デート・ア・ライブ 祝福の美夜ダークネス (蝶々)
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プロローグ
夜天の追憶


 既存の小説のネタは思いつかないのに、別のネタは思いつく。唐突に思い浮かび、とりあえずいけるとこまで行ってみようと思い投稿しました。

 スマホで投稿しているため、誤字脱字が多いうえに更新速度も遅いです。さらにいつまで続くかわかりません。ですが、まぁ、読んでくれるだけで幸せです。



 ?「ーー此処は、何処だ……?」

 

 何処までも白い空間、そこに銀髪の美女が1人、己の疑問を口にする。

 

 

 ?「私は‥確かにあの時、主はやて‥騎士たちを救う為に消えた筈……なのに、何故…?」

 

 

 そう、かつて“呪われた闇の書”として幾度となく厄災を振り撒いてきた私は、今代も主となる者を殺し、世界を壊すのかとーーそう、思っていた。

 

 しかし、私は出会ったのだ。あの日、車椅子の少女に。命を賭してでも守りたいと願った1人の少女に。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 書を通して見る世界は今までの時代のどの世界よりも、私にとって全てが新鮮に見えた。

 

 最初はぎこちなく接していた守護騎士たちも、次第に笑顔を見せるようになって。

 

 

 このまま幸せな日々がいつまでも続けば良いと誰もが願っていた。だが、そんな幸せな日常も長くは続かなかった。

 

 

 主はやてが倒れた。

 

 

 彼女の担当医師の女性は軽い心臓発作だと言った。

 

 ーー違う、そうではない。原因は私ーー闇の書にある。本来ならば魔力を周りから奪集していかなければならなかった。ある日の夜、将ーーシグナムがこんなことを言った。

 

 

“この書があれば素晴らしい力を手にすることが出来る”と。

 

“その不自由な足も直し、健康な身体を取り戻すことが出来る”と。

 

 

 

 しかし主はやてはそれを望むことはなかった。

 

 

 主はやては今ある幸せだけを望んでいた。他には何もいらない、みんなと一緒に居られればそれだけで自分は幸せだと、笑って言っていた。

 

 だがそうもいかなかった。長い期間奪集がされなければ闇の書は自らの主の魔力を糧にしていく。未完全な契約、未成熟な身体、それが下半身付随や心臓発作として現れた。

 

 このままでは主はやてが死んでしまう。この愛おしい日々を失いたくない。守護騎士たちは主との誓いを破ってまで奪集活動を始めた。

 

 

 奪集当初は魔導生物のみを対象としていたが、やがて魔力を持つ人間にも対象を広げ、とある魔導士たちと出会った。

 

 

 魔導士たちの名前は『高町なのは』『フェイト・テスタロッサ』。

彼女たちは守護騎士たちに何度も語りかけ、止めようとした。

 

   

 

 

 

 

 12月24日 クリスマスイブの夜、ナハトヴァールの起動により私は主はやての身体を素体に現界した。

 

 

 彼女たちは私に幾度も言葉をなげかけた。何度も、何度も。

 

 

 『まだ終わりじゃない…まだ終わらせたりしない!!』 『泣いてるのは、悲しいからじゃないの!? 諦めたくないからじゃないの!?……そうじゃなきゃおかしいよ…。本当に全部諦めてるんなら…泣いたりなんてーーしないよっ!』

 

 『伝わらないなら、伝わるまで何度でも言う。助けたいんだ…貴女のことも、はやてのこともっ』 

 

 『いつかは眠るよ…。だけどそれはーー今じゃない』 『哀しみも‥悪い夢も…終わらせてみせるっ!』 『レイジンクハートが力を貸してくれてる。泣いてる子を、救ってあげてって!』

 

 

 

 我が主も。

 

 『わたしら、みんなよう似てる。ずっと寂しい思い、悲しい思いしてきて。1人やったらできへんことばっかりで……』

 

 『そやけど…忘れたらあかん。貴女のマスターは今は私で…貴女は私の大事な子や…!』

 

 

 そしてーーーー。

 

 

 『ーー名前をあげる。闇の書とか、呪われた魔導書なんてもう呼ばせへん。私が言わせへん。

  ずっと考えてた名前や…。強く支える者‥幸運の追い風‥祝福のエール、

 

 

  ーーリィンフォース』

 

 

   私は、名前を貰った。





 なるべく早めに本編に入りたいところです。


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重なる面影 重なる願い

 割と急拵えなので、結構おかしくなってるかも。地の文下手くそですし。まぁネタの続く限り書いていこうと思うので、暇つぶし程度に読んでいただければ個人的には満足です。
 ある程度の文才の無さはスルーしてくれると助かります(^-^;)


 

 

 『主はやて…守護騎士たち…それから、小さな勇者たち……ーーありがとう』

 

 

 

 

 

 そして私は、小さな光となって空に消えていったーーーー。

 

◇◆◇◆◇◆

 

 (主はやてはやはり、悲しんでおられるだろうな……)

 

 本音を言えば、もっと主と…守護騎士たちと共に過ごしたかった。夢や幻ではない、本物の時間を…… 暖かな日々で、幸せに………ッ。

 

 

 「私も…もっと、もっと一緒に…いたかった…っ! 守護騎士たちのように、私も…!」

 

 そんな嫉妬に似た想いが駆け巡り、涙が止まらない。

 

 

 『泣いてるのは、悲しいからじゃないの!? 諦めたくないからじゃないの!? そうじゃなきゃおかしいよ…。本当に全部諦めてるんなら……泣いたりなんてーーしないよっ!』

 

 

 

 「ああ…悲しいんだ、諦めたくないんだ……だが、もう遅いんだ…なにもかも」

 

 高町なのはという少女の言葉が記憶に蘇る。でも、もう戻れない。

 

 

 

 「我が主にはああは言ったが、やはり後悔があったのだろうな。どうにも未練がましくていけないな…………ん? あれは………」

 

 涙を拭き、苦笑を浮かべる私の視界に小さな穴が映った。気になった私はその穴のある場所へと向かう。

 

 そうして穴のもとへと辿り着く。穴を観察して、 どうやらどこかに視界が繋がっているのだと推測する。穴の向こう側を覗くと、おそらく誰かの部屋だろうか? タンスやベッドなどが見える。

 

 

 「視界の発生場所は……机の上…? それにこの視界の低さからして…。いやまさか、そんなはずは……」

 

 ひとつの仮説に思い至った私は自分の状態を把握するために目を閉じる。

 

 しばらくして閉じていた目を開ける。

 

 

 

 「どういうことだ? 調べた限り、この本は夜天の書をベースにしている。だが見た目だけで力そのものは無い。…ただの情報端末…?いやそれも違う。 ならば、いったい……」

 

 

 

 

      ーーガチャ。

 

 

 

 「ーー!?」

 

 思考の海に沈んでいた私の意識は扉の開く音によって強制的に覚醒させられる。どうやらこの部屋 の主が戻ってきたようだ。

 

 この夜天の書(力は無いが)を持つ人物とはいったいどんな者だろうかと興味を持った私は、視界を扉の開く音がした方へと向けた。

 

 

 

 

 

      そして驚いた。

 

 

 

 正確にはそこまで驚いたわけでない。ただあまりにも似ていたのだ、我が主に。

 

 見た目からして性別は男。いや、我が主を男性に近づけたらこうなるだろうという容姿、車椅子。

 

 

 

  …………………似ている、我が主に。

 

 

 

 違うとはわかっていてもどうにも落ち着かない。

 

 

 そんな私を余所に、我が主に似た少年は車椅子を押しながら私ーーいや、夜天の書を模した本のある机に近づき、まるで壊れ物を扱うかのように本を手に取り、抱きしめた。

 

 少年の行動に驚いた私だが、その身体が震えているのに気付く。涙を流すまいと必死に堪えながら。

 

 さらによく観察してみると、身体中のいたるところに傷がある。蹴られたような痣、鈍器で殴られたような痕、石をぶつけられたような痕など、何故今まで気付かなかったのかと思わせる傷が多数確認できた。

 

 

 (少年がここまで傷ついていて何故誰も止めないんだっ! この少年の両親はなにをしているんだ!?)

 

 普通の親であれば心配するはずだ。これほどの傷であれば警察沙汰になってもおかしくない。いや、 むしろこの少年の両親が加害者という可能性もある。 しかし私の疑問は、少年の嗚咽に混じって微かに聞こえてきた声によって消える。

 

 

 

 ?「…やっぱり、僕は‥疫病神な子どもなんだ…… お父さんも、お母さんも‥僕のせいで死んじゃったんだ……親切にしてくれた叔父さんも、叔父さんの娘だった女の子2人も‥‥僕と関わったから死んだんだ……僕に関わった人たちはみんな不幸になる‥だからきっと、僕は疫病神なんだ………」

 

 言葉を紡いでいくうちに徐々に耐えきれなくなってきたのか、少しずつ、また少しずつと涙がぽろぽろと落ちていく。

 

 

 (なんだこれは…? これほど悲しみに染まった人間を、私は未だかつて見たことが無い……)

 

 我が主も幼少の頃に両親を亡くし、不自由な身体で天涯孤独に生きてきた。時々悲しそうな表情を魅せることはあっても笑顔を無くすことは無かったし、のちに守護騎士たちという家族が、月村すずかという友人ができた。 だがこの少年には誰もいない。親しい関係だった者たちはもういない。周りの人間たちも彼を気味悪がって近づこうとせず、まるで化け物のように扱う。

 

 人間という生き物は異常を嫌う。たとえどんなに親しかったとしても普通ではないだけで、それは容易く崩れ去る。私は今まで生きてきた中でそれを知った。

 

 

 

 ……助けたいと思う。しかし今の自分は身体を持たずどうすることもできない。守護騎士たちもいない。人一人救うことのできない自分に苛立ち、歯痒い思いで見守ることしかできない今の状況に焦りばかりが増えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

    このとき、祝福の風は願った。

 

  ーーこの少年を救う力が欲しい。ーー

 

 

 

 

 

 

 

     そして少年は願った。

 

     ーー家族が欲しい。ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

  奇しくも折り重なった2つの願いは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《おもしろいわね。その願い、私が叶えてあげる♪》

 

 

 突如として現れた謎の存在によって叶うことになる。

 

 ただし、それは少年の人としての存在を完全な人ならざるものへと創り替え、過酷な運命へと導いてゆくとは、祝福の風も少年もこの時はまだ知らない………

 

 

 

 





とまぁ、原作を読んでいる方なら最後に出てきた謎の存在が何者なのかは、だいたいわかると思います。精霊の中では四糸乃が好きですが美九も好きです。原作未読の時点では四糸乃がダントツだったけど、原作読んでからは美九に傾きつつあったり、無かったり。

次回は一気に原作まで跳びます。私自身、あまり話しを長引かせるのも苦手なので。


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十香デッドエンド
朝のひととき


とりあえずリィンフォースのヒロインは確定です。原作キャラの最有力候補は美九ですが他はどうしよう……




     『疫病神』

 

 

 

 それが僕に対する呼び方だった。

 

 両親は事故で亡くなり、親戚の叔父とその娘たちも同じように事故で亡くなり、僕と関わった全ての人たちに何かしら良くないことが起きた。僕と関わった人間は不幸になるという噂が流れはじめ、徐々に周りからは人がいなくなり、僕のことを見るなり疫病神と言うようになった。

 やがては蹴られ殴られ、石や物を投げられたりされるようになった。でも我慢した。疫病神だから。自分は周りを不幸にするいけない子なんだと。ただただ耐えた、これが自分対する罰だと言い聞かせて。

 

 

 

 でもいつになっても周りからの罵倒や暴行は減らず、むしろ段々とエスカレートしていった。

 

 

   『化け物』

 

 

 表情を変えず、ただただ無表情な顔でいる姿からそう呼ばれるようになった。学校では私物を隠されたり壊されたり、校舎裏に呼び出されれば集団で暴行を受ける。教師たちは見て見ぬふりで関わろうとせず。

 

 

 ある日、僕は学校の階段で、突然後ろから突き落とされた。幸い命に別状は無かったが、代わりに歩くことも立ち上がることさえできなくなり車椅子生活を余儀なくされた。

 それ以来僕は学校に行くのを止めた。買い物も、近くではなくわざわざバスを使って遠くでするようになった。買い物以外では外に出ないようにした。

 

 

 こわい。僕を見る目が。

 

 

 こわい。罵倒を受けるのが。

 

 

 こわい。殴られるのが、蹴られるのが。

 

 

 

 

 

  こわい。人と関わるのが。

 

 

 

 

 

 

 

 こわい怖いコワいこわい怖いコワいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいここわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいーーーー、

 

 

 

 

 

 

 

 ?「颯斗、起きてください!!! 颯斗!!」

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

颯斗「ーーはっ!……ハァ、ハァ、ハァ…!」

 

 どこか聞き覚えのある声によって僕は目覚めた。

 声のする方に視線を向ければ、そこには銀髪に赤い目をした女性が僕を心配そうに覗き込んでいた。

 

 

颯斗「……美、夜…? どうして……」

 

美夜「何時も通り起こすために部屋に入ってみれば、激しくうなされている貴方を見て心配だったので。…それよりも大丈夫ですか? とても苦しそうにうなされていましたが……」

 

颯斗「………うん、大丈夫。あの時の夢を見ただけだから」

 

美夜「あの時の夢、ですか……。颯斗、辛いのであれば今日はお休みになられた方が良いのでは?」

 

颯斗「ありがとう美夜。でも本当に大丈夫。だから心配しないで」

 

美夜「ですが…! ……いえ、わかりました。朝食はできていますので、颯斗は汗を流してきてください。そのままでは風邪を引いてしまいます。もう春とはいえ、まだ寒さの残る時期なのですから」

 

 尚も心配な眼差しを向ける、“美夜”と呼ばれた女性は僕に汗を流すように言った。そう言われて改めて自分の身体を見てみれば、汗で衣服が身体にべっとりと張り付き、なんとなく気持ち悪い。確かにこのままでは風邪を引いてしまうかもしれない。

 美夜に言われた通りシャワーを浴びて汗を流すとしよう。

 

 

颯斗「そうだね。美夜の言うように、ちょっと汗を流してくるよ。

 ーーそれと美夜」

 

美夜「? なんですか颯斗」

 

 リビングに戻るのに部屋を出ようと扉に手をかけた所を呼び止められた美夜は、振り返って僕の方を不思議そうに見て尋ねる。

 

 

颯斗「ありがとう美夜、心配してくれて。嬉しかったよ?」

 

 微かな微笑みを浮かべながらそう返すと、

 

 

 

美夜「っ!///// わ、私はリビングに戻ってます! 早くしないと遅刻しますよ!?」

 

 まるでリンゴのように顔を赤くした彼女は慌てて部屋を出ていった。

 途中「きゃーっ!?」という悲鳴とともにドタバタと激しい音が部屋の外から聞こえてきた。 おそらく慌てていたために階段を転げ落ちたのだろう。

 

 なんとなく微笑ましい気持ちになった僕はシャワーを浴びるために部屋を出る。その際、ふとカレンダーを見ればそこには『4月10日』と記されていた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 シャワーを浴びて汗を流した僕は、現在制服を着て朝食をとっていた。

 

 

颯斗「そういえば最近空間震が多いね。あの時まではあんまり起きてなかったけど、またよく発生するようになったし。しかも発生場所が此処、天宮市だもんね。ホントいやになるよ」

 

美夜「そう言わないでください。仕方のないことですよ、彼女たちは別に意図して空間震を起こしているワケではないのですから」

 

颯斗「彼女たちが悪いって言ってるワケじゃない。ただ彼女たちが現れる度に出てくる蠅共が鬱陶しいだけだよ」

 

 ニュースを観ながら、笑顔でなにやら物騒なことを呟く颯斗に、苦笑する美夜。

 

 

 彼らの話題に出てくる“空間震”とはこの世界とは異なる“隣界”に存在すると云われる“精霊”がこちら側にやってくる際に引き起こされる大爆発のことである。

 

 

   『精霊』

 

 発生原因も存在理由も不明で、わかっていることは精霊たちの戦闘能力が桁外れなこと、その身を護る“霊装”を身に纏い、力の象徴である“天使”と呼ばれるものを有すること。

 

 そして先ほど説明した、限界すると同時に空間震を発生させることだけ。

 

 

 また、2人が言う彼女たちというのは基本的に精霊が皆、年若い女性の姿をしているためでもある。しかし必ずしも例外というのはあるワケで……

 

 

 

 

颯斗「まあ、向かってくる火の粉は祓うまでだけどね」

 

 その例外たる存在、八神颯斗はその顔に笑みを浮かべて。

 

 




原作キャラの登場は次回になります。


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時と夜天の群奏活劇

時間がかかった割には短いです。そして精霊が出ます。

最後の漢字はアンサンブルと読みます。…元ネタわかりますよね?


 

 

 

 

 

 放課後に妹とレストランに行く約束をしたあと。

 

士道は自分が通う都立来禅(らいぜん)高校にて、掲示板で張り出されている新しいクラスを確認しから、その教室へと向かおうとしていた。

 

 

 途中見知らぬ銀髪の女の子に絡まれ「私のことを知っている?」と聞かれたり、友人である殿町宏人(とのまちひとろ)に茶化されるなど、始業式すら始まっていないというのに既に疲労困憊である。

 

 

 始業式も終わって、妹との外食についても殿町に茶化されながら教室に戻ろうした時にそれは起こった。

 

 ーーブォーーーーーーン

      ブォーーーーーンーー

 

 

 

士道「これは空間震警報!?」

 

 

 

  なんだってこんな時に!

 

 

 

 生徒たちと同じようにシェルターに避難しようとした士道だが何か嫌な予感を感じてケータイのGPS機能で妹の琴里の場所を探す。

 

 

士道「くそ、あの馬鹿っ!」

 

 琴里の位置を示す赤い点が件のファミレスにあるのを見た士道は殿町の制止も振り切り駆け出した。そしてそこで彼は出会う。世界に絶望した精霊に。そして始まる。士道の戦争(デート)が。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 士道が空間震警報によって駆け出す数時間前、八神颯斗も来禅高校に向かっていたのだがこちらはこちらで厄介な相手に遭遇していた。

 

 颯斗は内心“面倒な相手に出くわしたな~”と考えていた。そして颯斗曰わくその面倒な相手ーー黒と赤の多いドレスを纏った女の子ーーは、颯斗の内心など知ってか知らずかたいして表情を変えずに微笑んでいる。

 

 

?「あらあらァ、そんな嫌そうなお顔をしないでくださいまし。なんだか悲しくなってしまいますわ」

 

颯斗「そりゃ早く学校に行かないと遅刻しちゃうからね。これでも無遅刻無欠席で通してるからできれば早く通してくれると僕的には助かるのだけど、狂三」

 

 

狂三「申し訳ありませんが無理ですわねェ。わたくしと会ってもいつもはぐらかして逃げてばかり…そろそろ我慢の限界ですのォ。ですから………刻々帝(ザフキエェェル)!」

 

 彼女の背後に身の丈の倍はあろうかという巨大な時計が現れる。両手には古式の銃を持ち、こちらを獲物を狙う肉食獣のような目で見てくる。

 

 

颯斗「……引く気は、無いんだね?」

 

狂三「えぇ、もちろんですわァ。先ほども言ったようにわたくし、もう我慢できませんのォ……」

 

 

 

狂三「ーー一の弾(アレフ)!」

 

 背後の時計の針から赤黒い糸状のナニかが一方の銃へと吸い込まれ、その銃を自らに向け躊躇無く引き金を引いた。

 

 驚くことにその場にいた筈の狂三が忽然と消えている。だが颯斗は特に驚くことなく後ろから放たれた銃弾をシールドを張って防いだ。

 

 

 

狂三「…驚きましたわ。まさか初見でわたくしの一の弾(アレフ)が防がれるとは」

 

颯斗「まあ色々あってね……こういった危機回避能力は高い方なんだ」

 

 

狂三「ますます楽しくなってきましたわァ。ならばこれはどうでしょうか? ーー二の弾(ベート)

 次は自分にではなくこちらに銃弾を放ってきた。それを防ぐのではなく右にずれることで回避する。ただの銃弾なら防げば事足りるだろうがそれが能力であるなら、安易に防げば拙いと颯斗の直感が告げる。

 

狂三「あらあら残念、避けられてしまいましたわ」

 

 狂三の発言から防がずに避けたことが正解だったようだ。おそらく自身に対して放つ銃弾は補助系統、相手に放つ銃弾はなにかしらこちらにとって厄介なもののようだ。

 

 

狂三「……あまり能力を使うのは気が引けますが、どうやらそうも言っていられないようですわねここからは数で圧倒させていただきますわァ…!」

 

 

 「あらあら」 「フフッ」 

     「遊びましょう?」 「まあまあ」 「楽しみですわァ」

 

 

 

 

 これもまた能力のひとつなのか、複数の狂三が現れる。その数はざっと10~20人程度。

 

 

狂三「どうですかァ? 驚きましたでしょう? これほどの数を相手に、どこまで持ちこたえられるか見ものですわ颯斗さん」

 

 語りかけてくる狂三は自身が優位であると思っているのだろう。

 

 

 確かに今の自分の状態では(・・・・・・・・・)おそらく勝てない。

 

 

 

 

颯斗「(仕方ない…あまり使いたくはなかったけどあとが面倒そうだ)」

 そう考えて、戦闘態勢に切り替えようとした時、突如上空からレーザーが降り注ぐ。

分身の何体かがレーザーに貫かれて消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「ようやく追いつきましたよ《ナイトメア》」

 

 

 

 

 




本来なら登場が先の人(精霊)が登場しました。士道sideを無くすと必然的に十香の出番も無くなる訳で。……どうしよう。


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因縁と始まり

時間がかかった割には文字数もあまり増えず。ネガティブになってる訳ではないですけど、どんどん増えていくデート・ア・ライブの二次小説に少し焦りが。

どれもこれも素晴らしい作品で、その技量に尊敬を抱きます。暇つぶし程度に書いているけど、ああいうのを読んでるとちょっとだけ熱意が宿ります。お気に入りの数も増えてきたし、少しずつ文章力と想像力を上げていきたいと思います。


?「追いつきましたよ《ナイトメア》」

 

 

 そこには白い機械の鎧を纏った少女がこちらを、正確には狂三の方を見ながら言った。先ほどのレーザーを撃ったのはどうやら彼女のようである。

 

 

 

 

 

狂三「まあまあ…誰かと思えば崇宮真那(たかみやまな)さんではありませんか。

 足止めをしていた筈ですが、思っていたより来るのが早かったですわね…」

 

 

 普段から余裕を崩さない狂三にしては珍しく表情に動揺の色が見えている。崇宮真那が現れることは予想していたようだが、その予想よりだいぶ早い到着のようだ。

 

 

 

真那「えぇ、確かに私ひとりだったらもっとてこずっていたでしょうね。何度殺しても死なねぇことには疑問を抱きましたが、まさか分身体を作る能力まで持っていやがるとは。危うくこちらが殺られる所でした」

 

狂三「…私ひとり、ということは他に誰かが?」

 

 

 狂三の言葉に真那は「いいえ」と首を横に振る。

 

 

 

真那「…私も正直姿を直接見たワケではねーです。白い棘みたいなものが突然足下から生えてきて、《ナイトメア》の分身体を一瞬にして殲滅してみせやがりました」

 

 

 

 

 

颯斗「(白い棘が足下から…?)」

 

 真那の言葉に反応する。特徴と合致する技を扱う者に心当たりがあったからだ。

 

 

 

美夜『無事ですか颯斗』

 

 

 

 

  ーーどうやら本人から連絡が来たようだ。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

ーー狂三sideーー

 

 

 

ーーあり得ませんわ。

 

 

 

 わたくしは柄にもなく焦っていた。

 

 

 

 真那さんは強い。それは認めましょう。ですがわたくしの敵ではないですわ。

 いかにかの“DEM”の魔術師(ウィザード)の中でも指折りの実力者だとしてもわたくしにはかないませんわ。

 

 実力トップである魔術師(ウィザード)最強の彼女であれば話しは変わってきますが、増援はおそらく彼女ではないでしょう。少なくとも分身体からそのような報告は受けていない。いかに彼女といえども、長距離射撃は早々してこないでしょうし。

 

 

 

 

 

 ならば、いったい誰が…?

 

 

 

   ーー狂三side outーー

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

ーー颯斗sideーー

 

 

 

颯斗『やはりきみだったんだね、美夜』

 

美夜『はい。本来なら“AST"や“DEM”の者を助けることなどしないのですが、時崎狂三の姿がありましたので。更に索敵範囲を広げてみると、少し離れた位置にも時崎狂三の反応と颯斗の反応が。

 私が直接そちらに向かえれば良かったのですが、あまり大っぴらに姿を見せるわけにもいきませんでしたから』

 

 

颯斗『そう…ありがとう美夜。正直助かったよ。

 あと少し遅ければアレ(・・)になる所だったよ』

 

美夜『……い、いえ。私は当然のことをしたまでですっ。

 そ、それよりも。こちら側で転移の術式を組んであります。直ぐに撤退を』

 

颯斗『わかった。こちらでも閃光弾で錯乱させる。

タイミングを合わせて転移をお願い』

 

美夜『わかりました』

 

 

 美夜との念話を終えた僕は、ふたりに気付かれない程度に霊力(・・)を引き出し、魔法の発動準備を行う。

 

 

 少し離れた場所では互いに探るような目で見る時崎狂三と崇宮真那。

最初の内はこちらに執着していた狂三もさすがに崇宮に対しては隙を見せることはマズいと判断したのか、意識を僕から外していて気付いていない。崇宮に関しては元から興味も関心も無いのかこちらには見向きもしない。

 

 

 

颯斗「(今なら気付かれることも無い。仕掛けるなら今か……)」

 

 

         右手を握る。

 

 

 すると、時崎狂三と崇宮真那の丁度中心辺りにライトグリーンの色をした球体が現れた。

 

「「なんですのいったい!?/なんでいやがりますか!?」」

 

 突然の出来事に驚くふたり。

 

 だがもう遅い。

 

 

 

 

颯斗「クラールゲホイル」

 

 その一言と共に球体が四散し、辺り一帯を明るい緑色の光で埋め尽くす。

 

 

 

 そして光が収まった頃には、既に颯斗の姿はこの場には無かった。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

士道「なんで馬鹿正直に残ってやがんだよ……っ!」

 

 妹に愚痴りながらも走る速度を落とすことなく士道は、依然として動くことのない、琴里の位置を示すアイコンが表示される携帯を見ながらファミレスに向かって走っていた。

 

 しかし体力にも限界がある。ペース配分も考えずにここまで走ってきた士道の体力はもう枯渇寸前であった。身体中が悲鳴をあげ、本能が止まれと警告を発する。

 

 けれど止まらない。否、止まれない。

 

 

 何よりも大切な妹が己の危険を顧みず、兄を信じて待っている。だから士道は走り続けた。

琴里のもとへただひたすらに。

 

 

 

士道「……っ、なんだ、あれ……?」

 

 士道の視界に何かが映り込んだ。数はおそらく三つか四つ……空に人影のようなものが浮いている。いったん足を止め、もう一度よく確認しようと意識を向けようとしたその時ーー

 

 

 

士道「うわ……ッ!?」

 

 進行方向の街並みが、突如として眩い光に包まれ、凄まじい衝撃波が士道を襲う。

反射的に腕で顔を覆って耐えようとするも、風圧に耐えきれず後ろに吹き飛ばされてしまう。

 

 

士道「…ってぇ……! なんなんだいったい……」

 

 (かぶり)を振って立ち上がる士道。

 

 

 しかし目を開けてみると信じられない光景が広がっていた。

 眩い光に包まれ、それが止んだかと思ったら先ほどまで確かに存在していた街並みが跡形もなく消え去っていたのだから。

 

 

士道「な、なんだよ……なんだってんだよ、これは……ッ」

 

 ただ呆然と呟くことしかできない士道は辺りを見回しながら何やら金属の塊のようなものを見つけた。

 まるでその場所がこの街並みを更地に変えたと思わせるクレーターの中心部に、玉座を彷彿とさせる何かが存在していた。

 

 そしてその玉座の肘掛けに足をかけるようにして、見知らぬ少女がひとり、奇妙なドレスを纏って立っていた。

 

 

 

士道「あの子ーーなんであんなところに」

 

 危ない、と。少女に声をかけようとして気付いた。

 

 

?「貴様は、誰だ……?」

 

 少女もこちらに気付き、顔を向ける。

 

 

 その声、その顔ーー全てが美しかった。

 

 

 

 

 

 

 でも、それ以上にーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうしてか、士道の目には悲しく見えて仕方がなかった。

 

 

 



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名も無きプリンセス

毎度のことながらも文字数が少ないです。

あまり進みませんを


士道「ーー君、は……?」

 

 

?「……名、か」

 

 

 

 

 

 

 

?「ーーそんなものは、無い」

 

 悲しげな顔で、悲しげな声で少女は言った。

 

 

 少女と視線が交わる。その表情は、やはり、今にも泣き出しそうにも見えてしまう。

 

 

 理由はわからない。でも、見て見ぬフリなどできない。

 

 

 

士道「なぁ、どうしてそんな物騒なもの持ってるんだ……?」

 

 士道は名無しの少女に尋ねた。

 

 

?「どうして、か……そんなもの、決まっている」

 

 対して名無しの少女は考えるべくも無いと言わんばかりに士道の方に身体を向けて。

 

 

 

 

?「ーーお前たち(・・)を……殺す為だ」

 

 

 そしてその手に持つ大剣を、士道に向けて振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

士道「ーーって危ねぇッ!?」

 

 目の前に迫る衝撃波に慌てて横に身を投げることで回避した士道。

 

 

士道「いきなり何すんだよ!? 危ないじゃないか!」

 

?「……? いきなりとは可笑しなことを言うな?

 お前たち人間も、訳も理由も無く同じように攻撃してきたではないか」

 

 何を馬鹿なことを言っている、とでも言いたげな表情の少女はなおも士道に大剣を向ける。

 

 

士道「(……人間?まるで自分が人間じゃないみたいな言い方じゃないか……)

 違う…別に君を傷つけようとした訳じゃない。俺はただ妹が心配で探してた途中で君に会っただけなんだ。だから、君を傷つけようとか…殺そうとか、そんなことは考えてない……信じてくれ」

 

?「ーーーー何?」

 

 真剣な顔で答えた士道に思わず面食らってしまった少女。

だが何かを感じたのか、士道から視線を外して空に顔を向ける。少女が視線を向けた先に居たのは、先ほど遠目から見えた複数の人影が居た。心なしか先ほどより数が多いように見えるのは気のせいか。

 と、わりと見当違いのことを考えていた士道。

 

その複数の人影ーー奇妙な格好をした女性たちは、手に持った武器から、士道と少女に向けてミサイルらしきものを何のためらいも無く撃ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 ーー避けられない……ッ!?

 

 

 来る衝撃に対して目を瞑る士道。しかし何時まで経っても来ない衝撃に閉じていた瞼を開く。

 

 

士道「え…………?」

 呆然と、声を漏らす。

 

空から放たれたミサイル群が、見えない何かに掴まれたかのようにぴたりと止まった。その先には気怠げな表情でミサイル群に向けて手をかざす少女が。

 

 

 

?「……こんなものは無駄だと、何故学習しない」

 

ミサイル群に向けてかざしていた手を上にやり、グッと握る。ただそれだけの動作で、少女の目の前で静止していたミサイルが圧縮されるようにへしゃげ、小さな爆発と共に消滅していく。

 

 

 少女の一連の動作に、ミサイルを撃った人間たちは驚きこそすれ、ある程度は予想の範疇なのか攻撃を止めようとはせず、次々とミサイルを撃ち込んでくる。

 

 

?「ーーふん」

 少女は小さく息を吐く。その顔には悲しみと、微かな怯えが見えた。

 

 

 ミサイルを容易く止めたのを見て、この少女が、この場にいる誰よりも強大な力を有していることは、何も知らない士道でも理解できる。

 

 

 なのに……なんで………。

 

 

 

?「……消えろ…っ、消えろ…っ! 一切、合切……消えてしまえ……っ!」

 

 

 なんで、あんな顔をするのか。

 

 

 

 

 少女が剣を振るう度、衝撃波が辺りを襲い、斬撃が飛んでいく。

たまらず、上空を飛行していた人間たちは離脱していく。だが次の瞬間、別の方向から少女めがけて光線が放たれた。

 

 その光線も少女の周りの見えない何かに阻まれ掻き消された。

 

 

 

士道「……っ! 今度は何なんだ!?」

 

 光線が放たれた方角ーー自分の背後に何者かの気配を感じた士道は振り向いた。

だが振り向いた先に居た人物を見て士道は動揺から身体が硬直してしまう。

 

 

 先ほどまで空中を飛行していた人間たちと同じような、見慣れない機械を装着し、手にはゴルフバッグのような形状の武器を携えていた。

 

 

 

士道「鳶一……折紙………?」

 

 今朝、自分に接触してきた少女の名を呟く。

 

 

鳶一「五河士道………?」

 

 対する鳶一は、感情の起伏が少ないその顔に僅かに驚きを見せ、怪訝そうな声色で士道の名を呟く。

 

 



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