、いい練習・・・でしたわぁ・・・・』

 

 

 『ブフゥー・・・くはぁー・・・きっちぃ。あーでもいい汗かいたわぁ・・・』

 

 

 「二人とも疲れていますねえ。ケイジがここまで疲れるとはゴールドシップとの併せ以来ですよ」

 

 

 「こちらもです。でも、イライラしたりカリカリしていないでいい目をしていますし、やはり相性がいいようですね二頭は」

 

 

 あの後、練習で俺が追い込みを仕掛けたがジェンティルちゃんがガチビビりしてすげえ逃げを披露。俺も負けじと追いかけて勝ったらもう一戦させろやあ!! とゴネられ練習続行。結局プール時間も取れないほどに走り回る結果になったでござる。

 

 

 それにしたって体力の削りがでかいのはやっぱプレッシャーの方がすごい。それもあって久しぶりにヘトヘトだ。今夜はグッスリどころか爆睡だろうなあ。新馬戦以上に感じたってどういうことなの・・・

 

 

 『ふぅ・・・ふ・・・わ、わたくし・・・今年は未勝利戦以外は来年のシンザン記念とやらに出ますのよ・・・』

 

 

 『・・・お、息戻ってきた。おお、日本最強の戦士の記念レースか。いいじゃないの』

 

 

 『ハァ・・・は・・・そこで勝てるようになるまで付き合ってもらいますわよ今後・・・』

 

 

 「うおっと。凄い勢いで眺めていますねジェンティルドンナ。うーん・・・相性もいいみたいですし、互いにぶつかるレースも3歳の年末以外はなさそうですから、どうでしょう。今後も併せどうですか?」

 

 

 「いいですよ。此方としても大抵の馬はケイジの馬体と風格に怖がる子が多いのでこちらとしても彼女ほどの女傑と学べるのは嬉しいです」

 

 

 『だってさ。これからもスパーリングパートナーよろしく』

 

 

 『スパー・・・?? まあ、よろしくお願いしますわ。お父様に負けないほどの力をつけるのに貴方は良さそうですし』

 

 

 『へいへい。ほれ、そろそろ帰るみたいだし早く帰って汗流してご飯食べるんだぞー』

 

 

 『わかっていますわよ。貴方こそお気をつけて。ほら何しているの。汗がベトベト。早くこの背中のもの下ろしてシャワーを浴びさせなさいな』

 

 

 最高のスパーリングパートナーゲットだぜ。そんで楽しそうだねえあっちの陣営も。

 

 

 「ふぅ・・・クタクタだ・・・ケイジ。頑張って慣れていくから僕ともよろしくね?」

 

 

 「ヒヒン・・・ひん?」

 

 

 『おう、よろしくう。けどな・・・それはそれとして』

 

 

 俺の騎手松風君も後半なんやかんや慣れてくれたし、後半は俺もさほど負担を感じずに走れたからいい。けどなあ。一つ問題があるんだよ。

 

 

 松風君が持ってる鞭を奪って取っ手を調整。そんで近くにあった木に思いっきり打ち据える!

 

 

 お前の鞭の指示力が弱すぎるんだよオラア! このくらいで叩けや! 勝ちに行く戦いをするんなら、お前も勝ちたいんならその気持ちを鞭と手綱にしっかり振るうんだよオラァ! 今日の併せ指示がわっかりづらかったぞお。

 

 

 「おわっ!? 何だケイジ!? どうした! どうした急に」

 

 

 お前の鞭打ちの指導じゃい! ほれ、お前もするんだよぉ!!

 

 

 『ペッ! ほれお前もしろ! 勝ちたいって気持ちを出しての指示をするイメトレだ! 声が円堂守ならそれくらいの熱血出しやがれってんだよ!!』

 

 

 ゴスゴス頭突きを松風君にかましてからようやく意図を察した松風君が鞭打ちの練習開始。おう、そうだその意気だ! サンデーとかステゴレベルの癖馬相手だと並の鞭の指示聞いてもらえんなよ? 俺もな酔った指示出しやがったら承知しねえからな?

 

 

 「こうかケイジ! こうか!」

 

 

 「ヒヒン!!」

 

 

 『おうよ! 俺と一緒に戦うんだ! 闘魂注入するくらいの鞭かませやオラア!』

 

 

 木に向かって鞭を振るい、馬の反応を聞く松風騎手とそれを応援するように嘶くケイジ。これを見た調教師が一言。

 

 

 「こんな形で騎手に競馬を教えるとは祖父のルドルフも思わなかったろうなあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ケイジ、お前の出走予定だがなー」

 

 

 「?」

 

 

 あの後ちょこちょこ練習をしながら新馬戦から1週間。テキが俺のとこに来てレースの話をしてきた。くっそーニチアサ見ていたのに。でもレースは大事だししょうがない。よいしょと体を起こしてから手綱を持たせてと。

 

 

 「お、手綱ありがとう。で、だ。次のレースだが三週間後の函館2歳Sに出る。その後に小倉2歳Sに出ていきたい」

 

 

 「ヒンヒン」

 

 

 こくこくと頷きつつ一緒に出走予定の場所と距離を見る。どっちもGⅢ、距離は1200。前の新馬戦が2000メートルだったし短距離か。マイルや短距離での適性を見るためにはちょうどいいね。俺が見せた大逃げの加速やペースが通じるかを見れるにはいい場所かも。

 

 

 「で、目指すは朝日杯フューチュリティーステークス。そこでGⅠを狙い、クラシックまではじっくりと力をつけていくぞケイジ」

 

 

 『おうさ、まずは一冠。2歳の中でしかとれねえ手柄取りに行くか』

 

 

 2歳の〆は1600か。一度1200で走りを見て、そこからマイルで様子見。クラシックに向けての距離適性の下限、中間はどれほどかを見つつ行く感じ。ついでに出走手当と賞金も手に入れば12月から最長で4月の皐月賞まで、最短でも3月の弥生賞までじっくり仕込むことが出来る。

 

 

 ジェンティルちゃんが2歳シーズンは2戦で済ませて3歳はじめから力をつけてティアラを目指すのとこっちは逆で俺らは最初にいくつか重賞を取って2歳最優秀牡馬を手にしてクラシックレース出走優先枠を取る。と。

 

 

 3歳から力をつけていくメンバーの戦いぶりをじっくり見れるし、俺は俺で追い込みと逃げの練習に時間を使えるから武器を一つ二つ隠したまま挑めそうだしいい感じだぜ。

 

 

 「よしよし。それじゃあ、函館の方への入厩はもう少し後になるし、今日と明日はゆっくりしよう。練習は無しな」

 

 

 「ヒヒン」

 

 

 『はいよ。東京から北海道だし旅の疲れもあるだろうしな。で、テキ。この子誰?』

 

 

 とりあえずしばらくは練習抜きで疲労抜き。そこから移動して移動疲れと離れするために少し休憩。そこから練習って感じということだけど俺が気になるのはテキの後ろにいる子供だけど。

 

 

 「お、お父さん・・・この馬大きいね・・・」

 

 

 「おう、こいつは歴代でもかなり大きいぞ。ケイジ、この子は蓮。俺の倅だ。蓮、こいつはケイジと言ってな。優しいが頭が良いから悪戯するんじゃないぞ」

 

 

 まさかの倅か。大体7~9歳くらいか? それなりに背丈あるね。そしていい顔になりそうな空気もっているね。撫でるかい?

 

 

 「撫でてみろ。噛み癖はないからな」

 

 

 「うん。おお・・・暖かい・・・意外と柔らかい?」

 

 

 「ヒィン」

 

 

 生き物だもんよ。足回りはカチカチだぞお。あ、久保さんおはよう。今日はゆったりねえ。

 

 

 「おはようございますテキ。お、蓮君いるのかあ。俺が見ておきますからテキは改めて予定確認してきますか?」

 

 

 「そうだな。蓮にも馬の見学をさせたかったしよろしく頼むよ」

 

 

 『俺も見ておくよ。しかし、野球少年かね? 何やらいろいろあるし』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふぅ・・・よしよし。無事に出走は問題なし。後は短距離はどうなるかだな」

 

 

 書類の整理を終え、一つ息を吐いてレースのローテが整ったことに安堵の息を浮かべる。新馬戦で見せたあの大逃げ。そして練習で見せたあの脚質。逃げと追い込みを得意とするという両極端な戦法を使える上にどちらも自分が経験はまだ浅めの調教師だというのを含めても素晴らしいものを持っている。

 

 

 コーナリングでの加速も出来、大逃げ、追い込みを使える末脚。頭も良く、騎手に従うことへの理解がある。今までにない馬ながら名馬になる素質は十二分にある。そしてケイジ自体がその素質を磨くのを好む練習好きであの体格に不釣り合いなほどの頑丈さ。だからこそしっかり見てみたい。あの馬がどの距離が出来るのか。3歳クラシック戦線に行く前にまず短距離とマイル。

 

 

 そしてそこから中距離、長距離での戦い。2000メートルを逃げ切れるスタミナはある。併せで見せた末脚も含めて今後のレース。多くの馬との戦いでも使えるか今のうちに見極める。葛城の中に湧くワクワクとケイジはどこまで一緒に行けるか、夢を追いかけられるかと心から思う。

 

 

 父の見せた不屈の戦いか、祖父の見せた絶対と言われたレース運びか。どちらでもないものを見せられるか。そして地震で落ち込んだ日本を活気づけられる一頭になれるか。

 

 

 「さて・・・蓮とケイジ、久保の様子でも見てくるか」

 

 

 背伸びをし、遅めだが愛しい我が子と愛馬。それを支えてくれる優しい仲間の様子を見るかと練習場とは別の広場にいるであろう二人と一頭の様子を見に移動。

 

 

 「ヒヒーン」

 

 

 『高めのボールイクゾー』

 

 

 「良し来い!!」

 

 

 「お、フライ来たぞ蓮君! よっしアウト! これでツーアウト!」

 

 

 そこでは段ボールで長さを増したトスバッティング用の台の上に置いた柔らかいゴムボールをプラスチックバットを構えたケイジが打ち。蓮がそれを取るというノック練習。

 

 

 ボール拾いをしているのは久保という。馬が野球を教える。混じるという光景を見せていた。

 

 

 「・・・何をしているんだ?」

 

 

 「テキ。いやー蓮君がケイジも野球できるのと聞いたときにケイジがバットを咥えまして。試しにとトスバッティングをやらせてみたらこれが上手なんですよ。早いゴロに打ち上げ。左右にボールも打ち分けるのでこれがなかなか」

 

 

 「ええ・・・」

 

 

 『お、テキ。お疲れい。そんで葛城さんボールくれー今度は脚で蹴って早いゴロを見せるから』

 

 

 「お、了解だケイジ。蓮君、今度は早いゴロが来るぞ! 目を凝らせよ~」

 

 

 「ヒン!」

 

 

 ケイジが二回足踏みをしてボールを催促し、久保はケイジが誤って踏まないようにケイジの少し前にボールを置く。それをケイジが前足で蹴ればこれは中々いい感じのゴロが飛んでいく。

 

 

 「・・・よし! あ、お父さーん! ケイジってすごいよ! 学校の監督に負けないくらいノックがうまいしリアクションも面白い!」

 

 

 ボールをしっかりグローブで捕らえた蓮もどうやら本当に楽しいようでニコニコと笑っていた。

 

 

 「・・・引退してもタレントホースで行けるかな?」

 

 

 「ヒ~ヒン? ヒンヒン」

 

 

 『俺役者になんの? ソ〇トバンクのお父さんになんの? なんちゃら割の宣伝しちゃうの? スマホ咥えたりして。出来ればワイドの紙咥えたいんだけど』

 

 

 改めてほんとこいつ何なんだろうなあと首を傾げるとバットを咥えたままのケイジも首を傾げる。やっぱこいつ人の言葉を完全に理解していやがるな。もっと今後は話すようにしないと。

 

 

 後年、プロ野球界にて守護神、盗塁王。バントの神様と言われた葛城蓮選手は語る。

 

 

 「僕を鍛えてくれたのは、頑張ることの大切さを教えてくれたのはお父さんとその仲間。何よりケイジでした。刑事? いえいえ。あの競走馬ケイジですよ」

 

 

 この発言のせいでケイジ、久保、蓮のノックの練習していた映像が世に出回りケイジの競争人生と蓮の少年野球時代を描いた映画が作られることになるのだがこれはまた別のお話。




 ケイジの次の目指す場所は8月7日 2011 函館2歳ステークス(GⅢ) 芝 1200メートル


 そこから9月4日小倉2歳ステークス(GⅢ) 芝1200メートル


 締めに12月18日朝日杯フューチュリティ―ステークス(GⅠ) 芝1600メートル に行く感じです。本音を言えばゴルシたちと戦うクラシック戦線に早くいきたいでござる。


 ケイジ 改めてジェンティルドンナの強さを知る。そしていい練習相手になってくれるので今後良くぶつかり合うことに。戦い方がサンデーに似ているということが発覚。コーナーガチ勢。蓮君とのトスバッティング、ノックはいい首の運動と前足の脚使いの練習になったとか。


 ジェンティルドンナ 扇風機を譲るし付き合いのいいケイジを気に入る。ただしタックル癖はやまない模様。レースで戦う可能性があるのは少なくても1年以上あと。


 松風君 騎手 どうにかこうにかケイジの体格から来る姿勢の変化になれていく。鞭の強さが弱かったためにケイジから鞭の入れ方を練習させられて翌日軽い筋肉痛に。


 葛城 テキ 実は妻子持ち。北海道に行く前に家族サービスということでケイジを見せに行ったらまさか野球を教えてくれるとは思わなかった。この後親子でキャッチボールをして楽しんだり、ケイジを改めて馬ではなく人と扱うことに決めた。


 久保 蓮君とは顔見知り。ケイジの首を痛めないプラスチックバットに軽いゴムボールだったから練習許可。左右に移動してスイッチヒッター、キックでもボールを飛ばすケイジを見て労いに後で桃とにんじんをプレゼント。


 蓮君 10歳 少年野球クラブに入っている。お父さんは尊敬している。ケイジを痛く気に入り今後も事あるたびに会いに行く。ケイジの頑張りを聞いて、レースを見て熱血野球少年になり後年プロ入り。珍事すぎるエピソードとケイジとのノックで鍛えた渋い技術と堅い守りで目の肥えた野球ファンから気に入られる選手に。

 ウマ娘になったケイジには惚れた。


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ウマ娘エピソード 3 学園の顔役2

 ケイジ(ウマ娘)の一口メモ 実はメジロ家張りの名家出身。曾祖母がヒサトモ(ご存命中)


 ケイジはふざける時とふざけないときのメリハリがつきます。なんだろう。ゴルシとコンビ組めるくらいふざけるけどふざけないときは大丈夫。破天荒とかソフトンみたいな? 


 髪型は艦これの大和をよりボリューム、毛量アップしている感じ。眼は切れ気味の琥珀色。ゴルシに近いレベルの美人でややイケメンより。




 ゴルシ「ハジケリスト世代だろ! 始まるよ~~~~♪ ・・・・始まるぞコラ」(ピキ)


 ケイジ「『始めさせてください』だろアア? この白饅頭がよぉ・・・」(メキ)


 ジャスタウェイ「何この始まり方!? 何でメンチ切ってんのよ前回同様!!


 勘弁して頂戴よせっかく評価もたくさんもらえ始めたってのに!! ちゃんと始めようよ!!」


 ゴルシ・ケイジ「「ジャスタウェイの言うとおりだぞオルフェーヴル!!」」


 オルフェーヴル「なんで私なんすかこの暴君どもがー!!」


 ケイジ「と、いうわけで気を取り直して!!」


 ゴルシ・オルフェーヴル「「ハジケリスト世代だろ! 始まるぞ!!」」


 ジャスタウェイ「画面から離れてゆっくりしてね。そして誤字報告、評価、感想、ブクマありがとうございます」


 「うっしょ、っとぉ」

 

 

 「ひぇー・・・割のいいバイトって釣られたウチが悔しい~・・・」

 

 

 「ぁあん? だらしねえな?(♀) 白い稲妻、雷の二つ名もらっているなら規格外のパワー出しちゃえよ」

 

 

 「だからっちゅーてあんたみたいな規格外のパワーとタフネスで比べんなや! うちはか弱い花も恥じらう乙女やぞ!」

 

 

 「おうこら日本最高レベルのウマ娘が何を言うか」

 

 

 ただいま芝の張替え中。アタシケイジとタマモクロス、アイネスフウジン、そのほかゴルシとライス、バイトしに来たウマ娘たちも一緒に・・・の前にゴルシはやる気失ったから仕込み頼んでアタシらが力作業。張り替えるためにはがした芝を整理してトラックに運んだり、アタシらの膂力で踏み荒らした。それが特に集中した場所。機械や重機で届かない場所を鍬とかつるはしでほぐしておくのが主なお仕事。

 

 

 アタシが呼んだ園芸、シルバー人材の受け皿なのもあって下手に重いもんポンポン持たせられんし。一人親方たちは機械を使ってもらうからまあ必然パワーのいる、スタミナのあるウマ娘かつ現役アスリート兼アイドルのアタシらの出番だ。

 

 

 「スタミナとパワーは別なんや。かはぁー・・・軽めとはいえ練習後にこのバイトは堪えるで・・・」

 

 

 「飯付き日当1万5千。学校からも内申点貰えるのにぶー垂れちゃほかのバイトが泣くぜ。で、ライスはいいのか? お前さんせっかくのトレーニング休みの日だろう」

 

 

 「うん。だってリーダーが頑張って仕事しているし、こういうのも楽しいから・・・ケイジさんもいいんだよね? ライスがいて」

 

 

 「おうよ! お前もたくさん食べる分、ここで小銭稼いで飯代でも稼ぎな! それにタマモといい可愛らしいウマ娘が二人だ。目の保養だろうおやっさんどもよー」

 

 

 まあなんやかんや言いつつもちゃんと仕事を頑張るタマモと何でか練習休みの日なのに手伝いに来たライス。この前アタシらチームシリウスに入った子なんだが、不幸だのなんだの言うのでうちのばあさんとこにぶち込んで励ましてもらってから笑顔を見せつつウチで練習を頑張る。けなげな子よ。

 

 

 ただ驚くのはその適正距離の長さとスタミナ。3000メートル以上を優に走れるだろうと太鼓判推されるほどの超ド級ステイヤー。アタシとの身長差65センチの小柄な背丈。身体も細いが飯をよく食べるしガッツもある。スピカのマックちゃん、ゴルシ、リギルのマルゼンスキーやナリタブライアン相手でも3000メートル以上は勝ちを拾えるとうちのトレーナーが言う。

 

 

 そんなド根性ウマ娘だけど庇護欲そそる雰囲気に美貌。背丈と仕草も相まってアタシの知り合いのジジババ、おっちゃんおばちゃんらには特に大人気。

 

 

 「おうよ! ぜひとも昼下がりのもうひと踏ん張りのために路上ライブでもしてほしいもんだ」

 

 

 「草刈り機と重機の音でライスの歌声拾えねーじゃねーかよ、おやっさんらよー、もったいねえって。休憩時間にでもしとけ」

 

 

 「そいつはいいな! ぜひとも子守歌でも歌ってくれや。懐かしいのと、ケイジは絶対そんなのしてくれねえからよ。こんのじゃじゃウマ娘は」

 

 

 「あんだとぉ!? 仕事も都合できる美少女になーに言ってんだコノヤロー」

 

 

 「え、えーと、なら今度余裕があるときにぜひライブをしてもいいかなって・・・」

 

 

 まさかのゲリラライブこの場で言質ゲット。あーまんざらでもねえ顔してえ。わはは、いい歳こいた野郎衆が思わず見惚れてら。よし、どうやって授業抜け出してやろうか。

 

 

 「ほれほれ親父ども働け働けー腰いわせねえように頑張らなければライスちゃんに嫌われっぞお?」

 

 

 「なんであんたはそないに元気なんや・・・人の3倍は運んでいるのに」

 

 

 「わはは、鍛えられているしね」

 

 

 んまーウマ娘になって、多分馬時代のアタシの実績をもとに身体能力もそうなっているんだろうけどね。今も1トンの芝や土くれを台車に入れてポンポントラックの荷台にぶん投げている。パワーは素手で鉄板引きちぎれる。防火扉、シャッター蹴り壊すのは普通にできちゃうし、特注のグローブとサンドバッグじゃないとすぐにぶっ壊れて使えない。

 

 

 更にここでも過密トレーニングしまくっているから体格に合わせて筋肉がもりもりついていく。でも女らしい柔らかさと肌艶は維持しています。

 

 

 改めて3000メートル以上走る機会も年に何回かあるアスリートでアイドルってほんと改めて考えるとすげえな。アタシもそれのために頑張ってアンコールの練習と引き出し用意しているけど。

 

 

 「そーれ800メートル行ったぞ。もう一息行くか!」

 

 

 「お、おー」

 

 

 「早いとこ終わらせてラーメン掻っ込みたいわ」

 

 

 「あ、アタシもう少ししたらいったん席外すから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はふ・・・ようやく終わりましたねタマモ先輩」

 

 

 「お、おお・・・あー腰が痛い。帰って湿布貼らんと明日腰いわしてそうやわ」

 

 

 ケイジさんが何でか突然いなくなってからも作業は続いて、経験したことのない園芸のお仕事だったけどおじさんたちが、タマモ先輩やアイネス先輩たちが優しく教えてくれてどうにかこうにか夕暮れ時には仕事が終わった。

 

 

 ジャージはドロドロだし、芝の匂いで青臭い。けど、楽しかったし、みんなでワイワイ過ごせたのがシリウス以外では初めてでライスはとても嬉しかった。

 

 

 芝は張り替えて夕日の中で整った緑のじゅうたんが輝いている。2日は芝同士がちゃんとくっつく、慣らすために立ち入り禁止にするそうだけど、新品の芝の上で思い切り走るのがワクワクしちゃう。

 

 

 「ここでできれば一番に走りたいですよね」

 

 

 「せやなーここなら最後の直線坂もないしスッキリいけそうや。けど、ケイジはどこ行ったんやろな?」

 

 

 「うーん。会長に報告に行ったとか・・・?」

 

 

 「ははは、賄いの用意だろう嬢ちゃんたち。ほれ、これ飲んで休もうや。クライアントからの賄いが楽しみだ」

 

 

 そして、そんな時間をくれたケイジさんは途中で抜けてからずっと来ない。けど作業をしていたおじさん達は気にもせずに紙コップに入れてくれた冷えた麦茶を渡して片づけを終えた場所に腰を下ろす。

 

 

 ライスたちも続いて腰を下ろすとしばらくしてガラガラと何かを引く音が。だんだん音が近づいてくるとそれは、一つは荷車で引ける屋台。もう一つは巨大なリヤカーに何かを満載したもの。「アフロ~アフロ~」と何かの宣伝らしい音声を流しながら近づいてくる。

 

 

 「安いよ~アフロ安いよ~」

 

 

 「出張黄金屋アフロ部門。トレセン学園に到着でござ~い」

 

 

 屋台の方はゴルシさんがまた浅葱色の法被をつけて頭に黄金屋と書かれたタオルを頭にまき、ケイジさんはメガホンで何やら昭和チックな声掛けでリヤカーを引いて移動。グラウンドの一つ手前に到着し、ケイジさんはすぐさまパイプ椅子と長机をてきぱきと設置。

 

 

 ゴルシさんの移動式屋台は大量の金髪アフロがおかれ、屋台にも台がセッティング。思わずぽかんとなるような光景にライスもタマモ先輩も目を丸くしていたけど園芸のおじさん達は待っていましたと目を輝かせる。

 

 

 「ぃよっ! 待っていました黄金屋! こいつはいいアフロだねえ」

 

 

 「いらっしゃいませー(エアロスミスー)

 

 

 「いらっしゃいませー(エアロスミスー)

 

 

 「ようこそ・・・『男の世界へ』・・・」

 

 

 「フォッフォッフォッ。じいさんどもアフロ好きかい?」

 

 

 「うん! 大好きSA☆」

 

 

 「いやいや! 黄金屋でアフロ売るんかい! そんでなんやその掛け声! あんた等女やんけ! 賄飯どこ行ったんや!! うちはもう腹がペコペコで疲れとこのツッコミのストレスでハゲそ・・あーだからそれを隠すためのアフロなんですね~って言わせるつもりかいどアホぉ! もうほんまなんやねん! 賄で出てくるのがアフロでなんでそれにおっさんども食いつんとんねんや!!」

 

 

 アフロに群がるおじさん達に和気あいあいと接客する二人にマシンガンな勢いでツッコミをかますタマモ先輩。ほんと訳が分からないけど同時にこれが日常茶飯事なのでライスはどうしたものやらと棒立ちしてしまう。

 

 

 「まあまあアフロが好きなのは全世界共通。さあさあよかったら触って新作アフロの出来を確かめてくれ」

 

 

 「ゴルシちゃん。今日のこのアフロはいくらだ?」

 

 

 「汚い手で触るな」

 

 

 「「「「え!!?」」」」

 

 

 触っていいよと言ったケイジさんの直後にゴルシさんのばっさり切り捨て。タマモ先輩もツッコミの嵐を入れながらの用意を済ませ、とりあえずパイプ椅子にジャージを脱いでかけておき、腰かけてお冷とお絞りで体を冷やす。

 

 

 ひんやりしたおしぼりが汗を吸い取って冷やすのが心地よく、お冷も水がおいしくてこれだけでもグイグイ飲めちゃうくらい。

 

 

 「よしよし・・・それじゃー注文取ろうか―今日のメニューは醤油ラーメンにチャーシューと高菜、空心菜のチャーハン。卵とわかめスープ、ゴルシ&ケイジ特製焼きそば、野菜たっぷり餃子、海老シュウマイになっている。タダだし替え玉も1回までOK さーみんな腰かけてメニュー言え」

 

 

 「そのメニュー何処にもないやんけ! あー・・・もう・・・うちは醤油ラーメンとチャーハン。わかめスープに餃子で・・・」

 

 

 「ライスは・・・ぜ、全部食べたいかな」

 

 

 「はいはい。えーと・・それならこれとこれで・・・ゴルシーおっちゃんどものメニュー聞けたかー」

 

 

 「おー問題ねえ。それじゃ、やっていくか」

 

 

 もうツッコミする気力もなく疲れたタマモ先輩や他のメンバーから注文を取り、ゴルシさんも注文を取り終え、丁寧な手つきでアフロのかつらを選んでみんなの前に置いていくケイジさんとゴルシさん。

 

 

 「よしよし。このアフロのかつら。ただのかつらじゃありません。こうして3回ノックをすればあら不思議。あっという間にカチカチの陶器に大変身!」

 

 

 「そしてアフロを半分に割ればそこには皆の選んだメニューが・・・」

 

 

 「ハァーイジョージィ・・・」

 

 

 その後に目の前でアフロを3回ポンポンと叩けばふわふわのアフロが急にカチカチのキレイな壺のような輝きを見せた。質感も目に分かるほどに変わっている。さらにそこを開けようとして・・・サングラスの男が出てきそうになった時点でケイジさんが無言で再度アフロを閉じ、ゴルシさんがガムテープでぐるぐる巻きにしてケイジさんにパス。

 

 

 ケイジさんがすぐにそれを抱えて遠くの大きなゴミ捨て場に投げ飛ばしてゴミ箱に入る。ガシャーン!! という音と「ぎゃぁあああ!!?」という無駄に良い声が響いてしばらくの静寂。

 

 

 「えーと。改めてこのアフロは・・・」

 

 

 「ちょい待ちなんやさっきの男!? どっから出てきた! つーかどうやってしまっていた!? アフロの屋台からのマジックショーって滅茶苦茶過ぎてもう頭ショートするわぁあ!!」

 

 

 「へいへい落ち着けタマモ。小じわが増えるぞ。で、まあアフロを3回たたいて半分に割ると中にこうして注文の中身が入っているって寸法よ」

 

 

 「えーと・・・・えい。わぁ・・・!」

 

 

 ケイジさんたちの言うとおりにやってみてアフロのかつらを開けると目の前を覆う湯気と食欲を誘う香り。キラキラと輝く油にしょうゆのきれいな色。黄金色のちぢれ麺、チャーシューは分厚くてなるとも美味しそう。

 

 

 二つある小さなアフロもそれをしてみるとチャーシューと餃子のセット、チャーハンが山盛りで入っている。手品とそのクオリティーに負けないほどおいしそうな食事にお腹がグゥウ~となる。

 

 

 「よし。そんじゃいただくぞケイジちゃん。ゴルシちゃん」

 

 

 「おうよ! アタシら特製の賄い飯。うますぎてほっぺた落とすなよ?」

 

 

 「はぁー・・・もう食べよ。疲れたわウチ。ん・・・うまい・・・おお。これはレベル高いわ。んぐ・・・」

 

 

 「はははは! そりゃーあたしとゴルシの飯だ。味は保証するぜ? さー食った食った。陶器になったアフロは上部分を食器に。下の部分は花瓶や生け花用に使って良し、灰皿にしてもいい優れもんだ。持って帰ってなー」

 

 

 疲れが癒されて、笑顔になっちゃう幸せな食事を進め、よく見るとアフロどんぶり? の内側、底の方にしっかり「黄金屋」の文字が刻まれているのを見てますますこの手の込みようにくすっと来ちゃう。

 

 

 ライスは持って帰ろう。記念だし、飾ったり、自炊した時にこれに入れて楽しく食べられたりするのもいいかも。

 

 

 「おっしゴルシちゃん替え玉!」

 

 

 「おれも!」

 

 

 「わしもじゃ!!」

 

 

 「チャーハン追加! 海老シュウマイもくれ!」

 

 

 「はいよ! 味を変えるための特製スパイスもあるぜ!」

 

 

 「焼きそばおかわり! これは箸が止まらんわ!」

 

 

 「タマモいっつもアタシらの屋台ひいきにしているもんな。大盛りで食え!!」

 

 

 ワイワイと食事の時間も過ぎて、余ったアフロ・・・とその食材は小分けにしてタッパーやアフロを風呂敷で包んでみんなで山分け。ラーメンは完売したみたい。ツッコミしまくっていたタマモ先輩も最後は笑顔で日当とアフロ型陶器と食材をもって寮に帰宅。ケイジさんとゴルシさんも屋台とリヤカーで片づけをしてから帰ることに。

 

 

 今日はとっても楽しい一日で、充実していたなあ。




 作者も理解できないギャグがあるマンガってほんと文章にすると怪文書。こんなん未来のAIでも壊れそう。


 ライスシャワーのネガティブを吹っ飛ばすくらいには好き放題、優しいケイジとゴルシ、シリウスメンバー。ただし暴走に巻き込まれる最前線。ケイジがいた場合この世界のウマ娘のゲームはいくつかライスのストーリーは変化する様子。


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ウマ娘エピソード 番外編? IF編? スカウトしてみますた

 思いついたのでちょいとチャレンジ。はよ本編しろと言われるかもですが申し訳ナス。寄り道ですわ。


 ウマ娘時空だどこぞのSCPじみた名探偵少年がいる世界くらい時空が歪んじまうぜ。ウルトラマンガイアよろしく歪みすぎて怪獣出てきたりして。


 今回のケイジはほぼほぼ真面目。漢女であり選手としての面を出しているかもです。


 「おおー・・・こいつは・・・また・・・」

 

 

 歴史で知っている。経済効果約数百億ともいえるほどの人気を呼び競馬ブームを起こしたオグリキャップ。子供も女の子も競馬に興味を持ち、そしてあのハジケリスト漫画でも魚雷先生がオグリに負けないと鍛えたりとするほどの衝撃を与えた実績でも影響でも怪物である芦毛の馬・・・ならぬウマ娘。

 

 

 中京レース場にルドルフとマルゼンで一緒に見に行ってみればまあー史実に負けない。むしろ人の知能と目標を持っているのもあってそれ以上の気迫と実力を見せての勝利。

 

 

 初めての芝。慣れないレース場でも文句なしの圧勝。なるほど。これは引き込まれる。

 

 

 「ほう・・・地方よりも中央で戦ってもいいほどの逸材・・・確か年齢は・・・」

 

 

 「クラシックにも間に合うわね。むしろ経験を積んでいければ三冠のうち一つ二つは取れそうねえ」

 

 

 いつもなら涼し気に見るだけのお二人さんも気乗りしているし、何やら黒服のおっさんどもに声をかけているわ。こーれ何するんだか・・・まあ、わかるけどさあ。

 

 

 「ああ。君、一つオグリキャップのトレーナーの・・・そう・・・ああ・・・」

 

 

 ・・・スカウトする気満々か。いやでもさー・・・これ、ハジケスイッチ切っているましな気分のアタシだから言えるがやべえだろうよ。急に地方から東京の、ウマ娘の最高学府、アスリート養成学校に本人には直に伝えずスカウト。

 

 

 オグリの保護者にも本人にも伝えず、で、まあオグリと中央の皆さんろくに話し合いも直にしていないだろうからなああの世界。真面目な話学費とか諸々どれほどの負担なのやらだぜしかも女手一人でってぽいし。

 

 

 黒服のにいさんらに北原呼ばせるつもりだろうが、ちょっといただけねえ。オグリのキャリアにとってはいいかもだけど、二人三脚、あっちの場合はベルノライト含めて三人四脚で互いに支え合い、心通わすあのメンバーを引き離すのはもったいねえ。

 

 

 「あー・・・ルドルフ会長。黒服兄さんらいいか」

 

 

 「どうした、ケイジ」

 

 

 「スカウトの話はアタシがする。いきなりごっついやろう二人が来たらトイレに誘い込まれると思うかもしれねえし女のアタシが行ったほうがあっちもかしこまらねえだろ」

 

 

 「・・・そういうものか? しかしトイレ・・・け、ケイジ・・・」

 

 

 「ナニ想像したかは聞かないが、まあーアタシに任せてほしい。会長とマルゼンは資料とかパンフとか、そこら辺郵送してくれや。で、そこの兄さんらは仕事奪った分これ奢るからそこの椅子に座ってケツで磨いてな」

 

 

 ほーん、やっぱ女子高生だしそっちは知識あるかあ。かわいいねえ。んで、まあ黒服の兄さんらには缶のアイスコーヒー渡してからひらひら手を振って移動・・・おごぉ・・・・あ、頭ぶつけた・・・くそ・・・アタシらサイズに合わせて出入口作ってくれよ・・・あ・・・思い出した。

 

 

 「あー忘れていた。会長、マルゼン。出来ればなんだが、編入とかの際、成績でどんな感じで奨学金とか、手当がもらえるかとかをオグリの実績に合わせて可能な範囲で示せる資料あとで寄越して」

 

 

 「はいはーい。お姉さんにお任せよ~」

 

 

 マルゼンから言質をもらっていざ鎌倉。でも、ちょっと待機だなあ。オグリとの顔合わせもせにゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よおー北原にベルノライトだな? ちょい一緒にアタシのデートに付き合ってくれや・・・おん? 六平の爺さんじゃねえか。どうした、青田買いでもしに来たか?」

 

 

 「ケイジじゃねえか。お前こそここに来ていたとはな」

 

 

 「け、ケイジ・・・さ・・・ん・・!? な、なんでここに・・・・!!?」

 

 

 「けっ・・・! ケケケ・・・ケイジ!? 傾奇ウマ娘・・・皇帝と太刀打ちできる人が何でここに!?」

 

 

 おうおう、アタシの顔見るやすげえ顔してんなお二人さん。そんで六平の爺様もいるしなあ。相変わらず元気・・・じゃねえな。心が少し沈んでら。アタシの目的を見抜いているか、懸念しているわなあ。地方の才能が中央に晒された。そうなれば懸念するのは引き抜き。

 

 

 中央のトレーナーの資格がない北原穣はオグリは中央に行ける実力と素質を見せても一緒にはいけない。年齢の事もあって尚更本人はいろいろ思うのもあるだろうしなあ。

 

 

 普段から生徒会にいろいろな意味で足を運んだり連れ込まれているせいでここら辺も顔が利く分気になるか。

 

 

 「んーまあ、北原のチーム、全員に話したいことだ。楽しい楽しいライブを終えて・・・あー・・・今度の休みっていつよ」

 

 

 「は、はぁ・・・い、一応来週の木曜日は練習が休みですが・・・」

 

 

 「んなら、その木曜にカサマツに来るからさ、オグリのお母さんとオグリ、ベルノ、北原、そんで六平爺さん。そこで茶ァしばこうぜ」

 

 

 「おいケイジお前一体・・・それに俺は俺のチームがあってな」

 

 

 「その日は休め。つーか休みだろうがよ」

 

 

 「・・・ケッ。わぁったよ、おいジョー。そしてそこのベルノちゃん。その日の昼くらいでいい、こいつに付き合え。一度言ったことは実行するし下手すりゃ問題児を増やしてお前らをずだ袋に入れて攫いかねん」

 

 

 お、流石よくわかっている。うちのメンバーとゴルシ呼んで騒ぎにしても楽しそうだったが先手打たれたか。まあそれはそれで話が早い。

 

 

 「え・・・ええ・・・・?」

 

 

 「わ、分かりました・・・えー・・・とケイジ、さん」

 

 

 「ケイジでいいぜ北原、いや、ジョーでいいか? ベルノもかしこまんなって。学生同士仲良くやろうや。あ、それとカサマツのうんまい飯や、土産屋とか飯処知らねえか? ちょいとそこら辺に出向くのはあんまりねえもんでねなあ」

 

 

 言質を取れたのでニッコリ笑顔で握手を交わし、その後はオグリらのライブをのんびり鑑賞。うーん、やっぱ美人ねえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さて・・・と・・・」

 

 

 「話っていったい何でしょうね・・・?」

 

 

 あの中京盃で出会ったケイジ。筋が通らない、犯罪者相手とはいえウマ娘のパワーをフル活用して現行犯逮捕して犯人を警察署にぶち込むついでに自分も厳重注意されたり、学園を何回も抜け出しては夜釣りをして怒られたり、なんでか工事現場で土方に混じって働いていたり、煽り運転を走って捕まえに行ったりと兎にも角にも話題に事欠かず実力もある話題のウマ娘。

 

 

 シンボリルドルフのお気に入りにして中央最強格のチームリーダーを務める英傑からの話。それには俺もベルノも、そしてオグリのお母さんも緊張を隠せない。

 

 

 「う、うちの子がこの前のレースで何かしたとかではないです・・・よね?」

 

 

 「お母さん、そもそもケイジって誰だ?」

 

 

 そんなことは露知らずなのはオグリのみ。むしろケイジの名前さえ知らないのかといろいろと不安が増す。気性の荒さと読めなさ加減では中央屈指のケイジ相手に何をするのか・・・待ち合わせの場所である喫茶店はコーヒーや紅茶もおいしいし、食事もボリュームのあるものからオシャレなものでおいしいのでカサマツでも人気、テレビでも取り上げられたことがあるが、正直今日は味がわかるか不安だ。

 

 

 「おおーオシャレ。シックで落ち着いているのに賑やか。いい場所だなあ」

 

 

 「待たせてしまったか? 邪魔するぞ」

 

 

 俺たちの不安をよそに入ってきた六平さんとケイジ・・・ケイジは何で鼻眼鏡とパーティー帽をつけて入ってきているのだろうか・・・・いや、よそう。割と日常らしいし見ないふりだ見ないふり。これとその親友連中まで来たら収束つかないらしいし・・・

 

 

 流石にオグリも固まっているがケイジと六平さんは気にせず腰かけて注文を取り、そしてそのままゲンドウスタイルになるケイジ。ぶふ・・・だ、だめだ・・・2メートルちょいの長身ウマ娘が鼻眼鏡つけてこんなのされると流石に・・・

 

 

 「ブフゥ!!」

 

 

 「っ・・ってこらオグリ! 流石に失れ・・・ほ、ほんと申し訳ないです・・・」

 

 

 「気にするな。流石にこいつの奇行になれろとは言わねえ。ケイジ、いい加減それ外せ」

 

 

 「えー? 一応お忍びのための変装だけど・・・」

 

 

 「その背丈と奇行で名札と看板ぶら下げているレベルだよお前は。でねえと話が出来ねえだろうが」

 

 

 「ヘイヘイ・・・まあ、これだとパフェ食えねえしいいか」

 

 

 六平さんの静止でようやく鼻眼鏡とパーティー帽を外してくれるケイジ。改めてじっくり見るとわかる。ウマ娘の中でも高い美貌、ゴールドシチーやゴールドシップに近しい美しさと言われるのも納得だ。背丈が高すぎさえしなければとも言われるがそれが気にならないほどの美しさ。そして表情がころころ変わるのも見て尚更親しみやすい。

 

 

 「んで・・・まあ本題に行くか。時間作ってもらったからな。まだデビュー前のアタシだがこれから話す言葉は中央トレセンの、そしてルドルフ会長の言葉と思ってもらっていい」

 

 

 しかしそれが急に圧をもってこちらを見据える。先ほどまではまるで感じなかった覇気、威圧があふれ出して美貌を怖さに、迫力に変えていってしまう。思わず固唾をのんで構える。

 

 

 「アタシらはぜひ北原穣、オグリキャップ、ベルノライトのチームを中央にスカウトしたい」

 

 

 「・・・この前の中京盃にシンボリルドルフ、マルゼンスキーが観戦に来ていただろう? 生でお前さんらの走りを見たのと動画での評判もあっての話だ・・・ジョー、お前さんらのチーム丸ごとカサマツから中央での戦線に引っ越しの誘いだ」

 

 

 「・・・は・・・・・・?」

 

 

 「ちゅ・・・中央・・・へ、私たちが?」

 

 

 中央からの話と聞いて、中年になりかけの、三流トレーナーの俺が、オグリの母親まで呼んで何の話だと思っていたが・・・オグリキャップは分かる。間違いなく地方でも最強。中央でも戦える器だ。でも、ベルノライトはまだ未勝利。俺に至っては・・・

 

 

 「行かない」

 

 

 「へえ?」

 

 

 「中央に東海ダービーはないだろう? マーチと一緒に走るって約束したし、キタハラと、私たちの夢は東海ダービーだ。だから中央にはいかない」

 

 

 「そ、それにですが・・・俺は中央のライセンスを持っていません。とてもじゃないですがチームとして行けないんです・・・」

 

 

 資格がない。オグリの実力と才能は間違いなく問題ない。でも、俺は中央トレーナーの資格がない。チームとして引き抜くと言ってもできないのだ。オグリは断ってくれているが・・・オグリの選手のキャリア、今後を考えれば、賞金や名誉を考えればそっちがいいはずなのだ。

 

 

 でも、長年の、ようやく手に届きそうな舞台に行けそうなのにと思う気持ちと、オグリの事を、ベルノの事を思うとどうすればいいのかという感情が出てしまう。俺の夢を手放すか・・・オグリ達を中央に送るべきか・・・

 

 

 「・・・急な話でありますが、中央に行けるという話はありがたいですし、娘が行けるのは素晴らしいことです。ですが、娘の進路は娘が決めます。ですから皆さんが反対なら私も反対です」

 

 

 「そういうだろうと思っていた。だからまあ、このプランを用意してみた。まず、中央に行くのは東海ダービーを終えてから、その後で判断してもらって構わない」

 

 

 「もう一つ、ベルノ、ジョーは俺のチームの下で見習い、雑用としてついてきてもらう。中央で最近新しい試みがあってな。これだ」

 

 

 オグリ親子は行かないと言い切り、ベルノと俺が懊悩しているとケイジ達はパフェを食べながら数枚の書類を出してきた。内容は「トレーナーおよびスタッフ研修新制度」とある。

 

 

 「この研修システムは地方から中央を目指すトレーナー、そしてウマ娘でも学園のスタッフ、トレーナーを目指す、適性がある子たちがいてなア。そういう人らに学園のトレーナー、チームの下で雑用とか下働きをしてもらいながら練習のノウハウやカリキュラム、地方と中央のレース運びの違いを生で見てもらいつつ学ぶシステムとなっている」

 

 

 「まあー下働きだから時給制、今のジョーの稼ぎと同じくらいだろうが学習時間を与えるために帰れる時間は早め、残業手当もあるっちゃあるし待遇はまあ悪くねえ」

 

 

 「地方の感覚とかレース場の考えが抜けきれずに中央のレース場、練習システムの知識だけをもってくるせいで齟齬が生じてしまうトレーナーを減らすための対処と、資格をしっかり取りつつ支えましょうねってことで始まったものだ。これならみんなで中央に行けるし、六平の爺さんとこにオグリもすぐにチーム入りして走れる。悪くはねえだろ?」

 

 

 「あとあっちは社員寮もある。そこらへんは気にしないでいいだろうな。ただし部屋の片づけはしっかりと」

 

 

 「これなら私も中央に行ける・・・オグリちゃんのサポートを続けられるんだ・・・!」

 

 

 二人の言葉を裏付けるようなシステム。待遇も実際に悪くない・・・祝い金まであれば社員寮も独身なら基本制限なしで住んでいい・・・中央の力の強さを感じるのと同時に、ここまでの待遇をくれることが、オグリはそこまで見込まれているというのがわかって嬉しくなる。

 

 

 「次に学費の件だが、これもオグリの実績、つまりは地方の戦績を見て中央に行く際に学費の免除が行われる。今の時点だと半分免除、返済なしだが・・・東海ダービー、間違いなく日本でも有数の実力者と見せつければさらに免除される。つまりはまあ、中央でも特待生として編入出来る」

 

 

 「まあ、今の時点でもカサマツに近いレベルなのに・・・」

 

 

 「いつだってスターを求めている学園側の地方引き込みの手段なんだろうなあー。ここだけの話、ルドルフ会長を超える器はレースを出ているメンバーでは中央にもいない。そこにオグリや北原、話題性のある実力派が出てきた。もともと中央の引き抜き行動、せめてもの誠意ってやつだろうさ。だからまあ、ルドルフ会長、学園側としては今すぐにでも中央に来てぜひクラシックに来てほしいと言っていたが・・・まあー調整やらで忙しい、そちらに集中したいと話しておくからまずは東海ダービーを取って来い。そっから中央に気があれば来てくれ」

 

 

 「・・・どうしてここまでしてくれるんですか? 六平さんに、ケイジ。なんでここまで・・・」

 

 

 オグリの学費も免除、移籍時期も好きにしていい。自分も中央で働きつつ資格を勉強しつつ、ベルノにもチームとして、あるいはスタッフとしての道を用意した。しかもあちらの意向を一部曲げてまでもこちらも丁寧に尽くしてくれる。どこまで行っても自分は三流トレーナー。オグリは実力も才能も底知らず。ベルノは勉学において優秀だし、知識も豊富でなるほどスタッフとして大成もできるだろう。

 

 

 でも自分だ。何度考えても自分だけは中央にふさわしい人間じゃない。だけど来てほしいという。それだけが信じられない。

 

 

 「お、俺よりもおじさんとか、中央の素晴らしい人材にオグリは鍛えられた方がよっぽど・・・」

 

 

 「私はキタハラ、ベルノとじゃないと行く気はないぞ」

 

 

 「そう、それよ。そのトレーナーとの信頼、絆。こればかりは中央の人材でも得難いものがあるし、なによりオグリの才能を開花させた。皇帝とスーパーカーのみならず目の肥えた学園関係者の目に留まるほどね。キタハラのそれはどんな機材や飯、設備をもってしてもできないこと。それに・・・」

 

 

 「靴だな。オグリの選んでいたレース用シューズ。その選出と蹄鉄までも合わせた組み合わせ。ベルノが選んだそうじゃないか。数度のレースであそこまでぴったりなのを合わせられる選別眼は大したものだ。オグリだけじゃねえ、三人そろって戦ってこそ中央でも輝くとワシもケイジも睨んでいる」

 

 

 「後は・・・夢をかなえて、そっから次に気持ちよく進んでほしいからだねえ。アタシの勝手な思いだが・・・」

 

 

 俺の疑問さえも、オグリを見出してくれたこと、そして実力を育ててくれたことのみならずベルノの事までもをしっかりと見ていた。俺たちを、ここまでも見てくれたということに思わず目頭が熱くなってしまう。そしてちょっと窓を見て目を細めるケイジ。とてもではないが年には不釣り合いなのに絵になり、どこか遠い昔に思いをはせているように思える。

 

 

 「クラシックの格式やレースの名誉は確かに高いだろうさ。一生に一度だろうさ。けどね。ライバルがいて、今一番行きたいレースに突っ走る姿の方が何よりも美しいし、価値があると思う。だから中央の話は半分に聞いておけばいい。お前さんらほどの人材を手放すつもりはないだろうし、時期はダービーが終わってからでいい。それに、アタシとしても、多分あんたらとしてもそっちの方がおもしれえ・・・」

 

 

 「・・・? 面白い? のか?」

 

 

 「ああ。考えて見なよオグリ、みんな。チームの夢をかなえて東海の頂点になったオグリがクラシック、ティアラを越えて実力をつけた、まさしく日本屈指のメンバーと戦う。地方の頂点と中央の頂点がしのぎを削って戦う。夢をかなえて尚、次の夢へと突っ走る。見たくはねえか? 次世代の格付けを済ませたと思ったら次の実力者が出てきて日本を盛り上げていく。そんな光景を。それを作り出す当事者になってみたくはねえか? それが出来れば・・・地方と中央双方の頂点のトロフィーを手にできる。ルドルフたちですらできなかったことをできるぜ」

 

 

 ハッとなる。その話の大きさに驚かざるを得ない。地方と中央の栄冠を手に・・・オグリの実力なら東海ダービーを取れる。俺の夢は、そこで一度止まっていた。そこで終わっていた。だけど、ケイジは違う。その夢をかなえて尚更なる上を目指す。次の夢を、その舞台の土台があるんだと話してくれる。

 

 

 「しかもまあ、ここにはキタハラの叔父さんの六平爺さんもいる。師匠として、受け皿としてはもってこいだ。爺さんもノリノリなんだよな!」

 

 

 「ゲッホゲホォ!? 急に背中を叩くなケイジ! げほ・・・くそ・・・んんっ。まあ、そういうことだ。俺もお前たちの夢を叶う姿は見たいし、その後も見たい。オグリキャップのお母さんにも迷惑はかけないし、思いきりカサマツでやり切って、その上でまだやる気があるのなら来い。世話してやる」

 

 

 「アタシも練習相手に付き合うぜ。だからま、後の細かい話はそこの爺さんと。アタシはちょいと話付けてくるからよろしくぅ! あ、それとメロンソーダアイス乗せ、オリジナルミックスジュースあとで頂戴。ちょっと失礼」

 

 

 そういってカラカラ笑いながら一度喫茶店を出てスマホで連絡を取り出して誰かと連絡を取り合うケイジ。

 

 

 見せられた夢の大きさ。棚から牡丹餅なんて話じゃない。突然目の前に夢の切符が。栄転にも度が過ぎる話が転がり込んできた。それを話すのが一人は俺の叔父で、海千山千のトレーナーだからわかる。しかしケイジの方はまだ学生だというのにこの説得力と燃えさせてくれるなにか。

 

 

 いろいろな糸が切れてどっと疲れが押し寄せた。これが中央でも指折り。練習とはいえリギルとやり合っている選手の覇気というものだろうか。

 

 

 「なんだか急な話だが。私達はもっと上を目指せるということでいいのか?」

 

 

 「そうだよオグリちゃん! 日本一、今よりもずっとすごい舞台で戦えるってこと!」

 

 

 「さすがねえ。オグリ。そこに行くとしても頑張るのよ」

 

 

 「・・・・・・ああ。私も東海ダービーで優勝して、中央に行きたい」

 

 

 ぐったりしてしまった俺を横に盛り上がるオグリ親子にベルノ。俺も中央に行きたいし、オグリも東海ダービーを越えた後に行く気らしいし。ははは・・・本当に、驚きとしか言えねえ。

 

 

 「はー・・・ロッペイさん・・・」

 

 

 「六平だ。書類でも見るか?」

 

 

 「いや、それは後で。それよりも・・・ケイジは、中央ではあんなレベルの子たちがごろごろしているんですか?」

 

 

 「・・・・・・・・あのレベルは中央でもそうはいねえ。そして、普段は訳が分からん。お前以上のクソガキで、奔放すぎて手に負えん。だが、誰かに手を差し伸べる時は全力で背中を支え、全力で愛して助ける。嘴の黄色いガキのくせして出来てやがる器だ。オグリキャップとも違う。だが強敵だろうな」

 

 

 「そうですか・・・でも、オグリならきっと勝てます。じゃあ、早速諸々の書類や手当を」

 

 

 この後に来る話、クラシックも菊花賞は間に合うということで一応そこは登録しておき、学費の件。移動や諸々、話し合いは進み。戻ってきたケイジとも楽しく語らって話は終わった。

 

 

 去り際にケイジが「中央に来たらそこでのファン第一号はアタシがもらうぜ!」と言えば「あ、こんにゃろ! わしの分も寄越せ!」とロッペイおじさんがギャーギャー言い合うという珍しい絵面を見せてくれながらの解散。本当に、いい出会いだったと思うし、オグリには負けるが俺もケイジのファンになったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「っはぁ~・・・・ああー・・・有意義だった・・・学校からはギャーギャー言われたが学生優先。それと青写真を話したら納得してくれてよかった」

 

 

 「しかしまあ、ずいぶんと熱心に話していたみたいだな。基本面倒な話ごとはスルーのお前がらしくない」

 

 

 

 夕暮れから夜に変わるであろう時間。六平の爺さんと一緒にフラフラ歩いて電車に向かうアタシ。スカウトは無事成功。ただし来年の7月に編入ということで済ませ、やいや言ってくる連中も論破して無事に終わり。いい仕事したぜ。

 

 

 「そりゃ。応援したくなるだろうよ。ターフに、レースに、勝利に恋した乙女の夢。しかもまあ東海と中央で狙えるという我儘シンデレラストーリーだ。背中を押したくもなる。戦えば叩き潰す勢いでやるがな」

 

 

 「フン・・・言うじゃねえか小娘がよ」

 

 

 「小娘だからこそよ。レースに身を燃やして戦うからこそわかるってな」

 

 

 実際に、あのレースの産毛の先まで燃えるような感触とどてっぱらに焼けた鉛を押し付けられたような感触の重圧。いろんなものをしょい込んで戦う感触はレースに出ているからこそだよなあ。それを楽しんで、戦うことを選ぶ。支え合う三人は絵になる。

 

 

 戦えば容赦はしないが、見てみたい。あの芦毛の怪物、そしてそれを支える仲間の旅路を。そして支えたい、そばで見たい。ウマ娘になっても歴史好き、馬好きから離れられん性分のようだわ。

 

 

 「そ・れ・に・~? 実はアタシ以上に嬉しいだろう? 爺さん」

 

 

 「ん?」

 

 

 「かーわいい甥っ子が全力で頑張って、チームで東海一を狙い、中央で弟子としても来てくれて日本一を目指す。後継者というか、後釜になるかもしれねじゃんかよ。ここまで成長して、頑張ってくれる姿を見せてくれるなんて全く憎いねえ。この色男がよぉ♬ あんたが呼び込んだ道でここまで来るとは大したもんだ」

 

 

 「けっ! あんなケツの青い若造なんぞまだまだわしの後には早いわ!! 中央でしごき倒してその上でオグリキャップたちとやり切ってからだわい!!」

 

 

 なはは。認めているし、口の端が吊り上がっているぞ爺さん。歩きもいつもより早いじゃねえの。だからかねえ。理事長たち相手にも一歩も引かずに自分のチームの補助をさせると言ってきかなかったのは。

 

 

 ま、ケイジちゃんはわきまえているから秘密にしておくけどねん♪

 

 

 「まま、それはまたもう少し後のお話ってことで・・・なあどこか美味いめし屋さん知らないか?」

 

 

 「おいおい。もう夜だぞ。どこに行くってんだ」

 

 

 「今後交流戦とか、スカウトやいろいろあってカサマツにも人来るだろうし、地方トレセングルメログとか作ってみたいんだわ。ドリジャに頼まれてなー中央のメンバーも楽しめるだろうし、合宿とかでもいいかもだしどうよ。ケイジちゃんとのカサマツ食べ歩き夜の旅。いっぺんやってかない?」

 

 

 「2店舗までだぞ」

 

 

 「へいへい。わぁーってらい。それじゃ、でっぱーつ!」

 

 

 「走るんじゃねえケイジ! お前の力でその速さは地面が壊れかねんわ!!」

 

 

 この後アタシと六平の爺さんと一緒にうまい店、老舗、ここに来たら寄るという店を教えてもらいつつ中央トレセンに帰宅。

 

 

 そして次の年、オグリが東海ダービーを制覇。クラシック三冠最後のレース菊花賞に割り込んできた地方の怪物オグリキャップの登場、大勝利に日本中が沸き、地方の星、オグリブームが到来。

 

 

 中央も最高のライバルだと言わんばかりに誰もが挑み、激闘を繰り広げ、地方はオグリのようなスターを育てようと躍起になることでレベルが急上昇。

 

 

 オグリと同じ地方から来た北原穣の挫折と努力、粘りがあってこその成り上がり、まだ学生でありながらもトレーナー、スタッフとして地方から来たのにもかかわらずベストマッチな道具選びをするベルノライトの存在もあって自分達だってやれるんだと、支えに、励みにしていくことでウマ娘業界は全国が盛り上がりまくった。

 

 

 地方も中央もどこを見ても熱気と興奮に包まれ、交流戦レースが新たに生まれるほど。またダートのレースも増えてきたことで主戦は依然芝だがそれでもダート路線の子たちには前とは比べ物にならない程恵まれた環境になる。

 

 

 オグリ達の起こした波紋は日本を、ウマ娘業界を追いに盛り上げ続け、それに負けないほどのスターたちが生まれ続けては常に激闘を見せ続けた。

 

 

 今日も芦毛の怪物が走る。彼女の背中を押す仲間たちと、ファンの期待を背負い、愛を受け止めて

 全力で応えるために。何より彼女が一番走りたいために。芦毛のシンデレラはゲートから出てターフを駆け抜ける。 




 ケイジは夢を歩む工程も大事にしたりするのでクラシックよりもそっちがいいならそれがええやろって感じ。美しく生きることこそが一番。人生こそが一世一代の勝負なんだから悔いはなくやろうやっていいます。


 六平さんも甥っ子が中央までも来てくれるわ、チーム丸ごと面倒見て成長していく過程をそばで見れるのでご満悦。ケイジ負けない程ワクワクしていました。なお後日こっそり祝杯をあげたら飲み過ぎて二日酔いになったご様子。


 ルドルフたちは「え? 今すぐこれないの?」な返事に「オグリ達が一番走りたいレース走らせてやれ。それに地方の頂点が中央のトップが成長した頃合いとぶつかり合って秋から年末を盛り上げるのもおもしれーだろ。無理強いで編入を学生にしちゃだめよん」と返されてしまう。オグリ本人にも聞いたら「だって東海ダービー行きたい」で切り捨てられて終わり。


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函館二歳ステークス(GⅢ)&小倉二歳ステークス(GⅢ)

 今回はさっくり二本立て。徐々にケイジの適正距離も分かるかも・・・? 評価人数10人越え!? ウッソでしょこれ。非公開みたいな感じなのにどうしてこうなった。いやほんとウマ娘の名作小説ははそれこそたくさんあるはずなのに。兎にも角にもありがとうございます。


 ケイジ(ウマ娘)の一口メモ ナリタブライアンの野菜嫌い克服の際に磔にして野菜の山で囲んで、枕に怪文書となんだこれは。たまげたなあ・・・な野菜の絵、写真を忍ばせる手段を開始。成功。頼んだビワハヤヒデから「意味が分からん」と言われた。


 なお本人もたまに磔にされている模様。


 ほふー・・・ようやくつきましたは北海道! いやー流石北の大地。俺の生まれ故郷。すず・・・しくねえ!! 畜生め。あ。俺今畜生だったわ。で、改めてなんでこの北の大地で30度台普通に出るんじゃ。冬はマイナス40度でるときですらあるから温度差年間なら70度以上だぞ。沖縄の方がまだ涼しいわ。南の島に夏の暑さで競り合って恥ずかしくないのかよ。

 

 

 まーしょうがない。頑張ってレースに勝利して今後のための獲得賞金ゲット。おやっさんらみんないい思い出来るよう頑張っていきまっしょい。ほれいくどー

 

 

 「今年の北海道は暑いなあ」

 

 

 「ケイジも思わずげんなりした目になっていましたねえ。今は切り替えているっぽいですが」

 

 

 「ありがたい。今回のレースはスプリント。パワーと体格を活かした加速で一気に終わらせて休んでもらえるよう夏バテにも合わせて調整をさせなければ」

 

 

 「一応桃とバナナは後で買ってくるのと、氷柱用意しているのでそれ扇風機の前において冷気を送っていくので夏バテ防止しつつですねえ。なんやかんや国内とはいえ真夏のレースですから」

 

 

 そうなんだよな。夏競馬は地味に北国、寒冷地域で育つ俺ら馬にはちょいキツ。しかも湿度高いからなあ。ここらへんは大陸で走っている馬たちが羨ましいぜ。

 

 

 でもまあ、頑張らなきゃならん。おやっさんらの牧場、なんでも元メジロ牧場のスタッフを数名雇ったそうだし。色々あって周りに迷惑をかける前にしっかりと引き際を見極めて今年に解散した某メジロ牧場。そこの人材でもう一度牧場で働きたいと考えた人たちを雇ったとか。

 

 

 『俺たちに夢とロマンを運んでくれたメジロの皆々様に今度は俺らが報いる番だ。それに実利的な意味で見ても名門牧場でのノウハウ、経験を積んでいる人材はありがたい』ってわけであの小さな前田牧場少し規模を大きくする用意もしているようで。実際、火山噴火の件さえなければ未来でも絶対日本最高のステイヤー、中距離の名馬を多く輩出していたよね。

 

 

 おやっさん、ほんと動くときは動く人なようで。その改築資金と、ボーナスのためにちょいと俺も頑張らなきゃな。どうせ陰で女将さんに怒られているだろうに。俺の一口馬主の・・・40%以上の権利もっていくために出費した後にこれ。普段はパチスロも煙草もしなけりゃ晩酌もちびちび。たまの宝くじを楽しむくらいな癖に動くときがやべえ。

 

 

 「ムフー」

 

 

 『とりあえずしばらく厄介になる場所と、早いところ足の感触確認に行こうぜー。暑い分走り回って思いきり汗かいた後に扇風機浴びながら桃食いてえ』

 

 

 「おいおい引っ張るなよケイジ。言わずとも練習はさせてやるから。その前に軽い休憩と練習場を歩くぞ」

 

 

 『はいよ。疲れはねえけど、明日以降からかねえ・・・ちょっとでも?』

 

 

 「練習したいような目をしてもダメだぞケイジ。車酔いが自覚なしであるかもだし、今日は疲れ抜きだ」

 

 

 「ぶふぅ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『さあーいよいよ始まります夏競馬、2歳のみが挑める条件戦重賞函館二歳ステークス。デビューを終えて一回り成長した若駒たちが挑みます1200メートル。天気は晴れ、芝の状態は良好』

 

 

 『ここ北海道でも今日は気温30度越え。この中での短い距離とはいえ辛いものがあるでしょう体調管理が出来ているかどうかもまた大きく響きそうです』

 

 

 そうだよなあー俺の母方の曽祖父シンザンとかもそれで苦労したみたいだし。この季節の競馬はつらたんなのはみんな思っているのねん。

 

 

 『そしてその中でも暑さを気にしないそぶりを見せていますは期待の一頭ケイジ。今日も元気そうですねえ』

 

 

 暑さもいい加減なれたわい。というのはうそだがこれくらいでへばれるかっての。どもども~ケイジだぞーおひさー何か月ぶりかだが帰って来たぞ~

 

 

 「ぬぉおお! ケイジ! パドックの移動中でヘドバンしながらわちゃわちゃするんじゃない! 疲れが出るだろうが!」

 

 

 うるせーテキのおやっさん! 短い距離の走りはまだしも回数短けえし仕掛けの練習もいいがもう少し体を鍛えさせろやこのやろ! このクソ暑い中プールだって半分も入れさせねえとはどういうことだオラァン!?

 

 

 『なにやら折り合いがついていないのでしょうか? 暴れながら変顔を披露していますねえ。会場が笑い声に包まれております』

 

 

 『新馬戦では二足歩行していたそうですしねえ。こういう騒ぎが好きなのでしょうか?』

 

 

 半分正解で、今回は調整の際の練習が少ないことでの不完全燃焼が半分じゃオラア! あーもー! お腹ペコペコの中でむしゃぶりつくバナナとか桃のあの味が最高なのに! あ、氷柱と扇風機のコラボはすごくよかったです。

 

 

 「おおーケイジ~頑張れよー!」

 

 

 お? この声は内の牧場の近所さんで俺をよく見ていてくれたおっちゃんか。わざわざ来てくれるとはねえ。ありがとよー! カメラむけてくれるな? ほいちょいロデオのポーズ

 

 

 「ぬぁあー!!? ぐぉお、た、倒れる・・・!」

 

 

 「うぉっとと。ほんとに足腰が強いなケイジは」

 

 

 よっしゃよっしゃ。おっちゃんも満足そうだ。じゃま、真面目に行きますかね。あと松風ほんとお前さんも騎乗うまいな。振り回した俺が言うのも何だが。パドックも終えて本場馬入場。俺の人気は~・・・?

 

 

 ・・・・・・3番人気、オッズ3倍ちょいか。ん~? 三番人気だけど、オッズの具合はどうだろな??

 

 

 「人気はあるが・・・まあ、さっきのパドックで体力消耗していると思われたり、うまくいかないかもってことで人気を落としたんだと思うよケイジ」

 

 

 「ヒン」

 

 

 『なるほど』

 

 

 「後は僕との折り合いがついているかって不安。だけどこれで済んでいるのはケイジの前の走りだと思うし、頑張ろう」

 

 

 『了解。ぶっちゃけスプリントレースだし一瞬だろうしなあ。デビュー戦と距離が800違うし気をつけにゃ』

 

 

 脚質測るためと叩きとはいえ思えばかなりの距離変更だなあ。楽しそうだからいいけど。そんでまあ、ぶっちゃけ一番人気はいらんわ。それよか倍率高い方が俺に賭けてくれた人らが儲かるしそっちの方がいい。

 

 

 『さあ、5番グッドヘイロー10枠に入りました』

 

 

 さてさて、短距離の世界へは俺はどうかね・・・と

 

 

 『3番ケイジ大外枠に入り体勢整いました・・・・』

 

 

 ゲートが開いた! よっしゃ!

 

 

 『ゲートが開いてスタートしました! ケイジ、今回も好スタートを切って先頭に立ちました。ナイスセレクト、アイムウィナーが後を追う形に。スプリントレースは最初から縦伸びの展開に』

 

 

 今回も好スタートは切れた。けど・・おっ、最初のコーナー。よっしゃよっしゃ、ここで差をつけつつ思いきり今回もいくぜ!

 

 

 『ケイジ、後ろからの猛追も相変わらずの大逃げで千切ろうとしています。現在ケイジが先頭。二番手からアクマメガトロン、ナイスセレクト、サンドクライムと食らいつきますが現在距離は4馬身。新馬戦で大差逃げを見せたケイジ。このまま逃げ切れるか?』

 

 

 足のキレは問題なし! だけど・・・あれ? はやくね? またコーナー。気持ち二つ分くらい早いな? これやばくね?

 

 

 「ケイジ、エンジンはもう掛けろ! そろそろ加速しないと後ろから来るぞ!」

 

 

 あっやっべ! マジでもう距離をつめてきやがってやんの! くっそースプリンターどもとの脚質や追い込みは今回が初だが予想以上だなおい! こなくそっ! やってやるぞ松風ぇ!

 

 

 『おっと松風騎手早めに鞭を入れた! ケイジ加速を開始! しかし少し伸びが鈍いか? 後ろからグイグイ迫ってくるぞ2歳スプリンターたち!』

 

 

 『もう最後の直線。先頭集団の差がつまりケイジとの差は2馬身に迫りました!』

 

 

 ぐぉおお!! もうセーフティーリードじゃねえな? だがこれ以上はやらん! 足もあったまったからな。思いきりイィ!! はじけろ筋肉! 飛び散る汗!

 

 

 『しかし譲らない! 譲らないぞケイジ! その粘り腰、競り合いの強さはまさしくテイオー譲り!』

 

 

 『そのままリードを譲らずにケイジゴール!! タイムは1分10,6。好タイムをもって見事スプリンター戦も制覇しましたケイジ』

 

 

 戦うパパは・・・あれ? あ、もうゴール? ふぃいー・・・不利な戦いになりつつあるのもひりついて面白いけど、汗かくなあ。そして俺パパじゃねえわ。パパになるの引退してからだわ。しかしパパになってのお仕事があれって考えると・・・うーんやめよう。引退後が何だか虚しくなっちゃうわ。

 

 

 あーとりあえず無事に勝てたかー。短距離戦だとみんな最初から鬼気迫るものを感じるのもあったのと、やっぱ仕掛けとか体感が違うなあ・・・俺はあんまりスプリンター向けじゃないのかな?

 

 

 「いい粘りだったぞケイジ。ロングスパートのやり方を活かして勝てたし、流石だ」

 

 

 『おうよ』

 

 

 ここらへんはジェンティルやゴルシとの併せで学んでいるからなあ。どうにかなってよかったわ。でも松風の助けがあってこそ。本当ありがとよ、助けられたわ。これで賞金・・・あー?? 3000万くらいだっけ? ゲットだぜ。おやっさんの晩酌は守れたかねえ。後お小遣い。

 

 

 『やはりこの馬は新世代でも頭一つ抜けているかもしれません。ケイジ、勝った後も悠々としています』

 

 

 そしてま、勝ったのならこれをしないとなあ? テコテコテコーとスタンド中央に移動して。

 

 

 「お、よっしケイジ。思い切りやろうか」

 

 

 『ケイジ、ウイニングランをするわけでもなくゆっくりとスタンド前に移動。真ん中あたりでぴたりと止まりました。もしやこれは?』

 

 

 予想の通りヨ実況のおっちゃん。右にちょいとぴょーん。左にちょいとぴょーん。そして首を下げて~~?

 

 

 「ビヒヒヒィイィイイイ~~~~!!!(いよっしゃァァぁあああああああ!!!!)」

 

 

 少し高めに跳ねての咆哮! 勝鬨じゃぁああい!! GⅢ、初重賞とったどー!!

 

 

 『再び響いた勝利の雄たけび! ケイジ初重賞の手柄を前田牧場に献上奉る! 若武者の見事な戦いぶりに会場も沸いております!』

 

 

 わはは! やったぜやったぜ! それじゃ、また次のレースで会おう! そして今日も応援ありがとよ。儲かっているといいな!

 

 

 『そして悠々と楽しそうに帰っていくケイジ。傾奇者、やることをやれば後は自分も晩酌と祝杯をあげに行くようです』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『さあ、曇り空ですがまだまだ残暑厳しい本日のレース。しかしこの熱気はそれ以上でしょう。小倉2歳ステークス、今回もまた話題の若駒が参戦しています』

 

 

 どんどん行くぜ二度目の2歳限定重賞。今日は曇りで芝は稍重。このレースの賞金もまた3000万ちょいだっけな? 勝って是非とも稼ぎたいね。がめついわけじゃないが俺のやれることと言えば今はこれくらいだし、おやっさんらに楽させにゃ。

 

 

 『ケイジ、前回は変顔をしながら暴れていましたが今回のパドックでは落ち着いた振る舞いをして・・・ブフゥ! い、いますね・・・くく』

 

 

 よっしゃ、変顔実況のおっちゃんに向けてやってみたがクリティカルだ。練習も今回は少し増やしてもらった分うまく調整できた気がするし、グースカ深く眠れた分気合も元気もノリノリのバリバリよん。

 

 

 「まーたお前は・・・はあ、変顔やポーズを取るのはいいがほどほどにな」

 

 

 「ヒヒィ、ン」

 

 

 『いいじゃんかよ。祭りの舞台なんだ多少のサービスはつきもんだろー?』

 

 

 「人気者だからというのは分かるが・・・お前の場合は積極的に人気を落としに行っていないか?」

 

 

 知らんな。それに俺に期待してくれた人にゃそれなりに稼いでほしいじゃん? 今回の俺の人気はー1番人気の・・・・お? 2,4倍? ほうほう。あーなんとなく理由分かった。

 

 

 「前回のレース、最後追い詰められていたからなあ。スプリントの適性が合うかどうか。そこを少しきつく評価されての一番人気だがこのくらいか」

 

 

 「後はあれですね。なんやかんや言っても2歳の、身体の仕上がりもまだまだ仕上がっていない若駒たちのレース。クラシック以上のあれ具合を見せるのはありますしそこを考慮してかもです」

 

 

 そんなもんか。まあ、ボクシングでも4回戦とかは良くダウンが多いとかいうし、思わぬ場面が多いってことかね。どちらにせよオッズが高いのは有難い。あれだぜ? 1000円俺に賭けて、当たったらそのお金で焼き肉の安い食べ放題プラン行けるくらいのお金になるんだし、やっぱ人気よりもオッズの方がいいわあ。

 

 

 『今日は百面相をしながら調教師や騎手と一緒に何なら会話らしいことをしているようですケイジ。頭がいいとは聞いていましたがある程度言葉を理解しているのでしょうか?』

 

 

 『スプリントレースは二回目。経験を積んで落ち着いているのかもしれません。体の仕上がりもよく一番人気も納得です』

 

 

 ありがとよん。少し暑さが・・・んんー・・・一応落ち着いたのと、経験を積めたのは大きいからなあ。今回も頑張るぜ。

 

 

 しかし、周りを見るとほんと暑さにへばっていそうなやつもいるしでやっぱ夏場は馬にはきついよなあ。肉体の仕上がりは良さげだけど目が疲れているぞ。

 

 

 無理はせずになーと。おいしょ、パドック終わって本場馬入場でござーい。

 

 

 『さあ、出走直前です小倉2歳ステークス。テイオーの息子ケイジの挑む重賞二戦目。かつての不屈の天才の子どもは父の、そして祖父の後を追えるのか。それを阻むライバルたちも多数。油断も隙もない一分とわずかの勝負』

 

 

 特に俺にとってはな。スプリント勝負はやや苦手だぜ。幸いなのは暑さが長引いてタフな分俺の方が体力の総量勝っていそうなのだけど。今回は9番1枠貰えたんで最初に入ってお邪魔します。あー・・・狭い場所だけど、なんだろう。落ち着きそう。

 

 

 ふわぁ・・・・あー・・・あともう少しだねえ。全頭入るの。

 

 

 『最後にハギノコルクが入りまして出走準備そろいました・・・スタートしました。ポンと飛び出したのはケイジ。あっという間に先手を取って最内につけました』

 

 

 始まったぜスプリント。今回は最内貰えたから楽な場所もらうぜー

 

 

 『先頭はケイジ、二番手にゴーイングラモン、メイショウダイナ、カヤノミドリが続いていきます。しかしグイグイ伸びていきますケイジ。コーナリングで減速することなく距離を伸ばして先頭を譲らない』

 

 

 『彼のこのコーナリングを邪魔せずに捌ける松風騎手との連携あってこそでしょう。早くも600メートルを通過』

 

 

 うーんもう半分。うおっと、もう仕掛けるか。了解、ペース上げるか。

 

 

 『先頭は依然ケイジ。おっともう鞭が入ったぞケイジ。そして加速をしていく!』

 

 

 早いな松風。やっぱ包まれる可能性もある?

 

 

 「あちらが仕掛ける前に加速するぞケイジ。お前のスタミナならちゃんとやり切れる。最後に脚を少し残してくれればいい」

 

 

 あいよ了解! っしゃああ! 振り落とされんなよ松風! ここからずっとスパートじゃい!

 

 

 一気にコーナー曲がっての~・・・直線! 足なんざたっぷり残っているわい。追いつかせねえからなぁ~?

 

 

 『伸びる伸びる! ほかの馬たちも仕掛けているが速度が違う! 鈍らない、落ちない! 鋭い切れ味の脚が尽きずに芝を駆け抜ける! 3馬身! 4馬身! さらに伸びる! ケイジ余裕をもってゴール!4馬身と半分! 見事なレース運び。短距離とは思えないほどの試合を見せました』

 

 

 ゴール! よっしゃよっしゃ、変な疲れや違和感も感じねえ。これがスプリントの走り方か、覚えたぜ。

 

 

 『タイムは1分8秒,1。前回よりもしっかりと距離を縮めての快勝です! ケイジ! 俺より前には立たせないと言わんばかりの大逃げをもってさらに実力を見せつけていきます! これがテイオーの最高傑作か!』

 

 

 「やったなケイジ! これで重賞二連勝。お前はいい馬だよ」

 

 

 松風もいい騎手だぜ!

 

 

 『松風騎手がポンポンとケイジの首を撫でます。ケイジも嬉しそうに身を震わせ、舌をべろべろしております』

 

 

 『そしてまたもやスタンド、観客の前まで歩いていきますケイジ。ここでもやるようですあのパフォーマンス』

 

 

 とりあえず、出走のための金額も勝ち星も稼いだ。後は、これをやるだけよ。

 

 

 「今日はもう少し大きくやっていいぞ」

 

 

 ありがと松風。応援してくれたみんな、来てくれたお客さん。そんであの地震で大変になった皆。元気出して頑張ろうぜ! 右へぴょーん。左へぴょーん。そして真ん中で首を下げてー・・・

 

 

 「ビヒヒィィイイィイイィイィンッッ!!!!(ぃいよっしゃあぁああああああ!!!)」

 

 

 やったぜ重賞二連勝! どんなもんだいってな! また皆来てくれよ~もしくは見てくれよ~!!

 

 

 『ケイジの雄たけびが会場に響き渡ります! それに応える観客の歓声で競馬場が大きく揺れているようです! 傾奇者の勝鬨、手柄を取ったという声に応える声でまさしく天を突かんばかり! 我々に元気をくれたケイジ。自身は手柄を咥えて悠々凱旋。これからが楽しみになる馬です』

 

 

 今年は後一戦。そこでどうなるかだなあ。頑張ろうぜ松風。

 

 

 「よーしよし。テキたちがおやつ用意しているようだから少し食べたら休もうな」

 

 

 「ビヒぃ!」

 

 

 『マジか!? よっしゃ。今日は梨かリンゴの気分だしぜひぜひ! ああーレースと勝利後のご飯が楽しみだぜー』




スプリントレースはちょい苦手。とはいえやれないわけではないって感じ。年齢制限のスプリントレースなので今後の経験積んだプロフェッショナル相手では怪しいかも。


 ケイジ 月一のレースでちゃんと勝利してきた。流石に三回もこんな感じなのでいろいろ周りから注目を浴びる。狙うは一着。一番人気なんぞよそにくれてやるわスタンス。小倉2歳ステークスが終わってからリンゴと人参を食べた。


 テキ ケイジに振り回された。最初は練習量減らしたら怒られ、プール練習がないやんと突っ込まれたのである程度にしつつプールを入れて二回目は調整。重賞連勝で前田牧場にも面目が立つのと朝日杯が楽しみ。


 松風 ケイジの屋根も慣れてきた。スプリントレースでは早い仕掛けで勝利するようにうまく調整。コーナーの際に脚に力を入れすぎてレース後足がプルプルしていた。久保さんに助けてもらって無事に帰宅。


 おやっさん 前田牧場長。ケイジの稼ぎで晩酌とお小遣いカットは免れた。牧場を少し大きくして繁殖牝馬や幼駒を購入しようか検討中。つてを使ってある馬の血統を探しているとかなんとか


 女将さん ケイジが稼いできてくれたので牧場の社員たちには臨時ボーナスを少しあげた。旦那の行動力は突発的な部分があるのにちゃんと実利もあるので強く怒れない。牧場の拡張は賛成。


 新厩務員ちゃん 次回登場予定。葛城厩舎に所属していきなり担当の馬(ケイジ)が重賞連勝してきたのでボーナスが入ってほくほく。久保さんにもよくしてもらっていて嬉しい尽くめ。


 ケイジのこの勝利後のパフォーマンスの名前どうしよ。


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仲間が増えるドン

改めてウマ娘から競馬の歴史を探ると今って結構2歳限定のG1レースもあるので早熟の子たちにも優しい方と言えるんですかねえ。


 「ヒヒーン・・・ムフッ」

 

 

 『はぁー今日は軽めかあ。プールは軽めだし。その分シャワー浴びっかあ』

 

 

 「そんな顔をするなケイジ。これでも普通の調教よりも少し多めなんだぞ?」

 

 

 レースが終わって朝日杯フューチュリティーステークスの出走権ももぎ取れたこともあって今はのんびり身体がなまらないようにしつつの練習中の俺とおやっさん。

 

 

 なにせまあ、うん。三か月近く間が空くってもんでその間はゆっくりになる。併せをしたり、坂路を走ったりいつも通りだし、むしろ今はレースが終わってすぐなもんで練習もすくねえ。

 

 

 「ヒンヒン、ブモ」

 

 

 『だって疲れてねえし。飯の量抑えるよか思いきり身体動かして飯食いてえよ』

 

 

 「うーん。食事量は減らしたくないけどなあ。むしろお前の場合飯を減らしたら筋肉まで余計に落としそうだし。でも疲れ抜きのために練習減らして食事はいつも通りは・・・練習嫌いはもちろんだが練習好きと筋肉付きまくりというのも大変だとはなあ」

 

 

 「あ・・・て、テキお疲れ様です。私がケイジ君のシャワーとご飯用意しますね?」

 

 

 そうなんだよなあ。俺の場合骨格がでかすぎ骨太すぎでナチュラルウェイトが620~30キロちょい。それを維持するための飯の量が必要だし俺は身体動かしたいから動きに動いてさらに食う。

 

 

 制限して練習不足になればいつぞやの馬房に畳吊るして旋回をさせなかった結果不調になったサイレンススズカみたいになるかもだし、動かないから余計に太るかも。かといって飯の制限は俺の場合は基本カロリー消費量がでかい分難しい。

 

 

 周りの厩務員も俺の飯の量見て感覚がずれそうだと言っていたくらいだし。どうすっぺ。

 

 

 んで、調教終わりの俺とテキを迎えてくれたのは黒髪の少しウェーブのかかった長い髪を腰より長く伸ばしていて紫のカチューシャが特徴的な、豊満ながらくびれのあるスタイルの美女。

 

 

 岡本真由美ちゃん。何でも久保さんと同じ俺の担当となる厩務員で新人の見習い。ちょっと弱気でおどおどしているけどいい子なんだなあ。

 

 

 「お、頼むよ真由美ちゃん。今日は練習は軽めだったから食事は少し抑えてな」

 

 

 「は、はい。じゃあ、ケイジ君。行こうか」

 

 

 『了解。じゃ、テキもほかの子たちと練習頑張ー』

 

 

 真由美ちゃんに手綱を渡してテキに頭を振ってバイバイしてから一緒にシャワー場に移動。

 

 

 「ま、まだまだ暑いから汗かいているねケイジ君・・・大丈夫? 今日は石鹸使ってあげるね」

 

 

 『やったぜ。しっぽもしてくれると嬉しいし、ああー・・・泡に汚れと一緒に疲れも浮き出ていくぅ』

 

 

 シャンプーとか石鹸でよく真由美ちゃんは洗ってくれるから嬉しい、嬉しい。あープールの濃い塩素の香りが浄化されてレモン石鹸のいい香り・・・んふー・・・

 

 

 「ふふ・・・はーいシャワーかけるよーそろそろ秋だし、夕方とか冷える頃はお湯のタオルで拭いたりとかしたほうがいいのかなあ。あ、足上げてー・・・」

 

 

 ほいさ。プールで落ちていない泥汚れとかあるかね。草とか絡んでいたりは?

 

 

 「よしよし・・・じゃ、馬房に戻ろうねー」

 

 

 なさそうだわ。そんでそのまま一緒に馬房にパカパカ。風が気持ちいい~そんで、おお、藁もばっちり。そうそう、これくらいもふもふな量がちょうどいいのよ。トモゾウも久保さんも上手だが真由美ちゃんも上手だねえ。少し待つかあ。

 

 

 「お待たせーケイジ君。はい、まずは飼料だよ」

 

 

 ほいほーい。あー・・・やっぱ少ない。気持ち3割減っているぞ。しょうがないなあ・・・はぁー・・・

 

 

 「・・・そ、そんな顔しないで? 代わりに飼い葉は多めなのと、これあげるから・・・」

 

 

 『おお、いつもよりここはどっさりに・・・人参の厚切り。これをもぐもぐして食べた気持ちにしますかあ。ありがとう真由美ちゃん』

 

 

 ちょっとテンション落ちていたけど多めの飼い葉と3個のにんじんの厚切りカットがあったので今日はそれであごを動かして食べた気になろう。うんうん・・・この、噛むたびにシャキシャキする感覚とぼりぼりの食感。甘味もたまらない。

 

 

 「・・・ケイジ君は頑張っているし、もう少しあげたいけどね。私ももう少し勉強して頑張るし、ふふ・・・よろしく」

 

 

 食べている俺の頭を撫でてくれる真由美ちゃん。新入りだしそんな焦らんでも。入社して三年で一人前の社会人。競馬の世界なんざそれ以上もざらだろ? 焦りなさんな。久保さんもテキのおやっさんもいい人だしな。松風にもいろいろ聞けばいいだろ。

 

 

 一度食事を止めて焦るな焦るなと真由美ちゃんのほっぺにほおずり。

 

 

 「・・・ありがとうケイジ君。私担当が君でよかったよ」

 

 

 そしたら真由美ちゃんが抱き着いてきた。おうふ。柔らかい二つの山が・・・ありがたいけど、役得? だけどなあ。

 

 

 「失礼しまーす・・・あれ・・・? 葛城さんはいらっしゃらない・・・? おおー・・・そして絵になりますなあ」

 

 

 「ヒヒン?」

 

 

 『どちらさん?』

 

 

 「ヒッ・・・! あ、あのどちら様で・・・」

 

 

 目の前にいた若い兄ちゃん。金髪の髪に・・・両端を刈り上げているけどそこは黒。どっちが地の髪色なんだろう?? で、ピアスをしているわで松風のようなあの某鍬の方が似合うアイドルグループのリーダーとは少しベクトルの違うクール系イケメンの顔立ちと合わさって何処かチャラい。眼鏡をかけて服装もオシャレ。

 

 

 少なくても俺も知らん顔だし、真由美ちゃんも知らんのだろうなあ。驚いてら。

 

 

 「ああ。申し訳ないです。ボクこういうものでして。今日はケイジ君の取材に来て、テキ・・・あー葛城調教師さんにアポ取ったんですがいらっしゃらないのでここに」

 

 

 見せてくれた名刺には某スポーツ新聞紙の記者の藤井泉助とある。ほうほう。そして俺の取材だあ? なんでまた。

 

 

 「あ、そ、そうでしたか・・・申し訳ないです。テキは今ほかのウマの調教中でして・・・ただ、そろそろ終わるかもしれないので一応連絡しますね?」

 

 

 「ありがとうございます。いやーそれにしても絵になりますね。大きな体に優しい心のケイジ君とそれを支える美人厩務員。どうです? 写真一つ撮りませんか?」

 

 

 「ふえっ!? あ、え・・・いい、のですか・・・? 私なんかで」

 

 

 『ほえー懐に入るのが早いなあこの兄ちゃん。そんで写真か。いいじゃんいいじゃん。馬房だからあんまポーズできんけど』

 

 

 会社、もとい厩舎用の電話で連絡を取る真由美ちゃんを見てにかっと笑って写真の提案をしてくれる泉助記者。俺はまだしも真由美ちゃんはいい子だしお目が高い。ここに松風と久保さんもいればうちのメンバー勢揃いでますますよかったのになあ。

 

 

 「いいのいいの、後でここに送りますから。ハイ笑って笑ってーチーズ」

 

 

 「ち、チーズ」

 

 

 『バター』

 

 

 ぎこちないながらにはにかんで笑顔を作る真由美ちゃんにそれなりにきりっとした表情で撮影される俺。さてさて。いつ届くかねえ。そうこうしていたらテキのおやっさんが来た。

 

 

 「おお、泉助さん遅くなって申し訳ないです」

 

 

 「いえいえ、むしろその間ケイジ君と可愛い厩務員ちゃんと話せましたから。明日の併せ、練習の取材許可までくれて感謝ですよ。あー・・・それと、ボクの声のボリューム大丈夫です?」

 

 

 早速握手を交わしながら楽しげに話す二人。泉助君はちょいと声のボリュームを一つ落として話すけど。あー馬って本来は大きい声とか、音でびっくりして落ち着かなくなるもんね。後フラッシュとかも慣れない子はほんと駄目。どこぞの女帝とか。

 

 

 「大丈夫ですよ。大きな声ではないけどよくとおる。いい声です」

 

 

 「良かったあ~いやあ、親父の影響でこの職就いたんですがその際はもう声がでかすぎるとよく注意されたもんでして」

 

 

 「お父さんもいい記者でしたねえ。オグリの取材の時も時間を決めてすぐに戻りましたし、馬の事を考えてくれていた」

 

 

 「そのせいでボクもすっかり競馬オタクで記者ですわ。とはいえまだ安月給なので1レースの際に2000円くらいしか賭けていませんが。じゃあまず、今後のケイジ号の目標などを」

 

 

 親子そろって競馬の記者とか濃い一族だなあ。親父さんに関してはしかもオグリブーム関わってんのかい。あの馬のこと考えない扱いの中でちゃんとわきまえて行動できるとは出来た親父さんだなあ。だからちゃんと気を付けているのね。

 

 

 「そうですね・・・まず今年のレースは朝日杯フューチュリティステークスに直行します。1200メートルと2000メートル両方でしっかりと差をつけて勝利できていますし、G1なので簡単ではないですがケイジならやってくれると思います」

 

 

 「ほうほう、流石です。お父さんのテイオーもマイルから2000メートル前後では敵なしの強さでしたし、自信もありと」

 

 

 「下手をすればテイオーどころかルドルフ、シンザンやミホシンザン。ステイヤーとも張り合える体力を持っていると思いますよケイジは。度胸もあれば遠征しても疲れがないですから」

 

 

 「うまくいけばまさしく皇帝の一族、そして最強の血が復権を目指して戦うことになるわけですか・・・こら熱いですねえ・・・もうゾクゾクしますわ。それに当たっての怖い相手は?」

 

 

 「・・・ゴールドシップ、ジャスタウェイ。いえ、この世代はみな強い子たちが特に多く思えます。クラシックでぶつかるメンバー全てが強敵です」

 

 

 「確かに。ストレイトガールに牝馬に関しても頭角を出しそうな馬がいますし、今年は間違いなく荒れると」

 

 

 実際この世代濃すぎるんだよ。ラーメンだったら蓮華もたつほどの濃厚こってりラーメンだぞ。しかもスパイスに前の世代たちにもワールドエースやオルフェーヴル、エイシンフラッシュだろ。お通しだけで満足するわ。

 

 

 「ですが、私はケイジを信じています。皇帝の、帝王の、最強の血はまだ戦える。日本をにぎわせたあの戦士たちの血は、このケイジならどこまでも行ってくれると断言します」

 

 

 『おやっさん・・・言ってくれるじゃねえか』

 

 

 「ありがとうございます。改めて、明日の調教の方もしっかり見させてもらいますし、あー・・・もう一人のケイジ号の担当厩務員さんと、主戦騎手さんも確か一緒に出勤でしたっけ?」

 

 

 「そうですね。明日は松風君と久保君。二人も一緒にきて調教と馬房の大掃除をする予定でしたから」

 

 

 「良ければですが、そのお二人にも取材をしたいのですがいいですか?」

 

 

 「私は構いませんが・・・一応、メールで打診はしますが本人たちからも確認とってくださいね?」

 

 

 「もちろんですわ。この記事を出せるとなればもう競馬界も湧くでしょうし、親父が喜ぶか悔しがりますわ」

 

 

 お、みんなに取材するのか? いいねいいね。ジャンジャンしてくれよ。そんでいつか松風と城〇茂と共演してくれないかな? マジで似ているから。親族じゃないよねってくらい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ケイジについて語るスレ~

 

 

 405:名無しの競馬おじさん

 今日の新聞、面白い見出しだったなあ。

 

 

 406:名無しの競馬おじさん

 >>405

 「皇帝の孫とシンザンの一族いよいよGⅠへ殴り込み! 年末に傾奇者の凱歌は響くか!」でしょ? まさか今のステゴ、ディープ、キンカメ、ダイワの時代にトウカイテイオーとかシンザンの名前を聞くとは思わなかったわ。

 

 

 407:名無しの競馬おじさん

 >>406

 もう20年以上前、ミホシンザンに関してはさらに前。もう古の時代だもんなあ。SS引退してちょいの時代の名馬の名前が来るとは

 

 

 408:名無しの競馬おじさん

 >>406

 しかも名前はケイジ。傾奇者の名前に恥じない変人ならぬ癖馬ぶりを見せていたなあ。パドックで三連続奇行って何だよ。騎手も騎手で笑って流しているし。

 

 

 409:名無しの競馬おじさん

 >>408

 おっ、待てい。それに加えて騎手と生産牧場、一口馬主代表の人も忘れてはいけないぞ

 

 

 410:名無しの競馬おじさん

 >>409

 騎手に松風騎手。生産牧場は前田牧場でありほぼほぼ馬主なのは牧場長の前田利褌。血統も名前も何もかもが時代が前過ぎてびっくりだわ。

 

 

 411:名無しの競馬おじさん

 >>408

 挙句の果てにはその変顔で実況アナウンサーが吹き出すという。舞台を盛り上げて自分のオッズをあげるというファンには嬉しい馬ですわ。もう儲けて儲けて貯金が出来ましたwwww

 

 

 412:名無しの競馬おじさん

 >>411

 俺も。しかし、トウカイポイントとか、テイオー産駒は気性難の問題があったけど基本レースに関してはしっかりだし、気性に関しても荒いとか、喧嘩はしないんだっけ?

 

 

 413:名無しの競馬おじさん

 >>412

 記者とか、関係者の言葉曰く「基本喧嘩は売らない、温厚気質だけど奇行と変顔が多い。練習大好きのアニメ好き」らしいぞ?

 

 

 414:名無しの競馬おじさん

 >>413

 アニメ大好き・・・・???

 

 

 415:名無しの競馬おじさん

 >>414

 親戚に厩務員とか調教師の人がいるから確かな話だけど、休憩時間とか調教の無い日は基本その日担当の厩舎の厩務員に頼んでアニメとかを見ているってさ。あと、前田牧場のブログでも毎日のように衛星放送、そういう番組でアニメをスタッフと一緒に見ていたらしい。

 

 

 416:名無しの競馬おじさん

 >>415

 前田牧場の近所に住むものだがその話に付け加えるとその牧場の女将さんもケイジが来るとあごを乗せるための専用の座布団とお菓子代わりに人参とかリンゴを出して一緒に見るぞ。ケイジもそれを食べながらアニメ見るし、牧場の皆と一緒にジャンプ読んでいたりした。

 

 

 417:名無しの競馬おじさん

 >>415 >>416

 馬・・・馬・・・???(宇宙猫感)

 

 

 418:名無しの競馬おじさん

 >>417

 馬だ。馬だと思え。しかしまあ、この時代にテイオーの子どもが出てきて、しかも名前はケイジで名前通りに奇行をして大舞台を楽しんでくるわスタッフになつくバカでかい図体の馬とか面白すぎる。

 

 

 419:名無しの競馬おじさん

 >>418

 禿同。今の時代にまたこの血統が見れるとかもう昔を思い出して興奮するんじゃ。久しぶりに競馬場いこうかな。確か次の出走は朝日杯フューチュリティステークスだっけ? 有給申請して前日、当日、後日でゆっくり休んで楽しめるようにしなきゃ。

 

 

 420:名無しの競馬おじさん

 >>419

 あの地震で暗いニュースや競馬も似たような血統で浪漫が薄れる中で現れた浪漫の塊でユニークな馬。競馬業界どころかかつてのオグリ世代、スぺ世代、ディープ世代のように盛り上げてほしい。

 

 

 421:名無しの競馬おじさん

 >>420

 待て、あの世代の中心は強さから言ってもグラスワンダーだろう? グラス世代に訂正せよ。

 

 

 422:名無しの競馬おじさん

 >>421

 おいおい。ワールドレコードを出して変幻自在の逃げを見せたセイウンスカイだろうJK

 

 

 423:名無しの競馬おじさん

 >>421 >>422

 この話は収拾がつかなくなるのでほどほどで。同世代で有望株はだれだろ?

 

 

 424:名無しの競馬おじさん

 >>423

 ストレイトガール、ゴールドシップ、ジャスタウェイ、フェノーメノ、ディープブリランテとかかねえ。今年はとにかく豊作で。牝馬の方もジェンティルドンナ、ヴィルシーナと強豪がそろっているし来年のクラシックもだがそれ以降もこの世代が暴れるんじゃという声もちらほら。

 

 

 425:名無しの競馬おじさん

 >>424

 基本皆大人しめの子が多いのね。そんななかで奇行を繰り返すケイジよwwwwww 98世代に負けないほどの盛り上げをしてほしいものだ

 

 

 426:名無しの競馬おじさん

 >>425

 少なくても盛り上げには貢献するだろうさ。見出しの写真。ケイジ、調教師、騎手、厩務員二人そろった写真あったがあの絵面の面白さと美男美女、ナイスガイ、ナイスミドルにテイオーとは別ベクトルのかっこよさとでかさのケイジ。競馬初心者にも受けるし、経験者からしても最高だろ。

 

 

 427:名無しの競馬おじさん

 >>426

 そりゃあ盛り上がるだろうさ。ああ~^早いところ12月にならないかなあ。そして来年のクラシックよ早く来い。日曜日が楽しみで仕方ない。

 

 

 428:名無しの競馬おじさん

 >>427

 そしてケイジも楽しみな日曜日(主にアニメ的な意味で)

 




 なお来年にはゴルシもケイジと同じネタ枠になる模様。実力はある癖馬枠。


 新厩務員ちゃんは女性。華がないとねという感じで。久保さんと一緒に漫画を描いたり擬人化したケイジの漫画を見せ合ったりケイジに見せたりします。


 記者さんはシングレのあの人。親も記者という設定で出てもらいますた。この世界ではオグリやらいろいろ競馬でのあれな話を聞かされているので分別やブレーキは効く方。


 ケイジ 真由美とも関係良好。オタクな真由美のアニメ談義も楽しむし、一緒にジャンプを楽しむ。某テニヌ談義もしてくれたりバスケ漫画もしてくれたりとで漫画、アニメの話が増えて嬉しい。記者君も気に入った。この前擬人化された自分の絵を見せられて絵の上手さとデザインに感服。


 岡本真由美(23)(CVイメージ 堀江由衣 様) 外見はポケモン第六世代のオカルトマニアちゃんの目をぱっちりさせた感じ。巨乳。動物が大好きで子供のころにライトな競馬ファンの父と一緒に見たヒシアマゾン、エアグルーヴのことや学生時代のウオッカ、ダイワスカーレットの戦いぶりを見て女の子でも頑張れるんだと刺激を受けて厩務員に。オタクで絵師としても実力あり。


 藤井泉助(26) スポーツ新聞兼競馬新聞の記者。ケイジに一目ぼれ。記者云々を抜いてもファンに。ついでに言えばケイジ陣営が面白いのと人柄がいい人ばかりなので気に入った。今後も色々取材をさせてもらえる許可をもらってウハウハ。親に話したらよくやったと言われると同時にこんな楽しい仕事俺に寄越せよと酒の席で談笑された。


 葛城調教師 藤井記者を気に入る。ちゃんとウマの事を考えているし、人懐っこい雰囲気がグッド。ケイジはしばらくは練習をさせつつも冬なので風邪をひかないようにプール調教の数を調整。馬房は寝藁多めで対処とぬるめの湯を飲ませたりして暖を取らせようかといろいろ模索中。


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あぁん? 馬主さぁん!?

 いつか支援絵をもらえるほどの腕前、話を作れればなあと思う今日この頃。三流の癖に何言ってんだって思いますが。


 私の作品だからこんなキャラが出るのは当然だよなあ? 今回は短め。朝日杯までの息抜きです。


 「ワンワンワンッ!」

 

 

 「ん~? 犬? ありゃー・・・野犬か・・? もしくは近所の犬が逃げて遊びに来たか・・・うちの馬は大丈夫かなあ・・・」

 

 

 朝、厩務員の朝は早い。最近は真由美ちゃんが来てくれたので俺も休みが増えたがやはり馬の管理というのは大変だ。生物だし不調好調はあるし、ちょっとの手違いで骨折や大けがなどは常について回る。

 

 

 今管理している葛城厩舎は比較的穏やかな・・・一頭を除いて基本大人しめの子たちばかりで今は楽だが本当によその話を聞けば苦労がわかる。ステイゴールドやドリームジャーニー、エアシャカールなどなどの気性難代表格の苦労など馬を愛している俺たち厩務員、調教師でもひやひや物だろう。

 

 

 そんな馬たちだが根っこはやはり臆病だし、大きな音はびっくりしてしまう。犬の声や暴れるのに驚いて身体をぶつけたりして怪我をしたり、噛まれて病気やけがをしても困る。事務作業も落ち着いてケイジの擬人化の見せあいっこのために描いていたスケッチブックを閉じていく。

 

 

 うちの厩舎からだが、大丈夫だろうか。

 

 

 「ワンワン。ワオーン」

 

 

 「・・・・・・・・・・・」

 

 

 うん。確かに犬の声はここから聞こえていた。ただ、ワンワン吠えていたのは犬じゃなくてケイジだった。

 

 

 「ケイジ、お前どうしたんだ??」

 

 

 「ヒヒン。わん!」

 

 

 『お。久保さん。すげえだろ? 昨日から練習して出来るようになったんだぜー』

 

 

 「いや、そんなどや顔されてもなあー・・・見ろ周りの唖然としているぞ」

 

 

 馬に近い種類のシマウマがワンワン鳴くのは動物番組で見たけどもケイジ、お前は一体どうしてそんな声を・・・もう周りの馬の反応も変なものを見ている目じゃないか。

 

 

 「ワフ。ぶふん」

 

 

 「てへぺろじゃないよ。もー喉の病気かもわからないし、テキが来たら一度ドクターに診てもらったりしてもらうからな?」

 

 

 舌を出しておちゃめな顔をしてごまかそうとするケイジ。こいつは本当に人の言葉を理解しているしその上でこの反応をしている。幼駒のころからアニメを見て人の反応や言葉を学んだせいなのか?

 

 

 馬と思わず人と思って付き合えが葛城厩舎のモットーだが、こいつはマジで人としか思えなくなってきた。シマウマの声帯模写する馬とか引退した後でも生物学的価値から大事にされたり引く手あまたなんじゃないかなあ。

 

 

 そんなケイジだからこそ可愛いし、仲間だと思えるしいい子なんだがなあ・・・どうしよ。テキこの前運営からケイジの奇行はほどほどにと言われていたしなあ。でも、あいつの奇行も人気の秘訣だし。うーん。

 

 

 俺の悩みも知らずにアニメの時間だから出してくれとヘドバンするケイジを見ながら思う。喉鳴りじゃなさそうだけどもなあ・・・この後アニメの途中でドクターの診察でテレビのある場所から離そうとしたら暴れたのでしょうがなくここである程度診察してもらい、改めて別の場所でほかの検査も。だからお前のアニメに対する情熱は何なんだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いやー何の病気でもなくてよかった。よかったが・・・この結果を報じても信じてくれるのかねえ?」

 

 

 「こればかりはケイジが突然変異ってことで」

 

 

 「ヒヒンヒン。むぅふ」

 

 

 『何言ってんだよ。人間だって昔の映画の始まりでは弁士がいたり声帯模写出来たり、鳥にも機械の音さえも真似するやつがいるじゃねーか。今更だよ今更』

 

 

 シマウマの声? 犬の声? が出来るようになって久保さんにお披露目していたら病気扱いされて精密検査されたあげくに競走馬研究所に飛ばされてさらに検査されましたケイジです。んまー健康体だけどね。見本にしたいくらいの優良健康馬だって言われましたわ。

 

 

 朝日杯の方も出走回避はなし。ただ流石に俺が今後この声を出してもお客さんが不安がらないように一応運営はこの件を報告するようで。「ケイジの声はケイジの声帯が変わっているだけで喉鳴り、病気の類ではないです」という感じで。返し馬や世間では「ケイジダンス」と呼ばれている勝利後のパフォーマンスの際に鳴いてみようなかなあ?

 

 

 あ、あと俺の心肺機能。普通の馬よりいい意味でやばいらしくて心臓に関しては普通の馬の2,5倍のでかさだってさ。やばいね♪ だからへばらねえのか。牧場でやたら柵越えしまくって障害物競走みたいなことしたり、雪の中を走り回っていたのも成長につながったのかね。

 

 

 「とりあえずケイジの健康が証明されたのと、初GⅠ挑戦が消えなくてよかったよ。同時に和製セクレタリアト扱いされたのは驚いたが」

 

 

 「そっすねえ。ケイジ。その声はパドックでは出しちゃ駄目からな?」

 

 

 『フリか? フリなのか?』

 

 

 笑いを誘いつつ俺のオッズで儲かりやすくするにはいいと思うんだがなあ。笑いもあってこそだろ。

 

 

 「あらー調教師さんに厩務員さんお待たせー♪ いやあ道が混んでいましてえ」

 

 

 「ヒヒン!?」

 

 

 『何だこのお・・・オカマ!?』

 

 

 俺たちの目の前に現れたのはピンクを基調にした服に黒の水玉模様という派手な服に金髪ヘアーを肩まで伸ばした。ごついオカマがきゃぴきゃぴと走ってきた。このインパクトに俺も思わず食べていた飼い葉がポロリと落ちて餌箱に入っちゃう。

 

 

 「おお。お疲れ様です玄武元社長。いやーケイジのチェックに来てくれて感謝します」

 

 

 「んもう。それじゃなくてスーザンと呼んでほしいわ。それにいいのよいいのよ。改めて間近でケイジちゃんをみたかったしね。うーん。やっぱりいい馬。それにお父さんはイケメンだったけど、貴方はナイスガイね♪」

 

 

 『玄武元社長? ・・・・GENBUグループの元社長だあ!? 日本最大手の車会社の社長じゃねーか! しかも敏腕かつ経歴がぶっ飛んでいるというあの。マジかよ?』

 

 

 この目の前のオカマ。一代で日本最高の自動車会社を生み出した玄武巌元社長だった。確か若い頃は伝説の暴走族の初代ヘッド。若いころにアメリカで特殊部隊の精鋭。で、たしか日本でGENBUグループを生み出して世界に名だたる敏腕・・・になって会社が軌道に乗ったところを嫁さんと息子に任せて本人は電撃引退をするという兎にも角にも話題に事欠かない人だ。

 

 

 マジかよ。誰もがおったまげな経歴の持ち主は急に姿を消したと思えば今は府中のオカマバーの雇われママ。そりゃあ記者の皆さんも探したってわからんわ。

 

 

 そんで俺の一口馬主で10%の権利持ちかあ・・・あ、ちなみにおやっさんは40%でトモゾウが20%くらい。俺の募集価格って確か1500万ちょいだったかな。つまりこのスーパーマンな功績を持つオカマさんは俺にそれほどの大金をぶっこんでいるということ。嬉しいけどもねえ。

 

 

 「私以外にもあなたの一口馬主になった知り合いの子たちがいるけど、その子たちは朝日杯で応援に来るようだし、頑張ってねケイジちゃん♪」

 

 

 「・・・ちなみに、お前の生まれの牧場長、担当厩務員が60%出していて、残り40%は全員玄武・・・げふん。スーザンさんたちオカマバーの皆さんだぞケイジ」

 

 

 『マジかー俺の馬主権利でいいのか? の4割はオカマさんかあ。というか、オカマバーの皆が応援するって何かあったのかねえ??』

 

 

 きょとんと首をかしげつつ草をもしゃもしゃしていたらいわ・・・スーザンさんが何かじっと俺を見ている。うん? 顔汚れている? 朝シャワーは浴びたけど。

 

 

 「ケイジちゃんってほんと賢いのねえ。私たちの会話に見せる反応がほんと人みたい」

 

 

 「そこらへんはテイオー、ルドルフに似たのかもしれないですね。後はアニメで覚えたとしか・・・」

 

 

 「ふふ。なるほどねえ。ケイジちゃん。私も色々世間から超人だとか敏腕だと言われたときがあるけど会社を興す際にいろいろ苦労もあって落ち込む日もあったわ。自分を隠したり殺しての日々に億劫で懊悩する日が続いていた時に貴方のお父さんの不屈ぶりと、時代を彩る名馬たちの熱い戦い、その裏の因縁やドラマを知って勇気づけられたの

 

 

 ・・・そして今のバーでも夕方の開店に合わせて準備をする傍らラジオとかテレビで競馬を流して応援したりして、ライトな競馬ファンが多いわ。そこで休日に試しにとクラブに行けばケイジちゃんの一口馬主の募集があってもうひとめぼれ。私に元気をくれたテイオーの子どもだってみんなで貯金出して即買いよ~頑張ってねケイジちゃん。私達ムランルージュの皆が応援しているわ。チュッ♡」

 

 

 「わふん。ンムフ」

 

 

 『ヴォウ! 投げキッスの迫力あんなア。ま、ありがとよ。応援に応えるよう頑張るぜ。はぁー濃いなあこの人。おかげで草の味がしねえぜ』

 

 

 投げキッスをもらい、何かゾワゾワしながらも嬉しいエールをもらって元気もゲットだぜ。しかしまーあれか? 朝日杯にはオカマバーの皆が来て応援するのか? 声援の中におもしれえ声が入っているかもなあ。ぜひ見てみたいわ。

 

 

 「それじゃ、冬の競馬場でまた会いましょうね。期待しているわ。チャオー」

 

 

 その後はすぐさま手を振ってどこで用意したのか男物のハイヒール・・・? らしきものをカツカツ鳴らしながら出ていくスーザン。濃い人だったなあ。全く俺のような常識人にはちょい刺激的だった。

 

 

 「っ・・・! あ、おはようございますテキ。久保先輩。ケイジ君。藤井記者さんも来ていますよ」

 

 

 「こんにちわっす。いやーいよいよ朝日杯も近づいてきましたし、今回は出走が決まった陣営へのインタビューしているんですわ」

 

 

 「お、藤井君おはよう。そうかあ。疲れるだろうしまま、休憩室で話そうじゃないか」

 

 

 「あ、じゃ俺茶淹れてきます。真由美ちゃん。えーと、冷蔵庫に羊羹入っていたから出してもらえない?」

 

 

 「は、はい! あと久保先輩。あのお、オカマさんは一体・・・? 厩務員さんです?」

 

 

 「『ケイジ(俺)の一口馬主だぞ(みたい)』」

 

 

 うーん。また一気ににぎやかになったなあ。そんでインタビューかあ。クラシックでもねえのにそこまでするのねえ。競馬新聞とか、そういうチャンネルテレビ? もしくははやりの何とかチャンネルみたいなところで出すのかね。

 

 

 そんで真由美ちゃん。スーザンが俺の一口馬主ってことにそこまで驚かんでも。ふわー・・・今日の調教は少し後だし、軽く眠るかね。ああーやっぱ秋は寝やすいわー




 今回のエピソードがケイジがウマ娘になっても山ちゃんボイスと麻沙美ボイスを使える七色の声の持ち主に。


 スーザンはクレしんのまたずれ荘に住むあのオカマさんモデル。ここでは東京在住の東京競馬場の近くのオカマバーのママさん。


 ケイジの馬主の4割はオカマ。残りの30%のうち10%はマドマーゼル西郷。割と競馬新聞があったり競馬チャンネルがあったり平成三強や98世代の馬のぬいぐるみがあったりで競馬場からも近いことがあったりで色々有名なオカマバー。


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第63回朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ)

 前回の感想でケイジの声の事やウマ娘エピソードでの衣装のことを細かに見つけてくれる凄い方がいて嬉しいやら驚くやらでいろいろ感動していました。思わず何回も読んじゃうほど。


 いよいよGⅠ初舞台。


 『さあ。今日もこの日がやってまいりました二歳限定GⅠにして二歳馬のチャンピオンの一角の決定戦。来年のクラシックへ向けての格付けでもあります朝日杯フューチュリティーステークス』

 

 

 いよいよやってきました朝日杯。2歳限定の年末に行われるGⅠレース。ある意味じゃークラシック、ティアラの三冠ではないけど、そんな感じなのかねえ。今はホープフル、ジュベナイル、朝日と多いけども。

 

 

 『ここに来るまでに既にいくつかの戦いを潜り抜けた若駒たち。その新鋭たちが初めて挑むGⅠのこの大舞台。東日本大震災の後ではありますがここ阪神競馬場は満員御礼となりました』

 

 

 『今年は有望株がかなりいますし、何より話題性のある子たちが多いですからねえ』

 

 

 やっぱそうだよなあ。昨年はなんやかんやオルフェーヴルが話題をかっさらったのもあるけど、なんやかんや影が薄いかもと・・・いや、三冠馬が出る年は基本周りが弱いと言われがちだけどさあ。

 

 

 むしろなんやかんやと強豪ぞろいのルドルフ世代前後がおかしいのかもだけど。ニホンピロウイナーとか今でも覚えているぞ。短距離から中距離の強さはほんと凄かった。ルドルフとシービーがいたのがほんとうにねえ。三冠馬が二頭いる時代とかやばいわぁん。

 

 

 『そんな中でもひときわ注目を浴びていますはケイジ。ここまでの戦績3戦3勝。新馬戦2000メートルでは大差。初のGⅢ函館2歳ステークスでは2馬身。小倉二歳ステークスでは4馬身をつけての快勝。まさしく期待の新星です』

 

 

 『伝説の名馬サイレンススズカ、ツインターボ、ミホノブルボン、サイレントハンター、メジロパーマー、ダイタクヘリオスなどなどの個性派を彷彿とさせるその大逃げがもう一度ここ阪神競馬場で炸裂するか。期待が集まりますねえ』

 

 

 俺そんな評価なの? サイボーグとか競馬界のエガちゃんとか爆逃げコンビなの? コンビいないんだけど。ま、戻って来たぞ皆の衆! ケイジのお通りヨってね!

 

 

 「今日は大人しいなあケイ・・・ぶふぅ! こ、こら。お前ってやつは」

 

 

 「ははは。全くお前は。ここでは二度目のお披露目だからこそなのかい?」

 

 

 「あ、ケイジだ! ケイジー!」

 

 

 「おお。ばあさん。ケイジが来たぞ。元気そうだなあ」

 

 

 「そうですねえ。今日は少しお金がありますし、ケイジに賭けます?」

 

 

 おお。新馬戦で応援してくれた親子に老夫婦。あ、写真撮るの? ほい止まって。ウィンクとポーズ。

 

 

 テキのおやっさんと松風も前みたいに暴れていないから緩く流してくれるから楽でいいぜー。今日は大事な初GⅠ。顔芸しながら少しステップ踏みながら歩きますかー

 

 

 「ケイジちゃーん! 頑張ってー!!」

 

 

 「マイルなら貴方の一族の距離! 完勝しちゃってきなさーい!」

 

 

 「初GⅠ。最高のプレゼントをアタシにちょうだぁーい!」

 

 

 『あ、あれがムランルージュのママさん達か。濃厚すぎるだろ。一発で分かったぞ』

 

 

 そんで聞こえて来た声に顔をむけばスーザン小雪ママとオカマの一団が俺に向かって声援を飛ばして鉢巻までしているほど。筋骨隆々の着物姿のオカマに何でかバレエ衣装で来ているオカマ。某美少女戦士のコスプレのオカマ。うーんすげえ。ぶっちゃけ俺らのレース以上に注目浴びてねえだろうな? どうやってここに入れたよ特に後半の連中。

 

 

 「おお。マカオとジョマさん。そして西郷さんにスーザンさん。ケイジの馬主さんらが集まっているなあ」

 

 

 「あ、ムランルージュの人達ですか。あの人たちテイオーのファンだって言っていましたしねえ。馬も人も愛する人たちで競馬場に近いですから僕ら騎手もよく飲みに行きますよ。食べ過ぎないようにするのが大変ですが」

 

 

 「ヒィン」

 

 

 『まさかのスポーツバー的な立ち位置だったかオカマバー。レース終わった後にここで一杯ひっかけるんだろうなあ。そしてまあ、頑張るぜい』

 

 

 「キャァアア!! ケイジちゃんが私のためにポーズしてくれたわ!」

 

 

 「何言っているのよあずみ! 私のためよ! 今日はばっちりデジカメ用意したのよ!」

 

 

 「あらぁん、私のためよ。一口とはいえ馬主になって」

 

 

 「今日は単勝一点買い。もうケイジちゃんしか勝たん☆」

 

 

 「それを言えば私もよ! 頑張れムランルージュの希望の星ケイジちゃーぁーん!!」

 

 

 黄色い声援どころか野太いド紫色の声援が阪神競馬場に響くという愉快なことに。でも実際、俺の応援のためにわざわざ東京から大阪に来ているんだもんなあ。しかも店のメンバー総出で。今どきネットで馬券を買って府中のレース後のお客さんのために店にいてもいいだろうに。全くもう。ますますやる気になるじゃねえの・・・! 

 

 

 後、喧嘩の騒ぎのせいで追い出されんなよ? あ、警備員さん注意しようかどうかいろいろ目を白黒させながら見てら。ちゃんと写真は撮れたっぽいしいいかな? 歩くか。

 

 

 「しかし、今回のレースはGⅠだが・・・ある程度安心はある。松風君、頼むよ」

 

 

 「え、ええ。ケイジならマイルは先のレースよりも距離が長い分脚が乗って気持ちよく走れるでしょう。2000メートルに近い分身体もエンジンがかかるでしょうから」

 

 

 松風、なんだか嫌に返事が固いな。GⅠと聞いて改めて緊張しちゃったか? まったくよーほれほれーミニロデオタイムじゃ。

 

 

 『おっとケイジ突如ロデオを開始。635キロの馬体が右に左に上に下にと揺れております』

 

 

 「うわっととと!!? ケイジ! どうしたんだいきなり」

 

 

 「むふん」

 

 

 『どうせこっからもGⅠに当たるかもなんだし今更緊張すんなよ。大舞台だ。盛り上がって、楽しんでいこーぜ。松風と俺のコンビなんだしな?』

 

 

 「・・・っふふ。だな。僕とケイジだ。今日も楽しもう。あーただし今日は仕掛けるのはこの前より気持ち一つ後にするからな?」

 

 

 少しロデオで揺すってから鼻息をならせば俺の意図を呼んでくれたかいつものノリになった。そうそう。これがベスト。でけえ舞台だからこそ笑おうや。こんなにみんなが注目して応援されるってすげえことだぜ。

 

 

 『あいよ。400メートル増えているからなあ。逆に早仕掛けが過ぎれば最後に差す脚が残るかもわからんし』

 

 

 マイルは問題なく最後まで逃げ切れる自信がある。が問題はどこで仕掛けるかだな。俺のコーナリングを使うベストスピードがまーだいま一つ。もっとうまくできそうなんだがつかみ切れていないんだよなあ。俺の特技と松風の鞭の入れるタイミングを研究して理解しているやつらは潰しにかかるだろうからそうならんようやるのが課題か。

 

 

 ロケットスタートして、最内よりややスペース開けて外にも逃げれるような感じで気持ち行くかねえ。

 

 

 「ヒヒン。ヒゥフ」

 

 

 「よし。・・・っし! 行こうケイジ。今年のチャンピオンの一人になるぞ」

 

 

 コクコクと首を下げると松風も小さく頬を叩いて気合を入れて空気が変わった。いいぜ。行こうじゃないの。まずは最優秀2歳牡馬。手柄の一つ持ち帰ってやろうぜ!!

 

 

 『いよいよパドックも終わり本場馬入場です。マイルの中にあるのはクラシックへの試金石と最終二歳馬の称号を得るための切符。そして初のGⅠの栄光。暮れの阪神競馬場で栄光をつかむのはどの馬か。勝負の1マイル。1分半と少しの勝負』

 

 

 『ケイジ。蟹歩きをしながら器用にゲートへ入ります。毎度ながら会場を笑わせております』

 

 

 足の動きは良し。そして1番1枠かあ。 うーん。3枠くらいがよかったけどなあ。んまー最初に経済コース取りやすいし、そっからちょい内ラチから離しつつやれればいいか。

 

 

 「・・・改めて、あんまりゲートを嫌がらないんだなあ。他の馬たちを待つ分じれたり怪我する子もいるのに」

 

 

 ああ。そういう馬も多いよねえ。名馬にふさわしい実績を持つ馬でもそうなんだし、俺は落ち着くけども。気持ちの整理がしやすいし、おふざけスイッチから戦うモードに切り替わる。

 

 

 『そして最後に17番ダローメカが入り準備整いました』

 

 

 さてさて暮れの阪神競馬場で行われますは俺を含む17頭の若駒たちが挑む一大合戦。賞金も名誉も。自分のプライドもかけた勝負の開幕でござい。

 

 

 『スタートしました! やはりスタートからハナを切るのはケイジ。外から追い上げて追いつこうとするのはカクレンジャー、さらにハチサンムーン、アルフルートが喰らいつく形となっていきました』

 

 

 む。やっぱりというか食らいつくやつらがいるか。逃げも確かいたはずだし、俺を追い越そうと必死・・・いや、ジョッキーの指示もあるなあ。んならもう少しひきつけつつ・・

 

 

 『第二コーナー回って、依然先頭はケイジ。差は3馬身と少し。その後ろにアルフルート、カクレンジャー、マイネルロブスターが追い付く形に。先頭集団は変わらず中団にトウケイキングにサドンデスストーム、ヒシマイケル、続いて2馬身後ろにローレルカント、ダガーネが続く形に』

 

 

 第二コーナーも半ばを過ぎて佳境。第三コーナーになるか・・・? ふむ。俺の先頭は変わらず。何でかかんでか内枠は少し開けているけどもそこからこじ開けて先頭を取ろうとするやつはいない。

 

 

 『おっとアルフルートとカクレンジャーケイジに追いついていきます』

 

 

 ははーん? 俺をこのまま内ラチに押し込んでコーナリング潰しつつ自分もちょい経済コース走ろうとしてやがるぜ。おう。いい動きだ。

 

 

 「っし・・・行くぞケイジ!」

 

 

 その動きのキレをもっと早く素早くできていたらな! ナイスタイミングだ松風。イクゾー!!

 

 

 『しかしここでケイジ引き離す! 必殺のコーナリングを見せつけるがごとく第三コーナーに入りぐんぐん差を広めます! 食らいつくはアルフルートとカクレンジャー! マイネルロブスターとトウケイキングが内から追いあがってきます!』

 

 

 甘い甘い! 坂路毎日やりまくって、プールでほぐして鍛えたこの肉体。もっと過激に攻めてやるわぁー!!

 

 

 『しかし追いつけない! 差が広がって5馬身! 6馬身! まだ広がる! ケイジ独走状態で一頭だけ第四コーナーをカーブ。最後の直線に入りました』

 

 

 っしゃ! まだまだ! 脚はこっから第二のエンジン追加よぉ! ギアチェンジ。思いっきり走るぜ!

 

 

 『アクティブシグマ、アルフルートが追いすがろうと走るが追いつけない! ケイジ、先に200メートルを切ってゴール前! セーフティーリードどころではない! 完全に決まった大逃げからの差し!!』

 

 

 来てたまるか! 来るとしたらあの終身名誉阿寒湖総大将かその一族くらいだろうがよ!ゴルシとか! 脚はもう使い切る勢いでやってやる。首を低くして風の抵抗を減らして気持ちもう一つ加速じゃぁあい!!

 

 

 『強い強い! これは手が付けられないかケイジ一人ゴール!! 7馬身もの差をつけての独走状態! 2着にアルフルート、3着にマイネルロブスター』

 

 

 っしゃぁあい! どんなもんじゃい!1200以上ならエンジンもかかる分ロングスパートもお手のものだってなあ!

 

 

 『タイムは1分32秒6。素晴らしいタイムが出ましたケイジ。そしてこの時点で4戦4勝で初のGⅠ舞台への連勝を達成! 大差勝ちを除いて尚合計13馬身差をつけているほどの戦績! ここに2歳最優秀牡馬の候補が一頭躍り出ました。ケイジ、これは来年も期待が持てるぞ!』

 

 

 『ケイジ松風騎手一人と一頭そろっての初GⅠ。見事な大手柄を持ち帰ることに成功しました。走った距離からしても来年のクラシックでも有力候補として盛り上げてくれるでしょう』

 

 

 「うぉおおおおお! 流石よケイジちゃーん!! ああ! 今すぐ抱きしめてキスをしてあげたいわぁあああ!!」

 

 

 「ケイジ! ケイジ! やったね!」

 

 

 「いやあー・・・綺麗な逃げだった。若返る気分じゃなあ」

 

 

 「ハイペースでの加速。ふふ。どこからでも仕掛けていけるのがかっこいいです」

 

 

 おおう。観客も盛り上がってらっしゃる。これはやらないといけないよなあ? さあー皆様知っているでしょ? ケイジと松風でございます。おい。コールしねえか? みんなおいでぇ。競馬場を揺らそうぜ~?

 

 

 「ふふふっ。お祭り男だなあお前は。いいぞ。最後に一つおまけもしてやれ!」

 

 

 「ヒヒィン!」

 

 

 『おうさ!』

 

 

 松風も慣れてきたんでステップを踏みながらスタンド中央あたりに移動。観客の皆も片手を開けてくれた。おお? これはまさか?

 

 

 右にぴょーん

 

 

 「「「オウ!」」」

 

 

 

 左にぴょーん

 

 

 「「「オウ!!」」」

 

 

 

 おお、俺に合わせて声を出して手を上げてくれる! いいぜいいぜ! そんじゃ、一呼吸おいて首を下げての~?

 

 

 「びひひぃいぃぃいいい!!!!(ぃいっよっしゃぁああぁあーーーーっっ!!!!)」

 

 

 「「「ウオォオオォオオオ!!!」」」

 

 

 ちょっとロデオ気味に体を起こしながらの咆哮をすれば観客の皆も手をあげての歓声! わはははははは!!! 阪神競馬場が震えてやがる! これがララパルーザってやつか?!!?

 

 

 『ここまで身体がびりびり震えるほどの大歓声が響きます阪神競馬場! ケイジの漢唄、凱歌に応える観客で大盛り上がり。ケイジも楽しそうに首をぶんぶん振りながら笑っております』

 

 

 『2歳でここまで観客と楽しんで、期待を抱かせる馬はそうはいません。年の締めくくりに良いものを見せてくれました』

 

 

 後は有馬記念とほかの子たちのレースだな。どうなっているかはこうご期待! そんじゃ、俺たちのショータイムはここまで。あーばーよ~ん。あー年末のテレビなに見ようかなあ。気が楽な状態で見れるアニメほどいいものはないぜ。




 無事にGⅠ制覇。ケイジの影響と藤井親子記者が新聞やネットニュースでいろいろ情報を(許可もらった範囲で)流したりコラムで書いたので阪神競馬場は満員御礼。


 変顔をする。欽ちゃん歩きをしながらゲート入り。オカマの歓声が響いて喧噪もあるという年末の騒ぎに。


 ケイジ 初GⅠ制覇。今回のオッズも1,7倍だったので戦績を考えればいいんじゃね? と満足。マイルからは脚が乗りやすいのでレース経験を積んでいるのと走りやすいのもあって多分一番楽しかった。


 松風 初のGⅠジョッキーの栄冠に。興奮しすぎて後で思わず恥ずかしがる。でもうれしい。ケイジの距離はマイルからだなあということで葛城さんと後で来年のことを話す。


 葛城 初のGⅠゲット。もう泣きそうになった。GⅡまでは届いたけどもなかなか届かなかった栄冠を。年齢限定GⅠで取れたということもあって嬉しさもひとしお。後で息子に語る。来年のローテどうしよう。


 前田 まさかまさかの快挙にフリーズしていたがその後狂喜乱舞。後ある血統を見つけられたので後日牧場に入る予定。しばらくは抑えていた馬産も積極的にしていくつもり。


 老夫婦 今回もケイジに賭けた。儲かったので二人でご飯を食べにそのままデートに行った。ウマ娘編でも実は出る予定。


 子供 ケイジを応援したいと親に頼んでいた。父親が設けた分で帰りにお菓子を買ってもらえて満足。


 ムランルージュの皆様 一口馬主マカオとジョマ、マドモマーゼル西郷、スーザン小雪そろって仕事仲間と観戦。全員儲けて祝勝会を開催。


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ウマ娘エピソード 4 最強の皇女

 まさかまさかのUA10000越えありがとうございます! 本当に応援ありがとうございます。


 そしてケイジの勝負服に関して前回触れることが出来なくて申し訳ナス! ケイジの主戦騎手松風の着けている勝負服は黒の帽子にやや紫がかった青を基調にした服。そこに赤の桜の花模様がいくつかあしらわれている感じですね。


 ウマ娘のケイジの勝負服はそこから簡単に言えばFGOの宮本武蔵(セイバー)の第二再臨の衣装を着けています。刀は自宅にある。艦これの大和の髪型をボリュームアップさせている切れ長めの目の美女。ただし背丈は2メートル越え。


 改めてこの世界のシリウスは海外と国内半々で戦っている感じになると思います。だからトレーナーの数も4名と多め。海外の調整とか大変だしね。学園でもかなり珍しいので特例で許可されている感じ。後実績的に口出しできない。


 「はっは・・はぁあっ・・・!!」

 

 

 私以上に赤い髪としっぽが目の前で揺らめく。全力で逃げていたのに気が付いたらもう目の前にいて、その差が縮まらない。

 

 

 「っッ!! ぉお・・・!!」

 

 

 ウオッカも追い込みをもってアタシとほぼ併走する形で仕掛けているけどそれでも、逃げでも、追い込みでも目の前のウマ娘を追い越せない。

 

 

 柔らかな茶髪としっぽがまるで届かない遠くの景色の一部のように見えて、キラキラと輝くそれが美貌を引き立てる。ひたすらに速い。そして強い。

 

 

 「―――ふっ」

 

 

 かすかに見えた赤ワインのような色の瞳がこちらを見て、実力を見ることが出来たとほほ笑んだように細くなり、それと同時にその鹿毛のウマ娘、ジェンティルドンナはゴールを決めた。私とウオッカの全力の走りが通用しない。

 

 

 これが世界を制した怪物。チームシリウスのリーダーの一人。あの天翔ける衝撃。シンボリルドルフと並ぶと言われたウマ娘を姉に持ち、そして超えると言われるほどの実力者。

 

 

 遥か格上の相手だと、先輩だとわかっていたけどもそれでもどうしようもない悔しさと、情けない自分に怒りがこみあげてしまう。勝ちたい。ウオッカと同じくらいに追いつきたい。勝ちたいという想いが渦を巻き、同時に疲労と負けたゆえのむなしさが私の胸を占めた。

 

 

 

 

 

 

 「流石はチームスピカの精鋭にして緋色の女王。そして常識破りの女傑。いい練習になりました。感謝します」

 

 

 「あ、ありがとうございます・・・」

 

 

 「は、はひ・・・ありがとうございます。あ、足がパンパンだ」

 

 

 スピカのダイワスカーレットとウオッカ。逃げと追い込みの天才ということで練習を頼まれたのでこれ幸いと模擬レースをしたけど、なるほど評判にたがわないプレッシャーと気迫。同世代でもかなりのレベルを持っているのは分かる。

 

 

 私と同期であれば怖い相手だろうけど、まだ青い。余力も残っていれば汗もさほど、息もあんまり乱れていない。気持ち腹7分目といったところか。

 

 

 「お二人もクラシックシーズンを終えてから戦う日が楽しみですよ。その時はぜひ、心ゆくまでやり合いましょう。ただし、手心を加える気は一切ないのでそのつもりで」

 

 

 「もちろんです。そして、その際は必ず勝ちます!」

 

 

 「オレだって! 最強の皇女に勝ってこそだ! ティアラ三冠の覇者。また挑戦させてください」

 

 

 「・・・ふふ。もちろん。それでは」

 

 

 ただ次世代の新星たちをみれた。これが収穫か。ジャパンカップに有馬記念、天皇賞(秋)エリザベス女王杯、ヴィクトリアマイル。ここら辺りでぶつかるだろう。来年以降二人はティアラ路線をいくという。ここからどうなっていくのかが楽しみだ。

 

 

 「ふぅ・・・さて、リーダーの方は何をしているのか・・・」

 

 

 とはいえ今は物足りないのが事実。今日はもう走る練習は切り上げて柔軟と体幹トレーニングで体をほぐしつつ過ごして休む。葛城トレーナーの指示に従って休むほうがいいだろう。不完全燃焼気味の気持ちを落ち着かせる時間が欲しい。そう思いながらゴールドシップと練習をしてくると言ったシリウスのチームリーダーを探す。

 

 

 「あら。ふふ・・・副会長の花壇はいつ見ても見事・・・」

 

 

 移動中に見つけたエアグルーヴの育てている花々が生い茂る花壇。よく手入れされているし、日が落ちてきて涼しくなり始めた時間に水をまいたのだろう。かすかに残る水が夕日を反射してキラキラと輝き、花の美しさを引き立てる。

 

 

 練習とはいえ勝負が終わって昂っていた気持ちが落ち着くにはいい場所。いいものをみれたとほほが緩む中、ザク、ザシュと何か音がそばで聞こえる。土を耕すような音。もしかして花壇の増設でもしているのだろうか? だとすれば理事長の許可を得たエアグルーヴ、もしくは彼女にあこがれるメジロドーベル。もしくはファインモーションだろうか? ちょっと首を横にすると。

 

 

 「ふぅ・・・いい天気だべ・・・」

 

 

 武者鎧に身を包んだケイジが花壇を耕していた。丁寧に紐を使って区間を作り、レンガも少し盛り上げて腰かけられるようにしている手のかけよう。そばには猫車と使ったであろう大量の土を入れていた袋がゴミ袋にまとめられている。

 

 

 そして植えられていたのは花の苗木ではなく割りばし。

 

 

 「練習しないで何をしているのよチームリーダァぁあー!」

 

 

 「ぬわーーっ!! あんだぁ!? ってジェンティルちゃん。もう併走と練習試合終わったか」

 

 

 相変わらずこの変人は・・・! 思わずローリングソバットで蹴り飛ばしたがピンピンしている。というか鎧が砕けも変形もしないあたりどれだけ頑丈なのよ!

 

 

 「終わりましたよ! そんでリーダー回収しようと思ったらこれですもの。何しているのよ!?」

 

 

 「何って、今日は涼しいしいい天気だから割りばしでも植えようかと」

 

 

 「だ・か・ら・・・・何で割りばしなのよぉお~~!」

 

 

 奇人に灸をすえる意味でキャメルクラッチを仕掛けてミチミチと締め上げる。が・・・くぅ。相変わらずの身体の柔らかさ。鎧で制限されている動きなのにあんまり決まった感触がない。

 

 

 「あだばばばば!! やめろぉ! この鎧初代ライダーさんと一緒に大河出る際に自作した自信作なんだぞ!? ぐっふぉ! 細い指が首に!」

 

 

 「おーいケイジどん。柿とスイカが冷えたし、食わねえべか? おおージェンティルどんもいるなら三人で食べるべ」

 

 

 「ゴルシぃ! 貴女も練習しなさいな!? 何でそっちも鎧なのよ! しかも西洋甲冑!」

 

 

 「えーだるいじゃん。それよりは一緒に割りばし植えつつ冒険のための鎧を作ったほうが有意義だぜ」

 

 

 くっそ・・・この変人コンビそろわなくてもそろってもろくなことしない。それでいてこの強さだから理不尽よ! 私なんて今でもまだ姉さまに敵う気がしないのに・・・

 

 

 「ぐふぅえ・・・ああ、かっは。ま、そろそろいい時間だしちょっと食べてから帰ろうや。アタシがさばくからよ。みんなの分も今捌いてからこのボックスに」

 

 

 「お、準備いいじゃん。保冷剤もばっちり。お前らの大好きなリンゴもあるぜ~?」

 

 

 「きゃっ! って、お、下ろしなさいケイジ! ああ、もう・・・」

 

 

 キャメルクラッチの姿勢から自分の腕力だけで体を私ごと宙に浮かせ、そのまま立ち上がり、両手で私の手をつかんで立ち上がるケイジ。キャメルクラッチは解けたけど今度は私がケイジの背中にぶら下がるような形に。

 

 

 「お、流石。まあ練習終わりのクールダウン代わりと水分補給だ。食べていこうや」

 

 

 「・・・・・はぁー・・・分かりましたよ。代わりにリンゴは多めに頂戴」

 

 

 「はいよ。くぁー水が気持ちいいぜ」

 

 

 下ろしてもらい、手を洗ってきたケイジがサクサクとなれた手つきでスイカや柿、リンゴを切り分けて振る舞ってくれるのを食べていく。

 

 

 ふぅ・・・汗をかいた分甘味と水分が染みわたる。ジュワッと一気に口の中に水分が来る感じは人参ではあんまりない感覚だから気持ちいいわ。

 

 

 「そういえば、今年は二人も宝塚記念でしたよね。ケイジのリベンジなるか、ゴルシの連覇なるかともう騒ぎになっています」

 

 

 「もちろんよ。ゴルシとの勝負はおもしれえからな。リベンジしてやるのさ! そういうジェンティルも混ざっての三つ巴だっても言われているからなあ。今から楽しみよ」

 

 

 「ははーゴルシちゃんは負けねえよ? 実際この前もふじ・・・・なんたらって記者が来たからなあ。確か近いうちに記者会見をするってうちのトレーナーも言っていた。そういうジェンティルちゃんも出るんだろう? あー・・・つめてえスイカはいいなあ」

 

 

 6月下旬、競バシーズン上半期の最強決定戦であり人気で選ばれるGⅠレース宝塚記念。そこでは私、ケイジ、ゴルシの三名が出走を決めている。私達三人で人気を独占しているのもあって三つ巴、ライバル対決と騒がれている始末だ。

 

 

 「もちろん二人に負けるつもりはないです。せっかくチーム内でもバチバチにやりあえるのですからケイジにも、ゴルシにもオルフェーヴルにもヴィルシーナにも負けるつもりはありません」

 

 

 ただ、やはりというかクラシック三冠で見せた二人の名勝負。それが皆の目に焼き付いたのもあってか私よりも二人の対決という声が多いのは事実。強さでは負けるつもりはないが場を沸かせる。賑わせるという意味ではこの二人は頭一つ抜けている。三つ巴と言われることもあるがやはり目立つのは、注目されているのはこの二人だ。

 

 

 渡された塩をスイカに振りかけてかぶりつく。甘味が増す前に感じるかすかな塩味がまた私のマイナス気味な感情を思わせてイライラが少し戻ってきちゃう。ライバルが注目されるのは嬉しい。友が成功して大舞台で楽しんでいるのは嬉しい。でもそこに自分がさほどみられていないのが悔しい。

 

 

 「そいつは面白いことになりそうだ! いやー今年の宝塚記念も楽しみになってきたなあ。よし。帰るぞジェンティルちゃん。みんなに晩飯の前のおやつか食後のデザート配達に行くぞ♪」

 

 

 「あ、なっ!? ちょっとケイジ!」

 

 

 「そんじゃアタシらはこれでお暇するぜゴルシ。また明日なー」

 

 

 「おうよ。まったなーじゃ、マックイーンの所行くか」

 

 

 スイカを食べ終わり、種を器用に排水口に口からマシンガンのように吹き出したケイジは自分のジャージを猫車に敷いて私の襟首をつかんでひょいと乗せて、驚く間もなくドカリとスイカやリンゴ、柿の入ったクーラーボックスを自分の膝の上に乗せていく。

 

 

 その後にケイジが猫車を動かして移動し、ゴルシはそれを手を振って見送る。遠目にゴミ袋は片付けてくれたけど、ほんと思考と行動が読み切れないわよ・・・!

 

 

 「ふふふー♪ 宝塚でまた三人でやりあえるのが嬉しいぜ。それに、ジェンティル。落ち込んでいるようだけどどうした?」

 

 

 「・・・ちょっとイライラしていただけ」

 

 

 「なら、この後風呂終わってからマッサージしてやるよ。疲れも抜ければイライラも綺麗に落ちて流れるだろ」

 

 

 猫車に揺られながらケイジの明るい声に少し気が楽になると同時に、素直に勝負を楽しみにしているケイジに比べて悔しがっていた自分のことを恥ずかしく思う。何度も思うことだが、三冠ウマ娘となってドバイSCも連覇。実績でも姉のディープインパクトを超えたと言われることがある。

 

 

 でもまだ及ばない。実績で追いついてもその器では及ばない。追いついていないと思うのだ。私生活では気さくで優しく穏やかなふるまい。食事のマナーや礼節においても既に先生方に教えることがないと言われるほど。

 

 

 そしてレースになればそこから一転して燃え盛るほどの闘志を見せて圧勝。ディープインパクトの出るレースではもはや二着を狙うのが常と言われるほど。足が血だらけになっても練習を続け、レースに挑んで勝っていく。令嬢としてもウマ娘のアスリートとしてもシンボリルドルフを超えると言われた逸材だ。

 

 

 この大器に並び立とうと。ふさわしい妹であろうと努力したが負けは多く、ティアラ三冠を制覇したが無敗ではない。そして勝気が過ぎて誰彼噛みつくときがあればそれを思い出して自分で自分の気持ちを沈めてしまうかよりカッカする。実力と結果こそがすべての世界。だからこそこのミスは残り続けるし、自分を許せないと思う時がある。

 

 

 「ええ。お願いしてもいい・・・今日はなんだか疲れて」

 

 

 「わはは! スピカの新鋭たちはそんなにか。いいじゃないの。ライバルが増えて、楽しみが増えるのはいいことだ。緊張と張りが来るし、同じ土俵でやりあえる分一人じゃねえもんな」

 

 

 「そうねえーヴィルシーナもきっと油断できないと頑張るかも」

 

 

 「そんならウオッカとダイワスカーレットの相手は、うちのティアラ路線の覇者二人に任せるか。頼んだぜリーダーさん♪」

 

 

 「貴女こそリーダーでしょうに」

 

 

 ただ、そんな苛つく気持ちも、姉に追いつかんとするプレッシャーも名家ゆえの緊張もケイジといる時は安らぐ。考える余裕がないほどに振り回す。奇行をするともいえるのだが・・・まあ、何にせよ落ち着くし場所が心地よい。

 

 

 「まあまあ、アタシはリーダーなんて器じゃねえわ。あ、そうだ。今度サバゲーに行くんだけどジェンティルもストレス発散がてら参加しねえか? おもしれえぞ」

 

 

 「は?」

 

 

 それにしたって、安らいだり緊張する時間も与えないとはいえ流石にこの急な提案や行動は流石に抑えてほしいともいえるが。ダンスやパフォーマンスの幅を増やすための練習もそうだがどこからこんな引き出しを用意するのやら。

 

 

 結局この後私はケイジとライスシャワーとサバゲーに巻き込まれ、山寺一帯を貸し切っての大騒ぎに巻き込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「何をしたらこんな記事できるのよアンタたち・・・連日ニュースになっていますよ」

 

 

 「いやー流石下町のジジババども。時間がある分みっちり鍛えているのと腰が低くできやすいぶんステルスでやられたぜ」

 

 

 「つい熱くなって・・・うぅ・・・忘れて頂戴なヴィルシーナさん・・・・」

 

 

 ジェンティルちゃんにライスも巻き込んでのサバゲーは山中に声が響き渡ってもう大騒ぎも大騒ぎ。普段は観光名所としても、歴史ある古寺としても有名だったゆえにニュースにも取り上げられたみたいだし。わはは。そろそろ観光シーズンの季節だしちょうどいいわ。

 

 

 恥ずかしがって顔を押さえているジェンティルちゃんもなんやかんやノリノリだったしなあ。あの後自腹でエアガン購入していたの知ってるぞ?

 

 

 で、アタシらの前で新聞と雑誌を見て呆れた顔を見せる青毛の正統派美少女はヴィルシーナちゃん。いろいろ珍しいクラシック記録と香港カップ、ドバイでも活躍したうちの実力者の一人。正直変人ぞろいのシリウスの中ではアタシと同じくらい真面目でクール・・・クールだよな? な子だ。

 

 

 「『騒然! 由緒ある山寺の下で響く銃声と雄たけび。ケイジと老人会の壮絶銃撃戦!』って・・・まあ、三流雑誌の言葉ですが事実もありますし、ちゃんとお寺の方及び檀家さんも許可を取った、依頼したと証言してくれていますから助かっていますけど・・・」

 

 

 「まー問題ねえって。ほれ、そろそろだしニュース見よう。そろそろだ」

 

 

 「はぁ・・・お姉さまも驚いていましたし、これは・・・あれ?」

 

 

 「わぁ・・・」

 

 

 頭抱えるヴィルシーナとジェンティルだが、正直心配する要素ねえのよな。それとサバゲーの後に大雨が降ったしそろそろだと思うんだけど。テレビのスイッチをぽちっとな。

 

 

 『それでは次のニュースです。数日前あの傾奇ウマ娘ことケイジ。最強の皇女ジェンティルドンナたちが大いにサバゲーで暴れたという〇〇山ですが、何とその山にいま多くの花が咲き誇って山の色を変えてしまうほどの光景を見せています!』

 

 

 「おおーサプライズ大成功♪」

 

 

 「はぁー・・・これはまた・・・・ケイジ。もしかして何か仕込みました?」

 

 

 「んまーな。遊びのなかにもエコと自然に配慮をするのがケイジちゃんだ」

 

 

 『関係者、そして寺の所有者曰く『ケイジさんらには観光シーズン前に一つ元気をくれる、面白い催しをしてほしいと頼みました。そしたらサバゲーやるわと言ったので任せたのですが、ここにふさわしい光景を見せると言い切って帰ったので待っていましたがこういう形で返してくれるとは予想外です。今年の花道は山全体がそうなりそうですし、いやはや読めないサプライズが彼女らしいです』と言っていました。

 

 

 情報によりますと先のサバゲーに使われたBB弾は花の種と水に溶けて肥料になるバイオプラスチックを使用したようであり、このお寺の名所である花畑、花道も今年は規模が数倍。山全体が花畑とかしておりその美しさに参拝する客も後を絶たないようです』

 

 

 「ちなみに、そのバイオプラスチックと種をうまく使える技術と素材はジェンティルちゃんとヴィルシーナちゃんの実家の家絡みの企業と下町の知り合いから提供してもらっているし、新聞社にも情報ばらしているから今頃嬉しい悲鳴上げているんじゃね?」

 

 

 「「はぁ・・・・!?」」

 

 

 「あ、あとあの花壇の割りばしもその素材で作ったから今頃いい花咲かせているんじゃねえかな」

 

 

 現代版はなさかじいさんならぬ花咲かジジババ&ガールズってことでやってみたがイヤー大成功。あとで二人のおやじさんに会って成果確認するかあ。土産は何がいいかなあ。すっぽんでも釣ってくるか。このニュースで知ったエコかつ自然を汚さないバイオプラスチック。サバゲーとかでも使えるし、畑の種植えの際の仕切り&肥料にしても良し。山芋なら塩ビパイプのなかに薄く塗って成長を助けたり、植木鉢の内側に塗って成長促進でも良し。

 

 

 こそこそ打ち合せして知り合いの技術者、下町工場でできそうなところに呼び掛けた甲斐がある。

 

 

 何やらギャーギャー言い出した二人を抑えているとライスとテキ・・・じゃねえ。葛城トレーナーのおやっさんが来て二人を落ち着かせてもらってニュースの事を伝えれば祝いの外食。焼肉食べ放題してきて最高だったぜ!

 

 

 ついでにエアグルーヴ副会長からもいい花壇だと感謝とハーブティーをもらったから家でひいばあさんと羊羹つまみながら飲んでやった。この出来の良さはもう売り物にしていいんじゃねえかなあ。




 ジェンティルドンナ 姉にディープインパクトがいるこれまた名家出身のウマ娘。無敗の三冠を成し遂げて無類の強さを見せた姉を誇りに思う一方で自身は無敗の三冠とはいかずコンプレックスを感じている。それを壊すため、姉に並ぶためにとか以外での戦いも積極的に行う。

 勝気な部分があるが姉と名家の誇りがあるのでやや猫かぶりな一面も。ただしシリウス内では隠さないというダイワスカーレットとメジロマックイーンのミックス的な部分あり。名家のプレッシャー、気負うのを忘れさせてくれる。刺激をくれるケイジの事を気に入っておりちょっと入れ込み気味。同時に自分のパワーを気にせずぶつけられるのもいい。


 ヴィルシーナ ジェンティルドンナと終生のライバルであり、まさかの三冠シルコレをするという珍記録を達成。とはいえその実力は高くケイジの指導。刺激もあって香港カップや多くのGⅠで勝利を重ね、特にヴィクトリアマイル、エリザベス女王杯では連覇を重ねるという歴史的快挙を達成。


 基本穏やかなまさしく令嬢と言える性格だが芯の強さは鉄骨入りレベル。ゆえに奇人変人の多いシリウスではライスと一緒に振り回されている。一方で怒ると怖い。レースの際は誰も油断できない実力者として認められている。


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さようなら2011年。そしてよろしく2012年

 のんびりとしたい。あ、あと競馬知識やあれこれが間違っていたら申し訳ナイス! ウイポっぽい要素もありますあります。あと、馬券云々は最悪この世界特有だと思ってくれると嬉しいです。


 『ケイジ2歳最優秀、最強牡馬として表彰! 弥生賞優先出走権獲得。既に1億円獲得ホースへ』

 

 

 『トウカイテイオー最後の子どもケイジ、傾奇者はクラシックでも輝くか』

 

 

 『父の果たせなかった三冠へ。ケイジ来年の弥生賞出走確定』

 

 

 「ムフー」

 

 

 『嬉しい見出しなのもだけど、弥生賞優先出走権を運営からもらえたのが嬉しいねえ』

 

 

 どうもおはこんばんちは、ケイジだぜ。年末の有馬記念、東京大賞典も終えて日本競馬界の年度優秀馬発表&表彰。それとそんな名馬たちを支えたホースマンたちの表彰式とパーティーも無事終了。俺は無事2歳最優秀牡馬を表彰。獲得賞金も1億と4000万くらいになったぜ。

 

 

 朝日杯の賞金がGⅢ2つ分だったもんなー。いやー儲け儲け。牧場のおやっさんもテキのおやっさんも久保さんももう大号泣。俺がどうにも二人の担当した馬で初のGⅠホースになったらしく、もう拝み倒されるという経験を初めて味わった。

 

 

 そんでまあ、表彰式のために慣れねえ燕尾服引っ張り出そうとしたらここしばらく牧場拡張や仕事ではりきっていたせいで痩せていたらしくサイズが合わねえから急ぎで新調したりとでわたわたしていた。んで、藤井の兄ちゃんは俺の馬券で年末に儲けて、記事の売り上げもいいしで金一封&冬のボーナス&俺の当たり馬券のトリプルハッピーパンチでウハウハらしい。

 

 

 真面目な記事だし優しいしで今後もテキやおやっさんは優先的に対応するという約束も取り付けたりで今後も顔をみそうだ。

 

 

 んまあ、そんな新聞とかテレビの情報を見つつ久しぶりに、ちょっとでかくなった牧場に帰宅。休養となった。何でも一月ちょいは放牧と休養で休んで、1月の2週くらいから再始動。弥生賞を狙うそうな。

 

 

 オカマバーの皆も正月の騒ぎが落ち着いてからうちの牧場に顔を出すと言ってくれたし楽しみだわぁ。トモゾウらの驚いた顔とその後のあれこれに。

 

 

 『おおー勝った勝った。やっぱつええなあージェンティルちゃん』

 

 

 「うーむ。次世代の牝馬たちもまたすごい子たちが出てきたなあ」

 

 

 「ですねえ。ケイジの言うとおりに賭けて勝てましたがここまでとは。牝馬のレベルが上がるのは嬉しい限りですよ」

 

 

 そんでいまはみんなで正月も一息ついてのシンザン記念に出走していたジェンティルちゃんをみんなで応援。トモゾウとおやっさんは俺がこいつに賭けろ! って鼻でゴスゴス小突いてからそれぞれ3000円かけてもらって無事儲け。お年玉だな。

 

 

 いやー馬主も馬券買えるってのを知ってよかったぜ。この子は今後も化けていくからできれば応援してほしいね。

 

 

 「俺の若い時代はとにかく種牡馬が優先されていたがいまや質のいい肌馬の重要性が重視されているからなあ。より日本競馬のレベルが上がっていけばいずれは凱旋門賞、海外の三冠を手にできる怪物が出るかもだ」

 

 

 「そういう意味ではナカヤマフェスタ惜しかったですねえ。オルフェーヴルがどうなるか期待です」

 

 

 肌馬、母系の血ははほんと大事だからなあ。日本の在来牝系の根幹になる20頭くらいの牝馬は超大国時代のイギリスから厳選に厳選を重ねた精鋭中の精鋭。しかも、馬は軍が所有する『兵器』であり、乗せるのはこれまた大量の金と時間をつぎ込んだ『将官』あるいは『華族』らを乗せるための軍馬を生み出すためのもので国の威信をかけたものばかり。

 

 

 こういういいお母さん馬。肌馬から今でも血統が続くシラオキ系、レイパパレの先祖フロリースカツプ系らが残って続くのを見てもいい牡馬の種を上手に組んで欠点を補う、良い素質を自分からも与える牝馬の質ってのは大事。そういう意味ではほんと女帝エアグルーヴやマルゼンスキーやスペシャルウィークの母方、ステマ配合組や、ステゴの一族はほんといい具合に強みを手に入れて戦っているよねえ。

 

 

 これをうまくつないで行ければ互いの欠点を補ってより強い、世界中で戦える子たちをたくさん出せるかもだし、イヤー競馬会ファイトだぜー社爛、ほかの大牧場からまたワキアとかサンデーサイレンスとか面白い馬たち来ないかなあ。

 

 

 「そうだなあー・・・ああ、そうだそうだ。ミホミサトの種付けだが、今年はステイゴールド、来年はタイキシャトルで行ってみようかと思う」

 

 

 「社爛の人も太っ腹ですよねえ。まさか初のGⅠ勝利記念にってこの二つの種付け権利をタダでくれたんですから」

 

 

 「ヒンヒン」

 

 

 『だよなあーあの二頭の種付けの権利とか最悪消費税だけで車買えるんじゃね? ってレベルの札束の殴り合いのセリの果てに手に入れるような物。それをPON☆とくれたんだから』

 

 

 「お前もいずれは誰もが欲しがるような種牡馬になれるよう頑張らないとなあ」

 

 

 あ、そうそう。正月の際にいつもの富豪者のおっさんこと社爛のお偉いさんが来て、俺らの優勝記念に先の種付け権を分けてもらったんだわ。

 

 

 俺が年齢制限付きとはいえ重賞三連勝。しかもこの年の朝日杯を快勝したのもあってここの牧場でかばわなくても種牡馬入りは確実。でまあ、そのお値段も依然安くいくつもりなので社爛からしてもサンデー薄め液としての役割を狙った俺の実力や素質を育ててくれた牧場と調教師に感謝の意味を込めてお年玉と称してくれたわけだ。

 

 

 あちらが言うには『まだわからないが早熟気味でありこの馬体重で足元不安もない。賢いようだし人懐っこい。今後の戦績次第ではケイジ産駒がクラブや海外からも声がかかるだろうし、来年も頑張ってください』だとさ。懐が広いぜ。

 

 

 ほぼほぼ独立状態の中小牧場にここまで言ってくれるとは嬉しいものだし、今年はいい正月を迎えられて何よりだわ。

 

 

 はふー俺ももう少し頑張らないとなあ。とはいえ今は流石に休むけど。どれ、ジェンティルちゃんのウイニングランと騎手インタビューもみたし、ひと眠りするかあ。

 

 

 「あら。ケイジちゃん。人参持ってきたけど食べないの?」

 

 

 「ヒィン」

 

 

 『え? マジで? やったーんじゃあ馬房に戻ってからもしゃもしゃして休むわ』

 

 

 女将さんが人参持ってきてくれたんでその先っぽをぱくりんちょと咥えてからポコポコ自分の馬房に戻る。流石に12月の北海道は寒いからねえ。雪も積もって日差しが反射するから昼寝するなら馬房に限るわ。

 

 

 「おっとケイジ。俺が今開けるから待っててくれ。それと、トングを置いておくぞ」

 

 

 「あー漫画は確か・・・この巻数だったか? 読んだら机に置いておくんだぞー」

 

 

 トモゾウがくれた取っ手が木でカバーされているトングを咥え、おやっさんが俺が読んでいた漫画の続きをカバンに入れて渡してくれたんで首にかけて気を取り直して戻る。

 

 

 戦いの合間にはこういう休憩も大事よね♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『いやっほー潮風がきんもちぃい~!』

 

 

 『ぬわー! ケイジ速すぎるぞ~!』

 

 

 休暇ものんびりと過ごし、1月の半ば。俺は今北海道の砂浜を突っ走っていた。柴犬と一緒に。

 

 

 というのもこれも調教の一種で砂浜という芝以上に柔らかく足を取られる場所で走らせることでパワーとスタミナをつける。そして犬に追いかけさせる。併走させることで馬がわり、追われるのを振り切るための勝負根性をつけるということで芝を主戦とする馬でもするようで。

 

 

 深く積もった雪の上を走るのも調教になるしで冬はいいトレーニングの季節だ。

 

 

 俺と並走ではなく後ろで走っている柴犬はうちの牧場の近所のおっちゃんの犬でまさかの猟犬。おっちゃん猟師と駆除隊を副業でしているようで俺が戻ってきて調教に使う犬でいいものはないかなあとテキのおやっさんは相談していたところに俺を見に来ていたおっちゃんが聞いてならうちの犬使う? ってことでそのまま海へとレッツラゴー。

 

 

 柴犬の幸太郎は普段は大人しく人懐っこい。いうことを聞く賢い子なので俺との併走の意味も理解して頑張ってくれている。俺とは同い年の3歳同士でたびたびあっては昼寝をしている仲だぜ。

 

 

 「ヒヒ。ワォアン」

 

 

 『終わったぞおやっさん。幸太郎もおつかれちゃん』

 

 

 「キュゥン・・・」

 

 

 『は、はやい・・・僕の方が山とかで歩いている分鍛えているのに』

 

 

 『俺狩猟シーズン以外も鍛えているからなあ。とはいえ幸太郎も速いぜ』

 

 

 走るトレーニングも終わったんで段ボールに幸太郎を乗せてついている紐をもって近くへと連れていく。

 

 

 「相変わらずの調子の良さとパワーだな。ただ、やっぱりタイムの具合を見ると芝が主戦。クラシックも問題ないか」

 

 

 「そうっすねえ。休んでいた分太った脂肪をすぐに血肉に変えていい具合に体重を増していますし、ここからまた微調整を続ければこの体重であっても足元不安はない。ヒシアケボノ以上の安定感を狙えると思います」

 

 

 「お疲れだケイジ。幸太郎。ほれほれ。水を飲むといい」

 

 

 俺と幸太郎分の水桶に入った水をごくごく飲みつつ一息。冬は水が自動で冷たくなるから汗かいた後は気持ちがいい。んふー・・・ああーいい水だなあ。ミネラルウォーター? うまいうまい。幸太郎も復活して一緒にぺろぺろ。

 

 

 「ヒヒン! ヒィィン」

 

 

 『ちょっと待つし! ウチの分も水あるんでしょ!?』

 

 

 『あるある。ってか練習どうしたお前』

 

 

 『だるくて調教師? に砂かけて逃げた。あーウマッ☆』

 

 

 『ご主人にそれしたら駄目じゃない・・・?』

 

 

 そこに割り込んできた尾花栗毛の牝馬。何でもおやっさんが見つけてきた。というよりは譲り受けたというのが正しい子だ。。馬主はこれまた一口馬主で前田のおやっさんが50% オカマバーの西郷さんが20%、近所のおっちゃんが30%の配分。ちなみに価格は1000万。今はテキのおやっさんの所に来た調教師助手と調教していたが逃げてきたっぽい。

 

 

 まー見ての通りのギャルできゃぴきゃぴな子なんだが、こいつの血統を見てくれ。こいつをどう思う?

 

 

 父 トウケイニセイ 父父 トウケイホープ

 

 

 母 ニーアライト  母母 ロジータ

 

 

 すごく・・・(血統が)大きいです・・・

 

 

 なんだよこれ。岩手の魔王。39勝を挙げたダートの怪物トウケイニセイ。母方はダートの女王。アメリカのトリプルクラウン、ないしティアラを取れたと言われるほどの怪物ロジータ。もっと言えばロジータの血筋はイナリワンを輩出していることからも分かるが芝砂どちらも狙えるかもなミルジョージ系だし。

 

 

 そんな名血なんだけどいまや超の付くレベルの零細血統、あの大震災でこの子を牧場で養うのが難しくなったりとあれこれあってうちのおやっさんが提示された価格の3倍の値段を出して購入。トウケイニセイの養育費と牧場への少しの助けもあったらしくその場で現ナマ渡したそうで。

 

 

 まあー後でまた女将さんに怒られたんだけどな! でも理由が『私も行きたかったですよ。岩手の伝説の子に人参あげたかった』らしい。まあ、人情あふれる行動だし女将さんむしろニコニコしていたしなあ。

 

 

 そんなこんなでうちに来たこのギャル牝馬。うちに来たフリーの調教助手に任せる予定だとか。現在砂にまみれているけど。

 

 

 『いいのいいの。ウチに気安く触れようとするなんてありえないし』

 

 

 『俺らの世話する戦友であり親友になれるやつらだし優しくしてやんな。で、なんていっていた?』

 

 

 『えー? なんだか変な人だしあれだけどー? あーウチはダート向きらしくて、才能? ありだってさーどうよケイジ。今年はウチの年になるよ~?』

 

 

 『お前デビューすんの早くても来年くらいだぞ』

 

 

 『ウッソ!? なんでー!?』

 

 

 『まだ1歳だろうがお前』

 

 

 まだまだ小さな若駒。来年以降からデビューでまあしばらくはここの牧場で過ごしてからうちの厩舎に入厩するんだろうなあ。調教師は確か平野さんだったか? に任せるそうだし、俺もしばらくしたらまた東京に戻るから会うのは後だろうなあ。

 

 

 「ゲッホゲホ・・・いやー砂に飲まれるとはこういうのを言うんでしょうなあ・・・」

 

 

 「お疲れ様平野君。どうだね? ニーアの様子は」

 

 

 「かなりいいですね。中央のダートの子たちにも負けていないです。ケイジがまた厩舎に戻る前に何度か軽く併走させておけばかなり化けると思っていますよ」

 

 

 「地方の怪物の血をひく子がまた中央へと来てくれるかもしれないか・・・ケイジなら併せてくれるだろうし、今も仲良く三頭で水を飲んでいる。頼んでみようか」

 

 

 「幸太郎とも仲良さそうですし、調教する年まではこちらも協力しますよ」

 

 

 あっちでは砂まみれになったまだ40代の若手の調教師。平野源五郎のおっちゃんとテキのおやっさん。近所のおっちゃんと話している。俺以上に良い環境で練習できそうだし、頑張れよと内心思っておく。

 

 

 『どうしたのケイジ。飲まないならウチが飲んであげる』

 

 

 『ぬお! そうはさせるか俺のミネラルウォーター! おっちゃんからのプレゼントはやらん!』

 

 

 『僕の飲むー?』

 

 

 『あ、もらうもらうー。ケイジはけちんぼだしー』

 

 

 『うるへー走った後の水は流石に飲ませろい』

 

 

 とりあえず、俺のいる間にアニメ教育とマンガで人の良さについて教えるか。確か俺の馬房にあるのはボーボボとジャガーさんとかマサルさんだっけかなあ。トング貸してやらにゃ。




 ここではお嬢様口調のジェンティルドンナだけどウマ娘ワールドでは規格外の姉がいるのである程度言葉遣いや勝気さはある程度抑えている感じです。ディープの場合は勝ち方がすごすぎて当時は二着を狙うほかないとか、練習大好きだけど優しく人懐っこく食事マナーがいいって史実でこれですからウマ娘だと


 「普段は大人しいお嬢様。だけど練習では兎にも角にも目の色が変わるほどにやり込み、レースになれば規格外の末脚を小柄な身体から繰り出して他を圧倒する」


 強さの魅せ方がすごすぎてジェンティルドンナもある程度控えるのかなあと。


 新仔馬登場。幼名はニーア。トウケイニセイの馬生もまた震災で晩年は大変でした。どうか天国でロジータやダートの名馬たちと楽しく走っていて欲しいものです。


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伝説を目指すんだよ!

 また気が付いたらお気に入りが増えていてええ・・・となっている自分がいる(建前)チラシ裏? なのにここまで見てくれて嬉しいです(本音)今回以降公開にしてみようかなあと思います。この駄作がどれほど見られるかは不明ですが。何卒よろしくお願いします。


 お気に入りが200人突破! 急いでかいちゃいました。いやー予防接種の副反応きついっす。


 ようやく始まる12年クラシック時代。の序章。やりたいことを頑張ります。



 今年も早くも二月。鬼退治に豆をまき、競馬もぼちぼち大きなレースが控える今日この頃。

 

 

 「うーん、ゴールドシップは無事に共同通信杯を勝利か。勝ち方もそうだが、戦績が凄まじいな。ケイジ、かち合わなくてよかったかもなあ」

 

 

 『だよなー今の時点だと掲示板どころか馬券も二連単? を外していないしレースの距離も俺とは違って全レースを1800~2000で走ってこの成績。クラシックの距離を走れるとわかっている分ファンはゴルシを有力候補に挙げているだろ。後、どうせやるならもっと大舞台でやりたいぜ』

 

 

 「それ以外にもグランデッツァにディープブリランテ、ワールドエースと有力候補が多いからな。いずれもレースを勝利、もしくは掲示板入りすれば皐月賞に直行だろうし、怖いものだ」

 

 

 春のクラシック戦線に向けて人馬共に調整中の真っただ中でござる。俺もかれこれここ葛城厩舎に戻ってからはジャスタウェイやジェンティルドンナと併せをして、厩舎の皆と走って、筋トレして、ご飯ウマーな日々を謳歌中。

 

 

 今は練習の休憩の合間に皆で競馬新聞を読んでのんびりしていたでござる。

 

 

 「まあ、うちのケイジも負けていないんだ。改めて、ローテの説明をしていこうか」

 

 

 「ウッス、テキ。俺らもそれに合わせてケイジの調整をやっていかないとっすからね」

 

 

 「ひん」

 

 

 『よっしゃよっしゃ』

 

 

 で、まあ改めてローテの説明。一応新年に決めてはいたけどちゃんと調教して俺の具合みないとテキ、もとい葛城のおっちゃんらも馬主の皆と一緒にローテ見極めきれないしね。仕方ないね。

 

 

 「まずありがたいことにケイジの頑張りもあって弥生賞への優先出走権は手に入れているのでまずは弥生賞。そこからクラシックへと挑んでいく流れになるな。テイオーにミホシンザンの血統。加えてケイジのスタミナと馬体は規格外。距離もダービーまでは問題ないだろう」

 

 

 「ほうほう・・・なら、その後は神戸新聞杯も行きます? ダービーの距離も走れるのならそこも行っていいと思うんすけど」

 

 

 「いや、それが王道なのだろうが・・・掲示板に残れた時はダービーから菊花賞に直行。それまでは休養を挟み、調教をしっかりしたい。今後のためにも淀の坂を問題なく走れる力が欲しいし、ケイジの場合はどうしても馬体がな」

 

 

 『あー600キロ越えだもんね。あとどうしたって日本の大レースが行われる場所は坂がある場所多いし、どれほど行けるか、問題なくいけるように仕上げたいと』

 

 

 テキのおやっさんの話を聞きながらなるほどと思う。俺の体重は現在635キロ。年末から正月の休養で650キロまで太ったところをすぐさま動きまくって肉に変えて脂肪燃焼完了したら前より5キロ肉がついた。

 

 

 パワーは問題ない、足元不安もない。ただまあ、あのエッグい坂を走るレースが今後は増えていく。それは古馬になってからも変わらないし、いつも俺坂路走って、プール入っているがそれでもそうそうないレベルの馬体重。気になるよな。

 

 

 「体を鍛えつつも余計な肉をしぼって行きたいって感じですか」

 

 

 「そうだ。それに菊花賞を終えれば嫌でも歴戦の古馬たちと戦う分感じるプレッシャーも増すだろう。それに負けない肝の座りようだができればある程度気おされても力を出せるような感じにしていきたい」

 

 

 「ヒヒン」

 

 

 『俺既にトーセンジョーダンに絡まれたり、なんでか厩舎のボスになっているし、ある程度は信頼していいんでない?』

 

 

 あ、ちなみにトーセンジョーダンとは仲良くなった。ちょこちょこ併せの練習で会う際にやたら絡まれるから対応していたら仲良くなっちった。

 

 

 んでさー・・・まあ俺のことを大事にしてくれるのはいいけどよ、ここも出してほしいんだよなーテキのおやっさん。

 

 

 「どうしたケイジ・・・ってお前はいつの間に鍵を開けて・・・」

 

 

 『クラシックに出るのはいい。俺も目指す舞台だ。だけど、なんか足りないよなぁ~?』

 

 

 トングを使って2012年のレース表をぶら下げている看板の一つをぱしぱしと叩く。おう。やるんならここも出せや。

 

 

 「む・・・NHKマイルカップ・・・? ケイジ、まさかそこにお前出たいのか?」

 

 

 「ヒィン! ムフー!」

 

 

 『おうよ! やるならとことんやるべきだ! マイルでも戦えるのはテキのおやっさんも見ただろう?』

 

 

 「だ、ダメだケイジ。流石にそれは危険すぎるし、達成できたキンカメもその後に菊花賞へ行けずに身体を壊しただろう?」

 

 

 あの伝説かつ、やばいダービーの事は知っていらあ。でもよ、どうせやるなら思いきりやりてえし、俺の体力と距離適性を買ってほしい。やろうぜおやっさん、久保さん! 伝説を作るんぜよ!!

 

 

 「首をぶんぶん振ってもだめだ! それに俺だけで決められるわけではないし、無理が過ぎる。キンカメのローテ以上に厳しいんだぞ?」

 

 

 「ワンワンワン! ビヒィ!」

 

 

 『その無理やタブーを越えてきたのが俺たち競走馬、ホースマンじゃろがい! それにここでGⅠとって引退だとしても早くから種牡馬としていけるかもだしそれはそれで問題ねえよ! やらせやがれー!!』

 

 

 「うぉおお!? 暴れるなケイジ! 周りの馬がびっくりしているだろ!」

 

 

 そんなら外でやるぞ外で! 少なくてもローテに組みやがれ! 浪漫や夢を見せてこその俺たちサラブレッド、引かねえからなおやっさん、久保さん!!

 

 

 この後滅茶苦茶暴れまわって、調教をしなかった分放馬してしこたま走り回ってやったぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「て、テキー・・・ケイジ君。ぜんっぜん馬房から出てくれません~・・・マンガを読んだり、わちゃわちゃ動いたり、首のチューブトレーニングをしてはいるんですが・・・」

 

 

 「うーむ・・・こまったなあ・・・」

 

 

 あの日以降。まさかのケイジからのマツクニローテのレース提案を断ったら大いに暴れられ、それから数日調教にも出てくれず、軽く運動をこなすだけで終わる時間が続いている。

 

 

 真由美ちゃんがお願いしても動いてくれない辺り頑なだ。ケイジの頭の良さは普通じゃない。人の言葉、おそらくは文字さえも理解しているだろう知能。新聞で自分と併走をしている、仲の良い競走馬の文字を見つけると嬉しそうに記事を見ようとしたり、写真を見てウキウキしていたりと馬の中で頭一つ二つは抜けているレベルだ。

 

 

 それゆえにクラシックでNHKマイルカップを入れなかったことに不服でケイジなりの意思表示。サボタージュなのだろうが・・・真面目に困った。

 

 

 「ケイジ君の運動量は・・・ほ、ほかの子よりも多いですし、その分運動しない反動が不安で不安で・・・」

 

 

 「ああ。それに太りすぎてもいただけない。弥生賞もだがクラシックのなかでも皐月賞は一番自信があるレースだし、ぜひベストにしたい・・・」

 

 

 「むふ・・・ひん」

 

 

 真由美ちゃんの心配する通り、ケイジの運動量は並じゃない。他の馬が根を上げるレベルの調教をこなし、600キロ越え、650キロにも届くかもな成長ぶりを見せても尚足元不安がない。むしろその太さは従来のサラブレッドを超える。間違いなく稀代の素質馬。最高の宝石と言って過言じゃない。

 

 

 しかし今年はそれでさえも勝てるかどうかの才能が集まる時代であり、それを差し引いてもこの才能の光をくすませてしまうのが嫌だが、だからと言ってこのローテは危険すぎる。けれども頭のいいケイジに嘘やその場しのぎをしてもすぐにばれてしまうし、そうなればいよいよもって何が起こるのやら・・・

 

 

 いまもちょっとこっちを見てそっぽ向くケイジを見て困り、しょうがないと電話を取って前田馬主代表にテレビ電話で連絡を始める。

 

 

 『もしもし、前田牧場です』

 

 

 「もしもし? 葛城です。ケイジ君のことについて相談が」

 

 

 『ケイジです? 何か不調でも・・・・』

 

 

 「いやいや、実はですね・・・」

 

 

 松風君も来て真由美ちゃんと説得しているがそれでもケイジは動かず、眠り始めさえしていく。此方はこちらでケイジとの出来事を話し、どうするべきかを相談する。皐月賞、NHKマイル、日本ダービーはおそらくケイジの適正距離にがっちりと噛み合い、その体力、回復力ならこなせるかもしれないが如何せん負担が大きい。

 

 

 本当にキンカメ、タキオンのように数戦だけしかこなせずに引退となりうる可能性がある。競走馬はイチゴのような物。明日がどうなるか分からないとはアメリカの伝説、サンデーサイレンスやグッバイヘイローのトレーナーが言っていたが、それでもこのイチゴ、ケイジは長く戦える素質がある。それを今使いつぶすローテを本人、もとい本馬が望んでいるとはいえやっていいのか。

 

 

 同時に感じるのは浪漫。競馬の世界に関わり、歴史を知れば文字通りのモンスターが多く出てくる。セントサイモン、エクリプス、キンチェム、リボー、セクレタリアト、マンノウォー、ダンシングブレーヴ。誰もかれもが創作物ですら出ないような暴れっぷりを見せて伝説を作り、この前前田牧場に入ってきたニーアも父は43戦39勝の岩手の魔王トウケイニセイ。母母はあの時代にあってダートの本場アメリカで戦えると言われたロジータと日本もまた伝説が多くいた。

 

 

 その日本、世界の伝説の名馬。一角に食い込もうとしているローテ。こなしてしまえば無敗の4冠、いや、朝日杯も含めれば無敗の5冠をケイジに与えてやれるチャンスが来る。そしてそれに関われた調教師として自分もまた関われる。ロマンと不安、ケイジの能力と馬への愛がせめぎ合ってしょうがない。

 

 

 どちらへ動くべきか。馬主の意見で押してもらわないとどうしようもないと思う中、どうにも前田さんはほかの馬主の方々へも連絡を取っているようで・・・なかなか時間がかかる。

 

 

 「ヒヒーン! むふっ、むふわぉん!」

 

 

 「ぬわーっ! ケイジ! ひっぱるなひっぱるな! そんで縛るな!」

 

 

 「ま、松風さーん!」

 

 

 その間もケイジは器用に手綱をひこうとした松風君をグルグル巻きにして馬房の扉に括り付け、自身はその横で新聞をトングで壁に押し付けて読んでいる。

 

 

 対処の仕方が馬のそれじゃないんだよなあ・・・・

 

 

 『ああ。もしもし? 馬主一同の意見が決まりました。それと、後で松風騎手には私からも謝りますので』

 

 

 「お手数かけます・・・それで、結果はどうでした?」

 

 

 『まあ、それはケイジにも聞いてもらう方がいいでしょう。えーと、机か、パイプ椅子はあります?』

 

 

 「少々お待ちを。真由美ちゃん。パイプ椅子持ってきて」

 

 

 「あ、はーい!」

 

 

 真由美ちゃんも流石にケイジを抑えるにはそっちがいいと理解しているのだろう。すぐさま休憩室へと走り、靴を脱ぐところの横からパイプ椅子を持ってきて立てかけてくれたところの上に置く。

 

 

 『ケイジ。そして葛城厩舎の皆さん。私達ケイジの馬主一同の意見だけども、ケイジもしっかり聞いてくれ』

 

 

 「ヒヒン。ヒン」

 

 

 前田さんの声を聞くや松風騎手の拘束を解いて馬房を出て座り込んでテレビ画面を見るケイジ。拗ねている様子もなく、真面目に聞くように耳を前に向けている。

 

 

 『マツクニローテはやってもらって構わないです。ケイジが望んだこと。それに、葛城調教師さんも悩む当たりケイジの素質はそのレベルがあるかもと考えているでしょう。私も実際、朝日杯、新馬の勝ち方を見れば皐月、NHKマイルは固いと思います。

 

 

 ケイジ、お前の選んだ道だ。なら傾奇者らしく戦い、そして皆と喜べる慶事を運んでくるよう頑張るといい』

 

 

 「ヒン!」

 

 

 おうよ! と言わんばかりの力強い頷きと目力を見せるケイジ。闘志が燃えているのは分かるが、危険なのには変わりない。NHKマイルに出るからと言って皐月、日本ダービーどちらかを外せば絶対ケイジがすねるし。

 

 

 『ただし、その期間中ちょっとでも不調、不安点が出ればすぐにNHKマイル、もしくは日本ダービー出走は回避してもらう。葛城さんたちもそうしてもらって結構です。ケイジ、お前の目指す心意気はいいが、ここでお前の道は終わらないはずだ。今後も走るために休むときは休む、無理な時は無理させずに休む。いいな? それが嫌なら、ちゃんとレース後に休んで、回復して、常に絶好調でいなさい。

 

 

 葛城さん、何かあった際の責任はすべて私にかぶせて構いません。ケイジの、そして日本競馬史の歴史に挑む戦いに進ませてあげてください。私も、くく・・・年甲斐もなく面白いと思っている部分もありますので』

 

 

 「分かりました。しかし、こちらも責任は負います。その上で全力を尽くして三冠、いや四冠、五冠を狙います。傾奇者の選ぶ過酷で、厳しい道。それを支える供回りとして支えていきます所存です」

 

 

 『はははは、既にGⅠの手柄を手にしている調教師がお供なら私も安心です。此方からも差し入れや、うちの牧場でケイジにしていたケアなどを教えるために私かトモゾウが後日行きますし、一緒に頑張りましょう。それでは』

 

 

 そういって通話が切れて画面も消える。それと同時に俺の腹は決まった。ケイジに取らせる。皐月、NHKマイル、日本ダービー、菊花賞。皇帝シンボリルドルフを超え、不屈の王トウカイテイオーの届かなかった場所を目指す。

 

 

 そのための道をケイジと歩む。不利な道で、危険極まりないのは分かるが・・・ケイジはきっと不利な戦いこそ燃えるものだ! と言わんばかりに鼻息を荒くしてしきりにハミを噛んでいる。

 

 

 「フフゥッ、ひん!」

 

 

 「のわっ!? うおっ! ケイジー! お前はカウボーイみたいなことをし・・あばばばばああっ!!?」

 

 

 「あ、あわわわわわ・・・ほ、放馬ー!! ケイジ君が松風さんを乗せて放馬しましたー!! て、テキ、ケイジ君を捕まえてきます! ケイジ君~!! 練習するならせめて鞍着けてーー!!」

 

 

 そして練習をするためだろうが、手綱を松風騎手の身体に引っ掛け、ぐいと引っ張って自分の背中に乗せる。そこから立ち上がり、鞍を持たずにすぐさま爆走開始。

 

 

 練習好きな分、ケイジもこのサボタージュは鬱憤がたまっていたのだろう。思いきり走り、それに揺られて落ちないように踏ん張っている松風騎手、それを追いかける真由美ちゃん。

 

 

 いつものノリが戻ってきたのに嬉しく思いつつ、ちゃんと真由美ちゃんの言葉に戻ってきたケイジが鞍をつけたのでとりあえず軽く歩かせてから坂路からスタート。

 

 

 頑張ろうケイジ。お前がちゃんと戦えるように俺も支えるからな。




 目指せマツクニローテ完遂。あらためてキンカメ時代ってスイープトウショウやハーツクライ、コスモバルクにダイワメジャーとメンツが濃い。


 そして同時にあのダービーの勝利を越えて、古馬になっても怪我無く現役のキンカメがいたらハーツクライと同じようにディープインパクトに迫る。勝ちを拾える器、可能性を感じるのも納得。もしもの世界線があったら是非見たいですね。



 ケイジ やるならとことんやろうぜ! ってことでマツクニローテを提案。無事に受け入れてもらえたのでウハウハで練習開始。目指すは前代未聞の新記録。日本に刺激と元気を与えるんだよぉ!!


 久保さん マツクニローテとかキンカメとか創作レベルの話、昭和のローテレベルだぜってことで断固拒否。でも後日承認されたことを知って常にコンディション維持のために出向いてくれた前田牧場長とトモゾウからよりケイジがぐっすり眠れる、心地よい藁の敷き方を学んでノートにまとめた。


 葛城調教師 昭和張りの無茶なローテに挑む不安もあるが同時にケイジならこなせる可能性があると踏んでもいるのでドキドキ半分不安半分だった。けれど吹っ切れたので伝説を目指して戦いに行く。ルドルフを越えろ!


 真由美厩務員 キンカメ時代あたりはちょうど学生時代に知っていたのでケイジが挑むと聞いて驚くも同時にテイオーの子どもゆえに早熟なのを考えても早めにとれるところを取って早く引退しても種牡馬として評価されたりしたほうがいいのかもと内心思う。ケイジの行動を後日マンガにして描いてみた。


 松風騎手 ケイジにグルグル巻きにされて、背中に乗せられて練習に勝手に連れ去られようとしていた。この後練習でくたくたになったけど真由美とほのぼのいい時間を過ごせたり、まさかのローテに驚くも、ケイジなら・・・と内心燃えている。


 前田牧場長 ケイジがマツクニローテやらせろと駄々をこねたのを聞いて名は体を表すなあと思い苦笑しつつも、やらせてあげてくださいと背中を押す。他のケイジの一口馬主もケイジのやりたいようにやらせてあげようと一致。後日差し入れにリンゴとバナナを送った。


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青春の幕開け 弥生賞(GⅡ)

 お気に入りが三倍以上の700人越え、評価人数もやべーことに・・・ランキングまで乗って色々おったまげていました。いや、馬娘の名作はたくさんあるのにここまでこの作品が見られて嬉しいやら、高評価をたくさんもらえてうれしいです。


 今回はちょい雑ですが、急ぎで出しちゃいます。



 ケイジの問題行動メモ ライブを乗っ取りライブの曲、衣装完全無視。裏で打合せしていたレースに参加していた全ウマ娘たちと一緒に『天使〇ラブソングを・・・』のアレンジを加えたメドレーリレーを開始。18人全員にスポット、センターをとれるように采配を振りつつケイジ自身はラップ、男性ボイスや難しいパートを担当。


 「ウイニングライブはファンへの感謝! そんで今日はアタシらウマ娘をこの世に送ってくれた三女神ら多くの神様の感謝も一層に乗せた特別回! いつも以上に盛り上がっていこうぜー!!」


 この言葉を皮切りに会場スタッフも観客もノリノリにさせてのっとりライブ開催。レースごとの曲をガン無視&ライブ時間の変更等など問題が起きたが苦情以上に好評が多すぎたために口出しできず。以降ケイジ、シリウスのアンコールやライブの内容の現場変更、アドリブ、ケイジの仕込みは黙殺されるようになった。


 「ほうほう。そんなことがあったんですねえ。ケイジ君。ホンマ規格外やなあ」

 

 

 「いやはや、まさか今の時代にメジロマックイーン、シンボリルドルフ、オグリキャップレベルの過酷ローテーションをやる。しかも馬からの提案なんて今でも夢かと思いますよ」

 

 

 『うーん。リンゴも旬ではないなあ。人参かミカン、あ、ゴーヤーとかほうれん草もいいなあ。今度食べてえ』

 

 

 『んー・・・わたくしとしてはもう少し噛み応えと蜜の出る感じが・・・ああ、それとケイジ。あの走りの技術を教えなさい』

 

 

 『はいよ。もうひとっ走り行きますか』

 

 

 いよいよ迫るトライアルレース弥生賞。……の前に最終調整に来たジェンティルちゃんに俺のコーナリング技術を教えつつ俺は俺でジェンティルちゃんの末脚の技術を盗んでいる最中。

 

 

 藤井の兄ちゃんが来て取材。俺らにもプレゼントとしてリンゴとにんじんをくれたけど、やっぱリンゴの旬は秋頃くらいだね。うーん。そんで塩味も欲しくなる今日この頃。ジャガイモ、ピーマン。大根、ああー・・・おでんが恋しい。ハフハフしつつからしをつけて食べたい。

 

 

 「ま、こっちはちゃんとそちらの声を汲んで記事書きます。で、なんですがやはりケイジ君は大逃げで行くんで?」

 

 

 「そうですね。本人・・・ではなくケイジが好むしあっているのもありますが、あの馬体ですから馬群に飲まれた際に出るのに苦労します。出来る限り前目につけてのスタミナ勝負。これで行きます」

 

 

 「いやはや、まさかの大逃げこそが最適の武器とは、この時代にこの個性派が出てくるのはこっちも筆が乗りますわ。で、ジェンティルちゃんは熱発から回復したとはいえ、疲労は残っているでしょうに大丈夫です?」

 

 

 藤井の兄ちゃんが取材で聞いている通り、ジェンティルドンナ。まあジェンティルちゃんつい先日まで熱発していやがった。シンザン記念は文句なしの快勝だけど、まだ賞金が足りないからチューリップ賞に出るらしいのだがこの調子。俺も今日はペースをごまかしているがそれでも食らいつくのが遅いのだから不調は言わずもがな。

 

 

 「ケイジ君が併せてくれるのでちゃんと程よくできていますし、ぎりぎりまでしっかりと仕上げていきますよ。この子は必ず化けてくれます」

 

 

 「実際あの力強い走り。傍から見ても分かるコーナーと直線での足運びの変化。それがティアラ戦線の中で磨かれて肉体と共にどれほど光るかこっちも記者目線抜きで気になりますからね」

 

 

 そういう訳なのでこっちも調整は軽めにして、馬の習性を活かしての技術を磨くことに。というのも馬というのは群れを形成して、その中で走りを学んで速くなっていく習性をもつ動物。併走をするのも闘争心を養う、馬同士のレースへの慣れもあるが、やはり優れた技術を学んで強くなるための狙いも大きい。

 

 

 熱発が引いたけど不調のジェンティルちゃんに負担少なく次のレースに挑むための武器を搭載しつつ過ごすにはどうすればいいか。そんなこんなで文字通り馬が合っているとみられている上にコーナリング技術に定評があり、息の入れ方を知っている俺ならジェンティルちゃんがカッカしづらい。技も教えてもらえるのでベストな練習相手と白羽の矢が立ちました。

 

 

 俺もいいけどね。あの末脚や勝負根性。学ぶところは多い。今も話を聞きながらパカラパカラ走って戻ってきたでござる。

 

 

 『いいか? こんな感じで重心を低くしつつ、細かく足を刻んで走るのがコーナーを奇麗に、最短距離で走ったり、速度を上げていけるコツ。どう?』

 

 

 『・・・・んー・・・ある程度は分かりましたわ。なるほどこれは持っておくに越したことがない武器ですわ』

 

 

 『そいつは何より。出来る限り疲労を抑えて、しっかり休みつつやるんだぞ』

 

 

 ジェンティルちゃんもなんやかんや天才たちが集う中央競馬のなかでも更なる大天才の一頭だけあってあっという間に俺の技術にピコんと来ているようだ。じっくり俺の後ろから走りを見て、最初は後ろ、次は外側に回って全体を見るようにしただけなのに・・・・・これがディープインパクト産駒最強牝馬候補のトップか。

 

 

 『貴方はお父様の走ったレース。あー・・・弥生賞? に行くのでしたよね?』

 

 

 『そ、ここからもしばらく俺らは男の子、女の子限定のレースを走っていくし、一緒にやるとしたら年末くらいかなあ』

 

 

 『年末ですかあ・・・ま、いいですわ。そこに行くまでに必ずわたくしは最強になる。その際にまたやりましょう、ケイジ』

 

 

 『あいあい。そっちこそ気を付けてなー』

 

 

 練習を終えてすぐに手綱をひかれていやいやしつつも戻っていくジェンティルちゃん。病み上がりが暴れんなよ・・・暴れんなよ。

 

 

 「おっつーケイジ君。調子はどう? 松風騎手も。この前は災難だったようで」

 

 

 おっすおっす藤井の兄ちゃん。指かみ千切ったり、蹴り飛ばすよりはいいだろ? アメリカには人を食おうとした馬もいたんだぜ? 原因は人だけど。

 

 

 とりあえずヘドバンして、舌をペロンと横に出して絶好調アピール。最近の春は冷えるが、俺基礎体温高めだからむしろそれくらいがいいわ。

 

 

 「むにゅあふ」

 

 

 「いやーまさか馬に縛られるとは思いませんでした。ええ、問題ないですよ。藤井さんも連日通ってくれてありがとうございます」

 

 

 「ぶふ! あーシャッター切ればよかった。それは何より。いやーボクは歴史好きからの競馬好きになったもんですから、終わった血統と言われているパーソロン系、しかも皇帝の直系となればもう推さずにはいられませんわ。ディープの血もいいですが、ボクはケイジを応援しますよ」

 

 

 「こちらもですよ。ケイジは最高の馬です。それを譲るつもりはない。それに、ある意味ここからがケイジの本領でしょうしね」

 

 

 ようやく中距離だもんな。2歳限定の重賞も多いけどやっぱ大体2000メートル前後だし。

 

 

 で、まあ俺の2000メートルの戦績は新馬戦とはいえ大差勝ち。松風も俺が短距離だとエンジンかかるのが遅めなのもあってこっちだと言ってくれるんだろうなあ。

 

 

 「そいつは力強く言いますな。そしてそれが嬉しい。クラシックを征するには2000メートル以上走る力が必要ですし。んじゃ、記念に一枚とって、今度あげますわ」

 

 

 よし、変顔チャンスだな! はい、マーガリン。

 

 

 この後、俺の変顔ときりっとした松風のミスマッチな一枚の写真が送られて、うちの陣営爆笑していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『いよいよ始まります生涯一度のレース! そのレースへの資格を手にするトライアルレース弥生賞! 皐月賞を目指し本番と同じく中山の芝2000メートルに集った16頭の優駿たち。分厚い雲が空を覆い寒さがぶり返す中、ここだけは違うぞと熱狂しています』

 

 

 調整を無事に済ませ、寒さがぶり返したけど俺にとっては問題なかったでござるということで三月半ば、来ました弥生賞。皐月賞の優先出走権をかけたトライアルレースの中でもひときわ大きなもので、いってしまえばスーパーGⅡレースといったところか。

 

 

 『それもそのはず。ここにきているのは皇帝の一族最後の希望、ケイジ。今日は勝負のために精神統一でしょうか? フライヴェールで顔を隠されていますね』

 

 

 そんなスーパーGⅡでこれをしやがるかテキのおやっさん!! くそが! マジでなんも見えない!

 

 

 運営がうるさいからってこれをするかこのやろー! みんなに笑顔と笑いを与えていただけだろうがこのやろおお! ぬがー! 身体が熱くなるからスイッチ入りやすいがそれはそれでなんかイヤダー!

 

 

 「これでもダメか・・・ぐはぁっあ! やめろケイジ! 鼻で小突くんじゃない!」

 

 

 「ヒヒン! びふひ!」

 

 

 『ウルへーこのやろ! 馬の嗅覚と耳をなめるな! おやっさんの加齢臭から場所探ってみぞおちどつくこともできるんだぞ!』

 

 

 『と思っていたら、調教師にボディーブローを連打していますケイジ。そして何やらテキの回りをグルグルしようとしたら押さえ込まれています』

 

 

 「ああ・・・ケイジ君が目隠しされて、手綱をつけさせられて本番の場所に歩いていく・・・うへへ・・・スケッチと写真を・・・」

 

 

 おいごら真由美ちゃん! ナニ考えてやがるというか想像してやがる!? どこぞの久保さん・・・じゃねえ! 悶絶調教師を思い出しちゃったじゃねーか! 休暇なのに関係者の場所にいると思えばスケッチのポジション取りのためかよ! 汗のにおいと心音で変な興奮しているのまるわかりだからな!

 

 

 あーもー緊張も興奮も別ベクトルでまいっちゃうよ。何だって俺らのメンツは変人ぞろいなんだ。

 

 

 ん・・・歩いていくと芝についたなあ。それに・・・あー・・・馬になって毎日走りまくって、馬の場合基本立ちっぱがあんまり負担にならないから半自動、ぼーっとしても歩けるし、目の前真っ暗でゆらゆら揺れて・・・・・あー・・・熱の入った体が程よく冷やされるのが心地よくて・・・・

 

 

 すー・・・・・すー・・・・

 

 

 

 『さあ、この名馬もまた黄金の血筋を継ぐもの。フェノーメノ今日も仕上がりは良さそ・・・おや? ケイジ、何やら立ち止まっています』

 

 

 「起きろー! ケイジ寝るなー!」

 

 

 「ヒヒン!?」

 

 

 ・・・・・はっ! やべえやべえ、寝てたわ。あー朝飯の牧草食べなきゃ・・・

 

 

 「待て待て! レース場の芝を食べようとするな! 昔のレース場で花を食べようとした馬じゃあるまいに。ええい、とるぞ!」

 

 

 お? 真っ暗だった視界が明るく。ああ・・・光があふれて・・・晴天じゃなかったね。今日・・・

 

 

 そうだそうだ。俺弥生賞に来ていたんだった。目隠しされていた中ゆらゆら歩いていたんだったなあ。よし、じゃあ軽く顔芸しつつ歩きますか。

 

 

 『ようやく再起動したようですケイジ。今回は実に3か月ぶりのレース。その間に実力と経験を磨いてきたライバルたちにその逃げは通用するのでしょうか。1番人気の期待、そしてあのデビューで見せた走りを見せられるのか』

 

 

 耳の運動~顔の運動~首の運動~はぁーん。いい感じ。

 

 

 移動していたら松風が乗って、より気持ちが戦闘用に切り替わり始める。

 

 

 「ケイジ、もしかして寝ていました?」

 

 

 「・・・うたたねって感じです。今はもう大丈夫でしょうが・・・緊張ってものがこいつといると薄れるよ」

 

 

 「ケイジは胃薬いらずかもですね。毎日ご飯もりもり。今日も大丈夫そうでしたし」

 

 

 馬はストレスやらで大体皆胃薬と友達だものねえ。レースのプレッシャーやストレスで大変な子もいるし、ほんと、繊細な生き物だよ馬は。

 

 

 そんな繊細な生き物になったケイジちゃんなので、今日は疲れを残しすぎないように最初から飛ばすか。

 

 

 「ケイジちゃぁーん! ファイトー!」

 

 

 「アタシたちがここでもテレビの向こうでも応援しているわー!! トライアル勝って、一族連続のクラシック勝利を手にしちゃってぇん!!」

 

 

 「ヒヒーん」

 

 

 ムランルージュのオカマさんも、あ、この前よりは少ないけど、お店の時間でいないのね。今日もちゃんと勝ってお客さんとうまい酒飲めるよう頑張らないと。

 

 

 本場馬入場して、ゲート前になるとちょっとグルグル回りつつ待つ。今回の俺の番号は3番8枠。やや・・・・外寄りの真ん中? 逃げを打つにしては微妙な場所。内か外かの寄っていたほうがやりやすいんだがなあ。

 

 

 「・・・馬場はそれなり。冷えも問題なさそうだし・・・うーん。飲み込まれる前に逃げて、途中息を入れて脚を溜めようか」

 

 

 『了解。一番俺らが嫌なのは馬群に飲まれることだもんな』

 

 

 最初は飛ばして第二コーナーで一度息を入れて、第三コーナー半ばからのギアを最大まで仕掛ける感じかあ。首をポンポンと叩きつつ気合を伝えてくれる松風にコクコクと頷き、オッズを見る。

 

 

 んー・・・3か月ぶりということもあってかオッズは2,9倍の1番人気。とはいえほかのメンバーとあんまり差がないし、良い感じかな?

 

 

 『さあ、ケイジ今回は普通にゲートに入ります』

 

 

 んふぅー・・・・さあ・・・・思いきりやるための気持ちを落ち着ける・・・・ゲートが入る音を聞くたびに気持ちを沈めて沈めて・・・

 

 

 『ただいま全頭ゲートイン完了・・・・スタートしました!』

 

 

 開いた音を聞いたときに爆発させる!! 居合スタートダッシュでイクゾー!!

 

 

 『おおっとケイジ! ゲートが開くとほぼ同時にスーパースタートダッシュを見せる! あっという間にハナを切って先頭に出たぞ!』

 

 

 ここで躓くわけにはいかねえ! おやっさんらが俺の我儘汲んでくれたんだ。手柄の一つ、優勝一つ持ってこなけりゃ男が廃る!! スプリント戦でスピード勝負は覚えたんだ、ついてこられるかー!!?

 

 

 『ケイジ速い! 速い! 先頭はケイジ! 二番手に食らいつくフェノーメノもいますがその差は5馬身! 最後尾まで20馬身にまで伸ばす!!』

 

 

 む。思った以上に食いつくな・・・松風、どうする?

 

 

 「・・・一息入れる。俺が合図を入れるから少し呼吸を整えていこう」

 

 

 『あっという間に1000メートルを通過。タイムは58秒1これは早い! 3歳なりたてのタイムではないぞ!』

 

 

 んーもう少し息を入れなければもっと早かったかもな。でも、おかげでいい感じに余力を残せての第三コーナー。おいおいいいのかいホイホイ俺に経済コースをくれちゃって。

 

 

 俺は息を入れながらでも足を鈍らせずに加速を入れちまう牡なんだぜ?

 

 

 『松風!』

 

 

 「行くぞケイジ!」

 

 

 俺が鼻息を荒くすると同時に松風も読んでくれていたようだ。ぱちんと鞭を軽くたたいて仕掛けろという。

 

 

 こちらも最終コーナーを越えての直線。そこに向けての足の使い方を変えての直線用にシフトチェンジ。もっと早くいくぞ。全然息が切れていねえんだ。万が一も許さん!

 

 

 『ケイジ影すら踏ませない! 最後の直線に入ってまだ伸びる! 逃げて差す! 後続誰も食らいつけない! 漢単騎駆けで目指すは一番槍、一番手柄! まるで足色落ちることがない! 2歳チャンピオンの強さは3か月の時を越えて更に強くなっていた』

 

 

 もらうぞ優先出走権! 賞金! 俺が戦いたいライバルたちが先で待っている舞台への切符は譲らん!! 未来の盾の覇者だろうが今は俺が強い! 悪いがこのまま勝ち逃げじゃぁーい!!

 

 

 『もはや独走! 一人旅のままケイジゴール! 二着に10馬身差をつける大圧勝劇! 最高の形で皐月賞への切符を手にしましたケイジ! こいつの傾奇は、強さは止まるところを知らないのかぁーッ!!』

 

 

 止まるんじゃねえぞ・・・あかん死ぬぅ! ってシャレにならんわ! 一人ツッコミしつつ、息を整えて、あー疲れも抑えきれたな。経済コース走れたし、鍛えた肉体に柔軟性上乗せしたかいがあった。

 

 

  『大逃げで勝ち切りタイムは1分55秒2!! 2000メートルレコードを、ケイジ新馬戦で見せたスーパーレコードをさらに更新! 天馬、大王、天才、黄金の子どもたちの時代の中にかつての日本を席巻した絶対を持つ皇帝の血筋が名乗りを上げました!

 

 

 今年のクラシックに一頭の傾奇者が、若武者が無敗のまま乗り込んできます!! 復権を、そして父の果たせなかった悲願を手にするために更なる戦いに身を投じるケイジ!! 今後が楽しみな一頭です!!』

 

 

 おうおう!! ディープ、キンカメ、タキオン、ステゴの血筋にも負けねえぞ俺は! チャレンジして、どんどん次へと進んで大笑いしてやるんじゃい!!

 

 

 そして皆さんお待たせしました! どうぞお手を拝借したく存じますは

 

 

 「いい走りだったぞケイジ。そして、うん。思いきり叫べ。クラシックに行く名乗りを」

 

 

 『ケイジ、スタンド中央に移動していきます! この馬にはこれがつきもの! 会場の皆さんも右手を構えています』

 

 

 右にぴょーん

 

 

 「「「オウ!!」」」

 

 

 左にぴょーん

 

 

 「「「オウ!!!」」」

 

 

 

 息を吸ってー・・・・・・ハイ!

 

 

 「ビヒヒヒヒィィイッッ~~~~!!!(ィいっよっしゃぁああああああああ!!!!)」

 

 

 「「「っ・・・うぉおぉぉおおおおおおおお!!!! ケイジ! ケイジ!! ケイジ!!」」」

 

 

 『傾奇者の勝鬨が! 中山競馬場の観客一同を動かしてのケイジコールを巻き起こす!! 曇り空、寒ささえも吹き飛ばす熱を出す!! これがケイジだ! 最強と皇帝の血をひく戦士だ!!』

 

 

 さあ、あいつらが待つ大舞台への花道は開けた!! ここからもって面白くなるぜ! お前さんらお財布の用意と、予算の相談をしっかりして来てくれよ! じゃ、バイビ~☆ 緑が燃える季節、そして山が赤々とする季節の時にまた会おう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『時代を超えたTM対決再び』

 

 

 かつて、国営放送も取り上げるほどに競馬を盛り上げ、その戦いに、ドラマに、強さに日本を沸かせた二頭がいた。無敗の二冠。怪我に泣かされ、ライバルたちとしのぎを削りつつも決してくじけずに戦い奇跡の復活、不屈ぶりを見せた皇帝シンボリルドルフの子どもトウカイテイオー。

 

 

 日本初の獲得賞金10億越えホース。最強ステイヤーでありメジロ最高傑作。中距離も強くまさに退屈を生み出しかねない強さであり、誰もが見惚れたターフの名優メジロマックイーン。その二頭がぶつかり合ったレースはたった一度しかなく、当時の日本最強の二頭のライバル対決は意地悪な運命によって一度だけで終わってしまった。

 

 

 親の悲願は子に託すのがブラッドスポーツである競馬。子ども同士のライバル対決の決着をだれもが望んだだろう。しかし二頭の後継馬はなかなか現れず、時代から消えてしまうと思われていた。が、違った。黄金の旅路を歩んだ名馬ステイゴールドの、黄金の血脈によって名優の血は名を変えて現代に蘇った。夢の旅路ドリームジャーニーをはじめとして現在三冠馬であり黄金の暴君オルフェーヴル。そしてメジロマックイーンを彷彿とさせる芦毛の大型馬。名優の、そして黄金の血を運び戦う不沈艦ゴールドシップ。名優の血は孫の世代になり2000年代に入ってなお競馬界を沸かせている。

 

 

 一方トウカイテイオーの子どもたちもGⅠ馬が出たが、多くは気性難ゆえに騙馬となり、走っても牝馬ということもあって次世代の直系種牡馬となれる子が恵まれなかった。このまま彼の後継者は消えてしまうのか。そんな中生まれた最後の子ども。いま日本競馬界のみならずお茶の間も湧かせる人気者となって覇道を目指す傾奇者ケイジ。

 

 

 帝王の子どもが、名優の孫が、今同じ時代、同じ舞台、同じレースでぶつかろうとしている。その最初のレースは皐月賞。最も早い馬が勝つと言われているこのレース。既に2000メートルでレコードをたたき出しているケイジが勝つか、その速度さえもすりつぶして自分のペースにするゴールドシップが勝つか。彼らケイジの頭文字からK ゴールドシップの頭文字からG を取ってKG対決が行われるであろうが、往年の競馬ファンにはそれだけではない。

 

 

 KG対決のもう一つのなかにはTM対決がクラシックで行われた『もしも』があり、そしてそれが始まろうとしている。今年のクラシックは有力馬、才能が殊更多く集っているがこの二頭の勝敗が注目を集めるだろう。競馬界がより盛り上がる未来に◎をつけたい

 

 

 

                                     記者 藤井

 

 

 




 次回は何も挟まなければあのゴルシのレース回。そして久しぶりの再会。


 ハジケリストになったゴルシと、相変わらずのケイジや如何に?


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黄金の不沈艦VS顔芸百面相 皐月賞(GⅠ)

 お気に入り1000人突破!!! 皆様ありがとうございます! 本当にありがとうございます! ランキングもまさかの30位。応援感謝ばかりです!




 葛城「おおーケイジの二つ名が一つ決まったなあ」


 ケイジ『マジ? 何々?』


 葛城「顔芸百面相だそうな。お前にはある意味ぴったりじゃないか? 警察からも探偵からも逃げている勝利を盗む怪盗って意味で」


 ケイジ『このレースの勝利は頂いていくぞ明智君! ってか? コノヤロー武士とは逆の職業・・・いや。侵略戦とか領土獲得を考えれば間違いでも・・・? あ、武士ッて始まりが自警団だから違うかてか明智君ポジ誰よ?』


 久保「嬉しそうだなあーケイジ~いい顔してるぜ~? 今度怪盗コスプレしたケイジ描いてみるか?」


 ケイジ「ヒフン! ヒン!『いいねいいね。出来ればシルクハット、杖は馬具みたいにつける感じでよろしく!』」


 真由美「け、ケイジくーん。この前のわちゃわちゃ弥生賞の時のものを擬人化して書いてみたよ~」


 ケイジ『俺ガッツリ縛られてんじゃねーか! しかも勝負服をいい感じに着物にしやがって! センスがいい分尚更あれだー!』


 真由美「く、首を凄く横に振っている・・・いやだったのかな?」


 久保「緊縛される絵面とか嫌だろ。さて、トモゾウさんから教わった寝藁の敷き方、後差し入れの漫画を置く棚を用意しますか」


 ケイジ『やったぜ。あ、そうそう。ここら辺に本棚置いて、で、最近続きをみたかったのがここで―』


 『いよいよ始まります牡馬クラシック戦線第一弾皐月賞。最も速い馬が勝つと言われるこのレース。GⅠ、そして三冠を求める優駿、ホースマンたちが今年も集いました』

 

 

 無事に出走枠をもぎ取れました皐月賞。最も速い馬が勝つと言われる理由は、まあいろいろあるけど一つは早熟。短期間で成長出来る子たちだからこそ勝てると言われる部分があるこのレース。弥生賞や2歳戦線から大きく距離が変わるわけではないのでスタミナよりも足の速さを求められるからこそそういわれるのかしらね。

 

 

 『雨が上がったとはいえ今日の芝は稍重。この馬場を18頭どう走り抜けるのか』

 

 

 そうなんだよなあ。昨日から雨降って、今は上がっているけど馬場が荒れている。俺は砂浜やわざとそういう場所での調教で稍重、不良馬場でも走れるよう鍛えているけど、それでもこの荒れ模様はねえ。

 

 

 『新たな時代を切り開く若き新星たちを見に来ようとここ中山競馬場まで10万人の観客が押しかけています。その熱気たるや凄まじいもの。注目されるのはワールドエース、ディープブリランテ、グランデッツァなどなど多くの才能が集います』

 

 

 んまーしかし、ほんとこの盛り上がりは朝日杯を超えるレベルだ。近年ちょっと見ないレベルのお客さんの入りようなんじゃないのこれ? 声だけで肌にびりびり来ちゃうんだけども。

 

 

 『しかし注目されているのはこの二頭でしょう。ここまで5戦5勝。2000メートルのレコードを既に所持、更新している怪物。テイオー産駒最後の一頭であるケイジ。体重は638キロ。仕上がりもよく今日も元気そうに歩いております』

 

 

 理由は分かっているけどね。藤井親子の書いた記事、根回しもあって何と全国のお茶の間、ゴールデンタイムでも俺たち世代、そしてオルフェーヴルやらテイオー、マックイーン世代の事が取り上げられる。特番も作られるという大事に。しかも割と好評。

 

 

 考えればあの時代からはや20年以上。あの時お兄ちゃんお姉ちゃんだった人らは4,50のおっちゃんにおばちゃん。昔のロマン対決が血を繋いで実現するというのもあってかみんなかなり乗り気で協力してくれたそうな。

 

 

 『そしてもう一頭。名優の面影を色濃く残す芦毛の馬体が今日も映えます。ステマ配合の半兄たちにGⅠ5勝。夢の旅路ことドリームジャーニー、昨年に三冠達成。金色の暴君オルフェーヴル。自身もそれに負けない有望株。黄金の不沈艦ゴールドシップです』

 

 

 そのおかげでこの熱狂。大舞台のなかでこいつと再会して、戦えるんだから感謝しかない。すっかり白さが増して、馬体も出来上がってきているようだなアこいつは。

 

 

 「ヒヒン」

 

 

 『お久。ゴールシ。元気そうじゃないの』

 

 

 『おっと。ケイジ、自らゴールドシップに歩み寄って頭を下げます。挨拶でもしているのでしょうか? この二頭はデビューして少しまでは互いに併せもし仲良しだとどちらの陣営からも言われています。この親友でありライバル対決の前にほほえましい光景を見れるのでしょうか』

 

 

 「ヒヒーん」

 

 

 『fa(うまぴょい)ou♂』

 

 

 『ああん? 見せかけで超ビビってるな?』

 

 

 『誰がてめえなんか! テメエなんか怖くねえ!!』

 

 

 いきなり文字通りのご挨拶をされたので煽り返したらいい返しをくれた。流石ゴルシ。俺の親友でライバルだぜ。

 

 

 『おおっと! ケイジとゴールドシップ双方ににらみ合ったと思ったら顔芸を開始! これは威嚇しているのでしょうか?』

 

 

 「ヒヒーン。ひんひん」

 

 

 『わははっははは! 相変わらず元気そうでよかったわ! 大体一年ぶりくらいか?』

 

 

 「ビヒ、ヒヒひン」

 

 

 『ケイジこそ元気そうじゃーん♪ おいらは何時でもいい感じよお。ジャスタウェイからも聞いているぜ。強くなったんだろー? オイラも今日は本気で行くぜー』

 

 

 おうおう。嬉しい言葉をくれるじゃないの。そして、伊馬波のおっちゃんもお久。元気そうねえ。

 

 

 『おっとケイジとゴルシ、仲良さそうに笑っています。そして厩務員同士で挨拶を。和やかな光景が繰り広げられております』

 

 

 勝負の前の礼だからね。そして、ゴルシのために用意したこれをくれてやろう。テキのおやっさん、おやっさん。手をちょいとかしてくれ。袖をグイグイ。

 

 

 「お、おお? どうしたんだケイジ。俺の腕を・・・首のちょい下に?」

 

 

 そうそう。そのポジションね。で、喰らえゴルシ、伊馬波のおっちゃん! これが葛城厩舎、ケイジ陣営の技じゃい!

 

 

 『ぶふぉす! な、なんだよそれ。ぶわはははは! いいなこれいいなこれ。今度俺も伊馬波のおっちゃんとやろ』

 

 

 「ぶく、っくく・・・け、ケイジ君やるねえ・・・ゴルシに負けていないよ」

 

 

 『おおっとケイジ、なんとゴールドシップに向かってアイーンを披露! これにはゴルシも爆笑と笑顔。会場も笑いに包まれるという、中山競馬場の空気が熱気のベクトルが変わっております』

 

 

 ウケたウケた。いやーゴルシに再会した時に用意していたネタを使えてよかった。激しいクラシックの激闘が始まるんだ。楽しい癒しも必要よね~

 

 

 「全くお前は・・・・くく。さ。行くぞケイジ。今日もお前の大舞台だ」

 

 

 挨拶も終わったので俺もゴルシも一緒にパドックをパカパカ。そうそう。ようやく待ち望んだクラシック。俺に流れる血が背負い、求め続けた舞台。たどり着いたがそこからまた次のスタートとゴールがある。そこに行けるかどうか。先を占う大事な戦いだ。

 

 

 「おはようございますテキ。何というか・・・相変わらずですねえ」

 

 

 「そんな感想をクラシックに抱くとは思わなかったよ。まあ、うん。気負い過ぎずにいこう。重馬場でも行けるように仕込んだし、ケイジも不調はないほど。完璧な仕上がりにしてきた。よろしく頼むよ松風騎手」

 

 

 「もちろんです! 行こうケイジ。ここからが本番だ」

 

 

 おうよ松風! 目指せ若武者ナンバーワン! 今年も最強の称号も狙っていこうぜ。

 

 

 松風も乗っていよいよ本場馬入場でござる。あ、ちなみに俺は今回は3番2枠のまた一番人気。おう。出来れば二番人気くらいにしてくれない? ゴルシの方が面白いってー。

 

 

 「ケイジー! 頑張ってねー!!」

 

 

 あ、蓮君じゃん。そろそろ新学期も始まるだろうに、来てくれたのかあ。後ろにいるのがお母さんかな? 今日もよろしくぅ。

 

 

 「ケイジちゃーんファイトォー!! 三冠の全部あなたのものヨぉおおお!!!」

 

 

 「マックイーンの孫に負けちゃだめよケイジちゃん! ゴールドシップも強いけど貴方こそナンバーワン!」

 

 

 「アタシたち天使が応援してあげるわ! だから勝ってきて~」

 

 

 「頑張れーケイジーテイオーのリベンジも果たすんじゃよー」

 

 

 「ゴールドシップさんも応援しますが、ケイジちゃんも頑張ってね~」

 

 

 おお、オカマバーの皆さんに、いつぞやの老夫婦。あ、牧場の近くのおっちゃんもまた来てくれている。有休たまっていたのかね。俺の今日のオッズは4倍ジャスト。頑張って勝って儲けてもらえるようにするよ。

 

 

 『さあ、モンスニー入りまして、続いてアダムアドンがゲート入り。今回のレース場は特に第四コーナーが荒れており加えて先日の雨。これはかなり大外回りからの勝負になりそうです』

 

 

 「ちょっと見てきたが、あれは酷かったからなあ・・・逃げで少しでもいいところを走らないとどんどん外に出されて無駄な距離を走らせるのは駄目だし・・・」

 

 

 『つまりはいつも通り走るけど経済コースではなくやや真ん中から内側よりを狙う感じかあ。うーん。今回は反対かなあ。少しギリギリを攻めたほうがいいと思うぞ』

 

 

 ある程度ゴルシのレースは覚えているから知ってるけど『アレ』があるしなあ。それに、俺の知る未来とはよりやばい形での進化をしているかもだし、正直余裕がどこまであるか、ある程度は合わせるが、最悪後半は無理やりにでも最短距離をぶっちぎって逃げ切るほかない気がする。

 

 

 「とりあえず、今回は逃げがお前以外にも2頭いる。最悪そいつらから少し離れてもいいから先頭をキープして、少しでもいいところを走るぞ」

 

 

 「ヒ~ヒン」

 

 

 『そこは了解。さ、そろそろ始まるぜ松ちゃん・・・・開いた!』

 

 

 『スタートしました!』

 

 

 ゲートが開いてスタート開始! だが・・・

 

 

 『さあケイジのスタートダッシュが決まるが、すぐに追いついてきますメイショウミサワ、負けじとゼクスがついてくる! 三頭の逃げ争いが繰り広げられます!』

 

 

 二頭の逃げがいるんだっけかね。引き離せそうではあるが・・・松風の指示はちょい加速。了解!

 

 

 『その中でケイジハナを叩いて前に出るが、引き離し切れずに1馬身。それを追うはメイショウミサワ、続いて半馬身差、いえこちらも1馬身差をもって食らいつくゼクス。中団を形成して先を走るのはディープブリランテにコスモアオソラ、モンスニー。ゴールドシップはちょっと遅れたか? 最後尾あたりについています』

 

 

 うーん。流石ここに来れる優駿。逃げのレベルが高いし根性も凄い。坂を上っているのにまるで足が落ちないなあ。俺も並の古馬以上の回数坂路をこなして鍛えているけど、ついてくるのかあ・・・よし、んなら利用しよう。松ちゃん、もうちょい早く仕掛けるわ。速度上げる。

 

 

 『おっとどんどん差が開いて三頭の逃げ、ケイジ、メイショウミサワ、ゼクスが中団から6馬身の差をつける。最後尾はゴールドシップとワールドエース。実に先頭と最後尾の差15馬身。1000メートルを通過して58秒7 今日の馬場を考えるとかなり速いタイムです。

 

 

 ケイジ速度を上げていく! お得意のコーナリング技術が炸裂してさらに後続を引き離す!ここからもう仕掛けに行くのか!?』

 

 

 「ケイジどうした! いつもよりちょっと早いし、まだ焦ることは・・・」

 

 

 馬鹿野郎! すでに後ろで『アイツ』が仕掛けている! 今のうちにできる限りいい場所取るぞ松ちゃん! 指示出せ! 俺はこのまま行くのなら最内に斜向レベルではないように少し寄っていくぞ! 出ないとやばい! 思った以上に早い!

 

 

 「・・・分かった! いくぞケイジ! お前の判断を俺は信じる! けど、ならもう少し内に寄れ! まだ後ろの逃げ馬たちは諦めていないぞ」

 

 

 『さあ早くも600メートルを過ぎて第四コーナーへ入りました。先頭は・・・おっとケイジ、先頭に立った上でさらに松風が鞭を使う!? リードは既にセーフティー! 一人第四コーナーを過ぎる中どうしたのでしょうか。

 

 

 後方にゼクス、そして、来た! ゴールドシップが飛んできた!』

 

 

 来やがったな『黄金の不沈艦』ゴールドシップ!! 俺が仕掛けたのを見て足音を速めたの感じたがマジかよ、もう4馬身しか差がねえ! しかもメイショウミサワを抜いている辺り、俺の後ろで一気に中団ごぼう抜きしてきやがった。不沈艦には緑の海原は荒波こそがちょうどいいってかぁ!?

 

 

 「んなっ! ・・・ケイジ粘れ! そのままいい場所を譲るなよ!」

 

 

 「ヒヒィーン!!」

 

 

 あたぼうよ! 不沈艦がなんぼのもんじゃ、むしろ燃えてくるぜ! 不利になりつつある、気が付けば追い込まれていくそのギリギリの中でこそ粘り切って、勝ちを拾うのもまたも気合が入るってもんだ!

 

 

 『いよっしゃあー! 追いついたぜケイジ! 勝負じゃおらぁ!』

 

 

 『上等じゃぁい! 最も速い馬の称号は俺がもらうぞ!』

 

 

 『何ということでしょう! 今まで誰も影を踏めなかった規格外の逃走者ケイジ。その影を踏んで追いつくのはゴールドシップ! もはや二頭の勝負! 叩き合いだ! 大外からワールドエース、内からメイショウミサワ、ゼクス迫るが追いつけない! KG対決第一の舞台皐月賞からこのぶつかり合いを見せて残り200メートル』

 

 

 こなくそッ! 残り1馬身までもう迫っている! こいつの一族といい、こいつはほんとふざけた強さだ! 燃えるのが確かだが、同時に俺の逃げさえも潰すこの追い込みが同時に精神に来ちゃうぜ。ああ、燃える! 滾っていくぜぃ!! こんな大天才と、おんなじ舞台で競り合える機会が来るなんて馬生冥利に尽きる。漢冥利に尽きるってもんだよなあ!!

 

 

 だからこそ負けねえ! お前さんが本気を出してくれて戦ってくれるのなら、俺も全力で戦って勝つのが礼儀ってもんだ!! もっともっと速く! 脚よ動け! 気合を振り絞れ! 

 

 

 『残り100メートル! ゴールドシップ馬身差を縮める! ケイジ粘る! ケイジ粘る! ゴールドシップ追う! 追う! だけど届かない! ケイジクビ差でゴール!!! 不沈艦のワープですらも規格外の逃走者には届かなかったぁああ!!』

 

 

 「ヒヒィビーィ・・・・むふー・・・・・ムフゥー」

 

 

 うぁーきっちぃい~こんなドぎつい追い込みなんて初めてだ。心身削られるなあ。しかし、まだどうにか耐えきれたぜ。

 

 

 『タイムはなんと1分54秒9!! 前代未聞! この荒れ馬場でこのレコードを出してしまうのか! ケイジ変わらず強かった! しかし今まで誰も競り合えなかったケイジにここまで迫り、影を踏み、馬体に迫れたゴールドシップ負けて尚強し! 間違いなく次代を代表する名馬です!』

 

 

 全くだ。あの頑丈さと追い込み、先行を後に使って尚あの強さ。頭の良さもあってマジでディープ、三冠馬に匹敵するレベルの天才だよ。

 

 

 「やったなケイジ。まず一冠・・・そしてありがとう。ゴールドシップを知っている分助けられたよ」

 

 

 『おうさ、でもすぐに俺に任せて指示をしてくれた松ちゃんのサポートあってこそだぜ。そしてゴルシ、ありがとよ。ほんっっんとお前強いな!』

 

 

 『あー勝てなかったでゴルシ~でも楽しかったぜケイジ! そうだろ? なにせゴルシ様だからな。今度は笑いでもお前に勝ってみせるぞ!』

 

 

 『おう! いい笑いをくれ! そんでまだまだたくさんバトルしようぜ。んじゃ、ちょいとやってくるかー』

 

 

 ゴルシと松ちゃんの嬉しい言葉をもらいつつスタンド前に移動。オカマバーの皆も、老夫婦も、蓮君も既に拳を構えている。さあ皆様拳を拝借!

 

 

 右にぴょーん

 

 

 「「「オウ!!!」」」

 

 

 左にぴょーん

 

 

 「「「オウ!!!」」」

 

 

 今日はちょっと首を左右に振りまして。ほい

 

 

 「ッビヒィイィイィイィイイィイッッ『ッ・・・・ィいよっしゃあぁあぁああああああああ!!』」

 

 「「「ウォォオオォオォオォ!!」」」

 

 

 まずは一冠! 速い称号は手に入れた。目指すは三種の神器ならぬ三冠、四冠の勝利!! 今後もこうご期待!

 

 

 

 『皐月の勝利を手に入れたケイジ! 大声援を浴びながら松風騎手と共に去っていきます。なるか無敗の三冠! それを狙える資格はもはや彼のみ! ライバルは未だ多く、ゴールドシップの、黄金の不沈艦が阻むか! 激戦はまだ始まったばかり! とにかく今はこの勝利を楽しむべきでしょう。お祭り男ケイジ。今日も大いに盛り上げてくれました。皇帝の一族ここにあり。夢を見せてくれるか楽しみです!』




 ゴルシワープVSケイジブースト。皐月賞で大逃げの極致と追い込みの極みがぶつかっていました。


 ケイジ 対ゴルシ用プレゼント『アイーン』を見事に決め、大逃げでも見事に勝利。無事一冠確保。このあとゴルシと会話しながら車に乗って帰り爆睡。二日目には完全回復したのでNHKマイルカップに。


 ゴルシ 珍しくやる気を出していたので陣営が驚いていた。負けたけど親友が強いし面白かったしで満足。顔芸に精を出し始める。


 運営 ケイジの珍行動はもはや諦めた。若いころ盛り上げてくれたルドルフ、テイオーの一族の活躍が嬉しい。


 松風騎手 ケイジと折り合いも付いてきた。振り落とされないように最後はがっちりしがみついて耐えていました。


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NHKマイルカップ(GⅠ)&日本ダービー(GⅠ)

 ジャスタウェイ。ジェンティルドンナのイラストですが、個人的にpixivの アルチ 様のイラストが大好きです。もうかわいい、美しい。特徴がわかりやすいししっくりくるしでほんと絵を描ける人ってすごい。


 今回はレース二本立て。次回は休養回。


 『パワースピード、根性。全てをハイレベルで試されるマイルレースNHKマイルカップ。今日も開催される日がやってきました』

 

 

 無事に元気もりもり。腹が減ってはいいクソが出ないといい・・・あれ? 戦だったか。まあ。そんなこんなで無事に挑めますクラシック三冠ともう一つのクラシックと言ってもいいマイルレース。

 

 

 周りの騎手が『ウッソだろお前!』みたいな反応しているが気にしないでござる。だって元気だし獣医さんからも問題なしって言われたからねん。

 

 

 『皐月賞を終えてすぐさまここにも参戦。まさかのマツクニローテを達成してしまうのか? ケイジ。馬体重638キロ。あの激闘の後でもこの元気さ。今日は顔芸をせずにのんびりパドックを歩いています』

 

 

 今日は顔芸しない気分なのよん。それに、あの動物番組とかでもさんざ俺とゴルシの顔芸。そこからドリジャ、オルフェの顔芸も出されるわで間違いなく4月半ばから5月末で馬の顔芸はお茶の間で広がったでしょ。

 

 

 後なー・・・なーんか嫌な予感するんだよなあ。なんだったか・・・ねえ?

 

 

 「今日は大人しいなケイジ。お前の得意なマイルの距離だし、今日は馬場も良。最内につけて戦えるぞ」

 

 

 『そうなんだよなー俺、芝の質は問わんが良の方がより内ラチに、ぎりっぎりまで寄せての最短コースをぶち抜けるから技術面でいえば馬場は泥んこよりもそっちがいいけど。なんだろなー』

 

 

 テキのおやっさんとのんびりだんだん温かくなり、桜が散って緑のまぶしさが増していく季節を感じつつ歩いていくと、お。いたいた。

 

 

 「ひひーん」

 

 

 『おーいジャスター。元気そうだなあ~お久ー』

 

 

 「むふ? ヒン」

 

 

 『あ、ケイジ君。お久しぶり。ここしばらくは併せはジェンティルちゃんにつきっきりだったもんね。それと、皐月賞勝利おめでとう』

 

 

 久しぶりに会ったのは俺とゴルシのマブダチジャスタウェイ。なんやかんや肝が太く穏やかな性格なのもあってたびたび併せをしては互いに技を盗み合っている仲だ。

 

 

 『お前さんこそアーリントンカップ優勝おめでとう。賞金もいい感じに稼げればダービーも出れるんだろう? 頑張ろうぜ。勝ちは譲らんが』

 

 

 『それは僕もだよ。今日はいい勝負にしよう』

 

 

 互いに頭を下げてからまたパドックでくるくる回りつつ足をほぐしていくことに。うーん・・・なんだろうなあ・・・なーんか見落としている。なんだ・・・あん?

 

 

 『シゲルスミオ・・・マツザキシゲル・・・って色全然違うやんけ! じゃねえ! ああ。思い出したぞ! あの件か! ああー・・・あれはなあ・・・』

 

 

 グルグル回りつつも見えた芦毛の馬。おいこらジャスタ芦毛もいいでジャスねえって顔しているんじゃないよ。うーん。後で一声かけておくか。

 

 

 あと客さんよ。俺のローテにケチつけるんじゃないよ。無理だとぉ? それキンチェム大先輩とか汗をかかずにダービー勝利して、二日後にオークス勝利したシニョリネッタ先輩見て言えるのかよ。2400メートルを2日しか開けていないでも勝利。その馬見てあの馬産の神様。魔術師も新たな交配研究に乗り込んだってレベルがいたんだぞコノヤロー

 

 

 そりゃ俺らの時代前後でキンカメとかタキオンとかのケースもあるけどさ。んー・・・あったまきた! 今日は400メートルからスパート駆けて思いきり度肝抜かしてやるぜ!

 

 

 「うーん、朝日杯とおんなじ距離で馬場も良好。ケイジ、僕は5~600メートルくらいからギアを入れていきたいけど、どうする?」

 

 

 『俺はもっと早めにギア上げたいぜ。ぶっちゃけジャスタウェイのあの末脚の爆発力がどうなるか。カレンホワイトレイ、朝日杯で戦ったアルフルートが要チェックかなあ』

 

 

 首を軽く振りつつ縦に振ることでもうちょい早めにと意思表示。

 

 

 「もう少し遅めか?」

 

 

 『違う違う』

 

 

 「なら、早めにか」

 

 

 『そうそう』

 

 

 「よし。なら今日もそれで行こう。ただ息を入れると思ったら指示するからよろしく」

 

 

 ほいほーい。さてさていよいよ本場馬入場。の際にちょうどいいのでシゲルスミオ君に今日わんこ。俺の今日の番号は連戦ゆえの疲労を配慮されての1番人気とはいえオッズはこれまた3,5倍。6番8枠。人気はあるけど今日は負けるかもって評価なのかもね。

 

 

 『オッハー慎〇ママだよーってなわけでごきげんよう。ケイジの部屋でございます。今日のお客さんは同世代の芦毛のシゲルスミオさんでございます』

 

 

 『え? え? え?』

 

 

 『いやー元気そうじゃないシゲル君。ちょっと俺からアドバイスを出したくてさー。ちょいといい?』

 

 

 『あーいいよいいよ? 今日も一緒に五崎君と頑張るんだー』

 

 

 うんうん。いい子だし、それに騎手さんとも折り合いがついているなあ。いいコンビだぜ。だからこそだわなあ。

 

 

 『そっかーならさ、今日は距離が1600でみんな思いきり前に向かって走るから速度も出るし、多分前が壁になるときも出てくるのよ。その時は無理に走らずに抜ける時を待った方がいいぞ?』

 

 

 『え? でもそれだとまっている間に皆ゴールしちゃわない?』

 

 

 『大丈夫だって。途中から嫌でも伸びるだろうし。焦らずにな。でないと怪我しちゃったり、騎手君落ちるかもだから気を付けていこうぜ。お互いに』

 

 

 『それは嫌だなあ・・・うーん。分かった。気をつけるね。じゃ、ケイジ君も気を付けてー』

 

 

 『はいよーそれではウマでごきげんようの番組の時間はここまでになりました。皆様チャンネルはそのまま次はNHKマイルカップとなっております』

 

 

 『さあ、続々とゲートに入っていきまして、ケイジ、バックしたと思えばくるくる回りながらゲートに入ります。顔芸はしなかったが変態ゲート入り方法は出した様子』

 

 

 顔芸はダービーまで残しておきたいのよ。ゴルシとにらめっこをしたいし。

 

 

 俺にとっての二冠目。さあ行くぜ三歳マイルの頂点へ!

 

 

 『スタートしました! まずはいつも通り8番ケイジのスタートからの大逃げ戦法で前に立ちます。そして先頭集団2番手は押し出されるようにカレンホワイトレイ。続いて2番カーヴァンクル。3番手に16番カンジーナ、4番手にアルフルート、続いてワイドアスリートが続く形。マイケルロブスターにシゲルスミオが追いかけます』

 

 

 とりあえず出し特大逃げでゴール目指して馬まっしぐら。今日は早めにスパートをかけて周りを煽る。へいへいどうしたー皐月でいたゼクスやメイショウミサワは食らいついてきたぜー?

 

 

 おお、効果抜群。グイグイ追いかけてきてくれたんでそのまま直線で突き放しまくり。後はコーナーで引きずり回していきますか。

 

 

 『最後方から4番手にジャスタウェイ。その後方にブライトファン。セイントレイン、最後尾にアドンストームが入る形となりました。おおっと先頭のケイジは早くも第3コーナーへ入ります。今日も一人旅。このスピード違反に誰が追い付けるのでしょうか。いま800メートルを通過してタイムは45秒台速い速い!』

 

 

 うーん。弥生、皐月と走ってきたからやっぱマイルは少し短く感じるなあ。早仕掛けでエンジン駆けないと気が付いたらって感じになりそうで怖いなあ。

 

 

 ま、今は問題ないがな。ちゃんと縦伸びの展開にして横の幅が狭い。これなら馬群に飲まれてシゲルスミオも転んだりしないでしょ。

 

 

 さあ、もう一息ギアを上げていくざんす! ここで躓くわけにはいかないんだよぉ!

 

 

 『さあ、独走のままケイジだけが第4コーナーを越えて最後の直線に入る! ケイジを追うアルフルート、カレンホワイトレイが追うが届かない! ケイジのギアがさらに上がる! 伸びる伸びる! 誰も届かないのかケイジ! おおっと。カレンホワイトレイを抜いて今出てくるのはシゲルスミオ! そしてジャスタウェイ一気にごぼう抜きして迫ってきた!』

 

 

 『何イィィイーーっッッ!! ここで飛んでくるかお前ら!? ってか縦長にしまくったせいで横がガラガラな分そっから抜け出してきやがったか! わはは! よっしゃ行くぜ! お前らにだって負けねえぞお~~?』

 

 

 「・・・よし。ケイジ! そのまま押し切れ! 今のお前に鞭はいらない!」

 

 

 よく言った松ちゃん! おうよ! あの二頭も、周りもつぇえ。だけどな、まだ俺が上だ! 仕上がりなら俺の方が差をつけている! だから、今はまだ勝ちは譲らん!

 

 

 『ケイジに迫る二頭! だが届かない! 仕掛けるのが遅かったかケイジ先にゴール! 見事3馬身をつけての圧勝劇! 彼に迫れるのはやはりあの黄金の不沈艦しかいないのか! 連戦の疲れなんてないと言わんばかりにここも圧勝です!』

 

 

 「わ・・ヒヒィーン!」

 

 

 『おうともさ! しかもダービーまでは休める時間もあるからな! たっぷり寝て元気もりもりあんぱ・・・ケイジになってくるんだ。負けねえよ!』

 

 

 『タイムは1分32秒5! これは好タイム! 無敗の6勝。マイルGⅠレースを早くも二つ手にしておりますケイジ。皇帝の孫、天馬のひ孫は格が違うようです』

 

 

 嬉しいことを蟻が十匹。さてと・・・二着は・・・おージャスタウェイに、三着がシゲルスミオ。よかったよかった。落馬もせずに無事に入着。いい仕事したぜ。

 

 

 『くぅ・・・負けたかあ』

 

 

 『うーん。ケイジ君の言う通りにやったけど、ケイジ君が最大の壁だった』

 

 

 『わははは! そりゃあそう簡単に勝ちは譲らんぞ? 俺だって勝ちたいし、まだまだ先があるからな。でも、良いレースだったし、楽しい時間だったよ。ありがとな。そんじゃ、また会おう明智君』

 

 

 『『・・・明智君って誰?』』

 

 

 とりあえずま、勝利もできたのでいつも通りにスタンドへ移動。おい俺の疲れが何だって? まだまだ元気だぜケイジは! さあ、それを見せてごらんに入れましょう。お手を拝借!

 

 

 右へぴょーん

 

 

 「「「オウ!!」」」

 

 

 左へぴょーん

 

 

 「「「オウ!!!」」」

 

 

 ちょっと変顔入れて。あ、受けてくれた。それじゃ

 

 

 「ビヒヒィイィィイィイィンッ!!!『いよっしゃぁあああああぁああいいっ!!』」

 

 

 「「「ウォオオッオオオッ!! ケイジ! ケイジ! ケイジ!!」」」

 

 

 『ケイジコールが高らかに天へと響いて競馬場を揺らします! 次の舞台はいよいよ日本ダービー! 2000メートルもマイルも敵なし! 競馬上半期で挑む最高の舞台に脚を進めるケイジ! 傾奇者の歩みは止まらない!』

 

 

 おうよ! 俺にとっても初の舞台、距離だがやってやるぜ! じゃ、また次回に合おう。サラダバー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ぁはあん。気持ちいぜー・・・あーそこそこ。ブラシでごしごししての扇風機がサイコー』

 

 

 「ストレスも感じていないし、寝藁もいい感じ。顔も・・・うんうん。いい感じだ。ケイジ、お前は本当にすごいやつだよ」

 

 

 レースも終わって、藤井の兄ちゃん。後その親父さんが取材に来て桃とバナナをもらって、体調チェックしてから俺の元気さを何ら問題なし、皇帝の孫、帝王の息子ダービーへという見出しを作ってくれたり、テレビが来て俺の取材に来て、何とあの超大御所芸人志村ヘンさんと一緒にアイーンしたり、一緒にヘンさんはスイカ。俺は人参をバリバリ食べて、その写真を焼き増しでもらって牧場と俺の馬房とうちの厩舎にサインと一緒に飾ったり。

 

 

 競馬ブームに乗じようとして競馬の素人記者が一人混ざっていて(それ以外にも何名かいた)騎手を若手の松ちゃんじゃなくてベテランかつディープの主戦騎手だった大竹ジョッキーにしてミスなく無敗の三冠をさせるべきではと提案して俺が思わずブチギレて馬房の扉を破壊。そのまま最近覚えた猛獣の唸り声を出しながら噛みつこうとしたら抑えられて、テキのおやっさんや久保さんの指摘で記者たちが謝ることで俺も抑えたりでいろいろありながら過ごしていた。

 

 

 で、NHKマイルカップを勝利したあたりから実は久保さん、真由美ちゃん、そしてトモゾウの厩務員三名体制で俺の世話、管理をさせてもらっている。次のレースの事もだし、俺のやっているローテはそれこそ並の過程ではないのでちょっとの不調も見逃さないためにということだそうで。

 

 

 「名馬になると思っていたし、勝ってくるのが嬉しかったが・・・ここまで来るとはなあ・・・お前には驚かされっぱなしだよケイジ。そして、その上で一つ頼みたい」

 

 

 「ヒヒィン・・・むぁふ・・・フン?」

 

 

 『トモゾウのブラシは心地いいなあー相変わらず、これにはほかの馬も骨抜き・・・んぁ? どったの?』

 

 

 今は軽く調整をしながら2400を走って問題ないとなってお昼休憩。の前にトモゾウに汗を流してもらうためにシャワーを浴びて、ブラシかけてもらっている。どうしたトモゾウ。らしくないなあ。

 

 

 「かのメジロが成し遂げた親子三代天皇賞制覇。ゴールドシップのおじいちゃんのマックイーンがした偉業の中の偉業。ケイジ、お前もまたそれ以上だろう偉業のチャンスが来ている。親子三代日本ダービーを無敗での勝利。しかも、勝てばお前はこの時点で変則三冠を手にできる。

 

 

 ・・・我儘なんだが、見せてくれ。こんなことしかできない野郎の頼みだが、神話の、伝説の名馬たちが成し遂げた偉業に負けないそれを現代に見せて、凄いやつなんだって見せつけてくれないか?」

 

 

 ・・・なーんだ! それなら俺だって言わずとも狙ってやるぜ! それによトモゾウ。お前さんはすげえよ。デリケートで、繊細な馬に。下手すれば人に噛みついたり蹴り飛ばしに行ったりとで危険な生物たちを相手に愛を注いでこうして元気でいるタフ、そして愛。どこに出したって恥ずかしくないホースマンだぜ。

 

 

 育ててもらった恩があらあ。愛してくれた恩があらあ。うまい飯を、リンゴをもらった恩があらあ。なら挑むさ。そして成し遂げるよう頑張るさ。俺はケイジ。祝い事の慶事の名を持つ馬だ。任せておけって♪ 身体も乾いたのでトモゾウの顔をぺろぺろ舐めてほおずりする。俺にとっちゃマンガを読ませてくれた兄貴分で戦友だ。その願い。背負ってやろうじゃないの。

 

 

 「うわおぉ。ふふ、ありがとなケイジ。テキや皆さんにリンゴとか桃は渡しているのと、ゴーヤーも買っておいたからしっかり調子を整えるんだぞ?」

 

 

 『おうよ。夏バテ対策。ビタミンマシマシ。沖縄のソウルフード野菜だしなあ。あの苦みがなかなか効くが・・・あーチャンプルーにして食べたいなあ。あの木綿豆腐と麩、もやしにキャベツ、豚肉を混ぜたあれがうんまいんだよなあ~大根もいいけど、あれもなかなか』

 

 

 「よだれが垂れているぞケイジー。あ、そうそう。それとな、一応ダービーを終えた後はウチに戻ってきて短期休養に入るだろ? その際にまた牝馬がうちに来たのと、牧場を大きくしてなあ。アメリカの牧場に幼駒がいい感じに売れたし、お前の稼いだ賞金でうちも余裕がより出てきて、グッズの売り上げも凄いのなんの」

 

 

 『ほへーそっちも色々あるんだねえ。ってかニーア以外にもまた増えたのと・・・あーそっか。俺GⅠ3勝したから運営さんがぬいぐるみ作ってくれるんだっけ?』

 

 

 うちのおやっさんの事業もコツコツいい感じになっているようで。そんでトモゾウがスマホで見せてくれる俺のぬいぐるみ。うん、でかい。すげーな、ビワハヤヒデとかヒシアケボノのぬいぐるみよりもしっかり大きく作ってくれているし、俺の十字架を思わせるような流星もばっちり再現している。

 

 

 「みんなで最低5個づつ買って保管したり飾っているぞ。それ以外にも牧場でお前さんの鹿毛と黒い鬣もあってミルクチョコにビターチョコチップを混ぜ込んだソフトクリームやアイスを売ったり、いろいろできて楽しいよ」

 

 

 『すまん。ミルクチョコ味のソフトクリームの時点でソフトンしか思い浮かばんかった』

 

 

 「あ、それとなー牧場の設備の整備と増築の際に基礎工事したら温泉掘りあててな。ケイジ、うちの牧場でお前も湯治、温泉を楽しめるようになっているから」

 

 

 「ヒヒン!?」

 

 

 マジで!? あーなるほどだからうちの牧場の、放牧地の一部の地面が暖かったり、雪が妙に早く溶けていたのか。まじかーこれ馬温泉。湯治の場としても儲けられない?

 

 

 「そうそう。だから人数制限はしているが、休養してある程度疲れが抜けている時期に何名か見学のお客さんにソフトクリームやアイスを振る舞って、足湯も作ったからアイスを食べながら湯を堪能できるようにしようとしてなあ。馬温泉もできそうだし、頑張ってきてくれケイジ。帰って来たお前を俺たちが全力で癒すから」

 

 

 おうよ! ますますダービーは負けられないな! ってことで桃のお代り頂戴。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『今日もこの日がやってきました。馬主、調教師、騎手、すべてのホースマンが一度は勝ちたいと願うこのレース。数あるGⅠのなかでも最高峰のレースが幕を開けました。東京優駿、日本ダービー。天気は晴れ、馬場は良、まさしく最高のレース日よりです』

 

 

 誰もが夢見る最高の舞台日本ダービー。最も運のいい馬が勝つと言われるGⅠ最高峰の一つ。なんでそんな舞台なのに運がいい馬が勝つと言われているのか? まあ理由はあれこれあるんだろうけど、まずは皐月賞からの開催期間にもある。

 

 

 まず皐月賞の4月半ばからダービーは5月末。大体一か月ちょいくらいの期間。それは休養や調整にはいいかもだけど大きな変化や成長を与えるには短い。そしてまだまだ成長途中の俺ら馬にしたって皐月からの大きな変化は菊花賞に比べると望めない。つまりはパワーバランス、強さの変化が起こるには期間がちょい短い。

 

 

 加えて今は18頭とかくらいで行われるレースだけども昔は20頭は普通……そういや、テイオーが二冠目を手にした時のレースはそうだった。25頭とかもあったそうな。日本ダービーのモデルとなったエプソムダービーは出走制限がなかったので時代によっては日本よりやばく30頭参加とかは普通にあってまずそれによって枠順の不利が大きくなる。

 

 

 大外ならもう2400+何メートル走るんだよって話になるし、追い込み馬が最内につけられると馬群に飲まれて抜け出しての末脚使っての勝利もできない。逃げの馬が大外につけられるとほかの馬より長距離走らされてへばりかねない。モデルレースの格言と、実際に今では考えられない多頭出し故に起きるパニック。それらを無事に制し、自身らに合った枠を勝ち取ることが他のレースよりも特に大事になるからこそ幸運な馬が勝つと言われるんだろうね。

 

 

 実力を短期間でさらにつけて、ハプニングに巻き込まれず、いい枠順を持ち、加えて故障なく暑くなり始めるこの季節を乗り切れるか。どうしたって強く運が絡むこのレース。待っていたぜ!

 

 

 『さあ、その中でもまた幸運と、何よりも実力を見せているスターホースが一頭やってきました2番ケイジ。馬体重は641キロとプラス三キロ。体のたるみもなく短期間でまた見事に仕上げてきました。松風騎手と共に無敗の変則三冠馬となれるでしょうか。彼の登場に会場が大いに沸いております』

 

 

 「ここまで来れるなんてね・・・夢を見ているようだ」

 

 

 『おん? 振り落として夢じゃないと教えようか? まあー騎手数年で日本ダービー本命騎手の一人とか確かにあの福崎騎手を思い出すけどさー』

 

 

 今日はもう本場馬入場。道中俺のローテを蒸し返す奴らの事や松ちゃんを馬鹿にする声が聞こえて思いきり暴れたかったが一生に一度の大舞台。テキのおやっさんもまた蓮君とか嫁さん呼んでみてほしいと言っているし、パドックも顔芸だけで済ませたり、ウィンクをオカマたちに飛ばして軽く会場を騒がせるだけにした。つーかバーはいいのか、ここ東京競馬場の近くだろ。

 

 

 『今日のこの会場は超満員! 21万人が押しかけており入場制限も入るほど。それほどにこの二頭の対決をみたく、そして先の皐月賞を見れなかった悔しさの声があふれております』

 

 

 ゴルシワープはかっこいいもんなー芦毛の、白い弾丸がワープしたように現れるんだもんよ。ラジオだとマジで何が起きた!? って感じじゃないの?

 

 

 『次に本場馬入場しますはケイジのライバルにして親友。その末脚は先のNHKマイルカップでもケイジに迫りましたジャスタウェイ。馬体重は482キロでプラス8。今日も勝利を狙います』

 

 

 『よう。ジャスタウェイ。鍛えてきたようだなあ。見違えているよ~』

 

 

 『ケイジこそ。毛並みがすごくいいけど、誰かに良い人にブラッシングしてもらったの?』

 

 

 『俺の一番古いダチで兄貴分みたいな人からな。しかしまあー今回もやばそうだ』

 

 

 ゼクス、ベールブレイカーとまーた実力者がごろごろ。スピピパークとか後の史実の天皇賞の盾を取る中距離の強者だしなあ。そして、来たか。

 

 

『黄金旅程ことステイゴールドの子、ターフの名優メジロマックイーンの孫。黄金の不沈艦ゴールドシップここに参上。体重は500キロで+2。芦毛の馬体がここ府中に映えます』

 

 

 ほーん。いい感じに仕上げてきて・・・いるよな? そしてワールドエースにディープブリランテ、フェノーメノ・・・ああ、すげえな・・・時代を彩る怪物たちがいるのを見て、改めて俺はここにいるんだってのを感じられる。間違いなく、最強最高の世代の一角になれているのが嬉しい。

 

 

 おお。大竹ジョッキーはアルフルートに乗るのか。福崎ジョッキーに池沼ジョッキーも。伝説と次世代の天才たち一堂に会している。あーたまらねえぜ。ファンファーレを心地よく聞きながらポコポコ。この曲がいいなあ。

 

 

 「ヒヒン! ムフゥー!」

 

 

 『お、いやがったなケイジ! ジャスタ! こいつを喰らえ!!』

 

 

 「ふぼふ!? ビヒぃ! わふっ、わおほぅわ!!」

 

 

 『か、顔をにょーんと突き出して、眼を真ん中に寄せるのは卑怯だろ! ぶふす! くく・・・つ、ツボに入った・・・!!』

 

 

 『ぶふす! お、おもしろ・・・で、でもその顔もいいよゴルシ・・・!』

 

 

 『おおっと。ゲート前でいきなりゴルシがケイジ、ジャスタウェイに変顔を披露して二頭見事に爆笑。親友でありライバルの三頭がそろって仲良く話しております。まるで大一番の前に互いに健闘へのエールを送るスポーツ選手のようです』

 

 

 『ふひーふひー・・・あーお腹痛い。でもほぐれたわ。くっそー俺も用意した変顔のパターン忘れちった。ま、それは今度にして、こうしてそろってレースできてうれしいぜゴルシ、ジャスタ』

 

 

 『オイラもだぜ。それはそれとしてずるいぞケイジ! おいらもジャスタウェイとなんちゃらマイルカップに出て一緒に走りたかったんだぞー』

 

 

 『あの時は負けちゃったけど、それでも今日の日に向けて鍛えてきたんだ。二人にだって負けないからな!?』

 

 

 『それは茄子のおっちゃんに言いなって。そしてジャスタウェイ、望むところだ! 思いきり来やがれ! お前さんら二人に負けねえ! 勝つのは俺だ!!』

 

 

 先にチューリップ賞から連勝。桜花、オークスを完勝したジェンティルちゃんからも言われているからな。『わたくしのライバル。パートナーが情けない負けを見せたら蹴りますわ』ってな。背負う者が増えたが、その増えた荷物を持ったまま勝ってやらあ。一族の悲願。俺の周りの人らの望み、全部全部背負って走り切るぜ。

 

 

 『あーん? 勝つのはオイラだよ! お前ら二人には負けねえ!』

 

 

 『僕だって! ダービー馬になってやる』

 

 

 「ヒヒィン!」

 

 

 『いよっしゃ! そうでなきゃこの祭りは盛り上がらねえ。なら後はレースでぶつけるだけだな。それじゃ、俺は一足先に。お前さんらもゲートしっかり入れよー』

 

 

 さてさて。ゲートに入りつつ精神統一。今日のオッズはうーん。1倍人気の2,1倍。まあ、距離がマイルからは50%プラス。皐月からなら25%の距離増し。血筋もなあ。今のディープ、ステゴ、ハーツクライ産駒の子たちはみんな距離適性の幅が広く見込めるから有利って感じかあ。

 

 

 俺は疲労の心配をこれまた追加。連勝ゆえの斤量+テイオーは中距離いけるマイル馬って意見もちらほらあったりでこの距離をこの世代と戦えば分からないという感じで連勝したけどオッズ2倍なんだろうね。

 

 

 ま、今回は少しオッズの事は頭から抜くか。流石にこの舞台ではそれを見ている余裕もねえ。

 

 

 『ただいま全頭ゲート入り完了しました。・・・・・・・スタートしました!』

 

 

 今は目の前の勝利を手にしてこのローテも問題ねえってこと、松ちゃんをダービージョッキーにしてやるんだよぉ!!

 

 

 『ケイジのスタート今日も好調! その逃げについていきますはゼクス! そしてゴールドシップ何と先行だ! これは燃えているかかかっているのか? 最初からハイスピードなレース展開になりそうです。続いてディープブリランテにトーセンカチドキ、フェノーメノが後を追う形になります』

 

 

 マジかよゴルシ先行策!? くっそーあいつは重馬場の方がいいとはいえ良馬場もいけるし、強いからなあ。これは・・・あー・・・逃げもいるし、ちょいうまくできないか試すほうがいいかも?

 

 

 「ケイジ、今日はコーナーが多く使える。思いきり行け。後で流すぞ」

 

 

 『おうさ了解。同じ意見たあ落ち着いているじゃねえの』

 

 

 『さあ、まずは第1コーナーに差し掛かりカーブ。第2コーナー直線へと入ります先頭はケイジ。ゼクス、ディープブリランテにフェノーメノを引き連れる形から引き離してその差は5馬身のリード。その後を追う形でゴールドシップ、コスモアオソラにジャスタウェイ、グランデッツァが続く形へ。中団はクラレレンスーア、ブライトエンペラー、ワールドエースが続きます』

 

 

 先行がやや多めで、後ろは空いている感じか。ってなればかなり細長の先攻集団形成しているなこりゃ。追い込みのゴルシが先に出てくれているしみんな驚いていたりで馬はともかく騎手の方が読めなくてどう対処するかを考えてくれそうだしで助かるわ。

 

 

 んじゃま、ちょい仕掛けますか。加速ー!

 

 

 『おっとケイジが仕掛ける! これぞ十八番の早仕掛け。ケイジのスタミナを活かしてのハイラップを刻むようです。早くも1000メートル通過。57秒4! 相変わらずの大逃げっぷり! これは飛ばしている。しかし好きにさせるものかとゼクス、トーセンカチドキ、ディープブリランテ、グランデッツァも上がって食らいつこうとしています。フェノーメノ、スピピパークも徐々に上がっていきます。ワールドエースも食いついていこうとするか? ペースを増しながら3,4コーナーへ入りますケイジ』

 

 

 よしよし。食いついてくれたか。じゃ、俺は一足先にコーナーで速度はある程度減速するにとどめていくんで、差を詰めて追いかけていくメンバーのスタミナ削りつつ脚を溜めますか。

 

 

 ふぃー・・・コーナーでの一呼吸を入れて溜めないと先行策ゴルシ、ジャスタウェイには勝てねえよ。馬身差は・・・問題なし! よし。直線入ってすぐに仕掛けっぞ松ちゃん!

 

 

 『ケイジとゼクス、トーセンカチドキ、ディープブリランテの馬身差2馬身! 更に後方との馬身差は実に10馬身以上! さあ最後の直線の攻防! ここでケイジがさらに加速! ほか三頭を千切って独走状態に変わっていく! 一方でケイジ以外の逃げ馬三頭が垂れていく! 何ということだケイジ! あのメンバーをスタミナで磨り潰していたぁ!!』

 

 

 よし決まった! これならスタミナが切れて逆噴射した馬たちが壁になって俺を追いかけようと経済コース走っていたやつらにはむしろ抜け出すのは至難の技。

 

 

 これで残りは絞られる。外側をずっと走っていたゴルシ、ジャスタ。そして・・・フェノーメノ! そうだよなあ、お前さんらはくるよな当然!!

 

 

 『最後の直線もう400を切った! ここで来るのはケイジ! しかしゴールドシップ再び皐月のように食らいついてくる! そしてジャスタウェイも猛追! いやいや俺だってライバルとフェノーメノも加速が鈍らない! 勝利はこの4頭に絞られました! ケイジとの差実に8馬身、7馬身! 差を詰めていきながら最後の200メートル! 松風騎手の鞭が飛ぶ! ケイジさらに加速するが周りの末脚も怖いぞ!!』

 

 

 「ビヒ、ヒイビィイ!!」

 

 

 『なんのぉおおお!! 負けねえぞ! 負けねえぞぉおらぁ!! 勝って温泉入ってリフォームされた馬房でくつろいでアニメ見るんじゃー!!』

 

 

 『アニメも気になるが今はお前だケイジ! 今度こそ勝ってあの面白ダンスをやるんじゃ!!』

 

 

 『ぐぉおお・・・銀魂思い出しちゃうけど、負けない。僕だってここの舞台に立てる一頭なんだあぁああ!!』

 

 

 『前のレースの借りを返す・・・負けないぞケイジ!!』

 

 

 このやろー!! なんであっさりと追いつけるんだこいつらはよぉ!! ここからが二枚腰さんの使いどころだ!! これで引き離して勝ってやるぜー!!

 

 

 『おっとここでケイジに迫るのはやはりゴールドシップ! 前よりも末脚の鋭さが増している! 流石は名優の孫! 長距離ならお手の物か! しかしまたもやケイジ粘る! 三代制覇の夢は、勝利は譲らないと闘志を燃やす! ジャスタウェイも意地を見せる! フェノーメノ追いすがる! 並ぶか! 並ぶか! いや並ばずにゴォオールッッ!!! ケイジ粘り切ってのアタマ差の勝利!! ここでも父親譲りの競り合いの強さを見せました!! たとえ影を踏まれることになろうとも最後の勝利は譲らない! 男の意地で勝ちましたケイジ!! 二着にゴールドシップ、三着は微妙なところです!』

 

 

 よ、よっしゃあー・・・勝った・・・勝ったんだー!!

 

 

 「ふ、ふぅうう・・・し、心臓に悪いよ競り合いは・・うおぉっ!? どうしたケイジ・!? まだあれは後・・・ふふ。嬉しいのかお前も。・・・ありがとう。俺も、俺も夢をつかめたよ・・・」

 

 

 いやったぜー!! 逃げからの翻弄での逃げ馬潰し作戦大成功! ディープブリランテやゼクス怖かったからこの戦術を選んでよかったー!!

 

 

 『写真判定の結果3着はジャスタウェイ! そしてケイジの勝利タイムは・・・何と! 2分19秒7!! 2400メートルのワールドレコードも更新! ケイジ! これでレコードホルダーとして二つ目を獲得! さらに! これで無敗の7連勝! 無敗の二冠! NHKマイルカップも含めれば何と変則無敗の三冠を達成しました!! 私たちは今歴史的名馬誕生の瞬間に立ち会えています! 過酷なローテも望む荒武者は、強力なライバルたちですら傾奇男の、皇帝の血筋の復活は止められないのか!!』

 

 

 ふん! 嬉しいことを言うが、俺はまだまだだぜ! まだ菊花賞がある。そこでわかるはずだ。本当に強い、同世代最強は誰かってな!! ただ・・・その賞賛も嬉しい。受け取ってもおくわ。

 

 

 『くっそー・・・また負けたーま、いいか。今度もまたやろうぜ。あと、今度マンガについて教えてクレメンス』

 

 

 『あー・・・僕の脚は菊花賞はつらいと言っていたし、僕はしばらく後で戦うのかな。それまでは武者修行だよ。今度こそ負けないよケイジ』

 

 

 『ぬわぁああ!! くやじぃ~~!! 今度は勝つぞケイジぃ!』

 

 

 『おうよ。今度は秋に会おうぜ。俺は温泉浸りしてくるからな。わはは♪ んじゃ行くぞ松ちゃん』

 

 

 『ケイジは菊花賞に直行するということらしく、最後の一冠まで力を蓄える様子。最後の一冠。KG対決のうちどちらが手にするのか、父テイオーの苦手とした距離でもこの傾奇者は通用するのか、テイオーのもしもも含めた戦いに今から楽しみが増します。さあ皆様、ケイジが来ました。よければ右手をお貸しください』

 

 

 あら。今回はアナウンサーさんが教えてくれるとは助かるわ。そんじゃ皆行くぞ! これを逃せば最低でも秋までできないからな!

 

 

 右にぴょーん

 

 

 「「「「オウ!!!!」」」」

 

 

 左にぴょーん

 

 

 「「「「オウ!!!!!」」」」

 

 

 首を下げてのー・・・・?

 

 

 「ッ・・・・・ビヒィィイィイイイイィイィイインッ!!!!(い・・・・よっしゃあぁあぁあああああぁああぁああっっ!!!!)」

 

 

 「「「「ッ・・ウォオォオオオオォ!!! ケ・イ・ジ! ケ・イ・ジ!! ケ・イ・ジ!!」」」」

 

 

 『東京競馬場が、府中が揺れております! 晴天に響く20万人の雄叫びとケイジコール! 最後の一冠に届くのか!? それとも猛追し続けるゴールドシップが阻むのか!? 皆様秋の戦いに期待を馳せましょう!』

 

 

 むしろ俺が挑む側の距離だからなそれは。たとえ勝利はしていてもここからが未知の領域。いやあ、しばらくは休んでからまた秋に会おう皆の衆!!




 名馬による激戦が多いほんとやばい時代だった12年クラシック世代。でも実は悲劇や悲しみも同時に多いかもなのがこの世代。ケイジは一つそれを潰しました。


 久保、トモゾウ、真由美厩務員 「「「ほぼイキかけました」」」厩務員して向こう数年。一人は見習いでダービー馬。変則三冠王の厩務員に格上げ。真由美はゴルシ、ジャスタ、ケイジの絡みとレースの興奮で鼻血出していた。


 ケイジ 無事にマイル&ダービー制覇。牧場で楽しみが増えたのと、おやっさんの懐が暖かいのを知って嬉しい。とりあえずぬわ疲なのでぐっすり寝たい。


 前田のおやっさん また号泣していた。トモゾウは専属でつけてでもケイジを癒させようと決意。自分も頑張るつもり。


 ムランルージュ 大盛況&ここ上半期のレースの馬券でかなり儲けた。競馬トークやネタ、知識も豊富なのとケイジの一口馬主がいるのでダービー後にお客さんが押しかけていろいろケイジやゴルシ、ジャスタウェイの話で盛り上がった。


 葛城調教師 もううれし泣き。歴史的名馬に関われたことに翌日になってようやくのみ込めたくらい。インタビューされたときはしっかり答えていたのだが記憶が飛んでいて後日動画で確認してほっとした。


 松風騎手 次世代の岡本ジョッキーもとい大竹ジョッキーと言われたり。顔もイケメン。柔らかい性格なのもあって競馬CMの依頼が来たとか。


 葛城蓮君 小学校最後の年。無事に野球でレギュラーに入って全国を目指す。ケイジの偉業に思わずうれし泣き。後日ジャスタウェイの元ネタを知ってびっくり。



 ケイジ(ウマ娘)の一口メモ 実家の稼業は温泉旅館、ホテルの一大企業である「前田グループ」ヒサトモのコネや知り合いもあって警備会社もある。


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ケイジの夏休み

 お気に入り増加が止まらない。高評価がもらえるのが嬉しいこの頃です。仕事やら諸々の都合で早く出せないのが申し訳ないです。菊花賞までは早く出しておきたいんですがねえ。


 あ、それとケイジのウェストを72に変更しておきました


 最近ニコニコでウイポ淫夢動画を見ているんですが、妖精さんVS変態さん の名勝負とか、98世代がキングヘイローがエル、グラ、スペ、スカイ同格の強者になって、更にライバルがもう一頭増えての6強時代を結成していて全員集合した場所がやばすぎて爆笑したり、タマモクロスと同期のライバルが出てきて平成四天王になったりとやたらドラマチックな作品で燃えます。


 別作品ではオグリキャップがアメリカトリプルクラウンを狙っていたりでなんで淫夢作品はハイレベルかつドラマが多いんだ。


 ケイジ(ウマ娘)の一口メモ 東日本大震災が起きた時はすぐさま休学。停学でもいいからと届け出を出してから学校を抜け出す。知り合いのスイーパー、シンジュクタネウマと特殊刑事課の皆さんと協力。実家の前田ホテルの協力と自身の資産を投げ打って人命救助と炊き出し、もろもろの活動に2か月近く尽力。


 チームシリウス、ゴルシ、ジャスタも合流して全員で炊き出し、慰労ライブ、ボランティア活動をしていき、デビュー前に「ここにいるアタシらで必ずおもしれえことを。日本を盛り上げてやるさ! だからアタシらがいなくなっても元気でいてくれよな!」 と言って帰り、後日ケイジはマツクニローテを無敗で達成。


 『いい湯だなあ・・・・あはぁーん』

 

 

 『そうねー・・・温泉って最初は熱いだけの水かと思ったけど、悪くないじゃん』

 

 

 どうも皆さんおはこんばんちは。無事に変則三冠馬となれたケイジでごわす。

 

 

 菊花賞への優先出走権ももぎ取って、マツクニローテをこなした疲労抜きと夏&秋休みということでまたまたちょいと広くなった上に石油じゃなくて温泉を掘り当てたことで温泉施設までできた前田牧場に戻ってきたでござる。

 

 

 で、今はこうして湯の心地よさに身を委ね、ししおどしがないことにちょっと残念がりつつ楽しんでいる。ニーアと。・・・いやいや。おやっさんに女将さん。ニーア牝馬よ? 牡馬の俺と混浴させていいのかよ。

 

 

 ちなみに湯の効能は疲労回復、リュウマチ、むち打ち、関節痛に聞くとかで近所の猟師、もといマタギのおっちゃんと幸太郎もちょこちょこ浸かっていく。

 

 

 『温泉はいいぞー伝説の名馬オグリキャップも大好きだったしな。で、ニーア。俺にくっつきすぎじゃねえか?』

 

 

 『ウチら馬って温泉やっぱ好きなんだね。いいじゃんいいジャンこれくらい。それにもうウチ、ニーアじゃありませーん。新しい名前をもらいましたっ♪』

 

 

 『え? マジで? 幼名卒業かあ。大人への第一歩おめでとう。じゃ、えーと・・・あ、これでいいか』

 

 

 擦りついてくるニーアをよいしょと離しているとまさかの情報・・・でもないか。なんやかんやぼちぼち1歳と半年。なら幼名卒業していってもおかしくないわなあ。じゃ、一つ聞くために近くにあった柄杓を柱の端にこんこん叩きながら

 

 

 『今のニーアのおっ名前おーしえて?』

 

 

 『プッ、何なのその話し方。受けるんですけど~ウチの新しい名前はナギコだよ~よろぴく♪』

 

 

 『うーん、やっぱそろばんじゃないと駄目かな? そしてもう一度おめでとうナギコ。これからもハッピーうれピーよろぴくねーん♪』

 

 

 ナギコかあ、いい名前。そしてネタが受けてくれたのは嬉しいけど、知られてなかったのはショック。あ、ちなみにだがナギコもすっかりマンガを読めるようになりアニメ好きに。マキバオーではチュウ兵衛親分の最後に号泣して、ドラゴンボールではピッコロさんがファンだそうで。うんうん、そのうち最近俺が読んでいる金田一耕助・・・は刺激が強いかもだし、ホームズの本でも貸そうかな?

 

 

 『ウェーイよろぴく♪ でさーこっちに来てもいいのよ? ここの方が湯が近くて熱いのがいいし』

 

 

 『う、うん・・・ありがとうございますナギコ姉さま・・・ケイジ、さん』

 

 

 『ああー俺がお邪魔ならどくぜー? 幸太郎と一緒に遊ぶ約束もあるし』

 

 

 で、実はこの馬温泉。俺とナギコ以外にも入浴している馬がいて、黒鹿毛のまだ0歳。今年の4月に生まれた牝馬でおやっさんがアメリカの知り合いの牧場であるロック&ヘリントンファームで幼駒を互いに同じ値段で取引して来た馬らしい。ちなみにそのファームはあのサンデーサイレンスを生んだ牧場。今は子供さんが運営しているとかなんとか? この世界ちょこちょこ俺の知る世界とは微妙にズレあんな。

 

 

 そんなこんなである意味帰国子女なこの馬。取引でおやっさんが渡した母父オグリキャップ、父父イナリワンの子どもを渡しただけ欲しがるのも血統を見て分かった。

 

 

 父父がミスターシービーで、母父がイージーゴアというまたなんだこれはと言わんばかりの日米浪漫配合でしたとさ。なんだよこれ。ナギコの血筋も大概だがこの子もやべえ。しかも母父イージーゴアってことはアメリカでの大牝系とも言えるラトロワンヌ牝系の中でも優秀、エクリプス賞最優秀古馬牝馬を手にしたリラクシング。アメリカでは言わずと知れた名馬アリダーの血も引いているわけで、文字通りアメリカの歴史的名馬の血を持ってくれている。

 

 

 もっと言えば母母がこれまたサンデーサイレンスの高祖ステイミーのライバルにして三冠馬、両親何方も優秀な血を持つアソールトの子孫だし・・・この血筋だけで欲しがる馬主いるぞおい。

 

 

 そして日本側の血も父父にあの三冠を達成したミスターシービー、父母には日本の牝系が生んだ至宝ニホンピロウイナーの娘が入っているしで・・・なんだこれはたまげたなあ。日米牝系の至宝の血が集結。牡系も日米三冠馬二頭の詰め合わせセットでございまーす♪

 

 

 こんなとんでも名馬の血を引く馬を譲ってくれたアメリカのロック&ヘリントンファームのビリー牧場長はなんでも父とサンデーサイレンスの激闘。そして日本に渡ってからの文字通り歴史を動かしたサンデーの活躍を喜ぶと同時に、日本の競馬界により興味を持って歴史や血統を調べていくのが趣味になったそうだが、欧州は愚かアメリカでも早々見ない、知らないようなガラパゴス状態の血統だらけ。そしてその強さ、何よりそのダートと芝の落差に驚いて同時に興味を持ったとか。

 

 

 日本の芝は世界でも有数の固さと高速馬場。そしてダートは高温多湿かつ雨が多い日本なので土ではなく砂。つまりはアメリカのダートと比べると別物だ。そりゃ土と砂だから違うけどさ。要は固い芝に柔らかい砂と落差も何もかもが別物。

 

 

 だというのにそこの二刀流で結果を出したオグリキャップにイナリワン、アグネスデジタル、クロフネなどなどの優駿たち。それを見て思ったのは真逆もいいところな馬場のレースをこなせる脚使いを変えられる器用さ、パワー、スピードを持つ日本馬たちはアメリカの血統の偏りを薄めつつかつてのサンデーサイレンスが日本競馬界を変えたように日本馬の血がアメリカ競馬のレベルをより上げる可能性があると踏んでそういう芝砂二刀流をこなした名馬の血を集めているとからしい。

 

 

 後はまあ・・・言っちゃ悪いがウマ目線から見ても美人さんになる素質はあるけど、後ろ脚がちょい曲がっているし、馬体が貧相。加えて気の弱さが勝負で足を引っ張りそう&外貌主義のアメリカで下手に買い叩かれるよりはうちのおやっさんにいい値段で売りたかったってのもあるんだろうね。

 

 

 『い、いえ。大丈夫です。そ、その・・・』

 

 

 『あーケイジは確かにでかいけどいいやつだよ? ふふふーうちがマンガを読んで人の言葉覚えたのもケイジのおかげだしね。ジーナちゃんも気楽に気楽に♪』

 

 

 『んまーそういうわけだ。ただまあ、俺はしばらくいるし焦らずにここに馴染んでくれや。んじゃーな』

 

 

 『あれ? ケイジもう行くの? もちょっとナギコさんの感触味合わないの~?』

 

 

 『言い方ぁ~幸太郎と遊ぶ約束しているし、蓮君も来るっていうからな。色々今日はお客さん多いんだわ。お前さんも平野さんと仲良くしておけよ。ぼちぼちお前さんの入厩も近いからかよく顔出しているし』

 

 

 ったく妙に色気づきやがって。美人ならぬ美馬にはなっているけどなー。ま、ジーナちゃんと仲良くしていて欲しいし、そんで湯あたりはしないように。身体拭いてほしいし、ベルをからんからん鳴らす。トモゾウを呼ぶ合図だ。

 

 

 「お、ケイジ。出るのか。よしよし、身体拭いてやるからなー」

 

 

 『ああー湯であったまった体が扇風機と風で冷やされるのが気持ちいいぜ。夏前のこの暑さを乗り切るには汗を流す風呂だよなあ』

 

 

 「いやー俺も昼休憩に軽く入るけど、人と馬用のスペースがあるから最高だよ。ケイジも春の戦いの疲れをしっかり抜くんだぞ」

 

 

 『おうよ。そんでうまい飯を食うんだぜー。今日の気分はバナナ!』

 

 

 あふぅ。はぁー・・・この風呂の心地よさがたまらねえぜ。馬って牛乳飲めたっけなあ。飲めたのなら湯上りに一杯したいのだが。今は水で我慢。うん、おいしい!

 

 

 「・・・マジで馬がベル鳴らしてトモゾウさん呼んでいましたよ・・・」

 

 

 「ナギコもアニメ見て一緒に鳴いたり笑ったり・・・ケイジが教えたんだろあれ?」

 

 

 「・・・メジロでもあんなのいなかったし・・・これがテイオーの最後の最高傑作なのかねえ・・・」

 

 

 何やら遠巻きに作業しつつ呟いているのはメジロの厩務員だった人らね。いや、むしろそこら辺はマックイーンも凄かったんじゃねえの? 人参よこせ。持ってんだろ? と身体検査したり、噛む振りして知らんぷりとかの悪戯していたそうだし、あっちも頭いいだろ。しかも馬付き合いも上手でオンオフ切り替えていたってんだから。

 

 

 「よし、綺麗になった。じゃ、水を飲んだら後でバナナと昼ご飯。幸太郎と蓮君に渡すおやつ持ってくるから仲良くするんだぞ」

 

 

 「ヒィン」

 

 

 『へーい。あ、幸太郎は水もね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ヒゥフン!」

 

 

 『早めのゴロ!』

 

 

 「よっしとった!」

 

 

 「わふわふ・・・」

 

 

 『今度はこっち』

 

 

 今日は蓮君も遊びに来たので幸太郎と俺で一緒に軽く遊べる場所でノック。俺がノックを打ち。蓮君がボールを取ればそれを投げ返す。ただしその場所は幸太郎が常に場所や距離を変えるのでそこに向かって投げてもらい、飛んできたボールを幸太郎がキャッチ。それを俺がもらって土台にセットしてまた打ち返すという練習をしている。

 

 

 『ほーい今度は高めのフライ~』

 

 

 「おっ・・・おっ・・・? おっし! よーしケイジ、返すよー」

 

 

 低め、ある程度の弾道のボールで打った時は幸太郎に。高めで打った時は俺に返すようにと相談して決めていて、俺の場合は背中の鞍に即席で段ボールを置いているのでそれで高めのボールで投げ返されたボールをキャッチして遊んでいる。何でも幸太郎君曰く「速いボールの勢いがすぐ殺される、軽いボールな分ぶれてしまうからしっかり見極めて動く、ボールを見るからいい練習になる」とのことで幸太郎もボール遊びもできるし、俺も息抜きになって万々歳。

 

 

 馬になって走るの大好きになったけどやっぱそこは元人間。いろんな娯楽で息抜きも大切よねん。

 

 

 『ほいキャッチ。そんじゃ、水飲もうかー北海道もなんやかんや暑いしねー』

 

 

 「ありがとう、ケイジ。幸太郎君は、ほらプール」

 

 

 『ありがとう蓮君! ワオォーン!』

 

 

 そのノックも幸太郎が汗をかき、蓮君が息を切らしたところで一息。木陰に入って休む俺と蓮君。幸太郎は金タライに水を入れた場所に飛び込んで時折飲み水を入れた皿をぴちゃぴちゃして水分補給。

 

 

 ああー・・・・蝉の声がもうじき聞こえる季節なんだなあとしみじみ思うぜ。青々とした草木に熱い日差し。昨年の新馬戦、2歳限定戦を思い出すなア。

 

 

 「ケイジ。僕ね、今年もレギュラーでセカンド、2番バッターで行けそうなんだ。全国もいけそうだし、小学校最後の年、優勝してくるよ!」

 

 

 『おお!? 野球はあんま詳しくねえが、クリーンナップへの起点づくりの2番バッターに、一番難しい守備ポジションのセカンドを任されるとは・・・有望株だな!』

 

 

 「鼻息がくすぐったいよケイジ―。ふふ・・・ケイジも秋には菊花賞? でしょ。一番強い3歳になってきてね。僕、応援しているよ」

 

 

 たーしかテキのおやっさん遅めの子どもってのもあってかなり子煩悩なんだが、それを差し引いても全国を狙えて、いぶし銀のポジションを担えるとは大した器だぜ。これは未来のプロ野球選手か? テキのおやっさんの話が確かならバント技術高めの堅牢な守備を持ち味にしている小学生とかなかなかいないだろ。

 

 

 そんで、おうさ! 蓮君に先を越されてしまうかもだが俺と蓮君で日本一の称号を狙っていこうぜ! そして来年は蓮君は中学生デビュー、俺は古馬デビュー。良い来年の出だしのために今年も思いきり気張ろうか! 頑張れよという意味合いを込めて鼻先で腕とほほをすりすりして優しく微笑んでおく。アスリート同士、一緒に高みを目指そうや。

 

 

 『僕はー・・・狩猟犬だから、立派な猟犬になることかな?』

 

 

 『立派よ立派。農家の皆さんのためにも、害獣に困っている皆様の役に立つんだ。お前さんしかできねえ道だ』

 

 

 『えへへー』

 

 

 「ああー・・心地いい。ふふ。あ、そうだケイジ。実は今日夏には少し早いけどここの近くで祭りがあってね僕そこに行ってくるから、そこで何かケイジが食べられそうなものあったら持ってくるね?」

 

 

 『ああーそういえば一度近くが騒がしい時期があったけどそれかー祭り・・・いいなあ。俺ら動物はいけないもんなあ幸太郎』

 

 

 『え? 僕ご主人様と行くよ? お祭り』

 

 

 『裏切ったな幸太郎!?』

 

 

 この後、後ろ髪をひかれるような気持ちで幸太郎と蓮君を見送ることに。ああーこういう時は馬はつらいぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いよいよ夕方。太陽も寝るために沈んでお月さんが夜勤勤めにこんにちは。する当たりの時間。祭囃子と音が馬の俺の耳に入ってくる。

 

 

 蓮君と幸太郎君が祭りに行くので、今日は俺の脱走記念日。というわけで脱走しましょうかね。藁に隠しておいたテグスで扉を開けてと・・・あ、抜き足差し足馬の脚。ナギコとジーナには俺流ぐっすり睡眠法で普通の馬のように何度も起きることなくぐっすりすやすや。温泉に浸かって二人ともトモゾウと馬具の装着訓練で疲れているので尚更起きないだろう。

 

 

 さあさあ。お祭りを楽しみに行っきましょうかね~♪ 祭り会場まで600メートル。そこの神社にいざ鎌倉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おおー賑わっているなあここも」

 

 

 今日はケイジ君の軽い取材。の前にその周辺地域の取材。前田牧場長から聞いたがここの早い夏に始まる祭り。そこにある神社は由緒がありご利益は仕事運、無病息災。そして馬の神様を奉る神社だとか。

 

 

 ケイジも何度か一緒にお参りしているらしく、由来に関しても北海道開拓時代。馬と共に大地を耕して根を下ろそうとした先祖たち。互いにパートナーであり不慣れな土地、そこで共に過ごし、働き、そして死んだ後は働いた分神様と共に安らかに過ごしてほしいという想いから作られたそうだがなるほど中々。

 

 

 ましてや今は競馬ブームがディープ、98世代を超えるレベルで賑わっていることもあって北海道に旅行しつつ牧場に見学しようとしている人が多いのやろうなあ。

 

 

 「ほーん、ケイジのぬいぐるみにストラップ・・・お、ケイジの好物りんご飴って。わはは、ケイジ様様やなあ」

 

 

 その中でも次代を盛り上げているのは主にこの5頭だろう。ケイジのライバルにして黄金の不沈艦の名を持つ、オルフェーヴルと同じステマ配合で産まれた馬であり名優の血をひくゴールドシップ。

 

 

 ゴールドシップの親友であり、あの大人気漫画『銀魂』にも登場している、ある意味世界一のネタ馬にしてなんやかんやNHKマイルカップと日本ダービーでも好走しているジャスタウェイ。

 

 

 牝馬三冠に王手をかけ、ますます気力も実力も着けている貴婦人ジェンティルドンナ。

 

 

 そのジェンティルドンナに常に食らいつき2位を連発。牝馬のメイショウドトウ、シルコレとなるか秋華賞を取るかと注目されるヴィルシーナ。

 

 

 最後に競馬ブーム再燃の火付け役。皇帝の直系筋にして最強の血をひくターフの傾奇者。出れば笑いを誘うケイジ。彼らの時代はオルフェーヴルの一強時代と言われた世代から一転強者ひしめく強豪らの戦国時代。それを引っ張るケイジの地元で馬の神社となれば祭りに興味を持つ人もあってかそこそこの田舎だというのに人が多い。

 

 

 ま、ボクもそれを狙ってきたんやけどね。ケイジの地元の神社の取材と夏祭り。こういうのも競馬雑誌、新聞のコラムやミニコーナーで出していけるかもだし、ついでに前田牧場に予約は入れて許可も貰えたんでケイジ君から元気をもらいつつ最近湧き出たという温泉で湯治と洒落込みたいもんだ。

 

 

 「おっちゃん。ケイジ君のストラップ一つ。お? なんや?」

 

 

 お土産とコレクションの意味でストラップを数個買ってカメラを回していると何やらざわめきが聞こえてきた。なんやろ。取材のネタになるか?

 

 

 「ほいほい。ちょっと失礼。しつれーい。・・・・・はぁ!?」

 

 

 人ごみをかき分けて、ちょい足場を見つけてそこに立ってみると・・・

 

 

 「ケイジ君!? なんでおるんや!? そんでその柴犬どちらさん!!?」

 

 

 何でかケイジ君がいた。この規格外のでかさ。そして十字架を思わせる流星。ファンサービスをしつつ変顔をしたりカメラの前でポーズを取るのはまさしくケイジ君。何でかリードを咥えて柴犬の散歩としゃれこんでいるけど、ホンマ何してん? 奇行はレース以外でもしていたけどここまでするか・・・というかもしかしてカギを外してきたんか?

 

 

 

 「ヒン? ひひーん・・・ぶるる」

 

 

 「お、おお久しぶりやなあケイジ君。どうしたん?」

 

 

 ボクを見つけるやすぐさま寄ってきて首をかしげるケイジ君。うん、何でここにいるって顔しているしそういう仕草だろうけど、それはボクが言いたいわ。ダービー馬で変則二冠達成かつクラシック三冠馬にリーチかけた有名人ならぬ有名馬がこんなところに誰も着けずに来たら駄目でしょ。

 

 

 「いやいや、牧場で休まなあかんでしょケイジ君。休養中でしょ?」

 

 

 「ヒィン、むふっ、フムー・・・ブルル、ワン」

 

 

 「いや、ここに遊びついでに羽休めってあんたなあ・・・」

 

 

 俺だってここに来たいんだと言わんばかりのジャスチャーをするケイジ君の、何度も取材とコミュニケーションをとっているからわかるかもな反応に頭を痛める。

 

 

 もう周りもケイジ君だって気付いているし、写真もSNSに載せたとかなんとかいうギャルや学生がちらほら。あかんわ。これ大丈夫かいな?

 

 

 とりあえず牧場長に連絡入れて早いところ連れ帰って病院と変なもの食べていないか翌日の検便、検尿させてもらわな・・・そう思っていたらケイジ君が何やら真剣な顔になって走っていった。

 

 

 その先で・・・ええ・・・!?

 

 

 「おいそこのおっちゃん! これ置いておくで! こらアカン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『だってよー俺だって祭りの空気を味わいたいんだぜ? いいじゃんよ藤井の兄ちゃんよー』

 

 

 『ケイジ~・・・お土産はあったらもらってくるって言ったのに・・・』

 

 

 『祭りの空気も味わっての祭りなの~! 幸太郎こそおいしそうな匂いに涎だらだらだったくせに!』

 

 

 いやーやっぱ祭囃子の空気はいいもんだわー。途中柱にリード付けられていた幸太郎を見つけてリードをほどいてから俺が咥えてファンサービスしながら神社目指してポコポコ。俺もお参りして感謝と報告したいし、ついでにこういう空気を味わいたいし。

 

 

 おんもしれえ人の反応見つつ歩いて、ファンサしたり写真撮って、でも飲み物や食べ物のサービスは断りつつ過ごしていたら藤井の兄ちゃんに遭遇。いやーそうは言ってもこういう空気に触れたくなるのはあるあるじゃない? 感じるだけでもサー。

 

 

 藤井の兄ちゃんもどうせうちに来るんならそのまま一緒に帰って・・・・あ・・・? 何だこの声? そんで悲鳴? まじいなあ。行くぞ幸太郎!

 

 

 『わわ! どうしたのケイジ!?』

 

 

 『蓮君と、知っている声が聞こえた! 失礼、ちょい失礼!』

 

 

 何やら引き攣った声が聞こえた方向に走り出せば見えました光景に絶句もんだぜ。

 

 

 何やら超馬鹿でけえヒグマが、蓮君と新馬戦から俺のファンである子供に襲い掛かろうとしてる。テキのおやっさん何していやがった!! そんで、蓮君は俺のファン君を庇いつつ立っているが腰が震えているし、周りの人の悲鳴を聞いたり大声を聞いてもこの熊怯まねえ。ましてや屋台の調理場の炎を見てもビビらん。人慣れしているやべえ奴だわこいつ。

 

 

 『蓮君!?』

 

 

 『あと俺のファンだ! 幸太郎! この糞グマはっ倒すぞ!』

 

 

 『・・・わかった!』

 

 

 おいゴラァ! どけや! ここは人とペット、経済動物専用道路だ! 勢いをつけての前蹴りでヒグマの前足を蹴っ飛ばして首に頭突き、幸太郎が目にタックルをしてくれて吹っ飛ばす。

 

 

 「グルルゥ・・・ガぁっ!!」

 

 

 「ビヒィ!! グルゥウォオ! ギュォッ!!」

 

 

 『この熊公! よくも楽しい祭りを台無しにしやがって!』(←一番先に祭りに騒ぎを持ち込んだウマ)

 

 

 『ケイジがそれを言っちゃう・・・?』

 

 

 『この俺が月に代わって臨界点を見せてやる!!』

 

 

 「フグッ、フッフッ・・・!」

 

 

 む・・・? 動物の声がわかるがこいつ半狂乱・・・腹減っているのか、怒りで我を忘れているか・・・傷もちらほらあるし・・・んーかなり歳食った上で今が脂の乗った全盛期。そんでブチギレているか。こいつは腹くくらんとなア。

 

 

 襲い掛かってくる熊に俺がジャンプで避けようとしたらヒグマの目と舌に何やら当たってびっくり。

 

 

 「ガフッ!?」

 

 

 「ビヒィ!」

 

 

 『おらぁ!』

 

 

 「ガフッ、ワンワン! ワグッ!」

 

 

 『この!? ご主人様!?』

 

 

 その間にタックル気味で来ていた熊の上をジャンプしつつ首と背中目掛けて飛び越えながらのキックで木に目掛けて吹っ飛ばすがそれは肩に当たって不発。幸太郎もヒグマのケツに噛みついてしっかりダメージ与えたし、グッド。

 

 

 しかし正確な射撃だ。獣の敏感な部分を的確に狙ったのを音からしてエアガンでこなすとは、やっぱいい腕しているぜ。マタギのおっちゃん。

 

 

 「幸太郎にケイジ!?!!? お前ら何しているんだ! 理由は後で誰かから聞くがそいつは知り合いの猟友会の言っていたやばいやつだ! ケイジはさっさと逃げてくれ! お前さんに死なれちゃ俺は利褌さんに死んでも合わせる顔がない!」

 

 

 『馬鹿野郎! 無限の未来を、国の宝の子どもを熊の前において、ダチと知り合い置いてケツむけて逃げられっか!! この場で張り倒すんだよぉ!! おっちゃん、幸太郎。ちょい時間かせ・・・いや、その前にそこの二人連れてってくんない!?』

 

 

 猟師でも仕留めきれんかったやつね。もしかしてちらほら見れる傷跡はライフルや散弾銃のやつか。ますますここで仕留めんと駄目だわ。ここで逃がして都市部に行ったらさらにやべえ。

 

 

 「ケイジ君! ワンちゃんにおっちゃん。ほれ坊主らもここに来い!」

 

 

 「ヒン? ワフッ! ムフゥ」

 

 

 『おお、藤井の兄ちゃん! ナイスゥ! 子供らそのまま庇ってくれや!』

 

 

 「だからお前さんも来るんや・・・念のためにと車に持ち込んでいた熊撃退スプレーで今は追い払うで・・・!」

 

 

 俺の馬具を引っ張るな藤井の兄ちゃん! その子らを・・・ってあのヒグマあんな強かに木に肩をぶつけて、俺の前蹴り前足に喰らってまだやるの!? ほんと気が狂ったか、ますます怒ったなこいつ!

 

 

 あーもー! よし、いいもの見つけたし、ちょっと失礼屋台のこれ借りるぜ!

 

 

 「グォオオ!!」

 

 

 また懲りずにタックルしやがったな!

 

 

 「このっ! いいから逃げなさいってケイジ!!」

 

 

 おっちゃんの電動ガンで放ったBB弾がまたヒグマの、今度は耳と喉に放り込まれていく。弱い場所をこうも連続で喰らえば流石に怯むよな!

 

 

 「ビヒィー!!」

 

 

 喰らえ、マスタードビーム!! アメリカンドッグのトッピングマスタードをたんまりもらえー!!

 

 

 「グルゥ! ワン!!」

 

 

 おやっさんと俺の連携で怯んだヒグマの鼻を目掛けて飛びつく幸太郎。あ・・・

 

 

 「ワグッ!! キャインキャイン!! ピスピス!! キャフン!!?」

 

 

 『うぁわあー!!? 辛いよ! なんだか変だよぉお!!?なんだこれ、つーんてくる!!』

 

 

 マスタードまみれのクマの顔に噛みついた幸太郎。アワレ舌をマスタードにたんまりチョイス! 鼻を噛まれた熊はもんどりうつけど幸太郎もすぐにマタギのおっさんの所に移動しながらのたうち回る。犬に刺激物は、やめようね!

 

 

 『おどれ熊公!! 祭りのみならず幸太郎をやりやがったな!! ゆ”る”ざ”ん”!!』(←マスタード噴射した張本人というか張本馬)

 

 

 そしておのれ熊公! 今がチャンス、俺の最大の技を喰らえー!! まずは勢いよく後ろに向けてダッシュ! してからの反転しながらの加速! さらにそこにジャンプしながら体の向きを変えて

 

 

 『ケイジキックじゃー!!』

 

 

 ライダーキックならぬケイジキックをヒグマの眉間に炸裂! 馬の速度とパワー、そして俺の馬体重現650キロを乗せた飛び蹴りを叩き込めばヒグマが面白いように転がって、ゴロンと地面に転がってビクンビクンと震えて動かなくなった。

 

 

 「ヒィン?」

 

 

 「・・・えー・・・? いや、待てケイジ! そこの兄さん。ケイジの知り合いなんだろう? このワンチャンの、幸太郎の舌をこれで洗ってあげながら待っていてください。あと、私はマタギです。そのスプレーもお貸しいただけると」

 

 

 「あ、はい・・・ま、まじかー・・・」

 

 

 やったか? と思っていたがそこは油断大敵。マタギのおっちゃんがエアガンと藤井の兄ちゃんから借りた熊撃退スプレーを持って熊にそろそろと移動。

 

 

 「・・・うぉ。ライフルで撃ったとしてもこうはならんぞ・・・うん。これは死んでいるな。眉間周辺が陥没していやがる・・・」

 

 

 「子供を守って戦い、熊殺しのケイジ爆誕・・・かあ・・・あ! あのカメラ! ・・・・・・・・・・・・っし! これは特ダネ! の前にまずは牧場長に連絡するぞケイジ君。お手柄だけど、それはそれとして怒られなさい」

 

 

 『えー!!??』

 

 

 この後前田夫妻とテキのおやっさんに滅茶苦茶怒られて、感謝されたりした。雷が何度も落ちて、その後に胴上げされそうなほどに感謝されるのを短時間で味わうって早々ないよなあ。まあ、流石に少し反省。女将さんやナギコ、ジーナに泣かれそうな顔されちゃあな。女の子にゃ勝てねえぜ。熊より手ごわい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「夏祭りを守り、若き命を守り、危険な動物を退治したその勇気と強さ、心で成したこの功績を讃え、これを授与します」

 

 

 「ヒヒン」

 

 

 「ワン!」

 

 

 「はい!」

 

 

 「は、はい」

 

 

 あの夏まつりから後日。俺らで退治したあのヒグマ。やはりというか猟友会でも仕留めきれず、三つ足の猪を襲い、近所の農家さんを怯えさせていたやつだったそうで。その大きさもでかく危険視されていたいわば指名手配犯的な扱いのやつだったそうな。

 

 

 そいつを退治した上に、俺のファンの子ども、国光君。祖父が警視。父が自衛官という家系であり、馬と犬とマタギと記者がヒグマを退治したというだけでも話題になるのに更にこれもあって只今警察署で俺ら二人と二頭が感謝状を賜ることになったで候。

 

 

 警視の爺さんに自衛官の、俺をなんやかんや応援していた? 親父さんに俺のファンの国光君から揃って感謝され、警視、署長直々に感謝状をそれぞれ貰い、メダルと金一封をもらう。

 

 

 あ、そうそう。俺に関してはまた獣医のお世話になり、熊や猪の毛皮にいるヒゼンダニを媒介しての病気、疥癬も無ければ特に足元も異常なし。精々ヒグマにケイジキックをかました際に蹄鉄が壊れたくらいだ。

 

 

 なので俺の検査が終わってからの表彰式。マスコミやらメディアが来るわ来るわ。外がすっげえことになっているぜ。

 

 

 「ではケイジ君、ありがとう。そして、これは私個人の話だが・・・孫を守ってくれてありがとう。菊花賞、私も応援に行くからね」

 

 

 まあ、それはそれとして俺の番になって警視の爺様から表彰状(汚れないようにビニールで包んでいる)を貰い、ありがとさんと代わりに頬に自分のほっぺを当てる。

 

 

 で、この後は写真撮影となり牧場長のおやっさんと俺、幸太郎とマタギのおっちゃん、藤井の兄ちゃん、警視の爺様に国光君、蓮君とテキのおやっさんとみんなで撮影。マタギのおっちゃんが幸太郎の分の表彰状を持ち俺は表彰状を咥えてにっこり。

 

 

 いぇーい。お茶の間の皆見てる~? 夏を楽しく過ごしてくれよなー




 熊殺しのケイジとかいうまず競馬じゃ聞かない二つ名をゲット。オルフェのあの阪神大笑点といいこの時代実力のあるコメディアン多すぎ問題。


 ケイジ 温泉堪能してから脱走してからのまさかのクマとの喧嘩。後日捌いた熊をみんなで食べたがケイジは食べられずに馬房内で食わせてくれーと叫んでた。ナイスネイチャ大先輩に続いてワイドの紙ならぬ感謝状を咥えて写真撮影。


 幸太郎 ケイジと一緒に熊と戦い、マスタードにやられた。ちゃんと舌も無事で後日焼いた熊の肉を堪能。ウマ娘の世界だと女の子で親と一緒に東京で猟師しては前田ホテルのジビエ専門料理、珍味の肉を卸して生計を立てている。外見は白と茶色の髪の毛をした艦これの榛名。


 ナギコ 無事名前をもらう。そろそろ牧場を出てレースの世界へ。ケイジの教育のおかげですっかりマンガとアニメ大好きに。カスケードの戦いぶりにあこがれた。なんやかんや平野調教師とは折り合いがついてきた。


 ジーナ まだ臆病で自身がない内気な牝馬。最終的にはアズレンの赤城みたいな性格になって多分ウマ娘の外見は近い感じで大鳳。ヤンデレの素質マシマシ。地味に祖父世代らの血筋がやばいので血統保護と牝系の血による名牝としての可能性をかけて購入された。


 蓮君 小学生にして防御の上手さとバントの達人、足で勝負して引っ掻き回すという渋すぎる野球少年に。ケイジと夢を語り、夜にはケイジに助けられてとやたら濃い夏を満喫。後日ケイジらとクマの激闘の動画に映っていたせいで学校で根掘り葉掘り質問攻めにあう。


 国光君 ケイジを新馬戦のころに応援していた子供。ケイジに助けられ、護る姿に感銘を受けて後日自身も身体を鍛えてどちらかは未定ながら祖父、父らの歩む道を目指そうと考えている。菊花賞は駄々こねてでも応援に行くつもり。


 藤井泉助 馬関連のコラムを書きつつ温泉とケイジへの取材に来たらさらに熊とケイジ達の激闘を見るという珍事件に遭遇。祭りの様子を撮影していた資料用の映像にばっちりケイジたちの戦いの一部始終が収められていたのでこれを後日利用。会社から賞をもらい、映像もバカ売れしてウハウハ。ちゃんと温泉も味わいました。


 前田夫妻 熊とケイジの激闘を知ってショックで心臓が止まりかけた。無事に戻ってきてくれて嬉しいのとは別にしっかり怒り、そして怪我も病気も一切ないケイジの頑丈に感謝しつつも首をかしげた。熊鍋美味しかったです。


 マタギのおっちゃん まだ名前は未定。祭りで幸太郎と食べるご飯の前にエアガンくじを楽しんでいたら一等の電動ガンをゲットできたのでBB弾も購入していたらまさかのヒグマとケイジ、幸太郎の激闘を目の当たりにしてすぐさま助けを出す。実は一流の猟師。


 世間 ぶっ飛んだニュースに驚いたり爆笑したり肝を冷やしたりと反応様々。ゴルシの伊馬波さんのシャツを破いた連続記録と鹿を蹴散らしたニュースも相まって馬の認識が壊れるわ。


 もう少し夏休みは続くかもしれません。その後くらいにウマ娘エピソード。
 


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続・ケイジの夏休み

 のんびり休みたい。2か月くらい。その間にこの作品書きたいわぁー


 誤字訂正、お気に入り人数80人突破! そして高評価をありがとうございます! 夢がかなってまた次の夢を見せてもらっているような気分です。これからもコツコツやっていきます。


 「さてさて、今日はお前も一緒だなあ。しっかりお参りするんだぞ?」

 

 

 「ヒフ」

 

 

 あの祭り? の後日、マスコミやら記者が押しかけたりで大変だったが藤井親子、そしておやっさんの知り合いのゼネコン超大手、そしてスーザンママらの『牧場に迷惑かけるってんなら金は出さないし、アドバイザーもやらん』の鶴の一声で見事にぴたりとやんだ。そして藤井親子や信頼のできる記者たちだけが来ては真摯に対応しているのを俺も見つつ変顔したり、空いた時間に記者さんらと一緒に温泉に入ったりマンガ読書会の日々。

 

 

 そんで夏競馬も熱くなって来たりとある程度熱が収まってから俺とおやっさんは祭りのあった神社に向かって一緒に歩いている。というのも貰った金一封。後日祭りの運営委員会からも貰い、地元の市役所からも害獣駆除のお礼でなんやかんやちょっとしたボーナスくらいの額になった。

 

 

 で、牧場長。もとい利褌のおやっさんおよび牧場のスタッフ一同の意見が「今回ばかりは完全にケイジのほぼ一人手柄だし、思わぬボーナスだし、ケイジの意見に合わせて使おう」ってなった。で女将さんとトモゾウが思いつく限りのお金の使い道をイラストにしたものを用意して俺が頷けばそう使う。首を横に振ればそういう使い方はしないという感じで相談会。

 

 

 結果は3割は募金、1割は俺、おふくろ、ナギコ、ジーナのリンゴとか人参購入、3割は牧場に、残りの3割は馬の神様を奉る、神仏習合なのか馬頭観音様もいらっしゃる神社に収めようとなった。で、俺も一緒に行くぞ、出ないとまた脱走するぜー? って感じでジェスチャーしていたら出してくれた。やったぜ。

 

 

 以前は外で調教するたびに一緒にお参り行っていたけど、ここ最近はずっと東京の厩舎にいたせいで行けなかったしな。報告も、感謝も山ほどあるってもんよ。

 

 

 「さてさて・・・と。スロープで馬でも優しく登れるのがいいな。じゃ、手を洗って・・・ケイジは口だな。ほれ」

 

 

 「ペロペロ・・・グビ、れー・・・」

 

 

 手水舎でおやっさんと俺は手を洗い、俺は口をすすぐ。そんでお金を入れた封筒をくわえ直してもらい、首には人参やりんご、芋とか野菜を入れたかご。これがお参りの際にお布施でいいのかね。で、賽銭箱の前に到着。お金の入った封筒を賽銭箱に入れ、野菜の入ったかごを賽銭箱の前に置き、鈴を鳴らしてから二礼二拍手・・・は出来ないので前足でトントンと石畳を軽く踏むだけにして、最後に一礼。

 

 

 『(神様。どうにかこうにか頑張って最後の大舞台に挑めるように、そして競馬界がおもしれえくらいに賑わっています。これも神様の繋いでくれた縁あってこそ。感謝します。そして、話を聞いてくれてありがとうございました)』

 

 

 「・・・・・・よし、ケイジもちゃんとできたか?」

 

 

 「ヒン」

 

 

 「じゃ、帰ろうか。ナギコもジーナも待っているぞ」

 

 

 『ああーそっか。平野調教師、また来ているんだっけ、相当ナギコを買ってんなア。俺の時よりもVIP待遇じゃん』

 

 

 互いに神様への言葉を心の中で祈り、終わったのでのんびり桃やバナナを買いながら帰宅。で、案の定俺と幸太郎で二頭の訓練を開始。そんでまた平野調教師は砂にまみれて、今度は海に突き飛ばされて、それを俺と幸太郎は爆笑しながらも引っ張り出してやった。ナギコの悪戯だろうが、ゴルシ思い出すなおい。尾花栗毛のくりくりお目目の美馬だってのに。

 

 

 で、最後になんだかジーナの視線がしっとりになってきている気がするんだが気のせいか? 前より接しやすくなったけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「フスー・・・フスー・・・」

 

 

 『ぉお・・・うぉおお・・・やめろゴリラ局長。そのダークマターを食べたらぱっつあんみたいに目が悪く・・・・はッ!? あれ?』

 

 

 夜中、ナギコとジーナの調教が終わり、のんびり風呂に浸かってご飯を食べて、俺のボーナスのリンゴをシャリシャリ。そして爆睡していた。

 

 

 この世界ではゴルシと俺も銀魂のジャスタウェイの話に出ていたのを見たせいでヘンテコだけどアニメにありそうな悪夢を見ていたら雲の地面に桃園まみれの場所に俺は寝ていた。あれ? 俺いつ死んだっけ? にしたって川がないんだけど。奪衣婆さんはどこだよ。もしかしてここ界王様いないかなあ?

 

 

 『うーん。なんか独特な場所だが・・・いい香りに空気、天界ってのはこういう場所なんだろうなあ』

 

 

 『やあ、久しぶりだね。いや、今日あったかな?』

 

 

 『あんたは・・・神様! ご無沙汰して・・・あれ? 今日??』

 

 

 どっちにしてもいい場所だなあと思っていたら、俺を馬に転生させた神様が。頭を下げていると今日という言葉に首をかしげる。

 

 

 『ほら、参拝したでしょ? 神仏習合して神様も仏様も奉っている神社に』

 

 

 『ああーあの。いやあ、今まではせいぜいが人参一本、5円とか500円だったもんで、ちゃんとお参りとお布施を渡せて満足ですわ。んで、今日は如何様に?』

 

 

 『ふふ。あれはいつもにんじんチャンプルーにして食べていたり、麩菓子を買っていたよ。いやあー君の珍道中。もう高天原も馬に関わったみんなが爆笑していたりでね。同世代、先輩世代らの活躍もあって今日本の競馬に神仏みんなが注目、楽しみにしているんだ。そのお礼をしたくて来たんだ。私の予想以上の活躍に敬意をこめて。この子とか・・・この武将が・・・この馬が・・・』

 

 

 しれっと言っているけど、日本競馬に天界が注目しているとかマジかこれ。お伊勢参りもしたほうがいいのかしらん。そんで語られる天へと旅立った名馬たち、武将たち、ホースマン、神様仏様らの話を楽しそうに話す神様に自分も嬉しくなってずっと聞いていた。

 

 

 いやー歴史好きな分ほんとこういう話を聞けるって最高だぜ!

 

 

 『それで、もう匈奴や島津の武将たちがぜひ一度乗ってみたい、松風騎手そこ代われとレース中に何度も言っていたり、シンザンとシンボリルドルフが私のひ孫だ私の孫だと周りに自慢したり大げんかしたり、トウケイニセイもナギコちゃんが活躍しそうなのに涙を流したりで・・・おっとと。話が長くなったね。で、ケイジ。君には私から稀代の頑丈さ、胃の強さ、種の強さを与えた。ちゃんと種牡馬として大成できるように。

 

 

 ・・・・それ以外の馬体、パワー、スタミナ、柔軟性。勝負根性、は全て君が私すら予想しないレベルで手にして、そして変則三冠という偉業を成した。それのプレゼントとして、もう一つプレゼントを渡したいんだけど、何がいい?』

 

 

 『ああ、それならいりませんわ』

 

 

 『え?』

 

 

 いろんな話を聞いて、一緒に桃をかじりつつ本題の俺にくれる能力の話で俺はいらんと一言。だってなあ・・・

 

 

 『もう俺はたくさんのものをもらった。神様がくれた無事是名馬のギフトを。この馬生になっての沢山の愛を、期待を、声援を、そして友たちとの友情を。もうこれだけでお腹いっぱいなのにもっと食べたくなる。だのに眺めていたくなるような宝石のような、至高のご飯みたいなものをたくさんくれた』

 

 

 そう。人から畜生、経済動物になってこの愛を、素晴らしい時をくれた。これだけでも最高なものだ。それに加えて、まだ俺はたくさんもらった。

 

 

 『そして、どこまでも楽しくなれる青春を、夢を追いかける旅路をくれる時に、この生きている時間に恋をしちまうほどだ。神様、貴方のおかげで俺は最高の恋愛をしている。命短し馬にこんな最高の青春を、燃えるような恋をくれたんだ。そしてそれは必ず俺が競争人生を終えても輝き続ける最高の宝だ。これをくれた。だから俺はもういらない。それ以上もらっちゃあ、宝物が多すぎて一人じゃあ抱えきれませんぜ』

 

 

 『・・・・・・・ははは。君は本当に、面白いよ。でも、私も私で君にプレゼントしたいんだ。笑いも熱さも、本当に愉快な時間をくれた。どこまでも夢を追いかける姿に、愉快に過ごす日々に、子供のために命かけるその姿に。そして果てしない激闘を征した武士に褒美を与えなければだよ』

 

 

 愉快な、そして燃えさせて、笑わせてくれるダチ公。俺を支える愛おしいホースマンの皆。牧場で俺を見守り、そして今は休ませてくれる換える場所の皆。沢山の愛を、夢をくれた。元気も活力も何もかんもをくれる皆に、応援してくれる大ファン。俺を見込んでくれたオカマバーの皆。こんなにたくさんの素敵な馬生をくれたんだしな。もうこれ以上は俺には勿体ねえ。

 

 

 だけど神様も引かないし、うーん。武士に恩賞の話となれば確かに乗らなきゃもったいない。なら・・・・・

 

 

 『そんなら、俺以外の皆に神様が俺に今渡すはずだった分の力を幸運に変えて、あるいは何らかのギフトを上げてくださいや。今の俺は一人で、一頭でこうなったわけじゃない。俺を支えた、俺が挑む気をくれたみんながいる。その皆に祝福を。それが回りまわって俺の幸せになりますし、助けになるでしょう。更に言えばそのほうがきっと大きな幸せをみんなでわけあえる・・・どうですかねえ?』

 

 

 『うん。それならいいよ。了解だ。ふふ。菊花賞。メジロマックイーンの血が強いゴールドシップ相手だから何か必要かと思っていたけど、大丈夫そうだね』

 

 

 『もちろん、不利と言われるでしょうけどもだからこそ燃える。だからこそ挑む。俺の名はケイジ。不利なレースでこそ燃えるってもんだ。そして神様。見ていてくれ。貴方様の認めた漢があの稀代の大天才にどう挑むか、しっかりとみんなで見ていてくれれば。それが俺に今貰える最高の褒美だ。あ、もちろんコーラとポテチ持参で』

 

 

 『もちろん。それじゃあ、またねケイジ。私の見込みは間違いじゃなかったよ』

 

 

 『ありが・・・もにゃ・・・お、おおおぉ・・・なんだ・・・あふわ・・夢の中でねむ・・・』

 

 

 「ヒヒン!?」

 

 

 「おおっ!? どうしたケイジ。悪夢でも見たか?」

 

 

 「・・・ヒィ・・・ン?」

 

 

 『あ、夢かあ・・・長くて今でも覚えている夢だったなあ・・・まあ、本当に出会っていたんだろうけどね。神様と。どったのトモゾウ?』

 

 

 目が覚めて、起きるとトモゾウが馬房の回りを掃除していてびっくりしていた。いやーすまんすまん。3年ぶりくらいに神様にちょっと会いまして。これだけ聞くとどこぞのちきゅ育ちのサイヤ人みたいだな俺。

 

 

 「まあいいか。ケイジ、お前が熊退治で手にしたボーナスでな、なんとラジオを馬房のそばに置くことになったぞ! あとはアニメのお前の好きな曲を詰め合わせたCDをみんなで作っているから、ここにいる間はこれでリラックスして、アニメが見たいときはいつもの場所で見ような」

 

 

 「ビヒィ! ヒヒン! ヒーん!」

 

 

 『マジで!! いぁやったー!! これでますます暇とはおさらばだー! アニメの曲を聞きながら漫画読めるとか最高かよ!』

 

 

 『うるさいしー・・・どうしたのよケイジにトモゾウー・・・もにゃ・・・』

 

 

 あ、すまんすまんナギコ。いやしかしとうとう俺の馬房には本棚、新聞置き場、そしてサインと賞状。いよいよラジオも来るかあ。感慨深いぜ。

 

 

 「ふふふ。喜んでくれてよかった・・・お? この桃、どうしたんだケイジ? すごくいい香りだけど、昨日利褌さんとお参りの際に買ってきたのか?」

 

 

 「?? ムフ? ・・・わふ」

 

 

 トモゾウと一緒ににっこり笑っているとトモゾウが何やら首を傾げ、俺も? っとなっていると確かにかぐわしい、嗅いだことのある香りがするので首を下げると俺の馬房の扉のそばには一つの桃が。でも昨日の晩御飯のおやつの桃は全部食べたし・・・この香り、もしかしてこれ、神様がくれた餞別代りか?

 

 

 ふーむ・・・一つしかないし、トモゾウには悪いがウマ組で分けるか。トモゾウーカットしてー

 

 

 トングをつかんで包丁に見立てて桃を4等分するジェスチャーをしてからトングを置いて桃を咥えてトモゾウにひょい。俺と付き合い長いし、もうわかるでしょ。

 

 

 「ああ、はいはい。ミホミサトに、ケイジ、ナギコにジーナの分に分けてほしいってことね、了解。ついでに朝ごはんの時間だし、オードブル代わりに食べようか。にしてもいい香りだぁー・・・・利褌さん相当いいもの買ったんだろうなあ」

 

 

 利褌のおやっさんにはちょっと悪いが、まあ伝わったとしても分からんだろうしなあ。言わんとこ。

 

 

 この後、滅茶苦茶うまい桃にみんな騒いで馬房がうるさくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『いやー! 牧場離れるなんてイヤダシー!! 離せ! 離せ平野のおっさん! このっ! このっ!』

 

 

 「ぐふっ! ふぐぁ! な、ナギコ、ちゃんと入りなさい。怪我しちゃうから! あぶな!」

 

 

 すっかり夏も過ぎ、秋になろうかという、残暑残る季節になりました。ナギコは基本ここで調教をして秋ごろに入厩するという形でようやっと平野厩舎に入る・・・んだけど、まー荒れているのなんの。まあ、ここ温泉もあるしなあ。温泉じゃなくてシャワーだけの生活とか引き取られてすぐにここで過ごしている温泉大好きナギコには辛いよなあ。

 

 

 「ヒィン。わむ、むふぁ」

 

 

 『おーおー荒れているなあ。ナギコー頑張って活躍すればここに帰ってきたときにもっとゴージャスで、フカフカな場所になれるし、行先でもリクエストできるぞー』

 

 

 「ヒヒン!?」

 

 

 『ウソッ!? あれよりもよく!? 本棚にテレビ、志村さんとの写真とかも!?』

 

 

 「ムフッ。ビヒ、わぉん、きゃふ」

 

 

 『出来るできる。もっとすごい大物との写真とか、面白いことになるかもだぜー』

 

 

 ナギコも大分本好きになったからなあ。ちなみに探偵もののにはまっているらしく、マープル、ホームズの作品を大いに読み込み、日本作品だと明智小五郎が大好きな文学少女になった。活字を読む速度は俺より早いんじゃないだろうか。

 

 

 なのでそういうこともできるぞーと言えばナギコのやつぴたりと止まって大人しく。よしよし。もう一押し。

 

 

 『それに、俺が鍛えられてこの筋肉もりもりマッチョマンになったのは競馬で鍛えられているからだ。ナギコも頑張れば最高のスタイルと美貌を手にできるぞー』

 

 

 『なら行くし! 女磨きしてくるし! ほら何しているの平野のおっさん! 入るし入るしー!』

 

 

 「ええ・・・入るのか・・・ありがとうケイジ君。今度梨あげるね」

 

 

 「ムン」

 

 

 『気にするな。ナギコの事よろしくぅ』

 

 

 急いで馬運車に入って自分から扉を閉めるナギコに驚きと呆れを見せる平野調教師を見送り、ひげ熊厩務員の運転する馬運車がとことこ牧場を出ていった。ナギコも調教、そんでデビューか。

 

 

 でも、2歳馬のダート路線って日本じゃ芝メインなのもあってとことん数少ないしなあ。あ、だから入厩の時期を遅らせたのかね。秋競馬が本格的になって忙しい時期だし。いやでもあの頻度で東京から北海道に出向いて褒めちぎっているし期待度は高いよなあ。

 

 

 ちなみにだが、蓮君は無事に小学生野球日本一を達成。最優秀セカンドポジションとなんと盗塁王、バント多数使用してなのに最優秀打者としての三冠で表彰されるということに。マジかよ俺に続いて三冠取りやがったな事態でスポーツ新聞にもちょっと載っていたりしていた。

 

 

 まったく。日本一のチームで一つ優秀なポジションとして表彰されるだけでもやべえってのに。蓮君はそれ以上を見せた。そしてテレビ電話で俺にこう言った。『ケイジ、次は君の番だよ』だってさ、燃えるじゃねえの。四冠一番乗りを果たして見事にやってやろうじゃねえか。漢同士のお約束、果たさないとなあ。

 

 

 『ナギコお姉さまも花嫁修業の旅に・・・ジーナはまだですが、その分ケイジお兄様と一緒・・・うふふふ』

 

 

 『そうだなあ。もう少し練習頑張ろうか。あ、でも俺もしばらくしたら出るぞ? 秋競馬、冬の大一番が待っている』

 

 

 『そ、そんな・・・! ケイジお兄様との時間が一番楽しいのですのに!!?』

 

 

 んで、ジーナは俺らに大分心を開いてくれて、一緒に調教、併せを頑張って、毎日細かく起きずにぐっすり最低6時間睡眠。ご飯もりもり温泉ぷかぷかした結果黒鹿毛の毛並みは芸術品。身体はこれが病弱で細かったのが嘘のようなレベルの馬体へ。

 

 

 後ろ脚の歪みもサンデーサイレンスとかに比べれば軽い方だしで足回りもムッチムチで故障も起きづらいだろう。この短時間でいい感じに成長したものだ。で・・・ん。マジで俺になつきすぎじゃないっすかねえ。すっげえショック受けているみたいだし。

 

 

 『始まるんだよ。秋の大一番、俺にとって一番大事な戦いの一つがな・・・ま、テレビで見れると思うから、そこで応援してちょ』

 

 

 『私も行きたい・・・でも絶対止められる・・・ぐぬぬ・・・わ、分かりましたわ。テレビで全力で応援します!!』

 

 

 ちなみに、ジーナも漫画教育はしていて、女将さんが昔見ていたアタックナンバーワンとかガラスの仮面、エースをねらえなどなどの少女漫画の文庫本版を嗜んでいる。たまに夜更かしそうなら声をかけるが、気持ちは分かるぜ。

 

 

 そして始まるのは最後の一冠をかけた勝負。赤い糸が俺たちの命をそこに運ぶために張りつめて音を立てる。その糸は、その行先は何よりも濃く、赤い血の色で、紅葉以上に燃え盛る炎の色。燃え上がる戦場だ。

 

 

 『おう。さあ・・・・・勝負だぜ。ライバルの皆、ゴールドシップ・・・!』

 

 

 菊花賞。三冠最後の一つにして俺たち3歳馬にとっては未知の距離にして史実ではゴールドシップの得意とする距離。俺にとってはミホシンザンが、テイオーが王手をかけて尚届かなかったクラシック三冠を手に入れる大一番。

 

 

 ターフでの激闘が、あいつとの再会と勝負がいよいよ、始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ケイジに関して語るスレ996~

 

 

 677:名無しの競馬おじさん

 

 皆の衆! 財布とコールの用意はばっちりか!

 

 

 678:名無しの競馬おじさん

 

 >>677

 もちろんです! ケイジ将軍にどこまでも付いてく所存です!

 

 

 679:名無しの競馬おじさん

 

 >>677

 隊長! 秋に入って漢を磨いたケイジとゴルシ、淀の坂で漢勝負始まるのにその用意を怠る不届き者はおりませんぞ!!

 

 

 680:名無しの競馬おじさん

 

 ケイジのいない秋競馬は笑いが少なかった。熱気が無かった。だが、それも全てはこの大一番のために! 秋の最強決定戦! 大勝負を彩る傾奇者が帰ってくるぞ!!

 

 

 681:名無しの競馬おじさん

 

 子供を守るため熊を蹴り殺し、牧場の次世代をも育てる武将の鑑ケイジ。厩舎に帰るだけであたりの厩舎がざわめき、大殿の言うことすらも聞かない我が道を行くこれまた奔放な服破り、鹿もビビる不沈艦ゴールドシップの勝負。いやー待っていたぜ!

 

 

 682:名無しの競馬おじさん

 

 しかもその夏を越えて秋にぶつかるレースが「もっとも強い馬が勝つ」と言われる菊花賞。常に前線で戦い力と経験を積んだゴルシか、一度休みつつ力を蓄えたケイジが勝つか。帝王と名優のTMから傾奇者と不沈艦のKG対決へとバトンが・・・もう気が狂うほど気持ちええんじゃ。

 

 

 682:名無しの競馬おじさん

 

 実際、ケイジにとってはここまでは前哨戦。ライバルのゴルシは血筋、そして今までのレース展開を考えるとマジで菊花賞が分からないんだよなあ・・・テイオーと同じく菊花賞は手にできるかどうか、一番ドキドキする。

 

 

 683:名無しの競馬おじさん

 

 そうなんだよなあ。マックイーンに似ていると言われるゴルシ、だとすれば本格的に仕上がるのが今ぐらいだし、レースも皐月、ダービーごとにケイジに距離をつめてきている。ラップタイムや末脚の速度、3ハロンの速度はケイジも距離が増せば増すほどに早くできているけどそれに追いついて差を縮めている。

 

 

 早熟と言われている部分もあるし、勝ってほしいが同時にゴルシの成長を見て此方も応援したくなる・・・ああ、もどかしいがワクワクする!

 

 

 684:名無しの競馬おじさん

 

 マイル、ダービーでケイジに食らいついていたジャスタウェイは距離が長いってことで出走はしないみたいだし、本当にこの二強対決。国営放送でゲストが激論を交わしたり、週一で競馬の特番が普通にテレビでやっているとかすごい時代になったもんだわ

 

 

 685:名無しの競馬おじさん

 

 既に経済効果百億近くいきそうで、ぬいぐるみとか飛ぶように売れているんだろ? いやーダービーとマイルで手にした最初のぬいぐるみ、シリアルナンバー1桁を手にできた時は舞い上がったし馬券は儲けたしでウハウハですわ。ぬいぐるみは金庫に入れて保管して、愛でる用を購入したし。

 

 

 686:名無しの競馬おじさん

 

 >>685

 なん・・・だと・・・

 

 

 687:名無しの競馬おじさん

 

 >>685

 シリアルナンバー2桁は既にプレミア値段でファンからは数万~数十万で取引されるレベルだぞ! おめでとう! そして爆ぜろ! くっそー!! 俺のぬいぐるみのナンバーは101だったしよぉー・・・!!

 

 

 688:名無しの競馬おじさん

 

 >>685

 あれ? もしかしてこの前ムランルージュでスーザンさんと話していた人? 確か一緒にシリアルナンバー1桁を手に入れたねって言って互いに奢り合っていた。

 

 

 689:名無しの競馬おじさん

 

 >>688

 もしかしてそういうあなたはケイジとゴルシ、ジャスタウェイの3連単、ワイドでかけて大あてしていた人では? かなり豪快に飲んでいたような

 

 

 690:名無しの競馬おじさん

 

 まさかの顔見知り候補がここ掲示板で出会うとはたまげたなあ。

 

 

 691:名無しの競馬おじさん

 

 >>689

 そうなんですよ! 大儲けしたのと初の3連単あたりだったので祝いにと。菊花賞は行きますか?

 

 

 692:名無しの競馬おじさん

 

 >>691

 行かないわけがないです! ケイジの晴れ舞台を! ライバルのゴールドシップの対決を生で見ないのはうそです!!

 

 

 693:名無しの競馬おじさん

 

 >>692

 なら一緒に応援しましょう!私は「ケイジ応援団」って名札付けておくので

 

 

 694:名無しの競馬おじさん

 

 >>693

 なら私は「ケイジ応援団2号」と名札をつけるので! 一緒に語り、応援しましょう!

 

 

 695:名無しの競馬おじさん

 

 馬で繋いだ縁がどうなるか、いやはや気になりますなあ。熱い友情が続いてほしい。

 

 

 696:名無しの競馬おじさん

 

 志村ヘンさんらドリフターズ! 明石家トンマ! 歴代ライダー主人公俳優! 大物演歌歌手のサンちゃんも来る京都競馬場! お前ら早めにいけよ! ダービー以上の盛り上がりと客が入るのは間違いない! 有給申請、お財布の用意、そして帰る分の路銀は持つように!!

 

 

 697:名無しの競馬おじさん

 

 それでは皆の衆2週間後の京都で会おう!サラダバー!!




 いよいよKGクラシック対決も最後の一つに。次回はウマ娘エピソードにするべきか菊花賞を優先するべきか。



 ケイジ お参りして神様にともがらたちの幸せと祝福を願い、桃を餞別にもらった。体の仕上げよし。最後の一冠、無敗の4冠を目指す。戦意はゲッターメンバー張りに滾っている。菊花賞用に用意したある技を松風騎手と相談している。


 ゴルシ ケイジもいないしでつまんないでゴルシ~しながら神戸新聞杯を勝利していたのだが菊花賞でケイジが出ると聞いて練習を珍しく頑張って周囲をびっくりさせた。伊馬波さんと例のCMを見て、話を聞いてぺかーと何か思いついた。


 ナギコ(CVイメージ 東山奈央 様)無事? 入厩。馬体重460キロまで成長していたり足元不安もないしでダートの期待株。ケイジとは一緒の厩舎じゃないことに後でもう一度荒れた。多分ウマ娘になるとしたらきららに近い外見かも。


 ジーナ(CVイメージ 種田梨沙 様)ヤンデレの素質開花し始めた。後馬体もしっかりして来たり走り方をケイジから教えてもらってすっかりコーナーワークの技巧者に。とはいえデビューはまだまだ先なのでしばらくは幸太郎と一緒に海辺で調教。適性は芝向き、1200から2400メートルが適正範囲だとか。


 神様 ケイジにプレゼントしようとしたら周りにそのプレゼント分の幸せをくれてほしいと言われてますます気に入る。けど何もあげないのは何なので桃をプレゼント。どこぞの斉天大聖が食べた桃ではなく普通に超おいしい、みずみずしくシャキシャキの桃。滋養強壮にいいぞ! 周りの神様からも期待株を良く出してくれたと褒められている。聖☆お兄さん的なノリ。


 ケイジファンの皆様 ライバルのゴルシ、ジャスタウェイも大好き。またケイジの盛り上げの際には必ずテイオー、マックイーンの名前が関わるのでそこから競馬史をより調べたことでゴルシらにも敬意を持つし、応援する。オグリや競馬の悲しい部分も知っているので基本マナーはいい。


 掲示板で知り合った二人は後日一生の親友になりますた。


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ウマ娘エピソード 5 帝王と傾奇者

 お気に入り1500人突破ありがとナス! 評価90人!! ありがとうございます! 大台突破したぜ! 誤字報告もありがとうございます! 今回はウマ娘エピソードから。


 この世界のチーム評価 リギル、スピカ、シリウス


 リギル チームの原型を作った初代リーダーセントライトから続く厳格ながらも和気あいあいとしたチーム。ルドルフやエアグルーヴ、ナリタブライアンがいることもあってますますチームとしての格は揺らがない最高峰。美貌、強さ、ライブ全てをハイレベルで備えた誰もが憧れ、ウマ娘なら一度は入りたい。メンバーに生で会いたいと思うチーム。


 スピカ 初代チームリーダークリフジから続く自由さ、おおらかさと実力派の集う色々とリギルとは対照的な部分のあるチーム。ただしリギルに匹敵すると言われるだけあり個性派でありつつ実力者が多数在籍。沖野トレーナーとスぺちゃんの件は後日クリフジ、ヒサトモ、セントライトからクレームが来た「生涯一度デビューのライブをあえてやらないのではなく指導不足で棒立ちとは何事だと」言われ沖野さん肝がマジで冷えた。


 シリウス 初代チームリーダーヒサトモから続き、ひ孫のケイジがチームリーダーを務める実力者が多いのだがそれ以上に問題児が勢ぞろいする。ただライブの技術と引き出しはリギルと比べても頭一つ抜きんでていることや海外遠征を積極的にしていくのも相まって話題の尽きないチーム。ケイジのせいでさらにライブでの盛り上げぶりは世界でも有名。


 「そこ! もっと動きにキレをつけなさい。でなければ周りとあわない!」

 

 

 「はいっ!」

 

 

 「そう! 決してそこも気を抜かない。ウイニングライブはファンへの感謝。レースだけではなくライブもどの順位であれしっかりこなしてこそ一級と言えよう。焦りすぎてはいけないが、かといって気を抜きすぎるな」

 

 

 ウイニングライブの踊りというのは勝利したウマ娘の持ち歌やレースごとに課題曲、大きな、GⅠなどを代表する重賞レースともなれば衣装も用意されているほどだ。それでいてやることは多い。1着、センター、それ以外の2着、3着用、そして5着までの子たちは大きく分けて一曲につき最低でも3通りのパターンを覚えなければならず、そのために学業の合間にある体育の授業ではおおよそダンスの授業になる。

 

 

 出るレースごとに分かれ、指導するのだがそこにはすでに覚えているウマ娘が指導に当たることも珍しくはない。エアグルーヴもその一人であり、むしろシンボリルドルフに並び立つ存在であるために、自身の高い自負と目標、プライドとそれに見合った実力がある彼女は進んで指導をこなし、結果ウマ娘たちからは厳しいが優しく、大変頼りになる副会長と慕われているほど。

 

 

 今もこうして厳しくもダンスで自分たちがより見事で美しいダンスを踊れるように自分の練習時間を割いてくれているのだ。それがどれほどありがたいか。

 

 

 「ふぅ・・・で、だ・・・テイオー! ケイジ!! お前たちも手伝え! 課題曲も何もかもできているだろう!?」

 

 

 「「えーめんどい」」

 

 

 そして、ダンスに関しても一級品。レースにおいても誰もを魅了するケイジとトウカイテイオー。この二人も学年を問わずに誰もに教えられる技術とセンス、経験があるのだが、揃ってどうやって持ち込んでいたかモンハンを協力プレイで二人が躍るのではなく二人のプレイするハンターが剣舞を踊る始末。

 

 

 「めんどいではない! ではどうしてここにいるのだ!?」

 

 

 「カイチョーとケイジがいたから? あ、ケイジ。次のクエストこのモンスターにしようよ」

 

 

 「あ、いいぜ。そんじゃあアタシがボウガンで行くか」

 

 

 「ほうほう・・・どういうモンスターなのだ?」

 

 

 「会長! 貴女も見学しないでください!!?」

 

 

 そこに混ざるのは偶さか見学に来ていたシンボリルドルフ。シリウスリーダー、リギルリーダー、そしてスピカ主力がこの有様。学園内、日本内でも屈指の怪物たちがこの有様。ケイジに至っては無敗のマツクニローテ達成、2400ワールドレコード達成に世界すら注目するというのにこれだ。

 

 

 更には今回の授業、ひいてはエアグルーヴのいるダンスの練習組はリギルの女帝のみならずテイオーステップでおなじみ踊りもレースも軽やかで美しいテイオーのダンス、あらゆる踊りやアドリブで場を盛り上げるケイジがいるというのもあってきているというのにこれでは意味がない。

 

 

 美しい顔だがしかめて眉間にしわを寄せればその怖さも相まって練習していた周りのウマ娘に怖がられて思わず後ずさりすると言えばわかりやすいか。

 

 

 「はぁー・・・しょうがねえ。テイオー、やろうぜ。最初に振り付け通り、その後に・・・あー確か恋愛の歌だし、アタシが男性のダンス、テイオーは女性のやつな?」

 

 

 「りょーかい。しっかりリードしてよねケーイジー♪」

 

 

 「了解しましたお嬢様。テイオー姫君のリードはしっかり握って見せましょう。じゃ、ミュージックスタート」

 

 

 しぶしぶと言った感じで始まる二人のダンスは先ほどまでのおふざけから一転。ダンスのキレ、衣装の趣向、デザインを活かした動きが一層振付を映えさせ、何よりふざける際は七色の男性ボイスを放つが素の声はクールな印象を持つケイジのハスキーボイス。明るくはつらつ、元気印なテイオーの声色が混ざり合い見事なハーモニーを放つそれはルドルフもエアグルーヴも感嘆の息を漏らす。

 

 

 その次に放つ歌詞を意識した二人の踊りは課題曲をより盛り上げていき、生き生きと、社交ダンスのような部分も組み込んだ美しい舞は長身恵体のケイジと小柄でスレンダーのテイオーの対比もあってこれまたアレンジ前の振り付けに負けないほどに引き寄せるものを見せつけていく。

 

 

 「っとまあ、こんなもんでしょ。このスカートのひらひら、あえて深くしているからおどる際に腰の回転を意識して広げていけば花が舞うように、花開くように舞うし、そこを使えばより映えるだろ。ブーツに関してもあえてひらひらしているのは振り付けでももっと動いて花弁のように舞い踊る。桜のイメージかもなあ」

 

 

 「だねー足腰は細かく動かして華やかさを。逆に上着は袖が長くない分しわとか気にしないでいいから伸ばし、止め、はねを意識するよりもポーズの角度で衣装のデザインの見せつけ、あと、ライトの角度でスパンコールの輝きが違うからそこを意識すればより映えるんじゃない?」

 

 

 「う、む・・・はあ・・・何でアレンジもうまくできるんだ・・・そして、みんな。参考になっただろう?」

 

 

 そして終われば衣装のデザインから来る狙いも読み切って教えていくケイジとテイオー。ケイジはしっかりと一緒にパートごとに教え、訂正も懇切丁寧に教え、ほめて伸ばす。テイオーはいわゆる塩対応だが角度まで計算された、ステップによる音まで考えたダンステクは誰も非を言えず素直に聞いていくほかない。

 

 

 これにはルドルフも苦笑い、エアグルーヴはもうやれやれと思いながら言うほかなく、ほかの生徒らもそうですねというほかない。

 

 

 「そりゃあ、アタシらまず基礎を覚えてからのアレンジに行くからなあ。守破離っていうだろ?」

 

 

 「そうそう。いくらボクでもしっかり練習していないと駄目だからねー飲み込み早いと思うけど」

 

 

 「う、うむ。しかしケイジから守破離という言葉が出るとは・・・いや、ヒサトモさんの教育もあってか?」

 

 

 「ははっははは。基礎はあってこそだよ。出なきゃ次へ行けないしイケても、すぐ止まる。でーもー? 出来ちゃえばこんな風に・・・・・・あ」

 

 

 面白そうにコロコロ笑うケイジが自分の頭をポンとたたけばその頭はポロリとマネキンのように落ちて地面にごとりと落ちる。

 

 

 「「「「キャァアアァアアッ!?」」」」

 

 

 「あーらーやーだー! ケイジちゃんったら頭落としちゃったあ。汚れちゃったし、古いから入れ替わりの季節ねん。はーいそういうわけで新しい顔をはいドーン!」

 

 

 「な、なななななな・・・・は、あ、ええ!? ケイジ!? い、いったいどうやって・・・」

 

 

 「何言っているのよぅエアちゃーん。これくらい、お茶の子さいさい。マジの魔法使いであるファンタジスタケイジちゃんにはできちゃうのよーねえテイオー?」

 

 

 「そうそう・・・ってそんなわけないでしょ!? なんで落とした首の方がしゃべってポンと首が生えているのさケイジ!! ワケワカンナイヨー!!?」

 

 

 そのせいで学園中に響く悲鳴が轟くがケイジの身体は気にせずに頭のあった場所から首の方へ手を突っ込んでポンと顔を出し、そして転がっている頭から言葉が出ているのでテイオーも訳が分からないよと悲鳴じみた声をあげる。

 

 

 「ンモーこれくらいマジックと声の技術の応用よん。声は腹話術。首はチョチョイとね? ほーら二つに増えた、三つに増えちゃったー♪ ならそのままお手玉お手玉♪」

 

 

 その生首の切断面がプラスチックなのを見せて玩具であることを見せたと思えばそのおもちゃの生首を増やし、全員が全員しゃべりながらケイジ本人がお手玉し、最後に一つにまとめてから手の中で押しつぶし、最後に手を広げれば大量の花束に変えてしまう。

 

 

 「おっとっと。授業終わりのプレゼントに癒しのアロマ漂う花束でございまーす。ああ。ちなみにこの花束、何と全部飴とラムネ細工。ほらほら。みんな食べてってね」

 

 

 「はぁ・・・心臓に悪いぞケイジ・・・しかし見事な造形。私も一つ・・・会長? どうしたのです? ケイジのプレゼントですしぜひ・・・」

 

 

 「ん? カイチョー? ・・・・き、気絶している!!? カイチョー!! 起きて、ケイジ無事だから! 大丈夫だから!!」

 

 

 「け、けい・・・ケイジ・・・は!? あ、ああ。無事なのか・・・・いつ見てもとんでもない手品だな。スイープトウショウやフジキセキが習いに行くのも分かる。それと私も貰うよ。ああ・・・ふふ。青いバラもいいし、赤もいいな」

 

 

 「両方あげるよー。今日の授業もこれで終わりだし、テイオーいこーぜー」

 

 

 ショッキングな映像からの魔法のようなマジックを見せて自身の生首マネキンをラムネと飴の造花に変えて出して振る舞うケイジ。しっちゃかめっちゃかな光景からの美しい色とりどりの花に生徒たちは歓喜の声を上げ、エアグルーヴも花好き。その造花の出来の良さと香りにほほを緩める。

 

 

 しかし目の前のこの衝撃はケイジにゲロ甘なルドルフにはショックが多すぎたらしく立って目を開いたまま気絶。テイオーによって起こされてようやく首があることにいつもの手品と安堵をしてからほかの生徒に混じって花のお菓子をもらう。ケイジの背丈も相まって大人から子供がお菓子に群がるような様子を見せつつ、一通り配り終えるとテイオーにも造花のお菓子を渡しつつほほ笑む。

 

 

 「ん? りょーかい。今日はカラオケと野外でのダンスの練習の助っ人。よろしくねー。ボクはスぺちゃんとウオッカの指導にかかり切るかもだし―」

 

 

 「はいよーしかし、スピカのトレーナーは大丈夫なのか? ルドルフ会長やエアグルーヴ副会長レベルの経験者ならまだしもお前さんに頼むって・・・生徒にダンスの指導を頼むなよ。しかも中央トレセンの名門チームの一角の」

 

 

 「ケイジ。ブーメランブーメラン。ケイジこそいろいろ教えているしアドリブのネタ教えていないでしょ?」

 

 

 「ん? わはは! ちげえねえや。よっしゃ。まだ時間はあるし、ちょい買い物に付き合ってくれや」

 

 

 「いいよーじゃ、カイチョー、副会長。まったねー」

 

 

 二人とも笑顔で手を振って野外ライブ練習場を出ていくのをルドルフとエアグルーヴは手を振って見送り、内心ルドルフは『混ざりたかったなあ。でも、生徒会の仕事もあるし・・・今日は練習もオフ。気をつけなければ』と自制しつつも羨ましがっていたり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「んっしょ・・・ふぃー・・・大量に買ったねえ。ケイジー」

 

 

 「ははは。テイオーの好物の蜂蜜レモン? が安く売っている店がアタシの行きたかった店でよかったぜ。ポイントもたまったしなあ」

 

 

 ダンスの授業も終わってさっさとホームルームも終わらせてのカラオケに行きつつの買い物を済ませている道中。トウカイテイオー・・・俺のおやじがまさかこうなるとはなあ。いや、ウマ娘は覚えていたけど改めてみるとほんと不思議だわあ。

 

 

 背丈差は実に60センチ。いやまあ、ゴルシとさえも背丈差40センチくらいあるけどさ。

 

 

 そんでまあ、テイオーはアタシを慕ってくれている。仲もいいし、マツクニローテをクリアしての菊花賞挑戦。無敗の四冠。ルナねえですらこなせなかった偉業に王手をかけて皇帝を超えるかもしれないことを喜び、同じくらいに負けないと豪語する。

 

 

 一緒に遊ぶし生徒会にたむろしてその場でステーキを焼いたり、TRPG会場にしたり、生徒会への差し入れで届いたジュースをルナねえから分けてもらったのでアニメ鑑賞会をしたりとまあ好きにさせてもらいつつ遊ぶ。で、今回はテイオーのチームスピカのダンス指導。

 

 

 あのウマ娘の有望株の生足見ればすぐお触りセクハラしていく沖野トレーナー、スペシャルウィークのデビューをチームに入れて一週間でレースに出す。ライブの踊りを教えるのを忘れたという前代未聞の事態を巻き起こしたことでうちのひいばあちゃん。ひいては前田家、メジロ家からも苦言をもらった。オグリキャップですらデビューのライブでは盆踊り披露しているってのに。

 

 

 アタシから見てもまあ。実力、才能を見込んで早く経験を積ませる意味でデビューさせるのは分かる。ただなあ・・・ウマ娘のレースに燃え上がり、最後にライブで盛り上がって完全燃焼を楽しむためにレース場にお客さんは来ている。盛り上げてなんぼ。燃えて萌えての笑いと興奮あってこそ。アスリートとアイドル二つの側面を持つウマ娘のトレーナーになるというのはその子たちの両側面を育てることを背負うってのに、それを生徒に任せるのはねえ。

 

 

 こっちはやりたいから自分から引き出し増やすし、みんなで楽しみたいからトークショーとかネタを作るが、せめて最低限は教えなさいや・・・

 

 

 「ふふ。奢ってくれてありがとね? このロイヤルゼリー味。出たばかりで楽しみだったんだ♪」

 

 

 「なあに駄賃よ駄賃。それに、アタシも買い物できたし」

 

 

 「うーん。その買い物はいいけどさケイジ。・・・・・・・何でローション? しかも業務用をかなりの数・・・・」

 

 

 で、今日はライブのダンス以外に色々マジック、ダンス、トークショー、コント、あれこれやっているシリウスのメンバーから指導をと依頼が来たのでゴルシを動かせるのでアタシとなったわけだ。

 

 

 まあ、ついでにアタシの用事のためにあれこれ買ったがな♪

 

 

 「いやな? エルコンドルパサーとタイキシャトルからぬるぬる相撲が日本の国技相撲の一つと言われてぜひアタシらでやろうって話になってなあ? 面白かったからやろうぜということでその用意」

 

 

 「それ微妙に違うよね!? 日本の国技じゃなくて某クイズ番組の恒例イベントだよね!?」

 

 

 「安心しろ。しっかりとケイジちゃん特製の激にがセンブリ茶も用意するつもりだ。リアクション芸もできるぞ」

 

 

 「ますますもって相撲じゃないじゃん! でもセンブリ茶は面白そう。ゴールドシップとかに飲ませてみる? にシシ」

 

 

 「わかってんじゃん。ゴルシにはあとでこっそ・・・火事か?」

 

 

 今度リギルと練習の際に一つ面白く盛り上げて、ついでにカレンチャンでも呼んでから一連の流れを動画にあげてもらおうかなーと思っていたら煙と臭い・・・これはやべえなと本能が告げる。

 

 

 「テイオー急ぐぞ、それと、119番を頼む。アタシのスマホのGPSとマップ連動させて。住所と周辺の目立つ施設がわかる」

 

 

 「え? あ、わ、分かった!」

 

 

 スマホの地図とGPSで自分らの現在位置周辺を映し出しつつ急いで煙の元へと走っていく。そこは商業施設と住宅街の境目くらいの場所。そこにいけばまあー見事にそこそこ大きな、ちょい裕福くらいの3階建ての家の1階が燃えていやがった・・・うわぁ・・・これ、漏電ってレベルじゃねえな。放火か、それとも油による事故から本棚にでも火がついたか・・・

 

 

 ちっ、周りはSNSにあげるかパニくっている、野次馬ばかりじゃねえの・・・

 

 

 「えーと・・・お、流石ここの自治体だ前に町長が言っていただけあるな。おいどけ! っし・・・ベルを鳴らして・・・! テイオー! この消火栓で水を出すからお前水をかけておいてくれ!」

 

 

 「ケイジは!?」

 

 

 「せき込んでいる声と気配を感じる。ちょいと救ってくるぜ! テイオー水くれ!」

 

 

 荷物を卸してから水を吐き出してくれている消火栓に身を突っ込む。

 

 

 「あばげぶぐぼぼぼぼぼぼぼ!!? ぶはっ! っしゃ!」

 

 

 「け、ケイジ!? 危険すぎない!? それに大事なレースがあるのに無理は・・・」

 

 

 「こういう時にアタシらウマ娘が動かなくてどうするってんだ! 行ってくるぜ。心配すんな。アタシはレンジャー、軍や警察、消防の訓練も受けている」

 

 

 「っ・・・分かった! 無事に戻ってきてよ!」

 

 

 持っていた大きめのハンカチをマスクにしてすぐさま火事の中に身を突っ込む。周りもギャーギャー言っている暇があるならご近所から消火器の一つ、庭先のホースでも借りてテイオーの手伝いしろってんだ!!

 

 

 幸いなのか恐らく火の出どころが台所の近くだったので玄関が入れそうなので蹴り壊してすぐに入り込む。うぐぇっほ・・・! くそ、こういう時に背丈の高さが恨めしい。

 

 

 炎の中でも聞こえる息遣い・・・逃げようとしたか、それとも誰かをさが・・・お、みっけた。ウマ娘の30代後半の女性。よいしょ・・・・っと・・・頭と肩に打撲。煙を一気に吸ってふらついたところに強かに頭をぶつけた感じだな。度合いから見ても軽度の打撲。早く突っ伏したせいで煙はさほど吸っているような感じはなし。

 

 

 むしろ、炎の熱での熱射病に近い症状が出そうなのがやべえ・・・・咳の声? 二階か! 

 

 

 「ぬへあっ・・・・!! ぐへ・・・テイオー、ここにこの奥さん置いておくぞ!」

 

 

 「ま、まだいるの!?」

 

 

 「声からして子供。二名だな・・・テイオー、今すぐそこでスポドリとお茶、水をしこたま買ってきてくれ、大急ぎだ」

 

 気絶している奥さん? らしき女性の肩をゆすりつつ小銭入れを渡し、再度身体を濡らして準備をする。

 

 

 「ど、どうして?」

 

 

 「炎の熱から来る熱射病に近い症状と有害な煙、熱で喉をやられているかもしれん。時間が惜しいから後で話すわ! じゃ!」

 

 

 そういうわけでもう一丁炎の中にいざ鎌倉。そんで急いで二階に上がればいましたいました子供が・・・どっちもウマ娘かよ!? ま、人だろうがウマ娘だろうが代わりねえや。

 

 

 「よいしょ・・・そーら・・・もう大丈夫だぞ・・・っとお!」

 

 

 おんぶとお姫様抱っこで抱えてそこからは窓から飛び降りての着地。ふぃー・・・よし、手当開始だ。

 

 

 「よし・・・ケイジ! 用意出来ているよ!」

 

 

 「よしよし。じゃペットボトルを手足、脇に握る、挟ませてから水をぶっかけて熱を取って・・・あーガスと熱で身体がびっくりして気道ふさがってんな。無理やりだがうがいさせてガスの有害成分を洗い出しつつ冷まして呼吸して大丈夫なようにするぞ。テイオー、気道の確保は私がやるから手足に冷えたボトルなり缶を握らせてくれ」

 

 

 「りょーかい! あ、消火栓はビニール袋とか僕のハンカチで標識とかと固定して水を常に炎にかけられるようにしているから」

 

 

 「ナイスだ。あ、よいしょ。この子はまだ症状が軽いな。ほれほれ。起きているかー?」

 

 

 やれやれ。火事では煙、ガスの方が危険だというがほんとだぜ。しっかし・・・音やにおいに敏感なウマ娘でもこうなるとはよほど火の回りが強かったし、心肺機能が高い分思いきりガス吸い込んじゃったんだろうなあ。

 

 

 「う・・・ぁ・・・・あれ・・・あ、あの子は!!?」

 

 

 「おおー起きたか奥さん。安心しな。そこの二人だろ? 素人診断だが息はしているしやけどもしていない。消防も呼んでいるからすぐ来るだろうし、ドリンクでうがいしてから飲んでリラックスしてなって。ほれ来た」

 

 

 センブリ茶とブレンド用のお茶パックを入れている袋をうちわ代わりにぱたぱたして子供らを仰いでいると奥さんが目を覚ましたので額にドリンクを当てながら微笑む。そんで、早めに連絡したとはいえもう来たか。

 

 

 「よ、よかった・・・ありがとうございます!! 何と礼を言えばいいか・・・」

 

 

 「礼は貰うがそこのテイオーにも頼むぜ。ドリンクやら消火栓で消火活動をしてくれた勲功者だ」

 

 

 「ふぇ・・・」

 

 

 「おお。ハッピーかい? なんてな。生きていてよかった。儲けもんだぜ」

 

 

 「あ、消防士さん。この人たちガスを吸っていたりで病院に、はい。はい。ケイジが助けてくれて・・・」

 

 

 ぞろぞろと来てくれた流石はプロ。過酷な場所に身を投じる人らだ。あっという間に状況を理解しながら動いていく。顔色も落ち着いてきた妹かな? の子どもを担架に乗せて、奥さんも救急車に肩を貸して乗せて、一緒に目を覚ましてもふらつく姉らしきウマ娘ら全員に未開封のスポドリを渡しておく。

 

 

 「奥さんの方が軽度のやけど。そして打撲あり。子供らは火傷はないけどガスを大量に吸い込んだ恐れあり。精密検査と呼吸内科の方も呼んだ方がいいかもしれん。お願いしやす」

 

 

 「分かりました・・・ありがとうございますケイジさん」

 

 

 「あ、ありがとう・・・ケイジ、さん」

 

 

 「おうよ♪ 火事は大変だったが生きていて何よりだぜ! 奥さんも職が必要ならうちに来な。バイトならうちのホテルで幾つかあるから紹介してやんよ」

 

 

 一通り乗り込ませて用意を済ませていると姉の方が体を起こして頭を下げた。おいおい。ふらつきながらだってのに無理をしなさんな。

 

 

 「ありがとうございます」

 

 

 「いやいや。『笑顔』を見せてくれよ♪ それがアタシへのお返しってことで」

 

 

 「え・・・えへへ」

 

 

 最後に笑顔をもらってから救急車を見送ってから荷物をまとめて・・・と

 

 

 「いやーありがとよテイオー。おかげで助かったぜ」

 

 

 「いいのいいの。人助けもいいものだしーじゃ、カラオケいこっか」

 

 

 「おー!」

 

 

 拳を合わせてから消防士に頭を下げてさっさとその場を移動。煙のせいですすだらけになったのでアフロのかつらを用意してドリフ爆発ごっこしたりカラオケやダンス指導していたら警察と消防士がきてアタシとテイオーに事情聴取を頼んだので病院で検査して、警察署で事情聴取されてSNSに流れた映像やあの親子の話、残っていた野次馬の話から感謝状をもらうことに。ありがたいが、今日はダンスの気分だったなあー




 ケイジのエピソードはアプリであるとしたらこち亀の人情話とゴルシとボーボボなノリが織り交ぜている感じですねえ。そして生首お手玉はジーニーのあの曲のワンシーンがモデル。


 ケイジ 火事から親子三人を救出。後日感謝状をもらった。その後にぬるぬる相撲をしてからの5戦目でゴルシに負けて特製センブリ茶を飲んでリアクション芸を披露。何でかゴルシも間違えて飲んで二人そろって変顔を披露。


 トウカイテイオー ケイジの事は大好き。同時にルドルフを追っている自分以上に厳しい目標を目指すケイジを尊敬しつつ、羨ましい、思いつくのがすごいとも思っている。マジックやダンス、ネタの引き出しが多いのでことあるごとに生徒会に一緒に連れ込んでは遊んでいる。


 シンボリルドルフ ケイジのマジックに心底度肝を抜かれた。この後生徒会の仕事の傍らケイジからもらった飴細工とラムネ菓子をつまんでは楽しみ、夜のニュースで火事の中に身を突っ込んでいったケイジと消火活動をしているトウカイテイオーのニュースにぶっ倒れそうになる。実はプライベートではケイジに「ルナ」と呼んでほしいと頼み「ルナ姉」と呼ばれるように。


 エアグルーヴ 大原部長枠。ある意味問題児二人が頼りになるのも事実なのでなんやかんや課題曲のダンス、練習に関しては呼ぶ。何でかアフロ姿で表彰される、頭を下げた際にカツラがこぼれていつものポニテに戻るケイジの映像を見て吹き出してしまった。



 次回は菊花賞。がんばります。


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最後の一冠 菊花賞(GⅠ)

 しおりが一時 564(ゴルシ)件になっていて笑いました。いよいよ最後の一冠へ。


 最近見た馬でグラシーナのレースがあるんですが馬体重の増加が全レースと比べて55キロとかみて爆笑しました。やっぱり馬ってすごいなあ。現在も成長しているそうですし戦法が逃げ。ターボ師匠みたいに愛されてほしいです。


 ~パドック前~

 ケイジ『ほうほう・・・いやー今日はこの作戦で行きたいのよ』


 葛城「ふーむ・・・まあ、それでもいいのだが、松風君もそのやり方は経験を積んでいるし」


 松風(テレビ電話)『なら大丈夫ですよ。振り落とされないよう頑張りますし、やりましょう』


 ケイジ『あーりがとねん』


 葛城「念のためとボードを出したが・・・いやはや、今日はどうなるか。まあ、ここまでの栄冠をくれたのはお前の力あってこそ。すでに変則三冠は手にした。最後は思いきりやって来い!」


 ケイジ『おうよ!』


 『皆様、今日という日をどれほど待ち望んだことでしょうか! あの夏の大激闘!! 夏を過ぎて秋、紅葉が映える中始まりますクラシック最後の一冠菊花賞!! そしてKG対決最後の大舞台の場所でもあります! 勝つのはケイジなのか、ゴールドシップなのか、はたまたほかのライバルか! 間違いなく今日この時間、日本中、世界の目がここ京都競馬場に寄せられております!!』

 

 

 最後の一冠。秋の大勝負たる菊花賞。最も強い馬が勝つと言われるレースだ。いやあー長いような短いような。あっという間の夏休みだったなあ。

 

 

 ちなみに菊花賞の『最も強い馬が勝つ』の意味はこの日本競馬では俺ら3歳馬までのレース。菊花賞以外では3000メートル、それ以上の長い距離のレースはない。つまりは誰もが未知のエリア♂ なわけ。そして、皐月、NHKマイル、ダービーでは早熟で早く仕上がった馬が、あるいは枠順と運に恵まれた馬が勝つかもしれない。

 

 

 ただそのダービーから約5か月。サラブレッドの成長は早く、調教する時間もあるので晩成ゆえに春は仕上がらずに実力を出せなかった馬たちも磨きあがって真価を出していくだろう。ちょうどゴルシの祖父マックイーンとかな。

 

 

 だからこそその鍛える時間、成長してくるライバルたちと競り合い、淀の厳しい坂を二度も走り、そして未知の距離を耐えきる肉体のタフネスさ、それでも落ちない速度、この距離を走って闘争心、戦意を失わねえ精神力。そして自分の強みをしっかり出し切ることが求められるレース。ゆえに最も「強い」馬が勝つレースだ。

 

 

 これを手にしなきゃあ、皐月をとっても世代最強とは言えねえ。だから狙うぜ。そして皆の衆! お久しブリーフ。

 

 

 『それもそのはず! かつて日本を沸かせた不屈の帝王ことトウカイテイオーと最強ステイヤーメジロマックイーンのTM対決! 彼らから託された血のバトンは時代を超え、ミレニアムを越えて彼らの子と孫に託されました! そしてそれはなんと同世代でのクラシック三冠をかけての争いへ!! ターフの傾奇者ケイジ! 黄金の不沈艦ゴールドシップ! その二頭のKGクラシック対決最後の大一番にしてどちらが勝ってもおかしくない菊花賞はここ京都競馬場での勝負! 本場馬入場で早速そのうちの一頭が顔を見せました!』

 

 

 『まずは先日の神戸新聞杯を制して見事な走りを見せ、馬体を今日も仕上げてきました1番ゴールドシップ! 唯一といっていいほどケイジに迫り食らいつける葦毛の怪物! この淀の坂ではケイジを越えることが出来るのかあ!!? 馬体重は前回より+2キロの500キロ。かつてのターフの名優の面影を見せて今日もその快速船ぶりを見せてくれ!!』

 

 

 おおー相変わらずいい仕上がり。そしてますます白くなってきたなあゴルシ。気合も良さげ、楽しみだぜ。

 

 

 さてさて。今度は俺だな。

 

 

 「ヒヒン」

 

 

 『さあーそして彼もまたターフへと帰ってきました! 休養期間中に牧場を大脱走からの熊退治を達成し、自ら感謝状を頂戴した稀代の傾奇者! 健康診断、精密検査も全て問題なし。彼がいなければ今年の菊花賞はなかったと言えるほどです! 2番ケイジ馬体重653キロ! 日本ダービーの時より13キロ増量していますが弛みはない! 完全な仕上がりと言っていいのではないでしょうか! そして彼とゴールドシップの登場に既に会場が揺れるような盛り上がりようです!!!』 

 

 

 『まさしく割れんばかりの歓声ですねー、有名人も多くが今日を楽しみにしていてここに来ている人も多数。新規ドリフターズメンバーの題うってのコラボ写真でゴールドシップとケイジの顔芸が混ざっているのがもう面白くて面白くて!』

 

 

 わはは! すげえなー空気がビリビリきて手綱が震えている感じがするぞ。確か入場人数22万以上で、それ以上来たから仕方なく抽選にしたんだっけか。いやーやべえなあー時代が動いている感じがするぜ。特例中の特例でレース場の内側にすら客入っているもんなーアメリカの競馬場かっての。

 

 

 「ああ・・・いよいよ来たか・・・菊花賞・・・ケイジ、本当にお前はあれでいいんだな?」

 

 

 『おうよ。むしろあれしかねえ。あいつんとこの舞台でやるならこれがベストだ』

 

 

 緊張する松ちゃんも頬をバチバチと叩いて気合十分。よしよし、そうじゃなくっちゃ。よし、まずは松ちゃんの緊張取りとゴルシと最初の勝負。

 

 

 まずはバック走でゴルシに接近。バックします、バックします・・・ライダーの胸糞ゲゲル怪人思い出しちまったわ! ええいもう少し、もう少し。ハイ到着。そして喰らえゴルシ! 舌べローンの扇風機~

 

 

 『お久しぶりでゴルシ~むく・・・お返しじゃあぁい』

 

 

 『おおっとケイジ、いつも通りライバルで親友のゴールドシップのところへバック走で移動。舌を出しての振り回し。ゴールドシップも負けじと大きく口を開けてからの驚いた表情からの舌を出して顔を斜めに向けての舌ペロを披露』

 

 

 『・・・・・・・ぷふぅ。だ、だめだぁー・・・これでにらめっこは俺負け越しだなあ』

 

 

 うーむ、やはり顔芸の面白さは俺が耐性ないかあ。くそう、手札の数は顔芸百面相の面目躍如だが、俺の笑いの沸点の低さが負けを招いたか・・・今度は負けん。

 

 

 『もはやお決まりになっていると同時に両陣営もこの方が互いにやる気が出るとのことで運営もスルーしている恒例行事。にらめっこの方はゴールドシップに軍配が上がり、ケイジ顔芸百面相敗れてしまいました』

 

 

 うるへーやい。ま、いいかあ。しかし今日は皆来ているなあ。利褌のおやっさん夫婦にトモゾウ。あの老夫婦に国光君親子と爺様。蓮君にテキの嫁さん、わっか。藤井の親父と兄ちゃんはシャッター押しまくって、ムランルージュは・・・おおぉう。ドリームガールズの衣装とか攻めてんなア。そして鉢巻きにうちわってアイドル応援かよ。お、垂れ幕もある。『(かぶ)いていけ!! 漢ケイジ』 いいねえ、かっこいいーじゃーん。

 

 

 『お久ゴルシ。いやー顔芸は負けたがレースは負けねえぞ~?』

 

 

 『こっちこそ。もっとも強い馬が勝つってレースだし、ここでケイジに勝って最強の称号勝ち逃げしてやるもんニー』

 

 

 『わはは、秋の時間がより男を磨いたようだなア。でも今回も勝つのは俺だよ。勝たなきゃあいけねえ理由が増えたもんでな、ここも譲らん』

 

 

 うんうん、これはやる気の目だな。しかも何か考えついていやがるぞこの白饅頭。さてさて~? 俺も今日はちょいと松ちゃんとうちの陣営にクレーム来るかもな戦法取るし、いやはや。色々な意味で楽しみだぜ。

 

 

 ここからはファンファーレを聞きつつのゲート入り。俺とゴルシが番号的に先に入らなきゃなんだよなあ。俺はいいけど。

 

 

 『いよいよ発走の時を迎えましたクラシック最後のレース菊花賞。最後の一冠はケイジが手にするかゴールドシップが手にするか。それともほかのウマが手にするか。この世代のトップホースは多くがけがや故障に悩まされることが多く、走ることの難しさを思い知らされる時代となりました』

 

 

 そうだなあーなんやかんや、同期がもう多く脱落している。しかもそれは成績不足とかじゃなく故障が多いってんだからな。ほんともったいない。どいつもこいつもすげえやつらだってのに。

 

 

 『そんな厳しく、才能が集まったまさに戦国時代のなかここまでこぎつけた18頭の優駿たち。最後にマックリプがゲートに入りました』

 

 

 だが、ここは勝負の世界。走ると決めた場所では俺は遠慮はしねえ。さあ、未知のエリア♂でテイオー、ミホシンザンの分まで走ってやろうじゃあねえの。

 

 

 『・・・・スタートしました! まずは1番ゴールドシップいいスタートを切りましたがスッと下げます・・・何事でしょうか!? 2番ケイジ、いつものロケットスタートを決めずにゴールドシップと併走しています! 故障でしょうか!?』

 

 

 んースタートあえて遅らせるのは遅らせるのでちょいと厳しいのねん。そんでゴルシの下がり具合に吹くわ。まーずは最初の坂ー。おおー、みんな俺の前で壁張っているねえ。まあ、俺をここから逃がせばダービーみたいに逃げ切っちゃうよぉん。ほれほれー。

 

 

 『ケイジいつもの大逃げをしない! これには会場が啞然!! そして悲鳴と怒声がこだまします!! そんな中まずは第3コーナー、最初の坂に向かいます。そこへスッと前に出ますは11番ニッポンポン。ケイジ、前に少し出ますが馬群が壁となって抜け出せずにさらに外へと膨れます。一方先団はニッポンポンさらに1馬身のリード、そこにコスモアオソラが食らいついていきます。そして坂を下ります。800メートルの標識を通過』

 

 

 こいつぁ確かに角度がすげえなあ。なるほどこの坂での下手な仕掛けはタブーになるし、ここを愛したと言われるライスシャワーの化け物ぶりがうかがえる。ううーん、よし。角度も感覚も覚えた、問題ねえな。ってことでさらに外へ外へ。斜行じゃないレベルでじーりじり。

 

 

 『ケイジ、未だ馬群の後ろにつきゴールドシップとは離れて外側を走ります。そして先頭は依然ニッポンポン、コスモアオソラ。更についていきますは17番タカノアステロイド、18番マックリプ、4番フェイスホールド、外からフジサンコウテイ、更に14番リーフグランが外から走ります。さあ第4コーナーからスタンド前を走ります』

 

 

 おおースタンドの距離近いなあー改めて二回もここを通るってちょっと新鮮だわあ。で、うーん。すでに馬券を投げているおっさんとか、怒声がうるせえなあ。わはは、あれだなあーキングヘイローのダービーの時もこんなんだったかな? あっちは血統の方もすげえ良血だったし。

 

 

 『さあ拍手と怒声、激しい声が18頭を迎えつつ最初の1000メートルを通過。タイムは59秒2やや早めのペースになります。さあ、1番ゴールドシップは後ろから2番手で、その後ろに13番ハニージェラートがうかがいます。そして2番ケイジは後方から3番手。食らいついてこそいますがいつもの大逃げのキレはうかがえません。さあ第一コーナーをカーブして先頭はニッポンポン、2馬身のリードを持っています。その後ろにはマックリプが2番手』

 

 

 さてー・・・んー足の消耗はやっぱないなあ。気分的には800すぎたくらいの気分だし、エンジンは動いた分あったまっているから問題なし。

 

 

 「大丈夫か? ケイジ」

 

 

 「むふん」

 

 

 『問題はねえ。松ちゃんこそブーイング大丈夫かよ?』

 

 

 「・・・問題はない。それより、来たぞ」

 

 

 松ちゃんも俺の意図を相談して読んでくれていて変に制御したりしない分、俺の消費も少ないんだろうな、助かるぜ。そんで、やっぱ仕掛けていくかゴルシ。まだ坂の前、スタンドの向こう正面に来たくらいだってのに1500メートル以上をスパートしていくつもりかあ。

 

 

 『・・・後は14番リーフグラン坂の・・・おおっと! ゴールドシップが上がってきた! 1番ゴールドシップ、一気にユウヒセンシ、ジェネラルルートを抜いて前に行く! 坂の上りの前から仕掛けてきましたゴールドシップ! 坂の上りで先団を追って仕掛けてきましたものすごい脚です!』

 

 

 しかもまあ、俺の記憶よりもずっと早い。いいねえいいねえ・・・! 燃えてくるぜ!!

 

 

 『さあ二度目の坂越え! そして坂の下りへ入ります。既に先頭ニッポンポン、コスモアオソラ、マックリプを捉えて前に出ていきますゴールドシップ!! タブーを破って見事な追い込み!』

 

 

 俺も坂を上って、下り・・・ここだぁ! 行くぜ松ちゃん!! 今がチャンス!

 

 

 「行けっ!! ケイジ!」

 

 

 鞭が入って、松ちゃんの姿勢も力を込めて振り落とされないよう、低姿勢により変化。互いのギアとスイッチがかみ合う感覚。俺らが仕掛ける。差すときのそれだ。待ってろよゴルシー! その舌ベロいつまでもできると思うんじゃねえぞ!

 

 

 『さあ第4コーナーに入る前だが先頭は1番ゴールドシップ!! そのまま差し切って逃げてしまえるかゴールド・・・来た! 来た!! ケイジだ!! 2番ケイジ、超大外からぶん回して飛んで来たぁああ!!』

 

 

 ヒューっ!! 坂を思い切り走って加速するのたんのしぃー!! そんでえ! 周りのウマたちが俺を前に出すまいと広く横に広がったまま淀の坂越え2度もして、ハイペースで走った上でのゴルシにびっくらさせられてでヘットヘトなこの瞬間を待っていたぜ! プレッシャーを感じる余裕も体力も全部ゴルシにぶつけたかったんでな! もっともっとぶん回すぞ!

 

 

 『ケイジ不調ではない! 騎手との折り合い不足でもない! 隠していた! この差しの末脚を! 二振り目の名刀を隠し持っていた! 一頭二頭! 撫で切りにしてそのまま迫るは1番ゴールドシップしかいな・・・ケイジが消え・・・ていない! 超大外回りを使っての更なる加速を見せた!! 第四コーナーを曲がって直線に入る! 最内ゴールドシップ! 大外ケイジ!!』

 

 

 ブロックされるのも、道を塞がれるのもごめんでな! ひいじいちゃんよぉ! あんたの走りを、技を借りるぞ!

 

 

 『いざ直線! いざ勝負!! もはやこの勝負は2頭に絞られた!! そしてやはり最後はこの二頭だ!! ゴールドシップが鬼の豪脚のごときタブー破りをすればケイジが最強の戦士の大外回りで他馬を交わしての超加速! 何ということでしょうか! 三冠馬の走りが! 伝説がテイオーとマックイーンだけではなかった!! ミスターシービーが! シンザンまでもが京都競馬場に走りを通じて彼らとともにいます!!』

 

 

 さあ、最後の直線勝負! 俺に追い込まれるたあ思ってなかっただろゴールドシップ!! 俺だって差しは出来るんだ! お前との菊花賞のために隠していたんだよぉ! おらおらおらぁ!! 普段の逃げの分をぶち込んでやる!

 

 

 『互いに睨み合いながら直線勝負!! 父の届かなかった無敗の三冠までもう少し! 勝ってくれケイジ! 祖父の! 名優の愛したこの距離で負けるわけにはいかないぞゴールドシップ!! 並んだ! 並んだ! 差し切れケイジ! 伸びろゴールドシップ!』

 

 

 『負けねえぞゴルシぃいい!!!』

 

 

 『勝つのはオイラだケイジぃいいい!!』

 

 

 『並んだままゴールイン!! 睨み合いからの一気に切り替えての直線! 大外と最内ながらこれは分からない! 勝負の結末は写真判定へと託されます! 3着はスカイフィニッシュ、4着は・・・・・』

 

 

 ぶふぅー・・・あーちっかれた。そんですんげえ歓声。おうおう最初のブーイングはどうしたぁー?

 

 

 さてさて、息を整えつつポコポコ。勝敗はどちらに傾くのやら。思い切りやり切ったのは確かだし、ぶっちゃけマツクニローテしているより疲れた。やれることは全部ぶち込んだのは確かだ。ふぅー・・・負けも認めよう、受け入れよう。それだけ出し切ったし、同時にゴールドシップの強さもまた納得がいくもんだ。

 

 

 『写真判定の結果が出ました・・・・・・・・・・・同着!! 何と同着となりました! ケイジとゴールドシップ! KG対決最後の一冠は何と互いに分け合うというとんでもない結末を迎えました! タイムもなんと2分59秒8!! クラシック2冠を同じ年にワールドレコード更新という異常事態の目白押しイィイ!!!? 誰もが予想できるわけがない!』

 

 

 「ビヒわぉん!?」

 

 

 『同着だぁ!? わははははははははは!!! ああ、これはいいな! この方が最高だ! 最高におもしれえ!』

 

 

 『あらー? オイラとケイジおんなじ1位? こんなのあるんだねえ』

 

 

 『あるある。ただすごく珍しいけどなー』

 

 

 『おおーじゃあ1位おめでとうケイジー・・・・俺の1位を取るんじゃねえよ!?』

 

 

 『お前も1位じゃろがい!』

 

 

 互いに一呼吸ついてのんびりしつつこの歓声を浴びつつ感じる。ああ・・・・いやあ、やってやれたんだなあと。トウカイテイオー、ミホシンザン、シンボリルドルフ、シンザン。見ているかい? 御前さんらの血は、今の時代にもちゃんと届くんだぜ。

 

 

 『菊花賞同着という異常事態ですが、いよいよこれをもってケイジは無敗の三冠、いやNHKマイルカップを含めれば無敗の四冠!! そしてGⅠ勝利数は既に五連勝! ワールドレコードも既に二つを手にした皇帝の血筋、最強の戦士の血をひく傾奇者がここに爆誕!! その名はターフの傾奇者ケイジ!!』

 

 

 「ビヒィイ!!」

 

 

 『おうよぉ!! 俺こそがケイジ! お祭り大好きケイジだぁい!』

 

 

 『そしてそのケイジに食らいつき影を踏めた唯一無二の快速船!! 菊花賞を共に手にしワールドレコードも手にしました! 傾奇者の大逃げすらも沈まず、追いつける黄金の不沈艦ゴールドシップ! 見事メジロマックイーン、ステイゴールドの強さを引き継いでの大手柄を手にしました!!』

 

 

 「むふぁー」

 

 

 『歓声は嬉しいけど、それよりも早くあれをしたいでゴルシー』

 

 

 ますます歓声は盛り上がってもう声だけでマンガみたいに背景が歪んで見えるレベルの歓声。いいぞいいぞー! もっとやれー!!

 

 

 「・・・・お前は・・・本当に規格外だよ・・・ふふ」

 

 

 「ヒヒン。わふ。わぉあん」

 

 

 『まっちゃんこそ、最後のたたき合いは見事だったぜ。さてさて。やりますかあ』

 

 

 松ちゃんの涙を感じながらも悪いがもう少しだけ力を残してもらう。一緒にやることがあるんでな。ゴルシの手綱をグイグイ引いて引っ張る。

 

 

 『ゴルシもやるんだろ? 今日は疲れたし喉乾いたし、ファンサービスも兼ねてやろうぜー』

 

 

 『お、待ってました。あれやりたかったんだよねー』

 

 

 『これをもって今年は無敗の三冠馬ケイジ! そして牝馬三冠を手にしたジェンティルドンナ! 更には前年度に三冠を手にしたオルフェーヴルを含め何と三冠馬が3頭存在する時代へ突入します! シンボリルドルフ時代を超える時代を我々は今後目撃することになるでしょう! その幕開けと、この勝負の勝鬨を上げんと今二頭の菊花賞馬がスタンド前にゆったりと移動してきました』

 

 

 さあーそんな伝説の幕開けに、皆様ド派手な花火をお一つ出していただきたく。

 

 

 ゴルシもご一緒にー? 右へぴょーん

 

 

 「「「オウ!!!!」」」

 

 

 左へぴょーん

 

 

 「「「オウ!!!」」」

 

 

 首を下げての~?

 

 

 「「ビヒヒヒィイィイイイイイイイイッッッン!!!『『いぃいよっしゃぁああああああああああああ!!!!』』」」

 

 

 「「「ウォオォオォオオオオオオっっっ!!!! ケ・イ・ジ!! ケ・イ・ジ!!! ゴ・ル・シ!! ゴ・ル・シ!!!」」」

 

 

 『京都競馬場を埋め尽くすケイジコールとゴルシコール!! これはすごい! 我々の音声が聞こえるか不安なほどです! そしてそれも当然! この伝説のレースを見れた。当事者の一人となれた興奮はこれで収まるものではないでしょう! 時代を引っ張るであろう黄金世代の二頭! 今後の活躍が楽しみです!!』

 

 

 いうじゃねえの!! おうよこの時代こそ愉快な黄金時代! 98世代にだって負けねえように頑張るぜー。そんじゃ、皆の衆! 稼げていると幸いだ。ばっははーい。




 伝説の勝負はより伝説へ。なれていたら嬉しいですねえ。ケイジの脚質ですが 次の目標 でテキが追い込みも使えると言っています。ケイジもテキも、松風も使えるけどあえて使わずにここまで隠していました。


 ケイジ 変に逃げても淀の坂慣れていねーし距離長いしでゴルシ相手に集中できるようにできないかなあ。そうだ追い込みしよう。という感じで無敗の4冠馬達成。この後松風騎手と一緒にインタビューを受け、ジャスチャーで対応。最後に雄たけびを頼まれて思い切りやったら音声でかすぎてびっくり。マイクを壊して記者さんの耳がしばらくキーン状態に。

 この後オカマたちと厩舎の皆、牧場の皆にもみくちゃにされまくった。


 ゴールドシップ ケイジと一緒にケイジダンスをやれて大満足。滅茶苦茶伊馬波さんに褒められてご機嫌な一日に。後日滅茶苦茶飼い葉食べまくっていた。後日ケイジとゴルシの変顔写真集が出版。


 松風騎手 無敗の四冠騎手に。インタビューはしっかり答えたけど、実感がわいたのは翌日。嬉しすぎて起きてしばらくしてから号泣していた。後日ケイジにアニメDVDコンプリートボックスをプレゼント。


 葛城一家 父は伝説になりえる名馬を育てた調教師になり。ケイジも約束を果たしたので蓮君も奥さんもより父親を、旦那を尊敬するように。競馬のレースシーズンが落ち着いたらケイジに会いに行けないかを打診中。


 老夫婦 またまた大儲け。ウマ娘世界ではケイジの老執事、メイド長になっている感じ。


 利褌牧場長 ケイジの功績にたまげつつも一番喜んだ。そして皐月賞から菊花賞までケイジが稼いだ賞金の一部を東日本大震災復興への寄付することをインタビューで答える。「人を愛するケイジならきっとこうしたでしょうし、私もまた震災を乗り越え、ケイジを心から応援できるようになってほしいです」このインタビューでまたケイジ陣営が濃いと言われるように。


 神様 ケイジファンの皆で降りて変装してから競馬場で観戦していました。みんなゴルシかケイジに賭けていたけどみんな当たったのでみんなで居酒屋で騒いで心底楽しんだ。


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師走で走るのは坊さんだけじゃねえんだよ

 とうとう評価人数が100人を突破! お気に入り人数も2000間近! 誤字報告に感想、高評価などなどありがとうございます!

 思った以上に菊花賞の評価が高いようでうれしかったです。ゴルシ世代でやるのなら必ずこれは入れておくべきだよなあと思い頑張りました。


 そして感想でケイジのスキルを考えてくれた御方がいたのでそれが可能なら採用したいです。スキル名は「千両役者ここに参上!!」で。



 ケイジ(ウマ娘)の一口メモ メジロライアンが2着に入ったライブでは(自身が一着)アンコールからの超兄貴&ヴィレッジピ〇プルのメドレーを開始。バックダンサーにボディービルダーを入れての大盛り上がり。休憩がてらのトークショーではライアンの身体づくりのコツでオフの日でもできるお手軽脂肪燃焼やおすすめデザート、おやつを聞くというものに。男女問わずに身体づくりブームに一役買った。後ライアン着せ替えショーをやってケイジとゴルシ自作の可愛い衣装着せまくり、最後にプレゼントした。



 ~レース後、某居酒屋~

 ルドルフ(ウマ娘状態 中身は馬の方、以降みんなそんな感じ)「あぁあー・・・!! 嬉しい! 孫が私を越える可能性を見せ、テイオーの無念を晴らしてもう一度私たちの血がつながる道を見せたのはいい! だけど何で私の走りじゃなくてシンザンなのだぁああー!!! そこは皇帝の私の走りで見せつけてもいいだろう!?」


 シンザン「これは私の子どもも喜んでいるじゃろうなあ・・・諦めろルドルフ。お前のような万能。相手の土俵に乗ったうえで叩き潰すような器用な戦いよりも大いに場を盛り上げるような戦いがあの子は好きなんだ。・・・神様、ちょこっと・・・ちょこっとだけでいいからじかに会えないかなあ・・・?」


 ミスターシービー「いやはや、名優と闘将の血をひく孫からわしの技を舌ペロしながらやるとは、互いの仲の良さが結んだ必然の大器でしたよ。わしの孫娘もあやつにならくれてやってもいいし、デビューが楽しみだ。そちらのナギコちゃんも来年以降でしたっけ?」


 メジロマックイーン「ふふふ・・・母系とはいえメジロの血がつながる。そしてテイオーの子どもとやるとは、面白い。いいものを見せてもらったよ。そしてサンデー、お前さんの孫はやはり、怪物だったようだな」


 サンデーサイレンス「お姉ちゃんビールおかわり―! ぶはぁー・・・俺とマックの孫だ! これくらいしてやるってんだよぉ!! しかし、最後の一冠だけってのが・・・あぁああーー!! ゴアの野郎を思い出しやがる! やいルドルフ! 御前の孫のせいでゴルシが三冠とれなかったじゃねえか! どうしてくれやがる!? バリバリに燃えて! 腹ごしらえしたら今すぐ走らねえと収まらないんだよぉ!!」


 ルドルフ「くそぉ! 絶対あの子は出来る! あの極端な脚質と加減を活かせばあらゆる場所からの競馬が・・・! 私のような・・・シンザン! お前の派手さで飾るのはいいがあの才能は絶対に私の・・・なんだ二冠しか取れなかったひよっこぉ!! 今取り込み中だ! そこの枝豆とキャベツとビールでも詰め込んでろ!」


 サンデーサイレンス「んだとぉ!? 俺以上に子供や孫が才能を出せるようにして言えってんだよ!! テメエの孫の走りで俺とマックの孫が一冠のみなのがむかつくんだよぉ!!」


 ルドルフ「俺の孫だ当然だろう! シンザンのひ孫で俺の孫! 頭の良さもあれば熊殺しの怪物! 格が違うんだよ。数じゃねえ。質を煮込んだからこそのケイジだ! その強さを私がお前に勝つことで証明しよう!」


 神様「はいはいそこまで―。にんじんスティックと野菜サラダ。ケーキに黒ビールキャンセルしちゃうよー」


 一同「「「申し訳ありませんでした!!」」」


 トウケイニセイ「いやぁー私のような新顔がこのお歴々と一緒に観戦できたことが光栄ですわ。しかし、シービーさんのジーナも楽しみですねえ。今はあのワンちゃんと一緒に練習ですっけ」


 ミスターシービー「やれやれ・・・レースの時以外の気性の荒さは本当にライオンだなあルドルフは・・・ええ。ケイジ君の走りの技術も覚えて温泉でしっかりリフレッシュ。孫娘がどうなるか心配ですがワクワクも・・・たしか、あの子の血にはラトロワンヌ牝系、メジロアサマさんの母方の血筋でしたかな。それもあるので長い距離もいけそうで」


 神様「シンザン。後で寝顔を見に行こうか。こっそり。

 ああ。そういえばケイジ君にあげる予定だったギフト。才能は分配してジーナ、ナギコ、そしてミホミサトちゃんの中の赤ちゃんにも分けたからちゃんと長生きすると思うし、実力も出ると思うよ?」


 トウケイニセイ「ぉおお・・・ありがとうございます。そして、うーん。来年の赤ちゃんが楽しみですねえ」


 シンザン「ああー・・・かぼちゃのコロッケ・・・人の食事もおいしい・・・うん。すごくいい・・・うーん。私のひ孫が出てくれるのかあ。ケイジのおかげで血は残りそうなうえでさらに。しかし、サンデーさんの所のステゴ君ですかあ。いやはや、期待できるのお」


 メジロマックイーン「ステゴのおかげで私の血も残りましたし、まさかドリジャにオルフェ、そして今年のゴールドシップですもの・・・スタッフもケイジ君の所の牧場で頑張っていますし、本当にありがたいことだ」


 サンデーサイレンス「ああー・・・肉がうめえ。こりゃあヘイローのやつが・・・ああーあいつなあ。あいつのおかげでマックの強さが、力が今も知られているんだ、ま、今度会ったら飯でも奢るさ」


 神様「そうそう。和やかに行こうねー。改めて、ゴールドシップ、そしてケイジのこれからの躍進と愉快に競馬界を盛り上げてもらうことを願ったもう一度」


 一同「「「乾杯!!!」」」




 ~ケイジに関して語るスレ1919~

 

 

 721:名無しの競馬おじさん

 

 ケイジ最強! ケイジ最高! ゴルシ最高! ゴルシ最強! 何だこの菊花賞!!?

 

 

 722:名無しの競馬おじさん

 

 シンザン、ルドルフ、トウカイテイオー、ミホシンザン、ミスターシービー、メジロマックイーン・・・どれだけの名馬たちの走りや面影を見せつけていくんだこいつらは!!

 

 

 723:名無しの競馬おじさん

 

 >>722 しかもゴルシの紹介文も見るのならオグリを意識していると深堀してもいいレベル。もう日本競馬の怪物たちがあの時一緒に走っている幻覚をわしは見たぞ。

 

 

 724:名無しの競馬おじさん

 

 そして最後は一緒にケイジダンスをしてからの変顔を見せての悠然と去っていくのがまた・・・あんなに仲良しなのにレースになれば互いにバチバチににらみ合っての本気を出し合うってのがもうね・・・尊い。熱いよこいつら。擬人化したらキャ〇翼にだって負けないと思う。

 

 

 725:名無しの競馬おじさん

 

 改めて競馬がスポーツであり、馬たちも戦っているのを分かっていると思い知らされたなあ・・・そういえば、ケイジとゴルシの体調は大丈夫なのだろうか。何せあの二人の馬体であれを仕掛けたのだからなあ

 

 

 726:名無しの競馬おじさん

 

 500キロの大型馬が淀の坂を加速しながら登って降りて、最後にさらに加速。一方は下り坂を653キロで大加速しての叩き合いだからなあ・・・

 

 

 727:名無しの競馬おじさん

 

 ああ、それなら運営公式情報で出たが二頭ともバリバリ元気。両陣営のSNSでは二頭ともレースが終わった後に診察をする前に腹が減ったから飯よこせと厩務員さんらにごねていたレベルらしい。

 

 

 728:名無しの競馬おじさん

 

 菊花賞をあのレコード出したうえで飯よこせって元気すぎるだろ!? 最後の3ハロン計っていたけど31秒7出していたぞアイツら!!

 

 

 729:名無しの競馬おじさん

 

 しかもケイジとゴルシ、志村さんとか大物らと写真撮影もネタ披露して、最後まで元気に振る舞っていたからなあ・・・怪物が今年の古馬戦線に乗り込むのかあ・・・

 

 

 729:名無しの競馬おじさん

 

 無敗の四冠馬ケイジ そのケイジと菊花賞とワールドレコードを分けたゴールドシップ。牡馬からで既にこれなのに、今年は牝馬もやばいからなあ。ジェンティルドンナにヴィルシーナ

 

 

 730:名無しの競馬おじさん

 

 ケイジとよく練習していて本人も同じく三冠を獲得。他を圧倒する中唯一食らいつけたヴィルシーナ・・・ケイジ、ゴルシと合わせればこれ、三冠馬レベルが4頭今年は古馬戦線に殴り込むってこと!?

 

 

 731:名無しの競馬おじさん

 

 もしくは全盛期オペラオーとメイショウドトウが二頭づつ。しかもジェンティルドンナはJCを出走表明しているしオルフェーヴルも同じく。昨年の三冠馬と今年の三冠馬が早速激突するのは冬の大舞台の一つと来た。

 

 

 732:名無しの競馬おじさん

 

 なんだって今年はここまで熱いんだ!! 菊花賞からのこれはやばいぞ!

 

 

 733:名無しの競馬おじさん

 

 コメディ、ネタ、勝負、実績すべてで盛り上げていく。ディープ産駒、キンカメ産駒の時代の中でこれらを押しのけてのテイオー産駒。ステゴ産駒、母父メジロマックイーンだものねえ。しかし、これテイオー産駒でGⅠとった馬いたでしょ。あれを騙馬にしたのもったいないなあ。こんな怪物が生まれる可能性がまだあったわけだし。

 

 

 734:名無しの競馬おじさん

 

 それな。ケイジの活躍を見ているとほんとそう思うわ。テイオー産駒、その血を地方からでもいいから残していって中央にもまたカムバックできるようにできればなあ。

 

 

 735:名無しの競馬おじさん

 

 まあそれを言えばケイジの母ミホミサトも元は乗馬用の馬なのをシンザン系の血が入っていると見つけたわけだし、思わぬところからいつかひょっこり顔を出すやもしれないし気長に待とう。

 

 

 736:名無しの競馬おじさん

 

 そうだねえ。実際ゴルシやオルフェ、ドリジャで有名になったステマ配合もそれをするためにマックイーン産駒の乗馬用とかになった牝馬までもをかき集めていったりとかしたらしいし。

 

 

 737:名無しの競馬おじさん

 

 またこんな風に往年の名馬の子孫らが出てきてほしいなあ。ああ、それとは別だけど、ケイジが壊したマイク。かなりの高値になりそうみたいね。

 

 

 738:名無しの競馬おじさん

 

 ケイジの雄叫びの大音量で機械壊すって声優さんみたいなことして、ごめんごめんと言わんばかりに歯型をつけてくれたからなあ。もう使えないだろうけど、無敗の四冠馬の歯形付きマイク・・・欲しいな。

 

 

 739:名無しの競馬おじさん

 

 一緒に写真を撮った志村ヘンさんはケイジ直々にダービー制覇の時につけていた蹄鉄をもらって、しかもそれを調教師さんと蹄鉄師で2012年ダービー制覇記念 ケイジって彫ってもらっていたしなあ。あんなの一生の宝物だわ。

 

 

 740:名無しの競馬おじさん

 

 ゴルシもそれをしてくれたし、サンちゃんは二頭の菊花賞の蹄鉄をもらったそうだねえ。いやあ、サンちゃんは馬主さんもしているし、いい馬に巡り合えるといいんだけど。

 

 

 741:名無しの競馬おじさん

 

 ケイジらレベルの巨大でタフな馬と巡り合う運勢になりそう。その二頭の蹄鉄は。

 

 

 742:名無しの競馬おじさん

 

 いやあーいつかもらえるか、できなくても一度見てみたいよね。レースごとの蹄鉄の一覧とか。

 

 

 743:名無しの競馬おじさん

 

 人数制限掛かるけど前田牧場一応観光は大丈夫みたいだしいつかみたいねえ。最近GENBUグループの警備部門でも特に屈強な人らがマナー違反の客は容赦なくたたきだすみたいだからしっかりマナーは守ってだけど。

 

 

 744:名無しの競馬おじさん

 

 そもそもマナー違反をする時点でもっとしばかれてもいい。ケツドジョウの刑でもいいくらいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『三冠馬5頭時代へ!? 2012年クラシック世代いよいよ古馬戦線へ』

 

 

 『最強の貴婦人ジェンティルドンナ、ターフの傾奇者ケイジ、黄金の不沈艦ゴールドシップ、準三冠馬ヴィルシーナ。金色の暴君オルフェーヴルらが待つレースへ歩を進める』

 

 

 『皇女ジェンティルドンナVS金色の暴君オルフェーヴル。三冠馬同士の対決はジャパンカップで!! 傾奇者と不沈艦の次の行先や如何に?』

 

 

 どうもみなさんこんにちは。無事にクラシック三冠&NHKマイルの四冠を無敗で征したケイジです。いやーもうほんとここしばらくが厩舎も牧場もお祭り騒ぎだったらしく、俺らのぬいぐるみがバカ売れ。牧場の温泉で来客さん用の足湯、手洗い、湯船でゲン担ぎをする人や近所の神社にお参りする人も増えたそうな。

 

 

 そのせいか昔の名馬たちを見に行く人も増えたり、なんか経済効果がすごいとかなんとか。あの大震災の後に日本の景気が上向きになっているのは嬉しいし、大震災の募金額もやばいことになっているそうだ。まあ、これはおやっさんのせいだろうなあ。「菊花賞の賞金はクラシック三冠の分も一部含めて全額募金します」だし。これで一層募金が募って早い復興が出来れば幸いだ。

 

 

 で、俺は今何をしているかって? お湯で行水した後に身体を真由美ちゃんに拭いてもらって、ここしばらくの競馬新聞を読んでいるんだわ。うーん。温泉の良さ、お風呂の良さを味わうとちょっと物足りないなあ。後冬だしあったまりたいわぁん。

 

 

 「ケイジくーん・・・持ってきたよ。はい。つけようねえー」

 

 

 「ヒヒーン」

 

 

 『ありがとう。あーぬくいぬくい。読書しながら昼寝しようかなあ』

 

 

 まあ、防寒は問題ないけどね。志村ヘンさんやサンちゃんに蹄鉄のプレゼントをした後にお返しだと俺ら馬用の防寒着。しかもドリフイメージの色にサンちゃんのイメージカラーのそれぞれをもらえたんだよねえ。どちらもサイン入りの。ゴルシも貰ったそうだし、いやあーやったぜ。

 

 

 「ふふふーケイジ君が四冠馬・・・夢のようだよ・・・ディープインパクトさえも超えたクラシックを見せたし、私も夢のよう。あ、そうそう。絵を描いたんだけど、どう?」

 

 

 『おおー今回はまた世紀末拳法家な画風に挑戦したんだねえ。あらぁー女の子バージョンも』

 

 

 ドリフターズの防寒着をつけてもらい、手を洗った真由美ちゃんから見せてもらえたのは菊花賞後に二人で勝利後のウイニングライブ代わりのいつものあれをしているのをモチーフにしたのか俺とゴルシを擬人化してスタンドに向かって拳を掲げているイラスト。

 

 

 漢バージョンは俺が花の慶次の前田慶次。ゴルシの方は南斗水鳥拳の使い手みたいな感じで画風も濃厚な劇画チック。女の子バージョンは真由美ちゃんの本来の画風でうん。アニメウマ娘に近い感じかな? ゴルシは超美人だけど可愛げのある感じで、俺は鹿毛ロングポニテの美女。流石だぁ。

 

 

 「あ、よかったみたいだね。うふふ。久保先輩のイラストがすごかったし、あの勝利は私泣いちゃったくらいだし、頑張ったよー」

 

 

 「むふぅー・・・ワンワン」

 

 

 『なら頑張った甲斐があるってもんだなあ。金も稼いだし、みんなの懐をあっためられたのならいいけど』

 

 

 ちなみに久保さんの画風はすげえオサレ。あの漫画家の絵にそっくり。ゴルシのイケメン具合の表現がすごかったなあ。あいつもファンサービス好きだし、人だと人気俳優になりそうよね。

 

 

 で、俺の獲得賞金だけども昨年の合計金額1億4000万に加えて今年の弥生、皐月、NHKマイル、日本ダービー、この菊花賞の賞金も含めれば俺の手にした獲得賞金額合計、大体7億3000万になりますた。

 

 

 で、まあ改めてその賞金の数%はここ葛城厩舎に来て、それを山分け、で、俺の担当厩務員の久保さんと真由美ちゃんはさらに倍率ドン。これ普段のお給金とは別口でもらえるっていうからマジで菊花賞はみんな募金にしたけどそれまででもなんやかんやボーナスは運べたと思うし、いい年末を迎えてほしいぜ。

 

 

 「おかげでもうケイジ君の担当が楽しいし、仕事もやりがいがあるし、お財布もたんまりだから冬の新刊での通販であれもこれも頼んで・・・友人にもあれをコミケで買って・・・うふふふふ」

 

 

 『買いすぎ注意だぞ。あと、ほんと真由美ちゃん色々見るよねえ』

 

 

 「うぃっぷぅ・・・・あ、頭が痛いわぁ・・・ケイジちゃんお久しぶりー・・・」

 

 

 「ひ・・・きゃふ。わぉん。ワン。ブルル」

 

 

 『うおう酒くせえ。たばこくせえ。シャワー浴びて来いシャワー』

 

 

 イラストを眺めていると酒臭いスーザンさんがきた。俺はいいけど周りの馬が臭いでうわってなっているじゃねえか。頭もいたいと来れば二日酔いか?

 

 

 「あぁー・・・ケイジちゃんは元気そうでよかったわぁ。もうね、ここ最近ずっとお店が大繁盛。なのはいいけど競馬の話をしつつ飲みまくるお客さんに付き合って飲んでいたら私たちも二日酔いで」

 

 

 「ず、頭痛薬とスポドリはうちの厩舎にもありますし、持ってきますからシャワーをよければ・・・タオルもアリマスよ」

 

 

 「ありがとう。それじゃあ、少し失礼するわぁん。ケイジちゃんからもう色んな時代の名馬の話が出来たのは楽しかったし」

 

 

 あのオカマバー何気に本棚があって、そこには絶版した競馬関係の本とか歴史本。みんなで集めた写真を集めたブロマイド集とかあるらしいなあ。松ちゃんも言っているがあそこはかなり競馬ファンたちからは名の知れた場所らしいが、俺の一口・・・というよりはもう共同の権利者? とでもいいのか? がいる上に場所も競馬場から近いのもあってもう連日連夜どんちゃん騒ぎだったんだろうなあ。

 

 

 「はぁー・・・生き返るわ。お酒の後のスポドリやお水のおいしさって格別よね」

 

 

 「おお、スーザンさん。お迎えできず申し訳ありません。体調は大丈夫ですか?」

 

 

 「あら大吾さん。ええ、ケイジちゃんと真由美ちゃんの顔を見て、おもてなしも貰えたから元気もりもり。ぶほほ♪」

 

 

 「えへへ・・・」

 

 

 おお、テキのおやっさんもきた。なんだろ? 俺の今後のローテの相談か? そういや、年末の大舞台何処に出るか俺しらねーや。真由美ちゃんは俺の首をポンポンなでてからお茶を淹れに行った。

 

 

 「いやあ、連日儲けていると聞いていますが、こういう時おつきあいで飲みすぎるのは大変なようですなあ」

 

 

 「でも楽しい話もできていいものヨ。で、えーと年末は有馬記念に直行。それまでは調教をこなしていくという感じでお願いしていいのよね?」

 

 

 「もちろんです。隠れた疲労も抜いておかないといけませんし、ジャパンカップは既にあの対戦カードが実現して大盛り上がり待ったなし。ゴールドシップも出てくるようですし、何より初の古馬を含めた大レース。ケイジの実力を改めてみる上でも今年はこれ一本に絞って締めたいということで前田牧場長からも許可をいただいています」

 

 

 あんらぁー俺の方は元気もりもりだけど、まあー淀の坂を直下降は負担を心配しちゃうかね。そしてさっそくジャパンカップは確か凱旋門賞を取ったソイミレニアム。三冠馬にして今年の凱旋門賞は2着という結果を見せたオルフェーヴル。そしてジェンティルちゃんが出走表明。日本が誇る三冠馬二頭&凱旋門賞馬。それ以外にもエイシンフラッシュにフェノーメノとまあーメンバーが豪華だってのなんの。

 

 

 「ゴルシちゃんの方も流石にあのタブー破りの疲労を考慮して放牧していることからも多分有馬に直行でしょうし、下手すればまた激闘再開。しかも次回は古馬もいる上でどうなるか・・・うーん燃えるわね、了解よ。それなら私達ムランルージュも問題なし。じっくりケイジちゃんを見てあげて」

 

 

 「分かっています。もうケイジは私達の誇り、そして英雄ですからね。優先出走権と運営からも是非とも出てくれと言われていますし最高の仕上がりにして見せます」

 

 

 「でも今年はとにかく過酷な戦い、相手もあって疲労もあるでしょうし無理はしないでね。最悪、有馬記念でも無理をさせないために手を抜いてもいい・・・のはないわね。ケイジちゃんの性格を考えると」

 

 

 『あたぼうよ! 大舞台に出れるんだから全力でやってなんぼ!! それに手を抜いて譲る勝利を与えたって嬉しくねえぜ!!』

 

 

 ヘドバンしながらそれはしねえとよ意思表示すれば二人とお茶とお茶請けを持って来た真由美ちゃんが苦笑しつつも和やかな空気を出す。俺らのやれることは思いきりやる。だろう?

 

 

 「そうだな。傾奇者、大舞台大好きのお前に手抜きをしろはタブーだ。思いきりやろう」

 

 

 「そうね、私もまた応援に行くわ。東京だし、みんなですぐに行けちゃうし♪」

 

 

 「だ、大丈夫だよケイジ君。みんな全力でやるからね。あ、それとおやつ」

 

 

 あ、リンゴ。ありがとナス。うーん、やっぱ冬のリンゴはうまい。固くて蜜たっぷり、元気が出るなあ。あと、今回はオカマバーの皆なんの衣装で来るの?

 

 




 ルドルフはあだ名が「ライオン」と呼ばれるくらいに気性が荒かったそうですしね。しょうがないね。テイオー産駒で気性が荒いのがいたのってそこの隔世遺伝も強いのでしょうかねえ。


 ウマ娘回を挟むか、もう一話箸休めを入れるかそのまま有馬記念に行くか。出来れば今週中にもう一話は入れたいです。


 ケイジが寝た後にルドルフとシンザンはケイジの寝顔を見て撫でてから天国に戻りました。


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人気者で行こうぜ! 有馬記念(GⅠ)

 Q:何でこの作品はオカマが多いの?

 A:実際の競馬でも騙馬がいるしレースでも会う機会が多いじゃろ?


 ここからがようやく本番になっていく2012年クラシック世代。早速史上初が


 『さあ、年末の中山競馬場。有馬記念、本場馬入場となります。今年はとにかく怪物たちがクラシックにひしめき、そしてその代表の一頭ジェンティルドンナが先の三冠馬オルフェーヴル、凱旋門賞馬ソイミレニアムらを下しジャパンカップを制覇。史上初の三冠牝馬による牡馬混合GⅠを制覇。今年生まれた三冠馬の実力をさっそく見せつけました』

 

 

 やってきたぜ年末の大レース有馬記念。芝2500メートルの大一番であり多くのドラマ、激闘を生み出してきた由緒正しい。名レースだ。

 

 

 『今年のクラシック世代は違う。そう見せつけるレースの後にやってくるのは今年の牡馬三冠を征した怪物が二頭やってきます! 22年ぶりオグリキャップ以来の葦毛の有馬記念制覇となるかゴールドシップ! 親子三代有馬記念制覇となるかケイジ!』

 

 

 いやーしかし、まーた貴婦人タックルかましてからの競り合いしての勝負とかほんとあの子の勝負根性と負けん気の強さは相変わらずだわ。そういえば、近いうちに併せをするかもって聞いているけどいいのかね。あの強さを強くするのは俺はいいけども。

 

 『さあ17番ケイジが入ってきました。体重は前回と増減なしの653キロ。この前の菊花賞のような追い込みを見せるのかそれとももう一つの大逃げを見せるか。松風騎手の采配が試されます』

 

 

 どうも皆さんおはこんばんちは。ケイジでぇございます。みんなちゃんと元気でいたかーい?

 

 

 『いやーここではダービー馬エイシンフラッシュもいますし、どうなることか。ゴールドシップとも前回の菊花賞は同着。ファンの皆さんは何方に賭けるべきかで割れているようですねえ。オッズがそれを物語っていますよ』

 

 

 「ああー実際どうなるか分からないからな・・・ダービーと比較しても100メートルの距離がある。仕上がってきたゴールドシップが今回はどうなるか」

 

 

 『だなあ。真面目にアイツの仕上がりもまたやばいし、今回は放牧をした分元気もりもりだろ。俺は大外だけど・・・うーん?』

 

 

 多分古馬になってどうなるかっていうのがあるんだろうなあ。オッズ3,1倍かあ。ゴルシと俺のダービーを考慮してかゴルシが3,3倍の二番人気なのがやっぱお客さんらも分かっているんだな。俺とゴルシの今の実力の差があんまりないの。

 

 

 今回は外枠気味だし、最初はコーナーでハナ奪ってからのって感じで行くか。あ、お久しぶりゴルシ。

 

 

 『今日もルンルンと楽しそうに首を揺らしきょろきょろしながらゴルシへと移動。今日も変顔を見せるのか?』

 

 

 『お久しぶりケイジー元気してたぁ?』

 

 

 『とってもお元気。今日は変顔の代わりにあれをみろ』

 

 

 ゴルシもちょい肉をつけて元気そうだったのでまずは笑顔でご挨拶。からの顔を振って観客席に向けさせる。

 

 

 「ケイジちゃーん!! ゴルシちゃーん! ファイトォーー!!」

 

 

 「最強なのは古馬を含めても貴方たちが候補よぉ!!」

 

 

 「「ケ・イ・ジ!! ケ・イ・ジ!! ゴ・ル・シ!! ゴ・ル・シ!!」」

 

 

 そこにはどこで仕入れたか知らんが学ランとセーラー服をつけたムランルージュのオカマたちが俺とゴルシを応援してド紫色の声援を飛ばす。いやほんとこの人らの声いい声しているなあ。ぶふぅ! そして吹く。

 

 

 『ぶわははははははは!! あははは!!? なんだあれ!? あれお前の応援団かよ!? ぶふぅ!!』

 

 

 『おおっとゴールドシップ。本場馬入場前に何やら観客席を見て笑っております。何があったのでしょうか』

 

 

 『うけるだろー? いい人だし、茄子のおっちゃんよりはお前も気に入ると思うぜー』

 

 

 『おおーならぜひ今度来てもらうわ。お前に勝ってからな?』

 

 

 『ははは。もう毎度のやり取りだが、ああ。勝つのは俺だよ。そんじゃ、ゲートはいりますかぁー』

 

 

 ファンファーレを聞きつつのんびりとゲート入り。俺の方は15番枠だなあ。あの追い込みを考慮されてなのか、初めての古馬混合GⅠレースと長い休養もあってなお馬体重の増加がないゆえに不調とみられているのか。まあ外枠内枠どちらでも使えるカードはあるけど。

 

 

 「ケイジ。個人的にだが、僕は今回のレースは大逃げで行ってへばらせる作戦をしたい。この世代の子たちはケイジレベルの大逃げの経験がないし、騎手は対処できても馬が対処できるかは難しい」

 

 

 『ほうほう』

 

 

 「それにこの競馬場は最後の直線が短いからエイシンフラッシュとかルーラーシップもそうだがお前の仕掛けを潰したうえで直線での仕掛けをみなやるだろう。それよりは大逃げで行きたいんだ」

 

 

 『あー9歳とか2年連続で有馬に挑んでいるやつとか普通にいるしなあ。それに俺と同じダービー馬エイシンフラッシュ。あれが面倒だし、引きずり回してゴルシの壁を用意しつつ行くプランで行くかあ』

 

 

 だなあ。良くも悪くも俺の今までの経験は言ってしまえば全員が初体験同士のメンバー同士での殴り合い。馬の方も得意なレース場ならと俺の動きを騎手が封じて、馬の方が好走をして俺らの経験ではない手段を持ってくるのが怖いし、むしろそれらの作戦を練るボードごとひっくり返しますか。

 

 

 『さあ全頭がゲートに入りまして・・・スタートしました! ああっと!!? ルーラーシップ大きく立ち上がって大出遅れ! 一方で17番ケイジ今日は大逃げか! 9番ルーラーシップも遅れを取り戻そうとして走り、その前に13番ゴールドシップが後ろから先団を伺います』

 

 

 「むひふっ!? ぶふ・・ふぅー・・・・・ヒン!」

 

 

 『ぶふはっ!? あーもー生で見ると笑えるぞ!? 女帝の子どもがこれをするってほんとコメディアンだなおい!!』

 

 

 「だ、大丈夫かケイジ!?」

 

 

 問題ねえ! これくらいで俺の加速が鈍るってわけねえぜ! よっし先頭取れたし、コーナーに入ってから内に入りーの最内狙うぞ。菊花賞の調教の後と、うちの陣営も今回は大逃げように仕込んでくれたんだ。3200メートル走る分の体力を2500にぶち込んでやるから覚悟しとけよ先輩方にゴルシ。

 

 

 『相変わらずの大逃げ! 射程圏内は1200~2400まで実証済み! 途中何やら笑っていましたが問題なく先頭3馬身。その後ろにハーネストが先行集団の先頭を形成。3番手は14番ピートプラン、外から16番ルージュデンゴン三頭が集団の先頭を走りケイジを追う形に。そのまま第4コーナーをカーブしてホームストレッチに入ります。

 

 

 先頭はケイジ、5馬身までリードを広げつつ最内を取って驀進しております』

 

 

 よーしよし。コーナリングは相変わらず好調。いい感じに先手を取りつつリードを取れたし、このセーフティーを使いつつ少し息いれっか。

 

 

 『さあケイジは先頭。二番手のハーネストは馬群の先を依然譲らず三番手のピートプラン。その横で最内を走りますは1番ローズパラダイス。続いてルージュデンゴン。エイシンフラッシュはやや後ろ目につけ、馬群の後ろに15番ナカヤマサムライ。後ろから追い上げて馬群の後ろに食らいつきますは9番ルーラーシップ。その前に13番ゴールドシップが付ける形です。

 

 

 ケイジ先に1000メートルを通過タイムは58秒2 そのまま第1コーナーに入り第2コーナーへと入ります』

 

 

 うーん。ある程度の速度で入っているとはいえ騎手の方はぐらつかんな。で、馬の方は・・・ある程度俺に合わせた練習もしていたか? 大逃げにビビらんなあ。ま、それはそれとしても消耗は感じられるし作戦は6割がた成功だろ。コーナーで息を入れても加速、勢いが鈍らんように鍛えたコーナリングはこういうところで生きるぜー。

 

 

 で、ほいさと第2コーナー抜けたからここからちょいと脚を使ってー

 

 

 『ケイジさらに大逃げの馬身差を広げて7馬身! 一人旅をしながら気持ちよさそうに走っております。さあここで食らいつこうと先団も加速。4番ハーネスト、16番ルージュデンゴンが叩き合い。その横をすり抜けようとピートプランがうかがいます。最内は変わらず1番ローズパラダイス。ダイワサンサン、スカイルート、エイシンフラッシュ。その後ろにクロカゲ。その後ろの集団にルーラーシップ。更に後ろにオウカンスリー、最後尾にゴールドシップです』

 

 

 ああー大逃げもやっぱいいわぁ。そんでそろそろ第三コーナーに入るか。

 

 

 ふーむ・・・足は問題ないし、松ちゃんが息いれるのを理解して邪魔しなかったおかげで予想以上に元気。うん、やるしかねえな。

 

 

 俺が仕掛けるのを感じてか松ちゃんもすぐさま鞭を入れてのスパート態勢に。よっしゃ! 有馬もいただいて二年連続無敗記録をもらうぞ!! うぉおぉおー!!

 

 

 『さあ17番ケイジここでエンジンをかける! これが傾奇者の大逃げ! 一番槍は、一番乗りは俺のもの! この場所は俺のスペースだ、庭だと言わんばかりの加速を見せて第3コーナーに入ります! おおっと!? いつの間に仕掛けていた13番ゴールドシップ! 最後尾からあっという間に先頭集団に接近! 大外からまくっていく!』

 

 

 まじかー!! こんの、いっつもいっつも手品みたいな追い込み魅せやがってこの大天才が!! 気持ち悪いぐらいにスッと大外につけてのまくりとかやばすぎぃ!!? 負けるかよ! もっと脚を使えるんだ! まだまだ行くぞおらぁ!!

 

 

 『ケイジさらに加速して一人第4コーナーを抜けてホームストレッチは目前! しかしゴールドシップが先団を抜けて猛追! 不沈艦が錨を上げた! エンジン全開! 馬群という名の荒波を抜けて目標を捉える!』

 

 

 こんの・・・! 最後のコーナーで加速と最内は捉えた! リードはゴルシと5馬身ある・・・がこいつはほんとめっちゃくちゃするからな! 松ちゃん! 振り落とされるんじゃねえぞ!!

 

 

 『さあ黄金の不沈艦が迫ってくる! 羅針盤の指す場所はゴール板!! 主砲を向ける先はターフの傾奇者ケイジ! その快速船ぶりで緑の海を渡り、傾奇者の持つセーフティーリードという鎧を主砲で砕いていく! 主砲の射程圏内に捉えられた傾奇者ケイジは逃げ切れるかどうか!!』

 

 

 残り200・・・180・・・! こなくそ!! 二枚腰をもっとぉおおお!!

 

 

 足を速めるがゴルシの野郎、溜めに溜めていた足を爆発させるのと、馬群に飲まれるの読んで前もってよけやがった・・・! 一番の加速を使える直線もここは短いからこその大逃げだが・・・それを追い込みでこうもつぶしてくるかよ!?

 

 

 『ケイジもさらに伸びるがゴールドシップの加速はさらに上をいく! エイシンフラッシュにスカイルートも猛追するが既に4馬身つけられている!! これはもう決まった!』

 

 

 ぐぉおお!! 並んだ!? 並んだだとぉ! やっべ残りもう距離がねえ!! まだまだ、もっと伸びろ俺の脚! もう少し・・・!!

 

 

 『ケイジ粘るもゴールドシップ差し返しての一着ゴーォオォオオール!!! 1着はゴールドシップ!! 最後はこの二頭! 見事に皐月賞、日本ダービーでの借りを返して年末の大舞台の勝利を飾りましたゴールドシップ!! 2着はケイジ! 3着にエイシンフラッシュです!!』

 

 

 くはぁああー!! 負けちまったぁあああ!! ぐぉおおくやじぃい。あともうちょいだったのにぃ。

 

 

 『しかし勝利の差はハナ差。異次元の大逃げとまたもやワープしたような追い込みの勝負。そして見事にオグリキャップ以来の葦毛による有馬記念優勝を果たしましたゴールドシップ!!先のジャパンカップではジェンティルドンナが史上初の牝馬三冠馬による牡馬混合GⅠを勝利! しかも相手は凱旋門賞馬と昨年の三冠馬という歴史的快挙を成し、そして自身はあの葦毛の怪物を思わせるような強さと結果を見せました!!』

 

 

 ああーでも、やべえ、めっちゃこの舞台にいることが嬉しい。歴史的勝利の瞬間に超間近で立ち会えているのがもう感動もんだぜ。あのオグリと並ぶと言われるかあ・・・そいつがライバル。最高だ! 負けた悔しさはあるがそれ以上に楽しいし嬉しい!

 

 

 『クラシックを終えて尚古馬に揉まれるどころか圧倒していく今年のクラシック世代。ターフの傾奇者ケイジもまた敗れはしましたが9勝1敗。無敗の四冠と怪物! これはかつての98世代を超える黄金時代の誕生と言ってもいいでしょう!!』

 

 

 なんのまだまだ、負けたがこれからももっと強くなって伝説を作るんだよ! ま、それはそれとしてゴルシの方にポコポコ。耳ピーンってなっているし、いやほんと喜んでいるなあ。後あんまばてていないのマジ? 俺もちょい疲れているんだけど。

 

 

 『やられたぜゴルシ。今日は完敗だ』

 

 

 『おおぉー♪ おいらの勝ちだもんね。にへへ。ケイジからの勝利で今日は大宴会でゴルシよ』

 

 

 『ああ。おめでとう! 流石俺のライバル。滅茶苦茶燃えたし、悔しかったがそれ以上にお前の勝利もまた嬉しい! またやろうぜ!!』

 

 

 『おう! ケイジとのレースは楽しいからまた次やろう!』

 

 

 今日は俺じゃなくてゴルシが主役だった。そして勝者をたたえてこそのスポーツ。勝負よ。首にポンポンとほおずりをして、にっこりスマイル。

 

 

 「完敗です横峯さん。あの追い上げは目を疑いましたよ」

 

 

 「いやあ、今日はゴルシも最高にテンション乗ってくれたし、観客の皆さんの応援もあると思う。君もあのコーナリングと、すぐに仕掛けて僕らの追い込みをかわそうとしたときは肝が冷えたし、凄かった。また次の時も負けないよ」

 

 

 「こちらこそです。そして、改めて有馬記念優勝おめでとうございます」

 

 

 『何という光景でしょう!! ケイジとゴルシが首でのハグを、松風騎手と横峯騎手が握手を交わして健闘をたたえております。互いにクラシックからやり合った好敵手。だからこそ互いの勝利が嬉しくたたえ合うという。まさしくこれが競馬! 激闘だったからこそ勝者には賞賛を送るスポーツマンシップあふれる行動に中山競馬場は拍手の嵐です!!』

 

 

 うんうん。ゴルシの勝利も見れたし、ジェンティルちゃんも優勝。いい年だったぜ。あ。ちなみにだけど、ゴルシ今回はウイニングランガン拒否してそれがまた笑いを誘ったとさ。




 このレース史実も見どころ多めで愉快なのがまた。後調べ直して9歳馬出ているの!? だとか2年連続3着とかのナイスネイチャ枠がいたりしてほんとなんやかんや面白いメンバーだなあと思いました。


 ケイジ 初敗北。でもゴルシは好きなのでゴルシの勝利を見届け、生で見れたのは改めて感激。しっかりとエールを送った後にウイニングランを拒否する、走るふりからの疾走一本背負いしようとしたゴルシを見て爆笑していた。


 松風 ケイジの初敗北に内心すこしへこんでいる。ただ勝者を称えるのと、ケイジに余計な心配をかけさせないと終始笑顔だった


 ゴルシ 見事勝利をして葦毛の怪物襲名。ただしその後はケイジダンスをやる気分じゃなかったのかそれとウイニングランを拒否。茄子調教師が来たら目が死んだりで百面相ぶりに会場を拍手と歓声の嵐から笑いへと変えていく。


 オカマバーの皆様 ケイジが負けたのはショックだけどライバルのゴルシが勝ってくれたので素直に称えました。この後みんなでお客さんらとどの距離ならケイジとゴルシが上なのかで楽しく語らい、また二日酔いのスタッフが増えた。


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あー年末。そんで来年のローテ―

 お気に入り2000人突破! 感想も100を突破! 前回の話ではランキングも9位に入っていたりでうれしい限りです! コツコツ頑張っていければと思います。

 改めてこの時代、ほんと何処いってもやべーのしかいないという時代なんですよねえ。距離も性別も芝もダートも問わずに怪物しか居ねえ。


 今回は説明回とのんびり行きまっす。


 そういえばこの世界のクワイトファイン。テイオーの血が欲しいと代用血統。パーソロン、テイオーの血統保護ということで種牡馬として人気出そうですよねえ。代用血統で生まれた怪物の例としてはアメリカの三冠馬シアトルスルーなどが有名ですし。


 日本の種牡馬で有名処だと確かブライアンズタイムはサンシャインフォーエヴァーの代用血統、種牡馬として入ってきての大成功でしたか。ミホノブルボンもマグニテュードもミルジョージの代り。スズカもそんな感じで生まれた名馬ですし、凄いですねえ。


 ケイジの一口メモ 背丈が大きすぎれば体格もいいので女性向けの服、オシャレな服が買えないせいで私服が大体ビッグサイズ専門店でのシンプルなシャツやズボンばかり。なので自作したり、知り合いの呉服屋から買ったり、生地をもとに緩めの和装を作っているので部屋着や私服がTシャツか着流し、浴衣で過ごすことが多い。自作の甚兵衛は大きすぎるせいでちょこちょこナギコが毛布の一つやクッション代わりにしてしまう。


 「おめでとうケイジ。これで晴れてお前も二年連続最優秀牡馬。そして初の年度代表馬になれたなあ」

 

 

 「ヒヒン」

 

 

 『だねえー、しかしジェンティルちゃんがとるかと思ったんだけどなあ。JCでオルフェをタックルで沈めてからの勝利と、同じGⅠを四勝だけどあっちは勝った相手がやばいしねえ』

 

 

 どうもおはこんばんちは。ケイジだよん。年末の表彰式も無事に終わり、俺が最優秀年度代表馬に表彰されてから一度牧場に帰ることになった。何でも来年のローテの相談と放牧のためだとか。結構休み入れるのね葛城厩舎。

 

 

 「どうにも無敗のまま前代未聞のクラシック4冠。そして有馬でも2着。それとワールドレコードを二つ出したのが評価されてだろうなあ。ただ、同じくらいジェンティルドンナに票が入っていたのも見れば彼女の強さをしっかり理解していることだろう」

 

 

 だなあ。票差わずか2票だったし。ただまあ、負けた後馬房でエシディシよろしく泣いてスッキリしてからもう完璧に気持ち切り替わった後でこれを見れてみんな笑顔で見送れてよかったわ。松ちゃんも今年でクラシックのレース全部ゲットできたしで今後の騎乗依頼も困らないだろうし。

 

 

 まあ、そんなこんながあって今は俺と利褌のおっちゃんは馬用と人用の温泉に互いに浸かりつつぼんやり月見でござる。ああーこれを明日にもう一度見たら新年かあ。そうなれば俺も2月の後半生まれだしすぐに4歳。早いなあ。色々と。

 

 

 「・・・夢のような一年だったよ、ケイジ。お前のおかげで俺は本当に夢を見れた・・・松風君もまた挨拶に来てくれるみたいだし、あのルドルフの、テイオーの子どもでまた夢をつかめたのが嬉しいよ。ありがとうケイジ。お前は最高だ」

 

 

 「むふん」

 

 

 『おやっさんこそ最高の漢だぜ』

 

 

 思えばそうだなークラシック全勝ちして、有馬記念までいけて、二着。古馬を交えてもやれたのが嬉しいなあ。勝ちではないが、大きな実りある負けだったかもだねえ。ゴルシに今度は勝ちたいが。しかしまあ、一億円以上をPON☆と寄付したおやっさんもさすがだぜ。ありゃあ痺れたね。

 

 

 健康診断も大丈夫だったし、来年以降も頑張らないとなあー・・・・ああー夜風の冷たさと湯船のあったかさの対比が心地いい・・・はふぅ・・・ああ、ほっとリンゴウマウマ。その後に冷えた水を入れたボトルをグビ。ぷはぁーたまらん。

 

 

 「さて・・・そろそろ上がろうかな。ケイジも今夜は体を拭いたらそのまま休むんだぞ。松風君からもらったアニメが楽しいからって夜更かししないように」

 

 

 『わかっているぜ。おやっさんこそ湯上りの晩酌飲みすぎて女将さんに怒られるんじゃねえぞ? 本番は明日なんだからよ』

 

 

 俺もおやっさんも風呂場で水を一杯飲んでからおやっさんが身体を拭いて着替えた後に俺の身体を拭いてくれてからの就寝。ああーやっぱ温泉は・・・最高だな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふすー・・・・すぅー・・・」

 

 

 『・・・きな・・・! お・・・・さ・・!』

 

 

 『んふぇ・・・あー・・・? だれぇ・・・? 予約は牧場を通して・・・』

 

 

 『何を言っているのよケイジ!』

 

 

 『ぶふぇっ!? あはぁーん・・・ジェンティルちゃんじゃねえーの。おはよぉー・・・ああーそんなに急いて起こしてくれるってことは、笑っていいとも! の時間かあ。今日のゲスト誰だったかなあ・・・』

 

 

 『知りませんわよそれ。なんですのよ!?』

 

 

 『おぶち!』

 

 

 んー・・・新年あけて、放牧のなか原っぱの真ん中で読書をしつつ寝ていたらジェンティルちゃんにハリセンでしばかれて起こされた。ってか・・おれがドリフターズからもらったハリセンを俺以上に早く使いこなすんじゃないよジェンティルちゃん。

 

 

 バチバチ馬の聴覚でハリセンの音を間近で聞けば嫌でも目が覚めるのでよっこいせと体を起こす。おいこらスタッフはどこだ? 牡馬の俺の放牧場に牝馬のジェンティルちゃんを入れた阿呆は。

 

 

 「かふぁー・・・むふぅん」

 

 

 『オッハー・・・ジェンティルちゃん。どったのこんなところに』

 

 

 「ヒヒン。むふ・・・ぶふぅー」

 

 

 『まあ、こぢんまりしていますがね。わたくし、しばらくここでご厄介になりますのよ。調教と放牧両方を』

 

 

 『ええ? なんでまた。お前さんらの陣営ここ以外にもいい場所多いだろうによぉ。にしても・・・』

 

 

 まあいいやということで後でスタッフもいるだろうしもう一つのピコピコハンマーでしばきながら問い詰めるとして、んーやっぱあれだなあ。

 

 

 『どうしましたのよ?』

 

 

 『いやいや。綺麗になったとな。淑女としての成長と色気を感じるぜ。はははは。東京の戦いで女磨きをしたせいだろうな。雪景色と日差しが引き立てらあ』

 

 

 感性の一部が馬の方にやや引っ張られているのもあるんだろうけど、いんやあー美人になったねえ。まったく戦いが女を磨くというのを見られるとはこれまた競馬冥利に尽きるってものか。ジェンティルちゃんもハリセン落としちゃってどうしたんだろかい。

 

 

 『・・・・ふん。当然ですわ。貴方さえいなければ年度代表馬はわたくしになれたほどですもの』

 

 

 『はっはっは。流石にそう簡単には譲れない勲章なもんでな。大人げないが頂戴つかまった。ああ。それと明けましておめでとう。今年もまたよろしくね』

 

 

 『あけましておめでとうございます。・・・これ、人間の挨拶でしょう? それと、後ろの二頭はどちら様で?』

 

 

 いやあ、挨拶を忘れるとは寝ぼけていたとはいえこいつは失礼だ。後でおやっさんからデけえバナナでも振る舞ってもらうようたのも。で、後ろ?

 

 

 『ケイジー・・・そこの女誰だしー・・・』

 

 

 『ケイジお兄様・・・そこの女は一体』

 

 

 おおう。ナギコとジーナが睨んで・・・だからなんで俺の放牧エリアに牝馬をぶち込んでいるんだ。つーかナギコいつの間に帰ってきた。

 

 

 『俺の親友で練習相手のジェンティルドンナだ。ついでに言えば今年の世界トップレベルを倒した最強候補だな。ジェンティルちゃん。尾花栗毛の方がナギコ。黒鹿毛の子がジーナ。あー・・・ある意味妹分みたいなもん。ま、仲良くしてやってくれ』

 

 

 『なるほど? ではでは、どうも御二方。わたくしケイジの『パートナー』のジェンティルドンナ。ケイジと同じ三冠馬にして天馬の娘です。お世話になりますわね?』

 

 

 『・・・ナギコ。まだデビューしていないけどケイジと同じ牧場出身』

 

 

 『ジーナです・・・むぅ・・・』

 

 

 おーおーなんでかバチバチやってんなこいつら。女の縄張り争いか? 俺の放牧地なんだけど。ったく、せっかくここは雪解け早いからって読書にいいのに、まあったく。今は火花散らすのなんて見る気分じゃねえっての。

 

 

 『ナギコ。お前とジーナでジェンティルちゃん連れて出口あたりにいろ。温泉にでも入って話をすればいいよ。ほれ、サンデーサイレンスとディープインパクトの話をしただろ? ジェンティルちゃんその孫娘であり、娘だから色々話が弾むと思うぞ』

 

 

 『マジ? かしこまり♪ それじゃ、ケイジが呼んでくる間にウチがこの牧場の事を教えるし』

 

 

 『ええ、お願いしますわ。でも、ケイジはどうやっ・・・ええ・・・・・・』

 

 

 さてと、ひょいさっと柵を飛び越えて牧場の休憩所の大広間に移動。人の匂いも音も集まっているしな。しかし、新年だからか? やったら多いなあ。車も多い。ん? 平野調教師とひげ熊厩務員のおっちゃんの車もある。あーだからナギコいるのね。

 

 

 「ではお願いしますよ平野さん。ナギコのこと、よろしくお願いします。私からも預かる牧場先にはロック&ヘリントンファームに頼んでおきますから」

 

 

 「ありがとうございます・・・・・! ナギコの才能は間違いなくアメリカクラシック、トリプルクラウンを優に狙える才能です! それを日本の、2歳のレースは少なく、しかもあのホッコータルマエ相手につぶし合いをさせるのはあまりにも酷・・・! それよりは日本のダートの怪物たちの結晶ともいえるあの子を世界に知らしめて、栄冠を持たせてやりたいのです!」

 

 

 んー? ナギコのローテか・・・しかしマジか。アメリカトリプルクラウン。つまりはあの激烈過酷なローテのレースを狙えると。少なくても一年近くナギコを見た平野調教師がこうもかあ。こりゃあ、しばらくここも騒がしくなりそうだな。

 

 

 二人して土下座してでも頼み込むとは。いやあーナギコ、愛されているし見込まれているなあ。まあ、それはそれとして、ジェンティルちゃんの調教師と厩務員もいるのでちょうどいいやと窓を開けて顔を出す。あけおめ。

 

 

 「うおっ!!? け、ケイジ!?」

 

 

 「おおーどうしたケイジ。正月の特番アニメは夕方だぞ?」

 

 

 「ケイジ相変わらずだなあ。というかどうやって出てきた。え? 柵越え?」

 

 

 ジェンティル、ナギコ陣営は驚いているけど流石にここの牧場と俺の陣営は驚かんな。話が早いぜ。久保さんも俺のジェスチャーですぐに柵越えしたとわかってくれたようだし。

 

 

 「で、どうしたんだケイジ? 新しい本が欲しいのか?」

 

 

 『いやいや、温泉に女性陣入れてほしいのよ。流石にジェンティルちゃんは監視が欲しいだろ?』

 

 

 近くにあったタオルを畳んで自分の頭に乗せて緩んだ顔を見せて少し顔を下げる。その下にあった女将さんが作ってくれていた温泉マークの看板を咥えればみんな理解してくれた。

 

 

 「なるほど、悪いけどトモゾウ。ジェンティルドンナちゃんとナギコ、ジーナをお風呂に入れてあげて。ジェンティルドンナちゃんは馬温泉初めてだろうし、まずは浅めの少しぬるめに」

 

 

 「了解です」

 

 

 「じゃあ俺も手伝いに・・・」

 

 

 「あ、久保さんはここに。ケイジの今年のローテのほうで牧場長からの話したいみたいですし。ケイジ、お前もどうせ聞くだろう? 大人しくしておくんだぞ」

 

 

 トモゾウとひげ熊厩務員が出てくれたので問題はないか。それとトモゾウ。それはフリか?

 

 

 「ふむ、まあケイジもちょうどいいから聞いてほしい。昨年のJC、有馬記念の結果を見て、ドバイのこの人が手紙をくれてな」

 

 

 『おうおやっさん、これマジかよ。ドバイの王族、その本家筋の人の直筆じゃん。テレビで見たぞ』

 

 

 「実は私の知り合いで、たびたび日本のサンデー産駒の牝馬とかで繁殖用、血統入れ替えの事もあって交流をしていたんだが、私の牧場からケイジが出ての昨年の結果。同年代にジェンティルドンナちゃんも三冠牝馬。しかもその年の凱旋門賞馬に凱旋門賞二位、2011年の三冠馬オルフェーヴルを下したこともあって是非日本の三冠馬コンビをドバイで走らせてほしいという推薦状だ」

 

 

 うん、まあサンデーを生み出した牧場と知り合いの時点であり得たけどさ。コネがえげつねえよ。ドバイの王族にアメリカの名門牧場って、なんで社爛の末端も末端の所で牧場してんの? 独立しちまえるだろ。パトロン候補いるし。

 

 

 「いやはや・・・とんでもない話ですなあ・・・」

 

 

 「ドバイワールドカップデーのどれかでいいから二頭とも出せばその出てくれたレースの賞金は弾むし、牧場や輸送機の手配はしてくれるようだ。ははは。ありがたい話だし、そこを目指していたジェンティルドンナ陣営の皆さんにもちょうどいいでしょう?」

 

 

 「渡りに船ですよ。温泉で疲労を抜きつつ体を冷やさないように過ごせる。ケイジと調教、併走が出来るということがすでにありがたいのに更には推薦まで・・・ありがとうございます」

 

 

 「いえいえ。此方こそナギコとケイジのいい経験になりますし、放牧の期間がちょうど重なってよかったです。狭い牧場ですが、温泉とケアでしっかりジェンティルドンナちゃんを仕上げるお手伝いをさせてもらいます。で、ケイジ。俺たちの予定だが、相当にお前のファンらしくてな。ジェベルハッタにも出てほしいそうだ。結果がどうであれ私たちの出るレース。ドバイDFには出してくれるそうだし、気楽にドバイデビューしないか?」

 

 

 「ワンワン。わふぅん! ムフゥーッ!!」

 

 

 『おうおう! 楽しみだし、燃えるじゃねえの!! こいつはおもしれえ。やってやろうじゃん!!』

 

 

 いやはや、新年早々グッドニュース!! ジェベルハッタといえば2012年。つまりは昨年に国際GⅠになった大レース。そこで闘えるってことはシンボリルドルフの目指しても届かなかった海外のGⅠレース制覇。そのままドバイDFも勝てれば国際GⅠ二連勝を狙えるってことじゃんかよ!! 最高だぜ!!

 

 

 『そうと決まれば柔軟しておくわ! わはははは! 次の目標は海の向こう! 世界最強格が集う芝の戦場!! いいねいいねえ! ゴルシらと戦う前の修行であり、これもまた大一番! 温泉入って雪かき分けての訓練も楽しみだぜー! 幸太郎呼んでくれよ! いっちょ海で走るのもいいな!!』

 

 

 「待てケイジ!! その前にお前は暫く休めー!!」

 

 

 『今日はKARATEの稽古の日なのよ!!』




 ケイジの次回の出走場所はドバイのGⅠレース。ジェベルハッタ芝1800です。3月9日に開催。その後にドバイDF芝1800へ。どちらもケイジは4歳なのでOK


 ケイジ 無事年度代表馬を獲得。次の目標が決まってウキウキ。ゴルシに勝つ前の過激修行と思っている感じ。でも全力で戦うために放牧中だってのに自主練開始。


 ナギコ アメリカトリプルクラウン狙うこと確定。暫くしたら早速デビューをアメリカで行うことに。ジェンティルドンナと仲良くなる


 ジーナ しっとり度更新中。ケイジが帰ってきて一番喜んでいた。


 前田牧場長 馬主、牧場長。らしく色んなコネを持っている。けどそれをあまり頼りすぎずに小さな牧場主として過ごしていました。この世界でのドバイの王族にケイジのファンがいて推薦状を貰ったのでならばと挑戦させることに。


 PCが急に電源落ちたりで色々暫く更新が出来ないかもしれません。返信も遅れる可能性が高いので申し訳ありません。皆様の感想は本当に楽しく読ませていただいています。


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ウマ娘エピソード 6 祝福への旅路を

 改めて思う。あの変態勇者アグネスデジタルはケイジを推しにするのかなあと。隙あらば山ちゃんボイスだしてしまう変ウマ娘ですからねえ。


 ケイジをイラストにしてみたいけど絵心がない自分が悲しい。


 ケイジの一口メモ 文学、歴史、武術全般関連はケイジ。数学、物理学、重機関連はゴルシ。パソコン、電子機器、演出はジャスタウェイがそれぞれ秀でている。共通で得意なのは料理。裁縫。屋台もよく出しては料理や小物を売っている。


 「うぅーん・・・」

 

 

 「毎度! そんじゃあ気をつけて帰ってなー! っし。完売! さーて・・・帰りますかねえライス。どうした?」

 

 

 ライスの日本ダービーが終わり、しばらくは休養に入ったので黄金屋の出張屋台。土方のおっちゃんらや園芸の兄ちゃんらに弁当を売り歩いて無事完売。いやー夏ってことでいわしのハンバーグに大根おろしと柚子ポン酢ソース。さらっといけちゃうぶっかけうどんのメニューで攻めたがこいつは行けるぜ。

 

 

 今度は山芋を入れたやつとか、チリソースと竜田揚げでも・・・と思っていたらライスは何やら顔がうかねえ。どうしたんだ?

 

 

 「う、うん・・・その、シリウスの皆に応援してもらったのに、ライスずっと二位で・・・」

 

 

 「なーに言ってんだ。二位、しかも周りがミホノブルボンに振り回されてへばる中食らいついて体半分まで迫っているんだ。大したもんだぜ! 新聞も菊花賞は先が読めない! サイボーグの精密なレースプランを黒い弾丸がひっくり返すか! で大盛り上がりだもんよ」

 

 

 そう、ライスシャワー。アタシらのもとで鍛えてシリウス期待の新星と言われていたけども同時期にミホノブルボン、多くのライバルがいることもあってヴィルシーナもびっくりな5回連続の2位を乱発。まーさかアタシとゴルシのような状況が起こるってほんと分かんねえな?

 

 

 ただまあ、そのなかでも基本アタシの練習に食らいつく、大逃げはスピカともよく練習するから大逃げ、逃げのスタイルをよく見ている分食らいついているのがライスだけなんだよなあ。他はみんなへとへと、もしくは足が痺れて力が落ちるのが多い中、だ。

 

 

 「でも、そうなったら・・・ケイジさんとゴルシさんみたいに同着じゃなくて・・・勝ちたいけど、勝ってしまったら怒られないかなって。周りを不幸にしないかなって・・・」

 

 

 「・・・なら回避するか? そのまま天皇賞秋に行ってもいい。あそこに行けるだけの実績はあるしなあ。ライスは中距離もそのスタミナで走り切って周りを引きずり回せるし」

 

 

 「う・・・・ううん、いや。一生に一度の大舞台・・・・・行きたい・・・そして、け、ケイジさんに並ぶようなウマ娘に、シリウスの一員だって誇りたい・・・応援に来てくれたみんなを笑顔に、ライスも幸せになりたい!」

 

 

 「ははは、その意気よ。それになライス、お前さんはもう不幸にするだのを気にしないでいいんだ。お前さんが歩む道をみんな祝福している。うちのひいばあちゃんも言っていただろ?」

 

 

 屋台車を片付け、引きながらのんびりライスと話ながらにっこり笑えば落ち込んでいたライスも笑顔を見せてくれた。そして、ああ、この目がいい。青い炎。冷たそうでその実赤よりも熱い炎の色。気合は入っているな。

 

 

 「ヒサトモさんも・・・うん。頑張るよケイジさん! ライス、菊花賞で勝つ!!」

 

 

 「おうさ! そのために残していた弁当食べてから今日は寮に帰っか! でねえと怖ーい副会長にどやされちまうぜ。今までの二位が何だ、ライス。菊花賞で勝って、お前が一番強いウマ娘だって証明しようぜ!」

 

 

 「おー!!」

 

 

 にしし、いい感じに元気が出た。寮に帰る前に軽食として用意していたアタシら分の弁当を近くの公園でお茶と一緒に食べてこの後戻る。ライスの方は明日も練習は軽めで済ませるよう言われているし、図書館で作戦を考えるとかなんとか。

 

 

 「・・・もしもし? じい? おうよ。アタシの盆栽と、刺繍した帯、腰当。そうそう、それと刀も・・・ああ? もったいない? いいんだよ。それと、明日ちょいと学校抜けっから車まわしておいてくれ。はははは、ばあやはノリノリか。そうじゃなくっちゃ♪ 明日は大脱走だぜ~☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『いよいよこの日がやってきました! 一番強いウマ娘が勝つレースクラシック最後の一冠菊花賞! ここまで無敗で来た機械仕掛けと思えるほど正確なラップで逃げを放つミホノブルボンが勝利を手にするのか! いやいや! このウマ娘もいるぞチームシリウス期待の黒いステイヤー! シリウスのリーダーケイジとスピカの不沈艦ゴールドシップのようにミホノブルボンに猛追し最後の一冠を手にするかライスシャワー! ほかにもマチカネタンホイザや多くのメンバーが勢ぞろい! この淀の坂、未知の距離でぶつかります!!』

 

 

 い、いよいよ来た・・・菊花賞・・・うぅ・・・ケイジさんたちは応援してくれたけど、やっぱり・・・こ、怖いし・・・緊張しちゃう・・・ケイジさんの訓練や、お師匠さん達と地獄の・・・・・・地獄の・・・あ、頭まで痛くなってきた・・・オカマの魔女に変態警察・・・爆竜大佐・・・

 

 

 ああ、でも、でも訓練が終わった後に皆で食べたごはんと目標を語るのは・・・凄く楽しかった。面白かったなあ・・・もう一度、今度は勝ったうえでみんなと・・・

 

 

 「ライスシャワーさんを確認。今日はいいレースにしましょう」

 

 

 「は、はい・・・」

 

 

 『パドックから今回参加するウマ娘すべてが出そろい我々の前でその勇姿を見せつけます! おおっと!? 観客席からひときわ大きな声が上がります!』

 

 

 「「「ライスー!! ファイトだー!!」」」

 

 

 「「「ライスちゃーん!! 頑張れよー!!」」」

 

 

 『そこにいたのはチームシリウスリーダーにして無敗の四冠! 海外でのレースすべてで大暴れをしています傾奇ウマ娘ケイジ! ジェンティルドンナをはじめとしたシリウスメンバーそろい踏み! ゴールドシップにジャスタウェイ! そして何やら周りにもへ・・・ちん・・・独特なファッションで身を包んだ方々や多くの人達が声援を上げております!』

 

 

 「ケイジさん・・・おじさん達まで」

 

 

 今まではなかったほどの応援が聞こえる。ライスの名前を呼んで勝ってくれと言ってくれている・・・うん、負けない。ミホノブルボンさんでも、負けるわけにはいかない!

 

 

 「ミホノブルボンさん・・・ライスは、今日は勝ちます!!」

 

 

 「挑戦を受け取ります。その上で私はマスターの指示通りに勝ちます」

 

 

 『互いにライバル同士! かつての傾奇者と不沈艦を思わせるような宣言をしてからのそれぞれがゲートに入ります』

 

 

 ゲートに入るまでの短い時間。息を整えつつ心を高める。勝てるんだ・・・この作戦なら・・・ここまで逃げないでこれたライスなら・・・みんなが信じてくれたライスなら・・・!

 

 

 『全員がゲートに入りました・・・・スタートしました! 菊花しょ・・・・おぉ!!? どうしたことだライスシャワー!! まさかのロケットスタートからのミホノブルボンを追い越しての逃げ、いやこれは大逃げだぁああ!!?』

 

 

 いつもミホノブルボンさんの走りはじっと見ていた・・・それと同じくらいにほかのウマ娘のレースも・・・全部比較した。いつものびのびと後ろや好きな位置につけていたみんながミホノブルボンさんの逃げで引きずり回されるとやりたいスタイルが出来なくて、焦れたり、怖くてすぐに疲れちゃっていた。

 

 

 だから、まずはそれをする・・・! サイボーグが相手なら、読めないことをすればいいっていうケイジさん、ゴルシさんのやり方を!!

 

 

 「っ・・・!!」

 

 

 『しかしそれでも逃げのスタイルは私が一番だと猛追を仕掛けるのはミホノブルボン! 淀の坂でライスシャワーをすぐにとらえて抜き去る! いやライスシャワーも続く形で離されない!! 先頭の二人のたたき合いのハイスペースなレースとなります! ほかのウマ娘たちは既に4バ身差をつける形! さあそのまま叩き合いを続けてコーナーに入っていきます』

 

 

 「ふっふっ・・・ふ・・・・・ふー・・・」

 

 

 (ケイジの怖い所ですか? ・・・皆が速度ばかりを言いますが、何より私はコーナリングですね。緩かろうが、きつかろうがどんなコーナーでも自身は息を入れつつも加速をして、何時もいい位置を取る。出来なくても回復してロスを少なく仕掛ける脚を溜める。これが私は恐ろしいです・・・ケイジより小柄なライス。貴女ならそれをすぐにものにできるでしょう)

 

 

 まずは・・・まずは坂を一度越えた。そしてそのまま坂の無い直線で・・・少し加速!

 

 

 『コーナーを越えたところでミホノブルボン、ライスシャワーを引き離して2バ身! しかしライスシャワーと後方の位置は既に6バ身! ホームストレッチでは例年まれに見れる最初からのたたき合いにこのハイペースの試合に湧いております!!』

 

 

 「「「ライスー!! いいぞー!!」」」

 

 

 「「「負けるなミホノブルボン!! 勝ってくれー!!」」」

 

 

 「いいぞライス! あーっははははははは!!! アタシの大逃げを使うとは! っくく! まだまだ先は長い! 気ぃつけろよー!!」

 

 

 「面白いもん見せてくれるじゃねえか! 頑張れライス! 勝ったら焼きそば奢ってやるぞー!!」

 

 

 「ライスちゃーん! 頑張ってくれぇ―!!」

 

 

 あ、芝の整備をしていたおじさん達・・ケイジさんにゴルシさん! あんなに手を振って、は、鉢巻きに専用の法被・・・・! うん・・・ライスのこと、応援してくれるんだ!

 

 

 『ライスシャワーが再び息を吹き返すようにミホノブルボンに迫る! 彼女とここまでのたたき合いを演じるのはやはり黒き弾丸ライスシャワーだけか!? 1000メートルタイムはなんと58秒7! こ、ここまでハイペースな菊花賞になるとは!? これはかつてのケイジとゴールドシップの激闘の舞台となった伝説の菊花賞のレコードに迫るタイムも期待されます!!』

 

 

 まだまだ・・・! もっと追い込む! 仕掛ける! ここのコーナーで一気に・・・!

 

 

 『さあここでライスシャワーがいよいよミホノブルボンを捉えて先頭! そのまま第一コーナーから第二コーナーへと入ります! そして見えてくるのは二度目の淀の坂! 心臓破りの坂がかわいく見える二度目の試練! この高き壁を前に全員の脚が鈍らずに超えられるか!!』

 

 

 もっともっと伸びないと・・・仕掛けないと・・・出ないと勝てない・・・! ミホノブルボンさんに・・・!

 

 

 「ターゲットのスタミナ疲労を確認。直線での仕掛けが有効・・・今です」

 

 

 『ここでミホノブルボンがペースを上げてもう一度ライスシャワーを追い抜いたあ! やはり菊花賞の勝者はサイボーグミホノブルボンになるのか! ライスシャワー! 明らかに足色が落ちて後方集団に飲み込まれかけています!!』

 

 

 あ、ああ・・・ミホノブルボンさんが行った。ここまではいいのに・・・あ、足が予想以上に・・・慣れない逃げで消耗しちゃった・・・スタイルも叩き込んで、スタミナを伸ばしての自信作だったのに・・・ライスがついてこれないなんて・・・やっぱり私は・・・

 

 

 「・・・・・・・・よーし・・・皆ぁ!! 旗ぁ上げろおおお!!!」

 

 

 「「「オォオッ!!」」

 

 

 

 『何でしょうかこれは!! 京都レース場にはためく大量の旗!! これは全てがライスシャワーの、シリウスの応援旗!! 観客席の一部を埋めるほどの大量の旗! そして歓声がひときわ大きく、熱くなっていきます!!』

 

 

 「へばるなライス!! そんなところでへばるような女じゃあ! ウマ娘じゃねえってのはアタシが一番よく知っているんだ!!」

 

 

 「負けねえでくれライスちゃん! 捲れ! 捲れぇええええ!! もう少し、あともう半分を過ぎているんだ!!」

 

 

 「そうよライスちゃん!! 貴女の笑顔を、歌をまたセンターで聞かせて頂戴! 欲しかった優勝トロフィーを抱えた姿を撮影させてぇええ!!」

 

 

 「うぐぉっ・・・! そうだライスちゃん! 君の目指したGⅠの勝利は、話してくれた夢はもう少しなんだ!!」

 

 

 皆・・そうだ・・・まだ終わっていない! 頑張ってシリウスに入ったのも、中央トレセン学園に来たのも、ここに挑んでいるのも・・・全部全部・・・弱いライスを変えるためなんだ!! ここで負けて終わるような自分を変えたくて、不幸を潰したくて来たんだ!!!

 

 

 『シリウス、ライス応援団の涙も交じるほど熱いエールがライスシャワーの背中を押す! 旗がちぎれんばかりに振られて輝く! そして淀の坂でミホノブルボン失速!! 黒き弾丸が再びサイボーグの走りを壊していく! そうだ!! この舞台はミホノブルボンのだけではない! ライスシャワーもまた彼女に食らいついてきた一人! クラシック三冠を求め未知の舞台へ乗り込んできた挑戦者だ!!』

 

 

 (ケイジのやべーところか? そうだなあー・・・飯がうまいし喧嘩もつぇえ。そして、うん。あいつはさ、笑顔で期待も夢もしょい込んで、その上で心底嬉しそうに戦うんだ。その上でレースで戦う皆を尊敬している。だからだろーなぁ・・・あいつとのレースはいつだって待ち遠しくてしょうがねえ。ひたすらに楽しそうに、タブーも非常識も蹴り砕いて走りぬく姿に皆惚れこんじまうんだろうぜ)

 

 

 淀の坂・・・こんなの! こんなものでライスは止まっちゃだめだ! ここを超える! ほかの皆が焦るほどの大逃げ! ついてきてスタミナを使ったところでこっちは直線で脚を残して・・・ここをもう一度加速するんだ!! ミスターシービーさんが、ゴルシさんがしたように! 

 

 

 『な、なんていうことだ!! ライスシャワー淀の坂でさらに加速! そして坂を更にもう一度加速を仕掛けていく!! これはまさかのタブー破り!! ミスターシービー! ゴールドシップ!! そしてケイジに続いてこの淀の坂を自らの武器として利用!! いよいよミホノブルボンと距離を広げていく!!』

 

 

 ここからは脚を残すために坂の加速のままだけ! コーナーを使うために少し内枠を広げて負担を・・・・・・・ッッ!!?

 

 

 「システムイエロー・・・ですが・・・・勝利のための許容範囲と見て加速を続行します・・・!!」

 

 

 『し、しかしここでミホノブルボンまさかの坂を直下降!! まさかのケイジのあの峠攻めをしてくるのか! あっという間にライスシャワーに迫り! 空いていた最内に飛び込んできた!!』

 

 

 まだ、まだ・・・これをしても食らいついてくるの!? 息は切れているし、汗だくで苦しそうだけど・・・それでもこの速度を・・・! い、いやだ! ここで負けるのは嫌だ! あともう少し、もう少しでGⅠに、クラシックに手が届くのに!!

 

 

 「負けません・・・マスターが・・・お父様が・・・皆が私を応援してくれている・・・!! その期待に! 三冠ウマ娘になって見せます・・・!!!」

 

 

 「う・・・ぅう・・・!」

 

 

 普段の無表情・・・静かな雰囲気、顔つきじゃない。鬼気迫る、この人が見せる気迫に、声に押されそうになる。これがミホノブルボン。わかっていた。あれほどの正確なラップ。キレが鈍らない脚は本当に鍛錬の積み重ねだって。サイボーグ・・・それを超えるほどの力を持つほどに鍛えたんだって。だからライスも、ほかの皆も届かなかった。

 

 

 けれど今は負けない。そのための策を用意したのに、鍛えたのに、技を覚えたのにまだ届かないの! 一番の仕上がりなのに、一番今脚が動いているのに、それでも勝利がするりと・・・・

 

 

 「ライスゥウー!!! そのまま走ってこーい!!!」

 

 

 ケイジさん!?

 

 

 (ケイジが強い理由? そんなの簡単。夢追い人だからっしょ。どこまでも力強く、どんなに強いライバルや相手がいても見えている目標のためなら戦う。夢に恋した乙女だからこそ。ああもやり切れるんだろうなあー熱いけど、こういう香ばしさは嫌いじゃないよね)

 

 

 『互いに並んだまま伸びない! させないまま最後の直線に入る! 抜いては抜かれてのこの勝負もいよいよクライマックスを迎えました!! 互いにギリギリまで攻めたコーナーで叩き合い!! そうだ! これが菊花賞! もっとも強いウマ娘が勝つ!! このたたき合いを征していける強さを見せてこそ栄冠を手にするにふさわしいのだ!!

 

 

 互いにまるで固定されたかのようにピタリと差が広がらない! 意地と根性と! 最後の一冠をかける執念のぶつかり合い! にらみ合いながらもゴールを見据える二人!』

 

 

 「勝てッ!! ここまで頑張って!! 泣きながら、苦しみながらでも来た時が報われるときなんだライス!! 勝って本当のヒーローになってしまえよライスシャワー!!!!

 

 

 「勝ちなさいライスシャワー!! 祝福の名を持つ最強ステイヤーは貴女だけ!! 私たちチームシリウスが認める幸運の証なのよ!!」

 

 

 「「「「差し返せライスシャワー!!!」」」」

 

 

 ケイジさん、ジェンティルドンナさん・・・オルフェーヴルさん。皆・・・!!! うん・・・うん!! 負けない! ライスは! ライスシャワーは・・・・・・

 

 

 『祝福』の名前を持つ・・・『ヒーロー』なんだっ・・・!!!!!

 

 

 『なんとライスシャワーここでさらに二段加速を見せた! ミホノブルボン粘るが届かない! これが黒き弾丸! これこそがシリウスの一員!! これこそがライスシャワー!!! 無敗の二冠ウマ娘ミホノブルボンを破って今ゴールイン!! 長かった・・・そして欲しかったGⅠの栄冠を手にしましたライスシャワー! 京都レース場から祝福の声が彼女を包み込みます! 無敗の二冠に届く強さを、最強は一人だけじゃないんだと己が足をもって見せました!! タイムは・・・2分59秒6!!? まさかまさかの! ケイジ、ゴールドシップのコンビが手にした菊花賞同着にしてワールドレコードを更に0コンマ2秒更新!! もうこれは刺客じゃない! シルバーコレクターでもない! まさにヒーローの誕生です!!』

 

 

 やった・・・! やったよみんな!! ライスは・・・ようやく一冠を、菊花賞を取れたんだ!!

 

 

 『秋の京都レース場に色とりどりの旗が力強く天を突いてはためきます!! それは祝福のための旗! 欲しかった栄冠を手にしたウマ娘がいることを示すもの!! この時代はまだ分からない! 紙吹雪舞う中シリウスのメンバーがレース場に飛び込んでいきます!』

 

 

 「やったじゃねえかライス! しかもアタシとゴルシのレコードまで超えやがって! 最高だぜ!」

 

 

 「流石ですよライス・・・ああ。ようやくほしかったものが手に入りましたね。ふふ・・・初GⅠの気分はどうです?」

 

 

 「わははは! あの大逃げからの差し。じゃなくて差して逃げるへのシフトチェンジってやべえよお前。楽しく勝負できそうだし、今度はしろーぜ!」

 

 

 「う”ん・・・うぅ”う”・・・ありがとう・・・ありがとうぅ・・・皆ありがとう・・・嬉しい・・・ライス、本当にうれしいよぉ・・・」

 

 

 シリウスと知り合いのおじさん達、おばちゃんたち。そしてスピカのゴルシさんとジャスタウェイの皆。アタシを祝福して、そして観客席の皆がライスの名前をコールしてくれている・・・ああ・・・やったよ・・・ライスが頑張って、見たかったのは、目指したのはこれなんだ・・・!

 

 

 もう。しっかり見たいのに、全部聞き逃したくないのに、自分の涙とそれを聞き取っちゃうせいでかすんで、潤んで見れないよ・・・聞こえないよ・・・

 

 

 「ミホノブルボン、そしてみんなの戦いあってこそのこの菊花賞! 無敗は途切れたがまだ終わりじゃねえ!! アジアマイル三冠! 欧州マイル三冠! 秋三大レース三冠!! 春三大レース三冠!! ステイヤーズミリオン! 三冠はこれだけじゃねえ!! ミホノブルボンも! ライスシャワーもまだまだ目指せる三冠は! 大舞台はこれからもある!! だから今はみんなから歓声を受けて、ファンサービスの時間でい!! ほい失礼!!」

 

 

 「きゃあっ!?」

 

 

 「っ!? な、なにを・・・」

 

 

 『おっとケイジ! ライスシャワーとミホノブルボンを両者肩に乗せてスタンド前の中央に立つ! 今年のクラシック三冠を大いに盛り上げた二人! 精密な逃げは誰もが届かない! 無敗の二冠ミホノブルボン! もうシルコレとは言わせない! 菊花賞を手にした黒い弾丸ライスシャワー! その二人をケイジが! シリウスが祝福するように囲み、今右手を構えた! これはあれか! あれをするのか! 観客の皆さんもそれを察してか拳を構える!!』

 

 

 「・・・む・・・足を怪我してんなブルボンちゃん・・・すぐに手当てするようにするからちょいと我慢してな・・・ さぁー皆! 無敗の二冠に最後の一冠! 互いに冠を分け合った二人の王者! だがまだ終わりじゃねえ! これからの二人! そしてここで未知の距離を戦い抜いたウマ娘全員の更なる飛躍! そしてこの勝負の健闘をたたえてお手を拝借!! ジェンティルちゃん。アタシ両手ふさがっているからよろしく♬」

 

 

 「もちろんよ。じゃあ・・・皆さん準備はオッケー?」

 

 

 「「「もちろんでーす!!」」」

 

 

 ジェンティルドンナさんが拳を構え、ライスも、ミホノブルボンさんも拳を構える。あのパフォーマンスをできるなんて。ああ・・・今日は最高だ

 

 

 一度拳を突き出す

 

 

 「「「「オウ!!!」」」」

 

 

 もう一度拳を突き出す

 

 

 「「「「オウッ!!!!」」」」

 

 

 そして、乱れていた息を整えつつ思いきり息を吸い込んでいき、嬉しさを、喜びを全部見せつけるように吐き出す。

 

 

 「「「「ぃいよっしゃぁあああああああああ!!!!!」」」」

 

 

 「「「「ウォオオォオオッ!!! ラ・イ・ス!! ラ・イ・ス!! ブ・ル・ボン!! ブ・ル・ボン!!」」」」

 

 

 『鳴りやまないライスとブルボンコール!! そうだ無敗の三冠とはいかずとも同時代の王者が二人誕生した! その二人が、いやこの世代がこれから挑むのはクラシック、ティアラを越えた怪物たち、強者たちのひしめく舞台! その中でも戦えるであろうことを見せた全員への確かな賞賛と声援がレース後の疲労した身体に染み込んでいく! そして観客もウマ娘の皆さんもここで終わりじゃないぞ!? ウイニングライブが待っている! そこまでの体力と喉をしっかり残さないともったいない!!』

 

 

 ライスは! ライスだって誰かから祝福をもらえる、幸せにできるんだ。ああ・・・今日は最良の一日だよ。ありがとう・・・みんな・・・・ありがとう。ミホノブルボンさん。みんな・・・ライスは、幸せ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「~♪ ー♬ ~♫♩」

 

 

 「ほっほっほ。すっかりぐっすりですなあ皆さん。お嬢様の口笛のおかげでしょうか?」

 

 

 「ライスとブルボンちゃんの走りが・・・いや、あそこで戦った皆、そして、あのレース皆の熱気、ライブだよ。あそこまで盛り上げるなんて傾奇者と言われるアタシが顔負けしちゃうぜ」

 

 

 ライブも終わり、アタシの家のリムジン、そこにライスとアタシ、ジェンティルドンナを乗せて運転はじいに任せて移動。少し移動時間は休めるように持っていた楽器と口笛でワイルドアームズ の荒野〇果てへを口笛とギターのみのアレンジを演奏していたら二人ともぐっすりすやすや。役得だねえ。

 

 

 ブルボンちゃんはやっぱあの淀の坂を加速しながら走って、更にはアタシらみたいにコーナリングに長けているわけではないのにあれ程の無茶をしたので足を壊していた。急いで地下で手当てと鎮痛剤を打ち込んでこっそり担架で運んでおいたからすぐ治るとか。

 

 

 「ふふ。お嬢様ほどのショーガール早々はいませんよ。しかし・・・あの最後の加速。凄まじいものを感じましたな」

 

 

 「あれはアタシらも勝負したら勝てるかわからない。それに・・・下手すると今回で一皮二皮むけたかもなあ。大化けしたやもしれん」

 

 

 菊花賞での大逃げ、からのほかをへばらせて再度の逃げと差し。セイウンスカイのそれに近いが、淀の坂まで利用して、そしてアタシのコーナリングまでもをしっかり使ってのあれだ。ステイヤーゆえのスタミナとコーナーで息を入れてのハイスペースレース。あれは覚えれば今後中距離。1800くらいまでなら優に射程圏内を伸ばせる。

 

 

 ドバイに連れていくのも面白そうだなあーそれとステイヤーズミリオン。

 

 

 「この年になっても尚滾るものを見せつけられるとは長生きするものですなあ。ばあさんは悔しがりそうですよ。生で見たかったと。ささ、つきましたぞお嬢様。皆様を起こしましょう」

 

 

 「あいあい。おーい皆起きろー」

 

 

 「んにゃ・・・どこぉ・・・ほふえ・・・」

 

 

 「くふぅ・・・ああ・・・ついつい眠ってしまいました・・・あら。お寿司屋さん?」

 

 

 ついた場所は超神田寿司。アタシにとってはもう一人のひいばあちゃんみてえな人がいて、顔なじみの板前と警察官、子供がいるまあ行きつけのすし屋だ。

 

 

 「ライスのファンがいて、今日はぜひ菊花賞の祝いをしたいということでな。お邪魔するぜー」

 

 

 「おおケイジ! ライスシャワーにジェンティルドンナも。待っていたぞ」

 

 

 「久しいねケイジ。そしてこの子がシャダイの子だね?」

 

 

 そこにいたのは夏春都ばあちゃんと両津・・・げふん。もとい浅草一郎。通称イチローだ。すでに寿司と吸い物の香りが食欲をそそるってもんだ。

 

 

 「あ、はい・・・ら、ライスシャワーです・・・あ、あの」

 

 

 「擬宝珠夏春都だよ。ふぅん・・・・・なるほど。いい子を持ったねリアルシャダイも。ライスちゃん、今までの努力も苦労もあったからこそのあの祝福だ。おめでとう。長い旅だったろうに、本当に頑張ったね・・・今日は是非とも祝わせてもらおうか」

 

 

 流石長くウマ娘の戦いの歴史を見てきた古老。すぐにライスの目から何かを感じたようで。そんでまあ、アタシもアタシで。

 

 

 「今夜はアタシのおごりだ。イチローにい、夏春都ばあちゃん。これでありったけ!」

 

 

 「そんな札束今はいらないよ。アタシが奢ると言っているんだ。ケイジ、さっさとそれをしまいな」

 

 

 「あぁん? 何言ってんだ! ちゃんと店に金払って飯食うのは筋だろうが! アタシのチームの親友が勝った祝いだ! 奢らせろってんだよ!!」

 

 

 「今日くらいは甘えてただ飯食いなじゃじゃウマ娘!! 年長者がこういう時に気合入れないでどうするんだい!」

 

 

 「それを言うのならリーダーがこういう時に振る舞わねえでどうするってんだ!」

 

 

 「こっちもだよこの破天荒が!! こういうところは本当にヒサトモに似てしまって!!」

 

 

 ったくほんとこのばあ様元気すぎんだよ!! 店貸し切りにしている分少しくらい払わせろってんだ!! 最初に渡そうとした金も突っぱねやがって!!

 

 

 「やれやれ、相変わらずあの二人は・・・さて、ライスちゃん。何から食べる?」

 

 

 「えっと・・・イチローさん? でいいですよね? じゃあ・・・マグロの赤身!」

 

 

 「私は鯛を」

 

 

 「わしは卵とイカを。いやあ、久しぶりの寿司ですのお」

 

 

 しばらく夏春都ばあ様と言い合いからの薙刀を使っての打ち合いしそうになっていたらライスに止められてみんなで改めて寿司を食べての少人数での宴会を開始。

 

 

 まーライスが食べながら泣くのなんの。こんなに泣いちゃあムラサキなしでも塩味しそうだなあ。ここの醬油もわさびもいいものだし、ぜひぜひ涙を拭いて笑顔で食べてほしいねっと。塩も甘いやつとかあってすげえのなんの。

 

 

 ともあれ、おめでとうライスシャワー。これからもたくさんの祝福をもらう旅路を進んでくれるように。




 この世界のライスはケイジとゴルシ(互いに強化済み)の因子、戦い方をインストールしています。なので体も少し柔らかくなっていたり。後スタミナ、パワー、根性はさらにドン。


 ケイジ 自分の持っている小さいころから手入れしていた盆栽(時価数百万)その他もろもろのものを売って資金を用意して知り合いの会社、関係者に声をかけてチケットを用意するからぜひライスシャワーの応援に来てほしいと頭を下げていた。レコードまでも更新されて最高。超神田寿司を夜貸し切りにしてライスの祝いを企画したりと裏でいろいろしていました。


 ライスシャワー 完全覚醒。眼に青い炎が宿り、色々インストール完了。ケイジのしごきをもらっているので靴を20足以上潰してしまう。しょうがないのでケイジが自衛隊の方に頼んで靴は特注で頼んでプレゼントされた。超神田寿司でお腹いっぱい寿司を食べ、あまりに一日泣きすぎたせいで後日目もとがすごいことに。ケイジに爆笑され、ジェンティルドンナからサングラスをもらって隠していました。


 浅草一郎 あの日本一愛されて有名な警察官。もとい今は板前。ケイジの頼みに自身からも夏春都に頼んで店の貸し切り。もてなす板前として寿司を振る舞う。ちなみにこの後ケイジが夏春都から押し返された札束をもらい、一緒に寿司のネタ仕入れと急な板前登板ありがとうということで臨時ボーナス扱いとしてさらにお金を貰った。


 夏春都 超神田寿司のスーパーおばあちゃん。ケイジとは赤子のころから知っていて、最早自分の孫みたいなもの。ヒサトモとは竹馬の友であり、一緒に違う道ながらも支え合い、励まし合いながら進んできた。ライスシャワーの祝勝会を心から喜ぶ一方でちゃっかりと後日超神田寿司のブログにこのことを書いて写真を上げ、店にはシリウスメンバー全員のサインを飾るなどして大儲け。ケイジ曰く「やっぱこのばあ様怪物だわ」


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遠征前の準備中

 前回のウマ娘エピソードなんですがイメージ、テーマソングに映画「ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち」の主題歌を意識して書いておりました。もし見直す、思い返す機会があれば是非これを聞きながらでもいいかもしれません。


 後はウマ娘エピソードIF、2での六平、エアグルーヴのケイジに対する評価とかも見直せばケイジの行動もより理解できる・・・かもしれません・・・?


 「あけましておめでとうございます! 前田さん、トモゾウさん。ケイジ」

 

 

 「あけましておめでとうございます。いやはや、いい場所ですねえ」

 

 

 正月を過ぎてなんやかんや正月ボケが抜けて久しいころ。うちの牧場に松ちゃんとナイスミドルなおっさんがひとり来た。んー録画していたアニメ特番を見ていたが、ドバイに向けての調整だろうかねえ。

 

 

 けどもう一人は誰じゃろ。テキの補助か? それとも新顔厩務員? どっかで見た気がするんだよなあ。

 

 

 「おお松風君、そして・・・・いやはや。的矢さん、久しぶりですねえ」

 

 

 「ご無沙汰しております利褌さん。社欄の集まりで語らって以来ですねえ」

 

 

 ・・・・・・・・ヒットマン! 仕事人的矢かよ! まーたビッグネームがまー。どうしたってんだ?

 

 

 「本当に馬がアニメを見ているんだねえ。いやあ、ここまで人間臭く、のんびりしているのはあの子らを思い出すよ」

 

 

 「ヒン?」

 

 

 「ははは・・・相変わらずだなあケイジは。前田さん、少し僕と的矢さんをケイジに乗せてもらっていいですか? 走らせませんし、ほんの少しでいいので」

 

 

 「ケイジ、お前はどうする? 私は構わないですよ」

 

 

 『もちOK でも浮かねえなあ。どうしたよ松ちゃん』

 

 

 頭を振ってコクコクと頷くのを見て松ちゃんもおやっさんもこれをOKと感じてくれたらしく早速鞍を持ってきてくれたのでそれを装着。そこからは早速放牧地でのんびり歩くことになりましたとさ。

 

 

 

 

 

 「ほうほう・・・・・これはまあ・・・怪物だな。グラスワンダー、あの時のライスシャワーを思い出す・・・いやはや、なるほど皆が一度直に見ればわかるというのも納得だ」

 

 

 「ですよね。やっぱりケイジは規格外ですよ! だからこそ、少し悩んじゃいまして・・・」

 

 

 『あん? 何が悩んでいるんだあ? せっかく四冠ジョッキーになったってのに』

 

 

 一緒に放牧地で軽く、速足くらいでくるりと回ってから的矢さんがおりて俺の首をポンポンと撫でる。あーそこそこ。いいところなでてくれるねえ。

 

 

 「・・・ふむ。ケイジ君のこの前の敗北かい?」

 

 

 「ええ、ケイジは怪物。この時代の中にあっても頭一つ抜けていると思います。だからこそ同時に思うんですよ、俺でいいのかって。ケイジの実力があってこそとれたGⅠであるのは理解していますし、それに。言い方は悪いですが・・・かつての和倉ジョッキーのようにリュックだのなんだので・・・才能を活かせる騎手に譲るべきなのだろうか、と」

 

 

 『和倉龍三騎手ね。オペラオーと俺を重ねているファンというか、人がいるわけだ。ったく、気にすんねえ。松ちゃんのあの乗り方を見てそういえるんなら相当な阿呆。相馬眼ならぬ相騎手目がねえよ』

 

 

 まあー指導者というか、俺ら馬の頭脳部分を代わりに担っている騎手だけど騎乗姿勢や動きで馬に余計な負担をかける。仕掛けを鈍って脚を残したまま負ける。逆に早仕掛けをしすぎて馬の体力を潰して勝てるレースを潰す。

 

 

 そういうのは往々にあるもんだ。そりゃあ分かる。けどなー正直今まで松ちゃんにあんまり下手な動きしてんなあってのはねえぞ?

 

 

 「それは私の視点から言えば間違いだな。君こそが一番ケイジに乗れるだろうし、努力もしている。何より、ケイジを思えば君は絶対に屋根にしがみつくべきだろう」

 

 

 「・・・え?」

 

 

 「いやいや、知り合いから聞いた話だけどね。君は最近ずっとヨガ教室、ジムに行っては柔軟をひたすらにして、インナーマッスルを鍛えているんだろう?」

 

 

 え? マジ? そんなことしていたのか松ちゃん。あ、ほい乗るのね。あよいしょとしゃがんでから乗るのを確認して体を起こしてポコポコ放牧地をグルグル。

 

 

 「ええ。ケイジの場合は馬体がとにかく規格外。足を大きく開いてまたがる分どうしたって固い体では体が浮きすぎてコーナーで吹っ飛ばされるし、そもそもいらない負担を強いることになるでしょうし・・・あのコーナーではいつも爪が食い込みそうなくらいには握っています」

 

 

 「そしてインナーマッスルはそんなケイジ君の規格外の馬体とそれに見合ったパワーと技術を使ったコーナーの加速で振り落とされないための芯づくり。身体もより絞ったし、何より僕が驚くのは鞭の少なさだ。全く使わない、あるいは使っても数度だけ。合図一つすればそれでもう君たちは別の生きものみたいに飛んでくる。僕がいうよ。ここまで馬と意思疎通できるのはケイジ君の素質以外にも君の努力と才能あってこそだ。並の、いやある程度の才能があってもあの加速は振り落とされかねない程だよ」

 

 

 あーまあなー。きついコーナーの際に俺が仕掛けたら何度かテキのおやっさん体が宙を浮きそうになったことあったし。それでも落ちないどころかしっかり余計な負担を与えずに喰らいつけるってのは確かに、若さを差し引いても大したものだ。

 

 

 「あ、ありがとうございます・・・」

 

 

 「それに、馬は不思議でね。人と関わることで如何様にも別の顔を見せる。グラスワンダーも、ライスシャワーもそうだった・・・人の努力や気持ちを感じて自身も奮起する賢い生き物だ。ケイジ君は一度の負けくらいではへこたれる器じゃない。だけど君が落ち込んでいたらそれを感じて力を抑えるかもしれない。そうなってケイジ君の評価を落とすのは嫌だろう?」

 

 

 「当然です。ケイジは、こいつは必ずドバイでも、どこでも戦える器です」

 

 

 「なら君も腹をくくりなさい。一番ケイジ君に乗って、併せて努力できる。経験を持っている君以外の騎手が来たら折り合いがつかないか、ケイジ君のスペックに対応できずに潰す騎手がほとんどだろう。大竹騎手や福崎騎手くらいのレベルじゃないととてもではないがこの子に君より経験を積まずに乗りこなせる騎手はいないよ。

 

 

 ・・・・・大竹騎手にとってのスーパークリーク。松風騎手にとってのケイジ。そういわれるよう頑張っていきなさい。それが必ず最良のはずだから」 

 

 

 「・・・ありがとうございます! ケイジ、悪かったよ。ちょっと気落ちしすぎていた。これからもよろしくな。ドバイも、大舞台でもまた一緒に戦わせてくれ」

 

 

 『もっちロンよ! わはは。俺の相棒なら気にしなさんな。それにまあ、勝ち負けも味わって強くなれれば万々歳。松ちゃんは経験と賞金、名誉と今後のキャリアを。俺も賞金と、引退後の生活。それとマンガの予算のためにもどんどんやっていこーぜー』

 

 

 よしよし、流石的矢ジョッキーだ。松ちゃんも俺で初GⅠを取ったのを知っているから天才を覚醒させたスーパークリークを引き合いに出してくれたのはナイスだぜ。俺と一緒に走り回ってより速くなれるようになりゃあいいのよ。

 

 

 しかしまあ落ち込んでいた松ちゃんの慰めと俺に会うだけのために北海道まで遠路来たとは思えないしなあ。温泉旅行か? にしたっていいところは他にあるしな。なんじゃらほい。

 

 

 「あ、そういえば、的矢さんは何で今日はここまで? 僕はケイジの調子の確認とドバイへの予定。新年のあいさつなんですが」

 

 

 「うん。ここにいるジーナちゃんっていう幼駒。後ろ足が少し曲がっているようだけど足は太く、馬体も成長していっているようだからね。期待株だと思って是非私の所に入厩してもらえないかと打診しに来たんだ」

 

 

 「なるほど。的矢さんほどの方に預かってもらえるのならきっと喜んで受け入れてくれますよ」

 

 

 ああ、入厩のお誘いというかお願いね。ジーナも確かにやたら幸太郎と走り回っていたりしたせいで大分鍛えられているしなあ。俺らともここしばらく併せしているしでレベルはもーりもりアップ。不思議な飴レベルよん。

 

 

 その後すんなりと入厩は許可。でも今ではなく7月くらいにしようとなった。宝塚記念あるし、少なくても上半期の忙しい時期を抜けてからというのと、厩舎の方も準備いるだろうし人手もいるでしょうから焦らずにって感じだ。

 

 

 ・・・ナギコもだったが、温泉の味を幼いころから知っているジーナが大丈夫なのか割と心配だわ。ここ最近よく来ているお客さんの馬たちも出たくないよーってなって、最後はここは俺の家だ! 離せこら! ってなる奴らもちらほらいたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ウェーイ! ナギコの勝ちっ♪ ダートじゃあ負けないよ~』

 

 

 『あ、ちょっ! もう! 砂浜ではいつも通りに蹴れませんわ! もう一度、もう一度勝負しなさいナギコ!』

 

 

 『かしこまりー☆ ばってばてなジェンティルっちをひねっちゃうよ。ああ、それとねーこういう柔らかい場所で走るには脚の使い方を変えないと駄目だよ? 蹴り方を変えるの。はじめの一歩でもだけど、砂の蹴り方にはコツがあって・・・』

 

 

 『青春してんねえ。ジーナもお疲れ。ほい』

 

 

 『ありがとうございますケイジお兄様・・・んふふ・・・はふ・・はひ』

 

 

 今日も今日とてダート、ではなく砂浜で走り込み。雪の中を走ったり、障害物競走のミニサイズ版を作ってそれを置いたコースを走ったりの日々だ。

 

 

 というのもだが、俺やナギコ、ジェンティルちゃんはそれぞれに3月前くらいにはアメリカとドバイに行く。日本の芝やダートとはまるで違うし、芝質が違う故に苦労する可能性が高いのがジェンティルちゃん。牝馬なのにアメリカ最高峰のダートレースを目指すナギコは生半可な闘争心や精神じゃあひるんでおしまい。俺もなんやかんや皐月賞以外は戦ったレースの芝の状態が良ゆえに柔らかな地面での戦いにあまり慣れていない。

 

 

 ナギコはクラシック戦線を越え、古馬戦線も経験した俺やジェンティルちゃんと併せをすることでプレッシャーに耐えて戦える。焦らないための訓練。ジェンティルちゃんは芝質が違う故に来る足運びの変化や馴染ませるための練習。俺は慣れているけど経験を積んでおくに越したことはないということで参加。ついでにジーナの併せを付き合って鍛えております。

 

 

 幸太郎は今日はなんでも猟の方に行かないといけなくて調教は付き合えないそうな。

 

 

 『ふぅ・・・しかし、このコーナリング? はナギコお姉さまも言っていましたが、どのように役立つのです?』

 

 

 『んー走る場所でなあ。曲がる場所があるんだけど、これを覚えていればあんまり疲れないままに速く走れるよ。あれば便利だぞお』

 

 

 『そうですの・・・なら、もっとお兄様に教えてもらいたいです。しっかり、じっくり・・・』

 

 

 『はいはい。でもまずは休もうな?』

 

 

 『ああぁ!! また負けましたわ!!?』

 

 

 『連勝快調これ最強~♪ 今度はケイジとやるしーケイジー! 休んだら併せしよ?』

 

 

 『ほいさーはい、水とリンゴ』

 

 

 しっとりし始めたジーナを休ませつつ、また併せで勝ってきたナギコにリンゴを渡し、水飲み場を開ける。ナギコがダート向けとはいえ、ほんとこいつの成長はやばい。高速馬場のアメリカンダートに合わせての芝でもタイムが現役クラシックメンバーに近いし、柔らかい砂、泥んこ馬場ではもはや敵なしのレベル。

 

 

 砂浜、柔らかすぎる足場が不慣れとはいえジェンティルちゃんを子ども扱いするし、慣れている俺でも5回やって3回勝てればいい方。全力でもやや勝ち越しだし、ほんとダートではこいつ桁が違うし、平野調教師があれ程に入れ込むのも納得だわ。

 

 

 「よしよし。お前たちも休んでいい感じだぞ。さてと、ケイジの方は一足先にドバイに飛んで、そこで先にジェベルハッタを戦い、その少し後にジェンティルちゃんは調教の疲れを抜いてから同じあちらの厩舎に入ってから本番に挑むようだな」

 

 

 『いわゆるぶっつけ本番ってやつか。後は同時にレースが近くなると牝馬はカリカリしやすくなるのが段違いと聞くが、それをできる限り減らすためかね?』

 

 

 ダイワスカーレットはテンション上げてカリカリして体重を調整できたり、ウオッカは自分で食事量を制限してベストに近づけたりとかしたそうだしねえ。俺? いつも思い切り動いて、飯食ってぐっすり寝て毎日元気もりもり。筋肉もまたつくかもだが、密度を高めたいなあ。

 

 

 まあ、要は長くドバイ、慣れない環境で放牧もないからレースかもって思う時間を長くしてカリカリイライラ緊張して遠征、飛行機に不慣れだった場合のストレスも含めて体調壊すのを嫌がったのかしらねえ。

 

 

 「ケイジは基本車の中でも寝るほどにお前はどっしりと肝が据わっているからな。しっかりとドバイで頑張って、ジェンティルちゃんを迎えてエスコートしてあげるんだぞ?」

 

 

 「ムフン」

 

 

 『分かったよ。まあ、あれな話だけどドバイの厩舎で俺の匂いがついてくれれば大丈夫と思ってストレスを減らせるかもだしなあ』

 

 

 俺の場合は基本車の旅だろうが気にしないし、飛行機なら音楽聞かせてくれたりしてくれれば大丈夫よ。だからラジカセとアニメ、漫画は載せてくれよ。

 

 

 「お、流石だぞケイジ。おやつも多めに用意しておくからな」

 

 

 『先生! リンゴはおやつに入りますか!』

 

 

 「テンション高いなあ。リンゴが食べたいのか? 海外、ドバイの果物とかも食べさせてみるか。あっちの方々がレースの検査に引っかからない果物用意してくれるようだし」

 

 

 『先生! おやつは300円まで・・・すくねえわ!』

 

 

 『おやつー? それよりケイジ走るよー』

 

 

 まあいいわ。とりあえずドバイの前にしっかり鍛えますかあ。目指せドバイ。目指せ国際GⅠゲットってな。




 調教で障害物競走をするってやはりメジロパーマーの成長とかを見て始めた人が多いのだろうか気になる今日この頃。


 あらためてカイフタラの血をひく牝馬とオジュウチョウサンの子どもとかすごいステイヤーになりそうだなあと最近思ってしまいます。


 ケイジ 相変わらず。ちょいと的矢騎手の乗り方やマークする際の話を聞いて追い込みのコツを少し覚えた。リンゴうめえ。


 松風騎手 ケイジに初敗北を与えたことに柔軟性を高めて騎乗スタイルの改良とケイジの邪魔をしないように努力していた。的矢さんの話や技術でいろいろ学べた。ドバイの遠征にしばらくつきっきりになるので翻訳どうしようと困っていたりわたわたしていた。


 的矢調教師 ジーナの成長の話を聞いて実は前もって打診。松風騎手の応援をしながら牧場に今回出向いて無事にジーナの入厩予約ゲット。ケイジを見て性格は少しスペシャルウィークみたいな馬だなあと少し思ったそうな。


 ナギコ 中央の調教と牧場での砂浜、山、障害物競走もどきでの調教での下地が完全に噛み合って覚醒。才能爆発、成長中。ジェンティルドンナをからかいつつも競走馬の歴史や面白エピソードを聞かせたりしてジェンティルドンナが寝る前の絵本の読み聞かせみたいになっている。


 ジーナ ケイジとナギコとの日々にご満悦。コーナリングを覚えているのとやたら重馬場に強くなり始めつつある。お風呂大好きなので真面目に厩務員が手を焼きそう。ちなみに馬主は牧場長とある北海道の地元企業で自動車、農耕用重機の整備、レンタルをしている会社のウホッ! いい男 な若社長で権利を半分分けているとか。


 ジェンティルドンナ 完全に前田牧場になじんだ。多分遠征の際に離れるとなる、厩舎に戻るとなるとごねること確定。ケイジよりもじっくり時間をかけて重馬場、柔らか馬場への練習を積む様子。


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世界の大舞台へ ドバイDF(GⅠ)

~出発前~


 利褌「うーん。ミスキュービーは良い名前だと思ったけどなあ」


 ケイジ『淫獣扱いされそうだって。ミス・QBだしよお』
 (〇×クイズのようにいい名前なら〇の看板。だめなら×の看板を出していたりした)


 女将さん「まあまああなた。ミスにこだわらずに縁起のいい名前にしてもいいんじゃないかしら?」


 利褌「ふーむ。そうなると・・・日米の名馬、大牝系の血を何方も引いているから姫、巫女ということでヒメミコ」


 ケイジ「ヒンヒン『いい名前。もう一声』」


 女将さん「日米の名門お嬢様で日本育ち・・・なら、これはどうでしょう? もう一度羽ばたいてほしいということで」
 (鳥の図鑑を見せる)


 利褌「キジ・・・よし。そうだな。ジーナの名前はキジノヒメミコにしよう」


 ケイジ『いい名前じゃん。俺もいいと思うし、日本の国鳥で姫様がどれほど頑張るか。的矢さん頼むぜー』


 「いやはや、まさかここまで愛されているとはなあ。ケイジ君もう世界の大スターじゃないかあ?」

 

 

 『かねえ? 久保さんもよかったじゃねえの』

 

 

 どうも、無事にドバイ、王族の方々、そしてドバイミーティングのレース主催者らの運営する厩舎に無事これたケイジだよん。ゲスト用の厩舎だけどさーうん。豪華さが何もかも違う。ドーピング対策用の検査道具や、馬の体調を気遣うための空調。必要なら外部を遮断して馬房に冷房や暖房を使って温度調整もできるとかこれマジ?

 

 

 いやはや、流石王族、世界でも指折りの賞金額を持ち文字通り世界最強決定戦の一つのレースを同じ日に開催する国は違うなあ。

 

 

 「まさか一緒にあんなことをして、しかも本人が超ノリノリでSNSに動画をあげるもんだからなあ。俺もサイン色紙を渡すことになったし・・・真由美ちゃんも呼ぶべきだったかなあ」

 

 

 『だなあ。お礼にとあちらからもサイン貰えたし、俺らのサインコレクション増えたし』

 

 

 俺らが入厩して、あれこれの準備を済ませていたら王族の方が来て、あれこれ会話をテキのおやっさん、松ちゃんらと開始。俺も顔を出してそばで聞いているとグッドルッキングホースという単語が聞こえたのですかさず変顔。それで噴出した王族のおっちゃんのリアクションを見て今度は笑い返してからのハリセンでペチンと緩くツッコミを入れた。

 

 

 そんな様子を動画で取っていたおちゃめな秘書さんはあの名作ドラマ「お〇ん」のファンで、その時代あたりの日本のテレビ番組を調べていくことにはまり、アニメ作品とドリフのファンだったらしく、これが志村さんのサイン入り特製ハリセンだとわかればぜひ欲しいと言われてのじゃあと志村さんにメール打ってからの許可を得ての交換成立。

 

 

 後日すんごいのをくれるとかなんとか言って。互いにハグ。俺はほおずりして別れるという一連の流れというか騒ぎがあった。これを聞いた利褌のおやっさんとジェンティルちゃんらの陣営どんな顔するんだろな。王族の皆さんのフランクさとフットワークの軽さに。

 

 

 「ま、とりあえず不安だった飛行機遠征によるストレスも無さそうだし、今日は軽くレース場の芝を歩いてから休もうか。本格的な最終仕上げは明日以降。ケイジもゆったりしておくんだぞ。読書用のクラシック音楽メドレーかけておくから」

 

 

 『へーい。久保さんも買い物とか出費気を付けてなー』

 

 

 「ケイジも今日は流石に脱走するんじゃないぞ。我慢したら面白いお土産あげるから」

 

 

 流石にしねえよ。正直飛行機酔いするからってアニメや漫画読めていなかったからそれを読み返すぜ。あふぁー・・・あと、ここ居心地いいから眠くなるわぁー・・・馬房のカギも良し、奥の方でゆったりするかあ。

 

 

 

 

 ~2013年 3月9日~

 

 

 メイダン競馬場 ジェベルハッタ(GⅠ)

 

 

 芝1800メートル

 

 

 『(現場ドバイのアナウンサーさんの実況です)ケイジの大逃げで先頭から最後尾までおよそ30馬身! こんなハイペースなレースは見たことがないぞ! 終始好き放題に引きずり回すケイジの滅茶苦茶なレース運びに名の知れた名馬たちも足が重い!』

 

 

 『ミルキーホワイティー、アストラゼネック追いかけるが最早馬身差が圧倒的! これがケイジか! ジャパニーズサムライホースか! 全く鞭を使わない! それでも誰も追いつけない!! 影すらも踏ませやしないのか!?』

 

 

 『鹿毛の怪物はここでも魅せてくれた! ケイジそのままゴール!! 二着との馬身差なんと13馬身! タイムはなんと1分43秒2!! なんということだ! 1991年から更新されていない1800メートルのワールドレコードをコンマ2秒更新! これは強いぞケイジ! ドバイミーティングにもぜひ出走してくれ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ってことがあってなあ。久保さんも金の自販機に興奮ついでに今まで俺が獲得した賞金の一部からでた厩務員らの担当馬の賞金ボーナスでなんか買い物したんだってさー』

 

 

 『色々ありますのねえ・・・さすがは世界でも指折りの大都市、富豪が集う場所ですわ。お父様もここで戦ってみたかったでしょうねえ』

 

 

 ドバイのレースもまた格式高い、凄いレースが多いしねえ。日本近代競馬の結晶がここでも・・・・・・あれ? でもディープインパクトの血って確か日本っつーか両親とも海外の・・・・やめよう。まあ、引退が早くなければここにも来たかもだけど、確か蹄が薄いと聞いたし、消耗をして病気になるよりは元気に引退してゆったりしたほうがよかったかもね。実際種牡馬としても凄いし、普段はのんびり優しい性格だそうだし。

 

 

 『んまーその戦えなかった分はジェンティルちゃんが頑張ればいいんだよ。日本最強の天馬はここでも戦える。勝利できる器なんだって見せつけちゃえばいい』

 

 

 『ですわね。それにしても、ここはいい場所ですわねえ。そちらの新しい馬房よりもずっとすごいですわ』

 

 

 『そりゃあ一国の、大レースを開催するすげえ人らの所有する馬房だ。俺らみたいな小さな牧場と比べちゃあ困る。お風呂まであるとはなあ』

 

 

 ああ、そうそう。俺が出たレース、ジェベルハッタの勝利から数日後にジェンティルちゃんも無事にここへ入厩。その後やっぱりドバイの王族が来てくだすってジャパニーズダブル三冠馬と写真を撮ったりで愉快に過ごしてから差し入れにリンゴとにんじんをバケツ一杯くれた。有難い有難い。

 

 

 ジェンティルちゃんも飛行機遠征で少し疲れているようだし、ここで疲れを抜いてほしいわねん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よし・・・いよいよだなケイジ。この日が来たぞ」

 

 

 「ヒヒン」

 

 

 いよいよやってきたはドバイミーティング。国際招待の大レースが一日でなんと9つも行われる。世界中の芝もダートも問わずに名馬たちがやってきて一日中その戦いを見れるという馬好き、釣りキチならぬ馬キチにはたまらねえぜな一日。

 

 

 そしてホースマンたちからすれば間違いなく世界最高峰の騎手、馬の名誉と規格外の賞金を手にできるチャンスをめぐって戦う一日だ。

 

 

 ここで戦って勝利をした馬たちは、騎手たちは後にも大きな結果を残していることからも縁起がいい。俺にとっても世界へ二回目の顔見せってな。待ってたぜ!

 

 

 『松ちゃんも調子は良さそうだなあ? 俺も毎日の検査で不調は無し、ドーピングも食材には毎日皆がすげえ気遣ってくれて問題なし。行こうぜ』

 

 

 舌をぺろぺろしながらコクコク頷いて微笑む。一緒に馬鹿しに行こうや。

 

 

 『・・・・・・そうよ、私はジェンティルドンナ・・・天馬の娘、凱旋門賞馬も三冠馬も倒したの・・・行ける。行けるのよ・・・ああ! 邪魔しないでテキ! 今集中しているの!!』

 

 

 「うーん・・・ジェンティルちゃんカリカリしているね。気負い過ぎていないかな?」

 

 

 『だなあ。ここしばらく馬の面白エピソードや歴史を寝る前の読み聞かせみたいにして緊張ほぐしていたけど、まあ当日はこうなるよなあ』

 

 

 ただ、ジェンティルちゃんはかなり緊張している。まあ、厩舎の皆さんも世界一、とかすごい賞金とか、期待を感じていたりレースが近いのを感じてイライラしていたもんなあ。こればかりはしょうがないが、うーん。もったいないし。

 

 

 『松ちゃんちょいたんま。降りて降りて』

 

 

 「おっ、どうしたケイジ、ふちょ・・・ではないな。降りろ? そんでここに立て? 分かったから引っ張らないでくれ」

 

 

 少し今日の調子を確かめるために乗っていた松ちゃんを下ろしてジェンティルちゃんのいる方に立たせる。

 

 

 ほいほい耳をすごい勢いで上下にピコピコピコ高速で動かしまーす。

 

 

 『おーいジェンティルちゃーん』

 

 

 『なんですのよ・・・』

 

 

 『あ、カトちゃんっペっ』

 

 

 『ぶふぅっ!? ぶふ・・・、な、何をしていますのよケイジ!?』

 

 

 「ぷふ。相変わらずいい顔をするよお前は」

 

 

 耳を動かす勢いを増しながら目を真ん中に寄せながら舌を鼻先に上にあげてぺちょんと着けながらの顔芸を見せればジェンティルちゃんも松ちゃんも周りも吹き出してくれた。よっしゃよっしゃ。受けたわ。

 

 

 『まあー落ち着きなさってジェンティルちゃん。ジェンティルちゃんは来年もここに行ける強さを持っているし、お前さんほど強い馬はぶっちゃけ出るレースの牡馬たちにも引けを取らん』

 

 

 『わかっていますわよそんなの・・・でも、でもどうしても』

 

 

 『気持ちは分かるぜ。だからこそリラックスして頑張ろうや。この一戦で終わりじゃねえ。ジェンティルちゃんの道はまだ続くんだ。その中でいかに美しく生き飾ることが肝要。この浮世での生こそ一世一代の大博打! 元気ならあとでミスは取り返せるんだ。俺も手伝うし、な。笑っていこうや』

 

 

 なあにジェンティルちゃんのネームバリューはこの戦いの結果だけで落ちるもんじゃあねえ。そもそも牝馬でありながら牡馬も騙馬も関係なくちぎる時点で規格外。そしてJCからのこのドバイに行けるほどに自身を持たせる馬だってのはみんなが知っていらあ。

 

 

 だからこそ怒る顔もかわいいが、笑顔と気合の入った顔の方がいいぜー?

 

 

 『・・・ふん。なら、しっかり私の前のレースで勝ちなさい。でないと承知しないわよ?』

 

 

 『おーおー怖い怖い。そんならいざ出陣しましょうかねえ。行こうぜ松ちゃん。世界を取りに行こうか』

 

 

 「お、よしよし。行こう。ドバイでの、ドバイまで来てくれたファンの皆さん。そしてライバルたちに見せつけに行こう。お前の強さをな」

 

 

 話すこと話したんで松ちゃんの袖を引っ張ってそのまま移動。ジェンティルちゃん陣営もジェンティルちゃんがカリカリしなくなったので安心して馬具や諸々の用意をしていく。

 

 

 「ありがとうケイジ君。後でリンゴとバナナ奢らせてくれ」

 

 

 『それは気持ちだけ受け取ろう。リンゴとバナナは貰ったうえでそちらの貴婦人殿に労いと勝利祝いに渡すんで』

 

 

 「・・・松風君。ケイジはなんと?」

 

 

 「うーん・・・多分。それはジェンティルちゃんにあげるよ。じゃないですかね? きっとケイジは確信していますよ。ジェンティルドンナの勝利を」

 

 

 あたぼうよ。間違いなく世界最強牝馬の一角に立てるぜあの子は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『皆様、いよいよこのドバイミーティングも大詰めに差し掛かってきました! しかし興奮は冷めやらぬ! それもそのはずだ! 今年のDFとシーマクラシックはなんと日本から来た同世代のトリプルクラウン、ティアラを手にした三冠馬ホース、ジャパニーズサムライボーイとナデシコガールが参戦だ!』

 

 

 さあ、始まったぜドバイDF、1800メートルというマイルと中距離の間くらいの距離のこのレース。その分マイル、中距離何方でも問題なく戦える強さ、要は器用さとこの珍しい距離でいかにして馬の力を出し切れるかが求められるこのレース。タイキシャトルとか、トウカイテイオーとか、ダイタクヘリオスあたりなら結構相性いいんじゃないかなここ。

 

 

 『その先陣を切り抜き、ナデシコガール、ジェンティルドンナにいいバトンを渡せるかサムライボーイケイジが先鋒を務める。馬体重は654キロでプラス1キロ。何というでかさ! これはジャイアントホース。そしてぐっと・・・ぶふぅ!!? な、ナイスるっきんぐホースではないでしょうか・・・くく』

 

 

 「ケイジー!! またお前はわちゃわちゃして変顔を・・・二本足で立つんじゃない!!」

 

 

 『いいじゃねえの。花舞台、大舞台! しかもジェベルハッタとは違って一日中世界の猛者たちでの祭りだぜ!! 楽しんで、楽しませてなんぼよぉ! というわけでケイジでございまーす(サザ〇さん風)』

 

 

 今回は利褌のおやっさんとテキは馬主席っつーか来賓席に。そんでパドックでの手綱を握るのは久保さんだ。俺はおれでみんなに改めてのお披露目ってことで顔芸をしたりグイングイン頭を動かしたりでお客さんにアピール。

 

 

 ついでに一日中レースを見て少し疲れているかもなのでちょいと刺激をね?

 

 

 『さ、さあ日本の戦士たちは侮れない。ナカヤマフェスタに続いてオルフェーヴルの昨年の凱旋門賞2位。そしてこの次のレースであるドバイシーマクラシックではステイゴールドが時の最強馬ファンタスティックキングを下すなどここ最近の日本の馬は侮れない。その中でもいろいろな意味ででかいこの一頭。今日も大逃げを見せてくれるのか。いよいよ本場馬入場に入ります』

 

 

 「よ、ようやく落ち着いたか・・・ふ、ふぅ・・・あ、松風君。先ほどぶり。今日はまた改めて頼むよ」

 

 

 「ええ、ケイジも海外のお客さんにサービスは終えたようですし落ち着いています。勝ってきますよ」

 

 

 「頼もしいねえ。よろしくお願いします」

 

 

 松ちゃんを無事に乗せていよいよ本番前。いやあー楽しみだぜ。斤量ちょい載せられたけど、むしろこれくらいがいい重さってね。

 

 

 ゆったり移動してゲートへ移動移動。さあー大逃げで、2000以下でマイルまでならちょうどスタミナも全部ぶち込むにはちょうどいいんだよなあ。1800の逃げ方も経験したし、頑張るぞい。

 

 

 今回は俺は1番人気。1番1枠とは嬉しいね。今回は世界でも見られているというのを感じられるんでこの人気はにっこり。

 

 

 『さあ全頭ゲート入りしまして・・・・スタートしました! ケイジ速い! 早速ハナを奪って先頭! 大逃げを以って戦いに行くようです!』

 

 

 そりゃあ俺なら大逃げよ。追い込みもできるが、それよりは今日はこの気分なんでね。馬群に飲まれるのもごめんだしガンガン引っ掻き回すからよぉ~変に息入れないでもずっとスパートを最後まで掛けられる分お前さんらついてこなきゃ俺の一人旅は止められねえ!

 

 

 『おっと早くもケイジ一人コーナーに入る! そこでもぐんぐん伸びて更に差を伸ばす! ハーバーフリッチュ、モンテスキュー追いかけるも食らいつけずに引き離される! コーナーでの加速はモノが違うぞケイジ! ぐるりと回って一人旅! 直線で今度はダブルクロスが伸びてくるが先団の馬群のハナを取るに過ぎない。ハーバーフリッチュ、モンテスキューと三頭先頭を取りつつケイジをにらむような形になるようです』

 

 

 ほんほん。速度で勝てないなら後方から一度脚を溜めて後半のロングスパートに仕掛けるか、直線での末脚の爆発を使う感じにシフトチェンジしたかな? まあ、欧州あたりの競馬は基本スローペースで逃げはラビット。でいいんだっけか。要はチーム戦みたいに同じ馬主、グループの馬で本命の馬を活かすためにほかの馬のペースを壊しつつ味方の力の温存を助ける。いわば役だったりの側面が強い・・・らしい。

 

 

 そういう意味では俺は大逃げで勝っているけど海外のレースはまだ1度のみ。しかもGⅠとはいえ格上げが最近も最近のレースで賞金もここには及ばないのもあってここでは通用しないだろうと思っているのかもなあ。まあ、賞金についてはここがすごすぎるのと、実際に海外のレース運びに翻弄されたのはメジロマックイーンとかそうだったもんね。しかも日本国内のレースで。

 

 

 『さあレースも後半! 1000メートルを通過、タイムは・・・57秒1!!? おかしい! あまりにおかしいぞこのタイム! さらにケイジ伸びる! 後方も仕掛けていくがその馬身は埋まらない!』

 

 

 芝質とかよォ~3月のはじめと後半でのレースでの疲労とかヨォ~まあそれもあっての戦術だろうがなあ。それが通じたのは良くて『最初』のジェベルハッタのレースくらいだ。疲労抜きもばっちりで、ドバイの芝もレース経験も積んだ俺にそれは悪手だ!! ヒャッハー!! このコーナリングで俺を抜こうと加速か、こっちも加速できるんだ。そのまま最後までやらせてもらうぞ!

 

 

 『コーナリングの妙技がさえわたる! するすると加速をしながら最終直線へ突入! サムライの末脚が、キレる刃がターフを切り裂く! 黄金の暴君の後に続く三冠馬はブレーキの壊れた暴走機関車か! 止まらない鈍らない! 馬群を抜けたサッシャ、ハーバーフリッチュ、後方の馬たちも仕掛けるが足が届かない! あれだけの大逃げをしても尚回転が違う!! もはや勝負は決まった! この差は覆らない!』

 

 

 やるのなら俺の大逃げに付き合って叩き合って最後の一番に賭けるほかなかったとは思う。日本のカチカチ馬場とはいえあのスタミナお化けども相手に大逃げしたりロングスパートしかけて競り合ってきたんだ。この手合いの勝負の経験値は世界にだって負けねえ!!

 

 

 もらうぞ世界! もらうぞドバイミーティングの一冠! ほかの皆も勝利が欲しいだろうが、俺だってこの勝利を、期待には応えていきたいんでな!

 

 

 『ケイジ終始一人旅のままゴール! 馬身差見事に10馬身をつけての大勝利! 見事自身のペースをもっての大逃げで圧倒! これは面白い! こんな大逃走劇生で見れるもんじゃない!』

 

 

 ぶふぅー・・勝ったかあ。あーちょい疲れた。芝が少し柔らかい分蹴り飛ばす力が必要だったしなあ。でも、これで無事にジェンティルちゃんらにもいい感じでバトン渡せたっしょ。

 

 

 『タイムは・・・これはすごい! 1分43秒1! ジェベルハッタで見せたレコードを更に自身でコンマ1秒更新したぁ! ジャパニーズサムライボーイが今年のドバイを彩り、会場を沸かせました! これはもう本物だ! 大逃げのカブキモノ、ケイジ! その戦法も足も世界に認めさせた!!』

 

 

 おうよ! 大逃げの有名馬多数! ユニークな実力派多数の日本。その代表としてやってやったぜ!!

 

 

 「ははは・・・海外でも大逃げで二連勝。凄いなあ。おめでとうケイジ。多分同期では君が一番乗りだよ。10億円ホースになったのは」

 

 

 ああ、そっか。このレース確か6億円だっけ賞金。はははは、なら既に13億くらいは優に稼いだなあ。やったぜ、海外くんだりまで遠征ご苦労様な皆にしっかりボーナス渡せたなあ。

 

 

 じゃ、おなじみのあれをするためにほらいくどー

 

 

 『サムライボーイの次もやってくるのは凱旋門賞馬を下したナデシコガールのお披露目だ! 観客の皆も目を見開いてまっていよう! さあ、そしてケイジが来た。スタンド中央に悠然と歩く。やってくれるかケイジダンス!』

 

 

 おうさやらないとなあ? ウイニングランの代わりにこれをしちゃだめってルールはないし、さあドバイで二度目の勝利の咆哮イクゾー!

 

 

 右へぴょーん

 

 

 「「「オウ!!」」」

 

 

 左へぴょーん

 

 

 「「「オウッ!!!」」」

 

 

 首を下げてのー? 今日は大きめに立ち上がっております!

 

 

 「ビヒィイィイィイイイイイイインッッッ!!!『イヨッシャァアアアアァアアアア!!!!』」

 

 

 「「「FoooOOOOOOO!!!! ケイジ!! ケイジ!! ケイジ!!」」」

 

 

 またまたやらせていただきましたァンッ!! どうじゃこれが日本の馬、日本の騎手じゃい!

 

 

 『こんな勝利パフォーマンスをする馬見たことない! ケイジ、ドバイの観客の心を鷲掴み! ジャパニーズスーパースターホースがまたもや生まれたぞ! 悠然と去っていくその姿に誰もが虜だ! ナデシコガールジェンティルドンナもこれに続けるか! さあいよいよドバイシーマクラシックが始まるぞ!!』

 

 

 はははは。おうよ! まだまだ終わらねえぜ。後2レース。その一つでまた日本の怪物を見てくれよなー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『さあジェンティルドンナが仕掛けたぞ! 先頭4角を取って引き離しにかかる!』

 

 

 『負けませんわ! ケイジのくれたバトン! あの勝利に負けるような戦いをするのはわたくしのプライドが、意地が許さない!!』

 

 

 『これが牝馬の末脚か! いいや! これが3歳にして世界最強格を倒した女王の実力だ! 速い速い!! まるで周りの時間が歪んだがごとくの足さばきを見せて引き離す! 伸びるところをとどまらない! 貴婦人の道に壁は無し! まるでレッドカーペットを歩くスターのように華やかに、軽やかにターフを進む!』

 

 

 『そうよ! わたくしこそがジェンティルドンナ! ひとたびレースに出れば他は1着ではなく2着を狙うと言わせるほどの強さを見せた天馬ディープお父様の娘! 世界の戦いだろうと、このレースでは絶対に負けるわけにはいきませんのよ!』

 

 

 『ジェンティルドンナ自身以外のすべての牡馬も牝馬も従えての圧勝ゴールイン! やりました! 今年のドバイミーティングでなんと日本からやってきたサムライボーイとナデシコガールの二頭がそれぞれ一冠を手にする大偉業! ケイジはワールドレコードを、ジェンティルドンナは日本初! 牝馬によるドバイシーマクラシック優勝の栄冠という大偉業までもを手にした! 世界が驚き、日本が誇る優駿コンビをこの目で見れたことに私は感動が止まりません!!』

 

 

 『やりましたわ・・・ふふふ。そうよ! わたくしこそ最強! ドバイのこの舞台でも負けることはないのよ!! ・・・ありがとう。ケイジ』

 

 

 

 

 おおー勝ったなあジェンティルちゃん。こいつは良い土産話が出来そうだし、わはは。しばらくは検疫ついでに身体を休めて、次の戦いの予定を聞きましょうかねー。うまくいけばナギコのデビュー戦を電波放送で見れるかもだし。確か6月末くらいだったような。

 

 

 日本の牝馬では初めてのドバイシーマクラシックの優勝おめでとう。いやはや、歴史的瞬間を見れたなあ。




 何気に史上初尽くしのこの世代。その中でも筆頭格は間違いなくジェンティルドンナ。というかほんとこの馬凄すぎる。


 ケイジ ドバイで王族にハリセンツッコミ入れるわ変顔で笑い取るわで脱走以外は基本変わらず好き放題していた。優勝インタビューの際はハリセンを持ってきてくれた王族の方が祝いの言葉をくれる際にぼけたのでツッコミを入れたりで一部なんやこいつ扱いに。海外のファン獲得。


 久保さん あるプレゼントを用意するために観光がてら買い物していた。ケイジの勝利と更なるワールドレコード獲得に感動。そして貰える手当の額に思わす目ん玉飛び出そうになった。ケイジのスタッフということで王族からサインをねだられ、こちらもプレゼントをもらうことに。


 ジェンティルドンナ 実は史実より1年早くドバイシーマクラシック優勝。みんなからちやほやされたり労われ、最後にケイジからリンゴとバナナをお疲れさんと渡されウキウキ。同じく10億円ホースに名乗りを上げる。


 ドバイの王族の方 ケイジの圧勝劇にもうたまらない。秘書はハリセン貰ったり自分はジェベルハッタ、ドバイDF勝利記念のレースで使用していた蹄鉄に利褌直々に文字を彫り込んだものを貰い感激。後日プレゼントをあげるのと、できれば種牡馬になったケイジの子どもくれと頼んだ。


 松風騎手 2013年スタート早々に国際GⅠレース2連勝騎手に。嬉しいのと同時にケイジの起こした行動に相変わらずだと呆れつつもらしいなとほほ笑み、帰りの飛行機は一緒に貨物スペースでアニメを見ていたりした。


 藤井親子 実はこっそり観客席で応援。ついでに記事にしました。この後ケイジとジェンティルドンナどっちが強いかで語り明かした。


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まーた休みだよぉ

 毎回感想をくれる皆様ありがとうございます。真面目な話日々の活力になっています。誤字報告や高評価も本当にありがたいです。まさかこの作品がランキングで見る日が来るとは思いませなんだ。


 改めて思う。事あるたびにふざけて山ちゃんボイスを出す背丈210センチのウマ娘を欲しがる人いるのかなあって。それとルドルフ会長とゴールドシチーの新衣装。ケイジはノリノリで着こなしていそう。


 この世界だと樫本理事長代理&チームファーストはケイジや強化&やる気増したゴルシやジャスタウェイ、ジェンティルドンナやヴィルシーナ、オルフェーヴルにホッコータルマエ、そしてまだ実力はみせていないけどナギコにキジノヒメミコ相手にもあの賭けレースをすることになるんだなあ。



 「わふぅー・・・・くふぅ・・・」

 

 

 「暇そうだなあ。ケイジ」

 

 

 『練習も無く、のんびり検疫というか、まあ風土病持ち込んでいないかの検査でやることねえしなー・・・アニメもみたし、天皇賞(春)はゴルシのやつ後半萎えたのか3位どまりだったしで、見ることは見たわって感じ・・・まあ、この余暇も、暇もまたいいもんよ』

 

 

 ドバイでの戦いも無事終わり。ついでに幼駒セリをちょい見ていた利褌のおやっさんも特にティンと来たのも無かったのでうちに新顔が来ることもなく帰国。

 

 

 しばらく新聞では『2012年クラシック世代古馬になっても大暴れ! ケイジ&ジェンティルドンナ ドバイミーティングをW優勝! 天皇賞(春)をフェノーメノリベンジ成功!』 『日本の女王は世界に駆け抜けた! ケイジ早くも祖父の皇帝に並ぶ大偉業!!』『日本史上初牝馬でのドバイシーマクラシック優勝!!』と、まあこんな感じでスポーツ新聞は疎か普通の新聞ですらしばらくは俺らのニュースが一面を飾っていたとかなんとか。

 

 

 おかげで記者がうるせーのなんの。おやっさんの知り合いの超大手ゼネコン会社の会長ドカちゃんとスーザン伝手で用意した警備員らがいなかったら帰国後すぐにどんだけ質問攻めにあっていたか。

 

 

 「まあ、ケイジの次の出走は夏になるかどうかの季節だしな。しばらくはもうちっとこの若葉を見ながら過ごそうじゃないか」

 

 

 『だなあー・・・今のんびりと。それにまさかのプレゼントが手に入ったし』

 

 

 まあ、なんやかんや俺らドバイでの戦いからの一月後だった天皇賞(春)は間に合わなかったが、それは来年に期待として、良いものを貰った。まずドバイの王族の方からなんと純金と宝石ででできた蹄鉄と、ペルシャ絨毯などを作る専属の職人に用意させた専用の優勝レイ。しかもまあ「2013年ドバイDF優勝 ケイジ」と彫り込まれた一品。秘書さんからもかなりいいクリスタルで俺を再現した小物を送ってくれた。

 

 

 そしてついこの間来た久保さんが俺、女将さん、利褌のおやっさん。トモゾウらへのプレゼントとしてこれまた純金。しかも俺の顔が彫られた金貨を渡してくれた。なんでもドバイに一月滞在する際に純金の自販機でコツコツ買い込み、日本で知り合いの彫金師らに頼んで作ったものを専用のケースに丁寧に収められているのをプレゼント。

 

 

 「ケイジ君のおかげで俺も夢やいろんなものを貰いましたし、その少しでも返せたらというのと。シンザン、ルドルフ系の一族での国際GⅠ優勝記念っす。これ1枚でも金の価値だけで20万にはなるくらいなんでいざという時は質でもどうぞ」って言っていたよ。単価ウン十万の金貨とか東京フレンド〇ークかよって思ったわ。これあの人らに渡せばパジェロできるの? まあしないけど。大事に俺の分もおやっさんらの牧場の金庫にしまってもらった。

 

 

 自分でいうのもあれだけど・・・真面目にあの優勝レイも名のある職人のものだったし、宝石編みこんでいる話だったし、マジでルパン一味現実にいたら目をつけられそうなものが増えたなあウチの牧場。いまだに中小で、精々競走馬三頭所有。現役の俺以外では内デビューは今年。もう一頭は来年以降でせいぜいたまに幼駒をセリに出したり、馬や人の湯治をする馬温泉を最近しているくらいだってのに。

 

 

 「ああ、そうだそうだ。ドバイの皆さんに頼まれてね、ケイジとゴルシの変顔写真集。ケイジとケイジの同期の皆のぬいぐるみをそれぞれ3個くらい予備を含めて送ることにしたよ。いやあーあのハリセンでのツッコミが本当にうれしかったようで」

 

 

 『あれのお返しがぬいぐるみと写真集でいいのか王族。いやまああれにふさわしいお返しってのも思い浮かばんが。来年もまた来てくれって感じじゃないのね』

 

 

 「ぬいぐるみも今は品薄だし、あちらさんの声もあって来年はぜひ天皇賞(春)に挑戦させたいからなあ。あの菊花賞。長距離で可能ならゴールドシップともう一度やるところを俺も見てみたいよケイジ」

 

 

 『任セロリ。しっかり3200メートルも勝って名誉あるレースを勝ちてえしな。あと、春のレースはぜひ。桜まう中で勝利の雄叫びをやってみたいわー』

 

 

 天皇賞。日本でも最も格式高いレースと言ってもいいだろう。同時にメジロが常に狙い続けた大舞台。しかしまあ、改めて3200と2000メートルのレースを両方勝てるって相当なトップスピードとスタミナ、ペースを切り盛りする騎手や馬であってこそだよなあ。更に言えば馬も早熟ではなく晩成向きの方がいいだろうし。3歳で燃え尽きたら天皇賞(秋)はつらたん。

 

 

 ほわぁ・・・春か秋かは分からんが、どちらかは勝ちたいねえ。個人的には春。あいつらとまたバチバチにやり合いたいもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おお・・・無礼なケツだ♂」

 

 

 『なんだこのおっさん!? 放牧地から出ていけぇ!』

 

 

 今日も今日とてのんびり放牧。していたらやったらガチムチなアメリカンナイスミドルが俺のトモを見て一言。いきなりご挨拶だなあおい。いや、馬のトモを見るのはホースマンならわかるけど評価はどうよこれ。

 

 

 「んーこれはいい。この馬体に毛並み、足の太さもほかの馬の脚が細く見えるほど・・・もう50キロ重くても問題なく支えるレベル。ミスター利褌もいい馬を手にできたなあ。これは初年度産駒はぜひぜひ買うべきそうすべき」

 

 

 『あん? ミスターにこの言い分。つーか要所要所の片言っっつーかその喋りかたはもしかしてビリー牧場長か?』

 

 

 「ビリーさん。いくらケイジが基本人懐っこいとはいえ後ろに立つのはやばいですって! お、お怪我はありませんか?」

 

 

 「おお、トモゾウ君。問題ないよ。ケイジもお客さんと気付いて見るだけに留めている・・・いや、見定めようとしているのかな。賢いねこの子は」

 

 

 ほぉん。俺の意図を読むのか。流石はあの牧場の主さんだなあ。そしてここに来るってことは、ナギコ絡みか?

 

 

 「ええ。本当に人の言葉を理解しているので、下手な言葉を言えば怒るので気を付けてくださいよ」

 

 

 「はははは。そこはサンデーのエピソードからも賢い子はそうするとわかるし、大熊ですら蹴り殺すあれを受けるのは勘弁だ。しかし、そんなに賢い子であの強さ。素質は十分だし、今度来るときはうちの繁殖牝馬のみならずアメリカの知り合いからも募ってみるとしよう」

 

 

 「う、うちの馬房足りるかなあ・・・その際は出来れば早めに伝えてくれれば場所を用意しますので・・・」

 

 

 「了解だ。その時は資金も援助させてもらうよ。さて、私はミスター利褌にあってくる。ありがとうね。トモゾウ君」

 

 

 アメリカではパーソロン系なんて何それレベルだろうしなあ。あちらさんも零細の肌馬つけて血の閉塞を止めつつ、ついでに成熟とみられがちな俺の話を聞いて早いうちに結果を出してシンジケートを狙っているのかしらん。

 

 

 「さわやかな男だったなあ・・・ん? どうしたケイジ。話を聞きに行きたいのか?」

 

 

 「ヒヒン」

 

 

 『んまーな。ナギコの事もだし、まあいろいろ聞ければ幸いだ』

 

 

 なんか話が面白そうだったので連れてってくれということで服を嚙んでぐいぐい引っ張ってトモゾウと一緒に休憩室の窓に移動。ビリーのおっちゃんは気づいていないらしいけどま、いいべ。

 

 

 「いやー本当にジーナ・・・ではなくキジノヒメミコを買ってくれて感謝します。あのイージーゴアの孫娘でありながら後ろ脚が少し曲がって肉付きが薄い黒鹿毛。サンデーを思い出してあれこれ言われる可能性もあれば、まだまだ外貌主義の強いわが国ではあまりいい思いをできなかったでしょうから・・・」

 

 

 「いえいえ。こちらこそ日本のサンデーの血の閉塞を危ぶみつつも走る子が多いゆえに異系は増えない。その中であれ程の素質馬であり、サンデーの血が入っていない子を、しかもシービーの孫を貰えるのは本当にうれしいです。しかもあの値段で」

 

 

 「うちの牧場のサンデーも最初は全く売れずでしたし、ヒメちゃんはもっと大変だったかもしれません。それよりはこちらでのびのび育てて、成長してから子供をアメリカに連れて行って血を薄める役割を担ってくれればと。そしてケイジの種付け料、これでいいのですか? はっきり言って、これの三倍の値段でもアメリカ中の馬主が飛びつきますよあの走りですし今引退しても、です」

 

 

 かなり真面目な話なのと、まあやっぱ根付いた考え。しかも馬主自体がそもそも超特大のギャンブルみたいなもんだ。しかも脚の形の悪さは走りにも影響を与える分、そうなるのはしょうがなし。それと俺の種付け料はやっぱ安いままなのね。まあ高すぎてもなんだかなあだけど。

 

 

 「ケイジはトウカイテイオーやシンボリルドルフとも比べても突然変異もいい所です。そしてパーソロン系、もっと言えばルドルフ、テイオー系は良くも悪くも気性難。足のもろさもありますし、ケイジの良さをすべて引き継ぐかは不明。なのでこの値段。そして、ビリーさんなら、早熟化、スピードを求め続けるアメリカ競馬に一石を投じようとする貴方だからこそ危ない橋を渡る危険度を減らしたい。それにまあ、この値段ですら最初の予定より高いのですよ?」

 

 

 「ふむ。確かに初年度産駒、いえ、3年は見ないとその傾向がわかりませんが、それでも欲しがると思うんですがねえ。まあ・・・良くも悪くもアメリカ競馬は早熟傾向が過ぎます。もう数十年前からあちらの馬は3歳で燃え尽きて種牡馬入りなんて珍しくない。ですがそれでは海外の大レースを挑もうとしても勝てない。この前のドバイDF、シーマクラシックのように4歳以上の出走条件ではこちらではもう衰えている可能性が高い。アメリカ国内ならそれでもいいかもですが、海外への馬産、取引をする上ではマイナス。

 

 

 ドイツ、そして日本の馬のように頑丈で強く、長い目で見れる馬。そのほうが夢を同時に長く見れる。自分の愛した、応援した馬の駆け抜ける道を一年でも長く見たい。そういう意味では4歳になっても成長を続け、1200~3000まで戦い抜ける能力を持つケイジ君の血はぜひアメリカに入れたい。改めて、引退後の初年度シーズン。お願いします」

 

 

 「こちらこそこんな貧乏牧場に嬉しい話をありがとうございます。そしてナギコをお願いします」

 

 

 「もちろんです。我が牧場総出を上げてしっかりと預かりアメリカのスターホースにしましょう。あ、それとケイジ君とゴルシ君の変顔写真集ありがとうございます。カレンダーも」

 

 

 ほうほう。稼ぐ、というよりは競馬界を考えての俺の馬産計画か・・・いい男だねえこいつもまた。まあ、俺も気を抜けばいい女の子には馬っけ出しちゃいそうになるし、うん。まあ大丈夫っしょ。

 

 

 しかし、やはり厳格な規制、制限と検査を抜けて行ってようやく種牡馬になれるドイツの馬はやはり海外から見ても大成功かあ。まあ、日本で見てもビワタケヒデだっけ。とかマンハッタンカフェとかはドイツ系の馬の血が入っているし、エイシンフラッシュもドイツ。欧州の中にあって独自の血統や馬産を続けているのと特徴が頑丈、健康という速度重視ともまた違うからほんとありがたいんだよなあ。

 

 

 日本だと有馬記念、天皇賞(春)ステイヤーズSだっけ? とか2400メートル以上の長距離レースを走るのに必要な元気さをくれるし、海外遠征でも何につけても健康でいられるってのは大切。海外への売り出しの際にも健康で長生きな繁殖牝馬、種牡馬ならあちらも多少色を付けてくれるかもだし。

 

 

 「今日は一度此方で休んで、明日に改めてアメリカにナギコをお願いします」

 

 

 「ありがたいです。いやあー日本酒と刺身というのがすごくいいと聞いていたので温泉を味わって・・・・ワオ!? ケイジ君!? 放馬してしまったのかい!?」

 

 

 「あ、いつもの事ですし、ちゃんと牧場より外は出ることはめったにないので」

 

 

 オッスオッス、ビリーのおっちゃん。いいびっくり表情いただきましたー。ああ、それとやっぱあのサンデーを知ってても俺の行動は驚くのねえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『いやぁああああぁあ!! 助けて! 助けてケイジお兄様ぁああ!! わたしここを離れたくないイィイ!!』

 

 

 『いやだしー!! ようやくここに戻れたのにアメリカに行くとかイヤダー!! 絶対温泉ないじゃん! 湯船ないじゃーん!! シャワーだけの日々とか勘弁よ平野ー!!』

 

 

 『どきなさい! ここが私の家!! 小さいですがいい場所ですの! あっこら! 押すな! 別荘! せめて別荘をここにしなさい!! あの温泉と海辺の良さは戻る場所にありませんものー!!!』

 

 

 『お前さんらなあ・・・』

 

 

 なんやかんや翌日、ナギコはアメリカデビューのために空港へ。キジノヒメミコは的矢のおっちゃんと一緒に厩舎へ移動。ジェンティルちゃんは自分の厩舎に戻ることになったんだけど、みんなごねるのなんので大暴れ。俺と利褌のおやっさんで呆れた顔を見せながらぼんやりと眺めている。

 

 

 『おやっさん。うちの、うちに関わった牝馬は出かけるときは騒がなきゃいけない決まりでもあんの?』

 

 

 「いやはは、ここまで暴れるとはなあ。ケイジはすいすい行ったのに」

 

 

 『まあ、俺の場合はねえ。それに今は厩舎にもダチ、戦友がいるんだ。どっちに行くのも楽しいってものよ。冬は暖かい水でシャワーしてくれるし』

 

 

 『『『ヤダー!!!』』』

 

 

 俺の場合は戦いが楽しみだってのと、ぶっちゃけ普通の馬とは違って繊細さが少しないからなあ。がさつってかね。馬の場合は繊細だからこそいい思いした場所を気に入ってホーム認定するんだよね。ウオッカとか府中の番長で、そこの競馬場を離れようとしたら嫌がってしまいには怒ったそうだし。

 

 

 まあそれはそれとして、ほんとこいつらどうしましょ。みんなパワーがあるのと本気で嫌がっているからどこの陣営さんらも苦労してるわ。ヒメミコも俺らの調教メニューを徐々にこなせるようになったから大分肉がついたしなあ。

 

 

 「おっほっほっほ~元気だ(^ω^) でもこれじゃあ余裕を持ってきたけど飛行機に遅れないようにしないとねえ」

 

 

 『お~激しい。だなあ。流石に国内組はまだしもナギコはいかんわ・・・はぁーしゃあーねーなあー』

 

 

 流石にヒメミコを安くうちに渡して、真面目にアメリカの競馬界を考えてくれるナイスミドルと平野調教師、ひげ熊厩務員を待たせるわけにはいかん。どれどれ。まずはナギコの所へ。

 

 

 『ナギコさんや』

 

 

 『何だしケイジ』

 

 

 『お前がアメリカで頑張って、お金稼いで戦えば馬房が豪華になるし、温泉もばっちり。ここに帰った後の楽しみが増えるのと、それにな・・・』

 

 

 『それに・・・・?』

 

 

 『お前、かなりの美人だしそれでアメリカの大レースに勝ち続ければ歴史に名が残るぞ。最近読んでいた史記や偉人伝の馬版にお前の名前が載る。しかも日米両方。もっといけば世界で』

 

 

 『・・・・・・・・・行く! けど平野、定期的にここには返すし!! ほらイクヨひげ熊のおっさん!』

 

 

 よしまずは一頭。まあ、真面目な話尾花栗毛の馬体完璧。日本からやってきた、両親の系譜がアメリカの星系の血とダートの怪物たちの血をひく牝馬が活躍すればあちらもアメリカンドリームな話題&その美貌にみんなほれ込むでしょ。血統に関したって日本ですら被る血統見つけるのが難しいレベルだし、子供がアメリカに行けば皆欲しがるんじゃない? キンカメあたりとの子どもとかよさげ。

 

 

 『さーてヒメミコ』

 

 

 『お兄様! 嫌です! 私はここを離れるのは!』

 

 

 『可愛い子には旅をさせよ。というだろう? それに、言っちゃえばこれは花嫁修業だぞ?』

 

 

 『花嫁修業・・・ケイジお兄様の伴侶としてです?』

 

 

 あーもう・・・妹分&血統現代では被るのが難しいとはいえ・・・実際そうなるかもとはいえ、ヤンデレ気味なのすげえなあ。もう少し俺の器が大きけりゃあこれも慣れるんだろうが、くそう。俺の器の小ささはまだまだだぜ。

 

 

 兎にも角にも落ち着いてくれたんでそのまま続ける。

 

 

 『まあ恐らく。で、これからの戦いでお前さんの才能を見せつければ、俺も頑張る分みんな見たくなるんよ。次世代を。俺やヒメの力や才能をひいた子供が見たいとなるし、みんながすごいと言ってくれる。女磨きの旅だ。実際、エアグルーヴやヒシアマゾンとかダスカとかその戦いぶりでみんなすごいのなんの。この相手とふさわしいかもと言ってくれたりでなあ』

 

 

 『なら行きますわ。ケイジお兄様のふさわしい女として行ってきます・・・的矢さんの騎手としての経験や技術も盗んで、見事大和撫子となって見せましょう』

 

 

 『おう行ってこい。そんで、世界に羽ばたいて最高の女だって見せつけてこいや』

 

 

 『・・・はぁあ・・・ぁ・・・・・も、もういっ・・・』

 

 

 『頑張って来いキジノヒメミコ。お前さんの晴れ姿を期待しているよ』

 

 

 『あふぅ・・・! ケイジお兄様行ってきます! 行きますわ的矢さん!』

 

 

 ほいもう一頭。まあ、こういった手前責任は取るよーそのためにも利褌のおやっさん頼むわ。俺とあの子での組み合わせをね。でないと俺は多分ヒメと鹿に蹴り飛ばされる。

 

 

 『で、ジェンティルちゃんよ』

 

 

 『なんですのよ・・・』

 

 

 『そうカリカリしなさんな。俺も厩舎で寒い日は暖かい湯を浴びて拭いてくれたり、色々応用はある。それに、また海外で戦ってからの検疫とかでここを隔離&休養地に充てられるかもだし、また来れるんだからお嬢様らしく余裕をもっていきなせえ』

 

 

 『分かりましたわ。でも、これなかったら怒りますからね!!』

 

 

 あらあっさり。ジェンティルちゃんもすぐに馬運車に乗ってくれた。周りが俺を見ているけど、まあまあ俺はちょっと嘶いた、鳴いただけですよー。ほれほれ早くしないとみんな気が変わって暴れるぞお?

 

 

 みんなを見送って、俺らもひと段落したということで放牧エリアに。あの三頭、これからどうなることやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ってことがあったのよ。いやー的矢のおっちゃん。ありゃー苦労しそうだぜ』

 

 

 『あははは。いやはや、あの人と再会できた時も話していたが、君の嫁さん候補は相当曲者だねえ。元気なのは素晴らしいことだが』

 

 

 『女ごころってのはまだ若造の俺にゃ分からんぜグラスのじーさん』

 

 

 『私もまだまだ分からないよ。だが感謝と敬意を持つのは忘れちゃいけないよ。私達の血を繋いでくれる。夢も乗せてくれるのだからね。そして決して弱くはない。君たちの時代はむしろその差はほとんどないのではないかい?』

 

 

 放牧地にここしばらく来ているお客さん。栗毛の怪物グラスワンダー爺さんとぼんやり俺のおすすめのポカポカする地面のポイントで日向ぼっこ。俺はもちろんジャンプ持参で。グラスワンダー爺さんはまだまだ種牡馬としても現役だが、あいにくうちにはもうステゴの子を身ごもったおふくろくらいで仕事できたわけじゃない。

 

 

 功労馬にして98世代の最強の一角。その名馬を是非労ってやりたいという牧場の意向でうちの温泉と基本俺はのんびりとそこらへんの草をむしゃむしゃしないのでのびのび育った牧草やらをグラス爺さんが食べて、湯治をして、馬の数が少ない小さな牧場でちょっと早めの夏休みをしてもらうためにやってきた。

 

 

 まあ、後は真面目な話、うちの牧場の馬房、普段から湯治に来た馬たちのために多く開けているし、温泉や馬房の質。元メジロのスタッフもいるので小さいながらにレベルは高い感じだそうで。なのでここで種付けをして、受胎を確認する間種牡馬も牝馬も休んでもらう場所として注目されているそうな。

 

 

 なのでここでグラス爺さんが気に入ってくれれば種牡馬のお仕事もいい感じ。やや身体が弱い牝馬もリラックスしながら休んでくれると一石二鳥。ということでここにきている部分もある。・・・・ってトモゾウが教えてくれた。

 

 

 『いやあ、しかしここのタンポポはうまい。よく育っているし、地面も暖かいしで温泉もいいねえ』

 

 

 『定期的に葉をかじっては再生するのを待っていたからねえ。暖かい分育ちもいいんでしょ。ああ、そうそう。この前の話のお礼に、タンポポが特に群生しているところを教えるよ。こっちだけど』

 

 

 『おお、ありがたい。じゃあ、今度はスぺ君をマークした際の追い込みのやり方を話そうか。あれは今から1万4000年前・・・』

 

 

 『古い古い。そこはせめて20年前・・・も古いなあ。お、ついたついた。じゃあーのんびり聞かせてくれや』

 

 

 こうしてのんびりもそもそタンポポかじりながら話す姿のんびりものな好々爺なんだがなあ。的矢のおっちゃんと話しているとき、レースの話になった際の目のぎらつきようとか、一気に感じた気を味わえばああ、確かにこりゃあ怪物と呼ばれるわと分かる。

 

 

 すぐになでられたり、人参を貰ってほわほわした顔になっていたけどねーレースがない以上相棒との時間はのんびりってかね。俺も俺で追い込みの戦い方やマーク戦法を学べて楽しいのなんの。

 

 

 「あ、ケイジにグラスワンダー。一緒にいたかあ。ケイジ、お前のしばらくのスケジュールが決まったぞ」

 

 

 『おん? マジでー? 教えて教えてー』

 

 

 話を聞いていたら来たのは利褌のおやっさん。おお、俺の今後の予定が決まったのねん。どれどれ、どんなのー? 顔をあげて耳を前に向ける。

 

 

 「まずは人気もファン投票も接戦だが無事1位をいただけたので宝塚記念。その後に招待状が来てな。8月にKGⅥ&QES、10月にはオルフェーヴルと一緒に凱旋門賞に挑むぞ!」

 

 

 『・・・・・・・・・・・・・マジで!? 俺が欧州はおろか世界トップレースのうちの二つを狙えるチャンス来るの? たまらねえぜ!』

 

 

 『おおー・・・凱旋門賞。ブロワイエを思い出すねえ。ふふふ、これは楽しくなってきた。私もぜひ牧場のテレビで見たいねえ。応援しているよ』

 

 

 いやー寝耳に水、青天の霹靂ってレベルじゃねえぜ。宝塚記念はまだしも、また海外。しかもキングジョージ&クイーンエリザベスSと凱旋門賞。はっははは、こいつはいいねえ。どれをとっても最高じゃねえの、燃えてくる!!

 

 

 『いよっしゃ! じゃあ練習・・・のまえに、グラスの爺さん。話の続き聞かせてくれ』

 

 

 『いいよいいよ。それじゃあ、レースの初めから。あータンポポ美味い。水もあとでほしいなあ』

 

 

 「おや、ケイジの事だからすぐに走りに行くと思っていたんだが」

 

 

 だからって縄を用意しているんじゃないよ利褌のおやっさんに後ろにトモゾウ。まあ、これも練習。お勉強よ。栗毛の怪物の視線と技、技術も学んでこそってね。




 次回の戦いは宝塚記念。そしてまた世界に戦いに。


 ケイジ 女心はまだわからない。でもナギコとキジノヒメミコの扱いは少しは分かっているつもり。紅茶の国の女王陛下から招待状を貰ってまた戦いの舞台が決まる。その前に念願のゴルシへのリベンジ。国内のレースをするために宝塚記念へ。グラスワンダーからマークと追い込みのやり方を学んだ。


 ビリー牧場長 アメリカの森の妖精♂的なガチムチナイスミドル。アメリカの外貌主義とイージーゴアの血をひいていながら外見はサンデーよりのキジノヒメミコをアメリカでは如何に大成しても叩かれたりするだろうと憂いていたので前田牧場に安く売る。アメリカ競馬界を考えつつ、利益もしっかり狙う夢追い人。ケイジの行動と種付け料の初年度の値段にビビるわぁ!


 前田牧場長 紅茶の国の女王陛下からのレースへの招待状を貰ってたまげた。実はドバイの王族からの根回しと女王陛下もこの馬おもしれえとなった。とりあえずは宝塚記念で好成績を出せればと思っている。ケイジの種付け料は現時点では300万くらいに予定していたし、予約してくれた皆様には必ずその値段で対応するつもり。産駒が結果を出す。受胎率を見て少しづつあげていく予定。


 ナギコ アメリカ横断ウルトラ長期遠征。いざ競馬史に名を刻めと頑張る。しっかり荷物に本とトングを入れてもらった。この後牧場から本棚一冊分の歴史や文学書が届いてウキウキ。これを見て平野調教師が「馬って何だっけ・・・」とつぶやいた。


 キジノヒメミコ 無事? 的矢調教師の元へ預けられる。花嫁修業ということで勇往邁進。頑張るつもり。本人はマイラーとしての気質とシービー、イージーゴアの血が強いのかステイヤー張りのスタミナ持ち。何気にゴルシやケイジとの組み合わせは日本根幹牝馬やアメリカの大牝系とのクロス、血を強める組み合わせが発生するのでビリー牧場長、社爛からは真面目にケイジかゴルシとキジノヒメミコの子どもは欲しいと考えられている。


 グラスワンダー 2020年まで元気に種牡馬していたスーパーおじいちゃんにして黄金時代の一角。久しぶりに的矢さんにあえてご機嫌&次世代の姿をみれて満足。ケイジが基本放牧エリアを汚さないしタンポポを食べていなかったのでタンポポ食べ放題温泉ツアーを満喫。ケイジが厩舎に戻る前には牧場周辺のタンポポが全滅していた。出来ればまたここで湯治をしたい。


 ジェンティルドンナ 前田牧場実家認定。温泉もあれば砂浜での調教。柴犬も練習に付き合うし、ケイジらもいる。バカンスを満喫していたのだが早めの夏休みが終了したので大荒れ。厩舎に戻ってからもお風呂に入れてと頼んでいた。


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ウマ娘エピソード 7 蒼目の武者、傾奇者の家へ

 グラスワンダーはアメリカにいたころに日本のアニメとか見ていたのかなあ。そういうエピソードがあれば是非見てみたい。


 「おお、ケイジ。待っていたよ。今日の練習はよろしく頼む」

 

 

 「来たかケイジ。まあ・・・しっかり練習を頼むぞ」

 

 

 「ケイジちゃん元気―? 今日もアゲアゲで行きましょ♪」

 

 

 「ヘーイケイジ―! また今度一緒にBBQしましょー!」

 

 

 「やあケイジ君。ふふ、君の前ではこちらがポニーちゃんになっちゃうね。相変わらずの威風堂々。素晴らしいよ」

 

 

 「お、ケイジさん。この前のジャガイモとステーキの組み合わせよかったよ。姉貴も泣いて喜んでいたしまた頼む」

 

 

 「やあケイジ! よく来たねえ歓迎するよ! ・・・・・それとは別で、どうやってブライアンの野菜嫌いを治したんだい? そこら辺ちょっと詳しく・・・」

 

 

 「やあケイジ。今日はどの距離で走る? ぜひ一緒に3000メートルを走らないか」

 

 

 「今日も雄々しくも美しいねケイジ先輩。さあ、ボクと一緒に歌劇を盛り上げるために練習しようじゃないか! まずはミュージカルパートから」

 

 

 「あ、ケイジ先輩! ぬるぬる相撲面白かったデース! アメリカの知り合いでも大うけでしたよ! あの変顔ももう最高デース!!」

 

 

 「お久しぶりですケイジさん。今日もまたお願いしますね?」

 

 

 「あははは。アタシは聖徳太子じゃないんで一人ひとりよろしく。そんでお願いするぜリギルの皆、一人での練習とは違う刺激が欲しくってな!」

 

 

 この人が一人来ればリギルの空気の明るさが増す。その強さは誰もが認める。ケイジの練習の参加に皆があれをしたいこれをしたいとワイワイ集まる。

 

 

 私、グラスワンダーもそうだ。正直な話、なんで好ましいかはわからない。

 

 

 「よく来たなケイジ。此方としてもぜひその体力とパワーを貸してもらいたい。そちらのメニューにこちらから必要なメニューに合わせてメンバーをつけるので揉んでやってくれ」

 

 

 「あいよおハナさん。そう固くなりなさんなって。その笑顔と女らしい体みたいに柔らかく笑顔笑顔♪」

 

 

 「ケイジに言われると自信を無くすがな。・・・ふふっ。ええ、お願いするわ」

 

 

 ことあるごとに暴走し、ゴールドシップらと一緒に馬鹿をする。晴れ舞台のウイニングライブの舞台も好きほうだい。挙句の果てには乗っ取る。伝統あるライブを自分のものに、新しく滅茶苦茶にすることもしばしば。

 

 

 いざとなればその剛力を振るうことに躊躇はなく、火事場に身を突っ込んで人命救助、震災現場での長期ボランティア、人命救助、犯罪者を現行犯逮捕も良くするが、その際にボコボコになっている犯人も珍しくはない。夏場の合宿では海辺に逃げてきた鮫の群れを拳と銛ですべて仕留めていたりとウマ娘たる力を余すことなく使う一方でその危うさが不安になる。

 

 

 「よっしゃ。そんじゃ、ストレッチをしてからにするとして・・・あー・・ふぐぁ・・・今はシリウスはナギコとアタシ以外皆海外遠征でジェンティルちゃんが引っ張っていっているしねえ。ナギコは休みだし、あはははぁー・・・んーところで、今日はどこでやるの? ダートは勘弁だぞ?」

 

 

 「いやいや。今日は私とグラスワンダーと併せをしてほしい。大逃げの戦い方を学びたいし、ぜひコーナリングを仕込んでくれれば」

 

 

 「あいよルドルフ会長。グラスちゃんもよろしく」

 

 

 滅茶苦茶で問題児も問題児。だけど一方で豪快でさっぱり。エルが比べ物にならないほどの破天荒。怒ることもある一方で、なんでか親しみを感じてしまう自分の心が不思議でしょうがないのだ。

 

 

 「お願いします。今後また天皇賞(秋)や宝塚記念でスズカ先輩ともぶつかるでしょう。遠征に行っている今のうちに鍛え直したいのです・・・!」

 

 

 「はっははは! 異次元の逃走者相手に、あれを味わってひるまねえか。流石だぜ! いいぜえー~? あちらが異次元ならこちらは規格外! 3000メートルだって走れる分教えながら引きずり回すぞ!」

 

 

 「ふふふ・・・久しぶりに燃えてくる。休憩を挟んだらぜひ私にマルゼン、ブライアン、オペラオーで長距離を頼んでいいかな? 私たちも海外遠征を考えているし、不慣れな場所でも戦える体力が欲しい」

 

 

 「あいよあいよ。んーなら、今度うちのトレーナーのレポ渡せるか聞いておくわ。どうせ隠すもんでもねえ。リギルなら安心して渡せるだろうし」

 

 

 規格外な背丈、それでいて豊満。絞るところを絞ったスタイル。美貌は言わずもがな、長い鹿毛の髪をポニーテールにまとめ額の髪の毛にある十字架を思わせる流星が映える。無敗の四冠にして海外GⅠにおいては負けは一切なし。ライバルになる。相手になるのはゴールドシップやジェンティルドンナとごく一部。

 

 

 シンボリルドルフ生徒会長を超える器。シリウスの格を引き上げた傑物。なるほどこれはルドルフ生徒会長もたびたびケイジらを次期生徒会に入れようと気をもんでいるのもうなづけるというものだ。

 

 

 「そんじゃあ行こうか。スタートとゴール板頼んだぜヒシ姐さんよ」

 

 

 「あいよ! それじゃあ位置について! 用意・・・」

 

 

 絵になるさまを見つつも私もスタートの位置について気を落ち着かせ、荒ぶる戦意に蓋をする。大逃げのケイジへのマーク。そしていかにしてそれに食らいつくか。足と戦意を爆発させるタイミングを頭の中で練りつつ、スタートの合図とともに地面を蹴りだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ゼハー・・・・ゼハー・・・か、かふ・・・おっぐ・・・ふぅ・・・ふ・・・も、もう足がもたない・・・です・・・」

 

 

 「っはーぁー・・・ああーいい汗かいたぜ。流石はリギル。みんなすげえなあ。タフだ」

 

 

 無事一日の練習を終えて横で終始大逃げでペース壊しまくっていたので疲れ切ったグラスにスポドリを薄めたやつを渡しつつほぐし終えた体を座らせる。

 

 

 軍や警察、消防で鍛えた、メニューも一部シリウスで採用しているトレーニングで鍛えているのにアタシも疲れが出るくらいには皆くらいついてきた。体力なら負ける気はなかったが、いやマジで速度や足運び、走りにおいてみんな強いのなんの。いい練習になった。

 

 

 「なんで・・・・なんでそれなりの速度で3000メートル2本、2400メートル3本・・・その後に筋トレを平然とこなして最後の流しさえも・・・た、タフすぎです・・・タイキ先輩ももう横で撃沈していますし・・・」

 

 

 「いやあーライスとかゴルシら相手と併せをしていたら嫌でもこの距離と数を毎日走るからねえ。最低基準で。アタシもあっちで鍛えられているってな」

 

 

 「練習の密度が高いと聞いていましたが・・・ふ・・・これを血肉に変えられるのも才能・・・ですね・・・はふぅ・・・ありがとうございます。ようやく一息付けます」

 

 

 まあ、実際頑丈さは才能だわなあ。オーバーワークですらも身体を壊さずに肉体を仕上げる。そういう意味では幼いころから漢方やらひいばあちゃんに軍やらに放り込まれて体を鍛えていたからこそだけど。それに優に追いついてくるライスとかうちのシリウスメンバーも大概な才能だよなあ。

 

 

 グラスちゃんも、リギルの皆も付いていっている分十分に怪物だし、ほんと才能を努力で叩いて鍛えたみんなだからこそ。あー・・・あ? そうだそうだ。思い出したわ。

 

 

 「ああ、そうだそうだグラスちゃん。グラスちゃん最近茶器に興味があるんだろ?」

 

 

 「え? ええ。レースで稼いだ賞金もありますし、ぜひ茶道、その道も学びたいと思いまして」

 

 

 「んならうちに余っている茶器とかいくつかあるし、自分のおニューの茶器をしっかり手入れ、長く使えるようにするためにうちのお古や余りでよければ貰いに来るかい?」

 

 

 「いいのですか!? あ、失礼しました・・・でも、いいのですか?」

 

 

 「いいのいいの。道具なんて使われてなんぼ。その役割をこなして、そしてちゃんと使ってくれるグラスちゃんなら構いやしねえ。今度のオフの日にでもうちに来なよ。ついでに何かあれば渡せるし」

 

 

 アメリカ生まれ、育ちで留学できたのにここまで日本を愛している日本通ならということで余っていた茶道具があったので分けることに。いくつかはマナー教室や教養ってことで中央トレセン学園の茶道クラブに学園の家庭科に回したがそれでも余ったやつとかを渡すことに。

 

 

 ついでにまあ、うちの家なら良くも悪くもグラスちゃんには楽しめるだろう。色々。

 

 

 「ふふ。ではその際はぜひに」

 

 

 「グラス、エル、ケイジ! ダウンに入るぞ! そして予定を伝えるのでその後全員集合するように」

 

 

 「はいよー」

 

 

 「オッケーでーす!」

 

 

 「了解です」

 

 

 この後はみんなでクールダウンして、いつの間にやら現れたゴルシの屋台で焼きそばをおやつにしてから解散。さーて、じいやに頼んで車まわしてもらうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ささ、グラスワンダー様。着きましたぞ。どうぞこちらへ」

 

 

 「は、はい・・・・はぁ・・・・ー・・・」

 

 

 あの練習の後、よければ写真撮影もいいと言っていたケイジさんの意味が分からなかったがインスタントカメラとスマホのカメラの充電を確認しておき、数日後に執事と思われる好々爺の車の送迎を貰ってついた先は、まさしく絵巻物に出てくるようなそれは見事な日本屋敷。

 

 

 美しい瓦の並びに整理された石畳。風に揺られてさわさわと鳴る草木の音が心地よい。ケイジさんの家が日本でも名のある名家だということは知っていたが、まさかここまでとは思わなかったと同時に、なるほどこれはぜひ写真に収めて眺めたりアメリカの日本通の友達に見せるにはちょうどいい。誰の家とは言わないが。

 

 

 「お、来たねグラスちゃん。ささ、入った入った。茶でもしばきながらゆったりしようや。じいやもありがとう。ばあやがデートしようってめかしていたから10分くらい後に呼んでからエスコートしてやんな」

 

 

 「ほほほ。この年でばあやとデートに行けるとは若返る心地ですわい。ええ、しっかりリードさせていただきます。それではグラスワンダー様。お嬢様とどうぞゆるりと」

 

 

 「おお熱い熱い♪ 土産は肉まん頂戴。さてー・・・んふぅー」

 

 

 そんな私を笑顔で出迎えるケイジさんも今日は普段のジャージ姿ではなく緩い和装。カランコロンと下駄をならしてからからと笑う姿がこれまた非常に絵になる。執事らしい老紳士。じいやさんにお土産の駄賃と言ってお金を渡し、返そうとするじいやさんにならお使いだと思ってもらってくれとねじ込む。

 

 

 あれこれと軽く話をつけた後に背伸びをしてから屋敷に入っていくケイジさんの後を追い、屋敷にいる女中に挨拶を交わすケイジさんの後ろをついていく。木の優しい香りにイグサの香り。落ち着く空気と同時にまさしく純和風といったつくりに何度もカメラのシャッターを切る。ケイジさんも許可をしているのと前もって伝えてくれているのだろう。使用人の皆さんも笑顔で接してくれている。

 

 

 「ここの砂利がな。川をイメージしたような作りになっていたり、その流れの先に池があるっていう作りなんだわ。で、ここの錦鯉がなあ、まあー長生きのくせにすげえ元気で」

 

 

 「・・・美しい・・・それに、確かその鯉、ニュースになったものでは?」

 

 

 「ああー震災の際にあれこれあって募金やら支援物資の資金繰りの際に一匹売ったからなあ。何億かいったっけ。ま、それでも何匹もいるし、こうして元気だけどねー」

 

 

 玉砂利による美しい風紋や川をイメージして敷かれる石の芸術。あえて余計なものを置かないことでの詫び寂びを感じさせる場所もあれば、大きな庭にあるこれまた大きな池にそこを心地よさげに、悠然と泳ぐ錦鯉の美しさ。時折なるししおどしの音が心地よい。

 

 

 レースのため、学業のためにと頑張る日々の中で知らずに疲れていたかもしれない心が癒され、日本の美を詰め込んだ屋敷に興奮が止まらない。写真を何枚も取り、鯉の動きを眺めては鱗の美しさとその身体で見せる芸術に思わず感嘆の息を吐いてしまう程。

 

 

 「はぁ・・・これは本当に・・・凄い」

 

 

 「気に入ってくれたようで何よりだ。じゃ、少し茶と茶請けを持ってくるから待っててくれ。何かリクエストはある?」

 

 

 「いえいえ。ケイジさんに任せますよ」

 

 

 了解だと言いながら移動していくケイジさんを見送り、しばらく屋敷の庭の景色をじっくりと眺め、たまにちらりと客間の様子に目が映る。

 

 

 よく見れば家具も美しいし、使い込まれているが歪みや汚い汚れ、傷がない。大事にされているのもそうだが、これまた相当腕のいい職人が作ったのだろう。時代劇に出てくるような道具入れの棚などを見つめて面白くなる。

 

 

 「誰だい! そこにいるのは!!」

 

 

 ただ、そこに急に聞えた声とただならぬ殺気。そうこうしていたら目の前に一人の老婆・・・ウマ娘だろうか? が薙刀を振りかぶって此方にとんでもない速度で飛んでくる。

 

 

 「泥棒なら容赦はしないよ! チェァアアアアア!!!」

 

 

 「え!? え!? ひ、ヒェッ!!」

 

 

 「うおっと!? ばあちゃん俺のダチ! リギルのグラスワンダー!! あんたいきなり何してんだこの動いたっきり老人!!」

 

 

 私とその老婆・・・ケイジさんのおばあさん? の間に割り込んでトンファーで薙刀を受け止めたのがケイジさん。しばらくギリギリと音をたてながらつばぜり合いをしていたが事情が分かればおばあさんの方が刃をひいた。

 

 

 「ああ。あの宝塚記念で大暴れしたグラスワンダーね。ふん。泥棒なら思いきりやっていたものを」

 

 

 「おうこら前田ホテルの名誉会長大人しくしとけや。ったく、選手としても伝説だろうにヒサトモひいばあちゃんよ」

 

 

 「ひ、ヒサトモ・・・!!? あ、あのセントライト、クリフジと並ぶ初代三強の一角。初代シリウスのリーダー・・・!!?」

 

 

 ひゅんひゅんと薙刀をまるで棒切れみたいに振り回す方の名前を聞いてさらに驚く。ヒサトモ。今のトレセン学園にある日本最強格のチーム。リギル、スピカ、シリウス。その原型のチームを作った初代の三人。初代三冠ウマ娘セントライト。変則三冠王クリフジ。その二人と互角に渡り合った尽きぬ闘魂。暴風起こす走りと言われたヒサトモ。もう100を超えているはずの女傑は目の前で元気そうにケイジと軽口をたたき合い、同時に私の方に視線を向けている。

 

 

 光栄であると同時に、その眼圧。眼にこもる力と威厳に背筋が自然と伸び、失礼は出来ないとこわばる。ケイジさんが壁になっているからいいがそれが無かったらどれほどのプレッシャーだったか。

 

 

 「で? 今を時めくリギルの期待株。うちに来てくれるのは嬉しいが一体何の・・・ああ。そういえば余った茶器を渡す相手がいるって言っていた相手がこの子かい? ケイジ」

 

 

 「おうよ。そこら辺の女の子よりもずっと日本の歴史や文化を知っていて愛してくれるいい子だし。そういう子に道具は譲るべきだろ? 茶とお菓子はあるし、二人同士で少し話しておきな」

 

 

 「はいよ。そんなら茶でも貰おうかね。ふぅ・・・悪かったねえグラスちゃん。泥棒だと思ってしまって」

 

 

 「い、いえ。それよりもヒサトモさんにあえて光栄です。その強さ、伝説はアメリカにいるころから知っていましたから」

 

 

 茶請けとかぐわしい香りを漂わせる茶の入った湯飲みを置いてまた移動していくケイジさんと、薙刀を置いて一緒に縁側に腰かけるヒサトモさん。もう優に80年以上前の戦い。そして引退して30年後に見せた伝説のレース。そのタフネスぶり、その人情家、漢勝りなその生き方や戦いはアメリカでも大いにもてはやされた。

 

 

 それゆえか前田ホテルに泊まりに行くことがアメリカのウマ娘でヒサトモさん、ケイジさんのファンにとってはいわゆるゲン担ぎであり、お守りやそういうたぐいを手にできればそれはもう羨ましがられるほど。ダービーウマ娘は多くいるけども、これほどのインパクトを残した選手はそうはいない。今もなお続くチームの原型を作り、世界に誇るホテル、旅館チェーンの会長。先ほどまでの怖さもあるのだろうが、いやでも内心舞い上がる。

 

 

 「おや、あのレースの本場にもかい? この老骨のしょうも無い話よりもあっちはマンノウォー、セクレタリアト、多くの怪物がいるでしょうに」

 

 

 「それでも、です。ヒサトモさんたち前田一族の成した話、戦いはもうみんな大好きですし、私の周りの大人たちも語っていましたから」

 

 

 「嬉しいが、今まさに伝説を作ろうと頑張る子たちに目を向けてもらいたいもんだねえ」

 

 

 「ふふ。それならまさにケイジさんがそうですよ」

 

 

 「あんまりほめ過ぎてもいけないよ。あーのお調子者は何をしでかすか分かったものじゃない」

 

 

 「あー・・・それは・・・」

 

 

 うん。そこに関しては同意するほかない。学園でやらかした行動の多数にこの前も阪神で起きたビリケン様人質事件で犯人をとっちめるために警察官と一緒に通天閣タワーで大暴れしたこともあったし、本当に毎回のように出ていく先で変なことを聞かない方が珍しい。ヒサトモさんのひ孫娘のことでこういう反応は失礼だと思うが流石に反論が出来ない。

 

 

 「ま、ただのおせっかい焼きだからね。甘える時は甘えて、叱るときは容赦なく叱ってやんな。あれくらいがあの子にはちょうどいい」

 

 

 「だーれがおせっかいだ。ほれ。もってけグラスちゃん」

 

 

 少しきつい言い方だが、優しい目と声色で空を見つめるヒサトモさんを見て、ああ、この人はこの人で心配している部分もあるんだろうなと思っていたらちょうどケイジさんが戻ってきていくつもの道具を入れたかごを渡してくれる。

 

 

 「えーと・・・・あの・・・この茶筅・・・煤竹真天目立てでは・・・? それに、この茶碗。確か・・・かなり高級なものでは」

 

 

 その中身だが・・・私のような浅学菲才の身でもわかるような有名処の道具ばかり。茶筅だけで2万。この茶碗に至っては利休の、茶聖のある流派に認められたものだ。これら一式だけでいったいどれだけになるのか、立っていたら間違いなくふらついてしまう。

 

 

 「ああ、それアタシの自作。茶聖の流派の免許皆伝もらっているからねえ。あそこの流派新たに創作した茶器とかをよく使うからアタシも学んで一応ある程度の茶碗なら作れるしほれ、予備ももってけ」

 

 

 「え、あ、あのこれだけで何十万・・・・い、いえそれい・・・」

 

 

 「若いのに目利きがあるねえ。どれ、私からもプレゼントをしようか。確か村田刀でいくつかあったのと薙刀が余りがあったねえ・・・あ、ちょいと。蔵から村田刀と薙刀を持ってきなさい。この子にあげるわ」

 

 

 「かしこまりました大奥様」

 

 

 「・・・む、村田少将の作った名刀のものまで!? ま、待ってください色々もらいすぎて!」

 

 

 「「好きな奴に、ちゃんと扱ってくれるやつにくれるんだから遠慮せずにもらいなさい!」」

 

 

 ・・・この後、しばらく記憶が飛んでいたが、寮に戻ってから手にしていた刀に薙刀、そして背負っていた風呂敷の中にある数々の名茶器、茶道具を見てこれらを貰ったことだけは覚えている。しっかり菓子と茶葉までつけられて・・・・・

 

 

 ケイジさんのあの性格と振る舞い。間違いなく一因にはあの曾祖母が関わっている。フラフラ自分の部屋に戻り、プレゼントの数々とヒサトモさんのサインを丁寧にしまい込みつつそう思った。

 




 ヒサトモ ケイジの曾祖母にして初代シリウスのチームリーダー。シンボリルドルフより強いと言わしめたクリフジ。そのクリフジですら同じ戦いぶりは出来ないと言われるほどの豪快な戦いぶりで世間を沸かせたスーパースターウマ娘。前田ホテルの名誉会長。過去にウマ娘たちに元気と可能性を見せるために50歳を過ぎて現役ウマ娘のいるGⅡレースに参戦。勝利を飾り怪物の異名をもらう。

 超神田寿司の夏春都とは竹馬の友で浅草一郎にはたびたびホテルに出張させてイベントや料理を頼んでいたりで提携している。ひ孫のケイジ、ナギコ、キジノヒメミコはもう愛おしくて仕方ないがケイジは特に厳しく鍛え、愛しているので基本やり取りはいつもこんなノリ。メジロアサマを若いころから振り回しているのでなんやかんやケイジの曾祖母。

 若いころの外見のイメージは名作デュエルマンガ デュエル・ジャック!! の主人公 火野 マナト のおばあちゃん 火野 トリ の若返った時の姿。


 ケイジ 割と文化人で茶道は免許皆伝。実は桐生院とも交流があるので先代、先々代ともたびたびあっては茶をしばいている。グラスに自作した茶道具(茶道家からのお墨付き)と余った茶道具を渡す。


 グラスワンダー 薙刀を手に入れた。刀を手に入れた。茶道具を手に入れた。ヒサトモのサインを手に入れた。色々もらいすぎたりケイジとヒサトモの喧嘩を見たところから完全に記憶が飛んだ。後日改めてもらったものの価値を知ってまた驚く。固有発動強化されました。


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いざリベンジ! 宝塚記念(GⅠ)

 お気に入り2500人突破! しおり1000件越えありがとうございます! 高評価、誤字報告いつもいつもありがとうございます! そしてこれからもどうかケイジ達をよろしくお願いします。



 ケイジの一口メモ 特撮のゲスト出演は割とある。以前仮面ライダーで出演した際は主演の主人公も高身長イケメンなのにケイジとの身長差と破天荒なアドリブが採用されたりで放送後主演の俳優くんへ可愛いという声が増えてベビーフェイス向きの役の仕事が増えることに。



 「うーん・・・・テイオーよりはルドルフよりかねえ。いやあ、本当にでかい」

 

 

 「ヒン」

 

 

 『またレジェンドが来たぞお。岡崎元ジョッキーじゃぁーん』

 

 

 俺が厩舎に戻って早々にきたおっちゃんことトウカイテイオーやシンボリルドルフの主戦騎手。皇帝と帝王の相棒岡崎元ジョッキー。俺をじろじろ見てはすごくうれしそうに、だけど悲しそうな眼をして俺を見ている。

 

 

 松ちゃんと大竹騎手ここに来れば無敗の三冠達成した騎手が三名そろうのになあ。うーん見てみたい。

 

 

 「神様に君が生まれてくれたことを感謝すると同時に、できれば7年早く・・・いや、5年、3年でも早く生まれていたら私は少ししか乗れなくても君の屋根を取りに行った・・・土下座してでも乗りに来ただろうね。贅沢なのは、神様に我儘を言っているのは分かっているけど」

 

 

 『流石にこの頼みは俺も言えねえなあ。たとえまた会える機会があっても。岡崎元ジョッキーには悪いがこの時代の皆とやりあえないのはなあ』

 

 

 「ははは。ケイジ君、言わなくてもわかるよ。私がここまで惹かれて、思わせるのもゴールドシップやジャスタウェイとの激闘。私から見てもあの二頭を思い出す、いや・・・海外の戦いも含めればそれを超えるかもしれない世代の中であの結果を出せたからこそなんだ。あの菊花賞・・・涙が出た」

 

 

 ちなみになんだが、テキのおやっさんや久保さん、真由美ちゃんは空気を読んで外で何かあればすぐ来られるようにしつつも水入らずにしている。

 

 

 そっかあー・・・あの菊花賞は言ってしまえばミスターシービーと何度もやり合った、あのTM対決以外でもマックイーンの強さを何度も味合わされた岡崎騎手からすれば実況も相まって本当に走る姿が見えたのかもなあ。

 

 

 「全く。そこから海外でルドルフに並ぶGⅠ勝利数を獲得。テイオーの、ミホシンザンの無念を晴らしたと思えば次はルドルフが出来なかった世界への飛翔も果たした・・・ありがとう、ケイジ君。テイオーの子どもでここまで夢を、いや私の思い描きつつもついぞ見れないと思っていた景色を見れたことが本当にうれしすぎてたまらない・・・・・・ごめんね。年を取るとどうしても涙もろく」

 

 

 『気にすんねえ。涙は心にたまった宝石がこぼれただけよ。そこまで想ってくれるんなら俺も俺のおやじや爺ちゃんも喜んでいるぜ』

 

 

 「天皇賞(春)のゴールドシップはやる気を少し欠いていた。だがそれでも掲示板入りする走りを見せた。ケイジ君、凱旋帰国からのレースだが勝てとは言わない。気負い過ぎずに、自分のレースでぶつかってくれ。怪我をしなければ私はそれが一番だ。いや、本当にテイオーとルドルフの子孫でここまで頑丈な子が生まれるとはなあ・・・」

 

 

 『そこは神様に言ってくれい。まあ、どちらもケガやローテに泣かされたりで華やか、熱い戦いを見せる一方苦しい場面や苦労がまたすさまじいものねえ』

 

 

 この後、ひと段落したということでみんなと一緒にワイワイ過ごし、岡崎元ジョッキーからもらった人参をかじり、ぼんやりしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『いよいよ始まります今年の上半期における最強決定戦宝塚記念! もう夏に差し掛かったここ阪神競馬場は満員御礼。レースが待ちきれないと、優駿たちの走る姿を早く見たいという声が聞こえます!』

 

 

 さてさてやってきましたは阪神レース場で行われる宝塚記念。このレースは獲得賞金ではなく馬たちの人気によって出走資格が手に入る。いかに強かろうと不人気であれば出られない。ある意味では『最も愛される馬が勝つ』レース、なのかなあ?

 

 

 そしてここ最近ずっと見ているけども競馬場は今日も満員御礼。いやー嬉しいね。そして皆さんおっひさー

 

 

 『今年のレースに参加したメンバーはモノが違う! レベルが違う! さあまずやってきたのは先の天皇賞(春)でゴールドシップを下し黄金世代はまだここにもいるぞと見せつけたフェノーメノ! 今日も見事な仕上がり。さあここでも勝っていけるでしょうか注目されます』

 

 

 『続いて負けはしましたがそれで落ちる実力や人気ではありません。10番ゴールドシップ。あいも変わらずの舌ペロをしながらフェノーメノをにらんでおります。挑発なのでしょうか? 今日はウキウキで進んでおります』

 

 

 相変わらずだなあアイツ。同時に元気そうなのが嬉しいけど、さてさて俺らの出番だー

 

 

 『そして皆さまお待たせしました! このコンビの入場です! 今年の3月に行われましたドバイミーティングでドバイDF、シーマクラシックそれぞれを手にするという快挙を達成! 更にはワールドレコード、日本競馬史初も持ってきたまさしく最強世代の筆頭! 11番ジェンティルドンナ! 鹿毛の馬体が悠然とターフを歩みます!

 

 

 更には12番ケイジ! ターフの傾奇者もここに帰ってきました! ドバイでも相変わらずの奔放ぶりと大逃げをもって見事GⅠを7勝! 4歳にしてすでに祖父の皇帝シンボリルドルフに並ぶ怪物はここ宝塚記念も持って帰りゴールドシップへのリベンジなるか! それともフェノーメノが、ジェンティルドンナが阻むかと熱い戦いが予想されます!』

 

 

 『やー思ったより早く再会できたなあジェンティルちゃん。そんでゴルシもフェノもおっひさー』

 

 

 『ええ、そうね。元気そうで何よりよケイジ。そして・・・あいつは相変わらず・・・』

 

 

 『来たなケイジ。ゴルシにはリベンジできた。今度はケイジにも勝ってやるからな!』

 

 

 『へいへーい。お? ケイジお久しぶりでゴルシー・・・なんで天皇賞いなかったんだよお! 正直萎えたんだぞお前いないし!』

 

 

 おう、やっぱやる気スイッチ電源ごと落としていやがったかこいつ。それで3位ってやっぱこいつステイヤーとしてはほんと日本競馬史でも最強格だわあ。ジェンティルちゃんらの得意とする距離だけど、その中でもこいつスタミナに任せたハイペースなレースと末脚残すから怖いんだよねえ。だからこそ楽しいし燃えるけど。

 

 

 『萎えたからっていう結果じゃねえだろ。つーかフェノーメノに喧嘩売ったって聞いたけど?』

 

 

 『途中で飽きちゃった~でも、今日は面白くやれるぞ~ジェンティルちゃんとケイジがいるからすげえわくわくすっぞ』

 

 

 『よし、今日も勝って分からせてやる』

 

 

 『貴方がジェンティルちゃんいうな! そして負けませんわよ! わたくしは世界のレースで勝ったんですもの! ここでも勝って魅せますわ!』

 

 

 『おっと。ケイジ世代らのメンバーが集まって何やら嘶きつつケイジとゴルシの変顔を見せあい、耳をしきりに動かしております。ここお笑いの本場関西、阪神で見せるその顔芸百面相のお披露目にレースでも変顔でもライバルをしておりますゴールドシップの様子に競馬場は熱気の種類を変えて笑い声に溢れます』

 

 

 いやー調教中も表情筋動かしたりして表情豊かに行きたかったからなあ。頑張ったぜー? 代わりに真由美ちゃん笑いすぎて後日腹筋筋肉痛になったけど。

 

 

 しかしー・・・上半期の日本競馬古馬最強決定戦。有馬より短い距離のレースだってのに、12頭とは少ないなあ。回避とか、不調な子が多いのかねえ。

 

 

 『えーいいジャンよジェンティルちゃん。綺麗だし、強いってケイジから聞いて楽しみにしていたんだぜ~?』

 

 

 『にやにやするな白饅頭! ほかの馬にもちょっかいかけつつよくもまあ器用にできますわね!?』

 

 

 『こいつは・・・おぉ。もう』

 

 

 「いやはや、ほんとカオスで愉快だなあこの子ら。ケイジ、今日の作戦はどうする?」

 

 

 『松ちゃんも付き合ってくれてありがと。うーん・・・・追い込みで。確か新聞では俺以外にも逃げをする馬がいたはずだし、ペースメーカーと引きずり回してもらうのはそっちに任せるわ』

 

 

 同期のわちゃわちゃしたやり取りを見つつ松ちゃんの声を聴いて頭を6回くらいヘドバンする。おいゴルシ。真似しても疲れない? めっちゃすごいシェイクしているんだけど? コーラでも振る動画でも見た?

 

 で、この俺のヘドバンは松ちゃんにどのレース運びをするかって合図。1~2回なら大逃げ。5~6回以上なら追い込み。一緒に勉強して考えたサインだけど、松ちゃんも俺になじんでいるし、すんなり共通のサインになったわ。

 

 

 「了解。大逃げ二頭だとあの爆逃げコンビを思い出したけど、それは次だね」

 

 

 『ヘリオスとパーマーのお笑いレースね。どちらも凄い強いんだけどコンビ組んだらああなるからほんと面白いわ』

 

 

 改めて、大逃げコンビに泣かされていたテイオーの子どもの俺が大逃げを武器に引きずり回したり、追い込みで戦うとか岡崎元ジョッキー最初俺を見たときどんな顔したのやら。さーてファンファーレもなっていよいよゲート前―いやーこいつらのやり取り見ているだけで俺は変顔しながら楽しく眺められていいですわ。

 

 

 『さあいよいよゲート入りです! 今回の宝塚記念出走は12頭。ですがそのメンバーの豪華さは間違いなく歴史に残るもの! 同期にして牝馬、牡馬それぞれの三冠馬にそれを打ち破った不沈艦にそれを倒した黒い刺客! このレースに雨は似合わないと先ほどまで降っていた雨は上がり青空が顔をのぞかせています。馬場は良。怪物たちの戦場にふさわしいものでしょう。

 

 

 次々とゲートに各馬が入りまして出走準備が整っていきます』

 

 

 なにやら大竹ジョッキーの熱い視線を感じつつもゲート入り。上半期最強決定戦の王座をかけていざ・・・勝負。

 

 

 『係員が離れまして・・・・スタートしました! おおっと5番シルビート一気に前に出る11番ジェンティルドンナそれを追うように前に。ケイジは・・・今回はゆったり後ろを走ります。今回は追い込みで仕掛けるようです』

 

 

 出走馬の数が今回は少ないし、俺以外で大逃げいる分楽に前に出られるもんねーたまにはゆったりと脚を溜めてダイナマンもいいもんよ。ってことで・・・・あれぇ?

 

 

 『さあ、二番手を狙いますジェンティルドンナ・・・なんと10番ゴールドシップ4番手! 今日は前目につけて先攻集団についていますその横を3番フェノーメノが食いつく形になります』

 

 

 『ジェンティルちゅわんいいケツしてんねえ。まってー』

 

 

 『よらないで馬鹿が移る!!』

 

 

 『お前ら馬じゃろがい・・・ええー・・・』

 

 

 まさかの先行策。いやまあ、ステイヤーのフェノーメノのエンジンかかる前に早めに仕掛ける。いい場所とるのはナイス。と言いたいけど絶対これジェンティルちゃんに突っかかってるだけじゃん。騎手の兄ちゃん少し動揺しているんだけど。先行で仕掛けたのって俺とやり合った日本ダービーくらいだもんな。俺が後ろなのにそれしちゃうんだ? って感じの反応してんぞ。

 

 

 『レースは既に第2コーナーを曲がり先頭はシルビート大逃げを持って既に7馬身、8馬身・・・10馬身とリードを広げます。二番手にぽつんと4番ダンスバラムーン。少し離れまして11番ジェンティルドンナ。それをマークします10番ゴールドシップ。その次に6番トーセンキッシュ。3番フェノーメノに8番ナカヤマノブシが続き、最後尾には12番ケイジ。シルビート1000メートルを通過タイムは57秒8とハイペースな試合になります』

 

 

 うーん。もう1000メートル通過かあ。やっぱ追い込みだと足のためをしやすいから疲れんなあ。そして大逃げを擦る馬たちを後ろから見るとこんな感じって改めてよくわかる。経験を積んだ古馬。そしてこの宝塚記念で勝利を狙うために磨かれた手綱さばき、体裁きを持つ騎手たちの技量もあっていい勉強だわー

 

 

 『シルビート一足先に第3コーナーへ。このレースの四天王の位置取りを改めて、11番ジェンティルドンナ3番手で馬群の先頭を走りそれについていきます10番ゴールドシップ。3番フェノーメノは4番ダンスバラムーンのやや後ろを走り、12番ケイジは最後尾ポツンと走っております。

 

 

 先頭から最後尾までおおよそ25馬身の差がついたままシルビートさらに逃げて先頭集団と15馬身差をつけて第三コーナー中間を走ります。ケイジさらに遅く30馬身まで差が広がります』

 

 

 さてー・・・そろそろ仕掛けていくかあ? 松ちゃんいくぜ。

 

 

 「・・・そろそろシルビートも疲れが出てくる。行くぞケイジ! 外からまくっていけ!」

 

 

 『気が合うねえ! おうよ! さあこっから勝負だ!』

 

 

 『シルビート第4コーナーをカーブするも既にリードが詰められている! しかしその中でもどうにか7馬身残して最後の直線へ! おっと!? ケイジ仕掛けた! 第3コーナー半ばからすっ飛んできてあっという間に先頭馬群に猛追していく!』

 

 

 淀の坂も、不慣れな芝でもねえ分ジェベルハッタよりもずっとやりやすいわ! そして数が少ないのも相まって余裕よ余裕!

 

 

 『しかし先頭馬群、四天王のうち三強は並んで直線に・・・おおっと!? ジェンティルドンナ、ゴールドシップに体当たりだ!』

 

 

 『どきなさいこのデカブツ!!』

 

 

 『なんなんだぁ今のはぁ?』

 

 

 『ひゃんっ!?』

 

 

 『ぶわはははははっははははははは!!! あーっははははははは!! や、やべえ力がぬけ・・・ブフス!』

 

 

 クッソwwwww そういえば宝塚記念でこいつらこれしていたな! やべえ忘れていたわ! わ、笑うついでに息が抜ける。くそう。貴婦人タックルも黄金の不沈艦には効かないってか。いやージェンティルちゃんもすげーパワーしているのにこいつも大概だなあ。流石だぁ!

 

 

 『フラれちゃったからもう行くでゴルシー』

 

 

 『はぁ!? 何よそのかそ・・・・』

 

 

 『おおっと!? ケイジ爆笑しながら失速・・・いや、再加速して猛追! ジェンティルドンナは失速したが追い込みをかけるゴールドシップにケイジが並ぶ! シルビート、ダンスバラムーンを撫で切って有馬記念の再来のようなたたき合い! いや、ジェンティルドンナも持ち直して追いかけてくる! フェノーメノも食らいついていく!』

 

 

 『待ちやがれぇいゴルシぃ! 俺との対決はまだだろうが! もうちょい付き合え!』

 

 

 『待っていたぞお? でも勝つのはオイラだよーフラれちゃったのを伊馬波さんに慰めてもらう予定だし』

 

 

 『勝手に来ただけでしょうに!!? こんの・・・待ちなさい白饅頭にケイジ!!』

 

 

 『ふざけんじゃねーよこの野郎ども! 勝つのは俺だぁああ!!』

 

 

 『わたくしは女でしてよフェノーメノ!!』

 

 

 くっそちぎったつもりなのにもう差を詰めてきた! ほんとあの末脚の爆発や天皇賞を取ったスタミナでの粘り腰が怖いなこいつら! でも勝つのは俺だあ! このやろー笑わせてくれた分の礼は俺の勝利で返してやる! 松ちゃんの闘魂鞭も来ているんだ! こなくそぉお!!

 

 

 『四天王激しいデッドヒートに会場が大盛り上がり! 人馬一体の走りをもってのたたき合い! しかしそこから一頭抜け出したゴールドシップ!! 猛追するケイジも抜け出そうとするが届かない! あとわずか! もう少しが遠いケイジ!』

 

 

 『負けないぞお! 天皇賞萎えた分のお返しだケイジ!』

 

 

 『なら俺は笑いをくれた分のお礼をくれてやらあ! ぐぉお・・・! 何だこの加速・・・!』

 

 

 くそぉ。溜めた足を全部出し切ったうえでさらにいい場所つけているってのにこいつの脚が鈍らん・・・! さらに加速だとぅ!? くっそおぉ・・・届かねえのかぁ・・・!

 

 

 『ゴールドシップ二枚腰の加速をもってケイジに一番槍を譲らずにゴールイン! 新たな金メダルを獲得! 二着にケイジ!! 三着にジェンティルドンナ。四着にフェノーメノ! 同世代で宝塚記念の順位を独占! タイムは2分12秒3! これはとんでもないタイムだ!

 

 

 そしてやりましたゴールドシップ! ドバイミーティングの覇者にして三冠馬二頭! 天皇賞馬フェノーメノをまとめて千切り捨て、リベンジを見事達成! 流石は黄金の不沈艦! 簡単には沈むことなき力強い走りで見事上半期最強の称号ももぎ取っての勝利です!!』

 

 

 くっそー・・・負けたかあ・・・いやあ、強い・・・世界での経験をもってしてもこいつには届かなんだか。だが、同時に誇らしいし・・・かっこいいぜぇー・・・・ぶふ、すまん。それ以上に今は笑いの方が強いけど。

 

 

 『ぬあぁあああああ!!! 何であんなのに負けたんだぁああ!!!』

 

 

 『わたくしのタックルでも沈まないなんて・・・! オルフェーヴルはあれで怯みましたのに・・・!!』

 

 

 『ゴルシだからさ・・・(某赤い彗星風に)ま、それはそれとして、おめでとうゴルシ。いやージェンティルちゃんの体当たりを受けたうえでのあの走り。見事だったぜ』

 

 

 『ありがとうさん。いやーケイジの姿が今日は見えなかったからあれ? ってなったけど、最後の勝負面白かったよぉ。これで伊馬波さんにも褒めてもらえるもんね。茄子はしばくかもだけど』

 

 

 『勝利した時くらいやめてやんな。いやあーみんな強かったし、楽しかったぜ! ありがとよ! やっぱみんな最高だ!!』

 

 

 これで二連敗。笑いのミスがあったとしてもゴルシもタックル喰らっていたしで条件はおんなじ。やっぱり今日もゴルシが強かった。食らいついてきた。追い込みがメインのゴルシまさかの先行での戦いと大逃げのシルビートに振り回されつつもここまでやりあえたジェンティルちゃんにフェノーメノ。みんなみんな見事だった。

 

 

 凱旋勝利とはいかなかったがしょうがなし。今は健闘と勝利を讃えてターフを出るぜ。

 

 

 『ケイジ出走した全頭に頭を下げた後に大きく嘶いて悠然とターフを去ります。帰国後の華を飾ることをできませんでしたが、それでも勝者を称える姿は見事! 松風騎手も頭を下げてともに移動します。そして勝利したゴールドシップやはり強い! 三冠馬にも劣らない輝きはまさしく黄金! いや芦毛なのも相まってプラチナの輝きを見せつけるようにウイニングランを拒みます! 勝利の歓声から笑いがまたもや入り混じる! ケイジに向かって変顔と舌ペロをした後に頭を下げてライバルを見送ります』

 

 

 おいこらゴルシ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『うーん・・・・・まあ、あんな珍事はないと・・・は思えないが、今のゴルシとやり合うにはもう少し力が必要だなあ。どうしたもんかなあー? 先行とか差しだと俺の馬体で馬群に飲まれると抜け出すのキッツいし』

 

 

 「うぅーん。ケイジ君はほんと極端な戦い方の方がいいしねえ・・・あーでも馬群に呑み込まれないまま相手をすりつぶすのなら、ダイワスカーレットの戦い方とかいいかも? えーと動画動画・・・テレビにつないで・・・と」

 

 

 宝塚記念が終わり1週間。わちゃわちゃ馬房内で動いて柔軟をした後に真由美ちゃんと今後の作戦、手札を用意するにはどうしたらいいんじゃろなあと相談中。大逃げと追い込み、大外ぶん回し。これ以外で何かないかなあと一緒に名レース、名馬たちの動画を見ていたんだが、真由美ちゃん思いついたらしくダスカの動画を見ることに。

 

 

 コントロール型の逃げかあ。みんなを焦れさせて磨り潰した後に残った脚を使う。俺の場合は逃げて差す。か差して逃げる。のどちらかだし、そういうのも悪くはないのかな・・・? 松ちゃん来たら真由美ちゃんに話してもらってから練習できるかテキのおやっさんとも相談だなあ。

 

 

 まあ、使うのはもう少し後になるかもだけど。今からKGⅥ&QESの用意もあるし、急ごしらえの武器では欧州の、本場の競馬では駄目だろうし。確か今回は女王陛下とドバイの王族の手配でまたいい場所に入れるんだっけか。有難いねえ。

 

 

 「け、ケイジに真由美ちゃん・・・た、大変なことになった・・・・!」

 

 

 どたどたと走り込んできて汗だくだくですげえ顔しているテキのおやっさん。どうしたんだろう。まさか登録忘れたとか・・・はないだろうし。すげえ不安そうな顔しているぞ・・・?

 

 

 「て、テキ・・・どうしたんですか・・・? み、水をどうぞ・・・」

 

 

 「あ、ああ・・・すまない・・・落ち着いて聞いてほしいのだが・・・松風君が今日のレースで落馬して、命に別状はないが大けがをした・・・全治2か月の大けがで、完治するのは最低でもKGⅥ&QES、凱旋門賞が終わるころ。その間はケイジの屋根が変わることになった・・・・!」

 

 

 「え・・・・・?」

 

 

 『な、なんだってー!!!?』




 リベンジ失敗。でもまあ楽しかったし面白かったしでいいかって感じ。次に勝ってやるとやる気満々。


 ケイジ 宝塚記念のゴルシタックルVSジェンティルタックルは来年だったっけとほとんど忘れていて大逃げいるから今回は追い込みでいいやと思っていたらあの光景を見てしまい爆笑。どうにか2位につけて面目躍如。まさかの海外遠征前のトラブルに心底たまげる。


 ゴルシ 相変わらずの不沈艦。ケイジに二連勝してうっきうき。でもまた海外に行くと知って不機嫌になりつつ茄子調教師に頭突きをかまして伊馬波さんのシャツを破く。ジェンティルドンナにフラれちゃったけどまあいいや。


 フェノーメノ 色々あれな戦いをしたうえで勝ったゴルシに負けて悔しい。ただ今回の宝塚記念で4着に入っているし天皇賞も取れるステイヤーなので種牡馬としての期待も人気もうなぎのぼり中。


 ジェンティルドンナ 自身のタックルがまさかの跳ね返される事態にびっくり。パワートレーニングと坂路にいそしむ。


 岡崎 かつてのルドルフとテイオーの主戦騎手。宝塚記念でも今のゴルシは厳しいと思っていたがケイジは爆笑するわゴルシとジェンティルのタックル合戦が見られるわで長い騎手人生でも早々見られない光景に思わず笑ってしまった。松風騎手の怪我を聞いて急いで手を打つように的矢調教師と連携を図る。


 松風 ケイジと負けてはしまったが2着。そして追い込みの強さも二度目の使用で実感したのでこれからだと思っていたのだがケイジの主戦騎手になる前からの付き合いの陣営の馬のレース(条件戦)に参戦。レースは勝利したがその後馬に振り落とされて大けが。命には別条なし。完治後も騎手として問題なく行けるのだが欧州二冠挑戦が消えてしまいケイジと相性のいい騎手は誰がいいかと急いで葛城大吾調教師と連絡を取り合い怪我の事を謝った。


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隣の芝はやばい

 感想でケイジの戦法や騎手さんを予想してくれたりと皆様の感想を見てにやにやしちゃいました。そして、GⅠレースがギャグになっているのも困ったことに史実。今回は大逃げではなく追い込みでしたが大逃げでケイジが爆笑していたらダイタクヘリオスを思い浮かべてくれた人もいた可能性が・・・?


 ケイジの一口メモ 部屋割は ケイジ&ジェンティルドンナ シゲルスミオ&ヴィルシーナ ナギコ&ホッコータルマエ ゴールドシップ&ジャスタウェイ キジノヒメミコ&オルフェーヴル フェノーメノ&ラニ


 シリウスメンバーは大体部屋が近いの相まって騒ぎが絶えない。かといって離しても変わらない&周辺への被害増大が懸念されるのでエアグルーヴ曰く「隔離」のためにまとめたとか。


 「私、松風さんにあってきますね。色々ありますし・・・」

 

 

 「俺がしばらく出るし、有休も使っていいからつきっきりでもいいよ。むしろ俺の代りにありがとう真由美ちゃん」

 

 

 「それと、馬主さんら、牧場でも言われるだろうけど私達ケイジ陣営は松風守騎手を主戦騎手から外すつもりは毛頭ないとも伝えておいてくれ。手術後の麻酔の副作用や麻酔が切れた痛みでいろいろ精神も不安定だろう。支えてあげなさい」

 

 

 『俺からも今日のご飯の人参とリンゴ・・・は駄目だなあ。馬の飯だったものとか病院で突っ返されるわ。あ、アニメがあったな。えーと松ちゃんからもらった未来少年コ〇ンと・・・トモゾウからもらったふしぎの海のナデ〇ア・・・あ、電王とメビウス、80先生もあるじゃん。これ持っていってあげてー』

 

 

 「あ、ありがとうございます久保さん、テキ。ケイジ君・・・DVD、多すぎない?」

 

 

 「全治2か月。気分転換用にって押し付けてしまえ。ケイジからのものだと言えば喜ぶよ。それに、主戦騎手が大舞台前でこうなるというのはなあ・・・しかも三冠馬でこれが続くというのは・・・いやでも意識してしまうだろう」

 

 

 松ちゃんの大けがもあって出国10日前を切ったってのにあわただしくなった俺らの陣営。緊急手術を終えて一晩経った松ちゃんに昨日は俺以外の皆で見舞いに行ったが今日は真由美ちゃんが代表で見舞いに行くことに。前々から距離が近くなっていたし、まあ真由美ちゃんレベルのスタイル良しの美人さんに看病されりゃ少しは気が休まるってもんだろ。

 

 

 しかしなあ・・・オルフェの事もあるが、二年連続で海外遠征、大舞台に挑む日本馬で鞍上の変更が起こる。俺らの場合はしょうがないとはいえ嫌なジンクスが出来そうだぜ。しかもルドルフの孫の俺がちょうど遠征の際にトラブル起きてだし、松ちゃん気を病んでなけりゃあいいなあ。

 

 

 「私、しっかり松風さんを励ましてきます。テキ、久保先輩、ケイジ君。行ってきます」

 

 

 「行ってらっしゃい。さて・・・松風君の一番の無念はケイジの遠征自体が取りやめになることだ・・・やはり一番の問題は騎手だな・・・」

 

 

 「的矢さんと岡崎さんがあちこちに急いで連絡取って、騎手が一人来てくれるそうですけど、真面目な話挑む舞台とその挑戦する馬。話題性もあってドタキャンとか、断られそうで不安ですよ」

 

 

 「ああ、私の方でも知り合いに連絡してみたが皆断られたよ。ケイジの経歴に、ましてやKGⅥ&QES、凱旋門なんて荷が重すぎると・・・な・・・・」

 

 

 『あー・・・まあ、ディープやオルフェの件もあるしなあ。それに加えて俺はなあ。ガタイも邪魔するか』

 

 

 真由美ちゃんを送り出してから今後どうするかで問題はやはり騎手。欧州二冠。しかもまあ、招待状貰ってのいわゆる推薦枠の俺。自分でこんなん言うのはあれな話だが、無敗の四冠に海外GⅠ含めて7勝。競馬ブームもみんなと作ってきたし、志村さんやドバイの王族、GENBUグループや日本最大手ゼネコンの会長。その他もろもろの人らとも関りがあるし身近な俺の実績や周囲も含めればまずこれだけでもとんでもないプレッシャー。

 

 

 更に言えば俺の体格もあっていつも通りの手綱さばきを変えても短期間で調整して御せるかという問題も出てくるし、海外レースでの経験の無い騎手は間違いなくたたかれる。しかも今はSNSやらで情報の伝達速度は速い。全国、世界でも顔が知れている俺だからまあ最悪何でお前さんレベルの騎手が乗っているんだとさんざ言われるだろうなあ。

 

 

 松ちゃんも今は俺の鞍上にあっていると競馬を長く見ている目が肥えた客、関係者、ホースマンからは認められる声が多いが、心無い声やアンチ、悲しいかな。俺の相棒にふさわしくないという声は今でも多い。2年近く一緒に戦って、この実績を出しても。だ。

 

 

 ・・・・・・そう考えるとサンデーはほんと騎手や陣営に恵まれているなあ。あんな騒ぎの渦中のなか伝説の騎手の代りがまた伝説。アメリカ競馬界を変えて日本の最強騎手が私のあこがれ、ヒーローだというほどの人が一緒に戦ってくれたんだし。

 

 

 「兎にも角にも、来てくれる騎手さんは一人いますし、その人と出来る限り調整して今できる最善をするしかないっすね。あのお二人が呼んでくれた。ケイジの鞍上代打を務めると言い切ってくれる胆力。それに期待するしかないですわ」

 

 

 「・・・そうだな。私は私でケイジの調教、併走や慣らしの走りの際に気を付けていることを箇条書きにしてみる。久保、君視点でもケイジの管理、心を通わせるにあたって必要なものを書き出して騎手さんに渡すメモを用意するぞ」

 

 

 「ウッス。ケイジも頭がいい。騎手さんと早くなじんで、松風君の分も戦って、次こそは必ず俺が挑戦するんだという気持ちを松風君に持たせるよう頑張りましょう。ケイジと松風君の、そして騎手さんのために」

 

 

 『俺は軽くわちゃわちゃしてから小休憩しつつ騎手さんを待とうかねえ。いつでも動けるようにしつつ体力は残して』

 

 

 ま、俺の方も負けちゃいねえ。いや、こんだけの人が動いて大舞台への道を閉ざすもんかとやってくれるんだ。必ずいい結果を見せられるようやるだけだわな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お待たせしました。今回は松風君の代りに僕が鞍上を務めます。・・・正直な話、僕でいいのかとは思いますがお願いします」

 

 

 そしてやってきた騎手。うん。この人なら文句はねえよ。いや出せねえわ。この人の代りって誰出せばいいんだよ。アメリカのレジェンド騎手出してようやくだってレベル。

 

 

 「こちらこそ急な申し出なのにもかかわらずにありがとうございます。・・・大竹さん。正直な話、貴方以外には私達弱小陣営ではコネも少なく誰も騎手が捕まらずにいた中で来てくれたのは本当に天の助けです」

 

 

 『おあちゃー本当に来てくれたかあ大竹騎手。いや、豪傑とヒットマンの認める最強騎手。あの二人が本気で頼む相手ってならそりゃあ大竹さんだろうけどさあ』

 

 

 「実際にオルフェーヴルほどの怪物でも届かない舞台。それに迫れる。ディープを超えるかもと言われるケイジへの騎乗。今の時代はネットが発達した分若手もベテランも怖がるのはしょうがないでしょう。・・・・・・僕も凱旋門賞の経験はありますし、復帰した松風君にいいバトンを渡せるよう。ケイジに負けを与えないよう頑張ります」

 

 

 大竹さんの登板は実際経験もある分良いんだけどねえ。大竹さん緊張というよりはギラギラしている当たり根っからのホースマンだし、なんでだろうねえ。俺を見つつも俺を見ていない感じがするのは気のせいか?

 

 

 ま、いいか。それを見極めるのは調教からでも遅くはない。頑張るかー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 終わったはずの血統。誰もがそう言っていた。メジロアサマ、シンボリルドルフから続くパーソロン系。しかしその血統も次から次へと来る海外の血統に淘汰され、トウカイテイオーも産駒で結果を出しつつも騙馬が多く、最早中央競馬では母系からでも少ないほど。この世界にいれば嫌でも血が途絶える一族が出るのは避けられないし、時代が求める強みや、途絶えるには相応の理由あってのことだ。

 

 

 いかにあの名馬たちを出そうともパーソロン系は終わり、時代はサンデー、ディープ、クロフネにキンカメ。そういわれていた中、そんなの知ったことではないと言わんばかりの怪物が歴史をひっさげ、常識も蹴り壊しながらやってきた。

 

 

 僕とディープ、岡崎騎手とルドルフの成し遂げた無敗の三冠を越え、無敗の四冠。しかもその中でワールドレコード更新を二度。

 

 

 ワープしたかのようなゴールドシップとそれでさえも届かせない快速の大逃げを見せた皐月賞。

 

 

 大逃げでへばる馬たちをすり抜けて猛追してきたジャスタウェイとシゲルスミオをねじ伏せて手にしたNHKマイルカップ。

 

 

 全盛期のマックイーンを思わせるような先行策で挑んできたゴールドシップにトウカイテイオー、シンボリルドルフを思わせる叩き合い、勝負根性の強さでかわして手にした日本ダービー。

 

 

 そして、幾つもの名馬たちの走りを呼び起こしてみせ、新時代の到来を見せつけた菊花賞。

 

 

 他者から見た僕とディープ。・・・そしてスズカ。それを見せつけるような大逃げと追い込みを武器に戦い、熱く熱く戦い、勝利も敗北も楽しんで相手を讃え、そして場を沸かせるスター。もう目が離せなくなった。気が付けばネットや新聞、知り合いからケイジの情報を探した。そして出てくる写真や一見怪文書にしか見えない情報の数々。その事実やエピソードを知れば、夢中になった。

 

 

 非常に頭がよく、人の言語を理解している対応に反応。人懐っこいが仲間を馬鹿にすれば、害そうとすれば馬房の扉を蹴り壊し、熊さえも蹴り殺すほどの闘争心と怒りを見せる。大舞台となれば変顔や奇行を繰り出し、ゴールドシップを代表に良く会話をしたり睨めっこをしばしば。

 

 

 あのテイオーたちの血でドバイのレースを手にし、そこでも珍行動を乱発。何でも騎手とジェンティルドンナにドリフの芸を見せて笑わせたり、飛行機の中でアニメ鑑賞会を開いて陣営皆で見たとか、自分の長いキャリア、騎手人生の中でも聞いたことがないようなことばかり。

 

 

 乗ってみたい、あの二頭だけではない。かつての相棒たちを思い起こさせる力強い豪快な戦いぶり。人懐っこい傾奇者。気が付けば常にそう思っていた。

 

 

 そしてそのチャンスは不本意な形だがやってきた。騎手の大けがによる代打。喜んではいけないとわかっていたが、内心飛び上がりそうな自分がいたのも確かだ。あのKGⅥ&QES、そして凱旋門賞にケイジと挑める。今までの相棒たちでも届かなかった場所に、相棒たちを思わせる怪物と走れる。

 

 

 岡崎さんと的矢さんからこの話が聞いた時はすぐさま行きますと言った。もう一度あの舞台へ、そして・・・皆と見たかったあの景色を・・・

 

 

 「ぬっ・・くぐ・・・・」

 

 

 そして今はケイジの走りを感じるためにウッドチップの練習場でケイジに乗って走らせているが、改めてケイジの規格外さ、そしてその特技と馬体が噛み合ってしまった故の乗りこなすことの難しさがよくわかる。

 

 

 660キロに届くかという規格外の馬体は普通に乗るだけでも足を大きく広げるせいで必然深く馬体を挟み込めずに踏ん張りが浅くなるし騎乗姿勢がずれてしまう。更にはケイジの場合はコーナリングがえげつない。ボクのあこがれるヒーローも騎乗したサンデーサイレンス。彼の舐めるようなコーナリング。コーナー最内を取ったうえで加速。内を他馬に防がれようとも知ったことかと伸びていくあの走り。それをこの馬体でやってしまうのだからケイジよりも僕の方が外に身体が膨らんで吹っ飛んでしまいそうなほど。

 

 

 コーナリング以外にも直線も決して遅くはない。いやむしろどっちも遜色なく上手で強く、速度もパワーも問題がない。坂だろうが足が鈍らないのだから怪物だ。

 

 

 これをこともなげに見える。綺麗にいなして指示を飛ばす松風君の凄まじさとその努力がよくわかる。ケイジと共に2歳戦線を潜り抜けてからは特にそれが顕著で、完全に覚醒したと言ってもいい。ケイジほどの才能が松風君の才能の蓋を壊してレベルを引き上げ、互いにベストな状態ゆえにあの戦いを見せていたのだと教えられる。

 

 

 ・・・・・こういうところは僕とスーパークリークなのかもね。松風君と君の関係は。ああ・・・すごい。こんな、こんな子と一緒ならあの景色を見れるかもしれない。スズカと一緒に見たかった、ディープと目指したあの舞台が・・・

 

 

 「ヒヒン・・・ブルッルルルゥ・・・・」

 

 

 「どうした? ケイジ。疲れたかい?」

 

 

 とんでもない速度の加速を見せて走っていたケイジだが、突如ゴール前で減速して降りろと言わんばかりに身をかがめていく。

 

 

 汗も大したことがなく、息が乱れていない。そもそも菊花賞であれだけ大暴れするスタミナ持ちが早々ばてることも無い。・・・急にだが自分を拒むように動き、いよいよ振り落とそうかとなったところで僕が降りると、すぐさま自分の馬房の方に向かって戻っていく。

 

 

 「・・・・・・・どうしたんだろうか」

 

 

 練習好きな話は聞いていたのだが、急にこの反応。テキや久保さんが手綱を取ろうとすると邪魔するなと言わんばかりに暴れ、すぐさま自分の脚で走り戻っていった。

 

 

 僕とケイジの騎乗の練習は、中途半端な形で最初の日を終えることになったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「またか・・・しかし、今回はまたひどいな。前にもまして」

 

 

 「NHKマイルへ出せってごねた時ですね・・・飛行機の話を出せば顔を見せますが、練習自体は嫌みたいです・・・」

 

 

 「馬が出走レース増やせという話はまあ置いておくにしても・・・どうしたんでしょう。ケイジ・・・」

 

 

 「前回は自分からこのレース出せって指示した分分かりやすかったですが、今回は異常ッすね。プールトレーニングをこの季節でも出たがらないとは・・・うーん」

 

 

 あれからはや3日。ケイジが練習をほとんど拒否して久しい。必要な分の運動はするが、それだけでまるで動く気がない。食事も自分で抑えている分太ることはないが、それにしたってみんなから見てもこの事態は異常らしい。

 

 

 「普段の練習好き。気を抜けば本番張りの速度を平然と出しかねないからなあ。・・・ウッドチップではそれをよくする当たりここなら負担が少ないと気づいているんだろうが・・・さて・・・これでは満足に大竹さんと戦うことが出来ないぞ・・・」

 

 

 「うーん・・・練習嫌いというか、そういう子はスペシャルウィークやステイゴールドを思い出すけど、あの子たちの場合はさぼりたいって気分が強いけど、なんだかケイジは違う感じですよね」

 

 

 「あ、松風君から電話来たっす。もしもし? 久保です。ほうほう・・・・はい。はい・・・大竹さん。松風君から伝えたいことがあるそうです。一度外でじっくりと・・・」

 

 

 いつの間にやら手を回していたのか。すぐさま久保さんから携帯を受け取り、すぐに厩舎を出て耳に携帯を当てる。

 

 

 「もしもし。大竹です」

 

 

 『大竹さん。忙しい中失礼します。松風です。話は久保さんからメールと、練習の映像は届いていて分かります。それで、時間も惜しいでしょうし単刀直入に言います』

 

 

 「うん。あの練習好きと噂のケイジの突然の練習拒否。何があったのか、松風君の視点から是非聞きたい」

 

 

 久保さんも何か思うものがあって前々から連絡していたのだろう。本当に動きが早く迅速。経験はまだ浅い陣営だが今後必ず伸びるチーム。ここに馬を預けられるのであれば馬も馬主も幸いだろう。

 

 

 そして、松風君がつかんだヒント。それは何なのか。僕も分からない謎の原因を知りたくてしょうがない。

 

 

 『僕にとっては大竹さんは憧れで、目標です。だからあらゆるレースの映像を見て研究しました。・・・・大竹さんは今ケイジに乗っているつもりではなく、スズカ、ディープに乗っている気持でケイジに乗ろうとしている。それがケイジは許せないんだと思います』

 

 

 「・・・・・・!! どうして、そう思うんだい?」

 

 

 『大竹さんの練習で、最初はケイジの馬体の大きさゆえにスタイルが崩れていました。だけど、二度目、三度目からはなじませて自身のスタイルとケイジの体格に合わせ、細かく調整をしています。そして、そこからはコーナーでも見事に対処して見せる。・・・・とんでもない実力。手綱さばきですし、すぐに合わせるあたりものが違います。

 

 

 ・・・ですが、ケイジがエンジンをかけて加速する瞬間、スタイルや空気がスズカやディープで最後の追い込みをするスタイルに微妙に変わっているんです。ケイジもまた競馬新聞や競馬史をみんなから聞いているでしょうし、騎乗スタイルの意味のない変更から大竹さんの心理を感じ取って俺と組むつもりがないのなら降りろと拒んだのでしょう』

 

 

 なるほど納得だ。馬というのは賢い。ライスシャワーのエピソードもそうだし、僕でいえばマックイーンか。晩年は不調があればすぐに訴えるし、長距離の負担、全盛期のようには難しいとよくごねていたし、引退に追い込んだ怪我の不調も予兆があったのかそれを伝えようとした。

 

 

 アグネスタキオンも皐月賞前に足の不調を感じたのか今日は走りたくないとごねまくったことがある。

 

 

 ケイジも感じてしまったのか。僕がケイジの戦い方や強さにあのまま怪我をすることなく走り抜けたであろうスズカ、早く引退をせず、蹄の問題なく戦えたディープ、怪物たちをねじ伏せるまさしく黄金の末脚を見せたステゴ。僕と戦ってくれたみんなの、特にこの三頭を思い出していたのが、強く重ね過ぎたのが。

 

 

 ・・・・ホースマンとしては恥ずべき行為だ・・・ケイジも今を生きて戦う一頭だというのに、まさか松風君の不幸があってケイジの道を閉ざすなと頼んでくれたこのチャンスに甘えてここまでしていたとは。

 

 

 『ただ、ケイジは決して狭量な馬ではないです。いえ、むしろあいつは夢を追う仲間や、人を愛して支えたいとさえ思わせる仕草を見せる漢です。大竹騎手。スズカやディープの事を想うなと、影を追うなという無茶は言いません。ただ、ケイジと一緒にその景色を見るために、スズカやディープとみるはずだった、見たかった景色を見るために一緒に戦ってくれと頼んであげてください。心から』

 

 

 「ケイジは、そこまで賢いのか・・・・・・そして、もちろんだ。ケイジなら、それで応えてくれるんだね」

 

 

 『もちろんです。あいつは漢の中の漢。イケメンな顔を自分で変顔して台無しにしたり、毎週ジャンプ読ませろとごねたり、藁で縄を作って脱走用の道具を用意しようとしたり、ボクを乗せたまま二本足で歩き始めたりと滅茶苦茶しますが、信じた分には応えようと全霊をかけて戦うやつです。

 

 

 ・・・・・・大竹さん。ぜひKGⅥ&QES、そして凱旋門賞であいつと戦い抜いて、スズカやディープ、いえ、今までのすべてを思いきりぶつけて勝ってきてください! ケイジは必ず応える。貴方の心からの声に、共に戦う戦友の願いを裏切らないやつです。僕から言えるのはそこまでです。

 

 ・・・あ。申し訳ないです。検査のために今はこれで・・・失礼しました。僕みたいな若造の言葉ですが、ケイジは動いてくれるはずですよきっと。では』

 

 

 電話が切れ、ツーツーという電子音が聞こえる中、気持ちがきれいに切り替わるのを感じる。そうだ、スズカやディープの幻影をケイジにつけて走るんじゃない。同じ走りを持って見たかった舞台に、可能性に挑みに行く。そしてそれを伝えに行くのだ。

 

 

 『君たちのスタイルや戦いは、確かに世界に届いた。それを見せつけてくれた馬が今もいるんだよ』

 

 

 と。大逃げと追い込み。それをこなせる傾奇者がいる。日本古来の血をもって破天荒なふるまいをもって挑みに行く。それを支え、リードするのが僕だ。挑みに行く舞台は栄光と伝統、そして火花どころか炎渦巻く戦場。それを乗り越えるために、今から急いでその用意をしないといけない。

 

 

 「そうと決まれば・・・ケイジに頼まねば!」

 

 

 携帯を閉じて急いで厩舎に戻り、携帯を久保さんに返してケイジの前で頭を下げる。

 

 

 「勝手に君をスズカ、ディープを強く重ね過ぎて申し訳なかった! でも、君にとっての相棒が松風君のように、僕にとっても相棒だったんだ。・・・・・ケイジ。君と一緒に戦わせてくれ。そして、その上で相棒たちと見れたはずの、見たかった景色を一度でいい。それを見るために、その目指す場所で一緒に戦ってくれないか」

 

 

 「・・・・・・・ムフン! ヒヒィン!!」

 

 

 ふてくされるようにマンガを読んでいたケイジ君の目に活力が宿り、任せろと言わんばかりに力強く鼻息を出して頷く。よく見慣れた戦意を燃やす馬の目だ。これならいける。早く出せと急かすケイジの首を撫でながら、心底楽しみな遠征に胸を高鳴らせた。

 

 

 そして、ノリノリなケイジの走りに僕は危うく宙を舞いかけた。本当に馬力が違う・・・・! あの世代はこれに食らいついていけるんだからほんとどうなっているんだ・・・!?




 改めてわかるケイジのジャマをせずに騎乗し、あまつさえ乗りこなす難しさ。そもそもの体格が違いすぎますしね。更にパワーもスピードもドン。大体早仕掛けでコーナリングで加速。シングレのレースシーン、コーナーで外に膨らんでしまったウマ娘がオグリにぶつかったシーンを思い出しつつ想像してくれると難易度がわかるかもです。


 ケイジ 俺と戦う気がなくスズカやディープの再来とやり合いたいのなら素質のある若駒見つけて馴致から仕込んで光源氏計画や金田一のガールシャイなおっちゃんの真似しろやと怒っていたが大竹騎手の夢を追うための戦いならと快諾。

 この後また一般新聞の記者から遠征が松風騎手ではなく大竹騎手の方が成果が期待できると言ったせいでブちぎれてもう一度馬房の扉を破壊して藤井記者がかばわなければ熊殺しキックを近くの壁にかまして記者君に馬の怖さを分からせるつもりだった。


 大竹騎手 今まで自分の前でぶっちぎって勝利していくケイジにある意味当然あの二頭を重ねていたがテンション上がりすぎてもう二頭と走っている気持になっていたのを指摘され、改めて一人の夢追い人、騎手として戦わせてくれとケイジと短期コンビ結成。松風騎手をこき下ろした発言をした記者にはケイジが怒った後に『馬の扱いや賢さをなめていると真面目にお腹を食べられたり指をかみちぎられたり蹴り殺されても文句言えないよ』といい、漏らす記者を見て少し気が晴れる。


 松風騎手 落馬は自分のせい。チャンスを逃したのは痛いがそれ以上に落馬したレースでしっかり馬が勝ってくれたこと、ケイジの戦いの旅路が乱れることがないどころか頼もしい騎手が、あこがれの日本最強騎手が乗ってくれてあんしん。

 感じる悔しさをばねにして必ず凱旋門賞にリベンジしてやると大竹騎手の騎乗やケイジのレースを何度も見直して自己分析開始。DVDは合間合間に見ている。


 KGⅥ&QES は掲示板の実況形式でやってみたいと思います。


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競馬の本場、欧州へ KGⅥ&QES(GⅠ)

 今回は掲示板方式のレース実況にチャレンジ。どうなるかは私にもわかりませんがよろしくお願いします


 ~ケイジついて語るスレ特別版 KGⅥ&QES~

 

 

 12:名無しの競馬おじさん

 

 いよいよ始まるぞ・・・欧州二冠の一つ。名誉あるレースKGⅥ&QESが・・・だ、大丈夫かなあケイジと大竹騎手

 

 

 13:名無しの競馬おじさん

 

 まさかの帯同馬ならぬ帯同犬と記者が一緒という珍事も付いてきて、ほんと海外遠征でもいちいちネタを提供する馬と陣営だなあここ。大竹騎手が来てくれて安心だが、同時に松風騎手が残念でならない・・・

 

 

 14:名無しの競馬おじさん

 

 欧州二冠に挑めるはずが怪我のせいで断念せざるを得ないからなあ・・・そしてユウジョウの鞍上から変わってまでケイジの鞍上を務めた大竹騎手も驚き・・・ではないよなあ・・・・

 

 

 15:名無しの競馬おじさん

 

 代わりの騎手なんていくらでもいただろうになんでユウジョウの鞍上変わったんだ大竹。凱旋門賞どうなるんだよ

 

 

 16:名無しの競馬おじさん

 

 アンチはよそへ行って。どうぞ。

 

 

 17:名無しの競馬おじさん

 

 まあ、あの戦闘スタイルと人懐っこいエピソードだらけだからなあ・・・いやでもディープとスズカを思い出すよな・・・少なくても走りは。

 

 

 18:名無しの競馬おじさん

 

 普段の奇行ぶりは絶対想起できるのゴルシくらいしかいないけど、ほんと人懐っこい、信頼している。そしてあの戦いぶり。スズカの場合は遅咲きの覚醒だったけど、ケイジは2歳のころから大暴れ。ディープの盤石な強さと戦闘スタイルにスズカの大逃げとその技術を足して割らないのがケイジって感じだし。

 

 

 19:名無しの競馬おじさん

 

 改めて聞くと本当に化け物だなケイジ。そしてそれに食らいつけるメンバーが多く、少なくてもゴルシは既に2度の敗北を与えている様子。

 

 

 20:名無しの競馬おじさん

 

 あの世代おかしいよ・・・そしてあの奇行で想起できる馬が同世代かつ親友でライバルってほんと出来すぎ・・・と言いたいけど、競馬に関しては歴史を調べるとほんとフィクションを凌駕する話が多いのなんの。

 

 

 21:名無しの競馬おじさん

 

 頭ボーボボな馬に銀魂な馬。そしてドリフみたいな行動をかましていく馬。牝馬も牝馬で怪物ぞろいだし、真面目に黄金世代だよなあ。ここまで猛者が集まったのってディープ時代の周辺くらいじゃないか?

 

 

 22:名無しの競馬おじさん

 

 スイープやダスカ、ウオッカ、ファインモーションとか牝馬も兎にも角にも怪物ぞろいだったなあ・・・あ。そうだ。関〇スポ新のネットで現地に飛んでいる藤井って記者がケイジの様子を掲載しているんだけど、ケイジと大竹騎手の方は問題なく組めているみたい。

 

 

 23:名無しの競馬おじさん

 

 マジ? ちょっと見てくるは

 

 

 24:名無しの競馬おじさん

 

 パドックまであと数分だし、気を付けて―

 

 

 25:名無しの競馬おじさん

 

 いやはや、無事にコンビが機能していて何より。しかしなあ、ケイジの馬体を良く制御できるもんだ。

 

 

 26:名無しの競馬おじさん

 

 サクッとだけど読んできた。遠征疲れも無ければ平然とその日のうちに動き回るってどんだけ元気なんだケイジ・・・そういえば、俺よく欧州競馬は分からないんだけど、結構独特というか、自分から見たら複雑な形状しているじゃない? あれってなんで?

 

 

 27:名無しの競馬おじさん

 

 あーそれは日本の場合はしっかり場所を整えてある程度の変化を与えつつも形状はある程度企画を合わせて競馬場を「造った」んだけど、欧州の場合は自然の中に柵を立てて、レース場のそばに客席を作って競馬場に「した」って感じが近いからなあ。だから結構いびつだったり、自然をある程度残しているからレース場の厳しいものが多いのもその影響だね。

 

 

 28:名無しの競馬おじさん

 

 エプソムとか坂ではなく最早丘だからねえ。重い馬場に加えてこれだから本当に日本の競馬場、芝とは色々と違うのが出てくるねえ。しかし、一層カチカチ高速馬場になっていって本場欧州の芝とは真逆になっていくのに海外でも戦える馬たちが多いってほんと謎

 

 

 28:名無しの競馬おじさん

 

 それだけ馬のレベルが上がってきたと言えるけども、うーん。凱旋門賞を狙うのなら日本でもそういう馬場のレース場を増やして戦う方がいいはずだよね。不思議だあ。

 

 

 29:名無しの競馬おじさん

 

 興行、博打としては高速馬場からのスピード感あるレースが見栄えがいいからねえ。そこらへんは仕方ないのかもだけども・・・お。いよいよ馬出てきたぞ。今回は確か15頭だてかあ。

 

 

 30:名無しの競馬おじさん

 

 いやー衛星放送でこうして見られるのが幸せだわ。しかし・・・ふむふむ。今年もまたすごい名馬たちが来たねえ。欧州のダービー馬が普通にいるよ。みんないい仕上がりだなあ。

 

 

 31:名無しの競馬おじさん

 

 おお、きた! ケイジと大竹騎手コンビが来たぞ!

 

 

 32:名無しの競馬おじさん

 

 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! っておい馬体重650キロって前の宝塚記念よりさらにでかくなってんじゃねえか!!

 

 

 33:名無しの競馬おじさん

 

 遠征疲れがないのこれでわかったなあ・・・たまげたなあ。そして相変わらずの変顔をしながらぽっぽこ楽しそうに歩いているなあケイジ。

 

 

 34:名無しの競馬おじさん

 

 結構ケイジを呼ぶ声多いのと、何気に2番人気とは意外。オッズも3倍と期待度は高め?

 

 

 35:名無しの競馬おじさん

 

 あの菊花賞とか、ケイジのレース動画が動画サイトで全世界で見れるのと、やっぱりワールドレコードを何度も出している。ドバイでもその実力を見せたのが競馬ファンにも知られているのかもねえ。レース内容を知らなくてもワールドレコードは嫌でも更新されて知れ渡るし。

 

 

 36:名無しの競馬おじさん

 

 レコードからケイジを調べて、戦い方に興味を持って、ついでに変顔や奇行をみてファンが増えたんやろなあ・・・・・流石ケイジだぜ!

 

 

 37:名無しの競馬おじさん

 

 日本の競馬を良く知らない欧州競馬ファンの皆さんケイジの変顔とレースから日本の競馬史を知ってくれそうだし・・・ケイジは初心者導入向けの馬だった・・・?

 

 

 38:名無しの競馬おじさん

 

 大逃げと追い込み、大外まくりでワールドレコード乱発する。勝利パフォーマンスまで自分だけで用意している怪物を初心者向けと言っていいものか・・・まあ、実力やらで知名度は高い分入りやすいのかもだけど。

 

 

 39:名無しの競馬おじさん

 

 今回は女王陛下まで観戦なされているし、アラブの王族といい、アメリカの超名門牧場と言いやっぱりケイジ注目されているのねえ。

 

 

 40:名無しの競馬おじさん

 

 真面目にルドルフ、シンザンの血統、系譜とか日本くらいで、その日本国内ですらもう絶滅危惧の血統だからなあ・・・それに加えて日本の根幹牝馬、牝馬によるダービー制覇を始めて成した豪傑の血も入っている。古来の名馬たちの血を煮詰めた純血日本馬。

 

 血の閉塞を塞ぎつつ、ケイジ、テイオー、ルドルフ、シンザン一族どれかの名馬の遺伝が強く出ればもうそれだけで十分に強いしでみんなどの肌馬を引退後につけようかと話しているんじゃない?

 

 

 41:名無しの競馬おじさん

 

 確かにこれらの血を繋いで血を薄め、更にはケイジと並ぶ功績を持つルドルフ。他も推しも推されもせぬ名馬たち。父方母方どちらに似ても一国の競馬の時代を作り上げた怪物の力が出るわけだしなあ・・・

 

 

 42:名無しの競馬おじさん

 

 改めて皇帝の祖父と並ぶと言わしめる傾奇者おかしいよ・・・功績でいえばオペラオーもいたけど、ケイジは今これを超えるかもしれない偉業に挑むわけで・・・ああ・・・やべえ、鳥肌立ってきた。

 

 

 43:名無しの競馬おじさん

 

 近代日本競馬の結晶ですら届かなかった欧州の大舞台、今を時めく金色の暴君も届いていない欧州三冠レース。そこに挑むのは純血にして古来の日本競馬の結晶。古き華族のごとき出自の傾奇者。その傾奇者とコンビを組むはターフの魔術師の子にして日本最強騎手・・・勝ってくれ!

 

 

 44:名無しの競馬おじさん

 

 お、いよいよ本場馬入場からのゲート入りだ。ほうほう。ケイジは大外枠。これ、不利? 有利?

 

 

 45:名無しの競馬おじさん

 

 有利というか、基本ケイジは最内か大外ならむしろ自分の武器のどちらかをフルで活かせるし、スタミナも問題ないから大外枠は最内枠と同義

 

 

 46:名無しの競馬おじさん

 

 暴論に聞こえるけど真面目にそんな勝ち方しているから質が悪いんだよなあ・・・

 

 

 47:いつもの実況のおっさん

 

 僭越ながら今回のレース実況をこの掲示板でもさせてもらうぜ

 

 

 48:名無しの競馬おじさん

 

 あ、あんたは数々のレース実況を掲示板でしている実況のおっさん。オナシャス!

 

 

 49:名無しの競馬おじさん

 

 おお。レース後の解説も定評あるおっさん。頼んます!

 

 

 50:いつもの実況のおっさん

 

 まかされたぜ。さあ、全頭ゲート入り完了。スタート! 各馬一斉にスタート。大外枠のケイジは今回は追い込みか、大外からゆったりとつけて走っている。

 

 

 2番人気が最後尾かつうちにつけない騎乗に観客席は驚きとワクワクの声が入り混じるものに。そして先頭集団はアストルフォが先頭。馬群から1馬身つけてリード。他の馬たちもブラダマンテ、リーズホッグ、アカテナンスが先頭を負いながら馬群を形成。徐々に広がっていた馬群も細く伸びていく。

 

 

 51:名無しの競馬おじさん

 

 これは・・・・ケイジが大逃げをするのを警戒してハナを奪おうとしたけど追い込みで来ると知ってみんなスタミナ消費を避けるためにウチにつけていったんだろうな。足の回転や速度が目に見えて落ちた。

 

 

 52:名無しの競馬おじさん

 

 ドバイDFでも大逃げで10馬身差をつける怪物だしなあ。2400、欧州の重い馬場でも問題ないのは皐月賞のレースで見せつけている。大逃げを潰すために進路をふさぐ、ブロックをしていこうとしたけどそれをしなかった。

 

 

 53:名無しの競馬おじさん

 

 ケイジの気性の場合追い込みでも問題ないから前を塞ぐことで消耗を狙えるってわけでもないし、それならと自分たちのスタイルに戻した感じか。

 

 

 54:名無しの競馬おじさん

 

 ぶっちゃけ、スタミナは折り紙付きだし、下手に大外のケイジを塞ごうとしてずっと自分らも外側回っていたら消耗して、追い込みのケイジや先行組はスタミナ残したまま自分はガス欠とかあり得るし、良い判断だと思う。

 

 

 55:いつもの実況のおっさん

 

 スウィンリー・ボトムのカーブに差し掛かった先行集団。その前の下り坂を走った後にすぐさまこのきついカーブもあって慎重な騎乗が試されるこのコース。先頭はアストルフォとブラダマンテのたたき合い。後続は3番手にホグワーツ、じりじりと内から伸びてきているクレオパトス。ケンタウルスホイミも5番手で食らいつきスローペースながら位置取りを狙っている。

 

 

 ケイジは変わらず大外からゆったり楽し気に最後尾を走っている。先頭から最後尾までおおよそ12馬身。縦長な展開かつスローペース。王道な欧州競馬のレース運びとなっています。最初のコーナーを抜けて次の直線に移るも先頭は依然アストルフォ。

 

 

 56:名無しの競馬おじさん

 

 追い込みだとやっぱりゆったりになるというか、こっちも気持ちが落ち着く不思議。

 

 

 57:名無しの競馬おじさん

 

 大逃げだとケイジのコーナリングとかでいつもおおっ。となっちゃうしねえ。

 

 

 58:いつもの実況のおっさん

 

 さあ最初のコーナーから上り坂になる。そこを上っていき、馬群が少し入れ替わる先頭はブラダマンテ、ケンタウルスホイミが前に行く。パンジャンドラム外から伸びて先頭集団入り。アストルフォ馬群に飲まれる形となったか。

 

 

 この競馬場は直線が長くコーナーの数が少ない。最後の直線のために全頭いい場所を取ろうと騎手の手綱が動き始めている。

 

 

 ホグワーツ内ラチから抜け出して先頭をうかがうもブラダマンテが先頭を譲らない。最後のコーナーが見えてきた。

 

 

 59:名無しの競馬おじさん

 

 え!? もう最後!? ってあーこの競馬場。おにぎりみたいな三角形の競馬場だからコーナーを二つ使って最後の直線なのか。

 

 

 60:名無しの競馬おじさん

 

 アメリカ競馬は最後の直線が短いからこそ先行。逃げでいい場所を常に取って最後までって感じだけど、欧州のレースがスロー気味なのはこの長い直線ゆえに巻き返しがしやすい、そのために力をためやすいのもあるよね。凱旋門賞も最後の直線が長いのなんの。

 

 

 61:名無しの競馬おじさん

 

 欧州だと直線だけのレースとかも珍しくないし、ハイペースになる試合も多いけど、基本はゆるやかよねえ。

 

 

 62:いつもの実況のおっさん

 

 最終コーナーへ先頭ブラダマンテ入る、そこに猛追しようとケンタウルス・・・違う! ケイジだ! ケイジが飛んできた! いつの間にやら大外から加速してブラダマンテを交わしてあっという間に先頭に立つ! 後ろではケイジの進路を塞ごうとしていた馬たちが外に広がろうとしてむしろ外に膨らんでコーナーを長く走る羽目に!

 

 

 欧州の馬場がなんぼのものじゃ! コーナリングの妙ならこちらにありと言わんばかりにブラダマンテに3馬身をつけてコーナーを抜けて最後の直線に入るぞ! 脚使いが変わる! 大竹騎手の鞭が入りさらに早くなる!

 

 

 63:名無しの競馬おじさん

 

 きたきたきたきた来たぁ!!! ケイジが来た! 漢唄がアスコット競馬場に響く! これだ! この末脚がケイジの武器!! 伝家の宝刀! 

 

 

 64:名無しの競馬おじさん

 

 大逃げの朱槍だけじゃない! 追い込みの名刀もあるんだと見せつけろケイジ! 大外ぶん回しで引きずり回してしまえ!

 

 

 65:名無しの競馬おじさん

 

 あれは・・・ディープだ! ディープの走りが俺には重なって見えるぞ!!

 

 

 66:名無しの競馬おじさん

 

 こいつはモノが違う! 周りの騎手も馬も何でお前大外から来たのにこんな加速しているんだという反応しているよコレwwwww いいぞ! これを見たかった! こいつの規格外さを海外で見せたかったんだ!

 

 

 67:いつもの実況のおっさん

 

 もはや止められない! この長い直線の中にあって加速が続く! かの英国の王の、女王の名を冠したレースで日本最強と皇帝の一族が一番槍の誉れを、一番手柄を頂戴仕ると加速が続く! 差して逃げる!! 翼が生えたような加速には誰も追いつけない!

 

 

 その衝撃には! 力には誰も届かない! 残り200メートルでセーフティーリードは十二分! しかしまだ伸びる! 後続の末脚でさえも無意味だと言わんばかりに差が伸びる! 欧州よこれがケイジだ! 日本最強の破天荒! 傾奇者だ! そのまま8馬身差をもってゴォオオーーーールッッッ!! ケイジ見事な大勝利! ここ競馬の本場でも漢唄が響き渡る!! あぁ^~たまらねえぜ!!

 

 

 68:名無しの競馬おじさん

 

 いよっしゃぁああああああああああ!!!! ケイジ! やったぜ欧州三冠のレースのうち一つを奪取!! しかも、しかもこれでGⅠ8勝! 海外レースにおいては無敗の三連勝!!

 

 

 69:名無しの競馬おじさん

 

 皇帝と帝王の、最強の戦士とその最高傑作の繋いだバトンが欧州にさえも確かな実績を見せた・・・涙が・・・涙が止まらん・・・

 

 

 70:名無しの競馬おじさん

 

 観客も大歓声とどよめき入り混じるえげつないことになっているぞ。なんだこのモンスターとかすげえ言われようだし。

 

 

 71:名無しの競馬おじさん

 

 あ、藤井記者泣きながらカメラのシャッター切っている。そしてこれドーピングしてねえよなと言っている若い兄ちゃんとドーピングでこんな勝ち方できるかよと女性の方が言い合っているなあ。あ、ビンタされた。何でケイジのレースの際は観客席も何か起きているんだ。

 

 それはそれとして・・・漢ケイジ! やりやがった!! 日本競馬の血が欧州にも届くと! しかも海外馬とのレベルに悩んで追いつこうと努力したあの時代の血統でこの大暴れ! 浪漫すぎる! 最高すぎる! 常識や定石なんぞ知らんと振る舞っていくお前が俺は大好きだぁあああ!!

 

 

 72:いつもの実況のおっさん

 

 もう気が狂う程気持ちええんじゃ。漢ケイジと共に挑んだ大竹騎手も大粒の涙を流しつつ観客席に手を振ってこたえる! ケイジもニッコリ笑顔からの舌ペロで笑いと歓声を盛り上げます! この追い込みにかの勇者ダンシングブレーヴの再来だと、日本のサムライがドバイからここでも強さを見せつけたんだと盛り上がる!

 

 

 すでにケイジコールとそれにこたえて大きく嘶くケイジ! そして悠然とスタンド前に立ち、ケイジダンスのお披露目だ! 

 

 

 大歓声がさらに上がる! アスコット競馬場を揺らす!! 競馬の本場イギリスでさえも魅了する漢の中の漢! その傾奇に、戦いにあっという間に誰もを認めさせる!! これが日本の馬だ!! 誰もを沸かせた戦士たちの子孫だ!!

 

 

 73:名無しの競馬おじさん

 

 ああ・・・これは凱旋門賞も期待できる。しかもオルフェーヴルやユウジョウもいる。今の日本競走馬のなかでもトップ、しかもまた三冠馬コンビで挑みに行く大一番のレース。期待が、期待があふれる・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 220:いつもの実況のおっさん

 

 女王陛下から勲章と優勝レイを直々にもらい、大竹騎手のインタビューに移るぜ。

 

 「僕にとってはベストの追い込みをもって勝利できたこと。そして、ケイジが無事でいて、勝ってくれたことが嬉しいです。ですが、ケイジはまだ80%、よくて90%の力しか出していません。僕ではなく松風君とのコンビが一番力を出せたでしょう。

 

 

 改めて、この競馬の本場にして歴史と伝統、栄光あるこのレースに出走できたこと、僕とケイジを受け入れてくれたこと、応援してくれた皆様。そして共に戦ってくれたライバルの皆さんに感謝を。そして、よければ凱旋門賞でもケイジを見てあげてくれれば幸いです。この通り人懐っこい子ですので面白いことをしてくれるかもしれません」

 

 

 221:名無しの競馬おじさん

 

 あれでまだ8割、よくて9割というのか・・・謙遜だとしても、あの人がいうのなら思わずそうかもと思うなあ・・・・

 

 

 222:名無しの競馬おじさん

 

 今回はワールドレコード更新していないしそうなんじゃない?

 

 

 223:名無しの競馬おじさん

 

 普通は出せるもんじゃないのよ。それをポコポコ周りも出しているからおかしいけども・・・今回のタイムもまた悪くないからなあ。2分22秒2と凄いし、2番人気と何でか2にやたら絡むレースになったなあ。

 

 ああ、凱旋門賞はまたオルフェやユウジョウとトリオで挑むし、これはいい・・・実にいい・・・検査の方も問題なかったし無事にGⅠ8勝目獲得。名実ともに日本最強馬が世界最高の舞台に行くなんて

 

 

 224:名無しの競馬おじさん

 

 オルフェーヴルを総大将に三頭が行くのかあ。うーん・・・ゴルシやジェンティルドンナもいたらなあ

 

 

 225:いつもの実況のおっさん

 

 それだと最早ジャパンカップやな。そしてインタビューは最後はマンガの話になって終わり。これにてKGⅥ&QESは無事ケイジの勝利、好調なまま凱旋門賞へ挑めるぜ。みんな実況を見てくれてありがとう。また次は凱旋門賞で映像と実況を見ながら楽しもう。

 

 

 それじゃ。次回までテンション。溜めて待つぜ。

 

 

 226:名無しの競馬おじさん

 

 ありがとうございました! 次回もお願いします! さーて、後は仮眠とって、ニュース速報と藤井記者の記事を楽しみにしますかね。

 

 

 227:名無しの競馬おじさん

 

 これは全国紙を飾るか・・・? 欧州三冠の一角を圧勝。偉業も偉業だ・・・応援に行こうかなあ。

 

 

 228:名無しの競馬おじさん

 

 俺は行くぜ。必ず三冠馬たち、日本の戦士たちの晴れ舞台を見守りつつ、馬券をしこたま買い込んでも儲けてやるんだ。

 

 

 229:名無しの競馬おじさん

 

 実利も心も夢もみたされる最高プラン。そしてオルフェやケイジならあり得るという。ケイジが挑む場所はまたもや欧州の伝統ある場所。傾奇者にも応援が必要というもの。いつ出発する? 私も同行しよう。

 

 

 230:名無しの競馬おじさん

 

 

 花京院・・・じゃねえ。いやでも助かるぜ。早めに行って旅行しながらでもいいなあ。ほんと楽しみ。今からでも予算を組み立てておかないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ほわぁー・・・・あー寝た寝た。昼寝最高。オルフェもおつかれちゃん。またまた挑めるなあ。凱旋門に』

 

 

 『ひ、ひえ・・・そ、そうだね・・・ケイジ君も、今回は一緒に出るんでしょ?』

 

 

 無事にKGⅥ&QESを勝利。凱旋門賞への優先出走権も手に入れました。ってことで早速専用の厩舎にまたいろいろ警備が厳重なゲスト用厩舎に入ってのほほんと過ごしております。トングで本を読めるけど、今はインクやら紙についている成分ですらドーピング扱いされそうなのでラジオとかアニメ鑑賞をして我慢我慢。まあ、それはそれで我慢の間に読む本が少し増えて嬉しいけど

 

 

 幸太郎も入れたかったけど駄目ってことでしょうがないので近くのペットオーケーなホテルの方で利褌のおやっさんが預かっている感じ。まあ、移動中話し相手になってくれたし、役割は果たしているからセーフ。今は俺より先に入厩していた先輩にして三冠馬。金色の暴君の名を冠するオルフェやユウジョウと過ごしている。

 

 

 いやしかし・・・ほんと暴君と名付けられるほどのレース運びや強さ、池沼騎手を振り落とそうとする行動を見せるけど、これら全部ステマ配合組では珍しいほどの臆病さと人懐っこさから来るというからいろいろオルフェーヴルは変わり種かもしれないなあ。

 

 

 あと、何気にオルフェやドリジャはステマ配合での大成功組だよねえ。あのステゴの末脚や小柄さ、頑丈さもある程度受け継いでいるし勝負に強いし。まあ、ドリジャはそれで今小柄すぎて種牡馬のお仕事の際に踏み台とかを利用しないと苦労する日も多いそうだけど。

 

 

 『んまーね。本来の相棒松ちゃんじゃないけど、大竹騎手も俺を信じてくれている。なら思いきりやってやるのです』

 

 

 『そ、そうかあ・・・でも、それだと力が出なくて不安になるよね・・・ぼ、僕も池沼がいないから本当に・・・ペースやら色々違ってもう・・・』

 

 

 あー・・・オルフェ、池沼さん大好きだもんなあ。振り落とすのも顔を見たいし甘えたい。バイクの音を聞けば早く来てとテンション上げて暴れるくらいだそうだし。

 

 

 二度目とは言え不慣れな欧州に来て、いつもの相棒がいないのは臆病さが特に出ているオルフェにはつらいよなあ・・・

 

 

 『そうだな。でも、その池沼や、俺の場合は松ちゃんだな。は気持ちだけでも必ず俺らを応援してくれているはずだ。背負うものがある分、強くなれるもんだってあるはずだぜ。オルフェーヴル。俺らの本来の相棒でなくても、今戦ってくれる騎手さんも一緒に勝ちを狙う同志だ。優しく受け入れてやんな』

 

 

 『う、うーん・・・でも、でもなあ・・・』

 

 

 『まあ、難しいよなあー。わはは。ま、まだ時間はあるし、じっくりこってりならせるよう頑張ろうぜ。それにオルフェは一度ここを経験しているんだ。今回もいいとこ行けるぜ。俺も優勝を狙うし、ライバルとして、ダチとしてよろしくぅ』

 

 

 才能はまさしくディープレベルの怪物だし、互いにベストレースにできればいいんだが。ユウジョウも元気そうだったし、日本勢でいい感じにやりたいぜ。

 

 

 とりあえずは、俺もここでのレースや馬場は初めてだしどうしようかね。欧州の芝の感覚はがっちりつかんだし、警備もまたどかちゃんとか、スーザンママの手配とか、ドバイの王族の方がたらが手配した警備と凱旋門、フランス競馬でのルールに厳格に合わせに合わせた食事やいろいろを合わせた調整をしているけども。

 

 

 後で大竹騎手と相談だなーあ、後藤井の兄ちゃんや幸太郎も呼んで凱旋門賞の授業できないかな。

 

 

 『よ、よろしくねケイジく・・・だ、だれだ!?』

 

 

 「ケイジ。今から凱旋門賞のレース運びについて相談が」

 

 

 「ケイジ君、ちょい大竹騎手さんと君について取材いいかな。差し入れに人参とリンゴを用意してきたわ。ちゃんと市場での卸たて。検査もばっちりの最高品やで」

 

 

 『ケイジー。あそぼー』

 

 

 『おお、大竹騎手に藤井の兄ちゃんに幸太郎。噂をすれば影が差すとは本当だなあ。そんじゃ、いいぜーオルフェも加えてみんなで話そうや』

 

 

 利褌のおやっさんとトモゾウは何やら幼駒のセリというか庭先取引に行ったそうなので久保さんと真由美さんも交えて大竹騎手の凱旋門賞。その戦場となるパリロンシャン競馬場についての講義を聞くことに。イヤー勉強になるなあ。オルフェも幸太郎や俺がいるのか落ち着いて話を聞けたし、うん。行けるんじゃない?




 無事に欧州三冠のうち一つを制覇。そして凱旋門賞は超がつくほどの厳戒態勢と国のトップ直々の部隊をもってケイジが無事挑めるようフランスの競馬のルールに合わせて食事やいろいろ見てくれています。


 ケイジ 遠征疲れ? なんのこったよ。より筋肉つけて大暴れ。終始大外につけてマークを外してからの大外ぶん回しの追い込みで完勝。女王陛下直々に勲章と賞賛を賜る。後是非国の馬たちを引退後送るから種牡馬としても頑張ってねとウィンクされ、こちらもウィンクで返して頭を下げた。ネット社会のいい面でケイジの知名度が海外でも高いせいで結構ファンが多い。主に奇行から入り、レースでたまげるというコンボが定番だとか。


 大竹騎手 ディープもかくやな戦いぶり。圧勝に涙が止まらず、インタビュー開始も少し遅れちゃった。松風騎手ならもっと強く戦えるという発言と、今回はワールドレコードを出していないのでいろいろ説得力マシマシ。

 ケイジが作戦を理解できるというので凱旋門賞の作戦会議を葛城調教師とやる前に予習ということでしてみたら本当に理解できて驚きつつも満喫した時間を過ごす。


 幸太郎 お供についてきた。狩猟シーズンではないので飼い主のマタギのおっちゃんより一足先のイギリス、フランス旅行。ヒツジやヤギの蒸したお肉とか、ケイジのレースを見れて色々満喫。ホテルでもらったクッションがお気に入りに。


 藤井 日々の行いやケイジの事を良く知っているということで密着取材記者として同行を許可。ケイジ、幸太郎と一緒に飛行機の貨物エリアで一緒にアニメ鑑賞して楽しむケイジ達を思わずパシャリ。レースでもケイジの強さが見れてご満悦。遠征してからは毎日ケイジの様子を自分の会社のホームページの方にあげていて閲覧者爆増。

 新聞記事も飛ぶように売れて帰国したらボーナスと賞を貰えること確定。凱旋門賞ではケイジに全部ツッパするつもり。


 女王陛下 ケイジの事をドバイの皆様から聞いていたので是非と観戦しに来たら滅茶苦茶な戦いぶりに満喫。パーソロンという聞いたことのない血統。調べてみれば日本でもかなりの名馬を生み出してきた奇跡の血統。ライバルのゴルシもアメリカの大牝系とパーソロンの血をひいているしで2012年世代の種はぜひイギリスに持ち込みたいなあと思っている。ウィンクにウィンクで返すケイジのおちゃめさに思わず頬が緩んだ。


 利褌 もう夢か幻じゃないかと思うほどにケイジの躍進ぶりに感動しているし、一度思わず自分のほっぺと掌をつねった。

 凱旋門賞までは時間があるので新しい肌馬を求めて庭先取引へ。実は遅咲きながらようやく相馬眼が開眼。ある牝系を求めてえっちらおっちら。


 ドバイの皆様方 ドバイだけじゃなくてイギリスの頂点のレースまでも制覇でもういけるとこまで行っちまえ状態。日本馬たちが無事にレースを終えていちゃもん付けられないように日本の警備の方々と自分の国の警備関連の精鋭を用意して食事、生活すべてで問題がないように手配。イギリスでも観戦していたし、凱旋門賞ももちろん見に行くつもり。何気に国際ニュースになっている。


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背負って、歩いてきたからこそ 凱旋門賞(GⅠ)

 目指すは世界の大舞台。戦うは最強と最高の集うつわものたち。ケイジなら燃えないわけがない。レース破壊の専門家(ウルトラマン風)のケイジが来たことで日本代表オルフェとユウジョウはどうなるか。


 前にライスシャワーのテーマソングに劇場版ウルトラマンティガ&ダイナのテーマソングが合いそう。と言ったんですが、ケイジの場合だと馬の時代は漢唄以外にも真ゲッター 世界最後の日 のOPとか似合いそうですよねえ。どちらのOPでも


 「よーし息を入れてー」

 

 

 『はいよー』

 

 

 「よし、そのまま仕掛けてー」

 

 

 『ほいさー』

 

 

 よっすよっす。最近オルフェとユウジョウがトライアルレースに行っちゃったので俺と大竹騎手。いやタケちゃんでいいかね。気さくに接してほしいと言っていたし。話を戻して、一緒に大逃げの練習中。

 

 

 俺の場合は基本スタミナとスピードで今までぶん回してきたんだけど、今回はちょいと都合が違うそうな。

 

 

 「うーん。問題ないし、このまま行けるとは思うが、まあ、まだ時間はある。焦らずじっくりと行こう」

 

 

 『あーいよ。はぁーんいい汗かいた』

 

 

 というのも、凱旋門賞の舞台パリロンシャン競馬場。コーナーが緩いので俺のコーナリングで差をつけられるのが他もさほど膨らまない、減速しづらいのでそこで距離を開けるのが難しく、加えて最後の直線が長いので前回のアスコット競馬場よりも早仕掛けのキレと息の入れ方を練習することになった。

 

 

 ここにきてまさかの事態だが、それは俺だけで周りはしっかり知ったうえでの対策。幸いなのは時間はそれなりにあること、そしてここの経験があるタケちゃんが教えてくれるのでこっちもそれ対策がしやすい。俺のスタミナと脚使いはここ欧州の、重い馬場であるアスコットでも文句なしの走りと疲労を見せなかったことで今回も逃げ切れるというのは太鼓判を貰ったが、それをより高めて十全の勝ちを狙う。そのための用意だ。

 

 

 何せ挑むは凱旋門賞。前回のKGⅥ&QESもそうだが世界中から怪物たちが集まる。気のゆるみ一つが命取りという訳よ。

 

 

 「お疲れ様です大竹さん。どうです? ケイジの仕上がりは」

 

 

 「・・・正直、怖いぐらいですね。今まで海外遠征は何度かしましたがやはり馬は気性が荒い、暴れる時があっても根っこは繊細。だから消耗しますし、不慣れな場所は嫌がります。だけどケイジはそれがない。それゆえにスタミナも落ちることがないですし、速度も技術もある。

 

 

 ・・・・・・スズカの技術とディープのスタミナ、剛力。そして、もしもですが古馬になってさらに成長したキンカメの可能性を併せているように私は思いますよ。もう少し重い馬場を走らせるか、距離を50メートルづつ伸ばしてスタミナと欧州芝をよりモノにするため、そして僕とケイジの呼吸を合わせていけるようにできるか、そこもできればやりたいです」

 

 

 「了解です。でもその前に少し休んでからにしましょう」

 

 

 「もちろんです。幸いにしてケイジも欧州の芝の走り方を覚えている。微調整の方に時間を割けるのが本当にありがたい」

 

 

 『よせやい』

 

 

 俺もタケちゃんも互いに互いの走りやスタイルを合わせることが出来ているんだが、改めてわかるタケちゃんのすさまじさ。

 

 

 松ちゃんの騎乗スタイルも朝日杯あたりからは軽いし俺も問題なかったのだけど、タケちゃんはすぐにそれに届いて、更に今はそれ以上に軽い。というか負担がない。世界一美しいモンキースタイルと言われるのも納得。後はまあ、うん。癖馬にも多く乗っていたからだろうなあ。ステゴとかエアシャカールとか、ほんと時代の名馬かつ癖馬には何かと縁のある人だし。

 

 

 「おお、お疲れ様です大竹騎手。そして葛城さん。紅茶を用意しましたがどうです?」

 

 

 「た、ただいま戻りましたーケイジ君の馬房の掃除と寝藁を新しくできました~・・・」

 

 

 お、利褌のおやっさんと真由美ちゃん。ドイツから戻ってきたかあ。確かトモゾウも一緒に探し物していたんだっけかあ。真由美ちゃんは俺の馬房の掃除当番。お疲れちゃーん。

 

 

 「いただきます。ふぅ・・・ジャムと一緒に味わうのはロシアでしたっけ?」

 

 

 「ですな。スコーンもありますが騎手は食事制限がきついでしょうし、ヘルシーでおいしいとあったものをチョイスさせていただきました。

 

 

 ああ、ケイジ。お前さんの新しい嫁さん候補探してきたぞ。まあ、うちの馬房今は湯治に来ている馬が多いし、社爛さんも預託料まけるから馬房は開けてくれってことで会うのはしばらく先、引退後になるかもだがな」

 

 

 『ほへーマジで俺と海外馬での交配で日本の主流血統が全くない異系を生み出そうとしているのねえ。あ、血統表みせてー』

 

 

 水をごくごく飲みながら見せてくれーと動けば利褌のおやっさんが血統表を見せてくれた。ほへー今回は二頭かあ。

 

 

 「ドバイの皆様が先に牧場に送ってくれるそうだし、今回は甘えたよ。そして、これは掘り出し物だぞお」

 

 

 『んー・・・ああぁ・・・・? まーじかよこれ。ドイツの名種牡馬アカテナンゴの孫とマンハッタンカフェの母系の系譜の娘ミレーネに、こっちは日本でいえば地方競馬の子どもだけど・・・名前はブラウトちゃんね・・・・キンチェム系の直系じゃねーか!!』

 

 

 「え・・・き、キンチェム系の直系牝系!?」

 

 

 「お、おおー・・・しかも父方からとはいえリボー系も少し入っている。・・・・・・これはゴールドシップとケイジ、前田さんの牧場だけで日本、アメリカ、ハンガリー、ドイツの大牝系の血筋が入ることに・・・」

 

 

 うわーマジかよ・・・54戦54勝。適正距離はレースを見るだけでも約950メートルから4200メートル。あの時代での過酷な遠征をむしろ楽しんでいるわ斤量77キロ担いだレースでも圧勝。時の大国の皇帝や王族すらも惚れこませたまさしく怪物の中の怪物。でも可愛い。そんなキンチェムの子孫かあ。

 

 

 何がやばいって日本だと明治7年くらいの馬の血筋で、しかも自身の子どもは5頭だけ。その5頭全員がダービー制覇とかの結果を残して今なおガッツリ欧州中央競馬の中に血が残っているんだよなあ。2013年の今もだぜ?

 

 

 『・・・・あ。まさかおやっさん・・・あんた昨年の英国二冠。17代目キンチェム系直系のアルトリアが種牡馬入りしてからこの子と組み合わせるつもりじゃねえだろうな? 牝系のクロス起こすために』

 

 

 「はぁー・・・これはこれは・・・しかし高かったでしょう。これほどの牝系とは」

 

 

 「なに、どちらも安かったですよ。どちらの親も言い方が悪いですが・・・結果が出せなかったということや、血を残したいのか安く売ると言ってくれたので。・・・少し、それに色を付けて即決買いしたので、また帰ったら怒られそうです」

 

 

 「ば、馬主さんは大変ですねえ・・・」

 

 

 まーた女将さんに怒られるくらいの出費をしやがったか。こりゃあまた頑張って稼がんとなあ。しかし、まさしく大牝系の血だし、スぺちゃんやゴルシが引き継いでいる血。日本やアメリカの根幹牝馬の血と掛け合わせればうまくいけばそれこそエアグルーヴのような名牝が生まれるかもしれないし、おやっさん、ほんと牝系を大事にしているねえ。

 

 

 「そういうわけだケイジ。俺が怒られないためにも、もしくは少しでも火を鎮火させるためにも出来ればいい結果を凱旋門賞で出してくれ!」

 

 

 おうこら四冠馬馬主。情けないこと言うんじゃないよ。ちゃんと一着狙うし無事に帰ってくらあ。周りの皆も笑っているし。うーん。いい空気だしまあいいや。

 

 

 チキショーそれにしてもジャム美味しそうだなあ・・・添加物とか、そこら辺の配慮もあるから食べられないし・・・くそう。後でしこたまリンゴ貰ってやる。そのために調教で腹を減らしておかにゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ほうほう。無事にフォワ賞を勝てたかあ。ユウジョウも結果を残せたし、これでどちらも凱旋門賞行けるねえ』

 

 

 『う、うん。いやあー頑張ったよ。それに早めにここに戻りたかったしね』

 

 

 『凱旋門賞かあ・・・世界一の舞台、頂点を決定する場所だっけ。どうなるかなあ』

 

 

 調教調教。なんやかんやこの期間調教をこなす時間って久しぶりかもしれん。そうこうしていたらオルフェにユウジョウがそれぞれトライアルレースを勝ってきてここに戻ってきた。後は最終調整をしながら凱旋門賞に挑むのみ、俺だけだった馬房が一気ににぎやかになる。

 

 

 『ほへーなんで?』

 

 

 『だってケイジ君面白いし。ジョーダンさんとも仲いいんでしょ? いろいろ話してくれたのを思い出したんだー』

 

 

 『なぁーるほどねえ。あのひ・・じゃねえ。馬も愉快な奴だしねえ。俺のダチ、ゴルシとよくケンカしているそうで。ユウジョウも大丈夫よ。為せば成るというし、おそらくだけど俺は大逃げするし、周りをかき回すからお前さんらはどっしり構えておきなさいな』

 

 

 『そうするよ。ってゴルシ? オルフェの弟でいいんだっけ?』

 

 

 『あーゴルシかあ・・・羨ましいよねえいつも元気で思いきり生きているし』

 

 

 あーやっぱ話題なのかあゴルシ。まあ、天皇賞とかちらほら奔放、喧嘩を売りにいったエピソードあるし、それがあちこちに伝わっているのか。そんで、オルフェは羨ましいのねえ。

 

 

 『いやーアイツの場合はほんと奔放すぎるからなあ。見ていて面白いけど。お二人さんもあれは真似しすぎると厩務員さんや調教師さんも苦労するからほどほどにね?』

 

 

 『うん。僕は大丈夫だよ。レースや練習が終わった後に思いきり身体を動かせば上から池沼さんが降りてくれるし』

 

 

 『オルフェ、それは振り落としたというんじゃ・・・』

 

 

 『だ、だってそれでもよしよししてくれるし・・・』

 

 

 『まあ、しないほうがもっと甘やかしてくれるかもな。おおー来てくれたんだねえ』

 

 

 ・・・オルフェもなんやかんや甘え方がステマ組は独特だなあ(遊ぶとシャツを破く。甘えるためにレース終了後に振り落としていく)と思っていたらお久しぶりな濃厚なあのメンツ。

 

 

 「ケイジちゃーん応援に来たわよ。あら。オルフェにユウジョウまでここにいるなんて。三冠馬コンビがまた戦う戦友が同じ馬房とは燃えるわぁん」

 

 

 「ふふ。夢の舞台に挑む。最も可能性のある最強世代。日本中はこれで大騒ぎ。全国紙でも話題にされるくらいよ。もう。色男たちの戦いが待ちきれないって」

 

 

 『何だこのおっさん!!』

 

 

 『ひえ!? な、なんだこの匂い・・・? 変な香りがするよー』

 

 

 『あー香水ね。大丈夫。悪い匂いじゃないよ。そんでいやはやご足労ですなあムランルージュの皆々様』

 

 

 いやーあの警備の皆さんに良く捕まらずにこれたよなあこのオカマたち。まあ、俺やナギコの権利を一部持っている馬主さんだし、利褌のおやっさんから顔写真と一緒にこの人らは大丈夫だからと教えられたのかねえ。慣れない香水の香りにオルフェは不安がるし、ユウジョウは面食らう。

 

 

 慣れている俺の方が変わっているのね。

 

 

 「いい仕上がり。ふふ・・・頑張ってねケイジちゃん。日本では古くはシンボリルドルフが挑もうとして、その前のたたきのレースをアメリカでして故障して欧州に挑めないまま引退。ディープも戦ったけど届かなかった。ナカヤマフェスタやそこにいるオルフェちゃんたちが2位を取ってくれてようやく距離が縮まってきたの。今回はディープ級の馬にこれまた実力者がそろったいいメンバーでこれているわ」

 

 

 「中にはこの凱旋門賞が届かないのを日本競馬の呪いと言われることもあるの。ケイジちゃんたちならその呪いを蹴り砕いてくれると思う。頑張って頂戴。勝ったらキスをあげるわぁ♪」

 

 

 『場合によっちゃあ特大デバフやめーや。まあいいぜ。やってやろうじゃねえの。日本斬り込み部隊の実力を見せてやるからしっかり観客席で見てろよー?』

 

 

 「この調子なら問題なさそうね。あ、これ差し入れ。後でみんなで食べてねー。それじゃ、ぶほほ」

 

 

 最後にバケツ一杯のリンゴとにんじんを警備と久保さんに渡して去っていくムランルージュの皆さん。この後も藤井の兄ちゃんやマタギのおっちゃん。国光君とか蓮君も来てくれたりで大賑わいの時間を過ごしていた。

 

 

 そういや、蓮君すげえ背が伸びて180近くまでなっていたなあ。おかげで夏の大会はレギュラーとして全国でもそこそこ活躍で来たとか。俺も負けないように頑張らないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『(現地にきた日本のアナウンサーさんです)皆さまお待たせいたしました! 歴史と伝統、そして賞金を懸けた欧州三冠最高峰のレース凱旋門賞! 今年もここに最高の優駿たちが世界中から集結! 誰もかれもが優勝を狙える怪物たち!! その戦士たちがいよいよわれらの前にお目見えだ!』

 

 

 とうとうここまで来たぜ凱旋門賞。世界各国にある最強、最高峰のレースは数あれど、国際レースの中でも歴史と伝統、知名度という意味ではおそらくこのレースがその中でも頭一つ抜けているのではないだろうか。多くのドラマが生まれ、そして挑むもの達にとっては今までの集大成を世界に見せつける花舞台。

 

 

 だが、今年は違うぜ。今回の主役は俺ら。日本遠征軍団の大暴れする舞台。日本の悲願を頂戴する。

 

 

 『さあ、先のKGⅥ&QESでも好走を見せましたケンタウルスホイミ、今回も仕上げばっちり。国を選ばず距離を選ばずに必ず掲示板、馬券内に入り込んでくるその万能ぶりと油断できない強さはいまだ健在! 今回も怖い相手になります! 続けてフランスのダービー馬にして最強格モントレー。馬体重も少しの増量。より筋肉をつけて挑みに来ます。そして次に・・・・

 

 

 来たぞ来たぞ! 日本メンバーの登場だ! まずは6番オルフェーヴル! 昨年度の凱旋門賞では惜しくも二着! 日本が誇る黄金の暴君は今度こそここを制覇して見せるとやる気十分! フォワ賞で見せた走りをここで見せ、今度こそリベンジなるか!!』

 

 

 ちなみにだが、凱旋門賞は3歳以上あたりからは斤量のハンデがつくのだが、それが確か3キロだっけな? くらいあるので、このレースを取るのであれば3歳の乗りに乗った新生をぶつけたほうがいいという意見も多いそうな。そういう意味では、まさしくこいつは期待の新星と言える。

 

 

 『続けて14番ユウジョウ! 日本のダービーを制した新進気鋭の期待株! 金色の王と共にこの最高の舞台を征してやろうと。新時代を作ろうとやる気がみなぎる! その返し馬の様子からも期待できるか!』

 

 

 うーんいい感じ。こいつは手ごわそうだ。斤量ないのも相まってこの芝さえ慣れておけばやばいかもなあ。俺? ぶっちゃけ斤量よりも自分の馬体重の増加の方が重いんで意味がないなあ。だって斤量+しても今回のために絞っておいたから結局合計ではマイナスの合計重量。むしろ、このくらいの重さの感覚でやれるのがいいわってくらい。

 

 

 さあーいこうやタケちゃん。今日はちょいとサービスもしてやるしな。

 

 

 いざ、日本艦隊の先鋒の登場だ!

 

 

 『そして、オルフェーヴルと同じく、いやそれ以上の期待を背負って登場だ16番ケイジ!! ワールドレコードを3つ所持! 無敗の四冠を手にした王者であり、先のKGⅥ&QESでも大勝ちをもって英国を虜にした侍ボーイ! 今回は日本最強の騎手と共にここへ堂々参戦! 名前のモデルはあの花の慶次! 私も大好きです!』

 

 

 おおーフランスの実況の方でも話していたし、俺が出たらなんかあの前田慶次のシャツやら旗を振ってくれる現地の皆さんも。あれ知っているのかあ。流石日本の漫画を愛読してくれる方々が多いフランス。いいねえ。通だねえ。そんなら少しサービスサービス。

 

 

 「おおっ。これもやるのかいケイジ。っふふ。僕以上に気負いがないねえ」

 

 

 「ヒヒーン・・・むふ」

 

 

 『あったり前田のクラッカー。日本の王者の血筋であるアピールにも、ちょっとした盛り上げにもちょうどいいだろう?』

 

 

 『おっと、ケイジ軽やかにステップを踏んで楽し気にパリロンシャンの芝を進んでおります。これは彼の父親トウカイテイオーの魅せたテイオーステップ! フランスで日本の不屈の名馬のパフォーマンスをお披露目だ! 流石は生粋のショーマン。会場を盛り上げるのが大好きなようです!』

 

 

 『おうよ♪ さあさあフランスの皆さんおはこんばんちは。日本の競走馬三頭目にして、好き放題やる予定のケイジだ。ちゃんと賭けておいてくれよなー』

 

 

 オッズの方は・・・3番人気の2,7倍。オルフェや地元フランスへの期待が大きいけども三番人気でこのオッズはこちらも勝利があり得ない人気ではないって感じか。期待度は高いねえ。

 

 

 「さあ、いよいよよケイジちゃん! おじいちゃんの果たせなかった凱旋門挑戦! そして勝利を飾ってきてえ!!」

 

 

 「日本競馬内で一番可能性があるのは貴方ヨケイジちゃん! すべて蹴散らして大勝ち取ってきなさーい!!!」

 

 

 「ああ・・・私の方がドキドキしちゃうわ・・・ルドルフ、テイオー、シンザン、ミホシンザン・・・力を貸してあげて・・・!」

 

 

 「ウォオオオ!! ケイジちゃーん! かましてやりなさい!! 大逃げでも追い込みでも世界最強のケイジちゃんならいける行ける!!」

 

 

 「ケイジー! 頑張って来いよー!!」

 

 

 「ケイジ君、気張りや! もういつでも号外出せるよううちの新聞社スタンバってんでー!!」

 

 

 『カブキボーイの登場とステップに何とアウェーのはずのここでもケイジコールが飛ぶ! 今回はますます混迷を極める、激闘が予想されます凱旋門賞! 世紀の大一番がもう少しで始まります!』

 

 

 「・・・ふぅー・・・・・よし。うん。ケイジ、作戦はあれでいいよね? 僕は問題ないし、そのために技術と連携は仕上げてきたから君が無事であればどんな結果も受け入れる」

 

 

 『おうよ! あれで問題ない。あれで行けるぜ! しっかしまー実況が言及しなかったが、相変わらずというか現地でオカマ友達増やしているじゃねーかムランルージュの皆さん。一部の空気がすごいし違いすぎるわ。

 

 

 ・・・・・・・・・んあ? あー・・・なーるほどねえ? よしよし。これなら尚更にこれで行くしかねえな』

 

 

 観客席も相変わらずの混沌というか、フランスでムランルージュのカオスな応援と日本の応援団。国光君や蓮君の声を聞けるとは思わなんだ。だからこそ気合が入る。そしてまさかのサプライズにもうやる気が滾る。こいつは俺も応えなきゃあいけねえ。

 

 

 『うぉう・・・やるぜ・・・俺はやるぞ! 今度こそここで勝ってやらぁあ! フー! ブフゥー・・・!!』

 

 

 オルフェもスイッチが入っていわゆる暴君モードに突入したし、うんうん。こいつはいいね。やれそうだなあ。さてさて。綺麗なファンファーレを聞きつつのんびりとゲート入り。

 

 

 俺の出番になったのでゲートにする。うーん。狭い。真面目に肉の付き具合どうにかせんとなあ。

 

 

 このレースが終わったらテキや利褌のおやっさんとも相談しないと・・・そのためにも、行くぜ!

 

 

 『スタートしました! さあまずはケイジが勢いよく飛び出して先頭を奪いリードを伸ばす! これは・・・大逃げだ! ケイジこの凱旋門賞で選んだ戦術は大逃げ! そのまま馬群を形成しているグループを置き去りにして日本最強コンビ悠然と前をいきます』

 

 

 まあねー馬群に飲まれちゃーめんどくせえ。それよりは大逃げで周りを思いきり引きずり回しながら走るに限る。あちらさんのやり方に付き合う理由もねえ。

 

 

 さあさあ。スローペースなレース運びにかつて日本最強ステイヤーメジロマックイーンもジャパンカップで翻弄されて負けたが、今度はそちらが日本の名馬たちの武器、大逃げに翻弄されてもらおうじゃないの。

 

 

 『ケイジ大逃げで先頭集団から4馬身のリード。そしてオルフェーヴルは馬群のなか。先頭に立ちますはイギリス、そしてカナディアン国際競争何方も勝っていますジョセフが馬群先頭に。ゴーイングサムソンが中盤に。グッドダディー真ん中を走る。ユウジョウは後方、最後尾から3番手で様子を伺います。おっとオルフェーヴルのそばからイギリスダービー馬ルーラーベルセルクが上がって横につきます』

 

 

 ほんほん。いやーやっぱすげえなあ。メンツが。ま、とりあえず今は様子見でいいでしょって感じだろうね。大逃げはあちらではラビット。他陣営のペース崩しみたいなものだし、焦らずという感じかあ。

 

 

 『ケイジ一足先に坂を上り、降りていきます。足色は衰えずに高低差10メートルの坂を駆け抜けつつコーナーへ。そこは淀の坂を直下降したケイジ。このくらいではものともしません。ケイジの後を追う先頭集団も馬群が伸びてきたぞ。先頭はケンタウルスホイミ、二番手にルーラーベルセルク。

 

 

 三番手にトレヴン、オルフェーヴルが続いて内ラチ後方にゴーイングサムソン変わらず。グッドダディーは少し前につけようと外から伸びようとしています。先頭から後方まで13馬身。既に1300メートルを通過してケイジと先頭集団の差は6馬身へと伸びています』

 

 

 ただまあー・・・あははは。坂を上ってコーナーでと少し消耗しているかもだが、俺の場合は息入れつつで距離をつけていることに気づいているのかねえ~? 馬たちの方もオルフェの気迫と、俺の様子を感じてかちょいかかっているかもだぜー?

 

 

 「・・・一部は焦っているというか、ケイジに追いつこうと馬がしているのかな・・・? パーマーとヘリオスに付き合ったテイオーを思い出すな・・・いいぞケイジ。少し馬身差を縮めてもいいから今は少し力を残そう」

 

 

 『あいよ了解。ただ、最後の方は早仕掛けするからな』

 

 

 『さあフォルスストレートに入りましたケイジ。一呼吸遅れてルーラーベルセルクが馬身差をつめようと猛追。馬身差を4馬身まで詰めてきました。いよいよこの長い最後のコーナー、ゴール前の直線への道も半ばを過ぎます。

 

 

 オルフェーヴル早めに仕掛けた! ユウジョウも外から馬群を交わして飛んでくる! 日本組が仕掛けていく! 800メートルスパートをかけるつもりなのかこの二頭! おおっとケイジもさらに加速をしながら最終コーナー目指して突っ走る! 距離をつめてきていたルーラーベルセルクを引き離す! トレヴン、ケンタウルスホイミも仕掛けていきますが足が重い! ケイジの大逃げに知らず知らずのうちに付き合ってハイペースで走ってきたつけがここに来たかぁ!?』

 

 

 もう仕掛け時。ここからの直線も長いんだ。あちらさんが加速する前にこっちから仕掛けてコーナーでさらに引きずり回すぞタケちゃん! クライマックスへの準備は出来ているかい?

 

 

 オルフェもユウジョウも流石大逃げやらやたら個性派ぞろいの時代を戦い抜いた怪物。いい感じに俺の後を付いてきていやがる。だけど勝つのは俺、そしてタケちゃんだ!

 

 

 「行くぞケイジ! 得意の早仕掛けと、スパートだ!」

 

 

 『いよっしゃぁぁあ!! まかせろい!』

 

 

 タケちゃんも理解したか俺に鞭を入れて姿勢をよりがっちりと最後の加速用に備える。さあ、見せつけようぜ! これが俺と、タケちゃんと! ここに来るはずだった松ちゃん! そしてタケちゃん相棒、ライバルたちの戦ってきた技、大逃げからの差し! サラブレッド究極戦法の一つよぉ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ケイジがフォルスストレートの後半で加速した瞬間。時間の流れも、何もかもがゆったりとなった。

 

 

 集中が極限まで達したのだろうか、それは分からないが、いやに周りの状況がよくわかる。歓声も、実況もじっくりと聞けるし、聞き分けもできる。同時に、今のレースの状況も。大逃げからの差し。しかも残り700メートルからの、最終コーナーからの猛加速に誰もが振り切られてそのまま一人ぽつんと直線に入って更に差を伸ばす。

 

 

 揺らめくケイジの鬣、会場の光、日差しがゆったりと、線の形で捉えてしまえるほど。世界の時がスローモーションになったようだ。

 

 

 「最高だよ・・・ケイジ・・・君と凱旋門をとれる。そして・・・この景色を、戦いをしてくれてありがとう。優しい子なんだね・・・」

 

 

 思えば、ケイジは本当に優しかった。どうしてもスズカやディープを重ねてしまう自分だけども、ケイジを尊重して、その戦い方でいい部分、噛み合う部分をケイジに教え、練習していくうちにケイジの方から自然とディープやスズカの戦い方をしてくれるようになった。

 

 

 まるで「戦友だし、サービスしてやるぜ」と言わんばかりに僕と相棒たちが目指したスタイルの極致を見せつけ、僕に合わせてくれる。・・・・・・競馬界の皇帝、最強の一族は伊達ではないということだろう。差が広がる。後ろから追いかける足音が重なるがそれも遠くなる。もう勝ちは確定したも同然。ケイジの心音も、息遣いも、足の回転も落ちる予兆すら見えない。鈍るようなそぶりさえ見せない。

 

 

 行ける。凱旋門も。日本競馬の悲願・・・・いや、世界中のホースマンなら一度は夢見て仰ぐこの大舞台でこんな勝ち方が出来る・・・早くそれを味わいたい。けどこのケイジと乗って見える景色を見ていたいと自分の中で思っている中。何かが聞こえた。

 

 

 「――――-・・・って」

 

 

 「・・・少し・・・」

 

 

 「・・・・るな!」

 

 

 人の声だ。だけど、それを聞いた瞬間。僕と一緒に戦ったあの戦友たちを思い出す。異次元の逃亡者が、名優が、女帝が、頭の中を真面目に見てみたかったじゃじゃ馬が。生きている子も、天へと旅立った子たちも。皆、皆の声が、ありえないはずなのに聞えてきた。

 

 

 「頑張って、大竹さん。貴方と一緒だったから最後も怖くなかった。ここまで頑張ってきたからこそ今も勝てるの。もう一押し、頑張って!!」

 

 

 「ミスもあったし、負けも、悔しい思いも悲しい思いも味わって、見てきて、それでも愛してくれたからこそ届く栄冠!! 私たちの分まで取ってきて!! 大竹さん!!」

 

 

 「あの時代のなか、女帝と言われ、認められたのも貴方のリードあってこそ・・・・・勝て! 新時代を作れ! 私たちの時代を越えてくれ!!」

 

 

 スズカ、マックイーン、エアグルーヴ・・・ああ・・・きっと、ここに来てくれているのか。応援してくれているのか。天に旅だってなお、僕を見守ってくれていたのか・・・・・幻聴かもしれない。興奮が過ぎたゆえのものかもしれない。だけど・・・

 

 

 「ケイジ! もっと出せるのなら頼む! 一緒に・・・・一緒に新時代の幕開けをしてやろう!!」

 

 

 「ヒヒィン!!!」

 

 

 『おうよぉ!! その言葉を待っていたぜ!! やるんならとことんやるべきよなあ!! 落とされんなよ最強ジョッキー大竹ちゃん!! 今から日本最強じゃねえ・・・・世界最強ジョッキーに大変身するんだからよぉ!!』

 

 

 ケイジの嘶きと同時に聞こえてきた声。その後にさらにギアが上がり、文字通り飛ぶような走りを見せた。ああ・・・凄い。逃げて差す・・・まさしくそれの完成形だ・・・こんな名馬に乗れる・・・嬉しいことはない。

 

 

 だからこそ世界に見せつけてやろう! 日本の戦士がここでももう勝ち切れない存在じゃないんだと! 見せてやろう! 日本古来の戦士の結実が、今の時代の先をいく血統にも、名馬たちにも負けないんだと! そして・・・苦しい、悲しい時があっても、それでも馬が好きで、一緒に戦ってきた。

 

 

 僕の相棒たちが、ライバルたちが血と戦いのバトンを繋いでくれたからこそここに立てる僕が出来るのは、一緒に戦ってきた皆がいるからこそこの最強の傾奇者と走れるんだと、ケイジに世界最強の栄冠を届けるために、皆に見せるためにもっと・・・見えているスピードの向こう側、世界の頂へと・・・

 

 

 ゴールが見える。後ろにいる馬たちも追いつきやしない。この景色に、スピードの向こう側へと入らなければ今のケイジと僕には勝てない。だんだんと、視界と感覚の時間が元に戻っていく・・・

 

 

 

 『・・・・・ォオオーーーーーーールッッッ!!! 何ということだ! これは夢か幻か!!? 大竹騎手とケイジコンビ! 二着オルフェーヴルに4馬身をつけての大圧勝!! しかも、しかもしかも場所はパリロンシャン競馬場! 凱旋門賞のレースで!! 日本人、日本馬初の・・・! 長く・・・長く願うも届かなかった凱旋門賞の勝利の栄冠を持ち帰りましたぁああ!! タイムはなんと2分19秒5!! 自身のワールドレコードを更にコンマ2秒更新ンンッ!! 

 

 

 皇帝シンボリルドルフが挑めやしなかった!! 日本の名馬たちが挑んで、距離を引き戻すもあと遠い一歩。そこを確かに踏みしめて、手にしたのはケイジ! 皇帝の孫が日本最強ジョッキー大竹騎手を凱旋門ジョッキーに、あのサイレンススズカの得意戦法逃げ差しでつかみ取ったぁあああ!!』

 

 

 思わず驚くような大歓声に身を震わせ、ケイジの様子を見て首を撫でつつもすぐさま掲示板を見る。

 

 

 そこには確かに16番の文字がはっきりと示されていた。眼をこすっても、ケイジや僕を呼ぶ声が確かにそれを現実だと教える。届いた・・・ディープやフェスタ、オルフェーヴルですら届かなかった世界一の芝の舞台の一つで・・・ケイジが、皆が導いてくれたんだ・・・

 

 

 「ありがとう。ケイジ・・・・・君に凱旋門ジョッキーにさせてもらったね」

 

 

 「むふぅ。ワォン」

 

 

 『気にすんねえ。それより堂々としてなさいな。世界のジョッキーでありこのレースの勝者。勇姿を見せつけてしまいな』

 

 

 まだケイジの声が聞こえる気がする。だけど、多分嘶きの意味は同じことなのだろう。悠然と構える。どうだ俺たちを見ろと言わんばかりの態度。ああ。松風君が言っていたのは本当だ。この子は夢を背負い、そして仲間のために全力で戦ってくれる。漢の中の漢だ。

 

 

 『そしてなんとなんとぉ!! この凱旋門賞で1着から3着まですべて日本馬!! 2着オルフェーヴル、3着はユウジョウ! ほかの馬たちは皆ケイジの大逃げに振り回されて三頭以外の馬身差は3馬身以上! 規格外の大逃げに翻弄されつくし、日本メンバーは大逃げとの経験があった故にこの明暗が出てしまったのかあ!!? ますますもってこれは驚きを隠せない!!

 

 

 日本競馬の新時代を作り上げたターフの傾奇者ケイジ!! 日本競馬界を引っ張ってきた大竹ジョッキーのコンビによる凱旋門制覇は前代未聞尽くし! わたくし、この実況を出来たことに涙が止まりません!!』

 

 

 歓声を、実況を聞き、このレースを戦ったジョッキーたちと軽い握手をしながら改めて思う。たった二度、しかしその二度で欧州二冠を手にし、相棒たちと目指した景色を見せてくれた。こんな名馬と離れることが惜しくなってしまう。

 

 

 松風君には申し訳ないと思うも、これはある意味ホースマンの性なのだろう。こんな怪物とまだまだ戦ってみたいと若い松風騎手のやるべき屋根を一時的に担っている状況なのにそれを考えてしまうのだから。同時に、この二戦を自分に託してくれた松風君に陣営。頼み込んでくれた的矢さんに岡崎さん。背中を押してくれた前田牧場の皆さんへの感謝の気持ちがあふれて、ケイジと出会えたうれしさが止まらない。

 

 

 「さあ、やろうかケイジ。君の勝った時のパフォーマンスをこのフランスでも生で見せてあげよう」

 

 

 「ヒィン」

 

 

 ケイジの声は聞こえなくなったけど、きっと了解してくれたのだろう。ポコポコとスタンド前に移動し、僕も振り落とされないように涙を拭き、しっかりと手綱を握って脚に再度気合を入れる。

 

 

 目の前で行われるケイジダンス。大咆哮に応える観客たちに自分のこぶしを突き上げて応えつつ、ふと見えた観客席の一角。

 

 

 (まさか・・・・ね)

 

 

 何かを感じつつも、ケイジと一緒にスタンドを離れ、無事にレースを終えることが出来た。その日の酒は、食事は何もかもがおいしすぎてついつい食べすぎ、飲みすぎてしまい気が付いたら眠っていた。

 

 

 ありがとうケイジ。人生最高の日を、勝利を、あの景色を見せてくれて。ありがとう。僕と戦ってくれた皆。みんなと戦って、ジョッキーとして頑張れたからこそ、ここ凱旋門にも届いたよ。




 大竹さん夢をかなえる。世界に雄飛する世界レベルの騎手へ。なお来年は最低でも強化ゴルシとジャスタウェイが乗り込んでくる様子。


 ケイジ 逃げ差しで圧勝。ドーピング検査も引っかかるはずもなし。どんなもんじゃいどや顔しようとしたけど結局笑いを取ってしまう。ある意味芸人根性も付いてきた。神様たちがいたのに気づいて察したのでいつも以上に気合を入れた大逃げかまして勝利。勝利後にレースで使った蹄鉄は大竹、ケイジ、葛城、利褌でそれぞれわけあった。


 オルフェ 見事にケイジの大逃げに食らいつくも、届かなかった。ゴール直後にキレそうになったけど大歓声で驚いていつもの調子に戻り、ケイジの勝利を祝福するも自身は勝てなかった悲しさに何かを考えている。


 ユウジョウ 3着になるも悔しいとなってしまう。そしてケイジ世代らの滅茶苦茶さにやっぱやばい先輩なんだなあと再認識。


 大竹騎手 凱旋門賞で大逃げで勝利。聞えて来た声に何かを感じる。この後思わず痛飲。食べすぎで二日酔い気味に。ちなみに、後にキタサンブラックと出会うのでまだまだ逃げ、大型馬との縁は続くようで。


 藤井 涙でぼやけつつもシャッターを切りまくり、急いで原稿を書き上げて新聞社に電子メールで送った。その後に涙ながらに描いていたせいで誤字脱字が多かったと突っ込まれつつもよくやったと会社から社長賞。最優秀記者賞をいただきました。親父さんからは「歴史の証人となれておめでとう」と飯に連れていかれ、カメラの部品を一緒に買いに行った。


 ムランルージュの皆さん フランスでカマ友が増えて一緒に応援。大勝利の結界涙も鼻水も垂れ流しの大はしゃぎ。フランスの友達たちも日本馬初の歴史的快挙に一緒に喜んでくれてこの後飲み明かした。


 神様 前回より参加メンバー増えてのフランスへの応援団結成。今回はサイレンススズカ、エアグルーヴ、メジロマックイーン。エアシャカール。生きている子たちも分身というか分霊的なノリで連れてきました。ルドルフとシンザン、テイオー大号泣。神様も大快挙に思わずガッツポーズ。


 欧州ホースマン、競馬ファンの皆さん 大逃げでこの勝ち方とかマジかよ。ドーピングもまるでない。こんな怪物がいたのかと唖然。同時にロマンの極みともいえる大逃げでの圧勝に興奮と賞賛は送り、どうにかここに連れてこられないかなあと模索中。


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凱旋帰国

 評価人数160人突破! お気に入り2800人突破ありがとうございます!

 たびたび仕事とポケモンのせいで今後速度が落ちるかもしれませんがよろしくお願いします。このためにスイッチ買いましたが、いやはや、ゲームの進化ってすごい。まだまだやれていないですけども。


 今回は短めです。


 ~凱旋門賞・レース前~

 神様「いやはや、凄い盛り上がりだねえ。流石は世界有数の国際レース。競馬の本場での三冠の一つになるほどの大舞台だ」


 ルドルフ「ここが私が挑むはずだった場所か・・・そこに孫が挑む。感慨深い・・・」


 シンザン「私やルドルフの時代ではうそぶくことはあっても目指すことなんてとてもとても。遠い夢のまた夢だったね。ジャパンカップやほかのレースでも海外のレベルを思い知らされるばかりだった」


 エアグルーヴ「私の時代になっても・・びる・・・ピル・・・ああ・・・ブロワイエなど、強豪たちにねじ伏せられ、未だ難敵というものでしたからね。しかし、その本場に殴り込み、先のキングジョージでも圧勝」


 スズカ「あれがケイジ・・・私と大竹さんで目指した果てを届けられる戦士・・・」


 テイオー「そう! 僕の最後の子どもにして最高傑作!! ・・・・・にしても、大きいなあ・・・改めて」


 ルドルフ「テイオーの約1,5倍近い重量に背丈も高い。周りの馬たちが小さく見える。流石は私の孫だ。この前も熊を蹴り殺したときなど・・・」


 エアグルーヴ「え”・・・熊を蹴り殺した?」


 シンザン「ああ、そうかここで合流したものねエアグルーヴちゃんは。そうそう。昨年の夏ごろに夏祭りに牧場を脱走したケイジが知り合いの子どもを守るために熊と戦ってねえ」


 スズカ「マスタードで目つぶしをするわその隙をついた友達の犬が熊の噛みついてマスタードでのたうち回って怒ったり、なんかもう・・・やりたい放題だったわね・・・・」


 ルドルフ「そのおかげで日本史上初の警察から害獣退治と子供を守ったことでの感謝状を貰ったウマになった。流石だ!」


 テイオー「ワイドの紙を咥えたネイチャのポスターは見たことあるけど、まさかの事実に思わず父さんに二度聞きしてしまった。写真写りはいいけど、変顔の割合がなあ」


 エアグルーヴ「皇帝の一族は滅茶苦茶なのしかいないのでしょうか・・・失礼かもしれませんがもう・・・おお・・」


 シンザン「あの子がぶっ飛んでいるとしか。でも、滅茶苦茶というか、凄いという意味ではエアグルーヴちゃんも凄いよ。お母さんに負けず名牝として評価された。今も子供たちが戦っているんだもの。ケイジは分からないけど、現役も引退も名馬というのは本当にすごい」


 スズカ「そうですね。あ、そういえば確かケイジ君と確か子どもが出たレースで・・・ん、くく・・・」


 エアグルーヴ「わ、笑うなたわけ! 流石にあれは会う機会があればしっかり怒らねばいけない!! はぁ・・・それはそれとして、是非ともケイジには勝ってほしいな。スペシャルウィークたちの魅せた世界への日本の強さ。それをまた・・・」


 神様「僕もここまでやりたい放題していくとは思わなかったしねえ。しっかり録画はしているし、ゆったり見ていこう。ああ、それとエアグルーヴちゃんの知りたかった香水や花の名店、チェックしているから」


 テイオー「あ、僕がしていたステップ! ここでしてくれるんだ・・・!!」


 ルドルフ「見せつけるのだろうな・・・私たちの血がここまで来たと。しかし大竹かあ・・・私は大竹と聞くと魔術師の方を思い出すな」


 スズカ「大竹さんのお父さん・・・でしたっけ? あ、オルフェーヴルにユウジョウ。それにしても、本当にサンデーお父さんの血は強いわねえ・・・」


 神様「日本でいえば弥生、皐月、日本ダービー、有馬ないし宝塚記念。
札幌記念を勝っているような怪物でその時代のアメリカの主流血統からははずれに外れた完全異系だしねえ。名馬も名馬だよ。日本にこんな馬が来れたのは歴史の転換点さ」


 テイオー「マックイーンとの親友だっけ? 恋人・・・あれ? 同性・・・? どちらにせよ、羨ましいね。あんなに子孫が日本に、海外にたくさんいるんだから。しかもあのオルフェーヴルは互いの孫なんでしょ? すごい話だねえ。あれ? そういえばそのサンデーとマックイーンは?」


 ルドルフ「ああ。フランス旅行だし、二人で別席観戦してからそのまま旅行に行くと言っていた。私たちの血、子孫もこれからさ。テイオーが頑張って有馬を勝ったように、最後にケイジを残せたようにな。さて・・・レースが始まるぞ」


 ~レース後半・フォルスストレート~


 シンザン「むー・・・ここはこーなが緩やかな分他が減速する中加速するケイジは少し差をつけるのが難しい・・・おお、ここでも早仕掛けで行くのか!」


 ルドルフ「そうだ! それが一番、直線でずっと行けるのなら更に距離を取ってからコーナーが緩い分残せる脚でさらに突き放してしまえばいい! そうすれば体重が重い分一度ついた加速は鈍らない!! 直線でもケイジは負けない!! ・・・・改めてあの黄金の不沈艦は何なんだ!!?」


 テイオー「あの二頭を思い出すけど・・・いいぞー!! 思いきりやっちゃえ! 大逃げが弱いとは言わせない! あれでGⅠとったのが僕と同じ時代に、黄金世代を子ども扱いした怪物だって日本にはいるんだー!!」


 エアグルーヴ「いけ・・・いけ!! 大竹さん!! ケイジに、日本に世界の栄冠をまた一つ・・・!」


 スズカ「あ・・・この感じ・・・大丈夫・・・大丈夫よ! そのまま行ける!! 勝って大竹さん!! ケイジ君!」


 神様「ただ凱旋門賞を取るだけじゃない・・・こんなことまでしてくれるのか・・・ふふ。サンデーとマックイーンも応援しているけど、もう決まったね。ケイジ君の勝ちだ」


 ルドルフ「勝った・・・ケイジ、いや日本の大勝利・・・!! ああ・・・・!! やってくれた・・・! 日本の旗が、歌がここに来るとは・・・!! 幸せだ・・」


 テイオー「すごいよ・・・海外の、逃げが邪道だとかなんだとか言われる中でこの勝利・・・・・うん・・・最高だよ、僕の子どもが、やってくれたんだ・・・」


 シンザン「砂浜や山道での調教での柔らかい地面、反発力がない場所での走りの経験。そして・・・私やルドルフ、テイオーの時代の芝はまだ冬枯れもあれば、今よりもやわらかい芝だった。その中で走った血の遺伝も活きたのかな? ・・・・・・おめでとう・・・日本がずっと追いかけていた競馬の本場にも、届いたんだね・・・涙が・・・」


 エアグルーヴ「世界一・・・・・これで日本、ドバイ、イギリス。そしてフランスのGⅠを制覇ですか。いやはや感服としか言えません。私の子どもたちも嫁候補になるのでしょうけど、この子なら文句はない。おめでとうケイジ。古来日本競馬の結実の傾奇者・・・素敵な景色を見せてもらった」


 スズカ「ああ・・・よかった。本当によかった・・・! あの景色の先を、世界の頂点さえも・・・届いた、届けて、見せてくれた! 大竹さん、頑張って、歩いてきてよかったね・・・! ありがとうケイジ、最高の侍だよ」


 神様「そしてオルフェーヴルも二年連続二位で確かに三冠馬の意地を、新進気鋭のユウジョウも三着。これはもう文句なし、いや、言う輩はいるだろうが日本がもう欧州のレベルに届いたのは確かだと言える。

 ・・・全く、まだ4歳だというのに、これからもまだまだ先が見られる。飽きさせないね。あれ? マックイーンとサンデーも来た。二人で行かないのかな? ま、私達の馬券の儲けも使って今日は飲もう。美味しいお店を知り合いから教わってね」


 『ケイジ凱旋門賞を見事制覇!! 日本、アラブ、イギリス、フランス4か国目の勝利GⅠは日本の悲願までもを持ち帰る!!』

 

 

 『世界有数の名馬へと! 漢ケイジダービートリオで大手柄!』

 

 

 『見たか世界よ! 日本の皇帝の一族完全復権!!』

 

 

 「むふふ。これはいいないいな。ええ感じにケイジ君らで日本中がにぎわっておるわ」

 

 

 『だなあ。ところで藤井の兄ちゃんは記事書かないでいいの?』

 

 

 「ん? ああ、ボクの方はもう記事を書いて送っているからな。ほれ、移動中に利褌さんに取材したのをさかさカーっと描いてもう送ったから、今はもう牧場観光と湯治にシフトってわけや」

 

 

 『なーるほどねえ。そういや、予約表に入っていたわ藤井の兄ちゃん。ならゆったりとなー』

 

 

 無事に帰国を済ませ、ドーピングやらあれこれのいちゃもんも無くまた検疫と隔離のために前田牧場でしばしの休暇となった俺。同時に藤井の兄ちゃんとトモゾウたちがもってきてくれた新聞はどれもこれも俺やオルフェ、ユウジョウの記事ばかりで一面もそれ。

 

 

 大写真は俺らのゴールだけど小さな写真の際の俺とオルフェは変顔なのは笑いを誘うためかね。連日連夜テレビでも新聞でも大賑わい。日本競馬ブームは俺らの世代で起きていたが、今回の件でさらに前代未聞、空前絶後の大ブームになっているそうな。

 

 

 頑張った甲斐があったぜー。これでたくさんお金が入って、引退馬たちも穏やかに過ごせる資金が出てほしいなあ。

 

 

 「まー少し休んでから、もう一つ予約している社爛さんの牧場でブラウトちゃんたちの写真と、軽く取材を組むけどね。いやー・・・あの人、ケイジ君もやけどナギコちゃんにキジノヒメミコ、そしてミレーネちゃんにブラウトちゃんと世界レベルのロマン血筋かつ素質馬集めすぎやって」

 

 

 『俺の方はクラシック戦線時既に特番幾つかあったけど、今回の件でもう前田牧場特集組まれそうね』

 

 

 「ほんま、サンデーキンカメの血が入らない上にスピードもそこそこ、ド級スタミナ、パワー血統を用意したし、今後種付けの予約や依頼の取り合いなるで。さて・・・まーだ騒いでやがるのか・・・・ボクもちょい追い返すの手伝わんと」

 

 

 『いってらっさーい』

 

 

 でもまあ、オグリ時代とテイオー、マックイーン時代、98時代を全部詰め合わせたようなブームのせいもあって、うちの牧場に押し掛けるマスコミの数。おい俺ら馬の視力でも全部とらえきれないって何事だよ。記者の波が最早ゾンビ映画のワンシーンにしか見えねーぞ。

 

 

 日本一過激、素行不良、マナーを守らない記者は容赦なく悶絶調教する過激武闘派警備員もいるってのに全くすげえバイタルというかなんというか。何でこの記者さんらは入れているのにとごねる記者がいるけど、そりゃーお前藤井の兄ちゃんをはじめとした入れている記者さんらは凱旋門賞に挑む1か月以上前から予約入れて、俺ら馬の負担考えてフラッシュ厳禁、音も控えめのカスタムカメラに時間厳守の徹底ぶり。

 

 

 俺らへの土産すらも用意する馬やホースマン、牧場への配慮をしっかりしているからだよ。うちみたいな中小牧場に警備員を見返り無しで配置してくれているドカちゃんとか、真面目に今度は切れてマスコミやテレビに資金提供しなくなるぞ。

 

 

 藤井の兄ちゃんも記者さんらにプレートまで用意して注意と馬たちへの配慮をしろと言いつつ押し返し、おやっさんとトモゾウらが牧場の外でしっかり記者会見を即席で開いて対処。ほんとお疲れだぜ。

 

 

 『あー・・・いい湯だったぁ・・・温泉・・・秋でなくても入りたいね』

 

 

 『おーお疲れオルフェ。でしょー? しばらくはお前さんもここで休むそうだし、ゆっくり過ごしてくれや』

 

 

 『うん。あ、そういえばテレビでやっていたけど、大竹さんとケイジ君、前田牧場の皆国民栄誉賞もらうのと、大竹さん府中に銅像立つそうだね』

 

 

 『はっはっは! 銅像たあ豪気だが、あの人ならふさわしい。オルフェこそおめでとう。今回の結果で国際レートも上がったし、引退後は超モテモテのハーレム生活だぞお?』

 

 

 あ、ちなみにだがオルフェは俺の牧場で温泉に。ユウジョウはブラウトちゃんらと一緒に社爛さんの牧場で過ごし、しばらく検疫と休養。グラスじーさんがまた実家・・? に戻ったので牡馬放牧エリアがまた草も青々と生えているのでオルフェもぽかぽか地面で柔らかい草のクッションでお昼寝。気が向けば俺が頼んで牧場スタッフと温泉と、頑張った分のバカンスを満喫中。

 

 

 『うん・・・そうだね・・・ねえ、ケイジ君。君は、なんであそこまで強いんだい? 誰かの分を背負えるとフランスでは言っていたけど・・・でも、騎手が変わって、いつもと違うと感じながらもできるの・・・?』

 

 

 『そうだなあー・・・オルフェはさ、池沼ジョッキーのこと、好きだし、外国の騎手さんがお前さんにスタイルを合わせてもそれでも池沼さんがいいって思っていたろ?』

 

 

 『まあね・・・ずっと一緒に戦ってくれた人だもん。この舞台でも一緒ならと・・・』

 

 

 『それはあちらさんも同じなんだ。オルフェが池沼ジョッキーを想うように、あちらもお前さんを想っているし、同時に勝ってくれと願っていたはずだ。俺もそういう想いを背負っている、見守ってくれるというのが感じられる。だから相棒が変わろうともむしろその分やってやると脚に力が籠るんだ。ここまで来るまでに戦って、支え合ってくれたみんなの分な』

 

 

 そう。嘘みたいな話だが、期待や望まれるのが、そのプレッシャーがやる気になる。ってのは実感するとまあ凄い。言ってしまえばそのプレッシャーが、いや期待や夢が精神を研ぎ澄ませる砥石だし、俺の身体に入る活力だ。

 

 

 オルフェーヴルは基本臆病なせいで池沼ジョッキーや一部の人の期待を選んで載せていたと思うけど、それ以上に乗せられることが出来ればきっと更にやばくなる。

 

 

 『みんなの・・・』

 

 

 『そうそう。それに俺らダービー、三冠馬ともなればその圧は段違い。だけど、それだけ皆を夢中にさせて、笑わせたり熱くさせられるのは楽しいものヨ。オルフェもそれを既にしているし。欧州で俺らよりも先に切り込んで戦ってくれた偉大な戦士さ。オルフェも、きっとそれを感じたうえであの凱旋門賞を挑めば、俺とオルフェの順位は入れ替わっていたぜ』

 

 

 『そうかなあ? ケイジ君の強さはかなりやばい部類だと思うよ』

 

 

 『なはは! 既に二度も負けているんだし、ライバルは多いよ俺は。いつ負けるかもうひやひやで。お・・・? あ、池沼ジョッキー』

 

 

 『ううぅーん。ケイジ君もそんなこと考えるんだねえ・・・誰かの期待を脚に込める・・・か・・・え!? ほんと!? 池沼さん何処!? あ、いた!』

 

 

 おぉう。ほんと池沼さん好きなんだなあ。俺が見つけるやすぐさま体を起こして放牧エリアからすっ飛んでいったよ。

 

 

 松ちゃんも早く来ないかねえ。リハビリは済んで、今は練習中とのことだし、もう少しかかるのかしら。ほわぁー・・・さてさて・・・ナギコの本棚から借りた農業生物学や、武器軟膏の本でも読んでみるか。歴史教えたら推理小説のみならず奇書にまで手を出しやがったよあの馬。

 

 

 ほんほん・・・うーん・・・ええ・・・・・・うん。こりゃあー皮肉の効いた奇書だったということだけ、あ、ボーボボ零巻的なノリの偉大なるパンジャンドラムは笑った。

 

 

 

 

 

 『・・・ということで、ケイジ号、オルフェーヴル号、ユウジョウ号の放牧後、帰国後の1週間後に授賞式を執り行う予定となりました。その際は・・・・・・・・・そして、その大舞台を手にした大竹騎手のインタビューになります』

 

 

 『感無量であると同時に、時代を彩り銅像を建てられる名馬たちと少しでも並ぶことが出来たのかなと思うと嬉しく、少し緊張してしまいます。ですが、私の銅像は出来るのならケイジの本来の相棒と、ケイジ。そのコンビの戦いが終わってからにしてほしいというのが正直な気持ちです。

 

 

 私はケイジに勝たせてもらっただけです。そして、ケイジと戦えるチャンスをくれた的矢さん、岡崎さん、葛城さん、前田さんらケイジ陣営、何より私に思いを託してくれた松風騎手のエールがあってこそです。ですから是非、あの戦国コンビの戦いの果てにできれば僕と松風君で銅像を建ててくれれば・・・と』

 

 

 一通り騒ぎが収まりそうな・・・いや、収まっているか分かんねえな? な状況で、大竹騎手、そしてあの凱旋門賞で日本馬に乗ったジョッキー全員と、俺たち日本メンバー、陣営全員が国民栄誉賞を賜る話となり、また競馬ブームが大盛り上がり。大火事にガソリンをポリタンク単位で投げ込むような騒ぎだ。

 

 

 アメリカ版ウオッカかよと言いたいほどの人気と騒ぎ、そしてタケちゃんの言葉がこれまたまあ・・・いうねえ・・・これは是非とも来年俺も凱旋門賞に挑まないとだなあ? 利褌のおやっさんに女将さん。

 

 

 「ふむ・・・これは、来年のこの季節も行先は決まったかな」

 

 

 「来年の事を言えば鬼が笑うと言いますが、ケイジちゃんなら鬼ですら蹴り飛ばしそうですし、とりあえず凱旋門賞はもう一度挑みます?」

 

 

 「ああ。ただ、キングジョージは少し考えよう。やはり遠征ゆえの疲れもあるし、ケイジも古馬に入っていく。衰えや体力の配分、焦らずに、じっくり煮詰めつつやれるようにしていけるよう葛城君とも相談だなあ」

 

 

 よっしゃ凱旋門来年も挑戦は決定。もう15だか16億円も稼いでいるもんね。昨年の覇者が挑むと聞いてあちらさんも拒めないだろうし、こりゃあーじっくり用意してまた今度は松ちゃんと挑まないとな。

 

 

 「あ、そうそう。調教師で思い出しましたが、平野さんとナギコちゃんたち。アメリカで2歳限定戦重賞レースで3連勝。GⅠにも挑んでいくそうですよ?」

 

 

 「おお・・・そうかそうか・・・無敗のままナギコもアメリカで躍進しているか・・・これはいいな。しかし、同時にアメリカのファンの方は良い見方をしているのかねえ」

 

 

 『あーあっちはなあ。自由の国、サラダボウルな国のはずなのに競馬の世界での馬は階級社会とはこれ如何にだからなあ』

 

 

 のんびりテレビを見ていると思い出したのはナギコの躍進ぶり。アメリカは基本GⅠ多いしね。下手すれば俺以上の戦績、GⅠ勝利数を3歳で稼ぐのも普通にあり得る話だからなあ。そのためにはルドルフ、マックイーン、オグリレベルのトンデモローテになりかねないけど。

 

 

 その中で勝ち進んでいるのがナギコ。だけど、アメリカの競馬では階級社会。マイナーの馬はマイナーの馬としか、GⅠレベルの馬はGⅠレベルとというのが通例で、たとえ勝利を重ねようとも見込まれない可能性があったりする。ノーザンダンサーとかサンデーサイレンスとかね。というか、この馬たちを管理したのが師弟関係の調教師で、どちらもレジェンドで、サンデーに関しては種牡馬として活躍やばそうだなあと言われているのにアメリカで欲しがった人がほぼいないってすげえよな。外貌主義とアメリカ馬の階級の壁ここにあり。

 

 

 まあ、それも正しいんだけどね。実際オグリやセイウンスカイで後継種牡馬、牝系でもどうにか後継者候補が残った? と言われると・・・うーん。だし、良血と良血。ベスト配合をするのもまた王道だし、確率もそちらの方が期待が持てたりする。

 

 

 「はぁー・・いい湯でしたわ・・・ああ、ナギコちゃんのニュースです? それでしたら、アメリカの記者仲間からもそらぁー好評でしたよ」

 

 

 「おや、藤井君。牛乳とビール何方をもらう?」

 

 

 「牛乳で。本場北海道の牛乳は東京ではなかなか味わえない旨さで・・・ぷはー・・・ああ・・・そうそう。それで。ナギコちゃんの追い込みでのまくりと加速、そして尾花栗毛のキレイな馬体とも相まってミス・ゴールドクイーンと言われたり、ジャパニーズ・ワンダーウーマンとえらいもてはやされようで」

 

 

 「リンゴもどうぞ。そうなのねえー・・流石記者さん。ここら辺の情報が早くて助かるわ」

 

 

 少し俺も心配していたけど、温泉上がりの藤井の兄ちゃんからの情報を聞いて安堵する。いやーよかったよかった。ナギコの両親は何方も地方の馬の血だし、ダートの本場アメリカの中央戦線で戦う際に気をもんでいたんだよなあ。

 

 

 そんで、おい、藤井の兄ちゃん馴染んでんなア。前田牧場の俺のTシャツ着けて、カバンには俺のぬいぐるみ。牛乳ひげ作りながら楽しげに談笑して。記者っつーか親戚の兄ちゃんだよこらあ。お盆も過ぎたし年末まだだぞおい。

 

 

 「いやいや、ホンマ泊めてもらって感謝ですし、ナギコちゃんの活躍は嬉しくなりますから。話は変わりますが、今年の天皇賞(秋)ジェンティルドンナにジャスタウェイを筆頭に多くの怪物がまた集いますなあ。前田さんらはケイジ君の次走はどこに?」

 

 

 「ふーむ・・・そうですね。此方としてはジャパンカップに出そうと思います。ケイジと松風君との調整の時間も取れそうですし、何より・・・日本馬による凱旋門賞制覇の馬が乗りこんで行われる初の大レース。ケイジが勝っても、ライバルが勝っても大盛り上がりですし、ケイジもきっと日本の皆が恋しいでしょう。そちらにします」

 

 

 「あはははは!! 海外馬よりも日本馬が注目を集め、しかもそれが凱旋門賞馬!! こらあ面白いですわ。早速文章だけでも会社に送ります。いやーありがとうございます前田さん。そしてケイジ君。また日本のレースでも頑張らないと、ナギコちゃんに追い越されるでー?」

 

 

 『何だとこの野郎。受けて立つぜ!! 日本冬の大レース。見事に勝って魅せてやるよぉ! あ、アニメみせて! 銀魂! ジャスタウェイの話が出ないか、アニオリが気になるんじゃ―!!』

 

 

 秋の天皇賞はジェンティルちゃんかジャスタウェイが勝つか、それ以外かはわからん。だが、勝つのなら俺たちの世代だと思う。だからとりあえず今の競馬ブームでジャスタウェイの名前や姿が出る話出てないかが気になる。見せてくれ。アニメの時間なんだよぉー!!

 

 

 「おお? ケイジ。ああ、アニメの時間か。ほれほれ、お前の馬房にあるだろう? 見に行こう。その間にご飯とお風呂の用意しておくから」

 

 

 あ、トモゾウ。ありがとナス! アニメの方はなんか銀さんとゴリラ局長が秋のレース情報を見てどれに賭けるか話をしていた。ゴリラ局長は直線勝負と爆発力でジャスタウェイ。銀さんはジェンティルちゃんがやるだろということでみたらし団子もしゃりながら駄弁ってた。

 

 

 どうなるかなあー天皇賞(秋)楽しみだぜ。




 真面目にブームかつ毎年話題を放り込んでくるケイジってこのくらいは騒がれていそう。そして秋は天皇賞とジャパンカップでまたケイジ達が出走。有馬も出る予定ですので多分秋から冬の競馬場はギチギチになっていそうですね。この世代たちの覚醒していくメンツが出るのもまたこのころからですし。


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戦国コンビ再結成

 ケイジがよく口にする「あはぁん」はあのニコニコ界隈でもスポーツ界隈でも有名な炎の妖精の声をイメージしてくれると幸いです。


 まじめに仕事で身体がきついので更新速度がどうなるか・・・頑張ります。後ポケモンでしあわせたまご手に入らない。


 ~銀魂・アニメの一幕(出来の悪さは勘弁してください)~


 近藤さん「うーん・・・・・やはり、このくらいがいいのかねえ・・・」


 銀さん「どうしたゴリラ。バナナの値上がりとセールがないことに困っているのか?」


 神楽「どしたアルねゴリラ。警察官が真昼間から競馬新聞読んでこんなところで茶をしばくとかダメ警官ヨ」


 近藤さん「お前ら言わせておけば。ほれ、差し入れのみたらしとどら焼きだ。いやなあ万屋に神楽ちゃん。ちょっと再来週の将軍賞(秋)のレースの賭けの事でちょいとなあ・・・」


 銀さん「おいおい警察が競馬に熱いとか両さん大先輩じゃねーか。二番煎じを同じ時期にしたら編集部に怒られるぞごりらー。ただでさえ毛深い警察官キャラというかぶりがあるのにこれ以上それをしたら怒られるって」


 新八「まあまあ。しかし、将軍賞ですか。僕もケイジ君やゴルシ君から競馬を知った口ですが、凄いですよね。将軍家から賜る盾を貰いあの賞金。日本競馬界でもダービーと同じ、それ以上とも言われるレースなだけはあります」


 神楽「んむんむ・・・(どら焼き食べている)で? そんなレースにどうしてゴリラが悩んでいるアルよ。今まで賭けなんてしていなかったヨロシ?」


 近藤さん「いやなあ・・・俺たち武士にとって、侍にとって馬は時代が変わろうともやはり相棒。そういうこともあってなんやかんや競馬を見るくらいはしていたんだが・・・前年のエイシンフラッシュと騎手の拝礼に、今やケイジ、ゴルシの大暴れのおかげでこの日本の競馬界は宇宙でもそこそこ知られている。


 で、また将軍様がこの前将軍賞にお目見えすることをテレビで公表し、その際に俺たち新選組が護衛につくんだが松平のとっつあんが『今や競馬は賭け事のみならずスポーツであり、エンターテイメントの一種。護衛とはいえ遊びくらいはしねえと若様が楽しめねえ。というわけでお前らも豆馬券でいいから買え』といわれてなあ・・・」


 銀さん「で、俺やマダオの知恵を借りてほどほどに優勝を狙えつつ、かといって穴でもなく本命でもないちょうどいい塩梅の馬を知りたいと。お、このみたらしウマ」


 新八「ああ、なるほど。しかし宮仕えも大変ですねえ」


 近藤さん「まあなあー・・・正直、馬のレースだけでも楽しいのだが、外す前提の馬券とか、真面目に賭ける理由も言えねえと俺らが楽しんでいないと将軍様の気分を害しちまう。というわけで、どれを選んだ方がいいかわかるか?」


 銀さん「んなもんジェンティルドンナでいいんじゃねえの? 本命だけどあの強さと走ったレースが最近はほぼすべて2000メートル以上で3位以下はない。安定してやるのならこれがいいだろ」


 近藤さん「いや、できればほどほどに狙える感じのを教えてくれ」


 神楽「エイシンフラッシュも捨てがたいヨ。ダービー馬だし経験も積んでいる、将軍賞でもいい戦いを見せているし、ウオッカみたいに馴染んだ場所でここからの勝利を狙えるはずアル」


 近藤さん「ふむふむ・・・やっぱりオークス、ダービー馬は本命、そうでなくても二連単馬券に入れていいと・・・あ、あと個人的にこの馬が気になるんだが・・・」


 新八「ジャスタウェイ? ああ、たしかここ最近ずっと2着を続けている。どうしてまた? 僕も好きな馬ですけど」


 近藤さん「いやあ、確かに二着が多いのも確かなんだが。それを古馬に入ってもしているし、クラシックのマイルカップにダービーでもケイジ、ゴルシに食らいつけていたし、もしマックイーンみたいな晩成ならここらへんで一発あるかも・・・と。お父さんもあのディープに一度勝てた子みたいだし、ロマンを狙うという意味でも将軍様にとっつあんも笑ってくれるかなあと」


 銀さん「まーそれでいいんじゃねーの? せこい豆馬券賭けて接待しておけや。ジェンティルちゃんの勝ちが固いだろうし、伏兵のまま終わるポジだろうし」


 神楽「銀ちゃんレースはどうなるか分からないアルよ。それに、ジャスタウェイの強さはきっと2200メートルからマイルならきっとケイジ達にも負けないネ」


 新八「姉上も馬は少し知っていますが、この世代あたりは最悪最強世代と言われていますしねえ。ケイジがいなければもっと混沌とした時代で、牝馬は言わずもがな。その中で二着、三着を維持しているジャスタウェイは確かに。僕も馬券が買えたらジャスタウェイに賭けますよ」


 『俺のためのプレハブかぁー・・・・・うれしいぜ』

 

 

 今日は俺の凱旋門賞優勝記念。なんか色々取材代とか諸々のお金を貰ったのでここらで一つということで牧場の休憩所を増築。少し上等なプレハブを作ってもらえました。

 

 

 「最近は急速に、松風君が君と勝つたびにアニメや漫画を送ってくれたし、あれも貰えたしねえ。よかったなあケイジ」

 

 

 『ねー。しかし、ほんとここの牧場、昔っからの方向が丸々ずれている気もしないではないが。しかし、これはいいな。俺専用の顎のせクッションも多いし』

 

 

 そう、今回作ってもらえたのは俺の漫画やDVDを置いておくための新スペースと頑丈な本棚。もうちょっとした図書館ないし本屋さんのワンコーナーくらいには漫画もDVDも充実したので資金もあるのでとドカちゃんらに依頼して増築。そこにもテレビとDVDプレイヤー、本棚にも何とジャンプの歴代作家の皆さんからの寄せ書きや漫画も貰えちゃったのでそこはもともとの休憩所に全部移動してこれ専用特別性の棚に乗せました。

 

 

 そして俺用のあの人を駄目にするクッション? みたいなやつを複数用意して牧場職員も俺もリラックスできるように。いやー至れり尽くせりだ。

 

 

 あ、そうそう。国民栄誉賞の副賞で俺には特製だけどレースでも使える鼻革とかハミなどの顔あたりにつける馬具、そして鞍に桜の紋章をつけたものを頂戴した。牧場の皆にもいろいろ貰えた様だし、いやーえがったえがった。

 

 

 『トモゾウ、早速だしアニメみせてくれよーこち亀の映画を見たいんだー』

 

 

 「よしよし、アニメを見たいんだな? えーと、この方向だと・・・こち亀か。アニメ? ではない? あー・・なら劇場版入れておくぞ」

 

 

 『あーりがとよう。うんうん、やっぱこの感じがいいんだよな』

 

 

 ぽかぽか小春日和のいい日差しを感じながらのひと時。これはいいなあー・・・・ああ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ん・・・あ・・・寝ていたわ。ふぅー・・・・ふぅ・・・ん・・・お?』

 

 

 劇場版こち亀からのクレしんを見ていて、エンディングの際に寝落ちしていたらしく、身体を起こすともう昼下がり。いやあー得したか損したか。

 

 

 ま、軽く放牧エリアで走って、温泉で汗を流すか・・・お? この足音に声・・・来たか・・・?

 

 

 「いえ・・・本当に私を再度頼んでくれてありがとうございます。前田さんには本当に頭が上がらないですよ・・・」

 

 

 「いやいや、ケイジの主戦騎手探しですぐに手を上げて、ずっとあの癖馬っぷりを受け止めて一緒に過ごしてくれる松風君だからこそ。もう私にとってケイジの最高の相棒は君しかない」

 

 

 利褌のおやっさんに・・・・なはは。帰ってきたか。まーったく、元気そうじゃあねえの。どれ、俺も一つ迎えに行かにゃあ。

 

 

 「ヒヒーン」

 

 

 『よう松ちゃん。太ってねえだろうな? 待っていたぞ、相棒』

 

 

 プレハブから離れて声のする、牧場へとはいれる一本道に歩いていけば相変わらず、たるんだ様子なんぞ全く見えない松ちゃんと、楽しそうに話す利褌のおやっさん。

 

 

 顔色よし、足の動きも問題なし。いいねいいね。こいつぁむしろこのリハビリ期間中に仕上げてきやがったか? ボクサーどころかボディビルダーレベルでいい感じに絞りつつも無理はなさそうだなあ。雌伏の時となったか。そうであってほしいぜ。

 

 

 ま、何はともあれ、ようやくだな! 松ちゃんよぉ!!

 

 

 「ケイジ・・・・・うぐほっ!! ぐふぅ・・・・こ、これがテキが悶絶していたボディーブロー・・・だ、大丈夫ケイジ。ちゃんとたるんでいないし、重量も問題ないよ・・・そして・・・ああ、ありがとう・・・ずっと強いままで、元気なままで待っていたんだね」

 

 

 「おおっとケイジ、お前も久しぶりだし会いたかったんだな。ああ、そうだよ松風君。大竹さんとケイジのコンビもよかった。けど、大竹さんも、いや皆が君とケイジのコンビを見たかったんだ。ケイジ、元気か?」

 

 

 『これ見て元気じゃあねえというおやっさんじゃねえだろうによぉ? 走ってくるかぁ?』

 

 

 「うん、お前なら問題ないな。松風君、せっかくです。少し乗ってきてはどうです? ケイジもどうせ後でお風呂に入る時間ですし、疲れもないのでひと汗流すくらいして、さび落としでもして来ればいいでしょう」

 

 

 おお、ありがてえこと言うじゃねえの。そうそう、どうせなら早めに慣れておくに限るぜ。挑むは日本秋古馬の大舞台の一つ。やるんなら、俺と松ちゃんの日本での復帰戦かつ凱旋勝利を飾るってんならやるこたぁ全部やってからよな。

 

 

 鼻先でどすどす松ちゃんを小突いて。ポンポン頭を顎で撫でたり載せたりしていつつ、聞いた提案にテンションウキウキ。じゃ、早速トモゾウに用意してもらうぜー

 

 

 「ありがとうございます! よし、ケイジ、いく・・・おぉお! 待てー!! 坂道を走っていくな!」

 

 

 『山道を歩いたりもしているんだし大丈夫だよぉートモゾウー馬具つけてくれや! あ、あと水多めで!』

 

 

 「ぬおっ!? ケイジ急に来るな。周りの馬がビビっているだろう。ん? 馬具をつけろ? ・・・・ああ、なるほどね。了解。ようやく、相棒が来たんだなあ。飯も用意しておくし、松風君と一緒にリンゴを食べるようにな」

 

 

 『あいよー。そんじゃあ、いってくるぜい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふーむ・・・? 乗り具合は相変わらずだけど・・・加速のタイミングの幅が増えたし、息の入れ方もうまくなった・・・大竹さんから技を盗んできたな? 脚の使い方もまたうまくなったし、欧州での戦いと大竹さんの経験が更にレベルを上げたかあ」

 

 

 『松ちゃんこそ、俺のわずかな姿勢というか、速度、脚使いの変化に合わせての姿勢の調整と、柔らかさが段違いだなあ。なに? 立川のあの最聖コンビのパンチさんの方からヨガの指導でも貰ったの? すんげえコーナリングかましても全く上から引っ張られる感触がしねえ』

 

 

 早速放牧エリア・・・のほかの馬を刺激しないようにしつつ軽く走って互いの調整をしてみれば結果として、どちらもいい感じに磨き合っていましたよん。という結果でした。

 

 

 「いやはや・・・治療中でもできる柔軟とか、とにかくしておいてよかったなあ・・・・前の、いや、じっくり自分と大竹さんの騎乗スタイルの差異を見たり、こういう風に時間を持てないとここまでは無理だった・・・ケイジ、お前の成長はすごいし、追いつくのも一苦労だ」

 

 

 『松ちゃんこそ、リハビリしていた間は馬に乗れなかっただろうに、出来ることをしてむしろレベルアップしているのはやべえわ。男子三日あわざれば刮目せよというが、互いにそうでしたってかぁん? それがいいな!』

 

 

 いやあーしかし、ほんと俺の場合は怪我無し不調無しの日々だからコツコツ成長できるかもだが、やっぱリハビリのあった松ちゃんがすげえなあ。こいつは復帰戦だしとちょっとでも気を抜いたり手を抜くのはしちゃあいけねえ。

 

 

 「どうどう・・・・ケイジ。お前といると僕の不安や、心配が和らいで、吹っ飛んでいく気がするよ。復帰戦ではあるが、それでもその一歩から僕は夢を見たい、手にしたい。・・・・・・・ジャパンカップ、取りに行こう。そのためにまた一緒に戦ってくれ」

 

 

 『もっちろんよ! そして見せてやろうぜ! タケちゃんと俺じゃねえ。松ちゃんと俺のコンビが本来のスタイルであり、最強だってな!』

 

 

 一通り走り終わってから、息を入れつつゆったりお風呂場に向かいつつ、語ってくれる夢がまたいいね。そうよそうよ。二人だから、タッグだからこそ戦えるのが競馬。二人はいいもんだ。苦しいことは半分で、嬉しいことは二倍になると超人レスラーも言っていたんだ。

 

 

 松ちゃんも苦しいときは俺に頼れ、俺も松ちゃんに頼るときは頼るから。ささ、まずは風呂はいろーぜーどうせ持っていた荷物から泊っていくんだろ? 久しぶりの騎乗で汗かいた後に温泉浴びてビール飲んじまえや。

 

 

 「あ、松風さーん! ケイジくーん。お疲れさまー。ご飯とお風呂の用意出来ているよー」

 

 

 「戦国コンビ―夜の冷えも早いですし、ささ、すぐに汗を流しながらあったまってください」

 

 

 おお、真由美ちゃんにトモゾウ出迎えご苦労。そしてありがてえ。秋の夜長、ゆったりと過ごさせてもらうわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『さあジャスタウェイ! この加速には誰も付いてこれない! ジェンティルドンナを突き放す! そうだ! シルコレと言われるがこの時代、この世代でそれを続け、ケイジに食らいつける彼もまた強者の一人! その末脚が爆発した!』

 

 

 『そうだ! 僕だって・・・あの最強時代の一人! 銀魂にちなんでシルコレ、いろいろ言われるけど・・・勝ちが欲しいし、信じてくれたみんなに! 何より、ケイジに、ゴルシに、ジェンティルドンナ・・・皆に負けないライバルなんだぁああ!!!』

 

 

 『この加速力は、大物狩りを果たすその力は父親譲りか! はたまたその名前に刻まれた爆発力か! あるいは侍の血が彼にも覚醒したか! 直線からの大まくり! 最強の貴婦人も、閃光の末脚すらも千切り捨てる!! 今ジャスタウェイゴール!! なんということでしょう! 2012年クラシック世代の一人がまた怪物じみた強さを見せました! 1年8か月ぶりの勝利をここ天皇賞でつかみ取ったジャスタウェイ! まだまだ時代は分からない!』

 

 

 「おおー・・・この末脚は・・・爆発力は並のものじゃないぞ・・・」

 

 

 「2000メートル前後であればもしかしたらジャスタウェイはケイジたちの世代にも、オルフェーヴルにも届くかもしれないですねえ・・・本当、この世代はどうなっているのやら」

 

 

 『おめでとうジャスタウェイ。真面目にジェンティルちゃんに3馬身つけて勝つって会場の驚きと狂喜乱舞具合がすごいなあこれ』

 

 

 夜、皆で録画していた競馬をもう一度見直して天皇賞秋を見ていたんだが、いやーこれはすげえな。あの末脚の爆発に外をぶん回しての勝利。派手な勝ち方するし、その末脚もまさにキノコ取ったか、爆発したような加速度合い。

 

 

 流石はジャスタウェイ、俺らのライバル。NHKマイル、ダービーでも俺ら以外は軒並み4馬身くらいつけている中で食らいついているし、成績でとやかく言われるがメイショウドトウ状態だったもんなあ。ちょいと覚醒すればこの通りってな。

 

 

 あ、録画終わってからのそのままニュース番組だけど、競馬特集してくれている。ありがてえありがてえ。あれ? 岡崎元騎手に大竹さん。どったんだろ。

 

 

 『はい、というわけで11月の大レース、ジャパンカップですが、今回もまた豪華、特にイギリス2冠馬アルトリアも緊急参戦に、日本初の凱旋門賞馬ケイジも加えて歴代でも屈指の豪華さを誇る大レース! 特に我が国の誇りとなり、競走馬初の国民栄誉賞を賜った一頭ケイジについて今回はお二人に語ってもらいたく。岡崎さん、大竹さんよろしくお願いします』

 

 

 『よろしくお願いします』

 

 

 『よろしくお願いします』

 

 

 はえーもうジャパンカップの事で盛り上がっているのねえ。しかも俺らと同世代にしてブロワイエ産駒にしてキンチェム系のアルトリアまでもが参加。で、メンバーも俺ら以外だとゴルシ、ジェンティルちゃん、ヴィルシーナ、エイシンフラッシュ、トーセンジョーダンとイヤー豪華豪華。今あげられたメンバー以外も強敵ぞろいだし、ある意味一番豪華かも?

 

 

 『まず、岡崎さんに聞きたいですが、今回の参加メンバーですがやはり注目は2012年世代になるでしょうか?』

 

 

 『はい。あの世代は皆が強いのもそうですが、ジェンティルドンナはドバイでの成績からも芝質のある程度の変化は問題ないですし、ゴールドシップやケイジも皐月賞でのあの荒れ馬場、そしてケイジはイギリス、フランスの重馬場ですら関係ありません。距離も全員が問題なく走れるので、優勝争いはこの世代、特にケイジとゴールドシップ、ジェンティルドンナの三頭になるでしょう』

 

 

 『やはりそうなりますか。そうなってくると全員の素質も強さも文句なし、そうなれば問題はやはり復帰直後のケイジの鞍上を務める松風騎手になりますが・・・前代未聞の四冠ジョッキーとはいえ、数か月の間馬に乗れなかったブランクは大きいと思います。ケイジとの折り合いはつくはずですが久しぶりの実戦で大レース。不安はそこになるでしょうか?』

 

 

 『確かに普通ならそのブランクは大変大きいです。僕も挑むにしたって勝ちの目は薄いと考えてしまいますね。ですがあのコンビ、ケイジと松風君の戦国コンビはそういう常識もあてはめすぎてはいけないでしょう。必ず何かしてきますよ。ケイジは松風君にとって僕でいうところのスーパークリークです。

 

 

 大舞台に挑もうが問題なくあのコンビは100%の力を持ってくるでしょうし、そうしないと勝てる舞台でもない。天才を天才にしたケイジと、そのケイジと阿吽の呼吸で戦える松風君なら皆が思うような戦いぶりを見せてくれます』

 

 

 言ってくれるぜ。そしてありがとう。松ちゃんと俺でタケちゃんらちぎって勝利して見せるからなぁー? そして、期待されてんねえ。次世代のジョッキーちゃんよお。もう美人ちゃんに酌してもらいながら休んでいる癖に、また今にも練習したそうな顔しちゃってー

 

 

 ん? 改めて出走予定の馬・・・またホイミいるじゃねーか! しかも引退レースここっておい。はえー馬主さん日本ファンだし、もともと種牡馬として来ないかとオファー来ていたのね。戦績は・・・29戦16勝ってなかなか強い・・・けど大体GⅡ、Ⅲかあ。あ、でもいわゆる札幌記念的な、GⅠ馬も多く出るレース勝っているのかあ。ステゴやネイチャ枠なんだねえ。いやはや、これはジャパンカップ、楽しみになってきたぜ!

 

 

 さぁさ肌寒くなってくる秋から冬になる季節でもわかせて、熱くできるよう頑張ろうじゃあねえの。凱旋門賞馬にイギリス2冠、ティアラ三冠に菊花賞馬、ダービー馬。当代の世界最強格そろっての大レース。かける際はお財布の中身と俺らの様子を見つつお気をつけてってね♪




 ようやく戻ってきた戦国コンビ。復帰戦は秋競馬の大舞台の一角。2012年のCMがミスターシービーでゴルシととケイジの激突、2013年ジャパンカップのCMにはシンボリルドルフ。そのレースに、世界に届いた皇帝の孫が日本にも強さをもう一度見せるために挑みに来る。本当の相棒を乗せて。


 ケイジ 馬のための施設(本とDVD置き場)をいただいた。栄誉賞でもらった馬具をつけてジャパンカップに挑むつもり。日本初の凱旋門賞馬を見せてやるぜい。松ちゃん戻ってきてテンションアゲアゲ。


 松風 リハビリ中にさらに柔軟性と、大工に頼んで騎乗練習、スタイルの確認が出来るように馬の背中を模したものを作ってもらい、それに鞍を乗せて姿勢をチェックしていたりとかしていた。なんやかんやジャニーズ系(城〇リーダー)な顔立ちで背丈も167、ケイジとのコンビというのもあって入院中女性看護師さん達からモテモテだった。ケイジと再会して、利褌に主戦騎手をまたお願いと言われて思わず泣いていたり。


 トモゾウ なんやかんやこの牧場の現場でリーダー的な感じ。一気にいろいろ貰いすぎて当初は頭がパンクしそうというか理解できそうになかった。馬のために漫画とかの保管場所造るというパワーワードをすぐに理解したりと本人も割と壊れ気味。


 利褌&女将さん(冴子) 松風君はもう半ば息子のような感じ。実は女将さんの体質もあって子供がいない。プレハブ作ったり、もらった栄誉賞の飾る場所を考えたり、いろいろしている。社爛さんがケンタウルスホイミを種牡馬にしようとしているのでミレーネかブラウトにつけようかなあと迷っている。


 真由美 ケイジを厩舎に戻す前に様子を見つつ、松風に会えると飛んできた。女湯で女将さんから色々どうやって松風と距離をつめようかと相談したりしている。ヴィルシーナのファンでエリザベス女王杯に期待している。


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三度目の正直? ジャパンカップ(GⅠ)

 お気に入り人数3000人到達ありがとうございます! こつこつこれからもやっていきます。いつも感想、誤字報告、高評価ありがとうございます!


 キンチェム直系にして英国二冠馬のアルトリアのモデルの馬も確かゴルシたちと同世代で当時のイギリスでもその血統で話題になったとか。ほんとこの世代周辺って世界中でニュースを持ってきてくれる子たちが多いのなんの

 あ、あとケンタウロスではなくケンタウルスでした。ホイミの名前ミス申し訳ないです。


 『今日の東京競馬場で行われるジャパンカップ。その熱狂は昨年のクラシックを思い起こさせるほどの満員御礼。入場制限すらも入るほどの人数と熱気。此方まで伝わりそうなほどです』

 

 

 やってきました11月末に行われる秋古馬三冠のうちの一つにして賞金も高く、数々の名勝負や名馬たちの足跡を追い、あるいは超えるために挑む大レースジャパンカップ。昔は海外の有名馬も多くが出稼ぎ、もとい挑みに来てくれたこともあってそりゃあいくつもの国の代表馬がぶつかる場所だった。

 

 

 でも日本馬もどんどんレベルアップしてテイオー時代ではそうやすやすと海外馬たちに勝ちを与えず、サンデーサイレンスによってさらに日本馬たちが強くなってからというもの検疫の面倒さに輸送の手間、ここらへんからも最近は出走馬も日本馬がほとんどだった。ここ最近の海外馬で印象に残ったのってあの五本足で走ったお馬さんくらいじゃない?

 

 

 『それもそうでしょう。今年のジャパンカップに集まったメンバーの豪華さ、そして話題性は今までのジャパンカップを見返してもそうそうないほど! さあ、まずはやってきました1番ヴィルシーナ! 前走ではエリザベス女王杯を征して気合十分! ライバルのジェンティルドンナへのトリプルティアラでのリベンジを果たそうと燃えております!』

 

 

 しかし今回はちょいと違う。来てくれた二頭の海外馬も強豪。迎え撃つ俺らも一部を除いて同世代のメンバーが集結。楽しくなってきたってもんだ。あれ? それとヴィルシーナちゃん今年のエリザベス女王杯勝ったんだ? ジェンティルちゃんの走りでも学んでレベルアップしているのかねえ。

 

 

 『3番にやってきましたアルトリア! 2012年クラシック世代と同期にして英国二冠馬! かつてこのレースでスペシャルウィークと激闘を繰り広げたブロワイエの産駒にして母方からはあのキンチェムの血をひくまさしく欧州の宝! 陣営からも自信ありとのコメントあり、父の取れなかったここジャパンカップの勝利を持ち帰れるか!?

 

 

 さらに続けて4番エイシンフラッシュ! ダービー馬の意地を、古馬の経験を生かしたベテランの意地と誇りを見せつけ、勝利をつかめるでしょうか! 5番トーセンジョーダンも参戦! 天皇賞(秋)で見せたあのスーパーレコードの走りをもう一度ここで見せつけるか!』

 

 

 まさしく迎え撃つメンバーも、挑みに行くメンバーも誰もかれもが大レースを制したやつら。しかも全員中距離も、このクラシックディスタンスは問題ない。いやーうずうずするなぁ。わちゃわちゃ暴れたくなるぜ。

 

 

 『やってきたぞ7番ジェンティルドンナ! 最強の皇女! ドバイシーマクラシックを征し、宝塚記念でも三着と好走をしている三冠馬の一頭がここにも来てくれました! 連覇のかかったこのレース! ひしめく強豪たちを押しのけられるか期待がかかります!』

 

 

 さあーお披露目だい。皆の衆! 思いきり盛り上がろうぜ!!

 

 

 『そして、今日このレースでだれもが彼の姿を見たいと! その走りを見たいと望んでいた日本の誇る侍が相棒ともに来てくれました! 日本の悲願を手にしてくれたターフの傾奇者ケイジ! 堂々参戦だぁ!!』

 

 

 「ヒヒーン!!」

 

 

 『おうよぉ! 待っていたかーい!! このレースでも勝ってやるからなあ!?』

 

 

 俺が姿を見せて歩けば会場の皆の熱気がさらに増す。イヤーこいつはすげえなあ。わははは! そうでなくっちゃ面白くねえ。せっかくの大レース。楽しんで、盛り上がってなんぼよ!

 

 

 「こら! わちゃわちゃするんじゃないケイジ! 久しぶりの東京競馬場とはいえ全く・・・ぬぉ! 立ち上がるな!」

 

 

 『出るや否や立ち上がり、動き回り、最早暴れているようとしか言えない動きをしますケイジ。会場もこれには大盛り上がり! そして笑い声と声援が飛んでいきます。しかし、ライバルはまだまだいるぞ! GⅠ勝利こそありませんが欧州のあらゆるレースで優勝馬と競り合い2着を6回。伝統あるGⅡレースでの勝利数も多く油断できない伏兵ケンタウルスホイミ。ここが引退レースと決めているが果たして有終の美を飾ることが出来るでしょうか!

 

 

 ・・・そして、やってきました! 凱旋門賞も手にしたケイジに唯一敗北を与え、ケイジ相手に実に現在二連勝! ここでもケイジのリベンジをねじ伏せて勝利できるか13番ゴールドシップ! 黄金の不沈艦の輝きは今日も素晴らしい光を放ちます!』

 

 

 馬鹿野郎俺はリベンジするぞお前。しっかしまー見事にメンツが濃い。何度も思うが本当に濃い。つーかよぉ。本命ほとんど俺らの世代じゃねーか!! アルトリアも同期だしよお。世界中でこの世代やばいのか? もしかして。

 

 

 『久しぶりねケイジ。まずは凱旋門賞優勝おめでとう。お父様も手にできなかった栄冠。貴方なら当然ね』

 

 

 『おおージェンティルちゃん。ありがとうよ。いやー勝ててよかったぜ。あっちの芝は重いからなあ。砂浜で走ってなかったらしんどかったぜ』

 

 

 『ああ、前に言っていましたものね。ドバイや日本以上にあちらの芝は重いと。でも経験で補ったと。大したものですが・・・ここの勝ちは譲りませんわ。連覇がかかっていますもの』

 

 

 『それを言えば俺もちょいと負けるわけにはいかないんでな、レディーファーストはしてやれん。悪いがエスコートされてくれや』

 

 

 『ふん、そういわないと蹴っていたところですわ。本気のケイジと戦い、勝利してこそここでの連覇はふさわしいのですもの』

 

 

 おうおう、燃えてんなあジェンティルちゃん。ほんと、厩務員にはデレデレだけど、いざ勝負となればほんと目に炎がともっているというレベルだわ。ライスのあのCMレベルで。死ぬ気の炎みたいな?

 

 

 『あ、ケイジさん。初めまして。ヴィルシーナです。はぁー・・・おっきいですねえー・・・本当に。ジェンティルドンナさんから聞いていた通り、それ以上です』

 

 

 『お、ヴィルシーナちゃん。そうかい? むしろ絞ったほうだけどねえ。というか、ジェンティルちゃんから聞いていたの? 俺のこと』

 

 

 のんびりパドックを歩きながら騎手が乗る前の時間を過ごしていたらいやーまさかヴィルシーナちゃんからも声がかかってきたわ。うーん、確かにすげえレベル高いなあ。肉付きも脚使いから見るなんとなくの力量も。頂点だっけか、名前の意味。それを冠するだけはあるんだよなあ。

 

 

 ほんとこの世代の牝馬だったのが苦労しているわ。後半もっとやべーのくるとはいえ。あれだなヴィルシーナちゃんがはじめの一歩の伊達のおっさんで、ジェンティルちゃんがリカルドみたいな? あれより力量差は埋まっているとはいえ。

 

 

 『はい。私に会うたびにケイジさんとの練習の事や、レースの結果、そして牧場の温泉の事とかをもう細かに・・・』

 

 

 『ヴィルシーナさん!? それ以上は言いすぎですわよ!?』

 

 

 『あら、ふふ。これ以上は怒られそうですね。・・・・・・シルコレだとか、ジェンティルドンナさんに一度も勝てていない私ですが、それでも負けません。凱旋門賞馬、無敗の四冠だろうと、全力で行きますよケイジさん』

 

 

 『ありがとう、俺もそれがいい。そして油断もしない。勝つために全力でやってやろう。いいバトルをな』

 

 

 『ヨッ、ケイジ。モテモテだなアーお前』

 

 

 正統派ヒロインだなああの子。きっと厩舎でも牡馬たちにモテモテだろうねえ。顔立ちもかわいいし、そして、今年でGⅠを2勝している。勢いに乗られると怖いし油断は出来ん。

 

 

 で、今度はジョーダンか。マジで今日はいろんな馬たちから声掛けられるなあ。嬉しいけど。

 

 

 『ジョーダンにゃ負けるぜ。それに、お前さん引退した後多分モテモテだぜー? あの天皇賞の走りと血統からしてもお父さんとして期待されているだろうし』

 

 

 『なはは、そいつは嬉しいねえ。なら一つ、ここでお前さんにも勝ってその期待と格を一つ上げてやろうか?』

 

 

 『いやあ? 俺は負けんよ。ああ、それと離れたほうがいいぞジョーダン。ゴルシが来ている』

 

 

 『こんにちはジョーダン! そしてくら・・・ぬぐぇ!? 伊馬波さん止めるんじゃねえ! ケイジも教えるんじゃねーよチキショー!!』

 

 

 のんびり歩きながら会話していたら今度はゴルシが伊馬波さんごと引っ張りながらジョーダンに恐らく蹴りかかろうとしたので止めておく。馬鹿野郎。馬だけどさあ、レースでケリをつけんかいお前ら。あ、俺今いい事言ったかも?

 

 

 『またかゴルシぃ!! オメー、ケイジと話している時ですら茶々入れようとするんじゃねえよ!!』

 

 

 『今日はいい天気だからジョーダンを蹴りたいんだよぉ!』

 

 

 『お前ら餅つけ。じゃねえ、落ち着け。ほれほれー』

 

 

 『おおっとゴールドシップがトーセンジョーダンに張り込んでいくが、ケイジが間に入ることで止まる。そしてここでケイジ変顔を披露! 顔芸百面相は健在のようです』

 

 

 ほーれ目玉をグルグル回しております。多めに回しておりまーす? 耳もグルングルン。エレキングみたいだろー?

 

 

 はーいそのままグルングルン。回して目を内側下向きに寄せて、耳をピーンと立てながら舌をぴょーん!

 

 

 『ブフス! ケイジ! それいいな! 面白い! よし、ジョーダンに喧嘩売るの今度にしよ』

 

 

 『あははははは!! なんだその顔!?』

 

 

 『なんだとぉ!? これが俺のイケメンフェイスだぁー~!! ・・・・ああー目が回るうう・・・』

 

 

 「ケイジー! 自分で目を回すんじゃない! 大丈夫か!?」

 

 

 『おおっとケイジ何やら変顔の際に目を回していたせいで立ちくらんでいるようです。そのまま寝転んでいく。こんな凱旋門賞馬見たことがありません!』

 

 

 おうふ、眼を回しすぎた。ダメジャーじゃああるまいにまさかパドックでこうなるとは・・・おおー世界が回るよぉ~・・・あーもう10秒待ってテキのおやっさん。んふぅ・・・ふ・・・あ、よいしょ。大丈夫大丈夫。

 

 

 さてさて、パドックの再会再開。もう少しで松ちゃん乗せるしねー足の感触を再チェックだーお客さんもダメジャーかお前と言ってくるが、いやーあれほどじゃないでしょ。名馬だし、復活劇もかっこいいけどもね。

 

 

 

 『・・・凱旋門賞馬だけど、ここまでフリーダムなのはちょっと聞いたことがないなあ・・・』

 

 

 『おおーん? アルトリアか? いいんだよこれくらいー。日本でもこういう癖馬は常にいるんだぜー?』

 

 

 ソロバックドロップしたり逸走したり、ゴルシに関しては疾走一本背負いしたりとか。うん、ほんと日本は癖馬だらけだなあ。流石古代でも気候の影響があるとはいえ気性難を抑え込む騙馬の技術を使わずに気性難大好き民族と共に過ごしていただけあるぜ。

 

 

 そしてまあ、そんな顔しなさんなアルトリア。お前の親父さんがここで戦った馬たちも終身名誉阿寒湖とか、日本総大将も愉快な個性派だったんだし。

 

 

 暫しパドックを過ごし、ようやく騎手の騎乗。いよいよだぜ松ちゃん。

 

 

 「はぁー・・・なんというか、最初の頃を思い出すなぁ」

 

 

 「ある意味ケイジらしいと言えますがね。道中も馬たちと愉快に会話していたようですし、元気そうで安心です」

 

 

 流石松ちゃん。わかってんね。そうそう、今日も俺は絶好調。欧州のまさしく頂点の血統であり天才も、日本のライバルたちも千切っちゃおうぜ。

 

 

 「よし・・・さて、今日はどうするケイジ。大逃げ? 追い込み? もう一つの方いくか?」

 

 

 「ワンワンワン。むふぅー」

 

 

 「・・・ふむふむ。んーあれでいいのかな? ま、それなら加減のために細かに指示を出すからよろしく」

 

 

 『アイアイサー。さて、俺のやり方も今までぶつかっていなかったメンバーは研究しているだろうし、ここらで一つやりますか』

 

 

 

 『えーパドックではある意味恒例とも言える騒ぎに更にもう一波乱ありましたが、無事に全頭本場馬入場です。天気は快晴。馬場は良。まさしく強豪たち全員が思う存分ぶつかり合うに相応しい日となりましたここ東京競馬場。

 

 

 ここジャパンカップの舞台で日本の優駿たちが揃い、そしてあのブロワイエの子が来てくれる。かのスペシャルウィークたちが戦ったあの日を思い浮かべる人も多いでしょう。そこに挑むのはステイゴールドの子どもゴールドシップ。そして時代は違いますが親子三代制覇がかかっていますケイジ。いやいや連覇を手にしてやると燃えておりますジェンティルドンナ。あの時代、レースに負けないほどのドラマと夢、そして思いを乗せて優駿たちが今か今かとゲート入りをしていきます』

 

 

 そういえばそうだよな。そういう意味でもますます98世代を思い浮かべる人は多いか。血を繋いだ子がまた来てくれる、ブラッドスポーツここにありってね。まあ、それならそれで今回だからと勝ちは譲らん!

 

 

 今日はゴルシもすんなりゲート入り。そんじゃあ俺もゲート入りしまして。あー・・・松ちゃんの首ポンポンが心地いいわあー狭いし、日差しも暖かい分眠りそ・・・。

 

 

 「落ち着きすぎてもスタートで遅れるぞケイジー。まあ、お前がそうして落ち着いたり、騒いでくれる分僕も落ち着くけどね。ありがとう」

 

 

 『いいのいいのーゆったりと、まったりと行こうぜ。どうせ爆発させる力を残さにゃいかん。そのための今は緩急のうちの緩よ・・・・・・・』

 

 

 『さあ、最後に10番ケンタウルスホイミが入りまして・・・・スタートしました! ジェンティルドンナとケイジ、好スタート! すぐさまハナを奪います。凱旋門賞で見せたあの大逃げを、サイレンススズカのような逃げを見せるのでしょうかケイジ。13番ゴールドシップは追わない。一気に後ろに下がって最後尾から狙うようです。

 

 

 一方、3番アルトリアは馬群の中ほどにつける様子。外側からケイジ達先行集団を伺う様子』

 

 

 よっしゃスタート。うんうん。やっぱというか、二頭はこんな形になるよね。ゴルシの場合は真面目に俺の大逃げとか追い込みを気にしない。好きなタイミングで好きにしてくるから消耗させようとかスタミナも相まって無理。ジェンティルちゃんもあの闘争心では消耗を多少しようとも問題ないレベルで飛んでくるし、うーん。ま、やっぱ周りの馬たちを早くへばらせて、ゴルシには壁を。ジェンティルちゃんらと余計な力使わず行くのが王道か。

 

 

 ・・・・あん?

 

 

 『おおっと! これはびっくりエイシンフラッシュも逃げ! ケイジの内側に入り込んで得意のコーナリングをさせないまま半馬身差をつける形で2番手に!』

 

 

 『私だってダービー馬・・・その大逃げ、強さの一つを潰させてもらいます!』

 

 

 『マジか』

 

 

 『4番エイシンフラッシュ、ケイジより内側のまま食らいつく逃げのスタイル! これには場内もどよめいています!!さらに後ろには5番トーセンジョーダンが3番手として伺い、その外側から1番ヴィルシーナも付いて先頭集団を形成。ケイジに3馬身しかつけない、ハイペースな試合展開となってきました』

 

 

 俺のコーナリングを潰して加速を封じる。で、ちょいと俺が下がればすぐに左右からすっ飛んできて壁を作るってことかね? 大逃げからの追い込みへのシフトもできないわけじゃないけど、それをしちゃうとスローペースな試合はお手の物なアルトリアにホイミ、そしてゴルシがいるし、ちんたらしていたらすぐに先攻集団とジェンティルちゃんが先にゴールしちゃうと。

 

 

 ・・・・・・結果的にだけど、連携したような大逃げ、逃げに食らいついて俺を焦らせようとしているような形になったなあこれ。

 

 

 「・・・・・・・問題はないかな?」

 

 

 だな。むしろこれくらい食いつきがよければ嬉しいくらいだ。

 

 

 『先頭集団からすぐ後ろにはルージュデンゴン、少し外から7番ジェンティルドンナ、その後ろにケンタウルスホイミ、アルトリアが中ほどから伺う。そしてゴールドシップは・・・いましたいました!最後尾、殿からチャンスを伺います黄金の不沈艦。どの場所にいようとも全く油断できない快速船。

 

 

 まさかのケイジの大逃げに食らいつくエイシンフラッシュに先行集団という読めない展開となりました。一体どれほどのペースになるのか、ただいま1000メートルを通過。タイムは60秒3。遅い! ケイジの大逃げが不発したせいか!? いつもの前に出るケイジのスタイルで出すタイムの中ではぶっちぎりの遅さです!』

 

 

 ほうほう。会場もさすがに騒めきが増してんな。でも馬券は投げない。うんうん。そりゃあねえ。俺とゴルシの菊花賞でかなり馬券を捨ててしまって悔しがった人ら多かったそうだし。何かあると考えて残しているみたいだわ。

 

 

 しかしー・・・うーん。そろそろ仕掛けるかね? このままでもいいけど、もう少し前に出たほうがこの技ははまりそうだし。

 

 

 「前に出るか? よし、なら2馬身くらいのリードで行こう」

 

 

 『おうよ。それに、もう動いてきているぞこいつら』

 

 

 ギアを上げて少し前に。エイシンさん悪いねー。今からちょいと俺に食らいついてきたツケを払ってもらおうか。

 

 

 『おおっとケイジ先頭に、より距離を取りに来た! ここから逃げ差しをしていくのか!? コーナーはいよいよ第三、第四コーナーへ。先頭はケイジ、エイシンフラッシュに1と半馬身をつけてのリード。そこに食らいつきますエイシンフラッシュ、トーセンジョーダン。あーっと上がってきたぞ7番ジェンティルドンナに3番アルトリア! 1番ヴィルシーナも猛追を開始! ルージュデンゴン、ナカヤマノブシを引き離す! ケンタウルスホイミも外から粘り伸びていく! そして来たぞ来たぞ! 13番ゴールドシップ。今ターゲットザシュートを追い抜いていく。

 

 

 ケイジを先頭に第三コーナーで先頭集団一斉に仕掛けていく! コーナーの中でケイジを真ん中に大外がゴールドシップにケンタウルスホイミ、トーセンジョーダン! 内枠からエイシンフラッシュ、ヴィルシーナ、ジェンティルドンナ、アルトリアが追い越して蓋をしようと粘る!』

 

 

 やっぱこいつら俺の早仕掛けを察知して動いてきたか! でもー・・・・コーナーで俺に、松ちゃんに仕掛けるのは愚策だよな? その速度で、2400とはいえ高速馬場で仕掛けちゃあ、外に遠心力で膨らんじゃうぜー

 

 

 『いよいよ第四コーナーを抜けて最後の直線・・・ケイジが一気にまくって最内につけた! そこからそのまま残していた末脚を爆発させる! まさかまさか・・・! いや、このコンビならやってのける! ケイジと松風コンビ! コントロール型の逃げを使いあっという間にレースの主導権を完全に握りしめた!

 

 

 後方も粘るがコーナーで加速が鈍ったか追いつくのが難しい・・・いや! 飛んで来たぞ! 13番ゴールドシップ! 1番ヴィルシーナ、3番アルトリア! 7番ジェンティルドンナがすぐさまコーナーを抜けて加速で猛追! 4馬身つけているケイジにグイグイ追いついてくる!』

 

 

 よっしゃ。先輩勢は軒並み引き剥がしたが・・・大外でコーナーでの膨らみが緩いゴルシと、俺の走りを学んでいるジェンティルちゃん。そしてジェンティルちゃんの走りからある程度学んでいるヴィルシーナちゃん。何より、流石欧州最高格の一頭。食らいついてくるか!

 

 

 松ちゃんもここで更にもう一押ししないとヤバいと理解しているのか、すぐさま鞭を入れて加速の合図を出す。真面目に直線勝負なら欧州の長いストレートじゃねえ分アルトリアは不利だが、それ以外が怖すぎるんだよ!

 

 

 

 『松風の鞭が飛びケイジさらに加速! 残り200メートル! これが日本初の凱旋門賞馬! これが傾奇者! 松風との戦国コンビの速さに誰も付いていけない! ゴールドシップ1馬身、ジェンティルドンナも粘るがそれ以上伸びない! 追いつけない! アルトリアも追いつこうとするが届かない! 

 

 

 ケイジ見事にゴォオーールッッ!! 2着にジェンティルドンナ、3着にゴールドシップ、4着にアルトリア、5着にエイシンフラッシュ。タイムは2分20秒3! 大変なハイペースでの勝利!!』

 

 

 ぃやっほーい! どうよどうよぉ! これが俺の第三の武器! そしてこれが戦国コンビよぉ! 満足できたかーい? 儲けられたかーい?

 

 

 『そして・・・・そしてケイジ! なんと日本馬初GⅠ10勝目! 二桁の大台に乗りましたぁ!! 更にさらに! シンボリルドルフ! トウカイテイオーと親子三代でのジャパンカップを制覇という大偉業を更に達成! 凱旋門賞制覇からの立て続けにこの大記録! どこまでもこの傾奇者は我々を興奮させてくれます!!! そしてその記録を打ち出す立役者は復帰戦でこれを成した松風騎手! 新たな偉業と復活の狼煙をあげる粋な勝利だ!!』

 

 

 そうだー!! 俺の相棒がいたからこそのこの勝利だ! もっと盛り上がれ皆-!! まだまだこれくらいじゃあ終わらねえぞお!!

 

 

 「ああ・・・よかった。無事にやれて・・・そしてケイジ、僕の拙い指示でもしっかりやってくれてありがとう。助かったよ」

 

 

 『松ちゃんこそ、難しい逃げ、すぐさま飲まれそうな中調整してくれてありがとな。イン突きの時、すげーやりやすかったぞー?』

 

 

 観客の波のような、嵐のような声援の中、静かに男泣きする松ちゃん。やったなあ。復帰後すぐのGⅠ、このジャパンカップ制覇は伝説になるだろうし、いやはや、勲章を一つくれることが出来て俺も安心ってもんだ。

 

 

 『松風騎手静かに男泣きをしながらケイジの首を撫で、ケイジも嬉しそうに応えております。我々が待っていたコンビの復活劇は快晴ながらも声援と嬉しさの雨が降り注ぐことに』

 

 

 『ぐ・・・何なんですのあの走り・・・気が付いたらガクッと足が鈍って・・・』

 

 

 『大外から捲ったけど難しかったでゴルシーなんかグイグイ回りがいつも以上に速かったような?』

 

 

 『・・・大逃げについていたと思っていたのに気が付けば・・・どういう技なんですケイジさん?』

 

 

 『くぅ・・・また、届かなかった・・・』

 

 

 『これが日本の凱旋門賞馬・・・大物が犇めく場所だとテキや厩務員さんが言っていたのも納得・・・・完敗ですケイジ。日本の戦士の強さを教えてもらいました』

 

 

 『ああーお前さんら。今俺がやったのはコントロール型の逃げってやつだな。ツインターボ、セイウンスカイ、ダイワスカーレット辺りがした逃げの一つだな。そしてアルトリアもありがとう。いやー今回は競馬場の場所での相性もあっただろうし、まだわからんよ。じゃ、また今度よろしくぅ』

 

 

 さてさて、勝利を手にできたし、あのパフォーマンスもしないとなあ? みんなも待ち望んでいるだろうし、やっぱりというかムーランルージュの皆さんも・・・・フランスでのオカマさんも来ていない? え? 美人というか、美丈夫も多いけどなに? 新スタッフなの?

 

 

 まーいいや、今度聞けたら聞くとしてスタンドの中央辺りに移動。松ちゃんも涙を拭いて、よしよし。振り落とされるなよー?

 

 

 『ケイジがスタンド中央に移動していきます。そう! 彼が勝ったのならこのパフォーマンスまでがワンセット! 皆様拳を構えて準備万端! さあ、始めましょう!』

 

 

 実況のおっちゃんノリがいいな? 悪くない。はい右にぴょーん

 

 

 「「「オウ!!」」」

 

 

 左にぴょーん

 

 

 「「「オウ!!!」」」

 

 

 首を下げて溜めての~?

 

 

 「ッ・・・ビヒィイィイイイイィイイ!!!!『いぃよっしゃあぁああああああああああっっ!!!!』」

 

 

 「「「ウオォォオオッォオオオオ!!!! ケイジ! ケイジ! ケイジ!!」」」

 

 

 『東京競馬場に響き渡るケイジコール! そうだ! 凱旋門賞馬の、そして皇帝の一族の勝利を讃えるのならこの歓声がふさわしい! 天を揺るがし、会場が震えるほどの大歓声! 帰ってきたケイジの花舞台の祝福は途切れない! おかえりなさいケイジ! 君の帰還と勝利を我々は待っていた!!』

 

 

 ありがとよぉ! この大舞台! 盛り上げてくれて! そして有馬でもよろしくなー!




 無事にゴルシへのリベンジ成功。日本の凱旋門賞馬の力を皆さんにお披露目。


 同時に一つの時代の区切りへも。エイシンフラッシュも、あの名馬もこの年で引退ですし。


 ケイジ 無事GⅠ10勝&親子三代無敗のダービー制覇に続いてジャパンカップ制覇を達成。コントロール型の大逃げでの快勝にご満悦。この後涙が止まらない松ちゃんとハンカチを渡して労う真由美の様子を見て葛城と久保と一緒ににやにやしていた。


 松風 復帰直後に大勝利とケイジへの歴史的偉業を取らせる大勝利を飾る。最後の第4コーナーでは実はコーナー半ばまで内ラチをあえて開けて隙があるように見せる→途中から加速しての一足先にコーナーに入って一気にイン突きで最内に入ることで内からうかがっていたメンバーへの蓋をする→そのまま加速していくという技術を使っていた。


 ジェンティルドンナ 連覇ならず。悔しい。でも同時にケイジの強さを再確認。有馬記念、宝塚記念でリベンジを誓う。


 ヴィルシーナ 正統派ヒロインな性格でやや大人びた感じのお姉さん。大逃げのケイジに食らいついていったらまさかのコントロールの逃げでペースを崩されまくる。強化ジェンティルドンナとクラシックでひたすらやり合っていたせいで自身も地味にレベルアップしていた。


 ゴルシ ゴルシ。実は一番体力消耗していない。ケイジの大逃げに一番慣れているせいで。でもコントロール型の逃げで周りが追い付こうとするせいでハイペースな試合になってしまい仕掛けや場所どりを微妙にミスしてしまった。ジョーダンは今度蹴りに行きたい。


 エイシンフラッシュ 逃げを使ってケイジの最内を取り、コーナリングを潰しながら周りの状況も利用しようとしたが逆にケイジに翻弄されてしまう。なお、ウマ娘世界でも両さんに壊れた中川みたいなシチュがちょこちょこ待ち受けている様子。


 トーセンジョーダン 他厩舎のボス格だけど基本穏やかなケイジは同格として気に入っている。最後の直線で仕掛けようとしたが気が付いたらハイペースな走りでスタミナ潰されていた。ウマ娘世界でも仲は良く、ゴールドシチーと三人仲良くしている。


 アルトリア 高速馬場かつ試合運びに翻弄されるというある意味逆メジロマックイーン状態でジャパンカップで敗北。イギリスではこのニュースに日本やばい。と同時にケイジの子どもやっぱほしいぜーとなった。なお、後にブラウトと交配してキンチェム系の血を強めるために何度かお世話になる様子。


 ケンタウルスホイミ これにて引退&日本で種牡馬生活スタート。ネアルコ御三家も無ければノーザン系も付いてないマイナー血統なので受けの広さとあらゆる距離のレースで好走した実績を売りに今後頑張る様子。


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さらば金色の王 有馬記念(GⅠ)

 ウマ娘エピソードに行こうかと思いましたが、先にこちらだけを出しておきたいと思います。どうしてもこの話は来年以降のケイジへ必要なターニングポイントですし、ウマ娘世界でもオルフェとケイジの関係に深くかかわるので。


 しかし、ウマ娘の新ガイドを見ましたが、史実ゴルシ凱旋門賞での顔鞭はあれは描写してもセーフなのか心配になる今日この頃。


 「ぁあー・・・もぉ。ケイジちゃんったら燃えさせちゃって。貴方が人間だったら性別問わずに惚れこんでいたわよぉ」

 

 

 『よせやぁい。スーザンママも羽振り良さそうだねえ。いやーいいコート羽織っちゃってー』

 

 

 ジャパンカップの勝利から数日。スーザンママが大量のリンゴと、足が速いせいか少しだけどバナナを持ってやってきた。早速今日も坂路6本決めて、プールは寒いので代わりにウッドチップでコーナリングの練習。で、暖かいシャワーと石鹼で体を洗ってもらってご飯を食べていたのでおやつに。

 

 

 ああーたまらねえぜ。で、俺とのんびり話しているけどさ。何やらメモ帳とか持っているし、どうしたんだろうねえ。何かあるのかね?

 

 

 「いやーお待たせしましたスーザンさん。今日の方はぜひ相談に乗ってもらいたくて」

 

 

 「あらあら。気にしないでいいわよ。ケイジちゃんの今後の事にもなるしね。あ。お茶ありがとう♪」

 

 

 『俺のこと?』

 

 

 「ケイジの今後についてだって。俺らも関わることだし、ここで話そうとなってなあ」

 

 

 『あ、久保さん。ほえー俺の今後ねえ。引退、それと種付け料か?』

 

 

 利褌のおやっさんがお茶をもってパイプ椅子をそばに置き、スーザンママと一緒に俺の馬房の前に座る。

 

 

 そんで、お代りの、少しぬるめの水を持ってきてくれた久保さんに頭を下げてぐびぐび飲んでいるが、なるほどねえ。俺も4歳だし、来年の2月には5歳。ディープの引退は蹄の事もあってだけど、同時に種牡馬として早く活躍させたいという部分も大きい。

 

 

 俺ももしかしたらそういうパターンに入るかもということで意見のすり合わせに来たのね。厩舎の人も知っておかないとそりゃあ儲けもあるし、空いた馬房にどの馬を入れるかどうかで大変そうだしなあ。

 

 

 「んーそれじゃあ、私の方は出来ればケイジは6歳までは戦わせておきたいです。無論リスクは承知ですが、ケイジもきっとライバルが残ったまま引退するのはなんだか嫌がりそうな気がしまして。休暇を増やして無理なく行ければと思います」

 

 

 「私たちの方もそう思うし、ケイジちゃんの場合、早熟というよりは早熟と晩成の間。成長し続ける名馬と見ているわ。それに、出来ればライバルたちと戦う時にあの楽しそうな姿を見ちゃうと引退を早めるのは私も気の毒だと思うし」

 

 

 『やったぜ。つまり2015年まで戦えるのか。キタサンブラックやサトノダイヤモンドとも会えるし、いやー嬉しいなあ』

 

 

 「ならこちらも一層ケイジの体調には気を配ります。どうしましょう。次走の有馬記念の後はまた牧場に戻して放牧させますか?」

 

 

 「ええ。ぜひとも。実はなんですが、また休暇中に何頭か是非併せをしつつこちらの施設を借りたいと予約が来たので。休暇中ですから無理なく、一日に必要な運動分だけ走らせますが」

 

 

 あらー今年の有馬記念の後はまた牧場に戻れるのか―。そいつは嬉しいね。温泉入りたいし。ただ、やっぱローテはよほどのものじゃない限り基本ゆったり。今年みたいに一月半の間隔を置いてやるレースを序盤、一月から三週間くらいの間を置いてやる秋、冬のレースをやっていく感じかね。

 

 

 いやー頑張って稼がないとなあ。

 

 

 「よしよし。これで一つ目の課題は済んだ。で、二つ目の課題として・・・ケイジの種付け料。いくらにするべきでしょうかね?」

 

 

 「ああー・・・そうよねえ。私と前田さんで考えた時は重賞少し勝ってくれて、100万、50万くらいのお値段で安く、そして血の閉塞を止めつつテイオーの血筋を残したいというプランだったけど、もうケイジちゃんでそれは出来ないほどの成績を見せてるし」

 

 

 「実際、キングヘイローのような値段をすればそれこそケイジや牧場でも負担がシャレにならないでしょうし、それはやめたほうがいいっすよ」

 

 

 『あらー今度は俺が頑張ったせいの苦労とは。嬉しい悲鳴かそれともだなあ。この人ら金稼ぎよりも馬産と競馬界を見ているほうだし』

 

 

 俺の今後を決めてくれて、次は引退後の話となったが、どうにも俺の場合、結果がどうであれ引退した後は安い種付けプランでキングヘイローのように広く色んな所に血を残して今の競馬界だからこそ噛み合う組み合わせを試したりすることや、血の閉塞を抑えることを狙っていた。

 

 

 はずなんだけど、俺が予想以上に勝って、しかも筋肉痛すら起こさない健康体。人気も自分でいうのもあれだがある方だしどうにも種牡馬としての人気は問題ない。血の閉塞も抑えられる。ここまではいいけど値段つけるのどうしよっかってことになったと。

 

 

 「すでにディープを超える実績をたたき出していますしねえ・・・社爛さんからは1500万くらいにして思いきり私が儲かるべきだと言ってくれたんですが、やはり中小、地方の方にもケイジの血を、それにうまく名馬が生まれてくれればより盛り上がりますし」

 

 

 「でも安すぎても駄目でしょうし、私としてもオーナーブリーダー一本でやっている前田さんには是非是非この幸運と今までの努力が報われてほしいですから・・・少なくても600万以上で行くべきでは?」

 

 

 ちなみに参考になるかはわからないけど、ディープの初年度種付け料金は1200万。黄金旅程は200万くらいだったかな? でもなー俺の場合はねえ。のんびり飼い葉をもしゃもしゃしながらディープと俺の身体を見返し、そして思い返すは親の顔。

 

 

 「ですがねえー・・・ケイジはテイオーどころかルドルフの子にしても大柄すぎるし頑丈な突然変異。ディープインパクトの場合はサンデーも小柄、ディープもそれを引き継いでいて足元不安がないですし、パーソロン系は気性難が多い、で、ケイジは・・・気性難・・・? いや、変わり者ですからねえ。ケイジではなく親世代の方と隔世遺伝で似てしまえばというのもありますし」

 

 

 「んー・・・でも、やっぱり親子三代GⅠ制覇。ダービー、ジャパンカップ制覇を成し遂げた一族で、数はともかく長く名馬を出している日本の名馬ですし、やはりこれくらいは・・・」

 

 

 これは長引きそうねーあ、久保さん。飼料おかわりーそれとテキのおやっさん、お疲れさん。今色々盛り上がっているぞー?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うーん・・・では、ケイジの種付け料はひとまず800万くらいでスタート。産駒の成績が伸びてくれば50万刻みで伸ばすという感じで」

 

 

 「そうしましょう。それに、今はナギコちゃんをはじめとしてそちらの牧場には海外、地方を問わず名牝、名馬の子孫がいるからいい結果を残せるかもですし。ぶほほ♪ もうケイジちゃんの今後のレースの活躍と、産駒もどちらも楽しみですわ」

 

 

 あれから20分。話し合った結果俺の血筋から来る名馬は出るけども数の少なさ、気性難の継承率の高さ問題。俺がケガに泣かされたテイオー、ルドルフの子孫にしては頑丈すぎ&でかすぎで突然変異過ぎてしっかり素質が遺伝するかわからん。という理由を表に出して、とりあえず800万で行くことに。

 

 

 ま、この値段とその理由なら少し様子を見つつ来てくれるかね? サンデーもフジキセキが出てくるまでは枠が開くくらいには人気は抑えめだったし。当時トニービンがいたこともあるけど。

 

 

 「ふぅー・・・これでいい加減あなたが報われなさい、稼ぎなさいと言ってくれる社爛さんにも説明が出来そうです。で、次の方ですが・・・実はこの馬たちで何頭か入れようとしているのですが、どれがいいですかね。予算としてはこのくらいで・・・」

 

 

 「うーん・・・なら、この馬と・・・これがいいですね。日本ではほぼ入っていない血筋で、片方はニックスを狙えつつ、先祖の血も悪くない。隔世遺伝も狙えますし、なにより、これはもしうまくいけば楽しくなりますよ」

 

 

 「さすがの切れ味ある選別眼。いやあー頼りになります。予算はここからも用意できるので、それでうまくいけば来年にでも・・・」

 

 

 『何の会話しているんだー? とりあえず馬を輸入させようとしているのは分かるけどなー』

 

 

 うーん。延々話を聞いていると、眠くなってきたぜ。ふわ・・・あーねむ・・・

 

 

 「ケイジも眠そうだなあ。あ、そうだ。蓮君また来ているし、テキ。ちょいとケイジと蓮君会わせてきますわ。俺が見ておくんで」

 

 

 「おお、頼むよ。蓮のやつ、ケイジに学んでいろいろ頑張って、話したくてたまらなかったようだし」

 

 

 え? 蓮君来ているの? やった、色々話聞きたかったんだよなー。久保さん出してー、食後のちょっとした運動と散歩でさー。顔を振って出してくれアピールアピール。

 

 

 久保さんも出してくれたんでそのまま蓮君の所へ、いざ鎌倉。どれくらい成長しているかねー

 

 

 

 

 

 

 「でさーケイジのスタイル変更を見て、僕の方でもどうにかできないかなってやってみたんだ。まあ、まだまだ難しいし、思うようにはいかないけどね?」

 

 

 『そっかーいやーでも、これは面倒になるぜー?』

 

 

 お久しぶりに会えた蓮君。背丈がまた伸びていた。いよいよもって190台の大台へ。キセキの世代かよお前さんはよーと言いたいほどの背ののびっぷりだ。

 

 

 で、色々聞いているとまさかの中学校に入って早々に二度目の制服を新調する羽目になったり、靴もどうしようか迷ったり、寝ているときに骨ののびる音や成長痛で悩んだりといろいろ苦労しているようで。

 

 

 ただ野球の方ではテキのおやっさんが稼いでいるのもあって何とピッチングマシーンを購入。それと大きな傷をつけたボールを使ってブレ玉にナックル、もといシーサーボールでも捉える練習と、ボールに数字を書いてそれを捉える動体視力を鍛えたりで頑張っているとか。

 

 

 そしてそのうちの一つの大目玉が、なんとバントと見せかけてのスイングで相手の意表をついて自身も先に出塁しているメンバーも無事で済む。撹乱用のバッティング技術を練習しているとか。一応練習試合でも二塁打を何回か出していたりで先輩がたも驚いたとかなんとか。

 

 

 『にしても、俺の追い込みや大逃げ。この二つの極端なスタイルから来る読めない戦いをバントと、それを餌にしてバッティングで長打を狙うとはなあ』

 

 

 「監督からは腰の動きをより鋭く、体幹を鍛えなさいと言われて頑張っているんだけど、まだまだなんだよね。でも、このスタイルで行きたいし、僕もお父さんやケイジに負けないくらい頑張ってプロになる。そして、プロでケイジの稼いだ金額以上を稼げるように頑張るよ。まだ全国大会でも優勝できていないけどね」

 

 

 『いいのいいの。夢大きく持ちなさいや。てかまだ中1だろ。でも、焦って体を壊すのだけはNG。馬でも身体が出来上がっていないときに出る炎症とかあるしな』

 

 

 しかし、バントと見せかけてのスイングだし、どうしても振り切れる距離も加速も無い分普通よりも身体の軸の動きでほとんどボールを吹っ飛ばすのかあ。相当変態型に育ったなあ蓮君。テキのおやっさん、たまげているか喜んでいるのか。

 

 

 のんびり、今日は夕焼けをバックに一緒にトスバッティングをして過ごした。よーし有馬記念でまた勝って、蓮君の夢のハードルを上げつつやる気もプレゼントできるよう頑張っちゃうぞー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『今年のレースもまた、多くの名馬たちによる激闘で彩られてきました。そして、ここ暮れの中山。芝、そしてダートでもその一年の締めくくりとなるレースが始まろうとしています』

 

 

 さて、二度目の挑戦にしてリベンジ。やってきました有馬記念。

 

 

 『そしてそのレースは三冠馬の一頭にして凱旋門賞二年連続二着。間違いなく日本競馬の成長を世界に見せつけ、戦い続けた金色の暴君オルフェーヴル。その末脚に誰もが魅了されたでしょうエイシンフラッシュ。多くの名馬たちの引退レースになりました有馬記念。天気は晴れ。馬場は良。その光は両者の馬体をより美しく輝かせます』

 

 

 同時にオルフェや、ケガをしなかったのかここが引退レースとなったエイシンフラッシュ。トーセンジョーダンにゴルシもいるしで、なんやかんや豪華なメンバーでまた年末を締めくくることになりそうだ。

 

 

 『ぬおぉー!! ゴルシテメエ! またやる気かオラア! いい加減こっちも蹴り飛ばすぞ!』

 

 

 『やってみろやジョーダン! スタミナもパワーも負けねえからよぉ!』

 

 

 まあ、俺らにはそんなものいつも通りというかなんというか。やってんねえ。毎度毎度。そういえばゴルシブリンカーつけたんだなあ。何気にこいつも神経質な部分あるからなー。普段は頭ボーボボだけど。

 

 

 『またゴルシとジョーダンの喧嘩が始まっていますが、ケイジは渋い顔をして呆れたように見つめております。そしてそのそばにはエイシンフラッシュも』

 

 

 『もはやKGコンビが出るレースは大概コントになることになるのがお決まりレベル。18万人の観客も笑いながらその様子を眺めております』

 

 

 全くお前さんら師走の締めで年末の大一番。喧嘩以上にレースで白黒つけるんだし、そっちで決めねえでもいいじゃねーか。

 

 

 しょうがないので俺が入り込んでレフェリーストップ。けがはしていないけどね。

 

 

 『おめーさんらレースでどうせ白黒つけるんだしそっちでやりあえや。まーったく』

 

 

 『え? こっちでも蹴りつけたほうがよくね?』

 

 

 『レース前に脱落させるのはNG てかお前も下手すりゃ失格だよ』

 

 

 『つまり早く帰れるのか。なるほどそれは・・・ケイジとレースできないしやめよ』

 

 

 ゴルシよ。お前ほんと愉快だなあ。いやー元気貰えるぜー。思わず尻尾が揺れちゃう揺れちゃう。で、ジョーダンももう付き合いきれんわと言わんばかりにすぐ離れちゃった。あらら。俺もちょいと話したかったが、ま、騎手さんも距離開けてクールダウンさせたいみたいだししょうがないね。

 

 

 『・・・ケイジ・・・さん』

 

 

 『んぉ? オルフェじゃあん。いよいよラストランだなあ。最後の一戦。思いきりやらしてもらうぜ?』

 

 

 『そいつはこっちもだ! もう凱旋門賞のようには負けねえ。勝つのは俺! 三冠馬の力を、池沼と俺の力を見せてやる!』

 

 

 『上等! ラストランだろうが花道を譲るつもりはねえ。先輩方には大人しく後輩の俺らに道を譲ってもらう! まあー俺も同じ立場なら譲るつもりはねえけど。わはは!』

 

 

 オルフェもオルフェで気合十分。すっかり戦闘モードに入っているし、さっきのギャグ光景から気持ちの切り替えがしやすくて助かるわ。

 

 

 「凄い目をしていたなあ・・・オルフェーヴル。最後の戦いだってわかっているのかな。ケイジ、油断はできない。一番慣れている大逃げで行こう」

 

 

 『おうさ。それに、真面目に下手打っていけねえ以上、それがいい』

 

 

 まだ幻惑逃げに関しては経験浅いしな。一番使い込んだ戦法でやるほうがずっといい。松ちゃんも理解しているじゃないの。

 

 

 『さあ、様子が落ち着いたところでゲート入りへと移ります。年末、芝レースのグランプリ有馬記念。スタート前となりました』

 

 

 ファンファーレと拍手を聞きながらゆったりゲート前に。そこから順々に入っていく俺たち。思えば、俺オルフェとはこれも含めて二戦だけしかしていないんだよなー。昨年の有馬、今年の宝塚記念は回避したのもあってチャンスが少なかったし。

 

 

 そして凱旋門賞では互いに騎手が変わって、オルフェはまだ気持ちがついていけない部分もある。いろんな意味で、本当の力を出し切っての戦いで最後の激突。うん、こいつは全力を出さないとだわ。

 

 

 1番最内枠をいただけたのでそのままするりとお邪魔します。

 

 

 『ケイジ、オルフェーヴル、ゴールドシップ、エイシンフラッシュも既にゲート入り。そして最後に16番トーセンジョーダンもゲートに入りまして・・・スタートしました! オルフェーヴルはそこそこいいスタート。ケイジすぐさまロケットスタートで前に出る。これは大逃げか!?

 

 

 ゴールドシップすぐに下げて後ろから二番目につけるか、いや上がっていく。オルフェーヴルは後ろから三番目になります。その横にテイエムライト』

 

 

 よしよし、スタートは好調。そのままいい感じに行くか。今回はエイシンフラッシュは俺についてこないようだな。前の逃げもあるし、下手に付き合いすぎると潰れるから末脚での爆発勝負を仕掛けるつもりかね?

 

 

 兎にも角にも2500メートルの距離なら大逃げしてもへばることはないし、少しリード取って何処かで俺も息を入れて最後に力を残しつつ逃げないと。

 

 

 『そしてラストレース、オルフェーヴルは後ろからナンバーは6番。9番エイシンフラッシュは前目につけますが必要以上にケイジは追わずに先攻集団でルージュデンゴン、ナカヤマノブシと競り合っています。さあ、コーナーを曲がってスタンド前に移ります。

 

 

 池沼騎手が言っていました。最初のスタンド前が大事、うまく立ち回れるかがカギだと。さあ先頭から最後尾まで16馬身。ケイジを先頭に各馬正面スタンド前を通過。先頭はケイジ、距離を置きましてルージュデンゴン、ダンスバラード、エイシンフラッシュ、ナカヤマノブシ、ラブリーアイス、外からトーセンジョーダン。うちからゴールドシップ、ウィンドハリアーと並びました』

 

 

 オルフェはまだ仕掛けないねえ。観客の歓声がすげえなあ。やっぱ大舞台は盛り上がる。そして名馬たちの引退。誰もが時代を沸かせて彩った名馬たちだからなおさら応援にも熱が入るんだろうなあ。

 

 

 なんやかんやこうしているうちにスタンド前を過ぎてコーナーへ。よしよし。ちょいと息を入れながらコーナリングでもう少し距離を開けよう。

 

 

 『1000メートルを通過。タイムは57秒9 今回のケイジは大逃げ。やはりタイムが早くなります。そして勝負は中盤から後半へと移りつつあります向こう正面、ケイジ依然先頭。そこから4馬身程離れまして先攻集団ダンスバラード、エイシンフラッシュが先行集団争い。少し後ろにルージュデンゴン、ナカヤマノブシ、ラブリーアイス。少し前に出てきていますゴールドシップとトーセンジョーダン。ウィンドハリアーと並んだまま向こう正面真ん中を通過。

 

 

 ケイジを先頭に後方は馬群が長く伸びた形となりました。その中で後ろ目につけたままなのはオルフェーヴル。池沼騎手と三年半もの間コンビを組んできましたベストコンビの大一番。ケイジはそのまま第三、第四コーナーへと入り・・・おおっと動いた! オルフェーヴル動いてきた!』

 

 

 む・・・はや・・・いや、早仕掛けならこれくらいはするかオルフェは。よし、俺もコーナーなら負けん。松ちゃん、やるぞ! 相手はあの金色の王、慢心も油断もできねえ!

 

 

 「これはくる・・・行くぞケイジ! そのまま逃げ切る!」

 

 

 『赤い帽子がぐんぐん馬群のなかを突き進んでいく! 初めての対決となるゴールドシップをあっさりと抜き去り・・・いや、ゴールドシップも飛んできた! ウィンドハリアーも猛追を開始! 三頭が馬群を抜け出してケイジ同様コーナー勝負に移っていく!!』

 

 

 マジか!? もう追いつき始めたぞ! 後ろ目にいたから7馬身近くはあったはずなのに!! くっそ! ここは直線が長い・・・ある意味じゃあ今のオルフェの加速には俺が不利になりかねねえ! ええいこなくそ! オルフェは外、俺はまだ内にいる。経済コース使って少しでもロス減らしつつ加速していくぞ!

 

 

 『さあ最後の400メートル、オルフェーヴル、エイシンフラッシュをもかわして馬群を完全に抜け出す! そしてケイジとの差実に2馬身! いや1馬身! 距離はもうない! あの異次元、規格外の大逃げですらこの王者は潰してしまうのか!!?

 

 

 後方にウィンドハリアー、ゴールドシップ、エイシンフラッシュ追い上げるが差が縮まらず2馬身以上縮めることを許さない! いや、さらに伸びる! 坂なんてまるでないかのような加速でいよいよケイジを捉える!!』

 

 

 『ケイジ・・・! ケイジ!! あんたにフランスで教えてもらった言葉の意味が、全部、遅いけどようやくわかった!! この驚くような歓声も、皆の期待からだって! 愛からだって、俺に力をくれるものだって!! それを理解して、たとえ相棒がいない中でもそれを背負っていたからこそケイジはあの舞台を勝てた!!』

 

 

 もう半馬身・・・! くそっ・・・マジかよ加速力は馬体の差があるとしても、最高速度までこうも食らいつくのか!? いや、食らいつくどころかむしろ俺を引き離しに・・・ッ!

 

 

 『俺も三冠馬! その重みを力に変えて走れることを教えてくれたお礼に最後・・・ありったけを持ってお前に勝つ! 確かに強くなれる。お前の教えの成果を見せつけてやるぜええぇぇえ!!!』

 

 

 『それなら俺だって背負ってらあ!! 負けねえ! 最後だろうと、いや最後だからこそ俺の強さをしっかり目に焼き付かせてやる!!』

 

 

 『『勝つのは俺だああぁあっ!!』』

 

 

 まだだ! 終わらねえぞ! ここも勝って! 親子三代有馬記念制覇! そして、今度こそいい年末迎えるんだよぉ!! ぐぉ・・・こんのぉ・・!!

 

 

 『オルフェーヴル、ケイジを引き離しに! いやケイジ粘る! ケイジ粘る! 二頭の世界! これはモノが違う! これが三冠馬同士の! 世界に通用する怪物同士のぶつかり合い! しかしオルフェーヴル抜け出す! 抜け出して更に逃げ切る! これは決まった! ケイジの、あのワープすら届かない大逃げをねじ伏せた!!』

 

 

 粘るが・・・届かねえ! 引き離された・・! まだ、まだゴール板が残っている。加速出来れば・・・! ああ・・・くっそ・・・先に行っちゃったか追いつけなかった・・・か。

 

 

 『そうだ! これが王者! 目に焼き付けろ! これがオルフェーヴル!! 金色の暴君だぁあああ!! 見事に有終の美! ラストランを飾りました!! 二着にケイジ、三着にウィンドハリアー、四着にゴールドシップ、五着にエイシンフラッシュ。タイムはなんと2分28秒5!! ワールドレコードも引っ提げての大勝利!! これが本当に最後の走りか!? あのケイジを引き離し1馬身差、ゴールドシップ、ウィンドハリアー、エイシンフラッシュ相手に7馬身をつけての大勝利!

 

 

 黄金の王、その強すぎる姿を見せつけてくれました。ありがとう! 金色の王! 三冠馬として、世界に挑み続けた猛者としてふさわしい走りを見せつけてくれました!!』

 

 

 『いよっしゃぁああ!! 勝ったぜー!! 池沼、褒めてくれ。褒めてくれー!!』

 

 

 くっそぉー・・・届かなかった・・・全く。流石の強さだよオルフェーヴル。そして、ぶふぅ! 早速地味に騎手を振り落とそうとしているんじゃないよお前。わはははは!! ああ、やめやめ。湿っぽい空気は合わんわな。

 

 

 池沼騎手も満面の笑みでガッツポーズ。いやあ、大したもんだぜ。追い込みでワールドレコードを引退レースで相棒に渡してあげて嬉しいんだろうなあ。

 

 

 「負けたが・・・うん。納得のいくものだ。今日はあっちがすごく強かったなケイジ。今度頑張ろう」

 

 

 ポンポンと首を撫でながら慰めてくれる松ちゃんもね。俺は大丈夫よ。負けはしたが、王者の最後の姿を見れているしな。しかし、口を忙しなく動かして地味に振り落とそうとしたり、本当に元気だなあこいつ。俺もだけど。ぐったりというより心地よい疲れが強くてなあ。

 

 

 『フゥー・・・フゥー・・・・お、おぉ・・ケイジ君・・・君に頼みたいことがある。落ち着いたから。うん。大丈夫』

 

 

 『☆くぅん? チャージングゴーは駄目なんだよ?』

 

 

 『チャー・・・? あとオルフェーヴルだよ。ケイジ君はさ、まだまだこれからも走るでしょ?』

 

 

 『もちろん。まだまだ取りたいレースもあるし、勝利も欲しいからな!』

 

 

 レースが終わり、騎手を振り落とすのも失敗している間にクールダウンできたかいつも通りのノリに戻ったオルフェ。俺に近づいてきて何か用事があるようで。

 

 

 『ならさ、もし凱旋門賞に挑むのなら・・・もう一度、勝ってきてほしいんだ』

 

 

 『凱旋門賞を?』

 

 

 『うん。ケイジ君と挑んだ二度目のレースは、僕も分からないことがあったりして負けたのもしょうがないとわかったし、ケイジ君が勝ったからいいんだ。・・・・・・だけど、まだ借りは返し切っていない。一度目の分をまだ返せていない・・・! でも、僕はもう引退だ。みんなが決めたことだし僕ではもうどうしようもない。だから、ケイジ君。君がもし今後チャンスがあるのなら凱旋門賞に挑むのなら、もう一度勝ってくれ! 期待や想いが力になるというのなら、僕の想いも載せてまたあの大舞台であのかっこいい姿を見せてくれ!』

 

 

 やれやれ。三冠馬、押しも押されぬ世界レベルの名馬からの期待と願いを託されるか・・・重いねえ。だけど、だからこそそれがいい! 燃えるし、ますます来年挑むという話は決まっている分重さが増す! わくわくが止まらねえよ。

 

 

 まだレースが終わった後の火照りもあってぐつぐつ血が沸くような思いだ。ははは・・・最後に勝利を見せつけた以外にも、こんなものまでもらえちゃあなあ、最高だよ。勝てはしなかったが、これはいいな。

 

 

 『相分かった! それならまた挑むときは必ず勝つ! いや、それ以外のレースでも大暴れしてやるさ。そして見せつけてやる! 俺よりも早く走って勝ったやつがいる。時代を作って、大いに戦った偉大な王がいるとこのケイジが見せつけてやる! だから安心して休めオルフェーヴル! お前の想いも全部しょい込んでやる!』

 

 

 『うん・・・ありがとう・・・! ケイジ君がいて、ライバルで、凱旋門賞で、有馬で戦えて本当によかった・・・!』

 

 

 『ああっとオルフェーヴル。ケイジと向かい合い何やら涙を流しています! 凱旋門賞で勝てなかった借りを返せた故の嬉し涙か! それともライバルとターフでの最後の戦いを惜しんでいるのか。大粒の涙がこぼれます』

 

 

 ははは、やっぱりオルフェーヴルは優しいね。こんなに思ってくれるんなら俺も背負う甲斐がある。俺たちが来る前より欧州で日本の強さを見せつけ続けた先輩にして切り込み隊長。あんたと一緒に戦えてよかったよ。

 

 

 『ならさ・・・その思いを受け取るために。バトンタッチをしようぜ。俺ら手がつかえないから首でポンポンとな?』

 

 

 『バトンタッチ・・・? ☆君といい、色々何か出てくるねえケイジ君』

 

 

 『わははは。まあな~♪ バトンタッチはな、人がしている。誰かへ自分の想いや、夢、いろんなものを託すときにするものなんだ。オルフェ、あんたの想いは俺が背負うから、それをしっかり受け取らせてくれ』

 

 

 『うん・・・こう? おお・・・ケイジ君、改めてでかい』

 

 

 互いに歩み寄って、俺とオルフェでは身長差がやばいので少し俺が首を下げて首をポンポン。よしよし、これで確かに思いを受け取ったぜ。バトンタッチだ。

 

 

 『オルフェーヴルとケイジ、三冠馬同士によるハグ。昨年の有馬記念でのゴールドシップとしたようなことをまたしております。偉大な先輩へ対する敬意か、スポーツマンシップでしょうか。同じ時代に三頭三冠馬が存在するという前代未聞の日本競馬の一角オルフェーヴルとケイジ。その一頭の最後の戦いに、王の退陣に傾奇者からの激励を送られているようです』

 

 

 『じゃあな、偉大な王者オルフェーヴル。閃光の末脚エイシンフラッシュ。その強さはずっと語り継がれていく。そして、子供たちが必ずその強さを引き継いでくれるはずさ』

 

 

 敗者はこれ以上この場にいるべきじゃねえやとその後はゆったり移動。今度は有馬取りたいなあ。




 王から王への意志の継承。次の時代へと確かに託してオルフェは引退。エイシンフラッシュも史実より長く走って、賞金を持って無事に引退。


 ケイジ 今回も有馬記念は取れず。だけど大きなものを貰えたので収穫はあり。でもとりあえず例年通り有馬を終えたので放牧のために牧場へ帰省。


 スーザンママ なんやかんや超がつくほどの大物なのでいろいろとアドバイザーとして有能。利褌の考えているプランにも一枚かんでいる。


 利褌 あるプランを練っている。ついでにケイジの種牡馬プランがケイジのせいでまさかの爆上げに驚くと同時に値下げしておきたいオーナーと値上げしなさいよと催促する周辺という変な事態に。ケイジの種牡馬としては当初5歳くらいまでは知らせて1~2つ重賞取れればそこから50~100万くらいでキングヘイロー的なプランで行くつもりだったそうで。


 蓮君 ケイジの戦い方を親から聞き、そして久保さんから借りていた某野球漫画で影響を受けて更に魔改造と変態型への道を進む。成長が早すぎてお気に入りの靴とかシャツ、ズボンが着れなくなって地味に悲しい。クラスでもモテモテ。


 オルフェーヴル ケイジにバトンを託して引退。多分種牡馬としての価値がこの一戦でさらに上がる。でもなんやかんや静養牧場の一面を持っている前田牧場にも顔を出すのでなんやかんやケイジと出会う機会多数。


 エイシンフラッシュ 怪我がなかったので史実より一戦長く戦い掲示板入りして引退。種牡馬としての勝ちも上がってくれると幸い。


 次回こそウマ娘回に行ければと思います。


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ウマ娘エピソード 8 フラッシュの災難

 いつも感想、誤字報告。高評価ありがとうございます。

 何年振りかのゲーム機ポケモン楽しい。いつかブイズパでバトルタワー制覇したいです。


 ケイジ(ウマ娘)の一口メモ 休みの日はたまに、寮、ケイジの実家の縁側でケイジの太ももを枕にゴルシ、胸やお腹を枕にジャスタウェイが三人仲良く寝る姿が見られる。


ケイジ世代らのトレセン学園トレーナー評価:どうしようもない怪物をどうしようもない怪物がやっつける。喰らい合う世代。芝はケイジ、ダートはホッコータルマエが頭一つ抜けているがそれ以外でも怪物多数。


 「ふぅ・・・天気予報通りで助かりました」

 

 

 早朝のランニングを予定通り、時間通りにこなす。毎朝の日課であり、私の一日のルーティーン、予定を組み立てる時間だ。

 

 

 何事も予定通りに最善を尽くしてこなしていく。これが私の信条だし、それが一番いいのだ。予定を組み立て、秒刻みの予定を決めれば時間を無駄なく使える。わずかなロスがあとに響くのは生活でもレースでも同じ。それを削る習慣と立ち回りを覚えればどちらにも必ずいい成果が出てくる。

 

 

 「朝が早くなってきてだんだん温かくなる感触も気持ちがいいですし」

 

 

 ただ、そのルーティーン。鍛えつつ予定を確認、組み立てる時間というのを差し引いても朝日が昇りだんだんと明るく、温かくなる時間はやはりいいもの。走る前の、頭も体も動き切っていない私が今こうして心身あったまり一日を始めるためのスイッチが入る。それを太陽も同じように感じられ・・・・

 

 

 「・・・? 何の音でしょう?」

 

 

 静かな朝の時間。そこに混じる不釣り合いなほどの大きな音と怒声と悲鳴。後ろの方から聞こえてくるのだが、気になってくるりと振り向けば、そこには逃げる車と原付。大きな砂煙を上げて後ろから猛追してくる警察官と、日本、いや世界でもスポーツ選手以外ではちょっと見ないほどの長身を持つウマ娘。その後ろにさらに一名のウマ娘。

 

 

 「待ちやがれこの空き巣にひったくり野郎!! わしとケイジの前で逃げられると思うなよ!!」

 

 

 「ここ最近、朝の散歩をしてる爺さん婆さんたちの財布を狙ってる連続犯はおめえだな!? アタシの目が届く場所でふてえ野郎だ! しょっ引いてやる!!」

 

 

 「「ひぇええ~~!!! た、助けてくれー!!」」

 

 

 「な、なんで私まで―!!?」

 

 

 「え? え・・? え・・・!?」

 

 

 何やらがっちりした体系の超ふと眉の警察官が自転車で、そして、日本の誇り、新時代を蹴り開いた千両役者。ターフの傾奇者ことケイジ。ジェンティルドンナに届かないが、それ以外のメンバーを圧倒する。間違いなく怪物の一人ヴィルシーナが爆走して何やら犯人? らしき男たちを追いかけている。

 

 

 予想外。予定外もいい所の光景と、自分に向かってこの集団が来るということに頭の理解が追い付かずに立ち止まってしまう。

 

 

 「あ!? フラッシュちゃん! 何かそこのひったくり野郎から逃げてくれ! 危ねえぞ!!」

 

 

 「は、はいいいー!!」

 

 

 「ケイジ! わしが空き巣野郎を捕まえる! 後は応援を呼んでいるからトレセン学園に戻れ!」

 

 

 「ここまできて戻れるかい! ヴィルシーナ。アタシがひったくり犯捕まえるからワッパ・・・は持ってねえから、捕まえた後にジャージ、もしくは靴紐で縛るの手伝って! こんな用意周到な奴ら万が一でも逃がしたら後味悪いんだよぉ!!」

 

 

 「わ、分かったけど・・・! も、限界近いですから早くですよケイジ!」

 

 

 「そういうわけだ両さん! 後で感謝状と、ヴィルシーナには金一封でも渡してやんな!」

 

 

 「分かったよ! そんじゃあ」

 

 

 「「待ちやがれこの外道どもが!!」」

 

 

 「「いやぁあああ~~~~~!!!?」」

 

 

 あっという間に自分の横を通過して怒声と悲鳴が遠ざかる。しばらくして車のブレーキ音と何やらガラスが割れる音。ネコの悲鳴に何かが倒れてゴミ袋に何かが突っ込んだ音が響き、更にもう少ししてから聞こえるパトカーのサイレンの音。

 

 

 一瞬だけども濃厚な出来事に思わず立ち止まり、しばらくしてようやく再起動。

 

 

 「・・・・もうこんな時間!? い、急がないと!」

 

 

 持っていた時計の時間を見ると大幅に予定より遅れているのに気づいた私はこの後に急いで寮に戻るも、予定時間より遅れた時間にしか着けなかった。

 

 

 一日の流れが崩れた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 「はあぁー・・・憂鬱です。億劫です・・・」

 

 

 あの朝の騒ぎ、もとい台風一過ともいえるような出来事に一瞬巻き込まれたせいで一日の予定が崩れ、気持ちが落ちたままどうにか時間を取り戻そうと頑張っているが、やはり気持ちは戻りにくい。

 

 

 今日が心底休みの日でよかったと思う。授業なんて今日は手につかないし、トレーニングも軽く済ませるスケジュールの日。これなら今日の夕方には再起動できるだろう。

 

 

 「うあぁ・・・つ、疲れた。あ。エイシンフラッシュさん。向かい失礼します」

 

 

 「あ、ヴィルシーナさん。ええ、どうぞどうぞ。ところで、朝の騒ぎは大丈夫でした?」

 

 

 もそもそと食事をとっていたら向かいに少し疲れた顔。風呂上がりすぐなのだろう、上気した肌で少し疲れた顔をしたヴィルシーナさんが腰かけてきた。

 

 

 食堂でニュースを見ながら過ごすために多めの時間を取っていたのが幸い。軽く談笑くらいは出来るし、朝の一件について聞くのもいいかもしれない。

 

 

 「ええ。無事に犯人も捕まえまして。ケイジの知り合いの警察官さんがオフの日に偶然出くわして、三人で朝のジョギングからウォーキングに変えてここ周辺での空き巣や、ひったくり犯の話をしていたらちょうどケイジが空き巣を。両さんがひったくり犯を見つけてそのまま追いかけていたんです」

 

 

 「それはまた・・・でも、片方は車でしたよね?」

 

 

 「なんでも逃走用のためのものだったそうで。かなりの距離を移動して範囲を絞らせないためだとかなんとか」

 

 

 なるほど。そういえばトレーナーさんもここ最近ひったくりが増えているから行動する際は気をつけろと言っていたし、ニュースでも空き巣が増えているという話があったのをぼんやりと覚えている。その犯人らが朝のあの車や原付で逃げていたやつらだったと。

 

 

 「はぁー・・・あー朝のいい運動だったぜー・・・お、フラッシュ。怪我無ねえか? それとヴィルシーナ、お手柄だな」

 

 

 思わぬところで変なことが起こるものだと思っていたらその犯人を見つけて捕まえたケイジがウマ娘基準でも、いや彼女の身体にはちょうどいいのか?な量の食事を机に並べながらいつも通り快活な笑みを浮かべている。

 

 

 向かいで疲れた顔をしているヴィルシーナさんと比べて何でもないようにけろりとしているケイジさんを見ると、なるほどステイヤーとしても高レベルだというのがよくわかる。文字通り心臓の強さと体力が段違いなのだろう。

 

 

 おそらく犯人を捕まえるために主立って立ち回ったのもケイジさんだろうに。その疲れなどがまるで感じられない。

 

 

 「おはようございますケイジさん。私は問題ありません・・・そちらこそ、怪我の方は?」

 

 

 「お疲れ様ケイジ。私はせいぜい犯人の手足を縛って、盗んでいた財布やバッグを警察の皆に渡したくらいよ。お手柄はケイジの方じゃない。というか、貴方感謝状いらないと私がもらってすぐ出ていったし」

 

 

 「ケガはないなあ。ま、あんな老人狙いの下種野郎相手に負けるほどなまっちゃいねえ。そしてヴィルシーナも謙遜するなって。実際大助かりだったんだからな。もらった金一封でおめかししちまいな。あー・・・うまい。今日の野菜もいい味している。味噌汁も油揚げがうまいうまい」

 

 

 目の前でバクバクと美味しそうに食事をかき込みながら楽しそうに話すケイジさんを見ていると此方も元気が出てくる。豪快なのに周りにご飯粒や食べかすを飛ばさない。要所要所に見える所作がまた美しい。

 

 

 名家であり常に一流であることを自負するキングヘイローさんもまた普段の振る舞いが洗練されているのがわかるが、ケイジさん。そしてその実家である前田家の教育が届いているのだろう。真面目に普段の振る舞いを見てどうやって教えたのかは分からないけども。

 

 

 「おお、ケイジ君。ここにいたのか。相変わらずいい食べっぷりだ」

 

 

 「んぐ・・・んー・・・納豆、青じそいれるか。香りがいいなあ~・・・あ? 大原部長じゃん。お疲れ様です。どったの?」

 

 

 「いやいや・・・君、感謝状授与もその場でめんどくさいとバックレて、金一封も募金しておけと押し付けていったじゃないか。流石にそれは駄目だということで渡しに来たんだ。ほら、学園の立ち入り許可証」

 

 

 「だってもう何枚目かわからんし。それにアタシはレースの賞金、ショーやライブ、海外でもあれこれ依頼でも稼いでいるんだ。被災地で物資の資金にでも使ったほうが有意義だっての。部長らの派出所とは管轄外なのに部長らが来るんだねえ」

 

 

 「逮捕したのが君と両津だからな。それに、君への感謝状を渡すとなって府中管轄の警察官が我も我もとなって収拾がつかなくなって顔見知りかつ両津の上司の私になったんだよ」

 

 

 目の前にやってきたちょび髭が特徴の中年男性。部長というからにはそれなりの地位の方だろうか。その方が困ったように頭を搔きながらカバンに下げている感謝状が入っているであろう筒を渡そうとするがケイジさんもいらねえよと突っぱねる。

 

 

 警察官ともこうも親しい話をしているのに同じチーム所属のヴィルシーナさんがいつも通りだなあという風に食事を勧めるあたりケイジさんの人脈が気になるが、私も食事を勧めないと時間をオーバーしそうなので急いで食べていく。

 

 

 「ったくーなら、メンドクサイあれこれ無しでもらうよ? もう警察署でいちいち貰うのも手間だし」

 

 

 「もう署内の皆と顔見知りだからねえ。いやはや、町の平和のためにいつもありがとう。私達もより頑張るべきだと身が引き締まる。しかし・・・うーん。やはりここはすごいねえ。私のような老人でも知っているアイドル、もといウマ娘たちがたくさんだ」

 

 

 「まあな。ほれ、ヴィルシーナにエイシンフラッシュもいるぜ? 後でサインでも貰っておこうかあ? 渡すついでに土産もって出向くぜ」

 

 

 「おお、是非是非。エイシンフラッシュ君のあのダービー、天皇賞での振る舞い、レースは痺れたし、ヴィルシーナ君もエリザベス女王杯とヴィクトリアマイルの強さにまさしく天才でかっこよかった・・・」

 

 

 「え、えへへ。感謝します大原部長。なら、後で書かせてもらいますね?」

 

 

 「ありがとうございます。ですがスケジュールがありますし、明日以降で宜しいですか?」

 

 

 まさかの私のファンということに内心嬉しくなり、同時にお客様だ。にっこりと笑顔で対応する。私たちウマ娘はアスリートでありアイドル。学園内にマスコミも来ることは少なくない。いつだってしっかりと気を引き締めておくべきだ。

 

 

 大原部長さんもそれを聞いて優しい、好々爺というべき笑顔を向けてくれた。遅くなることは悪いのだが、その分良いものを渡せれば。

 

 

 「でーアタシは今日オフだけど、何か相談あるんじゃないのー? 顔に出ているぞ?」

 

 

 「む、わかるかね。いや・・・実はねえ。孫の趣味、というかブームのゲームについて是非教えてもらいたいんだよ」

 

 

 「ほうほう。ああーこれかあ。いいよ。これだとジャスタウェイとナギコもいたほうがいいな。呼んでくるし、せっかくだ。部長さんも飯食っていけ。ここの飯はうんめーぞ~?」

 

 

 自分の分の食事を食べ終え、ナギコさんたちのいる方に手を振って歩いていくケイジさんを見送りつつ、私は食べ終わった食器を整理し、大原部長さんとヴィルシーナさんに頭を下げて食器の返却場所に行く。

 

 

 朝の予定から躓いたが、ファンの笑顔と、ケイジさんらに元気を貰えたし、うん。頑張りましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「というわけだ、フラッシュ。これから数日だが、チームシリウスと合同練習を組むこととする」

 

 

 「おっ、了解だ」

 

 

 「そして、葛城さんからも了解をもらってフラッシュの練習相手にはケイジとヴィルシーナがついてくれる。最強世代の二人だ。大いに学んでくるといい」

 

 

 「あの・・・話が読めないのですが・・・?」

 

 

 あれから数日後。私の専属のトレーナーさんから言われたとおりの場所に来るとそこにはシリウスメンバーが勢ぞろい。ここだけで三冠ウマ娘が何名いるかと言いたいほどのメンバーのうち最強格とその最強に食らいつける怪物をつけてくれる。

 

 

 嬉しいのだが、急すぎて少し目が回りそうになってしまう。

 

 

 「フラッシュ。レースでお前の堅実、確実な勝利のための最高のプランニングを組むのはいい。だが、それを崩される、狂った時の調整が利かないのが君の悪い所だ。君がレースごとに相手を研究するのなら、当然あちらもしてくる。その上で、一度歯車を狂わされてしまえばそれで終わってしまう脆さは間違いなく今後響く。

 

 

 なので、世界中、日本中でも常に最高レベルのレース。相手とやり合っているシリウスと練習して一皮むけるように頑張ろうとな?」

 

 

 「え・・・で、ですが完璧なプランと調整さえすれば・・・」

 

 

 「そういうプランですらねじ伏せる。シンプルな強さで叩きのめすウマ娘がいるのがこの世界だ。せめてサブプランを作る。それくらいは考えたほうがいい。・・・荒療治なのは重々承知。だが、間違いなくいい経験だ。時間はしっかり守るから、頑張ってきなさい」

 

 

 これを言われると返す言葉がない。実際に私の戦績も決して無敗とは言えない。いや、負けもかなりある。それに予定が狂って負けることも、狂った際にすぐに何をすればいいかがわからずに仕掛けどころを間違って負けるのもあった。

 

 

 日本国内で専念してもこれだ。それと比べると海外で戦い続けることもある、芝質もコースの特徴も、何もかもが違う場所を飛び回っているシリウスメンバーから何か学んでくるというのも、呑み込むほかないだろう。誇り高い戦いを。勝利を手にするためには。

 

 

 「・・・分かりました。ではケイジさん、ヴィルシーナさん。改めてシリウスの皆さんよろしくお願いします」

 

 

 「おう。ま、固くならずにな? アスリートも女の子も柔らかい体と心構えが必要よ」

 

 

 「こら。まあ、そういうわけです。此方こそよろしくお願いします」

 

 

 どうにか気持ちを切り替えて、今日の練習を確かな糧にできるよう頑張らなければいけない。間違いなく世界レベルの怪物たちが力を貸してくれるのだ。ものにしなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・な、なんですかこれ・・・ま、まるで分からない・・・」

 

 

 そうして始まった模擬レース。軽い流しの結果から言えば、私は惨敗した。しかもただ着差をつけられただけじゃない。完全にこちらのレースを壊した上での勝利。

 

 

 「幻惑型の逃げに嵌りに嵌まったからなあ。アタシの背中にこの距離でつけてこのコーナーでって仕掛けようとしていたのもすぐに分かったから足を残さないように磨り潰した。最初の大逃げからの変化で体内時計も狂ったろ」

 

 

 「あの逃げは真面目に気ままに好き放題しながら楽しめるゴルシや、ジェンティルくらいじゃないと。対応できるのは初見ではルドルフ会長、マルゼンスキーさん、ブライアンさんくらいですしねえ。もう、私も気付かなかったら後の体力残っていませんでしたよ」

 

 

 「だ、だからなんですね……気づかないうちに私は加速を速めすぎて、第三、四コーナーでさらに身体に消耗を強いての最後はガス欠と……」

 

 

 全く分からなかった。最初で一気に飛ばされ、そこから追いついていけたと思い、最後に末脚を使って抜けるポジションを維持していたはずが、それさえも掌のうち。

 

 

 セイウンスカイさんの使っていたあの逃げをケイジさんの場合は普段の大逃げで逃げ切ってしまう脚、尽きないスタミナ故に追いつこうとしていくのを餌にして使用した。本番のレースでは1000メートル通過の時点で実況がタイムをアナウンスするからそれを聞ければまだ対処が・・・・いや、そこで調子を狂わされているとわかった時点でむしろ早く調子が壊れていた。

 

 

 分からなかったからこそ最後までどうにか粘れたというべきか。

 

 

 「そ、早めに気付いたヴィルシーナは抑えつつ外に膨らんだフラッシュちゃんの内を突いて食らいつけた。もう少しアタシに食らいつくんだったらヴィルシーナの様子を見て気付いてプランを変える。もう一つの武器、備えを持っておくべきだったろうな」

 

 

 「実際、エルコンドルパサーも凱旋門賞では普段あまり使わない逃げをもって周りの意表をついて戦いましたし。備えあれば患いなし。フラッシュほどの実力と才能、プランニング能力があるウマ娘なら手札を多く用意するのはいいと思います」

 

 

 「な・・・なるほど・・・」

 

 

 「ただ極端な戦法変更は難しいから、フラッシュの脚質に合わせつつ出来るやつを考えようか。勝負において戦法や作戦を変えるのは誇りを捨てることでも、間違いでもねえ。手札にあるカードの切るものを変えるだけさ。いつもこの手札だと思っているやつらの度肝抜いて、話題も勝利もかっさらおうぜ♪」

 

 

 「大逃げ、逃げ、先行、差し、追い込み。あらゆる戦いが出来るメンバーが揃っていますし、頑張りましょう。私も微力ながら力になりますよ」

 

 

 「分かりました・・・やります。お願いします!」

 

 

 ただ、ここで終わるわけにはいかない。トレーナーさんのくれた機会を無駄には出来ないし。なにより常にシリウスメンバーは誰かが海外遠征をするのと練習をしたいという申し込みも常に多くあって数日間の時間を取るのも一苦労。

 

 

 その中で手にできた時間を、トレーナーさんの好意を無駄には出来ないと気合を入れる。今ある武器を増やし、そのどれもを最高峰に・・・!

 

 

 

 こうして始まった練習は、どれもこれもが新鮮で、経験のないものばかりだった。力石を使った鍛錬に、走りながら後ろから聞こえる音を聞き取る練習。そして、途中途中で変更を加えたりなどで自由にしつつも強い皆。

 

 

 一つの武器を持ちつつもサブがあったほうがいい。いや、まんべんなく強い方が。でも、みんな強みはあるし、あれ? 私はどれを武器に。いや、この戦法も魅力的だし。でも、私の脚質は・・・うーん・・・・うーん・・・・これ、どうしたら・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 「よし。確か時間はこのくらいだったか・・・」

 

 

 どうにかこうにか手にできたシリウスとの合同練習の予約にエイシンフラッシュを入れての練習。秒刻みの予定を組み立て、レースに関してもプランを意地でもやろうとする。確実第一と言えば聞こえばいいが、見方を変えれば不器用。しかもそれに囚われ過ぎてしまうのが短所でもあった彼女。

 

 

 複数のプランを持たせ、ある程度の柔軟性を持って戦えるようにすればどうすればいいかと考えた結果、経験豊富かつ、怪物が多数いるシリウスで一度揉まれてサブプランを練る。対応策を用意することの大事さを学んでほしいと思っての強硬策だった。

 

 

 ただ、クレームやすぐに助けてほしいというメールや連絡もなく、数日が過ぎた。エイシンフラッシュをシリウスに預けることにした作戦はどうにか功を奏したのだろうか。どのように彼女は成長したのか。トレーナーとしても気になってしょうがない。

 

 

 「あ、トレーナーさーん。お疲れ様です」

 

 

 「ああ、フラッシュお疲れ。時間には間に合ったし、どうだった?」

 

 

 「大変ためになりましたよ。いやはや、世界の大舞台で勝てる皆さんはやはり柔軟なんですね」

 

 

 にっこりと笑顔で微笑んでくれるフラッシュの顔に疲労の色は強く出ていない。どうやら成功したようだ。

 

 

 「それなら、予定に組んでいた軽い練習から、今日は早めに休もうか。疲労抜きは大事だしな」

 

 

 「ならすぐに休みましょう? 予定変更も大事ですし、ケイジさんも疲労抜きは重視していましたし」

 

 

 「む? そうか? しかし・・・意外だな。時間を秒刻みで以前は決めていたのに。まさかの時短でもなく休みとは・・・」

 

 

 「ふふふ。だって、今は休みたい気分ですし、適当でいいんですよ。気を抜くときはとことんとー」

 

 

 ・・・・・いくらなんでも緩すぎないか? ニコニコ笑う仕草は変わらないし、空気も変わらないが、まさかの提案にこちらが驚いてしまう。いや、驚きで忘れたが言葉遣いも少し変わっている・・・?

 

 

 「いやあ、ほんと、滅茶苦茶な鍛錬や放課後も練習終わりもしっちゃかめっちゃか。食事はしっかりしていますがほんと騒ぎばかりで、テキトーな部分ありありであの強さ。強い人は無理せずとも強いですし、私も適当に、緩ーくやります♪ ささ、トレーナーさんも一緒に。美味しいパフェ食べ放題で話しましょう?」

 

 

 「・・・・・・・ケイジ―!! シリウスのみなさーん!! フラッシュを元に戻してぇえええ!!?」

 

 

 「どうしたんです? まあまあ、焦らずに緩く緩く。そのほうがいい作戦も思いつくかもですし、栄養補給ですよー」

 

 

 この後、どうにかフラッシュをいつもよりも緩く。サブプラン、第一プランが駄目な際の次の行動を提示できるくらいには緩くしつつ出来るくらいには戻してもらえた。

 

 

 いやはや・・・荒療治が過ぎたか・・・薬のつもりがあわや毒になるところだった。どうにか劇薬の範囲にとどめられた・・・よな? 




 真面目にあらゆる戦いでしっかり100%の力を出してくるケイジはフラッシュ心底相手しづらいだろうなあと。しかし、練習通り、予定通りのことをやり切ろうとする真面目さって競走馬のウオッカに近いんですねえ。エイシンフラッシュ。ウオッカもアニメで作戦をよく気にするシーンがありましたが、そこも恐らく史実準拠でしょうし。


 ケイジ よく犯人を両さんたちと捕まえているせいで自室は感謝状まみれ。金一封は半分は自分の小遣いで残りは家族や周辺のお土産、ゴルシとの屋台での資金。若しくは募金に回す。世界中でトークショーゲスト。マジックや歌の依頼が来るのもあってシリウスメンバーと世界中飛び回っている。


 ヴィルシーナ この世界ではケイジと長い付き合いのせいでさらに強化。ちょこちょこケイジとこち亀騒ぎに巻き込まれる。なんやかんや気の強いジェンティルドンナに代わってまとめ役をすることもちらほら。みんなのお姉さん。


 エイシンフラッシュ セイウンスカイレベルの自由人。下手すれば高田〇次レベルのテキトーウマ娘になりかけた。騒ぎや暴走に事欠かないシリウスの空気や練習が刺激的過ぎた様子。


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生産牧場って何だっけ?

 たくさんの感想と、両さんとケイジのかかわりがよかったみたいで安心でした。シリウスメンバーは全員あの派出所、署の皆と顔見知りです。


 ケイジ達の世代がアニメになったらこの世界だといろんな世代の人が見てくるかなあと内心思っております。バカ騒ぎ多数の世代なので絶対シリアスとギャグの落差がおかしいでしょうけど。何クールくらい必要になるんだろうか。


 ケイジ(ウマ娘)の一口メモ ライスシャワー、ナギコの海外遠征の際に応援ライブを開いて忍空、レイアース、平成ぽんぽこの主題歌を熱唱して思いきり背中を押す。ゴルシとジャスタも交えたイリュージョンもみせたりで大騒ぎに。


 『ただいまー』

 

 

 「おかえりケイジ。いやー今年も頑張ったなあ」

 

 

 「おかえりなさいケイジちゃん。温泉とご飯の用意、出来ているわよ」

 

 

 「おかえりケイジ。もう冷えるし、暖かい湯も用意しておくからご飯でもあったまろう」

 

 

 今年も有馬記念を終わり、なんやかんやとまた3月近くまで休養ということで牧場に帰ってくるとみんなが出迎えてくれた。いやー二年連続有馬は二番手柄だけど、こうしてくれるのがありがたいぜ。

 

 

 そんで、温泉も楽しみだったんだよなあーあっちの厩舎じゃ久保さんや真由美ちゃんが湯を用意してあったかシャワーとか、蒸しタオルやそういうので身体を拭いてあっためてくれたけど、やっぱー湯船、温泉が最高だぜ。

 

 

 「そう構えるな。お前は十分稼いだし、有馬2年連連続二着はすごいもんだ。来年取ってしまおう。ほれ、風邪ひく前に休んで来い」

 

 

 「ヒヒン・・・ワン」

 

 

 「お、よしよし。行こうケイジ。いやー漫画もたくさんファンからの差し入れで届いて、今年の休暇は読書も満喫だぞお?」

 

 

 『マジでー? 読書の秋ならぬ冬かあ。運動はするけど、より密度を深めて、休む時間はガッツリ読むぜー』

 

 

 えーと、今年のドバイの時点で獲得賞金が13億で、宝塚記念2着でたしか6000万。KGⅥ&QESで約1億3000万。凱旋門賞で3億1000万。ジャパンカップで3億。で、有馬記念で2着だったから1億2000万。

 

 

 合計で・・・あー・・・? 俺の獲得賞金合計22億2000万くらいでいいのか・・・・? やっぱ、世界でも高い賞金のレースを勝っている分稼げたなあ。

 

 

 ま、まずはその疲れを癒すためにお風呂にちゃぽん。ビバノンだわぁ~♪ 癒されるぜぇ・・・お風呂はいいねえ・・・・・・こんないいものはほんと日本の文化だし、キャプつばの石崎くんもお風呂好きなのがわかるぜ。ちなみに沖縄県はシャワー文化らしいけどマジ? 湯船ってどれくらいの割合で入るんじゃろか。

 

 

 「気持ちよさそうだなあー・・・俺も後で入ろう。ああ。それとケイジ。年度代表馬二年連続受賞おめでとう。もう紛れもない日本最高。ルドルフも越えているという声が多くなってきたぞ」

 

 

 『それなー二歳限定の優秀牡馬も含めれば三年連続受賞だろ? 真面目に今年とれるとはなあ。凱旋門賞獲得が大きかったのかな?』

 

 

 そう。それと俺、また年度代表馬として受賞。なんか副賞としてお金もまたもらったとかなんとか。いやー確かに海外含めれば今年でGⅠ5勝したけどさ。日本だと今年は一勝二敗しているからなあ。オルフェの事もあったしとれるかわからんかったから驚きよ。今年は昨年ほどじゃないけど票が割れていたしなあ。俺とオルフェ、ジェンティルちゃん。ゴルシで。

 

 

 「ほんと、お前はすごいやつだよ。そんなお前の世話が出来て、一緒にマンガを読んだり、過ごす姿を見れて俺は幸せだ。ケイジ。何か体調不良があればすぐに言うんだぞ。その時は俺はここをクビになってでもお前を休ませるから」

 

 

 「ぶふぅ・・・ひん」

 

 

 『馬鹿野郎せっかくボーナスやらで稼いで貯蓄も仕事もできているのにそんなことするな。俺らの回りの大人はみんな優しいし、そんな奴らじゃねーよトモゾウ。気持ちは嬉しいがな』

 

 

 嬉しい言葉だが、おやっさんらを信頼してやれという意味でお湯の水をちょい・・・あ、思ったより水飛んでいった。

 

 

 「うおっと! ははは。悪い悪い。つい心配でな。とりあえず、無理なく、無理なく。でも戦う時は全力で行くんだぞケイジ。そのための調整、健康管理のために俺らはいるんだからな」

 

 

 『あいよ。代わりに頑張って稼いでくるし、トモゾウたちも頑張れよー? 厩務員の激務さは知っているし、休むときはしっかり休むんだぞ』

 

 

 ああーいい湯・・・同じ湯でも、温泉はやっぱ違うなあ・・・・骨の芯まで染みる・・・これこれ。これと冷たい水を飲んで、風呂上がりにのんびり飯を食べながら暖かい湯を飲んで心地よいほてりを感じながらDVDや漫画を見つつ過ごす。最高だー

 

 

 あ、年末特番で競馬の歴史をゴールデンで放送? ウッソだろお前! まじかー、あ。志村さん出てる。俺やゴルシとアイーンした画像を大きくバーンと出しているわぁん。あ。そんで俺のための歌を作った?

 

 

 ほうほう・・・「赤白の 水引き咲くは 葡萄月 傾けど揺れず 門を潜らむ」 ああー俺の凱旋門賞の事を読んだのか。さっすが芸能界の超大御所。経験と教養が深いぜ。

 

 

 特番の内容は・・・今回はルドルフ、テイオーに、マックイーンとステゴね。で、そこからサンデーサイレンス。次回に俺とゴルシ、ステマ兄弟やウオッカダスカ時代もやると。あ、ステゴの逸走のレースにスぺちゃんに噛みついたレース流れてやんの。ゲストの皆さん驚いているじゃねえか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『あけましておめでとうケイジ君。今年もよろしくね』

 

 

 『あけましておめでとうジャスタウェイ。此方こそよろしくだぜ。でさー。どったの? うちに来るとは。しかも大所帯で』

 

 

 新年あけまして、2014年競馬特番も組まれたりで色々何やら変わっている中、やってきてくれたのはジャスタウェイ。そしてジェンティルちゃんとヴィルシーナ。と大勢来て、キジノヒメミコと的矢さん帰って、あるいは出向いて来た。

 

 

 『あら、ヴィルシーナさん。あけましておめでとうございます。貴女も調整でこちらに?』

 

 

 『あけましておめでとうございますジェンティルドンナさん。ええ。私は休養と調整でここへ。ところで、あの子大丈夫です?』

 

 

 『お兄様! お久しぶりですー!! ああ、この柵邪魔・・・! 的矢さん出してくださいよー!!』

 

 

 うん。今年はしっかり牝馬エリアに入れているな。ヨシ! 真面目にあんな美人らと一緒に過ごすとか俺も我慢が大変なんだぞ~?

 

 

 『ああ、僕は今年に3月だっけ? にドバイDFに挑みに行くんだ。この前の天皇賞で結果を出せたし、これならいけるだろうって。で、ゲン担ぎの意味と、調整場所としてはここがいいからってことでここに来ることになったんだ』

 

 

 『まあ、冬でありながら地熱であったかい。でも周りは雪が多いからそういう調教もあり。海も近いから砂場で走れるといいけど、ゲン担ぎ?』

 

 

 『昨年ケイジ君とジェンティルドンナさんの二人であっちのGⅠ三勝してきたから。此方もここで鍛えて、勢いをってことらしいよ?』

 

 

 『なるほどねーならここを満喫してくれや。ヒメ。普通俺ら男と女の馬はしっかり分けるのが普通だからな? 暴れない暴れない』

 

 

 『うぅ・・・分かりましたぁ・・・』

 

 

 よしよし。収まってくれたのを無事ジェンティルちゃんがリードしてくれている。流石慣れたもんだわ。

 

 

 『お久ジェンティルちゃんにヴィルシーナちゃん。二人もドバイに?』

 

 

 『あけましておめでとうケイジ。ええ。ドバイシーマクラシックへもう一度挑みに行きますわ。・・・貴方ともいきたかったですが』

 

 

 『あけましておめでとうございますケイジさん。はい。私は同じくドバイミーティング? のレースの一つ。アルクォズスプリントというGⅠレースに出走する予定です』

 

 

 えーと、ジェンティルちゃんは2400メートル、ジャスタは1800メートル。ヴィルシーナちゃんは直線1200メートルのスプリントに出るわけかあ。俺は出来て1800の調整までが下限だなあ。ヒメが調整相手になるか?

 

 

 『そんなら、また俺が練習相手になるだろうしよろしく頼むわ。ここに来るウマはみんな湯治で来るか、うちの馬もおふくろは競走馬じゃないし、子供もまだ1歳で俺らと合わせないようにしているからなあ。

 

 

 ジャスタには俺のコーナリング。ジェンティルちゃんはスタミナの練習に、あーそういや、直線なら俺もできるし、ヴィルシーナちゃんともたたき合いの練習すっか? 多分テキたちも同じ考えだろ』

 

 真面目に俺とジェンティルちゃんはすぐ5歳。牝馬でありながらあの強さと才能を持つけども衰えとか、なんやかんや気を遣わないといけないし、あのレースになれば出てくる戦意が悪い方向に転ばないようにコントロール調整とかするだろうしな。

 

 

 で、ジャスタウェイは天皇賞で見せたあの爆発力。それをより活かすためにコーナリングでロスがない、加速しながら足を溜められる俺の技術を学ばせたい。ヴィルシーナちゃんはあの戦いの強さと足のキレ味は確か。

 

 

 それを終始使ってサクラバクシンオーのように常にトップギアで戦いながら周りに押されない強さをって感じかしら。で、ヒメは何だろうなあ。休暇? 今年デビューとはいえ、かなりいい評価とか電話ばかりだったと利褌のおやっさん言っていたけど。

 

 

 「おーいケイジ。ジャスタウェイ君。今から浜辺で軽く併せと運動をするようだ。来てくれー」

 

 

 『へーい。今行くぜトモゾウ。あ。幸太郎。お久ー』

 

 

 『この子が一緒に熊を倒した幸太郎君? かわいいねえ』

 

 

 『だろー? 俺らと同じ血統書付きの由緒正しい柴犬だぜ。ささ、いくかジャスタ。砂での走りだし、ウォーミングアップは入念にな?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『やぁああ!!』

 

 

 『んのっ・・・・ま、だまだぁ・・・!』

 

 

 「ふーむ・・・やはり、あの子はサクラバクシンオーやメジロマックイーンのようなタイプですな。いやはや、今の時代に一石を投じることが出来る怪物を預けてもらえてうれしい限りです」

 

 

 『ほへージェンティルちゃんにヴィルシーナちゃん相手に砂とはいえいい勝負しているなあ。あ。ジャスタ。お前さんのコーナリングはいいけど、まだロスがあるなー脚の使い方を練習していこうや。もっと爆発力伸ばせるぜ?』

 

 

 『うん! でも、ほんと凄い脚の動きの変化をするよねえ。やっぱり、普段の変な行動から?』

 

 

 早速砂浜でみんなで練習中。で、俺の走り方をジャスタウェイに伝授&ドバイDFで戦うレース場での注意点を教えていきながら野郎メンバーはすごし、女性陣? いや牝馬陣は三頭仲良く併せ・・・いや、半分本気でやり合っている感じ。元気だねえ新年早々。

 

 

 『幸太郎君もありがとう。しかし、ほんと凄い体力だねえ』

 

 

 『毎日ご主人様から焼肉貰っているからねージャスタウェイさんもドバイに行くんでしょ? 頑張ってね? ここの皆もジャスタウェイさんを応援しているしファンも多いから』

 

 

 『ほんと? ありがたいなあー僕たちの世代はケイジ達がハチャメチャすぎてねえ』

 

 

 『わははは。お前さんもその代表の一頭よ。いやーほんと覚醒したお前さん相手にマイル~2000メートル前後ではやり合いたくないレベルだ。よし。じゃ今度は俺のやっている柔軟の仕方なんだけど・・・』

 

 

 「んー・・・馬は群れて、小動物と仲良くなるし、その中で走りを覚える動物ですが・・・・その、ケイジ君たち、自主練だけで走りを磨いていませんか? 本当に」

 

 

 「あれ、いつもしますし、ジェンティルドンナちゃんにも教えますからねえ。この前売りましたが、ステゴとミサトの子どもにもその走りを教えた結果、柵越えをポンポンして大変でした」

 

 

 ああーあの子ね。ビリー牧場長が見るや野獣の眼光と妖精のオーラを出して「すぐにアメリカに行きやす。カモン! さあカモン! なんぼ!? なんぼなん牧場長!?」って変なテンションになったあげく3億即金で買ったっけ。牧場に戻るたびにいろいろ教えていたが、あれだなー元気印の人懐っこい見た目はステゴ。素質もそれくらいの芝もダートも両方いけるし、幸太郎と鍛えていた。

 

 

 うんそんな感じ。あっちでも元気に過ごしているといいけど。来年はタイキシャトルとおふくろの子どもが生まれるし、俺がここにいる間に生まれそうなら手を貸しますか。あ、そういやビリー牧場長もようやく予定あいたし、遅めの新年のあいさつに来るんだっけ。元気しているかねえ。

 

 

 「だからトリプルティアラ路線の時からあのコーナリングを見せていましたし、ドバイではさらに足の使い方の変更。ギアチェンジさえも見せたと・・・しかし、クラシックの時期を越えて、ジェンティルドンナちゃんは正直な話、牝馬限定戦に出すよりもまた宝塚や有馬に行って優勝を狙える器です。さらにケイジ君の技術を、しかもそれに近いレベルのヴィルシーナちゃんたちに教えていいのです?」

 

 

 「私たちのような貧乏中小牧場にはケイジがいるだけでかなり稼いでいますし、あいつもこうやって嬉々として教えるあたり、互いにレベルアップした上でやり合いたいでしょうからね。喧嘩をしない限りはあいつのやりたいように、教えたいように教えます」

 

 

 「そうですか・・・それにしても、やはりキジノヒメミコのあの早仕掛けと、マイルの距離前後で思いきりスタミナを出し切るのはケイジの影響でしょうかねえ。普段の軽い練習や走らせるだけなら2500、いや、3000もいけるスタミナを持っているので」

 

 

 「間違いなく。血統からしてド級のスタミナ血統ですが、あの子はケイジの事が大好きですからね。きっと追い込みがやりやすく、菊花賞の事をケイジから聞いてこれをしたのでしょう。・・・・・今のスピード、キレ味、末脚瞬発重視の血統やレースが多いこの競馬界にありったけのスタミナを使って切れ味どうこうではない。スタミナとハイペース、速度で振り切る。サンデーサイレンス産駒、その血統を継ぐ馬たちとの真逆かつ相性最悪なマイラーが来た。面白い話ですねえ」

 

 

 しかもそれがステイヤーとかかわりの深いヒットマン的矢さんのもとに来て、スタミナ豊富な癖にサクラバクシンオーなノリのヒメというのはほんと芝生えるわ。いやまあ、半分は俺のせいだけどさ。

 

 

 「全く。あの毛色も相まってライスを思い出しましたし、スタミナ血統だと思い蓋を開ければ素質は超高速マイラー。当時のサクラ軍団もバクシンオーを育てた時は皆才能に感謝と驚きを隠せなかったでしょうなあ。しかし、改めてなぜこのようなスタミナ血統を? 異系であれども速度を求めるのなら貴方ほどのコネと、ケイジの稼いだ資金があればアメリカやオーストラリアからでも速度に富んだ素質馬を購入できたでしょうに」

 

 

 「これは。私の持論ですがね。今の競馬界では速度を求めるゆえにその血統が多い。ですが、私の場合、むしろステイヤーの血をそこに入れることを絶やしたくないのです。強く戦える名馬の条件は筋肉量ではなく、むしろ頑丈な内臓器官にある。特に循環器系ですね」

 

 

 ああーセクレタリアト、日本だとテイエムオペラオーにオグリキャップらだねえ。あの怪物的名馬たちはみんな心臓や循環器系において普通の馬たちとは違う点があったんだっけ。

 

 

 「スプリントでの戦いならばねや筋肉、足の回転に闘争心があればという感じかもしれませんが、中距離、もしくはマイル以上の距離となれば筋肉、骨格、内臓器官。精神力。全てがハイレベルに問われていきます。そして何より、年間を通して戦える体力。それを補える。支えられる血統は必ず必要になります」

 

 

 「確かに。早熟なのはいいことですが、すぐに衰えてしまえばドバイや、4歳以上の古馬戦で通用しませんし、何より今の世代は海外遠征も多いのを見て我もとなって速度重視の馬を用意して蓋を開ければ挑めるころには衰えた。では話になりませんからね」

 

 

 「そうです。そしてステイヤーの馬たちは人を乗せたうえで長い距離を走り、しっかり勝負所を待てる精神力や体力。長距離のレースを走って体調を壊さない頑丈さがある。その体力の維持は現役でも種牡馬になっても助かるでしょうし、キジノヒメミコのように距離をしぼってつぎ込めばこれほどに戦える。

 

 

 競馬は賭け事ですが同時にスポーツであり、誇り高い競技でもあり、そしてエンターテイメントの一種だと私は考えています。だからこそ、バリエーションと、やはりどの戦いが強いかとワイワイみんなで話せる時代を作っていける助けをしたいのですよ」

 

 

 なるへそ。実際、うちにいる血統を見れば俺やおふくろはルドルフやミホシンザン。ナギコは中距離だけど、砂のダートで戦える体力とパワーがあるし、ヒメはゴアにシービー。ミレーネちゃんはマンハッタンカフェの母系の末裔で、ブラウトちゃんはキンチェム系。みんな長距離で戦える、名を示した血統ばかりだなあ。

 

 

 いやしかし、これ大分社爛さんも助かってんだろ。真面目に重い芝で戦える血統かつステイヤー系だし、日本のド級速度血統と組み合わせていい感じに長所を伸ばし合えばレベルもっと上がるぜー?

 

 

 『ケイジ? 次走ろう? ヒメちゃんもジャスタウェイさんも待っているよ?』

 

 

 『んぁ? あー悪い悪い。小休憩終わっていたな。っしゃ。じゃ、今度はみんなであわせだっけな? ヴィルシーナちゃんとジャスタを真ん中にして、ジェンティルちゃんを最内、俺が大外で走るか。幸太郎は後ろから追いかける感じで。俺らの脚の使い方。じっくり見ろよー?』

 

 

 『代わりにわたくしたちもそちらの技術を盗みますので。ジャスタウェイのあの末脚に、ケイジの大逃げでつぶれきらなかったヴィルシーナさんの走り。覚えてみせますわ』

 

 

 『ふふふ。私こそ。二人でこっそり覚えて、教え合っていた技術を貰いますからねー私たちのお爺ちゃんを思い起こさせるほどのコーナリング技術を使えるなんてワクワクしますもの』

 

 

 『僕も必ずドバイDFを勝つために強くなりたい! みんなのライバルだって胸を張れるようにケイジ、思いきり頼むよ!』

 

 

 『おうこら、俺一応休暇中の運動扱いだからな? ま、これくらいなら問題ねえけども。さ、いくぞー』

 

 

 さてさて、こっちもこっちで競馬界を盛り上げたり楽しむために頑張りますか。

 

 

 ・・・・・・しかし、生産牧場なのにもう湯治と養生のためのスペース多めで、海外遠征する馬たちの準備拠点とかしているここの牧場は何だろうなー早いとこブラウトちゃんとミレーネちゃんここに入れて、しっかり本来の仕事も頑張れ。前田牧場。




 今年も来ました同世代。もはやこの牧場の仕事って何だっけ? と軽く思っているケイジ。


 ドバイでは今回のドバイミーティングにケイジの同世代で昨年ドバイシーマクラシックで勝利したジェンティルドンナが連覇を目指してきてくれて、さらにはそのジェンティルドンナに勝利したジャスタウェイ。2着連続とはいえ確かな実績。2013年にGⅠ二勝した名牝が来てくれるとあってまたこの世界では大盛り上がりでしょうねえ。


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ウマ娘エピソード 9 三人の日々

 ようやくジャスタウェイが前田牧場で養生と調整に来る話が書けたのでこのエピソードに行けます。ケイジ達がふざける。ハジケる時はこんな感じなんだあと思ってくれれば。今までは基本優しい顔が多かったですしね。


 後、職場が忙しい、合っていないかもなのもあって真面目に投稿速度が落ちていくと思いますが何卒よろしくお願いします。真面目に休日しか書けないし、身体が辛いわぁん。


 今回かなりおふざけ、真面目に昔のドラゴンボールなノリも一部あるので、もしやばい場合は一部修正します。お願いします。


 ケイジ世代らの一口メモ シリウス、ゴルシ、ジャスタウェイたちは互いに互いのぬいぐるみを全部持っていて保管用と観賞用で管理している。そして部屋に飾っている。




 「喰らえシャコ魔人ー! ゴルシスマッシュ!!」

 

 

 「ぐはぁああああー!!! が・・・・ぁ・・・」

 

 

 ゴールドシップの滑り台を利用した三角蹴りが蝦蛄とボクシンググローブと人とあれこれ派手なカラーリングを悪魔合体させた怪人に炸裂。

 

 

 それを喰らったシャコ魔人は吹っ飛んで地面を転がり、その後にぼかぁん。と爆発と煙が舞い上がる。

 

 

 「う・・・ぉお・・・? おお・・・も、元に戻った・・・! 助かったぜゴルシ、皆!」

 

 

 「はっははは! スーパーゴルシちゃんとみんなの力のおかげだぜ! さ、ケイジ、少し休んだら助けてくれたみんなへのお礼の食事を振る舞わないとな?」

 

 

 『よい子の皆とゴルシちゃんのおかげで怪人になっていたケイジが元に戻りました! 応援してゴルシちゃんに力をくれたみんなありがとー!!』

 

 

 「皆、迷惑をかけて申し訳ない。そして、助けてくれてありがとな! おいしいご飯をあげるから、一緒に皆で食べよう!」

 

 

 濛々と、煙幕レベルに立ち上がる煙の中から出てくるのはケイジ。そしてそのケイジの手を取りゴールドシップと二人そろって大きく手をあげる。

 

 

 子供たちもそれを見て大きな拍手と歓声が上がり、もうこの託児所は大賑わいだ。

 

 

 「うふふふ」

 

 

 それを見て思わず笑顔が出ちゃうのは私、スーパークリーク。今日は私の実家の稼業である託児所にケイジ、ゴールドシップ、ジャスタウェイの三名が私のお母さんたち以外には内緒でサプライズヒーローショー、そして、食事やあれこれの用意をしてくれる一日となった。

 

 

 このヒーローショーもケイジの魔法のようなマジックでちょっとの間を利用して見事に怪人の着ぐるみをつけ、そしてその身体能力を活かして子供たちを驚かせ、怖がらせたりとそこらで見れるものではないとついつい見入るほど。

 

 

 「よーしそれじゃあ、手を洗って、一度着替えようかみんな! 今日はアタシ特製のカレーに」

 

 

 「私とゴルシちゃんお手製のコンソメ肉団子スープだよーさーちゃんと並んで、その後にご飯を取ろうねー」

 

 

 「はいはい。しっかり靴を脱いで入るんですよー」

 

 

 「うっしゃ。早速その間に食事持ってくるぜ。あ、おばちゃーん! 食器マシマシで宜しく!」

 

 

 話題とネタ、強さにも事欠かない。ケイジは特撮への出演や多くの活動。ジャスタウェイは実家がアニメ関連ということもあってその手合いのグッズや知識、演出を用意できるのもあって子供たちからの人気も高い。

 

 

 ゴールドシップも言わずもがな。二人のライバルであり、奔放なふるまいにカラーリングから光の国の戦士たちとのコラボやイベントにもケイジと並んで参加しては一緒に騒ぐなどまさしく子供たちのヒーロー。

 

 

 それでいてレースも実績も文句なしの怪物たちなのだからこのメンバーが来た時の託児所の盛り上がり様はすごいものだった。

 

 

 「さぁー黄金屋特別出張。行先はここふたば保育園。今日のメニューはこちら! デザートもあるけどお残しは厳禁だ!」

 

 

 「ちゃんと食べられる量を頼もうね? はーい君は少なめだねー?」

 

 

 「クリークも先に食べたら? また道具を用意する間子供たちの世話クリークに頼むし」

 

 

 「あら? ではお言葉に甘えまして。私も並ぶわね? んふふ」

 

 

 子供たちの背丈に合わせた屋台風のセットを取りだし、黄金屋 の看板を掲げてお品書きを貼り付けて勝負服から一転。法被に鉢巻をつけて子供たちに食事を渡していく三人。小さく切られた野菜がかわいいカレーに、優しくもかぐわしい香りが漂うスープに私も食欲がそそられ、小さくくぅとお腹が鳴ってしまう。

 

 

 「ん? デザートは何かって? フルーツゼリーだが、ちょいと普通とは違うぜ?」

 

 

 「私とケイジオリジナルのぱちぱちするフルーツとラムネ味の混成味だ♪ だからおやつ分のお腹も残しつつしっかり食べるんだぞー? でねえとクリークみたいにバインバインのお姉ちゃんにはなれねえぞ?」

 

 

 「あら、キノコは駄目? じゃあ代わりにこのにんじん多めに入れるよ? 風邪ひかないためにもしっかり食べないとだよー」

 

 

 「じゃ、しっかり手を合わせて、いただきます」

 

 

 「「「「いただきまーす!!」」」」

 

 

 元気でやんちゃな園児たちもしっかりと手を合わせ、今日のご飯を食べ始める。皆が美味しい美味しいと言って食べてくれることに私も嬉しくなり、一口食べていくと。

 

 

 ・・・おいしい。イベントで招かれた際に食べたカレーよりもずっと・・・高級ホテルで出すようなその味でありながら、子供たちが食べやすいように調整されている。思わずスプーンや箸が止まらない。おかわりもしたくなる程で、食べ終わった後なのにまだ食べたいと胃袋とおなかが訴えてくる。

 

 

 結局、おかわりをして、この後に出てくるデザートもおいしいし、おかわりをくれと取り合いをする園児たちをなだめたりしつつ、お昼寝の時間にはまた次の用意を手伝った。

 

 

 

 

 

 

 

 「奇麗に並んで並んで~? それじゃあ始めよう。魔法少女ベンテン。兄貴たちとの出会い! 始まり始まり~♪」

 

 

 昼寝が終わり、今度は紙芝居を披露することになったケイジ。ジャスタウェイは先のヒーローショーのようにSEやBGMを担当しており、持ってきているPCとスピーカーを用意してケイジの語りと紙芝居の流れに合わせていく。

 

 

 ゴールドシップが女性と男性。ケイジはその倍以上の声を担当することで進めるそうで、そこはやはりケイジの七色の声。真面目に私もこんな声質を聞いたことがないレベルで幅広く声を出せる彼女だからこそ出来ることだろう。

 

 

 「それじゃあ、ときめき♡ヤクザハイスクール! 始まるぜ!」

 

 

 「え!? 魔法少女じゃないの!?」

 

 

 私のツッコミも気にされずに流れていくコミカルなかわいい歌。作詞作曲が水野勝成って・・・ええ・・・?

 

 

 「第一話。ようこそときめきとカチコミの世界へ。・・・・時は戦国」

 

 

 「時代劇なの!? ハイスクール何処へ行ったのよー!!?」

 

 

 「武田信玄は悩んでいた。細川藤孝に負けない歌を作り、いずれ万葉集のような歌集に名を連ねたい。そして自国の歌舞伎グループへの新曲の用意に追われ・・・」

 

 

 「と思ったらアイドルものだった―!! 魔法少女要素と学園何処かへ家出しちゃった!!?」

 

 

 ・・・・・・繰り広げられるカオスな内容なのに出来はいいし、絵もいいし、二人の演技も相まって園児たちは大盛り上がり。私も思わず聞き入り、最終的にアイドルグループによる人気合戦が戦国で行われ、CDの貸し借りで合戦が起こる内容すらも受け入れていたのに内心驚き、あとでこの紙芝居シリーズを購入することを決意したわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「すー・・・・すー・・・・」

 

 

 「んー・・・・ふぅ・・・す・・・すぅ・・・」

 

 

 「いやーこいつらも一緒に仲良く寝るとはな。こうしていりゃあゴルシも令嬢・・・いや、ないわー」

 

 

 「本当に頑張っていたものね。後はお出迎えを待つだけだし、ありがとう。ケイジ」

 

 

 目の前で耳としっぽを大暴れさせながら寝ているゴールドシップと、静かな寝顔で園児たちと混じって夕方に仮眠をとっているジャスタウェイを見つつ。私とケイジは片付けと掃除をしていた。

 

 

 あのハチャメチャ紙芝居をした後、折り紙の講座を開いて、ケイジとゴルシが出来なかったという珍事が起こり、代わりにと言わんばかりに失敗作の折り紙を手の中でつぶして、生きたスズメや鳩、描いた絵の動物たちを出しては驚かせたり、侍風の和装に身を包んでプロジェクターから映し出される影を斬り捨てていく殺陣、剣戟のアクションをして見せたりと大盛り上がり。

 

 

 ケイジとゴールドシップの二人が目の前で仮面ライダーに変身してみせたり、ジャスタウェイの演出と三人交えたダンスや歌で終始託児所は盛り上がり、昼寝をして元気もりもりだった園児たちも楽しみなはずの家族の出迎えを待てずにまた眠っていた。

 

 

 「今日はありがとなクリーク。こうして子供たちと遊ぶのもいい時間だったし、楽しかった」

 

 

 「こちらこそ。お母さんもみんなも思い出になるって喜んでいたし、サインやライブで使うネタまで披露してくれて・・・本当にうれしかった」

 

 

 「いいんだよ。子供は宝だし、いい思い出になってくれればアイドルやっている甲斐があるってな。ほんと、余計な声を聞かずに好き放題やれて最高だったしよー♪」

 

 

 「わふっ!? も、もぉ・・・こういうのは私がしたいのに」

 

 

 モップで埃を舞い上げないようにしながら子供たちを見つつほほ笑んでいるとケイジが私を抱きしめて頭を撫でてくれた。210センチの背丈と豊満すぎる胸もあって私が子供になった気分になりつつ、甘やかしたいのは私なのになあと少し拗ねてみる。

 

 

 「お? なら膝枕してくれねえ? いやーアタシもちょいと眠くてさあ。子供たちが帰ってからの掃除まで少し眠りたいんだわ」

 

 

 「もちろん。なでなでしてもいい?」

 

 

 「いいよ。クリークほどのべっぴんにこうしてもらえるのなら心地よく休めそうだし。そんじゃ、えーと座布団座布団」

 

 

 抱きしめる力が増し、むぎゅぅと汗と、いい香りのするケイジの身体の匂いを味わっていると、私が座る用の座布団を耳からにゅぅーと出して床に置く。タマちゃんやオグリちゃんも言っていたけど、本当に間近で見て尚分からないその技量はどうなっているのか。

 

 

 座布団を出して私から離れて茶を飲むケイジを見つつ私も座布団に座り、膝をポンポンと叩いていいですよと見せる。するとケイジも頭を膝に乗せ、目を閉じていく。

 

 

 「時間になったら起こして・・・あと、アタシ背丈がでかい分頭も重いだろうし、痺れそうだったら無理せずにな・・・・・・ん・・・すぅ・・・・・・すぅ・・・」

 

 

 「大丈夫よケイジ、全く重くないから。ありがとう。ケイジ」

 

 

 すぐに寝息を立てていくケイジの前髪を撫で、そっと寝顔を見る。ジャスタウェイ、ゴールドシップ、ケイジの美貌はウマ娘のなかでもかなり高い水準で、三人でケアもしているのでさらにその美貌は引き立つ。

 

 

 でも、それでも近くで見ればわかる目元のクマ。普段からエネルギッシュに動き回り、ケイジに至ってはイギリス、フランス、ドバイ、アメリカでもショーやレース。応援に言ったりで兎にも角にも多忙な中どうにか予定を開けて二人と一緒に来てくれたのだ。

 

 

 世界最強格であり、人気も知名度も高い、別の仕事も多いであろうにもかかわらず小さな託児所に無償で食事も、ライブでやるようなショーも朝から夕方までやってくれた。普通に頼めば何十万、何百万と掛かるであろうクオリティーを子供たち、そして私のためならと笑顔で引き受けてくれた三人には頭が上がらない。

 

 

 「・・・・・・ふふ。不思議。貴女には不思議な縁を感じるし、甘やかしたいけど、甘えたいという気持ちも出てきちゃうわ。ケイジ・・・ゆっくり、いい夢を見てね」

 

 

 ぐっすり寝ているケイジの頬を撫でながら沈んでいく夕日に映える顔を眺めて少ししあわせな気分に浸る。子供たちのためのはずが、私もすごく楽しめた。そんな素敵な一日だったわ。あとでイナリちゃんやオグリちゃん、タマちゃんにも自慢しちゃお。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おおー? どうしたんだジャスタウェイ。藪からボーに」

 

 

 「ケイジー・・・ちょっと手伝ってほしいのよ~」

 

 

 クリークの託児所で愉快な一日を過ごしてから早数日。仕事もひと段落したのでオフの日を満喫していたらアタシの部屋にジャスタウェイが来た。あ、ちなみにジェンティルちゃんは実家に戻って姉のディープと飯食いに行っている。

 

 

 「手伝い? 御前の親父さんの関わるアニメの作画とか? あれはクリークに任せた方が・・・」

 

 

 「いやいや。そうじゃなくて、ビワハヤヒデさんにデー・・・遊びに行く誘いの手紙を送りたくて」

 

 

 「おうこら、本妻のゴルシどうした。つーか、今どきライン? ウマッター? で頼んでいいんじゃねえの? それかナギコ呼ぶ?」

 

 

 でまあ、うん。ジャスタはいいやつだし、穏やか優等生だけど芦毛フェチだし、テンションが割とおかしくなる。その中でも同級生かつライバルで相棒、親友で滅茶苦茶美人なゴルシとだとほんと毎日しあわせ状態。ハッピー〇ーンいらねえなこれ? となるが、葦毛フェチゆえに結構いろんな葦毛の子たちのコレクション、ブロマイド、ぬいぐるみを部屋に飾るほどちょっといろいろ気が多いかもな部分がある。

 

 

 今回はまさかのお誘いの手紙とはなあ。真面目な話、読書友達のナギコの伝手使えばあっという間に仲良くできそうだけど。

 

 

 

 「い、いえ、そこはしっかりと文を送りたくて・・・で、ケイジに文をチェックしてもらいたいなあと」

 

 

 「アタシ確かに書道習っているが、文才はねえぞ? ますますナギコ呼んだほうがいいって」

 

 

 「こんな相談ケイジにしかできないじゃない! というわけで手伝って!」

 

 

 「まあいいけど。どれどれ。えーと机に・・・ほれ、一応紙と便箋の予備」

 

 

 うん。まーデートのお誘いの手伝いとか、そりゃあー・・・・ナギコ絶対ウキウキで手伝うだろうなあー。ま、いいかいいか。気楽に見ていこ。

 

 

 「えーと・・・・『拝啓、だんだんと夏の暑さも落ち着き、心地日差しと風が吹く日が増えてきましたがいかがお過ごしでしょうか?』」

 

 

 「うんうん。字もきれいだし、良い感じいい感じ」

 

 

 「よかった。それじゃ『そろそろ大レース、GⅠの舞台も近づき、忙しい中ではありますが、その中でこそ息抜き、そして互いに意見交換をしたいと思います。なぜならあなたが私は好ましく・・・・・』」

 

 

 「速い速い。ステップAからいきなりYくらいまでぶっ飛んでんじゃねぇか。告白しちゃうのがドラマやバラエティーより早いって。学校の屋上での告白より早いわ。書き直しだこんなの」

 

 

 いきなりこんな文書かれたら最早怪文書なので取り合えず紙を取っておく。意見交換からの告白とか、美少女ゲーかよオラァン。

 

 

 「それにまあ、好ましくとか遠回しをせずとも、ファンです。とか、選手として尊敬していますとか直球の方がいいんじゃねえの? 最初の方はいい感じだし、はい。続きから」

 

 

 「わ、分かったわ。えーとじゃあ最初の方がいいから意見交換をしたいと思います。で・・・『なぜなら私もまた勝利を手にしたいですし、貴方を見ているとムンムンしてしまい・・・』」

 

 

 「直球すぎんだろお!!? 告白どころか別の発言に聞こえるわ! ムンムンって何じゃああ!! カノープスのタンホイザかよお前はよぉお!! ドラクエの開発陣営かDBの言葉使いじゃねえんだよぉお! リテイク! リテイクしろ!!」

 

 

 「そんなー!!? 素直な気持ちなのに!?」

 

 

 「それで出てくるのがムンムンってなんだよ!? 書き直しだ書き直し!」

 

 

 くっそ。早速なんかタガとテンションおかしくなってきたわ。ビワハヤヒデ美人だもんなあ。スタイル良し、可愛げあれば郷に入っては郷に従えで下調べもするし、読書家だからアニメやそこら辺関連を親の影響であれこれ知っているジャスタとも話し合うだろうしで、うん。まあそりゃあー色々仲良くなった後のプランに思いを馳せちゃうだろうけどさあ。

 

 

 「分かったわよ・・・じゃあ・・・『なぜなら・・・・貴女が好きだからです』」

 

 

 「見境なしかよぉお!!! 粘菌だってもう少しマシな思考回路しているぞ!!?」

 

 

 「ヒィン!? だってだってええ!! ビワハヤヒデさんとお出かけのためだって考えるとあれこれ感情が出ちゃうんだものー!!」

 

 

 やっぱこいつゴルシに負けないほど濃いわ! アタシの様な普通のウマ娘には無理だぜこりゃあ! オルフェでも一緒にいさせるかマジでナギコ呼ぶべきだったかな。

 

 

 「だからって直球すぎるわ! 昭和の熱血少年の告白かあ!? もうアタシがブライアンやナギコ経由でビワハヤヒデかっぱらってくるから急いで告白しろ! デートしたいんだと赤面したのを録画しながら見守ってやるからなあ!?」

 

 

 「ケイジの意地悪! 絶対ついてる!! この女たらし! ウマ娘たらし!!」

 

 

 「何がだ、何がついとるんじゃおらぁ!! 毎日アタシと一緒に風呂入って、風呂上がりにもゴルシと一緒に抱き着いたりもふもふ、ぱふ〇ふしたりクッションにするくせに!!」

 

 

 「抱き枕にもクッションにもゴルシと一緒にできて最高だもの! いい匂いするもの! 私悪くない! ケイジが悪いの!!」

 

 

 ギャーギャーとまた怒ったというか、変なスイッチ入ったジャスタウェイともみくちゃの大騒ぎ。ほんと、こいつのパワーと瞬発力は瞬間的にはアタシに匹敵するから面倒くせえ! 爆発力はすごいからなあこいつ・・・・

 

 

 ウギギと組み合っている中、ガチャリとドアが開く。

 

 

 「おーいジャスター、ポケモンでいいやつゲットできたし進化するためにちょっと通信交換と、ケイジ、ばと・・・・」

 

 

 「「「あ」」」

 

 

 

 ゴルシがス〇ッチを持ってきてアタシの部屋に来た。で、そこで少しはだけた服に、アタシがジャスタを下に抑えている状態。うん。色々勘違いしちゃう絵面だわこれ。

 

 

 「そんな・・・・・ひどいわジャスタウェイ! 葦毛の子たちならまだしもケイジに浮気しちゃうなんて!! ゴル美の事裏切ったのね!! ひどいわ酷いわぁあー!!」

 

 

 「ああ、待ってゴルシちゃん! そうじゃないの! ケイジが勝手に!!」

 

 

 「ジャスタのおバカ! ケイジ絶対ついてる!!」

 

 

 「お前まで何言っているんだこらぁああ!! 待ちやがれこの不沈艦! 脚はっや!!」

 

 

 泣きながら寮内を爆走していくゴルシを半ば見送りながら呆然とするアタシとジャスタウェイ。そして、ゴルシが逃げた方向と反対側から聞こえてくる足音。

 

 

 「何を騒いでいるんだケイジ! もう夜になる時間だぞ!!」

 

 

 「ちょっとパパ何ノックせずに勝手に入っているのよこのエッチ!!」

 

 

 「ぬぁ!? す、すまないケイジ! 私が悪かった!!」

 

 

 「年頃の娘の部屋に入るなんてプライバシーないわよパパ! 出ていって!」

 

 

 エアグルーヴが怒ってきたのでとりあえず追い返す。よし。

 

 

 「じゃあ追いかけるぞジャスタ。窓を開けてと・・・」

 

 

 「ちょちょっ!? エアグルーヴさんは!? いいの?」

 

 

 「いいのいいの。そろそろ来るし、お前はアタシに巻き込まれたと言っておけ」

 

 

 すぐ戻ってくるエアグルーヴを振り切るために窓を開けていざ寮を抜け出す準備。ジャスタも抱っこして飛び降りる準備はオッケイ。補助のためのカギ縄もばっちり。

 

 

 「はぁ・・・さすがに焦ったか・・・しかし、ケイジのやつもいい女に成長して実った・・・って誰がパパだたわけぇ!! 私はおん・・・・な・・・・は・・・?」

 

 

 愉快な天然のノリツッコミからおそらく激怒して再度部屋に乗り込んだエアグルーヴの声を聴きながら既に部屋を降りて寮から脱走中。

 

 

 「ッ・・・・ケ~イ~~ジィイイイッッッ!!!!? 貴様ぁ!! また何をやらかそうとしているのだあぁああ!!」

 

 

 「ちゃんと今日中に帰ってくるから一時外泊許可でも出しといて~じゃあ、またあとでね銭形のとっつぁーん♪」

 

 

 「私は女だケイジぃ!! ジャスタウェイまで巻き込ん・・・いや、また何かしでかしたか!? 戻ったら覚えておけ!!」

 

 

 窓からギャーギャー騒ぐエアグルーヴを尻目にいざゴルシを追跡。どうせあいつのことだ、追いかけてくると踏んで海辺あたりにでもいて、何かしているだろ!

 

 

 

 

 

 

 「はぁー・・・あー夜の海は冷えるぜ・・・で、やっとおいついたなゴルシぃ・・・・アタシとジャスタはなんもしてねえよ・・・ったく・・・」

 

 

 いつも行きつけ、というかちょこちょこゴルシが出没する釣りスポットに行けばドンピシャでいたゴルシ。で、釣りをしている当たり何処で用意したこいつ。

 

 

 「ゴルシちゃん。ごめんね! ケイジとちょっと手紙やらの事でいろいろ相談していたらああなって」

 

 

 「そうか・・・よかったぁー・・・私のジャスタウェイがとられるかと思ったぜ。マックイーンとか、葦毛好きなのはいいけど、やはりジャスタの本妻は私だぜ!」

 

 

 で、流石はこの二人。ハジケリストゴルシに言うこと直に聞かせて話が出来るジャスタウェイに、なんやかんやゴルシも義侠心に富んだやつだし、頭も滅茶苦茶いいからすぐさま理解して二人とも仲直り完了。早いなあ~

 

 

 

 「ゴルシちゃーん!」

 

 

 「ジャスタウェーイ!!」

 

 

 「はい! そこでカット!! いいねいいねーさすが似合う二人。夜の海でも映える美しさと笑顔が輝いていたよー」

 

 

 二人とも抱き着いたところでメガホンを出してとりあえずカットイン。

 

 

 「じゃ、キスシーンは場面を変えてからゆっくり熱いやつをね。いやーナイスだよ二人とも」

 

 

 「監督こそ、良いシチュだったぜー? なら、ここから一度冒険のシーンを入れて思い返しながら最後に幸せなキスをして終了って感じで」

 

 

 「ふむふむ・・・なら、挿入するBGMはこの感じで・・・ってちがーう! そうじゃない! 絶対今の流れそうじゃないよね!?」

 

 

 サングラスをかけて、ジャンパーを首に緩く下げながらちょうどいいので軽いネタシーン用の映像を録画しながら相談相談。ネタ動画用の素材にいいからね。あと、アグネスデジタルに見せてやるか。二人ともデジタルの推しだったし。

 

 

 「何言っているんだよジャスター。さ、もう帰ろうぜ。コンビニでアタシが飯奢ってやるから」

 

 

 「お、それじゃあカレンチャン一押しの美味しいスイーツが出ているコンビニ近いし、そこでスイーツとお茶、お菓子を食べながら海洋冒険記の編集の続きを」

 

 

 「なんか違う。これ絶対違うよ! はぁー・・・スイーツとお茶はたっぷりもらうからねケイジ?」

 

 

 何はともあれいつものノリに戻ったので三人でコンビに寄りながら寮に戻り、エアグルーヴの隙を突いて自室でお菓子パーティー開催。

 

 

 エアグルーヴにはお菓子を奢ったが怒られて、後で少し反省文書く羽目になったわ。あ、それとビワハヤヒデとジャスタのお出かけは無事成功。互いにナリタブライアンとシゲルスミオのぬいぐるみを交換し合ってウキウキの笑顔で報告に来ているのがほほえましかったなあ。




 普段は割とこんな感じ。エアグルーヴもケイジが真面目なら多分ルドルフと同じくらいに尊敬していると思う。



 ケイジ 世界中を飛び回ってショーをすることも珍しくない。海外の前田ホテルでショーをすることも多く、かなり多忙。子供好きなのもあって今回は奮起。ライブで使う予定だったネタも先行お披露目。作った紙芝居は全20話。怪人への着ぐるみ着脱はマジックや煙幕を利用して合成技術無しでどうにか頑張った様子。


 ゴルシ 子供好き&ケイジやジャスタウェイと思いきりできるということで託児所で元気に遊んでいた。ジャスタウェイの葦毛好きは知っているし、最後にここに戻ればいいやって感じ。でも時折パ・・・ゴル美になる。尚、この後夜中に蝦蛄と珍生物の画像をケイジとジャスタウェイにしこたま送った。


 ジャスタウェイ 文武両道の超のつく優等生。普段は大人しく優しい。が、葦毛と一緒にいるとテンションがおかしくなるし、ゴルシといると壊れ気味&常に絶好調。ケイジも同じく大親友でありよく頼りにする。葦毛のウマ娘は好きだけど本妻はゴルシ。


 スーパークリーク ウマソウルでケイジと騎手に関わる縁でケイジに親近感を覚えているし、甘やかす対象であるがそれ以上に女、甘えたいと思ってもいる。託児所でちょっと催しをしたいなーと話していたらまさかここまでしてくれるとは思わず何度も頭を下げた。


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歴史が壊れるわ

 ※この作品はフィクションであり、実在の人物、団体、事件には一切関係はありません。


 そして、感想の件で粗相をしてしまいまして大変申し訳ありませんでした。今後気を付けていきますゆえ、よろしければこれからもこの作品を見ていただけると幸いです。


 そういえばですが、もし余裕が出来たら、皆様がいいのであればですが、二度目の凱旋門挑戦あたりのウマ娘エピソード、震災が起きた際のケイジのとった行動をしようかと思っております。両さん、冴羽も出てくるかもです。そしてたぶんちょい重め。




 ~アメリカでのナギコ~


 ナギコ『ぬぁああーー!! いくら、いくらクラシック三冠があるからと言っても、ウチ牧場に返さないのは無しでしょ平野ー! ひげ熊!! お風呂、温泉! 暖かいのが欲しいの! ぬるいシャワーだけなのはこりごりなんじゃー!!』


 ビリー「おお!? ナギコちゃん暴れすぎ! 牡馬までビビっているじゃないか。落ち着いておち・・・アッー!!!♂」


 平野「ぬぅ・・・お風呂しばらく入っていないし、この寒さ・・・羽織るものは着せてあげているが、そういうのじゃないんでしょうなあ・・・ってビリー牧場長!?」


 ひげ熊「見事な頭突きでしたなあ・・・うーん・・・そうだなあ・・・サウナというか、それに近いことをしてみるのはどうです?」


 ナギコ『はぁあー・・・せっかくケイジも今頃牧場に帰ってきて、ヒメっちも来て久しぶりの再会にお風呂・・・ぁあー・・・アメリカに来たのに憂鬱なんて―・・・』


 ビリー「元気だなあ。無敗のままGⅠ勝利。3日前にレースをした後の牝馬とは思えない。で、サウナ??」


 ひげ熊「馬房を閉めて、ヒーターをたくさん置いて暖かい中で湯を浴びせてやるんですよ。温室と湯で出来る限りあっためてやって、ヒーターを切りながら身体を拭いて冷えないようにしていくのはどうです?」


 平野「お風呂の心地よさがないのがストレスになっているんだろうし・・・物は試しだ。やってみよう。ナギコ。お風呂なんだがこういうのは・・・・・・・」


 ナギコ『ほうほう・・・おお? 蒸し風呂って程ではないけど、温室でのあったかシャワー? なら許す! でもいつか蒸し風呂入ってみたいな。サウナっていいものらしいとケイジからも聞いているし』


 ビリー「人の言葉を理解しているんだねえ。そしてお風呂好きの美人・・・よし。君のあだ名はしずかちゃんだな」


 ナギコ『ウチ黒髪じゃないしバイオリンを音波兵器にしないし―! もっち美人になってケイジを振り向かせるんだから、ばっちりケアして鍛えてよ!? 代わりに三冠とってくるから!』


 『・・・うぅ・・・いい話じゃないか・・・ウマゴン。誇れる相棒と怖くてもガッシュたちのために戦いを決意してこんなに強くなって・・・』

 

 

 『かっこいいです・・・ただ、名前の方が少しかわいそう・・? 馬の怪獣だからウマゴンって・・・』

 

 

 『サンビームさんいい人ですね。ふふ。これは惚れる女性も出てくるでしょうに』

 

 

 『アニメも、良いものですわね。音量も調整すれば問題ないですし』

 

 

 『だろー? 今後もどんどんかっこいい、いぶし銀の助けをしてメンバーを支えるからなあ。いいもんだぜー』

 

 

 もう1月も半ば。雪解けの速い温泉の近くの放牧エリアで今日はみんなでガッシュのアニメを見ていたんだわぁ。千年前の魔物編あたり。ビクトリーム大好きだし、レイラにパムーン。大好きだなあ。個人的にこの後のファウード? の時に封印されていた時の謎の建造物の正体をキャンチョメが見抜いたときのゾクッとした話の衝撃はすごかったけど、これみんなで見たらパニックにならないよな?

 

 

 「テレビの前に固まってアニメを見る馬かあ・・・ケイジのせいで本当に色々変な事になっているなあ。おーいケイジ、ジャスタウェイ。二人のローテがとりあえず決まったぞー」

 

 

 『漫画も読めるように俺の愛用のトングを・・・お? トモゾウ。それ本当~? おせーておせーてー』

 

 

 『あ、僕もなんだね。どうなるんだろう。ドバイに行くことは決まったけど』

 

 

 トモゾウが人参スティックを俺らの分用意しながら来てくれたので移動し、柵から人参ポリポリ。え? テレビはどうしているかって? 小型発電機を繋いで放牧エリアまで持ってきたんだわ。てか、なんでまた牝馬まで牡馬と一緒にさせているんだ陣営さん。

 

 

 「よしよし。皆人懐っこいし、穏やかでいい子だなあ。ケイジは除いて」

 

 

 『おう柵越えしてからの頭突きの刑を数年ぶりにしてもいいんだぞ? あ、うまーい』

 

 

 「ケイジ、柵越えは雪があるとはいえ駄目だぞ? で、だ。今年もジェベルハッタに挑むが、ケイジはそれだけで、このレースを終えれば結果に関係なく国内に戻って天皇賞(春)に挑みに行く。ジャスタウェイ君は昨年のケイジと同じローテを少しする。つまり、ジェベルハッタを挑んでからのドバイDFに行く形になったそうだ。

 

 

 今の仕上がりならこのローテも行けるだろうというのと、ドバイの方からもケイジ世代がこんなに来るのならぜひドバイミーティングの前からも盛り上げてほしいというお達しでね。代わりに賞金1億上乗せするって」

 

 

 あら。太っ腹。でも、俺はまたドバイに挑めるのか―しかもジャスタウェイと2000メートル以下での距離で激突。面白いじゃないの。しかし、GⅠに上がって早々にジャスタウェイが来てくれるとか絶対未来でみんな喜んでいるぜ。レースの格を上げてくれた名馬だったって。

 

 

 『勝負だね。ケイジ君』

 

 

 『ああ。負けるわけにはいかねえなあ?』

 

 

 『僕だって。今度こそ君に勝って僕もこの時代のライバルの一頭だって見せてやるんだ』

 

 

 『ふふ。熱いのはいいことですが、それでDF前に燃え尽きないようにですよ?』

 

 

 ヴィルシーナちゃんの言う通り。ドバイミーティングは同じ日に世界中の名馬たちが集まって沢山のレースをするぶん注目度が段違い。俺としてはぜひそこでジャスタが快勝してこの時代の怪物の一頭なんだと世界に知れ渡ってほしいからなあ。

 

 

 そんで、ヴィルシーナちゃんらもまたその舞台の一つに挑みに行くんでしょうに。そっちもみっちり鍛えてやるからなぁー?

 

 

 『・・・・・やる気と元気をもらえましたし、少し走るのを付き合いなさいなケイジ。ジャパンカップは貴方に阻まれましたが、シーマクラシックは必ず連覇する! そのためにも練習しますわ! 走るだけでもあなたの技を盗めますもの!』

 

 

 『あ、お兄様私も! もう少し教えてください! そしてなでてください!』

 

 

 『わかった! 分かったから小突くな! トモゾウ! 各陣営のスタッフ呼んでくれや。ちょいと本気で走る。具体的には65%くらいで』

 

 

 「モテモテだなあケイジ。うーん・・・俺ももう少し貯金して余裕出来たら嫁さんさがしたほうがいいのかね。ま、走るのなら調教師さんたち呼んでくるよ。馬と人の視点で調整を見れた方がいいだろうしな」

 

 

 ステップみせてみると流石トモゾウ。すぐに理解してくれて助かるぜ。目指すは世界の舞台に行く。大事なデビュー戦のために力を蓄えるやつらなんだ。大切に。大切にね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『うーん。ヒメ、お前さんの走りだがな。緩急をつけたほうがいい。あと俺の走りを真似しすぎるのもきついな。ヴィルシーナちゃんはちょいと地面をかく力、動きを覚えないといけねえ。あっちの芝は日本よりもちょい重だから』

 

 

 『うーん。ケイジさん達みたいに地面を思いきり蹴り飛ばす感じですよね?』

 

 

 『何でですお兄様? お兄様のコーナリングはすごい凄いと的矢さんたちも絶賛していたのですが』

 

 

 で、早速併せ練習。今回はジェンティルちゃんとジャスタで組ませてジェンティルちゃんがドバイで走る際の技術を教える形にして、俺は俺でヴィルシーナとキジノヒメミコの様子をチェック。幸太郎は狩猟シーズンなので今現在山にいるとか。鹿がたくさんとれたそうで、マタギのおっちゃん肉をお裾分けに来ていたなあ。

 

 

 陣営の皆さん鹿のステーキ好評だったし、購入もしていたっけ。

 

 

 閑話休題。で、まあ二人ともハイレベルなんだがじっくりここしばらく付き合っての指導で見えてきたものがある。

 

 

 『そうそう。どうしたって芝が重い、日本以上に生えているから足を取られる。それを振り切る走り方とパワーが必要になるんだわ。あと遠征で疲れるだろうし、ここで肉とエネルギーをため込んで備えるのがヴィルシーナちゃんの課題。

 

 

 で、ヒメ。お前さんと俺は違うものが多すぎる』

 

 

 『違うもの?』

 

 

 『まず俺とヒメでは足の形が違うから無理に俺の走りをまんまやりすぎると負担がでかい。そしてもう一つだが、身体が仕上がっていない中で俺の技を使うのは大変だ。だから加速はして、コーナーでは少し力を落としながら走るといい。それでもお前はそこいらのやつらに負けない程のコーナリング技術がある』

 

 

 俺の走りの場合コーナーの際は姿勢をちょいと低くして体重と馬力で外に膨らむのを抑え込んでいる部分もあるからなあ。それも出来上がってきたのは2歳の後半になるかどうか。デビューが今年の6月で、体重も450キロあるとはいえ下手に無理させてもなあ。

 

 

 後脚の形が違うのに、少しの誤差ならまだしもヒメの場合はサンデーレベルで脚の形が違う。同じフォームを無理にさせれば今までは馬体の軽さが負担を抑えていたけど今後が怖い。

 

 

 『そうなのですねえ・・・お兄様と同じ技を使えるものかと』

 

 

 『まあまあ、でも俺の技はしっかり覚えているし、その上でそっちに合わせた技術への変化をすればお前さんだけの技になる。今は守破離の内の守は来たし、破の部分だ。長く、しっかり戦えるように技を覚えようぜ?』

 

 

 『はい! 的矢さんにも恩返しをしないとですし、頑張ります!』

 

 

 『麗しい兄妹・・・いや、血筋はないんだっけ? でもいい関係。うーん・・・ケイジさん。もう一度走るのを見せてもらっていいです?』

 

 

 『あいよ。おーいジャスタにジェンティルちゃん。もいっちょ走るのみせるから。お前さんらも横から走りながら見てくれー』

 

 

 この後、皆でわちゃわちゃしたり、走ったりして柔軟性とフォーム矯正に努めていった。お礼にと各陣営から人参貰えて万々歳だ。皆で分けたけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さて・・・お集りの皆さん。今日は本当にお忙しい中来てくれてありがとうございます」

 

 

 そろそろドバイに出立の準備となる中、何やら人が多く集まってきたので気になって俺も窓からひょいと顔を出して話を聞く。休憩の時間だし、トモゾウもそばにいるしで許可もばっちり。

 

 

 集まっているのはムランルージュの皆に、GENBUグループの社長と会長。まあ、スーザンママの息子と奥さんだけど。あとヒメの共同所有権を持つ地元の自動車整備工場の社長阿部さん。藤井親子に社欄のトップ。マタギのおやっさんにビリー牧場長。岡崎さん。

 

 

 見慣れていないとぱっと見何の集まりかわからんけど、間違いなく競馬界に関わっている面々がそろっておやっさんと話している。なんだろうなあ?

 

 

 「まず初めに、タイキシャトルとミホミサトの子が生まれればミホミサトは社爛さんが3億の値段で買い取ってくれることが決まりました。このような小さな牧場にここまでしてくれることに感謝を」

 

 

 ああーそうそう。おふくろ。社爛さんが買い取ったんだよな。で、空いた馬房にミレーネやブラウトちゃんをようやくうちの牧場に入れることが出来る。最初は驚いたけど、日本でも数少ない血統かつサンデーもノーザンも入っていないレベルだし、やっぱりお金や施設でいえば社欄に敵う訳もなく。同時にその力や施設でしっかりお袋を大事にしてくれるだろうし、寂しいけど同時に有難い話でもある。

 

 

 なにせ元は乗馬用だったおふくろが繁殖牝馬として3億の値段がついて、子供たちもうまくいけばかなり稼いでくれることだろう。ここが安宿だとしたら超高級ホテルにずっと住める。確かまだ7才だったはずだし、お母さんとしても末永く、穏やかに過ごしてほしいぜ。

 

 

 「そして、皆様の支援と協力。手回しも相まって欲しかった血統に素質馬。場所も用意できました。有志も集い、後は少し時間をかけてしまいますが、必ず表舞台に出てきてくれることでしょう」

 

 

 はえーまだうちに馬来るの? でも素質馬ってことは牡馬かねえ。ライバル・・・になるころには俺引退してそうだし、俺が引退する際の次の競走馬ってことかね。場所は・・・分場牧場? スタッフも来てくれるんなら幸いだ。

 

 

 ステゴとおふくろ。そしてお袋の子で既に6億近く稼いでいるし、もう一つ冒険するのかしらねえ。

 

 

 「ヘイ、ミスター前田。もったいぶるのもいいが、早く話してくれ。ワクワクしてもう興奮が止まらないよ」

 

 

 「ふふふ・・・いやあー今度はどんなことが起こるのか。休みをもぎ取ってきてよかった」

 

 

 「おおっと失礼。私も心の準備が整いましたので。では・・・・・・皆様にだけ先にお伝えしましょう」

 

 

 「いまここで・・・メジロ牧場を復活させます!」

 

 

 マジかよこのおやっさん・・・・! この時代にメジロの名前がまた競馬界に、しかもレースに出てくるウマたちの中から出てくるのか・・・!? わははははははは!! 最高じゃねえの!!

 

 

 これには皆も一度固まり、そしてすぐさま起動してここが牧場かつ、俺も窓から顔をのぞかせているのを忘れて絶叫と興奮。うるせーよ!

 

 

 「これはいい! メジロの血が出てくれる、牧場が復活だと!? アメリカの仲間に呼びかけて素質馬と芝のステイヤー(2400メートルくらい)の血筋の産駒を用意させて安く売るぞ!」

 

 

 「ビッグニュースやで!? ゴールドシップが暴れているこの時期にメジロの復活! 最高や! でも前田さん。メジロの子たちはどうするんです?」

 

 

 「中国に渡ったメジロアルダン。その産駒でビビッっと来た子を2頭。ノーザンの血をひいている牝馬と、入っていない牡馬の1歳児を用意。あと、タイキとミサトの子に、青森に根付いた地方血統の牝馬とマヤノトップガンでいい子を用意できたのでその子を譲ります。どの子もまだ1~2歳になったばかりでレースに出るのはまだですが・・・・・私の私見ではどの子も素質があると思います。

 

 

 そして、オグリキャップの母の血をひいている子に、エアグルーヴの子どもたち、長距離を得意としている子との組み合わせでいい子を用意できました。中距離もこなせる長距離ステイヤー軍団メジロ家。テイオーの血筋はケイジが復活させた。彼らももう一度、日本を盛り上げるために集まりました。皆で支え、頑張っていきましょう!」

 

 

 ほうほう。素質馬は既に日本や中国で集めてきたし、社爛さん預かっていたのね。しかし・・・何気にあの女帝の子どもの直系に、変幻自在の撃墜王マヤノトップガンの息子。地方の血統でありながらオグリを代表に重賞馬を生み出した名牝の血もこの時代に来るのかあ・・・ノーザンの血をあえて持ってきたのはあれかね。サンデーとノーザン系の相性がよかったし、ステゴ、ディープ産駒の子たちとの組み合わせで再度それを狙えないかって感じかしら。

 

 

 中国じゃあ今ノーザン系が主流だし。ちょいと前の日本と同じ・・・・・・・・・あれぇ? これ、あっちにサンデーの血を放り込んでやればあっちでもスぺちゃんレベルの怪物がたくさん生まれるかも? アジアの競馬レベルガン上げになるかもなあ。

 

 

 なんにせよこれは一大ニュース。母方からとはいえマックイーンの血も入れることが出来るし、母系でメジロ直系の血もいる。牝馬に関して言えばほんとあちこちから集めているし、アメリカのビリー牧場長も社欄も協力して名牝を可能な限りまわしてくれるともいう。

 

 

 なははは。いいじゃんいいじゃん。こういう元気の出るニュースは好きだし、俺もその助けにひと稼ぎしないとだぜ! トモゾウも呆然としていないで。飯食べて、休んでから走りにイクゾー




 いよいよケイジのせいで牧場長もやべーことバンバンし放題。競馬界にとってもあの名門中の名門のノウハウや経験が復活するのでプラスになるという。これもあってケイジ達前田家とメジロ家はウマ娘ワールドでもかなり関りが深いです。


 次回はもしかしたら葦毛組とのウマ娘エピソード。マックイーンとシゲルスミオになるかもです。


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ウマ娘エピソード 10 野球とバイトと

 2012年世代のウマ娘増えてほしいですねえ。


 日本競馬史上最強の牝馬アイちゃん。ここの世界だと前田牧場やその周りででお相手探していそうですよね。ケイジもいればケンタウルスホイミもご近所さんという。そして復活メジロ家はマヤノトップガンの後継者候補とアルダンの有望株かつノーザンの血が入っていない子もいますし。


 ケイジがマジックやらあれこれ多芸な理由ですが、馬時代の奇行や行動が原因でいろいろゲーム側の設定で盛られているバフがあるのと「馬の時代ってあれこれ世話してもらったけど、自分でやりたいことあんまりできなかったし、こうしてできるのなら。思い切りやりたいぜ!」となっていたケイジにヒサトモが知り合いのコネもフル活用してコマンド―部隊も爆竜大佐もドン引きするような苛烈な訓練と習い事のオンパレードを4歳から叩き込まれたせいです。

 ケイジも気合で乗り越えていろいろできるように。ショーのパフォーマンスを覚えたいということでマジック、イリュージョンも覚えました。


 「お待たせしましたお嬢様。シゲルスミオ様。ウミガメのスープとバケット、イセエビと神戸牛のステーキです」

 

 

 「ありがとうよ。さ、スミオちゃん。食べようぜ。今夜はアタシのおごりだ」

 

 

 「ほ、本当にいいのよね・・? じゃあ、いただきまーす♪ あ・・・なにこれ・・・すっごくおいしい!」

 

 

 今日も今日とてウマ娘ライフ。なアタシだが、今回はちょいと親友のために奮発してのホテルでのディナーを満喫している。

 

 

 というのも、目の前で綺麗な葦毛を肩あたりで切りそろえ、おっとりほわほわしたたれ目のナイスバディな美女、もといウマ娘のシゲルスミオちゃんのGⅠ2勝獲得記念のためだ。

 

 

 日本だとシルコレ、ブロコレ扱いだったのだがビリー牧場ちょ・・・じゃない。あちらではアメリカ中央トレセンのトレーナーにしてトレセンへの進学塾のオーナーにアメリカの芝質やコースの走りがいいかもと言われアタシの推薦状を渡してアメリカでスズカと一緒に渡米。あっちでナギコと合流。

 

 

 で、スズカはナギコとアメリカのダート、スミオちゃんは芝のマイル~2400で戦いGⅡ3勝。GⅠ2勝を挙げて無事に帰国。その際に祝いということでアタシが所有権をほとんど握っている前田ホテルの支店の一つの特別展望ルームでのディナーとスイートルームでの休暇をプレゼントしたわけだ。

 

 

 ちなみに重賞勝利したウマ娘の祝いとかならこれらのサービスや値段は安くできるようにしているのでレースで勝った子たちの奮発した祝いの場所としても有名なんだよねここ。その際にサインと写真をくれたらルームサービスもちょい安になったり。それの展示コーナーもあるから結構人が来てくれるんだよなー

 

 

 「はふ・・・にしても、本当に制服でよかったのかなあ・・・? ここ、ドレスコードとか・・・」

 

 

 「いやいや、学生だしこれが一番。それに、アタシとダチのスミオちゃんを馬鹿にするのならアタシが怒るさ。オーナーのな。ささ、肉も茶も、スープも味わおうぜ。このエビもおい・・・かってぇ!」

 

 

 「殻ごと食べちゃだめだよ~うふふ。でも、本当にありがとうケイジちゃん。凄く奇麗だしご飯もおいしいしで、ちょっと大人の気分」

 

 

 ほわほわとほほ笑むその笑顔にこちらも嬉しくなりつつエビの殻をバキバキ食べていく。うん。いいした味と仕込みだな。いいシェフが入ったと料理長喜んでいたけど、もう少し手伝い入れて休みとちょいボーナス入れてあげてもいいかも。

 

 

 実際、一皮むけた。成長できたという印としてアタシらウマ娘ではレースの勝利。特に重賞ともなればそれを感じるし、そのご褒美とステップ達成おめでとうということでこういうのをするのはいいかも。マヤノもアタシに『重賞、GⅠとったらケイジ先輩のホテルで休暇を満喫したいの! その時はサービスしてね?』とおねだりしていたなあー

 

 

 「さてと・・・ま、せっかくだ、このディナーついでにだが、もう一つ何かあれば聞くぜ? GⅠ一つと、GⅡでの勝利の分はここのホテルのスイートルーム食事、このディナーだが、もう一つGⅠ一つ分の勝利のご褒美くれてやらあ」

 

 

 「ん・・・はぁ・・・染みる・・・濃厚・・・・え? ケイジちゃん。それはちょっとやりすぎじゃないの?」

 

 

 「いいんだよこれくらい。アタシらシリウスにもそっちの練習や戦いのデータはいい経験やノウハウの蓄積になったと松ちゃんやおやっさんも言っていたし、ビリーさんもそうだ。こういう時にリーダーのアタシが羽振りよく労わにゃむしろ怒られらぁ」

 

 

 それにまあ、アタシらの世代のなかでも苦労して、怪物世代だが、一つ小ぶりと言われる中で頑張って成績残して帰ってこれたのは真面目にすごい話だからなあ。なんやかんや、アタシの周りというか、チームもそうだが名家、富豪。大財閥関連の人ら多いせいか、金銭感覚ちょいとずれてんだよな世間と。

 

 

 「んー・・・・あ、ならさ。こう・・・短時間でもいいバイトとか、紹介、知っていないかな?」

 

 

 「なんでまた。スミオちゃん、両親ともいい職就いていて、この前のGⅠ勝利でお金はたんまりでしょうに」

 

 

 「そうなんだけど・・・こう、五崎さん・・・・トレーナーさんのプレゼントを用意したくて」

 

 

 金遣いの荒い話も無く、賞金も稼いで金には困っていないだろうにと首をかしげていると出てきた単語に口のなかがイセエビの味に砂糖が混じる。

 

 

 スミオちゃんのトレーナー、シゲルスミオが競走馬だった世界で主戦騎手だった五崎騎手がこちらではトレーナーとしてスミオちゃんを支えているんだが、恋愛しているんだよなあこいつら。そりゃあもうゲロ甘なくらいに熱々のトロトロ。

 

 

 まあねえ、若い男性でおっとり柔和なスタイル良しの美少女と苦楽を共にして、悩みも共有して支えて助けての日々。どっちから歩み寄ってもおかしくはない。トレセン学園そういうカップル多いし。しかしまあ、その用意のためにバイトをしたいと・・・サプライズだろうけど、忙しい中殊勝なこった。

 

 

 「ならここのホテルのレストランのウェイトレスに、お土産とかの販売店のレジ打ちがあるからちょいと打診してみるわ。短時間のやつもできるし、お前さんならプチライブとかの催しも誘うがいいか?」

 

 

 「え? いいの? あの制服もかわいかったし、えへへ・・・」

 

 

 「まだ打診だぞ~? 甘い夢見てやがるなあ。その顔でも送ってやるわ」

 

 

 でまあ、少し忙しくなる時期だからバイトでこういう場所でも人ほしいと言っていた運営を丸投げしているここのトップがいたので、スミオちゃんを紹介してみるかと考えていたらもうにやけ始めているスミオちゃん。いい顔しているわ。

 

 

 「あ、ちょっと!」

 

 

 「ははは。いつもトレーナーの前でそんな顔しているのに今更よ今更。ほれ、飯が冷める前に食べちまおう。これからの数日、じっくり羽伸ばして、骨休めしてくれ」

 

 

 写真を撮って五崎トレーナーに送り、指先でスマホをくるくる回して胸ポケットにしまい食事を再開。その間はさんざのろけ話を聞かされてスイーツ店に行った気分になるほど口の中砂糖だらけになったわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁー・・・」

 

 

 学園の授業が終わった昼下がり。わたくし、メジロマックイーンは少し気落ちしていた。練習は上手くいっているし学業も問題はない。ただ、スイーツの制限が長く続き、そして趣味の野球観戦も、今回は面白いイベントがあったのだがチケットは完売。転売されているものもあったがそういうものには手を出したくないし、信用できない。

 

 

 癒しの二つがことごとく手に入らなかったことが思ったより大きく、皆様の前では努めて隠しているが一人歩いているとどうしても思い出してはため息が出てくる。

 

 

 「おぉーマックちゃん。お疲れぇ~ちょいといい」

 

 

 「キャァアッ!!? あ、貴女はスパイダーマンですのケイジさん!? 驚かせないでくださいまし!」

 

 

 気持ちを切り替えて練習に励もうと思っていた矢先にするすると木の上からさかさまの姿勢でロープを握ってぶら下がってきたケイジさんに驚かされる。

 

 

 ゴールドシップさんがライバルと公言し、彼女とのレースにおいては練習も手を抜かないほどやる気にさせる。ルドルフ会長を越えた学園トップのスター。日本のウマ娘で今まで一度も手にできなかった凱旋門賞制覇と国民栄誉賞も授与したこともあり間違いなく我が国の宝であり最高のアスリートなのだが、普段からこうして関わるとその気持ち以上にツッコみたくなる気持ちが強い。

 

 

 「ん? なにいっているんだ。これくらいは常識常識。そうでないとマックちゃんもこの先ビッグボスと一緒にミッションをこなせないぞ?」

 

 

 「ビッグボスって誰ですのよ!? そんなロープワークと降下技術を磨く場所に行く機会なんてあってたまるものですか! で、呼びかけたのはどうしたんですケイジさん」

 

 

 「大丈夫大丈夫。割と近くにあるから。おおーそうだそうだ。えーと・・・この日空いていないかねえ。ちょいとこの日の野球のイベントのチケット貰ったんだが、知り合いにもどうぞって言われてなあ。1枚余ったんだが、確かマックちゃん野球好きだったろ?」

 

 

 頭からぶら下がっている状態からクルンと体を回して地面に着地したケイジさんはジャージのファスナーを下ろし胸の谷間からスマホを取り出してカレンダーを見せる。くぅ・・・何ですのよこのスタイルの良さ・・・腰回りがわたくしよりも太いけどくびれているし、胸に至っては驚異の115・・・うぅ・・・同じ学生ですのにこの格差は・・・

 

 

 なんだかもう色々気持ちに疲れが強くなるけども見てみれば、その空いている日というのがちょうどわたくしがチケットを取れなかった野球のイベントの日。思わず目が点になり、画面に食らいつく。

 

 

 「こ、この日のチケットが手に入ったんですの!?」

 

 

 「そうそう。どうだ? だめならほかのやつにでも配るが」

 

 

 「い、行きますわ。ええ。是非とも! 必ず行かせてもらいます!」

 

 

 「おうさ。じゃ、一応予定あいたのが確認出来たら今夜アタシの部屋に来てくれ。チケット渡すから」

 

 

 何度確認しても間違いなく欲しかったチケット、見たかったイベントの日であることに思わず舞い上がりそうになりつつ、ケイジさんの笑顔につられて笑顔になっていく。

 

 

 これは急いでトレーナーさんに相談して休みをもぎ取る。爺やに車を回してもらうべきで・・・いえ、車は目立つのやめましょう。

 

 

 「ははは。いやーここまで喜んでくれるのなら渡し甲斐があるっても・・・」

 

 

 「お! ケイジみっけー! よっしゃあー!! これでシンデレラは私のものだぜ!」

 

 

 「あっ、見つかった! くっそシンデレラになるのは私のもの! ヒロインは譲らないわよー!! じゃあなマックちゃん! 後で会おうぜ!」

 

 

 なにやらかくれんぼ? 缶蹴り? をしていたらしいケイジさんとゴールドシップさん。走っていくゴールドシップさんを追いかけながら手を振ってわたくしに微笑むケイジさんを見おくる。

 

 

 「相変わらず嵐のような方ですわね・・・・」

 

 

 とりあえず、練習に行こう。そう思い直して移動する最中。高い音と共に空を舞う空き缶を見て今日はゴールドシップさんは練習に来るのかと少し不安になりましたわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はははは。プラチナチケットかつあれこれ貰えるサービス付とはなあ。感謝だぜこりゃあ」

 

 

 「ええ。っふふ♪ 限定グッズにユタカのサイン付きユニフォーム・・・もう、最高の日ですわ」

 

 

 そしてやってきたホームラン競争イベント。このイベントは日本の球団のクリーンナップレベルがそろい、一定の投球数内でホームラン数を競い、一位を決めるイベント。普段の送りバントやヒットで場を掻きまわす、変化球を織り交ぜた戦術の妙もまた野球の醍醐味ですが、こういう豪快かつ場を沸かせてひっくり返すホームランをたくさん見れるというのも面白いもの。

 

 

 見たかったイベントに、しかも掲示板のすぐ近くゆえにホームランボールまで手に入るチャンス圏内の場所かつ様々なサービスのついた特別チケット。1枚何千円もする、倍率も高いこれを手にできたのには感謝しかない。

 

 

 「そういえばさー今回はやけにマックちゃんはりきっていたけど、今日のイベントは何か違うの?」

 

 

 「ああ、それでしたら今回はビクトリーズのユタカ選手と、ゴジラーズから蓮選手と国光選手が来たのが話題でして。特に蓮選手はバントとバスターの名手ですが、バスターで飛ばす距離が普通のそれではないのでフルスイングしたらどれほどになるのかと期待が」

 

 

 「なるほど。確かにあの剛速球や変化球を読んで正確なバント、ボールを捉える能力でフルスイングしたらどうなるか。ってかんじね」

 

 

 気楽にのんびりとしているケイジさんを横目で見つつ、本当にこの一族に我がメジロ家はどれほど助けられているのかと思う。

 

 

 前田家。ケイジさんの曾祖母にしてシリウスの原型を作り、ルドルフ会長を越えた器と言われたクリフジと互角に切り結んだヒサトモさん。祖母は最強の戦士の称号を貰い、長く超えるべき目標でい続けたシンザンさん。母は二冠ウマ娘であり時代最強の一角ミホシンザンさん。そしてケイジさん。誰もがクラシックを一つ以上手にしており時代を作った最強の一族。ミホシンザンさんの妹のミホミサトさんはレースに興味がないと言って経営の方にすぐさま関わり業績をたたき出したバリバリのキャリアウーマン。

 

 

 メジロに負けないほどの功績を持ちながら本人たちはウマ娘業界で仕事をせずに旅館、ホテル、警備会社を運営する一方、ヒサトモさんやセントライトさんらの時代、知り合いの関わりもあって多くのウマ娘たちに警察や自衛隊に口利きをしたこともあり警察も無視できない程の発言力もある。

 

 

 我がメジロ家がウマ娘のレース界隈から経済を動かしているのなら、前田家はそのウマ娘がレースを引退して尚力の有り余る子たちの職場を用意している。そして、我がメジロ家も火山の噴火に大震災が重なった時、多くの工場や関わっている会社が大打撃、倒産となってしまい……困窮極まる中になんと2兆円という大金をポンと渡し、無利子でいいからと言って前田家の人員も回してあっという間にメジロ家を立て直し、新事業でも成功を収める結果に。

 

 

 方々への借金やあれこれを返し終え、ようやく前田家に返す目処がついたということでアサマおばあ様が前田家にお礼と返済の話をしに行けば、ちょうど前田家の皆で焼き芋を焼いており、その火種に使っていたのが、何とメジロ家に貸した2兆円の借用証書!

 

 

 急いでアサマおばあ様が止めようとするも時既に遅し。借用証書は燃え滓になっていたらしく、前田家の方々はといえば、「もうこれで借金はチャラでいいでしょ」。「今後の新事業で盛り返せるし、こちらのポケットマネー、今までの貯金やちょっとしたへそくりだから会社の運営にも問題なし」。そう言ってメジロ家の借金返済&新事業成功、軌道に乗った祝いだとおばあ様もその場で焼き芋パーティーに巻き込まれたりとで。何とも言えない顔で帰ってきた。

 

 

 『我がメジロ家は私は愚か、娘の代ですらも返せないほどの大恩を貰いました。マックイーン。貴女もいずれメジロの後を継ぐのなら、前田家への感謝と敬意。そして、前田家に何かあった時はメジロ家の総力を挙げて助けなさい。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・そして、ええ・・・彼女たちは破天荒ばかりですので、そこは気をつけるように』

 

 

 そういって、いつもの威厳溢れるおばあ様の顔ではなく、苦労に疲労、そしてどこか懐かしそうに微笑む顔は忘れることが出来ないでしょうね。きっと。昔からヒサトモさんやシンザンさんに振り回されていたそうですし、きっと昔からこんな感じだったはず。

 

 

 「おおー・・・ユタカさんすげえなあー・・・お! 国光選手くるぞ。いやーしかし、こういう派手なイベントもあって野球は幅広いねえ」

 

 

 「そうでしょう? わたくしもライアンからの影響ですが本当にいい息抜きですわ」

 

 

 「まーレースばかりの日々じゃあ疲れちまうからな。弓だって弦を常に張り詰めちゃあ弦が弛むし、弓も弱る。こういう別のものでリフレッシュは大事よ大事。しかし、ビクトリーズとゴジラーズがチームの総合打率で互角なんだなあ」

 

 

 横でジュースをすすりつつもスマホや本でイベントに参加している選手とチームを調べて楽しそうにしているケイジさんもそんな前田家の最高傑作と言われるほどの功績や行動を示し続けている。彼女と深い関りを家ぐるみで持てることは嬉しいと同時に彼女らを支える存在にわたくしはなれるよう頑張らないといけない。

 

 

 「そうですわねえ。やはりですがここ最近入団して早速成果を上げているゴジラーズの二枚看板の蓮選手と国光選手の存在が大きいですわ。蓮選手のとんでもない打率と、出塁した蓮選手を返す国光選手の大砲ぶり。蓮選手に気を向けてしまえば国光選手がボールをスタンドに運び、国光選手に気を向け過ぎれば蓮選手が盗塁していつのまにやら2,3塁にいて得点圏内に。ビクトリーズに来てほしい人材ですわよ」

 

 

 

 「はははは。ドラフト会議でもみんな狙っていたからねえ。鉄壁守備のいぶし銀と容赦なしの大砲かつエリア51所持。お? ホームランこっち来るな。ユタカ選手飛ばすなあ」

 

 

 「え、え!? い、急いでグローブを・・・」

 

 

 「はい、グローブ」

 

 

 「あ、ありが・・・ボクシンググローブじゃありませんわ!!」

 

 

 「にゃにおぉう? ソフトボールの由来の一つに関わる由緒あるグローブだろうが!」

 

 

 「今野球のイベント! そしてボールキャッチできませんわよー!! ボールをパンチングしてどうしますのよ!!? キャッチ&リリースどころかパンチ&リリースとか前代未聞ですわ!!」

 

 

 ギャーギャー話していればいつの間にやら大きくカーブを描いて落ちてくるボールがわたくしたちの前に迫ってきた。ユタカ選手のホームランボール! 欲しい! そしてあわよくば家に飾りたい!

 

 

 ようやく持ってきたグローブをもって立ち上がると文字通り目の上に落ちてくるボール。

 

 

 それをキャッチして、恐る恐る見てみれば確かにわたくしのグローブにボールがある。ホームラン大会とはいえ、この広い球場の中で手にできた。ユタカ選手のボール・・・やりましたわ!

 

 

 「おお、やったじゃん。確か今回ホームランボールはゲット出来たら後でサイン書いてもらえるそうだし、良いもの貰えたなあ」

 

 

 「ええ・・・これはもう、わたくしの宝物ですわ。ってまた来た!?」

 

 

 「おっと! 今度は蓮かあ・・・あれ? 何気に決勝まで残っているってやべえなあ。今度は国光・・・おいもう一発来たぞ」

 

 

 写真撮影もできるようですし、サインボールにサイン入りユニフォームに、うふふふ・・・これは永久保存。なんて思っていたらバカスカ飛んでくるボールをケイジさんが素手でキャッチ。

 

 

 最終的には国光選手が1位。ユタカ選手が2位。蓮選手は3位になりましたわ。うーん。これはまた、蓮選手がここまでやるなんてという声も多数でしたし、本当普段のボールを捉える技術とあの体格を生かしたパワーはメジャーでもいい線行きそうです。

 

 

 

 

 

 『今日はマックイーンさんが来ているのを見つけたので、ぜひファンである彼女に僕のホームランボールを渡したいなって頑張って狙っていました。いやあ、ケイジさんから連絡来てもうやる気が限界突破したからこそ、この結果を後押ししてくれた部分もあるかもしれません』

 

 

 『いやはや、どうにか2位までは入れて嬉しい限りですよ。ですが、来年こそは1位を狙いたいですね。先輩としてまだまだ頑張れるんだぞぉというのを見せたいですし、僕も勝ちたいですから』

 

 

 『ケイジは僕と野球をしてくれて、教えてくれた人です。彼女に試合ではないですが初のホームランボールを渡せたのは幸いですし、そして、彼女が世界最高レベルのウマ娘になれたのなら、僕も世界最高レベルの野球選手として負けないよう今後も精進していきたいです』

 

 

 

 ホームラン大会も終わり、3位までのインタビューでまさかの国光選手からのわたくしのファンであるという公言を貰い、顔を真っ赤にしつつもありがとうございますと此方もマイクパフォーマンスで答えたり。ケイジは蓮選手と幼馴染ということがわかったり、蓮選手のインタビューに『ならすぐにそのレベルにならねえとアタシはもっと先に行っちゃうぞ~? 女は成長も早ければウマ娘のアタシは脚も早いからな♪』と返すわでこう・・・まさかわたくしたちまでこのイベントの一幕にガッツリかかわるとは・・・

 

 

 ま、まあこれはこれでいい思い出になるでしょうし、ええ。有難いことですわ。例え後日ゴールドシップさんに散々からかわれる未来が見えていたとしても。




 シゲルスミオはウマ娘世界ではケイジの魔改造と人脈を生かして本人も努力してなんやかんや大勝利。トレーナーラブ勢です。外見ですがアクション対魔忍の 氷室玲奈 をイメージしてくれれば。

 マックイーンと野球観戦ついでに前田家の概要解説回。本職が警察官じゃないのに警察に顔が利くというのはミス・マープルを思い出していました。一族が大体こんななのにレースを引退したら旅館、ホテル経営に行くせいで前田家の名前はレースでもあんまりでない。逆に出る際は大体怪物、天才レベルが出てくるともっぱら言われている。


 ケイジ 親友にプレゼントをしたり、友人にチケットプレゼントしたりあれこれサービスしていた。ホテルの展示室にはサインとサインを書いたウマ娘の写真。主な勝利レースをが展示されている。野球のチケットは蓮からもらった。


 シゲルスミオ この世界ではシリウスメンバーと頑張ってトレーナーと無事GⅠレース、GⅡレース勝利。この後トレーナーとウマぴょいする。ケイジとはチームが違うが仲良しで親の仕事で互いに関わることも多い。


 マックイーン やきうのおウマさん。国光選手とユタカ選手のサイン入りユニフォームとボール。写真もゲットできた。真面目に前田家への恩を返すにはどうしたものかと悩む。ケイジのステイヤーとしての才能や足の使い方の変化による芝質の対応を盗もうと頑張っている。


 蓮 プロ野球選手として2年目。打率3割8分。盗塁成功率9割。100メートル走10秒2 セカンドにボールが飛べば大体とれる。ケイジと小学校のころからキャッチボールやトレーニングを一緒に頑張って無事プロとして成長中。ケイジに負けないスポーツ選手として頑張ってやると啖呵を切って見せ、ケイジも受けて立つと宣言。


 国光 この世界ではプロ野球選手として蓮と二枚看板。高いホームラン成功率と外野の守備範囲の広さに定評あり。マックイーンが大好きでいつか告白したい。そのために現在ウマ娘のことやレース、その歴史などを蓮と一緒に勉強中。蓮とはゴルシとケイジのような仲。


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2014年レース始動 ジェベルハッタ(GⅠ)

 誤字報告、高評価、感想、いつもありがとうございます。本当に各時間がない故に走り書き気味になるのでああいう見事な訂正は助かります。


 毎日12~14時間労働は辛いっす・・・繁忙期とはいえ限度がある。


 皆様どうか来年も良い年を。そして、ハジケリスト世代だろ! をどうぞこれからも応援よろしくお願いします。





 ~ドバイに行く前に~


 ケイジ『よしよし。今日もきれいだなあここの神社は』


 ジャスタウェイ『ほえー趣ある、いい場所だねえ・・・ここに僕たちの神様がいるの?』


 ケイジ『そうそう。俺らを守ってくれる観音様と神様のいる社だ。初の遠征だし、一つお参りしてゲン担ぎと安全祈願をな?』


 利褌「よし。口も足も洗ったね。ささ、行こうか。お賽銭は・・・お金と・・・人参とリンゴ、バナナの詰め合わせを・・・よし」


 ジャスタウェイ『頭を下げて神様に願えばいいんだよね?』


 ケイジ『そうそう。今挨拶と話を聞いてくれるためのお賽銭はおやっさんが入れてくれたから、ジャスタウェイもぜひ願っちゃいな』


 ジャスタウェイ『ありがとうケイジ君。利褌さん。・・・・・(どうか、ドバイで勝って、皆と並ぶ強さになれますように)』


 ケイジ『(ジャスタもライバルたちもみんな万全でレースに臨んで、無事でありますように。そして、話を聞いてくだすってありがとうございます)』


 利褌「・・・・・・よし。それじゃあ行こうか。いよいよ二度目のドバイと、ジャスタウェイの初海外遠征。此方の経験で助けていきつつ頑張ろう」


 『御久しブリーフ。ってことで出合い頭のハリセンビンタよ!』

 

 

 『いきなりおじさんにハリセンかました―!? どうみたってすごい身分の人なのにいいのケイジ君!?』

 

 

 どうも皆さんおはこんばんちは。ジャスタウェイと一緒にこれまた牝馬の皆さんより先んじてドバイにつきましたケイジとジャスタ。

 

 

 そんで早々に王族の皆さん来たのでご挨拶のハリセンでの脳天へのツッコミを披露。スパーンといい音が鳴ったぜ。

 

 

 で、まああちらもそれをむしろ来いよ! と構えていたので笑顔を見せて俺らを撫でてくれた。あーそこそこ・・・

 

 

 『ええ・・・なんでこの人たち嬉しがっているの?』

 

 

 『ある意味お笑いの恒例行事みたいなものだから。あ、これお土産のサイン入り法被と扇子です』

 

 

 で、まあ毎度の挨拶をテキのおやっさんと利褌のおやっさんが話しつつ、用意していたお土産。ドバイ、もといアラブ語字幕編集した年末の俺ら世代、その親たちの歴史や激闘、血のバトンを解説、紹介した年末特番のDVDと騎手たちの対談番組。

 

 

 そんでまたまた志村さんからもらいましたドリフターズのサイン入り法被とバカ殿で使用したサイン入り扇子。これらを渡してのんびりゆったり。

 

 

 『ほうほう・・・おおージェベルハッタそのまま賞金上がったままで行けそうなんだねえ。これならドバイミーティングのステップレース、トライアルのノリに近い感じでありつつも賞金も稼げる。賞金も名誉も、次の勝利も見込める大レース。いいねいいね』

 

 

 『あーケイジ君暴れたせいで、かなり名馬たちが集まってくれそうなんだ。ゲン担ぎかつ賞金も狙えるとなればそうなるよねえ』

 

 

 で、聞いているとジェベルハッタ。GⅠレースにグレードアップして早々に俺が走り、20年近く更新されなかったワールドレコード更新。そんで後で俺凱旋門賞を取る&ワールドレコードまた更新。というのもあって運営側も各陣営もここを縁起のいい、名馬たちが成長する場所と考えてここに挑もうとする人が増えそうだとか何とか。

 

 

 今年は俺もいれば、更にはドバイシーマクラシック制覇のジェンティルちゃんを破ったジャスタウェイも来るとあって客入りもかなり見込めそうらしい。景気のいい話は聞いていて耳が心地いい。そんで秘書さんも周りも俺らの土産に興奮している。志村さん直筆だもんなーしかも実際に番組で使ったものだし。

 

 

 『そんなレースに挑むのは俺とジャスタだ。今回も勝って賞金かっさらいに行かないとなあー』

 

 

 『勝つのは僕だよケイジ君。いや、むしろここは勝たないといけない。君とまた適正距離内でぶつかれるチャンスなんだから』

 

 

 『上等だ。ま、今はのんびり疲れを抜けよ? 飛行機の移動は慣れないだろうし』

 

 

 『あー・・・うん。そうだねえ・・・何でケイジ君元気なの? 普通にアニメを見て、読書して、空の景色を松風さんと一緒に眺めていたり・・・』

 

 

 そこは人間の感性の方が馬の本能を凌駕しちゃっているからなあ俺・・・ま、そのせいでただでさえ心臓がでかい分セクレタリアトとか言われているのにキンチェムかよとか言われる始末だが。ふざけんじゃねーよ! 直系の子うちの牧場にいる上に俺既に3敗以上はしているんだぞ! 無敗のキンチェム大先輩に及びすらしねえわ! あと親友は猫じゃなくて犬だし。

 

 

 ちなみに幸太郎は今回もうしばらくうちの牧場で調整をしている牝馬メンバーの手伝いとして過ごしている。バイト代は毎日のご飯とお風呂。マタギのおっちゃんに少しの御駄賃だとか。おっちゃんとしては狩猟シーズン過ぎても駆除隊にもいるし狩りや依頼を受けて動くんだが、やはり狩りのシーズン直後はシカやイノシシは少ない。

 

 

 その間も運動させてくれることが助かると言っていたし、互いにいい関係だねえ。

 

 

 『今年も護衛と警備、設備は全部いいもの回してくれるってよジャスタ。人は多いがみんないい人だし、顔見知りも多いから何かあれば俺に聞け。初の海外遠征に、うちの牧場で鍛えもしたんだ。いい結果を残そうぜ!』

 

 

 『うん! いやー海外のにんじんの味、楽しみだなあ』

 

 

 水は多分日本がいいかもだけどね。利褌のおやっさん水をトラック単位で王族の皆さんにプレゼントしていたし。後緑茶の茶葉ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「久しぶりのプールだが、すっかり泳ぎがうまくなったなあケイジ。水をかく動きがいい。足首も鍛えてきたな?」

 

 

 「ひひーん」

 

 

 『温水プール楽しいぜー♪ そして正解。砂浜や雪のなかで柔らかい場所を蹴る動きをしていたら覚えてなあ。鍛えてようやくここまでこれた。まあ、馬の水泳レースとかあっても出ないけど』

 

 

 そんで、温水を用意してくれたプールで久しぶりにテキのおやっさんと真由美ちゃんも一緒にプール調教。おやっさん。蓮君が二年生になればすぐレギュラー確定というのもあってうっきうき。『プロを目指すと言っているが厳しい世界。今のうちに思いきり力をつけて悔いのないよう挑んでほしい』と言っていたが、頭のなかぜってえプロになった蓮君を想像しているぜ。

 

 

 「うふふ。ケイジ君は本当に元気だね♪ 暖かい場所で休んで、無理なく過ごそうかあ。今日は飼い葉多めがいい?」

 

 

 「うーん。ケイジもいい感じだが、こいつ遠征疲れや減量がない分太りやすいものなあ。飼い葉を多めにしつつ、飼料を減らすか。真由美ちゃん。代わりにリンゴとかまだストックあったよね?」

 

 

 「もちろんですテキ。ケイジ君沢山食べるから、私も多めに買っています」

 

 

 おお―有難い。今日はのんびりもしゃもしゃしたい気分だったし、真由美ちゃんも俺の気分を分かってきてくれて有難いなあ。そして。女としてもまあ奇麗になっていく。恋が女を磨いたかあ。そして愛が実ればいいけども・・・リンゴ買いすぎちゃあだめだぞ? 女の子は色々物入りだってわかるし、激務している分稼いだ分は自分に使いなさいや。

 

 

 テキのおやっさんもそう言っているのだが『推しのケイジ君で、且つ稼ぎ頭を労いたい私の気持ちですので問題ないです!』と可愛く鼻息荒く言う真由美ちゃんに押されていた。もう24? くらいだが、可愛いなあー美人でスタイルも凄いいいし、くっそー松ちゃん羨ましいぜ。早く幸せになりなさいよお二人さん。

 

 

 「しかし・・・今回はどのような作戦で行くか・・・あのジャスタウェイ相手でしかも彼らの距離だ。追い込みで行けばかつてのハーツとディープのように逃げ切られて終わりもあり得る」

 

 

 「NHKマイル、日本ダービーでもケイジ君相手に食らいつけていましたし、大逃げも見ている分対応もできるでしょう。かといって幻影逃げではあの爆発力に一気に振り切られる・・・うぅーん・・・」

 

 

 で、話の話題になるのは今回の俺の最大の壁になるであろうジャスタウェイ。そうなんだよなあージャスタの親父さんの血が濃いジャスタ相手にそれは難しいし、先行よりの幻惑逃げではすでにジェンティルちゃんが天皇賞(秋)であの大外からの爆発力で振り切られた。

 

 

 距離が長ければ俺のスタミナと加速力が生きてくるのだが、2000メートル以下での爆発力は間違いなくあちらが上手。しかもゴルシからも情報を得ているだろうしそもそも俺が牧場で技術教えているからなあ。まず化けている大物を更に強化したようなもんだ。キレる手札もどれも通じるか怪しい。

 

 

 追い込みは逃げ切られてしまいかねない。幻惑逃げではヨーいドンの勝負であちらに加速力が分があるしスタミナすりつぶすにも距離が短い。

 

 

 ・・・・・・・・大逃げかねえ。

 

 

 「松風君は大逃げでやって爆発力を少しでもすり減らしてケイジのスタミナに賭けていくのがいいと言っていた。少しでも体調を維持しながら減量。大逃げの負担を減らせるようにいくほかないか」

 

 

 『だねえ。それに、ほかのライバルたちもまた油断できねえ。そちらさんも対応するなら不慣れな大逃げで磨り潰すのがベターだろ』

 

 

 「はい・・・あ、ちなみに目標重量は?」

 

 

 「マイナス1~2キロかな。減らしすぎても逆に駄目だし、少し軽い。そう感じてくれれば万々歳だ」

 

 

 「改めて、海外遠征して減量を目指すうちって一体・・・・?」

 

 

 「・・・ケイジが特殊なんだ。こいつはもう競走馬だが私は軍馬か戦馬、どこかでキンチェムの血をひいてきていると思えてしまう」

 

 

 『おやっさん。あんたもか』

 

 

 いやまあ、ゴルシとか遠征少ししたらすごい体重落ちたりしたし、今回はジャスタも少し体重落ちたみたいだけどさ。胃薬のお世話になったことすらないもんなあー俺。

 

 

 そんなこんなで、ヘルシーに穏やか減量とレースの相談をしながらプール調教をしていましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 (※現地のアナウンサーさんです)『さあー皆様! 今年もこの季節がやってきました! ドバイミーティングの前に行われるGⅠレースジェベルハッタ! 今回も世界中から多くの名馬たちが、ホースマンたちが我こそ栄冠をつかんで見せると。ドバイミーティングも取ってやると気炎を燃やして参戦!

 

 

 しかししかし! 今年もそれを狙う有力候補が日本から二頭もやってきました!』

 

 

 あっという間に時間は過ぎてやってきましたジェベルハッタ。賞金が増えたこともあってこれは美味い! ぜひともやってやるぜと言わんばかりにレベルがぐんと上がっている。多くの名馬たちの紹介を終え、いよいよ俺たちのお披露目。

 

 

 『まずは14番ケイジ! 馬体重は650キロジャスト! 今回はマイナス2キロの馬体重となりました。昨年の制覇から何とKGⅥ&QES、凱旋門賞、ジャパンカップを手にしGⅠ制覇数10勝以上を上げた怪物! 今年もドバイに参戦!』

 

 

 『おおーすげえ歓声だぜ。今年は多いなあ。オーストラリア? にアメリカ、フランスにドイツ、イギリスにイタリアと世界中から人も来ているなあ。国旗の模様が入ったシャツがあって分かりやすい』

 

 

 「ケイジちゃぁーん!! 応援しているわよぉーう! ジャスタウェイちゃんと一緒に頑張って!」

 

 

 あれー? フランスで見たオカマさん。ここにも来ていたのねえ。結構裕福な方なのかしら。

 

 

 

 『そしてそして! 昨年のドバイシーマクラシックを制覇した日本の牝馬三冠馬ジェンティルドンナを昨年破った同期のライバルも今回来てくれました! 15番ジャスタウェイ!! 馬体重はマイナス3キロ。しかしその毛並みや動きからして調整は文句なしでしょう。傾奇者とどう戦うか注目です!』

 

 

 ジャスタウェイの紹介にフランスかな? の皆さんからの歓声がすげえことに。海外でも銀魂人気なんですねえ。嬉しい。嬉しい。ライバルであり親友が応援されている光景はやっぱ元気をもらえる。

 

 

 『さーて・・・賞金たしか1億7000万。そしてGⅠ制覇をして松ちゃんを連覇ジョッキーにしてやるぜ・・・負けねえからな? ジャスタ』

 

 

 『2400以上で君を相手すれば確実に僕がもたない。だけど、この距離では負けたくない。マイルとダービーの借りもここで返すために、勝つからねケイジ君!』

 

 

 互いに戦意を燃やした目で一瞥してからゆったりゲートへ移動中。うーん。やっぱ・・・ゆったりした時間もいいけど、こういうひりつく時間もいいと思うあたり、俺の本能は馬の闘争心が強く出ているなあ。

 

 

 「久しぶりだねケイジ。ライバルも多い中だが頑張ろう。無事に勝って、天皇賞へいざ鎌倉だ」

 

 

 『おうさ! 目指せナンバーワン! 中距離?マイル?のここも勝って、ステイヤーとしても今年で改めて実力を見せるためにも勝つぞ!』

 

 

 「しかし、テキとも話したが、あの爆発力一つでケイジの手札を二つも捨て札にさせていく判断をさせてしまうあの加速力・・・本当に厄介だ」

 

 

 『それなーある意味ではサンデー、ハーツの切れ味をばっちり受け継いだ、サンデー一族らしいともいえるが、あれはちょいと厄介ってレベルじゃねえ。真面目に距離を絞ればラスボスよラスボス』

 

 

 

 まあ、同時にこれが世界に挑む、大レースに挑む者たちがもつ武器であり、それを活かしているからこそ勝てる。その勝利も重いものになるわけだしなあ。

 

 

 ジェベルハッタ。数年後にはどれほどの格になっているか楽しみだぜ。

 

 

 さてさて、そんなこんなでゲート入り。変顔? 奇行? 今回はキャンセルだ。そういう気分じゃないのよん。日本で見せるかもだからこうご期待ってね。

 

 

 『全頭ゲート入り完了しました・・・・・・スタートしました! まずはケイジが先頭を奪ってそのまま独走! 世界を取った大逃げを、昨年ここを制覇した大逃げをまたもや披露! 二番手にソースナイス、三番手にクッキーベリー、四番手にジャスタウェイがケイジから3馬身程離れて馬群の先頭集団を形成。今回もまたハイペースなレース展開となっていきそうです』

 

 

 スタートダッシュは問題なし。ジャスタは先行集団の・・・・中ほどか。内にもよっていないが外でもない。ダービーもいけるスタミナはあるし、あちらとしては及第点の滑り出しって感じか。

 

 

 こちらはいつもながらいい感じ。場所どりもここは何度か走った分大丈夫だし、順調順調。

 

 

 『第一コーナーをカーブして依然先頭はケイジ。パプワ、タスマニアバードも叩いて先頭を狙い馬群の先頭集団はタスマニアバード、続いてソースナイス、三番手は少し上がってジャスタウェイ。ほぼ真横にクッキーベリーとなっております。ケイジとの差は5馬身。それを維持しながら進む形となりました』

 

 

 んー・・・俺の加速、速度とレースの距離を鑑みて・・・ややくらいついている感じかな? 俺の戦いを研究しているだろうし、今回はみんなスタミナ重視の最後の少し前からハイペースなたたき合いをするかもしれないなあ。確か今回のレース、多くの馬たちがステイヤーの血を持っているみたいだし。

 

 

 日本でもここらへんで7馬身つけられるのもあるし・・・早仕掛け、どうするかねえ。最初はチョロチョロ中ぱっぱは米炊きのやり方だっけ? 早仕掛けはするが、直線への体力とパワーの比率残しておくか。

 

 

 『さあいよいよレースも半ば! ケイジ一人1000メートルを通過。タイムは57秒2 相変わらずのハイペースに観客も驚き、そして瞬きすらもったいないとレースに食らいつくように見ております! そして仕掛けてきた! 松風騎手の鞭が一つ飛ぶ! ここからが本番だと言わんばかりのケイジの動きにほかの馬たちも速度を上げていきます!』

 

 

 ちっ、やっぱみんな対応していくか。コーナー前での加速は遠心力に引っ張られて膨らむが・・・それよりも俺を野放しにできないと踏んでいるなこりゃあ。

 

 

 そして・・・まあ、そうなるよなあ。お前さんらの祖父の持つ技を教えたんだ。血のつながりも相まってそりゃあこうなるわ・・・・ジャスタウェイ!

 

 

 『第三コーナーから第四コーナーで移るなか馬群を抜け出したのはジャスタウェイ! とんでもない加速で早仕掛けをしていたケイジにあっという間に食らいつく! あの最強の皇女を倒した爆発力を何とコーナーから披露するという凄まじい戦いぶりだ!

 

 

 ソースナイスも粘るが足が鈍い、いやコーナーでの加速が距離を伸ばしてしまう! 後ろからマリネーヌ、サイダーミントが追い込みを仕掛けるが既にケイジとジャスタウェイは最終直線に乗り込んだ! 二頭のたたき合いに誰も付いてこれない!!』

 

 

 『連覇がかかっているんだ! 譲らねえ! 御前さんが相手でもだ!』

 

 

 『僕もだ! ・・・・・・・シルバーコレクター、二番手だの言われて・・・悔しかった! でも誇りたい! 自分でいいたい! 見せつけたい! 僕だって君たちの世代であり! 頂点の君たちに並ぶ・・・ライバルなんだって!! だから勝利は貰うよ・・・ケイジ!!』

 

 

 マジかよ・・・7馬身つけたリードさえも埋めていくのか、その上で俺を越すような加速をしていくのかよ・・・!! 改めて、いや、牧場でも何度も見た動きを見て分かっていたがまざまざと見せつけられていく。

 

 

 ジェンティルちゃんを、あの覚醒した最強格を大外からぶん回して勝つあの派手な戦いぶり。俺よりスタミナがないが、あのとんでもない瞬発力と勝負根性で勝ってしまうその強さ・・・納得してしまう。こいつはまさしく世界最強格。その一頭だ!

 

 

 『それでもだ・・・! 御前さんくらいやばいライバルだからこそ勝利が欲しい! 松ちゃんのためにも・・・連覇を貰うんじゃい!』

 

 

 『負けない! 君にも、皆にも並んでやる! そのためのもう一勝・・・取ってやるぞおお!!』

 

 

 『ジャスタウェイ抜けた! ケイジを引き離していざ先頭! 1馬身の差をつけてゴォオーーーールッッッ!! ケイジの連覇を阻んだのは同じく日本馬にして同期のライバルジャスタウェイ! 何ということでしょう! 昨年ドバイミーティングでコンビ制覇をしたケイジ、ジェンティルドンナを日本で、そしてここドバイでも下したジャスタウェイ! この世代の日本馬にまた最強格が名乗りを上げる! タイムも何と1分43秒2! 昨年のジェベルハッタでケイジが出したタイムと同じタイム! そしてワールドレコードにコンマ1秒迫る好タイム! これは文句なし!!

 

 

 見事だジャスタウェイ! おめでとうジャスタウェイ! 君もまた世界最高候補だ!』

 

 

 くっそぉ・・・・負けちまったかあ・・・先にゴールされてしまって俺は二番・・・海外戦勝率100%も、ジェベルハッタ連覇。その称号を松ちゃんにあげるのも消えちまった・・・・・・・

 

 

 ま、しょうがねえや。ジャスタウェイ相手なら納得だし、悔しいが、ダチ公の勝利と見事な賞賛を受けているのが自分のことのように誇らしい。いやはや、ディープもかつてハーツに負けた時はこんな感じだったのかね? 今度予約入ったそうだし、一つ聞いてみるか。グラスのじーさんも来ているといいなあ。

 

 

 松ちゃんには負けたことを謝っておくとして、とりあえずジャスタウェイのもとにポコポコ。

 

 

 『おめでとうジャスタウェイ! いやーとんでもねえ加速でぶった切られちまったぜ。流石、世界最強への名乗りを上げたな!』

 

 

 『ありがとうケイジ君! これで胸を張ってドバイDFにもしっかり挑めるよ!』

 

 

 『ああ・・・必ず勝ってこいジャスタウェイ! もう一度あっちでも勝って、この勝利はまぐれじゃない! 御前もまた最高の戦士なんだって見せつけてきてくれ! 俺はここでは見れないが・・・日本で応援しているからよ! いやーははっは。こいつはゴルシにもいい土産話が出来たぜ』

 

 

 『もちろんさ。みんな大レースを勝ってきている。もう一度勝ってくるし、皆に笑顔でいてほしいしね』

 

 

 いいこと言うねえジャスタ。気持ちのいいやつだぜ。俺も満足したのでゆったり移動。おめでとうジャスタウェイ。お前さんもまた最高のライバルだ。




 ジャスタウェイは真面目にお父さんの強さを引き継いだうえで強化した覚醒をしましたよねえ。


 疲れがやばすぎる・・・ほんと、きついわぁ。


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ちょっとしょんぼり。だけど嬉しい

 ケイジ「新年。あけまして・・・おめでとうございます(CV若本様)昨年はこの作品の多くのご愛顧、高評価、感想。誤字訂正感謝します。本年もどうかこの作品をよろしくお願いします」


 ナギコ「ウチもそろそろ三冠に挑むし、お年玉に支援絵くれてもいいんだよー?(チラッチラッ)」


 キジノヒメミコ「私は・・・お兄様の引退後くらいですし、のんびりとお兄様たちの戦いをこれからものんびり見てくだされば幸いです」


 ケイジ「お正月でのんびりできる人も、忙しい人にも少しでものんびり楽しめれば幸いだぜ」



 ケイジ、前回は流石にへこんだけどライバルを賞賛。あれですねポケモン剣盾のダンデみたいな感じです。一瞬の中に多くの感情を抱えたけど、すぐに自分が認めたライバルであり勝者を称える感じ。少し引きずりますがすぐに切り替えます。

 ・・・・・割と相性良さそうですねケイジと剣盾のメンバー。ただしあの頭わいせつ物コンビは除く。絶対ケイジ爆笑した後に行動に切れ散らかして蹴りに行く。


 『今度は僕の番だ! 僕が制覇して世界に見せつける!』

 

 

 『ジャスタウェイ速い速い! あまりの速さに周りの馬たちがついていけない、いや、時の流れが歪んでいると思えるほどの末脚を見事炸裂! ジャスタウェイゴール! タイムはなんと! なんとぉおお!!!? 1分40秒1!!!! なんということだ! あのケイジの出したレコードを3秒も更新ッッ!! これがジャスタウェイ! ジェベルハッタでケイジを下したその強さを更に磨き上げての大金星です!!』

 

 

 『どうだい! ワールドレコードもゲット! 僕もこれでレコードホルダーだー!!』

 

 

 

 

 

 『連覇を逃がし、宝塚では負けた・・・でも、ここでも負けるほどわたくしは衰えても、なまってもいませんわ!! もう一度ここからリスタート! そのためにもそこをどきなさい!! 邪魔ですわ!』

 

 

 『ジェンティルドンナ鬼気迫るほどの走りに牡馬も牝馬も驚くほどだ! その矢のごとき鋭く速い走りに差は広がる! 日本最強牝馬が再びその輝きと末脚を世界に見せつける! これが最強! これが日本最強の皇女の走りだ! ジェンティルドンナ世界初のドバイシーマクラシックを連覇! 怪物的名馬に並ぶ功績を見ごともぎ取ったぁああ!』

 

 

 『ふぅー・・・さすがにここを逃がしてはあの牧場にも、ケイジにも面目が立ちませんもの・・・そして、私が目指す目標にも・・・さて・・・次はどこで戦うのか、あとで厩務員さんに聞きませんと』

 

 

 

 

 

 『コーナリングが必要ないのはありがたいですね・・・思いきり前だけに脚をつぎ込める!』

 

 

 『ヴィルシーナの速度が更にあがる! 多くの優駿を振り切ってその速度は伸びる伸びる! これはもう勝負あったか!? 二番手とのリード実に2馬身! さらにじりじりとその差が広がる! 追いすがることすら許さない。これが頂点の名を冠するものだ! 日本最強世代の一頭だ! ヴィルシーナ見事ゴール!! このスプリント戦線も見事征しましたぁ!!』

 

 

 『ふぁー・・・スプリントは本当にあっという間です・・・とにかく勝ててよかったですし、教えてもらったケイジさん、キジノヒメミコさんたちにも胸を張って報告できますね。よかったぁ・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ケイジとその世代について語るスレ 221~

 

 

 

 

 21:名無しの競馬おじさん

 

 ジャスタウェイドバイDFでケイジのレコードを3秒更新、ジェンティルドンナドバイシーマクラシック連覇。そしてヴィルシーナはアルクォズスプリント制覇で1200~2200のGⅠ制覇・・・やばすぎるだろこの世代!!

 

 

 22:名無しの競馬おじさん

 

 ジャスタウェイ、ジェンティルドンナに関しては国際評価は既にエルコンドルパサーを越えているどころか、アメリカダート界の魔王シュガーポッドやセクレタリアトに近いレベルだし、ランキングもトップ5入り確実だとか

 

 

 23:いつもの実況のおっさん

 

 もっと言えば、親子でのドバイDF制覇であり、ジェベルハッタではまさしく父親を思い起こさせる大物食い。ジャスタウェイのこの二つの勝利は限りなく重いぜ

 

 

 

 24:名無しの競馬おじさん

 

 そしてジェンティルドンナはドバイシーマクラシック初。世界でも初めてここのレースを連覇した牝馬として名乗りを上げたし・・・真面目にこのメンバーに常に先着、勝利していたケイジにそれを何度も倒しているゴルシ。食らいついてきてスプリントでも結果を出したヴィルシーナ。このメンバー、引退後も種牡馬、繁殖牝馬として引く手数多でしょ。

 

 

 25:名無しの競馬おじさん

 

 確かケイジに関しては血統ゆえの気性難やあまりに突然変異ゆえにケイジの馬体を引き継ぎすぎても足元不安がある。とかあれこれ理由をつけて800万くらいでスタートしたいと言っていたよなあ。・・・・・・・無敗の四冠&欧州二冠、ワールドレコード今回ジャスタウェイに更新されたとはいえ中距離から長距離でそれぞれ持っている。2歳のころとはいえ重賞スプリントでも2馬身以上つけている怪物があの値段ってリーズナブルすぎんでしょ。

 

 

 26:名無しの競馬おじさん

 

 ディープの種付け料スタートよりも確か400万も安いうえに、ノーザンの血も薄ければパーソロンというほぼほぼいない血統。受けも広ければもしノーザンの血のクロスも入ればアサマ、ルドルフの等の様な名馬の面影も狙えるかもだし・・・それに、確かどこぞの総帥殿がステゴとテイオーの一族はニックスを見込めるって話があったし、面白そうだよなあ。

 

 

 27:名無しの競馬おじさん

 

 ステゴ、ステマ配合に加えてケイジの子どもや、ステゴの子どもとケイジのニックスを狙えるとかあの馬も伝説すぎるなあ。すでに多くの名馬を送り出しているってのに。そこにゴルシやジャスタ、そしてケイジも並んで、名牝候補にもヴィルシーナにジェンティルドンナ・・・夢が広がる。エアグルーヴの再来になるかなあ。

 

 

 28:名無しの競馬おじさん

 

 ただ、ケイジの種牡馬入りに関しては安くしても嫌がる人、反対の声もそれなりにあるみたいだねえ。

 

 

 29:名無しの競馬おじさん

 

 え? どういうこと?

 

 

 30:名無しの競馬おじさん

 

 いや、ルドルフもGⅠ馬はテイオーしか出ていないし、そのテイオーの子どももケイジ以外は気性難で騙馬になり、GⅠ戦線でも今一つ。何頭もの名馬を生み出してきた今の種牡馬たちに比べると一族の種牡馬としての実績があれだし、その・・ロマンに走って潰れるの嫌だなあって意見があるんだって。

 

 

 31:いつもの実況のおっさん

 

 なるほど。それもまたわかる意見だな。だが、正直な話、俺はケイジの功績と、たとえ一頭だけとはいえ親子三代ダービー、ジャパンカップ制覇。そして凱旋門賞を取った名馬の才能を遺伝できないかと試さないのはもったいないし、正直な話、前か後かに名馬を狙いやすいかの違いだと思うぜ。

 

 

 32:名無しの競馬おじさん

 

 ええ・・・パーソロンだってそもそも成果なしの種牡馬だったけど日本で成功したし、ノーザンテーストもGⅠ勝利は一つのみ。それを踏まえても親子三代日本最高峰のGⅠ制覇やGⅠ勝利数二桁到達の怪物の種付け料があの値段なら試すべきだと思うけども・・・

 

 それとおっさん殿。前か後に名馬を狙いやすいというのは?

 

 

 33:名無しの競馬おじさん

 

 俺も気になる。ぜひぜひ教授してくれ

 

 

 34:いつもの実況のおっさん

 

 任されたぜ。じゃ、まずケイジをつけずに今の時代の名種牡馬たち・・・アグネスタキオンにディープインパクト、キングカメハメハ、ステイゴールド、そしてグラスワンダー、クロフネたちにつけた場合だな。

 

 このメンバーたちの場合は多くがサンデーの血をひいている上に大体が孫かひ孫。そうでない馬たちも種牡馬入りした時代がもう前なのもあって多くの子たちが血をひいている。ゆえに受けは狭まってくるし、いずれは親戚同士とのクロスとなる。そこでサンデーとディープ、あるいはその子供世代らの血のクロスで奇跡の血量を狙える。

 

 

 いわゆるインブリードの一つであり、まあ、やろうと思えばサンデー系とキンカメ、グラス、クロフネを更にのせる子を次に送り出せるだろう。

 

 

 何せ多くのGⅠ馬を生み出した子たちだ。確率でいえば安パイレベル。

 

 

 34:名無しの競馬おじさん

 

 でもなあ・・・いや、実際にそのほうが生産者としてはいいかもだが、今の時点でその子供だらけで似たような血統ゆえに離れた競馬ファンも多ければ、俺としてはエルコンのように早く天へと旅立ってほしくはない。

 

 

 35:名無しの競馬おじさん

 

 エルコンの血統も親戚同士だったしなあ・・・インブリードはまさしく名馬を生み出すための確かな技術だし、その歴史と研究には敬意を払うべきものだからあまり悪く言う気はないけど、やりすぎても未来がないというか、ロマンがなくなるというか。

 

 

 36:いつもの実況のおっさん

 

 そう。インブリードになってしまうことが一つの問題。名馬を多く出してきたインブリードだが、やはりそれによる体の不調も出てきやすくなるし、不受胎しやすい体質になるかもという声も多い、何より、下手にサンデー系でインブリードをすぐに選んでしまうと、次の子どもたち、あるいは自分の繁殖のお相手がすぐに狭まってしまう。先の6頭のうち半分はサンデーの子どもであり、いざ彼らの血が欲しいとなっても手元にはサンデー系だけとなればお手上げだぜ。

 

 

 で、次にケイジを先につけた場合だが、確かにあの一族は今の所1頭づつしか産駒で大きな成績を上げた子を生み出していない。テイオー産駒、あるいはルドルフの気性難を隔世遺伝、あるいはどこかで顔を出してしまって大暴れしたら大変だし、あの成績とはいえ値段は少し高く、血統からしても反対の声も正解だ。

 

 

 37:いつもの実況のおっさん

 

 ただ、先ほどの名馬たちもやはり多くは重賞馬を生み出せたのも種付けした数の内の一握りだし、あの成績をひっさげたケイジの才能、そうでなくてもシンザン系、あるいはルドルフ。父母どちらの血が出ても中距離、長距離何方も戦える強さが狙える。何より、次がある。

 

 

 今や日本競馬界でほとんどの馬たちに入っているサンデーの血筋を薄めつつパーソロンの血を入れることができ、子供たちも先ほどの名牡馬、あるいはその子供たちとの交配が試せる。それこそすべての名馬の系譜からな。

 

 

 そうなればやはり限られた数の種牡馬とのみの組み合わせ以外の可能性も試せるし、海外遠征も増えてきた今日この頃。そこにあった血統の子も選びやすい。日本で売れなくても海外のセリや馬産関係者に売りやすくもなるし、長い目で見ても、次世代の馬たちの事を考えてもケイジを挟んでみるというのは悪くはないと思うぜ。前にするか後にするかも今はサンデーの血が入っていない馬がいるのが助かる。

 

 

 38:名無しの競馬おじさん

 

 なるほど・・・そういえば、トーセンジョーダンにケンタウルスホイミもサンデーの血が入っていないし、ノーザン系もホイミはない。先にこちらの子を手にして、次にケイジ、そしてグラスからのサンデー系につけるということもできるし、全員中距離で結果を見せた子だからバリバリの中距離、それこそクラシックディスタンスも狙える。

 

 

 血筋でいえばこのメンバーを挟めば奇跡の血量も狙えるし、サンデー系だとしてもいい。そしてゴルシたちの子が欲しい時にも少し時間をかけるけども狙える・・・うん。やっぱケイジはいたほうがいいなこれ。

 

 

 39:名無しの競馬おじさん

 

 真面目な話選択肢は多い方がいいよねえ。反対という声も分かるが、やっぱ俺はケイジに種牡馬としても頑張ってほしい。あんなに突然変異だし、種の方も凄いことになっているかもだし。

 

 

 40:名無しの競馬おじさん

 

 それに、血統という意味でもヒサトモの血も入っているし、日本初の牝馬によるダービー制覇を成した怪物。あの血も繋いで今に届けてほしいよ。

 

 

 41:名無しの競馬おじさん

 

 改めてケイジの血統って日本ダービーと本当に因縁というか、関係が深いなあ。ケイジと2012年世代の牝馬や、ライバルの子たちとの産駒・・・見てみたい! でもケイジのレースも見ていたい。

 

 

 42:いつもの実況のおっさん

 

 そこがまた競馬の楽しみであり、ワクワクとジレンマだなあ。そんなケイジと、最大のライバルゴルシの激突先は天皇賞。千代田区のさる御方たちも見に来てくださるそうだし、皆、財布の用意はしっかりとな。

 

 

 43:名無しの競馬おじさん

 

 検疫もぼちぼち終わっているし、調整も問題なし、前田牧場の関係者のSNSからも元気な姿が見れるし、楽しみだわKG対決二度目の長距離戦。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『いやーやっぱ、あんたさんの娘はすごいなあ。世界初の大偉業を打ち立てちまったぜ。親越えしたんじゃないの?』

 

 

 『だねえーなんだか、嬉しいし、わがことのように喜んじゃうよ。ありがとうケイジ君。ふふふ。ここでの温泉も楽しいし、いい気分だよ』

 

 

 ドバイミーティングも無事俺の同期メンバー全員が勝利を飾り世界最強世代とも銘打たれた新聞が飛んだりしたのを見ながら過ごしつつ、俺もジェベルハッタ遠征後の検疫が終わってのんびり牧場でもうしばらくだけ放牧中。

 

 

 今日はやってきたお客さんをもてなしているのだが、そのお客さんが天翔ける衝撃。日本競馬界でも5指に入るほどの強さと種牡馬としての実績を残している怪物ディープインパクト。予約入っていたのはこの前見ていたが、いやーまさかこうして放牧地でのんびりできるとはね。

 

 

 『君には感謝しているんだよケイジ君。僕に乗ってくれた大竹さんに栄冠を、そして、僕の娘のパートナーとしても支えてあの大成果。ここの温泉もいいしご飯も美味しい。人も優しいしで、あったかい・・・ふわぁ・・・』

 

 

 『タケちゃんは色々予想外の展開だったがなーそして親父さん。娘さんをもらうにはまだ俺引退してねえよぉー? あら。眠いか。もっと暖かい場所に行く?』

 

 

 『大丈夫大丈夫。ここも十分暖かいし、確かグラスさんがタンポポと野菜食べているはずだから』

 

 

 『俺の育てたタンポポ、鑑賞してから嬉しそうに食べるんだよなあ。農家の喜びをここで知るとは』

 

 

 でまあ、こうして話せばなんだが、俺も基本喧嘩や威嚇はしないし、ボスだと威張る気も無い。ディープも基本のんびりおっとりの優しい馬なので互いにほわほわと日差しを浴びながらのんびりしている次第だ。種牡馬生活での激務を癒すために毎日温泉に何度か入り、一緒にマンガ鑑賞をして命の洗濯の日々。俺も次の激闘に備えての休みだし、良い時間よ。

 

 

 『しかし、しばらくここで種牡馬のお仕事するんだっけ? 大変だよなあそちらさんも。無理なく過ごしてな? 確か、オーナーさんから許可もらって知り合いの牧場特製のキャラメルやミルクキャンディー定期的に上げるってよ』

 

 

 『え!? あの美味しいのくれるの!? ここの温泉と、牧草の心地よさも凄いのに・・・おぉー・・・来てよかったあ・・・うんうん。無理せず頑張るよぉ』

 

 

 『兄貴ー! グラスじーちゃんがまたレースの話してくれるって!』

 

 

 『うぉっふ。こらこら。俺にタックルしてもお前さんがケガするだけだぞ。そんで了解。行こうぜディープ。そちらと同じくサンデー産駒最高傑作にしてグラスのじーさんのライバルの話が聞けるぞ』

 

 

 日差しを浴びながら過ごしていたら尾花栗毛の仔馬が俺にタックルしてきた。その子はタイキシャトルとミホミサトの子どもで幼名はジャック。

 

 

 こいつもまた素質馬で、普通は生まれた仔馬は立ち上がるのに1時間はかかるんだが、20分で立ち上がるということで度肝をぬかしやがった。で、早速柵越えをするわこの短期間でヒメのやつ読書を教えたせいで人の文字がわかるという魔改造の結果。なんかやべーやつ扱いされることに。新メジロ牧場にこの子は行くのだが、いやー早く来てくれというラブコールがすげえのなんの。

 

 

 あのマイルの皇帝タイキシャトルの後継種牡馬になるとみんな言うし、俺、アメリカに行ったステゴとおふくろの子に続く牝系からシンザン系を残してくれるやもと皆ワクワクしているし、俺も休みの中で走りの技術を教えて、なんでか懐かれて、来ていたグラスのじーさんもあのタイキさんの子どもと聞いて技術を伝承。

 

 

 ディープもいいよーということで教えてくれたので色々成長しているし、将来が楽しみだ。

 

 

 『おおー楽しみだなあ。大竹さんも何度も話していた黄金世代。その話がまた聞けるなんて。何か持っていったほうがいいかな?』

 

 

 『そこに生えているタンポポでも持っていってあげれば喜ぶんじゃない?』

 

 

 いやー俺もまたあれこれ聞かないとなあ。ゴルシ、フェノーメノ対策練りつつ、上手くやれるようにしないと。




 ケイジの影響でトンデモ具合が増した2012年クラシック世代代表格。もう周りはこのメンバーだけでやってくれ状態。


 ジャスタウェイとジェンティルドンナ世界的な偉業を打ち立てる。ヴィルシーナもこいつやべえなという功績を打ち立ててええ・・・? 何この世代。こいつらクラシックの時にバチバチにやり合っていたのと海外記者ドン引きされたり。


 タイキシャトルの後継種牡馬候補登場。やっぱりケイジ達のせいで魔改造&来ていた伝説たちの薫陶を受けてさらに倍率ドン。レベル5トレーニングってレベルじゃねーぞ。ジャックの好きな本はキン肉マン。


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ウマ娘エピソード 11 黄金屋

 休めるうちに話しをかく。正直どれほど休みがあるのか・・・


 今回真面目にふざけまくっております。ご了承ください。そしてディープも出すとしたらどんな話にしようかなあ。あちらも名家かつ、ディープ、ジェンティル姉妹という感じで最強格という感じですし、前田家とも仕事やあれこれでのかかわりは深い感じに考えているので。



 「あり? もうソースの予備がねーじゃん。マジかよー・・・」

 

 

 「本当。うーん。聖蹄祭近いし、メニューの味の確認もしないとだし」

 

 

 「どうしたんですか? お二人とも」

 

 

 練習が早めに終わったあと、私、スペシャルウィークがスピカの部室に戻ると、備え付けの冷蔵庫の中身を見ているゴールドシップさんとジャスタウェイさんの姿が。

 

 

 この冷蔵庫、普段は沖野トレーナーさんが私達への差し入れ、練習中に飲むためのスポーツドリンクなど以外にもゴールドシップさんたちがよくやっている屋台。そのための食材や調味料の保管場所としても使われている。でも、今日は何か浮かない様子みたいです。どうしたのでしょうか?

 

 

 「おースぺ。いやなあ。聖蹄祭で今回はケイジ達シリウスと屋台を二つやることになったろ? そのための商品の味見と仕込みのためのソースや調味料を見ていたんだが、数が少なくてなあ」

 

 

 「できれば今週中に最低でも味見とケイジと打ち合わせしたいし、仕込みまでは難しそうねって話していたの」

 

 

 「ああー・・お三方の焼きそばにお好み焼き・・・おいしいですものね・・・ー・・・」

 

 

 いわゆる中央トレセン学園の学園祭である聖蹄祭。そこでスピカは祭り運営の経験がないので基本ゴールドシップさんの屋台が主だったのだが、今年はシリウスと合同で大きな屋台をやってみることにした。

 

 

 基本祭りで一番人気と言えばリギルのメイド、執事喫茶などが老若男女を問わず人気なのだが、シリウスの屋台の場合基本味一筋勝負ということで例年2位、最低でも3位以上をキープする名店として人気を集めている。そして、何よりシリウスとスピカの先輩方は世界最強格と名高いメンバーぞろいかつ美人。今年は1位を見込めると意気込んでいるし、その味の上手さは普段からよく屋台にお世話になっている私も行けると思う程です。

 

 

 「打ち合わせのためにもいろんなメニューの味見をしたりしないと品目の選出できないしなあー・・・・あージャスタ。ケイジに連絡してくれねえか? 今度の休みに食材買い足しに行こうって。スぺ。お前さんもよければ荷物持ちしないか? 代わりにアイツらの飯分けるし、上手くいけば前田ホテルのランチ券もらえるかもだぞ」

 

 

 「それ暗にケイジにランチ券用意しておけってことでしょ・・・・もう。私は連絡ついでに頼んでおくし、スぺちゃんもよければ一緒に来ます?」

 

 

 「え? いいんですか!?」

 

 

 「荷物持ちはありがたいし、それにウマ娘視点の意見も欲しいからなあ。ある意味スぺは私らの屋台は他の皆に比べると食べている期間が短い分、まだ出していないメニューの味見も適役なんだ」

 

 

 「是非是非! 荷物持ち頑張ります!」

 

 

 思わぬ提案にお腹が鳴りそうな感覚を抑えつつ首を縦に振りまくってしまう。あの世界でも有名なホテル、旅館チェーンであり、料理も有名な前田ホテルのランチ券、それでなくても超神田寿司からも太鼓判を押されるケイジさんの料理をできたてで、新メニューまで味わえるとなればもう頷くほかない。

 

 

 「あ、ケイジも大丈夫みたい。ゴルシちゃん。スぺちゃんもよろしくね?」

 

 

 「使い倒して腹減らしてやるから、覚悟しておけよー?」

 

 

 「もちろんです! 農業で鍛えたパワー、お見せします!」

 

 

 ふふふ―どちらに転んでも楽しみだなあ・・・高級ホテルのランチ・・・あの世界最強格のケイジさんの手料理・・・・よだれが出そうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おー来たかお三方。元気そうじゃあねえの♪」

 

 

 「よおじいさんにケイジ。そりゃあゴルシちゃんだぜ。元気バリバリよ!」

 

 

 「執事さんもお世話になります。車まで回していただいて」

 

 

 「あ、ケイジさん! この前はサインありがとうございました! そして、今日もよろしくお願いします」

 

 

 さてさて、とりあえず今日は基本的な食材はこの業務用も取り扱っている超大型デパートで先に爺やたちでうちの屋敷に運んでもらい、それとは別で試食用の食材はスぺちゃんやアタシらで買うということで話がついていざヨコセヨデパートに突撃。

 

 

 スぺちゃんも来てくれたし、試食と荷物持ちやってくれるのが嬉しいねえ。

 

 

 「よっしゃ、それじゃあまずスぺちゃんは爺やの手伝いしてくれや。腰いわさねえように助けてやってくれ」

 

 

 「で、私とジャスタはケイジと一緒に食品、調味料のチェックだな」

 

 

 「新メニュー、とりあえず二つ出して、もう一つはおまけにするんだっけ。ふふ。それの用意ねえ」

 

 

 「スぺちゃんは爺やたちの車に食材運んだらアタシらと合流。ついでにだが、屋台の衣装とか簡素なものだがそれも見たいしな。ねじり鉢巻きとか、簡単な小物一つでも雰囲気は出せる」

 

 

 聖蹄祭は結構学園からも予算出してもらえるんだよなあ。毎年黒字を出しているのもあるけど、アタシらウマ娘、中央で戦うメンバーは特に日本はおろか、世界でも戦い、魅了するアイドルでありアスリート。そんなメンバーの学園祭となれば学園側も力を入れるし、ウマ娘側からしてもファン獲得のチャンスでもある。どちらも力を入れる分、アタシらシリウスも、ゴルシたちも気合を入れるのは当然だ。

 

 

 ある意味じゃあ普段あまり長く触れあえないファンの皆とも近い距離で接することが出来るチャンスだもんな。素顔を知って新しい一面を触れてもらうためにも頑張らないとだぜ。

 

 

 「そういうわけで、一度解散!」

 

 

 ゴルシの号令の下、アタシらは一般のコーナー、スぺちゃんと爺やたちは業務用の大型コーナーに移動。さてさて・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 巨大食品コーナーについたケイジとゴルシちゃんと私。新商品を試しつつ、やはりウマ娘の私達、多く食べたいなということになり、いろいろ買うためにケイジに今日の特売を見てもらっている最中。

 

 

 「さあ。今日は特売日! 朝市での特売の食材は・・・特売品は・・・・あったぜ! ジャスタウェイ126円だ!」

 

 

 「なんでよ!? ってかふりかけのジャスタウェイに私の写真を乗せないでよー!! 何で違和感なくコラしてんの!?」

 

 

 早速だ! 早速ケイジがハジケていった。どうやってスマホに見えるサイトの情報と画像をいじって変えたのかわからないが。私の画像の下に値段が張られている。・・・・私と同じ名前のメーカーのふりかけの部分に。

 

 

 「あーっははははははは!! かやく大量にゲットだぜ! これはお買い時! 屋台のミニ弁当に、焼きそばの隠し味に使えるぞ。勝利だわ! アタシ買い物戦争に勝利したのよぉお!!」

 

 

 「いいやぁああー!!? 私をカートに載せないで! もっていかないでーー!!? 売り物じゃないの! ジャスタ売り物じゃないのよぉお!!」

 

 

 「渡さない!」

 

 

 「にょわー!!」

 

 

 早速私をカートに入れてレジに爆走し始めたケイジ。それを止めるようにゴルシちゃんがカートを止めた後に上にぶん投げ回してカートは華麗に着地。ケイジはカートに振り回されて飛んでいくも綺麗に1着のポーズで着地を決め、そして私はゴルシちゃんに受け止められてからまた再度カートに乗せられてしまう。

 

 

 「このジャスタウェイは私がもらったー! 嫁にもらってそのまま秋の京都の旅行に行くんだ~~!!」

 

 

 「いいのゴルシちゃん! 私を貰ってちょうだい! そしてまず泊まるホテルは・・・」

 

 

 「なあにを騒いでいるんだ貴様らぁあー!!」

 

 

 「「「ぬわーーーーっ!!」」」

 

 

 そしてゴルシちゃんにお嫁にもらわれそうになったところでエアグルーヴ先輩によって全員車田飛びを決めてしまう。あれ? 何でこんなところに? ってああ。今日はリギルも休日ですしね。

 

 

 「お、エアグルーヴ。元気しているかあ?」

 

 

 「早速その元気が貴様らで余分に使いそうだがな! デパートでこんな騒ぎをするな! はぁ・・・せっかくの買い物の日、良い掃除道具を見つけたというに・・・」

 

 

 「あらやだ奥様。そうなんですの? まあー景気も良ければ家族仲もいい。いい話ですわ」

 

 

 「うふふ。そうでしょー? ケイジちゃんの所もいつも愉快な話を先生からも聞けてもう楽しくなっちゃうわ。あの子ったらこの前にちょっとドジをしちゃって」

 

 

 「お母さま!? 何を話していたのです!!?」

 

 

 でまあ、早速ケイジはエアグルーヴのお母さんと談話を交わしていた。いつの間にか割烹着とパーマを効かせたコメディマンガのおばちゃんスタイルで。

 

 

 「おっと。屋台の調味料の買い物まだだったな。はい。これエアグルーヴとリギル皆での集合写真。プレゼントオぉ~♪ じゃ、エアグルーヴにおばちゃんもまったなー♪ 今度の聖蹄祭に来たらサービスするぜー?」

 

 

 「いつの間にそれを貴様がもっているのだケイジぃぃい! お母さまも大事にカバンにしまわないでください!? ああ、まて! まだ話は・・・!」

 

 

 「さてとーケイジ、今回買うソースだけどよ、塩麹以外でちょいとこれも・・・・」

 

 

 「魚醤? ああーなるほどね。なら、お好み焼きも用意するか。ジャスタ―甘味の方は何を用意する?」

 

 

 「んー・・・リギルの方が執事喫茶で、ほかもチュロスとかオシャレなお菓子ばかりでしょ? 土産にもし易くて、お手軽。箱に入れて油とかから守れる大福、まんじゅうがいいかなって私は思うけども」

 

 

 「ふふふ。ほらほら、私たちもまだ買い物はあるし、また今度にしてあげなさい。次は掃除道具や小道具専門店。お母さんの買い物にも付き合ってちょうだい」

 

 

 エアグルーヴ先輩とお母さんの二人に手を振りつつ私たちも買い物を開始。一応、プランは決まっているんだけど、それ以外でも思いついたものの材料は購入しておき、皆で試食をして、どれがいいかと決めていくために候補は多めだ。

 

 

 楽しい楽しい買い物の時間。ポイントカードもどれくらい貯まるか楽しみよ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よいしょっと・・・・えーと。これで全部ですが、本当に私、一緒に行かなくていいのですか?」

 

 

 「ほっほっほ。大丈夫ですよ。屋敷に戻れば若いのがいますし、そちらに手伝ってもらいますゆえに。それよりもスペシャルウィーク様もお嬢様たちと一緒ではなくこの老骨と一緒に荷物を運んでくださりありがとうございます」

 

 

 「いえいえそんな! むしろこういう手伝いをしてこそですし、こちらこそありがとうございます!」

 

 

 ケイジさんたちと別れてから業務用の焼きそば麺にフライドポテト、お好み焼き用の粉、餅粉などなどを大量に買い込んで、いつものリムジンではなくワンボックスカーに満載していく作業が終わりました。

 

 

 流石にこの重さをこの数は大変というか、間違いなく執事さんも腰を壊していたでしょうし、こういう時にウマ娘のパワーで助けられるのは嬉しい限りです。

 

 

 「こちらもそのまま荷物を屋敷に降ろして再度来ますし、お嬢様たちと合流なさるとよろしいかと。今連絡が来ましたが、調味料は無事に買い終わり、今2階の本屋の前で待っているそうです」

 

 

 「分かりました! では、失礼しますね執事さん。またあとでお願いします」

 

 

 頭を下げてデパートの本屋さんの場所を目指す。前にちゃんとマップで場所を確認。何度か来ているけど、実家の方にはこんな大きなお店なかったし、迷わないようにしないと・・・よし。ここだね。

 

 

 場所も分かったので後はゆっくり移動。ウマ娘の速度だと早歩きでも大変だし、学園のように静かに走れ。はやったらだめですし。

 

 

 「すいませーん。おまたせしまし・・・・・・牢獄!!? なんでそこにケイジさんが入っているんです!?」

 

 

 「あ、スぺちゃん。いやーケイジちゃん、法被やねじり鉢巻き買う前に本屋さんに入り浸ってカバンの残りスペースに気に入った本を買い込んで詰め込もうとした罰で投獄したの」

 

 

 「ジャスタウェイさんいろいろそれ理不尽すぎませんかね!? そしてゴールドシップさんはどこ・・・看守姿で出てきたー!!?」

 

 

 本屋さんの前につけば、何でか牢屋が出来ており、そこに入っているのはケイジさん。ジャスタウェイさんから話を聞けばもうどうしてそうなったとしか言えない理由での投獄。そこに入ってきたゴールドシップさんはちょっと攻め気味なミニスカ看守姿で入ってきました。・・・・・・インペルダウンでしょうか?

 

 

 「それでは点呼を取る!」

 

 

 「ッチ・・・・1!」

 

 

 「2! 異常なし!」

 

 

 「なんでお前までカウントされているんだよ! 囚人じゃねえのかお前!? 異常なしじゃねえよ異常ありだよ。囚人のくせに看守に成り代わったのかよ!?」

 

 

 「私語は厳禁だ37億5000番」

 

 

 「囚人多すぎじゃないですかね!? インドと中国の人口足しても多いですよ!?」

 

 

 「あ、スぺ。爺さんどもの手伝い終わったか? それじゃー早速、法被やねじり鉢巻きとかを行きつけのコスプレショップや服屋さんで・・・」

 

 

 ようやくゴールドシップさんも気づいてくれたのでひとまずこの状態から買い物に行けそうだと思って安堵の息を吐いていたのだが、その後ろでケイジさんは持っていた針金を使ってピッキングでこの仮設トイレのような感じでおかれていた牢屋を抜け出した。

 

 

 「よっしゃあ! これで自由の身だぜー! そして、おしゃれをしていくわ!!」

 

 

 「あ、囚人が逃げ出した! 待ちなさい39億2000番!」

 

 

 「数もっと増えた!? 37億5000番じゃないんですか!?」

 

 

 当然それを追いかける私達。もうなんていうか・・・・このノリについていくのだけでも精一杯です!

 

 

 「あ、ケイジそっちは違うわよ!? そこ宝石店!」

 

 

 「アタシが輝く場所は当然ここの宝石店・・・・な訳なくフェイントぉおお!」

 

 

 「コスプレ店へドリフトみたいな急カーブしながら入っていったあ!?」

 

 

 「おのれあの技術に負けるわけにはいかねえ! 私も!」

 

 

 「「しなくていいから!(です!!)」」

 

 

 ゴールドシップさんを抑えつつコスプレ店に入ればすでにケイジさんは試着室に入っているようで「あらやだこの生地馴染むわ! この色も好み! うーん・・・あとはこれを頭に・・・」という声が聞こえてきて、周りはケイジさんが来ていることに喜んでいる人、この暴走劇に呆然としている人。そしてそれをSNSにあげている人など様々。

 

 

 そして、一通り着替え終わったのかガサゴソという音が消えて、カーテンが開かれた。

 

 

 「全部もらおうか」

 

 

 「「ダース・ベイダーになったー!!?」」

 

 

 「さあいくらなの!? いくらなのよーォッ!!?」

 

 

 「ぎゃあぁあああ!? ケイジさんがハジケているぞおー!!」

 

 

 ライトセイバーで店員にツッコミを入れながら『早く宇宙を取りに行くからここで手間取るわけにはいかない』とか叫んでいるケイジさんを見てどうしたらいいのだろうかと思っていると後ろからゴールドシップさんが出てきた。

 

 

 ・・・・ジェダイの騎士の格好で。

 

 

 「代金は貴様の敗北だベイダー!」

 

 

 「来たなジェダイの騎士」

 

 

 「いや、十代のお姉ちゃんだ」

 

 

 「いやそうじゃなくて」

 

 

 そういってライトセイバーで打ち合うお二人の隙をついて、ジャスタウェイさんがケイジさんの背後に回って、見事なタックルを決めた。

 

 

 「ぬおっ!?」

 

 

 「よっし抑えた! ゴルシちゃんこのヘルメット外して! いやこれ仮面だっけ!?」

 

 

 「知らん! そしてケイジ! お前に似合うのはそんな仮面じゃなくて、こっちの方が似合っているんだ! 私からのプレゼントで正気に戻れー!!」

 

 

 一瞬だけならケイジさんに匹敵するパワーを出せるジャスタウェイさんがケイジさんを抑え込み、ゴールドシップさんがあのマスクをはがした。と思えばすぐさま緑のマスクを顔面に装着。

 

 

 「うぐぅうぉぉおおおおおぁあああああああ!!!?」

 

 

 マスクが装着されるや否や、顔を抑えて苦悶の声を上げていき、立ち上がって高速回転しながら移動して店の外に出てくるケイジさん。

 

 

 しばらく回転は収まらず、ようやく収まっても顔を抑えたままだ。

 

 

 「ケイジさん。大丈夫ですか!?」

 

 

 「・・・絶好調だぜぇ~!」

 

 

 「マスクが顔に馴染んじゃったー!!?」

 

 

 そして起き上がるや、緑色のマスクがそのまま見事に顔になじんでニッコリ笑顔で白い歯を見せるケイジさん。ふ、普段の白い肌から緑色の変化の圧がすごい! 怖い!!

 

 

 「さーさー! 皆さんお集まりいただいて感謝感激雨あられ! と・い・う・訳でぇー・・・ショーを開催しまーす!」

 

 

 「・・・・・・・もう、突っ込み切れない・・・です・・・・」

 

 

 おかあちゃん。こんな騒ぎをして怒るどころかむしろショーを楽しんでいる都会の皆さんの切り替わりの速さと、あこがれのスターのハチャメチャさに私はついていけるかわかりません・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さーてと・・・じゃ、とりあえず従来のメニューに追加するものだが・・・まずは普通の焼きそばと、塩焼きそば、お好み焼きにそれぞれ一品追加。あと、イチゴ大福を作ってみました。食べてくれスぺちゃんにライス」

 

 

 「はぁあ・・・凄い・・・おいしそうです」

 

 

 「おぉ・・・ケイジお姉さまたちのご飯・・・頂きます!」

 

 

 あの後、あれだけの大騒ぎをしても怒られるどころかむしろゲリライベントと称して緑のマスクをかぶったままのケイジさんが風船であらゆるものを作っては生きているように動かし、最後は風船でマシンガンを作って乱射。飴の弾丸を子供たちにプレゼントしたり、ゴールドシップさんとコント、漫才をして場を沸かせ、コスプレショーでジャスタウェイさんの小物も合わせたチョイスを私と一緒にやることでお店のアピールをしてむしろ売り上げ増加と喜ばれる始末。

 

 

 ケイジさんがハジケる時は大体あんな感じになるし、SNSで広まって一目見ようとお客さんが増えるということで基本許されちゃうとかなんとか。あの緑のマスクも貰い、しっかり法被とハチマキ、もろもろを買い込んで寮に戻り、ようやく食事の時間となりました。そこで自主練していたライスシャワーさんをケイジさんがオーバーワークだと捕まえてゴールドシップさんに頼んで風呂場に連行。

 

 

 そして、その間にケイジさんとジャスタウェイさんが手際よく料理を作り、風呂上がりでさっぱりしたゴールドシップさんとライスシャワーさんも戻ったところで試食。

 

 

 まずは王道のソース焼きそばに天かすを乗せたものを食べてみる。

 

 

 「お、美味しいです! 焼きそばの中にあえて固い・・・餡掛け焼きそば? みたいなものが混じっていますし、濃厚なソースに混じる天かすの風味がいいアクセントです!」

 

 

 「わぁ、この塩焼きそばも・・・パリパリで・・・ん? タケノコ? レンコン? メンマもある・・・噛み応えが美味しいし・・・あ、少しトロっとしている餡がほんのり甘いし・・・野菜の青臭さを消してとっても食べやすいです」

 

 

 「うふふ。噛み応えがあるほうが私達みたいなウマ娘の顎の力にもいい食感を与えてくれるし、野菜もたっぷりヘルシー。予算も抑えられる分かさましもしやすいからありがたいわよね」

 

 

 「ほうほう。トロトロあんかけ塩焼きそばと天かすパリパリ焼きそばはいい感じか。んじゃーゴルシちゃん特製アジアンお好み焼きも食べてみ? どれ、半分にして」

 

 

 食べるたびに食感がいくつも味わえて、風味もまるで天かすが風船のように口の中で噛めば破裂して香りが広がるのが心地よい・・・そして、お好み・・・うん? なんかすごい香り・・・え? これお好み焼き? 見た目はともかく、香りが・・・なんでしょうこれ?

 

 

 「魚醤っていって、製造で近いものだと東南アジアのナンプラー、古いものだと古代ローマでも楽しまれた調味料の一つを入れて、パクチーなどの香草を一部混ぜた感じのやつだな。そこにちょいと奮発して、牡蠣を入れているんだ。ほれほれ、食べてみ食べてみ?」

 

 

 「ほ、ほうほう・・・? では・・・・!? う、美味い・・・!? 魚醤の癖の強い香りですが、コクと甘みも来ますし、その分パクチーとソースの香りがあとからガツンと来ますし、味も独特な強い味からソース、そしてそこに来る牡蠣の味がとどんどん変わる・・・! うんうん・・・ああ、これ紅ショウガで一度口の中リセットして今度はパクチーやソースの量を調整してまた食べてみたいです!」

 

 

 「んむんむ・・・んふぅー美味しい♪ これ、くさやとか、納豆、匂いの強い発酵食品みたいなものを好む人はすごく合いそうかも♪ ライスもこれはたくさん食べられちゃう。魚の味からソースとお肉、パクチーの味と来て最後は牡蠣・・・贅沢だね♡」

 

 

 口の中でいくつもの味が広がって、互いに入れ代わり立ち代わりで見事なショー、あるいは演奏会を奏でているような味わいに思わず頬が緩んじゃいます。隣のライスシャワーさんも小さな体にどんどん詰め込んでいっては笑顔を見せ、おかわりを欲しいとケイジさんに頼んでいるほどです。あ、私もぜひ。

 

 

 「うんうん。それじゃあ、今度はアタシとジャスタウェイプロデュースのやつだな。今回の聖蹄祭でやる屋台だが、3点以上の商品の購入、もしくは、1000円以上の購入をしてくれた人にくじを引かせていきたいと思っている。で、くじであたりが出た方にこの料理をプレゼントしてみようとな」

 

 

 「ふふふ。私とケイジ特製、ロブスターのピリ辛四川風蒸し焼き。これを振る舞おうと思うの」

 

 

 そういって出してくるのはお肉の部分を奇麗に剥いてエビの頭部分は残した見事なものがデン! と出てくる。おぉおお・・・・ホテルで出るような、ドラマや漫画でしか見たことがないような物が・・・

 

 

 「い、いやいや!? これかなり高いですよね!? いいんですかそれ振る舞ってしまって!!?」

 

 

 「え? いやいや、ロブスターだし、それに爆竜大佐に頼んで専用ルートで用意してもらって、超神田寿司の仕入れついでにだからかなり安く済んだぞ。まま、食いねえ食いねえ。えーと・・・一応辛いし、とりあえず牛乳用意して、二人とも先に飲んでおきなー牛乳もお代りあるし」

 

 

 「食べる際は尻尾の方からちょっとづつ食べるといいですよ? うふふふふ・・・♪」

 

 

 ジャスタウェイさんも珍しく悪戯っぽい笑顔を浮かべて此方の反応を楽しんでいるのでこちらもとりあえず指示通りにしっぽの方から尾を外して肉をパクリ。

 

 

 「んふぅー・・・濃厚な味に、あ、辛い・・・けど、そこまで? でも、んむ・・・・?」

 

 

 「だんだん、辛くなっている・・・?」

 

 

 「正解。背ワタを取りながら注射器、あるいはこういう辛味の調味料を仕込んでな。だんだんと頭の部分に近づくたびにそれを多くしているんだ」

 

 

 「はふ・・・ハフハ・・・おお・・・こ、これは・・・辛味に舌が慣れていきながらどんどん大きなエビのお肉を食べられて、その刺激も心地よいです!」

 

 

 「辛さが美味しく、どんどん強いのも美味しくなる! 辛党になりそうな・・・それだけじゃなくてエビのシンプルなうまみを引き立てる四川風ソースの味付けもいい! ぶりっぷりの食感と味に絡むそれがもう・・・あふぅ・・・・舌に残る辛さがちょうどいいよぉ・・・」

 

 

 いきなり強くない辛さに、それを抑えつつ主張する蝦肉のおいしさ。だけどだんだんと主張を増すその辛味もまたちょうどよくなってくるという塩梅の良さ。思わず口の中でじっくり咀嚼をして何度も何度もかみしめながらゆっくりと呑み込む。

 

 

 「よーし、お前ら一通り食べたな? 最後はゴルシちゃんプレゼンツ! 特性イチゴ大福だ! さあデザートを食べるがいいさ!」

 

 

 「イチゴ・・・? あれ? でもイチゴが見えないですよ?」

 

 

 「・・・中にあるのかなあ? あむ・・・ん? つめた・・・シャキ? あ、イチゴ!」

 

 

 「え? あ・・・ん・・・ああ、イチゴ! でも、しゃきしゃきで固くて冷たい?」

 

 

 「わははは! そうだろそうだろ? こしあんの中に混ぜた冷凍していたダイスカットしたイチゴ果肉を混ぜているんだよ。今回の料理は多くを食感にこだわろうぜって話になってなー、デザートもそれをするのならこういう形で食感を変えられるということでやってみました♪」

 

 

 「うまいアイデアだよなー冷たいものがだめならそれも用意できるし、固いのがだめでも解凍したものを混ぜ込めばいい。知覚過敏、あるいは固いのが無理な高齢者にも配慮できるということでやったが、何よりその場で食べても、持ち帰っても食感の差異を味わえるってのがいい」

 

 

 「保管に関してもドライアイスを詰め込んだ発泡スチロールの容器に入れておけばいいし、鮮度が―とかもさほど気負わないでいいのが嬉しい。アイスも考えたけど、溶けちゃうし、皆で祭りを味わってほしいからこういうのでとなったの」

 

 

 「モチとあんこの優しい甘味から来る冷たいイチゴのしゃきしゃきでフレッシュな甘味と食感・・・んふふふーこれはまた沢山まで味わいたくなっちゃいます」

 

 

 「暑い日でも食べられちゃうし、寒い日でも家でこたつやカーペットの上で少し熱くて渋いお茶と一緒にでも・・・・・・すっごくおいしい」

 

 

 しかも、サイズが小さな一口サイズからちょっとしたおにぎりサイズまで簡単に多くできる。デザートも、食事もどれもこれもが美味しいものばかり。

 

 

 この後もいくつかの新メニューを試し、焼きそばは定番メニューに3種追加、お好み焼き、当たりくじの賞品のロブスターとデザートイチゴ大福に決定。

 

 

 試食と評価のお礼ということで前田ホテルのランチ券もペアチケットでもらえて「スズカとでも食べて来ればいいさ」と優しく笑ってくれたケイジさんには本当に頭が上がりません。そして、聖蹄祭。今年はどうなるか本当に楽しみです!




 ふざけにふざけた、はじけたケイジ達。でも割とよくあることだったり。


 ケイジ 相変わらずのハジケリスト。ふざける時は大体こんな感じ。しっかり外れた緑のマスクを貰った。聖蹄祭りでは浅葱色の法被と額あて、鉢巻きどちらかを選んでの接客となりました。


 ゴルシ ゴルシ。ケイジと一緒ならこれくらいは普通にする。一緒にバカ騒ぎした後は爽快な気分。後でデパートでの騒ぎがニュースになっていたのを見て爆笑した。聖蹄祭では見事スピカ&シリウスの屋台黄金屋で売り上げ1位を獲得。


 ジャスタウェイ ケイジやゴルシとのお出かけでちょっとテンションがおかしくなった。自分の考えたメニューが無事に採用されてご満悦。普段は優等生だけど今回のようなパターンでたまに怒られたりする。


 エアグルーヴ 久しぶりの親子での買い物をしていたらケイジ達に遭遇してちょっと頭痛を覚える羽目に。実はケイジが緑のマスクをかぶってからのショーを見ていたりした。


 エアグルーヴのお母さん ケイジの師匠の一人がトレーナーだった。気さくかつなんやかんやとママ友のパートや仕事を紹介してくれることもあってケイジとは顔を合わせる機会がある。ケイジ達の騒ぎはいつも笑ってみている。


 スペシャルウィーク ケイジ達は素直に尊敬している先輩。ただ、ハジケまくるときは逃げたいと思うことが多い。今回は食事券に料理をたっぷり味わえて満足。後日スズカと前田ホテルのランチを満喫した。


 ライスシャワー シリウス最強ステイヤーとして成長中。ケイジにつかまって晩御飯代わりにご飯を貰って満足。菊花賞の一件以来ケイジをお姉さまと慕うように。試食とメニュー選抜後に大福を何個か貰って、後でみんなでわけあった。毎日しあわせ。


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新称号ですってよ奥様 天皇賞(春)(GⅠ )

 50話到達! そして感想が400件を超えました! いつもいつもありがとうございます。結構皆様先を読むというか、鋭い意見や考察が多くてびっくりします。





 ジャック『兄貴―! いかないでくれ兄貴―!!』


 ケイジ『いや、お前さんが馬運車に乗せられているんだろうに』


 ジャック『え? そうなの? なら下ろせ―! 俺は兄貴といるんだー!』


 ディープ『暴れているねえ。ジャック・・・じゃない。メジロライトニング君』


 ケイジ『俺らである程度の走りの技術教えたもんなあ。あーあーがたがた馬運車揺れているでやんの』


 (元ジャック)メジロライトニング『うぁー! うぉー! ここが家なのに何するんだお前ら! どりゃぁ!』


 新メジロ牧場スタッフ「ぬああああ!!? 何だこれ! 幼駒のパワーじゃないぞ! 素質馬なのは嬉しいが、暴れすぎ!」


 利褌「こりゃーキン肉マンシリーズ全巻は後で郵送するかねえ。若しくは引っ越し屋さんに頼もう」


 ケイジ『頑張れライトニング。少し辛抱すればここにも来れるし、修業期間だと思いなさーい』


 メジロライトニング『修行・・・・うーん・・・・分かった!』


 ディープ『それでいいんだ・・・・』


 ケイジ『俺もそう思わないと温泉離れはちょいつらいからなあ。出稼ぎとも思っているよ』


 グラス『いやあーあれがタイキさんの子どもかあ。また、あの強さが見れるのかもしれないとなると長生きしないとだねえ』


 ケイジ『ははは。あんたさんは日本の宝だし、競馬界の伝説だ。元気の秘訣の一助となれたんなら、あいつも喜ぶだろうぜ。今度休み出来た時はぜひ色々教えてやってくださいや』


 グラス『もちろん。ところで・・・朝ごはんの後のデザートはないかなあ?』


 ケイジ『キャラメルとタンポポは売り切れだなあ』


 ディープ、グラス『『そ、そんなあ・・・』』


 『さあ! まずは一冠チャレンジいってみよー! っておらあ! ケイジやジェンティルっちより加速鈍いわ!』

 

 

 『なんということだ! これは夢か幻か! ナギコ! グイグイ追い上げる! コーナー前からの早仕掛けをしたと思えばその加速は今までの遅れなんてないと言わんばかり! 一頭二頭とごぼう抜き! こんな光景があっていいのか!?』

 

 

 『甘い甘い! 速度勝負!? 位置取り!? んなもん芝レース世界最強格と練習で盗んで対応も練習もしているしー! サンデーの牧場主の息子からの教えもあってコーナリングくらい大外からでも加速できる!』

 

 

 『地方から中央どころじゃない! ダートの頂点アメリカの更なる伝統あるケンタッキーダービーすらも無敗のまま征してしまうのか!? ナギコ先頭! グイグイ伸びて2馬身とリードを広げてラスト100メートル!』

 

 

 『平野たちがくれたチャンスと場所はちゃんと応えないとね♪ ケイジに追いつくために、もらったぁああー!』

 

 

 『ナギコが今ゴォオオール!! タイムはなんと1分57秒ジャスト! スーパーレコードまでもを手にナギコが今牝馬の身でありながらトリプルクラウンの一冠を奪取! これは目が離せない! 日本から来た黄金の美少女はどこまでやってくれるのでしょうか!』

 

 

 『モチやれるとこまでよ♪ ふぃー早く休モー。でないと次のレースに響いちゃ~う』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『さあ、いよいよこの日が来ました。日本の格式ある大レースかつ、3200メートルという長距離で戦います天皇賞(春)』

 

 

 いよいよというか、俺にとっては初挑戦となる天皇賞(春)。思えば俺菊花賞以来長距離というか、3000メートル以上のレースは出ていなかったからそういう意味ではほんと1年以上の間を空けての挑戦なんだよな。

 

 

 一応調教では毎日坂路で走ったり、それ以上の距離を走って鍛えていたけどさ。

 

 

 『日本で最長距離のGⅠレース。陛下御夫妻に太子様夫妻も今か今かと楽しみにこのレースに挑む名馬たちを見守っております。そして、今回このレースにあの名馬が来ております!

 

 ダービー馬にして凱旋門賞三位のユウジョウ。そして、昨年このレースを手にし連覇を狙うフェノーメノ、リベンジを狙うゴールドシップ。彼らと同期にして日本馬初の凱旋門賞を手にしました傾奇者が見参!』

 

 

 『はぁー・・・いい天気だわぁん。思わず昼寝したくなっちゃう。でも、そのあったかさがスイッチを入れてくれるぜ』

 

 

 『ターフの傾奇者ケイジ! 今回はドバイDFをいかずにこのレースで盾を取りにやってきましたぁあ!』

 

 

 『イェーイ! さる御方も来ているんだろう? 今日はサービスしちゃうよぉん』

 

 

 「のぁーっ!? 御前、落ち着いていたと思っていたらこれか!!? 確かに客も多いし、ゴルシもいるが待たないか! ぐふぇ!」

 

 

 『おおっとケイジ、葛城調教師にボディーヘッドバットを決めて変顔と何やら跳ね回っております。今回も会場はパンパンの満員大入り。レース場内側にも観客を入れて尚入場制限を設けるほどの人の波、歓声にケイジも興奮しているようです』

 

 

 いやーいいなあ、何だろう。さる御方もいるのもあるのかなあ。いつもより空気が違うというか、なんかこう、分からんが調子がいいぞお?

 

 

 おお、そしてお久しぶりー

 

 

 『お久ーケイジ。お元気ぃ? そしてコノヤロー! お前ジャスタと一緒に温泉旅行したりドバイ旅行したんだろぉ!? 羨ましいぞこの! おいらもつれていきやがれー!』

 

 

 『うるへー! 俺の家だよ温泉は! そんでドバイで負かされたんだ! ここでは勝つからな! 連れていきたかったらお前さんの調教師に頼めってんだ!』

 

 

 『おおっとケイジの終生のライバルゴールドシップもケイジを見つけて・・・威嚇? でしょうか。をしながら一緒に跳ね回り、変顔を披露してグルグル一緒に回っております。またまたやっておりますこの二頭の奇行。これには会場の熱気が興奮から笑いへと変化しています』

 

 

 「ああぁー・・・もう。天覧競馬だというのに・・・・伊馬波さんもお疲れ様です」

 

 

 「いえいえ、そちらこそ。これだけ元気ならゴルシも万全で戦えるはずですし、今日はいい勝負を・・・するためにゴルシ。落ち着こう。な?」

 

 

 『『あ、一着のポーズ!』』

 

 

 『うーん。元気そうだしもう許せるぞおい! そんでぇー・・・一緒にフェノーメノにリベンジしない?』

 

 

 『俺今回初挑戦だけど? まま、いいよー俺が勝つし、盾ゲットとフェノーメノへのリベンジ。やったろうじゃないの!』

 

 

 『なに勝手にリベンジしようとしているんだ! むしろ俺がリベンジしたいくらいだわケイジ!』

 

 

 おおう。お互いに落ち着いたと思ったらマメちん。お元気そうだねえ。そういやそうだな。今んところは。

 

 

 『おっはーフェノーメノ。連覇を阻まれたばっかりだし、このレースはすげえしで俺張り切っていっちゃうよぉん』

 

 

 『おお、フェノーメノ・・・・何しに来たんだコラァ!』

 

 

 『来たっていいだろうに! ぬぉお! くそう話にならない。もう後だ後!』

 

 

 あらら、ゴルシが威嚇して面倒くさがって、そのままみんなで騎手を乗っけての本場馬入場へ。うーん。これをしていると日本に戻ってきたって感じるわぁ。

 

 

 そして、松ちゃん初の天皇賞の盾獲得ジョッキーにするためにも頑張るかあ。

 

 

 タケちゃんもユウジョウと仲良さそうで相変わらずだねえ。年末の番組でタケちゃんと松ちゃんは馬語を理解しているというネタ的な都市伝説へ、元も含めたジョッキー、調教師さん方皆様がそうだそうだと頷いたシーンは爆笑したなあ。

 

 

 さて、松ちゃん。今日はどうしようか?

 

 

 「菊花賞の感覚は覚えているだろうし・・・うーん。大逃げで行こうか。そのための練習もしっかりしていたしね?」

 

 

 『あいよ了解。もしペースがやばそうだったら抑えて頂戴』

 

 

 今回も大逃げと。そのほうが良いなあ。俺もやりやすい。

 

 

 『なーなーケイジ。ジャスタウェイっていつ頃戻ってこられるんだ?』

 

 

 『そうだなあ、大体あとひと月未満くらいだろ。俺を倒して世界最強になったんだし、かなりウキウキだと思うぞ?』

 

 

 『みんな強く、成果を出しているなあ・・・俺も負けねえようにしないと』

 

 

 『いや、フェノーメノもゴルシもみんなやばいと思うぞ? さてさて。ファンファーレも鳴ったし、いくかあ』

 

 

 今回俺の馬番は9。タニノエポレットはどうしたかな? で、人気は・・・うーん。3番人気か。いいぐらいに勝てれば稼げそうだね俺に賭けたお客さん。人気が少し落ちたのは年末からドバイでも負けているし、俺の場合は昨年も天皇賞(春)に挑んでいない。経験がないから菊花賞以外はマジで長距離の経験を積んでいない。その有無が分かれている感じかなあ。

 

 

 後は、俺海外での戦いでの成績がいい分日本の芝質よりも海外の芝質の方があっているという意見も多いし、そういう意味ではこのカチカチ高速馬場のレース場をまた菊花賞のように走れるかどうか。という感じだろう。

 

 

 ゲートに入ってのんびり精神統一・・・・うん。オッケイ。

 

 

 『・・・・18頭が順調にゲート入り。新緑をバックにレースを今か今かと構えている優駿たち。最後にデスバラードがゲート入りし全頭ゲート入り完了』

 

 

 『ぬおー! うぉー! なんでフェノーメノ(こいつ)が隣なんじゃぁああ!! ブモォオオオ!!』

 

 

 『ぶふぅう!!? ゲート内で暴れているんじゃないよお前! クッソ・・・! まーた笑わせやがって・・・あ・・・やっば!』

 

 

 『ゴールドシップ立ち上がって吠えた! そしてスタートです! 最初はややかかっているのか? いや、順調そうですケイジが先頭。今回は大逃げか、幻惑逃げか。菊花賞では見せなかった長距離でハナを奪っての強気な姿勢を見せております。

 

 

 ケイジの後ろにサトノブレスミー、隣にサイレントヒルデーが並び、後ろにアドマイヤレーンが続いて三コーナーの最初の坂を上ります』

 

 

 くっそーあいつまだマメちんに威嚇していやがった。おもしれえ声まで出しやがって。どうにか先頭にはこれたし、ロスも無し。坂も・・・うん。欧州での経験が生きている分と、坂路漬けの日々の調教で鍛えている分逃げで走っても問題ねえや。

 

 

 さてさて、ここは少し流しても加速になるし、緩ーくしつつも先頭を譲らない感じで行きましょうかね。

 

 

 『先頭ケイジすぐさま坂を下りて後続に4馬身のリード。二番手以降の馬群はサトノブレスミー、サイレントヒルデーが叩き合い、その後ろにアドマイヤレーン。レッドバビルも追い上げてきまして5番手に。更に後方アイクリスチャン、デスバラード、彼らも坂を下っていきます。そして後方ホッコーシェイミ、グレートインパクトと続いて、最後尾から二番手にユウジョウ。その後ろにはゴールドシップ。

 

 

 第四コーナーをケイジが最初に抜け出してスタンド前に行きます。1000メートルを通過してタイムは57秒7 速い! ケイジまさか大逃げでここを勝ち切るつもりでしょうか!? 戦国コンビの様子も特に変化なし、間違いなく攻めていくつもりのようです! これにはスタンドからもどよめきと興奮の歓声が飛んできます!』

 

 

 おろ。少し落としていたつもりだけど。あれだなあ。高速馬場なのもあってドバイやイギリス、フランスの芝と比べると軽く蹴っていても普通に速くできる分大逃げしやすいなおい。ま、まだまだスタミナも問題ないし、コーナーでもまた息を入れつつ加速できるし、さてさて、まだまだ面白くやっていくからこうご期待ってね♪

 

 

 『ケイジ第一コーナーに入って行きさらに伸びる! これについていってはまずいと後続はややペースを落とし・・・いや、ユウジョウが上がってきて少し並びが変化します。先頭はケイジ。後続とは6馬身のリード。その後ろにサトノブレスミー、上がってきたユウジョウが続き、サイレントヒルデーは馬群の三番手に。

 

 

 この三頭からまた少し離れまして、アドマイヤレーンとレッドバビル、デスバラード、ホッコーシェイミ。サイレントハープと並んでいます。おおっとゴールドシップもコーナーから徐々に順位を上げております。これは仕掛けに行くのでしょうかいつの間にか中団の位置につけております。

 

 

 フェノーメノも負けじと馬群を抜け出して先頭集団を狙い始める。2012年クラシック世代、ダービー馬が本領発揮か?』

 

 

 うーん。俺を逃がしたらやばいというのをよく理解しているメンバーはもうペース上げているか。俺のコーナリングを見ている分、盗まれた技術も多いだろうしなあ。他のメンバーに比べれば負担も少なく走ってこられるのが面倒くさいぜー。

 

 

 「ふむ・・・・よし、ケイジ、やるか?」

 

 

 『おうさ。これくらいならやってやろうぜ』

 

 

 それを感じて松ちゃんもすぐに仕掛けていくかを考えて俺も了解。真面目に名馬に名手のコンビたちだらけのなかでもさらに頭一つ抜けたメンバーたちが迫ってきているんだ。俺のスタミナを信じなさい。

 

 

 『早くも第二コーナーを抜けて二度目の淀の坂が見えてきました。驚異のこの傾斜。ここを越えて最後までのスタミナを残していけるのか先頭は・・・ケイジなんと仕掛けていった! 淀の坂を上りながら加速! 松風騎手の鞭の指示が飛ぶ! 何ということだ! 鬼の豪脚、そしてライバルの黄金の不沈艦のタブー破りをケイジもしていったぞ!

 

 

 これを見てか先頭にとりついたゴールドシップも加速してケイジを猛追! こちらもタブー破りをしながらの勝負を仕掛けていく! 連覇を狙うフェノーメノですがこちらは抑え、そしてユウジョウも同じく無理はさせずに後半勝負へと持ち込む様子』

 

 

 ユウジョウは馬場との相性とか色々あったしねえ。下手に無理をさせるよりは切れ味を残す方を選択したか。フェノーメノも、そりゃあねえ。俺らのやり方の方がめちゃくちゃだし、付き合って強みがなくなれば意味がない。

 

 

 『坂を下りたケイジと坂を上るゴールドシップ! 二頭のタブー破りからのさらにスパートをかけて残り1000メートル以上を叩き合うつもりなのか! 残り800メートルですが脚色も衰えない!

 

 

 ゴールドシップ第四コーナーに入る前にケイジを捉える! そして後方8馬身にいるフェノーメノとユウジョウも仕掛けて差を詰めていく!』

 

 

 『イヤッホー! 追いついたでゴルシ。さあ、勝負と行くぞケイジ!』

 

 

 『モチのロン! 思いきりやらせてもらうぞ! ジャスタにも借りを返すためにまずはここで勢いをつけたいしな』

 

 

 流石、食らいついてくるよなあこのスタミナお化けは。そして、フェノーメノも得意の早仕掛け、ユウジョウも飛んできた。とはいえ、ほぼほぼセーフティーリード。ジャスタレベルの爆発力がなきゃあ、追いつけねえぜ!

 

 

 さあ、一騎打ちだゴルシ!

 

 

 『第四コーナーを越えての最後の直線はこの二頭に絞られた! 外からゴールドシップ、最内ではケイジが加速をしてゴールを狙う! がケイジコーナリングでつけた差をさらに広げてゴールドシップを引き離しに行く! が、ゴールドシップも粘る! フェノーメノもユウジョウも四馬身まで詰めるも、加速が追い付かない!

 

 

 じりじりと差が開く! ハナ差からクビ差! 半馬身と伸びる! これがケイジ! ステイヤーとしての力もまた怪物だ! もうこれは決まったか!』

 

 

 あたぼうよ! 何度も負けているが、こんな大舞台、祭りで負けるわけにはいかねえ! 有馬記念? 今年は勝つんだよ! ぬぉおお! 俺のスタミナがここで尽きるものじゃないと魅せてやるぜー!

 

 

 『届かない!? クッソー! ケイジのやつ、ほんとにジャスタに負けた後とは思えないぞ!』

 

 

 『この舞台での初栄冠。頂戴する!』

 

 

 『ケイジ、二着に二馬身差をつけて今ゴォール!! フェノーメノの連覇を阻んだのは傾奇者ケイジ! この長距離レースを大逃げで勝ち切るという怪物ぶりを見せつけての快勝! 二着はゴールドシップ!三着にフェノーメノ、四着にユウジョウ。タイムはなんと・・・! 3分12秒3! ワールドレコードを更新! この天覧競馬にふさわしい勝ち方をケイジ、見事見せつけ、さらにGⅠ11勝目! どこまでもこの世代は、そしてその筆頭は見せつけていきます! 俺たちこそが世界最強だと!』

 

 

 ィよっしゃ! 無事に勝利ゲット! そしてまたレコードか壊れるなあ。でも同時にこれくらいしないと勝てないよなあこいつらに。最後ら辺、フェノーメノとユウジョウが三馬身まで迫っていたのかよ。かなりセーフティーリード取ったつもりだったのになあ。

 

 

 『ぬあー勝てなかったでゴルシ。ケイジはやっぱ強いなあ』

 

 

 『連覇が・・・でも、ケイジならと納得している自分もいるのがまた・・・完敗だ』

 

 

 『先着がみんなケイジさんらの世代・・・ほんと、この時代のメンバーがいる間はどの戦線も地獄になりそうだなあ』

 

 

 『しばらくしたらまた海外に行っている俺らの世代も来るしなーいやあ、勝ててよかったぜ。真面目にお前さんら相手では気を抜けん』

 

 

 ほんと、早仕掛けもみんな使えれば、俺以上に加速力ある奴ら多すぎ問題。いや、俺の場合は馬体重も相まって最初の加速が遅いのもあるけども。

 

 

 ともあれまあ、どうにか春の一戦は無事勝利。ナギコたちやライトニングたちへ元気を与えられれば幸いだなあ。

 

 

 「よし、無事に勝てたね。今年の春もそれが出来たし、やるなら思いきりやっちゃおうかケイジ」

 

 

 『あいあい。思いきりやろーぜー』

 

 

 とりあえず勝利をできたのでお久しぶりのこれを披露だ。スタンドの真ん中に移動して―

 

 

 『今年の春、桜吹雪が似合う傾奇者が見事に天皇賞を制覇。そして、ケイジがいつものように移動して、我々も拳を構えます』

 

 

 『さあ、いくぞー』

 

 

 右にぴょーん

 

 

 「「「オウ!!」」」

 

 

 左にぴょーん

 

 

 「「「オウ!!!」」」

 

 

 首を下げてのー・・・・

 

 

 「ビヒィィィイイイイイイィイっッッ!!!!『いよっしゃあぁああああああああああ!!!!』」

 

 

 

 「「「ウオォオオォオオオォ!!! ケ・イ・ジ!! ケ・イ・ジ!!」」」

 

 

 いぇーい。2012年世代は今年も絶好調! 今度は宝塚も勝っていってやるぜー!

 

 

 あ、この後だけど、しっかり検査と検量済ませてからさる御方とレース場で撫でてもらい、騎乗してから緩やかに歩いたりするのをフェノーメノとゴルシ、ユウジョウと一緒にやることになって、千代田区のさる御方たち御一行様を全員のせて楽しく過ごしたぜ。ゴルシも話せばすぐに受け入れてくれたし、これ面白いことになりそうだなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いやーすっかり気に入ったんだなあケイジ。にしても・・・御前試合三冠か・・・」

 

 

 「真面目に無敗の四冠だけでも前代未聞なのに日本馬でこの血統で欧州二冠に加えて、天皇賞勝利でアラブ、イギリス、そして日本の王族、皇族の皆さんが見に来てくれた試合での勝利を踏まえての御前試合三冠・・・歴史に名が残ること確実っすね」

 

 

 「わ、私たちの方にもたくさんの差し入れや、特別賞ということで賞金もらえましたしね・・・にしても、ケイジ君、似合っているよ♪」

 

 

 「ヒヒン♪」

 

 

 天皇賞の勝利が陛下が俺を撫でている写真、乗っている写真と共に全国紙に乗せられた新聞をみんなで見つつ、俺はプレゼントを咥えてのんびり休んでいる。

 

 

 あの後、さる御方たちからのプレゼントということでハミ当たりの金具に菊、そして黒地を基調とした布地に桜吹雪が刺繍されたメンコと、ケイジということで俺専用のキセルを貰った。予備と飾る用を含めて計6本。

 

 

 5本は前田牧場に送り、1本は葛城厩舎に送って俺がこうして咥えている。似合っているみたいだしやったぜー。

 

 

 新メジロの皆様もこの後すぐにうちの厩舎と牧場それぞれに来て『是非ケイジの種付け権利を優先できませんか!』と土下座していたんだよな。おやっさんたちがすぐさま止めさせて、予約枠で大丈夫な分を少し回したとかなんとか。

 

 

 

 「いやあ、俺のような地方の中小整備工場にここまでしていいんですか? ありがたいし、あんたいい男だからホイホイ飲んじまうが」

 

 

 「父さんも貴方の経営手腕と技術を見込んでのことですし、ぜひお願いします。それと、出来れば是非そちらのキジノヒメミコの所有権利から、わが社と共同でステッカーを作りたいのですが・・・」

 

 

 で、その横ではヒメの権利者の一人で北海道で整備工場をしている阿部モータースの若社長阿部さんとスーザンママの息子さんで何やら打ち合わせ中。阿部さんは俺とヒメの様子を見るためにここの厩舎に来たんだけど、息子さんはスーザンママと話すためにオカマバーに移動する。前に土産にと俺の写真を撮ろうとして、ちょうど阿部さんとばったり出会ってそのままという感じだとか。

 

 

 「ステッカー? それは構わないが、それならデビュー前のヒメよりケイジ君の方で相談したほうがいいんじゃないかな?」

 

 

 「ああ、それなんですが、既に父さんと前田牧場さんたちから話が上がっていて許可をもらいまして。既に松風騎手さんも使用しているんですよ」

 

 

 「ムフン」

 

 

 『新車を今回の賞金で買っていたが、ケイジ号と愛称付けているわ、デフォされた俺のステッカー以外にも俺関連のステッカーをさっそく貼り付けていたりすごかったなあ』

 

 

 愛車に愛馬というか、相棒の馬の名前を付けるとかメジロパーマーの騎手さんのエピソードを思い出しちゃうけど、嬉しくなっちゃうね。あ、ちなみにそのステッカーのデザインは久保さんと真由美ちゃんの作品が多かったりする。普段から俺を見ている分特徴や癖、そういうのを表現できちゃうからね。

 

 

 ケンタッキーダービーを無敗で征したナギコや出会ったホースマン皆が悶絶すると言わしめるヒメのシリーズも作るようだし、絵師? デザイナー? としての副業でも稼げそうで何よりだわ。

 

 

 「まあ、とりあえず二度の長距離レースの、しかも3000、3200メートルのワールドレコード所持でまたオーストラリア、イギリスからの種付けの予約や値段の確認、あれこれの電話も増えた。引退後も安泰そうで何よりだし、無理はしすぎるなよケイジ?」

 

 

 『無理するなとは言わないのね』

 

 

 「お前は滅茶苦茶だが、それに渡り合える怪物たちが多いからな。やるときはやる。けど必要ないなら休みなさい」

 

 

 『あいよ。いやーしかし、キセル貰えて満足だ。帰ってきたナギコに自慢してやるぜーあっちの勝利も労いつつ』

 

 

 「ケイジちゃーん。遊びに来たわよ。あら、キセル咥えていい男。カメラいいかしら?」

 

 

 あ、スーザンママ。いいよいいよーしっかり皆と撮って集合写真撮ろうぜ。松ちゃんもすぐ来るそうだし。




 今年もこの世界の競馬界は世界中沸いていそうなスタートを切れましたぁん。


 ケイジ 無事に勝利。新たな三冠をゲット? できた。オーストラリアのホースマンとステイヤー信仰のホースマンたちの脳を一部破壊した。キセルも貰えてご満悦。メンコは大一番でつけようぜとみんなで決定。


 ディープ、グラス 前田牧場バカンス満喫。長生き確定。あとお菓子の魅力にはまってしまう。


 ゴルシ ケイジでやる気アップとフェノーメノがいていろんな意味でやる気アップしていた。天皇賞と宝塚は毎度元気にはじけます。


 フェノーメノ 連覇を阻まれてしまう。後でケイジもジャスタウェイにジェベルハッタ連覇を防がれたという話を聞いて俺らの世代って大体いつも喰いあいしているなあと呆れた。


 ナギコ 無敗でケンタッキーダービー制覇。現在GⅠ3勝。アメリカでとんでもない騒ぎを巻き起こしている。預かってくれている牧場もサンデーのいた牧場なのも相まってまたやべーマイナー血統が暴れていやがると競馬ブームが巻き起こリング。


 松風 コツコツレースで貯めていたお金で新車(軽)を購入。ケイジ号と命名&ステッカー張りまくり。後日シール販売最初のというのも相まっていろいろプレミアがついた。


 メジロライトニング 元ジャック。幼名を卒業しメジロ牧場へドナドナ。悲しんだが、すぐに牧場にもなじみ、ケイジの偉業を聞いてやる気アップ。休憩時間はキン肉マンシリーズを読み返しているので馬房と人の休憩室に予備も含めて同じコミックが2冊ある。メジロ牧場のスタッフは「こいつも本を読むのか・・・」といろいろ常識を砕かれた。


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ナギコの目指すもの ベルモントステークス(GⅠ)

アメリカの競馬ですが、真面目に作者英語が壊滅的に駄目なので架空馬で固めちゃおうと思います。ご了承くださいませ。




~前田牧場~


ジェンティルドンナ『あら・・・ケイジが天皇賞(春)を制覇。ナギコはケンタッキーダービーとプリークネスステークスを無敗で制覇・・・・これは・・・三冠を取れるかも?』


ヴィルシーナ『ナギコさん、芝、高速馬場もケイジさんから教わって弱くないですしね。問題は疲労だとケイジさんが言っていましたが、ファイトです。怪我せずに』


ジャスタウェイ『あらーゴルシ負けちゃったかあ。今度慰めよう。で・・・確か―前田牧場ってスタミナ血統多数用意するとか言っていたし、ケイジのここでの勝利は種牡馬としても幅が出来るし、いいことだね』


 グラスワンダー『そうそう。マイル、中距離の血統の子たちに頑丈さとスタミナを与えていけるようにしてレースの幅を増やしたいみたいだねえ』


 ジェンティルドンナ『あ、貴方は・・・グラスワンダーさん・・・! 伝説の一頭ではないですか!』


 ヴィルシーナ「え? あの一族ですか!? いやー・・・噂はかねがね・・・」


 グラスワンダー『いいのいいの。緩く緩く。ふふふ。君の子どもたちはいい子ばかりだね。そして、ライバルの子もいるよ? ディープ君』


 ディープインパクト『キャラメル美味しかった・・・♪ おお・・・おー君がジェンティルドンナで、そっちがヴィルシーナ、そして、ハーツ君の最高傑作と言われた君がジャスタウェイ君だね。ドバイのレース皆お疲れ様』


 ジェンティルドンナ『お父様・・・英雄ディープインパクトなのですね・・・お会いしたかったです・・・私が貴方の娘のジェンティルドンナ・・・無敗ではないですが・・・三冠を、取りましたわ』


 ヴィルシーナ『お父さん・・・天翔ける衝撃・・・そちらこそお疲れ様です。私はヴィルシーナ。どうにかGⅠ3勝しましたが、今年も頑張ります。ふふ・・・穏やかな方なのですね』


 ジャスタウェイ『僕はジャスタウェイ。ああ、ケイジ君が言っていた日本競馬で5指に入ると言われる伝説。ボクのお父さんも一勝をもぎ取るのがすごく大変だったと言っていた・・・いや、本当にここに伝説多いなあ・・・』


 ディープインパクト『みんな僕を越えている、迫れるほどの才能と実力があると思っているよ。僕を越えていったケイジ君もすごくうれしそうに皆の事を話して、褒めて応援しているからね』


 グラスワンダー『戦えば勝利をもぎ取るライバルだが、同時に大切な親友たちだとそりゃあいい顔で話していたからねえ。私達も会えてよかったよ。激闘を征してきたんだ。私もベルの使い方を覚えたし、温泉やお菓子を食べて休みながら過ごそう』


 ジェンティルドンナ『もちろんですわ! でも、今は柵もあってなかなか話しづらいですわねえ・・・』


 ディープインパクト『そこは今グラスさんがスタッフ呼んでくれるよ。あと、バター、ミルクキャンディーもくれるそうだし、楽しみだなあ』


 ヴィルシーナ『あ、そうですディープ父さん。食事がすごくきれいに食べていくと聞いているのですが、そのマナーを教えてもらえませんか?』


 ジャスタウェイ『グラスさん。確かライバルに葦毛の逃げ馬がいたっていうけど、どんな馬だったの? 確かケイジ君の逃げと近い技術を使うとかなんとか』


 グラスワンダー『ははは。それは温泉に浸りながら話すとしようか。ささ、その後にご飯とおやつを楽しもう』


 『ここら辺が五大湖の周辺なんだねえ。だから暖かいのかな? いや、暑くなってきているけどさ』

 

 

 ウェーイ。皆お元気ぃ? ナギコだよー。なんやかんや無事2冠目のプリークネスステークスも奪取して今はベルモント競馬場の近くでのんびり・・・できていないなあ。

 

 

 いやあーホント大陸横断。日本縦断レベルの距離の移動に加えてこのローテ。そりゃあータフなレースと言われるのも納得だよねえ。で、記者どもうるさい!

 

 

 「はいはい・・・ナギコのストレスになりますし、あまり騒ぎすぎないでください。ただでさえ長旅の直後で疲れているんですから」

 

 

 「興行かつ、何億ドルもの金を生み出すであろうスターを貴方たちの手でつぶすのか? 防犯のために録画もしている。何かあってもこちらが勝ちだぞ」

 

 

 まったくもー・・・ケンタッキー勝ったあたりから記者が多いのなんの・・・フラッシュを一部たいているやつらのせいでまぶしいったらありゃしない。ケイジも確かブームが起きた時はしばらくうちらの事を考えない輩が多かったと言っていたけど、まさか味わう羽目になるとは。

 

 

 今は平野とひげ熊、運営の皆さんで追い出してくれたけども、ほんと、うるさかったなあ。ねえ。藤井さん。

 

 

 「全く・・・どこ行ってもマナーをわきまえない輩は多いなあ・・・アメリカの場合、最高のエンターテイナーになるし、しょうがないか。サンデーの時もそれで厩務員さん怒ったそうですし」

 

 

 「ああ。親父が言っていたね。全く、馬は繊細・・・いや、ナギコたちは変わり種だとしてもそう対応するべきだというのにだらしねえし」

 

 

 「ただでさえ二冠馬になれても最後の一冠の前に疲労がたまる、怪我をして挑めない故に涙をのんだ名馬たちも多い。疲労抜きくらいしっかりさせてやるべきですよ」

 

 

 『そーそーでないと読書すらもゆったりできない。せっかくアメリカ文学を楽しんでいるっていうのに』

 

 

 トムソーヤの冒険とか、色々アメリカもいい作品多いよねえ。いやー後で牧場から本を送ってもらってよかった。英語読めないし。

 

 

 「そんでまあ・・・うん。今はナギコちゃんリラックスしているようですし、ボクも戻りますわ。最後の一冠。どうなろうとナギコは伝説になります。怪我はせずに気を付けて。それじゃ」

 

 

 『バイバーイ。ウチの記事盛りすぎないようにねー』

 

 

 「君も気を付けてね。いやーいい記者じゃないか」

 

 

 藤井さんを見送って、ウチもだべーって寝藁に寝転がる。ふわぁー・・・やっぱ、長旅の後だし、疲れあるなあ・・・うーん。寝よ・・・ふす・・・

 

 

 「おや、寝ちゃったか。一度寝ると数時間は起きないからねえナギコ」

 

 

 「おかげで疲労回復が早くて助かります。俺がそばで待機していますし、テキにビリー牧場長も休んでくださいや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『いよぃしょー! これでどうよ!』

 

 

 「ふむ・・・いいタイムだ。骨格的には直線向きとはいえ、これは悪くないな」

 

 

 「やはりコーナリング技術はケイジ譲りなのと、両親の血統が日本のダートですからねえ。柔らかい砂を蹴りあげる力に対応力も手にしているのでしょうね。何度見せられてもすさまじい」

 

 

 まあねー直線勝負がこのレース場では活きるんでしょ? 頑張るよ。今まではコーナリングが特に活きてたけど、ここのレース場、ベルモント競馬場は一周が大きい分コーナーが緩やか。つまりウチのコーナリングで戦うのが活きてこないし、直線が長い分スピード勝負になる。

 

 

 シンプルに強く、早く、位置取りをしっかりとやる。そういうまぐれも起きない、最後の一冠を手にするにふさわしい場所だってみんな言っていたし、サンデーとイージーの三冠最後の激突もコーナー番長なサンデーと直線番長なイージーで明暗が分かれたんだっけ。スタミナでもステイヤーなイージーにマイラー、短距離気味のサンデーとほんと対照的だよねー

 

 

 「ナギコちゃん。疲れはないかな? 今は人参やリンゴだけだが、このレースが終わったら大好きなバターキャンディーをあげるから、しっかりやり切るんだよ?」

 

 

 「俺からも新しいブラシと、本を買ってきている。こんな機会をくれたんだ。無事であればそれでいい。頑張れよナギコ」

 

 

 もー平野もひげ熊も心配しすぎだって。確かにウチの親父は脚の問題もあって岩手以外でのレースが厳しかったっていうけどさ、ウチはそういうのないじゃん? ちゃんと戻ってくるから夢見ていようよ♪

 

 

 ケイジもこういう気持ちになっているからこそ、ウチらに良く厩舎のこと話してくれたのかなあ。ふふふ。自慢話のネタが増えそう♪

 

 

 『にしてもあっついねえーアメリカ。なんか、少しムシムシしない?』

 

 

 「やはり五大湖の近くなのもあるのかな。汗が出るなあ・・・ナギコも汗をかいているし、熱中症になる前に休ませておこう」

 

 

 「ですな。いやはや・・・本当にいい子ですよ。ビリー牧場でもアイドルですし、一度帰国する際は荒れそうで」

 

 

 『あ、そっかあ。アメリカ、やっぱ色々規模がでかいのねえ。湖の影響での湿度もあるとか。日本じゃ琵琶湖? だっけ? くらいじゃないの?』

 

 

 ほふぁー・・・ま、汗流した分今はまたゆったりしたいね。まーた周りに記者が潜んでいるのウチの耳でわかるし、捕まる前に休みたいよー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『アメリカ最後の一冠ベルモントステークス! ここにやってきた優駿たちはいずれもアメリカ競馬の時代を担うスター候補たち! しかし、今年はそのスターたち以上に注目されるスーパーウーマンがいます! 日本のマイナーレースのみの血統であり、牝馬。しかしそんなこと知ったことではないとここまで無敗の10連勝! GⅠ4連勝! ジャパニーズスーパーウーマン! ナギコの三冠最後の戦いでもあります!』

 

 

 『ウェーイ! アメリカの皆見てるー? そして日本の皆。面白ニュース届けちゃうからねー? あ、はいシャッターチャーンス』

 

 

 ようやくやってきたベルモントステークス。アメリカ国内だけでなく、日本からも多くの人が来ているねー。いいねいいね。ケイジがお祭り、こういう騒ぎはいいものだと言っていたのがわかるな。

 

 

 『尾花栗毛の美少女でありながらその強さは我がアメリカの優駿たちをねじ伏せるすさまじさ。しかしそれもそうでしょう。彼女に技を教え、鍛えたメンバーはなんとあの日本の2012年クラシック世代筆頭のケイジ、ジェンティルドンナ! 世界最強格の走りを学んだ彼女が彼らに並ぶべく挑むこの舞台。気合は十分。歴史に名を残す女傑はここでも更なる成果を出せるのかぁあ!?』

 

 

 あーそっか。たしかちょっち前にケンタッキーダービーを制覇した牝馬はいるけど、確か3頭目? くらいだっけ? で、ウチが4頭目だし、そこから無敗でここまで来ているし・・・達成すれば確かシアトルスルーに並ぶんだっけ?

 

 

 うん。いいじゃんいいじゃん♪ それくらいやらないとウチの夢と、教えてくれたみんなに並べないしね。三冠。取っちゃうよー♪

 

 

 「この大歓声ですら気にしないか・・・お~ほっほっほ。相変わらずナギコの方が落ち着いているから私も落ち着くねえ。さ、やってこようか。君が今日の主役だ」

 

 

 「あかん・・・・マジで震えてきた・・・無敗の四冠、御前三冠を成し遂げたケイジのいる牧場から無敗のアメリカ三冠・・・しかもそれを牝馬で、地方の血統が成し遂げる・・・? もう。汗も止まらんわ・・・伝説見放題過ぎやろ・・・二冠の時点ですら歴史に名を刻めるってのに」

 

 

 平野もそうそう。いつものお姉っぽい笑い声が出ていい調子♪ あ、藤井さん。もー気にしないでいいのに。お祭り騒ぎを盛り上げて伝えるのが記者さんだし笑顔笑顔。ほら変顔―~

 

 

 「元気だなあ。しずか・・・じゃない。ナギコ。・・・・血は繋がっていないが、サンデーの取れなかった最後の一冠。頼む。取ってきてくれ・・・! 親父たちの欲しかった一冠、称号を見せてくれ・・・!」

 

 

 「ヒヒーン・・・」

 

 

 『もち。そのためにも頑張るよビリーさん。んじゃ、あっとでねー』

 

 

 ファンの皆さんもしっかりカメラで撮ってくれたと思うのでそのままポコポコゲートに移動。騎手さんはなんだっけ? サンデーレースで後半主戦を務めた伝説のお弟子さんだっけか。日本のマイナー血統&日本漫画オタクでウチを見るや興奮していたっけなあ・・・

 

 

 『伝説を更に塗り替える一戦となるか、それともこの日本からやってきた黄金の大和撫子にアメリカの、ダート世界最強レベルの意地を見せつけるのか。どうなろうが伝説となるこの一戦。いま、全頭がゲート入り収まりました』

 

 

 まあ、ウチの事は愚か、ビリーさんの牧場とか、ウチの牧場を応援してくれているし、悪い人じゃないからいいけどね。アメリカの競馬界は馬の血統は階級社会。それを考えればダートが少ないし砂。しかもそこで地方の血統のウチと戦ってくれた分有難いもんよ。

 

 

 さ・・・すたーと!

 

 

 

 『スタートしました! まず先頭を切るのはミュージックトーク、その後方にクリスエスタイプ、ブラックホーク、ラッシュアワーたちで先頭集団を形成。二冠馬ナギコは最後尾からの競馬となっています』

 

 

 あら? 結構スロー・・・ってそっか。アメリカだと2400が最長。日本でいえば菊花賞みたいなものだし、前目の競馬をするとはいえ少し仕掛けるのを抑えているのかな? じっくりじっくりやらせてもらおっと。

 

 

 『アイリッシュシアター、ファイアウォールが馬群の中ほどに入りながら第一コーナーに入ります。先頭は依然ミュージックトーク。続いてブラックホーク、イーグルトップガンが先頭を狙いハナを叩いて三番手。クリスエスタイプ、ラッシュアワーがその後についています。そしてそこから1馬身離れたところでアイリッシュシアター、ファイアウォール、ロックラックと続いております。

 

 

 第二コーナーを抜け、800メートルを通過。レースは早くも3分の1を通過となります』

 

 

 うーん・・・一応馬群を作っているっちゃあいるけど、前よりずっと間延びしているね。あれかなあ。アメリカトリプルクラウンは距離もだけど、日程が過酷すぎてそもそも挑めるメンバーも限られると聞いたことあるけど、それで疲労が尾を引いているのか、それとも長距離ゆえにスローを心掛けているのか、それともウチ対策?

 

 

 『さあ、1000メートル通過。タイムは58秒7 中々のペースです。そして、徐々にギアが上がっていきます! 先頭集団ハナを奪い場所どりを狙い始めています』

 

 

 「うーむ・・・・追い込みのナギコに併せてスタミナを残しつつ、今から仕掛けに行くか。・・・行くぞナギコ!」

 

 

 あいよピーターっち。早仕掛けはアメリカでは多いもんね!

 

 

 『さあ、ナギコもエンジンをかけていく! グイグイと後方から先頭の馬たちをぬかしていっていく! あっという間に第三コーナー手前の集団に追いついていく! この速度に誰もが追い付けなかった! 誰もが逃げ切れなかった! 金色の風が! 黄金の国ジパングからやってきた風がダートを駆け抜けて勝利を狙い始めたぞ!』

 

 

 ウチがアメリカで戦い、勝利していくたびに聞いた血統ゆえの通用しないという言葉。勝ってもなあという声を聞いてイラっと来たし、見返してやろうと思った。それに・・・ウチには目標があってここでの戦いを喜んで受け入れた。

 

 

 一つは顔も分からないまま天へと旅立った親父に、今よりもずっと昔なのにアメリカに届くと言われたおばあちゃんの強さを、日本が愛した岩手の魔王と女傑の強さを見せつけるため!

 

 

 『するすると抜けて、大外からのブンまわしで先頭に立つ! ラッシュアワー、アイリッシュシアターも追いかけるが差が縮まらない! ここまで、この距離で、最後の三冠までもを手にしてしまうのか! 日本の大和撫子が見せつける! 最後の直線に入って速度がさらに上がる!』

 

 

 そして、血統だけじゃ勝負が決まらないってのを見せつけるために! だってそれだけじゃ面白くないじゃん! いろんな可能性や勝負があってこそだって! 

 

 

 『もう止まらない! 彼女の走りに、力強さに誰もが追い付けない! ナギコグイグイ差を伸ばす! 鞭さえも使わずにこの強さ! 日本ダートの怪物の娘が! 今伝説を刻みに行く!』

 

 

 何より・・・ケイジ達に! あの伝説になるであろう皆に並んで、一緒に笑顔でいるためにはウチだって負けないほどの功績を手にしたい! 一緒に胸を張って最強なんだよっていうためにここの一冠も貰うし!

 

 

 女磨きの一つのゴール・・・・絶対に手にする!

 

 

 『ナギコが今ゴォール!!! 2着ファイアウォールに5馬身差をつけての大圧勝劇! タイムはなんと2分25秒ジャスト!! 届かなかったとはいえ、あのセクレタリアトのタイムに1秒まで迫るというスーパーレコード! 日本の地方から世界の頂点をつかみ取った! アメリカンドリームを手にしたワンダーガール! その名はナギコ! ジャパニーズサムライホース ケイジに並ぶ偉業を達成しましたぁああ!!』

 

 

 『イェーイ! うちの勝ち! アメリカ三冠。見事取れたよー!』

 

 

 

 『アメリカ三冠、しかも無敗となればシアトルスルーなどごくごく一部のみ! そこに牝馬で、しかも日本馬でこれを成し遂げるというまさに歴史的大波乱! ジャパニーズワンダーガール!! 君の走りが今歴史を刻んだ!』

 

 

 おおぉう。割れんばかりの歓声だねえ。すごいすごい♪ うちのファンだらけだねえー♪ ふふーどうよ♪ これが日本のダートの血筋だよ。弱くないっしょ? うちの親父も、とんでもなく強かったみたいだし、きっとできたであろうことを成し遂げられて安心安心。

 

 

 ふふふふ。・・・・・・・あれ? そういえば、ウチずっとアメリカで戦っていたけど、日本だと今年の年度代表馬に入れるのかな? アメリカには入れると思うけども。ま、いいか。今はこの優勝の気持ちよさと、歓声を浴びながら勝利の味に浸るのもいいものっしょ♪

 




 ナギコ無事無敗の三冠達成。次回のウマ娘エピソードはナギコにしようかな。


 ナギコ 無敗の三冠達成。伝説の一頭に。この後流石にずっと温泉我慢していたので一度帰国して温泉バカンスへ。アメリカンドリームを手にしたうえにトウケイニセイの子どもということもあって日米やばい騒ぎへ。


 ビリー ナギコを預かる代わりに一部賞金を分けてもらえる約束していた。三冠とるわ三冠最優秀賞でボーナス更に来るわでうっはうは。サンデーと親父さんの悲願も取ってくれて大感激。後で電話線がパンクするほどに牧場に電話が着て悶絶した。


 平野調教師 初重賞をアメリカで手にするどころか三冠調教師になった実感がわかずに数日何度も新聞を読み返した。この後温泉での湯治のために前田牧場で休もうかとナギコに伝えたらはしゃいだナギコのタックルで寝藁にふっとんだ。


 ひげ熊厩務員 ナギコを優しく労った後に裏で誰より号泣して喜んでいた。どこまで行けるかみたいではあるが、同時にナギコの血統を考えれば早くに引退させて血を残す方にも努力させるべきだしとホースマンとしての考えで少し悩んだ。


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ウマ娘エピソード 12 文学ギャルは駄弁りたい

 今回はナギコさんの日常。山無し谷無しですがよろしくお願いします。あ、ちなみに前田家のウマ娘は皆さん大変豊満なスタイルをしております。それでいて性格がナギコやケイジ、ヒサトモなどの時点であんな感じの性格が多いのでスキンシップ多め。多分デジタル殿が大興奮の絵面多数です。


 「ってことでー・・・このあえて未解決だからこその良さがウチは好きなの」

 

 

 「なるほど・・・確かにそのほうが考える余地もあれば、想像力を掻き立てられる。ふふ。未解決ゆえの終わりだったが、これはたしかに」

 

 

 金糸の髪を後ろで編みこんで専用の眼鏡をはずして嬉しそうにほほ笑む目の前のウマ娘と一緒に本を語らう。いつもそうだが、彼女の渡す本は面白いのだが、私にとっては読み終わることで終わりではない。

 

 

 「でしょー? それにどっちの方が上司だったのか、どういうやり取りがあったのか。この事件を通じて親交を深めた二人が晩御飯でどのような話をしたのか。お酒が入ってどうなったかも楽しみだよ。ニシシ♪」

 

 

 「ふふ。やっぱり心に残っているのが思わず出て事件を一から思い返しての推理大会になるか、もしくはそれ以外か・・・ナギコのこういう感想や考察があるから私も読み甲斐が増すというものだ」

 

 

 ナギコ。前田家の娘の一人であり、アメリカで無敗の三冠を達成どころか無敗のスーパーフェクタもたやすいと言われるほどの女傑。同じシリウスのダート路線の怪物ホッコータルマエ、ラニと共に世界のダート路線を荒らし回り、日本のウマ娘業界でもダートレースを増やしていく路線を作るほどに輝きを見せる金色のワンダーウーマン。

 

 

 いわゆるギャルという振る舞いや性格だが根っこは前田家の、義侠、愛情にあふれる性格で優しく、そして何より読書、推理小説や奇書を好む文学ウマ娘でもある。

 

 

 「いやはや。点と線。大変いい作品だったし、この時代だからこそ成立するトリックも刺激になったよ。ありがとう。ナギコ」

 

 

 「いいのいいの♪ ウチも読書仲間のハヤヒデっちがこうやって喜んでくれるのならバリ嬉しいし♪ なら、今度は何を借りていく? 今ある奇書だと農業生物学や武器軟膏。推理だとマープルシリーズにホームズがあるけど・・・・あ、そうだそうだ。ホームズなら確か6つのナポレオンだったかな。をケイジ達がアレンジというか、少し手を加えた演出動画もあるよ」

 

 

 「ではマープルシリーズを是非。あの作品は薬学のトリックを使うことも多ければ主人公のゆったりと構えた雰囲気が好きだし、思考と倫理の回転力、方向性を伸ばすために考えるいい本だ。・・・アレンジ? 6つのナポレオンは前に読ませてもらったぞ?」

 

 

 「そうそう。でも、あれは最後にホームズが種明かしをする感じで、道中は基本静かじゃない? だから、ホームズが各地で壊されたナポレオン像を回るたびにその場でどういう推理をしたのかって組み立てた考察劇場風動画をジャスタっちとゴルシっちと一緒に作ったんだって。データ渡すし、どう?」

 

 

 「ほう・・・では、そうだな。一つ頼んでいいかな? ホームズの冒険活劇な部分も好きだが、やはりそういう推理のロジックを見るのはワクワクするものだ」

 

 

 そして、関わるとわかるが、その文学の趣味もそうだが、読むだけではなく深く掘り下げていく姿勢や考察を楽しげに語る姿がまた好感を持てる。友達のウイニングチケットやナリタタイシンとは文学はどうしても学校の授業で習う範囲がせいぜいというのもあり、私にとっては大変貴重で得難い友だ。

 

 

 ケイジもそうなのだが、言動に反してこういう教養や知識の深さに面食らったのもいい思い出。二週間に一回の読書会や語らう時間が待ち遠しいほど。

 

 

 「あーわかる。ホームズは作者のドイル氏が本来そういうのを書きたかったんだろうなあってのをひしひし感じるし、強引な手段使う話は笑っちゃうよね♪」

 

 

 「まったくだ。逆にマープルシリーズは犯人の手口の薬品などもそうだが、そのやり方の恐ろしさがな。そして誰もいなくなった、を初めて見た時の衝撃と来たら」

 

 

 「犯人のえげつなさというか、周辺含めての業の深さだと私は金田一耕助かなあ。いやー獄門島に手鞠歌は絶句した」

 

 

 「む・・・ま、まあな・・・今の愉快な路線も含んだものと言えば、やはり明智小五郎のシリーズだろうか。助手くんが主役となって顔芸・・・じゃない。怪盗二十面相を追い詰めた時は思わずうなったよ」

 

 

 「その後メガトンコインされちゃったけどねー。しかし、ビワっちも大変だねえ。読書を楽しみつつも、それをレースのロジック構築の幅を増やすためにでもあるんでしょ? ウチそこまでリソース使って読書できないよー」

 

 

 「そうでもしないと勝利を手繰り寄せられないのでな。ここまでついつい考え込んでしまう。だが、同時にナギコが羨ましくも感じる。素直に読書を楽しめているのが私はまぶしいよ」

 

 

 目の前で次々と作品の話をしてはころころと表情を変え、その美貌の色を変えて輝くナギコ。私ももっと柔和に過ごし、皆と接したいのだがどうしても性根というか、生来の固い部分が顔を出す。ナギコの明るい部分を、チケットのああいう部分をよりモノにできればと思うのだけども・・・まあ、ここでもそういう志向になるあたり筋金入りだ。

 

 

 ここで嫉妬心の一つでも沸くわけでもなく、素直にそういえるのは救いだし、同時にナギコの人間性がそうさせているのだろう。

 

 

 「それをいえばビワっちのしっかり順序立てていきつつも、すぐにそれが難しいとなれば切り替える柔軟さもウチは大好きだし、尊敬しているよ? いやーもう馴染んだ走り、追い込みがベターになってその結果、うちのトレーナーももうこれ一本で暴れようかって言われちゃって。アッハハ!」

 

 

 「ふふふ。その一本であのセクレタリアトに1秒まで迫るタイムをあのベルモントで出したんだ。まさしく黄金の追い込みだし、傾奇者ケイジの一族だと言える。ナギコとは戦ってみたいとブライアンは良く話しているんだぞ?」

 

 

 「へー? ケイジ以外では基本やる気出さないのにねえ。いいよーと言っておいて? ウチ芝も日本芝なら問題なく走れるし、タイムも一応2400までなら日本レコードに迫れるし」

 

 

 「ほう・・・それはすごいな。その際は私も相手してもらっていいかな? 中距離の練習をしたいのだが、追い込みのエキスパートとの経験を味わいたい」

 

 

 「ケイジとゴルシっちよぶ?」

 

 

 「申し訳ないが何もかもが予測不可能な怪物たちはまだ関わるときじゃないのだ・・・ナギコだけで頼む」

 

 

 基本明るく、いいところを見ていきながら素直に伝えて支えてくれる。まぶしいが、同時に柔らかい光を持つ素晴らしい子だ。タイシンも素直に頼るときがあるくらいだ。かくいう私もデータや理論実践のために何度世話になったか。

 

 

 「でも、追い込みもワールドレベルなんだけどねえーいっか♪ あ、そうだ。中距離ならサー、今度強い子たちとも練習するし、その際のメニューも覚えて教えるから。そっちの練習も教えてね? ステイヤーのトレーニング気になっているし」

 

 

 「おお、ありがたい・・・が? む? むしろステイヤーとしてもケイジやゴールドシップもワールドレベルだろう?」

 

 

 「ケイジは軍仕込みと滅茶苦茶。シリウスもステイヤーケイジ以外基本いないからあんまりしないし、ゴルシっちもスピカでは練習さぼる機会多くてー・・・マックっちとスペっちから学んでいるけど、そっちのも知りたくて」

 

 

 「そういうことなら力になろう。やはり狙うのか? スーパーフェクタ」

 

 

 「モチ♪ それくらいしないとケイジに並べないしね。日本初の無敗の四冠に並ぶにはアメリカ史上初の無敗のスーパーフェクタを手にしないと。で、まあブリーダーズカップのためにもスタミナつけてその中で思いきりを叩き込めるように仕込みたいんだよねえ」

 

 

 軽く言ってのけるが、それを日本のウマ娘が成し遂げてしまえば前代未聞どころか、アメリカのウマ娘誰もが出来なかった快挙。あのビッグレッドたちですら出来なかったことをやるという。それをすればホッコータルマエ、ラニの活躍も相まって日本ダート界どころか一つのチームにダート世界最強が集いアメリカを超える事態すら起こりえる。

 

 

 そんな怪物と競り合えることや、糧を与えられる相手として見られているのは緊張するが、同時に光栄でもある。そして何より私自身の強さにもなる。我が妹、怪物ナリタブライアンに並ぶほどの強さを手にするにはこのくらいの怪物と並ぶほどでないと駄目だ。いや、むしろダートが本業の相手。日本芝もいけるとはいえ勝てなければ駄目だろう。

 

 

 ナギコに芝のレースで勝つ。それが改めて怪物に挑めるレベルの基準になるだろう。楽しい娯楽を提供してくれて、同じ本で語らえる友であり、同時に怪物であり、挑むレースは違えど競い合うライバル。本当に、愉快な子だよナギコ。

 

 

 「ふふふ。なら、しばらく引きずり回してやろう。言っておくが、2400と3000は世界が違うし、坂のないアメリカダートレースと坂のある日本レースでは色々違う。覚悟しておくんだぞ?」

 

 

 「坂は大丈夫だし、距離は気合で慣れていくよ♪ んじゃしばらくビワっちが師匠。よろしくぅ!」

 

 

 「ああ。こちらこそ。アメリカ仕込みのハイペースレースと追い込みの合わせ技。学ばせてもらう」

 

 

 ぜひとも無敗のスーパーフェクタを手にしてきてほしい。そして、その技量で私も鍛え、学んで貴女に負けないほどのウマ娘になって見せる。そうすればブライアンにもタイシンにもチケットにも負けないライバルとしてより自信を持っていけるはずだから。

 

 

 まあ、今はそのための小休止として借りた本へと胸を弾ませるのだが。いやはや、今日の本はどのような物語か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ほいさっ・・・ほーいさー・・・あー・・・マシントレーニングもやっぱいいわぁあー・・・補助付きなのもだけど、しっかりバランス狙えるのがグッドー♪」

 

 

 「うわぁーぉ。やるねえナギコ。アタシはこんな重いやつをガンガン上げるの無理ー」

 

 

 ほふぁー・・・あー・・・今日は走るのを抑えてボディバランスを調整するためのトレーニングをジョーダンっちと一緒に練習中。で、まあ空気は日本の方がウチには合っているなあやっぱり。でもレースの主戦場はアメリカだし最低でも一年のうちの数か月はアメリカ・・・ビリーさんや平野には感謝しているけど、真面目に英会話辛かった・・・

 

 

 ケイジ達から好きなドラマの海外翻訳入り、字幕で必死にリスニングしてどうにか受け答えするくらいにはできたけどさー真面目に変な回答できないから気を遣うわ!

 

 

 あの国は本当にエンターテイナー以外でも何もかも動く金や盛り上がりがすごい分、ほんとうまく盛り上げないと駄目なんだよねえ。そこらへんは好き放題しつつも盛り上げるケイジがマジ羨ましい。

 

 

 「えー? でもやっておいたほうがいいよ。シチーっちもだけど、モデルやレースで外部露出する分身体も整えたほうがいいし」

 

 

 「ん、まーそうなんだけどさ。汗臭いのをしすぎるのも・・・ナギコと話せるのは楽しいけどさ。筋トレの仕方も結構分かりやすいし」

 

 

 「アメリカ、結構お偉いさんとの会談場所がジムとか意外とあるあるなんだよね。鍛えている人が多いし。とりあえずプロテインのメーカーと味の話からレースでのパフォーマンス相談とか多かった」

 

 

 で、ジョーダンっちはまあ、汗臭いとか努力はめんどくさがるときがあるからダチで、筋トレやメディア露出を本場アメリカで鍛えられたウチが相手すれば自然とするし効率も上がるだろうってことであっちのトレーナーさんから頼まれて今日は一緒に友情トレーニング。

 

 

 ラニが暴れるのに関してはケイジとホッコーが抑えてくれるし、大丈夫でしょ。まさかアメリカでゴジラコラが作られてあまつさえグッズ化するとはたまげたなあ。予備含めて3つ買いました。いい出来だし、バズりまくってほしいなー。うちの妹分みたいなものだし。

 

 

 「ウェーかったるというか、あーでも、かたっ苦しいドレスとかしない分ちょっち楽かも?」

 

 

 「そうそう。まあ、その代わりに別の意味での視線も増えるけどね。ナハハ♪ ま、もう少し頑張ろ。ジョーダンっち。ピンポイントで鍛えられる分体のバランスも綺麗に整えられるし、シチーっちの出る雑誌の服奇麗に着こなすためにもね。肩の筋肉とか鍛えたほうが見栄えするよ?」

 

 

 「はいはーい。頑張ればアタシもモデルの仕事来て、シチーの悩みをその場で聞けるかもだしねーじゃ、とりあえずこのマシンで・・・」

 

 

 そうそう。実際、ジョーダンっちはネイルやアクセを良くつけるから指が太くなるとか言って筋トレ渋っていたようだし、指に必要以上に負担をかけないようなやつで・・・

 

 

 「こうやってね? ほい。ここの筋肉鍛えるよ~」

 

 

 「はーい・・・・どう? 意識しているけど」

 

 

 「利き腕の方に力入っているから反対の肩周りに負担来ていないよーもう少し修正してーそうそう」

 

 

 「指はこれくらいでいいの?」

 

 

 「いいのいいの。あくまで引っ掛けるだけ。軽い負担で肩を意識しながら引き寄せて―? バリ来てる来てる」

 

 

 やっぱ、頭の回転も速いしセンスもあるから飲み込み早いなあ。ぐんぐん筋トレのやり方を効率化している。・・・・・・・なんでこれでウチに教えてもらうくらいテスト毎度ギリギリなんだろう? あれかなあ。思考の回転スイッチ入るベクトルが偏っているのかなあ。

 

 

 ま、いっか。動かしたかのフォームを見ながらウチもずれがないか確認できるし。

 

 

 「はーいそこまでー、プロテイン持ってくるからーほぐしながら釣らないようにしていくんだよ?」

 

 

 「軽くでも、数をこなせば来るねえー・・・あっづー・・・あー・・・おいし。あ、ヨーグルト味? んふふ。これは癖になるかも♪ マジ感謝」

 

 

 「アメリカで日本人向けのショップで見つけてさー甘さはあるのに溶けやすいし、飲みやすいから愛飲してんの♪ もー滝汗だらっだらの後にシャワー浴びてさ。冷んやりのこれ飲むと、マジ最高よ? よければ今度知り合いの銭湯か、ウチの家でひとっ風呂浴びてからどう? もちトレ後に」

 

 

 「ならナギコの家に行ってみたいな。すっごい豪邸なんでしょ? しかも日本屋敷。こういう詫び寂びに触れるのってあこがれるし、写真撮らせてよ」

 

 

 一緒にプロテインを飲みながら器具を拭き、タオルで汗拭きながら移動。筋トレ後にはすぐプロテイン。そして柔軟。そしてシャワーキメて着替えて風を浴びるのが最高なのよ。本当は温泉がいいけど・・・明日の朝練があるから家に帰っての長風呂できないしなあートホホ・・・

 

 

 「イッタ・・・・あづづ・・・やば・・・これ深いかも・・・」

 

 

 「どうしたのジョーだ・・・うっわ深くいったね・・・テンション上がって腕強く振っちゃったのかも?」

 

 

 「そうかも・・・あー・・・これどうしよ・・・明後日にシチーと一緒にネイルやマニキュアの新作巡りに行く予定だったし・・・その際に塗りあいっこもしたいのに・・・」

 

 

 移動中に何かに指をぶつけちゃったジョーダンっちの爪にヒビが入っている。あらー・・・ただでさえ爪が割れやすいのに筋トレ後にハイテンションで歩いていたせいでウチらウマ娘のパワーで何かにぶつかればねえ。

 

 

 うーん。血は出ていないけど、これは下手にネイルとかの薬品が入っちゃうのはなあ。

 

 

 「ならウチがどうにかできちゃうし、一度指先を軽くでいいから消毒と洗浄しておいて。その後にハンカチで綺麗に拭いておいてよ?」

 

 

 「? わ、分かった。はー痛かった・・・」

 

 

 ジョーダンっちが洗っている間にウチのカバンから救急キットを出して。と。あったあった。それらを取り出してジョーダンっちのそばに移動。

 

 

 「はい。爪出して。塗るよー」

 

 

 「うぇえっ!? 接着剤!?」

 

 

 「ああ、大丈夫大丈夫。医療用のものだし、何だったら軍隊も使用しているもの。爪の割れ目を塞ぎながら治癒力を高めて、ばい菌入らないようにしている」

 

 

 「はぁー・・・便利なのね・・・最近の医療の進歩スゴ・・・あ、固まったかな?」

 

 

 「なら、しばらくすれば完全に固まるし、お風呂入っても大丈夫だから。爪が伸びればそのまま爪切りで切っていいからね」

 

 

 ケイジが軍の教育課程にぶち込まれた際に気に入って前田家は定期購入しているものだけど、マジで骨折した部分への添え木の固定とか、こけてしまったり、日常生活でもパワーのせいで怪我した部分をすぐに塞げて便利なんだよねこれ。

 

 

 確か・・・デルタフォースとグリーンベレー? あと爆竜大佐の方でもしごかれたって言っていたなあ・・・何でこうして学生出来ているんだろうね。

 

 

 「はぁー・・・あーこれならいいかも。サンキュナギコ。代わりに今度ご飯奢るよ♪」

 

 

 「いいの? なら、この接着剤あげるからハンバーガーショップの新作食べさせてよ。んふふー久しぶりに照り焼きの味が恋しくて恋しくて♪」

 

 

 アメリカのバーベキューな味もいいけど、やっぱ醤油味が恋しくなる。後味噌汁。今度のアメリカ遠征ではお徳用4パックもっていく。平野と一緒に保存食をスーパーで買いあさる・・・何で緑茶も甘いの多いのよ! 玉露かってーの! あの渋さ、苦さに甘味が合うの!

 

 

 「いいよいいよー? この前のレースでも勝利できて賞金もがっぽりだし、先輩に奢られなさい♪」

 

 

 「ゴチになります♪ あ、その時にさーパーマーっちとヘリオスっちも呼んでいい? ギャル友で集まりたいし、中距離組でいろいろ話したいし」

 

 

 「あ、ならシチーも呼んでいい? 仕事後でいろいろ気疲れあるだろうし吐き出させてあげたくって。何か面白い本とかあればついでに持ってきてよ」

 

 

 「アイマム。んー・・・なら、パンジャンドラムの元ネタか。詫び証文か。あ、あれもいいかもなあ。タイタニック号に関わる世界一豪華な本と言われたものの話も面白いかも」

 

 

 この後、なんでかコサックダンスの練習をしていたゴルシっちとケイジに見つかり、クイズ大会をする羽目になってと愉快なことになった。いやージョーダンっちとゴルシっちの漫才にケイジやジャスタっちと一緒に腹抱えて笑った笑った。 




 ナギコは基本練習以外は本の虫になっているか、コスメやおしゃれをしている感じですかねえ。見た目はアクション対魔忍より エミリー・シモンズをより若くしたイメージ。前田家の女性とウマ娘は大体同学年を中心に初恋を奪ったり色々刺激を与えすぎること多数。


 ナギコ シリウスでホッコータルマエと双璧を成すダート界のスーパースター。アメリカでセクレタリアトやマンノウォー、ナスルーラと仲良くなったりしている。遠征の度に持ち込む本と食材で毎度苦労している。ケイジには惚れている。


 ビワハヤヒデ 読書仲間ということでナギコと仲良し。明るく元気。心底楽しそうに過ごすナギコを羨ましく思い、習うべきだとよく接している。後日ナギコの追い込みの滅茶苦茶具合を肌で感じて色々疲れ切った。


 トーセンジョーダン ギャル仲間。よく一緒に遊ぶしゴルシたちに巻き込まれている。ギャルだけどなんやかんやお嬢様なパーマーと似ているなあと思われている。この後爪質に合う医療用接着剤を弱めたものを貰ってうっきうきに。




 平野 ナギコのトレーナーでシリウスのトレーナーの一人。ナギコに振り回されるが、文学や様々な教養を持ち、才能を磨くことを好むナギコを真摯に支える。お姉口調を良く出してしまう。


 ビリー アメリカ中央トレセン学園トレーナー。実家はテキサスでトレセンへの塾、ジム。教室を運営。ナギコやシゲルスミオをアメリカに招いた本人。アメリカがダート界の頂点だと自負しているし、芝でも欧州とぶつかれている。が、外部からの刺激や磨きあいもあってこそのレベルアップや最強。そしてエンターテイメントだという考えで彼女たちを招いた。ナギコの暴れっぷりには爆笑した。


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ちょっと熱いんじゃないの~?

 いろいろあって休みが増えました。可能なら連投したいですねえ。でも同時に心身ちょっと病んでおります。


 ポケモン剣盾今更ながらやって楽しいですねえ。ムゲンダイナをもしフラダリやゲーチスが見つけていたらあのやべー兵器の威力もっとやばくなっていそうですよね。真面目にローズ委員長が見つけたのはかなりましな方という。間違いなく偉人レベルの鉱石を上げた傑物に一地方の1000年先のエネルギー問題の解決の見通しさえも立たせられるほどのエネルギーを持つポケモンですし。


 新シーズンの競馬も盛り上がっていきそうですし、このままいろんな名馬たちのバトルと面白いエピソードが増えてほしいと願う今日この頃。ソダシちゃんどうか無理せず頑張って。


 「ナギコ無敗のアメリカダートトリプルクラウン制覇。岩手の魔王の娘が世界を取った・・・いやはや、素質馬だとは思っていたが、平野さんの判断は正しかったわけだな」

 

 

 『だなぁー真面目に日本ダートだとぼちぼちホッコータルマエとどっかでぶつかっていたし、才能を潰さず伸ばすというのが功を奏したか』

 

 

 「まさしく女傑。黄金の姫君・・・ふふふ。私の大好きなスカーレットちゃんを思い出しちゃう。緋色の女王。かっこよかったなあ・・・お母さんと同じくGⅠ馬になれて」

 

 

 日本中でまた全国紙の一面を飾る競走馬。今回は俺やゴルシじゃなくてナギコだけどな。皆で見ているが、土煙を上げながら駆け抜ける尾花栗毛の姿がきれいに映えていやーいい絵だ。

 

 

 なにせ中央ダートGⅠも優にとれる才能。メイセイオペラの騎手さんも彼の方がすごい。と言わせるほどの怪物でありながら脚質の問題で岩手から出られなかったトウケイニセイの娘が日本ダートどころか本場アメリカのGⅠどころかトリプルクラウンを無敗。GⅠ5連勝を掲げるという前代未聞の大騒ぎ。

 

 

 一度牧場で休んでから今度はブリーダーズカップに挑むと公言しちゃったのでその前後のアメリカの航空便が安くなるキャンペーンもあるんだよなあ。予約も既にあるそうで景気のいいこって。

 

 

 「まあ、代りに前田牧場にまた人が押しかけて大変だそうだからなあ・・・警察官も大量に来ての記者対応や失礼な客を追い出したりでケイジの次の放牧の際には引いていればいいが」

 

 

 「競馬ブームが来てくれるのは嬉しいですが、やはりそういうところは嫌ですね・・・・ナギコちゃんもケイジ君もゆっくり休めないです」

 

 

 「むふぅー」

 

 

 『まあ、そろそろ真面目にマスメディアたちはマナーをわきまえないとどうなるかわからんな。一般の人達は・・・ま、警察にお世話になるかも?』

 

 

 ただまあ、俺とナギコが同じ牧場で、ナギコもまた日本競馬ダートレースの怪物たちの直系筋なのもあるし、ナギコが文字通りその魔王の血を繋ぐ立場なのもあってある意味俺以上に色々沸いている人も多い。

 

 

 血筋も日本では主流じゃない子たちなのに有望株ばかり出すものだからなんだこりゃあと言われたりね。ほんと、そういうのはちゃんと予約してからこようね。その上でマナーはしっかりと。

 

 

 「ま、それはそれとしてだ・・・ウチも運営からゆったり休んでもいいから出るレースは全てGⅠで出てほしいと頼まれたし、ケイジに私も最強の一冠を渡したい・・・宝塚を狙うぞ。ケイジ。真由美ちゃんも頑張ろう。ゴルシへのリベンジだ」

 

 

 「はい・・・! 競馬上半期の最強決定戦! 天皇賞に続いてここも取れれば春古馬GⅠのうち二冠も取れますしね!」

 

 

 『俺もリベンジしたいし、是非是非。あ、それとプール連れて行ってくれよ。そろそろ熱くなってきた季節でプールが恋しいんじゃ―!』

 

 

 「おお、ケイジ、休憩はもういいのか? よし、プールに行きたいんだろう? 真由美ちゃん。お風呂の用意と、ご飯の方を。水は多めでお願いね」

 

 

 「了解ですテキ。ケイジ君もプール満喫しすぎて夏風邪ひかないようにねー」

 

 

 『へーい。真由美ちゃんも水をこぼさないように焦らずナー』

 

 

 小休憩も終わっていざ練習再開。と言っても、坂路やらウッドチップで朝からずっと走ってきたし、流すというか、筋肉ほぐしながらのプールトレーニングへいざ鎌倉。温泉もいいけど、あの心地よいひんやり感もいいよね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うーん・・・・どれがいいかなあ。ケイジ君。私はこういうのも・・・」

 

 

 「ヒヒン」

 

 

 『馬に松ちゃんとのデートのための衣装聞くとか相当変態だぜ?』

 

 

 「青春だねえ。うーん。俺はこういう抑えめなのもいいと思うけどなあ。真由美ちゃん美人だし、奇をてらいすぎるよりは」

 

 

 なんやかんやと6月に入るころ。初夏の空気が漂う中で俺と久保さんは真由美ちゃんのデートと、宝塚記念の時真由美ちゃん休みになっているので観戦するための勝負服を選ぶ・・・ことが出来なくて、真由美ちゃんが俺と久保さんにどれがいいかと大型タブレットや写真を持ってきて選ばせている。

 

 

 確かに俺新聞見るし、漫画の好みな女性キャラはかわいいなあってなるけどさ。朝のブラッシングと食事を終えてからの開口一番に『ケイジ君。松風さんはどういう衣装がいいかなあ』ってスマホ見せられた時は変顔すらする余裕なかったわ。

 

 

 『普段から肌隠しているんだし、少しくらい出したっていいだろ。そーの胸と白い肌さらして誘っちゃいなよ。黒髪長く伸ばしている上にウェーブ掛かっている分映えるぜー?』

 

 

 「う、うわぁ・・・肩だしで・・・は、恥ずかしいかなあ」

 

 

 「白のワンピースだし、似合いそうだけどねえ。どこぞの令嬢みたいだ。うーん。それなら黒一色のコーディネートで、ジーンズに肌を隠すために外見は厚地だけど、薄地で通気性のいいこれは?」

 

 

 『それ黒の厩務員さんの衣装に見えなくもないかなあ? この前伊馬波さんがゴルシにシャツ破かれる際につけていた革ジャン思い出したわ』

 

 

 まあ、俺そういうセンスはないけど野郎の意見出すだけでも助けになるのならということで付き合っているけどねー。基本俺ら馬のために日々頑張ってくれているんだ。こういう時に支えないとね?

 

 

 ただ、真由美ちゃんオタク気質でおどおどしているんだけど、普段からオシャレよりもけが防止の長袖。オフの日でも基本芋ジャージや緩い私服で自宅。最低限の筋トレかストレッチ。マンガを見たり動画を見るくらいでオシャレに関してというか、肌を晒すことの耐性も無いみたい。自分で過激な衣装も見せるのに俺が藁でこれは? とつんつんしてもわたわた赤面して拒むんだよね。その顔松ちゃんに見せなさいよ。イチコロだぞ?

 

 

 「あ、こ、これはいいかも・・・地味ですが肌も隠せるし・・・私、すぐ肌が赤くなっちゃうので」

 

 

 「それなら尚更露出の多い衣装は駄目だねえ。なら、これにジーンズ、緩めの方が蒸れなくていいかな?」

 

 

 『あーならさーそれの下にカットソーを着けてしまえばいいんじゃない? 首より下、胸元鎖骨を少し見せるだけでも変わると思う。髪の毛のボリューム真由美ちゃんあるし、白がいいかね? 黒一色よりは少し違う色があるだけでも変わるし、視線行かない?』

 

 

 「お、これならいいかもなあ。シンプルだが、普段の少し出かける時にも使いやすいし、洗濯しやすい。ジーンズとカットソーはここのメーカーがいいなあ。安くて頑丈なんだよ。あちこちで仕事していた時もお世話になった」

 

 

 地味な子がちょっと勇気を出してのお買いものかあ。なんやかんやいい感じになりそうだし、ちょっとした遠出にも使えそうだしでいい感じ~真由美ちゃんもこれならとワクワクしている感じが出てきた。

 

 

 「よ、よし・・・これなら予算も十分に余るし・・・ありがとうございますケイジ君。久保さん」

 

 

 「いいのいいの。むしろ普段の服のセンスがない俺の意見が助けになったのなら幸いだ」

 

 

 『そうそう。俺みたいなマンガや本、歴史好きの馬の意見が助けになったのならねえ。普段のお世話の礼だよ』

 

 

 真由美ちゃん定期的に俺の漫画で読み終わった本を入れかえてくれるんだよな。好みの漫画でいいのがないかと聞いて、俺が気に入ったら自腹で持ってきてくれる。久保さんもそうだが、ありがたい話だよ。まあ、同時に俺とナギコ、ヒメは馬房に本棚と本を読むためのトングがあるのでなんだこりゃあと言われる始末になったがな。

 

 

 ともかく、そんないい子が春を味わってくれそうで幸い。松ちゃんはいい男だし、お似合いのカップルだよ。早いところ松ちゃんもっと稼いで真由美ちゃん貰っていけ。寿退社しても松ちゃんからのろけ話を聞かせてもらうからなぁー? そこまで早く結婚するか不明だけど。俺が引退した後ででもいいから教えてくれよなー

 

 

 「後は化粧品も少しだけお高いのを・・・」

 

 

 「お、みんな揃っているな。真由美ちゃん。今日は半休でいいよ。久保君もいるし、今はうちの厩舎もみんな引退して数もいない。オシャレの用意をしてきなさい。お給料は引かないでおくから」

 

 

 「え!? ・・・あ、し、失礼しました。でも、テキ・・・あの、流石にお給料は引かないと・・・」

 

 

 「なら後で私の気持ちということでもらっておきなさい。毎日頑張っているし、それにオフでくるとはいえ宝塚記念を見に来てくれるんだ。ケイジ陣営がしっかり晴れ姿を見れるように時間を作ったと思えばそれでも問題ない。こういう時は素直に甘えておくべきだよ」

 

 

 「そうそう。それに、今から暑くなってくるんだ。スタミナを着けつつ、日焼け止めとかも用意しておいたほうがいいよ」

 

 

 テキの言う通り。せっかく美人で頑張っている。素敵な子なんだ。女を磨いて美しさを輝かせちゃえばいいのよぉ。でないとムランルージュにでもぶち込んでオカマの皆さんのコスメとエステ講義聞かせるぞ。

 

 

 「あ、ありがとうございます! あ、そうなるとやっぱりジーンズでは失礼だし、良い感じの・・・」

 

 

 『それならこのロングスカートにシャツの組み合わせでいいんでない? カジュアルだし、白いシャツが映えるぜ。後はアクセサリーで勝負よ勝負』

 

 

 「ケイジの指示するこれがいいかもなあ。あ、そろそろ松風君来るし、サプライズのためにも裏からこっそり出ていくといい。おめかしして、ゲットしちゃいなよ!」

 

 

 「くく、久保さん! わたしはそうい・・・い、いえ・・・あ、ありがとうございます・・・!」

 

 

 顔を真っ赤にしながら急いで裏口から松ちゃんに見つからないように出ていく真由美ちゃん。買い物のためにメモした雑誌握力でくしゃくしゃにしちゃっているけどちゃんと買えるかねえ? 

 

 

 そんで野郎二人と一頭で『青春だなあ・・・』とほっこりしているとその真由美ちゃんの意中の方松ちゃん登場。よっ。色男。

 

 

 「お疲れ様ですテキ。久保さん。ケイジ。今日もよろしく頼むよ。とはいえ軽くだけど」

 

 

 「おお、いやいや、そちらも別の厩舎の騎乗依頼で飛び回ってお疲れ様。いやはや、地方交流のオープンや重賞も勝てるようになってきて本当に一回り二回りも大きくなって」

 

 

 「ケイジや皆さんのおかげですよ。それに、本当にここでの一戦一戦が僕にとっては一気に何十戦もするような経験になりますから。お、ケイジ。今日は何を・・・通販? 何を見ていたんだい?」

 

 

 『んー・・・恋愛マンガ? まま、良いじゃないのそれよりほれほれ。午後の練習イクゾー』

 

 

 馬房から出してくれーアピールして、久保さんが出してくれたんで馬具を装着してもらってから松ちゃんを乗っけていざ練習。体重を絞りつつも骨は強く太く。衰えさせないぜー?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふふふ・・・いやあ、二度目の宝塚だなあ。ケイジ。二年連続で挑めるなんて、凄いことだよ」

 

 

 『ファン投票合計で500万票集まったんだっけ? 競馬ブームやべーよなあ。俺とゴルシでそのうちの300万分けているのがほんと爆笑したけど』

 

 

 練習もひと段落し、クールダウンしがてらゆったりポコポコお散歩タイム。ああー牧草以外の草木の香りがいい気分転換になるぜ。プチ森林浴というか。

 

 

 そして、全くだ。もう古馬になって久しい。衰えやら、いろいろ言われたりとか新世代も出てくる中で人気トップでまた挑める権利を得られるとはなあ。いくら獲得賞金があろうとも人気がなきゃあ挑めない舞台。そこにチャンスが来るってのはほんとありがてえ。

 

 

 「今年こそ挑んで、勝ったうえで凱旋門賞に挑む。怪我もしない。ケイジと一緒に戦えるジョッキーなんだって見せていくんだ・・・!」

 

 

 『そうよそうよ。その意気だ。騎手人生10年も行かねえのにGⅠ9勝している天才なんだ。世界にだって通じるんだって本場でも見せつけに行こうぜ!』

 

 

 「それに。そうじゃないと僕を信頼してくれている皆に申し訳が立たないしね。種牡馬入りしてもいいはずのケイジなのに、僕と君で出来る限り戦ってほしいと言ってこうしていられるんだ。宝塚、頑張ろう!」

 

 

 『おう! あ、ところで松ちゃん。これ食べていい?』

 

 

 一緒に気持ちを燃えさせて明日への気炎も用意していい感じ。なところで少し小腹が好いちゃったので移動中に見える草を発見したので食べていいかと首をあげる。

 

 

 いやー動いた分お腹減るよね。

 

 

 「あ、こらケイジ。もう少しで厩舎なんだし、我慢しないと。蓮君も来ていて、バナナの差し入れがあるようだぞ? 後パイナップル」

 

 

 『え? そりゃあ―我慢しないとだなあ。ありがと・・・おー蓮君。おげん・・・またでかくなっていないか?』

 

 

 この後、また蓮君と一緒に遊んでいたら松ちゃんのケータイにメールが着て、オシャレをした真由美ちゃんの写真が来て、松ちゃん顔真っ赤にしていたぜ。

 

 

 蓮君もすげーなーと言っていたけど。お前さんもイケメンで背が高いんだし、惚れるクラスメイトとかいないの? という感じでつついてみれば逆に背が急に伸びすぎるわ家に戻っても成長痛が辛いし野球漬けでなかなか難しいという答えが返ってきた。

 

 

 ほんと、プロを志す、プロになって上を目指す皆も支える人もみんな大変だなあ。せめて俺の回りの皆に元気を与えられるように気張りますか。待ってろよ。宝塚!




 ケイジもリベンジへ。ゴルシの宝塚に連覇を阻んで春古馬二冠を手にするために頑張っております。


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漫才やってんじゃねえんだぞ 宝塚記念(GⅠ)

 ブリーチの班目一角が主人公の小説大好きです。拳で戦うわ砕蜂の師になるしで面白い展開多数。きっと原作よりもマイルドで気のいいお兄さんという感じで一護にも慕われそうですよねえ。


 『あっづーいやーきついぜー』

 

 

 『だなあー暑いのは嫌だ・・・はーお風呂入りたい・・・』

 

 

 さあ、やってきました宝塚記念。とはいえ、暑いのなんの。今一緒にパドックでトーセンジョーダンと一緒にぐーるぐる。

 

 

 『あ、ヴィルシーナちゃん。今度オイラとお茶しない?』

 

 

 『私たちお茶飲んだらレース出られませんよ? どこでそんな言葉覚えたんです?』

 

 

 『あの白饅頭は・・・! もう。ほんと騒がしいですわねえ』

 

 

 その中俺らの同期は相変わらず愉快でえーございます。ジャスタも安田記念取って景気がいいし、ゴルシもうっきうきなんだよなあ。相棒が勝っているのと、多分女の子たちに出会えているからだろうけど。

 

 

 あ、それとヒメもばっちり勝利。俺のデビュー戦に乗ってくれた梅・・・梅沢君が主戦騎手になって見事10馬身差で勝利。的矢さんお口あんぐりだったそうな。

 

 

 『そういえばさ。ケイジの家にようやく来た? 女の子。あー・・・ブラウトにミレーネちゃんだっけ。どんな子なの?』

 

 

 『ナギコ曰く小美人からの艦これの愛宕と高雄だったかなあ? 4歳なのもあってお姉さんって感じなんだけど、ナギコをリーダーとして従っているんだって』

 

 

 『何を言っているかよくわからないが、良い女の子なのは分かった。いいなあーお前さんの牧場。美人さん多いみたいで』

 

 

 『生殺しだよこっちからすりゃあ。俺の場合放牧で戻ることも多いけど、なんでか牝馬と一緒になる機会が多くてなあ』

 

 

 俺の場合、レースへの調整に時間を使って一戦一戦への質を高めるってやり方をしているらしく、この後のローテも精々年末が少し忙しいくらいでこの後は凱旋門賞までかなり間空くしなあ。これ終わればまた牧場で放牧。温泉浸りだ。やったぜ。

 

 

 『何で一緒になる機会多いの?』

 

 

 『分からん』

 

 

 『あ、ケイジ。そんでジョーダンまたお前かよー今度こそしばいてやる!』

 

 

 『貴方たちこの狭いパドックで暴れているんじゃないですわ!』

 

 

 『ぬおっ! お前らバタバタするんじゃねー! ゴスゴス当たるんだよぉ!』

 

 

 『おおっと。またもやゴールドシップとトーセンジョーダン。パドックで喧嘩を始めようとしますがジェンティルドンナとケイジが間に入って抑えております。今回集まった13頭の優駿たち。

 

 

 3200mワールドレコードも記憶に新しいケイジ。史上初ドバイシーマクラシック連覇を成し遂げましたジェンティルドンナ。ヴィクトリアマイル連覇を成し遂げ好調ヴィルシーナ。天皇賞(秋)の勝利馬トーセンジョーダン。そして連覇がかかっておりますゴールドシップ。彼らのレースを見ようとここ阪神競馬場も満員御礼です』

 

 

 まったく。ドバイで暴れた牝馬コンビも来てくれているってのに、いつも通りだぜこいつら! ぬぉお! ジョーダン! 蹴る準備をするんじゃねえ―!

 

 

 『このやろー! 今度こそ蹴るって決めているのに―!』

 

 

 『かかってこいやゴルシぃ! 今度こそ白黒つけてやるからな!?』

 

 

 『ケイジとのレースの前に余計な体力を使わせないでくださいません!? ああーもう! 厩務員さんも大変ではないですか!』

 

 

 『あらー・・・本当に仲が悪いのですねえ。この二人・・・喧嘩するほど仲がいいとは・・・?』

 

 

 『あれはそうじゃねえなー・・・ぬぐっ! ええい落ち着かねえかお前さんら! レースでけりつければいいだろうがよぉ!』

 

 

 『おっとケイジが嘶いてゴールドシップとトーセンジョーダンが喧嘩をやめました。解説の岡崎さん。ケイジは普段からこういう役割を?』

 

 

 『そうですね。ケイジの場合、頭がいい分ボスがどうこうというよりも基本なだめて落ち着かせることが多いです。放牧で帰る前田牧場が半ば静養牧場なのもあっておどおどしたり、落ち着かない馬や過ごす馬たちの入れ替わりが激しい分こういう対処に慣れているかもしれません』

 

 

 あ、今日の解説岡崎さんなんだ。月に二回ほど前田牧場に来ては雑用しつつ温泉に浸かったり俺らを見に来たり、最近はブラウトやミレーネちゃんの様子を見ているんだっけ。

 

 

 そんで、ようやく収まったかお前さんら。まったくよーほかの馬たちドン引きしているじゃねーの。

 

 

 『ゴルシ、お前さんも、馬鹿するならゲート側くらいにしておけ。やるんなら、走りで。な?』

 

 

 『へーい。ジャスタも絶好調だし、おいらもケイジに勝って今年の箔をつけないとなー伊馬波さんに山盛りバケツ人参盛りを貰って食べるんだぜ』

 

 

 『そしてケイジとゴールドシップの変顔や頭をしきりに動かしながらの挨拶。今日は大人しい方ですが、それでも舌をべろんべろん出しての顔芸騒ぎ。今日もカメラのシャッター音が聞こえます』

 

 

 『ここまでカメラに動じないのはオグリキャップやルドルフを思い出しますね。おや、二頭もまたカメラに視線を向けての大きく立ち上がってのポーズ。綺麗にシンクロするとは・・・併走を最近したという情報は入っていないのですが』

 

 

 いぇーい。喧嘩騒ぎもいいけどこういう騒ぎがいいぜーおお、お客さんも暑い中だってのに気合が太い!

 

 

 「ケイジちゅわーぁん! 頑張るのよぉー! アチシたちがついているわー!」

 

 

 「ムランルージュ夏の関西旅行! その目玉プランの一つ。2012年世代対決! 頑張ってねえ―! んーまっ♡」

 

 

 「ケイジちゃぁーん! ファイト! いつも通りぬるぬる動き回ってレースでも引っ掻き回しちゃってー!」

 

 

 で、またお前らかムランルージュの皆さん! オカマの密度増えているぞおい! しかも舞妓さんの衣装で来るとかよく許可されたな!? うぅーん投げキッスの迫力よ。あ、そんで手前の方に真由美ちゃん。おおーシャツに赤いロングスカート。ブローチが映えるねえ。

 

 

 「ケイジ君ファイト―・・・ゴルシ君たちも。あ、写真写真。後で絵のネタにも・・・」

 

 

 相変わらずだなあ。松ちゃんが来る前に取っておけよー。さてさて、騎手を乗せる場所にヨッコラショ。

 

 

 「今日も調子良さそうだなあ。ケイジ。今日は逃げで行こう。脚を最後に思いきり使えるようにしていきたいし」

 

 

 『あいよーこの距離だとヴィルシーナちゃんやトーセンジョーダン、ジェンティルちゃんと怪物ども多いからなあ。ゴルシは・・・分からん。やばい度合いは最高レベルで確かだが』

 

 

 幻惑逃げのいいところは俺の大逃げを知っていても周りの馬たちも釣られてしまってうまく周辺をコントロールしてしまうからどうしてもどこかで動きが鈍るのがいいよなあ。

 

 

 兎にも角にも、欧州でもまた戦うんだしそのためにコントロールタイプの戦いもやっておいておかにゃいかん。頑張らないとなー

 

 

 とりあえず松ちゃんを乗せたので本場馬入場。おおー歓声の度合もさらに増すなあ。耳がびりびり震える感じさえする。

 

 

 『おおー人間さん大騒ぎだねえ。もっと盛り上げるために喧嘩でもするかあジョーダン!』

 

 

 『誰がやるか!? ケイジの言う通りレースでけりつけてやるわ! あばよ白饅頭!』

 

 

 『はあ・・・これだから男の子は・・・ケイジ。ナギコがやりましたわね。無敗の三冠。全く、あの牧場は真面目に神様の加護でもあるのではなくて?』

 

 

 ほぼ核心を突いてくるなあジェンティルちゃん。俺の滅茶苦茶な戦闘スタイルの一助となっている頑丈さも神様の贈り物だしね。他? 定期的に顔を合わせて何か上げようとしてくるから断って他に分けている。つーか界王様レベルで普通に夢枕で出会うんだよね神様。

 

 

 おかげでルドルフ爺様やテイオーの親父にも会ったぞ。・・・・・・・見た目だけウマ娘になっていたがな! スズカもだよ! まあ、現役の頃の面白い話聞けて面白かったけどさ。テイオーの親父。食もこだわっていたのがすごかったわ。ほんと帝王というか。イケメン王子様だったんだなあって。

 

 

 『オッス、ジェンティルちゃん。多分な。近くの神社にも定期的にお参り行くし、俺が行けない分もトモゾウとおやっさんがお参りしているんだ。レースも馬産も、皆無事でありますようにって』

 

 

 『相変わらずですのねえ。良い人達で何よりですわ。さて・・・日本最強の一冠。ドバイでは手にしてきましたし、ここでもお一つ取りましょうか。昨年の借りを返す意味でも』

 

 

 『あのタックル合戦は爆笑したわ。ヴィルシーナちゃんもするんじゃないぞー』

 

 

 『流石にしませんよ。ふふ。まあ、とりあえず今回もお願いしますよケイジさん』

 

 

 後ろでウォーウォーと威嚇と喧嘩合戦している二頭をよそにご挨拶。ジェンティルちゃん昨年はお笑いレースで負けちゃったもんな。俺もまさか追い込みをあんな形で減速させるとは思わなんだ。

 

 

 で、ヴィルシーナちゃんはGⅠ二連勝で挑むとやる気十分。毎度ながら、うちらの世代たちどこもかしこも怪物ばかりだなあ。昨年はここに下手すればオルフェもいたかもだし。やりたかったなあ。三冠馬三頭そろい踏みでの大暴れ。ぜってえ国際的にも盛り上がっていたはずだ。

 

 

 『さあ、いよいよゲート前へ優駿たちが移動してきました。前代未聞。500万を超える票が集まり、その上位陣がほとんど出てくれました今年の宝塚記念。その中でも連覇を目指します葦毛の怪物ゴールドシップ。先ほどトーセンジョーダンとの再度の騒ぎもひと段落してケイジのそばに移動しております』

 

 

 『ケイジー、ジョーダンがいぢめるー』

 

 

 『お前さんが喧嘩売りに行っていたんでしょうに。まったく。俺らとレースで戦う分の体力残しているんだろうなあ?』

 

 

 『そいつは問題ないぜ。ジャスタに俺も続いて偉業ってやつをやってやる! というわけでーみんな倒してやるから』

 

 

 『なはは! 言ってくれるぜー。そっちは俺のセリフだ。連覇は阻ませてもらう』

 

 

 そうこう話しているとあっという間にファンファーレでございまーす。今回俺は13番。大外枠。うん。逃げやすいし助かるわ。

 

 

 さてさてーゲートへえっちらおっちらオットセイ。

 

 

 「ケイジ、そこじゃゴールドシップのゲートだぞ。あそこあそこ」

 

 

 『やーいケイジ間違えてやんのー』

 

 

 『お前こそなんで俺の場所に入ろうとしているんだよー移動だ移動』

 

 

 間違えちったのでそのまま別の場所あーらら。うーん。でもほかがまだだしもう少し待つかなあ。気分的に。

 

 

 『おおっとケイジゲート入りを間違えそうなのを松風騎手が止めましたが今度は一度外に出てなぜか旋回をしております。そしてゴールドシップもなぜかグルグル回りながらのゲート入り。器用に収まりました』

 

 

 『客席の笑い声が最早恒例となっておりますねえ。お、するりと入りました。恐らく笑い声を聞いてスイッチが切り替わったか、満足したのだと思います』

 

 

 『岡崎さん鋭いなあ。俺の気分を分かっているとは。ま、いいか。さてさて・・・』

 

 

 ゲートに入ってガシャンとロック。そんで気持ちを切り替えれば出走準備オッケイ。

 

 

 『今ゲートに全頭収まりまして・・・スタートしました! いいスタートを切ったのはゴールドシップにケイジ。 しかしゴールドシップは下がり、ケイジはそのまま加速を続けて先頭へと立ちます。互いにベストの立ち上がり。

 

 

 そしてそこにするするとついていくのはヴィルシーナにジェンティルドンナ、カレンカモミールが続く形。そしてその横にファインゲームが続きます・・・』

 

 

 いいスタートきっての大外。いやっほー大外だから俺についてくるメンバーでの動きを制御されないまま先頭取れるのはラッキーでも、同時にやっぱ前目につけてくるメンバーは軒並みが怖い実力者かあ。わかっちゃいたけど、コントロール逃げは距離を大逃げより離さない分プレッシャーがビシビシ来るねえ。感じるねえ。

 

 

 『おおっとゴールドシップ追いあげてきました。ぐんぐん走ってジェンティルドンナの横につける形に。そしてその後ろにメイショウサンバにホッコーブレイヴ、トーセンジョーダンと続いていきます。その後にヒットガンマン、ヴェルショットと続いていきます。

 

 

 早速第1コーナーに入り第2コーナーを目指します。先頭は依然ケイジ。そこに追いつこうとしていくかヴィルシーナ、ピッチを上げて三番手に1馬身のリードを着けます。しかしその差は2馬身。今回は逃げで戦うつもりのようです』

 

 

 ふーむ・・・ゴルシは先行かあ、昨年ほどのゴリゴリ具合じゃないけど、それはそれであのタックル合戦でのロスがないまま来るってことだしおっかないなあ。ただ、先行の経験ないだろうし消耗狙ってみるかねえ。いや、先行したらジェンティルちゃんも俺も負けちゃったけどさ。

 

 

 「ゴールドシップの先行が怖いな・・・早仕掛けより今回は最後に脚を思いきり使おう。此方の最後のコーナーでの消耗やふくらみも抑えていくほうがいいかもしれない」

 

 

 『はいさ。まあ、俺らも技術で抑えているとはいえコーナリングは大変だもんね。そんじゃあコーナー抜けるぞー』

 

 

 

 『第2コーナーを抜けまして先頭はケイジ。そして二番手にゴールドシップ。半馬身あけましてヴィルシーナ。次にカレンカモミール、ジェンティルドンナ、トーセンジョーダンと続きます。1000メートルを通過しましてタイムは58秒5 ハイペースでの試合運びといつもとは違うゴールドシップの積極的な先行に会場も沸いております。

 

 

 トーセンジョーダンの後ろはデニムサファイア、ホッコーブレイヴが中団を形成する形に』

 

 

 マジか・・・ゴルシのやつダービー以来か? ここまでハイペースで逃げについてくるのは。うーん。しかもいい感じに内に寄ってるし・・・かといって今から大逃げにシフトされてもアイツのスタミナと末脚じゃあせっつかれてペース崩されて終わりだわ。

 

 

 松ちゃんもそのままで行くほうを選んだな。手綱の加減を変えずに行っているわ。残りも短い・・・やったことはほとんどないが、末脚でやるしかねえ!

 

 

 『さあ、いよいよ800を通過しました。先頭集団が激しい叩きあいになっております。ヴィルシーナとゴールドシップの先頭争いにカレンカモミールが迫る。ジェンティルドンナは外から攻めるように動いて先頭よりやや後ろに控える。ホッコーブレイヴも勢いを上げて残り600を通過。ゴールドシップとケイジの距離は少し開いて3馬身。最後のコーナーを抜けます』

 

 

 よし・・・ハイペースでのたたき合いで距離を取ってしまったジェンティルちゃんと、ゴルシや俺に引き離されまいとペースを上げ続けた先行メンバーもいい感じに行けそうだ。第4コーナーでの動きもいい・・・! 

 

 

 行くぞ最後の直線! 思いきり脚をぶっこ・・・・

 

 

 『隙ありでゴルシ―』

 

 

 『なぁ!!?』

 

 

 『ケイジいつもの早仕掛けではなく最後の直線に入った途端に凄まじい末脚を見せる! あっという間にヴィルシーナ、ホッコーブレイヴを引き離すが・・・! 何と最内を突いてゴールドシップがケイジに並ぶ! 追い越す! なんということだ! 他がペースを上げてバテる、コーナーで膨らむ中冷静に最内を突いてケイジのセーフティーリードを一気に叩き切った!』

 

 

 あ、くっそ! あいつ皐月賞の時のゴルシワープをここで使うかよ!? 俺のペースでコーナーの際に遠心力で外に膨らんだ他のメンバーに巻き込まれないために前にいたのかよこいつ!

 

 

 俺の幻惑逃げの弱点すぐわかりやがった! ほんと怖いなお前!

 

 

 『待たんかいコラァああ!! 宝塚記念の勝利よこせー!!』

 

 

 『いやだよーん。今度の勝利はオイラがもらっちゃうもんニー』

 

 

 ぬぉおお! この末脚なんだこりゃあ!? セーフーティーリード潰して何でここまで加速できるんだこの天才はよぉ!!

 

 

 『さあ残り200メートル! ヴィルシーナ粘ってケイジ、ゴールドシップに粘るが差が縮まらない! ケイジとゴールドシップのたたき合いを見せるが、じりじり粘るケイジを引き離していく! これは決まったか! ゴールドシップ、今年も快勝!! ケイジへ天皇賞の借りを返しながら見事史上初宝塚記念二連覇を達成! 黄金の不沈艦の名に偽りなし! ジェンティルドンナ、ジャスタウェイ、ケイジに続いて大偉業を打ち立てたぁあ!!!』

 

 

 ぐはぁー!! クッソ―負けたぁ!! ぬあー悔しい・・・うーむ。ここまで積極的、ほぼ逃げに近い先行で食らいつくとはなあ。ダービーの頃の借りまで返された気分だこっちは。

 

 

 『タイムはなんと2分10秒5! レコードに迫るほどの好タイム! 二着にケイジ。三着にヴィルシーナ、四着にホッコーブレイヴ、五着にジェンティルドンナ。文字通り最強格たちを最後の直線、坂で振り切っての大勝利を見せましたゴールドシップ。見事、本当に見事な勝利をあげました』

 

 

 まあ、しゃあねえ。負けちゃったもんはしょうがねえ。素直に労わんとなあ。敗者にできるのはそれくらいだ。

 

 

 『おめでとうゴルシ。まさか逃げをこんな形でつぶされるとはなあ』

 

 

 『ありがとねーいやーケイジの逃げを見てあ、これなら最内から行けんじゃね? ってなって今日は攻めてみたのよ。これでジャスタともネタにできる』

 

 

 『おうこら。ま、いいさ。宝塚記念連覇おめでとう。まさしく歴史に残る偉業だぜ』

 

 

 いつも通り、負けたし激励のハグをポンポン。松ちゃんもあちらの騎手さんと握手を交わしているし、良い感じ。

 

 

 それを済ませれば俺らは退散。今日のウイニングランはゴルシの番だ。・・・・・・・・するよね?

 

 

 『ケイジ、勝者への激励のハグを交わし、松風騎手も握手を交わして静かに去っていきます。敗れて尚強し戦国コンビ。それを見事退け歴史的勝利も持ってきたゴールドシップと横浜騎手に会場が大いに沸き、拍手の雨が降り注いでいます』

 

 

 くっそー今度こそ。来年のラストチャンスでリベンジしてやる。




 また怪物世代たちが来ちゃっての大騒ぎ。真面目に2014年に日本競馬で起きたニュースがこの世界では3月に2012年世代がドバイミーティングで三勝。内、ジャスタウェイが1800でスーパーワールドレコードを出し、ジェンティルドンナは史上初の連覇。


 その後にケイジが天皇賞(春)で3200メートルワールドレコード


 そしてナギコがアメリカトリプルクラウンを無敗で達成。


 今回でゴルシが宝塚記念を初の連覇。競馬熱が天井知らず。ケイジ以外のメンバーも暴れに暴れております。



 ケイジ また負けて流石に悔しい。後でやけ食いしたらちょっと太っちゃった。でもすぐ痩せる。しばらくはまた牧場で放牧と調整。


 ヴィルシーナ 地味にジェンティルドンナより先着している。陣営は3着だったがこの結果に大喜びし、ヴィルシーナも喜んでいる陣営の皆さんを見て嬉しかった


 ゴルシ この後調教師さんにハグされて目が死んで、伊馬波さんに撫でてもらい人参を貰ってご機嫌に。前田牧場にジャスタウェイと一緒に来ます。


 ジェンティルドンナ 何とか掲示板には入ったが、この順位なのがショック。また前田牧場にお邪魔することに。


 トーセンジョーダン 6着でした。このあとゴルシと威嚇をまたやっていたりで元気。いつか前田牧場に行ってみたい。


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五頭は、どういう集まりだっけ?

 いよいよやってくるあの舞台。真面目に何でネタが尽きないんですかねゴルシ世代の周辺って。


 あ、検疫とかそこら辺の時間間違っていたら申し訳ありません。


 ポケモン熱が戻ってきて、こっちの時間が削れるぅ!! でも、ほんとポケモン面白いですね。BW、初代を歴代ポケモンも手に入りつつリメイクされないかなあと思いますね。特にBW2のクリア後要素とかももう大好きで大好きで。PWTに四天王も戦えるようにならないかなあ。後歴代主人公のライバルたちも。


 『ほへー・・・・ミルキースター札幌記念に挑戦。ゴールドシップにシゲルスミオ、豪華なレースになるなあ』

 

 

 『・・・・・・・こいつがあのステゴの子どもねえ・・・? いや、似てねえな。オルフェーヴルの方がまだ似ている』

 

 

 『そりゃ、あんたさんに噛みついたあの黄金旅程に比べるとねえ? 当時の牧場の皆さんも驚いたみたいよ。ステゴじゃなくてマックイーンだわ。って』

 

 

 どうもおはこんばんちわ。ケイジでごわす。まあ、また次の戦いへの備えということで放牧で牧場に帰ってきたぜ。いやー目の前で阿保やろうとした記者やマナーのない見学者たちが悶絶調教される様がすごいのなんのって。

 

 

 周りの馬たちの動揺を抑えるのが大変だった。

 

 

 『しかしま、この強さは確かにあの阿寒湖に似ている。あっちの場合間違いなく手を抜いていたが・・・』

 

 

 『そりゃあ、お互い様じゃねえの? 手抜きを種牡馬でも現役でもしていたのによ。スペシャルウィーク』

 

 

 で、俺と同じ放牧場にいるのは元日本総大将にして黄金世代筆頭格の一頭スペシャルウィーク。出会って早々に威嚇されるわ喧嘩売られたが、俺が人間臭いことや序列だボスだとかいうのを気にしないせいかね? 仲良くなれたぜ。

 

 

 どうにも種牡馬としてお仕事しに来たっぽいんだよね。おやっさん曰くたしかスぺちゃんとミレーネちゃんと交配してスタミナ血統を作る。って言っていたな。それとだけど、後々マンハッタンカフェの一族とクロスさせることで母系の血とサンデーの血のクロスを狙っている感じかねえ。

 

 

 後はブラウトちゃんに確かキングヘイロー。

 

 

 キングヘイローとブラウトちゃんの組み合わせは一度ノーザン系の血を薄めつつも多重クロスを見込める。特にディープ産駒との相性がニックスを見込めるほどにいいかもということでキンチェム系を牝系からでも保護できるようにしようとしているとかなんとか。ま、本音としてはアルトリアが種牡馬入り、俺との交配を待つ間に受けの広い馬産をしようというのがあるのだろうけど。

 

 

 けど、サンデー系を全くと言っていいほど入れていなかったうちの牧場でサンデー系とのニックスを狙うのはいいが、やりすぎは注意だぞーおやっさん。

 

 

 『あーあー大竹さんに言われたようなことを・・・そういえば、今年も挑むんだろう? 凱旋門賞。あれだなあ。ブロワイエを思い出す。何度も何度も大竹さんが話しては気合入れていたからなあ』

 

 

 『今なお時代に名を残して語られる名馬中の名馬だからねえ。それに勝ったスぺちゃんも大概だが。それと、ミレーネちゃんに威嚇しなくてありがとな』

 

 

 『はん。お前さんの家族みたいなもので、トモゾウさんも心配していたからな・・・さすがにこれ以上は失礼は出来ないさ。代わりに温泉たんまり入れてもらうからな?』

 

 

 しかしこの馬嫌いの日本総大将。トモゾウに懐いたなあ。女将さん・・・あー冴子さんにも懐いているし、気性が荒い荒いと言われていたけどそれも無かった。ここで心を休めているのかねえ。ならいいけども。

 

 

 『はいよ。それじゃーもうひとっ風呂浴びる?』

 

 

 『おうさ。湯上りにシャワー浴びて、扇風機を浴びるのが幸せでなあ。ここ、潮風もあるから汗かくとべとべとして』

 

 

 あーまーねー俺の場合練習で毎日汗流すし、風呂に良く入るけども、やっぱ気になるよなあ。一度俺の馬房の近くにあるベルを持って鳴らしてトモゾウを呼ぶ。草木の影の傾き具合から昼休憩は終わっているでしょ。

 

 

 「どうしたケイジ。ご飯はまだだぞ?」

 

 

 「わふっ、イヒン。むぅーふ」

 

 

 『スぺちゃんお風呂に入れたって。扇風機サービスも追加で』

 

 

 「んー? んー・・・ああ。スぺちゃんお風呂ね。はいはい。ケイジもここに水を追加しておくから、陰で休んだりするんだよ?」

 

 

 『わーい。ありがとうトモゾウさん。じゃ、ケイジあとでな。マンガの話教えてくれよ』

 

 

 『はいよー行ってらっしゃい』

 

 

 スぺちゃんを放牧エリアから出してもらい、温泉エリアに移動するのを見送っていると後ろから近づいてくる気配が。あらーほんと良く来るねえ君たち。

 

 

 振り返れば栗毛のやや大きめの牝馬と同じくらいの黒毛の牝馬。

 

 

 『『お疲れ様ケイジ君。ちょっと今時間いい?』』

 

 

 ミレーネちゃんとブラウトちゃん。ようやくうちの牧場で過ごせるようになってきた、おやっさんの連れてきた欧州の名牝の末裔たちだ。

 

 

 『わかったからその声を合わせるのやめてくれい。マジで小美人かよお前さんら』

 

 

 『うふふ・・・はいはーい♪ ほんと、何度見ても遠近感狂っちゃうほどに大きいわよねえケイジ君。そしていい男♪ お姉さんといろいろ話しましょ?』

 

 

 『あ、こらブラウト! ケイジはまだ種牡馬じゃないのにそういうのは駄目、今もこっそり抜けてきているんだから。ナギコちゃんから行きやすい場所を教えてきてもらっているのに』

 

 

 早速繁殖牝馬としてのお仕事を終え、後は子供が生まれるまでは定期的に運動をしながら健康第一をより頑張る感じだとかなんとか。それでさーなんでそれなのに俺のそばに来るんですかねえ?

 

 

 後、君らの方が年下じゃろがい。

 

 

 『話ならいいぞー? 後で冴子さんでも来て連れていくだろうし。何を話そうかねえ。ブラウトちゃんのご先祖にして最強の初代キンチェム先輩の話か。ミレーネちゃんの一族で日本でも活躍したマンハッタンカフェの話でもしようか?』

 

 

 『あ、いいですね♪ じゃあ、いい牧草と、多めにもらった人参チップを分けるから聞かせてもらっていいですか?』

 

 

 『是非私も。スペシャルウィークさんもですが、確か短距離から2000メートルが適正距離と言われたサンデーサイレンスさんの産駒でも珍しいミドルディスタンスだとかなんとか』

 

 

 『よーしいい子の皆は集まれーあれ? ナギコは?』

 

 

 『ひげ熊さん? と一緒に海に行くそうですよ? 海に突き落としてやるって笑顔で言っていました』

 

 

 ナギコ、じゃれるついでに調教師と厩務員にきついちょっかい出すなあ。精々新聞やジャンプよこせとねだるくらいにしておきなさいよ。

 

 

 ま、いいか。とりあえずキンチェムの面白エピソードを色々話していく中で女将さんが来たので無事にブラウトちゃんたちを引き取ってもらいましたとさ。ちゃんと手は出していないので問題ないですぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「利褌(としみつ)さん。ケイジちゃんの様子、私から見たら元気そうだけど、どうかしら。やっぱりするんですか?」

 

 

 「まあ、ケイジの場合遠征疲れも無いのと、何よりまた手紙が来ましてなあ。葛城厩舎も、松風君もやれるのならそのために予定空けると言っていますし既に調整しているので、それでもいいかと。値引きしてもいいからと獣医も社欄さんのお抱えが来るそうですし」

 

 

 「んーそうだけどぉ。ケイジちゃんの元気さは知っているけど、やっぱりもう5歳の古馬。いざという時はみんなで休ませるために頭も下げますし、無理はしないようにしましょう?」

 

 

 「もちろん。女王陛下もケイジの産駒を欲しがっていますし、ナギコ、ヒメの大暴れを見てこの子たちは・・・! ともう凄いことになっていますよ。ああ、そういえば、ステゴとミサトの子・・・ドリームシアターもデビューで無事勝利したそうです」

 

 

 今日は俺のローテ。の話し合いをオカマさんたちと利褌のおやっさんが話している。というのも、俺宝塚記念を終えれば凱旋門賞まで休暇になっていたんだけど、かの国の女王陛下からまた来てほしいという招待状が届いて、行くかどうかを決めかねているっていう感じだ。

 

 

 真面目にKGⅥ&QESの連覇からの凱旋門賞連覇って成し遂げた馬いないはず・・・だよな? だし。俺の場合種牡馬として値段が実績に比べて安くしていくのだが、それでも血筋でのあれこれもあるし、後継者を残すためにはやっぱり多くの子たちと交配したい。

 

 

 そのためにはやっぱ実績も必要。時間もあるし経験も昨年積んだ。だからどうスッペ。という感じなんだよねえ。

 

 

 「私としては問題ないのですがねえ・・・ギリギリのローテで皆さんの疲労が心配で心配で」

 

 

 「けど、今回の手紙の事を話したら・・・」

 

 

 「いやあ、もう皆さんノリノリで。ケイジの体調次第と言ってくれていますが、やると聞けば今すぐ飛んできそうな勢いでした」

 

 

 「まあ、みんな元気ねえ。ぶほほ。でも、わかるわ。成し遂げてしまえば欧州二冠連覇という前代未聞の大騒ぎ。それに同期、同じ牧場からはナギコの成し遂げた実績を鑑みれば今年一年の半分以上を暴れまわることになるしねえ。ケイジちゃん、どうする?」

 

 

 「むふー・・・」

 

 

 あ、俺にも話を振るのね。窓からアニメ見ていたらそのまま話しになったけどさ。んー・・・・一応、やるかやらないかと言われれば・・・・・

 

 

 やるっきゃねえよな!

 

 

 『やろうぜ。体調は問題ないし、気楽に思いきりだ! いつぞやのマツクニローテの際には俺の我儘通してもらったんだ。その借りを返す意味でも、やろうぜ欧州二冠に連覇! 日本に欧州二冠ジョッキーを二人目に増やすんだよ!』

 

 

 「うーんやる気十分。これは私の心配しすぎかな? それとも聞かせるべきじゃあ・・・いや、どの道聞くし、早いか遅いか。だな。そしてケイジなら」

 

 

 「挑むことを選ぶでしょうねえ。ふふふ。元気に挑む男の子って素敵。私達もまた差し入れ用意しておくし、ケイジちゃん夏バテしないように気を付けてよ?」

 

 

 おうよ。やれることが出来れば同時に俺のライバルたちの強さも世界に知ってもらえるし、ますますおもしれえバトルになるかもだしな。

 

 

 いつかジャパンカップがアジアの凱旋門賞。そういえるくらいには暴れてやるからなぁ~?

 

 

 「舌を出して傾けて。まったく。面白い顔をしてくれるなあお前さんは。よし。どうせだ。海外の方からもケイジを種牡馬として依頼が来るように、狙うか。欧州二冠連覇!」

 

 

 「歴史に挑むのね・・・ああ、素敵。スポンサーにGENBUグループがつけられないか相談しておくわ。ふふふ。それじゃ、バイバーイ♡」

 

 

 あ、スーザンママバイバイ。皆も気を付けてねーよーし。幸太郎呼びに行くかなあ。練習もやっておかにゃ。

 

 

 脱走は駄目? なら練習相手呼んでくれよー利褌のおやっさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ここの牧場はおなごだらけじゃのう!』

 

 

 『タマムシジム覗き見してたじいさんみたいなこと言ってんじゃねえや。駄目だぞー』

 

 

 『ケイジの言っていた通りだーゴルシっち。でも本当奇麗な葦毛だねえ』

 

 

 『でしょ? ゴルシはかっこいいよねえ』

 

 

 さてさて、ナギコも今日は練習オフの日。で、札幌記念の前の小休止ということでゴルシが、ジャスタウェイは少し長めの御休みのためにウチの牧場に来てくれた。入れ替わりにスぺちゃん戻ったけど。名残惜しそうにずっと温泉とトモゾウを見ていたのが印象的だったなあ。

 

 

 『いやーようやく来れたぜ前田牧場! 俺の牧場とか、伊馬波さんたちが話していたからなあ。温泉と優しい潮風。うまい飯に変な馬が多いって』

 

 

 『最後の一文は何なんだ? 変なうまぁ? 今いるのなんて俺とナギコ。癖馬なんぞ俺以外いないぞ』

 

 

 『癖馬って自覚はあるんだ・・・そりゃあ、ここの馬たちほとんどが読書を嗜むし、本棚に行きたがる馬って何だよっていう声が多いらしいよ? 案外読めるようになると本も楽しいのにね』

 

 

 『でしょー? でも、小説は中々読んでくれないのがつらたん・・・ブラウトっちにミレーネっち、漫画の方ばっかりなんだよねえ。コナンとか、金田一とか・・・原点やリスペクト元も面白いのに―』

 

 

 そんでまあ、なんでナギコも来たかは知らんが、皆で潮風に当たりながら心地よくお散歩。というなの美味しい牧草巡り。

 

 

 俺の放牧に併せてトモゾウが飯までの間のおやつ替わりってことで前もって用意してくれたんだよね。で、それをみんなで食べている。んーいい肥料使っているなあ。牧草の味がいいぜ。

 

 

 『うまー。そういえば、お前さんまた欧州で戦うんだっけ?』

 

 

 『そうそう。イギリスにまたナー。そっちこそ気をつけろよ? 札幌記念。シゲルスミオに天才少女ミルキースターが来るそうだ。どいつもこいつも怪物たちだぜ?』

 

 

 『ああー、そういえばスミオ君も来るんだっけ。確か、引退試合にするんだっけ?』

 

 

 『ほへー。あ、そういえばビリー牧場長が話していたし、確かアメリカに期間限定で種牡馬するんだって言っていたし、それでもあるかも』

 

 

 うーん・・・これはまた。期待の新星。天才少女と俺らの世代がぶつかるのか。ただでさえ札幌記念賞金やちょうどGⅠも落ち着いているのもあって集まるメンバーが怪物。GⅡだけどGⅠレベルの戦いになるってのに、これ、客入りやばくなるパターンだな?

 

 

 史上初宝塚記念連覇を成し遂げた葦毛の怪物と凱旋門賞を狙える器の桜花賞馬。そして俺たちと戦えるレベルを持つ同期。こりゃあ見ごたえがありそうだ。俺は見れないのが悲しいなあ。

 

 

 で、ナギコはまた面白そうな話を。どういうこった?

 

 

 『ナギコ。それってどういう意味だ?』

 

 

 『んーとねえ。いや、スミオっちの成績、シルコレ、ブロコレと言われるけど、ケイジ達化け物世代たちの中でそれをやっているし、ケイジ達の世代、クラシックの時点で多くが怪我とかで脱落したじゃない?』

 

 

 『だなー菊花賞では特に多くが怪我したって聞いたでゴルシ』

 

 

 『それ絶対ケイジとゴルシっちのあのタブー破りが原因でしょ・・・で、その実力を持つ上に、頑丈。血統もクロフネにサンデーの血を引いていて、アメリカで抱えるサンデーの血を引く子、ビリー牧場長のとこだとドリームシアターだね。とかのクロスを狙うためにアメリカで数年間だけ種牡馬をして、また戻ってくるプランを組んでいるんだって』

 

 

 なるほど。聞けばそれは納得できるし、同時にアメリカで欲しがるかもという需要を狙えるのも納得する。何せまあ、サンデーもクロフネもダートで日米活躍した才能馬。クロフネは芝がメインだったが、たった一戦でその強さはダートにも関係ないと見せつけ、芝の方もアメリカに近い高速レースだったし。

 

 

 サンデーは言わずもがな。アメリカ競馬歴代でもトップに肩を並べる最強候補・・・だよな? マンノウォーとセクレタリアトがヤバすぎる。あ。そこにナギコも入るのかあ・・・たまげたなあ。で、まあ兎にも角にもその二頭の血を引いているシゲルスミオ。クロスを狙えるし、値段もリーズナブル。アメリカの馬産はビジネスとしての色が強いし、主流血統ではないかもだが、隙間産業を狙える。

 

 

 もっと言えば俺らの世代の中で戦い続けて結果は残しているのが種牡馬としての売りになる感じだろうか。で、同時にビリー牧場長の所でも牝馬あたりでも狙って、いずれドリームシアターとの交配でサンデー系のクロスを狙う感じだろうな。あの牧場からすれば本当に欲しい、先代牧場長の救世主にして戦友が血のバトンを繋いで来てくれたんだ。絶対やるだろう。

 

 

 『何にせよ景気のいい話だ。これはゴルシ、負けてられねぇなあ? お前さんも強く戦わないと気合入れているスミオには敵わねえぞ? 一戦だけだが、あいつの強さは分かる。本物だ』

 

 

 『もちろんでゴルシよー。皆のライバルとしてダルいレースでもやってやるでゴルシ。というか、真面目に伊馬波さんとお前たちがいないとやる気なんてナイナイ』

 

 

 『ゴルシ、何度か調教師さんに蹴り入れているもんね。加減しているとはいえ牧草に狙ってぶち込んだり、プールに引きずり込んだりとか』

 

 

 『ああー。だからたまに茄子のおっちゃん、朝と昼前で服が違う時があるのね』

 

 

 遊ぶ度に服を破られて着替えざるを得ない伊馬波さんに、プールトレーニングをする度々に引きずり込まれて濡れねずみになる茄子さん。着替えてばっかかよゴルシ・ジャスタ陣営。

 

 

 『ほんと見事にシャツを破く技術がレベルアップしているのなんの・・・温泉も楽しみだなあ。今のうちに浸かっておきなさいって言われたんだよね』

 

 

 『ここの温泉は格別だよ~? ほんとアメリカでの冬の時は何度入れてくれって思ったか・・・今のうち?』

 

 

 『うん。僕たちも何か遠征があるとかどうって』

 

 

 『そういえば伊馬波さんも言っていたような・・・?』

 

 

 『なんじゃろね』

 

 

 みんなで牧草を食べ歩きしながら、あとで温泉を満喫。そして翌日に出てきた新聞を見て納得がいった。

 

 

 

 『ケイジ、ゴールドシップ、ジェンティルドンナ、ジャスタウェイ、ミルキースター凱旋門走出走表明! 日本最強世代、次世代の天才少女たちが再び頂点へ!』

 

 

 

 マジかあ。ゴルシとジャスタと俺はまだしも、ジェンティルちゃんも来るのかあ。こいつはすげえな。日本艦隊によるフランス殴り込みじゃん。フランスでジャパンカップ開催言われかねんぞこれ。

 

 

 で、俺に関して新しい二つ名を貰った。その名も、『日本総大将』―かつてスぺちゃんがブロワイエと戦う時に命名されたように、今度は俺たちから殴り込みに行く際に俺が大将格ということで拝命仕った。いやはや・・・燃えるねえ。こいつはますます落とせねえな。欧州二冠。今年も暑い夏。秋まで残暑が残るレベルの戦いになりそうだ。




 また海外も大騒ぎなことになりそうな感じ。


 凱旋門賞に一頭追加。欧州二冠馬、史上初宝塚記念連覇、ドバイシーマクラシック連覇、スーパーレコード持ちの世界一位、今年の期待株の天才少女が日本からやってくるという豪華。多分フランスでも大騒ぎ。


 ケイジはまたトンデモローテにぶち込まれます。本人は平気だけど多分陣営の皆さんはパスポートの期限が大丈夫だったか何度も互いに確認していることでしょう。


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フランス旅行

 この時代、大真面目に常に怪物が出てくるというか、ほんと世界中で前代未聞が生まれ過ぎというか。どの国からでも話題の馬が出てくるってほんとどうなっているんだ。


 ケイジとメロディちゃんが一緒に歩いたら面白い絵面になりそうですよねえ。いつぞやの宝塚みたいに。ステゴ一族ってのは強さとバラエティーの充実に振り切った子しかいないのかといいたいほど。


 『おぉん? この程度の重馬場と! 追い込みで俺を追いこせると思うなよぉ!!』

 

 

 『ケイジの脚が鈍らない! 周りの追い込みが止まって見えるほどだ! 昨年とは違う大逃げでの戦いをまさかこのアスコット競馬場で大逃げで勝ち切ってしまうというのかあ!?』

 

 

 『ジャスタやゴルシ、フェノーメノの追い込みがもっとやべえ! あいつらのワープやニトロじみた加速に比べりゃあ・・・重馬場のハンデなんてないんだよぉお!!』

 

 

 『ケイジ大逃げをもって! 10馬身差をつけてのゴォオール!! 昨年の大竹騎手とのコンビも強かったが! 今年の、松風騎手との戦国コンビはさらに差をつけての大勝利! 欧州に傾奇者の本気を見せつける! タイムは2分19秒7!! 自身のレコードにコンマ2秒迫る快速ぶり! 誰も捕まえることが出来なあぁい!!』

 

 

 『イヤッホー♪ これでGⅠ12勝目! そんで松ちゃんも晴れてGⅠ勝利10勝目の大台へ到達だぜ!』

 

 

 『おおっとケイジ興奮しながらスタンドでのケイジダンスを披露! そして会場も大揺れの大歓声で応えます!! このレースを連覇した競走馬は今まで2頭のみ! そして3頭目として名を連ねるのは日本が誇る傾奇者ケイジ! 日本競馬の皇帝と最強の血筋の名を確かにここイギリスに刻みました!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『うわーお。こっちの新聞でも大盛り上がりだなあ。欧州二冠連覇なるか。傾奇ホース、サムライホースケイジ。フランスへ殴り込み!』

 

 

 「やれやれ・・・本当に、やりたいと思い挑戦したが、いざ達成すると震えが来るし実感がわかないものだなあ」

 

 

 テキのおやっさん。それ現実逃避入っていないか? 一緒にスマホを見ながら和訳された現地のニュースを見ながら首をかしげる。

 

 

 「いやあ、現地でも傾奇ホース、サムライホース、日本総大将。どれがいいかって競馬ファンのみなさんが議論していたり、ケイジの人気がわかるなあ。嬉しいのなんの」

 

 

 「で、ですが私たちまで写真や取材が多いのはなんででしょうか・・・あう・・・その、変な答え方していないか心配で心配で・・・」

 

 

 いやあーなんやかんやKGⅥ&QESは勝利。欧州の怪物的、歴史的名馬たちにもGⅠ勝利数が少しは並んだかねえ? になって。またまたドバイの皆様の用意してくれている馬房とスタッフの皆さん。そしていつもの葛城厩舎メンバーでフランスでござーい。

 

 

 そして、真由美ちゃん。真面目にうちの厩舎知名度高いし、テキのおやっさんもいろいろ古風な調教をするし、真由美ちゃんは俺が目隠しされていた時に興奮してスケッチ描くし、この前の宝塚でも描くし、美人でグラマラス。久保さんもいい男だし、優しいし、確かイラスト投稿サイトで正体がわかって、いろんな意味で注目されるようになったしでしょうがないよ。

 

 

 「に、してもゴールドシップやジャスタウェイ、ジェンティルちゃん、ミルキースターちゃんたちは遠征疲れが大丈夫かねえ・・・まさか空港がストライキを起こして輸送路線変更になるとは」

 

 

 「急遽フランス政府やドバイの皆さんの連携で輸送車や個人所有機を使えてよかったっすよ」

 

 

 『ねー、にしても、日本のニュースでも、札幌記念はスミオの勝利かあ。で、ゴルシが3位、ミルキースターが2位。GⅡとはいえGⅠレベルのバトルでの勝利と、ゴルシへの勝利、良い箔付けをしての引退になったなあスミオ。よかったよかった』

 

 

 いやーほんと、俺らの場合真面目に欧州に行く際はコネもあるからこそ快適に移動できているよなあ。馬運車で俺のためにテレビやラジオをつけてくれるってありがたい有難い。そんで、スミオも、同期が引退したが、勝利を飾っての勇退だし、ほんと安心だぜ。

 

 

 「一応、明日くらいにはゴールドシップやジャスタウェイたちも入厩する予定だ。此方の方で調教のプランの再確認と、寝藁の予備をチェックしておこう。今回は日本勢皆で戦い勝利を狙うということで、色々と物には困らない」

 

 

 「GENBUグループが大々的に支援を申し出てくれましたからねえ。いやはや、まさかうちの厩舎の馬運車も新車になるとは」

 

 

 「ホテルまでばっちり完備ですものね・・・泊まるのが少し怖いくらいのいい場所を」

 

 

 『甘えとけばいいと思うよ。俺らでその出してくれた資金分暴れてやればいいのさ。にしても、楽しみだなーみんなとまた遊べそうだ』

 

 

 ちゃんと俺が欧州で勝ったし、皆の実力もそれで尚更にわかってくれると思うし、さあさ、来てくれないかなーここでの調教や覚えることも少しは教えられるし、激闘のためにレベルアップさせてやりたいぜ。

 

 

 ・・・松ちゃんへの勲章を与えたいけど、同時にそれも願うあたり俺変わり種かねえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『あ”ー・・・大変だったあ・・・ふーしかし、フランスの空気、なんだかいいな! いつもと違う雰囲気に、面白いぜ!』

 

 

 『ドバイとはまた違う感じだなあ・・・ここが、欧州、イギリスと並ぶ競馬の本場、先進国かあ・・・』

 

 

 『お父様もかつて挑んだ場所・・・そこにわたくしもこれた・・・感無量ですわね』

 

 

 『うーん・・・だるい・・・眠い・・・疲れが抜けないよー休まない?』

 

 

 『お疲れさんお前さんら。流石に疲れは抜けたかあ?』

 

 

 さてさて、やってきました俺ら同期組と天才少女ミルキースター。無事入厩でござーい。ま、実際は先日について、休憩してからだけどね。

 

 

 で、まあ皆慣れない空気や場所にソワソワ。楽しんでいるのもあるが、ま、元気そうだわ。

 

 

 

 『いいなあ。なんか人の感じが違うぞ? 髪の色や目の色も色とりどりで綺麗だなあ。面白いな。で、なんで俺ら人気なんだろうね? ここ来るの初めてだぞ?』

 

 

 『そりゃ、ジャスタやジェンティルちゃんらの活躍が世界にとどろいているからなあ。その同期でお前さんも強いんだ。名は知れているし、人気もあるよ』

 

 

 『まあ、その先駆けは間違いなくケイジだよね。ジェンティルドンナちゃんと一緒にドバイに行って以降、この中じゃあ一番海外で戦っているもの』

 

 

 『世界でも指折りの強さ。ですものね。しかし、調教で林や森に入ることはありましたが・・・本当に欧州は森も凄いのですのねえ』

 

 

 で、今は森の中を歩いて移動しながらの調教。まあ、言ってしまえば自然をそのまま多く残すことの多い欧州の競馬場。芝も深ければ地面も柔らかい。それになれるための調教だわな。

 

 

 『うおーなんか日本との香りが全く違う。行こうぜジャスタ!』

 

 

 『うん! ボクも楽しみだよ。行こう!』

 

 

 『あ、先輩たち先行きまーす』

 

 

 で、まずは先発組の3頭が出発。あまり横に広く広がりすぎてもあれだし、俺とゴルシの場合、そのままレース始めそうだと言われて分けられちゃった。失礼な。精々変顔対決くらいだわ。

 

 

 それにまあ、森だしね。細い場所とかもあるだろうし傍で手綱を引く人やガイドも含めれば歩く場所やあれこれあるだろうししょうがないない。

 

 

 『いってらっさーい。いやはや、日本馬三頭立てでの凱旋門賞は参加したことはあるが、今回は5頭かぁ・・・・それだけ強いメンバーがそろったということだし、日本競馬の強さが高くなっているというのを感じるね』

 

 

 『確か、日本のレースは元は欧州を目指して、追いつくように頑張ったのでしたっけ?』

 

 

 『そうそう。んで、そこにアメリカ化の影響で高速馬場、距離とかあれこれあって今は欧州とアメリカの中間的な感じで、同時にそのころの名残なのかね。凱旋門賞を狙う。そのために多くの素質馬が狙い、届かなかった』

 

 

 ジェンティルちゃんの親父さんに、俺だとルドルフ爺様だな。真面目に何度か夢枕で会うけど、ウマ娘になっているせいで爺様呼びの違和感がすげえのなんの。神様いくら助言したいとルドルフが言うとはいえ週2回は多いんじゃない?

 

 

 『けれど、時代は変わっていった』

 

 

 『そ、特に大きな成果、変化を与えたのはやっぱりルドルフの爺様の周辺世代によるジャパンカップでの海外馬への勝利。そして、海外でも結果を残したエルコンドルパサーにステゴ。日本国内でもスペシャルウィークが今なお欧州最強格候補ブロワイエに勝利をして、日本馬の強さを見せつけた』

 

 

 『そこから時代が流れてナカヤマフェスタにオルフェーヴル、そしてわたくしたちが・・・ですか。なら、尚更に負けられないですわね。更に強くなった日本馬の強さを見せちゃいましょう』

 

 

 『おうよ♪ なにせ今回は三冠馬レベルが4頭。それに食らいつける才能が1頭来てくれているんだ。皆で暴れて勝利しよう。お、進んでいいみたいだぞ?』

 

 

 ポコポコ周りの視線やカメラに応えつつサークル内をグルグル回っていたらようやく森に入っていいっぽいので俺らもいざ突撃。俺もイギリスやフランスで何度かしたし、ここの森はある程度地理も覚えているし、まあ、どうにかなるっしょ。

 

 

 いやー・・・森の香り、落ち着くなあ・・・森林浴ってほんといいもんだよな。アロマな香り・・・でも、これって植物が虫対策で出す香りでもあるってすごいなあ。

 

 

 『落ち着きますわ・・・でも、足元が・・・ドバイの時より重い?』

 

 

 『そりゃあねえ。多分朝霧もあって湿っているせいもあるんだろうさ。だけど、これくらいの重さは平気じゃないと凱旋門賞はきついぞ。真面目に芝が日本とは真逆だからなあ』

 

 

 『問題ありませんわ。ナギコやヒメさんと砂浜で走り倒しましたし、山も幸太郎さんと一緒に歩いたりして鍛えましたもの。これくらいなら』

 

 

 流石はジェンティルちゃん。うちの牧場、静養牧場だけど牝馬とかに脂肪をつけすぎないように砂浜や林、山を歩くための場所、コースがあるんだが、その場所は同時に俺らの練習場所。放牧の最初と最後手前でよく使うんだが、俺の場合シンザンやルドルフ寄りの、あの時代の馬場に対応できる技術とこういう場所を良く歩く分重馬場に強いのかもなあ。

 

 

 日本とは違う香りと空気を味わいながら厩務員さんを連れてのポコポコデコボコ森道を歩いていけば、何やら自分ら以外の人の香り・・・というか、よく嗅いだことのある匂い。

 

 

 「ヒヒーン!」

 

 

 『伊馬波さーん! あんたこんなところで何しているんだ? 流石に鹿とか、猪、熊とか出たらやばいぞ? 前もって駆除や追い払っているとは思うけど』

 

 

 「お、おお・・・いやあ、助かった。久保さんにケイジ君、ジェンティルちゃん。森に迷ってしまって・・・どうやって帰ればいいかと」

 

 

 『ええ? ゴルシはどうしましたのよ。いえ、ジャスタウェイにミルキースターもいたでしょう?』

 

 

 「どうしたんすか伊馬波さん。ゴールドシップたちは?」

 

 

 「い、いやあ・・・ゴールドシップのやつ、テンション上がってしまったのか、私を置いてそのまま行ってしまいまして、追いかけることもできずにこのまま森のなかだったんです」

 

 

 「『『ええ・・・』』」

 

 

 あいつ、多分年下の牝馬とジャスタもいるせいで思わず伊馬波さん忘れやがったな? で、ジャスタもジャスタでテンション上がっているからそのまま。気が付いてもその時は遥か後ろと・・・しょうがねえなー連れて行こう。真面目に気が立った鹿とか人に角を振るって襲いかねないし、危険だ。

 

 

 『ほい。これ持って伊馬波さん。俺は変顔以外は暴れないよ。ここで漫画読めねーし』

 

 

 「ケイジのやつが持っていろって言っていますよ。気にせずどうぞどうぞ」

 

 

 「それでは言葉に甘えて・・・いやはや、ゴルシのライバルで、いつもこいつがいなければと思いますが、同時にやる気にさせてくれる有難い友で、そして、私もファンですよ。こうした機会をくれたのはゴルシに感謝かな」

 

 

 『それで遭難、死にかける危険があるのは流石にやばいですわよ?』

 

 

 「それを言えば、私達も前田牧場の皆もゴルシが勝つたびに、ケイジを負かすたびに悔しくなりますが、同時に強いライバルだといつもいつも驚き、笑顔になります。あのマックイーンが帰ってきた。葦毛の怪物伝説が続いているんだって思いますから」

 

 

 だなあ。負けるのは悔しいが、同時にライバルの強い、かっこいいのを見れるのは幸せってもんだぜ。にしても、伊馬波さんにファンと言われるのは嬉しいねえ。俺らもいつもゴルシとの楽しい日々の話は元気をもらえるぜ。

 

 

 そういえば、伊馬波さん専用にシャツを破かれる際の手当てが増えたって噂は本当なのだろうか?

 

 

 この後、もう少し歩いていたらミルキースターの厩務員さんも森の中で迷子になっていたので保護。結局厩務員さん離さなかったのジャスタだけかよぉ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あらー・・・まさかの事態やな・・・これは探索隊を組む流れか?」

 

 

 今年の競馬記者程、海外移動を何度したやつがいるのかホンマ分からんほどにあちこち飛び回る羽目になった。

 

 

 何せまあ、ドバイでは2012年世代がドバイミーティングで大暴れ、ダートでも同世代がGⅠ10勝を目前に。かと思えばその世代筆頭ケイジが天皇賞で大勝利。そしてアメリカでのナギコが無敗のトリプルクラウン。

 

 

 更にはまたケイジがこの前にイギリスでKGⅥ&QESを連覇し、この凱旋門賞。アメリカにはナギコが再度移動してブリーダーズカップへと挑み二年連続無敗と最強を狙うという。まさしく世界中を日本馬が暴れまわっている状況。

 

 

 明るいニュースは本当に日本を元気づけ、世界からも前田牧場の牧場長の声もあり震災復興募金もとんでもない額が集まったりといいことづくめ。そして、日本艦隊による凱旋門賞殴り込み、となっていたのに、まさかの厩務員二名が森の中で迷子になっているという事態。

 

 

 前もってハンター、駆除隊によって道の確認と、害獣の駆除はしているのだが、すべてではない。何かあってはと皆が不安がり、記事の変更もするべきかと考えていると、第二グループのケイジとジェンティルドンナのコンビと・・・伊馬波厩務員さん。ミルキースターの厩務員さんも一緒に来てくれた。

 

 

 これに皆驚き、安堵する。無事だったと。

 

 

 「はぁー・・・安心安心。どうあろうが、この遠征は無事に終わってほしいわ。傾奇者に、あの最強の癖馬たちに悲劇は似合わん」

 

 

 『おおいこらお前さんら。厩務員さん置き去りにしてんじゃねーよ!』

 

 

 『あ、ありがとー先輩。気になっていたんだよねー』

 

 

 『あ、伊馬波さーん! 心配したんでゴルシよーで、ケイジこら! 伊馬波さんはオイラの仲間だぞ! 奪うのは駄目だ!』

 

 

 『お前がおいていったんじゃろがい! これを喰らわせてやる!』

 

 

 安心していると、ゴルシが伊馬波さんとケイジが一緒にいて、手綱を持っていることにイラついたか、怒るとケイジも何でか持ってきているハリセンを咥えて構え、ゴルシもハリセンを伊馬波さんから奪って構える。

 

 

 『そうは問屋が卸さない! お前の頭の音色を聞いてやるからなあ!?』

 

 

 『なにおう!? 俺にハリセン捌きで勝てると思うなよ!』

 

 

 何やら嘶きながらハリセンで互いにツッコミ合戦を入れ合うケイジとゴルシ。とりあえず、厩務員さん達の無事とこの面白い絵面を収めようと動画と写真撮影を始めておく。

 

 

 強さだけじゃない。このカオスさあってこそのこの世代や。欧州の皆さんに忘れられないようにええ写真撮らんとな~

 

 

 バシバシ、スパーン! と小気味よい音を聞きながらシャッターを切る。この後に、ハリセンを構える二頭の絵面と、周りで呆れたような表情で見る三頭の絵面がフランスの新聞に載った。いやー頑張った甲斐があるし、レースも楽しみやわ。




 フランス旅行。真面目にこのメンバーの日常茶飯事を見て欧州のホースマンは何を思うのか。


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俺の名は 凱旋門賞(GⅠ)

ここを終えれば一度ウマ娘エピソード挟みたいですねえ。ある意味一つの区切りです。


 「ふー・・・ここにきてしばらく経つけど、まだ緊張・・・いや、むしろ酷くなるな」

 

 

 『気負ってんねえ松ちゃん。キングジョージでもおもしれえくらいにどもりに噛みまくって現地のコメディアンにネタにされ、動画サイトでも素材にされちまっているのに』

 

 

 今日はのんびり一緒に練習。そんでまあ、松ちゃんもいい感じに肉体は仕上がっているんだけど・・・なあ? 気負過ぎだぞー目標の場所についたとはいえ、既に日本の凱旋門ジョッキー第一号はいるんだし、軽く軽く。

 

 

 「お疲れ様。松風君。ケイジ。いやー流石フランス。オーガニック、低カロリーでいい飯が作れる。ケイジの方は・・・お前、ほんと不慣れとか、気負いとかないのなあ。ちゃんとレースに合わせて自分でも馬体重調整はするけど」

 

 

 「ありがとうございます。いや・・・ほんとサラダとか、色々な味を楽しみながらも体重制限が楽で助かりますよ久保さん」

 

 

 『久保さんも確かジョッキーの遠征負担を減らせるよう低カロリーで栄養のある食事の技術磨いているんだよな。いやー大したもんだ。まあ、俺のせいであちこち遠征いくからしょうがないかもだけど』

 

 

 久保さんも真由美ちゃんもほんと松風君や葛城厩舎でかかわるジョッキーのためにあれこれできるようになっていくんだよな。ハードな仕事の後だってのに、頭が下がる思いだね。

 

 

 松ちゃんもサラダとサンドイッチをほおばり、小休憩。おなかが空いているときは一度飯を食べて気持ちを落ち着かせたほうがいいよ。

 

 

 「ありがとうございます久保さん。いやはや、やっぱり緊張しますよ。あの舞台に僕が挑めるのと、行っていいのかって」

 

 

 「気にしないでいいさ。君もGⅠ10勝の立派な一流ジョッキーの仲間入り。その経験は必ず通じるよ」

 

 

 「それもケイジがいてこそですよ。それ以外では重賞を幾つか。そんな僕が本当にケイジの力を引き出せるか。大竹さんの心意気に応えられるか・・・・・」

 

 

 『それにこたえるためにお前さんがリラックスというか、良い感じに元気にならないと。でないと、俺のコーナリングで吹っ飛びかねないぞ?』

 

 

 真面目に、怪我しかねないからなあ俺のコーナリング。追い込みだろうと大逃げだろうと逃げて差すか、差して逃げる。そして早仕掛けだから基本コーナー手前から加速していくし。

 

 

 頭をゴスゴス小突いてからニッコリ笑顔。余計な心配する心は気にすんな。必ず俺が暴れて不安もしないくらいに走ってやるからよ。

 

 

 「おぐっ! うぐっ! げふ・・・ケイジ、やめ・・・ぶうふっ! お、お前なア。変顔したらイケメンな分刺激が強いぞ。・・・・ありがとう。助けられてばっかりだなあ。僕はみんなに」

 

 

 「いやいや、俺らは君のように馬と心を通じ合わせて命がけのレースで戦えることが出来ないし、技量も無い。全てを背負って戦える心も無い。松風君。俺も助けられているんだ。レースでの勝利と、ケイジとの人馬一体での戦いに集中して構わないよ」

 

 

 「そうですよ。それ以外の事は全部私たちが支えます。ですから松風さんは、勝てる。勝つと考えて挑んでくれれば」

 

 

 「そうそう。それに、来年もケイジは走る。ローテの組み具合ではまた挑めるし、気楽に構えなさい。むしろ、大竹さんみたいにベテランや、実力がはっきりわかる分落胆も少ない、失うものが少ないと考えて思いきりだ!」

 

 

 おおう。葛城厩舎ケイジ陣営の皆での激励だ。わはは。こいつは松風君。おいおい。涙を流すの早いぞ? 勝ってから男泣きをしてやろうや。

 

 

 あ、真由美ちゃん俺にも牧草くれー。ありがとナス! んー・・・さすが農業大国で、競馬の本場フランス。牧草もいい味しているねえ。

 

 

 「ありがとうございます。テキ、真由美ちゃん。久保さん。ケイジ・・・そうですね。思いきり、やれるだけやります! あ、そういえば、今回は蓮君もフランスに来たと聞いていますが」

 

 

 「うんうん。また素質馬が来れば君に頼めないかも頼むし、今はケイジと一緒にどこまで行けるかを考えなさい。ああ。蓮は今私の嫁さんと一緒にフランス旅行だよ。この前のキングジョージで稼いだ分。家族サービスをね。この職業だ。休みがなかなかない分こういう時にサービスを」

 

 

 「やっぱ、馬たちの方に意識いきますし、なかなか難しいっすよねえ。まあ、それくらい馬が愛おしい馬キチだからこそここまでのサービスもできているわけですが」

 

 

 「違いない。ははは。そしてそのチャンスをくれたケイジ。やれるだけやって来い。私にとってはお前があとにも先にも最高の馬だ」

 

 

 もちろんよテキのおやっさん。そんで、ここでも勝ってもう超えることが出来ないほどの最高の馬になってやろうじゃねえの。時代を作った馬だって言えるくらいには頑張るぜ。

 

 

 さ、松ちゃん。走ろう。凱旋門賞も重馬場。アスコット競馬場に負けねえほど直線長いし、色々やっておかないとだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『今までこんなことがあったでしょうか。今年の凱旋門賞。挑む日本馬たちは実に5頭! そして、そのうち4頭全員が前代未聞の記録、ワールドレコードを持ち、更にはこの4頭すべてが同じ時代、クラシックを戦い抜いた同期! そして残る一頭もまた次の時代を作る天才! 日本艦隊が凱旋門賞に到着。いざ挑戦となります!

 

 

 そして、そのうちの一頭は昨年ここを制覇した日本初の凱旋門賞馬! 日本総大将ケイジも参戦している! 連覇なるか! 同期が奪うか! 欧州の精鋭たちが取り返すか! 世界が注目する一戦が幕を開けようとしています!』

 

 

 始まったなあ。世界でも指折りの格を誇るGⅠレース凱旋門賞。昨年タケちゃんと一緒に行った時よりも熱気がすごい。

 

 

 そりゃあそうか。ここ数年の日本馬たちは誰もかれもが凱旋門賞に指をかけたような才能ばかり。欧州のレベルに、真逆のレース運びや芝の整理をしたうえでもここの場所に適応して追いついてきた。日本の競馬ファンからすれば長く悲願であった欧州のレベルへ追いついたことの証明。

 

 

 欧州の競馬ファンからすれば欧州最高格のレースを日本に取られることへの悔しさもあるだろうが、同時に知らなかった血統たち、その血を引いた戦士たちとの出会い、その血筋を自分の知る名馬と組み合わせたらとロマンを妄想し、想起する。

 

 

 世間じゃあ、俺たちが出した結果をまぐれという声も多くあったが・・・見せつけるためにはいいチャンスだ。そして、俺自身がしょい込んだ想いのためにも、やるっきゃねえ。俺ら競走馬にとっての勝負服もつけて気合ばっちりよ!

 

 

 『いよいよ彼の入場です! 5番ケイジ! 一番人気を持って堂々入場! 馬体重は前回から増減なしの650キロ! 傾奇者が再び欧州の頂点のレースを奪いにいざ参上! 今日は桜吹雪が舞うメンコもつけて気合じゅう・・・おおっと? 何でしょうか、6番黄金の不沈艦ゴールドシップと一緒に暴れだしました』

 

 

 『うっひょーすげえすげえ! 日本のとなんか違う。お客さんが一杯だー! ウェーイゴルシダヨーン。よろしくぅ!』

 

 

 『どーもどもケイジでぇございます。おい。俺の馬券買わねえか?』

 

 

 というわけで、早速ファンサービス開始。バックで移動しながら客席の近くで変顔と決め顔の百面相。どうよ。これが顔芸百面相。馬の表情も豊かなんだぜ? で、ゴルシも俺に続いて欽ちゃん走りでヘドバンしながらの変顔もお披露目。舌ペロまでしちゃって。なら俺もベローン。

 

 

 観客も受けてくれるしいいね良いね。世界最高格のレースだ。盛り上がってなんぼよ!

 

 

 あれ? 見た顔がちらほら・・・おおー

 

 

 「ケイジ! ぶふ・・・頑張れよー連覇! 昨年の猪一頭分の売り上げをお前に託したぞ!」

 

 

 「がんばってーケイジちゃん。シンザンもルドルフも、テイオーもミホシンザンも越えていくのよ」

 

 

 「頑張れよぉケイジ。天国でルドルフたちと再会する前に最高の土産話をわしに持ってきてくれ」

 

 

 「「「「ケイジちゃぁーん!! ファイトォー!! 日本総大将! 勝利をつかむのよぉ!」」」」

 

 

 「「ケイジくーん! 頑張れー!!」」

 

 

 おぉう。マタギのおっちゃんに、あの老夫婦。そんで、ムランルージュの皆さんはまた現地のオカマさんたちと今度は戦国ものコスプレで来たかあ。しっかり横断幕にも俺の刺繡までして、日本総大将と書かれているでやんの。日本人も昨年に比べると多いなあ。応援有難いぜ。

 

 

 頑張るぞー! ほれゴルシもぴょーん! するんだよぉ!

 

 

 『フランスの皆お元気ぃ? ほれほれもっと盛り上がって盛り上がって。年に一度のお祭り騒ぎ! 盛り上がらなきゃあ損よ損! 俺のメンコも今日が初使用なんだぜ? これが日本の桜。あ、写真撮る? ほいほい。じゃ、松ちゃんも一緒に移るよう下がりながら・・・チーズ』

 

 

 『俺たち最強メンバーで暴れちゃうからなあ? 後で人参くれよそこの姉ちゃん。顔芸するからさーおおーゴルシーボクゥ♪ 俺のぬいぐるみじゃーん』

 

 

 『『『知らんふり・・・知らんふり・・・・・』』』

 

 

 『おっとケイジとゴールドシップ。軽く跳ね回るような動きまで披露。その元気さに会場は大盛り上がり。笑いと同時にあっちだよーと誘導する声も聞こえます』

 

 

 あれ? ジャスタもジェンティルちゃんもスターちゃんもそっぽ向いて首下げてもったいないなあ。せっかくの大舞台。楽しもうぜ?

 

 

 さあ、二度目のお披露目かな? テイオーステップからのー・・・・・

 

 

 『あ、ゴルシ! 俺ら大分遅れているわ。足もあったまったし、そのまま前に行こうぜ!』

 

 

 『了解! いやー面白いわフランス。そのままウイニングランだ!』

 

 

 『まだレース始まっていねえよ! ここからばてるんじゃねえぞ?』

 

 

 ふと後ろを見れば思ったよりみなさん本場馬入場していたので急いで列に戻ることに。ゴルシと一緒にそのまま客席近くを一緒にダッシュ! 急げ急げ。

 

 

 『『『え!? 今走るの!? 急がないと!!』』』

 

 

 『あっとケイジとゴールドシップ走り出して列に戻ります。そしてそれにつられて後続の馬たちも走っていきます。ここまでハイペースかつ笑いの起きる凱旋門賞での本場馬入場は初めて見ました』

 

 

 あれ? 返し馬じゃないのにほかの馬も走って来ているね。まーいいか。よっしよっし。無事に列に戻りましてと・・・あー愉快愉快。昨年よりも客入り多いみたいだし、笑えたしでとりあえずウォーミングアップは十分だぜー

 

 

 後は思いきりやり切るだけ、勝負の方でケリつけないとなあ。

 

 

 ゲートが見えてきて、いよいよ勝負の時。ささ、俺らの方もゲートに・・・・あ、番号的に俺が先に入るべきか。ほいほい。ガシャンとな。

 

 

 『最後にゴールドシップ。葦毛の馬体が入り、全頭ゲートに収まりました・・・・激しく、長い2400メートルの戦いが今スタートしました! 20頭による大レースが幕を開け、第3コーナーを目指して直線を駆け抜けていきます』

 

 

 『さてさて・・・今回はわざと追い込みで行くかね・・・松ちゃんやテキもそのほうがいいと言っていたし』

 

 

 いいスタートを切ったけど、50メートル飛ばした後にすぐに後ろに下がってと・・・おいゴルシなんかやる気失せていねえか? あ、違うな。芝の感覚再度確かめている感じだわ。まーいいや、いつも通りのポジションだし、俺もそのほうがありがたい。

 

 

 今回は日本どころか世界でもやべーやつら勢揃いのレース。俺のいつもの武器を見せないのと、日本メンバー多数。しかもオルフェを倒しているジェンティルちゃんもいるしジャスタもいる。斤量ハンデなしのミルキースターちゃんもいるしでどれをマークすればいいかばらける分、俺らもわざと後ろに下がってかく乱したほうが戦いやすいってね。

 

 

 『今回ケイジとゴールドシップは最後尾から2、3番目につけ、ジェンティルドンナは前から2番目の内側。ジャスタウェイは5番目の外、ミルキースターは7番目につけるという位置取り。この位置をどう見ますか岡崎さん』

 

 

 『ケイジが場をコントロールしながら自分も楽にしていますね。ジェンティルドンナ、ジャスタウェイ、ミルキースターばかりを気にすれば後ろからケイジとゴールドシップが飛んできます。かといって、あの二頭を塞ごうとすればジャスタウェイ、ジェンティルドンナのあのとんでもない末脚とパワーを好きにさせて欧州のスローペースな試合運びを壊されます。しかもケイジは追い込みも得意。正直、私も相手すればどうするか迷っているうちにまけそうです』

 

 

 ふーむ・・・馬群が団子みてえに広くなっているな。俺らを塞ぎつつも、何時でも前に行けるようにしている感じかねえ? ジェンティルちゃんは抜け出しやすそうだが、ジャスタとスターちゃん大変そうだなあー

 

 

 さてさて。気持ち的にもう少しで1000メートルを超える感じかね? 少しギア上げるか。そんで・・・ゴルシの道を作るほうが俺への注意もそれて楽だし、外から攻めるぜ松ちゃん。

 

 

 『ありがとうございます岡崎さん。さて、今回のレースのペースメーカーはモンマロン。そして続くキングロッカー、ジェンティルドンナが続いてレースを引っ張る形に。今回もまたダービー馬、二着にほか重賞を手にした怪物たちとまさしく欧州競馬の祭典にふさわしいメンツで争います。

 

 

 ケイジ、ゴールドシップやや外からギアを上げて馬群へと追いつこうとしていきます』

 

 

 『どちらも大型馬ですし、馬群に飲まれるよりはそのほうがやりやすいでしょう。そして、最後の直線でどちらも光る末脚がある。悪くないと思います』

 

 

 『今回は本当に追い込みで行くようですね。さあ3、4コーナーの中間へと入り、もう少し走ればフォルスストレート。偽りの直線へと入ってい行きます。日本競馬ではそうそうみられない長い直線での戦い。昨年ここを征したケイジは追い込みでどう攻略するのか』

 

 

 ほんと、ここのストレートすげえよな。真面目にコーナーとコーナーの中間なの? ってくらい。む・・・ジャスタ、更に内に入って、スターちゃんも内側か。確か今日は内側の方が馬場がいいんだっけ? 消耗避けるためとはいえかなり中に入って攻めるなー

 

 

 さて・・・見えてきたぜ第4コーナー・・・早仕掛けで一気にまくるぞ松ちゃん!

 

 

 「・・・よし! ケイジ! 大外から行くぞ!」

 

 

 『あいよ!』

 

 

 『お? 攻めどき? なら便乗して場を荒らすでゴルシ―』

 

 

 『いよいよフォルスストレートから第4コーナーへと入って行きます! ここからがまさしく正念場。自分の競馬が出来るかどうか。それが大事になってきます! さあケイジとゴールドシップが外から攻める! まくっていく! 早仕掛けを見せていくぞ!』

 

 

 よっし! いい感じにクリアな状態。前に行きや・・・あ? マジかよここまでよれるってサンデーのケンタッキーダービーじゃあるまいに。俺のそばに一気に来たなおい。ゴルシの方は・・・あー問題なさげ? 俺の方をガンマークしていたのね。

 

 

 まあ、問題ない、最後の直線まで足を残せたんだ。ここからおもいき・・・・おぶちっ!!?

 

 

 『『『『ケイジ(先輩)!?』』』』

 

 

 『さあ、最後の直線へと移ります! ゴールドシップが仕掛けるもケイジを気にしてか足が鈍る! しかしそれでも速い速い! ジャスタウェイ、ジェンティルドンナ、ミルキースターも広く横に広がった馬群から抜け出していく!』

 

 

 こんにゃろ。タックルも? 効くかよこんなの! ゴルシやジェンティルちゃんレベルのやつもって来い! ははははは。人気者は辛いねえ。マークされてスキンシップされてしまうわ。・・・・いいねえ。これくらいやってくるのなら、俺も燃えて、思いきりやってやるってもんだ!!

 

 

 『こんにゃろ! おめーよくもケイジに!』

 

 

 『気にすんじゃねえやお前ら!! こんなこともあらあ! それよりゴールに早く着く方に目えむけろ!! これを負けた言い訳にするんじゃねえぞ!』

 

 

 多少のアクシデントくらい問題ねえ! それくらいで松ちゃんもみんなも騒ぐことじゃねえ! 俺にとっちゃあただのスパイス。むしろやる気が出ていいくらいだ!

 

 

 『俺のライバル達がここの直線で衰えるわけがねえよな? 気がつきゃあ俺の尻を追いかける羽目になるぜ! それをされたくなきゃ前を見ろ! 行くぞ日本代表!! もう一度頂点を取ってやるぜ!!』

 

 

 『『『『っ・・・・・ォオオッ!!』』』』

 

 

 『ケイジ足の回転が高まる! ゴールドシップ加速を再度開始! ぐんぐん抜け出してごぼう抜き! 先頭に並んでいく! 追い越していく!』

 

 

 『やっぱお前最高だぜケイジ!』

 

 

 『これが最強世代・・・! なんか熱くなっちゃうわ。キャラじゃないのに!』

 

 

 俺の名はケイジ! 不利な状況でも楽しみ、燃える傾奇者、武将慶次の名を持つものよ!!

 

 

 『ミルキースター加速! ジャスタウェイ! ジェンティルドンナも馬群を振り切ってその末脚を爆発! ケイジ達を猛追! これは・・・! これは昨年の凱旋門賞の再現になったぁ!!』

 

 

 『そうだ! ケイジならその心配すら失礼。負けないよ! 僕だって世界最強! だからこそここまでこれた!』

 

 

 『ああ、そうよケイジ・・・! その燃える戦いに、心があるからこそ倒したいし、戦いたくなる! そばにいたくなるの!!』

 

 

 俺の名はケイジ!! 祝い事である慶事の意味を持つ名を持つもの!!

 

 

 このくらいでへばるような道のりを歩んじゃいねえ! そんな程度で勝てるライバル達じゃねえ! このくらいでよれるような軽い走りをしちゃいねえ!!

 

 

 『残り300メートル時点で既に勝負は先頭の5頭に早くも絞られた! そのすべてが日本馬! そしてその先頭を切るのはやはりこの馬だ! 日本総大将ケイジ!! スペシャルウィークから引き継いだその名に恥じない走り! 天馬を、黄金を思い起こさせる追い込みですべてを撫で切って道を切り開いたぁあ!!』

 

 

 この走りが偶然か!? この光景が偶然か!? 見せてやるぜ世界! 俺を信じてくれたみんな! そして・・・俺にバトンを託してくれた、ちょっと不器用だけど優しい金色の王に応えるために! いつも俺を信じて悩んでも進んでくれる相棒のために! 背負い込んだ想いのために勝ってやる!

 

 

 日本の想いはもうここに届くんだって! 俺たちの歩みは偶然じゃないんだって! 日本のホースマンと馬の歩みは、追いつきたいというその願いは・・・!

 

 『最後の争い残り200メートル! ケイジが抜けていく! もう誰も追いつけない! 日本馬同士の最後の戦いはこの漢に、コンビに軍配が上がった! グイグイ伸びていく! 喰らいつくジェンティルドンナ、ゴールドシップから2馬身の差をつけて残り100メートル! 言葉はいらない! 目に焼き付けろ! これが・・・これが日本の皇帝、最強の血筋が生んだ最高傑作! その名はケイジ! そして日本の生きる伝説大竹騎手が認めた騎手、松風守の走りだぁあああっ!!』

 

 ここにしっかりと届いているんじゃぁあい!! 偶然じゃねえ! まぐれでもねえ! 俺たちの勝利だ!!

 

 

 『ケイジ3馬身差をつけてゴォオオールッッ!! もう、フロックとは言わせない! 傾奇者ケイジ、史上初欧州二冠連覇達成!! 前代未聞! まさしく歴史的快挙を起こした! そして、日本人二人目の凱旋門賞ジョッキーを誕生させた! そしてそして! タイムはなんと2分19秒3!! レコードをさらにコンマ2秒更新! 着順もまた1着から5着まですべて日本馬!! 2着ジェンティルドンナ 3着ゴールドシップ 4着ジャスタウェイ 5着ミルキースター 掲示板を日本馬で二年連続独占!! 凱旋門賞でこの大快挙!! やりました日本メンバー! これが日本最強! いや、世界最強世代だ!!』

 

 

 

 

 しっかりと。しっかりとゴール板を通過し、しばらく速度を落としつつ走ってからようやく一息。よしよし・・・へっ。一番手柄頂戴仕るってな。

 

 

 『いやあ、掲示板から外れるが、きっと気持ちでは一緒に戦っていたと思うぞ? 6頭目の、優しい暴君様がな。見てくれているかねえ。オルフェ・・・ふぃー・・・・』

 

 

 『おいケイジ! 大丈夫かよ顔! あーら桃色にはれ上がっていらっしゃる。医者―!』

 

 

 『それ俺のメンコ! 桜吹雪じゃぁい! この紋所が目に入らぬか!』

 

 

 『絶対それ別の時代劇! 立場が爆上がりしているよね!?』

 

 

 『ああ、ケイジ! 大丈夫ですの!? 怪我、身体も無事ですのよね!?』

 

 

 『あー先輩たちの走りやばいってー・・・でも、本気で走ったのいつぶりだろう。すっごくだるいけど・・・楽しかったー』

 

 

 あーもーレース終わってすぐこれか! 浸る暇もねえ! ったく。まあ、俺ららしいけどさー。で、どうよ松ちゃん。そこから見える景色、悪くねえだろ?

 

 

 松ちゃん泣きすぎて俺の鬣や体に涙やら鼻水の雨だよ。全くも―後でブラッシングとシャワー、久保さんたちと一緒にしてもらうからな。

 

 

 『レースが終わり、日本馬メンバーがわちゃわちゃと集まって嘶いております。互いにこの激闘を讃えているのでしょうか。この古い歴史、伝統を持つ凱旋門賞。故に集まり、勝利を手にするのは怪物的名馬ばかり。その歴史の中で連覇を成し遂げた名馬は数えるほどしかいない。しかもそこに欧州二冠も含めれば彼一頭のみ! その名はケイジ! 欧州でまた彼は一番手柄を上げ! 日本に持ち帰ることが出来ました!』

 

 

 『感無量であり・・・同時に、日本の血統はここまでやれるんだと見せつけられましたね・・・ルドルフもきっとここに挑めれば取れていたかもしれない。そう思わせてくれるほどに、強い戦いぶりでした』

 

 

 岡崎さん涙声じゃん。あちこちで涙流してんなあおい。

 

 

 ま、いいか。とりあえず。

 

 

 『いよっし。皆。あれやろーぜ? 欧州でこれをやる機会ってないし、日本メンバーでさ』

 

 

 『いいでゴルシよ。あれだけやっても負けたやつらに見せつけてやる意味も含めて』

 

 

 『根に持つねゴルシ・・・いいよ。僕もやってみたかった』

 

 

 『あーあれ・・・? えーと、ジェンティル先輩、一応どうやるか教えてもらっても?』

 

 

 『何でわたくしに・・・いいですわよ? 簡単ですし、まずは・・・・』

 

 

 今回は俺だけじゃねえ。ここにいる日本メンバー、そして、これなかったやつ、信じてくれたやつ。バトンを託してくれたみんなの勝利だ。なら、せめてここにいる俺らだけでもパフォーマンスを見せてやらないとってね。

 

 

 ジェンティルちゃんも説明が終わったみたいなので5頭でスタンド前にポコポコ。

 

 

 みんな拳は構えたな? 喉枯らしていないよな?

 

 

 『さあ、ケイジ達がスタンド前に移動した。これをやるために相談していたのでしょうか? おなじみケイジの勝利パフォーマンス。それを今回はライバルであり戦友たちとやるようです!』

 

 

 よっしゃ。それじゃ、右にぴょーん。

 

 

 「「「オウッ!!」」」

 

 

 左にぴょーん。

 

 

 「「「オウッ!!!」」」

 

 

 首を下げてからのー?

 

 

 「「「「「ビヒヒィイイイィイイィイッっ!!!!『『『『『っいよっしゃああぁあああああああ!!!』』』』』」」」」」

 

 

 

 「「「うおぉおおおおおおっっ!!」」」

 

 

 また見に来ているなあ。神様たち。どうだい? 日本馬の浪漫、世界も含めて面白くなりそうだし、俺を信じてくれた分。しっかりやれたかねえ? そして、オルフェーヴル、竹ちゃん。あんたらの想いも、バトンも、しっかり届いたぜ。




 ケイジ、欧州二冠連覇を達成。欧州での勝率は100%のまま。


 ケイジ 無事大勝利。ドーピング検査もサプリすら食べておらずばっちり。日本競馬界の重鎮や各国のやんごとなき方々もしっかりその結果を見届けてからの万歳三唱を貰ったりした。もう一度国民栄誉賞受賞されることに。

 ゴルシ 顔バチーン回避。代わりにケイジがもらった。お返しと言わんばかりに5着以下に3馬身つけての3着入り。この後なんやかんやケイジを気にしつつご飯を食べていた。


 ジャスタウェイ 4着に入り、その維持をの見せつけていった。国際レートがさらに上がり、種牡馬入りの話がすでに飛んできているほど。


 ジェンティルドンナ 一番ケイジを心配していた。地味に親を超える結果を凱旋門賞で見せつけての勝利。馬房の中で気になる余り旋回して厩務員さんを心配させてしまった。


 ミルキースター ケイジ達に触発されて真面目に走った。陣営の皆も掲示板入りしたことを褒めてくれたのでこれ以降たびたび本気で走ってくれることも。


 松風 泣きまくり。日本人二人目の凱旋門ジョッキーへ。ケイジ達と一緒に国民栄誉賞をもらうことに。


 オルフェ 牧場でスタッフの皆と応援していた。ケイジダンスと、ケイジの言葉を聞いて思わず涙。


 神様 また皆で欧州旅行していました。予想を超えるケイジの大奮戦ににっこり。ナギコのレースも楽しみで仕方ない。


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ウマ娘エピソード 13 伝説への旅路

 今回はここの世界でのケイジのスタートになると思います。少し重い話、別作品の漫画のキャラが出てくると思いますのでご了承を。

 まあ、こち亀とかなんですがね。


 「だーかーらーよ・・・しばらく休学にしてここを出させてくれって言ってんだよルナ姉!」

 

 

 「駄目だケイジ! 抜け出していく先は危険が過ぎる! 君のキャリアどころか命も危ないのだぞ!」

 

 

 東日本大震災。この星を揺らすほどのまさしく天災。その震災があった直後、余震さえもまだ気を抜けないとき、ケイジは生徒会室へと入ってきて休学届を叩きつけた。

 

 

 理由は単純明快、津波が来たという現場へ赴き、救助活動をしてくるというのだ。今年の7月にはデビューを控え、その時点ですら私は愚かマルゼンスキーさえも認めるほどの才能の持ち主がこの学園を離れ、真冬の、しかも泥やあらゆるものがごたまぜになり危険極まる場所へ。

 

 

 「知るかアタシのキャリアなんぞ! こういう時にアタシらウマ娘のパワーと体力、嗅覚に聴覚を持って救助をするべきだろう!? ルナ姉の言うウマ娘の幸せってんなら! あそこで巻き込まれた子らのためにも行くべきなんだよ!!」

 

 

 「それはプロに任せるべきだと言っている。君は確かに軍の研修をこの歳で吸収し、あらゆる意味で規格外だ。だが、あくまで民間人であるケイジを救助現場へ出向かせるわけにはいかない。それをするのなら・・・・」

 

 

 正直言って、私も行きたい。ケイジの言う通りだ。人類史とウマ娘の歴史を紐解けば私たちウマ娘はその美貌と優れた力を使い人を助け、代わりに食事や社会的立場を用意してもらい、共存してきた。

 

 

 災害の時もそうだ。そしてこの災害大国と言われるほどに多くの災害が起こる日本ではウマ娘が身体を張って人々を助けた記録も多々見受けられる。

 

 

 しかし、しかしそれを見たうえでもケイジを行かせるのは先達としても、生徒会としても、個人として、アスリートとしても抑えておきたくなるものだ。彼女の才能を潰したくない、万が一があってほしくない。無性に甘やかしたくなる。親しみを感じる。自分とは別のベクトルで大器を見せる彼女をここで磨くのを止めてはならない。そう思いが強くなる。

 

 

 だからこそだろう。強く言ってしまったのは。同時に、そこで測り間違えていた。ケイジという女の、ウマ娘としての器を。

 

 

 「休学では済まない・・・停学でよければいい。退学だってあり得る。此方が認められないのに無理に出ていくというのなら、それをしないといけなくなる」

 

 

 「っ・・・・・・・・」

 

 

 しばらくの沈黙。この時、私はケイジも思い留まったと考えた。何せ、日本最高峰の財閥、ホテルチェーンを持ち、資産も世界有数の前田家の令嬢。ウマ娘日本最強格が一族である名家中の名家。その家に泥を塗ることへの重さ、スキャンダル扱いされての株価の下落や被害。なんやかんやふざけ倒しつつも頭の切れるケイジならわかるはずだ。

 

 

 いつもの学園内外での少しの騒ぎならまだしも、退学となれば、しかもそれが学園側からのとなれば流石に問題となる。有名人。富裕層であるが故に起こりうる問題だ。一度落ち着いたか。その間に期間を置いてのボランティアの募集でならいいと条件を出そうとしたのだが・・・

 

 

 「ならいいぜ。退学にでもしてくれ。むしろそっちの方が好きにやれるし、海外のトレセン学園ででもやり直す。ビリーさんにでも相談すっか。ブライアン。窓開けてくれ」

 

 

 「わかったよ。相変わらず、ケイジさんは決めれば一直線だね」

 

 

 「ま・・・っ! ケイジ! 今すぐでなくてもいいだろう!? もう少し待ってくれ! そうすればこちらの方でも物品回収やあれこれのボランティアへの便宜を図れる!! 焦る必要はないはずだ!」

 

 

 「何言っているんだよ、この冬だぞ? 凍傷での怪我もあれば、心身病んでしまう人も多い。一人でも今は人手が欲しいんだ。今すぐ行かねえという選択肢はねえ。ほれ、アタシの文は書いたし、後はルナ姉で好きな処遇を書いて出しておいてくれ。お礼はあとで言う」

 

 

 さらさらと便箋に何かを書き込み、封筒にしまい机に置いて生徒会の窓から出ていこうとするケイジ。それを抑えようと私も立つがそこにブライアンが壁となって止める。

 

 

 「ケイジ! 君の才能は間違いなく私を超える! 世界へも名を馳せるはずだ! それの一歩を躓いて、そして君の活躍で日本を、多くの後発への刺激や、あらゆる可能性を潰しかねないのだぞ! やめてくれ! 私は君の輝かしい成長と未来を捨ててほしくないのだ!」

 

 

 「あのなぁルナ姉、ここで躓いてもアタシならやり直せらぁ! でもよ。今あそこで失われそうなものには、無限の未来や可能性、アタシを超える器だっているかもしれねえんだ。こういう時に動けなければ女でも廃る! アタシのウマソウルが許さん! じゃぁな。あっちで頑張ってくるわ」

 

 

 そう言ってケイジは生徒会室の窓から飛び降りた。私は、しばらく呆然としつつ、地面に降りて走っていくケイジを見送る他なかった。

 

 

 「ケイジさんは今行かせないと、必ず後で滅茶苦茶をしてでも行く。見送る他ないよ会長」

 

 

 「そ、うかもだが・・・だがやはり心配で・・・」

 

 

 「問題ないよ。ケイジさんの回りには支える人たちも多い。必ず面白いことをしてくれるさ。それより、今は生徒会の仕事と、増える仕事をするべきなんじゃないのか?」

 

 

 ブライアンの言葉にそうする他ないと自分に言い聞かせ、席に座り直す。ああ。こういう時に性根が出てしまうのが悔しく、同時に思いきりやり切れるケイジが羨ましく思える。

 

 

 「私も手伝うよ。書類をくれ」

 

 

 「ふふ・・ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おーい爺や、ばあや。アタシの貯金とこの前超神田寿司で捨てられそうになっていた骨董品。片っ端から開いて現金に回すのと、支援物資、食料品に全部回して。それと、月光刑事にも連絡頼む。アタシの方も既に両さんに連絡取って・・・お」

 

 

 さてさて、学園の方は抜け出せたし、通帳と判子。回せる分の金とコネでトラックやらあれこれを用意出来た・・・そんで。後はあっちに移動するだけなんだけど・・・。

 

 

 そう思っていたら、何やら見覚えのある車。いやはや、流石だねえ両さん。

 

 

 「ケイジ! どうせ震災現場に行くんだろう? 乗れ! 中川から車を借りてきた!」

 

 

 「さっすが両さん! ゴムボートにあれこれ詰まっているじゃないの! 大原部長は大丈夫だったの?」

 

 

 「はん。ケイジのやることを支えなきゃ。若い子だけに無理させるのを見ないふりは無理だし、それやるのなら警察官やる意味がねえ。啖呵切ってきたぜ」

 

 

 「もし首になってもうちで雇ってやるさ。さ、行こうぜ! 震災現場で寒さや怖さで震えているやつらにやけどしそうなスープとミノムシになりそうなくらいの分厚い毛布を配るんだ!」

 

 

 いやはや、中川さんの所のトラックを運転してきた両さんと一緒に東北へいざ鎌倉。とりあえず、これで最低限の救助活動と、荷台に詰め込まれたテントや寝袋、食料の一覧表に目を通していると電話が。あ、爺やじゃん。

 

 

 「もしもし? どうだったよ」

 

 

 『用立て出来た金額全て資金に回したのと、冴羽殿に2000万現金で渡してドライバーと補助を受け持ってもらえました。お嬢様の護衛も。とりあえず、1万人分の食事数日分と、寝袋やヒーターをあるだけ。発電機も用意しました。

 

 

 旦那様達の方は即金で30億下ろしまして、追加でどんどん使えというのと、現地の前田ホテルグループでも空き部屋は全て家を失った被災者へ回していいそうです。今できるのはこれくらい、現場に一緒に行けなくて申し訳ないと謝っておられましたのと・・・私でもこれがせいぜいです。申し訳ありません』

 

 

 「十分! なら、爺やたちは被災現場での炊き出しや前田グループとの打ち合わせを頼む。アタシと両さん、月光刑事、冴羽にいで救助活動をしていく。その救助者たちの受け入れを頼みたい。時間との勝負だ。年の功と、アタシに普段付き合っている度量で癒してやってくれや」

 

 

 『もちろんですぞお嬢様。ばあやとの連携で驚かせて見せましょう』

 

 

 まったく老いてますます盛んとはよく言うねえ。頼もしい。とりあえず、現場で動ける連中にドライバーとして雇ってホテルか宿を物資の中継地点にして各所に分配、それをしていくための資金は爺やと現地のトップに回すか。爺やに簡単な指示の相談をしておいてから電話を切る

 

 

 で、家が流れた、職を失った人たちにそれらの仕事をやらせたいし、あっちで求職の応募も出しておくか・・・さすがに震災が起きたその日にすぐできるとは思わないが・・・一応。な。

 

 

 「ケイジ。今回わしがこうしてお前さんに手を貸すのは、どうせ止めても何らかの手段で向かうのを分かってのボディーガードに近い。だから、無理はするな。何かあればわしらを頼れ。ケイジより年上なんだ。頭で負けても、経験では負けんぞ」

 

 

 「はっははは! ある意味での信頼ゆえだねえ。ああ。頼むよ両さん。それに、まだ頼もしい大人が来ているようだしな」

 

 

 高速道路を走る中、聞こえてきた飛行機のエンジン音。民間のそれではない。夜間戦闘機月光。そして、うちのヘリ。多分ヘリはばあやの方だなあ。たしか見習いの時にヒサトモばあさんと一緒に上空からホテルのイベントビラ巻くために免許取ったんだっけ。

 

 

 『こちら月光刑事。両津、ケイジ。借りを返すのと、警察として、個人として手を貸そう。いつぞやの怪盗団逮捕の時には助かった。今度はこちらの番だ』

 

 

 「こちらケイジと両津。感謝するよ月光刑事。避難場所や受け入れでの警備や指示とかも混乱しているだろうし、警視庁の幹部の発言は混乱している現場を抑えるのにいいし、うちのホテルでも受け入れを始める。その際の指示に助かるよ」

 

 

 『相変わらず年に不相応な手際の良さだな。よろしい。此方特殊刑事課でも可能な限り動かせる人員を回してサポートに回る。両津。この宝を守るのだぞ』

 

 

 「了解、そっちこそ救助活動の際に操縦テクを披露してくださいよ。わしらで可能な限り救える命を救いに行くんですから。それじゃ」

 

 

 トラックの無線にどうやったかは不明だけど月光刑事からの通信が着て、両さんが答えたところで通信を終了。ばあやからも懐中電灯を使った信号で協力すると言ってくれていたのでこちらも懐中電灯で返しておいておく。

 

 

 幸子からも協力が出来ないか連絡しておくか・・・あの子の嗅覚とパワーは真面目に欲しいし、料理上手だし。まさかこの世界では人間になっているとはなあ。しかもマタギのおっちゃんの娘。

 

 

 あれこれ両さんと話しつつやるべきことの手順をメモに書き記しておくうちに震災現場に到着。さ・・・一肌脱ぎましょうかねえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふっ・・・ん・・・! いよっし・・・! 嬢ちゃんにばあちゃん。大丈夫か? 怪我してねえな?」

 

 

 「は、はい・・・!」

 

 

 「おお・・・お嬢さんウマ娘かい・・・最近はこんなに若いのに自衛隊にいるんだねえ」

 

 

 目の前でがれきの山を自分の腕力だけで持ち上げ、すぐさまおばあさんと、その孫娘と思えるウマ娘を呼び出していくケイジのすさまじさをわしは改めて見せつけられていた。

 

 

 ウマ娘のパワーの中でも群を抜いて高く、それでいて繊細なコントロールや加減もできる。ゆえに陶磁器、茶器の製作や魔法のようなマジックも見せていける。そんなケイジの力を振るい、地震で倒壊した地域でがれきの中で出られなくなっている人たちの救出に全力を振るう。

 

 

 「よし。お二人さん。わしの車に乗ってくれ。避難場所と、受け入れ先に前田ホテルが旅館やホテルを開放している。そこに連れて行って自衛隊や出張してきた医者たちの手当てを受けてくれ。ほれほれ。乗って乗って」

 

 

 「ありがとうございます・・・! ありがとうございます・・・!」

 

 

 「ありがとう・・・! もう助からないかと思っていた・・・私も腕が折れていて・・・もう・・・」

 

 

 「気にすんねえ! 生きてその笑顔みれりゃあアタシも儲けもんよ! お、月光刑事の飛行機が来たな。おーい! こっちだこっち!」

 

 

 わしは軽トラでおばあさんと孫娘を運び、ゴムボートには先に救助してきた人を乗せ、それを月光刑事の戦闘機から降りてくるロープで固定し、低速で避難場所へ運ぶ。

 

 

 「んー・・・あっちから生きている人の匂いがするわ」

 

 

 「奇遇だな。アタシも怯えてパニくりそうな声が聞こえる。そっちの方へ行くか」

 

 

 被災者の発見はケイジのウマ娘としての聴覚、そして、ケイジの幼馴染であり、人でありながら警察犬以上の嗅覚を持つ幸子ちゃんが次から次へと見つけてはこの3月の東北地方という凍死もあり得る、寒さと暗さ、怖さのなかから助け出し、二人の美貌で微笑んでは癒しを与えていく。

 

 

 明るい、本当に明るく強い、健気な子たちだ。急いで警察特別協力者というワッペンをつけさせて余計なことをしようとする輩をけん制し、こうして救助活動を続けて早3日。

 

 

 泥の中にいた人たちもヘリや戦闘機で救助し、ボートを使って助けに行き、飯を用意し、金銭を与え、まだ活力の残っている人達にはボランティアや職を与えて少しだが避難先の体制もできつつある。

 

 

 その避難先に大きく力を注ぎ、助けているのはやはり前田ホテルの存在が大きい。あの震災から数時間後には記者会見を開いて被害にあった地域周辺の前田ホテル、関連の宿は全て被災者の受け入れ場所として無料開放。

 

 

 もし職を求めるのであれば県外になるがそこも紹介していくし、家族で住み込める場所も都合するほど。その手際の速さには中川や麗子も電話で聞くほどであり、同時に、シンザンやヒサトモ。大災害を経験した経験者たちがいたからこその対応の早さだろう。

 

 

 「あらー・・・ちょいと傷が深いな・・・消毒するぞ」

 

 

 「はいはい。あとは・・・えーと、あったあった。大分消耗しているわね・・・眠れるようにも栄養剤を肌から・・・」

 

 

 「戻ったぞー・・・次の人は傷がいくつかあるな・・・」

 

 

 「そうなんだよ両さん。しかもまあ、時間がたって化膿し始めている。知り合いのドクターで腕の立つやつ何名か呼んでいるからそっちで見てもらう方がいいなあ」

 

 

 「消耗も大きいし、栄養も点滴しながらじゃないと怖いなあ・・・出血量は傷口に異物が入っているせいで抑えられていたけど。ふぅ・・・」

 

 

 そして、その孫とその親友の動きの速さ。けが人の消毒を済ませ、医療用接着剤で傷を塞ぎ、栄養剤のパッチを貼り付けての見事な応急処置。常に現場に張り付いているのが少女なのがわしのふがいなさを感じさせるが、同時にその手際の良さで助かった命も多いと医者たちも言っていた。

 

 

 間違いなく早く、無理やりにでも来てくれたことで救われた人は多い。年齢がわしより2回りくらいは下の子どもだと思えないほどに素晴らしい。

 

 

 ただ、同時に働きすぎであり、休ませるべきでもある。すでに自衛隊や警察、志望者による救助活動は始まっている上に、指定されたエリアで救える人は全て救い出した。6名でプロの何倍もの働きをしたのだ。休んだって誰も怒るいわれはないだろう。

 

 

 「よし・・・これでこのエリアは全て回ったかね。ケイジ、幸子ちゃん」

 

 

 「だな。次いって助けに行こうぜ両さん」

 

 

 「ええ・・・私の鼻でももう人の匂いはしないですし。行きましょうか」

 

 

 「いやいや、ここ以外は全部警察や自衛隊が回ってくれている。わしらは休もう。・・・と言っても聞かないだろうしな。せめて炊き出しの用意をしよう。力仕事だし、二人の力が欲しいと言っていたぞ」

 

 

 二人とも首をかしげるもそれもいいかと言って笑顔で歩いていく。本当に強い。だからこそ大事にしたい。わしの先輩や、檸檬のような、芯が強いからこそ弱さを隠す、見せない人らは思わぬところで折れかねない。せめてそこをわしが支えたり、かくして癒してあげられるくらいしかできないが、それでも助けになれば。

 

 

 今日のご飯は雑炊と魚の塩焼き。そして漬物。いくつかは前田ホテル御用達のメーカーから回してもらったものも多く絶品だったのだが・・・ケイジに心無い言葉を投げてくる輩に殴りに行きそうになり、飯の味が台無しになった。気にしなさんなと言って笑い飛ばすケイジがいたからこそ耐えられたが・・・令嬢のポイント稼ぎだの、普段の素行の悪さの埋め合わせだの言うのは怒りが爆発しそうになった。

 

 

 大金を惜しみなく放るだけでも感謝されるだろうに、進んで常にきつい仕事をこなし、炊事もこなし、自身は少しでも多くの食料を回すためにと普段の半分以下もいいと思えるほどの量の食事だけ、睡眠もいい場所ではなく作業場に近い場所にテントを張って、中に新聞紙を敷いての寝袋だけ。自衛隊と同じ過ごし方をしつつも重機と警察犬張りの働きを同時にこなす。そんな彼女への罵倒などされるいわれも無いはずなのに。

 

 

 一人憤るわしにもらってきたという酒と一握りの豆菓子を渡し、ケイジも幸子ちゃんも『両さんが怒ってくれるからこそアタシ(私)たちは怒らないで済んでいる。だから、今は心をほぐして』と言ってくれて、渡された酒の味はわしは一生忘れないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふっぐ・・・あー・・・身体がバキバキだ・・・ストレッチ毎日しているのになあ・・・」

 

 

 かれこれボランティアを始めて1週間がたつ。あの震災の衝撃や、兎にも角にもどう過ごせばいいのかと迷う人らの受け入れや衣食住は対応も進んでいる。中川、麗子さんらの会社も動いてくれたことに加えて前田ホテルグループでの連携。GENBUグループもバスやトラック、多くの車を回して世界規模の企業での連携を持ってひとまずの対処と先を見通せるための余裕は持てた。

 

 

 「ケイジちゃん。今日のご飯もらってきたわ。せめて朝と晩御飯だけでもいいもの食べないと・・・」

 

 

 「おお? 悪いね幸子ちゃん。あーその出汁巻き卵少し苦手だし、幸子ちゃん貰って」

 

 

 「嘘言わないの。ケイジちゃん私の料理でたまご大好きだと言っていたじゃない」

 

 

 「いいからいいから」

 

 

 ただ、同時に少し余裕が出来る、安心していけば同時に感じるのはなんで自分はこうなったという感情。悲しさ、失ったものの事を強く想起する時間が増える分落ち込んでしまう人も増えているのが事実だ。せめて賃金やお金の面では余裕を持てるようにと職の紹介も早くから始めているが、それでもやはり心に刻まれた傷のせいでそれも手につかず、でも心は弱っていく人も多い。

 

 

 「それに・・・今日は自衛隊の人達がいるし、もう少し寝ていいって言っているし休もう? 目元・・・クマがべっとり・・・」

 

 

 「泥が落ちていなかったかな? はははは。顔も洗うから勘弁してくれ。せっかく早起きしたのに眠りなおすのは休日くらいで結構だ」

 

 

 その人達を少しでも助けたい。立ち直らせる助けになりてえ。だがそれの厳しさもある。それに付き合ってくれている幸子ちゃんに両さんには頭が上がらねえ。せめて戻った時に何か礼をしたい。アタシ用にと頑張ったのだろう。山盛りの料理を持って心配そうに目を潤ませるのにアタシも心が安らぐし、だからこそ幸子ちゃんには腹いっぱい食べてほしい。

 

 

 「・・・もう! 頑張りすぎなのケイジちゃん! 休もうよ! 貯金もコネも使い続けて! 3時間しか寝ないで動いているの知っているのよ!? 1週間もまだ寒いこの場所で! せめて休める時に休まないと・・・」

 

 

 「なあに。これはアタシにとってはレースへ向けてのトレーニングでもある。だから気にすんねえ。ほれ、飯を食おう。せっかく熱々で持ってきてくれたのに冷めちゃあもったいない」

 

 

 「うん・・・いただきます。それで・・・練習って?」

 

 

 怒り始めると怖い幸子ちゃんを怒らせるわけにゃいかないので一緒に段ボールを地面に敷いてから食べていく。朝は豚の生姜焼きかあ。うん。いけるいける。でもゆっくり食べないとアタシ胃袋縮んでいるだろうしなあ。

 

 

 幸子ちゃんも食事にほほを緩ませていきつつ聞いてきたのでちょうどいいやと話すことに。真面目にアタシの嘘はすぐ見抜くから誤魔化せないだけだけど。

 

 

 「アタシがこれから挑むウマ娘のレースは・・・正直言って理不尽のぶつかり合いだ。誰より練習しても才能に潰される。そもそもどんなに願っても入りたいチームに入れるかさえもテストの結果次第で落される。ひたすらに、純粋に強いものが勝って、栄光の舞台に上がってもまたライブで力量を見られていく。華やかで輝かしいが、その戦いは命がけで、心身全てを全力でぶつけて尚結果を数字でたたき出していく世界だ」

 

 

 ルナ姉にうちのばあちゃんたちがそうだが、まさしく才能、上に立つものが周囲をねじ伏せてその器を見せていく場でもあるレース、ライブ。どんなに努力しようが、最終的には才能と努力、あらゆるものの総合値がレースで見せられる。

 

 

 たとえ才能が20で、努力を100積んで底上げしたウマ娘が1位を狙おうとも、才能は100で努力は50程度しかしていない怪物には敵わない。努力が報われない場面が多数出てくる。それがウマ娘のレースだ。しかもおまけとしてファンたちの評価や言葉までもが飛んでくるという始末。

 

 

 「そこじゃあどんなに厳しい結果でも挑んだ以上受け止めなきゃいけねえ。その上で次にいかないといけねえ。努力は報われる。それを潰す事実を学生の身で受けなきゃいけねえ。これはその訓練でもある。理不尽を受け止めて、艱難辛苦を乗り越えて前に進めなきゃいけねえ」

 

 

 「・・・でも、あんまりにも厳しすぎるわ・・・せめて癒しの時間くらいは」

 

 

 「なあに、あるんだぜ? 助けたみんなが微笑んでくれてさ、軽口叩きながら配膳したり、一緒に掃除したり、洗濯したりしてよ。おばあちゃんやウマ娘たちとこの前なんてお菓子の交換をしてさー。癒しもある、鍛えられる。アタシにとっては人助けをしながらトレーニングになる。だからよ、気にしすぎんな幸子ちゃん」

 

 

 そう、これくらいの厳しさは耐えなきゃあいけない。正直少し心がきついが・・・戻るまで少しでも多くの手伝いをしたい。ウマ娘として三度目の生を受けたんだ。ここで力を振るわにゃあ女が廃る。

 

 

 食事をかき込み、茶で流し込んでから腰を上げる。さて・・・今日は何をしたものか。

 

 

 「おいおい、こんなに楽しそうなトレーニングをしていたなんてずるいぞケイジ~ゴルシちゃんも混ぜてくれよ♪」

 

 

 「まったく・・・リーダーになって早々にこれですもの・・・私の家の方でも多くの力を支援に回せるようにしましたわ。楽をしなさい」

 

 

 聞えて来た声に思わず振り向けば、嘘かと思うような光景を見て目をこすってしまう。

 

 

 「すまんケイジ。ちょっと戻っていてな。代わりに人手を集めてきたぞ!」

 

 

 「ケイジ・・・いや、ケイジさん! あんたの心意気に感動した! そして、それに応えるためにちょいと古巣のやつらと知り合いを集めてきた!」

 

 

 「ケイジちゃーん。もう、乙女がしていい顔じゃないわよ? 私の方でも人を集めてきたし、楽しなさいよ」

 

 

 ゴルシ、ジャスタ、ジェンティル、ヴィルシーナ、ナギコ、オルフェーヴル、ヒメ、両さん、おそらく手の部分にバイクのハンドルを固定されている本田さん、スーザンママ、ヒサトモひいばあに、後ろには男どもが大量にずらり。

 

 

 「関東男連合600人、本田ヘッドの声、そしてケイジの姐御の心意気に感服し参上しやした!! どうぞこき使ってくだせえ!」

 

 

 「16号の黒豹1000人初代総長とケイジさんの姿に惚れて参上しました!! ケイジさん、ここからは俺らにも手伝わせてください!」

 

 

 「なんじゃこりゃあ・・・・」

 

 

 「カレンチャンがケイジや幸子、両さんのボランティアの光景の動画を拡散していてな。それも相まっていま日本中がおもしれえことになっているぜ? 見て見な」

 

 

 ゴルシから投げられたスマホのニュースとウマスタのページを覗けばその動画の発信元はアタシが助けた人らのもの。そして、ニュースで警察、企業、果てには自衛隊までもがボランティア募集の数を限界突破し、無理やりにでも来てくれる人が多くいることや、復興支援金が世界中からも来ているというニュースばかり。

 

 

 「この動画や書き込みが来てから数時間後には一気にこの具合でな、ケイジ、あとはわしら大人に任せろ。少しくらい寄りかかれ」

 

 

 両さん・・・ああ・・・すげえなあ、こんなに人が来てくれたのかよ。まったく。嬉しいばかりだ。

 

 

 「前田家の方でもさらに金を追加でつぎ込むし人も回す。ミサトが会議でもうまくやって4000億即金で回せるそうだ。それに、知り合いの老人をシンザンと回って用意した。炊事や雑用で回すし、ケイジ・・・アタシのひ孫だからこそ強さは分かるが、それでも休みな。一度休んでこそ、より強く、早く動けるってもんだよ」

 

 

 バスから降りてくる老人たち。それも何台ものバスからだ。本当にうれしいことだ、本当に、アタシなんぞの行動でそうなったというのなら、報われるという想いじゃ足りない程だ。

 

 

 思わず目頭が熱くなる。くそう・・・泣くのはこういう時じゃねえしキャラじゃねえってのになあ・・・幸子ちゃんに至っては泣きすぎて顔面崩壊しているじゃねえか・・・あはは。

 

 

 「すまねえ。ちょっとの間でいい。みんな、頼らせてもらうわ・・・ありがとう」

 

 

 「気にすんな! ゴルシちゃんはいつも頼っているしな!」

 

 

 「そうそう。それに大切な友達だもの。笑顔でいてほしいし」

 

 

 「リーダーが頑張ったからこその成果。私達が繋いでみせますよ」

 

 

 「ええ。ケイジだからこそ見せたこの成果、より大きくして見せますよ」

 

 

 「ふん。久しぶりに燃えるのを見せてくれたんだ。応えなきゃ女じゃないね」

 

 

 「ぃよおーし!! お前ら! 早速作業を始めるぞ! 両津の旦那に半分付け! 残りは俺と作業の指示を貰いに行くぞ! ケイジさんの繋いだバトンを俺たちが落としちゃいけねえ!」

 

 

 「それじゃあ、やるわよ皆。ルールを守る暴走族。ここでも丁寧に早くやり切っていくわ!」

 

 

 「やり切るぞみんな! ケイジに負けるな! 大人の意地を見せてやろうぜ!!」

 

 

 両さんの号令で老若男女みんなが声をあげるのを見てから、私らは背を押される形でバスの中で仮眠をとらされることに。久しぶりに泥のように眠って、起きたころには夕方。その中でも汗水たらして働くみんなを見て、アタシも手伝ってからみんなで食べる飯は、そりゃあもう美味かった。ただの豚汁やみそ汁のはずだけど、どこのレストランで出される料理よりもおいしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『いよっしゃー! ライブは一度休憩! とついでのトークタイムだ! みんな腰かけて茶あしばきながら今度はアタシの話を聞け―!』

 

 

 東日本大震災。その復興に日本が躍起になる中、ひときわ大きな波を起こした一人のウマ娘。ケイジ。そして彼女が所属するチームシリウスや周辺のメンバー。

 

 

 今日はそんな彼女たちの急遽行われたライブの取材にボクは来ていた。震災が起きるやその日のうちに現場に出向き、特殊刑事課たちを動かしての人命救助。幼馴染とともに何十人も救出し、その後は現場での作業に炊事洗濯とこなして、更には被災地に一番最初に届いた救援物資およそ何十億円相当の物資も彼女から。

 

 

 前田ホテルグループの令嬢でありながら誰よりも泥にまみれて汚れ、粉骨砕身働き、その思いが日本有数の巨大暴走族グループを二つも心酔させて動かし、その動きに呼応するように誰もが復興への助力を大なり小なりしてくれた。

 

 

 おおよそ1か月近くにわたるボランティア、娯楽提供のためのマジック、歌、踊り、コントを披露しては各地を回り続けた。リギルがいずれ自分たちに匹敵、超えるとさえも言っていた器だが、デビュー前でここまでの事をできるのかと何度も何度も驚かされるばかり。

 

 

 そして、そんな愉快なライブはケイジが来た場所で開かれ、その様子を各地に設置されたモニターで見れるようにしていた。伝えたいことがある。そう言ってケイジが頭を下げ、暴走族たちが二つ返事で各地を駆けずり回って出来たイベント。ボクも聞き逃すまいと耳に神経をとがらせ、ペンに力を籠める。

 

 

 

 『まずはみんな。こうしてライブで出会えてありがとう。あの震災があってなお気力を持ち、生きてくれてありがとう。あの津波であらゆるものが流されて、潰されても尚耐えてくれたのに感謝だ』

 

 

 ライブでのはっちゃけ具合はどこへやら。きりりとした顔でマイクを握り、和服が明かりに照らされる。

 

 

 『だがよ、正直もう何もしたくねえ、何をしたいかわからない人もいると思う。当然だ。地球さえも揺らすほどの巨大な災害と波は意志も、何もかもを流して、何時もあったはずの景色さえも泥水で汚して潰して、変えてしまった・・・

 

 

 みんなが落ち込んで、悲しむほどに合った日常も、隣にいたはずの人も、ウマ娘も、ペットも、なじみ深い、愛しい風景さえもなくなってしまっただろうさ。あんまりに急すぎて、凄まじすぎて訳が分からねえという声も、怒る声も納得する』

 

 

 ケイジの言葉にどこからともなくすすり泣く声が出て来たり、目頭を押さえる人も出てきた。当然だ。想像しろと言っても難しい、映画の表現すらも生ぬるい地獄が起きたのだ。そうなるのも仕方がない。

 

 

 『だがよ、今を生きている皆には、つらい言葉かもしれないがもう一度立ち上がってほしい。先に天国へと旅立ったみんなの分まで生きて、そしていつの日か皆が愛して、過ごしたこの地を、地震なんぞに負けねえと復興を・・・いや、それ以上の輝きを手にしてほしい』

 

 

 若造が何を言うか。という声もあっただろう、だが、それは少数だ。ボクは録音とペンで記録しているが反論すらここに浮かびすらしなかった。まだ10代半ばの娘の言葉だというのに、惹きつけられる。反論できない重みを感じさせるのだ。

 

 

 『何をバカなというだろうな。だけどさ、人はそれをできる力があるんだ。東京タワーよりも、どんな建物よりも大きく強いものが人には、ウマ娘にはある。そいつは・・・アタシたちの意思だ』

 

 

 すとんと心に落ちて染みる言葉に反論の言葉さえも無くなっていく。ボクもペンを走らせる手を鈍らせないようにしつつも聞き入りすぎないようにと意識を走らせていかないとそのまま聞いたままになりそうなほど。

 

 

 『どんな巨大な建築物も、すげえ技術のものも、それは人が、ウマ娘が造ろうと思わないとできなかった。ああ、あの場所にこれを造りたいという想いがその場の景色を変え、それは自然の姿も変え、そしてこの星のあらゆる場所にその意思が基礎となり、土台となって多くの建物が、技術が、今の世界を造った。ここにいる皆も間違いなくその意思を持つ一人で、そして進んできて誰かの助けになり世界を動かしていた一人なんだ。

 

 

 だけど、それも今は意志が折れたり、くたびれたり、疲れているかもしれねえ。火が消えているかもしれねえ。だからよ。その火を付けたくてアタシは今日ここで宣言する。

 

 

 アタシは、シンボリルドルフを超える。超える伝説を作る! そして、その始まりの場所はこの場所、このライブからだ!!』

 

 

 驚きのあまり、ペンを落としてしまった。声が出ない。瞬きを忘れてしまった。シンボリルドルフ。ケイジの祖母シンザンを越え、永遠なる皇帝と言われるまさしく日本最強のウマ娘。自身の立ち振る舞いに美貌、人格も学業も完璧どころか既に社会人としての振る舞いもウマ娘のレースを運営する関係者からも太鼓判を押されるほど。

 

 

 そんな彼女に並ぶ、近づくというウマ娘は多くいた。が、超えると公言。しかもデビューさえもしていないウマ娘がそんなビッグマウスを叩く。これに会場も静まり返り、そして笑い声が出てくる。ジョークだと、あるいはそこまで言ってくれるのかという声が多い。既にこのライブ会場ではケイジに心をつかまれた人が多い。ケイジの発言もこちらを励ますためと感じているのだろう。

 

 

 励ますためというのは正解だろう。だが、その瞳に感じる熱は、ボクもなんとなくそれだけではない。自分のためでもあると語っているように思える。

 

 

 『おいおい。まさか笑ってくれるとはなあ。座布団貰えるの? 座っていいのか? まあなールドルフを超えるのは無理と思う人もいるだろうさ。けどよ、あんな大スターが出た後にもうあんな大物は出ないと思っていただろ? でも、出たじゃねえの。オグリキャップという葦毛の怪物がライバルたちとまたすげえ時代を作り、その記録はまさしく偉業さ。

 

 

 その記録は、旅路はオグリキャップが進みたいと思ったから、その意思が作ったものだ。不可能なんてない。それを今度はアタシが見せる番だ・・・! アタシの意思で新しい伝説を作る!! その始まりの場所はここだ!』

 

 

 語る声に熱が入る。その熱に誰もが燃え上がる。もはや武将の飛ばす檄のようだ。びりびりと肌が震え、腹の底から熱がこみあげていく。これが少女の言う言葉か? これがまだレースさえも経験していないウマ娘の言葉の力か? もう既に場を握っているのはケイジ一人だ。

 

 

 『アタシは、この災害でも立ち直れる人の力を信じている! その意志の火をつけるためにアタシが出来ることで何度だって挑む! そのためならルドルフ越えだってやってやる!! だからよ・・・皆で頑張って前に進もうぜ!!!』

 

 

 この感じる圧に、熱に、言葉に全て魅入られる。そして、直観と経験でわかる。間違いなくルドルフやオグリに並ぶ、いや超えるほどの器だと。前田家一の傾奇者。かつての巨星シリウス復活を成せるだろうと言われていた言葉が今ならわかる。もう、目が離せない。この先の時代を作るのは間違いなく彼女、ケイジだ。

 

 

 「そうだ! ここで立ち上がらなきゃあもったいねえ!! お前らも声出せ! 元気を出せ! この年の子どもですらここまでの心意気を持っているんだ!! 俺たち大人が応えなくちゃあいけねえ!!」

 

 「頑張って立て直すわよ皆! ケイジちゃんたちがまた来てくれた時に今度こそここのきれいな姿と笑顔で迎えるためにもう一度踏ん張るときよ!!」

 

 

 何やら警察官とオカマの声に多くが応え、会場が揺れんばかりの歓声に包まれる。気が付けばボクも声を上げていた。すっかりファンになっていた。そこからケイジ達の声を合図にライブの後半が始まり、すっかり見入って楽しんでしまっていた。

 

 

 この後、ケイジは文字通りルドルフを、それどころかディープさえも越える戦いを、時代を皆と作っていった。

 

 

 

 『ああっとケイジデビュー戦でまさかの大差勝ち! そしてレコードも更新するという功績を見せる! あのライブでの公言は嘘じゃないと言わんばかりの強さ! レースにまた一人傾奇者が乗り込んできたぞお!!』

 

 

 誰もが弱いわけではなく、間違いなく誰もが時代の頂点になれるほどの怪物たち同士での真っ向勝負。

 

 

 『ジェンティルドンナ強い強い! 姉、ディープインパクトに負けないと言わんばかりの三冠達成! チームシリウスのサブリーダー! その意地と強さ、美しさを見せつけたぁああ!!』

 

 

 「ケイジ達に負けてなんかいられない! みんなで盛り上げて、元気を渡すの! そして、お姉さまにも並んで見せる・・・!」

 

 

 時にそれはあり得ないような光景さえも見せつけていった。

 

 

 『何ということだ! ゴールドシップがケイジ相手に取ったその一手は三冠ウマ娘ミスターシービーのタブー破り! ケイジが対抗するのは直下降からの祖母シンザンの魅せた超大外回りでのぶっこ抜き! 三冠最後の勝負で三冠ウマ娘たちの時空を超えた勝負! いざ直線! いざ勝負! 最後のスパートをかける!!』

 

 

 「もう無敗の変則三冠とったんだ! ここは譲ってもらうぞケイジイィイ!!!」

 

 

 「やだね!! アタシの夢は、背負ったもんはここで止まらねえ!! お前こそ倒すからなゴルシィ!!」

 

 

 『二人並んでのゴォオールっっっ!!! 結果は写真判定にゆだねられました! ・・・・・・・・・・・・・・・結果は・・・何と同着だぁあ!! 同じ年に菊花賞ウマ娘が二人!! ワールドレコード所持もまた同時!! 三冠ウマ娘の技を見せて、ライバルの最後の一戦は互いに冠を分け合うことに!! 無敗の四冠ケイジ! 彼女に並びくらいつきこの菊花賞を手にしましたゴールドシップ! 傾奇者と黄金の不沈艦の輝きに割れんばかりの拍手が、歓声が響き渡ります!』

 

 

 「おぉおーーよぉお!! そうだ! こいつがゴールドシップ! アタシの最高のライバルでダチ公だ!! アタシら二人で最も強いウマ娘! まだまだここからも暴れていくからな!! 応援よろしくぅ!」

 

 

 

 その戦いは世界ですら関係なかった。

 

 

 『ジャスタウェイ、スーパーレコード達成! ヴィルシーナスプリントまでもを制覇! 昨年の三冠コンビに続いて今年はトリオでの制覇! そしてまたまた偉業を達成! この世代の強さは日本だけにとどまらないのかぁあ!!』

 

 

 「負けられないもの! ケイジだけに背負わせない! 私たちみんなで最高の時代を、そして私自身も勝って勝ち続けてみせるの!」

 

 

 「ジェンティルさんに負けられないもの。私もまた、最強時代の一人だって・・・見せる!」

 

 

 意志の見せる強さ。その可能性を、とことんまで見せつけていった。

 

 

 『ケイジ、日本代表を引き連れて今ゴォオオール!! 凱旋門賞に桜吹雪が舞う! 桜の羽織を手にケイジ見事に欧州二冠連覇達成!! もう届かない場所じゃない! 日本ウマ娘のレベルはここまで来たんだと高らかに手を上げて見せつけます! われらが日本総大将! 世界のウマ娘に並んで見せたぁああ!!』

 

 

 「どうだ! アタシを信じてくれたみんな! その想いは、意志はここにだって届かせることが出来るんだぜええぇっ!!!」

 

 

 その戦いに誰もがワクワクする。皇帝よりも負けが多く、好きほうだいの奔放さには誰もが手を焼く問題児。絶対といえる強さを持ちつつもライバル達もまた怪物。今回は誰が勝つかと議論は盛り上がり、最強格であるライバルたちと勝ち負けを繰り返す滅茶苦茶な時代。

 

 

 最高で、あるいは地獄ともいえる熱い熱い時代、その火を起こし、大炎に仕上げたケイジ達の世代。今日もボクはそんな彼女たちを追うためにカメラを持って駆け回る。その記事が、記録が誰かの元気になる。その助けとなるために。




 この世界でのケイジのウマ娘としてのスタート、そして藤井記者さんとの出会いですね。ここから始まり、そして隙あらばチンドン屋の格好をしたりキセルを加えて面白煙ぷかぷか浮かせるウマ娘になってしまいましたとさ。


 前に書いたかもですが、この世界でのウマ娘、スぺちゃんが授業で聞いたトレセン学園にいる三冠ウマ娘でケイジも並ぶ際はどんな感じになるのやら。とりあえず最低でもあのメンツにディープ、オルフェ、ケイジ、ジェンティルは確定ですよねえ。


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世はまさに競馬時代

 そういえばナギコですが、ウマ娘時代はケイジが被災地で行ったライブをきっかけに惚れていますし、ライスはあれを見てからシリウスを目指しています。


 ポケモンSMが2016年発売なんですが、ケイジもCMに出ている妄想が出てしまいました。人類最強のサオリさんと一緒に。

 この世界だとゴルシモチーフのポケモンも出てきそうですね。剣盾で白馬のポケモンが出ましたし。なんか強いけど特製で敵味方問わず引っ掻き回しそう。


 今回は短めです。申し訳ないです。


 『あばばばばばば・・・』

 

 

 凱旋門賞を終えて、すぐに帰国して戻ってきたは前田牧場。だけど、現在激しい筋肉痛に襲われて悶絶状態でございます。

 

 

 そりゃそうだ。追い込みであのレコードを出すほどにかっ飛ばしたらなあ。あんなの俺二度と出せるかわからんわ。まさか二日も長引くとはなあ。筋肉痛ってことでちゃんとジャパンカップには出るけどね。

 

 

 『ほれほれ。ここか? ここがええのんか?』

 

 

 『にょわー! テメエゴルシそこをつんつんすんな・・・アッー!!』

 

 

 「オス同士の戯れ。癒されるじゃないの」

 

 

 「ほんま、凱旋門賞二連覇の怪物とは思えんなあ。そこがええけど。いやほんと、仲がよろしいようで」

 

 

 で、まあそんな筋肉痛な場所をゴルシのやつが脱走ついでに休憩所からかっぱらってきた孫の手でつついてくるのでたまらない。このやろーマッサージならともかくそこをされるときついんじゃ!

 

 

 トモゾウー! 早く二度目の温泉入れてくれー! ぐぁああ!鼻で押して俺を転がそうとするなゴルシ!

 

 

 『相変わらずですわねえ・・・』

 

 

 『先輩たちの世代ってほんと滅茶苦茶やりますね。にしても、ここレース場じゃないですよね? 人がすごく多いような』

 

 

 「ヒヒィーン!!」

 

 

 『くのやろぉう! ハリセンでしばいてやる!』

 

 

 『お? いいぞいいぞ! フランスでのリベンジも兼ねてやってやる!』

 

 

 『暖かいなあここは・・・はふぁ・・・ねむ』

 

 

 現在俺らより先に温泉に入っているジェンティルちゃんとミルキーちゃんの言う通り、今ここの牧場にはまた人が押しかけている。俺らの取材にまたマスコミが大量にねえ。半分以上が新聞の取材、残りの半分のほとんどがテレビとかネットニュース、雑誌とか。で、残った少数が何でも面白動物の映像を狙いに来たとかなんとか。

 

 

 今回は流石に警備員もだが、前もって日本競馬の運営や大物たちが注意を促しているのもあって人は多いが静かなもんだ。ジャスタウェイも俺らのハリセンでのしばき合いをよそに昼寝し始めたし。

 

 

 よそでは現在おやっさんやトモゾウたちが取材に応じている。いつもこんな感じだと答えているが、んまあーそうねえー喧嘩はしないがこれくらいは日常日常。

 

 

 『首は動く分バチバチ打ち込んでやるぞこの野郎!』

 

 

 『へぶし! このぉ! 伊馬波さんのシャツにかけて負けられねえ!』

 

 

 『それお前があとで破くじゃねーか!』

 

 

 「う、うーん。英雄的な活躍をしたケイジのきりっとした写真が欲しかったのだが、これだと最早新喜劇かドリフだなあ」

 

 

 「ある意味ケイジらしいんですがね。大竹騎手の銅像に加えてケイジの銅像も立つことが決まりましたし」

 

 

 そうそう。記者さんが言うように俺と大竹さんの銅像が立つことになったんだってさ。松ちゃんは土下座して拒否していたけど。後、少し静養したら今回凱旋門賞に挑んだメンバー皆国民栄誉賞を受賞することになった。

 

 

 ナギコもアメリカから帰ってきたらもしかしてと言われているけど、いやー昨年と今年だけで8頭近くがそれを頂戴するかもってすげえ話だな? 訳が分からんよ。面白いけどさ。

 

 

 まあ、兎にも角にも今は俺らの騒ぎを中心になんか盛り上がっているようだし、それで日本が元気になるのなら問題ないわ。今年人気のアスリート部門もどうなるか楽しみだし、有馬記念を終えた後の年末のテレビが今から楽しみなんじゃー

 

 

 今はゴルシをしばいてからだがな! このやろ筋肉痛相手につんつんしまくりやがって! ツボ押しならまだしもヨォ! 温泉に入る前に筋肉ほぐしつつ汗流すのにちょうどいい! やってやらぁ!

 

 

 ハリセン合戦を終えてのシャワーとお風呂になったんだが、この時に俺とゴルシのシャワーの比較動画が後日出ていたけど笑ったわ。ゴルシのやつのヘドバンとじゃれつき、隙あらば悪戯にケリを出そうとする絵面がなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ようやく落ち着きましたなあ。いやはや、ケイジ君様様といいましょうか」

 

 

 「うちのような貧乏牧場を裕福にしてくれた救世主ですしね。して、どうしました? 的矢さん。ヒメに何か異変でも?」

 

 

 ゴルシたちもひと段落、俺らも受賞もしてからしばらく、的矢さんがやってきた。

 

 

 『お兄様。お久しぶりですー! 私、重賞を二連勝して無敗で来られましたよ!』

 

 

 『おおー大したものじゃないの。この時点でも既にいい牝馬として認められるレベルだぞー?』

 

 

 で、ヒメも当然来ているわけで。しれっと柵越えしてから俺のそばではしゃいでいる。身体も成長して460キロくらいまででかくなっていた。いやー成長したなあ。

 

 

 今回は少しの静養と、今後の方針のために来たらしく、ヒメの相手をしつつも耳を向けて軽く話だけは聞いておく。

 

 

 「いえいえ、無事にスプリント、マイルのレースを走らせて分かりましたが、ヒメの強さはすさまじい。牝馬にしてはあり得ないほどのスタミナをこの距離につぎ込む走り方も相まって文字通り敵がいない。気性は大人しい、可愛らしいのですが、いざレースとなれば鬼神もかくやです」

 

 

 「ふふふ。かつてのケイジと松風君を思い起こさせましたね。ケイジと同じローテーションをこなしても快勝とは」

 

 

 そうなんだよな。そんでつけた馬身差も俺以上。間違いなくスプリントとマイルの強さはヒメの方がやばい。梅沢君吹っ飛びそうになっていたりしていたな。

 

 

 『そういえば、梅沢君とはどうよ? ちゃんと大事にされているか?』

 

 

 『すごく大事にされています。どういう戦い方がしたいかとか、調子は大丈夫かとよく話してくれますし、人参も貰えるんですよ』

 

 

 『ほうほう。とはいえ、ちゃんときついときは言いなさいよ。治してくれる人達もちゃんといるんだから』

 

 

 うんうん。あれだもんなあ。俺の主戦騎手の松ちゃんは俺と出会う前に一応数年の経験があるし、ナギコの騎手もアメリカの伝説的ジョッキーの弟子が乗っている。けどヒメの場合は梅沢君俺のデビューの時にようやっと卒業で、どう見積もろうが梅沢君騎手人生3年くらいの経験だもんな。

 

 

 真面目に騎手の技量でいえば一番下だし、互いに意思疎通しているのなら幸い。

 

 

 「それでなんですが、正直な話このまま阪神JFを走り、クラシックで挑んでもトリプルティアラのうち二つは距離が厳しいです。私としてはそれをさせるよりヒメもナギコちゃん同様海外に行きたいと思っております」

 

 

 「ほうほう。私もそれで構いません。しかし、そうなると狙うのはやはり?」

 

 

 「はい。欧州マイル三冠。イギリス1000ギニー、アイルランド1000ギニー、コロネーションSを狙いたいと思います。ヒメのスタミナと脚使いなら重馬場でも問題ないですし、スタミナでごり押しも狙える。何より高速マイラーでありながらスタミナ血統であることの証明を見せればいい種牡馬も依頼をしやすいでしょうから」

 

 

 ほうほう。ヒメも海外へ出ていくのかあ。そうなると、うん。5月早々にマイル三冠牝馬になって、今度は年末に日本のマイルでも荒してアジアマイルでも狙うのかねえ? 

 

 

 なんにせよ、ミスターシービー、イージーゴアの子孫であるヒメが暴れるわけだし、これ結果次第では海外の方で日本の馬のセリが熱いことになりそうだねえ。外貨獲得だぜ!

 

 

 『よかったなあヒメ。お前さん更に凄い所に行けるようだぞ?』

 

 

 『? どこに行くのです?』

 

 

 『俺らも行ってきた競馬の本場欧州。とはいえ、ちょいと期間は短いし、すぐ戻るかもだけどねー』

 

 

 『お兄様たちのいた場所ですか・・・頑張ります! レースの方も私、楽しくなってきましたし!』

 

 

 おお。ヒメもレースの楽しさを味わうとは、成長したなあ。これなら、今度俺が葛城厩舎に戻る際も大丈夫そうかな?

 

 

 「面白い話ですし、ええ。私も応援します。梅沢君もいい経験になると思いますし、国内でのプレッシャーを味わうことなく成長してくれれば幸いですよ」

 

 

 「はい。あの子も伸びてほしいですし、今後はケイジ達の功績も相まって日本馬たちの海外遠征が増えると思います。その前にこういう経験を積んでおけば今後騎乗依頼も増えてくれるかも、ですしね。それにスズカのようにヒメも海外の経験で更に一皮むけてほしいですから」

 

 

 「ふふふ。いやはや、日米の至宝の血筋を引いた子がまた海外へ挑む。楽しいことがつきませんなあ。ありがとうございます的矢さん。いい人生送れていますよ」

 

 

 「いえいえ、私もこんな天才少女に、未来ある若手との出会いがあって嬉しい限りですよ。そして歴史的な記録をケイジも引っ提げて。少しあの時代を思い出しましたよ。テイオーとマックイーン、ライスのいた時代を」

 

 

 その子供と孫で一緒にバカやってきたもんなー、的矢さんから見た凱旋門賞はどう映っていたのやら。

 

 

 あ、それとヒメをいい加減離してくれないかお二人さん。ちょいと我慢が大変なの。阿部さんも来たし、撫でさせてあげてよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『さあ、ナギコの追い上げがうなる! アメリカのスピード競馬を無視したこの追い込みはまさしくエンターテイメント! またもやごぼう抜きをして連勝記録を打ち立てていくのか! あっという間に先頭へ! さらに伸びる、伸びていく!』

 

 

 『ケイジたちの勝利に花を添えないとね? というわけでどけどけナギコが通るってね! さあ、追い上げていくよぉお! 無敗の4冠? かは分からないけど、GⅠ連勝記録貰ったー!』

 

 

 『ナギコ今ゴオーッルっっ!! 無敗の三冠に加えてここブリーダーズカップ・クラシックを制覇!! もうこの日本からやってきた黄金の姫を止める者はいないのか!日本のダートの血がアメリカを制覇! ケイジに続く偉業をまた成し遂げました!』

 

 

 『っしゃ! ナギコ大勝利―♪ 平野平野。勝ったし、今度テレビで見た黄色の人参食べさせてよ! 美容に良いんでしょ? おいしそうだしこの賞金で食べさせて!』

 

 

 

 『ケイジの追い込みに追いつくのはフェノーメノだ! 天皇賞(春)での借りを返すと言わんばかりに距離を縮めていく!』

 

 

 『ぬお? ここまで来るかフェノーメノ! てかなんだその伸び!!』

 

 

 『ずっと負け続けで、天皇賞連覇を止められたんだ、その分の借りを返してやる! ケイジ! お前のライバルはあいつらだけじゃねえんだよ!』

 

 

 『フェノーメノケイジを抜いて見事ゴールを奪取! ケイジは二着に! 傾奇者ケイジを止めたのはまたもや同世代! 怪物には怪物を! 最強には最強をぶつけると言わんばかりの激闘、ジャパンカップを制覇したのはフェノーメノ!! ケイジの連覇を止め、見事海外馬たちをも蹴散らしました!

 

 

 世界よ刮目せよ!! これが日本最強世代! その一角である!!』

 

 

 『くぁー!! 負けたかぁあ! 悔しいが・・・・おめでとうフェノーメノ! お前さんも強敵だったし、気を抜いたつもりはないが、見事だった』

 

 

 『ようやくだ・・・はぁー・・・あー疲れた。まだまだ、借りは返したが、今度はそっちにもっと勝ってやるからな? ゴルシにも負けねえさ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぬわぁー! ぐやじぃー~!! ここの連覇も狙っていたのにぃ! くっそー覚醒したフェノーメノのやつ、更に力をつけていやがった。さすがだわ。

 

 

 「遠征している海外の方が安心できるというのも滅茶苦茶だなあケイジ」

 

 

 「海外では1度だけ。その敗北もジャスタウェイからですしねえ・・・本当に、ケイジ君の世代がおかしいんだなってわかります・・・あ、ここのブラッシングは大丈夫?」

 

 

 「ヒフゥ・・・ヒン」

 

 

 あーそこそこ・・・はぁーま、しょうがない。負けたもんはしょうがないし、今度の有馬記念を頑張りますかあ。

 

 

 今年もまた俺、ゴルシ、ジャスタ、ジェンティルちゃんが出るもんな。負けられねえぜ。

 

 

 「落ち着いたか、これなら大丈夫そうだな。しかし、また最強世代がそろっての戦いになるし、しっかり調整をしないとな。まさかヴィルシーナが出ないというのは驚いたが」

 

 

 「エリザベス女王杯とヴィクトリアマイルを連覇して、まさかの香港ヴァーズでしたしねえ。てっきり有馬で引退レースになるのかと私も・・・」

 

 

 「噂ではケイジが牧場で会った際にスタッフにここ行けと提案したそうだが、どうなんだケイジ?」

 

 

 『テヘペロ♪』

 

 

 おうふ。真由美ちゃんにすりすりされると胸や心地よい感触が。そんでテキのおやっさん鋭いなあ。実際、それをしていたんだよね。

 

 

 真面目な話、日本の方が魔境だし牝馬GⅠがほとんどだから国際GⅠで2400メートルレースを狙う方が勝率あるし、ヴィルシーナちゃんの子どもの評価も上がるだろうしなー

 

 

 うちの牧場で休憩しがてら相談していた陣営の皆さんも最初驚いていたけど、ここがいいかということで受け入れてくれたとさ。

 

 

 「おそらくやったな・・・? まあ、いい。兎にも角にも年末の大一番こんどこそ、勝てるといいなあ」

 

 

 「記録にも記憶にも残る名馬の年末での勝負。また特番も年末にあるし、みんな笑顔で過ごしたいねケイジ君」

 

 

 『だねえ、大みそか特番に競馬が出るとかすげえことになっているし、愉快な大一番にしてやるぜ!』

 

 

 ま、兎にも角にも勝利を目指していざ鎌倉。そのためにご飯食べたいし、真由美ちゃん。なでなで嬉しいけどそろそろ放してちょうだい?




 次回は年末へ。ケイジ達の大暴れも相まってもう世界中で競馬ブーム真っ只中。


 そりゃあ毎年世界各地で日本から面白血統な子たちや癖馬たちがやってきますしね。レース運びもしっちゃかめっちゃかすることもあるのでファンも大喜び。


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一つの終わりへ 有馬記念

 史実を見て一つ思う。真面目にこの世代実装されたらアニメも盛り上がるだろうになあ。


 ポケモンアルセウスに時間を取られちゃっておりました。君ディアルガじゃないのに時間が泥棒されちゃうんだけど? 


 有馬記念。そのレースは強いものだけではなく、語り継ぎたい名馬たちが勝利が出来ると言われるレースだ。でまあ、実際にそこで勝った多くの名馬たちは今もファンたちでの語り草になるし、競馬史でも歴史的なワンシーンを多く残してきた。

 

 

 このレースを最後に引退する名馬たちも多く、クリスマスシーズンに見れる最後の輝きはきっと町のイルミネーションに負けないほどの輝きを放って見えているのかもしれない。あ、ちなみに今年は一応クリスマスすぎてのレースだったかな?

 

 

 『さあ、今この時、この瞬間。まさしく日本最高のパワースポットとなりました中山競馬場。20万人が集まり、今年の締めくくりの大一番となるこの勝負を見ようと押しかけ、そしてその勝負を彩る名馬たち、相棒のジョッキーたちもまた気合十分。この2500メートルのレースの中でどんなドラマを繰り広げるのでしょうか。

 

 

 今年は世界も注目する名馬たちが多く参戦したのもあり、会場は満員御礼どころか急遽増設、普段は入れない場所も開放してファンが押しかけているほどです』

 

 

 そんな大一番。俺にとっては三度目の挑戦。待っていたぜ。

 

 

 『いやー本当にこの16頭。誰もが怪物的強さですが、やはり2012年世代。その代表格が多く参戦したことがこの盛り上がりを作ったと言えるでしょうね』

 

 

 『そうですねえ岡崎さん。ドバイDFでスーパーレコードを出したジャスタウェイ。ドバイシーマクラシックを初連覇したジェンティルドンナ。宝塚記念初連覇のゴールドシップ。天皇賞(春)とジャパンカップを手にしたフェノーメノ。そして曽祖父シンザンの連対記録を塗り替え、欧州二冠連覇を達成した我が国の至宝ケイジ。

 

 

 ここには参戦していませんがヴィルシーナも先の香港ヴァーズを制覇して年間GⅠ勝利を4を手にして引退と、怪物ばかりがそろう、まさしく時代を彩る最強世代のほとんどがここに来ています』

 

 

 『ジェンティルドンナとジャスタウェイもここのレースを最後に引退すると決めておりますし、そういう意味でも時代を作り続けた優駿たちの最後の輝きであり、その同期たちに立ちはだかりつつも自身も手にしていない有馬を狙うケイジに二度目の勝利を狙うゴールドシップ。誰もかれもが油断できない。まさしく大一番ですよ』

 

 

 すでにパドックは済ませて、今はのんびり本場馬入場。変顔ももちろんしまくったが、暴れるのは少し我慢したよ。志村さん来ていたから一緒にアイーンしたけど。

 

 

 『ふわー・・・ねみぃ・・・んぁー』

 

 

 『やる気無さそうだなあゴルシよぉ』

 

 

 『だぁーいじょうぶ大丈夫。もう少ししたらスイッチ入るかも』

 

 

 相変わらずで何より。そしてまあ、実況と解説の岡崎さんも言っているが、まさしくこのレースは俺らの世代にとっても大きな節目だ。ジャスタも引退するとは思わなかったが、とにかく俺たちの、多くがクラシックで引退した中で暴れ続けたメンバー。ストレイトガールとかも短距離にいるが、中長距離で暴れたメンバーは多くが今年で去ることになる。

 

 

 だからこそ勝ちたいねえ。ライバルたちに花道を譲るつもりはない。最後まで全力でぶつかって勝つことを狙うのが俺なりの礼儀で敬意だ。

 

 

 『親子三代制覇を今度こそ成し遂げるかケイジ。それをさせまいと立ちはだかるか最強世代に次世代、先輩世代の強豪ら。有馬記念。クリスマスも過ぎて大晦日も間近だというのに熱気と興奮で汗が流れそうなほどです』

 

 

 『その中心にいるのはわたくしたち。・・・・・・負けませんわよゴルシ、ケイジ、ジャスタウェイ、フェノーメノ、わたくしにも今ほしいものが3つあります。それを狙うためにも、勝ちますわ』

 

 

 『そいつはこっちこそ。毎度毎度阻まれているからなあ。今度こそ勝ってやるってんだ。長距離勝負なら負けねえぞ?』

 

 

 『長距離ならオイラだろー? 二度目の優勝貰っちゃうもんにー』

 

 

 『距離は怖いけど、ここまで来たんだ。もうやり切るだけだよ。勝負だ!』

 

 

 『ここも勝てれば秋古馬二冠? だったか。それを手にしたいし、こっちも負けるつもりはねえ』

 

 

 みんなでしっかり戦う前の挨拶を軽く済ませてそろそろゲート入り・・・・・・ん? 何で周りの馬少しビビっているの?

 

 

 「今日は大逃げ一本で行くぞ・・・大竹さんが最内にいるし、下手に追い込みをすればこちらのルートを潰しつつ有利に出ていく。多くがGⅠ勝利馬で埋め尽くされたレース。常に先手を打ち続ける」

 

 

 『あいあい。真面目にやばいやつらしかいないからなあ。逃げで変に手を打たれたりあっちのペースにもつれ込む前にやりますか』

 

 

 午年の締めくくりの有馬記念。ファンファーレも気合入ったのを聞いていざゲートにガシャンとな。

 

 

 『いよいよ全頭がゲートに収まり・・・スタートしました! 有馬記念! さあースタートからすぐのコーナーへの位置取りが大事なりますが、やはりケイジと松風騎手の戦国コンビは前に出る! ロケットスタートからすぐさま先頭を取りました。

 

 

 そこに食らいつくはジェンティルドンナ、エアハピネスも続きます。マキシマム、テュギャザー続きジャスタウェイ、ゴールドシップが続く形で先頭集団を形成。最初のコーナーを曲がりつつ、それぞれいい位置取りが出来ているのでありましょうか』

 

 

 いいスタートっ♪ 何だが、うーん意外。ジェンティルちゃんはまあある程度分かるが、ゴルシのやつ前目につけたなあ。ジャスタは距離が不安だし抑えつつ行く感じ?

 

 

 とりあえず、コーナーを走ってある程度芝の具合や感じはつかめた。次からグイグイコーナーで仕掛けつつ引き離していければ幸いだなあ。

 

 

 松ちゃんの体調も問題ないし姿勢も問題なし。さあ。盛り上がっていこうぜ。

 

 

 『さあ、最初のコーナーを越えて一度目のスタンド前に来ました優駿とジョッキーたち。割れんばかりの歓声が響き渡ります。先頭を行くはやはりケイジ。そしてその2馬身後ろにエアハピネス。半馬身を置いてジェンティルドンナ。マキシマムが続いて、ゴールドシップが前に出る。ジャスタウェイはそこに続く形で来ております。トーセンラインも内から続きます。

 

 

 今回は前に出るゴールドシップとやや後ろにつけましたジャスタウェイと珍しい構図に観客も盛り上がりつつ、第1コーナーのカーブへと入って行きます。ケイジ早速加速を開始。コーナー勝負ならお手の物か』

 

 

 あ、ゴルシのやつ歓声浴びてテンション上がったのと目が覚め切ったか? やっぱトーセンラインはつけていくよなあ。コーナーが多く使える有馬記念。つまりはコーナー勝負で強い俺が距離を伸ばせる絶好の場所だし。

 

 

 ジェンティルちゃんもなかなか離せんなあ。かといって加速しすぎて後半ガス欠はなあ。とりあえずコーナーで頑張るのと、今回は最内を攻めていくかあ。瞬発力とかそこらへんは俺みんなに一枚劣るもんな。

 

 

 フェノーメノもギアを少し上げてきた・・・これは、第2コーナーを抜けたら俺らで先頭争いになるか? ゴルシとフェノーメノは前につけさせたくないがなー

 

 

 『ファンから遠のき、勝負に集中。さらにギアを上げていきます16頭。先頭を行きますケイジ。見事有馬の舞台を制覇することが出来るのでしょうか。1馬身離れてくらいつきますはジェンティルドンナ。エアハピネスを抜いてケイジの後を追います。そこから更に4馬身離れてトーセンライン、フェノーメノが虎視眈々とチャンスを狙う。

 

 

 ワールドトリック、ゴールドシップ、ジャスタウェイがその後ろに続き、ギガインパクトが後方馬群を形成。第2コーナーから第3コーナーの中間は大きく伸びつつ通過。第3コーナーへと移り始めていきます』

 

 

 あり? 1000メートルタイム今回は言わないのねん。ジェンティルちゃんのくらいつきが怖い・・・エアハピネスは確かシンボリクリスエス・・・あのとんでもない怪物の子どもさんだったか。俺の大逃げにコーナリングにもちゃんとついてくるあたりやっぱ怪物だな。

 

 

 そして・・・他ももうギアを上げ始めている。俺の早仕掛けに対応してここで余力を使い始める感じだな? 爆発力じゃあ今のサンデー、キンカメなどの血を引く子らに切れ味勝負で俺は劣る。どちらかと言えばサクラバクシンオーやシンザン、マックイーンに近い俺はスタミナと速度で磨り潰すほうがいいから早仕掛けでつぶれないと今度は俺が瞬発力で負ける。

 

 

 互いに互いの相性が最悪ゆえにどちらもキラーになりえるという。ほんと大変だぜ。ゴルシに・・・ジャスタ、フェノーメノも仕掛けていくな。息と足音が早まるのを感じる。

 

 

 松ちゃんも感じたか。ここが勝負と分かったかスタイルをさらに加速用に変えて俺に鞭を入れる。よしよし。行くっきゃない。

 

 

 『第3コーナーから皆が速度を上げる! それに呼応するように歓声が盛り上がる! そう。ここからの勝負がまた長い! 誰もがここを仕掛けなければ傾奇者に振り回されて終わるとわかっていると言わんばかり!

 

 

 大歓声に迎えられながら第4コーナーを飛び出してくるのはケイジ・・・いや! ワープしたかのように食らいつくはジェンティルドンナ、そしてゴールドシップが大外から飛んできた! ジャスタウェイもここに続くように走る走る! 役者がそろいました!

 

 

 最強世代の決着はここでつけてやると言わんばかりにケイジ達が先頭争いをし、その争いにフェノーメノも躍り出る! 空の分厚い雲さえも吹き飛ばさんばかりの熱気と激闘! エアハピネス、トーセンラインも粘るがあっという間に引き離される! 時代を彩る怪物たちの嘶きが、気炎がここまで届きそうなほど! 年末の大一番! ここを征するのは誰だ!!』

 

 

 『なんじゃこの加速!? 速すぎだろうジェンティルちゃん!』

 

 

 『・・・三冠馬と呼ばれようとも、史上初を成そうとも・・・貴方にわたくしは一度も先着できなかった』

 

 

 『ぬぉー! なんだこりゃ? 速すぎるでゴルシ―!』

 

 

 『ちゃんと内から行ったのに・・・!』

 

 

 『くそっ! まだまだ・・・!』

 

 

 正直な話驚いてはいた。怖さはあったが、ジェンティルちゃんが俺の大逃げのハイペースに食らいついてここまで来たが、第3、4コーナーで最後のスタミナをすりつぶして、残った体力も最後の直線の半ばでどうにかできるかもと思っていた。

 

 

 爆発力を残すことを選んだジャスタウェイに、スタミナを持ちながらも前目につけて狙っていたゴルシとフェノーメノを警戒もしていた。だが、その警戒の比率を誤ったというのか。するりとジェンティルちゃんが前に出て、引き離そうとしていく。

 

 

 『だから・・・ここで勝つ! 同世代の三冠馬として! 多くの連覇を持つ貴方に本当に並ぶのなら、せめてここを取って、先着して上なんだと見せつける! でないとファンや、支えてくれる厩務員さんやみんなに申し訳が立ちませんもの!!』

 

 

 『っ・・・! その気持ちを知っても、俺だって同じなんだよぉ! 負けるか!! この一冠は・・・一族の悲願でもあるんじゃい!!』

 

 

 ああ、そういえばと振り返る。忘れていたわけじゃないが、確かにそうだ。俺とのレースは、どうにか俺が1着か2着。掲示板やテレビでもいろいろ言われていたっけ。

 

 

 その借りを返す最後のチャンス。いつもより鬼気迫るその炎がわかる。だけど、俺だってと強く芝を蹴るが、それでも、差が縮まらない。

 

 

 『2012年世代が並ぶように走り1着をもぎ取ろうと最後の力を出し切る! しかし、しかしこれは決まったか!! 抜き返そうとするケイジの脚が届かない! ゴールドシップもジャスタウェイも、フェノーメノも届かない!

 

 

 勝ったのはジェンティルドンナ! 中山競馬場に初挑戦で見事に勝利! こんにちはとさようならを見事成し遂げたジェンティルドンナ! そしてケイジへの初勝利も引っ提げての最後の花道を見事走り抜けましたぁああ!! タイムは2分32秒6。 2着にケイジ! 3着にゴールドシップ! 4着にジャスタウェイ! 

5着にフェノーメノ! 2012年クラシック世代による掲示板独占! やはりこの世代は強すぎる!』

 

 

 ぐぅうー・・・ま、また負けた・・・チャンスを手にできなかったってか・・・!

 

 

 『ケイジも負けましたがシンザンを越えた連対記録をさらに伸ばし、負けて尚強いところを見せつけます! そして勝ったジェンティルドンナも、掲示板に並んだゴールドシップ、ジャスタウェイ、フェノーメノもまた全頭がケイジに先着、勝利経験のある名馬ばかり。

 

 

 年末の大一番にして、時代の変わり目を見せる大レースにふさわしい戦いだったと言えましょう』

 

 

 『まさしく有終の美を放ち、同時に新時代へその強さを見せつけての引退。最強の貴婦人、皇女の名は伊達ではないということでしょう。ケイジもいい走りをしていましたが、ジェンティルドンナの加速力と、やはり距離をつめられていたのが敗因でしょうか』

 

 

 悔しいぜ。狙っていた勝利はするりと抜け落ち、鍛えた強さも負かされた。だけど・・・うん。それでも悔いはねえ。いい勝負だった。

 

 

 『やったな。ジェンティルちゃん。有馬記念。中山競馬場での初レースでの大勝利おめでとう』

 

 

 『負けたでゴルシ―ま、いいやぁん。ジェンティルちゃんってそうなのねえ。おめでとさーん』

 

 

 『・・・どうにか、掲示板に入れたけど、うーん。ふぅ・・・ジェンティルドンナさんお疲れ様。やっぱり強いなあ』

 

 

 『駄目だったか・・・はぁー・・・しょうがねえ。来年でケイジ達にはリベンジだな。お疲れさん』

 

 

 『ありがとう。ようやく貴方に勝てた・・・けど・・けど・・・』

 

 

 走る速度を落とし、一呼吸を置いてみんなで労う。同世代のまさしく頂点。その一角の最後だもんね。

 

 

 でも、ジェンティルちゃんは泣き始めた。一体どうしたんだ・・・?

 

 

 『やっぱりもう少しだけ戦いたいですわ。またケイジ達に勝ちたい、挑みたいのですもの・・・』

 

 

 『・・・そんなら、もうジェンティルちゃんの挑戦は始まるよ。ジャスタウェイもな』

 

 

 『『え?』』

 

 

 いやはや、そこまで闘争心を持ってくれるのはありがたいし、悔いを残しての涙の引退はもったいねえやということで俺からの激励だな。

 

 

 『俺らの子どもたちがまた挑んでくれるさ。俺の子どもにジェンティルちゃんの子どもが挑んで俺らの分まで走ってくれる。戦ってくれる。確かにジェンティルちゃんのレースは終わりだが、そのバトンはしっかり次世代が繋いでくれる』

 

 

 『次世代に・・・』

 

 

 『そっか。僕たち、引退したら子供たちを生むために頑張るんだって厩務員さんも言っていたなあ』

 

 

 『そういうことだ。むしろ、俺は来年も走る分、ジェンティルちゃんにジャスタは1年早く俺よりも戦いを始められるんだ。だから、気に病むことはねえ』

 

 

 『おっと涙を流すジェンティルドンナにケイジ達同世代組が近寄り、慰めるように嘶いております。親友でありライバルの最後のレースへの祝福でしょうか』

 

 

 ついでに言えば、ジャスタウェイもジェンティルドンナもどちらも成しえた大きなことがある。それを胸に抱いてどうか笑顔でレースから引退してほしいもんだ。

 

 

 だから言うべきだな。出来れば子供たちにも火をつけ、夢を託せるように。

 

 

 『そして、ジャスタウェイ。お前さんの父親ハーツクライは当時最強。日本でも五指に入るディープインパクトに日本で唯一勝てた戦士。その子供であるジャスタは俺に勝ち、ドバイでも輝かしい成果を浴び、世界での評価はディープインパクトを越えた。

 

 

 ジェンティルちゃんも三冠牝馬であり、史上初のドバイシーマ連覇。そして、父ディープを越えた無敗の4冠さえも倒して、有馬記念での勝利で歴史に名を刻んだ。

 

 

 誰がどう言おうが俺が言う。世界最強格であり、父を超えた偉大な優駿! その強さは確かなものだったぞ! また会おうぜ! 今度はレースじゃなくてご飯の話とかな♪』

 

 

 ささ、後は引退式を控えているジェンティルちゃんとジャスタ。そしてヴィルシーナちゃんのトリプル引退式のためにもハグをしてからササっと退散退散。

 

 

 もう一仕事。頑張ってきてな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ケイジたちについて語るスレ1919~

 

 

 390:名無しの競馬おじさん

 

 

 今年もケイジは勝てなかったかあ・・・来年があるとはいえ、6歳の古馬になるし、カンパニーみたいに行くか・・・

 

 

 

 391:名無しの競馬おじさん

 

 

 しかし、中山で戦いなれているゴルシやケイジを退けての大勝利。しかも有馬記念の歴史でも5頭目となる牝馬の制覇に加えて、あのシンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクト、ウオッカ、ケイジに続くGⅠ勝利数7勝以上を達成。まさしく彼女も皇帝たちに並ぶ強さだった。

 

 

 ケイジのライバルであり、嬉しかったのも事実だ

 

 

 

 392:名無しの競馬おじさん

 

 

 その倍近い数のGⅠを制覇しているケイジのおかしさも同時に分かるわ・・・GⅠ勝利数はもはや欧州の怪物たちに迫り、凱旋門賞どころかKGⅥ&QESの欧州2冠連覇。連対記録はダスカどころかシンザン越えをキープ。

 

 

 

 393:名無しの競馬おじさん

 

 

 シンザンとルドルフの記録を同時にぶち抜いて更新していくからなあ・・・何で同世代であんなのに渡り合えるのばっかりなんだよ。特にゴルシ。今回ジェンティルドンナはようやくケイジに1勝だけど、かれこれゴルシはもう3~5回くらいは優に勝っているんだろ?

 

 

 394:名無しの競馬おじさん

 

 

 それな。というか、そのゴルシも史上初の宝塚記念連覇をしているし、ケイジは欧州2冠連覇、ジェンティルドンナはドバイシーマクラシック連覇とこの三頭だけで国内外の大レースを春夏秋それぞれ連覇しているという。

 

 

 395:いつもの実況のおっさん

 

 

 それもあって今回のレースで日本は魔境だと世界中で騒がれているそうや。ついでに言えば、サンデーの血も欲しがる声が多数だとか。

 

 

 396:名無しの競馬おじさん

 

 

 あ、おっさんお疲れ様です。ケイジの血は分かるけど、やっぱり今回のサンデーの孫たちがケイジに迫ったから?

 

 

 397:いつもの実況のおっさん

 

 

 それもあるんやが、ケイジの血はノーザン系も一応血が入っている。それによってクロスが起こるんやが、それを更に濃くするためにまた孫、ひ孫世代かつノーザンと相性が異常に噛み合ったサンデー系の血。

 

 

 要はケイジとの交配でノーザン系のインブリード気味の子を生み出し、その子とケイジ世代らのサンデーの血でニックスと、ノーザンの血があればさらに少し血を強くして当時日本でもてはやされたノーザン系の強さを生み出す。といった具合やろな。

 

 

 398:名無しの競馬おじさん

 

 

 なるほど・・・そういえば中国でもノーザン系が主流だからサンデー系のインブリードをした子供を欲しがっていると聞いているし、世界中でサンデー系を欲しがっているんですね。

 

 

 399:いつもの実況のおっさん

 

 

 そうやな。中国はやはりジェンティルドンナの強さに此方でも日本のレベルアップを目指して。欧州やオーストラリアはケイジの血と、その血筋と相性のいい子を狙うために。どちらにせよあの怪物世代たちが世界の競馬界に目を向けられているというのは事実。とんでもねえ時代がきたもんだ。

 

 

 400:名無しの競馬おじさん

 

 

 欧州に追いつけ追い越せと頑張っていた日本のホースマンたちはテレビや天国で見てどんな顔しているのやら。そういえば、血を欲しがると言えばやっぱりジャスタウェイやヴィルシーナも大分種牡馬、繁殖牝馬として注目されたよなあ。

 

 

 401:名無しの競馬おじさん

 

 

 1200~2400の国際GⅠ。しかもドバイと香港で勝利したGⅠ6勝を成し遂げた名牝に1600~2500まで立ち回りジェベルハッタ、ドバイDFでケイジを撃破、ワールドレコード更新を成し遂げた怪物だものなあ。

 

 

 ジャスタはアメリカやアラブ。ヴィルシーナちゃんは・・・誰が最初のお相手になるかわからないほどにお父さんを探すのに陣営も苦労していそう。

 

 

 402:名無しの競馬おじさん

 

 

 お母さんとしても名牝となるかは不明だけど、素質がオールラウンダー過ぎてどこをやるべきかとなるだろうしなあ。短距離も今熱いし、最初は短距離向きの子を狙い、ケイジが種牡馬入りしたらケイジとつけてクラシックディスタンス、長距離も狙える子を狙う感じかな?

 

 

 403:いつもの実況のおっさん

 

 

 そういえば、ケイジ今回も2着だったこともあって3年連続2着という2着版ナイスネイチャと言われたりもして面白いことになっていたなあ。

 

 

 まさか2000年代を越えてあの名馬に並ぶ大異業を見れるとは。知り合いとケイジの敗北を悔しく思い、ジェンティルちゃんの勝利に喜んでから思い出して爆笑したぜ。

 

 

 404:名無しの競馬おじさん

 

 

 それぞれ2012年はゴルシ、2013年はオルフェ、2014年はジェンティルと戦った相手も怪物ばかりとはいえ本当にこの馬珍事と偉業には事欠かねえな。金と銀の記録取りすぎでしょ。

 

 

 405:名無しの競馬おじさん

 

 

 獲得賞金も確か30億近くいったはずだし、まさしく競馬界の皇帝、最強の血を引く傾奇者なのに、いや、だからこそかはわからんが何でこう記録に記憶に絡んでくるのかねこの馬。

 

 

 406:名無しの競馬おじさん

 

 

 今回もボロボロ泣いていたジェンティルちゃんやジャスタウェイにハグをして去って行ったもんな。引退していくのを感じてしたのだろうけど・・・ほんとスポーツマンシップと敬意を忘れない紳士・・・人なら惚れるレベルのいい男だよ。

 

 

 407:名無しの競馬おじさん

 

 

 引退式でも3陣営全員がケイジのことを話題にあげてとてつもなく大きな壁だけど、好ましいライバルで友達のような存在だったと語っていたしねえ。あそこまでさわやかな関りを見れるってそうそうないわ。

 

 

 後、ヴィルシーナの香港ヴァーズのローテ、ケイジも参加して決めたって話がマジなのは本当になんなんだろうか。

 

 

 

 408:いつもの実況のおっさん

 

 

 まあ、あのマツクニローテ足しての4冠を自分で狙う怪物だ。今更だろう。兎にも角にも、ケイジは負けたが、素晴らしい戦いを持って年末を締めくくり、気持ちよく新年を迎えられる。皆で大みそかの競馬特番を見て、来年も残る2012年世代代表のケイジ、ゴルシ、フェノーメノの戦いを期待しようぜ。

 

 

 409:名無しの競馬おじさん

 

 

 あの番組楽しみなんだよなー、藤井記者さんの密着した前田牧場の名馬たちとの触れ合いや、ゴルシの奇行にケイジの奇行を詰め込んだシーンもあるようだし。




 多くのライバルがクラシックで脱落し、残った強豪たちも多くがここをきっかけに離れていく。本当に悲しさを感じました。ただ同時に次の世代があのキタサトコンビに、その次はアイちゃん。本当に世代のバトンは継がれていくなあとも思いました。


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年末年始だよ。

 お気に入り人数3500人、評価200人突破! 皆様いつも感想、評価、誤字報告ありがとうございます。真面目にここまで評価されるとは思いませんでしたし、嬉しい限りです。ケイジの旅路もあともう少し。のんびり見てくれれば幸いです。



 ケイジがどこか別世界の作品に行くとしたらどの世界が合うのかなあと思ったり。どこでも好きほうだいはしそうですが。BLEACH の世界とかだと七番隊隊長になって狛村さんと的場さんとのほほんとしていそう。ケイジじゃなくても何か似たようなタイプの女隊長で書いてみるのもいいのかなあと思っております。


 どうも皆さん。シルバーナイスネイチャだと騒がれちゃっているケイジだよん。いやー年末の最優秀代表馬の選出は大荒れも大荒れ。

 

 

 今年は表彰式の様子とか表彰の際の議論もワクワク動画で中継されていたんだが、皆ただの競馬好き、馬好きに戻っての激論と愛のぶつけあいをしている様子がみんな馬好きなんやなあというコメントや同意するコメであふれかえるという珍事になった。

 

 

 今年の年度代表馬? ナギコになった。僅差で俺は二位。何でも今回は俺、ナギコ、ゴルシ、ジェンティルちゃん、ジャスタ、フェノーメノ、ヴィルシーナ、ホッコータルマエで票を分け合うというかちぎりまくったというか。そのせいで歴代年度代表馬でもぶっちぎりの最低票数での選出という事態にも。

 

 

 まあねえー欧州二冠連覇を俺はしたけど、ナギコは牝馬の身で二年間無敗のトリプルクラウン&BCクラシック制覇のGⅠ7連勝という記録をひっさげた。新年にやる競馬の特番がゴールデンであるのだが、そこにビリー牧場長も出演するしで『テレビの出演料だけで馬たちの食費とスタッフのお給料一部賄えるほど』というくらい出ずっぱりだとか。ナギコの暴れっぷりでアメリカも競馬ブーム真っ只中のようで。

 

 

 「いよいよ最後の年になるなあ・・・寂しいよ。お前みたいな怪物で人懐っこい癖馬今後出会えるかどうか」

 

 

 「名馬にしていくという約束をして、あっという間の4年目かあ。本当にお前さんはすごいやつだよケイジ」

 

 

 「ヒヒーン。むぁわ。ビヒ」

 

 

 で、今はテキのおやっさんと久保さんも温泉に浸りながらウチの牧場で泊まり込みしつつ俺の様子を見に来てくれた。ローテの相談もあるけどね?

 

 

 あ、それとヒメも無事に阪神JFを大差勝ちして帰ってきた。GⅠで大差勝ちってウッソだろお前。俺も出来た記録なんて精々8~10馬身くらいだってのに。的矢さんの所にいる青鹿毛の子と言うことでライスみたいだと騒がれたり、またあの牧場かと言われていたりで。次世代もいい感じいい感じ。

 

 

 で、まあ俺は来年で引退。確か、最後の年に当たる相手としてはキタサトコンビだったかなあ。一応何度か併せしていたり、馬主のサンちゃんとも再会して、君に負けないくらい男前だろう? と自慢して来たりで愉快だったぜ。

 

 

 キタちゃんも優しい子で俺の指示を聞いたり、アドバイスを聞いてからぐんぐん成長。特に回復力は目を見張るものがあったので人のようにぐっすり眠る話をレクチャー。ただでさえ頑丈、タフな馬が更にタフになるな。

 

 

 昔は追いかける側だったのに今や後輩たちが増えて俺は最後の花道を考えるシーズンになっているのを有馬記念ではなく温泉に浸かりながらしみじみ実感しているよ。

 

 

 「連もいよいよ中学最後の年。必ず優勝してくると息巻いていたし、ケイジも最後。私達も負けじと支えて、ちゃんと次へと行かないとなあ」

 

 

 「結構入厩依頼も増えてきましたしね。ケイジが来た1年ちょいまでの状況とは考えられないですが」

 

 

 「そりゃあ、当初ケイジの暴れっぷりのせいで私達の厩舎はサーカスの芸でも教えているのかと散々な言われようだったからなあ。ケイジの性格と強さを見て評価が変わったが」

 

 

 『そうだったのね。だからたまに競馬以外の人が来たのかあ。むしろ今は種牡馬として見極めする人が増えたけど』

 

 

 なんだかおもしろいが、その分来年まではしっかり勝って厩舎にお金落としていかないとなあ。天皇賞連覇できるかな? あとは宝塚でゴルシに勝ちたいぜ。

 

 

 ささ、そろそろ新年最初の夜の特番あるし見ようぜー

 

 

 「ん? お、よしよし。それじゃあ俺が先に上がって、上着用意しておくよ。ケイジも番組見るんだろう?」

 

 

 「今年もまた三冠ジョッキーたちを筆頭に実力派ジョッキーたちを集めた特番があるからなあ。松風君も出るし、どんなことになっているのやら」

 

 

 今年は牝馬三冠の方も来てくれるし、ビリー牧場長にアラブの大富豪、王族のホースマンたちでヒンドスタンを売ってくれた一族などからの日本の競馬界の評価を聞けるってこともあるし、イヤーこいつは楽しみだぜ。

 

 

 あ、出来れば縁側に牧草も積んで・・・え? している? おおートモゾウがしていたのね。流石。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『日本の競馬界は欧州を目指していきましたが、レース場の形状や、徐々にアメリカの影響を受けてよく言えばいいとこどり、悪く言えば中途半端と言えます。それもあって基本はクラシックディスタンスあたりを狙う中距離がメインの状況』

 

 

 『レースも欧州というよりはアメリカのスピードレースですが、それゆえにでしょう。2400以上の距離も速度勝負で戦える身体能力。それでいて短距離も充実しているために調教の仕方によってはその力をすべて短距離につぎ込める。この環境が近年の名馬たちを生み出しているのでしょう』

 

 

 『ステイゴールド、スペシャルウィーク、ウオッカ、オルフェーヴル、ナカヤマフェスタ、アグネスデジタル。そしてケイジ、ゴールドシップ、ジェンティルドンナ、ヴィルシーナ、ジャスタウェイ。国内メインだけどその皆に勝利経験があるフェノーメノ。ナギコ。誰もかれもが我が国へほしいという声があふれるほどだよ。相手するのは勘弁してくれという声ばかりだけど

 

 

 本当に今の日本競馬のレベルは世界屈指。海外GⅠ勝率90%を超える三冠馬コンビですら日本では戦績が落ちるという事態はもう意味が分からないと言われまくっていてねえ』

 

 

 『はぁー・・・やはり、今の時代はとんでもないと。サンデーサイレンスやイージーゴア、アメリカの名馬を見続けた名門牧場のビリーさんもそう思うので?』

 

 

 『もちろんさ。私の牧場に来てくれたドリームシアターも既にGⅠを二つ取っているし、今は海外のセリでは日本馬を出せば多くの人たちが集まるほどだよ。今のレベルの高さはもちろんだが、その前の時代。凱旋門賞に挑もうとしていたシンボリルドルフ、ドバイに挑もうとしていたダイワスカーレット。彼らがもし無事に挑戦していたらどうなっていたか。

 

 

 今の時代のみならず過去のメンバーも気になるほど皆日本競馬を注目し、どの子なら種牡馬、繁殖牝馬として買えるか。その見定めで酔いつぶれそうなほどには議論するのもしょっちゅうだ』

 

 

 『私のご先祖様が日本に売ったヒンドスタン。その血が母系からとはいえ今も続いて、時代を作っていることに本当に感謝しています。出来れば、シンザン系の母系が出来ることを願っているばかりです。その際はぜひぜひ買い取って、血のバトンを繋いでいきたいですから』

 

 

 『シンザンの名前が今も出るってのはすごい話よなあ。だってあれでしょ? 白黒テレビの時代で、芝も冬には枯れてダートレースと思えるような芝のレースが当たり前の時の怪物』

 

 

 『そうそう。我が国アメリカでもあの連対記録を誇り、更には三冠も手にしているという怪物はちょっといない。間違いなく日本のセクレタリアトレベルの怪物。その血がちゃんと続いて、しかも海外の血統とつけ放題。いやあ、夢が広がるばかり。日本のサムライホースの血が入ってくれるのだから』

 

 

 『そういう意味では、ケイジもまた種牡馬として見込めそうなんですね。ところで、アラブとアメリカのホースマンから見て、今後日本競馬界に期待するのは何でしょうか?』

 

 

 『そうですねえ。私としてはぜひぜひドバイミーティングに参戦して、その強さを世界中に知らしめてほしいですよ。芝もダートも、短距離も中距離もばっちりありますから。国際色豊かで、愉快なレースを見れればそれが幸せです』

 

 

 『我が国アメリカなら、是非是非面白い血統を教えてくれればうれしいね。私の方は牧場経営だけど、日本の名馬の子どもたちがどんな風に成長していく様をそばで見ていて世話しながら過ごしていたいよ』

 

 

 

 

 ほうほう。つまりまあ、日本独特のレース体系が海外でも戦える名馬たちの血を鍛えたし、そして今の世代たちの子は欲しいけど、多くは戦いたくねえや状態。

 

 

 うーん。まあ、そうなるのもしょうがないか。海外GⅠレースでも一部を除いて賞金も低いし、色々あるよね。で、ビリー牧場長はやっぱホースマンだねえ。てか、ドリームシアターGⅠ2勝ってことは2歳限定GⅠを制覇しているのか。今年からはクラシックだが、どうなるかなあ。

 

 

 『海外での私たちの評価。大分高いのですねえ』

 

 

 『俺ら、基本海外では負けがほとんどないからねえ。確か全員全勝か、負けても1敗だけで済んでいるし。そんで、ヴィルシーナちゃんはここでしばらくの休養?』

 

 

 『はい。引退したのでお気に入りの前田牧場の温泉をしばらく味わって休んできなさいとオーナー? さんに言われて、3月までゆったりしつつ私のお相手を探すとかなんとか?』

 

 

 もうホテルか別荘だよここの牧場。いやちゃんと馬産しているけどさ。今年の2月か3月くらいにミレーネとブラウトちゃんの子供生まれるかもだし、仕事しているけどさ。真面目に俺の賞金と馬産の料金に釣り合うくらいにここ養生で稼いでいるだろ。

 

 

 まあ、それでライバル、友達が安らいでいるのはいいことだから強く言わないし、温泉好きだしまーいいか。

 

 

 『ならまあ、お母さんになるんだなあ。いい相手さん見つかるといいが。あ、それと言い忘れていたが、おめでとう。ジェンティルドンナに並ぶ功績を無事にとっての引退。見事だったよ』

 

 

 『んぇ? 私、何かありましたっけ?』

 

 

 『ジェンティルちゃんの一年でのGⅠ最多連勝数は4連勝。それに並ぶ連勝を上げて、距離に至っては1200~2400メートルのジェンティルちゃんを超える適正距離の広さを見せつけた。まさしく並ぶ。距離に至っては越えた功績だよ。

 

 

 まさしく頂点の名前を持つにふさわしい女傑となって最後を飾ったんだ。ゆっくりしてな』

 

 

 『・・・・・・ふふふ。ええ。ありがとうケイジさん。ケイジさんこそ、最後の一年。思いきりゴールドシップさんやフェノーメノさんと戦ってきてくださいね』

 

 

 嬉しい応援をもらっていたら、番組も最後は面白映像集で締められて終了。いやーいい番組だった。笑いと歴史も感じられるのと。松ちゃん少しテレビになれてきているのが面白いのなんのって。

 

 

 『ふぅーいいお湯だった・・・あ、ケイジにヴィルっち。おっつーどうよケイジ♪ 日米年度代表馬ゲットしちゃったもんね♪』

 

 

 『おうよナギコ。いやーやられたぜ。そして凄いことになったなあ。あ、そういえば一応だが来年の俺らのローテ後でおやっさんが教えてくれるみたいだぞ?』

 

 

 『あ、マジ? それなら後で会いにいかないとねまたアメリカ行くのかなあー?』

 

 

 『どうでしょうかね? でも、ナギコさんならどこへもいけますよ。どうかお気をつけて』

 

 

 『ありがとねん♪ あ、おやっさん。会いに行こう』

 

 

 また柵を飛び越えて出てきたナギコと話していると利褌のおやっさんを発見したので俺とナギコで会いに、ヴィルシーナちゃんは放牧エリアに厩務員さんに連れていかれた。いい休暇をねー

 

 

 オッスオッスおやっさん。新年早々だがローテ考えているんだろ? 教えてくれよー

 

 

 「ケイジ、それにナギコまで脱走か・・・真面目にもう少し柵を高くするべきですかねえ?」

 

 

 「うーん。流石にこれ以上はなあ。とはいえ脱走後、扉を開けた後も自分で閉めたりするくらいだし、どうしたものかなあ。で、どうしたんだい二頭揃って」

 

 

 『トモゾウもおつかれちゃん。ローテ教えてくれよー』

 

 

 『今年のうち等の目標を教えて―』

 

 

 メモを持っていた腕の袖をぐいぐい引っ張って見せろとやってみれば流石はおやっさんとトモゾウ。すぐに理解して俺らの頭を撫でて止めてとやりつつもメモを開いてくれた。

 

 

 「ローテを知りたがる馬とは面白いものだなあ。まったく。まずはケイジからね。ケイジは国内優先。検疫などの手間も省きたいし、最後の年だ。万が一にも備える意味でも基本動きやすい国内のみにする。今年最初のレースは天皇賞(春)頑張っていこうな」

 

 

 『あいよ。ってことは最低でも1か月くらいは放牧と休暇になるわけか。ほんと俺のローテはクラシックからひたすらGⅠ戦線だなあ。よく運営さんも許してくれるもんだ』

 

 

 多分ここから宝塚を挑んで秋のレースに行く感じになるのかしら。まあ、そのほうが周りも負担が減るだろうし、松ちゃん騎乗依頼も増えているようだしなあ。経験を積むためと、俺とも乗りやすい方がいいということで国内にとどまって最後の戦いを挑むのは悪くない。

 

 

 「で、ナギコはドバイワールドカップで引退レース。その後はすぐに繁殖牝馬入りしてケンタウルスホイミと交配をしていこうと思う。ナギコの血統とホイミなら今の日本でもアウトブリードを狙えるし、保護していくべき血筋。少しでも長くお母さんとして頑張ってくれ」

 

 

 『ほーい。ケイジとは駄目なのかあ。引退した後はちゃんと私につけてよおやっさん。ケイジをリードしてあげるんだから♪』

 

 

 ほうほう。ナギコは次が最後のレースで、引退後はホイミとかあ。確かネアルコ御三家もついていないホイミに加えてナギコの地方血統だし、確かにこれは今の時代ではクロスを狙う方が珍しいレベルの血統になるし、受けが広いからもしホイミとナギコの子どもが大成しなくても牡なら種牡馬として買い取って牧場で世話してもいいし。牝なら繁殖目的で持っていればそれだけで大分助かるね。

 

 

 『というか、意外だなあナギコ。ホイミが相手ってのに怒らないの?』

 

 

 『そういうものでしょ?それにま、私とケイジの子も期待されているだろうし、来年以降はお願いね』

 

 

 ほんと切り替え凄いなあ。ここは見習うべき部分だわ。

 

 

 「あ、そうそう。志村ヘンさんと北島サンちゃんがここに来るのと、キタサンブラックもしばらくここで休むようだから、ケイジ、失礼のないようにな。何でもテレビ撮影だとかなんとか」

 

 

 「あー言っていましたね。三が日が過ぎて少し後のテレビで放送するとか。いやあ・・・ほんとここの牧場がこうなるとは数年前まで予想もできなかったですよ」

 

 

 繁殖牝馬一頭。聞くと多くても3頭くらいの小規模牧場だったのにねー。人生何があるかわからないものですなあ。馬生もそうだけど。

 

 

 「さて、また脱走したんだ、君たちしっかり戻ってもらうぞ。他の馬たちも出られないかなとソワソワするんだから」

 

 

 『『はーい』』

 

 

 この後、サンちゃんと遊んだり、志村さんと一緒にドリフじみたやり取りをして見せたりしつつ、のんびりと過ごしていたぜ。差し入れにハリセンとか、鉢巻きが人参と一緒に入ってくるようになったのはなんでだろうかねえ? 




~テレビに残った映像~


志村「全くお前さんは―今度馬券賭けてあげないからな?」


ケイジ『そんなーねね、いいでしょちょっとくらいは賭けてくれよー』
(嘶いた後にすりすり)


志村「なんだ? 賭けろってか? しょうがないなあ~ちょっとだけよ~?」


ケイジ『あんたも好きねえ~・・・って何しているんじゃい!』
(ハリセンでしばく)


志村「あ、なんだこのやろ! やったなー! やっぱり賭けるのやめた!」


ケイジ『おいおいおい。それは無しだろおとっつぁん』


以下、軽くループしていた感じです。





 国内に専念のローテに。同時に参加していなかった天皇賞(秋)や宝塚記念を三度目の正直で狙うのが陣営の狙い。後は松風君も依頼が増えてきているのでそこも対応しやすいためにといった感じです。


 次回で切ればスーザンママや阿部さん、キタちゃんだしたいですね。


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ラストシーズンへ

 申し訳ないです。少しゲームや息抜きすらもおっくうになるほどに最近心身がきつくて更新が遅れておりました。今後も頑張りますが遅くなるときは本当に申し訳ないです。


 今回は短めです。



 ケイジの現在の戦績というか、大まかにこんな感じ。

 主な勝鞍


 2011年 函館2歳ステークス(GⅢ) 小倉二歳ステークス(GⅢ) 朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ)


 2012年 弥生賞(GⅡ) 皐月賞(GⅠ) NHKマイル(GⅠ) 日本ダービー(GⅠ) 菊花賞(GⅠ)


 2013年 ジェベルハッタ(GⅠ) ドバイDF(GⅠ) KGⅥ&QES(GⅠ) 凱旋門賞(GⅠ) ジャパンカップ(GⅠ)


 2014年 天皇賞(春)(GⅠ) KGⅥ&QES(GⅠ) 凱旋門賞(GⅠ)


 戦績 24戦18勝(同着一回)6敗 連対率100%


 獲得賞金 約32億8000万(外貨も日本円換算しての合計)


 レコード所持 2000 2400 3000 3200 でそれぞれ所持。


 二つ名 ターフの傾奇者 顔芸百面相 日本馬の結実 皇帝と最強を継ぐもの 一頭チンドン屋 日本総大将 その他多数



 しっかり数えたつもりなのですが戦績など間違っていたら申し訳ありません。


 『ほらほら捕まえて見なさーい』

 

 

 『牡にそういわれても変な感じですよケイジさーん!』

 

 

 『なにぃ!? 艶っぽいと評判の俺だぞお!? なら思いきりかかってこい! 逃げ切ってしまうぞぉ!』

 

 

 今日はのんびり葛城厩舎の皆とキタサンブラックと一緒に練習中。もちろんウッドチップのコーナーで。

 

 

 「やっぱりケイジで麻痺しちゃいますが、キタサンブラック大きいっすねえ」

 

 

 「真面目に500キロを超える大型馬であるのに、さらに成長しているからねえ。いやはや、タフさもあってまさしく重戦車だ」

 

 

 「やっぱりケイジ君がいて助かるよ。いやあ、同じ厩舎の子たちとは練習してもどうにもブラックは不完全燃焼みたいで」

 

 

 『追いつけない! このー! ケイジさんの大逃げどうなっているんですか!』

 

 

 『速度だけを見るな、俺の脚と姿勢を追え! 俺以上の大逃げの天才とタッグを組んでいた名手がお前さんの相棒だ、コツコツ教えるから頑張れキタちゃん!』

 

 

 「ケイジ、ノリノリだなあ。やっぱり、一緒に練習できる相棒が増えて嬉しいのかな?」

 

 

 「ふむ・・・逃げ、先行がやはりキタサンブラックには合うかな。そしてこのタフさ・・・ケイジにまたお世話になるとは」

 

 

 で、まあ俺には松ちゃん。キタちゃんにはタケちゃんが騎乗しての練習。俺もキタちゃんも互いにタフすぎる上にこのガタイのせいで並の馬というか、周りの馬へのプレッシャー&頑丈さで先に潰れちゃうから練習、特に併走、二頭以上でやる運動があまりできないのもあって俺とやっているんだが、いやー楽しいわ。

 

 

 ゴルシのやつは途中調教師のおっちゃんに切れて喧嘩売りに行くし、残りの俺についてこれていたメンバーはみんな引退したしで、ほんと練習相手が見つかってよかった。

 

 

 「しかし、この子はどうにも遅咲きというか、晩成気味の気がします。それをどうにかうまく引き出してクラシックに合わせるには、やはり勝ち方というか、パターンを作ってこの子を乗らせる方がいいのでしょうか」

 

 

 「僕もそう思う。キタサンブラックは性格がすごく穏やかだし、優しい。人に合わせてくれるし、同時に気負いを感じてしまう。互いにこれなら大丈夫と思わせて戦う。馬に好きにさせるよりは、互いに歩むほうがより強さを引き出せる。とは思う」

 

 

 『必殺技で勝ちをつかんでレースへの気持ちを高めてからの戦いがベストかあ。王道だな! ウオッカはいざという時の戦い方がなくて苦労していたし。それであの成績はおかしいけどなーで、キタちゃんはやっぱ逃げかしらねえ』

 

 

 『逃げですかあ。それだと、えーと・・・ケイジさんのコーナリングと、脚使いはどれがいいのでしょうか?』

 

 

 『加速ってよりは息を入れるやり方になるかな。足の使い方も教えていくから、水飲みながら聞きねえ』

 

 

 『何でケイジさん普通にへばっていないんですか』

 

 

 鍛え方が違いますよ。ミホノブルボンやライスが話題になるレベルで鍛えているからね。

 

 

 とりあえず息の入れ方やコーナーでのスタミナロスの防ぎ方。姿勢の変化とかを教えていく。次世代の期待株だし、サンちゃんにもたくさんいい思い出を作ってほしいからなあ。

 

 

 「ケイジ。お前も元気なのはいいけど、しっかり休むんだぞ。ほら、バターキャンディー」

 

 

 『ありがとナス! うまーい。んーかみ砕いてからの水で・・・・まろやかジュースだぜ! そしてその後に余韻をキメれば最高。ミントキャンディーでのさわやかさを味わうのも素敵』

 

 

 久保さんからのキャンディーのプレゼントも味わいつつ、心地よい春風を味わっていく。体の熱が抜けていくのが気持ちいいぜ。

 

 

 「しかし、松風君もいいチャンスを貰えたねえ。キタサンブラックの騎乗依頼。まさか大竹さんの代打として受け持てるとは」

 

 

 「まさか僕に来るとは思いませんでしたよ。和倉騎手とか福崎騎手とか池沼騎手とかふさわしい騎手も多いはずですのに」

 

 

 「いやいや、今や業界では大型馬は松風騎手に任せてみるべきではと言われているし、僕も松風君ならキタサンブラックの実力を引き出せると思う。僕も僕で、まさかナギコの引退試合を受け持つとは思わなかったよ」

 

 

 あ、そうそう。松ちゃんはもう色々成績が俺以外でも地方、中央問わずに重賞で入着、勝利をコツコツ重ねているのもあるのと、大竹さんに依頼がごたごたきすぎてキタサンブラックのクラシック期間の間の相棒どうするよ。となっていたのでサンちゃん直々の指名で松ちゃんが受け持つことになった。何でもサンちゃん曰く『男を磨かれた彼ならキタサンブラックを任せられる』とのこと。大丈夫? 松ちゃんオロロロロしない?

 

 

 タケちゃんもアメリカでナギコの相棒をしていた騎手さんがレース中に身体を壊したようで引退試合に出られなくなり、代打としてまさかのご指名。ドバイワールドカップ? でいいのかな。ミス・アメリカンドリーム。ミラクルガールと呼ばれたナギコの最後の戦いを受け持つことになってうきうきとドキドキなんだとか。生粋のホースマンだねえ。

 

 

 ちなみにヒメの相棒梅沢君。阪神JFであんな馬鹿勝ちした上で欧州マイルに速攻殴り込みになっているので真面目に口から食べたご飯どころか内臓吐きそうなくらい緊張しているとか。精神科のお世話になっているみたいだけど大丈夫かどうか。

 

 

 「いやー楽しみっすね。ナギコはあのトウケイニセイとロジータの才能を全て受け継いで覚醒した女傑。子供もいい子が生まれてほしいんですが・・・」

 

 

 「トウケイニセイは産駒に恵まれなかったですしねえ。トーセンジョーダン、ケンタウルスホイミ、引退後はケイジ、そしてステゴ一族にディープ一族。多くの血統と組み合わせも狙えるし、利褌さんに任せましょう」

 

 

 「私たちの厩舎にもぜひ来てほしいですねえ。悪戯好きらしいので怖いですが」

 

 

 『平野調教師とひげ熊厩務員。プールと海に合わせて30回以上は突き飛ばされているらしいからなあ。加減はしているとはいえ、毎日着替えを3着常備は大変だよ』

 

 

 『それ、風邪ひきません?』

 

 

 『うちの牧場ではすぐに温泉に沈めたみたいだから大丈夫だったみたい』

 

 

 ナギコも甘えると悪戯するマックイーンみたいな部分あるからね。とはいえ、基本威嚇もしないし、喧嘩もしないからどちらかと言えばフジキセキになるのかしら。

 

 

 「そういえば、大竹さん今からまたキジノヒメミコとナギコたちとの練習をするのでしょう? 体力大丈夫ですか? 結構なハイペースでの調教でしたし」

 

 

 「これくらいなら問題ないよ。それに、今日は顔合わせと調整もあるから軽めだそうだよ。本場アメリカ仕込みのハイペースな戦いと、鬼才マイラーとの練習。ものにして見せる。後は・・・梅沢君のメンタルケアもできればいいね」

 

 

 「ですねえ。僕もケイジとクラシックを越えた直後は睡眠不足になりましたし、ケイジ、ナギコに続いて前田牧場の怪物天才馬三頭目にいよいよ・・・となれば気負いは相当でしょう」

 

 

 『無敗四冠、GⅠ10勝越えに日米初牝馬によるアメリカクラシック無敗三冠&BCクラシック制覇。そしてマイルでの大差勝ち・・・うん。僕も相手したくないなあそんなの』

 

 

 『今鍛えているのそのうちの一頭なんやぞ。で、まあお前さんもこれから大舞台に挑むんだ。ほれ、もう一本いくぞ。どうせ年末にはぶつかるであろう相手だ。頑張ろう』

 

 

 『はい! で、さっきの逃げ方なんですけど、あーダイワスカーレット? のあの走りでしたっけ? 教えてください』

 

 

 この後も滅茶苦茶に練習したんだが、無理させ過ぎてソエになるのも怖いので腹八分くらいの感じで切り上げた。キタちゃんもメキメキ成長しているし松ちゃんも頑張れよー。しれっと俺のダスカ、セイウンスカイの逃げを7割コピーされたのにはびっくりしたけど。これが新時代の天才か・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「チャオ―ケイジちゃん。相変わらず今日もいい顔。肌艶も文句なしのイケメンね」

 

 

 「男なら思わず食っちまうほどのイケメンだな。そして、ヒメも元気そうでよかったぜ」

 

 

 「ヤッホーケイジ、ヒメ。久しぶりだね」

 

 

 『おいっすー。スーザンママに阿部さん。蓮君。・・・蓮君。野球じゃなくてサッカーやってそうなくらいのガタイになったねえ。具体的にはボールが友達の天才がいる世界の』

 

 

 『あ、阿部さんに、??? 残りの御二方はどちら様?』

 

 

 今日はヒメが欧州マイル三冠を狙う前の日本では最後の調整。コロネーションSが確か6月半ばくらいでやるからー・・・あー一応、3月から現地入りして、6月半ばまでは欧州。で、終わってからは日本に戻って冬のチャンピオンマイルあたりに挑む感じだとかなんとか。

 

 

 『俺の馬主権利を持っているオカマに、俺と一緒に頑張っている野球少年。どちらもいぶし銀の部分があるいい人だぜー?』

 

 

 『まあ! そうなのですね。キジノヒメミコです。お願いしますよスーザンママに蓮君』

 

 

 「あら、人懐っこいし、ミホシンザンみたいな部分もある可愛らしい顔。お姫様みたいなお馬さんねえ。美人」

 

 

 「おおっ? ありがとう。確か―マイルの覇者だったよね」

 

 

 「ふふふ。相変わらずヒメは可愛いじゃないの。さてと・・・そんな二人の面白いステッカーが出来たから見せに来たんだ。ほら」

 

 

 で、ヒメもさっそく俺の関係者だと知るや甘える仕草というか、挨拶をしていると阿部さんがカバンからごそごそ取り出してきた。それはなんと馬用の冬服。に花柄のアレンジをしたものをヒメが着けているステッカーに、ウルトラマン風の俺のシルエットに十字架の流星、そして桜吹雪を付けた奇麗なもの。

 

 

 車やバイクにつけるステッカーで、俺と松ちゃんや、ヒメと梅沢君。それらを見せては俺らの前で紹介してくれる。

 

 

 「君たちのステッカーがいい感じに売れていてね。いやあ、北海道の中小自動車整備会社の俺の方でも少し余裕が出来た。ケイジのおかげで競馬に興味を持って、その妹分のヒメの馬主の権利を持てたからこそだ。ありがとう」

 

 

 「私もよ。馬は大好きだったけど、あのテイオーの子どもでここまで夢を見せてくれたケイジちゃんだからこそ今の日々があるの。最後のシーズン。怪我しないように頑張ってね? 応援しているわよ~」

 

 

 「僕もこのステッカーはコンプリートしているんだ。保存用と、ほら、ストラップバージョンも!」

 

 

 『おおー・・・バッグにじゃらじゃら。大丈夫? 競馬大好きな中学三年生かつ得手はバントに盗塁の安打生産機とか一昔前の野球漫画ですら早々いないレベルの変人の道を歩んでいるんだけど。あ、キセル咥えた俺のバージョンもある』

 

 

 『あ、この写真のバージョンほしいです。私の馬房に飾って・・・的矢さんに頼めないでしょうか?』

 

 

 にっこりと笑って野球バッグにぶら下がっている俺、ヒメ、ナギコのストラップを見せてくれる蓮君。馬好きなのは嬉しいが、真面目に今の葛城厩舎、葛城大吾の息子さんだってわかると大変そうだなあ。主に教師の皆さんからのお願いとか。

 

 

 あ、今の時代子どもでも俺らのこと知っている子多いそうだし・・・どのみち学生からも大変そうだな! 大丈夫? 色々。

 

 

 「で、最後の年・・・僕も中学で全国に挑める最後であるし、ケイジもこの年で競走馬は引退。だからさ。小学生のころからしてくれたあれ、やらない? 少しでいいからさ。父さんからの許可も得ているから」

 

 

 『ほーん? よし、やろうぜ。久保さんも、松ちゃんもいるようだしな。ささ、行こうか』

 

 

 久保さんに頼んでもらい、馬房から出してもらいみんなでぞろぞろ広場に移動。そうかあ。これでこの厩舎周辺で遊べる最後の年だもんな。

 

 

 

 

 

 

 「ケイジ達はさ、ここに立てる。重賞に挑める時点でエリート、プロの中のプロのレベルの戦いだってわかっているよ。だからこそ、応援し続けていたし、負けるたびに自分も悔しがっていた」

 

 

 『そうさなあ。何せ、年間で数千頭生まれる、時代が時代なら万を超える中でのほんの一握り。そしてその同期は愚か先輩後輩たちともしのぎを削って、生き残っても場合によっては・・・だからな』

 

 

 「いつも気合をくれていたのに、僕は何も返せなかったよ。世界の名馬に並ぶほどの功績を見せても、僕はまだ全国でもトップになり切れず、夢もまだ途中だ」

 

 

 互いにトスバッティングをしつつ、言葉は通じていないが仕草や、反応を返して応えていく。数年前の160前後の少年が今や2メートル近い美丈夫になって、全国屈指の安打生産機かつ盗塁王の野球少年になっている。その支えの一つが俺だと言ってくれるのが嬉しいし、その成功を喜ぶが、蓮君はどうにも不完全燃焼っぽい。

 

 

 「だから、全国優勝をもぎ取ってくる。世界最強の名馬の友達にふさわしいかと言われるとまだ足りないけど、僕にやれることでまずはケイジと、支えてくれる皆に見せられるいい景色を持ってきたいんだ。・・・・・ケイジは頭がいいし、こうしてボールも心もかわしているのがわかるからとても楽しい」

 

 

 『俺もだよ。人の時の俺にはなかったであろうそのひたむきさに、優しさ、強さ。どこまでも応援したくなる。なら、今度も俺は負けられないなあ。必ず、凄い成績を作って、蓮君に自慢できる功績を作ってやるぜー』

 

 

 変化を加えたり、歩きつつ感じていた地面のデコボコを利用したイレギュラーバウンド、そして高めに打ち上げた。柔らかいゴムボール故のブレとかも難なく捉える蓮君の見事な捕球術を見つつ、成長を感じて、そして我がことのように喜んでしまう。

 

 

 『ケイジお兄様と蓮君との友情。ああやって始まったのですのね。二人の歩みは』

 

 

 「いいわねえー・・・青春。私の青春は夜の風とバイクの音で彩られて、決して輝かしい花道とは言えないものだったし。あれもいいものだとは思うけど、だからこそ反対の輝きもまぶしいほどだわ」

 

 

 「俺は筋トレと男と油と鉄臭い機械いじりの日々だった。全く。汗水たらして高い壁に挑もうとする名馬と少年。彼らを見れるようになれた分、支えてあげられればと思うようになったのは歳を取ったかな」

 

 

 「大人も大変ですが、それでも子供を、次の時代を支えたい、見たいと思ってしまいますよ。成長するのをそばで見ていると尚更」

 

 

 「蓮君もケイジも、一緒に成長してきたっすからね。俺にとっても弟分みたいなものですわ」

 

 

 周りでみんなも眺めつつボール拾いをしたり、茶をすすりながらようやっとあったかくなってきた日差しと風を感じながらボールに気持ちと言葉を込めつつ過ごしている。

 

 

 『まずは天皇賞(春)、蓮君は春の中学甲子園。頑張ってきてくれ。そして、体壊さないでね。俺は今年で選手としては引退だが、蓮君の道はこれから。高校野球に続くんだ』

 

 

 「ゴールドシップにフェノーメノ、強豪ぞろいだけど、みんな油断できないけどケイジが必ずまた最強として勝ち切ってくれると信じているよ。来年、再来年は優勝旗やメダルを持って牧場にも来られるよう頑張るから、ケイジ、またこうして遊ぼうね」

 

 

 『いうねえ。・・・おうさ。頑張ってやろうじゃないの』

 

 

 「ですってよテキ。貯金頑張らないとっすね」

 

 

 「一応無駄遣いはしていないつもりだが、頑張らないといけないなあ。馬のためにも、皆のためにも」

 

 

 「ぶほほ♪ いいお父さんは大変ね。辛いときはうちのバーに来て愚痴でも吐いて頂戴。色々サービスするわよ?」

 

 

 「馬運車の故障は・・・まあ、北海道になるがそこでの整備や調整はこちらでやる。ふふふ。いい男ぞろいじゃないの」

 

 

 『いい人ばっかり。だからこそ、ケイジお兄様は戦えたのでしょうか。あ、蓮君凄い動きでボール取りました』

 

 

 やっぱ、人に支えられているから俺は傾いて、楽しんでいる。だからこそ最後も気合入れないとなあ。笑ってバカやって、その上で最後まで盛り上げてやるぜ!

 

 

 そのためにも、目の前のライバルに火を付けるような戦いを見せてやらにゃ。

 




 キタサンブラックも大分やべーやつになっております。


 ケイジ 衰え知らずの老兵ポジへ。キタサンブラックにあれこれ教えて、蓮の夢を再度確認しつつ楽しんで遊んだ。


 松風 まさかのキタちゃんのクラシック期間中の相棒に。馬主さんから大型馬の扱いに秀でているだろうし、直感でということでの大抜擢。


 大竹 ナギコの騎手のトラブルで代打を務めることに。ナギコの才能はディープレベルだと評価。真面目に前田牧場をパワースポットだと思っている。


 キタサンブラック ケイジの技を学んでメキメキ成長中。ケイジへの評価は変だけど優しい先輩。爆睡するようになってグラスワンダーレベルののんびりさ加減に近付いている。


 キジノヒメミコ マイルまでは戦えるケイジの技術を本番さながらのプレッシャーを感じながらの練習。本人はワイルドで素敵としか思っていない様子。欧州の野菜も食べてみたいなあと思っている。


 大吾 蓮の成長に涙が出そうになる。前田牧場への挨拶の際は必ず一緒に連れて行っていくことを決意。


 阿部さん GENBUグループに先駆けてステッカーやストラップの販売をやって大儲け。ヒメの成長とその強さがどうなるか楽しみ。このために競馬チャンネルを契約して作業場と自宅のテレビで見られるようにした。


 スーザンママ 相変わらずのオカマ。ケイジ最後の年ということでちょっとしたフェアをバーでやろうかと企画用意中。


 蓮 中学野球全国大会優勝を目標に掲げる。ケイジの獲得賞金を超える賞金を手にできるプロ野球選手への第一歩として投資がメラメラ。最近好みの癒し動画の比率が馬だらけになってきている。


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ウマ娘エピソード 14 ちょっと次世代とケイジの回り

 申し訳ありません。真面目に心労が大きいようです。ほんと動画を見るくらい、小説を読むくらいしかやる気が出ないってやばいです。スマホゲー、ポケモンすら触れる余裕が出ないって初めてです。


 ワンピースの百獣海賊団側スタートの作品が面白すぎて見返すときがしばしば。ウマ娘もそうですが、本当に多くの視点やアイデア。考察が光ってすごいのなんの。

 文才豊かな人ばかりで是非イラストや漫画で見たいなあと思うばかりです。



 今回はちょっとケイジの回りのメイン? 回。になると思います。


 「キタちゃん。いい加減決めようっす。キタちゃんの才能なら必ず試験合格するはずっすから」

 

 

 「そうですよ。それに、早くチームに入ろうと考えていたのもキタちゃんですし」

 

 

 

 「う、うーん・・・そうなんだけども・・・でも、でもぉ・・・」

 

 

 中央トレセン学園のとある教室の一角。そこで放課後の時間を利用してゆったりと話している三人のウマ娘。

 

 

 一人は金糸の髪を腰より下まで伸ばし、それを専用の髪紐で毛先近くまでグルグルと巻いてまとめているスタイル良しの長身美女、快活さが前面に出ている元気印のウマ娘メジロライトニング。

 

 

 もう一人は鹿毛の髪を長く伸ばし、額部分にはダイヤを思わせる流星。編み込みが一部ある特徴的な髪型。純情可憐な深窓の令嬢がそのまま形になったようなウマ娘サトノダイヤモンド。

 

 

 そして最後にその二人に挟まれ、うんうん唸って二つのポスターを見比べている黒髪を短くカットしており、黒髪に一部流星のある髪型に、先の二人に負けないほどのスタイルを持つウマ娘キタサンブラック。

 

 

 三人ともこのトレセン学園に入学して早数か月。学園での規則に寮生活も慣れ始め、ようやくチームへの参加も認められたということで入ろうとしていたのだが、キタサンブラックが未だに決めきれずに悩んでいたのだった。

 

 

 「入るのならやっぱりシリウスっすよ。日本では三冠を取り、海外でもドバイ、フランス、イギリス、アメリカで大暴れ。世界でも知らぬ者はいないまさしく最高のチーム。あらゆる距離と場所で戦えるんですし、キタちゃんの才能もここで花開くと思うっすよ」

 

 

 「私はやはりスピカですね。編入してすぐにスペシャルウィークさんの才能を開花させたことや、色々癖はあると聞きますがトレーナーさんも優秀とのこと。あちらは練習もいろいろ相談が聞くそうですし、のびのび学生生活をしながら強くなるにはこちらがいいのでは?」

 

 

 「うぐぐぐぐ・・・・どっちも・・・どっちも捨てがたいぃ・・・どうしよう。スピカか、シリウスか・・・」

 

 

 「もうかれこれ放課後1時間。しかもほぼ毎日っすからねえ。キタちゃん知恵熱で倒れる前に決めようっす。スズカ先輩みたいに途中での移籍もできるし、ゴルシ先輩もケイジさんもシリウスやスピカを行き来して遊んでいるし」

 

 

 「移籍を前提に話されるのは少し駄目だと思いますよライトちゃん。まあ、実際交流も多いチームと聞きますし、本当に悩み過ぎずとも」

 

 

 「でもでも! テイオーさんかケイジさん。どっちかと同じチームの称号を背負って戦うし、同じ練習を過ごせるんだよ!? そうそう決められないよー!!」

 

 

 ライトニング、ダイヤモンドはそれぞれ決めているチームは違うが、主にそれぞれのリーダー格が自由に交流していることも相まって気楽なものだが、ブラックはそこを非常に悩んでいた。

 

 

 というのも、キタサンブラックはトウカイテイオーの華やかさ、可憐さ、勝負でのスマートな強さ、あらゆる面で魅了され、大ファンなのだがこれまたケイジのレースでも日常でも変わらない奔放さ、豪快さ、そして触れ合えばわかるその優しさや人柄に胸打たれ、更には学園に入る前から両親、祖父の影響もあって顔見知り。練習もつけてもらっている過去がある。

 

 

 これから雄飛するスピカを盛り上げ、トウカイテイオーたちと一緒にシリウスやリギル。多くのチームやウマ娘たちと鎬を削るか、あるいはシリウスという歴代最高最強。そこでしごかれて世界中で戦うことを選ぶか。

 

 

 どちらのチームにもあこがれの人がいて、しかもチームに入ればその称号を背負って戦いの舞台に行く。そのプレッシャーと嬉しさ、誇りを想像するどころか手に届く場所にまで近づいたのもあってキタサンブラックの懊悩も強いものになるのは分かるのでライトニングもダイヤも待っている。が、流石に長すぎるのでこうして促しに来ているという訳である。

 

 

 「そこまで悩む必要もないと思うんすけどねえ。シリウスもスピカも自由な気風で合同練習も多い。気楽に気ままに、まずは入ってみようっす。私は当然シリウスっすけど。マイルの絶対王者。ヒメ先輩にタイキ先輩に負けないほどの怪物になって見せるっす! そんでケイジさんやジャスタ先輩にも勝って魅せるんすよ!」

 

 

 バシンと拳を掌に打ち付けて気合を入れるメジロライトニング。彼女はメジロ家の一人なのだが、何分遠戚よりであり、しかも前田家とのかかわりもあって幼いころから前田家、つまりは全員が何らかのGⅠ、直系筋に至ってはほぼ全員がクラシックを一冠以上手にしてきた怪物たちからの手ほどきを受けている。

 

 

 そういうこともあって基本天皇賞などのレースを狙うことを良しとしてきたメジロ家の中では最初から天皇賞は眼中にない。あっても秋の天皇賞くらいであり『やるならマイルで伝説を作る。ステイヤーから見れば短い距離だけど、その中にありったけを詰め込んで燃え切っていくんす!』とメジロアサマに真正面から啖呵を切った変わり種。ケイジもミホシンザンもそれを聞いて爆笑し、ヒメと一緒に鍛えたこともあってますます前田家大好きになったくらいである。

 

 

 「相変わらずマイルと前田家が好きなのですねえ。ふふふ。でも私はスピカです。リギルも素晴らしいですし、シリウスもいいですが、マックイーンさんもいればスペシャルさん、ゴルシさんもいます。ステイヤーとしての実力者ならこちらの方が相が分厚いですし、ここで学んでいけば中長距離なら最高になるはずですから」

 

 

 そしてサトノダイヤモンドはメジロマックイーンにあこがれるウマ娘であり、令嬢同士というのもあってシンパシーを感じている。日本でも格式が高い天皇賞であれ程に才覚を持って戦い、あまりの強さゆえに退屈と言われるほどの強さ。それでいてストイックな立ち振る舞いを見せるマックイーンはまさしくあこがれるヒーロー。

 

 

 彼女のファンであり、目指す舞台となれば当然天皇賞。そこを目指すにあたってマックイーン以外にもステイヤーとして規格外の才能を持つメンバーばかりのスピカ。しかもそこで古株でありリーダー格であるゴールドシップは前代未聞である宝塚記念の連覇。加えてあのシリウスのリーダーにしてルドルフを越えた怪物ケイジに一番勝ちを手にしている。それも有馬記念に宝塚記念と中、長距離でのレースで。だ。

 

 

 最強に立ち向かえるこれまた最強格の怪物。しかもマイルや中距離もジャスタウェイがドバイで暴れてスーパーレコードを出す。あのサイレンススズカも日本、アメリカで大暴れ。キタサンブラックの才能を磨くのならここだ。と何度も熱く押していたくらいには。

 

 

 「うーん・・・・うーん・・・・うう・・・も、もう・・・コイントスで決める! それで決まった場所をいくよ。そういえば、サトちゃん、ライトちゃんはもう決まったの?」

 

 

 「うん? 勿論っすよ。マイル部門で1位取ったのでそのままチームに。ダート部門はラニ。他の子たちは練習で早々に潰れちゃったようで、今は別チームへの移籍をしようとしていたとかなんとか」

 

 

 「私は一応トレーナーさんとスズカさんへ面通しをして、キタちゃんの事は伝えています。可能なら、もう一枠開けていて欲しいと。皆さん待っているとほほ笑んでいました♬」

 

 

 「シリウスの練習の際のハードさと、滅茶苦茶具合はほんと凄いしねー・・・そしてサトちゃん動きが早いよ」

 

 

 財布から硬貨を取り出して手で転がしつつ覚悟を決めようとするブラック。シリウスは現在在籍しているメンバー、海外を多く主戦場にしていることも注目を引くのだが、同時にその性質故に一つのチームに複数人のトレーナーがいるのもまた珍しいもの。

 

 

 それもあって受け入れるメンバーの容量は広く、今の人気も相まってリギルよろしくチーム参加のテストを幾つも開催してそれぞれ得意な距離や芝、ダートを選んで受けられるのもさらに話題を呼んだ。

 

 

 1200、1600、2000、2400 芝、ダートそれぞれで模擬レースをして、1着のものをチームに仮加入。しばらくの練習を経験して本格的にチーム加入となるのだが、ライトニングはすでに突破。チームの一員としてスタートを切っていたのだ。それ以外でも入学式の時から注目されていた問題児、ラニも無事にチーム入り。それ以外はシリウスのハードな練習とあのやたら濃いメンバーの前でやっていけるか自信を無くして別チームへというのがいくつも続いているということらしい。

 

 

 「まあ、キタちゃん確かあそこのトレーナーさんに足を触れられたでしょう? そのこともあって才能ある若手が来るのなら枠を開けておくから是非来てくれって乗り気でしたよ?」

 

 

 「ダイヤちゃん。それしれっとだけど半ば恐喝じみていないっすか?」

 

 

 「?? でも、あちらじゃ日常なのでしょう? なんでもスペシャルさんもされたとかなんとか? ケイジさんも。その後にシリウスに大目玉を喰らったとも聞きましたが」

 

 

 「あ、あはは。かなりの特別優遇は嬉しいけど、また触れられるのは勘弁かな~・・・ま、とりあえず、どこのチームに行くか・・・表ならシリウス、裏ならスピカで・・・」

 

 

 スピカのトレーナーに脚を急に触れられた一件と、親友がよくわからないままこの件を利用していたことに苦笑しつつコインを握って念を込めるブラック。このコイントスの方法もまたケイジから教わったものであり、どの選択も迷うのならこれで決める。その結果で迷うようなら心の奥では別の結果を望んでいるのだからそこを選べばいい。ということで困ったときはコイントスで決めるようにしていた。

 

 ウマ娘の力でコインをはじいて天井にぶつけたり、窓ガラスを割らないように気を付けてはじいたコインは宙を舞い、ブラックの掌に落ち、それをブラックがもう片方の手で覆う。

 

 

 しばしの間を置いて手を外せば、コインは裏。

 

 

 「スピカっすね。なら、私も行くっすよ。今日はシリウスも練習は軽めで、私も休むよう言われているのでスピカの見学ついでに」

 

 

 「ですね。ふふふ。ささ。キタちゃん。一緒にチーム入籍の書類。書いちゃいましょ?」

 

 

 「うん! テイオーさんと一緒のチームかあ・・・ふふ。それなら、ケイジさんとも真っ向から戦って、いつか勝てるように頑張らないとなあ」

 

 

 「夢がでかいっすねーケイジさんに勝つよりも無敗の三冠目指すほうがまだ現実的って言われる怪物相手に。だからこそ、キタちゃんらしいっすし、最高の親友だけど」

 

 

 ようやく決まったチーム移籍に安堵する二人。この後ブラックとダイヤはチーム入籍のための書類を用意し、その間ライトニングはスピカとシリウスの熱が出た時に見る悪夢。というたとえがしっくりくるポスターを眺めては爆笑し、コピーして寮で飾る用と保管用で用意してからスピカへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「げほっ・・ぐぇっほ・・・け、ケイジさんの練習きついっす・・・おぇ・・・み、みず・・のど、いだ・・・」

 

 

 「あ、足が力はいらな・・・あ・・かは・・・こ、これがステイヤーの世界・・・なのです・・・・?」

 

 

 「は、肺が・・・肺がきつい・・・み、水・・・空気・・・あ・・・・」

 

 

 「おーおーみんな死屍累々だな? ケイジとゴルシちゃん、ライスの練習についてこれる分有望株だが、早すぎたなー」

 

 

 「まあ、いい気合いだし、悪くないだろ。まーライトニングは明日の練習は筋肉痛ほぐしだなこりゃ。おーいジャスタ。こいつ頼んだ―」

 

 

 今日はライスはケイジお姉さまと一緒にスピカと合同練習。で来ていたんだけど、ちょうどスピカに入ろうとしていたキタちゃんとダイヤちゃん。後、この前無事に試験を潜り抜けて、ケイジお姉さまの練習についてこれた一人、ライトニングちゃんたちがそのまま参加。ステイヤー専用の心身を苛めて長い戦いへの耐性を付ける練習をしたんだけど、やっぱり結果は三人そろって轟沈。

 

 

 明日は筋肉痛になること確定になるであろう三人を木陰で休ませ、ライトニングちゃんはジャスタさんにケイジさんが放り投げてマッサージのケアを頼んでいた。

 

 

 ライスも、流石にこれをこなすのはきついし、しばらく後は動けなくなるほどに疲れ切る。ヘロヘロながら誰かの支えがあって動けるのなら凄い体力の下地があるし、キタちゃんは必ずすごい選手になると思うなあと感じているくらい。

 

 

 「お疲れ。ライスちゃん。重バ場での2400メートル2往復の2セット。いいタイムだったぜ。しかもダートで、特に乾燥してサラサラの脚を取られる。海辺以上の悪条件で。だ。マッサージするからこれ飲んで休んでいなさい」

 

 

 「あ、ありがとうございます。タクヤお兄様」

 

 

 「いいのいいの。んー張っているけど、疲労も前ほどじゃないねー仕込み甲斐があるぜーってケイジと一緒に頑張った分、強い脚になっている。これなら明日は筋肉痛はないかも」

 

 

 こちらも休もうとしていたら、浅黒く焼けた肌にサングラスが特徴的な筋肉質の男性。シリウスのサブトレーナーの一人で、ライスたちのサポートをしてくれる一人。久保タクヤさん。漫画家とシリウスのサブトレーナー、噂ではこの前サッカーワールドカップを優勝した下北沢代表? と攻撃トレーナーの一人とか言う噂もあるけど・・・とにかく、二足の草鞋を履く凄い人。そして、ライスの絵の師匠でもある。

 

 

 タクヤお兄様からかすかに梅干しやレモンを入れてくれた冷たい水を飲みつつ、マッサージ、アイシング用の氷嚢を太ももにあててもらいながら一息つく。きつかったが、今日も無事に練習を終えることが出来た。トレーナーさんからも許可を得て日本での最終調整も半ばだからこその念入りな追い込み。それにケイジお姉さまも付き合ってくれて、充実した時間だし、何より、この後の楽しみが活力になる。

 

 

 「あー練習かったりぃー~ジャスタにケイジ達じゃないとゴルシちゃんスイッチ入らないのよねん」

 

 

 「贅沢だねえ? 世界最強じゃないとやる気にならないとは。ま、いいさ。今日は特別梅シソおにぎりにツナ、鯛飯おにぎり、たくあん。味噌汁を用意しているから、それで一息ついてあがろーぜ」

 

 

 この言葉に周りの皆、スピカのなかだとスぺちゃんやダスカちゃんが目の色を変える。ケイジお姉さまが合同練習をする。あるいは今回のように心もきついステイヤー専用のトレーニングをした後は晩御飯までのつなぎということでこういう軽食を作ってくれる。それがまた絶品なのだ。

 

 

 ある時はサンドイッチ、ある時はハンバーガー、菓子パン。お菓子などなど、スープもついたそれは本当に軽食であることが惜しいくらいに美味しく、久保お兄様も思わずお腹を鳴らすのが聞こえた。

 

 

 今日の味噌汁は前田ホテルのバイキングでも使われる選りすぐりの味噌に、おにぎりはケイジお姉さま、ゴルシさんらが自作した具材。もうライスやみんなの心は疲労よりもご飯の方に心がいき、この後の後片付けもあっという間に終わった。

 

 

 「んー・・・こいつは美味い! また腕を上げたなケイジ!」

 

 

 「ありがとナス。いやーマグロや鯛の切り落としや余り物を漬けて、焼いてみたがこいつは良いな。濃い味なのと塩分が練習後の身体にしみるぜー♪」

 

 

 「お米がほくほくでほろほろ口の中で崩れて・・・甘いのがまた味を引き立てて・・・くー・・・蘇る心地っスー・・・味噌汁も・・・うん? これ海老出汁っすか?」

 

 

 「ああーそうそう。久保さんがこの前サーフィンついでに捕まえてなー。いやーラーメン以外で使うのは久方ぶりだが、やはり味が強い」

 

 

 「その分梅シソおにぎりやたくあんが口の中をリセットして新しく次の食べたいものを選び直して・・・い、いやいや。ここで食べすぎたらミホのご飯を食べられない・・・!」

 

 

 「愛妻家ぶりは変わらずですねえ。いやほんと羨ましいですし感謝しているっす。俺の分の弁当まで作ってくれて」

 

 

 そして始まる軽食の時間。ライスたちウマ娘はたくさん食べる分、おにぎりは4,5個食べても晩御飯は問題ないけど、それが少なく感じてしまうし、出来れば余らないかなあ・・・と思わずトレーの中を見回してしまう。

 

 

 一方で、久保お兄様と談笑をしながらおにぎりをラップにくるんだまま、家へのお土産にしようとしている中年男性はシリウスのトレーナーにしてケイジお姉さまのお父さん。前田利褌さん。お嫁さんはあのミホシンザンで、前田ホテルグループの経営にもかかわる超大物。今もケイジお姉さまの作ったおにぎりとたくあんをお土産に持って帰ろうとしていて、その分を我慢しようとしているけど、ケイジお姉さま手作りのご飯というのもあって食べたいという想いに苦悩しているみたい。

 

 

 それをケイジお姉さまやみんなは微笑ましく笑い、『また作ってやるから気にせず持って帰っちゃいなよ親父。それと、おふくろもまた晩御飯を作っているし、労うついでにスイーツでも買って帰れば?』とケイジお姉さまに言われ、それもそうかとほほ笑んでおにぎりを保冷剤と一緒にカバンにしまい込む光景がとてもまぶしかった。

 

 

 

 「キタちゃん。食べすぎじゃない? それとライトニングちゃん。たくあんにおにぎりはここで食べないんです?」

 

 

 「だ、だってこんなにおいしいおにぎりに味噌汁初めて・・・はぐ・・・あー・・・幸せ―♪」

 

 

 「せっかくですし、メインディッシュにするっす! 晩御飯を食べて、寮で人心地ついてからの至福の時間にするんすよ!」

 

 

 「あ、ならライトニングちゃん。ライスの部屋にもケイジお姉さまからもらった梅干しあるけど、もらう?」

 

 

 「い、いいんですか!? ライス先輩! ならお願いします! いやーあの果肉の分厚さも最高で」

 

 

 「お、ならライスちゃん。俺も貰っていい? あれを酒に混ぜて飲んで、最後に食べるのがたまらなくいいんだよー~平野さんもまた帰ってくるし、一杯やりたいなー」

 

 

 「ああ、シンザンさんとケイジの梅干しかあ。あれは酒にもご飯にも合うんだよなあー・・・うん。よし、明日のご飯には梅干を置いてもらおう」

 

 

 ふふふ。みんなでワイワイ。愉快でいいなあ。ライスもまたしばらく海外遠征に行っちゃうし、今のうちにこれを満喫しないと。あ。ゴルシ先輩、おにぎりのどに詰まっちゃった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「わはは、コートポリアールとアクシードメルツ。下北沢代表メンバーで固まった二チームの激闘とはなあ。真面目に世界最高チーム同士のぶつかり合いが実現。いいねいいね。ウマ娘業界以外のスポーツも野球に続いて大盛り上がりだ。ひで選手と石崎選手のディフェンス合戦。平野とその弟子武内のゴールキーパー対決。そしてストライカー対決・・・録画しておくかねえ」

 

 

 練習も終わり、今日はちょいと相部屋のジェンティルちゃんもいない。朝の新聞を再度見直し、ネットニュースを見てのんびりとした夜のひと時を満喫中。

 

 

 俺の知り合いも何名か鎌田スポーツで世界を湧かせているし、にっこにこしていたらノックの音。

 

 

 「あ、すいませーん。うちセールスはお断りで」

 

 

 「そ、そこをお話だ・・・って違うよケイジちゃん?」

 

 

 「知ってるよーん。おっつかれい。真由美ちゃん。松ちゃんとのデートはどこまで行った? A? それともC? Zは・・・まあ、時間からしてしていなさそうだなあー」

 

 

 ドア越しにからかい。いいツッコミが飛んで来たのでドアを開け、茶を入れてもてなすのはシリウスのサブトレーナーの真由美ちゃん。この世界でも相変わらずのスタイルと髪の毛のボリューム。そして内気な部分は変わらずなようで。

 

 

 今日はシリウスがおおよそ休みだったのでシリウスのトレーナーの一人松ちゃんとデートしてきたのだが、まだまだ夜も更けていないこの時間だ。多分晩飯食って社員寮に帰宅。で、こっちに来た感じだろうなあ。飯も・・・匂いからして近所のイタリアンなお店かねえ。

 

 

 「ししし・・・・していないよケイジちゃん! もお、私が一応年上なのに」

 

 

 「はははは。その可愛さがあるからついつい。饅頭あげるから許して。んでー? どうしたの? ライスのデータや調子は久保さんからの報告で知っているだろ?」

 

 

 「う、うん。それでなんだけど、あ。この饅頭お茶と合う・・・♪ で、そろそろ遠征に行くんだけど、ケイジちゃんからも見てどうかなって。ライスちゃん、トレーナーの皆から見てもいい感じだと思うんだけど、海外遠征の経験が一番あるのはケイジちゃんだから」

 

 

 ほわほわと落ち着く。わたわたする姿も可愛いねえと思いつつ。ライスの遠征の話だったので改めて今日の記憶の中をさらう。

 

 

 まあ、行く場所はアタシの縁あっての部分もあるし、見にくる客層を考えれば、まあねえー。真由美ちゃんが心配になるというか、安心するための要素が欲しいのも分かる。まあ、嘘偽りなく言えば

 

 

 「身体も大分柔らかくなっているし、膝の具合もいい。足の肉も程よくついていいクッション、いや、サスペンションか? の役割も果たせるな。ストレスが大分減っているのもあって食欲も凄いし。んーとりあえず、日本のパンの味やご飯も恋しくなるだろうし、肉を落とさないためにも真由美ちゃん、うちの親父は飯の管理に気を付けたほうがいいんじゃないか?」

 

 

 「やっぱりそうだよね。うーん・・・となると・・・お米に炊飯器、えーと小麦粉に、パンを作るやつとかも必要かなあ・・・?」

 

 

 「そうだなあ。後は乾物とかで保存利くやつ持っていって最低でも一日一食は日本の味を感じさせる方がいいだろうな。最初は新しい飯に刺激を受けるが、そうなるほど恋しくなるかもだしな♬ 後は、行きつけのホテルの方にもこっちから連絡しておくし、ライスの事、頼んだぜ真由美ちゃん」

 

 

 ぶっちゃけ、ライスはシリウスに来る前よりずっと肌の地色もよければ肉もついてタフなレースに身を投じることが出来る。回復力も段違いになっていれば、あのブリキのおもちゃの方がまだ柔らかいぞと言えるほどにガチガチの身体も柔らかくなっていた。

 

 

 重バ場への練習もしっかりしているし、コンディションさえ崩さなければ海外でも暴れられるステイヤー。海外でヴィンテージクロップも認める才能だ。背中を支えてやってほしいね。

 

 

 「うん・・・ら、ライスちゃんは必ず勝たせてくるよケイジちゃん。帰ってきたらまた労ってあげてね?」

 

 

 「あたぼうよ。真由美ちゃんも、またイラストにおもしれえ土産話を頼むわ♪ あ、それと締め切り大丈夫?」

 

 

 「最後にそれ言わないでよー! 思わず背筋が冷えちゃった。だ、大丈夫よ。ちゃんと締め切り前に出しているし、データの方もちゃんとバックアップを取っているし」

 

 

 流石コミケの女王。今年の売上いくつになるかなー久保さんも一緒だし、真面目にブースでの列がひでえのなんの。アタシらが売り子に行ったらさらにひどくなったし。

 

 

 兎にも角にも、この後ちょいと茶をしばきつつ今日の練習での愉快な出来事を話して、一緒に思いきり笑ってから解散。この後母ちゃんからメールで「おにぎり美味しかったわ」と連絡も来ていい夜になったぜ。




 シリウス所属メンバー ケイジ(チームリーダー) ジェンティルドンナ(サブリーダー) オルフェーヴル ナギコ ヴィルシーナ キジノヒメミコ ラニ ホッコータルマエ ライスシャワー


 少し前にはここにハーツクライ、ドリジャなどがいた感じです。基本ぶっ飛んだやつしかいない。現在は短、中、長距離。芝、ダート(土、砂)のそれぞれのエキスパートがそろった日本最精鋭の一角。ルドルフ、理事長からも「まんべんなく多くのレース環境、国もまたいで戦える幅広さを持つ最強の候補」という評価をもらっている。


 メジロライトニング ケイジの大ファン。天皇賞? それよりマイルチャンピオンや安田記念だろ! というマイル大好きウマ娘。夢はタイキシャトルやキジノヒメミコを越えるマイルの怪物になってケイジに挑むこと。後日酷い筋肉痛になってずっと爆睡したりアバっていた。


 キタサンブラック ケイジからの教えを受け、テイオーの走りに感銘を受けたこともあって真面目に数日どのチームに入るか迷いまくったがスピカに入ることに。シリウスの合同練習が多いのでライトニングとも一緒で満足。テイオーと挨拶してサインをもらう際に何でかテイオーの目が死んでいた。


 サトノダイヤモンド 日本最強ステイヤー候補のケイジ、マックイーン、ゴルシ、ライスシャワーの練習を一緒にできて満足。でも筋肉痛で動けなくなった。スピカに入って以降ダスカのおてんばぶりに驚いたり、マックイーンの行動に色々イメージが崩れたり変化した。


 久保さん シリウスのサブリーダーにして漫画家。週刊少年ヂャンプにて大人気漫画を連載していた。いまは時折コミケで作品を出したりしつつシリウスでみんなを支えている。ライスの絵の指導者として教えつつ、作品を書く際のアドバイスをしていたりで充実している。趣味はサーフィンとサッカー


 利褌 この世界ではケイジの親父さん。トレーナー業と前田ホテルの経営をしている中川状態。というか中川とも知り合い。嫁さんはミホシンザン。に冴子さんの要素を足した美ウマ娘。愛妻家で有名かつ、夫婦でサブトレーナーたちを助け、支え、育てている人間の鏡。


 真由美 サブトレーナーをしつつ、夏と冬の祭典には参加して作品で大儲けしている。松ちゃんの事はこの世界でも大好き。いつ告白するか実はシリウス内でみんなで晩御飯をかけられている。器量よしすぎてウマ娘と一緒にグラビアモデルの依頼が来た時は大変だった。


 ライスシャワー シリウスで充実の日々。将来の目標のために久保さんに絵の練習も手伝ってもらっている。後日真由美ちゃんや久保さんと一緒にイギリスに遠征。グランドナショナルで優勝してきた。


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滑り出しや如何に 天皇賞(春)(GⅠ)

 最後の年のスタートへ。しかし、面白い作品が多いウマ娘の中でここまで見てくれる人たちがいてくれるのが嬉しいです。誤字報告、高評価。感想ありがとうございます。少し書き方の感を忘れていますが頑張ります。


 ケイジ(ウマ娘)の一口メモ リギルのメンバー全員を赤面させちゃったことがある。ギャグではなく誘い文句で。


 『長い距離を走って衰えないスピード、パワー、それらを維持できるスタミナ。騎手もまた長い距離を走る馬を御する腕を求められるハイレベルなレースにして伝統あるこの大一番がまた今年も始まります。

 

 

 天皇賞(春)にまた名馬たちの激闘が彩られようとしています』

 

 

 やってきました天皇賞(春)そして、俺らの最後の年の始まりであるレース。いやーあっという間。なのかねえ。

 

 

 『あー今日もいい天気。昼寝したくなっちゃうねえ』

 

 

 『あの黒豆がいないなあ・・・ま、いいでゴルシ。お久ーケイジ。相変わらずのんびりしているねえ』

 

 

 『お久ーゴルシ。ようやく癇癪は収まったかい?』

 

 

 『あー・・・うん。いやー寂しいし、茄子の野郎はいつかしばく』

 

 

 そんでまあ、ゴルシはまあ、ジャスタが引退したこともあってしばらく荒れたのなんの。真面目に茄子のおっちゃんが俺らの方に来て『ゴルシの練習をするにはケイジがいないと今は絶対無理だから頼みます』と頭下げてきたときはほんと何事かとね。

 

 

 今は騎手を乗せてから本場馬に行く前のパドックでゆったりしているが、久しぶりの顔も。ユウジョウと大竹さんもいるし、今回の期待の一頭となっているみたい。テレビのCMよかったなー

 

 

 『ま、いずれ会えるはずだしとりあえずこのレースでも楽しもうぜー』

 

 

 『またお前の牧場でみんな揃ってゆったりしてえなー・・・・あーくそー! むかむかしてきたぞ! うぉー! うぉー!』

 

 

 『あっとゴールドシップパドックから本場馬への最中に大暴れ。何度も立ち上がっては嘶いております。これは先の映像を思い出させるような豪快な暴れっぷり・・・ケイジもそれに倣って二頭同時に暴れております!』

 

 

 『わはは! 元気だなーゴルシ! なら俺もー! うぉー! わはははは!』

 

 

 『おぉ!? ケイジやっぱでっけえな。よし。そんなら、うぉー!』

 

 

 ゴルシの方が暴れたのでこちらも一緒に遊んでいればゴルシは暴れるのがむかつきから楽しむのにシフトチェンジ。やっぱこうでなくっちゃ。稀代の破天荒にして癖馬ゴルシはこうでないとな! 周りの馬がドン引きしているって? 知らないねー

 

 

 あ、松ちゃんもわりいわりい。あっちの騎手さんもだけど凄いねえ。俺らが暴れても振り落とされないんだから。

 

 

 『闘志が燃え滾っているのか、それとも遊びたいのか。どちらにせよこれを御したジョッキーと手綱を握る厩務員の慣れがうかがえます』

 

 

 『どちらも普段からああですしねえ。しかし、あそこまで暴れるほどの元気があるという証でもありますし、ゴールドシップ、ケイジ、ユウジョウ。やはり皆の人気が集中するのも納得というところでしょう』

 

 

 あ、ちなみに今回の解説もまた岡崎さん。いや、俺のレースの際は番組なり会場なりでほんと何処かにいるんだよねあの人。文も凄いしでほんといつもコラムや色々読ませてもらっているぜ。

 

 

 「うーん・・・新品のピカピカ馬場・・・場所もここだし・・・今日は、追い込みで温存するほうがいいかね。固すぎる馬場でもケイジは行けるが、体重がある分脚に来る反動がなあ」

 

 

 『あーまあねえ。多分俺、重馬場の方が思いきり地面を蹴り抜けるから動きやすいと思えるし。そこは調教でよく砂浜を走っているのも影響あるのかね』

 

 

 「後は・・・まあ、真面目にステゴ産駒とマックイーンの血を引いた最高傑作の一頭だしなあゴルシは。ユウジョウも強いが、スタミナ勝負。タフなレースでいえばやはりステゴ一族に軍配が上がる。今回は僕らにとってもシーズンスタートのレース。焦らず行こうか」

 

 

 だねえと松ちゃんに嘶きで返して、落ち着いたゴルシと顔芸を客席に振りまきつつ本場馬入場へ。しかし、こう考えると真面目にすごいなステゴ産駒。日本のスタミナはあるが速度やキレがないと言われた血統にサンデーは母系の力を底上げしつつ自身の速度と切れ味を遺伝させるのが特徴だった。

 

 

 だけどサンデーの調教師も牧場も本質はマイラーで、スタミナは母系から持ってこないと長距離は厳しいと言われていた。実際、スぺちゃんやカフェは母系がスタミナ系統だからこそあの長距離の強さだし。で、今はどこもサンデーやディープ産駒だらけでどこからスタミナの血統を持ってくるか。ダスカやダメジャー、多くの馬が短中距離を主戦場にするのにステゴ産駒はスタミナバリバリでタフなレースで輝く。サンデーの系譜なのにまるでサンデーの真逆の強さを持ちつつあのふざけた切れ脚を持つ。

 

 

 ディープ一族の対抗馬なだけあるよなあ。ほんと凄いわ。あの阿寒湖、親父の良さを持ちつつも自分のスタミナや強みをがっちり持たせるんだからここらへんは親父譲りなのかしら。そこにさらにマックイーンの血を覚醒させたのがゴルシだしな。ほんとこれで性格がキタちゃんやディープみたいだったら真面目に伝説も伝説の怪物だったのかしら。

 

 

 まあ、兎にも角にも今はレース。連覇を狙うぜ天皇賞(春)最後のシーズンは国内専念。プレゼントを松ちゃんとおやっさんたちに渡さにゃあなあ。

 

 

 『さあ、いよいよ本場馬入場。連覇を狙うはケイジ。それを阻むは阪神大賞典を三連覇しました黄金の不沈艦。最強ジョッキーと挑むダービー馬ユウジョウ。三頭共に凱旋門賞で暴れた戦友であり、互いの強さを良く知っているライバル。この長い3200メートルの中でどのようなドラマを見せてくれるのでしょうか』

 

 

 『日本最強格が三年連続で挑んだ戦いを彩る優駿たちが今度はこの天皇賞で競い合う。同じ年の凱旋門賞5位以上がその内三頭揃っているということもあり世界からの目も集まっている。春だというのに夏のように熱い熱気を感じてしまいます』

 

 

 そういえばそうだ。しかも舞台は3200メートル。うん。欧州のステイヤー信仰のホースマンにオーストラリアの方々の注目はやばそうだなあ。しかもゴルシの場合は親父も祖父も実績や世界へ与えた衝撃は真面目にすごいし。

 

 

 うちの方にもそういやオーストラリアのやべー馬主さんが来ていたなあ。ペタールーンスンカットとかいうマックやオグリ世代あたり、1990年代あたりにに大いに暴れに暴れたオーストラリア最強馬の一角の馬主さん。何でか本人も覆面、もといメンコ被っていたけど。俺の産駒やその系譜の話を聞きたいとか何とかで長期旅行で日本に来たとか。

 

 

 それなら俺も暴れてやらないとなあ。日本古来の血統の強さを見せつけてやるぜい。

 

 

 『そして今回の天皇賞も天覧競馬。陛下も直々にご臨席してくださりレースを楽しげに見ておられます』

 

 

 『あのメジロの血を引く不沈艦と日本競馬界の皇帝の直系。そして今の時代を切り開く優駿たちの戦いを満喫したいとほほ笑んでおられました。どうなるか誰もが手に汗握って今か今かと待っております』

 

 

 あ、そっか。オグリブームのすぐ後にマックイーンやテイオーたちの時代だからそりゃああれだけ暴れたマックイーンを覚えているよなあ。葦毛の怪物たちがオグリからしばらくずっと出ていたし。

 

 

 『さあ、いよいよファンファーレがなります。格式あるこの天皇賞(春)集った18頭とそのコンビ。誰が盾と賞金、そして名誉を手にするか。今、優駿たちがゲートに・・・おっとゴールドシップとケイジがゲート入りを拒んでおります』

 

 

 『イヤンゴォオォオ!! おもしれえ観客たちの声と様子をもう少し見るの! 何ロープで誘導していこうとしているんだこの野郎! 蹴るぞ!』

 

 

 『春なんだし、長いレース。まったりいこーぜー俺もゆったり考えたいの。気持ちの整理よ整理。あー笑点見たい。もしくはイッポンザグランプリ』

 

 

 『ゴールドシップ、いやがってそのままバックでゲートに・・・入ろうとはせずにくるりと回って暴れます。ケイジはケイジでわちゃわちゃ回りながらゲートから遠ざかる。この二頭がそろうと起こるこの騒ぎ。周りの馬たちがまたもやドン引き。会場は笑い声であふれております』

 

 

 せっかくの祭だ祭り。古馬だろうと愉快に行こうじゃあないかあ。

 

 

 わちゃわちゃしていたら身体もほぐれてきたし、ほいほいこっちはゲートにがちゃん。あ、歓声ドーモドーモ。

 

 

 『アッ! 何すんだこら! 放せ! 目隠しすんなコラー!!』

 

 

 おおー目隠しされて結局ゴルシはいってやんの。プププ。ほんとおもしれえなあ。そして入っただけでここまで歓声を貰える馬もそうはいねえ。

 

 

 『あーもーなんだか萎えちゃったでゴルシ―』

 

 

 『まあまあ、周りも応援しているぞ? 主にお前さんの騎手だが』

 

 

 で、まあうん。騎手さんはちゃんと走ってくださいと何度もゴルシの上で頭を下げているし、周りも頑張れという声が騎手さんに飛ぶ。うんうん。愉快でいいこった。

 

 

 『さあ、ようやくすべての馬がゲートに入りました・・・・今スタートしました天皇賞(春)。まずはケイジはすぐに出ますが下がっていき、ゴールドシップの少し前を走る形に。ユウジョウ、大竹騎手もまた同じように後ろから様子を窺う形に。

 

 

 先頭争いはグリーンカイザーが行った。大逃げの天才ケイジ、今日は追い込みを使うようで先頭争いはし烈。そのまままずは最初の坂を上っていきます』

 

 

 そんでレースもスタート。いや、ほんと淀の坂はきついとは言うが、欧州の坂の方がやべえし、抑えておいてよかったんじゃない?

 

 

 「思ったより前に出たな・・・やっぱり坂があってもカチカチの高速馬場だからケイジの脚も乗りやすいし、うーん。もう少し気持ち落とそうか」

 

 

 だねーやっぱ固い馬場だと俺の場合は脚が乗りすぎる。大逃げでやってもいいけど、二度目の坂を走って仕掛ける際の体力ほしい。脚使いのギア変えておいて温存しつつ前の争いをのんびり観戦しておきますかあ。固い分速度は出るけど反動が来るから思った以上に消耗があると嫌だし。

 

 

 『最初の関門坂の下りを越えて馬群は縦長に伸びました。先頭は依然変わらずグリーンカイザーが三馬身のリード。そしてスズカアビス。ヴィンバリアメールが続き、カレングレース。ハートマン。後方は最後尾がゴールドシップにユウジョウ。ケイジが続く形となって3,4コーナーを走っていきます。

 

 

 ラストショットにホッコーブレイヴが馬群の中段を引っ張りつつ第4コーナーを抜けてスタンド前に先頭が近づいていきます』

 

 

 んーゆったり。1000メートルタイムとしてはやや遅めかあ。で、ゴルシは内側から徐々に外側につけているな。ありゃあ、騎手さんの指示だろうけど、こっちはも少し待ちかね?

 

 

 「馬群が伸びた分も少し体力節約だね。ケイジ、少し内につけよう」

 

 

 あいあい。今日の仕掛けどころはココからじゃないからねー。

 

 

 『さあ、いよいよ1000メートルを通過。タイムは1分1秒8 それほど速いタイムではありません。内にケイジとユウジョウ、そして外はゴールドシップという形に。スタンド前を走る優駿たちへファンからの声援が飛び交います。10万9千人の大歓声。

 

 

 このまま第1コーナーへと入るのは先頭をキープしておりますグリーンカイザー、1馬身のリード。続いてスズカアビス。ウィンバリアメールにタマモビール。カレングレースにハートマン。ホッコーブレイヴが続いていきます。

 

 

 おっとケイジが少し前に出る。が、それ以上にゴールドシップが前に出てきたぞ。代わりにユウジョウが現在最後尾となる形になります。コーナリングでの加速は相変わらず。2012年クラシック世代は皆これが武器の一つ。長い天皇賞(春)ではそれを活かすチャンスが多いぞ』 

 

 

 『さあ、ぼちぼち盛り上げるぞー』

 

 

 ゴルシもノリノリの気持ちに入ってきたようだな。こいつは心配・・・なさそうだね。松ちゃんもそれを感じているようだし、プラン変更はいらねえか。

 

 

 『全頭第2コーナーに入り第3コーナーを目指す直線。2度目の淀の坂が目に入り始めました。先頭グリーンカイザーとスズカアビスの馬身差はほぼなく先頭争い。そこにタマモビールが加わってペースが上がる。いや、かかってしまっているのかタマモビール』

 

 

 よし、ここだな。松ちゃんいくぞ! 思いきりここからロングスパートよ!

 

 

 「っし・・・いくぞ!」

 

 

 松ちゃんの鞭が入って俺も足のギアを切り替え。前に出てしかけ・・・・・

 

 

 『『え?』』

 

 

 ゴルシ、お前も仕掛けるんかーい!

 

 

 『ああっと一気に飛んできた! ゴールドシップとケイジ2頭同時に第2、第3コーナーの中間から仕掛けていく! 2頭の騎手ほぼほぼ同時に鞭を打っての超ロングスパートに打って出た! ぐんぐん抜いて先頭に出ていくぞ!!』

 

 

 面白いからいいが、そういえば菊花賞でもこのくらいからスパートしかけていたなあ。わはは。なら、このままいかせてもらうか!

 

 

 『ユウジョウは未だ後方から4番手! 乗り遅れてしまったか! そして先頭集団にとりつき、あっという間に前に躍り出たのはケイジとゴールドシップ! まさかまさかの2頭同時の仕掛けと淀の坂のタブー破りを敢行!! そのまま坂を上り、下りでもさらに加速! この2頭にタブーなんて文字はないと言わんばかりです!

 

 

 グリーンカイザーが粘るが最早主導権はこちらのものだと抜かせないケイジとゴールドシップ。ユウジョウも外から仕掛けて第3コーナーの中ほどから先頭集団に追いついてきました。先頭はケイジ、ゴールドシップ、カレングース、グリーンカイザー。そこにユウジョウが入ろうとしていますがまだ遠くそのまま最後の直線へと出ていきます!』

 

 

 中々粘る、が脚は残しているからな! 最後のもう一押し! それでも引き離せない、喰らいつきそうなのは・・・こいつだよな~

 

 

 『イヤッホー! お客さんもノリノリ。ならそのまま勝っちゃうよーん』

 

 

 『俺も勝つぞお! 目指せ連覇、ゴルシ阪神大賞典を既に連覇したんだし譲らんかい!』

 

 

 『周りの最後のスパートですら追いつけない! またもや2頭での優勝争いとなりました天皇賞(春)!! ケイジか、ゴールドシップか! ユウジョウも伸びるがまだ遠い! ケイジ粘る! ゴールドシップ追いあげる! 抜くか抜かれるかの熾烈な競り合い! 鼻先を奪いながらラスト100メートルを切る!』

 

 

 何とか、何とか粘っているんだが! ほんとこいつノリにノッテいるときの強さがやばすぎるんだよぉ! くっそ、ほんともう少しでゴール。ゴールだ俺! そこまで逃げきってしまえば・・・・!

 

 

 『ああっと差し逃げをしていたケイジをまくり返して前に出たのはゴールドシップ! 黄金の不沈艦の速力とスタミナ本領発揮! 見事傾奇者を下してのゴール!! 3度目の正直で見事天皇賞の盾を手に! 母父メジロマックイーンたちが求めた天皇賞の盾を見事獲得!

 

 

 2着はケイジ。負けはしましたがやはり強い! 連覇ならずとも連対記録は維持。怪物の歩みは次の期待を我々に抱かせてくれます』

 

 

 抜かれちゃったか―・・・・くぅーほんと、俺らの世代にことごとく連覇を阻まれているなあ。今年の滑り出しは幸先悪いが、ま。ライバルの勝利もまたいいものだし。労らわにゃあな。

 

 

 『お見事。ゴルシ。いやー同時に仕掛けて逃げ切ろうとしたが、ダメだったぜー』

 

 

 『ケイジこそ相変わらず強かったぞー? お客さんの歓声でやる気出てからケイジとのレースも面白くなったし、またやろうぜ』

 

 

 『おいこら。客のスパイスあってようやくかい。まあ、レースはまた戦うだろうしいいぜーそれじゃ、まったなー』

 

 

 首をポンポンハグしてからくるりと斤量室へ。くっそー中々連覇とか狙えないなあ。




 相変わらずふざけたレース運びでしたとさ。多分ウマ娘、アニメだと同時に仕掛けて驚くも次の瞬間には一緒に不敵に笑いながら仕掛けていると思います。



 ケイジ ゴルシと仲良く淀の坂のタブー破り敢行。でも負けちった。真面目に欧州のやべーレース場を想定した場所の調教とかも経験しているので淀の坂はまだましな部類。後で覆面しているオーストラリアの馬主さんとも交流会を開いた。


 ゴルシ 見事天皇賞(春)を勝利。この後さる御方に撫でられ、しっかり対応していた。ただし茄子には頭突きをした。後でプレゼントとして冬着を貰ったらしい。


 今更ながらにケイジの実績をみてこの世界でケイジが吹き飛ばした金額って結構ありそう。そしてウマ娘になった際はそれがネタにされちゃう。『吹き飛ばした金額合計000億円』とか。


 


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新時代の波

 いつも誤字報告、感想、評価ありがとうございます。のんびり感想を読み返しているのが楽しみです。碌な返答を返せているか不安ですが本当にありがとうございます。


 ケイジって学園じゃあ先輩としての評価は極端になっていそう。絡みも暴走も訳わからないとき多数で問題児。やりたい放題。だけど面倒見はいいし見捨てない。しっかり支えるし戦績は言わずもがな。


 ケイジの一口メモ 爆竜大佐に引きずり回されたせいで英語は日常会話、取材を受けるくらいなら問題なし。ただし読み書きはまったく出来ない。アメリカに友達多数。


 『男松風騎手覚醒か! キタサンブラックとともに日本ダービー制覇!!』

 

 

 『ナギコ見事ドバイWCを制覇。5馬身の差を持っての圧勝。黄金の姫無敗のまま引退へ』

 

 

 『ハイペースでのGⅠゲット。傾奇者の相棒二度目のダービージョッキーへ』

 

 

 『梅沢騎手キジノヒメミコと共に欧州牝馬マイル無敗の三冠奪取。黒き国鳥と欧州を飛び回る』

 

 

 「うんうん。松風君もさすが成長しているねえ。そして梅沢君。帰るとき飛行機でインタビューのメモを作っておくよう伝えておくかね」

 

 

 『欧州ですげえパニくっていたもんな梅沢君。そんで英語分からないですー! を言いまくっていたのを通訳されて爆笑の嵐だったっけ。すでに動画の素材にされているし』

 

 

 早くも6月。のんびり葛城厩舎で宝塚記念へ向けての調整。をしつつ今は休憩中。皆で新聞を広げてゆったりしている。とはいえ蒸し蒸し暑い季節だからみんなスポドリに水を常備して木陰での時間だがな。

 

 

 しっかし、松ちゃんもブラックも成長したなあ。後続に2馬身つけての勝利は文句なしの実力を見せつけての勝利の証。俺以外との馬たちと重賞、OPの勝利はちらほらあったが、GⅠ、しかもダービーを二度目の優勝。しかもまだ20代半ばの若手ジョッキーがそれを成した。

 

 

 以前俺とタケちゃんが欧州二冠を制覇した際に松ちゃんは必ず強くなるという感じの事をタケちゃんが言ってくれたが、まさしくそれを見せつけたこともあってイケメンでありながら柔らかな笑顔が似合う、マイクや楽器より鍬と釣り竿握っているほうが似合うアイドルのリーダーみたいな顔立ちもあってますます人気爆増。それにつられて競馬ブームもさらに過熱。

 

 

 子供たちのあこがれる選手で野球やサッカー選手に混じって騎手の比率が増えてトップ3に混じるんだからすげえよな。

 

 

 「しかし、的矢さんの所もこの件で素質馬の入厩依頼が増えたみたいですね。嬉しい悲鳴だと苦笑して、ヒメのグッズを神棚に飾ったり、ヒメにご褒美を増やしたとかなんとか・・・?」

 

 

 「私のような若造が言うのははばかられるが・・・的矢さんは馬に優しすぎたからね。ただヒメ、ケイジのような練習好き、自らスパルタを課しつつも休むときは休む名馬を見て練習と甘やかす切り替えをつけたと思う。加えてあの的矢さんだ。現役時代の仕事人ぶりをここでも見せれば名門厩舎になるぞ」

 

 

 「あのヒットマンの技術と経験が今度は馬の調教で、ですし・・・う、うん。とんでもないマーク戦法や調整で暴れてきそうですね・・・」

 

 

 『そういう意味ではその覚醒を手伝ったのは梅沢君とヒメ。若き素質とこれまた時代に埋もれつつあった血統がなしえたかあ。ほんとドラマに富んでんねえ! しかもアメリカと日本の三冠馬、三冠候補の怪物が祖父母世代にいる子が欧州のマイルを。ねえ。わはは。ビリー牧場長ぜってえ腹抱えて笑っているだろうな』

 

 

 的矢厩舎の方もヒメの暴れっぷりがやばすぎてこちらも人気爆増。しかも父父ミスターシービー、母父イージーゴアの血統が。だからね。ロマンあふれる血統でこの戦績、馬産から見てもこれはまたバリ受け広々な血統でサンデーも俺も基本つけ放題。

 

 

 マイルをぶっちぎれるスピードをふざけたスタミナで押し切るので産駒のスタミナも期待大。すでにその話も上がっているし、梅沢君も俺と一戦だけどデビュー戦で大差を叩き出して、そして今度はこれ。顔立ちも松ちゃんには負けるが悪くないので人気ももりもり。

 

 

 本人口からゲボどころか内臓吐きそうなほどプレッシャーでやばかったそうだけども、もう少し頑張れば慣れる・・・かもしれないからファイトよん。松ちゃんに相談したらいいよ。あいつも俺と組んで、今もちょこちょこ悩んでいるがなんやかんやベストな騎乗をしてくれるし。

 

 

 「よし、ケイジ。プールトレーニングに行こうか。西日が強くなる前に練習を終わらせて夕方はゆっくりご飯を食べて休むぞ。水を飲みすぎて夏バテしないようにな?」

 

 

 『へーい。まあ、風邪も夏バテも縁がないけどな。うっしょ・・・ほぉん。さー眠気覚ましにいっちょいきますかあ』

 

 

 「真由美ちゃんはいつも通りケイジの寝藁の用意と、タオルやご飯の用意をお願いするよ。今日は日差しが強いし、軽めで上がるから」

 

 

 「は、はい。テキ、ケイジも気を付けて」

 

 

 『はいはーい。身体冷やしすぎないように頑張るぜー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「こうしてプールトレーニングをするとこの季節が来たなあと思うよ。お前ほどの巨体でおぼれる心配がない馬は本当に珍しい。安心してみられるよ」

 

 

 『馬の水泳大会があればメダルでオセロできるくらいには集めてやろうか? スタミナも折り紙付きだぜー? ホーレ潜水ー~』

 

 

 やっぱりムシムシした暑い季節にはプールに限るよな。身体もクールダウンできれば筋肉もほぐしつつ鍛えられる。俺の場合は心臓が普通よりずっとでかいせいで血液の循環が早い分冷えるのも早いし、温度はちょい高めで泳ぐがやっぱりいいもんだ。

 

 

 「・・・・・改めて、この時代は何もかもがおかしいものだった。ルドルフレベルが少なくともお前を含めれば4頭近くがいる。それに及ばずとも近しいレベルでいえばそれ以上。史上初を幾つもこなす日本馬たちがほぼ同世代という。

 

 

 思い返せば思い返すほどにとんでもない時代の最前線で僕はケイジと一緒に歩めている。それが嬉しい」

 

 

 なんでえ、急に改まって。潜水しているが耳はばっちり水面より上に出しているから聞いているのを分かっているうえで言ってんなテキのおやっさん。

 

 

 「だからこそ、最後のシーズンは昔のように全勝を持たせてやりたかったが・・・春天は勝てず、お前に一番くらいつき、勝利をもぎ取ってきたあのゴールドシップが相手。しかも得意なレース場で、これまた史上初を果たした宝塚記念で相手する。

 

 

 正直、ベストな調教をしているつもりだが不安が尽きない・・・あの葦毛の怪物。オグリキャップにタマモクロスを相手せざるを得なかった当時のホースマンはみなこんな感じだったのかな・・・とな」

 

 

 こればかりはしゃーないよ。あいつの才能は間違いなく三冠馬レベル。頑丈さで言えば間違いなく日本最強格だ。あの破天荒ぶりと今の時代に逆行するような追い込みで戦う怪物だからなあ。俺もふざけはするが全力でやるし、その上であれなんだからほんとおかしいよ。

 

 

 「世間じゃ三連敗のケイジより、宝塚記念三連覇を成し遂げるゴールドシップへの声も大きいが、だからこそ連覇を阻んでやりたい。いつもライバルたちと阻んで阻まれての戦いを最後の年でもやりつつ、お前に最高の勲章を与えてやりたい。

 

 

 史上初の宝塚連覇馬ですらケイジ相手に三連覇をひっくり返された。とな」

 

 

 いうじゃんテキのおやっさん。そうでなくちゃあねえ。アメリカンなノリだけど、こういうバチバチに熱い戦いは大好きだぜ俺。潜水を終わって息継ぎしながらゆったり呼吸整えて―

 

 

 まあ、実際になあ。あのレース場、俺もいい位置取りしているつもりなんだけどゴルシのやつが一番馴染んでいるのと、ファンの歓声大好きだからやる気マシマシになるんだろうね。三連覇した日にはウオッカのように帰るのごねだすんじゃない?

 

 

 『やるならしっかりやろうやおやっさん。万全の状態で万全のゴルシに勝つ。そうして今度こそ有馬記念同様に取れなかった宝塚をゲットして中長距離の春古馬を制覇ってな』

 

 

 そうすれば葛城厩舎にも牧場にも松ちゃんにも箔がつくし、愉快になりそうだからな。どんどん盛り上げてやるぜー?

 

 

 『ところで腹減ったし、飯食べようぜーそれにテキのおやっさんも汗だらだらジャネーノ』

 

 

 「む? 上がるか。いい時間だし、そうだな。今日もプールトレーニングの予約は多いし早めに上がって今日は終わりだな。ああ。そうだそうだ。明日には松風君も来るようだぞ」

 

 

 マジで? わーい。ダービージョッキーへ突撃インタビューしてやるぜ。さてさて、プールを上がって。あー風が気持ちい・・・いや、べっとりしてんね。ほんと、梅雨から夏になるあたりは風もムシムシして嫌だわ。

 

 

 「あ、テキ。ケイジ君。はい。用意できていますし、水も程よく冷えていますよ。ケイジ君は今日は飼料多めだよ? 汗で体力を消耗しているだろうし」

 

 

 おおー真由美ちゃんありがとう。んーんまい。今日も動いた分飯がうまいわ。食欲は落ちていないし、身体も万全。うん。いい感じいい感じ。

 

 

 「うんうん。ケイジ君ほんと食欲落ちないね。かといって運動力も鈍りはないし、ほんと凄い・・・テキ。そういえば蓮君の全中に向けての調整。どんな感じです? ケイジ君は今年で引退・・・・・・で、蓮君も今年が中学最後の年ですよね?」

 

 

 「真面目に、ここまで衰えを感じさせずに戦い続けるのはステゴを思い出すねえ。ん? ああ、蓮ね。とりあえず、周りからするとすごく面倒な相手扱いされているな。塁に出せば盗塁で場をかき回し、かといって抑えようとしたら先に出塁しているランナーが得点圏に行かされる。2アウトの状況で出すようにしないと駄目だと言われているとか」

 

 

 『ひでえ話だ。敬遠したら盗塁で暴れ、相手すればバントかバスターでかき回して確実に1点を取れる布石を打つ。これ相手バッテリーからすれば胃が痛い案件だよなあ』

 

 

 蓮君もまたやばい選手となって行くなあ。確か前に久保さんに聞いたときにはすでにスポーツ強豪校からも推薦の声が来ているんだっけ? あ、この牧草いつもよりみずみずしい。

 

 

 キタサンブラックも来て、松ちゃんに梅沢君も活躍著しい。世代の交代をひしひしと感じるなあ・・・・俺の場合は馬の分それを一層感じるよ。ヒメにも会いたいねえ。海外でどんな風に過ごしたか。

 

 

 「わ、私は野球はあまり分からないのですが、あれです? イチロー選手みたいな」

 

 

 「そういわれているねえ。ただ、僕も不安になるほどにバントでチームを回す。仕事人になり切ろうとしているからねえ。一度聞いてみたけど『お父さんや馬たちを支える厩務員のようにチームを支えて、先輩・・・じゃなくて、同級生や後輩を好きに動かせてあげたい』と言われてはなあ・・・あげくにはこうして確実に点を取れればこちらのバッテリーの気も楽になるだろうし頑張る。という始末だ」

 

 

 「来年は高校生とはいえ、本当に支える役を好むんですね・・・・・本当に、ふふ。凄いものです」

 

 

 『だな。自ら進んで縁の下のなんとやらを狙うとは。ただしその支え役がめちゃくちゃ目立っている件について』

 

 

 くっそーますます負けていられねえじゃんかよ。俺が勝って全国大会への励みにしないといけねえ。テキのおやっさんにも蓮君にも気合を入れるためにも。

 

 

 水に飼い葉を浸して・・・・・あーなるほど。馬でいうところの茶漬けというか、そんな感じ? しゃきしゃきの水気と味が広がりやすいしこれはゴルシも気に入るわけだ。うんうん。染みるぜ。

 

 

 そういえば全中のスタートってぼちぼちだっけ? もう始まるんだっけ?

 

 

 「全国大会を優勝すればボクの貯金の中でほしいものを何でも買ってあげると言ったからなあ。ますます気合を入れているだろう。そのうちの欲しいものはケイジの勝利とも言われてな・・・ふふ。たくさん食べて沢山休むんだぞケイジ。宝塚記念はゴールドシップと万全の状態でぶつかってその上で強いんだと見せつけて来よう」

 

 

 「で、ですね。頑張ろうケイジ君。私も支えるよ」

 

 

 『ありがとナス。その前に真由美ちゃんは今日はしっかり休んで明日のために化粧の用意もな? 松ちゃん来るんだし』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『おぉー・・・あー? あれ? 女声・・・マジかあ。神様。流石に夢の中でいよいよ俺もウマ娘ですかい?』

 

 

 『流石慣れているねえ。ふふふ。似合っているし、ほれぼれする美人だよケイジ』

 

 

 『そいつぁ至極恐悦。そしてありがとうございますささ、とりあえず茶でもしばきましょうや』

 

 

 夢の中でぼんやりしていたらまたもや桃源郷でとうとうウマ娘の姿になっていた俺。神様も来たので夢のなかというのを利用してとりあえず座布団とちゃぶ台、茶を用意して腰かける。

 

 

 手鏡で自分の顔や容姿を見ると・・・あれ? これ久保さんと真由美ちゃんがデザインした中の俺を擬人化? 獣娘化した際にいいかもと言っていた草案の一つじゃ・・・ま、いいか。しっかし、胸がこうもでかいと確かに重いなあ。

 

 

 『これはどうも・・・・うん。美味しい。長く馬として過ごしているのにいいイメージをしているね』

 

 

 『神様やルドルフ爺様にシンザンひい爺様、テイオーの親父にミホシンザンの爺様らと茶をしばき合っていれば忘れねえってもんよ。皆ウマ娘になっているから舌の方は人間よりだし。でー・・・今日はどうしたんで?』

 

 

 『いやいや。本当に君たちの時代、その中心に合ったケイジ達の大盛り上がりは天界でも本当に最高の娯楽だった。馬たちも、神様もかつての偉人らも大盛り上がり。そして、その周りのメンバーで大きく日本の競馬界も変わろうとする予兆がある。君というイレギュラーがまさしく波紋を生んだ』

 

 

 『神様の選別眼と、ギフトあってこそですよ。あたしゃあ今や厩務員さんや周りの助けがないと明日もしれない一頭の馬だからねえ。走るのが仕事の馬なのに手足のない人間のようなものでございやすってな』

 

 

 茶をすすり、羊羹をほおばりながら一息つく。夢の世界。神様もいる時は明確に記憶や五感も持ち込めるから人のころの娯楽もこうして味わえるのが本当にうれしい。ある意味俺の精神安定にも一役買っているぜ。

 

 

 『ありがとう。で、その新時代もいよいよ次の時代へと変わろうとしている。君もまた現役を引退する年だ。何か渡せるものやほしいものは改めてないかなとね。本当に私の想像を超えた活躍を見せて、愉快に、楽しく時代を切り開いた傑物だからこそ、私もその行為に報いたい』

 

 

 『いやあ、なら。毎度その分を他の皆に与えてくれれば。そうすれば俺に回り回って戻ってきます。最後の最後まで、既にギフトをもらっているからこそ頑丈さを持ってゴルシたちと戦える。それがすでにご褒美ってもんだから周りの人にご褒美をくれれば』

 

 

 『まったく。君は本当に侍のような子だね。まあ、それなら引退後にでも何か願い事をかなえるとかしてあげるし、君の最後の競走馬としての戦いを見させてもらう。凄いよ? マックイーン、ルドルフ、テイオー、サンデー、シンザン、ミホシンザンみんなで今日はこっちが勝つんだと大盛り上がりさ』

 

 

 しかもウマ娘の姿でな! あの美少女集団が競馬新聞とマグロ串とかカップ酒、飯を持ちながら激論かわす絵面とか面白すぎるわ。そこにしかも歴史の偉人とか武将らがあの馬に乗ってみたいなーとか言っているんだろ? 真面目にそれ横で眺めていたいんだけど。

 

 

 『あ、なら今度その様子でも夢の中で見せてもらっていい? いや、何というか絵面がもう面白そうだなあと常々思っていたんで』

 

 

 『それくらいなら何の問題もないし、ご褒美のうちにも入れないよ。ささ、そろそろ夢から覚めるね。宝塚記念。応援しているよ』

 

 

 『いっちょやってきますわ。そんじゃ、神様もお達者で』

 

 

 多分つぎは宝塚記念終わった後かなーと思いながら目を覚ませば空が白んでくる頃合い。そばでは久保さんが道具のチェックをしているし、朝かあ。ほわ・・・・・・・

 

 

 さ、今日も頑張っていきますかね。その前に、まずは充実した日々をくれた神様と、周りの皆に感謝を。足しかないから頭を下げて祈るほかないけど。

 

 

 「お、どうしたケイジ、まだ眠いのか?」

 

 

 『少しねー久保さん水ちょーだい』

 

 

 眠気覚ましの一杯を貰いつつ、さて、今日は何をするのかなあ。あ、それと松ちゃん。いつ来るんじゃろ。




 ケイジ達の時代は終わりを歩み始め、同時に新時代、新世代は人馬共に始まります。


 次回は宝塚記念。あの事件はどうなるか?


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愉快な一日 宝塚記念(GⅠ)

 いよいよ例の宝塚記念。ゴルシの破天荒伝説の一つであり、祖父のマックイーン同様トンデモミスで何百億という金額を吹っ飛ばした大事件。はてさてここではどうなるか?


 あ、出来れば今回のレース。こち亀やクレしんのBGMをイメージしながら、あるいは流しながら見てもらえれば幸いです。



 『今年の宝塚記念。注目はやはりこの破天荒な葦毛の名馬に集まっております15番ゴールドシップ。昨年はジェンティルドンナのドバイシーマクラシックの連覇。ケイジの欧州二冠連覇などなどの史上初の偉業に負けじと宝塚記念を連覇。

 

 

 そして今年は3連覇がかかっております。先の阪神大賞典の三連覇、天皇賞(春)の制覇と今年は素晴らしい滑り出しを持って今日もコンディションはばっちり。多くのライバルたちの勝利を阻んで勝利をもぎ取ったこの阪神競馬場での走りをファンも今か今かと期待しております』

 

 

 うーん。今日は俺アウェーに来た気分だ。海外遠征以外でこれを味わうのってなかったからなんか新鮮。

 

 

 さてさてやってきました宝塚記念。無事に俺も二位の人気を手にしているのでここに参加。今年こそねじ伏せてやるぞー今回は俺は17番。大外枠かあ。・・・大逃げが活きるし、追い込みでもいいから問題ないな。むしろ内ラチの取り合いを無理にしないでいい分楽だわ。

 

 

 『やってきたぞーここのレース場好きなんだよなー人の歓声が多いから面白いし、ファンサのし甲斐があるしー』

 

 

 『そりゃあゴルシお前さんここで史上初を二つしているんだぞ? お客さんもお前さんを応援しているんだよ。大したもんだぜー』

 

 

 『なら今日もここでハジケていかないとだね。調子も上がってきたぞー』

 

 

 で、ゴルシのやつは今日も気合ばっちり。うんうん。これはいいレースになりそうだ。史実ではあの事件を起こしたレースだけど、ここでは無事にスタートきって万全な状態で戦って勝利してやる。

 

 

 『今年もここで三度目の対決となりますケイジ。連対率100%の怪物はここで初めての1着を手にしてゴールドシップの三連覇を阻むか。ジェンティルドンナにフェノーメノなど同世代の怪物たちもことごとく阻まれた宝塚記念でのゴールドシップの快進撃。怪物世代たちの激闘にして最後の宝塚記念。初夏どころか真夏のような熱気が会場を包んでおります』

 

 

 「ケイジちゃん頑張れー! 天皇賞での借りを返すのよ!」

 

 

 「今年でケイジも見納めか。いや、長く見れた方だが、寂しいものですなあ」

 

 

 「そうですねえ。ふふ。あのコンビの激闘。今年もどうなるか素直に楽しみましょう」

 

 

 あ、スーザンママにあの老夫婦。いやー応援ありがとうね。こっちもやるだけやっていくぜ。

 

 

 パドックを抜けて本場馬入場。俺のオッズは・・・2番人気だけど、あれ? 2,1倍ってゴルシとあんまり倍率離れていないね。そしてファンファーレがなって、いよいよレースが始まる直前だ。

 

 

 『さて、ゴールドシップですが、この前の天皇賞(春)でのゲートを嫌がったこともあったのでしょう。目隠しをされてゲートに入っていきます』

 

 

 『? 何でゴルシ?』

 

 

 『あ・・・・』

 

 

 おあちゃー、やってしまったか。これはまず怒るよなあ。いやー大変だねえ。あ、ちなみに俺もゲート再試験は受けたけど、めんどくさいからすぐに終わらせた。試験受けた際の検査の人達に『こいつ分かってすぐに終わらせたんだろうなあ』とか言われたけどはて、なんのことやら?

 

 

 とりあえずゴルシは俺より先にゲート入り。『・・・・・・は?』って言った後に完全にブちぎれていたけど、大丈夫かねえ。

 

 

 俺もゲートに入って、一頭間に挟むが話しかけておくか。

 

 

 『落ち着けよーゴルシ。俺は万全のお前さんを倒して勝ちたいんだからな』

 

 

 『・・・ぐぬぬ・・・むかつくが、うーん・・・うーん』

 

 

 『でかい葦毛のお隣さん怒っているじゃないか。イヤダー!』

 

 

 いやいや、俺はともかくゴルシくらいの馬体は割といるって。牝馬でもいるから我慢してくれいゴルシのお隣さん。

 

 

 『ゴールドシップ落ち着いております。さあ続々と馬たちがゲート入りを果たしております』

 

 

 いやこれどう見ても火山の噴火前をどうにか抑えている感じだぞ。ゴルシのやつ何か考え込んだけどろくな気配がねえわ。

 

 

 『さあ最後にハートマンが入り込みまして、全頭ゲート入りとなります。さあゴールドシップの三連覇か、それともケイジや他馬が待ったをかけるのか』

 

 

 『やっぱむかつくでゴルシ―! 俺のやる気をそぎやがってコノヤロー!!』

 

 

 『ああっ!!』

 

 

 あ、ゴルシ起き上がった。で、一度目ではゲートは開かない。まあ、そこまではいいんだけどねー

 

 

 『あァッ!?』

 

 

 『おおっと立ち上がったゴールドシップでないでない! そしてケイジも何やら爆笑しながらとんでもない出遅れ! 9万人の大観衆からどよめきが上がります!』

 

 

 『ぬぉーっ!! あ、やっべ。もう走らないと。でもなーやる気萎えちゃったでゴルシ』

 

 

 『怖いよー!!』

 

 

 『ワハハハハハハハ!! あっははははは! やっぱ生で見るとおもしれえわ!』

 

 

 結局ここでもこのスタートは変わらなかったでござる。もう面白いし俺も出遅れちゃったし、イヤー面白い。まあ、ここから巻き返せるけどさー距離が短い分超ロングスパートで仕掛ければいいから。

 

 

 松ちゃんも不安がらずに。大丈夫だって安心しろよー。あ、でも全力のゴルシを倒してこその勝利が一番欲しいのでちょいと失礼。

 

 

 横に移動して―の。

 

 

 『やーいお前の親父阿っ寒湖ぉ^~~ウイニングライブの常連~』

 

 

 顔芸しながらの挑発をしてレースに復帰。さあ。逃げ差しの対極の技を見せてやるぜ!

 

 

 『さあ、出遅れていたケイジ一気に足を速めて最後方からグイグイ迫って馬群との距離を縮めていく。先頭はハートマン、レッドアイズ、トーセンスタントが続きますが緩やかな流れ。ケイジ早くも馬群最後尾にとりついて伸びていきます。先ほどの出遅れは何だったのかといいたいほどの速度で大外からまくっていきます』

 

 

 『なんかよくわからんが、挑発されたのは分かったでゴルシ! 待ちやがれぃケイジぃ!!』

 

 

 さあさ、まずはこの馬群を抜けて先頭にいかないとなーっとゴルシも来たか。そうだそうだ。出遅れてやる気なくしたお前さんに勝つのは味気ない。やるのなら互いに全力で悔いなくやり切ったうえでの勝利が俺は欲しい!

 

 

 ついて来いよ! そして愉快に行こうぜ!

 

 

 『ああっとゴールドシップもエンジン点火! ケイジを追いかけるようにグイグイ伸びて馬群にとりつき、さらに伸びる! 最後尾の2頭があっという間に馬群の中段へ、先頭へ! 先ほどのあれは何だったのかといいたいほどのレース運びです! かかっているとも見えますがこの2頭のスタミナは規格外! ここからの巻き返しも十分にあり得ます!』

 

 

 会場からは爆笑とどよめきと真面目にやれだの罵声が飛ぶのと、うん。主にジョッキーじゃなくて俺らに罵声が飛ぶ当たりファンも分かってんね。

 

 

 はっははは。日本の高速馬場でこの距離ならこのスパートでも問題ない。ついてこられるかなあ? そらそら。一気に先頭へ到着でござーい。

 

 

 『ケイジ先頭だ! 差してからの逃げの姿勢への変更! まさしくごぼう抜きからの独走態勢。既に第1コーナーを回って後続のレッドアイズとは2馬身差。このままでは終わらないとゴールドシップ追いあげてハートマンに続く4番手としてグイグイ上がってきます! スタート直後の遅さはもうどこにもない! 黄金の不沈艦抜錨! ケイジを標的にエンジンがうなりを上げて猛追だ!』

 

 

 『待たんかケイジ~!』

 

 

 『ぶ、部長~! 勘弁してくださーい!!』

 

 

 『嫌だね両さん! 今日こそツケを払って・・・じゃねえや! このやろう! 追いついてやるからなあ!』

 

 

 『『『何であんなところからぶっ飛んでこられるの!?』』』

 

 

 ウッソだろお前、もう3番手とかこいつすげえ変態だぜ?(誉め言葉)あ、いやそうじゃねえわ。先行もやろうと思えばできるんだよなあゴルシ。なんか周りの馬からドン引きされたりしているけどこれくらいはいつものノリだから勘弁してちょ。

 

 

 さてさて、レースもぼちぼち中盤。頑張るぞい。

 

 

 『向こう正面にまずはケイジが切り込みます。そしてそれを追いかけるゴールドシップ、レッドアイズ、ハートマン、ナディア、トーセンスタント、ホワイトダイアと続きます。コーナー技巧者のケイジですが直線も決して遅くはありません。ただいま1000メートルを通過して59秒9。これはハイペースな試合運びになりました。

 

 

 その先頭を引っ張るのは後方に3馬身つけて独走のケイジ! かかっているどころかむしろこれくらいなら苦にもならないと大外から最内につけてのかそ・・・おおっとゴールドシップその差を詰めて2番手、2馬身、1馬身と差を縮めて互いに第3コーナーへと入ります! スタートは最後尾だった2頭が先頭での叩き合い! 誰がこんな展開を予想できたでしょうか!』

 

 

 はっははは。ハイペースな試合運びはお手の物よ。それよりも、やっぱ周りの馬たちも動揺してスタミナの落ちが早いな? まあ、スローペースで進んでいた試合がこうもがらりと変われば騎手も動揺して、その動揺を馬が感じて不安がってからの消耗。ってところだろうなあ。

 

 

 さてさて? 互いにコーナリングは問題なければこの距離のスパート程度でバテるスタミナでもない。ここからが本番だよなあーゴルシ。

 

 

 『追いついたぞこの野郎! 阿寒湖ってなんじゃ! 俺の親父ってレースだったのか!? まりもなのか?』

 

 

 『終身名誉阿寒湖にして世界の方が強い怪物だな! 後気性がやべえ。マリモってよりは黒いなあ』

 

 

 『あのマメちんに似ているのか?! なんかさらにムカついてきたぞこの野郎! ウイニングライブってなんじゃー!!』

 

 

 わはは! もう俺のセーフティーリード詰めちゃうの? いや、ほんとこの切れ味はステゴだわ! いいねいいね! このまま最後までランデブーしながらでも勝ってやる!

 

 

 『既に800を切りましてさあ第3、第4コーナーの中間! 先頭はケイジ、半馬身、いや首差で詰めているぞゴールドシップ。4馬身開いてハートマン、続いてレッドアイズ、トーセンスタント、ホワイトダイア、アドマイヤスイート、600を切り続いてナディア、ジャッカルマン、メニマニ、オオハラブチョーが続いて第4コーナーを抜けて最後の直線スタンド前!

 

 

 大歓声が上がります! こんな滅茶苦茶な試合私は見たことがない! 後続伸びが苦しいなか先頭ケイジとゴールドシップ伸びが落ちない! これがステイヤーたちの本領! 距離の短い分スパートを常に仕掛けての高速レースで引きずり回して他馬の末脚を潰しながら爆走だ!』

 

 

 『オイラを挑発した罪だ! このっ! この!』

 

 

 『なんなんだぁ今のは?』

 

 

 ゴルシの野郎俺にタックルしながら最後の直線勝負に入っていきやがった! いや、俺の馬体とパワーでも少し揺らぎそうになるあたりやっぱやべえな!? 流石のパワーだしこれを衰えさせないスタミナもすげーい。

 

 

 ただ、この程度で俺をジェンティルちゃんのように吹き飛ばすことはできぬぅ! 後ごめんな松ちゃん。俺今最内にいるせいで鞭が使いづらいだろうし。

 

 

 少しどいてもらうために今度は俺から・・・!

 

 

 『ああっとゴールドシップとケイジ激しいぶつかり合い! 戦意が燃えております! 今年もまたこの世代! この2頭のデッドヒートとなりました宝塚記念! そうはさせまいと後方も末脚を使いますが伸びない! 第1コーナーからのハイペースな試合運びの変化の消耗が大きすぎる様子!』

 

 

 『これくらいで俺を倒すことはできぬぅ!! ということでどいてもらうぞゴルシ!』

 

 

 『あ、もう気が済んだからいいでゴルシよ。ばっははーい』

 

 

 『おろっ? あっちょっとペースずれ・・って加速はヤァ!』

 

 

 『ああっとケイジ失速! ゴールドシップややケイジと間を開けてのさらに加速! 坂をものともしない二重、いや三重底のスタミナを持っての更なる末脚の爆発! ケイジも負けじと猛追! ここにきて順位が入れ替わってのラスト100!』

 

 

 ぬぁー! まさかのフェイントだとぉ!? くっそー! 変に横にずれすぎちまったせいで加速が鈍っちゃった! こなくそ! まだまだ追いつけるんだ! 待ていゴルシ! 今度こそ宝塚記念取らせろー!!

 

 

 最後の最後に残していた末脚を使うが、それでもゴルシの方が早い! またか、また届かないのか! いや、でも全力で戦えたのは良かったし・・・・悔しいが、楽しかったししょうがねえかあ。

 

 

 『首差のリードを手放さないままゴールドシップゴールイン! やりましたゴールドシップ! 史上初の宝塚記念連覇。そして今三連覇を達成! 前代未聞! まさしく偉業をさらに偉大なものへと塗り替えました! しかもそれはあの大出遅れをしてからのこの勝利!

 

 

 2着はケイジ、3着はハートマン。ケイジをまたしても下し、春古馬二冠を見事獲得。黄金の不沈艦、まさしく日本が誇る最強の一角です! タイムは2分11秒8! これまた好レコードを手にしての勝利。文句なしの快勝です!』

 

 

 くはー駄目だったかあ。あー強かったなあ。どうにかやれると思ったが、やっぱ本気のゴルシは強い。今年の春古馬は取れなんだかあ。

 

 

 しょうがねえ。連敗続きで悔しいが負けは負け。ゴルシを労わねえとなあ。ファンの大歓声に大喜びしちゃってマー

 

 

 『おめでとうゴルシ。史上初の三連覇。日本競馬史に永遠に刻まれる大偉業だぞ』

 

 

 『あ、ケイジ。ありがとう。いんやー三連覇だろ? 伊馬波さん喜ぶかなあ?』

 

 

 『あそこで涙流して喜んでいるぞ? あと茄子のおっちゃんも』

 

 

 『あ、茄子のおっちゃんはいいから』

 

 

 茄子のおっちゃんかわいそう。伊馬波さんは今日は思う存分労ってあげればいいのかしらね。

 

 

 歴史的快挙をまたなしえたかあ。俺のローテは国内優先だから凱旋門賞も今年はいかないし、しょうがねえ、またしばらく休憩とトレーニングで鍛え直して最後は勝ちまくってやる!

 

 

 『とりあえず、本気のお前さんと戦えてよかったぜ。また今度思い切りやろうや。それじゃな』

 

 

 『またねケイジー今度は牧場かトレーニングの場所で―』

 

 

 ポンポンとハグをしてから俺は一足先に退散。うーん・・・4連敗かあ。流石に、少し堪えるねえ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~2015年宝塚について語るスレ~

 

 

 801:名無しの競馬おじさん

 

 

 あれ最早宝塚記念じゃなくて吉本記念だろwwww! 馬券捨てないでよかったよかった。ほんと終始笑わせてもらったなあ。やっぱケイジとゴルシは馬券に絡めておくほうがいい 

 

 

 802:名無しの競馬おじさん

 

 

 立ち上がって超出遅れからの爆笑での出遅れが二頭。で、うち一頭が挑発してからの逃げ差しならぬ差して逃げるをしていたら超弩級の追い上げからの先行しての最後はタックル勝負。マリカーかエンターテイメントを見ている気分だったぞこっちは。

 

 

 ケイジ、ゴルシで流していたほうに多めに賭けていたんだがなあ。もう一つの馬券は当たったから一応100円儲けたけど。

 

 

 803:名無しの競馬おじさん

 

 

 いや、今日のレースは儲け云々差し引いても生で見れるのが幸せだわ。あんな罵声とどよめきと笑いと歓声の入り混じる滅茶苦茶なレースなんてあの二頭くらいだぞ。

 

 

 804:名無しの競馬おじさん

 

 

 しかし、下手にあの二頭あのまま沈んでいたらどれくらいの金額の馬券が吹っ飛んでいたんだ? 結果を見ればカチカチもいい所の結果と歴史的偉業を達成したわけだけど

 

 

 

 805:名無しの競馬おじさん

 

 

 ああ、それ運営からの公式の報告とアナウンサー、解説の方からのTw〇tt〇rでは確かあのまま2頭沈んでいたら300億吹き飛ばしかねかったんだと。しかし、宝塚記念三連覇、これゴルシの功績ルドルフに並ぶか超える偉業を達成したんじゃないか?

 

 

 806:名無しの競馬おじさん

 

 

 300億wwwwマックイーンですら驚く金額じゃん! ああ、今回の三連覇で阪神競馬場にゴルシの銅像を建てようとする話が出ているみたいよ? 黄金の不沈艦か最強の癖馬とかの名前のアンケートも実施しようかと迷っているとか。

 

 

 807:名無しの競馬おじさん

 

 

 最強の癖馬www ぴったりだわ。癖馬ながらあのケイジに食らいつける怪物だもんな。春古馬二冠、宝塚記念三連覇。オペラオー、ルドルフにだって負けていないよこの強さ。流石名優の孫にして阿寒湖の子。あのステマ兄弟の一頭だ。

 

 

 808:名無しの競馬おじさん

 

 

 実際、今の所ケイジに勝つにはとんでもない末脚を持ってぶっちぎるか、スタミナを持ってのハイペースの試合についていって押し切るかのどちらか。それを世界レベルで持っていないと無理だからなあ・・・

 

 

 海外からの反応もやべえぞ。なんでケイジが連敗を国内でしているの? って

 

 

 809:名無しの競馬おじさん

 

 

 そりゃゴルシたちが相手だし

 

 

 810:名無しの競馬おじさん

 

 

 ゴルシだからね。しょうがないね

 

 

 811:名無しの競馬おじさん

 

 

 その通りだけどなあ。ほんと同世代とオルフェ以外には負け無し、海外でもジャスタウェイ以外には負け無しだからね。確か、ジェベルハッタが賞金上がって、レースの格も今年から大分上がっているんだよな。ケイジとジャスタウェイが走ったレースということもあって。

 

 

 812:名無しの競馬おじさん

 

 

 ドバイミーティングの前のステップレースにもなれば賞金も高くなって、さらには日本どころか世界レベルの怪物たちが勝利したレースということでゲン担ぎで人気も増えたとか。

 

 

 ・・・あ、やべえやべえ。これ宝塚記念のレースの話だよ。今回は吉本記念だけど。

 

 

 813:名無しの競馬おじさん

 

 

 そうだったそうだった。やっぱりだけど、この2頭はどこであれ好きにさせてはいけないってのがわかるなあ。前であれ後ろであれ本と馬体に似合わないほどの速度を出して好き放題するから抑え込まないとゴルシ、ケイジ劇場に巻き込まれておしまいだわ。

 

 

 814:名無しの競馬おじさん

 

 

 でも追い込みで常に後ろのゴルシに付き合えば後半巻き返しが効くかわからんし、ケイジの場合は前も後ろも極端な場所で好き放題しちゃうから脚質が合わない限りついていくのが本当に無理。

 

 

 815:名無しの競馬おじさん

 

 

 ルドルフの勝負強さというか、賢さをふざけたベクトルで持ちつつ変幻自在ぶりを伸ばしたのがケイジだよなあ。馬体の問題もあって馬群に飲まれる戦法を嫌がるけど逆にそれが強みになっているし。にしても面白かったのは最後の直線のタックル勝負よ。

 

 

 816:名無しの競馬おじさん

 

 

 2年前のジェンティルドンナとゴルシの対決を思い出したわ。むしろゴルシが小柄に見えるケイジの馬体がおかしいが。最後ひょいとゴルシが横にそれた時ケイジの耳がへにょっていたの本人も予想外だったんだろうなあって。

 

 

 817:名無しの競馬おじさん

 

 

 そこからの競り合いもギリギリまで粘り続けての2着は維持。怪物同士の戦い。怪獣同士のつぶし合いだよなああれは。

 

 

 

 818:名無しの競馬おじさん

 

 

 シンザンとルドルフを足して割らずに現代のスピード競馬の速度まで手にしているのがケイジみたいなものだし・・・あ、頑丈さはケイジの素質として。しかし、あのケイジが4連敗とは・・・・いや、予想外だわ。

 

 

 819:名無しの競馬おじさん

 

 

 世間では衰えたという声もあるが、ゴルシ以外には4馬身つけての勝利をしているからなあ。ほんと相手が悪いというか、喰らいつけるやつらがやばすぎるとしか言えないんだわ。1馬身つけての勝利の時点で既に物が違うと見せつけるようなものだし。

 

 

 820:名無しの競馬おじさん

 

 

 海外からも応援の声と心配の声が多いらしいね。ケイジは大丈夫かって。この後のレース予定はどうなっているんだっけ?

 

 

 821:名無しの競馬おじさん

 

 

 いつも通り夏は休養。今年は海外遠征も考えていないから天皇賞(秋)から始動していくようだな。傾奇者最後のシーズン。日本のファンにできるだけ生で多く見てほしいという意向からだそうな。

 

 

 822:名無しの競馬おじさん

 

 

 はえーてっきり欧州二冠3連覇を狙うかと思ったら。ケイジの体調への気配りもあるのかね。でも年間8戦とかもあったし、割とスパルタな部分あるからあり得そうだったのに。

 

 

 823:名無しの競馬おじさん

 

 

 いや、葛城厩舎と前田牧場は基本馬の調子を見て予定を組むぞ? ただケイジもナギコもふざけたタフネスだから問題ないというのと、それを納得させるほどの実績を見せていくから夢を見て挑んじゃっているというか・・・葛城厩舎のほかの馬たちは基本休みもローテもケイジより優しいこと多いから。

 

 

 824:名無しの競馬おじさん

 

 

 あまりの強さに調教師の目をくらませる名馬ケイジにナギコか。そしてそのナギコはもう引退、ケイジは競馬の上半期ではもう見れずに秋までお預け・・・寂しくなるなあ。

 

 

 825:名無しの競馬おじさん

 

 

 むしろ長く戦ってくれているほうだし寂しいが感謝はばっちりとな。そして、次のケイジのレースまではしっかり貯金をして、馬券とご飯の分のお金を用意しておこう。まだまだあのコンビには夢がある。そして、最後まであの傾奇者の戦いを応援していこうじゃないか。

 

 

 826:名無しの競馬おじさん

 

 

 持ちのロンよ! ああーそれに、楽しみなんだよなあ。ナギコにキジノヒメミコとの子供。ベスト×ベストの組み合わせだけど、ほんと楽しみ。産駒も早く見たいがケイジの戦いも見ていたい。ぜいたくな悩みだけど。




 もはや宝塚記念どころか吉本記念。アナウンサーさんも思わず二頭を贔屓しちゃうほどにはめっちゃくちゃな試合をしてくれやがりましたとさ。


 このレースにサンちゃんいたので一曲歌ってくれて更にお祭り騒ぎに。


 そしてケイジのラストシーズンも早くも折り返しに。


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ウマ娘エピソード 15 ちょいヤンデレ? と相棒

 ニコ動でステゴの子どもたちがプロレスラーになって戦う動画があるんですが面白いです。ほんと皆さんのアイデアってすごいなあと思う今日この頃。そしてこの興行試合をもっと見ていたい。皆様もよければどうか応援してくれると幸いです。


 後、感想でケイジたちの世代を驚異の世代と言ってくれた方がいるのですがそれを採用したく。確かに三冠馬二頭にそれに喰らいつける怪物多数ってすごいというよりやばいが先に来そうですしね。いいセンスですよぉ!



 この世界のウマ娘でのレースはちょいと気持ち多めになっております。というか、ルドルフは学生の時点で既に銅像が立つレベルの影響を与えていますしルドルフ記念とかありそうですよねって。だからこの世界ではヒサトモ記念とかクリフジ記念もあります。


 後は多分、ウマ娘の身体能力って回復力とかはすごいんじゃないかな。ということでどうか一つ。人の雑食ぶりとあの量を吸収できるわけですし、馬と違ってぐっすり眠れる分回復力はもりもりなのかな・・・と。


 具体的に言えば世界各国シリウス&スピカ(ゴルシ、ジャスタ)と海外の名ウマ娘たちのレース、エキシビジョンを荒らし回ったりしつつハジケまくっております。海外のウマ娘たちはケイジの名前を聞いてどんな顔するのやら。シングレのトニビアンカやムーンライトルナシーとか。


 「バ、罵漣鯛院・・・それは古来にノンケを救うために坊主が祝福の鐘を鳴らしまくって始まる益荒男たちの料理対決!!」

 

 

 「何か色々間違っている気はするけど、ケイジ、ごー・・・あーシップ。黄金屋のメニュー、バレンタイン用で何か用意する?」

 

 

 「それじゃあゴルシちゃん特製のチョコパスタとチョコバーガーを」

 

 

 「前それでみんな吹き出して、まずいまずい言いながら完食したじゃねえか。アタシは飴細工とチョコのコラボかね。チョコフィギュアとか、チョコで作った日本画を描いた屏風とかを数点。後は飴細工を現場で披露しつつ売るとか。飴をガラスみたいに膨らませて中にチョコを入れたものとかなー♬」

 

 

 「私は道具シリーズだな。ジオラマとかで使えそうなの。ジャスタに着色とか頼むぞ?」

 

 

 「はいはい。そのおまけでスパロボとか怪獣のソフビも置いてくからね?」

 

 

 今日も愉快な声が聞こえる。姦しいでは済まないハジケぶり。台風というのがふさわしい奔放さと元気。だけどそれが私の心にハリと癒しをくれる。

 

 

 「あーなら、うちからも持ってくるよ。あ、あと大量生産用の飴の金型あるけどジャスタ使う?」

 

 

 「それはいいわね。それだったら表面を固めて、中に色々入れた飴のお菓子箱。とかキラキラカラフルなチョコボールとか作りたかったの、こう、金平糖のチョコバージョンみたいな」

 

 

 近くにいてほしいけど何処までも駆け抜けていて欲しいもどかしさをくれる愛しい人。そしてそのライバルであり素敵な先輩たち。その人達と出会えるのが嬉しくてたまらない。

 

 

 「おお、いいねいいね。んなら、ちょうどいいからホテルで使用している飴細工の材料とかも諸々用意して、今年のバレンタインは飴とチョコの宝石細工のようなものに・・・」

 

 

 「ケイジお姉さま、ゴルシ先輩、ジャスタ先輩。お話し中失礼します。少々宜しいですか?」

 

 

 「んお? おーヒメちゃーん。今日も相変わらずいい体してんね!」

 

 

 「こらシップ。美人だしわかるけど・・・ごめんなさいねヒメちゃん。どうしたの?」

 

 

 まずはゴルシ先輩とジャスタ先輩がにっこりとほほ笑みながらぽっけから出してきた酢昆布を受け取りながら微笑み返す。海外で唯一ケイジお姉さまを下した1600~2000メートル内ならスズカ先輩とも太刀打ちできる怪物にケイジお姉さまを何度も退けつつ宝塚記念三連覇を成し遂げた黄金の不沈艦。

 

 

 この世代の怪物たちであり、そして好ましい先輩たちのスキンシップを受けていればケイジお姉さまも微笑んで頭を撫でてくれる。

 

 

 「おっとヒメ。どった? 何かジェンティルちゃんからの呼び出し?」

 

 

 「ん♡ いえいえ、スピカ、シリウスへの大量のチョコ、お菓子の差し入れがありまして。しかも内容が黄金屋の今年のバレンタインへの応援として使ってほしいとのことや、備品諸々の予備が届いています。それの割り振りなどや、そちらの予算案を見直すために一度来てはどうでしょうか? と思いまして」

 

 

 女性らしく細くしなやか。だけど大きな掌で少し乱暴に撫でられるのが心地よく、幸せで心が満たされる。もはや世界のウマ娘、関係者は知らないものがいない怪物。その破天荒な振る舞いと隠し持つ礼儀作法への理解。日本では皇帝・シンボリルドルフと双璧を成す傾奇者であり、同じ前田一族としていられるのが誇りだ。

 

 

 そんな怪物たち三名の人気屋台黄金屋。クリスマスにはアイスケーキにチキン料理からお寿司、正月には初詣でで店を開き、節分には木彫りの鬼の面まで作って豆と恵方巻を売る。季節に合わせた愉快でおいしい料理の数々のファンは多く、その差し入れが届いたことを伝えると三名とも表情が一層明るくなる。

 

 

 三者三様裕福な家庭であるし本人たちのレースでの賞金で既に遊んで今後暮らせるほどに稼いでいるのだが、それを無駄に扱うことなく予算を決めてやりくりする姿は好感が持てる。だからこそこうした「差し入れ」が多く来るのだ。シリウス、スピカメンバーの誕生日には寮の入り口が埋まるほどに大量のプレゼントが世界中から、しかも国の要人や富豪からも届くと言えばその人気もうかがい知れる。

 

 

 「おっ!? そいつはいいね! 等身大チョコフィギュアでスーパーヒーロー戦隊でも作ってクリークの保育所にでもぶち込もうかね」

 

 

 「いやいや、そこは世界の蝦蛄とゴリラシリーズにして博物館に」

 

 

 「んー可能なら・・・葦毛のウマ娘ちゃんたちに、もしくはヂャンプのキャラクターのチョコとかできないかな。色々バリエーションもできそうだし」

 

 

 「ふふふ。今シリウスとスピカの方で整理して、シリウスのミーティングルームに集めていますし、既に爺やたちに道具も手配させています。ジェンティル先輩たちが困惑するほどに来ているそうですし、チョコにうずもれないでくださいね?」

 

 

 「もっちろんよ! よっしゃ! チョコでチョコフォンデュにしてチョコパックしてやるぜー! わっほほーい♬」

 

 

 「早速チョコにうずもれるどころか塗りたくろうとしているんじゃないわよ! それで来るのなんてカブトムシでもなく蟻よ蟻! そこはせめて私を誘うために蜂蜜で・・・あ、じゃなかった。ありがとうヒメちゃん。私達も仕分けの手伝い行ってくるね?」

 

 

 暴走し始めたゴルシ先輩の後を追いつつ何やら桃色の妄想をしているジャスタ先輩を手を振って見送る。今頃スピカではスズカ先輩が「ウソでしょ・・・」と言ってたり、スぺちゃんがチョコの山に食欲がわいていたり、マックイーンちゃんも思わず涎が出そうになっていたりテイオーちゃんは相変わらずだなーとつぶやき、ウオッカちゃんとダスカちゃんは漫才繰り広げつつ先輩たちに負けないウマ娘になろうと内心誓っているのだろうか。

 

 

 シリウスでは・・・ジェンティル先輩が指揮を執りつつ部屋中に集まった差し入れの整理に四苦八苦でしたね。私も早くいかないと。

 

 

 「なはは。相変わらずだねえあの二人は。よっし、ヒメ。アタシらも行こうか。いやーどんなチョコを作れるか今からワクワクするわ♪」

 

 

 「むぐっふ! う・・・も、もおケイジお姉さま。こうも抱き寄せられてはケイジお姉さまが歩きづらいでしょう?」

 

 

 「いいのいいの。焦らずまったりいこうや。それに、昔はよく添い寝したりしていたろ? またしばらく欧州で暴れる前に少しこうしておくのよ。なはは」

 

 

 いきなりそばに抱き寄せられ、そのスタイル故に胸が顔のそばに当たりながらもかぐわしい香木とケイジお姉さまの香り、柔らかさを味わいつつ、わざと歩幅を狭くしてしまう。幸せな時間なのだし、ジェンティル先輩たちなら既にあらかた終わるくらいには整理も済ませているはず。

 

 

 実際「あの三人には今年の面白メニューを作るほうに頭と体の労力を割いたほうがいいですからね。ゆったりでいいから呼んできて」というあたり本当に優しい。・・・・・・ライバルでもあるんですよねえ本当。

 

 

 「そういえば、確かライスとも一緒に行くんだよなー今回は保護者というか、トレーナーサイドは誰が一緒に行くの?」

 

 

 「むふぅ・・・・♡ ん!? あ、ああそれでしたら今回は利褌おじさまが。欧州のステイヤー信仰とそのレースを学ぶためなのと、確か今年はかなり凄い子が来るとか何とか」

 

 

 「ほうほう。そいつはまた。えーと・・・あーカイフタラにヴィンテージクロップ、タージオン・・・うんうん。怪物たちが多くいるね。そして・・・わはは! 日本の黒騎士ライスシャワーと一手願いたいだとよ! 日本が誇るマイルとステイヤーの撫子コンビとすげえ盛り上がりようだ! 頑張って来いよヒメ。勝って来たら何かアタシでできることならやってやるからな」

 

 

 片手でスマホをいじり、出てくるビッグネームたちとの対決。私もしれっと入れられているのだが、これは欧州マイル戦線からも飛び入りでとんでもないのが来そうで少し不安ですね。レース相手のデータは覚えて対策もしたのですが。

 

 

 ですがまあ、今はそれも些事。ケイジお姉さまからのご褒美があるとなればマイルだろうが3000メートル以上だろうと走りぬく所存! これは明日の用事も済ませてからの練習にはさらに熱を入れないとです!

 

 

 ああ、でも今はこの胸の感触とケイジお姉さまのあったかさを・・・あー・・・チョコよりも先に私が蕩けちゃいそうですよぉ・・・

 

 

 この後、ジェンティル先輩に少し羨ましそうな目で見られつつも整理は無事終了。チョコは・・・うん。もはやチョコの彫刻博覧会となってしまいましたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中央トレセン学園のある町。そこにある市民公民館。ここの広間の使用率は高い。学園以外で内緒でダンスの練習をするウマ娘、ちょっとしたカードゲーム大会にTRPG会場として、あるいは室内のフリーマーケットとしてなどなど多くの用途で使われる。

 

 

 そして、今日もまた公民館の室内広間に集まる人々。だが、そこに集まる面々はみな顔を隠し、仮面や覆面、フードを深くかぶるなどして素顔は分からないようにしている。

 

 

 「皆様ようこそお集まりくださいました。今日もまたこうして素晴らしい集まりを開けることにまずは感謝を」

 

 

 そういって現れる司会らしき人物。声からして女性と分かるのだが、それを聞けば一同に頭を下げ、そして頭をあげる。

 

 

 「今日もまた多くの仲間に支えられ素晴らしいものを手にすることが出来ました。そしてそれを皆さまがどうか手に取れることを願います」

 

 

 周辺には写真や半券、多くの道具が並べられ、どれもがケイジやナギコのもの。普段は見れない学生としての一面を映したものもあれば仕事やレースでの一幕を映したものまで。

 

 

 これは全て司会ともう一人が用意したものであり、司会の、キジノヒメミコの声を皮切りに会場の熱が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 事の始まりはキジノヒメミコの病的というか限界オタクというべきか、兎角ケイジとは結婚したいと思うほどに愛している余り、ケイジのファンかつ同胞であるナギコのファン。つまりは同胞の良さも知ってもらいたいということでケイジのファンや自分とケイジを推してくれているファンへの語らい、トークショーで披露された学園内での話がきっかけだった。

 

 

 ヒメもケイジと同じ前田家であり親戚筋。ファンが普段知りえないケイジやナギコの一面や、写真などを幾つも持っておりそれを話したり見せていた。

 

 

 そこにとある交番の巡査長がこれで商売、シリウスやスピカの支援に向けてみてはどうかと悪魔のささやきをし、ケイジ達の助けになると聞けばヒメは即座に行動を開始。ケイジやナギコの写真で仕事の合間に出てしまった没写真、何気ない一幕を取ったものを焼き増し、流出厳禁などの制約を課すことを条件にこのオークションに集まるファンを募集。

 

 

 あまりに人数が多すぎるために会場の定員までのメンバーを毎度くじ引きやダイスなどで決めてオークションに参加できる幸運をつかめた同志たちとのオークションが秘密裏に開催されるようになったのだった。ここにいる誰もがケイジやナギコのファンであり、憧れ。あるいは限界オタク。固い絆で結ばれたウマ娘オタクたちのある意味サバトともいえる祭りが何度目かの開催となった。

 

 

 「続きまして・・・欧州二冠連覇の際のレースチケットの半券セット。ケイジお姉さまのサイン入り20枚。最終落札価格の順番から渡していきます。まずは500円から」

 

 

 出される商品はケイジやナギコのお古のシューズに小物で捨てようとしていたもの、ヒメやライス、協力者たちによって入手できた出してもいい写真などが主になるが、何せ史上初を幾つもこなした怪物たちのもの。ファンの目線を差し引いても十分に持っておきたい価値のあるものばかり。

 

 

 今出される半券もリボーや欧州の怪物と言われる、歴史に名を残すウマ娘たちですらできなかった欧州二冠連覇の際のKGⅥ&QESと凱旋門賞のセットであり、しかもケイジの直筆サイン入り。これだけで一体幾らになるのか。

 

 

 「7000!」「8000!!」「10000!」

 

 

 「そこまで! では、10000の方から20名。19番、28番、32番、56番・・・・最後に2番の方までお渡しします。日本のウマ娘のレベルが世界最高峰だと決定づけた偉大なレースの半券。どうか大事に」

 

 

 まさしくファン、そうでなくても垂涎物をしっかりとプラスチックケース、板に固定されて渡されていく半券。手に取る誰もが表情は分からないがその動きや声で歓喜に満ち溢れているのがわかる。

 

 

 この興行で得た収入はヒメやライス、協力者たちが2~5%ほど貰い、残りはシリウスやスピカへ様々な形で還元され、あるいは孤児院や震災復興などの募金、ウマ娘たちの支援事業へ渡されることとなる。

 

 

 ケイジ達へ届いた大量のチョコも実はこの興行での収入であり、イベントへの食材支援など、興行収入を還元されるにしてもどのようにして還元してほしいかのアンケートなどを取ることもしばしば。

 

 

 なのでケイジ達の開く屋台のメニューが相場より安くなり、オークションに参加できなくてもその助けで安くケイジ達の絶品料理を味わったり、子供たちが少ないお小遣いでも満足できて心が温まり、自分たちもありがたいと得だらけ。

 

 

 無敗の四冠&御前試合三冠&欧州二冠連覇の怪物と無敗のアメリカトリプルクラウン制覇を成し、GⅠ8連勝。17戦無敗の金の姫君の超超限定グッズを手にしてそのお金さえもまたケイジ達を支える。アイドルオタクとしてこれほどの幸せはない。

 

 

 「ナギコお姉さまがドバイWCを制覇した際の練習用シューズ(サイン入り)は3万で落札。では、続きまして写真のコーナーに映ります。まずはフジキセキさんの出した鳩とケイジお姉さまの出した鳩の中にたたずんでいるケイジお姉さま」

 

 

 「ヴィジュアル系バンドのワンシーンだ・・・ふつくしい」「ああ・・・ケイジ様素敵♡」「おっひょぉおー・・・これは、これは感涙ものですぅ~^」

 

 

 感嘆の声の中には女性、ウマ娘も多数いる。ケイジは普段こそそのふざけ具合がひどいものだがゴールドシップやゴールドシチーに負けないほどの美貌に210センチという背丈。そしてその背丈に釣り合うほどのパワーを持てば肢体なぞボンッキュッボンという我儘セット。レースも強く人情家となれば女性ファンも多いというもの。

 

 

 以前落札した耳当てを外したゴルシとふざけた空気を抑えたケイジの茶道の写真などあまりに値上がりしすぎてヒメも思わず真顔になりかけたほど。

 

 

 今回の写真は7500円であるウマ娘が落札。後日ケイジがレース、エキシビジョンレース後に行うウイニングライブでのサプライズでこれと同じ構図をやってしまい意図せず尊死しちゃったのはご愛敬である。

 

 

 ちなみに、このオークションでは写真の焼き増しに横流し、情報の漏洩は厳禁とされ、破った際は即このオークションの永久閉鎖。罰則まである厳重ぶり。更に言えばこのオークションを取り仕切るのは誰も言いはしないがキジノヒメミコ。警察や自衛隊などに強い発言力を持つ前田家の一族の放つ発言であり、自他ともに認めるケイジの限界オタクである彼女の発言に集った同志たちはみな心に強く誓う。

 

 

 素敵なこの秘密の会合が終わるのは嫌だし、ケイジへの支援もこっそりできなくなるともなれば破るのはデメリットしかない。更にファンの視点で言えば文字通りそこらの専門ショップでも手に入らず、自分だけの宝物になるのだ。魂にかけて秘密をばらす輩はいない。

 

 

 ケイジの重賞勝利の際に使用した蹄鉄、練習風景のワンシーンを写した写真。レース、ライブでは見れない読書中に眠りこけてしまった眼鏡姿のナギコの写真などなど、いくつもの物品をさばき、いよいよ最後に差し掛かる。

 

 

 

 「さて、皆様本日最後に出す商品の品々。これはゴールドシチーさんやゴールドシップさん、タイキシャトルさんなどと一緒にケイジお姉さまが参加したファッション雑誌の特集。

 

 

 ・・・・水着に下着、あらゆる方向で日本屈指の美しさを誇るウマ娘たちの特集であり、歴史的な売り上げになりました」

 

 

 記憶に新しいあのファッション雑誌。普段はやらない下着や水着の特集まで盛り込んだそれはいつも通りケイジとゴルシがどうせなら色々やろーぜということで増えてしまったコーナーだが、その分普段買わない人も買い、男性の購入者も多数。色々と衝撃を与えたその雑誌の話題を出されれば察しのいいものがざわめく。

 

 

 「その中でケイジお姉さまは下着や水着姿でいろんなものを試し、愉快にしていたせいもありNG、没も多くあったのです。その写真も本人は雑誌に使えればいいと言っていて入手の許可も得られました。これを見た時、ええ、私は天女は本当にいたと思い神に感謝しました」

 

 

 どうか皆様もこのお姿を心行くまで見てほしいです。そう締めくくってからプロジェクターに映される写真。A4サイズまで引き延ばされたそれは黒に白のラインが走るビキニ姿に髪をポニーテールではなく下ろして優雅にほほ笑むケイジの姿。B 115 W72 H 120 という破格のスリーサイズを有するアイドルでありアスリート。ムチムチでありつつくびれの鋭い、肉感的なそれは美しい芸術品でもある。

 

 

 それ以外にも様々な下着をつけたうえでヨガのポーズをしたり、スポーツ用のシャツで無邪気にマジックをしていたりする姿。色気に年相応の可愛さ。ケイジというウマ娘の魅力がこれでもかと詰まった写真の数々に会場の歓声はもはや怒号。ボルテージも最高潮だ。

 

 

 

 「最高だ! 最高だぜ司会さん!! これは・・・・濡れるッッ!!」

 

 

 「おお無礼なケツだ♀ そして脚の筋肉のバランスに、背中のラインが美しい・・・アスリートとしても最高だぁ」

 

 

 「ほんと凄いスタイル・・・胸も形がきれいだし、どんな鍛え方をすれば・・・はぁ・・・奇跡のウマ娘だ」

 

 

 「ふふふふ・・・この素敵なケイジお姉さまの素晴らしい写真の数々。皆様の誰かが手にできますように。では、この10枚のうち1番から始めます。ます1000円から!」

 

 

 ここからのオークションはまさしくお祭り騒ぎであり、5万まで写真の値が吊り上がるなどの盛り上がりを見せてオークションは終了。

 

 

 次回は何が来るのかとだれもが期待を寄せ、そして次回の抽選に当たっているかドキドキしながら帰路についた。

 

 

 「ふふふ。今日も完売かつ大儲け。屋台車の予備や、シリウスやスピカのための法被や鉢巻の発注。後は震災地へのボランティアの炊き出しの資金にしてもいいかもですね。それか会員の皆様に次回のレースのチケットの配布。うーん。何がいいでしょうか」

 

 

 全員が帰ったことを確認しつつ、キジノヒメミコ。通称ヒメは売り上げを見つつこれを次回はどういう形でシリウスやスピカに還元しようかと思索する。

 

 

 今回のアンケートでは具体的な使い道のリクエストがなかったゆえにヒメが考えるほかない。若しくはこのオークションを知っているジェンティルドンナに真由美ぐらいか。

 

 

 「どちらにせよこれでケイジお姉さまたちが楽になってくれますし、本当にいいことづくめ。私もここで少しづつ貯金を貯めていますし。いつかケイジお姉さまに・・・ふふふふ♡」

 

 

 その考える時間も楽しく、ケイジ達の助けになるのが嬉しいとヒメは笑みを浮かべる。ケイジにべたぼれもべたぼれ。ファンは大事にするし友人も素敵。だけどケイジのそばに最後にいて伴侶としているのは自分なんだと妄想しながら赤い瞳を輝かせ、しっぽが嬉しそうに揺れる。

 

 

 とりあえずさりげない会話からひな祭りやホワイトデーの日に何をするか聞きだしてから「差し入れ」の内容を決めようかと考え、服を着替え、公民館の受付に使用終了の旨を伝え、欧州マイルの覇者は帰っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キャーキャーと黄色い声、しかも女性の声が響くのなんの。今日はテレビがうちのチームと、もう一つのチームの合同練習の際に取材を申し込んできた。のと周囲の女性はその取材対象への追っかけと言えるかね。

 

 

 中央トレーナーはその収入もあって花形の仕事だし結婚したいと思う男性女性も多い。けど、今取材を受けようとしている二人はそれ以外にもイケメン、美人だからその人気も高い。

 

 

 「今日はお時間をありがとうございます。本日は『怪物ケイジと栄光を支えたもの達』という特集を組んでいましてどうぞよろしくお願いします。名瀬文乃トレーナー、そして松風守とれー・・・ぶふっ!」

 

 

 「よろしくお願いします。松風君。顔、君いつの間に正月を過ごしていたの?」

 

 

 「え? 確かに顔はあら・・・ケイジのやつ! 墨とマーカーインキを途中ですり替えてやっていたな!? あ、えっと確かアルコールティッシュで・・・・ふぃー・・・・い、いやーお待たせしました」

 

 

 スーパークリークやユウジョウ、多くのウマ娘たちに栄冠を取らせた名伯楽。腕は確かで小柄な女性。しかしその美貌は王子様と思えるような中性的なそれで仕草もそりゃあ女をころりと落としちゃう。名瀬文乃トレーナー

 

 

 そして・・・くくくっ。羽子板に付き合わせた際の顔の落書きをこっそり油性ペンで描いてやったから効果は抜群。相変わらずそこも親しみやすいってことで人気も高いからアタシの相棒は頼もしいねえ。

 

 

 

 「し、失礼しました。ケイジ選手の悪戯ですかね?」

 

 

 「ええ。ウォーミングアップで羽子板やろうと言われてボロボロに」

 

 

 「見ていて愉快なものでしたよ。僕も危うく巻き込まれかけましたがユウジョウが混ざって・・・ユウジョウー!!?」

 

 

 あ、名瀬ちゃん驚いている。まあねえ。あの後ユウジョウも羽子板で挑んできたのですぐさま顔中墨まみれにして、代りにひょっとこのお面とか般若のお面に落書きをして付けさせたせいで顔だけ阿修羅みたいな光景に。わはは。名瀬ちゃんも驚く珍妙な衣装させているしいい反応いい反応。

 

 

 「え、ええーと・・・そ、それでなんですが、お二人はそれぞれケイジ選手と共に欧州二冠。KGⅥ&QES、そしてあの凱旋門賞を制覇する際に支えたトレーナーです。そして今年は三連覇をかけた大一番。すでに歴史に名を刻む偉業を成したケイジ選手ですが、今回もいけると思いますか?」

 

 

 そうそう。馬時代と違ってここの世界じゃ検疫とかそういうのがないし、リラックス、疲労抜きの設備は大量にある。人と同様ド級の雑食でありながらたらふく食べられるウマ娘の回復力もあるからということで天皇賞(秋)に挑む前に欧州二冠三連覇を狙うことにした。

 

 

 ゴルシが三連覇したんだ。アタシもしないとな?

 

 

 「問題ないでしょう。肉体も骨も何もかもがベストコンディション。ゴールドシップにこの前負かされて4連敗中ですが海外ではジャスタウェイ以外に負けていない。確率は十分にあると言っていいです」

 

 

 「僕も同じ意見ですね。欧州の坂やレース場はエキシビジョンでも何度か走りしっかりものにしていますし、ケイジならやってくれると思います。春は私の指導不足で負けてしまいましたが、必ずいい成果を持ち帰ってきます」

 

 

 おうおう言ってくれるね。まーその通りだけどよ。必ず勝利してくるぜ。そんで見せつけてやるのよ。俺たちはもうこのレベルに到達したとな。

 

 

 「素晴らしい! お二人のその自信が今の美しさや美貌を作っているのでしょうか」

 

 

 「いえ、むしろ僕はケイジから支えてもらうばかりでしたし、薬湯などをむしろ渡してもらったくらいで」

 

 

 「僕もそこまで。むしろケイジの料理の試作を大量に食べることがあるので太っていないかと体重測定が日課になっちゃいまして」

 

 

 「なるほどなるほど。しっかり絞っていて真由美ちゃんとのホテルでの夜で幻滅されないためですな?」

 

 

 「そうですね、いつか僕もそう・・・・ってケイジ! 何言わせようとしていたんだ!」

 

 

 なんだかむず痒くなったので鼻眼鏡をつけて記者の皆さんの中に横入り。惜しかったなーいい加減付き合っているような状況で1年たっているんだしそろそろ私は子供の顔が見たいのじゃよ。

 

 

 「相変わらずだねケイジ。クリークとユウジョウはどうだった?」

 

 

 「仕上がりは悪くないね。今はライスとオルフェであわせて2400と3000の練習をさせている。ケイジちゃん特製の激やば悪バ場でな」

 

 

 「うわ・・・どろどろに加えてこの坂・・・いや、あれが本場欧州ではあるものか」

 

 

 「クリークの脚質なら対応は出来ると思う。まー今は下地作りと思ってもまれてもらうよ」

 

 

 名瀬ちゃんに頼まれていた二人の仕込みもばっちり。海外の遠征が増えた分トレセンでも欧州の芝を再現した場所を作ってくれたからうれしいよなあ。

 

 

 「ケイジさん。欧州二冠三連覇をかけての遠征を控えていますが、松風トレーナーとの更なる栄冠を取るにあたって何か一言貰っていいですか!」

 

 

 「んー? ふふ。なら、そうだな。必ず取ってくるさ。アタシのビッグマウスに付き合って戦い続けた男にゃふさわしい勲章と名誉が必要だ。だから取ってくるぜ。男松風守の選んだ選択とその実力は最高だって見せるためにいっちょ暴れてくるぜ!

 

 

 じゃ、そういうわけで。アタシはまた練習行ってくるー」

 

 

 これ以上マスコミの相手しても趣旨が違うだろうしさいなら。クリークたちと一緒に練習したほうがいいってな。後は飯の用意したい。

 

 

 走りながら遠目で様子を見れば松ちゃんもちゃんと対応できるようになっているし、善きかな善きかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ようやくたどり着きましたまずはKGⅥ&QESの舞台。欧州二冠三連覇のための第一関門。またまた女王陛下に殿下たちまできての大盛り上がり。欧州の怪物、精鋭たちがそろってアタシを今度こそ負かしてやると息巻いているのか控え席からでも感じる。ああ^~たまらねえぜ。

 

 

 「ふぅー・・・・調子は良し、ケイジ、今日の馬場は少し湿っているが、今回の相手はおそらく包囲や壁になる用にマークしていくこともあり得ると思う。だから大逃げで引きずり回して、可能ならペース崩しのための逃げへのシフトもいける。それでいいんだな?」

 

 

 「ああ、それで行こうぜ松ちゃん。今年は日本勢がいない分少し寂しいが、その分アタシが盛り上げまくってやんのよ」

 

 

 「不思議だな。ずっと、今以上に長く一緒にいた気分がするし、ケイジの無茶ぶりも問題なく受け入れてしまえるよ。不安もおさまって・・・ありがとう」

 

 

 「松ちゃんがいるからこそアタシも思いきりやれるんだ。見ていろよ。松ちゃんの努力と知識は間違っていねえ。アタシというウマ娘をこの舞台で暴れさせられるほどの名手だって見せつけてきてやらあ。だからレースをのんびり見ながらインタビューの用意でもしていな」

 

 

 松ちゃんの方も不安な顔から覚悟を決めた顔になって、いつもの柔らかい笑顔になる。そうそう。それでいい。それがいい。観客席で見ている名瀬ちゃんもにっこりできるような余裕さを持っておきなさいや。

 

 

 「分かったよ。僕はしっかり君を見ておく。だから見せてくれよ? 三度目の欧州の頂点に立つ瞬間を」

 

 

 「もっちろん。じゃ、行ってくるぜ相棒」

 

 

 「勝ってきてくれ。私の相棒」

 

 

 気合も入ったところでいざ鎌倉。さあさ、日本の怪物たちに揉まれた腕前を披露してやらんとな。新レース設立が日本でも上がっているし、その勢いをつけ、相棒に箔を持たせるためにも。




 ナギコはちょいFGOの清姫っぽいブームをたまにかまします。外見自体はアズレンの大鳳。


 ケイジ 無事に欧州二冠三連覇達成。レース終了後日本でケイジと松風のために最上級の勲章をもらった。バレンタインでは文字通りチョコと飴細工の祭典となって全国ニュースになった。


 ゴルシ あわやカブトムシを捕まえようと努力していた近藤さんみたいなことをしそうになっていた。ケイジの遠征レースはしっかり見に行った。


 ジャスタ ゴルシの作るチョコジオラマの着色頑張った。結果なんかすごいことになったので写真を撮ったらウマッターでバズった


 キジノヒメミコ ケイジの事大好き。結婚したいし子供も欲しい。できる時代なんだからはよ結婚したい。ジェンティルドンナは良い先輩だけどライバル。ナギコとは二人でケイジを愛したい。ケイジが絡んでもある程度はまともだけど一線超えたらやばい。


 名瀬文乃 ケイジと一緒に欧州二冠を手にできた。真面目にその時は普段のクールさが崩れて泣いていた。三連覇を達成した時にはしばらく息が止まっているほどに驚き嬉しかった。


 松風守 テストレースの際にケイジのビックマウスのせいでだれもケイジにつかない中ケイジに引きずり回される形でトレーナーに。そこからドタバタしつつも無事に大功績を連発。三連覇を達成した時のインタビューが素晴らしいと後日日本のテレビで取り上げられた時は恥ずかしさでしばらく夜のテレビ見れなかった。


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バカンスと調整

 誰かウマ娘のケイジを描いてくださーい! いやほんと私は絵心がないのですが絵でケイジを見てみたい。という気持ちがほんと高いのなんの。絵が描ける人ってほんと凄い、尊敬します。



 どうも、無事とは言わんがなんやかんや宝塚記念を終えてまた牧場に戻ってきたケイジだよ。

 

 

 まさか四連敗とはなあ。真面目にちょいと堪えたが、やけ食いして眠りまくったらまあしょうがねえやとなった。後半で巻き返せばいいんだよ。

 

 

 というわけで、いざ休養。はするのだが。

 

 

 『そらそらそらぁ!! もう一つギア上げるぞ!!』

 

 

 『この距離ならウチの距離なのに―!!』

 

 

 『ぐ、は、早すぎですよお二人とも―!!』

 

 

 合間にもちろん走り込みは忘れない。俺の次の目標が天皇賞(秋)ちょうど検疫を終えて牧場で同じくバカンス中のヒメと引退したけどぶっちゃけ怪我も無ければ衰えもないナギコと三頭で勝手に併せ中。

 

 

 三頭そろって1600~2000は問題なく戦えるスタミナとスピードあるから放牧地を利用して練習練習。

 

 

 的矢さんが面食らっているが知らんな。

 

 

 「スパルタはやりすぎるといけないが、優しすぎてもダメ。うーん。ほんとケイジ君たちには学ぶことが多い」

 

 

 「あいつらは色々異常ともいえますがね。しかし的矢さん。今日はどうしたので?」

 

 

 ああ。それとマタギのおっちゃんも来ているんだよね。真面目にナギコとヒメの馬主権利で超儲けまくったせいで仕事もやめて今は駆除隊としての仕事と山の管理。合間に短期バイトの日々をしているとかなんとか。

 

 

 幸太郎もここの牧場ですっかりなじんでいて、今もお仕事真っ最中だ。

 

 

 「いえね。冴子さんがこっそり社爛さんに協力を頼んでなんでもディープとハルウララの子どもを産ませたらしく、それを前田牧場が買い取ったそうなんですよ。なのでブラウト、ミレーネちゃんたちの子も含めてどんな子なのかと」

 

 

 「どちらも競馬ブームをけん引した馬ですが・・・・うーん。血統的にはケイジとは多重クロスがかかりすぎてインブリ気味。ディープも今の時代では相手を探すのが大変・・・・キンカメ、モーリス、ジョーダン、ホイミあたりと組み合わせを狙うのですかねえ?」

 

 

 ほへー。ってか、普段は馬を想わぬ値段で買うおやっさんを怒る冴子のおかみさんがハルウララとディープの子を依頼して、ゲットしていたとは。いくらしたんだ? 種付け料だけでもすごいことになっているでしょディープ。しかも交配の方の依頼ってことでウララちゃんの方にもお金払うわけで。

 

 

 「それもですが、ウララちゃんは良血も良血ですからねえ。血を残していくほうがいいでしょうし、私としては利褌さんの狙う子との組み合わせを狙っているかもしれません」

 

 

 「ふむ? まあ、後で聞きますか。おーいケイジー、ヒメ、ナギコ―走りすぎずに休むんだぞーほら、シャワー浴びようなー」

 

 

 『ほーい。いやー助かったぜ二人とも。スピード勝負になるだろうしそういう相手とやりあえてよかった』

 

 

 『アメリカではガシガシやり合っていたしこれくらいちょろいちょろい♬ しっかしケイジが負けまくるってねーあの白饅頭ゴルシやっぱやばいわね』

 

 

 『お兄様のためならこのくらい。でも、後ですりすりしてくださいません? あ、シャワー気持ちぃぃー♬ ふふ。葡萄も美味しいです』

 

 

 マタギのおっちゃんも一緒にシャワーついでに俺らを洗ってくれるので満喫。

 

 

 夏の汗を流すのと水が気持ちいいぜー。おっちゃん。たまにこうしてスタッフの手伝いするから牧場で休みを少し増やしてスタッフの負担も減らしてくれるんだよね。ありがてえありがてえ。

 

 

 『でさーヒメはマイルチャンピオンシップに出て今年のレースは終了だっけ? 無敗の四冠。やるジャンやるじゃん♬ あーウチももう一年やれたらなー』

 

 

 『ケイジお兄様のお嫁様になるにはこれくらいしないとです。ですが、クラシックを手にしたナギコお姉さまには負けますよ。来年はドバイDFに出て、安田記念で引退らしいですよ?』

 

 

 『DF以外はすべてマイルで暴れての引退かあ。ライトニングとの交配依頼が来そうだな』

 

 

 『嫌ですよ? 私はケイジお兄様以外は相手したくないです』

 

 

 真面目に馬っけ出した牡馬が俺以外来たら喧嘩しそうだなあ。おやっさんもそれを察してくれるといいんだけど。

 

 

 っと。シャワーが終わったので日差しを避けるために馬房に移動。扇風機も回してもらって、アニメを見つつ一息。優雅だぜ・・・

 

 

 

 「ワン」

 

 

 『戻ったよーあ、ケイジ―元気?』

 

 

 のんびり銀魂を見ていたら幸太郎がブラウトとミレーネを連れて帰ってきた。

 

 

 絶賛繁殖牝馬として頑張っている二頭だけど、妊娠した牝馬とはいえ運動をおろそかにして脂肪をつけすぎても大変。ということで幸太郎が前から後ろからリードしたり声をかけたりして動かすことで運動量を鈍らせないようにしているわけよ。

 

 

 『元気元気―幸太郎も子供たち元気かー?』

 

 

 『元気だよー? 今はご主人様が里親を探しているけど、なんかすごい人ばかりがもらいに来ているとかなんとか? 大きな牧場とか、王様とか貴族とかなんとか?』

 

 

 『俺がいない間に何があったんだろうなあ。で、どうだったそこの二人の調子は』

 

 

 『いい感じだよ? ご飯もちゃんと食べているし、毛並みもいい。運動は、むしろケイジ達が走るせいでやる気出しすぎるの抑えさせているくらい』

 

 

 なんやかんや競走馬としての血が騒ぐのね。今度の自主練は今日みたいに歩いていたり海辺の散歩の時くらいにしていくか。

 

 

 『あら。ケイジ♬ お姉さん寂しかったのよー? ほらほら。疲れを癒してあげるから入れて入れて♬』

 

 

 『お疲れ様ケイジ。今日もいい汗を流せましたか?』

 

 

 『お疲れさんお二人とも。そんで今入っても熱いだけだぞー俺の体温でかい分長持ちだからな。扇風機気持ちぃー』

 

 

 『だめだよ皆を困らせたら。ブラウトちゃんはこっち、ミレーネちゃんもこっちだよー』

 

 

 幸太郎とスタッフで俺の向かいの馬房にしっかり入れられる二頭。ほんとこの二頭も美人で困るなあ。真面目に引退後が見えてきている分我慢するのが大変なのに。

 

 

 『ちぇー。来年もケイジとの子供は出来なさそうだしこれくらいいいじゃないのー』

 

 

 『代わりに貴女のご先祖様の血が強い子たちを埋めるのですしいいのでは? 私なんてお相手候補のカフェさんも体調不良ですし』

 

 

 『代わりに来年の相手はケイジかもでしょ? いいなーがっつかずに優しいものケイジ』

 

 

 『引退した後はがっつくかもしれんぞーお前さんら美人だし。しかしまあ、ほんと日本でこの血が蘇るってほんと分かんねえな?』

 

 

 そう。ミレーネはスぺちゃんと、ブラウトちゃんはキングヘイローとの子を今年産んで、どちらも牝馬。で、今は俺もちょいちょい走りを教えたりしつつ過ごしているんだが、今年この二人の相手をしたのが4歳で競走馬引退したアルトリア。

 

 

 つまり、ブラウトちゃんもキンチェム系直系。アルトリアもキンチェム系の血を引く。キンチェム系のクロスが発生した子を宿しているんだよな。この日本で。ミレーネちゃんもマンハッタンカフェの母方の血を引いているので牝系の血を強める組み合わせをスぺちゃんに続いてやっているのでこれまた牝系ファン大歓喜の組み合わせ。

 

 

 ただ、基本アウトブリードを目指すために俺、ナギコ、ヒメ、ブラウト、ミレーネを用意したけど最近はスぺちゃんにディープとサンデー系の血も多い・・・・・・あーだからここでアルトリアの血を持ち込むことでさらに異系を持ち込んでインもアウトも思いのまま。ニックスも俺とステゴの牝馬たちと狙えるし、資産に余裕が出来た分ロマンと需要の幅を増やしに来たかね。

 

 

 オーストラリアの馬主さんも是非キャビアプラットとかいう怪物牝馬を俺と交配させたいと言っていたし、アメリカからもビリー牧場長がやべーのを持ってくるらしいし。うまくいけばこの牧場だけで10種近い異系、牝系の血がそろいかねねえぞ。

 

 

 「お前さんら仲がいいがケイジはまだお父さんにはなれないからなー幸太郎もお疲れ様。ほら。ブドウとリンゴだぞーしっかり噛むんだぞ」

 

 

 『トモゾウサンキュ! 葡萄かあ。水気たっぷりで汗をかく夏にはピッタリだぜ。あーうまい―』

 

 

 『ほふ・・・リンゴ甘いし素敵です。ブラウトも食べて食べて』

 

 

 『はいはーい♬ おなかの赤ちゃんの分も頂戴ねトモゾウ♪ んまーい♪ この前のマスカットとは違う味わいだけどスッキリー♪』

 

 

 『はふー・・・冷たい水美味しい♪ あ、ケイジ扇風機の近く貸して―』

 

 

 『ほいよー明日は1800メートルで練習だなあ。瞬発力じゃなくてトップスピードを常に維持して引きずり回すのがベストだし、早仕掛けも練習だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふーむ・・・ホンマ、ここの牧場はニュースに事欠かんわ。引退後のこと含めてここは真面目にニックスとアウトブリードのための予約で埋まりかねんぞ」

 

 

 今日も今日とて夏競馬の真っただ中、秋競馬に向けての取材の日々をしております。藤井や。

 

 

 マンハッタンカフェが天へと旅立ったりするのもあったが、やはり秋への関心が高い。時代を作り続けたケイジは四連敗で衰えたかという声もある。一方史上初を昨年やり遂げ、その伝説をさらに高めたゴルシへの注目が高くうちの会社の記者たちも多くはそっちに向かっている。

 

 

 後はやはり松風騎手と大竹騎手、梅沢騎手の松竹梅トリオ。前田牧場の馬たちに乗って偉業を成した日本の伝説とその伝説に続く若き天才たち。

 

 

 彼らがどう秋を戦うかという取材に向かうばかり。なのでボクはあえて前田牧場に行くことにした。

 

 

 まず欧州牝馬マイル三冠を無敗で達成したキジノヒメミコがマイルチャンピオンシップへの出走するという情報が大きいし、何せキンチェム系のクロスの子が日本で生まれたことや、先に引退したジャスタウェイたちの相手になるかもしれない子たちがわんさかいる。世間と会社の皆さんが秋のレースに意識を向けるのならこっちは前田牧場と引退後への展望を書いていくのもいいだろうってな。

 

 

 ま、コラムの一つ、小さな記事として使ってくれるのを願いつつ車を走らせ、牧場より少し離れた場所の駐車場に停める。馬たちに排気ガスと車の騒音を聞かせないためにもね。予約も入れたし、何なら少し周りも散策ついでにお参りも。

 

 

 「相変わらず、馬の気配がしつつものどかでいい空気や・・・・お?」

 

 

 「い、いよいよ予約してこれた・・・前田牧場」

 

 

 「黄金の姫ナギコ、マイルの黒鳥キジノヒメミコ、そしてターフの傾奇者ケイジ。今の競馬界をひっかきまわして盛り上げた怪物たちがここに・・・葛城、平野、的矢厩舎を名門にも押し上げたし、長かったなあ・・・」

 

 

 「こ、声は大きくないよな? 大切な馬たちへの失礼が無いように・・・」

 

 

 車を降りてみれば周りに何名かの人らが前田牧場を目指してい歩いている。まあ、前田牧場は見学をOKしているのもあってボクら記者や関係者以外もこうして多くが来る。とはいえ月ごとの見学人数は制限されているから本当に目の前で小声で話す若い兄ちゃんらは本当に待ったのだろう。

 

 

 連敗続きとはいえ何せルドルフを越え、倍近いGⅠ勝利をしていれば凱旋門賞連覇。その偉業は今後日本競馬で出てくるのかといえる生きながらの伝説。既に記念レースを新設するべきという声が出ているのだからその功績はとんでもないし妥当なとこ。

 

 

 マナーの悪い客はここの大ファンであり、日本最大のゼネコン会社の社長、会長が過激派警備員を派遣しているので馬鹿をすれば追い出されるのでそこも安心。

 

 

 目の前の子たちもそのまま声を抑えつつケイジを眺めてもらえればいいねえ。

 

 

 「さーて・・・いい絵面を取れればいいんやけど。後は今日牧場長さんに葛城さん来ているようだしケイジにどんな血統の子をつけてみたいかとかも色々・・・・お?」

 

 

 なんやのんびり歩いているとどよどよと声が不穏なものに。

 

 

 ・・・・なんか、デジャヴを感じるんやけど、そこは記者。興味と仕事根性で足を速めていくことに。

 

 

 「ケイジ―! シカと猪を追いかけるんじゃない!! とまれー!」

 

 

 「ビヒィイイ!!」

 

 

 『ヒメにブラウトちゃんらを追いかけまわそうとしたり喧嘩を売ったのはあっちじゃい! ケイジキックをお見舞いしてやるぜコノヤロー!!』

 

 

 『ケイジ、まずはシカを仕留めに行くよ!』

 

 

 『おうよ幸太郎! 喰らえケイジキーック!!』

 

 

 ・・・・・・なんや、目の前でケイジを止めようと汗だくで追いかけている葛城親子に、逃げ惑うバカでかいエゾシカに200キロはあろうかという猪。それを追いかけるケイジと幸太郎。

 

 

 幸太郎がエゾシカの逃げ先をなくして怯んだ一瞬にケイジのキックがさく裂。・・・・・・シカって・・・あんなに高く吹っ飛ぶんやなあ・・・ともうどこか呆然というか、またやったかと思いつつカメラのシャッターを切っていく。

 

 

 そして猪の方も追い詰めたところでいつぞやのヒメやナギコちゃんの馬主の一人でもあるマタギのおっちゃんが槍を持ってきて見事猪の方も退治成功。

 

 

 ケイジの熊退治伝説を思わせる内容に周りの見物客も大盛り上がり。そらそうや。650キロの巨体かつ競走馬の中でも規格外のパワーで繰り出す蹴り。ライフル張りの威力はあるやろうな。

 

 

 そこで終わるのならまだよかったが、僕ら見物客を見てニチャアと変顔をした後にしれっと脱走をしてから僕らに近づいてきた。

 

 

 「ケイジが近づいて・・・うぉぉおおおでっけえ・・・すごい迫力だあ・・・」

 

 

 「傾奇者・・・・いや、あえて感謝感激です。あ、あの・・・え? これあげるから食べさせろって?」

 

 

 「はぁーケイジたち見に来たけどワンチャンもかわいいぃ~♡」

 

 

 「へえーゴルシとかは気難しい部分あるって聞くけどケイジは本当に人懐っこいんだ。スズカとかディープもそうだって聞くし、うーん。ブラッシングもしていいの?」

 

 

 ケイジがリンゴや人参を満載した籠を持ってきて、幸太郎はブラッシング用のブラシを持ってきてケイジの脚を撫でることでやってみてとアピール。

 

 

 もう、葛城さんも前田さんも諦めたらしく警備員とスタッフを置いてケイジのふれあい会を開始。

 

 

 桜吹雪のメンコやキセルを用意しての写真撮影にブラッシングに餌やり。しゃがんだケイジに子供を乗せたり幸太郎とのトリプルショットまでと至れり尽くせり。GⅠ13勝している現役競走馬とここまでできるって志村ヘンさんやアラブの王族くらいや。

 

 

 ここでしか売っていないケイジ、ナギコ、ヒメ、幸太郎たちのグッズもみんな買ってからほくほく顔で帰っていくのを見届けてようやっと嵐のような時間が過ぎた。

 

 

 もう、会社にはこのニュースと映像を送ることにして、キジノヒメミコの出走と牧場の牝系と今後の展望のコラム記事は次回でええやろ。ケイジ健在というのを伝えるにもちょうどいいし。

 

 

 目の前でケイジが説教されているが「知りまシェーン」って感じの変顔でスルーしているのを見て爆笑してしまう。うん。これは秋もいけるわ。天皇賞(秋)はケイジに賭けよう。応援しているでケイジ。




 後日この一件はニュースとしてまた大騒ぎになり、そこに居合わせた藤井君社長賞またゲット。世間でももはやケイジの専門記者扱いに。


 ケイジ ちょうど牧場に短距離から2000メートルで世界レベルの怪物牝馬がいるので秋天への自主練。幸太郎とはちょこちょこ同じ馬房で寝る。シカと猪は放牧地に入ってきて牝馬たちにちょっかいかけようとしたのを見て怒り追いかけまわして退治。


 キジノヒメミコ アジアマイル戦線を狙うために一度帰国。ケイジとナギコとレースできてうっきうき。シカを退治してくれたケイジに後で頭を下げた。


 ナギコ 怪我無しの引退なので元気バリバリ。幼駒たちに走りを教えている金髪ギャル(ウマ娘の姿だと)ドリームシアターがアメリカで好成績なのが嬉しい。


 ブラウト アルトリアとの子を宿しキンチェム系のクロス馬を生むことに。牧場の方針では牡馬牝馬一頭づつほしいので最低でも二年は相手することに。早くケイジとの子が欲しい。


 ミレーネ スタミナ血統なので相手どうしよっかと実は困っている。早いところケイジと組み合わせたい。


 ウララとディープの子 超良血なので繁殖用に。牝馬。血統の関係からサンデーやパーソロン系の入っていないホイミやブラウトの子どもなどを組み合わせて異系を狙う予定らしい。


 藤井 熊退治に続いてシカと猪退治にまでで合わせてしまう強運。馬券は毎回ケイジに3000円くらいツッコんでいる。秋には応援も兼ねて5000円にアップ。


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子育て中と青田買い

 いつも感想、評価、誤字報告。応援ありがとうございます。更新が遅くなっているのが申し訳ないです。


 ハルウララとディープインパクトの子どもの名前は感想で素晴らしい名前があったのでそれを採用させていただきます。いや、本当に知識の引き出しの多さや皆様少しの情報から色々考えたり教えてくれるのが驚いたり感心したりするばかりでございます。


 現在の前田牧場の幼駒


 ミレーネ×スペシャルウィークの幼駒 ステイヤー気味。


 ブラウト×キングヘイローの幼駒 中距離主戦。好みは先行?


 ハルウララ×ディープインパクトの幼駒 芝砂両刀の砂より。


 今回は短めです。


 『いいかーこうしてな? こう動くと身体がほぐれてレースでも強くなるんじゃよ』

 

 

 『『『ほえー』』』

 

 

 『身体はしっかり柔らかくしよう! さー軽く走ってナギコと流しに行くぞー』

 

 

 『『『はーいケイジおじさん』』』

 

 

 『お・・・もうそんな年だもんなあーよし、ほらいくどー』

 

 

 シカと猪をしばいて鍋にした後、記者もやってくるのをいなしつつ今日も今日とて休養。ついでに幼駒たちへの走りの指導。競走馬としてのイロハを教えている最中。

 

 

 今は俺の日課の身体ワチャワチャを教えている最中だ。柔軟、ストレッチは大事。ストレッチパワーがたまってきただろぉ?

 

 

 「うんうん。みんないい動きだ。素質馬ばかりが生まれるとはなあ・・・何頭競走馬にしてみようかなあ」

 

 

 「ミホミサトの方もまた素質馬を生んだようですしね。ライバルになるかもしれませんね。ふふふ。またお参りして感謝を神様に伝えませんと」

 

 

 「馬がラジオ体操みたいな動きをしているというのはツッコまないほうがいいんですかね? しかもケイジが先生みたいな感じで」

 

 

 「もうケイジだし、いいんじゃないかなお父さん。というか、ここの馬たちはみんな頭の良さが異常だよ」

 

 

 牝の幼駒を俺に預けて鍛えさせている時点でそっちも異常だがな!

 

 

 で、今はここの牧場に葛城親子にマタギの赤城のおっちゃん、藤井記者の兄ちゃんも来て俺らの様子を見学中。昨日は牡丹鍋と鹿肉のステーキ食べたみたいなんだよな。いいなー馬だから肉が食えないのが・・・

 

 

 あ、それと蓮君無事に全中野球大会で優勝。MVP、打率5割の盗塁成功30回。デスゾーン扱いされる二塁の守りとまあキチガイじみた戦果をひっさげて帰ってきやがったよ。俺は連敗で夏を終えたってのにコンチクショー

 

 

 蓮君のライバルとして俺も負けられねえ。やる気は既に最高だぜ! まあ、それは今抑えつつ幼駒たちの鍛錬だけどね。・・・ハッ! これがいわゆるパパ活か。

 

 

 『何考えているかわからないけど違うと思うよケイジおじさーん』

 

 

 『オジサンだとぉ!? ふざけんじゃねーよお兄さんダルォオオ!? まだまだ元気もりもりの現役じゃーい』

 

 

 『そうそう。それくらいの元気さが無いとねー。ほらほら私のお尻を子供たちと追いかけてきてごらーん♪ 蓮君や私たちにかっこいいとこ見せてよね日本総大将♪』

 

 

 『そっちこそこの子らにしっかり教えろよアメリカ最強の一角さん。よっしゃ。トモゾウドア開けて―』

 

 

 「はいはい。それじゃあ―砂浜で走るか。幸太郎、赤城さん、幼駒たちのリードをお願いします」

 

 

 「よしきた」

 

 

 今日は砂浜でじっくり走る練習。テキのおやっさんいわく地面をしっかりける練習と、足元の負担を減らしたいとか。後はまあ、走る練習をしまくって今ここの牧場で湯治をしに来た馬たちを刺激しないためにだね。

 

 

 のんびりポコポコ海に向かって移動。そして

 

 

 『よっしゃ喰らえーい赤城のおっちゃん。海へぴょーん!』

 

 

 「ぬわー!」

 

 

 早速ナギコが海にマタギのおっちゃんを突き飛ばしていた。ほんとこの悪戯好きなんだなあ。あ、こら幼駒の皆は真似しちゃだめだぞ? 変顔と脱走くらいにしておきなさい。

 

 

 現在うちにいる幼駒。ミレーネちゃんの子どもは青毛の子で名前は将来はマアトエルにする予定で、体格は普通。気性は大人しい。

 

 

 ブラウトちゃんの子は特にまぶしい金色気味の尾花栗毛で名前に関してはシズル。体格は少し大きめかな? 性格はー母親似。かねえ。

 

 

 で、ウララとディープの子。鹿毛が特徴で名前はハルフカシ。体格は小さい。が一番素質を感じるのはこの子だな。ディープの血か、ウララの親の血が覚醒したかは不明だが。一応全頭GⅠ上位で戦える可能性を感じる。後は調教師と騎手次第だろ。

 

 

 それまでの下地はちょいちょい俺らが教えればいいしな。

 

 

 『ほらほら。レースでの位置取りは大事! 先行を狙うのならウチの前に、追い込みならウチの後ろにつける。短距離ではポジショニングと速度が多くの勝因に関わるよ!』

 

 

 『追い込みは焦らず脚を残す。焦って前に出れば気持ちの分も足を持っていかれるからな。我慢だよ我慢―』

 

 

 アメリカのレースの中で追い込み一本で無敗のままドバイまで荒したナギコの指導は速度と場所どり。実際そこを覚えるの大事だし、あっちはポジショニングが熾烈だからな。スタート直後からぶつかり合いとか起こるとかどんだけだ。

 

 

 そして・・・・うーん。追い込みからのやり方で高速戦はこういうのもあるのか・・・タケちゃんとやったやり方に合わせれば思いきり大外からのぶっこ抜きもいろいろ鋭くできそうだなあ。

 

 

 『はーいそれじゃ、ヒメ、バトンタッチ―♪』

 

 

 『かしこまりましたナギコお姉さま。では、今度はコーナリングです。ケイジお兄様のコーナリングの鋭さが一番ですが、まずは私から教えていきましょう。いいですか? 私の脚をよく見るんですよ』

 

 

 『俺とヒメじゃ体格が違う分脚運びや姿勢も違う。じっくり学ぶんだぞー』

 

 

 『ああ・・・お兄様との並んでの練習。素敵です。いずれは私の子もこうして教えて・・・・』

 

 

 頭の中で幸せ家族計画しているっポイ姫を置いておいて砂浜でカーブする。コーナーでの動きをじっくり教えていき、そのまま直線での脚の使い方、シフトチェンジをじっくりこってり。

 

 

 まだ生まれて3か月あるかどうかの子たちだから加減はしているけど、ちゃんと喰らい付くあたり素質はあるんだよな。このまましばらくナギコやヒメたちで疑似レース、併せで経験を早めに積ませていけば化けるかもしれん。

 

 

 「お疲れだケイジ。本当にいい感じに鍛えているようだし、太った様子もない。もう少しで厩舎に戻るが、秋でゴルシへのリベンジもできそうだな」

 

 

 『おうともよ! 負けっぱなしで終わる気はないからな。蓮君の見せた偉業にも応えるために頑張るんぜよ!!』

 

 

 「お疲れケイジ。ちゃんと加減してくれて偉いぞ。しかし、お前のサイズに最初はビビっていたのに、すっかりあの子たちもなじんちゃったなあ」

 

 

 それなトモゾウ。俺やヒメたちでリードホース? だっけ? をしたときは当初泣かれるくらいには怖がられたってのに、しばらくしたらむしろ甘えてくるんだから。子供の順応力が高いのか、あの子らの肝が太いのか。

 

 

 この後すぐにブラウトちゃんとミレーネちゃんに子供たちに厳しくし過ぎないでよって怒られたけど、ちゃんと加減はしているし、ソエにはさせねえよ。あと、ついでにこれを機にと二頭ともすり寄ろうとするのやめてくれませんかねえ? ナギコとヒメの視線が怖いんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お久しぶりケイジ、いやあー今日も顔芸が切れているねえ。ふふ」

 

 

 「ケイジちゃんおっひさー。あらあら今日もいい男♪」

 

 

 『スーザンママお久ーで、タケちゃんもお久ーどったの? スーザンママはともかくタケちゃんまで』

 

 

 『オジサン。あの人たちだーれ?』

 

 

 『んー俺の相棒の一人と、俺の大ファン。でいいのかね? ハルもまた柵越えしやがったな?』

 

 

 藤井の兄ちゃんが東京に戻ったのと入れ替わりにやってきたのはスーザンママとタケちゃん。俺になでなでしてくれて人参チップをくれたのでさっそくコリコリ。うまい。

 

 

 で、また柵越えして俺の放牧エリアにいるハルフカシも興味津々でてこてこと歩いてきて首をかしげている。まったく。またトモゾウに注意されるぞ。

 

 

 「いやあ、ウララとディープの子がこの牧場にいると聞いていてもたってもいられなくてね。前田さんに是非騎手をさせてくださいとお願いしに来たのと、近くの神社への御参りかな」

 

 

 「私は今年生まれた牝馬たちの馬主権利を一部分けてもらおうかなって。ムランルージュの皆も来ているわよ。ケイジちゃんたちが稼いでくれたおかげで懐もほっくほくなのよ。ぶほほ♪」

 

 

 あ、よく見るとブラウトちゃんやミレーネちゃん、ナギコたちの方にもちらほらオカマがいたりして、幼駒にキャーキャー言っている。予約? 馬主権利者の関係者だしノーカンノーカン。

 

 

 「お、君がハルフカシか・・・僕は大竹。君のお父さんとお母さんと一緒に戦ったジョッキーなんだ。もし君がデビューしたら、僕と一緒に頑張るかもしれないからよろしくね?」

 

 

 「ヒィン・・・??」

 

 

 『よろしく・・・・? お父さんとお母さんの騎手さん・・・何か聞いたような聞いてないような・・・?』

 

 

 「あら、この子が噂の・・・・この年でこの肉付きに、パワーも感じられるし・・・うん。大物かもしれないわねぇん。いくらになるのかしら。評価額」

 

 

 『しれっと見抜くの早すぎないスーザンママ。えーと、評価額は大分安かったなー』

 

 

 確か評価額は800万。ディープの血は高いんだけど、ウララの方が本来は繫殖行きすらできなかったのをコネとお金でどうにかして産んだからねえ。その母親の初子というのもあって値段は超大赤字。まあ、おやっさんが相手への敬意や気持ちで自分から額以上の金を出すことに比べればどうにかなると女将さんは言っていたし、レースか繁殖でその分も戻せるとのこと。

 

 

 「シズルちゃんはナギコに似たレベルの尾花栗毛で綺麗だし、どうだい。おじさんと一緒にレースで戦わないか。オ~ッホッホッホ」

 

 

 「うーん・・・いいねえ。いい素質馬だ。前田さんの所、最近名牝が多いですなあ」

 

 

 「マアトエルちゃんはこれまた・・・ライスを思い出すなあ。しかし、君も新聞を読むんだねえ。この競馬新聞、わかる?」

 

 

 『オネエなのこのおじさん? いけおじなのになーってか、ナギコさんの厩舎の人なんだ?』

 

 

 『新聞、面白いですよーケイジおじさんから色々教えてもらっているの。あーディープさんの子ども多いってほんとだ―あとステゴさんも。凄いなあ』

 

 

 「あっちも名牝の素質というか・・・ここ、もう馬のための新聞もう一部予約していいんじゃないかしら?」

 

 

 「・・・ケイジ、君が教えているのかい?」

 

 

 「ヒィ?」

 

 

 『ぺろーん。しらーんなー』

 

 

 よく見ると福崎騎手もいるな。的矢さんに平野さんも。前田牧場の次世代の牝馬を見に来た感じかあ。まあ、スぺちゃんやキングの子で素質馬が出ましたとなれば大竹さんと福崎さんはそりゃあ来るよなあ。

 

 

 にしても・・・・松ちゃんは来ないのかあ。

 

 

 「松風君は明日来るようだよ。少し取材やラジオの依頼で忙しいとか。おっとと。いやあー可愛いなあ・・・っ! 柵越えをするのかいハルフカシ・・・これは、テイオーレベルの子になりえるのか・・・? ウララの子で・・・」

 

 

 「これは、凄いわねえ。うーん。ウララちゃんの子でこれは嬉しいけど、同時にだからこそケイジとの組み合わせが出来ないのが残念でもある・・・」

 

 

 『そこはグラスの子たちと組み合わせていけば孫世代と俺ということで。ってか。人が近くにいる場所で柵越えとはやるねえ!』

 

 

 『えへへーなんかこのおじさん達好きー♪ ねね、遊んで遊んで?』

 

 

 「おっとと。人懐っこい。ディープより・・・スズカも思い出しちゃうなあ・・・いいよ。でも、ここだと駄目だから僕が放牧エリアにはいるね?」

 

 

 嬉しい情報を貰えた。明日は松ちゃんと走るか。で、ハルも無事に大竹さんと仲良くできているようで何より。

 

 

 後ろではナギコに放牧地で倒されてナギコに転がされている平野調教師の声とこの珍騒動に周りの馬たちもなんだこれって顔しているし。うんうん。平常運転だ。シズルと福崎騎手も仲良くやれそうだし、キングの子でGⅠ頑張れよーまあ、ウチのおやっさんが競走馬にするかどうかの相談もしっかりとな!




 ケイジ先生。ナギコ先生、ヒメ先生の指導教室。ミホミサト。現在産駒の重賞勝ち上がり率7割以上。名牝ですな。社爛さん大歓喜。


 ケイジ 夏休みに指導をしている現役選手感。ついでに本人もナギコやヒメから中距離の戦い方を再度学び直している。幼駒たちにも早速懐かれた。マイブームは笑点。


 ナギコ 引退しているので基本幼駒の育成や教育に関わっていたり。海とプールでは親しい人を突き落とすのが好き。主にリアクションが。平野とも久しぶりに再会できてウキウキ。マイブームは仮面ライダーアギト。


 ヒメ 本人もケイジの姿勢や脚運びを続けていたのを自分なりの方向に変更した過去からこういうのを教えるのは得意。マアトエルのステイヤーとのしての才能を羨ましがっている。マイブームはおジャ魔女。


 ハルフカシ ディープとウララの子ども。才能は幼駒組の中ではトップクラス。スズカレベルで人懐っこい。ケイジの事も好き。脱走芸をメキメキ覚えている。マイブームはライジンオー。


 マアトエル ミレーネとスペシャルウィークの子ども。ケイジレベルのスタミナの持ち主。気性も大人しいので真面目に欧州の長距離レースも狙える。マイブームはスラムダンク。


 シズル かなりケイジ大好きな子で色々成長が早い。キンチェムの血が覚醒気味なのもあってスタミナも相当だが基本距離は中距離。走るときは前目につけて一気にスパートをかけるのが好き。マイブームはトラブル。


 ミホミサト 社欄の方でも重賞馬をしっかり産んでいる。社欄に来てから牝馬ばがずっと生まれているのでシンザン系の牝系できるかも? といわれていたり。


 大竹・福崎騎手 自分に縁深い子たちの素質馬が生まれたと聞いて売り込みに来た。主に松風騎手からの連絡で大竹、福崎騎手に連絡が来てすぐさま北海道に飛んできた。どちらも仲良く過ごし、鹿肉のステーキを食べて温泉満喫して帰った。


 葛城親子 馬と触れ合えてニコニコ。ケイジと会えてにっこにこ。ハルフカシはここが預かる予定。


 平野 久しぶりにナギコにあって早々に牧草地で転がされた。シズルを預かることに。


 的矢 またもやライスを思わせる幼駒だけどグラスレベルののんびり具合に思わずほっこり。マアトエルを預かる予定をゲット。


 スーザンママ 三頭の幼駒の馬主権利の10%をゲット。ケイジと一緒にツーショットを取ったり色々満喫して帰った。


 赤城 マタギのおっちゃん。三頭の幼駒の馬主権利の5%をゲット。前田牧場の今後が楽しみ。このあと阿部さんにも連絡して二人で馬主権利を獲得して次世代の子たちにも期待を寄せる。


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最後のKG対決三本勝負 天皇賞(秋)(GⅠ)

 ケイジの戦いの旅路ももう少し、ウマ娘エピソードは馬時代の話が終わってからも続けるか考えております。


 活動報告に手ウマ娘のケイジのプロフィールをさっくり書いておきました。見直す際に良ければどうぞ。


 『振り切った! 逃げ切ったぞキタサンブラック! 松風守! 圧倒的なスタミナと速度を見せたキタサンブラック! 戦国コンビの松風守騎手のリードで見事キタサンブラック二冠達成! 松風守騎手何とダービー、菊花賞二度目の勝利を手にしました!

 

 

 名馬も騎手も次世代の躍進ここにあり! 逃げの名手が一頭と一人名乗りを上げたあ!!』

 

 

 「うふふ・・・かっこいいなあ・・・松風さん」

 

 

 「逃げを持って菊花賞勝利かあ。いやーこれはすごい。ケイジは脚を隠していたとはいえ、あの淀の坂を二度越えての勝利を三歳馬がするってなあ」

 

 

 『しかもキタサンブラックの巨大な馬体でそれをするんだからな。頑丈さは俺も認めるものだが、この秋でさらに伸びたか。サンちゃんと志村さん二人で喜んでいるよ。今日も競馬場に演歌とコントが響くかあ』

 

 

 そしてこの後は天皇賞(秋)松ちゃん頑張るねえ。キタちゃんもブラックで一気にGⅠを二つも制覇。男泣きしまくっているし、あ、俺があげた蹄鉄を見せて俺にありがとうと言っているよ。

 

 

 普段神棚に飾っているみたいなのに、お守り代わりに持ってきたのかしらん。

 

 

 「にしても、スタミナに物を言わせての逃げだが、キタサンブラックの性格もあってできる芸当だな。あのおとなしさに人の指示を聞く従順さ。優しさあってこそあの長い距離を我慢しながら戦えるのだろう」

 

 

 「あ、テキ。へえー・・・名馬って結構気性難とかの話を聞きますが、逆なんですね。ケイジのお父さんもお爺さんのルドルフも気性難、気難しい部分があるって聞きますが」

 

 

 「そうっすよね。実際、気性からの闘争心が強い子たちの方が強い。ディープやスズカもレースではやる気十分。サンデーに至ってはあれで、ルドルフはライオンといわれるほどだったようですから」

 

 

 「そう。だからこそ気性難は名馬になりえる子が多かった。だけど、気性が大人しいからこそ人の言うことを聞いてくれる。レースでやる気を出しつつも騎手の指示を聞くからこそのベストな戦いが出来る。新しい名馬のイメージとしてもキタサンブラックは注目されている。有馬にも出るだろうし、これは怖いぞ」

 

 

 『まあ、負けるつもりはねえけどな。先輩のオルフェには負けたが、それ以外では後輩にも先輩にも負けていないし、最後のシーズン。こっからは落とせねえからな。ってことでおやっさん。練習追加してくれ』

 

 

 ブラックと松ちゃんの活躍を聞いて、今後ぶつかっても負けないために、そして秋天への備えのためにも追加練習させろと頭を振る。脱走用の道具掃除の際に回収されちゃったんだよなー真由美ちゃん。俺の寝藁の用意のみならずこういうのの隠し場所まで見抜くのが上手になりやがって・・・

 

 

 脱走用のテグスも針金も藁で編んだロープもないんだよなー孫の手も今はないし。

 

 

 「練習は今日はもうしたからダメだぞケイジ。来週に秋天なんだ。最終調整は軽く。馬体も絞れているんだからこれ以上は無理はさせない」

 

 

 「ほ、ほら新しいアニメを一緒に見よ?」

 

 

 「お。新作アニメか。真由美ちゃんいいセンスしているね。皆で見ようか」

 

 

 『しょうがねーなー。他の馬たちも見ようぜー』

 

 

 この後、俺の馬房でアニメ上映会をみんなで楽しんだ。ところで、俺が新しい名馬とかのモデルやイメージになるってことは・・・特殊過ぎてない? あらーそっかー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『すっかり秋風涼しくなってきましたこの季節。しかしここは燃えるような熱気に包まれております! それもそのはず。夏の休暇を終えてこの名馬がまたターフへと帰ってきました!』

 

 

 何気にここのレースへの参加は初めてなんだよなー俺。いつもKGⅥ&QESと凱旋門賞で戦っていたり菊花賞の後にレースは流石につらたんだったのもあって。でも、今回のレースは実は大事なものだ。記録的な意味でも。

 

 

 『ターフの傾奇者ケイジ! 今日は桜吹雪のメンコもつけて気合ばっちり!! そしてそのライバル黄金の不沈艦ゴールドシップ! 二頭とも天皇賞(春)を制覇した名馬! ゴールドシップは春秋連覇。ケイジも春秋の制覇をかけた記録をかけたKG対決! 両者の相棒ジャスタウェイも制したこのレースをどちらが征するのか。観客もそれで大盛り上がりでございます!』

 

 

 天皇賞春秋連覇は有名処だとタマモクロスとかか。あれは強かったそうだなーレース映像見たこと実はあんまりないんだけども。あ、それと今回は秋天ということで気合を入れる意味でもらった桜吹雪のメンコをつけての参戦じゃい。

 

 

 ま、皆お久しブリーフ。待っていたかーい?

 

 

 『いやぅっほー! いいねいいね。こうじゃないと!』

 

 

 「おっとと。ケイジ元気なのはいいが、暴れすぎるんじゃないぞ?」

 

 

 『ケイジ、早速跳ねまわって楽しそうに芝の上でダンスのような動きを見せております! 鞍上の松風騎手も久しぶりのケイジとのコンビにニッコリ笑顔。ロデオのように暴れるケイジの上で器用に乗りこなしながらケイジの首を撫でております』

 

 

 『おーいケイジ―! 待っていたぜぇー! お久しブリーフ。ってことでかたっ苦しいパドック抜けたんで早速!』

 

 

 ゴルシも今日も元気もりもり。いいねいいねえ。これでターフに戻ってきたって気持ちがするぜ。そしてー? 一緒に併走中に逃げ出して練習したあれをするぞ!

 

 

 『やろーぜー! 秋の大一番。天覧競馬を湧かせてやるんだ』

 

 

 『じゃ、ズンズンズンズン♪』

 

 

 『ああっとゴールドシップケイジの方に走って近寄り、二人合わせて欽ちゃん走りをしながらのヘドバン。時折変顔しながら顔を揺らして仲良く移動。これは・・・ひ〇ダンスでしょうか!? まさかまさかのあわせ芸。フランスでやったハリセンしばき合いのような息の合ったコンビ芸を見せております!

 

 

 これには会場も爆笑の渦に包まれます。稀代の傾奇者に癖馬コンビ。場を沸かせに沸かせに来ております。こんな光景見たことない!』

 

 

 今回も千代田区の高貴なる方来てくれているんだよなあ。お忙しい中来てくだすったんだ。笑わせて、愉快に過ごしてもらってなんぼよな。見てくれぃ! これが俺のライバルで親友。そして俺らを倒そうとしている天才どもだぜ!

 

 

 『今日のレースはジャスタも勝ったレース! ここをゲットして俺も並んでやるぜ!』

 

 

 『なにおう? 勝つのはオイラだもんねー。よっしゃ。身体あったまったし、早速行こうぜ』

 

 

 「よしよし。いい感じにあったまったか。少し汗をかいたくらいなら、最初からいい感じにギアを使えそうだな」

 

 

 『今回は距離が短いものなあ。いつでもギアを上げて思いきりやれるようにあっためておいたぜ。松ちゃんこそ。キタちゃんにまたがっての勝利は気持ちよかったかい?』

 

 

 「何か変なこと考えているが、素直にうれしかっただけだぞケイジ??」

 

 

 あ、そーなのかあー未来でウマ娘になったキタちゃんを見てこの子と一緒にダービーと菊花賞取ったんだなあってなる日が楽しみだぜ。松ちゃん×キタちゃん×真由美ちゃん・・・・ありだな!

 

 

 本場馬入場からのゲート前でござーい。さーて今回もやべえ優駿ぞろいだが?

 

 

 『追い込みで今日は行こうぜ。今日の馬場固いし、ちょいと狙っていることあるんだわ』

 

 

 「ふむ。よし。それで行くか。ただし、かなり早く仕掛けていくぞ?」

 

 

 『問題ねえ。身体は既に200メートル走ったくらいにほぐれているし』

 

 

 そういえばなんだけど、ゴルシここにも出てくれているんだよなあ。確か茄子のおっちゃんが『秋三戦は調整が大変だが、ゴルシの調子と、ケイジがいることでやる気も出してくれる。ならば秋天、秋古馬三冠は挑む価値はある』とか言っていたっけ。ゴルシ陣営おれをゴルシのやる気スイッチ扱いしていねえかこれ?

 

 

 このやろー確かに連敗続きだが、しっかり夏も中距離、マイルの怪物牝馬やディープやグラスの爺様からいろいろ学んで来たんだ。負けねえぞ?

 

 

 『しかし、今回の天皇賞(秋)もすさまじいメンバーがそろいました。全員が重賞ウィナー、更にはKG対決最後の勝負の始まりでもあるということもあって競馬場は満員御礼。更には普段立ち入り禁止の場所まで開放して客席を増やすなどの配慮をしてもこの様子。伝統の一戦であり、競馬史に名を刻んだ一族、その子孫にして今伝説を作り続ける名馬たちの一戦に今か今かとこの2000メートルの勝負を待ち望んでいます』

 

 

 『2000メートルという距離は長いようで短いですからね。位置取りを最初で取ってそこから余裕を持ちつつ行けるか。瞬間瞬間の判断がより鋭く問われますからね。騎手の手綱さばきもまた注目でしょう』

 

 

 ちなみに解説にはまた岡崎さんも来てくれている。真面目に俺のレース国内の時は毎度いないかな?

 

 

 コラムとかもなんだけど、何回かに一回は俺のことを出してくれたりで、いやーほんとルドルフの孫、テイオーの子どもってこともあって贔屓してくれている気がするよ。この前会った時はバターキャンディーくれたし。

 

 

 おっとと。そうこうしていたらゲート入り。今回は17番8枠で1番人気。とりあえずゲートにガチャンとな。

 

 

 ゴルシの方も問題なくがちゃん。よっしゃ。後はゲートが開くのを待つのみだぜい。・・・・・・さあ。最後の戦い。そのスタート、やってやろうじゃん!

 

 

 『・・・・スタートしました! 1番ディザイア好スタートを切りました。そしてその横からエイシンメビウスが前に行こうとします。そしてケイジは今回は追い込みの様子。ゴールドシップよりやや前目につけますが最後方でのゆったりとした競馬に。あっとエイシンメビウスのハナを奪いクライアントが前に出ていきます。

 

 

 先行争いは熾烈! 現在クライアントが先頭、そこにつけるようにエイシンメビウス、さらに二馬身離れてハートマンが先行の馬群の先頭を走り向こう正面へと行きます』

 

 

 やっぱ先攻争いはこうしてみるとすげえな。ふむー・・・馬群は伸び気味だが、まあ、まだ問題ないかな。向こう正面を超えたあたりからの攻めを狙うか。松ちゃんもそれを考えているのか感じる視線の向きがコーナーの方。そこから・・・か。

 

 

 『ハートマンを躱してカレンカモミールが前に、その後ろの三頭並んで、サトノクラウド、ワンアンドオール、サイファーが追走。その後ろにはボーイズジャーニー、ステファノンが・・・』

 

 

 ここからだな! もう残り1400メートルちょい! 仕掛けるぞ!

 

 

 「行くぞケイジ! ここから後はギアを上げていけ! 7ハロンのスパートもお前は行ける!」

 

 

 『おうさ! ゴルシもぼちぼち行くだろうし、ここからまくっていくぜ!』

 

 

 ここまできれいに整備された芝なら飛ぶように走れる! ずっと砂浜と山道を歩いて、ナギコやヒメと調整してきた今の俺を見ろぉい!! うぉりぁあ!!

 

 

 『ああっと! ケイジ仕掛けた! ケイジがグイグイ押している! 松風騎手鞭が飛ぶ! 戦国コンビの早仕掛け! 向こう正面から第3、第4コーナーへと一気に突撃!爆走開始! 最後尾から大外をぶん回してのごぼう抜き!撫で切りにしてあっという間にコーナーへと一人旅! 1000メートルを通過! タイムは59秒5! 最初のゆったりしたペースから一転! ギアが上がって・・・ああっとゴールドシップも抜錨! ケイジを追いかける形でギアをあげる!

 

 

 最後尾にいた二頭がまたもや先頭争い! 第3、第4コーナーの中間からもう抜けようとスパートを仕掛けてきております! しかしそれを周りも許さない! 伸びていた馬群がぎゅーんと縮まってきております! 先頭はケイジ! 二番手にゴールドシップ! 三番手にハートマン! 四番手にエイシンメビウス! 五番手にディザイアと並んでコーナーを抜けて直線へ!』

 

 

 コーナーが少ないこのレースではナギコやヒメと学んだスタイルが役に立つ! そして、タケちゃん。ディープ! あんたが教えてくれたあの追い込みを使わせてもらうぜ! もういっちょ、ぃよぃしょぉおおおお!!

 

 

 『ケイジさらにギアを上げていく! 翼が生えたような追い込みだ! もはやだれも手が・・・いいや! 黄金の快速船がその背を追う! ゴールドシップが傾奇者を捉えんと猛追! 規格外の追い込み勝負で残り400を通過!

 

 

 後方にハートマンが追うももはやその差は広まるばかり! ケイジとゴールドシップ二頭の世界! 二頭の熾烈なたたき合いだ!』

 

 

 『ヒャッホー!! そのまま逃げ切ってしまうぜ! 秋の盾! もらったぁあ!』

 

 

 『なんじゃその手ごたえは!! 待てーぃルパン! じゃねえケイジ! 逃がさんぞ~!!』

 

 

 『いいや、今回は逃げ切らせてもらうぜゴルシのとっつあん! 春天と宝塚の借り、ここで返してやらぁ!』

 

 

 今回もゴルシはすごいが俺の方が上だ! 脚の手ごたえと速度でわかる! まだまだ俺だって戦える! 連敗していたって盛り返せるんだって見せてやる。そして、二度のダービー、菊花賞の勝利をした松ちゃんに俺からも花を添えて、全国大会優勝した蓮君にも応えなきゃならねえしな!

 

 

 もう少し! もっとギアを上げていくぞ! 松ちゃん振り・・・・問題ない! いいスタイルだ!

 

 

 さあーそのまま。残りもう少し、もう少し。

 

 

 『ケイジさらに引き延ばす! 黄金の不沈艦すらも振り切ってさらに加速! ものが違う! ひと夏を越えてさらに成長したか! ケイジゴールイン!! 四連敗からの見事復活! 国内では約1年ぶりの勝利をあげました!!

 

 

 帰ってきた! ターフの傾奇者が帰ってきたと同時に見事な勝ち名乗り、手柄を手にしましたぁああ!! 二着にゴールドシップ、三着にハートマン、四着にエイシンメビウス、五着にクライアントとなりました』

 

 

 勝った! いよっしゃああああ!! ようやく、ようやく手にできた! ケイジ復活じゃい!

 

 

 『くぁー速かった・・・オイラも追い込み今回はいい感じだったのになあ』

 

 

 『夏で鍛えてきたからな! まずは復活。お前さんのライバルだ。まだまだ簡単にはやられてやれねえよ』

 

 

 『なにおぉ? ま、今日は負けておいてやるでゴルシ。今度はジャパンカップで勝負だぞ?』

 

 

 『もちろん。そんじゃ、まずはこれをしねえとな』

 

 

 『ケイジ見事な勝利、そしてGⅠ14勝目! 祖父シンボリルドルフの倍の数のGⅠ勝利を手にするという。怪物の足跡がまた一歩刻まれた瞬間を天皇(賞)、天覧競馬の場で見せつけることに! 見よ! これが日本総大将だ!!』

 

 

 ははははは。そっか。この領域まで俺は来ていたか。でも、まだ残っているんだぜ? 勝負は。ここから。そしてー皆さん忘れていねえよなあ?

 

 

 スタンド前にポコポコ移動。

 

 

 まずは右にぴょーん!

 

 

 『『『オウ!!!』』』

 

 

 左にぴょ―ん!

 

 

 『『『オウッ!!!』』』

 

 

 首を下げてのー? 約一年ぶりの~?

 

 

 「ビヒィイィィイイィイイィィイッ!!!『いよっしゃあぁあああぁああ!!!!』」

 

 

 『『『ウォォオォオォッッ!!! ケ・イ・ジ!! ケ・イ・ジ!!』』』

 

 

 『復活のケイジダンス! 復活のケイジコール! 観客もこれを待っていたと言わんばかりの咆哮だ! ケイジ、松風戦国コンビ! まだまだ夢を見せてくれるのかぁああ!!?』

 

 

 

 この後、また千代田区のさる御方になでなでされて、また乗ってもらって少し歩いたり写真撮影した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いやーホンマ盛り上がりましたわ! 最高でっせケイジ君! もう筆が止まらなくて書きすぎだと編集長に怒られるぐらいで、ま、その分は別記事で使ってもらったんですが」

 

 

 「ハハハハ! 日本でも競馬ブームが熱いようだねえ。いやあ、ケイジ君。君は最高のナイスガイさ」

 

 

 秋天も終わり、ちょいと休憩していたら藤井の兄ちゃんとビリー牧場長がやってきた。どうしたんじゃろ?

 

 

 「いやあー新メジロの方でも重賞馬が出てきたし、アメリカでもいい結果を見せていてね。うちの牧場から何頭か買いに来てくれたりとで好調なんだ。それと。宣戦布告をしに来た」

 

 

 「ああ、例のジャパンカップですね? 今年はそちらも偉いのぶつけに来ましたよねえ」

 

 

 「おお? ビリーさんの方からも来るんですか。どの馬が?」

 

 

 そういって出走表を見せてもらう。ほんほん・・・・

 

 

 『ドリームシアターいるじゃーん! いいねいいね。アメリカダートクラシックの二冠、ケンタッキーダービーとベルモントステークスを制覇したんだよな。サンデーの孫がアメリカで二冠を制覇かあ。なはは! そいつがジャパンカップだあ? 最高だな!』

 

 

 「これ以外にもイタリアにオーストラリア、フランスからも参戦。皆ケイジ、ゴールドシップ打倒を掲げてくるようですし、ほんま、盛り上がること待ったなしですわ」

 

 

 「シンザン系の血も入っているのが助かったか、芝の方でのレースでもGⅡを勝利していてね。せっかくだ、里帰りと激闘をしたほうが燃えると思ってね。ケイジ、君の弟分であり弟子が襲い来る。気を抜けば勝利は僕とドリームシアターがもらっていくぞ?」

 

 

 『上等だぜ! あ、それはそれとして一緒にダーマみない?』

 

 

 しかし、もう出走予定決まったんだなあ。俺とゴルシもしっかりいるし。これは燃える。後、関係者には公表されているけどこうして晒すってことは、結構早めに藤井の兄ちゃん記事をかける余裕出来ているのか。

 

 

 ま、気持ちは燃えているが休めと俺今日はオフで最低限の運動のみで終わったし、一緒にこれみよーぜ―牧場長。

 

 

 「おお? 日本の特撮か。なら2話くらいは見ながら過ごそうかな? いいですか? ミスター葛城」

 

 

 「構いませんよ。ケイジも誘っていますし」

 

 

 「お、お茶は間違えてケイジ君が飲んだら大変なので水で申し訳ないです」

 

 

 「いやいや、ありがとう。どれ・・・おぉ? レオパルドん・・・?」

 

 

 しかし、アメリカのダート二冠馬に、また海外からの多くのメンバーが集まってのジャパンカップか。どうなるかねえ? あ、真由美ちゃん俺にも水ちょ―だい。




 復活の狼煙を見事あげました。


 アメリカからケイジと同じ前田牧場で生まれたドリームシアターが挑みに来てくれますた。父はステゴ、母はミホミサト。アメリカではサンデーの血がやばい、ケイジの母方やべえと大騒ぎになっておりました。二年連続で日本馬の血にアメリカダートクラシック奪われまくっております。


 ジャパンカップも濃いメンツを出せるよう頑張りまっす


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年末大騒ぎやなって

 自作内のキャラをちょっと出すか考え中。ゲスト出演的な感じで。


 船坂華奈 という子なんですがね。前田ホテルの支店のトップの一人とかで。シゲルスミオとケイジのディナーをしたホテルとかにいいかも。


 
【挿絵表示】






 あ、今回超短めです。申し訳ないです。



 


 「ワンワン、わん」

 

 

 『真由美ちゃん、目にクマが出来ているぞー? 明日から連休だってのに―』

 

 

 「うふふー・・・ちょっとワクワクしちゃっていてね? 大丈夫だよケイジ君。心配そうにしないで」

 

 

 いや、ふらっふらじゃないの。何していたんだあ? 記者に追い掛け回されていたりとかなら、警察とかにも相談したほうがいいってのに。

 

 

 「真由美ちゃん。キジノヒメミコに会えるのと、連休松風君と被ったのでデート行こうとしているらしいぞケイジー」

 

 

 「ふx・・・・モグッ! ななな・・・なんで知っているんですか久保さん・・・!」

 

 

 おお、しっかり声を抑えて話してくれている。真由美ちゃん成長したねえ。で、デートかあ・・・・・秋風から冬に移るこの季節。松ちゃんも俺にずっとつきっきりだし、いいねえ。そしてヒメとも?

 

 

 「いや、なんとなくそうなんだろうなって。いいじゃないの。しっかり羽を伸ばしつつ満喫してきなよ。いつも馬たちのお世話に日々頑張っているんだ。たまには俺らに見送られて女の子として過ごすべきよ」

 

 

 「は、はい・・・・! あ、それもですがヒメちゃんとも会うのも楽しみなんですよ? 欧州牝馬マイル無敗の三冠奪取。それ以降も無敗の王者。欧州に行く前のメジロライトニングとの併せでケイジ君以外の前田牧場の名馬たちに会えるのももう楽しみで・・・あう」

 

 

 「おっとと。今日は俺もいるし仮眠とってきなさい。テキには俺からも行っておくから」

 

 

 あーなるへそ。ヒメもマイルチャンピオンシップ出るし、確かメジロライトニングも欧州マイル三冠からのアジアマイル三冠を狙うんだっけ? そして主戦騎手は梅沢君。・・・・・・・・体内時計、大丈夫かな? つーか、海外飛ばされまくり具合は松ちゃんよりひでえな。バラエティー豊かな欧州のレース場を走る分鍛えられそうだけど。

 

 

 そんで真由美ちゃんは興奮しすぎたか立ち眩み。おいおい。こいつはろくに寝てないのもあるが疲労も抜けていないな。えーと・・・脱出用にちょいと改造したトングで・・・・よいしょ。

 

 

 ほれほれ真由美ちゃん。休憩室にゴー。俺が護衛してやるから。

 

 

 「い、いえ、お仕事ですしケイジ君も午後の・・・・ひゃっ!? ケイジ君? いつの間に!?」

 

 

 「ワワン、ぶるぅ」

 

 

 『今を時めく女の子が無理しちゃダーメ。ヒメと会う時間までは休みなさい』

 

 

 「ケイジも休めと言っているぞ。出ないとケイジは馬房に戻らないし、ゴルシに会いに行くかもしれないぞお? ほれほれ、休みなさい休みなさい」

 

 

 「は、はぁい・・・その、久保さん、ケイジ君。ありがとうね?」

 

 

 目にクマができている分、よりポケモンのオカルトマニアっぽくなっているけど、俺はいつもの健康的な肌色の真由美ちゃんが好きよ。だから今は休んだ休んだ。ヒメもライトニングも人の変化には敏感だからすぐわかるしな。

 

 

 「いいのいいの。後輩の助けをするのが先輩の仕事。後輩は無理せず仕事を覚えてくれればいいし、今度ヒメちゃんとライトニング君の話を聞かせてくれ」

 

 

 「あ、ありがとうございます本当に・・・写真とかも大丈夫ならしっかり取ってきますので・・・ん・・・」

 

 

 そういって休憩室のクッションと座布団を敷布団にして、タオルケットをお腹に賭けて仮眠を取り始める真由美ちゃん。じゃ、俺もここで護衛をしながら漫画を・・・・

 

 

 「こらケイジ。お前も休憩中とはいえそこに入り浸ったら大変だろうが。戻らないと」

 

 

 えー?

 

 

 「相変わらずだなあ。そして真由美ちゃんは体調不良かい? 給料ひかないでいいから早上がりにしてもいいが」

 

 

 「あ。テキ。実はカクカクしかじかで」

 

 

 まるまるうみゃうみゃうまよんなのよ。

 

 

 「なるほど。それならえーと、夕方になるころに軽く併せをするようだし、それまでは仮眠だな。飲み物も用意しておくか。久保、お前は何がいい?」

 

 

 「ゴチになります。えーと・・・午後ティーで」

 

 

 「ワンワン」

 

 

 『ミネラルウォーター』

 

 

 「ケイジ、お前さんにはあとでしっかりいい水を出すから・・・・ああ、それと。お客さんが今から来るんだ。ケイジ、お前さんも運動の際に来るそうだから、大人しくしておくんだぞ?」

 

 

 お客さんという言葉に首をかしげる俺。ほえ? 藤井の兄ちゃんとかなら大人しくとか言わないし、スーザンママも阿部さんもビリー牧場長も問題ねえ。ならなんだろ。競馬の運営の皆さん?

 

 

 まーいいか。へいへい。それはフリだろ? 変顔しろという。

 

 

 「・・・・・・・フリじゃないぞ?」

 

 

 『わかってる分かってる』

 

 

 「不安になる顔ッスねえ・・・あ、マンガをここで読むんじゃないの」

 

 

 この後、マンガ読んでから昼寝した。あー練習して、飯食ってからの昼寝サイコー・・・・・・・・くかー・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いやはや・・・実際に競馬場にも足を運びましたが、迫力が違う・・・そしてケイジは特に、周りの子たちもレースに出られる競走馬なのですよね?」

 

 

 「勿論っす。ケイジの場合はでかすぎるだけですからね。しかし、柏木社長直々に来るとは思いませんでしたよ」

 

 

 ほんで夕方、真由美ちゃんはヒメとライトニングを見るために移動して、俺とテキ、久保さんはウッドチップの練習場で軽く調整中。

 

 

 ここに来ていたお客さんってのが・・・君、ウマ娘に出演していなかった? 樫本って名前で。な見た目の若い女社長。うん。真面目にそうとしか思えねえのだわ。

 

 

 「父と兄がケイジと牧場の大ファンでして・・・それにわが社の子会社の乗馬クラブに関しても好調でいろいろ拡張とかそういう話があるので見学に。それと・・・・癒されますね」

 

 

 「ああー確か父親はあの岡山グループの土方会長でしたか。いつもケイジと前田牧場がお世話になっているっす」

 

 

 ドカちゃんの娘かよぉ!? いやー真面目に警備員の派遣には感謝しているぜ。今でも客さん多いし、たまに国の要人、大富豪が俺らを見に来るんだよね。一銭もこっちに要求せず俺らのために用意してくれるんだから感謝しかねえわ。

 

 

 そんで、癒される?

 

 

 「ウッドチップとはいえ、ああものびのびと好きに動いて、心底楽しそうに走るケイジ・・・私も仕事で見ていましたが、本当に、かっこよくて、可愛いですね」

 

 

 「でしょ? ケイジは俺らのヒーローで、戦友で、偉大な男っす。人懐っこいですし、触れてみませんか? なんかあった時の責任は俺がとりますから」

 

 

 「こら久保、そういう話は私にも通さないか。ま、どうだケイジ? 美人さんになでなでされてもらうのは」

 

 

 『OK牧場。ということで柏木ちゃーん。ほいほい。けいじだよーん』

 

 

 テキの裾を噛んでアイーンしてから早速ポコポコ。頭を下げて手の位置に。

 

 

 「くくっ・・・ほんとうにいろんなことを。お、おぉ・・・心地よい・・・・」

 

 

 「むふーワン」

 

 

 『久保さんにしっかりブラッシングしてもらっているからねー手がすべすべだあー満喫したー?』

 

 

 「わ、ワン・・・? いや、しかし・・・こんな大きな生物が人の言うことを聞いて、何十キロも出してレースをするのですよね・・・そして、仲良く・・・ええ、夢がありますね」

 

 

 「気性が荒いやつはほんと大変なんですがね。ええ、俺は見送る側っすけど、ほんと騎手と馬たちの息の合ったコンビとなっての戦いは熱くなるものがありますよ」

 

 

 「私は、それを支える久保さんら厩務員も素敵だと思いますよ。たくましいですし、それに、しっかりレースへと、テキへと送り出すお世話をする大事なスタッフですから」

 

 

 何やら柏木ちゃん久保さんにいい視線。これはー? おやっさん、俺らはあっち行こうぜ。何をしようか?

 

 

 「ん? ははは。そうだなケイジ。さて。今度は2400だし、身体は絞りすぎずにだな。スタミナも欲しいし、明日以降は坂路を抑えつつここでの走りをやっていくぞ。とりあえず、もう一周軽く流そうか」

 

 

 テキも察してくれたので離れての練習。久保さんと柏木ちゃんの和やかな談笑を見つつ楽しく練習しましたとさ。いやー冬になるってのにお熱いねえ。うちの厩舎は。久保さんにも一足先に春が来ているかね?

 

 

 あ、おやっさん。柔軟を今日から多めにしてくれ。ちょいとやりたい技のために一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これは・・・・凄いことになったわねえ。歴代のジャパンカップでも最高に豪華じゃないの?」

 

 

 「燃えるねえ。これはギンギンのビンビンになってしまう」

 

 

 「う、うわぁ・・・・・」

 

 

 「まさしく日本の最高の舞台になっているっすね」

 

 

 スーザンママと阿部さんが来て、明らかにウマぴょいしやがった! な真由美ちゃんと久保さん。俺で競馬新聞を見てジャパンカップに参加する馬たちの出走一覧を見ているんだが。こいつはやべえな。

 

 

 イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、日本それぞれクラシック、ティアラを一冠以上獲得、ダービー制覇をしているメンバーが参加、イタリアからも海外GⅠ制覇をしている名馬がいて、オーストラリアからもGⅠ複数勝利をしている怪物が参加。更には今年の凱旋門賞馬、KGⅥ&QES馬も参加の豪華も豪華。

 

 

 日本からも俺、ゴルシが参戦しての形になるから、えーと? GⅠ制覇馬が11頭近く出走、7か国以上から集う怪物たちの祭典かあ。燃えるねえ!! そしてマイルチャンピオンシップにはヒメも参戦してのまさしく世界のこの時代の名馬たちが集う騒ぎに。いいねえ!

 

 

 「これは、ケイジちゃんに一点買いよ! 応援も兼ねて、日本総大将の意地を見せつけるのよ!」

 

 

 「参加している海外メンバーも皆が打倒ケイジを掲げるか。まさしく最高の手柄と名誉を求めるか。いい男たちも女たちも山盛り。最高の舞台だぜ・・・これは会社も休んで応援に行かないと損だ」

 

 

 「ケイジの体重もベストの650キロを維持だな。風邪もひかないようにしないと・・・よし、気合を入れ直すぞ」

 

 

 「はい! 久保さん! ケイジ君。がんばろうね」

 

 

 「ビヒーん」

 

 

 『もっちのロンよ。いやーこれは良いな。見ていろよ世界。日本でも俺は強いんだって見せつけてやるぜー』

 

 

 さあ、秋の二冠目。これは大盛り上がりになること請け合いだぜー?

 

 

 

 

 




 思えばここまで豪華な年ってそうはないかも? 競馬ファン大盛り上がりしているのかなあ。


 次回はジャパンカップ。ある子を出せるよう頑張ります。


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やべえの来たなあ ジャパンカップ(GⅠ)

 活動報告を一つの作品でここまで出せるってほんと不思議に思えます。皆様の感想、評価、誤字報告、いつもありがとうございます。愉快な感想が多くて私も活力になっております。活動報告でもコメント待ってまーす。


 この世界でのウイポ、ケイジらと前田牧場の扱いってどうなるのでしょうかね。主人公らのお助けキャラ、珍しいというか、受けの広い牝馬や牡馬を都合してくれるお助け牧場。若しくはのほほんとした先輩ライバルポジなのか。



 『さあ、美しき国鳥が翼を広げた! ゴールめがけて一直線! これが姫の走り! これが翼を持つものの速さだ!』

 

 

 『お兄様へのバトンタッチ、梅沢さん、的矢さんへの恩返しのためにも負けるわけにはまいりませんのよぉおお!!』

 

 

 「うぉぉぉおお! お、落ち・・・・ぐぅう! 頑張れヒメ! もう少しだ!」

 

 

 『欧州を震撼させたマイルの女王! 見事凱旋帰国と勝利、その強さを見せつけた! キジノヒメミコゴーォーール!!! 二着のモーメンズに2馬身、二着以下に5馬身を叩きつける圧倒的強さ! 欧州で磨かれたその速さと美しさに誰も追いつけない! ここマイルチャンピオンシップを獲得し見事無敗のGⅠ5勝をゲットしました!!』

 

 

 『やりました梅沢さん、的矢さん! これで晴れて2歳限定以外の国内GⅠもプレゼントですわー!』

 

 

 「はぁ・・・はぁ・・・さ、流石ケイジの妹分・・・ありがとうヒメ、僕も・・・最高の気分だ」

 

 

 『えへへ。ありがとうございます梅沢さん。さて・・・・後はお兄様ですね。なんでも凄いのが来たと的矢さんが言っていましたが・・・お兄様ですもの。勝ってくださいませ!』

 

 

 『キジノヒメミコと梅沢騎手の仲良くじゃれ合う光景。同じ前田牧場のケイジ、そして若き天才松風騎手を思い起こさせるような光景に思わず頬が緩みます。そして・・・・おお!? まさか、これはまさかしてしまうのかぁあ!!』

 

 

 『お兄様の勝利と、的矢さんたちへの祝いも兼ねて、真似させてもらいますよ♪ 右へぴょーん』

 

 

 『ケイジダンス! ケイジダンスをまさかのキジノヒメミコも披露! これには会場も応えて大合唱! ヒメコールが会場を埋め尽くします! 傾奇者と同じ牧場の名牝。彼女もまた場を沸かせるエンターテイナーでした!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ここまで国際色豊かかつ、最強がそろうレースがここまであったでしょうか!! 日本を含めアメリカ、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、オーストラリア、七か国の重賞、GⅠ、ダービー、クラシックいずれかを手にした名馬たち18頭が一堂に会する大舞台、ジャパンカップが幕を開けました!

 

 

 お聞きくださいこの熱狂! 観客は満員御礼どころか制限されるほど! 世界の視線も集まって今か今かとレースを待ちわびております!!』

 

 

 いやーヒメがまさか俺と同じパフォーマンスをするとはねえ。今度会った時はしっかり色々感想とか聞きたいなあ。梅沢君最初落とされそうになっていたのが爆笑だったぜ。不意打ちだったみたいだしなあ。

 

 

 で、アナウンサーさんも盛り上がってんねえ。まあ、実際に海外のメディアもいればなんと参加国全てに衛星放送されているというからすげえ話だ。

 

 

 それほどに俺らの首が欲しい、倒した名誉が欲しいってんだから、嬉しいねえ、燃えるねえ♬

 

 

 『海外のホースマン、陣営いずれも同じことを言っていました。前代未聞、欧州二冠連覇を成し遂げたケイジ、そのケイジを何度も下しているゴールドシップ。その二頭を倒すためにここに来た! 日本最強のサムライホースたちに挑戦しに来たのだと!!

 

 

 日本総大将! そして副将たちの地で倒して見せるという熱気が世界からこの日本に集結。まさしく名将、怪物同士のぶつかり合いとなることでしょう!!』

 

 

 まあ、ここで俺らを倒せばまず評価は爆上がりだよなあ。日本芝という独特のカチカチ具合の馬場で、クラシックディスタンス。2400メートルという国際的にもいい距離で俺らを倒せば引退後の産駒や種付け料金爆上げ。

 

 

 何より、名誉がでかい。俺らを倒すというのはそれくらいの価値があるんだろうなあ。なんか俺とゴルシ国際レート1位と5位だったし。ジャスタの次に俺も世界一だぜ。わーい。

 

 

 『さあ、まずは昨年アルトリアも送り込んできたイギリスからダービー馬が再び参戦! ランスロットがここに見参! 続きましては・・・・』

 

 

 まあ、色々来ているが、空気もある程度なれている、感じる強さもまあ大丈夫・・・が、明確にやばいと俺が感じるのが三頭。一頭は言わずもがなゴルシ。

 

 

 『そしてそして! サンデーサイレンスの孫がアメリカで二冠! ケンタッキーダービーを制覇し、ここ日本にも来てくれました! 母はケイジと同じくミホミサト! 大いなる劇場をここでも開演なるか! ドリームシアターここに参上!』

 

 

 そしてもう一頭が俺の弟分であり、短い間だったが弟子でもあるドリームシアター。何が怖いって? こいつ自身も才能をステゴとおふくろから引き継ぎつつレースは大好き。で、ナギコがアメリカにいる間は併せとかで技術を叩き込んでいる。俺とナギコの技とコーナリングを手にしているサンデーの孫って時点でなあ。

 

 

 『いよいよやってきましたオーストラリアが生んだ怪物牝馬! 母国ではあのキャビアプラットを超えるとも評価される名牝が殴り込みだ! その美しい瞳が見据えるのは日本総大将とジャパンカップの勝利のみ! ウィンクガールがやってきた!』

 

 

 で、この子よ。将来のGⅠレース25勝の超天才。真面目に次元が違う現代のキンチェムといってもいいやべーのがやってきた。もうオーラがみえるのよ。俺も燃えているがこの子はすげえ。ブロリー見ている気分。あ、一応いうと超美人よウィンクちゃん。

 

 

 んー? でも、距離適性2000くらいまでだったような?? まさか、鍛えて伸ばせたとかじゃないよな・・・でも、そうじゃないとここに来ないし、うーむ。わからん。ここにジャスタがいたらなあ。それこそオーストラリアで二頭の決戦見たかったぜ。

 

 

 

 『そして、それらを迎え撃つのはわれら日本が誇る最強世代! その二枚看板が登場だぁああ!! まずは6番ゴールドシップ! 阪神大賞典、宝塚記念三連覇を達成し、春古馬二冠も獲得したまさしく黄金の不沈艦! 国内ではケイジに一番多く勝ちを奪っている葦毛の怪物が堂々見参! 今日も気合・・・十分すぎてロデオのような暴れっぷりを早速して調教師を振り回しております!』

 

 

 『放せ茄子ー!! お前を蹴らせろやおらああ!! ケイジとの舞台にはジャマ! 伊馬波さん寄越せー!!』

 

 

 「やめろゴルシ―!! きょ、今日は文字通り世界も見ているんだから大人し・・・・ぬぉおおお! 蹴らないでくれ!!」

 

 

 『あ~~~っははははははははははは!!! あははははは!!!!』

 

 

 相変わらずすぎておもしれえなあおい。パドックですらこれかい! 全く、日本の副将がこれだと思いやられるぜ。なら俺が手本を見せないと。

 

 

 『さあ、そして世界が倒したいと願い! 日本が信頼を託す最強の名馬! ターフの傾奇者がやってきます! 7番ケイジ! 欧州二冠連覇! ワールドレコードを幾つも持ち、それは欧州の重い馬場ですら成し遂げた怪物! 海外戦績においてはジャスタウェイ以外には一切負け無しの豪傑! かつてのスペシャルウィークのように日本総大将の名を背負い、今日も桜のメンコをつけて参上!

 

 

 ・・・・こ、こちらも何やらワチャワチャ動き回ったあげくに厩務員を手綱でグルグル巻き、独楽のように回しております! 何をこの期間中に覚えて来たんだケイジ!?』

 

 

 『これが日本の元気さ、ガッツ、ハッスル、情熱じゃい! いつもより多めに回っておりまーす♬ よいではないかよいではないか』

 

 

 「のわぁああああ!!? ケイジぃぃいい!!わめ、目が・・目がぁああ!!・・・・おぉおお」

 

 

 『バルス! じゃないわ。ほれほれ。くらくらしないのん久保さん。バレリーナ、フィギュアスケート選手のようにしゃっきり。よいしょ』

 

 

 ふらつく久保さんを俺が支えつつ一緒にポコポコ。いやーいいねいいね。盛り上がっているねえ。観客なんて大爆笑・・・あ、国光君に蓮君。老夫婦にマタギのおっちゃん。遠くで幸太郎の声も聞こえるし、うんうん。ほとんど顔なじみ・・・・・・おい、ムランルージュの今日の格好ヴィレッジピープルじゃんかよ。

 

 

 『『『なんだこいつら・・・・・』』』

 

 

 『なんだってチミは? そうですわたすが日本総大将です』

 

 

 『おっひさ―♪ ってわけでもねえか。ケイジ、今日も調子良さそうだねえ』

 

 

 『おうさゴルシ、待ちに待った、さらに盛り上がっている大舞台なんだ。やる気が出るよなあ!』

 

 

 『茄子のおっちゃんのせいで嫌だったが、ああ、この会場の声と、お前見たら元気でた! うっひょーかわいこちゃんもいるし、へいへいーお茶しなーい?』

 

 

 俺らがお茶飲んだら駄目だぞーせめて引退後だ。お? ドリームシアターにウィンクガールが。

 

 

 『ケイジの兄貴。お久しぶりです! このドリームシアター再び会えたのが感激だ!』

 

 

 『お久、ドリーム。聞いているよー? アメリカでも超人気なんだってなあ。ナギコも言ってたぜ。必ずアメリカの時代最強になるって』

 

 

 『今来ているアメリカンアテムとはいいライバルで、いやあ、危ういところだけど、ナギコの姐さんの期待に応えるためにも負けないです。あ、それと、シゲル先輩からケイジの兄貴に頑張ってねってコールが』

 

 

 これマジ? ってあーそうか。同じビリー牧場長の牧場で過ごしているから、友達になっているのね。納得納得。そして、アメリカの地で種牡馬として頑張っている友からの声援もあるか・・・いいぜえ!

 

 

 『なら、見せてやろうじゃないの。日本総大将。HENTAI民族ニホンジンの生み出した皇帝と最強の血を引くものとしても愉快な強さを見せてスミオのライバルとしてもふさわしい戦いをな!』

 

 

 『相変わらずですな兄貴。ですが・・・今日は勝たしてもらいやす。兄貴に姐さん、そしてビリー牧場長への恩義と技の継承者として、師匠越え、恩人へのお返しはそれが一番。勝負だ! ケイジの兄・・・いや、ケイジさん!』

 

 

 『上等。叩きつぶしに来いルーキー、ねじ伏せてやる』

 

 

 互いに不敵に笑ってから会話を切るドリームシアター。集中しに入ったか。こいつの場合は差し気味の先行策からの俺のコーナリングで優位な場所をキープ。からの血統と才能から来るスタミナで残した足をナギコ譲りの追い込みの技術でまくっていく戦法を使う。

 

 

 高速レース、お祭り騒ぎのアメリカらしい戦法だな。さて。あれを使う以上はまるとは思うから相性は良さげだが・・・どうなるかねえ。

 

 

 『・・・・・・・大物ですのね。日本には凄いやつがいるとオーナーも、厩務員さんも言っていましたが、凄く強く、かっこいい殿方ですこと。お初お目にかかりますケイジさん。ウィンクガールと申します』

 

 

 『ん・・・? おお。ウィンクちゃん。こいつは丁寧に。俺はケイジ。ま、日本総大将を張らせてもらっているぜ。世界の女王様』

 

 

 『世界などと。オーストラリアで頑張っていますが国外戦など今回が初。まだまだオーストラリアでもキャビアさんという女傑がいる以上遠い遠い』

 

 

 『未来では間違いなくお前さんが記録を抜くよ。断言するさ。俺を超える傑物になるよ。まあ、とはいえ、まだ俺が強い。勝利は譲らんよ。美人さん』

 

 

 うーん。言葉遣いはジェンティルちゃんやヒメに近いが、ノリはヴィルシーナに近いねこれ。だけど、纏う空気は既にこの時点でオルフェや昨年の有馬で戦ったジェンティルちゃんに匹敵するわ。

 

 

 ・・・・まったく。ドリームにゴルシ、ランスロットにシャルルマーニュ、アテムと海外の怪物ぞろいだってのに、これに並ぶかやばいのがこの子かあ。性格からして俺がやりたい策にもはまるかどうか。

 

 

 

 『随分と私を買うのですのね。そしてありがとうございます。ですが、この日のために2400以上を戦えるように鍛えました。オーストラリアに日本のG1の勝利と、何よりあなたからの勝利を奪います。侮らないでくださいね?』

 

 

 『そっちこそ。俺だって油断はしねえ。全員まとめて叩きのめす、勝利するためにここにきている。もう老兵と呼ばれる年齢の俺だが、油断すりゃあ経験で翻弄してやるさ』

 

 

 『衰えの見える顔でもなければ、かっこいいのですがねぇ? 老兵っていう年齢ですの?』

 

 

 『俺6歳だぞ?』

 

 

 『ウッソでしょう!!? ・・・・・・・ま、まあではお手柔らかに。どうかいい勝負を』

 

 

 ウィンクちゃんも大人しくパドックの中に入ってグルグル周回。なんで俺の実年齢聞いたら驚いたんだろう? 同い年に見えたとか? いやーそれはねえよなあ。なんじゃろ。

 

 

 ま今はそれを終えて、松ちゃんを乗せてのグルグル。大人しくカメラを見つけたら変顔と決め顔交互にしながら大人しく体をほぐしますか。ゴルシは相変わらず周りに喧嘩を売るかナンパするかの元気具合だし、あれ? 騎手池沼さんなんだ。ほんとゴルシ陣営は騎手がよく変わるなあ。いや、俺も今までの経歴からすると騎手三人乗せているけどさ。

 

 

 『さあ、いよいよ本場馬入場となります世界各国の名馬、この時代の頂点の多くがここにきていると言っても過言ではないこのレース。文字通り勝てばホースマンとしての名誉の多くを手にできる偉大なる一戦。天もこれを祝福しているように快晴となっております』

 

 

 さてさて。芝の上で軽い返しとゴルシと遊んでいたらー・・・・あ、神様。それにテイオーにルドルフの親父に爺様、シンザンのひい爺様もいるじゃねえの。まあ、間違いなく世界中の神様と話題にしているんだろうなあ。そんで観戦しに来たと。真面目にどこぞの最聖コンビのお兄さんらみたいに気軽に降りてきてんねー。

 

 

 じゃ、見せつけてみますか、俺と松ちゃん、テキのおやっさんでやれるだけやってみた技術の一つを。

 

 

 『伝統的距離クラシックディスタンス2400メートル。この距離の戦いで、まさしく世界最強の名馬は誰か、それと共に戦う騎手の強さも見せつける。人馬一体の戦いを見せてくれるでしょうジャパンカップ。いま、続々と名馬たちがゲートに入っていきます』

 

 

 

 さてと、俺もゲートの中にガチャンとな。

 

 

 「さて・・・やろうかケイジ。うまくいけばきっとマジシャンといわれるよ」

 

 

 『松ちゃんこそナー見せつけてやるさ』

 

 

 『今最後にドイツダービー馬、アドンが入りました・・・・・スタートしました! いよいよ始まりましたジャパンカップ! まずはケイジが先頭に躍り出る! あっという間にハナを奪い前に前に! 今回は大逃げか逃げか! そこについていくのは凱旋門賞馬シャルルマーニュ、アメリカのコンビアメリカンアテム、ドリームシアターが続く。その真横にウィンクガール、後ろにイタリア代表ニッチェ、ドイツ代表アドン、イギリス代表ランスロット、そしてゴールドシップと続いていきます。

 

 

 先頭ケイジと後続の差はおよそ3馬身。今回は逃げで行くようです戦国コンビ。相当な脚の回転を持って前に前にと出てそのまま第1コーナーに』

 

 

 さてさて。まずは順調。そして、早い脚の回転で相当前に出ていると思えるよな? 周りもせっついてくらあ。

 

 

 さあ、まずはココで脚の回転を緩めて脚幅は広く。ストライドの変化を加えつつ、加速を鈍らせてコーナーに。

 

 

 ・・・・・・・で、このカーブで・・・変化! 加速をして一気に第一コーナーを抜ける!

 

 

 さらに、ここでストライドを短く! でも速いままに!

 

 

 『おっと? ドリームシアター、ケイジに仕掛けていきます。コーナリング技術でケイジに相手しようというのか、しかしシャルルマーニュを抜いたところで止まり先頭は依然ケイジのまま第一コーナーを抜けます。

 

 

 後続もコーナー抜けますが、ケイジとの差は広がる! 4馬身、5馬身と広がる! ケイジを逃がすまいと周りもギアをあげていきます。そうです。大逃げを許してしまえば喰らい付けたのはわずか数頭のみ。逃げから大逃げに変化を許さないと猛追していきます』

 

 

 向こう正面に出た。よし! 減速するがストライドは広く変化! 息を入れつつ、伸びた分、ここであえて餌を巻くぞ。

 

 

 松ちゃんも姿勢がいいね良いねえ。低くして既に加速しようとしているように見えるし、俺が加速するときの脚使いや空気を出しているから周りも俺を研究している分逃がさないと追いつく。

 

 

 でもさー? コーナーで俺レベルのコーナリングと加速をして、一気に前に前にと気持ちを焦らせて、それを馬に伝えていいのかい? ジョッキーの皆さん。俺を捉えたいという焦り。消耗はどれくらいになるのやら。傾奇者は場を沸かせてなんぼ。そのための晴れ舞台に技術は惜しまねえぜ。

 

 

 『おっと! ウィンクガールにドリームシアター! そしてランスロットがケイジに迫りおよそ2馬身、最内と2番手を狙いデッドヒート。その後ろにショウナンノア。ゴールドシップがついていきます。

 

 

 今回はゴールドシップはやや先行気味ですが後ろから様子をうかがう珍しいスタイル。ケイジを狙うも、彼にとっては不気味な位置です。おっと、アメリカンアテム、ケイジに大外から回して鼻差まで迫りました。これは追いつくのか? 1000メートルを通過、タイムは・・・おおっと!? 59秒8!? そこまで速くないぞ!』

 

 

 『いよっし! おい・・・あれ? 思った以上に速くない・・・? でも、足の変化とか、加速が・・・・あ・・・・!』

 

 

 『む・・・この距離で、加速をするのではなく減速!? え? もっと走っていると思っていたのに!』

 

 

 『・・・・ハメられた! ケイジの兄貴に!!』

 

 

 ナハハ。俺の走りで加速をいつするかとかを誤魔化した甲斐があるね。ここで勝負だと思っちゃった分、消耗はするだろう? で、俺に関しては慣れてんだよねえ。こういう後ろからのプレッシャーに!

 

 

 行くぜ松ちゃん! 残り約5ハロン。全部注ぎ込んでいこうぜ!

 

 

 「さあ、ここからが本番だ!」

 

 

 『1400メートルを通過し、残り1000メートル。ケイジ達が更に加速! いや、このタイムを見ても彼らはまた幻惑していた! かつてのジャパンカップのような幻惑の逃げ! トリックスターぶりをまたまた見せつけた! アメリカンアテムを引き離しそのままケイジ向こう正面から第3コーナーへと入っていく!

 

 

 ウィンクガール、ドリームシアター、ショウナンノアが追いますが差が縮まらない! 一気に、一気にケイジが伸びていく! コーナー勝負はケイジの十八番! ここからさらに伸びていきます! アドンにランスロットも仕掛けていきますがケイジ伸びる伸びる! 後続に再び距離をつけて6馬身と伸ばしていく! 第3コーナーを過ぎて早くも第4コーナーに! もう残りは最後の直線が見えてきているぞ!』

 

 

 今回は向こう正面で息を入れているからな! コーナーでもグイグイ息を入れずに加速よ! さあ、俺の速度についてくるかい? ついて来たら・・・・足がヘトヘトになるぞ?

 

 

 いや・・・ウィンクガール、ドリームシアターは鋭いな。内を開けて直線勝負に賭けていくか。周りは焦ってそこに来て、俺がコーナー技巧者だからそこで息を入れていくっていう情報をもとに少しでもいい位置で最後の底力に賭けるって感じか。

 

 

 『やっぱケイジはそうするでゴルシよー。色気を感じていたからココで勝負でゴルシ』

 

 

 『くっそー! やっぱくるよなあ。来るよなあゴルシぃ!!』

 

 

 『さあ、ケイジ最後の直線に・・・あっと! スーッとゴールドシップが外から出てきたぞ! 馬群が伸びた今がチャンスといわんばかりに一瞬の間に先頭に躍り出た! 黄金の不沈艦ここで抜錨だ! ケイジもさらに足を使い伸びる伸びる! セーフティーリードを保とうとするがゴールドシップグイグイ縮めていく・・・・!?

 

 

 残り500を通過! ここでウィンクガール! ドリームシアター! そして最後尾のニッチェムが飛んでくる! ゴールドシップと競り合うように横に広がりケイジを追いかける! 日本総大将の首を取らんと包囲網が迫ってきたぞ!』

 

 

 「粘れ! 粘るんだケイジ! あともう少し! お前なら逃げ切れる距離だ!」

 

 

 おうさ松ちゃん! 距離は縮まっているが、気迫は感じるが疲労の色も濃い! これならどうにかなるはず!

 

 

 『くぅうう! 体内時計を狂わされていたというの!? どういう逃げですか!! まだ・・・まだまだああ!!』

 

 

 『これで尽きるスタミナしていないぞ! 負けねえケイジの兄貴! アメリカのお祭りレースで鍛えた根性ぅうう!!』

 

 

 『おおー暑いでゴルシーじゃ、ちょっと横に避けて観客の声を聴くでゴルシ』

 

 

 うぉぉおい!? マジか! 距離が詰まってきているぞおお!? 真面目にエイシンフラッシュらを翻弄した時以上の手ごたえだったってのに!? 何のこれしき! まだまだエンジン再点火! ってゴルシファンサに走ってんじゃねえよオラァン! おめえあの阿寒湖かよぉ! 

 

 

 ああそうだこいつその息子だったなあ。おいこら見ているだろ!! お前の息子さんどうにかしてくれよぉおん!! 神様と一緒にチーカマとマグロ串かじってねえでさ! あ、ビール美味しそう。喉乾いてきたし、早く水飲みたい。

 

 

 『残り300を通過! 先頭はケイジ! 二番手争いが熾烈だが二頭に絞られた! ウィンクガールとゴールドシップおよそケイジとの差は3馬身! 凱旋門賞馬もドイツダービー馬もものともせずにこの4頭の勝負に絞られていく!! 日本総大将と副将の意地が光る! 黄金の不沈艦と傾奇者の三振り目の名刀が束を斬り捨て、抜き去っていく! しかしそれに喰らい付くのがオーストラリアのウィンクガール! アメリカのドリームシアター! これは分からない! これはどうなるか!

 

 

 残り100! ケイジとの差は2馬身だが、決まった! これは決まったあぁアアアア!!』

 

 

 悪い実況のおっさん! ゴルシ半分遊んでいるんだわ! 意地どころかエンジョイだよコノヤロー。

 

 

 そんでぇ! 悪いな次世代の皆。まだまだ勝ちは譲れねえんだわ。狙っているもののためにも、期待の分も負けられねえ! もらったぁああ!

 

 

 『ケイジだケイジだ! ケイジがゴールォオオルインッーーーーッッッッ!!!! ケイジが一着で駆け抜け見事勝利! この世界レベルの怪物たちが集うジャパンカップを制覇しました!!見事見事! 世界最強の栄光を見せつける形になりました!

 

 

 二着はウィンクガール! 三着はゴールドシップ、四着はドリームシアター! そして五着はアドン! 6着はショウナンノア! 凱旋門賞馬、KGⅥ&QES馬たちですら掲示板に入れない。超ハイレベルなレースでしたが二着に2馬身と半馬身差をつけての快勝! これが日本総大将! これがターフの傾奇者ケイジ!! まだまだ衰えたとは言わせない! 稀代の幻惑逃げを持って圧倒しました!!!』

 

 

 ふぃいー・・・なんか後半ゴルシのせいで気が抜けかけたけどどうにかなったか。いやー良かった良かった。なんか、快勝したってのに気持ち良さよりも安心感が強いって久しぶり。

 

 

 『ケイジこれでGⅠ15勝! 二度目のジャパンカップ制覇を松風騎手と共に獲得! 文字通り文句なしの強さを見せつけての勝利です!

 

 

 しかしアメリカの雄にして二冠馬ドリームシアター、名牝にして怪物ウィンクガールもケイジに迫る怪物ぶり。あともう少し経験を積んでいればどうなるかわからないと思うほどの強さを見せました。ケイジの勝ちですが同時に此処に集った名馬たちのレベルもまたとんでもない。

 

 

 弱くはなく一枚上手だったとしか言えない。そんなジャパンカップ。これを実況できたことを誇りに思うほどです』

 

 

 だなー真面目にちょっと前だったら10着までレコードレベルの速度で走っているというとんでもない速さのレースだし、前半俺が翻弄したのにこれってことは、後半で全員末脚使ってこのレコードレベルの速度を出したってこと。誰が弱いとかじゃなくて誰が一枚上手だったか。底力を出せたか。そんなレースだったわ。

 

 

 『やっほーみんないい声出してんねえ。そんなに嬉しいのか―い?』

 

 

 『そりゃーそうだろ。このレースはたぶん歴史ものだぜ? で、ゴルシおめえ。最後気が抜けたな?』

 

 

 『そんなことないでゴルシよ?』

 

 

 『舌ペロして可愛い顔しても分かるわい! まったく。ウィンクちゃんを超えることだってできただろうに』

 

 

 『いやー可愛いお尻をしていたのでついつい見惚れて』

 

 

 うーんこの。ま、どちらにせよ勝ちは勝ちだ。お前さんもしっかり休めよ。

 

 

 『くっそー!! 届かなかった・・・・!!』

 

 

 『あんな逃げ・・・初めてです。これが日本の怪物、総大将・・・!』

 

 

 『お疲れさんお二人さんよ。ははは。俺にいい逃げ方を教えてくれた人らと、付き合ってくれた人らの分の勝利だからな。今回は引き出しの差で勝ったようなものだ』

 

 

 で、俺に喰らい付いてきたこの2頭にも労うかね。俺らの弟子と、未来の大天才を潰すのは流石に忍びねえ。

 

 

 『お前さんらはまだまだここから戦うだろうし、その分多くの出会いもある。そこから技を盗んでいきな。俺も、ずっとターフでライバルたちと凌ぎ合ってきて、いろんな技を試してものにして、勝って負けてここまで来た。

 

 

 あんたらの才能なら、俺以上に負けることは少なく必ず俺を超える戦績を残せる。頑張れよ。未来の最強候補たち』

 

 

 『兄貴・・・・・オッス! 頑張りやす! ・・・・今日のレースありがとうございました! どうかお元気で!!』

 

 

 『・・・・・・・本当に、かっこいいですね。ええ。なら、今度もまた会えるように、強くなってきますので。そして、勝利おめでとうございます。ケイジさん』

 

 

 ははは。いいねえ。俺も、ルドルフ爺さんや、多くの怪物たちを追いかけて戦って、追い抜こうとしていたらいつの間にか今度は追いかけられる側か。楽しんで過ごしてきた日々がこうして指針になるのなら悪くはねえ。ああ、悪くないねえ♬

 

 

 じゃ、その先輩として、一つまた盛り上げ方を見せつけちゃいますか。行こうぜ。松ちゃん。

 

 

 「いよっし。ケイジ。今日は僕にも少し一緒に盛り上げるのを手伝わせてほしい。本当に、君ばかりに盛り上げをさせてもらっている分ね」

 

 

 おぉ? いいぜー一緒にやろう。なにせ戦国「コンビ」だからな! 一緒にやってなんぼだ!

 

 

 『さあ、これでいよいよ残すは有馬記念! 秋古馬三冠をかけた戦いにしてKG対決最後の舞台! ここまではケイジが盛り返すように二勝していますが、やはりまだまだゴールドシップは油断ならない。

 

 

 そして、ケイジと松風騎手がスタンド前の中央に来ました。さあ、皆さま、いつもの時間です! さあのどを潤し気合を入れましょう!』

 

 

 アナウンサーさんも超ノリノリじゃん。真面目にこれ後で怒られない? 脳破壊されていない?

 

 

 さあ、いくぜえ! 右へぴょーん

 

 

 『『『ォオウ!!』』』

 

 

 左へぴょーん

 

 

 『『『ォオオオオオッ!!』』』

 

 

 はい、首を下げての~? 今日はちょっとためを作って・・・・・大きくナポレオンのあの絵画のように体を起こします!

 

 

 

 「ビヒィィイィィイィイィイィインッッッ『ィィイッヨッシャアアァアアアアアアアアアア!!!!』」

 

 

 「皆さん、応援ありがとうござ―まーす!!」

 

 

 

 『『『ウォオォォオオっっっ!! ケ・イ・ジ!! ケ・イ・ジ!! まーつかぜっ!! まーつかぜっ!!』』

 

 

 

 ははははは!! 松ちゃんも手をあげてのガッツポーズに良く通る声出すじゃん。流石イナイレの円堂監督の声しているだけあるぜ!

 

 

 そして海外の皆さんも一緒にコールサンキュー!! 最後の有馬記念も、よければ来てくれよなー!!!!

 

 

 『会場の皆さんで割れんばかりのケイジ、松風コール! 戦国コンビを祝福するように、天へも届く大合唱! ゴールドシップにドリームシアターも一緒に大きく嘶いてはケイジを祝福しているようです! ありがとうここに来てくれた名馬たち! 名ジョッキーたち!! 今ここに伝説の一幕を刻んでくれた皆様に、応援してくれたファンの皆様に感謝を! それしか、今はそれしか言えません!!』

 

 

 ああーいい空気だなあ。皆で騒ぐこの感じ。これも・・・あと一回のみか。頑張るぜ。皆。




 オーストラリア最強の女王も見事粉砕。世界でも伝説のジャパンカップになりましたとさ。


 そしてケイジの戦いも残すこところ有馬記念のみ。


 ケイジ 脚使いとペースを変えて距離感や速度を狂わせる逃げを覚えたので披露。真面目にゴルシ以外は全員翻弄したので満足。足の負担も問題なくすぐご飯と水寄越せとねだった。


 久保さん 今回の被害者。ケイジに独楽のように回された際にシャツのボタンがちぎれちゃった。久しぶりにパドックで誘導してこれをされてと大変な一日だったけど、ケイジの勝利を生で見れて満足。


 ゴルシ 後半気持ち2割手を抜いていたというかファンサに走った。でもケイジを一番見てきているので幻惑逃げは即座に見抜いて後半仕掛けたりとでやっぱりやべーやつ。伊馬波さんに頑張ったなあと労われてうれしかったがやっぱり茄子は嫌い。


 ドリームシアター、ウィンクガール、ほか海外の名馬の皆様 まとめてケイジの幻惑逃げに翻弄されまくって変な消耗を強いられて敗北。この後みんな前田牧場や周辺の牧場で休養。陣営の皆様はそろってケイジらのいく神社でお参りしてきた。


 世界 ケイジとゴルシやべえと再確認。サンデー血統、特にステゴ系を欲しがる声が多数で日本の中小牧場にいるサンデー血統まで欲しがる凄い事態に。ケイジの子が出てきたときの対抗として手に入りやすいステゴの血を欲しがっているとかなんとか。


 キジノヒメミコ ケイジの前哨戦的なノリだったマイルチャンピオンシップで快勝。ケイジの勝利にはもちろん大喜び。ドリームシアターも大健闘したのには素直に称え、今度は自分ともぶつかるのかなあと想像していたり。


 松風騎手 ケイジの逃げには基本何も邪魔せず、最後の押しと最初の位置取りを助けた。だんだん度胸もついてきているのだが、同時にテンションの高さはケイジとのターフでの別れが近いのを悲しんでいる分もある。


 神様 観戦していた。当然ケイジらの行動は爆笑していたし、馬券も賭けていた。ルドルフとテイオー、シンザンとスズカが即座にケイジの戦い方を見抜いているところにやっぱり血のつながりや同じ戦い方をできる分分かるんだなあとしみじみ思っていた。打ち上げは居酒屋でタコ天と焼酎、マグロ串とポテトサラダで満喫。


 


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ウマ娘エピソード 16 前田家の悩み?

 今回は箸休め会。山無し落ち無しの話です。それでもよければどうぞ読んでくだされば幸いです。


 「ん・・・お疲れだね立花。そしてお帰り。ケイジは寝ているのかい?」

 

 

 「はい。大奥様。ぐっすりと。ラスベガスでのマジック、イリュージョンとライブショーは大成功。大統領をはじめとした方々との会食も終え、帰りの飛行機から時差ボケを抜くと言って眠ってそのままですね」

 

 

 夜分、丑三つ時とは言わないが、まあ日付が変わる少し前の時間。戻ってきた前田家のメイド長。の教育係をして、ケイジの専属のばあやをしている立花が戻ってきて私にそう伝える。

 

 

 娘のシンザンの付き人、護衛として鍛えてくれて私と同期からたの・・・いや、当時のあちらさんの家の貧しさゆえに私らに育ててほしいと言われ、それを感じさせずに我が娘のように育てた。それは立花の家を建て直すのを手伝い、今はうちの子会社になって成長させても変わらずに。

 

 

 執事の方も同じようなもんだ。まさか夫婦になって、互いにしわまみれになってもこうして同じ屋根の下で同じ釜の飯を食い、そしてひ孫の世話まで頼んでいるんだから人、ウマ娘の生涯は分からないものだねえ。

 

 

 「ふん。なら、明日は腹を空かせるだろうが、味の濃いものは出さずに風味の深いもので飯を出してやらないとね。刺身の方も用意すればいいか」

 

 

 「それならとっくに手配済みですわ大奥様。爺やの方も醤油は薄口のに取り換えて疲れを抜くための山芋も用意しております」

 

 

 「相変わらず手際のいい。ならとっとと休みなさい。ケイジの体力に振り回されて老骨に応えたでしょうに」

 

 

 「大奥様に鍛えられ、奥様にも鍛えられましたから問題ありません。それよりも大奥様・・・いえ、ヒサトモ様も休まれませんと。夜更かしは毒ですよ」

 

 

 飲んでいた白湯を置いて少し頬が緩む。こういう時は決まって公私のうちの私の方での頼みをすることだ。

 

 

 前田家。昔は地域の旅館だったのが今や世界でも有数の富豪、財閥に成長してからというもの、こういう時間が貴重だとこの年になっても感じれば、娘のような子から頼まれるというのは悪くない。

 

 

 「いうじゃないか。シンザンは練習嫌いで夜も出かけるで大変だったからねえ。全く、ケイジの爪の垢をタイムスリップさせて飲ませたいほどに。分かったよ。ちょうど漢方も飲み終わって眠い所だ。それに、また無駄に腹の立つ写真を燃やした分少し気が晴れた」

 

 

 「またですか・・・ケイジ様も、大奥様もお疲れ様でございます。・・・実は、今回のアメリカのショーの件でも来たものは」

 

 

 「断っておきな。明日の夜にケイジに少し聞きたいし、どうせ同じ面構えだよ」

 

 

 今やすっかりケイジを溺愛して奔放ぶりに頭を痛めるシンザンの昔の奔放ぶりを思い出していたが、その後にケイジを思い出せばちょうどあの子の問題を思い出して少しいら立つのを抑える。

 

 

 ちょうど立花も同じ問題を抱えていたのだが切って捨てる。どう私らが動こうがケイジが決めないといけない問題。ただこちらとしてもケイジが決めるよう動かないといけない問題故に少し面倒だが、進めていかないといけない。

 

 

 焼却炉に投げ込んでいたものを思い出すのを止め、明日の我がひ孫はどんな面構えで飯を楽しむかを考えることにして立花を下がらせ、私も眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「もにゃ・・・・かふぇあ・・・あへ・・・ん?」

 

 

 えーと・・・アタシはアメリカでエキシビジョンマッチで一着もぎ取って、ベガスでショーをして・・・ビリーのおっちゃんと一緒に飯食って・・・あ、そうだそうだ。その後飛行機で爺やに頼んで寝たんだった。

 

 

 でも、うん。脇腹に当たる柔らかい感触は何じゃらほい?

 

 

 「すぅー・・・すー・・・お姉さま・・・・ぁ・・・♡」

 

 

 「ヒメ・・・かぁ・・・あーびっくりした」

 

 

 目を向ければヒメがいつの間にやらネグリジェ姿で抱き着いてそのまあたわわな胸を押し付けて爆睡しているでやんの。アメリカで訴訟目当ての輩が私に来たかと構えたが天井と周りの空気、さわさわと揺れる外の木々がちゃんとアタシの実家、前田家の屋敷だと理解させてくれて安堵もする。

 

 

 そして。うん。美人でいいスタイル・・・馬時代もこうして甘えてくれたのを必死に理性を抑えるのは大変だったなあ。今ももう男も女もいけちゃうクチになっちゃったから毒っちゃ毒だけど。というか現在進行形でやばい。スタイルもだけど体を押し付けて寝て、無防備だからね。うん。ヤバイヤバイ。美少女ケイジちゃんが狼になっちゃうわぁん。

 

 

 「はぁー・・・飯・・貰いに行こう。ヒメの分も。今日はアタシとヒメは休みの申請しているし」

 

 

 ヒメは欧州マイルの帰りの時差ボケ抜き、アタシは仕事なのも相まって休暇申請は出している。何やら新たにうちで預かるウマ娘たちは学校に行っているそうだが挨拶は後ででいい。預かると言っても寮で過ごすそうだし。

 

 

 「おふぁ・・・」

 

 

 「おはようございますお嬢様。ご飯をお持ちいたしましょうか?」

 

 

 「ばあや。おはよう。なら、ヒメの分もあるから私も取りに行くよ。それと、しぶーい茶を欲しいかな。眠気覚ましに」

 

 

 「ふふ。では甘いモンブランもお付けしましょう。日本のスイーツも恋しいでしょう?」

 

 

 「ナイス。なら、そっちにはアメリカのお菓子を渡すよ。凄いふわふわのマシュマロ買えたんだわ」

 

 

 「おや。では若い子たちにも配ってきましょう。私よりも甘みに飢えているでしょうから」

 

 

 二階から降りてくる前にかっぽう着姿で出てきたばあや。アタシが起きる頃合い、もしくは起こしに来てくれたんだろうね。で、まあアタシにとってはメイド長のトップ。の教育役。真面目に爺やもだが執事やメイドを顎で使える立場だってのにアタシらのために今もこうして接してくれるんだからありがてえ。

 

 

 一緒にバカもしたことは一つ二つじゃないからな♪ 何度か一緒にエアグルーヴに怒られちゃったり、愉快愉快なもう一人のばあちゃんと爺ちゃんだ。そんで、アタシが屋敷にいる時はヒメとナギコが何度も忍び込んでは添い寝して、アタシも寝ているときについつい抱き枕代わりに抱きしめちまうのでもうアタシが姫の分の飯を持っていくと言っても動じねえ。年の功もあるけどなー。アタシらが添い寝しているのもちびの時からこうしているのを見慣れているだろうし。

 

 

 とりあえず、後でアメリカ土産、大量のアタシとビリーのおっちゃんでチョイスしたお菓子とかアクセサリー、宝石とか色々配る話をしつつ、飯を取りに行く。香りがいいし、それに・・・うん。

 

 

 「香りがいい・・・風味もだけど、ふふ。濃い味でガツンと来たものばかりだからね。舌を戻すにちょうどいい」

 

 

 「大奥様がわざわざ台所に立たれまして。茶碗蒸しとお吸い物は自信作とのことですよ?」

 

 

 「ひいばあちゃんが? おいおい。いくらになるんだこの料理。未だに前田家財閥の料理人でこれを再現できるのはいない。できるのはうちのおふくろとばあちゃん、ばあやくらいだろ?」

 

 

 「それだけ、今回の帰国を喜んでいるのです。成し遂げた成果も含めて」

 

 

 「ま、あの会食は楽しかったぜ? 後で動画見せるわ」

 

 

 まったく。100歳だってのに元気なばあさんだ。大人しくうちのおふくろか按摩師に肩揉まれて好きなことしやがれってんだよ。笑いの種にチームシリウスとゴルシらでやったあの劇やらを見せるか。久しぶりに武術を披露する機会もあったしな♪

 

 

 「ふふ。楽しみにさせていただきます。ああ、それと、前田家で新たに迎え入れるお客人。お嬢様と同じく学園に通う子たちなのですが、このお二人で」

 

 

 「ふむふむ? ・・・・・・・・ブラウトにミレーネ? いや、ミレーネはドイツ屈指の製薬会社の令嬢で、ブラウトはあの欧州屈指の超名家じゃん・・・ブロワイエ、アルトリアも確か分家だったよな?」

 

 

 「ええ。だからこそ我が前田家の預かりとなったそうで、是非とも『よろしく』とのことです」

 

 

 くっそ。朝飯の楽しみが吹っ飛ぶくらいの衝撃だわ。まさかここではこういう形で出会うのかあ・・・あの二人。そしてばあやのそのニュアンス。間違いなくそういうことだよなあ。はーやめやめ。明日以降に間違いなく突撃してくるあの二人は置いておこう。この世界でも出会えるのは嬉しいが、素直に喜べんのは家柄のせいかそれとも。

 

 

 とりあえず、久しぶりの我が家での飯と、メイドや執事を順番に呼んではプレゼントを配って過ごすことに。ヒメにネックレス渡したら失神したが・・・さすがにルビーの首飾りは豪気すぎたか・・・? あたし耳飾りとおそろいのデザインにしたんだが、スーザンママに渡すべきだったかねえ。あ、派出所にも持っていかねえと。後は超神田寿司と商店街、知り合いの土方連中に・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ミレーネです。ここへはスタッフとしての勉強として来ているのでレースはしませんが、よければどうぞ皆さんよろしくお願いします」

 

 

 「ブラウトでーす♪ 私もスタッフ、トレーナー志望です。うふふ。皆さんよろしくお願いしますね?」

 

 

 「大物が来ましたね・・・あのブロワイエさんの親族でしたっけ」

 

 

 今日、トレセン学園に転校生というか、留学生が来ました。スぺちゃんみたいに転校生がこのクラスに来るなんて分からないものですね。そして、そのうちの一人は私も知る欧州屈指のウマ娘の名家の令嬢ブラウトさん。

 

 

 ブロワイエさんから知っていった欧州の名家。その中でも王侯貴族との関わりも含めてかなりの歴史を持つ家の出がここに来るというのは内心ルドルフ先輩たちも相当に驚いているはず。既にファインモーション先輩もいますが、またもや欧州のすごい方が。

 

 

 先生も敬語を交えて戸惑いつつも席へと座るよう伝えて授業に。今日はケイジさんらシリウスとスピカのメンバーはゴルシさん、ジャスタさんらは休みだとか。アメリカへのショーとエキシビジョンの時差ボケ抜きと疲労抜きのために。

 

 

 できることなら土産話やドリームシアターの事も聞きたかったですが、明日以降の楽しみに取っておくとしましょう。今は授業に集中。その後でブラウトさんやミレーネさんも日本に来て日が浅いでしょうし、同じ海外から学びに来た先輩として私が助けになれれば幸い・・・ふふ。同級生で先輩って、スぺちゃんを思い出しちゃいますね。

 

 

 「・・・?」

 

 

 スマホに通知の振動? この時間に誰でしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ほうほう。ケイジさんってやっぱり料理が得意なんですね? あ、それと好みの漫画とかはどんなものが。グラスワンダーさんがいて嬉しいですよ」

 

 

 「お姉さんが料理で癒したいなー♪ なんて、お姉さんを料理で癒すね。ふふ♪ イギリス料理ばかりだったでしょうしドイツ、フランスの料理を是非是非。食事の交換会なんて素敵」

 

 

 「え、ええ。あと、マンガについては基本少年漫画を好むのですが気に入れば少女漫画も結構。私も何度か屋敷にお招きされたのですが本に関しては結構幅広く読んでいますよ。にしても、まさかお二人が前田家にステイしているとは思わなかったです」

 

 

 予想外でした。まさかお二人がケイジさんの実家預かりであり、ケイジさんを気に入っている様子。私も交友がありレースで応援されたことから知っていたり、ケイジさんのコメント記事から私の事もよく知っている。授業が終わるやすぐに質問攻めにあっています。

 

 

 相当にリサーチを重ねている。やはり欧州でもあの二大レース、KGⅥ&QES、凱旋門賞の三連覇は伝説となっているのでしょう。極東の血筋、最強戦士の孫が来たと海外の新聞でも話題になっていましたし。

 

 

 「今回は欧州での調味料、香辛料、ドレッシングを持ってきていますし、是非是非、ケイジさんには味わってほしいですね。私も地元の料理を振る舞うべきでしょうか」

 

 

 黒のボブカットに赤眼のウマ娘のミレーネさん。

 

 

 「それもだし、ぜひ音楽での交流も♪ いい曲が多いし、ぜひ膝枕しながらでも。っふふふふ~♡」

 

 

 金糸の髪をセミロングまで伸ばし、蒼の瞳がまぶしいブラウトさん。対照的なのですが、スタイルはこれまた大変たわわでくびれもあるお二人の圧はすごく、私もたじたじになります。

 

 

 「あ、ああ、でしたらお二人とも。これを見ませんか? ケイジさんはたま・・・いえ、よく読めない行動をするのですが、今回も何やら大騒ぎをしたようでして」

 

 

 ただ、あの家にステイする以上は知っておくべき、いえケイジさんには関わるかそうでないかに関わらずあの奇行ぶりはこの中央トレセン学園にいる以上は知っておくべきものだ。

 

 

 レース前のパドックでの奇行なんて軽いもの。突然畑を作って割り箸を植えれば後日それが花畑になり、ホッコータルマエさんと一緒にダートの練習場を砂絵の展覧会にしたり、階段を突然木琴の音が鳴るように改造したり、某忍者漫画とゲームのように木々を飛び回っては時折カギ縄を使ってエアグルーヴさんから逃げ回る。

 

 

 北海道の雪まつりに参加したらゴ〇ラVSガ〇ラVSウル〇ラマンの氷像を短時間で作り上げてしまうなどなど、兎にも角にも奇行とイベントには事欠かないのがケイジさん。先ほどのスマホに来ていた通知の内容。その動画も見せておくのはケイジさんを知る意味ではいいサンプルになるかもしれない。

 

 

 「おお? いいのですか? ありがとうございます。って、この曲は?」

 

 

 「日本の和装。かっこいいですね。しかも、メンツもシリウスのメンバーにゴールドシップさんにジャスタウェイさん。世界でも名だたる最強世代の。あら、ケイジさん」

 

 

 私も一緒に見始めたその動画には舞台上に見事に作られた和の一室。そして天井近くの額縁には「笑(点)SHOW TEN」と見事な達筆で記されたもの。そしてあの聞きなれた大喜利のテーマ曲が流れていく。

 

 

 舞台では左からジェンティルドンナさん、ジャスタウェイさん、ヴィルシーナさん、ホッコータルマエさん、オルフェーヴルさん、ラニさん、ナギコさん、ゴールドシップさんらが座布団の上に、これまた皆個性的な和装を身に纏い扇子を持って座っている。

 

 

 その後ろから大トリといわんばかりに現れてきたケイジさんが皆の後ろから一番左端へと移動。司会の席に腰かけ、扇子を置いた次の瞬間。

 

 

 『ボッシュートになります』

 

 

 『ぬあー!!?』

 

 

 別のクイズ番組のあの音声と共に落ちていった。

 

 

 「ぶ・・・! くくく・・・!」

 

 

 流石にこれには、いや間違いなく日本でこの二つの番組を知っている人には刺さるギャグの披露に会場からは笑い声が届き、そして困惑を見せる一部を除いた舞台の皆さん。

 

 

 数秒後には何でか天井から緑の土管が出てきてあのSEと共に赤い帽子を追加したケイジさんが再登場。海外のネタを交えた大喜利大会が幕を開き、美味いことを言ったメンバー、もしくは減点として座布団を追加、あるいは取っていく役をドリームシアターが行うという。

 

 

 アメリカのネタの具合は私も分かるし、そのいじり具合も見事なもの。気が付けば私とブラウトさん、ミレーネさん以外のウマ娘の皆さんも私のスマホの前に集まっていました。

 

 

 

 「これが日本のお笑い。ふふ。よければ私にもこの動画を貰っていいですか? 元ネタの検索にも使いたいですし」

 

 

 「ああ、私も。今度はぜひ欧州のネタを交えてほしいし、日米ネタも愉快だからこその欲求がついつい♪」

 

 

 「もちろん。ケイジさんも知り合いに見せて息抜きにどうぞって書いてくれていますし、よければこのままラインの交換もしませんか? 私の所属チーム、リギルの指導方針や意見交換もそちらの目指す道にも噛み合うでしょう?」

 

 

 「みなさーん。授業始まりますよー」

 

 

 ブラウトさんたちと互いに連絡が取れるようにしていたら先生が来て授業の時間に。でも、あの動画が頭にこびりついてついつい思い出し笑いをしてしまうのは私の精神が弱いのかケイジさんたちの愉快さがずるいのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ケイジ。今日もまた見合いの写真を捨てたようだね?」

 

 

 「ひいばあちゃんこそ。アメリカからそっちに来た話を断ったんだろ? まーアタシより利権目的なのが見え見えだもんなー」

 

 

 夜。久しぶりにミホシンザン母ちゃんやシンザンばあちゃん、ヒサトモひいばあちゃん、キジノヒメミコら揃っての親子(ヒメは養子)四代での晩飯の時間。利褌の親父はスピカ、カノープスのトレーナーたちに酒を奢りつつ意見交換の時間にムランルージュに行っている。確かにあっちはいい場所だけどイケメン独身男性をあのオカマバーに放り込む親父はやっぱ変人だなあ。

 

 

 で、ヒサトモばあちゃんからの話はまあ当然だがアタシの見合い話。ぼちぼち10代の半ばを越えて女ざかりの歳のアタシ。今どき許嫁とか政略結婚とかと思うかもしれないが、まあこの家のレベルになるとそういう話はどうしたって湧いてくる。

 

 

 流石にアタシの背丈や性格からしてまあそういう話を持ち掛ける男どもはアタシに恋しているというよりは金に恋していて裏で愛人囲いますって顔と空気を持っていて、少し叩けば埃が出てくるから断っているんだけどね。ただまあ、それなら諦めさせるために男捕まえて来いと前々から言われている。

 

 

 「そういうことだ。つまらん男にアタシはお前をやるつもりはない。ならお前が決めて捕まえて来ればいい。けど野郎を捕まえてこないだろう?」

 

 

 「ちょうどいいのがいねえのよ。なかなか見つからんよ」

 

 

 けどまあ、中々アタシの、ウマ娘となって早十数年。男もいける口になったがこの人はと思う人が見つからん。旦那探しは難しい。レースでは好き放題しているがそこが出来ないとは傾奇者失格かねえ?

 

 

 「あんたのハジケに合わせられる野郎がいないのもまあしょうがないさ。傾向は違うがシンザンと同レベルだからね」

 

 

 「お母さん。流石に私のレベルを超えている気も・・・」

 

 

 「牛といわれるほどの練習嫌いで夜遊びをしょっちゅう。パワーで靴も蹄鉄も練習で壊しまくって専用の蹄鉄を用意する始末。奔放、滅茶苦茶具合は似たり寄ったりだよ。で、だ。ケイジ。そんなお前だからね。もう女を捕まえてきな」

 

 

 「ぶぐふぇ!? げっごほ・・・げほ・・・はぐぉ・・鼻に味噌汁が・・・」

 

 

 「・・・・・・・・・・・・!!!!」

 

 

 まさかまさかの発言に味噌汁を吹き出しかけるアタシ。こらえたが、くっそ・・・鼻から逆流しやがった・・・! い、いだい・・・

 

 

 「おいこらひいばあちゃんにばあちゃん。母ちゃん。あんたらギャグで言っているんじゃないだろうな?」

 

 

 「冗談でそんなことは言わないわケイジ。私もお父さんも貴方が心配だし、女の子からもモテるそうじゃない? それなら同性婚でもしたほうがいいと思ったのよ。言い出しっぺはヒサトモおばあちゃんだけど」

 

 

 「今や同性婚も認められて、女同士でも子を作れる時代だ。ならあんたを身近で見て気心の知れた女、ウマ娘でも連れてきて添い遂げたほうがいいと思ってね。それに・・・実利の方でもあんたを押すのなら前田家の一人娘がジェンダーについての自由さを見せつけるというのは刺激にもなる。

 

 

 そういうカップルがホテルや旅館を利用してくれるいい宣伝にもなるだろう? まあそういうことだ。最終的にはケイジに決めてもらうが、男が見つからないならうちらは女でもいいってことよ。いい子がいたら連れてきなさい。祝福してあげる。前に来てくれたライスちゃんやグラスちゃんはどうだい?」

 

 

 「おうこら。流石にあの二人はちげえよ。はあー・・・分かった分かった。アタシが好いた男でも女でも捕まえてくるから、その際はしっかり式の手伝いしてくれよ?」

 

 

 全く。アタシがバイ寄りだってのを感じ取ったというか、そっちの方向で舵を切りやがったかコンチキショウ。いやまあーそりゃあ魅力的な子は多いよトレセン学園。でもなあー・・・んー・・・ま、ディープに今度相談するから。あっちもこういう縁談は苦労していそうだし。

 

 

 「私としてはヒメちゃんが結婚してもいいと思うのよねえ。私の孫だけど養子。6親等以上は離れている遠戚だし、気立てもいいから是非とも・・・」

 

 

 「シンザンばあちゃん!?」

 

 

 「そ、そうですか? ケイジお姉さまとケッ・・・結婚・・・・・・・・うふふふ・・・え、ええ、私も縁談の際に金銭や権利の欲まみれの殿方よりはケイジお姉さま殿なら・・・ま、まま・・・まあ・・・?」

 

 

 おうこら黒鳥。顔が真っ赤だぞ。はー・・・あー・・・こら収拾つかねえ。

 

 

 「もしくは明日顔見せに来るブラウトちゃんとミレーネちゃんよね。名家、財閥同士の関わり合いを深めるための留学だけど、凄くケイジのファンですって前から公言していたし、今日わざわざお父さんの所に来て挨拶してきたそうよ?」

 

 

 「・・・・・へぇ? ミホシンザンお母さま。その内容を是非詳しく」

 

 

 「あーあー。それは今度聞くし、婚姻の件も分かった分かった。だから飯食わせてくれ。せっかくの超神田寿司からの差し入れの寿司と吸い物だ。もっと食いてえ」

 

 

 「アタシは相手をたくさん呼んでもいいからね。子は全部面倒見るよ」

 

 

 「ひいばあちゃんはアタシを犬神佐兵衛にするつもりか? 後で軍人将棋で勝負してやる」

 

 

 「それくらいの気概を持ちなってんだ傾奇者。いいだろう。師匠の私を越えられるか勝負だよ」

 

 

 馬時代も馬時代でいろいろ血統とかそこら辺で今の親父やトモゾウ(この世界ではトレセン学園のスタッフ)やらとどうしようかって色々話を聞いていたりしていたけどここでもそうなるとはなあ。

 

 

 全く。この美味い寿司の味も薄れないように舌に意識を集中しよ。・・・お。酢の具合がいいね。

 

 

 この後ビリーのおっちゃんとかに相談したら「こればかりは仕方ないね。歪みねえ相手を見つけてきたら僕も助けるよ」としか言われず、ディープに話したら何でかジェンティルちゃんに速攻で話が飛んでいて根掘り葉掘り聞かされ、後、アタシの実家の部屋がブラウト、ミレーネ、ナギコ、ヒメらのものが増えたり添い寝されまくり、ジェンティルちゃんとヴィルシーナちゃんがよく来るようになった。

 

 

 ・・・・・・・夏は暑いんだよぉお! 後、ヒメもヒメで窒息するほどにアタシの胸にうずもれていないで離れてくれぇ! 怖いわ!!




 ケイジの立場を考えればそうなるよねっていう。自身の活動でも既に前田グループ、財閥を盛り上げている立役者の一人にして名前がすでに宣伝になるレベルの実績を作っているので。


 ケイジ 婚姻どうしよってなっている。真面目に女性をめとるとなればウマ娘にいい子が多いので悩む。シリウス&ゴルシ、ジャスタの大喜利、会食にはビリートレーナー、ファインモーション一家。アメリカ大統領、イギリス王室、アラブの王族、フランスなどの貴族の方、日本のさる御方なども来てのプライベートなもの。そこでもゴルシやラニと好き放題しまくっていてファインモーションが気苦労で寝込むほどには暴れた。


 キジノヒメミコ ケイジが学園の寮ではなく自宅に戻った際はすぐさま添い寝にしゃれ込む。婚姻の話にはいの一番に喰らい付き、化粧と美容を更に気づかい、磨くためにゴールドシチーに弟子入りした。


 ヒサトモ ケイジを一番愛して溺愛してるが気性も相まってその分激突しまくりの曾祖母。そこらの欲の皮が突っ張った野郎たちにケイジをやるよりは恋している乙女にでもやってやるという気持ち。実利の方を出したのはこういう話でもあるから断るならそれで断れという老婆心。


 シンザン どっちかといえばこっちのほうが前田慶次じゃね? ってくらい若い頃は好き放題していた。今はケイジやヒメ、ナギコ大好きなおばあちゃん。キングダムの蒙恬のじいや的なノリ。執事とメイドのトップとは竹馬の友であり助けてもらっている従者。今もケイジたちの話を聞いては一喜一憂してついついお小遣いを渡す。


 ミホシンザン 破天荒過ぎる一族の中で一番まとも・・・に見えてなんやかんや要所要所の判断はぶっ飛んでいる(ケイジ、利褌談)同性婚についても何の問題ですか? と気楽に受け入れむしろ気心の知れた子たちが義理の娘になるのならモーマンタイと太鼓判を押す始末。


 グラスワンダー まさかの転校生のメンツにびっくり。トレーナー志望、スタッフ志望とのことなので後でおハナんらにも話を通して指導方針や心がけなどなどを教えてもらえるよう頼んだりしていた。動画はショーなどしか映っていなかったのだが、後日このショーを見ていたメンバーを知って絶句。ブラウト、ミレーネとはともに海外から日本に来たということですぐに仲良くなる。


 ブラウト どう見ても艦これの愛宕。ケイジとのなれそめは欧州二冠を狙う際に出会い、サインをもらった際に一目ぼれ。曾祖母のキンチェムからこの話を聞いて一も二もなく即決。メイドでもいいので兎角ケイジとは一緒にいたい。この後ファインモーションとも出会いびっくり。


 ミレーネ どう見ても艦これの高尾。遠戚だがマンハッタンカフェとは血が繋がっている。魔女の家系なのだがその薬学で生計を立てている家系。それが代を経ていくごとに成長してドイツトップの製薬会社になり、その令嬢。前田家とは将来財閥を引っ張る者同士ということでの仲良くさせるためのものだったが予想以上にケイジを気にいるどころか惚れこむ始末。
 


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時代を築いたもの

 ケイジ伝説もぼちぼち終わり。馬時代はですが。ウマ娘エピソード、蛇足になるかもですがケイジの馬時代が終わっても続けていいでしょうかね? 正直出来がいいものを出せる自信はない。半ば、いえほとんど自己満足かもですが。アンケを用意しますのでよければご意見お願いします。


~ジャパンカップ、客席~


神様「ええ・・・・・・?」


シンザン「どうされました。このメンツを集めたのは神様のおかげでしょう?」


神様「いやいや、ケイジ君の記録を楽しみにしていたけど、ここまでのメンツが来たのは予想外だよ。真面目に私の予想を超えている」


ルドルフ「アメリカ、フランス、ドイツ、イギリスそれぞれのダービーを持った二冠馬、オーストラリアからはメジロラモーヌ、ウオッカレベルの牝馬がそれぞれ、イタリアも国際レースを勝ち抜いたたたき上げ・・・私の世代のころでもここまでのはちょっとないな」


テイオー「しかもGⅠレースを2勝以上したメンツが半分以上。まさしく世界の優駿ぞろいの大舞台・・・うん。僕もぜひ戦いたくなる」


神様「ケイジのおかげでこうもねえ・・・というか、海外の書き込みが面白いというか画像がね。ケイジがあの海賊漫画みたいな懸賞金コラあるんだよ」


シンザン「どれどれ・・・懸賞金3億ベリー・・・ぶふ。変顔の時ですねえ。そして金額はどこの麦わら帽子の少年やら」


ルドルフ「欧州二冠連覇をした私の孫だぞ? 6億以上は固いだろうに。そして、このイケメン顔なら牝馬もそろうだろう! 懸賞金というよりは見合い写真では?」


スズカ「ま、まあイケメンなのは確かなんですが。ふふ。ちなみに、皆さんは今日はケイジはどの戦術を使うと思います?」


ルドルフ「追い込みはないな。アメリカの高速レースからズルズル遅れるのは駄目だし、欧州はそういうレースの本場。逃げではないか? マグロ串を賭ける」


テイオー「そういう意味なら大逃げじゃない? スタミナでケイジに勝てる可能性がある乗ってゴルシぐらいだし・・・あ、ドリームシアターもステゴとシンザン系の子どもだっけ。僕はポテト―」


シンザン「2400走り切ってもけろりとしていたそうだからね。しかもあっちも高速芝。2年前にしたあの幻惑逃げじゃないかなあ。あ、私はタコ天」


スズカ「やっぱりあの子の一族はスタミナ血統なんですね・・・サンデーお父さんの血筋だけど私とは真逆。あ、私は大逃げの方にカルアミルクで。それとステゴさんはあっちでのんびりしているそうです」


神様「つい最近ここに来たばかりだからね。人の食事や視点、味と向き合いたいし、観客目線を満喫したいと言っていたよ。じゃあ僕は大穴の追い込みにステーキを賭ける。あの子にも賭けの結果での食事は奢ろうか」


一同「「「「はーい」」」」


~レース~


ルドルフ「・・・! あれは・・・ペースと脚遣い、全部がバラバラ・・・! これは距離感どころか下手すれば体内時計までもが狂うぞ。ケイジを研究し尽くした分だけ想定のペースも仕掛けもずれる」


シンザン「しかもコーナーで息を入れることが多いケイジがあえて加速したりとでラップも滅茶苦茶。どれくらいのペースで付いていくべきか先行勢は振り回されまくっているね。騎手も思わず姿勢が崩れている。焦りが馬に伝わってペースが崩れているし」


テイオー「なんで二人はそんなに早くわかるの? 逃げに振り回されてガス欠・・・う・・・パーマー、ヘリオス・・・あ、それとこの時点で神様の大穴は外れちゃったかあ」


スズカ「大竹さんと学んだ大逃げ、逃げとは真逆。コーナーで加速も息を入れるのも好きほうだいで切るケイジだからこそできる技ですか。私よりずっと器用ですね。羨ましいです」


神様「スズカ君の場合は精神もありそうだけどね。にしたって、加速した動きについていけたと思えば実は遅く、息を入れていると思えば実は距離を伸ばしている。幻惑の極致を手にしているね。ハイペースもローペースのレースもケイジと一緒に経験している松風君だからこそ理解できて一緒にできる戦いぶりだ」


ルドルフ「うむ。岡崎さんも競馬を教えてからもより頼もしかったが、これはいいコンビ・・・ケイジが私たちのようになってからも嫁に・・・・いや、やらない! やらないぞ!!」


テイオー「それ、僕が言うべき台詞じゃないの? お父さん。というか、ケイジが僕たちみたいになるってそれ天へと旅立った後だよ」


スズカ「できれば向こう20数年くらいは後の方がいいですね・・・! 仕掛けるようですよ」


シンザン「ははは。鉈の切れ味といわれた私だけど、これは見事。そのまま・・・喰らい付いてくるか、ドリームシアター、ウィンクガール。見事。だけど」


テイオー「最後の競り合いの強さはケイジも強いもんね。周りがやばすぎるだけでケイジだって根性あるからねー!」


神様「決まったか・・・これで二度目のジャパンカップ制覇。しかも世界中の当代の最強格を叩きのめしての勝利。間違いなく、今の世界最強はケイジだ」


ルドルフ「皇帝といわれども、国内のみの内弁慶といわれることもあった・・・それが、その孫がここまで・・・・! テイオーもジャパンカップで強さを見せてくれたが、ここでも・・・ああ・・・・ああ・・・!」


シンザン「この勝利は松風君もケイジをうまく支えてくれたからこそだけど、ケイジの競馬への理解もあってこそ。以前は私に似ていると言ったが、あの強さは間違いなくルドルフ、テイオーのもの。君たちの血は脈々とケイジに継がれているよ」


スズカ「ええ・・・あの競り合いの強さ、勝負の見極めはまさしく。大竹さんもいつも語ってくれていたテイオーさんにルドルフさん譲りと思います。本当に、おめでとう。戦国コンビ」


ルドルフ「(言葉にできないほど泣いている)」


神様「馬券は儲けたし、ははは。いいものも見れた。最後の三冠目にも勢いをつけての挑戦。またもや世界が見守るであろうラストランを見守ろう。ささ、いつもの居酒屋で乾杯だ。今日も私のおごりだよ」


 ~ケイジについて語るスレ ジャパンカップ編 893~

 

 

 454:名無しの競馬おじさん

 

 世界のダービー馬を蹴散らしての大勝利! ケイジ万歳! ケイジ万歳!! 国際レートもセクレタリアトにも後1の差まで迫れるってやばいでしょ!!

 

 

 455:名無しの競馬おじさん

 

 何度思い出してもあれはやばすぎる。あのガソリン積んだUMAに迫れるというのは本当に。これでしかも日本競馬の注目度合が世界でもぶっちぎりのものになっているんだから。後オーストラリアもすごく注目されているらしいね。

 

 

 今後はオーストラリアと日本競馬でアジアを席巻するんじゃないか? いや世界も!

 

 

 

 456:名無しの競馬おじさん

 

 

 世界というか欧州はすでにケイジとキジノヒメミコで荒してきたから・・・(震え声)あ、アメリカもナギコとドリームシアターでもぎ取ってきたんだっけ。しかもサンデーのいた牧場で。

 

 

 457:名無しの競馬おじさん

 

 前田牧場何かがおかしいよ・・・改めてジャパンカップ。今回歴代ぶっちぎりの売り上げだったんでしょ?

 

 

 458:いつもの実況のおっさん

 

 ケイジ達の世代が来て常に最高売り上げを更新しているジャパンカップ。今回はその最高売り上げが1,7倍の売り上げだったそうや。それで今回は参加した馬たち全員に賞金を割り増しで渡したそうやな。このレースに参加した全頭に配るべきだという運営の計らいで。

 

 

 459:名無しの競馬おじさん

 

 神采配。

 

 

 460:名無しの競馬おじさん

 

 それは。いや、真面目にGⅠ馬が18頭中10頭以上で、掲示板確保したのがケイジ以外で凱旋門賞馬がいないってハイレベルだったもんなあのレース・・・後、やっぱりケイジと松風騎手、逃げの際に脚使いとペース変更をあべこべにして周りを幻惑していたよね?

 

 

 461:いつもの実況のおっさん

 

 ああ、間違いなく。インタビューでもケイジと練習していたとかで、実際競馬番組でもケイジはここ最近ずっと馬房内、外の練習でもワチャワチャとストレッチをして柔軟性を高めていたそうで、まあ間違いなくこのための布石やろ。

 

 

 ・・・長く競馬を見てきたが、ここまで勝負強さと理解を持つ馬はいない。時代の担い手どころか作り上げた怪物や。

 

 

 462:名無しの競馬おじさん

 

 実際、真面目に歴代最強の功績を持つ功労馬だよなあ。今の時点ですらこれで、種牡馬として大成しなくてもいいレベルだよ。というかこれでケチがついてもそれがどうしたと言える。

 

 

 463:名無しの競馬おじさん

 

 

 ・大差勝ちを持つ

 

 

 ・年齢限定戦を含めれば1200~3200メートルの重賞レースで勝利を手にしている。

 

 

 ・連対率100% 2位より下に落ちたことがない。

 

 

 ・ディープインパクト、シンボリルドルフを超える無敗の4冠を制覇。マツクニローテを無傷で乗り切る。

 

 

 ・日本どころか世界史上初欧州二冠連覇(うち一つの凱旋門賞ではワールドレコード更新)を成し遂げてルドルフと日本のホースマンの悲願をかなえたうえでさらなる躍進を遂げた。

 

 

 ・国民栄誉賞二度の受賞。千代田区のさる御方からも最高位の勲章を贈られる。

 

 

 ・さらに千代田区のさる御方からは個人的に桜吹雪のメンコとキセルを頂戴。定期的に咥えていたりしている様子。

 

 

 ・日本のレジェンド大竹騎手へ欧州二冠を。現在欧州牝馬マイル三冠&マイルチャンピオンシップを制覇している梅沢騎手には大差勝ちを。戦国コンビの相棒松風騎手には無敗の四冠、欧州二冠、御前試合三冠を含めてGⅠ13勝をプレゼント。伝説と次世代への功績を支える。

 

 

 ・今年の全中にて全国優勝の原動力となる打率4割近くを誇り、ケイジの厩舎葛城大吾の息子の葛城連くん、祖父は警視総監、父は自衛隊特佐の国光君を巨大な熊から祭りと一緒に救う。後にシカと猪退治も相棒の柴犬と成し遂げる。

 

 

 ・ゴールドシップ、ジャスタウェイ、ジェンティルドンナ、フェノーメノ、ヴィルシーナ、ホッコータルマエ、ストレイトガールなどなどをはじめとした怪物ぞろいのメンバーの筆頭最強格としてオグリ以上の競馬ブームを作り出す。

 

 

 ・現時点で40億近く稼いでいるがそのうちの1割5分は東日本大震災募金に回している。この活動で世界中からも募金が殺到。現在も募金が億単位で各国から送られてくる。

 

 

 ・ワールドレコード複数個所持。更新されたものまで含めれば1800~3200までの幅広さ。

 

 

 ・海外馬に一切負け無し。今回のジャパンカップまでは3,4馬身つけてわからせしまくっていた。

 

 

 ・国内外を問わずの珍行動、実績で日本競馬への注目を海外から集め、格式とレベルを見せつける。

 

 

 これ全部ケイジ絡みで起きているってマジ? 名馬すぎるだろ・・・

 

 

 464:名無しの競馬おじさん

 

 しかもこれがテイオーの子ども、ミホシンザンの孫っていうんだから浪漫すぎるんだよなあ。今の時代にはバリ受けの広い種壺野郎なうえに何だったらパーソロンとかのクロスを狙えるっていう割と使い勝手のいい血統だし。

 

 

 悲しい話だけどシンザン系が今は絶滅寸前故に牝系からの血筋も今の日本競馬の血統でクロスを気にする問題がないとメリットになっているという。あるとしてもドリームシアターとメジロライトニング位という。

 

 

 465:名無しの競馬おじさん

 

 誰かが言っていたけど帰ってきた最強戦士。というのは伊達じゃないよなあ。というかドリームシアターもメジロライトニングもそのシンザン系をケイジと同じ母から継ぐ名馬だし、最強の血筋を見つけてきた前田牧場の動きよな。二つ名も多いしどれもしっくりくる。だからこそ楽しかったし。・・・・・・・うん。楽しかったよなあ。

 

 

 466:名無しの競馬おじさん

 

 

 無敗の四冠&欧州二冠のケイジ。牝馬三冠、ドバイシーマクラシック連覇のジェンティルドンナ。阪神大賞典、宝塚記念それぞれ三連覇を成し遂げたゴールドシップ。天皇賞(秋)を制覇。ドバイDFでケイジのレコードを越えてスーパーレコードを出したジャスタウェイ。ヴィクトリアマイル、エリザベス女王杯連覇のヴィルシーナ。天皇賞(春)、ジャパンカップでそれぞれケイジとゴールドシップを倒したフェノーメノ。ダート路線で戦うことはなかったけどGⅠ10勝を成し遂げたホッコータルマエ。

 

 

 ルドルフ、ディープを超えるレベルが最低でも2頭。ルドルフレベルは2頭以上。そしてそれらを倒す。喰らい付ける怪物たちも多数。前の世代なら金色の暴君にあの龍王もいた。

 

 

 夢のような時代だった。こんな時代・・・・・・もう。ないよなあ・・・

 

 

 

 467:名無しの競馬おじさん

 

 ケイジ達の戦いのさなかにアメリカトリプルクラウンを持ってきて、無敗のまま引退した岩手の魔王の娘ナギコもいたし、メジロ牧場の復活。そこの看板となるのがメジロアルダンの直系筋に、タイキシャトルの子どもが来てくれるという。そして今はサンデーのライバルイージーゴア、ルドルフのライバルのミスターシービーの血を引くキジノヒメミコが大暴れ。

 

 

 競馬ファンからすればどれだけこの数年間が充実していたか。競馬の儲けで貯金もたんまりだし、ケイジ達様様だよ。

 

 

 468:名無しの競馬おじさん

 

 怪我らしい怪我もなく、テイオーの孫が、ケイジの子どもが見れそうなのは嬉しいが、やっぱりあの名馬たちの時代が終わるのを感じると・・・寂しいよなあ。

 

 

 469:いつもの実況のおっさん

 

 あのレベルの名馬であり迷馬がいて、これまた名馬であり迷馬がライバル。テイオーの息子とマックイーンの孫という。運命が紡いだ同い年の激闘の日々。奇跡を越えているものなあ。ただ、同時にこのまま無事に戦いを終えればケイジとゴルシには無事是名馬という称号と名誉を手にできる。

 

 

 今はそれを願いつつ、最後の有馬記念を待とうじゃないか。年末は盛り上がるで。

 

 

 470:名無しの競馬おじさん

 

 それもそうだな。思えば筋肉痛以外は特にけがもなかったケイジとゴルシ。テイオーとマックイーンが出来なかった健康のままでの引退を願いつつ。今度の馬券も儲けてやるぜ!

 

 

 471:名無しの競馬おじさん

 

 禿同

 

 

 472:名無しの競馬おじさん

 

 俺もケイジに冬のボーナスの分をかけてやる!

 

 

 473:名無しの競馬おじさん

 

 お前ら大好きだわ。そんなお前らに朗報? 有馬記念。ゴルシとケイジが出走するのは確定なのでこんな馬券を特別に出すそうだ

 

 → 〇RA 広報

 

 

 

 474:名無しの競馬おじさん

 

 同着もあるとか3連単が可愛く見えるレベルの難しい馬券じゃねーか! でも釣られクマ―。記念馬券になるだろうし。ちょっと夢を託しちゃお。500円くらい。菊花賞の時を思い出すな。

 

 

 475:名無しの競馬おじさん

 

 時空を超えた三冠馬同士の激突・・・だったもんなあ。なおこの後に天皇賞で同時にタブー破りをかます様子。

 

 

 476:名無しの競馬おじさん

 

 あれで色々競馬の常識を崩したよなあ。淀の坂をああもやりたい放題とか。しかし、同着かあ。記念馬券で買う人が多そう。

 

 

 477:いつもの実況者のおっさん

 

 ケイジとゴルシだからこそみられた馬券やし。いいお守りというか、記念品を100円から買えると考えれば安いもんや。わしは3000円を可能ならかける。

 

 最後のKG対決にして三冠のかかった大一番。きっと、今年のうっ憤をケイジ達が蹴り飛ばして、来年への元気を背負ってきてくれるはずや。それを応援しに行く。これがわしにできるケイジのレースでの最後、ファンとしての応援や。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「コラム記事はケイジの子どもばかりを期待か・・・いやはや、全く、気が早いことだ。最低でも2、3年は待たないといけないのになあ。ケイジ」

 

 

 「ヒヒン」

 

 

 『ねーしかも初年度は海外の予約が多いし、日本の方で素質馬出てくれるかな? それとおやっさん今日はどったの』

 

 

 二人で一緒に競馬新聞を読んでいたが、連日俺やゴルシの記事ばかり。おやっさんはにこにこしてみていたが、今日は珍しくここにきているんだよね。牧場はいいのかしら。今日はオルフェとディープの休養の日だって言っていたのにねえ。

 

 

 「? ああ、牧場の方は母さんとトモゾウに任せている。久保君の彼女の知り合いでいい子がいてねえ。バイトしてくれているのもあって今は余裕があるんだ」

 

 

 『トモゾウも春が来たかあ。いいこって。幸太郎も嫁さん近いうちに連れてくるそうだし、俺の回りは冬だってのを忘れるくらい春が多いなあ』

 

 

 女将さん、ハルフカシを我が娘のように可愛がっているからなあ。俺を息子だと言ってくれてもいたし、きっとハルフカシも強くなって大竹さんと良い感じに暴れてほしいぜ。

 

 

 「それで。いやあ、会えてよかった。ケイジ・・・お前のおかげで本当にいくつもの夢を見れて、私もとてもいい時間を過ごせた。まさかテイオーの子どもでここまでの怪物が生まれるなんて、本当に予想外過ぎたよ。

 

 

 おかげで今も決めた種牡馬としての値段に安すぎるとか言われるクレームが飛んで来たりで愉快だよ」

 

 

 『それを愉快といっていいのかね。まあ、種牡馬として種付け料850万くらいだっけ。ディープと比べても3割近くお安いもんね』

 

 

 「そして、その戦いも最後。私は繁殖牧場をやっているからこそ、ケイジが無事に、有馬を落としても問題なく元気でいるのが一番。そう分かっているはずなんだがな・・・ケイジ、どうしてもお前には夢を託したくなってしまう。

 

 

 シンザンも、ルドルフも越えた傾奇者。私の最高の名馬ケイジ。有馬記念。頑張って勝ってきてくれ。できればでいい。でも、どうか勝ってきてくれ」

 

 

 「わふ」

 

 

 『言わずもがなよ。俺はいつだって全力だぜー?』

 

 

 おやっさん泣きながら言わずともいいのにねえ。いやあ、まあ分かるよ? 親子三代有馬記念。ここさえ制覇すれば真面目にダービー、ジャパンカップ、有馬記念の三つを親子三代で制覇できるというものだもんな。

 

 

 ははは。脳を焼かれちゃったか? ケイジちゃんの功績に。まま、軽く構えていなさんな。緊張していたら牧場に静養しに来た馬たちも休まらないよ。

 

 

 「ケイジ。ご飯のお代りとマンガの新刊でていた・・・利褌さん。如何なされました?」

 

 

 「あ、ああいえいえ。ケイジが帰ってくることへのホースマンとしての期待と悲しみが揺れていまして・・・本当に、嬉しさと悲しさがもう滅茶苦茶で・・・」

 

 

 「ええ・・・私にも初重賞をくれて、それ以降はもう、夢を見ることを許されたと言わんばかりの日々でした。利褌さん。ケイジと貴方には感謝しかないですよ。蓮のことも、すべてを私には救われました」

 

 

 あ、テキのおやっさん。ジャンプ最新刊じゃーん。ありがとナス。読ませてもらうぜ。ふふう。んー? あのクマ騒ぎはいいってことよ。真面目に俺も驚いたなあ。あのクマの毛皮。今では近くの警察署に飾っているんだっけ。

 

 

 うーん。やっぱ面白いよなあ。ほんと、ここに来る漫画家たちは頭の中が二つあるんじゃないかってくらいの世界のレベルだぜ。

 

 

 で、おっさん二人がしみじみ泣くんじゃないやい。そういうのは俺と最後の戦いを終えてからでいいだろぉ? 勝ってくるからさ。絶対。三度も落としているレースだけど、信じてくれ。

 

 

 しかしまあ、またこの舞台で戦うのはゴルシに、キタちゃんか。どうなるかねえ。




 最後の戦い。同時に立ちはだかるのは弟子とライバル。騎手もかつての相棒が弟子と組んでくるというね。あ、一応もう少し話は挟みます。


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最後の戦い 有馬記念(GⅠ)

 前回は話を分けると考えていたのですが、せっかくなので一つにまとめました。少し長かったらゆっくり休みつつ見てくだされば幸いです。


 それと感想がみなさんのおかげで600件を超えました! いやあ、ほんと訂正の報告はアッ。私だらしねえし。いやあスイマセーンとなり本当に助かりましたし、面白い感想だらけで読み返してはにやにやしております。これからもどうかよろしくお願いします。真面目に励みになっております。


 今日は、少し冷えているなあ。

 

 

 「どうどう。ケイジ。これくらいで一度ストップだ」

 

 

 「ヒヒーン・・・むふ」

 

 

 『なんでえ。これくらいまだウォームアップにすらならないぜ?』

 

 

 松ちゃんも、気にしないでいいのによお。秋古馬三冠のローテは確かにきついし、俺も古馬だが衰えていないぜ? 愉快に行こうや。

 

 

 「練習はしたいが、最後だからな。早歩きでもう少しじっくり温めてからやれとテキも言っていただろう?」

 

 

 「む・・・・わん」

 

 

 『へいへい。そういやそうだった。あーゆったりテキの所まで800メートル。ゆったりだわぁん』

 

 

 そういえばそうだった。軽く流してからの後はいつものいくつかの走り方をしてからの坂路。古馬になってから兎角すごい勢いでテキのおやっさんが俺を休ませては脚を見るからなあ。大丈夫だってのに。二度目の凱旋門賞の後の筋肉痛もしっかり俺から伝えたし。どうやって? トングを使ってのジェスチャーで色々。

 

 

 歩いて歩いて。そのたびに伝わる松ちゃんの感情。悲しい。こういう時間がもっと長く。と思っているなあ・・・このやろー秋古馬三冠に燃えている勢いよりもそっちを出しやがって。少し驚かせてやるか。

 

 

 残り200メートル―・・・はいよー

 

 

 「なっ!? うぉっ!! ケイジ! 急に立ち・・・えええ・!?!」

 

 

 「ケイジー! お前、あぶ、あぶ・・・! 松風君も降りて降りて!」

 

 

 二足歩行でこのままゆっくりポコポコ。どうだいテキのおやっさんに松ちゃん。これが衰えた爺の脚遣いかあ? 筋力かあ? 問題ないんだからそうしょげなさんな。別れもここで終わりじゃないんだからさあ。

 

 

 そのまま前進しまーす。松ちゃん、鐙と器用に俺につかまって降りないなあ。いや、半分パニくって降りるかどうするかすら頭から抜けてない?

 

 

 残り100ー・・・・50-・・・・はいついた。降りまーす。よっとこなんちゃら太郎。いやーいいなあ。こういうのも。200メートル二足で歩けたのは記録更新だな。

 

 

 「け、ケイジ・・・! お前はシンザンみたいなことをこの歳でするんじゃない! き、肝が冷えたぞ・・・! ウッドチップ、特に新品を引き立てのいい日を貰えたってのに」

 

 

 「ははは・・・こ、腰が・・・シンザンと一緒に散歩していた人もこんな感じだったのかな・・・ま、まったく。出会ってから常に何かの驚きと振り回すことをするなケイジは・・・どういう足腰をしているんだ?」

 

 

 『お前さんら俺以上に俺の身体を知るくらいの人なのに甘いよそんなんじゃ。ははは。そりゃあ坂路に山道歩いていれば鍛えられるし、最近は余計な増量もないからいい感じなのよん』

 

 

 一緒に幸太郎と練習していたのが懐かしい。夏の放牧では毎年やっていて楽しんでいたなあ。俺らを真似するシズルたちも相まって二足で歩きまくる馬と犬という変な光景が見られるようになったんだっけ。

 

 

 ・・・・あれ? あの牝馬シスターズの柵越えのパワー与えたのあれのせいじゃね? トモゾウそのせいで連日走り回っているそうだし。まあ、どうせ牧場の敷地からは出ていないだろうけど。賢いしあの子ら。

 

 

 「はぁー変顔をしてごまかすんじゃない。全く・・・お前のふざけた練習量とそのタフさに周りの馬たちの調教の調整がスパルタになっていないかと心配する日々も終わるのがこんなに寂しくなるとは思わなかったよ。

 

 

 さ、ケイジ。ここからは少し流して1000メートル走って、後半2000メートルは松風君と好きに走ってこい。加減はここからも見守るからな。・・・どうせ今の二足歩行で不安だからと止めようとすればますます暴れるだろう? 大丈夫ならやってきなさい。ただし、その後は休憩とチェックだからな」

 

 

 『あいあい。じゃ、行くぜ松ちゃん。あの走り方でなー』

 

 

 「よし。行ってきます。テキ。ケイジも、合図は出すからその時にだぞ?」

 

 

 松ちゃんと一緒に頷いてから気持ち6割で走り出す。ウッドチップはふかふかで俺の体重でも問題なく衝撃を受け止めてくれる。いやー引き立てのダートとかこんな感じなんだろうなあ。晴れが続いた日の砂浜や欧州の芝を思い出す。

 

 

 まずは900を通過して、そこからギアをあげていく。コーナーを抜け、加速。コーナーでは息を入れるもそれでも比較的早めに。

 

 

 あの幻惑逃げではない俺らのいつものノリ。それをこなしていく。互いに慣れに慣れたスタイルだ。俺も松ちゃんも最高のスタイルに仕掛け、足元も不安はない。

 

 

 最後は少し早すぎたかもといえるくらいのラップタイムで無事にテキのおやっさんの元に。どうよ?

 

 

 「・・・・・・文句はない。むしろ、まだまだ成長を見せるつもりかお前は・・・ほれ、休んだ休んだ。特別に大量の寝藁を久保君と真由美ちゃんが用意してくれた。しばらく楽になりつつ診せなさい」

 

 

 「いい仕上がりでしたし、テキ。最後はやはりあのやり方でやらせてください」

 

 

 「私もそう考えていた。頼むよ松風君。まったく・・・あのテイオーの子どもでこのサイズ。誰も大差勝ちを見ても乗りたがらない、乗らないほうがいいと言われていたケイジが、最早世界最強とはなあ・・・松風君もケイジ以外でGⅠ、GⅡを手にできるほどのジョッキーになった・・・・・大竹騎手の言った言葉は本当だった・・・な・・・・・・・・・・・運命か。これも」

 

 

 そういやそうだった。俺、小柄なテイオーから生まれた650キロ台の超大型馬だもんね。いやー足元不安に骨折しまくりだったテイオーの子どもな俺だからなあ。松ちゃん来るまで梅沢君も周りに押されて俺に乗るチャンスを潰されていたとからしいし。なはは! 分からんもんだろうな世間は。

 

 

 「ケイジは、ええ。大竹騎手にとってのスーパークリーク・・・いえ、それにサイレンススズカにスペシャルウィーク、ディープインパクトを足して割らないくらいですよ。今後どれだけ戦い続けても僕は必ずケイジとの日々を忘れません」

 

 

 ははは。いうねえ。嬉しくなるよ。あのメンツと並ぶたあ。ただ、それはテレビで言いな。今は有馬を勝ちにいこうぜ? そのためにもほれほれ。思い出話以外にもあるだろぉん?

 

 

 「うぉっと。ケイジ。小突くな小突くな。わかっているよ・・・今回は、油断できない逃げの名馬に逃げの名手・・・いや、日本最強のジョッキーが組んで、ベテランジョッキーと追い込みの天才のコンビが再注目・・・かといって中途半端な場所は出来ない。大変だ」

 

 

 分かっているじゃん。

 

 

 『超スタミナ型の逃げ馬。高速戦車キタサンブラック。そして黄金の不沈艦ゴールドシップ。どちらも規格外のスタミナを武器に逃げやら追い込みでぶっ飛んでくる。俺らも変な札きれんぞ』

 

 

 まったく。キタちゃんの場合俺が仕込んだせいもあるけど気性もかなりいいから俺がハナを奪っても耐えつつ隙をついてサンデー譲りの瞬発力で抜いてからあのスタミナでひっかきまわすのもできるからなあ。逃げ馬の対策が通じないって反則だろ。

 

 

 「だからこそ、ケイジ。僕は君と一番の札を切るだけ。それだけを考えて・・・・うん・・・必ず最高の一手を持っていくよ。だから安心してくれ。ケイジ。君の信じた相棒は。僕は分かっているよ。君の言いたいこと」

 

 

 「・・・・・ヒィーン」

 

 

 『ならよし。んじゃ、少し水を貰うわ。はー・・・冬は程よいぬるい水が心地いいわ』

 

 

 真面目に、俺を知り尽くした、デビュー前からのマブダチで名馬に弟子でありこれまた逃げの天才に天才がついているんだ。ほんと気が抜けねえ。幻惑逃げでつぶせるほどのスタミナじゃないし。

 

 

 親子三代有馬記念がかかっているってのに、ラストチャンスだってのにいつだって阻む相手は三冠馬レベルに時代の頂点が立ちはだかる。ハードモードだよなあ。だからこそ燃えるけどよ。最後の最後のチャンス。命を燃やす勢いで行かねえと。

 

 

 「ケイジ・・・いつだって君のその度胸とおおらかさ、愉快さに助けられた。だから。その集大成は必ず見せていく。鞭もいらない。君と、世界最強にふさわしいフィナーレを飾りに行こう」

 

 

 「ああ、傾奇者にしみったれた空気は似合わない。その相棒も、素晴らしい男に育ったものだなあ・・・・君たちは私にとっては弟や戦友、あるいは実の子供みたいなものだ。だからこそ。遠慮なく、好きに戦って来なさい。仕上がりは、私が保証するよ」

 

 

 「ははは。そうなると僕前田牧場さんも含めて親が何人もいますね」

 

 

 「いいものだろう? お年玉やろうか?」

 

 

 『え? マジでー? それなら俺も』

 

 

 「ケイジには引退後にいいものあげるから」

 

 

 『やったぜ』

 

 

 「涎垂れているよケイジ。ふふ。元気出た。よし。後はブラッシングしようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぶほほほ。もう最高の仕上がりねケイジちゃん。今までで一番決まっているわ。びしっとバシッときっちりと♡ あ~んもう、スーザンメロメロよぉん♡」

 

 

 『騙馬の子らみたいな反応返すんじゃねーやい。待ったくモォーン。俺の馬主は変人だぜぃ』

 

 

 「スーザンさんがそういうのも分かるよ。ケイジ。毛の艶と筋肉がすごいもん」

 

 

 「写真集新刊出るそうですしねえ。あれ? そういえば阿部さんは?」

 

 

 「あの人はヒメちゃんの馬房に行ったわ。馬主だってわかってから仕事がすごく儲かっているらしくて。写真も欲しいし、労いにって人参を山ほど持っていったのがすごかったわよー?」

 

 

 無敗のGⅠ5連勝だもんなあ。しかもほぼ全部マイル。確か、後はいくつかのアジアマイルをめぐってからの引退で行こうって話だっけ。的矢さん。海外の方で調教師としての評価が日本と真逆になりそうだあ。まあ、シズルらがまた活躍すれば変わるかもだけど。

 

 

 あ、ちなみに今はスーザンママ、蓮君、久保さんと俺で駄弁っている。レースの数日前ってことで調整のみの分時間があるからみんなで会いに来たんだってさ。真由美ちゃんは俺の馬房の漫画の整理。色々あるからねえ。本棚にキセルに蹄鉄飾った額縁とか写真とか。

 

 

 「ふふふ。しかし、こんな人たちで集まって話して、一頭の名馬を見れるんだからケイジちゃんは流石よ」

 

 

 「厩務員、野球少年に自動車整備工の若社長にオカマバーのママ。十人十色なメンバーでケイジと一緒にレースについて駄弁れる。本当に愉快な時間でしたよ。こんな経験、今までなかった」

 

 

 「僕も。野球を教えてもらえて、戦い続けることのすごさに励まされて頑張って、もう推薦も手にできた。いろんなことがあったなあ・・・」

 

 

 「ふふふ。熊退治の豪傑の馬だものな。いい男は知らずに良い縁を招いていしまうのだろう。俺もこうありたいものだ」

 

 

 いつの間に。阿部さん。

 

 

 そういう意味じゃ阿部さん一番ラッキー? 世界レベルの車会社と直接コネと仕事のパイプ出来たし、ヒメのおかげで欧州の資産家らとも知り合いになれたし。ついでに女王陛下とも謁見叶ったしね。

 

 

 こう考えると、ヒメやナギコもしっかり馬主孝行しているなあ。俺の場合は宝塚取れなかったり、互いに連覇を潰し合ったりのバチバチ時代だったとはいえ負けも多いし。全くスーパーサイヤ人をそばで見ているZ戦士ってこんな気持ちなのかしら。若しくは悟飯を見守るピッコロさん?

 

 

 「私のバーね? ケイジちゃんの話を聞きに来る人や写真を見に来る人が増えているのよ。そして、皆言ってくれるわ。『ケイジが見せてくれた競馬の面白さと馬たちを応援する』って。過酷な世界の中にある良さを日本中に、世界に見せてくれたのが本当にうれしいの。ケイジちゃん。頑張ってきてね。ここを越えれば、いい余生が待っているわよ」

 

 

 「ケイジ。僕も来年から高校生で、甲子園、プロを目指すよ。ケイジのように厳しい世界で、入れるかもわからない。でも、戦い続けて、目指すよ。ケイジが助けてくれた命と、見せてくれたかっこよさに負けないくらい頑張る」

 

 

 「あちこち仕事を探して、合わずに辞めてきて、未来はどうなるかわからない不安もあった。だけど、競走馬を助ける、お世話する日々を欲しいと思って頑張って、すぐにケイジと出会えた。きっとこの先も支えになって、光り輝く時間をくれた。ケイジ。最高だよお前は」

 

 

 「しがない地方の中小企業整備工の俺がこうして東京で馬主として、大企業とコラボの仕事が出来るのもケイジ達の居た牧場が近くで、ケイジの存在が教えてくれて、興味を持たせてくれたからだ。ヒメの馬主にさせてくれたお前は最高だ」

 

 

 「あ、皆さんずるいですよ。私もケイジ君に伝えたくて一緒にって」

 

 

 「ぶほほ。大丈夫よ真由美ちゃん。あのセリフはみんなで伝えるって決めているから。ささ、真由美ちゃんも一緒に一緒に」

 

 

 おろ。茶菓子を持って来た真由美ちゃん。なんだろ。皆で言うこと? 俺に?

 

 

 「せーの」

 

 

 「「「「「頑張れケイジ。お前がナンバーワンだ」」」」」

 

 

 

 「ビヒィ!」

 

 

 『ここでこのセリフは良いね! よっしゃ。勝ってくるぜ』

 

 

 拳を出してみんないい笑顔で俺を応援してくれた。最高だ。俺も鼻先をこつんとみんなと付き合わせていくことで気合を補充。ははは。なら、いっちょやってきますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「きたきた・・・おはようさん葛城さん。ケイジ君。調子はどうです?」

 

 

 「おはよう。藤井君。問題ない。いや、むしろ今日ほどいい仕上がりはないほどだ」

 

 

 「ヒン」

 

 

 『おいっす』

 

 

 おうおう。カメラの音がすごいねえ。フラッシュはたかないけど、凄い凄い。めっちゃ記者いるじゃん。そんで藤井の兄ちゃんは今日も元気そうだねえ。目が血走っている以外。

 

 

 「藤井君は逆に大丈夫かい? 目が赤いよ」

 

 

 「い、いやあ興奮してついつい眠れず。移動中とさっき仮眠を取ったので一応問題ないですわ。ふむ・・・ケイジ君もこれは・・・記者としてこういうのはあれだけど、ほんま、ケイジ君の勝利を願っています。ケイジ陣営で打ち上げの際は誘ってくださいね? 個人として祝いに来ますから」

 

 

 記者としてそれはいいのか。そんでまあ、ほんと、藤井の兄ちゃん打ち上げの記事すらもかかずに個人として来てくれるっていうねえ。まあ、定期的に夏に来ては温泉とビールと牛乳を味わいながらウチの牧場のコラムを書いてくれたり、引退馬支援について書いてくれたりでいい人だしね。

 

 

 「KG対決最後のレースはこれまた三冠を賭けた大一番。新世代の波も来ている中での戦い・・・ほんま、どこまでも、最後までも目をそらせるような戦いをしない。目だって目立ってなんぼの傾奇者の体現をしている。記者として、男としてもここまで惹かれる馬は、漢はそうない」

 

 

 『だろぉー? いい事いうねえ』

 

 

 「だからこそ、僕もしっかりと記事は公平に、情報はしっかりと書いてきたつもりや。この世代を、名馬たちを知ってほしいと。素直に気持ちを出すためのコラムも増やしてもう頑張ってきた。だけどこれも最後や・・・ケイジ。今日出す記事は素直に君とゴルシの事を褒める記事を書きたい。だから、いつも通り最高に暴れてきてくれ」

 

 

 『あいよ。なら、世界も翻訳するような文を頼むぜ。藤井の兄ちゃん』

 

 

 互いに頭を下げてから俺はパドック目指してゆっくりと移動して、藤井の兄ちゃんも記者としての仕事のために客席に移動。

 

 

 冬だっていうのに、凄い熱気と声で寒さを感じない。あいも変わらずここの熱量は季節関係なく燃えさせて、俺達馬と騎手を待ってくれているんだなってわかるぜ。

 

 

 「・・・・・・燕尾服、スーツを用意していくのが常になるなんて思ってもみなかったものだ」

 

 

 「ヒヒン。わぉん」

 

 

 『勝利すれば口撮り写真とかあるしな。だから優勝候補の人らはみんなスーツとか制服だっけ』

 

 

 「よし。ケイジ。最後の有馬記念。最高の名馬として何年たっても、映像でしか知らない遠い未来のファンたちも語り継ぐような戦いをしてこよう」

 

 

 『モチのロン』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『いよいよ皆様、この時を迎えました。暮れの中山。今年最後のレースの一つ有馬記念。多くの名馬が戦い、名誉と賞金。何よりここで語り継がれる名勝負とその記憶を求めて数々の激戦が繰り広げられました。語り継ぎたい名馬が勝つと言われるレースであり、多くの名馬たちが引退の花道としたこのレース。

 

 

 ・・・ここをまた最後の戦いと決めた名馬がまた二頭。しかしそんなことは知ったことではないととんでもない勝負をしようとしています!』

 

 

 最後の有馬記念。かあ、思えば何度挑んでも負けて、だけどそのたびに勝つやつらが面白い実績を手にして去っていった。それを見るのもまたよかったと思えたし、最後は笑えた。

 

 

 『引退の歳になってなお二つのレースを史上初の三連覇を成し遂げ、春古馬二冠を手にした黄金の不沈艦ゴールドシップ! 世界初の欧州二冠連覇、日本初の無敗のクラシック四冠を成し遂げ、今秋古馬三冠に王手をかけて再びライバルと最後の一冠をかけてここに来ました! 四度目の正直なるかケイジ!

 

 

 世界史上初、日本初、三冠馬、そのレベルを何頭も生み出し、実績とドラマを生み出した最強世代の筆頭格二頭。KG対決の最後の舞台にして、ケイジの三冠がかかった勝負がここ有馬記念で行われようとしている。二度目の三冠を賭けた勝負を見れるということもありここまで聞こえるほどの熱狂は天を衝かんばかり!』

 

 

 オグリ以来の葦毛の馬による有馬記念制覇のゴルシ。凱旋門賞馬になった俺を叩きのめして、天へも届くほどの勝利を見せた先輩三冠馬オルフェーヴル。俺らと同期の牝馬三冠で、初の中山のレースで最後を見事に飾ったジェンティルちゃん。

 

 

 ゴルシは今回も戦うが、誰もかれもがやばかった。あんなに喰らい付いても届かなったのは本当に驚かされた。だが、今度こそ。今度こそだ。いつも言い訳はないほどに頑張って戦って負けた。だからこそ、今度は勝って帰るぜ。

 

 

 『皆様は誰に夢を賭けるでしょうか!? ケイジか、ゴールドシップか、あるいは次世代の筆頭格キタサンブラックか! 馬券も今回限りの同着馬券もあります! あり得ないかもしれない決着だって見せてきた最強世代最後の戦い。思う存分盛り上がりましょう! 夢のような時代、戦いを繰り広げた名馬たちへの期待と思いを乗せて!!』

 

 

 いやーアナウンサーさん超ノリノリだな。もう競馬というかプロレスとかの興行名乗りのそれだよ。

 

 

 ははは。そしてこの空気の中でも勝利を目指してきた天才たち。いいねいいねえ。ほんとこういうノリの中で戦ってきたんだよな。ディープと戦っていた皆さんもこんな気持ちだったのかね。

 

 

 『どーもどーも皆さん。ケイジだよん。最後の大一番。しっかり見ていってくれよ』

 

 

 『いやーケイジ。今日の仕上がりはすさまじいですね。この仕上がりをこの年齢まで持ってこれるというのは葛城厩舎の腕とケイジの胆力もあってこそでしょう』

 

 

 『なるほど岡崎さん。この前のジャパンカップもすさまじかったですがそれ以上と?』

 

 

 『間違いなく。私だったらきっと彼と戦う時は二着を狙うでしょうね。それくらい感じる覇気と仕上がりが違う。馬ですが、馬以上の何かと思えます』

 

 

 あ、岡崎さん今回も解説なのね。的矢さんも見に来ているし・・・あー国光君にあの老夫婦も。いつも関西では見たけどわざわざ関東まで来てくれたか。もしかして今年馬券でかなり儲けたのかしら。皆いるなあ。マタギのおっちゃんも。幸太郎はいないか。いたら驚くけど。

 

 

 『ゴールドシップ、ケイジどちらもいい仕上がり。早速二人ともカメラを前に立ち止まる。ポーズをとる。変顔をするの大騒ぎ。観客席からは先ほどの歓声から一変笑い声が中山に響きます』

 

 

 『これがこの世代でしたね。レースもパドックも、ウイニングランすらも騒ぎに、ドラマに変えてしまう。最強と愉快さの両立したしっちゃかめっちゃかさ。何度日本競馬の常識を変えたか』

 

 

 『いやっほ。ゴルシ―お元気ぃ? ほーれ』

 

 

 『お、ケイジ。オッハー。びろーん』

 

 

 とりあえずレース前のご挨拶ということで変顔対決。俺は耳をどこぞのエレキングのように回しつつ真を真ん中に寄せ、ゴルシは舌を出しての目をグルグル。

 

 

 『・・・・ぶふぅ。負けたー』

 

 

 『いよっし。俺の勝ち。最後にはしっかり勝てたぜー』

 

 

 にらめっこ勝負は俺の勝ち。よしよし。今日もいい感じだな。

 

 

 『今日で最後の対決だなあ。ゴルシ』

 

 

 『そうだねーようやくジャスタ達と一緒にだらだらできるぜ』

 

 

 『ははは。なら、その前にさ、俺とまた勝負をしようぜ。最初にあったころのように気持ちよく走ろうや』

 

 

 ゴルシの場合、レースは嫌いだけど俺らとの勝負とか、ファンサのために来ていたようなものだったしな。ある意味俺以上にこのレースが終わった後の解放感を求めているのがわかるし、併せの際にも愚痴っていた。

 

 

 

 だからこそ、今日はノリにノッてほしい。引退後俺の牧場に来れば走れるけど、この舞台ではどうあがこうがもう最後だもんね。

 

 

 『ふーん・・・・いいでゴルシよ。ケイジここで勝てていないしもう一回勝つもんね』

 

 

 『お前・・・! 言ってろい。俺が勝つんだよ今日は。先で待っているからちゃんといつものように来いよ』

 

 

 全く。こういうところの記憶力は本当にすげえな。レースの事も場所も覚えているんだから。しかも大体3年前くらいの。感じる気配も強くなったし、うん。問題ないか。気合も乗ったゴルシなら、最後の戦いにちょうどいい。

 

 

 『今回のレース。KG対決もそうですが、その中に割って入れる才能の持ち主キタサンブラックもまた注目を浴びていますね岡崎さん』

 

 

 『はい。あのとんでもないスタミナで菊花賞を逃げ切れるスピードを持ち、気性も優しいので持ち直しもできる新時代の名馬のイメージを作れる器。騎手も大竹騎手と松風騎手という逃げの名手たちとの経験を持っています。逃げ馬同士の対決という意味でも今回は新旧の世代の対決になり凄いです』

 

 

 やっぱそこ注目するよね。俺らの世代に次ぐ代表的な逃げ馬でスタミナバリバリ。菊花賞を逃げで勝利とかある意味ミスターシービーレベルのタブー破りかましているんだから。

 

 

 こう考えると。真面目に世代交代の時期と分かるなあ。俺が当事者になるのはほんと考えていなかったけど。わかっていたはずなんだけどね。

 

 

 『あ、ケイジさん。お久しぶりです!』

 

 

 『よっ。キタちゃん。今日もいいがたいしているねえ。毛並みもいい。ぐっすり眠れた?』

 

 

 『はい! あの睡眠方法でもう元気で! 大竹さんもいつも以上になでなでしてくれたんですよ』

 

 

 『期待されているねえ。あはは。お前さんは次世代の筆頭だ。皆がお前さんを次のヒーローだと認めている』

 

 

 真面目にノーザンテーストあたりから小柄な名馬たちが増えている中俺ら真逆の大型馬でしかも逃げでやりたい放題しているしねえ。キタちゃんの場合馬主や騎手も話題の人だしほんとネタに事欠かんよ。

 

 

 『おや、ケイジとゴールドシップの次はケイジとキタサンブラックが顔を向け合いながら何やら嘶いております。どちらも名手大竹騎手。次世代の雄松風騎手と共に戦いクラシック、あるいは重賞を手にしてきた者同士。同じダービー馬であり逃げ馬同士。師弟関係でもあるのもあってここでも何か話しているのでしょうか』

 

 

 『奇行、破天荒なエピソードが多いケイジですが気性難の馬にも優しく、人懐っこいですからねえ。キタサンブラックにも逃げを教えたもの同士。気性も優しいゆえに仲が非常に良いようです。しかし・・・どちらも大型馬のはずなんですが、ケイジのせいで小柄に見えてしまいますねえ』

 

 

 今日の俺652キロだもんな。前より増減抑えているけどそれでも650キロを切らないあたりこれがナチュラルウェイトの下限なんだろうなあ。

 

 

 『今日はケイジさんの最後のレースと聞いています。だからこそ・・・僕にとっても最初で最後のケイジさんへの挑戦のレース。全力で挑ませてもらいます!』

 

 

 『ライバルがここでまた増えるかあ。全く人気者は辛いねえ。いいよ。思いきり来い。そして、大竹さんとも仲良くね』

 

 

 『はい! あ、それと松風さんにもよろしくです』

 

 

 いい子だなあ・・・未来のウマ娘のスタッフさん。キタちゃんの性格調べるために何日も泊まり込んでお世話を見ながら研究していない? ほんとアニメの面影が被るの。

 

 

 さてさて、パドックをグルグル回り、そんでいつも通り松ちゃんをよっこらしょ。体重もいい感じ。足の力の具合と揺れ具合からも体調も良し。流石。いい感じに仕上げてきたか。

 

 

 『いよいよ本場馬入場です!! 1番ケイジ。テイオーステップで入場をしてきました!! 体重は652キロ。余分を削ぎつつも削ぎすぎないベストな状態で持ってきました。最後のレースの前に気合十分。戦国コンビ最後の花舞台。一冠を求めてきました! そして2番ゴールドシップ。505キロ。オグリキャップ以来の葦毛馬による有馬記念優勝がケイジから奪った初勝利というドラマチックと愉快さに溢れた黄金の不沈艦。二度目の優勝とケイジとの最後の一戦を勝利を飾らんと気合十分。

 

 

 国内で多くの怪物たちと渡り合い、彼もまたすさまじい戦績を積み上げてきた猛者。ここに来ても尚油断をすればマジックのような追い込みに抜かれてしまうでしょう』

 

 

 一番油断できねえよ? 俺デビュー前からその才能をじかに見てきているし。何回かあのゴルシワープに驚かされて、あまつさえ幻惑逃げもつぶされたか。ほんと、いいはまり具合だったのになあ。

 

 

 あ、例の同着馬券・・・ウッソだろ。2番目くらいには買われているのかよ。しかも俺とゴルシかキタちゃんだし。ゴルシとキタちゃんはないんですかねえ?

 

 

 「やあ、戦国コンビ。今日も相変わらず元気そうで安心したよ」

 

 

 「大竹さん」

 

 

 『あ、タケちゃん。お元気?』

 

 

 キタちゃんとコンビを組んでのタケちゃん。相変わらずナイスミドルねえ。

 

 

 「君たちのタッグを見れるのが今日が最後・・・騎手としては怪物が去るゆえに勝利のチャンスが手に入る嬉しさもあるけど・・同時に僕も乗れるチャンスが消えるし、一ファンとして去るのは悲しいものだ・・・」

 

 

 「大竹さんがそう言ってくれるのならケイジも喜ぶはずです。相棒の一人であり、一緒に新時代を作ったんですから」

 

 

 「・・・ありがとう。だからこそ、何度も何度も挑んでは返り討ちにされてきたが、今日もまた挑ませてもらう。キタサンブラックも間違いなく怪物の器だ。いいレースをしよう」

 

 

 「はい!」

 

 

 いい男同士のやり取りは痺れるねえ。そして、松ちゃんも言うじゃないの。新時代を作った。か・・・確かに。でも、お前さんが本当はやれるはずだったんだぜ。欧州二冠の連覇の栄冠もね。

 

 

 タケちゃんにプレゼントできたのは素直にうれしいし、悔いはねえ。でも少しでもその分の実績は渡したいからね。だから。せめてここの一冠はプレゼントさせてもらうぞ。松風守。

 

 

 『いくつもの時代がここで生まれ、あるいは去り世代交代をしてきました。その激闘は今も語り継がれ、我々の思い出に刻まれてきました。そして今確かに日本競馬を次のステージへと押し上げた最強世代筆頭格の二頭は最後の花道を飾るために、ライバルとの最後の戦いへと臨み、新世代もまたその最強を倒さんと集いました。

 

 

 有馬記念。そのレースを始めるために次々と名馬たちがゲートインしていきます』

 

 

 無事にファンファーレもなって、俺らもほいさほいさとゲートイン。ゴルシの方も最後と分かっているからかごねることがないね。

 

 

 いや・・・これは一番ノリにノッテいるな。なら、松ちゃん。わかっているよな?

 

 

 「分かっているよ。ケイジ。一番の武器で行こう」

 

 

 『さっすが。なら、問題ないな』

 

 

 気持ちも十分。身体も問題なし。相棒は最高。うん。行ける。

 

 

 『今全頭ゲートインしました・・・・・・・スタートしました! さあ、先頭に出たのはケイジ! 今回は、最後の大一番に持ってきた戦法は大逃げだ! それを追いかけるのはキタサンブラック! 新旧逃げ馬対決が繰り広げられています。

 

 

 ゴールドシップはいつも通りの最後尾について先頭を伺います。大型馬が先頭と最後尾を取る形となりました有馬記念。極端な戦法が入り乱れる中先頭集団を形成するのはゴールドミラー、ハートマン、アイシクルレインと続きます』

 

 

 さ、いつも通りの大逃げ。いや、久しぶりか? でも俺らの代名詞といえばこれよ! さあさ。お披露目でござーいってね。

 

 

 『ケイジグイグイ伸びて既にキタサンブラックに2馬身の差をつけて独走状態。コーナも見事に走りホームストレッチへと向かっていきます。観客は既に興奮のるつぼ。そう。ケイジの傾奇者伝説は大逃げから始まりました。それを最後に見せてくれると言わんばかりの爆進ぶり。キタサンブラック追いかけますが距離を離されていきます!!

 

 

先頭はケイジ。二番手にキタサンブラック、三番手にゴールドミラー、サウンドアクター、ハートマン、アイシクルレインと続いて先行集団を形成。マリアルール、アドマイヤアレスが続きます。後方はビッグショック、ヒットクエスト、ルージュヴィン、オンリーゲットが続きゴールドシップは変わらず最後尾です。今回かなりのハイペースなレース運びです』

 

 

 キタちゃんは喰らい付いてくるか。で、ほかはまあいつも通り。ゴルシはもうアイツは問題ないというか、楽しんでいるなあ。気配でわかる。

 

 

 さ、とりあえずは第1コーナーでいっぺん息入れながら引き離すかね。真面目に三回くらいコーナー使えるからここのレースと距離はありがたい。

 

 

 『さあ、1000メートルを通過しました。タイムは57秒3!! これはかなりのハイペース。ケイジとキタサンブラックによってレースを引っ張ることで非常に速いレース運び。

 

 

 キタサンブラックのペースとなりますが同時に先頭のケイジの得意なレース運び。距離を詰めることが出来ないまま第2コーナーを抜けて向こう正面と出ていきます。先頭はケイジ、二番手キタサンブラックとの差は4馬身。かなり飛ばしております』

 

 

 よし・・・行くか。出ないとそろそろアイツが来るし。松ちゃんも。

 

 

 「行こう。ケイジ。ここからが本番。だもんな」

 

 

 首にポンと手を置いて鞭の代りの指示。それだけで十分。そして相変わらず分かっているねえ!

 

 

 さあ、最後のスパート前準備の加速。いってみよー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「相変わらず・・・何てスタミナだ・・・!」

 

 

 ケイジが僕とキタサンブラックの先頭を譲ることなく常に走り続けてレースも後半。これくらいでへばるキタサンブラックではないのは分かっている。だが、そのスタミナ自慢の相棒の逃げを封殺し続けたまま常に先頭を保ち、あまつさえ引き離してくるこの滅茶苦茶さ。

 

 

 『まるで・・・まるで追いつけない・・・! これがケイジさん・・・これがターフの傾奇者!』

 

 

 「落ち着いて、もう少し我慢だ・・・それまでは息を入れつつ行こう」

 

 

 前にも感じた少し時間が遅く感じるほどの集中と、ケイジの声が聞こえたような、あの凱旋門賞の時の感覚。そこまで集中して、キタサンブラックの気持ちも感じ取れるほど。だからこそ息を入れて、最後のコーナーからの直線に賭けるように、力を残すように指示をする。

 

 

 逃げ馬のキタサンブラックだが、気性が優しい分我慢も利く、先行策への切り替えをして持ち前のタフさとスピードを最後に持ってきて勝利を狙う。ジャスタウェイ、ジェンティルドンナらほどの瞬発力はないが最高速度は間違いなく世界でも高水準。やれるはず。

 

 

 そう考えている中、ケイジはさらに加速して第3コーナーに入っていった。今ここで加速。ここまで距離を取っていて息を入れるどころか更に差す勢いで飛んでいく。何を警戒しているのか。少し考えるよりも早く、その答えが横から白い輝きと一緒に現れた。

 

 

 『ああっとゴールドシップが仕掛けてきた! 黄金の不沈艦ここが勝負どころだとケイジを猛追開始! グイグイ中団、先頭集団とごぼう抜きをしてあっという間に先頭集団! キタサンブラックを追い抜いてケイジとのリードを縮め・・・・いや! ケイジさらに加速する! リードは譲らないと大逃げのケイジ! そのリードは潰してやるとゴールドシップ! 二頭の激闘が繰り広げられています!』

 

 

 黄金の不沈艦ゴールドシップ。そのマジックのような追い込みであっという間に僕たちを抜いていく。

 

 

 規格外の大逃げの大天才ケイジと、これまた規格外の追い込みの天才ゴールドシップ。二頭のこの戦いを後ろから見て、全く外見も性格も違う。毛色だって違うのに・・・ふと、思い出してしまった。

 

 

 「サイレンススズカ・・・ステイ・・・ゴールド・・・!」

 

 

 僕と共に戦ってくれた、日本競馬を沸かせてくれた優しい大逃げの天才。その同期にして日本競馬の海外コンプレックスを砕き、間違いなくスペシャルウィークらと共に日本競馬を次のステップへと進めてくれた天才。どうしてもかぶってしまう。あの日曜日さえなければ見れたはずの可能性が、あの香港で終わることなくあの走りが出来たのなら。

 

 

 二頭のありえた未来を体現したような二頭のレースに、僕も、そしてきっとキタサンブラックも魅入られていた。

 

 

 『かつての97世代にて世界を、日本を湧かせたサイレンスズカとステイゴールドの激突なのか! 菊花賞以来見せてくれる名馬たちと共に走り抜けるケイジとゴールドシップ!!! 負けるなケイジ! 負けるなスズカ! 勝ってくれゴールドシップ!! 伸びてくれステイゴールド!!

 

 

 最後の三冠を目指す勝負はまたもや伝説たちの戦いぶりを呼び起こしての大激闘!! リードを縮めようとするゴールドシップとそうはさせないとケイジが逃げ切ろうと粘る! 4コーナーカーブを抜けての直線だ! 最早この二頭の世界。二頭、いや四頭の大天才たちの夢のレース、そのフィナーレを飾るのは誰だ! ケイジとスズカ組か、ゴールドシップとステイゴールド組か! 意志のバトンか血のバトンか! 今それが試されております!!』

 

 

 「いったい・・・いくつもの場面を重ねさせてしまうんだ君たちは・・・行くぞキタサンブラック! 君たちの大先輩へと挑むチャンスだ!」

 

 

 ただ、だからこそ挑みたくなってしまうのは騎手の性か。魅入られるほどの怪物たちに負けられないと鞭を入れてスパートの指示を出す。勝利は誰のものか、なんとなく感じてはいたが、だからと言ってこの戦いを手放すわけにはいかない。

 

 

 頑張ろうキタサンブラック。この戦いの糧は。必ず大きなものとなるはずだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっぱ来たなゴルシ! そうだよな。ここでお前なら来ると思っていた!

 

 

 『残り300メートル! デッドヒートを続けていく二頭! 唯一キタサンブラックが喰らい付きますが5馬身を付けられこれ以上は厳しいか! ケイジ半馬身のリードを譲らない。ゴールドシップもまだまだと言わんばかりにその差を離させない。

 

 

 伝説の再演は同期同士の勝負、どちらもまた時代を沸かせた怪物たちの勝負となった! 最後の一冠。手にするのは何方だ!』

 

 

 『後はケイジを抜けば勝利。思いきりやらせてもらうでゴルシ―』

 

 

 『ははは。ああ。こっちのセリフだ。そして、思い出すな。こうしてよく併せをしていたよなー最初のうちは一緒によーいドンで』

 

 

 『そうだったねえーなら・・・・せーの』

 

 

 『ほっ!!』

 

 

 最後のスパート。もう何方も力は最後の一絞りくらい。それは分かっていた。だからこそ、親友でありライバルのゴルシとは真正面から楽しく。でも熱くやりたかった。だからこその同時再加速。

 

 

 互いにデビュー前で一緒に愉快にやっていたころの気分と、同時にそこからここまでこれたことへの感慨をしょい込んでのスパートは、いやに長く感じて、とても愉快だった。

 

 

 でも、それももう終わりだ。

 

 

 『ケイジか、ゴールドシップか! 二頭並んだ! 並んだままさらに加速! 離れない、離さない! 怪物同士の競り合いはまるで固定されたように動かない! そのままゴールだ!! タイムは驚異の2分24秒9!! ワールドレコードを更新!! さらに二頭並んだままのこれは・・・・写真判定に託されます! あり得るのか・・・これはあり得てしまうのか!!』

 

 

 一緒に並んでゴール。いやー今回は互いに顔をちょいと向ければぶつかりそうなレベルの密着での激闘だった。

 

 

 写真判定らしいが・・・まあ、なんとなく予感はある。このレースの結果。きっと・・・こうなっているだろうな。

 

 

 『結果が出ました・・・・! 結果は同着! 同着です! 一着は共にケイジとゴールドシップ! 互いに有馬記念優勝を手にしました!! ケイジは秋古馬三冠を手に! そしてゴールドシップは春古馬二冠と二度目の有馬記念勝利を手にするという、最後まで彼らの時代のままここを征しました!!

 

 

 伝説は伝説を呼び、そして輝きを増して去り行く二頭! 彼らがいなければこの時代はあり得なかった! ありがとうケイジ、ありがとうゴールドシップ・・・・・・・寂しくなります! 去らないでほしい! 本当に、この世代よ永遠なれぇえ!!』

 

 

 『アナウンサーさん鼻水垂れているだろ絶対。すげえ鼻声』

 

 

 『また同着だったねーケイジ。なはは。最後の年は互角ってことか』

 

 

 『だなぁ。だけど、今度はお父さんとして勝負だぞ。ゴルシ。いい女の子と沢山デートするんだから、頑張れよー?』

 

 

 『ジャスタは先に行っているんだよなーずるいし、その分頑張るでゴルシよ』

 

 

 割れんばかりの歓声。観客たちの興奮で会場が揺れて、空気がびりびりするのを感じつつ最後の、ターフの上でのレース後の会話を楽しむ俺ら。

 

 

 一方。鞍上の方でも楽し気な会話・・・松ちゃんは号泣しているけどさ。まあ、和やかな会話をしているよ。

 

 

 年末の大一番。俺らにとっては大団円で幕を下ろすことが出来そうだな。

 

 

 『行こう、ゴルシ。このダンスは一緒にやろうぜ』

 

 

 『あいよ。それじゃ、観客の皆さんを更に湧かせちゃうぞ~?』

 

 

 この後の俺らのパフォーマンスでの盛り上がりは最高潮で、なんか気絶した人もいるとかなんとか。俺らあの超伝説のバンドグループじゃないよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ケイジとゴールドシップの出会いはそこからだったんですねえ。いやはや・・・本当にこの二頭は仲良しだったと』

 

 

 「ええ、たびたびレースが合わない秋ごろには本当に調整で大助かりで・・・優しいのもあってうちの厩舎であわせを何度もしてもらっていました」

 

 

 『くのやろー! 俺の変顔の方で先に笑ったのゴルシだろー!』

 

 

 『回数はそっちの方が多いもんにー! このやろー!』

 

 

 レースも終わり、いよいよ最後の引退式。志村ヘンさんが来てくれてドリフ新メンバーお疲れ様という垂れ幕をみんなで持ってきてくれたり、北島サンちゃんが来てくれて演歌を歌って俺らとキタちゃんを労ったりとでしんみりした空気はない。

 

 

 現在進行出来で俺とゴルシでハリセンのしばき合いしたり隙あらば変顔勝負しているからな。伊馬波さんも久保さんも泣き笑いしているのよ。茄子のおっちゃんインタビューされているけど半分苦笑い状態だし。インタビューしている姉ちゃんも笑いを隠しきれていないし。

 

 

 『素敵なゴールドシップ陣営のお話。ありがとうございました!! では続きまして、ケイジ陣営の話に移らせてもらいます。GⅠ16勝。無敗のクラシック四冠、欧州二冠連覇、そして今日の秋古馬三冠。まさしく世界に誇れる日本の怪物ケイジですが、本当はかなり早めに切り上げることを考えていたというのは本当ですか?』

 

 

 「ええ。実際、馬主の前田さんや私も何ですがケイジの血は今の競馬界ではアウトブリードを狙える存在ですし、テイオー産駒の素質馬も少なかった。どうにか重賞で勝利、もしくは善戦して種牡馬として細々でも頑張ろう。そういう気持ちでした。実際、あのテイオーの子どもでこのサイズです。怪我の不安は他の馬より強いでしょう?」

 

 

 『え? そうなのケイジ?』

 

 

 『俺の親父が怪我に泣かされ続けた悲運の名馬だからなー。小柄だったのに俺だもんよ。そりゃー不安がられたんだぞ?』

 

 

 「ま、まあ確かに。そもそも、500キロ前後で大型なのにケイジのサイズは650キロ越えですものね」

 

 

 「それもあって突然変異過ぎるし、足元不安はいつも怖かったですよ。結果からすればそれを吹き飛ばすほどの頑丈さとパワーでここまで戦い抜いて、毎日が夢のような時間でした。とはいえ、種牡馬としてのお値段どうするべきかとみんなで相談し合ったりとほんと愉快愉快でしたよ。あはははは!」

 

 

 なお今も900万、せめて1000万にしたほうがいいんじゃないかと周りから言われている様子。安くいきますと譲らない馬主とか前代未聞じゃないの? つーか厩舎にもまた相談していたのかおやっさん。

 

 

 「ケイジには夢を見せて、叶えてもらいました。これから生まれてくるであろうケイジの子どもたちをまた預かって、必ず競馬界に血が残せるように頑張ることでケイジへの恩返しをしたいですね」

 

 

 『ターフの傾奇者。復活した皇帝の血筋は必ず残るはずです。ではでは、続きまして騎手の皆さんに伺いましょう。まずはケイジの華々しい傾奇者伝説の幕開けを彩り、現在ケイジと同じ前田牧場の名牝キジノヒメミコの主戦騎手を務めています梅沢騎手から』

 

 

 「えーと・・・いや、ここの場所に呼んでいただけること自体が感激で・・・その、ケイジの強さは、まさしくずば抜けていました。ただ、ケイジがテイオー産駒なのとあの巨体なのも相まって周りからは乗り続けずにほかの馬で経験を積んでいたほうがいいと言われて乗れず・・・今思うと、振り切ってでも乗れたらと思うこともありました。

 

 

 だけど、それだと今僕と一緒に戦っている。キジノヒメミコとの出会いもなかったでしょうし、ケイジの子どもと今度は一緒に戦えればと。できればケイジとキジノヒメミコとの子供と一緒にいければ最高です。そしてケイジ、お疲れ様。一戦だけだったけど僕にはすごくいい思い出だったよ」

 

 

 ははは。デビュー戦で実は落ちそうだったよなあ。そして、いうねえ。問題ないよ。きっとおやっさんなら俺とヒメの交配も考えているだろうし、素質馬が出ればすぐにお前さんが主戦だ。

 

 

 『梅沢騎手。ありがとうございます。では続きましてケイジの初の欧州二冠。凱旋門賞を制覇した時にコンビを組んでくれました大竹騎手にお話を伺いましょう。ケイジとともに日本の悲願をもぎ取った相棒として如何でしょうか』

 

 

 『感無量ですね。あの二戦は僕にとっても一生物の思い出ですし、本当にいつでも愉快なレース運びで周りを沸かせていました。僕にとってはとんでもないライバルであり、同時に・・・いくつもの想いを背負ってくれた戦友です。あのテイオー産駒でこの規格外な突然変異のケイジが生まれたのは本当に神様に感謝するほかないです。僕も何度も一競馬ファンとしてケイジやこの時代を楽しめたか・・・

 

 

 ケイジ達の作った時代はキタサンブラックたちが引き継ぎます。必ず、このブームを繋いでケイジ達とそのライバルたちの激闘が語り継がれるように頑張っていきます。だから、ケイジも見ていてね』

 

 

 ついでにほかの馬たちにも乗るだろうし、この伝説ジョッキーはいくつの勝利を手にするんだろうね? 俺も期待しているよ。今後のレジェンドの活躍に。

 

 

 さ、そして大トリだ。頼んだぞ。一番の相棒。

 

 

 『大竹騎手ありがとうございます。では最後に。ケイジと共にGⅠ14勝。戦国コンビとして多くの伝説を作りました松風騎手にお話を伺いたいと思います。最後の戦いまでまさしくケイジらしい戦いぶりでした。今のお気持ちは如何ですか?』

 

 

 「もう・・・なんというか・・・本当に一緒に、どこまでも戦い抜けたのが嬉しくて・・・僕が怪我しているときでも問題ないと言わんばかりに戦って。滅茶苦茶しても必ずレースではいつだって最高の走りを見せてくれました。僕が未熟ゆえに、負けも多く与えてしまったのが悔しいですが、その分は、ケイジの子どもと一緒にケイジに教えてもらった分も含めて恩返しをしていきたいです。

 

 

 ケイジの一族には僕が引退するまでは奉公する。お仕えする所存ですよ。ケイジ達の作り上げた時代をその子供たちに伝えて、一緒にケイジが取れるはずだった宝塚記念や、多くのレースに挑んでいけたらと思います」

 

 

 宝塚は取れなかったもんなー。短距離のレースも含めていろんなところのレースを取って来いよ。GⅢの年齢制限とはいえ俺と一緒に1200も取ったんだ。行けるだろ。

 

 

 さてさて。そうこうしているうちに俺とゴルシの両陣営への騎手、調教師への花束贈呈。なんだが・・・ここで一つサプライズ。

 

 

 「どうぞ・・・松風騎手。ケイジ君と最後まで一緒に戦ってくれてありがとうございます」

 

 

 「え・・・! あ、ありがとうございます」

 

 

 真由美ちゃんが松ちゃんの花束贈呈の役をやっているんだよね。しかも花束に隠れているけど実はラブレターも忍ばせているという。

 

 

 化粧も香水もばっちりの。普段は俺らの世話で見えない真由美ちゃんの女の顔に松ちゃんドキドキだぜ。うっひょーい! お似合いだぜ御両人!

 

 

 「あっこら。ケイジ・・・! ちゃ、茶化さないでくれよ・・・ふふ」

 

 

 「もう。ケイジ君。ありがとう。本当に最高の出会いと日々だったよ」

 

 

 『いいじゃないのいいじゃないの。いよっし。ゴルシ。あれやろーぜ。俺はお前にくれてやる』

 

 

 『ん? いいでゴルシよーなら、おいらはケイジに』

 

 

 俺よりも早く次世代が生まれる可能性があるカップルを見届けつつ、久保さんと伊馬波さんを引っ張って中央に移動。

 

 

 『さて、これを持ちましてゴールドシップ号、ケイジ号の引退式を・・・あら? ケイジとゴールドシップ中央に移動しました。まさか、これはまさかやってくれるのでしょうか!?』

 

 

 引退式もぼちぼち終わり。もう俺らはターフの上で戦うことはない。だからこそ。掟破り。二度目のダンスのお披露目じゃい! 引退式に来たウン万人のファンの前でもバッチしサービスはしないとな。

 

 

 『み、皆さますぐに拳を構えましょう。ケイジとゴールドシップによる彼らからの最後のダンスです!!』

 

 

 『『せーの』』

 

 

 右へぴょーん。

 

 

 『『『オウ!!』』』

 

 

 左へぴょーん。

 

 

 『『『オウ!!!』』』

 

 

 ほい、首を下げての~・・・?

 

 

 「「ビヒィイィイィィイイッン!!!!!『『いよっしゃあああああああああ!!!!!』』」」

 

 

 『『『ケ・イ・ジ!! ケ・イ・ジ!! ゴ・ル・シ!! ゴ・ル・シ!!』』』

 

 

 『割れんばかりのケイジ、ゴールドシップコールが会場を包みます! 最強世代筆頭格二頭! 最後の最後まで熱く、愉快に我々を盛り上げてくれました! その二頭を、そして彼らを支えた皆様への大きな拍手をもってお送りしましょう!!』

 

 

 さらばターフよ! さらばレースよ! 長いようで短い戦いもこれでさらば!! 後は、子供達か、動画でまた会おうな! あっははははははははは!! 最後まで、楽しかったぜ!!




 最後のKG対決にして戦国コンビの有終の美。三冠を賭けた二回目の戦いは三冠馬同士の戦いではなくこれまた伝説の世代同士の戦いでもしものになりました。ほんと98世代もやばいですが97世代もやばいメンツだらけでこの時代はほんと凄いなあと。


 ちなみに ケイジ GⅠ16勝 ジェンティルドンナ GⅠ7勝 ゴールドシップ GⅠ7勝 ホッコータルマエ GⅠ10勝 ヴィルシーナ GⅠ6勝 ジャスタウェイ GⅠ4勝 フェノーメノ GⅠ 2勝 という感じ。芝もダートも三冠馬レベル揃いすぎ問題。 


 ケイジ 最後にキチガイレコードと三冠、親子三代有馬記念制覇をひっさげての大勝利。どこまでも好き放題しての引退式もやって満足。牧場に戻るや否や牝馬たちに追い掛け回された。


 ゴルシ ケイジとまたまた同着。追い込みでこれをしているのでやばすぎると業界震撼レベル。ちなみに2015年のケイジとゴルシの対戦成績は5戦2勝2敗1同着という結果に。


 キタサンブラック どうにか喰らい付いて2着(3着)に喰らい付いた。ケイジとゴルシのやばさを目の当たりにしつつもしっかり糧にできたので多分覚醒する。


 松風騎手 御前試合も含めれば3つ目の三冠を制覇するという前代未聞の記録所持者に。この後真由美ちゃんのラブレターを読んで正式にお付き合いを開始。デートスポット探しに四苦八苦している様子。


 葛城大吾 ケイジの引退に影で号泣していた一人。本当に早くケイジの子どもを預かって恩返しをしたいと思っている。とりあえずそれ以外では近いうちにやってくる前田牧場の牝馬の子を鍛えること。


 葛城連 オカマバーの皆さんと一緒に観戦していた。ケイジの最後の戦いに感動し、思わず興奮しすぎて鼻血が出た。推薦高校も決まっているのでしばらくは北海道でケイジの様子を見ながらトレーニングしようかなと思っている。


 久保さん ケイジの偉業に涙。引退式の際には手綱を引けて良かったと思っている。ケイジの産駒が気になる一方で運動好きゆえにあの健啖ぶりと足元不安を潰していたケイジの引退後の身体は大丈夫かと少し心配。


 真由美ちゃん こっそり花束贈呈の中に紛れ込んで松風騎手に花束プレゼントという大役に。周りもやっちまえと背中を押され無事に松風騎手と恋人に。以来ケイジと出会うたびにからかわれるようになった。


 大竹騎手 負けはしたが、かつての相棒たちを思い起こさせるバトルを見せてくれるし、真面目にケイジのくれた勝利と偉業が大きすぎて素直に拍手。キタサンブラックとケイジたちの作った時代を引っ張っていくのと、ハルフカシとのレースが楽しみ。


 スーザンママ ケイジとゴルシの同着勝利に漢ならぬオカマ泣き。バーの皆も一緒に興奮と涙の洪水状態だった。この後ケイジの馬房を片付けるのだが、改めてケイジの馬房の中が馬よりも人だなあと思いますます親近感がわいた。


 阿部さん 思わずケイジたちの戦いぶりに興奮しちゃった。生で有馬記念を見に来れたことを一生の思い出にすると決めており、ヒメの来年のレースの際はぜひいい写真を撮りたいと目標にしている。


 梅沢騎手 ケイジとヒメの前田牧場の馬たちに調教、もとい一緒に戦って成長中の若手。いつかケイジの様な名馬と共に戦えることを願いつつ、ヒメと来年以降狙うアジアマイルでの勝利を狙う。


 藤井記者 ケイジの専属記者も同然の感じでここ数年は過ごしていた。引退式の際は涙と鼻水が止まらず大変で後日サングラスでないとやばいほどに目元が腫れた。引退式の後に前田牧場への新年のあいさつと食事会は満喫。でも記事はしっかりと贔屓は控えめで頑張った。


 次回は多分ケイジの引退後のあれこれか、ウマ娘でのケイジの引退の際のお話になるかと思います。ますますだらだらやると思うのでお願いします。




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ウマ娘エピソード 17 時の河

 今後もケイジのエピソードはちらほら書きますが、そのほぼ全部の終着点はここだと思ってくだされば幸いです。


 あ、それとですがこの世界のウマ娘、ケイジと関わっているメンバーは大体強化、頑丈になっております。なので戦績もマシマシ。人の分長く走れるしね。


 勝ち負けを考えずにケイジのベストバウトは皆さんは何でしょうか? 私は2013年の宝塚記念です。


 あ、あとケイジと相性のいいこち亀キャラって両さん、夏春都以外だとだれがいいですかね?


 「欧州二冠三連覇、ドバイシーマクラシック3連覇、宝塚記念4連覇、1800、2000メートルワールドレコード更新、そのほかにも前代未聞の記録多数。やれやれ・・・皇帝と言われた私だが、これでは形無しだな」

 

 

 「こんな滅茶苦茶な成果、どれか一つでも出せば時代の頂点なのに、これが何名もだものね~本当、世界最強世代は伊達じゃないわ」

 

 

 トレセン学園職員室。そこでは新米のトレセン学園の職員として働いているシンボリルドルフ。前から懇意のトレーナーと結婚をして新婚として幸せを満喫していたマルゼンスキー。

 

 

 彼女たちから生徒会はジェンティルドンナを会長。副会長にはグラスワンダー、ヴィルシーナたちの体制に移行。レースからは早くから一線を退いたジェンティルドンナが学園のために奔走し、時折ルドルフに相談を持ち掛けるのは風物詩となっていた。

 

 

 「しかし、それも最後か・・・彼女たちが来てから本当に毎日が騒がしかった」

 

 

 「苦情に珍騒動。バカ騒ぎもあれば、取材の依頼の殺到。首をかしげるようなものまで多分ここでしかないような物ばかり」

 

 

 「かと思えば突如犯罪者を逮捕して来たり、そのために警察の方々からの感謝状のあれこれで苦心したり、突然協力してくれたりと、ふふ。おかげで多少のアクシデントは問題なくなったよ。今日も顔を合わせて話したりで楽しかった。そう・・・」

 

 

 ただ、その世代。いわゆる世界最強世代と言われたメンバーたち。その筆頭格黄金の不沈艦ゴールドシップ、ターフの傾奇者ケイジ。その両名は有マ記念をもって引退を表明。

 

 

 彼女たちの存在は国内外を問わず学園の門をたたくものが増え、重賞を手にするもの達も増え、日本ではあまり人気のなかったダート人気の到来、長距離レースへの見直しなど多くの影響を与えた。海外への挑戦も積極的となり、その代表格がドリームシアター、メジロライトニングだろう。

 

 

 そう。新時代を作り上げ、いくつも栄冠と史上初を。ワールドレコードを出した怪物たち。その大看板ともいえる二人がいなくなる。これには世間もショックを受け、常日頃騒ぎをくれたメンバーのさることを受け入れづらい人もいる始末。その中にはルドルフもいるのだが。

 

 

 「なんというか・・・実感がわかないんだ。毎日あの声が聞こえて、騒ぎが広がって、あの二人がどたばた走り回るのがあってその周りにいるメンバー。それを眺めたり、あるいはエアグルーヴと一緒にたしなめたり。愉快で、まぶしくて、私を更なるステージに引き上げてくれたりで。これがずっとあるんだっていつの間にかどこか考えていたみたいで」

 

 

 「分かるわ。毎日が楽しかったもの。今日はどんな騒ぎが起きるのか、どんな料理をケイジちゃんは作っているのか、誰とバカ騒ぎしているのかなんとなく考えていたらいつも彼女たちが思い浮かんじゃって」

 

 

 「ウマ娘として彼女たちと同世代でありたかったとも何度思ったか・・・さて・・・ケイジの引退式は・・・東北の各所に同時配信。か。震災の場所で、あの始まりの場所で・・・何を見せてくれる? ケイジ。アスリートとして君は最後に何をしてくれるんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ゴールドシップさん。ケイジさんと同時引退式を蹴ったというのは本当ですの!?」

 

 

 「おーマックイーン。話が早いなあ。どこで知ったの?」

 

 

 「どうしたもこうしたも! すぐにウマッターで広まってニュースにもなっていますわよ!!?」

 

 

 ケイジさんとゴールドシップさんの破天荒コンビの同時引退式の話が出た直後、ゴールドシップさんが話を蹴り、ケイジさんも震災の被災地でやるわと言って席を立つという前代未聞の会見式で引退式の変更。

 

 

 ジェンティルドンナさん、ヴィルシーナさん、ジャスタウェイさんの三名同時引退式が昨年あったのも相まってこのコンビの引退式は同時でという世間の声を見事にこの二人はぶった切ったのだ。

 

 

 「いいじゃんかよ。わざわざ詰め合わせバリューセットで売り付けねえでもさ。私は、ケイジを友として見送りたいんだ。ライバルじゃなくてな」

 

 

 「・・・友として?」

 

 

 ウマ娘はアイドルであると同時に国の期待を背負い戦うこともあるアスリート。ケイジさん、ゴールドシップさんらの世代は特にそうだ。欧州、アラブ、オーストラリア、アメリカ。各国を沸かし続け、凱旋門賞ウマ娘を何度も下し、各国のダービー所持者を征した彼女たちのその発言の大きさに流石にやり過ぎだというつもりだったのだが、ゴールドシップさんの真面目な顔と瞳にそれが出なくなる。

 

 

 「いつだってケイジは最高だった。友として愉快で、ライバルとしていつも最強でいてくれた。夏を越え、秋にはいつも快挙をひっさげて、春には桜よりもケイジとのレースが新しい季節を想わせてくれた。だからこそ私もいつも最高にレースが好きで、そのためにめんどくせえ練習もやってきた。

 

 

 肩ひじ張り合って、でも笑顔で勝つんだと言い合ってぶつかるレース。それが終われば一緒に騒がしく楽しむ。私もケイジの大ファンになっていたんだろーなー。気が付けば一緒にいない時間が少ないくらいだ。

 

 

 だからこそ、そんなアイツの親友だからこそ一ファンとしてケイジを送り出したい。リップサービスとか礼儀と関係ない。ただ一人のゴールドシップとしてケイジの最後の花道を見送りたいんだ」

 

 

「ご、ゴールドシップさん。・・・悪いものでも食べましたの? メジロ家のかかりつけ医を呼びますのでしばらくお待ちを・・・」

 

 

 「おいおい!? ゴルシちゃんはいつだって元気だぜ!?」

 

 

 いや、これを聞けば間違いなく皆正気を疑う。あのいつでもふざけまくり、訳の分からない奇行を繰り返していたゴールドシップさんがあんなにまじめな目でケイジさんを見送りたいと切に話すなんて。ケイジさんとのやり取りも暴走7割というのに。

 

 

 「で、ですがあんなにまじめに。引退式に乱入してバナナの皮をばらまくくらいはしそうだと・・・」

 

 

 「ゴルシちゃんがそんな真似するかい! ケイジとジャスタ、友達のことはいつだって真面目だぜ!」

 

 

 「あ、一応ふざけているという自覚はありましたのね」

 

 

 「そ、そんなことはないかニャー? ゴルシちゃん分かんなーい」

 

 

 そうだった。なんやかんや友達思いではあるのですのよね・・・暴走が多いだけで。ケイジさんもですが、本当にこの二人はそういう部分が隠れるほどに暴れるから分かりづらいですよ。

 

 

 とりあえず、今間違いなく騒ぎのど真ん中であるゴールドシップさんに来るであろうパパラッチやマスコミをどうするか。せめて引退式の際のパフォーマンスの練習の時間は割かないとやってられないでしょうし・・・

 

 

 「はあ・・・まあいいですわ。ゴールドシップさん。もしマスコミの騒ぎがうるさいときはメジロ家での練習設備を使えるよう融通しますので、遠慮なく頼ってくださいませ」

 

 

 「さっすがマックちゃん。話が分かるぅ♪ ケイジがいない分薄い引退式とは言わせねえ。愉快なものにしてやるための用意が必要だからな。頼らせてもらうぜ!」

 

 

 「んぶわっ! ちょ! 息が出来ないですわ! もがも・・・ぐ」

 

 

 この後、ゴールドシップさんに抱きしめられたままおばあさまに連絡を取れば問題なしとの即答と『ケイジの暴走でこうなるのは予想がつきましたし・・・』と重くため息をつく様子にきっと過去を思い出したのだろうと思いましたわね・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふぅぃー・・・ありがとな松ちゃんに名瀬ちゃん。引退式のためにあれこれしてくれて」

 

 

 「ケイジの最後の舞台だ。しっかりやりたいことをやれるに越したことはないよ」

 

 

 「ええ。あくまでも主役はケイジであり、ファンの皆も振り回されるのを楽しんでいる。最後まで傾奇者らしく振る舞って」

 

 

 いやーアタシとゴルシの同時引退式のキャンセルと即バックレしたが。周りも理解していたというか仕込んでいたからどうにかできてよかった。

 

 

 馬時代に同時引退式はしたし、ゴルシもアタシを個人的に見送りたいと言ってくれたしな。最後まで好きにやらせてもらうさ。

 

 

 「それに、ほら。騒いでいるのはマスコミくらいで、世間の、貴女のファンは面白いわね。もう馴染んでいるわ」

 

 

 「どれどれ・・・? わははははは!」

 

 

 ウマッターやネットの書き込みをみれば『まあケイジだし』『今まで好き放題しつつ楽しませてくれたんだし、いいんじゃない』『無事開催が決まればそれでよし。むしろいつも通りで安心した』という書き込みがほとんど。なんだなんだ。わかってんじゃないの~

 

 

 「今まで散々滅茶苦茶している中ついてきているファンたちだ。それに、引退式の場所もまたケイジたちの始まりの場所だしね。納得するだろうさ」

 

 

 まあ、ライブの選曲を変える。空から登場したりライブのスクリーンを車で破っての登場。これくらいは日常茶飯事だしなあ。これくらいしても問題ないってか? なはは。麻痺してんなあアタシもみんなも。

 

 

 「まあ・・・そもそもケイジの始まりはルドルフ越えを公言しているところから始まって、気が付けば世界最高峰の戦績を残している。これくらいはついてこれないと駄目だと皆も思っているのでしょうね」

 

 

 「ゴールドシップ、ジェンティルドンナ、ヴィルシーナ、ホッコータルマエ、ジャスタウェイ、フェノーメノ、シゲルスミオ・・・多くの怪物たちの世代でこのメンバー皆がGⅠを複数手にしているし前代未聞の記録多数・・・ケイジの強さは僕が知っているけど、よくこの記録が残せたよ」

 

 

 はは。まあ、これ以上は残せないがな。もう最後だ。だからこそ。いいものにしないとなあ。

 

 

 「さ、松風君。一緒に最後の調整にいこう。ケイジの晴れ舞台。整えに行くし、例の元暴走族集団。彼らと顔が利くのは君だろう?」

 

 

 「いや、あれはどちらかと言えばオカマバーと葛飾区の警察の皆さんが・・・おーいケイジ、しっかり寮で休んでおくんだぞー」

 

 

 あいあい。名瀬ちゃんと松ちゃんに手を振って見送りつつ。目の前に来たのはスズカ。

 

 

 「ケイジ。引退式の前から暴れたわねえ」

 

 

 「なはは♪ まあなーま、マスコミさんらの勝手も協会も知ったこっちゃねえや。最後まで好きにさせてもらうぜ」

 

 

 いやー・・・綺麗になったというか、マジで人妻になってから色気が増したなあ。スピカのトレーナーとっ捕まえて幸せになっちゃってまー子供が見れる日も近いかしらん?

 

 

 「っふふ・・・期待しているし、ケイジ。貴女と大逃げの練習をしたり、レースのことについて語り合えるのは楽しかったし、私、まだ満足できないの。引退してからも是非、一緒に走らない?」

 

 

 「欲求不満かー? あんなにトレーナーののろけを聞かされているが好きものだなあ」

 

 

 「あ、あの人とはもちろん問題ないわよ!? ただ・・・スぺちゃんたちや、後輩のキタちゃんサトちゃんの話を聞いていると、私もまだまだ走りたくて・・・」

 

 

 キタちゃんは逃げのスタイルだし、スズカにはなかった規格外のスタミナ持ちだものなあ。ありえたかもな未来を見せられてまだまだやれると火がついたのかもしれん。

 

 

 まあ、この世界引退したウマ娘や非公式でもレースに走りたいウマ娘のためにちょびっとの賞金だけど出られる草野球ならぬ草レースもあるからそこで走りますかねえ。大逃げ対決だからー・・・・2000メートルくらいか? ジャスタウェイも誘うか―

 

 

 「なら、前田家の専属医紹介するからそこでみてもらえよ? 骨の強化と維持もしっかりと。もしやべえ病気でも知り合いのクロオ先生に診てもらうから」

 

 

 「確か・・・マックイーンの脚を治してくれた名医よね? かなり独特の白黒の髪の毛につぎはぎの傷跡が特徴的な」

 

 

 「ああ、いい人だし、今度アタシ特製のラーメン食べる約束しているが会ってみるか?」

 

 

 マックイーンの治療費。アタシから上乗せしてやったなー『代金は復帰レースの賞金とそのグッズの売り上げの利益全て。びた一文負けませんぜ』『ああん!? 安いわ!! 5億アタシが追加で出す!! 必ず手術をやってくれよ先生! この名優の脚と未来にはそれを出しても安いと思わせる価値がある!!』『お、お願いします! まだわたくしはターフの上でのライバルと競いたい! 走りたいのです!!』『その言葉が聞きたかった。そこの傾奇者の代金の分しっかり面倒は見せてもらいましょうか』だっけか。

 

 

 ははは。いやーあの後一緒に楽しくラーメン食ったらそのラーメン代ってことでアタシとマックイーンのだすお代は本来の3割になったっけ。『名優と傾奇者の作る絶品料理を食べつつご一緒で来たのでサービスしておく』とか。カーッ。キザだが似合うこと言いやがって。家も約束の大工と一緒に新築にできたしで。いいことづくめだぜ。ま、無理やりアタシは5億押し付けたが。

 

 

 「ええ。ああ。それとねケイジ。私と一緒に今まで大逃げの練習をして、支えてくれてありがとう。アメリカの遠征の際もビリートレーナーの支えもあって快適だったし」

 

 

 「いやーむしろあっちも大助かりだったそうだぞ? 何せ日本最高峰の大逃げの天才が来たと盛り上がったのなんの」

 

 

 真面目にミドルディスダンスの世界最強格は誰か。で日本のウマ娘の世界の知名度ではサイレンススズカ、ジャスタウェイがまず上がるレベルだもんなー。その一角が来て重賞を勝ちまくって、スピードレースが売りのアメリカの精鋭を振り切って子ども扱いしたんだからそうなるわ。

 

 

 後は―・・・馬時代の関係性を考えればサンデーの牧場にサンデーの子どもが来て暴れたんだからそこの関係もあって殊更に痛快に感じたんだろうなあー。ビリーのおっちゃんアタシと会うたびにスズカの事褒めていたし。

 

 

 「ありがとう。ね。ケイジ。最後まであなたらしく好きにやってきてね。いつもどんなレースでも好き放題で全力のあなたの姿に私も元気を貰えたの。だからこそ、その在り方を応援するわ」

 

 

 「おう! じゃ、アタシもマスコミから逃げつつ仕込みの用意してくるからまったねー♪」

 

 

 さてさて。大逃げ同士で心地よくレースをするためにも。いっちょ奇麗に締めくくりますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『さー皆! ケイジちゃんのライブ。どうだったぁ~ん? 楽しかったかーい!!』

 

 

 大歓声で応えるケイジへの返事。いよいよ始まった。始まってしまったケイジの引退式。記者の僕としては当然行くのだが、いい記事が書けるかという心配と、寂しさが胸をしめてしまう。相変わらず見せるダンスも手品もトークも歌も何もかもが一級品。

 

 

 世界で認められる。パフォーマンスのみでの依頼ですら多く、億単位の金を平然と動かす世界のアイドル。GⅠ30勝をしているウィンクガールが唯一勝てなかった最強の傾奇者。その伝説が最後の火を燃やし、終わろうとしている。

 

 

 『アタシのバカ騒ぎに最初から最後までほんと良くついてきてこれたよなー皆。覚えているだろ? ここでルドルフ越えの伝説作るんだーって言ってよ。笑われたもんだぜ』

 

 

 ハスキーボイスの女の声から愉快で七色の男性の声まで出してはやりたい放題。レースも両極端な運びで海外での負けは一つのみ。ダービーウマ娘6人以上を凱旋門の覇者としてまとめてねじ伏せるなど快挙に事欠かない怪物の頂点。

 

 

 そんな彼女の、ケイジの最後のライブは始まりの東北でのもの。レースの賞金はことあるごとに募金をして、芋煮会などのイベントに、多くの祭りに参加してはお金を入れて復興の支えにしては盛り上げ続けた。その活動は世界へと広がり多くの支援があって今や東北の復興もかなり進んできている。本当に、新時代を作り続けたのだ。

 

 

 『だけどよ、気が付けばアタシに負けないライバルで親友らと心底楽しく競い合っていたら世界最強世代と呼ばれて、その通りの強さをみんなで見せて暴れまくった。まったく、分からねえものだよなあ。もう超えることのないと言われたルドルフ、オグリの時代を超えたんだぜ? しかも三冠ウマ娘レベルがたくさん! 笑うしかねえよ』

 

 

 だけどそれももう終わる。彼女というウマ娘が表舞台のターフで走ることはもうない。引退した後に公式のレースには走れない。精々地方や市町村でやっている草レースで走るくらいが関の山。世界に名を刻む記録も戦いももう見れないのだ。

 

 

 (わかっていたはずや・・・)

 

 

 怪我らしい怪我もなくここまで戦い続け、記録を残したことの偉業をたたえるべきであり、記者としてもその発言を全て聞き逃さずに文字を書き起こすべきだ。

 

 

 『ま、そんな時代も。アタシらの時代ももう終わりさね。老兵は去るのみ。アタシとゴルシもこれで最後。ターフの上でみれてもよくて実況解説ぐらいだろうさ』

 

 

 ただ、それ以上に悲しさと行かないでほしいという気持ちが勝る。

 

 

 『みんなもそういわねえでくれ。もうあの時代は完成している。これ以上余計に長く走ろうとしてもそれは蛇足でしかない。みんなやり切ったんだ。アタシもゴルシもジャスタも。みんなみんな戦い抜いてできた時代だ。これ以上の栄冠は求めない』

 

 

 観客も皆悲しく去らないでくれと黄色い声も野太い声も交じる。同時にこれは僕の気持ちの代弁でもある。このスターが去ることを想像できなかった。日本ウマ娘の世界に永劫求め続けた栄冠と、新たな道しるべとなる記録を幾つも打ち立てた。

 

 

 レース中に爆笑して失速することもあればタックル勝負を繰り広げ、変顔勝負をしては目を回してレース前にぶっ倒れ、ファンサービスのために勝負服以外の服を何着も持ってきてはファッションショーをやらかす。海外のレースでもやりたい放題。騒がしく常にテレビで、動画で奔放に過ごすさまは元気を貰えた。

 

 

 『ま、だからよ。ここでファンの皆にはアスリートとして、アイドルとしてはお別れさね。そりゃあ悲しいことではあるぜ? でも同時に、嬉しいことでもある』

 

 

 怪物たちの世代を幾つも煮込んで濃縮したような栄光と地獄のごとき戦いの時代。苛烈も苛烈なその時代の頂点。そのケイジから紡がれる言葉を聞き逃すまいと耳を立てる中、ケイジの発言に観客一同がざわめく。

 

 

 「嬉しいこと・・・? どういうことや」

 

 

 去ることが嬉しいこと。走ることを強く本能で喜んでいる。楽しんでいるウマ娘。そのケイジがターフを去ることを良しと言った。思わず耳を疑った。あれ程にいつも心底楽しく勝ち負けを満喫していたあの子が何を。そう考えていた僕・・・いや、僕たちの思いはケイジがすぐに吹っ飛ばした。

 

 

 『アタシたちの時代が終わる。それはまた新しい時代が、スターが現れるわけだ。アタシ達だけじゃあ飽きちまうだろう? 時代が次に進んでいく。次のアタシ達にはない、あるいは超える才能が表れてくれるかもしれない。ワクワクするじゃあないか。皆も想像しえなかったルドルフ、オグリを越えたスターたちが生まれたあの快感をまた味わえるんだ。

 

 

 想像してみなよ。アタシがかつてシンボリルドルフの記録を超えると言ってスタートした競争人生を。それを今度はアタシたちの記録を越えてやると言って挑みに来る若い才能たちが来るんだ。アタシ達にはない個性と才能を。夢を持ってアタシ達で描けなかった絵を見せてくれる。全く痺れるねえ・・・最強と呼ばれたものを次の時代が超えようとしていく。そいつらに舵を渡せるんだ・・・面白くてたまらない』

 

 

 その発言にハッとさせられる。そうだ。ルドルフ以上のスターは出ないと言われた中現れたオグリキャップら三強。タマモクロス。彼女らが時代を引っ張り、そしてケイジやスペシャルウィークたちの時代がさらに盛り上げていった。

 

 

 時代は変わるが、そこに次のスターがいる。そこに希望を託すことを見据えているケイジの発言に落ち込んでいた空気がガラリと変わりワクワクしたものに変わる。

 

 

 (ホンマ・・・この子は学生かいな・・・シンボリルドルフもそうやったが・・・持っている空気も視点も、学生のものやない)

 

 

 『そしてその才能は既に現れ始めている。菊花賞を逃げ切るスタミナと頑丈さを持つ子がいたか? マイルで欧州、アジア三冠をそれぞれ狙える器がいたか? 大物がすでに出てきているじゃねえか。

 

 

 今日はアタシの引退と同時に新しい時代の門出を祝う日でもある。そんな日に集まってくれたファンの皆に一つ頼みをアタシはしに来てもいる。聞いてくれるか?』

 

 

 彼女の言葉に誰もが『問題ない』『何でも言ってくれ!!』『ケイジちゃんの頼みを断れやしねえよ!!』という声が響き渡る。それを聞いたケイジはにやりと微笑み、語気を強めていく。

 

 

 『よーく言ったぁ!! それでこそアタシのファン・・・いや戦友(ダチ)だな! なら聞きやがれ!! あんたら皆今日をもってレースの上でのターフの傾奇者ケイジへ向けた情熱を、次世代の、アタシのいかした後輩たちに向けてやれ!!

 

 アタシたちの栄冠を支えたその力を、思いを、優しさを次の時代に向けて愛してやってくれ!! そうすればやってくる次の時代は、必ず現れるそのスターたちは・・・・・・

 

 

 

 

 絶対に!! アタシ達の、いくつものあの時代たちを色褪せさせるものにはならねえ!!!』

 

 

 

 (ホンっまにこの子・・・・・何度僕らを魅了させるんや・・・泣いてしまうやろ・・・・!)

 

 

 セントライトの時代が、シンザンの時代が、ルドルフの時代が、いくつもの時代があり、そのどれもが最強を、かつての時代を越えようとして輝いていた。その時代の一つになるのを喜び、なおかつファンを戦友とまで言い、後輩たちを愛してくれとまで言う。

 

 

 この器を取材できたことを誇りに思う。この時代を知れてよかった。愛せてよかったと思う。もっと言うべき、似合う言葉があるはずで、それを書くのが記者の仕事でもあるはずなのに、それ以上が絞り出せない。

 

 

 大歓声が沸く。泣きながらもちろんだと叫ぶ男性がいる。ケイジの分まで見守るという女性がいる。号泣しながら言葉に詰まりながらも何度も頷くオカマもいる。にっこりと満面の笑みで微笑むケイジにコールが飛び、泣き声から笑い声と合唱が響き渡る。

 

 

 『よっしゃ! ならみんなで次の時代を見守ってくれ。そして・・・・・バトンタッチだ! 頼んだぞ。次世代のエース候補!』

 

 

 その中でケイジは自身の・・・さる御方から頂戴したものとは別の黒の羽織。それを自身の耳飾りと一緒に髪をまとめていた紐でまとめて投げ飛ばし。その先には・・・キタサンブラックがいた。

 

 

 「は、はえ!?」

 

 

 『アタシからの餞別だ!! 持っていきな。これからの時代を背負う一人として応援しているよ!

 

 

 じゃー皆とは名残惜しいが、いい加減次世代にその元気を渡さなきゃあいけねえ。だから皆! 最後にアタシを笑顔で見送ってくれ! それが終わればそこからは後輩たちへ気持ちを向けてくれよ!』

 

 

 ケイジの後ろのスクリーンにはケイジへ贈る言葉をみんなで叫ぼう。という表示と同時に始まるカウントダウン。だんだんと数字が小さくなり、そして1から0になった時。

 

 

 「「「「「さよーならー!!! ケイジー!!!!」」」」」

 

 

 『っ・・・ぁあーりがとーよぉおーーっ!!!』

 

 

 言葉を聞くや背を向けながら高く手をあげて応えるケイジ。その後ろからも分かる顔には笑顔と、一瞬だけ、大きな雫が流れていた気がした。

 

 

 この引退式は世界中でニュースとなり、誰もがその引退を惜しみ、あるいは笑顔で見送った。誰もが認める功績を作り上げた怪物の中の怪物だが、それでも決して勝ち切れる相手はいなかった世代。その最後の輝きはまさしく最後まで世界を揺らし、ケイジの言葉はまた世界中のウマ娘に、ファンたちに新たな火をともした。

 

 

 最後の残り火を見送るはずの引退式は、再び世界中にターフで戦うウマ娘たちの火をつける大炎となって広がったのだ。その一助を担えた僕は、一ファンとしても何もかも支えてもらった僕はこれからもこの業界を支えなければいけない。記者として、男として、ファンとしても。頑張っていこう。どこまでもそう心に刻ませてくれたケイジに感謝を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「かいちょ・・・ではなく、ルドルフさん。書類が完了しました」

 

 

 「ああ、ありがとうエアグルーヴ。君も不慣れなはずなのにこうして支えてくれてありがとう」

 

 

 「いえ、むしろルドルフさんこそせっかくの良縁に恵まれたのにこうして多忙な身。少しでも楽になれば・・・」

 

 

 「それを言えば君こそだろう? あの女帝が良妻となって君の旦那からのろけ話が絶えないよ」

 

 

 「なっ・・・も、申し訳ないですルドルフさん。まったく・・・後で叱ってやらねば・・・」

 

 

 私、エアグルーヴとシンボリルドルフさんは、互いにトレセン学園から卒業・・・いや、生徒会のために卒業を伸ばしていたのである意味では戻ってきたと言えばいいのだろうか。今もトレセン学園で職員の一人として働いている。

 

 

 互いに良縁に恵まれたと言っていいのだろう。私から見てもいい殿方を捕まえ、結婚してもこうしてウマ娘のために職務に励み、次期学園理事長確定と言われているその手腕は学生の頃を越えて磨きがかかっている。既に部署トップの片腕となって動いていることからもそれは一目瞭然だ。

 

 

 「ふふふ・・・ほどほどにしてあげてほしい。それほどに君を愛しているという証だし、君の一面を知れるのは私も嬉しいのでね」

 

 

 「分かりました・・・ルドルフさんこそ、最近が身が入っていない気がするのですが、大丈夫でしょうか?」

 

 

 「そんなことはないよ」

 

 

 「いえ、時折ぼっとすることがありますし・・・不調。若しくは・・・ケイジの引退ですか?」

 

 

 ピクリと片眉が上がり、分かったかと言わんばかりに息を吐くルドルフさん。図星だったようだ。

 

 

 「まあね、あの竜巻のような彼女たちがいないことがこれほどに喪失感を感じるとは思わなかったよ」

 

 

 「まあ・・・気持ちはわかります。あの騒ぎが無いと本当に毎日が平和・・・平和すぎる程ですし」

 

 

 シリウスに残ったメンバーも騒がしいのだが、ラニは抑え込めるメンバーがいるのとやはりあの規格外たちの暴走がないのが今も賑わいを見せるこの学園をどこか寂しいと感じるほどには感じていた。

 

 

 それはあの世代たちが学生としている頃を知っているメンバーは同じようであり、学生でもその差が出ているあたり本当にあの世代はどれほど暴れていたかを再度思い知る。

 

 

 ケイジ達が引退して早数か月。まだあの騒がしさを寂しがるほどにはあの日々は賑やかすぎたのだ。

 

 

 「全く。理事長とたづなさんであの奇行による被害の見積書やまさかの報告書に驚いていたころが懐かしく思えるものだよ」

 

 

 「毎日のようで、海外に遠征していてもゴールドシップがいるわで・・・本当に・・・む? 失礼します・・・・ルドルフさん。これを」

 

 

 毎日怒っていたばかりの日々だが、思い返せばそれもまた懐かしく、同時に刺激になっていたとは思う。意識してしまう故に彼女たちに負けまいと奮起していた日々も。

 

 

 思わず二人で思い返している中、スマホにメールが届き、旦那からのメール。要件はこれを見てみろ。開いてみたその内容と動画に驚きを隠せなかった。

 

 

 『いやっほー♪ みんな元気かーい? ケイジちゃんだぜー。始まりましたネット配信番組ウマ娘どうでしょう♬ ターフでの戦いは終わったけど、今度はこっちで緩ーくやっていくぜ。ま、いろんな企画をやっていくつもりだからよろしくな。

 

 

 じゃ、まず栄えある第一回はキタサンブラックのおじいちゃんを捕まえてきて企画に連行じゃい! いざ鎌倉!』

 

 

 動画にはケイジとゴールドシップが車に乗り、何やら動画企画を持ち上げて楽しげに話す二人。動画投稿者としてやっていくぜと書かれたそれと内容の破天荒ぶりに思わず私とルドルフさんは苦笑してしまう。

 

 

 「変わらないな・・・彼女たちは」

 

 

 「ええ・・・いつだって自由なのにみんなを笑わせています」

 

 

 「よし。なら私たちも私たちなりのやり方で皆を笑顔にしよう。さ。エアグルーヴ。次の案件は何がある?」

 

 

 「はい。それが終われば動画を見ましょうか。では・・・・」

 

 

 いつもの表情に戻ったルドルフさんを見て、私も笑顔で仕事に戻る。後で旦那にはお土産を持っていくことを考えつつ、ケイジへの感謝も。

 

 

 あの傾奇者たちのこれからはどうなるのか。楽しみが増えたことに感謝しかない。




 ケイジなりのバトンタッチ。次世代へとしっかりタスキは渡しました。


 これからケイジはキタちゃんのおじいちゃんや志村ヘンさんを定期的にアメフト部の皆さんで捕まえては海外ロケしたり、急にレース場に現れてはイベント起したりします。あと鍬が似合うアイドルと一緒に色々したり。プロ野球の応援に駆けつけてはアクロバティックなパフォーマンスで応援合戦したり。


 ウマ娘どうでしょう


 企画 ドリジャ 脚本 ジャスタウェイ 音声 ナギコ 小道具 オルフェ メインキャスト ゴルシ、ケイジ、ホッコータルマエ、テイオー


 提供 メジロ家 前田家 中川コンツェルン 超神田寿司


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引退後よん

 ケイジの引退後。1話を緩ーく短くやっていきたいと思います。流石に1万字越えを連発でちかれた。


 産駒紹介もちまちまやっていきますよーいくいく。


 『ビール! ビール!』

 

 

 『おう冷えてるかー?』

 

 

 『大丈夫。ばっちり冷えてるよ~』

 

 

 よっすよっす。おらケイジ。ただいまアメリカに遠征中。なんでかって? 種牡馬のお仕事のためだねん。いやー引退してからしばらくすればすぐにアメリカからの依頼で50頭の牝馬さんお相手するためにアメリカにビューン。

 

 

 一応初めての相手はジェンティルちゃん。次にナギコだったけどね。

 

 

 日本だとテイオーの血筋で更には俺が突然変異過ぎるのもあって値段850万スタートなんだけど地方の牧場や社爛さん。新メジロくらいでさほど依頼は来ていなかったんだよね。ま、サンデーも同じようなものだったし俺らは気にしてないが。

 

 

 でもビリー牧場長とその知り合いでは血を薄めるのとやっぱりここ最近アメリカのクラシックを日本の血統が奪取して、その代表格らを俺がジャパンカップで叩きのめしたのもあったからその名馬の種をこの値段で!? よっしゃビッグビジネスのチャンスということでみんなで金を持ち合って大規模依頼ってわけ。

 

 

 『ぶはー・・・一仕事した後はこれよね! ケイジちゃんもいい男だし、刺激的だったわぁ・・・♡』

 

 

 『このビールいけるなあ。わはは。ありがとうさん。アメリカ代表牝馬と相手出来たのは幸いだぜ』

 

 

 『にしても、ケイジとまたこうして会えるなんてねー。うまーい。もう少し後だと思っていたよー』

 

 

 そんでまあ、この仕事が終わり、アメリカ版ウオッカ。アメリカの人気アスリート女性版でランキング2位に入ったこともあるまさしく国を代表する牝馬。ムギヤッタ姉貴と、シゲルスミオと一緒に仕事の後の一杯としゃれこんでおります。

 

 

 「みんな仲良く飲んでいるなあ。ははは。いい子を産んでくれよ。ドリームシアターが引退するのは今年の末だし、そのつなぎの次世代をこうしてケイジの子どもで用意できるのは嬉しい限りだ」

 

 

 「にしても・・・ほんとでかいっすねえケイジ・・・そりゃあ、あんなのを持ってくる必要があるわけですわ」

 

 

 「ケイジはビッグボーイだからね。功績も振る舞いも体格も規格外さ。いやーしかし前田牧場の血筋が早く出てこないかなあ。ナギコの子どもなら大枚はたくんだが」

 

 

 「前に牧場長が手にしたオグリキャップの孫もGⅠ5勝して、産駒も重賞を勝って、うちにサンデー以来のダービー制覇は日本馬の血筋ばかり。ナスルーラの来た時はこんな感じだったんですかねえ」

 

 

 あ、ちなみに俺のお仕事の時は小学校で使う鉄棒をでかくしたやつにクッションマシマシにして。俺がよいしょとそこに上半身を預けて使うんだよね。500キロで大型馬なのに650キロの俺が覆いかぶさるとか牝馬壊れちゃ~~うだから。将来に出会えるかもなメロディちゃんと俺とか体格差どうなるんだか。

 

 

 牧場の皆さんもご満悦らしくのんびり話している。新しい血筋の到来を喜びつつも、ナスルーラがアメリカに来て変わった歴史を思い出しているようで。ははは。サンデーの血筋がこうも活躍していろいろ思うのもあるんだろうなあ。

 

 

 『スミオこそ、早くも産駒で重賞、GⅠ狙える才能がいるんだろ? よかったじゃんか。今後もいいこと出会えて、お父さんとして俺らにリベンジチャンスが来るぞ?』

 

 

 『えへへー走ってくれると嬉しいなあ。ケイジ君の子どもと僕の子どもで孫も見たいし、もう少ししたら日本に帰れるから五崎くんとも会えるかなあ』

 

 

 『会える会える。産駒も来てくれるかもだし、一緒に楽しめるさ』

 

 

 『二人とも仲いいし、ジョッキーとも絆があるのねえ。いいことだわ。なら、その絆に乾杯ってことでもう一杯』

 

 

 『はいよ。お代りに。おおー俺の好きなキャラメルも。気が利くぜ』

 

 

 ま、とりあえずビリー牧場長に4つ目のダービーの優勝を運んでくれることを。ムギヤッタと俺の子どもに、スミオの子どもに才能と輝く未来があることを願ってカンパーイ。あ。そういえば来年の俺とムギヤッタの子どもはうちの牧場に来るんだって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ってことがあってさー。うまくいけばスミオの後継種牡馬も来て、アメリカで見つけてきたトニービン産駒の直系と、ブライアンズタイムの直系をおやっさん見つけてきたから、そこにオグリキャップのひ孫も来て日本競馬盛り上がりそうなんだわ』

 

 

 『知らない名前だなあ~グラスさんは知っています?』

 

 

 『随分と懐かしい名前が出てきたねえ。知っているとも。私の前の時代を彩って、今もその血が続いている女帝の一族と、日本の時代を作った怪物の系譜さ。オグリキャップはケイジ君レベルの頑丈さを持つ怪物だと聞いているねえ』

 

 

 日本に帰ってきましたら、いつも通りに静養に来ているディープとグラスの爺様とのんびり放牧タイム。ディープもここで過ごせば気性が大人しくなるとか何とかでよくここで過ごすんだとさ。とうとう前田牧場も人気種牡馬御用達の温泉旅館に・・・・・ますますここって何だろうな。

 

 

 まあ、とりあえずおやっさんと社欄の協力でうまくいけばなんだけど、ディープ系が多い今の日本競馬にキンカメ系、クロフネ系、トニービン系、ブライアンズタイム系、オグリ系、そしてマックイーン直系、ノーザン直系、グラス系、そしてルドルフや俺の血筋、タイキシャトル系、ケンタウルスホイミ系、トーセンジョーダン系の入り混じるカオスでバラエティー豊かな日本競馬にタイムスリップできそうなんだよね。

 

 

 今のままだと遠からずに優れた才能、GⅠ勝利しても種牡馬入りできない名馬とか出てくるからそこを防いで、競馬人気を保って引退馬たちの多くの余生のために頑張っているんだよねえ。

 

 

 『はぁーそんな血統がねえ。そうなれば・・・僕のお仕事も減ってゆっくりできるかな?』

 

 

 『もしかしたらすぐにそうなるかもねえ。ゴルシも来たし、スタミナ血統だから今後はそっちも需要あるだろうしなあ』

 

 

 『いい芝でとことん早くてマイルから2400では無類の強さを誇るディープくんの血筋に、ケイジ君やゴールドシップ君のとんでもないスタミナの血筋の組み合わせは確かにねえ。私の孫たちも頑張っているそうだし、ふふふ。新しい顔達も見たいよ』

 

 

 『そういえば新しい顔が増えるってことは牧場も大きくなるんだよね? どんどんくるたびに変わるなあ前田牧場』

 

 

 『とはいえ、あまり大きくするつもりもないそうだし、残りは社欄に預けるようだけどね。でかくなりすぎるよりは余裕のある中小でいいわっておやっさん言っていたし』

 

 

 温泉も湯量は問題ないし、お金もあるんだけど、真面目に牧場のスタッフの給料上げたいのと、大きくし過ぎても人でも仕事量も追いつかんわ。ってことでそうするみたいね。「大牧場のトップなんぞ私にゃ似合わんよ」って俺と晩酌しながら笑っていたなあ。

 

 

 あ、そうだ。

 

 

 『トモゾウー! 俺がテキのおやっさんからもらったぶどうジュース二人に振る舞ってやってくれー! まだたんまりあっただろー!?』

 

 

 「ケイジ。どうしたんだお前。ん? ほうほう。あー二人にジュースをね? はいはい。後で飲ませておくから。それよりお客さんだ。温泉に浸るついでに話したいみたいでさ。湯の番をしてもらえるか?」

 

 

 え? 俺に客人? あーこの鳴き声は。了解了解。じゃ、行ってくるわー

 

 

 『お久ーオルフェ―。元気?』

 

 

 『あ、ケイジさん。お久しぶりですー。いやー・・・久しぶりに来たら牝馬が多くて・・・ちょっと驚いちゃって・・・』

 

 

 『ははは。また拡張したからね。ささ、えーと・・・3番が開いているからこっちにね。タイマーセットして。よし。入っていいよー』

 

 

 久しぶりに来てくれたオルフェーヴル。無事に種牡馬として活躍中で、なんでも俺に勝ったことが再度評価されて種牡馬として人気マシマシ。海外からもオファーが絶えないとか。ゴルシに負けないほど人気なのはやっぱり凱旋門や遠征での機会が多いのもあるのかな。

 

 

 で、俺も牧場にいる間は番頭とかかれたタスキを付けて牧場で手伝いをしております。派手に運動できない分ここで動かないとね。

 

 

 「本当にケイジが温泉の手伝いしているんだ・・・・あ、オルフェ。おいでおいで」

 

 

 『はふぅー・・・・いい湯だぁ・・・癒されますー・・・』

 

 

 『だろー? 引退してレースすることもない分長く浸かれるよ。にしても・・・・さらに強くなっているねえ』

 

 

 うーん・・・引退前の俺でもこれ勝てるかわからないほどのオーラを感じるねえ。あれだけ強かったのに今あたりが本格化とか、真面目にステゴの血統、マックイーンの血筋の覚醒を感じさせるなあ。ゴルシもやばかったが、才能ではステマ組だとやっぱオルフェかねえ。

 

 

 いやはや、早熟な仕上がりの多いディープ産駒だけど、ステゴ産駒はほんと晩成で息長い子が多いなあ。

 

 

 『そうかな? 確かに最近調子がいいけど。ケイジさんには負けるなあー・・・あー・・・いい湯だぁ・・・』

 

 

 『いやあ、多分重馬場でならわからんぞ? おん? あらー風呂上がりをごねている子がいるのか。どれ、のんびりしていなよオルフェ。後でブドウのサービスあるから』

 

 

 『はぁーい。んふー・・・』

 

 

 さてさて。ごねる子は―・・・あらら。GⅠ戦線で戦っている子じゃないの。どれどれ? ほーれリンゴジュースだぞー? ほーれバナナだぞー。食べたかったこっちおいで―よしよし。出てきたな。はい。厩務員さん。これ後で上げてね? あ、それと扇風機こっち―

 

 

 「おーいケイジ―、ニュースだぞー?」

 

 

 ほいほーい。トモゾウどうしたの? イギリスとアラブでの種牡馬依頼の量増えたの?

 

 

 「お前さんのレースが今年の夏に開かれるんだってよ。その名もケイジ記念! GⅠレースで芝の距離2600メートルの国際レース。賞金は1着2億! 日本競馬運営が主催の大規模なものになるそうだ。

 

 

 そこで第1回は俺とケイジで誘導馬をするそうだって。やったなあケイジ。親父たちを超える偉業を早速増やしたぞ!」

 

 

 まぁじで~? ほーん。8月の2週に行われるGⅠレースで、制限は日本国内外を問わずに3歳以上の牡馬と牝馬の混合国際GⅠ。出身国、年齢での斤量追加はなく真っ向からの勝負ってわけだ。で、それのお誘いが来ているのかあ。誘導馬に・・・俺、オルフェ、ゴルシ、ジャスタウェイのメンバーが・・・絶対ゴルシいうこと聞かんぞ? またレース場に戻って蹄鉄つけるとか逆切れ案件じゃん。

 

 

 しかし、すげえ話だなあ。終わったはずの血統に、最早静養牧場と化している中小牧場にこの誘いとは。ホースマン冥利に尽きるねえ。

 

 

 トモゾウもやったな。歴史に名が残るぜ? 流石俺の兄貴分だ。

 

 

 「ケイジもトモゾウも見たな? そういうわけだ。急いでイギリスとアラブでの種牡馬のお仕事を済ませて夏に備えるぞ! あ、母さん。万が一に備えて来月の浜野さんのスポーツ番組の騎手特番。録画しておいてくれ」

 

 

 「ふふふ。わかっていますよ。ちゃんと牧場のカレンダーに記していますから。松風君のテレビはしっかり録画していますもの。さ、ケイジちゃんに貴方。行ってらっしゃい」

 

 

 はいはーい。じゃ、行くかトモゾウにおやっさん。頼むから予算以上にまた牝馬を買い込むんじゃないぞー?




 世界中で頑張っておりますケイジ君。あれだけの功績をたたき出しましたが、まあ血統面から日本ではいろいろ気にする人は多いようで。功績やばいのに種牡馬としては警戒、評価されなかったのはサンデーサイレンスもだったし仕方ないね。


 基本ここの牧場ではケイジが種牡馬のお仕事以外ではスタッフとし手伝っております。その時は番頭のタスキを付けて馬の誘導や手伝いにちらほら。トモゾウと一緒に働いております。


 ディープくん気性が昔のころに戻っています。基本ここでも種牡馬の仕事はしますがそれ以上に遊んでくれる幸太郎やケイジ。娯楽が豊富故に満喫中。


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ウマ娘エピソード 18 超一流ってなんだよ?

 今回はリクエスト回。とはいっても私なんぞの技量で応えきれているかは不安ですがねー


 「というわけだ。夏の合宿には今年はキングヘイローとハルウララが来ることになった。芝とダート、短~長距離も問題ないシリウスで鍛えてほしいと言っていたが・・・お前たち、くれぐれも壊すレベルでしごくなよ?」

 

 

 「はいよー・・・ほわぁ・・・」

 

 

 「まあ、ケイジ以外は基本問題ないですよ。後はナギコさんとヒメさんも・・・」

 

 

 「前田家組は基本駄目だね~ケイジが指針になるから~」

 

 

 毎年恒例夏合宿の季節になりました。私らシリウスのチームは毎年北海道に行って幸子と会いつつお参りと近くの前田家の別荘を借りる予定になっている。

 

 

 リギルやスピカ、ほか多くの学園主催夏合宿のグループとは離れることになるんだけどもまあ真面目にシリウスの場合は海外遠征も多ければその分独自のルーティーンがいいのもあるし、馬時代もお世話になった神社への御参りも恒例なのでみんなそれに賛成。

 

 

 だけど今年はそこに飛び入りでまさかの二人が参加。いやー以外。そんでジェンティルちゃんとホッコーしれっと失礼だな?

 

 

 「ケイジちゃんだって加減は出来るんだぜー?」

 

 

 「貴女の場合はそのレベルが規格外なのです。砂浜で4000メートルダッシュ二本からの遠泳なんてあなたとオルフェさん、ライスさんくらいしかできなかったじゃないの」

 

 

 「だから翌日は加減しつつホッコーと砂遊びしていたじゃん」

 

 

 「後半最早人が住めるレベルのもの作っていたっすよね? 流木や廃材を鉄骨代わりにしての一軒家建てて」

 

 

 「あれは雪まつりで作る予定の一つだね♪ 来年は二階建ての戦国風の長屋を立てて初代ライダーさんを呼びたいなあ~」

 

 

 まあ、真面目にスタミナはバチバチに鍛えているし、軍隊の訓練もあってそういうのは得意だしねえ。いやーしかし、あの砂の一軒家はいい出来だった。ポケモンでそんなのいなかったっけな?

 

 

 「なんだったら志村さん呼ぶか? ドリフの倒壊オチでも」

 

 

 「それは大変じゃないかな・・・? ケイジお姉さま」

 

 

 「ま、流石に雪の中に生き埋めはやばっしょ。しっかり基礎設計作らないとねーと。そんで~? 今は夏の話よ夏の話! 悩殺ビキニでケイジとみんなをメロメロっしょー!」

 

 

 「ふふふふふ・・・あの用意したマイクロビキニに・・・あれも使えばケイジお姉さまと・・・!!」

 

 

 「そういう話はアタシのいないところでしようなー葛城のおっちゃん、真由美ちゃん後で回収しておいて?」

 

 

 こいつらまだこりていねえのか。昨年はスリングショットを付けようとして親父の雷貰っていたし。泳ぐ目的じゃねえし親戚で同性を誘惑するなと。後はまあ・・こいつらのスタイルだと真面目に不埒な輩が出るわ。

 

 

 ふわー・・・で・・・ハルウララにキングヘイローかあ・・・どっちも後継種牡馬、牝馬を馬時代ではうちの牧場で生み出したし、そういう意味での関わりかねえ。

 

 

 「ナギコ、ヒメ、後で没収だ。それと。今回だが、芝とダート組で分けて午前中の練習を行おうと思う。ちょうど海と山何方でも練習が出来る環境だし赤城さんも来てくれている。安全見回りの役目を頼んでいるのと、山海鍋料理が味わえるぞ」

 

 

 「ふふ。幸子さんの作る鍋はおいしいですものねえ。それにあそこの温泉も・・・ああ・・・今から楽しみ・・・」

 

 

 「ドバイで戦う前の最終調整はいつもあそこでしたいくらいです。お姉さまも入り浸りますし。お土産も持っていきませんとね」

 

 

 「この前は駆除隊の仕事のせいで鹿肉のステーキをたらふく食べたんだよなー今回は何が食えるかな♪」

 

 

 「私はあれっすね。クマザサの茶と、鹿肉と猪脂のつみれ団子。あれと柚子醤油だしのスープが本当に・・・はぁ・・・お腹すきそう」

 

 

 「ライスはイノシシのタンとカレー。あれは本当においしかった・・・♡」

 

 

 わはは。幸子も愛されているねえ。赤城の親父さんも。

 

 

 「今言ったものは全部用意している。ホテル専用の冷凍庫に保管しているからな。それを使って用意してくれるそうだ。さ、夏で鍛えて秋の大レースに殴り込みの準備だ。そのためにまずは風邪をひかない。熱中症、日射病には気を付ける。いいな」

 

 

 「「「「はい!!」」」」

 

 

 「よーし、じゃ今日はこれで解散。松風君、真由美ちゃん、久保君。今ライトニングと一緒にいる的矢さんとも調整のためにメールを打ってほしいのと、アメリカにいるラニちゃんと平野君にも何か必要なデータが必要かを・・・」

 

 

 「あ、それとケイジちゃんの監視役は誰にします・・・? ブラウトちゃんとミレーネちゃんはホテルでのあれこれをお願いしたいですし・・・」

 

 

 「そのふたりと幸子ちゃんと、キングちゃん、ウララちゃんの誰か、もしくはオルフェちゃんがいいんじゃないすねえ。合宿の間だけでも流すくらいの練習にさせないと」

 

 

 合宿恒例だけどなんであんたら合宿でアタシを練習させないこと第一に考えているのかしらね。はー・・・しょうがない。川釣り用の道具用意してくるか。後は海で漁をするための道具も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「キングヘイローよ。ま、まあよろしく頼むわね?」

 

 

 「ウララだよー♪ みんなよろしく!」

 

 

 あのトレーナー・・・確かにスペシャルウィークさんやみなさんに負けないほどの鍛錬を。このキングにふさわしい夏合宿を用意する権利をあげる! と言ったのは確かだけど・・・一流も一流! 怪物の巣窟に投げ込むなんて聞いてないわ!

 

 

 「よろしくー~ウララちゃんも一緒に練習しようねー」

 

 

 「この前はお姉さまがお世話になりました。キングさんもそう構えずに。基本のお世話は前田家の皆さんとミレーネ、ブラウトさんがしてくれますから」

 

 

 実際、頼りになるし、お母さまの戦っていた舞台もいくつも制覇して、世界で戦い続けて成果を残す。三冠レベルの怪物たちのトレーニングは確かにいい糧になるでしょう。ええ。そう考えればむしろいいチャンス。しっかり集中出来るように配慮しているのも高ポイント。なるほど悪くないですわね。

 

 

 「ええ。このキングの一流の姿を見せて差し上げますから。皆様しっかりもてなしてくださいね?」

 

 

 「はははは。いうねえ。あいあい。しっかりもてなして美味い海の幸と山の幸を用意してやるさ」

 

 

 「ところでケイジさんは何で釣り人の格好に麦わら帽子なの~?」

 

 

 「これがアタシの練習スタイルなのよん」

 

 

 「どこかの釣りキチの悪魔合体だねー。トイレの洗剤もっているのは分からないけど」

 

 

 「これで河童がつれるんだよ」

 

 

 「釣るんじゃあありませんし狙わないの! 私たちはレースのアスリートであって力士じゃないですよ!?」

 

 

 まあ、うん。鎧姿でサーフィンしたり、急にサンバを始めたりするよりはよっぽどましな方と思いましょうか。ジェンティルドンナさんがつれないと言わないあたり、あり得るんでしょうねえ・・・あるんでしょうねえ・・・そんな絵面がある可能性が。

 

 

 そして、ウララさんは早速馴染んでいるのが。私はまだ緊張しますのに。

 

 

 「よーし。行くぞ。道中でもどう動くかを話すが今回は芝組とダート組で分かれての練習と、合同での日程で行く。で、ウララちゃんは基本的に芝とダートを往復しつつの基礎連と、キングちゃんは基本芝組でいってもらう。ダート組は海で、芝組は山周辺を用いた練習になる」

 

 

 「芝のオルフェ、ライトニング、ライス、ジェンティル、ヴィルシーナ、ヒメたちはまずは軽く柔軟と、それぞれ戦う場所のために用意した山道を歩いてアップになる」

 

 

 「だ、ダート組のホッコーちゃん、ラニちゃん、ナギコちゃんは海での基礎運動。途中から負荷をかけたものもやっていくから、柔軟はしっかりとね?」

 

 

 「ケイジは基本流す程度で俺やブラウト、ミレーネちゃんらと一緒に今回は休暇と料理だ。無理は禁物だぞ?」

 

 

 「?」

 

 

 ケイジさんは練習しない。ということに首をかしげつつも、道中はみんなでカラオケ大会をしたり、別荘で昨年は何をしたか。色々と話を聞きつつ過ごし、愉快な時間を過ごせました。

 

 

 

 

 

 

 「よーし着いた。ふぅー相変わらず、手入れがされているねえ」

 

 

 「あ、ケイジ―♪ お久しぶり♪」

 

 

 到着しました別荘。前田ホテルが少し離れた場所にある。馬時代ではアタシらの牧場があった場所。ついて荷物を下ろして別荘に入れていたら茶髪のロングの髪の毛と可愛らしい美貌がまぶしい美少女が走ってくる。

 

 

 幸太郎。この世界では赤城 幸子 としてアタシの幼馴染の一人として一緒に過ごして、特例でマタギとして過ごし、猟銃と罠の免許持つ子だ。いやー・・・犬耳としっぽがみえるほどに元気で飛び込んでくるなあ。

 

 

 そして・・・女としてもいい具合に成長したようで。背は伸びないが。前世が柴犬だったせいかな?

 

 

 「よっす! ふふ。久しぶりだなあ。仕事以外では最近トンと会えないし。今日のために別荘の掃除と依頼受けてくれてありがと!」

 

 

 「ケイジの頼みだしねーたんまりこっちも貰っているから気にしないで。早速お肉も解凍しているから、今夜はみんなも料理を期待していてね? でー?? あーキングさんに、ウララちゃんだね? ケイジから聞いているよー私は幸子。ここでしばらくお手伝いさんをするからよろしく」

 

 

 アタシに抱き着いてきた幸子を肩に乗せて、幸子もシリウスのみんなとキング、ウララに挨拶。

 

 

 「あ、さっちゃーん♪ 久しぶりー。この前貰ったジビエのお肉美味しかったわー。ヒサトモさんも満足していたわよ?」

 

 

 「お久しぶりです幸子さん。ふふ。今日はまた日本料理の指導もお願いしますね?」

 

 

 「あら、メイドの方です? 私はキングヘイロー。貴女にここの管理の権利をあげるわ!」

 

 

 「ハルウララだよ。よろしくねーさっちゃん」

 

 

 とりあえず、仲良くなっている皆とも挨拶を済ませつつ荷物を置いて用意はばっちり。これで合宿もできるってもんだ。

 

 

 「じゃ、おやっさん。アタシと幸子でホテルから頼んでいた分の肉と食材をもらってくるわ。ついでに欲しいのはある?」

 

 

 「あーケイジちゃん。それなら俺も行くっすよ。こういう時くらい酒も楽しみたいだろうし、荷物持ち手伝うっすから」

 

 

 「そんならミレーネとブラウトには雑用頼むわ。専用のドリンクの用意とかもお願いねー」

 

 

 「久保君。気を利かせないでいいのにねえ。有難いが・・・」

 

 

 「僕もこうならないとですねえ。さ、皆。秋の大レースの前に心身を鍛える絶好の機会。ジビエの料理に山海の環境何方でも鍛えられるいい場所だ。今年も頑張ろう!」

 

 

松ちゃんの気合でみんなも元気を出したところでアタシはとりあえずホテルの冷凍庫や用意してきた食材を用意した後に知り合いの船を借りて釣りに。さーて。どれだけ晩御飯釣れるかなあー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ひぇえええ~~~!!? ら、ラニちゃん怖いよぉお!!」

 

 

 「何言ってんだウララぁ!! これくらいアメリカじゃあ普通だったぞ!! 生っちょろい走りしてんじゃねえや!」

 

 

 「ラニっちの言うことは怖いけどそうだよー。合宿だけど気を抜きすぎウララちゃん」

 

 

 「ほいほーい。ここまで~ウララちゃん大丈夫?」

 

 

 さー張り切っていきましょうかダート組! とはいってもー基本うちらの場合はアメリカやドバイでの戦いを主軸にしているから、合宿ではパワーとスタミナの練習が主なんだよねえ。芝組との走りをやればそれである程度高速レースの練習になるし、最悪ケイジに頼めばいいし。

 

 

 だからウララっちの追い運動ってことでみんなできる追い込みの復習がてらやってみたんだけど・・・いやー・・・あれだね。才能はまあどうにかなるとして、頑丈さも問題ない。

 

 

 ただまあ

 

 

 「ウララちゃん気が散りすぎているしそのたびにフォーム崩れるしー・・・よく大けがしなかったね?」

 

 

 「そこはラニっちと似ているね。あっちこっちで負けんき出してもうぐだぐだ。にゃはは♪」

 

 

 「そこは言わねえでくださいよ! ただまあー・・・真面目に、OPは狙えるけど、これ、下手すりゃあ周り巻き込んで怪我しかねませんぜ?」

 

 

 そうだよねえー集中力散漫。走るのは好きみたいだけど、お遊びの域を出ていない。下手すればそこら辺の中高は愚か小学生の方がまだ集中しているかもなレベル。

 

 

 走るのが好きでこの頑丈さと前向きは間違いなく天性の才能だし、パワーもつけられる下地はある。だからフォームと集中できる時間を作るべきなんだけど。どうしよっかな?

 

 

 「うーん。ウララちゃ~ん。せっかくだからさーゲームを一つしない?」

 

 

 「ゲーム?」

 

 

 「そうそう。綺麗にフォームを保って走ることが出来たらケイジの特性デザート一品頼めるか、これをあげる。味見してみて?」

 

 

 ラニっちの場合は負けん気と、気性の荒さはケイジが早々に分からせてウチが鍛えてなんか舎弟みたいになっているけど、ウララちゃんにそれをするのはなあとラニっちと首をかしげているとホッコーが何やら提案をしていた。おろ? もう考え付いたのかな?

 

 

 ってあれは。ああーなんとなく考えがわかった。

 

 

 「お、美味しいい! なにこれ!? ウララ初めてのんだよ!?」

 

 

 「ケイジ特性ミックスフルーツジュース~これをしっかり走れたら飲ませてあげるけど、ダメだったら私たちが飲んじゃいまーす。4リットルあるけど、コップ3杯づつだから軽く流しも含めるとあっという間だよぉ?」

 

 

 「! そうだねえー? ウチらは優しいからしっかりと走ってくれればあげるけど、ダメならお預けだよ? にひひ。さ。練習しようかウララちゃん。ファイトだよー」

 

 

 「あれは私も欲しいからな。たくさん飲むために手は抜かないからね!」

 

 

 ケイジの料理の腕はホテルで鍛えて、出店で磨き続けているからね。ふふ。うちらも今もこれを見るだけでもよだれが出そうだし。

 

 

 「よーし! ウララ頑張るよー!!」

 

 

 「よっしやーじゃあ~今度は私が後ろについて、ナギコはウララちゃんのそばで併走。ラニちゃんは前に出てねー? お昼休みには美味しいご飯が待っているから。さあ思い切り鍛えて、お腹を空かそう~」

 

 

 ウララっちもやる気が出たからみんなでさらに練習は過熱。海の音と煌きが心地いいし、最高だね! でも、水着でも泳ぎたいなあ。せっかくのプライベートビーチだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うーん・・・キングさん。貴女。海外レースを見据えた練習をしていないです?」

 

 

 「え? 何でですの? ジェンティルドンナさん」

 

 

 私たち芝組は山道を歩き、時には獣道を歩いての足腰の鍛錬と坂での足の使い方の下地作りとウォームアップ。私は海外は主にドバイとフランスですが、日本はそこと比較してもやはり芝が固い。それに慣れすぎないためと、深い芝やぬかるみでも足を慣らすこと。

 

 

 加えてしっかり整備せず、自然を多く残してのレース場での戦い故にこういう場所を歩いて重心のかすかな変化もつかむようにやっているのですが・・・キングさんはその中でも消耗が大きければ、歩き方も変だ。

 

 

 「深い芝を想定した歩き方をちゃんとできていないですし、踏み込みの際に足の親指の踏み込みが浅い。指の付け根で蹴っているんですよね」

 

 

 「要は固い芝での戦い方のみで、悪バ場を想定したやり方が浅い。筋肉で何とかしている感じっすね」

 

 

 「う・・・その・・・ボディバランスとフォーム練習ばかりでしたし、実際それで戦えていたので正しいでしょう?」

 

 

 「いえ? むしろ私たちの場合はそこから体幹の変化や脚の使い方の変化、坂の練習などとことん足元のやり方を徹底しますね。ケイジお姉さま、オルフェさんがそうですがとにかくそれを活かした戦いであれほど強いですし」

 

 

 どうしても海外のあらゆる場所で戦うのと、日本の比ではない坂や芝の凹凸などを走り切る。コーナーの差もあらゆるものがある以上そこを戦うための技術と体力のロス、負担を抑えるために体幹とフォームの矯正、足元第一。筋力は二の次三の次。

 

 

 ここらへんは、エキシビジョンを含めて世界中で戦う私達だからこその方針ではあるのですが。日本から香港、オーストラリアに飛んでイギリスとかありますし・・・

 

 

 「もったいないですねえ。筋肉の付き方も、ばねも持っているものは一流。下地はあるのですが・・・集中力とプライドのせいですぐに焦りでレース中もスタミナ切れが思われる部分がありますし、私のようにマイルに専念します?」

 

 

 「ヒメさん、ステイヤーの才能あるけど、集中力を全部つぎ込んで走るってことでマイラーですしねえ。ジェンティルさんはほんとあの闘志であそこまで長く走れるのがすごいっすよ」

 

 

 「う、うーん・・・・いえ! キングとして、一流の証としてクラシックディスタンスも、短距離も走れる強さを手にしていくのです! だからこそ、貴女たちのその強さ、全部学んで超一流になるのよ」

 

 

 「ふふふ・・・なら、容赦なくしごきますし、うちでは結構変わった練習もするので。最後はきついのもするので気を付けてくださいね? さー休憩場所です。ゆっくりしましょう」

 

 

 アップの歩きを終え、柔軟運動をしながらのんびりと海を眺める。木々の木漏れ日と音、それを聞きながら海の波の音を聞いていける。本当にケイジの別荘はいい場所にある。それ加えて温泉もあるし・・・真面目に、ここで仕事やら引退後は過ごしたいほどですねえ。

 

 

 「んーそういえば、ケイジさんはどうしたんでしたっけ? 一流というか、まさしくこのシリウスでは一番練習をする人でしょう?」

 

 

 「ケイジさんは練習しすぎるから夏は休ませるために基本合宿でも料理をしていたり、釣りをしているの。うふふ。あーあの船じゃない? 確かライスも乗せてもらったことあるし」

 

 

 「あ、そうっすね。いやー船釣りをしてからの温泉で汗を流しての刺身はおいし・・・・? なんだろ。電話を取って、急に海に飛びこ・・・鮫狩りしている!? ひぇ!? 何しているんすか!」

 

 

 オルフェさんが怯える表情をしているので見てみれば、確かに鮫のひれが無数に見えて、それに銛とナイフを持って立ち回るケイジさんが。

 

 

 ・・・・鮫が宙を舞っていますし・・・今夜は鮫の料理ですかねえ。キングさんは何が何だかという感じですが、まあ・・・慣れてください。いつもこんな感じですので。




 芝もダートも怪物まみれ。基礎練もやばいです。今回は初日なので流している感じで。オジュウちゃんが学園に来るとして、来るとしたらやっぱりリギルなんでしょうかねえ。あれは怪物すぎますし。


 あ、続きます。多分もう1~2話くらいは使うかもですねえ。


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引退後よん 2

 思えばケイジと縁のある馬たちって大体人間好きな子たち多いですねえ。オルフェにグラスにディープにスぺちゃん。レースのれの字もないような場所で馬も犬もいて温泉満喫しながら甘いものを食べられる。人間不信の気を見せていたスぺちゃんとディープもここでは幼駒のころにもどっちゃいます。


最近ポケモン手描き実況者の梨子(なしこ)さん の「色ガルドちゃんと行く初心者対戦記」にはまっております。可愛い、かっこいい、美人な擬人化ポケモンと可愛いマスターをすごくきれいなイラストで描いて邁進していくのがすごくいいです。


 皆様もよければ見てみるといいと思います。凄くいい作品だと私は思います。あわよくば応援してくださるとうれしいです。


 ~前田牧場~


 ケイジ『あーようやく帰ってこれたわ。おやっさんまた牝馬を買ってきてーまあ、予算より安かったからいいか』


 幸太郎『ケイジ! ケイジ! おやっさん呼んできて!!』


 ケイジ『どうした? すぐ呼んでくるから、お前さんも無理するなよ。おやっさーん』
 (柵越えして利褌を呼んでくる)


 利褌「おお、どうしたケイジ。お前、もう一年復帰して障害に出したほうが良さそうなくらいの元気さだなあ。む? 幸太郎が吠えている? 来てくれだと? わかったわかった。袖を引っ張らないでくれ」


 ケイジ『連れてきたがどったのー幸太郎。熊でも来ているのか?』


 幸太郎『いや、子猫がいるんだけど、弱っていて・・・お医者さん呼べないかなあ』


 ケイジ『あちゃー・・・真っ白と真っ黒な子猫・・・女の子か。ご飯を取れないのもあるだろうけど、そうだなあ。おやっさん。呼べない?』


 利褌「む・・・子猫・・・うーん。病気かな。よし。獣医に診てもらう。何かの縁だし、幸太郎が助けてくれと言っていたんだろう?」


 幸太郎『そうだよ。それに、牧場に猫っていいんでしょう?』


 ケイジ『気性難の緩和とか、ネズミ退治に助かるよー。ナイスだ幸太郎。助かるぞきっと』


 利褌「よし。じゃあ病院に連れていこう。ケイジと幸太郎は放牧エリアで休んでいなさい。しっかり助けに行くぞ」


 ケイジ、幸太郎『『ほーい』』


 


 ~某所・スタジオ~

 

 

 「ジャ〇ク・スポーツ~!! 騎手特~集!!」

 

 

 「さあ、皆様始まりましたジャ〇ク・スポーツ。騎手特集。競馬ブームをけん引している若き才能から伝説まで集まっての豪華二時間スペシャルとなっておりまーす」

 

 

 いやあ・・・数年前の自分に聞かせても理解できないだろうなあ。僕が伝説たちと一緒にテレビに出て、あまつさえ競馬ブームの立役者になっていると言っても。

 

 

 「今回集まりましたお歴々には、今回競馬のいろんな話。名馬のことを皆さんに知ってもらうためにぜひぜひ話を聞きたいところです!」

 

 

 「ホンマ、ここまで競馬ブームが再度来るとは思わんかったなあ。オグリ以上やで!? もう連日新聞見ても馬の顔が一面だらけで、わしら馬面になってしもたんかな思うくらいや! 馬面のあの人が偉業を成しましたー! みたいな」

 

 

 観客がわいて。笑い声が響く。本当にあの大物芸人ミッドナイトタウンの浜野さんのスポーツバラエティー番組に二度目の出演とは。

 

 

 しかも大竹さん、和倉さん、池沼さん、安西さん、横峰さん、福島さんという誰もが時代を彩った怪物だらけの中に僕。う、うーん・・・何度目かの経験だけど吐きそうだ・・・レースなら相棒がいるからある程度安心できるんだけどなあ。

 

 

 「いやーしかし、今回揃ったこのメンツ! いったいどれほど稼いだんでしょうかねぇーそして、改めて競馬ブームが起きているこの昨今だからこそ、時代を作ってきた名ジョッキーたちに馬のあれこれを聞いていきたいと思います」

 

 

 「あ、あのー浜野さん」

 

 

 「はいなんでしょう松風君」

 

 

 「そ、その僕はまだまだ多くの馬たちと出会えていないのでどこまで話せるか・・・」

 

 

 「大丈夫大丈夫。君の一番の相棒まだネタあるだろうし、真面目に吉本の社長直々にスカウトするか言うくらい逸材だから」

 

 

 僕も苦笑しつつ、会場も笑ってくれたのでよかった。ありがとうケイジ。今回のギャラ、何割かお土産にもってくからね。

 

 

 「さてさて。早速行きますが、今競馬ブームになると同時に気になるのが名馬たちの性格。皆様の相棒、戦友たちの性格ってどんな感じだったのでしょうか?」

 

 

 「実際、僕らみたいな素人でも名馬は気性が強い、闘争心が強い馬が強いとは聞くけどねえ。ほらーあのオグリ? とかスペシャルウィークは人懐っこいというやん? そういう馬は勝つなーってのはあるのん?」

 

 

 その発言を聞いてみんな同時に考え込む。というのも、主に90年代を期に名馬のイメージというのも徐々に変わってきたのもある。ただ、個人的な意見を考えれば・・・

 

 

 「そうですね。一つ前まではいわゆる気性難。賢い故に人の言うことを聞きづらい。だけど気の荒い。闘争心を持つ名馬が強いと言われていました。シンボリルドルフや僕の中だとエアシャカールとか、イナリワンとかがそうです。で、もう一つは対極に人懐っこい、穏やかな子です」

 

 

 あ、流石大竹さん。僕が言うよりも説得力があるので助かる。

 

 

 「ほーん? 穏やか。え? でもあのレースでそれがなんで役立つの?」

 

 

 「人懐っこい、穏やかな子は言ってしまえば人の言うことを聞く。だから調教を聞いてくれるし、その分鍛えていける。それに馬は賢いですからね。レースでの勝利が人が喜ぶとわかればその分応えようとするんです」

 

 

 「大竹さんの所ですと、スペシャルウィークとかスーパークリークもそうでしたね。心を開いた相手には本当に応えてくれて」

 

 

 「和倉さんとテイエムオペラオーもそうでしたよ。いやースぺは途中で賢い分逆にさぼるのも覚えちゃって大変でした」

 

 

 「今話題のキジノヒメミコの調教師をしている的矢さん。彼の相棒だったライスシャワーとグラスワンダーも人懐っこくてのんびり、心優しい子でしたからね。それがあのメジロマックイーン、スペシャルウィークという当時の最強格を倒す。馬も人に応えようとして頑張る力があるんです」

 

 

 その言葉に皆頷く。本当にそうだ。馬たちの賢さは侮ってはいけない。しっかりと一人の相棒として、仲間として、友として扱うべき相手。名馬たちとの関わりを聞くと本当に思うし、仕事をして尚更な感じさせられる。

 

 

 「はぁー・・・まさしく相棒ってわけで。じゃあ、つまりは気性難なレベルで闘争心があるか、穏やかな子が強いって感じ?」

 

 

 「そのうえで才能が高いのも必要ですがね? 後は、そうですね。三つ目ですと・・・安西さんの相棒、いや彼女がわかりやすいのでは?」

 

 

 「ダイワスカーレットですか。ですねえ。彼女はやりたいことをやって、それをできるだけの才能でねじ伏せてきた。まさしく才能を用いてねじ伏せる超天才型。これも含めれば大きく名馬でありがちな性格、タイプはこの三つが主に上に来る。と思います。もっといろいろあるんですがね」

 

 

 「サイレンススズカもそうでしたね。彼の場合はちゃんとやるために息を入れることを覚えたので大逃げで覚醒しましたし。ディープインパクトも本当に抑えるのが大変でした」

 

 

 「スイープトウショウもそうでしたねえ・・・乗れば強いんですが、ほんと乗らせるのが大変で・・・」

 

 

 「これ以外でも多くの名馬が意外と人懐っこいという声がありまして。女帝エアグルーヴ、女傑ヒシアマゾン、幻の三冠馬フジキセキ、覇王のライバルメイショウドトウなどはとにかく人懐っこいという話が出ますね。

 

 

 時代が変わるたびに名馬にもこういう子が増えていると思いますが、その中でもここ最近の世代では気性が大人しい子が多いです。名馬のイメージも変わりつつあると思いますが、この馬はすごいというエピソードはありますか?」

 

 

 名馬のエピソードかぁ。

 

 

 「僕はウオッカですかね。基本器用だから色んな戦い方が出来ますし、しかも強い、自分で勝つために抜け道を探したりで本当にあの子はレースへの理解もあると思います」

 

 

 「世間だと女番長って言われるんですけど、カメラ大好きで大和撫子な子なんですよね。いやーウオッカとダイワスカーレットの調教師は仲がいいので色々聞かせて合わせてもらったんですがほんといい子でしたよ」

 

 

 「ほー世間ではダイワスカーレットは女王で、ウオッカが番長言われていたけど、実はダスカちゃんの方がじゃじゃ馬なん?」

 

 

 「僕はそう思いますよ? ダイワスカーレットはあれですね。言っちゃえば少し抜けたところがある脳筋やきもち焼きのお嬢様です」

 

 

 「いや少し前の漫画のヒロインか!!」

 

 

 さすが安西さん。見事に場を盛り上げてくれる。それに、名牝の活躍も最近は多いし、思い返す人も多いだろうし。

 

 

 「いや、ほんとそうなんですよ。好きな厩務員さんとかにはなついているんですが、別の馬を世話しているとご機嫌斜めになったり離れようとすると袖を噛んでいかないでとごねたり、担当が変わって以降ダスカ以外の子を担当しているのを来てほしそうに見つめていたりとか。寂しがり屋でもありましたし、ダスカは本当にそんな感じです」

 

 

 「寂しがり屋という意味ではオルフェーヴルもそうでしたね。強かったんですが、欧州に遠征する際は帯同馬が常に必要で」

 

 

 「あ、そんなオルフェーヴルで私がすごかったと思ったところは脚の動きの変化ですね。他と比べても器用に変化させて戦うんですよ。引退レースの有馬記念は痺れました」

 

 

 「この映像ですね」

 

 

 そういって映し出されるのは有馬記念でケイジと戦ったこのレース。うん。改めてケイジも足の回転を速くして仕掛けているんだけど、本当にエンジンが違うと言わんばかりにグイグイ来ていたなあ。あれは強かった・・・そういえば、前田さんからさらに成長していたと話していたけど、下手するとこれ以上になっているんだよね。年齢的にはもう8歳を迎えそうな時期なのに。

 

 

 「ホンマやなあ。足の動きが違う。喰らい付いているのケイジくらいや。そんで、その後勿論振り落とされたんでしょう?」

 

 

 「いやいやいや。流石に耐えましたよ?」

 

 

 「落とされそうだったのは本当なんかい!!」

 

 

 「あの子、甘えたくて振り落とせば池沼さんが落ちてくるとわかっているみたいですしね。レースが終わった後に興奮の勢いと甘えたくてそうしているらしくて」

 

 

 「甘え下手にもほどがあるで。しっかしまー馬も馬でみんな濃い性格しているなあー。誰か翻訳機作ってくれへんかな。真面目に対談させたらおもろいで絶対」

 

 

 是非それは思う。ゴルシとジャスタはそのうち筆談できそうというか、ジェスチャーでどうにかできそうな気もするけど。

 

 

 「じゃーそんな中ではい! 凱旋門賞を手にしたお二人さん。ディープインパクトとケイジの性格を教えてもらえないでしょうか」

 

 

 「え? ディープインパクトですか? そうですね。凄く人大好きな甘えん坊。かまってちゃんです。レースの際は闘争心が強すぎて大変でしたが」

 

 

 「はぁー。あれだけ強いのにかなり人懐っこいとは。そういえば以前再会した時は乗っていく? という感じで甘えていたねえ。やっぱり相棒との絆は強いんやなあ。じゃ、一番いじり甲斐のある戦国コンビの松風君! ケイジはどういう感じだったのかな?」

 

 

 うぐ。やっぱり来た。いや、そうだよなあ。馬の性格となればなあー周りの皆さんもいじり倒す気満々の目になっているよ! くそう。ケイジの性格かあ。

 

 

 「えーと・・・そうですね。派手な騒ぎが大好きで、情の深い顔役でしょうか」

 

 

 「昭和の親父か番長か何かなん!? どんだけ濃いねん! 英雄と傾奇者で下町のおぼっちゃまと顔役でドラマいけるで!」

 

 

 「いや、でも実際そんな感じなんですよ。基本気性難相手でも仲良くできるし仲裁するし、人には悪戯はするんですが葛城さんにも僕にも優しかったんですよ。怒ったりしたときなんて数えるくらいしかないです」

 

 

 「あーたしか、あれでしたよね。記者が松風君を馬鹿にした時と、マツクニローテに出せとごねた時。あと大竹さんがサイレンススズカやディープインパクトを重ねすぎた時でしたっけ」

 

 

 「そうです。でも、一緒に戦うと決めてからはむしろサイレンススズカやディープインパクトの戦い方であの二冠を取らせてくれて・・・うん。最後の有馬でも、夢の続きを見せてくれましたよ・・・」

 

 

 「そんなお二人の栄冠への戦いを共に歩んだケイジですが、記者さんへ怒った時の行動が偶然厩舎の監視カメラに映っており、その映像を残していたとのことで、特別に譲ってもらいました。此方です」

 

 

 『いやーやっぱり松風騎手よりも大竹さんが日本初の凱旋門賞に挑む傾奇者とのコンビはふさわしいですよ。怪我も相まってコンビは変わったほうが』

 

 

 『何を言いますか! 松風君こそがケイジの相棒です! 大竹さんを悪く言うわけではないですがケイジの相棒は彼です! そこは譲れないです』

 

 

 『ちょっ。〇〇社さん! 流石に失礼でっせ! ケイジと松風君の絆と強さは並じゃない。そこを馬鹿にするのは競馬記者として許せません!』

 

 

 『いやーとは言いますがね』

 

 

 『ビヒィイイ!!!!』

 

 

 ドガシャアァアアアアンン!!!

 

 

 『『は!?』』

 

 

 『ギュオッ!! グフゥウ・・・!! ビヒギィイイ!!』

 

 

 『なっ!? は! いや! 何だケイジ号が!?』

 

 

 『ぉおおい待って待ってケイジ君! 襲ったらあかん! 襲ったらやばいで! タイムタイム! 僕と葛城さんで怒っておくから! 大丈夫だから!』

 

 

 『ブフゥー・・・ブルルル・・・!! グフゥ・・・』

 

 

 「えーと・・・馬房の扉を一発で蹴り壊しているけど、ここまで脆いもんなの?」

 

 

 「いえ、葛城厩舎の馬房はまだ新しい方ですし、扉もケイジのというのがあってしっかりメンテしているので頑丈ですよ。普通に大型馬が蹴っても壊れないはずのそれを一発で壊しています」

 

 

 うん。ケイジが僕のことを思ってくれたのは嬉しい。なあ。ただ、蹄も足もあれで大丈夫だったのかな? いや、大丈夫だからこそあの戦いをしていたんだしなあ。

 

 

 「ちなみに熊退治の映像もここに」

 

 

 「いや、これ嘘じゃないよね? ほんまこのパワーもやけど、馬って臆病じゃないん?」

 

 

 「ケイジの場合はそれ以上に仲間意識と守る、戦うという気持ちが強いみたいなんですよね。さっきの動画でもですが、ちゃんと向かいの馬房の馬にはごめんねと謝っていますし」

 

 

 「ちなみにこの後にケイジ君。差し入れの人参を向かいの馬房の馬にも自ら分けに行ったそうです」

 

 

 ケイジの場合はなあーほんと基本レース中でもゴルシたち以外ではちょっかいもめったにかけないしなあ。遊ぶ相手以外にはしっかり無理はしないんだよね。むしろ紳士的というか。

 

 

 「なんや、馬というより。馬の皮被った猛獣と何かを足したような奴に思えてくるなあ。ホンマ人好きなのはわかるけど。馬とそれ以外にも優しいの?」

 

 

 「そんな浜野さんのために。今引退後の余生を過ごしているケイジ号。そしてアメリカトリプルクラウンを手にして無敗のまま引退したナギコ号がいる前田牧場に取材に行ってくれた人がいます。その映像をご覧になってもらいましょう」

 

 

 なんかそのままケイジの特集になっちゃったけどいいのかな? まあ、それはそれとしてケイジの様子を見れるからいいけど。

 

 

 『アイーン! どうも。わたすが変なおじさんです。はい志村ヘンでーす』

 

 

 ドリフターズの志村さんじゃん! ええー・・・

 

 

 「志村さん!? いや。まじかードリフターズつながりか」

 

 

 『いやー新メンバーなのになかなか牧場の予約が取れなくてねえ。今回の企画でようやく行けるってわかって頑張って頼んだ甲斐がありました。ケイジ君。待っててねーん』

 

 

 そのまま前田牧場に行く。前にしっかり消毒と靴の洗浄を済ませていく志村さん。うんうん。病気を持ち込まないために大事だからね。

 

 

 『さあー来ました前田牧場。ここね。ずっと社爛さんと手伝って馬たちの親戚の血が濃くなりすぎないようにいろんな子たちを用意してきた日本競馬界の縁の下の力持ちだったのよ。だけど、ケイジが生まれてからいろいろ変わってきて、今は静養牧場と生産牧場の二刀流。

 

 

 今の時代にオーナーブリーダーをやるってのはほんと凄い。ぜひ応援するべき存在よ。お、前田さん。今日はお世話になりますぅ~』

 

 

 『はい。よろしくお願いします。いやあ、ドリフターズのメンバーとしてケイジを迎え入れてくださったこと。光栄ですよ』

 

 

 『いやいや、あそこまでお祭り騒ぎの競馬と愉快な時間をくれたんです。あんな奇麗なアイーンと顔芸を見せて入れないのは噓よぉん。いつかゴルシ君にも会いたいね。あ、いたいた。ケイジだ』

 

 

 そんなこんな談笑をしながら牧場内を歩いて放牧エリア。牡馬の方に行くとケイジ・・・ケイジ?

 

 

 ケイジが座布団を枕にキセルを咥えて横になり、そのまわりでは幸太郎とその子供たち、後新しい顔か、白猫と黒猫が昼寝をして、グラスワンダーとディープインパクト。少し離れてオルフェーヴルがみんなで昼寝をしていた。

 

 

 「休みの日の親父か!! キセルまで咥えて完全に時代劇の親父やんか!」

 

 

 『ヒヒーン・・・むぁふ・・・ワン』

 

 

 『おおーケイジ。志村さんが来たぞ』

 

 

 『ケイジ―元気しているかー?』

 

 

 キセルを咥え直してから起き上がり、背中に幸太郎、頭に黒猫を乗せたまま頭を下げるケイジ。癒される光景と。しっかりカメラにも挨拶するあたりほんとこいつは。で、くるりと逆の向きに移動してからガチャンと音がしてから、放牧エリアを抜け出し、器用に扉を閉め直してからカメラのほうに歩いてきた。

 

 

 「あ、後ろでディープインパクトが悲しそうに追いかけて柵の方で見つめている。相当ケイジになついていますね。オルフェーヴルも。仲いいんだなあ」

 

 

 「何気に三冠馬三頭、有馬記念奪取含めれば4頭の豪華な絵面ですね。ホースマンには夢の光景です」

 

 

 『ケイジ。またお前は・・・ん? 腕を噛んで。ああーはいはい。じゃー志村さん』

 

 

 『おお? アイーン』

 

 

 『ワヒーン』

 

 

 一人と一頭で一緒にアイーンを決めるこの絵面。しっかりカメラに向かってやっているのももう笑うほかない。その後にキセルを咥えてにっこり微笑むのももうずるいんだよケイジ。

 

 

 「こいつホンマ馬かいな! 芸人が馬に乗り移ったとちゃうんか!? 志村さんと息ばっちりすぎやろ。こいつホンマおもろいわーずるいわ稼げるくせにおもろいとか」

 

 

 「いやあ、それどころかちょっとだけよーとかも理解して乗ってくれたりとかあったので・・・」

 

 

 『いやあ、ありがとうケイジ。でねえ。今日は前田牧場の見学に来たんだけど。いいかな?』

 

 

 『ブルん。ワン、わふ』

 

 

 『その前に温泉に入って休めば。と言っていますよ。人も入れる湯の質なのと、関節痛、筋肉痛に聞くのでよければどうぞ。その際にゆっくりご説明ともてなしさせていただきます』

 

 

 「これ温泉紹介動画だっけ?」

 

 

 「馬たちの旅館という意味ではあっていますよ」

 

 

 「三冠馬御用達の名馬たちの温泉旅館です」

 

 

 「そういえば、キングヘイローもここからは帰るのを心底いやがっていたって言っていたなあ」

 

 

 どうしよう。前田牧場に湯治を頼む人間の依頼が増えないかな。前田牧場の電話線大丈夫かなあ。謝っておこう。

 

 

 「志村さんが温泉に入る用意の間、冬に撮影されたゴールドシップの映像を見ましょう。2012年クラシック世代。ケイジの終生のライバルゴールドシップの映像がこれです」

 

 

 志村さんが休憩場所から着替えて温泉に入るまでの時間、カットせずに間に映されるのはゴールドシップが雪の降る中に映る映像。

 

 

 絵になるのだが、カメラに気づいた瞬間ハイスピードカメラですらほとんどが変顔になるという。相変わらずの顔芸を披露。そして映像が変わればケイジと志村さんが温泉に浸かり、頭にタオルを乗せ、志村さんのそばで幸太郎も湯を満喫する絵に。

 

 

 「マジでこいつら呼んでこい!! リアクション芸人集めて勝負させるぞ!」

 

 

 多分ケイジが勝ちますよ。という言葉で締めくくられ、そこからはナギコのアメリカでのあだ名が「しずかちゃん」と呼ばれたことからオルフェ世代からケイジの引退までの時代のネタ話になり、なんか最後は前田牧場の幼駒たちに皆騎手として期待していることを話して締めくくった。

 

 

 大竹さん、ディープとケイジに会えるということで早速予約入れようとしていたし、また伝説の絵面が生まれそうだなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『牧場、大きくなったなあ。幸太郎の子たちも何頭もここに来たし、ネズミ退治は問題なさそうだけど』

 

 

 『うふふ~この前来たおじさんも面白いし、いい出会いが増えないかしら~猫ちゃんもかわいいし~♪』

 

 

 幸太郎が見つけた子猫二匹。無事に健康体になってうちで引き取ることに。なので、プロの狩猟犬の幸太郎がネズミの取り方をレクチャーしている。

 

 

 猫ってネズミを退治して俺ら馬の餌を駄目にするのを防いでくれるし、馬たちと仲良くなれるから気性難の緩和にも役立つのがいいんだよね。真面目に今までは馬の数が少なかったし、俺らも問題なかったけど幼駒たちのために、大きくなっていく牧場の餌の管理の厳格化のためにもここで動物の手が増えるのはありがたい。

 

 

 ブラウトちゃんらにも好調だし、すっかり猫たちはうちのアイドルだ。

 

 

 『うふふーケイジとうちの子ども楽しみだなあー♪ 日米三冠馬の子どもだよ? 鍛えないとねー』

 

 

 『むー・・・私は今年もアルトリア相手だし、ケイジとは一年待たないといけないのが・・・早く子供欲しいいいい!』

 

 

 『おうこら妊婦。子供いるじゃろがい。まあ、気ままに待とうぜー。ヒメなんて今年も引退できないってしょぼくれていたし』

 

 

 ヒメ、アジアマイルに向けて戦っているものなあ。休暇の際は甘やかしてやるか。猫たちの名前を決めた後に教えてやらないと。ヒメの癒しになってくれよー




 大体大竹さんとケイジ世代たちの話になるよねっていう。真面目にゴルシとジャスタだけでも特番組めるレベルのエピソードありますし。


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ウマ娘エピソード 19 基本自由なのよね

 いつの間にやらお気に入り人数が4000人が目前になっていることが嬉しいです。そして感想、評価、お気に入り、誤字報告ありがとうございます。


 マルゼンスキーのシナリオを見て、マルゼンスキーは98,2012世代達の世代を羨ましがりそうですよねえ。三冠レベルたちが多くいて、どの距離でも怪物多数。その皆が真っ向から激突を望んで同時に一番の友達をやっているわけですし。ルドルフと一緒に喫茶店でオシャレに会話しながら二人で練習の申し込みを頼むかとかしていそう。


 「あー可愛い~♡ ケイジさんってこんなに小さいころあったんだ♬」

 

 

 「そうなんですよ。本当に今は大きくなりましたけど、昔は小さくて。まあ、この数か月後にこうですが」

 

 

 「ええ・・・? 一気に背が・・・」

 

 

 「私の妹たちにおさがりが10数着下着もセットで来た時は流石に何事が起きたと父さんと一緒に驚きましたねえ。ケイジも成長痛で眠れねえと私とよく昼に添い寝を」

 

 

 ブラウトちゃんとミレーネちゃん。シリウスに入ってきたドイツとハンガリーのご令嬢、スタッフ希望で着た子たちと聞いているけど、何の問題もなく料理の仕込みと掃除も問題ない。花嫁修業をしてきているのか、そういうのも覚えているのか。なんにせよ私には助かる。

 

 

 やるべきことも終わり、昼休憩の時間になって持ってきたアルバムで私とケイジの昔の写真をお披露目。ふふ。ヒメちゃんにはたまに怖い視線を貰うけど、面白い写真も多いからねー

 

 

 「添い寝・・・? ケイジさんとです?」

 

 

 「そうそう。それにケイジ、寝るときは私を良く抱きしめていたので今も抱き枕とかがないと駄目みたいで。練習も一緒に走っていたの」

 

 

 「え・・・? 幸子さん人間ですよね? ケイジさん子供とはいえウマ娘ですし速度は」

 

 

 「あ、私も時速35キロまでは走れるの。だからスタート練習とかそこらへんはやっていて」

 

 

 昔からケイジと一緒に走っていたせいかな。それともマタギの生活のせいかな。足腰は自信あるんだよねー鼻も耳も警察犬に負けないし。

 

 

 「それに、次世代のメイドの子たちもここで預かっていたり前田家とは古い付き合いなの」

 

 

 「ほぉー・・・ちなみに、どういう形でその始まりが?」

 

 

 「あら。ブラウトさん結構前田家を気に入ってくれているんです?」

 

 

 「もちろん♪ ケイジさんと一緒なら楽しそうだし。ねーミレーネ」

 

 

 「え、ええ。シリウスの日々もですし、休日に前田家に顔を出してもとても暖かく」

 

 

 「おお、さすがミホさんたちです。えーと。私のお父さんがマタギで、仕留めたシカやイノシシ、鴨などをホテルに卸していたんですが、その質がいいことやその知識でお茶とかも用意していたことでいろいろと仕事を回していただいているんです。

 

 

 妹たちももう少し育ったら前田家のメイドの教育を頼まれていますし・・・おっと。戻られたようですね。専用のドリンクを持っていきます。お二人はお昼ご飯の用意をお願いしても?」

 

 

 懐かしい思い出を話していると外からワイワイと聞こえる声とドォン! という音でみんなが持ち込んできた器具での鍛錬をしているのがわかるので休憩用のドリンクと塩分補給のタブレットをクーラーボックスとお盆に乗せて持っていく。

 

 

 ミレーネさんたちにはそのパワーで皆のお昼ご飯を机に運んでもらうように指示。

 

 

 「あ、ケイジさんの方は?」

 

 

 「あの人は自分の分は持っていっていますし、食べたいときはそれこそ何処かで持ってくるか戻りますよ。ふふ。予備もあるのでお気になさらず」

 

 

 どうせ、どこかで騒ぎを起こしている、巻き込まれている気がするけど変に言わないほうがいいだろうしなーなにか海の方が騒がしいし、何をしているのか・・・ケイジ。休めているのかなあ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふっ! ふっ! ふっ!」

 

 

 「っっ!! シッシッシッシ!! は・・あああ!」

 

 

 山で歩いて、そこから比較的奇麗な山道を走り、戻ってきてから私と芝組の皆さんはいわゆる上半身のトレーニングになったのですが、かなり変わったものだった。

 

 

 ライスさん、オルフェさんはハンマーを太鼓のばちのようにして重機のタイヤを叩き、ライトニングさんとヒメさんは何かのトレーニングマシンのグリップ部分をつかんでひたすらに引っ張っては戻しての繰り返し。

 

 

 「ふぅうぅうっん!!」

 

 

 「せぇ・・・・い!!」

 

 

 ジェンティルさんは巨大な石を持ち上げ、ヴィルシーナさんは重量のあるボールを空高く放り投げる。いわゆる上半身のトレーニングだろうか。それなのだがどれもトレセンですら見たことがないのばかりだ。

 

 

 「その・・・ライスさんの方は何をしているんですの?」

 

 

 「ふぇ? ああーこれはね。背筋のトレーニングと、ずっと腕を振り続けるための練習なの。重機のタイヤだから砕けないし反動が返ってくるのを自分の力で抑えながらしっかり決めた時間までやるの。ライスは3分。オルフェさんは2分ちょいだね」

 

 

 「なるほど・・・で、そのハンマーの大きさが違うのは何でですの?」

 

 

 「ライスは長い距離を走る。ずっと加速をする戦い方をするから常にそれを維持するの第一。オルフェさんは2400前後で最後にスパートをかける分ライスより一気に振りぬくのとスパートも短い分パワーをつけるために重いハンマーで、最後にラッシュをするの」

 

 

 「そろそろ・・・オオォオォオオアアア!!!!!」

 

 

 オルフェさんが目の色が変わり、そこからはハンマーがいくつも見えるほどの速度でタイヤを叩き下ろしていく。時間は残り20秒。最後の直線に入るかあたりの時間に仕掛けていく。走ってこそいないがイメージが出来る。あのとんでもない脚の回転とエンジンのかかり具合が。暴君と呼ばれた強い走りが。

 

 

 「・・・・そこまで! オルフェさん。大丈夫?」

 

 

 「だ、大丈夫っすぅー・・・ほへ・・・はひ・・・」

 

 

 「あらーオルフェちゃんちょうどいいわ。はい。私特製レモネードと、梅飴よ。汗びっしょりで頑張ったねー♪」

 

 

 「さ、幸子さん・・・ご馳走になります」

 

 

 「流石金色の暴君。練習の努力も凄いよ♪」

 

 

 「アタシは普通のウマ娘っすよ。皆が優しいから頑張っていけるだけで・・・・ぶは・・・う、うまいぃ・・・」

 

 

 三冠ウマ娘で、ケイジさんに勝てて、あげくに勝利の勢いでトレーナーにプロレス技をレース場で仕掛ける子が普通・・・? と思うがそれを口に出すのは呑み込む。キングは空気を読む力も一流なのですわ。

 

 

 「よし、ライスも思いきり味わうために! ふっ・・・!! あ、キングさんは多分あっちのマシンがいいですよ? 面白いと思います」

 

 

 「そうですか? ではお言葉に甘えて」

 

 

 「あ、キング先輩。やるのだったらこのリストバンドを手首に。保護のためなんす」

 

 

 「ありがとうライトニングさん。ぐ・・・ぎ・・・・ぃ!?」

 

 

 ライスさんに勧められるまま空いているトレーニングマシンのそばに移動し、専用の保護リストバンドをライトニングさんから着けてライトニングさんやヒメさんのように動かそうとするも、ゆっくりしか動かない。ウマ娘のパワーでここまでしか動かないの・・・!?

 

 

 「これはパワーで動かすものじゃないんですよキング先輩。瞬発力で一気に早く引いていく。強くひこうとすればするほどに強くワイヤーが動きづらいんです」

 

 

 「こっちはマイル、短距離組専用っすね。どこまでも短時間で早く腕を振って前に出る力を手にするか。仕掛けも何も常に全力で仕掛けないといけないレース用なんす」

 

 

 そういってピィン、ピィン、ピィーンと音を響かせながら機関車のピストン運動のように早く動かしていく二人。私も真似するのですがなかなかうまくいかない。

 

 

「うーん。私達みたいにボクシングのジャブみたいにやるんじゃなくて、引く方でやっていいと思うっす。私もそこから慣れていったので」

 

 

 「こ、こうですか? ふっ・・・ふっ」

 

 

 おお、やり始めればうまくピィンと音を立てながらワイヤーが伸びて掌が脇腹までしっかり引けた。負担も少ないし、でも速く引くことを意識しないといけない。それを続けないとあっという間に腕を引き戻されてリズムが崩れる。いい鍛錬です。

 

 

 「これは、シリウスだけにしかないのです? ふぅ・・・ふっ!」

 

 

 「あーなんでしたっけ。ヒメ先輩。ゴルシ先輩とケイジ先輩、ジャスタ先輩で作ったんすよね?」

 

 

 「そうですそうです。確かベガスのイベントでケイジお姉さまとゴルシ先輩、ジャスタ先輩でライブイベントをやった後にビリーさんがアメリカでこういうマシーンがあるんだってメインイベントのボクシングの観戦後にボクサーのトレーニングマシーンを見せたんです。

 

 

 で、それをゴルシ先輩とジャスタ先輩が写真をもとに設計を再現して、ケイジお姉さまが持ち運べるように改良して固定する台座を即席で用意して作ったんですよね。パーツは一部粗大ごみとかバイクや車のを拾ったりとかしてかき集めたとかなんとか」

 

 

 ええ・・・・・まさかの自作。しかもアメリカの名トレーナーが見せるってことは最新器具だろうし、それを再現したってこと?

 

 

 「グリップはダイエット器具から、板金は車とかからかき集めたりとかしていたらしいっすよ。あ、キングさん。これ私の予備っすけど使います?」

 

 

 復活したオルフェさんから渡されたのはマスク。いつもオルフェさんが着けているものだけど。とりあえずつけてみる。

 

 

 「苦しい・・・? 低酸素マスクです?」

 

 

 「そうそう。ケイジさんから普段から負担掛けていって密度を高めていくほうがいいって言われて。これ、かなりおすすめっすよ。これつけて30秒このマシーン仕様の3セットするだけでヘロヘロっす」

 

 

 「ちなみにケイジお姉さまは脚や手首に鉛入りのバンドを付けたり中敷きを仕込んで日常生活でも負担をかけたりもします。専用の鉛入り中敷きも譲りますよ」

 

 

 クラシックディスタンスでケイジさんと互角と言われた同期以外での数少ない怪物の鍛錬方法にケイジさんの鍛え方。これなら合宿が終わっても使えますし、やってみましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「にょわー!!!!」

 

 

 「ケイジ! お前というやつは・・・はぁー・・・怪我はないんだな?」

 

 

 あっちゃー。やっぱ海で暴れていたケイジだけど、そりゃあ怒られるよねえ。鮫の群れが近くの漁場にいたので退治を手伝ったってあるけど。逃げたやつら追いかけて素手と銛とナイフで立ち回ったそうだし。

 

 

 葛城トレーナーに雷を落とされてしまい頭から煙を出して倒れるケイジ。うん。いつも通りだ。

 

 

 「大丈夫ー・・・・とりあえず、鮫の漬け丼と、お礼にもらった海の幸でちらし寿司と寿司握るわ。ほれ。大吟醸も退治した鮫をホテルに持っていったら譲ってもらえたから飲んでけ」

 

 

 「ありがたいけど退治した鮫を?」

 

 

 「なんだ松ちゃん。鮫は意外と捕まえた日なら美味しいんだぞ? ただで捕まえたし、ホテルのディナーにネタ枠で出しておけと言っておいた。ふかひれも作っておいたし、そのお代にトレーナーに飲ませろってな」

 

 

 「あそこのコック長だな。後でお礼に行くか・・・・ま、それはそれとしてお疲れ様」

 

 

 「ほんとお疲れケイジ~鮫退治さっそくニュースになっているよー?」

 

 

 「おろ。いつの間に。そんでナギコ。ウララ生きてる?」

 

 

 あ、そういやそうだった。あの後練習で引きずり回してぐったりしちゃったんだった。疲れすぎて眠っているだけなんだけど。

 

 

 「問題ないよ~疲労で眠っているだけ。ラニに追い掛け回させてから休憩に汽水域の方で浮き輪の上で休ませていたら眠っていたのよ」

 

 

 「ま、おかげで姉貴のジュースをたっぷりいただけて良かったぜ! そんで姉貴! 姉貴の飯食えるんだろ! 急いで風呂入ってくるぜ!」

 

 

 「あ、風呂上がりの牛乳はフルーツとコーヒー用意しているからねー」

 

 

 「ありがとう幸子さーん!」

 

 

 「ラニ元気だね~もう少ししごいたほうがよかったかなあ~あ、ケイジ今日の砂の芸術、砂絵だよー見てねー」

 

 

 「そんじゃ、ウチも入ってくるね♡ のぞきは駄目よ~? ウララちゃんも起こしてあげないとだし」

 

 

 「それは松ちゃんたちにいえやーい。料理作っておくから汗流せや」

 

 

 ひらひらと手を振りながらケイジに分かれてお風呂に。いやー温泉楽しみだわ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 「んえ? ほわ・・・・おー? ウララ寝ていた?」

 

 

 「そうだよーでもノルマは達成したから問題なしなし。ほわー・・・潮風でべたべたしたのが落ちていく―・・・」

 

 

 「くはぁー・・・やっぱ・・・ここの温泉は癒される・・・ウララ。お前さんの分のジュースは私がいただいたからな?」

 

 

 「えー! ずるーい!」

 

 

 「でも、今日はケイジが料理をしてくれるからその分食べるといいよ? ケイジの料理は前田ホテルの料理人にも、老舗寿司屋にも太鼓判を貰っている腕前だから」

 

 

 「あ、じゃあいいやー。むしろその分沢山食べるよ」

 

 

 「おいおい。髪の洗い方が荒いぞ。綺麗なピンクの髪なのになあ」

 

 

 そういっているラニも滅茶苦茶髪の毛の洗い方荒かったけどねー真面目に丸くなったものだわ。私達で鍛えたし。あはー・・・いいぐあぃ・・・

 

 

 はふぅ・・・あー・・・アメリカじゃあ中々こういう風情ある温泉はないからねえ。

 

 

 「明日はキングをこっちで面倒見るんだけど、どうする~ウララちゃんは明日まではこっちで預かるよう相談してみるぅ?」

 

 

 「そしよっかホッコーっち。ウララっちは強くできる気がするし、もう少し反復練習してから新しい練習をさせたいし。平野にも考えてもらっているからねー」

 

 

 小柄だから戦い方はライスに近いやり方になるかそれとも。うーん・・・はふぅ・・・ウマ娘での視点も大事ってことでみんなで考えるのもいいよねえ。

 

 

 あー・・・いい湯・・・はぁー・・・ん? 酢の香り。酢飯の香りだ♬

 

 

 「じゃ、芝組のもてなしのためにもウチ等は早めに上がろっか。にしし。今日の晩餐は豪華だよー?」

 

 

 「ケイジのご飯のおかげでドバイも勝てたしね~ふふふ。疲れを抜くぞ~」

 

 

 「ういっす。姉貴たちのミルク。何がいいっすか? ほれウララも。ゆでだこになるぞこのままじゃ」

 

 

 「あ、うちはフルーツ牛乳でー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「美味しい・・・肉が蕩ける・・・醤油も美味しいです」

 

 

 「うんうん♪ すっごく美味しい~♪」

 

 

 「鮫肉のステーキもスパイスもいい感じだ。酒に合うな・・・」

 

 

 「日本酒と合いますねえ。濃密なうま味をスカッと切り替えつつも合うのが。まさかウニにイクラまで食べられるとは」

 

 

 「け、ケイジちゃんの暴走のおかげだけどね。本当に大丈夫なの?」

 

 

 芝組もみんな風呂を上がったのでさっそく晩御飯。アタシは先に食べたので皆に寿司を作っては振る舞っている。

 

 

 今日は板前ケイジちゃんってね♪ キングもウララも満悦でよかったぜ。

 

 

 「問題ないよ真由美ちゃん。鮫退治くらいアメリカ海軍の友人と一緒によく空母から飛び降りてやっているし」

 

 

 「ジョディ―さんだな。爆竜大佐がケイジを軍に引き抜こうとしたのを何度抑えさせたか」

 

 

 「シリウスは私とケイジさんのリーダー二枚看板でいくのがいいですのに。全くあの人は。あ、キングさん。ガリもらっていいです?」

 

 

 「ジョディー姉ちゃんはいい人なんだけどね。ウチらのライブの際に戦闘機でライブ上から落下傘で降下してくれたのは楽しかったなー♪」

 

 

 「冴羽と一緒に車でライブに殴りこんでのスタートも楽しかったぜ。またやれねえかなあ。あ、ムラサキ多めで頂戴。ライトニング」

 

 

 「ういっす。お吸い物も来たっすよーうしお汁とみそ汁の二つあるみたいなんで言ってくださいね」

 

 

 みんないい感じに食べているねえ。鮫バーガーも作ってみたがビールに合うようで何より何より。ナギコが持ち帰って来たアメリカンなソースもあったから使用したかいがあるぜ♪

 

 

 「にしても、タコとイカが多いのですねえ」

 

 

 「タウリンとかもあるし、美味しいからねえ。シンプルにトレーニングにはいいのよ。天ぷらも用意していくし、ははは。気楽にリクエストしてくれ」

 

 

 「なら、私は大葉とイカのはさみ揚げをお願いします。ふふ」

 

 

 「あいよヴィルシーナちゃん」

 

 

 「私はタコ天を」

 

 

 「はいはい。待っている間にこれをどうぞ。箸休めの漬物だ」

 

 

 賑やかでいいこった。それに、食欲が落ちてないのがいいね。しっかり鍛えつつもバテ過ぎずに回復の余地を残しているし、うん。初日が心配だったがそこも問題ないか。

 

 

 松ちゃんたちもいい感じに酒が入ってきているし、揚げ物で胃をもたれさせ過ぎないようにさらっとしたものも用意するとして。

 

 

 「そういや、幸子らも飯を食え。明日の用意もあるだろうし、皿洗いで地獄を見るぞ?」

 

 

 「はいはい。ならケイジは料理を終わったら休んでよ? この人数の食事を一人で切り盛りしているのも傍から見たらマジックみたいなんだから」

 

 

 「あんたらが配膳してくれているから楽なもんだ。作って盛り付けすればいいだけだしな」

 

 

 合宿だっていうのにほんと、アタシは料理人だねえ。まったく。ほわ・・・私だけ花嫁修業の合宿じゃないってのに。




 基本アスリートではあるのでしっかり鍛えては行きますよという。シリウスとスピカであるトレーニングマシーンの何割かはケイジとゴルシたちで作ったものです。


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引退後よん 3

 ぼちぼちケイジの産駒も出していきたいなあ。と。後時期的にプロジェクトも動いてきますよねえ。


 お気に入り人数4000人突破しましたァン!! 皆様応援ありがとうございます。いや、真面目に何回も言っているんですが、名作、面白い、更新速度が速いウマ娘の小説が多いのにこの作品に目を向けてくれてありがとうございます。


 感想もいつもワクワクしながら待って、届いたものは全て楽しく読ませていただいています。これからもどうかお願いします。


 やってきましたケイジ記念。流石に暑すぎるにょーということで北海道の競馬場で開催。後俺に配慮してらしい。種牡馬だしあちこち移動してもねという。やさしい。まあ、同時に中央あたりだと重賞が近いからというのもあるんだろうね。

 

 

 そんで俺は誘導馬。先頭を切って移動することになったんだけど一緒に来たのはオルフェ。うん。真面目に今日は池沼騎手とレース出場じゃないとしっかり教えているから落ち着いているねえ。

 

 

 『始まりました第一回ケイジ記念! 皆様にも記憶に新しいでしょう。昨年まで最前線で戦い、多くのファンを沸かせ、記録を生み出しライバルと戦い続けていた傾奇者ケイジ! 彼の功績から生み出されたこのレースケイジ記念。

 

 

 世界をも魅了したそのケイジのレースの開催に世界各国からも開催祝いの手紙が届いています。まずは読み上げていきましょう』

 

 

 『凄いねーケイジさん。ケイジさんの名前がレースになるとは』

 

 

 『オルフェもそうなるかもしれねえぞ。お前さんの成績と、子供たちの功績次第でね。できれば欧州レースに行く前のステップレースみたいにしてほしいなあ。強いし、挑む前にオルフェの強さを貰うみたいな』

 

 

 一緒に話しながらアナウンスを聞いていると王侯貴族とか時の首相の祝いの手紙が来ていてもうどうしたらいいんだろうねこれ。来年以降ダービー馬送りつけてジャパンカップも両取りしてやるとかプロレスのマイクパフォーマンスみたいな内容もあって草生えるわ。

 

 

 あ、それと種付けの依頼に応えたついでにファンサしたことへのお礼も来ているなあ。ありがてえ。

 

 

 で、うちのおやっさんのこのレースの時期にしてほしいという想いも話されることに。

 

 

 『このケイジ記念は夏の開催という過酷なものです。3歳以上の混合GⅠであり、距離もクラシックディスタンスから200メートル長いです。過酷も過酷。ですがあのマツクニローテを越えて凱旋門賞の後も筋肉痛以外は一切怪我をしなかったケイジのタフさを示すならこの季節です。

 

 

 そして、ここでの勝利や成績がクラシックレースや海外に挑みに行く、いえ海外からも強さと名誉をさらに求めてくる優駿たちの更なるステップになる。もう一押しになるのならこの季節になるしかないと思いここの季節に開けて嬉しいです。最後に一つ。是非、強さも美しさも愉快さも感動も詰め込んだホースマンと愛馬たちのレースが長く続くことを願います』

 

 

 いいこというじゃんおやっさん。会場も沸いているし。あれだなーアメリカのトリプルクラウンもタフさを売りに出しているけど、日本でのタフさを示すローテやレースはマツクニローテとこのレースになるかも?

 

 

 よしよし。いこうかオルフェ。皆が出ようと指示をしている。

 

 

 『さあ、日本の三冠馬二頭。日本総大将と金色の暴君がこの記念すべき第一回を戦う優駿と騎手をリードしていきます!

 

 

 そしてその先頭を切るのはケイジの弟子であるキタサンブラック! 鞍上はケイジと共に欧州二冠を日本に持ち帰った最強騎手大竹騎手! お祭り名馬と最強のジョッキーがここに来るべきなんだと参戦だぁ!!

 

 

 二番はケイジの戦国コンビの相棒松風騎手! サトノダイヤモンドと一緒に参戦だぁ!! 相棒の名を冠したGⅠレースを手にできるのか! 新たな相棒と共に狙うぞ!』

 

 

 あはぁん。この二人とキタサトコンビとかやばいなあ。

 

 

 『おぉ・・・レースの久しぶりの感触・・・池沼さんが鞍上だったらなあア!! あぁあああー!!』

 

 

 『我慢我慢。駄目よぉーん?』

 

 

 『続きましてなんとアメリカ、オーストラリアのダービー馬が参戦! 狙ってやるぜと気炎を燃やしております!』

 

 

 大きく嘶くオルフェを抑えつつ一緒に誘導馬のお仕事をこなしつつ参戦するメンバーを聞けばこれはやばいなあ。いやーこれは愉快になりそうだぜ。よし。やるか。

 

 

 「よしよし。ケイジ君にオルフェ君誘導ありがとう。落ち着いていて流石だったよ」

 

 

 『オルフェーあのな? ごにょごにょ・・・』

 

 

 『それ、怒られない? ケイジさん』

 

 

 『俺の名前のレースなんだ。笑かしていこうぜ』

 

 

 『はーい』

 

 

 誘導馬に乗っていた人が降りた瞬間を見計らってソーレ脱走だーい。

 

 

 そんで、あ、よいしょっと。簡単なドアだなあ。針金あれば南京錠でも俺開けられるぞ? あ、カチャカチャっと。

 

 

 『さあ、レースがは・・・ケイジ号とオルフェーヴル号がまさかの一緒に再度の本場馬入場! もしや彼らもレースに参加しようとしているのか! 本当の王者は俺たちなんだと有馬記念の続きをしようとしているのか! まさかの乱入者、いや予想通りか!?』

 

 

 『あ、タイミング速かったみたいだな。くっそーうまくいけば20頭立てのレースになれたのにー!! いよぉーし! そのままゲートの後ろに待ってからスタートの後にぶっこ抜いていくぞ!』

 

 

 『ケイジさんとのレース・・・うっぉおおぉお!! いいぞいいいぞお! 早く早く! レース! レース!』

 

 

 「ケイジくーん! 待ってくれー!」

 

 

 「やばい! オルフェがレースモードだ! 落ち着いて落ち着いて!」

 

 

 「ケイジ―! お前は相変わらずすぎるぞ! まてまて! 鞍上なしのお前とか勝てる気がしない!」

 

 

 「松風君、いうべきところそこじゃない! ケイジ君! オルフェ君! 待って待って! レースに出ちゃいけないから!」

 

 

 いいじゃんよお池沼さんに松ちゃんにタケちゃん。俺のレースなんだ。愉快に騒いでいこうぜ!

 

 

 『ケイジさーん! 後ろから網とロープを持った人たちが来たよ!』

 

 

 『よし! 騒がしくできたし逃げるぞ! 今度はこのおっちゃんらと鬼ごっこだ! 2分逃げ切ったらオルフェ、今度俺のリンゴジュースあげる』

 

 

 この後滅茶苦茶逃げ切った。後怒られたり笑われた。後、リンゴジュースを一緒にオルフェと飲んで愉快に過ごせたぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ウマ娘・・・ですか?」

 

 

 「はい。競走馬を擬人化したゲームを開発しようとしているのですが、その際にぜひぜひ前田牧場の名馬たちも名前の使用許可をいただければと」

 

 

 『おーこの話がうちにも来たかあ。出世したなあ』

 

 

 第一回のケイジ記念はキタちゃんの優勝で締めくくり、俺とオルフェの暴走が全国ニュースになったり世界でもウケていたらしく俺とオルフェのぬいぐるみの再販が決まったりと愉快な日々を過ごしていたが、シャイゲームスの方が来て俺らに頼み込んでいた。

 

 

 いやーそっかそっか。そろそろこんな季節なんだなあ。感慨深いわ。ウマ娘ファンの俺が馬になって、そのゲームのモデルになるって。世の中わけわからんなあ。

 

 

 「でしたら構いませんが、ケイジのやつが美少女になるにしても色物枠でしょうなあ。わはは。楽しみにしていますよ」

 

 

 「い、いいのですか!?」

 

 

 「いやいや、日本の大昔も鳥獣戯画で擬人化を楽しんでいましたし、船も女性をイメージした名前を付けたりしますし、ケイジの名前がより広く、そこからライバルたちや競馬の事を知って、馬たちを愛してくれれば私はそれで。

 

 

 一応、私が権利の多くを持っていますし、このまま決めてもいいでしょうが、出来ればここの方々にも連絡してくだされば。私から連絡してアポを取るので、もしよければ泊まっていってくださいな」

 

 

 『おやっさん失礼だなー俺超美人になるかもだぜー? 全くよお。お前さんの愛馬だってのにな。しかし、ヒメとナギコもとはいいけど。レースどうするんだろ。こいつら主戦場海外だぞ?』

 

 

 大喜びするシャイゲの方をほほえましく見つめる俺とおやっさん。そうしているうちに何やらおやっさん思い出したらしく、立ち上がった。

 

 

 「あ、そうです。一つ頼みたいことがありました」

 

 

 「なんでしょう?」

 

 

 「できればなんですが、ケイジのキャラクターデザインについて、この方々に頼みたいという方がいるのですが、指名できないでしょうか?」

 

 

 「もちろんです! では、そのデザインと設定が出来た時はぜひぜひお願いを・・・!」

 

 

 ま、その前に休もうぜシャイゲの兄ちゃん。この後いい男のいる自動車整備工場と、オカマバーに出向かないといけないから気苦労のベクトルは違うが疲労するぞ絶対。

 

 

 あと、デザインの依頼ねえ。あの二人にかな? 今度みせてもらお。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (♪年末ビンタのテーマ♪)

 

 

 「ユウセイ。マイ、フレンド・・・・だから、代りに俺の呼んだともにしばいてもらう」

 

 

 「しばかれるのは変わらないんですかアーッ!!」

 

 

 やってきました年末風物詩。お笑いの長期マラソン番組。志村ヘンさんに北島サンちゃんも参加しての超豪華。ネタも多数あってのいい時間の後半戦。兆治マサトシさんがユウセイさんをしばく・・・のではなく他の人がやることに。

 

 

 「だから、代りにおい浜野ぉ! 松谷! さっき笑っていたお前らは俺と友にしばかれてもらう」

 

 

 「「いやなんでやねん!!」」

 

 

 「問答無用! そしてカモン! マイフレンド! ケイジ!!」

 

 

 「ヒヒィーイン!!」

 

 

 『ガッデェ~ム!!』

 

 

 「スペシャルゲスト! 続きましては日本競馬の傾奇者ケイジでございます! 今回は兆治さんの声に応えてスペシャルメンコを付けて来訪です!」

 

 

 いやっほーみんなお元気ぃ? 年末でも元気に登場でぇーす! 今回は真っ黒にお仕置の文字を付けたメンコでおめかし。というわけで。オラアお仕置きじゃあぁい!!

 

 

 「ちょちょちょ!! 馬に鞭打たせるんかい!」

 

 

 「ふつう逆でしょうに!」

 

 

 『知るか! そしてこれはハリセンだミッドナイトタウン! さあ、顕彰馬のハリセンをくらぇい!』

 

 

 そぉーらハリセンだー!

 

 

 「あひっ!」

 

 

 「おぉう!!」

 

 

 「ユウセイ・・・ふん!」

 

 

 「あばふっ!」

 

 

 兆治さんも見事にビンタを決めたところで一緒に首と手を合わせてガッツポーズ。そんで、あ、兆治さんの持ってくれた巻物を俺が咥えてするする―

 

 

 「ウマ娘プリティーダービープロジェクト始動! みんな応援よろしく! そして、キタサンブラック凱旋門賞優勝おめでとう! サトノダイヤモンド有馬記念優勝おめでとう!」

 

 

 『皆、アニメとか後でやるかもだから見てね! あ、それと兆治さん、あれもってきてあれ』

 

 

 宣伝も終わり、そのまま兆治さんになでなでされていたけど、帰る前にもう一つプレゼントということで。

 

 

 トモゾウに持ってきてもらった色紙とサインペン、絵画用の三脚を立ててもらって。

 

 

 傾奇者ケイジ。レスラー兆治さんに・・・と。全部ひらがなでごめんね? 代わりに筆ペンで水彩画風の俺を書いて・・・ 朱肉で俺の蹄を濡らして、色紙の角にポン。

 

 

 はい。兆治さん。俺のサイン第一号ね。マイフレンドに俺からのサービスだ!

 

 

 ハグをして。バッハハーイ。まったねー




 ケイジ。真面目に種牡馬の人気ないのかと掲示板に心配されたりしております。あまりにテレビ関連への顔だしやレースで誘導馬しているので。


 後こいつ2011年から2016年までの時点でもバカ騒ぎのネタを投下しているなあ。


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ウマ娘エピソード 20 愉快な時間を

 ケイジの持ち歌の一つは「Uptown Funk」これを山ちゃんボイスでカバーした感じでしょうか。後は「Change」です。アメリカでオベイユアマスター、ミシェルマイベイビー、ナギコ、ドリームシアターと一緒にライブしちゃったり。


 ケイジなら歌うというか、まあ本人のイメージならやりそうだよねと。ついでにアメリカウマ娘たちを魅了して帰ってはナギコにやきもち焼かれる。オベイは甘える相手を見つけた目になりそう。


 あ、ドリームシアターの外見のイメージは対魔忍の井河さくらをイメージしています。快活なスポーツ少女という感じで。上下関係はしっかりしている。ケイジ、ナギコの弟子であることを誇りに思っている。


 「ふぅ・・・・」

 

 

 快適な空調に優しい木の香り。寝具も全てが心地よく、食事も文句なし。練習もよかったのだけど、どうにも眠れなかった。

 

 

 シリウスの練習は刺激を受けるし、色々と学べる。でも、何かが足りないと思う。

 

 

 「少し風に当たりましょう」

 

 

 それがわからずにコテージに出るとケイジさんが燻製のチーズと肉をかじりつつ星を眺めていた。

 

 

 「どうしたキングちゃん。夜這いだとしたらあいにくだが気分じゃないぜ」

 

 

 「違いますわ! ケイジさんはどうしたので?」

 

 

 「少し走ってきたのよ。全く。いつもの半分も動けてやしないから不完全燃焼で眠れなかったんでな。そしたら小腹が空いたから夜食食べてんの。松ちゃんには伝えているから気にしねえでくれ。食うか?」

 

 

 席を勧め、冷えた水と燻製を分けてくれたので席に腰かけ、燻製をつまむ。既に沢山食べた後だというのに胃袋にするりと入る味。相変わらずだがいい料理の腕をしている。料理人としても大成する腕だ。

 

 

 「美味しい・・・そして・・・綺麗な星空ですこと」

 

 

 「だろ? いい景色だし、都会じゃあ見えねえ。見落としちまうぜ。あたりも星が多いせいかねえ。なんてな。で・・・どうしたよ? 愚痴くらいなら聞いてやるぜ?」

 

 

 「・・・問題ないです。といいたいのですがね。いえ。この合宿は身になりますが、今一つ何か足りないと思いまして」

 

 

 水で口の中に残るうま味とチーズと肉の味、煙の美味さを流しつつ、思わず口に出してしまう。ケイジさんの場合は何でかわからないが、いやに口が軽くなる。話しやすいというか、普段ふざけまくっているのに相談すると言われると素直に言えるのだ。

 

 

 「なるほどねえー・・・そりゃあ、あれじゃねえの? キングちゃん色々考えすぎているんじゃないの? もしくは目標を分不相応に多く持ちすぎているかよ。だから軽く流したこの練習じゃ足りないと焦るとかな」

 

 

 「・・・そうかも、しれないですわね」

 

 

 「あんたのお母さんはあれだもんな。アタシも欧州で戦うたびにどちらの末脚が強いかと話題にされたぜ。目標にしているんだろ? なら言っておくぜ。追いすぎるのはやめろ。どっかで壊れるぜ」

 

 

 ケイジさんの思わぬ一言にコップを落としそうになる。同時に怒りが出てきそうになる。何がわかるのだ。あの完璧すぎる母親を見返そうとしてうまくいかず、一流の証明が出来ない歯がゆさと悔しさがわかるのか! 

 

 

 無敗の四冠というディープ家でもただ一人。歴史でも数人しかない無敗の三冠すらも越えた功績を持つ怪物がわかるのか!

 

 

 そう言おうとしたが、その瞳に、強く、深いその目に言葉が詰まり、代りに肉をかじってかみちぎることでむしゃくしゃごと呑み込もうとしていく。

 

 

 「目標がでかいことはいいことだ。その先を見据えているのはいいこった。だけどよ。あんまりにでかすぎるのを見過ぎていたら足元掬われるか、目の前のレース、今走っているレースですらもそのプレッシャーで焦って無駄に疲れて負けちまうよ。

 

 

 もっと気楽に目の前のレースを楽しめ。キングちゃんは今の目標はでかすぎるからよ。誰かに支えてもらいな。そうすりゃあ、勝てるもんが増えていくし、気が付けば母ちゃん越えているだろうぜ?」

 

 

 「もっと周りを・・・」

 

 

 「そうそう! アタシなんて頼りまくりだぜ? レースもいつも油断もできねえ。心底楽しいからなんも余計なもん考えないで戦い、遊び倒しさ。でも気が付けばここまで来て、愉快に過ごしているんだ。

 

 

 その細い体で重すぎる荷物を背負いなさんな。誰かと歩け。今の日本の中でのレースは間違いなく世界最高峰のメンバーがそろってのものだ。一勝でもそれは母親を超える、近づけた一戦になるはずだからよ。気ままにだ。わはは!」

 

 

 よく言うものだ。あれだけのものを自らしょい込んだというのにやり切って暴れている怪物が。

 

 

 周りを見ろとは何度も言われたが、ケイジさんの言葉で楽になる。これがGⅠを16勝以上している怪物。日本のウマ娘以外には一切負けず勝ちを許さない怪物の言葉と言われるとお母さま以上にすとんと胸に落ちる。

 

 

 「では、そうですね。まずは私の同期。スペさんやスカイさん、グラスさん、エルさんへしっかりと借りを返すことを第一にしましょう」

 

 

 「いいじゃん! 黄金の五人目だって見せつけてきな!」

 

 

 本当に背中を押してくれる子の声が優しい。だからこそ。

 

 

 「ふふ。その切り替えのために今夜はもう少し私の愚痴に付き合う権利をあげるわ」

 

 

 「おおっと。あいあい。そいつは光栄だしご一緒するぜ」

 

 

 ちょっとたまっていたものを吐き出すのに付き合ってもらうわ。それと、ついでに色々海外の事も引き出していくとしましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふっ・・・! ぐっ・・・きつ・・・!」

 

 

 「頑張れ。水流の中でもしっかりと踏ん張って早く体を起こす! 脚を鍛えつつも負担を殺せるいい運動だよ!」

 

 

 「プールの中よりきつい・・・ぐぅうう・・・まだまだ!」

 

 

 「キング先輩、なんか火がついているっすね」

 

 

 「いいことですよ。変に煮え切らずに距離を置くよりもらしいです」

 

 

 ケイジが何かしたんだろうなーとは思いつつ、川の中でスクワットをするキングさんとライトニングの様子を眺めつつオルフェさんと一緒にストレッチをしてフォーム確認。

 

 

 「ヴィルシーナ先輩。ところで私がダートも狙えるって本当っすか?」

 

 

 「実際その才能はあるとナギコとホッコーが言っていましたしね。多分ケイジよりも才能の伸びはありますよ」

 

 

 「実感わかないっすねえー・・・あ、キング先輩。休まないとっすよ」

 

 

 「わ、わかっています・・・は、はぁー・・・はぁあ・・・・い、意外と木々がないと日差しの暑さは変わらないんですね・・・」

 

 

 横で座り込むキングさんに水を渡しつつ自分たちも水を飲む。

 

 

 真面目に北海道が試される大地と言われるのも納得だ。夏は30度以上。冬にはマイナス40度になるときもあるというこの極端な温度差なのだからすさまじい。

 

 

 「ヴぃ・・・ヴィルシーナさん・・・ウララさんやケイジさんは何方に・・・ぜは・・・」

 

 

 「二人は幸子さんと一緒に山道でジョギングです。気分転換ついでに芝も狙うのならということでアップダウンの激しいコースでペースの切り替えを意識させるそうですよ」

 

 

 「なるほど・・・はぁー・・・はふ・・・それにしても、シリウスは重バ場を良く練習しているんですか?」

 

 

 「ええ。欧州は基本芝が重いですし、何でしたらここの獣道くらいはイメージしていいくらいです。ドバイや香港はまだいい方ですが、それでも日本は世界でも見ても芝が固いですし、パワーを鍛えるためにもいつも芝は深い場所で練習です」

 

 

 基本高速レースを支えるのはコーナーを走る際に発生する遠心力によるふくらみやそれを抑えるための減速のロスを抑える技術が大きくかかわると言ってもいい。

 

 

 シリウスの場合はケイジやオルフェが筆頭にそれが抜群にうまい。その中にはパワーの反動、衝撃を抑えつつ、速度を殺さないパワーにある。ケイジのふざけたパワーもそれがあるからこそ場所を選べずに戦える。高速レースだからこそ加速を鈍らせないパワーを。マックスのスピードは負けようが最高速度の維持時間と技術が勝れば勝てる。

 

 

 ・・・・・・ビリーさんがアメリカの方がこのチームはやばいと言っていた理由がわかる気がします。何せアメリカのレース場の場合は距離が長いのならその分回ればいい。その分コーナリング技術で差を開かせていける。

 

 

 ・・・ウララちゃんとキングさん。お二人ともアメリカでレースの機会を増やしたほうが大成する?

 

 

 「なら、是非ともその練習を! もっと覚えていかないといけません。私もリベンジをするために」

 

 

 「それは駄目です。それに休んでいたほうがいいですよ? 後でナギコ、ヒメ、ジェンティルさん、私と併走するので。もちろん全力で♪」

 

 

 「ジェンティル先輩容赦ないですからね。真面目に相手してあのパワーをあしらえるのケイジ先輩くらいっす」

 

 

 プレッシャーに慣らせるための練習もあるし。多分下手するとオルフェとナギコだけでも大変になるのよねえ・・・何でうちのチームは二刀流できる人が多いのか。私の異名が形無しですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ウッララー♪ 下り坂らくちーん♪」

 

 

 「下り坂は勢い落としてウララちゃん。膝に負担来ちゃうよー」

 

 

 「いやー森林浴しながらの運動は最高だな。はっはは」

 

 

 今日は今日とてのんびりウララちゃんと練習。何でも一応休みを取りつつ最低限の運動に済ませてくれということでアタシにお鉢が回ってきた。

 

 

 ついでに教育にも。はは。アタシがねえ。

 

 

 「よしよし。いい感じだぞウララ。集中力を養って、無理なく、足の動きを意識してな?」

 

 

 「うん。思いきり頑張って。その分思い切り休んで元気に遊ぶ! メリハリ。だよね?」

 

 

 「おう。有マを狙うってんなら。それくらいはやってのけろよ? それと、えーと? また高知でレースだっけ?」

 

 

 「そうそう! 高知一発逆転なんちゃら? に出るみたいよ?」

 

 

 おお、あの面白レースか。いいよなあ。ああいうイベントで地方の方が愉快なイベント用意したり。

 

 

 そういえば・・・・・・いつぞやにアタシが王侯貴族やら各国の要人を出迎えた際に、地方の協賛レースでみんな大暴走して自分の名前を冠したレースや推しのウマ娘のレースを用意しようとして、賞金まで上乗せしようとしたりで騒ぎになった時あったなあ・・・

 

 

 「なら、なおさらがんばれよ? あのレース地方からも中央からも選りすぐりが出る。ある意味レースの読めなさ加減とレベルは中央の重賞に負けないまさしくGⅠレベルだ」

 

 

 「うん! そこで優勝したらね。来年以降のケイジさんのレース、ケイジ記念も優勝するの! ケイジさんから優勝のトロフィーを貰うんだからね?」

 

 

 「ははは!! いいねいいね! 暑い夏を吹き飛ばすくらいの素敵な桜吹雪を吹かせてくれ!」

 

 

 楽しみだねえ。史実じゃあありえなかった。というかできなかったウララちゃんがアタシのレースを勝利するか。海外から毎年やばいメンバーが集うレースでねえ。燃える燃える。

 

 

 「ケイジ―速い速い。少し落として。ウララちゃーん? ここから長い上り坂になるから・・・・・・ウララちゃん?」

 

 

 「あれ? いつの間に? あ、もしかしてあっちの分かれ道で間違えたか?」

 

 

 あらら。なんやかんや30キロくらいで走っていたし、あっという間にはぐれた・・・あ?

 

 

 「なあ。ウララちゃんにクマよけの鈴は?」

 

 

 「邪魔になるって外していた・・・」

 

 

 「熊ってさー・・・」

 

 

 「うん。追い払ったはずだけど、いや。追いかけようか。これやばいわよ!」

 

 

 やべえやべえ。クマよけの鈴と道具はアタシと幸子が持っているけどウララちゃんなんもないぞ!?

 

 

 急いで追いかけねえといけねえ。アタシと幸太郎はクマはどうにかできるが、ウララちゃんらウマ娘でもクマに追いかけられたらやばい。

 

 

 急いで分かれ道から鼻と耳で追いかけてみれば。あちゃー・・・マジでいたよクマ。

 

 

 ウララちゃんの後ろから襲おうとしているし、どっせい!

 

 

 「あれ? ケイジさん? 幸子さん・・・・熊ぁ!?」

 

 

 「全く、迷子になった直後にクマに会うとか童謡かっての。幸子。預かってろ」

 

 

 「ケイジは?」

 

 

 「いらねえ。で・・・どうする?」

 

 

 吹き飛ばしたクマも臨戦態勢で立ち上がるけど・・・・まじかーアタシよりでかい。うーん。ちょうどどこに逃げても上り坂だからクマの方が早いし、撃退スプレーしてもなあ。このサイズはやばい。

 

 

 何よりウララちゃん抱えてというのが無理あるし。このクマの感じ、スプレーでも逃げてくれなさそうだな。

 

 

 「はぁー・・・ケイジ。ウララちゃんは私が守るから、そのまま仕留めちゃって。必要ならサポートするから」

 

 

 「あいあい。本気出すから。ちょっと暴れるぞ」

 

 

 幸子もウララちゃんを木を背中にして背後から襲われにくいようにしつつコンバットナイフとスプレーを構えて問題ないのでアタシもジャージを脱いで久しぶりの本気で暴れることに。

 

 

 結果から言うと、クマさんのパワーもいい練習になったぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぐはぁあ・・・・まだ耳と頭が痛いぃぃい・・・・」

 

 

 「当然です。鮫に続いてクマを仕留めて帰ってくるアスリートなんて前代未聞ですよケイジさん」

 

 

 「でもケイジさんかっこよかったー! クマを放り投げたり、とびかかってのビンタを拳で押し返したりとか!!」

 

 

 あの後超特大の雷と説教が雨あられと降り注いでアタシは頭が今も重い状態だ。くっそう・・・しょうがないじゃないか逃げる方が危険だったんだし。

 

 

 熊も無事に飛び蹴りで仕留めて、シリウスの皆にクマ鍋にして振る舞ったりと、肝と右手はまたホテルにただで譲ったりしたのに・・・うぅ・・・何で功労者で美少女のケイジちゃんがこうなるのだ。

 

 

 「まあ、そいつは良かったぜ。とりあえず、ウララもキングもいい顔しているし、最後に模擬レースをしまくって鍛えていこうか。その後は花火大会もするし、派手にやるぞー?」

 

 

 「ふふ。学園主催の合同合宿から離れてきたけど、満足させられるものを用意してくださるのかしら?」

 

 

 「花火? ウララあのシュバーッて大きく火を吹くやつとねずみ花火で遊びたーい!」

 

 

 そこは問題ない。知り合いの花火師にも用意してもらったり卸業から用意してもらったもの。かなりいいものを用意してビーチでやるから必ずいいものになる。

 

 

 「問題ないさ。それよりも、ふふ。頑張って来いよ二人とも。結果を出したらアタシやナギコからの推薦状を書いてレースにも都合していけるよう頼むし、ライバルが増えるのは大歓迎だ」

 

 

 「そういうことでしたら、私たちはすでに目標がありますの」

 

 

 「うん! ウララとキングでね。二人でケイジ記念に出て、勝負するの。ライバルで同じチームで親友だよぉー!」

 

 

 おおう。まさかの発言にアタシもびっくりだわ。ははは。しかし、夏のレースな分秋の大レースの前にやれるのがあってみんな目標にするねえ。

 

 

 「そいつはいい。なら、二人で掛かって来いよ。アタシの記念レースには推薦枠開けておく。そこに優勝すれば年始のレースへの参加も道が開ける。アタシらシリウスとリギルで揉んでやる」

 

 

 強敵が生まれたかねえ。いい目をしているし、ふふふ。友情も見える。これは来年のケイジ記念も楽しみだねえ。




 クラシック期にケイジがやらかした熊退治エピソードもここに追加。この後勿論ニュースになりましたとさ。


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引退後よん 4

 シン・ウルトラマンを見てきました。一言で言えば最高でした。色々な原作へのリスペクトをしつつうまく落とし込んだり設定を持ち込んだりでウルトラシリーズへの愛と理解を持ったうえで現代風に持ち込むのかと興奮です。


 とりあえずメフィラス星人いいキャラすぎた。


 そして感想で素晴らしい話を教えてくれたのでケイジの引退後の行動が一つ増えました(歓喜)とりあえずケイジはあっちの世界ではネットでもリアルでもウマ娘の広告塔やりそうっすね。


 ウルトラマンたちに元気をもらえたので気合の連続投稿です。


 「え・・・? 私に絵のお仕事です?」

 

 

 「これまた・・・ケイジのウマ娘のデザイン原案の依頼ですか」

 

 

 ケイジがいなくなってからその馬房にはハルフカシが入り、我が葛城厩舎は大人気厩舎となると同時に気性難が多く入厩する気性難厩舎になった。

 

 

 あんな癖馬をああも強くしたのだから大丈夫だろうということで前よりも色んな馬が来て絶賛大賑わいだ。ただ、気性難ばかりだが幸いというか一つは大竹騎手がハルフカシに会いに来て調教の際に他の馬と合わせをするとき、ハルフカシもいつの間にやらここのボスになっていてその間は調教は順調に進むので成果が出ていること。

 

 

 もう一つはハルフカシはディープに似て優しい気質なので調教が楽であり、ウララの頑丈さを受け継いでいるので休みを与えつつ安定して鍛えられる。ダート重賞も近いうちに狙えるだろう。

 

 

 そして、松風君も完全に覚醒していると言っていいのか、この場合は本格化というべきか。気性難ともすぐに気持ちを通わせてあっという間に呼吸を合わせて仲良くなるのでそこもまた負担の軽減になっている。レースでも鞭を使わず首をポンと叩くだけで加速させて重賞を取っていく様は見事しか言えない。

 

 

 厩舎ではハルフカシが、レースでは大竹騎手と松風君の二人がこの厩舎の気性難を矯正、抑え込んでくれているので比較的楽な時間を過ごしていた。もしくはケイジの脱走まみれの日々とあの癖馬っぷりと周りに集まる人たちのせいで麻痺したというべきか。

 

 

 まあ、そんなこんなで色々と過ごしている中、急にゲーム会社がやってきて何事かと思えばケイジが擬人化して美少女・・・いやエルフのような亜人の美少女? なのか? のゲームに登場が決定。そのゲームのデザインを真由美ちゃんと久保君に頼みたいという話が来た。

 

 

 「はい。前田利褌さんや赤城さん、スーザンさんからケイジをウマ娘にするにあたって是非お二人のデザインを使いたいとのお達しでして。それさえしてくれれば許可は出すということでして。お受けしていただけるでしょうか」

 

 

 「も、もちろんです。むしろさせてください。こんな光栄なことないです。ぜひケイジ君のウマ娘のデザイン。やらせてください!」

 

 

 「私からもお願いします。ケイジは私にとっても第二の愛息子のような存在ですし、またこういう形で知ってもらって、走る姿を見れるのなら感無量です」

 

 

 「ヒヒーン?」

 

 

 『ケイジお兄ちゃん?』

 

 

 おっと。ケイジの名前にハルが顔を出してきた。ケイジの事気に入っていたようだしなあ。

 

 

 「ケイジがね。擬人化するんだって」

 

 

 「??」

 

 

 『ぎじんか・・?』

 

 

 「テキ―ケイジの事でなんかすごい所から話が・・・あ、すいません。来客でしたか。失礼しました」

 

 

 ハルには大丈夫だよと頭を撫でつつ話を聞いていると久保君からケイジの事で連絡が。なんだろうか。

 

 

 「いやいや、むしろ僕より君たちへの来客かな。僕は久保君の言う話に対応するから、ぜひ真由美ちゃんと一緒に聞いてくれ」

 

 

 「? 了解っす。あ、外の休憩室の方に待ってもらっているんで、そこに行けばいいです」

 

 

 この後聞かされたニュースにまたもやたまげることになり、同時にホースマンとして複雑になりつつも喜ぶことに。蓮のライバルはどこまでもやりたい放題だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さて、殿。次のお客様です」

 

 

 「あん? 今日誰が来るんだっけ? ま、よいよい。通せ」

 

 

 「かしこまりました。それでは松風守騎手様です。どうぞお入りくださいませ」

 

 

 「失礼します。殿」

 

 

 今日はまさかのバラエティー番組に参加。いや、志村ヘンさんのこの番組にゲストで来られるとは。スポーツ番組の際に呼ばれることはあれどもまさか小さいころから笑ってみていたあの番組の世界に来るとは思わないよ。

 

 

 「おお! よく来た。苦しゅうないぞ。まま、楽にせい」

 

 

 「ははっ!」

 

 

 「いやーにしても、菊花賞に有馬記念と優勝でケイジ記念も2着。大躍進じゃないか。ええ?」

 

 

 「殿たちの活躍と栄光には及びません。それに、私たちに応えてくれる愛馬たちあってこそです」

 

 

 「流石次世代の担い手。そんな君たちを見てね。俺も馬主の権利を得たの」

 

 

 「ええっ!?」

 

 

 「ほんとですか殿!」

 

 

 「ほんとよほんと。いや俺も将軍だしね、殿だし? しっかり愛馬の1頭や2頭は持つべきだよなあと」

 

 

 おお、ニュースの通りだ。いやあ、ほんとしっかり調べて、ヘンさんのマネージャーにも確認してきたがよかった。

 

 

 「流石殿! では、そんな殿の愛馬もいずれ出会いたいものですな」

 

 

 「そうじゃろそうじゃろ? その際はぜひ松風君にもレースに出てもらうよ」

 

 

 「実は、そんな愛馬を持とうとしている殿に私の親友が会いたいと申しておりまして。もうそろそろ来るのですがここに呼んで宜しいでしょうか」

 

 

 「君の親友? いいぞいいぞ。苦しゅうない。おい、来ていいよと言ってきて」

 

 

 そういって周りの侍に扮した芸人さんに声をかけてその芸人さんも呼びに行く。その後すぐに

 

 

 

 <ガシャーン!!

 

 

                            お待ちをお客人! うわーっ!>

 

 

 <アッー♂!!

 

 

                            ドカーン!! バリバリィ!!>

 

 

 「お、おい何が来るんだ!?」

 

 

 ああ、うん。何割かはこっちも知らない音が聞こえるし間違いなくアイツ、アドリブで暴れたりからかっているな?

 

 

 騒ぎの直後にピタリと止まり、スパァーン!! とふすまが勢いよく開かれて出てくるのは。

 

 

 「ビヒィイン!!」

 

 

 『オッハー! ヘンさん元気ぃ!? ケイジだぜ!』

 

 

 頭にちょんまげのかつらをかぶって、着物風の馬の服を付けたケイジと、そのそばについてくる尾花栗毛のきれいな流星を持つ幼駒だった。

 

 

 器用に身体を入れて、ふすまを自分で閉めてから腰を下ろす。

 

 

 「おおお! ケイジ! 久しぶりだのぉ! 相変わらずの傾きっぷりだの。まま、楽に楽に」

 

 

 「というわけで、松風守騎手と共に戦い抜きGⅠ16勝。日本初の凱旋門賞連覇を果たしたターフの傾奇者。ケイジ君と・・・あ、あの。ケイジ君。その子は?」

 

 

 『お久ー志村さーん。あ、松ちゃん。これこれ』

 

 

 「あ、ありがとうケイジ。殿。この子は名をミコトと申します。そして、馬主を始めたという殿へ前田牧場が祝いとしてこの女の子を譲ると申しています!」

 

 

 おおーと周りが驚くみんな。そりゃあそうだ。ケイジの初年度産駒の1頭。そしてここにいても気にしないあたり相当大人しいというか頭もいい。

 

 

 肉体もいいし、ケイジのやつしっかり鍛えているな。これは・・・GⅠもいける器・・・いや、かなりやばいぞ。

 

 

 「ええ? そんなのいいの?」

 

 

 「はい。しかも管理費用や厩舎へ払うお金も全部前田牧場で負担すると申しております。その誓約書に加えてミコトの権利書がこちらでごさいます」

 

 

 「ちなみにこれはしっかり既に競馬の運営にも通達しており、殿がサインをすればすぐに承認されます」

 

 

 「おおぉ・・・いやー最高のプレゼントありがとうね。ささ、ミコトちゃんもケイジもちこうよれちこうよれ」

 

 

 『よっしゃー甘えに行こうぜーミコト』

 

 

 『はーいお父さん』

 

 

 2頭で仲良くすりすりしたり持ってきていたリンゴを美味しそうに食べるケイジとミコトちゃん。うん。真面目に人慣れしすぎているなあ・・・ケイジのやつに幼駒を頼めばいい感じになりそうだ。

 

 

 関連書類はケイジが持ってきている袋に入っているのでそれを志村ヘンさんに渡しつつその光景に思わず笑顔がこぼれる。

 

 

 「あ。そうだそうだ。この子のお父さんはケイジだろうけど、お母さんは誰なの?」

 

 

 「ナギコと申します」

 

 

 「ほーん。ナギコちゃんね・・・・・・ぇえ!!? あの17戦17勝無敗。アメリカダート三冠のナギコ!?」

 

 

 「左様でございます。ドリフターズ仲間としてケイジを応援してくださった殿へ牧場からの気持ちだということで是非是非。前田牧場長も才能はあるので応援してあげてくださいとのことです」

 

 

 まさかの日本の無敗の4冠の牡馬とアメリカのダート三冠&無敗の牝馬のベスト×ベストの組み合わせ。しかもケイジの馬鹿気たスタミナとパワー、ナギコの追い込みの瞬発力と2頭のコーナリング技術を狙える配合でもあるし、引退しても受けの広すぎる血統。

 

 

 「ちなみにこの子の評価額なんですが、3億円は下らないとのことです」

 

 

 そして血統を無視しても欲しいであろう実績持ちの夫婦の子ども。繁殖にも期待が持てるのでまさしく誰もが欲しがるのをポンと渡すあたりほんとあの牧場はケイジも含めて懐が広い。

 

 

 「え? 本当にいいの? もうこんなかわいい子なのに」

 

 

 『いいのいいの。松ちゃんを乗せてくれや』

 

 

 『そうだよ―一緒に遊ぼ―?』

 

 

 「前田牧場に問い合わせても問題ないとのことですし、厩舎の方も葛城厩舎で預かる算段もつけているようです。殿が競馬の世界を触れる際に助けられるのならファンとしても最高と申しておりますし、殿。受け取ってくだされ」

 

 

 「はっははは! 流石じゃのぉー流石傾奇者の一家よ。苦しゅうない! 余は満足じゃ! 祝えぃ! 余の新しい娘の祝いじゃあ!」

 

 

 この後はケイジがミコトと一緒に庭に出てケイジダンスを披露したり、ハリセンで殿をしばいたり、くいっと綱を引っ張って金ダライを落としたりして愉快に過ごして時間が過ぎた。いやあ、志村さん凄くいい笑顔していたなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ケイジについて語るスレ 4545~

 

 

 564:名無しの競馬おじさん

 

 ケイジとか言う引退して一年ちょい立つのにネタが増えていく癖馬

 

 

 565:名無しの競馬おじさん

 

 そしてこの前はバ〇殿で戦国コンビ再度一緒に登場していたのが涙出たわ。相変わらず仲良しみたいだし。そしてケイジとナギコの子どもがタダで渡されるというね。

 

 

 566:名無しの競馬おじさん

 

 しかも厩舎のお値段とか牧場で預かる費用は全部ケイジが稼いだお金から出すから気にしないでこの一頭と一緒に競馬界を知ってくれという超太っ腹の対応ぶり。

 

 

 567:名無しの競馬おじさん

 

 志村さんあれ以降ことあるごとにミコトやケイジ達をほめちぎるし。心底嬉しいんだろうなあ。

 

 

 568:名無しの競馬おじさん

 

 そりゃあ、3億以上する。世界で暴れまわった怪物夫婦の子どもをタダで渡す。その後の負担もこの子だけならただで工面しますと言えばなあ。しかもこれ前田牧場みんなで決めたことなんでしょ? めっちゃくちゃすぎるでしょあの牧場。

 

 

 569:名無しの競馬おじさん

 

 GⅠ勝利が合わせて23勝。獲得賞金50憶を超える夫婦の子どもとか文字にしたらやばすぎる。しかもあれだけ騒いでも驚かないあたり相当人慣れしているし。ケイジやナギコの娘なんだなあと分かるわ。

 

 

 570:名無しの競馬おじさん

 

 動画見てきたんだが超身体能力も高いみたいね。自分より高い柵を飛び越えてケイジやディープに遊んでとねだってきていたし。尚、ケイジとディープ、オルフェは一緒にレースしていたりラジカセからヴィレッジ・ピー〇ルの音楽に合わせてヘドバンしていたりと愉快に過ごしていた様子。

 

 

 571:名無しの競馬おじさん

 

 しれっと言っているけど三冠馬二頭と四冠馬がレースをしていたりラジカセ流して遊ぶとか真面目に夢のレースと芸人じみたことしていて芝が生い茂るんだが。

 

 

 572:名無しの競馬おじさん

 

 夢の第11レースかな? あとアフロのかつらをつけて遊んでいるときもあったぞ。

 

 

 573:名無しの競馬おじさん

 

 なおそこにナギコも入る可能性あり。

 

 

 574:名無しの競馬おじさん

 

 ナギコってダートだけど走れるの?

 

 

 575:名無しの競馬おじさん

 

 ナギコは平野調教師曰く『芝も普通に走れるけどダートの方が得意という感じ。血統がごく少ない子じゃなかったらもう一年延ばして芝GⅠも狙えたかなあ。オ~ホッホッホ』と言っていたからまず芝でもやばい強さになると思う。ケイジと併走をしていた動画もあるし

 

 

 576:名無しの競馬おじさん

 

 後アメリカのダートは日本の芝に近いというし、ナギコの頭の良さなら対応できるだろうなあ。現在はその頭の良さ活かして脱走したりマンガを読んだりケイジと音楽聞いているけど。

 

 

 577:名無しの競馬おじさん

 

 ディープにオルフェ、ケイジにナギコのクラシック13冠メンバーで仲良く洋楽を聞いてウキウキに楽しんでいる動画もあってもう最高や。

 

 

 578:名無しの競馬おじさん

 

 夢のレースをしたり愉快な絵面を見せたり癒されたり。前田牧場の動画バラエティーに富みすぎでしょ。最近は猫も増えたし。

 

 

 579:名無しの競馬おじさん

 

 黒猫のはケイジ達牡馬ととくに仲良しで、白猫の方は牝馬たちとかなり仲良しみたいね

 

 

 580:名無しの競馬おじさん

 

 急報ーーーーー!!!!!!

 

 

 581:名無しの競馬おじさん

 

 どうした急に

 

 

 582:名無しの競馬おじさん

 

 あわてるな。ケイジたちに振り回されまくった俺たちなら驚くのはないはずだ

 

 

 583:名無しの競馬おじさん

 

 ケイジが東京オリンピックに出るんだってよぉおお!!! 公式からも発表された! また傾奇者が世界に戦いに行くぞぉおおおおお!!

 

 

 584:名無しの競馬おじさん

 

 は・・・・・・・?

 

 

 585:名無しの競馬おじさん

 

 何だってぇええー!!!?




 はい。というわけでケイジとナギコの初子。ミコトでございます。


 ミコト ベロちゃん二世というくらいに人懐っこいし穏やか。レースも好きなので基本調教師にも騎手にも厩務員にも甘えるし離れる時はいなくならないでと袖を噛む癖がある。煙草の匂いは苦手。これのおかげで志村さんたばこの量を抑えたりで健康になって長生き。ヘンさん曰く「娘に怒られちゃったおかげで元気だねえ」とのこと。


 とりあえず未来にはアメリカトリプルティアラを持って帰ってくる。


 ちなみに志村ヘンさんへのこの厚遇ぶりはみんなで決めているので冴子さんにお説教をもらう牧場長はいません。


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ウマ娘エピソード 21 アイドル一族

 ケイジ記念の実装でようやくロック解除でこのエピソードをやれます。


 シン・メフィラスとケイジとゴルシが出会ったら多分仲良くなる。一緒にグルメ巡りをしたりケイジが鍋を振るっては愉快にもてなすでしょう。


 見てみたいという気持ちは、ありますかねえ?


 ~葛飾区亀有公園前派出所~

 

 

 「馬鹿もぉーん!! 両津! 有休がないのに休みをこれ以上寄越せ、しかもウマ娘のライブのためとは何事だ!! しかも私にも無理やり来いとは何事だ!」

 

 

 昼前、ある意味風物詩となっている交番から響き渡る大音量での声。それに派出所の扉が吹き飛びそうになりつつもこらえ、そして怒られている本人もその声に思わず耳を抑えている始末だ。

 

 

 「お、落ち付いてください部長」

 

 

 「あつつ。わかっていますよ部長。でも今回のレースに関しては行きたいんですよ」

 

 

 「私も個人としてある程度の都合は用意してやりたい。だが、アイドルのライブのために休みをするのは町の平和を守る警察官として何事だ! 中川君もなぜかばうのだ? どうせこれを理由にどこかでうまく逃げてパチンコを打つのが関の山だぞ」

 

 

 「ケイジちゃんのレースが行われるのよ。しかも、GⅠの一大レースで。ほら」

 

 

 大原部長。超も付く問題児だが有能な警察官として動き、刑事課でも地域課でも検挙率トップを誇る両津勘吉を怒っていたのだが部下の麗子に見せられる新聞に目を通す。

 

 

 「ふむ・・・ケイジ記念。GⅠ2600メートル芝のレース・・・おお! あのケイジ君の名前を冠したレースとは!」

 

 

 「しかも日本に名を刻んだウマ娘、ディープインパクトなどもGⅡのレースまでなのに新設でおまけにGⅠ、海外のウマ娘たちも多くが参加して行われる第一回目なのでケイジから来てほしいと言われていたんですよ」

 

 

 「部長もケイジの事を気に入っていたじゃないですか。ケイジの方も部長たちを気に入っていて、今回のレースに出走はしないけど第一回目だしどうだと。ほら。学園ブログにも」

 

 

 そういって両津の見せるトレセン学園のブログ。ケイジの記事には『亀有公園前の派出所の皆は大好きだぜ。大原部長には世話焼いてもらって第三の爺さんだねえ』と書かれた記事を見て思わず頬が緩む。

 

 

 ちょび髭にややいかつい顔、両津のせいでよく怒るので怖い印象を持つ人も多いのだがなんやかんや孫もいるおじいちゃん。アスリートとして今のウマ娘のアイドル事情を知らずとも耳に入るほどの活躍をして、犯人逮捕にも協力するケイジの事を大原部長も目に入れていたくないほどの孫娘のように気に入っており、そしてこの部長。かなり孫に甘いのでこれを見れば心にクリティカルヒットだ。

 

 

 「う、うーん・・・しかしなあ・・・夏の季節で花火などでのボヤも怖い。人はいるべきだし・・・でもケイジ君の名前を冠した新GⅠレースか・・・」

 

 

 「あの前田家きって最強のケイジのレースですし、キタサンブラックも出るんですし生でみなかったら後悔しますよ部長。あの北島サンちゃんの孫娘でケイジの弟子であり後継者も来るんですよ」

 

 

 「なに!! あのサンちゃんの孫娘がウマ娘なのか!? ぉおお・・・しかもそれが前田家のケイジの弟子で後継者・・・昔を思い出すなあ・・・」

 

 

 思わず新聞を見直しつつ昔に思いを募らせる部長。それをしり目に中川、麗子、両津で会話を始める。

 

 

 「サンちゃんの孫娘っていえばクリーンヒットね」

 

 

 「そりゃあ、中川や麗子には分かりづらいだろうがわしらの時代の大スターだからな。映画に色々関りもあるし、あそこら辺の時代でも前田家とメジロ家のライブ内容も相まって演歌とアイドルの二つにドはまりしていた人も多いんだ」

 

 

 「メジロティターンさんにミホシンザンさんあたりです?」

 

 

 「そうそう。そしてその前はメジロアサマとシンザン。真面目に日本のウマ娘と言えばこの二枚看板が常だったんだ。で、ライブも前田家は演歌も歌うし、メジロ家は欧州の歌劇を取り入れた演出。

 

 

 サンちゃんは演歌で男らしさを見せてとほんとわしらも子供のころに親父たちが鼻の下伸ばしていたり興奮していたアイドルはそんなんだった。その前田家と北島サンちゃんの孫娘、娘が関わるレースとなればまあ・・・」

 

 

 女性のあこがれと男性のあこがれを持ったアイドル一族に昔を思い返していた大原部長だが、ふと戻り。

 

 

 「おほん・・・ま、まあ確かに日本のレースにGⅠが増えていき、あのケイジ君の名を冠したいいレースではある・・・しかし・・・前田家か。シンザン、ミホシンザンが私の青春だったなあ」

 

 

 「え? でも親子ですよね?」

 

 

 「ああ。学生のころに私たちのあこがれのお姉さんだったのがシンザンでね。あの強さと女傑然とした振る舞いに負けないようになろうと頑張り、社会に出てからは母親シンザンに負けないと頑張って可愛い顔で笑顔と覇気を見せていたミホシンザンに頑張れと応援していたものだよ。

 

 

 ケイジ君もその前田家の親族だっけ? いやあ、本当にあの一族はすごいと思うよ」

 

 

 大原部長の言葉に大原部長以外の全員が首をかしげる。同時に察するのはアイドル一族とはいえここまで疎いのかということへの半ば呆れも含んだものだった。

 

 

 「まさか部長。ケイジが分家筋だと思っています?」

 

 

 「違うのか? キジノヒメミコ君が本家筋だと思っていたが」

 

 

 「部長。ケイジが直系筋でヒメちゃんとナギコちゃんが分家筋です。ミホシンザンの一人娘ですよ」

 

 

 「何!? し、しかしあの体格でミホシンザンさんのとは・・・てっきりマイシンザンあたりの娘かと・・・」

 

 

 「確かにケイジちゃんは背丈が大きすぎますしね。でも、実際にそうなんですよ部長」

 

 

 「流石に親子四代日本のアイドルであり続けてクラシックを最低一冠以上手にして盛り上げ続けた一族の家族関係くらいは分かっておくべきですよ。しかもミホシンザンもシンザンもケイジの事ことあるごとに自慢しちゃうくらいでれでれなんですから」

 

 

 ケイジと公私ともに関わる両津と必然その上司故に良くかかわる大原部長の無知さに流石に両津もあきれ顔。孫娘のようなケイジの事をまさかこう捉えているとはと流石に驚かざるを得ない。

 

 

 「そ、そうだったのか・・・申し訳ないことをした」

 

 

 「まーともかく。お願いします部長。ケイジとキタサンブラック。そしてそのライバルで幼馴染のサトノダイヤモンドも来ますし、休みをもらえないですか?」

 

 

 「うむ。ではケイジ記念にはみんなで行こう。所長にも私から相談しておくのと、両津。お前に関してはどうしても欠勤になるのでその分の給料は私が払う」

 

 

 「え!? いいんですか部長」

 

 

 「ケイジ君のことを教えてくれた礼と思えばいい。で・・・チケットはどうすればいいのだろうか。久しぶりなもんでどこで買えばいいのか」

 

 

 その発言をよそに電話を何処かにかける両津と、少し申し訳なさそうな顔になる中川と麗子。

 

 

 「部長。実はすでにケイジ記念のチケットは既に完売で。転売も禁止なのです」

 

 

 「世界各国の要人も注目しているレースなので私達の方でどうこうすることも・・・」

 

 

 「お。つながった。もしもし? わしだ。そうそう。部長が無事いけそうでなあ。そうそう。お。いいのか!? ありがとうよ! そこまでするのか!? はははは。そうだな。わしとケイジの仲だ。今度美味い飯屋紹介するぜ」

 

 

 大原部長がライブに行けるかどうかと思った矢先。両津の電話での会話に混じるケイジという言葉を聞いて一同振り返る中両津がスマホの通話ボタンを切って微笑む。

 

 

 「問題ないっすよ部長。プラチナチケット、しかも関係者エリアにも入れる関係者関連のパスも用意。そして前田ホテルで休めるように宿泊券と飛行機チケットもタダでくれるそうです」

 

 

 「い、いいのかね!?」

 

 

 「爺さんと姉貴分兄貴分らがこうして頼んでくれるんなら応えなきゃウマ娘が廃ると言っていたんで甘えておきましょう。どうせケイジは引かないです。前もただでライスの菊花賞応援に来てくれと頼んだみんなから代金分のものを渡す渡さないで喧嘩していましたし。

 

 

 基本ケイジは筋を通す。あちらから来てほしいと言っていた分、変に遠慮したり金を返すと言えば間違いなく怒りますよ部長。孫の孝行と思って満喫しましょう」

 

 

 そういって数分後、黒塗りの高級車が目の前に止まり、人数分の航空チケット、ホテルの宿泊券。チケット。関係者立ち入り用のパスまで若い執事見習いが渡してきたところでいつもの業務のリズムに戻ったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おお。大賑わいだな・・・!」

 

 

 「そりゃ、あのシリウスのリーダーの一人でケイジの名を冠したレースですからね」

 

 

 あの後、レースの前日に前田家のホテルに泊まり、レース観戦に行くお客のためにこの日限定のシャトルバスに乗ってついた札幌レース場。そこは太陽の日差しに負けないほどの観客の熱狂と興奮のるつぼにあった。

 

 

 「テレビ局もそうだが・・・海外の人も多くないか?」

 

 

 「ケイジさんは海外ではジャスタウェイさん以外には一切負けていない。それどころか3、4バ身を平均で突き放して圧倒した上で欧州二冠を三連覇した怪物ですからね」

 

 

 「欧州どころか世界では倒すべき存在。欧州のウマ娘が出来なかった偉業を持つまさしく伝説として尊敬されています。ケイジちゃんの土俵で倒そうと以前あったジャパンカップがそうですね」

 

 

 「当時の国の最強、ダービーを手にした各国最強のウマ娘たちがそろっても全員ねじ伏せての勝利のまま勝ち逃げしたのがケイジ。そのケイジの名前を冠した国際GⅠレースにかかる名誉。しかもここのレースの芝は欧州のそれと同じなのも相まって海外組にも優勢。

 

 

 賞金も高いですし、ちょうど秋の大レースの前に行われるここで勝てれば凱旋門賞や天皇賞。BCシリーズなどそれらに自分の優先枠をもぎ取れたりもできると、うま味が大きすぎるんですよ」

 

 

 「つまりは各国の強豪たちがケイジの強さをあやかる意味と超える願いを持ち、そしてそのための今後を手にするためのレースという意味でもこのレースは注目も高いのだな」

 

 

 なるほどと納得する大原部長。なんやかんやある程度レースの格式は知っているのだが、ここのレースの場合はかつてのシンザンやセントライト、クリフジの名を冠したレースでもあると同時にその次のGⅠを狙うもの達が狙う夏の祭典。

 

 

 ハードな暑さと怪物たちを跳ねのけて手にする勝利を求めるもの達が集まる鉄火場ともいえるのだと理解していく。

 

 

 「基本クラシックからのメンバーも全員が国を問わずに参加できるようにしているのもそれなんでしょうね。狭いもんですが、この時期に挑めるこの国際GⅠでえるものも大きいですから。お。おーい! ケイジ―!」

 

 

 「よう! 両さん。大原部長に中川の兄さんに麗子の姉ちゃん。お久。来てくれて何よりだぜ!」

 

 

 緩い和装姿に下駄で歩いてくるケイジ。両津が声をかけたことでレース場でレースを今か今かと待っていた観客の視線が集まり、ケイジだとわかると一斉に歓声が上がる。「ケイジだ!」「本物!?」「ジャパニーズサムライガール!! oh!!」「イッツクレイジーモンスターガール・・・!」などなど歓声は様々。

 

 

 同時にそのケイジが親しげに声をかける両津達にも注目が集まり、同時に美男美女の中川と麗子にもいろいろと声が飛ぶ。

 

 

 「来たぞケイジ。ははは。キタサンブラックを推させてもらう」

 

 

 「アタシとしてはそこにサトちゃんも勧めておくぜ。プラチナチケットで屋内のいい場所を確保している。チケットの番号に従ってくれ。ああ。それと。係に見せればドリンクとかも貰えるから」

 

 

 「いやあ、申し訳ないケイジ君。こうも色々都合してくれて。私も今日は久しぶりに色々と楽しませてもらうよ」

 

 

 「おおー♪ 部長さんも元気に見ていってくれよ。今日は祭りだ♬ あ、そうだそうだ。レースのプログラムパンフある?」

 

 

 「ああ、もちろん」

 

 

 「ほいほいほいのほーい・・・っと♪」

 

 

 いうが早いか、ケイジは両津達のパンフレットの表紙に自身のサインを書いていき、チケットの半券の裏側にもサインを書いてくれた。

 

 

 「一着になった子のにもサインねだりな。アタシが都合しておくからよ。じゃ、祭りを楽しんでな。チャオー♪」

 

 

 指をピッと振りつつウィンクで返し、観客たちに笑顔で手を振りつつマジックを披露しては盛り上げていくケイジの背中を見送りつつサインされたパンフレットを見る。

 

 

 「ひょっとして、かなりのプレミアものになったのか・・・?」

 

 

 「チケット倍率数百倍のレースのプラチナチケット、後パンフレットだけでもすごいのにケイジちゃんの直筆サイン入りとか普通に数百万出す人もいるわ」

 

 

 「世界の要人の多くがファンですからねえ。僕もパーティーでケイジさんのサインをもらえないかと何度か言われました」

 

 

 「ま、これは大事にしまっておくとして、早いところ行こう。多分あの窓とガラスのある部屋みたいだし」

 

 

 パンフを眺めてレース場内の客席とチケットの番号を確認してきた両津が誘導して移動を開始。基本ウマ娘、少年少女には真摯に対応するのでケイジのくれた商品を売りさばくというのが出ないことに驚いたり納得したりしつつ後ろから着いてくる中川たち。

 

 

 ついた場所はそれぞれ席があり、広くレース場を見れるベストポジション。ドリンクを置く場所もあれば机もあり、少し視線を上に向ければ細かくレース場を見れるためのモニターもある。冷房の効いた場所だが会場の熱気はガラス越しにびりびりと伝わる。いい場所に腰を下ろす。

 

 

 「よし。そんじゃこの前田ブランドの酒を一杯と、あー唐揚げ山盛りを一緒に」

 

 

 「お・・・おお。専用のドリンクに、お酒もいいのか。かなり自由度が広いんだな。ではこのリンゴ酒を。どうにも緊張して敵わない」

 

 

 「まあ、国際GⅠの初開催ですしねえ。ケイジの弟子であるキタサンブラック。日本最強ステイヤーの一角メジロマックイーン、ゴールドシップの後継者になりえると言われているサトノダイヤモンドを倒してやると燃え上っていますよ」

 

 

 「シリウスのメンバーの伝説たちは多くが引退していたりレースには出ないのもあって弟子同士の対決で盛り上がっているのよねえ」

 

 

 「同時にそのメンバー全員でぶつかり合うとんでもない状態。まさしく乱戦もいいところ。お・・・今回もダービーウマ娘が5人もいるのか」

 

 

 手慣れた様子で酒をあおりつつ唐揚げをつまむ両津と大原部長に色々と情報を教えていく中川と麗子。大原部長も久しぶりのレース会場でいろいろと昔の記憶と経験を思い出して照らし合わせつつ会場の熱気を楽しんでいる中、スタンド正面に置かれているパドックから続々と出てくるウマ娘たち。いよいよレースが始まる前の勝負服と調子を見せる時間。

 

 

 オルフェーヴルが先導して出てくるこのレースに出走資格を得た猛者たち。誰もが眉目秀麗かつ個性的な面々の登場に歓声が沸く。

 

 

 「おお。私もニュースで見たようなメンバーが続々と! しかし、本当にすごいきれいだなあ」

 

 

 「化粧とかメイクの技術も高まっているんですがほんと凄いですねえ」

 

 

 「肉体の仕上がりは誰もがいいが・・・キタちゃんとサトちゃんの仕上がりがいいな。これはやはりアメリカンアテムくらいしか相手になるのがいないか?」

 

 

 今回のレースで戦う18人がそろった後、スタンド前に突如空間が歪んだように見え、そこからケイジが現れた。勝負服を身にまとい、トロフィーを持ち拳を掲げるだけで天が揺れるような大歓声が沸き起こる。

 

 

 それを笑顔で受け止めてから腰帯からマイクを取り出し、ウマ娘たちに声をかける。

 

 

 「ようこそ! この暑い真夏のレースによく来たな!! まどろっこしいことは言わない! アタシを超える気でやってきた猛者たち、麗しのウマ娘たちよ、このトロフィーも賞金も名誉も! 次の栄光のためのステップも! 何より勝利を求めて戦え!! この熱さもエンジンかけるものにしちまいな!! 第一回、ケイジ記念開催だぁああ!!」

 

 

 

 そういってまたもや魔法のように消えるケイジを見た直後に歓声が先ほどよりもさらに大きくなって響き渡る。その中には両津達ももちろん混ざり、いよいよ本場バ入場。そしていざレースとなった時。

 

 

 「あ、ケイジのやつしれっと後ろに並んで待っていやがる」

 

 

 「オルフェさんもいますね。多分ケイジさんに巻き込まれたんでしょうけど」

 

 

 『ケイジ! 勝手にレースに混じらないの! わざと勝負服にしたのはそのためか! 確保―!!』

 

 

 『ちっ! 駄目かオルフェ! 逃げるぞ!』

 

 

 『だから言ったじゃないっすかぁー!!』

 

 

 解説のジャスタウェイからの指示が飛び、スタッフがさすまたを持ってきて捕えにかかるのを急いで逃げていく凱旋門コンビ。

 

 

 そうやってスタッフたちから逃げ回っていたのだが、突如と網が放たれてケイジたちを捕獲。

 

 

 『いよぉーし! 大漁大漁♪ 大物ゲットだぜ♪』

 

 

 『ナイスシップ!! えー・・・大変失礼しました。レースに関しては何の問題もないのでそのままレースを始めます』

 

 

 呆れた声のジャスタウェイと、網の中でもがくオルフェとケイジ。それを引きずっていくゴルシの騒ぎに会場からは爆笑の声があふれ、ゲートの中のウマ娘たちも笑っている始末。

 

 

 「相変わらずだなあケイジ。多分レースしたら真面目にあの二人で勝っていたぞ」

 

 

 「ほんとケイジちゃんはやりたい放題するわね」

 

 

 「本当に変わらないなあケイジ君」

 

 

 この後のレースも無事に終わり、ライブには前座としてケイジとオルフェのライブとショーが始まり、更にはサンちゃんも飛び入り参戦して曲を披露。ウイニングライブにおまけのケイジとの対談トークショーで今回参加したウマ娘たちの次回のレースの予定と応援を込めた時間を作り、全員に見せ場を作って終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いやあー・・・童心に帰った気持だった」

 

 

 「ははは! そいつは良かった。部長もよかったじゃんかーサンちゃんにキタちゃんのサインもパンフに書いてもらって」

 

 

 「これは私の宝物だ。久しぶりにこういうライブを味わうのもいいものだな。あの一体感は癖になる人が増えるのも納得だ」

 

 

 「でしょー? ウマ娘のレースとライブで二度おいしいですからね。しかもケイジの場合はちゃんとトークショウで掲示板に入れなかったウマ娘たちの強みや今後を応援して彼女たちとその推しをしっかりフォローするのが人気なんですよ」

 

 

 「動画にもなっていて、実際にこのトークショウから覚醒したように強くなる子たちも多いですからね」

 

 

 無事にケイジ記念も終わり両さん達らと合流してのんびりホテルで風呂上がりに打ち上げ前の駄弁りに興じているアタシ達。ゴルシらはお疲れってことでロイヤルスイートにぶち込んでおいたし、後でアタシも遊びに行くか。

 

 

 で、だ。その前に両さんに頼まれていたことをしておくかね。

 

 

 「さて、この後はアタシのホテルの選りすぐりの料理人らで食事を用意させてもらう。えーと・・・ああ、ここの部屋に来てほしい。中川の兄ちゃんと麗子の姉ちゃん。両さんはちょいと手伝ってもらいてえことがある。部長さんは先に行って貰っていていいか?」

 

 

 「いいぞ? 確かトレーナーたちにプレゼントする酒の購入と送付手続きだろ?」

 

 

 「そうそう。流石に未成年が買うのはねえ。パパラッチどもにあれこれいらねえ話を作られてもめんどくせえ」

 

 

 「ああ、それでしたらドリームシアターさんやライトニングさんのおかげで僕の会社も儲かったので、その分のお礼をさせてください。奢りますよ」

 

 

 「あら、それなら私の会社の化粧品会社もケイジちゃんたちのおかげで助かっているし、私もね?」

 

 

 「そういうわけで部長。一足先に行っていてください」

 

 

 「ああ、それと、ケイジ君も今日は本当にありがとう」

 

 

 部長に微笑んでから移動するふりをして影からちゃんと移動したかを見守り、無事に部屋に入ったのを確認。

 

 

 よし・・・・

 

 

 「もしもし。もういい感じよ。おう。オッケイ。やっちゃって」

 

 

 「よしよし。サプライズは上手く行きそうだな」

 

 

 「両ちゃんもケイジちゃんも悪戯好きよねえ。まさか部長がシンザンとミホシンザンのファンだからって本人らによるもてなしとライブをやっちゃうなんて。しかも部長一人のために」

 

 

 「いいんだよ。世話になってるし二人もちょうど来てくれる予定だったからな。三人仲良く昔話に花咲かせやがれってんだ」

 

 

 ま、ちょうどいいので普段のねぎらいとサプライズということで母ちゃんとばあちゃんに頼んでのライブ。母ちゃんは昔の衣装今も普通につけられるしスタイルいいから持たせて。ばあちゃんは若木の色の着物をアタシが仕立ててプレゼント。

 

 

 二人も超ノリノリで部長へのプレゼントを用意してくれたし、にしし。孝行しないとね♪

 

 

 買い物も一通り終えて部長たちのいる部屋に入ると感涙している部長とほほ笑んでいる母ちゃんとばあちゃんが。後は両さんらも合流させてアタシは退散ってね。来てくれてありがとよ。皆。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁー・・・これはいいな・・・」

 

 

 「部長。あれからケイジさんたちの曲とウマ娘の曲を派出所で流したりしてはすっかり楽しんでいますね」

 

 

 「ケイジの場合男の声も出せるし曲も演歌から洋楽もできる分部長のはまる曲を用意したりカバーも容易だからな。それらをねじ込んで飽きさせないようにしているメドレーだからなおさらだろ」

 

 

 ケイジ記念から数日後。セミの鳴き声をバックに書類仕事を終わらせ休憩時間にシンザン、ミホシンザン、ケイジ、シリウスのメンバーの曲を詰め込んだCDを流しては子供のような瞳で楽しんでいる大原部長を見てひそひそ話をしている両津と中川。

 

 

 伝説たちとのまさかの邂逅とライブ。そしてプレゼントに握手にサインと相当に部長の子どものころ、若いころの心を刺激してしまったらしく。暇があればウマ娘のことを勉強したり、両津に聞いてくる始末だ。

 

 

 「当時の歌とリメイク版の歌声を収録して、サインまで書いたものを渡されたときの笑顔がすごかったですしねえ」

 

 

 「あの厳つい部長の顔がああなるってわしもそうそう見たことないぞ」

 

 

 「両ちゃーん。部長いる?」

 

 

 「麗子。どうしたんだ?」

 

 

 そうこう話していると麗子がパトカーを駐車して降りてきて部長を呼ぶ。

 

 

 「いえ。これをシンザンさんから渡しておくって言われて」

 

 

 「あ、今日発売の前田家のウマ娘の愉快エピソードを詰め込んだ暴露本! 初版本にしっかりシンザンとミホシンザン、ヒサトモまでもサインがかかれているぞ!! すげー! 超プレミアものだ!」

 

 

 「なに!? 見せてくれ!」

 

 

 両津の声を聞くやすぐに富んできた大原部長。そしてその本を手に取ると何やらメモ用紙が。そこには「今も応援してくれるファンへのささやかな気持ちですよ。ヒサトモ、シンザン、ミホシンザンより」と書かれていた。

 

 

 「よかったじゃないですか部長。ずっと覚えていた甲斐がありましたね」

 

 

 「いやーこういうのはいいもんだね」

 

 

 「か、感動だ・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さあ両津! 急いでレースを見に行くぞ! 今日は府中でのレースだから電車で行ける!」

 

 

 「部長! わし今日は夜勤ですよ!」

 

 

 「私が特別休暇を用意するから色々教えてくれ! さあ行くぞ!」

 

 

 「部長。ますますウマ娘が大好きになっているわね」

 

 

 「娘さんとも話が出来るようになったりグッズがうらやましがられたりもあってほんと充実しているようよ」

 

 

 頭にウマ娘LOVEの鉢巻を付け、暑さ対策のグッズを持ちながら両津を連れていこうとしている大原部長にまさかの状態に戸惑う両津。それを眺める麗子と中川。ちょっと変わっているがいつもの賑やかな派出所であったとさ。




 ケイジの一族とメジロ家は大体日本のアイドル一族。実力派しかいないやべーのだらけ。


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再び現役かぁん

 後はのんびりとダイジェスト気味にやっていきますかねえ―





 シンザン「ふうー・・・ケイジも無事引退。産駒もいきなり素質馬が出ていて安泰そうですなあ・・・」(茶をすすっている)


 スズカ「そうねえ。でも、きっと前田さんまた値段をあんまり上げないのかもね。ふふ」


 神様「基本あそこは中小牧場とかも依頼しやすいようにしているしねえ。2016年は150頭。今年は2017年は180頭で多くが国内。産駒が楽しみだ」


 ルドルフ「おい・・・とんでもないことになっているぞ・・・!」


 シンザン「どうしたんだいルドルフ。君らしくない程に面白い顔しているぞ」


 ルドルフ「ケイジが2年限定で復帰してオリンピックに出るそうだ・・・!! 神様。貴方の仕業か?」


 神様「ぶほっ!? いやいや?! 流石に予想外だよ!? でも・・・ははは。そうかあ。楽しませてくれるようだね彼は。まだまだ暴れ足りないのか、それとももっと盛り上げてくれるというのか」


 シンザン「うーん。馬術かあ。私はよく知らないなあ」


 スズカ「私も・・・でも、ケイジなら大丈夫かしら?」


 ルドルフ「こればかりは私も分からないなあ。でも、きっとやれるはずだ・・・で、東京オリンピックの観戦に行かせろと天界が大騒ぎなんだがどうなるんだこれは? レースで決めるべきか?」


 神様「どうしようかなあー・・・まあ、ゆったり考えよう。時間はまだあるさ」


 『でさーオリンピックに出るための審査とレースに出るのよー』

 

 

 『オリンピックってなあに?』

 

 

 『うーん・・・群れのボス同士が集まって競い合う感じ?』

 

 

 『それはすごいねえ。でも、無理はしないでよ?』

 

 

 『ありがとう。後でバナナ分けるね。あ、出来た』

 

 

 オリンピックに俺が出ることに決まったけど、ちょっと用意とかでいろいろあるそうなので今日は東京の動物園で絵をかくゾウさんと一緒にスケッチを満喫。

 

 

 互いに互いを見ながら絵をかいて、交換会をしているんだけどこのゾウさん花の絵がきれいでいいのよねえ。

 

 

 俺をイメージしたものをお願いねってことでゾウさんからヒマワリをもらったので俺は大きなユリを満面に書いた後にサインを入れたりして、いやあ、今日は素敵な絵画を二枚貰えたのがすごくうれしいぜ。

 

 

 「ケイジって頭いいんだねー」

 

 

 「ゾウさんとリンゴとバナナと絵を交換しているわ。可愛いわねえ」

 

 

 「ゴールドシップもアニメを楽しんだりマンガを読んでいるというが、本当にこの世代は頭がいいんだなあ・・・」

 

 

 『ほい。バナナあげる。そうだなあ少年。文学小説も読むぞー? じゃ、またなーこの絵は大事にするし、今度も会おうなー』

 

 

 『バイバーイ。バナナ美味しかったよー』

 

 

 ゾウさんにお礼のバナナをあげて、あたりの見物客さんにも愛想振りまきつつゾウさんからもらった俺の絵とひまわりの絵をトモゾウにしまってもらって、最後はゾウさんも俺も大きく嘶いてから頭を下げて帰宅。

 

 

 いやーテレビ局もいたけど、これ仕事だったのね。お疲れ様だわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うーん・・・これがケイジ・・・いや、生で見ると威圧感がすごいですなあ。目はルドルフに比べて優しいのですが」

 

 

 「よく脱走してはアニメとマンガと温泉を楽しみますが、基本温厚ですよ。人懐っこいですし」

 

 

 『酒の匂いがすごいなあ。でも酔っている感じがしない。そういう仕事の人か?』

 

 

 牧場に戻ってきましたら。なんかオジサンが俺にリンゴを渡しながら見上げたりうろうろ周りを見ていましたとさ。なんだろな?

 

 

 「しかし、ええ。ルドルフの孫。シンザンのひ孫。これはぜひ、オリンピックへのゲン担ぎや、その強さほどうまくなるということも込めて16冠馬の酒を造らせてください」

 

 

 「もちろんです。ルドルフの7冠馬を越えた度数になりそうですなあ。ケイジ同様刺激が強い」

 

 

 あ、俺の爺ちゃんのお酒を作ってくれた人か。そんで、俺のお酒をねえ。嬉しい。しかもオリンピックもかあ。

 

 

 「その際に何ですが、出来れば度数の低い、甘いリンゴ酒も作れないですか?」

 

 

 「リンゴ酒。ですか?」

 

 

 「ええ、ケイジもビールとかが飲めるので、ぜひ馬も飲めるアルコール度数の低い甘いお酒を作ってくれればと。そうすれば馬にプレゼントするお酒としてもいいものになりませんか?」

 

 

 ムギヤッタ姉貴が聞いたら涎垂らしそうな話しているし俺も欲しい。なんか俺とムギヤッタ姉貴の幼駒、ビリー牧場長がまた『GⅠ狙える器だぜイヤッホォォオオゥ!!』と狂喜乱舞していたみたいねえ。牝馬だからドリームシアターやスミオ、アメリカンアテムとも交配が問題ないしで。

 

 

 しかし、あれだなあ。タケちゃんとか、池沼さんとか、和倉さんとか、福崎さんとかも昔の相棒にもっていきそうだし、需要ありそうだなあ。アメリカじゃあ健康飲料ってことで馬に定期的に飲ませる場所もあるそうだし。

 

 

 「確かに。それに果実酒なら女性ファンにも親しみやすそうですしね。それだと・・・ブドウとかのでもいいですかね?」

 

 

 「馬もブドウを好きな子がいますし、いいと思いますよ? ナギコとかも好きですねえ」

 

 

 『俺はリンゴー』

 

 

 「ケイジはリンゴ派のようですね。是非リンゴ酒が出た時は16冠馬甘口。とでも出してください。ケイジにも試飲させますよ」

 

 

 「豪快ですなあ前田さんは。ははは。ありがとうございます。ぜひぜひお願いしますね」

 

 

 とんとん拍子で話が進んでいくのをみて俺もほっこり。で、視線を移しまして。

 

 

 『ウチ言ったよねえ? 牝馬にちょっかいかけるなって。子供たちがあほな悪戯しちゃうでしょ!』

 

 

 『ずびばぜんでしだ・・・』

 

 

 『俺がおやっさんと参拝している間に何があったんだよ・・・』

 

 

 ナギコに分からされているのはナギコの弟子であり、砂のゴルシといわれたラニ。ゴルシとよく似たぶっ飛んだ追い込みを武器にしているのでこれまたナギコも追い込みが武器なのであれこれ教えていて、大竹騎手と一緒に日本馬初のUAEダービーを勝利。アメリカでもケンタッキーダービーとベルモントステークスを手にしたアメリカ二冠馬。

 

 

 なんだがなあ・・・ドリームシアターと同じクラシックレースを手にできたんだけどまあ気性がやばい。ゴルシの場合は愛嬌があるんだがこいつは本当に気性がすごいので俺も怒って、ナギコがとことん分からせつつ教えて技術も教えたので成果も出したんだが、多分飛行機帰りのストレスでイライラついでに牝馬たちを威嚇したところをナギコが切れてお仕置した感じか。

 

 

 『そりゃあ、子育てで四苦八苦していたり気を張っているお母さんを怒るなんて激おこよ。ケイジはミコトも無事にいい人に引き取られたからいいけどさー。ほんと次の子は強い子かなあ』

 

 

 『兄貴・・・失礼しやした』

 

 

 『さあなあ。まあ、鍛えるよナギコ。で、ラニはまあ温泉でリラックスしな。ジュース後で分けてやるから』

 

 

 『ありがとうございます! そんじゃ、ゆっくりしてきますわ』

 

 

 『はいはい。タイマーセットして。厩務員さん蹴るなよー』

 

 

 まあ、イライラしたら俺が相談したりして大人しくさせるかね。真面目にブラウトやミレーネちゃんらはストレスになるだろうし。基本ここだとみんな大人しくなるからラニレベルで元気が過ぎるとねえ。

 

 

 『はぁー・・・あのやんちゃ坊主は。あのくらいの体躯と威嚇でウチがひるむわけないってーの。ケイジを見慣れているんだから。さーみんなー今日も遊びましょー』

 

 

 『いよっしゃーそんじゃ、今日も遊ぼうぜ! じゃあ、今日はマイケルの曲で踊るのと、走ることから』

 

 

 『ケイジーあの曲。ケイジの好きなあの曲も流してー? アメリカでも大人気だったのよ』

 

 

 『はいよー』

 

 

 とりあえず俺らは俺らで今日のリードホースのお仕事だ。最近はあちこちから幼駒たちを預かり始めていて、その指導も頑張っているんだよね。

 

 

 音楽も交えた柔軟に、文字の読み方に人の言葉の理解。走り方を教えたりしていたり。ディープも手伝ってくれるからうれしい。トモゾウも音楽があったほうが俺もナギコもノッテくるのがわかっているらしくちゃんと機材を用意してくれるしで幼駒たちとは愉快に先生をさせてもらっている。

 

 

 『可愛いなあー・・・ふふふ』

 

 

 『ねー・・・よいしょ。ほらほら。私達も追いかけてごらーん?』

 

 

 『『わーい! 遊ぼ―ケイジせんせー! ナギコせんせー ましろちゃーん。クロエちゃーん』』

 

 

 そんで、新しくうちに入ってくれた白猫のましろ。黒猫のクロエ。すぐに家になじんでくれて、馬にもなついてくれて有難いし、幸太郎の指導のおかげでネズミを仕留めても食べずにゴミ箱に廃棄してくれている有難い存在だ。

 

 

 何よりこうして馬たちの走る相手になってくれたりでほんと引退馬たちの運動もやってくれているから助かる。ディープもグラスの爺さんもメロメロだ。

 

 

 ほれグルーミングするぞーよしよし。うーん。お前さんは今度海で遊ばせてやるよ。

 

 

 『ケイジせんせーまたどこか行くって本当?』

 

 

 『ほんとだぞーすげえお祭りに行ってくるんだ』

 

 

 『寂しいなあ・・・一緒がいいよ』

 

 

 『ははは。そのころにはお前さんも一流になっていないとだぞ? ブラウトちゃんとアルトリアの子どもだ。頑張らねえとな?』

 

 

 俺と一緒に走っている牡馬はあのアルトリアとブラウトちゃんの第二子。いやーようやく後継種牡馬となり、俺以外の種牡馬になってくれそうな子が生まれたとおやっさん安堵していたからね。良かった良かった。

 

 

 貴重なキンチェム系のクロスだし、牡馬と牝馬確保できたのがでかいよなあ。まあ、血統を見ればうちの牝馬皆貴重だけどさ。

 

 

 『さあーリズムにノッテー? テンアゲで行ってみよー♪』

 

 

 『『『イェー!!』』』

 

 

 ナギコが追い運動を始めたので俺は先頭に立ってリード役を開始。その後はアニソンと洋楽のメドレーでのダンスと柔軟。いやー楽しいわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ご破算願いましてはー・・・」

 

 

 『うーん。そろばんはやっぱすごいな。この計算機を生み出した人はやべえぜ・・・えーと・・・42、126・・・』

 

 

 「母さん。ケイジにそろばんを教えているのかい?」

 

 

 「ええ。ト〇ー谷の真似とBJの漫画を読んでいたので試しにとやってみたらそこそこ上達が早くて」

 

 

 あの舌でそろばん大会を頑張るエピソードは泣けるよね。俺の場合は加工した専用のそろばん棒を咥えて練習しているんだけどさ。

 

 

 「しかし、すっかり麻痺しているが本当にこいつの頭の良さはとんでもないな。しかもそれを周りに影響を与えているし」

 

 

 「私たちにくれた神様の贈り物ですよケイジは。自慢の息子です」

 

 

 『あ、出来た。女将さん。確認お願い』

 

 

 話している間に計算が終わったので少し後ろに引いて確認作業。トモゾウが作ってくれたそろばん棒。使いやすいが俺がもう少し使えるよう練習頑張らないとなあ。

 

 

 「うん。正解。よくできました。ご褒美にワインをあげましょう」

 

 

 『わーい。うん。美味しい!』

 

 

 「昼からお酒とは贅沢だなあ。で、だ。ケイジ。来年以降のお前さんの予定だが、緩くやっていくことになりそうだ」

 

 

 『どういう意味?(レ)』

 

 

 ワインを飲みつつのんびりしていると思わぬ発言に耳と顔も傾ける。元気になるのに緩いとな?

 

 

 「基本ケイジの場合は障害馬術に推薦枠で出てもらうことになっている。そこにじっくり調練をしていくのだが、お前さんの場合はまだまだ衰えが見られないということでな。練習は現役時のメニューを馬術のそれに切り替えて落としていけばいい感じだそうな。

 

 

 近いうちに北海道での試験を経て、また東京の大会と選手権に出てしまえば推薦はもぎ取れるのと、ぜひ世界からもケイジを出してくれるのなら推薦すると言われていてなあ。前代未聞だと言っていたよ。ライバルの国の選手を、しかも素質のある名馬が出るのにむしろ出てくれといってくるのは」

 

 

 「嬉しいことですが、ケイジを障害馬術にですか。もう一つの演技の方ではないのですね?」

 

 

 「演技の方だとこいつはついでに何をするか分からないしなあ。総合馬術も連日かけて戦う分負担も大きいし、それなら速度と普段から柵越えをしている頑丈さ、馬体重を今も現役と変わらず維持しているケイジなら障害馬術が向いているとのことだ。専属の獣医も大量につけてくれるとさ」

 

 

 失礼な。精々演技終わった後に洋楽流してのエキシビジョンを突発的にやる程度だわ。でも、まあ障害馬術の方がいいな。サクッとやる分をぶつけ切って終わるほうが気持ちがいいし疲れないし。

 

 

 なるほどねえ。しっかし至れり尽くせりだな。かなりバックアップが出来ているのなあ。

 

 

 「で、まあ競馬の業界の方からもせめて牧場内の牝馬たちとケイジの産駒は生み出してくれという声もあるので、基本休みを多く与えつつやることになりそうだ。最低でも年間10頭くらいは産駒を出してくれた方が助かると。

 

 

 現役と種牡馬を両立するというのはほんと驚くが・・・ヒメがなあ」

 

 

 「あー・・・」

 

 

 

 『そうね~ヒメはなあ』

 

 

 ヒメの場合俺以外、サンデー系のディープとの、つまりは祖父にサンデー、曽祖父イージーゴアのライバルの交配をしようかという話が上がっていたんだけどをそれを聞くや超駄々こねまくって暴れたからなあ。

 

 

 アジアマイルも制覇したマイルの女帝。中距離にべらぼうに強い産駒を生み出しているディープとの子どもはタイキシャトルの再来になるかもということで期待されていたけど俺以外無理だわということで断念。俺とヒメの産駒、あとタイキ爺さんに頼んでまた産んでもらった牝馬とディープ。でその子とヒメの子どもで組み合わせるかと現在は相談している始末だし。

 

 

 「他にも基本ここの牝馬たちはケイジを気に入っているし、ミコトや他の子を見るにケイジも種牡馬としての才能があると思う。ようやく叶うサンデー血統の飽和を薄めつつ多様な血統を広げるためにも、私もできるのならそうしていきたい」

 

 

 「でも、種牡馬のお仕事も命がけ。ケイジの心臓は分厚いけど、無理はさせないように休みも現役に負けないようきっちりとね」

 

 

 「全くだな。そういうわけだケイジ。うちのお姫様達を相手しつつ、選手としても頑張るぞ」

 

 

 お父さんと幼稚園の先生と選手の三足の草鞋か。いいぜ。やってやろうじゃん。セカンドライフも愉快になりそうだなあ。あ、幸太郎は連れていけないの?

 

 

 そっかーサポーターがせいぜいかあ。残念。




 普段から柵170センチくらいをほとんど助走なしでポンポン飛び越えまくっております。そしてケイジがちゃんと試験を通って大会に出るとしてだれが鞍上になるんだと大揉め状態。


 ケイジの場合、このままウマ娘になるとしてIQどれくらいになるんだろうかね。ギネスだと確か228でしたっけ。


 16冠馬 アルコール度数30度 米酒


 16冠馬(馬用) アルコール度数1度 リンゴ酒


 売れるかな? ラベルには多分ケイジの顔がランダムで貼り付けられている。





おまけ


シン・メフィラス「ふむ・・・ここが地球か・・・なるほど・・・」


ケイジ「おう。いきなり異星間交流とはすげえ幸運だぜ」


シン・メフィラス「・・・失礼。お嬢さん。なぜ私を宇宙人だと?(人の耳がなく、獣のような耳にしっぽ? なんだ? 私の調べたデータにはない恰好・・・コスプレというやつかもしれないが、それにしては接続部分などの人工物がない。生体パーツを付けたのか?)」


ケイジ「だってすげえ驚いているじゃんよ。ウマ娘を知らないだろ? それに、スーツを着こなしているという感じのくせに嫌に新品の匂いにこなれた感じが変だし、匂いも変だ」


シン・メフィラス「見事だよお嬢さん。私はまさしく異星人。メフィラス星人と名乗っておこう。で、どうするのかね? 私をそのまま通報するのかね?」


ケイジ「あほか。地球に興味を持ってくれて、今もこうして暴力なり超技術なり記憶改ざんなりなんなりしねえ紳士をすぐに暴力で訴えるかっての。メフィラスといえば紳士のそれだろ? ならこちらも礼儀ってもんがあらあ」


シン・メフィラス「では出迎え感謝とその行動に敬意を。お嬢さん。よければそのまま散歩をしつつこの星の事を教えてくれないかね? お礼もしっかりとしよう」


ケイジ「おうさ♪ 旅は道ずれ世は情け、袖すり合うのも他生の縁っていうからな。楽しもうぜ! ではでは、地球観光ガイドのケイジちゃんと出ぱーつ♪」


シン・メフィラス「(一見すると人に見えるが筋力も私のデータとは段違いだし、何よりこの娘・・・武人としてもかなりのものだな。言動はともかく、知識はありそうだし、色々と情報を聞き出すのがいいか)ふむ。いい言葉ですね」


ケイジ「ことわざといってな? いろんなことを示すのに分かりやすいいい言葉なんだぜ? まま。ゆるーりと歩いていこうや。好きな言葉を自分のイメージや信条にする人もいるし、後で本も貸しておくよ」


シン・メフィラス「なるほど。では、お貸ししていただきましょう。貴方のような美女からお貸しいただけるとは光栄です」


ケイジ「そういうあんたは眉目秀麗のいい男さね。ははは。こんなにおもしれえ出会いならゴルシと一緒にもっと宇宙人を探すべきだったかな」


シン・メフィラス「なるほど。眉目秀麗。これは私の好きな言葉に加えさせていただきましょう」


 ~傾奇者と悪質宇宙人散歩中~


ケイジ「なるほどな。本来そっちが目指すはずの地球にはいない種族、ウマ娘がいることからしても多分だけどジャンプドライブや空間に穴をあけての空間移動をする際にそういう方向に空間の穴が出来ているのが繋がってしまった可能性が高いんじゃないか?」


シン・メフィラス「おそらくは。しかし、獣のごときパワーを持ちつつも人間とは大きく差異のない外見。本当に不思議なものですね」


ケイジ「まあな。ウマ娘は並行世界のある生きものの魂を宿して生まれてくるっていう。今も生まれる条件がはっきりとはしていないんだ。でも太古から人と関わって生きている種族なんだよ」


シン・メフィラス「ほほう。異種族でありながら互いに手を取り合い、近しい存在でありながら互いを害さず過ごしている。素晴らしいことです」


ケイジ「まだまだ不完全だけど、それでも互いに支えつつ、助け合いつつ歩けている素敵な存在だよ。で、だ・・・あったあった。ウルトラマンという存在がそっちにいるんだろ? おそらくだけど、マルチバース理論や、そこを行き来できるウルトラマンの作品があるんだが、そういう存在によってたまたま近い場所に流れ着いてしまったんじゃないかな。


 そっちの目指す地球とアタシらのいる地球は近いけど別の宇宙。だけど本当に距離の近い。あの自動販売機とゴミ箱の距離くらいに近いから本来は影響を受けないはずの時空間の歪みや過去の余波を受けちゃったと」


シン・メフィラス「ウルトラマンゼロ。それにブルトン・・・なるほど。それはあり得る話ですね(利用しようとしていた生物兵器を輸送していく際の過去のジャンプドライブの影響、もしくはこのウルトラマンのような存在の移動の際の影響か・・・ふむ。あり得る話だ。しかし、あっという間に空間の話を付いていけるとは。この星の中でもなかなか見どころがありそうだな。ブルトンの事といい、この星の映像作品のウルトラマンに目を通すことで得られる発見もあるだろう)」


ケイジ「ただまあ、同時にそこから変に動くとこれまた大変だろうし、そっちの頭と技術でもずれが起きちまったんだ。再度しっかり目的地の世界線の地球に行くために一度頭と心を休めつつ、この地球を満喫していきな。よいしょ・・・ほれ」
(缶コーヒーを投げ渡す)


シン・メフィラス「(確かに、目的地の世界線の地球に戻り、潜伏活動をするためにも、計画のためにも再度演算処理とエネルギーの充填は必要。今はそうするほかないか・・・)おっと。これは?(少しの興奮作用をもたらす成分にエネルギー源となるものがある。嗜好飲料というやつか?)」


ケイジ「コーヒーといってな。少し甘いやつだが、旅の疲れもあるだろ? ほれ、ここに座って、あれを見なよ」
(河原の土手に座り、夕日を眺める)


シン・メフィラス「ほお・・・美しい」


ケイジ「茜色の素敵な太陽の柔らかい光に、それに照らされる街並み、キラキラ光る川の様子。それを眺めながらのんびり何かを飲むのが気持ちよくてなあ・・・どうだ?」


シン・メフィラス「どれ・・・おいしい・・・悪くないですね(苦みの中にコクというべきなのか・・・それに来るミルクの甘さに、砂糖のそれが苦みによって刺激を受けた頭にしみわたるように口を喜ばせてくれる。そして、この宝石のような美しさ・・・素晴らしい)」


ケイジ「だろ? いろいろ考えているんだろうけどさ、こうして楽しみながら過ごそうぜ。頭がいいからこそあんたからすれば原始的で未熟な星からわかるものがある。温故知新ってな♪」


シン・メフィラス「温故知新。ふむ・・・私の好きな言葉になりそうですね。ありがとう。ケイジ君」


ケイジ「おう。あんたは何て呼ぶよ?」


シン・メフィラス「では、人前では山本と」





続く・・・?




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ウマ娘エピソード 22 お前は何を言っているんだ?

 真面目に馬の方はゴルシたちとのレースが終わったのに感想が多くもらえるのが嬉しいです。


 いつかシマカゼタービンとケイジのコラボをしてみたいけどタービンと愉快な仲間たちを私は描ける自信がないですわ。


 「ということで・・・風紀の引き締めとその規律の維持のために学園全体の管理プログラムを理事長代理としては行うつもりです」

 

 

 どうも皆さん。ベルノライトです。理事長がアメリカに長期出張の間代理としてきた樫本理子理事長代理のあいさつの後にすぐに出てきた学園の新規管理体制に少し呆然とするほど驚き、周りの喧騒にようやく意識が戻って内容を飲み込めた状態です。

 

 

 中央トレセン学園は生徒の自主性を重んじるので生徒からのトレーニングへの意見や食事への提案も多くあるのですが、理事長はそれを「無計画」「情動的」と切り捨て、食事内容に就寝時間、その時間すべてを管理する徹底管理の方針を掲げました。

 

 

 しかもアオハル杯というチーム戦を行えるレースも廃止をするなど、クーデター、横暴ともいえるようなその内容に非難轟々の嵐。イナリさんなどは血管が切れそうなほど。

 

 

 「ベルノ・・・もしかして今後おかわりは出来なくなるのか・・・?」

 

 

 「も、もしかしたら・・・?」

 

 

 「おかわりが出来ないのは辛いぞ・・・」

 

 

 オグリちゃんは泣きながら魂が抜けそうだし、ブライアンさんも野菜を強制的に食べさせられそうなのに顔が少し青くなっている始末。

 

 

 でも、これに声をあげそうなタマモ先輩やクリークさんはいぶかしむというか、半分呆れたような顔でこの様子を見つめています。食事で苦労しているタマモ先輩に、名瀬さんとすごく仲良しのクリークさんもこのプログラムは大変なはずなのに、なんでだろう・・・?

 

 

 「ふぅ・・・何というか・・・」

 

 

 「良くも悪くも、これは劇物ですね」

 

 

 「ああ、あの人たちの考えることはなんとなくわかるがいかんせん賭けとも取れる。信じてはいるのだろうが・・・どうにもやり方が激しすぎる。面白いのは確かとはいえるのだが」

 

 

 エアグルーヴ副会長。ルドルフ会長?

 

 

 「む。ベルノ。理事長代理にイナリとヘリオスが近づいているが私も行ったほうがいいか?」

 

 

 「むしろそれは止めないと!」

 

 

 いよいよ殺気立ち始めた学園の過半数の空気に理事長代理も流石に後ずさりしそうになっているけど、そこにマイクを握りなおして会場全体を睨みつける。

 

 

 「しかし、管理体制を強く敷いているゆえに強いチームリギル。そしてその主要メンバーが生徒会として学園を動かしている一員なのは確かでしょう。皆様はその頂点に立つ姿にあこがれたのではないのでしょうか?

 

 

 シンボリルドルフ生徒会長。貴女もまたこの管理プログラムでより皆が勝てるように、皆が勝利の栄光をつかめるチャンスと才能を育てるべきではないでしょうか?」

 

 

 樫本理事長代理はルドルフ会長に問いかける。リギルもまた他と比べると管理を強くしている無駄なく勝てることを目指すチーム。そして「皇帝」の二つ名とそれに負けない強さと器を持つルドルフ会長の魔性に近いカリスマ。あの人の発言次第ではこの状況もひっくり返し、場を収められると踏んでいるのだろう。

 

 

 生徒会の発言力と権利、そしてその強さと経験に裏打ちされた彼女たちの発言になびくものを狙うのだろうが。

 

 

 「あほくさ。生徒会をよう見ているようで見ていないわあの姉ちゃん」

 

 

 「あれは駄目ねーリギルと生徒会、ルドルフさんのモットーを見ているけど、もう少し深い内面まで見ていないわ」

 

 

 「ルドルフは拒否するぞ」

 

 

 「・・・あー・・・うん」

 

 

 タマモ先輩にクリークさん、オグリちゃんの発言に私もはっとなって。なんとなくこの先が読めた。同時に、落ち着いていた理由も。

 

 

 「なるほど。確かに樫本理事長代理の言うことも一理ありますし、私の所属するリギルも管理の徹底は近い方向性を持つ。そちらへの理解もあります。

 

 

 しかし、同時にだからこそ違う形で私達に挑む、超えようと、並ぼうとしていくウマ娘とトレーナーの個性も尊重したいのが確かです。ゆえに、私は生徒会会長として、個人としてもそちらにも静観をしたいのです」

 

 

 「どういうことでしょうか?」

 

 

 「樫本理事長代理。貴女のトレーナーとしての手腕、そしてURAでの敏腕ぶりも。だからこそ知っているはずです。ここにいるのは日本の代表アスリート、アイドルを育てる場所。そこを変えることの重さも」

 

 

 「もちろんです。だからこそよりレベルアップと管理を厳格に行うためにこのプログラムを・・・」

 

 

 ルドルフ会長という成功例を引き出し味方にしようとしていますが、同時にそれはほぼ無理でしょう。彼女たちの存在がいる限り。

 

 

 「それなら、その管理の対極にいるチーム。世界最強と認められた二人がいるあのチームたちを倒して認めさせるのが最初であり、私たち生徒会を、リギルを引き込むことではないのです。

 

 

 私たち生徒会は学園の運営に関わるものであると同時に生徒の代表。目指すべき姿でもあります。故に、私は樫本理事長の考えに同意する者と、彼女たちでどちらがより強いかを見せていくべきだと思います」

 

 

 「っ・・・それは・・・!」

 

 

 そう。好き放題の暴走し放題。問題も起こすが間違いなく世界を良い意味で震撼させ続けるウマ娘たち。

 

 

 「生徒の皆に聞こう。樫本理事長のプログラムに反対する者として私はチームシリウス。そしてチームスピカのゴールドシップとジャスタウェイの連合と樫本理事長の管理プログラムへの賛同者による学園の方向とアオハル杯廃止の是非を問うべきだと思う。

 

 

 チームで夢を追いかける重賞レースであり、国のアスリート養成所の今後の方針を決めるにあたってふさわしいものだと思うがみんなはどうだろうか?」

 

 

 ルドルフ会長の発言に会場のウマ娘のほとんどが大歓声を上げて賛成する。当然だ。あの暴走チームならやってくれるという確信がある。

 

 

 「だ、そうだよ? ケイジ。帰国したばかりで悪いけど早速やれそう?」

 

 

 『おうよ! 何の問題もねえ。チームの皆で爆笑しながら聞いていたからな。親父に松ちゃんらもみんなこの方針は大反対! 楽しんでいこうぜ? 最高の祭りにした上で勝ってやるからよぉ!!』

 

 

 いつの間にやら通話していたシービー先輩のスマホから聞こえるケイジさんの声にますます歓声が上がる。生徒会所属ではないが、そのほぼ全員が前代未聞の記録を持ち、あるいは三冠レベルの実績を持つ怪物たち。彼女たちの参戦、そしてリギルが理事長代理提案の管理プログラムに従わないことに青い顔をする樫本理事長代理。

 

 

 「わかりました・・・・・・では、この後にチームの招集をかけてシリウス連合チームとの試合に向けての調整をするということで譲歩しましょう。

 

 

 これを持って挨拶を終わります。では・・・・・」

 

 

 挨拶を終えて下がる樫本理事長代理をバックにケイジさんとシービー先輩の会話を聞いて愉快に過ごす面々を見つつ、ひとまずケイジさん達の勝利を願うほかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 予想外だった・・・まさかリギル、それも生徒会がシリウスを生徒の代表にするとは思わなかった。あれ程に始末書と苦情と電話対応に追われる元凶を味方するとは・・・リギルがつかなかったのは予想できたがこれは想定外・・・。

 

 

 不幸中の幸いはチーム戦を行うにあたって問題ないメンバーと人材が来たこと。戦えはする。問題は、あのチームにどこまでやれるか・・・いや、やるしかないのだ。そのチャンスは他になく、そして目的のためには譲れない。

 

 

 「皆さんよく集まってくれました。私達チームファーストの結成と同時に、これから私たちが最初に倒すべき相手についての情報を共有したいと思います」

 

 

 プロジェクターを起動し、スクリーンを下げて映像を見せていく。

 

 

 「まずは一人目。名門メジロ家でありながら天皇賞への興味を持たずにマイル戦線で暴れることを選んだ変わり種。しかし欧州クラウンマイル戦線で無敗の三冠をあげ、イタリアでも大暴れした結果かつての欧州最強トニビアンカとも互角以上に切り結びました。

 

 

 逃げを用いたその速度と技術はまさしく雷鳴のごとし。GⅠ5勝『雷爆の襲撃者』メジロライトニング。戦績は10戦6勝4敗」

 

 

 「・・・あのトニビアンカを・・・!?」

 

 

 「タイキシャトルさんとの練習試合でもほとんど差がなかったんですよね・・・」

 

 

 この子だけでもどよめくのは当然。しかしここから。

 

 

 「次に二人目もまたマイルの怪物。欧州ティアラマイル、アジアマイル三冠をそれぞれ奪取。一度の負けはタイキシャトルとのレースのみであり、それ以外ではほぼすべてに平均4バ身以上を付ける。まるで捕えられないすべてを飲み込むような美しい黒髪、規格外の大逃げ戦法はマイルのサイレンススズカといわれるほど。

 

 

 GⅠ7勝『ブラックライトニング』キジノヒメミコ。戦績は15戦14勝1敗」

 

 

 「阪神JFでも大差勝ちをしたあの子!!」

 

 

 「基本大逃げで全くへばらないのがもう・・・」

 

 

 国内で一番衝撃を見せたレース。マルゼンスキーレベルでしか見られない着差をGⅠで見せつけたのもあって青ざめる子もいる。当然だ。

 

 

 

 「これくらいで怯んではいけません。

 

 続けて三人目はその気性の荒さゆえに問題児でしたがシリウスに半ば放り込まれる形で入り覚醒。日本のウマ娘による、ドリームシアターも含めれば三人目のケンタッキーダービー優勝。アメリカトリプルクラウンのうち2つを手にした実力者。

 

 直線での加速と、その気性ゆえの尽きない闘志はあちらでも脅威となりました。GⅠ4勝『砂の怪獣王』ラニ。戦績は13戦8勝5敗」

 

 

 「あーあのやたらアメリカの代表的巨大建造物を破壊されるコラがあった」

 

 

 「怪獣たちとのコラもありましたね」

 

 

 「実際レースを見ると迫力がすごいのよね・・・」

 

 

 少し気持ちが安らいだ・・・というわけではないが、息を入れられたので一つ落ち着く。

 

 

 「そして、四人目は推薦枠でトレセン学園に入るもその実力が開花せず、シリウスに入ってもミホノブルボンの前に勝利を掴めずにいました。しかし菊花賞でミホノブルボンを破り、天皇賞(春)ではあのメジロマックイーンの三連覇を退けました。更には世界最大の障害物レースグランドナショナルを制覇してレコード記録を叩き出したことでかの女王陛下から騎士の勲章を授かりました。

 

 

 日本の中距離でも戦い、その規格外のスタミナを活かした高速レースはまさしく暴走列車。GⅠ6勝『青薔薇の姫騎士』ライスシャワー。戦績は34戦16勝18敗」

 

 

 「長距離GⅠ制覇がメインなんですが・・・中距離のGⅡでも強いですし基本マイルくらいにならないと弱くないのが」

 

 

 「菊花賞を大逃げからの叩き合いで制した怪物。しかも小柄故にバ群を抜けるのも上手いですしねえ・・・」

 

 

 先のメンバーたちはまだ対処もできるが、ライスシャワー辺りからは真面目に対応自体が実力で上回る他ない、というレベル。真面目に高い壁なのを皆も知っている分、表情が渋くなるのがわかる。

 

 

 「まだよ皆さん、ここからはさらにレベルが上がる。

 

 五人目はジェンティルドンナのライバルであり同時にシルバーコレクターと揶揄されましたがクラシックを越えて成長。以降は多くのレースを連覇した記録を持ち、何より1200~2400の距離内の国際GⅠを勝利、逃げ、先行、差し。全てにおいてハイレベルな彼女は決して弱者ではありません。

 

 

 GⅠ8勝『万能女王』ヴィルシーナ。戦績は27戦14勝13敗」

 

 

 「陰に隠れがちとは言うけど、三ヶ国で戦って成果を出しているし、何よりこちらの策を上回りそう」

 

 

 「エキシビジョンを含めれば5ヶ国で戦い勝率7割。怪物よ・・・何がシルコレか」

 

 

 このレベルですらまだ上がいるという事実に確認する此方も頭が痛くなる思いだ。リギルがこちら側にいれば少しは楽だったのだが・・・。

 

 

 そしてここからも特に気が重いが・・・言う他ない。情報の共有は必須事項。

 

 

 「続いて六人目は三冠ウマ娘の一人。

 

 普段は大人しく物静か。あのチームシリウスでも基本誰かに振り回されているのが常です。しかし、その体幹移動と脚使いはまさしく超一級。凱旋門賞で二年連続二着。海外重賞を連覇し、更には名瀬トレーナーからも2400メートルにおいては世界最強格と言わしめる。

 

 レースにおいては一転凶暴ともいえる戦意と理不尽の強さを見せることからも怪物です。

 

 

 GⅠ10勝『金色の暴君』オルフェーヴル。戦績は24戦15勝9敗」

 

 

 「トレーナーにパロスペシャルかけていた・・・」

 

 

 「ええ・・・チームメイトともレース後は普通に喧嘩してそうなくらいなのに・・・」

 

 

 もう既に意気消沈しそうな面々も出てくるが、水を飲んで気持ちに整理を付けつつ自身ももう一押しと気合を入れる。

 

 

 「そして・・・シリウスの残りのメンバーを復習する前にスピカから参戦して戦うことになった二人も紹介しましょう。

 

 

 まずはそのうちの一人。

 

 彼女もまたシルコレ、ブロコレといわれ、クラシック期はさほど成果があげられませんでした。しかし天皇賞(秋)から覚醒していき、ドバイDFではスーパーワールドレコードをたたき出して世界ランキング1位に躍り出ました。

 

 ミドルディスタンスの距離においてはまず最強といっていい。GⅠ8勝『白銀の末脚』ジャスタウェイ。

 

 戦績は26戦13勝13敗」

 

 

 「あの葦毛スキーさんよね? 確かこの前もオグリさんを餌付けしていた」

 

 

 「セイウンスカイさんに釣竿をプレゼントもしていました」

 

 

 「そしてもう一人。

 

 規格外の強さとそれを支える頑丈さと追い込みのパワー、レースも日常の振る舞いも何もかもが破天荒と奇行に彩られています。しかしその強さは世界最強と渡り合えるものであり、前代未聞の記録を更新。阪神大賞典、宝塚記念の4連覇を成し遂げるなど記録が途切れることはない。

 

 GⅠ11勝『黄金の不沈艦』ゴールドシップ。戦績は37戦19勝18敗」

 

 

 「私は一番相手したくないです」

 

 

 「どんなに逃げても気が付けば後ろから追い抜きそうで怖いのよ。あのワープしたような皐月賞とか」

 

 

 ここまで紹介してきたが、同時にこの二人とここからは間違いなく誰もが世界最強を名乗って問題ないメンバーばかりだ。

 

 

 真面目に2対1の状況に持ち込むなりしたかったのだが、どこまで勝利を手繰り寄せられるか。

 

 

 

 「皆さん、落ち着きながら気持ちを高めなさい。目標のために復習してきたこのメンバーですが、ジャスタウェイ、ゴールドシップたちとここからのメンバーは間違いなく世界最強であり、私たちが最も警戒しないといけないメンバーです。今までのメンバーも油断できませんが、ここからは格が一つ上がります。

 

 

 その一人。シリウス七人目の一人。

 

 アメリカトリプルクラウンを無敗で制覇した三冠ウマ娘の一人。それのみならずアメリカの高速先行、逃げレースの中で追い込みを武器に全てを捲り返して捻り潰すその規格外の強さと黄金の美貌はアメリカの大スターとなり、セクレタリアトのレコードにあと0,1秒迫ることもありました。

 

 GⅠ10勝『ネオ・ワンダーウーマン』ナギコ。戦績は19戦19勝0敗」

 

 

 「無敗の女王・・・! ダートどころか芝でも出てきかねないわよ!」

 

 

 「大外からでも飛んでくるし、何より前田家の一人。やろうと思えば逃げもできると言っているのが・・・」

 

 

 現在リギルの中で25戦無敗の戦績を持つマルゼンスキーに並ぶ器と称され、同時にアメリカのダートと日本の芝の相性からも芝にもダートにも出てきかねない怪物。まず対処が難しいだろう。

 

 

 「さらに次に出てくるのは三冠ではないですがまさしく最強といっていいでしょう。シリウスの八人目。

 

 

 ダートをメインとしておりロコドルとしての活動に余念のないウマ娘。ですがドバイワールドカップや東京大賞典を制覇し、国内においても敵なしであり、海外でもその強さは衰えない。コパノリッキーやワンダーアキュートとしのぎを削り、チーム内でもその評価はナギコやラニと負けず劣らずの天才。彼女の功績でダートも三冠が設立されるほどです。

 

 

 GⅠ15勝『ダートの絶対王者』ホッコータルマエ。戦績は43戦23勝20敗」

 

 

 「無理ぃ・・・」

 

 

 「怪物すぎるのよ彼女・・・強いし揺さぶり効かないし・・・」

 

 

 心が折れかかっている子がいるが、まだ二人いる。しかもその二人もまだまだ怪物だ。

 

 

 「まだまだここからなのよ皆さん!

 

 九人目も三冠ウマ娘の一人。トリプルティアラを征した怪物であり、世界初のドバイシーマクラシック三連覇を成し遂げ、欧州のレースを暴れまわりました。先行策という王道の戦術とその驚異的な戦意、ウマ娘の中でも規格外のパワーを活かした末脚の爆発は場所を選ばずに勝利を手にしました。

 

 『英雄』の妹というのは伊達ではなく、シリウスのリーダーの器もある頂点の一角。

 

 GⅠ12勝『最強の皇女』ジェンティルドンナ。25戦16勝9敗」

 

 

 「ジャパンカップと宝塚記念でのあのぶつかり合いは派手でしたねえ・・・」

 

 

 「あのディープさんよりも凱旋門賞で順位が上というか、もう3位以内に入り込めている時点でヤバすぎる。先行策だけどスタミナもあるから逃げで潰せないし・・・」

 

 

 そして残る最後の一人。もう一度水を思いきり飲み込み、息を吐いて呼吸を整えながら少し深い呼吸を繰り返してから気持ちを入れる。

 

 

 「最後の一人。シリウスの十人目にしてシリウスのリーダーのもう一人。

 

 ビッグマウスから始まり、そのデビューも大差勝ち。そこからは自身が掲げたビッグマウス以上の前代未聞の記録を打ち立て続け、無敗の四冠も成し遂げたことに始まり、日本にキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスと凱旋門賞の栄冠を三年連続で持ち帰るなどなど……この国の英雄としてあり続け、一方で奇行と暴走を繰り返しては問題児になりました。

 

 レース前の暴走にライブでもメニューを無視して追加したりコーナーを設けるのは当たり前、しかしそのクオリティーの高さで全てを黙らせてしまい世界各国の要人、王侯貴族ともつながりを持ち、世界中の最強をねじ伏せた怪物の中の怪物。国内のウマ娘、特にゴールドシップ以外には2度目の負けを一切許していない。

 

 GⅠ20勝『ターフの傾奇者』ケイジ。戦績は35戦25勝10敗」

 

 

 「GⅠ30勝のウィンクガールが唯一敵わなかった怪物・・・!!」

 

 

 「しかもセクレタリアトに並ぶレートを叩き出した皇帝を越えた怪物!」

 

 

 「私達チームファーストが戦う相手は彼女たち。無論とてつもなく高い壁です。しかし、私が勝たせる。私達で勝つのです!!

 

 皆さんは私が必ず上にいけます。彼女たちの情報は用意しているので目を通してから練習に移ります!!」

 

 

 「「「「「ハイッ!!」」」」」

 

 

 相手が怪物たちだろうと負けるつもりはないわ! 私の目的のために・・・ウマ娘のために・・・!!




 真面目に国の代表となるアスリート、アイドルを育てる学園の半ばクーデターをするのなら最高戦力を倒していかないとねという。


 ケイジ達の戦績は史実より長く戦っているのでその分盛られています。


 ~おまけ~


シン・メフィラス「ふむ・・・」
(前田家の書斎で本を読んでいる)


シン・メフィラス「この世界ではウマ娘と人・・・異なる種族が太古から支え合って生きているし・・・戦争も遥かに少ない。農業の発展具合や、生活などの技術水準は私の目指していた地球以上。何より、ウマ娘の生まれる法則性がない。文字通り神秘の種族・・・か・・・私の理解できない概念と種族とは興味深い」


ケイジ「よう。山本さん。仕事が決まったぞ」


シン・メフィラス「おお、ありがとう。しっかりとした戸籍の用意に加えて社会的立場まで」


ケイジ「まあ、記憶喪失ということでうまいことな。悪さしなけりゃいいさ。で、とりあえずなんだが前田家とメジロ家で提携している飲料会社のCMをやることになってなあ。これなんだが・・・」


シン・メフィラス「ふむ・・・役者という訳か。要はこれで指示に応えて演じればいいんだな?」


ケイジ「そういうこった。地球人を演じているんだ。簡単だし、仕事のロケついでに地球を見て回れるだろ?」


シン・メフィラス「なるほど。CMの撮影の際に確かにいろいろ見て回れるな。ありがとう。ケイジ君」


ケイジ「仕事は明日からだな。無理するなよ。終わったら初仕事の祝いに飯を振る舞ってやるからよ!」


シン・メフィラス「ふっ。それなら是非とも私も頑張って美味しいご飯を満喫しよう」


~続け~


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ウマ娘エピソード 23 そらそうよ

 皆様が真面目にケイジと付き合ったら相性が良さそうなウマ娘は誰でしょうか? 前田家組は基本ぞっこんなので外した場合。


 感想が700件を超えました! ありがとうございます。いやあ、シン・メフィラスが受け入れられていて嬉しいです。


~おまけ~


山本(この惑星の住人は不器用だ)


モブ店長「今日から働くことになる山本ジョージさんだ。みんなよろしく」


モブたち「「「よろしくお願いします」」」


山本(この惑星の住人は間違いを常にする)


モブ「おっと・・・とと、ありがとうジョージさん」


山本「いえ。お怪我は?」


モブ店長「おいおい大丈夫か! 新人に助けられるんじゃなくて教えるんだ! 少し休んでこい」


山本「店長。私は大丈夫ですから。それより、先輩を助けつつ、私は掃除をしておきます」


~バイト時間終了~


バイト上がり組「お疲れー山本さん」


山本「お疲れ様です」


モブ「ありがとう。山本さん。今度は、かっこい先輩になるよ」


山本(ただ、この惑星の夕日と人の笑顔は、柔らかだ)


缶コーヒーBIGBOOS 新発売


監督「はいカット―! いいねえ。流石山本さん。ケイジちゃんが推薦してくれただけあって笑顔も仕草も完璧だよー」


山本(シン・メフィラス)「ありがとうございます。ケイジお嬢様の心に応えただけですし、監督や皆様の優しい指導と指示があったからこそです」


監督「いやいや! 実際、予定していた時間より早く取れた分予算が浮いたし、次のCMの草案も練る時間が出来たよ。とりあえず山本さんもお疲れ様。これ、近くのお店のクーポン。昼休みにでも使って」


山本「お心遣い感謝します。では、私はこれで」


ケイジ「いよっ。お疲れさん。初仕事。花丸ものだったな。うちの方にも絶賛だとよ」


シン・メフィラス「まさかの仕事内容でしたが、そちらの家にあったSF映画と、ハリウッドスターが来ていたので色々助かりましたよ」


ケイジ「あの人超日本大好きだからなあ。アタシと会うたびにサインねだるんだぜ?」


シン・メフィラス「ははは。それはそうですよ。貴女もまた世界の大スターですから」


ケイジ「いうねえ。ああ、そうだ。今夜は少しそっちには刺激の強めな料理を味合わせてやるよ」


シン・メフィラス「ほう? それは楽しみです」


~続け~




 「ふぅ・・・どう対抗するか・・・まず、芝は三冠レベルは距離を細分化すればばらせる分勝ちの目は増やせる・・・ダートはそもそもアウェーで戦うのが常だったメンバーが多数ゆえにむしろ火をつけかねない。それならいっそまとめさせて身内同士での消耗を狙うべき・・・?」

 

 

 どうにか勝利のプランを作るにも、文字通り針の穴を通すようなものだ。

 

 

 何がひどいと言えば、このメンバーは基本海外で戦う故に常に相手はチーム戦に対して単独で挑むような状況でも問題なく戦い、勝利してしまう。

 

 

 チーム内でのぶつかり合いも楽しみ、むしろ鍛えた後に全力で叩き潰し合うのを満喫した後に翌日は和気あいあいと遊んでいる絆の深さ。だからこそそれを過剰なまでにして掛からせるためにもどうにかリギルや他のメンバーを引き込みもうひとチームを用意する策もあったのだが、何よりケイジ達がノリノリだというのがミスターシービーにより電話の内容をすべてあの場で出されてしまったせいでおじゃん。

 

 

 情報戦のための盗聴器やカメラも成果が出ていない。どうしたら・・・

 

 

 

 「もしもし。ちょいといいかね?」

 

 

 「・・・どなたでしょう」

 

 

 全員のプランを組みつつどうやるべきかと考えていると扉がノックされ、聞いたことのない声が響く。

 

 

 「私もアオハル杯。シリウス側に参加する。そいつを伝えたくてねえ。そちらさんに宣戦布告と陣中見舞いのお菓子だ。もらっておきな」

 

 

 「そうですか・・・とりあえず、そのお菓子は感謝しま・・・・・・・な・・・あ、あなたは・・・・・・・・!?」

 

 

 「全く。生真面目なのは変わりないようだねえ。その手腕と色気は上がったが性根は沈んじまってまあ。それじゃあね」

 

 

 目の前に現れて不敵に笑う人物に脳内処理が追い付かず、気が付けば私は座り込み、倒れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よーし。皆。改めて今回のアオハル杯へのチームレースについての情報が届いた」

 

 

 「芝のレースは1200、1600、2400、3000。ダートの方は2000の方だけとなっている」

 

 

 さあさあ始まりました日本ウマ娘業界の今後を左右することになった賭けレース。いやーまさかここの世界に来て身内同士のレース以外でこんなやべえカオスなレースを見るとは思わなかったぜ。当事者だけど。

 

 

 「そこでチームを分けるが、その前に一つ注意だ。今回のレース。私達シリウス連合軍に求められているのは完全勝利。はっきり言って、どれ一つも落とすことは今後に影響が出る」

 

 

 「え・・・? でも、勝てば問題ないでしょう?」

 

 

 「そうそう。勝てば官軍。うち等なら勝利はオケマル水産でしょ」

 

 

 うん。オルフェとナギコの言うことも確かだけど、同時に樫本ちゃんがそう易々と下がるかといえばね。

 

 

 「ところがねえ。そうもいかないのですよぉ。少なくともあの挨拶でリギルがつかなくてもこの話を引っ込めなかった辺り、私達シリウスがすぐには来れず、リギル、生徒会が相手しても問題ないレベルまで仕上げられるということはできると自負しているのです。樫本理事長代理は」

 

 

 「そして、あの皇帝たちを見てそこまでできる手腕なのは私たちも知っている。だからこそ、皆の勝利を疑わないが、一矢報いた。そのわずかな風向きの変化を彼女は利用する」

 

 

 「まあ、要はあれだろ? 親父におやっさん。平野さん。アタシら世界最強格のシリウスに短期間で用意した急増チームで少しでも爪痕を残せればそれを出汁にトレセン学園にプログラムの有用さを見せつけられるし、今後、事ある毎にそれをそれとなく話題に出して支持者を増やす。

 

 あんな派手なことやる姉ちゃんだ。それくらい強かなことはするだろうし、自分についてくれたウマ娘を守るためにもやるだろうなあ」

 

 

 今回ファーストについては来なかったけど、エイシンフラッシュにミホノブルボンみたいにそういう練習、指導方針を好むウマ娘でGⅠを手にした怪物たちもいるからなあ。本人の今回の行動をうまくマスコミから大胆な改革とレベルアップと方便を使えば火消しも早くなる。

 

 

 ほんと、アタシらを敵に回しても保険があるあたり大したもんだわ。

 

 

 「そ、そういうわけだから・・・皆で頑張ろうね! シリウスみんなとゴルシちゃんとジャスタちゃんがいれば問題ないよ!」

 

 

 「おう! ゴルシちゃんにお任せ! その後であのメンバー全員に落書きしてやろうぜ!」

 

 

 「ふふふふ・・・シリウスとスピカの方針を叩きつぶすのは、私も本気で怒りますよ」

 

 

 「うむ。しばらくはシリウスの預かりになるが、よろしく頼むぞ! じゃあ、まずは芝3000メートルから。ここは当然ケイジ、ライス。ゴールドシップの三名で行く!!」

 

 

 「おう!」

 

 

 「はい!」

 

 

 「流石葛城のおっちゃん。わかってんねえ。ケイジとライス。最高のレースになるぜ!」

 

 

 よっし。さすがだ。アタシらの適正距離もだし、ふふふ。この二人とやるってんなら燃える! 

 

 

 「勝とうぜ。ライス。ゴルシ! その後でライスを胴上げだ!!」

 

 

 「だな! 空の果てまで飛んでいかせようぜ!!」

 

 

 「ふぇ!? ら、ライス空に飛んじゃうの!?」

 

 

 「その後はちゃんと受け止めるから。姫騎士様♪」

 

 

 とりあえず、アタシとライスで引きずり回してからのゴルシのぶっこ抜きを狙うか・・・うーん。それともライスとゴルシを後ろにしてアタシは前で幻惑逃げするかねえ? そこも一応人生ゲームしながら考えるか。

 

 

 「続いて、芝2400。ここはジェンティルドンナ、オルフェーヴルの二人だ。この距離での二人の強さは問題ない。ただ、先行を維持して常に囲まれないようにしていけ」

 

 

 「了解です・・・・・・・ジェンティル先輩。あの時のジャパンカップの借りを返すんで、早めに抜け出してきてくださいよ」

 

 

 「もちろんよオルフェーヴル。1000メートルで突き放して、そこからはランデブーをして頂戴? ケイジやスズカ先輩がいるくらいの気持ちで仕掛けたほうがいいかしら?」

 

 

 「そうっすね。やっぱりうち等は逃げを武器にする人多いですし、常に高速逃げを追うつもりでもやりましょうか」

 

 

 おおう。燃えているねぇこっちは。でもしっかりとまずはファーストを叩き潰すつもりでいる。うんうん。いいことだ。

 

 

 「続いては芝1600。当然メジロライトニング、キジノヒメミコの二人だ。久しぶりの日本芝。慣らすことを第一にだぞ」

 

 

 「勿論っすよ! トニビアンカ先輩とまたレースをするためにも負けられないっす!」

 

 

 「ケイジお姉さまにシービー先輩、スピカの皆さんのためにも叩きつぶしましょう・・・!!」

 

 

 「んー・・・二人で爆逃げするっすか? パーマー姉ちゃんとヘリオス先輩みたいに」

 

 

 「ですねえ。何気にコンビというかレースが同じなのは初めてですし、相談しに行きましょうか。あ、それとあちらのお菓子も頼む際に用意を」

 

 

 「ゴルシ。スズカにも手伝いできないか聞いておいて?」

 

 

 「あいよ。後ついでに飯を作るために食材もってくるわ」

 

 

 ありがたい。マイルと3000だとどうしても練習内容がずれるしね。愉快で賑やかにやるほうがいいし。

 

 

 「そして、芝の1200はジャスタウェイにヴィルシーナでやってもらう。ヴィルシーナは短距離では久しぶりのコーナーを使うものとなるし、ジャスタウェイも短距離は久しぶりだ。息の入れ方とコーナー確認のために私達も人を割くから遠慮なく頼ってくれ」

 

 

 「「はい!」」

 

 

 「しかし・・・短距離かあ。やっぱりケイジのハイラップの仕掛け方がいいのかな」

 

 

 「それくらいでいいけど・・・そうね。400くらいからギアをあげていくくらいでしょ。本当に気持ち一つ山を越えたと思えば佳境に入るので仕掛けの練習がメインになるんじゃない?」

 

 

 「そうなるかあ。短距離は一瞬だからね。とにかく仕掛け大事に。か」

 

 

 あードバイのレースに関しては直線一気のレースだったし、ジャスタウェイも1600~2400が主戦場だったしね。ある意味では短距離の層の薄さは不安だ・・・でもあたしも年齢制限以外での1200重賞は走っていないし、ギアがかかりづらいんだよなあ。どうしよ。

 

 

 カレンチャン、フラワーちゃんあたりに声かけようかしらぁん。

 

 

 「ぅおっほっほ。ダートはもちろん。ホッコー、ナギコ、ラニの三名で行きますよぉ。2000メートルは慣れている距離ですが日本の砂でのダートはホッコー以外は久しぶり。足首の鍛錬と柔軟をメインに行きましょう」

 

 

 「モチよ平野! シリウスダート頂点決定戦にするためにウチがファーストの皆ぶっちぎってあげるからねー♡」

 

 

 「分かりましたナギコちゃんには負けないし、ラニちゃんも容赦しないです凱旋帰国でのチームレース。いいPRイベント。宣伝になりそうだし」

 

 

 「お二人にも、シリウスを舐めたファーストにも負けるつもりはない! 全員相手だろうとやり切る!! 行こうぜお二人さん!! 祭りの用意じゃ!!」

 

 

 「あははー熱いねえ―♡ それでこそ私の好きピで後輩ちゃん♬ 本気で叩き潰し合うレースは久しぶりだし~」

 

 

 「本気でやり合ってこそよ。それに、私達シリウスでは基本身内の潰し合い上等だし」

 

 

 「お前ら一応チーム戦だからなー」

 

 

 ・・・勝つとは思うんだが、こいつら間違いなくファーストよりも身内でのレースに興奮していやがる。まあ、その分練習も身が入るし、レースも気合があればあるほどこいつら強くなるしいいか・・・

 

 

 「で、親父、松ちゃん。久保さん。ここで突かれてきそうなのは1200だと思うんだよ。一矢報いるのすらもどうにかしたいうち等としてはここを抑えたいけど、基本マイル以上のレースは技がものを言うが、この距離はまぐれも怖い。

 

 

 どうする? あたしかライス、誰か助っ人を呼ぶのは」

 

 

 「うーん・・・とはいえなあ。既にシリウスとこの連合部隊でレースはぶつかるという決まりだ。練習の手を借りるのはまだしも、人が増えるのは・・・」

 

 

 「そうなんですよねえ。僕も久保先輩も、短距離の選手を育てた経験は全くないですし・・・下手な机上の空論状態のものを今教えるわけには・・・」

 

 

 やっぱり人手と教育でどうにか刃を研ぎ澄ませる他ないのかねえ。残りは問題ないけど、1200が懸念点だよなあ。スプリントレースならそれこそ短期間で仕上げられるのもあるし、プレッシャーと判断の我慢を問われる時間も少ないから。

 

 

 「それなら私を1200に入れな。しっかり許可は貰ってきているよ」

 

 

 「誰だお前は!!」

 

 

 「無暗な拘束に憤る女! ゴルシーマッ!!」

 

 

 「違うお前じゃない!!」

 

 

 そういってきた姉ちゃんはまあたわわな胸に長い白髪を後ろに流して一部を間に跳ねさせているウマ娘。和服に何やら差し入れらしいお菓子と重箱を持ってきている。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・?? あれ? どっかで見たというか、嗅いだことのある匂いに、雰囲気。

 

 

 「なんだい? 呆然として」

 

 

 ・・・・・あー!!?

 

 

 「ヒサトモおばあさん!?」

 

 

 「ヒサトモひいばあちゃん!?!」

 

 

 「そうだよ! 全く。孫にひ孫に忘れられるほど顔を合わせていないつもりはないよ」

 

 

 ウッソだろお前(ばあちゃん)!? 若返っていやがるよおい!

 

 

 「いやいやいや!? おばあさん。何がどうして!?」

 

 

 「それがねえ。うちにアグネスタキオンとか言う小娘がやってきて、アオハル杯をかけたレースを行うから是非応援団として来てくれと言われてねえ。そのためにケイジと作った健康サプリを飲んでくれと言われるままに飲んだらこの姿さ」

 

 

 「あー? あ~・・・もしかして、けがの回復促進のために細胞の再生と分裂回数をリセット、増進させる薬の相談ついでに深夜テンションで確かに作ったような・・・」

 

 

 「ケイジ! 貴女それ最早人類とウマ娘の目標に手が届いたわよ!!? 封印しなさいそんなの!」

 

 

 「大丈夫ジェンティルちゃん。資料は速攻で燃やしたし、中身はアタシの頭の中だから・・・で、タキオンどうしたんだよひいばあちゃん」

 

 

 「とりあえず笑顔で褒めておいてからそれはそれとして簀巻きにして庭の木につるしておいたよ。それと、理子ちゃんからはもう許可も貰っている。全く・・・あの子は優秀だがいかんせん愛と生真面目な性分が過激すぎる。ケイジ、お灸とついでに矯正するために叩き直すよ!」

 

 

 おおう。こいつは頼もしいぜ。引退してから20数年後に復帰レースを一度だけしたけどそれでも若いウマ娘たちを蹴散らして勝利したダービーウマ娘の参戦とはな。

 

 

 「なら、アタシらと練習して暴れに行こうぜ? 老骨だからって容赦はしないからガワに負けない中身でいてくれよ?」

 

 

 「言うじゃないかおてんば娘。可愛いひ孫だろうと叩き潰せる強さを見せてやるわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数日後、改めてアオハル杯をかけたレースに参加するチームファーストに私達シリウスの登録と、それを公平な判定をしてもらう。不正がないようにしてもらうためにケイジ、前田家の口添えで知り合いの警察たちに警備を敷いてもらうことを許可してもらえた。

 

 

 これを聞いたディープお姉さまも参戦しようとしていたのを必死に抑えて、地団太を踏んでケイジに会いたいと駄々を捏ねるお姉さまを背後に出たのは心苦しかったですが、これ以上怪物たちを参加させてはチームの人数の差的にも大変ですので・・・後で応援に来てほしいとだけ連絡しておきましょう。

 

 

 すでに来ているチームファーストの皆さん。そして私たちは・・・

 

 

 「ええ・・・なんでケイジ磔刑みたいになっているの・・・?」

 

 

 「ゴルシさん・・・なんで口枷目隠し、拘束されているの・・・レクター博士みたいに・・・」

 

 

 うん。こうでもしないと色々と何をしでかすかわからな・・・・・あれ? 

 

 

 「うぇっ!? 平野!? あれ? ケイジじゃなくて変装させられている!?」

 

 

 「お~っほっほっほ! いい束縛でしたねえ。ケイジにいつの間にかやられまして」

 

 

 「じゃ、じゃあゴルシは・・・ラニじゃーん!!」

 

 

 「ラニちゃん。ああ、束縛されている姿も美しい・・・」

 

 

 言っている場合ですかジャスタさん! あの問題児どもはどこよ!!

 

 

 あたりを見回しているといつの間にか地面から台がせりあがってそこからはエルヴ〇ス・プ〇スリーの衣装を着けたケイジとゴルシが・・・

 

 

 「さぁー! ロックでファンクな賭けレース! 盛り上がらにゃあもったいない!」

 

 

 「行こうぜそのためのファーストミュージック! イッツ! しょー・・」

 

 

 「やってる場合か!」

 

 

 ハリセンでビンタしてからのタイキ先輩から習ったロープ術で捕縛して引きずってチームの方に戻す。このリーダー格共は・・・!

 

 

 「あああぁああー~! 削れる! 痛い痛い! ケイジちゃんが削られるぅう~」

 

 

 「生きている証拠だよ!」

 

 

 「言ってる場合かひげ熊ぁ!」

 

 

 「ぐはぁあー! これがロックの代償なのね! 主人公の代償なのねえー!!」

 

 

 「同時に暴走トラックよ貴女たちは! はぁー・・・じゃあ、とりあえず・・・審査役として、警察騎バ隊の皆さんにこのレースの間の警備と、整備をお願いする。でいいのですよね。樫本理事長代理」

 

 

 「え、ええ・・・それでは・・・審査とこの後の警備を・・・」

 

 

 真面目に国の一大事業代表のアスリート、アイドル養成所の方針を変えることになりかねないレースだもの。審査に不正が起きないように問題ない人材を集めてもらったつもりだけど・・・ケイジたち、前田家の声が入っているのが・・・真面目にケイジの行動と顔の広さが・・・はぁー・・・

 

 

 「では、双方の証明書はこの私海パン刑事が受け持ちます!」

 

 

 「「「「「キャァアアああああああああ!!!?」」」」」

 

 

 「おおっと失礼。ネクタイが歪んでおりましたな」

 

 

 ああー・・・・特殊刑事課も来ているのね・・・来ているわよねえー・・・・・ヒサトモさんという超大御所にケイジと縁があるメンバーといえば・・・私たちは見慣れているけど、ファーストの皆叫んでいるじゃない。

 

 

 「大丈夫よ皆さん」

 

 

 「これはいつものものだし、彼の紳士服。そして、決して女性には手を出さない紳士だから」

 

 

 「その服装が既にアウトなんだよ月光刑事!」

 

 

 「あ、両さん。来てくれたんだなあ」

 

 

 「そりゃートレセン学園の一大事と聞けばな。わし等くらいじゃないとウマ娘の騒ぎに対応できないのと、ケイジの奇行に対応できるということで・・・海パン刑事、月光刑事、革命刑事、ドルフィン刑事が来て警備をしてくれるそうだ」

 

 

 大真面目に警視庁の警視、事件解決率100%、世界をにぎわす怪盗団の一つを捕まえた敏腕警察官たちなのだけど・・・

 

 

 目の前で困惑と顔真っ赤と感情が迷子のまま爆走しているあのメンツ大丈夫かしら?

 

 

 「今回の護衛の一人を務めますウマ娘モッコリスイーパーです。優秀なウマ娘を生み出すためのウマぴょいもできますので是非是非よろしくお願いします!」

 

 

 「なぁにを言っているのよどの色ボケ馬鹿男ぉおー!!!」

 

 

 「ひぇええー!! 香しゃぁーん!! 駄目よ! 今回の護衛!! 大事にする護衛対象!」

 

 

 「ならあんたがそのための盾となりなさいぃ~~~!!!」

 

 

 ああー・・・・冴羽さんに香さん・・・まあ、うん。ケイジが未成年には手を出さないというか女として見ないから大丈夫といっていたけど・・・・・・・いきなり樫本理事長代理に手を出そうとは。

 

 

 「ヴィルシーナさん・・・葵さんとおハナさん。名瀬さん、小宮山さんには少し離れた場所で練習するよう通達してもらっていい?」

 

 

 「了解。あと真由美さんにもしばらくは前田家で保護してもらいましょうか」

 

 

 「そうね。護衛はしてもらえても別の方が危険になるわよ」

 

 

 もう、チームファーストの皆は何が何だかという顔しているし。はー・・・うん。日本に帰ってきた。日常だなあという感覚が戻ってきたわ。

 

 

 とりあえず、あと数秒後にあの100トンハンマーで芝が一部壊れないことを祈る他ないわね。……あ、吹っ飛んだ。

 

 

 「さーて。じゃ、このサインの瞬間から約3週間後のレースまで互いに頑張る他ねえか。愉快な祭りにしていこう!」

 

 

 「Heiケイジ! シリウスの皆。応援しているぜ」

 

 

 「ン~♪ DEEP♂DARK♂FANTASY♂ 万が一があってもわが国でも受け入れる」

 

 

 「ははっははは。ヴァン殿。それはわが国でもですぞ。是非是非シリウス杯をドバイミーティングの一つに作るためにもとうちでも騒がしくて」

 

 

 ええ・・・ビリートレーナーにヴァントレーナー。そしてアラブのさる御方まで・・・え、これ視察なの? 絶対カレンチャンのウマスタを見てきた口よね?

 

 

 いやまあ分かるわよ。だって世界中で暴れまわってきたシリウスの方針もこのレースの結果次第で変わるし、ケイジも私たちも嫌だから万が一の場合は留学という形で移動もあり得るし、うわー・・・下手すると真面目にこれはいま世界中でみられているわよねえ・・・シリウスにトレーナーとウマ娘獲得が万が一でもあり得るかもしれないレースになるわけだし。

 

 

 ほんと、大騒ぎ。世界の大レースの後だというのに更にお祭り騒ぎかあ・・・同時にシリウスの力量と樫本理事長代理の手腕もどうなるか。

 

 

 とりあえず、裏で手を回してあっちのケアをしておきましょう。でないと真面目にレース前に潰れそうだわあの子たち。そこまでする義理もないし、つぶれる方がいいけど、あの顔見て見捨てるほど非情になれない自分が憎いわ。




 新たな13人目のシリウス連合軍に参戦。若ヒサトモ。原作(史実でも)ルドルフより強いと言わしめたクリフジ。そのクリフジもヒサトモのような戦いぶりは出来ないと言わしめるほどの怪物牝馬。いざ参戦です。


 あ、メフィラスさんとケイジの話は次回に続きますん。


 シリウストレーナー陣


 前田トレーナー ケイジの親父にして前田グループ現総帥。基本はトレーナー陣の休暇とケイジ達の休みの調整と予算の用意をするくらいで基本皆を支える縁の下。


 平野トレーナー アメリカ、ダート組の育成をやっている。ナギコには何でかプールの際は突き落とされたり海に投げ飛ばされる。豊かな鼻の下の御髭と眼鏡が特徴柔らかい雰囲気の男性。担当ウマ娘は ナギコ ラニ ホッコータルマエ


 的矢トレーナー 欧州挑戦組とマイル組の育成を主にしている。皆に情が深く、定期的についついスポドリの粉を買いすぎてはシリウスの部屋のお菓子がちょいちょい一緒に増えていく。担当ウマ娘は ライスシャワー キジノヒメミコ メジロライトニング オルフェーヴル 


 葛城トレーナー ケイジとジェンティルドンナ担当。ケイジ達に振り回されつつも愉快に過ごしている。ケイジの練習量にたまに感覚がバグりそうになる。担当ウマ娘は ケイジ ジェンティルドンナ ヴィルシーナ


 松風サブトレーナー ケイジとほぼコンビで付いてはあちこち振り回されている。ケイジにはよ真由美ちゃんとくっつけと急かされている。


 真由美サブトレーナー ジェンティルドンナとオルフェーヴルたちをメインに担当。普段はほわほわと緩やかに過ごすのだが、担当の子たちの見せる戦意によく驚く。


 ひげ熊サブトレーナー トレーナー資格はあるのだが平野を支えるためにあえてサブでいる。資格手当はあるので稼ぎはいい。普段から覆面をかぶるふくよかさであだ名はクマさん。


 久保サブトレーナー 三名のサブトレーナーが多くのメンバーを抱えて動くときに助けるお助けポジ。基本はマネージャーのように裏方を特によくしている。


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もう一つのギフトってそういう

 アオハル杯編が好評でうれしいです。


 


 ~ケイジについて語るスレ オリンピック応援 364~

 

 

 19:名無しの競馬おじさん

 

 ケイジの騎手と出走も無事決まって安心したわ。

 

 

 20:名無しの競馬おじさん

 

 審査も無事通って、速攻で大会に挑んで優勝。オリンピック出場権を日本レコード出すことで確保。ほんと常に話題をくれるなこいつ。

 

 

 21:名無しの競馬おじさん

 

 相棒となった騎手さん。岩丸騎手も驚いていたなあ。いきなり前回のオリンピック銅メダルと同じタイムと得点をたたき出しての快勝だもんよ。こいつ本当にサラブレッド種かと。

 

 

 ただ、岩丸騎手もベテランだし、ラストチャンス。花舞台を見事に勝ってきてほしいね。

 

 

 22:名無しの競馬おじさん

 

 何度目かの生物学者たちを泡吹かせたり発狂させたりしていたし今更ともいえるなあ。

 

 

 23:名無しの競馬おじさん

 

 サラブレッド種と思えないような足腰の強靭なばねと頑丈さとパワー。類人猿を差し置いて人類に一番近い脳みそのつくりをしているとしか言えないレベルの頭の良さ。それでいて気性難にはならずに奇行はするけど穏やかなボスになったりとで。

 

 

 24:名無しの競馬おじさん

 

 漫画を読んだりシマウマの鳴き声を出したりとでほんとこいつ変な奴だけど最高に愉快だわ。

 

 

 25:名無しの競馬おじさん

 

 そしてそれに近いレベルの頭を持つ同期が多数いるというね。ゴルシもジャスタもケイジが勝利したと聞いたらすごくうれしくてここ最近ずっと上機嫌だとか。

 

 

 26:名無しの競馬おじさん

 

 ケイジは回りの馬たちを刺激して脳を覚醒させるとか言われているけど、ケイジ記念でのオルフェとケイジが誘導馬の仕事をしてからの脱走してレースに混じろうとしたMADの反応を見てもそう思えるわ。完全に反応が部長に見つかった時の両津と本田なんよ。

 

 

 27:名無しの競馬おじさん

 

 種牡馬としてのお仕事は牧場の数頭だけにして負担を減らして今はまた現役生活とはほんとこいつどうなるんだろうなあ。もうケイジの応援団としてドリフターズと北島サンちゃんと多くの人が集まっているし、アニメウマ娘の方でもケイジの応援をしているしねえ。

 

 

 28:名無しの競馬おじさん

 

 パカチュープだっけ? あれでも取り上げられていたし、アニメもケイジと仲良しのスぺちゃん主人公ですごくよかった。ケイジの出番が少ないから増やしてクレメンス。

 

 

 29:名無しの競馬おじさん

 

 あれは98世代が主役だから。それにしてもマジでケイジの声で山ちゃんもいるのはやっぱシマウマの声を出せることからなのかねえ。女性陣だらけの中に「どうも、ウマ娘ケイジの声をやっております山ちゃんで~す」と出てきたときの回りの反応が面白すぎる。

 

 

 30:名無しの競馬おじさん

 

 女性が9割以上を占めるアニメで急に超大御所が出てきてノリノリで美少女の声をアテレコしていく絵面が面白すぎるんよ。

 

 

 31:名無しの競馬おじさん

 

 しかもその動画にケイジもリアル出演して自分のウマ娘のビジュアル見ていいやん。って反応した後に動画に登場していた声優さんらにサインを書いて、自分も貰っての交換会をしたりね。

 

 

 32:名無しの競馬おじさん

 

 山ちゃんたちには自分の蹄をしっかりと魚拓みたいな感じでスタンプしてくれたり。ケイジの声優さんもリアルケイジもド級にサプライズしてくれたりで超盛り上がっていたなあ。

 

 そういえばゴルシも伊馬波さんにこれお前のウマ娘の姿だぞーってストラップ見せたらマジ? って感じで首をかしげていたとか。

 

 

 33:名無しの競馬おじさん

 

 この後サンちゃんとヘンさんにもサインを書いてあげて、サンちゃんは早速神棚に飾ったそうで。

 

 

 34:名無しの競馬おじさん

 

 大竹騎手と松風騎手もほっこりしていたとか。松風騎手もサトノダイヤモンドでケイジ記念と凱旋門賞を手にして完全に覚醒しているし、毎年GⅠを確保してくれるのに、葛城厩舎と中小陣営の依頼も断らずに乗りまくって、成果を出してくれてとほんと戦国コンビ忙しいな。

 

 

 35:名無しの競馬おじさん

 

 終わったはずの血統を再活性して、その強さと賢さでどこまでも突っ走り話題をくれるケイジに、覚醒して尚色んな馬主や厩舎の手助けを続けて騎乗依頼を断らず、どんな気性難でもあっという間に心を通わせて戦う松風騎手。

 

 

 真面目に新時代の風を作っているよねえ。大竹騎手の後継者でしょ。

 

 

 36:名無しの競馬おじさん

 

 以前競馬の番組で大竹騎手と松風騎手は馬の言葉がわかるということに本人ら以外は全員が頷いたり、気性難の乗りこなしは誰がいいかというので10名いるジョッキーのうち半分近くは松風騎手を勧めていたりとかでねえ。以前は全員で見事に押し付け合っていたのに。

 

 

 これで後は池沼騎手の後継者がいれば気性難の騎手は埋まるかも? 真面目に気性難の馬たちがデレデレで松風騎手に甘えているのがすごいわ。

 

 

 37:名無しの競馬おじさん

 

 新型の病気もどうにか風土病程度で抑え込めそうだし、オリンピック会場もしっかり立て直しもなく建設は着々。いい感じだよね。確か前田牧場に警備員を置いてくれて、乗馬クラブをやっている岡山グループがやっているんだよね。

 

 

 38:名無しの競馬おじさん

 

 バイトの人を雇っているんだけど、その際に支給されるTシャツに前田牧場と岡山グループコラボでケイジがプリントされているのがあって今プレミアの値段になっているとか。会長とその孫娘がケイジの大ファンだと会社のブログでつぶやいていたのも相まって。

 

 

 39:名無しの競馬おじさん

 

 そういえば、ナギコとヒメ、ケイジのステッカーを販売している北海道の自動車整備工もあるけど、ほんと基本コラボ商品なのに値段も安いんだよね。利益の多くは基本前田牧場以外に分けているとか。

 

 

 40:名無しの競馬おじさん

 

 予想以上の人気故に一応販売されるみたいだねえ。Tシャツが1枚1300円。帽子が2300円で来月から発売されるそうな。

 

 

 41:名無しの競馬おじさん

 

 安い。買いだな。

 

 

 42:名無しの競馬おじさん

 

 なお売り上げの一部は引退馬の支援に使われるように前田牧場と岡山グループはやっているようで。

 

 

 43:名無しの競馬おじさん

 

 そういえばウマ娘から思い出したけど、ダスカやメイショウドトウ、タイキシャトル、ナイスネイチャとかの生活も助けられるのか。傾奇者の応援になってオリンピックを応援して、引退馬の寄付にもなる。最高か?

 

 

 44:名無しの競馬おじさん

 

 伊馬波厩務員さんも早速買いに行きますと言っていたし、これは楽しみだぜ。

 

 

 45:名無しの競馬おじさん

 

 アニメも最高だし、アニメにもちらっと出てきたケイジが2020年にはオリンピックで大暴れ。アニメ二期も2021年に放送決定。たまらねえ。

 

 

 46:名無しの競馬おじさん

 

 多分世界でも珍しいレベルで注目されているよねえ。歴代オリンピックでも馬術に凄い注目がされているのが。

 

 

 47:名無しの競馬おじさん

 

 そりゃあ、世界最強の名馬のまま引退したケイジがオリンピックにも実力を発揮して殴りこんでくるし、しかもその馬が擬人化美少女になっているわで常に話題が絶えないまま暴れているのだからなあ。

 

 

 48:名無しの競馬おじさん

 

 もしケイジが優勝したら種牡馬としての値段も上がりそうだなあ。あのばねとパワーと気性を狙ってほしがる人もさらに増えるだろうし。

 

 

 49:名無しの競馬おじさん

 

 瞬発力もおそらく馬体が軽ければやばいのがわかったし、ステイヤー系のケイジ。最高速度もあの有馬記念や数々のワールドレコードを見ればわかるし、今の短距離、中距離が増えつつある競馬界にも新風を巻き起こしてほしいな。

 

 

 50:名無しの競馬おじさん

 

 とりあえず、シャツの予約だなあ。買えるといいけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「どういうことだろうな」

 

 

 「どういうことでしょうかねえ」

 

 

 『どういうことなの・・・』

 

 

 今日は牧場で静養と放牧で戻ってきて、俺とトモゾウとおやっさんで俺の産駒たちの性別を見て首をかしげている。

 

 

 「9割5分が牝馬とはなあ。しかも再度の種付けもなしで受胎率9割6分をキープ。ここまで二年連続で極端な偏りが起こるとは。ダスカじゃあるまいし」

 

 

 「まあ、業界では繁殖牝馬が大量に増えたということで買いに来る富豪もいて、あちこちの牧場が持ち直すきっかけになったりでいいらしいですけど」

 

 

 「後、中々素質馬が多いのと、気性が大人しいらしいな。ケイジの才能が継いでくれる子が多そうだな」

 

 

 『ああー・・・もしかして、神様の言っていたもう一つのギフトはこういうことかあ』

 

 

 神様が俺にくれたギフト。体の頑丈さに胃の頑丈さ。そして種の強さだけど、こういうことなのね。受胎率のこの高さ。そして俺の才能と、おそらくだけど牝系の強さも引き出している。でないとうちの牧場の産駒の多くが才能もちなのに納得がいかん。

 

 

 ちなみに素でこれに近い的中率のゴルシ。あいつやっぱすげえなあ。おかげで今は俺に種牡馬としての依頼が出来ない間、さらに人気も増していくだろうし。

 

 

 「とりあえず、うちは生産牧場だから牝馬が多いのに越したことはないしこれからもコツコツやっていこう。ケイジ。お前さんにも無理をさせるが、もう1年と少し。頑張って走ってくれ」

 

 

 『問題ねえよおやっさん。世界を沸かして帰ってくるわ』

 

 

 「あ、そうだケイジ。これは飲んでも大丈夫だそうだから、持ってきたぞ。16冠馬の馬用のリンゴ酒。一杯飲んでいけ。第一号の試飲だぞ」

 

 

 お、トモゾウできたのか。おぉー・・・いい香りだ。

 

 

 ん・・・んーむ。甘い。すげえ。凄く甘い。それに酒精もあんまり感じないし、あれだなあ。カクテルとかにも使えそうだし、普通にソフトドリンクみたいに味わえそう。

 

 

 『ケイジお兄様。そのお酒は?』

 

 

 『うふふーおいしそうな香り♪ 私にも飲ませて?』

 

 

 『お酒です? この前の黒ビール美味しかったですよねえ』

 

 

 『お、俺をイメージしたお酒なんだよ。ナギコ呼んで来い。みんなで飲むぞー』

 

 

 ヒメたちも来たので絶賛リードホース兼妊婦のナギコを呼ぶようにヒメに頼んで、ついでにトモゾウは察するとみんなのために少し冷やした水と混ぜたリンゴ酒を注いで用意して、そこからナギコも入ってくる。

 

 

 『おー? ケイジのお酒って? ウマウマ♡ 役得ねー♪ 美味しいし、程よく冷えて美味しいし、うふふ。時々ほしいかも?』

 

 

 『染みわたりますぅ・・・あーおいひい・・・お兄様の名前を冠したお酒・・・ふふ。流石です』

 

 

 『ふふ。これは元気が出るわ♪ リンゴ味の水なんて最高♪』

 

 

 『私はバナナ味も欲しいですね』

 

 

 ミレーネちゃんはバナナ派かあ。

 

 

 「ふむ。いい飲みっぷりだな。まあ、最近はニンニクみそとかの味噌汁を産後にしばらく飲ませていたし、甘いものに飢えていたのかもなあ」

 

 

 「ですねえ。ところで牧場長。結構16冠馬牧場の倉庫にありましたけど、あれどうするんです?」

 

 

 「む? ああ、ほら。アニメウマ娘にケイジも出ただろう? それで、ウマ娘に出ていた名馬たちを預かっていた牧場にも記念として是非送ろうとなあ」

 

 

 『スぺちゃん喜ぶなあ。あいつも元気だし、一緒にまた酒を飲みたいぜ。一緒にアニメを見てこれお前なんだぜー? ってからかいたい』

 

 

 とりあえず、あれだねえ。うん。ゴルシたちも喜んでもらえそうだし、なはは。いいお酒だぜ。




 ケイジのもう一つのギフトがいかんなく発揮されております。産駒の特徴として母方の良さを引き出す。ケイジからはパワー&スタミナ&頭の良さ。そして気性は大人しい、人懐っこい子が多めです。

 サンデーに近い感じといえばいいでしょうか。そして的中率も激高。


 あ、スぺちゃんはバリバリ元気です。牧場でケイジのリンゴ酒を美味しくスぺちゃんの声優さんと飲んでいるでしょう。そしてグラスもケイジのお酒と聞いてタンポポと一緒に一杯。



~おまけ~


メフィラス「うむ・・・この寿司というのは・・・驚きだな」


ケイジ「なはは。だろぉ? シンプルで野蛮に見えるかもしれねえ調理だが、この美味さがいいんだな」


メフィラス「この寿司につける醤油にワサビ、そして酢飯の味が複雑に絡みつつも自己主張を繰り返すことでこの小さな一握りでいくつもの顔を味わえる。そしてこの肉のネットリと、あるいは強く出てくる肉の味・・・たまらない。

そしてこのお茶にガリで口の中をリセットしての再度味わえる・・・これが江戸時代のファストフードとは。贅沢なものだ」


ケイジ「おいおい。これだけで満足しちゃあいけねえ。ほれ。茶碗蒸し。これもいいぞ?」


ゴルシ「よー! ケイジ! 飯食わせてくれ・・・あー? 宇宙人じゃーん。マジかケイジ。お前本当におもしれーな!」


メフィラス「面白いことを言うね。ゴールドシップ君」


ゴルシ「なんだよー気構えなくて大丈夫だぜ? メフィラス星人。ゴルシちゃんはすぐわかるんだからよ。あと、アタシの方でも宇宙人の知り合いが出来てな」


ケイジ「ほい。お通しとタマゴ、鯛な。で? 宇宙人の知り合いだ? 誰だよ」


ゴルシ「おう! メトロン星人だ。私とケイジの大ファンでな。今度一緒に会わねえか? 今日はなんでもお茶とオタ芸の練習で気合入れて会う準備するって。うんうん。流石ケイジ! いい味」


メフィラス「・・・ケイジ君に続いて君にもばれるとは。なら、素直に紹介させてもらう。私はメフィラス星人。人前では山本と呼んでほしい(ケイジ君もだが、この子も思考が読めない・・・どうなっているんだ。他と比べてもこのウマ娘たちは規格外だ)」


ゴルシ「了解だ。そんでよ、この前のアタシとケイジの生徒会でのあれこれを話したらもうそれだけで限界突破してなあ。おもしれえ声上げていたのなんのって!」


ケイジ「なははは! おもしれえやつを見つけてきたな。なら明日はアタシとゴルシで山本とそいつのためのゲリラライブするぞ! というわけで、ほれ、英気を養うために、蝦蛄、ムール貝、中トロな」


~続け~


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ウマ娘エピソード 24 つまらない走りと祭りはしない主義

 雨のせいで日課の散歩が出来なかったのでがんばりまっする。台風で海の中をかき混ぜてサンゴたちが元気になるといいなあ。後、断水問題解決してクレメンス。


 ケイジをポケモンに例えると何が近いでしょうかね。イメージとして。





 「と、いうわけでねえ。昔何度か顔を合わせていたがあの生真面目さと愛が暴走したんだろうさ」

 

 

 「なぁーるほどねえ。まあ、それこうなるあたり、あれか? 最近で大きいのだとスズカとかテイオーの怪我の件でいよいよ限界を迎えた感じかねえ」

 

 

 「さあね。ただ、この機会を虎視眈々と待っていたのは確かだろうね」

 

 

 シリウスのメンバーたちと護衛、警備の皆さんで連日学園に泊まり込んでの練習の日々。アタシらも食材の買い出しやらいろいろと用意をしつつの帰り道。ヒサトモひいばあちゃんから理子ちゃんの事を聞いてなるほどなと思って首を横にひねる。

 

 

 要は敏腕でそれでどうにか言っていたのだけど思わぬ一件で歪んだというかなんというか。

 

 

 その暴走のせいで今や世間は問題ないけど、既に情報をキャッチした世界のウマ娘のトレーナーや大企業がこの賭けレースに注目して凄いことになっているからなあ。やれやれ。とんでもねえボヤ騒ぎになったもんだ。

 

 

 とはいえ、これを潰すだけではもったいないんだよなあ。

 

 

 「ならま、一つ思いついた。せっかくだし、派手にやってやろうぜ?」

 

 

 「この悪ガキ。何を思いついたんだい?」

 

 

 「ひいばあちゃん。アタシの気性を知っているだろ?」

 

 

 「・・・食えないが、いい女に成長したね。何でも言いな。その目論見、一枚かませてもらおうじゃないか」

 

 

 なら話は早い。ルナねえと、えーとジャスタの所の親父と、ヴィルシーナ、ディープの所にも連絡と・・・岡崎のおっちゃんも呼んで。そうだなあ・・・中川、麗子の二人にも連絡だ。

 

 

 ひいばあちゃんもメジロ家に連絡して、あーあっちの方じゃアサマばあちゃんがすげえ驚いているのがわかるな。なはは。いいじゃんいいじゃん。どうせやるのなら、思いきりやるほうがいい。

 

 

 シリウスの皆にもつまらないレースはしないほうがいいよなあ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よし。海パン刑事。バナナの補給な。あと休憩用のコーヒーとお水」

 

 

 「助かる。栄養補給の時には私はバナナ派なのでな」

 

 

 「ケイジ!? しれっと殿方のぱぱぱ・・・ん・・・を開けてバナナを入れないでください!」

 

 

 「ええ・・・どうやってあの中に奇麗に入っているの・・・」

 

 

 「ヴィルシーナ先輩。あれは考えるだけ無駄な類っす」

 

 

 「うん。ケイジ君の豚汁はおいしいなあ・・・あったまる」

 

 

 「部長。コーヒーどうぞ」

 

 

 全く。特殊刑事課の連中相手にひるまないケイジはほんとどういう精神しているんだ? 部長ももうあっちを見ないようにしながら警備しているってのに。

 

 

 「おお、助かる。しかし・・・まさかの事態だが、ああも明るく過ごしている彼女たちは強いな。両津」

 

 

 ケイジお手製の豚汁に、肉じゃが、漬物、ご飯にコーヒー、お茶、水、オレンジジュースのどれかを選んでの晩御飯を警備の皆に振る舞ってもらったのを部長と食べつつ休憩時間。シリウスメンバーの全く尽きない元気と明るさに部長も不安な顔をしている。

 

 

 アオハル杯のみならず中央トレセンの今後を背負う立場というのにその表情には憂いや不安は全くない。むしろ部長が孫を見るような目で心配そうに見守っている始末だし、周りの警察たちもそうだ。

 

 

 まあ、気持ちはわかる。ただ、同時にわしはもう一つの明るい理由も分かる。

 

 

 「部長。ケイジ達がああも明るいのはまず、ああいう大舞台に慣れているのが一つ。それと、この機会自体がシリウスには本当に初めてなんですよ」

 

 

 「と、いうと?」

 

 

 「基本、シリウスは国外に多くいくし、チーム戦もあまりしていない。そんな中でこんな形ですがシリウスというチーム全員で一丸になってぶつかる機会がやってきた。真っ向から一つの相手に大舞台で、普段はぶつかり合うメンバーで連携できる。チームプレイをできるのが心底嬉しいんですよ彼女たちは」

 

 

 「国のアスリート、アイドルの一大養成施設の今後をかけた勝負でそんな思考を・・・」

 

 

 「何より、ケイジという存在が支えるのも大きいでしょうけどね。彼女は間違いなく傾奇者、千両役者にふさわしい大物です」

 

 

 なるほど。納得もいく。同時に、目の前でぎゃいぎゃいと騒がしく食事を楽しみながら過ごして、笑顔のままでいるみんなを見て笑顔になる。

 

 

 警察官としての人生の中で彼女たちを警備して、見守れることの誇らしさ。この歳になってこれを味わえるとは思わなかった。

 

 

 「両津。彼女たちを無事にレースに送り出せるよう。警備も頑張ろう」

 

 

 「ですね。だからこそ、今はご飯を食べてから仮眠をとってくださいよ。トレーナー寮のプレハブにわしらの仮眠室があるので。お風呂もそっちでみたいです」

 

 

 「真面目に、短期間で即座にこれを用意したというのはすごいな」

 

 

 「前田家のバックアップ様様ですね。ワシは先に休んでいますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『さあ、皆さま! まさかまさかの超突然のイベントながらも間違いなく国の中でもトップレベルの祭りとなりました! アオハル杯の前夜祭というにはあまりにも豪華!! 聞こえますでしょうか30万人の観客の歓声が! 世界中のメディアも集まってのこの騒ぎ!』

 

 

 「なによ・・・これは・・・!」

 

 

 聞いていない! 聞いていない! トレセン学園内で終わらせるはずの騒ぎのはずがまさかの超大騒ぎの、しかもアオハル杯の前の祭りということになっていての祭りになっている。

 

 

 周りには屋台や出店が列をなし、シリウスのグッズやチームファーストのメンバーへの取材も多数。

 

 

 何が何だか思考が追い付かない。

 

 

 「失礼。樫本女史。ケイジちゃんからの伝言だ」

 

 

 「冴羽・・・さん。失礼します」

 

 

 そばにやってきたのは前に私にナンパしてきたケイジのボディーガードと名乗っていた男性。ケイジから預かったというメモを受け取り開いてみる。

 

 

 「『どうせやるのなら派手な祭りにしたほうがいいし、そっちも勝つつもりなんだろう? ならそのお披露目は盛大にね。チームファーストのチーム戦での初陣。楽しもうや!』・・・! この傾奇者・・・奔放なあの子は・・・!」

 

 

 「あの子なりの思惑はあると思うがね。まあ、必要でしたらお悩み相談も受け付けますので。それでは」

 

 

 そういって後ろにいた女性と一緒に歩いていく。此方の焦りをみんなに見せないように急いで取り繕うが、皆は不安を隠せずにいる。

 

 

 『それもそうでしょう! かつて敏腕トレーナーとして名をはせた樫本理子理事長代理が育てたチームファーストの初陣、そしてその相手は今まで世界中で戦いながら一度もチーム戦をしたことのなかったチームシリウスのメンバー、そしてそこに最高のライバルのゴールドシップ、ジャスタウェイの連合チームとなっての総出のバトル!

 

 

 更にはそこに前田家からの秘蔵のスプリンターか!? マエダノキズナも参戦しての超豪華メンバーでの戦いとなりました! 徹底管理の手腕はシリウスの奔放さを止める壁となるか! 世界をはばたくシリウスの強さはどこまでも砕いていくか! 世紀の一戦となりました!!』

 

 

 「待っていたぞー!! チームシリウスー!!」

 

 

 「マエダノキズナちゃんも凄い美人だなあ・・・前田家のメンバーもフル出場。これはすごい!」

 

 

 「チームファーストも勇気があるし推せる!! 頑張れよー!!」

 

 

 「おおーあの樫本さんのチームか・・・実際、あっという間に強くさせていたからなあ。今回はどうなるか」

 

 

 「シリウスに一矢報いれば間違いなく世界レベルだな」

 

 

 「シリウスメンバーフル&ゴルシ、ジャスタ、そしてそこに新星のマエダノキズナちゃん。最高だぜ! 急いで有給申請してきたかいがある!」

 

 

 もう逃げることや理事長代理の権限を使用してもどうにもなることはない。ここで逃げること自体が敗北を意味するし、もう勝利するしかない。やるしかないのだ。

 

 

 気合を入れろ理子。私の目指す場所はこれくらいのことは想定して砕かないといけない。

 

 

 チームファーストの皆を奮い立たせるために、私も皆を集めて改めて作戦を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「全く。大騒ぎにしましたねケイジ」

 

 

 「これくらいがいいんだよ。アタシ等にチンケなレースは合わねえだろ? ヴィルシーナ」

 

 

 「はあ・・・まあ、お父さんもまさかの大仕事に歓喜でしたし、これならURAに面目が立つどころかそのままもう一つのチームレースが設立されそうな勢いですけど。純利益。今の時点で数十億叩きだしていますしね。ライブ前のグッズ販売もまだだというのに」

 

 

 「お姉さまもすっごくウキウキで手を貸すと言っていましたわね。ケイジの名前を出せばすぐに。これなら我が家の社員にも冬の臨時ボーナスが出せそうだとお父様も笑っていましたわ」

 

 

 プイちゃんありがたいねえ。ディープ家の力を借りられたのも相まって芋ずる式に協力者を募ってこのレースにできたし。

 

 

 「さて・・・出走レースの順番が出たね」

 

 

 お、ひいばあちゃん。今はマエダノキズナと名乗っているけど、このレースでどういう順番で挑むかが出たか。

 

 

 最初に1200メートル。次に1600メートル、そしてダートの2000メートル、その後に2400メートル。締めに3000メートルという感じか。あたしは大トリだねえ。

 

 

 「ちぇー、私とケイジが最初ならいろいろできたのにマジ饅頭だわ」

 

 

 「むしろそれを抑えるためにしたと思うのは私だけかしら」

 

 

 「ジャスタっち。多分それあっているよ。まー大トリにうちらの大将とライバル。最強ステイヤーを残すのはいい判断でもあるっしょ♪」

 

 

 「お姉さまたちにゴルシさん、ライス先輩を盛り上げる最後に残すのは分かっていますね・・・なら、そのためのバトンは意地でも渡します!」

 

 

 「ライスも、皆に負けないよう頑張るから、応援するから頑張ろうね!」

 

 

 なはは。頼もしい仲間たちだぜ。負ける気がしねえ。そしてあたしも気合が入るぜ。

 

 

 『この超豪華なチームレースはまさしく世界が釘付け! 最強か新星か! そういう意味でもまさしくこれ以上ないでしょう! トレセン学園の生徒も総出での応援となり黄色い歓声が会場を響かせる!!

 

 

 今か今かと会場からシリウスコールが飛び交います! さあ、いよいよ始まります!』

 

 

 おっと。そろそろ始めるか。

 

 

 「よう。そんじゃあ、皆。勝って笑おうぜ! どこまでもバカバカしく、最高にハジケていこうや!!」

 

 

 「「「「「「オウッ!!!!」」」」」」

 

 

 「じゃあ、行ってくるわ。負けないわよ。私は」

 

 

 「ふふ。しっかり覚えてきたしね。幸先いいスタートを切って見せるわ」

 

 

 「さてさて、年寄りの冷や水といわれないように行ってくるかねえ」

 

 

 三人を見送り、控室でゆっくりしつつ見ますか。

 

 

 『さあ、チームファーストの皆が出てきた後にこのメンバーが出ました! まずは世界最強のマイラー、ミドルディスタンスの戦士の一人! ジャスタウェイ登場! 続いては怪物の万能女王ヴィルシーナ! そしてシリウスのジョーカーなるかマエダノキズナ!! シリウスチームの登場です!』

 

 

 皆大騒ぎだねえ。スピカのマイル周辺の怪物と、うちの万能女王。知られてはいないがかつての伝説が参加だもんな。面白いわ。

 

 

 さてさて、まずはゲートに入った・・・

 

 

 

 『スタートしました! まず前に出ていくのはジャスタウェイ、ヴィルシーナ! 一気に前に出ていく! デュオペルテ、アジサイゲッコウが二人を猛追する一方ジェネラルフライトが後ろにつきます! その後ろにマエダノキズナが最後尾となりました!!』

 

 

 ふむ。スリップストリームを作って一着を狙うか、一着は逃してもそれ以降は全部独占してポイントを狙う感じか。

 

 

 まあ、いい動きだけどなあ・・・それを悠長にできる相手じゃねえぞ?

 

 

 『最初のコーナーを曲がり、早くも中盤になりました! スプリントレースは短い! この刹那の勝負ももう残り僅かになりつつあります! さあアジサイゲッコウ、ジェネラルフライトが加速をしていきます!! ジャスタウェイ、ヴィルシーナの背後から一気に抜け出そうとし・・・

 

 

 ああっと! 爆発した!! ジャスタウェイの末脚が爆発! ここからさらに二段加速をしていくのかジャスタウェイ! そこに続く形でヴィルシーナが女王としての強さを見せていきます!』

 

 

 もうわずか。いやあ、真面目にスプリントレースは距離が短いなあ。アタシはしっかり仕込んでもエンジンがかかるのがすこしかかるし、やっぱり難しそうだなあ。

 

 

 『もう残り僅か! 以前先頭はキープするヴィルシーナ! ジャスタウェイが突き放していきますがジェネラルフライトが喰らい付きます! 残りもう少し、もう残り200・・・ああっと! マエダノキズナが飛んできた! まるで怪物! 剛脚であっという間にごぼう抜きして三番手につきます!

 

 

 首位はシリウスメンバーでそのまま残り100・・・50・・・・ゴォオール!!

 

 

 結果は1着ヴィルシーナ! 二着は・・・・・・・・写真判定の結果ジャスタウェイ、マエダノキズナの同着となります! 4着にジェネラルフライト、5着にデュオペルテ、6着にアジサイゲッコウとなります!! 早速チームシリウス好発進! そして流石万能女王! ドバイのスプリントレースを連覇した実績は伊達じゃありませんん!』

 

 

 よし。山は越えたか。無事に勝利だねえ。後は問題ねえわ。

 

 

 『ふふふ。無事にスプリント女王の座は維持ですね』

 

 

 『くはぁー・・・付け焼刃じゃあ、まだまだかあ・・・これからだわ』

 

 

 『ははははは!! 新世代もさすがだ! いやあ負けたがスッキリだねえ。ファーストの皆もお疲れさん! いいバトルだったよ!』

 

 

 レースを終えてみんなで握手をしてから無事に戻ってくるメンバー。

 

 

 「無事にバトンは繋ぎましたよ。お願いしますね」

 

 

 「ふぅー・・・なんやかんや今になってどっと来た・・・頑張って。マイルクイーンズ♪」

 

 

 「いやあー楽しかった。遊んできな最強チーム! 後でお小遣い上げるよ」

 

 

 「行ってくるっす!」

 

 

 「マイルコンビは負けません! 見ていてくださいねお姉さま!!」

 

 

 次の二人も参加。思えばマイルと中距離はハンデ戦みたいなもんか。まあ、一番きついのが終わったし問題ないだろ。

 

 

 「ふぅ・・・安心ではないが・・・山は越えたか」

 

 

 「ですね。後は・・・ペースもへったくれもない。マイペースのままとことん引きずる回すメンバーばかりだ。問題ない」

 

 

 「あはは。私が言うのも何ですが、本当に後は問題ないというか、ほんとそういうのばかりですしね」

 

 

 「ケイジとシップが大トリですし問題ないですよ」

 

 

 信頼されているのか何なのか。お。始まった。

 

 

 『・・・続きまして! やってきましたアジアと欧州のマイル王者コンビが参上です! マイルの電撃王者メジロライトニング! マイルを襲う漆黒の暴風のごとき羽ばたき! キジノヒメミコ! マイル制覇の怪物コンビ! 初のタッグ戦で参上だああ!!!』

 

 

 仲良く二人で腕を組んであげるあたりほんとこの二人もショーの盛り上げ方を分かっているなあ。ははは。既に会場をものにしていらあ。

 

 

 二人ともいい感じに勝負服と自身の美貌をアピールしつつ、ゲートにガチャン。

 

 

 『スタートしました! メジロライトニング、キジノヒメミコこれは爆逃げか!! 師匠且つリーダーのケイジ譲りの大逃げにあっという間にチームファーストとの差が開いていく!!

 

 

 デュオジャヌイヤが追うも差が縮まらない!! タイドアンドフロウ、アゲインストゲイル は後位につけるかどうか迷っているのか! 速度にぶれがあるように感じられるぞ!』

 

 

 あ、ダメだこれ。あの二人は本来中距離も、ステイヤーも狙えるのをマイルの中に全部ぶち込んでいるから最初から逃げで行ったときは全力で付き合っていかないといけないのに。あー・・・・

 

 

 「終わったなーありゃ」

 

 

 「だな。コーナーでさらに差を付けられるのが落ち。やるとしたら・・・最後の直線でどれだけ差を縮められるか。だろ。ゴルシならどうする?」

 

 

 「気が向いたときにズドン。それで何とかなる。と思う」

 

 

 「これだから怖いよあんたは」

 

 

 「お前が最強のライバルだからな。いやでも鍛えられるもんさ♪」

 

 

 いうねえ。おっと。

 

 

 『さあ、第三コーナーを曲がって最後の直線! 以前先頭はぴったりと張り付いたままメジロライトニング、キジノヒメミコが突っ走る! グイグイ差が伸びていくがそれでもデュオジャヌイヤは喰らい付く!

 

 

 残り100メートル! キジノヒメミコ最後の一押しでメジロライトニングを突き放してゴールイン!! 一着はキジノヒメミコ! 二着はメジロライトニング!! マイル女王コンビの大逃げがさく裂しましたがデュオジャヌイヤはなんと2バ身まで縮める快挙!! キジノヒメミコに一番近づいたもう一人です!』

 

 

 『これが・・・シリウス!! 世界最強なのです!!』

 

 

 『ぬぉおお!! 次は勝つ! 必ず最強の座を手にするっすよ!』

 

 

 ははは。お見事。しかし・・・ふふ。いいねいいね。この二人。あの爆逃げコンビみたいだわ♪ いい勉強をできたようで。

 

 

 「ふぅ・・・やってきました! お姉さま、少し休ませてくださいませ♪」

 

 

 「くっはあぁー!! 爆逃げを一緒にするのはいいっすね! 来年もしたいっす。ヒメ先輩!」

 

 

 「はふ・・・もちろんです。一緒に頑張りましょう?」

 

 

 おう。しれっとアタシの膝を借りるなヒメ。まあいいけどさ。保冷剤を首筋にあてながらなでなでしておくか。

 

 

 「そんじゃ、行ってくるっしょー♪」

 

 

 「暴れてくるよぉ~」

 

 

 「ぶっ飛ばす!!」

 

 

 そんでその後はダート三人衆。うん・・・・ご愁傷様。真面目にやばいわ。全員普段見えないレベルのやる気出している。

 

 

 「・・・大丈夫かな」

 

 

 「とりあえず大差を付けられなければいいんじゃね?」

 

 

 「そこまで弱くはないわよ・・・きっと」

 

 

 ~キングクリムゾン~

 

 

 

 『圧勝! 圧巻!! ダート戦はまさしく横綱相撲! ナギコも前に出ての競り合いを制したのはナギコが一着! 二着はわずか数センチの差でしたホッコータルマエ! 三着もこれまた数センチでしたラニ! その後ろの差は10バ身以上!! これがアメリカ、ドバイで暴れた怪物トリオの力なのかぁああああ!!!!』

 

 

 あちゃーむしろいい方か。

 

 

 ナギコも普段のやり方だけど速すぎてめんどくさくなってからそのままホッコーとラニと一緒に三人の勝負にぶち込んでいるしで、真面目にこいつら三人で勝負するために最初でふりちぎっていきやがった。

 

 

 「いよっしゃ! 無敗伝説更新~♪ どうよ♡」

 

 

 「ちぇー勝てなかったかあ。今度は勝つもんね~」

 

 

 「くそぉ・・・まだ先輩方には遠かった・・・! でも、今度こそ!」

 

 

 三人とも愉快に戻ってきた。いやーヒメたちあんまり汗かいてないな。

 

 

 「そんじゃ、任せたよ。二人とも♪」

 

 

 「何の問題もないよ二人なら~」

 

 

 「何の心配もしていないです。武運を!」

 

 

 「任せて」

 

 

 「行ってくるっす」

 

 

 「「必ずぶっ倒す!!」」

 

 

 やる気満々で出ていくオルフェとジェンティルちゃん。ああーこれもまた・・・うん。なはは。こりゃあ問題ないね。




 ケイジが唯のしんみり緊張したレースにするわけないよねという。ついでにある思惑があります。


~おまけ~


丹波さん「はぁー・・・ケイジちゃん、ゴルシちゃんのライブ・・・尊かった・・・最高。サインに握手に写真に手料理・・・天国・・・」


メフィラス「まさかこの星のアイドルオタクのメトロン星人と出会うとは思わなかったよ」


丹波さん「ははは。私も元々は侵略者だったんだけどね。そのための道具がまるで通用しなかったんだよ」


メフィラス「この星の科学水準で通じなかった?」


丹波さん「ああ、その後に見たアイドルの魅力に魅了されてね。人の持つ力は時に科学やそういう数字を超えることがあるって分かったし、星を越えようとも、レベルが違おうとも仲良くなれる。ともに夢中になれるのを知った」


メフィラス「・・・確かに、ケイジ君のくれた料理に、ゴールドシップ君のくれた魚料理もおいしかったな・・・一緒に出してくれたお酒も」


丹波さん「その後は彼女の幸せを見届けて、また旅をしていたらこの世界線の地球について、今はゴルシちゃんの所でオタ芸教室と動画配信、アイドルグッズのデザインを担当しているよ。


 君も、わかるだろう? この星の美しさと魅力を。まだ私達からすれば赤子だが、だからこそある美しさや情緒、光を・・・」


メフィラス「・・・ええ。この星は、意外なほど刺激と発見をくれました」


丹波「よかったよ。君がそう言ってくれて。そして君も君なりに何か彼女たちに相談してもいいのではないかね? 必ず、面白いことをしてくれるよ」


メフィラス「そうですね。是非一度、試してみましょう」



~数日後~


ケイジ「どうしたんだよ。メフィラス。無人島に急にワープして」


ゴルシ「この前戦艦大和に積み込んでいた沖縄で使うはずだった資金を詰め込んだ金庫を一緒に見つけたけど、それか?」


メフィラス「いいや、一つ。君たちがウマ娘、この星の代表的存在であり、その知識と私たち異星人を受け止めた度量を見込んで一つゲームをしよう」
(指パッチンして銀の棺のようなものを出す)


メフィラス「これはベータ―ボックスといって、私達外星人が巨大化する際に使用しているシステムだ。これに関する素材と、数式を用意した。どうだい。試しにこれを複製してみないか?」



~続く~


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花は強く美しいのねん

 ケイジとプイプイちゃんのウマ娘エピソードもかいてみようか考えております。多分一番いちゃつく。


 ケイジの一口メモ メジロドーベルにジャスタウェイと一緒にマンガの指導とアシスタントをしている。モデルや衣装の着せ替えはエアジハードも手伝うことしばしば。皆で売り子もするし、作品内のキャラのアクリルキーホルダーなどの作成もする。


 最近丹波さんも手伝う


 少し前にハジケリスト世代だろ! は一周年を迎えました! ここまで長く続いたのも皆様の応援、感想、評価のおかげです! これからもコツコツ。ペースは落ちるかもしれませんがやっていくので皆様よろしくお願いします。


 「真由美さん。まだまだ未熟で、ジョッキーとして10年ようやく行くかな僕ですが、ケイジ記念を勝ててようやく自信がつきました。これからもずっと僕を支えてください!」

 

 

 「・・・はい・・・!」

 

 

 「では、指輪交換と新郎新婦の誓いのキスを」

 

 

 ヒューッ! いいねいいね。ようやくだぜ。ようやく松ちゃんと真由美ちゃんが結婚かあ。いやあ、結婚式に参加できてよかった。ご祝儀は俺の種牡馬としての牧場の純利益の一部をおやっさんが包んでくれたけど、これでよかったかな?

 

 

 見事キューピッドを務めたサトちゃんにもちゃんと労いの16冠馬を渡せたし、いやーめでたいめでたい。確か、松ちゃんが28歳くらいで、真由美ちゃんは27歳くらいだっけ?

 

 

 ・・・・・・一番熟れていいころだな!!

 

 

 『ほーれ。おめでとさーん。乗りなー披露宴会場まで連れていくぜ』

 

 

 黒の花嫁衣装と白のタキシードを付けたこのご両人を教会からパーティー会場に連れていくのは俺の役目。そのためにしっかりトイレも済ませてシャワーも浴びて鞍とメンコを付けて、キセルも咥えてのおめかしもばっちりよん。

 

 

 さてさて、真由美ちゃんを奇麗に乗せて、松ちゃんに手綱を引いてもらっての移動。

 

 

 あ、ちなみに黒のウェディングドレスは「あなた以外には染まらない」という意味があるらしい。つまり今後も馬キチジョッキーの嫁でいますよといっているのね。ま、それくらいの覚悟ないと騎手の旦那とかできんわ。

 

 

 「ふふ・・・ケイジ君の背中、おっきいね。守さんはこの大きな背中に乗っていつも戦っていたんだね」

 

 

 「大きすぎる。僕には頼もしすぎる背中だよ。今も追いつけているのかな」

 

 

 『これから追いつけていけるさ。そして、もう少しで追い越してくれよ? 俺はもう親父だぞ?』

 

 

 「ふふ・・・ここまで来いと言っているようですよ?」

 

 

 「うん・・・もっと頑張るよ。ケイジ。これからもね」

 

 

 お似合いだねえ。ま、まずはうちの子らを頼んだわ。

 

 

 さてさて、ここからはいわゆる遊覧船に乗っての船内でのパーティー。俺の方はここでお別れして、また調教の時間だ。流石に馬の香りがオシャレな食事の場所にあるのはというのもあるし、船側も流石に俺が船の揺れで怪我した時のリスクやらで乗船できなかったそうな。仕方ないね。

 

 

 「ケイジくーん! オリンピック応援しているからねー!!」

 

 

 「僕は行けるかわからないけど、応援しているよケイジ―!!」

 

 

 俺に大きく手を振ってくれる松ちゃんと真由美ちゃん。うーん。白の花婿と黒の花嫁が似合うぜ。ははは。いいね。主役の花が目立っていい感じだ。

 

 

 これから国内旅行してお楽しみするだろうし、いやー楽しみだなあ。おめでた報告。俺が鍛えようかしら。

 

 

 ささ、行こうぜマタギのおっちゃん。久しぶりの放牧楽しみだ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふっ・・・・しっ・・・!」

 

 

 「蓮。プロに内定したというのに、これ以上の練習は毒じゃないのか?」

 

 

 「そうなんだけど・・・ふー・・・ケイジと一緒に同じ祭典に出られるチャンスなんてもうないだろうし・・・頑張らないとだよ」

 

 

 我が愛息ながら、まさかここまでケイジに脳を壊されているとは思わなんだと思いながら久しぶりの休日に家にもどればメジャーリーガーのパワースラッガーが使うような素振りの器具を使って500本の素振りと、専用の練習ボールでのバッティング練習をしていた。

 

 

 「東京でまた練習をしているから何度か顔を見に行って、ついでに調子を見ているが凄いぞアイツは。真面目に衰えが未だに見えない。足の頑丈さももろさも見えない。ただ、ケイジ同様休むときは休むようにしておきなさい」

 

 

 「わかった・・・はふー・・・はぁー・・・あ、そうだ。はるちゃん元気?」

 

 

 「おお、一応地方を今コツコツと戦ってなあ。連勝してウララの連敗の分を取り返しそうな勢いだ」

 

 

 「可愛いよねー。勝利した後に頭を下げてお辞儀するし、小柄なのがもう」

 

 

 プロにドラフト1位で入り、そこからは猛練習の日々。もうすぐプロとしての試合も控えている。ここでの結果次第では来年のオリンピックへの枠に滑り込む可能性もある。

 

 

 大変厳しいが、代打として送りバント、バスターなどで場を掻きまわせられるのと、100メートル10秒2を最速タイムとするあの脚ならうまくはいきそうなのだが・・・

 

 

 プロの世界であり、4年に1度しかない世界のスポーツの祭典。私のコネでもどうにかできたとしてもこれをしてはいけない。実力でつかんでこそだ。

 

 

 「ディープに似たんだろうな。ここから一応大きくなりそうだが、それでも標準くらいになりそうかねえ。しかし、このボールを良くとらえられるな」

 

 

 「これくらいのブレ球は取れないとだからね。どうしてもバントをしてくるとみられている以上変化球をむしろ得意とできるくらいじゃないと」

 

 

 ボールにノミや彫刻刀で切り、傷をつけてピッチングマシンで射出することで超高速ナックルになる。しかもその軌道も読めないボールを捉える練習。これを毎日しているせいで甲子園でも打率4割を誇る。自慢の息子だ。

 

 

 いつかケイジに負けないアスリートになってケイジと野球をした話をしたいというが、いったいいつになるのやら。早く見て、そのインタビューを聞きながら会場でビールを煽る時間が来てほしいなあ。

 

 

 「すでに選出は始まっているんだっけ?」

 

 

 「監督が言うにはおおよそ。だから代走でも、代打でもいい。とにかくオリンピックを目指す。ケイジと一緒にメダルを目指す・・・プロとして、のし上がる!」

 

 

 「その意気だ。ケイジもきっと応えてくれる。ファイトだぞ。蓮」

 

 

 まったく。あいつはどこまでも私を助けてくれるな。今もなお私の息子に気合を入れるとは。これはプロに入っても腐れないだろうし、天狗になって潰れないようになるかもしれん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『トモゾウ―・・・シャワー浴びさせてくれ』

 

 

 「ケイジ・・・ぼさぼさになっているな。鬣。どうした・・・あーもしかしてあの二頭にか?」

 

 

 『ダスカとカレンチャンにねー。何で取り合いするんですかねえ。娘らの様子見なさいよ』

 

 

 はぁー放牧と練習のために牧場にもどれば、昨年種牡馬としてお相手しましたカレンチャンとダスカ。俺との子供もつれて前田牧場に来訪していたでござる。

 

 

 なんでも、俺やディープ、ナギコ、ヒメのリードホースとしての動きを見込んで今年生まれた幼駒の教育と、ついでに牝馬二頭の養生のために連れてきたそうだけど・・・

 

 

 早々にナギコと牝馬のボスについてのお話してくるカレンに、俺らのコレクションの本棚を邪魔と蹴りそうになるダスカとまあ大変だわ。さっきも俺の鬣を噛んで引っ張り合う始末だし、よだれでべたべただよ。

 

 

 うちは牡馬も牝馬もゆるゆる。主なルールはいじめは駄目絶対。本のまた貸しは禁止。ご飯はよく噛みましょう。くらいのゆるーい所なのにガチガチのルールを持つカレンチャンは相性最悪なんよ。そういう意味ではロブロイもダメだねえ。基本うち緩いし。

 

 

 まあ、普段から女傑然としているし、賢さに強さもあるからこそあの龍王も惚れたのかもだけどね。真面目に美人だし、人の言うこと理解できる頭の良さと飛行機のエピソードから我慢強さもある。

 

 

 そんでダスカは・・・スイーピーといい、あの時代あたりの牝馬、フィジカルお化け多すぎない?

 

 

 「もてる男は大変だなあ・・・しかし、こういう話はマックイーンあたりが多いよなあ」

 

 

 『サンデーとの男同士の愛情に、イクノちゃんね。イクノちゃんモテモテだったそうだからなあーあーそこそこ』

 

 

 はぁー・・・しかし、シャワーの感触が心地いいなあ・・・温泉入った後のシャワーもいいけど、こうべとべとしたのを洗い落とすのも最高だ。

 

 

 「そういえば、モテていたと言えばジャスタウェイのお父さんに、今来ているダスカちゃんのお兄ちゃんもモテモテらしいなあ。ケイジも色男だからここまでされるんじゃないか? 羨ましいねえ」

 

 

 『鬣を噛まれたりべたべたのモヒカンじみた何かにされるのは勘弁よー』

 

 

 『あ、トモゾウさんだー♪ ケイジ、カレンもシャワー浴びたいし、浴びさせて? その後は一緒に遊んだり子供たちを鍛えましょ?』

 

 

 「おや、カレンチャンもお風呂? 待ってねー。ケイジの身体を拭いて・・・と。ほい。扇風機に当たってきなさいケイジ」

 

 

 『ありがとー。カレンチャン。今日は冷たいリンゴジュースあるぞー』

 

 

 『ありがとう♪ ふふーカナロアに負けないいい男よ』

 

 

 どうにもお話も済んだようで、俺もよいしょと移動移動。

 

 

 『1足す1はね。2なんだよ。ダスカおばちゃーん』

 

 

 『ほんほん・・・算数は難しいのね。ありがとう。じゃー走ろう! 私も教育頑張るわよー』

 

 

 『うぇーい! さあーウチ等のように頑張ろう。イヤッホー!』

 

 

 放牧地ではいつものように幼駒たちと一緒にダスカが算数の勉強をしてからの本を片付けて走り始めた。ナギコもいるし、大丈夫そうかな。

 

 

 『ナギコ―カレンチャンとは大丈夫だったか?』

 

 

 『あ、ケイジ―大丈夫よーケイジもこんなルールだし、ボスとか気を張らずにお客さんとして過ごして―といったらああなったー』

 

 

 そりゃ幸い。変にボスの座をかけての喧嘩とかされても困るしな。

 

 

 『ばかねきみたち。さいしょからずっとまえにでていればいちばんつよいの!!』

 

 

 『ダスカおばちゃんはやーい!!』

 

 

 うーんこの。流石走り方もレースも覚えずにフィジカルで蹴り飛ばした女傑。でも、今も走りがきれいだし、子供たちに技を教えてくれるのはありがたいね。超子煩悩と聞いていたけどそれも見えないし。

 

 

 『ふぅーい・・・スッキリ♡ あ、ねね。ケイジ。ナギコ。貴方たちの娘と、私とケイジの娘。どっちもスプリントいけそうな気がするんだけど、しばらく鍛えさせて?』

 

 

 『ありがたいし、ナギコに短距離の走り方教えてくれないかな。俺、短距離あたりはほんと経験ないし苦手なのよ』

 

 

 『いいよん♪ じゃ、皆で子供たちと遊びつつ鍛えまっしょい♪ 次世代もエンジョイだよー!』

 

 

 なはは。流石ナギコ。子供たちともいい感じ♪ よし。ここはキン肉マンとヴィレッジ・ピープルの曲をかけて楽しく踊ったり走ろうぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ケイジ。行くぞ!」

 

 

 『おうさっ!』

 

 

 今日は東京で練習の日々。とはいっても、無事に参加権はゲットしたし、調整の日々。騎手の岩ちゃんも真面目に俺の意図や考えを読んでくれるので互いに手綱の動きや軽い動き一つで指示をできるようになってるのでどんどんタイムも点数も上がってきている。

 

 

 高い柵も問題ないし。むしろ筋肉がもりもりつけやすくて足に筋肉をつけまくっているから前より高く跳べるようになってきたよ。おかげでお前サラブレッド種なの?といわれるようになったがな!

 

 

 「タイムは・・・・よし。金メダルを十分に狙える。ポールも落ちていない。流石だケイジ。よしよし・・・」

 

 

 『なでなで気持ちぃ・・・はふぅ・・・んふぅー』

 

 

 「岩丸騎手。お疲れ様です。記者の藤井ですが、今お時間宜しいでしょうか?」

 

 

 「おお、ケイジの専属記者の。ええ。そのまえに、ケイジを休ませに行っていいでしょうか?」

 

 

 「もちろんです。ケイジ君。お土産のリンゴ後で渡しておくで」

 

 

 練習も終わり、互いに一息ついていると藤井の兄ちゃんがやってきた。あ、俺とゴルシのストラップカバンに下げてる。嬉しい。

 

 

 あ、リンゴは俺ら馬皆の分あるよね?

 

 

 「もちろん箱で買ってきたから馬術組の皆で食べてな。ではでは・・・岩丸騎手。しばらく取材お願いします」

 

 

 「了解です」

 

 

 さてさて、俺はおっ風呂ー♪ 今日は久保さんがやってくれるんだよなー

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ありがとうございました。オリンピックでの戦い応援していますよ。ケイジの四人目の相棒。大舞台を勝ってきてください」

 

 

 「もちろんです。引退後は葛城厩舎の厩務員の内定をもらえましたからね。ケイジの相棒として恥じない戦いを見せていきます」

 

 

 『あ、テキのおやっさんのところ行くのか。あっち今気性難だらけの厩舎みたいだし気を付けてよー。そんで、またなー藤井の兄ちゃん』

 

 

 取材も終わって両者ほくほく顔で去っていくのをハンカチを咥えてひらひら振ってお見送り。

 

 

 藤井の兄ちゃんほんと元気でいいなあ。確か、俺のファンの女性と結婚したんだっけ。別嬪さんだったなあー。休みの日に競馬あれば豆馬券買って楽しむようだし善きかな善きかな。

 

 

 「まったく。こんな最高に愉快なオリンピックになりそうなのはいい感じだな・・・ケイジ。一戦だけだが、その一戦。無事にやり切ろう」

 

 

 『おう! 行こうぜオリンピック!』

 

 

 「あ、それとね。君のいた葛城厩舎の葛城さんの息子さん。オリンピックに野球で代打枠で出るみたいだよ? 負けられないね」

 

 

 『マジ? なはは! なら野球と馬術で金メダル貰って帰らないとな! テキのおやっさんに二人のメダリストを出した名調教師の称号を渡してやろう!』




 ようやくくっついたご両人。でも子供を産むのは2年後くらい。しばらくは二人でいちゃいちゃと養育費の貯蓄。


 ちなみに松風騎手。ケイジ、キタサンブラック、サトノダイヤモンドで既に凱旋門賞2回、日本ダービー2回、菊花賞3回、有馬記念2回と有名処でもここら辺を複数回勝利してGⅠ20勝に手が届きそうです。そしてしばらく後にミコトの鞍上に。


 マエダノカレン 父 ケイジ 母 カレンチャン 葦毛の牝馬。 サクラバクシンオーレベルの超スプリンター。スタミナもあるのでマイルも戦える。基本人懐っこいのだが、とにかく好奇心旺盛。何でも気になっては集める癖があるので気が付くとホースとか箒と空のバケツが集まることがちらほら。 好みの作品は忍たま乱太郎


 馬主は前田利褌(50%)スーザンママ(50%)


 主な勝倉 ジ・エベレスト連覇 スプリンターズステークス ジャック・ル・マロワ賞


 マエダルージュ 父 ケイジ 母 ダイワスカーレット 黒毛の牝馬 身体が超頑丈なダスカ。普段はぬぼーっと本を読んでいるのだが、レースの際は思いきりスイッチ入って常に前で爆走。前に出たらいうこと聞いてくれる。適正距離も広いのでいろんなレースに出ては暴れた。好みの作品はディズニー作品


 馬主は赤城(マタギのおっちゃん)


 主な勝倉 アイビスサマーダッシュ 桜花賞 菊花賞 ドバイゴールデンシャヒーン 福島ツインターボ記念 高知一発逆転ファイナルレース








~おまけ~


ケイジ「これがそっちの外星人らが変身するための道具ねえ・・・」


ゴルシ「すげえなあ! で、ウルトラマンたちの道具は大体こんな感じなの?」
(ペンライトを見せる)


メフィラス「ああ。光の国の技術は進んでいてな。とくにこのベータシステムに関しては素晴らしいの一言だ」


ケイジ「・・・なるほどねえ・・・? で、これを俺らが複製してみろと」


メフィラス「素材と、この星の文字や計算式に訳したデータもある。期限は1年。その中で作れないかをやってみないかね?」


メトロン「それで、ケイジちゃんとゴルシちゃんが負けたらどうするのかね?」


メフィラス「少し贅沢なご飯を教えてほしい。私が負けたらその時に負けた際の商品をお渡しする。これでどうかね?」


ケイジ「いいぜ? 丹波のおっちゃんを借りていいよな?」


メフィラス「当然です」


ケイジ「いよっし。ならあそこに行くか」


~一同、(株)ツヨシ工業に移動中~


ケイジ「おいっす。いかりやさん。今から地下室しばらく借りていいか? 料金はこれ」
(キャリーケース一杯の札束を置いておく)


ビオランテ「まあ、今は繁忙期を過ぎたからいいけど、何をするんだい?」


ゴルシ「ゴルゴル星の命運をかけた仕事をするのさ! あ、これついでに釣れた魚。ワタは抜いているからみんなで食べて―」
(大量の坂なのは言ったクーラーボックスを置く)


丹波さん(メトロン星人)「失礼します」


~地下の作業場に移動~


ケイジ「さてと・・・一応数式や構成のあれこれは頭に叩き込んで覚えたが、とりあえずまずはレプリカの複製と、同時にその機能で気になる場所を片っ端から洗うぞ」


ゴルシ「ま、アタシとケイジならこれだけ手厚い素材と組み立ての情報をくれたんだ。できるできる♪」


メトロン「流石だねえ。しかし、この世界の変身道具はすごいなあ・・・変身時に頑丈になるし、空間に関しての理解も深い。私も学ばせてもらう。眼兎龍茶も用意するよ」


ケイジ「ならそのお礼と息抜きついでにプチライブやマジックもやるぜ♪」


ゴルシ「おう! 世界でやってきたメドレーもいいな!」


メトロン「フォオォオオオオオ!!!」


~続け~




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ウマ娘エピソード 25 受け皿なのよ

 皆様夏が本格化しましたが大丈夫でしょうか。どうかご自愛と、水分補給と塩分補給。涼しい場所で休むことを忘れずに。


 ケイジのシナリオ、ゴルシと一緒にナバルデウスとか見つけていそう。生態的にも実際にいそうですし。


 「くっ・・・・おぉ・・・!」

 

 

 喰らい付いてくるっすね。でもまあ・・・この距離でこの焦り。かかっている。

 

 

 「ふー・・・・」

 

 

 ジェンティル先輩も見て呆れているっすね。そりゃあそうだ。シリウスに喧嘩を売るということを理解していない。この程度の速度で、レース運びに動揺しているようじゃ生ぬるい。

 

 

 『1000メートルを通過! タイムは57秒2!! 速い! 大逃げをしているオルフェーヴルとジェンティルドンナ!! ハイペースの試合の慣れは世界一! 流石のレース運びです!!』

 

 

 何を言っているんすか。ケイジ先輩は間違いなくこの先で走っている。これ以上の速さで先へといって涼しい顔で微笑んでいるはず。

 

 

 ここからさらにギアを上げて突き放す。身体も十分ギアが入ったし、なにより変に色気を出す気もない。叩きつぶす。アタシのような臆病者を三冠ウマ娘に鍛え上げて、支えてくれたシリウスやスピカの皆のトレーニング方針を、あの自由さと温かさを否定するのは許さない!!

 

 

 『オルフェーヴルグイグイ伸びていく! コーナーでもなお加速が衰えない! 金色の暴君の本領発揮! クラシックディスタンスにおいては最強と称されたその脚が勝利を見据えて驀進!!

 

 

 ジェンティルドンナも負けじと加速! ビターグラッセも喰らい付こうとするがコーナーで外に膨れて減速! コーナリングの妙はシリウスの十八番! 喰らい付けない!!』

 

 

 「勝負よ・・・オルフェーヴル!!」

 

 

 「負けないっすよ・・・ジェンティル先輩!!」

 

 

 大逃げに見えるような先行をイメージしたレース。アタシ以上にケイジ先輩と戦い慣れているジェンティル先輩は流石喰らい付いてくる。

 

 

 もう一伸び。もう一伸びをしてからの第三コーナー、ここからの更なるハイラップ勝負をしたうえで脚を残しての直線勝負。

 

 

 『さあ、向こう正面から第三コーナーに入ってくるジェンティルドンナとオルフェーヴル!! 加速を続けてさらに伸びていく! チームファーストたちに末脚すらも残させない試合運びのまま爆走だ!!』

 

 

 「負けない・・・!! 全部勝利していくっすよ!!」

 

 

 「こっちこそ・・・皇女と呼ばれる自負があるの・・・負けないわ!」

 

 

 普通はもう最後の加速をしながら走れるのだけでもいいのだろう。でも、ここから更に再加速をするくらいじゃないと駄目だ。この相手を、このレベルを相手するにはこれをしてようやく相手になるのだから。

 

 

 それを教えてくれた人がいる。その相手を倒す人らがいる。そこに届き、先に行くには越えていくのだ。

 

 

 『最後の直線にあっという間に入り伸び続ける末脚! 自分の勝利以外は許さない王者たちによるぶつかり合い! かつてのジャパンカップを思い起こさせるぶつかり合い! 残り400メートル! ビターグラッセのみ喰らい付くがチームファーストは軒並み沈没! もはや勝負はこの二人! シリウスの皇女と暴君にゆだねられた!』

 

 

 「っらぁあ!!!!!」

 

 

 「はぁあああ!!!」

 

 

 もう一伸び! もう一押し! ケイジ先輩が届いたあの一押しを手にするために、あの舞台でこの力があれば、わかっていればつかめたはずのそれを見せつける! チームファーストごときに届かせるレベルじゃないと見せつける!

 

 

 そして、先輩らに届いているんだと、あの時のジャパンカップの借りを返す意味でも負けられない!!

 

 

 『残り200を切って100! 50! あと少し! わずかに、わずかにオルフェーヴルが伸びた! ゴォーーールッッ!! 一着は・・・・写真判定の結果5センチ! わずか5センチですがオルフェーヴルの勝利!!

 

 

 暴君と皇女の戦いは見事オルフェーヴルのものに! チームシリウス4人の三冠ウマ娘の一人!! ジェンティルドンナと共に三着ビターグラッセに4バ身を着けての大勝利です!!』

 

 

 はぁ・・・はー・・・ちっ・・・思った以上に引き離せない。喰らい付いてきたか・・・ケイジ先輩のようにはまだ行かないっすね。

 

 

 でも、まず一つ借りは返せた。無事に・・・バトンも渡せたし、目標達成。

 

 

 「負けましたか・・・オルフェーヴル。見事です。ふぅ・・・は・・・ー・・・今度は絶対に勝ちますよ」

 

 

 「受けて立ちます。必ず・・・勝ちますからね」

 

 

 「ええ。それでこそ。よ」

 

 

 「つ・・・ぜは・・・な、なんで・・・そこまで・・・余裕なんですか・・・!!」

 

 

 ん? ビターグラッセ。ですよねえ。負けて悔しそうにしているけど、それ以外でもなんすかねえ。

 

 

 「なんでそこまで早くて、あんな走りして、余裕そうなんですか!!」

 

 

 「なんでって・・・あんたら。挑戦者として挑んできたでしょう?」

 

 

 「当然・・・!」

 

 

 「それが敗因よ」

 

 

 ジェンティル先輩の言う通り。それだけでは走る脚にこもる力は小さいもの。それでも素質や努力、仲間がいれば変われるだろうけど、まだ足りない。このメンバーでは足りない。

 

 

 「それが・・・何でですか! 油断なく挑戦して何が敗因に!」

 

 

 「私たちはそれだけじゃないのよ」

 

 

 「アタシらはチャンピオンでチャレンジャー。アウェーでのレースも当たり前。その上でチームメイト同士でも全力でつぶし合う。それが常っす」

 

 

 「今から掴もうとしているのにこの程度の、背負おうとしているものも自覚しないで戦っている時点で、もう貴女たちの負けなのよ」

 

 

 国の誇りだの記録だの、ウマ娘のレースの歴史を塗り替える記録もしょい込んで戦っているのが常のアタシら。先輩方ですからね。それに勝つために「徹底管理」と「挑戦者」だけで、学園でそれをすることへの理解がないなんて。絶対に勝てない。

 

 

 「アタシらが目標している皆さんはもっとやばいっすよ。それを分からないのなら、最後のステイヤー組はやばいっすね」

 

 

 「その一人にしていると公言している私に勝ってよく言うわ・・・とりあえずお疲れ様。ビターグラッセさん。チームファーストの皆さん。最後の一戦。休みながら見守りましょう。では」

 

 

 観客とファーストの皆さんに手を振って二人で控室に戻っていくことに。後は、怪物と、その愛弟子の一人に任せるっすよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無事に二人も勝利と。でも、予想以上に喰らい付いてくるなあリーダー格は。真面目にあの二人が息をそろえたレースでここまで距離をつめているとは。世界でもそこそこやれるほどに仕上げるとは。怖いねえ♪

 

 

 やりがいのある相手が出てきてやる気も出るってもんだ。

 

 

 「ふぅ・・・無事やり切ったっす」

 

 

 「負けは悔しいけど、無事1、2フィニッシュを維持。頼んだわよ。ライス。ゴルシ、ケイジ?」

 

 

 戻ってきた二人も汗を拭きながらにっこり微笑む二人にニッコリ笑顔。もちろんよ。ここを落としていたら日本総大将の名前が廃る。

 

 

 二人と腰を上げてみんなとタッチをして移動。

 

 

 「さーて・・・私が大逃げで行くわ。二人はいつも通り好きにしな」

 

 

 「なら、のんびり追い込みで行かせてもらうぜ」

 

 

 「ライスは・・・一緒に逃げようかな? ランキングを維持しないとだし」

 

 

 問題ないと思うけど、ライスもアタシの大逃げをものにしているし、相手を揺さぶる意味ではそれがいいかねえ。

 

 

 「そんじゃあ。それで行くとして、祭りの盛り上がりを担うんだ。ハジケていこうぜ?」

 

 

 二人の背中を軽くたたいて鼓舞しながらパドックの裏側に移動。ファーストの皆はすでに出ている。ささ、まずは・・・

 

 

 『さあ! 皆さまお待たせしました! いよいよシリウス、スピカの連合チーム! 3000メートルレースに挑むその一人がお披露目です!! ミホノブルボン、メジロマックイーンをはじめとして多くの強敵を倒した筋金入りのステイヤー!! 完走するだけでも名誉とされるグランドナショナルを優勝し、レコードまでもを更新して女王陛下から直々に騎士としての勲章と宝剣を授かりました!!

 

 

 世界の長距離レース戦線でもヴィンテージクロップと互角に戦う姿はまさしく奇跡を可能にする青薔薇の花言葉のごとく! 我が国の英雄の一人、青薔薇の姫騎士ライスシャワァーーーッッ!!!!』

 

 

 「え、えへへ・・・ライス。頑張るよ!」

 

 

 おおう。ウルトラマンネクサスのOPもかけるとは。いいねえ。流石分かっている。そして・・・ふふ。よかったなあ。ライス。ヒーローとして認められて。この歓声全部がお前さんのファンだぞ。

 

 

 『続きまして! その豪快なレース運びと美貌はまさしく誰もを魅了する美しさと強さ! ケイジに2回以上の敗北を受ける一方で阪神大賞典、宝塚記念を4連覇! メルボルンカップ、BCターフ、そして年齢制限を取り払ったイギリスダービーを制覇しライバルに負けじと4か国のGⅠレースを制覇する怪物!

 

 

 いくつもの宝物と栄光を手にし、何より自身が一番の財貨である宝船! 黄金の不沈艦ゴールドシップぅうう!!!!』

 

 

 「イェーイ!! ピスピース! もっと盛り上がっていこうぜー!!」

 

 

 ゴルシは初代ウルトラマンか。わはははは! 色合いからしてそうだもんな! どっちかといえばノリはタロウだけど。一着のポーズで出てきてさらに会場を盛り上げている。

 

 

 じゃあ・・・最後はアタシだ。行きましょうかねえ? かかる曲は今日は漢唄ではなくウィー〇ー! か。あら。ゴルシとアタシの曲逆でもよかったかな?

 

 

 『最後にやってくるはシリウスのもう一人のリーダーにしてゴールドシップ永遠のライバル!! 無敗の四冠! 欧州二冠三連覇をはじめとして数々のワールドレコードを所持!! 海外のウマ娘には一切の負けを許さず、2回以上の敗北はチームシリウス、スピカ内ではゴールドシップのみ!! エキシビジョンマッチのレースにおいては10戦を越えて今も無敗を貫く我が国の至宝!!

 

 

 破天荒かつ奔放さはレースにパフォーマンス、ライブを問わず、その立ち振る舞いは行く先々でだれもを魅了した最強のウマ娘が帰ってきた!! ターフの傾奇者!! ケェェーイジィイイ!!!!』

 

 

 おおう。アタシが来ただけでこれかあ。にひひ。30万越えの観客の歓声はすごいねえ♪

 

 

 「・・・・・・・・」

 

 

 少しあたりを見回して、にっこり笑っての拳を天に掲げる。

 

 

 「いよっしゃあああ!!!!!」

 

 

 会場もこれに応えて大歓声のるつぼ。びりびりと空気が震えて熱気も揺れるような気さえするほどだ。

 

 

 いいねいいねえ。やっぱ祭りはこうでなくちゃいけねえ。いやーほんと理子ちゃんさまさまだね。アメリカでもこうも派手な対立を用いたショウはサンデーとゴアくらいじゃないとないほどだ。

 

 

 「もうチームの負けは決まっている。だけど・・・ここだけは絶対に譲らないわ!」

 

 

 「そいつは無理だ。アタシが一着をもらうからね」

 

 

 「おいおいケイジぃ~ゴルシちゃんが勝つに決まっているだろ? ダメダメ。先の事を言うと鬼が笑うぞ?」

 

 

 「そ、それはゴルシさんもじゃ・・・? ライスも、頑張るからね!!」

 

 

 「なんだとぉ!? この前の凱旋門賞でもアタシに負けたのに何言ってやがる白饅頭!」

 

 

 『ああっとゴールドシップとケイジ早速何処からかハリセンを出してのシバきあいです!! チームファーストのメンバーもこれには啞然! 毎度毎度ながらパドックでも大人しくしないこのメンバー! それでいて毎度レースでも無尽蔵のスタミナを見せるのですから不思議なものです!』

 

 

 こんなじゃれ合いでへばる体力もって世界中を飛び回れるかい! 回復力も鍛えているから問題ないわい!

 

 

 「レースでケリをつけてやるからな! アタシが勝ったらアタシのホテルで奢ってやるから、ゴルシが勝てばゴルシの所有している飯屋で奢れよな!」

 

 

 「おうよ! 派手に騒がせるためにも絶対ファーストぶっ潰すぞケイジ、ライス!!」

 

 

 「おお!!」

 

 

 「うん!!」

 

 

 よっし。口に飯を詰め込んで騒ぐためにも、勝利のためにももっとやる気も身体に入った。問題ねえ! さあ、思いきりエンジンかけていくぞ。

 

 

 『さあ、いよいよ最後のレースを彩る6人がゲートに入ります。全く真逆なレース運びで世界レベルの戦いをするシリウス連合チームにどうチームファーストステイヤーメンバーは立ちはだかるのでしょうか』

 

 

 情報だと、基本ぶっ飛んだレース運びはしないというか走り方が今のアタシらの布陣に近いんだよなチームファーストのステイヤー組。

 

 

 だからやるのは真っ向から上回るのと、最初にやるべき仕事はアタシがしないといけないと。さーて・・・久しぶりの日本の芝。どれほどに軽いか楽しみだ♬

 

 

 『・・・・・・・・スタートしました!! まずは最初に前に出るのはケイジ! 今日は大逃げで行くよう・・・おおっと! 最初からこのギアで行くのか!? かなりの速度で飛ばしております! そこにわずかに下がってついていくのはライスシャワー! 続きましてクレセントエースが続きますが後ろに大きく離される!

 

 

 その後ろにリトルココン。ミニベロニカが続き、更にその後ろに離れてゴールドシップ。6人のレースとは言えどもとんでもなく伸びたバ群を形成してのスタートとなりました!』

 

 

 ほいほい。まずは逃げを潰すことは成功。後は気持ちに合わせてギアを上げていければいいかな。チームの動きとしては逃げを捨て石にして、エースのリトルココンが突き上げて、最後にはミニベロニカと二人でのスパート。最後にクレセントエースもスタミナがあれば優位性を保ったまま行くという感じなんだろうね。

 

 

 ただ、うちのメンバーは全員がこの距離はお手ものなんだ。王道の手段、そこに一手加える程度じゃ勝てねえよ?

 

 

 『さあ、最初のコーナーを曲がってケイジさらに加速! ライスシャワーも小柄さを活かして内ラチギリギリを活かしてのコーナー加速! クレセントエース膨らんでしまったか減速! 逃げの名手が多くいるシリウス、スピカは何方も互いに練習も多く共にする。あのサイレンススズカとも経験を積んでいるのが活きているのでしょうか。よどみないレース運びです。

 

 

 むしろ早すぎて心配になるレベルですがこれが日常。言っていて私も訳が分からないと思いますがそうなんです!! 規格外。常識外れのレースこそが彼女たちの武器!!』

 

 

 ははははは!! そうそう。そうじゃないといけねえ!! 常識外れの強さ! あるいは王道を極め尽くしてむしろ異常。それこそがチャンピオンよ!! アスリート、上に立つやつらはそうじゃないとね!

 

 

 さて・・・そろそろか?

 

 

 『1000メートルを通過。タイムは55秒7!! 速い! あまりにも早い! この破滅的ペースは初めて見ます! ああっとケイジ、ライスシャワーさらに加速! ひたすらに喰らい付いていくクレセントエースを更に引き離していく! クレセントエースも喰らい付くが息がすでに荒いか!? リトルココンもペースを上げていくが表情が厳しい!!

 

 

 一方ゴールドシップはミニベロニカを追い上げていく! 黄金の不沈艦抜錨! エンジンをかけていく。標的は傾奇者と姫騎士! 自らの宝の一つに加えるか、乗せるために速度を上げていく!』

 

 

 「さあ・・・かっ飛ばす!」

 

 

 「ライスも負けないよ!!」

 

 

 「くぅ・・・追いつけ・・・ない・・・!?」

 

 

 いやーさすが日本の芝。かっ飛ばしても軽い分サクサク走れるな! ほんと欧州で高速レースするよりやりやすいわ。

 

 

 1000メートル走ってもこれだ。ここから記録狙いでさらに飛ばすぜ♪ ライスもゴルシも、チームファーストの皆もぶっちぎる! 一着は譲らないからな。勝負だ!

 

 

 飛ばして飛ばして! とことんスピードと距離を走り切れるスタミナ勝負! 長距離レースでは肉体のみならず脳の疲労も問われるだ!? 知らないねえ! 持久力だけじゃない! クラシックディスタンスのペース以上でのぶっちぎりレース! スピード勝負と行こうぜ!

 

 

 『ケイジ、ライスシャワーのスパートは止まらない! ハイラップ、ハイペースのレースなのに加速をし続ける! スタミナとスピードで磨り潰す、瞬発力、最後の末脚を使いたければこのペースについてきたうえでやってみろというド級のスタミナハイペースレース!

 

 

 さあ、そこについていける一人ゴールドシップが猛追してきたぞ! グイグイ差を詰め始めてリトルココンも追い抜いてクレセントエースの後ろ! もう距離がない! 真横についていく! クレセントエースも抜いてあっという間にシリウス、スピカチームでの先頭争いのまま最後のコーナーに入っていくぞ!』

 

 

 「追いついたぜぇケイジ! ライス! 勝負しようや!!」

 

 

 「上等!! 潰れんじゃねえぞお前ら!!」

 

 

 「負けないよ!! ライスだって・・・!!」

 

 

 いいぜいいぜ! ゴルシとのレースは、ライスとのレースはこうじゃないと! 最高だ!!

 

 

 『最後の直線に入ってさらに加速! どこまでも天井知らずのスピード勝負! これが長距離レースとは思えないハイペース! 怪物ステイヤー! 世界最強格の怪物同士のぶつかり合いとなりました! グイグイ伸びる! 伸びて伸びていきまくる!! 

 

 

 もう止まらない! 最後の直線はもはや弾丸のごとし! さあ、のこり300・・・・・・・200・・・!』

 

 

 「ぐぅうぉおおおお!!!!」

 

 

 「ああ・・・・・ああああああぁああ!!!」

 

 

 「ふんぬぉおおおおおお!!」

 

 

 「相手に・・・相手にすらされていないの・・・・・!!?」

 

 

 この野郎!! ほんっとに速度が落ちないなこいつら!! ライスは体が軽いし背も低い分風の抵抗もなく加速がしやすいし、ゴルシはあのパワーに技術が天性ものだからな! ほんと・・・爆風を感じながら走っているのに焼けつくようなプレッシャーが素敵すぎる!!

 

 

 最高の、最愛のライバルだ!!

 

 

 『残り100を切った! 突き切ってのゴォオォオーーーーッル!!! 一着はケイジ! 二着はゴールドシップ! 三着はライスシャワー!! そして四着はリトルココン!

 

 

 タイムは・・・何と2分56秒3!! 非公式のレースとはいえ、1~3着までまさかのワールドレコードの更新!! 最強ステイヤートリオの名に恥じない、これぞチームシリウス最強ステイヤーとそのライバルです!!』

 

 

 「いよっしゃああー!!!! どんなもんじゃーい!! これがアタシ達シリウス! ゴールドシップの強さだー!!」

 

 

 「よっし! ライスを胴上げだ! ケイジ!」

 

 

 「おうよ。わーっしょい!!」

 

 

 「わーっしょい!!」

 

 

 「きゃぁああああぁああああ!!?」

 

 

 『ああっと! ケイジとゴールドシップ。一緒にライスシャワーを胴上げしておりますが、あまりの高さに数メートルも空に舞うことになっております! まるで絵本のワンシーンのよう! もしくはトランポリンの競技でもしているのでしょうか!?』

 

 

 ・・・・・・紫か。いいチョイスだ。

 

 

 よっし。思いきりぶん投げて。

 

 

 「ライス! 空に飛んで来い!」

 

 

 「え? あ、ちょ・・・きゃぁあああああああ!!!!?」

 

 

 「ゴルシ! お前もだ! 来いや!!」

 

 

 「おっしゃー!! おおおおっおお!!」

 

 

 ライスを思いきり空にぶん投げて、そしてゴルシが飛べるように手を踏み台にしてからゴルシの脚が乗った瞬間に上にぶん投げる。

 

 

 「ライス号とゴルシ号ドッキング完了!」

 

 

 「そんじゃアタシも・・・・トゥッ!」

 

 

 ゴルシがライスを空中で肩車したのでアタシもジャンプしてゴルシを肩車で受け止めつつ着地。

 

 

 はーい連合チームステイヤー組のトーテムポールでございまーす☆

 

 

 「ライス。アタシやゴルシと一緒にピスピスしような?」

 

 

 「た、高いよケイジお姉さま!?」

 

 

 「ダイダイジョーブだって。ケイジやアタシのパワーを信じな」

 

 

 「そういうこと。それじゃ」

 

 

 「「「イェーイ!! ピスピース!!」」」

 

 

 大歓声を浴びながらの勝利。心地よいほてりが気持ちいいねえ。あははーやっぱレース最高♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「相変わらずだねーケイジ、ゴルシっち。ライスっち」

 

 

 「いいではないですかナギコお姉さま。ライス先輩も明るい笑顔が増えましたし」

 

 

 まね♪ 何はともあれ、これでシリウス、スピカ連合チームはチームファーストに全部勝利。出たメンバーは全員が1~2。若しくは3着を手にしての完全勝利をしたから文句のつけようもないでしょ。樫本っちが飲んだ勝負だし。

 

 

 ただ・・・周りの目を見ると。多分ケイジの思惑も成功していそうなんだよねえ。

 

 

 「樫本トレーナー・・・申し訳・・・ありません・・・!」

 

 

 「勝利を、一矢報いることすらできませんでした・・・!」

 

 

 あら・・・チームファーストの方はお通夜で泣き始める子も・・・まあ、そりゃあそうよね。こんな大きな賭け、信頼を寄せてくれたのに叩きつぶされたんだもの。

 

 

 叩きつぶしたのはうち等だし、それをしないとうち等がああなるから後悔はないけどね。

 

 

 「マイティーチャー!! oh!! マイティーチャー!! ソーリー!!」

 

 

 「ガッデム! マイティーチャー!! ソーリー!!」

 

 

 「!!!?」

 

 

 「どさくさに紛れて変なバイリンガルが2匹まぎれているわ!!」

 

 

 いつの間に紛れていたのケイジにゴルシっち!? しかも鼻眼鏡つけているし!

 

 

 「ひでぇよ・・・改革を起こすために頑張ったのにこんなノッテ・・・」

 

 

 「そうよそうよ! もう一度挑むべきだわ!」

 

 

 「あんたらが完膚なきまでにとどめを刺したのに何を言っているのよ!! 何様!?」

 

 

 「「おわー!!?」」

 

 

 あ、ジェンティルっちがハリセンでしばいて連行してくれた。助かる~♪ 相変わらずレースが終わればこうなるから読めないね。にゃはは。

 

 

 「今回の一件は・・・もう、私たちの完敗です・・・この件は私の責任で・・・」

 

 

 「何言っていやがる。その責任は今後も取るんだよ。逃げるなよ樫本ちゃん。あんたの回りにいる教え子たちのためにもな」

 

 

 「そうそう。実際、ウチ等にこれくらい迫れるのは世界でトップランカーたちなんだよ? 負けたからはい辞職はなしなし」

 

 

 それに、一気にこの人数を管理して、鍛え上げる手腕は間違いなく世界に知れ渡ったし、URAがこの一件で樫本っちを追い出したらそれこそこの敏腕トレーナーとチームメンバーを特権付きで抱え込もうと海外のメンバーは動くだろうしね。短期間でここまで渡り合える仕上がりをするのは尋常じゃない。

 

 

 ケイジもそれを分からせるために、国内で樫本っちの暴走に怒ったメンバーを黙らせるためにあえて世界に放送してまでの大騒ぎにしただろうからね。関連事業の宣伝や利益も数十億単位でたたき出して土産も持参して。

 

 

 「大甘の中の大甘・・・! 愚の愚!!!」

 

 

 「だから貴女はどっちの味方なのよ!」

 

 

 「・・・情けをかけるというのですか・・・」

 

 

 「さっさとライブの準備をしな。私達の気が変わらんうちに」

 

 

 「ジャスタっちがそれを言うの!?」

 

 

 もうほんとこの三名はそろうとドタバタだにゃ―。あはは。もういいや。このまま愉快に騒ぎつつライブとしゃれこみましょ。

 

 

 あ、その前にアイシングついでにケイジとゴルシっち達をアイスバケツの中にツッコまないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ・・・どうなっているというの・・・・・・・?」

 

 

 あのシリウス、というかケイジとゴールドシップによる大暴走に巻き込まれ、いつも通りあの破天荒すぎるライブに巻き込まれてからURA、日本の大企業の面々から処分はなく、怒られるどころかむしろ褒められてしまい、これからもチームファーストの教育を頼むと言われる始末。

 

 

 チームファーストのメンバーは疲労抜きのためにすぐに休ませ、数日後に慰労会を開くということと、今後もチームファーストは存続することを伝えてホテルのバーで酒を煽りつつ不可解な出来事に首をかしげる。

 

 

 「なあっははははは!! あーこの飯うんまい! おかわり―!!」

 

 

 「そらそらもっと飲みなよトレーナー陣も酔いつぶれてしまえ! タクシーは手配するからよ!!」

 

 

 「うーん。やはりここのホテルのシェフは腕がいいですね。ディープお姉さまが通うのも納得です」

 

 

 「ふふ。本当に、お手製フルーツジュースも最高で♡」

 

 

 「あ、シゲルスミオちゃんの写真にサイン? おおーあそこには・・・うん。ご飯が進む!」

 

 

 「わははっはあ! これはおいしい! 酒が進む! 平野さん。利褌さんも一杯!」

 

 

 「真由美さん。このカクテル果物に合うよ?」

 

 

 「あ、ありがとう・・・♡」

 

 

 「はむ・・・んー♡ ライス。このご飯大好きかも」

 

 

 トレーナーとしての手当ても多く、世界各地のトレーナーたちからもぜひエキシビジョンと合宿をという依頼が増える程。完全に負けたというのに・・・・

 

 

 「ぶほぉおお!!? げっほげほ!?」

 

 

 「あっはははははははは!!! 平野!! いくらなんでも同じ酒だけどこーれーぐーすとバーボン間違えちゃだめでしょ! なははっは!! げっほげほ! むせた!!」

 

 

 「ナギコお姉さま笑いすぎですって。あ、的矢さん。こちらのワサビと大葉、サーモンに挟むと美味しいですよ?」

 

 

 「うん。ありがとうヒメちゃん。うんうん・・・・・染みるなあ。これは大吟醸を開けるほかないかな。ヒメちゃんも、今度勝利祝いに何かあれば言ってね?」

 

 

 「オルフェ先輩。この和風ソースと、洋風ソース。半分分け合ってステーキ食べません?」

 

 

 「いいよライトニング。あ、このコンソメスープがすごくお肉に合うらしいんだよ。それと、バケットも一緒に」

 

 

 「塩に調味料で色とりどり―♪ 食の芸術ご覧あれっ♪」

 

 

 「おおぉー・・・ノンアルカクテルが色とりどりの色に・・・ソースでの絵も見事です。ホッコーさん。メイドカフェでバイトしていました?」

 

 

 「していないよ~? 砂絵の練習で覚えたの」

 

 

 「ケイジちゃん特製バーガー! 大きさ30センチ! これをプレスして・・・・あぐぅう・・・・・か、かた・・・ムン!」

 

 

 「うーん・・・うまい! いいねえ! これにはひげ熊おじさんもにっこり」

 

 

 「ひげ熊さん。人の顎しているの・・・?」

 

 

 「ライス。ここのメンバーは割と人間と思わないほうがいいわよ。タフさの面でも」

 

 

 ・・・・・・・・うるさい・・・思考をまとめきれない。

 

 

 「そこの貴方たち! 静かにし・・・・」

 

 

 「おん? あーら理子ちゃんじゃなーい。一人? 一緒に遊ばなーい?」

 

 

 振り向けばシリウスのメンバーがみんなで豪快に食事をとっていた。盛大に場所を貸し切っての大騒ぎ。気が付かなかったが・・・どうにも私以外にはシリウスメンバーしかいないようだ。

 

 

 「な、なんで貴方たちがここに・・・?」

 

 

 「いや、この前田ホテルの支店アタシのものだし。それに」

 

 

 「前会長の私がいるんだけど、おかしなものかい? 理子ちゃん」

 

 

 ケイジとヒサトモさんが私を挟むようにカウンターに座り込み、ついでにとミルクを二人して注文してくる。

 

 

 「お前さんらそのまま飯食ってな。ちょいと私とケイジは理子ちゃんと話をしてすぐ戻る」

 

 

 若い姿のままのヒサトモさんが他のシリウスメンバーに指示をしてから手を振り、一緒に出てきたチョコをかじる。

 

 

 「・・・若い姿のままなんですね・・・」

 

 

 「アグネスタキオンに戻してもらおうにも細胞を若く復活したのを強制的に老化させるのは危険すぎると言われてねえ。そのまま第二の人生を歩むことになったよ。だから今後は人前ではマエダノキズナと呼びな」

 

 

 「期待の超ベテラン新入生だ。速攻でシリウスにぶち込んでやるぜ♪」

 

 

 「何をしたのですか。二人とも。今回の私の一件を何で誰も不問どころか褒めて・・・・?」

 

 

 

 ちょうどいいということでそのまま話を聞くことにした。チームファーストの今回の一件。生徒たちはまだしも、私に至ってはスピカやシリウスの方針を否定した。世界最強のチームの母校のトップの暴走ともいえる行動だ。

 

 

 思い返せばとんでもないことをしたとわかるが、それを誰も咎めないのが不思議でならない。

 

 

 「・・・まだ30も行くかどうかな小娘のやんちゃの一つくらい流せなきゃあいけないと叱っただけさね。それに、やよいちゃん、たづなちゃんも理子ちゃんの暴走を読んだうえであえて異動してこの人事をしたんだよ」

 

 

 「!!?」

 

 

 「他にも経営手腕に秀でた人材はいるけど、あえてこうしてURAから学園に引き込んで、理子ちゃんの過去のうっ憤を吐き出させて再度やり直してほしかったみたいだねえ。まったく。大したもんだぜあの姉ちゃん」

 

 

 「それに、今回の理子ちゃんの暴走をケイジがアメリカンショーマッチと宣伝して、利益も百億単位で動かして企業、URAの重役、株主たちを黙らせたこと。これで日本のウイニングライブの新しい顔ということでより幅を広げられたし、何より、今回のファーストの面々の奮闘が高く評価されているのさ」

 

 

 そういって端末を操作して見せてくるのは今回のチーム戦の公式動画。その映像のコメントの海外からのものを見ると「まだこの短い仕上げでこの差で済ませるのか!?」「負けてはいるけど、短期間で世界でも戦えるレベルとはすさまじい」「負けはしたが弱くはない。むしろこれは今後が怖い」「レースブレイカー多数のシリウス相手にこれは拍手もの」という声が世界各国から寄せられている。

 

 

 しかも国内からもこの声が多い。

 

 

 「この人材を日本のウマ娘のレース、URA業界から追い出して海外に渡す不利益は将来的にリギル、スピカ、シリウスのどれかを手放すのに近いものだと説教したのさ。結果は今回だけで百億単位の臨時収入が入ったし、やり直しのチャンスをくれてやれとな」

 

 

 「それに。ルナ・・・じゃねえ。ルドルフ姉からも聞いたが、チームファーストの方針を好む、徹底管理で鍛えたい、そのほうが安心できるという声もあるのが事実。だから理子ちゃんは学園でそういう子たちを鍛えて、支えて、これからも多くのウマ娘を支えてほしいと思ってなあ。

 

 

 いろんな顔が、やり方があるからこそ日本、世界からやってくるウマ娘たちを輝かせる可能性が増すんだ。その一つを世界に示した理子ちゃん。あんたは間違いなく時の人で、日本の宝だぜ? ほれ。理事長からの人事の事前通達のボイスメッセージだ。聞きな」

 

 

 もう一つと端末をケイジが持ち出し、録画映像のデータを開くと、そこに映るのは秋川やよい理事長が。

 

 

 『慰労ッ!! 樫本理子理事長代理。まずは今回の一件。学園としても不問としたいがそうはいかない。しかし理事長代理の才能と想いは無下にするのも大変惜しい。ゆえに! 降格!! 私がアメリカから戻ってきたら学園内でチームファーストの専属トレーナーとなり、そして現在トレーナー不足を解消するための人材発掘の業務を行ってもらう。

 

 

 これからもウマ娘たちの未来を、夢を支えていこうではないか。それでは失敬!!』

 

 

 映像は途切れ、端末をケイジが片付けるころには私の目には涙があふれていた。

 

 

 どこまで優しいのだ・・・こんな浅慮な暴走をしても許し、未来を向けてくれた・・・あの子たちともう一度やり直していいと言ってくれているのだ。

 

 

 優しすぎる。本当に、どこまでもこの人達は大きすぎる・・・

 

 

 「ビリーのおっちゃんに、ヴァンのおっちゃん。他にも女王陛下から是非育成理論や食事の事とかを色々聞きたいと招待の手紙も多く来るみたいだからよ。数日後は頑張れよー? 理子ちゃん。新しい門出の祝いだ。今日はアタシのおごりと、今度ファーストの皆もここで飯を食いな。タダにしておくからよ」

 

 

 「ま、そういうことだね。まだまだ若いんだ。抱え込みすぎなさんな。私もまたトレセン学園に通うし、相談はしなよ。私らはあそこで飯食っているから、混ざりたければ来な。理子ちゃん」

 

 

 そういってひらひら手を振って騒ぎの中に戻っていく二人。歴戦の女傑にそのひ孫。身長差があまりに違いすぎるが、確かに大きく、頼もしい背中にいつの間にか私は席を立って頭を下げていた。

 

 

 直後に爆発音が聞こえたが・・・何もなく食事が出来たので忘れることにはする。




 理子ちゃんこれから功績と働いてこの騒ぎの責任を取ります。


 ちなみにこの後のアオハル杯ではケイジ達はエキシビジョンや休憩中の一芸の披露に回ることに。チームファーストはリギルに負けて2位だけどMVPやコースレコードを何名かが出すなどして実績を確かに残して好発進です。


 リトルココンはケイジに苦手意識を抱くけど恩人なので悶絶。ビターグラッセはケイジから蕎麦や料理、弁当の勉強を教えてもらっています。




~おまけ~


山本「この惑星の住人はスピードに捕らわれている」
(配達員の衣装で階段を上がっている)


山本「荷物お届けに来ましたー・・・はい。サインはこちらです。ありがとうございます」
(階段を降りる)


警察官A「うーん。貼るほかないか」


警察官B「ですね」
(駐禁シールを貼る)


山本「・・・・・・・・・この惑星の駐禁は、厳しい」


缶コーヒーBIGBOOS 微糖 新発売


監督「はいカット―! お疲れ様です皆さん。いやー山本さんもいいねえ。NGなしでここまですぐやれる俳優はそうはいないよ。お疲れ様」


山本「ケイジお嬢さんの期待にも応えないとですので。勇往邁進。私の好きな言葉です」


監督「流石ですねえ~ああ、それでなんですが、近いうちにコーヒーのシールを集めて送ると特性の革ジャン、ジャンパーをプレゼントする企画がありましてね?


 そこで山本さんと、ケイジさんらシリウスチームとリギルチームとのコラボCM、写真撮影をするので、次回は少し長い撮影になりそうです」


山本「それはそれは。私も身だしなみをいつも以上に気を付けなければ。豪華絢爛。華やぐ映像をお届けできるように頑張らないとですね」


監督「いやーみんな美人ですからねえ。しかもケイジさんは差し入れも美味しいので、期待していますよ」


山本「確かに。あの弁当は美味というほかありませんでした(かれこれあの道具を渡してから2週間。一体どれほど進んでいるのか)」


~(株)ツヨシ工業 地下室~


丹波「・・・と、いうわけで、こちらの世界ではこのようになっているんだが・・・凄いなこのベータ―システムは。少なくとも装備した対象者の強化も成されている」


ケイジ「だなあ。ただ、あのメフィラス星人ですらこのサイズがせいぜい。光の国の科学力。そして種族としての強さもあるからこそあのメフィラスの世界では光の国の発言力に直結しているわけだ」


ゴルシ「だなあー・・・くはぁー・・・どうにか完成。ベータ―システムの完全復元版・・・テストも100回海底で行ったんだ。問題ないだろ」


ジャスタ「まさか二人に、丹波さんまでこんな騒ぎに巻き込まれていたとか・・・いや、巻き込みに行ったのかな・・・? おかげで光学系に関しては真面目に軍の衛星も騙せるしジャミングシステムまで出来るカモフラージュ光学技術覚えちゃったわよ」


ケイジ「なはは! 間違いなくこの星の科学技術を何段階かすっ飛ばした内容が頭の中に入っちまったな!」


ケイジ「おかげでやりたいこともできたんだよなー! さて」


ケイジ・ゴルシ「「これからベーターカプセルの作成に取り掛かるぞ!」」


ジャスタ「ええ!? いやいや、既にこれを作成した時点でとんでもないのに、さらに!?」


丹波「似ているようで、空間に関する理解や技術はこちらの方の宇宙が深い。この技術にこの時代の人類、ウマ娘が到達しているだけでも偉業というのに、更にかい?」


ケイジ「ああ。これを使えばメフィラスの考えていることも楽になるかもだし、予備も作れるからな。後、丹波さんの巨大化や、あっちの世界に戻った時に地球防衛組織と一緒に戦う際にこのシステムを組み込めばより強くできる」


ゴルシ「二人で作成中に思い付いたシステムがあるからそれも同時並行で作成するぜ。丹波ちゃん。素材の融通や、いろいろ頼むぜ?」


丹波「むぅ・・・それなら・・・幸い素材に関しては私の宇宙では普通に手に入るものだからね。分かった。推しに頼まれて断るのはドルオタの名折れ!」


ジャスタ「はー・・・よし。とことんやりましょう! それな私ももう最後まで付き合うわよ」


ケイジ「いよっし。やっていくか。あの宇宙人の度肝抜かしてやるぜ!」


ゴルシ「ついでにライブの演出にも使えそうなのあったし。とことん笑かしてやるぜー?」


~続け~


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ウマ娘エピソード 26 プイ

 えー今日は一つ報告があります。私のファンの方からなんとプレゼントとしてイラストレーター、キャラクターデザインとして活躍している ゆなまろ 様にいらしてケイジのイラストを描いてもらい、それをいただけました!!


 私のケイジのイメージをより美しく、そして素晴らしく描いてくださいました!


 同時に今までのウマ娘エピソードでの行動や、山ちゃんボイスを交えて元気に過ごしているケイジをイメージしてくださると幸いです。

 できればアニメ スペース☆ダンディ と名曲 「Uptown Funk」 のMAD動画くらいにははじけていると思えば幸いです。



【挿絵表示】



 「到着しましたお嬢様」

 

 

 「ありがとう。じゃあ、しばらくはこっちで過ごすし、仕事もメールや通信で対処してくるからね? ふふ」

 

 

 ようやく仕事がひと段落して、もぎ取れた長期休暇。お父様からも大変助かっているけど休みなさいと言ってくれて乗っかった甲斐があるわ。

 

 

 運転してくれた執事に手を振って、前田家の執事と警備に頭を下げて、お土産を渡してからゆったり上がる。ほんと、自宅の周辺一帯が前田家の関係者、警備の人間で固めている。町一つがちょっとした城のような警備の厳しさはすごいわよ。

 

 

 「いやあ、ディープインパクト様が来てくださり大変ありがたいのですが、申し訳ありません。ケイジお嬢様は今昼寝をしていまして。この広間の方で眠っているので、起こしましょうか」

 

 

 「大丈夫ですよ立花さん。私が起こしますし、そのまま話しますので。ふふふ。マエダノキズナさんやシンザンさん、ミホシンザンさん、利褌さんによろしくお願いします」

 

 

 キャリーケース一杯のお土産を引いていきながら私に微笑み、ふすまを開けてくれる執事長の立花さんに礼を言って、広間を見ればエアコンを切ってスピースピーと可愛い寝息と、その美しい寝顔を見せてくれるケイジ。

 

 

 「ケイジー・・・来たよー? ・・・ケイジー?」

 

 

 「はふわ・・・ぉお・・・生で・・・生でへちまは駄目なんだ、せめて玉ねぎに・・・」

 

 

 相変わらず、何の夢を見ているか分からないけど、起きないので悪戯しちゃおう♪

 

 

 ケイジの身体にダイブして・・・あー・・暖かい・・・すっごいい香り。香木に、甘い匂いに・・・ふふふ・・・この胸に、脚に・・・大きな体がもう最高・・・あーもにもにもにゅもふ・・・ほふ・・・最高。

 

 

 赤ちゃんみたいな綺麗で気持ちいい肌なのに、力を入れれば車をひっくり返し、エンジンかけても引きずり回せるパワー持ち・・ふふふ・・・私が現役のころにレースをしていたら、どれだけ・・・ハーツちゃんとも一緒に楽しめたのに

 

 

 「おーうこらこら。ケイジちゃんの胸はクッションじゃないぞー? プイちゃん。おひさー。どうしたの?」

 

 

 もぐ・・・起きたケイジに胸に頭をうずもれさせられた。あー幸せな窒息だわあ。

 

 

 「ぷは・・・久しぶりケイジちゃん♪ いやー久しぶりにしばらく泊まりに来たのと、トレセン学園に遊びに行きたくて。ジェンティルちゃんと同室でしょ。色々一緒に過ごそうよ」

 

 

 「おーそいつはいいな。リギルの皆も喜ぶし、シリウスの皆も大喜びだ。よし! そんじゃアタシも腕を振るうかね。食いてえもの言いな。作ってやるぜ?」

 

 

 わしゃわしゃと頭を撫でて明るい笑顔見せてくれるケイジちゃんに私ももっと笑顔になる。

 

 

 ふふ。私が先輩だけどケイジちゃんは本当にこうして接してくれるからうれしいわ。周りの目を気にせず、思いきり素でいられるんだもの。

 

 

 「お、プイっち~! お久。なにしにきたの? ごはん? お風呂? それともケイジ? 前田しに来た?」

 

 

 「そんなメジロしに来たみたいに言わないでよナギコちゃーん。遊びに来たの。執事さんにお菓子も渡しているから、晩御飯に食べよう?」

 

 

 「ってことはケイジの手作り料理食べられるじゃん! イヤッホー! ありがとうプイっち! 急いでヒメにも今日は寮から帰るように連絡しておかないと!」

 

 

 「ナギコうるせーぞ・・・おお・・・おかげで目も覚めたし、どれ・・・超神田寿司の方からも余りそうなもんもないか聞くか。あっちの仕込みは最高だからな。プイちゃんもたくさん食うだろ? 今日は好きに過ごしな。あんたはアタシの親友だからな」

 

 

 あーほんとこの空気がいいなあ。名家だけど飾らないし、どこか懐かしいこの空気が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「FOOOOO!! ケイジ、ディープ先輩最高にファンクでした!! 本家に劣らない最高のカバーソングとダンス!!」

 

 

 「ベリーグッド!! これはアメリカのフレンドにも是非送らないと♪ 日本の英雄と傾奇者のコラボダンス。夢の練習でライブデース♪」

 

 

 「ふふ。改めて洋楽の良さも分かりましたし、日本で長く過ごしたからこそ新鮮と懐かしさを感じます。ケイジ先輩、ディープ先輩。ありがとうございます」

 

 

 早速トレセン学園にプイちゃんと一緒に登校して、練習の際にリギルのアメリカ生まれ組が是非ダンスをしてほしいというので「Up〇own Funk」 に私なりの振り付けを付けてのダンスと男性ボーカルはアタシが声帯模写でやり切っての披露。

 

 

 プイちゃん、アタシのやるサプライズやアドリブ、ライブの演目は全部目を通して記録しているらしく、特に最近は洋楽とビーストウ〇ーズのOPをゴルシと一緒にやったやつがお気に入りだとか。

 

 

 「いやいや・・・最高だったよケイジ、ディープ。本当に君たちの踊りや歌はアイドルという路線をぶっ壊して幅を広げてくれる」

 

 

 「ふふ。ルドルフ先輩は皇帝と呼ばれるのにライブであんなに乙女でキュートな顔するからなおさらにファンが多いんですよ。私が男ならキュンキュンしちゃいますよ?」

 

 

 「君みたいな品行方正で眉目秀麗。実力もあれば私も嫁に行くのはやぶさかではないな」

 

 

 「会長・・・まあ、私もディープの意見には賛成だがな。ありがとう。ディープ。ケイジ。今日はいい刺激になりそうだ」

 

 

 ルナねえにエアグルーヴらも来ているしで、ほんとプイちゃん元リギルとしても大人気だよなあ。真面目に飛び級してすぐ卒業しなくてもここにいたらこうして遊んで、アタシともレースできただろうに。

 

 

 「ケイジ。模擬レースしまショウ? ジャスタウェイに勝つためにも、ヒメちゃんやライトニングちゃんと戦うためにもケイジのトップスピードに対応できるようにしたいのデース!」

 

 

 「あ、私もケイジとレースする予定なんだから! 3000メートルでシービー先輩とルドルフ先輩、ブライアンで三冠ウマ娘でのドリームマッチよ!」

 

 

 「おお・・・! それは大変すばらしい。ですが・・・その、大丈夫ですかね?」

 

 

 「どうしたのだ? グラス」

 

 

 「いえ、その。周りの生徒たちの視線が」

 

 

 「あら。むしろ盛り上がってチョベリグじゃないかしら? 私も最近距離適性伸ばしたし、参加したいわケイジちゃん。プイちゃん♪」

 

 

 あー・・・まあ、プイちゃん来ているとカレンチャンのウマスタ投稿に、アタシが一緒にリギルに練習相手としてきているせいで凄いことになっているもんな。つーかURAの職員や重役、トレーナーまで多く来ているじゃねーか。

 

 

 かかか。こいつは盛り上げないといけねえなあ? 

 

 

 「いよっし! ならマルゼンちゃん。シリウスに連絡取ってスピカにも連絡取ってくれ。ゴルシとスぺちゃんと、ウチからもオルフェとライスを呼んで3000メートルレースの模擬連やろうや!」

 

 

 「ケ!? 皇帝、英雄、暴君、登り竜、怪物、スーパーカー、姫騎士、傾奇者、不沈艦、日本総大将の練習試合ですか!? ドリームマッチ! まさに最高のレース! エルも、エルも是非! この怪鳥も!!」

 

 

 「エルちゃんはまだ距離適性がステイヤーに厳しいでしょう? けが防止のためにも無理は駄目だよ?」

 

 

 「う、ディープ先輩がそういうのなら・・・なら! 今度2400で勝負デース! 英雄の末脚とまた勝負したいのです!」

 

 

 「いい根性だぜエル。なら後でアタシが相手してやるよ。さーやろうぜ、タイキシャトルにフジキセキ、ヒシアマゾン。アタシの体力を舐めて手を抜いたらあっという間に終わらせてやるからな?」

 

 

 ウォームアップついでに練習で1600、その後に他のメンバーのウォームアップ中でインターバル。で、3000を走って、一休みしてから2400でエルとグラス、エアグルーヴらを相手するか。さーて・・・スタイルは何でやろうかね?

 

 

 「ケイジちゃーん! 今日は大逃げでやって頂戴! 私とどっちが早いかエンジン勝負よ!」

 

 

 「あ、マルゼン先輩! 私も言おうとしたのに。ケイジちゃん負けないでよ。 私が倒すんだから!」

 

 

 「言ってな! 現役引退してからもどれだけ鍛えているか見てやるから柔軟で脚攣るんじゃねえぞ!」

 

 

 はい大逃げのスタイルで行くこと確定。ははは。スーパーカーと、英雄の脚と速度勝負。どうなるかな?

 

 

 ・・・あ、そうだ。野菜嫌い克服のために関東野菜連合にブライアンとスイーピー友情トレーニングで預けていたし、連れてくるよう連絡しておかないと。報酬は・・・えーと肥料に栄養アンプル。培養土とかでいいかな? 後はウチのホテルと契約している農家さんにも連絡をと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はい。えーとこれはこうで。よし。計算全部終わり」

 

 

 「ふぅーこっちもおしまーい。これで生徒会の半年先までの業務の4割くらいは済んだんじゃない?」

 

 

 練習試合を終えて、今度は生徒会業務の応援でござい。ブライアンが野菜嫌い克服の友情トレーニングとアタシらとの練習試合で完全に体力尽きたからその分はね?

 

 

 「そ、そろばんの指の動きがみえなかった・・・なんで計算機やPCの計算式よりも早く打てて正確なのだケイジ」

 

 

 「日本が生んだ計算機とその技術を舐めちゃいかんよエアちゃん。いや、これでもまだ遅いぞ? アタシのひいばあちゃんはもっと早かったし」

 

 

 「エアちゃんいうな!」

 

 

 「じゃあベロちゃん」

 

 

 「っ・・・!? なぜ幼名を知っているのだケイジぃ!!」

 

 

 「面白かったよねー。若いころ何度かウマ娘のパワーのせいでそろばん壊して、その珠算でネックレスとかブレスレット作っていて。あ、ケイジちゃんその話詳しく」

 

 

 「聞かなくていいぞディープ!!」

 

 

 ちなみに今はマエダノキズナとして普通にアクセサリーとして今も使っているがな! しかも梵字を書いてのお守りとしてギャル組に受けたとかなんとか。80年以上使い込まれた新作アクセとか新鮮だな。

 

 

 あ、ちなみに今はあの龍王と同級生になって二人でシリウスの入団テストに行こうとしてくれているそうな。嬉しい。

 

 

 「ふふ・・・感謝するよケイジ。ささ、差し入れで入ったものだが、いいリンゴジュースと、ケイジの好きなお菓子もある。一息入れようじゃないか」

 

 

 「お、サンキュ♪ しっかしよーあんたらほんと人増やしなさいよ。ルナねえも自分がやったら早いけど、あれこれやりすぎてもルナねえがいなくなった時に生徒会回らないし、権力増やしすぎてもなあ」

 

 

 「あー・・・人参クッキー・・・チョコチップ味とこのリンゴジュース・・・うーん♡ いいブランド貰ったのね。あー聞いたわよ? 樫本トレーナーに広報とトレーナーと生徒の契約とかそっち関連は減らしてもこれだもん。先輩たちワーカーホリックすぎ」

 

 

 それ、まだ成人どころか学生業やっているほうが正常な年齢のプイちゃんがすでに日本の名家勝つ財閥のディープ家の運営の一翼になっているからブーメランじゃね? リギルは自由人とワーカーホリックの差がひでえなおい。

 

 

 アタシらを見習え。トレーナーを海にぶん投げたり振り飛ばしたり、鮫漁に連れていったり犯人逮捕に強行突入したり、皆で鍋会したり外来生物の駆除ついでに食べたりとか自由だぞ?

 

 

 「む、むぅ・・・だからこそケイジやディープを生徒会に誘おうとしたのだがな・・・」

 

 

 「貴様ら二人がいれば私らもずっと楽だったんだが」

 

 

 「それはそれでアタシらがいなくなった後の生徒会に来るメンバーの基準がやばすぎるし、暴走した際に異を唱えるやつらがいなくなるわ。今回の理子ちゃんの件でもわかっているだろ?」

 

 

 「真面目に生徒会、学園は愚かURAに発言力があるチームシリウスがいたからこそいろんな視点があるしね。ただ、同時に生徒会には強いウマ娘がいないとというのも分かりますけど」

 

 

 「ブラッキーエールとかみたいな跳ねっ返りでも黙らせるくらいの実力や経験者でないと聞かない子らもいるだろうしな。真面目なケイジちゃんとゴルシちゃんを見習ってほしいぜ」

 

 

 「貴様らが真面目なら世の中の9割9分は真面目になるぞ」

 

 

 無敗の三冠レベル何名生徒会に集まるんだよ。真面目に誰も生徒会になりたくなる子いなくなるわ。先輩らと比べれば―とか言われかねんぞ。

 

 

 まあ、同時に実力があって現役ゆえの生徒たちへの理解もあれば目標になるべきだからこそ生徒会への権力や発言権の強化、そういうレベルの人間を欲しがるのも分かるけど。

 

 

 ほわ・・・ほんと、だからこそ万が一の際は生徒の頂点ともいえる生徒会に否を言える実力者がいたほうがいいし、難しいねえ。

 

 

 「とりあえずよー無理せずに周りに頼りつつ過ごしたほうがいいぞーやれウマ娘の理想の女帝やら、ウマ娘の幸せの追求とかもいいがなあ、生徒としての幸せも味わえないまま大人になるよりやりたいことも素直にしなさいや。お、このお菓子美味い」

 

 

 「企業とかそういうのに関わって、仕事するとわかるけど市民、生徒とか学生としての視点が案外意見や考えとして役立つしねー。上に立つものの視点と、同時にルドルフ先輩たち個人としての、うら若い乙女としての視点。どちらもあるほうが目指す先も明確になるかも?

 

 

 あ、ケイジちゃん。こっちのお菓子頂戴?」

 

 

 「ふーむ・・・そういうものかな。前田家の直系と、ディープ家最強の意見だ。ふふ。いい意見としてもらおうか。お代りもあるし、ぶどうジュースもあるぞ。私達では消費しきれないのでな。是非もらっていってくれ。

 

 

 今度貰った方々への話のネタにもなるし、私達だけで味わうにはもったいない味だし」

 

 

 「たまにでいいケイジ。貴様も手伝いに来い。普段はふざけ倒しているが周りをよく見ているゆえにこういう意見を言える相手は貴重だ。ただし、ゴールドシップは連れてくるなよ? 以前益虫だと言ってテントウムシの仲間扱いとしてカマキリの卵を大量に持ち込まれた後に地獄を見たからな・・・!」

 

 

 ああーしかもどこで見つけたかニセマオウハナカマキリだっけ? あれの卵もあったりで大騒ぎだったなあ。エアちゃん泣きながらアタシに抱き着いて助けてくれといっていたのは可愛かったし。

 

 

 ついでに捕まえて、カワカミちゃんにあげたらすっげえ目を光らせてくれたなあ。アトラル・カのモデルだけある。一部の虫嫌いのトレーナー、ウマ娘たちは悲鳴上げて逃げたり、泡吹いていたけど。

 

 

 「あのカマキリの外来種のせいで真面目に国が動いて、外来種の調査で東京中に教授や研究所が動いて愉快だったなー、事の真相はマニアが間違えて逃がしちまったせいらしいけど」

 

 

 「あんなモンスターカマキリ。私も見たら驚くかも? あふ・・・おーこのスコーン美味しい」

 

 

 「ははは。流石にあの時は本気で怒ったな。ささ、どんどん食べてくれ。二人の食べっぷりは私も食が進む」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふぃー・・・もう夜かあ。さ、帰りにコンビニでおやつでも買って、モンハンする?」

 

 

 「うーん・・・それもいいけど、ちょっといい?」

 

 

 夜になって今夜は寮ではなくアタシの自宅なのでちょいと夜更かしもできるのでアタシ、プイちゃん、ナギコ、ヒメでゲームしようぜと話してそのためのお菓子とジュースを買おうとしていたのだが、プイちゃんが何やら空気が違う。

 

 

 「あ~らー? どったのー先生?」

 

 

 「ん、もう一回走らない? ふふ・・・昼のもよかったけど、周りの目を気にせず、思いきりケイジとだけレースしたいの」

 

 

 あらー火がついて収まっていないか。こいつは・・・ほんと、早い引退と卒業が惜しいぜ。あのレースでも強かったってのに。

 

 

 まあ、アタシも今の言葉で火がついたがな。

 

 

 「距離は?」

 

 

 「2400。凱旋門賞を取ったのはケイジちゃんだけど、国内では負けないよ?」

 

 

 「もう一度昼のように勝ってやる。負けたら今度蝦蛄漁に付き合えよ?」

 

 

 二人でこっそりレース練習場に入り込み、距離の測定とカメラを用意。

 

 

 スマホのタイマー機能を用意して・・・

 

 

 「・・・・!」

 

 

 「ふっ!」

 

 

 夜の特別☆二人きりのエキシビジョンマッチ開始!

 

 

 この後残業していたオハナさんにつかまって怒られた。




 ようやく馬世界でもケイジとよく絡んでいるプイちゃん登場。何気に姉妹でケイジを狙っております。


 ディープちゃん 無敗の三冠を達成した一人であり、怪物、英雄として世間から、URAからいつまでも愛される魔性、呪いともいえるレベルの超カリスマ持ちなのだが本人は人懐っこく気さくな性格。足の皮、爪が強くないのだが天性のパワーとスタミナ、加速力に練習大好き故に足の皮がずる向けなどの怪我を多くしていたので早めに引退し、飛び級のまま速攻で卒業してからはディープ家の跡取りとして社会人として活動。

 自分を超える功績を多数持ち、英雄や怪物としてではなく一個人として触れ合ってくれるケイジ、シリウスやスピカ、リギルチームの皆が大好き。楽しみは休日の際に前田ホテルの温泉や料理。ケイジを抱き枕にして眠るの大好き。


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開催でござーい

 前回のケイジのイラスト、美しい、イメージにぴったりといってくださり大変うれしいです。もらったすぐ後に書き始めましたし、真面目にあのイラストを見せたいためにエンジンかけました。そのせいでおまけをお休みして急ぎ出したいとなりましたけども。


 あらためてイラストをくださったファンの御方。そしてそのファンの要望に応えて絵をかいてくださった絵師のゆなまろ様。本当にこのイラストをくれてありがとうございます。


 あ、それと活動報告にて表情差分もありますのでよければどうぞ。たくさんあります。



 ケイジの馬時代のイメージ曲は真ゲッターとかモンハンですが、ウマ娘の時代のイメージはポケモンの神曲「GOTCHA!」とかウルトラマンとかですかね。馬時代を経て、もう一度、ずっと一緒にいたいというケイジのみんな大好きな部分から。


 「いよいよだな・・・ケイジ」

 

 

 『だなあ・・・ははは。いやー愉快愉快』

 

 

 練習も終え、実績も文句なし、ようやくだぜ。ただまあ、驚くのは蓮君よね。マジで一発逆転の主砲ではないけど代打、代走枠でオリンピック野球チームに入るとは。

 

 

 岩ちゃんもドキドキかあ。そうだよなあ。岩ちゃんの親父どころか、爺様世代にしか見ていないであろう日本で開かれた世界のスポーツの祭典。

 

 

 それに参加して、挑みに行くんだ。そうなるわな。

 

 

 『ほれほれ。リラーックス。俺がいるんだ。問題ねえぜ!』

 

 

 「はっはは。本当に松風騎手や大竹騎手が言うように自分らの言うことを理解しているようだね。うん。大丈夫だ。君を無事に返して、君の相棒たちに負けないような功績を出していくよ」

 

 

 それ大丈夫? 志村さんにあげたミコトはすでにアメリカでGⅠ2つ取って、うち一つはクラシックだし、イギリスでも女王陛下所有の俺の子、既にイギリス二冠持って三冠目指すそうだけど。初年度産駒でこれだけどおやっさん値上げどうすんじゃろ。

 

 

 うちの牧場だと、アルトリアとブラウトちゃんの子どもがドイツダービー制覇。ヒメと俺の子どもは芝とダートそれぞれOP馬だっけ。ミレーネちゃんの子はオーストラリアのヴァンさんが買っていって繁殖牝馬にするとか。何でも「お母はんとしての素質を感じる」とか?

 

 

 あ、それと俺とウィンクちゃんの子どもの計画がしっかり通ったので三年間はウィンクちゃんは俺の伴侶ということで、代りにお代は900万でいいそうな。値上がりする前に予約したから大丈夫。引退後はしばらくうちに来るそうで。

 

 

 『じゃあメダル取りに行くぞ。人間で言えばこちとら国際大会、そのレベルの大レースを16回以上優勝してんだ。ここで一つ増やして将来俺の子どもたちでそのメダルやらいろんなものでオセロできるくらいに手にする前の序章よ』

 

 

 「本当にやる気満々だが・・・落ち着いている。うーん。いつも触れあっている馬たちとは違うレースへの意欲は流石競走馬・・・か。それくらいがいいな。うん。世界を相手に戦うのなら君が最強に噛み合う。さ、行こうか」

 

 

 『おうよ。季節外れの桜吹雪咲かせよう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~東京オリンピック2020応援スレ 18~

 

 

 110:名無しの観客

 

 オリンピック応援スレだけど実質ケイジファンの集いだねえここは。

 

 

 111:名無しの観客

 

 あんだけネタと強さを振りまいて、障害馬術も無敗でレコードをたたき出して挑みに行くんだししょうがない。競馬を引退して尚あれだけ子供たち以外で夢を見せるなんていなかったよ。

 

 

 112:名無しの観客

 

 公式のケイジ応援団のメンツも豪華だしねえ。志村ヘンさん筆頭にドリフターズ、大演歌歌手北島サンちゃん。元プロレスラーヒール兆治さん。広島〇ープ全員。元野球選手ゴジラ松沢さん。歌手でマルチタレントの和田サエコさんに小林雪子さん。霊長類最強の吉田美奈子さん。

 

 

 ゲーム会社からもポ〇モン、モン〇ン、特撮からもケイジが共演したウルトラマンにライダー俳優も初代から多くがいたりでなあ。あと動物から志村さんの相棒チンパンジーのパン君に絵をかけるゾウのコウスケ君にかつてのライバルに先輩でゴルシにジャスタ、ディープにオルフェ、カレンチャンやジェンティルドンナ、グラスワンダー、スペシャルウィークと。ウマ娘のモデルの競走馬、それ以外でも多くが応援団だし。

 

 

 騎手も岡崎元騎手から的矢調教師、大竹騎手に松風騎手。他にもウマ娘の声優さん達、絵師さん、日本の超有名漫画家たち皆がいる大応援団だ。

 

 

 113:名無しの観客

 

 まず日本にいれば何処かで名前を聞くメンバーが勢ぞろいしてケイジの応援だもんなあ。同時にそれだけケイジが多くに関わって、遊んでいるんだよな。声優さんや俳優さんがケイジと共演した際には塩おにぎりとたくあん一緒に食べた動画があったり、テイオーステップやってくれたという書き込みがあって最初なんのこっちゃとなりかけた

 

 

 114:名無しの観客

 

 ウルトラマンやライダーのDVDのおまけで撮影現場の際のケイジと出演者たちのふれあいとかNGシーン、作品内の後日談のおまけ映像で新規ファン老若男女問わず引退しても尚増やしまくっているしね。おかげで馬券、応援馬券、半券の値段がえらいこっちゃ。

 

 

 115:名無しの観客

 

 日本が生んだ最強だもんなあ。しかも海外馬には国内外のレースを問わずに一切負けていないからそのジンクスでこのオリンピックもいけるという声も分かる。

 

 

 116:名無しの観客

 

 大真面目に今から障害レースに転向してもあの絶対王者と戦えるだろうと言われているしね。今なお体の衰えどころか成長して、柵越えに関しても170cmを助走なしのその場でぴょんと軽く飛び越えるのが日常茶飯事だし

 

 

 117:名無しの観客

 

 あの動画は驚いたなあ。トウカイテイオーも幼駒のころから130センチくらいの柵をその場で助走なしで飛び越えていたようだし、あの柔軟性とばねを引き継いで、頑丈さは軍馬以上。あの馬体であの末脚も納得だよなあ。

 

 

 118:名無しの観客

 

 テイオーの柔軟さと賢さ、マックイーンの無尽蔵のスタミナと悪馬場をものともしないパワーと脚遣い。引き継ぐ子がいないと思いきやステマ兄弟にケイジと、往年のファンの夢をかなえて、その先を見せてくれるんだから盛り上がるわなあ。

 

 

 ・・・お。選手入場だぞ!

 

 

 119:名無しの観客

 

 始まった! いよいよだぞ。二度目の東京オリンピック!! さあ、早く・・・おお!? この入場曲、まさか・・・!

 

 

 120:名無しの観客

 

 ゲームの楽曲を!? いや、アニメもあるぞ!!

 

 

 121:名無しの観客

 

 おおー・・・! エスコンに、すげえ。知っているような曲がたくさん! ああー日本と言えば、ゲームも立派な文化だし、個性や多彩さを出すにはもってこいだよな! いいぞ! よくやってくれた!

 

 

 122:名無しの観客

 

 観客からも大歓声じゃん。しかも世界各国の応援団も喜んでいるし、すげーな、海外の反応も推しのアニメやゲームの曲だとわかって歓喜したり秒単位で入場曲のメドレーを書きんこでいる。

 

 

 123:名無しの観客

 

 クールジャパン。日本を湧かせて、今も元気を与えてくれる日本の文化だもんな。お・・・日本代表が来るぞ!

 

 

 124:名無しの観客

 

 お、おいマジか・・・・・・!!

 

 

 125:名無しの観客

 

 ケイジがいるぞーーーーーー!!

 

 

 126:名無しの観客

 

 キタァアーーーーーーーーー!!! (≧▽≦)!!!

 

 

 127:名無しの観客

 

 漢唄からの真ゲでケイジ登場とか最高じゃねえか!!

 

 

 128:名無しの観客

 

 おお! 桜吹雪のメンコに、菊の紋章を着けた馬具に鞍。陛下から頂いたキセルもぶら下げて完全にやる気満々の正装じゃん!!

 

 

 129:名無しの観客

 

 おい観客で国内外問わずに気絶したやつらいるぞ!

 

 

 130:名無しの観客

 

 そりゃあ、海外の伝説の名馬たちも成しえなかった功績を上げて、海外のレースの常識を叩き壊した生ける伝説だもんよ。しかもまあ、国民栄誉賞、陛下から直にいただいたものに勲章まで下げての入場に参加とかもう盛り上がらないわけがないわ。

 

 

 131:名無しの観客

 

 海外と別の掲示板からももはやケイジの登場に沸いているのと、フルアーマーケイジと言われているのが草生えるんだわ。

 

 

 132:名無しの観客

 

 キセルに勲章、馬具に鞍にメンコとこれでもかと自身が手にした栄光を見せつけているもんな。ここに金メダルも追加してやると言わんばかりの堂々ぶりに俺も惚れちまう。

 

 

 133:名無しの観客

 

 ケイジ応援団も大興奮じゃねえか。というかこの大音量の音、音楽に歓声にビビらないあたり本当に馬とは思えないほどの肝の太さだなあ。

 

 

 134:名無しの観客

 

 むしろもっと盛り上げてやろうかと言わんばかりにしっぽブンブンだもんな。これでもいつも通りの奇行や暴走をしないあたりしっかりわきまえているんだろうね。やっぱ皇帝の孫だし、最強の戦士のひ孫だわ。肝も太ければ頭もいい。

 

 

 135:名無しの観客

 

 でも牧場に帰ると犬や猫と戯れて、牝馬の尻に敷かれたり、三冠馬、有馬記念制覇メンバーの牡馬たちと一緒に散歩したりかけっこしたり、海で泳いだり、アニメ鑑賞会したりとかほんと優しいんだよな。メイショウドトウレベルで優しいそうな。

 

 ただし他のボス馬たちもすぐさま大人しくさせるほどにボスの風格はあるというか、優しく緩いけど調子乗りすぎると怒るボスだとか

 

 

 136:名無しの観客

 

 カレンチャンとダスカに取り合いで鬣両方から噛まれたりグルーミングされまくって変なモヒカンじみた何かになったり、タイキシャトルやメイショウドトウたちと一緒に遊んだ際は自分からおやつ分けてあげたりとか、ほんと奇行もするけどそれ以上に優しいんだよね。ジョーダンとかも湯治の帰りは温泉以外にもケイジから離れたくなさそうにしていたそうだし

 

 

 なお二度目の熊退治もしていた様子。

 

 

 137:名無しの観客

 

 ほんとあいつは軍馬か何かなのか。障害馬術のレースの際に北海道内移動していたらクマに遭遇して襲い掛かってきたから厩務員や騎手かばって返り討ちにしたとかほんとあいつは何なんだ。

 

 

 そりゃあ牧場でも基本ケイジの方は馬房から放牧地に出入り自由な特別待遇になるわ。

 

 

 138:名無しの観客

 

 ケイジだし。ほんとこれだけ滅茶苦茶やって元気な頑丈さがすごいわ。そう言えば、馬体重今何キロだっけ?

 

 

 139:名無しの観客

 

 確か、前日の発表だと675キロ。肉をつけて、脚の筋肉を太く、衝撃に耐えられるようにしっかりしたら本当に足がさらに太く、骨も大きくなったとかなんとか。

 

 

 とにかく運動しまくるしその分食べまくる。けど現役、クラシックを過ぎたあたりのころからレース前は体重を絞る癖もあるから増量は少し大変だったし、ハードな練習で汗を流しまくるから確か塩とかも普通の馬たちが一日90グラム取らないといけないけど、ケイジの場合は獣医から105グラムくらいは取らないとこの馬体から来る発汗量と普段の運動量から間違いなく低ナトリウム血症起こすと言われたとか。

 

 

 140:名無しの観客

 

 でもレース前の2週間以上前からは一切サプリも食べないし、水もしっかりとしたものじゃないと飲まない。普段は好き嫌いもまるでないからドーピングを警戒していると担当調教師も厩務員も騎手も言っていたからなあ。真面目に食事に関してはマジでプロの意識がすごい。

 

 

 141:名無しの観客

 

 あーだからか。ケイジの応援する人らのうちわに食材を描いているものあるけどみんなびっくりするくらい一貫性ないの。多いのは好物のリンゴくらいか。それ以外はニンニクみそに大根、レンコンとかビールとかオレンジジュースとか。ヒナギクとかミントキャンディーにバターキャンディーとか。

 

 

 142:名無しの観客

 

 マヤノトップガンやメジロライアン、キンチェムにサンデーサイレンスの好物もあるのか、真面目に何でも食べるのねケイジ。海苔は駄目だけどお米も普通に楽しんでいるようだし。

 

 

 143:名無しの観客

 

 うーん。これは楽しみだな。オリンピック委員会からも「日本が誇る最高のアスリートの参加」ということでケイジの入場を太鼓判押して認めているし、頑張れよケイジ。勝ってきてくれ!!

 

 

 




 次回に競技に挑みまっす。あとあの騒ぎはどうしようか、一応それと噛み合わせるかどうかでケイジがひと騒ぎします。



~おまけ~



~ヒシアケボノとトレーナーがいた無人島~


メフィラス「・・・・・・・・これは。ほんとうにやってのけたのか」


ケイジ「おうさ♪ ベーターカプセルとほぼ同じサイズの時計型ベータ―システム。名付けてベータ―ウオッチ! 実演するから、ゴルシ―」
(某Gショ〇ク風の金属製の時計を右腕に装着)


ゴルシ「あいあい。光学湾曲ステルスシステム。ジャスゴルジャミング開始! よし・・・いいぜーこれで民間は愚か軍事衛星でも半径20キロはアタシらが何をしてもここを唯の無人島としてしか見られない」


丹波「空間や光学による理解からまさかの私たちの宇宙船が使うシステムまで理解するとはねえ。やはりこの星の、アイドルの、人の可能性は侮れない」


ケイジ「ははは。ま、それはこれを見てからな。そら!」
(ベータ―ウォッチを起動して巨大化する)


ゴルシ「よしよし。無事に細胞の一つまで無事に機能しているし、衣服の強化も問題ない。プランクの方もいい感じ。わはは! 光の国の技術に追いついたぜ!」


メフィラス「素晴らしい・・・私の持つベータ―システム、いや、衣服の強度などを見ればそれ以上・・・ははは・・・まさしく度肝を抜かれるとはこのことですか」


ケイジ「よいしょ。とはいえ、これはメフィラス。あんたがアタシらにこの情報をくれて挑戦してきたからこその、丹波のおっちゃんがいたからこそできたことだ。地球と、メトロン星と、メフィラス星の住人の邂逅と光の国という目標があったからこその化学変化で生まれたものさ」
(巨大化を解除する)


ゴルシ「そういうこったな。ほれ、メフィラス。丹波のおっちゃん。あんたらの分のベータ―ウオッチ。変身の際は時計部分の近くの金属部分を開けてからボタンを押せばガチャンと時計部分が変化してボタンみたいに押せるようになるから、そこを押せばすぐに巨大化も、小さいままでも強化装甲を付けられるぞ」


ケイジ「どうせあのバカでけえ棺桶変身以外で使うだろ? 備えあれば患いなし。メフィラスの好きな言葉だったよな?」
(ベータ―ウオッチをメフィラスと丹波に渡す)


メフィラス「やれやれ。完敗です・・・ああ、だが・・・清々しく、嬉しい敗北だ。君たちは武力を使わず、暴力を使わず、その笑顔と可能性と心で私を負かした」


丹波「ウルトラマンたちがこの星を愛する理由がまたひとつわかった気がするね・・・ふふふ・・・ギンガ、ビクトリー、千草ちゃん。君たちの故郷の星は次元が違っても凄いよ」


ゴルシ「なーに湿っぽくなってんだよー湿っぽいのはネイチャと佃煮くらいでいいんだよ。さ、鯛でも釣って帰ろう!」


丹波「ゴルシちゃん。それは銛漁じゃないかな?」


ケイジ「その後は・・・行くんだろ? メフィラス」


メフィラス「もちろんだ。この星の美しさを知ればなおさらに。元の次元に戻り、わたしなりの手段であの星を手にする。光の国やほかに渡さないためにね」


ケイジ「その世界にウマ娘いないかもしれねえ。ただ、この星の可能性は舐めちゃ痛い目見るぜ? なら、新しい目的に挑みに行くダチの門出の祝いだ! 派手に行くぞ。丹波、め・・・いや、山本。今夜はうちに来い。超神田寿司も呼んでのパーティーだ!」


丹波「え!? ってことはナギコちゃんにキジノヒメミコちゃん、未来の卵のミコトちゃんたちにも会えるの!?」


ゴルシ「おうよ! アタシも認める才能だ。ファン第一号になってこい丹ピッピ。お前の振り付け、オタ芸動画の大ファンらしいぜ?」


ケイジ「そういや言っていたなあ。丹波のおっちゃんの踊りの切れや教え方、振る舞いは渋くてかっこいいって。なら、山本の門出と、ミコトのファン第一号の誕生祝だな。わはは!」


メフィラス「和気藹々。私の好きな言葉です。ケイジ。もし私がやるべきことを成し、出来ずとも最低限の事をこなした後は・・・また、来ていいですか?」


ケイジ「なーに言ってんだよ。アタシとあんたは友達で、悪友で、仕事仲間さ。またいつでも来い。袖振り合うも他生の縁。次元が違う出会いを一期一会で終わらせるほどさばさばしてねえのよん」


メフィラス「これはこれは・・・この星の女性は強かですねえ。ふふふ」


ケイジ「そういうこった。ま、そのついでにおもしれえ場所と知り合いを最後に教える。きっとお前さんの役に立つものをくれるぜ?」


~数日後~


ケイジ「行っちまったかー頑張れよメフィラス。そっちの世界の地球。どんな形かは知らんが、精いっぱい守れるようにな」
(BIGBOOSの企画でみんなでビッグボスジャンを着けた集合写真を見つつ)


ゴルシ「よーケイジ! ウルトラマンスーツ作ろうぜ!」


ジャスタ「ヤッホーケイジ。そういうことだけど、大丈夫?」


ケイジ「問題ないよ。いよっし! なら、だれがどのモデルがいいかの会議を・・・」





~シン・ウルトラマン世界線~


シン・メフィラス(山本)「全く・・・君は今の君の状態を理解していない。君自身の存在がこの星を消すぞ」
(ブランコに腰かけてコーヒーをすすりながら)


リピアー「どういうことだメフィラス」


シン・メフィラス「・・・光の国の住人の君と、君と融合した神永君。本来ここまで深く、そしてしっかりと噛み合う融合をするということは光の国と地球人は同じ進化をたどる可能性や、なにより私が提示した地球人がベータ―システムを利用した生物兵器となる可能性のその先・・・短時間だが光の国の戦士の力を引き出して戦えることを示している。


 はっきり言おう。私が来るよりも早くこの星で目覚めてしまった。過去のこの星に投棄、眠らされていた生物兵器・・・この星では禍威獣と言ったね。それを既にこの星の文明レベルで的確な対処をして被害を抑えていることからも今後外星人の関りで文明レベルは飛躍的に伸びる。いわゆるブレイクスルーだ。しかも、私はその脅威を教えるためにあえて日本に眠っていた禍威獣を目覚めさせた」


リピアー「メフィラス・・・!」


シン・メフィラス「おっと。待ってほしい。ただし、それ以外、日本以外の禍威獣はすべてを目覚めさせないようにしていたのだ。秘密裏に場所を移させ、あるいは今の人類が少なくても向こう数十年は見つけられない、刺激しないような場所にね。現に、君たちの言うところのゴメスは工事が原因で暴れただろう?


 ・・・・・・・君と私の行動はお互いのミスとアクシデントによって宇宙に散らばる130億以上の知的生命体の星々にこの星の今後の危険性と兵器としての可能性を見せつけてしまった。


 呉越同舟。この星を私の管轄下において危険な進化や外星人たちを下手に刺激する、これ以上ちょっかいを出される事態を避けようじゃないか(・・・それにだが、この世界の地球人・・・ベータ―システムとの相性の良さ、奇跡ともいえるベータ―システムへの適合を持つケイジ君たちとは違う異常なまでの・・・おそらくは・・・まったく、考えることは同じか・・・)」


リピアー「断る」


シン・メフィラス「・・・なら、どう守り続ける。私と君でもやれることは限度があるし、神でもない。私達も力はあれどもただの知的生命体の一人。君に至っては変身の時間さえも、エネルギーさえも限られる。無謀だ。馬鹿な考え一つで突っ走り、夢半ばで勝手に倒れることほど滑稽なことはないぞウルトラマン」


リピアー「それでも、だ。私の招いた災禍でもあるというのならば、この身体・・・神永のようにどこまでも戦い、守り抜く。それに・・・この星の現生人類はお前が思っているよりも強い。必ず、一緒に守れるはずだ。この星に眠っていた禍威獣からも、外星人からも」


シン・メフィラス「物別れとは・・・実に残念な結果だよ。ただ、時間はまだある。私もこの美しい星が、現生人類が好きだ。今後も互いの意見を話そうじゃないか。それと、話に付き合ってくれたお礼だ」
(自販機で缶コーヒーを買ってリピアに渡す)


リピアー「・・・」


シン・メフィラス「私の本当に好きなメーカーではないが、一番近い味でね。コーヒー一つ取っても、お茶一つ取ってもこの星の味の追及は興味深い。この星を愛するというのなら、もっといろいろ知るべきだよ。ウルトラマン。では」


~続け~


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今日は記念日

 水着ゴルシにマックイーンの実装に、ダートに怪物たち、現役の頂点の一角、しかもホッコータルマエが来るとは思いませんでした。もしかして結構色んな名馬たちの許可を取れているけどシナリオとかデザインとかで色々煮詰めて未完成だからお出しできないという子もいるのかなあとワクワクします。メイケイエールちゃん来たら絶対面白可愛い子になると思います。


 誰かホッコータルマエとコパノリッキー主人公の小説書いてくれないものでしょうか。絶対面白いですよ


 ゴルシとは対照的に白の水着を着けたケイジがゴルシと一緒に遊びに行ったら凄い注目されそうですねえ。スタイルもあれで、ゴルシは耳当て? ヘッドギアを外した状態ですし。





 ケイジ記念。この世界での2020年まではこんな感じ。


 2016年 キタサンブラック(日本)


 2017年 サトノダイヤモンド(日本)


 2018年 キウイフェザー(オーストラリア)


 2019年 メジロメビウス(日本)


 2020年 ボーボボ(イギリス)


 メジロメビウスは父方はアルダンの孫で母はオグリキャップのひ孫です。ボーボボはケイジの初年度産駒で女王陛下の持ち馬。鬣のボリュームがすごくモフモフのふわふわなミホシンザンうり二つの子だと思えば幸いです。


 ケイジ応援団たちとのかかわり。

 志村ヘンさん ドリフターズの仲間にして娘、ミコトを渡したマブダチ。温泉もよく入っては二人一緒にビールで乾杯。幸太郎の子どもも里親としてもらったりして最近動物の写真が更に増えた。


 北島サンちゃん レース勝利記念の蹄鉄を幾つかサービスでプレゼントしている。ケイジが雄たけびで壊しちゃったマイクも実は持っている。自身の持ち馬の牝馬とケイジの二年目の産駒で何やらやべーのが出そうだとか。


 ヒール兆治 笑っていけないシリーズガースー黒光り牧場で共演。ケイジのサインをもらった第一号さん。一口馬主からスタートしてケイジの産駒を買おうかと思案中。ガルパンおじさんからウマ娘おじさんになりかけている。


 広島〇ープの皆様 蓮君の入団した野球チームということでケイジたちから直々に16冠馬のプレゼントと試合の公式イベントで応援に来てくれたこともあってみんなファンに。大真面目に熱い試合だけどそれ以上にネタと暴走の多いケイジ世代のネタを漁る選手が増えたとか。


 ゴジラ松沢さん カ〇プの応援に駆け付けていたケイジと仲良くなり背中に乗せてもらった。サインの交換会をしたりケイジのおやつのリンゴと松沢さんの買ってきた大根を交換してぼりぼりむさぼる姿がテレビにも。


 和田サエコさん お正月特番企画でケイジの牧場に行って一緒に海で遊んだ。フリスビーを追いかけるケイジに、逆に幼駒たちにフリスビーで遊ぶケイジを見て爆笑。ケイジの馬たちを買おうかなと前田牧場に打診している。


 小林雪子さん ポケモン企画でご一緒に。その際にはしっかりと鞍を用意して乗せてもらいライブ会場、ショーに出演してくれるというアドリブもしてもらったりであっという間にファンに。サンちゃんと共有で馬を持とうかとも。ラスボスということでケイジから頭を下げた数少ない人物。


 吉田美奈子さん ポケモンのCMにて一緒に出演。背後のカイリキーやバンバドロよりもお前ら二人が戦う方が絶対強いだのなんだの言われる始末に。オリンピックの関係でもまた会うことが多かったので仲良し。


 ポケモン関連 CMに出演。アニメーションでも共演したりとでいろいろ出ているのだが基本ギャグに。理由としては「仲間、身内を舐められる、馬鹿にされるのをケイジが真面目な描写だと絶対にやばいことになる」ということで。


 モンハン キリン亜種、希少種、オトモガルクの声の収録。ガルクの声はサンブレイクの特典にて実装。ケイジのシマウマの鳴き声も出せるという特技を生かして一頭3役をこなした。


 ウルトラマン ウルトラマンゼットにて客演回。基本ゼットとふざけ倒しつつもサポートもした。ウルトラ兄弟やゼロとも出会うことに。


 仮面ライダー ジオウにて客演。シリアスな空気をぶち壊して癒しのエピソードに。たくあんをもらってご満悦にもしゃもしゃしていた。


 漫画家の皆さん 集〇社の方々多数。理由は言わずもがなケイジの名前の由来とその活躍で世界中にまた日本の漫画を広めたことからの協力。将来出てくるシングレのおまけページでは馬のケイジとウマ娘のケイジが仲良くおにぎりをもしゃもしゃしているイラストも。


 「蓮」

 

 

 「はい、監督」

 

 

 オリンピックの野球日本代表の代打に選ばれ、一回戦。5回表ノーアウト1塁。互いに点差はなくどちらが先に取れるかという展開。監督に呼ばれて僕はすぐに飛んでいった。

 

 

 「・・・塁を進ませればいい。送りバントでもバスターでも、普通にやって構わない。荒して、守りも頼んだぞ」

 

 

 「・・・はい!」

 

 

 監督からの代打に出し、防御も任せるという言葉に気合が入る。血がふつふつと熱くなる感触が心地よい。

 

 

 ケイジはきっとこれを何十回も感じていたのだろう。レースの前は何時もやる気に溢れていたそうだし。僕も父さんに、ケイジに、皆に負けないほどの成果をたたき出す。そのための一歩だ。

 

 

 『代打。1番、三嶋 結城に代わりまして、バッター葛城 連 背番号12』

 

 

 アナウンスを聞いてバッターボックスに立つ。相手選手も若き新星。特にスピードとパワーのあるボールがキレ味だという。

 

 

 投げられるボールは・・・ゆっくり見えた。同時に、怖さがなかった。この日のために普通よりずっと短い距離から投げられるボールを打つ訓練や、超ベテランたちのピッチング技術を味わってきたのだ。

 

 

 様子見でストライクゾーンではなくボールの方にきわどい場所で投げているが、悪球打ちもしている。驚かせてやる。線はまだ細いのっぽだろうけど、こういうやり方もできるんだ!

 

 

 『蓮選手初球から打ちました! 外角のボールを捉えライト、センターの間を奇麗に抜けて取れない!』

 

 

 思いきりファールゾーンギリギリへの狙ったけど・・・うーん。半分だけか。でも弾丸ライナーで奥まで転がり込んであちらさんの対応が遅れるようにはできたし、ドームの形状故に奥にボールが転がり込んだのは正解かな? 練習しないとなあ・・・

 

 

 ほい1塁、2塁に出塁。先輩は既に3塁を越えて無事に帰ってきて1点ゲット。・・・・・・・・もう少し行けるね。

 

 

 『蓮選手。初打席も何の緊張もないのか3塁打をたたき出し、走者を返し先制点を確保! カー〇の韋駄天。赤き彗星の名前は伊達ではないのか!』

 

 

 待って待って世間じゃそんなあだ名あるの!? 僕機械類凄く弱いんだけど!? え、命名元がケイジと志村さん? そして松風騎手? 何を教え込んだ・・・いや、アニメを見たんだケイジ・・・・オリンピック開催期間中に会いにいけたら質問カードとイエス、ノーの棒も持たせてから聞いておかないと。

 

 

 監督からのサインは・・・色気は出さずにしっかりと戻ってきて。かあ。了解です。あ、長打で度肝抜いたのいいぞと言ってくれた。やったね。

 

 

 次の先輩も安打製造機として有名だし、僕よりもずっと冷静な方だ。待っていてね父さん、みんなにケイジ。必ず勝って、ボーナスでウマ娘のDVDケイジの実家に送るからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「蓮選手凄いなあ・・・1回戦はアウトにならずに盗塁3回の4打点に貢献。悪球だろうと、内外問わずに確実にランナーを進めるか自分ごと塁に押し出す。お父さんは馬のみならず息子さんの才能を伸ばすのも秀でていたわけか」

 

 

 『やってくれるねえアイツは。俺のライバルを目指すのならこれくらいは当然だが。あ、スタッフさん教えてくれてどーも』

 

 

 「さて・・・僕らも頑張らないとねえ。葛城厩舎と、蓮選手にも負けないように」

 

 

 だな。さーて。そろそろ競技の時間だわ。で、まず俺の挑む馬術だが、簡単に言えば障害物のバーを落とさないようにしながらどれだけ早く、そして奇麗に時間内にゴールできるかというものだ。

 

 

 これ以外にも演技力を競う、騎手の指示通りに演技をする馬場馬術もあれば三つの競技の総合力を競う総合馬術なるものもあるんだそうな。

 

 

 この中では一番俺が力を発揮できるのは障害馬術。普段から柵越えもして、引退後も運動は欠かさなかったから今も衰えていないし、速度への慣れは大逃げかましていたからね。あと放馬した際に他の子たちを捕まえたり俺が逃げてからかったり。

 

 

 後は基本長くても3分ちょいの中にとことん集中して挑む。ぶつける一発勝負をしていたので短い時間の中でしっかりやり切れるというのならここだろうとかなんとか。

 

 

 まあ、行きますか。俺らの出番になった。思いきり暴れ散らかしてやるぜ。岩ちゃん振り落とされるなよぉ?

 

 

 「よし・・・ケイジ。君の好きなようにやろう」

 

 

 『おう!』

 

 

 アナウンスの声を聞いて会場にぽっぽこ出場。おおーすげえ声だあ。観客の声が周りからわーって来るのすごいなあ。こだま? するのは会場の形のせいだねえ。

 

 

 オカマバーの皆に、公式応援団の皆、あ、ミコトの写真もちながら志村さん手ぇ振っているわ。ミコトはナギコやヒメにベッタベタに甘やかされていたけどアメリカ暮らしは大丈夫そうだって志村さん言っていたし、安心だ。

 

 

 さてー・・・いよっし!

 

 

 まずはスタートして、最初のバーを越えて―ハイほんで次も越えて―うん。行くか。はい次のコーナーに向かって爆走! コーナリングで鍛えた体さばきで急カーブしての柵を飛び越えて―すぐさまカーブをして折り返すようにしながら次の場所へ。

 

 

 細かにカーブを用意したコースだから加速もしづらい中しっかり規定タイム内でゴールできるスピードとバーを飛び越えられる助走の用意が必要。うんうん。難しいねえ。

 

 

 これくらいの練習はいつも牧場で頑張っていたんだ。猟犬たちと鍛えた技術見せてやるぜい!

 

 

 「ケイジ、ここは飛びどころを間違えないように」と言わんばかりの手綱での指示を聞きつつ目の前にある三本のバーが短い間隔で並んでいる場所を見て了解と意志を返したうえで加速。

 

 

 最初もポーン。次に勢いを殺さずにもういっちょ。二回のジャンプで貯めた反動と脚を使って最後の長く跳ばないとバーに当たる場所を飛び越える。

 

 

 ここからはドリフト気味に身体を傾けてのカーブしながらの加速をしてバーをジャンプぅー!

 

 

 そして次からはバーの高さもあるけど、何よりいちど飛び越えるんじゃなくてしっかり長く高く跳ばないとバーが引っ掛かる場所ばかりになるから勢いも今のまま維持したものに。

 

 

 ギアをしっかり強く、早くしていく。うんうん。いい感じで、更にポーンと。で、ある程度走ればだんだんとバーが高くなっていく6連発のバー飛び越え。最後に至っては高さが俺の目元くらいにあるほどの高さときたもんだ。

 

 

 うんまあ、俺から見れば低い高さだけどね。でもこりゃあ高い。障害レースは一応研究のためにトモゾウとか松ちゃんと見ていたけどほんと草木とかじゃなくてバーだからか威圧感あるなあ。

 

 

 「「「「おぉおおー!!」」」」

 

 

 大きく飛び越えての着地と同時に加速をしてしまえば大歓声もゲッチュ。そしてある意味大一番を越えたので思い切り残りをやれば俺の競技は終了。

 

 

 記録というか得点は・・・97,575 あれ? どこで減点食らったんだよこれ。岩ちゃんに聞くかあ。で、現在ぶっちぎりの1位。ふむ。

 

 

 とりあえずドーピングの検査を再度受けて、後は結果を待つほかないねえ。

 

 

 「これは・・・行けたか?」

 

 

 『さてな。まま、ドイツにイギリスと今年のメンツもすごいそうだがこれ以上は気にせず過ごそうぜ。後は天命に身を任せちゃいましょ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「1位・・・・・・・・ケイジ、岩丸騎手!」

 

 

 無事でした。ドーピング検査も念入りに念入りで世界中に公表してからの最終結果発表。これなら後から改ざんもできないし、ミスでした―とかも運営言えねえしな。

 

 

 泣きながら金メダルを首にかけてもらえる岩ちゃんに、俺もしっかり首にかけてもらい表彰台に上がる岩ちゃんを見て、会場に向けて一つ嘶き。

 

 

 どうだ。俺たちの世代はしっかりと世界の頂点に二つの舞台で立ってやったぞ。ゴルシたちみているかなー

 

 

 会場全体からの割れんばかりの怒号が響いてすげえのなんの。いやーやったぜ。真面目1位と5位で日本組が馬術の本場ドイツやイギリスに並んで世界に名をはせたんだ。女王陛下からまた国に来てくれとか依頼してきそうだなあ。

 

 

 『岩ちゃん。これ預かってて』

 

 

 「ケイジ、どうした・・・メダルを預かってくれ?」

 

 

 『そうそう。そんじゃ、行くぞー!』

 

 

 メダルを預かってもらってから思いきり爆走。そんで勢いのままにジャンプして、くるりと一回転。そんで着地。

 

 

 『金メダル。取ったどー!!』

 

 

 「ケイジ、流石にそれはやり過ぎだって。いやあ・・失礼しました。ほれケイジ。しっかり撮影とかやろうな?」

 

 

 あいあい。お客さんも受けているしいいじゃんよ。別にマナー違反じゃないだろう? スポーツの祭典でちょっとしたサービスよん。

 

 

 あー気も抜けたし、思いきり甘いもの食べたいねえ。酒は駄目かもだが角砂糖かリンゴ食べたい。

 

 

 俺はここで終わりだが、蓮君も優勝目指してがんばれよー




 無事にケイジの勝ち鞍に金メダルを追加でございます。ちなみに、この同年にケイジの娘がアメリカ牝馬クラシック三冠、息子がイギリスクラシック三冠を手にして、ほかにもGⅡ、Ⅲ、OP入りしていたりとで種牡馬の値段が爆上がりせざるを得ずに悶絶する前田牧場の一幕があったそうです。


 ケイジとメフィラスのおまけももう終盤。次もやるのがいいのかなあ。エヴァの世界にベータ―ウォッチとウルトラマンスーツ持ち込んでの大騒ぎとか。とりあえずネルフの皆さんは振り回されるしシンジ君は性癖を破壊されながらしっかりメンタルケアしつつ成長します。



~おまけ~


メフィラス「ふぅ・・・ゼットンを押し込む別次元へと吹っ飛ばすゲートから来る地球や君への被害を抑え込むための第二のゲートを発生させて壁を作りつつ君と私の安全を確保するという作戦は成功のようだね」


リピア―「ああ・・・しかし、本当にあのゼットンを・・・」
(プランクブレーンから出てくる)


メフィラス「何度も恒星を滅ぼし、地球よりもはるかに高い科学技術を持つ星々ですら対処できなかったあの天体制圧用最終兵器を滅ぼして切り捨てた惑星の住民と、たった二人の外星人によって使い物にならなくなった。実に愉快で、君たちの判断の過ちを示すようだね? ゾーフィ」


ゾーフィ「まさか、このような形であのゼットンをとは・・・リピア―・・・そして、なぜ君もここまで」


メフィラス「この星が好きだからだよ。そして、裁定者気取りでこの星の可能性を無個性と、潰していいとまで言ってのけた無知蒙昧な光の国の住人に見せたくてね。温故知新。私の好きな言葉です」


ゾーフィ「・・・・」


メフィラス「私は愚か、君たちですら思いつかなかったスペシウム133、それを用いたベータ―システムのバグのような特性を用いたこの攻撃。うまくいけば私の星よりも科学水準が低い星々、戦闘能力を持たずともこれを使えば君たち光の国の戦士は愚か星ですらも危機に陥る。なにせ、科学で上回ろうともこの星でいうところのカミカゼをしてしまえば君たちを数で対処できるのだから。


前代未聞の快挙と運用方法を見出してしまった。・・・危機に直面した生物の可能性と、私たちが普段運用して慣れ親しんだゆえに思いつかない盲点。それを見せつけられて光の国は、その裁定者は今も判断が正しいと言えるのかね?」


ゾーフィ「・・・・・・・いや、今回は流石に光の国の敗北と言えるのだろう。あのゼットンをこの星と、たった二人によって止められ、しかも被害もない。完敗だ」


リピア―「ゾーフィ。私はこの星の可能性を見守り、助けていきたい。今後ゼットンを、君が立ちはだかろうが同じことを何度でも繰り返す。この星を滅ぼさせはしない」


ゾーフィ「しかしだ。この星の危険性とベータ―システムを用いたこの成果は宇宙中に広まってしまった。間違いなく今後も目を付けられるだろう」


メフィラス「ならばその間は私がこの星で守りを務めよう。だから君たちはさっさとその光の国の掟とやらを済ませてリピア―君とゾーフィ。君もこの星に来て守りたまえ。実はどうやってゼットンを潰したかはゾーフィ、君が破棄プログラムを起動してゼットンを壊したかのようにしか観測できないように細工をしておいた。


 あの兵器が攻撃と、その攻撃プログラムを邪魔しない限りは何もしてこないなのを利用できたゆえにだが、君がリピア―君と一緒に今後この星を庇護下に置く、あるいはこの星の政治にかかわらずに守ると飲んでくれるのならこの細工の映像をそのままにしておこう」


ゾーフィ「・・・なに・・・? む・・・とんでもない・・・どうやってこのジャミング、工作技術を」


メフィラス「この星の創作物と出会いでヒントを得てね。この星の生物は未熟で弱い。だからこそ圧倒的存在への対処や畏怖、憧れ。同時に対策を考える輩は多い。ゆえに、こうしてこの快挙を裁定者の判断ということに誤魔化せるヒントもできた。


 取引しようじゃないかゾーフィ。君たちの過ちを認めてリピア―への裁きとやらを済ませた後に彼をこの星の守護につかせる。それさえすれば君たちお得意のゼットンの消失の真相をこの宇宙に、130億以上ある星々に伝えないようにできる。どうだ?」


ゾーフィ「・・・分かった。しかし、同時にリピア―と融合した神永の命は」


メフィラス「そこも問題ない。私の知り合った中でいわゆる(ウマ)仙人なるものがいてね。死者蘇生をできる。命を固形化したというべきものを渡してくれた。これを神永に使えばリピアー君、神永君二人の命は問題なく、分離した後も問題ないだろう」


リピア―「!!・・・・感謝する。メフィラス。いや、山本というべきか? とにかく・・・彼は無事でいられるのだな」


メフィラス「まあ、政府からのあれこれは面倒だろうが、そこのケアは私がしよう。彼の経歴と行動も素晴らしいし、今後禍威獣と外星人への脅威への対処に必要な素晴らしい人材だ。


 だからリピア―、さっさと裁きを受けてから戻ってきたまえ。私もあの星のグルメと歴史を満喫したい」
(固形化した命を渡す)


~続け~


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オリンピック馬術が終わればケイジワールド

 ウマ娘で早めにウインディちゃんを実装しないとダートでの魔境具合が凄まじいことになりそう。後、地方の子も出ていいのなら是非是非トウケイニセイとお父さんも出してほしい。運命を変えられればダートでの絶対魔王、ウィンクスレベルの怪物になりますよ、おそらく。


 アルチ 様にケイジとゴルシとジャスタの絡みを描いてくれないかなあと思うこの頃。


 ~ケイジを応援するスレ・オリンピック特別編 194~

 

 

 334:名無しの観客

 

 ケイジ、無事にオリンピック金メダルを奪取して、更には5位までに日本代表がケイジコンビ含めて二人。日本の馬関連のレベルを見せつけることになってオジサン嬉しすぎる。

 

 

 335:名無しの観客

 

 これにはルドルフもテイオー(ウマ、ウマ娘含む)もにっこり

 

 

 336:名無しの観客

 

 にっこりどころか号泣していておかしくないわ。産駒も既にアメリカとイギリスでクラシック二冠を取って親父のケイジは金メダル獲得。下手すれば親子で世界と国のトップ、頂点の三冠と金メダルを取る結果とか種牡馬としての値段どうするんだこれ。

 

 

 337:名無しの観客

 

 今前田牧場の皆さんで書き込んでいるブログ見たけど種牡馬としての種付け料金は850万から1200万にあげると書いてあったよ。それでもプイちゃんの引退直後の種付け料金は確か1200万前後だったから激安にもほどがある。

 

 

 338:名無しの観客

 

 そら、ケイジの種牡馬としての値段が低いのはケイジの父親テイオー産駒が今まで気性難すぎて騙馬にしないといけない子が多かったり、怪我に泣かされる可能性が高い、前時代であらゆる方面での子をあてがっても大成しなかったテイオーが父方、母方はまだ成功したとはいえもう絶滅寸前のシンザン系。

 

 

 ケイジはそのどちらの血統の特徴にも当てはまらない。サラブレッドかも怪しいと言われるレベルの馬体と頑丈さの突然変異だからケイジと親の悪いところを引き継ぎかねないというのを考慮して、それでもケイジの実績を加味してのあの値段だったしね。これだけの結果を出されればあげないのはむしろケイジへの失礼に当たる。

 

 

 339:名無しの観客

 

 2年種牡馬生活やって、2年復帰してその2年で既に条件戦、OP以上の子たちを30頭以上。クラシック2冠馬を2頭。しかも3冠目を狙えるかもと言われる出来息子、娘と一緒に世界の頂点を戦い、取ってきたんだからな。偉大な親父だよアイツ。

 

 

 340:名無しの観客

 

 そもそもケイジの悪い所ってなんだ? あのレコード、タイムを頻発しても問題ない、何なら激闘の後にまいど飯よこせな頑丈さ、異常なまでの頭の良さ。悪戯はするけど人をケガさせないレベルに抑えるし、人も動物も馬も大好きな気性。

 

 ご飯もリンゴは好きだけどルドルフやテイオーみたいに品種でえり好みしないし嫌いなものなく食べる。調教もレースも大好き。サイズをでかくして頑丈にしたスズカとプイちゃんを悪魔合体した代物だろ?

 

 

 341:名無しの観客

 

 その人好き、仲間を守るためにはプロのハンター集団も取り逃してしまったヒグマにも喧嘩を売るし勝ってくる闘争本能。頭がよすぎて脱走芸はお手の物。最近だと南京錠でも簡単なのは外されそうだと変えても身内や相棒たち、知り合いを馬鹿にすれば鉄の扉でさえも持ち前のパワーで蹴り壊して人でも襲おうとする。

 

 頭の良さと知り合いを大事にする気性ゆえに下手に地雷を踏めばあのパワーと馬体、頭の良さを用いて全力で暴れるんだ。そこを悪い方向で産駒に遺伝すればと思えばまあ。

 

 後頑丈さが遺伝しなかったらあのノリで暴れて怪我とか、シャカールの二の舞になりかねないし。

 

 

 342:名無しの観客

 

 ケイジの頭の良さを中途半端に引き継いで気性難、レースを嫌がる子が生まれるかもだし、でもオペラオーにマックイーン、ルドルフ、テイオーのように頭がいいからこそ強い名馬も多いからこそ難しいよねえ。

 

 

 343:名無しの観客

 

 そんなケイジだからこそ推せる。しかし、あの後に起きた馬術での騒ぎがなあ・・・馬を思いやるどころかあれはないわ

 

 

 344:名無しの観客

 

 騎手もコーチもプロだっていうのに大衆の面前であれはねえ・・・

 

 

 345:名無しの観客

 

 しかも世界の要人も観ていたのに、あのお馬さんの心労が心配だわ。騎手とコーチは知らん。

 

 

 346:名無しの観客

 

 金メダルゲットして、もう食事制限もなく自由にしていいと言われたケイジがまた脱走してその馬に会ってから自前のリンゴをプレゼントして、食べている間にグルーミングしてあげたりとケアしていたみたい。

 

 オリンピックの公式サイトでその様子が動画としてあげられているから見るといいよ。タイトルは「戦いを終えた選手たちの語らい」で挙げられている

 

 

 347:名無しの観客

 

 優しい世界。というか、オリンピックの設備でもケイジ脱走していたのかよwwwしかもしっかり金メダルのはく奪や取り消しはないとわかってからの行動に芝生えるわww

 

 

 348:名無しの観客

 

 あ、おい、待てぃ(江戸っ子)脱走直後にちゃんと久保厩務員が捕まえて散歩していたんだぞ。ケイジもぼろやおトイレをせずにしっかりファンサもしていたしで最早イベントだった。

 

 リンゴは多分久保さんがあげたとは思う。それを分けるあたりドトウとタイキと同じく友達になったかもだが

 

 

 349:名無しの観客

 

 馬の方がスポーツマンシップと優しさを知っているのが草生える。まあ、ケイジは現役時代からして勝った相手には讃える意味でハグをしたりしていたし、夏と冬の長期休暇の際には温泉浸かりに来た馬たちと遊んでいたりで優しいからね。

 

 

 350:名無しの観客

 

 しかし、改めてこの暑い中で行われているオリンピックだけど色々暑さで問題点が出ているがお馬さん達は大丈夫なのかね。いやちゃんと設備もいいものを用意しているのは知っているけどさ

 

 

 351:名無しの観客

 

 実際に見てきたけど氷柱に扇風機を当てて冷風を送るようにしていたりシャワーの際には足場にビニールプールで脚も冷やせるようにケアしたりして対策は万全みたい。

 

 後、海外のお馬さん達は日本の人参やリンゴにはまっているらしくそれを寄越せと駄々こねる子たちが増えていると海外の騎手、ホースマンたちはつぶやいていたね。

 

 

 352:名無しの観客

 

 日本の人参っておいしいのかね?

 

 

 353:名無しの観客

 

 日本の人参は海外の家畜にあげるあんまり甘くない果実とか味の薄い果実に負けないくらい味が甘い。日本のリンゴとかは海外では触感とか見た目で評価が下がるときがあるそうだけど甘みは強い。

 

 だから昔からジャパンカップに来た海外馬たちが日本の人参とか食べるとそれを良く寄越せとねだるようになったそうだ。今はもっと甘い人参が多いだろうしはまったんじゃない?

 

 

 354:名無しの観客

 

 海外の馬の好物は人参じゃなくてリンゴというイメージが強いけどそういうことなのね。海外のファンの人が日本の馬の好物が人参と聞いて首をかしげるシーンを見たけど納得。

 

 

 355:名無しの観客

 

 そういえば、今日の夕方馬術競技も終わったけど何かあるって公式から発表があったね。エキシビジョンと言っていたけどなんだろう?

 

 

 356:名無しの観客

 

 あれじゃないか? 日本馬で次のオリンピックを狙う馬たちによる交流試合とか、引退した馬たちによるオリンピックではできない演技をするとか。

 

 

 357:名無しの観客

 

 一応競技の休憩の合間にやるちょっとしたものらしいし、配信もされるそうだから楽しみだねえ。

 

 

 358:名無しの観客

 

 一応選抜に当たって障害馬術と馬場馬術どちらも挑んで片方に絞った子とかいるし、そういう子たちの交流模擬試合とかかしらね。楽しみだわぁん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ケイジを応援するスレ・オリンピック特別編 255~

 

 

 19:名無しの観客

 

 ケイジやりたい放題すぎるだろ!

 

 

 20:名無しの観客

 

 ケイジをセンターに日米オリンピック参加していた馬たちでマイケル踊るのはもう笑うしかないwww ゾンビの動きも前と後ろ交互に反対に跳ねることで人より大きく速く動けないのを演出しているし。

 

 

 21:名無しの観客

 

 ケイジが企んでいたらしくオリンピックの休憩時間中この音楽流してもらいながら変な動きをしていたとあったけどこのためかよ。ほんとボス馬になりやすいのを活かして暴走しているよこれ。

 

 

 22:名無しの観客

 

 これのせいで夜のニュース番組で一番大きなスポーツの記事というかスクープ記事になっているのがもうね。オリンピックなのにもはやケイジワールドに振り回されているよ。

 

 

 23:名無しの観客

 

 しかもこれがまた世界にも大うけというね。そらこいつに馬術の指導させたほうがいいとかあの事件も相まってコーチこいつにしろと言われるよ。馬と人の言語理解して馬の方からの舐められない優しい親分だし。

 

 

 24:名無しの観客

 

 女王陛下がすげえ興奮して手を叩いて喜んでいたりでほんとこいつお祭り騒ぎになると無類のネタを出してくるね。

 

 更には参加してくれた馬たちにはケイジの所に届いていた人参300キロの差し入れをみんなで参加賞ということで分け合ってみんなで食べ合う姿を動画にしてファンの方に感謝を伝えるのをブログとかで伝えたりで。この日だけでどれだけお馬さんの可愛い顔を見れたか。

 

 

 25:名無しの観客

 

 同時に海外のホースマンたちは頭抱えていたけどね。日本の人参にドはまりしすぎる馬が増えるから甘みにうるさくなるなあと。ちょっとお高いリンゴを食べた瞬間フリーズした海外馬もいたし。

 

 

 26:名無しの観客

 

 そりゃあ、海外のアスリートも日本のリンゴとかフルーツを知ってから日本のフルーツうますぎるけどどうやって作っているんだろう。またほしい。とか言って大型スーパーで探していたりとかしていたらしいしねえ。

 

 

 27:名無しの観客

 

 それが終われば後日日米以外の代表馬たちにも人参やリンゴを配りに行くみたい。スポーツが終わればみんな仲良しという感じだなあケイジ達は。

 

 

 28:名無しの観客

 

 ケイジの競走馬時代も同期たちと何度も同じレースでぶつかっても互いに負け癖つかずに激闘をしていたけどプライベートでは仲良しだったしねえ。やりたい放題だけどこういう友情を見せるケイジは好きだよ。

 

 

 29:名無しの観客

 

 ボス馬と言っても基本威張らず困ったことがあれば聞く。くらいのスタンスだからなあ。精々厳しいのは本の貸し出しのマナーくらいだし。

 

 

 30:名無しの観客

 

 馬のマナーではないはずだけどねえ・・・というかあれだな。ボス馬としてはチケゾーやキタサンタイプか。体格や振る舞いからボスになるけど基本ボスとして厳しくないという。

 

 

 31:名無しの観客

 

 周りから担ぎ上げられてボスになるタイプだね。尚チケゾーはボス扱いが嫌だったけど優しい子だからやらざるを得ないという苦労馬だった様子。

 

 

 32:名無しの観客

 

 また何か表彰されるみたいだし、引退後会いに行きたいね。種牡馬のお仕事の後ののんびりしている時間を見てみたい。

 

 

 33:名無しの観客

 

 おい、野球の方で蓮選手がやばいこと言っていたぞ。小学生のころからケイジと一緒に遊んでいたし、幸太郎たちと一緒に野球の練習をしてくれていたって!

 

 

 34:名無しの観客

 

 「野球を教えてくれた一人はケイジです。警察? いえいえ。競走馬の、この前金メダルを取ったあのケイジです」と言いやがったし、しかも競走馬時代のケイジの担当調教師の息子だったのかよ!?

 

 

 35:名無しの観客

 

 有名な話だけど、一緒にノックまでしていたりとかしていたのは初耳だなあ。そしてテレビで・・・マジか。プラスチックバットだけどしっかり蓮選手が取れるかどうかを加減してボールの速度や高さを加減しているぞ。

 

 

 36:名無しの観客

 

 蓮君の投げたボールを幸太郎がケイジの取りやすいように持ってきてくれるのがドチャクソ可愛い。ケイジもかわいい。蓮君も可愛いなあ・・・

 

 

 37:名無しの観客

 

 ホ〇だプボ!?

 

 

 38:名無しの観客

 

 あの熊退治の際に助けられた調教師の息子がケイジに負けないほど稼げる実力派プロ野球選手になると目指して、プロになって速攻でオリンピックでケイジと共にメダルを目指して戦うとかほんと出来息子に恵まれすぎているよ葛城厩舎。

 

 

 39:名無しの観客

 

 ケイジと蓮君、蓮君のいる球団相互に応援し合っている関係だからなあ。しかも連くんオリンピック中では打率5割だしオリンピック終わった後にウマ娘に野球イベントどちらも大盛り上がりでしょこれ。

 

 

 40:名無しの観客

 

 実際ウマ娘のケイジに一目ぼれしたそうだし、給料が入ったら特注でケイジのフィギュア作ってもらったそうだしねえ。何でも自室の本の半分はケイジ世代とその血筋の名馬たちの本、関連書籍ばかりだとか。

 

 

 41:名無しの観客

 

 プロ野球を目指すほどの情熱と才能、実力のある子がケイジに脳を壊されてさらに精進した結果がこれという。種族が違えどアスリート同士で切磋琢磨した結果日本開催のオリンピックで金メダルと金メダルに王手をかけつつある終わりだったはずの血統の怪物と若き新鋭とか盛り上がらないわけないなあ。

 

 

 何よりこの証拠映像を残してくれていた葛城厩舎と前田牧場。藤井記者に感謝。

 

 

 42:名無しの観客

 

 ケイジのおかげで野球も面白そうだし、今度見に行くか。




 ケイジもようやく引退。のんびり種牡馬のお仕事に戻ります。尚結局騒ぎを起こすか巻き込まれる様子。




 ~おまけ~


 ケイジ「さーて・・・企画はこれでいいし、後はジャスタとドリジャとどこら辺の週でロケするかを決めて・・・お?」


 メフィラス「戻ったよ。ケイジ君」


 ケイジ「おかえり。その顔だと・・・負けたか?」


 メフィラス「清々しいほどに。ですが得るものは得ましたし、きっとあの星は大丈夫でしょう。いざという時は助けますがね」


 ケイジ「負けることで得るものを得るのならそれは勝利を手にするよりも難しく、大切なものさ。さ、来な。今日はおでんと筑前煮を振る舞ってやるから風呂入ってこい。かあちゃーん! 山本帰ってきた!! 親父呼んでビール用意してくれねえか?」


 ミホシンザン「あらーおかえりなさい山本さん。旦那も貴方が戻ってきたときにと良いお酒とつまみを用意していたので、ささ、楽になって」


 山本(メフィラス)「ありがとうございますミホシンザンさん。では先にお風呂を頂戴します。ここの温泉は素敵ですし」


 ナギコ「うぉう? オッスッス! 山っち―。元気していた―? 今夜もケイジの食事出るし、食べてってよー!」


 ヒメ「あら・・・ふふ。お疲れ様です山本さん。後でで宜しければ実はトレセン学園からある依頼が来ていまして。手紙を渡しますのでどうぞ」


 山本「ええ。ナギコさん。ご馳走になりますよ。ケイジ君の料理はとてもおいしいので。そしてヒメさん依頼ですか。恐らく広報やトレーナー試験を受けたことでの結果でしょうけども。わかりました。ぜひそのお手紙をいただきますね」


 ケイジ「さっさと行かんか伊達男。飯の準備もするんだかよー」


 山本「これは手厳しい。ではでは」



 ~終わり~


 この後メフィラスは丹波オジサンと一緒にアイカツしながら二人でトレーナーになって丹波はアグネスデジタルを。メフィラス基い山本はナカヤマフェスタのトレーナーになりますん。


 もしおまけをまたやるのなら今度はエヴァの世界に行かせてみたいですね。多分ネルフの大人たち何名かにビンタかますか野菜連合にお仕置させる。ゴルシもメフィラスも付いてきて大騒ぎ。


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ウマ娘エピソード 27 バカみたいに叫ぶんだ

 ここ最近眠りたくても眠れないので怒りの投稿です。再就職先を探すにも不安だらけでどうしよ。


 ゴルシの子どもたちの今後も期待ですがメイケイエールちゃんの夏休みも気になるこの頃。頭は間違いなくいいしレースのセンスも肉体もあるけど多分どこかでレースのルールを間違えていそうな気がしますよね。エールちゃん。とりあえずゆったり休んで快適な夏休みを過ごして元気になってくれれば幸いです


 「せいやぁあ! で? アタシに何を聞きたいんだっけ?」

 

 

 「ふっ! だからー! ケイジ先輩の和風コーデとか着付けを教えてほしいの! 祭り、縁日でお兄ちゃんやみんなに可愛いを見せるために!」

 

 

 「だったら、まずは下駄から慣れることだな! っせい! 歩き方とか一つで浴衣は着崩れするから狙う時以外でやったらまいっちんぐ☆ になっっちまうぜ・・・!」

 

 

 「ぷっ! マルゼン先輩みたいなこと今言わないで!? 力が抜けちゃうよ・・・っ! と」

 

 

 今日はカレンチャンと一緒に葛飾区の警察署で婦警、ウマ娘の機動隊員、特殊部隊の皆を交えての訓練講座。

 

 

 学生の身で何を教えるかと言われれば。まあー私は甲冑組術にアメリカで作り上げた我流のコンバットアーツ、逮捕術。カレンチャンは中等部なのにどこぞのグラップラーなあの爺ちゃんが指導したんじゃないかというレベルの合気道を会得している有段者。

 

 

 「はー・・・ケイジのやつがここまで強いとは・・・私も小さいころから凄いとは思っていたが、人もウマ娘の機動隊が二人同時でも相手になっていない。カレンチャンも凄いし・・・」

 

 

 「流石は爆竜大佐がわざわざ頭下げてまで欲しがる人材というわけだ。あのスーザンママといい、あいつの回りはおかしい」

 

 

 ついでに言えば、ある意味では灸をすえるというか、皆に刺激を与えるためだろうねえ。現役アスリートで武人はヤエノムテキもだけど兎角ぎらついてレースに武術に精進する。若いけどその成長ぶりに負けるなという意味で国光の爺様から依頼されて定期的に顔を出している。

 

 

 でもアタシだけじゃあ刺激が薄れる。だから学園の武人、腕利きたちを定期的に呼んではみんなで大騒ぎさ。

 

 

 ほーれ・・・警戒しているのはいいが・・・女の身体で固くなりすぎちゃア置物よぉん!

 

 

 「きゃあぁあ!!?」

 

 

 「おー二人同時に一本背負いの形でぶん投げたか。纏。大丈夫か?」

 

 

 「あでで・・・大丈夫。ケイジが痛めないように落とし方を加減している・・・でも、どうなっているんだあの強さ」

 

 

 「そんなカチコチじゃ、ほい!」

 

 

 「ひぇっ!?」

 

 

 「おおーカレンチャンも腕をつかんだ瞬間に相手に膝をつかせての尻を着かせたか。合気道の極みの一つだな」

 

 

 「ほれほれどうした! しゃべりながら学生二人に歯が立たたないとか情けねえ! もっとかかってこい!」

 

 

 両さんはアタシの保護者がわりということと腕が立つので見学に来ているので纏ちゃんらを看病。カレンチャンの加減技術はほんとアタシも覚えないとなー

 

 

 「そんで。そうだなーとりあえず下駄と足袋の用意、それとちょうどいい匂い袋分けてやるから、後でウチに来い。合いそうなもの分けてやるから・・・よっ!」

 

 

 「ありがとうケイジ先輩! あ、出来れば屋敷の池? 映していい?」

 

 

 「あんまりやりすぎるなよ。ほっ!」

 

 

 「勘吉。確かケイジは小さい頃はアメリカ軍で鍛えていたんだっけ?」

 

 

 「ああ、ヒサトモさんとケイジ本人の願いで5歳くらいから通信教育しながらのアメリカでグリーンベレー、ジョディーのいる海兵、空軍でも整備関連、グリーンベレーとは別の爆竜大佐直下のアメリカ陸軍特殊部隊に半年から1年ほど研修を受けて、全部でとんでもないほどに喰らい付いてきた。

 

 

 卒業後にぜひ来てくれとスーザンママと一緒に軍のトップが何名も来ている始末だ。あっちじゃあ軍人上がりの議員や有名人も珍しくないしな」

 

 

 「すでに世界トップのアスリートでアイドルだろう? あいつはどこに行こうとしているんだ・・・」

 

 

 まーた懐かしいこと話しているな両さん。スーザンママが大佐ないし中佐でアタシが大尉で爆竜大佐の元につけようと何度も画策されているんだよなあ。ジョディー姉からも海軍に来いと誘われるしで・・・間違えたかねえ。鍛え方。

 

 

 「じゃ、これで終わるかあ。ふぃー・・・来週はヤエノムテキにヒシアケボノが来るからみんな鍛えないとまた投げられちまうぞー? 暴れ牛の突進を止めちまう怪力だからな。あ、それとファインのSP隊も来てくれるから、更に面白いな♬」

 

 

 「でも、ボーノ先輩のちゃんこに料理はおいしいから元気になるはずですよ♪ それじゃ、ありがとうございました!」

 

 

 一人当たり数回は投げ飛ばして技術を叩き込んだりはっぱを仕掛けたので礼をして終了。シャワーを浴びて着替えてからナップサックに柔道着を詰め込んでカレンチャンと両さんと合流。

 

 

 「いおっす。どうよ両さん。腕は鈍っていなかっただろ?」

 

 

 「相変わらずだよケイジ。この前の犯人検挙にもありがとうな。カレンチャンも。可愛いし強いしで流石だ」

 

 

 「でしょー? 両さんもありがとね。カレンもしっかり腕を鈍らせないように警察官の皆さんとの試合はいい経験になるから」

 

 

 アイドルにレースにと忙しい中こうやって鍛えつつも気分転換になるようにできるあたりほんとこの子は馬でもウマ娘でも強いなあ。そしてこの若い女傑の人生の軸を打ち込んだお兄ちゃん。恐ろしい子っ!

 

 

 「両さんこの後はどうするんだ?」

 

 

 「ワシはそのまま派出所に帰りながら見回りをして昼御飯だな」

 

 

 「そいつはちょうどいいや。朝飯のあまりもんだが弁当を作ってな。もってけ」

 

 

 「おお! いいのかケイジ!」

 

 

 「いいのいいの。うちのメンバー勢ぞろいで加減間違えて作りすぎてなあ。派出所の皆と食べてくれや」

 

 

 「わー写真撮るね? ケイジ先輩の手作り弁当・・・っと」

 

 

 持ってきていた重箱を両さんに渡して、カレンチャンはアタシと両さんと一緒に撮影。うっわすごいな。ウマスタにあげた瞬間に即座にいいねとか滅茶苦茶入ってきたぞ。

 

 

 「あ、ケイジちゃんにカレンチャンだ!」

 

 

 「練習上がりかしら? キャァアー!! カワイイカレンチャン!」

 

 

 「レースで見ていたけど、本当に大きいわねケイジ・・・うん、色々と」

 

 

 広間というかロビーというか、そこで駄弁っていたら今日の練習に参加していなかった婦警の皆さんがぞろぞろ。やっぱカレンチャンモテるねえ。

 

 

 「ははは。流石ケイジにカレンチャン。皆に人気だなあ」

 

 

 「嬉しいねえ。ちょうどステイヤー気味のアタシとスプリンターのカレンチャンだからファンが被らないのもいいのかね?」

 

 

 「どいておじさん」

 

 

 「ちょっとそこのおじさんは黙っていてよ。ケイジさん。ぜひサインを・・・」

 

 

 あ・・・・!?

 

 

 「おうこら、両さんに今なんつったよ」

 

 

 「ヒッ!? い、いえ・・・その、両さんはケイジさんみたいに綺麗なアイドルとかと釣りあわ・・」

 

 

 「黙れよ。アタシらシリウスの応援団を作って、企画の手伝い、プロデュースもやってくれる最高のファンでアタシの兄貴分みてえな人だ。それに、両さんの伝手があってこそこうしてここで練習していたんだ。それを知らないで、しかも先輩相手にこの礼儀の取り方だぁ? おめえら普段からこんなんしていていざという時に犯罪者相手出来るのか?」

 

 

 「ファンの皆には悪いけど―・・・さすがにちょっと駄目だよねー? お話。しようか・・・?」

 

 

 常に検挙率トップで元刑事課のエリート、特殊刑事課と世間を騒がす怪盗集団も捕まえた敏腕の先輩に対してこの態度かあ・・・多少のふざけは許すが、見た目とちょっとの素行だけで身内同士でこの扱いだぁ?

 

 

 げんこつの一発でも落とすか・・・

 

 

 「おいおい待てケイジにカレンチャン。ワシは気にしていないからそれくらいにしておいてくれ。見ろ、周りの婦警も野郎もみんなビビっているぞ」

 

 

 「・・・しゃあねえなあー・・・てか、アタシの軽い怒気に負けるってダメだろ警察として・・・・」

 

 

 「むー・・・両さんがそういうのならいいけど、お兄ちゃんも私も助けてくれたり、あのお寿司屋さんも素敵だったしで。お世話になってる人をけなされるのは」

 

 

 「ご、ごめんなさい・・・もうしませんから・・・」

 

 

 「い、以後気を付けます」

 

 

 両さんに肩を叩かれて怒気を抑えたが、よく見れば周りも確かにビビっている。まったく。トレセン学園で両さんに世話になった人は多いってのによ。カワカミやファイン、大真面目に国交絡みのものまであるのになあ。

 

 

 「ビビらせて悪かったな。ほれ、アタシの昼飯だが詫びにもらってくれ。どうせ今日は練習も軽いしゴルシに弁当たかりに行くし。じゃなー」

 

 

 「お姉さんたちも可愛いと優しさを忘れたらだめだよ? じゃあねー」

 

 

 「ワシも派出所に戻るか。ケイジも気を付けるんだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ねーケイジ先輩。ちょっといい?」

 

 

 「どったの~? 先生」

 

 

 飯を終えて縁側でのんびり日向ぼっこ。金ダライに氷水を張ってののんびり昼下がりのいい時間~

 

 

 をしていたらカレンチャンから相談が来た。匂い袋にコーデのあれこれは済ませたというのにどうしたのやら。

 

 

 「うん。わたしのおにいちゃん。カレンの事本当に好きなのかなあって」

 

 

 「何を言っているんだお前は? メロメロのデレデレだろ」

 

 

 「そうかなあ? 優しいし、素敵だけどアプローチを何度もしてもあんまり反応してくれなくて。カレンの事はあくまでも子どもとして見てくれていないのかなって。ケイジ先輩なら頼れるし、その・・・」

 

 

 あー・・・まあ、傍から見ればカレンのトレーナー(お兄ちゃん)はどう見てもカレンにメロメロだけど中等部の子に手を出してはいけないと必死に自制しているからね。でもそれがカレンチャン視点だと自分の肢体も美貌もかわいさも全部理解してぶつけているのにあの反応だから小さいころに出会ったころのままの扱いなのかと不安になると。

 

 

 まあ、教え子に手を出すようなロ〇コンが惚れた相手でいいのかといいたいがなあ。お兄ちゃん定期的に滝行して耐えているくらいにはカレンチャンの攻撃に耐えられるよう必死だけど。この前は護摩行をして他の坊さんが頭を下げるくらいにこなしていたし。

 

 

 「よーし分かった。このケイジちゃんにお任せ! とりあえず、あのお兄ちゃんの本音を引き出しちまえばいいんだよな?」

 

 

 「そうそう! いい加減お兄ちゃんと関係を進めたいの!」

 

 

 「ふむ。ならー・・・この日のこの時間に学園の正門入っての広場で腰かけておくといい。後、ウマスタにも挙げられるようなもの用意しておくからな。なはは。愉快なものにしていけるよう頑張るわ」

 

 

 「ありがとうケイジ先輩! 今度奢らせてね?」

 

 

 「そこはアタシに奢らせてくれよー結果が上手く行ったらファインのラーメン食べに行こうや。アタシの料理も振る舞うからウマスタにあげてくれればそれが報酬よ」

 

 

 とりあえずはなしながらゴルシたちに計画を送って、オッケーをもらえたので後は実行に移すのみ。参加者もついでに募るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼下がり。学園での一般教養の勉強が終わり、実技や指導の時間。チームや専属トレーナーがいる場合はそこにも行ける比較的自由な時間。さてさて。屋上にやってきました。

 

 

 カレンチャンもちゃんと広間にスタンバイしているし。じゃ、先陣を切りますかね。

 

 

 「ゴルシ、ジャスタ。ありがとな?」

 

 

 「いいってことよー! おもしれえ頼みだし、やってこいやってこい!」

 

 

 「おう! ・・・・すー・・・ケイジです!! チームシリウスの叫び行きます!!」

 

 

 屋上から前に出てみんながみえるような場所で大声で叫んでスタート!

 

 

 「松ちゃーん!! 真由美ちゃーん!! お前らいい加減くっつけ―!! 結婚しろ―! 毎日カフェオレに砂糖入れないでも激甘の市販のものになっちまうんだよコノヤロー!!」

 

 

 真由美ちゃんたちも顔を真っ赤にしながら手で丸を作ってくれた。あ、やったぜ!

 

 

 「早いところアタシに子供の名づけをさせてくれー! 出ないと今度新潟レース場の遊園地()にぶち込んでやるからなー!!」

 

 

 この発言にゆでだこみたいになる真由美ちゃんを見て推せるのでカメラでパシャリしてからアタシは移動。

 

 

 「ケェェエエイジィィイイ!!!!! 貴様また何を・・・!! ってなぜ屋上にいけないのだ!?」

 

 

 あ、カフェの友達に頼んでおいたけど無事に騒ぎが終わるまで屋上にこれないようにしてくれているのね。ありがとう。今度仏さまに捧げる砂糖菓子でも土産に持っていくか。コーヒーにも合うだろ。

 

 

 よーし! そのまま次行くぞ! いけ! カレンチャンのおにいちゃん! ゆうわくだ!

 

 

 「カレンのトレーナー、行きまーす!! カレンー!! 僕は君が大好きでーす! でも僕を誘惑しすぎるのは大変だからやめて―!!」

 

 

 あ、カレンチャン誘惑にはバツマーク作っちゃった。

 

 

 「カレンがもっと大人になって!! 結婚できる年になったら僕はもう立派なおじさんですが、それでも恋していたらトレーナーとしても、それ以外でも一緒にいてくださーい!! 大好きだぞー!! カレン―!!」

 

 

 カレンチャン満面の笑みというか泣き笑いながら丸マークを作ってくれていたわ。よしよし。

 

 

 「タイキシャトルデース!! オハナさーん! エアグルーヴ先輩に言いたいことがありマース!!」

 

 

 とりあえずメインは終わったので後は一緒に乗ってくれた参加者の皆で大騒ぎ! カメラも休憩中、スタンバイ中に楽しめるようにクーラーボックスにジュースもお菓子もばっちりだぜ♬

 

 

 「もっとBBQさせてくださーい! ハグさせてくださーい!! オハナさん細くて正直不安デース!!」

 

 

 「ならBBQは許可取りなさーい!! そしてありがとう~~!」

 

 

 「OK! なら来週早速一緒に楽しみましょーネー!!」

 

 

 リギルとシリウスで合同BBQしようかな? 幸子に頼んで冷凍保存しているイノシシとシカのお肉持ってきてもらってからのジビエBBQ。

 

 

 「ミホノブルボンのトレーナーだ!! ライスシャワー!!」

 

 

 「ひぇっ!? は、はーい!!」

 

 

 「君のおかげでブルボンはまた走れるようになったぞー!! だから! 今度一緒に練習をしてくれないかー!! 君はブルボンの最高の親友でライバルだー!!」

 

 

 手で丸を作って喜ぶライス。うんうん。いい感じいい感じ。

 

 

 「そしてブルボン! 俺はお前をこれからも支えたい! もっと夢を見ていこう! だから、これからもよろしく頼むぞー!!」

 

 

 「分かりましたマスター!! これからも、今度はシリウスを打倒しましょう!」

 

 

 「わははははは!!! いうねいうね! それくらいじゃないと面白くないわ」

 

 

 んーこれはどこでぶつかるのかね。今度的矢さん捕まえてみんなでローテのすり合わせしないと。

 

 

 「今度はウチや。タマモクロスやー!! コミちゃーん!! いつもウチのために食事を作ってくれてありがとー!!

 

 

 でも、ウチもしっかり食べられるようになったから、ええ加減男捕まえてやー!! 美人なのにもったいないでー!」

 

 

 「ならー!! タマちゃんが今度私にご飯作って、しっかり食べられているところを見せたら考えるからー! そして余計なお世話よタマちゃーん!!」

 

 

 どっちもどっちで思い合っているのね。

 

 

 「チームスピカメンバーのジャスタウェイでーす!! 葦毛のみなさーん!!」

 

 

 「「「なーにーーー!!」」」

 

 

 「大好きでーす!! 今度皆でデートしませんかー・・へぶち!」

 

 

 あ、ゴルシキックさく裂した。

 

 

 「お前はー! ゴルシちゃんという子がいるっていうのに! こんな大不倫はじめてよ! いやもう大車輪よ!! 花吹雪の花まみれの桜吹雪じゃないのよ!! アタシがヒロインなのよー!」

 

 

 「シップも好きだけど葦毛も好きなのょおぉおお!! この思いは止められない! シップでも止めきれないのよぉおおお!!」

 

 

 屋上で相撲始めながら言い合う内容かこれ? 撮影しとこ。

 

 

 「この葦毛フェチ! 今度は黄粉かぶって昔の栗毛に戻ってやるんだからー!」

 

 

 「あの白玉粉の毛染め本当だったの!? いや! シップはシップだから好きだし、葦毛でなくなっても愛しているのよぉー!!」

 

 

 「ッ・・・! バカヤロー! 今言うのかここでー!!」

 

 

 あ、テレ顔ゴルシの顔いいな。ヘッドギアも外れてこれはアタシもめったに見ないものだし。

 

 

 ん? なんかドアの方がうるさいな。

 

 

 「よ、ようやく来たぞケイジぃいい!! 貴様あ! この騒ぎは何事だぁあ!!」

 

 

 「やべえ! 女帝が来たぞ! みんな逃げろー!!」

 

 

 カフェのお友達も限界というか、頃合いだということで解除したのかね? あらかじめ用意した逃走経路でみんなで解散。アタシはワイヤーアクションで問題なく、ゴルシはムササビスーツといろいろ。

 

 

 後日色々学園に苦情というか、懐かしいという声が多かったそうで、特番でこれが取り上げられたそうな。かなり好評だったのと、カレンチャンの熱愛報道と、ライスシャワーとミホノブルボンの立場が逆転した状況でのリベンジマッチとで大盛り上がりだとか。

 

 

 よかったなあカレンチャン。頭にたんこぶこさえた甲斐がある。




 大体こんな感じ―両津を邪険にしていたのはいつもの婦警さん。あんな扱いするのならせめて両津以上の功績出してからの方がいいんじゃないかなあと。真面目に両津の場合警察としても持っている技術と経験はそうそうあるものじゃない。


 あとケイジの経歴上オマタさんとか、マヤノのパパとも仲良しです。



 ~おまけ~


 ゲンドウ「シンジ、エヴァに乗れ」


 ケイジ「やだわー~もう感動の再開なんだからおひげ所りじょりしながらのハグくらいしてあげなさいよ。それでもあなた男なの?」


 ゲンドウ「ほぢゅあぁああぁあああぁああ!!? ケイジ!? あのケイジちゃんが来ちゃったよ! え!? どうやって冬月!?」


 冬月「私にもわからん」


 ケイジ「あ~ら~やーだー! オタク防露と使途の出会いはいきなりなのね~そういうわけでシンジ君。早速エヴァに行こうぜ! ロマンが君を待っている!」


 シンジ君「あああぁあ!?なんでだぁあ!! というかケイジさんにおんぶされて!?」


 ゲンドウ「ずるいぞシンジ! 私も付いていく!」


 ミサト「貴方はここにいなさいよ指令!! というかなんであの子はいつの間にここにいるのよ!?」


 ゴルシ「よーし! エヴァのシステム全部理解したしリフトOK! 後は・・お! ケイジ、シンジを連れてきたか。後はスイッチを入れればいいぜ?」


 ケイジ「流石だなゴルシ。あ、スーツは?」
 (シンジを下ろす)


 ゴルシ「ジャスが持ってきてくれる」


 ケイジ「了解。あらー奥さんお肌がてかりまくりねえ。ケアしすぎでも駄目よー? ほら動け、このポンコツがぁ! 動けってんだよぉ!」
 (エヴァにケリを入れ始める)


 赤木「ちょ!? 勝手に何をしているのよ! それにエヴァがそれで動くわけが・・・」


 ケイジ「動いたぁ! ってシンジ君速攻にエヴァに放り込まれて、アタシは何で鷲掴みなんだこの野郎! じゃない奥さん!」


 ゴルシ「おいおいケイジ! ウルトラマンスーツ!」


 ジャスタウェイ「間に合ったぁ! ケイジ―!」
 (ウルトラマンスーツをケイジにぶん投げる)


 ケイジ「サンキュー! そんじゃ、シンジ君。とっとと行こうぜ。何度も町を荒す使途をぶん殴りに行こう。アタシが支えるからよ。あ、それとできればリフト揚げ切った時でいいから握られている状態外せる?」


 シンジ「え、えーと・・・あ、声が・・・ジャスタウェイ「シンジ君。エヴァンゲリオンは比較的君の意思に応えて動く感じなの。だから君はケイジを信じて、そして使途を倒すという気持ちだけを持ってくれればいい」で、でもあの使途に・・・・?」


 ケイジ「なぁに。ここにいるのはケイジちゃんだぜ? 使途はアタシと二人きりのライブのアトラクション。そしてここにいるのはあんたの推しだろう? 無事に帰れるよう守ってくれよヒーローさん♬ サポートはしてやるから。あ、ゲンドウジャスタとゴルシにも発狂しているわ。ドルオタなのかあのおっさん」


 シンジ「あの駄目親父・・・分かった。ケイジさん、ジャスタさん、ゴルシさん。皆を信じるから・・・でも、本当に何もわからないから・・・一緒に戦ってください!」
 (リフトが開いてケイジも開放)


 ケイジ「よく言った! アイカツとうまい飯食いながら青春して、そのついでに世界も救って使途をしばきに行こうぜ! それじゃ・・・・行くぞ!」
(ウルトラマンスーツ(モデルはどれがいいか迷っています)を付けてベータ―ウォッチで巨大化)


 ミサト「エヴァンゲリオン、およびシンジ君無事に・・・って何の光!? ・・・・え・・・銀と赤の鎧の・・・巨人!?」


 ゴルシ「ヒュゥ♬ さっすがケイジ。似合っている似合っている♬ スーツの出力問題なし、行けるぜ」


 ゲンドウ「おぉおお!? 何だこれは!? 何だこれは!? ケイジキュンがライダーみたいな変身して巨大化!? 夢か!? 最高すぎ・・」


 ミサト「誰かこの駄目親父黙らせて! ええぃままよ! シンジ君、ケイジ君第四使途を・・ケイジ「のん兵衛は黙ってろぃ!」ひどっ!?」


 この後ピザの宅配員を装ったケイジに騙された使途さんは見事倒されました。


 ~終わり~


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もしかして:ノーザン、ロブロイレベル

 皆様心配をおかけしました。まだまだ睡眠障害は続きますがのんびりやっていきます。


 タイキシャトルのご冥福をお祈りします。どうか天国でステゴやスズカやかつてのライバルや多くの馬たちと幸せにワチャワチャ過ごしていていることをお祈りします。


 この世界のウマ娘での名家への世間のイメージ


 前田家 出ればまず怪物ぞろい。ヒサトモ時代から破天荒ぞろいでケイジが来る前から下町の気風が強く他の名家と比べても異色だが何かしてもまあ前田家だしで終わる。基本喧嘩を売ってはいけない。


 メジロ家 皆がイメージするザ・名門。基本育ちの良さがみえるのでどぼめじろう先生の話と野球場に現れるマックイーン(のそっくりさん扱い)で議論は絶えない。ライアンを筆頭にウマ娘以外で人が主役のスポーツへの理解も深い子が多いのでスポーツ関連への投資、融資の話が最近多いとか。


 ディープ家 令嬢、名家だが畏怖されるか距離感がバグっているという意見が多数。引退後に思わぬ一面を知ること多数。ディープインパクト、ジェンティルドンナ、アーモンドアイ、コントレイルと怪物ぞろい。最近は前田家と仲がいいので結婚もあり得るかと騒がれている。


 シンボリ家 ルドルフとシリウスの影響でまさしく上に立つ存在としての印象多数。実際に名家なので周りからも敬われている。前田家が奔放・破天荒すぎる家ならここはメジロに並ぶほどの厳格な家系と思われている。


 サクラ家 基本ほのぼの。親戚同士のつながりやイベントも多いので朗らかで接しやすい。他の名家以上にイメージが薄いというか一族で固まって住んでいないのでちょこちょこ名家と思われないらしい?


 アグネス家 前田家、メジロ家とぶつかり合える実力者ぞろい。名門なのだが最近タキオンの存在が異色すぎていろんな意味でイメージが崩れたり曲がったりで渦巻状態。


 『ねーおやつ頂戴よケイジさーん』

 

 

 『もうないよーほわぁ・・・もういい時間だしねるぞ。厩務員の姉さん寝るみたいだし』

 

 

 『デース。ケイジは優しいですねー』

 

 

 ほいさー今日はドトウとシャトルの牧場でお世話になっているよー種牡馬の仕事はどうしたって?

 

 

 休みの期間になったのと、この前のオリンピック金メダルゲット&娘と息子が三冠ゲットの親子で同年に7冠制覇を祝してJ〇Aさんとドカちゃんの岡山グループ。他多数からのお祝い金でうちの厩舎の建て替えと俺のプレハブをしっかりしたものにするそうな。

 

 

 志村さんにあげたミコトはアメリカトリプルティアラ。息子の・・・あームネシゲ(モデルは立花宗重。名付け親は女王陛下)はイギリストリプルクラウンを制覇。しかもまあ、イギリス競馬のクラシックは前には古馬も交えたものになったんだったかね?

 

 

 そのなかで歴戦の古馬も新鋭の同期もねじ伏せての三冠を手にしたということで大盛り上がり。その功績もあってうちの牧場が未だに中小牧場なのはということで規模拡大はしなくても設備はいいものにしようということで工事中は俺らはそれぞれの牧場でご厄介。

 

 

 後、俺のプレハブに入るマンガや記念品も増えに増えたのでしっかりとした建物に保管しようという感じらしい。嬉しいね。優勝レイとか蹄鉄とかキセルとかメンコとかぬいぐるみとか色々入れるのが楽しみ。

 

 

 『ケイジさんは羨ましいですぅ―今もあんないい女の子たちと沢山相手しているんでしょう? 私も久しぶりに女の子とのんびり』

 

 

 『おうこら。ほんとマイペースだねえーあ、シャトルの爺さん。あんたの息子のライトニングも無事種牡馬となってお前さんの一族は繫栄しそうだ』

 

 

 『たくさんの友達が出来るのなら万歳だねーミホさん美人でしたし―』

 

 

 今も重賞馬生み出しているんだよなあおふくろ。名牝だなあ。ほんと社欄の方に預けて正解だわ。あの才能を日本最大、最高峰の牧場で預けたほうが今後のためだ。

 

 

 シンザン系の牝系か・・・アラブの王族、大実業家笑いが止まらなそう。世間でも今シンザン系、テイオー産駒で交配した子がいて地方でも確か重賞出ていなかったかな?

 

 

 『おふくろ、童顔だもんなーほわぁ・・・お休みー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『はぁー・・・白湯美味しい~』

 

 

 『私にもお湯分けてくだサーイ・・・』

 

 

 『あげません!』

 

 

 『また食い意地はってるよーあー納豆と飼料ウマウマ』

 

 

 翌日、相変わらずの食い意地を見ながら俺は納豆と飼料むしゃむしゃ。ニンニクみそもいただけて最高。

 

 

 『ちぇーあ、ケイジ―そういえば今年の三冠馬コンビ? がケイジ達の再来と言われているようですがどうですー?』

 

 

 『うーん。ライバルも怪物が多いからねえ。ちょいと苦戦するかも』

 

 

 『わぉ。それは私たちの世代みたいな?』

 

 

 『そんな感じ。ただ、三冠取っているからちょいと世間の見る目が不安かなー』

 

 

 『負けた時の視線や空気っていやですしね~オペラオーと悲しくつぶやくのがまた』

 

 

 あ、戻ってきたドットさん。

 

 

 『でも、オペラオーってお前さんのライバルと前一緒にいた馬オペラオーだぞ?』

 

 

 『そうなの? あれー? 一緒にレースに出て勝ちたかった馬だけど、前お隣にいた馬はいい馬ですよーのほほんとしていて』

 

 

 あ、これ多分レースの時のオペラオーとそうじゃないときの落差に気づいていないのと、互いにマイペースすぎてわかってねえや。まあ、うん。あのきりっとしたレースの時と普段の顔はねえ。

 

 

 『飯寄越せー』

 

 

 『人参寄越せー』

 

 

 『駄目デース。ケイジと私とドトウのでーす』

 

 

 『ヤギさんだらけになっちゃったよー』

 

 

 『わはは。おー猫も。おいでおいでー』

 

 

 飯が来たのでみんなでもしゃもしゃしようとしたら一緒にヤギも来ちゃった。で、猫も来た・・・小顔なのか、いや、筋肉がすごいな。うちの猫たちがひょろがりに見えちゃうくらい。ネコ界のシュワちゃんだわこれ。

 

 

 『今日のおやつはー・・・シャトル爺さんと俺はバナナで、ドットさんは、おお。梨だ。この梨はいいぞー』

 

 

 『おぉ・・・これは・・・歯ごたえあるけど噛み切りやすいし、ジャクジャクと甘みも出てきて、美味しいですぅ~』

 

 

 『オー。このバナナ。すっごく甘いし香ばしい! ほむ・・・おふ・・・おおぉ・・・』

 

 

 『あ、高級品ジャンこのバナナ。差し入れうまし。うーん・・・』

 

 

 流石ウマ娘人気と名馬たちがいることもあって差し入れの質がすごいなあ。このバナナ。普通に安いバナナと値段500円は違うやつだよ。

 

 

 『・・・乗せろー』

 

 

 『おわー俺の耳はハンドルじゃないぞー』

 

 

 『あーケイジさんにメトさんが乗っている~』

 

 

 『バイクに乗る人間みたいですねーいい顔していますし、羨ましい~』

 

 

 あふーうちの猫以上にアグレッシブだなあーヤギも寄ってきて・・・あ、ここの牧場のお姉さん。スマホで近況報告かな? ちょうどいいや。はい、バター

 

 

 よしよし。下段、ヤギ。中段。俺、上段。メトさん。最上段。何でか上を飛んでいた雀。うん。いい写真。ありがと―お姉さん。

 

 

 「ケイジありがとねーいい写真撮れたよー今日のSNSにあげるネタになったし、シャトじいじとドットさんにもおやつ少し増やしてあげるね」

 

 

 現代のブレーメン。かあーいいねいいね。あ。うちの牧場から良いねコメきた。あ、今度牧場の馬皆預かるから長期休暇取ったらとおやっさんからも提案来ているし、こりゃーしばらくみんなと一緒だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ケイジ。どうだ。ピカピカのいい馬房。地熱であったまっているから寝冷えも問題ないぞ!」

 

 

 『すげえなトモゾウ。ピカピカの新品になってるよー』

 

 

 無事に戻ればなんということでしょう。あのバブル崩壊を利用して比較的整ってはいたけど古くなりつつあった中小牧場が最新の綺麗な牧場になっていた。

 

 

 これ俺とおふくろしかいなかった小さな生産牧場でしたって言っても信じてくれないだろうなー。しかも数年でこれだし。

 

 

 『お兄様―! 私たちの馬房が! 放牧地と繋がっていますー!』

 

 

 『本棚のペースもあるのにこの広さ―♪ 快適快適♬ 照明も明るいから読みやすいわ』

 

 

 『広い馬房ーあ、目の前に大きなテレビも』

 

 

 『新しい匂いがへ・・・あれ? あ、私たちの寝藁』

 

 

 牝馬メンバーも大歓喜。うちの子らトイレも一か所にとどめて汚さないから新品の建物の匂いへの戸惑いを薄めるために寝藁も持ち込んだんだろうなあ。

 

 

 『いいお湯ですー』

 

 

 『癒されマース・・・』

 

 

 シャトル爺さんとドットさん、あの牧場メンバーもさっそく温泉を満喫。いい顔しているし、あ、ちゃんと人間と動物用の温泉スペースもある。

 

 

 ほうほう・・・

 

 

 『なーなートモゾウ。あの場所はどうなっているの?』

 

 

 「おっとと。わかっているよケイジ。あの場所だろ? ここに見事なものが出来たぞ」

 

 

 トモゾウに引かれて移動すれば二階建ての大きな建物が。あ、俺ら馬も入れるようになっている。

 

 

 おおー本棚に、上の額縁には大物たちのサイン入り色紙がずらり。でも二階は何だろう?

 

 

 「二階か? 二階はお前の優勝レイや盾を飾っているよ。この前の金メダルもね。レースで使用した蹄鉄も錆びないようにしてから飾っている。写真を入れたアルバムもたくさんだ。ナギコもヒメのものもあるし前田牧場三羽烏のちょっとした記念館だぞ」

 

 

 『いいねえ・・・あ、そういえば純金の蹄鉄とか、宝石ちりばめたやつとかキセルとかメンコはどうしたの?』

 

 

 「凄い頭を振るなあ。ああーあの豪華すぎるプレゼントは厳重に牧場のオフィスに保管しているよ。流石にあれはねえ」

 

 

 『だなーということはキセルとかも飾る用と俺の玩具以外では全部保管しているのね。ある意味別館と本館で分かれているような感じなのかな?』

 

 

 俺の愛用しているキセルもあれさる御方からもらったものだしね。なんやかんや超の付く貴重品だし。

 

 

 「いや、ほんと前は小銭をため込んでいる海苔の箱と電子器具以外は大したものはないはずの牧場が変わったよなあ・・・ほれ。ケイジ。ここがお前さん用の第二のくつろぐ場所だ」

 

 

 おお。昔いっしょにテレビを見ていた場所にクッションと藁のあるエリアがある。顔を突っ込みつつここで膝を曲げて座り込んでも痛くないわ。いいねーこういう場所の空気もいいのいいの。

 

 

 『ケイジさーん。元気―?』

 

 

 『ケイジ。お邪魔しているよー』

 

 

 『あれ? オルフェにグラスのじーさん。どうしてここに』

 

 

 『おいらもいるぞケイジ~』

 

 

 『ヤッホー。久しぶりにケイジとゴルシに会えた―』

 

 

 『え? ジャスタにゴルシ。どしたん?』

 

 

 放牧地の奥から聞こえてきた方を見ればまさかのメンバーがずらり。あれ? ここ社爛レベルの牧場だっけ?

 

 

 「あ、ケイジ。実はなー新設備でみんな癒されてほしいって牧場長と周りの意向で来てもらっていて、そのままウマ娘の声優さん達が貸し切り見学に来るイベントのためにも来ているんだ。ほら、ウマ娘第3期、4期のためにも」

 

 

 ああ^~なるへそ。そういやすでに覇王世代のアニメと、ドリジャ、ダイワ姉妹のアニメをやるってあったしね。5期が確か1期をリョテイを加えたものにもするって。

 

 

 そういう意味じゃあスぺちゃんも近いうちに来るか? 後ジェンティルちゃんも。

 

 

 「ささ、遊んで来いケイジ。後でおやつを持ってくるから」

 

 

 『へーい。トモゾウもまたなー』




 前田牧場にケイジ記念館が設立。日本の著名人、漫画家のサイン広場も同施設内に設置。温泉と馬房の設備がグレードアップしました。ケイジ、ナギコ、キジノヒメミコ、ブラウト、ミレーネは放牧地と繋がった馬房に。

 前田牧場に手オルフェとグラス、ゴルシ、ジャスタが過ごすことになりました。今後も。




 放牧地と馬房がセットになっていて出入り自由なのは思い出せるのはゼンノロブロイとノーザンテーストが印象に強いのですが他の馬だとミホノブルボンとだれになるのでしょうかね? 知っている方がいれば是非是非教えてください。帯同馬が常にいた名馬だとファインモーションは知っているんですが。


ケイジが2020年にオリンピックで金メダルを取った年にコントレイルとデアリングタクトも三冠獲得。ケイジとジェンティルドンナの再来かとこの世界では騒ぎになっていそうですよね。というかしれっとまとめても芝もダートも怪物たちが暴れに暴れて、後継者もいればラニのように遠征や海外へのステップを切り開いて新時代を作り、盛り上げつつもバトンは確かに繋がっているという。



ミスターシービーって実は二頭いるそうで、初代シービーはヒサトモと同期。二代目は皆様ご存じ淀の登り竜でウマ娘の二代目シービー。


 これを踏まえるとほんとシービーの一族は常に怪物、伝説と戦うことを運命づけられているような物なんですねえ。ウマ娘世界ではシービーのひいおばあちゃんはセントライト、ヒサトモ、クリフジたち相手に戦って、ひ孫はリギルに入ってルドルフら相手にしていたらヒサトモのひ孫がシリウスに入って世界中で暴れるという。


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ウマ娘エピソード 28 祭りを起こし隊

 思えばケイジってウマ娘のお嬢様、名家たちからはどう思われているのかなあと。特にダイイチルビー。ケイジとゴルシも多分とんでもないお嬢様でしょうし(ウマの血筋的に)その上であの行動をかまして実績出しまくりのエンジョイ勢をどう見るか。



 「あ、カイチョーおはよう。昨日は地震があったみたいだねー・・・大丈夫かな?」

 

 

 「おはようテイオー。震度7、しかも夜だったのもあるから家事からの火災なども気になっているが・・・どれ」

 

 

 昨晩あった大震災。どうしてもケイジのあの震災地のエピソードも相まって余計に気になる。情報を見るために食堂のテレビをっと。

 

 

 『おっーほっほ! 春なのにさっそく今日の九州は夏日和! 桜どころかこの豚たちのようにむさくるしい汗が舞うほどよ!』

 

 

 『あおぉぉおーーっ!』

 

 

 「ブーッ!!」

 

 

 テレビを付ければいきなりどこぞの女王様な恰好をした女性があれこれをしながら天気の解説をしている。あー九州暑いのかあ・・・ってか朝から嫌なニュースだよ!

 

 

 エアグルーヴも思わず味噌汁吹き出しているし。

 

 

 『この熱気は夜も続くのよ。この赤い蝋燭のようにね・・・そう! だからこそ暑さに耐えられるように水分補給と体調ケアのために笹針をすればあ・・・』

 

 

 「こんな番組など見せられるか!! 会長。テイオーチャンネルを変えるぞ」

 

 

 急いで近寄って頭を下げてから急いでリモコンでチャンネルを変えるエアグルーヴ。

 

 

 『横綱天気予報』

 

 

 『はっけよい・・・のこった!』

 

 

 『どすこい! はぁ! 今日は全国的にも少し暑い日が続きますが・・・ハァハァ・・!』

 

 

 『ふぶっ! 中国、特に九州地方は暑い一日になるでしょう! セイヤッ!』

 

 

 そして次の番組の天気予報では力士たちがぶつかり稽古をしながら汗を垂らし息を切らして天気予報を継げる。アツクルシイヨー

 

 

 「だーっ!! ろくな天気予報はないのか! 次だ次!」

 

 

 「お、落ち付こうエアグルーヴ。ほら。この番組なら天気予報の後に震災のニュースも分かる・・・」

 

 

 「は、はい・・・ん・・・?」

 

 

 「こたつ?」

 

 

 『空母からお届けするぞ! 我慢大会天気予報! ハハウ! ハフ! 今日の天気は全国に手気持ちのいい晴れ! むぐ。大根あっぢ!』

 

 

 『出汁がボーノ☆ でもあふぅ! あつ・・・! んふぅー小春日和と言ってもはぐはぐ・・日差しは強くなっているから早めの日傘や熱中症対策はしっかりと!』

 

 

 『あちち! あ、鍋焼きうどんおかわり― それで! 夜も熱くなるので今日一日は水分と塩分。涼むことを忘れずにね! ケイジとヒシアケボノとの約束だ』

 

 

 今度はヒーターに暖房機に布団乾燥機をホットで回し、一昔前の暖房機の上でやかんを沸かし、甚兵衛を羽織ったケイジとヒシアケボノがおでんを食べながらの天気予報。

 

 

 見ているだけで汗が流れるような光景と綺麗な天気予報の絵面のギャップに一瞬頭が麻痺する。なんなのさこれ・・・

 

 

 「暑苦しすぎるわ! 見ているこっちの方が食欲が・・・はぁー・・・今日は軽めにして軽食をつまみつつやるか・・・」

 

 

 「というか、空母?」

 

 

 「ケイジとヒシアケボノ。何をしているのだ? どれ・・・連絡を・・・む?」

 

 

 相変わらずトンキチなことをしているのはいつものことだけど、空母という発言を聞いてカイチョーがスマホを弄る前にニュースですべてを理解することに。

 

 

 『本日のニュースです。あの傾奇ウマ娘ケイジとゴールドシップ首謀による爆竜大佐、武藤准将が指揮を執る日米合同艦隊が本日未明熊本震災救援艦隊と名乗り出航。これは震災復興を願い支援物資の大規模搬送、チャリティーイベントなどを現地で行うと同時に早急な復旧のための活動とアメリカ大統領セクレタリアト、日本首相切札総理からもケイジ発案による日米合同のものだと発表。

 

 

 その支援として岡山グループ。中川コンツェルン。秋山グループ、前田グループ、サンデー財閥などなどの日本の大財閥も協力を表明。現在も輸送機の編隊が空を舞い、あの特殊刑事課もボランティアを表明しました』

 

 

 『現在、日本各地からボランティアを募りながら熊本を目指す伝説の暴走族16号の黒豹の後継を名乗る18代目の女豹たちによる大規模ボランティア軍団が中国地方を横断中。その後ろを関東野菜連合と名乗る野菜のコスプレでしょうか? をした大軍団が迫っております! 速報です。両津警備会社からも多く人員を動員して警備、雑務に応じるために熊本震災への支援を表明。多くの警備員と装備が中川コンツェルンの飛行機に搭乗。タンカーに格納されています』

 

 

 『熊本から現地のニュースです。岡山グループの総指揮の元に熊本各地の建設グループによる大連合での早期復興作業チームの設立とチーム分けが行われるようです。既に救助ヘリや山林バイクによる地震による道路の被害や断層による陸の孤島と化した地域への救援、資材補給隊も組まれ、搬送ルートもおおよそ確保。

 

 

 地震に負けるな。傾奇者を逆にもてなしてやれという声をスローガンに各地で早速復興作業と輸送ラインの復旧への用意を始めているようです』

 

 

 えーと・・・とりあえずわかることは・・・1、ケイジが日米のトップを動かして艦隊に救援物資を詰め込んで熊本に送り込んでいる。2、ヒシアケボノとゴルシもいること確定。3、日本最大のゼネコン、日本最大の暴走族の後継たち、警視レベルの大物たちも行動を開始。4、年収数十兆を超える大企業たちも巻き込んでの大規模復興作業開始を昨日の今日でしている。

 

 

 ・・・・うん。とりあえずこれはやばいかなー? というか、僕も呼んでくれていいのに―

 

 

 『なお。この超巨大チャリティーイベントにはケイジ、ゴールドシップ、ジャスタウェイ、スマートファルコン、タイキシャトル、ヒシアケボノ、オグリキャップが参加しているようで、この電撃的行動には流石ケイジという声も多数とのこと。では、次のニュースです』

 

 

 「ななな・・・何をしているのだあのたわけは・・・」

 

 

 「ああ、どうりで・・・理事長や樫本トレーナーから食事が終われば一度相談をしたいというメールが・・・」

 

 

 「僕も手伝うものある? 多分今頃正門にはマスコミも押しかけているだろうし、色々対応も大変だろうしー。にひひ。ずるいなーケイジ。こんな復興とついでにお祭り騒ぎにして被災地に元気を与えようとするなんて」

 

 

 「全くだ。この分だとディープ家。メジロ家も動いてくれるだろうし、私の方からも実家の方に声をかけておくとしよう。マルゼンスキーの家の方も確かあっちの方にも会社があったはずだが、どうなっているか」

 

 

 僕の家の方でも動きがあるのかな? スマホを見ればさっそくお母さんや爺やからのメールが来ているし、ほんとあの家は一度動けばぶっ飛んでいるねー。

 

 

 「ふぅー・・・全くアイツは・・・テイオーある程度の雑用は頼みたい。後で特大ハチミーをおごってやる。本当に、デビュー前とは違う」

 

 

 「だねー最初はビッグマウスのほら吹き扱いだったのに今や世界最強の選手の一人だし。ニシシ。お土産ねだっちゃおう」

 

 

 「全く、次は私達も誘ってもらわないと」

 

 

 ま、僕も僕でどうやっていけるかを相談しないとな。本当にふざけているけどだれよりも情に熱いんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うーん。おでん蕎麦も美味しい。沖縄のそばって本当にで小麦粉で作っているのだな」

 

 

 「スーザンママとか米軍から聞いたんだけどなー基地から入ってくる輸入品の小麦粉とかが手に入りやすい? のもあってそうだと聞いたけど忘れた。しかし、うーん。おでんの出汁をこんな風時味わえるのは、ゴルシの幻のちくわもうまい」

 

 

 「空母の風も気持ちいいです~でも本当にびっくりした。ケイジさんが夜明けに急に天井から出てきて気がついたら寮の外。からの車に皆と一緒に入ってだもの」

 

 

 「でもワクワクしまーす! 震災への救援と盛り上げ、ケイジが東北でやったことをより規模を広げてやるのが最高!」

 

 

 空母で飯を食いつつ海風を堪能中。いやー震災の情報が来てから即座にあちこちに連絡して動くよう頼んでよかったわ。

 

 

 早速ニュースで世間は大わらわ。ついでにより地震に目を向けていろいろ見てほしいね。

 

 

 「大物はつれないかニャーっと。そしたら海鮮丼と叩きにして振る舞うってのに」

 

 

 「私も~大陸棚の方に沿って移動しているから釣れないかな?」

 

 

 「みんな中に入ろうよー甲板の照り返しと潮風で肌と髪を痛めちゃうよ~☆」

 

 

 「ははは。ウマドルは大変だねえ。あ、トレーナーたちは知り合いの輸送機に突っ込ませたから現地合流出来るぞ」

 

 

 爆竜大佐とジョディーの空母の上でのんびり釣り糸垂らして飯の調達と娯楽の時間。その間もタブレットで予定は確認しているけど、おおよそやることはみんな頭に叩き込んだしねえ。

 

 

 「ところでさーヒシアケボノ。薬味と付け合わせのおかずはこれがいいかねえ。後御飯は出来れば雑穀、玄米にしようとしているんだが」

 

 

 「そうだねえーそれなら栄養も取れるし、確か前田家のブランドの玄米なら子供たちにも評判よかったしそれがいいんじゃない? あ、ゴルシセンパーイ。ジャスタセンパーイ。ここ、焼きそばなんですけど、イカとタコ、どっちがいいです?」

 

 

 「んー? ならイカにしようかなあと。細切れにしたのをフライにして天かすみたいに食べられるか、かき揚げにしてむしゃむしゃするかよ。かー! 早く熊本つかねえかなあ! よっし! 動力室に頼んで速度上げてもらうか!」

 

 

 「フルスロットルで行きましょう! 善は急げ。デスヨネ?」

 

 

 「お腹空いたな・・・ファル子。一緒にご飯食べに行こう。海軍飯も美味しいものだな」

 

 

 「待ってえ! それ軍事機密! 日米の間にやばいことになるからぁ!」

 

 

 大丈夫よジャスタ。ゴルシは本当にやばい所は踏み込まないからいつの間にか食堂で飯をたかるくらいだろ。お、竿が引いている。

 

 

 「釣れた―! おお? 鯛? かなりでけえな!」

 

 

 「アタシは・・・ブリ? 味噌煮つけでもしようかね」

 

 

 大漁大漁。さー熊本でも幸せを大量に釣り上げようねー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なんじゃありゃー!! 変態と野菜がバイクとトラックに乗ってきやがったぞー!!」

 

 

 「野菜と変態まで~~~!!? ナニソレ~~~!!」

 

 

 「空からセーラー〇ーンのコスプレしたおっさんまで来たぞ! 何だこの地獄絵図!!」

 

 

 「親方ぁ! 本当にイルカの群れと潜水艦と日米合同艦隊が来ました!!! アウストラロピテクス復活祭という横断幕を掲げています!」

 

 

 「ならかぼちゃの山盛りを目印に歓迎してやれ! いおぉーし! 役者がそろったぞ! 熊本復活の始まりの日じゃぁーい!!」

 

 

 「そーら資材と食材! 重機も用意してきたぞお前ら! 復興開始じゃぁーい!!」

 

 

 さあさやってきました熊本。周りも気合が入っていればドカちゃんも月光デカたちもいるしで早速やれそうだな。

 

 

 震災の辛さを吹き飛ばせるように頑張っていきましょうや!

 

 

 「ドカちゃん。会場の確保は大丈夫?」

 

 

 「ようケイジ。全く問題ないぜ。避難先の各所に既に鍋と食材は用意している。それで、あの空母と艦隊に資材が詰まっているのか?」

 

 

 「ああ、それと現地の資材もアタシの金で可能な限り買い取って現場に回すからガンガン復興してくれ!」

 

 

 「この歳になってこんな騒ぎ。震災の立て直しを明るくやれる場に立ち会えるのは最高や。ピカピカの道路と家を立ててやるから期待しておけ。それと親父さんによろしくな」

 

 

 頼もしいねえ。流石日本最大のゼネコンの会長。現場との意思疎通もできているようだし。餅は餅屋。工事建設のプロにそっちは任せて。

 

 

 ウマ娘。アイドルとアスリートのプロはアタシら。そっちの方面で盛り上げていくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「みんなー! 震災に負けないようにファル子と一緒に盛り上がろうねー☆」

 

 

 「「「「うぉおおお! ファル子ちゃーん!!!」」」」

 

 

 「さっすが超銀河系アイドル。船旅で少し遅れたとはいえ軍艦の最大船速で来ているのに海外のファンまで来ていない?」

 

 

 「すでにボランティアが数万人来ているし、チャリティーイベントも復興場所に差し支えないように配慮しているのに客入り数十万・・・ケイジ。この収入だけで大真面目に成功ものだわ」

 

 

 「さすがジャスタ。計算が早い。おーいゴルシ―。キタハラとオグリの方はどうだ?」

 

 

 「無事合流しているししくじ〇先生風の話の打ち合わせもいい感じ。ファル子のライブが終わればアタシら三人でのトリオマジックで盛り上げようぜ!」

 

 

 地方営業も欠かさないファル子をかっさらってよかったわー。しかし、しれっと宇宙人らしいのまでいない? いやまあ、3兆人のファンがいれば妥当かあ。どうせ日本の電波を盗んだらファル子みてはまったパターンだろうしほっとこ。好きなものには星の違いは大したものじゃないし。

 

 

 「しゃぁーい!!?☆!? ケイジちゃーん!? なななな、なにしているのー!!?」

 

 

 ファル子のヨガの練習とフラッシュとの練習の写真をバックに流したらおもしれえ悲鳴も聞こえた。ファンは大興奮だし、いいじゃんいいじゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ということで、私たちは中央からの誘いが来て、その担当がまだデビュー前のケイジだったんだ」

 

 

 「当時、本当に天がひっくり返るような思いでした。私にとっての夢は私と進んでくれるウマ娘と一緒に東海ダービーを取ること。それが絶たれること。学園と今も最強格のルドルフの言葉の代理と言っていたうえに、私の師匠であり恩人のトレーナーの言葉でしたから。誘いを断れないともう不安で」

 

 

 懐かしいねえ。あの時はまだ私もペーペーだったなあ。マルゼン姉さんに喰らい付くけど首差で届かないのもよくあったし。

 

 

 『でもオグリさんは無事菊花賞にも参加して見事勝利を収めましたよね。それに北原さんも今や押しも押されぬ中央トレーナーの一人。やはり、あの新制度を?』

 

 

 「そうです。オグリは特待生としての最高の待遇と、私はロッペイさんの見習いということで中央に。ベルノも一緒に参加して私の持つオグリのデータと中央のやり方を擦り合わせていって支える傍ら資格勉強をしてようやく行けました」

 

 

 「正直、私のいたカサマツでも中央に行くこと自体があり得ないとしてクラシック制度や中央の事もさほど教えなかった。けど、この制度があるから安心してみんなで中央に殴りこめた。みんなと一緒に夢を追いかけることが出来た」

 

 

 「近い時期にイナリワンも来て地方と中央の格差も埋められる。怪物たちが出るんだと、夢を見せることが出来たのが感無量です」

 

 

 その後は中央と地方の指導力の差による部分もウマ娘たちの地方と中央の地力が違うのではないかということで交流戦も増えたし研修も増えたし、地方からも腕利きたちを試験で無駄に落とさずに引き入れられるようになったから人材不足も前よりは薄れつつあるんだよね。

 

 

 本当あの制度を利用してくれた代表格がオグリとイナリなのは学園もにっこりだろうよ。

 

 

 「私も一度は腐っていたのをロッペイさんに引き上げてもらい、オグリに活力をもらって今があります。厳しい世界ですし、中央に行ってもそれがようやくスタートに立ててすらいないほどの勝負の世界。でも、本当に頑張れば、その夢を狙えるチャンスは必ずめぐってきます。ここにいる皆さんもどうかこの震災に負けないでください」

 

 

 「私も挑みに来てほしい。負けるのは嫌だがライバルは多い方がいい。友達も増えて私も嬉しいぞ」

 

 

 あ、ウマ娘の何名か気絶した。そりゃあ、オグリにライバル、友達になってほしいからレースで挑みに来てほしいと言われればなあ。

 

 

 よし、そろそろ別の方に移動するか。ファル子の第二幕の後のイベントに備えないとだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぎゃぁああああ!!? おいしく、おいしくたべてくれぇええ!」

 

 

 「そりゃそりゃそりゃあ! よーし関東野菜連合のぶつぎりいっちょあがり!」

 

 

 しゃべる野菜を調理してブルドーザーにのせて調理を開始。

 

 

 「んー♬ この味付けはボーノ♬ これならいくらでも行けちゃう」

 

 

 「こっちもBBQにジュースの準備はオッケーデース」

 

 

 「こっちも白米の準備は行けるぜ!」

 

 

 「雑炊じゃねえか! つーか玄米何処いった!?」

 

 

 炊き出しの準備をしていたらゴルシの野郎が暴走したのでジャスタに放り投げておいて隠していたもので再度米の準備。

 

 

 家が崩れたり震災でインフラがぶっ壊れたのを復旧中だし、ほんと東日本大震災から5年たつかどうかでこれなんだから困るわ。

 

 

 「いよぉーし! 巨大鍋大会と合同BBQでの晩飯を始めるぞー!! さあ皆思いきり食べて飲んで騒いでくれ! 震災に負けないよう栄養と元気を詰め込もうぜー!!」

 

 

 「いよぉーし! 皆、宴だぁー!!」

 

 

 アタシとゴルシの音頭で乾杯をしてみんなで夜の宴会に突入。工事をしていたおっちゃんらに被災地の皆さんも一緒にワイワイ大騒ぎ。

 

 

 軍のろ過機も利用して大量の真水を使って風呂も用意できているから気持ちよく大騒ぎして行けるのがいいね良いね。

 

 

 ファルコらも別の会場で騒いでくれているし、花火もやり始めた。

 

 

 「えーと・・・確かここのポイントと、ここの場所で花火と刺激をすると地脈が刺激されていい感じに運気も回るようになるんだったよな」

 

 

 「あ、コパちゃんのメール?」

 

 

 「そうそう。うちの会社でもやっているんだけど定期的に気の淀んでいるポイントではお祭り騒ぎのようなイベントをすることで悪い気を払しょくしつついい気を呼び込むようにするんだわ。これが効果があってなー」

 

 

 風水の技は大地。その国にあるポイントも見極めて設置して刺激を与えれば運気が回るというのはコパの親父さんの言葉でもあったか。そのポイントに沿ってホテルを置いて、補助するように施設や工場もおいたりしたのはほんと功を奏したなあー

 

 

 今日のイベントの場所もそこを意識しておいたし、早いところ運気が巡りいいことが起こればいいけど。この地震で金脈と油田が見つかるとかさー

 

 

 「ケイジちゃーん! ケイジちゃんのためのドデカステーキが焼けたってよー!」

 

 

 「ケイジー! ニンジンヘッドの巨大ステーキに大皿ステーキ! さあ食べまショウ♡」

 

 

 「そうだぞケイジー! お前も野菜を食えー!!」

 

 

 あ、ヘッド復活している。目の前で本人の人参焼かれているのに。そしてうっひょー!! 週刊誌のジ〇ンプくらいのサイズはあるお肉に野菜たっぷり。これはいいね。最高!

 

 

 「分かったよー! それとタイキ! オグリの分も用意しておけ! いま鍋の方から悲鳴が聞こえた。多分完食してくるぞ!」

 

 

 「ケイジ先輩! オグリ先輩が鍋を平らげちゃって! デザートを出したほうがいいかな?」

 

 

 「出せ出せ! お代りもアタシが用意してくる! ヒシアケボノも休んでいろ。ヒサトモ仕込みの、一流コック仕込みの腕を見せてやろうじゃないの!」

 

 

 笑顔が一番。震災にも負けないくらいがちょうどいいってね。




 思えば真面目にケイジたちの世代って震災に関わるような時期が多いなあと。ケイジらの世代が頭角を現すあたりで東日本大震災。引退して数か月後には熊本震災。


 あ、エヴァの方は少し休みます。少し心がしんどいです。


 今後はケイジのアニメやアプリ参戦の掲示板の反応集。pix〇v風に近いケイジのウマ娘、競走馬の辞書っぽい何かをかいて一区切りとしようかと思います。


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実装&アニメ化だって

 後はケイジの辞典みたいなノリですかねえ。ウマ娘エピソードを考えるとしたらメジロ家に前田家で遊びに来てマエダノキズナ(ヒサトモ)と一緒にはしゃいだり、リッキーらと馬鹿するか。


 突然ですがケイジと絡んでほしい他作品のキャラとかは皆様誰がいますか? 私は対魔忍シリーズより舞華かきららです。


 ~ケイジ達を応援するスレ 114514~

 

 

 76:名無しのトレーナー

 

 やばかったなあ。ゴルシウィーク。2012年世代メンバー勢ぞろいの同時実装。お財布がすっからかんになるところだったよ。実装数に応じて入手確率をあげてくれる&イベント更新度でキャラがもらえるシステムがないとやばかった。

 

 

 77:名無しのトレーナー

 

 ケイジ、ジャスタウェイ、ジェンティルドンナ、ヴィルシーナ、ストレイトガール、ホッコータルマエ、フェノーメノみんな同時実装に本気バージョンというか頭の飾りを外しておしゃれしたドレスバージョン。

 

 しかもゴルシシナリオは2012年世代にオルフェたちも交えての新規シナリオ完全実装だし。流石ケイジと並ぶウマ娘の広報部長。

 

 

 78:名無しのトレーナー

 

 そりゃあゴルシはウマ娘のアニメやアプリが来るまでの間ケイジと一緒に頑張ったしねえ。しかし、マジでケイジの声山ちゃんもあるWボイス仕様なのかよwww

 

 

 79:名無しのトレーナー

 

 そのせいで他のウマ娘のボイスとシナリオのボリュームの倍はあるんだよな。いやほんと仕草も動きも愉快でかわいいし声で笑わせるわ。そして。でかい。

 

 

 80:名無しのトレーナー

 

 わかる。でかいよな・・・腰回りの時点でマックイーンのバストと同じか少し上ってどうなってんだ。たるんでいるわけではなくうっすら腹筋の割れ目も見えるほどの鍛え具合だし。

 

 

 81:名無しのトレーナー

 

 まあ、史実からして650キロ前後で常に暴れ続けたしなあ。ヒシアケボノより100キロ近く上の馬体重に調教師や騎手からも平均よりかなり太いと言わしめたあのぶっとい脚にバキバキムキムキの筋肉。そりゃあのスタイルになるわって。

 

 

 82:名無しのトレーナー

 

 身長210センチ B:115 W:72 H:120 筋肉もりもりマッチョマンの優駿がボンッ! キュッ! ボンッ! のムチムチウーマンに大変身よ。あの胸に思いきり勝利の喜びのハグでダイブしたい。

 

 

 83:名無しのトレーナー

 

 レースの汗でむわむわの谷間にダイブして香木と汗とケイジの香りの中に包まれてから一緒にケイジダンス。あるいはコールするのか。たまらねえぜ!

 

 本人もゴルシ張りにドロップキックとかカワカミみたいなやんちゃするかと思えばむしろトレーナーを気遣いつつ立てているほうだしな。

 

 

 84:名無しのトレーナー

 

 そこらへんはケイジの史実準拠だろうね。調教師とも厩務員とも騎手とも仲良しで全員がそれぞれ大成、成功していること。悪戯はすれども基本危ないことやケガをさせることは絶対しない。本気で怒る。切れ散らかしたのは相棒騎手を馬鹿にした記者と仲間や子供を襲おうとした熊相手くらいだったし。どちらも〇す勢いだったし熊は仕留めたけど。

 

 

 葛城調教師からも「いたずらや構ってほしい時のちょっかいも力加減を考えていたすごく頭のいい馬です」と言っていたしなあ。知識だけじゃなく知恵もある。

 

 

 85:名無しのトレーナー

 

 でもその分行動というか、奇行に走ればその規模がやべーんだよなあ。警視庁にアポなし突撃して警視総監振り回したり大金使ってイベント開いて元気づけたり下町の商店街起こしをするということで知り合い中に声をかけて意見交換会と祭りを起こして店のグレードアップを図ったり。

 

 どこかの警察官と一緒に犯人逮捕したりオカマと絡んだりオカマと絡んだりトレーナーをオカマバーに投げ込んでストレス発散させたり。

 

 

 86:名無しのトレーナー

 

 トレーナーと自分の極端な脚質に併せて戦術を選んだり相談したり、一緒に進んでいく感覚は今までのウマ娘と比べてもかなり強いよね。ケイジも最初から「トレーナーがいるからこそアタシの強さがあるし前を行けるんだ!」って宣言しているし。

 

 あとケイジの最初の冷遇というか周りの逆張り具合がすごかったわ。

 

 

 87:解説のおっさん

 

 そこはまあ当時のケイジへの評価のせいやな。世間では大差勝ちをして大盛り上がりやったんやが、ケイジの血筋とその体格のせいで弥生、皐月あたりに行くまでは競馬関係者からはすぐに壊れかねないと言われていたんや。

 

 

 88:名無しのトレーナー

 

 あ、おっさんオッスオッス。ありゃ。世間ではマルゼンスキーの再来とか、帝王の血の復活とか言われていたのに。震災直後なのもあって尚更。

 

 

 89:解説のおっさん

 

 テイオー産駒はどれも気性が荒くて騙馬にしないと行けなかったりしたし、何せあの回数の骨折をしてしまったテイオーの血。母方もミホシンザンの娘。ましてや乗馬用になるほどの気性の柔らかさ。父方の血を引いても怪我と気性に泣かされるだろうしあの馬体なら尚更可能性は高い。

 

 母方の血が強く出ていても果たして戦意が出るかどうか。人懐っこく頭がいい分レースでの辛さと褒美のなさを理解したらすぐにやる気を失うと言われていたりで一部関係者からは評価は高くなかった。

 

 

 90:名無しのトレーナー

 

 それが怪我は現役通して筋肉痛くらいの頑丈さでマツクニローテをしたうえでクラシックレースを全て勝利で完走。頭もよければ滅茶苦茶強い。実力とライバルとネタに恵まれまくった故のケイジの存在。か。

 

 

 91:名無しのトレーナー

 

 アニメ二期でもあったTM対決。それを子孫で、しかも同期でクラシックから最後の有馬記念まで激突を続けるとかほんと運命が運んでくれたとしか言えないよなあ。

 

 どちらの日本の牝馬における歴史の最高級、星旗やヒサトモの血を持っている上にシンザン、ルドルフ、そしてメジロの血を引いた日本競馬の結晶といえる存在同士で世界でも類を見ない記録を見せていく。そりゃあ世間もKG対決としてはやし立てるわ。

 

 

 92:名無しのトレーナー

 

 その結果、間違っていなければ16戦以上激突して1着を明確な勝利としたらゴルシとぶつかって7勝5敗2回同着しているのがやばいな。マチカネタンホイザとライスシャワー以上にバチバチにやり合っていてあれなんだし。

 

 

 93:解説のおっさん

 

 マックイーンの面影を見せるゴルシがかつてライアン、パーマー、マックイーンで成し遂げたメジロによる宝塚記念3連覇。かつてメジロ記念とも言われるほどの暴れっぷりを一頭で成し遂げてあげくにはギャグもしまくりの吉本記念扱いをさせたゴルシ、かつての最強と皇帝を呼び起こし超えるような強さを世界に見せつけて、日本の悲願か呪いかともいえるほど欲しかった凱旋門賞も連覇してきたケイジ。

 

 オグリキャップによって一度日本競馬界は変わったが、間違いなくその次のターニングポイントとなる時代を作った名馬たちや。

 

 

 94:名無しのトレーナー

 

 そしてそれと同じくらい濃いエピソードに事欠かないというねwww ドバイで王族にハリセンかましたりドリフターズのグッズを差し入れにしたり、女王陛下とティータイムをたしなんでナイトとしてリードしたりとかゴルシといる時、奇行に走るときのひどさの反動もあってかっこいいんだわ。

 

 

 95:名無しのトレーナー

 

 そして同じくそれを山ちゃんボイスでぶち壊していくという。しかし、シナリオの目標のでかさがファルコに負けないかそれ以上だよなあ。世界最強格、史上初が何名も同期、先輩後輩らがいる中で今までの時代を超える新時代と日本ウマ娘業界の悲願をかなえるという目標に突っ走るという。

 

 何が凄まじいかってこのエピソード史実準拠で本当に大熱狂。今も続く競馬ブーム起こしたし。

 

 

 96:名無しのトレーナー

 

 ケイジ自身が絶対強者だけどそれでも油断できない。比肩できる功績持ちばかりでぶつかり合う。驚異の世代だしねえ。そしてその中でもリアルでもミドルディスタンスの距離はケイジ以上と評価をもらったジャスタウェイの異常さもよくわかる。2戦でこの距離ならケイジより上と認めさせたわけだし。

 

 

 97:名無しのトレーナー

 

 ジェンティルドンナを秋天で千切ってもいるあの末脚の爆発力を見せるようなスキルで加速するのが面白いし、ほぼ全員パワー補正が大なり小なりついてパワーとスタミナが高くないとデバフがガッツリ来る洋芝にも対応しやすくなっているのが面白いな。

 

 流石は海外戦での勝率8割越え多数の怪物世代。海外戦をいくにあたってはまずこのメンバーからで慣らすほうがいいんだろうね。

 

 

 98:名無しのトレーナー

 

 シナリオ見てきたけど、早々とリタイアしたメンバーからやっかみや喧嘩を売られても受け止めて、その上であんたらの分まで高みに行くといって背負っていく姿がもうね・・・惚れるしかない。自分の強さを研鑽し続けて、文字通り規格外の才能もちなのにトレーナーの存在やアドバイスを真剣に聞いて全力をぶつける。

 

 勝っても負けても大笑いして相手を讃え、賞賛して尊敬する。一方でゴルシ張りの滅茶苦茶さで動き回り人助けもすればオカマたちも何もかも巻き込んでの大騒ぎをしていく。

 

 というか、ジャンプオールスターズみたいにどこかで見た、読んだ気のするキャラクターが多すぎるんよ。ジャスタ、ケイジ、ゴルシのシナリオに間違いなく銀魂とこち亀の住人いるじゃねーかよ。おかまで言えばボンちゃんにイワちゃんみたいなやつもいるしで。クレしんも交じってどんな世界だあの時空のトレセン。

 

 

99:名無しのトレーナー

 

 だって日本の有名漫画家さんらケイジにマンガを寄贈して、サインもあげて書下ろしイラストでコラボしているし。許可ももぎ取っているからねえ。ゴルシ、ジャスタ、ケイジがそろえばプリティーよりギャグマ〇ガ日和にすらなりえる。

 

 

 100:名無しのトレーナー

 

 ケイジの一言で『一緒に行こうぜ珍道中! でっけえ夢と旅ほど面白れぇ!!』ってのが示しているよね。一歩学園の外に出てイベントが起きるなりシナリオになればどんな奴と出会うかわからなさすぎる。まさしく珍道中。ドタバタしながら進んでいく感じ。

 

 

 101:名無しのトレーナー

 

 この世代は基本皆穏やか寄りかと思えば牝馬組くらいで残りは個々でも濃いし、それをケイジとゴルシがひっかきまわしつつ引っ張ったりみんなでハリセンでしばいて大人しくさせたりしている感じよね。明確なボケが強すぎるというか。

 

 

 102:名無しのトレーナー

 

 そこはまあある程度予想通りというか、むしろ周りも負けず劣らずネタが一つ二つあるのがね。

 

 しかしまあキタサトコンビの師匠ポジションでダイヤ相手にじゃんけんや勝負事でも勝つあたりほんとケイジもやべーやつだよなあ。あのクレイジーダイヤモンドに勝つんだから。

 

 

 103:解説のおっさん

 

 そこは多分騎手絡みやな。ケイジとのコンビで覚醒した松風騎手がサトノダイヤモンドの主戦騎手になってケイジとの経験を活かしての多くのGⅠ制覇につながったことから彼女の思考を比較的読み取れるんやろう。実際にクラシック前にはケイジの元で放牧しながら色々世話になっていたそうや。

 

 

 104:名無しのトレーナー

 

 そりゃあ普段あれなゴルシでもケイジ相手にはおふざけ抜きで本気で相手したいというわけだわ。冗談抜きで最強のライバルで最高の親友の一人だし。早くアニメが見たいなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ウマ娘4期を見た感想 819~

 

 

 344:名無しのトレーナー

 

 アニメ全部見たけどぶっ飛んでいたりやりたい放題だった件。

 

 

 345:名無しのトレーナー

 

 第一話の時点で「前回のあらすじ!」でスタートしてまさかの実馬映像でのナレーションをゴルシがしていたらジェンティルドンナからハリセン喰らってからのOPスタート。そして最初から練習相手に困っていたケイジがリギルで練習しているところにゴルシが乱入しての大騒ぎというワチャワチャ加減。

 

 

 346:名無しのトレーナー

 

 史実だと併せの相手にも困っていた感じだけどこの世界だとテイオーやルドルフもいる分相手に困らないし、同級生がいる分ほんといつも騒がしいよな。というか一応美少女アニメでやっていいのかという顔芸が多すぎる。

 

 

 347:名無しのトレーナー

 

 ケイジもみんなも滅茶苦茶気合入った美少女の顔しているのに秒で崩れるからなあ。そして動き回る、作画の量が段違い。

 

 すぐに手品で首を戻したとはいえ朝からケイジが自分の首をもってデュラハン状態で歩いて騒ぎにしたり、ジャスタウェイにジャスタウェイの工場での短期バイトを教えて三人でバイトしに行ったりとか愉快すぎるんだよなあ。

 

 

 348:名無しのトレーナー

 

 ワンシーンがいちいち濃すぎるしほんとMAD動画のネタに困らないくらい素材過多だよこんなの。

 

 

 349:名無しのトレーナー

 

 そしてまあ、ケイジが本当にでかい。シングレ世界かよと言いたいくらい。ヒシアケボノですら小さく見えるんだから。後声がほんと山ちゃんはいりまくりで腹筋に不定期に衝撃を与えるの勘弁www

 

 

 350:名無しのトレーナー

 

 わかる。あのでかいけど美少女、美女よりの顔で『ぅアタシちゃんをお探しなのぉ~ん?』とか言いながらエアグルーヴから逃げ回っていた時は腹抱えた。

 

 

 351:名無しのトレーナー

 

 でもレースの時は本気でかっこいいし、その後のケイジダンスならぬケイジコールにウイニングライブもマジックショーとかトークタイムで場を盛り上げたり今までにない要素をぶち込んできたよね。

 

 

 352:名無しのトレーナー

 

 ケイジらの行動はほんとぶっ飛んでいたしねえ馬の方も。あと周りのモブウマ娘の顔が当時のケイジやゴルシたちの強さにドン引きというか絶望していたのもよくわかる。

 

 どんなに追いすがっても追いつけない、どんなに引き離したつもりでもいつの間にやら追い抜かれている。競り合っていたと思いきやそこからさらに加速してぶっちぎる。世界が違うというのを見せつけるし、しかも距離別のスペシャリストだけど2000メートル前後はみんな十二分にやり合えるからなおさら立ち入る隙が無い。

 

 

 353:名無しのトレーナー

 

 毎回OPも違うのがほんと気合入っているよなあと。洋楽の時はアメコミ風にしてきたり、かと思えば和ロックの時は水墨画風からアニメの絵柄に代わったりとで。

 

 

 354:名無しのトレーナー

 

 中身の根幹自体は熱血スポコンだし、ウマ娘たちの美少女アニメなんだけど、今まで以上にゴルシたちが暴れるわOPからあらすじのナレーションとそこの噛み合わないボーボボ風のやり方を交えたりでほんとしっちゃかめっちゃか。

 

 

 355:名無しのトレーナー

 

 今までは基本狂言回しのみのゴルシだったけどレースへの思いやジャスタウェイからの思いを託されての菊花賞での本気。かと思えば史実通りに舌ベロしてきてほんと熱血とギャグのはざまをシャトルランしているよなあ。

 

 その後にケイジもぶっ飛んできてすぐさま本気での競り合いになるからほんとこいつら。

 

 

 356:名無しのトレーナー

 

 まさか欧州二冠を狙う際に松ちゃんの代りに名瀬ちゃんがケイジのトレーナー代理になっていくあたりも再現したり驚いたわ。

 

 そして凱旋門賞で圧勝した時にルドルフとテイオーが泣いていたりで当時の日本の熱狂ってこんな感じだったんだなあと。

 

 

 357:名無しのトレーナー

 

 実際お祭り騒ぎだったからね。でもその後にすぐさまギャグに戻るあたりとことんこの世代は強さとネタに事欠かなかったというのを示している。

 

 オルフェが覚醒してケイジを有馬記念で倒すのも凄かったなあ・・・

 

 

 358:名無しのトレーナー

 

 わかる。この作品もだけどケイジが主人公だけど同時にゴルシや周りもケイジをラスボスとして超えようとする主人公となる話があるし、スッキリとした終わりになるからほんと気持ちよくアニメを見れる。

 

 

 359:名無しのトレーナー

 

 ケイジ自身が怪物なんだけど、同時に周りもまた怪物であり、超えようとするぶつかり合いからの勝ったり負けたりをうまく描写しているからケイジの強さでつまらないとならないんだよね。

 

 

 360:名無しのトレーナー

 

 そうそう。オルフェの勝利からの再出発とシリウスチームでより上を目指す、ゴルシとジャスタもスピカで気合を入れ直し、フェノーメノやストレイトガール、ホッコータルマエらも負けじと気合を入れる。

 

 でもそれはそれとしてみんなで集まってパーティーをしたところで1シーズンが終わったし、2シーズン目でケイジ達の戦いの後半が楽しみで楽しみで




 ケイジの実装と馬がああなりましたは世界でもニュースになっていたりして。



 ~おまけ~


 第5の使途戦


 ケイジ「シンジ君、そいつをそのまま抑えていな!」
 (スーツ着用&巨大化)


 シンジ(エヴァ搭乗)「はい! ベアハッグ・・・!!」


 ケイジ「無駄に長い体にしやがって! 綺麗に畳んでやらあ! ケイジちゃんキーック!」
 (ドロップキックで第5の使途の頭を蹴ってエヴァの腕をもとにぼっきり二つ折りに)


 ~第6の使途戦~


 ゴルシ(スーツ着用&巨大化)「シンジ、アイツ多分ビーム撃つから開いたタイミングでライフルを撃つんだ!」


 シンジ「え!? あ、本当に開いて・・・ゴルシさん!」


 ゴルシ「ハジケ神拳大根返し!」


 シンジ「はぁ!? スイッチ!」


 ミサト『ネギで粒子砲打ち返したー!!? で、シンジ君も対処しているし!』


 ゲンドウ『なんなんだよこのアイドル達!? 巨大化するわビーム撃つし!! でもそれがいい!』


 ジャスタウェイ『いいわよー二人ともー! それでこそ人類希望の星―!!』


 ミサト『あんたら二人とも楽しそうね!!』


 ~しばらくして~


 ケイジ「焼き芋~焼き芋だよー」


 ゴルシ「焼きそば食いねえそば食いねえ」


 ゲンドウ「居酒屋じゃないか! しかもラーメン! まあいいや・・・はぁー・・チャーハンギョーザセット、半ラーメン一つ・・・おじさん疲れちゃったよ」


 山本「お酒は何をしましょうか? あ、これお通しです」
 (ピリ辛もやしとお冷を出す)


 ゲンドウ「あ、マネージャんさんです? こいつはどうも。はぁー・・・こういう酒は久しぶりだなあ」


 ケイジ「それならついでに色々吐いてしまえやダメ親父。息子が人類の希望をしてそれの指示しているのにレイちゃんばかり気にしてこのロリコンが―。あ、山本酌頼んだ。アタシら未成年だし」


 ゲンドウ「あのねえ、オジサン流石に傷ついちゃうよ。オジサンは寂しいと死んじゃう生きものだから気を付けてね」


 ゴルシ「それで息子冷たくしてちゃー駄目だろ。奥さん愛して二人の愛の結晶なんだから愛してやれよ。よし。ヘイお待ち!」


 山本「ささ、まずは一杯」



 ~しばらくして~


 ゲンドウ「うぉお・・・ユイ・・・会いたいよ・・・ぉお・・・シンジも、やり直せるのなら頑張りたいよおじさん・・・しんどいのよ色々と・・・」


 ケイジ「ならまず頭のみならずお前さんも奥さんに似やがれってんだ! ありのままを愛してくれた奥さん似合う手段はめぼしついているのに、そんなしみったれた面見せたら男が廃るってなもんだ!」


 ゴルシ「まず奥さんもさすがに子供ほったらかしてこれしたら呆れちゃうぞー? 女の子からの意見だしケイジも多くの人を見ている分尚更」


 ゲンドウ「うぅ・・・」


 ジャスタウェイ「あ、ケイジ―、シップ―連れてきたよー?」


 シンジ「糞親父!? ってケイジさんにゴルシさん!?」
 (ジャスタウェイに化粧&女装させられた。黒髪ロング)


 ケイジ「いょおーし! 流石性別:シンジ! 男も女もメロメロのビンビンよ!」


 ゴルシ「面白いしちょっと1枚」
 (連射機能で撮影)


 山本(メフィラス)「ほうほう。化粧というのは流石。しかし、やはり素材がいいのですねえ」


 ゲンドウ「・・・・・・ユイ、ユイなのか! うぉおおぉ~~ん!!」


 シンジ「のわぁあ!? 酒臭い! なんだこれ! 何じゃこれええ!!?」


 ケイジ「じゃ、どうぞ親子二人でごゆっくり~♂」


 ゴルシ「あ、屋台は壊さないでね」


 山本「親子の友情がどう変化するのか、明日が楽しみですね」


 ジャスタウェイ「あ、レイちゃんがご飯を喜んでくれたんだけど、今日のご飯みんなまだ食べられる?」


 シンジ「ちょっ!? まってこの親父放置しないで! もしもーし! もしもーし!!」


 ~続け~


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辞典風 馬版

 100話に到達! 皆様の応援でここまで来れました。ありがとうございます! 誤字報告、評価、感想誠にありがとうございます!


 今回はケイジの馬での辞典? みたいな何か。暇つぶしに見てくれれば幸いです。


 ケイジ

 

 

 2009年生まれの競走馬。GⅠ16勝。2020年東京オリンピック障害馬術金メダリスト。日本にとっての悲願と新時代を届け、どこまでもやりたい放題をしながら戦い続けた顕彰馬である。

 

 

 

 目次

 

 

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 ・概要

 

 

 ・特徴、強み

 

 

 ・誕生に至るまで

 

 

 ・デビュー前(2009~2011)

 

 

 ・現役時代1(2011)

 

 

 ・現役時代2(2012)

 

 

 ・現役時代3(2013)

 

 

 ・現役時代4(2014)

 

 

 ・現役時代5(2015)

 

 

 ・種牡馬時代1(2016~2018)

 

 

 ・現役時代6(2018~2020)

 

 

 種牡馬時代2(2020~)

 

 

 ・ケイジのエピソード

 

 

 ・異名

 

 

 ・総括

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 『ターフの傾奇者』

 

 彼にとってはターフはまさしく花舞台であり手柄をあげる祭りの場。ライバルと、歴史と、世界と戦いその走りは誰もを魅了し、夢の先へと突っ走った。日本の戦士の結実たる傾奇者。荒武者の槍捌きをご覧じろ。

 

 

 

 

 

 

 

 概要

 

 

 かつて日本を騒がせた最強の戦士が、その血を引く最高傑作がいた、皇帝がいた、帝王がいた、しかし終わった血筋のはずだった。否、その血を引き継いだ傾奇者が新たな時代を切り開く。彼の名はケイジ。最強の伊達男である。

 

 

 

 生年月日 2009年2月25日

 

 英語表記 Cage

 

 毛色 鹿毛(やや黒鹿毛より)

 

 父 トウカイテイオー

 

 母 ミホミサト

 

 母父 ミホシンザン

 

 生産牧場 前田牧場

 

 馬主 前田利褌以下6名

 

 管理調教師 葛城大悟(栗東)

 

 主戦騎手 大竹稔 松風守 梅沢勝 岩丸丈 (岩丸丈騎手は障害馬術のみ)

 

 厩務員兼調教助手 久保宗助 岡座真由美

 

 競争成績 29戦20勝(同着2回)9敗 障害馬術 4戦4勝 オリンピック障害馬術金メダル

 

 獲得賞金 41億8140万円(無敗の四冠、御前試合三冠、欧州二冠連覇、秋古馬三冠ボーナス含まず。障害馬術、後述の活動は除く競走馬時のみ)

 

 

 

 

 日本どころか世界で見ても強豪、怪物ひしめく12年世代の筆頭格にして世界最強を手にした鹿毛の牡馬。記憶にも記録にも残る強さ。と何より650キロ前後という驚愕の大きな馬体、規格外のスタミナと頑丈さ、パワーを活かした大逃げ、逃げ、追い込みで豪快に戦い抜く兎角派手なレース運び。それに負けないほどの頭のよさゆえの暴走、奇行、ネタ馬として名を馳せる。

 

 しかしその実績は確かなもので無敗の4冠(皐月、NHKマイル、ダービー、菊花)と世界史上初の欧州二冠連覇を成し遂げ、GⅠ16勝と前代未聞を連発。その強さと前述のキャラクター性。同期にもあのゴールドシップやジャスタウェイ、ジェンティルドンナにフェノーメノとライバルは多く、ヴィルシーナにシゲルスミオも含めて世界最強世代と呼ばれたメンバーの中心的存在。

 

 

 

 

 特徴

 

 

 ケイジの生まれ、目標自体が実は競走馬としてもかなり変わっている。異色なもので当時のディープ、キンカメ、クロフネの血統だらけの中その血を薄めるためにたとえ実力がなく不人気でも繁殖牝馬、あるいは種牡馬として細々でもアウトブリードを狙うために牡馬、牝馬共に中央競馬では今は見ない血統を選び、かつ小柄で足元の負担を軽減する遺伝を狙えるように配合をした、というとにかく実績を無視してでも種牡馬、繁殖牝馬として確保したいという社欄との協力により生まれた。しかし生まれてきた馬はでかすぎた。

 

 基本的には人懐っこく調教でも指示をすぐ聞いてくれるのだが度を越えた体力と練習好きゆえに調教師を振り回し、餌ではなく新聞や漫画をねだることがしょっちゅう。

 

 自分よりも、自分の周りを馬鹿にすることが許せないというボス気質な部分がある一方、他のボス馬を見ても威嚇しない、威嚇されてもたいていは意に介さず権力争いも興味なし。馬や女性、子供たちには甘い、優しく接するので他のボス馬たちと自然と打ち解けるなど神経質、気性が荒いサラブレッドの中でも肝の太い、ボスに興味のないボスという変わり種扱いもされていた。

 

 

 

 

 

 

 評価・強み

 

 

 ケイジの強みは規格外のスタミナとコーナリング。それを理解できる賢さにあると言ってもいい。調教でもケイジは併走には付き合うがレース中は大逃げや追い込みなどで馬群に埋もれることは一切せず、これに関しては調教師と騎手全員がそろって「ケイジは自分の馬体が馬群を抜け出す際に不利なのを分かっている」と言わしめるほどで実際のレースでも「かかり」になることはほとんどなくばてる様子もない。

 

 逆に追い込みの場合でも大外から最高速度に乗せやすい場所から飛んで来たり最内をついていくなどの自分の切れ味の鈍さを最高速度でカバーする。スタミナで振りちぎるやり方をやっていた。

 

 それらを支えるコーナリングもかの名馬サンデーサイレンスを比較に出すほどでぴたりと最内につけたまま加速、息を入れつつも他の馬を寄せ付けないほどの速度で曲がることが出来るなど脚の使い方も抜群であった。

 

 これらを支えるパワーと頑丈さは同期にして最大のライバルゴールドシップ同様規格外であり怪我らしい怪我も二度目の凱旋門賞後での筋肉痛くらいであり、それも数日で完治したほど。後述するが鉄扉を蹴り壊し、ヒグマの頭蓋を一撃粉砕するなどの事をしても本人は全く痛がるどころか蹄にもダメージはなく、父が何度もケガに泣かされたトウカイテイオーなのもあって尚更にこの頑丈さは怪物だと評された。

 

 基本大逃げで他馬のスタミナをすりつぶしていっての逃げ差し、あるいは差して逃げるかの差し逃げが武器のケイジだがキレがないかと言われればそうではない。むしろ3ハロン平均31秒台をたたき出し、いくつものワールドレコード更新記録を見ればその速度とエンジンは並のものではない。

 

 主な戦法が逃げを使う故にキレが鈍って見えるがその最高速度は並ではなくハイペースな試合をしたうえで最後にさらに加速という二段ロケットを捉えたのはゴールドシップ、ジェンティルドンナ、オルフェーヴル、ジャスタウェイ、フェノーメノの5頭しかおらず、しかも2回以上の勝利をつかめたのがゴールドシップのみ。彼の場合余りに馬体が大きすぎるために加速が遅いが半面速度に乗ればその重さが加速を鈍らせず、またその筋肉が脚の衝撃を受け止めるために怪我も無かったと言われている。

 

 健康体で引退し、今も牧場では漫画やアニメ、新聞に目を通し、走り回ったり脱走したり温泉に浸かる、牝馬に追い掛け回される。犬猫と遊ぶ日々が目撃され、今なお色あせない名(迷)馬であり続けている。中身はともかく黙っていればミホシンザンよりの柔和な顔もテイオーを思い起こさせるイケメンな顔も見せる美しい馬なのは間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誕生に至るまで

 

 

 ケイジの誕生は当時の時代とオーナーブリーダーの前田利褌の考えが大きく絡んでいた。当時の血統の閉塞を塞ぐための繁殖牝馬、あるいは種牡馬を社爛との協力で生み出しいわゆる血を薄めてくれる馬を用意することを考えていた。

 

 一方でケイジの権利者の中でも主な前田利褌はそれ以外にも根幹牝馬と歴史を絶えさせたくないという思いもあり血を薄めつつ日本馬の歴史を継ぐ存在を狙い牝馬から探した。

 

 ケイジの母ミホミサトは乗馬用だった馬を見つけたがその血は父がミホシンザン、父父がシンザン。日本初のシンジゲートを組まれたヒンドスタン系であり、神讃と呼ばれ日本競馬に大きな影響を与えた名馬の一族。

 

 父トウカイテイオーはいわずと知れた不屈の名馬であり無敗の二冠馬。父父には7冠馬皇帝シンボリルドルフ。更にテイオーの血をさかのぼれば日本初の牝馬によるダービー制覇を果たした元祖女傑牝馬ヒサトモ。その母も宮内省下総御料牧場の牝馬の一頭星友の血を引いている。(この時点でライバルのゴルシと似ている部分も)

 

 ここまで見るとかなり豪華かつ日本競馬の歴史的血筋だが既にこの組み合わせもかつて考えられ、試された組み合わせだが同時に父母どちらでもクロスを狙える相手が少ない故にアウトブリードをできやすいために実行された。

 

 その結果、良くも悪くも期待をぶち壊しまくる怪物が生まれてしまうことになるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 デビュー前(2009~2011)

 

 

 2009年2月25日に前田牧場で誕生。生まれて仔馬は立ち上がるまでに1時間くらいかかると言われているのだが10分ですぐさま立ち上がり、ミホミサトに母乳をねだるがミホミサトは初めての出産とケイジの馬体のせいで疲労が大きく拒否されてしょげるという規格外の素質と頭の良さを垣間見せていた。

 

 両親に似ずに大きな馬体と十字架を思わせる奇麗な流星が特徴的であり、人懐っこい故に牧場のスタッフ皆可愛がり色々見せた結果頭がはじけてしまった。と関係者は言う。

 

 ケイジの世話をしていた厩務員曰く「一緒にマンガを読んでいたら読ませてくれとねだるようになりまして。それで見せたらちゃんとキャラの判別もできているし、反応が本当に人間じみているんですよね」と答え、牧場長の奥さん曰く「好きなアニメの時間になると庭から顔を出してくるから顎を乗せる座布団とおやつを出してみんなで見るのが楽しみでしたよ」とのこと。それ以外にも恩を感じる時は牧場長を背に乗せたりもしていたり悪戯好きだが人好きでもあり人が怪我をするようなことは基本しない、力加減をしていたようだ。

 

 なおこの時点で既に馬体重は500キロ後半から600キロ以上にムキムキと成長。脚周りも既に平均より太く牧場スタッフ一同首をかしげて突然変異だなあとつぶやいたとか。

 

 

 

 

 

 現役時代1(2011)

 

 

 無事に成長できたケイジは社欄の協力もあり栗東トレセンの葛城大悟厩舎に入厩。この時も余りの馬体のでかさのせいで当時の厩舎で併走をできる子がおらず周りに連絡を取った結果ゴールドシップなど同期やライバルたちとの経験を遅まきながら積んでいく。

 

 その後2009年7月の阪神競馬場の2歳新馬戦(芝2000m)でデビュー。この時に大逃げをもって2000mの日本レコードを更新。ど派手なデビュー勝利を飾る。この時1度だけ騎手を務めたのは後に前田牧場三羽烏の一頭、無敗の欧州牝馬マイル三冠を成し遂げるキジノヒメミコの主戦騎手である梅沢騎手。

 

 この勝利を持って世間から注目を浴びるも、テイオーの血と親の面影もないようなでかすぎる馬体からすぐに怪我をしてしまうという関係者たちからの評価ゆえに今後の騎手選びで困っていたところ、主戦騎手を務めたのがケイジ一番の相棒となる松風騎手が是非と頼み込み陣営も快諾。後の戦国コンビ結成の瞬間であった。

 

 騎手問題が解決した後に函館2歳ステークス、小倉2歳ステークスも難なく大逃げで快勝。しかし陣営は「ケイジに短距離は合わない」「2000mと比べると明らかにエンジンがかかるのが遅い」「この2戦は頭の良さと自力で勝てたが3歳以降、古馬のスプリンターには通用しない。ここはケイジの土俵じゃない」ということで今後ケイジは短距離は挑むことがなくなる。

 

 無敗のまま迎えた朝日杯フューチュリティステークスも勝利。4戦4勝。既に獲得賞金1億以上の怪物として世間も関係者も注目を集めたまま2歳シーズンを終える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現役時代2(2012)

 

 

 冬は休み次走は弥生賞となったケイジ。しかしその際のローテにケイジはマツクニローテを組み込まないと嫌だとごね、馬主たちも納得させて前代未聞の馬によるローテの調整をする珍事を終えて3歳シーズンは幕を開ける。

 

 そうして幕を開けた弥生賞では2着に10馬身を付けての大圧勝劇をもって勝利。この勝利と同時に皐月賞に出走を決めているゴールドシップの対決に世間が大いに沸いた。

 

 トウカイテイオーとメジロマックイーンが勝負したかつてのTM対決。たった一度の対決だが日本中が注目して沸きに沸いたあの対決がトウカイテイオーの子どもとメジロマックイーンの孫で、しかも同期でクラシックから真っ向からぶつかるという競馬のテーマの一つである「血のバトン」とどちらも実力のある怪物同士というのも相まってオグリキャップブームを超えるほどの競馬ブームの火付け役となる。

 

 大熱狂の中始まったKG対決とクラシックレース。最初の皐月賞ではケイジはいつも通りの大逃げでゴールドシップの代名詞たる「ゴルシワープ」からも逃げきって見事勝利。

 

 次走NHKマイルカップでは後の世界最強の実力とネタ馬枠のジャスタウェイ、アメリカ、日本でGⅠ馬を6頭生み出すシゲルスミオらと対決し快勝。

 

 そして日本ダービーでは先行策で挑んできたゴールドシップや切れ味を増したジャスタウェイ、フェノーメノに迫られるがここも大逃げで勝利。変則三冠を手にして名実ともにトウカイテイオーの正統後継者として、シンザンの血を引くものとして認められた。マツクニローテに関しての批判もレース後けろりとしたタフさとその強さで批判もねじ伏せるなどまさしく怪物だった。

 

 しかし疲れを抜くべきだということでケイジ陣営はケイジを夏は休養させることを選択。菊花賞までは微調整と静養のために前田牧場に里帰り。牧場の整備と拡張の際に温泉を掘り当てていたためにまさしく湯治となる。

 

 夏休みとなったケイジだがその際にひと騒動を起こし(後述する夏祭り騒動)ますます競馬人気の担い手となりながら挑んだ菊花賞。今まで2着に甘んじていたゴールドシップだがステイヤーとしての才能があるゆえに油断できないと入れたレースは従来の大逃げではなく真逆の追い込みでスタート。

 

 今まで大逃げで挑んでいたケイジの真逆の戦いに観客も実況も驚くことになるが、そこからはまさしく規格外、破天荒の連続。

 

 かつてのミスターシービーのように淀の坂で加速しタブー破りでぶっこ抜くゴールドシップ。ケイジも下り坂を一気に加速しながらスタミナが落ちた他馬を躱しながらのシンザンのような超大外からの加速。

 

 クラシック最後の一冠をかけた勝負で互いに三冠馬を思わせる戦いのままゴールし結果は同着。前代未聞の同時期に2頭の菊花賞馬の誕生。ケイジは無敗の4冠とテイオーは愚かルドルフもシンザンも越える強さを見せる。二頭ともワールドレコードを出してと話題尽くしのまま菊花賞を終えた。

 

 そして3歳シーズン最後の有馬記念も出走したが規格外の追い込みを見せるゴールドシップに敗れ初敗北の2着。しかしこの時点で連対率100%、年齢限定戦がほとんどだが1200~3200mの重賞で8連勝という記録を獲得。

 

 ライバルのゴールドシップはGⅠ2連勝。オグリキャップ以来の葦毛による有馬記念制覇。同期の牝馬であるジェンティルドンナは牝馬三冠とジャパンカップでオルフェーヴルとその年の凱旋門賞馬に勝利などこの世代の怪物ぶりを見せつけるような年となりなんやかんや無敗の四冠と連勝記録が評価されて年度代表馬に。こうしてケイジの3歳シーズンは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 現役時代3(2013)

 

 

 年が明けて4歳となったケイジ。ドバイからの招待をもらいドバイへと同期のジェンティルドンナと早速遠征を開始。ジェベルハッタもこともなげ無くワールドレコードを出しながら快勝。

 

 ドバイDFでも2着に10馬身を付けつつ勝利。更に自身のレコードを更新。1991年以来更新されていなかった1800のワールドレコードを同じ年に2回も更新していくという化け物ぶりを世界に見せつける。ジェンティルドンナもドバイシーマクラシックで見事勝利し、ジャパンカップで見せた強さは本物だと世界に示す。

 

 またこの時点でGⅠ7勝となり祖父シンボリルドルフに並ぶ功績、海外GⅠで勝っていることを踏まえればルドルフを超えるという評価も手にして帰国。この時にアラブの王族から賜った賞品もまた豪華なものだった。(後述)

 

 次走は宝塚記念に出走。ここではゴールドシップ、フェノーメノ、ジェンティルドンナと四天王と呼ばれ優勝候補の一角に。そのレースでは追い込みで仕掛けていくがジェンティルドンナとゴールドシップのタックル合戦を見て爆笑からの失速。どうにか持ち直すもゴールドシップに届かず1着はゴールドシップに譲り2着となる。

 

 負けたが尚強しという評価と海外経験も積んだケイジ陣営は次走をKGⅥ&QESに決定。しかし主戦騎手の松風騎手が骨折するという怪我を負い(他馬のレースで勝利後に振り落とされてしまった)騎手問題にまたぶつかることに。

 

 そこに前から乗りたいと思っていた大竹騎手が名乗り出て騎手問題は解決。日本最強騎手と日本最強馬のコンビによる競馬の本場欧州への遠征は世間をまた沸かせた。

 

 挑んだKGⅥ&QESでは周りの騎手も馬も驚くほどの追い込みで周りを振りちぎって2着に8馬身差をつけてのゴール。大竹騎手は号泣しながら「ディープの可能性の先を見せてもらった」と語ったほど。

 

 海外の重馬場ですら問題ない強さを見せていよいよ凱旋門賞ではケイジの前年に三冠馬となり、昨年の凱旋門賞では2着だったオルフェーヴル、今年のダービー馬ユウジョウと日本ダービー馬トリオで挑んだ。

 

 幕を開けた凱旋門賞ではケイジの一番の武器である大逃げを使い日本馬以外は最低でも7馬身近い差をつけて、ワールドレコードも塗り替えての快勝。更には日本馬で1着から3着まで独占。日本競馬界長年の目標、悲願であった凱旋門賞を皇帝、神讃の血筋が勝利したというニュースは日本中が歓喜に湧きたった。

 

 大竹騎手はこの勝利は「ケイジはあえて僕のためにスズカとディープのスタイルをもってその先を見せてくれた」と言わしめ、また「自分ではケイジの力量は8割~9割程度しか引き出していない。松風騎手ならもっと強かっただろう」とインタビューで応え戦国コンビの復帰を望む声も多かった。

 

 帰国後ケイジはまさしく国のスターとして讃えられ国民栄誉賞。日本国の勲章としては最高位の「大勲位菊花大綬章」を授かる。それ以外にも副賞として専用の馬具や鞍なども賜り名実ともに日本最高位となり、迎えたジャパンカップでは復帰した松風騎手と逃げを披露して勝利。GⅠ10勝目を挙げ、日本馬の記録として未知のステージへと踏み込んでいく。

 

 4歳シーズンを締めくくる有馬記念にも出走したが引退レースとなったオルフェーヴルに届かずに2着で敗北。先輩三冠馬であり凱旋門賞へ挑み続けた日本総大将。金色の王へとハグをしてその引退を惜しむように見届けてケイジの4歳シーズンは終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現役時代4(2014)

 

 

 5歳となったケイジは再びドバイにいきジェベルハッタに出走。しかしそこには昨年の天皇賞(秋)でジェンティルドンナを破ったジャスタウェイの加速に差し切られて2着で敗北。その後のドバイDFではジャスタウェイはケイジのワールドレコードも一気に塗り替えていき世界最強のランキングも奪われる。

 

 次走は天皇賞(春)に出走。そこでは連覇の掛かったフェノーメノにゴールドシップ、ユウジョウと油断できないメンツだったがなんと3200メートルを大逃げ、淀の坂も加速してそのまま走り切るというタブー破りも平然と敢行。見事1着獲得とワールドレコードも更新。

 

 この天皇賞(春)は天覧競馬だったこともありドバイDF、KGⅥ&QES、天皇賞(春)の勝利でアラブ、イギリス、日本の王族、皇族の観戦しているレース、しかもGⅠで勝利したことで御前試合三冠という新たな三冠称号も獲得、天皇陛下から個人的に専用キセルのプレゼントと話題に事欠かなかった。

 

 そうしてリベンジも含めた宝塚記念への二度目の出走では逃げで脚を貯めつつ後半に仕掛けようとしたが開いた内ラチからゴールドシップに差し切られて2着で敗北。リベンジは失敗に終わる。次走は再びKGⅥ&QESとなったがその前に大ニュースがあった。

 

 日本から凱旋門賞に挑むメンバーがケイジをはじめとしてドバイシーマクラシック連覇の三冠牝馬ジェンティルドンナ。宝塚記念連覇のゴールドシップ。世界最強のミドルディスタンスホースのジャスタウェイ。天才少女ミルキースターと2012年世代を中心に5頭が挑むという「日本艦隊」(当時の記事から抜粋)が発表された。その際にケイジは日本総大将の二つ名を襲名。かつてのスペシャルウィーク同様日本の代表としての期待を背負い戦いに挑むことに。

 

 日本総大将として、連覇をかけたKGⅥ&QESは昨年とは真逆の大逃げをもって2着に10馬身差をつけての圧勝。もはやライバルたり得るのは日本の同期だけだと言わんばかりの勢いで凱旋門賞に挑む。

 

 そして凱旋門賞では本場馬入場でゴールドシップと一緒に奇行とスタンドに愛想を振りまき相変わらずの行動に現地へ駆けつけたファンと現地のケイジファンは大ウケ。レースでは追い込みで挑み加速する際に隣の馬の騎手から鞭で顔面を叩かれるが、むしろそれで負けん気に火がついたかさらに加速。日本馬組もそれに負けじと奮起した結果1着勝利とワールドレコードをさらに更新。日本馬たちで凱旋門賞の掲示板を独占するなど昨年を超える成果を日本メンバーと叩きだした。

 

 凱旋門賞をジャパンカップに変えたと言わせるほどの暴れっぷりに海外のファンもこいつはモノが違うと言わせるほど。

 

 KGⅥ&QESと凱旋門賞の欧州二冠連覇という世界でも前代未聞の大快挙を見せ、最早日本馬のレベルは世界レベルに届いていることを名実ともに見せつける結果に世界中が驚愕し、同時にこの世代を世界最強世代と歓声をもって迎え入れられた。

 

 次走はジャパンカップに挑むがそこではフェノーメノの渾身の走りに追いつかれて1馬身差をつけて2着に敗北。ジャパンカップ連覇とはならなず、3度目の正直となるか有馬記念に出走。

 

 しかし有馬記念をもって引退のジェンティルドンナに差し切られてしまい2着に。3度目の正直とはならず有馬記念3年連続2着というナイスネイチャのような珍記録を樹立。

 

 このシーズンに同期では牝馬三冠、ドバイシーマクラシック連覇を成し遂げたジェンティルドンナ。ミドルディスタンスのGⅠで4連勝を手にしたジャスタウェイ。1200~2400メートルの国際GⅠ制覇、エリザベス女王杯、ヴィクトリアマイルをそれぞれ連覇したヴィルシーナ。天皇賞(春)、ジャパンカップを勝利したフェノーメノなどの多くの同期でありライバルであり戦友が引退。

 

 ゴールドシップと共にライバルたちを見送りながらケイジの5歳シーズンは終了となった。

 

 

 

 

 

 

 

 現役時代5(2015)

 

 

 競走馬としてのラストシーズン。6歳となったケイジは馬主の意向によって国内戦に専念することになりその第一走は天皇賞(春)であった。

 

 連覇の掛かったレースだったが相変わらず二頭揃ってゲート入りを拒むというかからかうようにゲート入りをせず、レースとなればゴールドシップと同じタイミングでの追い込み勝負となり一歩届かず2着になり敗北。

 

 この時もまたもや淀の坂で加速を続けて走るというタブーを無視しており最早この二頭にとっては淀の坂はタブーですらない。軽いものだと言われるほど。

 

 天皇賞は敗れたが今度こそと意気込むケイジと陣営はこれまた3度目の正直で宝塚記念に出走。ここでゴールドシップとケイジを語る上で欠かせない大騒ぎ。通称「300億紙屑未遂事件」が起きる。阪神大賞典3連覇を成し遂げ、更に宝塚記念でも3連覇がかかっているゴールドシップ。阪神、京都競馬場で無類の強さを見せていたゴールドシップにはこのレースでも当然大きな期待がファンからかけられ、1番人気であったが今回でもゲート入りを拒み目隠しをされてのゲート入り。

 

 更には隣の馬が騒いでいるせいでさらに気が立ちスタート前にゲートで二度立ち上がることで大きく遅れるゴールドシップ。更にはそれを見て爆笑するケイジという1番人気と2番人気がそろって超出遅れをするという大惨事をやらかす。

 

 しかしここからもこの二頭はやりたい放題でありケイジがゴールドシップの横で舌をべろんべろんしてから追い込みを早速開始。ゴールドシップは舌を出す行為を挑発と理解しているらしくケイジの挑発に見事乗っかり気合再充填。

 

 二頭揃って最後方からロングスパートで一気に先頭に出るやタックル勝負を繰り広げてからの競り合いでゴールドシップの三連覇、ケイジは2着で敗北と有馬記念に続き同じGⅠレースで三年連続2着という珍記録を樹立。

 

 もしこのレースでケイジとゴールドシップが最下位になっていた場合約300億の馬券が紙くずになりかけるというトンデモ具合でありケイジとゴールドシップの人気の高さがうかがえる事件であった。

 

 この後にすぐさま二頭は喧嘩になると思われたが仲良くじゃれついている辺りいつもの事らしく、ますます奔放ぶりと規格外さを見せつけるレースとなった。

 

 ここまで連対率100%という間違いなく前代未聞の強さを見せつけていたケイジだが6歳という年齢の波もあり衰え始めているのではないかという声も出始めていた。しかしケイジという馬はそこで終わるような性格も強さでもないことをここから更に見せつけていく。

 

 夏は牧場で放牧をして休養を挟み、再始動は天皇賞(秋)。最後のKG対決始まりのレースともなる。そこでは追い込みを使いゴールドシップをねじ伏せての勝利。約1年ぶりの勝利を手にして復活の狼煙をあげる。

 

 続いて挑むのはジャパンカップだがこの年にケイジが引退することもありケイジに勝とうと挑む海外陣営が多数参加。世界7か国以上からダービー馬、各国最強達が挑みに来るまさしくチャンピオンカーニバル状態。中には後にアメリカでGⅠ7勝を挙げる二冠馬にしてケイジの半弟ドリームシアター、GⅠ勝利数国際記録保持者になるオーストラリア最強牝馬ウィンクガール。凱旋門賞馬、KGⅥ&QES馬などなどの国際GⅠ馬たちが参戦。世界中で衛星放送されるほどの騒ぎとなった。

 

 しかしケイジは逃げを使い翻弄。馬場の状態を選ばず戦えるうえに高速戦は得意のケイジが見事1着で勝利。秋古馬2冠を手にし世界最強としての格を見せつけていく形に。

 

 そして迎えた4度目の有馬記念。そこではケイジがクラシック前に指導もしていたキタサンブラックとゴールドシップがライバルとなり、最後の戦いは一番の親友でありライバルと自身と騎手が鍛えた弟子との対決となる。

 

 最後のレースでは大逃げを用いて同じく逃げ馬のキタサンブラックですら追いすがるのがやっとの速度で走り続け、最後もまたゴールドシップとの一騎打ち。逃げ差しというサイレンススズカの完成形の体現の走りをするケイジとゴールドシップの父ステイゴールドが香港で見せたあの驚異の追い込みを見せる、97世代の同期対決を思わせるような競り合いの結果かつての菊花賞同様同着。タイムも2分24秒9というスーパーワールドレコードを獲得。

 

 GⅠ16勝。今まで取れなかった有馬記念を制覇し親子三代有馬記念制覇という最高の花道を飾りケイジの競走馬人生は最高の形で引退を迎えた。

 

 ゴールドシップとの合同引退式では15万人のファンが押しかけ、2頭とも仲良く騒がしかったのも相まって終始愉快な引退式となった。

 

 引退式でのインタビューでは両陣営が最高のライバルでありファンであることを告白しゴールドシップ陣営は特に「ケイジとのレースが近いと練習もやる気になってくれて非常に助かった」という発言で会場を大いに笑わせた。

 

 日本最高の競馬ブームを作り上げ、その戦いも日本国内のみならず世界の最強格たちとの戦いはハイセイコー、オグリキャップ以上の盛り上がりであり、まさしく時代の立役者である競走馬であり続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 引退後1(2016~2018)

 

 

 GⅠ16勝という日本競馬界前代未聞の成績を持ち引退したケイジだが、故郷の前田牧場で種牡馬として生活を開始。当初はトウカイテイオーの血筋ということやケイジが突然変異過ぎていいところを継ぐかというところが不明だったために実績のわりには大変安い種付け料(850万円)だったが、日本国内での依頼は少なく、むしろ海外での依頼が多くアメリカ、アラブ、イギリス、欧州での依頼をこなしていた。

 

 ケイジは種牡馬としても優秀で種付けもスムーズかつ受胎率90%半ばと大変高い。牝馬もえり好みせずに紳士的に対応して負担もかけないようにしているのでもともとモテモテなのだがさらにモテるようになり同じ前田牧場の牝馬ナギコ、キジノヒメミコ、ブラウト、ミレーネはよく脱走してケイジの放牧地に入り込んでは追いかけまわし、ケイジは逃げ回る様もよく見られる。(ケイジの場合牝馬も好きだし種牡馬のお仕事もこなすがそれ以外では分別を付けているために馬っ気を出さずに丁寧に接する。仔馬にも反応しないことから頭のよさゆえに逃げているようである)

 

 一方でケイジのその功績からケイジの名前を冠した夏のGⅠレースを新たに設立。「ケイジ記念」は芝2600で札幌で開催。多くの海外馬たちが大レースに挑む前のステップレースとして挑むことも多く大人気のレースとなっている。

 

 またそれ以外でもテレビ、バラエティーへの出演も多くケイジとゴールドシップを新ドリフターズメンバーとして受け入れてくれた仲で馬主を始めた志村ヘン氏のバ〇殿に出演。ちょんまげのかつらをつけて松風騎手と出演し、自身とナギコの娘のミコトを費用負担付きで無料プレゼントした。笑っていけないシリーズでは兆治氏と一緒に出演しハリセンで出演者をしばきながらウマ娘の宣伝。更にはなんとサインをかいて兆治氏にプレゼントするなどまさしく芸人顔負けの活躍。

 

 バラエティー以外にもウルトラマンZ、仮面ライダーエグゼイド、ジオウに出演。俳優馬として演技もしっかりこなし、俳優たちと一緒に塩おにぎりやたくあん、リンゴを食べている写真なども多数残している。

 

 ほかにも後述するが静養牧場ともなりつつある前田牧場に定期的に顔を出すグラスワンダーと遊んだりディープインパクトの気性を大人しくさせたり、牧場の犬や猫と和やかに過ごしていたりなど忙しくも悠々自適の日々を過ごしていた。

 

 主戦騎手の松風騎手との岡座厩務員の結婚式にも顔を出し、このころには多くの漫画家たちとの書下ろしマンガやネタイラストなども描かれまさしくアイドルホースとなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 現役時代6(2018~2020)

 

 

 忙しくも種牡馬として過ごしていたケイジだが、2020年の東京オリンピックの馬術に推薦枠で参加してほしいという要請を受け障害馬術の候補にエントリー。その後は岩丸騎手とコンビを組んで再度現役の道を歩み始めていく。

 

 障害馬術の推薦枠とはいえ日本代表に足る力を示すためにいくつかの大会に参加。その際も相変わらずのフィジカルと頭の良さで競技をこなし無事に代表確定。

 

 その傍らケイジの実績から酒を作られることも決まり焼酎、馬も飲めるリンゴ酒というコンセプトで2つの「16冠馬」が作られたりなど競馬ブーム、馬への世間の興味を集め続けていた。

 

 そうして迎えた2020年東京オリンピックには代表選手団の一人として入場式にも参加。競走馬時代よりも鍛え上げた筋肉と10歳になっても元気さとその迫力は世界にケイジが帰ってきたと歓喜させるには十分なものだった。

 

 肝心の競技でも危なげなくこなし見事1位。前代未聞のサラブレッド。しかもGⅠ16勝馬が金メダルまでもを勝鞍に加えるという怪物ぶりを見せつけ、2012年世代の代表は伊達ではないと改めてこの世代の怪物さを知らしめた。

 

 レース終了後もいつの間にか日本とアメリカの馬術代表の馬たちに踊りを仕込んでみんなで踊って見せて周囲を驚愕させたり志村氏にあげた初年度産駒のミコトがオリンピックの年にアメリカでトリプルティアラ。息子のムネシゲはイギリスでトリプルクラウン獲得。ボーボボはケイジ記念を獲得という産駒も自身も暴れまわったままインパクトを増して二度目の現役人生を引退していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 引退後2(2020~)

 

 再びの引退生活となったケイジは今度は種牡馬としての仕事以外はリードホースの役割も担い牧場の幼駒たちの世話もしている。ケイジの場合教えるのも抜群にうまいのかレースへの理解が高い子が多く、同時にマンガやアニメ、新聞に小説を楽しむ馬ばかりになるという教えるべきかどうかわからない部分までも教えている。(実際にゴールドシップや牧場の馬たちは全頭馬房に本があるほど本好きばかり)

 

 産駒はどうも牝系の良さを引き出しつつ頑丈さとスタミナを遺伝させるという日本版サンデーサイレンスともいうべきとんでもなさで特にケイジが現役時代に激突したメンバーとの相性はとてつもない。

 

 また初年度、2年目の産駒は約8割強が牝馬という偏り具合もネタになり、今も牝馬の方が比率が多く関係者(ケイジ以下前田牧場の馬)全員が首をかしげる始末。

 

 直接の産駒としては代表的なのはアメリカトリプルティアラの名牝ミコト、ケイジ記念奪取の牡馬ボーボボ、イギリストリプルクラウンの牡馬ムネシゲ。カレンチャンとの間にはジ・エベレスト連覇で有名な牝馬マエダノカレン。ダイワスカーレットとの間には桜花賞と菊花賞を取るという怪物牝馬として名が知れたマエダルージュと既にGⅠ馬を国内外問わず多く輩出。

 

 ジェンティルドンナ、ヴィルシーナとの産駒も牝馬続きだがGⅡ、GⅢを取って成果を出しており、2023年度産駒も前田牧場が所有しているがどうにも素質があるとケイジのお墨付きで期待が高まっている。

 

 母父としてもオーストラリアで短距離戦戦を荒らし日本とオーストラリアの競馬対決の火付け役となったコンドウサン(父ジャスタウェイ 母父ケイジ)やステイヤーズミリオン連覇を達成したスペースケイジ(父ゴールドシップ 母父ケイジ)欧州三冠を成し遂げたキタサンプラチナ(父キタサンブラック 母父ケイジ)などなどそこでも成果を上げている。

 

 産駒は基本的に人懐っこい、のんびりものか悪戯好きばかりでサンデー産駒の気性難も見事緩和成功。一方でとんでもない気性難はまれにいるようでケンタッキーダービー他GⅠ8勝を挙げたリトルケイジはサンデーサイレンスを輩出したロック&ヘリントンファームですらサンデーサイレンスを比較に出してそれ以上にやばいというレベルで気性難。

 

 ケイジに気性の矯正を頼むほどでケイジは実際に見事大人しくさせてサンデー、ステゴレベルにどうにか緩和させたほど。

 

 日常生活はいわゆる種牡馬と保育園の先生として過ごすのだがケイジの場合は運動好きなので疲労の顔を見せず、ストレス発散の手段も多いためか充実している日々を送っているようである。

 

 見学に来た見物人にも優しく対応し、頼まれた顔芸にも応えるなど人懐っこさを見せる。また食事に関して好き嫌いがないタイプらしく知り合いの馬たちの好物は自分の分を分けて譲ることもあるようで大変面倒見もいい。その分なついてきた馬たちは同時にケイジの奇行に振り回されるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ケイジのエピソード

 

 

 どこまでもやりたい放題なケイジだがその実仲間を大切にし、またおおらかな部分もある。競走馬として見た場合問題点と良い点がかなり極端にある。

 

 ・調教は大好きすぎて練習は坂路を1日に5~6本。それを毎日やってなお元気。むしろ調教師が負担を抑えるためにプールトレーニングでごまかしたり散歩させる時間を増やしたりして負担をかけないよう気をつけた。

 

 ・ケイジの練習密度のせいで調教師サイドが他の馬たちの練習メニューの加減を念入りにチェックするなど認識をバグらせかけた。

 

 ・前述の事からも調教師や厩務員、騎手全員が好きでレースも大好き。騎手の松風や調教師の葛城とはレースの作戦の打ち合わせも一緒に聞いていることが多かった。

 

 ・仲間のためには命を懸けることをいとわないボス気質が強い。日本ダービー勝利後に放牧で前田牧場に戻った際には地元の夏祭りに脱走して参加。そこにいたヒグマが襲おうとしていた後のプロ野球選手であり葛城調教師の息子葛城蓮、自衛隊広報部長になる武藤国光を救い、そのままヒグマに帯同犬であり親友の幸太郎、幸太郎の飼い主でマタギの赤木氏と一緒に戦いヒグマの頭蓋を蹴り砕いて退治。

 

 ・現役引退後オリンピック馬術を目指す際もまたヒグマを退治するなど熊殺しの称号を得る競走馬になる。

 

 ・レース勝利後にウイニングランではなくセンターに立ち独自の身体を跳ねてから大きく咆哮する独自のパフォーマンスを誰に言われたわけでもなくやり始める。(通称ケイジダンス)

 

 ・漫画やアニメ、新聞を愛読する。文字や言語を理解しており自身の人気から日本中の漫画家からマンガをもらい、あるいは書下ろしコラボが多量に出た。(ケイジとマンガ作品のコラボを出版社別にまとめた本のシリーズがあるほど)

 

 ・前述で寄贈してもらった本やサイン、商品を保管する場所を作った結果優勝レイや蹄鉄なども保管するある意味ケイジ記念館のようなものが牧場にできた。

 

 ・アラブの王族に大変気に入られ優勝賞品で純金の蹄鉄と宝石をちりばめた優勝レイをもらい、お礼と言わんばかりに同期と共にドバイのレースで暴れまわりレースの格をあげた。

 

 ・脱走の常習犯であり柵越えを良くする。

 

 ・しかも助走すらなくその場飛びで140センチ以上はある柵を超えるほど。

 

 ・高い柵の場合でもなんと自分で藁で縄を編んで閂を外す。なくてもテグスやロープをこっそり隠していて隙を見て鍵を外す。でも長距離脱走、牧場敷地外に出たのは夏祭りの熊退治の一件だけで以後はない。

 

 ・神社参拝を良くしており最早地元では風物詩。しっかりと頭を下げて目を閉じるなどマナーや意味を理解している様子。

 

 ・博愛主義者であり馬も人も動物も大好きですぐ仲良くなる。スペシャルウィークなどの気性が荒い、馬嫌いですらもすぐさま打ち解けているほど。

 

 ・仲間を馬鹿にされると許さない気性でかつて「ケイジの相棒には松風騎手ではなく大竹騎手がいいしそのまま続けたほうがいい」と言った記者に怒り心頭となり新調したはずの馬房の鉄扉を一撃でけり壊し本気で襲おうとした。(この時はケイジ陣営全員が一番肝が冷えたという)

 

 ・しかもこれを2回ほど行なったため、ケイジの馬房、厩舎の前に「ケイジの前でケイジの関係者を馬鹿にしないように」という注意書きが書かれるほど。

 

 ・二度目のジェベルハッタに挑みに行く際にはアラブの王族にハリセンツッコミを入れてコントをするというトンデモ行動を披露。

 

 ・凱旋門賞二度目の挑戦の際に先に森で調教に行ったゴールドシップたちの後を歩いていたらゴルシに置いていかれた伊馬波厩務員らを確保して森から脱出。その後ゴールドシップとハリセンでしばき合う。

 

 ・凱旋門賞レース前にはゴールドシップと一緒に客へのファンサービスを重視するなど基本緊張というのが薄い。

 

 ・レース前に他の馬と談話したりにらめっこしては顔芸勝負もしていた。

 

 ・泳ぎがべらぼうに上手で潜水したり変わった泳ぎ方もしていた。

 

 ・温泉が好きで日に一度は入りたがり拒むと脱走してでも入りに行く。

 

 ・タンポポを育てるために種集めなどを行い、放牧地の一角に作ったタンポポ畑の鑑賞を楽しんでもいる。その後養生に来たグラスワンダーにタンポポ畑が食べられるまでがワンセットらしく互いにのんびりしている。

 

 ・松風騎手曰く性格は「下町の顔役」

 

 ・大竹騎手、岡崎元騎手から「ルドルフ、ディープを越えた最強」と太鼓判をもらう

 

 

 

 

 などなど、これ以外にも多くのエピソードがあり、実績は間違いなく世界有数の怪物なのだが同時に癖馬としての顔も強い。コメディアンぶりと実力。そしてその博愛主義者、懐の深さが愛される所以だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 異名

 

 

 人気馬なために異名も多いケイジ。人懐っこさと悪戯好き、頭の良さと強さ全てがハイレベルで悪魔合体したような馬ゆえにその異名もまた極端なものまである始末。

 

 一方馬券を買う立場からはその安定性からも好まれ名前からも「荒武者」「名将」などと呼ばれることもあった。

 

 

 ・傾奇者

 

 ケイジの名前のモデルが「花の慶次」からきていることや大逃げや追い込みなど競馬では王道から外れた個性派のレース。基本常識があてにならない。大外がリスクにならないなどなどの豪快な強さととことん普通ではなかったことからそう呼ばれていた。

 

 

 ・熊殺し

 

 3歳時の夏の放牧の際にヒグマを仕留めた時についた異名。祖父がライオンと呼ばれるほどの気性難だったためにその荒々しさはなんやかんや引き継いでいる(とは言っても限度はあるが)ことからも現役時も引退後もたびたび呼ばれていた。ある意味文字通りライオンを比較に出せるほど強いのは確かだが。

 

 

 

 ・顔芸百面相

 

 とにかく顔芸と奇行をパドックと本場馬入場。普段からもしていたためにつけられる。実際にその顔芸のパターンはゴルシに負けないほど多く顔芸写真集が出来る。ネットでも検索した場合無数に出てくる。画像集が出来るほどなので百面相の名前は伊達ではない。

 

 顔芸も多いがそれが映えるのも元はかなり顔立ちがよく柔和さも見せられるゆえにその変顔加減も際立つ。本馬もそれを理解しているゆえかよく顔芸のパターンを増やしては回りの馬や人に見せては遊んでいる。

 

 

 ・先生

 

 放牧の際にキタサンブラックを鍛えたり同期のゴルシやジェンティルドンナたちに自身のコーナリング技術を教えるなど大変教え上手なのを関係者全員が口をそろえるレベル。

 

 リードホースとしての才能も確かでブラウトとキングヘイローの娘であるシズルはミラノ大賞典とドイツダービー他二冠を制覇。ミレーネとスペシャルウィークの娘であるマアトエルはフランスでティアラ2冠を制覇。他にもBCクラシック制覇のハルフカシや自身の産駒たちに技術を教えており実際にケイジの指導を受けた子たちはコーナリングや息の入れ方、身体の柔らかさに定評がある。

 

 

 

 

 ほかにも日本総大将。世界最強、帰ってきた最強戦士などなど無数にあるがここでは割愛させていただく。

 

 

 

 

 総括

 

 

 これまで書かれてきたネタっぷりと暴走。それに反比例したような安定した成績から馬券師には大変喜ばれているが同期や周辺世代が世界最強格、史上初を幾つもこなす怪物。まず互いに世代が被らなければそれぞれに3冠、最低でも2冠を取ったうえで時代を作れると言われたメンバー同士がやり合っている時代なために当時は予想が外れることも珍しくなかったそうな。

 

 とはいえ2着は固かったので2012年世代が多くいるレースの時は1着か2着にケイジを入れておいて後は同期を入れておけばいいかと言われるほど楽であり馬券初心者向けと言われることもあるのでそこでも極端と言える。

 

 パドックやレースでの破天荒や奇行も見せる一方で騎手や調教師とも仲が良く馬たちとも喧嘩しない性格のギャップでファンになる人も多かったそうでなにより規格外の大逃げや追い込みはサイレンススズカやディープインパクトなど時代を彩った名馬たちの可能性を見せるような強さ。

 

 負けても次は勝てると思えるほどの勝負根性や負け癖のつかなさ加減。ハイペースでの早仕掛けを多く仕掛けるがその場所も自在であり瞬発力勝負でない多彩な勝負を見せたこともまた人気の一つであろう。

 

 いろいろな評価はあれどもGⅠ16勝。日本のような高速馬場からロンシャン競馬場のような重馬場でも対応でき年齢限定戦を除いても1800~3200mでGⅠを取ったのは紛れもない事実。このことからも現時点で日本最強馬候補では常に候補に挙がる。

 

 

 総じてまさしく「傾奇者」常識に当てはまらない規格外の強者の代表格。それがケイジである。




 振り返れば濃いなあケイジ。ここに更に馬主の何名かがオカマとか色々さらにあるのでほんとネタに事欠かない。

 次回はケイジのウマ娘の辞典風です。




 ~おまけ~

 前回のあらすじ。性別:シンジなシンジをマダオ状態のゲンドウに放り込んで話し合いをさせることで親子♂の仲を取り持つことが出来たケイジとゴルシとジャスタ。

 一方そのころマリとアスカも無事にネルフに参加。なぜかネルフ内部にラーメンと焼きそばの屋台が出来ていることに首を傾げ加持は二重スパイとしてオカマたちの尋問を受けていた。



 加持「地獄だ・・・オカマが・・・青ひげとルージュのコラボはやめてくれぇ・・・」


 ケイジ「いい面してんねえ! だらしねえ大人が恥ずかしくないのかよ」


 ゴルシ「しょうがねえなあ。干物にして佃煮にしてやればいい出汁が入って身も入るだろ」


 ジャスタウェイ「あ、二人とも気にしないでね。いつものことだから」


 アスカ「ンなわけできるかぁー!! いきなりなによこの騒ぎ!? ウマ娘はいるわ変身巨大化するわ加持さんはいつの間にかオカマの餌食になっているわ、なにより・・・」


 マリ「あらーいい体しているわねえ。その顔もかわいいけどもっと肉を付けてお茶で香りを整えればとってもいい感じ・・・♡」


 レイ「これがポカポカする感覚なの・・・」


 アスカ「私に抱きつく変態レズ二人をどうにかしなさいよそこの三バカー!!」


 ケイジ「あ、後はどうぞお若い方同士で。オホホホホホホ♬」


 ゴルシ「そうそう。未来のためにも仲良くね。ニョホホホホホホホ」


 ジャスタ「そういうことでーあ、お風呂と赤飯は用意しておくねーバッハハーイ」


 アスカ「いやぁああああ!!? 監視カメラもある施設内でこいつらと一緒にしないで! 一人にしないでええええぇえええ?!!? あぁあああああ!!?」


 ~しばらくして~


 ミサト「いやー青春っていいわねえ。くはー! 酒がうまい!」


 アスカ「冗談じゃないわよ! 赴任初日に襲われるって何のギャグよ! どうにかシンジの馬鹿が助けてくれたけど今度は目の前で馬鹿シンジがマリににゃんにゃんされかねないし無駄に雌の姿が似合うしで!」


 ケイジ「仲良くレクで来てよかったじゃねえの。ほれ豚肉と大豆のあいびきハンバーグステーキ。若い子はたくさん食べて元気に過ごすんだぞー」


 アスカ「五月蠅いわ! あぐ・・・ウンッま! 何よこの味・・・! 今まで食べたことない」


 ジャスタ「うぇへへへ・・・レイちゃんもたっぷり食べるんですよ。ああ・・葦毛のような毛並みにこの瞳。シップの妹みたいですし、光源z・・・」


 ゴルシ「お前は葦毛なら何でもいいのかよぉお! この浮気ものぉ!」


 ジャスタウェイ「なにを言いますか! 葦毛こそ最高! はかなげな白髪気味の中に見えるウマ娘のパワーと幽玄な美しさ! シップこそ最高ですがそれとこれは別! レイちゃんもまた芸じゅちゅ、げい、芸術に仕立て上げるんですよ! あれは磨けばあらゆる方面で光ります! 人ミミで出会えた奇跡の葦毛のような美少女! 磨いて磨いて・・・うふふふふふふふ!!」


 シンジ「ふーむ。レイはこういう服と肌着がいいかも。僕の使っている化粧品でこの化粧水がケイジさんからのおすすめでね?」


 レイ「ほうほう・・・これが、アスカと、シンジも・・・喜ぶ?」


 マリ「ほうほう。わかっているじゃないシンジ君♬ ケイジさんもよくわかっているようだし、流石はウマ娘。アイドルな分化粧やそういうメイク技術の知識は頼れるわねー」


 ミサト「いやー・・・ほんと、賑やかでいいわねえ。あなた達人類の最後の希望。最高戦力、パイロットってわかって・・むぐふ!」


 ケイジ「分かっているからこそ今こうして楽しんでいるの。楽しんで、はしゃいでみんなで辛さを薄めて楽しさは分けて増やせばいいんだよ。余計な口をはさむのなら腹回り気になるくらいのカロリー爆弾飯を弁当と晩酌に詰め込んでやるからなぁ?」


 ジャスタ「ふにゅぎぎぎぎ! シップが最高なのだけど他の子も愛するのは負けないわー! あ、ミサトさん。大真面目にケイジが本気でそれをするとメタボ確実なうま味の中毒飯作るから気を付けてね?」


 ミサト「もう。わかっているわよ。羨ましくてつい言っちゃっただけ。明るいのがまぶしくて。んふー・・・あ、ケイジちゃん。パリパリキャベツと牛蒡の煮つけおかわり―!」


 ゴルシ「へいおまちぃ!」


 シンジ「あ、ゴルシさんそれ今日の僕のリクエスト!」


 アスカ「ふーん? イカ焼きそばね。アタシも味見してあげる。うーん・・・うまい・・・! へぇー意外と合うのね。あむ。ケイジさん、ご飯おかわり―!」


 山本(メフィラス)「皆さんもどりました。デザートのアイスを買って来ましたよ」


 ゴルシ「(あ、エヴァの機密情報盗んできているな)おお! 私ストロベリーアイス!」


 ~続け~


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事典風 ウマ娘版

 今回はケイジのウマ娘バージョンの辞典風です。



 ケイジ(ウマ娘)

 

 

 『ウマ娘プリティーダービー』に登場する「ウマ娘」の一人。モチーフ、モデルは2010年代前半から2020年まで現役として活躍し無敗の四冠、東京オリンピック障害馬術金メダリストなど多くの優れた戦績のほかに同期のゴールドシップに負けず劣らずの破天荒、奇行ぶりでも知られる『ケイジ』号。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 目次

 

 

 ・プロフィール

 

 ・ソロ曲

 

 ・概要

 

 ・容姿、デザイン

 

 ・アニメ版(シーズン1、2、4、5)

 

 ・うまよん

 

 ・ゲーム版

 

 ・育成ウマ娘

 

 ・固有スキル

 

 ・特殊実況

 

 ・サポートカード

 

 ・NPCとしてのケイジ

 

 ・公式YouT〇beチャンネル

 

 ・関連人物

 

 ・余談。前田家について

 

 

 

 

 

 「一緒に行こうぜ珍道中! でっけえ夢と旅ほどおもしれえってもんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 プロフィール

 

 

 キャッチコピー 痛快! 奔放! 縦横無尽の怪物ウマ娘!

 

 誕生日 2月25日

 

 身長 210cm

 

 体重 理想的(背丈のせいで重いんだわ)

 

 スリーサイズ B:115 W:72 H:120

 

 靴のサイズ 両足共に31,0cm

 

 学年 高等部

 

 所属寮 栗東寮

 

 得意なこと 格闘技 料理 サバイバル 漫画速読

 

 苦手なこと よくわからない。

 

 耳の事 良く動くしたまに変な動きをする。

 

 尻尾の事 超奇麗。テンションのせいでいつも揺れている

 

 家族の事 仲良し。曾祖母とはよく斬り合っている。

 

 ヒミツ 1 そろばんは達人以上 2 勉強スポーツ問わずゾーンに任意で入れる 3 薄い本を集めている 4 自宅の部屋と寮室にいくつか隠しスペースを作っている

 

 自己紹介 アタシはケイジ! こんな場所での出会いだ。一緒に愉快な騒ぎを作りに、楽しみに行こうぜ! 

 

 CV 瀬戸麻沙美 山寺宏一

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ソロ曲

 

 

 夢で終わっちゃいけない。夢の果てまで走り抜ける! 時代の荒波を起こしてやるのさ!

 

 

 『傾奇桜注意報!』

 

 

 作詞 前田利家

 

 作曲 織田信長

 

 

 

 

 

 

 

 

 概要

 

 

 「黙っていれば美人」「残念な美少女」という枠では収まらない暴走ウマ娘。

 

 色白、墨を流したような長い、赤と黒の混ざる長髪に長い手足。切れ長の涼しい瞳とここまで見ればただの美女だがその背丈は2メートル越え、スタイルもバストとヒップは3桁越え、腰回りはマックイーンのバストとほぼ同じというスタイル抜群どころかダイナマイト級の規格外ナイススタイルというほかない。

 

 あのゴールドシップと共にバカ騒ぎをするし自身の行動の奇人ぶりもあってゴルシと並ぶ「ウマ娘界のハジケリスト」。ゴルシと一緒に広告塔としても多くの媒体に顔を出してインパクトを残している。実際の競走馬ケイジ号もかなりの奇行が目立つし何だったら他の馬に伝染させるのでまあこいつらだしと諦められるほど。

 

 ただ会話不能レベルのアプリ版ゴルシと比べるとケイジの場合はアプリやアニメも会話は通じるし何だったら顔を立てる一面もよく見せる。だからこそその奇行ぶりが際立つのだが。特にケイジの場合は自身の家や自身の実績、顔の広さを活かした行動はトレーナーの肝を冷やすものまで多数。

 

 同時にゴルシと並ぶ問題児であるのだが同時にその美貌もまた並び立つほどであり基本美少女のウマ娘基準でもかなりの美少女扱いであり「ゴールドシップに並び立つほどの美貌を持つウマ娘」とアニメで紹介されている。

 

 

 一人称は「アタシ」トレーナーは「トレーナー」と割と普通な呼び方をする。アニメ、アプリともにチームシリウス所属、チームエースを務めアニメでもアプリでもゴルシほか多くのウマ娘の手助けと暴走に巻き込む日々を過ごす。

 

 

 

 

 (ウマ娘1の頭脳、器用さ)

 

 

 元ネタのケイジが幼駒のころからニュースや漫画を楽しみ人の言語や言葉を理解、自分でチューブトレーニングをする。藁縄を編むなどの他の馬とは一線を画す頭脳と手先? 口先? の器用さを見せていたためにウマ娘のケイジの器用さと頭脳の良さは多岐にわたる。

 

 アグネスタキオンの薬品の図面を少し見るだけで調合のずれや効果を増すための薬品をすぐさま提示したり教科書をパラパラめくるだけでテスト勉強を済ませる(しっかりと高得点)。ウイニングチケットやオペラオー、スペシャルウィークらに勉強を教えて見事に理解させてテストで高得点を取らせる。

 

 魔法のようなマジックを使いこなし一見何もないような場所からも大量のものを出したり消えたり自分の身体さえも変幻自在に変えてみせたりなどなどの奔放ぶり。

 

 ゴルシの溶接やエアシャカールのソフトウェア作成も手伝い、ジャスタウェイとアニメ演出を活かしたライブ演出を用意したりと他者にその頭脳を以って教えることも手伝うことも得意。

 

 お菓子作りでもヒシアケボノやエイシンフラッシュが舌をまくほどの味と造形技術を両立したお菓子を作り、料理も一般家庭のそれから世界中の料理も作れる。飴細工でも青龍や鳳凰を作り、パン細工では錦鯉や玄武を作るなどなど。

 

 ゲームでもその賢さは反映されており賢さの成長補正数値はなんと35%とこの補正だけで他のウマ娘の補正ボーナスを多く超えるほど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 容姿・デザイン

 

 

 黒と赤の混じる黒髪を長く伸ばしそれを後ろで紅白の髪紐でまとめている。前髪の一部は十字架を思わせるメッシュ(流星)が特徴。右耳にはルドルフの耳飾り。宝石はルビーのものを付けている。

 

 瞳は切れ長の赤。

 

 

 

 

 勝負服

 

 

 肩から下を晒す和服風の白衣装に桜吹雪をあしらっているのが特徴的。胸元をさらし、腰には菊の腰当に腰紐。手元には黒と赤のアームガードに金の腕輪。

 

 むっちりとしつつも長い脚を際立たせる黒のハイソックスに赤のロングブーツ。

 

 またある時期から黒を基調とした桜吹雪の羽織を羽織りキセルを腰に差すか首から下げている。

 

 

 

 

 

 

 

 アニメ版

 

 シーズン1、2

 

 

 

 基本出演自体は控えめでゴルシが橋渡しとなってスピカメンバーを支える。生徒会のフォローに回りつつ暴走するシーンが目立つ。

 

 チーム選びに悩むテイオーにスピカがいいと言ってスピカトレーナー(沖野トレーナー)に紹介。マックイーンのチーム入りの際もゴルシのプレゼンテーションに参加して地面から急に表れてチーム入りの契約書をマックイーンの尻尾から出して手渡しいつの間にか去っているなどシリウスメンバーとの絡みよりも外部からスピカを支える描写が多かった(当時はジェンティルドンナほか多くの同世代メンバーが参加していなかったのもある)

 

 合宿回に関しても沖野トレーナーの財布事情とスピカメンバーの才能、アイドルとしての才能を知っているため無料で実家の経営するホテルの宿泊とオプションを全部提供する代わりにスピカメンバーと沖野トレーナーのサインをホテルに渡してほしいと交渉しており、1期最終話ではスピカメンバー全員のサインがあるホテルとして客を集めるなど単なる人情家だけではなく商才がある一面も。

 

 

 また大変手先が器用かつ多芸なため聖蹄際などではゴルシと一緒に焼きそば以外でも多くの料理を振る舞い(しかもどれも好評)スズカが故障した際に手渡した手作りのお守りは手製の刺繍から神仏へのお守りとしての加護を賜るための手順も踏んでいたりなどなど知識の幅広さも見せていた。

 

 

 2期では医者嫌いのテイオーに対して首をかしげる(元ネタの本馬は医者知らずな頑丈さ。それはそれとして奇行のせいでよく医者の世話になるも暴れなかった。医者に不調や検診は見て貰えばいいとわかっていたようだ)。また暴れるテイオーを持ち前のパワーで抑えて注射をさせたり、気分転換に実家のホテルの施設で遊ばせるなど面倒見の良さと史実で親子だった二人の仲の良さと絆を見せる。

 

 そのため周りに誰もいないときにはテイオーの苦悩に心痛めていたりする一面も。

 

 最終話でのテイオーの有馬記念での勝利の際には「1年以上のリハビリを経てGⅠ、しかも有マ記念を勝てたのはテイオーだけ。テイオーは今、無敗の三冠以上に手に入れるのが難しく、厳しい称号を手に、そしてルドルフとは別の形で栄光と強さを見せた」とテイオーを賞賛し、最後には「その勝利は必ずマックイーンにも奇跡を呼ぶ」と言い満面の笑顔でテイオーと笑い合う。

 

 

 

 

 

 

 

 シーズン4

 

 

 今までは基本サブキャラとしての出演が多かったケイジだが、とうとう主役として4,5シーズンに抜擢。2012年代を中心としたメンバーとして堂々の参加。

 

 

 そのスタートは東日本大震災での復興作業、現地で行われた復興ライブで「ルドルフを超える実績をたたき出す!」というビッグマウスから始まる。これに世間は前田家の令嬢でも無理だろうとからかわれ、冷ややかな目で見られることもある中本人と周りも気にせず邁進。

 

 ゴールドシップ、ジャスタウェイ、ジェンティルドンナ、ヴィルシーナたちと必ず世界最強の世代になると約束を立ててからのデビューからの快進撃は世間も注目を浴び、そして前述の評価を塗り替えていく。ダービーの時点で変則三冠を手にしてレコード更新も行うなどルドルフ越えをできるかもと言われはじめる。

 

 その途中で引退、菊花賞に挑めない同期からもその分までも戦ってほしいという願いを聞き入れていく一方青春も謳歌。後述するがかなりのやらかし具合をしている。

 

 そしてその中で菊花賞や有馬記念を越え、ドバイでルドルフに並ぶ実績を手にしたことが日本でも騒がれていき、もはやケイジがルドルフ越えをするのは無理と言っていた評価も消え失せていた。

 

 ただルドルフに並ぶともてはやされてもケイジは満足せず、それどころか相棒的存在であったトレーナーの事故により欧州二冠を狙うことに暗雲がさすと言われてもむしろその分暴れてやると代理トレーナーと一緒に欧州に飛び海外のウマ娘に自身の強さを見せつけるように戦い、イギリスでKGⅥ&QESを日本のウマ娘として初制覇、そのままフランスに渡り、日本ウマ娘レース界の悲願である凱旋門賞を勝利した。

 

 ジャパンカップを制覇しGⅠ10勝を遂げ明確に歴代日本ウマ娘最強に躍り出るも後輩であり三冠ウマ娘のオルフェーヴル(史実ではオルフェが先輩だがこの世界では後輩)がケイジに欧州で教えてもらったことやある約束から完全に覚醒。最終回でケイジを負かし、その上でケイジに泣きながら頭を下げる「これからも多くのウマ娘たちのためにも、ケイジさんのためにも走ってください」

 

 オルフェーヴルの、自分に勝った相手の言葉を受け取りハグしてから新春の番組ではまた海外に、同期たちで挑むことを表明。どこまでも暴れてやるとにっこり笑いながら締めくくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 シーズン5

 

 

 オルフェーヴルとの有マ記念を終えてから再びドバイでジェベルハッタに挑むケイジ。そこに同じく来ていたジェンティルドンナ、ヴィルシーナ、ジャスタウェイらと一緒にドバイで再始動するも敗北。

 

 負けることの悔しさを受け入れつつもライバルとの激闘を楽しみながら再び欧州に飛び欧州二冠連覇へ挑戦。同じく凱旋門賞に挑みに来たメンバーたちと早めに来られたのもあってフランス観光案内をしたり土産の購入などを楽しみ、本番の凱旋門賞では重バ場のロンシャンレース場でワールドレコードを再び更新していくという誰も成しえなかった快挙を達成。それも、1着から5着を日本から出走して来たウマ娘たちが独占するという前代未聞の記録達成の立役者になった。

 

 文字通り世界の頂点。日本ウマ娘競走界の新時代を作り上げた立役者となるもジャパンカップ、有マ記念では連敗を味わい、更にはこの有マ記念を機にジャスタウェイ、ヴィルシーナ、ジェンティルドンナ、フェノーメノがそれぞれの事情でレースを引退。

 

 ケイジと仲良しのシゲルスミオもすでに引退しており世界最強世代としての強さを見せつけたシーズンではある上に自身の目標も手にした一方、覚悟していたはずの引退していく親友たちの姿にむなしさと悲しさを感じつつ見送ることに。

 

 その後再始動は天皇賞(春)と決めて自身の調整の間にラニやキジノヒメミコ、メジロライトニングにメジロブレイズ、キタサンブラック、サトノダイヤモンドをスピカメンバーと合同で面倒を見ているもどうにもぼんやりとした日々を送るケイジ。

 

 しかしそこでキタサンブラックたちが自分を目標にしてくれていることや激励からオルフェーヴルの言葉と自分の行動が確かに後輩たちへと響いていたことを自覚し再燃。再度思いきりやり切ると約束をしていく。

 

 春二冠はギャグをしながらも全力で戦うも逃がし4連敗を喫するケイジ。しかしやる気は尽きず再始動の天皇賞(秋)の前に世界に向けて記者会見を発信「アタシはこれから日本の秋古バ三冠を挑む。その際にある二冠目のジャパンカップ。そこで海の外からも挑みに来るやつがいればかかってこい! 欧州二冠連覇を、宝塚記念3連覇を倒す名誉とその強さを求めるのなら! アタシは逃げない。世界、かかってこいや!」と秋古バ三冠取り宣言と世界中に自分とゴルシを倒す気があるのならジャパンカップに挑みに来いと宣戦布告のパフォーマンスを披露。

 

 その後自身の宣言の一つ通りに天皇賞(秋)を勝ち、迎えたジャパンカップ。文字通り世界中から最強格、新進気鋭から経験豊富な怪物たちが参加。だれもが「世界最強とそのライバルを倒し自分が世界最強となる」と目標に掲げていた。

 

 幕を開けたレースではケイジは逃げを使い全員の距離感と体内時計を翻弄させる逃げの経験を活かした技巧で惑わしての勝利。大逃げと追い込みの大胆な技以外でも強いことや世界最強としての存在を見せつける結果に。

 

 レース終了後は挑んできた世界中の強豪たちとサイン交換会や互いの戦術の意見交換を交わし最後の一冠を取ると拳を合わせてさわやかにそれぞれの国と戦いへと戻っていく。

 

 そして最後の有マ記念では同期のジェンティルドンナにシゲルスミオ、後輩たちが応援に来ており手を振って応え、そして自分を倒すと宣言するキタサンブラック。本気でぶつかり合ってくれるゴールドシップと最高の試合にしようとほほ笑む。

 

 始まったレースでは自身の代名詞であり一番の武器である大逃げをもって挑み、その鋭さと速さにはキタサンブラックですら届かない中かつてのように広がったバ群の内をついて飛んできたゴールドシップ。黒と白の弾丸が並んで競り合い、ゴール。結果は同着だった。

 

 同じウマ娘の組み合わせで、GⅠでの二度目の同着という珍記録。しかしオグリキャップ以来の二回の有マ記念優勝の葦毛のウマ娘という記録を手にしたゴールドシップ。そして自身の宣言通りに秋古バ三冠を手にしたケイジ。万雷の拍手と祝福に包まれながら有マ記念をまたもや自身の用意した仕掛けで翻弄するウイニングライブで締めくくった。

 

 最終回では新たにリギル、スピカ、シリウス、カノープスに新メンバーが入団テストを受ける。アーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクト、ソダシ、ユーバーレーベン、アカイトリノムスメ、メイケイエール、エフフォーリア、皆がケイジ達の世代に負けないと意気込む面々。そして一方でケイジはオリンピックに参加。世界中のファンの歓声を浴びながら拳を掲げて不敵にほほ笑む。

 

 新時代の到来。その火付け役はさらなるステージに挑んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 ケイジ達が主役になったアニメ4期、5期はアニメウマ娘2期、3期よりも悲劇、いわゆる曇らせ描写は少なくそれよりもとことんギャグと青春を前面に押し出した作風となったのが特徴となり好評を呼んだ。そもそもケイジ達の世代、時代自体が快挙や前代未聞だらけであり作中のギャグで行われている描写も史実準拠なのが多い。

 

 製作スタッフ一同も「史実の時点でギャグが多いし当時を知る人達に取材しても明るい空気で満ちていた」ということであえてこのギャグコメディ路線に舵を切ったと答えている。

 

 その中でもやはりケイジの暴走は多くアニメで変則三冠を取った後の夏の休養での熊退治のエピソードは2メートル越えのヒグマの突進をパンチ一発で吹っ飛ばし、爪の降り下ろしも空中にジャンプしての回避。とどめは史実でケイジの海外遠征のお供、熊退治にも参加していた柴犬の幸太郎をモデルに美少女化した幼馴染の幸子とケイジがエアガンとマスタードで目と鼻を塞いだ後にケイジの空中で一回転してのかかと落としで退治するという擬人化美少女スポコンアニメのウマ娘とは思えないほどのアクションを披露。

 

 通称「刃牙回」と言われるほどに洗練された動きは格闘技のプロもうならせるほど。

 

 また海外遠征の際ではドバイでは王族の面々にドリフターズのコスプレで現れて新喜劇に巻き込んでのハリセンでのツッコミ(これも史実で王族やその側近にドリフターズのグッズをプレゼント。ケイジがハリセンで実際にツッコミを入れた)演出にKGⅥ&QESでは女王陛下と優雅にティータイムを楽しみ、フランスではフランス観光などで暴走ついでに迷子の子供のウマ娘(おそらくモデルはブラウト、ミレーネ)を助けたりなどなどとにかくネタには事欠かなかった。

 

 そして観客などのモブやケイジの応援団にオカマなどが多いのは史実のケイジ、ナギコ、キジノヒメミコの馬主権利を持つ人にオカマバーのメンバーが多く、ほかにもガチムチや覆面を付けたナイスガイなど史実がいい人なのだが変わり種といういろいろな意味で濃いアニメとなる。

 

 証拠となる写真や映像は5期のDVD特典での前田牧場での映像資料にあるのだが、サンデーサイレンスを輩出しリトルケイジやドリームシアターを所持しているビリー牧場長。ウィンクガールの馬主であるヴァン牧場長。そしてオカマバー「ムランルージュ」の面々に前田牧場。そしてケイジとの集合写真があるのだがその絵面は濃すぎるとしか言いようがなく、イギリスでのケイジへの種牡馬の合同依頼で遠征の際にケイジと女王陛下がスコーンとクッキーをかじって過ごすティータイムの映像もあったりとおまけが濃すぎるとこれまた言われた。

 

 またおまけでなんとボーボボの声優や制作メンバーを集めて2012年世代中心のOVAを用意するという話が持ち上がっており、あのカオスな世代たちとどう絡むのかと期待の声と今後も我々に話題を運んでくれるようである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うまよん

 

 

 うまよんではケイジの暴走。かと思いきや割とまじめなシーンが多く描かれており、勉強の仕方や生徒会の書類の整理の手伝いなどを行うことが多く、史実でも牧場の牡馬と牝馬のまとめ役をしている側面を多く見せておりむしろ周りのギャグに付き合うことが多かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゲーム版

 

 

 ゴルシウィークのイベントで満を持して2012年世代の筆頭として実装されたケイジ。アニメに比べて奇人具合は減るどころかむしろ増していきゴルシほどではないがそのカオスぶりは大概なものであり、更にはケイジの史実での多くの漫画作品との絡みもあり周りのモブやイベントではどこかで見たお巡りさんやハジケリスト、どこかのやべー研究所などなどともはや「日本アニメ、ジャ〇プオールスター」と言われる始末であった。

 

 またゴルシよりまともで言動も通じるが一方でスーパークリークやアグネスデジタル、アグネスタキオン、サトノダイヤモンドなどのゴルシですら負ける度を越えたナチュラル変人枠らになんなく馴染んで対応したりむしろ負かしたり、ゴルシと馴染んでいたりなど変人への耐性やなじみ具合はやはり「ウマ娘界もう一人のハジケリスト」と言われるのにふさわしい存在である。

 

 声優もアニメ同様男女の二種を織り交ぜる(史実でケイジはシマウマの鳴き声を自由に出せる)せいもあって美少女の顔でいきなりひょうきんな男性の声を出したりかと思えばハジケながら女性のボイスを出すなど見た目と仕草と声のカオスさ加減は現在のウマ娘の中でも随一。

 

 育成シナリオはルドルフやオグリ時代以上の新時代を作り上げるという大目標と熱いライバルとの激闘。日本も世界も巻き込んだ大ブームを起こすというものなのだがやはりそのシナリオもハジケまくっておりスタートのトレーナーの性別でその始まりも変化があり、

 

 女性トレーナーの場合は「関東野菜連合に磔にされて連行。目の前にべちゃりと放り投げられ『今度制限時間以外に玉ねぎ残したらこれじゃ済まさねえ』と言われて何処かに去る。そしてケイジの第一声は『だって・・・外国産玉ねぎの一気生食いはきついよ・・・』」というどこかのハジケリストと同じようなスタート。

 

 男性トレーナーの場合は「自転車で車と同じ速度を出すどこかで見た眉毛の繋がった警察官と一緒にひったくり犯の乗るバイクを走って追いかけてバイクを力づくで押さえ込み捕まえてから感謝状をもらうのがめんどくさいからトレーナーに押し付けて自分はラーメンを食べに行こうとする」という破天荒さでスタート。

 

 その後も熊退治をしたり、どこかで見たキャラと過ごしていたり川でサーフィンをしていたりなどなどのカオスさは本当に滅茶苦茶である。

 

 行動基準は基本奇行か人助けという具合だがその思いやりはトレーナーにもしっかりと向けられており、レース前には作戦の打ち合わせをした上で走りを変えたり弁当とおやつを持ってきて無理なく休めと背中を叩いたり、育成後半になるとトレーナーに自分の次の担当ウマ娘を早く見つけて来いと発破をかけるなどトレーナの次のキャリアを見据えた発言も多い。

 

 GⅠ10勝を越えたあたりには自分の実家の経営しているホテルのスイートルームとサービス、施設を無料で使える日を設けてトレーナーの息抜きをさせたりなどお嬢様らしい豪快な気遣いも。また料理もここでも上手らしくゴルシやファインとよく一緒に焼きそばやラーメン、そのオプションのチャーハンや餃子などなども作る。

 

 基本アニメでは掘り下げきれなかったケイジのキャラクター性やグラフィックのクオリティーの高さもあって「ケイジの魅力を再確認できた」という声も多く、また女性ファンも多いようだ。

 

 

 

 

 

 

 メインストーリー

 

 

 メインストーリーではアニメ同様主人公の所属するスピカのライバルチーム。チームシリウスに所属。スピカの新リーダーとなったマックイーンへのアドバイスや練習にも付き合い、アニメ同様周りを助けることが多かった。

 

 またケイジを所有しているとシナリオが変化し分岐点が発生、ライスシャワーの菊花賞、天皇賞(春)ではケイジ自身の貯金や自身が所有している品物を売り払い金銭を工面。ライスシャワーのファンやその応援団のための横断幕や旗を用意してライスシャワーは誰かに元気を与えてくれる存在でありヒーローだと背中を押したり、また史実からもミホノブルボンやマックイーンの勝利を誰もが望むレースであるのに挑んできたライス以外のメンバーや負けて尚強いとマックイーンやブルボンをほめたたえてこのレースに参加した全員がいたからこそのこの素晴らしさなんだと場を盛り上げる。

 

 ほかにも史実の悲劇やヒールへのケアや改変を行ったりなどケイジの暴走と性格ならやりかねないというのをやりたい放題しており狂言回しとしては一番暴れているだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 育成ウマ娘

 

 

 

 ☆3「千両役者ここに見参!」ケイジ

 

 

 

 ゴルシウィークにて実装されたウマ娘。特徴としては脚質が逃げ、追い込みと極端な二つの適正がAという非常に希少なものに。所持スキルも発動条件が緩いうえに強力なスピード強化を二つ。そのどちらも現在はケイジのみが所有しているもの。更にもう一つの海外遠征専用スキルも含めれば海外戦においては史実のマルゼンスキー、覚醒サイレンススズカ状態を再現できる。

 

 

 これらの強力なスキルを持つが、史実のケイジが大種牡馬として早くも成果を出していること。その関係も広ければ血筋除いても多くのウマ娘のモデルとなっている名馬たちとの出会いも多い故か、そのスキルを因子継承などでもらいやすいのも相まって人権ウマ娘の一人となっている。そのせいか追い込み、逃げ専用以外のウマ娘の強化にも助かるという声は多く、史実のゴールドシップ号の厩務員であった伊馬波厩務員もアプリ版をプレイする際はゴルシとケイジのスキルを組み合わせるとすごく楽と発言。また「リアルでもよくケイジと練習させた日は機嫌がよかったしここでもらしいなあ」とつぶやいていた。

 

 

 固有はレースの中盤に差し掛かるころから自動発動するというもので強化すればパワーとスピード両方をパワーは「すごく」スピードは「少しづつ」あげていくというもの。

 

 

 これに前述のケイジ固有スキル「傾奇者」「大レースの鬼」を組み合わせるだけでもいいがさらに円弧のプロフェッサー、全身全霊、直線一気などを組み合わせればその速度は追いつけるウマ娘がほぼいない状態であり、海外遠征においては「海外遠征◎」を入れれば史実再現もやれるという検証動画も上がっている。

 

 

 育成シナリオ内では史実のケイジが担当調教師の感覚をバグらせかけるほどのタフさと練習好きを反映させているためにトレーニングでの体力消耗や失敗率は低めに設定されており、また夏と冬のトレーニングのターンは1~2ターン多めにできるようになっているなどなど育成もしやすくなっている。

 

 ただしプールトレーニングを入れないとケイジがごね出して練習を自分で勝手に決めるなどの暴走(史実でケイジはプールトレーニングを良くやらせろとごねていた)もあるのでそこは気を配るべき場所である。

 

 育成の際も賢さがぶっちぎりに上がりやすいが他にもパワーとスタミナも上がりやすく追い込み型の育成、また日本の芝よりもパワーとスタミナの数値を求められ、一定値以下ではデバフをかけてくる洋芝、海外遠征向けへの育成もしやすい。一方で史実のケイジを再現する際の難関は最初あたりであり2,3番目のレースは短距離レース。ケイジの短距離適性はGのため多くのプレイヤーは速度で無理やりにごり押していくなどの対処で逃げ切る場合が多い。

 

 

 

 

 固有二つ名

 

 

 荒武者

 

 皐月賞、NHKマイル、日本ダービー、菊花賞、KGⅥ&QES、凱旋門賞を含むGⅠ10勝以上したうえでファン数100万人以上となる。

 

 史実ローテがファン数獲得の多いGⅠ戦線であったことや欧州二冠や4冠ボーナスを手にできればそこまで難しくない。要注意なのは1度しか挑めないクラシックのレースであり、特に弥生からダービーのローテは余裕が無いのでその前で如何に準備が出来るかがカギとなる。

 

 

 

 

 特殊実況

 

 

 変則三冠を手にした後に挑む菊花賞での勝利。凱旋門賞の勝利の際に差し込まれる。これもケイジの史実ローテを意識して挑んでいれば問題なく見れるので特殊実況としてはかなり優しい部類となる。

 

 

 

 

 

 

 NPCとしてのケイジ

 

 

 育成がしやすく、逃げでも追い込みでも勝利を手にしてくれるケイジは嬉しいものだが、同時にこれが敵に回ると脅威以外の何物でもない。NPCでは基本逃げか追い込みかはランダムなのだがスキルの汎用性と固有発動条件の緩さも相まって気が付けば後ろからワープしたように飛んでくる。常に先頭を走り続けるせいで逃げの固有スキルを叩きつぶしながら自分はスキルを発動させてぶっちぎり続けるなど当時ケイジを敵に回していた陣営の恐怖をアプリでも味わうことに。

 

 さらに恐ろしいのはここにゴルシも加わり、逃げのケイジと追い込みのゴルシで固有を潰しつつどちらも最後に壁となって飛んでくることであり「ケイジを敵に回さないシナリオが息抜き」と言われるほどのひどさである。

 

 

 なので最初期のシナリオや育成ではケイジを敵に回さないこと。若しくはいかにして前に出さずに逃げ切るか、モブブロックでケイジがつぶれることを祈るなどケイジらしいが勘弁してほしいという声多数。尚、後日実装予定のチャレンジモードでは史実のケイジを完全再現した「完全版ケイジ」に挑めるというものがあるそうだが、さらに本気を出したケイジの強さに戦々恐々とするプレイヤーは多いとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・サポートカード

 

 

 SSR「怪力無双の槍捌き」ケイジ

 

 

 ゴルシウィークにより実装されたサポートカード。タイプはパワー。中距離、長距離の逃げに特化したものだがその進化は海外遠征への必須スキル、そしてチーム戦のスキルを多数内包した優秀なもの。チーム戦や海外で複数のウマ娘で挑む際には重宝され、また同じ日のレースに複数送り込む際にもバフがかかるのでドバイミーティングなどで芝、ダートそれぞれにウマ娘を送り込む際でもスキルの加護をもらえるという便利具合。

 

 汎用スキルや専用スキルが多いのだが、同時にその数も歴代最多ゆえに欲しいスキルを狙いづらいという欠点もある。しかしそれを差し引いても初の海外遠征向けのカードであり水着マルゼンスキーとは別ベクトルの逃げ専用のサポカというのもありマルゼンスキーやスズカをアメリカで遠征させる際に使用する人が多い。

 

 

 

 

 

 SR「ギアチェンジ・息抜きの秘訣」ケイジ

 

 

 ゴルシウィークにて実装された配布サポカ。タイプはスタミナであり、入手難易度、クエスト自体も非常に楽なもの。スタミナと速度強化のためのスキル。そして特にコーナリングスキルが多数内包されており前述のケイジのサポカと違い此方はスキルの数は少なめゆえにスキルを狙いやすく、またスタミナとスピード強化でのごり押し、コーナーを多く使えるレース場、レースでは特に活きてくるので初心者から上級者まで愛用できるサポカとなっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・公式YouT〇beチャンネル

 

 

 「さぁーパカチューブでござんす! で、今日は何するんだ?」

 

 

 2018年にゲームの事前登録に合わせて某動画サイトに「パカチューブ」が開設。そこで宣伝部長(自称)のゴルシと一緒にバーチャルユーチューバーとして自由気ままに振る舞い、暴れている。

 

 なお、ケイジの声優さんがハジケていいと言ったことから最初からハジケまくった結果ケイジの声が毎回違う。しかもやたら大物声優やボーボボ組が来てハジケまくったりとでゴルシを圧倒する場面も多数。

 

 実馬のケイジも参加して一緒にそろばん対決をしたり、コラボの際に権利をギリギリまで攻めた奇行は当たり前。

 

 ケイジの馬主やそのケイジの紡いだ縁を通して紅茶の国の女王陛下にドバイの国王陛下も顔を見せたり、日本歌謡界のラスボスやスパロボ軍団、演歌の大物サンちゃんや志村ヘンなども参加してみんなで歌を歌ったり牧場に顔を出したり、実馬のケイジによる今日のおすすめマンガコーナーなど。

 

 もはや平成から令和にかけた「声優無法地帯」どころか「馬好きの大物無法地帯」というパワーワードを生み出し、あらゆる伝説を生み出していく。

 

 アプリ実装からはアプリのウマ娘たちとの絡みや史実をもとにちょっとした掘り下げや豆知識などの解説コーナーも設けて育成のコツなどをウマ娘、あるいはトレーナー視点で話し合うなど今も精力的に活動を続けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・関連人物

 

 

 史実のケイジも多くの名馬との出会いがあるのだがウマ娘でも多くのキャラクターと遊んでいたりまき込んだり絡んでいる。

 

 

 

 

 ・トウカイテイオー

 

 史実でのケイジの父親であり、アニメやアプリでも絡みが多い。ただケイジが高等部のため史実では父親のテイオーをケイジが支えるというシーンが多い。

 

 ケイジもテイオーもどちらも互いの力量や強みを良く知っておりその上で互いに油断できないライバルであり最高の悪友と感じて過ごしている。テイオーはケイジの破天荒さを気持ちよく受け止め、あるいは振り回されるがそれを基本良しとしており仲は良い。

 

 アニメ版ではスピカメンバーのダンス指導に二人で教えたり、アプリ版でも二人によるダンス指導を生徒会から頼まれていたりで何かと依頼の際はセットで頼まれる。

 

 テイオー曰く「先輩だけどいつか甘やかしたい相手」「素直にカイチョー以外であこがれを抱ける存在」とのこと。

 

 

 ・シンボリルドルフ

 

 史実ではケイジの祖父に当たる存在でありケイジは孫になる。その所為かケイジにはダダ甘でありテイオーよりも甘やかす節がある。その具合はエアグルーヴが頭を抱えるほどの案件でも苦笑で済ます程であり、むしろかばう時もしばしば。

 

 一方でその甘やかしはケイジの持つ実績や実力、才能。自分にはないカリスマの形や人助けの仕方など史実の血縁以外でもケイジ自身の才能が自分の後継者、そうでなくても自分ではできない形で人を引っ張る形を見せることにワクワクしている節がある。

 

 またケイジ自身が自分に物怖じせずに堂々と意見をぶつけ、たしなめるなど「皇帝を諫言できる」存在としても感謝する一方、生徒会に定期的に入るように頼んでは断られてすこししょげることがあるそうな。

 

 

 

 ・ゴールドシップ

 

 言わずと知れたケイジ最大のライバルであり最高の親友。絡むときはとことん馬鹿をやり、ハジケまくっては周囲を巻き込んでの大騒ぎに発展させていく。

 

 レースでも私生活でも学園生活でもひとたび絡めば何が起こるかわからずシナリオ内でもこの二人だと相手するウマ娘たちがひっかきまわされて大変そうだとつぶやくモブがいるほど。二人の親友のジャスタウェイと三人で屋台経営をしたり釣りを楽しんだりと遊ぶのだが、大体その時はケイジが変なものを見つけたりしてゴルシですら驚くことが。

 

 河童や幽霊、小判、ウマ仙人などとの出会いがあったりと兎にも角にもケイジといると退屈しないということでゴルシから絡んでくることが多く、両者のトレーナーがそのまま被害を受けることも。

 

 一方ケイジの人脈は素直にやばいというほどで、流石にオカマバーと特殊刑事課の濃さにはゴルシも思わず素になっていた。

 

 

 

 ・ジャスタウェイ

 

 ケイジの親友の一人であり普段はゴルシやケイジと絡んでは振り回されたりツッコミに回ることが多い。同時に本人は重度の葦毛フェチであり、そのコレクション収集に振り回すこともあればテンションがおかしくなるのをケイジに抑えられたりなど、なんやかんやあの二人の親友をやれる変人。

 

 またケイジのウイニングライブの暴走や独自のプログラムの演出を手伝うこともあれば物語を書くのが得意なのでオペラオーのオペラの脚本の依頼を頼まれてケイジに協力を仰ぐことも。

 

 

 

 ・ジェンティルドンナ

 

 ケイジの親友の一人。同期でともに三冠を手にすると誓うも自身は無敗と行かず、ケイジは無敗の4冠を手にしたこと、姉のディープインパクトに並ぶことが出来なかったことからのコンプレックスを感じるも、ケイジ自身はいい所を見て素直に褒めてくれるしライバルと公言してくれていることに救われているし居心地がいいと感じている。

 

 一方でケイジの暴走には容赦なくハリセンでツッコミを入れるなどストッパー役としても活躍。アニメではシリウスの実質リーダーの一人として振る舞う。

 

 

 

 ・ヴィルシーナ

 

 ケイジの親友の一人。ジェンティルドンナ、ケイジにはある意味であこがれと同時にライバル心、親友としての心境が同居しており悩むことも。ケイジはそこを見抜いているので強さを引き出せるように鍛えつつも別路線のやり方で勝利を重ねることを選ぶ。

 

 基本ジェンティルドンナ以上に振り回されまくるし心労を重ねる苦労人ポジションだが同時にケイジに触発されて熱くなって暴走することもあるメンバーらの更なる抑え役、実質的2012年世代一番の常識枠。

 

 

 

 ・フェノーメノ

 

 トレーナー大好き勢。マメちん、マメちゃんと呼ばれると喜ぶ。ケイジとトレーナーへアプローチの手段を考えたり、デートスポットを学んではケイジに振り回されて怒ること多数。ただ料理の腕前やトレーナーの好みそうなマンガのサーチなどでは感謝している。

 

 ゴルシとは喧嘩友達でコマンドーなやり取りもちらほら。

 

 

 

 

 

 ・ホッコータルマエ

 

 ケイジと一緒に遊ぶが砂絵でアートをしたり、はたまたロコドルとしてのプロデュースなども手伝ったりとのほほんとしすぎているのをケイジが支えたりも。

 

 ナギコとの練習を経てアメリカでも顔を売ろうとしたりと割と素で暴走をするのでケイジも爆笑している。

 

 

 

 

 

 ・シゲルスミオ

 

 ケイジの親友。トレーナー大好き勢で怪物ぞろいの同期に挑みに行く自分を支えてくれるトレーナーに親愛を抱いており、トレーナーが怪我したと聞いたときはレースの出走予定を取り消してでも看病とケアに時間を割こうとしたほど。

 

 自分のスタイルの良さと美貌にやや自己肯定感が低い。ケイジの影響で距離感がバグっているせいでトレーナーをよく無自覚に誘惑しているのでケイジには「はよくっつけバカップル」と言われては嬉しそうに笑う。ケイジのホテルのお土産屋さんやレストランでバイトをしている時も。

 

 

 

 

 

 ・トーセンジョーダン

 

 ゴルシの喧嘩友達だがケイジとは大変仲が良く付け爪を細かくカットしてそれを貼り付けてネイルアートをしてくれたりトレーナーの忙しいときはケイジが勉強を教えてしっかり高得点を取らせたりなど世話を焼いている。

 

 ケイジの評価は「飲み込み、要領を得るのが遅いだけで理解すれば早い。地頭はいい方」と太鼓判を押す。

 

 

 

 ・エイシンフラッシュ

 

 お菓子作りで意見交換をしたり、はたまたシナリオではその不器用やレースですべてプラン通りにいくわけないということで矯正のために幻惑逃げや追い込みでそれを叩き込んでいく厳しいシーンも。

 

 バレンタインの際にはケイジから飴細工のやり方を学んで自分の技巧にしていくことをみせていきアスリートとしてもパティシエとしても成長のきっかけを得ている。

 

 

 

 

 ・ツルマルツヨシ

 

 病弱なのだが頑張り屋なところを気にかけ、ケイジもどうにも気になるらしく体質改善の一環として知り合いの中華料理屋さんに声をかけ薬膳料理のレシピやランチを教えて病弱をどうにか助けつつ自身のデータを渡すなどして夢の後押しをしている。

 

 

 

 

 ・ナギコ

 

 ケイジの後輩であり前田家の一人だが養子。文学大好きギャル。互いに本を貸し合っては意見交換を行い、アメリカに行く際はアメリカの漫画の日本語訳をくれと頼んだり互いの練習のためにウッドチップの練習場で練習に励む姿がしばしば。

 

 イベントではアメリカの遠征の際に満足のいくお風呂が満喫できないと嘆いているナギコをケイジがいい場所があるとアメリカで湯船にゆったり浸かれる場所を教えるなどのシーンがある。

 

 

 

 

 

 ・キジノヒメミコ

 

 前田家の一人でありシナリオ内でもケイジへの愛とトレーナーへの敬愛を持つヤンデレ気味のウマ娘。ケイジファンクラブを立ち上げたり、オカマバーでトレーナーへの料理を教わるなど双方への愛を見せまくる一方ケイジの前に立つとその愛が暴走して大概変なことになる。

 

 ただケイジとトレーナーしか興味がないわけではなく面倒見は良くむしろ温和。ただ根っからのマイラー気質なのもあって教え下手なので実戦練習でトレーナーや相手に比較させることで短所を教えるという不器用ぶりを見せる。

 

 

 

 

 

 ・オルフェーヴル

 

 ケイジの後輩、臆病な時もマスクを外して暴走するときもケイジが抑え込み、かばいつつ支えているのでケイジに大変なついている。

 

 シナリオ内ではマスクを外してもしっかりと暴走せずに自分の意思を燃やしつつケイジに勝利。その後はマスクを外す機会も増えるがそれでもマスクを着ける時は「癖になっちゃって」とはにかんだり覚醒した時の様子も描かれた。

 

 

 

 

 

 ・キタサンブラック

 

 史実でもアプリ、アニメでもケイジの弟子。逃げのコツやコーナリング。レースでもライブ練習からそのライブをぶっ壊しての自分色のライブのやり方も教えている。ケイジも愛弟子と認めておりキタちゃんも素直に甘えている様子が描かれる。

 

 時折親子、祖父も拉致されてはケイジの企画に巻き込まれることがあり、その際には実家のセキュリティや弟子たちをかいくぐって行われる怪盗の手口にまいど呆れると同時に悲鳴を上げるのがほぼ恒例。

 

 

 

 

 

 

 ・サトノダイヤモンド

 

 キタサンブラック同様ケイジの弟子。ブレーキがぶっ壊れた際の行動でも難なく対処していくし、何だったらその上でドン引きさせるケイジの行動に関心も寄せたりとである意味クレイジーダイヤモンドぶりを暴走させたりハジケワールドに連れ込み合う仲。

 

 ケイジのアイデアと草案をまとめてゲーム開発をしてそれが成功したり、グッズをホテルで販売したりなど互いに名家としてのやり取りも多くそのためか互いの実家で絡むシーンも多い。

 

 

 

 

 

 

 ・メジロライトニング

 

 史実でケイジの半弟。またタイキシャトルの正統後継者でマイラーだったせいかメジロ家なのだが真っ向から天皇賞に興味はないと言い放つなど豪胆ぶりを見せケイジに爆笑される。明るく実直なのだがそのせいで勉強でも好き嫌いでのテストの差がひどいのでケイジに勉強を教えてもらうことが多い。

 

 

 

 

 

 ・メジロブレイズ

 

 史実でのマヤノトップガンの息子。ステイヤーよりの中距離向きなのでマックイーンとケイジによく師事を仰いでいる。練習も理解して頑張るのだがいかんせんどこかで心配が勝り反復練習をし過ぎてオーバーワークをし過ぎるせいでケイジに良く怒られている。

 

 

 

 

 

 ・タイキシャトル

 

 よく一緒に食事を楽しみに行く仲であり屋上でBBQをする際にはケイジが用意してきた食材、中にはジビエなども多数でありプールトレーニングでも泳ぎで勝負をしたりなど大変仲が良い。

 

 ケイジ曰く「可愛い大型犬」「ああ見えて気遣いもできる優しいお姉さん」と評し互いに甘やかし、食事を楽しみ合う食べ仲間。

 

 

 

 

 

 ・メイショウドトウ

 

 内気で変な発言をやり気味のドトウを落ち着かせ、自身の休憩ついでに愚痴を聞いたりアドバイスを交わすことも。

 

 また史実ではよくおやつをおねだりされては自分のおやつを分けていたせいかケイジと話す際は良くジュースやお菓子を持って語らうシーンが多い。

 

 

 

 

 

 ・エアグルーヴ

 

 生徒会副会長としてケイジの起こす騒動。悪戯に快挙を起こしたことでのマスコミの対応や生徒への通達など頭を抱える案件を幾つも出してはそのたびに怒り、追いかけまわすのがほぼ恒例行事、風物詩と化している。

 

 ただケイジの持つ植物の知識や茶の知識、礼儀作法などは認めており自ら学びに行くことがある。

 

 

 

 

 

 

 ・グラスワンダー

 

 史実でもケイジとよく遊んでおり、ケイジの放牧地のたんぽぽエリアを毎年食い散らかしている。ケイジから茶道や日本文化を学んでおり、よくからかわれたりするもそれも楽しんでいる節が。また歴史の文献を借りたり、ナギコと仲良くなることもあり基本エンジョイ。

 

 納豆やお茶に合うトッピングや味の調整などを学びアプリシナリオでも納豆に日ごとにいろんなものを乗せたり(シソ、ネギ、卵、砂糖など)お茶もウーロン茶をタイキシャトルのBBQにもっていって満喫したりなど味の探求を求めるイベントがある。

 

 

 

 ・ディープインパクト

 

 無敗の三冠。奇跡に最も近いウマ娘、英雄など多数の呼び名をもらいルドルフに並ぶ怪物と評された怪物ウマ娘。史実でも気性が荒くなり始めたころにケイジと出会い昔のような人懐っこさ、穏やかさを取り戻したことからかケイジとの絡みも多く、自分に色眼鏡で見たり、気を置かず遠慮なく絡んで遊ぶケイジを心底気に入っている。

 

 同時に自身も家業を継ぐ者としてケイジとよく互いの家の企画を用意したり自分のネームバリューを活かしたり、そのイベントでケイジと遊ぶ機会を確保したりなど強かな一面も。

 

 

 

 

 

 ・ライスシャワー

 

 アプリ内でもよく絡んではその自信のなさを支えたりケイジから絡んでは気分転換、発散させたりなどメインシナリオではケイジの妹分としての振る舞いを見せる。

 

 同時に2012年世代に近いレベルで暴走に巻き込まれ、気がついたら氷像の中に閉じ込められたり、氷の城の女王様役にいつの間にか抜擢されたりなど気がついたら絵本の世界に巻き込み、また絵本作成を手伝ったりと髪の毛の色も相まって本当に姉妹に見間違えられることも。

 

 

 

 

 

 

 ・スーパークリーク

 

 子供好きなケイジゆえにクリークの実家でイベントやショーを行うことがあり、世界で暴れているスーパースターのケイジの料理にイベントに子供たちが楽しむのをほほえましく見守っている。

 

 またどうにもケイジを妹のように見ている節やシンパシーを感じており、ケイジと料理をしたりなど自分から交流を持とうとすることが多い。

 

 

 

 

 

 

 ・カレンチャン

 

 カワイイの追求の際にケイジに相談することがあり、その際にオカマバーにトレーナーもろとも連れ込んで晩御飯をつつきつつオカマたちから意見をもらったりしてしつつ愚痴を吐かせたりなど、カワイイの求道者じみているカレンチャンの手助けをしている。

 

 またカレンチャンの疲れをケイジがすぐさま見抜き「今日は休め(意訳)」で無理やり休ませるプチイベントなどもありカレンチャンもケイジには素直に甘える。

 

 

 

 

 

 ・ダイワスカーレット

 

 優等生として振る舞う自分の本音や本心をすぐさま見抜かれてしまったり、自分よりやりたい放題しながらも認められ、世界最強の称号を手にしているケイジをあこがれと同時に嫉妬を渦巻いたりとで複雑に見ているがケイジはそれを受け止めたうえで優しく接していたりなど可愛い先輩後輩として描かれる。

 

 アニメでも先輩後輩としての関係であり、また逃げ戦法を使う者同士として研究し合う様子が描かれたり史実での戦法の似ている部分も反映され仲良し。

 

 

 

 

 

 

 ・サイレンススズカ

 

 互いに大逃げという共通点を持ち、スズカの思うままの大逃げと走りを満喫しようと言って練習に付き合ったりなど互いに仲良くかかわっている。その一方スズカの天然ぶりに振り回されることもありスズカのトレーナーに依頼されて何処かに走りに行ったスズカの捜索を手伝うイベントがある。

 

 その際はケイジもナース服に着替えて聴診器を地面にあててスズカの走っている場所を探り当ててすぐに捕獲に行く。その際はスズカも驚いていたりなどなんやかんや二人が絡むと互いにボケ合戦。

 

 

 

 

 

 ・ウオッカ

 

 アニメ版での絡みが主でありケイジのキセルを吸う姿、着物姿にカッケーとはしゃいでいたりとケイジの振る舞い、破天荒ぶりにあこがれている描写が多数。

 

 その際にはキセルを買おうとして迷子になりかけたり、ゴルシとケイジに変なことを教え込まれそうになって混乱したりなど良くも悪くもケイジに振り回され続けることが多数。

 

 

 

 

 

 ・スペシャルウィーク

 

 アニメではウイニングライブで何もできずに棒立ちしたことに怒り「どうせやるならアドリブで場を沸かせたり愉快にしてなんぼだろうが!」とトレーナーもろとも正座させられていた。それ以外は太りやすさや足の怪我を不安に見ていたりなど、ケイジは先輩として陰から見守っていた。

 

 黄金世代の代表として頑張って来いと背中を押したりなどする一方からかいやすいのでケイジは良く振り回している。

 

 

 

 

 

 ・ナリタブライアン

 

 圧倒的強さのケイジとよく併走に挑んでは振り回されるなどマヤノトップガンとは逆の立場になるが自分を燃え上がらせてくれるケイジを気に入っているし何だったら甘やかされている。冬はケイジの知り合いの狩猟で手に入ったイノシシやシカのステーキを分けてもらい満面の笑顔を浮かべたりなど、ビワハヤヒデがケイジに苦言を呈するほど。

 

 ただしそこはケイジなので野菜嫌い克服の際に関東野菜連合に連行させ(50%の確率でケイジも一緒に連行)二人してドラム缶に詰められたり磔にされたり簀巻きにされてターフにべちゃりと転がされたりと割ととんでもない振り回され具合を味わう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・余談 前田家について

 

 

 ケイジの実家である前田家は、史実のケイジの生産牧場であり今も過ごしている前田牧場がモデルとなっている。

 

 アウトブリードなどを主としていたのだが、ケイジの生産をしてからケイジの活躍と同時にアウトブリード兼将来のケイジのお嫁さん候補の牝馬を集めたり牧場整備をしていた際に温泉を掘り当てたため、静養牧場としても経営することに方針を変更。

 

 現在は半分静養牧場と生産牧場として経営しており、多くの種牡馬と牝馬の出会いの場であり同時に休む場所。引退馬も多くが特定の時期に湯治に来ており代表格ではディープインパクト、グラスワンダーがよく休みつつケイジと遊んでいる。

 

 牧場長も「生産牧場としての顔はほぼないような物ですが、これはこれで馬たちの安らいでいる顔に、関係者の皆様も笑顔でいるのならそれが一番です」と答えており本人も苦笑しつつも今の状況を受け入れている様子。

 

 また牧場なのだがケイジの趣味とケイジの主戦騎手や関係者等からの差し入れで漫画やアニメが多くあり、それらを管理するための場所もあれば、前田牧場で過ごす外部の人用の宿泊場所があったり、人間用の温泉エリアもあることからアプリ、アニメ版ウマ娘のケイジの実家がホテル、旅館業をしていることになっている。

 

 ケイジ自身も温泉に浸かる馬たちの様子をチェックしたりなど馬たちも人間も安らげる。もはやケイジが生まれる前と後ではまるで違う牧場なのでそういう意味でもいろいろと愉快な牧場。現在も現役引退問わず多くの馬たちが訪れており、今後も愉快な様子や話題で彩られるだろう。

 

 またアプリに登場する白髪と黒髪のメイドは牧場の二匹の保護猫、ケイジの親友である幸子はケイジとよく帯同犬として海外遠征に行った幸太郎がモデルとなっている。




 これに手ケイジの物語はひとまず終了。今後はとことん気が向いたらネタとしてウマ娘のエピソードを投下できればと思います。皆様改めてここまで応援ありがとうございます。ここまで続けられたのは皆様の応援あってこそです。

 これからもどうか皆様が素晴らしい作品と出会い豊かな時間を過ごせることを願うばかりです。

 今後はのんびりおまけと思いついた話を気ままに投げつける感じで過ごします。それでは皆様さようなら。さようなら。


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ウマ娘エピソード 29 前田とメジロ

 台風三連続は何年ぶりなのかなあと。


 ケイジの衣装違いが出るのならランプの魔神バージョン。そして専用ライブはもちろんあの曲をジーニーボイスでやりまくるしあの映像をほぼ再現してしまう。


 ケイジの固有発動(ゾーン)をシングレ風に描くとどんな風になるのか個人的によく妄想しております。ゴルシの場合はまんま戦艦大和のような超巨大戦艦が波をかき分けて突撃するような感じでしょうけど。


 「そういうわけだ。だからマエダノキズナとして今後は生きていくからよろしく」

 

 

 「まったくもう・・・この年になってこんな事態に出会うとは思いませんでしたよ」

 

 

 目の前で覇気を纏い懐かしそうに自分を見て微笑む鹿毛のウマ娘。私の恩師であり、元祖女傑のヒサトモさん。それがケイジとアグネスタキオンの薬で若返り、第二の人生を歩むというのだから世の中分からない。

 

 

 葬儀の時に号泣していた自分と目の前の若返りかつて自分を指導していた頃より美しさを増している。いや、取り戻しているこの少女に怒るかビンタでもして許されると思っているが、それはそれとして驚きと、同時に若いころのヒサトモさんに出会えた嬉しさが勝る。

 

 

 「あんたも若返ってみるかい? ケイジの事だ。どうせ薬の設計図とデータは頭の中に叩き込んでいるだろうし締め上げて作らせて青春を謳歌したらいい。新しい恋でも捕まえてねえ。ほんとあんたはモテたし」

 

 

 「ふふふ・・・それは素晴らしい提案ですね。ですが、もう少しメジロの子たちが成長してからですよ」

 

 

 「昔よりずっとスイーツも多いんだし食べまくれるチャンスなのにねえ。若い頃は私や執事たちからも隠れてこそこそパクパクしては・・・」

 

 

 「そ、それ以上はご勘弁を。もう。最後あたりはちゃんと節制できたでしょう・・・?」

 

 

 若いころの話を持ちだされ顔が赤くなるのを笑われる。見た目はまだ中等部くらいの少女にだが、同時にこれを知っているのはもはやメジロ家の執事長とメイド長。そしてヒサトモさん世代のみ。ますます確信を得ると同時に嬉しくもなる。破天荒な強さと振る舞いを見せつつも世話焼きのあの人がようやく青春を謳歌できることに、この羞恥を味合わせるも懐かしい師匠の若い姿に。

 

 

 「ん・・・そういえばヒサトモさん。私に教えてくれたのは感謝しますが、それ以外ではだれに?」

 

 

 「クリフジとセントライト、今私と屋敷に住んでいる子たち。それ以外には伝えていない。頼れるのはあんたらだと思っているからね」

 

 

 「まあ嬉しい。ところで目標としては何を目指します?」

 

 

 「んーもう一度ダービー取りに行くのと、そうさなあ・・・1200~3600での重賞を取ってやるかね。今の世代も頼もしく強敵ぞろいだがやりがいはあるさね」

 

 

 「ふふふ。前のアオハル杯でも問題ないことを見せましたしね。応援しておりますよ」

 

 

 「ま、あんたんとこの子らが立ちはだかるだろうけどね。特にマックイーン。あれは強て・・・」

 

 

 「いい体してるじゃない・・・でも・・・♡ 私の方がおっ〇いおっきいわ・・・♡」

 

 

 ヒサトモさん。いえ、マエダノキズナさんのこれからの躍進はどうなるかと気になっていたところ外から聞こえる声に二人して意識を向けてしまう。

 

 

 「私の方が! おっ〇いおっきいわ!!!!」(CV ルナ・ドーパント)

 

 

 「まな板にしようぜまな板に! まな板!!」

 

 

 「まな板だよ! これすっげえまな板だよ!!」

 

 

 「貴方たち二人をまな板の原材料にして差し上げますわー!!!」

 

 

 「「ギャァアアアアアアアア!!!!」」

 

 

 ズドォン!! という音と同時に上がるライトニングとケイジさんの悲鳴。まあ、うん。あの二人が暴走したのでしょうね。しかしマックイーンも色気はありますが、もう少し体に実りを与えられればいいのですが、そういうサプリでも探しておきましょう。

 

 

 「面白そうだし見に行くかねー。あ、アサマちゃん。前田家の新作スイーツ執事に渡しているからゆっくり味わってから来たらいいわ」

 

 

 私が行くのは・・・やめておきましょう。マックイーンも見られたくないでしょうしね。一つ執事たちと一緒にお土産のスイーツでもつまんで。ふふ・・・この年で恩師から物がもらえるとは元気でいるものですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おーおー見事にまあ埋まって。マックちゃんもうちのバカと悪友に振り回されたようね」

 

 

 「まったくもう・・・あ、キズナさん。お見苦しい所を」

 

 

 何やらキズナ先輩とマック先輩が話し合っているようっすね。私とケイジ先輩はただいま地面に埋められて様子がわからないんすけど。

 

 

 「しかし、今日はいい天気だがゲリラ豪雨は大丈夫かなあ」

 

 

 「ケイジ先輩、今空見えないっす」

 

 

 「そっかーところで、今日のおやつって何?」

 

 

 「クッキーっすよ。ホワイトチョコとビターチョコをサンドしたものから低糖質のものまで」

 

 

 「上半身埋めたまま話しているな変人ども―」

 

 

 地面からキズナ先輩に引き抜かれるとあっという間に地面から逆さに見える二人が。あ、ケイジ先輩はそういえば。

 

 

 「ということで今日の土模様は大変良好。モグラさんにはメジロの花壇の下を。オケラさんは土を休ませているメジロ家の畑エリアが大変ごはんと掘りやすさに恵まれているでしょう」

 

 

 「オケラとモグラの変な予報士をしているー!?」

 

 

 横で何やらアナウンサー風の衣装に着替えているケイジ先輩がいつの間にやら土の掘りやすさと餌の予報士に。そしてなんでか真剣に話を聞いているモグラとオケラ。何をしているんすかね!?

 

 

 「変な仕事しているんじゃないわよ! ほれ。せっかくのティータイムなんだし、この穴を埋めなさい」

 

 

 「あばふ! へーいじゃあついでにお茶の準備も・・・」

 

 

 「何を・・・って鼻うがい!? なんで!?」

 

 

 シャベルで私ら二人が埋められた穴を直そうとしたらケイジ先輩が何か種っぽいものを置いてから地面を埋めて、鼻うがいをしてその水が降りかかる。

 

 

 何ということでしょう。見る見るうちに芽が出て、あっという間にそれなりに大きな木になりましたとさ。昔話っすか・・・?

 

 

 「えーと・・・・・・・・ほい。できた。出来立てほやほやのブレンドティーだよ」

 

 

 謎のタイマー音が鳴り、チーンという音の後にその木の皮が外れて中からホカホカのティーセットとお茶が。

 

 

 「飲みますかそんなもの! どうやって出したんですのよ!?」

 

 

 「んー・・・レモングラスとアップルミントのブレンドか。クッキーにはちょうどいいね」

 

 

 「あ、美味しいっす。でも、スコーンと食べるにはジャムを入れたりしたほうがいいっすね。若しくは蜂蜜?」

 

 

 「普通に飲んでるー!!!? お二人とも!? 得体のしれないものを飲まないでくださいまし! いやケイジさんのなら問題ないでしょうけど! それでも駄目ですわよ!」

 

 

 「まーまーほれ大自然の椅子だ。一杯やろうぜー」

 

 

 そういいつつケイジ先輩は木を引っこ抜いてからスパンと縦に二つに割って腰かけつつ紅茶を飲む。いやー・・・もう呆れてというか、どこからこのマジックというか何をどうしてこうやっているんでしょうかね。そりゃあフジキセキ先輩とスイーピーが勉強しに来るっすよ。

 

 

 まあ、今はブレンドティーの美味さとクッキーの味を楽しむっす。

 

 

 「いらないですわよ! というか片付けてくださいよケイジさん! 流石にこれは使えないです!」

 

 

 「ちぇーなら、しょうがない。よいしょ・・・」

 

 

 「相変わらずいつでもイリュージョンしやがってねえ。どうなっているんだい?」

 

 

 「!!?!?!?!」

 

 

 マックイーン先輩が驚く中、ケイジ先輩は自分の上半身と下半身を分離。二つに分けていた木をまるでブルーシートのように畳んでまとめ、ケイジ先輩はまるで尻尾を手回しハンドルみたいにしてぐるぐる回しながら畳まれた木がだんだんとケイジ先輩の下半身の分かれた場所に吸い込まれて消えたところでケイジ先輩が下半身を回して自分の上半身とくっつけて合体完了。

 

 腰をグルングルンと回してラジオ体操のように腰をそらしてくっついているのを確認してからケイジ先輩も野外のティータイム用の椅子に腰かけて息を吐く。

 

 

「世界のエンターテイナーケイジちゃんには不可能はないぜ♬ じゃ、クッキーいただきまーす」

 

 

 「あ、それなら今度ブロワイエさんとトニビアンカさんが一緒にショーをしないかと来ていたっすよ。ついでにマイルで4人で練習しないっすか?」

 

 

 「それなら私も入れてくれ。欧州の王者たちとの練習はデビュー前に積むにゃいい練習だよ」

 

 

 とりあえず、この後はマックイーン先輩がたくさん食べていいって知って食べすぎて、翌日の体重計で悲鳴を上げていたっす。あと、ケイジ先輩とキズナ先輩の欧州でのショーは成功して「前田家」の存在がヒメ先輩とナギコ先輩の実力も相まって皆一緒にやべーやつら認知されました。

 

 

 デビュー前からアオハル杯前夜祭でシリウスにくらいついて、欧州歴代王者とケイジ先輩と互角でしたしねえキズナ先輩。私前田家ファンなんすけど。改めて思い返すと一体こんな逸材で直系筋が今までどこにいたんでしょうか・・・? ま、推しが増えて、頼もしい先輩がいるのはいいことっすけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うーん・・・緊張しちゃうなあ」

 

 

 「大丈夫っすよドーベル先輩。ケイジ先輩の師匠。つまり大師匠ですし優しいはずっす」

 

 

 ライトニングに背中を押されて一緒に今ダンスの練習場に移動している私。メジロドーベル。というのも・・・エアグルーヴ先輩やヴィルシーナ先輩に負けないほどのダンスの腕前と趣味の漫画を両立させたいからトレーナーとは別の刺激と勉強を受けたいと聞けばみんなが『ケイジに頼め』の一言で、そのケイジさんも『ならアタシのダンスの師匠を呼ぶから一緒に練習と遊ぼうぜ♬』と笑って終わった。

 

 

 その時のおばあさまの顔とあのケイジさんの師匠の時点でろくな存在じゃないと分かったから引きたいけど・・・同時に世界中でショーとライブを成功。何十億、何百億を軽く動かす世界レベルのウマ娘の師匠・・・気にならないと言えば嘘。

 

 

 「というか、ライトニング。あなたケイジ先輩の弟子なの?」

 

 

 「私らの世代は結構多いっすよ? ヒメ先輩とナギコ先輩を除けば私は1番弟子で、2番手がキタちゃん。3番目がサトちゃん。4番手はラニ先輩っす。コーナリングと柔軟。ダンスレッスンとかすごいっす」

 

 

 「へえー・・・ちなみに絵の方は?」

 

 

 「凄いっすね。結構本格的ですし本人曰くぼーっとしながらスケッチをしたりマンガを読みながらトレースしていたら上達したとか短時間でできることをしたら覚えたとかで」

 

 

 訂正。ますます気になるわ。ケイジ先輩にもマンガの秘訣とかを聞きつつ、絵柄とか見たり、学びましょう。

 

 

 そうこうライトニングと近況報告をしていると指定されたダンスレッスンの部屋に。

 

 

 「失礼します」

 

 

 少し息を整えてから軽いノックをして扉を開ける。怪物ケイジ先輩の師匠どんな人か・・・!

 

 

 「誰がトドじゃい! そして動きはこう!」

 

 

 「ぐふぇ! 何すんじゃい! 少女漫画のスケッチ教えてやんねーぞ!」

 

 

 バタン

 

 

 ・・・・・・・・・・・気のせいよね? へのへのもへじが書かれたバレエの衣装を着けたむっさいおっさんがケイジさんと一緒に踊っていたような・・・

 

 

 「気のせい気のせい。変なMAD動画とかお笑いを見過ぎたのよ・・・そう・・・」

 

 

 もう一度呼吸を整えて・・・ドアを開ける。

 

 

 「ハイハイハイハイ! もっと情熱的に! 美しさと麗しさだけじゃダメ! 熱さを学んでこその美しさよぉおお!!」

 

 

 「これがダンスのど越しなのね! ハートなのね! 学んでみせるわよマカオ!」

 

 

 「ええジョマ! さあケイジちゃん! もっとテンポを上げてもオッケーよ!」

 

 

 「よぉ~し。流石だぜぇ~ならそのまま折り返してからのステップに移行して、皆で輪になって踊るぞ!」

 

 

 「「オッケーよ!!」」

 

 

 バタン!

 

 

 ははは・・・私疲れているのかな・・・ケイジ先輩と金髪丸刈りの、タイツ? にサスペンダーを付けたオカマらしき人と、黒髪を左右にお団子でまとめているバレエドレスのオカマらしき人が三人一緒にコサックダンスを踊っていた・・・

 

 

 幻覚と幻視を見るにしても流石にこんなのは・・・

 

 

 「どうしたんすか? ドーベル先輩? ケイジ先輩の声も聞こえますし入りましょうよ」

 

 

 「ね、ねえ・・・ライトニング。私、目とか疲れた様子はない?」

 

 

 「? 何言っているんすか。すっごいきれいな肌と瞳っすよ。んーはい。私の指何本に見えます?」

 

 

 「3本」

 

 

 「問題ないっす。なんか変なものでも見たかもっすけど、ケイジ先輩のマジックとかかもしれないっすし。ささ、入りましょう」

 

 

 「あ、ちょっ・・・わ、私が、私が開けるから!」

 

 

 うん。ライトニングの言う通りケイジ先輩のマジックかも・・・そう。あれは変な映像。ホログラムとかそんなものよドーベル。さあ、時は金なり。今すぐ練習に・・・

 

 

 ガチャ

 

 

 「組体操! ダイヤ! いいねいいねーマカオにジョマ、ルリリン! これは次回のバレエ発表会にいけるぞ!」

 

 

 「ケイジちゃんしっかり支えていい感じ! まるで大木の太い枝のように安心!」

 

 

 「ええ! そしてマリリンさんもさすが! これぞ芸術! バレエとウマ娘のナセル芸術品!」

 

 

 「湧いてくるわ! 私の漫画のアイデアもわいてくるわ! バレエとフィギュアスケートそれぞれの道を目指す親友の青春を描くストーリ! ふぉおお! 最高よぉお!!」

 

 

 バタァンッッッ!!!

 

 

 ああ・・・駄目だ。目の前の変な光景に頭がおかしくなりそうになる! 何なのよ!? ケイジ先輩の両腕にあのオカマ二人が乗って、更にその二人の腕の上であのへのへのもへじのバレエオカマがポーズをとる! いったい何が

 

 

 ガチャ!

 

 

 「ちょっとそこのあなた! 何度も何度も開けたり閉めたり! 何か御用なの!!?」

 

 

 「オカマと仏の顔も3度まで! それを忘れちゃだめよ!」

 

 

 「アラー可愛い子♬ ねね。今度是非私の漫画のモデルに」

 

 

 「ホギャァアアアアアァアァアアッアアアアアア!!!!!?」

 

 

 「ぬわー!! 耳が! 耳がぁ~!!」

 

 

 目の前で突然ドアが開いてさっきのオカマ三人がぎゅうぎゅうに顔をつめて詰め寄ってくる! いやぁあああ!! なによこれ! マックイーンの見ていたゾンビ映画よりもよっぽど怖いわ! 助けてトレーナー! 助けてライトニング! 意味不明に迫力のあるトーテムポールが迫りくるのぉお!!

 

 

 「あんらぁ~ドーベルじゃーん。それにライトニング。どったのー? あ、三人とも。この黒髪美少女ウマ娘がメジロドーベル。金髪ポニテの耳抑えているほうがメジロライトニング。今日のダンスレッスンの相手だ」

 

 

 「あらそうなの? チャオ。あたしはマカオ」

 

 

 「チャオ。あたしはジョマ」

 

 

 「「ようこそかわいこちゃん」」

 

 

 「私は特殊刑事課所属の美少女刑事! ルリリンと呼んでね♪ よろぴくー」

 

 

 「あ、私はメジロライトニングっす。目指すはマイル最強! よろしくっす大師匠の皆さん!」

 

 

 「いやぁ・・・帰るぅ・・・お家帰るのぉおお・・・・・・・・・・助けて・・・たす・・・!」

 

 

 今すぐ逃げたいけどライトニングが万力みたいな力で離さずずるずると室内に。いや! オカマと怪物の巣窟になったこの部屋に入るのはイヤァアアア!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そうよライトニングちゃん。リフトの基礎は体幹。その集中を崩さないように」

 

 

 「体の芯。つま先から脳天まで一本の柱を通すようにするの。マンガのアタリ。基本線を意識すれば早いわ」

 

 

 「おおー・・・くるりときれいに・・・」

 

 

 「これ気持ちいいっす! 今度のライブでやってみたいっす」

 

 

 「オルフェとゴルシ、ジェンティルちゃんくらいしかできなかったが、今度アタシのライブのバレエプログラムにライトニングは呼ぶかね?」

 

 

 「いいと思うわよ。ジョマが認める体幹と重心の理解は流石。今は暑苦しいけど、いずれクールな大人のレディに仕上げてあげる♡」

 

 

 絶叫から始まったダンスレッスンだが、マンガ家と特殊刑事課、世界の男性バレエ軍団のコーチをしている美少女デカとウマ娘の課題曲を幾つも作詞作曲しているマカオとジョマを呼んだのは大正解。

 

 

 ドーベルもなんやかんや男性嫌いとはいえオカマであり同志と知れば打ち解けるのも早いし、ライトニングはもともとアタシとシリウスチームにいるせいで耐性ついているし。

 

 

 「んーケイジちゃん。前より鍛えているわねえ。たるんでない様であたし安心したわ」

 

 

 「マカオこそいい動きだ」

 

 

 綺麗に足を開脚して、アタシが片手でマカオの横腹を持ってのリフトの練習。確かもう少し後で警察の男性のみのバレエチームで世界に遠征するようだし、そのコーチとして三人とも行くようだしなあ。そりゃあ気合も入っているってもんか。

 

 

 「さ、休憩よ二人とも。しっかり水分補給をしなさいよ」

 

 

 「お、おつかれさん。どうだったよ」

 

 

 「お疲れ様ですケイジ先輩。その・・・かなり分かりやすいしいい人で・・・プロの漫画家と知り合えたりで」

 

 

 「まさかライブの課題曲を幾つも作っている大物コンビ『キングレディー&胆汁ボーイズ』のお二人に会えるとは思わなかったっす」

 

 

 「近いうちにテーマパークも作ろうと思っているの」

 

 

 「はいこれ。無料チケットよ」

 

 

 「「サービスしてあげるわ」」

 

 

 ヘンダーランド。20XX年完成。完成記念特別入場チケット。あー確かウチも一枚かんでいた事業だったな。メジロ家のテーマパークとは離れた場所で開く。大丈夫? 出資者の一部のせいで施設の一角カマバッカ王国みたいになりそうだけど。

 

 

 「その際はアタシもショーでも開くさね。で、ライトニングから聞いたけどドーベル。確かアタシの絵の方に興味があるとか?」

 

 

 「は、はい。絵がうまいとか」

 

 

 「んードーベルの求める絵のタイプとは違うかもだけどね。ライアンの趣味の少女漫画とは違うし。ほれ」

 

 

ライトニングに頼まれていたアタシのスケッチブックを渡す。

 

 

 「いやウッマ!? 水墨画に鉛筆だけど濃密・・・陰影も凄いわ・・・おお・・・」

 

 

 「良けりゃやるよ。アタシの休憩がてらの手慰みだし。あと、ドーベルも確か漫画家目指しているんだろ?」

 

 

 「いいの!? ありがとう! それとえ、ええ」

 

 

 「結構コメディ漫画とかあこがれているんすよ。で、ケイジ先輩から何かアドバイスないかなって」

 

 

 「あら、わたしにも教えて頂戴。私も今後の参考にしたいの♡」

 

 

 にゅうっ! と美少女デカことルリリンが来たのでうーん。アドバイスかあ。ゴルシの面白やり取りを写真で取って後でトレース。はレベル高いというか、奇行を描くのは違うしなあ。あー・・・シンザンばあちゃんに教えてもらったあれがいいかも。今もたまにやっているし。

 

 

 「それならデッサンをやりゃあいいよ。あれは計算と感性と作者の思いが詰め込まれた濃密な一枚の絵、そこに描かれる人間と背景の全体バランスを学べるし、デッサンを通して歴史に残るレベルの画家の技術や工夫を感じられる。アタシ等みたいに二足三足の草鞋をやっている現役ウマ娘と特殊刑事課みたいに時間がないけど勉強するにはお勧めだ」

 

 

 今は人、ウマ娘を交えたワンシーンを気ままに休みの日にぼーっとしながら描いているだけだけどね。

 

 

 「ふーむ・・・分かった! 私頑張ってみる」

 

 

 「私も4コマ漫画以外でも新連載を持つ際にレベルを上げたかったし、ありがとう。ケイジちゃん。頑張るわ!」

 

 

 「あ、ドーベル先輩同人活動もしているんで見に行くといいっすよ。今年の夏コミケ行くようなんで」

 

 

 「ちょっ! ライトニング!」

 

 

 「ほら休憩はおしまい」

 

 

 「次の練習プログラムに」

 

 

 「「いくわよ。準備しなさい」」

 

 

 いよっしゃ。張り切って次行きましょうか。今日で2つは振り付け覚えておかないといけないし。

 

 

 後日。マカオとジョマとルリリンとアタシと知り合いのオカマと大物を適当に呼んで夏コミに突撃。ドーベルのPN,どぼめじろうに差し入れと応援、サインをもらいに行ったらなんか全国ニュースになっていて爆笑した。

 

 

 そのせいで同人作家どぼめじろう 売り子のウマ娘か男性かどっちがどぼめじろう先生なのかでネットが盛り上がったり、ルリリンの新連載でドーベルのモデルの子が出たりでしばらくネットはドーベルが注目されたわぁ。




 ご令嬢(笑)どうし。でも実力は互いに最高傑作。お嬢様の基準壊れる。


 ケイジ チーム勧誘のポスターは実は自作。その内容はボーボボのコミック表紙、扉絵、それと同じレベルのカオスで何枚も作るのでシリウス勧誘ビラシリーズでレスが作られたり。


 メジロライトニング ケイジといると一緒に馬鹿をする。シリウスチームの勧誘ビラシリーズコレクターでもある。ケイジの弟子であることは心底の誇り。


 メジロマックイーン 何度見てもケイジの奇行には慣れない。それはそれとして後日ちゃんとレモングラスとアップルミントのブレンドティーは貰った。


 マエダノキズナ(ヒサトモ) 第二の人生を生きる。恋するかどうかは気分次第。学園に入る前からケイジの滅茶苦茶を見て笑い飛ばしていたので割と奇行は平気。


 メジロアサマ 後日ナギコがやってきて文学小説で熱く語らった。後スイーツをついつい食べ過ぎて太った。若いころ、現役のころはよくヒサトモに体重管理が出来ていないと怒られていた。


 メジロドーベル 男への耐性が5上がった。オカマへの耐性が100上がった。オカマへの好感度が30上がった。画力が20上がった。絵をかく速度が15上がった。後日スーザンママたちのいるオカマバーでトレーナーと一緒に「ン~フフフウェルッ!! カマー!!!」と派手に歓迎された。


 マカオ&ジョマ どこかの世界である一家に負けて飛ばされてきた。前田家に拾われてウマ娘にほれ込み毒気を抜かれてこの世界では作詞作曲家、振付師として活動。「キングレディー&胆汁ボーイズ」のネームは小さいころのケイジからもらった。トレーナー資格もあるけど基本は歌やライブデザインを考えること多数。


 美少女デカ(ルリリン) ケイジとは何度か犯人を一緒に逮捕した仲でありマンガ友達。後日左近寺たちを含めた署の男性警察官によるバレエチームで世界選手権を優勝。新連載を少女漫画雑誌で連載。



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ウマ娘エピソード 30 どうでしょう

 今回はケイジが一度現役引退した後の話です。


 あと2023年の前田牧場ではニュージーランドの名馬の血を引くサラ系の末裔と、ドイツで5代ダービーを制覇した一族の牡馬と牝馬を購入。この世界での日本はサンデー系とそれ以外の血統が半々で頑張っております。大体前田牧場と社欄のおかげ。


 前田牧場は変わった血統を見つけつつかつての名馬の血を再興させると評判。オペラオーとドトウの直系かつ孫にあたる牡馬と牝馬も活躍して血統の避難所とも。


 世間ではケイジ世代の産駒のG1勝利数が20勝達成。写真集のランキングが人間じゃなくて馬が独占。葛城。平野、的矢の厩舎が海外遠征の駆け込み寺となる。


 松風騎手は絶賛癖馬と前田牧場産駒に多く乗って色々と後継者としても見込まれております。


 「ふわぁ・・・んー・・・今日もいい天気」

 

 

 朝日を感じながら目をこすりつつ洗面所に移動。顔を洗い、簡単なスキンケアと歯を磨いて目を覚ます。

 

 

 私、キタサンブラックは久しぶりに実家に帰って休日を過ごしています。ケイジさんの弟子として、正統後継者として無事に欧州2冠も手にしてマスコミへの対応も終わり熱もひと段落。

 

 

 テストもちゃんといい点だったので久しぶりの長期休暇。実家で過ごさせてもらっています。

 

 

 「んー・・・ん? ヘリ?」

 

 

 ここら辺にヘリが飛ぶなんてそうそうないのに。何かイベント、もしくは航空写真でも撮るのかな?

 

 

 バラバラと聞こえてくる音に耳を傾けてつつ口の中をゆすいで縁側に移動しようとした瞬間。

 

 

 「オッハー! ハローエヴリバディー? キタちゃ~ん♪ さあロケの時間だ!」

 

 

 ジャージ姿のケイジさんがいました。脇にはおじいちゃんを簀巻きにして抱えつつ。

 

 

 「え・・・? え・・・!? きゃあぁあああ!!?」

 

 

 「わーっはははははは!! お宝はいただいたぜ! あ~ばよとっつぁーん!」

 

 

 あっという間にケイジさんによって簀巻きにされておじいちゃんと一緒にケイジさんにさらわれてケイジさんは爆走しながら縁側から忍者のようにひょいひょいと屋根に上っていく。

 

 

 「お嬢と親父がケイジの姉御にさらわれたぞ! 追え! 追えー!」

 

 

 「あのセキュリティーをかいくぐったのかよ! 今日は負けねえぞケイジの姉御!!」

 

 

 お父さんの弟子たちも急いで走ってくるけど落とし穴とかバナナと(ご丁寧に怪我しないようにクッションまでどこからともなく出てくる)で足止めを喰らうし、びっくり箱が出て来たりで驚いたりでみんな動けない。

 

 

 いつの間にこんな仕掛けをしていたんです!?

 

 

 「拉致だよ! こらあ拉致監禁だよ!」

 

 

 「ひぇええ!? ケイジさん!? 一体どこ・・・ヘリが来たー!!?」

 

 

 「よーしゲスト2名様ご案内~♪ ほーれ!」

 

 

 そういってケイジさんはフックショットで軍用ヘリに飛び乗って捕まえていた私たちを座席に乗せてからお父さんたちの弟子に手を振る。

 

 

 「ゴルシ! お前も来い!」

 

 

 「おうよ!」

 

 

 「ゴルシ―!! 絶対に逃がさんぞー!」

 

 

 「また会おう明智君! は~っははは!!」

 

 

 ゴルシさんも弟子さんの一人に変装していて、短パン肌着姿の本当の弟子さんの一人が来るけどゴルシさんも鎖のついた錨をこっちに投げてケイジさんがつかんで引っ張り寄せてゴルシさんも軍用ヘリに搭乗。

 

 も、もしかしてゴルシさん変装してうちのセキュリティの穴をケイジさんに教えたんです・・・!?

 

 

 「行先は福島! いざウマ娘どうでしょう開始だぜ!」

 

 

 「今日はアタシケイジと、ゴルシと! ゲストにキタサンブラック。北島サンちゃんを加えて進行しまーす♬」

 

 

 「聞いてない! 聞いてないですよぉおお~~~~~!!!!」

 

 

 ウマ娘どうでしょう。ケイジさん、ゴルシさん、ジャスタさんをメインで行われる動画サイトで配信される超人気番組。毎回ハチャメチャ。あるいは自然や生物に関わるロケをしたり、サバイバルしたり。はたまたやたら迫力満点な怪獣とパワードスーツを装着したケイジさんたちの特撮シーンがあったり。

 

 

 大御所芸能人だろうとお構いなし。振り回し、楽しみ倒すその番組におじいちゃんは何度か巻き込まれていたがいよいよ私も巻き込まれてしまったのだろう。

 

 

 私の悲鳴もヘリの音にかき消されて何処かへと連れられて行く。というかヘリ運転しているのジャスタ先輩!? 何をどこで覚えてきたんですか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さー今回の企画は合同コラボ企画! あ、ジャスタは別の番組のロケで今回はお休み。あのTOKIOSのいるRASH村にやってきましたー」

 

 

 「ま、とはいっても、はぶち! もう何度も来ている、おぶち! なんだけどなー」

 

 

 「いやーいい魚だねえ。こいつは今晩が楽しみだ」

 

 

 アタシら引退後、自分らで番組作って動画サイトに投稿しているんだけど、なんでか前田ホテルとか多くのスポンサーがついたり、あのマイクと楽器より農具を握るほうが似合っているアイドルと一緒にコラボ回を何度もしたりとで愉快にしている。

 

 

 移動中ヘリで低空飛行しながら釣りと銛漁で土産のマグロとハマチを用意出来た。今もビチビチ跳ねていたいけど。

 

 

 サンちゃんは流石何度か拉致ってロケに直行させた経験の分慣れていやがる。

 

 

 「おじいちゃん慣れ過ぎ!」

 

 

 「まーまー気にすんなキタちゃん。若いのに小じわが増えるぜ☆ そんじゃ、とりあえずこの魚捌いて、冷蔵庫にツッコむか」

 

 

 「だなーえーと・・・こっちのじゃなくてこっちの包丁で・・・」

 

 

 東北でもブリ漁の具合どうかなーなどと話しつつ大変慣れた手つきで目の前でてきぱきと捌きあっという間に骨と肉とワタで分けてしまうケイジさんたち。ほんと、あの超神田寿司で板前と名乗れるのを許されている技量は学ぶべきですよ。

 

 

 「ほほう。今夜の酒のつまみに良さそうだねえ」

 

 

 「いいもの用意しているぜー? 親父に都合してもらってよ。とっておき☆ さ、まずは後ろで干している漢米ネオの脱穀とかやっていくか」

 

 

 「おーい!」

 

 

 「おっ! リーダー! 長野ー! 元気していたか―!」

 

 

 そうこうしていると、TOKIOS のリーダー城ケ崎さんと長野さんが笑顔で歩いてきた。マイクやギターよりも農具と重機のハンドルを握っている時間の方が長いと言わせる農業系アイドル。

 

 

 ケイジさんとも何度かコラボして、確か公式でファンクラブに入っていたような。

 

 

 「ケイジちゃんにゴルシちゃーん。おおっ!? 北島さんにキタちゃん!? ちょっとちょっと! 大物揃い過ぎじゃない!?」

 

 

 「最強世代にその世代の筆頭の後継者におじいちゃんなんて! あ、キタちゃん凱旋門賞おめでとう!」

 

 

 「いやいや、ありがとうね。自慢の孫娘たちだよ」

 

 

 「はははは。こういうことではケイジちゃん嘘つかねえよ」

 

 

 「イヨォーッお二人さん。待ってたぜー土産もいいもんをたんまりとな」

 

 

 二人とも微笑んで持ち込んでいた荷物から取り出すのは包丁と調理器具一式。包丁にはケイジという銘と錨のマークが。

 

 

 「ケイジとゴルシの手製包丁だ! ちゃんと登録もしてあるからよ。使ってくれ」

 

 

 「鍬と鋤、鎌も作ったんだ。どうだー?」

 

 

 「おおー! いいねえー・・・大事にするよ! じゃあさっそくこれで今晩の料理を」

 

 

 「あ、それは私らがやるよ。せっかくだし皆で脱穀と精米をしようぜ! で、晩飯もいいもんあるから今夜泊めてくれよ」

 

 

 「あ、いいよいいよ。じゃあ俺らは離れで休むからキタちゃんたち女性陣は母屋でね」

 

 

 「大丈夫大丈夫。むしろ人数少ないしアタシらが離れで」

 

 

 「いやーこういう場所で止まるのも久しぶりだ。いいねえ」

 

 

 おじいちゃんもノリノリになっているし私も・・・さっきからこっちを見ているヤギと犬が気になるし、うーん。こういうのも楽しそう! いろいろと気分転換にもなるかもしれない。

 

 

 「じゃあ、美味しいご飯を食べるために汗を流しましょう! 私も頑張りますからいろいろ教えてください」

 

 

 「腰をやらんように野郎衆も教えてくれよ。若い娘の腰やっちまわねえようにな。わはははは!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「くぁー・・・! うまい! マグロのわさび醤油漬け丼もいいなあ・・・! ー染みる」

 

 

 「うんうん。炙りもいいねえ・・・! お通しのピリ辛もやしとキャベツのサラダもうまい・・・! あー酒が欲しい」

 

 

 「ほれほれ。潮汁とみそ汁できたぞー」

 

 

 脱穀と精米を終えて無事に晩御飯にありつけているなか。いやー野郎衆はほんと飯の食いっぷりがいいねえ。この年齢でこの食は問題ないレベル。

 

 

 で、酒が欲しくなるような味付けにしていたのが幸いだ。番組ロケでもこういうのが売りでもあるし、そろそろ出すかね。

 

 

 「ほれほれオジサンず。なら今日は特別に親父から仕入れてもらったものがあるんだよ。ちょっと待ってろよ・・・・・・・・じゃじゃーん! 『ウマ練り』のミドルランナーとマイラーだ! ここの氷室で寝かせておいた分味もいいぞー?」

 

 

 「「おおー!! 地域限定のやつじゃーん!!」」

 

 

 「ほー! こいつはまた! なかなか手に入らないんだよな。どうやって手に入れたんだいケイジ」

 

 

 「ウマ練り? おさけなんです?」

 

 

 「酒だな。群馬にある瀬名酒造で本数も限定のほぼほぼ地域限定の酒。そのうちの二つだ」

 

 

 芯の入ったいい一族と社員で経営しているいい酒屋だったなあ。ブライアン、ハヤヒデの親父さんも知っていたりして。うちのホテルで販売するにも酒造の近くの支店で、かつ月に2~3本入れば上等なくらいのいい地酒。必要以上の金でなびかずしっかりとした経営をしているからアタシも親父もみんな気に入っているし、今度遊びに行くかねえ。

 

 

 今回は一升瓶でマイラーとミドルランナーを3本。500ミリリットルくらいのを2本。マイラーの方からいってその次にミドルランナーで行くか。

 

 

 早速開けてささ、一献どうぞってね。

 

 

 「サンちゃん升でどうぞ。ほれ、わさび醤油でマグロの刺身と炙りだ!」

 

 

 「じゃあ、私は長野さんに。ふふ。どうぞどうぞ」

 

 

 「そんじゃ私はリーダーだな。ハマチの握りも食え食え!」

 

 

 「おお~大スターのお酌。しかも美人さんのをこの歳でもらえるとはね。長生きしてみるものだ」

 

 

 「キタちゃんありがとう~いやー僕らも昔ロケで立ち寄った際に買おうとしたけど買えなかったんだよねー」

 

 

 「ぶふぉ! あむんぐ・・・! 寿司と一緒に酒まで注がないでゴルシちゃん!」

 

 

 「んー・・・リーダー特性の酢味噌で食う刺身もいいねえ」

 

 

 さてさて、おいしそうな香りを漂わせているけど、どんなものやら? 

 

 

 「・・・う~・・・ん。いい・・・! スカッと流れる後味の残らなさだが、そのうま味が深い! 残らないがその分食事に合う」

 

 

 「うまい! 刺身のうま味とか醤油が口に残るのを一緒に流すけど酒もすっとうま味を叩き込んで残さないから次のご飯に行きやすい」

 

 

 「晩酌にはもってこいだねー」

 

 

 おお。マイラーは好評。ふふふ。いいなあーアタシも成人祝いに開けるようにキープしてもらおうかなあ~アメリカでもらったビールとかと交換で。

 

 

 「アタシらは未成年なんで近所で取れたリンゴジュースで乾杯だ。わはは! カンパーイ!」

 

 

 この後、サンちゃんとキタちゃんの爺孫コンビでの即興ライブに、リーダーの親父ギャグ連発。でみんなで演奏会をしたり。ミドルランナーまで開けてのん兵衛どもが出来上がったり、テレビスタッフの皆さんにも振る舞っての大宴会になりましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぉおぉおおwwwww!!」

 

 

 「ぶふぅ・・・にょぉおお!!!wwwwww」

 

 

 「ちょっ、ぶふwww! お二人とももうこれプロレスじゃなくて新喜劇ですって。ぶふぅwwww!」

 

 

 「にゃにー! こんな美女のキャットファイトなんだぞ! 新喜劇とは納得がいカーン!」

 

 

 大騒ぎを終えて、野郎衆は母屋。女衆は離れで寝ることになったけど、元気が余っていたのでプロレスか相撲かをやろうぜということで三本勝負をしていた。

 

 

 2本とも勝ち越したけど、最後はなんかゴルシがビンタを要求したところから互いにぺちぺち合戦になっちった。

 

 

 向こうも向こうで長野とリーダーとスタッフでやっているようだし、賑やかすぎる。

 

 

 

 「隙あり!」

 

 

 「なに!? ぬわー!!」

 

 

 「足払いでケイジさんの三本勝利です!」

 

 

 「今のはずるだろーケイジ!」

 

 

 「オッーホッホッホ!! 勝負を忘れたあなたの負けよゴルシ。出直してらっしゃい!」

 

 

 で、隙をついてゴルシを転ばせて毛布に倒して無事に勝利。わはは。ボノとチヨとも相撲で鍛えているからな。ゴルシといえども油断すりゃああっという間よ。

 

 

 「ではではーこの相撲が終わったので終わりの音を出そうか。えーと・・・あったあった。これをあー・・・・・・・・・ん・・! よし。ほれほれ。ケイジちゃんの腹を叩きんさい」

 

 

 あ、因みにカメラはもう中の映像じゃなくて外観の方を移してもらっているけど、とりあえず木琴のミニチュアを咥えてごくりんこ。

 

 

 「おぉー・・・お風呂でも見ましたけど、ケイジさんほんと腹筋がきれいですよねえ・・・6パックがうっすらと・・・」

 

 

 「でも身体は柔らけーんだよなあ。添い寝にぴったし。ほんじゃ」

 

 

 ゴルシが木琴用のスティックを持ってきて叩けばのど自慢大会のあの審査の音が。あれー? 違う音になるはずだったんだけどなーてかジャンル自体が違うじゃねえか!

 

 

 「ちょっ! ゴルシ! そこは木琴で拍子木の音を出すべきだろ!」

 

 

 「いいじゃねーか時代はカラオケとマイケルだ!」

 

 

 「何言っているんですかお二人とも! ってあら? おじいちゃんたちの方が」

 

 

 あっちからもちょうど終わったのか、終わりの音を聞こえさせるけど、あっちも腹を叩いているのかよ! このはり具合だと・・・リーダーだな!

 

 

 「おーいリーダー! 終わったの~?」

 

 

 「あ、ケイジちゃーん!! そうそう! で、相撲の終わりの時のあの音を出そうとしてさー! どうやってケイジちゃんたちはあの音出したの~?」

 

 

 「ケイジちゃんマジック!」

 

 

 「おーいそっちもさーちょうどいいしそのまま演奏会しようぜ! 今ケイジをドラムにしているからそのままよー」

 

 

 「いいよ~そのまま、じゃあーいくよー」

 

 

 「「せ~の~!!!」」

 

 

 ぺちぺちと金管の音と木琴の音が入り混じる愉快な夜。いやーぶふぅ! これは力抜けそう。わはは!

 

 

 「なーこれに合わせてさ、何か声を出して目覚ましにしていいんじゃないか?」

 

 

 「あ、じゃあ私が言います!」

 

 

 「いいよいいよ。キタちゃん言ってしまえ」

 

 

 「すぅー・・・皆さん~おはようございまーす!!!!」

 

 

 「「「「「わははははははははは!!!」」」」」

 

 

 「よ、夜中におはようございますって!だ、だめだわ。なんかツボに入った!」

 

 

 「というか、もうあれだ。3年B組~! のあれを思い出した!」

 

 

 「3年B組DJ先生もやろうぜ! 〇〇先生シリーズと演奏会!」

 

 

 「毎朝こんな音が聞こえてきたらそりゃあ目が覚める! よーしもう一丁!」

 

 

 互いに声と音だけのやり取りで母屋と離れでの演奏会とトークは続き、夜が更けて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「「「ね、眠い」」」」

 

 

 「「お腹痛い・・・・・」」

 

 

 結局丑三つ時まで演奏会は続いて6時起き。皆さん絶賛寝不足と、アタシとリーダーはずっと腹をぺちぺちされまくってヒリヒリ。薬は塗ったけど、今日一日はこんなかなあ。

 

 

 「アイドルの顔じゃねーな皆。わはは。ささ。山芋ほりに行こうぜ。密集しているポイントこの前見つけてさー」

 

 

 とりあえず、せっかくだから少し降りた山にちょうどいい山芋の密集地帯があるのを下調べしていたから朝飯の確保のために移動。そのための移動手段は500メートルくらい先だけど川が近くになるので丸太で川下り。

 

 

 みんな経験あるし、冷たい水と紅葉を見ながらゆるりと短い時間だけど朝のひと時。

 

 

 「よっしょ・・・っと。よしよし。この丸太は一度川辺にあげてと。確かリーダー今度使うんでしょ?」

 

 

 「そーそー丸太船作ろうってね。近々無人島開拓と周辺の海の調査企画を使用と思ってさー」

 

 

 「ほーん? そんなら黄金世代のメンツ呼ぶか? ぜってえおもしれえぞー?」

 

 

 「スぺ先輩たちなら絶対愉快になりますよ! それにいい人達ですし」

 

 

 あと真面目に釣りが得意なセイに農業経験ありのスペ、この二人が動いてくれるしウマ娘だからなー重労働はお手の物よ。

 

 

 「よしよし・・・ーあった。これがいい具合に・・・それ!」

 

 

 山芋は掘った後に再度茎の一部を埋めておけば成長してくれるんだけどモグラやオケラ防止と、引っこ抜きやすいために肥料と大きめの塩ビパイプを埋めておいたんだよね。

 

 

 だからこれをそのまま引き抜けば綺麗に芋を傷つけずに引っこ抜けるってわけよ。

 

 

 「ゴルシ―すぐそばにクマザサと川魚用の罠置いているからそれも見てくれ」

 

 

 「あいよー」

 

 

 さて、今日の朝飯もうまくなるぞー・・・・

 

 

 「ケイジ―!! ニホンカワウソがいたぞー!!」

 

 

 これまじ? RASH村周辺が国立公園か保護区になっちまうよ。




 今回出てきた「ウマ練り」はイナダ大根様の名作 気儘に生きた転生馬物語 (https://syosetu.org/novel/261939/) で登場する主人公シマカゼタービンの実家の目玉商品です! あ、もちろん許可はいただいております。改めてイナダ大根様ありがとうございました!


 キタちゃんもケイジの後継者としてGⅠ10勝を果たします。そして馬でもウマ娘時空でも定期的にケイジの所に休みに来ては一緒に遊んだりもてなされたりして一緒におやつをむさぼったりお風呂を満喫。


 キタちゃんとサンちゃんは定期的にケイジたちにさらわれてはこんな感じで番組に参加。サンちゃんは自分の孫娘の師匠かつ自分のもう一人の孫娘みたいな子が元気に騒ぎに巻き込むので元気をもらっているとか。キタちゃんはなんやかんや楽しむ。


 某アイドルたちともよく絡みますし、凄い発見も多数。その際はみんなで雑談とマメ知識で大盛り上がり。




 ~おまけ~


 ゲンドウ「え”え”!! ゆゆゆゆゆ・・・・ユイを取り戻せるだって!!?」


 ケイジ「おうイケルイケル。ケイジチャン嘘つかない」


 山本「このエヴァンゲリオンという兵器の中に取り込まれているが同時に彼女の存在は確認できている。溶け合っている肉体と意識をかき集めて再構築。その上で時空間の操作とクローン技術を用いた義体に安定させて治療を行えば行けると私は推察します」


 ケイジ「簡単に言えばエヴァの中のあんたのマイハニーをかき集めて引っ張り出した後に身体になじむ成分のギプスで固定して治療すればいいってわけだな。そのためのノウハウは全部頭に叩き込んだ。


 ついでに、このデータはエヴァと一緒に戦ったシンジというあんたの息子の頑張りもある。後で褒めてやんな」


 ゲンドウ「し、しかしだな! エヴァのシステムに関わるほどのシンクロと、あの事故があって完成したエヴァだ。これに代わるのは・・・」


 ケイジ「そのために疑似餌を用意したのよ。ユイさんの代りに細胞情報と代用のOS、データ諸々を突っ込む。暴走した際はゴルシとアタシが抑え込むからどーんと構えてろ。漢なら、愛した女に会うため腹ぁ括れ」


 山本「人間の代りとなる代用OSの製造ノウハウはこれです。当然クリーンなものなのでご安心を」


 ゲンドウ「(・・・これがあればあんな事故を起こさずともエヴァを作れる・・・それに・・・)・・・分かった。ぜひやってくれ。責任は私が持つ・・・!」


 ケイジ「その言葉が聞きたかった。じゃ、始めるぞ山本―」


 山本「ええ。では私が中に入るので、ケイジさんはサポートを」


 ~しばらくして~


 ケイジ「ほいさーっと・・・うん。心拍、細胞異変。血圧。全部問題なし。エヴァの影響が出るからしばらくは血液の透析ついでに毒抜きとか必要だけど、しばらくすりゃあ義体にもなじんで人の身体、生活にもどれらあ」


 山本「エヴァに関しては一度テストをしていくほうがいいですねえ。遠隔操作と諸々の変更点を・・・と・・・これを赤木博士やほかの皆様にも」


 ゲンドウ「おぉおお・・・ユイ・・・ユイ・・・!」


 ユイ「・・・ん・・・あら・・・ふふ・・・ただいま・・・」


 ゲンドウ「ああ・・・・あぁ・・・! ・・・・は! そうだケイジく・・・ん?」


 ~外~


 ケイジ「さーいいことしたし、使途への対策やらあれこれの技術、アイデアは思いつく限りした。もう帰ろうぜ」


 山本「いいのですか? せっかく名誉も全てを手に入れることも可能でしょうに」


 ゴルシ「もうその報酬はあそこで過ごした家賃ってことでいいんだよ。後の戦いは、この世界の住人でけりつければいい」


 ケイジ「おもしれえものも見れたしな。くくく・・・女装癖に目覚めたシンジ君をみてどんな顔するかねえあのお母さんは」


 ゴルシ「ちげねえ。わはは。さ、私らの世界にもどろう。カフェのコーヒーが恋しい」


 山本「いいですねえ。彼女のコーヒーのお茶もよかったですし、ふふふ。丹波さんもよんでコーヒーやお茶の談議をしたいものです」


 ケイジ「じゃあ、ガメラが鳴くからかーえろ!」


 ~おしまい~


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IFルート 馬がウマに

 今回はなんとなくのひたすら垂れ流しの短めです。申し訳ないですご了承くださいませ。


 前回のコラボが好評でうれしかったです。ケイジが基本競争以外にも趣味や理解がある性格なのがよかったのでしょうかね?


 誰かバニーガールケイジ描いてクレメンス。いや本当に。絶体似合うと思うんですよね。あの身長ですが



 神様「よっし。悪戯しちゃおう。あれ? スズカ君も? よしイクゾー」


 『さあ、夏の祭典にして世界中の秋の大レース前の一大ステップレースGⅠケイジ記念! 今年も開幕! そして誘導馬を今年も請け負ってくれましたケイジ号が先頭を歩いていきます』

 

 

 2023年のケイジ記念。毎年多くの海外馬が参加してほんと世界中の大レース前のステップレースとして定着したなあ。

 

 

 今年の期待株は俺とプイとグラスのじーさんで技を教えたディープボンド。シルコレ枠だけど実力あるからね。凱旋門賞に二度目の挑戦をするようだし、しばらくは俺がジェンティルちゃんとの子供の教育がてら調整を手伝うことに。

 

 

 さー今年も熱い中、ここは床冷房と扇風機ふかしまくりで涼しいせいで毎年帰りたがらない馬が出るし気合もレコードも出るかどうかな・・・・あん?

 

 

 『今年はケイジの娘マエダマツ、悲願なるかディープボンド、ドウデュースも参戦! さあ全頭出そろ・・・? ・・・・・!!?』

 

 

 

 あれ? 視線というか見える範囲が違う? というかあれ? アタシの蹄が脚・・・足? んぅ? で・・・目の前にあるのが・・・す、スズカぁ!?

 

 

 『な、何んということでしょう!? 誘導馬ケイジがウマ娘のケイジに! そして、突如ケイジの目の間で寝ている少女は・・・さ、サイレンススズカでしょうか!?』

 

 

 おぉう。俺も俺でウマ娘になって・・・・神様何かしやがったか!? おっさんをおんぶしている状況じゃねーか! とりあえず下ろして・・・スズカを抱えつつ。

 

 

 『すまん。ちょいと任せるわ』

 

 

 

 『『『はーい』』』

 

 

 あ、馬語は喋れるね。問題ねえわ。よしよし。あーこれどーしよ。とりあえず寝ているスズカを連れていってと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ケイジ、お前は本当に滅茶苦茶だなあ・・・神讃の一族と異次元の逃走者は何が起きたのか・・・」

 

 

 「俺が知りたいよ。全く。検査で体がなまっちまう・・・」

 

 

 「大竹さん。老けていたなあ・・・あ、走ってきていいです?」

 

 

 あの後国の検査機関に放り込まれて調べた結果ほぼほぼ人間だけどウマ娘というまさかのこの世界で亜人が誕生するというめっちゃくちゃのことに大騒ぎ。

 

 

 真面目に世界中の要人との友好や勲章があるからこの程度で済んだが、いや全く。どうしたものかねえ。松ちゃんにタケちゃんとも俺とスズカ、タケちゃんらだけが知っている言葉や内容を伝えてケイジとサイレンススズカということを信じて、納得してもらえた。

 

 

 で、まあスズカの方はウマ娘というよりは競走馬サイレンススズカが天国で過ごした分の馬生の経験を積んだ。まあガワはウマ娘だけど中身は競走馬スズカという感じだねえ。

 

 

 「ほんと・・・なんやかんや後継種牡馬候補と、特に牝系は問題ないからいいけどさー・・・こんな形で今後の稼ぎを潰して申し訳ねえなおやっさん」

 

 

 「いや、どの道そろそろ種牡馬のお仕事は抑えるつもりだったしなあ。幸い後継者は何頭かいるし、牧場も貯蓄と牝系のそろえでどうにかなる。むしろ今までありがとうそして宜しくケイジ。とりあえずスズカちゃんは走らないでね。

 

 で、まあ・・・どうにかこうにか国民栄誉賞、勲章ほか多くの栄誉を持つケイジと、伝説の世代であり競馬ファンにとって夢の存在のスズカだからこそ無事に一応戸籍も作れた。二人とも15歳ということで、就職も一応都合つけられるし勉学に向かってもいい」

 

 

 手回しのいいこって。世間じゃあ超デコボココンビと言われたり、リアルウマ娘ということで外もマスコミでうるせえのなんの。おやっさんらもマスコミやら人で大変だったろうによくやってくれて感謝しかねえわ。

 

 

 「ならまあ、俺はここで勉強しながら牧場スタッフとか葛城のおっさんたちの方で働くよ。真面目に学校に通うためにここを離れたら大変なのが目に見える」

 

 

 「う、うーん・・・私もよくわからないし・・・ケイジさんと一緒にお願いします」

 

 

 真面目にこの熱が冷めるまでは色々となー後一応後継種牡馬と候補がいるとはいえ1500万の種付け料になった馬の俺がウマ娘になってまさかすぎるおじゃんで世界中のホースマンが悶絶と困惑とSANチェック状態だからなあ。おやっさんの損失も埋めるために働かにゃ。

 

 

 後スズカもそれがいいよ。あんたは人に懐きすぎているから真面目にね。

 

 

 「ところでトモゾウは?」

 

 

 「お前さんがリードホースしていたけど今日いないから嘶いている子らを慰めているよ」

 

 

 「あーそんなら後でみんなに会ってくるよ。馬の言葉も分かるし話せるのはケイジ記念で確かめているから」

 

 

 「ケイジちゃんホースマンとしても歴史に名を残しそうねえ」

 

 

 「いろいろな意味で前代未聞の記録だねえ~♪ 前田牧場は安泰だぜ!」

 

 

 真面目に観光用設備立てるかどうか考えているしな。血統と名馬の博物館として有名だし。

 

 

 「ふふふ。ケイジさん元気そう。それじゃあ私は」

 

 

 「おいこらスズカ。馬房にもどろうとするんじゃないよ」

 

 

 「とりあえず、この家でみんなで寝ようか。幸い客室も二つあるし、そこに二人で分けて寝るといい。下着は母さんが買ってきてくれた」

 

 

 「SPも3交代制で多数配置してくれたし、ふふふ。VIPになった気分ですねえ」

 

 

 いろいろな意味でなーま、とりあえず知り合いの皆には顔出して挨拶しながらプボ君とレーンちゃんを鍛えておくか。今年の欧州遠征組のトレーニングは約束していたし。

 

 

 「兎にも角にも、俺にとっちゃあ家族なのは変わらん。よろしく、おやっさん。女将さん。スズカ」

 

 

 

 

 

 

 

 「馬房じゃないのも落ち着いてきたわ。ふふ。慣れるとこういうのもいいのね」

 

 

 「明日からはようやく勉強と箸とかの使い方を教えられるからねえ。ほんと検査まみれと栄養剤での生活はこりごりだ」

 

 

 夜、お風呂に入って箸を使わない、スパゲティを食べ終えて就寝の時間。警備の皆さんにも感謝しつつ、とりあえず俺の下着も研究所でもらったもの以外で買いそろえたいなあ。スズカはすぐ手に入って羨ましい。

 

 

 「それじゃ、お休みスズカ」

 

 

 「ええ。おやすみなさい・・・・・・・・・・・・あれ? 誰もそういえばいない・・・」

 

 

 ふぅいー・・・馬の時の癖が抜けないせいで俺も箸の使い方と、そろばんで指の使い方を勉強・・・

 

 

 「誰かぁアァアアアァあああ!!!!!」

 

 

 夜に響き渡る絶叫。スズカの声!?

 

 

 「おい大丈夫か!」

 

 

 「あ、ケイジ」

 

 

 あれ? あっという間に収まった・・・あー・・・そっか。スズカって超寂しがり屋だったっけ・・・

 

 

 おやっさんも警備員の皆も飛んできて・・・あーあーごめんごめん。これこれこういうわけで。

 

 

 「俺と一緒に寝よっか」

 

 

 「うん・・・ごめんね。思えば一緒だったからついつい」

 

 

 今度アタシとスズカの部屋、ドアを付けて同じ部屋にするか、いろいろ相談しないとなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「スズカ。こうやって箸を使ってな? そうそう」

 

 

 「ふっ・・・ぬく・・・・」

 

 

 「・・・本当にウマ娘になっているとは・・・ケイジとスズカは本当に何が起きてもおかしくないと思っていたが」

 

 

 『ケイジが人間の女の子になったけど面白いなー』

 

 

 『うーん・・・・馬房に入り込んでも怒られなくなりましたけども・・・』

 

 

 なんやかんや牧場の厩務員ということで雇ってもらい俺に関してはすぐに箸の使い方も慣れたけどスズカは慣れないねえ。後火も怖いから台所で調理も無理だったし。テキのおやっさんは俺とジェンティルちゃんの幼駒を見に来たついでに俺らのニュースを確認しに来たようだけど、すぐ受け止めるあたりどんだけ俺が変な馬というか滅茶苦茶に思われていたのか。

 

 

 いやまあ、茄子のおっちゃんとゴルシのエピソードとかまさしく神の使いと言われたりとかだけどさあ。

 

 

 で、ナギコとヒメもだけど馬の皆も速攻で慣れてくれた。というかむしろ馬のパワーとスピードが全盛期に戻って言葉も分かれば人の器用さで手入れもお世話もできるから前よりモテるようになった。スズカもそんな感じで割と天職だわ。

 

 

 「ところでテキ。プボ君ら鍛えるんだろ? 俺も一緒に行くから」

 

 

 「ああ、馬主さんや陣営からも頼まれているからな。何せケイジ記念を取った。凱旋門賞へのトレーニングも報酬をはずむから是非と」

 

 

 「いよっし。じゃあまずはレース運びの勉強とうちの周辺で歩かせて重馬場への対応を覚えさせるか。ケイジ記念を勝てたから洋芝への対応は出来るし、水と砂で慣らす」

 

 

 この後ついつい昔の癖で俺とスズカとプボ君でそこら辺の草を食べようとして俺とスズカが怒られた。そうだった。馬じゃないんだよなあ。たまに本能というか記憶が出てくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「レーンちゃんはケイジ記念戦ったから今回は抑えつつか。スズカ―! それトレーニング器具じゃねえの! 移動するための道具なの!」

 

 

 「え? そうなの? なんだか馬運車とは違う感じ・・・」

 

 

 「よし、ここでしばらく待つか」

 

 

 「・・・・・・・・・・」

 

 

 「左回りする癖は消えないのねえ。ほれスズカ。イチゴ牛乳奢るから座ってろ」

 

 

 「ありがとう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ほれプボ君仕掛け間違っているぞー! 息を整えて! 今はしかけない!」

 

 

 『プボ―! やっぱり日本と違いすぎるプボ!』

 

 

 「ええ・・・調教助手二人の方が平然と競走馬についていけているし、本当にあの逃げと追い込みは・・・ケイジだ・・・」

 

 

 「仕掛けのやり方やコースの意識もケイジだなあ・・・これ、蓮君脳が破壊されていないっすかね?」

 

 

 「久保君もだろう。君たちがデザインしたウマ娘のケイジがまさかそのまま来るとはねえ」

 

 

 うーん。プボ君どうにか馴染んではくれているが、やっぱ坂とかの形が日本と違いすぎるのとコースづくりのせいでいろいろと仕掛けようとする感覚があるんだろうなあ。

 

 

 で、スズカもへばってらあ。それでも走るあたり根性あるけどさ。やっぱ日本、アメリカの高速馬場があっているんだろうな。

 

 

 「うーん・・・松ちゃん。ちょいとストップ。クールダウンさせながら俺が話しながら覚えさせる。プボも元気あるようだし。スズカも休んでおけよ。慣れない欧州馬場だし」

 

 

 「は、はい・・・」

 

 

 「了解。僕はご飯の用意だね」

 

 

 ほいよーと手を振りながらポコポコクールダウンしながら歩かせるプボ。うーんこしあんボディが相変わらず。負けず嫌いだけど穏やかな分いろいろ仕込めるな。どれどれ。

 

 脚の具合はいいけど、あー坂の仕掛けが間違えちゃうのと脚運びが違い過ぎて焦ると。脚の怪我もない。体力も問題ないけどこれは真面目に松ちゃんの指示だけじゃなくプボもしっかり押さえるようにせにゃいかんな。最後まで足を残しての直線勝負ならいける。

 

 

 ジャパンカップの前の勢いにしたいし、昨年の事も踏まえて海外馬と日本馬の誘致と配合の未来のためにもぜひぜひ勝たせたいぜ。

 

 

 「松ちゃ~んたぶん行ける! 休憩後に練習するといい。たぶん行ける」

 

 

 この後無事にプボ君凱旋門賞大勝利。まさかドウデュースと同着とはねえ。初GⅠの戴冠が凱旋門賞。そしてまたタケちゃん3度目の凱旋門賞を制覇。海外のホースマンたち松ちゃんとタケちゃん。梅ちゃんにどれだけ脳破壊されたのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、この子こうして撫でてあげると喜びますよ」

 

 

 「お前なーちゃんと懐き方をこうしてやるといいんだよ。そうそう。イキるのはいいけど怪我させたらお世話する人も変わるんだぞー?」

 

 

 「じゃあ走ってきますね。ふふふ。先頭は譲らないわよ」

 

 

 「おいこら練習させろ。あ、いっちゃった・・・タイム調教助手の方がよくなるなこれ。慰める準備とご飯とお風呂用意してくるわ。ほれお前さんは怪我しているみたいだし獣医さんを待とうな」

 

 

 うーん。なんやかんやあちこちに挨拶と勉強をしているけど、スズカが人間生活になれるのを見守ったり助けたり、何年も馬の生活していたせいでなんか結局厩務員と臨時調教助手して過ごす方が性に合っているなあ。声優の仕事もしたけど、どうしても周りの目がねえ。

 

 

 さてさて、後は飯の用意でも・・・・・・ええ・・・

 

 

 なんか、ウマ娘が数名馬房にいた。後で神様に夢枕に立つように頼んで一つ話をしないとだな。賽銭用のお金あったかしら。




 動画で見たある概念が面白かったのでやってみました。厩務員や調教助手として破格の才能だよねこう考えると。


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ウマ娘エピソード 31 赤鬼と荒武者

 そういえば前田家というかケイジ産駒は逃げが得意な子が多いので(馬時代にケイジに鍛えられた子多数)こっちの世界のウマ娘の逃げシスはエグザイルみたいに2、3チームとかで活躍していそうっすね。


 ケイジとジェンティルドンナの最高傑作は2023年2月生まれの マエダアトラス(牡)ケイジと同じローテで3歳時点でGⅠ6勝。ゴールドカップからジ・エベレスト、凱旋門賞、BCクラシックと大きなレースは総なめの合計GⅠ勝利数15勝。性格は超優しいのんびり屋さん。人間も馬も大好きで大きな十字架の流星持ちの560キロの大型馬。主戦騎手は当然松風守。


 ケイジ(馬)がケイジ(ウマ娘)になった際も前田牧場と仲良しのオカマたち共同所有のマエダアトラスが活躍しているので海外にも後継種牡馬いるしであんまり牧場も大丈夫だなあという感じに。


 松風騎手はこの時には気性難と前田牧場の馬たちの請負人。基本流れてくるうわさがギャグしかない。あと梅沢騎手と一緒に素質馬を見つけては前田牧場や社欄に頼んで若手に回して次世代を育成するよう頼んだり。



 そういえば2022年クラシック世代の牡馬も牝馬も小学生みたいな子が多いとか。小学生の精神性で大激闘を繰り広げる天才とかライジンオーとかマイトガインとかのロボアニメで出てきそうな子たちですねえ。ケイジとも仲良くできそう。


 『行くぞファルコン! カイジュウをしばきまわす!』

 

 

 『しゃあい!!』

 

 

 『いけー!! コヨーテ!』

 

 

 おおー映画『パシフィッ〇・リム・ZERO』いい出来だねえ。日本メンバーでアタシらを招集した時は驚いたがハリウッドデビューも無事で来たし、ファル子も今頃トレーナー(ファン1号)とみているのかしらねえ。

 

 

 特撮は初めてだったが、ほんとこういう風になるんだって想像できなかったわ。あと、セットやスーツをゴルシと作るのは楽しかったなーマヤノのパパも助けてくれたし、大統領とも飯食えたし、ムギヤッタ姉貴とレースできたしで。

 

 

 

 「ん? 電話? はいもしもーし」

 

 

 『あ、もしもし? ファル子だよ。ケイジさーん。映画すごくいい出来だったよね! おまけも最高!』

 

 

 あのイェーガーの資料集とかカイジュウのデータとかねえ。ほんと関係者特別のDVDとは豪気だよ。

 

 

 「アタシも今見ているところだ。いやーほんと特撮ヒーローは多く出ていたけど、ハリウッドでスーパーロボットものに出られるとはなあ。で、どったの? もう消灯前の時間じゃん?」

 

 

 『うん。でも話しておきたくて。あのさ、明日の時間少し余裕ある?』

 

 

 「明日? 明日は練習もオフだし、今回の件で多めに特別休暇をもらっているから一日オフだぞ」

 

 

 アタシら海外で戦うことが多いウマ娘の場合はトレーナーとおおよその予定を学園に提出。で、テストとかを前もって受けて基準点なら許可するんだよな。なんやかんやスポーツの超強豪どころか国を代表するアスリートとアイドルの育成学校だからそりゃ国の代表として遠征する学生があれじゃあね。ま、アタシは知ったことじゃないからやりたい放題するしテストも問題ないが。

 

 

 チームシリウスの場合は特に海外遠征が多いからそのための合同勉強会とかやるから真面目にみんな学力は高いし、主戦場にする国の言葉を話せたり翻訳もしばしばだ。アタシそのせいで5か国語は喋れるようになっちまったよ。

 

 

 おかげで通訳まで任されるからほんと手間。アタシはまだしも流石にダチの気持ちを伝える翻訳ではギャグ入れられないし。

 

 

 『よかったー。なら、明日にちょっと話していいかな?』

 

 

 「いいぞー? 話すときにワン切で電話してくれればアタシの方からいる場所を教えるからよ」

 

 

 『ありがとー☆ それじゃ、フラッシュさんも寝るからまた明日ね?』

 

 

 「あいよー」

 

 

 電話を切って・・・と。

 

 

 「ねー誰だったの?」

 

 

 「はふぅ・・・お姉さま・・・お姉さま・・・」

 

 

 「ファル子だよ。それと吸い過ぎだヒメ」

 

 

 「ご褒美としてくれるのですからこれくらいは。あ~・・・ディープさんはこれを普段気軽に味わうのがずるいです」

 

 

 「でもたまにタイキ先輩が後ろからサンドイッチしてくるからすごい大変な時もあるよ~」

 

 

 後ろから抱き着いて甘えるディープと膝枕しながらアタシの腹に顔をうずめて時折股に顔を動かそうとしているヒメにズビシとツッコミをしながら映画を一度止めてニュースで軽い情報収集。ヒメは欧州でエクセラー、アルトリア相手に2000メートルGⅠで勝ったご褒美でのおねだりとはいえ何をする気だナニを。

 

 

 岩手と群馬の民間伝承かあ。そういやディープとヒメは今度群馬に行くんだったか。あそこはあの子といい間違いなくアイちゃんやラモーヌレベルがごろごろいるし、皆戦い方も多様でさらにそれ以上の怪物もいる。いい刺激になるだろうさ。アタシもいい刺激でさらにハードな鍛錬で壁を越えられたし。

 

 

 しかし、芦名周辺は怪談とかだと何本かのテレビ企画でちょこちょこ出るよなあ。歴史でも知る人ぞ知るという感じだし、国盗り芦名衆かあ。籠城に向いた地形に名酒を生み出す美味しい水源も豊か。兵も強く多くの伝説が眠る。知れば知るほど面白い場所だねえ。そういやあの子ら夜にそういう怪異には出会わないのかな? 今度魔よけのお守りでも送ろうかしらん。知り合いの神様にでも頼んでご加護でも積んで。

 

 

 「ファルコン先輩だと。逃げシス? マルゼン先輩も参加している」

 

 

 「っ♡ 前々から一応第二の逃げシスチームとしてやらないかと言われているからなあ。この・・・ぉ!」

 

 

 「もぎゅぅ♡ あふぅう♡ お姉さま、ああー・・・そんなご無体なあ」

 

 

 悪戯してお腹やらさすり始めたヒメにお仕置で私の胸で包み込んで逃がさないようにしつつディープの頭を撫でる。むしろ自分から体ごと突っ込んでくるがしばらくすれば落ち着くからいいだろう。

 

 

 で、まあ逃げシス。逃げのスタイルで戦うウマ娘のメンバーで構成されたアイドルユニット。エースがファル子で城〇茂ポジがマルゼンのチームとは別でアタシ、ライトニング、キタちゃん。ターボ、ヒメで第二のユニットを作ってみないかと前々から言われていたがそれかもしれないなあ。

 

 

 「私も参加したいけど、遠征だし、脚質が合わないし~」

 

 

 「それ以前に仕掛けを間違ったりゲートが超下手で追い込みやっている節あるし、プイはもちっと大舞台でものんびりしすぎる癖を消さんとなあ。ダービーで眠くなるとかお前さんくらいだろ」

 

 

 「うぐ・・・」

 

 

 「後は爪のケアと足の肌もね。ちゃんとケアはしておけよ?」

 

 

 史実でのディープも確か蹄が薄すぎて釘とかで打ち付けるんじゃなくて接着剤でつけるほど薄かったんだっけ? だし、小柄で強い体だけど、爪だけが弱いからねえ。ウチ専用の爪割れ対策の保護液とか渡すがそれでもなあ。後最近、どうにもいいライバルを見つけたようで?

 

 

 「うーん・・・ケイジさんやダスカちゃんみたいなスタートの良さは勉強しないと私も逃げシスは無理かあ・・・あ、ケイジさん。今度それ私にもして?」

 

 

 「これを?」

 

 

 ビクンビクンと意識を失った心底幸せそうなヒメを横に転がして扇風機にあてつつ少し吐息で蒸れた胸をウェットティッシュで拭いているとまじまじと見ている。真面目に私のような精神性に男が残るのならまだしも何で女同士で割と私の胸を味わいたいウマ娘が多いんだろうね。私もスキンシップできていいけど。

 

 

 「ケイジさんいい香りだし、この胸も・・・おふぅー・・最高」

 

 

 「まったくもー眠るまでの間だけだぞー揉み過ぎは禁止。アタシも敏感なんだから」

 

 

 まったくリギル期待の新星。英雄と呼ばれるウマ娘がこんな天然で人懐っこいとかファンのみなさんどれだけ知っているのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ケイジさん。お願い! 今度の惑星のライブに付き合って!」

 

 

 「藪からハロン棒だねえ。どったのよ」

 

 

 で、昼のトレセン学園での食堂でおからと豆腐ハンバーグ定食を食べているとファル子からいきなりライブに参加してくれというお誘い。

 

 

 3兆人のファンを持つ超銀河系アイドルだからまあ宇宙でライブをするのは分かるし、アタシも負けるがファン数はそこそこ多い。でも、逃げシスじゃなくてアタシとは? あ、和風だしいいね。

 

 

 「それがね? この前ファン数が4兆人になった記念ライブを開くことになったんだけど、皆は予定がかみ合わないし、それならと代案をアンケートを取ったらケイジさんを是非呼んでほしいって言われていて」

 

 

 きっとメトロン星人とウルトラマンとかだよなあ・・・あそこら辺とは関わっているのと、料理番組とか生物番組とかのゲストに本を作ったりもしたし。

 

 

 「いやあまあいいよ? アタシとファル子なら5兆人は集まるだろうしファン層も重なるからみんなエンジョイしてくれるだろうし。かわりに好き放題させてもらうからな? で、ライブ場所はどこだ?」

 

 

 「M78星雲、光の国でのライブだよ! 移動中はマン兄さんとセブンさんが護衛してくれるって」

 

 

 ほうほう。今回はそこかあ。セブンならもとは観測員とかだし、ちゃんといいルートで通してくれるだろうしいいか。後は日程表が・・・いろいろの移動時間と時空軸のずれを考慮しても問題ないか。ならいいかねえ。

 

 

 「んなら、カレーとか、食事も用意しておくかあ。あっちの住人は光のエネルギーで食事がすむから娯楽の種類は多いけど飲食関係の方は逆にすこし鈍いとか」

 

 

 「へー? なら、ケイジさんが熊本震災でやった超大芋煮会とか、センチュリースープ、カレーとか?」

 

 

 「そうそう。飯の振る舞い甲斐があるぜ。関東野菜連合にも連絡するかあ。光の国で食べられる野菜の開拓と発見番組も始めたいし」

 

 

 「了解☆ それなら手配と・・・」

 

 

 「あ、アタシらの活動範囲は重力操作で地球に合わせてくれと念入りにね。流石にそのまま現地入りじゃ速攻でぺしゃんこになっちまう」

 

 

 120Gは流石にアタシでも無理だ。10Gくらいなら短時間は動けるんだがなあ。戦闘機の訓練で慣れているし。

 

 

 「あ、それと、物販とかでケイジさんは何を用意する?」

 

 

 「それならこの前ジャスタが撮ってくれた写真でも出そうかねえ。何枚かにサインも描いて。キタちゃんにも許可貰っておくわ」

 

 

 とりあえずキタちゃんに写真の使用許可をもらって・・・OK来たわ。よしよし。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 なら、これを焼き増しできるように期限内に頼んで、サインは・・・・1000枚に1枚でいいかね? 値段は安めで・・・

 

 

 しかし、久しぶりの星間ライブと配信か―・・・あん?

 

 

 「あ。これ食いながらでいいからさ、ちなみにファル子」

 

 

 「うわっ!? ふぇ? なんです?」

 

 

 そういえばとファル子に飯を用意しつつ、思いだしたことを素直に聞く。

 

 

 「今回のライブの収容人数。何名だ?」

 

 

 「えーと・・・・5億人かな? 一応配信もするけど」

 

 

 規模が違うが、それでも倍率クッソ高いなあ。とりあえず配信のために宇宙が平和になるか、宇宙警備隊に喧嘩売ってでもライブチケットをもぎ取るか、転売騒ぎになるか新しい星間戦争の火種にならないことを願うか。今度神様にも伝えつつ頼んでおこ。一応関係者のチケット渡すかあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やあ、久しぶりだね二人とも」

 

 

 「よっす! 相変わらずさらにムキムキになってんねえ。そしてありがとよ」

 

 

 「ありがとー☆ そしてはい。サインと、地球でのウマ娘ウエハースのファル子のシールセット。ゼット君にも渡すんでしょ?」

 

 

 「ありがとよ。あいつ泣きながら頼み込んできやがってなあ・・・」

 

 

 光の国に到着したら早速ウルトラ兄弟たちとケンさんらに出迎えを受けている。これ、テレビ回っているのかーしかも中継。こりゃあ宇宙のグランドライブだわ。垂れ幕、横断幕いくつも見えるぞ?

 

 

 「おっ。ケンさん。浮気疑惑の騒ぎがどうにかなってよかった。メビウスと超獣に感謝した?」

 

 

 「こらっ! 人聞きの悪い。今は笑い話だがなあ。Aのおかげで助かったよ」

 

 

 タロウの騒ぎで南さんきて、浮気疑惑いわれ、そんでその次はAとメビウスの際のウルトラタッチでようやく。だからなあ。光の国基準では数日だろうけども流石に胃が痛かったろうに。

 

 

 「さてさて。早速だが、ライブ開始の前だが是非全宇宙に向けての声明を出してほしい。ケイジ君のファン2兆人突破とファルコン君のファン4兆人突破の記念を一言」

 

 

 おうさマン兄さん。バシッと決めてやるぜ。そんじゃ、普段はケンさんが警備隊の皆さんに檄を飛ばすところに移動と。

 

 

 「前は銀河最強武闘会の会場でやったけど、ドキドキする・・・・!?」

 

 

 「「「「!!?」」」」

 

 

 さてさて、虹色アフロに金の肌にボーボボファッションの衣装に異次元着替え術であっという間に着替えて・・・と。

 

 

 おぉー・・・ウルトラな種族に、いろんな宇宙人がわんさか。凄い光景だ。さあ、思い切り行こうか。

 

 

 「今日は急な催しに来てくれてありがとう☆ 今日はこの光の国に来てくれたみんなも、画面の皆にも楽しんでもらうよ~☆」

 

 

 「芝とダートのコンビで大騒ぎ! さあ隼と総大将のライブ開催だー!」

 

 

 いろんな種族、惑星の人の声がこだまして始まる大ライブ。さあー弾けようぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いくつかの曲を歌い、次世代のウマドル、面白イベントの紹介をしてからまずは始まるコント。

 

 

 「さて、今日出会う人は最強のウマ娘。興奮してきちゃった☆」

 

 

 「あ、クワガタ娘の方は出入り禁止なんですよ」

 

 

 「誰がクワガタよ! これはツインテール!」

 

 

 おお、受けてくれているねえ。いいよいいよファル子。いいリアクションだよ?

 

 

 「怪獣娘の方も施設のサイズ的にはお断りで・・・」

 

 

 「怪獣でもなーい!☆ 失礼な人ね~この服装を見ればわかるでしょ?」

 

 

 「・・・・・・・あっ! もしかしてポップスターの伝説の戦士の!」

 

 

 「プププランドの住人でもないの! ファル子はウマドルなの!」

 

 

 怪獣酒場の皆さん何を考えているんだ? おいこら山本(シン・メフィラス)と丹波(メトロン星人)何か思いついたな?

 

 

 「だってそのお顔のまんまるさとピンクの衣装は砂のダービィでしょう? 勝利もファンも吸い込む」

 

 

 「そんなフードファイトな戦いはファル子NGなの! 今日はウマドル活動の仲間を誘いに来たんだけど案内してもらえませんか?」

 

 

 「はあ、構いませんがどうか離れないでくださいね?」

 

 

 「え? それはもちろん」

 

 

 「ここは一度離れると迷って二度と出れないと有名なんですよ」

 

 

 「はぇ?」

 

 

 「だからパンくずか毛糸を道しるべにしないと帰れないのとガイドについていかないと目的地にも会えないと有名で」

 

 

 「おとぎ話か! 迷宮か忍者屋敷なの!? どんなウマドルがここにいるっていうのよ! そしてどうなっているのよこの建物!?」

 

 

 「でもいまなら脱出RTAやアイテムサービスも充実しているのでお入りからお帰りまでスリル満点と好評なんですよ」

 

 

 「そんなドラ〇エなRTAをリアルでやらせる時点で建築物としてはアウトだよ! 国の要人だってそんな場所にいないって!」

 

 

 世界にもマジでそんな屋敷があるから怖いよね。トレセン学園でもアタシとゴルシちゃんとカフェの友達でそうさせたことあるけど。

 

 

 「しかし夏の大レースの前にここに来るなんて珍しいですね。もしかして夏眠ですか?」

 

 

 「ファル子テントウムシじゃないよ。いやね? ここにいるっていう生きる伝説のウマ娘と一緒にライブをしようと思っているの☆」

 

 

 「ほうほう」

 

 

 「ファル子ね。ダートを盛り上げてアイドルとして頑張ってきたけど、やっぱりいろんな人と知り合いたいし、一緒に輝きたいなって思ったの☆」

 

 

 「なるほど」

 

 

 「それで芝レースで世界中を戦ってきたウマ娘とも改めて世界のパフォーマンスや経験を教えてほしくて」

 

 

 「ふむふむ」

 

 

 「で! いつかはドバイミーティングに結成したチームで参加して、勝利をして盛大なライブと芝もダートも距離も関係なく盛り上げていきたいなって☆」

 

 

 「「あっはっはっは!!」」

 

 

 「ちょっと何言っているかわからない」

 

 

 「なんで何言っているのか分からないのよ! ここウマドル。現役競争ウマ娘のいる場所でしょう!?」

 

 

 いよっし決まった。会場大うけ! やっぱ完成されているよなあこのやり方は。

 

 

 「でもドバイミーティングに、しかもGⅠに挑むのは大変ですよ?」

 

 

 「それはもちろん承知の上☆ でもファンの皆に頑張る姿と、上を目指す姿を見せたいなって☆」

 

 

 「まずはジムに入ってしっかりトレーニングをして試験の後にプロライセンスを取らないといけないですし」

 

 

 「・・・ん?」

 

 

 「階級別の体重制限も大変ですし」

 

 

 「・・・・・んんん?」

 

 

 「世界に通用するキックボクシングの技術も必要なんですよ!?」

 

 

 「それK-1だよ! GⅠとは全く別物!」

 

 

 あ、ゼアスが大うけしているよ。まー時代だよなあ。ここら辺。ゼアスの師匠さんは空手家だったと思うけども。

 

 

 「おっと間違えました」

 

 

 「全然合ってないよね? どこからどう聞いていたの?」

 

 

 「おっと申し遅れた。アタシがファル子の会いたいウマ娘のケイジだ」

 

 

 「なんで変装しているのよ!」

 

 

 最後に変装を解いて二人で一緒に頭を下げてご挨拶。ジャパニーズコントショーでござーい♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「今回はファル子の水着の写真と! アタシとキタちゃんのブロマイドを限定販売! さらに! その中でもさらに一部には直筆サインと次回のイベントでのグッズの割引クーポンがあるからこうご期待!」

 

 

 「「「「ウォオオォオオオ!!」」」」

 

 

 「わわっ! 皆さん! 気持ちは嬉しいけど酸を吐いたり炎や光線を出さないで―☆」

 

 

 「さらにさらに! 新衣装のファル子、グランドライブでのいつもとは違う可愛いセクシーな衣装のライブ映像を切り取ったブロマイドを応募者全員にサービスだぁー!!」

 

 

 「「「「イヤッホー!!」」」」

 

 

 「もっと勢いがやばい!! というか氷に光の鞭まで飛んでるー!?☆」

 

 

 「お客様~! 電磁サイリウム、浮遊ミラーボールを投げないでくださーい!」

 

 

 ウルトラサインと光線の雨あられが空に舞ってすごいなあ! これはアタシもマジックで会場中に白い羽と高高度ミサイルの雨を振らせてやるぜ! 派手な花火と祭りにしていくぞー!!

 

 

 「あ、それとケイジさんはなんとビキニ衣装に聖蹄祭りのメイド衣装もって・・ケイジさーん! お祭り用のミサイルいくつ持ってきたの~!!」

 

 

 「なぁに祭りの花火よ! さあ、フィナーレの前の大盛り上がりだぞお前ら! 気合入れてイケー! A、マン兄さん! 爆発と彩り頼むわ!」

 

 

 「「任せろ!」」

 

 

 さあ、空に色とりどりの花火が上がって会場、光の国中が大盛り上がり。いいねいいね。こうでなくちゃ。常春の星を夏に変えてやるわ。

 

 

 「ファル子! まずはおジャ魔女なカーニバルでいってみよ~。バックダンサーはアドン、サムソン、バラン、関東野菜連合!」

 

 

 「絶対合わないって~!☆ でもいっか! もうこのままバカ騒ぎだー☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~数日後~

 

 

 

 「おぉお・・・完成した・・・」

 

 

 「抗核バクテリアに、重油を分解してかつ浄化できるやつもできたなあ。地球の施設でも再現できる。あ、それと光の国のセキュリティーなー真面目にみんな戦闘経験はあるけど皆善性が過ぎるせいで想定外の対策が弱いところ治しておいたぞ。後で見ておいてヒカリさんよ」

 

 

 「なっ・・・! いつの間に・・・見させてもらう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「にゅぉぉおおお! 何でドドリアンボムなんてあるんだよぉ光の国ぃ!! 食べたいから行くけどさー!!」

 

 

 「ごふっ・・・にょ・・・こ、これはウマドルがやるべき企画なのかな・・・っ?☆」

 

 

 「フレーメン現象起きかけてんぞファル子! マスクマスク! ってマスクもボロボロ!?」

 

 

 「ぐぉ・・・気合入れろお前ら! 絶対食べ残すことは許さないぞ!」

 

 

 「ならお前らが野菜連合の意地見せねえかおらぁあー!!」

 

 

 「ぎゃぁああああああ!!?」

 

 

 「「「ヘッドー!!!」」」

 

 

 あ、やっべ、匂いへの怒りと軽すぎてついニンジンヘッドを投げ過ぎた。げ、ドドリアンボムに当たって・・・・

 

 

 「落ちてくるぞぉおおぉおおおお!!!」

 

 

 「「あぁあぁあああぁあああああああ!!!」」

 

 

 地面に着弾しちゃったドドリアンボムの匂いは・・・やばすぎだった。あと、ウルトラマンたちのオロロはマジで光なんだな。修正いらずって羨ましいわ・・・ぐふぅ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はーいそこー分身して多くとろうとしたら駄目だよー分裂もダメ―みんな仲良くねー」

 

 

 「カレーに寿司、ラーメンに芋煮、ピザ、ハンバーガーセット! 地球の食事典大開催でーす☆」

 

 

 「ハヤシライス・・ああー・・懐かしいなあ。地球での食事がこうして食べられるなんて・・・」

 

 

 「餅かあ。そう言えば正月にはやたらと騒ぎがよく起こったなあ」

 

 

 「ウルトラうまい!! 今のアイドルっていろいろできて凄い!」

 

 

 「豚丼、牛丼。うっ・・・頭が・・・! でも美味しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あらーそうなのねえ。基本観賞用とかの品種改良とか、嗜好品の植物は残すけど、それ以外はプラズマスパークの影響とか当時のドタバタで手を出していないまま先祖返りしちゃったと。こりゃあ数年、十数年単位だなあ」

 

 

 「ほえー・・・先祖返りとかってあるんだね☆」

 

 

 「アタシらの食材だとししとうとか有名だな。あれもたまにトウガラシが原種だから多くは辛くないのにたまに辛いのが出来たりとか」

 

 

 「僕も是非地球の食事の豊富さをこの星にも用意したいんだ。皆が笑顔にできるし、星での駐在任務の際も食事の楽しさが癒しをくれるはずだから」

 

 

 「80兄さんは優しいねえ。とりあえず地球での品種改良のノウハウとかを用意するからファイトだよ」

 

 

 「ファル子も応援しているよ☆ もし今度のライブでも美味しい果物があれば料理しちゃうから」

 

 

 「ありがとう。楽しみにしているよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふぃー・・・楽しかったけどちかれた。後は・・・あー・・・

 

 

 「もしもしシンザンばあちゃん? 今回のライブの売り上げの税金から差っ引いた分のうちの半分国に募金して。ついでに母ちゃんと親父と一緒にいい政治してくれと背中しばいておいて。ほわふぅ・・・あー・・・」

 

 

 京どころか垓レベルで地球の金銭、貴金属、諸々が送られたからなあ・・・中川兄さんと麗子姉さんらの倉庫とかにも預けさせてもらったけど、真面目日本がジパング、エルドラドみたいなことになったなあ。ほわふ・・・寝よ。

 

 

 この後、トレセン学園に多数トレーナー試験の申し込みが増えたのと、なんか日本へ来日した外国人とかがすごく増えたってさ。これ何割が外星人なんだろうな。平和ならいいけど。




 今回も イナダ大根 様の名作にして傑作 気儘に生きた転生馬物語 とチョコっとコラボさせていただきましたァンッ! 本当にありがとうございます! 本当に芦名は怪異とか、そういうものが近い土地柄なんだなあと。カフェとフクキタルとそのトレーナーは絶対言っちゃいけない場所ですね。真面目に何が起こるかわからない。


 芝の逃げ代表ケイジ。ダートの逃げ代表ファル子。ケイジの場合はアイドル活動以外でも文化面とかで茶器とか陶器、刀剣とか品種改良した食材とかもあるので多くのファンがそれを求めて地球に押し寄せることに。


 ウマ娘スマートファルコンのあのファン数は笑ってしまいますよねえ―。ケイジもいればライブの多様性もさらにドン。多分この世界では宇宙の不動産ことフリーザ様もファン。ライブ会場の提供と地球のアイドル文化の勉強会とか開催していそうだなあ。


 客席のどこかでコブラとクリスタルボーイが肩を組んで応援しているでしょう。きっと絵面はスペース☆ダンディ



 ケイジ 宇宙ライブの間は年齢を取らない措置と時間を少しゆがめてもらって時間を確保している。ウルトラ兄弟とは仲良し。最近光線技を覚えた。マジックの技術は宇宙の技術でも見破れないほど。


 ファル子 毎度ライブの規模が宇宙規模の超銀河系ウマドル。ケイジと同じ措置をしてもらってファンサを欠かさない。ケイジを逃げシスに巻き込もうとしている。サイン会と握手会はケイジのハジケ真拳究極奥義「ハジケ黄金郷」であの人数をさばき切った。


 ウルトラ兄弟 光の国やほかの星でのイベントでの警備とMCの一人としてそれぞれ担当。地球のライブの際は年単位でスケジュールを開けて仕事を頑張りライブとグルメ道中の長期休暇を作るように。


 フリーザ軍 アイマス世界のあのノリの聖人軍団。会社の皆さんにはケイジとファル子からのチケットとグッズプレゼントのサービス券。フリーザには次回のライブで使用する惑星と会場の提供のお礼にサイン入りCDをプレゼント。その嬉しさのあまり彼らは強さの壁を一つ突破した



 今回のライブでのグッズ


 ・パシフィッ〇・リム・ZERO のDVD(ケイジとファル子の独占インタビューつき) 2500円


 ・ケイジ特性調理用包丁&まな板(数量100点のみ) 8000円


 ・ケイジ、ファル子各種ブロマイド(プレミアサイン入りも少数あり) 600円


 ・楽曲CD (ケイジ40曲収録、ファル子25曲収録)1セット 1600円


 ・楽曲MV、ライブ映像DVD 2500円


 ・地球のアイドルライブでのエチケットとマナーについてのガイドブック 全120ページ(著 シン・メフィラス(山本) メトロン星人ジェイス(丹波) アグネスデジタル  絵 アグネスデジタル)


 ・地球訪問と過ごし方ガイドブック 全300ページ(著 ファル子、ファン1号。絵 ケイジ) 1200円


 ・応援サイリウム&うちわ&法被 1400円


 ・ケイジ&ファル子謹製湯呑、マグカップ(ケイジやファル子のデフォ顔やデザインが彫り込まれている。7000点限定) 500円




 ケイジのブロマイド。今回は知り合いに代理依頼で頼んでおいてもらいました! サポカの1枚でもありそうなほどの最高クオリティ! ゆなまろ 様。そして代理依頼を受けてくださった私の知り合いに大感謝! 無断転載は禁止でゴンス。





 ~おまけ~


ケイジ「はい、あえいうえおあお。かけきくけこかこ」


ライス、ザパール「「あえいうえおあお。かけきけこかこ」」


ケイジ「よーし。口呼吸の練習はここまで。次はお箸の使い方ね。ほい。練習のお箸を持ってー」


ザパール「む、難しいのよね・・・人間の指の器用さが・・・うぐぐぅ・・・」


ライス「う・・お、折らないように・・・」


ケイジ「ちゃんと金属製で作っているから気にしない。馬の時代の習慣を抜きつつ過ごせるようにな。頑張ればリンゴと砂糖入りの紅茶だぞー・・・スズカ! 口だけで食べようとしない!」


スズカ「あ、ごめんなさい。ついつい」


ケイジ「まったくもーケイジちゃん特製アップルパイとショコラケーキあげねえぞ?」


スズカ「ごめんなさい私が悪かったのでそれだけは勘弁を・・・」


ザパール「それ、美味しいの?」


ライス「アップルパイ。リンゴのパイ?」


冴子「うふふ。それは私が教えますよ。ケイジちゃん。社欄の方からバイトしないかと声が来ているわよ。ディープちゃんとオルフェちゃん。クリスエスちゃんが遊びたがっているのと幼駒の訓練をしてほしいって」


ケイジ「女将さん。そいつはいいけどさ。こっちは大丈夫?」


冴子「スズカちゃんがいるし大丈夫よ♪ それに、シゲルスミオちゃんの子どもたちが有望だし、うちに来る子たちも見てきて頂戴」


ケイジ「ほいさ。じゃあ精々稼ぎつつ才能ある子たちを見つけてくるわ。じゃー。あ、ライス。的矢のおやっさんが今から来るのと、パール。タケちゃんくるみたいよ」



~おわり~


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ウマ娘エピソード 32 OBどぇす

 ハーメルンで生まれたウマ娘たちによる夢の第12レース。見てみたいけど大真面目にキャラたちが大渋滞で理子ちゃんとエアグルーヴの胃に穴が空きそうっすね。


 最近の推しはチワワなプイちゃんと仲良しなクリムゾンフィア―ちゃんが気に入っています。ケイジと波長が合うかどうか。


 あと真面目に基本ヒャッハーの前田家と名門の誇りと色気むんむんだらけのメジロ家。この世界で名家の気質のいい対比として出されていそうだなあ。ハジケリストなケイジが前田家のまとめ役。メジロ家はラモーヌさんな時点で。どちらも和服は似合うんですがねえ。


 全話で追加したケイジとファル子のライブでケイジがチョイスしたブロマイド。この話もあとでまたイラストを依頼しているので追加したいと思います。


 
【挿絵表示】



 「チームシリウスメンバー募集してまーす! 芝、クレー、距離は問わずにどんな子も募集中!」

 

 

 「選抜レースはするっすけど、リギル、真珠星部屋よりは受け付けるっすよ~さあ乗った乗った~!」

 

 

 「中央トレセンに来たんだ! 大きな夢を持つってんならここに来いや! アメリカでもドバイでも世界中で戦えるぞ!」

 

 

 今日は私達シリウスチームのメンバー募集のためにビラ撒きと勧誘。お姉さまたちはとっくに引退してケイジお姉さまはオリンピックに参加とかで話題になっているチームだけどだからと言ってそれに胡坐をかくのは駄目。常に挑戦者であれ。触れ合える距離を持つのが私たちの方針。

 

 

 ということで朝一番でオルフェ先輩とラニさんと一緒にビラ配りしているんですが、あれ? 朝の時間にしてはどうにも人が少ないような?

 

 

 「――!! ・・・さあ、お集まりいただいたお客様!」

 

 

 あの声は、ケイジお姉さま!

 

 

 「あっ! ヒメちゃんがケイジ先輩を嗅ぎつけたようっす!」

 

 

 「姉御が!? 久しぶりだ! オリンピック前に会いたかったから行くぞ皆!」

 

 

 この前来てくれると言っていたけど、本当に来てくれるなんて! ああ! お姉さまたちとこうして学園で会えるなんて! しばらく北海道で山籠もりをしていたのがどれほど色気を・・・?

 

 

 「こいつ! こいつはですね! 天六で半年前にひろってみっちり調教したトレーナーとしてはまだ初心者のT!」

 

 

 「そして~その弟で同じくトレーナーの初心者K! まだウマ娘との二人三脚は初めてのイケメン兄弟!」

 

 

 「調教次第では好みの男に! 一緒に夢をかなえたりデートしたり、甘々なプレイも青春も過ごせるかもしれませんよ! というわけで早速競りたいと思うんですよ! まず30から!」

 

 

 「50!」

 

 

 「60!」

 

 

 「60! 渋いなあ~もう少し欲しい! さあもう一声! こいつは中もしっかりして最高の素材! お客さんのプレイ次第では芝もダートもスプリントもウルトラソンも走れるようにさせてくれるかもしれませんよ!」

 

 

 「70!」

 

 

 「75!」

 

 

 「「「えええ・・・・」」」

 

 

 久しぶりに出会ったお姉さまは、いきなりナギコお姉さまと一緒に新入りのトレーナーの契約権でオークションを開始していた・・・というかあの二人今年シリウスに入る新入りトレーナーじゃないですか!? どうやって捕まえたんですかお姉さま! 流石ですけど!

 

 

 「80!」

 

 

 「う~んもう一声! こいつはこう見えても身体ががっちりして中々の筋肉質よ! さあもう一声!」

 

 

 「これ、アタシらで買い戻したほうがいいんじゃないすか? 値段の単位は知らないっすけど」

 

 

 「ケイジの姉御だしそれは・・・い、一応参加するか?」

 

 

 「とりあえずそうしましょうか」

 

 

 周りに既に爆竜大佐と特殊刑事課、ビリートレーナーさんとヴァントレーナーさんがいる時点で怖すぎる。どこかに連れていかれる前にこっちでやらないと。あと買った後でお姉さまにお説教ついでに甘えたい!

 

 

 「90!」

 

 

 「100!!」

 

 

 「いいねいいね~お客さん見る目あるよ~さあ、こいつらを自分色で染めて、あわよくばお持ち帰りをしてみませんか!」

 

 

 「120!」

 

 

 「120いい! 120いい! 売ったあ!!」

 

 

 「何のオークションをしているんだこのバカ姉妹共がー!!」

 

 

 「「おわぁー!!」」

 

 

 あ、おばあ様・・・じゃなくてキズナちゃんが止めてくれた。相変わらず見事なドロップキックで。

 

 

 「久しぶりに出会ったらこれとかなに考えているんだ~!!」

 

 

 「のわぁああ~~~~!!? レンタルトレーナーだよぉ! 今はやりの人材派遣みたいなもんだっぐぅああ!! そういう題材の漫画もあったろ!?」

 

 

 「こんなややこしいオークションにするバカがいるか! ナギコも乗っているんじゃないよ!」

 

 

 「え~だってシリウスの宣伝にちょうどいいじゃーん。ほれ、ゴルシのやつもあっちでトレーナーと一緒にスぺの実家の人参とジャガイモを売りつつおまけでスピカ入りの権利を売っているし」

 

 

 キズナちゃんにキャメルクラッチをもらって明らかにおかしいほどに身体が曲がりつつも慣れてきたのか苦しい声も出さずに指を刺せば人参とジャガイモをたたき売りしているゴルシさんとトレーナーさんにマックイーンさん。

 

 

 ええ・・・あ、しかも私達も目を付けていた子が入っていった。あー残念。あの子はきっとダービーを狙えるのに。

 

 

 「まったく・・・で、落札したのは? えーと。二人とも共同でえーと、一緒にシリウスに入るのかい?」

 

 

 「おおぉ~ようこそチームシリウスに。ウチはもういないけど天才だらけだし優しいから歓迎するよ。エフフォーリアっち、タイトルホルダーっち、メロディレーンっち。タケシ、カズオーそのままこの子らの面倒見れる? あ、それとパラガスっちはどこ?」

 

 

 「あ、パラガスさんは久保さんとか松ちゃんと一緒に今研修中っすね」

 

 

 「おじさんだからちゃんとメモしたいって。真面目だよなあ~」

 

 

 「さあー落札した二人は大人しく三人を案内して差し上げろ!」

 

 

 「威張ってんじゃないや!」

 

 

 相変わらずなやり取りをしつつこのノリに慣れているビリートレーナーさんとヴァントレーナーさんはやれやれと思いつつもそのまま学園内に。何かの話し合いだったのでしょうかね?

 

 

 そしてケイジお姉さまはキズナちゃんにキャメルクラッチからそのままぬるんと上空に打ち上げられて・・・・ビラの塊になってビラが空を舞うビラ吹雪に!?

 

 

 「はぁ!?」

 

 

 「ケイジ―!」

 

 

 「いや、ケイジはあんたじゃーん!」

 

 

 と思ったらナギコお姉さまのそばにいました。変わり身の術でも使いましたか?

 

 

 「ったく。おや、新しいビラかい?」

 

 

 「そうそう。ちょうどいいかなーと。ほれ、皆の分な」

 

 

 このノリが戻ってきたのに嬉しく感じつつビラは・・・おぉう。いいセンスです。あとでラミネート加工を何枚かしておいてライトニングにも渡しましょうか。今は海外に行っていますし。

 

 

 「はぁー・・・で、ナギコにケイジはどうしてここに?」

 

 

 「ルドルフとエアグルーヴに会いにな。それと、ぼちぼち選抜レースやチームの勧誘の時期だろ? OBとして顔を見せようと思って。ほれ、ということで顔を」

 

 

 「しれっと頭を外しているんじゃないよ! そういう意味で顔見せも間違ってんよ」

 

 

 「あ、中身はお菓子箱っすね」

 

 

 「うーん・・・芋菓子がうまい」

 

 

 「あ、こら私にも頂戴よ。スイートポテトにかぼちゃのきんつばもいい味だねえ。うーむ」

 

 

 お姉さまはしれっと自分の頭を外して首無し状態になったと思ったらポンと頭が出てきた。で、オルフェとラニは髪の毛をつかんで蓋を外せば中に入っていたお菓子をポリポリ。あ、わたしにもくださいな。

 

 

 「まあまあ~シリウスの空気とかを味合わせるにもちょうどいいじゃん? とりあえず今来てくれた子たちの練習はウチが見るし、ケイジは午後から見てくれるってさ。だからみんなも授業なり自分の練習に打ち込んでね~ウチ芝もウッドチップでも走れるし」

 

 

 ありがたいことです。ナギコお姉さまならアメリカでも伝説。日本の芝でも問題なく戦えるのと今でも衰えていないですから。

 

 

 「ケイジさん。お代わりないっすか?」

 

 

 「うーん。おやつにはちと足りない」

 

 

 「わがままだなあ。じゃあ、フェイスオープーン」

 

 

 先にお菓子を4人で食べていたオルフェたちがケイジお姉さまの頭の玩具のお菓子を食べ尽くしたようでおかわりを欲しがっている様子。ケイジお姉さまも顔を取って畳みつつ今の頭をぱかりと開いてみればお菓子に群がる妖精さん (・ワ・)  が。あ・・・私の分。まだスイートポテト2つだけなのに。

 

 

 (・ワ・)「あ・・・つまみ食いです?」

 

 

 (・ワ・)「ばれてしまってはしょうがない」

 

 

 (・ワ・)「「「にげろー!!」」」

 

 

 「待たんかあぁ! あ、その弁当は勘弁! アタシの昼飯―!!」

 

 

 逃げ出した妖精さんと自前の弁当をもって学園に爆走するケイジお姉さまを見送り、この騒ぎの心地よさを感じる。ああ、日常です。

 

 

 「さーて、ビラ配りの再開と今来てくれたタイホちゃんたちを・・・ありゃ?」

 

 

 「みんな泡吹いて倒れていたり茫然自失だったり気絶しているけど大丈夫? 熱中症ではなさそうだけど」

 

 

 「あのハジケにあてられたかねえ。おら起きろ! これくらいシリウスじゃあ常識なんだよ!」

 

 

 「全く。シリウスに来たのならあれをしばきまわせるか慣れるくらいのハジケは欲しいもんだ。どれ、バケツに水組んでくるからラニ。あんたも手伝いなさい」

 

 

 「了解っすキズナの姉御!」

 

 

 全くもう。ここから超シビアな世界に足を踏み入れるのにこれくらいで驚いていては駄目ですのに。お姉さまとゴルシさんが来た時は文字通り嵐だというのを教えたほうがいいでしょうか?

 

 

 青空の下でキズナちゃんとラニさんの持ってきたバケツの水が新入生、チーム参加希望生たちにぶっかかる心地よい音を感じつつジェネレーションギャップを感じます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ルドルフさん。ケイジが来たようです」

 

 

 「む。ありがとう。ぜひ通してくれ」

 

 

 「では紅茶もお出ししましょうか」

 

 

 「ああ・・・ってケイジ!?」

 

 

 エアグルーヴと仕事も早く一区切りがつき、昼前、オリンピックへ向けての調整中だというのに顔を出してくれたケイジへ久しぶりに心からワクワクする。既に相当に騒いできたようだがその騒ぎの声さえも心地よい。童心に帰るというのはこういうことか。

 

 

 そしてエアグルーヴがドアを開ける前にすでに入り込んでいたケイジが紅茶を入れ始め、慌ててエアグルーヴがドアを開けるとアイスのあたり棒と野菜と果物で作られた人形が。

 

 

 「わはは。ますます美人になったねえ~ルナねえ。色つやもよければまあたわわに実っちゃって~女帝も皇帝も魔性の青鹿毛もほんと色気がやばいぜ♪」

 

 

 「たわけぇ! こちらがもてなす側だというのに相変わらずのハジケぶりで振り回すな! 全く・・・まあ、久しぶりにケイジの紅茶が飲みたいからいいが・・・」

 

 

 「ふふふ。懐かしいやり取りだ。そしてケイジこそ、衰えている兆しはないな。むしろより肉を付けて競技に向けて余分のない仕上げ。質実剛健。再びここで生徒に混じっても負けないだろう」

 

 

 すっかり競技を離れて丸みを帯び、大きくなった胸と尻。おなかの方は必死に維持しているが、やはり一度鍛える日々からはなれ、鍛錬の時間を削った影響は出ているようだ。食が細い故に太ってはいないのだが、目の前で現役最強。怪物たちの中の頂点であったケイジの今も衰えない覇気とその肉体を見れば思わず皇帝と呼ばれて生徒会とリギルで奔走していた日々を思い出す。

 

 

 そんな記憶を思い返しつつケイジとのちょっと気を抜けば変な話が飛んでくるのをBGMに、鼻をくすぐる心地よい紅茶の香り。エアグルーヴの淹れるお茶とはまた違う香りに気がほぐれていく。

 

 

 「ほれ。ケイジちゃん特製ブレンドだ。二人もどうせ社員食堂で飯だったろ? 二人分の昼飯も作ってきたから食え食え。理事長共には例の件の話もあるって言って時間は取っているからゆっくりとな」

 

 

 ドカンとおかれた重箱を分けて割り箸を渡してくれる。中身は・・・ちゃんと野菜多め。お肉もあるがささみとかでカロリー控えめ。フルーツもビニールに入れた保冷剤をそばにおいて美味しい冷たさを確保してくれている。

 

 

 食べればシンプルなうま味にガツンと来る幾重もの味の協奏曲。弁当はどうしても濃いめの味付けになるのだが、私たち引退組にその味付けはカロリーや塩分が辛い。そこを香りづけと隠し味で補ってくれるのが大変ありがたい。

 

 

 「ああ、そうだケイジ。貴様のおかげで無事に開催できそうだ。今年一年の頂点を決定する最強決定戦レース。凱旋門賞で始まるが、それ以降はその年ごとに世界規模で人気の距離のGⅠレースでのぶつかり合い」

 

 

 「ほーん? あれできたのねえ。どうしても芝質とかダートの関係。関係者のあれこれでどうなるかと思っていたけど」

 

 

 「ダービー一族に加えて世界中の名家たち。それに伝説のウマ娘たちの声とケイジ、君の現役時代にやったあのジャパンカップ。あれが刺激になったようでな。世界中で暴れるチームシリウスの存在も後押しをして無事にできた。

 

 

 まずはその年の人気の距離を選定して、そこからはくじ引きでランダムにその開催レースを選ぶ。そして招待状をもらったその距離の現役スペシャリストのウマ娘たちはそのレースでの参加権を手にできる。グランドナショナルや我が国での、ヒサトモさんたちの時代の日本ダービーのような大人数で競う。どんな芝でもバ場でも、レース場でも勝てる真の名バ。本当に規格外の催しに沸き立っているよ」

 

 

 こうもすんなり決まるとは思わなかったが、やはりここ最近の、日本とアメリカ、アラブにサウジが乗り気だからこそできたと言える。 ここ数年は欧州の大レースも日本とアメリカ、ドバイが手にしているし最強という称号と前代未聞の興行。そしてその際の交流で世界各国のレースの情報を調べ、肌で感じる目的もあるだろう。

 

 

 外を知り、世界を知り、刺激を受けて切磋琢磨していく。本当に新時代が幕を開けたと言える。

 

 

 「いやはや、まさしく群雄割拠。世界中の怪物たちが国を問わずに戦い合う。激しいものになるだろうな」

 

 

 「あーだからケイジ記念の際にぜひぜひ来てくれってこの前URAからのお願いが来たのか。世界最強決定戦の舞台ではアタシの名を冠したレースを長距離で出すつもりなのかねえ」

 

 

 「おそらくはな。2400のクラシックディスタンスを走り切れる子たちがどうにか距離を伸ばせるうえにステイヤーたちも挑みやすい。芝質も欧州寄り。海外勢も毎年多く来ている国際レースだ。あそこで世界最強戦をしたいという声も既に多数出ている」

 

 

 「アタシもオリンピックで暴れてから参加しに行こうかなあ? ジョンヘンリーとかマニカトでも誘って」

 

 

 「やめてくれ・・・伝説の怪物たちが来ては現役を潰しかねん・・・」

 

 

 アメリカの勇者とたった一人でオーストラリアをスプリント大国にして、香港にも化け物マイラー、スプリントを多く出している行ける伝説か。ぜひ会いたいが、ケイジの知り合いでそのレベルは下手するとエアグルーヴの指摘通り確かにやりかねないな・・・私ですらかすむ怪物マニカト。ケイジ曰く「ニューカマーな人」らしいのだが。気になる・・

 

 

 「負けん気というか闘争本能を出してくれたらいいんだがねえ。ま、こればかりはしょうがねえや。むぐ・・・んーそういや、エアグルーヴ。お前さん家ではどういう教育していやがるんだ?」

 

 

 「? どうした急に」

 

 

 「どうしたもこうしたもねえわ。ウチとクリークの託児所でルーラーシップとかイントゥザグルーヴが喧嘩するときでも大人相手でも戯け連呼するわそれが普通ということでクリークが治そうとしても治らないわで苦労しているんだよ。旦那さんを家でもそう言っていやがるのか? ダイナカールさん大爆笑しつつもガチトーンでウチに預けて治してほしいと頭下げていたぞ」

 

 

 「あ・・・な・・・! あ、あの子らは・・・!!」

 

 

 「ルナねえのとこのサードステージはいい子なんだけどねー。流石に人を呼ぶときに誰にもたわけ呼びはまずくねえか? アタシが言うのも何だが」

 

 

 ま、まあエアグルーヴは家事も得意だし問題はない。むしろストレス発散が掃除ゆえに旦那さんに尽くすほうだが家ではかなり態度は尻に敷いている。亭主関白ならぬ女房関白ゆえか。あれこれ指示をしているのを聞いて育てばしょうがないか?

 

 

 しかし、ふふふ。サードステージはいい子か。ケイジがそう言ってくれるのなら将来も伸びるだろうし、鍛えていて欲しいものだ。

 

 

 「アタシも大概やっているが、子供の、しかもちびっこの内からあんなんなったらトレセン学園に行く年頃が問題だぞ? アタシのマジックとハジケ技術を伝承させてギャグやるか、真面目に今からでも話し方は直しておけよ」

 

 

 「うぐぅあ・・・・・わ、分かった・・・後、クリークにも私も頑張ると言っておいてくれ」

 

 

 「ふふふ。私が昔使っていた勉強用の教材や絵本でも渡して教育するかな。ああ、いや、それならライスシャワーの絵本がいいか。ロブロイの本屋さんで買ってくるとしよう」

 

 

 いやはや、彼女も自覚があるのだろう。ケイジの言うことをすんなり受け入れてやけ食いのようにご飯をかき込むさまは。いや、あるいはすぐに旦那であり現役トレーナーに会ってきて夫婦会議でもするのだろうか? ほほえましいし、後で見に行こう。

 

 

 今や成人して久しく、トレセン学園に入るが職員の身。片や奔放に世界をひっかきまわしつつも復帰してオリンピックでも暴れる予定の怪物。だが、この時間の時は本当に互いに学生で、切磋琢磨して、愉快に笑い合っていたあの頃の空気が蘇ってきたように思えるよ。ケイジ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「でー・・・アタシがシリウスの練習に参加するのはいいけど、正気か? アタシのいつもの練習に新加入メンバーも参加するって」

 

 

 「お姉さまがいなくなって学園も久しいですし、あの世代を学園で感じた子も少ないですしね。一度感じたいというのが本音でしょう。・・・・・・・・まあ、回収班とかも用意しているのでそこは大丈夫かと」

 

 

 お昼の練習時間。アタシも軽く練習しようかと思っていたらリギルにスピカに加入した子も交じってアタシと一緒に走り込みたいという子が多数。どうにも周りは止めたようだけど聞かないようで、根性があるのかなんなのか。ヒメもあきらめ気味なのが根負けしたのがわかるなあ。

 

 

 「ふーむ・・・つまりはまあ、アタシが絶好調な時のノリで行くけどいいな?」

 

 

 「はい。問題ないです。参加しない子たちはナギコお姉さまとキタちゃんが面倒を見てくれていますし、おハナさんに奈瀬さんにキタハラさん。沖野さん、六平さんも許可しています」

 

 

 「それなら構いやしねえ。ジャーイクゾー皆。学園出て河川敷で動きまくるから、それとトレーナー陣も手当てのための道具とドリンク頼んだわ」

 

 

 よっし。学園のジャージにそでを通すのも久しぶりだなあ。うーん。腹周りは大丈夫だが、腕、太ももが少しきついな。障害飛越競技のために鍛えている分こうなるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ゲッホ・・・げほ・・・はひ・・・」

 

 

 「ひゅー・・・ヒュゥー・・・む、むーりぃー・・・」

 

 

 うーん。耐えているほう。やっぱ選抜レースを潜り抜ける。目に留まる才能たちっすね。でもここまでっす。

 

 

 「ほーい休憩しようっす。水を一気に飲まないように。最初の一口はすぐ吐き出して二口目から飲むっす」

 

 

 ケイジさんの鍛錬。それもあの人の最盛期・・・ってどこっすかねえ・・・ま、まあスタミナをつけまくった、ライス先輩を指導している時のメニューをやりたいとはしゃいでいた新入生たちも最初の河川敷までダッシュからの河川敷を降りて、上って、反対側に降りての繰り返しの超ジグザグダッシュ18キロメニューは無理。

 

 

 初日に4キロ出来た時点で既に合格もの。文字通りの斜面を50キロで爆走し続けて、ちゃんと青々草ぼうぼうの欧州の芝以上に伸び放題の草の斜面を走り続けるのにここまでやれるのは才能だ。

 

 

 持ってきた水を飲ませて、酸素吸入器と疲労回復用の蜂蜜レモンを食べさせつつ足のケアをしてケイジさんを見る。ついてこれているのはヒメ先輩とラニは・・・青息吐息っすがくらいついている。

 

 

 「ぐぇほ・・ぷば・・・ぶはー・・・! か・・・い、いぎがえった・・・あ、あれを毎日・・・?」

 

 

 「デアちゃん息整えて。そうっすよ。ライス先輩と一緒に毎日10キロ以上。グランドナショナルに挑むと聞いてからは18キロここで毎日とさらにメニューを追加。おかげで河川敷で二人が走るルートの草が踏まれてはげてルートが出来上がっていたくらいっす」

 

 

 「あ、あれが世界最強ステイヤーの・・・青薔薇の姫騎士の師匠・・・」

 

 

 「シリウスメンバー皆の師匠っス。そしてライバル。あ、ここからは普通に学園に戻るっすよ」

 

 

 「え? 走らないので?」

 

 

 「いや、ケイジ先輩ここから着衣水泳でそのまま学園の近くの所まで泳ぐんすよ。何なら重りもつけて」

 

 

 周りがあり得ないと言わんばかりの顔を見せる。うん。そりゃあそうっすよね。レース場の坂なんぞ屁に思える斜面と深い草をかき分けての猛ダッシュ。カーブする角度もカラーコーン一つ分の切り返しをあの速度で。それを18キロ走って、その上で本人曰く「クールダウンがてら」で泳いで、更に学園でトレーニング。

 

 

 今日は私は新米たちのケアでやらないっすけどほんとよかった。

 

 

 「さ、クールダウンしながら戻るっすよ。ケイジ先輩も35キロとかそれくらいで済むんでうち等でも問題ないっす」

 

 

 文字通り鯨のような迫力とイルカのような軽やかさで泳いでいくケイジさん。あ、ゴルシ先輩の新入生歓迎の屋形船にぶつかったっす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、クマ吉さーん。飛び入りのお客さん~」

 

 

 おーいちち。ゴルシの船が来るとはなあ。さてさて、ヒグマの皆さんの結婚式かあ。

 

 

 「おめでとうクマ吉さん。これからも若いウマ娘たちの教育をお願いするよ。はい、ご祝儀。ハジケ学校卒業と結婚。おめでとう!」

 

 

 川魚と鯉の鱗。あとはプルコギと札束。熊殺し道場の師範として頑張れ。

 

 

 「あ、ありがとうございますケイジさん! デアリングタクトがトレセンにいますのでこれからもたまに見てやってください!」

 

 

 「ありがとうございますケイジさん。では、ご祝儀返しを」

 

 

 「そんな香典返しみたいな。悪いなー」

 

 

 クマ美さんから渡されたものは顔一つ覆える鉄仮面。こ、これは・・・・!

 

 

 ガチャっとな。

 

 

 「特殊刑事課 スケバン刑事Ⅱ! 少女鉄仮面伝説ここに再臨!」

 

 

 「少女ッて年齢じゃねーだろうが!」

 

 

 「ご無体な―!」

 

 

 ゴルシに投げられて無事に水泳再開。鉄仮面はありがたく緑の仮面と一緒に自宅に飾りました。いやー次世代も期待大だわ。




 OBになっても相変わらず。シリウスへ入る新人トレーナーとウマ娘たちは幸か不幸かケイジの普段のノリを味わえましたとさ。


 後シリウスチームのビラもいつかイラストにあげておきたいですねえ。依頼はしているのでゆるりとお待ちくださいませ。





 ~おまけ~


 ケイジ「でー・・・これがディープ?」


 スタッフ君「そうなんです。種牡馬の仕事の際に首を痛めて、処置をしようとしていたところに急にこうなりまして・・・映像でも・・・」


 ディープ「あ、ケイジ~♪ 遊ぼ・・・あれ? 私の身体・・・??」


 ケイジ「いやー見事にウマ娘になってんなあ。K大明神これどう思うのやら」


 スタッフ君「それでその・・・そちらの方で預かるのと、戸籍とかの手続きをできないかと代表やみなさんからの意向で」


 ケイジ「ウチ馬屋であって役所とか託児所じゃないのよ~それとさ。ボリクリもああなっているけど、何だろうねこれ」


 スタッフ君「え? あ・・・ええ・?? これは一体・・・」


 ケイジ「SF(少し不思議)だねえ」


 ディープ「ドラえもんかな? あ、人間に慣れたのならジュースを飲んでみたい! あの泡の出るやつ!」


 ケイジ「まずは舌の上で転がして大丈夫ならなーほれ行くぞ。首の調子はどう?」


 ディープ「大丈夫。おおーケイジ大きい~」





 ~前田牧場~


 大竹「パールちゃんがねえ・・・いやいや、これは寿司を頼むほかないな。どれ持ってきて・・・」


 パール「寿司? 寿司は駄目よ! またお腹いたいいたいになっちゃう! 地獄になっちゃう!」


 スズカ「え? お寿司美味しいわよ? この昆布で取った出汁もラーメンにすごくあって・・・あ、替え玉くださいトモゾウさん」


 ライス「見てみてお兄様! またライス元気に走れるし、調教師助手、厩務員の勉強もしているの。一緒に走ろう! ライスたちみたいに皆を元気に走らせる手伝いするよ!」


 的矢「ああ・・・あぁ・・・! でも、その前に神様にお供えと感謝をしないとね」


 ヒメ「ですねえ~ケイジお兄様は。あ、今はお姉さまですね。は良く近くの神社にお参りして、神様はいるからお祈りの時は感謝をとよく言っていましたし。私がリードしますよ」


 松風「うーん。ゲームの世界からか、天国からか、まさかこうして出会えるとは、ケイジもケイジだし。ほんと凄いなあ」


 真由美「だ、だねえ・・・幼駒を身に来たらなんかさらにウマ娘たちが、こ、コレクションが増えるわ」


 松風「あ、車に積んできた色紙とペンを持ってくるね」


 ケイジ「おろ? 松ちゃんにタケちゃん。的矢さんどったの。たしか5爺となんかの特集で競馬番組出るんじゃなかったっけ?」


 ディープ「あ、大竹さん! 乗ってくれないのにどうしてここに?」


 大竹「え・・・え・・? でぃ、ディープ!? それと今の君にも乗れないよ二重の意味で。ケイジ。これどいう状況・・・?」


 ケイジ「カクカクしかじか」


 平野「おーっほっほ。なるほど。しかしケイジ君の回りは名馬と愉快なことに事欠きませんねえ~厩務員のヘッドハントに来ましたが、これは倍率も減りましたなあ。ディープくん。おじさんと一緒に厩務員をやらないかな?」


 ケイジ「その前にまずは一般教育だよ。あとみんな人が好きだから対処とかを学ばないとだ」


 大竹「残念。弟の厩舎の方でスズカを預かろうとも思っていたのだが。ああ、それとだねえ。競馬の番組の方でケイジと蓮君の再開をやろうという企画があってねえ。どうだろう。来週の方だけど」


 ケイジ「ほんほん。了解。じゃあ面白くやるか」


 ~終わり~





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ウマ娘エピソード 33 お盆と収穫祭

 最近ハジケられていない気がする今日この頃。ケイジはハーメルンのオリジナルウマ娘の中でもハジケていられるように頑張りたいですね。


 それと、支援絵募集していまーす! 真面目に欲しいです!



 ケイジの珍道中 著 松風守


 ~一部抜粋~


 誰もが早枯れだと、まぐれだと言っていた。だけど彼を見て、その目に宿る炎に僕は胸を焦がされ、触れた瞬間脳に電流が弾けた。ああ、こいつはモノが違うと若年の僕でもわかる。こいつはやばい。何か違う。それが僕がケイジに感じたものだった。

 そしてそれは乗ればわかる。文字通りのモンスターマシン。いうことは聞くしその意味も理解して自分で調整もする。むしろ聞きすぎるし理解できるほど。少しの手綱と鐙で込める力の変化でケイジはすぐに意図を読んで加速も維持も減速もこなす。振り回されているのは僕の方。吹っ飛ばされないように力を込めて気合を入れての全身全霊の練習。でも、何かがはがれて洗練されるような気持ちもある。まさしく夢中。最高のアトラクションを恋人と一緒に乗っている気分だ。

 最高のF1マシン。最高級の外車になびく鬣、普通の馬よりも重厚な肉体から感じる熱はふつふつと僕の情熱を湧き立たせる。ああ、ケイジ。君は最高だ。テイオーやルドルフ、シンザンたちのような時代の名馬になれる。そんな彼の助けになれる。歩めることに僕は神様に感謝をした。

 ただ、その後で僕はすぐさまケイジと一緒にむち打ちの練習をさせられた。ケイジに。情けない鞭裁きまで教えてくれるとはケイジ。僕は君よりも競馬の世界に長くいるだけのひよっこ。君の血に流れるその強さと本能と才能の前では赤子なのだろう。だから鞭を強く古い練習をする。打ち据える木を自分に見立てて、ケイジにではなく自分にカツを入れるために自分を打ち据えた。最高の鍛錬の日、出会い。この後はケイジの気が済むまで全身を撫でまわし、一緒にバナナをつまんだ。


 ハロウィン。世間ではある意味仮装パーティー扱いといってもいいかもだが、その始まりは古代ケルトのいわゆる収穫祭と人ならざる者も返ってくる日本でいうところのお盆に近いものを合わせたものだという。

 

 

 なので前田家、前田グループでは神棚にお菓子とご飯を飾り、海に感謝と大漁を祈るとか。とはいえ、やはり世間では仮装イベントとお菓子をもらえるお祭り。ここトレセン学園でもそのイベントを開催しつつ学園敷地内を一般開放してのファンとの交友会を開いている。

 

 

 そうなれば必然チームシリウスも交友イベントは大きなもの。その準備で一番期待と不安が同時に来るケイジたちの方に向かうのだが。

 

 

 「用意してくれた衣装。着けてくれるかしら・・・」

 

 

 ケイジとお揃いで用意した吸血鬼ドラキュラを思わせる男装の麗人風の衣装。普段は私服ですら和服か緩いもの。普段とは違う魅力や似合うはずなのでと押し付けたがケイジならそういう気持ちをむげにはしないのと同時に暴走を抑えきれるはず。と思いたい。

 

 

 「ケイジー、ジャスタ~、ゴルシ。準備が出来・・・・」

 

 

 「「「はーよいしょよーいしょよいしょよーいしょ~」」」

 

 

 ドアを開ければ、サルのお面にたいまつをもって何やらワニの被り物を囲んで謎の踊りを踊っていた。

 

 

 「何の儀式をしているのよこの三バカー!!」

 

 

 「「「おわぁー!!」」

 

 

 思わずハリセンでしばき倒して吹っ飛ぶゴルシとケイジ。全く・・・! 松明の方は玩具だとわかっていたからいいけども何の邪神を呼ぶのよこいつら!

 

 

 「何ってそりゃあ儀式よ儀式。この祭りが上手く行くようにといずれやるであろう笑っていけないシャドーモセス島のために」

 

 

 「その特番は後にしなさい! そんな変態仮装大会にしても訳が分からん酔っ払いの夢になりかねないわよ!」

 

 

 「あ、葦毛神にささげるためのものですのにひどいですよジェンティルちゃん」

 

 

 「そうよ! カツオ神にささげる祈りが! アタシの新焼きそばの成功のための儀式が!」

 

 

 「全くだ。ハロウィンとアタシらとシリウスメンバー、ドリジャプレゼンツの新笑っていけないシリーズ成功への儀式が」

 

 

 「三人そろってばらばらの儀式をしているじゃないの! 全くかみ合っていないわ!!」

 

 

 も一発ハリセンでしばき倒す。全くこれだ。止めなければここからそれぞれこの謎の儀式の事での議論で話がさらに遅れていただろうに。ケイジからもらったやたら派手な音が鳴るハリセン。いいものだがそれを渡した本人に一番使う羽目になるのが頭が痛い・・・

 

 

 「しょうがない。ならシットロト踊りを・・・」

 

 

 「だから松明を持って踊るんじゃないわよこのおバカ! あとパプワ島か高知県室戸市に帰りなさいこのハジケリスト! ああーもういい加減にしてよもぉお!! 私たちのナイトロードエリアでケイジ貴女イベントするんでしょうが! ゴルシも! ジャスタはアナウンスや案内出入り口に行くんだから早く!

 

 

 真由美ちゃんとか松風さんも仮装しているのとイチャイチャするのを見るんでしょうが! あとあの濃いメンツの対処あんたらじゃないと無理なのよこの変人コレクター共が!」

 

 

 三人の首根っこをつかんで荷物を持たせてから引きずっていく。あのオカマの軍団とシリウスチームのエリアの仕掛けを自分ですると言っていたのだから早く動いてもらわないと半分何もできないんだから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「似合っていますよ~真由美さん♬ うふふ。これは・・・思わずうらやんじゃう」

 

 

 「う、うぅ・・・でもこんな服装・・・!」

 

 

 ケイジとキングちゃんの用意した魔女の服装。真由美さんの長髪のウェーブと少し紫がかった色。スタイルに美貌が噛みあってハロウィンの魔女そのもの。

 

 

 「スミオちゃんみたいに着こなせる自信が・・・うぅ。こういう時はウマ娘の皆のおしゃれさをうらやむ」

 

 

 ふふふ。でも真由美ちゃんも松風さんもきっと互いにいい顔しそうだし、後は他のメンツが・・・

 

 

 「ホワァアアア!! スミオちゃーんめっちゃ似合っているわ~! 素敵、素敵♡!」

 

 

 あ、ジャスタちゃんがどこかの海賊団のコックみたいな動きで飛んできた。私もジャスタちゃんも一緒にミイラの仮装しているんだけど、お揃いだー♪

 

 

 「ジャスタちゃーん。そっちも似合っているよ~」

 

 

 「あぁーもう一時も会えなかったのが寂しかった!」

 

 

 「私も♬ うふふ」

 

 

 抱き着いてくるジャスタちゃんを抱き返していると

 

 

 「「この泥棒猫・・・!」」

 

 

 「お義母様!」

 

 

 「母親何人いるのよ!」

 

 

 「ブルァアア!!」

 

 

 「オギャーン!」

 

 

 家政婦的な格好のケイジとゴルシ。そこにドロップキックで吹っ飛ばすジェンティルちゃん。うん。シリウスの日常だね~スピカだともっとツッコミは穏やかだし。うふふふ。

 

 

 「はぁー・・・あ、スミオちゃんお疲れ様。似合っているのと、シリウスチームの手伝いも本当にありがとう」

 

 

 「いいのいいの。私とトレーナーさんチーム所属じゃないからこういうイベントでワイワイやれるのもいいなって思っていたし、ケイジの負担が減ればそれがいいし」

 

 

 「おースミオ。いやあありがとうね。ステージの用意とかも助かったし。これで思いきり暴れるぜ!」

 

 

 「お、お菓子を配ろうね? ケイジちゃん」

 

 

 「真由美ちゃんもなー後松ちゃんからもお菓子と悪戯でスパムの山盛りでもらえ。ポークタマゴおにぎり朝ごはんにいいぞーというわけでほい」

 

 

 頭にたんこぶをこさえたケイジが何事もなかったように真由美ちゃんに大きなカバンにパンパンに詰まったお菓子の詰め合わせを渡してにっこりとほほ笑み、肩をポンポンと叩いて微笑む。うーん。どっちが大人やら。

 

 

 「ほらほら。いい男がワチャワチャしていたらスーツが崩れるっすよ」

 

 

 「い、いやあこういうピシッとしたのはなんか怖くて・・・おふっ!」

 

 

 そう思っていたらオルフェちゃんが松風さんの脇腹にワンパンしつつ引きずってくる。えーと? デュラハンをイメージしているのか騎士風の服装に首筋にはタトゥーシールで首の縫い目を表現。ここはたしかライトニングちゃんの特殊メイクもあるけどすごいわね。リアルすぎて怖いくらい。

 

 

 で、まじょこすの真由美ちゃんと普段はワイシャツとズボン。レース前にスーツくらいの松風さんだけどびしりと決めればやっぱり柔和なイケメンがより洗練されてかっこいい。まあ、私のトレーナーさんには負けるけど!

 

 

 「え、えーと・・・そ、その皆似合っているよ。凄く奇麗。僕が異物に思えちゃう」

 

 

 「いやいや! 松風さんもすごくかっこいいですって! ほら周りの声も」

 

 

 「「「キャァアアー!! 松風キューン! ケイジちゅぁーん!」」」

 

 

 そして響いてくるのはオカマの皆さんの野太い声。思わずこけそうになるけど、そうだった。この人らもスタッフなのよね。警備で。化粧だけで仮装もいらずにお化け扱いされていることにはいいのかなあと。

 

 

 「イヤッホー皆! ケイジだよぉん。アタシの相棒は譲らねえぞ~ウマ娘になって出直すか、青髭消して花束持ってきな!」

 

 

 「あらぁーいけずなお人・・・♡ でもそんなところも素敵よ☆ うふふ。トレセン学園の素敵なファッションにこれは眼福眼福」

 

 

 「何よ! ゴル美こそが今日の女王でヒロインよ! ハロウィンクイーンの座は譲らない。お菓子戦争してやるわよぉ!」

 

 

 「あ、ちょっとゴル美先輩ずるいわ! ヒロインは私のもの! リギルもシリウスも超えた人気で一面を飾るんだから!」

 

 

 「どちらかといえばそのまま変な騒ぎで一面を飾りそうだけどね~もう。ゴル美ちゃんったらその衣装は野球場でしよ? ジャスタちゃんも過呼吸になっているよ。はーい紙袋~」

 

 

 バスッ! という擬音が聞こえてきそうなウィンクといつの間にかチアガールコスになっていたゴルシちゃんと負けじとろくろ首になっているケイジでのヒロイン合戦。いや、今回シリウスとスピカでほぼ合同だけどね。その分スぺちゃんたちとかはイベントのもてなしとかではなくお客さんとしてフリーだし。

 

 

 「はい。ハッピーハロウィン。いやあ、ありがとうございます」

 

 

 「はっぴーハロウィンですぅ。え? このお菓子です? どうぞどうぞ~」

 

 

 「おぉう。流石・・・助かるわスミオちゃん。いやあ、オカマの皆さんも本と松風さんは捌くのがうまいし」

 

 

 オカマとウマ娘といろいろとできた列にお菓子を配る二人をしり目に、疲れていた顔のジェンティルちゃんに飲み物を渡しつつ様子を眺めてほほ笑む。ふふふ。ケイジは元気だもんねー。それに周りも濃いし、いつも一番に私たちの意見を代弁してくれてありがとう。

 

 

 さてさてー・・・モンスターロード? だっけ。あれどうなるかなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁー・・・まさか、ここまでガチとは・・・」

 

 

 「凄いねーキングちゃん! お化けだらけだー!」

 

 

 今年のトレセン学園のハロウィンの交流イベント。チームを持つところは特定のエリアを好きに装飾したりしつつイベントを不定期に起こしては奥にいるメンバーたちとひょっこり交流してお菓子をもらうというもの。

 

 

 リギルは美麗な吸血鬼や可愛らしいフランケンシュタインなどなどでファンとの距離が近いのだけどスピカとシリウスのエリアの方は装飾も雰囲気もお化け屋敷どころではなく文字通り何かがいてもおかしくないと感じてしまうほどのもの。

 

 

 ハロウィンではあの世から怪物や幽霊も出てくる日といわれているけど・・・そこでのエリアを歩いた後にシリウス、スピカのメンバーたちとの触れ合いとお菓子のプレゼント。まま、まあ・・いい出来よね?

 

 

 「えーと? ほうほう。ソウルケーキ? がトリックオアトリートの元ネタなんだ。美味しいのかな?」

 

 

 「どうかしらねえ。昔の、家のご先祖への弔いや祈りをささげた人へ渡すものといっていたけど、昔のパンは固いっていうからクッキーかもしれないわよ?」

 

 

 「ケーキなのにクッキーなの? フランスパンみたいに固いのかなあ。食べてみたいね!」

 

 

 エリア前にフリーで取れるハロウィンの由来とこまごまとしたトリビアが書かれたものを見つつ、やはり秋の収穫祭というのもあって食べ物のトリビアが多い。ジャック・オー・ランタンのかぼちゃ。あれが元はカブでやっていたというのは興味深かったし、もしそのままだったらかぼちゃのお菓子じゃなくてカブのスープとかをもらっていたのかしら。

 

 

 しかし、秋だから冷えるとはいえ、この寒さとか、雰囲気が本当に怖い! お化け屋敷みたいに変に暗くしたりとか恐怖をあおらないのになん・・・

 

 

 「うぇ!? 悲鳴!!? キングちゃん、何かあったのかな?」

 

 

 「え・・・あ・・・ウォッカさんにダスカさん!?」

 

 

 急に聞こえてきた悲鳴の先から猛ダッシュできたのはウオッカさんとダスカさん。お化けでも見たか・・・それとも・・・何かあったのかしら?

 

 

 「だいじょーぶ? 二人とも。何かあったの?」

 

 

 「め、目が・・・目だけが光っていた・・・!」

 

 

 「か、怪物か何かがいた・・・か、カフェ先輩の時の怪異かもしれねえ!」

 

 

 目? 眼だけが光っていた? 何かしらね。そういう怪物とか妖怪は聞いたことないけども・・・

 

 

 「きっと明りを見間違えただけよ。変に明るくない分ライトをそういう間違えしただけよ。このキングがいるんだから安心なさい。ほら、ハロウィンだしお菓子をもらいに行きましょう?」

 

 

 

 「い、いやいや・・・さすがに何かわからないですし」

 

 

 「でもハロウィンだよ~大丈夫大丈夫! あ、ところで目ってこれ?」

 

 

 「「「え・・・?」」」

 

 

 ウララさんがダスカさんを支えてあげつつ、何かに気づいて指さす方向を見ると

 

 

 「・・・・・ハッピーハロウィーン・・・・」

 

 

 「・・・・コフゥー・・・」

 

 

 プレデターと、エイリアンが左右から挟んでこちらをじっと見ていた。

 

 

 この後、思いきり悲鳴が上がって、私の喉にどこにこんな声があるのかというのと走り出すのがほぼ同じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いやぁああああ!!? 何でプレデターがいるのよぉお!!」

 

 

 「いたぞお! いたぞおおお!! 何でお化けじゃなくてそっちなんだよぉお!! ってかダスカはえええ!!」

 

 

 「あ、でも二人も追いかけてくるよー鬼ごっこだー♪」

 

 

 透明になって気が付けば後ろに猛追したりするプレデターに、わけのわからない足で猛追してくるエイリアン。しかも後ろから何かがちゅぃんちゅぃんと飛んできて背筋が凍るけど、後ろを見たら絶対動けない!  何でウララさんは平然として楽しんでいるの!? ケイジ記念、東京大賞典、BCクラシックを勝利してから胆が据わり過ぎ!!

 

 

 「ぶっ! 何かあた・・・あれ? 飴?」

 

 

 「キャッ! あつづ・・・あれ・・・タブレット・・・?」

 

 

 「おぉー狐の絵柄。あ、もしかして? ねーねー! エイリアンさーん、プレデターさーん!」 

 

 

 乱射するように飛んでくる何かを必死に背を低くしながら逃げていたけど、当たったものは思った以上にいたくなく、よくよく見てみると、自作らしき飴玉に、ハロウィン限定商品のラムネ。これを確認するやウララさんは立ち止まり、猛追していた彼らに声をかけると、プレデターたちも止まる。

 

 

 「トリックオアトリート!」

 

 

 「・・・・・・・・ウララ。マイフレンド・・・」

 

 

 そしてハロウィンのお決まりの言葉を言えばプレデターは腕につけていた籠手のような物からスティックキャンディーを取り出し、エイリアンは後頭部がぱかりと分かれて中から板チョコを人数分渡してくれる。

 

 

 ・・・・・・・もしかしてこれ、チームシリウスの出し物?

 

 

 「あ、ポケモンもいるよー! あ、でもエアグルーヴさん怪我したのかな・・・大丈夫かなあ」

 

 

 目の前のエイリアンたちの仮装している犯人がもう目星がついたが、怒る気力さえも失せ、半分腰が抜けて座り込みそうになるのを絶えているとそばで泡を吹いて気絶しているエアグルーヴ副会長をポケモンの仮装をした恐らくシリウスのメンバーが担いで移動している。

 

 

 ミミッキュにラランテス。サマヨール・・・ああ、おそらくラランテスで気絶したのね副会長は。確か大の虫嫌いだったし・・・

 

 

 この後に聞こえてきた第二の悲鳴と、いつの間にか目の前から消えていたエイリアンとプレデターに新しい犠牲者が・・と内心手を合わせつつ、何やら内またになって顔を真っ赤にしていたダスカさんとウォッカさんを休ませるために移動。

 

 

 ああ・・・もう。心臓に悪すぎるハロウィンだわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ニシシ。ハロウィンイベントだけど、ここは日本のお化け屋敷みたいな空気があるねえ」

 

 

 「ですわねえ。恐らくルートを二つ用意したとのことですし私たちが選んだのは和風だったのでしょうか?」

 

 

 スピカとシリウスの合同でハロウィンイベントで私とテイオーもイベントを楽しむ側に回ることが出来ました。

 

 

 ケイジさん曰く「マックイーンちゃんらはその可愛さと美しさを振りまきつつ楽しんでりゃあいいのよぉん」とのことで私は魔女。テイオーさんは赤ずきんの仮装であちこちを散策してお菓子をもらい、ここにも足を運んだということです。

 

 

 「しかし、あちこちで悲鳴が上がっていたり幽霊じゃなくてエイリアンがいたとか怪物だのとかの言葉が聞こえたけど、反対のエリア。何を用意したんだろう?」

 

 

 「うーむ・・・武器人間とかブロブでしょうかね? メジャー処だとウーズ、スキャグデッド。あ、クリーチャー的なのでしたらフィーストとか」

 

 

 「半分以上がマイナー映画とかじゃん。ウーズとかはみんなでゲームしたけどさ。でも納得かも。僕はレギオンとかかなあーと」

 

 

 「小型のものですか? いくらケイジさんでもそこは・・・・無理。とは言い切れませんよねえ・・・」

 

 

 あの人の才能の多彩さとその深さは文字通り物が違う。いつもの魔法のような手品に振る舞いもだがどこで知っているのかといわんばかりの知識の広さにはいつも舌を巻くし、それを活かしての世界各国でのライブやショーは文字通り私たちのウイニングライブや、競争ウマ娘のレース以外でのアイドル部分の幅を広げた一人。

 

 

 滅茶苦茶を、しかもゴールドシップさんも一緒なら多少の事は通る。何か騒ぎがあった場合、最悪を想定して足りない。常にその最悪の斜め上かブーメランのような動きをするのがあの人だ。

 

 

 そうこうしながら歩いていたらぽつんとついた広いエリア。やけに暗いのだが私たちがついたらパッと周りが明るくなる。

 

 

 『チャレンジャーの可愛いお二人さぁーんようこそようこそ~! ハッピーハロウィーン! ということだがそのまま素直にお菓子を配るのはもったいないよぉ~』

 

 

 ケイジさんの七色の声で男性の声でのアナウンスが流れ、見えてきたのは何か奥行きのある部分と、突如転がってくるのはサッカーボール・・・? 燃えていますが、熱くない? どういうものでしょう・・・?

 

 

 『ということでせっかくだから二人のその可愛い脚に秘めたパワーを使ってお菓子をつかみ取り、余計なジャマを入らせないためにイベントをしよう! モンスターストラックアウトー!! 今から向こうの場所から流れてくる怪物たちをその火の玉サッカーボールで倒して道を切り開いてくれ~制限時間は1分!

 

 

 その中で流れてくるモンスターたちを10体以上倒せば合格。それ以下なら不合格で残念賞だ』

 

 

 「楽しそう♬ なら、たっぷりお菓子をもらうために負けられないね~」

 

 

 「・・・野球での方が自信がありましたが。ですね。しっかりと勝ってみせましょう」

 

 

 こういうイベントなら確かにサッカーもですが蓮選手、国光選手の幼馴染に命の恩人。一緒に野球観戦をした刑事さんなら野球の方が気合も入りましたのに・・・いや、わがままを言ってもしょうがない。

 

 

 美味しいお菓子。ケイジさんの言うそれなら、料理上手が多数のシリウスのメンバーなら普段は節制で食べられないものもたんまり・・・! 負けませんわ!

 

 

 『だーけ~ど~もちろん今日はハロウィン。怪物たちもお菓子が欲しくて妨害するそれをうまくタイミングを読んでシュートを決めろ!』

 

 

 それを言うや、ちゅぃん! と何かが地面に当たる音と、ストラックアウトのある場所の上、角からグラサンを付けてスーツに身を包んだ・・・ナギコさんが出てきた・・・

 

 

 「妖怪「狙撃手」だ」

 

 

 「「妖怪スナイパー!!?」」

 

 

 「落ち武者も来ちゃったよ~」

 

 

 「「落ち武者!?」」

 

 

 

 キジノヒメミコさんもロブロイさんと一緒に地面から登場・・・いやいやいや!? どうやって地面から出てきたんですの!?

 

 

 その後に飛んでくる弾丸と弓矢は・・・お菓子だった飴細工?

 

 

 「「「ハッピーーハロウィン・・・・///」」」

 

 

 「妖怪たちの方が優しいですわ!?」

 

 

 「もはやハロウィンか何なのかワケワカンナイヨー」

 

 

 

 『さあ、彼女たちは君らの放つシュートを弓矢に弾丸で逸らそうとしてくる。競争ウマ娘の鍛えた脚とその細やかな脚遣いで切り抜けてくれ。ゲーム・・・・・・スタートォ!!』

 

 

 

 

 

 「中々歯ごたえのあるイベントでしたわね」

 

 

 「でもどうやって地面から出てきたりしていたんだろう? 今度聞いてみよ。悪戯に使えそう」

 

 

 イベントをクリアし、飴細工やお菓子をもらい既にたんまり。なのだがもう少し先がゴールなのでせっかくなので歩いていく。

 

 

 この飴たちは保管が聞くそうですが・・・うーん。大量ですし、ラモーヌさんやライアン達にも分けて、おばあ様にも渡しましょうか。秋の収穫祭もハロウィンの側面ですし。喜んでくれるかも・・・?

 

 

 「1まーい・・・2枚・・・」

 

 

 歩いている中聞こえる声。気が付けば学園の外のエリアに出ていたのだが、その一角の緑色の土管から聞こえてくる悲しい声。

 

 

 番町皿屋敷!? と思ってみれば。

 

 

 「皿が足りねえぜ・・・なんてこった・・・! 今日の試合で必要なのに・・・!」

 

 

 「「プロレスラー!!?」」

 

 

 プロレスラーコスをしていたケイジさんが皿が足りないと嘆いていた。

 

 

 「ちょっとケイジ」

 

 

 「ゴル美先輩!」

 

 

 「今日の興行は大事なもの。あんたその道具を忘れるとか覚悟と気合が足りないようね・・・」

 

 

 「ヒィいい・・・・! ごめんなさーい・・・!」

 

 

 「なんか変なの始まった!?」

 

 

 先輩ポジらしい。これまた覆面レスラーコスのゴールドシップがケイジさんにビンタをかまそうとしている。なか、何かが止めに入った。河童だ。・・・・河童!?

 

 

 「まあまあお二人とも。このお皿以外でもさりげなく道具をリングの中に仕込んでおけばいいですし、この枚数でもインパクトはありますから。ほら、10枚目のお皿はここに隠していたのか―! とか」

 

 

 そういって二人の仲裁をしている河童。でもよく見ると頭のお皿が・・・

 

 

 「「お前が犯人じゃねーか!!」」

 

 

 「ばれたか―!!」

 

 

 見事なクロスボンバーを決めて河童をKOした二人。10枚目の皿を河童の頭から手に取ってご満悦。

 

 

 「いやーよかった良かった。これで安心ですよ」

 

 

 「こっちこそカリカリして悪かった。相手が相手だ。気は抜けん。お? おっと。ファンの皆さんにもサービスを使用か。よいしょ・・っと!」

 

 

 「ぎゃぁああああ!!?」

 

 

 「河童の甲羅が割れたー!!?」

 

 

 「うぇ!? お、お菓子にケーキだらけですわ!」

 

 

 ニコニコの二人だが私達を見ればファンサービスと称して倒れていた河童の背中の甲羅を手刀で開いて大量のお菓子を取り出して文字通り風呂敷でパンパンになるほどに渡して移動していった。

 

 

 プチケーキに飴玉にチョコにクッキー、豆菓子に芋菓子。ソウルケーキと色とりどり。それに目を奪われていたが、河童はどうなっているのかと見れば。何やら溶けて河童らしいものしかない。

 

 

 ・・・・・・・何だか知らないですが良しですわ! そう考えてとりあえずシリウスエリアから無事抜けて別の場所でテイオーさんと休憩とお菓子を食べました。この後心底疲れ切ったスカーレットさんとウォッカさんが来たのでお菓子を分けつつ目の前の百鬼夜行な光景を楽しんでいましたわ。

 

 

 

 

 

 

 

 「サーてさてさて皆の衆! ハロウィンを楽しんでいるかーい!!」

 

 

 たくさんの仮装でみんなに刺激とお菓子をばらまいて、まさかのエアグルーヴ他数名が気絶する事態になったがすぐに復活させたのでそのまま次のイベントに移行。ついでに葦毛の皆様の多様な表情を見られたので眼福眼福。

 

 

 普通ならこれだけでもいいのですが仮装パーティーとはいえファンとの交流で、アイドルの側面もあるトレセン学園のウマ娘。「そんならライブも必須ってもんよ!」ということでケイジはすぐさまライブ会場でケイジの十八番メドレーにハロウィン風の振り付けに演出も盛り込んだものでやるとのこと。

 

 

 黄色い歓声と野太い歓声が混じりながら始まるケイジのライブ。急にテーブルを出してそこに無数の料理を出せば、あるいは煙と共にドラゴンの着ぐるみをつけて炎を吐き出し、その炎の中から踊り子衣装で登場。

 

 自分の耳を手で隠して出すときには自分以上の大きなものになって取れて、それが次の瞬間には長い巻物になっていく。それでファンの視界を隠したと思えばドラゴンの着ぐるみと踊り子衣装のケイジと勝負服のケイジで踊っていたりとでまさしく魔法のような縦横無尽。

 

 

 かと思えば次の瞬間には空模様を仕込んでおいた天幕を展開してプラネタリウムで満天の星空を。かと思えば百鬼夜行を演出。

 

 

 曲が変わればそれに合わせて文字通りステージも客席も姿も変える。傾奇者はアイドルという側面だけではなくアーティストとしてもマジシャンとしてもやりたい放題。それに魅了したと思えば突如ステージから消えるケイジ。

 

 

 後は私の出番。とはいえ軽いアナウンスだけど

 

 

 『さぁ皆様! 続いて本日最後のイベント。皆様ご存じヘンダーランドのオーナーにして多くのウマ娘の楽曲を作曲しましたマカオとジョマ氏対! ケイジ、ゴールドシップによる追いかけっこ! ケイジ達の握っているカードをゴールに届けたときはなんと今回イベントに参加している皆様のなかから31名にヘンダーランドの無料チケット!

 

 

 負けてもヘンダーランドで次回の新発売スイーツを抽選で31名に試食です! ではスタート!!』

 

 

 この合図で同時に学園の屋上から飛び出すシップとケイジ。そしてマカオとジョマのオカマ魔女コンビ。空中からのドローンと望遠レンズで臨場感ある演出で見せていく追いかけっこ。

 

 

 カードを即席で別のものでごまかしたり、ワイヤーアクションで飛び回ったりとコメディと化け物じみた動きで大盛り上がり。

 

 

 最後はケイジが無事にカードをセットしてケイジ側の勝利で花火が上がり今年のトレセン学園のハロウィンイベントは無事終了。

 

 

 後日。やたらオカマが多いので百鬼夜行トレセン学園と一部の新聞やテレビでは報道されていたのに笑うほかなかったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 「あっはははは! いやー愉快愉快。やっぱ祭りはこうでないと」

 

 

 「何名か気絶や泡吹いて楽しむ処じゃなかったけどね・・・不審者とかを捕まえたりとかほんと大騒ぎだったわ」

 

 

 祭りが終わり夜も冷え込む時間。片付けも終わり寮への帰り道。ジェンティルちゃんとの買い食いしながら冷えないようにコートを羽織ってふーらふらってね。

 

 

 「まあま。いいじゃんいいじゃん。あれくらい愉快なくらいが本来の祭りよ。で・・・さ」

 

 

 「?」

 

 

 祭りではずっと仮装しまくり走りまくりの時間だったから。これを付けることが出来なかったんだよな。

 

 

 コートを脱いでからジェンティルちゃんとおそろいのドラキュラ衣装。わざわざ宝飾までもしっかりとして派手だが、その目立つ宝石の数がアタシのGⅠの勝利数でそろえているのがほんと気合入っているわ。

 

 

 胸は潰してある程度ラインをと思ったけど、そこも合わせてくれているし・・・割とこれ礼服としても使えるよね。

 

 

 「トリックオアトリート。ふふ・・・お菓子、ある?」

 

 

 「っ・・・・! え、ええ・・・ほら・・余り物だけど、早く言ってくれれば渡すものもいいのあったのに」

 

 

 そういって渡してくれるカップケーキ。アタシの拳よりも二つ大きくデコレーションも大量。ったく。こんないいものをねえ。ならまあ、私も残していたのを渡さないとな。

 

 

 「いいんだよ。ちゃんともらえたのが幸せってね。戻ったらココア用意するから食べる」

 

 

 「じゃ、私からもトリックオアトリート」

 

 

 「ほいさ。それじゃあ。皇女様への捧げものをどうぞってね」

 

 

 ジェンティルちゃんも微笑んでトリックオアトリートを言ってくれたので、全身から飴細工に棒を刺したものを無数に出して花束のようにしてジェンティルちゃんに渡す。

 

 

 「わぁ・・・おお・・・凄い・・・あら・・・全部妖怪とか、怪物とかお化け?」

 

 

 「全部アタシプレゼンツの自作。湯に溶かしてもおもしれーし美味しいぞ」

 

 

 湯に溶かすと中のラメとエキスが広がってちょっとしたジュースになるし、キラキラ輝いていいんだよな。試した甲斐がある。

 

 

 「なら、ココアを溶かす際の湯をもらっていいかしら?」

 

 

 「おうよ。足湯も用意しておくから、あったまろうな」

 

 

 吸血鬼の格好で二人でニコニコ寮への時間。美味しい楽しみと時間が増えて幸せなハロウィンだわ。




 ケイジがこの祭りで騒がないわけがないというね。ちなみにラランテスはオルフェがコスプレしていました。


 後明日以降に加筆しますがケイジとジェンティルちゃんの祭りの後の後日談を乗せまーす。いやあ、今回はいつも以上に急ぎ足で申し訳ないです。


 そして、どうにかこの話でこれを見せられます! あの甘糖連合 様に頼んで描いてもらいましたチームシリウスの募集ポスターです! あ、無断転載はNGです。


 
【挿絵表示】



 こんなノリのポスターを毎年ケイジが作ってはばらまいております。メジロライトニングは全シリーズコンプしているし、ファンの間ではこれの本物のビラを手に入れるのが目標の方もいるとか。


 あ、馬のケイジがウマ娘になったおまけは次回に回します。それと次回はまたこち亀を絡めようかなあと


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ウマ娘エピソード 34 出向

 皆様あけましておめでとうございます。どうか皆様いい新年を迎えられますよう



 ケイジの珍道中


 ~一部抜粋~

 アメリカでのトリプルティアラを制覇し、僕のGⅠの勝ち数は騎手人生がようやく10年いくかどうかというのに早20勝目を越えた。日本の牡馬クラシック無敗のクアトロクラウン、アメリカ牝馬クラシック無敗のトリプルティアラ。欧州二冠三連奪取。世界が認める名騎手だと。あの傾奇者の相棒だとほめたたえてくれる。


 その言葉に笑顔を浮かべるが同時にその賞賛を受けるべき僕の一番の相棒がいない。ケイジが僕よりも賞賛を受け、いつもの自信に満ちて命がけのレースさえも楽しみ倒すあの魔性の美貌と色気を振りまくべきなのだ。そのことに悲しみとケイジがもらうべき分の賞賛を受けていることへのうしろめたさ、そして僕を称賛してくれるファンの気持ちも裏切っているということでは僕は宙ぶらりんの情けないやつだ。


 なにより、一緒にアメリカトリプルティアラを制覇したケイジの娘ミコト。馬主さんはケイジのファンであり同じドリフターズ所属の志村ヘンさん。ケイジの娘を預けるのなら君しかないと言って頭を下げてくれて、同時にミコトは文字通りケイジの娘というにふさわしい天才だった。


 日本にアメリカダートクラシック三冠を持ち帰り無敗のまま伝説を作ったナギコ、そしてケイジの娘はあの二頭の才能を余すことなく受け継いでいた。太もも越しに感じる脈動。頭を撫でて、一緒に扇風機に当たるときの顔、鞭を使わずとも仕草ですぐに加速してくれる頭の良さ。温度も体温もケイジの血を引いているからこそ感じられる命のリズムと引き継がれる意思と才能。


 それに僕はケイジの面影を感じつつも彼女の個性と強さに魅了された。キタサンブラックとダービーを獲った時よりも、二度目の凱旋門賞をサトノダイヤモンドと獲った時よりもミコトの素晴らしさとどこまでもいけるだろうと胸を高鳴らせる。


 しかしその恋のような感情は、最高の相棒だと感じるのはケイジという最高の相棒と、ケイジがつなげてくれた真由美ちゃんへの不義理だと言える。あの高鳴りとこのステージにこれたのはまさしく彼らの助けがあってこそだというのに、まさしく最高の一番で夢中になる。寝ても覚めても夢か現実かわからないほどのあの日々をくれた彼らがいるのに僕はケイジの娘に魅了されてメロメロになっていた。



 君という最高の相棒のために、支えてくれる伴侶に、皆に応えたいという気持ち以外にもミコトちゃんへの愛と信頼と期待を強く持ち、騎乗するときは文字通り彼女しか見ていなかった。勝利への賞賛と、感謝も本物だが、しかしケイジがいないと、ケイジと味わいたいという気持ちと後ろめたさがある。


 本来はケイジと一緒に受け取るべき栄光をその娘と一緒にもらい、娘にもケイジにも夢中になって最高の時間を味わう。親子そろって僕を支えて愛してくれる。こんな破廉恥でスケベな僕に。しかし騎手という仕事とケイジの血を残したいという気持ちも本物だ。ケイジ、今度会う時はこの煮え切らない情けない男を怒ってくれ。


 そして吹っ切れた僕と一緒に温泉に入り、アニメを見て、ご飯を食べよう。好きなリンゴと、牧場の皆の好きなものを持ってくるよ。怒ってくれ、詰ってくれ。その上で僕はまたケイジの子や、ライバルたちの血を残し、ずっと君たちを忘れさせないと気持ちを固めるためにまた語らおう。


 こう思っていたはずなのに、前田牧場にご挨拶に伺えば僕を我が子のように出迎えて労ってくれる前田牧場長夫妻に僕を見るに心底嬉しそうな顔で迎えてくれるケイジ。僕は君の娘に君を感じて夢中になっているというのに、こんなに思って優しくしてくれることに涙が出た。


 「泣くんじゃないよ松風。胸張って笑えや」


 そういうように慰めてくれるケイジに、ミコトの方を見て嬉し気に僕の胸に鼻先を押し当ててくれるケイジに僕は思わず抱き着いて色んな感情を吐き出した。僕の始まりの相棒。君の大きさとやさしさ、素敵すぎる。


 「新しい派出所ですか?」

 

 

 「ああ、警視庁と国からの要請でトレセン学園の近く、主に正門と裏門前に二か所配置するそうだ」

 

 

 昼前、わしと中川、部長で昼飯のカツ丼をつつき合いつつ署から来た連絡事項を聞いてた。しかしまあ、新しい派出所とは。好景気で人も増えたが、近年のウマ娘レースブームの需要とそれから来る税収を踏まえてだろうかねえ。

 

 

 「しかしなんでまた今更。既に周辺にも派出所があったりで中々あそこは人が多いと思いますが」

 

 

 「まあ、そこに関してはだがケイジ君、およびチームシリウス、スピカのゴールドシップ君とジャスタウェイ君、その後輩の皆さんの躍進が大きい。なんでも各国の要人との会食であのアスリート、アイドルが集まる学園だけど警備は大丈夫かという声が出たそうでな」

 

 

 「あと、マヤノトップガンのトレーナーアンチの行き過ぎた行動やナカヤマフェスタの賭けの行為をトレーナーもしていたことで騒ぎになったりとでそもそも最近色々と怖い話も出ていますから」

 

 

 「まあ、本命はケイジらへの警護でしょうけど。あいつの功績は真面目に滅茶苦茶ですからねえ。あ、部長七味使います?」

 

 

 蜆の味噌汁とかつ丼のセットに麦茶をすすりつつ、なんやかんや騒ぎは起これども本命はそれだろうと目星を付ければ部長も中川も同じ意見だったようで頷きつつ飯を食う。うん。期間限定のデカ盛りだがこれはいいな。

 

 

 「まあ、モロダシ共和国のオマタ国王をクーデターから救い出してその後も国王特別警護、救出部隊と臨時任命されて大暴れ。シャーガー誘拐事件も防いで誘拐を計画した組織ごと壊滅。かと思えばドバイミレニアム、イージーゴアにカラムーンの世界中が匙を投げた難病を治療できる医者を引っ張り出してきて完治させるとこれだけでもすごいのに世界史上初の欧州二冠三連覇。海外勢には一切負け無しですからねえ。英雄ですよアイツは」

 

 

 「普段の問題行動を差し置いてもあらゆる意味で暴れまわり、そしていい影響の方が大きいからな。もっと大事にしているというアピール。VIPとして対応していますというアピールもあるのだろう。かといって、ケイジ君はそういうのは面倒くさがりそうだからなあ」

 

 

 「ならせめて派出所を多く設置して学園全体の安全への配慮と気配りが出来ているようにすると。まあ、僕の会社の方でもケイジ君には助けられているので嬉しい話ですけど」

 

 

 問題行動というくだりでも笑顔がにじむあたり部長もケイジに甘いなあ。まあ、爺ちゃんみたいなものだと公言したり、孫の趣味やプレゼントのために奔走してくれるからなあ。わしから見てもいい関係だよ。中川の方でも会社のCMや商品開発。カレンチャンやメロディーレーンのインスタグラマーたちにも呼び掛けてアンケートを取ったり宣伝してもらったりとでまあやれることが多い。

 

 

 「そういうわけで、2週間後に私たちの方もトレセン学園正門前派出所に交代制で勤務することになった」

 

 

 「「え?」」

 

 

 兎にも角にも夢を追いかけて苛烈極まる勝負の世界に挑むウマ娘たちが学園の安全、治安が良くなるのはいいこと。そう思っていたらまさかのわしらも出向。これには思わず麦茶を吹き出しそうになる。

 

 

 「部長。わしらよくケイジと犯人逮捕はしていますが、府中は管轄外ですよ」

 

 

 「いやあ、それがトレセン学園は良くも悪くも濃いメンツが多いのとケイジ君、ゴールドシップ君らの行動へのある程度の耐性と経験を積んでいる人が欲しいと言われて。それで一番ケイジ君らと関わっている私達にぜひ出向してほしいとのことだ」

 

 

 「人事に関しても細かいですね・・・」

 

 

 「その分手当は弾むということと、派出所からもケイジ君らと関わりのあるメンバーを複数人出向して交代制で回していくそうだ。そういうわけだから2週間後にはトレセン学園前派出所へ持っていく荷物の用意とここの派出所に代理で来る人達への引継ぎの用意をするぞ」

 

 

 「了解しましたよ。そんじゃあ、とりあえずどうやろうか」

 

 

 金が出るというのはありがたいことだし、まあ電車を使えばトレセン学園も問題なく行ける。さてさて。超神田寿司以外では会うのは久しぶりだが元気しているかねえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よいしょっと・・・さすがに大荷物になったなあ。中川の車だと往復してようやくか」

 

 

 「僕の車だと一般乗用車と目的も違いますし」

 

 

 あれから引き継ぎや交代のローテーションを決めてから備品、書類諸々を中川のスポーツカーでピストン輸送で数回送ってようやく段ボールだらけだがトレセン学園前派出所についた。

 

 

 そこから見る学園はやはり大きく豪華。わしの青春を過ごした学校とも警察学校すらも小さく見えるほどの荘厳さと豪華さがある。

 

 

 「何度も足を運んでいるが、やはりすごいなあここは」

 

 

 「2000名以上の全国から門を叩く選りすぐりの競争ウマ娘たち。そこから更に国トップのアスリート兼アイドル養成学園ですからね。編入や推薦、特別枠などはあれども日本に一つしかないと言えば東大などの名門大学よりも狭き門ですよ」

 

 

 そう考えるとやはりここに来れる時点で学力、或いは走る才能などは折り紙付き。最近ではオグリキャップを支えたベルノライト、変態勇者アグネスデジタルの将来の目標の公表からもトレーナー志望、スタッフ志望のウマ娘なども育てる方向も伸ばしているがやはりそこも狭き門。

 

 

 さらにその中から鎬を削って1勝。リステッド、OP、重賞、ましてやGⅠに行けるとなると一握りの一つまみ。そこでいくつも勝利を重ねるメンバーの才能は文字通り日本の宝といえるものだろう。

 

 

 思わず感嘆の息も出る。そんな上澄みの上澄みたちと触れ合えていた。ましてやその子たちの安全に配慮した派出所に勤務できると考えるとなんだか身が引き締まる思いだ。

 

 

 「そう考えると天才は変人というがGⅠで戦うウマ娘たちが個性豊かすぎるのは当然なのかね」

 

 

 「そうかもしれませんね。まあ、その中でもケイジとゴールドシップは特に変人で刺激的だと思いますが」

 

 

 「お前も人のこと言えないがなあ。よいしょっと・・・」

 

 

 あの二人を変人という中川だがこいつも大概だ。今は丸くなったが既定の制服にそでを通さずオーダーメイドの制服を今も着ていてタクシー通勤した際には署にタクシー代を付けてそこら辺の車にマグナムをぶっ放す。わしなんかに負けないほどの破天荒だよ。

 

 

 「昔は友達と一緒にどこでも銃をぶっ放しては皇居のお堀に暴走族をレッカー車で放り込んだりとか」

 

 

 「そ、それは先輩もしていたじゃないですか! まあ、ケイジも不良集団相手に似たようなことをしたので本田先輩と僕と麗子さんと先輩みんなで叩き潰して豚箱にツッコんだのでいいですが。無期懲役で」

 

 

 「暴走族だの半グレだの知らんが世界の要人、軍人、日本の二大伝説の暴走族のヘッドと親友で、本人も化け物スペック。『星の一族』の末裔のケイジに喧嘩売るとはな。皇族に喧嘩を売るようなものだ。あの後に色々と青ざめて土下座するやつらの顔は見ものだった」

 

 

 そのぶち込んだ刑務所でもケイジ、蓮、国光、ユタカの大ファンのヤのつく自営業の連中たちにもこの情報は入っているようであの暴走族らは例え出所してももう悪さはしないだろう。

 

 

 「失礼します。新しくここに出向される警察の方でしょうか」

 

 

 「あ、はい。今日からここで・・・って、シンボリルドルフさん!?」

 

 

 段ボールから荷物を出しては整理しているとふと声がかかり中川が応えるとそこにいたのはシンボリルドルフとエアグルーヴ。トレセン学園の生徒会長と副会長にして何方も日本有数の実力と戦績を持つ怪物がわしらの前にいた。

 

 

 レース、ライブで何度も見ているが、近くで見れば見るほどその美貌と威厳はなるほどウマ娘の中でも頭一つも二つも抜けている。

 

 

 「ふふ。中川さんもお久しぶりです。そして両津さんもお久しぶりです。トレセン学園前に派出所が出来る理由などは私の耳にも入っていたので挨拶をと」

 

 

 「学園周辺の治安が良くなれば外でのランニングをする生徒も多いので安心できるでしょうし、ありがとうございます」

 

 

 「いやいや、わしらの仕事だしそうかしこまらずに。中川。茶を淹れてきてくれ」

 

 

 「はい」

 

 

 「いえいえ。そこまでもてなさずとも。私達もすぐ戻りますので。その前に、一つ私達からも個人的なのですが頼みたいことがありまして」

 

 

 作業の合間と昼飯にでも茶をすすろうと先にセットしていた電気ケトルで茶を中川に用意させようとしたらルドルフが手を振って大丈夫と拒否しつつ苦笑して頼みたいと一歩踏み込んできた。なんだろうか。基本わしらではトレーナーまがいのことは・・・地方ではわしはしていたけどさあ。一応資格あるし。

 

 ただ中央でも怪物であり、あのおハナさんの元での指導に不足はないはずだがそうなると・・・まあ、予想はつく。

 

 

 「その・・・ケイジとゴールドシップの暴走や何かあった時はぜひ抑えるのを手伝ってくれれば・・・と」

 

 

 「あいつの暴走はまあ、最近はある程度流せますがそれでも気がついたら何をしでかしているのかわからないときがありまして。その際はぜひお二人はケイジとの普段でも親交がある分対処できるかと思いまして・・・」

 

 

 「あ、お二人とも少し冷ましているので飲みやすいですよ。どうぞ。先輩も」

 

 

 「おう中川。そしてやっぱりケイジかあ。まあ、何度もわしらも振り回されている側だがなあ」

 

 

 皇帝と女帝がわしらのような一公務員にケイジの暴走を抑えてほしいと頼み込む絵面がシュールなのと、苦笑してケイジの暴走もいとおしそうに思っているであろうルドルフと、ケイジを心配と、過去の暴走からも整った顔だが眉間にしわを寄せているエアグルーヴの対比が面白い。ダイナカールさんは現役時も愉快な人だったが、優しさは受け継いでいるけど性格は本当に正反対の生真面目さだなあ。

 

 

 4人で少しぬるめですぐ飲める茶を結局ルドルフたちも受け取って飲みつつ今までそれぞれがケイジに振り回された過去を思い出す。戦闘機をかけてジョディーたちと空母の上でサッカーをしたり、ケイジの武芸を披露したり、ひったくり犯にケイジがロープをワッパに絡めてから犯人の両手に投げ飛ばしてから引っ張ってぶん投げたり、暴走車に飛び乗って犯人を捕まえたりと。いろいろしたなあ・・・

 

 

 「さあさあ! オカマ喫茶「食べ残し」の開店だー!」

 

 

 そうそう。ちょうどあんな感じで何をしているかわからんことを・・・・お?

 

 

 「さあさあ今日は開店サービス! いろんな限定品まであんなことやこんなこともやっているぞー!」

 

 

 学園の入り口ではケイジとゴールドシップが何やら屋台喫茶を開いて客を呼び込んでいる。いつの間にこいつらは。そして何をやっているんだ?

 

 

 「ケイジー!! 貴様は何をやっているのだ! また知り合いのオカマたちを呼んだのか!」

 

 

 「おわ? おお。エアちゃん。オッハー! そして両さんに中川の兄ちゃんにルドルフ会長! ハロー!」

 

 

 「タロウ~」

 

 

 「「岡本太郎~♪」」

 

 

 ゴルシと息の合った挨拶をして微笑むケイジ。うーん。学園の制服を着てるケイジは新鮮だなあ。いや、よく見ているはずなんだかその時は大体犯人逮捕だったり騒ぎに巻き込まれている時だし。しかし、ゴルシもわしより背が高いのに小さく見える。

 

 

 「タロウも何もないわ! 一体どんな喫茶を・・・?」

 

 

 エアグルーヴが起こりながら屋台喫茶を見ればそこには和風メイドの衣装に身を包んだジャスタウェイにヴィルシーナ、ナギコたち。そして周りにずらりとあるのは業物の鎌に飯炊き釜に窯。

 

 

 「「カマ違いだー!!」」

 

 

 「ほぉ・・・あの蹄鉄師の一品・・・」

 

 

 「いやあ、懐かしい。この味と匂いは何十年ぶりか」

 

 

 「しかも繁盛していますよ」

 

 

 「名うての鍛冶師の業物に世界の鉄人シェフたちが欲しがる逸品だからなあ。目端が利く人にはいいし」

 

 

 「さあー超特大ピザ焼くっすよ~本場イタリア仕込みをご覧あれ」

 

 

 目の前でマンホールのふたの倍の大きさにピザ生地がメジロライトニングの手の上で広がり、隣ではキジノヒメミコがあらゆる具材をまるで早送りのような包丁さばきでさばいては広がった生地に盛り付け。そして超特大のピザ窯に入れていく。

 

 

 隣では釜で出来上がった白米にしゃけの塩焼きに味噌汁と定食をほおばる爺さん。

 

 

 「昔のごちゃまぜ喫茶の香りがするなあ・・・」

 

 

 「どれ・・・ちょうどいい。お昼の弁当もあるのか。なら、Aランチの弁当を一つ」

 

 

 「会長。しれっとなじまないでください。む・・・意外と商品もあるのか・・・ふんどし?」

 

 

 ケイジ達の暴走になれているのかルドルフは弁当を頼み、頭を抱えつつエアグルーヴはしょうがないからと商品を見て、わしらも見ていたらあらゆる色のふんどしが。

 

 

 「そう! 男女共用でもつけられる! 前はしっかり隠しつつもお尻のラインを見せたい貞淑とセクシーを狙いたい方にお勧めの下着!」

 

 

 「時代を越えても愛される素晴らしい日本の簡単下着! ふんどし最高!」

 

 

 「ふんどし最高! ふんどし祭り! ふんどし祭り!」

 

 

 「「ふんどし祭りだワッショイワッショイ! ふんどし祭りだワッショイワッショイ!!」」

 

 

 「わけわからん祭りが始まったー!!?」

 

 

 いつの間にか法被に着込んだゴルシとケイジがふんどしを頭に巻いて懐から褌を投げつつ踊っている珍妙な光景が繰り広げられている。なんだこれは。

 

 

 「甘えるなゴルシぃ!!」

 

 

 「「「えええー!!?」」」

 

 

 かと思えばケイジのハリセンがゴルシに炸裂。突然の変貌に皆が驚いている。

 

 

 「おしゃれも下着も温故知新! ふんどしを超える貞淑セクシー下着を開発してこそよ! さあ、おいきなさい! 新たな時代を作るのよ!」

 

 

 「分かったわお母さま! 私! エルドラドに行って世界一の宝を持って帰るから!」

 

 

 その勢いのまま釣り竿とサングラスを付けてどこかへジャスタウェイを攫って走っていくゴルシ。いつものケイジワールドの一幕に巻き込まれたがほんとこいつらの脳みそはどうなっているのか見てみたいもんだ。

 

 

 あ、それと食事は普通においしかった。薪の釜めしと料理の数々。懐かしさを覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これで全部ですね。明日には纏さんと左近寺さん、本田先輩が来るのでその引継ぎをすればいいかと」

 

 

 「だな。理事長への挨拶もすんだし、学園裏門前の派出所の方も特殊刑事課が来てくれるということで打ち合わせも済んだ。これでようやく形になるということか」

 

 

 昼前、両津先輩と一緒にトレセン学園前派出所の備品の整理や周辺の警察官への挨拶、学園関係者への挨拶を済ませてようやくしっかりとした派出所運営が出来そうになってきた。

 

 

 朝もケイジ君とゴルシ君(あの後エルドラド? からタコとイカを釣ってきたらしい)の海鮮さっぱり塩焼きそばを食べて仕事をこなしていたがやはり昼前になると腹の虫がなる。

 

 

 「お腹がすいてきたなあ中川。ワシはカップ麺を食べるがお前はどうする?」

 

 

 「うーん。そうですねえ。一応近場の商店街にあった喫茶店にもいってみようかとは思っています・・・おや」

 

 

 食事はどうするかと考えていると聞こえてくるどこか懐かしさを感じるラッパの音にタイヤの音。

 

 

 「出張黄金屋でござーい。そこの伊達男お二人さん、昼めし食っていかねえかい?」

 

 

 「代金は取るが味は保証するぜ黄金屋! ゴルシちゃん印とケイジお手製ラーメン&チャーハンセットがおすすめだぜぇ!」

 

 

 ケイジ君とゴルシ君が屋台車を引いて学園前に置き、座椅子と机をセットしていく。ケイジの料理は僕も知っているが世界の高名なシェフに引けを取らない。あと基本こういう屋台以外では気まぐれなので味わえるチャンスは少ない。

 

 

 「よし。食べに行くか。おーい二人とも。ラーメンとチャーハンセットを頼む!」

 

 

 「お願いします。おや。デザートもあるんですか?」

 

 

 先輩もカップ麺よりは二人の料理がいいということで意気揚々と屋台車の備え付けの椅子に座り、僕もそれに続いてメニュー表を見ると「気まぐれデザート」というものに目がつく。

 

 

 「あいよ。麺の固さは? それと中川の兄ちゃん。デザートはアタシらの気分で作るもんだが、味は保証するよ」

 

 

 「固めで。それとデザートはわしも」

 

 

 「へえ。なら尚更楽しみですよ」

 

 

 「おう! あ、それとだけどよ。二人とも辛いのは大丈夫か?」

 

 

 香ばしい鶏がらと具材の匂いが漂うことから鶏がら系のラーメンかと予想を付けつつ、チャーハンを作るケイジ君とゴルシ君の質問に首をかしげる。チャーハンが辛いのだろうか?

 

 

 「問題ないぞ。むしろ目が覚めるってもんだ」

 

 

 「僕もある程度なら」

 

 

 「なら食べ方は教えるからこれもつけるか。ケイジ。できたか?」

 

 

 「おうよ。そらおまちどお、お二人さん。ケイジ&ゴルシ特製ラーメンセットだ!」

 

 

 そういって出されるのはキラキラと輝く黄金色のスープに縮れ麺。葱とメンマがあるラーメンと、これまた香ばしい香りを見せる五目チャーハン。一見普通のラーメンセットだが、その横にある出汁につけられている肉団子かカマボコ。白色や普通の肉団子と色とりどりでひなあられを模したのだろうか。気になる。

 

 

 「いただきます。うん・・・うまい!」

 

 

 「いただきます。ほぉ・・・これは・・・」

 

 

 麵をすすれば普通よりも角のあるちぢれ麺。金色のスープに卵麺だろうか。まるで稲妻のような麺は唇に舌に当たる感触が心地よく。そして鶏がらの出汁、いや、メインは塩に。そこに少しのとんこつも入っているけど、どこかとんこつラーメンのそれとは少し違う。

 

 

 最初に鳥の風味に、塩のガツンと来る自己主張にどこか主張をする隠し味のとんこつ、いやそれいがいの味を感じさせる。ちょっと普通のラーメンとは違うがこれはおいしい。

 

 

 「どれ・・・お? 豚の角煮に、おお。野菜ももりもりだな!」

 

 

 「ヘルシーだろぉ? それに食感も大事にしているけど細かく砕いているから歯が弱い人でも食べやすい!」

 

 

 「チャーハンでここまで噛み応えを味わえるのもいいですね。うん・・・スープとも噛み合う」

 

 

 次にチャーハンを食べれば豚の角煮に卵のまろやかかつ濃密な脂と肉のうま味と卵とソースの連携攻撃が口の中に広がっていき、その濃い味を塗り替えていく第二陣がごろりとした噛み応えのある野菜たち。レンコン、大根。そこに人参の甘み、きくらげのコリコリ感触や大粒のごまが風味と食感を添えて口の中で多種多様な味のダンスが始まる。

 

 

 一見五目チャーハンだが、五目どころではない幾つもの食材たちのショーが僕を楽しませてくれるし、野菜の甘みが来るのでラーメンの塩気が欲しくなる。交互に食べるのも、口の中をどれか一色に塗り替えてもいい。素晴らしいコラボレーション。

 

 

 しかし、この二つだけでも完成していると思えるのだが、そうなるときになるのは出汁の入った皿の中にある肉団子? カマボコ? の存在が気になる。さらりとした出汁だがこれはチャーハンにかけるのか、それともラーメンに入れるのか。

 

 

 「ところでケイジ君。この肉団子? はどう食べるの?」

 

 

 「お、そいつはラーメンに出汁ごと入れて団子を割って食べるといい。単品で食べるとむせるかもだから、辛党みたいな人以外にゃお勧めしねえ」

 

 

 「群馬にあるミブ風船っていう変わった風習があるのをイメージしてみた。後あそこらへんは空っ風の寒さに雷がすごいからそれらをイメージしつつも寒さに負けないようなものにした」

 

 

 「ほう。どれどれ・・・おぉ・・・うまい! それと、このスープ・・・沖縄そばに少し近い?」

 

 

 「なるほど。どこか香るとんこつの風味はこれのために。辛いですが・・・おいしい」

 

 

 カマボコ風肉団子を割ると表は白いけど、中身は肉団子。そこからあふれる汁をかき混ぜてラーメン全体になじませて食べてみるとピリッとくる辛みが入り心地よいうま味を増していく。そして塩、鶏がらにそのまま辛みを入れるのは合わないが沖縄そばの味付けを忍ばせていくことでその辛みの追加も心地よい物へと変化している。

 

 

 ましてやその辛みのせいでチャーハンも進むし、メンマや葱の味がいい変化となっていく。これは箸が止まらない。

 

 

 気が付けばあっという間に完食。食事の熱に程よいからさ。スパイスが熱をくれているのか心地よい余韻がある。そしてその後に香ってくるのは心地よい甘い香り。

 

 

 ゴルシ君が鉄板の上に円柱の金型を置いてその上に生地を流し込み、合間合間に何かを振りまいてしばらく。ひっくり返してから蓋をしての蒸し焼き。パンケーキの類だろうけどもこのかぐわしい香りがまた食欲を誘う。甘いものは別腹とよく言ったものだ。

 

 

 「ほいさ。ゴルシちゃん特製パンケーキ。おすすめは最初に切り目を入れてからゆったーりと蜜をかけて食べてくれ!」

 

 

 「「いただきます」」

 

 

 ドカンと出される分厚いパンケーキ。ナイフを入れてみれば蕩けるバターが染みわたるが・・・おや?

 

 

 「パンケーキの甘い香りが複数・・・?」

 

 

 「わしも二種類は分かるな」

 

 

 「あったり~♪ パンケーキを焼く際に生地を入れる合間に塗る用の蜜や生地に練り込んでいるやつとは別の蜜を薄く塗っているんだわ」

 

 

 「ゴルシ特製の熱伝導が高い合金で中にまでしっかりと火が通るからこそできるやつだな。まま、食べてくれよ。これはうんまいぜー♡」

 

 

 蜜を塗って染みわたらせた後に食べてみれば・・・なるほど。いくつもの酸味に甘味、それらを調整していくバターのまろやかさ。これらがふわふわスポンジ状の生地に吸い込まれているせいでまろやかに気泡となって、固形となって、あるいは口の中であふれた液となってのトリプルパンチ。それぞれの個性を感じることもあって幾つものお菓子を食べているような心地。

 

 

 それでいて分厚いために柔らかいのだがしっかりとパンケーキ噛む感触と呑み込む際ののど越しもあって満足が出来るもの。

 

 

 素晴らしい・・・この蜜のブレンドに生地、焼くための金属板。その用意と技量からくる味は僕が今まで味わってきたスイーツのどれにも引けを取らない。シンプルなパンケーキ。その中にいくつもの味を仕込んでくるこの楽しさ。満足するほかない。

 

 

 さりげなく出されていたアイスティーをすすり一息。口の中に残ったわずかな甘みも流して残りは満足感。

 

 

 「ご馳走様です。凄く美味しかったですよ」

 

 

 「ご馳走様。こいつは美味しかった。また食べたいもんだ。どれ。お代はいくらだ?」

 

 

 「しめて1500円だ」

 

 

 安い。この味と出来の良さなら2000円以上でも普通にいいし、もっと上の値段も取れるというのに。お代を支払いつつ頭を下げて派出所に戻る前に聞こえた盛況の声とウマ娘たちが来てみんなでワイワイやっている光景を見れたときは思わず先輩と一緒に笑みがこぼれた。

 

 

 「先輩。黄金屋の持ち帰りをもらえたら僕の分もお願いしていいです?」

 

 

 「もちろん。中川も頼んだぞ」

 

 

 「勿論です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うーむ・・・広いものだなあ・・・」

 

 

 「ウッドチップ、芝、ダート、障害レース、直線のみで1200メートルコース。芝が多いですがこの数に加えて野外ライブ練習場に加えて学園の様々な施設・・・海外の大学でもちょっとこれは数が少ないほどですよ」

 

 

 全く。改めてこの学園の広さは驚く。ウマ娘たちなら軽く走るだけでもすぐ行けるがこの距離を歩いていくのはちと骨だ。

 

 

 周りのウマ娘たちに挨拶をしつつ見回りをしつつ軽い見学だが本当にみんな元気に過ごしているなあ。ワシらを見ても驚かないのはケイジの騒ぎや感謝状と金一封を渡すために何度か足を運んでいるせいか。

 

 

 「ふぅー・・・くはぁああ・・・」

 

 

 学園で不審者が入りやすい可能性のある場所をチェックしつつ歩いていけばウッドチップのレース場で走り終えて汗をかいているケイジ。

 

 

 普段はアレだが、やっぱりこうしていると絶世の美女というのがわかる。いや、普段の暴走のギャップでそう見えているのか・・・?

 

 

 「おーすケイジ。精が出るなあ」

 

 

 「お、両さん。中川の兄ちゃん。見回りか?」

 

 

 「そんなところですね。見回りの際にどこを気を付けていくべきかと」

 

 

 「ケイジは練習か?」

 

 

 「練習ついでに技術を教えている。アタシなんやかんや結構海外にもいくからそのノウハウや技術を教えてな」

 

 

 麦茶を飲みつつカラカラと笑いつつ後ろでへばっている後輩ウマ娘たち。よく見ると周辺にもトレーナーや教官らしき人、そしてシリウスメンバーがちらほら見えることから海外遠征の多いチームシリウスでその経験を教えているのだろう。

 

 

 「まったく学生だってのに教師じみたこともやっていて大変だなあ」

 

 

 「ははは。その分内申点も高くなれば自分の技術の見直しにもなる。いい鍛錬よ。ところで両さん。どうよ。今から練習試合しないか?」

 

 

 「わしが?」

 

 

 「おう。人間も鍛えて秘孔、ツボを刺激したらアタシらに近いスピードもパワーも出る。何なら鍛えてアタシらに張り合う人もいるんだ。バクニュー大佐とか。両さんならアタシともいい勝負できると思うがどうだ?」

 

 

 ケイジの声に周りの視線も注目の視線が集まる。確かにまあ、人間の競争レースはある。実際わしならウマ娘にもやり合えるとは思うが、ケイジ相手には分が悪い。しかしまあ、せっかくだし。

 

 

 「うーん。わかった。やろう。距離は?」

 

 

 「マイル。アタシに勝ったら寿司職人の両さんに前田ホテルへの超神田寿司の出張とボーナスの打診を頼んでおくがどうだ・・・?」

 

 

 小声でひそひそという言葉にがぜんやる気が出る。よし。傾奇者がなんぼものだ! 負けるつもりはないぞ!

 

 

 「じゃ、ちょっとクールダウンがてら両さんのシューズ適当に買ってくるわ。待ってろよー!」

 

 

 笑顔で軽く流しつつ走っていくケイジをしり目にわしも準備運動を始める。

 

 

 「ちょっと先輩。流石にこの場での練習試合は・・・」

 

 

 「気にするな中川。ワシも何度かここの近くでケイジとも走っているし、ルドルフやエアグルーヴからケイジの暴走を抑えてほしいと言われている。監視ついでの見回りの一環だ」

 

 

 何の問題もない。実際周りのウマ娘たちも勝てるわけがないとは言いつつもわしのことを知っている子もいるようでどうなるかという声。あと何やら賭けをしている子がいたが個性豊かすぎないか?

 

 

 「うふふ。面白いことをしているわねえお巡りさん」

 

 

 「誰だ?」

 

 

 「私は安心沢刺々美。トレーナー資格もある笹針師よ。はい、トレーナー免許」

 

 

 目の前に現れた金髪ナイスバディの美女。マスクで顔を隠しているがまあ美女だろう。で、うさん臭さ満々の安心沢とやらは一応免許を見せてきている。うむ。中央トレーナーのものだ。

 

 

 「で、そのトレーナーがどうしたんだ。あいにくわしはトレーナー業はやらんぞ」

 

 

 「そうじゃないわ。むしろ、ケイジに勝つためのサポートと、可能性を見せてほしいの」

 

 

 「可能性?」

 

 

 「そう。可能性。人も鍛えればちょっとした原付に近い速度も出せるわ。ただ、今はそれどまり。だけどあなたのがっちりとした体に筋肉。相当鍛えているでしょう? どうかしら。ウマ娘の中でも頂点の頂点たるケイジへどこまでやり合えるか、笹針をブスッとさして、強化してみない?」

 

 

 なるほどそういうことか。たづなさんが言っていた不審者というのはこいつで間違いない。ただ、捕まえる前にして、ケイジに勝つためにも力を借りてもよさそうだ。ササバリシリーズなる人間のレースでもたまに名前を聞くほどの人物。ワシのボーナスのために頼るのもいいか。

 

 

 「よし、なら頼むぞ。お代は?」

 

 

 「先輩!」

 

 「あら、それはいいわよ。しいて言うのなら、このレースの観戦が代金よ。それじゃ、ブスッと♡」

 

 

 「ぐほぉ!」

 

 

 思いきりふっとい針を刺されてしまい痛さに驚く。が、なるほど。これは力がみなぎる・・・行けるぞ!

 

 

 「おーい両さーん。靴下と運動用シューズ。もう始められるか~?」

 

 

 ケイジが持ってきてくれた靴下とシューズを履いて準備よし。同じスタートラインに立って構える。スターターとゴール板は中川に頼んだ。

 

 

 「さーて・・・賭け勝負をするのは久しぶりだけど、負けねえよ?」

 

 

 「こっちこそ。ボーナスのために負けられん。文句なしだからな?」

 

 

 「位置について。よーい・・・・・・ドン!」

 

 

 そして始まる練習試合。ケイジのやつは最初から逃げ。既にウォームアップに後輩たちへの練習試合。そして今流してきたというのに足のキレが全く衰えていない。やはり凄まじい。だが、わしも負けるつもりはないぞ!

 

 

 「ウソッ!? ケイジ先輩の逃げにくらいついているわ!」

 

 

 「えーと・・・2バ身差。コーナリングでもくらいつくなんて!」

 

 

 「カレンチャンのウマスタで車を自転車で追いかけるお巡りさんがいたって言っていたけど、この人の事だったのかも」

 

 

 周りの声を聴きつつも自分の身体が吹っ飛ばないようにこらえながら力業でくらいつく。全く長い脚をすいすい動かしているというのに体幹がぴたりともずれずに曲がり切る。これを後ろから追いかけつつ見るのは堪えるだろうなあ。

 

 

 無事に最初のコーナーを抜けて長い直線に。この直線を抜けて最後のコーナーを曲がり、直線しばらく後にゴール。どこで仕掛けるか。わしもこらえてがすこし外に膨らんだと思うし、うーむ・・・

 

 

 「お姉さまに追いつきつつも冷静さを失っていないですね両さん。む・・・これは・・・」

 

 

 「大分ギャンブルをするようっすね」

 

 

 「ヒメ先輩、オルフェ先輩。両津さんは何をするんです?」

 

 

 「「おそらく次のコーナーで外から一気にさすようにコーナーを攻めてのイン突き」」

 

 

 流石シリウスチーム、そして多くの練習でもケイジを見てきたメンバーはすぐわかるか。ケイジは常に最内をキープしながらの大逃げ。くらいついてきたが、それでも今気持ち4バ身は離れている。なら、ケイジの十八番の一つをここで切るほかない。

 

 

 先行策からの追い込みの大外ぶっこ抜き。これが今打てる最善手。直線も半ばになってきた、ここだ、ここから加速を仕掛けていく!

 

 

 「ぬぉおおおおおおおおお!!!!」

 

 

 「来やがったな! そら・・・ギアを上げるぞ!」

 

 

 加速を始めていくのをケイジも即座に感じ取ってさらに加速を開始。もうここからは互いに全力をどこまで出せるか。ケイジの武器は他よりは鈍いが、長くキレ味のある脚を使えるのが強み。鉈の切れ味とはよく言ったもの。

 

 

 そこから加速もできるが、わしも負けるわけにはいかん。逃げ足、犯人を追いかけることで鍛えた足腰を見せてやる!

 

 

 「あと300・・・! 200・・・・100・・・!」

 

 

 ケイジにあともう少し、もう少しで追いつくぞ。唸れわしの脚! ボーナスは目の前だ!

 

 

 ゴールについたが、ケイジとは全く差がない。結果は・・・?

 

 

 「中川! 結果は!!」

 

 

 「結果は・・・同着です!」

 

 

 「「なにぃ!?」」

 

 

 ケイジと一緒に声を合わせてしまいつつカメラを見るがその結果はわしからみても確かにまったく差がない。ボーナスの事を差し置いても勝負で煮え切らない結果になるのは気にくわない。

 

 

 「ケイジ! もう一本やるぞ!」

 

 

 「おうよ! じゃあ今度は距離はダイスで決めての三本勝負! まだまだ暴れるぜ!!」

 

 

 「・・・・1400! じゃあ、スタート!」

 

 

 「「うぉぉおおおぉおおお!!!」」

 

 

 「もう完全に止めることが出来ない。二人の勝負の世界だこれは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・で・・・ぐほぉっ!! あのあと1400、2000、3600での三本勝負をやっても引き分けだったと。ぐふっ!」

 

 

 「あつつ・・・そうなんですよ。いやー・・・あつぐ・・・ぐ・・・う、動けない」

 

 

 「いやーいい鍛錬になったよ。ありがとうねえ。で、部長さんは腰とかの疲労がたまっているなあ。ほいさっと」

 

 

 あのあとの三本勝負も結局一勝一敗一引き分けで終わって両さんは無事全身筋肉痛。むしろよくここまでこれたな。なので針とお灸とシップでの治療ついでに大原部長には整体術で普段の身体の疲労を抜きまくりの鳴らしまくり。

 

 

 ベキバキと身体がなるたびにバリ受けの部長の肉体が歓喜の声をあげて老廃物と疲労物質をぶっ飛び放出させていくのを感じさせるのが楽しいのなんの。

 

 

 「ネットニュースにもなっていますね。傾奇者ケイジの新たなライバルは警察官!? と」

 

 

 「3600ではワールドレコードも出したからなあ。楽しかったわ。ほいっ・・・! そら。部長。具合はどうヨ」

 

 

 「うむ・・・生き返った心地、若返ったようだ。いやあ身体が軽い。ありがとうケイジ君」

 

 

 「ほい。水。整体術を受けた後は水をたくさん飲んで老廃物、身体の中の余計なものが尿でたくさん出るから出やすいように水を飲むんだよ。で、両さんもお灸が終わったし。ほいほい・・・」

 

 

 部長に水を渡してから両さんのお灸も終わっているから針を抜いてお灸の燃えカスを片付けてから汗を拭いてから水を渡して自分も一息。

 

 

 「中川の兄ちゃんもやる? 整体術」

 

 

 「うーん。嬉しいけど僕は一応かかりつけの整体院があるからそこで頼みますよ」

 

 

 ま、アタシのパワーで何かされると思えば不安、行きつけへの義理もあるかあ。あん? 何か外がうるさいな。

 

 

 「なんだ? そとがうるさい・・・」

 

 

 「両津さん! 是非私達と一緒にレースで勝利を!」

 

 

 「笹針の素晴らしさと可能性を世界に広めに行きましょう!」

 

 

 「貴方なら必ず世界を目指せます! さあさあ!」

 

 

 「いえ! こちらの人のレースのスペシャルマッチの特別枠で!!」

 

 

 「やめろ! わしはそっちの道には興味ない!」

 

 外からやってきたいろんな人が両さんを引き抜こうとしている。いやーだよなあ。特に海外の人が多いけどアタシに今まで負けどころか引き分けもなく4バ身以上で突き放しているからそれに引き分けできる人は欲しくなるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「先輩、アメリカでウマ娘と一緒に早さの可能性を目指す物語の映画に出ていますね」

 

 

 「あいつは出向早々にどこに行っているんだ」

 

 

 「ははは。ハジケてんねえ両さん。今度差し入れもっていくかあ」 







 『星の一族』はここの独自設定ですが、約100年以上前にイギリスから皇居に招かれて日本に帰化し、日本のウマ娘のレース、農業や関わる産業の発展に尽くしたウマ娘たち。史実ではイギリス等から譲ってもらった星旗、星友などの根幹牝馬たちがモデルですね。なのでメジロ家、前田家、テイオー、ゴルシ、スぺちゃん、ウオッカ、マチカネフクキタルあたりはその血を引く一族という感じです。前田家は自分の血筋を知っていますがだからこそ公言も公表もしません


 これ以外だと高砂(史実でナポレオン三世から譲っていただいた名馬)の一族などもいますよ。






 ~おまけ~


アナウンサー「スポーツ特番、東京オリンピック黄金世代組~!!」


志村「イェ~イ!!」


アナウンサー「今回の番組では東京オリンピックで活躍し今も躍進つづける次世代の選手たち、そしてその中でもスペシャルゲストがいます!」


志村「ボクのミコトちゃんのパパ、今はママで、同じドリフターズの仲間も来てくれるよ~」


蓮「お、おおお・・・そ。それはまさか・・・!!」


志村「この番組のためにあえて1年の期間を開けたのはそのゲストが自分が自分たる証明を用意するためだったからね」


アナウンサー「レースの誘導馬をやっていたところ突如ウマ娘となり、自身の存在を疑われましたが現役時代と同じく自身の剛脚をもって存在を証明! ドバイシーマクラシック、宝塚記念、ケイジ記念! KGⅥ&QES、凱旋門賞を大勝利してまさしくかの傾奇者だと世界に見せつけ、今はキジノヒメミコ、シンボリルドルフ、ライスシャワー、サイレンススズカ、シーキングザパール、シゲルスミオたちの教育をしつつ暴れまわる稀代のアスリート! ケイジさんです!」


ケイジ「ヤッホー♬ お待たせ♬」 
(バニーガール姿で出てくる)


一同「「「「「うぉぉおおぅおぉおおおお!!」」」」


志村「あらーそれはアウト―」
(ボタンを押す)


ケイジ「ほにゃっ!? おわぁー!!」
(発泡スチロールのたらいを頭にもらい落とし穴におとされる)


一同「「「「ワハハハハハハハ!」」」」


ケイジ「ちょっと志村さーん何すんだー!」
(落とし穴の中から声を出す)


志村「テレビでその衣装は駄目よーん。競走馬の時代よりも布面積は多いけどね。ほらお色直ししてきて」


ケイジ「ちょっとだけよー?」



~しばらくして~


ケイジ「ってわけでさ。イヤー驚いたもんだよ。夏祭りに脱走しがてら見に行ったら知り合いが熊に襲われそうになってんだから」
(Tシャツとジーンズに着替えた)


志村「本当に映像で見ても凄いからねえ。ほんとあの時はひやひやしたんだよ?」


ケイジ「もうそれは女将さんに耳にタコができるほどにいわれたから勘弁してくれよ志村さん」


蓮「あ、そういえば聞きたかったんだけど、えーと〇〇先輩も気になっていたけどドバイで首長をハリセンでしばいたってほんとなの?」


ケイジ「ほんとほんと。だから今年のドバイシーマクラシックの前にアタシがハリセンでしばいている映像が出たわけだし」


千堂(ボクシング選手)「あ、それなら女王陛下への挨拶に行ったのもあの茶会やムネシゲとかの縁で?」


ケイジ「そうそう。そのために千代田区のさる御方からも用意してもらったお土産をもって楽しく過ごしたよ。ふふふ」


志村「いやー場もあったまってきたところで、蓮君。ケイジに言いたいことがあるんだろう? ほれほれ。いっておきなさい」


蓮「あ、はい・・・その、ケイジ。競走馬時代はその戦いぶりとカッコよさにあこがれて、今はその美しさと明るさに惚れました! その・・・付き合ってください!」


ケイジ「えー!? いいよ」


アナウンサー「なんと! 日本最強アスリート、東京オリンピックコンビのカップルが誕生しました! 葛城厩舎から排出したアスリート二人。ある意味幼馴染のコンビ。素晴らしい場面です!」


~続くか不明~


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ウマ娘エピソード 35 砂

 今回はリクエストがあったので何んとなしに進めちゃう話なのと、超短い。ショートアニメ、動画を見る感じで見ると思ってくだされば。ゲームのタルマエちゃん基準で行きます。いやあ、あんな面白い子だとは。


 後最近の三冠牝馬はツンデレが多いんだなあと。デアリングタクトもジェンティルドンナも関係者にツンデレ言われるし、名牝仲間ならダイワスカーレットもそんな感じ。馬の性格も多種多様で最近はそっちを楽しんでいる日々です。


 アニメでキタちゃん主役おめでとう! 楽しみですねえ


 『アァア~~~~~~~ッンビリイィィイイ、バボォオオオ~~~~~ッッッ!!!! 奇跡か必然か! またまたとんでもないことをやってのけたチームシリウス! スピカ! リギル連合チーム!』

 

 

 ああーー・・・ドバイでも、日本でも頑張ってきて、その先の更なる頂点の一角に手が届いた。

 

 

 『エキシビジョンマッチレース5レース! BCシリーズレース14レース! しめて19レース! すべてがGⅠ、GⅠ級のメンバーがそろって行われたこの二日間にわたってのウマ娘たちの大祭典!』

 

 

 そう、苫小牧の魅力を、いい所を伝えるロコドルとしての使命、ウマ娘なら目指すべき頂点の一つ、GⅠ、それもダートの頂点アメリカで

 

 

 『その、その全レースを、アメリカウマ娘を、世界の精鋭たちを退けてケイジ、ルドルフ、ゴールドシップが率いる日本の三チームによる連合がすべて奪取! エキシビジョンも、BCシリーズも! 今年はすべて日本のものになってしまった!!!

 

 

 アメリカンドリームを手にしたのは大和撫子たち! これは完敗です!!!』

 

 

 BCシリーズ全レースを日本メンバーだけで制覇。掲示板トップ独占という、大快挙をもって苫小牧も、私たちのことも世界に見せつけられたからーーー・・・

 

 

 

 「・・・・はっ!?」

 

 

 目が覚めると。そこは見慣れた寮の天井。体を起こせばパジャマ姿。そうだった。あのBCレースを終えて、帰国して記者会見も終えてようやく帰れたトレセン学園。

 

 

 日本に帰って二日は経つのに。まだ実感がわかない。あんなとんでもない、前代未聞のチーム連合で挑む世界とのチーム戦をBCシリーズで行うというもので全勝。その後の海外の記者への対応も・・・

 

 

 「まぁーだ夢みたいな顔しちゃってまぁー」

 

 

 「ギャァアァアアァアアアアア!!? ケイジ! 貴女いつの間に!」

 

 

 そう。目の前に。自分のベッドの下からにゅるりと出てきたケイジも翻訳をして対応してくれたり、ぶっ飛んだ企画をアメリカに持ち込んだのも彼女。同じ同期として誇らしい親友であり、同時に超のつくほど頭の痛くなる問題児。

 

 

 思わず飛び起きてベッドから転がり落ちてその衝撃でよりしゃっきりと目が覚めてしまう。最高の夢に嬉しさが出る前に最悪の寝起きに変更させられるのが腹が立つ。

 

 

 「ったくよ~たかがちょっと潜入しただけよ。いいサプライズと、朝の風呂掃除を寮母、フジ姉から頼まれてやっていたんだ。ほれー朝風呂いくどー」

 

 

 「あっちょ! 引っ張らないでこの怪力女!」

 

 

 「ダートの絶体王者が負けちゃあいけねえって。いいもの用意しているんだからほれほれ」

 

 

 あぁああ~~!! 朝のゆったりとできたはずのかすかな時間が! 私のゆったりタイムがぁー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ・・・・一番風呂はやっぱり気持ちがいいもんだ」

 

 

 「ふぅ・・・なんやかんや楽しかった・・・で、ケイジ。いい物って何なの? あと、イチゴ牛乳ありがとう」

 

 

 朝風呂の掃除を終えて、そのままホッコーを風呂場に連れ込んで一番風呂。まだ人も来ていない食堂に座り込んで買っていたイチゴ牛乳で乾杯。

 

 

 「プハァー・・・おう。ほれ。これだよこれ。ダチに頼んで出来立てを回してもらったんだ」

 

 

 「な、これは・・・TI〇E!!? え、表紙に私が!!?」

 

 

 「この前のBCシリーズでの大暴れで記者会見やらインタビュー受けただろ? 面白いからホッコーちゃんとそのロコドルとしての特集を組んでくれたんだよ。アタシらチームシリウスの中でロコドルというのも面白いし、いま日本旅行が世界でもブームらしいし。

 

 

 これに、これでもだぞ?」

 

 

 「シモスポに、ヤンジ〇ンでも!? お、おぉお・・・どの新聞でも一面が私・・・」

 

 

 どの新聞、雑誌の表紙でも優勝トロフィーを掲げる、笑顔のタルマエ。チームの特集を組んでくれているけどダート世界最強のアメリカで暴れまくったナギコ、ラニ、そこに負けじと戦いその強さは世界どこでも通用するのだと見せつけたホッコータルマエ。

 

 

 この世界では二度目の挑戦でドバイのレースを勝利したスマートファルコンや後輩のコパノリッキーとのライバル関係や現日本ダート最強格の2人がドサ回りを欠かさないアイドルにロコドルと個性が強いの食いつくだろうと根回しをした甲斐がある。

 

 

 「ま、そういうこった。よかったなホッコー。今ウマッターでも苫小牧の話題で持ちきりだし、旅行をするという話や色々いいことが起きているようだぜ?」

 

 

 「ほわぁああ・・・あ、ありがとうケイジ。これ、何時のなの?」

 

 

 「まだ本屋さんにも並んでいない。今日の朝にようやく並ぶだろうな。言ったろ? 出来立てを回してもらったって。で、授業終わった後で松ちゃんと久保さんとこに会いに行け。しばらくは忙しくなるだろうし」

 

 

 「う、うん。わざわざありがとうケイジ。どれも大事にするわ」

 

 

 わははは! 頼めばこれくらい軽いってのに大げさだねえ。まあ、その笑顔と仕草を見れただけ幸いだ。

 

 

 「なら、後でアタシの持っている雑誌にもサインくれよ。ロコドルが世界のアメリカ、天下のBCシリーズでの大立ち回りに世界最高の雑誌の表紙を飾ったんだ。保管しておきたいもんだ」

 

 

 「ケイジ。おはよう。相変わらずいい仕事だった。気持ちがいいお風呂だったよ。タルマエちゃんもおめでとう」

 

 

 「おはようございますフジキセキ先輩! アメリカでも助かりました!」

 

 

 「はははは。アメリカのポニーちゃんたちも君たちに大集合していたからね。あのシリウスのダートの怪物。どこまでやるのかと注目されるのも仕方ない」

 

 

 「ナギコに負けないほど注目されていたからなあ。見ろよ現地じゃあまた来て今度はナギコやラニも入れたBCクラシックでやってほしいだとさ。あっちもリベンジと祭りに飢えているねえ」

 

 

 「私たちが来た時の新聞の見出しが『歴史的ハリケーン襲来』とか『ジャパニーズヒーローズ集合』だとか散々なものでしたねえ。あ、それとリギルも大分評価が変わったと聞きましたよ」

 

 

 「うん。リギルの海外遠征の実績が今回で大分増したからね」

 

 

 リギルは海外遠征はタイキとかエルとか数名でうち等ほど実績ないからねえ。

 

 

 「海外ではシリウスこそが最強でリギルは日本国内の内弁慶と言われる節があったけど今回でそれも払拭。後輩たちも暴れてくれたし、今回で海外遠征のノウハウが学べたとオハナさんも微笑んでいたくらいさ」

 

 

 「まーそもそもうち等が海外遠征が多すぎともいえるがホッコーやフカシらのおかげもあって国内外の芝、ダート問わずに戦っているからなあ。人数がいる分実績も増えているからしゃーないが」

 

 

 「でもそうは思えないほどでしたよ? みなさん英語ペラペラで。私なんてケイジやナギコちゃんに翻訳してもらったくらいでしたし」

 

 

 「そこに関してはアメリカを主戦場にしたナギコちゃんと5か国語以上しゃべられるケイジだからしょうがないよ。逆に今度リギルは欧州に遠征を考えていてね、その際はヒメちゃんを借りたいと考えているよ。通訳としてもアドバイザーとしても」

 

 

 「わはは。ついでにタイキとヒメのマイル勝負も見たいね。スピカのグランアレグリアとソダシもマイルは強いし、あそこでスピカ、リギル、シリウスの三つ巴の戦いをしたいもんだ。さてー・・・おばちゃーん! 今日のおすすめはなんだー!」

 

 

 三人で話していたら食堂のおばちゃんたちも仕込みがある程度できたので早速今日のおすすめの朝食を頼んでそのまま飯時に。案の定タルマエは同期に後輩たちにともみくちゃにされて、フジ姉はまたあちこちで後輩たちの目を♡にさせていた。

 

 

 アタシ? ジャスタとゴルシと一緒に飯つついてジェンティルちゃんとヴィルシーナとミレーネ、ブラウトとわいわいはしゃぎながら過ごしたわぁん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「というわけで、明後日に北海道苫小牧市でサイン会が行われる。色紙、タルマエちゃんが表紙を飾っている雑誌にサインをして、その上でミニライブを行ってもらう」

 

 

 「はい!」

 

 

 「あ、それとなんだけどメジロ系列のデパートと前田家系列のホテルで苫小牧名物のラーメンや特産品フェアをするんだけどその際のキャンペーンガール、CMにタルマエちゃんを起用したいとメジロアサマさんとシンザンさんが直々に申し出ている。どうする?」

 

 

 「勿論やらせてください!」

 

 

 「気合十分。旅疲れ、レースの疲労も心配だったけどこりゃあ大丈夫そうだなあ。それなら、ついでに北海道の地方レースでの顔出しや、地方番組でも出てほしいそうだし、やってきなよ」

 

 

 「え、大〇さんと番組も!? おぉおお・・・奇跡だわ。苫小牧にいろんなことが・・・!」

 

 

 「これもタルマエちゃんの努力あってこそ、苫小牧の皆さんのおかげだね。ふふふ。シリウスダート組も今はちょうど時間が空いているからプチライブでバックダンサーや手伝いをしてくれるようだから楽しんでいこう」

 

 

 「はい、松風さん!」

 

 

 「いよっし。なら飛行機はウチのプライベートジェットを使えばいい。次の祭りに行こう」

 

 

 さぁーて。苫小牧からの北海道活性化になるかもだし、愉快にやっていきましょう。




 タルマエちゃんの悲願成立の手伝いついでにケイジ達が動いた結果アメリカBCシリーズ蹂躙して帰っちゃった。ついでにルドルフのアメリカでのリベンジもエキシビジョンとはいえやり返してご満悦。


 チームシリウスメンバーでGⅠを手にしているメンバー、つまり全員はすぐさまゾーンに入れます。特に持続時間が長いかつ強烈のはケイジ世代。


 とりあえず、これでひとまずこの作品もお休み。今度はメジロラモーヌが実装されて、性格を理解したらメジロたちとケイジでやりたいですね。メジロ家の次期後継者筆頭と前田家後継者筆頭の座談会とか。ルドルフのお気に入りの女二人での会話とか。


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ウマ娘エピソード 外伝プロジェクトl'arc 次世代

 とりあえず知り合いの方々に凱旋門賞の話をかいてみたら? ということで外伝。本編とはケイジたちに絡んでいなかった佐岳メイが出ますよ。あと、ケイジ達はアオハル杯後に更に暴れていたらということで世界線としてはウルトラマンマックスみたいに微妙に違うかも。くらいの感覚で見てくださいな。


 あ、それと今回は軽い説明会なので、ぽへーとみいてくださいな。








 その始まりは、一人のもの好きのビッグマウスから始まった。


 「アタシは、シンボリルドルフを超える。超える伝説を作る! そして、その始まりの場所はこの場所、このライブからだ!!」


 その声は、ロマンはその想像を超えていく


 「日本史上初! 無敗の4冠制覇! 二人同時に菊花賞バが誕生!! 傾奇者ケイジ、黄金船ゴールドシップ! ともに前代未聞の大記録とレコードを打ち立てましたぁああ!!」


 傾奇者とその好敵手たちは日本にとどまることはなかった。


 世界は私達の庭。世界は遠い事なんてないと暴れまわり続けた。


 「ドバイDF連覇! 世界一のミドルディスタンスの強者ジャスタウェイ! 再び黄金の勝利を白銀の末脚でつかみましたあ!!」


 「ふふふ。シップ達には負けられないものね」


 「ドバイシーマクラシック三連覇! 何ということでしょう! 最強の皇女は日本のみならずドバイでも三度目の君臨! もはやドバイミーティングは彼女の庭園に過ぎないというのでしょうか!!」


 「ふん。ライバルたちがいるのですもの。これくらいはしませんと」


 「何ということだゴールドシップ! 年齢宣言解除のイギリスダービーを見事制覇して遅れたクラシック二冠目をまさかの海外で戴冠!! 黄金の国ジパングからやってきた金色の不沈艦は我々にその美しさを与え、その対価にダービーを持ち帰るようです!!」


 「イェーイピスピース!」


 「日本からやってきたロコドルガール、ホッコータルマエまさかのBCターフ大差をつけての大勝利! アンビリーバボー! 日本のダート、アイドルの実力は我々の理解を越えている! これが試される大地のパワー! これがホッキ貝パワーなのか!!」


 「皆~ハスカップを是非是非味わってほしいべ~試食会、後でするべよ~」


 「香港ヴァーズ連覇! 彼女は戦場を選ばない! 最強世代一角を手にする万能女王ヴィルシーナ! 美しきその輝きがまたもやここに花開きます!」


 「ふー・・・ほっとします。この瞬間は。勝利したとわかった時は」


 何よりも、その奮起を一番引き出すのに、一番周りを発奮させるケイジは


 「届くのか! いやもう決まった! これはゆるぎない! 届いたアァアアあ!!! ケイジ! なんと、なんと・・いくことでひょうひゃ!! は・・はふ・・お、欧州二冠、三連覇ァアアアァア~~~~~~っっっ!!!!!

 前人未踏! 誰も想像できない大記録を打ち立てたのは我らがケイジ! 凱旋門賞に日本の旗が、歴史に名を刻む大偉業とともに立ちました!」


 「どぉーよ。にっひひひ♪」


 誰も届かなかった欧州二冠三連覇を手に。全レース海外メンバーには4バ身以上をつけての勝利で一度も負けを許さない。その光景に誰もが熱狂し、そして一人の少女に火をつけた。


 「あたし様は佐岳メイ! チームシリウス、スピカのその強さ、ロマンに惹かれてきたものだ! 是非、一緒にこのプロジェクトl'arc  に力を貸してほしい! いずれ凱旋門賞、いや、海外のレースを戦えるような人材を日本で出すために!」


 「えーやだ」


 「なっ!!?」


 「今すぐ出すんだよ。というわけで、うちの新世代たちと海外飛び回ってもらうからはいよろしくぅ!」


 「は!? え! な、いやまて! いつの間にあたし様のパスポートを!? 行先アメリカ!? 凱旋門賞は・・・・放せェええええええ!!!」


 そんな出会いから、メイは魅せられた。金色の暴君に、砂の怪獣王に、青薔薇の姫騎士に、雷爆の襲撃者に、ブラックライトニングに、ワンダーウーマンに。凱旋門賞のみならず、世界中で距離を問わず戦えるウマ娘たちとの出会いと育成、そして交流。


 プロジェクトl'arc はメイの予想を大きく上回る結果を見せていき、そして。ケイジの愛弟子キタサンブラックが凱旋門賞を制覇してメイの目標をかなえ、そして現在


 「さて、三度目のプロジェクトl'arc  となるわけですが・・・」

 

 

 「今回の目標は凱旋門賞のみに絞る分、確実に取りに行きたいと思います」

 

 

 もはや世界中に名を知らしめたプロジェクトの会議。そこに呼ばれるトレーナーたちも中央トレセン学園に在籍する秀才、天才たち。だが、その空気は決していいものじゃない。

 

 

 (うーん・・・やっぱり、そうなるかあ)

 

 

 「そのために今回は前もってトレーナー諸君に声掛けとこの子ならという志願をしたいのですが。皆さんどうですか?」

 

 

 佐岳メイさんのその声に皆苦虫を噛み潰したような顔、あるいはどうしたものかと悩んだ顔を見せる。元リギル所属、今はトレセン学園の職員として生徒として、アスリートとしての視線と成長した職員の視線で今の生徒たちを見れるシンボリルドルフ、エアグルーヴも同様だ。

 

 

 ここまで皆が重い顔を見せるのはその成果を確実にしたいほどに今の世間の期待は重く、同時に認識のずれがある。

 

 

 「あまりいい声はなさそうですね。とはいえ、私の方も同じなのですが・・・」

 

 

 「うちの方でもキズナ。あーマエダのほうね。そっちはアメリカに行くということでそっちの勝負になるでしょうし、凱旋門賞はいかないでしょうしなあ」

 

 

 「ふむ。またシリウスに聞くことになるが松風さん。そちらにマエダノキズナ以外での有望株はいないですか?」

 

 

 「松風でいいですよルドルフさん。いやー流石に今のまま凱旋門賞にいくには資格も成長も手にしていないので」

 

 

 樫本理事長代理もこうして声をかけるも自分も同じと自嘲気に息を吐き、ルドルフさんからも声をかけられるも利褌さんと僕の意見は同じ。元ヒサトモ、現マエダノキズナはアメリカのBCシリーズ連覇を狙っていて凱旋門賞に興味はなく、素質を見込めるマエダアトラス、ミコト、マエダルージュ、マエダカレン、メジロトリガー、メジロブレイズらはまだデビュー戦もしていない子たち。リギルから移籍してきたオジュウチョウサンも障害は行けるが芝はGⅡがせいぜいとみんなが言う。

 

 

 僕らの言葉に皆一様にがっかりしている。正直な話ウマ娘に何らかの形で脳を破壊されたり、担当大好き、推しまくりのトレセン学園のトレーナーたちで自分の子ならいける。という言葉が素直に出ないのはそれほどに凱旋門賞の壁の高さを身に染みているのと、今の時代にその勝利を確実にできる逸材はいるかと言われると怪しいからだ。

 

 

 「困ったものだ。世間ではもはや凱旋門賞は自分たちのもの。いや、世界の大レースも手にできるウマ娘のアスリート大国としてのイメージが着きつつある。日本のウマ娘レースのレベルは遅れているというイメージを払拭は出来た。海外遠征も大成功した」

 

 

 「ですが同時に大成功をしすぎた。とも言えます。あの世代。まさしく怪物、伝説となるメンバーがそろい過ぎたあの時代に世間の意識と、今の学園のウマ娘たちのイメージさえも捻じ曲げてしまいかねないほどに」

 

 

 そう。このプロジェクトl'arcが始まる前にまずケイジ達の世代が世界中で暴れに暴れ、その無類の強さを誇るメンバーが国内で勝った負けたを繰り返す。まずケイジの欧州二冠連覇、ジェンティルドンナのドバイシーマクラシック連覇。ヴィルシーナのアルクォズスプリントから香港ヴァーズという1200~2400の自在な距離適性でのGⅠ勝利。ジャスタウェイがケイジを負かしてレコードも更新して世界ランク1位に。そのメンバー全員に勝利経験のあるゴールドシップ。フェノーメノ。

 

 

 海外のウマ娘を国内外でも軽く一蹴するメンツが国内のライバルには負け、そのライバルもまた強烈なメンバーばかり。そこで始まったプロジェクトl'arcが始動して以降はさらにその勢いは止まらなかった。

 

 

 アメリカトリプルクラウン、二冠、欧州、アジアのマイルをクラウン、ティアラ問わず確保。世界最高峰の障害レースグランドナショナルを連覇。欧州の有名なレースを荒らしまわる雷爆と金色の暴君。イギリスダービーを制覇後、オーストラリアでもメルボルンカップを手にし、ジ・エベレストも手に。ダート大国アメリカでも日本のダート娘たちが暴れて日本ウマ娘たちが交流戦をするようになって久しい。

 

 

 「まさかあたし様でもあの時代のチームシリウス、そしてスピカの二人がここまで規格外だとは思わなかったよ。世界中を飛び回り、そこで確実に成果を持って帰りそれはおまけと言わんばかりにレースでは周りをねじ伏せながらのデッドヒート」

 

 

 「一つのチームとそのライバルだけで1200~6907mの距離のGⅠを手に、芝も、ダートも、障害も制覇して世界各国のエースたちをまとめてねじ伏せた。更には歴史でも類を見ない同期で欧州二冠三連覇、ドバイシーマクラシック3連覇、阪神大賞典、宝塚記念4連覇。4レース全てを連覇と偉業を立て過ぎた。そのせいで今や世間では海外レースも日本のレベルなら軽く取れるという風潮もあるほどです」

 

 

 「それをいまさら違うというのはアスリートとして期待にこたえきれないということを自白するのに等しい。かといって応えようにもそのレベルに達することが出来る子がどれほどいるか」

 

 

 「しかし、今の学園に来る生徒とそのレベルの向上、レース興行やこの人気を落とさないためにも最低でも凱旋門賞だけに絞ってでも確保したい」

 

 

 「ええ・・・頭の痛い話ですが。この流れを断ち切るのはあまりにもったいないものであり、頑張ってきた生徒たちにも期待をかけてくれるファンの皆さんにも申し訳ない」

 

 

 「何より、ケイジの弟子のキタサンブラックも凱旋門賞を取ってこれで4年連続日本に凱旋門賞の勝利を届けている。5年目も。という声もありますしなあ。うちの娘が迷惑をかけていや申し訳ない」

 

 

 謝る利褌さんの顔は笑顔が隠し切れず、周りのトレーナーの皆も微笑えんで空気が和む。今は大変だが、あのメンバーでの珍道中と滅茶苦茶な成果に元気づけられた皆なのと、愛娘を愛する父親の顔はほほえましい。話は変わるが僕らはケイジ達と海外を飛び回ったせいで航空会社のポイントがたまりまくって休暇の旅行の際の旅費を大幅に節約できたので土産を買い込みすぎたりという一幕もあったがそれは置いておく。

 

 

 「コホン。まあ、なのでできれば今からでもいいので凱旋門賞に挑むウマ娘を選抜したいのです。以前のように皆に声をかけて我も我もとくる子たちも参加させたいのですが、今回ばかりは一点集中、少数精鋭で行きたいところですが」

 

 

 「あーそれなら一ついいです?」

 

 

 樫本理事長代理の言葉に手を挙げたのは沖野トレーナー。チームスピカのトレーナーであり、たった一人でリギル、シリウス、ファーストと戦えるウマ娘を育て上げる天才トレーナーだ。うちと良く練習している間柄だが、何かを考え付いたのか少しにやついた笑顔が浮かんでいる。

 

 

 「どうしましたか沖野トレーナー」

 

 

 「うちの子で一人今回の凱旋門賞へ挑戦する子を出したいです」

 

 

 その言葉に一同がどよめくも、沖野トレーナーのメンバーならと納得もいく。キタサンブラックが凱旋門賞を取っているし、ゴールドシップ、ジャスタウェイ、ダイワスカーレットにウオッカと海外遠征の経験も豊富。その彼が選ぶ子ならと皆明るい顔を浮かべた。

 

 

 「おお! その子は誰です? キタサンブラックを再度出すのです?」

 

 

 「いえ、サトノダイヤモンドに挑ませたいです。彼女ならきっと凱旋門賞でも行けるはず。ただ~・・・ちぃっとばかし条件というか、頼みがありましてねぇ」

 

 

 頭をかきながらキャンディーを咥えるトレーナーにメイさんも樫本理事長代理も興味深そうに耳を傾ける。

 

 

 「内容次第ですが可能な限り受け入れます」

 

 

 「どうも。じゃ、まず一つはチームシリウスからトレーナーの協力をしてほしいです。はっきり言って海外遠征のノウハウとその人脈の広さはすごいですし、俺も助けられましたから」

 

 

 「こっちは構わないよ。うちのメンバーも今は海外遠征がない分落ち着いているし、どんどん協力しようじゃないか」

 

 

 「私の方で事務などの雑務は請け負うとしよう。リギルにシリウスにも私は恩もある」

 

 

 一つ目の内容は僕らチームシリウスのトレーナーを貸してほしいとのこと。これに関しては問題がない。チームシリウスの特徴は利褌さんを中心に多くのトレーナーがいて海外遠征に対応できるのと、細かなケアが出来る。そもそも一緒に長く行動をしているのでその申し出も何ら問題ない。

 

 

 そしてそこにルドルフさんの申し出も助かる。ぶっちゃけた話、アスリート、アイドル、生徒会の仕事を一気にやっていたころより心なしか肌艶がいいのはいい伴侶がいる以外にも学生時代よりも仕事が減ったからだと僕は思う。

 

 

 「それじゃあ、二つ目ですが・・・ケイジを呼び戻して、ダイヤに指導をしてください」

 

 

 「「「「!!!!」」」」

 

 

 二つ目の発言にはみんなが驚いた。ケイジを呼び戻す。今の日本のウマ娘レースの人気を作り上げた世界最強。そして僕の相棒。真由美ちゃんとつなげてくれたキューピッドにして、どこまでも大きな贈り物をくれたターフの傾奇者。彼女がまたトレセン学園に来てほしいという発言に樫本理事長代理とメイさんはしばらく考え込み、ルドルフとエアグルーヴは嬉しそうな顔。利褌さんは爆笑。他は驚きつつも内心納得。

 

 

 僕も同時に嬉しく思う。引退後すぐオリンピックでも障害物競走部門で金メダルを取り、最近ではマジシャン、アーティスト、ダンサーとして世界中を飛び回っているケイジにまた会える。ハチャメチャな日々と、それ以上に楽しかった思い出、僕たちみんなの栄光の日々が目に浮かぶるようだ。

 

 

 「ケイジが・・・」

 

 

 「いや、キタサンブラックにオルフェーヴルたちの才能を見出して、あのラニを矯正させたケイジなら・・・?」

 

 

 「はぁ・・・警察とマスコミの対策のマニュアル。今の生徒会と照合して動かすべきだな・・・胃薬と頭痛薬の用意もしておくか。まったく・・・あのたわけは元気しているのか」

 

 

 「ふーむ・・ケイジの弟子がまた。となるかもしれないが・・・」

 

 

 「沖野トレーナー、あたし様は賛成するが、あなたほどのトレーナーがなぜケイジを求める? はっきり言って、サトノダイヤモンドの育成とバックアップを十二分にするのならチームシリウスの面々のノウハウと知識、サポートがあれば十分だと思うが」

 

 

 様々な意見が飛ぶ中メイさんの声に沖野さんも難しそうに顎を撫でながら少し難しそうな顔をして口を開いた。

 

 

 「んまあーダイヤの才能ならきっと凱旋門賞は行ける。才能は行けるんですがその引き出し方がどうにも思い浮かばなかった。こう~俺やシリウスの皆さん以外に足りないものがある。その刺激があったほうが彼女の宝石のような才能を磨きあげられると思うんですよ。何より、ケイジの指導力と、今のダイヤに足りないものを俺が考えるよりもズバッと出してくれそうな気がして」

 

 

 この言葉には皆一応の説得力を感じたようでなるほど考える。実際、問題児のラニを鍛え上げてアメリカのクラシック二冠を取らせたり、ライスシャワーの才能を開花。キジノヒメミコとメジロライトニングのコーナリング技術と逃げはケイジが叩き込んだ。

 

 

 そして基本練習はさぼる、奇行に走るゴルシですらケイジがいる時はやる気満々で練習に挑んで互いを磨き合い、弟子のキタサンブラックはGⅠ10勝目を上げてと絶好調。他のチームへ与える影響でいえばリギルやファーストもまさしく好影響を受けている。

 

 

 「ふむー・・・・・・彼女の機転なら・・・・・・ですが、問題は」

 

 

 樫本理事長代理も以前のアオハル杯でケイジがうまい具合に根回しなどがあって現在の地位とチームメンバーを守り、自分の考えに惹かれた生徒たちを鍛えている日々。だからこそケイジの参加によるダイヤちゃんの強化に踏み切りたいのだろう。

 

 

 「基本海外を飛び回ってるケイジが捕まるかどうか。予定が確保できるか。ですよね。ちょうどいいので今連絡してみましょうか」

 

 

 樫本理事長代理の懸念を見抜いた利褌さんがスマホでケイジの電話番号を出してスピーカーにして机に置く。しばらくのコールの後、通話がつながった。

 

 

 『あぁんらぁ~お父ちゃん。あんたも好きねえ~』

 

 

 「ちょっとだけよぉーん。って言わせんなケイジ。元気しているかー?」

 

 

 『こちとら何時でも元気マシマシよぉ! そばにアラ殿下いるけど話す?』

 

 

 「いやいや、殿下に時間を取らせるわけにはいかないしね。確かドバイでのショーだったか。まあーいい。一つ話があってね。ケイジ。トレセン学園で今からサトノダイヤモンドを鍛えて日本に5度目の凱旋門賞を取りにいかないか?」

 

 

 『わぁーお単刀直入♡ いやトレーナーらで頑張れ。松ちゃんにルナねえ、樫もっちゃんにおハナちゃん、沖ちゃんいりゃあ親父と変態共でやりゃあすぐ行けるだろ。アタシこれからベガスとニューヨークでショーの予定なんだよ』

 

 

 なんというか、男の声と女の声を出せる謎の声帯に相変わらずすぎる行動範囲に懐かしく思うが、ケイジもどこか引いている。そりゃあそうだ。自分の時代は終わり、次のスターたち、キタサンブラックやその後輩たちにバトンを託してレースからは身を引いたのにまた呼ぶというのはケイジからしてもなんだかなあーというのは。

 

 

 「もしもしケイジ。久しぶり」

 

 

 『おー松ちゃん久しぶり。いい加減真由美ちゃんと子供出来た? それと親父説得しといて』

 

 

 「ま、まだそこまでは・・・・じゃなくて。ぜひケイジ。もう一度だけトレセン学園に来てほしい。ケイジたちの作り上げた大炎を消したくない。つなげるためにケイジが必要なんだ」

 

 

 『だーかーらーよーキタちゃんがちゃんと凱旋門賞取って、ダイヤ以外にも才能ある子たちは来ているんだろ? そいつら鍛えればいいじゃねえの。天下の中央トレセン学園だし、アタシは気儘なOBとして遊びに来るくらいがいいんだがな』

 

 

 「ケイジ。私からもぜひお願いしたい。ケイジの言うことはもっともだし、大人がそろって頼るというのも恥ずかしい話だが君の生み出した流れと、それを絶やさないために。もう一度だけ君の台風のような暴れっぷりとその力、元気を貸してほしい」

 

 

 「私も助けてもらった身ですがお願いします・・・今から凱旋門賞にいく、いえ、確実にあそこで勝利できるという算段まで鍛え上げられる最後のピースが貴女です。どうか、お願いします」

 

 

 『・・・・・・・・・・・はぁー・・・分かった分かった。やってやろうじゃねえか。ダイヤちゃんを凱旋門賞を取らせる。ね。まったく女の頼みにゃ弱いのに。んなら松ちゃんに親父、樫もっちゃん。学園の方でもアタシの好き勝手やらせてもらうからな。

 

 

 まず栗東寮のフジねえに連絡とってアタシが来るのとアタシの知り合いの業者を入れることの許可、それとトレセン学園の食堂に連絡。前田グループの力でちょいと協力することがあるから。今から茂美社長とばあちゃんに連絡するからこれでな。長期休みが合宿になりそうだ』

 

 

 やる気になったケイジの返答にみんなワクワクした顔になり、メイさんも笑顔が浮かぶ。このプロジェクトが成功するかもしれないという希望。なによりあの台風のような思い出と元気をくれる彼女が帰ってくることに。なにより、僕が一番ワクワクしていた。またケイジに会える。それが何よりうれしい。

 

 

 『あー・・・それと、頼みがもう一つある』

 

 

 「なんだいケイジ?」

 

 

 『親父もみんなも、アタシをトレセン学園でしばらくかくまってどこにいるか教えないでくれ・・・特にうちの連中に』

 

 

 そういって電話を切ってしまうケイジの事情は後で利褌さんがケイジを狙う女性陣でいろいろ騒ぎが起きるのが嫌という返答に微妙な空気になった。頑張れケイジ。百合ハーレムを作るのか襲われるかはケイジ次第だと思うよ。




 ということで主役はダイヤちゃん。次回から出てきますがどうなることでしょうか。あとはまあ、あれだけ暴れまわればそりゃあ日本のウマ娘レースのレベルの認識も狂うよねって話。ケイジ達の世代も先輩世代も後輩世代もまさしく怪物だらけだったのとみんなでレベルアップしていたので。


 ケイジは現在キタサンからも色々な意味で狙われているので大変。下手にケイジがトレセン学園にしばらく滞在するとわかればケイジを慕うメンバーが突撃してきて学園内で百合園が開かれます。


 フジキセキ、ヒシアマゾンは寮長から寮母に。色々学生の性癖壊していそう。いや開発か。


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ウマ娘エピソード 外伝プロジェクトl'arc レギュレーション

 ケイジと一緒に戦ったチームシリウスの現在


 ・ジェンティルドンナ プイプイと一緒に次期財閥総帥候補として経営学、経済学、IT関連とスポーツ科学の勉強するために大学に。ケイジともよく顔を合わせている。


 ・ヴィルシーナ ジェンティルドンナと同じ大学に。父親やの職業と家のこともあって経済学とウマ娘レース、野球の知識を勉強中。


 ・オルフェーヴル アグネスデジタル、ベルノライトと一緒にトレセン学園でトレーナーの勉強中。ダートの育成が得意なようで地方と中央のトレセンを行ったり来たりしながら過ごしている。


 ・ラニ オルフェと同じくトレセン学園でトレーナーの勉強。気性も落ち着いてきたのでゴルシに似ている美貌と実績も相まってそこそこ人気。


 ・ライスシャワー 大学で民俗学、自然、生物学、歴史などを学びつつ絵本作家としてデビュー。ゼンノロブロイと今も同棲して一緒に創作活動に励んでいる。


 ・メジロライトニング 大学に通いつつドリームトロフィーマイル部門で活躍中。スポーツ科学を学んでいていずれはウマ娘レースのシューズの開発に関わりたいと思っている。


 ・マエダノキズナ(ヒサトモ) 現チームシリウスリーダー。アメリカ遠征を考えて調整中。欧州、とくにイギリスだと女王陛下とか星の一族関連のせいで感づかれるかもしれないので行きたくない。


 「まーそういうわけなんだわ。どうだろう。そっちの庭貸してくれない? おーありがとう中川の兄ちゃん」

 

 

 「は・・・はひふっ! ふっ・・・ふー!!」

 

 

 「んじゃまーサトノのおやっさんのほうにも連絡しておくのと下町の親父共にも伝えておくからよろしく頼むわ」

 

 

 ケイジの練習参加が無事に決まって早速ケイジとダイヤの練習が幕を開けた。日本じゃあ有名なトレーナー扱いされるときもあるが欧州、海外のレース経験、鍛える実戦は多くない。だからケイジに練習を任せつつどういう練習がいいのかと改めて見直すことにした。

 

 

 その結果が河川敷の草生い茂る坂をジグザグダッシュで走る。ダイヤがケイジに追いつかれたらアウト。というケイジのしていた練習をすることになったのだがケイジの方は電話をしながら息もさほど乱さずに走り逆にダイヤはヘロヘロだ。

 

 

 「ダイヤの方もスタミナがないわけじゃないけど・・・そういえば・・・」

 

 

 思い返すのはクラシック期最後の締めくくりにダイヤがキタサンを有馬記念で勝利した時か。逃げ差し、そしてあの中山レース場の心臓破りの坂でも逃げの切れを落とさなかった。ダイヤの末脚がどうにかとらえたが僅差。スズカでも鈍るあの坂を気にせず走り抜けるのはゴルシとケイジ達の世代くらいだが文字通りケイジに鍛えられた後のキタサンは見違えて最後にキレが落ちない。

 

 

 「その秘訣の一つがこれ。か。ふーむ・・・・お」

 

 

 ケイジ達の世代の跡の海外遠征はどうにもうまくいかない子が多い。その理由はなぜか。そのヒントの前にあるモヤが取れそうなあたりでジグザグダッシュの練習が終わったようで大の字で草原に転がるダイヤに水筒の水をぶっかけるケイジとダイヤに冷やしたスポドリを持っていく。

 

 

 「アバババババつめたぁあいですっぁつぶぶふふ!!」

 

 

 「ほーれアイシングに川にぶん投げるぞー」

 

 

 「やめんかケイジ。ダイヤもお疲れ」

 

 

 「お、サンキュ沖ちゃん。んー・・・染みる―♡」

 

 

 「はぁ・・・はぁ・・あ、ありがとうございます・・・んぐ・・・んぎゅ・・・ぷはッ! はー・・・はー・・・」

 

 

 今すぐにでも川にダイヤを投げ飛ばしそうなケイジを抑えつつ二人がスポドリを飲んでいる間クールダウンのためにダイヤ立たせて歩かせつつ汗を軽くふいてまだまだ元気すぎるケイジに視線を向ける。オリンピックで金メダルを取ったとはいえ現役ウマ娘を振り回すスタミナ、何より消耗が少ないのが流石と言える。

 

 

 この違いは何だろうか。どのレースでも全力を出してもけろりと回復する体力に心肺機能。怪我しらず不調しらずの頑丈さ。それはどこから来るのだろう。改めて気になることばかりとしか言えない。

 

 

 「さーてと・・・・・・・・この後は800メートルダッシュ10本するがその前にこの練習の意味を教えておくか。休憩ついでとこの練習のきつさを知ったうえで何でこれを必要とするか。な」

 

 

 「ああ、教えてほしい。坂ダッシュなら山の神社の方での階段ダッシュの方が傾斜もいいし、それじゃなくてなんでこれを選んだか。か」

 

 

 「お願いします!」

 

 

 「じゃーまずなんだが、日本の芝と欧州の芝の違い、もっと言えば、レースの土台の違いを言うか。

 

 

 日本のレースは欧州の名誉あるレースをモデルにしたレースを作りつつも、アメリカのスポーツとエンターテイメントの方を吸収して、土地の問題からもレース場の形状もアメリカをモデルにしている。だから国内のレース場は様々な差異があれどまあ欧州に比べると大人しい形状ばかり。ここまではいいな?」

 

 

 二人ともそろって頷く。そもそもアメリカでダートレースが多いのは土なら手入れもしやすいし少し均せばすぐにレースもできて管理費用も整備時間も短い。だからこそ一つのレース場で短いスパンにレースを詰め込んでも問題ない。

 

 

 逆に欧州だとその形状も凄いのだが、ケイジの挑んだKGⅥ&QESの開催するアスコットレース場などは排水、水はけの悪さで集中豪雨によって大レースが中止になるということも何度かあった。あちらの場合は自然の中に柵を立ててレース場にしたというものが多い故か。

 

 

 「逆に欧州は自然に近しいレース場の芝で着飾ったウマ娘たちのレース、ちょっとした舞踏会や興行をゆっくりと楽しんでいくという文化、考えが今も残っている。レース場の質改善とかでだんだん走りやすくなっているが今も深い芝、柔らかい土。石ころ混じるの当たり前で中山レース場の心臓破りの坂、京都レース場の淀の坂が可愛い丘と言っていい傾斜も普通だ。

 

 

 ヒトミミのスポーツみたいに均一になりつつある日本の芝は固いし短い。そこに欧州のレース場となればたとえダートやウッドチップで慣らしたとしても芝で地面をとらえきれず、あるいは石、雨でむき出した土に砂利で思わぬ減速をしたり、心配して無意識のうちブレーキがかかる」

 

 

 「つまり・・・今の日本のウマ娘レース環境。とことん設備を整えて常に最新技術を取り入れる中央トレセン学園だと」

 

 

 「スピード、距離の幅広さを鍛えるのなら世界有数だろうけど、欧州のレース場への適合、レギュレーションはむしろ遠のいている。同じ競技、距離なのにまるで別物になっていくだろうな。ただ、これはトレセン学園が悪いってわけじゃなくてむしろスポーツ科学、技術を取り入れるのはいいがそこへの理解、鍛える技術も抑えないといけねえのは確かよ」

 

 

 納得がいく。ケイジ達の世代は学園の外で川で泳いで追いかけっこをしたり缶蹴りをしてあらゆる場所で追いかけっこ。山狩りをしたり河川敷で走り回ったりとレース場、練習場所以外を問わずどこでも愉快に走り回っていた。その中での体幹の鍛錬と姿勢のシフトチェンジ、足遣いの変化がKG対決の皐月賞でのワープと大逃げの対決、菊花賞での常識破りの戦いを産んだのだと。

 

 

 「ダイヤちゃん。今からやることは欧州の角度ある坂道を、芝を、柔らかい土を気にせず走れる足を一から作ること。そして欧州の角度あるカーブでも問題なく走れるひねりに強い体づくりと経験の蓄積。最後に凱旋門賞でぶつかるフォルスストレート、最後の長い直線と二度の加速チャンスで切れ味が鈍らないための鍛錬をしていく。

 

 

 沖ちゃんもダイヤちゃんも付いて来いよ?」

 

 

 ギラリと目を光らせるケイジの眼には現役時代に何度も何度もしのぎを削りライバルたちじゃないとおじけづくほどの戦意を宿していた。その目に俺も燃えるものを感じていた。

 

 

 「もちろんです! ケイジさん。私もキタちゃんと同じ舞台で勝たせてください!」

 

 

 「よろしく頼むケイジ。お前さんの技術をとことん教えてくれ!」

 

 

 「おうよ! いいか、欧州の深い芝なんて言っても所詮は草!! 踏み越えて、喰らいつくしてもうアタシらのものにする勢いでやるんだよ! こうやってヤギさんの様に~!! んぐむぐもしゃも!」

 

 

 そういってガッツポーズをしたケイジは、雑草を食べ始めたと思っていたらいつの間にか

 

 

 「どー見ても牛だー!!」

 

 

 「というかケイジさんが牛になった~!!?」

 

 

 見事なホルスタインになっていた。いや、ケイジのスタイルは元からすごかったが。

 

 

 しかもその牛はそこら辺にあった木の実や草を添えて奇麗なサラダのようにして食べ始めた

 

 

 ((そーやって食べるの!!?))

 

 

 「私たちヤギはね。木の実や青草なんて新鮮な野菜を食べる機会がある子は少ないのよ・・・!」

 

 

 「あなた牛さんですよ?」

 

 

 「誰だテメー! ノッキング!!」

 

 

 「だから私ヤギだってー!!」

 

 

 しゃべるヤギ? 牛? になっていたはずのケイジがいつの間にやら現れて牛相手に拳を叩き込んで一撃で気絶。あれ? じゃあこの牛? は一体・・・???

 

 

 「今日の晩飯これにするか。よし。休憩終わり。沖ちゃんこれトレセン学園にもっていって。アタシダイヤちゃんと800メートルダッシュ10本しながら学園に戻ってくるから」

 

 

 「お、おう・・・」

 

 

 何というか・・・俺は考えるのやめていつの間にか手配していた畜産業者さんの軽トラに乗って今晩のご飯は贅沢だといいなあと思うだけにしておくことに。

 

 

 久しぶりのビフテキとテールスープは美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ってわけでして。芝への対応と坂道への強さ、コーナリング技術と直線での場所取りと速度の優位性確保の練習を欧州向けに鍛えている感じです」

 

 

 「あー・・・そういえばあたし様も練習を見ていても獣道で追いかけっことか、どこかの忍者漫画みたいに木々の間を飛び回ったり山道歩いたりとか、普通のレース場は愚か練習場以外の場所の練習も凄かった・・・フランスの森で遭難しかけた時は死を覚悟したよ」

 

 

 「私の時よりも整備の技術の進歩が逆に欧州を遠ざけていたとは・・・温故知新。最新を知りつつも昔の良い所を見返すのは必要かもしれませんね。まあ、かといってサバゲ―を始めたり鮫狩りをしても困るのだが」

 

 

 ケイジお手製焼肉弁当を昼食にしながらここ3日間の練習の内容とその意味をメイさん、ルドルフさんと話ながらの少し長めの休憩時間。メイさんにはその節は申し訳ないと頭を下げておくのだが。

 

 

 「そして今日で牛肉も食べ終るのでダイヤはしばらくチームシリウスの部屋で寝泊まりをしてもらい、さらにフランスの食事になれてもらうためにフランス産の野菜に果実に肉、調味料を取り寄せてケイジが食事の用意。

 

 

 練習パートナーにキタサンブラックを。マッサージやケア、勉強会はチームシリウスのメンバーでやってくれるようでして。いやはや頭を下げっぱなしですわ。練習内容の意味と効果は利褌のおやっさんがしてくれるようです」

 

 

 「ふむ。つまりあの世代を、メンバーを鍛え上げたトレーナーリーダーとその愛娘にしてチームのまとめ役が用意した渾身の凱旋門賞専用練習プログラム! いやはやまったくそれはいいなあ! ロマンが届くかもしれない。チャンスを取れるかもという希望が増えるのは大変結構」

 

 

 チームシリウスと何度も練習をしても分からなかったノウハウや経験を文章化、イラストとデータにして分かるというのはみんなも興奮する内容でやっぱりメイさんは膝を叩いて大喜びするほどだ。逆にルドルフさんはその経験やノウハウがあればと過去の苦い海外遠征のことを思っていたかもしれないが・・・

 

 

 とにかく、ここからどうなるのか、どう鍛えていくのかトレーナーとしても大変楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガンガンガンガンガンガンガン!!!!!!

 

 

 「ふあひっ!?」

 

 

 「起きろー!! 朝だぞお前ら―!」

 

 

 「ん~・・・う・・・おはよぉございますケイジ師匠・・・ダイヤちゃん・・・んっー・・・っふ!」

 

 

 お玉とフライパンを叩く豪快で、私たちウマ娘の頭の中まで鳴り響く音で飛び起きてしまう。ケイジさん、キタちゃんでチームシリウスの学園内で所有する筋肉ハウ・・・建物。で寝泊まりが始まってからの数日が立ちますがこの音は驚いてしまいます。

 

 

 キタちゃんはなれているようで眼をこすりながらぺしぺしと頬を叩いて目を覚まして着替えてジャージ姿に。私も着替えていきますが連日のハードな練習は中々疲れが抜けません。

 

 

 「キタちゃん。今日もそこのデカパイお嬢様引きずり回してこい。時間は・・・30分。その後に朝風呂用意しているから浴びてから来いよ。うまいもん食わせてやるから」

 

 

 「はい! さ、ダイヤちゃん朝のウォームアップにジグザグダッシュいくよー!」

 

 

 「あ、待ってキタちゃん! ケイジさんも行ってきまーす!」

 

 

 タイマーをセットして首に下げてキタちゃんが私の手を引いていくので私も急いで着替えてシューズを履いて飛び出す中エプロン姿に何でかパンチパーマのケイジさんが手を振って見送られて私たちはようやく空が白み始める中走っていく。

 

 

 「行ってらっしゃーい! さーて・・・んーおやつはヨーグルトに。なにしよっかな~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はっはっは・・・・ダイヤちゃんあと5回上り下りしたらいい時間になるよ。ファイト!」

 

 

 「ふっ・・・くふっ・・・! ふー・・! ふ! んぐ・・・ふ!」

 

 

 毎朝と昼の練習のスタートの日課になった河川敷ジグザグダッシュ。どうにかこうにか慣れて足が滑りそう、草が絡む感触で鈍るのはなくなってきましたがそれでもきついものはきつい。

 

 

 たいしてキタちゃんは息を少し切らしているけど余裕がある。後ろからいつもの元気でよく通る声で私を励まして背中を押しつつ追いかけてくる。

 

 

 やりこなす。そう頑張って長く感じるラスト5回の深い雑草の坂道の上り下りのダッシュを終えると同時に20分のタイマーがなった。

 

 

 「流石ダイヤちゃん。ぴったりだね! えーと・・・はい。ダイヤちゃんはストレートティーでいい?」

 

 

 「あ、ありがとうキタちゃん。ぷはー・・・い、生き返ります」

 

 

 「ケイジさんが小遣い持たせてくれているんだよね。歩いてクールダウンしながら飲んでおけって。にしても流石ダイヤちゃん。本当に慣れるのが早いよ!」

 

 

 ニコニコ笑って歩くキタちゃんを見て内心その強さがうらやましくも思う。クラシックを越えてキタちゃんと有馬記念で勝負して勝った時お父様たちも大喜びした。ケイジさんの弟子で、凱旋門賞ウマ娘のキタちゃんに勝てた。私はそれくらい強いんだって。

 

 

 本当にうれしかったし、この後も勝った負けたをできると思っていたらそこからのキタちゃんの成長はすごくて、私は喰らいつくのに精いっぱいだった。そして今回の鍛錬。キタちゃんを見て、一緒に鍛えてくれている沖野トレーナーもキタちゃんの経験をもってもケイジさんが必要だといった。

 

 

 私にはまだ足りないものがある。キタちゃんに一度勝っただけで思いあがっていたかもしれない私に突き付けられる練習とヘロヘロな私と元気なキタちゃんを見れば一目瞭然。キレる脚や速度はあってもそれをどこでも使える技術もスタミナも足りていなかった。それを分かると同時に心配もある。凱旋門賞はどこまで大変なのだろうかと。

 

 

 「・・・ねえ。キタちゃん」

 

 

 「ぷぁは・・・はー・・・朝日がまぶしい・・・ん? どうしたのダイヤちゃん」

 

 

 「凱旋門賞。どこまで私行けると思います?」

 

 

 「うーん。正直私からは行けると思うけど、もう少し言うとね?」

 

 

 「言うと?」

 

 

 「ケイジさんが行けるといった練習をこなしてきている。沖野さんも認めている練習をしているダイヤちゃんは必ず届く実力を持てるからきっと大丈夫! 今はダイヤちゃんの才能を磨くためのカッティング、研磨の時間だからさ。辛いときは私が支えるからダイヤちゃんも心配せずにがんばろ!」

 

 

 にっこりと笑うキタちゃんの笑顔に笑い返してそうだと納得していく。凱旋門賞ウマ娘たちが大丈夫と。私を信じてくれているのだから不安は考えないように今は練習に打ち込んでおこう。それに、ジンクス破りを頑張りキタちゃんのライバルなのが私。不安な顔は似合わないですよね。

 

 

 「・・・うん! ありがとう。キタちゃん♪」

 

 

 「どういたしまして♬ ささ、早く戻ろう。お風呂の時間とご飯の時間なくなっちゃうよー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふーとありあえずスッキリしました。えーと。ここですよね?」

 

 

 今日のトレーニングが終わり、ケイジさんからゆっくり風呂につかるのは後にしてシャワーだけにしてからマッサージを受けてもらうとのことできましたが・・・? 頭を置く部分と、その少し下に何かの隙間・・・あー・・・胸を潰さずに乗せる場所ですか。

 

 

 ケイジさん、ナギコさん、ヒメさん。大きいですものね。

 

 

 「はふ・・・はぁー今日も疲れました」

 

 

 「いんやー気持ちよかった」

 

 

 あ、キタちゃんも。二人ともマッサージ台に座ったところで扉が開く。

 

 

 「どうも皆さんご無沙汰しています。悶絶ウマ娘。専属調教師のタクヤと申します」

 

 

 「よーししっかり汗流したな。ならほれ、脱いで。スポブラとバスパンは脱いだらお仕置だからなぁ?」

 

 

 そこには相変わらずのガチムチ肉体のタクヤさんとヒゲクマさんがやってきた。バキバキと指を鳴らして威圧感ある二人に言われるままにスポブラとバスパンになって台でうつぶせになる。

 

 

 「どーれ・・・んー・・・ダイヤちゃんガッチガチだなあ。まったく。知らぬ間にため込んでいたのをドバーっと出してやらにゃ」

 

 

 「あだだだだだぁあああ!!? いっだ! あぁああああ!?」

 

 

 「んーやりがいがあるぜー? キタちゃんは相変わらず定期的に柔軟しているからか、いい感じだ」

 

 

 「ンッ・・・くっ、ふ! でも、やっぱりタクヤさんの整体術は効きます・・! 久しぶりですよぉ・・・あだだっ!」

 

 

 身体を思いきり曲げたり、ツボを押しながら始まる二人の整体術。ツボ押しとか、整体術は身体の不調とか、疲労とかが痛みに出るというけど、これは・・・あばばばっ!!?

 

 

 「おいおいこれは相当だなあ。指二本押し込んだだけでヒイヒイ言うほどってダイヤちゃん。もっと力抜いて~そうそう。いいねえ~」

 

 

 「あ・・・あづづっ! あー・・・アー!? あ、気持ち・・・ほふ・・・ぉ・・ぉおお・・・あー・・・ほぐれ・・・て・・・はにゃぁ・・・」

 

 

 「よーしそれなら、今度は足ツボと行くかあ。蹴るんじゃねえぞダイヤちゃん。ゴリゴリ行くからよー」

 

 

 心地よい感触とマッサージに疲れが溶けていく感触を味わい、天国かと思っていた束の間、今度は足つぼマッサージが始まりまたもや激痛に思わず声が出ないほど。

 

 

 「っっっっ!!!? !!!」

 

 

 「だ、ダイヤちゃんファイト―! またもう少ししたら気持ちよくなっていくからー!」

 

 

 「あ、タクヤさーん。持ってきました」

 

 

 「おーありがとう真由美ちゃん。よーしじゃあケイジもするかあー」

 

 

 「おう。頼むわ」

 

 

 キタちゃんの方はある程度の刺激とツボ押しでいいのか、タクヤさんから軽く肩もみや足ツボを軽く刺激してもらいつつエールをもらっていたら真由美さんも入ってきて大量の針の入った箱を置いて広げる。針灸までしてくれるようでケイジさんを見ると

 

 

 「すでにハリネズミだー!!?」

 

 

 「あー効くわぁ・・・腕を上げたねえタクヤさん。もう、気持ちよくて気持ちよくて溶けちゃいそうだよ~」

 

 

 言っている間にドロドロに溶けて霧になったと思えば復活していくケイジさん。いや、どんなマジックを見せているんですか!? しかもその霧が針を奇麗に抜いてアルコールの入った容器に入っていきますし。

 

 

 「ありがとナス。ということで今度は背中にいくぞー。キタちゃんもやるからもう一度うつぶせで転がって。真由美ちゃん頼むわ。俺とケイジは軽めにあげて料理の仕上げしてくる」

 

 

 「了解です。じゃーキタちゃん、力抜いてねー」

 

 

 「あたしは疲労少ないし、一部をさくっと刺してくれタクヤさん。あと今晩の酒のつまみ何がいいよ?」

 

 

 「あだだだ! あー・・・きもち・・・いだっだだ!!」

 

 

 この後、天国と地獄を交互に味わう時間を実に1時間。その後のお風呂では思わず寝ちゃいそうになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「んふぐ・・・・・トイレトイレ・・・」

 

 

 最高においしい晩御飯を皆さんと一緒にして、整体、針灸後は身体の毒を出すために水をたくさん飲むようにと言われていたので飲んだのですが、どうにも飲み過ぎたようです。夜中にトイレで起きてしまうのは何時振りなんだろうかと思いつつまだ間取りと灯りのスイッチがはっきり覚えていないのでふらつきつつトイレに。

 

 

 「んふー・・・ね・・・ねむぅい」

 

 

 ただ瞼が重い。疲労抜きと美味しいごはん。ケアも十二分で人材もばっちりいる分、眠りもかなり深いのかも。トイレで起きたけど、これなら大丈夫そ・・・

 

 

 「ダイヤちゃーん?」

 

 

 「ピゥッ!!?」

 

 

 目の前に来た黒いウェーブのかかった長髪と黒いぐるぐるの瞳と白い肌の顔が飛び込んできて思わず飛びのきつつ変な悲鳴を上げてしまう。

 

 

 バクバクと心臓がなりながらよく見ると真由美さんが本を片手に私の顔を覗き込んでいました。失礼なんですが、一瞬お化けに見えてしまいます・・・その、普段はあまり気にならないのですが夜だと尚更に風貌がそう見えてしまいまして・・

 

 

 「大丈夫? 眠れないの・・?」

 

 

 「あ、ああいえ。そのトイレで」

 

 

 「ふふふ。水沢山飲んでいるものね。じゃ、おいでー」

 

 

 明かりをつけてくれてそばの椅子に腰かけて本を読んで私を待っていてくれた真由美さん。なんでも、保護者兼チームシリウスの責任者ということでトレーナーたちとケイジさんで計3人もここに寝泊まりして警備と私たちの様子をチェックしてくれているようで。

 

 

 夜中まで真由美さんが起きていたのはついつい本を読みこんでいたけど灯りは自分の部屋のみにしていたそうです。

 

 

 キタちゃんもいて大変ありがたいのですが・・・真面目にチームシリウス。ケイジさん以外も変わった人の多さを改めて感じますよ・・・




 欧州のレース場。調べると水回り悪すぎて大レースが中止とかそういう話も結構あったりして驚きますよねえ。


 ケイジの言う練習は言ってしまえばバイクや車のタイヤのチェンジ、レース形式への対応だと思えばいいと思います。ロード用からオフロード用に変えると思えば。


 ケイジ以外にもヒゲクマ、タクヤ(淫夢) 真由美(ポケモンカロス地方のオカルトマニア)と見た目的にも変な人多いよチームシリウス。でもそいつらを振り回すオルフェやラニ、そしてナギコ。サトノダイヤモンドも不意打ち喰らえば驚くよねえって。


 ヴェニュスパークは次回以降に。


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ウマ娘エピソード 外伝プロジェクトl'arc 交流って大事

 ヴェニュスパークちゃんのモデル元がもしトレヴだったらこっちの馬時空ではケイジが連覇を阻んでボコボコにしているんですよね。しかも最初はオルフェたちと。次の年には同期と後輩引き連れて。師匠といい色々と日本に因縁があり過ぎませんかねこの師弟。


 評価人数300人到達ありがとうございます! いつも応援、感想も大変励みになっております。


 あ、それと最後にプチアンケを用意しますので良ければご意見くださいませー


 「はむ・・・んー・・・! このバケットとソースすっごく美味しいですケイジさん! サトノ家のシェフ以上ですよ!」

 

 

 「スープもすっごく染みて・・・はぁー・・・癒されます」

 

 

 「おーどんどん食べろよー低カロリー高たんぱく。栄養もばっちりの飯だ」

 

 

 ダイヤちゃん凱旋門賞への改造計画も進んで秋から冬になるころ。ダイヤちゃんも河川敷ジグザグダッシュやひねりに強い体づくりで根を上げることなく過ごせるようになってきて飯もたくさん食べてくれてと好調な勢いをキープ。

 

 

 「いやー・・・俺までご馳走にあずかって悪いなあ」

 

 

 「気にすんな。タッパーと鍋にスズカの分も用意しているから持って帰っておいて。あっためなおせば問題ないし」

 

 

 そして沖ちゃんも飯を食わせつつ嫁のスズカの分のスープと料理をそれぞれタッパーに鍋に突っ込んでおいておく。この手合いの野郎は仕事とウマ娘を育てることに突っ込んで私生活壊れるから真面目に自分の教え子かつ嫁で私生活も幸せとある程度財布に余裕持たせるように縛っておくようスズカにけしかけて正解だった。

 

 

 四人でがつがつ飯を食いつつ一息入れるころ合いになったのでお茶のおかわりを用意してと。

 

 

 「さーてと。ここからはダイヤも何んとなーくで聞いてほしいがあたしとキタちゃん、シリウスの補助メンバーはあくまでもダイヤちゃんの凱旋門賞へ行けるために実力をつけるための助っ人。だからそれまでのローテに関しては沖ちゃんとダイヤで決めてほしい」

 

 

 「まあ、それに関しては最初から言われていたからな。とりあえず冬はダイヤは有マ記念、キタサンは香港に挑んで、そこからは1~2月まではレースはない。3月にドバイミーティングにダイヤは参加して、キタサンは大阪杯に出走させたい」

 

 

 ほーん。キタちゃんは国内で鍛えて、ダイヤちゃんに関してはまず国外の大レースでアウェーの大舞台での経験を積ませていくと。ドバイなら芝質もまあ日本勢はある程度戦えるレベルだし。

 

 

 しいて言うのなら、欧州のメンツはあんまり出てこないからあっちの敵情視察をできねえのが残念だが、欧州のライバルがいない分いいと考えるかあ~

 

 

 「で、宝塚記念にも参加するか?」

 

 

 「ああ、ただしそこに出るのはキタサンブラックだ」

 

 

 「はい! あ、でもダイヤちゃんは?」

 

 

 「ダイヤはケイジ記念に出てもらう。キタサンは昨年勝っているからというのもあるが、出来る限り万全に整えてから一度欧州に挑む前にどれほど仕上がっているかを見たい」

 

 

 「・・・・・・・ゴクン。んむ・・・はい! 頑張ります!」

 

 

 「嬉しいけど、そうなると春三冠はキタちゃんが、ドバイからケイジ記念まではひたすらに煮詰めていくと。大分大事にしていくねえ。安田記念は出したら? いくら弟子とはいえ贔屓しねえから実績は積んでおかないとはじくぞ」

 

 

 「ふーむ・・・そうするか。試合勘を鈍らせるのももったいないしな。ダイヤ。行けるか?」

 

 

 「もちろんです。ケイジ記念は世界中からの怪物、天才がやってくるレースですもの。凱旋門賞に負けないほど頑張りますから」

 

 

 よしよし。これなら休みが開いている分色々私の仕込みと用意も活きてくるな。中川の兄ちゃんに頼んでおいたやつも使えそうだし・・・

 

 

 「うっし。それならだが、2月までは新しく用意した特別コースを使用する。休憩時間は増えるけどその分練習強度と密度は上がると思え。

 

 

 で、4月くらいからは北海道で過ごしてもらう。レースの移動の際はうちの方で手段を用意しておくのと、宿泊費、用意諸々学園が負担してくれるから気にすんな。とりあえず基礎に関しては松ちゃん達からも聞いているがアタシから見てもいいー仕上がりになっている。

 

 

 だから次のステップに進んでいくからそのつもりで。沖ちゃんはスズカにしばらく家を空けることを話しておけよー」

 

 

 イカのサイコロステーキをつまんで指パッチンで火をつけてアロマをキセルで一服。んー・・・オレンジ味。抹茶味にしておくべきだったかなあ今日の気分。お? 終わったか

 

 

 「じゃ、今日の話はこれでおしまい。細かな日程は後で松ちゃんや親父とすり合わせていくけど何となくこの感じで行くから。

 

 

 さー今日のおやつはガトーショコラとアップルパイ。ダイヤとテイオーの好きな紅茶な。お代りもいいぞー」

 

 

 「「ヤッター!!」」

 

 

 「うぉー・・・いい香り。これもタッパーに詰めていいか?」

 

 

 大喜びするキタサトとスズカへのお土産に欲しがる沖ちゃんを見てアタシは笑顔になる。ばあちゃんからホテル稼業に関わってほしいと言われているけど、料理関係なら関わろうかしらねえ。ふふふ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「えーと・・・時間どおりに来ましたけど。キタちゃん何か聞いています?」

 

 

 「ううーん? 授業終わったらドリンクとか道具用意しておいてッてだけケイジ師匠から言われていて」

 

 

 「大丈夫だよ二人とも。そろそろ来るはずだから」

 

 

 ケイジさんから言われて始める新メニュー。いつものジグザグダッシュもせずに授業終わりにすぐに練習道具とドリンク、蹄鉄の交換を用意してといわれて学園の門でキタちゃんと松風さんと待っています。

 

 

 

 「おまたぁー♡」

 

 

 目の前に泊まるワンボックスカー、そこから顔を見せるのはケイジさん。にっこにこで手を振って微笑んでいます。

 

 

 「さ、荷物もお前らも詰め込んでのったのった。少し遠出するから。松ちゃんもアタシがいない間運転できるように道を一応覚えておいてね。あとこれカードキー」

 

 

 「ありがとうケイジ。まさかケイジに運転してもらう日が来るとは。それとカードキー?」

 

 

 「新品の香りです~ケイジ師匠の新車です?」

 

 

 「内装も豪華ですね~ふふふ」

 

 

 「スーザンママからシリウスとスピカにプレゼントで貰ってな。まー息子の会社の宣伝にもなるから気にせず乗り回す。じゃ、いざしゅっぱーつ」

 

 

 みんなで荷物を詰め込んで車に乗ればケイジさんの運転で車が走って東京を走っていきます。

 

 

 しばらく進んで都会を抜けてから何か門でカードキーをかざして開いた門から入ってさらにしばらく車を走らせますがずっと木々と道路だけというまるで山間を走るような道に。ん?? この道、どこかで行ったような?

 

 

 まだまだゆられていく中、さらに豪華な門と後ろにそびえたつお城より大きな豪邸。そして門には中川の表札。

 

 

 え・・・まさかここって・・・

 

 

 

 「いよっ。中川の兄ちゃん。今日から暫く厄介になるぜー!」

 

 

 「お疲れ様ケイジ君。ダイヤちゃんキタちゃん、松風さん。皆さんお久しぶりですよ」

 

 

 やっぱり! 中川財閥の若社長にして警察官の中川さんじゃないですか! え、ってことはここ昔パーティーで来たあの豪邸!?

 

 

 「あ、ああ・・・あ、あの。お久しぶりです。いつもサトノ家もお世話になっています」

 

 

 「私もおじいちゃんやお父さんとも度もお世話に」

 

 

 世界でも指折りの超巨大財閥の一角を担う傑物とのまさかの再会にジャージ姿で出会うことが失礼だったかと思っちゃう。勝負服を一緒にもっていけばよかったでしょうか。ケイジさんのコネは相変わらずですが流石にサプライズが過ぎますよ!

 

 

 「いえいえ。僕の方もお世話になっていますから。そして、僕も先輩や部長たちとみんなで応援しているからね」

 

 

 「お世話になります中川社長。今日の機会を与えてくださって本当に。そしてケイジもお世話になっています」

 

 

 

 「ほいほい。社交辞令はこれくらいにして。ささ、練習の内容を見せていこうか♪ ついてきてくれーあ、それと兄ちゃんの欲しがっていたやつね。はい」

 

 

 「ありがとうケイジ助かるよ」

 

 

 何か封筒をケイジさんが中川さんに手渡しつつ手を叩いてついて来いとジェスチャーして歩いていく。庭から少し歩いた先にあったのは・・・・

 

 

 

 「わぁ・・・・!!」

 

 

 「レース場ですか!?」

 

 

 「あれ? しかもこの形状は・・」

 

 

 「わはは。あらっー感づいちゃったぁ松ちゃ~ん。そ、ロンシャンレース場を可能な限り再現。芝も土の柔らかさもそのままにして作ったダイヤちゃん専用の練習場だ!」

 

 

 そう。ロンシャンレース場。凱旋門賞の開かれる場所であり私の目指す場所。何度も見てきたレース場の形状そのままに、ゴール板に機材もすべてがばっちりと揃っているこの光景に私たちは圧倒される。

 

 

 「僕の庭に下町の庭師、園芸業者の人たちで作ってもらったんですよ。僕もケイジ君と先輩の伝手で下町の技術者、中小企業や個人経営の人たちと縁が作れて有意義な取引になりましたよ」

 

 

 「どーしても外野の目がうるせえのと海外勢に練習の様子やデータを取られて余計な警戒をされるのが嫌だったもんでね。体の基礎は出来ているからしばらくここで実際に走って感覚を養ってもらう。ここに下手にパパラッチや部外者が入れば何されても文句言えねえから思うままやれ」

 

 

 まさか私のためにレース場一つを私有地に作る話をしていたのが驚くほかないです。ケイジさんと中川さんはそれ以外にも互いに利益になる取引をしていたようですが、それを差し引いてもこれは贅沢というもので有難いもの。

 

 

 この期待に応えるために私がやるべきことは・・・

 

 

 「キタちゃん。ウォームアップしよう! 松風さん。準備をお願いしていいですか? すぐに走りたいです!」

 

 

 「うん! よーし。ここで鍛えて香港でもドバイでもへばらないスタミナを作るぞー!!」

 

 

 「それじゃあ、軽く流しながら走ってもらって、その後アップが終わったらまずは併走で感覚をつかんでいこう。ダイヤちゃんも気合を入れすぎず。キタちゃんは経験がある分前に出てペースづくりを。ケイジ、追い込みで二人のペースを小突いていく用意を」

 

 

 「おうさ。その後は1000メートルタイムを計ったりレース場の勉強しつつ休憩を。私は今晩の飯をここで作らせてもらうからな」

 

 

 そう。思いきり悔いなく鍛え上げて凱旋門へ準備をしていくのみ。凱旋門賞へケイジさんやキタちゃんがこじ開けた道を塞がないように私も穿ちぬける走りをしないと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よーし。一通り走ったな? それじゃあ、早速ロンシャンレース場での気をつけるべき点を見ていこうか。で、中川社長も聞くんですか?」

 

 

 「ええ。僕のグループのウマ娘教室とか、一応親族にいずれ欧州のトレセン学園に入る子がいまして。そのためにある程度は知っておこうかと」

 

 

 ウォームアップ、併走。1000メートルタイムの計測ともう一度流してみてとレースの実感を少しづつ掴んでから休憩しながら座学の時間。ホワイトボードに描かれたレース場を見ながらみんなで芝生に座って青空教室です。

 

 

 「おほん・・・それじゃあ、まずレース場の坂に関しては最初にすぐあるものでまずここで最初から飛ばしていくというのはなかなか厳しい。しっかりウォームアップしてもその負担の大きさは足がしびれかねないほど。山登りで最初から飛ばしたらすぐばてるという感じだね。ケイジもキタちゃんも大逃げや逃げを使ったけど、最初はそこはある程度無理せず速度を落としているからね

 

 

 で、そこからはローペースで走っていく中で後半に勝負。となるわけだけどそこで問題点がある」

 

 

 「フォルスストレート、そこの前後のコーナーですよね」

 

 

 「その通り。ここに関しては日本メンバーの強みが逆に足かせになりかねない」

 

 

 練習中に仕掛け場所として覚えていたフォルスストレート。日本のコーナーではまずないほどの直線と言えるほどの緩やかなカーブ。ここはケイジさんは平然と加速をして800メートル以上のロングスパートを仕掛けての勝利をしていたりと欧州でも常識破りな勝利をしたが走っていてその異常さがよくわかる。

 

 

 深い芝は地面と靴をかみ合わせてくれず、柔らかい地面はその芝も相まって滑りやすい。下手に速度を出してしまえば遠心力も関わって大きく膨らんでしまえばいい方で、最悪転んでしまいクラッシュになりかねない。

 

 

 その中でぴったりとコーナーについたまま周りを引き離しての大勝利をするほどの加速とコーナリング技術。それをできるほどのパワーと体幹、技術。改めて疑似ロンシャンレース場を走ってその凄まじさが身に染みてしまいます。

 

 

 「下手に速度を出してしまえばレース場に水をまかれることが多いロンシャンレース場だと滑りやすい。だけど下手に欧州のレースペースに合わせてしまえばあちらの切れ味とスタミナで一気に引き離される。少なくとも前目につけて戦う方がいいけどどっちにしろ早仕掛けをするにはリスクが大きい。そこは分かったね?」

 

 

 これらに対応するための河川敷ジグザグダッシュ。砂場や河原でダッシュ。パルクールと一見遊んでいるような練習で対応力をつけていたと。

 

 

 「坂も厳しければフォルスストレートを利用しての仕掛けをするにはまず世界最高峰の体幹と足で地面をつかんで走れる技術とパワーが求められる。改めて数ある世界最高峰のレースの中でも名誉と勝利の厳しさがよくわかりますね」

 

 

 「その通りです中川社長。しかもそのフォルスストレートを越えての直線も長く、末脚がどこまで長く使えるかもまた問題です」

 

 

 「うーん・・・私は確かにケイジさんから散々最後のひと伸びを鍛えられたけど、実際に欧州の皆さん最後の切れ味がすごくて、距離があっても凄くひやひやしました」

 

 

 キタちゃんと松風さんの言う通り。フォルスストレートで早仕掛けを成功させてもその勢いを常に切らさず、むしろ最後まで伸ばし切るくらいに鍛えないと駄目。基本スローペースのレースが多い欧州レースはそれゆえに差し、追い込みの技術や練習が凄まじくキタちゃんも実際に逃げで8バ身をつけて最後の直線に挑んで加速していても最後は3バ身まで追い詰められていました。

 

 

 その時の加速も鈍っていない、日本でのレースにそん色ない脚を使っていたのに、スピードなら世界有数の速度と言われる日本代表でもそれを斬り捨てかねない末脚の切れ味があるのが欧州の強さ。文字通り爆発力、スタミナのすさまじさは基礎が違う。

 

 

 「つまり・・・フォルスストレート、最後の直線。最後の1000メートルあたりでどこまで勝負を仕掛けて、その勢いを絶やさずに走り抜けるかが私の勝利のカギであり問題なんですね」

 

 

 

 「その通り。明日からはもっとレース場に水をまいてから走ってもらうから着替えも多めに用意しておくように。足りないのなら休みの日に多めに汚れていい運動用の服を買っておいてよ」

 

 

 「アタシやゴルシたちで世界中のレースで暴れまわったが、メルボルンカップやBCシリーズ、香港、ドバイなどなど色んなレースはあるが、坂がない、あっても傾斜が緩い、複雑な形状もさほどないと対応はしやすい。だがここに関しては真面目に地面も形状も全部が敵だ。

 

 

 欧州勢とそのほかではまずこのレース場を体で知って、走っている、データの蓄積量自体がすでにハンデになっているからな。そこを今後は埋めていくことになる。飯に関しての対応と足元の基礎は出来てきた。今度はこっちを攻めていくぞ」

 

 

 プロテイン入りスコーンを焼いてきてくれたケイジさんが入ってきてにっこりとほほ笑む。私も練習も次のステップに進めた。ここからは疑似とはいえ限りなく欧州のレース場に近い環境で走り、戦える。そう思えば気合が入ります!

 

 

 「あふー・・・サクサクで甘い♪ ココアの味が紅茶とマッチしています♪」

 

 

 「うーん・・・・香ばしいロイヤルゼリーの香りに・・・アーモンドの食感も混ざって素晴らしい。少し渋めの紅茶があう」

 

 

 「あ、キタちゃん中川さん私の分も残してくださいよ~!」

 

 

 でもその前におやつの時間。ケイジさんの食事をここ数か月ずっと味わっているんですが、もう本当においしくておいしくて・・・筋肉についているんですがお腹周りは毎日太っていないかチェックをそろそろしないと・・・鍋とかも用意しているようですし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~トレセン学園~

 

 

 樫本「あの・・・ケイジさんから中川財閥の協力の感謝とお邪魔するという声が」

 

 

 たづな「ええ・・・・ケイジさん、何をしているんですか一体・・・さすがの事態に理事長も混乱していましたし」

 

 

 メイ「毎度の話だがケイジの伝手はどうなっているんだ? シンボリの爺様もヒサトモさんに昔散々振り回されていた、メジロも同様にあきらめた反応だったし」

 

 

 沖野「あの・・・これ請求書とか今回の費用大丈夫なんですかねえ・・・?」

 

 

 樫本「・・・5年連続凱旋門賞制覇を今は考えましょう。今のこの道中のあれこれはもう考えると頭が痛くなるか思わず止めたくなるかもしれないので」

 

 

 皆「「「賛成」」」

 

 

 

 

 ~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「着きましたね日本! うぅー・・・意外と寒い・・・!」

 

 

 「アスリートが身体を冷やすことはしないように。ここからは電車で移動になるが気を付けるように」

 

 

 やってきました日本! 世界最高峰の怪物たちがいた国! 師匠と一緒に練習のために来たんですが観光もしたいですよ! フジヤマ、ゲイシャ、ニンジャ、マンガ! 美味しい食事も我が国の料理を魔改造したりとネタに事欠かないのでワクワクしていましたが、いやー思ったより寒いですね。

 

 

 「はい! でもその後はぜひ観光もしましょうよ! せっかくの長期滞在なんですし、日本土産みんな喜びますよ絶対」

 

 

 「まあー・・・休日はあるからその日にな。まずは日本トレセン学園につくことが第一。日本人は時間にうるさいと聞く。ルーズな対応をしてはあちらに礼をかくのでな」

 

 

 

 「はぁーい」

 

 

 そういわれて師匠と一緒にトランクケース二つを引っ張って電車に乗ってフチュウにあるというトレセン学園に。あの人もいるというし、本当にこのタイミングで行けるのが幸い。神に、この交流を許可してくれたヴェルサイユトレセン学園に感謝しかないです。

 

 

 しばらく電車に揺られてついたトレセン学園はとても大きく豪華。装飾は少し少ないですが花畑やその設備の多さがすごい!

 

 

 たづなさんという人にあいさつをして短期留学の許可を取ってから私たちも寮で荷物を下ろしてから早速グラウンドに。

 

 

 「にしても師匠。何でここに?」

 

 

 「ああ、ケイジが今はここに住んでいる。いや、泊まり込んでいるといえばいいのか。そう聞いていたからね。ぜひ練習相手にと思っていたのよ。何度も何度も煮え湯を飲まされた相手だが、だからこそその手助けは頼もしいはず」

 

 

 やっぱり! 世界を魅了した大スターウマ娘ケイジ! あの人に会えるなんて! 師匠は愚か世界中のダービーウマ娘も、国最強とうたわれたウマ娘誰もが彼女に負けを与えられずに日本メンバーだけが唯一相手になった怪物。

 

 

 どんな大レースでも、場所でもケイジたちが来ればアウェーも何も関係なく戦っていけるその強さ、カリスマは私にとっても目標の一つ・・・! 生で、近くでまた会えるなんてこれだけで日本に来たかいがあるってものですよ!

 

 

 

 「ふむ・・・ー・・・ここにいるとメールで書いてあったのだが・・・どこだ?」

 

 

 「ボンジュール。ああ、はい。今日私たちはここに来まして」

 

 

 挨拶してくれたウマ娘の皆さんにあいさつしつつ師匠はケイジさんを探してきょろきょろとあたりを見回す。あの背丈と雰囲気ならすぐに分かりそうなものですが。

 

 

 ・・・・・・ん?

 

 

 「あー・・・師匠・・・えーと・・・・・あれ・・・・は?」

 

 

 「ふむ・・・?」

 

 

 何か一つ騒がしい場所があったのでそこを指させば

 

 

 「もごごぃーぉーー!! むぐっ、ぶへぁー!!」

 

 

 何やら木につるされたケイジさんが野菜たちに襲われて口に野菜を詰め込まれたりボロボロにされているというあり得ない光景が。

 

 

 ・・・・白昼夢でも見ているのか、悪夢か何かでしょうか?

 

 

 「次日本産の野菜を断ったらただじゃ済まねえ・・・よっしゃ行くぞ野郎ども!!」

 

 

 しゃべる巨大な人参はそう言ってケイジさんを木からおろして野菜の入った段ボールで囲んでから周りの野菜と一緒にバイクに乗ってどこかに行きました。

 

 

 「・・・だって・・・・フランス料理と食材になれるためには一部トレセンに入れるしかないじゃん・・・・・・・・ぐふっ・・・!」

 

 

 「ケイジさーん!!」

 

 

 

 「師匠・・・・・・・あれがケイジさんです・・・?」

 

 

 「・・・・・・誠に遺憾だがそうだ・・・そして大体いつものことだ・・・ハァー」

 

 

 ぼろぼろのケイジさんに駆け寄る淡い鹿毛の女の子・・・えーと・・・サトノダイヤモンド? を見つつ師匠にあれがあの世界最強のウマ娘ケイジなの? と首をかしげると非常に苦々しい顔とあきらめの何かが混じった顔でそうだといいつつ歩いていくので私も後をついていく。

 

 

 「久しぶりだなケイジ。お前はなぜいつも不思議な光景に巻き込まれているのだ?」

 

 

 「んぉ? いい女の声。おーマンジュー。久しぶり」

 

 

 「モンジューだ! 全く・・・相変わらず鍛えているようだな。一線を退いたというのは嘘なのか?」

 

 

 「もうレースからは身を引いているわ。後輩たちのためにちょいとね。そして、相変わらずすげえ覇気と実力。前より強くなっているんじゃねえの? で、そこの可愛い子は?」

 

 

 むっくりと立ち上がれば2メートル越えの背丈と美しい黒と赤の混じる髪に鋭くも美しい瞳、そして文字通りのダイナマイトボディは弛みもなく現役時代のままだ。その美貌も覇気も間近で見れば威圧される。ただ、その覇気の反面、笑顔はとてもやさしく柔らかい。

 

 

 師匠と握手をしてニコニコ笑いつつキセルに指パッチンで火をつけて、確かアロマ? を吸いつつ私の方に目を向けてくれば一歩前に出て自己紹介。

 

 

 「ボンジュール。ケイジさん。私はヴェニュスパークです。モンジュー師匠と一緒にしばらくトレセン学園に厄介になります!」

 

 

 「いい返事と、あー確か二度目の凱旋門賞に挑んだ際に私に手を振ってくれた子か。大きくなったなあー。私はケイジ。もう引退したが元競争ウマ娘だ。で、隣のかわいい子は私の弟子のサトノダイヤモンド。可愛い子だろ?」

 

 

 「サトノダイヤモンドです。モンジューさん、ヴェニュスパークさん。お会いできて光栄です! そしてこれからもよろしくお願いしますね!」

 

 

 うわっ、まぶしい笑顔に柔らかい雰囲気。すっごく可愛いしいい子のオーラ! すごいなあーお嬢様と聞いていたけど仕草が本当に貴族のそれだあ。同時に、強い・・・体幹のブレのなさもだけど、筋肉のバランスもすごくいい。

 

 

 ケイジさんの弟子だとキタサンブラックさんやメジロライトニングさんが有名だけど、この子も弟子・・・私のライバルになるかもしれない。負けないつもりだけど油断できなさそうと内心思いつつも笑顔で握手。

 

 

 「こちらこそ。この前の有馬記念の勝利と、キタサンブラックの香港ヴァーズ優勝おめでとう。凄い大盛況だったみたいですね。あの強さ、まさしくダイヤの輝き以上だよ」

 

 

 「うふふ。感謝します。でも、どうして日本に? 日本だと今の季節って国際規模の大レースないですよ?」

 

 

 「あーそれは私も気になっていたな。そもそも欧州のウマ娘レース自体がオフシーズン。だってのにこの新年早々日本に来るってことは・・・そっちも何か動いてやがんな?」

 

 

 「ああ。私達欧州でも動いていてな。そのためにケイジ、少し貴女の実力とバカさ加減の刺激をもらいつつ世界を取ろうと思っている」

 

 

 そう。私と師匠が来たのはそのため。その発言にケイジさんはキセルを咥えたままニヤリと嬉しそうに瞳を細め、ダイヤさんは驚いて目を丸く。周りの皆も思わず耳を傾けて空気が少し硬くなったのを感じました。

 

 




 真面目に可愛いヴェニュスパークちゃん。いつか育成してみたい人も多そう。そして私生活のずぼらさ加減が面白い。


 後最後にケイジの言っていた欧州レースのオフシーズンはリアル競馬の方でも欧州の競馬は基本的に4に始まって10月くらいに終わる半年開催でして日本の様に年がら年中規模は問わずともレースがあるということ自体が世界でも珍しいそうです。なのでモンジューたちがお正月に日本に来るのはオフシーズン中に年中バリバリレースしまくりの日本で何かしに来たの? っていう疑問につながると思ってくだされば。

 なので欧州の競走馬はその半年でかなりレースを出すことになるので場合によっては一昔の日本のレースプランで走る子も多いようです。




 ケイジ 中川に頼んで馬鹿でかすぎる庭の一角にレース場を作ってもらった。負担は中川の全負担。車に関してはスーザンママの息子(スーザンが作った日本有数の車会社の二代目社長)からもらった。別の仕込みと用意に関しても現在用意中。


 中川 ケイジの申し出を受けてタダで庭の提供とレース場の用意。昔両津に下町の強さを教えるとかで会社に大損害を与えられたことがあるので下町の人たちとは業務提携の話を持ち掛けるきっかけをくれて互いに助け合える。仕事を都合できる関係にできたケイジには感謝している。


 ダイヤ ケイジ達に鍛えてもらっていてバリバリ成長中。同時にケイジの料理、前田ホテル最高級の味を毎日堪能しているので舌が肥えまくった。有馬記念無事勝利


 キタサン ダイヤと一緒に更に成長して現在はGⅠ荒らし中。香港ヴァーズでは大差をつけての大勝利。


 沖野 スズカと新婚さん。プロジェクトに参加して負担が減ったのと流石に貯蓄を覚えたので最近懐が温かい。それはそれとしてケイジからスズカに料理を教えてもらうか模索中。


 松風 比較的新人なのに既に凱旋門賞に4度関わって3回は自分の教え子(ケイジ)を優勝させたのも相まってレースへの理解度は日本一。なので基本ケイジの教え方も意味が理解してるから基本はダイヤのケアに集中。


 ヴェニュスパーク ケイジの強さと自分の国を震災からすぐにたち直させた、希望を与えたその歩みにあこがれと敬意を持つ。モンジューも師匠として大好きだし超えるべき壁で尊敬しているがケイジもまた同じ。この後サインをねだるためにコンビニに走った。


 モンジュー 何度もケイジに煮え湯を飲まされているが同時に一番顔見知りで強さも知っているので今回欧州で考えているプロジェクトの先遣隊としてヴェニュスパークと一緒に日本に。日本にも前に来て、その際にケイジ達のハチャメチャさを知っているので今回はゴルシがいなくてよかったと内心安堵している。


 関東野菜連合 最近ケイジからの野菜の注文が落ちているので聞いてみたらフランス産の野菜を取っているということで日本の野菜を舐めるなと絞めた。後日理由を聞いたのとトレセン学園から注文が増えて許すついでにニンジンヘッドは鍋にぶち込まれた。







 あ、アンケですがナギコの外見はアクション対魔忍のエミリー・シモンズをウマ娘化して少し幼くした感じです。


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ウマ娘エピソード 外伝プロジェクトl'arc 欧州事情

 アンケの方はエピソードではなくて依頼するイラストに選ばれる子ですが、いやー面白いことになっていますね。ここにラモーヌが入ったらどうなるか。入れてみましょうかね?


 あと、ラモーヌはやっぱりケイジを気に入りそうですよねえ。ギラギラを隠さずに思うままに突っ走り続けながら周りを巻き込んでいくタイプなので。更にその巻き込んだ回りもレベルアップさせていくという。


 なによりアニメ3期、3話本当にありがとうございました・・・! ありがとうゴルシ。そしてまさかの名前にびっくり。爆弾ぶち込みすぎて感謝しかないです。やっぱりゴルシはいい女です。ありがとう彼女と出会わせてくれて。そして名馬ゴールドシップと出会わせてくれて。


 「ささ、立ち話もなんだ。すわりねえ。アタシはサブトレみたいな立ち位置だから。ヴェニュちゃんも」

 

 

 そういってケイジは耳からにゅぅーと座布団を出して芝生の上に置いてくる。いつもながらこの多芸ぶりというかマジックはどうなっているのか・・・

 

 

 まあ、厚意には甘えて座り、ヴェニュスパークも隣でちょこんと腰掛ける。

 

 

 「えーと・・・水水・・・・・・ほい。これ」

 

 

 「折り紙の紙コップ? 中身もないが」

 

 

 「何言ってんだ。キンキンに冷えているだろう? ドリンクが」

 

 

 「え? あっ! 中身が。おぉー・・・冷たい・・・おいしいです師匠!」

 

 

 「ん・・・うん。ご馳走になる」

 

 

 「お代りもあるからな」

 

 

 「ッッッ!? すごいですケイジさん! どうやっているんです!?」

 

 

 「おっとぉーそれは内緒よぉんヴェニュスちゃん♪」

 

 

 目の前で足をへし折るように外して中からスポドリの入ったボトルを取り出して何事もなかったように戻していくケイジのマジックに弟子は悲鳴を上げそうになるが、周りのウマ娘たちは黄色い声を上げる。

 

 

 伝説のウマ娘、彼女のマジックはもはや海外でのショーが主で国内では最近やっていないのを生で見れているのがやはり嬉しいのだろう。

 

 

 「で、欧州も世界を取りに来たって? トニビアンカ、ピルサドスキー、アルトリア以外とんと日本にも来ずに欧州の伝統と歴史を重んじるウマ娘レースの先進地域が今更日本に学びに来るとか何事だよ」

 

 

 「その日本の存在、いや、明確にはケイジ、そして貴女とともに世界を駆け巡った仲間たちの存在がカギになってな・・・今欧州では欧州の大レースのみならず世界のレースで戦える経験、データ、そしてスターを求めている」

 

 

 「私の国、フランスの凱旋門賞は世界一の名誉を誇る大レースと自負しています。ですが、レースの賑わいや、お祭り度合では海外も負けていません」

 

 

 「文字通りあらゆる距離、芝、ダートでその日全てのレースがGⅠ級のドバイミーティング。同じくアメリカのBCシリーズ。国の祝日かつ多くの祭りも起きるメルボルンカップ。年末の香港シリーズ。皇族からの盾を下賜される天皇賞。まあ、お祭り騒ぎのレースは凱旋門賞と近い時期、それ以外でも多くあるからなあ」

 

 

 そう。そしてレースの売り上げという、興行的意味では有マ記念が毎年世界トップ5に入るほど。日本の市場の大きさを踏まえても歴史ある凱旋門賞を超える時も珍しくなく、歴史と伝統は負けないが興行的意味では正直な話負けているといえよう。

 

 

 「ああ。さらに言えば、貴女たちの実力で世界中のレースを制覇したあの鮮烈な姿は文字通り戦場を選ばない真の最強たるウマ娘の理想像を示したといえる。欧州の最強だけで、凱旋門賞の制覇だけで満足してはいけない。

 

 

 同時に欧州の強さを世界で示すことでその欧州の最強たちと戦える凱旋門賞で世界最強を決することで近年日本にとられ続けている凱旋門賞の優勝カップを欧州のウマ娘の手に、落ち続けている凱旋門賞の権威を取り戻すことにある」

 

 

 「なるほどねえ・・・ただまあ、今も私らからすれば凱旋門賞は高い壁であり挑み続けるものだってのに、まるで尻に火がついたような慌てっぷりで」

 

 

 「いやいや・・・だってケイジさんが欧州二冠三連覇、イギリスとフランスの大レースをそれぞれ3連覇して、弟子のキタサンブラックが凱旋門賞制覇で、真面目に凱旋門賞は日本の庭になるんじゃないかと言われていますよ?

 

 

 そこにくわえてライスシャワーがグランドナショナル、キジノヒメミコとライトニングにマイルは荒らされ放題で」

 

 

 弟子の言う通り欧州の伝統と名誉ある大レースのマイルは荒らされつくされ、欧州三冠もケイジ達にものにされ、グランドナショナルという世界最大の障害レースさえも日本が手にした。文字通り台風や竜巻という表現でさえ生ぬるい。

 

 

 栄誉は奪われ、レースの後のライブに関してもケイジ達の多芸さと新しい風に誰もが魅了された。そしてそのレースを終えた後でも年末だろうと春だろうと欧州がオフシーズンの間も戦い続けて更にその脚は早く、強くなっていく。差が開くばかりになる。

 

 

 これだけならまだ生易しい。そこにもう一つのあのレースがまた問題だ。。

 

 

 「これだけならいい。まだ欧州にも国際GⅠは多く、その栄誉と賞金を求めてくれる人はいるだろう。ただな。ケイジ、貴女の名を冠した8月の大レースケイジ記念。それが問題をさらにひどくしている」

 

 

 「え? あれ一応GⅠレースだけど開催してまだ数年しかないし、賞金も凱旋門賞と同じくらい。開催も8月だから大体秋の大レースのステップレースになるようにって感じで頼んだから客の取り合いもないだろ」

 

 

 「とぼけるなケイジ。そのレースの後に近くにあるレースはジャパンカップやBCシリーズにも行きやすいうえに、オーストラリアにも欧州と比べれば近い。アジア、アメリカの大レースに挑むやつらはこぞってそこに行くし、名誉という意味でも日本のウマ娘以外に一切負けを許さず、平均4バ身をつけて叩きのめした欧州二冠三連覇、御前試合三冠、無敗の四冠、そしてモロダシ共和国を救った英雄の名を冠したレースでの勝利の名誉は歴史の軽さを補って有り余る。

 

 

 そこから誰も貴女に勝てなかったジャパンカップを目指し、香港へと考える子は欧州にも増えている。今や欧州ウマ娘レースのGⅠへの関心はアジアに比率が増えつつあるのだ」

 

 

 まーそうなるよなーとぼやきつつ頭をかいてキセルを吸って遠くを見るケイジをみて、予想はしていたはずだがここまでかと頬杖をつき、私も同じ気持ちになる。かつてジャパンカップに来ていた時にはこんなことになるとは夢にも思わないほどに。

 

 

 もはや日本はウマ娘レースの後進国ではない。むしろ年中戦い続け、芝もダートも、短距離も長距離もあらゆる距離で戦える子たちがそろう可能性を秘めた傑物達のいる国とみられつつある。

 

 

 「だから欧州の威厳と強さ、更なるレースの新設をするにあたっても色々と学ぶためにアスリート視点で見れるうえに経験豊富なモンジューと、その弟子であり新進気鋭のヴェニュスパークちゃんが来たってわけね。全く。セントレジャーをモデルに菊花賞を作ったり、海外のノウハウを今も必死に学んでいる日本も高く見られちゃったもんだ。

 

 

 でー? 当然視察、勉強で済ますにはもったいなさすぎるほどの豪華なメンツ。どこを狙うんだ?」

 

 

 ギラリと目を光らせて真剣な選手の目で見つめてくるケイジに内心火がつく。何度挑んでもリベンジが出来なかったサムライの目。もう一線を引いて久しいとは思えないそれに射抜かれつつ気持ちを抑えつつクリアファイルを取り出す。

 

 

 「しばらくは日本に滞在してまずはドバイで二人で挑んでいく。ドバイDF、いや、今はターフだったか。そこにヴェニュスパーク。私はドバイワールドカップに挑む」

 

 

 「ほ? おいおいマンジューダートに行くのかよ? 欧州の悪馬場になれているのは分かるが、いきなりぶっこんでくるな」

 

 

 「マンジュー言うな・・・」

 

 

 「師匠も私もウッドチップや海辺の走り込みで鍛えていますから対応はばっちりです。なので思いきり暴れてきますよ!」

 

 

 「こっちはサトちゃんがUAEダービー、キタちゃんが春天に挑むから見事に分かれるなあ。アタシは殿下に招待枠で観戦させてもらうからま、楽しみにしておく。そこからは日本でもいくのか?」

 

 

 「もちろんだ。私は安田記念。ヴェニュスはケイジ記念を取る。その上で凱旋門賞には弟子、ヴェニュスが取ってもらうことを考えている。貴女はすでに引退している身だが、師弟対決と、日本の強さを学び、ものにしていくぞ」

 

 

 「そうこなくちゃあもったいないぜ。むしろガンガンうちの後輩たちを揉んでやってくれ。世界のレベルは、広さは侮れるものじゃなあいってな。

 

 

 じゃ、練習も始めたいだろうし積もる話とアタシからのサービスは後だ。練習終わったらアタシの元に来い。いいもんくれてやるぜ?」

 

 

 からからと笑いあの時と同じ、いや柔らかさを含んだ笑顔で立ち上がって折り紙の紙コップを回収して掌で潰し、完全に消失して片づけを終えて弟子であるダイヤに手を振って歩くのを見届けて私たちも練習を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「師匠。ケイジさんはとても大きい人ですね。器も、強さも・・・まだ現役で行けるくらいには」

 

 

 何枚も、色紙にシャツに蹄鉄にシューズにサインをかいてもらったのを保管しつつしばらくケイジさんと練習の合間に談笑した印象は、ちょっと変なことをしたり話すけど優しくて気風のいいお姉さん。という感じでした。

 

 

 欧州を魅了した最強のスーパースター、ナギコさんと合わせてアメリカ、日本、欧州の冠をものにした怪物という強さは分かるが接しやすく遠くないという感覚。

 

 

 「ああ・・・今も現役で行けるくらいには身体を作り続けている。マジックの技術は昔以上。演出技術も相まってウイニングライブとなれば文字通り永遠の最高峰だ。ただ、ヴェニュス。彼女は、いや彼女たちはその予想の二回りは上だぞ」

 

 

 ウッドチップの1000メートルのタイムと芝のタイムを計り、一度アイシングを挟みながら話している師匠の顔は、見たことがないほどに沈痛な顔に変わる。どんなきつい練習でも見たことがない。絶望も含んだそれはケイジさんたちと戦った時の顔だ。

 

 

 「ケイジ達は基本皆をリスペクトして、その強さもよさも全部わかっているし常に挑戦する気持ちを持っている。だがレースになると相手になっているのはケイジたち日本勢のみ。それが日本国内問わず世界中のどこでも。だ。

 

 

 あれはたまらない・・・・・ライバルだと認めてくれているのに、その相手はその遥か先を走って影すら踏ませない、どこまでも遠い壁がある。早さがある。並ぶことさえもできない絶対的壁は、誰もが絶望した」

 

 

 「師匠・・・」

 

 

 ケイジさんの強さは、とにかく場所を選ばず120%のコンディションで、気合で、エネルギーをもってぶつかり続けられること。欧州二冠連覇をかけた凱旋門賞で妨害と言ってもいいタックルや肘をもらってもそれが気付けと言わんばかりに爆走して日本勢を率いるように勝利した時も日本メンバー以外は全員みるみる離されて届かなくなる時は泣いている人や絶望していまにも足を止めそうな人もいた。

 

 

 「私は彼女の現役時代についぞリベンジも、影も踏むこともできなかった。欧州こそ最強だと疑わず、日本のウマ娘の強さに負けたのはスペシャルウィーク含めて慢心であり驕りだったのだろう。ヴェニュスパーク。フランスを愛し、希望を与えるために進む貴女の実力も志も素晴らしいが、その障壁はどこまでも大きく油断できるものじゃないと覚えておけ。

 

 

 私のような負けを、思いをしたくなければ・・・な」

 

 

 そのうちの一人だった師匠からすればこの強化プロジェクトで日本のレーススタイルや、大逃げなど欧州ではあまり出会えないレーススタイルをもっと早くから学べればと悔やんでいるのだろう。きっと先輩たちは。ケイジさんたちの世代とぶつかってしまった人たちはみんな。でも。

 

 

 「もちろんです師匠! 私はフランスに希望と光を見せたくて、配りたくてこのプロジェクトに参加しましたし、見ているだけで日本のレベルの高さは分かります。だから、必ず強くなってドバイターフもケイジ記念も、凱旋門賞も制覇してみせますから!」

 

 

 「ふふ・・・頼んだぞ我が弟子よ。なら、早速だがここの映像だが、緩やかなコーナーなのに少し速度が落ちていた。加速しすぎたな?」

 

 

 「うっ・・・だって日本の芝、軽すぎて加速が簡単に出き過ぎちゃうので」

 

 

 笑顔を見せてくれた。と思いきやさっきの練習映像でのフォームの修正とミスをビシバシ飛ばしてくる師匠。いや本当に日本の芝固いし軽いしで加速しやすすぎですよ!

 

 

 「膨らまないだけ見事といえるが、コーナーでこの減速は付け入られる隙を与える。逃げ寄りに近い先行策で挑むのなら早仕掛けも覚えつつやってもらう。まだまだ走るぞ」

 

 

 「はい!」

 

 

 「それと距離も日本では芝が軽いのもあって脚へくる反動をケアする時間を増やすが走る時間を増やす。元気があり余りがちなヴェニュにはちょうどいいし、ケイジ記念へ挑むのなら長距離も慣れないとな?」

 

 

 「う~ん・・・ししょー・・・それもいいですけどせっかくですし観光の時間も。アサクサ、雷門。皇居の回りとか~アキバとか~」

 

 

 「私のような負けをしないといった先から気を抜くな! 休日に連れていくが今ここで切り上げるのなら休みの日も練習だ!」

 

 

 「ひーん! 師匠の意地悪―!」

 

 

 何か月も日本にいるとはいえせっかくですから観光もしたいですよー! そのために日本の漫画とアニメで日本語覚えたのに! ケイジさんに観光ガイド依頼したかったのに!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これはすごいなあ・・・」

 

 

 「で、ですね・・・はふー・・・・ん・・・んっ・・・」

 

 

 ヴェニュスパークさんやモンジューさんと軽く併走、練習をしてみてそのフォームを記録していたのですが、はっきり言ってハイレベルだと沖野さんも私も同じ感想になりました。

 

 

 「日本の芝にもあっという間に適応してみせてしかもタイムもダイヤに近い。フランスの天才少女と名高新鋭とうちのスペが勝ったとはいえ、エルコンドルパサーを負かした欧州最強の一角は伊達ではないか・・・」

 

 

 「ケイジさんとキタちゃんも勝てていますが、改めてその舞台の高さがよくわかります・・・ふー・・・」

 

 

 日本の芝と欧州の芝は別物。そのための適応の練習に私は頑張っている中あの二人はすごい速度で慣れて習性をすぐにできている。私もサトノの至宝とお父様たちに言われて嬉しくも天狗にならないように頑張っていたつもりですが、それでも才能の違い、多くの歴史的ウマ娘を輩出し続けてきた欧州の力がわかります。

 

 

 「あのモンジューさんに、ケイジさんは何度も圧勝してきた・・・」

 

 

 「そしてキタサンブラックもな。ダイヤ。お前も勝てない相手じゃない。回復したらもう一本いくぞ」

 

 

 「はい!」

 

 

 だからと言ってあきらめない。まだ本番まで時間はある。それまでに私は欧州の壁を穿つ第三の矢と、刃となるような脚を手にすればいい。沖野さんからの激励を受け取って気合と呼吸を入れて整える。

 

 

 ケイジさんたちとキタちゃんが砕いた海外の大レースは勝てないというジンクス。そのジンクスを復活させずに砕き尽くすためにも私も負けていられない!

 

 

 「あの。ヴェニュスパークさん! もう一度併走お願いしていいですか?」

 

 

 「もちろん! ダイヤちゃんはケイジさんの弟子だよね? 同じ師匠を持つ弟子同士よろしくね」

 

 

 「こちらこそ。えーと。それでヴェニュスパークさんは今度はどこで走りたいです?」

 

 

 「そうだねー日本の芝はもう少しゆっくり慣れたいし、そろそろクールダウンに入るからウッドチップで1000メートルでどう?」

 

 

 ただそれはそれとしてどこかテイオーさんを思わせる明るく快活。優しいヴェニュスパークさんは個人的にも好ましく是非友達になりたい方です。彼女の走りも夢も応援しますが、同時に負けたくないライバル。色々と学び、欧州のレースの話も聞きたいです。

 

 

 「よし。俺がスターターとゴールをするから二人とも並んでくれ」

 

 

 「お願いします沖野さん」

 

 

 「お願いします。よし・・・」

 

 

 とりあえずもう少し互いを知るためにも今日は最後の併走。私は差しの位置を、ヴェニュスパークさんは前目につけての先行。互いにウッドチップの破片から目を守るためにゴーグルをつけて準備よし。

 

 

 「じゃあ位置について。よーい・・・・・どん!」

 

 

 沖野さんのスタートと同時に飛び出すように前に出て、少し後ろにつけてヴェニュスパークさんの走りを観察しつつ隙を狙う。

 

 

 1000メートルのレースは一瞬。だけどカーブのある所からしているからそのカーブの間に付け込める隙があればそこからまくる。フォルスストレートとその後の直線。そこで勝負を仕掛けるのなら、スローペースのレースが主体の欧州のウマ娘たちのレースで合間を縫って前に出るのならこの短い距離、練習でもそれを見極めるための意識と練習はしておいて損はないはず。

 

 

 「ふっ・・・っ・・・!」

 

 

 「は・・・ぁっ!」

 

 

 その油断は最初にまず来てくれた。コーナーでの減速をしつつもほんの少し外に膨らんでわずかなロスを起こしているヴェニュスパークさんを見て私も一気に仕掛けていく。

 

 

 コーナリングはケイジさん仕込み。ここでの勝負は私が少し上のはず!

 

 

 「やぁあああ・・・・!」

 

 

 「な、んのっ!」

 

 

 コーナーでぐんと伸びて残り半分を切ったあたり。わずかにヴェニュスパークさんとコーナーの合間を縫って前に出たと思ったらすぐに横でヴェニュスパークさんが並んで追い越そうと加速をしていく。まるでとんでいるような軽やかな足取り。フォーム。まだクラシックに挑む前だというのにこの完成度。天賦のものがあるけどそれに負けないほどに努力と走りを楽しんでいるからこそできる領域。

 

 

 不慣れなウッドチップでこれ。本当に馴染んできたらどこまで加速していけるのか。ぞっとする想像をしそうなのを抑え込みつつ残り300メートル。思いきり全力を振り絞って前に前にと体を押し込むように、倒れそうなほどにのめり込んで突っ走る。

 

 

 250、200、150、100・・・・・・・もう少し・・・!

 

 

 「ゴール! ・・・いいタイムだ。スプリントでも戦えそうなほどだな。いい走りだぞ二人とも。お疲れさん」

 

 

 「は・・・はぁ・・・はーっ・・・も、もう少しでした・・・」

 

 

 「はー・・・ふー・・・ここまで追い込まれちゃうなんて流石ダイヤちゃん! キタサンブラックを有マ記念で倒した日本最強格。私も思いきり全力を出しちゃった」

 

 

 ほんの鼻先の差。練習とはいえヴェニュスパークさんと短距離ウッドチップでの併走は負けてしまいました。あちらにはハンデがあるのにここまでとは・・・本当に世界の壁は厚い。高い。沖野さんからのタオルを受け取りつつゆっくり歩きながら息を整えつつ練習場所の横に移動して邪魔にならないように。

 

 

 「ありがとう。サトノダイヤモンド。そしてこれからももっと一緒に走って、練習相手になってくれない?」

 

 

 「ふふふ・・・はい! でも、互いに目標のために必ず倒しますからね」

 

 

 その中で私を褒めてくれて手を差し出してくれるヴェニュスパークさんの手を握って握手。

 

 

 「どれだけ練習で勝っても意味がないからね。本番で、GⅠレースで必ずぶつかろう。そこで本当の勝負はね?」

 

 

 「そこまでは一緒に磨き合って、その上で勝ちますからね。だから、それまでは一緒に負けずに頑張りましょう!」

 

 

 「うん。約束。一緒にまずは」

 

 

 「「ケイジ記念で!! ・・・・・っ・・・あはははは!」」

 

 

 今回のプロジェクトl'arcでの最大の壁は今も欧州にいるウマ娘でもなく、ほかの子でもなくこの子だと何となく感じつつも、だからこそ真っ向から勝つ。勝って見せる。そう心に誓いつつそのための第一歩のレースで一緒に戦う。そこまた大変な道だけどやっていくのだと。

 

 

 みんなで微笑んで笑いつつ、ケイジさんたちにこの後悶絶マッサージで仲良くすごく痛気持ちいい天国と地獄を味わい、極上フレンチ料理に舌鼓を打って交流練習のスタートを切りました。




 欧州のウマ娘レース事情と歴史と伝統の違い。まあ、野球とかサッカーでもオフシーズンありますし、それ考えるとまず日本の方がすごいんでしょうねえ。アスリート兼アイドルのウマ娘レースを年がら年中やっていてGⅠレースもなんやかんや多いって。参加するには実力、実績ありきとはいえレース自体は毎月常にありますし。


 ケイジは基本ゴルシたちとワチャワチャ楽しんでいたけどケイジと戦ってきた海外ウマ娘の視点はそりゃこうなるよねって。真面目にゴルシたちと同じように仲良しで楽しんでいた海外ウマ娘は多分ウィンクガールとドリームシアターくらい。


 そして日本のレース映像を見てワープVS異次元大逃げとかタックル合戦して爆笑したりとか、パドックでやりたい放題している様子を見てこんなやつらに負けたのかとなるかも。坂で加速を仕掛けたりとかまともなレース運びがあんまりない。


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ウマ娘エピソード 外伝プロジェクトl'arc 春から夏になるのって早いよね

 何かケイジのコネがすごいけど欧州二冠三連覇&あの世代の実質的リーダーやって暴れたり馬時代のあれこれ考慮するとそうなっちゃうという。真面目にこち亀の中川と両津を悪魔合体したようなやつだなあ今のケイジ。


 そしてアンケ結果を締め切って絵の方の依頼を出すのはもう少し後ですが、予想以上にヒサトモとナギコの人気に驚きました。いや真面目に愛してくださりありがとうございます。


 「よーし今日の練習はここまでークールダウンしてしっかり風呂に入れよー飯作ってやるから」

 

 

 「は、はい・・・! ふー・・・ふー・・・あ、ありがとうございました!」

 

 

 「ありがとうございました! いやーいい汗かいたねサトちゃん」

 

 

 「そうだねキタちゃん」

 

 

 1月も後半になってきてすこーしづつ寒さが抜けてきたが、そのせいか二人の汗のかく量も増えてきた。スタミナは増えているし、脚の消耗も減っているから前よりしぼっても元気が残っているけど、やっぱそろそろ暑さ対策というか、塩分補給の用意ももう一つしっかりとやっておくか。

 

 

 「じゃ、タクヤさんとクマさんはツボ押しと針灸よろしく頼んだわ。私は今日の飯の仕上げしに行かにゃいかん」

 

 

 「今日の晩御飯は豪華って聞いているし、ばっちり毒抜きと疲労は抜いておくぜケイジ」

 

 

 「いいねえーそうこなくっちゃ」

 

 

 「「お、お手柔らかに」」

 

 

 毎日のケアとなっていたツボ押しと針灸もやりすぎると二人の自由な時間が毎日削れ過ぎるのもストレスなのでスタミナとボディバランスの調整の時期に入った今は数を減らしたけど、うん。やっぱ怖いかあーまあー全身針まみれにされるのと激痛マッサージは痛いわよねん。

 

 

 「じゃ、そゆことでー」

 

 

 

 

 

 

 

 ~キタサトコンビ悶絶針治療とマッサージ中~

 

 

 「「あだだだだだだだだぁあっ!!!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ポトフもいい味だな。バケットもいい感じだし、キャベツとラムのボイルもいい感じ。今度ホテルに出してみるかあ」

 

 

 「はむ・・・んー・・・相変わらず身体に染みる料理・・・あ、そうですケイジさん。何やらお手紙が来ていましたよ?」

 

 

 ゆったりと今晩の飯に舌鼓を打って無事にできたことを喜んでいるとサトちゃんから手紙が。げ・・・この蝋印は・・・

 

 

 「あ、あのー・・・このマークってもしかしなくても」

 

 

 「ああーアラブの王族。モロ・ハーン陛下のものだよ。どーれどれ・・・」

 

 

 まあ、内容は十中八九分かっているんだけどね。蝋印を割って中身はーと・・・・・・・・

 

 

 「ふぅ。よしよし」

 

 

 おおよそ内容は予想通りだったし、必要なものだけ抜いて、紙の裏に返事を書いてと~

 

 

 後は破いて口にポイ。うーんミント味。

 

 

 「ちょっ!! ケイジ師匠!? 王族の手紙を破いて食べるって!!」

 

 

 ガガガガガガガガ・・・・チーン♪

 

 

 「お腹から変な音なった!? ケイジさん!? 大丈夫ですか?!」

 

 

 「ガンバレガンバレ、ガンバレガンバレ・・・・ん? おおー大丈夫大丈夫。しかしよかったなあサトちゃん。今回の手紙、ドバイミーティングの招待券、航空チケットだ。しかもファーストクラスのな」

 

 

 「いや機械音といい・・・え? それってつまり?」

 

 

 「UAEダービーの出走枠確保。むしろあっちから来てくださいという招待枠として呼ばれたわけだ。キタちゃんを、凱旋門賞制覇ウマ娘のライバルが来てくれるのはあっちも嬉しいだろうし、実力が認められたな」

 

 

 ついでにアタシへの国賓招待とか、前の事件での感謝とかが長々とつづられていたのは省く。まあ頼まれた日本の土産菓子、ウマ娘チップスの用意と魚料理は振る舞うけど。

 

 

 「やりました! まずは国際レースの第一歩です」

 

 

 「すごいよサトちゃん! ドバイミーティングに招待されるのはケイジ師匠以外ではほぼいなかったし!」

 

 

 「ただまあーそうなると短期とはいえあっちのお国柄に合わせた飯を数日あっちで食べたりで大変だろうしなあ。明日はチートデイだし、日本食、米解禁して飯の息抜きもするか」

 

 

 こっちとしてはまず世界の大レースのお祭り騒ぎって空気を選手としてまず感じてほしいし、同時にあっちの現地飯もまた新鮮に味わってほしい。キタちゃんはぼちぼち飯のフラストレーション溜まるしちょうどいい。

 

 

 「え。いいんですかケイジ師匠!」

 

 

 「流石にずっとフレンチだけじゃあ日本食に慣れたアタシとキタちゃんにはつらいしな。明日は好きなもの何でも作ってやるよ」

 

 

 「やったー!!」

 

 

 「ふふふ。やったねキタちゃん。私も明日考えておきますね? ドバイミーティング・・・ケイジさん以外にもジェンティルドンナさん、ジャスタウェイさん、ヴィルシーナさんたちが史上初の連覇記録や世界一の称号を手にした場所。楽しみです!」

 

 

 欧州の芝に対応させるついでに鍛えた足がドバイのダートにも通用するか。そしてドバイのダービーの称号を持つレースでの制覇は凱旋門賞に挑む箔付けとしちゃ悪くない。

 

 

 いよいよ本番に足を突っ込むなあ。ま、楽しんでいきまっしょ。ドバイはアウェーだけど実質ホームみたいなもんだし。

 

 

 

 

 ~同時刻・ドバイ~

 

 

 メイド「陛下。ケイジ様からのお返事がなぜか石像の口から出てきました・・・」

 

 

 陛下「おお^~待っていたよぉ。ふむふむ・・・これは私のウマ娘チップスカードコレクションをもっていかないと」

 

 

 メイド「? え? ドバイミーティングでは?」

 

 

 陛下「それと一緒にカード交換会をするんだ。最新のカードコレクションをコンプしないとねえ」

 

 

 メイド「は、はぁ・・・(世界有数の大富豪と世界最強のウマ娘が小学生みたいなことしようとしていますよ。ドバイミーティングで)」

 

 

 

 ~~~~

 

 

 

 

 

 

 「やぁあああああっっ!!」

 

 

 『サトノダイヤモンドゴォオオール!! 見事ドバイミーティング、その中のダービーの名を冠するUAEダービーを制覇しました! サトノ家に、日本にアラブのダービーをもぎ取っての大勝利ぃいっ!!』

 

 

 「やりました! サトノ家だってダービーを取れるのです!」

 

 

 

 「はっ・・・・・あ!」

 

 

 『軽やかな走りはまさしく天衣無縫! 誰もとらえきれなぁああいっ!! フランスの新星ヴェニュスパーク見事ドバイターフ圧勝! 見よ、これが欧州本場のウマ娘! その走りがここドバイで我々を魅了したあっ!!』

 

 

 「皆さんありがとう! 私はまだまだ勝つのでこれからもよろしくお願いします!」

 

 

 

 「フッ!!」

 

 

 『モンジューなんとなんと欧州ではなじみの薄いはずのダート! そしてその大レースであるドバイワールドカップを快勝!! 欧州最強一角の高みは今も健在! その走りはとどまることを知らず、戦場を選びません!!』

 

 

 「少し早い季節に浴びる歓声だが、悪くない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『天才少女ヴェニュスパークフランスに戻りフランスティアラレースに挑戦』

 

 

 『欧州最強モンジュー安田記念参戦か』

 

 

 『サトノダイヤモンド見事国外レースを制覇。サトノクラウンとともに国外GⅠの勝者に』

 

 

 『キタサンブラック天皇賞(春)を制覇し春古バ二冠、御前試合二冠を同時制覇。陛下、キタサンブラック、北島サンちゃんによる祭りの大合唱が響く』

 

 

 「今年の日本も凄くないか! これなら5度目の凱旋門賞制覇もいけるって!」

 

 

 「しかもあのケイジさんとチームシリウス、スピカの面々が協力しているんでしょう? それならケイジとキタちゃんみたいに圧勝してくれるはずよ」

 

 

 「いやーどうなるかなあ。あのモンジューと、特にヴェニュスパークは今年クラシックで鍛えている新星でしょ? あの子たちも凄かったし、今年はどうなるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「とまあ、一応のひと段落が着いたから今日はご褒美でな」

 

 

 「なるほどねえー全く、うちの署でもその話題で持ちきりだよ。というかどおりで最近見なかった理由が分かった」

 

 

 レースも無事に終わり、キタちゃんは宝塚記念。サトちゃんは北海道に連れていく前のご褒美とねぎらいってことで長神田寿司で慰労会。生魚とか万が一でもあたるものは避けていたけどチートデイには日本食解禁と管理のがっちりしている老舗かつレースのストレスも抜けたこの日に晩御飯。

 

 

 纏姉ちゃんや両さんのすしに天ぷらをもらいつつ茶をしばいて一杯。

 

 

 「んー♡ 美味しいです! この醤油の味もワサビの味も凄い!」

 

 

 「お米が甘い。酢の味も芳醇です。いい味ですよー」

 

 

 「お代りもいいぞ~今日はアタシのおごりだ」

 

 

 「いやードバイ制覇見事だったが欧州を向けてのダートのレースであのタイム、2着との開き具合はどうだ?」

 

 

 む、流石両さん。目の付け所が鋭いねえ。んまあー・・・あ、このアナゴいい味付け。

 

 

 「悪くはない。何よりレース後の消耗が思った以上に少ないのがな」

 

 

 「それなら後は2400であの切れ味をどこまで出せるか・・・そのテストとして2600のレース。ケイジ記念でさらにみると」

 

 

 「まね。あ、これは内緒な?」

 

 

 その通り。ミドルディスタンスでの切れ味の鋭さ、追い込みであのすさまじさは欧州のマイルGⅠでも問題なく戦える。ただ、クラシックディスタンスでそのキレをどこまで出せるか。維持できるか。その消耗の中でどこまでやれるかを見ないといけない。

 

 

 だからこそ真夏の中で走る2600メートル。ここでの結果を出せないのなら凱旋門賞制覇は遠いだろう。

 

 

 「しかしあのケイジがサブトレーナーまがいのことをして、しかもGⅠを取らせるとはねえ。あのまま動画投稿と料理人、マジシャンとして生きると思っていたよ」

 

 

 「アタシもだ。おかげで既に裏では大人たちの動きがあれこれ面倒くさいがやることはやるし、可愛い弟子たちの笑顔を見れたり充実しているよ」

 

 

 「えへへ・・・♪ あ、すいません。中トロと、イカ、赤貝をください」

 

 

 「私はカキフライと天ぷら詰め合わせを~もうお父さんもおじいちゃんもケイジ師匠に足むけて眠れないと毎日神棚にケイジさんからもらったレース使用後の蹄鉄を置いて飾って拝んでいます」

 

 

 「アタシより三女神と八百万に祈りなさいや。あー茶碗蒸しと潮汁頂戴」

 

 

 この前も出合った時にサトノ家、キタちゃんの一家、弟子総出で頭を下げられたからなあ。アタシよりも娘たちの才能と努力に感謝してほしいが。

 

 

 まあ、それはいいとして。

 

 

 「それで、次はケイジ記念となるがキタサトコンビはトレセン学園にいつづけるのか?」

 

 

 「いんや、一度北海道で練習をさせる。真面目に凱旋門賞のレースまでは常にどっかで合宿しながら過ごすようなものになる」

 

 

 「うーん。そうなると勉強とか、授業は大丈夫かい? イチローみたいに勉強しないと色々後で苦労するよ」

 

 

 「オイ纏! ワシをバカみたいに言うな!」

 

 

 「うーんいい味・・・・・お、茶柱。まあそこは問題ない。リモートで授業は受けさせるのと二人とも優等生だ。学力は落とさせない」

 

 

 そのための準備もしっかりとしているし、本当に後は北海道に行くだけだ。

 

 

 「ハイテクになっているねえ最近の学業も。なら問題ないし、ケイジ記念は私も応援に行くよ。さとちゃん。ファイトだよ」

 

 

 「おお、そうだそうだ。熱い中のレースだが、勝つためにもっと食べていけ」

 

 

 「はい! じゃあ、ちらしずしとサーモン、鯛をください!」

 

 

 「私はタコとイクラを!」

 

 

 「ならアタシもこの二人の監督役として気合を入れるためにカツオのたたきとムール貝をくれ」

 

 

 今のうちに寿司と生魚は食いだめしておかないとまたしばらくは無理だからなーいい枠順には当たってほしいけど魚や貝類に当たっちまうのは勘弁だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「まだまだ冷えますねえ北海道は」

 

 

 「でもあっという間に暑くなるからなあ。最近だと夏は沖縄の方が涼しいとかすげえ話だ」

 

 

 ケイジさん、キタちゃんと一緒に来ました北海道。田舎と都会の間にある前田ホテルの支店が今回の拠点になるということでそこに荷物を置いて、練習場所を紹介するというケイジさんと一緒にホテルのそばにある道を歩いていけばそこにはまた見事なレース場が畑の中にポツンとありました。

 

 

 キタちゃんはホテルで荷解きとサービスに関しての説明を受けてもらっていますがこれを見れば驚くはず。

 

 

 「おおー注文通り。さっすがあいつらだ」

 

 

 「え? これ最初からあったものじゃないんですか?」

 

 

 「ケイジの頼みで今年農業を引退する老夫婦さんから買い取った土地。それを1年だけケイジが農園会社の芝整備と建築のノウハウの実習のために作らせた即席のものだよ。でも、いいものでしょ?」

 

 

 二人で青々としたターフを見ていると後ろからやってきたルドルフさんに負けないスタイルと美貌、茶髪のロングヘアと流星らしきものがみえる女性はニコニコと笑って手を振ってくれます。

 

 

 「久しぶり幸子ー!!」

 

 

 「ケイジー!!」

 

 

 幸子さんという女性はケイジさんと既知の中のようで二人で走り出してガシィインッ!! という音がどこからともなくなって熱い抱擁。

 

 

 「どぉおりぁ!」

 

 

 「きゃぁあああー!!」

 

 

 の後にケイジさんにターフの方にぶん投げられてしまうも見事なトンボを切っての着地。の後に再度握手。間違いない。ケイジさんの親友です。

 

 

 「いい鍛え方しているねえ―学生時代よりいい感じ」

 

 

 「ケイジこそ衰えていないようねーふふふ。大人になってようやく猟銃免許も手に入って遠慮なくぶっ放しているわー」

 

 

 「あらためて北海道にようこそサトノダイヤモンドちゃん。私はケイジの幼馴染の幸子。農家のバイトしつつ猟師、駆除隊をしているわ」

 

 

 「学生のころから特例で駆除隊に入っていて槍で熊も猪も仕留めている女傑、同時にここにいる間は肉や野菜を用意してくれる頼りになるダチだ。ま、寄生虫対策で冷凍殺菌とステーキや角煮とかの火をじっくり通したものしか駄目だがな。それとは別でさらにここでのサポーターが・・・」

 

 

 「「姉御ぉ!! お待ちしておりました!!」」

 

 

 話をしていると幸子さんの歩いて来たらしい場所からさらに数人いかつい男性数人が並んで頭を下げている。女漁師の次はキタちゃんの家のお弟子さん達みたいな人が来ちゃいました。

 

 

 「おーいい練習場をありがとうな。関東男連合、16号の黒豹。いや、今は東北興進産業の皆。か。いい面になったじゃねえの・・・」

 

 

 「姉御たちの力添えあってこそです。そしてぇ。この練習場。ダイヤのお嬢はどこまでも使い倒してケイジ記念に、凱旋門賞に挑んで下せぇ!」

 

 

 「整備と修繕は俺らが行いますんで、どうか気にせず。ケイジ記念。会社の皆で応援に行きますわ」

 

 

 「応援ありがとうございます! そしてケイジ記念でもぜひお願いしますね? ケイジさんもここまで本当にありがとうございます」

 

 

 「気にすんな。中川の兄ちゃんの方でもだが、園芸、芝整備などのノウハウや経験をつめるし、空き地の有効活用だから金の方も思ったより安く住んでいるしな。皆楽しみなんだよ。ダイヤちゃんがどこまで戦えるか。既にドバイで実力は示した。次の楽しみにみんな全力なだけだ」

 

 

 そうは言うけどもそれを容易くこなせるケイジさんの今までの実績とコネの積み重ねがあってこその用意の周到さでしょう。それを使ってくれて私を応援してくれているという気持ちに胸が熱く。ドキドキしてしまう。

 

 

 「ケイジさん。私もっともっと燃えてきました! 今すぐに練習を始めていいですか?」

 

 

 「いいぞーよし。幸子も用意しておくのと、お前さんらは機材の用意を」

 

 

 「もちろん」

 

 

 「「了解しやした!」」

 

 

 万全の状態で挑めるケイジ記念。そこで皆さんの助けは無駄じゃないと示して見せます!

 

 

 「よーし。それじゃあ、まずは軽い柔軟が終わったら芝の感触を確かめつつ軽く走り込みしてもらう。で、今晩のメインディッシュは幸子の仕留めたイノシシのタンのサイコロステーキと鹿肉とイノシシの脂のミートボール。どっちも牛タンや鶏肉のつみれよりもうまいが・・・幸子に追いつかれたらどちらかは没収!

 

 

 あ、ちなみに幸子は時速40キロで2分半は走り続けられるからサトちゃん気合入れつつもしっかり芝に適応しつつ頑張れよー」

 

 

 

 「え・・・?」

 

 

 それ、ウマ娘じゃないんですか? ヒトミミなのは耳でわかるんですがスペックが異常ですよ?

 

 

 「私もあのご馳走はあんまり食べられないからね。負けないわよサトちゃん♪」

 

 

 「ハイスタート」

 

 

 「いやっふー♪ 思いっきり行くわー♪」

 

 

 「は、早!? 負けません!」

 




 あと3、4話で終わるようにできればいいですねえ―頑張らないと。


 ケイジ 相変わらずコネや実績でいろいろしている。今回の合間も色々と用意をしているけど北海道ではケイジ記念の準備の手伝いでちょっと席を外し気味


 ダイヤ 無事UAEダービー制覇。サトノ家狂喜乱舞させた。この後幸子と併走してちくわドリブル勝負で肉の取り合いに勝利。


 キタちゃん 春古バ2冠、御前試合2冠を同時制覇の偉業達成。ケイジの後継者として文句なしの実績で現在の日本ウマ娘最強の座を手にしている。ケイジ記念には出ずにマエダノキズナと一緒にBCシリーズに出走予定。


 幸子 馬時代のケイジと一緒に熊退治をしたり帯同犬として遠征した柴犬。ウマ娘世界では幼馴染の女の子。ケイジとは夜のうまぴょいするくらいには互いに仲良し。でも互いに恋人作れとは思う。しばらくケイジと遊びつつ前田ホテルにただで泊まれるのが超うれしい。


 東北興進産業 元暴走族の関東男連合、16号の黒豹がデビュー前のケイジと一緒に東日本大震災の際にボランティアとして参加。そのまま建築、農業、漁業の会社として設立して現在社員3000名以上。皆ケイジに脳みそ炭化するまで焼かれてしまっている。


 両さん。纏 ケイジがまさかの形で働いていることに驚き。慰労会では570万分長神田寿司の食材を食べ尽くされてさらに驚いた。ケイジ記念には観戦に行く。


 アラブの王族 ケイジともっこりスイーパーに孫娘のシャーガー誘拐事件を解決、防いでもらいドバイミレニアムの奇病はケイジの呼んだクロオに依頼して完治して無事トレセン学園に近いうちに入学。ジェベルハッタ、ドバイミーティングの人気と格式の向上にも貢献してくれたケイジは国の大恩人。観客席でウマ娘カードの交換会をしていたとか。


 次回、ケイジ記念かも。ケイジ記念はしっかりレースを描いていきますよ~


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ウマ娘エピソード 外伝プロジェクトl'arc ケイジ記念(GⅠ)

 ある意味では前世というかウマソウルの里帰りが出来たケイジ。前田牧場のある場所はケイジ達の別荘とかがあります。それ以外はケイジ達がお参りしていた神社はそのまま。


 北海道での合宿をこなしていますが、ここでは一つ大事な勝負、私たちの課題が出来てしまいました。

 

 

 「じゃあ、皆さん恨みっこなしですからね」

 

 

 「もちろんでさぁ。キタサンのお嬢」

 

 

 「私も負けませんから」

 

 

 「よーし、それじゃあーみんないいねー?」

 

 

 その勝負は毎日行われていて日々の練習より気合が入ることも。

 

 

 「「「「最初はグー! じゃんけんポン!!」」」」

 

 

 「「「「あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょっ! しょっ、しょっ!!」」」」

 

 

 「いやったー♪ 私の勝ち―!」

 

 

 「今日は幸子の姉御の勝利かあ~」

 

 

 「くぅー残念!」

 

 

 「角煮はまた明日ですねー」

 

 

 「じゃー今日の晩飯は鹿肉のステーキとジャガバターに蒸し野菜、玉ねぎの味噌汁だな。明日はくじ引きで決めるから、晩飯の際にリクエスト書いてけ」

 

 

 幸子さんが仕留めた獣肉を使ったケイジさんのジビエ料理。献立を自由に決められるけどみんなでどれを決めるかでじゃんけんやトランプ、くじ引きにあみだで食べたいものを狙う日々。

 

 

 「イノシシの頭の肉で作った猪肉カレーと、脳みそ焼きとかも考えているからその際は酒も用意するか―白子みたいな味するし」

 

 

 「角煮もお酒が進むから注意よねーご飯の上にのせて食べるのも♪」

 

 

 「私もあの角煮丼がもう病みつきで。野菜たっぷりなのにあのジャンクで美味しい味わいが・・・ワイルドです」

 

 

 「サトちゃんすっかりイノシシ肉の虜だね。私は鹿肉のステーキもいいけど、イノシシのタンがすっごく・・・」

 

 

 「あれとハツは猟師の特権だからね。すぐには用意できないわ。さーさー午後の一走り。私も付き合うから二人ともファイトよ?」

 

 

 「じゃあ野郎たちは整備と掃除でもしてきやすので」

 

 

 東北興進産業から派遣されている雑用の皆さんに、トンデモ身体能力の幸子さんとここ北海道に来てもトレーニングの質は落ちずに楽しく過ごせています。

 

 

 「さてと・・・そろそろキタちゃんはアメリカで戦うことになるからなぁ。体の仕上がりには問題ないが、あっちに合わせたメンバー同士で鍛えたほうがいい。ヒ・・じゃねえ。マエダノキズナが迎えつつぼちぼちアメリカに行くからそっちで総仕上げだな。

 

 

 アメリカでもビリーのおっちゃんとドリームシアターもいるし、うちのホテルの支店に話しを通しているから逃げの練習と感覚を練習してこい」

 

 

 「先行、逃げの高速レース本場アメリカ。そこでのBCレースも取ってくるよう頑張ってきます!」

 

 

 「おお、アメリカのレースはエキシビジョン以外はアタシも取っていないタイトルだ。とれりゃスピカ的にも凄い功績だぜ? で、サトちゃんだが今後は差しを想定した練習ってことで80メートル離れた先のキタちゃんを捕まえるように走る。前に幸子と2分以上併走ね。その後にもキレる脚を残すのが目標」

 

 

 「ハイ!」

 

 

 「一応経験済みとはいえ、昨年のケイジ記念と今回のケイジ記念はきっとサトちゃんには違うものに感じるだろうしな。とことんスタミナと根性で足を残したうえでぶっ放せ。それがアタシやキタちゃんら逃げでレースを作る面々はプレッシャーになる」

 

 

 「もちろん。凱旋門賞を穿つつもりで挑んでいるんです。ケイジ記念で躓くわけにはいきませんから!」

 

 

 「いい心がけ。そんくらいがいい。アタシのGⅠなんぞテスト、ステップレースぐらいでちょうどいいんだ。ただ、200メートルの差を改めて気を付けて」

 

 

 ケイジさんはそういうが、世界中から今年の秋の大レースの前に勢いをつける。あるいは挑むための実績を積むための切符獲得のために実力者たちが集う真夏のワールドチャンピオンレース。そこで凱旋門賞を狙って挑む私にとって2400以上に長い2600。その200メートルの消耗を気にせずに、欧州と同じ芝でどこまでやれるか。

 

 

 何度も分かっていて、確認しているけど日が近づくたびにその距離の違い、国の違いを意識してしまう。

 

 

 

 「じゃ、固い話は置いて、今は軽い身一つで走って練習練習♪ さー腹ごなしのひとっ走り。負けないわよサトちゃん♡ キタちゃんも追い抜いちゃうかもね」

 

 

 「幸子さん、キタちゃんもお願いします。油断していればあっという間にさくっと追い抜いちゃいますから」

 

 

 「私もBCクラシックが控えているしね。負けないよサトちゃん」

 

 

 「ふふふ。熱いわねー二人とも。互いの健闘と勝利のためにゴーゴー!」

 

 

 そういって幸子さんは背中を叩きつつも心配せずに今は走って楽しみましょうと励ましてくれました。今日の練習もとても楽しく美味しいごはん。ジビエ料理と北海道の幸を味わいつつ快適なホテルでの休息とケア。満たされた日々だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ケイジ。今日は近くの神社で祭りをするようよ」

 

 

 「おーそういや今日は夏祭りか。ちょうどいいや。今日はチートデイと休暇にして。アタシがいると嫌でもレースを意識しちまうだろうし、小遣いやるからサトちゃん連れ出しといて」

 

 

 「ケイジはいいの?」

 

 

 「今思い出したけどあの神社の夏祭りってあの祭りじゃねーか。ぶっちゃけ踊って騒いでやりたいが、そうなるとサトちゃん付き合わせるからなあ。この祭りは我慢して本番の祭りではしゃげるようにしておく」

 

 

 「丸くなったわねえケイジも。というよりは、今は後輩のため。か。ケイジが主役じゃないしね。今年挑む場所は。わお小遣いたっぷり。じゃ、あのハジケ令嬢連れ出してくるわー」

 

 

 「頼む―キタちゃんもアメリカに行ったし、ちょっと寂しいかもだし息抜きも兼ねてな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「にぎやかですねー」

 

 

 「でしょ? ここは三女神以外のウマ娘の加護をつかさどる神様を奉る神社だからね。北海道だとそこそこ有名な場所なの」

 

 

 「あ、牛串にシーフード焼きそば食べていいですか?」

 

 

 幸子さんに連れ出されてきたのは神社でのお祭り。屋台の食事もジュースもおやつも好きに食べていいということで早速屋台の料理を食べ歩きです。

 

 

 「ふふふ。あー美味し♪ ケイジの料理もおいしいけど、屋台で味わうのもまた別格。あ、おっちゃんビール一杯頂戴」

 

 

 「アイよ幸子ちゃん。ケイジの嬢ちゃんは来ていないのかい?」

 

 

 「ケイジはレースの用意で忙しいみたいよーあっちの祭り、レースで応援してあげて。ほれ、チケット代稼ぐってことでホットドッグも持ち帰り分買うから」

 

 

 「毎度。この祭りで熊殺しをしたコンビが見たかったがそれならそうしようか。ダイヤちゃんにもサービスで1本ね」

 

 

 屋台のおじさんから大量のホットドッグと大きな紙ジョッキに注がれたビールを美味しそうに飲みながら談笑を挟む幸子さん。熊殺し? あ、もしかして。

 

 

 「ありがとうございます。はむ・・・んー♪ ふえ? ここの神社ってもしかしてケイジさんがクラシック期の休暇で暴れたあの場所です?」

 

 

 「そうよ~あの時は胆が冷えたけど、もう笑い話。いやあの騒ぎの最後はそうだったわね」

 

 

 「いやー動画を何べんも見たけど、生のあの迫力はすごかった。蓮君、幸子ちゃん、ケイジちゃんが子供を守るために2メートル越えのヒグマに立ち向かっていった雄姿は」

 

 

 「蓮は子供を守って避難してくれたからいいけど、ケイジはヒグマをパンチでふっ飛ばして、組みあった挙句に力で勝って飛び蹴りで頭部を一部ふっ飛ばすライフルみたいな蹴りを見せた時はもう驚くを通り越して変な笑いが出たわよ」

 

 

 「幸子ちゃんもエアガンとマスタードでヒグマの鼻と目を潰しつつ接近戦をしていた時は怖かったよ」

 

 

 「いやまあ、猟師だしねえ私。あの頃は猟銃免許もまだなかったから槍とかナイフを使って即席投げ槍で罠にかかったイノシシとか熊を仕留めないとだったから」

 

 

 当時全国ニュースになって動画の再生も億を優に超えたあの動画の当事者。蓮さんは今や日本最強格と言われるほどの俊足、安打、堅守のプロ野球選手。幸子さんはホテルにもジビエ肉を卸しているプロの猟師。ケイジさんは言わずもがな世界最強、歴史的記録を手にしたウマ娘。

 

 

 「改めて、皆さん凄いことしていたんですよねえ」

 

 

 「ん? まあー私も昔馴染みで夢を語っていた友達たちが夢をかなえてテレビやニュースでよく見る顔になっているのは驚いているわー、そして、その弟子がこうして頑張っているのもね」

 

 

 「もしかしたらこの祭りの賑わいもケイジさんたちの騒ぎの場所をめぐる意味もあるのかもしれませんね。ケイジ記念の前に、えーと。いわゆる聖地巡礼?」

 

 

 「アニメの舞台をファンの人が巡るあれね。ふふふ。それで村がにぎわう、祭りが楽しくなるのは万々歳。ついでにここの前田ホテルに泊まってくれれば私の方にもジビエの依頼も増えて害獣退治で儲かるから気合も入るってね」

 

 

 犬のようにホットドッグや焼きそばを食べ歩きながら嬉しそうに語る幸子さんと屋台を回り、土産を買い込む中でふと見た顔が。

 

 

 「いやー! この出来はいいな! クマとケイジの戦いを描いた絵巻風のタオルに退治の一部始終と神社の情報をまとめた映像まで。これも買っておこう。おお、これはイノシシの牙で作ったキーホルダーと。普通の屋台では見れないものが目白押しだねえ」

 

 

 「あれ? メイさん?」

 

 

 「サトノダイヤモンド。君も今日はここで羽休めかい? そして隣の女性は・・・幸子さんだね?」

 

 

 「はい。ケイジさんが今日は休みだって」

 

 

 メイさんが買い込んだものをカバンに詰めつつチュロスを食べていた姿が。声をかけてみれば幸子さんにもすぐ気づき笑顔を見せて歩いてきました。

 

 

 「あー確かシンボリ家と縁の深いトレセン職員さんだっけ? ケイジが言っていたわねえ。なんか関わって以降シンボリの親戚筋の見合い写真が増えたからその写真まとめて焼き芋の薪にしたって」

 

 

 「それ、いいんですか?」

 

 

 「い、いきなりご挨拶だなあ・・・それと何をしているんだケイジは」

 

 

 「いやまあ、ケイジ昔っから婚姻で縛り付けようとするの大嫌いだし。なんならシンザンおばあさんもキ・・・ヒサトモ曾祖母さんも金目当て、コネ目当てでケイジに送りつける野郎、女問わず見合い写真は焼き芋の薪にしていたから。下手するとシンボリのおじいさん達に雷を落としに行くんじゃない? シンザンおばあさん」

 

 

 道理でケイジさんほどの実力者、美貌と実績持ちの人に浮いた話、熱愛報道とかの三流ゴシップ記事もないわけです。そもそも一族揃ってまともな考えで来ない輩は断っていると。

 

 

 それに関してはメイさんもひきつった笑顔になりますがシンザンさんが怒ると聞けば顔が青く。最強の戦士。三冠ウマ娘にして前田グループ現会長となれば流石に色々と昔の恩と、関りもあるのでしょうか。

 

 

 ・・・うちのお父様にも一応連絡しておくべきでしょうか? こういうジンクス破りを挑ませて前田家の怒りを買うのは流石に避けたいですし。下手すれば王族、皇族からも何か来そうで。

 

 

 「むぅ・・・今後は気を付けるよう言っておくよ。シンボリ家としても前田家のより強固なつながりは欲しいとはいえ流石に度が過ぎたというべきか」

 

 

 「メジロ家位フランクに関わりつつ仲良しの方がいいし、色恋のあれこれはケイジが決めたいでしょうしね。いくら一族4代クラシックレース制覇。内ダービー制覇3回、三冠2回、無敗の四冠1回とアスリートとしても怪物一族と言えどもねえ。

 

 

 ああ、話は変わりますがメイさんはケイジ記念の前の視察で?」

 

 

 「ああ、その通りだ。まさかここで模擬レース場を作り上げて練習をしているとは度肝を抜かれているよ。今回はチームシリウス、しかもケイジにトレーナーを任せてスピカの方も様子見で指導を抑えてみたが送られてくるデータにUAEダービー制覇と実績も見せた。

 

 

 そのノウハウを直に見るため、次のレースにどう挑むかをぜひ見たくってね。本当に彼女のやり方もだが、ついてこれるサトノダイヤモンド。君もサトノ家の至宝と言わしめるのも納得だ。

 

 

 ケイジ記念も励んでくれ。ここを勝てばまた遠征で疲れるだろうがそこが最大の目標になるはずだ」

 

 

 「ありがとうございます! 私も勿論やり切ってみせますので。でも、今はこの美味しいりんご飴やじゃがばたを味わいたいです~」

 

 

 なるほど。すっかり忘れていましたが私が参加していたプロジェクトは海外遠征のノウハウと実績をつかむためのもので今回は私一人に集中して挑むもの。そのレースも残り二つ。どれもGⅠなので視察に来るのも当然と。

 

 

 けど今はお休みです。この祭りを楽しんで、祭りならではの味に空気を楽しみたいです。

 

 

 幸子さんもうんうんと頷き、メイさんも朗らかに笑います。

 

 

 「いいことだ。弓の弦も常に張り詰めては緩んでいざという時に鋭く強い矢を射かけることはできない。今日は休みをたっぷりと楽しんでレースに挑んでほしい。あ、私も前田ホテルにいるので何かあれば声をかけてくれ。あ、それとさっき見たあの屋台は面白かったぞ。地元のストラップなどだが中々に珍しい物ばかりで」

 

 

 「それ多分私のお父さんの屋台ね。解体したイノシシの牙とか、クマの胆とかケイジ記念応援ってことでこの季節は毎年オリジナルグッズを作っているのよ。ちゃんと許可は取って。

 

 

 私の方はヤマドリのはく製とか羽飾り。秋の祭りの方ではジビエ肉入りの立ち食いソバとかも作るからまた来てね♪」

 

 

 「ヤマドリ?」

 

 

 「山の中に住んでいる鳥なんだけど、ジビエの鶏肉の中でもかなり美味しいのよ。癖も少ないから家畜の鶏肉に負けないから炊き込みご飯に入れて食べても良し、関東風蕎麦に入れて鳩肉と一緒にそれぞれの味を堪能してもいいわ。ふふふ。サトノ家も今度機会があるならおいで。私が多めに仕留めておいてあげるからね」

 

 

 「ほほぉ・・・是非!」

 

 

 メイさんとは互いに屋台巡りで分かれつつ幸子さんには秋の大レースの合間に余裕があればジビエ料理作ってくれるということで話はまとまり、大人になってレースも引退したらキジ肉の刺身にネズミ肉の塩焼きも用意してくれるという約束を取り付けて祭りを満喫して今日の祭りは終わりました。

 

 

 ケイジさんはお土産の量に笑いつつ酒を傾けて嬉しそうに食べてくれたのが何より印象的です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「暑いですねえ。北海道も」

 

 

 「全くだ。早いところレース場に入ろう」

 

 

 「しっかし、早めにホテルに泊まれてよかったよ。なんだいこのこの混みようは」

 

 

 今回のケイジ記念も特別招待枠ということで中川が貰ったチケットと宿泊券でケイジ記念に来たが、東京から遠く北の北海道に来てもこの暑さとは。日本どこもこの暑さは参るってものだ。

 

 

 「ケイジ記念の人気は年々上がり続けているのと、何より欧州二冠三連覇のケイジの名前を冠したレース。そのレースを制したキタサンブラックが凱旋門賞制覇。そして5年連続日本により凱旋門賞制覇記録をかけて挑むのはサトノダイヤモンドですからね。記録もですし、海外に挑む前のステップレースのゲン担ぎとしても凄いんですよ」

 

 

 「おかげで毎年各国のテレビ中継が増え続けているからなあ。見ろ。あっちはオーストラリアであっちはイタリア、フィンランドにアルゼンチンのテレビ局だ。100年を超える世界最高峰の凱旋門賞でも同じ国のウマ娘が、しかも日本が5年連続制覇なるか、日本トレセン学園のプロジェクトの実績を見ようと躍起になっている」

 

 

 「この暑さと混雑は決してこの夏だけじゃないってことか。道理でケイジがいつものふざけた顔じゃなくて侠客の顔を見せているわけだよ。この重圧を自分ならいざ知らず弟子に背負わせているんだし」

 

 

 纏の言う通りだろう。ライスシャワーの時もだったが、誰かのために全力を出すケイジだがこのレースに関しては一切の贔屓もできずにせめて実力をつけて送り出すのみ。自分の名前と実績がダイヤちゃんを守る盾ではなく重圧であり矛になりかねない。

 

 

 その中でどこまでやれるか。ダイヤちゃんの実力と才能、努力ならここまで行けると踏んでいた分今は少し心配をしているのかもしれないな。

 

 

 「ただまあ、それを踏まえてケイジが選んだ道だ。わしらはせめて客席から応援して、見届けてあげようじゃないか。それにこの暑さじゃあ早い所会場の影に入らないと倒れちまうよ」

 

 

 「だね。早く入らないと檸檬たちの土産も売り切れちまう」

 

 

 「僕はジュースを多めに買っておきますね」

 

 

 わしらも早いところ会場に入ろう。特等席以外にも空調やミストで可能な限り暑さ対策をしているとはいえそれでもこの暑さは毒だ。

 

 

 

 

 

 

 「ふーいつ来てもこの特等席は見やすいしサービスがいいな」

 

 

 「昼間から酒をひっかけるなよカンキチ。それと飲みすぎるなよ?」

 

 

 「いいじゃねえ―かせっかくの休みで祭りの舞台だ。ハメくらいはずさせろ」

 

 

 「先輩はいつもじゃないですか」

 

 

 みんなでそれぞれつまみとドリンク、グッズを買い込んで無事にエアコンの効いた特等席について一息つき早速酒を一杯。

 

 

 「うん。相変わらずいい味だ。部長の分も確保したし、グッズもある。後は幸子ちゃんからジビエをクール便で送ってもらえばあっちでも一杯やれるな」

 

 

 「大原部長、忙しくて無念の不参加でしたけどこれで喜んでくれるといいですねえ」

 

 

 「私も皆に頼まれて酒を買ったけど、飲む分と、期間限定で売るようだからねえ。全く。帰りが億劫だ・・・」

 

 

 三人でポテトや唐揚げとドリンクを飲んでいたらここまで響くひときわ大きな歓声、いや怒声と言っていい声と鳴り物が響く。

 

 

 「フレー! フレー! ダーイヤちゃん!!」

 

 

 「必勝必勝!! ダイヤちゃーん!!」

 

 

 「おっせーおせおせダーイーヤー!!!」

 

 

 声の咆哮を見るといかつい男たちが旗を振って太鼓を鳴らし、オカマたちが学ランをつけて応援するという奇妙な光景と、そのメンツを見て合点がいく。

 

 

 「な、なんだいあいつらは」

 

 

 「あー元関東男連合と16号の黒豹のメンバーで作った建築、農業、漁業の会社のメンツと、ケイジの友達のオカマたちだな。本田から話は聞いていたが凄いな。当時震災への復興ボランティアに参加したメンバー全員来ているんじゃないか?」

 

 

 「日本ダービーや有馬記念以上にすごい声があっちだけで聞こえていますよ。旗も横断幕も凄すぎる」

 

 

 ケイジの姿とふるまい、実績に脳みそ焼かれて、さらにライスシャワーちゃんの菊花賞の一件もあって男心に刺さる姉御肌のケイジの弟子の戦いだからなあ。その手伝いにと声をかけられたらそりゃあ応援にも来るか。

 

 

 オカマは・・・まああのオカマバーの連中だし、ケイジ記念には毎年来ているんだろうきっと。

 

 

 「あ、スーザンママもいる。本当にすごい集まりだねえ。絵面的な意味でも威圧感的な意味でも」

 

 

 「元はみ出し者、暴走族を軒並みそのふるまいで更生させてしまったからなあ。周りもその熱にあてられて熱狂でガラスが揺れるのももはやこの時期の札幌レース場は風物詩だ」

 

 

 「あ、そろそろ始まる時間ですよ」

 

 

 ケイジ記念の始まりはまずケイジの軽いセレモニーから始まる。その言葉を聞き逃すまいとあれほど騒がしかった会場がぴたりと静まり返ってケイジを待つ。毎年どこから現れるか、何をするかわからないケイジの登場に皆一番に見つけると、ワクワクしつつ目を皿のようにしていく中

 

 

 レース場の内部の芝、そこに立てられているケイジの銅像と看板。その看板が動いて銅像に当たったと思えばまるで看板が溶けるように色が抜け落ちて銅像に色がつき、それがギギギ・・・と音を立てて動く。

 

 

 会場がどよめく中、銅像が砕け飛び、中からケイジが現れる。

 

 

 「いよぉー! みんな待っていたかーい! このレースを!!」

 

 

 「「「オォオオオーー!!!」」」

 

 

 その登場に会場がわき、銅像もケイジがすり替わっていたはずがいつの間にやら戻っていて、砕けた銅像の破片をまとめて拾えばそれがケイジ記念の勝者に渡されるトロフィーに。

 

 

 「い~い返事だぁ! アタシも待っていたよぉーん。こんなアッツいなか、毎度季節変えろという声もあるけどよぉ」

 

 

 声が男の声に変わりつつ出てくる愚痴にみんな笑い、わしも笑いつつそうだそうだと纏と一緒に言う。

 

 

 「この季節に、この熱さ苦しさを越えて、なお挑んで勝利を、この次の勝利をつかみたいウマ娘たち、その姿こそがこのレースの華ってな! 改めてよーく来てくれた観客の皆! そしてレースに挑む暑いウマ娘たち! ケイジ記念ここに開催だ! あたしからトロフィー頂戴しに来いや!!」

 

 

 

 「「「イヤッホォオオー!!!」」」

 

 

 ケイジの啖呵に会場が揺れるように響いて、それに続くようにアナウンスがレースの開催、ウマ娘たちのパドックに移る。いつ見てもこの瞬間は心が躍る。

 

 

 『ではでは早速今回出走するメンバー紹介をします。1番ーーー』

 

 

 「さーてと、枠順の方は・・・ダイヤちゃんは4番か。確か得意なのは差しだったし悪くはないか」

 

 

 「怖いのはバ郡にのまれるくらいで、熱さに関してもここ数か月北海道で生活しているのと、ケイジ記念は経験者。1番人気になっていますね」

 

 

 

 『3番はフランスから来た新星ヴェニュスパーク。素晴らしい仕上がりとあいさつで我々を歓迎してくれます』

 

 

 「まあ、ケイジが直々に鍛えているってのもあるんだろうけど、でー・・・今年のアメリカトリプルクラウンを分け合ったメンバーの二人と、オーストラリアの長距離走者、香港の最強マイラーが来ているけど、ケイジが一番気にしていたのはヴェニュスパーク。か。カンキチ、中川さん。何か知っている?」

 

 

 あーあの子か。確か・・・

 

 

 「フランスの昨年デビューしてトリプルティアラ路線で走っている子だな。フランス期待の天才少女、ケイジに並ぶ器と言われているらしい」

 

 

 「僕の方でも耳に挟んでいますね。確か無敗のままここまで来て、しかもどれも圧倒的勝利。モンジューを師匠に持つこともあって師弟で日本に来た時は驚きましたよ」

 

 

 「ふーん。それでケイジ記念にはダイヤちゃんとぶつかると。なんというか、弟子同士がぶつかり合いも注目されていそうだね」

 

 

 纏の言う通り。あちこちでパンフレットに書かれているプロフィールとパドックでの仕上がりと可愛さにフランスから来たファンのみならず日本やみんなも素直に称賛と応援をしている。持っている雰囲気も普通じゃないのはこの猛者集まるケイジ記念でも抜けている。とは思う。

 

 

 「ただまあ、その弟子も海外メンバーに負け無しのケイジの弟子。こっちも期待はすごいぞ。そら来た」

 

 

 『続きまして4番サトノダイヤモンド。UAEダービー制覇、ここケイジ記念で師匠と親友に負けずに戦えるか期待の1番人気です』

 

 

 「ウォオォオー!! キターダイヤちゃーん!!」

 

 

 「いいぞ、いいぞー! 今日も輝いているよぉダイヤちゃーん!」

 

 

 「あはぁーん。可愛いわよぉ! そのまま勝ち抜いちゃってェーん!!」

 

 

 「お、来たか。相変わらずすごい袖と豪華な衣装だなあ」

 

 

 「本物のお嬢様は違うねえ。そしていい調子のようじゃないか。頑張れー! ダイヤちゃーん!」

 

 

 「いい感じに期待できそうな仕上がりですね。後は、どこまでやれるか。アメリカから4名、日本は4名、欧州からは6名。オーストラリアから2名、南米からは2名。前に出るレースもゆったりとしたレースどっちの本場からも比率が半分の割合ですよ」

 

 

 「ならまあ、団子にはならんだろうな」

 

 

 うーむ。中川の言う通り。前から後ろにとずらりと分かれた。これはレースも縦に伸びてしまうものになるかあ。ただ、そうなるとダイヤちゃんは差しだし抜け出して前に出やすいか?

 

 

 可能ならアメリカ、オーストラリアメンバーがレースペースを握ってもらって塊を作ってもらわないように願うほかない。そうなるとやはり問題はアメリカにはない2600という長距離とアメリカ、オーストラリアのレース場にはない坂を踏まえて速度を抑えるかどうかになりそうだなあ。

 

 

 三人でワイワイ話しつつ参加メンバーを見ているといよいよファンファーレがなってレース直前。パドックも終わりいよいよターフに立ったウマ娘たち。

 

 

 『さぁ! この札幌レース場に押し掛けた十万を超える皆様。いよいよウマ娘の皆さんがゲートに入ります。勝つのは日本か、世界か! 秋の大レースを見据えた大レースケイジ記念。世界中が注目す一戦!!

 

 

 最後にサトノダイヤモンドが入りました。・・・・・・・・・スタートです!』

 

 

 ゲートに入り、しばらくの静寂を置いてゲートが開いて走り出すウマ娘たち。それと同時にまた割れんばかりの歓声が押し出すようにウマ娘たちも前に出る。

 

 

 『まずは先頭を奪いましたセントジョン。ああっとそこに加わるはタマモロウリュ。日本、アメリカ勢が苛烈な先行争い。その後ろにミッシングウィットネス。オーストラリア勢が様子をうかがう。

 

 

 グイっと外から飛んでポジショニングを取るのはヴェニュスパーク! サトノダイヤモンドは後ろから様子を窺うようにしてスタンド前を通り第一コーナーに行きます』

 

 

 「アメリカ、日本勢のポジショニング争いはやや大人しいな。やっぱり未知の距離でのレースというのもあるか。今回のケイジ記念に挑むアメリカ、オーストラリア勢はこの距離は不慣れな分とりあえず前でペースを握る判断になったか?」

 

 

 「ミシェルマイベイビーのきたジャパンカップとか、サンデーサイレンスの挑んだクラシック三冠とかレース最初から接触衝突当たり前だったしねえ。それに比べれば接近は目立つが大人しいと」

 

 

 「先輩の言う通り長く伸びていきましたね」

 

 

 ホームで挑むレースの分日本は消耗が少なく、アメリカ勢の接触が少ないから気を揉まずに済んだ。ただそれを見つつ外から見るように走っているヴェニュスパーク。外からの先行策を最初からとは強気だなあ。

 

 

 ダイヤちゃんの方は顔色は良し。むしろこのくらいがいいと言ったところか。

 

 

 『さぁ最初のコーナーに最初に入るのはアメリカのデビルレイクバーマ。そこを追うようにシンボリエスプレッソ、タマモロウリュ、ミッシングウィットネス、セントジョンがポジショニング争いをしながら続く。そしてその外からはヴェニュスパークが徐々に追い上げていきます。

 

 

 長く伸びたバ郡はコーナーで大きな変化をせず。後方にサトノダイヤモンド、さらにベルギーのムーンミラージュ、イギリスからクラレントが様子をうかがう。そしてぐるっと回りつつ第二コーナーを曲がり向こう正面に向こう正面に入っていく!』

 

 

 「今のところはヴェニュスパーク以外は皆やや定位置についていけている。となると向こう正面についてからの仕掛け具合が見どころだな」

 

 

 「でもコーナーでの加速は減速しないと危ないんだろう? 第三コーナーで仕掛けていくってのは消耗も危ないんじゃないか?」

 

 

 「ええ。でもカーブがきつい内側ならまだしも外側からならカーブが緩く直線的に切り込めます。距離が長い分カーブを気にせずに走るか、内側を走って消耗を抑えつつ前をキープしていくか。アメリカだと基本前に出て出てとポジションを取りながら常に出続けるのでその優位性を保つのですが。

 

 

 欧州メンバーはその最後の切込みを仕掛けていくとしたら第三コーナーから加速しながら優位な場所をうかがうので先行勢はそれを防ぎつつ進路を取るために広がる可能性がある。だから一度チャンスを逃がす。仕掛けを間違えると加速も仕掛けもできずに沈む可能性があります」

 

 

 「そこからまたルートを再度模索しながら走る。しかもコーナーで外に膨らまないようにしながらとなると頭脳も精神も消耗もきついし、加速が鈍ればその分だけ直線で速度が出てもそのころにはゴールに届かず先に失礼されるか。だ。差し、追い込みはそれがシビアだがどうなるか・・・」

 

 

 ポジション争いも決着してそれぞれに脚をためつつ仕掛けを考えるかどうかというころあい。

 

 

 『向こう正面に出て半ばミッシングウィットネスが前に出た! そしてセントジョンも負けじと先頭を狙い出ていく! あーっと!! ヴェニュスパークが何と仕掛けていった! デビルレイクバーマを追い抜くようにグイグイ加速! シンボリラテ、タマモロウリュがアメリカ勢に続くように仕掛ける! ここで日本、アメリカ、オーストラリア勢に割り込んだヴェニュスパークが先頭を奪いリードしていく!!

 

 

 何ということでしょう! 欧州の新星が日本、アメリカのお株を奪うような先行からの逃げのようなスタイルで爆走! それに負けじと追走するという状態になりました!』

 

 

 会場もどよめきが走る。まさかの欧州の新鋭が、先行、先行よりの差しでのレースメイクをしていたヴェニュスパークが早仕掛け。しかもその速さはすさまじく追走するウマ娘たちも驚きを隠せない。

 

 

 そしてそのペースを握ったヴェニュスパーク自身がとても余裕のある。遊びを楽しむ子供のような無邪気で、自信に満ちた顔なのが一層必死に追いかける面々との差がわかる。

 

 

 『さぁ、第三コーナーに入っていくヴェニュスパーク。おおっと。サトノダイヤモンド仕掛けていった! 彼女もグイグイとごぼう抜き! すごい凄い! この加速! 躍り出て先頭との差は5バ身に縮めました!

 

 

 伸びたバ郡はここに入って一団に固まるようになっていく! そしてペースも急上昇! 最後のコーナーまでもう少しだ!』

 

 

 「イケー!! ダイヤちゃんもう少し! 最後のスパートならいけるぞー!」

 

 

 「いいわよぉーう! そのまま! そのままおい抜いちゃってぇー!! ウォオォオオ!!!」

 

 

 「先輩!」

 

 

 「まずいな・・・まんまとしてやられているぞ」

 

 

 「なんで? だって差しならダイヤちゃんの十八番でしょ?」

 

 

 「その差しを自分でしたんじゃなくて『せざるを得なかった』んだ」

 

 

 纏の疑問も分かる。追い込みでキタちゃんを退けたあのキレをここで仕掛けたのならと思うだろう。ただ、ヴェニュスパークの早仕掛けで回りも思わず仕掛けを速めた分、もう少し後からするはずだった最後の仕掛けの前のポジショニング争いからのスパートによる団子状態をコーナーで起こしてしまう。

 

 

 長く伸びたバ郡が一斉に加速していけばそこで飲まれないために、前に壁を作られないために差しのダイヤちゃんたちも動かざるを得ないが横にずれて長い距離を、不意を突かれたままするというのは大きい消耗だ。

 

 

 「予想外の動きでリズムを崩されて、しかも目標の距離も長い、ヴェニュスパークの方も余裕がある。たとえスタミナを鍛えていても、欧州に近いここの芝質に慣れていてもこの消耗はバカにできん。そして・・・」

 

 

 『最後の直線に入る前にまさかまさかのデッドヒート! デビルレイクバーマ、セントジョン、ミッシングウィットネス、タマモロウリュによるポジショニング争いと加速が熾烈を増す! ヴェニュスパークの後ろが固まりつつ最後の直線を抜けつつあります!

 

 

 その後ろからシンボリラテ、サトノダイヤモンドが並び、ムーンミラージュ、クラレントが広がりつつ直線で加速!

 

 

 コーナーでのせめぎあいからの最後の直線! サトノダイヤモンド伸びていくがやや鈍いか!』

 

 

 「まさかの伸びていた列が固まって再びポジショニング争いを始めたことで前から後ろからとダイヤちゃんを抜こうと、防ぎつつ前に行こうとするから後ろからと下手に動けば妨害とみなされる。

 

 

 間延びしていたレースからのこの急変。シンプルに早く仕掛けないといけないがこの速度で走りつつ心を整えつつ最適解を出せってのは酷だ・・・ヴェニュスパークのレースはもう少し仕掛けが遅く予想外のことをしてきたからこそ起きたこの流れはダイヤちゃんにとっては辛いぞ」

 

 

 「今まで見せなかった走り方で、しかもそのレーススタイルは日本やアメリカのお家芸を、あの世代を思い出すようなやり方。驚くのも当然です。それでもダイヤちゃんはなんとか行けそうですが・・・」

 

 

 『サトノダイヤモンドの伸びは止まらないが、前のポジション争いがきついか苦しそうだ! 最後の直線に入って先頭は以前ヴェニュスパーク! ああっとセントジョン伸びない! タマモロウリュも沈んでムーンミラージュが大外から強引に仕掛けていった! クラレントは最内から枠すれすれで斬り捨てようとして猛追!

 

 

 しかししかし! 依然先頭ヴェニュスパーク! 二番手にサトノダイヤモンド並んできた! 二重底のスタミナでグイグイ迫っていく! さあ、残り200メートルを切りました!』

 

 

 「最初に終わったはずだったアメリカ仕込みの接触やレース構築をここで挟むのは大きな消耗。アメリカ勢はここで沈んでいって欧州勢が伸びていくのを切り捨てるのは予定ないのつもりだったのだろうが、思わぬ早仕掛けとまさかの二度目の激しいポジション争い・・・負けるなー!! ダイヤちゃん! もう少し、もう少しなんだー!!」

 

 

 「そうだ! まだ終わっていないぞ。ファイト―! ダイヤちゃーん!!」

 

 

 「ファイト! ファイト! ダイヤちゃーん!」

 

 

 

 なんとなく感じている不安はある。だけどまだ終わっていない。あの子の努力はわしも知っている。この応援があるんだから負けないでほしい。わしらがあきらめずに応援して背中を押してやるんだと声を張り上げてファンの皆と一緒に最後のスパートをかけるウマ娘たちのなかで先頭争いをしているダイヤちゃんを見つめる。

 

 

 逃げの、距離を最初からとっていく相手を切り捨てるような末脚を、レース運びの経験でなんとかなるはずだと。その末脚に、今までの積み重ねてきた勝利と自信に全部つぎ込めばきっと。

 

 

 『あと100・・・・! 50!! 30!! この二人に絞られた! あと10! 

 

 

 

 ・・・・・・・ッゴォオォオオオオオルッッッ!!! ケイジ記念、勝ったのはフランスのヴェニュスパーク!! なんとなんと! 早くも国際GⅠ三か国目を制覇! フランスの新星は早くもフランス、ドバイ、そしてこの世界中の猛者集うケイジ記念で勝利をもぎ取った!! 2着サトノダイヤモンドとの着差実に1バ身!

 

 

 凱旋門賞ウマ娘キタサンブラックを有馬で退けた日本のエースをも翻弄しての素晴らしい走りを見せてくれましたぁあああ!!』

 

 

 悲鳴も交じるが歓声が飛び交ってヴェニュスパークを祝福する。いやな予感は当たった。そして、同時に強かった。

 

 

 「ダイヤちゃんが・・・負けた。あの子、まだレースデビューして1年と半年あるかどうかでしょ?」

 

 

 「凄まじい。早仕掛けとレースの翻弄はジェンティルドンナさんやヴィルシーナさんたち。あの世代の十八番。欧州でもそれを見せていましたがそれをここでしてしまうとは・・・凄い子が来ましたね」

 

 

 「ああ、そして間違いなく凱旋門賞に挑むうえで今年最大の壁になるだろうな。・・・・・・ダイヤちゃんも大変だろうが・・・まず、皆見事だった」

 

 

 ダイヤちゃんが負けてショックな気持ちもある。ただそれだけじゃない。ここまで熱くなるレースを。まさしく天才、努力、まだ底の見えないレースを見せてくれたヴェニュスパーク。それにくらいついたダイヤちゃんや世界の強豪たち。

 

 

 彼女たちに賞賛と拍手を送らないといけない。勝者は祝福されて、敬意を払わないといけない。ケイジが勝っても負けてもそうであったように大人であるわしらがそれをして若い世代を観客としてファンとしてしないといけないマナーだ。

 

 

 「惜しかったわよダイヤちゃーん! 次、凱旋門賞でリベンジしちゃえー!!」

 

 

 「ダイヤのお嬢が負けた・・・いや、見事だったぞー!! ヴェニュスパーク!! 推しになるけどダイヤちゃんが今度は勝つからなー!!」

 

 

 「また日本に来てねー!! ヴェニュスパークちゃんも凄いけど、熱いレースを見せたデビルレイクバーマにセントジョンのアメリカンレースも好きよぉお!!」

 

 

 「くぁあー・・・! 負けた! こうなったら嫁さん質に入れてフランスに応援いくしかねえぜ!」

 

 

 「ムーンミラージュもかっこよかったぞー! ダイヤちゃんと今度一緒に歌ってくれー!」

 

 

 

 『ヴェニュスパーク観客に向かってガッツポーズと手を振って歓声に応えます! そしてサトノダイヤモンドやレースの皆と握手を交わして健闘をたたえ合います! 今回ケイジ記念で10着まではいったメンバーには秋の重賞レースでの優先権と賞金が与えられます!

 

 

 今ここで走りぬいた彼女たちは再びこの熱い走りを見せて秋でも世界をわかせてくれるでしょう! さあ、そしてその中で今回勝利したヴェニュスパークにケイジさんからの優勝トロフィーの贈呈がされます!!!』

 

 

 

 『おめでとうヴェニュスパーク。ったくまさかのレース半ばからの、1300メートルスパートかけ続けての早仕掛けとかかっこいいなーんもー』

 

 

 『ありがとうございます! でもまだまだです。もっと勝って私はフランスに、故郷に希望と元気を与えていきたいです!! ケイジさん。貴女のように』

 

 

 『ったく。アタシが後輩だったらほれちゃうかもね。ははははは!! 次のレースでも頑張ってきてな。フランスの可愛い希望ちゃん』

 

 

 優勝トロフィーを手渡され、その上で固い握手を交わす二人にシャッターと割れんばかりの歓声が鳴り響いて勝者を祝福する。

 

 

 「1バ身。これを2か月ちょいで埋めるかどうか・・・か。ダイヤちゃんも大変だなあ」

 

 

 「でも、きっとやってくれる。そう信じて私らは応援しよう。今度うちの寿司屋に来たらサービスしてやらないと」

 

 

 「ですね。後はグッズの販売第二部と、ウイニングライブですし、早速行きましょう」

 

 

 「おお、そうだな。後ウイニングライブまでの時間にできれば酒を車に入れておきたい」

 

 

 課題が増えたか、むしろ収穫を得たと考えるかはわしらからは見えない。ただ、ケイジもダイヤちゃんもきっとあきらめてはいないはずだ。頑張れ。二人とも。ライブでも応援するからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レースも終わり、ウマ娘たちの次の舞台はウイニングライブ。のまえにシャワーで汗と泥を落として化粧直しと休憩。夏場だし、レース後は即座にミスト噴霧とか、強烈な風で冷却して、表彰前に水分補給とかはするんだけどやっぱ消耗はでかいからねえ。

 

 

 「大丈夫か? ダイヤちゃん」

 

 

 で、まあそれと同時にウマ娘たちにとっては心を整理する時間だ。泣き顔悔し顔のままライブをしちゃあいけないからね。それぞれの控室でシャワーを終わり勝負服や予備が無ければレース場で提供している衣装を貸してしばしの休息。

 

 

 「ケイジさん・・・・・」

 

 

 ダイヤちゃんもその休憩の合間だが、うん。そりゃあそうなるか。

 

 

 「負けちまったなあ。まさかアタシらがよくしていた早仕掛けを。しかもそのまま欧州仕込みのスタミナで暴れるから大荒れになるとは」

 

 

 「レースのペースを完全に握られちゃいました。私、驚いて、つられて仕掛けちゃって。あんなに・・・あんなに応援してもらって、頑張って、皆さんからの期待もあったのに・・・!」

 

 

 悔し涙を流してこぶしを握り締めるダイヤちゃん。ドバイでの勝利、ケイジ記念の経験があるという自負。それを持って挑んだのにまさかの翻弄されての負け。しかもまあ、アタシらを思い出すような早仕掛けでのペース変更はよく見ているはずだったのに。

 

 

 そりゃあ・・・悔しいよなあ・・・

 

 

 「でも、勝てませんでした! 私・・・わたし・・・」

 

 

 「負けは負けだ。でも、これで終わりじゃねえだろ。このレースはあくまで本命前のオードブル、食前酒みたいなものだ。そうだろ。ダイヤちゃん」

 

 

 でも、ここで全部出し切ってしまうんじゃない。ここがゴールじゃないんだ。それを忘れちゃいけない。このケイジ記念が人気があろうが何だろうがあくまでも立ち位置はステップレースみたいなもの。

 

 

 「はい・・・本番は・・・凱旋門賞、です・・・ひぐっ・・・」

 

 

 「ああ。その上でヴェニュスパーク以外には先着しての2着。ならまだいける。ここで負けていい。本番は凱旋門賞だ! だから、気負い過ぎるな。その頑張りも、心も私はずっと見ていたし、次は勝てるはずだ。ダイヤちゃんの脚なら、勝利の未来を開けるぜ・・・」

 

 

 覚えているようならそれでよし。アタシ的にはむしろ収穫を手にしている。手ぶらじゃない分むしろよく頑張ったよこの子は。本当にすげえ実力だ。優しく抱きしめて頭をなでてやるとダイヤもボロボロと大粒の涙があふれ出てしまう。

 

 

 「ぅ・・・ありがとう、ございますケイジさん・・・ちょっとだけ、そのまま胸を貸してください・・・う”ぐ・・・ぅ」

 

 

 「ああ、泣け泣け。明日までは思いっきり泣いて、悔しがれ。ただ、ライブでは切り替えて思いっきり歌え、踊れ。応援してくれたファンたちのために、掲示板に入れなかったライバルたちの分。そして、何より次のために頑張れるんだっていう姿を自分自身に見せるために。な?

 

 それが終わればいくらでもアタシの胸も貸すし好きな飯も作ってやるし、なんでもしてやる。アタシはあんたの師匠で、大事な教え子だ」

 

 

 「はい・・・頑張ります。ライブも・・・次の凱旋門賞で・・・必ず、次は・・次は勝ちます。ヴェニュスパークさんに、世界に・・・! もう一度、世界に勝って見せます・・・から・・!!」

 

 

 ダイヤモンドは砕けない。ってか。負けてなお輝きは鈍らずに増しているよ。アタシは弟子に恵まれたねえ・・・ダイヤちゃんは問題ないとしてそれいがいでありそうな問題はマスコミかなあ・・・




 ケイジ記念終了。ダイヤちゃんは惜しくも2着。色々な意味で大番狂わせの結果となりましたとさ。ケイジもダイヤが負けて悔しいけどそれはそれとして勝者のヴェニュスパークの勝利と強さに敬意を払っているのも事実。まあここらへんは馬時代からそんなノリなので。


 次回はいざおフランス。


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ウマ娘エピソード 外伝プロジェクトl'arc おフランス

 絵の方に関しては活動報告に書いていますのでノンビリとお待ちくださいませ。

 それとお気に入り人数4500人突破ありがとうございます! ここまで来るのは嬉しいことですよ。

 蛇足だなあーと思いつつあるこの外伝でこうなるとは思いもしませんでした。これからも皆様どうかウマ娘と競走馬と騎手たちと関係者を愛してくだされば嬉しいです。


 あと、12世代がどんどん実装されてきて嬉しい! いやあーこのままジャスタウェイやジェンティルちゃん、マメちんもみたいものですよ。


 『サトノダイヤモンド惜しくも二着。凱旋門賞チャレンジに暗雲か』

 

 

 『ヴェニュスパーク強かった。今年の優勝候補にサトノダイヤモンドどう挑む?』

 

 

 『ケイジ記念ヴェニュスパーク勝利。勢いをそのままに凱旋門賞に。サトノダイヤモンド負けるか』

 

 

 『遠い1バ身。凱旋門賞は絶望か』

 

 

 「ったくまあー煽ってくれるねえマスコミ共は」

 

 

 「うーん・・・遠い1バ身。かあ。まあ、不意を突かれたうえでああなったとはいえ、ちょっと早計過ぎない?」

 

 

 レースが終わって翌日。どのメディア、新聞のスポーツニュースでもケイジ記念でのダイヤちゃん敗北を取り上げて騒がしいことこの上ない。

 

 

 しかもまあ、ここぞとばかりに専門家の皮被ったつもりの輩が知ったかぶりでやいやい言ってくるもんだから雑音よりも耳障りったらありゃしないね。

 

 

 「アンカツさんとか、タバラさんの解説は参考になるのにねえ。怪文書で吹き出すけど」

 

 

 「あの二人はよく見ているよ。ダイヤの末脚の伸び。何よりそれが切れなかった。これだけでアタシは成功と思っている。この仕掛けをあっちの本場の気候と芝質に合わせて出せるように最終調整さえしてしまえば・・・やれることは全部やった」

 

 

 あの新聞記者、解説とコメンテーターをしている二人と藤井の兄ちゃんの記事はかなりいい所を見ている。というかアタシの狙いと収穫をしっかりと踏んでいるからありがたい。後でダイヤちゃんに見せるレースでの収穫。これを教えるにはアタシ以外からの、目の肥えたベテランたちの意見でも前に進ませる促進剤にしていくにもってこいだ。

 

 

 「気にしないのが一番だけど・・・やっぱりむかつくかも。ケイジの時も宝塚記念の時に似たようなこと言って、欧州二冠とったら知ったかぶりだもの」

 

 

 「はははは! あんときはむしろ回りがみんな叩きまくってしばらくコメントぶつけた芸人もコメンテーターも冷や飯食らって笑ったがな! いんやーまあ、毎年宝塚に負けてから海外遠征でこれしていたから3回目はもはや恒例行事になったけど」

 

 

 「そりゃあ、1度目は爆笑して失速、3度目ド級の出遅れからゴルシを煽ってからのごぼう抜きの超ロングスパートとか心配になるけどねえ」

 

 

 「でも面白いだろ?」

 

 

 「まね♪」

 

 

 流石幸子はアタシの理解者だねえ。ま、どっちにせよ今は外部の声は参考になる、ダイヤの助けになる声を拾ってあとで教えることにしつつ欧州行きの準備だ。

 

 

 「でーダイヤの新衣装の方。届いたの? 幸子が来たってことはさ」

 

 

 「あ、そうそう。あと5分くらいで来るそうだからホテルのロビーに下りてきてよ。一応練習用のやつと本番用で2着用意したんだって」

 

 

 お、いいタイミング。元気づけたり気分をスッキリさせるにはもってこいだ。あの変態の方もしっかりと仕事したようだし。んじゃまあ、行きますかねえ。出来を見に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「わぁ・・・これは素敵です! ありがとうございますケイジさん!」

 

 

 「いいのいいの。しっかしまあ、似合っているねえ」

 

 

 「うんうん。サトちゃんにピッタリ。まさしく麗しの騎士様だね♪」

 

 

 サトちゃんに用意した新しい勝負服は青い騎士を思わせる勝負服。スカートはちょいときわどいが、ま、綺麗な太もも拝めていい感じ。下はちゃんとショートパンツだし。いややっぱ色気あるなあ―サトちゃん。普段の勝負服とかだと肌を隠しているから少し足の露出を増やすだけでもすごいわぁん。

 

 

 「服も動きやすいですし、肌触りもいい。しかも軽いです。帽子もよくできていて・・・あ、レイピアも軽い。でも・・・はぁー・・・いいいつくりですね。しかも美しい・・・」

 

 

 「でも刃はない。模造品かあ。残念」

 

 

 「レース中に決闘されても困るわ。刃じゃなくて走りで勝負してくれや」

 

 

 いやまあ、タイキはリボルバー、ライスも短剣あるし、ゴルシもグラスも演出や撮影用に鎖付き錨とか薙刀あるけど。私も日本刀数本あるし。懐刀あるけど刃傷沙汰はNG。レースしろレース。

 

 

 「そのレイピアは模造品だが、サトノ家には真剣を送っているから機会があれば見るといい。人間国宝に作らせたものだから切れ味も美しさもその模造品に負けないぞ?」

 

 

 「そうなのですか? わざわざ刀匠にまで・・・ふふ。一応フェンシングは習っていましたが、これはぜひ見に行きたいですね」

 

 

 「凱旋門賞が終わった後の楽しみが増えたわねダイヤちゃん。私も見てみたいわねえ。ついでにナイフ、マシェットを作ってもらえないかなあケイジ」

 

 

 「暇な時間に頼んでみるわ」

 

 

 制作したのは腕はいいがかなりの変人だがな! 最近作った時価5000万の名刀「カノー姉妹」とか今回のダイヤちゃんのレイピアとか制作意欲がかなりおもしれーし。

 

 

 「じゃ、とりあえず汚してもいいその練習用。簡単に洗えるからそれでとりあえずちゃんと力が出るかとかを試すために今日は軽く流してからタイム測定をして終わろうか。疲労抜きが大事だが、今は軽く発散したいだろ?」

 

 

 「もちろんです! 疲れも吹っ飛んじゃいましたから!!」

 

 

 「よし。ならまーマスコミがうるさいし幸子。東北興進の若い衆と一緒にインタビューは練習終わりまで待つように伝えつつバカしねえように警備頼む。アタシは道具の用意をしてくるからサトちゃんは勝負服を部屋においてから着替えのジャージと新勝負服のブーツ専用に蹄鉄を再度合わせるからそこも含めて日本でやる最終チェックだ」

 

 

 「了解。バカがいればそこも映像を取っておいて後日逆に締め上げちゃお♪」

 

 

 「お願いします!」

 

 

 さてさて。疲労は残っているはずだし、軽めに流すとしてどこまでキレがいいか。鍛え上げたスタミナと回復力はどこまで今のダイヤちゃんの身体を支えているか。見ないとなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うーん・・・ダイヤちゃん、大丈夫かなあ」

 

 

 「なんだいキタちゃん。ダイヤちゃんが心配かい?」

 

 

 「あ、キズナさん。ええ・・・その、一緒にいられないのが続くと少しもどかしいのもあって」

 

 

 ここはアメリカ。私とキタちゃんで今年のBCシリーズに挑むために遠征に来ていたがそこでのスポーツ速報でのダイヤちゃんのケイジ記念での敗北。

 

 

 1バ身の差もだけどその仕掛けに振り回された形。日本というホームで引っ掻き回されたというのがキタちゃん的にも不安なんだろうね。

 

 

 「まあ、確かに負け方としてはバ身以上に怖いものがあるが、同時にそこをここまでまくり返したダイヤちゃんの底力はすさまじいものがある」

 

 

 「そうなんですよね。そこは間違いなくすごいんですが、欧州ではファンの応援も少ないですし、プレッシャーとか・・・」

 

 

 「んなもん挑む以上覚悟するもんだからへなへなしていちゃ締まらんよ。それよりもいい方向に目を向けなキタちゃん。ほれ、ここの方から見てみなよ」

 

 

 海外遠征に挑む以上ここら辺の事は理解しているはずだし、あの子の心の強さなら大丈夫なはず。だからこそ沖野も利褌もケイジに丸投げしてここにきているんだからね。

 

 

 とりあえず私のタブレットで公式のレース映像を再生っと。サトちゃんがしかけ始めてから、最終スパートまでの間だ。

 

 

 「ここのスパートの長さと切れ味の良さ。見ていてわかるかい?」

 

 

 「えーと・・・あ、1000メートル近く加速を。しかもこの時間は」

 

 

 「そ、ケイジやゴルシ、マックお得意のスタミナを活かした長距離スパート。ステイヤー最強格たちの世界に踏み込みつつあるのと、切れ味は先攻策のメンバーに負けないほど。キタちゃんを有マ記念で倒した時よりも距離もキレも増している。

 

 

 しかも欧州の芝質に近いケイジ記念で。だ」

 

 

 脚質自体は変えていないけど基本中距離を得意とするダイヤちゃんに2600メートルの距離で、深い芝、柔らかい土のレースでこの走りをできている。しかも休憩と再調整の2か月の時間もある。

 

 

 「なら、仕掛けを間違えず、振り回されなければ凱旋門賞もいけるはず!」

 

 

 「そゆこと。マスコミ共のほとんどはヴェニュスパークがレース全体を握ってメイクしたことに目が行きがちだけど、その中でここまでの成長とあと一歩でその流れを砕けそうになっていた。そこは大きな収穫だよ」

 

 

 うちのひ孫もその成長を見れたこと自体を望んでいただろうし、まあー気にしないでいいはず。まずうちのトレーナー、コーチ陣が深い心配していないし。

 

 

 「だからまあ、マスコミの文章は気にしないで、凱旋門賞ウマ娘のキタちゃんを有マ記念で倒したライバルの実力とその成長を信じてあげな。さ、私らも自分のことで手いっぱいだ。さっさと練習いくわよ」

 

 

 「はい! コーナリングの練習を頑張るのと、やっぱり荒っぽいポジショニング練習ですかね?」

 

 

 「後半、スポーツの話に聞こえないけどね。ま、そういうこと。足首と体幹を鍛えていくわよ。アメリカは日本よりもずっと逃げ、先行が多い分、最初が大事よ」

 

 

 アメリカは基本どこもレース場が同じような形状な分楽。ひたすら基礎とアメリカのレースの気風になれれば行けるはずだし、頑張りなさいよ。ケイジにダイヤちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うーむ。凱旋門賞はケイジに丸投げしてしまうとは、スピカ、シリウスのトップは大胆な采配を切りましたね」

 

 

 「ケイジ記念での走りを見てこのままでいいと思ったのだろう。しかし・・・ケイジの才能とコネは恐ろしいな」

 

 

 ルドルフさんの言う通り、ケイジとそのコネで人材を用意してUAEダービー制覇に、ケイジ記念2着となれば実績は十分。と言えるがまさかの采配に私も唸るほかない。利褌さん、沖野さん二人そろってケイジに投げる。まあ、それほどに信用しているし実際に成果を出してるのだけど同時に必要なものを即座に用意しているケイジにも恐ろしい。

 

 

 いくら現役時代から見てきている、突貫でトレーナー資格も手にしているとはいえサトノダイヤモンドを鍛え上げ、今も凱旋門賞に挑める資格を手にさせている。トレーナーになる予定もなかったケイジが。だ。

 

 

 「凱旋門賞の結果次第では急いで我々でケイジを確保。学園に留めるようにしたり、最低でもどこかの国のトレセン学園に行くことをさせないように頼みこむことになるぞエアグルーヴ。既に理事長とたづなさん。樫本理事代理は動いている。

 

 

 当然、我がシンボリに、メジロ、サトノ、ダイイチも皆裏では考えているようだぞ?」

 

 

 「名家による囲い込み。ですか。ケイジの指導力の可能性と、そのコネ、行動力を見込んでの青田買いとは思い切りましたね?」

 

 

 「サトノダイヤモンドの才能と努力がずば抜けているというのも確かだろうが、彼女はまだ学生だ。その彼女を支えながら海外GⅠ、しかもダービーを取らせて国内GⅠも2着。1年もたたないうちにこれを見せればな。しかもケイジの場合はたとえトレーナー始動がだめでもウイニングライブ、踊りの指導面での才能は素晴らしい。

 

 

 ・・・・・・どうせケイジは断るだろうが、それでもいてほしいという姿勢を見せることは大事というのは事実だとは思うよ」

 

 

 くすくすとほほ笑むルドルフさんの意見に私もつられて苦笑しつつ納得する。生徒会の誘いもだったが、王族からの短期留学の誘いすらも断っていたケイジだ。縁談でつなげようとすればことさらに反発するのは目に見えている。

 

 

 最終的には何らかの形、義理人情で頼むことになるというのは私も同意見だし、なんやかんやと今後も関わるかもしれないことは懐かしく、不安もあるがどんな吉報を持ち込むか楽しみにしている自分もいた。

 

 

 「バイトのトレーナー補助、という形で頼む意見案をまとめておきましょうか?」

 

 

 「頼むよ。ケイジ自身、動画配信に世界中でのマジックやショーで忙しい身だ。人での足りないチームや、ウマ娘たちの教育、支えとなってくれるだけでもと」

 

 

 「ではその様に」

 

 

 「ああ、そうだエアグルーヴ。今日はケイジ達がフランスに行くようでね。その様子が確かニュースになるかもと藤井記者が言っていた。この時間だったはずだから見てみよう」

 

 

 そういってルドルフさんはテレビをつけるとちょうどニュースではスポーツニュース。サトノダイヤモンドの凱旋門賞挑戦の事を話していた。

 

 

 『凱旋門賞に挑むサトノダイヤモンド。そのトレーナー代理としてついてるケイジ達は先ほど前田家の自家用ジェットで日本を飛び立ちました。

 

 

 空港入りする際には600台のバイクと30台のデコトラ、そしてオカマたちと黒服と野菜たちによってエスコート。『日本に5度目の凱旋門賞の勝利を持ってきます!』と力強くインタビューに答えたサトノダイヤモンド。そしてケイジトレーナー代理は『まあ、なるようになるが、負けるつもりで挑みはしねえよ』と答えて二人ともにこやかに手を振って出国。

 

 

 これからは二か月近くの期間をもって最終調整に挑むようであり、既に凱旋門賞運営からも公式に招待枠として確定しているようです。

 

 

 また、送迎の際に自家用ジェットを見送る際に東北興進株式会社の面々で人文字で『がんばれダイヤちゃん!』という文字で応援、漁師たちの船も一堂に海で大漁旗とサトノダイヤモンドのデフォルメした顔が描かれた旗で応援するなど、とにかく派手な見送りとなったようです。

 

 

 では続きましてアメリカの大レースBCシリーズに挑むチームスピカのキタサンブラック、チームシリウスのマエダノキズナについてですが・・・』

 

 

 

 「・・・・・・・・・・何をしているのだあのたわけは・・・」

 

 

 「こんな派手かつ、前例のない送迎は初めて見るよ私も。しかも自家用ジェット・・・移動時間もひたすらにリラックスの時間にあてるようだな。やりたい放題とはこのことか」

 

 

 「はぁ・・・必ず勝ってもらわないとこれから来る問い合わせの電話の対応に見合う成果にならないと思ってもらわないとなケイジには・・・」

 

 

 私の発言と同時になり始める学園窓口の電話にここ数か月何度目かの頭痛に頭を抑えつつ、頭痛薬を水で飲み込み早く凱旋門賞が来てほしいと内心思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『世界最強ケイジ、まさかのトレーナー代理としてふたたびフランスの地に!』

 

 

 『フランス大統領『大ファンなんです』サイン交換と握手を交わす』

 

 

 『怪物再び凱旋門へ。今度は弟子を連れての来襲』

 

 

 『ヴェニュスパークVSサトノダイヤモンド。決着は凱旋門賞で』

 

 

 『凱旋門賞ウマ娘キタサンブラックを倒したライバルであり幼馴染サトノダイヤモンド。本人も凱旋門賞を手にするために来訪。ヴェニュスパークとの決着や如何に!?』

 

 

 「なんといいますか、かなりフランスの方も私たちの方に詳しいのですねえ。驚きました」

 

 

 「んまあ、皆でここ数年荒しまくったからなあ凱旋門と欧州の大レース。日本の漫画とか、結構日本好き文化もあるフランスに加えてここ数年の活躍で結構ダイヤちゃんのファンもいるんだぜ?」

 

 

 「そうですよ。日本ウマ娘のアイドルグッズコーナーとか、ぱかプチも販売しているんですよ?」

 

 

 やってきましたおフランス。派手な歓迎で時間つぶしちゃったのでまあー気晴らしにとパリの散策に繰り出せばちょうど休暇というヴェニュスパークと一緒に買い出しに。老舗の茶葉屋でちょいとフルーツティーとかのシリーズ多めに買って家に備蓄しておきたかったし。テイオーとルドルフの土産にもいいだろ。

 

 

 「フランスのニュースでもダイヤちゃんのことを素晴らしいライバル。負けられないと熱く評価していたし、アウェーとは思えんほどだった。アタシのころだともう少し下に見られていたんだが」

 

 

 「ふふふ。それもケイジさんたちが変え尽くしましたからね。わが国では最新の教書、名鑑に日本のウマ娘が乗っているんですよ。ダイヤちゃんの幼馴染のキタサンブラックも勿論」

 

 

 「流石キタちゃん。私も嬉しいです! あ、この紅茶私も是非是非・・・」

 

 

 「レースが終わるまではお預けだ。密封された状態の商品や飲み物以外はほぼほぼNG、ドーピングにかすりそうな、何かありそうなものは触れねえからな。帰国の楽しみにしておけ」

 

 

 「は、はぁい」

 

 

 「しっかし。凱旋門賞も何度目かになるが、ヴェニュスちゃんのぱかプチ、ナポレオンの衣裳風のやつもあるのか。あの軍人皇帝のやったことは文字通り世界中に影響を与えたからな」

 

 

 大好きな紅茶を飲めずに少ししょんぼりするダイヤちゃんをしり目に凱旋門賞ってことで凱旋門を作ったナポレオンの軍服風のヴェニュスちゃんのぱかプチを数個購入。

 

 

 フランスウマ娘レース業界の火付けとなり躍進させた大レースと、混沌としたフランス革命時代を切り抜けてまとめ上げて躍進させた偉大な軍人皇帝。こういうとこでも共通点があるからいい目の付け所。いや、妥当なのかな?

 

 

 「ナポレオンは私も大好きです! 最後は悲しいものがありますが、我が国の誇る最強の軍人かつ政治家ですから! 流石に戦争は嫌ですが、偉大な人ということで憧れます。ああいう希望の象徴というのもあって」

 

 

 「アタシら日本。あー大日本帝国時代な。その時の民法の草案にナポレオン法典を使うくらい、いや当時の世界の民法に影響を与えたあの男の法整備技術は唸るものがある」

 

 

 「え! ナポレオン法典って日本にも影響があったんですか!?」

 

 

 「そうです! あの法典は我が国のみならず欧州、イスラーム社会、そして日本にも影響を及ぼした画期的な法律なんですよ?」

 

 

 なにせまあ、国の昔からの慣習を踏襲しつつも『法の下の平等』、『信教の自由』、『経済活動の自由』を盛り込んだ近代社会の法整備の草案、模範になったくらいの法典だからなあ。後フランス銀行設立もナポレオンだし、シンザンばあちゃんからも耳に胼胝ができるくらいにゃ教え込まれたわ。

 

 

 「実際公民とか、歴史の近代史を学ぶ上では本当に多大な影響を与えた。まさしく世界の先進国だったからなあフランス。町のつくりとかの整備性を見ても綺麗だしほんとよくわかるってもんだ」

 

 

 「うーん。私達日本も進んでいるとは思っていましたが、歴史の重み、感じさせるという意味ではやはりフランスはすごい。世界一名誉あるレースと言われている凱旋門賞があるのも納得しちゃいますね。だからこそ、燃えるというものですが」

 

 

 「ええ、まさしく我が国にとってはある意味ダービーよりも、クラシックのトリプルクラウン、ティアラ以上に重く、求めるレースです。だから私が手にする。私が取って国に希望を見せるんです。5度目の制覇を日本には取らせませんよ?」

 

 

 「にゃにぉう? こっちも負けるつもりできちゃいねえ。ダイヤちゃんは勝てるはずだぜー? ヴェニュスちゃんの才能は本物だがこっちのダイヤちゃんもまだまだ強くなるぞ」

 

 

 「ふふふ。リベンジは必ず果たします。もう凱旋門賞は欧州やアメリカのものだけじゃないって、私が3人目の凱旋門賞制覇をした日本ウマ娘になってみせますからね。もう一度勝負です! ヴェニュスパークさん!」

 

 

 互いに目に熱いものをたぎらせながら見つめあう二人。絵になるねえ。ふふふ。しかし、勝負への自信と自負、自身の才能を持ちつつもどこか丸く愛国心ある。うーん・・・テイオーとルナねえの中間ってか、いい感じに丸くなった今のテイオーをも少しマイルドにした感じだなあヴェニュスちゃん。

 

 

 「あ、ヴェニュスねえちゃーん!」

 

 

 「え!? ケイジだ! ケイジさんだ! ヴェニュスちゃん知り合いなのー!?」

 

 

 「すっげーこっちは本物のサトノダイヤモンドだよ! ケイジさんと一緒にサインください! あ、サインも色紙もない!」

 

 

 「急いで近くの店で買いに行きましょう!!」

 

 

 なんかいつの間にかフランスのちびっこ共に囲まれた。しかもアタシを知っているのかあー通だねえ。

 

 

 「よーしよし。ちびっこ共。サインは書いてやるからなー? 今ならダイヤちゃんのサインも付くからな。それそれ。ちょいとしたショーもしてやろう。ケイジちゃんのマジックショー開催だ! ヴェニュスちゃんもダイヤちゃんも手伝え!」

 

 

 「おおーいいですね! ふふふ。あ、ウマスタでも更新したいので動画にしていいですか?」

 

 

 「ワォ♪ ケイジさんのショーなんてチケット取るだけでも大変なのに。もちろん! 思いっきりマジックの手伝いをして」

 

 

 「「「「わーい!!」」」」

 

 

 

 ちびっこ共と、やじ馬が増えてきたので近場の大通りで早速マジックとラジカセを持っていた兄ちゃんから借りてのミュージカル風のダンスも披露。ダイヤちゃんとヴェニュスちゃんとはそれぞれのトレセン学園の課題曲に合わせてコンビでダンスを披露。フランスのトレセン学園の課題曲? んなもん現役時代に覚えているので問題なく踊り切れたわ。

 

 

 なんかちょっとしたお祭り騒ぎとサイン会をしてから最後はダイヤちゃんとヴェニュスちゃんで一緒に固い握手と、土産物や買い物を分け合ってからシャンゼリゼ通りを散歩して、凱旋門までエスコートしてもらってから解散。互いに練習にまた戻りましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふっ、ふっ・・・ふっ・・・はぁー・・・」

 

 

 「よーし午前の練習はここまでだな。どうだダイヤちゃん。欧州の芝でしばらく走ってみて」

 

 

 ケイジさんと一緒に欧州入りして早2週間。コツコツと現地になれつつ調整とトレーニングを重ねていますが、正直な話、楽。と言えるのが本音と言えます。

 

 

 「さほど違和感を感じません。なんでしたら思いきり地面をける際に深い芝と柔らかい土がクッションになって衝撃を殺されちゃいますがそれも対応済みですし、コーナリングの際には踏ん張りやすいのでかなり加速は鈍っていないなーと」

 

 

 「いい目の付け所。欧州だと基本最後の長い直線勝負になるけど、そこ以外でも勝負できる場所を増やすのと自覚できているのはいいことだからな。重バ場も問題ねえってのなら体の疲れを残さずに、でもちゃんと仕上げていく感じになるかねえ」

 

 

 欧州の広い土地ゆえの練習場所への移動に関しても毎朝の河川敷ジグザグダッシュでの往復で走る時間を増やし、中川さんの庭での練習で経験済み。

 

 

 北海道でもホテルと練習場所への移動をこなしていたのでまるで苦にならない、むしろ脚のコンディションのチェックと、すぐに止まらずにゆっくりと移動するクールダウンに使えると考えればこれもまた練習と思えるのでここフランスの広い土地を活かした雄大な練習場も楽しめています。

 

 

 「んじゃあ、昼飯はさっき仕込んでいた石窯オーブンでのチキンと野菜のホイル焼きと、ベリーパイ、余熱であっためていたコンソメスープで楽しむかあ~飯を食べて疲労を抜いたら、ちょっち作戦会議して、昼寝をしてから夕方まで練習するからなー」

 

 

 「はーい♪ ふふふ。ここにきて本当に優しい練習になりましたねケイジさん。楽しいのですがこれでいいのです?」

 

 

 「これでいいのだ! ってね~♪ 筋力は落としていないし、体重も増えていない。今は場になれつつ、も少し練習強度を上げるのは来週以降でいい。ダイヤちゃんも真面目に会おうと思っても今は知り合いもほとんどいないんだ。不安も変に考え過ぎずに楽しい時間を過ごしたほうがいいだろ?」

 

 

 食事も日本でフレンチをケイジさんが用意。しかも腕利きのシェフも顔負けの腕前で食材もフランスのものを使っていたので舌に合わないということもない。ちょっと遠出しているような気軽さで最終調整に挑めるのが嬉しいことこの上ないです。

 

 

 「ふふ。じゃあ、今日の練習はこれで終わるとして、そういえばなにやらケイジさんあてに手紙が来ていたようですが何だったのです?」

 

 

 「あーお偉いさんたちの社交パーティーだよ。めんどくさいから断っておいた」

 

 

 「出ないのです? ケイジさんほどの人なら文字通り話題の中心になるはずなのに」

 

 

 「なーにが悲しくてアタシの家柄と金目当ての野郎の目にさらされつつ陰口叩きまくるやつらに今更会いに行かなきゃいけねえんだか。それとは別で知り合いのいいとこの友達呼んで茶会やろうと思っているから、そこで親睦深めていくのと顔を売るわ。ダイヤも来るか? ゆっくりしていていいけど」

 

 

 うーん・・・凱旋門賞に集まる人たちってすごい人たちが来ると思うんですが、ケイジさんらしいのでいいですかね? そして嬉しい誘いには乗りたいです。

 

 

 「ええ。喜んで参加させてください! 紅茶の方とお菓子は私も手伝いますよ」

 

 

 「お、紅茶の方はそっちが詳しいし頼むわ。じゃ、戻るぞーそれと、作戦の方は本当にあれで行くんだな?」

 

 

 「もちろん。あれで行かせてください。不完全燃焼で終わるのが一番嫌ですし、凱旋門賞を穿つといった自分もそれに負けないほどの力を全部出し切りたいのです」

 

 

 「なら思いきりやってこい。凱旋門賞が目標なんだ。もう後先考えずに全力を出すんだぞ」

 

 

 「はい!」

 

 

 一緒にタッチをして笑いつつ休憩に。

 

 

 後日の茶会は。欧州屈指の大企業の会長や各国の王族、石油王たちが訪れての大騒ぎ。その・・・サトノ家も名家なんですがそれでもメンツがすごすぎていろいろと腰が引けそうでしたが皆さんと仲良くできて、コネが出来たのも嬉しかったです。これ、お父様に話したら嬉しく思ってくれるか、驚くでしょうか?




 ダイヤちゃん新衣装獲得。衣装はケイジの知り合いの人間国宝たちに頼んで用意してもらいました。尚その際に刀匠からは「剣の先でちくちくされながら罵ってほしい」が依頼の代金の一つになった。ケイジ曰く「誰だこいつを人間国宝にしたのは」


 衣装の方は皇室御用達の職人に。前田一族みんなお世話になっております。


 次回は本番凱旋門賞。


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ウマ娘エピソード 外伝プロジェクトl'arc 凱旋門賞

 ゴルシちゃんの漫画、コミックが出るのが楽しみです。


 『いよいよ始まります凱旋門賞! 欧州きっての国際レース! 長い歴史と実績は今も栄光を放ち、優勝を狙い今年も世界中から名うてのウマ娘たちがそろいました!』

 

 

 ここに来たことは何度もある。だけどそれはキタちゃんやケイジさんたちのレースを応援に来たり、昔サトノ家で見に来ただけ。ここのターフに自分の脚で立って、挑みに勝負服を通して戦えるのは初めて。

 

 

 『その中でも特に注目を浴びているのはこの二人! 一人は我が国フランスの若き天才ヴェニュスパーク! ドバイミーティングでも大勝利をおさめ、さらに前人未踏、KGⅥ&QESと凱旋門賞の欧州三連覇を成し遂げたたった一人の記録もちのケイジの名を冠したケイジ記念を手にしてココにも絶好調!今日も美しい勝負服と美貌で私達を魅了します!』

 

 

 「ボンジュール! 観客の皆さん。今日も応援お願いしまーす!」

 

 

 でも、ようやく来たという嬉しさとある意味安心がある。ここに来れる実力はつけているということ。そして、後先考えずに全部全部出し切って挑めるということが。

 

 

 『そしてもう一人は日本からやってきた美しき宝石サトノダイヤモンド! 凱旋門賞ウマ娘の一人キタサンブラックの幼馴染であり、あのケイジの弟子の一人! しかも今回はケイジをトレーナーとしてここに挑むという盤石の態勢! 騎士を思わせる新たな勝負服でいざ出陣!』

 

 

 「応援よろしくお願いしまーす!」

 

 

 歓声を受けながら手を振ってこたえる。世界中から多くの有名な人たちが来ている。誰もかれもが美しく、そして強い。私とヴェニュスパークさんが注目されていますが誰もが優勝する可能性を秘めているチャンピオンカーニバルと言うにふさわしいほど。

 

 

 「この前のお土産や紅茶のお土産ありがとうねダイヤちゃん」

 

 

 「ヴェニュスパークさん。こちらこそ。だけど、今はそのことは置いておいて、決着をつけますよ」

 

 

 それでも彼女に、ヴェニュスパークさんの実力はその中でも飛びぬけているように感じるし、この前のケイジ記念でのリベンジも含めて意識してしまう。

 

 

 ヴェニュスパークさんと会釈をかわして微笑むも、私もヴェニュスパークさんも目に熱いものが宿っているのを感じる。ケイジ記念の時よりも熱い炎を燃えさせている。

 

 

 「もちろん、私もダイヤちゃんも、ここにいるみんながそのために来ている。欧州一の大レース凱旋門賞。日本にはもう渡さないよ」

 

 

 「いいえ、私はそれを手にするために来ました。ここで君が代を5回目流しますからね」

 

 

 負けられない。そう伝えながらそれぞれパドックでウォームアップをしながらゲートに移動していく。

 

 

 ゲートは10番 今回の戦術ではそこまで気にしないで良さそう。それに作戦を使うにも問題ない。気持ちを落ち着かせていく。仕掛けは早くも最初からではない。でも、身体はほぐしていかないと駄目。

 

 

 私の脚質からも、そして何よりケイジさんから学んでいたことを踏まえてもこれをするほかない。同時に、そのための鍛錬も積んできた。行ける。いや、いく。それで勝つ!

 

 

 『さあ、ウマ娘がどんどんゲートに入っていきます。ただいまサトノダイヤモンド、ヴェニュスパークが入りまして最後にルディールが入りました。

 

 

 ・・・・・・・スタートです!』

 

 

 ゲートが開いていよいよ勝負が始まった。でもまずはいつも通りに後ろ目につけて身体をあっためつつエンジンをつけていく。

 

 

 『さあ、最初のコーナーに向けての長い直線。ここで先頭を取るのはシムカミユ。続けてセブンスタン。オルファントムが続き、前目に着けますはヴェニュスパーク。内側から先頭集団を伺いますアウトバーン。

 

 

 そこに続いてミスターオルレアンが中団の先頭に。サトノダイヤモンドは中団の後方から様子をうかがう形に』

 

 

 やっぱりというか、欧州の面々が多めの凱旋門賞はケイジ記念、UAEダービーと比べても流れがゆったりだ。長い直線で加速しすぎたら最初のコーナー、坂の勾配と加速で膨らみと減速、さらにはクラッシュも考えれば下手に加速しすぎないまま行くのはあっている。

 

 

 それに・・・やっぱりというか、ケイジさんの言うとおりになりつつある。

 

 

 

 『バ群を形成したまま最初のコーナーを目指しますウマ娘たち。様子見を続けつつの牽制か。セブンスタン、シムカミユはそのまま先頭。外からハーフ―ムールが抜けだしてよりバ群が広がっていく形へ。ヴェニュスパークは以前3番手をキープ。アメリカ代表ドリームクリームが前につけようとしますが仕掛けどころをうかがったまま』

 

 

 (アメリカ、日本とは違って、欧州の場合は今も個人の勝利と時にはそれ以上に母国に勝利を持ち帰ることを優先する傾向が今もある)

 

 

 (え? 今もですか?)

 

 

 (ああ、っというのも日本だとあんまりなじみがないかもしれないがあっちは大陸の中にいくつもの国があって、しかもそれは昔っからレースでもいろんな面でも関わり合い、競い合ってきた。だから前の時代からいわゆるチーム戦の文化と経験がはぐくまれていてな。チーム全体でレースメイクをしてみんなで順位をあげつつ最終的には誰かが勝てばいいとか、いわゆる潰れ役をやる行動や動きが抜群にうまい)

 

 

 (う、うーん・・・確かにオリンピックとかだと個人の勝利と同じように国にメダルが来たことを喜びますが、ウマ娘のレースだとみんなライバルですし、そうなるんです?)

 

 

 (そりゃ建前はみんなしのぎを削っての勝利の上でのものだが、チーム戦で挑むことも多いからな。凱旋門賞ほどのレースだと尚更。個人で戦うんじゃなくてまずはチームでレースメイクをしつつチームメイトのペースメイカーをしてから後半に仕掛けていく。

 

 

 これが欧州ウマ娘レースではちょこちょこある。そして、ヴェニュスパークやアメリカなどのメンバーは気にしないだろうがそれ以外の国は仕掛けてくるだろうよ。だから、レースの流れはケイジ記念やほかの国際レースと比べても団子状態になりつつゆったりになるとアタシは読む。ダイヤちゃんの脚質も相まって団子のままレースを進めりゃ仕掛けどころを見失うかもしれないし)

 

 

 (そうなると・・・仕掛けどころは)

 

 

 (ああ、最初のコーナー。ここでダイヤちゃんがスピカにいるゆえの強みと、今までの鍛錬、そして実績が活きてくる)

 

 

 『最初のコーナー、そして坂に入ると・・おおっと! サトノダイヤモンド仕掛けた! 一気に大外からの加速でごぼう抜き! バ群の中団、先頭集団へとくらいつきます!』

 

 

 ゆったりとしたペースで挑むことになる凱旋門賞。コーナーで団子状態が伸びることを期待して待つということは下策になるし、かといって前目につけて挑めば団子の中にのまれて動けないままレースメイクを握られて仕掛けどころを間違えてケイジ記念の二の舞になりかねない。

 

 

 じゃあどうするか。私とケイジさんで考えた作戦は作戦というには滅茶苦茶なごり押し。だけど、それでいいと思えた。

 

 

 「はぁああああああ!!」

 

 

 『何ということだ、サトノダイヤモンド大外から一気に先頭に! そして内側に入らずにそのまま爆走! 坂を下ってそのままフォルスストレートも大外のまま入っていく! 最内に入らずにこのロスを選んだまま走り続けるというのだろうか!!? この選択に会場もどよめいています!』

 

 

 (まず、最初のコーナーさえ抜けてしまえば後は下り坂と緩ーいカーブ、フォルスストレートだ。とはいえ、ここも内ラチにつけて加速していくのは大変。日本でもそうなのに欧州の深い芝はアタシらの脚と地面の間に挟まる芝がクッション兼滑る材料になってしまってやすやすと仕掛けを許してくれねえ。

 

 

 なら、あえて大外からそのままずっと走り続ける)

 

 

 (ええ!? そ、それは大分きついのでは!?)

 

 

 (ところが、だ。大外から仕掛けて走ったって実は距離とかはケイジ記念と同じかちょいあるかくらい。しかも残りの距離は第一コーナーの時点で1100メートル前後は走っているから残り1300、大外から仕掛け続けたって多少水増ししても1400メートル。有マ記念と同じくらいの距離。そこでキタちゃんに勝利をして、ケイジ記念でも炎天下の中2600を走り切れたダイヤちゃんならいけると思う。

 

 

 そして、なにより大外から仕掛け続けることってのは、カーブを気にせず好き放題アクセル踏んで加速も容易ければ目の前の団子状態になっているやつらを気にせずに走ってペースを乱してしまえばいい。後方からの仕掛けだが、ダイヤちゃんの脚の切れと、キタちゃん相手に長距離でも戦える持続力なら)

 

 

 (ロンシャンレース場の大きな緩いカーブの形状はむしろダイヤちゃんの強みを活かす最高のホームグラウンドに早変わりだ!)

 

 

 『ああっと何ということだ! サトノダイヤモンド先頭! そのままフォルスストレートに入る! さらにグイグイ差を開いて伸びる伸びる! これに負けじとバ群のウマ娘たちも足を延ばしますが坂の下りとコーナーなのが相まって二の足を踏む、少し躊躇を感じます!

 

 

 タブーなど気にするものか、常識など知ったことかとサトノダイヤモンドそのままターフを切り裂いていく!』

 

 

 軽い。深い芝だというのにまるで問題がない。自然に近い状態と言っても基本的に整備の少ない河川敷の雑草まみれの急勾配の坂と比べれば天地の差。加速し続けても地面を蹄鉄が、ヒールがしっかりとつかんで前に駆け出すための力を伝えている。

 

 

 コーナリングもいつものものと違って大変緩い分加速をしても何ら問題がない。こんなに早い段階で私の前に誰もいない先頭の景色を味わうこと。それもロンシャンレース場でそれが出来るとは予想もしていなかった。想像以上のはまり具合だ。

 

 

 (ただ、ここのコーナーでは仕掛けは気持ち7割、8割にしておいて、残った力のへそくりは本命の最後の直線まで取っておけ。最後の直線は実に600メートル。ここの距離は基本短い直線に慣れているアタシらにとっては想像以上に長く感じるし、フォルスストレートを前に走っていることもあって精神負担も少しある。

 

 

 長距離での仕掛けとロングスパートの経験、コーナーでの息の入れ方はスズカやゴルシ、マックちゃんらとの経験、ノウハウを活かして立ち回ること。中盤に主導権を握られようとここからまくり返してくるのが欧州ウマ娘レースであり、懸念点。優位を保ちつつもここで全部振り落とそうとするな。相手はそれを狙う)

 

 

 (ふむ・・・でも、そうなるとやっぱり早仕掛けは難しいのでしょうか?)

 

 

 (いや、それでもやるべきだ。むしろ相手に付き合ってしまって末脚を相手が多く残せばそれで負けるのはケイジ記念で味わっただろう? 多少早くとも自分のやり方で息を入れる、仕掛けを用意しておくように。それに。大外からのブン回しでズバッと斬り捨てての破竹の勢い。まさしく騎士らしい、ジンクスも常識も砕けるいいチャンスだ。

 

 

 アタシらに負けない衝撃を与えてこい!)

 

 

 

 「よし・・・ふ・・・っ! いける! そのまま・・・!」

 

 

 「仕掛けてくるとは思っていたけど、流石にぶっ飛んでいるね!」

 

 

 「!!?」

 

 

 『先頭に出ましたサトノダイヤモンド3バ身の差をつけてフォルスストレートを抜けはじめ最終コーナーに入りました! 大外のまま距離のロスさえも何のそのと大進撃! これはきま、っとお!! ヴェニュスパークここでバ群を抜けての大加速でサトノダイヤモンドの背中についてくる! 2バ身! 1バ身とじりじりと距離をつめていくぞぉお!』

 

 

 のこりもう少しでコーナーを抜ける。という所でヴェニュスパークさんが仕掛けてきた。前のケイジ記念でも先行策からの仕掛けをしていましたが、リカバリーが早い! でも、今は我慢! 追いつかれてもいい。脚を残したまま加速を鈍らせずに最終コーナーに行かないと。ここでの加速はむしろ減速になる・・・!

 

 

 『セブンスタン、シムカミユも追いかけますが最早二人だけの世界、二人だけの勝負! 今年の凱旋門賞はこの二人の一騎打ちとなりました!

 

 

 さあ、最終コーナーを抜けていざ直線勝負! ここでサトノダイヤモンドまだ加速! いったいどこまで加速するのか、日本のウマ娘のスタミナは底なしか!? いや、ヴェニュスパークも負けじと加速だ! 苛烈なたたき合いとなっての勝負にスタンドも大盛り上がりです!

 

 

 頑張れサトノダイヤモンド! 負けるなヴェニュスパーク! 逆転あるかとほかのウマ娘たちにも熱い声援が轟いてロンシャンレース場を揺らしております!』

 

 

 歓声が近づいてくる。あともう少し、後ろから近づいてくる足音が、気炎を上げて猛追してくるウマ娘の皆さんの声が聞こえてくる。先頭の景色を味わえる対価と言わんばかりに背中に刺さる負けるものかという視線。でも、同時にそういう殺気立った人たちの前を切って先頭に立って名誉を求めて、勝利を求めて走れること。それは本当にこの勝負服のモデル。騎士の様で逆に気合が入って足に力が再度みなぎっていく。

 

 

 負けない。仕掛けは・・・コーナーを越えた少しの、ここ!

 

 

 『ヴェニュスパークとサトノダイヤモンドほぼほぼ一緒に最後の仕掛け、切れ味勝負にでたぞ! この直線で勝のは誰だ! フランスの超新星ヴェニュスパークか! 日本から来たナイトサトノダイヤモンドか! もう残り400メートル!!』

 

 

 「ここまで、ここまで来たのです! ケイジさんたちの見てきた舞台、その景色を、今度は私自身も! あぁああああああ!!!!!」

 

 

 「もう凱旋門賞を何年も取れていないフランスの皆が落ち込む顔を見たくない・・・! 私が勝ってそれをひっくり返す! うぁあああああっっ!!」

 

 

 体の中の気力も元気も、残っている場所があればそれを全部ありったけ脚に叩き込んでいきながらの加速。肺が苦しかろうが腕が重くなりそうなのも全部気のせいだ、今はそれよりも早く足を動かして前に出ろと体に鞭打つ。

 

 

 一時の苦しさなんて無視してゴールに向けて突っ走る。でないと隣に並びつつあるヴェニュスパークさんに追い越される。そんなのは嫌だ! 私は負けたくない! 私は、ケイジさんの弟子で、キタちゃんの幼馴染で! サトノ家の至宝とお父様が言ってくれた、サトノダイヤモンド!!

 

 

 ヴェニュスパークさんの背負っているものも重いはずですが、こっちだって色々背負ってきたんです! だから、その先頭は・・・・・・・譲らない!!

 

 

 「っ・・・! ・・・ぁ!! ・・・・~~~~~!!!!」

 

 

 「っ・・・ふ・・・うぐっ・・・ぅぅうう!!!」

 

 

 

 『サトノダイヤモンドさらに伸びた! ヴェニュスパーク必死に追いすがるも差は伸びていく! 大外から走り続けてなおこの加速! そのスタミナは一体どこから湧いてくるのか! 残り200メートルで決着はついたか!? 残り100!・・・50! ・・・10・・・・・

 

 

 

 っっゴォオオオオルッッ!!!! サトノダイヤモンドが見事一着!!』

 

 

 その声は遅れて届いた気がした。しばらく走り続けていたけどようやく足が止まって、いや、電池が切れつつあるオモチャのように足に疲労が戻ってきてどっと動きが鈍る。間違いじゃないのか。この実況はあっているのかと。

 

 

 『サトノダイヤモンドが日本ウマ娘で史上3人目の凱旋門賞制覇ウマ娘に! そして、5年連続で凱旋門賞の勝利の栄光を日本に持ち帰ることに見事成功! 1番槍と大手柄を見事頂戴仕った極東のナイト!! 青き騎士は見事勝利の栄光を日本に持ち帰る幸せの青い鳥でもあったのです!!

 

 

 2着はヴェニュスパーク! 今年クラシックデビューをして早くもこの実力! フランスの超新星は文字通りの新星、怪物です! サトノダイヤモンドとの着差は1バ身! ここからのさらなる成長では歴史に名を残すウマ娘になる器でしょう!』

 

 

 「は・・あっ・・は・・・アハッ・・・・や、やっ、たぁあああ~~~!!」

 

 

 実況を聞いて掲示板を見て、ようやく状況を正確に理解、酸素不足で少し朦朧とした中に聞こえる私の名前を呼ぶコールでようやく実感がわく。ああ、勝ったんだって。私は、この大目標凱旋門賞を制覇した。

 

 

 あの大外でずっと中盤から仕掛けるというぶっ飛んだ戦術で、日本からは3人目の凱旋門賞ウマ娘になった。そう。ケイジさん、キタちゃんたちと同じ称号を・・・!! 自分の勝利を理解して、そのせいか力が抜けてべちゃりと地面にへたり込んでしまいそうになるのを声援が身体にしみわたって力をくれたか何とか持ちこたえる。

 

 

 「はっははははは!! もうへとへとかあダイヤちゃん。全く。凄いねえ。アタシのレコードに迫るほどのタイムをたたき出すとは」

 

 

 「ケイジさん・・・私、やりましたよ・・・!」

 

 

 「ああ、ダイヤちゃんのつかんだ勝利だ。なら、騎士らしく勝ち鬨をあげてみんなに応えな。倒れそうなら支えてやるぞ?」

 

 

 いつの間にやらターフに下りていたケイジさんがにっこりと笑いつつ私を支えてくれる。ああ、この人の指導のおかげで、鍛え続けてくれたからこそ私はここまでこれたんだ・・・本当に、この場所でこのレベル以上の戦いを3度も制覇した偉大な師匠。

 

 

 凱旋門賞を知り尽くした傾奇者だからこそ・・・私を。嬉しいし、本当に感謝、敬意、いろんな気持ちがあふれてくる。でも、ケイジさんの言うとおりにファンに応えないといけない。このレースを見に来てくれたみんなに。

 

 

 『おっとサトノダイヤモンド抜剣! 勝利した騎士が刃を掲げての勝ち鬨! えいえいおう! えいえいおう!! と歓声が響き、ダイヤコールが再びロンシャンレース場を揺らす! 師匠のケイジのケイジダンス、コールとはまた違うダイヤコール。師弟でまたもや栄光を勝ち取りました!!』

 

 

 ああ、疲れが抜けていく。もう全部やり切って、その結果は満足いくものだったんだと・・・本当に・・・ここまで来れて・・・よかった!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「惜しかったな。ヴェニュスパーク」

 

 

 「師匠・・・・」

 

 

 レースが終わり、我が弟子の様子を見に来たがその様子はまあ、憔悴したものだった。レースの疲労と今まで経験したことのなかった初の敗北。それが大目標としていた凱旋門賞で味わったのだ。今まで積み重ねたものがボッキリと折れて砕けて崩れるような感覚に、きっと空虚さもひとしおだ。

 

 

 「私、油断していませんでした。ダイヤちゃんだけじゃなくて、今回レースに出てくる子たちの情報をしっかり調べて、仕掛けも・・・」

 

 

 「ああ、完ぺきだったよ。ただ、サトノダイヤモンドはレースメイクに付き合わずに自分のペースで戦って振り回し切る。圧倒的スペックでごり押しつづけたことでこちらの予想を崩した。・・・ケイジ記念でやられたことをやり返した。

 

 

 しかもその方法も大外で中盤からひたすら加速し続けていく。あの地面をつかんで蹴り上げる力、無尽蔵に思えるスタミナはまさしくケイジ仕込みのものだ」

 

 

 ヴェニュスパークは100点のレースメイクと仕掛けをした。それは私の目で見ても確かだった。ただ、ダイヤモンドはそのレースメイクに付き合わない理不尽すぎる大外で走り続けるという走る距離が延びるというリスクを加速と走り続けられるスタミナ、そして長く続く加速の切れ味で振り切った。

 

 

 スタミナに関しては欧州の方が長距離レースが多い故に土俵だと思っていたがケイジの弟子だ。あんな戦法を取ってくること自体は考えておくべきだったのだろうか。

 

 

 「勝てませんでした・・・! 私、フランスの皆の希望になるんだって走ったのに、届かなかったです・・・!! 最後も、もう足をどれだけ前に出しても距離が、ち、ちぢひゃらなヴで・・・!」

 

 

 大粒の涙を流して泣きじゃくる愛弟子の顔に私も胸が痛くなる。ああ、彼女も味わってしまった。敗北の苦汁。しかも、この大一番、ホームグラウンドでの敗北・・・心中は察して有り余る。

 

 

 「う”・・・うぅおっ・・おうっ・・ぅっぉ! えぐ・・・わ、わひゃ・・こ、お・・こん、な・・はぅうぐ・・・も、もぉ・・・は・・・」

 

 

 「いいや、今もお前はフランスの希望だ。ヴェニュスパーク」

 

 

 「ふ・・んふっ・・・ふ・・・ふ・・・」

 

 

 感情があふれてしまった愛弟子を抱きしめてそっと背中と頭を撫でる。ああ、何時も元気で自信満々。元気な顔しか見なかったお前には、今何もかもくらく見えているのかもしれない。でも、1度の敗北で終わるものじゃない。これはクラシックレースじゃない。一生で一度のレースじゃないのだ。

 

 

 「ここ数年、日本メンバーの出ているレースはすべて日本が勝利。国内外問わずな。そのなかで欧州が挑んでこなかったドバイミーティングでの勝利、そしてケイジ記念での勝利。今回の2着も次回につながるものだった。

 

 

 すべて、私たちでは当時出来なかったことばかりだった。立派なフランスの期待のウマ娘だ。ヴェニュスパーク。・・・・・私は、お前を弟子に持ってて幸せだよ」

 

 

 「ししょ・・う・・う”う”う”う”~~~~~!!! うぐ・・・うぐふぅうううう・・・・!!」

 

 

 ああ、泣け、今は思いきり泣け。そして立ち上がればいい。お前はこんな一度の敗北で終わっていい逸材じゃない。今度こそ栄光を手にしていけ。その上で、今度こそ日本どころか世界の強豪をまた倒して頂点に立て。

 

 

 いつもより小さく、幼く見える愛弟子を撫でつつ、気が付いていたら寝ていた愛弟子を叩き起こしてシャワー室にぶち込んだ。全く。ウイニングライブを忘れたら大騒ぎだぞ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ヴェニュスパークさん」

 

 

 「? わっ! どうしたの? ダイヤちゃん」

 

 

 「レース。ありがとうございました」

 

 

 シャワーを浴びて休憩をし、そしてウイニングライブの少し前。私はヴェニュスパークさんに頭を下げた。

 

 

 「私は油断していたつもりもなかったです。ただ、行けるんだと思っていた自信は貴女に一度砕かれました。そして改めて世界の壁を知ってもう一度徹底的に欧州に合わせた調整をし続けて、レースメイクもケイジさんが眠そうになるほどになるほど打ち合わせをしたりと、とにかくやれるだけのことをしました」

 

 

 ドバイで勝利して、その後もいけるはずだとどこか天狗になっていた自分の鼻っ柱を砕いて、その上で文字通り何もかもをぶつけていけたのは文字通りヴェニュスパークさんたちのおかげ。きっと、ケイジ記念で私が勝っていたら不相応の自身でここで負けていたかもしれない。

 

 

 ケイジさんが認めていた、キタちゃんに勝っていた。それがどこか慢心になっていた自分を叩き直してくれたのは彼女。

 

 

 「それでも、最後は分からない勝負になるほどで、本当に強くて、ウマ娘レースの本場欧州のレベルを、その強さと歴史を叩き込まれた気分でした。貴女に私は心からの尊敬を」

 

 

 「う、うーん・・・先輩のはずのダイヤちゃんにそういわれると少しこそばゆいけど、こっちこそ。今まで無敗でここまで来れたから、私もいけるはずだってどこか慢心していたかもしれないし、舞い上がっていたのかもしれないから。

 

 

 互いにこの凱旋門賞で手にしたものは多かったと。今はそう思いたいな」

 

 

 強い。やっぱり彼女は天才ですが、同時に心の強さ、鍛え上げ続けた日々がバックボーンとなって支えているのでしょう。今のヴェニュスパークさんの瞳はすごく澄んでいて、もう一度挑めば負けているかもしれないと思うほどに。

 

 

 「もちろん。この勝利だけでは終わりません。この後も私は挑みますよ。日本ではまだまだレースがありますしね」

 

 

 「ああ、確かジャパンカップだよね? それなら私も挑もうかなって思うの」

 

 

 「ほうほう? それはまたすばら・・・・ええ!?」

 

 

 まさかの出走予定に驚きを隠せずにびっくりしてしまう。確かにジャパンカップは海外メンバーも多く来ますが、最近だと実力者もあんまり来なかった。ケイジさんやオルフェさんの世代に来たくらいなのに。思わず尻尾も滝登りですよ。

 

 

 「負けっぱなしは性に合わないからね。それに勝ち逃げは許さないからもう一度日本で勝利を奪いに来るからね?」

 

 

 「・・・・・・・うふふふ! ええ、でも私は負けないですからね。それに日本にもまだまだすごい人たちはいますから私たちは待っていますよ。今度はまた日本で!」

 

 

 「でもその前にまずはウイニングライブで。だね。さあ、麗しのナイト様。ちゃんとエスコートしてよ? なんてね♪」

 

 

 ああ、この子は本当にすごい。私、キタちゃんやケイジさん推しだったんですがこの子も推しになっちゃいますよ。そんな子と一緒にライブをできることも幸せに思いつつ、きっと初めてGⅠを勝利した時と同じくらいの幸せに包まれながら楽しく踊り切れました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『「まずはこの舞台に挑めること、そして認めてくれたフランスの皆様に感謝を。そして、栄光のレースを作ってくれたフランスに感謝を」サトノダイヤモンド見事凱旋門賞制覇! 勝利者インタビューでも我々を魅了』

 

 

 『「アタシよりもダイヤちゃんだろ。ただ才能をくすませないように支えていただけだよ。それよか応援してくれたファンの皆と、受け入れてくれたフランスに感謝だよ」ケイジ、トレーナーとしてさっそくサトノダイヤモンドを凱旋門賞で勝者に導く。傾奇者の珍道中は止まらない!』

 

 

 「ってわけだ。これで今回の契約、仕事の方は終了な。報酬はそっちの方でアタシの仕事に見合った料金払ってくれればいい」

 

 

 連日流れ続けるテレビニュースを切って最後の報告資料を理事長やルナねえたちにどさりと投げつけて茶をすする。ダイヤちゃんにほぼ付きっ切りでの1年くらい駆け抜けてのGⅠ2勝、GⅠ2着1回。それ以外でも沖ちゃんとか、松ちゃんらで実績を取らせているしもういいだろ。

 

 

 「うむ! 快挙! まさしく前人未到の記録よ。トレーナー資格を取ってすぐに1年目でUAEダービー、凱旋門賞を取ってくる。その合間にもケイジ記念の方も素晴らしい。いやはや、流石としか言えない」

 

 

 「やー本当に、名選手は名監督となるかは別だけど、ケイジの場合はとんでもないねえ。私もシンボリ家、メジロも名家も日本中が驚いているよ」

 

 

 「ふふふ・・・全くだ。そしてデータの方も分かり易い。助かるよ」

 

 

 おかげでダイヤと一緒に陛下から授与式。ダイヤの方は国民栄誉賞。アタシは既に貰っているから何個目かの勲章をもらうことになったしなあ。真面目に休ませてくれよ。

 

 

 「じゃーもうやることやったし、私は帰るぞーふわぁ・・・ようやく気楽に飯を食える・・・ラーメンでもぉっ!!?」

 

 

 ルナねえの方でも資料を見てもらったしやることやったからと部屋を出ようとするとルナねえに腕をがっちりとつかまれて引き戻される。ぬぉう!?

 

 

 「それとなんだがなケイジ? 今回の大実績と練習の構築。トレーナー資格をもってすぐにこれを成し遂げた君はもはや学園でもそうそう手放せない存在となった。そこで、だ。ぜひトレセン学園のトレーナーとして働いてほしい」

 

 

 「はぁ!? ふざけんな! 何が悲しくてもう時代を作り終わったアスリートが今度はコーチせにゃならねえんだ!! 新しい時代にアタシが出てきてもだろうが!」

 

 

 「否! むしろケイジの人気はより根強く、そして高まるばかり。何より学園生徒からも是非という声が殺到していてな。ああ、それと海外の王族からも自分の娘を是非という声が多数。我らトレセン学園は愚か世界の目も光っているぞ」

 

 

 「それと、縁談の話も増えていてね。私の方で抑えているけどこの数だ、早いところ好みの子を見つけつつここにいてくれないと私も抑えきれないかもよ?」

 

 

 くそがぁ! やっぱそうなるよなあ! だから逃げたかったんだよぉ! キタちゃんの方も親父さんとじいちゃんから是非貰ってくれっていう話が出ていてうれ・・・じゃねえ! 変なことになりそうだってのに。これ以上縁談にあれこれとせっかく気儘な引退後の動画配信と料理開発で働く時間を潰されるのはごめんだよぉ!

 

 

 「なんで大人の戦いに巻き込まれて、あまつさえ賞品にならにゃいけねえんだよぉ! そういうのは勘弁だ! BCシリーズ制覇したマエダノキズナとかキタちゃんとかの方を祝う方にいけ!」

 

 

 「あ、ケイジが逃げたぞ!」

 

 

 「捕縛! ウマ娘警備隊出動! 目標は傾奇者ケイジだ! 捕まえたものにはボーナスを出すぞ!」

 

 

 「昔を思い出すね。さあ、ケイジ。鈍ったとはいえど皇帝と呼ばれた脚、磨き直しているから捕まえてみせるぞ?」

 

 

 ぬぁー! まさか学園を卒業してからもこうして追いかけっこになるとは思わねえぞ! あーもう!! トレーナーなんてこりごりだぁ~~!!!




 これにて外伝終了! にしても、これからの12世代がどれほど出てくるか楽しみですね。これからも皆様ウマ娘を応援、特に12世代を応援よろしくお願いします!


 ほんと、蛇足もいいところなこれを走り切れたのは皆様のおかげです。イラストの方は首を長くしながら待ってくだされば幸いです。その際は活動報告にあげますので。ケイジ、キタちゃん、マエダノキズナのイラストをこうご期待してくだされば。


 ではでは~皆様さようなら、さようなら。


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ウマ娘エピソード 36 紅白

 ジェンティルドンナにオルフェーヴル登場やったー! 後はジャスタウェイが来てくれればここのメンバー全員でのイラストとかも依頼できそうですね。笑点パロとか。イラストでこれ見たいなあってのがぼちぼち動いてくれそうなのでもうわくわくします。後多分ひと月ちょっと!!


 あ。ちなみにケイジの方のパワーはしっかりジェンティル以上です。


 それと時間軸が滅茶苦茶なのはこち亀、コナン時空的ノリで許してちょうだい。


 夏合宿。それは私たちトレセン学園に所属するウマ娘たちにとっては海で水着姿ではしゃいだり、ちょっと外食や海の家のご飯を味わえる自由を味わいながらいつもと違う空気と環境に触れながら過ごせる。国内のレースの方もGⅠレースが一つを除いてないので一部を除けば半分は休み気分。

 

 

 とはいえ夏休みの宿題もそれなりには出るのだけど、まあそれはそれ。普段の課題と考えれば軽いもの。

 

 

 「ふぅ・・・ゆったり出来るわ」

 

 

 そのゆったりとできるメンバーには私、ヴィルシーナも入っている。冬ごろからサウジ、ドバイミーティング、そして日本、香港と飛び回ってはチームシリウス全員でのGⅠ、GⅡ問わずの参戦しての大暴れ。賞金も栄誉も勝利ももぎ取れるだけもぎ取って国内でも春天、安田記念、大阪杯、宝塚記念と出走の連続。

 

 

 ケイジ記念にも参戦はするがまずはレースに備えてずっとレースをし続けた体を癒すための自由時間多め、トレーニングも身体をなまらせない程度にしてスタミナをつけつつの休暇日和。夏休みの宿題もあらかた終わってまさしく最高の時間。

 

 

 「皆さんが練習に励む間休むというのは落ち着かない部分もありますがこの休暇もまた戦いであり次への備え。ですものね」

 

 

 「ええ。ジェンティルもお疲れ様」

 

 

 「ケイジ記念。チームシリウスはケイジ、ライトニング、ナギコ、タルマエ以外は参戦しての25名での大出走レース。ふふふ・・・この日差しに負けないほど燃え上がるというものですわ」

 

 

 「全く、昔のレースの形態に直して、賞金額も総合で上乗せってのもみんな合意で決めた。その後の大レースへの優先権利も決めたりで、相変わらず派手なこと」

 

 

 冷えたトロピカルジュースを持ってきて側に黒のビキニ姿で腰掛ける私のライバル、ジェンティルドンナからジュースをもらい、飲みながら話をするのは当然次の目標ケイジ記念。今回から出走枠を25枠まで増やし、10着まで賞金は高いししかも次のレースへの優先権利も付与。アラブ、サウジに至っては来年の冬、春の大レースへの出走権利も優先するという大盤振る舞い。

 

 

 ケイジのコネとこのレースの実績、人気が相まってできたことだがそれでもこの枠を争うのは大変なこと。私と彼女も休憩をしているがその実身体がうずうずしてしかたがない。互いにビキニとチューブブラと泳ぐというよりも遊ぶ、軽く海辺で戯れるくらいの水着だからそれでも遠泳して、鍛えて目の前のライバルに負けないほど鍛えたくなるのは仕方がないはず。

 

 

 「でも、その中での勝利を決めて、次のレースへとまた挑む。宝塚記念から秋の大レースまでのステップレースも悪くないですがこういうお祭りがあってこそ年がら年中レースで盛り上がる我が国にとっては好ましく私も悪くないですわ。貴女もそうでしょう? ヴィルシーナ・・・♪」

 

 

 「もちろん。貴女より先に凱旋門賞を取らせてもらうわ。それにKGⅥ&QESもね?」

 

 

 「あら・・・それは許せないわね。欧州二冠をもらうのは私。貴女に譲るつもりなんてありませんことよ?」

 

 

 目を細めてジュースを味わっていたジェンティルの目が細いまま戦意を宿したものにギラリと変わる。互いに負けるつもりはない。思いきり叩きつぶし合う。欧州だろうと変わりない。頂点は私。日本国内では負け越しでも欧州のレースでは負けない。勝つのだ。

 

 

 バチバチと火花が散る中、その炎を消すように大きな波が近くの岩に当たってそのしぶきに目をやれば同時に目に映るのはサーフボードで軽快に波に乗りながら鎧甲冑に身を包んで「天下無双」「天下一品」ののぼりを背負うケイジが。

 

 

 「歌手になりてぇえ~~~!!!!!」

 

 

 謎の叫びをしてそのまま波にのまれてしまうケイジ。いや貴女世界の歌姫かつアイドルじゃない・・・

 

 

 「ぐふっ・・けぷっ・・・! ぶふっ・・・桑田さん! トータスさん・・・ぶはっ!!

 

 

 ここにいます~!!! ぁあぁ~~ん~!!」

 

 

 滂沱の涙を流しながらなおも続けるバカなケイジの魂の叫びを黙らせるようにもう一発強い波が押し寄せてケイジを押し流す様を見て

 

 

 「「エンジョイしているわねえ・・・」」

 

 

 と同時には持った声を出してしまい二人で苦笑。さっきまでの空気も消えてしまった。前まではこんなことはなかったがチームシリウスに入り、ケイジ達と出会ってからはどうにもライバル関係は熱く燃えるが同時に友達という感じになってしまう。

 

 

 負けた時はライブの後一晩中泣くほど悔しいが、同時に勝者への敬意もいだく。勝っても負けても基本相手をたたえつつ全力でライブも盛り上げるケイジとゴルシ、ジャスタの関係にあてられたかもしれない。

 

 

 ゴボゴポゴポ・・・と暫くした後に

 

 

 「ヴィーナスの誕生出てきたー!!」

 

 

 「鎧はどこ行ったのよ!?」

 

 

 いつの間にやら水着姿で大きな貝殻の上に乗って出てきたケイジ。とその貝殻にガシッと何かの触手が絡みついて

 

 

 「このホタテは私のものよー!!」

 

 

 「何よこれは渡さないわ!」

 

 

 小さなタコが出てきてケイジと喧嘩を開始。

 

 

 「グフゥ・・・・」

 

 

 「「負けてる!! 小だこ程度に!」」

 

 

 ぷかーと顔をアンパンマンみたいにされて波打ち際に浮かぶケイジ。何がどうしてこうなったかは分からないがとにかくいつの間にか負けていた。

 

 

 「しゃーねーあれを次回の出し物に使うのはあきらめるかあ・・・ケイジ記念に使えそうだったのにぃ・・・ふぃー・・・」

 

 

 そしてボコボコだったのがすぐさま何事もなかったように復活して鎧甲冑をひとまとめに紐でまとめてサーフボードと一緒にもって海から出てくるケイジ。はぁー・・・水着やスタイル、戦績にと・・・私をおかしくしたのに、普段のこれが無かったらなあ・・・

 

 

 (でもこのおかしさが笑いと愉快さ、今のレース界隈を作っているのにもほれているんでしょう私?)

 

 

 (そうだけど・・・でもこの美貌を知っているとそれを崩すのがもったいないのよ。目に入れてもいたくないくらいの美貌。妹たちに負けない程なのよ?)

 

 

 (なら早くアタックしなさいよ私。今のケイジをフォローしつつうまいことお菓子でもおごったりすればいいわ。ライバルは多い。アプローチは欠かさずよ?)

 

 

 (うぐ・・・確かに。でも、うーん・・・)

 

 

 思わず脳内会議をしてしまうほどにはケイジを意識するようになってしまうのはいつのころからか。ほんと、同性には興味がなかったはずなのに・・・はずなのに・・・!!

 

 

 「ふぃーいい波だった。いやータコは強敵だった」

 

 

 「全く、目を放せばすぐこれ。ほら。口の中リフレッシュしなさいな」

 

 

 「お、サンキュージェンティルちゃん♬ んーおいし♡ ふはー・・・あ、お代り買うけど、何がいい?」

 

 

 「あら。ではエスコートしてくださるかしら?」

 

 

 「おう。ヴィルシーナもついでに奢るぜ。こういう時じゃないと海の家の飯なんてありつけないしなー」

 

 

 「っ・・・あ、あ・・・ええ! いや、むしろ奢るわよ? こういう時くらいね。奢られるだけじゃあれだし、チームリーダーも癒されないとね?」

 

 

 ケイジのそばに寄ってカバンをもってついついそういうとジェンティルもバチッ・・・とまた火花が散った気がした。普段見せない水着と海でのひと時・・・こういう思い出とかを作れる時間だし、私だってスタイルはジェンティルに負けるけど、細さとか・・・色気でなら勝負よ!

 

 

 「あら・・・それなら私も奢りましょうか? 次回のレースの主催の一人ですものねえ。ふふふ・・・」

 

 

 「む・・・・ぬぐ・・・!」

 

 

 あのデカパイを容赦なくケイジの腕に絡めて挑発的にほほ笑むジェンティル。あ、あんなに・・・!!

 

 

 「あーあー喧嘩すんな。それだけ元気があるんならビーチバレーで勝負しようぜ。ジェンティルちゃんとシーナちゃん負けたほうが奢らせるとか」

 

 

 「「勝ったほうよ!!」」

 

 

 「仲いいなお前ら。じゃーゴルシ―! ちょいと手ぇ貸せ!」

 

 

 「おーう! その前にちょっと待ってくれよ! ちくわは誰にも渡さねえ!!」

 

 

 「こっちはイカと戦っているー!!?」

 

 

 腕をにゅーんとのばしてスポンと外れたと思えば腕を回すケイジ。いつの間に義手にすり替えたの!? と思えばゴルシはゴルシで何やら金色のちくわをめぐって巨大イカと戦いを繰り広げている様子。この後ジェンティルに「あほなことしているんじゃないですわこの沈没船!」としばかれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「んじゃーアタシとジェンティルちゃん。ゴルシとヴィルシーナでビーチバレーするかあ。とりあえず勝ったほうが負けた相手にも飯を奢るってことで」

 

 

 「全くよー飯はいいけどこんな喧嘩犬も食わねえぞ~?」

 

 

 「黙って倒されなさい泥船。審判を用意してくれたのは感謝するけど」

 

 

 とりあえず、また張り合い始めたこの二人を大人しくしつつ飯を食べたいので始めるビーチバレー。審判はさっき仲良くなった巨大イカさん。

 

 

 「そぉー・・・・れっ!!」

 

 

 とりあえずと軽めのジャンプサーブ。これをゴルシが軽々レシーブでふわりと優しく受け止めて、それはそのまま綺麗にトスになってヴィルシーナが走ってきてそのままクイックアタック。

 

 

 「セイッ! ケイジ!」

 

 

 「あいよっ。ほい」

 

 

 「はぁああああああ!!!!」

 

 

 鋭いスパイクをうまい具合に拾い上げてこっちもそのままクイックアタックになるけどジェンティルちゃん助走をつけてのガチの顔と気合。あ、これやばいわ。

 

 

 「あ、ゴルシちゃんパース」

 

 

 「は、え!? ちょっ、ちょっとま・・・・」

 

 

 ブロックに入ろうとしていたゴルシもなんか気が乗らないというか変にスイッチ切れたかで逃げてヴィルシーナが蒼い顔するも既に遅い。渾身の一撃で放つジェンティルちゃんのスパイクが地面に当たり、爆弾が爆発したか地雷でもぶっ飛んだかと言わんばかりの衝撃と舞い上がる砂、そして出来上がるクレーター。

 

 

 ピーとイカさんが手回しの笛? っぽいもので音を鳴らして点数が入ったのを教えてとりあえずこっちの方に点数が入る。あ、ボール破裂しちゃった・・・予備あるかなあ。

 

 

 で、ゴルシの方は雪だるまならぬ砂だるまになっていてヴィルシーナは青い顔して冷や汗だらだら。あらやだ髪色と水着も相まってまるでラムネのキャラクターみたいねって思ったのは内緒☆

 

 

 「し、死ぬかと思った・・・一瞬妹たちの顔が脳裏に・・・」

 

 

 「私のライバルがこれくらいでなるわけないでしょう? さ、もう一度食らわせてあげましょう」

 

 

 「ん?」

 

 

 皇女のスパイクをもう一発ぶち込もうとアタシにサーブを促している中、目の前でバスが止まった。む? この声と匂いは。

 

 

 「ケイジ。やっぱりお前らか」

 

 

 「おー! 両さん~あれ? 派出所と署の皆もいる。纏ねえも。どったのこんなとこで」

 

 

 やっぱり派出所の皆。男女バスが違うけど何かの旅行?

 

 

 「いやー実はなあ、署の方で野球対決をすることになってな。今警察で全国野球大会を催すことになってまずは署内で代表チームを作ってその決定戦をするんだ」

 

 

 「ほーん? ・・・・・・・・もしかして武藤警視総監の提案じゃねえだろうな?」

 

 

 「おお、ケイジ君。その・・・水着は過激すぎないかな? それとよくわかったね。その通り警視庁で決まった催しで。私達もその試合のためにちょっとバカンスも兼ねてということさ」

 

 

 「多分孫の国ちゃん(国光)と蓮のやつがゴジラーズで安打とホームラン記録を出したからそのテンション上がったまま企画書出したオチだろ。MVPインタビューで武藤の爺様の事に感謝していたし」

 

 

 「んぁーそういえばマックちゃんからも聞いたなあ。『ビクトリーズ最大のライバルですわ! 本当にユタカと同じチームにいてくれれば最高なほどに素晴らしい選手ですのに・・・・ムキー!』って」

 

 

 「あーそういえばお父さんもこの前そんな話をしていたかも?」

 

 

 いつの間にやらバレーの話はうやむやになってみんなで談笑。夏の海ということでアタシら水着姿だけど野郎も女も鼻の下のばしているが大丈夫かこいつら。ボルボは鼻血出してんじゃねーべ。ジョディー姉さんとマリリンだけにしておけーほれほれー

 

 

 「ちょ、ケイジ! 溶けてる! 溶けているわ!」

 

 

 「コーンな熱い所じゃ溶けちゃうしぃ~海の家で休もうぜェ~先に1点取ったジェンティルちゃんの勝ちってことでさ」

 

 

 とりあえずまあバスは問題ない場所に駐車しているし、ハジケたいけど何かこのノリでうやむやになったから海の家で一休み。ヴィルシーナはちょっとごねていたけど、とりあえずアタシとジェンティルちゃんで全員に軽い飯を配りバスの方にいる面々も小休憩に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さっすがゴルシのイカ焼きそば。うんめぇ~♡」

 

 

 「特製秘伝のタレとこのイカの肉がいいなあ。黄金のちくわと交換した甲斐がある!」

 

 

 「そのイカも一緒に自分の足の入った焼きそば食べているけどいいのかしら?」

 

 

 「ん? あー一応タコも自分の足を食べる時あるし、案外慣れているのかもな。ワシはむしろこの光景を慣れている君らが怖いぞ」

 

 

 「このバカリーダーとゴルシが一緒にいれば嫌でも慣れるというものですわ。しかし・・・ふふふ。シーフード焼きそば。いいですわね」

 

 

 「うちでもやってみたいが、こういうのは匂いが着いちゃったりすると寿司に影響出るからねえ。出張屋台とかでやるくらいしか無理かなあ。おばあちゃんに相談してみよ。うん、イケる」

 

 

 結局食材費用をアタシらが出すことで屋台をすることになったから焼きそばをみんなで海の家でむしゃむしゃ。審判をしてくれたイカさんにも振る舞って仲良くなって海に見送りつつ署の代表決定野球大会について聞いてみることに。

 

 

 「で、結局今海の家と近くの喫茶店で飯食っているやつらも含めて署の代表だとして、男女別で出すの? それとも混成チーム?」

 

 

 「男女別になる。だがまあ、かなり早い段階でチームを組んでいた経験があったのでそのスタメンたちと他で試合をして、せっかくだからということで軽い旅行がてら近くの広場を借りることになったのだ」

 

 

 大原部長の言葉になるほどとなる。まあ、この署そもそもサンバチームとかバレエとか野球とか色々な催しをする際に率先して参加しているしその分野球チームを作ってからの動きも早いし備品もあると。

 

 

 で、まあ周りではウマ娘も婦警も野郎もそろってアタシらを取り囲むようにキャイキャイ言っていたり写メの嵐。ふ~ん?

 

 

 「ちょっとだけよぉ~ん♡」

 

 

 「「「キャァアアあああああ!!! ケイジ様ぁあああ!!」」」

 

 

 「「「うぉぉおおぉおおおおお!!」」」

 

 

 試しにと肩紐を横にずらして艶めかしく笑みを浮かべれば大歓声。ニシシ。水着のモデル撮影をしたばっかだからいろいろできるね。マルゼンと一緒に楽しんだし。

 

 

 「あんたも好きね・・・おぶちッ!?」

 

 

 「やめなさいおバカ!」

 

 

 「「「「ワハハハハハハハ!!!!」」」」

 

 

 ゆっくりと海の家から出てきて次のポーズをしようとしたらヴィルシーナちゃんのハリセンでのツッコミで砂場にどしゃーんと派手に突っ伏して大笑い。あっるぇーおかしいなあ。アタシのショーになっていたはずなのに。

 

 

 「ハロホロヒレハレェ~・・・・~んにゃあーで、さあ。その練習試合? は今から? ちょうど昼くらいだし」

 

 

 「む、ああそうなるな。あそこの草野球用に使われている球場で試合となる。まあ、男女別にメンバーは決まっているから合同強化試合みたいなものだ」

 

 

 「つまりはちょうど今夏合宿中のケイジらみたいなもんだな。合宿の邪魔しちゃ悪いし警察職員だからといられるこいつらも戻しておく」

 

 

 「おう、流石にこの情報が漏れたりして余計なやじ馬が増えたらちょっと面倒だし生徒会に絞められかねん。それとアタシも見に行っていいか? ちょっとこの合宿も休みが多くてなあ。海だけじゃあふやけちまうし野球を見せてくれよ。いいだろ?」

 

 

「ワシは構わないが。部長。どうします?」

 

 

 「んーむ・・・まあ、ドームとかでやるものでもないし観戦くらい問題ないだろう。来ていいよケイジ君。ただし、ちゃんとチームの許可とかは取ること」

 

 

 「なら私が保護者ってことでいるからちょうどいいだろ? おばあちゃんの時代から家族ぐるみの付き合いだもんね」

 

 

 部長らの許可も出て、纏ねえが保護者をやってくれるってんなら問題ねえか。警察官の草野球大会への参加だし知った顔ばかりだ。えーと親父と松ちゃんに電話をしてと・・・

 

 

 「胸の谷間からなんでも出すんじゃないわよはしたない!!」

 

 

 「じゃあ口から出したほうがいいのか?」

 

 

 「体の一部から出すなって言っているのよ、この変態奇術師が!」

 

 

 めっちゃジェンティルちゃんに怒られちゃった。ケイジショック!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さーて。負けねえぞ纏に婦警の皆にもな」

 

 

 「こっちこそ。県大会の前の弾みにしてやる」

 

 

 「お前らも付いてこなくていいのに。海で泳いでいたほうがいいんじゃねえの?」

 

 

 シャワーで海水を流して着替えてから両さんたちと大真面目に歩いてすぐだった浜辺から歩いて2分の球場。というよりは学校のグラウンド? に近い感じの場所での男女野球対決。早速リーダーらしい両さんと纏ねえがバチバチ火花散らして、婦警連中はいつぞやに両さんをバカにしまくっていた時にアタシとカレンチャンが切れていたのもあってか煽り言葉も抑えている。

 

 

 で、なんでかついてきたのがヴィルシーナとジェンティルちゃん。ゴルシはジャスタと遊んでマックちゃんに焼きそばとスイーツ食べさせると言ってどっか行ったので沖野ちゃんに監視頼んでアタシら三名と葛城のおやっさんも一応観戦。既に案山子に徹しつつアタシらの後ろに。

 

 

 「どうせ海にいても合宿に励む皆さんの様子で火が着いちゃうのでここでのんびり休みつつスポーツ観戦の方がいいですもの」

 

 

 「そうそう。妹たちもナギコと松風さんたちに頼んだし、勉強も練習もしっかりするでしょ」

 

 

 すでに日傘と日焼け止めを塗り直している貴婦人モードのジェンティルちゃんはまあ分かる。けどあのシスコンのヴィルシーナも来るとはねえ。

 

 

 「まあいいけど。にしても、すげえなあやっぱ」

 

 

 なんとなく意図は分かるけどそこに踏み込んだらやばそうなのでほっておくとして、ウォームアップの中で肩慣らしの投球練習を見れば両さんと纏ねえのその投球技術の高さがわかる。マックス145キロの球速だけどそのパワーは本気を出せば木製バットを砕きながらキャッチャーミットの中に入るパワー、変化球もお手の物な両さん。

 

 

 マックスは140キロだけどソフトボールでの下手投げでも130キロ。下から浮いてくるボールやらも出せるので球種の引き出しの多さは上の纏ねえとピッチャー対決のなるのが私でもわかる。ここマックちゃん連れてくるべきだったかねー後ライアン。

 

 

 「へぇ・・・・! すごいのねあの二人。高校まで野球していたの?」

 

 

 「いや? 二人とも草野球とか、ソフトボールチームに入っていたくらいだぞ?」

 

 

 で、まあ意外とハイレベルな内容になりそうな草野球に食いつくのはヴィルシーナ。親父さんの影響と妹のシュヴァルちゃんも野球が得意だったりとかで野球への理解は流石。

 

 

 んー・・・せっかくだしなあ。どれ。

 

 

 「おーい両さん。纏ねえ。この試合。いわゆる強化合宿みたいなものなんだろ?」

 

 

 「まあな。既に男女別で勝ち抜き戦をして残ったのがワシらのチームだ」

 

 

 「そうなるね。でもどうしたの急に?」

 

 

 「いやーアタシらもただ見るだけじゃあれだしさ。ピッチャーとか、代打させてくれないかね? 打撃練習と思って。いい球放るよ~? な、ヴィルシーナ」

 

 

 「え、ええ。それはもちろん。バッティングセンターやストラックアウトもしているし、自信はあるわ」

 

 

 「そういうわけでどうよ? いつも見慣れた顔とチームだろうし刺激を入れる意味でもさ~リリーフにでもどう?」

 

 

 ニヤニヤしながらのアタシの提案と案外乗り気。というか体を休めつつも周りの練習に励む姿とかにうずうずしていただろうヴィルシーナは乗り気。で、派出所の皆さんも所長も部長も面白いと許可。

 

 

 「私は構わないよ。どうせカンキチ達なんてソフトボールでも当てられないんだ。ケイジのお手並み拝見といこう」

 

 

 「なにおぉ? ワシも上等だ! じゃー・・・そこの三人で誰が参加するんだ?」

 

 

 「あ、私はケイジを希望」

 

 

 「な、ずるいぞ纏!」

 

 

 「あ、それならポジションはピッチャーだけにしてね。キャッチャーはヴィルシーナに任せるわ」

 

 

 「私もそれで」

 

 

 リーダーの許可も得たのでとりあえずアタシは婦警チームに。で、ヴィルシーナはそのまま男性警官チームに。かね? ジェンティルちゃんは・・・・

 

 

 「私は観戦をさせてもらいますわ。流石に経験のないスポーツ。しかもハイレベルな野球ですもの。力だけで張り合って怪我をさせては申し訳ないですもの。あ、代わりと言っては何ですが撮影をさせていただいても? 私たちのチームのチャンネルでこの試合を放送したいのですが」

 

 

 「もちろん構わないとも。私達も反省会のために撮影機器を用意しているのでそっちも使ってくだされ」

 

 

 「サンキュー大原部長~♪」

 

 

 とりあえずジェンティルちゃんはのんびり観戦。と。よかった。真面目にちょっと力んでボールぶん投げるだけでとりあえずけが人続出する事態になるのはないな。

 

 

 うちのチームの撮影器具と署内の撮影器具をもってのカメラ数台。ジェンティルちゃんの方は桂木のおやっさんがカウントと得点板、ピッチャーたちをちゃんと収められる場所にセットして木陰と即席のキャンプ用品で影を作って準備OK

 

 

 ジャージ姿のままとりあえずそれぞれのチームに入って試合前の挨拶。よろしくお願いします。

 

 

 先攻は・・・・男性チーム。アタシがいきなりピッチャーかあ。ふぅー・・・どーれ・・・・軽ーく・・・しょっ!

 

 

 「ストライーク!」

 

 

 「ひゃ、175キロ・・・」

 

 

 「しかも綺麗なフォームとコントロールだったぞ!」

 

 

 にひひ。胸と美貌に目が行って~競争種目とアイドル養成学校のトレセンだけど、結構ほかのスポーツに触れる機会はあるんだよ。アタシの場合は特にね。さあ、加減を加えてもういっちょ!

 

 

 「ストライーク! バッターアウト!」

 

 

 「あっという間に2アウト! カーブもチェンジアップも使っているぞ!!」

 

 

 「甲子園は愚かプロでもそうそう見れない球威だった・・・!」

 

 

 「ったく・・・さすが葛城蓮の幼馴染で昔は自主練にも付き合っていたというだけある。あの安打生産機が生まれるわけだ」

 

 

 「なんだと両津! あの葛城蓮! ゴジラーズの二枚看板の一人。オリンピックでMVP、MLBとの試合で大暴れもしたあの選手の幼馴染!? なぜそれを言わない! サインをもらえないものか。孫も私もファンなんだ」

 

 

 あ、ベンチで大原部長が両津になんか怒っているのかおどろいているのかわからん反応している。サインくらいなら今度試合の際に東京でやる際に頼めばすぐだから気にしないのに~

 

 

 次のバッターは中川。と。おぉう。後ろから婦警の黄色い声が飛ぶ。おいこらボールをこっちに飛ばしてとかアタシが打たれろって味方の言うことか! まーチームじゃ日常だけどさあこういうの!

 

 

 よーし。一つ見せてやるかあ。アタシの切り札。

 

 

 「シーナ。ミットもう一丁!」

 

 

 「! ええ。いいわよ!」

 

 

 ヴィルシーナ。もといシーナも本気と分かったようですぐにもう一つミットを持ってきて両手にキャッチャーミットをつけてきて再度キャッチャーポジションへ。

 

 

 銃やらいろんなことで鍛えているエリートの中川の兄ちゃんや両さんだろうとな・・・こいつはちょっと怖いぞ!

 

 

 「シーサーボール!!」

 

 

 あたしの得意な変化球。高速ナックルで6~8個に見えるほどにぶれながら飛んできて、そこからさらに

 

 

 「クッ・・・!」

 

 

 「ストラ―イク!」

 

 

 カーブで落ちてくる。けど、今度はどうかな?

 

 

 「ッっ!」

 

 

 「今度はシュート!?」

 

 

 「なるほど両手をグローブにするのはそれで。」

 

 

 そゆこと。高速ナックルからのカーブかシュートどちらかの動きで落ちながら曲がる変化球。東京のド田舎で知り合ったやつに教えてもらったけど、いやーいいねこれ。まあ、だから左右どちらかに落ちていくボールを片手で取るのは難しいから両手グローブになるんだけど。じゃ、最後はシンプルにストレートの速球で三者凡退ってね!

 

 

 これでチェンジってことで今度は婦警チームの攻撃。あ、一応纏ねえも両さんも4番打者か。それなら変化球を見せたのは早かったかね?

 

 

 さて、こっちもとりあえず最初はヴィルシーナから。ってことでアタシはキャッチャーへ。あっちの変化球もアタシじゃないとまず取れないのが多いからなあ~

 

 

 「さぁて・・・それじゃあ、行くわよ・・・っ!」

 

 

 それにまあ、何よりあのフォーム。プロ野球を少しでも知っている人ならまず驚くであろう投球フォーム。現役で既に怪物。大魔神の名を冠するメジャーリーガーだもんね。飛んでくるボールもまた親譲りのもの。んーいいボール!

 

 

 「な、な・・・なぁ・・・・あ、あのフォーム、球威はまさしく!」

 

 

 「私の家では軽くたしなむからね。さあ、次はこっち・・・・よ!」

 

 

 「きゃっ!!?」

 

 

 おお、来ました落差30センチ以上の高速フォーク。140キロからこの落差だからボールが消えたと思えるほどのものなんだよねえ。だからアタシとかボールを見慣れている人じゃないと無理無理。

 

 

 婦警の皆も目を白黒。男性陣はまさか大魔神のフォームと得意球を見れるとは思わず野球ファンたちが大騒ぎ。あ、両さんと中川の兄ちゃんがシーナの親父が大魔神だってばらしやがった。なんかもう部長は情緒がおかしくなって野球小僧の目になってキラキラしているし。

 

 

 でもここで終わらないのがうちのシーナ。頂点の名前を持つ彼女は親の技を持つだけじゃないんだなあ。

 

 

 「いいぞシーナ。球場に猛獣を放ってやれ!」

 

 

 「いいわ! ふっ!」

 

 

 そういうやシーナもグローブの中で握り方を変えて投げる変化球。一見普通の速球に見えるけど違うのはここから。怒った蛇がとびかかるようにゴンゴンゴンと三段ホップしてくる様は当たるわけないのに自分に襲い掛かってくるような迫力。

 

 

 「ヒッ!」

 

 

 いつも両さんを小バカにしていた婦警さんもビビッてしまいつつアタシは身体をあげて浮かんできたボールをグローブに収める。

 

 

 「ストライク!」

 

 

 「アンダースローでも、サイドスローでもないのに・・・ライズボール!?」

 

 

 「しかも2、3・・・か? くらいのホップをしたぞ・・・!」

 

 

 「ナイスピッチン! シーナ! そらそら。もっとビビらせちゃえよ!」

 

 

 「ふふん。さあ、婦警さん達も鍛えているんでしょうしガンガン行くわ!」

 

 

 この後は結局ハブボールと高速フォーク、ストレートとチェンジアップを織り交ぜた投球術で婦警さんらも手も足も出ずに三者凡退。打撃練習になるの? という不安も出てくるほどだったけど。

 

 

 「こなくそっ!!」

 

 

 「そらぁっ!!」

 

 

 両さんと纏ねえはなんとアタシらのボールを加減しているとはいえ捉えてホームラン。どっちもなんとヤマ勘でボールが来る方向にバットを振って当てればそのパワーで無理やり持っていくというとんでもない方法を選んできた。

 

 

 加減しているとはいえ140キロ当たりでぶん投げる変化球をとらえるってのは動体視力や反射神経もだけどそれだけパワーも捉え方も抜群。最悪変化球を捨てて速球の実に絞ったりと実にクレバーなこともしてきたりとでまさしく熱い勝負。

 

 

 そうなればアタシらも火がつくわけで。

 

 

 「代打で出してもらうぞ! せっかくだしとことんやり切ってやらぁ!」

 

 

 「草野球でこんなハイレベルな勝負できる機会はないしね。ケイジのシーサーボールもホームランにしてあげるわ!」

 

 

 「二人にはありがたいが主役はワシらじゃ! 負けんぞぉお!!」

 

 

 「いくら世界最強格のウマ娘とは言えど野球の経験は私らが長いんだ。妹分に負けるもんかってね!!」

 

 

 なんかもうみんな酒も入れて。アタシら学生たちは熱にあてられての大勝負に発展。終わるころには日が傾き始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はー・・・ぜー・・・・か、肩が痛い・・・」

 

 

 「うおぉお・・・耳が痛い」

 

 

 「結局18回までの大延長線からの日暮れで終わり。私達のチームの動画放送からの貴女たちの家族関係とか蓮選手との関係性までコメントでばれるわ、両津さんや纏さんの野球レベルも分かったりとでえらい騒ぎになりましたわね。

 

 

 動画再生数1000万越え、高評価、いいねも数百万単位でついていますよ。スパチャは言わずもがな」

 

 

 あの後結局大暴れしてトレセン学園の方からも見学客が来たりとで大騒ぎになって、酒の入った連中相手に即興ライブとか、ライアンやマックちゃんも交えて後日練習をしたりとの二日間。シーナとジェンティルちゃんのホームラン対決とか、色々しすぎて休みになっていないと大目玉食らって耳が痛いし、頭がガンガンするぜー・・・

 

 

 「ま、まだまだ休みはたっぷりあるし今以上に疲れを抜いてしまえばいいだろ・・・んあ?」

 

 

 「おーケイジに皆。悪かったな。ほれ、疲労抜きのためのアイシングや湿布の道具に疲労抜きの効果があるドリンクとかお菓子だ」

 

 

 合宿上で突っ伏していたら両さんが大量の差し入れを持ってきてはいってきた。ありがてぇ。フルーツ酢とか美味しいしねえ。

 

 

 「サンキュー、じゃあ楽しませてくれたシーナとジェンティルちゃんにサービスでお菓子作るか。疲労抜きのお菓子でもいいもの作れるしっと・・・・んあ? 両さん。付き添いいるの?」

 

 

 「確かに誰かの足音が聞こえますわね」

 

 

 「纏さんじゃないかしら? 私にフォークの投げ方教わりに来たかも・・・」

 

 

 そんな気配じゃないんだけどなあ。なんだろうかこのデジャヴュ

 

 

 「両津さん! おお、ケイジさんも! 是非我らがゴジラーズで蓮選手、国光選手と一緒に交流試合を!」

 

 

 「○○テレビのものですが! とんね〇ずのスポーツ王は俺だ! で是非リアル野球盤に参加を!」

 

 

 「いえいえこちらの体育会テレビジョンで是非是非プロに勝負を挑んでほしく!」

 

 

 「月間トゥインクルのものですが! ケイジ選手と蓮選手、ヴィルシーナ選手と大魔神の関係性について是非取材を!」

 

 

 「MLB職員のジョーンズです。ゼヒ我々アメリカのギドラーズで貴女たち4人とマトイさんを代打やリリーフでお招きしたいデース。あ、学生組は卒業してからでOK!!」

 

 

 やっぱりか! くっそ昨日の今日で話が早いわ!

 

 

 「待て待て待て! ワシらは今から県大会なんじゃ! 今からロケなどできん!」

 

 

 「おあいにく様ですがアポを通さない方との話はお断りでして。改めて日を改めてくださいませんこと?」

 

 

 「か、勘弁してー! 流石に今はケイジ記念に向けて休ませて!!」

 

 

 「ええいやめろやめろ! 今はそんな気分じゃねーんだ!」

 

 

 やっぱりこんなことだろうと思ったよ! 警備は何していやがったんだ後警察は!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「今年のスポーツドリンク、メジロ家と前田家のウマ娘で目白押しになりましたねえ」

 

 

 「それと警察官の草野球全国大会優勝の商品にプロ野球チーム、ゴジラーズとビクトリーズとの交流戦に決まったそうです」

 

 

 「ケイジ君とあいつのおかげでしばらくは孫との楽しみには困らなさそうだな」

 

 

 後日、新聞とニュースを見ながら中川と麗子、大原部長はそんなことをつぶやいていたとか。 

 

 

 




 ここの世界のヴィルシーナはジェンティルドンナにも数は少ないですが勝利や先着は出来るくらいには成長しております。でもジェンティルが上だとは理解している。だけど勝つために挑み続けるという毎日。後ここだと専属トレーナーではなくチームに所属しているのとケイジに脳を焼かれているので百合パラダイス状態。


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