Hunter×tale (カルカルパッチョ)
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閑話 バレンタインの一日

本編だと思った?
残念!番外編でしたー!

いや、ホントにすまん。筆が進まなかったから出し忘れてたバレンタインのやつ投稿するわ。
ホワイトデーが始まるから一周回って新しいまである。



バレンタイン──

 

 

それは2月14日に行われるカップルが愛を祝う日。聖ウォレンティヌスに由来する記念日であり、キリスト教圏では大切な人に物を贈ることが習わしとなっている。

 

しかし、非キリスト教圏である日本では『女性が男性にチョコレートを贈る日』とされてきた。

 

チョコレートが贈られるのが基本ではある...が、中にはマカロンやキャラメルといったチョコ以外のものが贈られることもあり、特に──

 

「──マシュマロは口のなかで消えることから『あなたが嫌い』という意味がある。そういう訳でほらコレ、マシュマロだ。」

 

「嫌いでもなんでもいいからマシュマロじゃなくてチョコ寄越せ。」

 

「oh...それは予想外の反応だ。だが、さっきも言った通り、普通は女から男に渡すもんだぜ?」

 

「しらん、さっさと寄越せ。」

 

「問答無用だな...」

 

これが朝からキャラとサンズのあいだで行われたやり取りである。そう今日は2月14日、バレンタインデーである。

 

こっちの世界に来てから3回目のバレンタインデーではあるが、つい最近まで忙しかったのでバレンタインを祝うのは初めてである。

 

そんな日の朝、ガラガラと音を立てながら銀色に輝くワゴンが食卓に向かっていた。

 

ワゴンを押すのはホロウであり、珍しく早起きで上機嫌である。それを見て『また何か面倒事だ...』とサンズとキャラで心の声が被った。

 

憂鬱な気分で卓にむかうとそこにはクローシェ*1が被さった料理があった。

 

ひきつった笑みを浮かべながら椅子に座るキャラとサンズ。先ほども言った通り、キャラとサンズよりも早くホロウが起きるのは珍しい。

 

いつもなら、サンズとキャラが交代で朝、昼、夜の食事を作っている。もっとも、2人がいない時はカップ麺だったりするのだが、今回に限って手料理である。

 

料理の覆いをとると黒く固まった何かがあった。

 

横におかれたフォークでつつけば外側がボロボロと崩れ落ち、上にかかったソース(?)を見るとかすかに人の顔にみえる気がする。

 

「あー。えーと?なに、コレ?」

 

「よくぞ聞いてくれました!今日はバレンタインデーということで、張り切ってチョコケーキを作ってみたよ!」

 

いやちょっと待って欲しい。突っ込みどころが多すぎる。

 

まず、朝にチョコケーキ。これを聞いた10人中10人が「マジかよ...」と反応するほど朝にケーキはないと思う。

 

しかもケーキ単品。デザートとしてではなくあくまでメイン。いったいどんな精神状態をしているのだろう。

 

百歩譲ったとしてもチョコケーキ?この目の前の暗黒物質(ダークマター)がだろうか?おそらくどんなレシピでもその通りに作ればこれは生まれなかっただろう。

 

一番、問題なのは『これを食べなければいけない』ということである。

 

ちなみにいうとホロウは味音痴である。それも、マイナス方向に振り切った料理でも「うまい!」と食べ進められるレベルの。

 

そんな人が料理をすると何が起こるか...いや実際何が起こるかわからないのだ。

 

味見しようとも旨いか不味いか分からないのだ。どちらもあり得るが今回はまず間違いなく後者であろう。

 

しかし、食べないという選択肢はない。なぜならホロウがそのコマンドをバキバキに破壊するからである。MERCY(慈悲)なんてなかった。

 

震える腕を押さえつけ、ゆっくりとフォークを物体にむける。気持ちはさながら処刑台に立つ死刑囚である。

 

「ボ、ボクちょっとコレだけじゃ足らないし何か作ってくるよ!」

 

先に動いたのはキャラだ。

 

サラッと自分が作ってる間は妨害されない手段でありながら、作りおわった後はそれだけを食べて『食べれないのが残念』という雰囲気にできる。

 

コイツ、できる...!そう確信できるほど見事な策。しかしてそれは失敗に終わる。

 

「大丈夫だよ!おかわりならいっぱいあるから!」

 

その言葉に顔をむければ山盛りとなった暗黒物質。心なしかこの世の全てを呪うような怨嗟の声が聞こえてくる。

 

裏返りそうになる声を必死に抑え、そうなんだぁー(棒)と死んだ目返すキャラ。

 

策が始まる前に無効化する。あらかじめ予想していたのかどうか分からないが、文字通り死ぬほどの量はあるようだ。

 

「おっと、どうやら何かあたったっぽいな。ひじょーうに残念だがこのまま食べないのは勿体ないからオレの分はキャラにでもあげてくれ。」

 

次に動いたのはサンズ。

 

よくある腹痛からのトイレというコンボ、さらには時間稼ぎという目的ではなく食べるのを回避。そして食べない分はキャラへの嫌がらせに使うというムダのない計画。

 

「あ、うん分かったー!」

 

この返答に内心と現実で小さくガッツポーズをするサンズ。

 

しかし、あえて上げるとするなら一つだけ欠点が存在する。

 

サンズは逃げの手段としてよく使われる『腹痛』を選んだ。何でもよかったが、ただよく使われるという理由だけで選んだのだ。

 

「でもさ、サンズってお腹痛くなる理由ないよね?痛くなる場所ないし、なにより毒も効かないもんね?」

 

「あ、確かに!」

 

その弱点をキャラが指摘し、ホロウが納得する。楽をしようとするほど弱点は浮き彫りになる。

 

軽く選んだことで本来の効果が発揮されずに潰されてしまったのだ。どんな時でも油断とは怖いものである。

 

「───ッ!!」

 

ようやく自分の失態に気づき、どこかから汗がたれてくる。

 

「あれれー?可笑しいなぁ...じゃあ何でウソなんてついたのかなぁ?」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべたキャラが、さらに追い討ちにかかる。

 

「もしかして...()()()()()()、なんてことは──ないよね?」

 

核心をついた言葉に鋭い目線をむけるも、むけられたキャラ本人はどこ吹く風。それどころかむしろサンズを巻き込めたことで上機嫌なまである。

 

その場で立ち止まったままだったサンズはやがて覚悟を決め、静かに椅子に腰を下ろす。

 

少しの沈黙の間、アイコンタクトでホロウにバレないようにやり取りをする。足を引っ張りあった2人が何をしているか...

 

(ったく、で?どうすんだよ。アイツのことだから全部食べきらないと満足しねぇぞ。)

 

(だからといって1人に押しつけるのはよくないとおもうんだけどなぁ?)

 

(テメェは『ここはオレに任せて先に行け』的なことは言えねぇのかよ!)

 

(『ここはお前に任せた先に逝ってこい!』)

 

(ふざけんなテメェも道連れだ!)

 

お前らさては仲良いだろ。

 

この言葉を2人が聞けば「「どこがだ!」」と即座に答えるだろう。もちろんアイコンタクトの会話と同時に答えるところ(そういうところ)がだ。

 

そのあとも何度も迫り来る危機を回避しようと動くがその全てがホロウの言葉と動き一つで消え失せる。

 

出せる手も策も全部出しつくした。

 

しかしその全てが何一つ通用しない。

 

今までの敵の中で間違いなく最強。

 

第三者が見れば「何だこの茶番...」と呆れた目線と溜息混じりに言うことだろう。

 

しかしそれも当事者からすれば真剣で、どんな手をつかったとしても先回りしてくるのはたまったものではない。

 

まだ諦めきれないまだ死にたくないと願い、脳の力をフル活用して逃げ出すための考えを巡らせる。

 

「しかたないなぁ、ハイあーん」

 

しかし、現実は無情なり。

 

相手の事情などしったことかと死神の鎌は振り下ろされた。

 

黒い物体が刺さったフォークを口元へと差し向けられる。その矛先はキャラ。

 

サンズのケチャップ好きと同じくらいチョコが好きなキャラだが、目の前の物体は果たしてチョコと言えるものだろうか。

 

出来る事なら回避すべきもの。しかし、それが許されない状況でいったい何が出来るというのか。

 

覚悟を決める時間は短く、されど強く思う。

 

「あ、あーん...ん?ア─ン゙ン゙!!!!!」

 

最初に来たのは甘味。しかしそんなものはすぐに後からきたものに打ち消される。

 

苦味、酸味、塩味ときて追い討ちに渋みと辛み。最初の甘味に安心した瞬間に絶望へとつき落とす様は十分なほどに精神に傷をつける。

 

あらゆる味(それでも旨味だけがないのは狙っているからかもしれない)が口内を蹂躙し、理解できない刺激となって脳に伝わる。

 

その出来事は体の痙攣をひきおこし、それを理解しようとするのを脳が拒絶する。そして、防衛反応が働き、キャラは気絶する結果になった。

 

時間にして数秒。されど味わった苦痛は何倍にも引き伸ばされて感じた。

 

気絶するまでのあいだに見たホロウの顔は満面の笑みだったという。

 

なお、犠牲者は2人に増えたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

「ところでサンズ、チョコレートを贈る意味しってる?」

 

キャラが「本当のチョコケーキと言うものをたべさせてあげる!」と意気込み、デザートとして小さめのサイズのケーキを三等分して配った時に放った言葉。

 

すでに手をつけているホロウを横目に見ながら、サンズが答える。

 

「ん?いや、知らねぇな...『あなたのことが好き』とかじゃねぇのか?」

 

その回答に鼻で笑いながらもったいぶる様に次の言葉を放つ。

 

「違うね、正解は──」

 

 

 

 

 

「『あなたと同じ気持ち(ボクもキミが嫌い)』さ」

 

*1
においとかを封じ込める蓋みたいなもの。ホテルとか高級料理店とかで見るようなやつ




チョコレートを贈る意味が『あなたと同じ気持ち』と知ったホロウの反応。

「じゃあ、キャラと相思相愛ってこと!?」

「え、キモ」


なんならこのやり取りの方が書きたかったまである。
バレンタイン云々はwiki様より引用させて頂きました。


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プロローグ

嵌まったから書きます


一人の人間がいた。

 

その人間をモンスターは一目見るや否や襲いかかった

 

危ない、と声を出したけれど出なかった。

 

モンスターと人間の戦闘が始まった。

 

助けようとしても体は動かない。

 

雪も風もモンスターも人間も全員体をすり抜けていく。

 

人間は一方的に攻撃されてもやり返さなかった。

 

それどころか会話で解決しようとしてた

 

目には信念(愛好)が灯っていた

 

誰も殺さず、けれど周りは襲ってくる

 

 

時には心優しいヤギのモンスター

 

 

時にはフレンドリーな面白いスケルトン

 

 

時にはロイヤルガードのような女騎士

 

 

時には大人気のスーパースター

 

 

そしてモンスターの王

 

 

色んなモンスターと戦っ(会話し)

 

モンスターを人間の世界に招いた。皆笑って───

 

 

視界が暗転する。

 

一人の人間がいた

 

その人間をモンスターは見るや否や襲いかかった

 

今度は声を上げなかった

 

手に持っていた木の棒で殴り殺した

 

何度も何度も動かなくなるまで殺した

 

その目には信念(憎悪)が灯っていた

 

 

時には心─しい───モンスター

 

殺した

 

時には──────な─白いスケルトン

 

殺した

 

時には─イヤ───────な女騎士

 

殺した

 

時には─人気の──パー─ター

 

殺した

 

そしてかつて──だったもの

 

殺した

 

手に握るのは赤く光を放つ刃物

 

殺してコロシテころして殺してころしてコロシテ殺してコロシテころして殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もいない世界で

 

笑って藁って嘲って嗤って笑って嗤って藁って嘲って笑って嘲って嗤って笑って藁って嗤って笑って藁って嗤って笑って藁って嘲って嗤って笑って嗤って笑って藁って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が合った。

 

 

 

ノイズが走り画面が切り替わる。

 

『*あぁくそ、ここまでか』

 

光も通さない真っ暗な室内。何も見えない世界で悪態をつく一人の姿があった。

  

否、一()と言うのは間違いである。

 

青いパーカーに白のタンクトップを身に纏っていてフードをしているが目が金色に輝いているのがフードの隙間から見える。顔は色白といえばやはり人に聞こえるだろう。色白といっても白骨化した姿ではあるが。

 

『*驚いたろ?オレやアイツの行動ですら

  “手のひら(シナリオ)”の上なんだぜ 』

 

誰もいない室内に響くのは呟く声とペタペタというスリッパの音。

 

『*滑稽だよな。自分で考えて動いても

  いつの間にか強制的に戻されてる 』

 

誰もいないはずなのである。それでも声が返ってこないのが不思議かのように振る舞い続ける。

 

『*アンタもそう思うよな?』

 

その目は黄色くまっすぐな瞳はフードに遮られることなく誰もいないはずの空間を見つめていた

 




HUNTER×HUNTERもUndertaleもにわかです。


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ハンター試験編
1話


調子に乗って次の日投稿


「んぅ...」

 

大きく揺れた船内で目を覚ます。嵐に見舞われ宴をしていて騒がしかったが、今では9割以上が船酔いで静かになっていた

 

(変な夢を見たなぁ)

 

警戒しながらも寝たはずが思っていたより深く眠っていたようだ。

 

自分の知らない人たち、のはずなのに何年も苦楽を共にしたような感覚。いまいち分からず首をかしげる

 

周りを見渡すと特に変わない様子なのは3人で元気の良さそうな黒髪ツンツン、男性なのか女性なのか分からない顔立ちの人、そしてスーツの男性だけだった。

 

先ほどの黒髪ツンツンは看病、美形はハンモックで睡眠、スーツの男性は雑誌を読んでいる。

 

嵐のせいで周りには汚物が広がっていたため間違っても転んで服に付かないように座っていた。

 

周りがこんな有り様なら少しぐらい警戒を切っても大丈夫だろう。...もう一回くらい眠ろうかな

 

「大丈夫?」

 

「ひゃあ!」

 

少し休もうとウトウトしていたら急に話しかけられたので変な声が出てしまった。休んでいた人たちが一斉にこっちを向く。こっち見ないでぇ...

 

「船酔いとかしてない?一応水持ってきたんだけど」

 

「だ...大丈夫。ありがとう水貰うね」

 

どうやら座って下を向いて動かなかったため

船酔いしたと勘違いされて黒髪の少年に声をかけたらしい。

 

顔を真っ赤にしながら乾いた喉に水を流し込む。さっき驚いたのは単純に声をかけられるとは思ってなかったからである。だって普通こんな格好してる人に声かけないでしょ。

 

そんなことを考えていると操舵室の扉が開いて船長らしき人物と船員が出てきた。

 

「今年の客はどうしてる」

 

「例年通りほとんど全滅です」

 

「ケッこれで資格とろうってんだから笑わせてくれるぜ」

 

例年通りってことは毎年こんな感じなのか、と船の心配を私がしていると船長は徐に指を指して数え始めた

 

「ひぃ..ふぅ...みぃ...4人か。ちったあ出来るようだな」

 

私と同じように見定めていたのだろう。少年も看病が終わったのか外にでて船長が後を追う。

 

少しした後船長と少年は操舵室に入り船内アナウンスが響いた。

 

「これからさっきの倍以上の嵐に突っ込む。

命が惜しけりゃ救命ボートに乗って帰りな」

 

船長の声に我先にと救命ボートに乗り込む。残ったのは私を含めた4人。

 

「結局残ったのは4人だけか。名を聞こう」

 

「俺はゴン!」

「俺はレオリオだ」

「私はクラピカ」

「...リアラです」

 

ツンツン男子、スーツの男性、きれいな男性私の順で名乗っていく

 

「お前らのハンター志望理由は?」

 

「おい、試験官でも無いのに偉そうに聞くもんじゃねえぜ」

 

確かに試験官では無いだろうけどハンター試験には関わってそうだなぁ。答えておくのが吉と見た。

 

「おめぇらはどうする?」

 

「俺は父さんの仕事がどんなのかやってみたくって」

 

ゴンのお父さんもハンターだったのか。仕事のとき何回かハンターと会ったりしたからその中にいたりしないかな

 

「私は仕事上で便利になるので」

 

「おいガキども勝手に答えてんじゃねーよ」

 

ハンターライセンスがあればハッカーハンターによる情報を買うことが出来るようになる。それは普通には入手出来ないので暗殺者などを調べるのに役に立つ。

 

「その仕事ってーのは?」

 

「フリーの護衛やってますよ。ここで会ったのも何かのご縁ですし依頼でしたら二割引きで受けますよ~」

 

「お前みたいなガキがか?」

 

そんなことを言うレオリオにイラッときた。おそらく体格から子供であると判断したんだろう。実際当たっているが「子供だから」や「子供なのに」は私の嫌いな言葉top5に入るのである。

 

しかぁーしここでは感情は表に出さないのだ!体は子供でも心は()()だからね。と胸を張る

 

「私もレオリオに同感だ」

 

「レオリオ『さん』だ。人を呼び捨てにしてんじゃねーよ」

 

「私の志望理由は内面に関わり過ぎているため初対面の相手には話すことは出来ない」

 

私以外船長が試験に関わっていることに気づいてないみたいだ。助言しようとしたところ船長が口を開いた。

 

「今年の通過者は2人だけか。オイ!こっちの2人は不合格で連絡しとけ!」

 

「「は!?」」

 

「まだわかんねぇのか?ハンターになりてぇ奴らは星の数ほどいる。それを俺達みたいなやつが雇われてふるいにかけるんだよ。この船を降りた奴らは既に不合格として連絡してあるから他から行っても門前払いっつー事だ。」

 

よかったぁ、ここまで言っておいて間違ってたら笑えないしね。

 

「...で?どうするんだ。話すのか話さないのか?」

 

船長の言葉に少し思案の表情を浮かべた後、先に口を開いたのはクラピカだった。

 

「...私はクルタ族の生き残りだ。4年前に同胞を皆殺しにした盗賊グループの“幻影旅団”を捕まえるためにハンターを志望している。」

 

「ほぉ賞金首狩りか、しかし幻影旅団はA級首だぜ?無駄死にすることになるぞ」

 

「覚悟の上だ」

 

クルタ族って言えば確か興奮すると目の色が赤くなる“緋の目”を持っている一族か。なんか親近感を覚えるなぁ。私の目も普段は黄色だけど頑張れば青くさせる事ができる。でもせめて念能力覚えないと文字通り瞬殺されるだろう。かといって蜘蛛と敵対するのもなぁ

 

そんなことを考えているとレオリオさんの番になり船長が急かす。

 

「俺か?ご機嫌伺いなんてまっぴら御免だから正直に言うぜ。金だ!金さえあれば何でも手に入るからな!でかい家!良い車!上手い酒!」

 

「品性は金では買えないよレオリオ」

 

レオリオさんの額に青筋が浮かぶ。私のこと子供とか言っておいてこの程度で切れるとかウケルー

 

「...表に出なクラピカ。うす汚ねぇクルタ族とかの血を絶やしてやるよ。」

 

「!...取り消せレオリオ」

 

「『レオリオさん』だ。ついてこい」

 

「望むところだ」

 

今甲板に出ると嵐の風に煽られるのでは?って思ったけど仮にもハンター試験を受けようとしてるんだから問題ないか。さっき船酔いしてた人?知らない子ですねぇ

 

「オイまだ話は終わってねぇぞ!」

 

「船長!想定してた以上に風が強いです!」

 

「チッ今行く!」

 

船長まで外にでて揺れる船内でゴンと二人。ついさっき名前知った程度だから何を話せばいいか分からず気まずい雰囲気になる。

 

「俺達も手伝いにいこうよ」

 

「あ、うん分かったよ」

 

外へと繋がる扉を開けた瞬間、強風が吹く

 

「う...うわあぁぁぁ!!」

 

「「カッツォ!!」」

 

その強風で外れた船の部品が船員にぶつかり船の外に投げ出される。クラピカとレオリオは喧嘩をやめ船員を助けようと手を伸ばす。...が一歩届かずその手は空を切る。するとゴンが船から身を投げ、ゴンが船員を掴み、レオリオ達がゴンの足を掴む。

 

「うおぉぉぉ!!」

 

しかしこのままでは4人とも船から落ちてしまう。私は服の下に鎖鎌を念能力で具現化させ、鎖をレオリオに巻き付ける

 

「手、離さないでよ...ね!」

 

海に落ちる前に引っ張り、救出。ゴンが鼻を打ったらしく簡単な治療を終えると嵐は過ぎていた。

 

「アホかお前は!俺達が掴んで無かったら今頃オメェまで海の藻屑だったんだぞ!?」

 

「全く...無謀極まりない」

 

レオリオの声が聞こえた方を向くとゴンがクラピカとレオリオに捕まっていた。私もそこに駆け寄っていく

 

「でも掴んでくれたじゃん」

 

ゴンがそう言うと2人は驚いた表情のまま固まった。そして少し唸ったあと気まずい雰囲気になるが口を開いたのはクラピカだった。

 

「非礼を詫びよう。すまなかったなレオリオさん」

 

「なんだよ水くせぇな。レオリオでいいよ、クラピカ。俺の方も全面的に撤回するぜ」

 

「はっはっは!今の俺は最高に気分が良い。お前ら4人とも責任を持って港に送り届けてやるよ!」

 

船長の声が響き、最初の試験は終わったのだと確信する。ゴンは船長に呼ばれ、操舵室へ行き、私たちは甲板の上で談笑していた

 

「そう言やリアラ...だったか。なんでそんな布なんて被ってんだ?」

 

「あーこれ?特に理由ないけど強いて言うなら...顔バレの防止かなぁ」

 

私はフリーの護衛にしては有名な方だから顔写真とか情報屋に売ればいくらかにはなると思う。...これを言ったらレオリオ辺りが撮ってきそうなので言わないが

 

「顔バレを防止するほど有名なやつには見えないけどな」

 

「失礼な!これでも巷じゃ『冥界の守護者』って呼ばれて...あヤバ」

 

『冥界の守護者』とはここ数年程で有名になった護衛を専門とする人である。身軽な動きで敵を翻弄、鎖鎌で武器を壊したり縛り上げたりする。

 

暗殺者であろうが殺さず捕らえ、身長が低いことから老人であるとか、子供だとか色んな憶測が飛び交う中で勝手に付けられた二つ名である。

 

もちろんその正体はリアラだが、いつも黒い布を被っているので顔が割れてないのが現状である

 

「はあ?マジかよ」

 

「いや待てレオリオ、『冥界の守護者』は武器で鎖鎌をよく使うらしい。そして私たちが海に落ちそうになった時に見せた物も鎖鎌で更には彼女の体捌きは間違いなく本物だ。」

 

「...確かにそうだな。」

 

アッハハー察しがいいね。でもその察しの良さはここで発揮して欲しくなかったかな!

 

「で、リアラ?それ取ってくれない?」

 

「んぁ?あぁうん。いいよー」

 

二人から「軽っ!」と言われたが別にバラさなければ見せても良いと思ってたし。

 

代わりに「情報屋にでも売ったりしたら...分かるよね?」とお話()したら何度も首を縦に降ってくれた

 

黒い布についているフードを頭から外し、顔を見せる。現れたのは着ている布と同じほど暗い黒に少し青みがかったの髪色、髪型はショートで目は黄色に輝いている。

 

「おい野郎共!そろそろドーレ港だ。降りる準備しとけよ!」

 

「ほら、そろそろ準備しろってさ」

 

いい加減そうまじまじと顔を見つめられるのも恥ずかしくなってきたので顔が赤くなる前にフードをかぶりなこした。

 

私の顔をまじまじと見ていた二人は船長の声で現実へ戻ってきたようで私に謝ってから身支度を始めた。

 

まだハンター試験の選定は終わらない

 




念能力について

強化系、変化系、放出系、具現化系、操作系、特質系の六つからなるHUNTER×HUNTERの特別な技。

念に目覚めるには
①瞑想などで体のオーラを感じる
②念を纏った攻撃を受ける
のどちらかでオリ主は①で目覚めた。

オーラ=生命エネルギーであり、念とはそれを操ることなのでオーラが枯渇すると動けなくなったりする。習得すれば誰でも使えるようになる

①は長い時間がかかるが“纏”を最初から使えるので安全。②はすぐに習得できるが“纏”を使えないとぶっ倒れるので危険な上に敵意がある攻撃だと最悪死ぬ

念能力の基本(四大行)
“纏(てん)”
常に流れ続けるオーラを自分の周りに留めること。これが出来ると普通は垂れ流しなオーラを必要以上に使わなくて済むので寿命が長くなったり、殺気を乗せたオーラを防げたりする。

“絶(ぜつ)”
体外に出るオーラをゼロにすること。気配を消せたりオーラの回復が速くなったりするが、防御も出来ないのでこの状態で攻撃されると“纏”よりダメージを受ける。

“錬(れん)”
オーラを練っていつも以上のオーラを出すこと。攻撃力も防御力も上がるが、その分速く消耗することになるので疲れる。覚えたてだと3分も持たないが限界までやり続けることで時間が伸びる

“発(はつ)”
系統別に能力を作ること。念能力の集大成で強力なものが多く、これがあるから実力に差があっても勝敗は分からない。

メモリ
念能力を作る上での容量的なもの。
シンプルなほどメモリの消費が少なく、複雑なほど消費が激しい。

制約と誓約
制約は自分の念に縛りを課したりすること。破ると念能力が発動しなかったり、効果が弱くなったりする。縛りが難しいほど効果が上がったりメモリの消費が抑えられたりする。

誓約は破った時の罰を作ること。自分自身を犠牲にするので制約より効果が高い。罰が大きいほど効果が上がったりメモリの消費が抑えられたりする。


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2話

二話目やぞ


 

ドーレ港に到着し船を降りた私たちは船長にもらったアドバイスで『山の上の一本杉』を目指していた。

 

「ん?ちょっと待て」

 

「どうしたレオリオ。置いていくぞ」

 

「いや待てって。会場のあるザバン地区はあの山の反対方向だぜ?下手したら無駄足になるさ」

 

レオリオが立ち止まり、近くの掲示板をみる。そこには周辺の地図が書かれてあり、確かにザバン地区は真逆でつい船長がボケたのかと思うくらいだ。

 

「俺は取り敢えず行ってみるかな。きっと何か意味があって言ったんだよ!」

 

「ゴンは人を疑うことを覚えた方がいいぜ。俺はバスで行くからよ」

 

...確かにゴンは人を疑うってことをしないよね。純粋無垢っていうか単純一途っていうか

 

「私もゴンについて行こっと。ゴンの勘はよく当たりそうだしね」

 

船で話してる時にクジラ島から来たって言ってるのを聞いた。あそこは自然が豊かでいろんな動物たちと会えるけどその分危険も多い。そんなところで育ったのだから危機察知能力も低くはないだろう。

 

ゴンの後ろを追いかけ隣につくとすぐにクラピカも来た。そこに5分ほどたった後レオリオが走ってくる

 

「ワハハハ!お前らだけじゃ寂しいだろうから仕方なく俺も付き合ってやるぜ!」

 

そう言って隣に並び汗をにじませる。大方、バスはダミーだったか今日だけ運行停止していたのだろう。それに気づいて来たってかんじかな。もちろんあえて触れないようにしておこう

 

そのまま一本杉に向かって歩いていくとボロボロの家が建ち並んでいてカラスが鳴く音がよく聞こえるくらい静かだ。

 

「薄っ気味悪いところだな。人っ子一人も見当たらねぇぜ」

 

「でも...人はいっぱいいるよね」

 

「うむ。衣擦れの音や息づかいがそこら中から聞こえてくるな。油断はするなよ」

 

うーん確かに視線を感じる。敵対じゃなくて観察見たいで嫌な視線だけど

 

少し話していると周りに人が増え始めた。気づいてはいたけど敵意は無かったから放っておいたら囲まれてた

 

「ドキドキ...」

 

(((???)))

 

「ドキドキ二択クーイズ!!」パチパチパチ

 

急に出てきた占い師みたいなお婆さんが声を張り上げて言い、マ●オのムーチョみたいな仮面を被った人たちが拍手する。

 

どうやら、これもハンター試験の前座で一問だけクイズを出すから1か2で答えるというもの。制限時間は5秒で曖昧な返事は不正解とするらしい

 

「なおあんたらは四人で一問とする」

 

「オイ待てよ。つまりこいつが間違えたら俺まで失格になるってことだろ」

 

レオリオがクラピカを指差して言うが確かにそうだ。でも逆に考えるとこの四人の内一人でも分かっていれば他三人も通してくれるのだから悪くはない。ゴンも同じことを考えていたらしく喧嘩していたクラピカとレオリオに指摘していた。

 

そんな中後ろから足音が聞こえてくる。気配からしても今ここで戦う気はないようだ。悪意の臭いはプンプンするが...まぁここを通りたい人なら譲った方が問題を知れて万々歳だ

 

「オイオイやらねえんなら退いてくれよ。俺が先にやるからよ」

 

その男は道場着の袖を破ったような格好で話しかけてきた。何が良くてあんな格好出来るのか。ファッションセンスを疑うわ(自分は棚上げ)

 

どうやら私たちと船長との会話を聞いていたらしく一本杉を目指すつもりらしい。

 

レオリオは皆と話し合い、先に通すことにしたらしい。何を問うのか何の試験なのかが分かればやりやすいと私と同意見だ

 

「では問題、

『母親と彼女が盗賊にさらわれた!2人の内一人しか助けられない。どちらを助ける?』①母親②彼女」

 

なるほど言うなれば究極の選択ってやつか。答えるなら1か2どちらかでないといけない。取り敢えず私だったら答える方は決まった。あとはゴンたち次第だ

 

ふと周りを見るとレオリオは怒り心頭、クラピカとゴンは唸り考え込んでいる。

 

「...①だ。」

 

道場着姿の男は少し悩んだあとすぐに答える。うん!クソ認定入りまーす。まず、こいつに言いたいことは2つ。

 

一つ目は現場を想定して質問していないところ。制限時間が5秒というのもあるがそれでも答えるのが早すぎる。まだカウントダウンも始まったばかりの時に言っている。

 

二つ目は試験官がお婆さんということから答えを出していること。どうせ(母親と答えた方が好みだろう)とか考えているのだろう。表情で分かる

 

「...理由は?」

 

「母親はこの世に一人だろう?彼女はまた作れば良い」

 

理由もクソ!つまり言い換えれば彼女は替えがきくってことを言いたいのね。しばきまわすぞ

 

お婆さんと仮面の人たちが話し合う。そして結果が出たのかこちらに振り返る

 

「...通りな」

 

「じゃお先に」

 

男が手を振り町を抜けるため道を通る。それを見ていたレオリオが激昂する。

 

「ふざけんじゃねぇぞ!!こんなもの人によって答えが変わるじゃねえか!もういい俺は違うルートから行くぜ」

 

「もう遅い。止めるなら不合格で通達させてもらうよ」

 

「ぐっ...」

 

来た道を戻るように進む足が止まる。流石にハンター試験不合格にはなりたくないようだ

 

「!...レオリオ!」

 

「なんだよ」

 

おっクラピカも気がついたかな?答えをレオリオに教えようとしてるけど自分で辿り着かないと意味ないんじゃ...

 

「ちょっと待ちな。これから先は余計な発言は即失格とする。①クイズを受ける②受けない」

 

「①だ!」

 

案の定ダメだったっぽい。お婆さんもクラピカが気づいたことに気づいたらしく無駄な発言を封じた。

 

「では問題

『弟と親友がマフィアに誘拐され、一人しか取り戻せない』

①弟②親友どちらを取り戻す?」

 

「5...」

 

ブチッとレオリオから何かが切れる音が聞こえたような気がした

 

「4...」

 

レオリオが近くの木の棒が立て掛けられている壁に向かって歩いていく。

 

「3...」

 

木の棒を手に取りビュンと風切り音が聞こえるように振る。

 

「2...1...」

 

辺りから音が消える

 

「ぶー時間切れ~」

 

結局誰も答えず時間切れになる。するとすぐにレオリオが飛び出しお婆さんに殴りかかる...がクラピカが間に入り攻撃を防ぐ。そしてリアラが鎖を具現化し、拘束する。

 

「なぜ止める!」

 

「落ち着けレオリオ!」

 

「いーや、そのババアの素っ首を手土産に会場に乗り込むぜ。ハンター!?こんな腐れた商売なんかなくなった方が世のためだぜ!」

 

「せっかくの合格を棒にふる気か?」

 

「...何?」

 

クラピカの言葉でようやく止まる。...正直思ってる以上に力が強くてビックリしたけど。

 

そう、この問題の答えは沈黙。①か②しか答えられないのだから答えなくてもいい。レオリオの言う通り答えなんて千差万別で答えがないのだから。

 

クラピカは先に進んだ男の悲鳴で正しい道じゃないことに気づいたらしい。...化け物じゃん、私も本当に微かしか聞こえなかったよ?

 

「その通り。本当の道はこっちだよ」

 

仮面を被った人の一人が家の引き戸を開ける。すると奥に繋がっているであろう道が現れる。

 

「一本道で2時間も歩けば頂上に着くさ。さあ行きな」

 

「バアさん...すまなかったな」

 

「何を謝る事がある。お前さんみたいな奴に会いたくてやってる仕事さ。良いハンターになりな」

 

「ああ...」

 

レオリオさんはイイ人だよね。船長に理由を訪ねられたとき金の重要性は言ってたけど何に使うつもりかは言ってない。家やら酒やらは例を言っただけである

 

「ゴン、そろそろ行くよ?」

 

道が出たのに唸ったまま動かないゴンに声をかける。

 

「う~んダメだ!やっぱり答えがでないや」

 

その言葉に3人ともキョトンとした後笑いだした。ゴンもクラピカと同じく声が聞こえて黙ってたのかとおもってた。

 

「何だよ、まだ考えてたのかよ。もういいんだぜ?」

 

「え、なんで?」

 

「何でって、もうクイズは終わってんだぜ」

 

「それは分かってるよ」

 

あぁそういう事か。あの男とはやっぱり違うな。

 

「でもさ本当に二人の内一人しか助けられなかったら...どうするの?」

 

それで悩んでたのか。ゴンは間違いなく良いハンターになるよ。そして私の答えも決まってる

 

「それの答えは『そうならないようにする』だよ」

 

「だからそうなったらどうするって...」

 

「さっきの質問だったら②だったよ」

 

即答したリアラの解答に驚いた後レオリオが怒り、胸ぐらを掴む。

 

「てめぇ...!」

 

「言っておくけどこの答えは変わらない。もう解答した後だ」

 

その言葉で更に怒りに火が着いたのか殴ろうとする...がリアラが片手で受け止める。

 

「もう戻らないんだよ。見捨てしまった弟も罪の重さに耐えかねて自殺した親友も」

 

あの頃を思い出して手に力が入る。自分の力不足で大切な人を二人も失った

 

「だから力が要るんだ。どんな人でも全て守れるような力が!」

 

レオリオの右手がミシッと音を立てる。そこで力を緩め手を離す。

 

「人はいつか死ぬ。誰が何をしたってそれだけは変わらない。だからせめて豊かに死なせたい。そのための力がまだ足らない」

 

「私が少数を殺すことで消える多数が生き続けるなら喜んで殺そう。護衛も暗殺も結局は命の取捨選択なんだよ」

 

その言葉に圧倒されたのか誰も声を出さない。...またやりすぎたな。感情的になりやすいのは師匠にいわれてたのに

 



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3話

3話目だぁ


一本道で二時間ほどで着くと言われた道をかれこれ4時間歩いている。歩き始めの一時間は気まずかったが、なんとか雰囲気を戻し今となっては昔ばなしを言い合っているくらいだ。

 

そんな楽しい時間もいつかは終わる。

 

「ねぇあれって...」

 

ゴンが指を指した方向を見ると電気がついてなく、外が夜であることもありより一層不気味さを醸し出していた。ふと、お婆さんが言っていたことを思い浮かべる。

 

『一本杉の下の一軒家に住んでる夫婦はナビゲーターをやってるんだ。そいつらのお眼鏡に叶えば会場まで連れていってくれるだろうさ』

 

時計などを持っていないため分からないがクイズが終わったときは夕方だった。感覚で4時間でこの時期だと9時...いや、もう少し経っているだろう。もし、ナビゲーターさんが寝ていたりしたら明日になるのだろうか

 

「ふぅ、やーっと着いたぜ。」

 

「静かだな。他の受験者はいないのか?」

 

「そもそも辿り着けてないんじゃない?私たちも船長のアドバイスが無かったらこっちに行ってたし」

 

「それもそうか。」

 

家に近づくと同時に私は“円”を使う。中にいるのは...3、家の裏に1かな。大体把握できたのでオーラを戻す。ここに来る途中、魔獣注意の看板があったがこの3人なら簡単に追い払われるだろう。

 

「邪魔するぜー...!」

 

ノックをしても応答が無かったので入り口らしきところからレオリオが先行して入ると体長約2mはあるであろう魔獣が荒れた室内で女性を抱え佇んでいた。

 

「キールキルキルキルキル...」

 

「「「魔獣!」」」

 

臨戦態勢を取ると魔獣は三人を押し退け外に飛び出して行った。

 

「つ...妻を、助け...」

 

「ゴンとクラピカは行って!私とレオリオは怪我人を!」

 

「頼んだぞ!」

 

「おう、任せとけ」

 

ゴンの後を追いクラピカが外に出たあと、レオリオはケースの中から包帯、消毒液、ガーゼを取り出し怪我をしていた男に応急処置を施す。素早くそして丁寧に行われその手際の良さには目を見張るものがあった。師匠も見習って欲しい

 

師匠の手当の杜撰さはさておき少し気になったことについて考える。レオリオは

 

「なぁ、リアラは何であいつを追わなかったんだ?」

 

「あいつ?あぁ凶狸狐っていう魔獣のことね。一匹だけじゃなかったからレオリオが襲われると面倒で。護衛は私の本職だよ」

 

本当は本職の過程が護衛ってだけだけどね。

 

「それよりもそっちの人に聞きたいことがあるんだよねぇ~」

 

「妻を助けていただけるならいくらでも...」

 

「じゃあ質問するよ?本物のナビゲーターはどこ」

 

手当が終わった男ではなくレオリオが呆れたように質問に答える

 

「オイオイ、なに言ってんだ。今お前が質問してる相手がそうだろうが。あの人とこの人の夫婦が...」

 

「いや違うよ?二人は夫婦じゃないよ。女の人の方は刺青いれてたでしょ」

 

あれ、生涯独身を誓うやつなんだよ。と付け加えるとレオリオは驚いた顔をして私を見てきた。

 

それは...なに、魔獣が外に出るまでの一瞬で反応出来たことに驚いてるの?それともそんな頭良いように見えないって顔なの?後者なら怒るよ?

 

ふと男の方に視線を向けると、真剣な顔をして雰囲気が変わる。レオリオも気づいたのか男と向き合う

 

「いかにも、わた「兄ちゃーん集合だってさ!そこの二人も一緒に!」...」

 

絶妙なタイミングで男の言葉を遮り、聞こえてきたのは魔獣に捕まった女の声。ここまでばっちりだと見計らったとしか思えない。

 

一瞬の静寂の後、何事も無かったように「さぁ行きましょうか」と笑顔で対応する男を不憫に思う。

 

外に出るとすでにクラピカとゴンが待っていた...二匹の凶狸狐と共に。

 

コソッ「あいつらで話し合い始めたけどそっちで何かあったの?」

 

コソコソ「それが分からないんだ。急に笑いだして...」

 

コソソッ「私もサッパリだ。あの女性と夫婦ではないことは見抜いたのだが...それだけだ」

 

うーん余計に分からん。まぁ男女がナビゲーターじゃなくて凶狸狐が2匹の時点でそういうことなんだろうけど...

 

「ゴン殿、あなたが殴ったのはどちらですか?」

 

なんだそれ。某泉の精霊みたいなこと言い始めたんだけど。て言うかさすがのゴンにでもそっくりな凶狸狐を見分けるなんて...出来ないよね?ちょっと不安になってきたぞぉ!

 

「え?そんなのこっちに決まってるじゃん」

 

断言した!これで不合格とか嫌なんだけど!

※自分が見分けつかないのを棚に上げている

 

「ふーむ、やっぱり分かってるみたいだね」

 

「何年ぶりかねェうちら夫婦を見分けた人間は...」

 

「「嬉しいねェ」」

 

合ってるんだ...私ゴンが怖いよ。よく言うけど(観察)眼が良い奴ほど上達が早いって。それが本当なら私なんてすぐに追い抜かれるんじゃないか

 

いつの間にか暗い感じが出ていたのか心配されたが笑って返事をした。すると凶狸狐たちが話を切り出す

 

「さて、君たちもお察しの通り我々夫婦がナビゲーターだ」

 

「結果はもちろん合格だ。4人とも試験会場に案内しよう」

 

男女も凶狸狐だったようで腕を広げればコウモリのように私たちと手を繋いで飛び立った

 

あ、クラピカに目のこと言うの忘れてたわ。ちょうど空中散歩で暇だし話題の一つにでもなればいいなぁ

 

「クラピカってクルタ族なんだよね?」

 

「あぁそうだが...それがどうした」

 

「いやぁ目の色が変わるって親近感沸くなーなんて思って...ね!」

 

タイミングを見計らい意図的に目を蒼く染める。私はこの目のことを『海の目』なんて呼んでるけどこれをするとね、バカみたいに体力使うんだ!念との関係は追々言うつもりだよ~

 

フッフッフ驚いてる驚いてる、まあだから何だって言われると何だろうね

 

「私の一族が──とかじゃなくて私だけの特異体質だけどね。似た人がいてよかったー」

 

「フム、確かにどの文献でもクルタ族以外目の色が変わるのは聞いたことが無いな」

 

「クラピカって色んなこと知ってるよね。私は気にかけてない人はすぐに忘れるからなぁ...」

 

眉をひそめてそう言うと3人が同時に笑いだした。

 

「えっ何!?なんか変なこと言った?私」

 

「いやいや、むしろ普通だったからかな。」

 

「『冥界の守護者』って呼ばれてて雲の上の存在みたいだったから同じ人間なんだって実感したのさ」

 

どうやら私を友人としてみてくれるようだ。それが嬉しくて、同時に悲しくて、涙が込み上げたが笑い飛ばした。

 

それぞれの思い出話をして束の間の空中散歩を楽しんだ4人だった。

 




今回で出た“円”などの応用技について

“円”
自身を中心にしてオーラを広げること。オーラに入った人や動きの探知が出来る。念能力の制約と誓約に組み合わされることがある。

“周”
物にオーラを纏わせること。切れ味が増したり、強度が上がったりする。

“隠”
オーラを見えなくすること。具現化した武器などに使うと透明な武器になる。

“凝”
体全体のオーラを一部に集めること。一部以外のオーラが薄くなる。目に“凝”をすると“隠”で隠されたオーラが見えるようになる。(熟練度によって見えないこともある)

“堅”
“纏”と“練”の応用技。増やしたオーラを留めることで功防力を上げる。

“硬”
体全体のオーラを一部に集めること。“凝”とは違い一部以外は“絶”の状態になる。代わりに“凝”より功防力が高い

“流”
功防力を変化させること。“凝”や“硬”より細かい調節をする技能。これを素早く行うことが戦闘の勝敗を分ける

功防力とは
そのまんま攻撃力と防御力を合わせたやつ


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4話

「ここから先は俺だけで案内するよ」

 

陸地につくと(ゴンに聞いたところ)凶狸狐の旦那さんの方が前に出て砂漠辺りに住んでる民族みたいな格好の人に化けた。

 

あれって毛皮が服にも化けてるのか、化けた時に出た煙の中で早着替えしてるのか分からないな。向かう途中で聞いてみたら企業秘密って言われちゃった。

 

この議論が思ってた以上に盛り上がり、気付いた時はナビさんに「そろそろ着くよ」と言われたときだった

 

「ツバシ町2-5-10は向こうの建物だね」

 

そう言いながら指差した所には荘厳な建物...の向かいにある定食屋であった。

 

いやもうなんと言うか中に入っても完全に定食屋。関係ない人もいるし。ナビさんが言うにはそう思えないからこそ良いらしい。

 

おっと一般客からも出来るだけ目立たない用にフードだけでも外しておかないとね。

 

「へいいらっしゃ~い。ご注文は?」

 

「ステーキ定食」

 

野菜を炒めてる(おそらく)店主の顔がピクッと反応を見せしっかりこちらを見据える。

 

「...焼き方は?」

 

「弱火でじっくり」

 

「あいよー。お客さん奥の席へどうぞ!」

 

店員に連れられ奥の扉を開くと人数分のステーキ定食があった。ナビさんが帰り際にダイヤルを回すとエレベーターのように部屋ごと下に降りていった。

 

...うん普通に美味しい。試験前の最後の晩餐的な物なのかな?毒は入ってなくて良かった。あれ耐えれるけど気持ち悪くなるんだよねぇ。

 

おっと危ない、もしかしたら受験者の中に念能力者がいるかもしれないから“纏”は解いておこう。ついでにみんなのオーラに合わせれば目をつけられる事は無いだろう。...あとはうっかり『冥界の守護者』とバラさなければだね。

 

途中、レオリオとクラピカがハンターについて語ってたけど興味が無いのでスルーしてた。

 

チンと到着したことを知らせる音が鳴る。扉が開かれた先には数百ほどの受験者だった。その全員がこちらに視線を向けるがすぐに興味を失ったのか前を向いた。

 

受験者たちに気圧されたのか、レオリオとクラピカは冷や汗をにじませる。

 

「一体何人くらい居るんだろうね?」

 

「君たちで406人目だよ」

 

ゴンの質問に答えたのは試験官ではなく⑯のナンバープレートを着けた小柄な男だった。

 

「よっ、俺はトンパ。35回も受けてる言うなれば試験のベテランさ」

 

35回って事はその分落ちてるってことだよね。わざとかもしれないけど試験によっては本当に足りなかったのかも。

 

会場にいたハンター協会の人から406のナンバープレートを受け取り、周囲をぐるっと見回す。

 

ざっと見た感じ警戒すべきなのは2人。ピエロの格好した奴と顔に針を刺している不気味な男。どっちもかなりの実力者だ。一般人カモフラージュは正解だったかもしれん

 

「おっとそうだ、これはお近づきの印に。お互いの健闘を祈ってカンパイだ」

 

そういってトンパがジュースを渡してくる。うーん表面を取り繕っても悪い顔が滲み出てる。確実に中に何か入ってるね。

 

ゴンが何も警戒せずにジュースを口に含むとすぐに吐き出した。

 

「おじさん、これ古くなってるよ。味がヘン!」

 

「え、あれ、おかしいなぁ~?」

 

おおぅ、マジか。たぶん無味無臭の毒か何かだろうけどそれ見破るのか。

 

「あっ、レオリオとクラピカ。それ捨てるならちょうだい」

 

「ん?別に良いがよ、何か入ってんだろ?」

 

「大丈夫大丈夫」

 

中に何が入っていても問題ないしね。そこら辺は師匠にいやと言うほどやられた。加減は絶妙に上手すぎて最大限の苦痛を味あわされたけど、そのお陰で毒の種類を判別出来るようになった。

 

二人から半ば強引に受け取り、ジュースを喉に流し込む。トンパは表には出さないがこれで一人落ちたといった感情が見えている。

 

「うーん。このくらいならまだ弱い。もっと本気で殺す毒かと思ったんだけどなぁ」

 

トンパが初めて反応を見せビクッと体を震わせる。相手がしてるんだ。こっちも試験に出れなくなるくらいの恐怖を植え付けられる覚悟はあるんだよね?

 

「相手は選んだ方がいいよー。じゃなきゃ...死んじゃうからね」

 

殺気をトンパだけに絞って出す。すると腰を抜かし首を何度も触りながら困惑の表情を浮かべる。

 

ジリリリリリリリリリリリリリリ

 

突然、けたたましい目覚ましのような音が会場に響く。音の方向に顔を向けると独特なデザインの音源とそれを持ったスーツ姿の男性がいた。

 

男性が手を翳すと音が止みハンター試験の開始を告げる。

 

「...さて、一応確認いたしますがハンター試験は厳しいものであり運や実力が伴わなければ怪我や死の危険性があります」

 

「それでも構わず受けたい。という方のみ、ついて来て下さい」

 

ゾロゾロと道なりに進んでいく試験官の後ろについていく。

 

「承知しました。406名全員参加ですね」

 

その声が聞こえたと同時に前の人たちが少しづつ歩くペースを上げていく。どうやら試験官が早歩きし始めたようだ。と言っても走らないとついて行けないくらい早いのだが。

 

「申し遅れました、一次試験担当のサトツと申します。これより二次試験の会場へと案内致します」

 

「一次試験の内容は私についてくること。場所や時刻についてはお伝えできません。ただ私について来て頂きます。」

 

ついて行くだけ...ねぇ。どこまで続くのか、何時まで続くのかって言うのは精神疲労が出てくる。

 

ゴンたちとちょっとした会話をしていると後ろからガーという音とともにスケボーに乗った少年が私たちの前に出てきた。

 

...見たことあるな、こんな感じの子供。水色の髪で私と同年代だった気がする。少し雰囲気が違うし暗殺一家だったはずだからよく似た別人か。

 

「おいちょっと待てガキ!反則じゃねぇーかオイ!」

 

「俺?何で?」

 

「何でっておま...これは持久力のテストなんだぞ。それじゃあテストにならないだろ」

 

レオリオが少年に突っかかるー!しかぁーし対する少年、特に気にしていないようだ!

 

「レオリオ、違うよ。試験官はただついて来いって言っただけだもんね。」

 

「ゴン、おめぇはどっちの味方なんだ!?」

 

「怒鳴るなうるさいぞ。テストは原則持ち込みOKなんだよ」

 

「ぐ...」

 

ここでゴンとクラピカによる援護射撃ー!レオリオ選手、完全に沈黙ー!

 

さてと下手な実況は置いといて、そろそろ本当に別人なのかを確かめねばなるまい。考えてる中でふと視線を感じたので目を向けると少年と目があった。

 

「ねぇ君たち、年いくつ?」

 

「もうすぐ12歳!」

 

「私も今年で12歳」

 

て言うかゴンと同い年だったのか。少し間を置くとスケボーを脇に抱え「俺も走ろっと」と自分の足で歩き始めた。

 

「オレ キルア」

 

「げぇ、やっぱり...」

 

最悪だ。まさかハンター試験でゾルディック家と会うなんて...

 

ゾルディックは暗殺者の一家。法外な値段ではあるが仕事は完璧にこなす。私もあいつらに追われたり、逆に追ったりする事も少なからずある。

 

そんなだからゾルディック家とはほとんど顔見知りである。もちろんキルアのことも。

 

「なんだよお前、人の名前聞いた瞬間嫌な反応しやがって」

 

「あーごめんごめん。私、リアラ」

 

「俺はゴン!」

 

ここで暗殺者と言うのは多分よくないだろう。交流の機会は奪わない方が良いに決まってるのだ。

 

その後、レオリオのことをオッサン呼びするキルアによりレオリオが10代であることが判明。大声で話している内にクラピカは前の集団に混じってしまった。

 

 

 

 

─数時間後─

 

私たちは今、サトツさんの真後ろにいる。途中から通路ではなく階段になったのだが、明らかに他の人がペースダウンしていたので抜かすのは難しくなかった。

 

「いつの間にか先頭まで来ちゃったね。」

 

「うん、だってペース遅いんだもん。こんなんじゃ逆に疲れちゃうよなー」

 

...キルアよ、それは後ろの人への挑発なのかい?ほら、後ろから舌打ちが聞こえてくるよ

 

「オイ!見ろ出口だ!」

 

向く方向をゴンたちから正面に変えると、確かに光が射し込んでいた。まさかこれで一次試験終わり?な訳ないか。

 

外に出ると広がっていたのは広大な沼地だった。少しそこで待っていると地下通路の出口へと徐々にシャッターが降りた。

 

これでも女だから沼地とか嫌なんだけど。泥が跳ねて服に付いたらどうしてくれるの?仕方ないから“纏”をして泥が付かないようにするけどさぁ...

 

ぞわぁっと急に気持ち悪いオーラが背筋を撫でる。勢い良くその方向を振り返るとピエロの格好の変態が恍惚とした笑みでこちらを見ていた。うっわ最悪...目ぇつけられた。

 

急に反応し、全力で嫌な顔をしてるだろう私にゴンがどうしたの?と聞いてくるがピエロのせいと返しておいた。

 

「ヌメーレ湿原、通称:詐欺師の(ねぐら)。ありとあらゆる方法で標的を騙し捕食する。騙されることないように私の後を着いてきて下さい。」

 

「ウソだ!そいつはウソを吐いている!」

 

全員に聞こえるように傷だらけの男が叫ぶ。左手にはサトツさんそっくりのヒョロっとした表現が合うような猿を持っていた。

 

「オレが本物の試験官だ!この猿は人面猿といって人肉を好むが、手足が細長く非力だ。そこで人に扮し湿原の生き物と一緒に獲物を生け捕りにする気なんだ!」

 

はい、ダウトー!非力ならどうやってここまで走ってこれるのさ。サトツさんは“纏”してたから分かるけどこの人はしてないし、その『非力な人面猿』にそこまで傷を負わされる試験官って本当にハンターですかァ?

 

考えている最中にヒソカから敵意を放たれたと思って顔を向けるとトランプに“周”を使いニセ試験官とサトツさんに投げてきた。ついでに私にも投げられた。

 

案の定、ニセ試験官はなす統べなく顔にトランプが深々と刺さりサトツさんは全て指の間に挟み防御していた。私はと言うと全て叩き落としてビリビリに破いてやった。

 

いやサトツさんの方より私に投げた数が多いのは何で?只の挑発ですか、さいですか。

 

ニセ試験官が死んだとほぼ同時に人面猿がそれを横目で確認し、一目散に逃げ出した。もちろんヒソカによるトランプが頭に刺さって動かなくなったが。

 

ヒソカが猿に追撃すると同タイミングで投げられた倍の数になったトランプを投げ返したが簡単には取られてしまった。

 

「くっくっく、そっちが本物だね 試験官は審査委員会から依頼されたハンターが無償で任務に就くもの♠️我々が目指すハンターがあの程度の攻撃を防げないはずがないからね♣️」

 

いや明らかにサトツさんが本物なの分かってたよね?分かってて試そうとしたからトランプの数が多いんだよね。そしてそれより多い私にはどうしろと言うのだろうか

 

そんなことを考えていても会話は進む

 

「誉め言葉として受け取って置きましょう。しかし次から私に対する攻撃はいかなる理由でも反逆と見なし即失格にします。よろしいですね?」

 

「ハイハイ♦️」

 

流石のヒソカも失格にはなりたくないようだ。いやもう早く失格になってくれと思ったのは私だけじゃないはずだ

 

「では改めて二次試験会場に行きますか」

 

二度目のマラソン大会が始まったのは言うまでもない。



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5話

 

ヌメーレ湿原を進むこと数分、辺りを濃霧が包み込む。手を伸ばせば指先が少し霞むくらい濃い霧で後ろを振り返れば数メートル先にいる人の影も見えない。...唯一感じるのはヒソカの殺気が気持ち悪いほど私に向けられてることか。

 

「ゴン、リアラもっと前に行こう」

 

「大賛成。早くヒソカから離れたい。あいつのオーラ気持ち悪いんだもん」

 

「オーラって?」

 

バッと慌てて口を塞ぐ。やっちゃった...非念能力者に“念”の存在を匂わせる発言はアウトなのだ。特にキルアはゾルディック家で大事に育てられているようなので勝手に教えると最悪消されるのでは...?

 

「...リアラ?」

 

目が泳ぎ、冷や汗が滝のように流れる。どうしよう...まだ死にたくないよ...流石にマハさん、ゼノさん、シルバさんに同時に目をつけられたら余裕で三回は死ねるね。取りあえず何か言い訳をしないと...

 

「あ、え、そうそう、そいつが放つ雰囲気的なもののことだよ。キルアも感じてるでしょ?」

 

「ん?ああそうだな」

 

実際はキルアが感じているのとは全然違うものだろうが同じという事にしておこう。幸いそれで納得したようなのでこれ以上の追求はあるまい...良くやった私!

 

「うわあぁぁ!!!」

 

どうしてか走ってきた後方ではなく右側から悲鳴が聞こえてくる。霧に惑わされて方向を見失ったか?

 

悲鳴が聞こえてきたと同時にヒソカのオーラが遠ざかっていくのを感じた。やる気満々の快楽殺人モードなのだろう

 

「レオリオたち、巻き込まれなければ良いいん「いって───!!」...けどなぁ」

 

レオリオの声がここまで聞こえてきた。あの~フラグ回収が早すぎませんかねぇ?まだ言いきって無かったんですけど。これ私がフラグ立てたせいで死なせちゃったら罪悪感すごいんですけどー!

 

ゴンが走り出す。試験まで一緒に行った仲だ。これくらいのタダ働きはしようかな

 

「キルアー先に行ってて」

 

「は?オイ───」

 

キルアの肩を叩いて私も走り出す。キルアの呼び止める声も初めだけですぐに聞こえなくなった。途中でゴンを抜かしたし先に辿り着けそうだ。

 

ようやく見えてきたのは数十人という受験者がヒソカを囲んでいる状況だった。

 

「君たちまとめてこの一枚で十分かな♣️」

 

「ほざけェェ!!」

 

全員が一斉に飛びかかる。ヒソカはハートの4を構え一番近い受験者にトランプを振るいその首を切る─ことはなかった。

 

リアラが“絶”状態で人の間を縫うようにしてヒソカの標的の人に突進、ついでに右足で蹴りを入れたのだ。

 

急に現れたリアラに全員の動きが止まる。その間に体制を立て直し、ヒソカに相対した。

 

正面から向き合うとリアラは蹴りが効いてなかった事に内心舌打ちをし、あからさまに嫌な顔をした。理由はヒソカの興奮したような表情と下腹部にある。

 

「くっくっ君なら確実に楽しめそうだ♥️」

 

「うへぇ本っ当に気持ち悪い。戦いたくないんだけど...見逃してくれたりはしない?」

 

「しないね♠️」

 

「デスヨネー...」

 

確認をしつつリアラの頭の中に浮かんでいる案を高速でシミュレーションしていくがどれをやっても周りが邪魔すぎる。数秒、いやそれにも満たない間の静寂の中でそれまで固まっていた受験者たちが武器を握り直した

 

「うおぉぉぉ!」

 

「えっ...ちょっ」

 

棍棒を持った一人がヒソカに向かって飛び出し、それを皮切りにほぼ全員が攻撃を開始する。

 

リアラにとってこれは最悪だった。ヒソカは殺すことを厭わないが、リアラは敵対しない人は出来るだけ死なせない主義なので数人ならまだしも数十というと守り切れないのである。

 

リアラは気絶しない程度に手加減して蹴ることでヒソカから遠ざける。...がそれでもヒソカに向かっていくので助かる人の方が少ないのは必然的だった

 

流石に向かっていった人の多くが瞬殺され冷静になったようでもう飛び出そうとする奴はいなかった

 

リアラが身を低くしつつ距離を詰める。足に“流”でオーラを集めて小柄な体格からは想像も出来ないスピードで懐に潜り込み、跳び蹴りを顔面に放つ

 

しかしヒソカはこれを余裕をもって右腕で防御、続いてトランプを横に振るうがリアラは体を捻り回避すると同時に腹へ反対の足で蹴りを入れた。

 

蹴った反動を利用して距離を取る。“凝”で大きなダメージは入っていないが衝撃は伝わっているはずだ。

 

(体術と素のパワーはあっちが上、スピードは勝ってるけどそのうちスピード頼みの私の方が先にスタミナ切れになるのは明白。ここで鎖鎌は出したくない。本当、面倒だ)

 

「んーそっちのターンは終わりかな♣️じゃあこっちから行くよ♦️」

 

リアラは思考を開始するがヒソカが待ってくれるはずもなく、余裕の表れかゆっくりと近づいてくる。

 

「へっ、やっぱダメだな。女に任せて自分だけ逃げるってのはよォ!」

 

「レオリオ!?」

 

どこからか取ってきた木の棒を片手にレオリオがヒソカに向かっていく。そのまま大きく振りかぶって攻撃、が最低限の動きで回避して後ろに回り込んだ。

 

ドカッ!

 

赤い玉と針が付いた物がヒソカの顔を打った。その玉には細長い糸が繋がっていて飛んできた方向を見るとゴンが持った釣竿だった

 

私は驚いたのはヒソカに攻撃を当てたことでも釣竿とは想像がつかないような音をしていたことでもない。ゴンの存在に気づかなかったことだ。

 

もしかしたら息を潜めていたのではなく今来たばかりなのかもしれない。それでも、目の前の敵であるヒソカに注意を向けていようとも、生半可な“絶”状態だとしても見破れる自信があった

 

    .... .

そう、生半可な“絶”なら

 

 

ゴンの“絶”は少なくとも数年、あるいは10年ほどの時間をかけなければ到達できないほど完璧だった。しかし、この状況でも“纏”をしておらず念能力者ではないのは目に見えて分かることだ。

 

「やるねボウヤ♣️釣り竿?ちょっと見せてよ♠️」

 

私を横目に見ながらヒソカはゴンに近づいて行く。レオリオが二度目の戦いをヒソカに挑んだが顔面を殴られ宙を舞う。同時にゴンが飛び出し攻撃を繰り出すがこれも回避される。

 

その間の私は静観を決め込んでた。理由はヒソカにゴンとレオリオを殺す気がないからである。もちろんすぐに止められるような距離に居はするが。

 

殺す気が無いのなら止める必要はない。触らぬ神に祟りなしってね

 

「んん~──うん!君も合格♠️良いハンターに成りなよ♦️」

 

合格?ヒソカってもしかして裏の試験官だったのか。そんなわけあるかァ!こいつが試験官だったら1割も生き残んねぇよ!

 

心の中で愚痴を叫んでいると電話の着信音が響きわたる。ヒソカのポケットから鳴っているようだ。

 

『ヒソカ、そろそろ戻ってきなよ。もうすぐ二次試験会場につくみたいだ』

 

「OKすぐ行く 」

 

ピッっと電話を切る音と共に「またね♣️」と手を振って帰っていく。二度と来んなピエロ!と親指を下に向けて心の中で呟いた。

 

霧に紛れて姿が見えなくなるとへたりとゴンの力が抜け膝をついた。極度の緊張からか顔には脂汗が流れ、腰が抜けているようにみえる。

 

そんなゴンを見てため息をこぼす。電話の話が本当なら急いだ方が良いのだからここでゆっくりはしていられない。...そういえばゴンって鼻が凄く良いんだよね

 

「ねぇゴン、ヒソカが向かった場所って鼻で分かったりしない?」

 

「...あ、えーっとさすがに他の魔獣のにおいに紛れられてるから難しいかな。レオリオみたいに香水をつけてるなら別だけど」

 

ふーんなるほどね。ヒソカは追えないけどレオリオなら追えるのね。

 

...良いこと思い付いた。私は早く着きたいから先に行く、けどだからと言ってゴンたちを見捨てる訳ではないようなこと

 

ここの魔獣に殺されるくらいだったらその程度だったってだけさ。わざわざ試験会場まで護衛していくのは面倒だしタダ働きにも程がある。

 

気絶しているレオリオを肩に担ぎ上げ、歩き出す。

 

「先に行ってるよー。レオリオのにおいなら辿れるんでしょ」

 

私はそういってヒソカと同じ方向に向かって歩きから早歩きに変える。とは言ってもおおよそ常人には出せない速度に達てしているのだが。

 

後ろから私を呼ぶ声が聞こえる。多分、私が本当に道が分かるのかを聞かれてるんだけど残り時間が少ないかもしれない中で質問に答える気はない。

 

これからまたあの変態がいるところに行くと思うと憂鬱な気分になる。

 

「はぁ...」

 




戦闘描写ってムズくね?


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6話

「よいしょっと」

 

レオリオを起こさないようにゆっくりと木にもたれかけさせた。む、近づいてくる人が一人...ゴンの絶や針が刺さってる人ほどじゃないけど気配の消しかたと暗歩(足音をなくして歩くこと)が妙に上手い。まあここまで出来るのはキルアくらいだろうけど

 

私が後ろを振り向くと少し驚いたような面白くなさそうな表情をしていた。

 

「ちぇっ、せっかく驚かせようと思ったのにさ」

 

「まだまだだね、気配は消すものじゃなくて偽って紛れさせる物なのだよ」

 

人差し指を立てながら言うとキルアから「何もんだよお前」と疑問の声が上がったのでいたいけな少女、とだけ返した。

 

「まぁ別にいいけどさ。それよりもどうやって戻ってきたんだよ?あとゴンのやつは大丈夫なのか」

 

「ゴンは大丈夫でしょ。私のはそう、天才的な勘でここに辿り着いたのさ!」

 

無論、ウソである。実際はキルアの肩を叩いた時にオーラの糸を着けて置いて伸ばしながら向かったので帰るときは辿るだけ。

 

ヒソカにはバレてたけど切られてなくて良かった。切られてたらどうしようかと思ったけど死んだ魔獣を道しるべにしてくれてた。

 

「おっさん担いで来たのに勘な訳ねぇだろ」

 

「...ヒソカが殺した魔獣を道しるべにした。だからゴンも大丈夫だと思うよ」

 

「へー。じゃあアイツに助けられたのか」

 

ぐ...そう思われるから勘で来たことにしたかったのに!て言うかおっさん言うなレオリオね!好きの反対は無関心ってか。それでもいい加減、名前覚えようね!

 

おっとここで展開してた“円”に反応が...二人ってことはゴンとクラピカかな?

 

「あ、ゴンだ。おーいゴン!こっちだー」

 

“円”を解除しつつキルアが向いた先を見ると手を振りながら近づいてくるゴンとクラピカが居た。

 

「ねぇリアラはどうやってここまで来たの?俺はレオリオの匂い辿ってこれたけど...」

 

「知りたい?実は私キルアに発信器を「ヒソカに助けられたって」言い方ァ!」

 

そこ二人ィ!何だその憐れむような視線は!そんな目で私を見るなぁ!「あぁ...(察し)」じゃ無いんだよ!

 

わーぎゃー騒ぎ立ていると途中でレオリオが起きたが、湿原に入った後の記憶を失っていたようだった。

 

「あぁ、それなら「ストーップ!リアラ」モゴモゴモゴ」

 

軽く説明しようとした所でゴンに口を塞がれた。何で?と問うより先にあの時の衝撃的な場面をわざわざ言う必要は無いとクラピカに耳打ちされた。

 

なるほど配慮が足りなかったか。と反省しつつもレオリオへの言い訳を考えた結果、催眠効果を受けていたから私が強めに殴って担いできたことにした。

 

レオリオも納得したようで「なるほどな」と声に出した後、続けて

 

「にしても記憶が飛ぶほどってどんだけ強く殴ったんだよ」

 

「アハハ...霧が濃くて前の人見失っちゃうから急いでたんだよ」

 

その後も何故、二次試験会場の小屋に入らず外で待っているのかを聞かれたがキルアが言うには開始が正午かららしい。

 

...その試験会場であるはずの小屋からは数多くの魔獣の鳴き声が聞こえてきて辺りは緊張感に包まれる。

 

私は“円”を展開してたから分かるが中の反応は2つしかなかった。体格からして片方は確実に人だったと思う。

 

正午まで数秒前、さらに雰囲気が引き締まる中でも血に飢えたような鳴き声は数を増やした。

 

チッチッチッ...ピーン

 

12時を知らせる音と同時に閉ざされていた扉が開く。中に居たのは美女と野獣と表すのが打ってつけのような二人。

 

驚くべきは野獣と言えそうな大きな男の方。先ほどからずっと鳴り響いていた魔獣の鳴き声のようなものは男性の腹の音だった

 

「ブハラ、お腹の調子はどう?」

 

「聞いての通りもうペコペコだよ」

 

「さて、予想はついてると思うけど二次試験は料理よ!」

「あたし達二人の美食ハンターを満足させる食事を用意してちょうだい」

 

料理...修行...師匠の罵倒...うっ、頭が...あのバカ師匠いつか絶対ボコボコにしてやる!

 

(──へぇ、それは楽しみだネェ)

 

頭の中で声が聞こえた気がして周りを警戒する。え、あの師匠ついに遠距離テレパシーでも会得した?や、やだぁー冗談に決まってるじゃ無いですかー(焦)

 

悲報!師匠、人間を辞める!?あ、元から人間じゃなかったわ。

 

そんな茶番劇を一人しながらも時間は進み、試験官に出す料理は《豚の丸焼き》。そのまんま、“名は体を表す”の最たる例だろう。

 

他の受験者はシンプルで助かったと言っているがシンプル故にこの試験は難しい。

 

何せ合格判定をするのがあの美食ハンターなのだ。食のために世界を渡り歩き、至福の一時を過ごす。当然、舌は肥えているはずだ。

 

さらには合格の条件が「うまい!」と言わせること。師匠の無茶振りに応えるためとは言え料理もしたことはあるが、美食家を唸らせることが出来るとは思えない。

 

シンプルというのはそれだけ下手に工夫すると良さが損なわれるため難しいのだ

 

「ん、引っ掛かった」

 

“円”を展開しながら走っていると複数の反応があった。目を向けた先には鼻が肥大化した豚の群れで確かグレイトスタンプと言う狂暴な性格な種だったはずだ。

 

昔、文献でみた時は頭部が弱点って書いてあった気がするので突進を上に回避しつつ、強過ぎないように“絶”状態で額に蹴りを放つ。

 

すると一発で豚は伸び、ズシンと音を立てて倒れる。それをしっかりと背負いながら道中で見つけたハーブのような物を摘んでおく。

 

リアラの~簡単!3分ほどクッキング~!

 

枝を集めて火を起こし、湿気って燃料にならない枝に“周”を使い丁寧に背から切れ込みを入れる。骨をとった後ハーブもどきでにおいを消し、火にかける。

 

完成したものがこちらになります。何?完成品があるならさっさと持ってけって?うるせぇ!別に良いでしょ茶番しても!

 

丸焼きが冷めない内にブハラと呼ばれていた男に持っていく。すでに20頭くらいの骨と10頭ほどの料理が渡されていた。

 

全然茶番してる暇なんてなかったね。なんなら骨とる必要すらなかったのでは...文字通り丸焼きで良かったのね。

 

試験は試験官のお腹がいっぱいになると終わりになる。なので、早めに来ないと満腹になってしまうという思いは杞憂に終わったようだ

 

丸焼きを渡した数秒後には手から豚は消えていて、後ろの骨が多くなっていた。唖然とする中でも「美味いうまい!」と咀嚼しながら合格を言い渡していた。

 

結局、70頭ものグレイトスタンプの丸焼きを食べブハラの試験は終わった。

 

...念能力使わないと考えられない量だよね。大食間と呼ばれる念能力者でも3頭が限界だと思ってたよこんなにデカいの。

 

何はともあれ無事合格!あとは女の人の試験を合格すれば三次試験だ。

 

さっきのブハラさんみたいなのだといいなぁ

 

「あたしはブハラと違ってカラ党!試験も審査も厳しくいくわ!」

 

今すぐお砂糖加えてドロドロに甘くしてください...

 




ストックが無くなったので更新遅くなるわ


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7話

「」は普通にその場の会話、『』は機械を通した声
“”はてきとうにつけてます。


─二次試験後半─

 

お題は《スシ》。ヒントとして魚以外が揃っていて、極東の島国の料理であること。さらに握り寿司しか認められない

 

受験者の大半がスシを知らず、試行錯誤したものを試験官(メンチさんと言うらしい)に運んでいく。

 

そんな中、私はというとグレイトスタンプの五匹目を受験者の邪魔にならないところで焼いていた。

 

 

       どうしてこうなった?

 

 

最初、お題が発表されたとき調理場に向かうと魚だけが無いのがわかった。

 

“絶”をしながら前半で見つけた川でグロテスクな見た目の魚を何匹か生け捕りして戻る。

 

漁をしている人なら全員知っているが、見た目が凄いヤツほど身が美味しいのが普通だ。色が鮮やかなのは毒を持っていることが多いが。

 

形や味などは知っていたため、あとはメンチさんの口に合うように...せめて人に出せるように工夫し、自分を犠牲にしながらも出来た物をメンチさんに持っていった

 

結果は散々な評価をもらったが『及第点』とめでたく合格者第一号となった。

            

ここまでは良かったのだ。()()()()

 

問題はその後でブハラさんの発言である。なんとあの人は一般人より明らかに大きいグレイトスタンプを70頭も食べたにも関わらず「小腹が空いてきた」と言ったのだ

 

そのすぐに減る腹はきっと四次元ポケットかまたはブラックホールになっているのだろう。

 

ブハラさんの発言に私が料理を作るハメになり、それくらいならと思って引き受けたら明らかに小腹の量じゃなかった。

 

「あれ、リアラじゃん。何してんの?」

 

「合格したからこき使われてるの。」

 

「何だよ。合格してんだったら『スシ』が何か教えろよ」

 

ハッハッハ、それは出来ない相談だ。何せ口止めされてるからね!

 

そう思いつつ口の前でバツを作ると渋々と言った感じで引き下がった。やけに素直だなぁと考えていると炭の臭いと共に背後に熱を感じる。不思議に思っているとキルアが「つーかさ」と口を開いた。

 

「─それいいの?凄いことになってるけど」

 

キルアが指を指した方向に目を向けると、そこには火に包まれた豚の丸焼きが──

 

「ウワアァァァァ!?」

 

咄嗟に火消し用にバケツで川から汲んだ水をかける。すぐに火は鎮火されたが、黒焦げの明らかに食べ物とは思えない物体が残った。

 

あぁグレイトスタンプ...クソォ!一体だれがこんなむごいことを!キルア?キルアだな!

 

しかし「あーあ、知ーらね」っと一足先に自分の調理に戻ったキルアに邪魔をする間もなく会場に響いたメンチさんの怒号によって私の怒りも鎮火された。

 

メンチさんは怒涛の勢いで私と同じくスシを知っていただろう忍を攻め立てていた。その後、メンチさんがキレる前に忍者が大声でスシが何かをバラしたため味で審査するしかなくなったらしい。

 

いや無理じゃん。美食ハンターが味で審査し始めたら一流の料理人でも難しいと思う。先にクリアしておいて正解だね。

 

黒焦げとなったグレイトスタンプを解体し、地面に埋めたりして生態系の糧になってもらった。

 

そんなことをしている内に試験の終了が告げられ私以外の受験者が絶句していた。予想通りあのあと一人も合格出来なかったようだ。

 

ほどなくしてメンチさんが携帯を取り出しどこかへ電話し始めた。耳を澄ませばハンター協会であることがわかる。

 

『────────』

 

「報告してた審査規定と違うって!?なんでよ?最初からあたしが“おいしい”って言ったら合格にするって話だったでしょ!」

 

「いやそれは建前で審査はあくまでヒントを見逃さない注意力と「あんたは黙ってなーーー!!」...」

 

Oh...ブハラさんを一喝しただけで黙らせた...力関係はメンチさんのが上なんだね。

 

「と・に・か・く!あたしの結論は変わらないわ!二次試験後半の料理審査、合格者は1名よ!!」

 

『───「ピッ」...』

 

あぁ、ハンター協会の人がなんか言ってるっぽかったけど問答無用に切っちゃったよ。電話の相手ストレスすごそう。

 

ドゴォォォォン!

 

電話相手の胃を心配していると突如、轟音が鳴り響いた。どうやら255番の人が調理台を素手で破壊した音らしい。

 

へ~念無しであそこまで破壊出来るのは素直に凄いと思う。単に調理台が脆かっただけかも知れないけどね。

 

「納得いかねェな。俺が目指してんのはコックでもグルメでもねぇ!賞金首(ブラックリスト)ハンター志望だ!美食ハンターごときに合否を決められたくねぇな」

 

ハハッ自分と相手の実力差すら測れてないヤツが何か言ってるわ。少なくとも貴方はその()()()にも勝てない気がするけどね。

 

「しかも一人の合格者はアイツだろ!」

 

おいコラ指さすな。まあ確かにこの試験での合格者は私ですけど。どうだ凄いでしょ「何でこんなチンチクリンのガキが合格して俺が不合格なんだ!?」...ア゙ァ゙?

 

誇らしげに胸を張っていると聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。ガキ?ガキと言ったかあの野郎は?

 

あーあ、嫌いも嫌い大嫌いだああいうヤツ。人を見た目で判断するなって教わらなかったのか?

 

頭は怒りで染まっているのにどこか他人事のように感じていた私はすぐに怒りを抑える事が出来た。

 

その後、メンチさんの「運が悪かったわね。また来年来れば~?」と挑発的な発言に男は激昂し、殴りかかった。

 

自分の感情すら抑えられないヤツなんてたかが知れている。それを証明するかのようにブハラさんの“絶”の張り手一発でのびていた。

 

「賞金首ハンター?笑わせるわ!美食ハンターごときの一撃でのされちゃってさ。武芸なんてハンターやってれば嫌でも身に付くもの。私が知りたいのは未知のものに挑戦する気概なのよ!」

 

『それにしても合格者一人はちとキビしすぎやせんか』

 

男が吹っ飛ばされたのをみてスッキリした私は会場に響いた音の方に意識を向けた。

 

ドォォォン!!

 

上から落ちてきたお爺さんは平然とした表情で歩いて来た。

 

...あの距離から落ちたらいかに念能力者と言えどもダメージは追う。それでも何事もなかったように歩いているのでおそらく強化系だろう。

 

お爺さんの名はアイザック・ネテロ。人類最強の念能力者と呼ばれた人物だ。現在は協会の会長をしている。

 

メンチさんと話し合った結果、ネテロ会長が提案したのは“メンチさん実演の再試験”だった。

 

それならばと目が覚めた男とメンチさんも納得し、改めて発表されたお題は─

 

「そうですね、それじゃあ“ゆで卵”で。会長、私たちをあの山まで連れていってくれませんか?」

 

「なるほど。もちろん良いとも」

 

指を指した方向には高い山があり、そこまで行くために困惑の表情を浮かべながらも全員飛行船に乗り込んだ。

 

 

 

─移動中...─

 

 

はい、着きました。果たしてここに何があるんだろうね。まあ十中八九たまごなんだろうけど、もしかして...

 

「「「「えー!?」」」」

 

急に周りがざわめき、崖の下を見ていたので私も覗いてみるとそこには自由落下するメンチさんが見えた。

 

そこでネテロ会長が説明を始める。

 

「マフタツ山に生息するクモワシの卵を取りに行ったのじゃよ。クモワシは丈夫な糸で卵を吊るし、陸の獣から守る。その糸につかまり一つ卵をとって上ってくるのが試験じゃ」

 

「これでゆで卵を作るのよ」

 

いつの間にか戻ってきたメンチさんが補足する。さっきの255番の男は萎縮してしまったようだ。ザマァ

 

「あーよかった。」

 

「こーゆーの待ってたんだよね」

 

「走るのやら民族料理やらよっぽど早くて分かりやすいぜ」

 

キルア、ゴン、レオリオの順に話し、迷いもなくクラピカを含めた4人が崖に飛び込んでいく。それに他の受験者も続いて飛び込む。

 

その間私は行きたい気持ちでウズウズしながらも合格したのに行くのは迷惑になると思い、気持ちを押し止めていた。

 

それに気づいたメンチさんが口を開く。

 

「別に行きたいなら行っても構わないわよ」

 

「良いんですか!?」

 

「まあその分リスクが増えるだけだけど」

 

「リスク上等!ハンターは多少のリスクは飲み込んでやりたいことをやるものだと聞いたので!それじゃ」

 

言いたいことは言えたのですぐさま飛び込む。何て言ったってあのクモワシの卵だ。普通だったらハンター(ライセンス)がないと近づけすらしない代物である。それを取って良いと言うのだから行かない手はない。

 

掴んだ勢いで糸が切れる、何て事はないと思うが念のため身を翻しながらゆっくりと下っていく。空中での戦闘が強いられたことがあったため対応出来るようにしたのがここで役立つとは...

 

卵を取った後は簡単、崖を登るだけ。戻ってくるとゆで卵の準備をしていた。本当なら持ち帰りたいところだが、ハンター試験で割れる危険性があるので大人しくゆで卵にした。

 

完成したゆで卵は濃厚で市販のものとは文字通り格が違った。皆、思い思いに感想を口にし、あの男にも「完敗だ」と言うレベルである。

 

その時のメンチさんは満足そうな笑顔を浮かべていた。

 

「もういないわね。じゃあ合格者の46人は飛行船に乗って」

 

結局、24人が落ちて次の会場へと向かう飛行船に乗り込む。

 

出来るだけ早く寝たかった私も足早に飛行船へと乗り込んだ

 




毎週日曜投稿(予定)


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8話

リアラの念能力がでるぜ!


飛行船に乗り込むと最初に試験のナンバープレートを渡していた人が説明をする。

 

この人、豆みたいな頭の形してるな(失礼)と思っていたら名前がマーメン・ビーンズさんと言うので驚きだ。

 

「次の目的地へは明日の8時到着予定です。こちらから連絡するまで各自 自由に時間をお使い下さい。」

 

うーん何してよっかなぁー。寝たいのは山々なんだけど安全そうな所見つけてからにしようか。

 

「ゴン!飛行船の中探検しようぜ!」

 

「うん!リアラも来る?」

 

「いいの?行く行くー」

 

ちょうどゴンとキルアが探索するようなので着いていくことにした。

 

結果、特に何もなかった

 

いや本当に何もなかったんだよ。ただ広いだけの何の面白味もないものだった。あのヒソカですらトランプタワー作って壊すを繰り返してたくらいだし。

 

結局は窓から夜景が見れるソファのある場所に落ち着いた。する事もないからゴンとキルアと喋ってた

 

そのときに両親の話になったので私から話すことになった。

 

「って言ってもなぁ、両親のこと知らないし顔を見たこともないんだよね。」

 

「一回も?」

 

「うん。顔はいつも隠してたし、聞こうとしてもはぐらかされてた。まぁそうするってことは裏の仕事でもしてたんだろうけどね」

 

本当に全く知らないのだ。何ならあの人達が本当に親なのかすら分からない。

 

確証は無いが弟がマフィアに襲われたのもあの人達か裏の仕事で反感を買ったからだとも思っている。

 

かくゆう私も今はマフィアの護衛などで稼いでいるのだが。

 

「キルアの両親は何してるの?」

 

うわ、ついにゴンがキルアのお家事情を聞き始めたよ。さてどうするよキルア

 

「んー殺人鬼」

 

「え、いつの間にゾルディックって快楽殺人犯になったの?」

 

あヤベ。思わず聞き返しちゃった。もういいや隠しておくのも面倒になっちゃった。

 

「...何で知ってる」

 

「フッフッフ...聞いて驚け!なんと私がかの有名な『冥界の守護者』なのだぁ!」

 

「ウソだな」

 

「事実ですゥ~」

 

ウソ、本当、ウソ!、本当!と言い合っている最中に急に凄い量のオーラが左斜め後ろから放たれた。

 

咄嗟に【海の目】を使い、【死刑宣告(デスマーチ)】を発動させる。これは身体能力と思考速度を上げる念能力である。

 

その場にいる誰よりも早く振り返るとオーラを足に纏い、逆方向に向かう人影が見えた。

 

(ヒソカ...じゃないね。一度、ゴンを見逃してるんだ。仕掛けたとしてもキルアか私が一人のときにやるはず。ってことはハンター協会の人、もしくは針が刺さったギタラクルとか言う人。ハンター協会は試験なら襲うかもだけどビーンズさんの連絡も来てないし、そこら辺はしっかりしてるはずだからハンター協会も除外。消去法でギタラクル、目的は疲れてるだろう今を狙った潰しかな)

 

足に“流”で功防力70にしながら影に向かって走り、上段に蹴りを入れる。しかし軽々と防がれる。

 

蹴りの反動を利用して下がりもう一度攻撃しようとするが、そこで違和感に気づく。

 

(この人、反撃しようと思えば簡単に出来たはずなのにしてこなかった。しかもそこまでオーラを移動させてないはずなのに私の【死刑宣告】+功防力70の蹴りを防いだ?つまり強化系か私みたいな念能力による強化。というかその前にこのオーラ見たことあるな。つい最近どこかで...)

 

そこでようやく影に光がさし、見えてきたのは洗練されたオーラに細い体で筋肉がついている白い髭を生やしたお爺さん─アイザック・ネテロだった。

 

ピキッっという音が聞こえるかのように動きが止まる。思考速度が上がっているせいで長く感じるがそれどころではない。

 

(そりゃ防げるじゃん。人類最強よ?ていうか誰よ、ハンター協会じゃないって言ったヤツ。この人以上のTHE☆ハンター協会って人知らないんだけど。あれ?もしかして私凄いやらかしてる?冷静に考えなくてもやってるよね?これで不合格とか嫌なんだけど。取りあえず謝んなくちゃ。どこかで聞いたことがある謝罪の最上級のを──)

 

この間わずか0.3秒。最適な考えを弾き出し次にした行動は東の小さな島国にて相手を最大限見上げることで謝罪の意を伝える至高の技...そう土下座である。

 

「本っ当にすみませんでした!!!」

 

走った勢いのまま床にダイブし、頭を擦り付けながらしたことによって迫力は十分。ネテロも思わずたじろぐほど。

 

そのまま相手に話される隙もなく一息で弁明を口にする。

 

「いや、違うんですよ。ついさっき私たちに向かってオーラが放たれてですね。条件反射というか仕事病といいますか体が勝手に動いてしまいまして特に「アイツ会長じゃん、試しに攻撃してみよ~」とかでは決して無くてですね、防衛本能見たいなものが働きまして別にやりたくてやったわけじゃ無くて、それでそれで───」

 

「い、いやもうよい。分かっておるわ」

 

ちなみにこの時ゴンとキルアはリアラが消えたと思ったら次の瞬間には謝る声が聞こえてきたので何が起こったのか分からずに動きを止めていた。

 

いやぁ、良かった分かってくれて。何ならちょっとしたパニックになってたし...あ、ヤバ【死刑宣告】切れた。

 

ドッっと疲労を感じる。もちろん見せないように訓練しているのでさほど問題ではないのだが疲れるものは疲れるのだ。

 

ようやく動き出したゴンが「あれー?」と声をあげながらこちらに向かって歩いてきた。

 

「ねぇネテロさん、リアラ。さっきこっちの方から誰か近づいて来なかった?」

 

「いーや、知らんな」

 

「...ワタシナニモシラナイヨ?」

 

十中八九ネテロさんなんだろうけど言わないでおこう...やめて、そんな目で私を見ないで。

 

思わず嘘をついた罪悪感でフード被ってしまう。

 

「年の割に素早いね」

 

「今のが?ちょこっと歩いただけじゃよ」

 

ゴンの後ろから来たキルアが言うが、煽るように言い放たれ額には青筋が浮かんでいた。

 

その歩きで並みの念能力者の全力疾走より速いのはさすがと言った方がいいのか分からないけどね。

 

「何か用。じいさん最終試験まで別にやること無いんだろ?」

 

「そう邪険にしなさんな。退屈しのぎにおぬしらワシとゲームをせんかね?」

 

...いいのか?ハンター協会の会長がゲームなんてしてても。

 

「くだんな。行こうぜ」

 

「えー!いいじゃん、やろうよゲーム」

 

「私はどっちでもいいよー」

 

正直なところ何もなければゴンに賛成だけど、ネテロさんが何かくれないかな

 

「ふーむ、そうじゃのう。このゲームに勝てたらハンターの資格をやろう」

 

「へ?」

 

まじか職権乱用じゃん。それでいいのか人類最強。ビーンズさんの苦労が伺えた気がするわ

 

歩き出したネテロさんについていくこと数分、飛行船の一室に到着すると動きやすい格好に着替えルールを説明し始めた。

 

「次の目的地までにこのボールをワシから奪えば勝ちじゃ。そっちはどんな攻撃も自由!ワシからは手を出さん。」

 

ふむふむ。念能力は制限ないのかな?と思ったら念文字で『“発”と“硬”はナシ』って書かれてた。“発”はゴンたちの目にも見えるから念の秘匿的にダメ。“硬”は一点集中させればいくら会長でもダメージは入るからかな?

 

「ただ取るだけで良いんだよね?じゃ、俺から行くよ」

 

「ご自由に」

 

「頑張れキルア~」

 

壁に寄りかかりながら手を振って応援しているとキルアが増えた。

 

暗殺術の1つ『肢曲(しきょく)』。特別な歩行方法により残像を作り出す高等テクニックのこと。

 

それをキルアがやっているので増えている様に見えてるだけで別にリアラが薬をやっていると言うわけではない。断じてない

 

1...2...3...456...とどんどん増えていき数えるのすら面倒になってきたくらいでキルアが攻撃を仕掛ける。

 

4、5回ほどボールを狙うがネテロ会長は時には避け、時には受け流すことでキルアの猛攻を掻い潜っていく。

 

このままでは取れないと思ったのか舌打ちをし、ネテロ会長の軸足を狙って蹴りを放つ。

 

...あの人、大人気ないな。しっかり“流”でガードしてる。キルアのしてやったり顔が少しづつ歪んでいく。

 

「いってぇ───!」

 

「アハハ、やった方が痛がってるよ」

 

「リアラもやってみ!あのジーサンの足、鉄みたいだから!」

 

「よーし、次はオレだ!」

 

キルアのことを弄っているといつの間にかゴンが飛び出していた。

 

どうやらゴンはネテロ会長に真っ向勝負を挑むようで一直線に走り出した。スピードは悪くはないがネテロ会長と戦うには遅すぎる。

 

と思ったら会長の目の前に来た瞬間上にジャンプ。油断していた会長は見失い冷や汗を流していた。

 

「ってぇ───っ!」

 

ゴンは天井に頭をぶつけ着地した後、痛そうにしていた。二人揃って怪我するって仲良しか!

 

キルアと同じように攻防を繰り返し、それをネテロ会長が軽く避けていく。

 

(そろそろかな...?)

 

『よーし!私が行くぞー!』

 

「お、ゴン!リアラが行くから代われってさー!」

 

「わかったー!」

 

ゴンが戻りつつ何か引っ掛かったのか「うーん?」と唸る。

 

(ホッホッホ、見せてもらうぞ実力を)

 

ネテロ会長が声がした方向に意識を向ける。念能力者とはいえ即座に反応し、適格な攻撃を繰り出した少女だ。

 

念能力者は見た目によらない。果たしてどんな方法でボールを奪うのか、それを楽しみにしていた。

 

しかし、リアラが着ていたフード付きの黒い布はオーラを纏ったまま動かない。不思議に思いつつも左手にあるボールを少し上に投げ、キャッチしようとするが()()()()()()()()

 

「私の勝ちだね。ハンターの資格は自分で取るからいらないよー」

 

振り向いた先に居たのはボールを手に持ち満面の笑みを浮かべるリアラの姿だった。

 

ネタバラシすると、

 

①護衛で子供だからといってナメられることが多々あるのでいつも持っているボイスレコーダーで録音する。

 

②音を大きくして時間差で再生するように細工をして黒い布を被せておく。

 

③黒い布に自分のオーラの大半を“周”に使い固定しておく。

 

④レコーダーが再生され意識が向いたらボールを奪う。

 

と言った風にゴンたちに説明した。他にやったことといえば──

 

「気配は消すものじゃなくて紛れさせるものだからね。」

 

例え“絶”を使ってそれが完璧だったとしても百戦錬磨のネテロの前ではバレるだろう。

 

あえて気配を消さずに空気のように当たり前に存在するものに擬態させることで気づかれないようにしたのだ。

 

ゴンが感じた違和感の正体はリアラの声がレコーダーだったことにある。一応、高性能なのだがゴンの耳は聞き分けていた。

 

「そう言うことだからお先~」

 

唖然とする空気に耐えきれずボールを返し、そそくさと通路にでる。

 

適当な場所を見つけ辺りを警戒しながらも眠りについた。

 




神出鬼没の鎖鎌(デスサイズ)
具現化系能力。登録した鎖鎌を作り出す。登録できるのは1つだけで作り出せるのも1つだけ。鎌の部分の大きさはオリジナルに左右され鎖部分はいくらでも伸ばせる。破壊されると次に出せるまでに1日かかる

能力はただひとつ。『限りなく壊れずらい』

死刑宣告(デスマーチ)
操作系能力。4秒間、身体能力と思考速度を強化。その後疲労が4倍になる。【海の目】発動時のみ使用可能

【海の目】
全系統の習得率が+30%(100%を越えるのは得意系統のみ)。発動時、体力とオーラの消費量が二倍。

オリ主は操作系なので発動時は触媒なしでオーラの支配が可能。(無生物、生物は対象外

これプラスあと1つ。サンズの能力があります


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9話 ※

キャラが分からねぇ


「皆様、大変お待たせしました。目的地に到着です。」

 

飛行船の中を響くアナウンスで目を覚ます。窓から外を覗いてみれば大きな円柱状のタワーが見えてきた。

 

あそこが3次試験会場?特段、何の仕掛けも無いように見えるけど...ここからじゃ“円”も届かないから中身も分からないなぁ。

 

「うえぇ、なにこれ」

 

出口に向かって歩いていると異臭と同時に赤黒い液体が広がっているのが目に入った。その液体は二つの人()()()ものの頭部から流れていた。

 

...うん!キルア君は何処かな?ちょっとお話しようか!まぁ降りれば居るんだろうけど!

 

大方、会長に勝てなくてイライラして殺っちゃったのかな?ヒソカはもっとうまくやるだろうし他の人はボコりはしても殺しまではしないだろう。

 

飛行船から降りてみれば特にこれと言った仕掛けがあるようには思えないただの石で出来た場所だった。

 

“円”を使おうとしたときビーンズさんから説明の声が耳に入る

 

「ここはトリックタワーと呼ばれる塔のてっぺんで、3次試験会場のスタート地点でもあります。」

 

「試験内容としては生きて下まで降りてくること。制限時間は72時間。頑張ってくださいね!」

 

説明が終わりビーンズさんが飛行船に乗り込んだと同時に離陸し、スタートの合図が聞こえる。

 

外壁に窓は一つとしてなくただの壁で特別なルールもない。『三日以内に下へ降りる』だけ。これは勝ちましたわ

 

「窓なんか無くてもこのくらいの取っ掛かりがあれば一流ロッククライマーなら難なくクリア出来るぜ?」

 

タンクトップ姿の筋肉質な男がどんどん下へと降っていく。

 

でも絶対に正攻法ではないよね。念能力者を除いて外壁からいけるのロッククライマーだけってそんなの試験にするはずがないもん。

 

まぁ私はその裏技で行く気まんまんですけど!正攻法で行ってなにが楽しいのさ

 

「ん?」

 

遠くからする気配に耳を澄ませれば「ゲ、ゲ」と不快に感じさせる声が聴こえてくる。

 

飛んで来たのは人の面、鳥の翼などちぐはぐな見た目に不気味な声を出す魔獣だった。

 

(ナイスタイミング!あれに決ーめた)

 

「あ、オイ!リアラ!?」

 

レオリオの制止を無視し、複数いるうちのトゲが付いていない一匹の背中に向かって落下する。

 

「おっとと...あっぶなー」

 

背に着地したときに多少揺れたがバランスを取り直した。【デスサイズ】を発動させ服の下に“周”をした鎖鎌を出す。

 

ロッククライマーの叫びをBGMに自分が乗っていない魔獣の首を全て落とし、動きを止める。鎖部分で魔獣と私を固定しておくことを忘れずに!

 

「ほらほら、早く上に登ったほうが良いんじゃない?多分あいつらまた来るよ」

 

「ヒィ...ハァハァ、あぁ分かった。感謝するぜ...。」

 

魔獣をみて過呼吸気味だった呼吸を整え、男は上に登っていった。流石はロッククライマー。少し焦りながらも数分もかけずに上まで登りきった。

 

さーてせっかく私の体長の10倍はある魔獣を見つけたんだ。これを利用しない手はない。

 

「ハッハッハー!それでは皆さーん!御武運をー!」

 

スパッと最後の一体の首を切り落とせば、翼の動きが止まり落下を始める

 

巨体が空気抵抗を受けているお陰で自分一人で落ちるよりも安定してるのだ。

 

あとは簡単!魔獣が地面に叩きつけられる瞬間に──

 

ドォォン

 

ジャンプするだけさ!はー楽な仕事だった。

 

ここだけの話、実は私師匠に休暇もらって受験してるんだよね。だから早く終わってほしいのに三日も暇とはこれいかに。

 

まぁ帰ったらどっちにしろ貯まった仕事地獄なんだけどね。休暇を休暇として使えるのはありがたい

 

塔の外周をぐるっと回ったけど見つかったのは扉とその上に仕掛けられた監視カメラくらいだった。

 

試験官がいると思ったんだけど当てが外れたね。しかたなく監視カメラに向かって話しかける。...端から見ればヤバいひとだよね

 

「あの~すみませーん!外壁から降りてきたんですけどー」

 

『あーハイハイやっぱいると思ってたぜ。ん?つーことは...まァいっか。ほらよ』

 

扉が開くとタワーの一階には大きな空間が広がっていた。

 

『406番 リアラ。三次試験通過第一号!所要時間7分32秒!』

 

ハハッ10分切ってやがる。どうせ皆は中から行くだろうから暇だね。ヒソカやギタラクルとかもこんな面白味の無いことなんてしないでしょ。

 

それじゃあおやすみ~

 

 

 

********************

 

 

 

『─────次試験通過第二号!所要時間6時間17分』

 

おっ遂に2人目が来たね。さぁて誰かなー?前半聞こえなかったけど面白い人だといいな

 

「へぇ君が一番だったか♠️」

 

...ワタシナニモミテナイヨ、ウン!きっとさっきのアナウンスは何かのトラブルなんだろうね!ピエロなんて目の前に居ないさ!

 

再び目を閉じて寝る準備をすると、居ないことにされたのを察したのかトランプが投げられる。ご丁寧に“周”をした状態で。

 

「あのね、こっちはわざわざ休暇取ってハンター試験しに来てるの!あんたにかまってる場合じゃないんだよ!」

 

「休暇で来てるなら遊ぼうよ♥️」

 

「うるせいやい!戦う気分じゃないっていってるの!ていうか話し中なのにトランプ投げんな!」

 

コイツ...本当に嫌い!お話し中は攻撃しないって言うのが暗黙のルールでしょうが!

 

無視しようとしても全部“周”されてるから出来ない上に念能力かと思うと避けるしかない。いっそのこと戦ったほうが楽なのでは?

 

布の中に鎌だけを具現化し、鎌には“周”を施しトランプを切り裂いて前にでる。この程度の“周”なら楽に対処出来る。

 

距離が離れても大丈夫な放出系と違って威力が低い。それでも自身の強化は意外と出来ているから強化系に近いけど強化系ではない。

 

トランプも“凝”を使って具現化したやつじゃないのも確認済み。残るは特質、変化、操作だけど特質は強化から一番遠いからナシ。

 

ってなると多分変化系か。“発”がどんなのか分からないから面倒くさすぎるんだよねぇ。

 

「ねぇ賭けをしない?」

 

「いいよ♦️何を賭けるんだい?」

 

即答かい...まぁいいけどさ。内容は──

 

「5秒間身動きが出来なくなったら負けでハンター試験中の間、一つだけ願いを叶えるってのは?」

 

「OK、いいよそれで♣️」

 

承諾したってことはその手段があるってことだよね。拘束系の念能力もしくはその技術があるってことかな?

 

鎌を力が入るように握り直し、足をオーラで強化することでヒソカとの距離を詰める。

 

私は相手を操作する系の念能力は持ってないから脳震盪による気絶を狙う。隙を作るためにスピードを生かし、四方八方から攻めていく。

 

上から、下から、鎌の動きに身を任せ流れるように攻撃を繰り出していく。時には足を使って顎を狙い、フェイントを交えながら攻防を続ける。

 

対するヒソカもトランプに“周”を使い、攻撃を捌きながらトランプを投げたりすることで行動の選択肢を減らして対応しやすくされる。

 

幸いにも一方的に攻めれているがフルスロットルで動いたせいで残りの体力を考えるとやはり短期決戦が望ましい

 

ヒソカが距離を取ろうとする。遠距離になると攻撃手段が激減する。

 

目を青くした矢先のことだったので必死に距離を詰めるために前足を踏み出す。が、意思に反して体が動かない。

 

「ごーお」

 

ヒソカの声が耳に届くと同時に目に“凝”を使う。すると薄く自分の周りに膜が張っていることに気づく。

 

「よーん」

 

膜は何層にも重なっていて、一つ一つが壁や床に刺さったトランプと繋がっている。力任せには千切れない。

 

「さーん」

 

【海の目】に変え、【デスマーチ】を発動させる。それでも少し動く程度で破壊までは至らない。

 

「にーい」

 

「はぁ、ここまでか...」

 

「いーち」

 

【海の目】でオーラを操作。オーラの支配権をヒソカにしたまま耐久を減らし脆くする。ゼロと口から発せられる前に膜を破り、目線を前に向けたまま手に持った鎌を後ろに引く

 

“隠”によって隠していた鎖がヒソカを拘束する。【海の目】による無機物操作で複雑に絡め合わせたことで強度をあげた。

 

 

ヒソカの念能力は

 

①私がどれだけ引っ張っても取れなかった『吸着性』

 

②おそらく攻撃の時につけられたのにすぐには動きを阻害しなかったから『伸縮性』

 

ってな感じかな?

 

 

考えている内に5秒が過ぎ、ヒソカがおとなしくなる。鎖はそのままで話しかける

 

「フフフ、やられたよ♠️」

 

「いえーい私の勝ちー!お願いは『ヒソカの方から私に関わらないこと』ね!」

 

パチンと指を鳴らし鎖鎌を消す。指を鳴らすのは何でかって?雰囲気作りに決まってるでしょ!

 

よし!ヒソカに関わられなくなったことだし暇潰しするかー。コイツ以外に基本怖いやつ居ないし。

 

 

 

─少女暇潰し中...─

 

 

「あ、来た来た。おーいゴン!キルア!クラピカー!」

 

残り1分になったとき出口から出てきたのは土埃をつけ、ボロボロになった3人だった。

 

「リアラ!?無事だったの?」

 

「我、守護者ぞ?自分すら守れずに他人なんて守れないよ!ところでレオリオ知らない?まだ来てないみたいなんだよね」

 

「リアラ...レオリオは...」

 

え?何でキルアはそんなに悲しそうな顔してるの?ていうかレオリオのこと知ってるってことは途中まで一緒だったんだよね?

 

もしかして、と思うと自分の顔が暗くなるのがわかる。クラピカでさえも放心したような顔をしてるし、やっぱりレオリオは...

 

「いやーイチかバチかだったな!」

 

「私の気持ち返せチクショウ!」

 

しっかりと後ろからレオリオが出てきた。心配して損したじゃないか!キルアは腹を抱えて笑いやがって!

 

ゴンたちはトンパと一緒で多数決の道で最後の分かれ道が『5人で長くて険しい』or『3人で短く簡単』を選ぶ。

 

時間が無かったから『長くて険しい』だと間に合わなかったんだけど、ゴンの提案で『長くて険しい』から入って『短く簡単』へ壁を壊したらしい。

 

『タイムアップーー!』

 

クラピカの説明が終わったとき丁度、時間切れのアナウンスが響いた。

 

『第3次試験 通過人数26名!内1名死亡』

 

ありゃ、誰か通過したけど死んじゃったのか。死んで合格よりも死なずに再挑戦のほうが絶対良いのに...

 

扉が開かれ外に出る。私はここを通るのは2回目だけど体力は全快してるからね。

 

外に待っていたのはパイナップルの頭をした試験官だった。

 

「諸君!タワー脱出おめでとう。残る試験は第4次試験と最終試験のみ」

 

「4次試験はゼビル島にて行われる。それにあたってクジを引いてもらう」

 

どこかから、「クジ?何のために?」と声が聞こえてくる。確かに何を決めるためにクジを引くんだろう。

 

その答えはすぐに帰ってきた

 

「──『狩るもの』と『狩られるもの』だ」

 

そして気づいた。ロッククライマー通過してないじゃん...




今さらだけどUndertale要素が今のところプロローグのみなんですが。大変だぁ


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10話

1日という大遅刻を仕出かした。すまねぇぃ


「この中には24枚のナンバーカード...すなわち、今残っている諸君らの受験番号が入っている。今から一枚ずつ引いてもらう」

 

どんな試験になるのか気づいた人はすぐにナンバープレートを隠す。私?来るんなら来いや精神だからずっと胸の辺りに付けてますけど、何か?

 

いや正直言ってさ、ギタラクルくらいしか警戒する相手見つからないんだよね。強いて言うならゴンたちとは戦いたくないけどね。

 

「それではタワーを早く脱出した順にクジを引いてもらおう」

 

おっと私か。前に進むと周りが少し騒がしくなる。そりゃそうだよね、あんな降り方したのにこうやってピンピンしてるんだもん。

 

箱の中に手を入れるとガサゴソという音が聞こえてくる。...何かこういうのって奥にある方が良いものってよく耳にするよね?

 

わくわくしながら四角いカードをみる。私の標的(ターゲット)は──404番?

 

え~っと私の番号が406で確かレオリオ、クラピカ、ゴン、私の順にプレートを渡されたから私の2つ前...ohまじか。

 

「ねぇ何番だった?」

 

「えっとね19...って危な!標的だったら例え友達でも容赦しないからね!」

 

フッこれをクラピカにギリ聞こえるくらいの大きさで言うことで自分が私の標的ではないと錯覚させる!もう、戦いは始まってんだよォ!

 

どうやってクラピカから奪おうかなぁ。盗む、拘束して取る、強奪、交渉する、脅す、出るわ出るわ手段の数々。交渉するのが一番穏便に済むね。

 

「全員引き終わったな。今諸君らがそれぞれ何番を引いたのかは全てこの機械に記録されている。従ってカードは各自で処分してもらって結構。そして、そのカードに書かれた番号の受験生がそれぞれの獲物だ。」

 

「自分と標的のナンバープレートは3点。それ以外は1点。ゼビル島での滞在期間中に6点分のナンバープレートを集めることで最終試験に進むことができる。では健闘を祈るよ。」

 

試験官から健闘を祈られました!正々堂々、プレートを奪うことを...多分、きっと、おそらく誓います!

 

ハンター協会の役員の女性に案内されて船に乗り込む。なんかチラチラと受験生がこっちを見てくるんですけど。

 

あっ(察し)、ごめんね気付かなくて...まさか大半の人が少女趣味(ロリコン)だったなんて...

 

と言うのは冗談で、ほとんど全員がプレートを隠しているのに対し、私とヒソカとキルアくらいが隠していないからだろう。

 

「やっほーゴンとキルア。何してんの?」

 

「お、丁度良いところに」「リアラは何番引いたの?」

 

「あー...そーゆーヤツね。ちなみにお二人さんは何番引いたの?」

 

「「秘密」」

 

「ハモるなぁ」

 

質問を質問で返し更にそれを質問で返すという投げられたボールを返さずに自分のボールを使うキャッチボールがあったが言及しないでおこう。

 

「安心しろよ。俺の標的は405番(ゴン)でも406番(リアラ)でもないからさ」

 

「右に同じく」

 

「オレも99番(キルア)じゃないよ」

 

ありゃ?私ではあるかもって言うこと?ゴンも駆け引きとかするタイプだったのか(失礼)

 

「じゃあ『せーの』で見せ合おうぜ」

 

「いいよ」「いいけど声に出さないでね」

 

「んじゃ行くぜ...せーの!」

 

バッと3人でカードを見せればゴンが44番、キルアが199番だった。...もう一度言おう、ゴンの標的は44番(ヒソカ)である。

 

「うわ、マジかよ。大丈夫か?」

 

「うん。倒すとかなら無理かもしれなかったけれど奪うだけならなんとかなるかなって。それよりリアラってあの時190って言ってなかったっけ?」

 

「え?ウソに決まってるじゃん。もう戦いは始まってるんだよ?騙さない人なんて只のバカでしょ。」

 

「うわ、きったね」

 

「失礼な!これも正当な戦術じゃい!」

 

キルアって私に対してちょっと辛辣じゃない?気のせい?そうですか

 

良い感じにリラックス出来たので2人と別れて一人で動く。準備運動でもしてればそのうち到着するでしょ。

 

案の定、あっという間にゼビル島に着いて協会の人からの声が響く。

 

内容は、3次試験の通過順に島へ上陸出来ることと滞在期間は一週間で最終日が終わったら船まで帰ってくること、だそうだ。

 

「それでは一番の方スタート!」

 

合図が入ったので船から降りて上陸する。“絶”を使って気配を消し、先ず探すのは水場と食糧。サバイバルの基本は理解してるつもりではある。

 

出来れば船から遠いところがいいかな?別に戦うのは良いけど面倒臭い。最悪、殺気と敵意のオーラぶつければほとんどの人は逃げ出すでしょ。

 

 

 

 

 

 

─少女探索中...─

 

「おっと奥まで来ちゃった。一旦引き返そっか。」

 

もう何度目かの島の端をみた後、来た道を引き返し船まで戻れるか試してみる。

 

探索中に水場は見つけたがゼビル島がどれくらいの広さなのかとどの位置に水場があるのかを把握するため駆け回っていたのだ。

 

水場は池のようなものが2、3個。川も数本通っていて水にはあまり困らない上に食べられる植物や少し狂暴な獣がいる程度で食糧の心配もない。

 

探索してからかれこれ一時間と少し経つが襲ってくる気配もない。まぁ、前の受験生がスタートしてから5分後に次の受験生がスタートするのでようやく全員スタートしたくらいだろう。

 

「お!ようやく見つけた」

 

気配がした方向を向けば、膝立ちすると隠れられるほどの高さのある草むらで緑の服を着た男と弓を構えて気配を消す男の姿が見えた。

 

気配を消していた男が弓矢を打ち放つ、が直前に殺気を感知した緑の服の男は間一髪で回避し続けざまに飛ぶ矢も右肩にかするだけで終わる。

 

その後に矢が放たれることはなく、緑の服の男は剣を構えてゆっくり近づいていく。しかし、弓の男は逃げる様子もなく徐に立ち上がった。心なしか笑みをこぼしながら。

 

次の瞬間、近づいていた男がうめき声を上げて歩みが止まり、そのまま倒れて動かなくなった。

 

「矢には速効性のシビレ薬が塗ってある。一週間はまともに歩くことも出来ないよ。まぁ水場はすぐ近くに゛ッ」

 

顎に蹴りを入れて脳震盪を起こさせる。加減したから数分で動けるようになるだろう。

 

「ちょっと注意不足だね。説明するのは良いけど誰がどこに潜んでるかは把握しとかないと、ね!ゴン!」

 

左の木を見ながら言えば顔だけ出したゴンが驚いた様子でこっちを見ていた。フッまだまだ若いのう。同年齢だけど。

 

私は周囲に気を配りつつ、ナンバープレートを奪って布の裏側に付ける。その間にゴンは木から降りてこっちに向かってきた。

 

「ストップ!ゴン、こっちに来ないで!」

 

「え、何で?」

 

「例え友達でも敵として扱うって言ったよね。今、私は自分のとこの2つで合計5Pなんだからゴンのを取れば合格できるんだよ。でも私はゴンと戦いたくないからね。アディオス!」

 

全速力でゴンから離れて一番遠い水場へ向かう。川や近い水場はゴンの拠点になってるだろうからだ。

 

後ろから「あでぃおす?」って聞こえたけど私も知らん!師匠がよくサヨナラって意味で使うから言ってみただけ!

 

て言うかゴンは後ろの人に気づいているのかな?...いやあの様子は気づいてなさそうだね。

 

その後、運が良いのか悪いのか誰とも出会うことなく一日目を終えた。

 

 

 

 

─二日目─

 

...おかしい。絶対おかしい。昨日から夜の間も走り回っているのに誰とも会わない。

 

確かに“円”を使ってない分、索敵能力が低いのは分かる。それでも一人も会わないってどうなんですかね?

 

「ぶっ殺す!!!」

 

Oh...今のはレオリオの声だね。あれだけ声を荒らげるってことはめちゃくちゃ煽られた、もしくは騙されてナンバープレートを奪われたとかでしょ。

 

声がした方向に向かえば逃げるトンパを追いかけるレオリオ、そしてこちらに気づかず向かってくる肩に猿を乗せた紫の服の男。

 

向かってきた男はボコボコにしてプレートを奪った。...403番(レオリオ)のもあったからこの人とトンパがグルだったんだろうね。

 

標的じゃないためレオリオに届けようとしたとき、目に入ったのはレオリオとクラピカが話している姿。

 

徐に隠していた髑髏の仮面を手に持ち顔に被せる。

 

ルールを聞いたときから決めていたこと、『標的(ターゲット)なら例え友達(クラピカ)でも容赦しない(本気を出す)』。

 

本気を出すときのスイッチが髑髏の仮面だ。

 

「やっほークラピカとレオリオ。元気?」

 

レオリオとクラピカは表情を隠さずに驚く。そしてすぐに服装からリアラであると判断したのか安堵の息をこぼす。

 

「なんだよリアラかよ、驚かせんなよな。その仮面はなんなんだ?」

 

「あーこれ?これはね()()()()()だけ使う仮面なんだよ。」

 

「ほぅ、リアラに敵として認められるヤツがいたのか」

 

「うん!といっても今から初めて戦うんだけどもね!」

 

鎌を手に持ち鎖を周りに纏う。誰もがよく知る『冥界の守護者』の戦い方だ。そしてだめ押しにカードを見せる。

 

標的が自分だと分かったクラピカは驚いた様子を見せるがすぐに武器を構えて臨戦態勢をとる。同年代から見れば隙がなく戦いづらい構えである。

 

同年代の例外が相手でなければ。

 

瞬殺と言って良いほどすぐに終わった。腕もろとも鎖に封じられ木にかけられて空中に浮いているため抵抗すらできない。

 

「確かに受け取ったよ~404番のプレート。これプレートをくれたお礼ね」

 

53番、105番、118番のプレートを置く。これを見たクラピカは目を見開き、驚愕を顔に浮かべる。

 

ついでと言わんばかりに403番のプレートをレオリオに投げる。レオリオもクラピカと同じ表情をする。

 

「じゃ、私は残りの5日間はてきとうに過ごすからそのプレート守って合格して見せてね!アディオス!」

 

ポカンとしている内にクラピカの拘束を解き、走って根城に向かう。夜の間に見つけた天然物の洞窟だ。

 

きっとゴンと同じく「あでぃおすってなんだ?」とか考えているだろうが、本当に知らないのだ。気持ちとしては覚えたての単語を言う小学生と似たようなものだ。

 

目的を果たし、洞窟の奥深いところでそのまま眠りについた。

 




第二者視点ってどういう時に入れるのが正解?


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11話

少し遅れてすみません


標的である404番(クラピカ)と自分の406番をしっかりと目で確認し、残りの5日間は守るだけとなった。

 

すでに他の人で3P貯まっていたのに何でクラピカと交換したか、って言うと私を狙う人が減るからなんだよね。

 

1+1+1Pは3人に狙われるけど3Pは1人にしか狙われない。別に挑んでくるのは構わないけど鬱陶しいったらありゃしない。

 

私を狙ってくる1人も私の正体を知ってるクラピカだから挑んでくることなんて無いだろうし。フフフ、勝ったな風呂入ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて、思っていた時期が私にもありました。

 

それは魚や獣を捕まえては干し木の実を見つけては蓄える、を繰り返し洞窟に籠る準備を終えて洞窟でぐうたらしてる時に起こりました。

 

寝てる時に気配を感じて目を開けると数秒後になんと砂漠で見かけるような白い服を着た男が入ってきたのです。

 

その男は私を見た瞬間驚いた様子でしたが何もしないところを見ると敵対する気が無いと判断し、何やらよく分からない動作をしました。

 

すると何と言うことでしょう。その男のゆるい服の間からおびただしい数の蛇が湧いて出てきました。その男はその様子にニヤリと口角を吊り上げると私に向かってこう言いました。

 

「この部屋から出ようとするとこの蛇が襲いかかるようにした。死にたくなければナンバープレートを寄越しな」

 

...うん居たね、私に挑んでくるヤツ。この会いたい時に来なくて会いたくない時に来るのは何なの?私の運命君は天邪鬼ですか?

 

無視して入り口に近寄ると蛇が出てきて「ここから先は行かせない」と言わんばかりに威嚇してきた。...これは本当に出れなそうだね

 

「これで分かったろ?俺はこいつらの解毒剤を持っている。お前のプレートと交換してやるから渡しな」

 

フムフム、外に出るには蛇に咬まれながらも行くしかない。でも毒があるから外に出れたとしても薬が無ければ死ぬかもしれない。そして、その薬はこの男が持っている。

 

私だって全く効かない訳じゃなくて効きにくいってだけだ。これだけの数の毒蛇に咬まれたらいくら私でも死ぬ可能性はある。

 

「本当にプレートを渡せば解毒剤を渡してくれるんだよね?そうすれば助かるんだよね?」

 

「...アァ勿論さ。プレートは地面に置いて離れたところに行ってくれ。それで交渉成立だ」

 

私は外套に着けている自分のプレートを外しそのまま布の内側に着ている服に取り付けた。

 

「──だが、断る」

 

「な、ナニィ!?」

 

「私が最も好きなことの一つは、自分で強いと思っている相手に“NO”と断ってやることだ!フハハハハ──ゴホッゴホッ」

 

幸い私には食糧も水も十分にある。残りの5日間程度なら健康的な状態で問題なく過ごせる。つまり無理して外に出る必要が無いのだ

 

高笑いのし過ぎで噎せている間に入り口の方向から出てきた白い煙が狭い洞窟内に充満する。

 

白い煙で真っ先に警戒したのは毒など死に至らしめるもの。息を大きく吸い込みガスを吸い込まない内に肺に酸素を入れる。そして口を閉じ酸素を止める。

 

蛇使いの男も瞬時にそれを察知し、同じく息を止める、が水中戦などの息が出来ない状況を想定して訓練していたリアラより息が続かず、やがて力無く洞窟の壁に寄りかかったまま動かなくなった。

 

リアラは記憶の中でガスマスクを持っていたような人がいないのを確認した後、頭の中を“無”で満たし、下手に動かず、出来るだけ心臓の鼓動も減らし、最低限の行動に留めることで長時間息を止めることに成功していた。

 

洞窟の入り口の気配を感じてから7~10分ほど経った頃、すでにガスが見えなくなり気配がこっちに向かっているのを感じとる。目を閉じて体の力が抜けた用に横たわる。

 

コツコツと洞窟の通路を歩く音が聞こえ、更に耳を澄ませば音の間隔からすれば歩幅が短く、女性であろうことが分かる。

 

あれ?そういえば私ってフード被ってるから目を開けてもバレないんじゃない?

 

ゆっくりと目を開き入ってきた人の姿を見る。暗い洞窟内にランタンを持って入ってきたのは全体的にピンクっぽい色の服と帽子を着た緑髪の女の子だった。

 

その女の子はランタンで右、左、上、下を照らしていく。女の子が蛇使いの男を見つけると同時に罠が無いかと疑いながら歩みを進めていく。

 

男まであと数メートルの距離に迫ったその瞬間、カツーンと小石が跳ねる音が洞窟の中で響く。私の近くに居た蛇が動いたためだ。

 

音に反応した女の子はゆっくりと顔を動かし...目が合った。

 

「えっと...こんにちは?」

 

「───~~~~!?」

 

女の子は声にならない悲鳴を上げながら腰を抜かしたようにその場で座り込んでしまう。他ならぬ自分を見た時に。

 

え、そんなに驚かなくても良くない?なんでそんな化け物を見たかのような目で私を見るの?

 

ふと、自分の容姿を思い出してみる。黒い髪の毛がある上に黒い外套を纏っているが、目だけは金色に輝いている。...この暗い洞窟内では全体的に黒い私は目だけが空中に浮かんでいる様に見えなくもない。

 

「あっ、いや違くて、別に驚かそうとか思ってた訳じゃなくて、なく...て....───~~~~!?」

 

弁解しようとしたとき、今度は私が悲鳴を上げる番だった。その原因は少女の帽子の中から数え切れないほどの蜂が飛び出してきたからである。

 

リアラの数少ない弱点、それは虫が大嫌いなことである。基本、リアラは冷静じゃなくなる事は殆どない。怒ることはあってもそれは『冷静に怒っている』のだ。

 

一見それは矛盾しているように見えるが、怒りに身を任せなければ、つまり感情をコントロールできればそれ程難しいことではない。

 

この感情のコントロールを失う要因の一つが“虫との遭遇”なのだ。無論、冷静さを欠いたとしても『冥界の守護者』と呼ばれる実力が失われる訳ではないのだ。

 

向かってくる蜂にすぐさま【デスサイズ】+【デスマーチ】による防御を展開する。寸分違わず胴体を真っ二つにする一振で数匹の命を奪い去っていく。その一振が二振り目を補助し、二振り目が三振り目を補助するように鎌を振るうことで無数の蜂は目に見えて数を減らした。

 

半数ほどになったところでようやく少女が正気に戻ったのか蜂が少女の元に戻り始めた。それに伴い、頭が急速に冷えていくのが分かる。

 

冷静さを取り戻したおかげで周りを見渡す余裕が出来た。その結果、蛇使いの男が左手を大きく腫らしながら苦痛に悶えていた。それを見た少女が驚愕を顔に浮かべる。

 

彼女の反応を見るにあの蜂の毒は直接死に至らしめる物ではなく、精々体の自由が利かなくなる程度の物なのだろう。それでも死にそうなのはアナフィラキシーショックが起きた以外は考えられない。

 

アナフィラキシーショックとは。一度、蜂に刺されたとき人の体に出来た蜂の毒への抗体が出来る。この抗体が原因で二度目刺されたときにアレルギー反応を起こすというものだ。

 

当然、蜂を武器にしているならそれの処置も可能なのだろう。しかし、それは蛇使いの男が張った罠によって不可能となる。少女が処置しようとした時に蛇が牙を剥いたのだ。

 

結果そのまま男は死んだが、蛇は変わらず出口と男を守り続けたため、少女と共に洞窟内で過ごすことになった。

 

て言うかさぁ、念能力者じゃないのに特殊能力持ちすぎでしょ!こいつもこの子もさも当然かのように振る舞うしさぁ!

 

沈黙が辺りをつつみ、居心地が悪くなったせいで話しかけざるを得なくなった。少女が私を警戒する視線がウザイので両手を上げながら話しかけてみる。

 

「あー、改めてこんにちは。リアラって言います。そちらから攻撃しない限りは戦う気は無いです。」

 

「えっと、まぁ、こんにちは。名前はポンズで私も戦う気はないわ。その男を追ってきたのは良いけどまんまと罠にかかっちゃったみたいね。」

 

「まぁ、プレートに発信器があるっぽいから助けを待ちますか。あっこれお裾分けです」

 

「ありがとう。そうね、幸い私もあなたも食べ物には困らないようだし。」

 

それから色んな話を聞いたり話したりした。蛇使いの男、バーボンがポンズさんの標的(ターゲット)だったこと。ポンズさんの蜂攻撃のトリガー。私の武器やタワーから落ちてどうやって生き残ったのかも。

 

タワーの話は落下速度と同じ強さでジャンプすれば出来るので難しくはない。なのにこちらを信じられない物を見るかのような目で見てくるのは何故なのだろうか。

 

 

 

─────────

──────

───

 

 

 

 

 

そうこうしている内におそらく4日ほど経った。暗い洞窟の中では時間の感覚が掴みずらいが何となくで良いならもうすぐ助けがくるだろう。

 

そんな中でふと洞窟の入り口で一人の気配を感じた。それは一度離れたあとすぐに戻ってきてここにたどり着く。その気配の主はなんとレオリオだった。

 

「あんたがポンズだな?悪いがプレート貰うぜ。」

 

「いやよ、それにあなたもここから出られなくなったしね。そこにいるバーボンのせいでね。」

 

それを聞いたレオリオは出口に近づく、が例に漏れずレオリオも蛇に威嚇される。しかし、それを無視してレオリオは叫んだ。

 

「ゴン、クラピカ、来るな!ヘビだ!!」

 

次の瞬間には咬まれたが最後の抵抗と言わんばかりにナイフで数匹の胴体を頭と切り離す。私は少なくともこの試験においては友達を助けようとはしないと誓っていた動かなかった。

 

レオリオが叫んですぐにクラピカとゴンが忠告を無視して洞窟内に現れる。ゴンがヘビの種類を見抜き、私の包帯を使い、応急手当を行うが一刻を争う状況なのは変わらない。

 

「バーボン!お前の望みのプレートなら全て渡す!今すぐ私たちをここから出せ!」

 

「ムダよ。彼はもう死んでいるから」

 

クラピカがバーボンと交渉するが、残酷なことに死んでいるため意味を成さない。それをポンズさんが告げると疑問を浮かべる。

 

ポンズさんから殺した方法をバラさなければ私も言うつもりはなかった。殺し方は闇の世界でもバレれば対策される。その結果、自分が死ぬことになるのだ。

 

せっかく出来た友達を危険な目に合わせる気もない。レオリオは自分から行ったんだから知らん。ま、その殺し方も結局クラピカの観察眼でバレたんだけどね。

 

流石の私もレオリオを見殺しにするほど鬼じゃない。自分のしたことの責任は自分でとれ、と私は思うが死ぬのは重すぎる。生きている限りはやり直すチャンスがあるのだから。

 

「ゴン、クラピカ。今からこのヘビ達を駆逐して上げる代わりにさ、私の面倒見てくれるならやるけど、どうする?」

 

私の提案に目を見開いて驚く二人。しかし、驚きこそすれど迷うことなく首を縦に振った。

 

「おっけー、じゃあ3人は目を閉じててね。良いって言うまでに開けたら頭と胴体は永遠の別れを告げることになるからよろしく。」

 

顔を青くした二人と違い、ゴンは普通に目を閉じてそれを見て二人もすぐに目を閉じた。しっかりと目を閉じたのを確認した私は奥の手を使う。

 

「『命ある者に(LOVE)を。(LOVE)無き者に死を。死せる者に新たな命を。回る廻る世界は(まわ)る。私は常世を愛す者。』」

 

「【審判の代行者(DEAD or LOVE)】!」

 

そう呟いた瞬間、ごっそりとオーラが抜ける感覚に陥る。体に倦怠感が襲うのを感じさせずに入り口に向かえば無数のヘビに囲まれる。

 

 

パチン

 

 

指を鳴らせば目の前のヘビは光に包まれる。

 

 

ブン

 

 

腕を振り下ろせばホネが貫く。

 

 

パンパン

 

 

手を叩けば世界が転る。

 

それを繰り返すこと数回。残ったのは何かが焼けた跡と()()()()()()()()()。ヘビがいなくなった洞窟内で3人に目を開くことを許可する。能力を解除することを忘れずに。

 

クラピカは目の前の光景に驚くが、すぐに動き始めてバーボンの服の中を探しだす。探し物を見つけて手に持ったのはナンバープレートと解毒剤。

 

すぐにレオリオは解毒剤によって治療され、穏やかな寝息をたてて眠っている。

 

「ポンズ、といったか?これがあれば6点分になるのだろう。そちらの睡眠ガスと交換しないか?」

 

手に持った103番/バーボンのナンバープレートを見せながらクラピカが交渉する。ポンズにとって既に半分程度しか残っていない催眠ガスと交換できるなら安い物だと。

 

ポンズはそれを了承し、催眠ガスがクラピカの手に渡りプレートが彼女に渡された。次の瞬間、プシューという音と共にポンズの頭が白い煙で包まれる。

 

クラピカから催眠ガスを借りてポンズに使ったのだ。催眠ガスによって良く眠ったポンズは私によってプレートを失った。

 

洞窟の外は既に夜の帳が降りていて真っ暗だったためそのまま眠りについた。

 

 

********************

 

 

ハイ、どーも!たっぷり寝て元気な私です!朝の島中に届くような大きなアナウンスで飛び起きたよ。

 

なんと1時間で元の場所に戻ってこなかったら不合格だとか。方向音痴だったら絶対ムリじゃん。まぁ私は違うんだけれども。

 

トリックタワーからゼビル島に来た時のような船で行くのではなく、飛行船で移動するっぽい。

 

飛行船の発着するところには既に私以外の合格者が来ていたようで私の後から来る人はいなかったことに驚いた。

 

4次試験の合格者はヒソカ、キルア、格闘家の男性、忍者みたいな男性、ギタラクル、レオリオ、クラピカ、ゴン、私、だった。

 

それぞれが飛行船に乗り込み、次の、最終試験の時間が来るのを待った。

 

 

 

ちなみに余談だがクラピカとレオリオは途中ヒソカと出会い、プレートを一つが渡して危機を脱出。何処かから飛んできた197番のプレートで1点が4枚だったため問題なかったらしい。

 




審判の代行者(DEAD or LOVE)
詠唱により発動。全オーラの8割を消費+“纏”の使用不可。残りの2割が無くなると強制的に解除され、行動不能になる。

効果は大きく分けて3つ
①ホネを作りだし操作する。
②ブラスターを作りだしビームを放つ。
③見えている範囲の重力操作。

数字が大きいほどオーラの消費量が多く、最初に消費したオーラを使って作られる。①②は当たると相手のオーラを減らし、自分に少しだけ還元される。


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12話

約三週間ぶりです。すまねぇぃ


 

飛行船が離陸してから数分。船内にアナウンスが響きわたる。

 

『えーこれより会長が面談を行います。番号を呼ばれた方は2階の第一応接室までおこし下さい。』

 

『受験番号44番の方。』

 

あ、ヒソカが呼ばれた。きっと番号順だろうから私は一番最後だー。なんか病院の呼び出しを思い出すなぁ。

 

にしてもなぁ、面接にいい思い出なんて無いんだよね。容姿を見せれば足下見られて侮られるし、たまに居るのは同じく雇った護衛が力の差も見分けられない雑魚だったりするのが一番面倒。

 

あ、別に私は年齢偽ってるとか念能力で見た目変えてるなんてことはないよ?“念能力者は見た目によらない”なんて言うけど実際そんなの多くはないし。見た目で油断させるのは私もしてるから警戒はするに越したことはないけどね。

 

見た目で油断させると言えばオーラを一般人並にする技ってなんて呼ばれてるか聞いたことないんだけど──

 

『ハーイ!知らない人はハジメマシテ!知ってる人はコンニチハ!リアラの師匠であるホロウだヨ~!』

『ボクの正体はまた今度、あの子が楽しくお喋りしてる間に、このボクが面接をダイジェストでお届けしちゃうヨ!』

 

『面接で聞かれたのは注目している人、一番戦いたくない人の2つ。それぞれ順番に①②で表すヨ!』

 

44番、ヒソカ

①→99番     ②→405番

 

99番、キルア

①→405番     ②→191番

 

191番、ポドロ

①→44番     ②→99番405番406番

 

294番、ハンゾー

①→44番     ②→44番

 

301番、ギタラクル

①→99番     ②→44番

 

403番、レオリオ

①→405番     ②→405番

 

404番、クラピカ

①→405番44番     ②→誰でも

 

405番、ゴン

①→44番     ②→99番403番404番406番

 

406番、リアラ

①→99番405番     ②→44番

 

『こんな感じかナ!詳しく知りたければ原作をどうゾ!それでは皆様、また来世~!!』

 

──うんやっぱり、カレーと鍋は至高の料理だと思う。ただしシチュー、テメェはダメだ。

 

「さてと...」

 

面接を手早く終わらせ、ゴンを探して飛行船内を出歩く。探索などには念能力を使わない方が楽しくて良いものだ。師匠も“便利すぎるとツマラナイものだヨ?”って言ってたし多分間違いない。

 

途中レオリオと会ったので一緒にゴンのいる場所へと案内してもらい、無事たどり着くことが出来た。

 

ゴンへの要件は、4次試験中に何があったのかだ。あの時、確実に何かがあったと思わせる程に前と後の雰囲気がちがった。

 

その事を聞くと悔しい気持ちを全面に出しながらも語ってくれた。

 

第4次試験中、ゴンがヒソカの隙をついてプレートを奪ったあと(ヒソカの隙をつけるのも凄いけど)、油断して他の受験者にプレートを取られたらしい。その受験者がたまたまヒソカの標的(ターゲット)だったため、44番(ヒソカ)をゴンに渡して借りを作ったという。そのときヒソカは

 

『ボクを殴ることが出来たら受け取ってあげる♥️』と言ったという。

 

それを聞いたあと、私はいった。

 

「(ヒソカに目をつけられて)ご愁傷さまです」と

 

 

 

─────────

──────

────

 

 

 

「最終試験は1対1のトーナメント形式で行う。」

 

飛行船から降りた後、ガラガラとホワイトボードを引いて言い出したのは皆さんご存知のネテロ会長である。

 

最終試験のクリア条件はとてもシンプルで一回勝てば良いだけ。武器あり、反則なし、『まいった』を言わせれば勝ち。ただし、相手を殺した場合は即失格。

 

最終試験を受けられる回数は試験の成績と印象値で決まり、面談で組み合わせが決定されたらしい。まぁ私は4回もチャンスあるし大丈夫でしょ。

 

最初は、ゴンVSハンゾー。ハンゾーはTHE忍者って感じの人である。

 

パッと見、ゴンよりハンゾーのほうが強い。忍者と言うだけあって気配にも敏感なようでゴンが気付かなかった後ろを()けてくる試験官にも気がついていた。

 

「それでは始め!」

 

合図と同時に素早くかけだすゴン。大方、速さで翻弄しようと言うのだろう。しかし、並の人より速い程度ではハンゾーにとって遅いと感じるくらいだ。

 

実際、すぐに追い付き当て身する。あれってみんなが想像する以上に難しいからね。なんか...こう、うん。感覚だけでやってたから分からんわ。

 

倒れ込んだゴンをむりやり起き上がらせて再度脳を揺らす。気持ち悪さから吐いているがハンゾーが手を抜く気はないようだ。ずっと冷たい目で見下ろしている。

 

ハンゾーが「まいったと言う気はないか?」「言った方が楽になる」「今終わらせれば次の影響もない」「意地を張っても良いことない」「差は歴然だ諦めろ」と様々な言葉を投げ掛けるがゴンは確固として『まいった』という一言を言わない。

 

結果、何度も何度も脳を揺らされ続け気力も血反吐も出なくなるほど時間がたった。

 

「フフッ」

 

小さく笑ってしまった。レオリオにでも聞こえていればそれこそ激昂していたかもしれないが聞かれてないので問題ない。それでも笑わざるを得ない

 

だってゴンの心は折れてない。ここまでされて揺るがない意思なんて早々見れるものじゃない。それに対してハンゾーの方は少しだけ揺れている。他人が気付くほどではないが、戸惑い、焦り、そんな感情が目に出ている。

 

客観的にみれば追い詰めているのはハンゾーなのだろう。だがこのルール下なら追い詰めているのは逆なのだ。折れない方が勝つ。ならばどっちが勝つかなんて一目瞭然。

 

「いい加減にしろよテメェ!俺が代わりにブッ飛ばしてやるぜ!」

 

「...見るに堪えねぇならきえろよ。ここからもっと酷くなるぜ。」

 

ゴンの為にレオリオがキレて前に踏み出すが1対1ゆえに黒服の男たちに止められ『今手を出せば失格になるのはゴンの方』と言われれば動けなくなる。

 

そしてどれだけやっても折れないゴンにハンゾーはついに上から体重をかけ、左腕を後ろへと回させる。

 

「腕を折る。本気だぜ、言っちまえ」

 

「 い や だ !!」

 

バキッと抵抗したゴンの腕から音がなる。ゴンは悲鳴をあげるが、痛みのあまり声にならず、その様子を見たレオリオも握りこぶしを作る。

 

「さぁ、これで左腕は使い物にならねぇ。」

 

床に倒れるゴンにハンゾーが冷たく事実を突きつける。受験者の一部は「本当に折るとは...」など呟いているが本気で拷問するならまだ甘い。

 

「クラピカ、リアラ、止めるなよ。あの野郎がこれ以上何かしやがったら...ゴンにゃ悪いが抑えきれねェ...!」

 

「止める...?私がか?大丈夫だ、おそらくそれはない」

 

あらお二人とも血気盛んじゃん。私としてはゴンに勝って欲しいからもちろん止めますけども?クラピカも変な言い方やめてくれ...つまりは『私も行くから止めれない』ってことでしょ!?

 

そんな時、ハンゾーは徐に片手だけで逆立ちをして目を閉じる。ゴンに絶対に勝てないという気持ちを与えるためだろうか?さらには自分語りを始め、床につく指の本数を減らしていく。

 

しかし、そこで黙っているゴンではない。持ち前のタフネスでゆっくりと起き上がり少しだけ後ろに下がる。ここでもハンゾーは目を閉じているので気づかない。

 

「悪いことは言わねェ...負けを認めな!(キリッ」

 

効果音が入ると同時に目を見開く。そのままゴンの蹴りがクリーンヒットォ!反応できなかったハンゾーは顔面にモロに受け、べちゃっと床に転がる。

 

やはり長いおしゃべりのおかげで立ち上がれるほどには回復したよう「よっしゃあゴン!!行け!殺すのだ!」...レオリオよ分かってると思うが殺すと負けだぞ...

 

「まぁわざと蹴られてやったわけだが...」

 

「うそつけ──!!」

 

レオリオがここにいる全員の心の声を代弁してくれたわ。お前、ちいさな声で「ぁ...」って言ってたの聞こえてたからな!蹴られたことで出た鼻血を手の甲でぬぐうが、涙が少し流れているのも見逃さないぞ!

 

「この対決はどっちが強いかじゃなくて『まいった』を言うか言わないかだもんね!」

 

「分かってねーぜお前。オレは忠告してんじゃねぇ。これは命令してんだぜ?」

「もっと分かりやすく言ってやる。脚を切り落とす、二度とつかないようにな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは困る!!」

 

「「「は?」」」

 

「脚を切られちゃうのはイヤだ!でも降参するのもイヤだ!だからもっと別の方法で戦おう!」

 

「なっ...てめぇ自分の立場分かってんのか!?」

 

今まで散々、殴られ、蹴られ、腕も折られているのにそこで『イヤだ』と言えるふてぶてしさよ。ほら、空気が変わってもうゴンのペースになった。

 

「勝手に進行すんじゃねぇよ!舐めてんのか!?その脚マジでたたっ切るぜコラ!」

 

「それでもオレは『まいった』なんて言わない!そしたら血が出て死んじゃうよ?」

 

「ム...」

 

「そしたらそっちは失格になるんだからお互い困るでしょ?だから考えようよ」

 

ふふっ...ダメだ抑えきれない...だってみんなからも笑い声聞こえてくるもん!なんでわざわざ自分を傷つける相手に向かってそんなことが言えるのかわからん。

 

そんな空気のなか、苦し紛れにハンゾーの仕込みナイフがゴンの額に突きつけられる。切れ味は抜群で、額から血が流れる。

 

「やっぱりお前は何もわかっちゃいねぇ!お前は死んだら次はないんだぜ?かたや俺は来年また再挑戦すれば良いだけだ。俺とお前は対等じゃねぇーんだぜ!?」

 

「・・・」

 

誰も何もしゃべらず、静寂に包まれる。

 

「...何でだ?...たった一言だぜ?...それこそ来年また挑戦すればいいじゃねーか!」

「命より意地のほうが大事だっつーのか!?そんなことでくたばって本当に満足か!?」

 

「...親父に会いに行くんだ。親父はハンターをしてる。時間はかかるかもしれないけど、きっと会えるって信じてる。」

「...でも、もしここで諦めたら...一生会えない気がする...だから退かない」

 

「退かなきゃ死ぬとしても...か。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「...『まいった』オレの負けだ。オレにお前は殺せねぇしお前に『まいった』と言わせる方法も思い付かねぇ...負け上がりで次にかける。」

 

まぁ、そうだよね...私でも“念”なしで言わせる方法が思い付か「そんなのズルいよ!」...な、い?

 

「ちゃんと2人でどうやって勝負しようか決めようよ!」

 

「フッ...バカか!?テメーはどんな勝負でも『まいった』とは言わねぇんだからこうするしかねぇじゃねえか!」

 

「だからってこんな風に勝っても全然うれしくないよ!」

 

「んじゃどーすんだよ!」

 

「だからそれをかんがえようよ!」

 

「あ~~つまりはこうか?『俺は負ける気だがもう一度真剣に勝負し、その上でお前が気持ちよく勝つ方法をともに考えよう』っーことか?」

 

その言葉に純粋なひとみと笑顔をもってしてゴンはハッキリ答える。

 

「うん!」

 

「アホか───!!!」

 

ハンゾーのアッパーカットがきれいに決まり、そのままゴンは気絶した。

 

「会長さんよ。アイツが起きたらきっと合格を辞退するぜ?そしたらこの後の試合は全部、無駄になるんじゃねぇか?」

 

「...心配しなさんな。ゴンは合格、本人がなんと言おうともそれだけは変わらぬよ」

 

「なるほどな。それ聞いて安心したぜ。」

 

ゴンが黒服の協会の人に医務室へ連れられ、場所が空くとすぐに次の試合の二人が出てくる。

 

「第2試合、クラピカVSヒソカ!始め!」

 

開始と同時にクラピカが駆け出す。手には木刀3つがひもで繋がった武器をもっている。

 

対するヒソカもトランプを投げて牽制...遅くね?念能力者ならあの10倍は速く投げられる。まぁそれでも充分、脅威ではあるのだが...もしかしてクラピカも目をつけられてる?もしくは品定めだろうか?

 

とんでくるトランプを避けつつヒソカを間合いに捉え、クラピカが猛攻を繰り出すが軽く回避したりトランプで受けている。...トランプに“周”をしていないのに木刀を受け流せているのだから素材が違うのだろう。

 

しかし、クラピカの攻撃も数秒たったくらいでヒソカが攻撃にうつることで防御に徹するような構えに変わった。

 

やはりヒソカは手加減しているようで、それでもクラピカがギリギリ捌けるような攻撃を繰り出す。クラピカは木刀でガード出来ないところは身を捩って回避するが、少しずつ切り傷が増えていく。

 

このままではダメだと思ったのかクラピカが攻勢に出る。一本目と二本目を手にもち、腕を振るう。もちろんトランプで防御されるが、勢いよく振るったことで三本目がヒソカの左からとんでくる。

 

それすらも後ろにのけ反ることで回避したヒソカだが、クラピカは次の手を打っていた。二本目を防御した腕を三本目とのひもを引っ掛け、右手で力を込めてひっぱる。

 

ぐんと少しだけよろめいたヒソカにクラピカの左こぶしが入った。追撃しようとは思わずすぐにひもを解いてバックステップで後ろへと下がる。

 

その一連の行動にヒソカは恍惚とした笑みを浮かべて一言。

 

「うーんイイネ、合格。」

 

ヒソカがゆっくりとクラピカに近寄る。クラピカも警戒するがヒソカは間合いの一歩手前で止まる。

 

「────。『まいった』」

 

ヒソカが何かを話したあと、すぐに降参する。クククッと喉をならして笑い、場所をあける。クラピカも下を向きながらではあるが、同じように場所をあけた。

 

「さてと」

 

「第3試合、ハンゾーVSリアラ!それでは始め!」

 

 

次は私の番だ

 




色々忙しくて投稿出来ませんでした。今後、不定期更新になると思いますm(_ _)m


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13話

いつの間にか評価バーに色がついている!?どうやったら付くか分からないですが良いことなんでしょう。ありがとうございます!!

今回は短めですm(_ _)m


 

勝負は一瞬だった。

 

「それでは始め!」

 

始めの合図が聞こえ、リアラの姿が掻き消える。次の瞬間、スパーンと小気味いい音と共にハンゾーの体がぐらりと傾く。

 

「 」

 

「?????」

 

「!...へぇ」

 

「ほう、やるのぅ」

 

フィールドの周りを取り囲んでいた受験生の多くはリアラを見失い、ハンゾーが倒れたことに絶句し困惑。試験官と一部(念能力者)の受験生は感嘆の声をもらす。

 

合図が聞こえると同時に“流”による脚力の強化。素早くハンゾーの懐に潜り込み、小柄なことを活かして“絶”の足でアゴに蹴りを入れる。

 

“流”から“絶”の流れを一切止まらず、更には念能力者以外の強者でも目で追えない様子に実力の高さが窺える。

 

ちなみにリアラはといえば

 

「(やっば強くやり過ぎた...)」

 

内心めちゃめちゃ焦っていた。

 

いや仕方なくない?だって試験前なんてずっと師匠と実践形式の組み手だよ?試験中だってヒソカ→グレイトスタンプ→ヒソカ→弓の人だからね?そりゃ手加減する感覚狂うに決まってるじゃん

 

ハンゾーさんはまだ強そうだったし、ゴンのうらみもあって強めに蹴ったんだけど...これ脳震盪だけじゃなかったらどうしよう。死んで──はないよ...ね...?

 

ゆっくりと警戒を解かずに近づいていき、鎖鎌の柄でわき腹をつつく。...反応なし。

一旦、転がしてあお向けにさせてみる。...白目を剥いてピクピクと痙攣している。

 

「...『まいった』。」

 

「「「ハァ!?」」」

 

そんなに驚かれましても...起こす手段を知らないし、でもハンゾーは気絶してるから『降参』なんてしてくれない。じゃあ私がするしかないじゃん?

 

ハンゾーが黒服の男に運ばれていく。きっとゴンと同じ部屋に入れられるのだろう。数時間で目が覚めるだろうからそのときに謝ろう。後悔はしてない!

 

さーて、次の相手は───

 

「───次...キルアじゃん」

 

しかもその次ギタラクルやんけ...。たった今軽率に降参したことを後悔してるわ。

 

キルアのことは...まぁ嫌いじゃない、からわざと負けるのも吝かじゃない。...けどねぇ、その後が問題なのよ。

 

ギタラクルに何か引っ掛かるんだよねぇ...?何だろう、こっち側の人だとか念能力者だとかを抜きにして何処か嫌悪感を覚えるというか何と言うか...まぁ、嫌な予感がする?ってことかな。

 

チラリ、とギタラクルを見るとカタカタと音を出しながら目線はいつの間にか始まっていたヒソカVSボドロに向かっているが意識はその奥、キルアだ。

 

ハッ...!わかった!分かってしまった!試験中、ゴンのことも見てた気がしなくもない!つまりは...ショタコン!?

 

そんなことを考えながら視線を向けると目があった気がしてついでに殺気を飛ばしてきたのであわてて目を背けた。あいつ絶対、心読めるぜ...

 

「勝者 ヒソカ!」

 

黒服の協会の人が終了の合図をつげる。実力差は圧倒的だが、抗い続けたのか血は出ていないがボロボロの状態であお向けに倒れていた。

 

あれは次の試合にも支障が出そうだね。仕方ないなぁ、ここは私がキルアで時間稼ぎを...しない方がいいな。『あなたのために時間稼ぎしてあげましたよ』なんてムカつくだけだし、何よりもキルアへの冒涜行為だ。

 

キルアには申し訳ないが、すぐに終わらせよう。

 

キルアと私が対面する。

 

前の試合から強さが見えたリアラに対戦相手のキルアだけでなく誰もが注目し、一挙手一投足見逃さないように見入る。

 

「リアラVSキルア それでは始め!」

 

合図が出ても無闇に動かず、体勢を低くしながら警戒するキルア。対するリアラは「やる気あるのか」と言われても仕方がない程に体をプラプラとさせている。

 

どちらも動かずに相手の出方を読む。数秒にも満たない静寂はリアラのため息がよく聞こえた。

 

「はぁ...」という音を出した後、“練”によりキルアを威圧する。ついでに殺気も加えて。

 

リアラから発せられるオーラと殺気は、自分に向いている訳でもないが念能力者以外に確かな重圧としてのし掛かった。

 

無論、向けられたキルアも脂汗をかき、目の焦点があわない様子だった。唯一、なぜかギタラクルだけは対抗するように殺気だけを飛ばしていたが...。

 

キルアの頭の中を支配するのは蛇に睨まれた蛙のような『恐怖』と格上には挑むなという兄からの『教え』。もう一つは今すぐここから逃げ出したいという『逃亡心』だった。

 

そんなキルアに追い討ちをかけるのはリアラだ。口から出た冷ややかな一言。

 

「 殺 す よ 」

 

決して大声で言ったわけでも、威圧目的として放った言葉ではなく、ただただ極寒を思わせ、決定事項のように語られた言葉にルールが頭から抜けたキルアには耐えきれなかった。

 

「ま、『まいった』...ハァ...ハァ」

 

オーラと殺気が消え、まるで長距離ランニングをした後のように浅く、無意識で止めていた呼吸が再開される。

 

緊張から開放されたからか、その場にへたり込んでしまったキルアに細い手が伸ばされる。

 

「大丈夫?ごめんね、本気で殺気とばしちゃった。立てる?」

 

「大、丈夫、、一人で立て、る」

 

リアラの手をとらずに自力で立ち上がったキルアに「やっちまった」という表情をうかべる。トボトボと試合の結果とは真逆の精神状態で自分の位置に戻り、体育座りで明らかに落ち込んだ様子だった。

 

 

 

 

───────

─────

───

 

 

 

ハッ...!キルアに嫌われたかと思っていたら何も考えれてなかった...。なんだかんだ言って私もキルアのことが好きなんだなぁ

 

急いで膝に埋めていた顔をあげ周りを見ると、そこには針が抜かれ、顔をいびつに歪め、バキボキという骨の音と共に変化していくギタラクルがいた

 

oh...グロッキー.....。

 

そうして顔の変形と不快な音が止まったと思ったら、ギタラクルの不健康そうな顔色と草っぱのようなモヒカンから黒髪のロングに端正な顔つきの青年に変化していた。

 

何ということでしょう...!これこそまさにビフォーアフター。

 

更に追い討ちをかけたのは当たってほしくない『予想』がキルアにより『確実』に変わったことである。

 

「兄、貴!?」

 

「や、キル。」

 

驚愕したキルアと相対するのは、今よりもっと小さい頃から指導をしてきた兄...ギタラクル改めイルミ=ゾルディックだった

 




感想でいくつか寄せられた「つまらない」という言葉を受け止め、最初の何話かを書き直そうか迷っています。具体的には主人公組と違うルートで試験会場に行くなど

そこで初アンケートを取りたいと思いますので、投票をして貰えれば幸いです。


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14話

アンケート答えていただきありがとうございます!
頑張って仕上げてきたぜぇ...


 

ゾルディック家。一家丸ごと暗殺者のヤベー奴ら。幼少期から暗殺術を仕込まれ、子供ですら一瞬の内に大人を殺すことができるほどの力を持っている。

 

これを踏まえてこの光景

 

「キルアの...兄貴!?」

 

なんでゾルディックの長男が三男と一緒にハンター試験受けてるんですかね?

 

そんな衝撃的な場面にいる私は思い出した。自分の一番、大嫌いなあの野郎との会話を───

 

『ししょー、なんで今さらハンター証取りに行くの?無くても普通に稼げてるよ?』

 

『ハンター証って便利じゃん。自分の力を示すのにも使えるし。』

『まぁ、もう一つ理由があるんだけどね。それは...』

 

『それは?』

 

『──今年がめっちゃ面白いことになるからだよ』

 

 

あんの野郎ォォォォォ!!!!!!!

 

リアラは激怒した。

かの邪知暴虐のヤツを除かねばならぬと決意した。

リアラにはヤツの言っている意味は解らぬ。

しかし、ここまで大変なことになるなら言えよと顔面に一発いれたくなった。

 

師匠の満面の笑みを思い浮かべ、嫌悪感たっぷりの表情をしているとふと耳に入った何の感情も含まない声。

 

そう言えばみんなお話してるんだった。師匠への怒りで聞いてなかっt

 

「え?まいったな、あっちはもう友達のつもりなのか。でもやっぱり殺し屋には友達は必要ないから───」

 

「───よし、ゴンを殺そう。」

 

...Way?

 

あっ、いや言ってたわ。『殺し屋には友達なんて必要ない』って。つまりは...

 

『殺し屋(キルア)に、友達(ゴン)は必要ない』

・ゴンの中ではもう友達

 →よっしゃゴン殺そ

 

うん、完璧に理解した。発想飛びすぎじゃね?殺すのはやり過ぎじゃん。せめて遠ざける程度にしとけや。

 

私の考えも届かず、イルミは協会役員に針を投げてさしゴンの居場所を言わせた。そしてそのまま扉まで歩いていく。

 

まあ、ゴンを殺させるわけがないよね

 

布の中にある“髑髏の面”を取り出し、そのまま顔につける。向かう先はイルミの進行方向、つまり扉の前。私以外にもクラピカとレオリオが立ち塞がりゴンの元への障害となる。

 

イルミも私が『リアラ』としてではなく『冥界の守護者』としていることに疑問を抱き、足を止めている。

 

「困ったなぁ。オレは仕事で使うから必要なんだけど...ここで殺すと俺が落ちてキルが合格しちゃうね。」

 

本当に困ったと言いつつ無機質な表情は変わらないまま考える素振りを見せる。やがて、名案をおもいついたように手をたたき「そうだ!」と口にする。

 

「まず合格してからゴンを殺そう!」

 

なるほど、合格してしまえば例え会長を殺しても取り消されないって会長自ら宣言してたからね。

 

実際、イルミが確認をとるがルール上問題なしと返される。

 

「分かったかいキル。俺と戦って勝たないとゴンを助けられない。でもお前は友達なんかより今オレに勝てるかどうかの方が大事だから戦えないよね?」

 

この場にいる誰よりも禍々しいオーラと殺気でキルアを威圧する。キルアからは大量の冷や汗が吹き出し、確実に冷静には見えない。

 

「オレは教えたよね?『勝ち目のない相手とは戦うな』って。そしてお前の力じゃオレを倒せない。」

「そこから動いても、オレの手が触れても戦いを開始する。止める方法は...わかるな?」

 

ゆっくりとキルアの頭に向かって左腕が伸びていく。レオリオの「気にせず戦え」という声も冷静さを失っているキルアには届かない。

 

「『まいった』オレの.....負けだよ」

 

「...あーよかった、これで戦闘解除だね。はっはっはゴンを殺すなんてウソさ、キル。でもこれでハッキリした。」

「お前に友達をつくる資格も必要もない。」

 

赤子をあやすようにキルアの頭にポンポンと手をのせてから、イルミはキルアから離れる。それを見計らい、レオリオとクラピカはキルアの所に駆けつけて声をかけた。

 

私は近くにいたヒソカの視線にたえながらもちょっとした疑問を解消するためにイルミにむかった。

 

「タダ働きはごめんなんじゃ無かったの?」

 

「タダ働きじゃないよ。キルを帰らせるっていう報酬があったからね。」

 

「あっそ。それで、ここのはわざと?」

 

自分の額を指さしそう伝える。

 

私がキルアをオーラで威圧したときとイルミが威圧したとき。どっちもキルアの額から他人の念が発動するのが見えた。

 

きっと条件に反応してキルアの脳に暗示をかけるものだろう。あのゾルディックが気づかないわけがないのでイルミの念能力である可能性が高い。

 

「うん、わざと。キルを守るためなんだから手を出さないでよね。」

 

「出さないよ」

 

念能力者とそれ以外では雲泥の差がある。オーラを纏った拳がかするだけでも死ぬ可能性があるんだから守るためと言えばそうなんだろう。

 

「で、そっちはどういうつもり?」

 

「何が?」

 

「それに決まってるだろ」

 

私の仮面を指でさして言う。

 

「その仮面、『依頼を受けないとかぶらない』って言ってたじゃん。」

 

「受けたよ。私が依頼した」

 

「...ふーん、お前がそこまで言うのも珍しいね」

 

「それは...ね。初めて会った、師匠以外の“赤”だったから。」

 

「?...まぁどうでも良いけど」

 

どうでも良いんなら聞くなよ。次の試合のレオリオとボドロが前に出てきたので視線を向ける。

 

協会役員が合図を告げる前に塞ぎこんで座っていたキルアがおもむろに立ち上がり体をボドロへと向けていた。

 

「レオリオVSボドロ 始め!」

 

試合開始とともにキルアはボドロの背後に瞬時に移動。そのまま心臓の位置にむかってナイフより切れる腕で貫いた。

 

血が吹き出し、ボドロの命が終わる。リングに残ったのは呆然とするレオリオと血を滴らせるキルア。その光景に全員の動きが止まり、唯一動いていたキルアは扉から外に出た。

 

バタンという扉の閉まる音でようやく正気を取り戻した協会役員が試合の中止とキルアの失格を告げた。

 

「ふむ、ではハンター証の受け渡しと説明会を開くので講堂に集まってくれるかの?」

 

会長の一声で一部はボドロの死体を気にしながらも役員に連れられ全員が講堂へとむかう。

 

そう言えばハンゾーとゴンはもう起きたのかな?

 

そう思いながらも役員の人が講堂の扉を開くと、なんとそこには椅子にドヤ顔で座るハンゾーがいた!

 

なんだ、ちゃんと手加減できてたのか。ならよかった。

 

身長が低いことを加味して前の方に座ると通路を挟んで右斜め前にイルミが座った。マジかコイツ。すごい邪魔なんだけど、嫌がらせ?

 

ゴン以外の受験生が席に着いたことを確認し、会長が口を開く。

 

「ゴンは今起きたところでサトツから説明をうけとる。ここに来るまでの間、何か質問とかはあるかのぉ?」

 

「それじゃあキルアのことで一ついいか?」

 

「私も、同じくキルアのことについて言いたいことがある。」

 

レオリオ、次いでクラピカと立ち上がり『キルアの不合格は不当である』と申し立ての声があがる。

 

それぞれの言い分をまとめると、

 

レオリオは『キルアがボドロを殺すことで自分を助けた。ならば不合格になるのはオレの方では?』とゴンVSハンゾーのときに言われたことを持ち出して言った。

 

クラピカは『イルミとの対戦中、キルアは暗示をかけられ自らの意思で行動できない状態にあった』と失格は妥当ではないとのこと。

 

「ふーむ、一応言い分はわかった。じゃがの...」

 

バン!

 

会長が何か言おうとしたとき、音を立てて開かれる講堂の扉。開いたのはまぎれもなく数分前まで気絶していたゴンだった。

 

サトツさんから説明されたのか怒りをにじませながらイルミのもとまで一直線に向かい、ゴンの方をチラリとも見ないイルミに口を開く。

 

「キルアにあやまれ」

 

「...あやまるって何を?」

 

純粋に分かってないのか無表情なのに驚いてるように見える。不思議ー

 

「そんなことも分からないの?お前に兄貴の資格ないよ」

 

「?...兄弟に資格がいるのかな?」

 

「友達になるのだって資格はいらない!」

 

その言葉と同時にゴンがイルミの腕を掴んだまま空中に投げる。腕力すごぉ。

 

ただ流石ゾルディックと言うべきか音を立てずに着地。そこでようやくゴンの方を向き、次に掴まれてる腕を見る。

 

ゴンが思いきり力をこめているのかイルミの腕からミシミシよりビキバキといった本当に折れそうな音が聞こえる。これを(イルミが腕に“絶”しているとはいえ)念なしでやるのだからビックリだ。

 

「キルアのところまで案内して。キルアを連れ戻す」

 

「まるでキルが誘拐されたみたいな口振りだな。あいつは自分で出ていったんだよ。」

 

「お前らに操られてるんだから誘拐されたも同然だ!」

 

ゴンのキルアを連れ戻す発言に私は思わず天を仰いだ。マジかぁ...キルアはポテンシャルはイルミを凌ぐって言われてるから大事に育てられてる。そんな我が子を精々知り合って数日の“友達らしい”が連れ出すなんて怒らないわけがない。

 

「その事についてレオリオ、クラピカから申し立てがあってのぉ。ちょうど議論しておったのじゃ。」

 

ここで誰も口を出せない雰囲気で会長が割って入る。いやまじで助かった。まだワンチャン取り戻せる。

 

クラピカとレオリオは後から来たゴンに言い分を説明、もしくは再確認のように言葉にする。

 

「まあ全て憶測にすぎん。催眠をかけたとする根拠も乏しく、殺人を指示した言動もあったわけではない。レオリオvsボドロはレオリオ優勢じゃったしあえて手助けする場面じゃなかったろぅ。」

 

「──そんなことはどうでもいい」

 

...え、どうでもいいの?マジ?

 

「それよりもキルアが望まず、人殺しをさせてるとしたらお前を許さない」

「その時はお前らからキルアを連れ戻して二度と会わせないようにするだけだ。」

 

あ、イラっとしてる。イルミは意外と家族思いである、方向性はぶっ飛んでいるけど。もう会わせない、なんて言われたら思うところはあるだろう。ついでに興味もわいてるっぽい。

 

イルミが“隠”も使わずに少しオーラを集めた手で触ろうとする。オーラを本能的に感じ取ったのかゴンは腕を離して下がり、私は“周”をした鎌をぶつけて鋭い視線を送る。

 

「取りあえず、キルアの不合格は変わらんしおぬし達の合格もまた変わらん。」

 

「それでは説明会を開始します。」

 

周りが無言になったことを確認するといち早く会長がきり込むのは凄いなと思える。単に早く終わらせたいだけかも知れないけど。

 

ビーンズさんによってハンター証の説明、及び協会のルールも話す。話しおわったあと「それでは失礼して...」と前置きをしてから

 

「ここにいる7名をハンターとして認定致します!」

 

そう声高に宣言した。

 

その後ゴンはイルミに問いただしキルアの実家にいくようだ。レオリオとクラピカもそれについて行くらしい。

 

私は師匠のこともあるし、遠慮するよーと伝えようとしたときだった。無表情黒髪ストレートによって爆弾を落とされたのは。

 

「あ、そうだ。『冥界の守護者』は父さんから招待しろって言われてるから来てね。伝えたから」

 

...ナンテイッタ?

 




ハンター試験おわった後の展開に迷いまくってる


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ゾルディック編
1話 ※


ようやくUndertale要素出せてすごいにっこり。





ゴン達side

 

「『リアラ=フォーラー』っと」

 

ハンター試験を終えたゴン達はキルアの実家であるククルーマウンテンについて電脳ページで調べるついでに今年、合格したハンターも調べていた。

 

リアラのことも気になっていたので調べた。直接聞くべきとも思ったがゴンの直感で感じた違和感と、何より『冥界の守護者』として分からなかったことが分かるかも知れないという好奇心が理性に勝った結果である。

 

「え?」「な、」「オイオイ何だこりゃあ?」

 

しかし、出てきたのは『検索に該当する人物は存在しません。』の文字だった。誰一人として名前が一致する人物が存在しなかったのだ。

 

電脳ページにも各ハンターの名前が載っていて、その人が極秘会員ではなく重要なことでもなければ載っている。

 

それは今年合格したリアラも例外ではない。それでも名前すら載っていなかったということは本当の名前ではない。つまり、偽名だったということだ。

 

無数にいるハンターから名前が分からないのに一人の人を探し出すのは至難の技である。

 

よくよく考えれば『冥界の守護者』である彼女が本名を教える訳がない。この分だと試験終了後に渡されたホームコードも偽物なのだろう。

 

「んーまぁ仕方ねぇか。」

 

「そうだね。リアラもゾルディックに招待されてたし、その時にまた聞けばいっか!」

 

「うむ、では行くか。ククルーマウンテンへ」

 

そうして今日出発の飛行船へ乗るために空港へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアラside

 

前回のあらすじ

 

ゾルディック家から招待が来ちゃった☆ははっ、笑えない。

 

それについて師匠からダメって言ってくれないかなぁという淡い希望と一発、腹か顔面に拳を叩き込まないとおさまらない怒りを心に家へとむかう。

 

着いたのは立派な家。

 

扉を開ければ果物ナイフが飛んできて、一歩踏み出せば右から鉄球が上半身を狙って打ち出され、それと連動してたらいが落ち、その先から矢が足元を狙う。

 

いつの間にか忍者屋敷と化した我が家に驚きつつもナイフを手で掴み、鉄球をしゃがんで回避。前に転がることで範囲から脱出、最後に矢をナイフで弾く。

 

...何なのだろうか。私に恨みでもある?それとも更なる強化を狙ってやったことなのかな?

 

よく見るとナイフと矢には何か塗ってあるし、たらいは重いのか落ちたときにガラーンではなくズシンって感じの音を出してた。難なら玄関が少し陥没してる。

 

『リアラー!』

 

外から声が聞こえ視線を向けると同時に背後からご丁寧に“周”付きのハンマーが投げられてきた。

 

柄の部分をしっかり掴み、オーラ量を倍増させてフルスイングで投げ返す。

 

そのハンマーを出てきた拳が軽々と粉砕し、大嫌いな顔と目が合う...前に踏み込んで加速アンド顔面パンチを繰り出せばこれもまた止められる。

 

「お帰りー、帰って早々物騒だねぇ。人に攻撃するのは良くないと親に教わらなかったの?親の顔が見てみたいよ。」

 

「玄関であんなことした奴のセリフじゃないし何より育て親はアンタだよ。鏡見ろ!」

 

余裕を崩さずやれやれと少し笑いながらこんなことを宣うコイツが私の師匠である。

 

「お、帰ってきたか?」

 

そして私たちの声に反応して奥から出てきたのは───

 

「え...?」

 

──青のパーカーを身につけた骸骨。夢に出てきたスケルトンだった。

 

「お帰り、どうした?そんなところで()()()として。」

 

「うんただいまー、じゃなくて!お前は夢に出てきた骨!?」

 

「おいおい、そんな反応されると流石のオレも傷ついちまうぜ...あ、そうだった。」

 

何かを思い出したように手をたたくと、「近道」と口にする。瞬間、10mは離れていた距離が一気に0になり頭を掴まれた。

 

急に起こった出来事に抵抗しようと考えるもすぐに頭のなかを電流が走った感覚とともに記憶が呼び起こされていく。

 

「あーおっけ思い出したよ、Sans。」

 

「あぁ成功したみたいで良かったぜChara。」

 

ケケケと嬉しそうに骸骨─サンズは笑う。

 

何が起きたか説明しよう。

まず事の発端はサンズの念能力にある。

 

【あり得た世界の物語】

 

それがサンズの念能力だ。もちろん系統は特質系。効果は、『記憶、人格、オーラの質、念能力でさえも変化させてしまう』もの。

 

人格やオーラの質はサンズでは決められない。今回は記憶を催眠で植え付け、念能力はホロウによって指導された。

 

ちなみに『冥界の守護者』はサンズが作り上げたもの。髑髏の面というかリアル髑髏な上、素早い動きは『近道(short cut)』で、体格?スケルトンやぞ?ってな感じで謎の存在の完成。

 

こうして架空の『リアラ』という存在が出来上がった。

 

当たり前だがこんなに強力な念能力、ノーリスクで使えるわけがない。制約をいくつも重ねてようやくメモリぎりぎりでおさまっているに過ぎない。

 

いくつかある制約のうち命に関係するのは二つ。

 

まず一つ目、これを使用中はサンズは無防備になる。ただでさえ『最弱の敵(物は言い様)』なサンズが無防備になる=些細なことで死ぬ。(具体的には“纏”が使えなくなるなど)

 

そして二つ目、エネルギーの消費。これは生命エネルギーであるオーラの消費ではなく、()()()()()なので枯渇すると動けなくる。サンズはモンスターなので食べたものが即エネルギーになるが体力はどうしようもない。

 

この制約を聞いたとき思わず顔をしかめたが、作った後だったのでどうにも出来ず、せめて最初は自分がやると言い出したのだ。

 

「そういえばやっぱり完璧じゃなかったよ。記憶やら人格やらの問題。」

 

『リアラ』としてのボクは師匠が怖かったが、時間が経つにつれてその恐怖がなくなっていってるのだ。むしろ怒りが湧いている。

 

他にもゾルディックと会ってすぐは嫌悪感が凄かったが、時間が経つと普通に喋れたりと少しづつ『Chara』の人格に戻ってきていたのだ。

 

それでも念能力やオーラの質はずっと変わらなかったし、記憶が完全に戻ることもなかった。いっそ念能力とオーラの質だけ変えて演技したほうがバレないまである。

 

「...ここまで強力となると何処か綻びがでるだろうとは思ってたけどねぇ。」

 

「取りあえず短時間なら成功つーことか?」

 

「一応。まぁ念能力とオーラの質まで変えられるのでも十分すごいけどね。」

 

ハンター試験での出来事と一緒にサンズの能力の綻びを明確に示していく。あらかじめ弱点が分かってたほうが対応が楽なのだ。

 

「あの時は()()()()拍子でハンター試験も受けることになってビックリしたぜ。スケル()()だけにな!」ツクテーン

 

「あ、そのハンター試験クリアしてきたんだけどさ。ほら」

 

「オイコラ、ライセンス投げんじゃねぇよ」

 

サンズのジョークを華麗にスルーしながら第287期のハンター証をホロウに向かって放り投げる。

 

それを危なげなく片手でキャッチし、表と裏を交互に見た後、「自分で持ってなよ」と投げ返したのをキャッチする。

 

「それで?ハンター試験のほうは?」

 

「いやぁー収穫はあったよ。見事に真っ赤っかだったし。ゴンだったかな?下の名前は聞いてないけどあれは頑固どころの話じゃなかったね」  

 

「そりゃあ良かったぜ。()折り損にならなくてな!」ツクテーン

 

「あとゾルディック家にお呼ばれしちゃったよ。『冥界の守護者』として。」

 

「「Huh?」」

 

今出来る最大の笑顔をしながらそう言ってやると言葉を理解したサンズは顔に手をのせ、師匠であるホロウは何を思ったか赤飯を炊き始めた。

 

「『冥界の守護者』自体はサンズの事だしねー。私も行くから安心して?」

 

「あーいやまて、罠かもしれねぇだろ」

 

「その時はゾルディック家を壊滅させてでもサンズを守るから大丈夫。」

 

「...オレがストッパーとしていくわ。あとそこの思考と行動が直結してるヤツ、まだ昨日のカレーが残ってるから赤飯炊くのやめろ」

 

「えー...」という台所からの声に頭をかかえるサンズ。師匠は戦闘だと強いし頭も切れるが、それ以外はどこか抜けているというかポンコツというか。

 

カレーと赤飯は合わないだろ、なんで炊こうと思った。

 

帰ってきたのがちょうど夜になったところだったので出来る限りの準備をするために2日後、出発することになった。

 

ちなみに顔はサンズが能力を解除してから本来の念能力によって戻っている。自分以外の顔で過ごすなんて気持ち悪くない?

 

 

 

───────

────

──

 

 

時は流れ、出発の日。

 

出来る限りの準備と言ってたはずなのに何故かボクにはマナーを教えられた。一応、解毒剤など色々リュックの中に入れたが重すぎて邪魔になるからとサンズに抜かれた。

 

「山に登るのイビト山以来だなぁ。サンズのブラスターのせてよ」

 

「目立つだろうが。地道に()()()()と登るしかないぜ?骨だけにな」ツクテーン

 

軽口を言い合いながらも常人には出せない速度でククルーマウンテンへと向かう。飛行船よりも早いのでうまく行けば半日で目的地に着くだろう。

 

今の格好は仕事着である。ボクは半ズボンに緑のパーカー。サンズはいつも通り、白のタンクトップの上に青のジャケット、黒のズボン。どっちもフードをかぶってそれぞれニコちゃんと髑髏の仮面を着けている。

 

障害物は少ない方がいいので建物の屋根をつたって急ぐ。おかげで日が傾き始めたあたりでククルーマウンテンのあるパドキア共和国まで着くことができた。

 

ククルーマウンテンまでは一日につき一本、観光バスが出ているが残念ながら既に出発したあとだったようだ。

 

仕方なく徒歩で向かうことになった。

 

「さぁてと、殴り込みに行きますか!」

 

「しねぇよ、頼むから大人しくしてろ。」

 




というわけでChara&Sansでした。
性格やらしゃべり方やらは分からぬ。Friskじゃない理由は作者がChara&Sansを書きたかったから。

過去編などは後で書くつもり(めっちゃ捏造)。


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2話

現在、ボク達は茂みに“絶”をしながら隠れていた。理由は単純でゴン達を驚かせたかったからだ。

 

ボク達がゾルディックの敷地前にある門のところへたどり着いたときには観光バスも少し前に着いたところだった。

 

「あ、いた。あれがゴンで隣にいる金髪の人がクラピカ。で、あの一番背の高いのがレオリオ。非念能力者の中では一応強い方なんじゃないかな?」

 

「まぁ、()のあるヤツかどうかは置いといてゴンってヤツは確かに真っ赤だな」

 

「でしょー!この世界だと多分『セーブ&ロード』じゃ無くて『天運』の方だとおもうけどね。」

 

最後にたらこ唇の大男と細マッチョな剣を背負った男がバスから降りてきたのを確認し、ガイドのいるバスの前方へと視線を向ける。

 

そこではゾルディックの門と山までの森ですら敷地であるということが説明されていた。どうやら中に入ったら二度と出られないらしい。

 

「ハッタリだろ。誰も見たことのない暗殺一家の噂だけが一人歩きして」

 

「実際は全く大したことがねぇっつーのが落ちだよ。」

 

大男と細マッチョの男がそれぞれ口にする。その言葉に少しムッとするがサンズに大人しくしてろと言われてるので下手には出ない。

 

そのまま門の隣にある守衛室の人を持ち上げ、鍵を奪った。

 

「ねぇ、間接的にボク達貶められてるけど。どうする?処す?処す?」

 

「なんでテメェはそんなに血の気が多いんだ?」

 

「ていうか守衛さんの実力すら見抜けないのによくあんなに偉そうに出来るよね。あの人相当鍛えてるよ?」

 

もちろん非念能力者にしてはという前置きがつくが。

 

二人組の男に真っ当な評価を下してる間に緑色の門に入っていく男達。数秒後、一人でにまた扉が開きグレーの毛並みを持った腕が中から出てきて、骸骨を外に捨てた。

 

その骸骨は二人組の男が着ていた服を身につけていて、たった今まで生きて喋っていた人が死んだことに守衛さん以外が動揺していた。

 

それはボクも例外ではなく確かに動揺していた。

 

「え、すご!ねぇ見たサンズ!肉の一欠片もなく綺麗に食べてるよ!ボクあの犬欲しい!」

 

「やめとけバカ。つーかオレらはどう入りゃあ良いんだ?ガイドの話もあれじゃ信用できねぇし...まぁ電話でもすりゃあ分かるか。」

 

どうやって入るかを考えているといつの間にかバスが出発し、ゴン達だけが残った。ボクたちは“絶”を解かずにゴンの後ろにつき、サンズと顔を見合わせ笑っていた。

 

「『おいニンゲン初めて会うのに挨拶もナシか?こっちを向いて握手しろ』」

 

「「「!?」」」

 

ゴン、レオリオ、クラピカの3人は急に聞こえてきたサンズの声に驚き、警戒心をあらわにしながらふり返る。そして髑髏の面を見たことがあるクラピカとレオリオは声が違うことで更に警戒した。

 

しかしゴンはリアラ(に扮したキャラ)が仮面を被っているところを見ていない。結果、危害を加える気がないと感じたのか迷いなく差し出された手をとった。

 

「俺はゴン!よろしk─ブ-プゥー─え?」

 

握ったサンズの手袋の中から気の抜ける─言うなれば放屁の音が聞こえてきた。その音に虚を突かれたのか驚いた表情を浮かべるゴン。

 

「へへっ、驚いたか?手にブーブークッション仕掛けておいたんだ。お約束のギャグってやつだよ」

「あぁ自己紹介がまだだったな。オレは─そうだな...エイル=フレイル。エイルとでも読んでくれ。」

 

「そしてボクがリアラ=フォーラー。『冥界の守護者』はエイルの方で、ボクはその相棒さ!ぴーすぴーす」

 

念能力で顔を変えても声は変わってないのでサンズの後ろから飛び出しそう言ってやれば3人が困惑しながらこちらを向く。

 

なに考えてるかは分からないけどサンズへの自己紹介を促した。自己紹介が終わり、守衛さんが骨を片付けおわる頃には夕方になっていた。

 

守衛さんの話によるとさっきの番犬はミケと言って(犬なのにネコの名前とはこれはいかに)、門から入ってきた人を殺すように仕付けられている。

 

敷地に入るには『試しの門』と呼ばれる方から入らなければならない。1の扉は片方2トンあり、数があがるごとに倍になってくらしい。

 

その話を聞いたゴンは唸る。

 

「うーん気に入らないなぁ...」

 

「何が?」

 

「何で友達に会いにきただけなのに試されなきゃいけないの?」

 

「...それ本気で言ってる?」

 

ゴンがキョトンとした顔を向けるので頭を抱えつつ、クラピカとレオリオも呼び寄せる。

 

「分かってないようだから言うけど、友達の資格って存在するんだよ。兄弟は無いけど」

 

「そんな訳ないよ!」

 

「何だぁ?オメーまであのギタラクルと同じこと言うのかよ?」

 

「なぁそもそもギタラクルって誰だ?」

 

「イルミのこと。じゃあ聞くけどさ、もしもキルアのことを殺せない殺し屋が依頼を受けたらどうすると思う?」

 

途中で話に入ってきたサンズに説明しつつもサンズ以外の3人に向けて質問する。

 

「諦める」

「鍛える」

「親しいひとを拐って脅す...とかだろ?」

 

「はい正解。鍛えるはともかく諦めるは論外。ボクらの世界は...というか世界のほとんどは『信用と信頼』で成り立ってるんだよね。」

「仕事を完璧にこなして続けることで『信用』を築く。それを『信頼』して仕事を渡す。今回の場合はもう依頼を受けてるのにそれをしないってことは『信頼』を裏切るってこと。」

「裏切りをそのままにしておくとなめられる。『あそこは裏切ったヤツも放っておく甘い奴らだ』ってね。そうなったら次に『信用』を失うのは自分たちだから裏切りは許されない。こちら側では特に。」

 

取りあえず仕事がどうやって回ってくるかを説明するとゴンの頭がプスプスと音を立てていく。考えるのは得意じゃないのね。

 

「『キルアは殺せないけどゴンは簡単に殺せる。じゃあゴンを人質にしよう!』ってことになるよね。」

 

「うーん?」

 

「ゴンは自分のせいでキルアが傷ついてもいいの?」

 

「それはヤダ!」

 

「でしょ?だからキルアのためにも強くならなきゃいけない。この門を開けれれば最低限にはなるだろうね。」

 

「それでも試されるなんてゴメンだよ」

 

「そう。じゃあ納得するまで考えればいいんじゃない?ボクはもう行くけどね。」

「あ、最後に一つ、前にも言ったけど結局は命の取捨選択────

 

 

 

『世 界 は 殺 す か 殺 さ れ る か さ』

 

 

 

そう言って門に向かっていくキャラを横目で見ながらサンズは言う。

 

「相棒のリアラがすまねぇな。アイツ、自分のせいで親友が死んでんだ。あぁお前らに話してたことでじゃないがな。まぁオレも行くから頑張ってくれ。」

 

「エイルー!早くー!殴り込みじゃあぁぁァァァ!」

 

「やめろバカ!!」

 

ドォンという音とともに『試しの門』が5の扉まで開きその前にいた片足を上げていたキャラが中に入る。サンズは両手で押し、2の門まで開けた。

 

ゴン達はその様子をただ見るだけだった。





サンズの貧弱ぼでーはどうしたのかって?逆に考えるんだ。オーラ全開にしても8トンまでしか行かないと


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3話 ※

鬱蒼とした木々の中、私とサンズは迷っていた。

 

「ねぇサ...エイル」

 

「...なんだよ」

 

「こういうのって執事とかが案内してくれるものじゃないの?」

 

「あぁ、そうだな。わざわざ道を外れて「探検しようよ!」とか言い出すバカがいなけりゃな...バカがいなけりゃなぁ!」

 

「だよね、やっぱりおかしいよ!何で執事は来ないんだろ?」

 

「こんなに言っても入らないお前の耳のほうがおかしいぜ。なんだ?飾りかその耳は?」

 

なんかサンズがぶつぶつ言ってるけどよく分かんな~い。

 

そう、もうかれこれ3時間も歩き続けて、頭上には満月が浮かぶほど夜も深くなっていた。この無駄に広い敷地のせいで。

 

「あ、柵にあたった。」

 

「おぉようやくか。よっしゃこれに沿って進m─「よしひきかえそう!」おい待てバカ、動くなアホ、『最悪な目に会わされたいか?』」

 

そこまで言われちゃ仕方ない。なんなら目の前に白骨出されてるし、青骨にも貫かれてる。やりすぎでは、これ動いたら死ぬが?

 

そのあとすぐに青骨が消され動けるようにしてくれた。かわりに服を掴まれズルズルと引きずられている。

 

「ねぇ服伸びちゃうんだけどー」

 

「・・・(*サンズははなす気がないようだ)」

 

「それ止めてくんない?あと服掴むのも。」

 

「・・・(*サンズははなす気がないようだ)」

 

「なに?『話す』と『離す』でかけてるの?誰が上手いこと言えっていったよ!」

 

いつものジョークは凍るほどすべるのにこういう時だけ上手いのは何なのだろうか?あと本当に止めてほしい。

 

本気で抵抗すれば抜け出すのは簡単だ。だけどサンズの貧弱ぼでぃに対して抵抗すると骨しかないスケルトンが骨折することになるから下手に動けない。

 

服が伸びないようにサンズと同じスピードで進む以外とれる方法がなかった。

 

 

 

しばらく柵にそって進んでいるとようやく道が見えた。

 

「ぬけたぁ~!」

 

ボクが大声をだし、サンズは疲れたようなため息をこぼす。同情するように肩に手を置いたら振り払われた。なんでだ?

 

あとなんか赤髪のなんか...うん、キミ個性的な髪型しているね!

 

「でもそんな君もいいと思うよ!」

 

「テメェは初対面に対して意味が不明な言葉を言うのヤメロ」

 

「気のせいかも知れないけどこっちって個性的な人多くない?あっちも負けてないけどさぁ。」

 

「中心に近い方が濃くなるのは当たり前だろ」

 

「それもそっか。」

 

結局、執事の人には分からない話になり女の人の顔には困惑の表情が浮かんでいた。

 

「貴方たちが執事室に電話をしてきた侵入者?」

 

「電話?オレらは電話なんてしてな...あー、それきっとアイツらだな。」

 

「その侵入者ってゴンって名乗ってる黒髪の子たちのこと?」

 

「そうね。容姿は言われなかったけどそんな名前だったはずだわ。じゃあ貴方たちはいったい?」

 

「オレらはイルミ・ゾルディックに呼ばれた『冥界の守護者』だ。証明手段は...今のところゾルディックとはオレらの623戦中256勝271敗96引き分けとかでどうだ?」

 

執事の人もボクたちの証明の仕方に苦笑を漏らし、次の言葉をだした。

 

「失礼しました、イルミ様のお客でしたか。しかし、執事室の許可なく入庭することは出来ません。ですので守衛室の電話から許可をいただいてください。」

 

「あー、まぁそうだよな。許可なく来たってことはオレたちも不法侵入者ってことだもんな。行くぞリアラ。」

 

「えーもう少...あ、いや行く。行くからぁ!ちょ、首掴むのは反則ゥ!」

 

くすぐったくて力が入らぬぅ。へにょと脱力して引きずられるボクを見た赤い髪の執事が笑った気がした。

 

ははは、そんな君には『冷蔵庫に入った賞味期限切れの食材で腹を下す呪い』を授けよう。苦しむがいいわ!

 

呪詛を言葉にしていると不意に体を浮遊感が襲う。言うまでもなくサンズの『shoot cut』の能力だ。

 

「ぐぇっ!」

 

その一瞬の浮遊感とともに視界が文字通り()()()()()。ついさっきまで鬱蒼とした木々に囲まれていたのに今は『試しの門』と守衛室が目と鼻の先にある場所にいる。

 

もうちょっと優しく下ろしてくれてもいいのでは、と思うところもあるけど口には出さない。出したら確実に何かされるから。

 

サンズが守衛室を覗いてもあの時の人(ゼブロさんというらしい)はいない。ついでに言うとゴンたちまでいないので電話番号も分からない。

 

しかし、そんなときに救世主が現れた!

 

「お、あんたらそこで何してんだ?」

 

なんと緑のハチマキをした男性が『試しの門』を開けて守衛室に来たのである。

 

これは好機とサンズが事情を説明し、電話を借りる...前にこっちを見て一言。

 

「俺が電話してるあいだ頼むからおとなしくしてろよ?...振りじゃねえからな?」

 

「わかってるって!」

 

「頼むぜ...ほんと」

 

サンズは疲れたように首に手を当てながら守衛室へと歩いていく。もー信用ないなー。

 

これでも3年...4年?の付き合いはしている。そんなに念を押さなくてもわかってるよー。

 

 

 

 

 

 

 

ビキッ

 

執事長らしき人から入庭許可をもらい、ようやく行けると思ったらキャラがいなかった。

 

その事実に浮かぶ血管はないのに頭に青筋が浮かんだ。

 

「オイ、アイツはどこ行った」

 

「ヒッ...し、使用人の家のほうに...」

 

サンズの滲み出る怒りの波動に体を縮ませながらも使用人の家へと案内する。

 

門を開き、せっかく案内に来てくれた執事に「遅くなる」と断りを入れてから使用人の家へと歩を進める。そして家にたどり着いた。

 

「それでね~──げ、サ...エイル...」

 

そこにいたのはゴンたち3人と仲良く話すキャラの姿だ。

 

「よぉ、すまねぇなコイツは用事があんだ。持ってくぜ。」

 

「エイルもゴンたちとはな...え、なんでボクの前に手を出してるの?あ、いたい。イタタタタタタタタタ!」

 

キャラの顔面を掴む、いわゆるアイアンクローの形にしながら森まで引きずり、再び『近道』をつかう。

 

そんなサンズがキレた状態でも「意外とサンズの手って大きいんだね」と言える辺り肝がすわりすぎている。

 

たどり着いたのは壁で囲まれた空間。監視カメラもなく、スイッチを入れれば蛍光灯が視界を明るくする。

 

「え、キレてんの?うわ、この程度でキレるとか...カルシウム足りてないんじゃない?」

 

その言葉とともにたまった鬱憤と怒りを晴らすため腕を振り上げる

 

「『最悪な時間の始まりだ』」

 

戦いの火蓋が切って落とされた。

 



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4話 ※

待たせたな!





 

「冗、談ッ、キツい、て...!」

 

散乱するホネ、ホネ、ホネ。倒れ伏したキャラの目の前にはスッキリした様子のサンズ。

 

乱れた呼吸をととのえる間にサンズが指を鳴らせば周りにあったホネは元から無かったかのようにその場から消える。

 

ゆっくりと呼吸を戻し、最後に大きく息をして呼吸をととのえる。

 

「まぁ、今日はこのくらいにしといて上げるよ。良かったね。」

 

「そりゃありがてぇことだな。オラさっさと行くぞ。テメェのせいで朝になっちまった。」

 

「ちょっと待ってて、今ワープしたら吐きそ...待って?何で近づいてくるの?止まろ?ね?待って待って待ッ────」

 

サンズに腕を掴まれ浮遊感が体を襲う、と同時に腹から込み上げてくる酸っぱい液体。飲み込もうとするも耐えきれずに吐いた。

 

「おえぇぇぇぇぇぇ...」

 

サンズとの戦いの中、重力操作で胃と頭の中をシェイクされた。結果、嘔吐にまで達したのであった。

 

待ってって言ったじゃん!何で?日頃の恨み...ボクなんか悪いことしたかなぁ!?

 

ギロッと目付きを鋭くしてサンズを睨み付けると「テメェが悪いこと以外したことあんのか?」とケンカを売ってきた。

 

取りあえず「ハァ~?ありますけどォ~?」とだけ返す。そもそもさらっと心読むなよ。人間辞めてんな。あっ人間じゃなかったわ。

 

「心の中読むとか、犯罪じゃん。プライバシーの侵害!覗き魔!変態!性欲魔神!」

 

「誰がテメェみたいなガキに欲情すんだ?」

 

「フリスクにはしてんじゃん」

 

「.........................ハッ!(*「フリスクと比べるとか笑わせんな」という顔だ)」

 

「挽き殺すよ?殺るか?お?」

 

「おいおい、出来ねぇことは言うもんじゃねぇぜ?テメェの攻撃は全部()()()じゃねぇか。」

 

「出来ますけどぉ?そもそも─「エイル様にリアラ様ですね?」─ん?」

 

言い争い中に横やりをいれられ思わず威圧しながら向いたところにみえたのはスーツに身を包む執事の姿だった。

 

いつまで経っても来ず、来たと思ったらずっと話しているボク達に主をなめられてると思ったのかもしれない。キレてるかも知れないがそれを一切外に出さないのは流石といっていいだろう。

 

「ご歓談中失礼かとは思いますがシルバ様の命によりお迎えに上がりました。執事長のゴトーと申します。これより本館へとご案内致します。」

 

それに対してサンズは「あぁ、待たせて悪かったな」と言いつつボクの首根っこを掴んでくる。それを払いのけ、歩き始めたゴトーの後ろにつく。

 

数分ほど歩く(他人から見ればそれ以上の速さだが)と大きな家、というか本“館”と言うだけあってデカイ建物が正面にみえてきた。

 

玄関を通ったあと、ゴトーの案内により客人用の一室へと連れられてきた。

 

「食事の準備が出来次第、お迎えに上がりますのでそれまでご寛ぎください。」

 

そう言うと腰を90度に曲げ、お辞儀をして扉から出ていく。...足音しないやつ執事も全員出来るようにしてるのか、と思いつつ気配が遠ざかってくのを感じてすぐに部屋の物色を始める。

 

ゾルディックがするとは思えないが情報の流出は怖いので“円”を使いながら部屋中をまわり、壁に耳を当ててたりする人影はない。

 

更にコンセントなどを中心に聞き耳をたてている可能性があるところを片っ端から探っていく。

 

それも無いことが確認できた今、やることといえば───全力でぐうたらするだけだ。

 

え、なに。もしかして何か、ないしょ話でもすると思った?残念~何もしませーん。本拠地でするとかマジで言ってる?

 

確かに確認できる限りでは情報が出ることはないのはわかった。けどここを何処だと思ってるの?ゾルディックだよ?

 

そう、ここはゾルディック。情報特化の念能力者もいるはずだ。そんな中で重要な話をしようものなら狭い集落並みの話の広がりかたをするだろう。

 

だから話をするにも注意しながらしゃべらなければいけないのだ。それでもどうなるかは分からないので大人しくしているのが一番───だけどボクが大人しくしてると思う?

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ねぇ、エイル。」

 

「あ?なんだよ。」

 

「いや、『なんだよ』じゃなくてさ、助けてくれない?」

 

サンズの目がチラリとこちらに向けられる。それも一瞬で手元の本へと目線は戻され、

 

「良いかリアラ?オレは今忙しいんだ。周りが見えなくなるぐらい集中しなけりゃ出来ないほどにな。」

 

「相棒のピンチよりもトランプタワーを優先するヤツが何処にいるんだよ!」

 

「ここはオレに任せて先に逝け!」

 

「お前に任せる敵は前じゃなくて後ろだ!ていうか力つっよ!お前ら、絶対強化系だろ!ここまで嫌がってるんだから分かれや!」

 

「すみませんリアラ様。エイル様の命により()()()()やらせていただきます。」

 

「全然不本意そうじゃないじゃん!顔が嬉々としてますけど!」

 

まぁ大人しくしなかった結果、ボクは着せ替え人形として連れていかれる運命にあるのだけれども。もちろんそんな運命は嫌なので全力抵抗である。

 

別に何かやらかした訳ではないけど、「そういえばつい仕事着で来ちゃったけど正装じゃなくて良いのかな?」と言ったのが発端である。

 

何故そんなことを言ったか分からないが今すぐその時の顔面を殴りたい。

 

その言葉を聞いたサンズが「そういえばお前もフリも正装持ってねぇな?いっそゾルディックに任せれば良いんじゃねぇか?」とのたまいおった。

 

結果、おもちゃを見つけた執事の女性陣に連れ去られる寸前である。さっきからサンズに助けを求めるも借りたトランプでコロッセオを作り始めた。それどうやって作ってるの!?

 

「ねぇ、待って。大人しくしてるから!今までのことも謝るから!着せ替え人形だけはやだぁ!」

 

「あぁ、支払いは後で振り込んで置くから思う存分にやってくれ。」

 

「「「御意!」」」

 

「返事いいなぁ!ヤメ、ヤメロォォォ!」

 

抵抗むなしくボクは部屋を後にした。



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5話 ※

めちゃくちゃ書き直して分からなくなったが投稿。





「お食事の準備が整いました」

 

そんな声が聞こえた時、神か仏かと思った。心なしか後光もさしていた。いや、実際はゴトーさんだったけど。

 

素早く着替え直し、逃げるようにその場から離れる。後ろを向くとめっちゃニコニコした執事たちがいた。その様子にげんなりしつつもゴトーについていく。

 

通された場所は食堂だった。ただし、とてつもなく広いがな!

 

ただ食事に呼ばれたわけじゃないだろう。毒殺とかが目的なら笑えないがタダ働きはしない主義なのでないはず...

 

正直言って散々邪魔してきたボクとしては殺ってきてもおかしくはない。せっかくあの時死なずに済んだのにまた毒とか止めてほしい。

 

運ばれてきた料理は豪華かつ美味しそうでにおいだけでご飯が食べれそう。いやー本当に見た目通りおいしいなぁ、いっぱい食べれそう──猛毒が入ってなければ...

 

耐性あるとはいえまったく効かないわけじゃないよ?サンズは毒もエネルギーに変えられるし、師匠は毒無効もちだし...あれ周りに化け物しかいないな?

※ゾルディックの毒を食べて耐えられるだけで充分化け物なことには気づいてない

 

一口食べても残念ながら知らないものだったから効果がどの程度か分からない。なので耐性をつけるためにもゆっくり食べていた。

 

めっちゃ美味しいのに少しずつしか食べれない拷問を文字通り味わっていると、いつの間にか話し合いが終わってた。まぁ取引とかはサンズの方が向いてるから元から任せてるけども。

 

「─で、仕事の内容はどうなったの?」

 

「キルア坊っちゃんの護衛だとよ。期限は『念の四大行』の()()()習得まで。オレは違う依頼入ってるからお前が行くことになるな。」

 

「『念の習得』までってことは念能力への対抗手段なしに戦うのを阻止すればいいのかな?習得後は経験値つませるために放っておくんだろうなぁ...」

 

「まぁ、どうせゴンたち(主人公)についてくんだろ?行動に気をつけながら───って言っても意味ねぇか。」

 

部屋に戻る前に依頼内容の確認をする。依頼人が何を望んでいるのかを理解して実行するのが出来るヤツだ。

 

危機感を持ってほしいならギリギリまで引き付けよう。

傷付けさせたくないのなら全ての可能性を排除しよう。

力が欲しいなら誰にも負けない武器をあげよう。使いこなせるかは別として。

 

元々は“何でも屋”として世界をまわっていたのだ。目的のためなら何でもするさ。

 

「報酬は?」

 

「『いつもの』だろ?ゾルディックで見つからないなら何か別の物で代替えするしかねぇだろうな。」

 

「...だよねー。あとは時の流れに任せるか...かな。...ホロウのおかげで目処は立ったし。」

 

っと、話してる間に部屋に着いちゃった。サンズはまたトランプを借りてタワー状に重ねていく。...何だかんだで満喫してるよね。

 

「トランプタワーとかやってることヒソカと同じじゃん。やめてくんない?」

 

「そう言われてもオレはそのヒソカとかいうニンゲンをしらn...「初対面のヤツに対して、ソイツが強いと思ったら股関を滾らせながら迫ってくる戦闘狂。ピエロのメイクしてる。戦闘に関しての変態。」..............................」

 

スペードのトランプをもつ手が空中で止まる。直後、一部出来上がっていたタワーを崩し、“周”をした一枚のトランプが壁に突き刺さる。

 

「...何してんの?」

 

「いや、ハエがうるさかったから少し...な。もしかしてそのヒソカっていうニンゲンはトランプを武器にしてんのか?」

 

「思い出したくないから聞かないでくんない?」

 

「おう、ワリィな」

 

そう言ってもその声色は申し訳ないと思ってるようには聞こえない。その事に舌打ちしつつ今度ヒソカにあった時は強いヤツとして教えてあげようと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──そんなこんなでボクは今、キルア君の前にいます。

 

依頼されたからには護衛相手にも報告する義務があるのでキルアの場所を聞いたら『独房』に入れられているとのこと。

 

独房というものについて悪いイメージしかない...というか良いイメージ持ってる人いる?って感じだからババ抜きしたら、負けた。

 

で、案内に連れられ来てみたら太った人がキルアを鞭でうっていたので軽く引いた。

 

ちなみにキルアは手首、足首を鎖でつながれ上半身裸の至るところにムチ打ちの跡が赤くなっている状態である。うわ、痛そうー(小並感)。

 

「かくかくしかじかでボクが護衛することになったよ!やったね!」

 

「いやわかんねーし、そもそもお前誰だよ!」

 

「忘れちゃったのね!一つ屋根の下(部屋は別)で夜をともに(ゴンも一緒)過ごしたのも、あの夜のこと(ネテロ会長とのゲーム)も全部お遊びだったっていうの!?(お遊びである。)」

 

「キル...お前...」

 

「知らねーよ!!おい、兄貴!ちげぇからな!?声は似てるけど、本当にコイツのことなんて知らねぇし、見たこともねぇんだって!」

 

「ひどいわ!あんなにも激しく(会長とお遊び)してたのに!」

 

「お前もう黙ってろよ!」

 

つーか、このデブ...んん゙、失礼。横に出た贅肉の人はキルアのお兄さんなんだね。名前は確か...ミルキ=ゾルディック。強そうには見えないけど念を習得してるし、弱くは無いんだろうなぁ。

 

報告するついでに部外者(ミルキ)は外に出てもらい拷問じみた、通称『お仕置き状態』を解除した。...え?自力で出れる?...キミ本当は念能力者じゃないの?

 

「では改めて。この姿では初めまして。ボクはリアラ。前職は何でも屋で今は『冥界の守護者』の相棒をやっているものさ。今回はアイツの代わりにボクがキルアの護衛をやるよー。顔が違うのは...ほら、キルアの兄だってやってたじゃん。あんな感じのをしてたんだよ。」

 

念能力で顔を変えていたので嘘はついてない。

 

「つまり、顔は変わってるけどリアラなのは間違いないんだな?」

 

「うん、そうだね。例え顔が変わってもボクはボクだよ。」

 

「それで...やっぱり、俺が『雇い主』みたいな感じになんのか?」

 

ん?どうだろう。雇い主自体は『シルバ=ゾルディック』として入ってるし、報酬もそうだけど...

 

「んー、一応そうなるのかな?ボクは雇用主の一人として考えてるけど。」

 

「それじゃあやだ。」

 

やだ?今、ヤダって言った?

 

突然の拒絶に頭が追い付かないまま、キルアは哀しそうな表情を浮かべながら話し始める。...どこかの場面と記憶が重なる。

 

「俺はさ、ハンター試験の時には言ってなかったけどリアラとも友達になりたいんだよ。」

 

言葉が出ない。友達になりたい?ボクと?

 

「でも雇い主だと友達になれないじゃん。昔、『俺が雇い主だから友達になれない』って言われたことがあったしな。」

『誰もボクと友達になってくれないんだ。』

 

頭に浮かんだのは見たこともない場所にきたとき、優しく手を引いてくれた親友。思えばあの親友も立場に振り回されて友達がいなかった。

 

「だから雇い主と雇われる人じゃなくて」

『だからモンスターとニンゲンじゃなくって』

 

かつて異質な目のせいで疎まれ、排斥されて、嫌われ者だったボクにかけられた言葉が(よみがえ)る。

 

「俺と友達になってくれないか?」

『ボクと友達になってくれない?』

 

 

目から出た水が頬をつたう。

 

何度も見たあの夢。頭に響く『Gルート』とやらを防ぐために動き続けた。

 

FRISKに伝えようとした。

殺すために必要な武器を隠した。

モンスターに襲わないように呼びかけた。

Sansに『セーブ&ロード』の存在を教えた。

FRISKの中に入ってPlayerの行動を止めようとした。

 

結局なにも変わらなかったから世界を壊したのに

 

全部ムダだったからこの世界に逃げ出したのに

 

大切なモノを守りたかったからケツイでバリアを抜けたのに

 

事故でSansが来たから目的地を探しても

心の中で見つからないで欲しかったのに

 

止められなかった罪を背負って我慢していたのに

 

あの時と同じように溢れる涙と嗚咽を抑え、あの時と同じ言葉を紡いだ。

 

 

 

「『ボクで良ければ...!』」

 

 

 

あぁ、アズに会いたいな...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『*ケツイがみなぎった。』

 

 




 
もはや自分でも分からなくなってきたから原作開始前のを書くためにしばらく更新止まるかも。すまぬ...


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6話 ※

クリスマスに予定がないのでクリスマスプレゼントだー!





こちらに来て数年間、聞かなかったアナウンス。

 

こっちに来てから二度と聞くことはないと思っていた誰かも知らない声。

 

『ケツイ』は()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

Charaは『Playerの思い通りにさせないようにする』という目的を成さずに逃げ出したのだから『ケツイ』を持つ資格すらないのだと。そう思い込んでいた。

 

実際『ケツイ』のこもった攻撃も、今まで出来ていなかった。結果、つい先日のサンズとのゲーム(お遊び)ですらの一方的な敗北。

 

しかしそれは『ケツイ』をもつ資格がなくなったのではなく、単にバリアを抜けるために全て使ったからなくなっただけであって、新しく決意すれば回復するものだった。

 

そして『ケツイ』が無いのを念能力で補って暗殺などの仕事をこなしてきたのだ。『ケツイ』を得た今、元の能力より高くなっている。

 

8636回。Gルートの()()()()()()()()()()回数である。それ以上にP,Nルートを攻略している。その分の、弾幕の回避、『ケツイ』の使い方、『セーブ&ロード』などなどを経験値として手に入れている。

 

オーラ、『ケツイ』、実戦の経験値、この3つが揃った今、どれだけ戦えるのか。どこまでいけるのか──

 

 

「──というわけで力試しを...何してんの?」

 

「ちょっと待て。今『ケチャップとマヨネーズの混合液体による人間の味覚への影響』についての本を読んでんだ。」

 

「ただのオーロラソースの活用本だろ。」

 

ようやく借り物なのか分からない難しそうな本をしまい、こちらに目を向けた瞬間少しびっくりしたような表情でおどけたようなうごきをした。

 

「お、なんだようやくか?ずいぶんとお寝()()()さんだったな」

 

「...は?」

 

「オイオイ、キレんなよ。沸点低すぎか?」

 

「キレてない!ってそうじゃ無くて、ちょっと出掛けてくるってのを言っとくべきだと思って。」

 

「ン?どこに行くんだ?」

 

サンズが怪訝な表情でこちらを見つめる。なに、依頼放り出して遊ぶとでも思ってんの?そうだとしたら心外なんだけど。まだ3桁までしかしてないよ?

 

「いや、テキトーにそこら辺まわって地域の治安維持活動に一役かってあげようと思ってね。」

 

「...ほどほどにしとけよ?」

 

「分かってる分かってる。」

 

ボクが何をしようとしてるのかも言葉から察し忠告をしてきたが、せいぜい正当防衛程度でしか戦わないから多分大丈夫だろう(オーラ使わないし)。

 

行くぞチンピラ共、震えて待っていろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『決意』をいだいた少女は動き出す。もう一度親友と会うために。

 

 

同時に歯車も動き出す。誰にも知られずゆっくりと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くらいくらいひかりをのみこむふかいやみ

 

ありえないそんざいがからだをふるわせ

 

こうふんにもだえながらめをひらく

 

くちからもらすはかんきのことば

 

「『✋ ☞⚐ ☠  ✋❄ ✌❄ ☹✌ ❄ (やっと見つけたよ)』」

 

ふかくふかく

 

おちていくのはきょすうのうみ

 

つぎのじっけんがたのしみだ

 




この後からが本番


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6.5話 ※

大晦日だー!

過去編、というかサンズがキャラを信じた理由とサンズの秘密。



 

これからする事が楽しみなのか嬉しそうに走っていく背中を見えなくなるまで眺める。楽しそうにしているがキルアの護衛というのに外に出れるか、ということまでは考えていなさそうだ。

 

この世界のオレ、サンズは()()()()()()()()()()()()()

 

これだけ聞くと他の二次創作に似たものがあるって言うだろうな。だが、安心しろよ。オレはまた別だ。

 

オレのは『他のサンズの記憶を持っている』だけだ。あとかろうじてplayerの存在を観測できるくらいか。本当に微かに感じとれるだけだが。

 

オレが持ってる記憶は3つ。『ホラーサンズ』『マーダーサンズ』そして『エラーサンズ』だ。あ?ろくなヤツがいない?あらゆるAUがろくなもんじゃねぇだろ。by error

 

記憶は曖昧になってはいるが、能力とかは覚えている。もちろん目的も。性格は...まぁ、そのうち思い出すだろ。

 

そんでもってこの3人...文字通り3's(サンズ)ってか?\ツクテーン/。おっと今はジョークの話じゃなかったな。

 

まぁ3人分の記憶があったせいで3倍、キャラ...ニンゲンのことを疑ってたわけだ。

 

今は信用してるがな。信用した理由はいくつかあるが一番はあれだな。そう、あれはこっちに来てから1年半ほどたった時のこと──

 

 

 

********************

 

 

 

 

世界を渡って1年。ホロウと出会った。

 

その1年間ずっと何でも屋をやっていた訳だが、その何でも屋ってのはカモフラージュ。実際はもっとヤバいことをやってたがあえて内用は伏せさせてもらう。

 

あぁ、どれくらいヤバいかは言えるぜ?一番ヤバかったのはマフィアの一勢力ぶち壊すとかだな。まぁそのせいで追われもしたが念の修行にもなったし今考えれば良かったと思ってる。

 

そのマフィアの報復ってのが『対象を見つけ次第、多数VS少数を仕掛ける』というものだ。もちろん有象無象が増えたところでキャラとオレに届くわけがない。

 

しかし残念ながらそう簡単にはいかなかった。ホロウと会ってから知ったことだがこの世界には“念”というものが存在した。

 

だからだろうな。どこにいっても、どれだけ痕跡を消しても、どんな時間でも3日に一度は襲撃してくる。それも追跡系の念能力だと考えれば理解できる。

 

それが分かってからは少なくとも10以上はいる敵の内、指揮している偉そうなやつを拷問し、情報元を即殺した。

 

敵の襲撃率は格段に下がり、数も少しずつではあるが減ってきたときであった。

 

その時も襲撃してきたやつら

 

「はぁ今日も終わった終わった。」

 

「(24...25.....26?おかしい...最初に見たのは27───!)キャラ!まだ「遅ぇよ!」...!」

 

「がはっ──!?」

 

“絶”の状態から背後に現れた男にキャラが反応するも態勢が間に合わず攻撃を受ける。受け身を取れなかったキャラは地面に転がる。

 

「あ?ダメージが少ねェな?とっさに“練”したか?つっても意味ねェがな。」

 

男の言う通り、せいぜい転がった衝撃でできた切り傷程度で完全に無防備だったわけではない。が、何か様子がおかしい。ダメージは少なく済んでいるはずなのに頭を抱えて起き上がる様子がない。

 

「そう!これが俺の能力『地獄より(memory call)』!俺が触れた相手は~かつて死んだ相手に憎しみの言葉を言われるのさ!しかも親しかった人ほど明確に聞こえる!この能力で何人も殺してきた!そしてお前らもそう...死ねェ!」

 

能力が決まったことに気が大きくなったのか声高らかに自分の能力をさらけだす男。こんなにマヌケなやつにしてやられるとは最悪な気分だ。

 

こういう雑魚でも初見殺しの能力で簡単に人を殺せるから念は怖い。本当に...嫌になる。

 

使い馴れたボーンアタックを地面から出し、腹を貫いて動けなくさせた後、体の中に骨を生み出し内蔵をぐちゃぐちゃにする。

 

これもこっちに来てから知ったことだが、骨で貫いてからなら人の内部にも骨を作れることが判明した。

 

それはさておき、うずくまった状態でブツブツとうわごとのように呟いているキャラに近づく。...よく聞くと何かに謝っているようだった。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい──」

 

何に謝っているかは分からない。ただ、男の話がもし本当なら今見ているのは...

 

オレはそのまま言葉が続くのに耳をかたむけた。

 

「愛されたのに憎んでしまってごめんなさい

信じられたのに裏切ってしまってごめんなさい

止められたのに前進してごめんなさい

親友なのに切り裂いてごめんなさい

約束したのにやぶらせてごめんなさい

ごめんなさい、ごめんなさい─────」

 

誰にあやまっているかの推測は当たった。オレはエラーサンズの記憶でキャラとアズリエル王子が親友、もしくは家族に近い関係だったのを知っている。そしてそれがあのクソ花のもとだったことも。

 

約束したのにやぶらされたのはサンズ(オレ)

親友なのに切り裂かれたのはアズリエル(フラウィ)

止めたのに前進されたのはアンダイン(勇者)

愛したのに憎まれたのは...おそらくだがトリエル()

 

そして信じて裏切られたのは───

 

ここまで思考して、やめた。

 

いまだに謝り続けるキャラに向き合い、

 

 

「オォラァ!」

 

 

──全力で頭突きをおみまいした

 

覚えたての“凝”で行った頭突きは効果バツグンだったらしく、無防備な頭に衝撃を受けたキャラは「は?...え?」と理解できずに目を瞬かせるだけになっていた。

 

そんなキャラの胸ぐらをつかみ、こう言ってやった。

 

「いいか?どんなに謝罪しようが、どれだけ償おうがテメェのしたことは変わることも消えることもねぇし、許すこともねぇんだよ。」

「本当に申し訳なく思ってんだったら生きろ。そしてその命が終わる時まで苦しめ。それがテメェに出来る贖罪だ。分かったな?」

 

「へ、あ...え?」

 

「 分 か っ た な ? 」

 

「ぉ、おーけー...」

 

「よし、じゃあ帰るぞ。ったく面倒かけやがって」

 

「(めっちゃツンデレ感あるな...)」

 

「なんか言ったか!?」

 

「ナンデモナイヨー!」

 

 

 

********************

 

 

 

そんなこんなで今は信用はしてる。アイツから聞いた話によるとplayer操られてたらしいしな。

 

「そうだろ?見てるよなplayerども?テメェらの思い通りになんてさせねえ。せめてこの世界ではハッピーエンドを迎えてやるぜ。」

 

player達の気配に気づいたのはハンター試験からだ。どうせこう考えてるのも見ている、いや()()()()()んだろ?

 

干渉するなんて許さねぇ。オレが止めてやるよ。

 

そう思いつつサンズは懐からケチャップを取り出した。

 





ところでゾルディック編終わったらでサンズ視点とキャラ視点で分かれるんだけどどっちを先に読みたいですか?
サンズ視点は『冥界の守護者』としての仕事。
キャラ視点は主人公組といろいろやっていくつもり

片方書いたら片方書かないなんてことはないので面白そうな方をどうぞ。


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7話 ※

「それならばリアラ様、お一つご提案がございます。」

 

すぐ近くのスラム街で肩慣らしをしようと準備しているところで執事長のゴトーから待ったがかかった。

 

「我々執事と戦って頂くというのはいかがでしょうか。」

 

キャラは不機嫌な感じを隠さずに表にだした。よく苦虫を噛み潰したかのようなと例えられる顔だと思う。

 

「いや、別に良いんだけどさ...ボク無駄なことに時間使うの嫌いなんだよね」

 

あ、今ピキって音した気がする。

 

「ご心配なさらずとも。そこら辺のチンピラに負けるほどではございません。」

 

「あ、そう?じゃお言葉に甘えて」

 

「もちろんでございます。では...」

 

二回、乾いた音を手で鳴らすとすぐにガチャと扉を開く音とともに女の執事さんが現れた。

 

「失礼いたします。リアラ様、こちらへ」

 

「ん?こっちってたしか物置部屋につながる扉じゃなかったっけ?」

 

「えぇ、そうです。しかし──」

 

コンコンコンと三回のノックに扉から若干のオーラが吹き出す。とっさに身構えるも扉からゆらゆらと出るだけで何も起こらない。

 

顔をしかめていると女執事さんが扉を開く。そこに広がっていたのは『鍛錬』の文字が書かれた木板と空間が広がっていた。

 

「こうすることでたどり着くことができます。」

 

おそらく念能力の補助が目的のオーラで書かれる『神字』と念能力の複合なのだろう。実際、扉と壁との接合部のオーラは心なしか量がおおかったし。

 

にしても物置部屋に仕掛けってなんかしらないけどよく見るよね。本当になんでか知らないけど。

 

ナイフを具現化し、手の上でくるくる回す。何度か回したあと手に持ち、そして上に弾き落ちてきた柄の部分を正確につかんだ。

 

「それじゃあ始めよっか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(なんつー動きしやがる...!)

 

鋭い眼光でコインを弾いて攻撃しつつも動きを観察する。目線の先には盾役強化系の執事をスピードで翻弄しながらも読めない動きでこちらの攻撃を回避、さらにはナイフを投げて牽制と防御を同時にこなす小柄な少女がうつっていた。

 

元のねらいはキルアの護衛にふさわしい実力を持っているかを試すためにしたことだが、これではどちらが試されてるのか分かったものではない。

 

足にオーラを集中させた素早い動きには強化系以外の足では追い付けず、足止めさせている執事と同等、もしくはそれ以上のスピードが出ている。

 

ならばと足にオーラを集中させると薄くなったところに投げナイフと“凝”の蹴り。

 

前衛のマンダラとカミラ、中衛にマトン、さらに後ろからゴトーとニシオ。

 

この5人の立回りで抑えられてはいるがほぼ全ての攻撃を回避しているところを見るに、数段上手と考えても問題ないだろう。

 

(見えてるオーラ量と比べて強化倍率が低い?──少なくとも強化系ではない。ナイフは具現化?──いや、投げナイフを俺のコインと同じように持っている可能性。転がっていたナイフが消えてる──消してるか回収してるか分からねぇように立ち回りやがる...)

 

コインを弾きながら冷静に思考をめぐらす。いつか主の壁となった時に備えて。幸い、強化系または放出系、変化系でないことはほぼ確定している。

 

そこで状況が動く。いままで回避と迎撃にてっしていたキャラがナイフをパーカーの中へとしまったのだ。

 

代わりに手に持たれたのはリボルバー式のピストル。右手にあるそれに注意を向けた瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その弾は周囲のコインを打ち落とす。それを機会に弾切れと判断したマトンという若い執事が距離をつめようとした瞬間、投げられたナイフで足を止められ、できた隙にアゴに蹴りが決まる。

 

「まずは一人」

 

その一連の流れを見ていたゴトーはマトンに不甲斐なさを感じ、舌打ちしてから思考に浸る。

 

「バカが...念能力が不明なのに下手に距離をつめるんじゃねぇよ」

(──具現化した弾じゃない。弾を入れる時間はない...となると放出?いやポケットに隠したナイフの質量がないところを見ると具現化のはず...自分の系統と別の能力をつくると威力もメモリも問題が出てくるから可能性は少ねぇ...厄介だな。)

 

1人ダウンしているなか先程より余裕をもって攻撃を避けている。

 

やられたマトンは格上との実戦経験こそないものの、実力は確かで『放出系オーラで切り傷をつける』という触媒を用いる操作系であった。

 

中途半端に力があった分、長時間の戦闘をあまりしたことがなかったのだろう。避け続ける相手にシビレを切らし近づいた瞬間にこれだ。

 

実はすごくいい仕事はしていたのだ。攻撃することでタイミングをずらしたり、視界の端にチラチラとうつることで集中をとかせたり。まぁ、だからこそ先にやられたのだが。

 

マトンが落ちたことで念弾が消えることから弱めていたマンダラの『炎をだす能力』の勢いが増す。それにあわせてカミラの『相対する性別で変わる強化』の倍率も強化させる。

 

臨機応変に執事たちが隙を埋める中、それを嘲笑うかのようにキャラが情報を増やす。

 

青黄黄青黄青、わずかな隙の瞬間に上に弾きだされた二色の弾丸を寸分の狂いなくピストルに吸い込ませていく。

 

「しっかり避けなよ?」

 

仮面の奥で口角があがったのを幻視する。直後、二発カミラに向かって撃たれる。一発目は避け、二発目は拳で弾く。

 

そう、正直ピストルなどの銃というものは念能力者にはほとんど意味がない。見てからでも回避できるし、弾くこともできる。強化系にいたっては“纏”の状態でも銃弾を弾くことができる。なんなら銃弾より速くはしれる。

 

それこそ当たった瞬間に何かが起きる能力でなければ致命傷から程遠い。

 

だがそれでも意識を一瞬だけでもそらすことが目的なら、攻撃の隙間を埋めるための行動であるなら、射程という問題を軽減させるための物であるなら、むしろ最適といえるだろう。

 

銃弾を弾いた腕のすぐ真下、そこに写りこむ緑色のパーカーと赤いナイフ。

 

何が、と思う時間もなく顔にむけてナイフを突きつけられる。咄嗟に顔に“流”でオーラを集中して──失敗を悟った。

 

なぜならナイフを持った右手ではなく、握りこんだ左手のほうがオーラの量が多かったからだ。

 

キャラのその左こぶしを腹に向かってふるわれる、前に突如その場から飛び退く。

 

──避けた場所には一本のオーラの矢が刺さっていた

 




すまねぇ...戦闘シーン書いてたら長くなったから四苦八苦してたらいつの間にか2ヶ月経っていた...

結局三話くらいに分かれることになったぜ。初のガチ戦闘シーンだから長いと思っても許しておくれ...


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8話 ※

バトルシーンは筆が進むけど難しい...




「ふむ、それを避けますか...」

 

開幕からずっと“絶”の状態でいた老年の執事、ニシオは眉をひそめ呟く。

 

すでに避けた後ではあるがさっきまで居た位置には矢が刺さっており、ニシオは弓を構え、矢を放ったようなしぐさで片ひざ立ちだった。

 

キャラのパーカーには鋭利なもので切り裂かれたような跡が残っていて、緑色を傷からたれる液体が一部を赤く染めていた。

 

「あーあ、結構お気に入りの服だったのに...」

 

怪我をしたことよりもあくまで服が汚れたことに落胆を示す。その不気味さに背筋を撫でられるような感覚を覚えるが、身を硬直させる暇もない。

 

数分ほどの間、戦っていたが目に見えるダメージはこれが初めてだ。

 

この時まで当たった感触はあっても傷は見えなかった。それこそマトンが何度も放っていたオーラによる傷もだ。

 

マトンの能力では『切り傷』を媒体としている。だからこそ傷が見えずに焦り、やられたのだと推測できる。

 

当たっているのに服にすら傷ができない。なのに今回は傷ができた...何らかの念能力か...?どんな能力か考えよう──としてキャラが飛び出した。

 

またも二発。今度は一発はマンダラの牽制、二発目はキャラと同時にカミラに向かっていく。

 

「何度も通じると思うなよ!」

(この位置から避けるとニシオさんに当たる...さっきの威力はそうでもなかった。“纏”で十分事足りる!)

 

先程キャラがカミラの真下から急に出てきたようにみえたのは、こういうことだ。

 

銃をうった硬直を狙い、マンダラが炎を放つ。その瞬間に足を“硬”で強化、炎が当たる寸前で通り抜ける。その後、“絶”で炎のオーラに隠れ、銃弾を避けてきたカミラの懐に飛び込む。

 

それをもう一度やるというのだからなめられているとしか考えられない。

 

しかしまたも予想は裏切られる。攻撃に備えて身を固めたカミラの開いた股下をスライディングで通り抜けたのだ。

 

すぐに背後を振り返るもすでにニシオに向かっている後だ。飛び道具を持たないカミラにとって致命的な距離。

 

フォローとしてゴトーがコインを弾いて、時間差で放っているが、カミラか追いつくことはできないだろう。

 

愕然とする暇もなく背中にオーラを移動させる。自分を無視したということは銃一発で倒せると思った可能性があるからだ。

 

カミラの能力は『相対した敵の性別が女なら強化、男なら弱体化』するものだ。果たしていまこの状況が相対しているといえるだろうか?

 

答えは否。つまりは強化倍率が下がる。その分“纏”の防御力も下がる故にオーラ量をプラスしなければ防げない可能性もある。

 

そして強化してすぐに背中に衝撃が───こない。その代わりに見えたのは()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

衝撃的な光景に銃弾の軌道をみる、前に“周”でオーラがふんだんに込められた黄色の弾丸がひたいを射ぬく。

 

相対しているとは言えない状況で防御力が減り、意識が外れた瞬間を狙った一撃。その衝撃の強さにカミラが倒れる。

 

一方、青い弾丸はゴトーのコインとぶつかり合い、はじかれた弾とと時間差で打ち出されたコインがあたり、軌道がずれる。

 

体はすり抜けてコインには当たる。

 

その念能力を考察する間もなくニシオにキャラが詰め寄る。冷静にニシオがオーラの矢を3本、弓につがえる。

 

ニシオは放出系と操作系からなる複合型の能力をつかう。もとから弓の名手であり、ハンター試験にてキャラがプレートを奪ったポックルの師匠でもある。

 

その念能力は『追尾弾』『操作弾』『直進弾』etc...と多岐にわたり、高い汎用性と速度を兼ね備えたものだ。ちなみにキャラに傷を付けたのは隠密性にすぐれた『隠密弾』である。

 

それを3本。今回は『炸裂弾』『直進弾』『操作弾』である。

 

『炸裂弾』は威力がゼロの代わりにスピードが高く、任意のタイミングで発光が可能。

『直進弾』は何もないが速度と威力に優れたもの。

『操作弾』はオーラが続く限り術者が操作できる。ほとんど意識せずに行える点も良い。

 

最初に『炸裂弾』を顔の正面で発光させて目をくらます。これを防いだとしても『直進弾』が、それも回避したところを『操作弾』による横からの攻撃。

 

しかし、この想像よりも文字通り一歩先を行く事になる。

 

初撃の『炸裂弾』。これに対してキャラがとった行動が──前進だ。

 

普通は目の前に攻撃が飛んできた場合、反射的に避けようとしたり防御しようとしたりするものである。もしくは体が一瞬硬直するかだ。

 

その反射を無視して前に進むのにはどれだけの鍛錬が必要なのかは想像しがたい。

 

キャラの想定外の行動に『炸裂弾』の発動が少し遅れ、真後ろで発光する。

 

されどニシオもプロ。一瞬驚いたもののすぐに立ち直り、逆光によってハッキリとした輪郭の頭を狙い『直進弾』を放つ。

 

光が止まったときにあったのは、頭を撃たれ、倒れこんだキャラ...ではなく、矢を回避してまっすぐニシオを見据えるキャラだった。

 

本当のことをいうとキャラは矢を回避したわけではない。それどころか矢すら見えていない。

 

ではどうやったか。答えは()()()()だ。

たまたま、逆光で頭の位置がわかりずらかった。

たまたま、戦闘で弛んでいたフードが風で外れた。

たまたま、下から攻めるクセがあり、体勢を変えていた。

 

たかが運、されど運。戦場ではその運のあるなしが勝敗(生死)を決める。『運も実力のうち』というのは過言ではないのだ。故に──

 

全てを回避し、攻撃すべく一歩足を踏み出し、そこにあったコインに足を滑らせた。

 

──“不運”もまた、実力である

 

思わぬことにバランスを崩したキャラはそれでも頭を回し、体勢を戻そうとしながらも蹴りで攻撃する。

 

キャラが動揺した一瞬の隙にニシオが後ろに下がる。がキャラも逃がすまい、とナイフを投擲する。

 

ナイフはまっすぐに飛び、足を切り裂く。傷による痛みがニシオの足を重くさせた。その瞬間に距離をつめる。

 

しかし、ここは執事のなかでも上位の強さをもつニシオも全力で抵抗する。

 

さっきから2本持ってるように見せかけて“隠”で1本隠してたり、弓のほうのオーラを多くすることで“凝”で見破りにくくしたり戦いづらいことこの上ない。

 

2、3撃を回避したあたりから正気を取り戻した前衛が向かってきてる。ニシオを倒せなくなるのも時間の問題だろう。

 

残り少ない時間、ナイフの射程内に入っていて弓矢の有効射程から外れているのに寸でのところでかわされる。

 

対してニシオも焦っていた。

 

(ホホ...これはまた厄介な。後ろに目でもついているのですかな?)

 

あらゆる『弾』を使うもほとんどが見切られ回避、『操作弾』で後ろから攻撃しようにも悉く失敗。もはやほとんど打つ手無しという状況だった。

 

唯一、ニシオにできるのは迫り来るナイフを弾きながら広大な空間を逃げ回る事ぐらいだ。と想像よりも軽い攻撃を避けながらニシオは考える。

 

チラとキャラの後ろから来るマンダラをみた瞬間、胸ぐらを掴まれた感触をかんじた。

 

「ムッ、これはマズ──」

 

グッと引かれる感覚にとっさに体重を後ろにかけると、今度は逆に後ろにむかって押された。

 

重心が後ろになっていたこともあり、抗えないで後ろに足を動かす。が、何かにつっかえたように体が揺らぐ。

 

ぐるんと回る視界と突然の浮遊感。

 

ニシオが感じたそれはスローモーションで床が上に、天井が下に見え、さらには自分に向かう蹴りが飛んできていた。

 

走馬灯ってこんな感じか...死んだわコレ

 

と考えたところでアゴに衝撃が加わり、脳が揺れた。その結果、視界が暗転。意識が途絶える前に

 

「──あと2人」

 

という女性の声が聞こえた。

 




サラッと倒される強化系の女執事に何か強そうな雰囲気が出た老執事

名前は友達に考えてもらって本当に感謝。


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9話 ※

スクロールバーが休暇してる系の狩人夢を呼んでいたのだが、めちゃくちゃ面白くてモチベ爆上がりした。

あ、今回短めです。



 

「よーし、あと二人ぃ!?」

 

ゴス、と鈍い音とともに背後から来る衝撃に思わず頭を押さえてうずくまる。少し...というか結構、痛かった。

 

「~~!!いッたいなぁ!いきなり何する...ん..だよ..................」

 

「よぉ、他人の家で暴れまわるのは楽しかったか?」

 

声にならない悲鳴を上げると、すぐに痛みが引いてきたので立ち上がる。同時に下手人の顔を見ようと振り返った先にはガイコツ(サンズ)がいた。

 

いや、ガイコツの面をかぶっているからあれなのだが、普通にホラーである。さらに言うと面に空いている目の穴から深淵が覗いてる。

 

サンズはいつも白い目か青い目をしている。それ以外、つまり目の色がないとき、それは超激おこぷんぷん丸(死語)(ガチギレモード)な状態な時だ。またはシリアスな場面。

 

よく小説などで使われるもので、笑顔とは本来~うんぬんかんぬんというのがある。口は確かに笑みを浮かべているが目が笑ってないそれのお手本ともいえるのが今のサンズの状態だ。

 

故に、すべき行動は“逃亡”。逃げるは恥だが役に立つ。しかしそれを許すほど最弱にして最強のボスは甘くない。

 

その行動を予見していたサンズは踏み出す足の前に自分の足をおくことで逃走の妨害に成功。恐ろしく早い思考とやり取り、ボクじゃなきゃ見逃しちゃうね。

 

「おっと、ちゃんと足元には注意しておけよ。それよりなぁ、オレは言ったはずだぜ?『迷惑がかかるようなことはするな』ってな。」

 

確かに言っていた。皆さんは覚えているだろうか、ゾルディック家までの道のりで「大人しくしていろ」と言っていたことを。

 

書かれてない時の場面でもずっと言ってきたことだが、久々の戦闘で頭から抜け落ちるほどハイになっていた。

 

「そういうわけだからコイツは持ってくぜ。迷惑かけたな。」

 

「いえ、元々こちらから誘わせて頂きましたので。お手合わせありがとうございました。」 

 

「へっそうかよ...。あぁ、そうだ」

 

進めていた足を止め、振り返る。

 

「カメラ仕掛けるんだったら場所を知るヤツは隠す技術を持った方がいいぜ。目線でバレバレだ。」

 

「 」

 

「じゃあな。」

 

おら、行くぞと不機嫌そうな表情(仮面で顔は隠れているが)のキャラにむかって言う。

 

「ところで、最近ボクの扱いひどくない?」

 

「自分の胸に手を当てて今までの行動を振り返ってみろ。そうすりゃわかるはずだぜ?」

 

「心当たりが多すぎてわかんない。どれ?」

 

「全部だ。」

 

バタン、と扉が閉まる音を聞いてからゴトーは小さく息を吐く。念のため入れておいた小型カメラは鋭利なもので貫かれたように潰れており使い物にならなくなっていた。

 

今回の目的は大きく分けて二つ。

 

一つ目、これはもちろん今回キルアの護衛をするリアラ(キャラ)の実力を測るため。

依頼主の大切な三男、それも未来が確約されるほどの才能の持ち主。神経質になるのは当たり前だった。

 

二つ目は執事の教育。

執事として雇われた者は多かれ少なかれ才能を持っている。特に念能力の。

 

その才能を見抜くのがシルバだったりするわけだが念を教えるのは執事長であるゴトーの仕事だった。

 

若い者たちは新たな力を持つと慢心しやすい。故に慢心しているときに叩きのめすのだ。

 

しかし今回は難しかった。

 

類い稀で膨大なオーラ量を持ち、炎という()費が悪い能力だとしても十全に使えるほどの量。さらに近距離と中距離の戦闘をこなす技術を持つマンダラ。

 

性別の不安定さがあるがゆえに高倍率の強化、そしてそうでなくとも体の柔らかさを生かした攻め方で敵を打ち倒すカミラ。

 

若いながらも高い習得率の放出系と操作系で操作よりも拘束に重きを置いた能力。武術を学んでいて近接への対応力も高いマトン。

 

その誰もが弱いわけではなく、執事の誰が戦っても圧勝と呼べるものではなかった。だからリアラを利用したのだ。

 

手合わせと聞いて乗ってきたことを考えると余程のバカか、もしくは全て読んだ上で乗ってきたか...おそらく後者だろう。と雇用主の壁となるような存在にため息が漏れる。

 

そこまで考えてからため息に反応して肩を震わせたマンダラと一緒に、伸びている3人を起こしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、どうだ執事は。」

 

「全然ダメ。ほとんどが若い奴らだったし執事長も本気出してなかったみたいだったしね。」

 

まずは情報交換。無いとは思うがもしゾルディックと敵対した時、膨大な数の執事が送られてきたら拙いからだ。

 

「それにしては傷がついてるけどな。どうした?()()()と気が抜けてたんじゃないのか?」

 

「いや、あれはタイミングが悪すぎたって。」

 

話題に上がるのは腕の切り傷。ニシオの狙撃によって作られた傷だ。

 

キャラの念能力、【動かぬケツイ(防具:ロケット)】による効果によってキャラには傷がつかない。

 

といっても首にかけているロケットを握っている間だけだが、切る系統の攻撃を打撃に変換できるのだ。

 

自身を操作するタイプであるため操作系は効かないという能力ではある、がフェイントに片手、攻撃に片手を使ったタイミングで頭から抜け落ちていたニシオに攻撃された。

 

そういうことである。

 

 

 

「ていうか、最初は止めなかったじゃん。なんで今止めたの?」

 

「作者のモチベが上がらないんだとよ。」

 

「は?何それ。」

 

...そういうことである。

 

 




ところで念能力で具現化させた物って非念能力者にも見えるんですかね?

誰かー!読者の方々の中に有識者はいらっしゃいませんかー!


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10話 ※

お待たせしました...



 

「そろそろ...か。」

 

「確か一週間はたったかな。じゃあそうだね。」

 

ぼそりと呟いた独り言にキャラが反応する。

 

そう、キャラがサンズと一緒にゾルディック家を訪ねてから一日を残して三週間が経過しようとしていた。

 

毎食出される毒入り料理にキレそうになったが、美味しいのもまた事実。おかげで毒の耐性も上がったようで、怒るべきか感謝すべきか分からなくなっていた。

 

そろそろ、というのはゴンたちがキルアを迎えにくるタイミングのことだ。

 

シルバはキルアをもとから送り出すつもりのようだった。何が目的かは知らないが少なくとも成長させるためだとしたらこれ以上ないほどの環境が整うだろう。

 

まず才能。キルアがまともに関係を持ったのはおそらくゴンが初。そのゴンはキルアと同様、もしくはそれ以上の才能を持っている。またクラピカやレオリオもそう。

 

初めて会った人達が全員才能アリとなると自分は平凡であると考える。実際にはそんなことないと言われるだろうが、要は自分には才能が無いと思うのだ。

 

その結果、努力という形で追いつくまたは追い抜こうとする。ゴンたちもまた追い抜こうとしてさらに努力する。

 

ライバルがいるといないとでは成長率が段違いなのだ。

 

これも師匠が言ってた『ゲンサク』とやらなのかなぁ...

 

そんなもん分かるわけねぇだろ

 

そうだよねー

 

少なくとも今ここで話すべきことじゃない。そう考えて話を打ち切る。なんとなく察したのかそれ以上のサンズからの追及はなかった。

 

この日まで別にぐーたらして過ごしていたわけではない。最初の手合わせに使った物しか使っていないが、体がなまらないように定期的に戦闘をおこなっていた。

 

いつもは囲まれる前に片付けるため無かったが、囲まれてからの立ち回りを執事たちの連携によって対策としていたのだ。

 

しかしそれももうすぐ終わり。何故かは分からないが家から出る前にホロウから「三週間くらい滞在することになると思うよ」と言われたからだ。

 

信頼が厚すぎない?など言われそうだがそれも全て今までの行動の積み重ね。ホロウの『~な気がする』や『...だと思う』はほぼ確実に起こることとしてキャラ達の中では判断されていた。

 

それでも時間まで暇なのは確かで──

 

「...暇だなぁー」

 

「.......」

 

「あーひまだー」

 

「...............」

 

「ひーまーだーなーぁー!」

 

「うるせぇな!そんな暇なら得意のナイフでジャグリングでもしてろよ。」

 

「お、いいねそれ。採用」

 

「何で上から目線なんだ?」

 

サンズの呟きを無視し、懐から取り出した3本のナイフを1本目が宙を舞っている間に2本目を投げ、右手のナイフは左手に移しかえる。これを繰り返すだけだが玉ではなくナイフであることが難易度を跳ね上げる。

 

サンズも半分冗談のつもりで言ったことだが想像以上に上手く出来ているため、ポカンと口を開けたまま目を見開いている。

 

「あー、もしかしてやったことあるとかか?」

 

「いや、初めてだねッと、あぶな」

 

うっかりナイフの刃の側を握ってしまうところをもう片側に指を当て、回転させることで柄の部分を掴めるようにする。

 

その流れは一朝一夕で出来るものではなく、「やっぱりやったことあるだろ...」と思いつつも興味を失ったように暇潰し用の本へと目を移す。

 

数分ほどたっただろうか。

 

扉の前からなにかを感じ、とっさに宙にあった二つのナイフを左手で持ち、右手にあったナイフを牽制を目的として投げつける。

 

執事だということはない。執事たちは必ず通路を歩くときは足音を消している、が扉の前にくる時はうるさくならない程度に音を出す。わざわざ不完全な“絶”状態である必要はない。

 

それがなかったのは別の存在だからだろうと推測する。例えゾルディックの人間だとしても(関係が悪化する以外は)問題ないように投げたし、刺客だとしたらそのまま死ぬだろう。

 

唯一、どうやってここまで来たのかが疑問ではあるがそれも殺してからじっくり考えればいい。そこまで考え──ドアの隙間から覗く銀色の髪に戦慄した。

 

銀髪の人間はゾルディック家には2人しか居ない。ゾルディック家当主であるシルバ・ゾルディック。もしくはつい最近まで拷問部屋につながれていたゴンの友人、キルア・ゾルディックかだ。

 

当主が訪ねてくることはほとんどない。なぜなら依頼される・するの関係でこちらの立場が下なのは明白だ。ならば当然、訪ねるのはこっち。

 

つまり、残っているのは護衛対象のキルアということで...

 

ナイフで方向をずらすには角度が足りない。

 

銃で打ち落とすには精度が足りない。

 

サンズに頼むには時間が足りない。

 

ならば──飛び込む。

 

脚を折り曲げると同時に“硬”、筋肉をバネのようにして直線を進むナイフに向かって前にとぶ。そして見事キャッチ。しかしキャラは忘れていた。

 

(あ、着地考えてなかった──)

 

ナイフの進行方向にはキルア。ならばそのナイフを取りに行けばすぐ近くまで行くのは自明の理。全力でとび、制御が効かない空中となるとなおさらだ。

 

キルアは高速で迫る物体に体が固まり、キャラはどうにも出来ない。

 

ガンと鈍い音を立てて額から衝突。それでも勢いを殺しきれず、キルアを巻き込みながら転がっていく。サンズは面白そうな予感がしたので開いた扉から顔を出した。野次馬根性丸出しである。

 

「いたたた...キルア、怪我はない?」

 

「ッ───!?」

 

思わず赤面するキルア。仕方がない。キルアも年頃の少年であるし、状況が状況なのだから。

 

それはキルアが下でキャラが上に跨がり、頭を打ちつけないように片手を後ろに回しながら、もう片方の手は壁につく(俗に言う壁ドン)という状況であった。

 

...オイ今ボクが下のが良かった、とか思ったヤツ、顔覚えたからな。夜道では背後に気を付けろ?ATK+99をなめるなよ?

 

とまぁ冗談はさておき、放心状態のキルアを立ち上がらせつつ考える。

 

たぶんアレだね。ようやく外出許可が降りたから早くゴンのところに行きたくてノックを忘れ、入ってきたところをボクと衝突したと....。

 

取りあえず状況を理解したボクはキルアの脇腹に腕を通し、腹を肩にのせることで俵担ぎにする。

 

「よし、じゃあ行こう。どこにゴンがいるかは知らないけど」

 

「は?ちょっと待て、知らないのかよ!」

 

ようやく現実に帰ってこれたキルアは「降ろせ!」と抗議しながら暴れる。肩の上から落として怪我されても困るのでおとなしく降ろしてあげた。

 

キルアが何かぶつぶつ言いつつも歩き出したのでそのままついていけば、到着したのは執事室。...まぁ執事室といっても室というより館という感じで、最初に来た人は勘違いするんじゃないかと思うほど大きかった。

 

中にいたのは顔に怪我を負ったゴンとは逆にかすり傷すらないクラピカとレオリオだった。ゴンが怪我してる理由はなんとなくわかったから良いや。

 

「“試しの門”何番まで開けた?」

 

「聞いて驚け!俺は二番まで開けたぜ!」

 

「わーすごい驚いたー。」

 

「棒読みかよ...」

 

「いやボク五番まで開けられてるし、自分より体格いい人の方が力ないってねぇー?」

 

「ぐうの音も出ねぇ...」

 

やーい、と軽くレオリオを煽るキャラも、内心では冷や汗を流していた。だって四トンの門ですら開けられなかった筋力をたった三週間で八トンまで行けるようにしたのだから。

 

これでもしレオリオが強化系ならただの殴りあいですら強敵となるだろう。実際は搦め手を使うから経験の差でキャラが勝つし、レオリオは医者志望なことも相まって人を殴るとは考えられないが。

 

「リアラ様」

 

話がまとまり、取りあえず領地から出てから別行動を取ることになった時にゴトーから話しかけられる。

 

「どうかキルア様をよろしくお願いいたします。」

 

頭を下げる瞬間に見えた表情はどこか心配しているように見え、少なくとも先ほどゴンに『依頼主に特別な感情は抱いていない』と言っていたゴトーとは思えなかった。

 

こういう時にする返しとして『最善を尽くす』などが無難な答えだろう。まぁ残念ながらキャラには良い意味でも悪い意味でも常識は通じない。

 

故にこそ、

 

「誰に言ってんの?死んだとしても守りきるよ。」

 

そうキャラは自信気に言いきった。

 




ようやくゾルディック編おわった...次から視点が別れます。キャラ編とサンズ編、書けた方から更新してくつもりではある。まだエタる訳にはいかんよ...!


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ヨークシン前 編
1話 ※



この終わらせ方って不穏な空気出る気がするよね。次回、天空闘技場。




 

「にしても...お前本当にがんこだよな!」

 

ゾルディック家から出て早数分。執事長であるゴトーのコイン当てをやったらしくその話が終わった後、キルアが別の話を切り出した。その内容は

 

「ハンター証もってんなら観光ビザなくてもずっと滞在できるんだぜ?わざわざやる手間も省けるのに使わねぇんだもん。」

 

そう、そうなのである。あろうことかこの頑固小僧。必要のない観光ビザを自分の意地を通すためだけにとりやがった。

 

もちろんゴンはクジラ島にずっといたため、ビザをとったことがない(ハンター試験では免除される)。ゴンの頑固さは折り紙つきで説得は無意味に終わった。その結果クラピカ、レオリオが取り方を教えるはめになり現在に至る。

 

「だって決めたんだもん。ヒソカに一発きめるまで使わないって。」

 

「そのヒソカの居場所は?」

 

「....」

 

その言葉を聞いたゴンが目に見えてその勢いを落とし、キルアに向けるのがすがるような目線に変わっていく。そしてその目線を流すようにボクを...は?何で?こっち見んな。

 

とりあえずクラピカに流しといた。レオリオ?少なくともこの件に関しては何も言うことはないです。そもそもヒソカとのつながりが殴られたってことしか知らないし。

 

その後はクラピカから9月1日にヨークシンシティで行われる、世界最大のオークションに旅団が来るかもしれないらしい。ヒソカ情報で。

 

...最後の一言だけで信憑性が失われるのは仕方がないと思ってる。少なくともヒソカの利があるからこそ教えられた情報だろうから真実でも裏があるだろうなぁ。

 

クラピカはきたる時のため力を蓄えに

レオリオは故郷に帰って医者に

ゴンとキルアは行動を共に

 

「じゃあ」「そうだな」「うむ」「よし」

 

『9月1日、ヨークシンで!!!』

 

ちなみにこれを物陰で聞いていた二人がいたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいか?ヒソカとハンゾーの強さの差がこれくらいだとすると...ゴンは────」

「ここな!かなりおまけ付きで。」

 

「じゃあボクはここで。あ、キルアここね。」

 

さらっと、ながーく引かれた強さの距離のゴンに近い方へとキルアの顔を付け足し、ヒソカの近くに新しい線を短く伸ばしその先に自分の顔を書く。どうやら戦力分析のために分かりやすく距離で表していたらしい。便乗させてもらった。

 

キルアが文句ありげにこちらをにらむけど妥当だと納得してるから何も言えないんだろうなぁ、と推測する。

 

「リアラだ!どこ行ってたの?」

 

「野暮用と買い物。ほら」

 

ドサドサと音を立ててパーカーの中から出るわ出るわお菓子の数々。どこにそれをしまっておく余裕があったのかと思えるほどで数秒後には小さな山が出来るほどだった。

 

「うへぇ、つーかチョコばっか。」

 

というかチョコばかりであった。

 

ちなみに特にミルクチョコレートが多かった。本人曰く『ビターはチョコじゃない』とのこと。全ビター派の人間にあやまれ。

 

「いや多すぎだろ。しかもチョコ一色。」

 

「なにいってんの?キルアもチョコ大好き人間(こっち側)でしょ。」

 

「は?一緒にすんな!だいたい、何の根拠があって言ってんだよ。」

 

「今からいく天空闘技場のファイトマネー、全部お菓子代に消えたんでしょ?」

 

「!なんでその事知って──」

 

「え、マジで?カマかけたら当たったんだけど...いや、流石にそれは引くわー。」

 

「アアアアアアアアアアアア!!!!」

 

「キルア落ち着いて!」

 

ふっふっふ、この程度の煽りで冷静さを失うとは...訓練がなってないんじゃない?もっとやりたいけど、ゴンも宥めてくれてるようだしこれ以上は言わないでおいてあげよう。

 

まあ──

 

「キルアと一緒に行くなんて嫌だから僕一人で天空闘技場に行くけどね。」

 

「こっちのセリフだぁぁぁ!!!!!」

 

「え、ちょっ」

 

「じゃあそういうことで!またね、ゴン、キルア!」

 

「待ってよ!」

 

「ゴン!あんなヤツほっといて先行こうぜ。よほど一人行動が好きらしいからな!」

 

さらっと言われた『天空闘技場』に対する質問を言おうと口を挟むもスルーされるゴン。不憫だなぁ。まあボクはそうは思いませんけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大通りを歩くキルアとゴンを横目に僕はたった今大人一人を()に沈めたところだった。

 

「はぁ、差し向けられてるのも雑魚ばっか。ていうかどこから情報漏れてるんだろ。そんなヘマしてないはずなんだけどなぁ...」

 

まさかゾルディック家自らとか?...あり得るね。理由としては実力じゃなくてちゃんと護衛できるかどうかの力を試してるとか。まぁチンピラ同然の奴らなんて怖くもないけど。

 

それにしてもゴンたちを欺くためとはいえ、道化を演じるなどほんと止めてほしい。どこかの変態マジシャンを思い出すから。

 

でも仕方ないとも思っている。多分この事を知ったらキルアはともかくゴンが突っ込んでくるだろう。それで人質にでもなってしまえば面倒なことになる。

 

もちろん速攻で取り戻せる自信もあるが、自分が頂点だと思うほど自惚れてない。上には上がいるのだから、そういう相手を想定して動くのはいたって普通のことだ。

 

それも分かってキルアもそういうフリをしてくれたと思っておいてあげよう。

 

ところでいい忘れていたが、ゴトーたち執事と戦ってから『ケツイ』と念能力を調べていたのだが...どうやら融合して変質していることがわかった。

 

効果が変わったとか性能が下がったとか、そういったマイナスなことが起こったわけではなく、どちらかというとプラスにはなった。

 

外套の中にしまっていたそうびの一つ、『やぶれたノート』を取り出す。これも影響を受けた『ケツイの力』の一つ。

 

念能力を覚える前、FRISKの背後霊てきな立ち位置のとき。つまりは俯瞰的な場所から戦闘を見たときの『やぶれたノート』の効果は、一時的な絶対防御(無敵時間)

 

人間が長く持ち歩いたものには魂が宿るという九十九神の理論がある。これが特に現れたものが『そうび』と呼ばれるものだ。

 

最初に見たときは目を疑ったもので。だって攻撃を受けると同時にノートに吸い込まれてしまうんだから。脱出ポット的な使われ方をしていてビックリした。実際入ってみても何も変わった気がしなかった。それどころか入ったという感覚すらしないのだから不思議アイテムもあるものだなぁ、と思ったぐらいだ。

 

それが変わった結果、どうなったか。言ってしまうと何でも取り込める便利空間になった。...まあ、生きた人間はさすがに無理だけどねー。

 

開いていたノートを閉じて“絶”をしながらゴンたちを尾行をしはじめる。その背後には乾いた石畳の路地裏が広がっていた。

 





この終わらせ方って不穏な空気出る気がするよね。次回、天空闘技場。



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2話


1ヶ月ぶりですね。モチベが上がってると言いつつこれだよ。



 

結局、雑魚しか来なかったので戦闘シーンはカットー!...と言うわけでやってきました天空闘技場!

 

なんと“天空”闘技場というくせに~空に浮かんでるわけじゃなくてただ天を突くように高い塔だからというだけなのだー!その階層数驚異の200階!体術と一緒にお金も貰えることから別名『野蛮人の聖地』。このことからゴンとキルアにはぴったりとも言えるのだぁ!

 

...このテンションきっつ。やめよ。

 

はい、ボクたちは今天空闘技場に来てるよ。

 

「おいゴン、格闘技経験五年って書いとけ。普通より早く上がれるから。」

 

「まー試しの門を開けられるんだから普通にそれくらいはあるよねー。」

 

面倒な作業をすませ、早速入場。ゴン、キルア、ボクはそれぞれ闘技場の中へと入っていく。ここで勝ったり負けたりを繰り返して稼いでいたら出禁をくらいかけたのは良い思い出だ。

 

なお、手続きは偽装が通るし、偽名も通るので結構ガバガバである。まあ、キルア達みたいに偽装しても実力がなければ即敗北するから問題ないんだけども。

 

「ここが『野蛮人の聖地』、天空闘技場だ。」

 

そこで行われていたのは殴る蹴る何でもありの戦いというよりも喧嘩に近いもの。複数あるフィールドを取り囲むようにして作られた観客席からは「いけー!」「そこだー!」といった歓声や、一部を称える黄色い声援、逆に恨めしいヤツがやられて「よくやった!」「お前は俺らの希望だー!」といった声も聞こえてくる。コロッセオ形式で行われるそれは傍観者からすれば気持ちの良いものなのだろう。

 

とはいえさすがに無法地帯というわけではなく、控え室から自分の番号と一緒に相手の番号が呼ばれ、フィールドへと向かうことになる。

 

なお十階までは控え室は二つあり、そのそれぞれから一人づつ呼ばれるので一緒に向かってちょっと気まずい...なーんてことはない。どちらも入り口からの距離は同じため、普通に歩いていてもバランスよく別れることが多い。

 

あ、言い忘れてたけどキルア、ゴン、ボクの順番で登録したから番号はそれぞれ2054、2055、2056番である。同じ控え室にいるからキルアVSボクなんてことはないしね。

 

控え室に入った瞬間、中の全員の意識がこっちに向けられる。ハンター試験の時に似たような感じで、すぐに興味を失ったようにもとの向きに戻した。

 

『2055番、1973番の方。Eのリングへどうぞ。』

 

「あ、オレだ。」

 

「行ってらっしゃーい。」

 

「ゴン、お前試しの門クリアしたんだろ?なら思いっ切り押してみろ。」

 

「押すだけ?」

 

「ああ。俺の予想だと...まぁ、とにかく行ってこいよ。」

 

「?うんわかった。」

 

そう言って控え室を後にするゴン。ありゃ分かってないな。

 

次いでキルア、ボクの順番で呼ばれ、それぞれリングに上がる。ゴンの相手は太ってはいるけどそれなりに筋肉も付いてる感じの大男。ゴンの2倍くらいありそう。

 

「それでは始め!」

 

でも子供だからっていう理由だけで舐めてるし、すぐつけあがるザコ。レオリオより体格はいいけどありゃ伸びないタイプだ。

 

「余所見か?余裕だな嬢ちゃん。」

 

キルアの相手は...正直言ってビミョー。でも体つきから考えると武術の腕はまあまあかな。当たるのがキルアじゃなければ50...いや60階は行ったかも。

 

「ぐっ...この!」

 

おっゴンの相手が仕掛けた。でも大振りの攻撃ですぐに懐に潜り込んでー、一押し!

 

それだけで面白いぐらいに飛んでいって壁に激突。おいおい、死んだわアイツ。

 

ゴンは自分の手のひら見つめて驚いてるけど2トン押す力あったら人なんて簡単に吹っ飛ぶに決まってるじゃん。どれだけ重い人でも0.2トンにも満たないんだから。

 

「何なんだよテメェ!今戦ってんのはオレだぞ!こっちを見ろよ!くそッ...どいつもこいつもオレを見下しやがって!オレはこんなにも努力してんのに!何でオレがこんな目にあわなきゃいけねぇんだ!くそがくそがくそがァ!!!」

 

「うるさいなぁ」

 

始まってからずっと当たらない攻撃を繰り出してる男がやけくそで飛びかかってきたところをしゃがんで回避。そのまま地面に手をついて顎を狙った蹴りを決める。

 

「怒って冷静さを失ってる時点で三流だよね。ただの喧嘩屋みたいだったから貰えるものもないっぽいし。」

 

ぐらりと音がつきそうなくらいきれいに倒れ、ピクピクと痙攣したまま動かない。その光景を最初から見ていた観客は息をのみ、すでに興味がないかのように他のところに目を向けたことに戦慄した。

 

「(元々、ここに来た目的も護衛ついでに武術を学ぼうと思ったからだし...この前はお金儲けのためだけだったからそういうの見れてないんだよねー。)お、キルアも終わった。手刀メインな感じかな。」

 

「...すばらしい戦いでした。あなたは50階へ。」

 

「はいはーい。」

 

審判の人から50階行きの紙だけ貰い、その場を後にした。

 

余所見しながら攻撃よけて一撃で倒したのに50階程度?って思ったかもしれないけど初挑戦は最高50階までしか行けない。

 

キルアは一度200階まで上がってるからか100階まで飛ばせるけどゴンは初挑戦、ボクは偽名登録だから初挑戦扱い。あ、キルアが50階からにしてもらってる。

 

「おい、こっちにも化け物みたいなガキがいるぞ!」

 

と、ゴンとキルアが集まっているところに向かおうとしたときそんな声が耳に入り、ちょっと気になった。観客の目線の先には胴着を着た坊主頭の少年。ゴンより少し年下くらいかな?

 

うーん、弱いね。武術のうではそこそこ?まあまあ?かな。武術だけで考えたらその年にしてはそこそこ。だけど、戦いってとこでみたらキルアどころかゴンにも届かなそう。って、この二人と比べたらかわいそうか。

 

...ただ、未熟ながらも“纏”は出来てるし、“絶”をつかって相手の精孔を開かないように配慮してる。念ありでもキルアやゴンが負けるとは思えないけど勝つのも難しいだろうなぁ。

 

それよりもどちらかというとあの人の師匠に興味あるな。ゴンたちのレベルほどではないにしても10年に一人ぐらいには才能あるし、あそこまで育てられるんならキルアたちにも教えて貰いたい。

 

(ボクが教えても良いけど、ぶっちゃけ教えてとか言われても分からないし、何となくで使ってるから使えないヤツの気持ちなんてわからないしなぁ。サンズなら教えられる?...いやいやいや、ニヤニヤしながら煽ってくるに違いない。)

 

想像の中のサンズを頭をふって書き消す。変なものを見るような目で見られたが、「なんでもないよー」と手を振ることで追及を回避しておく。念に関してだしまだ伏せといても問題ない。

 

そのまま三人で談笑しつつ、50階へと行くためにエレベーターに乗り込む。すると、どうやらさっきの坊主頭の少年も50階へ行くよう言われたらしく、ちょうど一緒にエレベーターから降りていた。

 

「押忍!自分、ズシといいます!お三方は?」

 

「俺、キルア。」「リアラだよー」「オレはゴン。よろしく」

 

自己紹介から入った坊主頭の少年─ズシは窓口に向かいながらも話を広げていく。

 

「それにしてもさっきの試合、拝見しました。いやー凄いっすね!」

 

「まあ、それほどでもあるよねー」

 

「お前少しは謙遜しろよ。つーか、何いってんだよ。お前だって一気にこの階まで来たんだろ?」

 

「そうそう一緒じゃん。」

 

「いえ!自分なんてまだまだっす!」

 

「リアラ。あれが謙遜ってもんだぜ」

「いやあれは事実でしょ」

「失礼すぎね?」

 

「皆さんはどの流派っすか?ちなみに自分は『心源流拳法』っす!」

 

流派?流派って柔道とかそういう系のヤツやってる人のだよね。それならボク我流なんだけど。

 

「?...別に、ないよな?」

 

「うん。」

 

「えぇ!?誰の指導もなくあの強さなんすか...やっぱり自分まだまだっす!」

 

「別に流派がないってだけで指導されてないってわけじゃないでしょ。ボクのは我流だけど」

 

談笑していると、パチパチと手をたたく音と一緒に

 

「ズシ!よくやった。」

 

「師範代!」

 

そんな声が聞こえた。

 





話をどこで切ればいいか分からん。

サンズsideの方ですが、天空闘技場編おわってから閑話みたいな感じで書いた方が読みやすいかなと思ったんでサンズはしばらくいません。
アンケートほぼ意味なくなってすまんな。


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