無気力な僕がAqoursのマネージャーになってしまった件について (希望03)
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第1話「平凡な日常からの転機」

初めまして、「希望03」と申します。
ラブライバーの僕が思わず、書いてみたくなってしまいました。
こういうのが苦手な人は申し訳ございません…
また全然新米のため、誤字脱字、ひどい駄文になってしまっているかもしれませんが…!
気楽に読んでいただけたら幸いです!
それではどうぞ!



「おねえちゃん…!目を開けてよ…!ぼくをおいていかないで…!」

 

「…んあ」

…また、あの時の夢か…

「学校…行かなきゃ」

そうして僕は起き上がって、準備をしようとしたとき

「おはよーーーーー!!!」

朝からとてつもなくでかい声で僕の静寂な生活を脅かそうとするオレンジ色の怪獣がやってきた。

 

「…うるさいよ、少しは静かに言えないの」

「だって優くん、朝になっても全然起きないじゃんかーー!」

 

このぴーちくぱーちく喋ってんのが僕の家の隣の隣にある旅館の末娘、高海千歌。

一応、紹介をしておくと僕の入学した高校先でスクールアイドルなるものをしている。

廃校寸前のうちの高校を救おうと奮闘しているらしい。

なんとも「輝き」?を東京に旅行しに行った際に見つけたらしく、それがたまたまスクールアイドルというものだったわけだ。非常に単純。

 

千歌「なんだか悪口言われてそうな感じがするんだけど…」

「…そんなことないよ?」

 

こうして僕の生活の一日は始まる。

そういえば、僕の紹介がまだだったね、誰に伝えてるか知らないんだけども

 

僕の名前は「空条優馬」。まあそこら辺にいるごく普通の高校生。

強いて言うなら、孤独を貫く孤高の高校生かな…

嘘です。

ただのコミュ障、陰キャなのになぜだかほぼ女子高のところに通わされることになった高校生です…はい…

 

優馬「自分で言ってて死にたくなってきた…」

千歌「一人でぶつぶつ何言ってるのー?」

優馬「自分のことを客観的に見たら死にたくなったんだよ…」

千歌「あー…だ、大丈夫だよ!優くんはそのー…なんか大丈夫だよ!」

優馬「んー…フォローになってないフォローありがとねー…」

 

こうして駄弁りながらなんとか着替えを済ませ、朝食を食べ、学校に向かおうと玄関を開けたら

 

「…あ、優馬くん、千歌ちゃん!おはよ!」

優馬「おはよう、梨子ちゃん」

千歌「梨子ちゃん、おはよー!」

 

このベリーブロンドの長髪に綺麗な顔立ちをしている女の子、桜内梨子が立っていた。

ちなみにこの子も千歌に誘われて、スクールアイドルをやっているらしい

こんな可愛い子がいるなら一度ライブでも見てみたいけどな

 

梨子「今日もいつも通りだね♪」

優馬「いつも通りってなんだよ、いつも通りって…」

梨子「その気の抜けた無気力な感じ」

優馬「あー…これはどうにもならない…」

千歌「もっと元気出してよ、優くん!」

優馬「僕には君たちが眩しく感じるよ…」

千歌「ふふんっ!そうでしょー!」

梨子「あはは…」

 

こうして、ようやく学校に足を進めた。

 

~浦の星学院~

 

優馬「いやぁ…相変わらず女子しかいないもんなぁ…行きづら」

そう、さっきも言ったがこの高校は元々女子高で共学化したのもつい最近、僕が転校してこの高校に入ってからだ。

そのためだからか今、この高校にいる男子はまさに僕だけなのだ。

かといって、ハーレムというわけではない。廊下を通っている時の目線の痛さと言ったらもう…とにかくしんどいのだ。

 

梨子「今更そんなこと言わないの!…ほら、早く行こ?///」

 

そうして、僕の手を握って引っ張ってくれた。

…ほんと面倒見のいい子、ありがたい

 

優馬「…うん、ありがとね」

千歌「…むぅぅぅぅ」

 

後ろでなんだか唸ってる子もいるけど…

 

梨子(…はぁぁぁ///朝から手、握れちゃったぁぁ…///幸せ…♪///)

千歌(も~~~!!ずるいよ!梨子ちゃん!起こしに行ったのは千歌なのにっ!!)

 

 

こうしてなんだか手を握ってからずっと頬を紅潮させて、にやけている梨子と終始不機嫌だった千歌と一緒に教室に入ると

 

「お!おはヨーソロー!」

 

僕とは対照的だろう、そんな爽やかな声で挨拶をしてくれたのが、渡辺曜という女の子。

髪型はグレーのショートボブ、なんでもそつなくこなせちゃう所謂完璧超人なんだけど、どうにも船の船長に憧れて、口癖がヨーソローという掛け声になってしまっている。そして、この子も同じように千歌に誘われてスクールアイドルをしている。

なんでスクールアイドルなるものはこんなに可愛い子が多いんだ…?

 

優馬「おはよう、曜ちゃん」

曜「むっ!この前、呼び捨てで良いって言ったじゃん!」

優馬「いや、呼びやすいんだよ…」

曜「ダメ!曜、って呼んで!」

優馬「いや曜ちゃん話を「曜。」…」

優馬「話「曜。」」

優馬「曜…」

曜「うん♪よろしい♪」

 

…たまに強引なんだよなぁ

でも、色々世話になってるからこれくらいは許してやろう、うん。

 

曜「今日はちゃんと起きて授業受けるんだよ?」

梨子「そうよ、一応内申点だってかかわってくるんだから」

優馬「んえぇ…?それは…無理かなぁ、もう眠いんだよ…zzz」

千歌「ダメだよぉーー!起きてー!優くーん!」

優馬「zzz…」

 

これが僕の日常、静かで、穏やかで、時に騒がしくても、平凡な一日を過ごせればいい。

そんな僕にとって心地よい日常をこれからも過ごす、つもりだった。

 

まさか、この僕が、こんなことに関わってしまうなんて…!!

 

 

?「2年2組、空条優馬君は至急、理事長室に来てください。繰り返します、2年2組…」

千歌「ん~?優くん、なんか呼ばれてるよ~?」

優馬「…あ、うん。すぐ行くよ。」

梨子「何かあったのかしら…」

曜「ちょっと不安だね…」

 

(…勘弁してほしいな、校内放送は)

 

こうして今日の何気ない一日から僕の日常が少しずつ”非”日常へと変わってしまう…

そんなきっかけとなる一歩を踏み出してしまったのだった。

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
まずは2年生3人組のご登場!やはり最初はこの方たちからじゃないと…!
正直理事長室ってだけでもう誰だかわかりますよね~
ということで、次回はあの人のご登場!
また見ていただけると幸いです!
ありがとうございました!次回もよろしく!


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第2話 巡り合わせは突然に

今回は少し長くなってしまいました。
そしてかなり?シリアス調に…
こんなにシリアスにするつもりはなかったんです…
おそらくこのシリアス調まだまだ続きます…
いつか必ずイチャイチャ回でも組み込むんで末永くお願いします!


 

優馬「はぁ…めんどくさ…」

 

今、僕はなぜだか理事長室に呼ばれ、向かっている。

大体察しはつくのだが、正直勘弁してほしい。

あんまり面倒事には巻き込まれたくもない、ただただ平凡に生きたいだけなのだ。

だが、鞠…理事長に呼ばれるとなったならおそらく平凡という平凡は失われる。

理由はないが、そんな気がする。

 

~理事長室~

 

「…どうぞ~♪」

 

優馬「…失礼します。」

「ハァ~イ♪相変わらずの元気の無さですネェ~♪」

優馬「そういうのはいいんで、早く要件を言ってもらえませんか?小原理事長」

鞠莉「…ツレないですねぇ…ちょっとは構ってほしいデェス」

優馬「僕の性格はご存じですよね?面倒事は手短に終わらせたいんですよ。」

 

この人は小原鞠莉。3学年でありながら、この学校の理事長を務めている。

これがお金持ちの力というかなんというか

…そして、僕にとってはあんまり関わりたくない人の1人だ。

 

鞠莉「素直に謝るわ、ごめんなさい。それで用件なんだけど…」

 

きっとめんどくさい何かだ、どっかの部活のマネージャーやれとか、部活に入れとか、何とか

…大体こういう時、僕の勘は当たる。

 

鞠莉「あなたにスクールアイドル部のマネージャーをやってほしいの」

優馬「お断りします。」

鞠莉「なんで~~~~!!??」

優馬「いや、如何にもめんどくさそうじゃないですか…」

 

ほら、やっぱり当たった。

 

鞠莉「あのスクールアイドルよ?そんなに嫌?」

優馬「嫌というか、ただただめんどくさいですね。」

鞠莉「それじゃあただの逃げよ、ちゃんとした明確な理由を言ってほしいわ」

鞠莉「…もしかして、まだ打ち解けるのが怖い?」

優馬「…っ!」

鞠莉「それだったら私だって、ダイヤや果南だって力になるわ、だから「少し黙っててもらえませんか」…っ!」

優馬「…とにかく僕はマネージャーにはなりたくありません。今回の件は、すみません。お断りさせていただきます。」

鞠莉「優っ! 」

鞠莉「私はずっと貴方の味方だから!だから…」

優馬「…失礼しました。」

「きゃっ!」

優馬「…ごめんなさい。」

「優馬…さん」

 

分かってたんだ。これは逃げだって。

でも僕には、僕なんかにはそんな資格なんかない。

また傷つけてしまうから、悲しませてしまうから。

だから、これでいい。これで良かったんだ。

これからも僕は塞ぎ込む。

それが僕にとっての最善策だって知ったから…

 

「鞠莉さん、彼は、優馬さんは…」

鞠莉「ダイヤ…ごめんなさい…ダメだったわ…」

ダイヤ「仕方ないですわ…彼も強情ですから…」

鞠莉「私たちじゃ、優を助けられないのかしら…」

ダイヤ「そんなこと…」

鞠莉「分かってるわ、彼はそんな人じゃないって…でも…」

ダイヤ「鞠莉さん…」

ダイヤ「…もう一度話してみましょう」

鞠莉「え…?」

ダイヤ「ダメでした、で終わらせたくないでしょう?」

ダイヤ「…何より、私はまた昔のような関係に戻りたいですわ」

鞠莉「…うん、私もよ、だって彼のことずっと好きだったもの」

ダイヤ「ふふっ、私もです…」

 

~昼休み~

 

ふぅ…朝からずっと疲れたな…

スクールアイドルか…、千歌たちが言ってたな

「輝き」だっけ

でも、僕は輝きなんて眩しいものはいらない。

一生モブで十分だ

千歌「ゆ~うくんっ!♪一緒にご飯食べよ?」

梨子「ま、待って!私もご一緒していい!?」

曜「じゃあ私も行くよー!…優も私と一緒に食べたいもんね?」

優馬「…」

曜「あれ?優?」

優馬「…」

千歌「おーい、ゆ~うく〜ん??」

優馬「…」

梨子「優馬くん、上の空って感じね」

千歌「おーーーい!ゆーーうくーーん!」

優馬「おわっ!…どーしたの?」

千歌「何って、もうお昼だよー」

曜「そうそう、だからこうやってご飯誘いに来たのに」

梨子「なんだか上の空って感じだったから…」

優馬「あー…」

梨子「…何かあった?」

優馬「…なんでもないよ、じゃあご飯食べようか」

千歌「おー!食べよ食べよー!」

梨子「…優馬くん」

曜「…どうしたんだろ、今日1日寝てなかったし…」

梨子「朝の事と何か関係あるのかな」

曜「分からないけど、その可能性は高そうだよね」

梨子(優馬くん…何かあったなら相談に乗るのに、そんなに話せないこと…?)

曜(優…話して欲しいよ、そんなに私頼りないかな…)

梨子・曜「「はぁ…」」

~放課後~

優馬「さて、じゃあいつもの場所に行って帰るかな…」

 

僕の放課後は基本ある場所で過ごしてから家に帰ることにしてる

それは…

 

~図書室~

優馬「やっぱり落ち着く…」

この静けさは落ち着く上で最高の環境だ

「あ、優馬さん!こんにちはずら〜」

「ゆ、優馬さん…!こんにちは…!」

優馬「あ、花丸ちゃん、ルビィちゃん、こんにちは」

花丸「もうこの席が優馬さんの定位置ずらね~」

優馬「そうだね、1番落ち着くよ」

優馬「今日も本を借りてくの?」

花丸「はいずら!…でも、ここに来れば優馬さんに会えると思って…///」

優馬「何か言った?」

花丸「…何も言ってないずら!ふん!」

優馬「えぇ…」

優馬「えぇっと、ルビィちゃんは?」

ルビィ「え、えっと、私は花丸ちゃんの付き添いです…あと優馬さんに会いに///」

優馬「あ、ありがとう///」

ルビィ「えへへ…///」

花丸「ずらぁ…もう許さないずら。」

ジト目が怖いよ、花丸ちゃん…

優馬「なんで…助けて、ルビィちゃん…」

ルビィ「ピギッ!…今回は優馬さんが悪いです///」

優馬「えぇ…嘘だぁ…」

 

こうしてなぜだか不機嫌になってしまった花丸ちゃんに機嫌を治してもらう為に色々模索することになった…

最終的に頭撫でたら機嫌は直ったけど、今度はルビィちゃんが機嫌悪くなったりで結局2人の頭を撫でたのだった。非常に恥ずかしかった。

 

優馬「そう言えば2人とも校門前ですごい勧誘受けてたね」

花丸「はいぃ〜…スクールアイドル部っていう部活だったんですけど、熱量がすごくて大変だったずら…」

ルビィ「でも、楽しそうだなって思ったよね!」

花丸「ルビィちゃんはスクールアイドル大好きだもんね!」

優馬「そうなんだ、じゃあやっぱり入部?」

ルビィ「…ルビィはスクールアイドルみたいに輝けないし、お姉ちゃんに怒られちゃうから…」

優馬「…そっか、花丸ちゃんは?」

花丸「ま、マルなんて!そんな、可愛くないですし、ずらとか言っちゃうし…オラには向いてないずらよ…」

優馬「そっか…」

 

2人とも可愛いのにな…

きっと自信が無いんだろう、でもその気持ちはすごく分かる。

 

優馬「…自信を持つのって難しいよね」

花丸・ルビィ「「え?」」

優馬「周りからの目が怖くて、どう思われてるか分からなくて、それでいて明るく、自信を持てなんて、そんなの拷問だよ」

花丸「優馬さん…? 」

ルビィ「どうしたんですか…?」

優馬「でも自信が無い人はきっときっかけが欲しいんだ、自分を変えたいそのきっかけが」

花丸「…」

ルビィ「…」

優馬「1人でも探せるけどそんなん探せてたらここまで自信なんて失くしてない」

優馬「誰か手を差し伸べてくれる人、一緒に走ってくれる存在がいるからこそ少しずつ自信がついてくるんだ」

優馬「…こんな僕が言うのもなんだけど、2人とも可愛いからもったいないよ、可能性はあるんだ。だったらあときっかけだけ、1回でいいから彼女たちのLIVEを観て考えてみない?」

花丸「優馬さん…」

優馬「ごめん、こんなこと言うつもりじゃなかったんだ、でもなんか引っかかっちゃって」

優馬「じゃあ、もう僕は帰るね」

 

そうして僕は悶々としながら帰り道を歩いていた

果たしてあれは正しかったのだろうか、また同じように傷つけてしまうのではないか、とか

 

「はぁ…気分転換にゲーセンでも行こうかな…」

 

~沼津~

ゲーセンにたどり着いたものの、目の前にはとんでもない光景があった

 

「私の闇の魔術にひれ伏しなさいっ!!」

優馬「…なにあれ」

 

花丸・ルビィside

~図書室~

花丸「ルビィちゃん…」

ルビィ「花丸ちゃん…」

花丸「オラ、オラは…自分を変えたいずら、輝きたいずら!」

ルビィ「ルビィも変わりたい…!」

「「だから!え…?」」

花丸「…ふふっ、LIVE観に行こうずら!」

ルビィ「うん!」

花丸(…そういえば、優馬さんに可愛いって言われちゃったずら///えへへへ…///)

ルビィ(…優馬さんに可愛いって言われちゃったな///)

花丸・ルビィ「「えへへへ…///」」

花丸(あんなに真剣にマルのこと考えてくれてて、いつになく真剣な顔で言われちゃったらドキドキ止まんないずらよぉ…///)

ルビィ(すごく真剣に考えてくれてたなんて、やっぱり優しいなぁ…昔と変わらないね…''お兄ちゃん''なんて///)

花丸・ルビィ「「えへへへへへへ…///」」

花丸「る、ルビィちゃん、顔真っ赤ずらよ?///」

ルビィ「そういう花丸ちゃんだって真っ赤っかだよぉ///」

花丸・ルビィ「…えへへへ///」

 

こうして2人は1時間くらいは思い出しては不敵な笑みを浮かべていたとさ。

 

 

~理事長室~

鞠莉「…」

 

"鞠莉"!

 

鞠莉「…///」

鞠莉「きっと、きっと救ってみせる、だから待っててね、私のダーリン」

 

そのためには優馬の事をスクールアイドル部のあの3人に伝えておくべきね

他の女に手を貸すのはちょっと嫌だけど、優馬のためだわ、しょうがない。

必ず、必ず助けてあげる…!

 




あぁ、やっぱりシリアスシリアス…
優馬君がなかなか強情ですね
無気力が無気力になってないような気もします笑
考えとしては、Aqours3人の初ライブまではシリアス調が続くと思いますが、
定期的に更新するつもりなのでぜひ見てくださいね!
また次回もよろしくお願いします!!


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第3話 動き出す歯車

AqoursCDset2021のDreamy Colorを聴きながらなんとか投稿できました…
ちなみに僕の推しは曜ちゃん、果南ちゃん、ヨハネです←聞いてない。
今回のお話はどちらかというと善子メインで書いてるつもりです!
前回よりもさらに長くなってしまいましたが、いつも通り気楽に読んでいただけたら幸いです!
それではどうぞ!


「私の闇の魔術にひれ伏しなさいっ!!」

優馬「…」

「…」

優馬「なんかごめんね、じゃ」

「ちょっと待ちなさいよ!!!」

優馬「…なに?」

「クックックッ…私を認識するということは、貴方リトルデーモンに相応しいわ…そこで貴方にはリトルデーモンの称号を「あ、要りません」なんでよっ!」

優馬「いや、だって…リトルデーモンってなんだか分からんし、関わりたくないなぁ…と」

「そんなにストレートに言わなくていいじゃない!」

優馬「はぁ…分かった、まぁリトルデーモンとかなんとかは置いといて、君の名前は?」

「クックックッ…私の真名はヨハネ「そういうの良いから」…津島善子よぉ…」

優馬「意外と普通の名前だ」

善子「うるさいわねっ!」

 

…すごくいじりやすいなぁ

重度の中二病だから変なとこはあるけど、顔立ち悪くないし、根はやさしい子かもなぁ

なにより面白い。

 

優馬「ねぇ」

善子「なによぉ…」

 

あ、すごく泣きそうになってる

やっぱり根は絶対良い子だな、”善”子なだけに

 

優馬「良かったら一緒にゲーセン回らない?何かの縁だし」

 

正直、この時は流れで言ってしまった。

思わず口に出ちゃうくらいだから波長が結構合ったんだろうな

というか普通に面白い。

 

善子「え…私で良いの?」

優馬「良いというか…せっかく声かけたんだし、ね」

善子「…っ!///」

 

この時、優馬は気づいていないが、優馬自身のスペックがかなり高い部類であり、

いつも無表情だが顔立ちはかなり良い。さらに思わぬ人物の遭遇で若干、テンションが高めのため、優馬の表情筋はいつになく動いている。そこで繰り出された不意のはにかみ。

ドキッとしない女の子はいないのではなかろうか、というレベルだ。

 

善子(…いやいやいや、単純じゃないの私っ!///ちょっと声かけてもらって、こんなに動揺するなんて…///)

 

優馬「…善子?」

善子「ヨハネよっ!///ま、まぁそこまでリトルデーモンが私と回りたいっていうなら?考えてもいいけれど??///」

優馬「そう、じゃあ行こ?」

善子「はぅ!///」

 

この時も優馬は気づいていないが、ナチュラルに手を繋ぎ始めたのだ。

ちなみにこれはあくまでも優馬自身はテンションが上がりすぎた代償によるものであり、決して意図的にやっているわけではない。

 

善子(なんなのよぉぉぉ///こいつ、なんでこんなに平常でいられるわけ!!??///)

 

取り乱される善子に全く気が付かない優馬だった。

 

一方その頃…

 

~浦の星・理事長室~

 

千歌「…失礼しま~す」

曜「…相変わらずすごい部屋だなぁ」

梨子「…」

 

なんで呼ばれたのか、そう言われると恐らく、数日後のライブのことだろうか、と頭によぎった。

ライブというのは、私たちスクールアイドル部を部として認めてもらうために条件として、ライブ当日、体育館を満員にするという条件が課せられた私たちにとって、試練と言えるようなファーストライブのこと

だけど…なんだか、嫌な予感がしてやまない。

とてつもない事を聞かされるような、そんな悪寒がずっとしてやまない

恐らく、それは千歌ちゃんも曜ちゃんも同じなんじゃないかと思ってしまうくらい、皆の表情が暗かった。

 

鞠莉「…はぁ~い♪千歌っち、梨子、曜、調子はどう?」

千歌「はい!ライブに向けて、頑張ってます!」

鞠莉「そう…それは良かったわ、その調子でライブ、成功させてね」

千歌「はい!」

鞠莉「…続いてもらわないと困るから、ネ」

曜「…?それはどういう?」

 

ライブの条件を出してきた時は試しているような感じの言い回しだったのに…

今はなんだか逆に頼まれてる感じ…?

 

梨子「何か、あったんですか?」

鞠莉「…実は、伝えておきたいことがあるの」

 

そうして、小原理事長の口から出た内容は私たちにとって、驚くべき内容だった…

それは、優馬君の過去について、

小原理事長とダイヤさん、果南さんという人(千歌ちゃんと曜ちゃんは幼馴染らしい)に加えて、優馬君は昔からの幼馴染でいつも一緒に遊ぶ位の仲だったらしい。

そして、この4人の姉みたいな存在だった、奏さんという人。

優馬君にとっては初恋の人だったみたい…、ある日突然、病に倒れて、そのまま…

ほんとに突然のことだったみたいで、優馬君にとっては大きなトラウマに…

それ以来、優馬君は砕けて笑わなくなってしまったらしい。まるでロボットみたいに

そして、それと同時に小原理事長たちとも遊ばなくなるどころか、話さなくもなってしまい…

気づいたら小学校高学年時に転校、つい最近、また沼津に帰ってきたと思い、嬉しくなったのも束の間、優馬君はあの頃から何も変わっていなく、無表情のまま

心を取り戻してほしい、とスクールアイドル部のマネージャーになってほしいと懇願するも駄目だった、しかしまだ諦めきれず、私たちにも相談…ということだった…

 

梨子「優馬君にそんな過去が…」

曜「だから何だか、皆と一線引く感じだったんだ…頼ってくれないのはそういう…」

千歌「そんな…そんなの、絶対いやだよ!!」

鞠莉「千歌っち…?」

千歌「誰にも言えずに、頼れなくて、一人で抱え込んで、そんなの辛いに決まってるよ!」

千歌「…なんですぐに言ってくれなかったんですか!?私たちだってできること「じゃあ!!」っ!」

鞠莉「じゃあ、私たちはあの時どうすればよかったの…?慰めてあげる?寄り添ってあげる?そんな簡単なものじゃないのよ!」

鞠莉「…だから私たちは彼を見捨ててしまった、追いかけることもせずに、ね」

梨子「…後悔、してますか?」

鞠莉「もちろんよ、ダイヤも果南も皆、後悔してるわ…、なんであの時、手を差し伸べられなかったんだろう、って」

曜「…なんでそんな」

鞠莉「ふふ…、醜い嫉妬よ、私たちは皆、奏さんに嫉妬してたの…、小さいときながらにね」

鞠莉「ダイヤも果南も、もちろん私も、皆、優のことが大好きだったわ、でも…優はずっと奏さんしか見てくれていなかったの」

鞠莉「実際はそんなことなかったのかもしれないけれど、それでも奏さんに初恋を抱いていたことには変わりないわ、それで…」

梨子「奏さんがいなくなって、今度は私たちに愛情をくれる、とかですか?」

鞠莉「…大正解よ、梨子。そう、今度こそ私の番、と皆思ってたわ、でもそれは違った」

千歌「優くんが、塞ぎ込んじゃった…」

鞠莉「そうなの、そこで誰にも笑いかけてくれず、話してもくれずで…私たちは失望したわ、なんでなの!?ってね」

曜「そんなの、「分かってるわ」…」

鞠莉「初恋の人が亡くなってしまったんだもの…、塞ぎ込んでしまうのはすごく分かる、でも当時の私たちはそんなこと考えもしなかった。純粋さうえに、っていうことね…」

鞠莉「今はすごく後悔してるわ、もしかしたら一つの行動が優の今を少しでも変えれていたのかもしれないもの」

鞠莉「だから、だからお願い。あなたたちに託したいの、この思いを、救いたいっていう思いを」

梨子「辛く、ないですか?」

鞠莉「辛いわ、すごくね、嫉妬で狂いそうよ?でも、それよりも大切なの、優のことが」

梨子「…素敵ですね」

鞠莉「…ありがとう、それで返事はどうかしら?託しても良さそう?」

千歌「…」

曜「千歌ちゃん?」

梨子「千歌ちゃん?」

鞠莉「千歌っち?」

千歌「…やります!絶対にライブを成功させて、優くんにも観てもらって、必ず輝きを取り戻して見せます!」

梨子・曜「「千歌ちゃん…」」

鞠莉「ふふっ、分かったわ、じゃあお願いね…ありがとう」

千歌・梨子・曜「「「はい!!」」」

 

 

ダイヤ「…良かったのですか?」

鞠莉「…何が?」

ダイヤ「本当なら、私たちで取り戻したかったはずなのに「いいのよ」…」

鞠莉「前のような優に戻ってほしいの、だから私たちの私情よりも優先よ」

ダイヤ「…あなたらしいですわね」

鞠莉「そういうダイヤこそ、良かったの?あの場で何も言わなかったけど?」

ダイヤ「…本当はずっと唇嚙み締めていましたわ、本来ならば私たちが彼を戻す役目だったはずが、お役御免というようなものですからね」

ダイヤ「それでも、彼には戻ってきてほしかった、鞠莉さんと一緒ですわ」

鞠莉「…そう」

ダイヤ「ですが…問題は果南さんではないでしょうか」

鞠莉「ええ…これを知ったら…」

ダイヤ「…納得してくれるといいのですが」

 

 

~ゲームセンター~

善子「ふぅ…」

 

なんだかすっごい遊んだわ

でも、楽しかったな。こんなに人と遊んだことないし

あいつ、なんだかんだで私に付き合ってくれるし…

 

優馬「ほい」

善子「へ?」

優馬「飲み物、いらない?いらないなら僕がどっちも飲むけど」

善子「い、いる!ありがと…」

 

どこに行ったかと思えば、トイレじゃなかったのね…

しかも、ちゃっかり私の分にも飲み物買ってきてくれるし

…無表情で感情が読みづらいだけで、根は良い人、なのよね

まだあって数時間の関係だけどすぐに分かるわ

 

善子「…」

優馬「…」

善子「…ねぇ」

優馬「?なに?」

善子「少し、話してもいいかしら」

優馬「…どうぞ」

善子「…ありがと」

 

そこで私は、過去のこと、幼稚園時代から中学校時代までのこと、自分がなぜ「堕天使」というキャラをしてるのか、高校での自己紹介に失敗してしまったこと、現在進行形で不登校になってしまってること、色んなことをこいつに話してしまった。

 

善子「私、やっぱり変なのよね、受け入れられなくて当然というか…」

善子「普通でありたいけど、普通になれない、こんなんだから不登校になるのよね…」

優馬「…」

善子「明日にはまた学校に行こうと思ってるわ、でももう堕天使キャラはお終い。普通の女の子になるために、まぁ頑張るわ」

善子「…ごめんなさい、急にこんな話してしまって」

優馬「…ねぇ、善子にとって普通って何だと思う?」

善子「え…?それは…」

優馬「周りと合わせること?協調性とか綺麗事を使って、それとも無個性のこと?」

善子「…普通は、私みたいに堕天使になりきったりなんかしないわ、もっと友達と他愛もない会話して、どこか一緒に買い物に出かけるとか、そんなどこにでもあるような光景のこと、じゃないかしら」

優馬「あながち間違いじゃないね。確かに今どきの女子高生は堕天使なんかになりきらないし、1人でゲーセンなんかにたむろはしないと思う。」

善子「うぐっ…」

優馬「だけど、だからといって周りに合わせる必要性ってあると思う?」

善子「そんなの…省られたら、嫌じゃない…だから、だから皆の趣味とかに合わせて、話に参加して…」

優馬「はぁ…僕には無理だね」

善子「え…?」

優馬「僕は基本的に平凡に生きれればそれでいい。だから最終的に僕が…楽に生きれればそれでいいと思ってる。」

優馬「その楽に生きるっていう僕の信念にそんな頭を使って、話に合わせるとか、めんどくさいことは極力したくない。そんな友達なんてクソくらえ、だと思ってる。」

善子「…じゃあ私はどうすれば」

優馬「自分のやりたいことすればいいんじゃない?一度しかない人生だし、後悔はしたくないでしょ」

善子「…でも堕天使なんて続けてたら、孤独じゃない」

優馬「孤独は嫌い?」

善子「…好きで孤立したわけじゃないもの。周りに見てほしいとか、気を引きたくて始めたのがきっかけだから」

善子「…寂しかったのかもね、でもそれと同時に堕天使ヨハネとしての私も本当の私だった。とても楽しいの。だからどうすればいいのか分からなくなっちゃって」

優馬「…じゃあ寂しくなったらおいで、話ならいくらでも聞いてあげられるから」

善子「いいの…?」

優馬「少なくともヨハネとしての君も善子としての君も、僕からしてみれば大差なんてない。」

優馬「…あんなに楽しかったのは久しぶりだったから、ね。」

善子「…私、めんどくさいわよ、たまに意味わかんないこと言うし」

優馬「面白いからいいじゃない。無個性の僕よりだいぶマシだ。」

善子「素直じゃないし、不器用よ?」

優馬「でも、根は良い子じゃない。名前に恥じないくらいには。もっと素直じゃない人だっている。」

優馬「…だから善子には、ありのままでいてほしいんだ。…辛くなってしまう人はもう見たくない。」

善子「…うん、頑張ってみるわ、ただし!もし私が辛くなったらまた助けて、ね」

優馬「…できる限りのことはするよ」

善子「ふふ…そこは当たり前だろ、くらいの気持ちで来なさいよ!」

優馬「いや、だって保証はできないし…」

善子「でも、ほんとにありがと、貴方に出会えて良かったわ」

優馬「こちらこそ悩みが解決できたなら、良かった」

善子「そういえば、貴方の名前、聞いてなかったわ…」

優馬「僕も忘れてた…僕の名前は「空条優馬」。改めてよろしくね。」

善子「優馬、っていうのね…」

善子「…そろそろ帰って、明日の準備しなくちゃ!」

優馬「うん、頑張ってね」

善子「…ありがと!またね、優馬///」

優馬「またね、善子」

善子「ヨハネよっ!///」

 

 

…本当だったらやめるはずだったのに、余計止められなくなっちゃったじゃない。

貴方があんなに真剣な顔で言うんだもの

私の手を引っ張ってくれる人…、どんな私でも受け入れてくれる人…

 

善子「ふふ…大好きよ、優馬!」

 




あー…また堕ちてしまった…
だが堕天使キャラは可愛い。
これで3話目にしてようやく8人目ってとこですね…
3年生は皆、ヤンデレレベルで優馬君のこと、大好きですね。はい。
特にまだ出てきてない果南ちゃんがやべぇらしいので、頑張ってヤンデレヤンデレしたいと思います。
それでは、また次回も読んでください!よろしくお願いします!


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第4話 不穏な雨に私は溺れる

もうシリアスな展開しか書けない病にかかりました
こんな僕を許してください
このね、ライブが終わればすぐいちゃつかせますから、ほんとに、多分
ということで、第4話、ついに9人目登場します。
どうぞ!


善子と別れて数分、ちょうど僕は家に向かって歩いている途中だった。

もう大分暗くなっているのにこんな田舎で目の前から足音が聞こえるもんだからつい、前を向いた。

するとそこには僕が小原理事長に続いて関わりたくない人の1人が居た。

 

「やっ、久しぶり、ゆう」

優馬「…果南」

果南「…元気?」

 

松浦果南、浦の星学院の3年生で最近休学から復学したばかり。

小原理事長と生徒会長と幼馴染で…僕も彼女とは面識がある…

濃い青色の髪でポニーテールにして、さらにはプロモーションも抜群。言う所無しだ、と言いたいが、僕はそう思ってない。なぜなら…

 

果南「今日、どこ行ってたの?誰と遊んでたの?まさか知らない女?いつから遊んでたの?」

優馬「…頼むから少し落ち着いて話してくれない?」

 

少々、口うるさいのだ。

これが俗にいうヤンデレというやつなのかもしれないが、少なくともデレはないと思う。

 

果南「それくらい心配なんだよ、ゆうのことが」

優馬「いや過保護すぎだからね」

 

果南は心配と言っているがもはや心配の域をゆうに超えているのがよく分かるんだよな

 

果南「…ちょっと話しながら帰ろうよ」

優馬「まぁ…いいけど」

 

恐らくここで断ったらナイフで刺されるんじゃないか、ってくらいには緊張感が漂ってる。

…なんで?

 

果南「鞠莉たちと話したの?」

優馬「まぁ、うん」

果南「スクールアイドルのマネージャーだっけ?」

優馬「そう」

果南「…ゆうはどうしたいの?やっぱり力になりたい、とか?」

優馬「まさか…もう僕も含めて皆が傷つくのは見たくないから、やらないよ」

果南「そっか…安心した。」

優馬「え…?」

果南「だって、私もゆうの辛い顔はもう見たくないもん、マネージャーを強引にやらされて、それでゆうが傷つくくらいならやらない方がいいと思う。」

優馬「…そうなのかな」

果南「そうだよ…あんなに辛いことがあったんだからさ、少しくらい逃げたって大丈夫だよ、きっと…」

優馬「果南…」

果南「ゆうが逃げた、って非難されても私だけはゆうの味方だよ?」

優馬「…ありがと、果南からそう言われると思わなかったよ」

優馬「でも、決めたんだ。まずはスクールアイドル部のライブだけは観てみようかな、って」

果南「…え?」

優馬「僕も何か変われるきっかけが欲しいってずっと思ってたけど、怖くて逃げてた。でももう高校生だし、何かからずっと逃げ続けているのはだめだな、ってだから「ダメっ!!」…え?」

果南「…っ!ごめん、なんでもないよ、そしたら私も観に行こうかな…」

優馬「そっか…まぁ観るだけだからね、まだマネージャーになるとかどうかは全く分からないよ」

優馬(もしマネージャーになったら僕は変われるかな、奏ねえさん…)

優馬「マネージャーになるって決めたらまずは果南にすぐ伝えるようにするよ、ここまで僕のこと支えてくれるし、ね」

果南「…うん、でも無理はしないでね、私はずっとゆうのこと想ってるから」

優馬「うん、ありがと、果南」

果南「…じゃあそろそろ帰る、またね、ゆう」

優馬「うん、話、聞いてくれてありがとう果南、またね」

 

…僕は変わりたいのか?それとも、このままでいたいのか…?

正直、分からない。

でも、やっぱり鞠莉たちとのあの関係はとても居心地が良かったし、今の千歌たちとの関係も同じ。

僕は、僕は許されてもいいのか…?

 

“あの時を忘れるな。”

 

…どうすればいいんだ、くそっ

 

優馬「はぁ…」

 

 

果南「ゆうも変わろうとしてるんだね…、嬉しいよ。」

果南「それがスクールアイドル、だなんてね…なんの因果だろ、ほんとに…」

 

あれから数日後、1stライブ前日…

 

~浦の星学院・教室~

 

優馬「…ふあぁ、ねむっ」

 

善子と遊んで、久しぶりに果南と会って、数日、ついにライブの前日となった。

あれから、小原理事長からも生徒会長からも何もアプローチ的なものはなかった。

もうさすがに諦めたのだろうか。

 

千歌「優くん、おねむだねぇ??」

曜「それもそうだよ、もうお昼だし、優にとっては、いつ寝てもおかしくないよ」

優馬「常に寝てる人みたく言うのやめてもらえる…?」

梨子「…いつも寝てるよね?」

優馬「…すみませんでした。」

 

…僕、そんなに寝てるか?

むしろ勤勉に勤めてるような…いや、ないわ、寝てた

 

千歌「そんなことよりも、明日はついに、ライブだよっ!!」

優馬「…あー、そうだったね」

千歌「もちろん、優くんは来てくれるよね??」

優馬「ん、まぁそうね、千歌たちの記念すべきライブだしね、僕は行こうと思ってる」

千歌・梨子・曜「「「え!!??」」」

優馬「…何かおかしなこと言ったかな」

曜「いや…だって、その、ねぇ、梨子ちゃん?」

梨子「え、ええ、優馬君のことだからてっきりめんどくさがって行かないかなって…」

 

心外だ!そんな心のないやつじゃないぞ、多分

 

千歌「…じゃあ、ほんとに来てくれるの?」

優馬「うん、そのつもり」

千歌「絶対、絶対だよ!?」

優馬「分かってる、行くよ」

千歌「やったーーー!!奇跡だよーー!」

 

何が奇跡だ、バカ千歌

…まぁ、観るだけ、観るだけだしな

 

~放課後・図書室~

 

花丸「あ、優馬さん!」

優馬「花丸ちゃん…」

花丸「今日はマルの方が早かったずらね!」

優馬「ふふ…そうだね」

 

あー、すごく安心する…

ここがオアシスか、図書室よ…

 

優馬「あれ、ルビィちゃんは?」

花丸「ルビィちゃんは用事があるとかで、先に帰ったずらぁ」

花丸(だから、今日は優馬さんを独り占め…ずらね///ずらぁーっ!///)

優馬「そうなんだね、そういえば花丸ちゃんはライブに行くの?」

花丸「はい!ルビィちゃんと一緒に観に行ってみるずら!」

優馬「そっか、…楽しめるといいね」

花丸「はい!…優馬さんはどうするずらか?」

優馬「あー…うん、行くつもり」

花丸「じゃあ!一緒に観ませんか!?///」

 

…急に顔を近づけられるとびっくりするなぁ

すごい取り乱してるけど、どうしたんだろ?

 

花丸「…うぅ、だめずら?」

優馬「いや、いいよ」

花丸「え!?ほんとずら!?」

優馬「うん、さすがに1人は寂しいしね」

花丸「えへへ…嬉しいずらぁ…///」

 

そんなに喜ばれると思わなかった…

でも、良かった、のかな。

と思った矢先、外を見てみると雨が若干、降り始めた時だった

 

優馬「…外、雨降ってきたね」

花丸「あ、ほんとずら…」

優馬「強くなる前に帰りたいし、そろそろ行くとするよ」

花丸「あ…はいずら…」

花丸(もう帰っちゃうずら…すごく、すごく寂しいずら…)

優馬「…じゃあライブでね?体育館前で待ってるよ」

花丸「は、はい!///」

花丸(…でも、ライブに一緒に行けるから良し!とするずら!///)

 

優馬「…明日、大丈夫かな」

 

 

~放課後・3年教室~

 

私が帰ろうと外を見た時、雨がちょうど降り始めた

確か、天気予報では今日、明日は雨って言ってたような気もする

そして、その雨を見て、ふと私は思ってしまったのだ

 

果南「…雨、もっと強まっちゃえばいいのにな」

 

私の心に溜まる雨水に溺れるように、全部溺れて消えてしまえばいいのに、と




果南ちゃん…泣
アニメ1期を見る度に、ほんとにまさに上級生って感じで辛かったんだな、って泣いちゃうんですよねぇ…
もしかしたら、それよりも闇を抱えている…?
ただ、ついに次はAqoursのデビューライブへ!
ようやくって感じですね…展開遅くてすみません…
ですが、次回もまたよろしくお願いします!


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第5話 それぞれの一歩

こんばんは!希望03です!
ようやく始まります!デビューライブ!
若干、原作改変がされていますがご了承ください…
ここが最初の分岐点!
どうぞよろしくお願いします!


 

~ライブ当日・優馬家~

 

優馬「…雨」

 

外を見るとそれはそれはすごい大雨だった。

遠いところでは、雷の音さえも聞こえてくる。

風は強くないが、これから強くなりそうな勢いでもある。

 

優馬「ライブ…できるのか?」

 

特に連絡等もないし、おそらくやるんだろう

ただ、現時点で不安しかない。

外に出るのが億劫だからとかいつもの感じではない。

本当に不安なのだ。

 

優馬「時間は…もう正午回ってるのか」

優馬「準備…しなくちゃ」

 

確か、ライブは午後だったかな

そろそろ準備をしなくてはならない時間にもなり、僕はライブ会場である

学校の体育館に向かった。

 

~浦の星学院・体育館~

 

花丸「…あ!優馬さ~ん!!」

優馬「花丸ちゃん、こんにちは」

ルビィ「ゆ、ゆ、優馬さん!!??」

優馬「ルビィちゃんも一緒だったんだね、こんにちは」

ルビィ「こ、こ、こんにちはっ!!///」

ルビィ(優馬さんも一緒なんて聞いてないよぉぉ…///)

花丸「そうずら!元々、ルビィちゃんと一緒に観ようって話をしてて…」

優馬「なるほど、僕、邪魔じゃないかな?」

花丸・ルビィ「「邪魔じゃないですっ(ずらっ)!!///」」

優馬「そ、そっか、じゃあ今日はよろしくね?」

花丸・ルビィ「「はい♪」」

 

2人と話しているとライブの時間も近づいてきたので、体育館に入ることにした。

すると、そこで見た光景は、悲しい現実を突きつけられるようなものだった。

 

優馬「…人が少ない。ライブってこんなに少ないもんなのか?」

 

いや、そのはずはない。

少なくとも、スクールアイドルとはいえ、アイドルと一緒。

まして、今でこそ大人気のスクールアイドルだ。こんなに少ないはずはない。

 

花丸「人、全然来てないずらね…」

ルビィ「やっぱり…この雨だからかなぁ…」

優馬「…」

優馬「確か、千歌たちが言ってたスクールアイドル部発足の条件は…」

 

“デビューライブで体育館を満員にする”

という条件が満たされていない、つまり必然的に部は発足できない…

 

優馬「…」

花丸「優馬さん…」

ルビィ「うぅ…」

 

…なんで、こんなに哀しい気持ちになってるんだ?

だって、あんだけめんどくさがってたスクールアイドル部のマネージャーをしなくていいんだぞ?

やらないって僕は決めたじゃないか、僕も周りの人たちも傷つかないようにって

なのに、なんで…

 

花丸「…あ、ライブ始まるずらよ」

 

花丸ちゃんの声で意識を現実に取り戻した。

閉じてた幕が上がり、そこには僕の同級生で友達、スクールアイドル部の千歌たちが目の前にいた。

 

千歌「こんにちは、初めまして!私たちは…」

千歌・曜・梨子「「「Aqoursです!!」」」

 

なんで、そんなに笑顔でいられるんだ

もう部活は続けられないんだよ?

なのに、なんでそんな輝きを

 

千歌「聴いてください…」

千歌「ダイスキだったらダイジョウブ!」

 

本当だったらこの現実を突きつけられて、悔しいはずなのに

千歌たちは笑顔で、歌い始めた。

そんな姿に心奪われてしまう。

そして、僕は思わず、口に出してしまった。

 

優馬「…綺麗だ」

 

隣で見てるはずの花丸ちゃんもルビィちゃんもさっきまで不安そうな表情から

明るくなっていた。

…これが輝き、か

 

しかし、僕の朝感じた不安は、最悪なことに、当たってしまった。

 

花丸「…ずらっ!?」

ルビィ「ぴぎっ!?」

優馬「…え?てい、でん?」

 

まさかの停電で明かりは消え、曲も止まる。

あんなに強かった雨、そして遠くで雷も鳴っていたんだ。

こうなってもおかしくはなかった。

それでも3人は頑張ってこらえて、歌だけでも続けようとしていた。

 

優馬「そんな、こんなのって…」

 

…やっぱり、奇跡なんてない。

輝きは一瞬。気づいたときには闇に染まる。

どんなに頑張って、奇跡なんて…

そんな時だった

 

「バカ千歌!!」

 

そこにいたのは、千歌のお姉さんにあたる高海美渡さんの姿と後ろにはたくさんの人たちがそして、同時に電気が元通りに…

 

優馬「…電気が」

花丸「ついたずらぁ!!」

 

…そういえば、体育館裏にダイヤがいるのを見かけてた

もしかしたら、ダイヤが…?

どうして、そこまで…

 

優馬「…この人数、もしかしたら条件は」

 

そう思ったのも束の間、体育館はすぐに満員となっていた。

そして、最後の曲「決めたよ!Hand in Hand!」が始まった。

 

千歌・曜・梨子「「「はぁ…はぁ…あ、ありがとうございました!!」」」

 

こうして僕の不安が初めて空振り

無事にライブは成功を収めることが出来たのだった。

 

~体育館裏~

千歌「うぅ…良かったよぉぉ!!」

曜「…本当に良かった、あと楽しかったよね!」

梨子「うん…優馬くん、聴いてくれてたかな…」

 

優馬「聴いてたよ…お疲れ様」

 

梨子「え…」

曜「あ…ゆ「ゆ――うくーーーん!!」…」

優馬「どわぁ!!」

千歌「どうだった!?どうだった!!??」

優馬「う、うん、良かった、可愛かったよ」

千歌「か、可愛いっ!?えへへぇ…///」

 

そうして、いつものように頭を撫でてたら

 

梨子・曜「「ち~~か~~ちゃ~~ん????」」

千歌「…あ」

 

なんでか千歌がすごく怒られてた。

…いつも通りで良かった。

 

花丸「…あ、あのぉ」

ルビィ「優馬さん…?」

優馬「あ、ごめんごめん、紹介するっていっても知ってるか」

優馬「あの怒られてるのが高海千歌、グレーの髪の子が渡辺曜、ストロベリーブロンドの髪の長い子が桜内梨子だよ」

花丸「にぎやかずらね…」

千歌「…む!あーー!勧誘した子たちだーー!」

ルビィ「ピギィ!?」

優馬「千歌、うるさい」

梨子「あはは…ライブ、観てくれてたの?」

花丸「…は、はい!すごく、すごく可愛くて、その…」

優馬「入りたくて、来たんだよね?」

花丸「はいずら…お、私も先輩たちみたく輝きたくて、スクールアイドルになれば変われるのかなって…だから…」

千歌「大歓迎だよ!!!」

花丸「ずらっ!?」

千歌「ようこそ、Aqoursへ!!」

花丸「よ、よろしくお願いします!」

優馬「…ルビィちゃんは?」

ルビィ「る、ルビィは…ルビィも!か、変わりたいです!今の自分を!変えたいです!」

ルビィ「だ、だから、お願いします!」

優馬「…千歌」

千歌「もっちろんだよ!よろしくね!」

ルビィ「は、はい!よろしくお願いしますっ!」

優馬「…良かったね」

曜「…優は、どうしたいの?」

優馬「え…?僕?」

曜「マネージャーのこと、私たちも知ってるよ?なってくれないの?」

優馬「…」

千歌・曜・梨子・花丸・ルビィ「「「「「…」」」」」

優馬「はぁ…先に言わないでよ、全く」

曜「え、それって…」

優馬「…正直、なるつもりはなかったんだ。今日だってライブを観て終わるつもりだった。」

優馬「条件だって、あの時は満たされてなかったんだ。どちらにしろもうマネージャーをやらなくていいと思ってたんだ。」

優馬「でも、あんなに楽しそうに、最後にはあんな奇跡まで起こして…」

優馬「…悪くないかもなって思った。マネージャーとして皆を見届けるのも、ね」

梨子「ということは…」

優馬「うん、僕もマネージャーとしてAqoursの活動に参加させてほしい」

千歌「も…」

優馬「…も?」

千歌「もっちろんだよぉぉ!大歓迎だよぉぉ!」

優馬「ちょっと待って、突撃してこないdぐへぇっ!」

曜「梨子ちゃん…」

梨子「曜ちゃん…」

曜「良かったよぉ…」

梨子「うん…うん…!」

 

 

 

鞠莉「…決まった、みたいね」

ダイヤ「ええ…ほんとによかったですわ…」

鞠莉「私の見立ては本物だったようねっ!」

ダイヤ「ふふ…そうですね」

鞠莉「それで…これを見てどう思った?…果南」

果南「…やっぱり鞠莉たちだったんだね、優馬を唆したのは」

鞠莉「唆すだなんて、人聞き悪いわ?これでも嫉妬ファイヤーは抑えてるんだから!」

果南「ふーん…」

鞠莉「私たちも…変わる時だと思うの」

ダイヤ「…というと?」

鞠莉「私たちも”もう一度”、スクールアイドルになるの」

果南「…」

ダイヤ「…」

ダイヤ「私も…その意見には賛成ですわ」

ダイヤ「優馬さんがようやく前に進み始めたのですから、その隣を歩むのが”女”というものですしね?」

鞠莉「ふふ…これで、2人、ね?」

果南「私は…ごめん、もう少し考えさせて…」

 

 

鞠莉「…ほんと、頑固おやじなんだから」

 

~帰り道~

 

千歌たち5人は打ち上げ会とかなんとかでどこかに出かけたため、僕は1人で帰ることにした。

すると、目の前には見たことがある綺麗な青色の髪をした女の子が泣いていた。

 

優馬「…果南?」

果南「ふぇっ!?ゆ、ゆう!?///」

優馬「どうしたの?」

果南「な、なんでもないよ…」

優馬「なんでもなくない。だって泣いてたよね?」

果南「…」

優馬「やっぱり…何かあったんだよね?」

 

 

 

昔、今日みたいに大雨の日で雷が鳴っていた日、奏さん、鞠莉、ダイヤ、ゆうと私の5人で遊んでいたら突然の雷でびっくりしちゃって、腰を抜かした。そして泣いちゃったときがあった。あの時は怖かったのもあるけど、腰に力が入らなくなったもんだからどうしたらいいか分からなくて、泣いちゃったんだ。多分不安だったんだと思う。

そんな時、ゆうが抱きしめながら、「だいじょうぶ、ぼくがついてるよ」って

ゆうの温かさ、優しさに思わず、私は安心した。そして、それと同時に私は君に恋をした。

 

 

優馬「…果南?」

果南「優馬は、やっぱり優しいね。マネージャーになるんだって?」

優馬「あ…うん…知ってたんだね」

果南「…うん」

果南「私も誘われたの、鞠莉とダイヤにもう一度、スクールアイドルになろうって」

果南「でも、昔鞠莉たちと一緒にスクールアイドルをしてた時、私のせいで、大事なステージを無下にしたことがあった。それ以来、スクールアイドルが嫌いになったの」

果南「…でも、今日のを見て、やっぱり好きなんだなって気づいて、でも怖くて、私にもどうすればいいか分からなくなっちゃったんだ」

優馬「果南…」

果南「ごめんね、こんな話して、私はもう大丈夫だから、気にしな「果南」…っ!」

優馬「じゃあ、なんで泣いてるんだよ」

果南「これは…」

優馬「不安なんでしょ?また壊さないかって」

果南「…だって、私が入ったって、また足を引っ張るに決まってるよ」

優馬「誰が決めたの?それ」

果南「それは…」

優馬「果南…君は一人じゃないよ」

果南「ゆう…」

優馬「”だいじょうぶ、ぼくがついてるよ”」

果南「…っ!」

優馬「懐かしいね、確かあの時も今日みたいな天気だった。」

優馬「今までは僕も変わるのを拒んでいたんだ。でも、今日観て変わった。何度でも輝けるんだって」

優馬「…だから、一緒に頑張ってみない?」

果南「…ゆ、うまぁ…ゆうまぁ…」

 

久しぶりの温もりだった。あんなに小さかった背中もこんなに大きくなってたんだね。

 

果南「…///」

優馬「落ち着いた?」

果南「はい…///」

優馬「良かった。それで果南はどうしたい?」

果南「私は…私もやってみることにする!」

優馬「…うん、よかった」

優馬「じゃあ遅くなっちゃうし、また明日、だね」

果南「うん…って明日!?///」

優馬「え…だってもう入るんでしょ?そしたら明日から一緒に活動するじゃん」

果南「そ、そうだけど…///」

優馬「…とにかく帰るよ、またね」

果南「う、うん…また、ね///」

 

優馬の温もりがまだ残ってる。それを私は体全体で噛み締めるみたいに抱きしめる。

はぁ…結局、私もゆうに絆されちゃってるなぁ…///

でも、決めたからにはアイドルも恋もがんばらなきゃ、だね…

 

果南「…ゆう、ずっとずっと大好きだよ」

 

そう、私は鞠莉にもダイヤにも千歌たちにも誰にも渡したくないくらい、ゆうが好き

スクールアイドルを通して、輝きを見つけて…

今度こそ、絶対に振り向かせてあげるから、ね!

 




ついに始動!!
と思ったら、あと一人、ですね…
あの子は後日、また書きたいと思います!
とりあえず今回も最後は果南ちゃんメインで書いてしまいましたが、これで果南ちゃんの件は解決できましたね!
今後はイチャイチャ度合いを増しつつ、シリアス度も若干落としつつも入れていくスタイルでできたらなぁって思ってます!
ですので、今後もよろしくお願いします!!


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第6話 始動!新生Aqours!

こんにちは!
今回は!シリアスな展開なんと!ZEROです!!
ほのぼのした一日を書けました!
強いて言うなら、今回は善子ちゃんがとてもかわいらしいです!
堕天使度ZEROになっちゃいました。
すみません。
では、どうぞ!


 

“わたし、ほんとうはてんしなの。いつか、はねがはえて、てんにかえるんだ!“

 

そう私は堕天使。普通の人間とは違う。選ばれし者。

容姿端麗で、みなが忠誠を誓うような尊き堕天使。

…というのは、私の立てた設定に過ぎない。

最近はこのキャラ設定のせいで「普通」を見失ってしまうから、と辞めてしまおうとした。

でも、出来なかった。いや、しなかったの。

なんで?

…やっぱりあの男の存在、だと思うわ。あの男というのは初めて、ヨハネとしての私も好きでいてくれて、素の私も好きだ、と言ってくれた人。優馬の存在が無かったら、きっと今の私はないと思うわ。

そんな優馬がこの前、ライブに行くとか言ってたからどんなライブなんだろうと思って聞いたら、私たちの学校のスクールアイドルのデビューライブだったの。

なんでも優馬の友達たちのライブらしいから行くみたい。しかもその友達というか先輩たちは皆可愛かった。

…なんかイラっとするわ

でも、優馬の友達って言ってたし、優馬も行くって言ってたし…

私もライブに行くことにしたの。

そして、ライブ当日、さっそく優馬を見つけて、声をかけようとしたら

まさかのずら丸が!?

 

善子(もうなんでいるのよ!!しかも、いつの間に”私”の優馬と仲良くなってたのよ!?)

 

すっっごくイライラしたけれど、さすがにバレるとまずいと思って、

その場は身を隠して、逃げたわ…

その後もバレないようにうまく身を隠しながらライブの時間まで待ってたの

ついにライブが始まって、さあどんなもんだろうと思って見てたら

もう、言葉にならないくらいすごかったわ!!

キラキラしてて、眩しくて、楽しくて、とにかくずっと見入っていたわ!

その時、思っちゃったのよね、

 

善子(…私もこんな可愛くなって、輝けるようになったら、もっと優馬は私のこと好きになってくれるのかな)

 

堕天使として認めてくれた彼に、素の私を見て、好きといった彼のために

理由は不純かもしれないけれど、やってみたい、って思ったのはほんとだったわ

だから…

 

善子「ここに来ちゃったのよね…、スクールアイドル部…」

 

 

 

~優馬家~

優馬「zzz…」

千歌「ゆ~~~うく~~~んっっっ!!♡おっはよーーー!!!♡」

優馬「ぬわぁ!!…千歌、うるさいし、抱き着かないで、暑苦しい。」

千歌「え~…だって!こうやってしないと優くん成分補充できないも~ん」

優馬「うわぁ…めんどくさ…」

千歌「あーー!今、悪口言ったーー!罰として、今日はずっと千歌の傍から離れないでね!!」

優馬「え!?えぇー…」

千歌「絶対だよっ!」

優馬「…はぁ分かったよ」

千歌「えへへー…///」

 

で、こうしていつも通り、オレンジ怪獣千歌に起こされ、学校に行くわけだが…

 

優馬「あのー…千歌さん?」

千歌「んー?どしたの?」

優馬「腕…抱きしめる理由はあります?」

千歌「あるよ!!だって、今日は千歌から離れられないんだから、ね?」

優馬「…だからってこれは」

千歌「…だめ、なの?」

優馬「うっ…だめ、じゃないです…」

千歌「えへへー…///じゃあこれはごうほう?なのだー!///」

 

本当、千歌はこういうとこずるいと思うんだよな

いつか、素知らぬ男にこういうこと平気でしそうでハラハラする。

 

千歌「…♡」

 

優馬(…まぁ、嬉しそうだし、いっか)

 

この時は、頭が回ってなかったが、後々、この考えを後悔することになる…

 

~浦の星学院・2年教室~

 

結局、僕は腕を千歌に取られたまま、教室に向かった。

 

優馬「…おはよー」

千歌「おっはよー!」

梨子「あ、優馬くん!千歌ちゃん!おは……は?」

曜「優!千歌ちゃん!おはヨー……は?」

 

…ん?なんだこの不穏な空気

あんなに笑顔で話してたのに、急に2人とも機嫌悪くなってるし…

は?っていや、怖いって

 

千歌「ふっふっふー…♡」

 

いや千歌さん、力強まってますよ

痛い痛い。

 

梨子「な、なんで千歌ちゃんは優馬くんの腕にしがみついてるのかなー??」

曜「そ、そうであります!千歌ちゃん…?」

千歌「えへへー…これは優くんの罰なのですっ!///」

梨子「罰って何!?」

曜「…」

 

おう…梨子さん…熱くなりすぎじゃないですかね…

あと、曜さん、目のハイライトが落ちてますよー…

 

優馬「あー…少し落ち着い「「優(馬くん)は黙ってて!!」」はい…」

 

あれからなぜか、僕が怒られ、千歌もばちこり怒られたわけなのに

怒られてるときもずっと腕を離さなかった

…こいつ、すごいな

でも、さすがに授業になると一緒にいるというわけにはいかないため、腕を放してくれた。

 

千歌「…またあとで、やるからね?」

梨子・曜「「だめ!!」」

千歌「むぅ…」

 

今日もにぎやかだ

 

~放課後・スクールアイドル部 部室前~

 

優馬「…ついに、始まるんだね」

 

この部室は、見事、あのライブで条件を満たして、部として発足した記念のスクールアイドル部としての部室だ。

ちなみに、部として発足する承諾、そして部室を貰う際に理事長室へ向かったら、

さらっと鞠莉から

 

~回想~

鞠莉「…あ、優?」

優馬「はい。どうしました?」

鞠莉「私とダイヤ、スクールアイドル部に入ることにしたから♪」

優馬「…は?え?」

鞠莉「そういうことで…”また”よろしくね、ダーリン♪」

優馬「…マジですか」

鞠莉「あと~…これからは昔みたいに呼んでもらうからね?♪敬語もノンノンよっ♪」

優馬「…」

鞠莉「ダイヤからもOK貰ってるから~♪」

優馬「…くそ」

 

というね

つまり、あのライブの件から一気に部員が7人になった、ということだ。

そんでもって、今

 

千歌「んふふ~…♡」

曜「えへへ…///」

梨子「…むぅぅぅ」

優馬「はぁ…」

 

結局、腕を放したくなかった千歌から妥協案として?

2人にももう片方の腕を抱きしめる権利を与えたのだ

ちなみに決める方法はじゃんけん。

 

優馬「…とりあえず行こう」

 

こうして、部の扉を開けた。酷い顛末になるとも知らずに…

 

優馬「ちは~…」

花丸「こんに……ちっ」

ルビィ「…はぁ」

優馬「部の発足はじめで舌打ちと溜息はどうかと思いますけど、お2人とも…」

花丸「誰のせいでこうなってるのか、考えてほしいずらね」

ルビィ「…優馬さん」

 

もうこの後、先は何も言えなかった。

…だって、目のハイライト消えてるし

すると、ドアからノック音がしたので開けてみると

 

善子「…こ、こんにちは」

優馬「善子…?」

善子「ふぇ?///ゆ、優馬!?///ってヨハネよ!!///」

優馬「う、うん…じゃなくて、どうしたの?」

善子「そ、それはぁ…///」

花丸「あ!善子ちゃん!いらっしゃいずら!」

善子「だからヨハネよ!!」

優馬「…え?知り合い?」

善子「し、知り合いじゃ…「知り合いも何も幼稚園の時から一緒ずらよ」…」

優馬「そうなんだ、で、来たってことは?もしかして?」

善子「うっ…あの、一応入部希望で…」

千歌「ほんとに!?大歓迎だよ!」

優馬「…まぁ、うちのリーダーがああ言ってるから入部許可下りたってことで」

善子「…こんなに軽いのね」

 

そう話してると、また扉が開いた。

 

鞠莉「チャオ〜♪皆、元気~?」

ダイヤ「皆さん、こんにちは」

優馬「鞠莉、ダイヤ…ほんとに来たんだね」

鞠莉「当たり前じゃない!もう私たちもここの部員よ?」

ダイヤ「…それにしても久しぶりに名前、呼んでくれましたね?///」

優馬「あ、うん…嫌だったかな?」

ダイヤ「ぜ、全然大丈夫ですわ!むしろもっと呼んで欲しいです…///」

優馬「ダイヤ…///」

鞠莉「…あんまり目の前でイチャイチャしないでもらえるかしら?」

千歌「そうだよ!優くん!今日は罰があること忘れてないよね!」

鞠莉「あと、そんなにイチャイチャしてると後ろの果南がもっと怒るわよ?」

優馬「…え、果南?」

果南「…」

優馬「か、果南…?」

果南「…ゆう?浮気?」

優馬「浮気というか、そもそも付き合ってないよね、僕たち」

果南「え?あ、そうだったね!ごめんごめん。」

 

いや怖いよ

脳内記憶いじっちゃってるよ

 

ダイヤ「そうです、果南さん、浮気じゃないですわ」

ダイヤ「むしろこれからの将来を見据えた愛の育みというか…///」

優馬「え」

果南「は?」

鞠莉「んー?」

千歌「…」

曜「はぁ…」

梨子「ちっ…」

花丸(もう知らないずら)

ルビィ「ていうことは、お兄ちゃん…?///」

善子(何言ってるのかしら、この人たち)

果南「なーんか聞き捨てならないなぁ、ダイヤ」

ダイヤ「あら、嫉妬ですか?見苦しいですわよ、果南さん」

鞠莉「どっちも見苦しいわ?ダーリン相手に」

果南・ダイヤ「…はぁ?ダーリン?」

鞠莉「あなたたちは知らないけど、私は昔、優と愛の誓い立ててるんだから当然でしょ?♡」

果南「いつのまに…」

ダイヤ「やってらっしゃいますね…」

 

なんなんだ、これは

とりあえず落ち着いてくれないかな…

と思った矢先

 

千歌「むがぁぁぁぁぁぁ!!!!」

優馬「うおっ」

果南・ダイヤ・鞠莉「…」

 

やめろ!手を取るな、バカ千歌!殺されるぞ!

 

千歌「とにかく!今日は優くんの罰で私の傍にいなきゃいけないんだから!邪魔しないでください!」

優馬「…千歌」

 

なんにせよ、今はそれ言っちゃダメでしょ

この子、やばい。非常にヤバイ。

 

果南「…まぁ私も鬼じゃないしね、今日は千歌に譲るよ。でも、浮気は絶対ダメだから、ね?」

ダイヤ「そうですわね…またこれから築き上げればいいですものね…ふふっ…///」

鞠莉「まぁ…そうね、約束があるのなら仕方ないわね…」

 

…とりあえず丸く収まりそうで良かったです。

 

千歌「…えへへー♡これからよろしくねっ♡」

優馬「…はぁ、めんどくさ」

 

こうして、ようやく全員が揃った新生Aqoursがスタートしたのだった。

 




こういう一日がずっと続けばいいのに…
あと数回、こんな感じのもの(PV編)が続いて、東京編でまたシリアス展開にするつもりでいますので、ご了承ください!
また、読んでいただけたら幸いです。ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!


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第7話 淡い、淡い空の下、僕たちは今も懸命に生きてます。

こんばんは!
一気にPV撮影まで持ってきちゃいました笑
そして、PV撮影編は明るくしようと思ってたんですけど、やっぱり若干シリアス調になっちゃいました…
重要な場面はやっぱりシリアスにしがちですね
でも、何とか書き上げたので、是非見てください!
ちなみに、感想も待ってます!、ご指摘等もあれば全然受け付けます!
それでは、どうぞ!


 

~理事長室~

鞠莉「…そんな、じゃあこの学校は」

鞠莉「…待って、パパ!お願い…もう少しだけ…」

鞠莉「うん…うん…ありがと、パパ…」

 

 

鞠莉「…時間が、ないわね」

 

~昼休み・浦の星学院 2年教室~

 

千歌「やっと昼休みーー!!」

曜「とりあえず、午前の授業は終わりだもんね!」

梨子「優馬くん!ご飯一緒に…」

優馬「Zzz…Zzz…」

曜「…しっかり寝てるね」

梨子「もうっ!相変わらずなんだから…ゆうまく…「ちょっと待って!」え?」

千歌「これは…チャンスだよ…!」

曜「チャンス?」

梨子「何言ってるのよ、千歌ちゃん。早く起こさないとご飯食べる時間無くなっちゃうよ?」

千歌「…梨子ちゃん、こんな無防備な姿を見逃していいの…?」

梨子「え…はっ!?」

千歌「そう!果南ちゃんたちがいる3年生とか花丸ちゃんたち1年生という学年の超えられない壁!私たちだけが知ってる優くんを今!まさに!見てるんだよ、梨子ちゃん!」

梨子「た、確かに…」

千歌「これは…写真に収めるしか、ないよね!」

梨子「う、うん!!しかない!///」

千歌「へっへっへー…///ではでは、早速…///」

優馬「千歌はバカなのかな?」

千歌「…え!?なんでおき「当たり前でしょ」」

優馬「あんなでっかい声を耳元で聞いたらさすがに気付く」

曜「あはは…」

千歌「むぅ…」

優馬「はぁ…全く…って!?梨子さん…?」

梨子「うぅっ…うっ…うぅっ…」

梨子(優馬くんのばかぁ…!可愛い寝顔がぁ…!)

優馬「…これどうすれば?」

曜「あー…放置しておいていいよ、自業自得だから…」

梨子「ひどいわよ!慰めてよ!!」

優馬「あー…ごめんね、梨子ちゃん」

梨子「あっ…///」

優馬「…っ!ごめん、千歌と同じ感覚でやってた」

梨子「い、いいの!///気にしてないから!///…何ならもっと撫でてほしいなぁ、って///」

優馬「そ、そう?///じゃあ…///」

千歌・曜「「…」」

優馬・梨子「「…///」」

優馬「…飯、食べよっか」

 

と、その時だった。

 

「はぁ~い!理事長の鞠莉よ!今から呼ぶ人は、理事長室に来てね~

3年1組、松浦果南、黒澤ダイヤ。

2年1組、高海千歌、桜内梨子、渡辺曜、空条優馬。

1年1組、国木田花丸、黒澤ルビィ、津島善子

…早急に!よろしくね~♪」

 

千歌「え!なんだろ…鞠莉ちゃんからの呼び出しなんて…」

優馬「…嫌な予感しかしない。絶対ろくな事じゃない」

 

 

~理事長室~

 

優馬「…失礼しま「ゆーーうーーー!!♡」ぐえっ…!」

鞠莉「ふふふ…♡ダーリンなら受け止めてくれるって信じてたわっ♡」

千歌・曜・梨子・花丸・ルビィ・善子「「「「「「…ちっ」」」」」」

果南・ダイヤ「「…ふんっ!!」」

鞠莉「きゃあ…!」

果南「…鞠莉?要件あるならハグする必要ないよね?そんなにハグしたいならしてあげるよ。代わりに肋骨の何本か折れちゃうかもしれないけど…」

ダイヤ「ここは学校なので、節度を持って接してください。全く…」

千歌「そーだよー、鞠莉ちゃん!ここは学校なんだからね!」

梨子「…それ、千歌ちゃんも人のこと言えないよね?」

曜「…鞠莉ちゃん、大胆だなぁ」

 

なんか皆さん、ご機嫌斜めですね。

果南さん?肋骨何本か折れるってどんな力使ってるの?

曜と梨子ちゃんはまたハイライトオフだし…

 

花丸「優馬さん…大丈夫ずらか?」

ルビィ「うゆ…痛そう…」

善子「全く、もう…心配させないでよね…痛いところとかない?」

 

あぁ…1年生組が天使に見える

優しすぎて、眩しいわ…

 

優馬「…天使が3人」

花丸「ずらっ!?///」

ルビィ「ピギッ!?///」

善子「んなぁっ!?///」

優馬「…あれ、今、僕、口に出てた?」

千歌「ゆ~~うく~~ん??」

曜「何してたのかなぁ?」

梨子「…ギルティね?」

果南「あれだけ浮気しちゃダメって言ったのになぁ…」

ダイヤ「…優馬さん?」

鞠莉「ダーリンったら…一度教育が必要かしら?」

 

いや、怖いって

なんであんなにいがみ合ってたのにこういう時に限って団結力あるわけ?

あと、果南と鞠莉に関しては付き合ってないのに、なんで記憶改変起きてんの?

 

優馬「はぁ…だるいって…」

花丸「…ずらぁ///」

ルビィ「ぷしゅうぅぅ…///」

善子「うぅ…///ばか…///」

 

なんでだか分からないまま、僕は1年生以外の6人にこってり怒られてしまった。

 

鞠莉「…じゃあひとしきりダーリンに思いの丈をぶつけたから、本題に移るわね?」

優馬「ここまで長いよ…」

あんなくだりがあったので、なんだか引き締まらないまま、鞠莉の話を待っていたが、

その鞠莉の表情が曇りだして悟った。

 

優馬(…ただ事じゃないな。)

 

鞠莉「…浦の星学院が、このままじゃ廃校になるの」

千歌・曜・梨子・花丸・ルビィ・善子「「「「「「え…?」」」」」」

ダイヤ・果南「「…」」

優馬「…統廃合かな、原因は生徒数の減少。それに加えて生徒応募数が著しく減少してる、そんなとこ?」

鞠莉「その通りよ…さすがね、優」

優馬「僕がここに初めて来たときから、なんとなく察してはいたよ。じゃないと共学化の先駆けとして来ないからね」

優馬「…それで共学化を掲げたものの、結局変わらず。生徒数は相変わらず…っていう感じ?」

鞠莉「ふふっ…大当たりよっ、やっぱり私たち、相性良いのかしら、相思相愛ね?」

優馬「…」

 

全く…不安な時、唇噛み締める癖、全然治ってないんだね

バレバレだよ

 

優馬「…鞠莉」

鞠莉「優?」

優馬「癖、治ってないね」

鞠莉「癖?」

優馬「不安なんでしょ?何とかして、統廃合を止めたいけど、どうすればいいか分からない。あるとすれば、スクールアイドルの持つ奇跡。藁にも縋りたい思いだけど、そんな簡単に上手く行くか、不安で仕方ない、でしょ?」

鞠莉「っ!」

鞠莉「あはは…全部、お見通しなのね…?さすが、IQ200の持ち主、ってところね…」

優馬「…そこでその話はしないでよ」

鞠莉「ふふ…ごめんなさい。でも、ここまで見透かされるとすごいわ?惚れ直しちゃいそう」

優馬「そりゃどうも…」

 

…平気そうに見えるが、これは鞠莉のプライドから成るもの

多分、今、必死に耐えてる。

もし、泣いていいよっていったなら決壊する。それくらいには思い詰めてるんだと思う。

 

優馬「…」

鞠莉「…不安よ?だって上手く行くか分からないもの…」

優馬「何もまだやってないのに、分からないからやらないっていうのは違うんじゃないかな?」

鞠莉「え…?」

優馬「ほら、見てみなよ、ただ一人、武者震いしてるバカがいるから」

鞠莉「…?」

 

…さぁ、あとは頼むよ、リーダー

 

千歌「…奇跡だよーーーー!!!」

鞠莉「え…?」

梨子「ち、千歌ちゃん!?」

曜「何言ってるの!?」

千歌「だって、あのμ’sと一緒だよ!?」

千歌「私たちも学校を救おうよ!!」

梨子「千歌ちゃん…」

曜「あはは…」

鞠莉「千歌っち…」

優馬「…ね?千歌はこんなことでめげないよ。それだけ本気なんだ。」

鞠莉「…うん、やっぱりすごいわ、本当に奇跡を起こしちゃいそうね」

 

きっと奇跡は起きるよ

その言葉は安直に言っちゃいけないと思い、僕は心に留めておいた。

 

優馬「…それで、救おうって言ったって、どうするの?」

千歌「あ…どうしよう?」

優馬「考えてなかったのか…」

千歌「えへへー…///」

 

さすが、千歌だ、こういうところも…

すると、後ろから

 

ダイヤ「ブッブーーー!!!ですわ!!」

千歌「うわぁ!!??」

ダイヤ「…全く、何も考えてないなんてどういうことですの!?」

千歌「だ、だって~…」

優馬「じゃあ、ダイヤは何か考えがあるの?」

ダイヤ「ふっふっふ…PV撮影をするのです!!」

優馬・千歌「「おおー!」

梨子「でも…そんな簡単に作れる物なんですか?」

花丸「確かに…大変そうずら…」

曜「そもそも全員が都合がいい日ってあるのかな?」

善子「ふっ…堕天使の帰りを待つ従者たちを待たせるわけにはいけない…」

花丸「なーに言ってるずら」

 

確かに、PVを作るのには時間と労力がいる。

比較的、1,2年生は部活に専念することが出来るが、3年生は…

受験勉強、しかも3人中2人は生徒会長に理事長と多忙な日々、果南に関してもまだ親父さんが帰ってきてないから必然的に店を手伝わなければならない。

その時、僕にある考えが思いついた。

…だが、ここで全員に伝えてしまうとモチベーションが下がってしまう

そのため、3人だけにこっそり伝えることにした。

 

優馬「…鞠莉、ダイヤ、果南」

鞠莉・ダイヤ・果南「「「…?」」」

優馬「ごめん…今回はPVのメンバーから外れてくれないかな?」

鞠莉・ダイヤ・果南「「「え…?」」」

鞠莉「そ、それはどういうことでーす…?」

ダイヤ「そんな…優馬さん…どういうことですの?」

果南「…さすがにゆう相手でも怒るよ?」

優馬「必要ないから外すわけじゃないよ、やってほしいことがあるんだ」

鞠莉・ダイヤ・果南「「「…??」」」

優馬「内浦の人たちに学校を残すための協力を仰いでほしい。」

 

そう、このPVは絶対に成功させる。なんとしてでも

 

~千歌の部屋~

 

千歌「うぅ~~分かんないよぉ!!どうすればいいのぉ!!」

美渡「千歌!うるさいよ!!」

千歌「ごめ~ん!」

 

PVなんて…初めてのことだしなぁ…

やっぱり学校のため、と言ったらPRだよね…

内浦の良い所…うぅ…全然思いつかない…

 

千歌「…って、優くんから?」

 

~梨子の部屋~

 

梨子「うーん、思いつかない…」

 

…今考えてみたら、まだ内浦のこと全く分かってなかったのかもしれない

だって、今なにも思いつかないもの

…優馬くんは思いついてるのかな

 

梨子「はぁ、助けて、優馬くん…」

梨子「って、え!ゆ、ゆ、優馬くんからだ…///もしかして、私のこと考えてくれてたのかな…?///」

 

~曜の部屋~

 

曜「綺麗な海…、富士山…、沼津…」

 

思いつくものを挙げても結局、これくらい…

何をPVにすればいいのか分からない

 

曜「難しいなぁ…」

曜「…ん?優?もしかして、心配してくれてる、とか…?///」

曜「えへへ…やっばい、ニヤケ止まんない…///」

 

~花丸の部屋~

 

花丸「どうすればいいずらぁ…、思いつかないずらぁ…」

 

優馬さんに相談しよう、と思ったら3年生と一緒にどこかに行っちゃうし…

何を話してたんだろ…気になるずら…

はっ!もしかして、愛の密談…?

 

花丸「むぅ、スケコマシずら…///」

花丸「ずらっ!?優馬さん!?」

花丸「…心配してくれたずら?///そうだとしたら、嬉しい、な…///」

 

~ルビィの部屋~

ルビィ「…おねえちゃ~んに相談しようとしたら…」

 

ダイヤ「ごめんなさい…ルビィ…今回は色々忙しくて…手を回せないんですの…」

 

って…はぁ…でも、これも成長のきっかけだよね!

 

ルビィ「思いついたら、優馬さんに褒めてもらえるかな…///」

ルビィ「ピギッ!?…優馬さんからだ」

ルビィ「えへへ…メッセージくれるだけでもうれしいなぁ…///」

 

~善子の部屋~

 

善子「くっくっく…我がリトルデーモンたちよ、私の加護がある限り、貴方たちはきっと守られるでしょう…」

 

善子「…ふぅ、今日の配信も終わりっと…」

善子「それより…PVどうしたらいいのかしら…」

善子「…優馬に相談してみようかな、って頼りっきりじゃだめよ、ね!」

善子「あ…優馬?どうしたのかしら…もしかして私を心配して…?///」

善子「…どうしよ、すごい嬉しいわ///」

 

 

~海岸~

僕は考えがある。といっても、この景色を見てもらって、

千歌たちがどう感じてくれるか、が鍵になるんだけど。

地元の人たちの協力はもう鞠莉たちに頼んである。あとは今日で彼女たちが気づいてくれるか、だ。

そしたらその彼女たちが目の前にやってきた。

 

優馬「…おはよ?」

千歌「…むぅ」

曜「はぁ…だろうと思ったけどね、うん…」

梨子「…優馬くんのバカ」

善子「期待してた私がバカだったわ…」

花丸「もう…分かってたずら、うん…」

ルビィ「…」

優馬「なんでそんな怒ってんの、皆して…」

千歌・梨子・曜・花丸・ルビィ・善子「「「「「「ふんっ!!」」」」」」

優馬「えー…」

優馬「まぁ…いいや、とりあえず今日来てもらったのはこれを見てもらうため」

千歌「…え?」

曜「あ、これって…海開き?」

優馬「…そうだよ、おそらくそろそろだったかな、って思ってたけど昔と変わってなくてよかったよ」

善子「あんたが見せたかったのって…」

優馬「うん…すごくない?」

梨子「…うん」

優馬「だって、海開きって言っても早朝だよ?まだ日が昇りきってない。なのに町中の人がみんな集まって”一緒に”浜辺のゴミをとる…」

優馬「…何気ない光景かもしれないけど、僕はすごく温かいと感じるんだ」

優馬「これが…町の皆の地元愛なんだなって…」

千歌「…優くん」

梨子「…千歌ちゃん」

千歌「梨子ちゃん…?」

梨子「これなんじゃないかな…こういうことなんじゃないかな、町の魅力って」

千歌「…うんっ!」

優馬「…そうと決まれば、あとやることは一つじゃない?リーダー」

千歌「協力、してもらおう!」

 

そうして、協力をしてもらうためにそこにいた人たちに千歌たちは駆けだした。

 

ダイヤ「…上手く行きましたわね」

優馬「うん…ありがとね、ダイヤ」

ダイヤ「ふふ…どうってことありませんわ、でもPVに参加できないのは残念です…」

優馬「…それは、ごめん」

ダイヤ「ごめんと思うなら、もっとシャンとしてくださらないと困りますわ!」

ダイヤ「…Aqoursの、私たちの、 “私”のマネージャーなのですから…///」

優馬「うん…ありがとう」

果南「あいっかわらず、私たちを置いてくの、やめてもらえるかな~~~??」

優馬「それは、ごめn「謝るなら、ハグして!!」…分かったよ」

果南「えへへ…///…温かい///」

優馬「果南もありがとね、助かったよ」

果南「ゆうの頼みだもん…悔しいけど、でも力になれてよかった…」

優馬「うん…」

鞠莉「だ~~りん♡わ・た・し・は・?♡」

優馬「鞠莉もだよ、ここまでしてくれて、ありがとう、恩に着る」

鞠莉「ふふ…気にしないで?で・も、やっぱり寂しいわ…?」

優馬「うん…ごめん」

鞠莉「冗談よ!It’sジョーク!」

優馬「そっか…ありがと」

鞠莉「…どういたしまして」

 

鞠莉たちには本当に申し訳ないことをしてしまったと思ってる。

でも、この選択が僕にとっての最善策だと思ったんだ。

あとは…本当に彼女たち次第

 

優馬(頑張れよ、千歌)

 

~PV撮影当日~

 

僕はこの当日まで来るのに、特にアドバイスとかそういうのは一切しなかった。

なぜなら、そんな不安は微塵もなかったから。

ここまで来たら、彼女たちの熱意で乗り越えられる。僕はそう確信してた。

ただ…

 

優馬「…屋上?」

 

不安はなかったが、屋上でのPV撮影というのがちょっと分からなかった。

どんなPV撮影になるのか、全く予想ができない。

そして、屋上に着いて、そこで見た光景が

 

優馬「…なるほど、スカイランタン」

 

そこでまず目についたのが、千歌たちの持ってるスカイランタンだった。

何なら、学校内に内浦中の人たちが集まって、皆スカイランタンを持っていたけど

そして、なぜ時間が夕方、日が落ちる直前だったのか

ここにきて、初めてその意図に気づいた。

 

優馬「グラデーションか…すごいな」

 

僕はすべてに圧倒された。

まだ、曲も始まってないのに、だ。

 

千歌「あ!ゆーうくーん!」

優馬「千歌、お疲れ様。」

千歌「ありがと!」

優馬「…素敵なPVが出来上がりそうだね」

千歌「…うん」

優馬「じゃあ…頑張って、僕はカメラワークの当たらないところに立ってるから」

千歌「うん…!」

 

 

「夢で夜空を照らしたい」♪

 

 

曲中に上げられた、スカイランタンが

ふわふわと空の彼方に上がる。

それはとても淡い、美しい輝きを灯して、僕たちを色づけていく。

そんな空の下、皆は”私たちはここにいるぞ”と主張するように

懸命にされど美しく、彼女たちは「生きていた」

 

 




かなりシリアスだったですかね?
でも、ここまで読んでいただきありがとうございます!
最後は若干駆け足になっちゃったんです…許してください…
あと、何かこれして欲しいとか、どういう絡みが欲しいとか、あれば受け付けるので
何かあればよろしくお願いします。
これからもできる限り、毎日上げられるように頑張ります!
次回もよろしくお願いします!


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第8話 いつも一緒

こんにちは!
投稿が遅れてしまってすみません!
今回は前話でPVに参加できなかった3年生をメインとして書きました!
3年生は過去のこともあって、だいぶヤンデレ気質がありますが、心は純粋のはずなので、気軽に読んでください!
ちなみに、ここはPV撮影と東京に行く間の出来事として、書いたのでご了承ください!
それではどうぞ!


 

~スクールアイドル部部室~

 

鞠莉「ふふ…♡ふふふ…♡」

ダイヤ「…♪♡…ふふ…♡」

果南「…えっへへ///へへ…♡///」

 

 

善子「…なに、あれ?」

梨子「…さぁ?」

ルビィ「おねえちゃん…楽しそう…」

花丸「機嫌良いずらねぇ…」

曜「うわぁ…今までで見たことないくらいのニヤケ顔…」

千歌「…こんな果南ちゃん、見たくなかったなぁ…」

 

なぜ、こんなに3年生が揃いも揃ってニヤケ顔を炸裂させているのか、

それはPV作成時にまで遡る。

 

~回想~

鞠莉「…綺麗ね」

優馬「鞠莉…うん、そうだね…」

鞠莉「はぁ…私も一緒に参加したかったわ…」

優馬「それは…ごめん」

ダイヤ「鞠莉さん、あんまり困らせないようにしてくださいね!」

優馬「ダイヤ…」

鞠莉「もうっ!分かってるわ!ジョークよ!ジョーク!」

ダイヤ「全く…本当なのでしょうか…」

果南「でも、寂しいのは本音だよね?」

ダイヤ「そ、それは…」

果南「私も寂しいよ、でも一番心に来たのはゆうにメンバーから外れてくれ、って言われた時だなぁ?」

優馬「うっ…」

果南「私たちも今回裏で頑張ったしな~、見返りが欲しいな~」

鞠莉「私も欲しいデ~スっ!!」

ダイヤ「果南さん!鞠莉さん!優馬さんを困らせては…」

果南「ダイヤも本音はちゃんと伝えた方がいいんじゃないの?」

ダイヤ「うっ…」

優馬「ダイヤ…」

ダイヤ「わ、私も寂しかったです…から、頑張ったご褒美をいただけるとその…嬉しい、ですわ…///」

鞠莉「ふふっ、これで3人とも同じ気持ちだったってことね!」

果南「さぁ、どうしてくれるの?ゆう?」

優馬「…はぁ、分かったよ」

優馬「…埋め合わせは必ずする。来週あたり、遊びにいこう、久しぶりに」

鞠莉・果南・ダイヤ「「「え!?///」」」

優馬「…え?行きたくないの?」

鞠莉・果南・ダイヤ「「「い、行きますっ!!!///」」」

 

 

 

そう、あの時、優馬から「埋め合わせ」必ずする。という言葉を貰っており、

そして、その埋め合わせの日がなんと今日なのだ。

 

鞠莉(ふふ…♡もうどれだけ待ち遠しかったか…♡)

ダイヤ(はぁ…♡はやく、はやく会いたいですわ、優馬さん…いや、優…♡)

果南(ゆう…♡ゆう…♡はーーー♡待ち遠しいよーー♡)

 

優馬「…ごめん、遅くなっちゃった」

千歌「あ!ゆ~うく~「優!!」…へ?」

ダイヤ「もう…♡待たせすぎですわ…早く、行きましょう?♡」

ルビィ「お、お姉ちゃん…?」

花丸「今、呼び名が変わった、ずらぁ…?」

 

果南「ちょ、ダイヤ!距離近すぎだよ!!」

鞠莉「まぁまぁ、果南♪今日くらい許してあげましょ?私たちもこの後…ね?♪」

果南「あ…///ふふ…そうだね…♡」

 

千歌「何話してるんだろ…」

曜「…なんだかイラっとするね」

善子「それはうん…否定できないわ…」

梨子「ええ…なんなの、このもやもや…」

 

あんなに距離を詰め辛そうにしてた3年生が、ここまで積極的なのだ。

他の6人からしてみれば何が起こっているのか、さっぱりだ。

しかし、現実は非情。今日一日は完全に3年生に優馬を取られてしまったのだ。

 

優馬「…えーっと、皆集まってるところ、ごめんなんだけど…今日は、」

鞠莉「今日はお休みにしマースっ!!」

千歌「ほんとに!?」

ダイヤ「ええ…ファーストライブにPV撮影と…かなり張りつめていましたものね…」

果南「だから、今日は思い切って休みにしようって、ね?ゆう?」

優馬「う、うん、そうだね、皆、無意識のうちに体に疲労が来てると思うからここでしっかりリフレッシュしてほしいんだ」

千歌「やったーーー!!」

曜「うーん…なんだか腑に落ちないけど、優がそう決めたもんね!しっかり休むであります!」

梨子「どうしよう…ピアノの練習でもしようかしら…」

花丸「ずらぁ…ルビィちゃん、どこか出かけるずら?」

ルビィ「うーん…買い物しよっかなって思ってる!」

花丸「じゃあ、オラも行くずら~!」

善子「気になってた黒魔術ショップでも行こうかしら…」

 

…良かった。皆、良い気分転換になるといいなと思ってたけど

やっぱりこう見ると普通の女子高生だもんな

良い形でリフレッシュできそうだ

 

千歌「優くんっ!」

優馬「?どうしたの千歌?」

千歌「えへへ…///一緒に遊びに行こっ!!///」

梨子「千歌ちゃん!?」

曜「それなら私もついて行ってもいい?」

千歌「うん!行こ行こ!!」

梨子「…わ、私も行く!」

花丸「お、オラたちも行くずら~~!!」

ルビィ「う、うゆっ!!」

善子「ふっふっふ…私もあなたたちの行く末を見守ると致しましょう…」

 

あ、やばいかもしれない。この展開。

…どう断ればいいんだ?というか、リフレッシュという形であれば一緒でもいいのでは?

とか思っていたら

 

果南「ごめん、千歌。ゆうは今日、私たちと約束があるんだよね」

千歌「んー…そっかー…それなら仕方ないねー…」

ダイヤ「ごめんなさい、ルビィ…」

ルビィ「ウウン!ダイジョウブダヨ!」

鞠莉「そういうことだから…ごめんなさいね?」

果南「じゃあ、ゆう、行こ?時間無くなっちゃうよ」

梨子「…は?」

曜「え」

善子「…イラッ」

花丸「…ジトーっ」

 

いや、だからなんで皆、腕抱きしめてくるわけ…?

腕が圧死するんだけど…

 

優馬「う、うん…じゃあ行こっか?」

ダイヤ「ええ…♡」

果南「うん!♡」

鞠莉「ふふ…♡」

 

 

3年生と優馬が去った後…

 

曜「…千歌ちゃん、梨子ちゃん、どう思う?」

千歌「うん、黒だね」

梨子「真っ黒、もう真っ黒だね」

善子「…あんたたちは?」

花丸「どう考えても黒ずらよ?」

ルビィ「…」

 

全員の目のハイライトが消え、真っ黒な心が浮き彫りになった。

そんな全員にはただ一つ、共通する思いがあった。それが

 

“優(馬くん、くん、馬さん、馬)を何としてでも取り返さなくては!!!”

 

こうして、1人の男を巡った“Aqours War”が始まった。

 

 

 

~沼津市内~

 

優馬「うわ…僕の苦手なとこ…」

 

僕が早々に連れてこられたのは、沼津有数のブティック店だった

 

ダイヤ「何をぼやいてますの?早く行きますわよ?」

優馬「…いや、だってほとんど女物しかないし」

果南「いや、当たり前じゃん、じゃなきゃ私たちここ来てないよ?」

優馬「そうかもしれないけどさ…」

鞠莉「もうっ!ウジウジしてないで、Let’s Go!」

優馬「はぁ…仕方ないなぁ…」

 

こんなこと言いつつもなんだかんだ言って、この空気は嫌いじゃないし

昔からの幼馴染だからか、居心地は悪くないんだ、と思っていた。

後ろの視線に気づくことはなく

 

千歌「むむむむ……」

梨子「…」

曜「優…優…優…」

花丸「楽しそうずらねぇ」

ルビィ「ピギィ…お姉ちゃん…優馬さんに馴れ馴れしいなぁ…」

善子「全く…いくら“私”の優馬がかっこいいからって女出しすぎよ…逆に見苦しいわ」

 

 

鞠莉「Wao!これとか果南に似合うんじゃない?」

果南「ん~…ちょっと私に似合わないんだよね…こんなフリフリな…」

鞠莉「Oh~…うーん…優はどう思う??」

果南「え!?」

優馬「ん?うん、可愛いと思う。似合ってるよ」

果南「あ、ありがとう///えへへ…///」

果南「じゃ、じゃあ思い切って買ってみよっかな!///」

優馬「うん、行ってらっしゃい」

ダイヤ「ふむ…」

優馬「ダイヤもお悩み?」

ダイヤ「ピギッ!?///え、えぇ…こういう所はあまり行かないので…」

優馬「確かにダイヤは着物着てるイメージだもんね」

優馬「あれはあれでとても綺麗だけど…」

ダイヤ「き、綺麗、ですか…ふふっ…///」

優馬「うーん…これとかどう?」

ダイヤ「…ワンピース、ですか?」

優馬「うん、白のワンピースとかダイヤの純白で綺麗な心にぴったりだと思うんだけど」

ダイヤ「ふぇっ!?///も、もう優ったら…///」

優馬「ん?呼び方変えた?」

ダイヤ「ふふ…///今日だけでも、と思い///」

ダイヤ「それより!優が勧めてくれたこの服、私も気に入ったので買わせていただきますわ♪」

優馬「良かった…行ってらっしゃい」

鞠莉「むぅぅ…」

優馬「…で、鞠莉はどうしたの?」

鞠莉「もう!果南もダイヤもずるいわ!私も優馬に服をPresentしてもらいたいわ!」

優馬「そういうと思って、はい、これとかどう?」

鞠莉「あ…水色のカーディガン?」

優馬「うん。あの色見た時、これ着て海辺にいる鞠莉を想像したんだ。」

優馬「で、その時、不覚にも“あ、綺麗だな…”って思っちゃったんだよな…」

鞠莉「優…」

優馬「え!?なんで泣きそうになってるの…」

鞠莉「だっでぇぇ…久しぶりに会った時はあんなに対応がひどかったのに」

優馬「あの時は悪かったよ…、周りが見えてなかったんだ」

鞠莉「…優、私、昔からずっと変わらずあなたのことが大好きよ」

鞠莉「だから、あの時、ほんとに辛かったの…でも、今日のこれでなんだか全てが報われた気がするわ!」

優馬「ふふ…単純だね、鞠莉らしい」

鞠莉「もうっ!///からかわないで!///」

鞠莉「…ありがとう、優。じゃあ買ってくるわね!」

優馬「即決かぁ…」

 

あれから、僕たちは店を出てから、まるであの頃に戻ったように色んなところを回った。

ゲームセンターでのリズムゲー、プリクラや本屋でスクールアイドルの雑誌を見て回り、雑貨店でお互い、お揃いのアクセサリーを買ったりとか、典型的なものばかりだったけれど、それでもこの4人で遊べていることがとても心地よかった。

でも、もう夜も更け、時間も終わりへと近づいてきた。

 

鞠莉「はぁぁ…楽しかったデース…」

果南「久々にこんなに回ったね…」

ダイヤ「足がパンパンですわ…」

優馬「どっと疲れたよ…」

優馬「でも…ほんとに、楽しかったな」

 

正直、こんなに楽しめたのは小学校の頃以来だと思う

昔の幼馴染と一緒に、こんなに…

それはもう時間が止まってしまえばいいのに、と願ってしまうほどには

 

優馬「…寂しいなぁ」

 

ふと、彼女たちがもう3年生で今年で終わり、という事実に気づくと

あれだけ「無」だった気持ちから「輝き」をもらって、自分が変わり、

今はこの時間が終わってしまうことにもう「寂しい」という気持ちへと変わっていた。

そしたら、涙が出てきたのだ。

 

果南「ゆう…?」

ダイヤ「…優?」

鞠莉「優…」

優馬「あ、れ…?久しぶりだな、涙なんて…ごめん…」

 

みっともない。こんな僕、いつもの僕じゃない。

耐えろ、耐えるんだ。泣くなんて…

そうして、唇をかみしめ、泣き止もうとした時だった。

 

果南・ダイヤ・鞠莉「「「…」」」

優馬「う、あ…」

 

彼女たち、僕の幼馴染たちが抱きしめてくれたのだ。

 

ダイヤ「私たちはずっとここにいますわ…」

鞠莉「例え、離れてしまったとしても…必ず帰ってくるわ…」

果南「ゆうは一人じゃないよ、だから…安心して」

優馬「皆…うん…うん…!」

 

別れは必ず来るもので、でもその分、出会いもある。

僕も昔、彼女たちと一度、別れて、今がある。

千歌たちや善子たちと出会って、そしてまた、鞠莉たちと会って

別れが来るのを寂しいことだと思ってたけど、それは間違い。

その分の出会いはあるし、気持ちが離れるわけじゃない。ちゃんとここに在る。

 

優馬「…お見苦しい姿をお見せしてすみません。」

果南「ふふっ、そんなことないよ、可愛かった」

ダイヤ「そうですわ!…私たちの方がお姉さんなのですから」

鞠莉「安心して、甘えてきてほしいデース!!」

優馬「…いや、もうしない、絶対に」

果南・ダイヤ・鞠莉「「「なんで(ですの)―――!?」」」

優馬「恥ずかしいからだよ…」

ダイヤ「…あらあら、ふふ♡」

果南「ほんと、いつもかっこいいのにたまに可愛いなぁ…///」

鞠莉「It’s so cute!!♡食べちゃいたいデース!!♡」

優馬「やめて…ガチやめて…」

鞠莉「ふふ…まぁ冗談はさておいて…」

鞠莉「そこにいるんでしょう?千歌たち?」

「「「「「「ギクッ!!」」」」」」

優馬「え…!?」

千歌「あ、あははは…バレてたんだねぇ…」

曜「完璧に尾行してたはずなのになぁ…」

梨子「バレちゃったらしょうがないわね」

ダイヤ「全く…あなたたちは…」

果南「だねぇ…ってゆう?」

優馬「…いつから?」

千歌「え、えーっと、ず、ずっとかなぁ…?」

優馬「今のも…?」

花丸「優馬さん…?怖いずらよ…??」

善子「お、落ち着きなさい!我がリトルデーモン!」

優馬「…千歌?今、聞いてるんだけど?」

千歌「す、すみませんっ!見てましたぁぁぁ!」

千歌「で、でもね、尾行しようって言ったのは千歌じゃないんだよ!!」

曜「え!千歌ちゃん!それはずるいよ!!」

ルビィ「そ、そうだよぉ…千歌ちゃんも言ってたよ!」

千歌「で、でも最初に言ったのは千歌じゃないもんっ!…って、優くん?お顔、怖いなぁ…?」

優馬「…ふぅ、ベツニオコッテナイヨ、ボクモウカエルネ」

千歌「あ!優くーーーん!!!」

 

僕はあの場にいるのがいたたまれなくなって、逃げてしまった。

でも、とてもいいリフレッシュにすることが出来たのだった。

…ちなみに、千歌たちは1週間口を利かなかった。

1週間目で6人皆が泣いちゃったので、さすがに許した。

 




はい、いかがでしたでしょうか?
3年生との仲が着々と深まってきてますね、良かったです
それと同時に優馬の心も開いてきてて、人間味が出てきたんじゃないですかね!
ということで、次回はおそらく東京編!
あの子たちの登場もさせます!
それでは、次回もよろしくお願いします!!


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第9話 出会いは突然に

こんばんは!
投稿が遅れてしまい申し訳ございません…
何とか、今日中にはまとめることが出来ました…
これから、少し忙しくなってしまい、投稿する時間が遅くなってしまうかもしれないので、そこはご了承ください。そして、気長に待っていただけると幸いです。
それでは第9話、よろしくお願いします!


~スクールアイドル部部室~

 

今日も今日とて、僕は彼女たちのマネージャーとして、ドリンクの作成やダンスの客観的視点からの指導、メールのやり取りなどの事務作業を行っていた。

そんなある時、

 

優馬「ん?“TOKYO SCHOOL IDOL WORLD”?」

 

そんな名前に東京と名前が付くくらいにはすごそうな送り主からメールが届いたのだ。

メールが届いたのと同時くらいに、千歌たちが走り込みから帰ってきた。

 

千歌「はぁ~~~!!ただいまぁぁ!!」

花丸「づ、づがれだずらぁぁ…」

善子「ふっ…この堕天使ヨハネにここまでのダメージを負わせるなんて…」

ルビィ「ピギィ…」

曜「あはは…飛ばしすぎちゃったかな…」

梨子「そ、そんなことないわよ…多分」

優馬「おかえり」

千歌「ゆうく~~ん…千歌、疲れたよぉぉ…」

優馬「はいはい、お疲れ様」

 

ここで構いすぎると止まらなくなるので、適当にあしらって、メールが届いたことを伝えた。

 

千歌・梨子・曜・花丸・善子・ルビィ「「「「「「おーーーー!!!!!」」」」」」

千歌「うわーーー!!東京だよ!東京!!」

曜「すごい!大会に招待されたってこと!?」

花丸「とうきょう…未来ずらぁ…」

善子「くっくっく…ようやくヨハネたちの魅力に地上の民たちが気づき始めたということね…」

 

なぜ、この大会に招待されたのか、

おそらくこの前のPV再生数の上昇率が全国1位で、一番期待のある新人、として招待されたのだろう。

そんな大会に招待されて、まして東京に遠征なんて、千歌たちにとってはワクワクが止まらないのだろう。

…一部を除いて

 

梨子・ルビィ「「…」」

 

梨子もルビィも心配なのだろう。

自信がないわけではないが、まだ駆け出しのグループ。

果たしてそんな大会に出て、パフォーマンスができるのだろうか、と不安が少なからずあると思う。

 

優馬「…不安?」

梨子「優馬くん…」

ルビィ「優馬さん…」

梨子「うん…少し不安かな…なんだか上手くいきすぎてて、勢いでここまで来てる気がしてて…ちゃんと認められてここに立ててるのかなって」

優馬「そっか…ルビィちゃんは?」

ルビィ「ルビィは…お姉ちゃんたちがいなかったのにこんなに認められるなんて思わなくて…その…思ってた以上だったというか…はい…不安です…」

 

2人それぞれの思いがあるらしい

梨子ちゃんに関しては昔のピアノの挫折を経験してる分の不安、ルビィちゃんはお姉さん…つまりダイヤたち3年生があの時、参加できずにいたのに、私たちがこんな認められていいのか、果たして通用するのか、という不安。

 

優馬「…そうだね、その不安はすごく分かる。僕も今、不安しかない。」

優馬「でも、やらないだけの挫折とやりきったうえでの挫折の重みはきっと違う。」

優馬「…今回ばかりは千歌たちを、信じてやってもらえないかな?」

梨子「優馬くん…」

ルビィ「優馬さん…」

梨子「なんだか、妬けちゃうな。千歌ちゃんのこと、すごく信頼してるんだね?」

優馬「そうだね…信頼というかなんだか奇跡を起こしちゃいそうなそんな予感がするんだ。」

梨子「ふふ…なにそれ!でも、優馬くんの言ってること、少し分かる気がする。」

 

そう、おそらくこれは信頼とか言葉で表すほど簡単なものじゃない

もっと当たり前に「千歌はやってくれる」という根拠はないが、自信が在る。

自分でも変だな、と思うがこれはもうどうしようもない。

 

優馬「それで…どう?」

梨子「うん…私も行ってみる。」

ルビィ「…私は、行きたい、です。」

優馬「うん、良かったよ」

 

こうして、Aqoursの東京進出が決まった。

 

~小原家~

 

鞠莉「それで、私たちに相談、ということね、優?」

優馬「うん、僕も不安なんだ、やっぱり」

 

さすがに上手くいきすぎて自分自身が怖かったから、

3年生に相談したのだ。

そんなAqoursの現状を相談したとき、ダイヤの表情が暗くなっていた。

 

優馬「ダイヤ?どうかした?」

ダイヤ「い、いえ…そうなのですね、PVの評価が良く、東京の大会に呼ばれた、素晴らしいですわね」

優馬「うん、でもあまりにも上手くいきすぎというか…」

ダイヤ「…」

果南「…確かに上手くいきすぎてるね」

優馬「あー…だよね?どうしよ…ここは出ない方が…」

鞠莉「いいじゃない!千歌っちたちが出たいというのであれば!」

優馬「え?」

鞠莉「というのは表向きで…正直、このまま行けば必ず高い壁にぶち当たると思うわ」

鞠莉「そして、今回の東京での大会で間違いなく挫折してしまうと思うわ?」

優馬「…鞠莉」

鞠莉「それは優も分かってるわよね?」

優馬「まぁ…じゃあ出ない方がいいんじゃ?」

鞠莉「優も言ってたじゃない。出ないで経験をしないよりも出て挫折をして、成長に繋げた方がいいって!」

鞠莉「…私も同じよ、上手く行きすぎちゃうほど、足元を掬われやすいわ」

鞠莉「だから、一度、現実を知った方がいい。私はそう思うわ?」

果南「私も同じだね。何も知らないよりも自分たちよりも上がいるって知れた方がより頑張るでしょ?」

優馬「…ダイヤはどう思う?」

ダイヤ「私は…できることなら、挫折なんてしてほしくないですわ、でも、それがきっかけになるのなら、私は行ってみてもいいとは思います。」

優馬「…うん、皆ありがとう、僕も一度頭の中を整理して明日、皆に伝えるよ」

優馬「3人は…東京、どうする?」

ダイヤ「すみません…私たちはまた行けませんわ…」

優馬「…そっか、うん、分かった」

優馬「今日は、本当にありがとう。すごく助かった。」

鞠莉「気にしないでくだサーイ!」

果南「うん、こんな夜までゆうと話せたし…ね?」

優馬「うっ…///不意打ちはやめて…///」

果南「あはは!ゆうってば照れてるの?」

ダイヤ「ふふっ、かわいらしいですわね…///」

優馬「あーー、もうやめて…///」

 

こうして、彼女たちとの密談が終了した。

彼女たちがいないのはやはり物足りないし、なにより寂しい。

きっと出れないのは嘘だ。何か意図をもってして彼女たちは参加を拒否した。

考えすぎかもしれないが、僕はそうだと感じた。

だからこそ、今回の東京遠征はどんな展開になろうとも受け入れよう。

絶対に後になって、それが好転すると信じて。

 

~スクールアイドル部部室~

 

優馬「東京、行こっか」

千歌「か、軽いよ、優くん…」

優馬「うわ…千歌に突っ込まれたら終わりだ…」

千歌「むっ!なにそれーー!!」

優馬「はいはい…とりあえず東京には行こう。」

曜「おー!じゃあ決定だね!」

優馬「うん、だから出発当日までにちゃんと準備しておくようにね」

千歌・曜・梨子・花丸・善子・ルビィ「「「「「「はぁーい!」」」」」」

 

 

 

~東京遠征当日~

 

優馬「だからって…これは…」

曜「あはは…」

千歌・花丸・ルビィ「「「「…?」」」」

 

いくら準備とは言え、千歌はとんでもなく派手な格好をして、ルビィちゃんはなんだかゴリゴリの格好してるし、花丸ちゃんはもはやどこか洞窟でも行くんですか、っていうとんでもない格好をしてきたのだ。

東京を何だと思ってるんだ、彼女たちは…

 

梨子「もう!!今すぐ着替えて来なさーーーーーい!!」

 

鶴の一声ならぬ梨子ちゃんの一声で、彼女たちは急いで着替えてくるのであった。

ちなみに駅までは千歌のもう一人の姉である高海志満さんに車を出してもらった。

そして、無事沼津駅に着いたと思えば…

 

善子「あ!優馬っ!」

優馬「あー…」

千歌・梨子・曜・花丸・ルビィ「「「「「…」」」」」

善子「な、なによーーー!」

優馬「いや…相変わらずなんだねって…」

善子「う、うっさいわい!!」

 

こうして、なんとか、東京へと出発した…

 

 

~東京~

 

千歌「着いたよ、とうきょおーーー!!」

花丸「み、未来ずらぁ、未来だらけずらぁ!」

ルビィ「は、花丸ちゃん…“ずら”って言っちゃってるよ…?」

曜「あ!制服ショップ…!?」

善子「くっくっく…堕天使グッズもあるわ…!!」

優馬「あー…お願いだからもう少し落ち着いて行動して…周りに見られるから…」

梨子「優馬くんの言う通りよ!全く…」

梨子「あ…ゆ、優馬くん?」

優馬「ん?どうしたの?」

梨子「ちょ、ちょっとお手洗いに…」

優馬「いいよ、行ってらっしゃい」

梨子「う、うん…///」

梨子(同人誌のお店に行くなんて言えないよーー…///)

 

こうして、それぞれのやりたいことを終えて、落ち着いたところで

千歌の提案でかつてμ’sが練習していたという神田明神へ向かうことになった。

するとそこで2人の紫色の少女たちがアカペラで歌を歌っていた

 

千歌「すごい綺麗…」

「あ…」

「…」

「こんにちは、すみません、驚かせてしまって、私たちはSaint Snowというスクールアイドルをしています。私が姉の“鹿角聖良”です。よろしくお願いしますね。こちらが妹の…」

「…鹿角理亜」

優馬「…よろしくお願いします。」

 

なんだか恐ろしいものを感じてしまう。

それが何なのかは分からないが、それだけのプレッシャーを感じられた。

でも、それと同時になぜだか懐かしいような、そんな気持ちが起こった。

 

聖良「…あなたたちは“Aqours”…ですよね?」

千歌「は、はい!」

優馬「…知っていたんですね?」

聖良「ふふ…もちろんです」

聖良「あなたは…覚えていないでしょうね?」

優馬「…?」

聖良「…“空条優馬”さん。」

優馬「っ!?」

優馬「あんた、なんで僕の名前を知って…」

聖良「…明日のイベント、楽しみにしてますね。」

優馬「ちょっと待って!まだ話は…」

 

すると、もう一人の小柄な少女が目の前でバク宙を披露し、Saint Snowと名乗る少女たちはその場を後にした。

僕以外のメンバーは彼女たちのバク宙や歌声に魅了されていたが、

僕はずっとあの時のつぶやきが忘れられずにいた

 

優馬(…僕は彼女たちと会ったことがある?)

 

そうして僕は帰り道の間、ずっと遠い遠い記憶の先を思い起こしていた。

 

 

 

理亜「…姉さま?」

聖良「どうしたの、理亜」

理亜「良かったの?兄さんと…」

聖良「…しょうがないわ、彼は、優君はもうAqours側で、私たちのことは覚えてなさそうだもの…」

理亜「…」

聖良「あんなことがあって…昔の記憶がきっとまだ混濁してるのよ…」

理亜「だとしても…!」

聖良「…明日、私たちのパフォーマンスで彼に思いだしてもらえるように、今は頑張るしかないわ」

理亜「…姉さま」

聖良「ふふ…頑張りましょうね、理亜」

 

優くん、雪のように冷え切った私の心を溶かしてくれた心優しい彼

いつの間にか、いなくなってしまった彼。

もう出会えないかと思ってたのに、本当に運命って残酷…

なのに忘れた、なんて…

そんなの言わせない。絶対、思い出させる。

 

聖良「覚悟しててくださいね…?Aqoursの皆さん、そして優君…」

 

 




いかがでしたでしょうか
ついに東京上陸…
そして、出てきましたね、鹿角姉妹!
最初は苦手だったんですけど…どんどんと魅力が出てきて、今ではライバルと言えど、愛されるグループへと成長していきましたね!
さて、東京編はまだまだ続きます!
次回こそ、イベントの開催!優馬がどう、思うか、どうなってしまうのか!
是非、また次回も見ていただけるとありがたいです!
それでは、次回もよろしくお願い致します!


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第10話 可能性というのはいつだって無限大らしい

こんばんは!
なんとか毎日更新、守れそうでした!!
遅くなって申し訳ありません!
それではどうぞ!


 

~東京・旅館~

 

優馬「…よし、とりあえずひと段落ってとこだね」

千歌「はぁぁ…長かったぁぁ」

曜「意外と遠かったね…」

花丸「もうマル動けないずら…」

 

 

「あなたは、覚えてないでしょうね?“空条優馬”さん。」

 

優馬「…」

 

僕はずっとその言葉に引っかかっていた。

なぜ、彼女が僕のことを知っていたのか、

そして僕が感じた、あの“懐かしさ”とはいったい何だったのか

 

優馬(僕が彼女たちに過去、会っている可能性がある、っていうこと、だよね…)

 

どうしても頭の中が彼女の言動で頭がいっぱいになってしまっていた

ただ、このことに囚われているわけにはいかない。

そう思って、僕は旅館の外に出ることにした。

 

優馬「…ごめん、ちょっと外の空気吸ってくるね」

梨子「あ…うん、分かった」

 

千歌「優くん、何かあったのかな…」

曜「うん…なんだかあのグループに会ってからちょっと調子がおかしいよね…」

花丸「…あの人たち、優馬さんの名前知ってたずら」

ルビィ「何か昔にあったのかな…」

善子「優馬…」

 

 

~旅館・外~

 

ああいう抜け方は皆を不安にさせちゃうかな

僕っぽくなかったもんな、なんか意味深な感じしちゃうだろうし

 

優馬「はぁ…」

善子「…優馬?」

優馬「っ!?」

優馬「あ…善子か…」

善子「…どうしたのよ、何かあった?」

優馬「その前につっこんでくれないの?」

善子「つっこむわけないでしょ、あんたのその顔見て」

優馬「ん…?今、僕どんな顔してる?」

善子「…なんだかしんどそう」

優馬「うわ…マジか…ごめん…」

善子「何謝ってんのよ!全く…話、聞くわよ?」

優馬「…いいよ、これは僕自身の話だ」

善子「…はぁ、あんた、バカじゃないの!?」

優馬「!?」

優馬「ど、どうしたの、いきなり…」

善子「いつもいつもあんたは誰にも頼んないでさ…気づいたら3年生に取られてるし…あーーーもうっ!!!」

善子「ウジウジしてないで、話す!!」

優馬「は、はい…」

 

そうして僕は生まれて初めて年下の子に怒られて、初めて相談をした。

 

善子「…なるほどね、それで悩んでたわけ、ね」

優馬「…まぁ、切り替えて今は明日のことに集中するよ」

善子「…できるの?」

優馬「…」

善子「できない?」

優馬「…少しは気にするかもしれない」

善子「そっか、ならそれでいいじゃない」

優馬「え…?」

善子「優馬が悩んでるなら私も背負うわ、そしたら重さ半分だし、ちょうどいいでしょ

?」

善子「それにあのグループを見て、負けたくないと思った。だって、優馬になんか因縁在りそうだし…」

善子「とにかく、あんたの悩みは半分こ。あんたの分も私はステージで頑張る。」

善子「あのグループを気にしちゃうかもしれないけど、そんなの気にならないくらい私に魅了させてあげる!だから覚悟してなさい!」

優馬「善子…」

善子「…それとも私じゃ、嫌、だった?」

優馬「いや、すごく嬉しいよ、ありがとう」

善子「ふふっ!良かった!じゃあ、帰りましょ?皆が心配しちゃうわ」

優馬「うん…ほんと助かるよ」

善子「当然よ、あなたは“私の”リトルデーモンなんだから!」

 

そうして、僕は明日に向けてまた歩き出した。

彼女たちのことは気にはなるけど、やっぱり僕はAqoursの一員で来たんだ。

今はAqoursのために頑張らなければ、その意思を強く持って、明日に思いを馳せるのであった。

 

優馬「…ただいま」

千歌「あ!優くん!!善子ちゃんみなかt…」

善子「…///」

千歌「…みんなーーーー、善子ちゃんギルティだよーーーー!!!」

善子「ちょ!止めなさい!千歌っ!!」

優馬「相変わらず、賑やかだなぁ…」

 

そうして送り出した善子は気づいたら他5人に説教を喰らわされていた。

皆心配してたのか…

 

善子「うっ…うぅ…ゆうまぁ…」

優馬「…大丈夫?」

善子「だいじょばないぃぃ…」

曜「善子ちゃん。だめだよ。」

梨子「うんうん。」

花丸「もっと怒られたいずらか…?」

ルビィ「ダメ、だよ…?善子ちゃん…」

千歌「…」

 

また皆のハイライトが…

 

優馬「…とりあえず、皆、心配かけてごめん。」

優馬「明日は皆緊張してるかもしれないけれど、自分自身のベストパフォーマンスをしてほしい」

千歌「優くん…うんっ!頑張るよ!!」

 

そうして僕らは明日のイベントに向かうのだった。

 

~旅館・寝室~

 

梨子「…」

千歌「…梨子ちゃん?眠れない?」

梨子「うん、ちょっと明日が怖くって…」

千歌「不安?」

梨子「うん…私ね、昔、音ノ木坂女学院にいた頃、周りからピアノに関して、すごく期待されてたの。だけど、そのプレッシャーに耐え切れなくて、全然コンクールでうまく行かなくて、いつしか…」

千歌「音が聞こえなくなってた…?」

梨子「ふふ…そう、だから海の音を…っていうね」

梨子「だから、今回も不安で…」

千歌「…私も、学校の皆が期待してくれて、すごく嬉しかったんだけどね、その反面、“あー、失敗できないな”って思っちゃって…」

千歌「怖くなっちゃったの、ステージに立つのが…」

千歌「でも、私たちには優くんがいるもん、だから…きっと大丈夫…」

梨子「…ふふ、千歌ちゃん、おやすみ」

梨子「そう、よね、優馬くんがついてるから…大丈夫、よね」

梨子(そうだよね、優馬くん…)

 

~イベント当日~

 

優馬「…ついに、か」

優馬(今回はイベントと言えど、お客さんの投票があり、出場者のランキングが形成される。だからより一層順位を気にしてしまう。)

優馬「出番は…2番…」

 

2番、それは前座と言わざるを得ない。

 

優馬「…くそ」

 

なんだか、嫌な予感がしてやまない。

Aqoursの皆はもう舞台袖に向かったが、大丈夫だろうか

 

梨子「ふぅ…」

曜「梨子ちゃん、緊張してる?」

梨子「うん…やっぱり緊張しちゃうわね…」

曜「大丈夫大丈夫!…優だって見てるし、ね?」

梨子「よ、曜ちゃんっ!!///」

 

ルビィ「うぅ…やっぱり無理だよぉ…」

花丸「大丈夫ずら、ルビィちゃん。落ち着いて、今まで通りで大丈夫ずら!」

 

善子「…優馬、見ててね」

 

千歌「…弱気になっちゃダメ!」

 

 

 

~イベント後~

 

梨子・曜・花丸・善子・ルビィ「「「「…」」」」

優馬「…」

千歌「お待たせ―、アイス、買ってきたよ…」

優馬「…ありがと」

 

なぜ、こんなにも沈んでいるのか

そう、僕らは負けてしまったのだ。それも僅差での惜敗ではない。

ボロボロのボロ、大敗も大敗だった。

30組中、30位。得票数は0。

つまり、誰も入れてくれなかったのだ。

 

千歌「…今回のライブ、今までで1番良かったよ。でも今回は有名なグループばかりだったし…うん…しょうがないんだよ」

優馬「千歌…」

 

僕もこうなるとは思わなかった。

良い結果にはならなかったのかもしれない。だが、こんな…

投票数“0”なんて…

そんな感傷に浸っている時、僕の携帯に1本の電話が

それは今回の得票数一覧を渡し忘れていた、というものだった。

 

優馬「ごめん、ちょっと会場行ってくる。すぐ戻ってくるから」

 

そうして、僕は会場にまた駆けだした。

 

 

~イベント会場~

 

会場に戻り、一覧表を受け取った。

やはり、そこには“0”の文字。

 

優馬「…くそっ」

 

イライラを抑えて、会場を出ようとしたその時、

 

聖良「こんにちは、優馬さん」

 

そこには昨日からの僕の悩みの種である人が立っていた。

 

聖良「…どうでしたか?」

優馬「馬鹿に、してるのかな?」

聖良「まさか…私たちも入賞すらできていませんからお互い様です。」

 

…何がお互い様だ。

そんなこと、微塵も思っていないくせに。

 

聖良「…ただ、今のままのAqoursではきっとラブライブで優勝など、いや入賞すら難しいでしょう。」

優馬「…何が言いたいんです?」

聖良「…はっきり言ってあげますよ。Aqoursとして、ラブライブを目指すのは“諦めた方が良い”と言ってるのです。」

 

悔しいが、まさにその通りだった。

今回の得票数。他のグループに比べて、拙いダンスや歌。

到底、ラブライブで優勝など…夢のまた夢。

 

優馬「…そんなのまだ分からないじゃないですか」

聖良「いいえ、分かります。あれだけのレベル…到底、優勝には辿り着けません。」

聖良「あなた達のように…遊びでやってる訳では無いのですから…」

優馬「…」

聖良「…だから、提案させていただきます。」

優馬「…?」

聖良「私たちSaint Snowのマネージャーに転向いたしませんか?」

優馬「っ!?」

優馬「…それは僕にAqoursを捨てろ、というんですか?」

聖良「はい。あなたの才能を買ってるんです。だから「お断りですね」…」

聖良「何故です?」

優馬「…彼女たちは僕にとって希望であり、奇跡の存在です。易々とこのポジションを失うわけにはいきませんよ」

聖良「…そんなに期待をかけてるんですね」

優馬「違いますよ。やってくれるっていう信頼です。」

聖良「信頼…ふふっ、羨ましいですね」

優馬「え…?」

聖良「分かりました。今回はお引きします。しかし、まだあなたを諦めた訳ではありませんから、嫌になったらすぐにでもご連絡くださいね」

 

そうして、彼女は僕に連絡先を渡してきた。

 

優馬「…素敵なアプローチありがとうございます。残念ながら連絡することは無いかもしれませんが」

聖良「あら、随分私も嫌われたものですね」

優馬「…」

理亜「姉さま…時間が…」

聖良「…それでは、また会う時までお互い頑張りましょうね?」

優馬「ええ…貴女方もその慢心から足下を掬われないように注意してくださいね」

聖良「ご丁寧にありがとうございます。」

 

そうして、彼女たちは去っていった。

自分でもほぼ初対面の人相手にあそこまで感情的になるとは思わなかった。

だからあれだけの強気な言葉に僕自身もびっくりした

僕も千歌たちのところに戻るべく、会場から去ろうとした時だった。

 

千歌「…優くん」

優馬「っ!?千歌…!?」

 

なぜだか皆と待っているはずの千歌が立っていたのだ。

 

優馬「…なんでここに」

千歌「…中々、優くんが帰ってこないから心配になっちゃって」

優馬「…そっか、待たせてごめん、じゃあ行こっか」

千歌「待って…」

優馬「…」

千歌「何か…話してたよね?あの人たちと、何、話してたの?」

優馬「それは…」

千歌「…」

優馬「…Aqoursは、ラブライブを、目指すべきじゃない、遊びでやってる訳じゃないって」

千歌「…そっか、あと、まだあるよね?」

優馬「相変わらずこういう時だけ、察しがいいな…」

千歌「そういうのは良いから言って!」

優馬「…Aqoursのマネージャーを辞めて、Saint Snowのマネージャーに転向しないか、って」

千歌「っ!?」

千歌「そ、それで…?」

優馬「さすがにそんな下劣な行動はしないよ…」

千歌「…そっか」

千歌「とりあえず…帰ろっか、皆待ってるし、ね」

優馬「…」

 

そうして、僕らは皆の元に戻って帰り道の電車で他のメンバーにも

Saint Snowとの会話、聖良に言われた一言、マネージャーには誘われたというのを話した。

 

梨子・曜・花丸・善子・ルビィ「「「「「…」」」」」

優馬「皆…」

優馬「…今回、イベントに呼ばれただけでもすごいと思うんだ」

優馬「だから…うん、胸を張っていいと思う…」

千歌「優、くん…?」

千歌「ねぇ…それほんとに言ってるの?」

千歌「優くんは…悔しく、ない、の?」

優馬「…僕は、結果として皆があんな大きな舞台に立てて、良かったって思ってるよ」

千歌「っ!」

曜「優…」

千歌「…そっか」

 

そう、これでいいんだ。

彼女たちはここまで頑張ってきたじゃないか。それを称賛しないでどうするんだよ。

そんな悶々とした思いが交錯する中、僕たちは沼津へと戻ってきた。

駅を出るとそこには学校の皆が

今日帰ってくると聞いて、わざわざ出迎えてくれたらしい。

だけど、その優しさが余計に心に沁みてしまった。

 

優馬「…わざわざ出迎えてくれたところごめんね、今日のところはゆっくり休みたいから、帰らせてもらっていいかな…?」

優馬「イベントのことは…また後日伝えるよ…」

 

そうして、僕は皆を解散させて、家に帰ることにしたんだけど…

 

ルビィ「…待って!!」

優馬「…ルビィ、ちゃん?」

ルビィ「優馬さん…今日、ルビィのお家来れない、かな?」

 

 

~黒澤家~

 

優馬「…お邪魔します。」

ダイヤ「…いらっしゃい、優」

ルビィ「…」

 

僕は早々に家に戻ろうと思ったんだけど、どうにもルビィちゃんから話があるみたいで

家に帰らず、今日は黒澤家にお邪魔することにした。

 

 

~黒澤家・客間~

 

優馬「相変わらず、すごいね」

ダイヤ「ふふっ、もう何年も前ですものね…」

優馬「うん…でも、今でも覚えてるよ…もちろん、ルビィちゃんのことも、ね」

ルビィ「…お兄ちゃん」

優馬「はは、懐かしい、その呼び方。」

ルビィ「…」

ダイヤ「…ルビィがここまで来れたのは優のおかげですわ、ありがとうございます。」

優馬「僕はそんな大それたことしてない。頑張ったのはルビィちゃんの方だよ…」

優馬「それで、僕はなんで呼ばれたの?」

ダイヤ「もう少しお待ちください。もう少しで到着すると思いますので」

鞠莉「はぁ~いっ!…待たせちゃった?」

果南「ごめんね、遅くなっちゃった。」

優馬「鞠莉…果南…」

ダイヤ「…私たちから話さなければならないことがあるのです。」

 

ダイヤから話があった。

それは2年前、まだ浦の星学院が女子高だった頃。そこにはスクールアイドルがいたこと。

それが鞠莉、果南、ダイヤの3人で昔から廃校の危機にあった学校を救うため、活動していたこと。

そして、同じようなイベントで周りに圧倒されてしまったこと。

 

優馬「…3人はそこで歌えたの?」

ダイヤ「歌えませんでしたわ。いえ…歌わなかったんです。1人だけは」

果南「あはは、懐かしいね…」

鞠莉「それを聞いた時はぶん殴ろうかと思ったわ…!」

果南「ごめんって…」

優馬「…ちなみになんで?」

果南「…当日、鞠莉は怪我してたんだ。」

果南「加えて、鞠莉には留学とか転校の話がたくさん来てた…だから、鞠莉のために、スクールアイドルを辞めよう、って」

優馬「それで…」

鞠莉「…あの時は本当にびっくりしたわ」

ダイヤ「ですが…怖気づいて歌えなかったのは…事実ですわ」

ダイヤ「だから、歌えただけでもすごいことなのです。」

優馬「…」

ダイヤ「…ルビィから色々聞きましたわ。得票数…0だったみたいですわね」

優馬「っ!」

ダイヤ「その結果は…彼女たちにとっても、もちろん優にとっても…悔しいものだったと思います。」

ダイヤ「でもっ!…優がここまで変われたのはスクールアイドルの輝きに照らされたからですわ」

ダイヤ「だから…今、本当はどう思っているのか、塞ぎ込まずに考えてほしいですわ」

優馬「…」

ルビィ「お兄ちゃん」

優馬「ルビィ、ちゃん」

ルビィ「ルビィはもっと頑張りたいの、まだ輝きたい。…だからルビィはやめたくなんかない!」

優馬「…」

ダイヤ「…話は以上ですわ。…ごめんなさい。あの時、そばにいてあげられなくて。」

優馬「…要は気づかせたかったんでしょ?現実を」

鞠莉・果南・ダイヤ「…」

優馬「…しっかり心に響いたよ、ありがとう。」

 

そうして、僕は家へと帰ったのだった。

 

 

~優馬家・優馬の部屋~

 

優馬「僕は、どうしたいんだ…」

 

「Saint Snowのマネージャーになりませんか?」

 

優馬「…僕はあくまでもマネージャーだ」

 

頭をよぎってしまう“0”の文字。

 

優馬「僕にそんな資格は…」

 

そうして、僕は眠りについていた。

 

 

~翌朝~

 

優馬「…」

 

その日はなんだか寝つきが悪く、気づいたら起きてしまった。

まだ朝6時。いつもなら爆睡してる頃だ。

気分を変えようとベランダの外を見た。するとそこには、

浜辺に向かおうとする千歌の姿があった。

 

優馬「…千歌?」

 

 

~浜辺~

 

優馬「千歌…?」

千歌「…優くん」

千歌「私ね、悔しかったの。だって、得票数“0”だったんだよ!?」

千歌「あんなに皆で練習して、頑張って頑張って、輝きたいってそう、思っていたのに…」

千歌「“0”なんて…その結果が“0”だったんだよ!?」

優馬「…千歌」

千歌「私は悔しくてたまらなかったのに!なんで優くんはそんな平気でいられるの!?」

千歌「優くんは悔しくないの!?」

優馬「…ぼ、くは」

優馬「…僕が悔しいって言うのは違うと思ったんだ。だって、あくまでもマネージャーだよ?」

優馬「君たちみたいに歌って踊って、あんな練習にも参加してない。」

優馬「僕には悔しいって思う権利はない、と思ってたんだ。」

優馬「…悔しいと思わないの?だって?」

優馬「そんなの!悔しいに決まってるじゃないか!!」

優馬「千歌たちの頑張りをずっと見てきたんだ!受け入れられると思って、きっと僕のように心打たれる人が必ずいるって、そう信じていたのに…」

優馬「悔しいよ!!なんでなんだよ!!」

 

…気づいたら、泣いていた。号泣も号泣だ。

久しぶりだった。こんなに感情的に泣いてしまうのも。

誰かにこんなに当たってしまうのも。

…あぁ、きっと離れていってしまうだろうな。こんなの八つ当たりじゃないか。

そんなことを思っていた時だった。

 

千歌「…やっと、伝えてくれたね、優くんの想い」

優馬「…っ!」

 

そうして、千歌は僕を抱きしめてくれたのだ。

 

優馬「…引かないの?八つ当たりだよ?」

千歌「引かないよ。だって、初めてじゃん。こうやって曝け出してくれたの。」

優馬「…」

曜「優」

優馬「…!」

 

そんな中、声をかけられて周りを見渡したらそこには3年生も含めたAqoursの皆が居たのだ。

 

優馬「皆…」

ダイヤ「全く…うまく行かなければすぐにいじけるんですから…」

果南「そんなゆうも可愛いけどね♪」

鞠莉「でも、ちゃんと話してくれてよかったでーす!」

梨子「ほんとに、ずっと心配してたんだからね?」

ルビィ「お兄ちゃんのこと、信じてたよ!」

花丸「辛かったら9等分ずら!」

善子「ふっふっふ…リトルデーモンなのだからこういう時こそ、主人であるヨハネに頼るべきなのよっ!」

千歌「…皆、優くんのこと、ただのマネージャーだなんて思ってないよ。」

千歌「かけがえのない大切な人。だから、弱気にならないで、ね?」

優馬「千歌…うん…うんっ」

千歌「私たちの始まりは最初0からのスタートだった。でも、今は10人の仲間がいる。」

千歌「だから、きっと0から1にも10にもできるんだよ!」

 

あぁ、そっか…

僕は0という数字にのみ意識しすぎていたんだ。

それよりも千歌たちはもっと前を向いていた。

0には無限大の可能性が秘めているってことに気づいていて

 

 

~スクールアイドル部部室~

 

優馬「よし…」

千歌「ゆ~~うく~~ん!!!はやく~~~!!」

優馬「今行くよー」

優馬「じゃあ今日もまた頑張りますか…」

 

 

あれから僕らはまた次にステージに向けて歩みだした。

そう、0から1に。可能性は無限大。

その思いを皆が持って…

 




なんだか、しんみりとしますね…
そして、2話分の更新をした気がします…
次回はイチャイチャほのぼの系を導入しようと思うので、良かったらまた見てください!!
次回もよろしくお願いします!


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第11話 妹分たちが天使で小悪魔なわけがない?

こんにちは!
昨日投稿しようとしたんですけれど、課題やテストの勉強等で中々、創作に手を付けることが出来なかったです…申し訳ない…
そして、善子ちゃんのソロ曲、ホコタテツバサがYouTubeで公開されましたね!
あんなに好き好き言ってる善子ちゃんに本当、惚れてしまいそうです…
そんな善子ちゃんも今回の回に登場します!
今回も楽しんでみてください!よろしくお願いします。


 

~スクールアイドル部部室~

 

優馬「…ふぅ」

 

ようやく自分の仕事が終えようとしていた。

練習で使用するドリンクの作成、今日の練習でのダンスをビデオカメラで撮影し、どこが悪いのか、何が良いかをリストアップ、他のスクールアイドルたちの動画を見て、研究など、

今は歌詞作りのためのテーマを決めていた。

それもちょうど、頃良いときまで終わりを迎えようとしていたのだ。

 

優馬「うぅ~ん…」

 

時間は今、ちょうど18時。

空模様もまだ若干明るいものの、暗くなるのも時間の問題というやつだった。

 

優馬「さてと…帰るか…」

 

そうして、帰ろうとした時だった。

なんだか、部室の近くから物音が聞こえてきたのだ。

不安に思いつつ、扉を開けるとそこには

 

善子「きゃっ…!」

優馬「…なにゆえ?」

善子「…なによ、いちゃ悪いの!?///」

 

なぜだか善子が目の前にいたのだ。

おかしい、帰ったと思ったのに。

もう時間も時間だったため、善子を送ることにした。

 

優馬「はぁ…とりあえず帰ろう?」

善子「あ…///えへへ…やった…///」

優馬「っ!?///」

 

え、何この可愛い天使

いや、堕天使の間違いでした。

いやこれもう堕天使じゃないでしょ、もはや天使だわ。

 

善子「…?何固まってるのよ?」

優馬「はっ…いや、善子が可愛くてつい、固まってた…」

善子「ふぇっ!?///」

善子「だ、だめよ…///不意打ちすぎ…///」

善子「と、とりあえず帰るんでしょ!!///ほら、早く!///」

優馬「う、うん…」

 

そうして僕はまさか堕天使にキュンとしてしまったことに驚きつつ、

とりあえず善子を家まで送ることにした。

 

優馬「そういやなんで善子はあそこにいたの?」

善子「えっ!///いや、その…///」

優馬「…?」

善子「うぅ…///」

優馬「なに?どしたの?」

善子「あ、あんたと…ゆ、うまと帰りたかったから…///」

優馬「あの、聞こえないんですけれども…」

善子「ゆ、優馬と一緒に帰りたかっただけなの!!///」

優馬「…え?///本気ですかい?///」

善子「う、うん…///ってなんか語尾おかしくなってるわよ…?」

優馬「あ、気にしないで…」

 

え、いやこの子どしたの?

なんでこんな素直になっちゃってるの?

いつもの堕天使キャラどうしちゃったの?

やばい、頭がおかしくなってきた

 

善子「…あ!ちょうどバス来たわよ!」

優馬「あ…うん」

 

こうしてなんだかよく分からないまま

善子とバスに乗るのであった。

 

~バス内~

 

善子「Zzz…Zzz…」

優馬「疲れてたんだな、そりゃあれだけ色々あったからそうなるよね…」

 

急にアイドルに誘われて、気づいたら東京に行ってて、色んな所で歌って踊って…

そりゃ、疲れるよ…でも、でもさぁ…

 

優馬「もたれかかるのは違うじゃんか…」

善子「Zzz…Zzz…」

 

善子は堕天使キャラのあれが無ければ本当に可愛いのにな…

…やっぱり顔は整ってるよね、アイドルやるだけあるわ

 

善子「ゆ、うま…」

優馬「…?」

善子「だい、すきよ…Zzz…」

優馬「…はぁ///」

優馬「勘弁して…///」

 

そんなことをしているうちに気づけば沼津に着いていた

 

優馬「あ、善子、着いたよ」

善子「うにゅ…?着いた…?」

善子「行かなきゃ…って、きゃっ!」

優馬「うわっ!」

 

寝ていたためだったかは分からないけれど、

善子の足がもつれて、転けてしまうところだったのを僕が抱きしめる形になってしまった。

 

優馬「…大丈夫?」

善子「う、うん…///ありがと…///」

善子「あ、え、と、あの…も、もう行くわねっ!!///ここまでで大丈夫!ありがと!///」

 

優馬「何だった今日はいったい…」

 

今日はなんだか善子にやられっぱなしだったな、なんて考えながら

僕は自分の家に戻るのだった…

 

 

~図書室~

 

…いまだに昨日の善子の余韻がすごかった。

ただ、あれだけやってきたのは善子のはずなのに

なぜだか善子の方が僕を避けていく…

なんで?

ただ、今日はスクールアイドル活動も休みの日のため、

こうして僕のオアシスである図書室へ赴いているのだ。

 

優馬「はぁ…すごく…落ち着く…」

 

いつも通りの場所で、いつも通り本を読みながらくつろいでいると

放課後の図書室というあまり人が来ないような時間に扉が開いた。

 

花丸「あ、優馬さんずらぁ~♡」

優馬「やっぱり花丸ちゃんか」

花丸「むっ!やっぱりって何ずら~??」

優馬「はは、放課後のこの時間で図書室に来るのは花丸ちゃんくらいだよ?」

花丸「ふふ…それもそうずらね!」

 

そうした会話を交わし、彼女はこの広い空間の中で僕の隣に座ったのだ。

しかもなんか近い。

 

優馬「…花丸さん?」

花丸「?どうしたずら?」

優馬「いや…なんか近くないですかね…?」

花丸「…だめ、ずらか?」

優馬「いや、全然大丈夫です」

花丸「ふふっ、優馬さん、敬語になってるずらよ?」

花丸「…それに隣が一番落ち着くずら///」

優馬「…///そっか///」

 

あーー、もうなんなんですかね、ここ最近の1年生たちは?

なーんでこんなに人の心を掴んでくるんですかねーーー??

とりあえず、落ち着ける存在になれてよかったです…はい…

 

花丸「…///」

優馬「…」

花丸「あ…その本…」

優馬「ん…?あぁ…これ?ちょっと読んでみたいなと思って…」

花丸「どこまで読んだずら??」

 

いや、距離感。

花丸さん、バグってます。距離感。

近いですよ?え?近いですけれども?

 

花丸「おー、もう結末が近いずらね…」

優馬「そ、そうだね、もう結構読んでたから」

花丸「これ、マルも読んだずらよ~、結構面白かったずら!」

優馬「そっか、ちなみにここまででのお気に入りのシーンとかある?」

花丸「マルはねぇ…」

 

うわ、え、めっちゃ近くなってるんですけど?

あれ、もしかしてこの子、無自覚?

それだったらすごくない?

 

花丸「…って、優馬さん、話聞いてた?」

優馬「あ…いや…ごめん…///」

花丸「…もしかして、距離近くて照れちゃったずら?///」

優馬「…///」

花丸「ふふっ、優馬さんも可愛いところあるずらぁ~♡」

花丸「マルだけが知ってる優馬さん、ずらねっ♡」

 

花丸ちゃん…

天使だと思ったけど、全然違う。

この子…小悪魔だ…///

 

 

~屋上~

 

今日は気持ちのいいくらいの快晴だったから屋上で練習することにした。

そして今は休憩中。皆はそれぞれドリンクを飲みつつ、さっきのダンスの振り返りをしている。

僕はビデオカメラでダンスの確認、を念入りにしていた。

するとそこに、

 

ルビィ「お兄ちゃん…?」

優馬「ルビィちゃん?どうしたの?」

ルビィ「あ、いや、その…お兄ちゃんがいなかったからどこにいったのかなって…」

優馬「あ…ごめん、もう練習始める?」

ルビィ「ううん…千歌ちゃんがどうせだから日向ぼっこしたいって言ってて…」

優馬「あー…相変わらずだね…」

 

本当に相変わらずだらしがない。

まぁそういうところも千歌らしいからいいんだけど…

でも、練習に支障が出てしまうのは良くない。

そうして、止めに行こうとしたら…

 

ルビィ「…///」

優馬「…どうしたの?」

ルビィ「る、ルビィは日向ぼっこしてたいな、って…」

優馬「あ、ほんとに?うーんじゃあどうしよ…練習時間は少し削ってもいいか…」

 

とか色々考えていると

気づいたらルビィちゃんが隣に座っていた。

 

ルビィ「えへへ…///」

ルビィ「お兄ちゃん?///」

優馬「ん…?」

ルビィ「ううん、呼んでみただけっ///」

 

ん~…なんて可愛いんだ、この天使…

いや、ルビィちゃんももしかして小悪魔なのでは…?

 

優馬「あー…ここじゃ、なんだし皆のところに戻ろっか?」

ルビィ「…ヤダっ!!」

優馬「えぇ…?どしたの、喧嘩した?」

ルビィ「あ、いや、違くて…」

ルビィ「今は、お兄ちゃんを独り占めできるから…///」

 

可愛すぎる…こんな妹が欲しかった…

ダイヤがうらやましく感じるよ…

そんなことを考えてたら

 

ダイヤ「ルビィ~~~どこ行きましたの~~?」

ダイヤ「もう練習始めますわよ~~!!」

 

ルビィ「あ…もう行かなきゃ…」

優馬「そ、そうだね…///」

ルビィ「…最後に♡」

 

そう言うと、彼女はその細い腕で僕の体をハグして、

 

ルビィ「ふふ♡お兄ちゃん成分補充完了っ!♡」

ルビィ「行ってきます!」

 

僕への置き土産を残して練習に向かっていったのだった。

 

優馬「いや…可愛すぎないか…?」

 

 

こんな風に僕は今日も1年生の意外なギャップにやられてしまう3日間を過ごしてしまっていました。

…すごい積極的だったなぁ

 

 

善子(はぁ…これで意識してくれるかしらっ!♡)

花丸(ふふ♡優馬さん可愛かったなぁ♡もう一回見たいずら~♡)

ルビィ(お兄ちゃんは誰にも渡さないからねっ!♡ふふふ…♡)

 

ちなみにその日の練習の1年生のキレは半端じゃなかったです。

すごかった。

 




今回は1年生がメインで書きました!
恐らくこの流れで行けば、次は2年生に…
とりあえず、まずはまたストーリー通りに戻して、書いていきたいかな、と思います。
なんにせよ、また楽しんでみていただけたら幸いです!
次回もよろしくお願いします!!


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第12話 拝啓僕へ、暑き夏、海にて戦争が行われていました。

こんにちは!
ついに夏が到来しました!
夏だけに?若干のヤンデレ要素も入れました!
ぜひ見てもらえると嬉しいです!
どうぞ!


 

~千歌家・千歌の部屋~

 

千歌「なっつやすみだーーーーー!!!」

優馬「千歌、うるさい」

曜「あはは、まぁまぁ」

優馬「はぁ…曜もあんまり甘えさせないようにさせないとだめだよ…」

曜「むっ!私のせいっていうの?」

優馬「いや、違う違う。断じて違います。」

優馬「それより、もう行かないとまずい。ダイヤがブチ切れる。」

千歌「え!じゃあ行こう!」

曜「全速前進ヨーソロー!!」

優馬「なんでこの人たち、こんな元気なの?」

 

僕がいる浦の星学院では昨日から夏休みがスタートした。

学生にとっての長い長い最高の長期休みだ。

僕は早速、初日からダラダラ生活を満喫しようとしたのだが、早々に千歌たちに呼ばれ、

かつその日にダイヤからも連絡が…

結果、僕のダラダラライフは水の泡と消え、今もこうして、暑い灼熱の中、学校に歩を進めている。

 

優馬「あー…暑い…もう帰りたい…」

 

家のクーラー、冷えたコーラ。

涼しい環境の中でのふかふかのベッド。

全てが恋しい。あぁ、何事もなく終わってくれ…

 

 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

ダイヤ「ブッブー!ですわ!大遅刻ですわ!!」

優馬「はぁ…暑苦しい…」

ダイヤ「何か言いましたか…?」

優馬「いえ、何も言っておりません。」

 

出る時に時間を確認したらもう間に合いそうにない時間であり

かつ僕の歩くスピードが遅かった結果、千歌と曜、僕は見事大遅刻をかましてしまったのだ。

 

ダイヤ「大体、夏休みだからと言って、弛みすぎなのです!」

優馬「いや…そりゃ夏休みなんだから…」

ダイヤ「ブッブー!ですわ!全く…」

ダイヤ「夏休みと言えば、何があります?ルビィ!」

ルビィ「はい!ラブライブです!」

ダイヤ「大正解ですわ!さっすがルビィ!」

ルビィ「えへへ…///」

優馬「はいはい。そういう茶番は良いから早く」

ダイヤ「す、すみません…」

ルビィ「うゆ…」

 

曜「優、暑さでイライラしてるね…千歌ちゃん…」

千歌「だね…暑くなり始めてからあんな感じだったけど…」

果南「ゆうは暑いのが大っ嫌いだからね」

鞠莉「それは昔から変わらなかったでーす!」

花丸「意外な弱点…ずら、ちなみに善子ちゃんも苦手ずら!」

善子「その情報はいらんわ!」

 

なんだか、不本意な言われようだが致し方ない。

そりゃ誰だって暑いのは嫌だろう。僕はそれが人よりも敏感なだけである。うん。

 

優馬「…それで?」

ダイヤ「は、はい。夏休みの間にはラブライブの本選に出場するための予選大会。地区大会が行われるのです!」

優馬「うん。それで?」

ダイヤ「だからこそ、ここで弛んでいるわけにはいきません!ということで、この夏休みを使って、特訓を致しましょう!!」

優馬「却下。」

ダイヤ「なんでですの!?」

優馬「暑い。だるい。辛い。無理。」

ダイヤ「そんな…」

 

そんな泣きそうな顔されても僕は動かないからな。

面倒事はしたくないんだ。やるなら練習だけでいい。

 

千歌「千歌はやりたーーい!」

曜「うんうん♪なんだか楽しそうだもんね!」

 

え、おいおい待ってくれ

 

花丸「マルもやりたいずら~」

善子「夏…皆で特訓…合宿…はっ!リア充!」

ルビィ「ルビィも…」

 

そんな単純な考えでいいのか

 

果南「良いんじゃないかな?楽しそうだし」

鞠莉「ふふ!これが青春っていうものでーす!」

 

あぁ、もう無理だ…

 

ダイヤ「…優馬さん?」

優馬「…」

千歌「優くん…」

曜「優…」

花丸「優馬さん…」

ルビィ「お兄ちゃん…」

善子「優馬…」

果南「ゆう…」

鞠莉「優…」

優馬「あーもう分かったよ…特訓やろう…」

 

こうして、僕は皆の意志に流されてしまい、特訓に参加することになった

しかし、

 

千歌「あ!でも…」

優馬「?どうかした?」

千歌「夏休み中は海の家の手伝いしなきゃいけない期間があって…」

曜「あ、そういえば…」

果南「完全に忘れてたね…」

優馬「あー…なるほど…」

 

海の家の手伝いを取るか、合宿を取るのか

結局のところ、合宿がどういう目的を持ってして行うか、が重要である。

特訓というのであれば、手伝いをしながら、もしくは手伝いをしていない時間を使ってできるし

 

優馬「そんなの、海の家を手伝いながら特訓すればいいでしょ」

優馬「海の家だってずっと手伝ってるわけでもないんだし、空いた時間の中で特訓はできるし、何より接客業は良い経験にもなるから、わざわざ特訓っていうのに拘る必要はないよ。」

千歌「優くん…」

鞠莉「さすがね…」

果南「っていうか、なんだかんだゆうも特訓したかったんだね…」

優馬「はっ!違う違う、皆があれだけしたがってたから失くすのはどうかなと思っただけで」

花丸「優馬さん…」

善子「あんた、なんの言い訳にもなってないわよ…」

優馬「あぁ…」

 

そうして、僕のプライドが犠牲となりつつ、海の家での特訓が決まったのだ。

 

ダイヤ「それでは明日からにいたしますか?」

優馬「うん。皆の都合が良ければ」

梨子「…」

優馬「梨子ちゃん?」

梨子「え!?あ、う、うん!大丈夫よ!!うん!」

優馬「…?」

ダイヤ「それでは明日の朝4時に海の家集合にしますわ!」

優馬「え!?はっや!?」

 

とりあえず、海の家特訓は明日からスタートすることになった。

 

 

~海の家~

 

優馬「それで…朝4時に来たのに…」

優馬「なんっでほとんど来てないんだよ…!!」

花丸「あはは…でも優馬さんと二人っきり…///」

優馬「はぁ…来るまでどうしよっか…」

花丸「え、えっと!ま、マルは、お話してたいずら…///」

優馬「そんなので良ければ、全然付き合うよ」

 

そうして、色々な話をした。

花丸ちゃんの好きなものの話。おばあちゃんの話。

僕の昔の話。ダイヤや果南、鞠莉との思い出話。

とか、色々。

 

花丸「ふふっ、ダイヤさんてば、そんなことがあったんずらね!」

優馬「あの時はびっくりしたなー…あのお堅いダイヤが…」

花丸「…それで、優馬さんはまだその、奏さん?のことが好きずら…?」

優馬「…どうなんだろうね、もう何年も前の話だからさ。分からないんだ。」

優馬「…正直、果南たちが僕のことを好きなのは知ってるんだ。すごく嬉しい。」

優馬「でも…誰かをまた好きになってしまったらあの出来事をあの人を忘れてしまうのではないか、って思っちゃうんだ。」

花丸「ゆうま、さん…」

優馬「…僕は彼女に、奏ねえさんにひどいことをしたんだ。だからこれは戒め、彼女を忘れないようにするための。」

花丸「そんなの、辛すぎるずら…」

優馬「しょうがない。ただ、やっぱりそれくらい奏ねえさんが好きだったんだと思う。」

花丸「羨ましいずらね…」

花丸「一途に想われるのは女の子にとって嬉しいことずら…でもそれが辛くしてるのならマルは救ってあげたい…」

優馬「花丸ちゃん?」

花丸「っ!んっ…!」

優馬「んっ…!はっ…」

優馬「花丸、ちゃん?」

花丸「オラは、こんな地味なオラだけど、皆にも、奏さんにも負けないくらい、優馬さんのことが大好きずら!」

花丸「…だから、あんまり抱え込まないで教えてほしいずら!」

優馬「…うん、ありがとう」

花丸「…///」

 

千歌「あ!ゆ~うく~ん!!」

優馬「皆、来たみたいだね…」

花丸「うん…///残念ずら…///」

花丸「…最後に、優馬さんにお願いがあるずら!」

優馬「…?」

花丸「お、オラのこと、マルちゃんって呼んでくれると嬉しいずら…///」

優馬「え、マルちゃん?」

花丸「はぅ…!///あ、あと優馬さんのことは優さんでいいずら…?」

優馬「全然いいよ?」

花丸「えへへ…///優さん…///えへへ…///」

 

こうして、すこーし来るのが早かったものの海の家での特訓がスタートするのだった。

 

 

優馬「それで、この海の家か…」

ダイヤ「…ボロボロですわ」

鞠莉「…ボロボロね」

千歌「あははぁ…」

優馬「愚痴愚痴言っててもしょうがない、よし、始めよう!」

千歌・曜・梨子・果南・ダイヤ・鞠莉・花丸・善子・ルビィ

「「「「「「「「「おーー!!」」」」」」」」」

 

いくらボロボロだとしても海の家は海の家

なんだかんだ来てくれる人がいるはず、と思っていたが…

 

優馬「…誰も来ないな」

果南「だねぇ…」

ルビィ「うぅ…」

 

それもそうだ。隣にもう一つ海の家があったとして、

その海の家が真新しく、綺麗な内装だとして、対してこっちはボロボロで古びた感じの海の家。

人間の心理で言えば、どっちに入りたいか、と言われればそれはもう決定的だ。

 

優馬「はぁ…しょうがない。やれることはやろう…」

優馬「とりあえず、皆は僕の指示に従ってほしい、いいね?」

「「「「「「「「は、はい!」」」」」」」」」

 

そこで千歌に同級生を呼んでもらい、さらにその同級生から声をかけてもらうことにした。

そしてその広告、接客担当として、千歌、梨子、果南を抜擢。

料理担当は元々、料理ができる曜とやりたいと言い出した鞠莉、なぜかやる気満々の善子を抜擢した。

だが、この料理担当達が…

 

曜「できたであります!オムそばならぬヨキそば!」

優馬「おー、美味しそうだね」

曜「えへへ…///あ、そうだ…///」

曜「はい!優!あ~ん…///」

優馬「え…いや、大丈夫だよ、まだ仕事あるしさ」

曜「もう!息抜きだよ、息抜き!ほら、遠慮しない!」

優馬「…あ~ん///」

曜「あ…///ふふ…///おいし?///」

優馬「う、うん///さすが、曜だね…///」

曜「えへへぇ…///よ、良かったら今度違う料理も食べさせてあげるからね!///」

優馬「そ、そっか…それは嬉しいな///」

千歌「…なにしてるのかな?優くん?」

優馬「ち、千歌…」

千歌「お客さんも来始めたんだけど?」

優馬「う、うん、ちょっと他の人たち見てくる!頑張ってください…」

 

曜「…千歌ちゃん、邪魔しないでくれるかな?」

千歌「?曜ちゃん、何の話かな?」

曜「今、私が優と話してたよね?」

梨子「まぁまぁ、曜ちゃん、落ち着いて?」

曜「…梨子ちゃん」

千歌「んー?あ、呼ばれてるから行かなきゃ!じゃ、曜ちゃんもがんばってね!」

曜「…独占欲の塊なのはお互い様か」

梨子「…皆、一緒よ?」

曜「全く…優ってば、こんなに皆を誑かしちゃってさ…ふふ♡」

 

 

鞠莉「だぁりんっ!♡」

優馬「…はいはい。どうしたの?」

鞠莉「むぅ…つれないわね…」

優馬「当たり前でしょ…」

鞠莉「…さっき、曜のやつ、味見したでしょ?」

鞠莉「私のも、味見、してくれるわよね?」

優馬「いや、でも見回り「してくれるわよね?」はい…」

鞠莉「ふふ♡そうよね!♡味見したいもんね!♡」

鞠莉「ということで…これが私が作ったシャイ煮よっ!」

優馬「え…なんか色が…」

鞠莉「味は保証するわ!」

優馬「いやいや…えぇ…」

鞠莉「はい、あ~ん♡」

優馬「あ、急に腹痛が「う・そ、よね~?」…はい」

優馬「…あ~ん///え…意外と美味しい…」

鞠莉「ふふっ、そうでしょ!」

優馬「う、うん…疑って申し訳ない…」

鞠莉「気にしなくていいのよっ、でもどうしても、っていうなら…今度2人きりで美味しいディナ「優?なにしてるんですの?」…ちっ」

優馬「ん?今、鞠莉の手料理を味見してただけだよ?」

ダイヤ「そうでしたか…それより、あちらの方がちょっと人手が手薄になってしまいまして…」

優馬「あ、ごめん、すぐ行くよ、ありがと!」

ダイヤ「いえいえ…」

 

鞠莉「…ダイヤったら嫉妬ファイヤーが燃えてたのかしら?見苦しいわね?」

ダイヤ「あなたの方こそ、人の少ないところで随分こそこそとやってるでありませんか」

果南「どっちもお互い様だよ。そんなことしてたらゆうがまた困っちゃうってこと分からないのかな?あ、分からないか、いつだって自分のことで必死だもんね?」

鞠莉「果南…」

ダイヤ「…」

ダイヤ「…そういうあなたこそ、こんなところで油売ってていいんですか?あ、もしかして優が盗られると思って、怖くて抜け出してきたんですか?」

果南「ダイヤ…」

果南「…あははは」

鞠莉「ふふふ…」

ダイヤ「うふふ…」

 

 

優馬「…どこだ、人手が足りてないところって」

善子「あら、優馬じゃない?」

優馬「あ、善子」

善子「ヨハネよっ!!」

優馬「あはは、いつも通りで良かった」

善子「…むぅ」

善子「あ!あんたにやってもらいたいことあるの!」

優馬「?どした?」

善子「いいから来なさい!」

 

優馬「…で、なんですか、これ?」

善子「くっくっく…ヨハネ特製『堕天使の泪』よっ!」

優馬(どす黒…なんかやばそう…)

優馬「えーっと、よくできたね…じゃ…」

善子「どこ行こうとしてるのよ?」

優馬「へ…?」

善子「味見、してもらいたいのだけど?」

優馬「…マジですか」

善子「マジよ、はい、あ~ん…///」

優馬「…はぁ、あ~ん」

優馬「うっ…!か、かっっっっら!!!」

優馬「し、死ぬ死ぬ死ぬ!!」

善子「ちょ、だ、大丈夫!?」

優馬「み、水…」

善子「み、水ね!はい…」

優馬「…ぷはっ…なんてものを…作ってるんだよ…」

善子「…てへっ♡」

優馬「はぁ…」

善子「そんなに辛いかしら…」

優馬「辛いというより、痛いよ…」

善子「うーん…」

優馬「…まぁ、もう少し辛さを抑えられれば、美味しいよ」

善子「…っ!優馬…」

善子「うん!!頑張ってみるわ!」

優馬「うんうん。頑張ってね、期待してるよ、ヨハネ」

善子「あ…///えへへ…///」

善子「そ、それでね!もし良かったら加減が分からないから、味見をまた優馬に「お兄ちゃん?」…ルビィ」

優馬「ルビィちゃん?」

ルビィ「うん!あのね、もう日も落ちてきたから、終わりにして、練習しようってお姉ちゃんが言ってたよ!」

優馬「あ、ほんと?OK、ありがとう!」

ルビィ「あと、あっちで千歌ちゃんが呼んでたよ!すぐ来てー、だって!」

優馬「分かった!ありがと!」

ルビィ「どういたしまして!」

 

善子「…ルビィ?どういう真似?」

ルビィ「善子ちゃんこそ、こそこそと抜け駆け?」

善子「私は味見してもらってただけよ?そっちこそ、2人きりでいるのに耐えきれなくて、嫉妬心爆発して、あんなことしたのかしら?だとしたら滑稽ね?」

花丸「…そういう言い争いをしてる2人の方が滑稽ずらね」

善子「…ずら丸」

ルビィ「花丸ちゃん…」

善子「あんたこそ、わざわざここに来て嘲笑うなんて、余程、余裕なのね?」

花丸「余裕も余裕ずらよ?なんせオラは優馬さん、いや優さんに“キス”までしたんだから…」

善子「…は?」

ルビィ「…」

花丸「ふふ♡あの時の表情はほんとに可愛かったずら…♡」

花丸「ほら、もう練習に向かうずらよ?善子ちゃん、ルビィちゃん?」

善子「…ちっ」

ルビィ「…はぁ」

 

 

~浜辺~

 

そうして日も暮れて、今日一日の海の家の手伝いも一段落ついたということで

僕たちは浜辺で練習をしようということになった。

だが、皆の空気感がおかしい。なんだか寒気がする。それくらい緊張感が漂っている。

 

優馬「えー…と、じゃ、じゃあ練習始めよっか?」

「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」

 

なんだか分からないが、とりあえず今日も一日、終わりそうだからもう考えるのはやめよう…

 

(((((((((…絶対に渡さないんだから!!!)))))))))

 

こうして一日目の特訓も終わりを迎えた。

…なんだか明日からの特訓がもう憂鬱である。

 

優馬「はぁ…しんどいなぁ…」

 

 




いかがだったでしょうか、僕的にはもう全員が結ばれっちまえばいいのにとか思っちゃいますが、皆さんはどうですかね?
とりあえず最終的に全員分のエンドは書きたいな、とは思いますが、まずは物語を終わらせないと話は始まりませんね!
また、もし何か感想やリクエスト等があればコメントにて書いていただけると嬉しいです!
それでは、次回の話もよろしくお願いします!


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第13話 小さな想いは重なり合い、大きな『大切なもの』へ

こんにちは
投稿が遅れてしまい申し訳ございません。
ちょっと課題や色々諸々やっていたら執筆の時間が無くなっていました…
とはいえ、何とか書き上げることが出来ました!
今回は梨子ちゃん回です。
若干、他メンバーのヤンデレもあっちゃったりしますが、何を言われようとも梨子ちゃん回です!
それではどうぞ!


 

海の家での特訓が始まり、数日。

段々と仕事もこなせるようになり、また浜辺でのトレーニングも形になっていた。

それぞれがそれぞれでこの特訓を良いものにしていたのだ。

ただ1名を除いて。

 

梨子「…」

優馬「…?」

千歌「ゆうく~ん!こっち手伝ってーー!」

優馬「あ、うん…今行くよ…」

梨子「…」

 

これを見てるあなたには分かるだろうが、梨子の調子がどうにも悪いのだ。

というのも、すごく悩みを抱えてそうな、そんな感じ。

今思えば、特訓を始めた時から梨子の調子はおかしかった。

どこか心ここに在らずみたいな感じで、思い詰めてるみたいな感じであった。

 

優馬「…ねぇ、千歌?」

千歌「んー?どうしたの?」

優馬「梨子ちゃんの調子なんか悪くない?」

千歌「調子?うーん?」

優馬「調子っていうか、なんか元気がなさそうに見えるというか」

千歌「…そうかな」

優馬「うーん…ちょっと聞いてみようかな…」

千歌「え…」

優馬「ん?千歌?」

千歌「い、いやなんでもないよ!良いと思うよ!うん!」

優馬「う、うん。じゃあちょっと練習の時にでも話してみるよ」

千歌「…うん、よろしくね」

 

正直、ここでは千歌のことは気にかけていなかった。

いつも通りだと思った。しかし、違った。

梨子ちゃんも悩んでいるのと同時に、千歌も悩んでいることに。

僕は、気づいてやれなかったんだ。

 

~浜辺~

 

海の家での仕事も終わり、僕たちは特訓を始めていた。

そのため、今日千歌と話してた通り、梨子ちゃんと少し話をしようと思い、歩を進めた。

 

梨子「…」

優馬「梨子ちゃん、ちょっといい?」

梨子「…優馬君?」

優馬「少し話があるんだけど大丈夫、かな?」

梨子「う、うん…いいよ?///」

 

梨子ちゃんの許可も取れたので、とりあえず二人きりになれる場所

というより、皆に心配かけるのも申し訳ないのでちょっと離れた場所で話すことにした。

 

千歌「…」

千歌「…ゆう、くん」

 

梨子「は、話ってなにかな…?///」

優馬「あ、うん。そんなに畏まらなくていいんだけど」

梨子「う、うん///そ、それで…?///」

優馬「…いや、梨子ちゃん、何かあった?」

梨子「え…?う、ううん、何もないよ?」

優馬「…ほんとに?」

梨子「…優馬君ってば、こういう時は鋭いんだから…」

優馬「…」

梨子「あのね…」

 

そうして、梨子ちゃんからピアノコンクールへの出場についての悩みを聞いた。

それもピアノコンクールがどうにもラブライブ予選と被ってしまうとのこと。

 

優馬「…」

梨子「だけど、皆と過ごしてきて分かったの。私はこの学校が、スクールアイドル、Aqoursの皆が大切で、優馬君が大切で大好きだから…」

梨子「そんな皆が目指しているラブライブは私にとって、本当に大切なものなんだな、ってそう思ったの。」

梨子「…だからもう決めたの、ラブライブに出るって」

梨子「私の今の居場所はここだから…」

梨子「さ、話もそれだけでしょ?早く行きましょ!」

優馬「…ほんとにそれでいいのか?」

 

その梨子の想いはどうにも僕にとっては煮え切らない何かになってしまったのだ。

そんな煮え切れない想いを抱えながら僕はまた練習に向かうのだった。

 

 

~優馬家~

 

優馬「…」

 

ずっと考えていた。

果たして、梨子ちゃんの想いを汲んでこのままラブライブに専念してもらった方がいいのか。

そもそも梨子ちゃんは本当にそれを望んでいるのか。

梨子ちゃんのかけがえのない大切なものはラブライブや皆の他にもあるはずなのでは?

それこそ、ずっと続けてきたピアノでは?

 

優馬「…くそ、分からない。」

 

そりゃそうだ。

人の心なんていくら頭が良かろうが読めるわけがない。

じゃなきゃ、あの時だって

 

優馬「あの時だって、気づけたはずだったじゃないか…」

 

そうして、気づいた時には寝落ちをしていた。

 

 

~浜辺・海の家~

 

今日も今日とて、海の家で仕事をこなしていた。

梨子ちゃんも昨日話した結果なのか、少しばかりか明るく振舞っていた。

それでもあの悩みが晴れたとは僕自身が思えず、どうしても気にしてしまっていた。

 

果南「…お~い、ゆ~う~??」

優馬「…っ!?」

果南「…大丈夫?暑さにやられちゃった?」

優馬「い、いや…だいじょう、ぶ///」

果南「ん~?でも顔が赤いよ…?」

優馬「それは、かおが、ちか、いから…///」

果南「…///」

果南「その顔はダメだよ…///」

優馬「へ…?」

果南「ふぅ…よし!とりあえず話としては、今日、梨子の部屋で予選に向けたダンスの打合せするんだけど、ゆうにも確認してもらいたいんだけど大丈夫?」

優馬「あ、うん。大丈夫だよ。夜?」

果南「うん!じゃあよろしくね!」

優馬「は~い…」

 

 

~梨子家・梨子の部屋~

 

優馬「…」

果南「ここは…」

梨子「そうですね…だから…」

優馬「…」

果南「それで、ゆうの考えた歌詞のテーマなんだけど…?」

優馬「…」

果南「…ゆう?」

優馬「あ…ごめん、歌詞のテーマだっけ?」

果南「そうそう、やっぱりダンスするには歌詞のテーマが大事だからね、聞いときたいんだ。」

優馬「…『大切なもの』だよ。」

果南「大切なもの、か…」

梨子「たい、せつなもの…」

梨子「…」

 

僕は2人の顔を見つめながらこのテーマを伝えた。どうしても伝えたい想いが込められていたから。

すると、梨子はやはり思いつめたような顔をした。

そして、机の上のピアノの譜面を見詰めていたのだ。

 

優馬「…!」

 

こうして、打ち合わせは終わった。

そして収穫もあった。僕は確信した。梨子ちゃんの想いを…

 

 

~浜辺・海の家~

 

善子「うぅ…」

鞠莉「Why…?」

優馬「あー…やっぱり…」

善子「やっぱりって何よぉ!!」

 

本日も海の家で仕事を手伝っていたわけでありますが、

やはり僕の予想通りというか、鞠莉のシャイ煮と善子の堕天使の泪はしっかりと売れ残っていた。

 

優馬「…どうしたもんか、さすがにこの量を廃棄ってわけにはいかないしなぁ…」

曜「ふっふっふ…ここは曜ちゃんにお任せをっ!!」

優馬・鞠莉・善子「曜?」

曜「これをこうして…これと混ぜて…味付けこうして…」

優馬「お、おぉ…すごい…」

善子「これができる女ってやつなのね…」

鞠莉「今だけは曜が輝いてるデース…」

曜「できたよっ!!“特製船乗りカレーwithシャイ煮と堕天使の泪たち”!」

優馬「すごっ…めちゃくちゃ美味そう…」

曜「…優、あ~ん///」

優馬「え、ここで…?///」

鞠莉・善子「「…」」

曜「だって…味見してくれないと…///見た目だけじゃ分からないでしょ…?///」

優馬「そ、そしたら鞠莉と善子に見てもらった方が…」

曜「優、ダメ…?」

優馬「うぐっ…///」

曜「ふふっ♡はい、あ~ん♡」

優馬「あ~…んっ、美味い…すごいな…」

曜「え、ほんとに!?えへへ…///やったぁ…///」

優馬「うん、これなら売れると思うよ」

曜「それなら良かったでありますっ!」

善子「…ねぇ、マリー?」

鞠莉「…」

善子「私たち忘れられてるわよね?」

鞠莉「今は話しかけないでほしいデース…」

曜「…ふっ♡」

鞠莉・善子「「…」」

曜「ねぇ~、優?」

優馬「ん~?」

曜「…このやり取りさ、新婚さん、みたいだねっ♡」

優馬「っ!?///」

鞠莉「ちっっ!!!」

善子「…はぁ、ちっ」

優馬「う、うん、そうかもねー…」

曜「優もそう思ってた!?///じゃあ、相思相愛ってやつだねっ!///」

優馬「あー…そ、それよりも梨子ちゃんどこにいるか分かる??」

曜「…梨子ちゃん?」

善子「リリーなら向こうにいるわよ!」

優馬「お、善子、ありがと」

善子「ヨハネよ!」

 

そうして、僕は梨子ちゃんの下へ駆け出した。

どうしても昨日確信したことを確認したくて

 

曜「…はぁ、まあ食べてくれたし、いいや」

鞠莉「…ちょ~っと、おいたが過ぎるんじゃないの?」

善子「そもそも重すぎね、あんなの優馬に引かれてもおかしくないわ」

曜「…まともに料理できない人たちよりはマシだと思うけどね?」

鞠莉・善子「「…ちっ」」

曜「ふふっ♡」

 

~海の家・食事処~

 

僕が向かったところ、ちょうど梨子ちゃんは休憩に入っていた。

丁度いいと思い、僕は昨日のことを、そして僕の想いを伝えることにした。

 

優馬「…梨子ちゃん」

梨子「優馬くん?どうしたの?何かあった?」

優馬「いや、ちょっとまた話があって、ね」

梨子「…また、昨日みたいな話?」

優馬「…まぁ、近いね」

梨子「私の想いは変わらないわよ」

優馬「それでもいいよ、聞いてほしいだけ」

 

すごく嫌悪感があるみたいだけど、しょうがない。

これだけしつこく迫られれば誰だって嫌だろうけど、そこは僕が耐えればいい話だ。

 

優馬「…昨日、僕の歌詞のテーマの話、したよね?」

梨子「うん…『大切なもの』よね?」

梨子「一昨日にも話した通りよ?私の大切なものは今なの、この時。だから…」

優馬「本当に?」

梨子「え…?」

優馬「昨日、大切なものの話をしたとき、ピアノの譜面を見たじゃないか」

梨子「そ、そんなの…」

優馬「本当は今の時間、ラブライブを目指しているこの時間と同じくらいピアノが大切なんじゃないか?」

梨子「わ…」

優馬「?」

梨子「分かったような口きかないでよっ!!」

優馬「…」

 

やはり、揺らいでいた、か

…今の梨子ちゃんは正直、以前の僕と同じだ。

大切なものを分かっていながら、トラウマで触れることすら恐怖を感じてしまう。

そうして、何か別なものを代替して、その心を補おうとする。

ただ、それは、「現実からの逃避」と一緒。

それじゃダメなんだ。きっと。

だから…

 

梨子「…ごめ「ちょっと昔の話をしよっか」…?」

梨子「昔って…」

優馬「あ、奏ねえさんの話じゃないよ。僕らが初めて会った時の話。」

梨子「あ…」

優馬「立場的には今と逆だったかな。あの時は奏ねえさんを失った喪失感に苛まれていたからね、何もかも無くなってしまえばいいって思ってたな。」

梨子「…」

優馬「そんな時、転校した学校先に君がいた。」

優馬「確か、音楽室にいたよね?」

梨子「…うん、あの時は発表会が近くに迫ってたから」

優馬「すごく、綺麗だった。音色とか弾いている姿とか何もかもが僕とは別次元の存在だと思った。」

優馬「途端、劣等感に苛まれて逃げようとしたときに、君から声をかけられた。」

優馬「転校生ってだけで有名だったからすぐ仲良くなったのかな」

梨子「あの時の優馬くんは気づいたらどこかに消えてなくなっちゃいそうなくらいに沈んでたから…」

優馬「はは…そうだね…でも、そんな僕のことを察してくれたのか、君は言ってくれた。」

優馬「“大切なものから逃げるのはもったいないよ。大切なら全部欲しいくらいの気持ちで行かなきゃ”って」

梨子「あ…」

優馬「そうだね、あの時の僕は君と同じだったよ。何も知らない君が何を、って」

優馬「でも、今なら分かる。」

優馬「梨子ちゃん。いや、梨子。本当に大切なら、やりたいのなら遠慮しないで?」

優馬「迷惑かけちゃうかもとかそんな余計な心配はいらない。そんなことくらい僕が支えてあげる。」

優馬「だから、君の想いを、同じくらい大切なものをもっと欲しがってもいいんじゃないかな?」

梨子「…ゆう、まくん」

梨子「わ、たし…」

優馬「…」

梨子「私、ピアノも大切なの…」

優馬「うん…」

梨子「だから、だから!ピアノコンクールに出たいっ!!」

優馬「…うん。分かった。僕は皆とここで梨子の想いと共に待ってるよ。」

優馬「…行ってらっしゃい。頑張って。」

梨子「うん、うん…!」

 

そうして戻ろうとしたとき、梨子から抱き着かれた。

 

優馬「…っ!?///」

梨子「わ、たし、私も皆の想いも“優くん”の想いも持ってるから!…ずっと大好きだよ!」

優馬「…うん、ありがとう。」

 




いかがでしたでしょうか
なんだかキャラの出演率が段々と別れ始めたんですよね
決して嫌いとかじゃないんですよ?
その場その場での要所が違うのでついつい、出演してるキャラに偏りが出てしまうんですよね…
これからはバランスよく話に盛り込めるように、執筆していきたいと思います!
それでは、次の話もまたよろしくお願い致します!


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第14話 愛情とは不器用で、面倒なものです。

こんにちは!
とりあえず今回はシリアス調にしてみました。
悩みを抱えた2年生たちの本当の想いがついにここで明らかになります
若干どころか結構なヤンデレ要素も入っちゃってるので苦手な人にはすみません…
それではどうぞ!
ちなみに、鹿角姉妹も出ます!


 

~優馬家~

 

地獄のような日々だった海の家での特訓も昨日をもって終わり

今日から通常通りの練習に戻ることとなった。

ただし、なぜだか知らないが今日の練習は午前から夕方までぶっ通しの一日練習。

頼むから休ませてくれ、という僕の願いむなしく、皆はやる気にみなぎっていたのだ。

そのため、学校に朝9時集合となってしまったのだ。

ちなみに今の時間は8時5分。今から布団を出て、準備をすれば間に合うような時間ではあるが…

 

優馬「うん。眠い。今日くらいは休ませてくれるでしょ。おやすみ。」

 

僕の答えは二度寝。

もういっそ出なくてもいいのでは、という僕の考えの下、二度寝を選択。

さぁ、早速、素敵な夢へとダイブ、と思っていたのだが

 

曜「ゆ~う~~~!!!起きろぉぉぉぉ!!!」

 

はい。無理でしたー。

しっかり起こされた。しかし、起こしてきたのは超人ヨーソロー娘であり、

今日はあのオレンジ怪獣じゃなかったのだ。珍しい。

 

優馬「はぁ…了解、すぐ起きますよー…」

曜「うんうん♪それでよしっ!」

優馬「それで…あのオレンジ怪獣は?」

曜「千歌ちゃん?」

優馬「そう。」

曜「なんか先に行くって言ってたよ?」

優馬「へー、珍しいこともあるんだね。」

曜「あはは…、だから今日は曜ちゃんと二人っきりなのですっ!」

優馬「そうだね、準備できたら行くから玄関で待ってていいよ」

曜「…うん」

 

そうして、準備を完了させて、僕たちは学校へと向かった。

 

~バス内~

 

今日の内浦も相変わらずの良い天気。

晴れは嫌いじゃないんだが、暑い晴れは大っ嫌いだ。

本当なら出かけるべきではない、とまで思ってる。

そんなことを考えながら、窓越しに景色を見ていたら、曜から話しかけられた。

 

曜「最近、千歌ちゃんの元気がないんだよね」

優馬「へー…みかんの食べすぎじゃない?」

曜「そんな簡単な悩みかな?なんかもっと深刻そうな感じがするんだけど」

優馬「そう?うーん…じゃあ少し話してみるかなぁ…」

曜「…話してみるって?二人っきりで?」

優馬「マネージャーだからそういうのも聞かないと…ってなんか怒ってる?」

曜「いや、別に。そこまで頑張らなくてもいいんじゃないかなって。」

優馬「…どうしたの?」

曜「二人っきりになる必要性ある?私もいてもいいよね?」

優馬「…」

 

なんだか分からないが、曜の機嫌がすこぶる悪くなった。

親友が元気ないと相談してきたのはお前だろう。と言いたいのだが

どうにもそういうことではないらしい。というより、2人きりで話すことを良しとしないらしい。

だが、悩みとは打ち明けられないから悩みなのだ。

そして聞かれたくないから悩みなわけで、極力、人数は少数で行った方が良いとは思う。

 

優馬「いや、曜には悪いけど、今回は千歌と二人きりで話をさせてほしい、かな」

曜「…そっか。うん。分かったよ。」

優馬「…」

曜「…いつもいつもそうやって優しすぎるから、勘違いさせちゃうんだよ。」

優馬「…ごめん、なんて?」

曜「ん?何も言ってないよ!気にしないでっ!」

 

そうして僕らはバスに乗られながらこの微妙な空気をやり過ごし、

学校へと足を運んだ。

 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

優馬「おはようございま~「だぁ~り~んっ!♡ぐっもーにーんっ!♡」へぶっ!」

 

ダイヤ・曜・ルビィ「「「…はぁ」」」

果南・善子「「ちっ…」」

千歌・花丸「「…」」

 

優馬「…あのね、もう少し自重って言葉を知ろうよ…」

鞠莉「私の辞書に自重なんて言葉はアリマセーンッ!♡」

優馬「はぁ…もういいや」

鞠莉「…♡」

ダイヤ「鞠莉さん…そろそろ離れないと、練習始めますわよ?」

鞠莉「あら、ごめんなさい。ダイヤ。つい優の抱き心地が良くって!♡」

ダイヤ「…」

優馬「あれ、そういえば梨子は…っとピアノコンクールに行ったんだっけか…」

千歌「…呼び捨てなんだね。」

優馬「え?あ、この前からね、ちょっと色々あって…」

千歌「色々って何?」

優馬「ピアノコンクールの話だよ。皆知らない?」

千歌「…知らないよ。梨子ちゃんからそんな話一度もされてない。」

優馬「そ、そうだったんだ…、じゃあ僕から話すよ…」

 

そうして、僕は梨子の当時の悩みを打ち明けた。

梨子のピアノコンクールがラブライブ予選と被ってしまったこと。

皆に心配をかけたくなくて、相談をしなかったこと。

ピアノを諦めようとしていたこと。でも、大切なものを思い出して、ピアノコンクールに出ることを決めたこと。

 

優馬「…と、こんな感じかな。」

千歌「…そんなことがあったんだね」

千歌「千歌、全然気づかなかったよ。リーダーなのにね。」

優馬「しょうがないよ。あの時はかなり忙しかったんだから。千歌が気に病むことはないと思う。」

千歌「…うん、ありがと」

 

こうしてまた微妙な空気に苛まれながら、僕らは午前練習を始めることとなった。

 

 

~浦の星学院・屋上~

 

やはり彼女たちは本気も本気だ。なんせもう1週間後にラブライブ予選が迫っているのだ。

今、センチメンタルな雰囲気に巻き込まれている場合ではないのだ。

そのおかげで練習が始まればすぐに気持ちを切り替えていた。

僕もいつも通りのことをこなしていこうとしたら、携帯に一通の通知があった。

その画面を開くと梨子からだった。

 

梨子『今、東京に着いたよっ!皆の分、そして優くんの分までしっかり頑張ってくるね!』

優馬「…ふふ」

 

あれだけ悩んでいた分、こうしてきちんと向き合うことができて、本当に良かった。

今の梨子ならしっかりかましてくれそうだ、とか思いつつ、梨子に返信をした。

 

優馬『頑張って、今の梨子ならきっと良い成績残せるよ。健闘を祈ってます。』

 

梨子への返信も終え、さてドリンクの準備でもしようかな、と思った矢先。

次は着信が鳴った。

相手は、Saint Snowの鹿角聖良だった。

 

優馬「…」

 

本当ならば出たくはないが、着信が来ている以上、出ないわけにはいかない。

何らかの情報であれば嬉しいし。

 

優馬「…はい。」

聖良「きゃっ、ほ、本当に出てくれた///」

優馬「…はい?」

 

この人は何言ってるんだ?

あんたが電話をかけたんだろ。と思いつつ、電話を続けた。

 

聖良「あ、い、いやこちらの話です!」

優馬「そうですか。それで何の御用ですか?今、練習中なので手短にお願いしたいのですが?」

聖良「そうでしたか。それは申し訳ございません。ただ、一刻も早く伝えた方が貴方達への刺激にもなると思い…」

優馬「そうですか。では、要件を?」

聖良「…せっかちは嫌われますよ?」

優馬「余計なお世話です。やめていただけますか?反吐が出そうです。」

聖良「…すみませんでした。では、本題ですね。」

聖良「私たちSaint Snowは昨日行われたラブライブ北海道予選、トップで通過いたしました。」

優馬「…僕らへの当てつけですか?」

聖良「そういうわけではありませんよ。言ったじゃないですか、刺激になるだろう、と。」

優馬「そうですね。僕の捉え方の問題でした。すみません。」

聖良「…それでは、練習の方、頑張ってください。」

聖良「…応援してますから。」

優馬「…どうも」

 

そうして電話は切れてしまった。

 

優馬「…ふぅ、よし。」

 

まあなんにせよ、気合が入ったのは良いことだ。

後で皆にも伝えて、気合を注入しよう。

そう、思いながらようやくドリンクを作りに行った。

 

~鹿角姉妹side~

 

聖良「…優君」

理亜「姉さま、おにぃはなんて?」

聖良「…僕らへの当てつけですか?ですって」

理亜「…そっか」

聖良「ごめんなさい。元々、あんなけしかけ方したから…」

理亜「…ううん、大丈夫。おにぃならきっとまた気づいてくれるって信じてるから。」

理亜「でも、でも…!」

聖良「…」

理亜「昔みたいに褒めてくれたらなって期待はしちゃってたな…」

聖良「…ごめんなさい。」

 

トップ通過したはずだった。

ラブライブの本選に立てることに誇りに思ったはずだった。

なのに、たった一人の男に褒められず、嫌悪感を持たれたというだけで

私たちは、こんなにも苦しい思いをしてるなんて

この日はトップ通過がどうしても喜べずにいた。

 

 

~浦の星学院・屋上~

 

練習を始めて、数分。休憩の時間となった。

毎度毎度思うが、よくこの暑い中で歌って踊れるものだ。

そう思いながら皆にドリンクを渡していった。

一呼吸できた段階で僕は、さっきの電話での話の内容を伝えることにした。

 

優馬「皆、ちょっといい?」

曜「どうしたの?」

ダイヤ「何かありましたか…?」

優馬「あー…さっきSaint Snowの鹿角聖良から電話がありですね」

千歌「え?聖良さん?なんで?いつの間に連絡先交換してたの?」

優馬「千歌、怖いんだけど…」

千歌「イベントの会場で最後会った時?それともいつ?」

優馬「いや…ちょっとまt「いいから教えて?」…」

優馬「会場で交換しました…」

千歌「…」

 

あー…なんか曜の言ってたことが分かった気がする…

これは明らかにいつもの千歌じゃない。

なんか落ち込んでる?何に落ち込んでるのかは分からないけれど

とにかくなんだか怖い雰囲気を身に纏ってるような、そんな感じ。

 

善子「そ、それでなんて言われたのよっ!」

 

おーー!ナイス善子!タイミングばっちりすぎる!

さすがだ…堕天使…いや天使…

 

優馬「あ、うん…それで、聖良さんからは…」

 

僕は彼女たちにSaint Snowが北海道予選をトップで通過したことを伝え、

そして聖良からはこれを刺激にして頑張ってほしい、応援してるとのことも伝えた。

 

ダイヤ「随分、喧嘩腰ですわね…」

善子「喧嘩売られた気分ね…」

千歌「…やろう、絶対に私たちもラブライブ予選通過しよう!」

花丸「がんばるずらっ!!」

ルビィ「うん!がんばルビィ!!」

優馬「…ふふ」

曜「…」

 

とりあえず皆のやる気もしっかり出てきてくれてよかった。

ただ、やっぱり気になるのは、今日の千歌の様子だった。

確かにさっきの千歌は明らかに違った。

 

優馬「千歌、ちょっといい?」

千歌「ゆう、くん?どうしたの?」

優馬「ちょっと今回の曲について、話があってさ」

千歌「そっか!了解!すぐ行こっ!」

優馬「うん。」

 

そうして千歌と話をしに行こうとしたとき、

 

曜「…どこに行くの?」

優馬「よ、曜?」

千歌「…」

曜「もう練習始まるよ?出なくていいの?」

優馬「ご、ごめん。ちょっと今後の曲のことで千歌に話があって」

曜「それなら皆の前でもいいよね?」

優馬「それは…」

 

言葉が出なかった。確かに曲のこと、と言われれば皆の前でも構わない。

いやむしろ皆と曲のことは共有しながらの方が良いまである

 

曜「…じゃあ行こ?皆待ってるから!」

千歌「…ちょっと待って」

曜「…どうしたの千歌ちゃん?皆待ってるよ」

千歌「邪魔、しないでよ」

優馬「千歌…?」

曜「邪魔?何の話?」

千歌「優くんは千歌に相談してくれるんだよ?皆への共有は後からでも良くない?」

曜「…」

千歌「曜ちゃんは単純に優くんを盗られたくないだけだよね?」

優馬「ま、まさか曜は皆のことを思って…」

曜「そうだよ。千歌ちゃんの言う通り。」

優馬「…え」

千歌「そっか…やっぱり…」

曜「3年生の皆も善子ちゃんも花丸ちゃんもルビィちゃんも梨子ちゃんも」

曜「そして今回は千歌ちゃん…」

曜「優だってマネージャーで大変な思いしてるのに、皆して負担かけすぎなんだよ。」

曜「しかも、その相談の内容が全部利己的で…」

千歌「…」

曜「だったら私が優を守る。負担にならないように私が管理する。」

千歌「それこそ、優くんにとって負担になるだけだよ」

千歌「それにその管理ですらどうせ表向きでしょ?」

曜「…そうかもね。最近までは許せたの。また優が皆を誑かしてるな、くらいで済んでたの。」

曜「でも、段々、優にとっての私がいなくなってしまいそうで怖かった。」

優馬「そ、んな…」

曜「…優のせいじゃないよ。これも私の心が弱いだけなの。だから自分を責めるのだけはやめて?」

千歌「…曜ちゃん」

曜「今回は許してあげる。皆には伝えておくね。それじゃ…」

優馬「よ、曜っ!」

曜「ごめんね?こんな女の子で…」

優馬「あ…ぼ、くのせいで…」

千歌「そんなことないよ、優くんのせいじゃない。だから大丈夫、大丈夫だから。」

優馬「…千歌は気づいていたの?」

千歌「気づいてた…というよりも同じ想いをしてるって勘づいた感じかな…?」

千歌「私もなんだか優くんの中での居場所がなくなってそうで、怖かったの。」

そうして、千歌は教えてくれた。

本当の想いを、そして意図を。

 

千歌「…勘づいたのはついさっきだよ。」

千歌「最初は邪魔されたと思って本当に殺しちゃいそうなくらい許せなかったけど、だんだんそうじゃないと思ってきた。」

千歌「…曜ちゃん、寂しかったんだよ。きっと。」

千歌「千歌と、同じで」

優馬「寂しい…」

千歌「優くんが転校してからずっと私たちって一緒だったでしょ?」

千歌「でも、スクールアイドルを始めてから昔からの幼馴染とか、知り合いとかが増えてきて、1年生からも好かれるようになって…」

千歌「気づいた時には大好きな人の大好きな場所が失いかけてて…」

優馬「だから、最近、元気がなかったのか…」

優馬「でも、曜は…」

千歌「曜ちゃん、隠すの上手だもん。そういうの器用にできちゃうから…」

千歌「でも、今もきっと心では泣いてる。」

優馬「…そうだったのか。」

千歌「私からの話はこれで終わり。曲のことはまた皆の前で話そう?」

優馬「…」

千歌「…じゃあ、私は先に練習に行ってるね!」

優馬「う、うん…」

千歌「そうだ!…大好きな優くんに一つだけお願いがあります!」

千歌「あの、ね?…私と、曜ちゃんを助けて?」

優馬「…っ!」

 

そうして千歌は練習へ駆け出してしまった。

あの時の顔、千歌は笑顔を浮かべていたつもりだったのかもしれないが

泣いてしまっていたのだ。

 

優馬「…不器用にも程があるよ」

 

その時、僕は覚悟を決めた。

今度こそ、救える人を救うために。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
いかがでしたでしょうか…
かなりのシリアス調になってしまって本当イチャイチャも少なくて申し訳ない限りです…
次回はついに千歌と曜のために優馬が動きます!
かっこいい場面も見られたら嬉しいですね!
そういうことでまた次回も読んでいただけたら嬉しいです!
よろしくお願いします!


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第15話 不器用な僕たちへ

こんばんは!!
1日遅れですね、ほんとに申し訳ございません!
これも何とか書き上げました!
優馬くんの活躍回!ついに過去も(少し)明らかになります!
では、どうぞ!


 

~優馬家~

 

『…私と、曜ちゃんを助けて?』

 

優馬「…」

 

ずっと考えていた。彼女たちを救う方法。

そして、また前に進めるように。

だが、珍しく僕の頭は完全に思考が止まっていた。

確かに覚悟は決めた。しかし、この穴をどう修繕するべきなのか

そこがまだ考え付かないのだ。

正直なところ、誰かに聞いてしまった方が簡単だ。

すると電話の一通の着信が入った。

 

梨子『もしもし、ごめんね、急に』

優馬「…いや、全然気にしてないよ。むしろ嬉しい。」

 

電話は東京にいる梨子からだった。

今、このタイミングでの電話は幸か不幸か

 

優馬「電話なんてどうしたの?」

梨子『う、ううんっ!///なんでもないの!///』

優馬「…?」

梨子『た、ただ…///声聞きたいな…って///』

優馬「…///」

梨子『な、何か言ってよぉ~~///』

優馬「い、いやごめんね、うん…///」

梨子『あぁぁぁ…///』

 

まさか、梨子からこういうことを言われるとは思わなかった

めちゃくちゃ悩んでた分、思わず拍子抜けしてしまった。

そして、梨子がめちゃくちゃ可愛い。

びっくりするほど、可愛い。

 

梨子『優くん…?///大丈夫…?///』

優馬「ご、ごめん…///」

梨子『そ、そうだ!///そっちの皆は大丈夫そう?///』

優馬「…まぁ、うん」

梨子『…何かあったんだね?』

優馬「…梨子?相談に乗ってもらってもいい?」

梨子『…うん』

 

こうして僕は千歌とそして曜との今の関係を話した。

曜の思い悩んでいたことも、千歌が抱えていたこともすべて。

そして、僕がそれを聞いてどう感じたか、も。

 

梨子『そっか…やっぱり、千歌ちゃんも曜ちゃんも…』

優馬「…?」

梨子『優くん』

優馬「梨子…?」

梨子『あのね、優くんって助けようとすると頭がいいから自分で全て解決しようとしちゃう癖があるんだよね』

優馬「…そうなのかな」

梨子『うん、それもね、とても素敵なことよ?やっぱりかっこいい、って思う。』

梨子『けど、千歌ちゃんと曜ちゃんは今、そんなことを望んでるわけじゃないと思うな』

優馬「え…?じゃあ…」

梨子『きっと寂しいだけなの。だから、“そばにいてほしい”、“寄り添ってほしい”。ただ、それだけだと思うな…』

優馬「“寄り添う”…」

梨子『うん…あとは優くん次第』

梨子『…頑張ってね』

優馬「ありがと、梨子…そっちも頑張ってね」

 

優馬「…ふぅ」

 

“寄り添う”こと。僕はこの言葉の意味の大切さを知っている。

だが、僕にはできなかった。かつての奏ねえさんの時のように…

 

優馬「必ず終わりはやってくる…」

 

永遠とは存在しえない。

必ず終わりはやってきて、別れはやってくる。

 

優馬「僕はいまだにそれを怖がってるのか、情けないな…」

 

ビビってるの?何を怖がってる?

相手との別れ?いなくなってしまう恐怖?

違うだろ、僕が怖がっているのは

 

優馬「周囲からの嫌悪…」

 

そう、あの時、奏ねえさんが死んだ理由。

突然の病とかじゃないんだ。僕のねえさんに対する憧れとか好意からなる

“ノイローゼ”による自殺だった。

 

~回想~

 

当時の僕はまだ無邪気だった。

こんな無気力で極力、うつろな目をしてるような

そんなロボットのような奴じゃなかった。

 

奏「皆、こっちこっち~!」

果南「ま、待ってよ~、奏おねえちゃん!」

ダイヤ「と、遠いですわ~…」

鞠莉「ゆ、優はだいじょうぶ?」

優馬「う、うん!平気だよ!」

 

…あの時は裏山の、僕たちの秘密基地に向かう途中だった。

そして、ここが僕と奏ねえさんとの間に“何か”が起きた時だった。

 

果南「はぁぁ!!ついたぁぁ!!」

ダイヤ「もう…へとへと…ですわ…」

鞠莉「マリーも…」

優馬「あ、あれ?おねえちゃんは?」

ダイヤ「奏さんなら向こうの川に行きましたわよ?」

優馬「ほんとっ!?ありがと、ダイヤ!」

 

 

奏「~♪」

優馬「あ!おねえちゃん!」

奏「ん~?どしたの?優馬?」

優馬「えへへ…おねえちゃんにプレゼント!」

奏「わぁ…ありが…っ!?」

奏「こ、この花たちの匂いって…」

優馬「うん!おねえちゃんが使ってる香水の花の匂いだよね!」

優馬「名前はマグノリア、モクレン科モクレン属の植物の総称で今渡した花はモクレン、タイサンボク、オオヤマレンゲでお花屋さんの人に言ったら渡してもらえたんだ!」

優馬「僕たちの家からここまで1.2km、詳しく言うと1224mあるから走って汗をかかないか冷や冷やしちゃった!」

奏「ゆ、優馬?ここまでの距離ってし、調べたの?」

優馬「?ううん!家からここまでの地図をイメージ、縮図して、頭の中で計算したの!」

奏「ひっ…!」

優馬「あ…危ない!」

奏「…あ、ありがとう」

優馬「危なかったね…あと体の傾きが23°足が28cm後ろに下がってたら落ちてたところだった…」

奏「あ…」

優馬「じゃあいk「触らないでっ!!」…え?」

奏「ご、ごめんね…優馬、ごめんね…」

優馬「あ…」

 

それから奏ねえさんは僕のことを見る度に怯える目で見るようになった。

恐ろしい、おぞましい、何かを見る目。

そして…気づいた時にはいなくなってしまった。

 

あれから僕は気づいてしまった。

僕のあれは“異能”であることに。

自らの好きなもの、憧れに対する執着心。そして全ての情報を吸収する人智を超えた脳

僕は思ってしまったんだ。「怪物」は誰とも相容れてはいけないんだ、と。

 

 

優馬「…それでも僕は動かなければ」

 

ただそれは過去の話。

今はもう違う。皆という仲間のおかげで

…さぁ、過去の払拭の時だ。

前へ進もう。今は彼女たちを救う番だ。

 

 

~優馬家~

 

優馬「…今までありがとう、ねえさん」

優馬「でも…それも今日で終わり、僕はもう迷わない。あなたに囚われる僕はもういない。」

 

優馬「ふぅ…今日も相変わらず、大っ嫌いなあっつい晴れだな…」

 

そうして僕は彼女たちにメッセージを送った。

 

『今日の練習後、話があるんだ。』

 

あとは…僕次第だ…!

 

 

~千歌家~

 

千歌「はぁ…」

 

初めて練習に行くのが憂鬱だなって感じてる。

分かってた。こんなのただの嫉妬だって。

優くんは何も悪くない。皆を支えたいからああやって話してるのに。

千歌がわがままを言ったから困らせてしまった。

 

千歌「…っ!?優くんからだ…!」

 

思わず、優くんからメッセージが送られてきて、つい舞い上がってしまった。

開くとそこには、練習後に話があるとの事。

 

千歌「…ゆう、くん」

憂鬱だった時も少し前向きになれた気がする。

そんな想いを抱えて今日も練習へと向かった。

 

 

~曜家~

 

曜「…」

 

なんで私はあんなことをしてしまったんだろう。

千歌ちゃんは大切な友達、もはや親友と言ってもいい存在の女の子。

でもそれを超えてしまうくらいにもっと大切で大好きな男の子。

本当ならずっとそばにいたい。一緒にいたい。

優が転校してきた時、声をかけて、ずっと一緒にいたのは私で、私が声かけたから千歌ちゃんたちも寄ってきて。

スクールアイドルを始める前はいつも一緒で、かけがえのない大切な居場所だったのに

気がついたら周りに皆がいて、私の居場所が消えていくような気がして…

 

曜「…わたし、優に忘れられちゃうのかな」

 

そんな辛く重い現実を考えてしまって、余計に塞ぎ込んでしまいそうで

もう練習なんて行かなくていいかな、って思ってた時だった。

 

曜「え…?誰から…?」

 

そこには優馬の文字、そして一言添えられたメッセージが

 

曜「優…私…」

 

私は覚悟を決めた。

優に想いを伝えようと、自分の抱えていた気持ちを伝えようと

重かった足を持ち上げて、私は学校へ駆け出した。

 

 

~浦の星学院・屋上~

 

優馬「あ~~、あっつい…嫌になる…」

果南「も~、大丈夫?」

ダイヤ「本当、相変わらずですわね」

鞠莉「ふふ、それが優らしいじゃない。あんなに悩んでそうだったけどもう吹っ切れてそうだし!」

優馬「え、僕、そんな顔に出てた?」

鞠莉「あったりまえじゃない!何年の付き合いだと思ってるの?」

優馬「あー…やっぱり3人には敵わないなぁ…」

優馬「まぁ…うん、もう過去のことは終わりにしたから、今日で僕も変わるよ、きっと、ね」

ダイヤ「…頼もしくなりましたね?」

優馬「ダイヤにそう言われると自信がつくよ、ありがとう」

ダイヤ「べ、別に大したことは言ってませんわ…///」

鞠莉「それじゃあ、これから?」

優馬「…うん、行ってくるよ」

果南「行ってらっしゃい…」

ダイヤ・鞠莉「んなっ!?///」

優馬「うん…って果南さん?これはいったい?///」

果南「ん?何って行ってらっしゃいのハグだよ?」

ダイヤ「は、離れなさいっ!果南さん!」

鞠莉「そ、そうよっ!ずるいわよ、果南!」

果南「えー、やだよ、折角のハグなのにー」

優馬「か、果南…俺、もう行くから…」

果南「え…、今、“俺”って…」

優馬「…じゃあ、行ってくるね」

 

そうして僕は駆けだした。

不器用で、不格好な僕の想いを言葉で伝えるために

 

 

~浦の星学院・校門前~

 

千歌「優くん…来てくれるってことだよね…///」

千歌「助けて、って言っちゃったけどもしかして…告白…?///」

 

千歌(“千歌を支えてあげる。だから、ずっとそばにいて…”とか!?///きゃー!!!///)

 

曜「あれ?千歌、ちゃん…?」

千歌「よ、曜ちゃん…?なんで…」

曜「なんでって…私、優に呼び出されたからだよ」

千歌「え!?」

曜「…まさか、千歌ちゃんも?」

千歌「…」

曜「…私帰るね」

千歌「ま、待ってよ!」

曜「…何?」

千歌「わ、私が優くんに頼んだの…私と曜ちゃんを助けて、って、だから」

曜「…どういうつもり?」

千歌「え…?違うよ…ただ私は…」

優馬「はい、そこまで」

千歌・曜「「優(くん)っ!?」」

優馬「ごめんね、待たせすぎたかな」

優馬「…行こ、ちょっと浜辺の方に」

 

 

~内浦・浜辺~

 

優馬「は~、やっぱ景色綺麗だな…」

千歌・曜「「…」」

曜「ねぇ、優…話って、何?」

優馬「…ちょっと、昔話をしようか」

 

こうして俺は“僕”の最悪の過去であるあの出来事を彼女たちに話した。

憧れだった奏ねえさんの死因。そしてその原因。

“僕”の「異能」の話。「怪物」だと自負して、周りと距離をとるようになった話。

僕の今までを彼女たちに話したのだ。

もちろん僕は嫌われる覚悟だった。嫌われて当然だと思うからだ。

それでも淡々と事実を話した。伝えなければならないから。

寄り添うことの重みを、そばにいることの重圧を。

それを知って、初めて、「温かみ」が生まれると、そう感じたから。

すると、彼女たちの顔から涙が出ていたのだ。

 

優馬「え、え…?なんで?」

曜「だって、そんな、私たち知らなくて…」

千歌「う、うぅ…それなのに私たち」

優馬「…知らなくて当たり前だよ、これは誰にも伝えてないんだ。」

千歌・曜「「え…?」」

優馬「もちろん…鞠莉やダイヤ、果南もこれは知らない。」

優馬「彼女たちは今でも死因が病死だと勘違いしてるんだ。ほんとは違うんだけどね…」

千歌「じゃ、じゃあなんで私たちに…」

優馬「そんなの、決まってるじゃないか」

優馬「…君たちが俺にとっての希望で、大切な人、だからだよ」

千歌・曜「「っ!///」」

優馬「本当はこの事はもう誰にも言わないでおこうとしたんだ。でも、千歌たちがそれを変えてくれた。」

優馬「今まで周りから嫌われてしまうことも離れていってしまうこともずっと怖がってしまっていた。それはいずれ起こってしまう。起こり得る可能性を秘めているから。」

優馬「…でももう違うんだ。曜や千歌、梨子と出会って、鞠莉たちと再会して、善子たちと新たな出会いをして、かけがえのない仲間がいることを知ったんだ。」

優馬「だから、もう怖がるのはやめにしようって、だから段階を踏みつつ、まだ距離があった曜たち以外の皆と話してたりしてたんだけど、逆効果だったみたいだ。」

曜「ちが、違うの!ごめん、ごめんなさい…!わた、し…」

千歌「ゆう、くん…ごめんね…ごめんね…」

優馬「…本当だよ、だからこれは俺からのお願いだ。」

曜・千歌「「…」」

優馬「…もう俺のそばから離れるな」

曜・千歌「「…ふぇっ!?///」」

曜「そ、それって!///つ、付き合おうってことじゃ…///」

千歌「で、でも2人同時だなんて///でも…///」

優馬「2人の存在は必要なんだ。俺にとっても」

曜「そ、そんな…///そんなこと言われちゃったら…///」

千歌「こ、断れないよぉ…///」

優馬「そして、スクールアイドル部、Aqoursにとっても…!」

曜・千歌「「あぁ…やっぱり…」」

優馬「え…?何この空気…?」

曜「…全く、さすが優だよ!このスケコマシ!」

千歌「優くんのバカ!唐変木!!」

優馬「えぇ…なんで…?」

曜「でも、ふふ…」

千歌「えへへ…これが優くんだもんね!」

優馬「…てことは?」

曜「しょーがないから!そばにいてあげるっ!」

千歌「その代わり!ずっとアプローチするからね!覚悟しててね!!」

優馬「う、うん…?ありがとう…?」

 

何はともあれ、僕たちの関係は元に戻った。そして、同時に新たなスタートを切れたのだ。

しかし、もっと変わったことが…

 

 

~後日・屋上~

 

ダイヤ「一体どうなってるんですの…?」

果南「分かんないけど…確実に何かはあったね…」

鞠莉「What…?だとしても…」

花丸「近くないずらか…?」

ルビィ「2人とも遠慮なくなってきたね…」

善子「…今こそ堕天使の力による裁きの時」

 

優馬「あー…今日も一日練習か…」

曜「ほんときついよね~…はい、優、あ~ん♡」

優馬「…あ~、ん、これ美味しい」

曜「ほんとっ!?♡」

優馬「うん、これなんのやつ?」

曜「えへへ、これ曜ちゃん特製のレモンの甘露煮なの!休憩に優と一緒に食べようって考えてて…♡」

優馬「あー…美味しいよ、ほんとに」

曜「ふふっ♡ありがと!♡」

優馬「ちょ、ハグは…」

曜「いいじゃん!見せつけちゃお?♡」

 

果南「…ハグは私のなんだけどな?」

花丸「今のはイラっとしたずら」

鞠莉「…嫉妬ファイヤーがメラメラと燃えてるデース」

 

千歌「も~曜ちゃん、ずるいよ!」

千歌「優くん、私も疲れちゃったぁ、ぎゅ~ってして?♡」

優馬「…えぇ?」

千歌「してくれないの…?」

優馬「…します。」

千歌「やったぁ!♡」

優馬「でも、皆見てるんだけど…」

千歌「そんなの気にしない気にしない!見せつけちゃおーー!♡」

 

善子「…もう裁いていいわよね?ギルティよね?」

ダイヤ「…処しましょう。ええ。処しましょう。」

ルビィ「…お兄ちゃんも浮気、だよね?」

 

優馬「…はぁ、もう勘弁してくれ…」

 

ほんとに何はともあれといった感じだけど、俺たちは前に進もうとしてる。

少しでも着実に一歩ずつ。

不器用な僕だけど、それ以上に器用だけど不器用で、

とてつもない想いを抱えている彼女たちと一緒にスクールアイドルをやれている僕は

なんだかんだ幸せです。

 

優馬「さて…じゃあラブライブ予選に向けて、最後の仕上げ、しよっか」

「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」

 

 

千歌(えへへっ♡優くんから“離れるな”って言われちゃったもんね!♡)

曜(だから、もうほんとに誰にも渡すわけにはいかなくなっちゃった!♡)

千歌・曜((覚悟しててね!優(くん)!))

 




いやぁ…最終的にこうなっちゃうんですよね…
とりあえず15話でした!
もう15話なんですよね…未だに予選が…
次回は予選に向けた回に加わったイチャイチャ回のつもりにします!
また次回もよろしくお願いします!


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第16話 渦巻く不穏、けれども穏やかな空気

こんにちは
今回はタイトル的にシリアスかと思われますが、全く違います。
ゴリゴリのヤンデレ要素満載のコメディです。
タイトルを気にせず読んでいただけるとまぁありがたいです!
では、どうぞ!


 

~浦の星学院・屋上~

 

ラブライブ予選まで残り3日。ついにここまでやってきてしまった。

梨子の不在。千歌と曜とのいざこざ、そして“僕”の過去からの脱却。

ここ3日間で多くの出来事があった。

けれど、ついにここまでやってきたのだ。

それなのに…

 

千歌「ゆ~うく~ん…あついよぉ~…」

優馬「うん…そうだね…なら離れればいいんじゃ?」

千歌「…いやっ!」

優馬「えぇ…」

曜「優?あの時言ったこと覚えてないの?」

優馬「…覚えてるけれども」

曜「ふふっ♡そういうことだからっ!♡」

優馬「…はぁ」

 

こんな感じであれからこの2人は周りに構わず、休憩に入ったら俺のところに来ては

ハグに加えて、体を擦りつけたり、自分の作ってきたものを食べさせに来たりとか…

とにかく色々なことを仕掛けてくるようになった…

アプローチとは言ってはいたが、まさかここまでとは…

そしてこのアプローチを続けていたら恐らく周りは…

 

花丸「…ずるいずら」

ルビィ「私もお兄ちゃんのところ行こうかな…」

善子「はぁ…優馬…」

鞠莉「…そろそろ我慢しなくていいかしら?」

果南「落ち着いて鞠莉、でも千歌たちも千歌たちだね…」

ダイヤ「ふぅ…そろそろ思い知らせないとだめかもしれませんね…」

 

ほら…なんか怖い雰囲気だし…

特に3年生組、雰囲気危なすぎですよ。

いまにも手を出しそうな勢いですよ。怖い怖い。

 

曜・千歌「「…」」

鞠莉・ダイヤ・果南・花丸・ルビィ・善子「「「「「「??」」」」」」

曜・千歌「「ふっ♡」」

 

ブチッ

 

ん?なんかキレる音が聞こえたような…

 

鞠莉「全面戦争デーーーース!!!!」

果南「鼻で笑ったことぜっっったいに許さないからね!!!」

ダイヤ「その鼻へし折ってあげますわぁぁぁぁ!!!」

優馬「え…ちょ、待って、落ち着いて」

 

え、え?何起こってるのこれ

全面戦争しちゃダメでしょ、そもそもあと3日後に予選なんですけど??

 

千歌「やーん、果南ちゃんたちが怖いよ~、優く~ん…♡」

曜「助けて、優~…♡」

 

そうしてさらに千歌と曜は俺に密着してきたのだ。

これには今度、1年生が黙っていない。

 

花丸「は、離れるずらぁぁぁぁぁ!!!」

善子「あんたたち、裁きを喰らいたいの!!??」

ルビィ「…お兄ちゃんを返してもらえるかなぁ???」

 

ほら、あんなに天使な1年生がこんなに大荒れ。

頼むから仲良くしてくれ。

そしてくっつかないでほしい。暑い。

 

優馬「…とりあえずもう練習しようよ」

 

とりあえず俺の一声で皆は練習へと取り掛かった。

かなり渋っていたが。

それでもラブライブ目指してんのか、こいつらと思ったが言わないでおこう。

練習が始まれば別人かのように全員の意識が集中するからだ。

 

優馬「…ふ」

 

正直、梨子がいないこの8人でのラブライブは少し寂しいというか

Aqoursと言えるのだろうか、と思ってしまう時がある。

きっとそれは梨子も寂しい思いをしてるんだと感じてる。

だからこそ、俺たちは梨子の想いも背負って、立たないといけないんだ。

急遽、梨子のスペースを曜に代替し、臨むわけだが、それも段々と様になってきた。

これなら予選通過も夢じゃない、それくらいまでは仕上がってきている。

…やっぱり彼女たちの本気度は違うんだな、とそう感じる。

信じてきて正解だった。

 

優馬「…よし、俺も頑張らなきゃな」

 

そうして俺は全員分のドリンクや東京行きの経費の精算などまだやり残している仕事を片付けようと一旦、屋上を出た。

 

 

~Aqours side~

 

…優馬は勘違いしているが、確かに梨子の想いも抱えて、ラブライブ予選を勝つというのは心にあるが、それ以上に彼女たちが大切にしているものがある。

それが…

 

((((((((…絶対に優(さん、くん、馬、お兄ちゃん)に“可愛い”って言ってもらう!!))))))))

 

という完全に邪な気持ちが原動力の源であるということ。

大切な仲間ではあるが、それ以前に大好きな男の子でもある。

さらに彼女たちは今まで優馬以外の男の子なんぞに目もくれなかった子たちばかり

つまり初恋も初恋なのだ。

それなのに周りにいるのは優馬の隣を奪おうとするライバル(泥棒猫)たちばかり

いつ何時、優馬にアプローチを仕掛けるか分からない。

となるともう、全員が全員気を張るしかない。するとどうなるだろう。

練習中の集中はそれはそれはとてつもないレベルの域まで達するのだ。

 

ダイヤ「…はい、そこまで!」

千歌「ふぃー…あっついよぉ…」

曜「ダイヤさん、休憩ですか?」

ダイヤ「そうですわね…また水分補給しておきましょう」

花丸「じゃあ、優さん成分を補充するずらぁぁ!!」

善子「ちょ、ずるいわよ!ずら丸!」

ルビィ「待ってよー!花丸ちゃん!」

花丸「…ってあれ?いない?」

善子「あれ、ほんとね…」

ダイヤ「優馬さんなら別件での仕事をしていますから一旦、抜けると言ってましたわ。」

千歌「…なんでダイヤさんが知ってるの??」

ダイヤ「それはさっき優馬さんから連絡をいただいたからですわ。」

ダイヤ「やっぱり、一番信頼しているからこうやって連絡を貰えるのですね…ふふ…♡」

千歌「ふ~ん…」

 

優馬が不在の中、この屋上ではとてつもなく不穏な空気が流れていた。

その中、空を切るかのように話題を出してきたのだ。

 

善子「…あんたたちさ、やっぱり全員優馬のこと好きなの?」

 

それはあまりにも唐突だった。

そして全員空いた口が塞がらなかった。なにせ、急にそんな話をぶっ込んできたから。

対応が恐らくできなかったのだろう。

 

善子「それで、どうなの?やっぱり好きなの?それとも違うの?」

花丸「そ、そんなこと言う善子ちゃんはどうずら!?」

善子「私?私は好きとかそんなレベルじゃないわ」

善子「愛してる。優馬のためならなんだって捧げるその覚悟があるわよ?」

 

善子の言葉は善子自身淡々と話していたが

実際、その言葉は重く、善子自身もその言葉の重みを分かった上で発言をしていた。

 

花丸「…」

善子「…なんだ、皆、そんなレベルじゃなかったのね、心配して損したわ」

花丸「オラだって!!」

花丸「オラだって、本気ずら。そもそも告白もまだ、キスすらもできない人達と一緒にしないで欲しいずら」

善子「…」

ルビィ「へ~…」

果南「キス!?///」

鞠莉「…ちっ、先を越されましたか…」

ダイヤ「キス、ですか…」

花丸「えへへ…♡優さんのあの時の表情を思い出す度に唇の感触を思い出しちゃうずら…♡」

花丸「あぁ、皆は知らないもんね!分からないなんて残念ずらねぇ…♡」

千歌「あはは!花丸ちゃんてば、それ自分からしたんでしょ~?」

花丸「…そうだったら何かあるずらか?」

千歌「所詮、優くんからはアプローチかけられてない、キスすらできない残念な女の子と同じだよ?」

花丸「へー…じゃあ千歌ちゃんは何かあったずら?」

曜「千歌ちゃんだけじゃないよ?花丸ちゃん♪」

花丸「…まあ2人とも鬱陶しいくらい優さんに引っ付いてたから分かっていたけど…早く言うずら」

千歌「ふふっ♡私たちはね~♡」

曜「優から“俺のそばから離れるな”って言われてるんだもんね~♡」

千歌「あの時の優くんの凛々しい顔つき…♡」

曜「もう言われるまでもなくずっと一緒だよね…♡」

花丸「…だからあんな喧しいくらいに優さんにしつこかったんずらね」

千歌「喧しい?あぁ皆からしたら喧しかったし鬱陶しかったかなぁ?」

曜「愛しの優を目の前で寝取られてるもんねぇ」

千歌「でも、私たちと優くんは相思相愛なの」

曜「だから、皆が付け入る隙なんて微塵もないんだ♡ごめんね?」

千歌・曜「「ふふ…♡」」

花丸・善子「「…」」

 

正に一触即発。

何かあればそこは戦場になりかねない。そんな雰囲気が屋上に流れていた。

ラブライブ予選直前?もっと練習に集中しろ?

そんなの今の彼女たちには知ったことではありません。今全員の頭の中は優馬という一人の男に独り占めされているのでご留意ください。

 

果南「でもさぁ、ゆうがそんな公然と二股をかけるようなこと、するかね?」

千歌「…何が言いたいのかな?果南ちゃんは」

果南「だから、そばにいてほしいってあくまでも“親友”としてそばにいてほしい、ってことじゃないの?」

鞠莉「へぇ…それは羨ましいわねぇ、千歌っちと曜は優馬にとって“親友”だなんて!」

ダイヤ「ええ…羨ましい限りですわ…あら?でも“親友”ということはそれ以上にはなれない存在ですよね?しかも優馬さんからそのことを言われてるってことは…」

果南「…残念だったねぇ、もしかしたらゆうからしたら2人は異性として見られてないかもねぇ?」

鞠莉「でもいいじゃない!ある意味特別な立ち位置よ、良かったわね!」

 

この雰囲気を分からないのか、3年生。

しっかりと2人に言葉の正拳、とてつもない右ストレートをかましていった。

さらに煽りに煽る。もう慈悲のじの字もない。

 

千歌「…ちょっと黙っててもらえるかなぁ?」

曜「…そもそも果南ちゃんたちは何かあったの?」

曜「優が来て最初の頃はずっと優をある意味突き放してて、そばにもいてやれず、幼馴染?」

曜「ははっ、面白い冗談だよねぇ?」

果南「…あー、そういうこと言っちゃうんだね?」

鞠莉「あなたたちは知らないけれど、PVの案もイベント行った後のアドバイスも優の考えてたことを支えてきたのは私たち幼馴染と言っても過言ではないのよ~?」

ダイヤ「しかも、優馬さんから私たちを頼りにして…ふふっ♡」

ダイヤ「まぁ…優馬さんが一番頼りにしてるのは私ですけれどね♡」

果南・鞠莉「「…ちっ」」

果南「まぁそれは置いておいて、とにかく千歌たちとはもはや違う次元なんだよ?」

鞠莉「そもそも同じ土俵にすら立ってな・い・の♡」

千歌・曜「「…」」

ルビィ「…お姉ちゃんたちも同じでしょ?」

ダイヤ「…ルビィ」

ダイヤ「随分と言うようになりましたね?」

ルビィ「ルビィは事実を言ってるだけだよ?」

ルビィ「親友だろうと幼馴染だろうと、立場としてはお兄ちゃんが異性として認識してないといっても過言じゃないレベルではあるし」

ルビィ「…もしかしたらお兄ちゃんにとってはお姉ちゃんたちは都合のいい相談役、としか思ってないかもしれないしねぇ??」

ダイヤ「…ふふ、あなた本当にルビィ?なんだか分からなくなりそうですわ」

鞠莉「いくらダイヤの妹だとしてもそこまで言うと容赦はしないわよ」

ルビィ「あれ?鞠莉ちゃん、図星突かれて、苛立っちゃったのかな?なら滑稽だね?」

ルビィ「あと、私はもう引っ込み思案の私はやめたの、お姉ちゃん。」

ルビィ「これも愛するお兄ちゃんのおかげ、私はお兄ちゃんのためならなんだってできる、それくらいに私は変われたの…ふふっ♡」

果南「…ルビィちゃん、それは愛じゃなくて依存だよ?知ってた?」

果南「ルビィちゃんはゆうのことを愛する異性じゃなくて、ただの依存先にしか見てない。」

果南「今までとな~んにも変わってないよ?」

ルビィ「…」

 

もはや屋上に流れる空気は戦場そのものであった。

誰もが愛するただ一人の男のために、例え仲間だろうと譲らず、蹴落とそうと

そんな私利私欲の感情で突き動かされている8体の獣たちがここに集っているような

そんなイメージができてしまうような雰囲気が流れていたのだ。

すると、ついに帰ってきたのだ。あの男が。

 

優馬「ふぅ…仕事終わったぁ…」

優馬「ごめん、待たせちゃったね…ってあれ?もう練習終わっちゃった?」

 

突如として何も知らない男がここに来た。

もちろんメンバーは動く。男の隣を勝ち取るために。

 

果南「お疲れ様♡ごめん…ゆうったら仕事してて来るのが遅かったからもう練習終わっちゃったんだぁ」

優馬「あー…それは申し訳ない…」

果南「ううん!大丈夫だよ!むしろゆうが仕事頑張ってくれるおかげで私も頑張れるから…♡」

優馬「そう言ってくれると嬉しいよ、ありがとう、果南」

果南「ふふ♡どういたしまして!♡」

ルビィ「今、ちょうど帰る準備してたんだぁ♡」

ルビィ「あ!そうだ!久しぶりに、ルビィ、お兄ちゃんと一緒に帰りたいなぁ…♡」

優馬「そうだね、いいよ」

ルビィ「やったぁ♡」

千歌・曜・鞠莉「「ちっ…」」

善子・花丸・ダイヤ「「「…」」」

 

そこは天国と地獄。

選ばれし者が隣に居座ることができ、まさに楽園と言わざるを言えない。

逆に取り残される6名は嫉妬の感情で押しつぶされそうなのを必死に堪えるくらいには辛い、正しく地獄と言えるようなそんなものが創り上げられていた。

しかし、ここで気づくのだ。

“いくらなんでも優馬の帰ってくる時間、長くなかったか?”と

 

ダイヤ「そ、そういえば優馬さん、仕事と言ってもそこまで時間はかからないと言ってらしたような…」

優馬「あー…ごめんね、ちょっと長電話しちゃってたんだ」

ダイヤ「ち、ちなみに誰ですか?」

優馬「ん?“梨子”だよ」

ダイヤ「んなぁっ!?」

「「「「「「「っ!?」」」」」」」

 

彼女たちは忘れていたのだ。あんなに想いを大切にするとか、何とか言っていたが

優馬のことで頭がいっぱいになり、完全に抜けきっていたのだ。思わぬ伏兵の存在を

 

優馬「どうにも久しぶりのコンクールだから緊張と寂しさでいっぱいになっちゃったらしくて」

優馬「だから色々話をしてたんだ。」

 

もちろん、これは梨子にとってただの優馬と話すための口実に過ぎない。

気づいていないのは優馬だけだ。

彼女たちは気づいていた。この思惑に。

 

優馬「いやぁ…今までは何でもできちゃうようなイメージがあったから最近、梨子も可愛い所あるんだな、って気づくことが多いんだよなぁ…」

千歌・曜「「可愛い!?」」

優馬「え、ま、まぁ…」

 

そしてしっかりと踏み抜いていく地雷。

これにはもう嫉妬が止められない。

 

優馬「と、とにかくもう練習終わりでしょ?じゃあ早く帰ろっか」

 

そうして帰る準備を進めていく。

しかしその間、彼女たちは感じていた。

 

((((((((梨子(ちゃん、さん)に先を行かれた…!!))))))))

 

と、優馬はそれを知る由もなく、今日も良い一日だったとまぁお気楽なことを言って帰ったとさ。

 

 

~東京~

 

梨子「…ふふっ♡絶対、優は誰にも渡さないわ♡」

梨子「ずっと好きだったんだから、ね♡」

 

そう呟いた梨子の不敵な笑みに

誰も触れることも知ることもなかった。

 




いかがでしたでしょうか?
もうそろそろ予選行けよって話ですよね、はい。
次話はちゃんと本編に行きたいと思いますから、ご安心を。
そのため、次回はあんまりイチャイチャする展開はないかなぁ、とは思っていますが
展開次第ですね笑
ということで、ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もまたよろしくお願い致します!


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第17話 彼女たちは想いを乗せて走り出す

こんばんは
投稿が遅くなってしまい申し訳ございません。
レポート、テスト勉強、その他色々…
かなり忙しくて、なんとか合間を縫いながら書きあげました。
今回はついにラブライブ予備予選を迎えます…
それではどうぞ!


 

ついにこの時が来てしまった。

そう、ラブライブ予備予選当日。ずっと彼女たちが、Aqoursの皆が目指してきたラブライブのその一歩目がついに、来てしまった。

情けないことに俺自身が緊張してしまって、手が震えてしょうがない。

 

優馬「…ふぅ、我ながら情けないな」

 

俺は決して彼女たちの練習に参加していたわけでも、ステージに立って踊ったわけでもない。

全てやってきたのは彼女たちのはずなのに、見ているだけで緊張してしまう。

まだ予備予選、地区予選はまだ先にあって、決勝もまだ先。

そんな長い道のりを彼女たちは走り続けなければならない。

俺はその道を支えてあげることしかできない。

だが、それでも緊張してしまうのだ。もはやこれはしょうがない。

 

優馬「そろそろ皆の出番が近づいてきたな」

 

Aqoursの出番が近づいてきたため、俺は皆に声をかけようと動き出す、

と思ったが、その前にもう一人声をかけようと思っている人がいる為、まずはそっちを優先することにした。

 

優馬「…もしもし?」

梨子「もしもし、優くん…」

優馬「良かった…まだ出番じゃなかったね」

梨子「うん、でもあと20分くらいかなぁ…」

 

そう、今、Aqoursとは別行動している梨子だ。

梨子は梨子で違う場所で戦おうとしている。

これはマネージャーとして声をかけないわけにはいかない。

 

優馬「緊張してる?」

梨子「…うん、やっぱり久しぶりの空気は違うね」

優馬「…そうだよね、本当なら行きたいんだけど、申し訳ない」

梨子「あはは、優くんが謝る必要はないよ!私がやりたいって言ったことだから…」

梨子「優くんはAqoursの皆を見てあげて?」

優馬「…見てるさ、でも心では梨子のことも応援してる」

梨子「うん…私も優くんの応援に応えられるように、精一杯頑張るね」

優馬「…頑張って」

梨子「ありがとう!…じゃあ行ってくるね!」

 

…きっと梨子は良い演奏してくれる。

千歌の時と同じ、根拠は特にない。だけど、やってくれそうなそんな雰囲気

当たり前にやってくれるだろうってそう感じてしまう。

信じよう、梨子を。

そうして、俺はAqoursのいる場所へ向かった。

 

 

~ラブライブ会場・楽屋~

 

千歌「…」

 

ついにこの時がきた。

ずっと目指していた“輝き”を求めて、そうして色んな事があって、

そうして大切な仲間ができて…

大切で大好きな人が私たちを支えてくれて、ここまで来れた。

私たちかどうかは分からないけれど…

少なくとも私は梨子ちゃんがいないっていうのは正直、不安でファーストライブの時からずっと一緒に頑張ってきたから余計に寂しく感じるのかもしれない。

 

ルビィ「…大丈夫かなぁ」

花丸「大丈夫ずらよ、あれだけ皆で頑張って練習して、それに優さんが見てくれてる。だから…きっと大丈夫ずら」

善子「…ずら丸、手、震えてるわよ」

花丸「…言わないでおいてほしかったずら」

善子「言ってあげた方が少しは緊張ほぐれるでしょ?」

花丸「むぅ…そういう善子ちゃんだって震えてるずら」

善子「よ、ヨハネよっ!震えてないやい!」

 

1年生の花丸ちゃん、善子ちゃん、ルビィちゃんも2度目の舞台で、やっぱり緊張してるみたい。

顔が引きつってるのが良く分かる。

 

果南「ふぅ…」

鞠莉「かぁなん!…緊張してる?」

果南「鞠莉…まぁ、ね、久しぶりというか私にとっては思い入れの深い場所でもあるから…」

ダイヤ「それを言ってしまったら私たちも一緒ですわ…」

果南「え…あ、手…」

ダイヤ「ふふ…黒澤家の長女でありながら情けないですわ…」

鞠莉「…私もよ、なんなら少し泣きそうで逃げ出したいくらいだわ」

果南・ダイヤ・鞠莉「「「…」」」

 

3年生の果南ちゃんや鞠莉ちゃん、ダイヤさんも緊張してそう。

3人とも顔が怖くなってるというか、雰囲気が沈んでしまってるような気がしてる。

 

曜「…千歌ちゃん」

千歌「あ…曜ちゃん…」

 

ずっと一緒にここまでついてきてくれた親友の曜ちゃん。

可愛くて、なんでもこなせて、千歌には持ってない才能をたくさん持ってる

…私の憧れ。そんな彼女でもすごく、すごく不安そうな顔をしていた。

 

千歌・曜「「…」」

 

今の雰囲気は最悪、だと思う。

なんせ空気が重たいというか…どうしてもそう感じてしまう。

そんなとき、楽屋のドアが開いた。

 

優馬「…大丈夫そう?」

千歌「優くん…」

 

優くんはどう思うのだろうか、この雰囲気を見て

やっぱり幻滅しただろうか

この後、ステージに上がるっていうのに、誰もが緊張で震えちゃってるなんて

 

優馬「緊張、してるよね?」

千歌「…うん、皆、ね」

優馬「…そっか、うん、分かった。」

千歌「…?」

 

何が分かったのだろうか。

何が言いたいのだろうか。

千歌はバカだから、分からないよ。優くん。

すると、優くんは皆に対して、声をかけ始めた。

 

優馬「…皆、話を聞いてもらって、良いかな?」

 

その一声で皆は優くんの方を見た。

やっぱりその視線は不安でいっぱいで、そんな視線。

 

優馬「俺は、スクールアイドルを知らなかったし、興味もなかった。それどころか人間関係とか、勉強とか、色んな事、何もかもが俺にとって、つまらないもので興味の湧かないものだった。」

優馬「鞠莉たちは知ってると思うけど、俺はずっと前に好きだった人がいた。憧れの人で、でも死んでしまった。俺の目の前で」

優馬「現実を受け入れきれずにその人の影を追いかけて、ずっと周りを見ないようにしてた。」

鞠莉・ダイヤ・果南「「「…」」」

優馬「でもそんなときこの高校に来て、仲良くなった曜たちがスクールアイドルを始めるなんて、しかもそれのマネージャーをしろとか、何の話だよって思ってた。」

優馬「逃げたかった。実際に逃げてたしね。でも、一回で良い、ライブを観てほしいって言われて渋々見たさ。その時ですらマネージャーをするつもりはさらさらなかった。」

優馬「でも、そこで大きく変わった。懸命に、とにかく楽しんでほしいっていう眩しい輝きが見えたんだ。」

千歌・曜「「…」」

優馬「…希望が見えたというか、自分でも変われるかもしれないってそう感じたんだ。」

善子・花丸・ルビィ「「「…」」」

優馬「…千歌たちはさ、スクールアイドルを通して、色んな人に何を伝えたいの?そして自分たちは何を得たいの?」

優馬「ラブライブ優勝っていう肩書?それとも廃校を救うこと?」

千歌「わた、したちは…」

優馬「…ごめん、対象を変えよう。千歌自身は?」

千歌「わた、しはあの時、見つけた“輝き”を追い求めて…」

優馬「…ならラブライブで、とか高校がどうとか、じゃないよ」

優馬「今しかない“輝き”、きっと今だと思うんだ。やっと見つけられる、って思ったらワクワク、しない?」

千歌「…うん、ワクワクする!!」

優馬「はは、だよね!…今日はお祭りだよ、千歌。楽しもう、皆で!!」

千歌「うん…!!」

優馬「俺からはこれくらいかな、拙い話で申し訳ない。でも今日は楽しんでほしい。あれだけ頑張ったんだ。今日は観客巻き込んで全員で楽しもう!」

 

そうして優くんは観客席へと戻っていった。

私たちの全てを見届けるために

 

曜「…ほんと、優ってすごいね」

果南「…うん、ほんと緊張なんてどっか行っちゃった」

鞠莉「いつもいつも優に助けられてばかりデース…」

花丸「惚れ直しちゃうずら…///」

善子「ふっ、さすが我がリトルデーモン…」

ルビィ「なんだか頑張れそうっ!」

ダイヤ「えぇ…やはり彼には不思議な力がありますわね…」

千歌「…やれる、私たちならできるよ!輝こう!今日はめいっぱいっ!!」

曜「千歌ちゃん…」

 

そうして私たちはついに出番を迎えた。

ステージ上に上がると目の前に学校の皆、町の皆。

そして、愛しの君。

あぁ、なんて素敵な光景何だろう。

梨子ちゃんの想いも乗せて、さぁ始めよう

 

 

~梨子side~

 

梨子「ふぅ…」

 

あぁなんて久しぶりなんだろう。

この感覚、体全身が震えあがる。緊張で止まらない手汗。

逃げ出したいくらい。けれど、なんだか何でもやれちゃいそうな感じもある。

 

梨子「ふふ…私も千歌ちゃんにあてられちゃったかな…」

 

「次の方、準備をお願い致します。」

 

すると、ついに私の番が呼ばれてしまった。

あぁ、まだ心臓の鼓動が収まらない。

違う。これは胸の高鳴り?

そっか、私、ワクワクしてるんだ。

優くんが応援してくれてるって聞いてからずっと

 

梨子「…優くん、貴方に全てを捧げます」

 

貴方にこの曲が届くように

めいっぱい貴方のことを想って

…さぁ、始めよう

 

 

~ラブライブ会場・客席~

 

それは大きな光だった。

一つ一つが主張し、輝いていて、でもそれを邪魔とは思わない。

むしろ全員が中和されて、一つでも大きかった光が8つ、集まることによって、さらに大きく、周りを包み込むように、輝きを見せていた。

ファーストライブで見た時のあの時の光、正しくその光のように、いやそれ以上に

ついに彼女たちは見つけたんだと、いや違う。

まだこれからなんだ。これはあくまでもスタート、彼女たちはきっかけを、小さな光の粒をようやく見つけたんだ。

 

優馬「…すごく、綺麗だ。」

 

こうして彼女たちのステージは会場全体を盛り上げ、大成功を収めたのだった。

 

~ラブライブ会場・楽屋~

 

千歌「ふぅ…」

 

やりきった、と言えるだろう。

なんだか感覚が無かった。あそこで歌ってるっていう感覚が。

もうこの曲を優くんに届けたい、っていう想いしか頭の中になくて

気づいたら終わってた。

 

曜「千歌ちゃん、お疲れ様。」

千歌「…曜ちゃんもお疲れ様!」

曜「なんだかあっという間だったね…」

千歌「うん…でも楽しめたかな…ずっと私…」

曜「…優のこと考えてた?」

千歌「っ!?///な、なんで…!///」

千歌「…曜ちゃんって、テレパシー持ってるの?」

曜「違うよ~…私も同じだった。」

曜「私もただただ優に想いが届いてほしいってそう思ってたから…」

千歌「そうだったんだ…」

 

周りを見渡してみると、皆の表情が穏やかでいて、どこか落ち着かない。

それはやりきった感じでもありつつ、そわそわしていた。

 

千歌「…なんか皆、そわそわしてるよね」

曜「そ、そうかなぁ~?」

 

言われてみれば、曜ちゃんもおかしい。

すごく普通そうに話してるけど、ずっと手をもじもじさせてる。

誰かを待ってるように、ちらちらとドアを見ながら

 

千歌「…怪しい」

曜「え」

千歌「何か皆狙ってるような…」

曜「そ、そんなことないと思うけどなぁ~?」

 

そんな話をしていると、ドアが開いた。

あぁ、絶対優くんだ。

ちょうどいい、あれだけ頑張ったのだ。優くんにたくさん甘えて、たくさん撫でてもらって

優くん成分を補充しなくては!

そう思っていた時だった。

 

優馬「皆、お疲れ様」

千歌「あ、ゆうk「ゆうまっ!♡」…は?」

善子「ふふ♡私のステージ、どうだった?」

優馬「あぁ、善子の魅力が詰まってたよ。すごく可愛かった。」

善子「ほ、ほんとに!?♡」

優馬「う、うん…ほんとだよ」

善子「えへへ…♡もう優馬ったら…♡」

花丸「ゆ~うさんっ!♡オラはどうだったずら~?」

優馬「マルちゃんもすごく可愛かったよ。うん、天使だったね」

花丸「はうっ!♡ま、マルね、ずっと歌ってるとき、優さんのことを想いながら…///」

優馬「ん?なんて?」

 

なんなんだ、これは

さっきまで仲間だと思って、大切な仲間だと思っていた。

しかし、それは撤回しよう。

やっぱり泥棒猫だ!ちくしょう!

目の前でイチャイチャイチャイチャと…

千歌だって、甘えたいのに…

…善子ちゃんと花丸ちゃん、ベタベタ触りすぎじゃない!?

もうだめだ、我慢できない!

 

千歌「ゆ、ゆうく「ゆ~う~~~!!♡」…」

優馬「鞠莉、お疲れ様」

鞠莉「ふふ♡ありがとっ!♡」

鞠莉「…マリーのステージはどうだった?」

優馬「うん…すごく良かった。綺麗だったよ。」

鞠莉「…っ!///優?今日はたくさんいいことしましょ?だからこのまま私の家へ…」

優馬「…はい!?///」

善子・花丸「「…ちっ」」

果南「はい、そこまで!ゆうが困っちゃうでしょ?」

ダイヤ「そうですわ!優馬さんが困るでしょう?」

優馬「はは…ありがとう、果南、ダイヤ」

果南「どうってことないよっ…ゆう?」

優馬「ん?どうしたの?」

果南「…私はどうだった?変じゃなかったかな…」

優馬「…全然、最高だったよ。いつも綺麗だと思ってたけど、今日はより綺麗で、可愛かったよ。」

果南「ふぇっ!?///」

ダイヤ「ゆ、優馬さん!わ、わたくしは…」

優馬「ダイヤも綺麗だったよ。一段と際立ってた。すごく魅力的だったよ。」

ダイヤ「…っ!♡ゆ、優…♡」

優馬「んん!?///ダイヤサン、チカクナイデスカ?///」

ダイヤ「すみません…♡もう少しだけこのまま…♡」

優馬「…はい///」

鞠莉「ず、ずるいわよ!私の時はあんなに言ってきたのに!!」

果南「…ねぇ、隣空けてくれない?交代制とかじゃないの?」

善子「は?早い者勝ちよ?遅かった貴方達が悪いでしょ」

花丸「そうずら。例え先輩相手でもここだけは譲るわけないずら、とっとと帰るずら。」

果南「…ちっ!」

 

…気づいたら蚊帳の外になっている。

私、このグループのリーダーだよね?扱いがひどくない?

皆して私の優くんにベタベタと…

あーあ、邪魔だなぁ…

今度こそ、あの雌猫共を押しのけて私唯一のポジションを奪い返さなければ

 

千歌「ゆ、ゆ~うく「お、お兄ちゃんっ!♡」…ちっ!!!」

優馬「ルビィちゃん!お疲れ様!」

ルビィ「えへへ…♡緊張したけど頑張れたよ…♡だから…」

優馬「うん。本当に良かったよ。ルビィちゃんの可愛さが今日は今までで一番可愛かったと思う。あんなに引っ込み思案だったのに…本当にありがとう、ここまでついてきてくれて…」

ルビィ「ううん!むしろお礼を言いたいのはルビィの方…こうやって変われたのはお兄ちゃんのおかげ…だからありがとう!♡」

ルビィ「でも…今日は頑張ったから、撫でて、欲しいなぁ…♡」

優馬「お安い御用だよ。よしよし…」

ルビィ「ふわぁ…♡えへへ…♡も、もっとお願いしますっ♡」

優馬「はは…本当に可愛いなぁ…」

曜「優っ!いつまで撫でてるのさっ!」

優馬「曜…」

曜「…優、ここまでやれたよ?」

優馬「うん…曜の頑張りも知ってるさ…ありがとう、そばにいてくれて…」

優馬「やっぱり曜は俺にとって、大切な人だよ」

曜「はうっ!///」

曜「そ、そんなの当たり前でしょ…///わ、私も優馬のこと…大切で大好きな…///」

優馬「…なんて?」

曜「な、なんでもない!///あ、の…わ、私も頭撫でてほしいなぁ…って///」

優馬「…今日の曜は可愛いな。」

曜「なっ!?///い、いつも曜ちゃんは可愛いでありますっ!///」

優馬「はいはい。よしよし…ありがとう…ここまでついてきてくれて…」

曜「あ…///えへへ…///」

 

あーあ、そうやって私を蔑ろにするんだね、優くん。

ひどいなぁ、目の前でそういうことするなんて

というか、ルビィちゃんも曜ちゃんもなんで撫でてもらってるの?

本来そこにいるべきなのは私のはずなのに

 

花丸「…オラを忘れないでほしいずら!」

善子「ヨハネのこともよっ!」

優馬「うん、忘れてないけど、近いような…」

 

ああああああ!!!

近いよ!!何してるの!!それしていいの私だけなのに!!

…駄目だ、我慢できない。

押しのけなくては、きっと優くんも困ってる。

だから千歌の目の前でそういうことしちゃうんだよね

その雌豚たちが勝手にしてくるんだよね

なら私が助けなきゃ

 

千歌「…優くん」

優馬「あ…千歌、お疲れ様。ごめんな、すぐ言ってやれれば良かったんだけど…」

 

あぁ、優しいなぁ

やっぱり優くんは千歌のことが一番だから本当はすぐ駆け付けたかったけどできなかったんだよね

今、解放してあげる

 

優馬「だからって…千歌?どうsんむぅ!?」

千歌「んっ…!んむぁ…んぁ…♡」

花丸「ずらぁぁ!!??」

善子「はぁぁぁ!!??」

曜「ち、千歌ちゃん!!??」

ルビィ「あ…!?」

鞠莉「…ちっ!」

果南「…千歌」

ダイヤ「……」

 

えへへ…///キスってこんなに気持ちいいんだ…///

優くんの表情、可愛い…♡

もっとしてあげたい、けど我慢。

だって、この後たくさんできるもんね♡

 

千歌「…」

優馬「ち、千歌?///なんであんないきなり…///」

花丸「そ、そうずら!!あんな、うらやmじゃなくて!」

善子「あ、あんたいい加減にしなさいよ!!」

千歌「ちょっと黙っててくれるかな?」

花丸・善子「「っ!?」」

千歌「えへへ…♡千歌のファーストキス…♡どうだった…?♡」

優馬「どうって…」

千歌「ずっとずっとずっと我慢してて、今日終わったらいっぱい甘えようって決めてたのに…」

千歌「目の前であんなに…我慢、出来るわけないよ…?」

優馬「で、でもいくらなんでも皆が居るのに…」

千歌「皆が居るから?むしろ好都合だよ…だって優くんは千歌のだって、皆に見せびらかせるもん」

優馬「はぁ…」

千歌「?」

優馬「大丈夫だよ。俺は千歌のこと、忘れたりなんかしてない。」

千歌「え…?」

優馬「全く…寂しくなったらすぐこういう手段取るんだからな…」

優馬「今日のステージは千歌がいてこそだった。皆も確かに輝いてたさ、綺麗で可愛くて…本当に素晴らしかった。」

優馬「けど、けどな?あの輝きは千歌のおかげなんだぞ?」

千歌「…」

優馬「千歌がいてくれなかったら、俺は変われていないし、皆ともつながれなかった。」

優馬「…だから、本当にありがとう。」

優馬「これからもその輝きのそばにいさせてくれ。…今日はお疲れ様。」

 

そういって優くんは優しく私を抱き締めてくれて

頭も撫でてくれて…

なんて心地良いんだろう。

 

千歌「ごめんね…あんなことして…」

優馬「気にしてないさ。なにせこんな可愛い子のファーストキスなんだ。嬉しくないわけないだろ?」

千歌「ふぇっ!?///」

千歌「ち、千歌、可愛い?///」

優馬「え、うん。当たり前だろ。千歌は可愛いよ。」

千歌「え、えへへ…///えへへへへへ…♡」

曜・善子・花丸「「「…ちっ」」」

ルビィ・ダイヤ「「…」」

果南「何の茶番を見せられてるの?」

鞠莉「さぁ…?一つ言えることはとてつもなく腹立たしいということだけね…」

 

 

こうしてAqoursの予備予選は終了した。

果たして予選を通ったかどうかは分からない。

ただ、一つ言えることはまだラブライブは始まったばかり…

俺とAqoursの物語はこれからも続いていく、そんな予感を俺は信じてる。

 

優馬「…これからもよろしく、千歌。」

千歌「もっちろん!ずっとそばにいるって決めたからね!こちらこそよろしくね!!」

曜「二人の世界入ってるけどさぁ…」

花丸「マルたちもいるずらよ…?」

善子「どうやら相当ヨハネの裁きを受けたいようね…?」

ルビィ「…」

ダイヤ「…」

鞠莉「はぁ…ほんとに優は相変わらずよね…」

果南「千歌も千歌だけどね…」

優馬「…ごめん、でも皆もまたこれからよろしくね」

 

さぁ、まだまだ始まったばかり

これからも彼女たちとの物語を紡ごう…

 




いかがでしたでしょうか?
最後の方、結局耐え切れず、ヤンデレ要素入れてしまったんですよね
千歌ちゃんの口が悪くなったりとか
というか千歌ちゃん、ヤンデレになるとかなり頭切れるんですよね。
まぁこういう千歌ちゃんもいいんじゃないかと
とりあえず次回から約3話ほどは本編ではありますが、閑話休題ということで
原作ストーリーとは逸れて、いつもの日常風景を出していきたいと思いますので
次回もまたよろしくお願い致します!!


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第18話 恋はいついかなる時でも気を抜いてはいけないらしい。

こんにちは。
毎度毎度、更新が遅くなってしまい申し訳ございません。
段々とネタが尽きてきて…
何とか書き上げている段階です。
今回も上手く書けているか、分からないところではありますが、見ていただけるとありがたいです。
今回は堕天使善子ちゃんと生徒会長ダイヤ様のバトルになります!
それではどうぞ!


 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

善子「…」

 

今日も今日とて私は部室にいる。

ついこの前、ラブライブの予備予選が行われて、疲れも相当あるはずなんだけど

やっぱりなんだかんだでこの部室に来てしまったのだ。

どうせ私一人なんだろうな、とか思ってたから部室に行って、ちょっと経ったら帰ろうとか考えてた。けれど、私より先に部室にいる人たちが居たのだ。

 

優馬「この練習法を…」

ダイヤ「ですが…時間的にも…」

優馬「じゃあこういう感じで…」

善子「…」

 

どうやら優馬とダイヤで次のラブライブに向けて、練習スケジュールとかの確認をしている。

元々、今日ダイヤが用事で学校に来ていて、ついでだからと優馬も今後に向けて、打ち合わせを予定していたみたい。

だから、私にとってはここで優馬の顔を拝められてラッキー、というわけなのだ。

 

善子「…♡」

 

じっくりと優馬の顔を見てみるとやっぱり顔立ちは良い。

長いまつげに、ぱっちりとした目、目元に関しては完全に女の子みたいで

でもその真剣な眼差しがすごくかっこよくて、体つきを見たら男の子らしい逞しい体つきをしていて…

 

善子(どうしよう…見てるだけでにやけちゃう…♡)

 

今、私の顔は一体どんな顔をしているのだろう

一つ言えることはおそらくとてつもなく気持ち悪い顔をしてしまっているだろうということ

でも、しょうがないじゃない、こんなのにやけない方がおかしいわ

だから、ダイヤが平静を保ててるのが、本当にすごいと思う。

どうやって平静を保っているのだろう?

不思議でたまらない。

 

ダイヤ「…なら、これで」

優馬「そうだね…了解。これでまとめて…」

ダイヤ「よろしくお願い致しますわ…」

優馬「じゃあ今まとめちゃうね」

 

話し合いが終了したみたい。

優馬が自分のパソコンで今後のスケジュール表を立ててるのが見えた。

またさらに真剣な顔して打ち込みを始めている。

その時、ふと視線を外してダイヤの方を見てみると

 

ダイヤ「…ふふ♡」

善子「うわ…」

 

それはそれは思いっきりにやけていたのだ。

顔も赤らめて、完全に平静を保ててない。

今、これを優馬に見られたらダイヤは失神するだろう。

それくらいにはいつものダイヤとは思えない程の顔をしていた。

 

ダイヤ「…♡」

 

視線は優馬にしか向いていない。

あんた、そもそも学校に用事があるから来てるんじゃないの?

仕事しなくていいの、この生徒会長は

そもそも私の存在に気付いているのかどうか…

 

善子「…ダイヤ?」

ダイヤ「…♡」

善子「だめね…」

 

これは完全に視線も意識も全部優馬に向いちゃってる

私のことは気づいてないわね…

 

善子「はぁ…ダイヤ?」

ダイヤ「…♡」

善子「ふぅ…ダイヤっ!」

ダイヤ「っ!?」

ダイヤ「え…あ、善子さん…?」

善子「ヨハネよ!…大体、なんで気づかないのよ!」

ダイヤ「すみません…ですが、まさか部室に来る人がいるなんて思わなかったので…」

善子「…まぁそうだけど」

 

それもそうだ。今日は本来であれば部活は休みで、皆思い思い夏休みを過ごしている。

それなのに、まさか部室に来るなんて

確かに私が当事者だったらびっくりするだろう。

 

ダイヤ「善子さんは一体、何をしにここに?」

善子「あ…それは…」

善子「思い立って、来たというか…なんとなくふらっと立ち寄ったみたいな…」

 

決して嘘偽りを言っていない。

真実を言ったまでである。だから決して優馬に会えるかな、とかそんな考えは一切ない。

多分…

 

ダイヤ「…そうだったのですね、てっきり優馬さんがいるって情報を嗅ぎ付けてきたのかと」

善子「んなっ!?///そんなわけないでしょ!?///そんなのただのストーカーじゃないの!///」

優馬「あれ?善子いたの?」

善子「あ、優馬!うん、邪魔だったかしら?」

優馬「そんなことないよ。むしろ俺の方が邪魔だったかな」

善子「へ?」

ダイヤ「え?」

優馬「だって、珍しく2人が仲良くしゃべってるじゃん」

ダイヤ「別にそのつもりは…!」

善子「そ、そうよ!」

優馬「はは、まあ良いじゃない。俺は向こうの方でまとめ切っちゃうから二人で仲良く話してて?」

 

そう言って、優馬は行ってしまった。

本当はもっと話したかったんだけど…

 

善子・ダイヤ「「…」」

ダイヤ「…善子さん?」

善子「…なによ」

ダイヤ「どうせなのでお話ししましょうか」

善子「どうせってなによ…まるでいたからついでみたいに…」

ダイヤ「あらそんなことありませんわ?」

 

嘘つけ、そんな見え据えた作り笑い

明らかにイライラしてる証拠だ。

…まぁかくいう私もイライラしてるけど

 

善子「…それで?さっきの話の続き?」

ダイヤ「そうですわね…どこで優がここにいるっていう情報を?」

善子「だから、たまたまよ…」

ダイヤ「じゃあ、ここに来たのは偶然だとして、私が優と一緒に2人きりでいたのを見ていましたよね?」

善子「まぁ、そうね。来た時には既に2人がいたもの。」

ダイヤ「なら、なぜ出ていかなかったのです?」

善子「は?」

 

何を言ってるんだ?この雌豚は

なぜここにいたら駄目みたいな言い草なのだ

まるで邪魔されたくなかったように

 

善子「何よ、私は邪魔だったかしら?」

ダイヤ「私はそのようなことは言っていませんわよ?」

善子「白々しいわね、そういう言い方をしてるっての」

ダイヤ「そう聞こえてしまったのでしたら申し訳ございません。ただ純粋に気になってしまったので」

 

よくもまあそんな嘘を簡単につけるものね

出ていかなかったのか、なんて遠回しに出て行って欲しかったって言ってるのと同じよ

それを分からないのかしら

 

善子「…まあ良いわ、気になったのね」

ダイヤ「ええ。それで真意の程は?」

善子「優馬のそばにいたかったからよ?それ以外には何もないわ」

ダイヤ「…」

 

一段とダイヤの表情がこわばった。

同じ人を好きな以上避けられないものではあるが、それでも嫌悪感があるのだろう。

 

善子「なに?そんなに嫌?」

ダイヤ「ふふ…そんなことありませんわ」

善子「逆に聞くけど、貴方の目の前に優馬と自分の知ってる女が一緒にいて、イチャついてたとしたら、その場から逃げようと思う?」

ダイヤ「…」

善子「その顔、もちろんNoよね?」

善子「それと一緒よ、私、強欲だから逆に奪いたくなるの」

ダイヤ「奪う?ふふ…面白い冗談を言うんですのね?」

善子「は?」

ダイヤ「私と優は昔からの仲、つまり貴方達と過ごした時間なんかよりも何倍も濃密な時間を過ごしているのです…♡」

ダイヤ「奪うなんて…面白い冗談に聞こえますわ」

善子「…へぇ、散々、優のこと困らせて、助けてもやれずに、戻ってきて今更幼馴染顔してるなんて、本当滑稽よ?」

ダイヤ「…」

善子「貴方達は優馬に対して、依存してるだけよ。愛じゃないわ。」

ダイヤ「…依存、ですか」

ダイヤ「貴方に私たちの、私の何が分かるというのですか?」

善子「…」

ダイヤ「優の心がそんなに壊れてるなんて、気づかなかった!気づいた時にはもう遅かった、それでも救いたくて!私たちのことを見てほしくて、必死だったのに…」

ダイヤ「最終的にいなくなってしまった…」

ダイヤ「分かってますわ…私たちがしてることは今までの罪拭い。そしてその裏にはどうしても捨てられない優に対する想い。結局、偽善行為なのだ、と。」

善子「ダイヤ…」

ダイヤ「でも、誰にも取られたくないのです。彼を、優を」

 

彼女たちは実質的に優馬から振られているものと同義。

なのに、今でも忘れられないのだろう。あの頃の優馬を知ってるからこそ

またいつ壊れてもおかしくない。だから、支えてあげたいのだろう。

 

ダイヤ「すみません、少し取り乱してしまいましたわ…」

善子「大丈夫よ…その…悪かったわ、あんなこと言って」

ダイヤ「気にしてませんわ、周りを見失ってたのは私も同じですから…」

善子・ダイヤ「「…」」

 

数分の沈黙が流れる。

さすがに何か話さなければ、そう思った矢先だった。

まさかダイヤからそんな話を持ちかけられるなんて

 

ダイヤ「善子さん…?」

善子「…何よ?」

ダイヤ「…少しの間、同盟を組みませんか?」

善子「は…?どういう意味?」

 

そこで止まってしまった。

なぜだか、ダイヤの雰囲気が一気にピリついたから

 

善子「まさか…私を引き込んで、少しでも味方を増やそうってこと?」

ダイヤ「…」

善子「…なるほど、でもそれをしたところで問題点は山ほど出てくるわよ」

善子「例えば、私たちが勝ち取ったとして、優馬はどっちのものになるわけ?」

善子「それに味方って言ったって同じ男を狙う者同士、裏切る可能性だってあるわ」

ダイヤ「ええ…それは承知の上ですわ。だから言ったではありませんか、“少しの間”と。」

善子「へぇ…あんたが持ちかけといて、裏切りそうな言い草ね?」

ダイヤ「ふふ…愛する伴侶を何が何でも獲り、振り向かせるのが黒澤家の女なので」

善子「…敵に回したら一番怖いかも」

ダイヤ「どうでしょうかね…?」

 

確かにこのままだと千歌と曜の2人に優馬が盗られかねないのは目に見えて分かる。

さらにあのずら丸があんなに積極的に動き始め、キスまでしたとのこと。

それが果たしてはったりかどうかは分からないが、呼び方もお互いに変わっていて、何かしらあったことを匂わせている。

そうなるとここで何かしらのアクションを私自身起こしておかなければいけなかったのだ。

そう考えると、この同盟は良い判断なのかもしれない。

1人だと中々、動きづらい中でなんだかんだで優馬に一番の信頼を得ているダイヤを味方に引き入れられるというのは大きい。

だが、1つだけ、気になる点があったのだ。

 

善子「そうね、でも1つだけ聞かせてほしいの」

ダイヤ「…なんでしょう?」

善子「…なんで私なの?」

ダイヤ「なんで、とは?」

善子「あんただったら、幼馴染の鞠莉や果南、妹のルビィの方がよっぽども信頼をおけるような存在じゃないわけ?」

善子「もしそうであれば、少なくとも私ではなく、彼女たちを選ぶはずよ?」

善子「なにか意図があるわけ?」

ダイヤ「…」

 

この時、私は知らなかった。

こうも深く、狂気じみたそれでいて、絡みついてしまうような濃密な愛が

この世に存在していたことを、そしてそれが私にもあることを。

 

ダイヤ「貴方に私と同じ匂いがしたから、ですわ」

善子「同じ、匂い?」

ダイヤ「ええ…優のためなら何をも辞さない、何をするにもためらわない。」

ダイヤ「そして、周りの女を蹴落としてでも、優を誰よりも愛するその自信がある。」

善子「…」

ダイヤ「それが貴方にとっては当たり前となっている、でしょう?」

善子「そうね、私はあいつを、優馬を言葉で言い表せないくらいには愛してる。でも、それは皆も一緒のはずよ」

ダイヤ「問題はそこではありませんわ。善子さん、そして私にしかないものがある。」

ダイヤ「それは“女としての矜持”ですわ」

善子「…ようはプライドの高さということ?」

ダイヤ「…まぁそういうことでいいですわ」

善子「…つくづくあんたの手段の深さが怖いわ」

ダイヤ「鞠莉さんや果南さんは不安から焦りへと変わり、いずれ…破滅する。」

ダイヤ「ルビィはポテンシャルとしてはさすが黒澤家の女と言えますわ。あの行動力、手段を選ばない強欲さ、だからこそ同盟では手が足りない。」

ダイヤ「だから…真正面から叩く必要があります。」

善子「…あんた、ルビィのこと大好きじゃなかったの?」

ダイヤ「もちろん大好きですわ、ですがこれは恋の戦い。慈悲など必要ありませんわ。」

善子「腹、括ってるのね」

ダイヤ「ふふ…じゃないとこうして話を貴方に持ちかけていませんもの」

ダイヤ「…それでお返事はどうなさいますか?」

善子「…」

 

決して悪い話ではない。

効率、そして争いに勝つことを優先して考えると非常にローリスクハイリターンな考えだ。

2人でなら動きやすいうえに味方がいるというのは心的にも安心感はある。

ただ…

 

善子「悪いけど、却下ね。」

ダイヤ「へぇ…ちなみになぜ?」

善子「フェアじゃないもの。」

 

確かに千歌と曜は2人で攻めてるのかもしれないが、それはそれで彼女たちの戦法であり、私が真似する必要性はない。

また、ずら丸は1人でも誰にも負けることなく、必死に自分をアピールしている。

それはルビィも鞠莉も果南も同じだ。

そんな彼女たちに対して、2人で攻め落とすというのはいささか、どうなのだろう、とは思う。

 

ダイヤ「…そうですか。まぁ分かっていましたわ。」

ダイヤ「この話を持ちかけられたとき、誰しもが一度は揺らぐんです。」

ダイヤ「ですが、結局、同盟はいずれ破綻する。そうするとそこから大きなリスクが生まれてしまう。」

ダイヤ「…確かにフェアじゃなかったかもしれませんしね」

善子「…ごめんなさい。」

ダイヤ「ふふ…謝る必要はありませんわ」

ダイヤ「ただし…容赦はいたしませんわよ?」

ダイヤ「優の隣にいる女は私だけで充分なのですから…」

善子「ふふ…臨むところよ。あんたにも、皆にも優馬のことは渡さないわ!」

 

こうしてダイヤとの話が終了した。

思っていた以上に、ダイヤが考えていて、虎視眈々と狙っているのだなと

そう感じた。

すると、優馬がちょうどよく帰ってきた。

 

優馬「遅くなって申し訳ない!」

ダイヤ「おかえりなさい。別に気にしてませんわ。」

善子「おかえり。そしたらもう帰る?」

優馬「あー…ちょっとダイヤから仕事を手伝ってほしいって持ち掛けられてて…」

善子「は…?い、いつそれを…?」

優馬「え?ついさっきだよ、丁度戻ってくる時に携帯にメッセージが入ってて…」

 

嘘、あの話の中でいつ?

どこにその携帯を弄る余裕があったの?

しかも仕事をしていなかったのは2人きりで仕事をするための布石?

そう思考を巡らせてる時だった。

 

優馬「善子に仕事を手伝ってもらうのはさすがに悪いからな…」

善子「え、い、いや大丈夫…」

優馬「無理しなくて大丈夫だよ、今日はゆっくり休んで明日からの練習に備えて?」

善子「う、うぐっ…」

ダイヤ「ふふ…♡そういうことですので…♡」

 

やられてしまった。

大敗も大敗だ。気づかないうちに予定を埋められていたらしい。

あのダイヤの恍惚とした表情。やはり侮れない。

 

優馬「じゃあ生徒会長室だよね、行こっか」

ダイヤ「ええ…♡よろしくお願い致しますわ、優…♡」

優馬「善子もお疲れ様。また明日ね。」

善子「あ…うん…またね…」

ダイヤ「…」

善子「?」

ダイヤ「ふっ…♡」

善子「なっ…!?」

 

そうして私のことを見て嘲笑いながら、

生徒会長室へと2人は消えてしまった。

 

善子「ダイヤ…恐ろしい女ね…」

 

そうして憤りを感じつつも私は家へと帰ることにした。

ダイヤがとんでもない策士で、恐ろしい女だ、ということに気づけたのは大きかったかもしれない。

そうなんとかポジティブに考えつつもやはりどうしても優馬と2人きりになれなかったのが悔しくてたまらない。

そう感じながら帰り路を歩くのだった…




いかがだったでしょうか?
生徒会長室で一体優馬はどうなってしまうのか…
それはまた後日、書いていこうかな、と思います!
ただ今回は2人とも頭がキレッキレでしたが、ダイヤが一歩上手でしたね…
さすが、というかまだ1年生には負けないかな、という考えのもとでした笑
今回はここまで見ていただいてありがとうございました!
次回もまた見ていただけると嬉しいです!


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第19話 大きな愛は狂気的な愛へと変貌する

こんばんは!
今回もまた投稿が遅れてしまってすみませんでした!
本当なら午前中には投稿しようと思ってたのですが…
横浜会場の5周年展示会に行ってまして、はい。
すごく細かい設定で、綺麗に描かれた原画…一つ一つに感動しました…
しっかり英気を養えたので、これからも執筆頑張っていきたいと思います!
まずは、今回の話から!ダイヤさんをメインに描いてます!
よろしくお願いします!


~浦の星学院・生徒会長室~

 

善子と分かれてから、俺はダイヤの手伝いのために生徒会長室にいた。

 

優馬「…」

ダイヤ「…」

 

特に会話はない。

なんせ、仕事しているのだ。仕事をする上で私的な会話は必要ない。

それはダイヤも分かっているし、俺もそれを汲んでるからあまり話さないように抑えている。

…まぁ、元々、俺は話すタイプではないからこれはこれで助かるのだが

しかし、これを何分もしているとさすがに気まずくなってしまう。

 

優馬・ダイヤ「「…」」

 

…これは話しかけられないな。

ダイヤが集中しているから、流石に会話で邪魔をするわけにはいかない。

 

ダイヤ「…」

優馬(…しかし、よく見るとダイヤ、綺麗になったなぁ)

 

昔から知っている彼女だが、俺たちの間には空白の数年間が存在する。

俺が東京に行ってしまったあの日から彼女たちとの関係は止まってしまっていたのだ。

しかしこのスクールアイドルを通して、俺は光を取り戻し、輝きを見つけ、そして彼女たちとも関係が動くきっかけを見つけることができた。

この関係はあくまでも幼馴染としての関係が戻っただけであり、異性としての関係が動いてしまったわけではない。

…だったのだが、やはり女性的な成長をいざ意識して目の当たりにすると、どうしても魅入ってしまう。

 

優馬「…」

ダイヤ「…///」

 

すると、ダイヤの手が止まった。

もう仕事が終わったのか、そう思ってると、ダイヤの顔が真っ赤に染まっていた。

 

ダイヤ「あの…優?///」

優馬「…?どうしたの?」

ダイヤ「その、み、見てくれてるのは嬉しいのですが…///少し、見過ぎというか…///」

優馬「へ…?///いや、その、ごめん…///」

ダイヤ「い、いや、そんな気にしてませんから…!///だいじょうぶ、ですわ…///」

 

あんなにお堅いダイヤがこんな表情をするのを見るのはおそらく初めてだった。

だからか、かなりドキッとしてしまったのだ。

思わず、俺も反動で赤くなってしまう。

鞠莉や果南、千歌や曜に見られたら恐らく、殺されるかもしれないから…

2人きりでよかったのかもしれない…

すると、すぐ俺は現実に戻された。

 

ダイヤ「ゆ、優に渡した仕事は終わりましたか?///」

優馬「あ、うん、丁度さっき終わったよ」

ダイヤ「本当ですか…あんな量を…」

優馬「あー…効率化したら意外とさっくり終わるよ?」

ダイヤ「ふふ…やっぱり優はさすがですわね!」

優馬「そんなことないよ、生徒会長として、あの鞠莉を支えてる方が十分すごいさ」

ダイヤ「ふふ…素直に受け取っておきますわね♪ありがとうございますっ♪」

優馬「ダイヤは仕事、終わった?」

ダイヤ「ええ、丁度今終わりましたわ」

優馬「そっか…遅くまでお疲れ様、生徒会長さん?」

ダイヤ「もうっ!///からかわないでくださいっ!///」

 

幼馴染だからだろうか、気づいたら自然と話していて、居心地もいい。

別に異性として見ていないということは決してないが、それでも今この空間だけは

昔の自分たちの関係に戻ったかのようで、とても心地よかった。

 

ダイヤ「…それでは少し、休憩いたしましょうか」

優馬「休憩って…ここにコーヒーメーカーとかないでしょ?鞠莉じゃないんだし」

ダイヤ「ふふっ…じゃじゃーん!実は、隠し持っていたのですわ!」

優馬「え!あのお堅いダイヤが…」

ダイヤ「…私だって、こういうことしたいんですのよ?」

優馬「そういうところ、昔と変わらないね…」

ダイヤ「ふふっ、じゃあ、今、コーヒー作りますわね、砂糖とミルクはどうされます?」

優馬「ありがと、ミルクだけいただこうかな」

ダイヤ「かしこまりましたわ」

 

そうしてダイヤはコーヒーを作り始めた。

非常に慣れた手つき、実のところ、以前からコーヒーメーカーはあったのでは?

そう思わせるくらいには手慣れていた。

そんな感じでコーヒーが出来上がるのを待っていると、数分でダイヤがやってきた。

 

ダイヤ「…お待たせいたしました、コーヒー、ミルク付きですわ」

優馬「ありがと、うん、美味しい。適度な苦みと芳醇な香り…ダイヤは何でもできるんだなぁ」

ダイヤ「ありがとうございます…そんなことありませんわ?できないことだってあります…」

優馬「え…?ってあれ…?」

 

コーヒーを飲んでるのに、なぜか眠い。

すごく瞼が重く感じる。

 

ダイヤ「…どうかされました?」

優馬「あ、あぁ、ごめん。なんか、すごく眠くて…」

ダイヤ「今日はずっと朝から活動してましたものね、昨日もラブライブの予選だったわけですし…きっと疲れが出てしまったのですよ」

優馬「そう、かもしれないな…」

ダイヤ「…私がそばにいてあげますから、ここは一度休んでしまわれてもいいのでは?」

優馬「あー…うん、ごめん、ありがとう。ちょっと休むことにするよ…」

 

そう残して僕の意識は睡魔によって、消えていってしまった。

 

ダイヤ「…おやすみなさい、優。」

 

 

~ダイヤside~

 

ダイヤ「…ふふ、可愛らしい寝顔♡」

 

優は言ってくれた。

私は生徒会長として鞠莉さんを支えられていると。

私は何でもできる人間だと、すごい人間だと彼は言ってくれる。

…そして、幼馴染として良い関係を築き上げてくれる。

そう、“幼馴染”として、だ。

幼馴染はよく恋愛小説や恋愛漫画で「負けヒロイン」として描かれることが多い。

つまり、幼馴染というステータスは恋愛において、一番近しい関係でありつつ、異性として一番遠い関係であるのだ。

 

ダイヤ(まぁ、黒澤家の長女でありながら、こんな空想上のデータで結果を導き出すのもどうかとは思います、が…)

 

しかし、そうもいかない事情が出てきてしまった。

そう、千歌さんたちの存在。そして、花丸さんやルビィ、善子さんといった後輩たちの存在。

彼女たちは新スクールアイドル部立ち上げ当初から優のそばにいて、支えてきた、といっても過言ではないくらいにかけがえのない関係性を築き上げてきている。

そうなるとどうだろう、私含めて鞠莉さんや果南さんといった幼馴染枠である私たちは見事、この空想上の物語と同じように「負けヒロイン」の称号を得てしまうのです。

…いや、称号があるとかそういうのは正直どうでもいいのです。

大事なのは“私”の優が盗られてしまう、ということ。

 

ダイヤ(…だから、味方のフリをして蹴落としてさし上げましょう、と考えていたのですが)

ダイヤ(善子さん…なかなか頭が冴えていましたわね…見破られていたとは…)

 

もしかしたら、善子さんが気付いたのは偶然なのかもしれません。

しかし、形式上の同盟ということを知られてしまったということは、もう他人には使えない。

…ですが、あれはあくまでも布石のうちの一つ。

しかも一番成功する可能性は低い、と踏んでいた策の一つ。

 

ダイヤ(…本命はこっち、ですわ♡)

 

そう、いささか強硬手段ではありますが、優と2人きりになり、コーヒーの中に睡眠薬を投与、眠らせた後、既成事実を…という策。

部室にいた時に行おうと考えていましたが…

善子さんが来たのは想定外でしたわ、バレてしまったかと思い、いつになく焦ってしまいましたし…

ですがあの時、善子さんも私が既に優に連絡をしていたことは気づいてなかったみたいですし、分析する力はあれど、周囲詮索能力は低い、ということですわ

連絡が済めば、あとは簡単でしたわ…

生徒会長室で2人きりという状況を作り出し、策通りに…♡

そして、今…

 

ダイヤ「ふふ…♡ふふふ…♡」

 

ダイヤ(あぁ、なんて可愛らしい寝顔なのでしょう…♡)

ダイヤ(久しぶりに会えたあの時からどれだけ恋焦がれていたか…♡)

 

ダイヤ「それでは…♡ふふ…♡私を受け止めてくださいね…♡」

 

そうして、優の唇にキスをしようとしたその時だった。

 

梨子「…何を、してるんですか?ダイヤさん」

ダイヤ「…っ!?」

ダイヤ「…梨子、さん?」

梨子「はい、こんな遅くまでお疲れ様です…ってそんなことはどうでもいいんですよ。」

梨子「今…優君に何をしようとしてたんですか…!?」

ダイヤ「…優が寝てる中、涎が垂れていたので拭って差し上げようかと思いまして」

梨子「違いますよね…?拭うのならなんでハンカチとかじゃないんですか?」

ダイヤ「…」

梨子「しかも、それだけじゃない。優君のそのはだけた姿…明らかに何かしようとしてましたよね…!?」

ダイヤ「はぁ…本当に今日は邪魔者が多いですわね?」

梨子「…答えていただけますか?」

ダイヤ「既成事実を、作ろうとしたのですわ」

梨子「は…?」

ダイヤ「私は優を愛してる。誰にも渡したくない。渡さない。ですが、想いばかり募らせてはいつの間にか、私の制御が利かない場所にまで優が行ってしまったので…」

梨子「それで…優君を?」

ダイヤ「そうですわ♪」

梨子「ちっ…貴方って人は…!!」

ダイヤ「…お怒りになられていますが、逆に聞きましょう。」

ダイヤ「…貴方はなぜ、優がここにいるということが分かったのですか?」

梨子「っ!」

梨子「…そ、れは」

ダイヤ「どうせ、GPSか何かを優に忍ばせていたのでしょう?」

梨子「…」

ダイヤ「何も言えない…ということは図星、ということですわね」

ダイヤ「そんな自分は正当な立場だとお思いかもしれませんが…」

ダイヤ「…その時点で、貴方はこっち側と同じなのですよ」

梨子「ち、ちがっ…私はっ…!」

ダイヤ「私は?何か反論でも?」

梨子「わ、たしはただ…優君が心配で…貴方みたいに淫らな行為をしようなんて…」

ダイヤ「…本当にそう思っておりますか?」

梨子「わたし、は…」

 

…おそらくもう何も言えない。

チェックメイトだろう。私はそう思いました。

さっさと梨子さんを退場させて、早急にこの時間ロスを埋めなくては

そう思った時だった。

 

優馬「ん…あ、ダイヤ、おはよう…ってあれ?梨子もいたの?」

ダイヤ「っ!…ええ、梨子さんは先程、帰って来られて少し学校に立ち寄ってたみたいですわよ」

ダイヤ「どうにも新曲に向けて、ピアノを弾いていたとか」

優馬「え、本当に?梨子は熱心だな…でも、程々に休まなきゃ、だめだよ?」

梨子「あ…う、うん!ありがとう!」

優馬「あと、おかえり。お疲れ様。良かったよ、良い結果で…」

梨子「ゆう、くん…」

ダイヤ「…そろそろ時間も遅くなりますし、私は帰りますわ」

優馬「あ、じゃあ送っていこうか?」

ダイヤ「…結構ですわ、それよりも梨子さんと積もる話もあるでしょうし…ね?」

梨子「…っ!」

優馬「そっか…それもそうだね、じゃあ気を付けてね」

ダイヤ「ええ…さようなら」

 

ダイヤ「梨子さん、これは追々、また話しましょう…ふふ♡」

梨子「…」

 

 

~内浦・帰路~

 

ダイヤ「…はぁ」

 

あともう一歩だった。

本当であれば、既成事実を植え付ける予定だった。

しかし…

 

ダイヤ(朝の善子さんといい、夕方には梨子さんが現れるなんて…)

 

想定外も想定外だった。

夕方の時点ではもはやバレていたため、優に伝わってしまうと、恐ろしくなりましたが…

 

ダイヤ(あの梨子さんの反応…伝わることはないでしょう…)

 

今日はなんとか上手く切り抜けることができたが…

 

ダイヤ(次の策を練らなければ…完璧に、そして誰よりも早く優を手に入れるために…)

 

ダイヤ「ふふ…♡」

 

これからが楽しみだ。

そう思いながら、ダイヤは不敵な笑みを浮かべ、

すっかり日の落ちた夜の道を歩いていくのだった…

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
次回は久しぶりに梨子ちゃんをメインに描く予定です!
段々とヤンデレ気質になってきて、話の展開を考えるのが楽しくなってきました…
ですが、ネタは尽きるばかり…
そんな時、買いました!設定資料集!!
これを見て、理解を深めながら、執筆活動頑張っていきたいと思うので、
これからも見ていただけると嬉しいです!
次回もまたよろしくお願いします!


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第20話 一難去ってまた一難

こんにちは!希望03です!
ついに、ついに!20話まで、来ました!!
おかげさまで気合が入ってしまって、久しぶりに立て続けに投稿できたような気がします…
今回は梨子ちゃんメインです!
梨子ちゃんってどこかヤンデレ気質ありますよね…
なんとなくですけど…
ここまで言えば分かりますよね?笑
ということで、今回の話もよろしくお願いします!
どうぞ!


 

~内浦・通学路~

 

梨子「…」

 

ダイヤさん…まさかあんなことを…

恐らくあのような強引な行動手段に出るのは果南さん、鞠莉さんの2人もしくは暴走状態になった千歌ちゃんくらいしかいないだろうと思っていた。

だから果南さんや鞠莉さん、千歌ちゃんの3人をまずはマークして、彼女たちにうまくバレないように迫っていたはずだったのに。

…思わぬ、伏兵だった。

知らないところであんな深くまで迫っていた、だなんて…

考えれば考えるだけで心が黒く染まっていく。

 

優馬「…梨子?何か元気ないけど、どうかした?」

梨子「あ…いや…」

 

優君にあの出来事を伝えたら、優君はなんて思うんだろう…

信頼していたはずの幼馴染に、睡眠薬を盛られて、挙句、既成事実まで…

やっぱり幻滅しちゃうよね、それ以上にもしかしたらショックでまた塞ぎ込んじゃうんじゃ

なら言わない方が…でも、言えばダイヤさんの評価は下がる一方、そして私は彼を支えるための動機を得られる。

そしたら私は、きっと彼の隣に居られる…

そばにいられる、あぁ、なんて素晴らしいんだろう。

 

優馬「何か、あったんだね?…話してくれない?」

梨子「…あ、あのっ!」

 

あれ、でも今、私何考えてた?

その時だった。

 

“貴方はこっち側と同じなのですよ”

 

梨子「…っ!?あ、うあ…」

優馬「り、梨子?」

 

一瞬だった。

あの言葉が心の底から押し上げるかのように頭の中で響いたのだ。

 

梨子「わ、たし…は…」

優馬「っ!?大丈夫か!?梨子!?」

梨子「…っ!」

優馬「っ!待ってくれ、梨子!」

 

気づいたら私は走り出していた。

優君から逃げるように。

 

梨子(だめ、今の私じゃ!とても言えない!)

 

そうだ、ダイヤさんの言ってる通り、私も同じ側の人間だったのだ。

周りの積極性に怯えながら、ゆっくりじわじわと関係を深めていって、最後は私が…

そう、私も深い愛に支配されていた側の人間だったのだ。

 

梨子「はぁ…はぁ…」

梨子「…あぁ、気づいちゃった。」

 

あんなにダイヤさんを嫌悪していたのに、いや今でも嫌悪している。

だけど、優君を取られたことに対して嫌悪しているわけじゃない。

恐らく、これは同族嫌悪に近い。

本当なら私が優君と…そう考えていたからこそ、あれだけは許せなかった。

 

梨子「…」

 

でも、不思議と体が軽かった。

なんだか重たい何かが消えていったような…そんな感覚。

 

梨子「はは…あははははははははっ!!!♡♡♡」

 

今まで我慢していたのだ。必死で、この想いを。

ずっとずっとずっとずっと彼が好きだった。

あの時、ピアノを聞いてくれたあの時から、ずっと。

一目惚れだった。初めての感覚だった。

ずっとピアノしか知らなかった分、あの衝撃は今でも忘れられない。

当時の男子とはどこか違う雰囲気があった、大人びていたあの男の子。

繋ぎ止めておかないと、どこかに消えてしまうようなそんな男の子。

また、ピアノを聴いてほしかったのに、いなくなってしまった男の子。

もう二度と会えないと思っていたのに…

 

梨子「それなのに…会えたんだ、また、優君に…」

 

昔の好きな人とまた巡り合う確率は約5%程度だったような?

まぁ、そんな細かい数字はどうでもいい。

会えたこと自体、奇跡なのだ。

いや、もう必然で運命だったのかも?

そう思っていたのに…

気づいた時には優君の周りに曜ちゃんや千歌ちゃん、幼馴染らしいダイヤさんたちやいつの間にか仲良くなってた善子ちゃんたち…

分かるよ、昔から優君って色んな女の子惹きつけちゃうもんね?

憤りもあった。邪魔だ、と思う時もあった。

でも、大切な仲間だから、皆と頑張ろうって決めたから。

そう思ってたのに…

我慢が、できなくなってしまった。ダイヤさんの、あの行動を見て…

気づいてしまったのだ、自分の狂気的な愛に…

 

 

~優馬side~

 

優馬「…梨子」

 

…実はなぜ梨子が逃げてしまったのか、分かっていた。

ダイヤから、キスをされる直前。

実はあの時、俺は起きていた。流石にダイヤもいる中でぐっすり寝るわけにもいかなかったから、割と軽めに目を瞑る程度に横たわっていたのだ。

だからキスをされると思わなくて、動揺して起きてしまった。

まあダイヤも問題っちゃ問題なわけで…やり方は良くなかったかもしれないが、あのダイヤがこういうことをするくらいなのだ。

何か思い詰めることがあったのかもしれない。

まぁ、ダイヤの行動に対してどうこう言うのはこれで終わりにして

その次の問題は梨子だ。

ダイヤが梨子に対してGPSを忍ばせているとかなんとか言ってて、まさか…

と思ったけど、そのまさかだった…

 

優馬「…あった。」

 

まさか本当にあるとは、GPS…

あったのは俺がよく使用する鞄の内ポケットの中。

 

優馬「はぁ…めんどくさいなぁ…」

 

というのは建前で、どうにかして彼女たちを救わなければ…

好意を持ってもらえるのは非常に光栄だし、嬉しい。

けど、ここまでするのは彼女たちの精神的な問題がある、と考えられる。

 

優馬「…ま、いいや。とりあえず帰ろ。」

 

今、冷静じゃない頭の中で考えたところで何も変わらない。

一度、家に帰って落ち着かせなければ

 

優馬「ふぅ…うん、よし。落ち着いた。帰ろう。うん。」

 

そうして俺は何とか帰路に就いた。

 

 

~梨子side・梨子家~

 

梨子「ただいまー!」

梨子母「おかえりなさい、優馬君には会えた?」

梨子「うん!会えたよ!」

梨子母「そう、良かったわ!なにせ初めて会った時からずっと好きだった男の子だものねー…?」

梨子「も、もう!///やめてよ!///」

梨子母「ふふ♪はいはい…いいから風呂入っちゃいなさい!」

梨子「はーい」

 

~梨子家・風呂~

 

梨子「…はぁ♡」

 

どうしようもなく押し寄せてくる優君への想い

今まで皆に遠慮しちゃってたから抑えてたけど…

もういいんだ。遠慮なんてしない。

そう思うだけでどんどんと肥大していく優君への想い

 

梨子「ふふ…♡ふふふふふふふふ…♡」

梨子(…優君優君優君優君優君優君♡♡♡)

 

でも、いきなりこんな想いを彼にぶつけてしまったらきっと彼は困惑してしまう。

だから明日もある程度、セーブしなくては。

 

梨子「…耐えられるかな」

 

いや耐えなくてはいけない。

これは私が彼と結ばれる、そのための試練。

そう思えば、何も辛くない。

 

梨子「あ…そういえば…」

 

ふと私はあれを思い出し、急いで部屋へと戻るのだった。

 

~梨子家・梨子の部屋~

 

梨子「あ、あった!」

 

そう、私が探していたのは昔のアルバム

それも小学校時代のもの。

 

梨子「でも本題はここから…」

 

このアルバムを見つけたところで意味はない。

私が見つけたいのはもっと先なのだ。

 

梨子「えっと…うーん…あ、あぁぁ!!」

梨子「あったぁぁぁぁ!!」

梨子「やっぱり優君、昔からかっこいいなぁ…♡」

 

ついに見つけてしまったのだ。

優君とのツーショット。なぜツーショットがあるのか、というと

一度だけ、私のピアノコンクールに優君を招待したことがあった。

 

~回想~

 

梨子「ゆ、優君っ!」

優馬「…なにか用?」

梨子「あ、あのね…その…」

優馬「何もないならもう行くけど?」

梨子「あ…!ぴ、ピアノコンクール!!」

優馬「え?」

梨子「ピアノコンクールに私が出るから見に来ませんか…」

優馬「…行かないよ」

梨子「っ!う、うぅ…」

優馬「え!?そ、そんな泣かないでよ…」

梨子「だ、だって…行かないって…」

優馬「あー、行くよ、行くから!」

梨子「ほ、本当?」

優馬「本当本当、絶対行く。」

梨子「えへへ…///じゃあ明日の10時からだからっ!またね!」

優馬「はぁ…めんどくさ…」

 

あの時、優君はものすごくだるそうにしていたけど

なんだかんだ言って、ピアノコンクールに来てくれたのだ。

本当に来てくれたことに舞い上がっちゃって、肝心のピアノに集中することができなかったけど、それでも嬉しかった。

だって、当時の学校にいた子たち皆が一目置いていた存在の男の子に、私の一目惚れ、初恋の男の子を独り占めできてたんだもの!

演奏終了してからもわざわざ会いに来てくれて…

“お疲れ様。すごく綺麗だったよ。”って!

そうして勇気を振り絞って、撮った写真がこのツーショット、というわけだ。

 

梨子「ふふ…雰囲気は相変わらず、変わらないなぁ…」

梨子「でも…」

 

初めて会った時も、再会した時も、そして今も

優君の雰囲気は変わっていない。

でも、変わってしまったことが一つある。

 

梨子「優君、性格が丸くなったんだよなぁ…」

 

昔の優君はもっと誰に対しても無気力というか無気力どころか冷酷な対応していた。

それなのに今となっては、色んな人に対しても優しくて、行動的で…

そんな優君も魅力的で素敵だと思う。

私の想い人が客観的に見ても素敵だと見られるのは悪くない気分でもある。

でも、それによってライバルを増やすのはいささかいただけない。

 

梨子「優君ってば、外見も内面もかっこいいんだから、無自覚に好意を振り撒くのはやめてほしいなぁ…」

 

そうやって優しくしちゃうから勘違いしちゃう子が増えちゃうんだよ?

 

梨子(…って言ったところで優君は変わらないだろうな)

 

梨子「だから、私が隣に居てあげなきゃ、色んな女の子が勘違いしないように」

 

そう、これは優君のためでもあり、周りの女の子のためでもある。

だから私がそばにいるのは当たり前。

千歌ちゃんや曜ちゃんに対して、そばにいてくれって言ったらしいけど、

私が発破かけちゃったもんね、優君も勘違いしちゃったんだよね。

本当に言うべき相手はここにいるのに。

 

梨子「ふふふふふ…♡」

 

 

~優馬side~

 

さて、どうしようか。

GPSは一応、鞄につけっぱなしにしている。

これを壊した時、梨子になんか言われそう、というか怖い。

 

優馬「梨子に直接言う…?」

 

いや、それは悪手だ。

梨子は俺があの時、寝ていたと思っているからこそ、ここでGPSというワードを出すというのがあまりにも不自然すぎる。

ならどうするか…

 

優馬「まぁ…結局のところ、まだ危害は加えられていないし、な…」

 

危害が加われば言う、といえばそれはまた考えどころだが。

まだ梨子はGPSを付けたというだけで、実際これを利用して、俺に何かしたというわけではない。

 

優馬「…一度、様子を見るか」

 

何も起こってないのに、梨子に聞くというのは全て不自然のように思える。

だとしたら、もう何したって無駄。お手上げだ。

そしたらこういう時は様子見が最善策。

 

優馬「とりあえず明日からまた練習だし…もう寝よ…」

 

ダイヤも梨子も、少し前の千歌や曜と同じ状態に陥ってしまっている気がする。

だから、以前俺が梨子に助けられた分、返さなければ。

そう俺は覚悟を決めて、明日の俺にすべてを任せるのだった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
いかがだったでしょうか?
かなり梨子ちゃんがストレスかかってて、それが爆発した感じですね~
しかもヤンデレ増し増しで書かせていただきました!
梨子ちゃん推しでこういうのが苦手、という方、大変!申し訳ありません!
ですが、ここからが優馬君の腕の見せ所、またまたダイヤさんと梨子ちゃん、2人同時に
救っちゃいますよ!多分!
もしかしたらやられるかもしれませんが!
とりあえず次回の話は恐らく、大分先になってしまうかもしれません…
投稿するのが遅ければ、1度振り返って見てみるのも良いと思います!
ということで、次回の話も気長に待っててもらえるとありがたいです!


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第21話 頭脳明晰な彼女たちに対する最善策とは?

こんにちは
投稿まで1週間。
かなり遅くなってしまい申し訳ございません。
色々な事情が重なってしまい、1週間以内に投稿するのがやっと、というような状況でした。
8月の中旬まではこのペースになってしまうと思いますのでご了承ください。
そして、本日はあの子たちを救うために動きます…
ぜひ、どうぞ!


 

~優馬家・優馬の部屋~

 

部屋に鳴り響く朝を告げるアラーム。

時刻は6時半。練習が始まる時間は9時から。

いつもであれば起きるにはかなり早い時間ではある。

しかし、今回は早く起きなければならない理由があった。

 

優馬「…よし、行くか」

 

俺はいつも迎えに来てくれる千歌に連絡を入れ、急ぎ足で学校へと向かった。

 

 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

優馬「…随分と早いご到着だね、ダイヤ?」

ダイヤ「…おはようございます、優。」

 

俺が急いで向かった理由。それがダイヤだった。

前日のうちに俺はダイヤに連絡をし、練習が始まる前に少し話がしたいと伝えたのだ。

 

ダイヤ「全く…呼び出したのは貴方でしょう?一体どうしたというのですか…」

優馬「ごめん、練習前に一度聞いておかなくちゃならないことがあってさ」

 

するとダイヤの空気が一気に変わった。

さっきまで穏やかな雰囲気で話していたはずだったのに、急に凍り付くような視線でこちらを見てきたのだ。

 

ダイヤ「…なんでしょう、練習のこと?それとも学校のこと?…なんにせよ、話を聞かないと分かりませんわね」

優馬「とぼけなくていいよ、ダイヤ。俺は分かってるから。」

ダイヤ「…?どういうことです?」

優馬「…俺が生徒会長室でダイヤの手伝いをしていた日のこと」

ダイヤ「その日がどうしたのです?何事もありませんでしたが…」

優馬「…あったよ。俺が疲れたと思って、寝ちゃったじゃないか」

ダイヤ「あれは仕方ありませんわ。ずっと張りつめっぱなしで、疲れが出てしまうのも仕方ありません。」

優馬「俺もそうだと思ったんだ。でも、違った。」

ダイヤ「…?」

優馬「あの時、俺は君に睡眠薬を盛られていた。そうだよね?」

ダイヤ「…はぁ、嘘も大概にしてほしいですわね。証拠はあるのですか?」

優馬「これに録音してるんだよ」

 

そうして俺が取り出したのは空のUSB。

これはブラフ。本当のところ、録音なんてしていない。

これが見破られなければ…

 

ダイヤ「っ!?」

優馬「…信じてもらえるかな?」

ダイヤ「そう、ですか。あの時の会話を…」

 

すると、ダイヤの肩の力が落ちた。

 

優馬(納得、してくれたか…)

 

ダイヤ「分かりましたわ…すみませんでした、睡眠薬はコーヒーに服用しましたわ…」

優馬「…なんで、そんなことを」

ダイヤ「そんなの、分かりきってるじゃありませんか…?」

ダイヤ「本当のところ、気づいていますわよね?」

優馬「…」

ダイヤ「…そういう頭の切れる人、本当、厄介ですわね」

 

そう言いながら、ダイヤは寂しげに笑っていた。

 

優馬「…なんで、あんなことを?」

ダイヤ「それは行為そのものに対してですか?それとも想いを持っていながらどうして?という意味合いですか?」

優馬「…後者だよ。」

ダイヤ「そうですか…もう隠し通せませんわね…」

 

そうして、ダイヤは話し始めた。

秘めていた想いの全てを。

 

ダイヤ「会った時から、優は本当に変わりましたわね」

優馬「そうかな…?」

ダイヤ「ええ…まるで昔の時のように」

優馬「昔って…」

ダイヤ「思っている通りだと思いますわ、本当、あの時とそっくり…」

 

そう言うとダイヤは俺の顔に手をかけて

涙を流していたのだ

 

優馬「ダイヤ…?」

ダイヤ「…いつか、優と結ばれることを夢見ていましたわ。きっと私に振り向いてくれる、と…」

ダイヤ「ですが…そう行かなくなってしまったのです。」

優馬「…千歌と曜のこと?」

ダイヤ「ご名答…貴方が焚き付けたのでしょう?」

優馬「あの時は…」

ダイヤ「分かっていますわ、そうするしか方法がなかったのだ、と。」

ダイヤ「ですが…わ、たくしは…」

優馬「っ!」

 

…女の子を泣かせるつもりなんてなかった。

全て全員が笑っていられるように、としていたつもりだった。

でも、違うんだ。俺がしていたことは。

じゃなかったらこうして彼女は涙を流していない。

 

ダイヤ「…失礼。ですが、私は耐えきれませんでしたわ。」

ダイヤ「貴方を救うために、彼女たちに協力を求めて、そうして私たちにできなかったことが彼女たちにはできて…」

ダイヤ「貴方の中心は完全に彼女たちになってしまって…」

 

違う。違うんだよ。

俺は誰が中心だなんて考えてなかったんだ。

ただただ…俺は…

 

ダイヤ「いつか、私自身、貴方の心に居場所がなくなってしまうのではないか、と…」

優馬「…」

ダイヤ「だから、あのような行動をとるしか方法がなかったのです…」

優馬「俺を、振り向かせるために?」

ダイヤ「ええ…残念ながら未遂で終わってしまいましたが…」

優馬「そっか…」

 

あの時はちょうど良いタイミングで梨子が現れたから

良いタイミング…?

待て、なんであの時あのタイミングで…?

 

優馬「…まさか」

ダイヤ「?どうされました?」

梨子「…楽しそうに話してるね?」

優馬・ダイヤ「「っ!?」」

 

そのまさかだった。

俺とダイヤの後ろにいたのは、梨子だったのだ。

 

梨子「おはよっ♪優君♪…それと、ダイヤさんも」

優馬「…おはよ」

ダイヤ「…」

 

挨拶だけのはずなのに緊張感がこの部屋に流れていた。

それもそのはず、梨子の目に光はなく、ダイヤもそんな梨子に敵意を向けているからだ。

 

梨子「そろそろ練習始まるけど、こんな所で何してたのかな~?」

ダイヤ「…何も、あなたには関係のないことですわ」

梨子「そういう彼女面してるのやめてもらえませんか!?」

ダイヤ「っ!」

 

すさまじい剣幕。

今までこんな声で梨子が叫んだことなど一度もなかったはず。

そんな梨子がここまでの声量で叫んだのだ。俺といい、ダイヤといい、怯んでしまっていた。

 

梨子「…関係ないなんて勝手に決めつけるのはだめですよ?」

梨子「私たちは“仲間”なんですから♪」

 

仲間とは時に都合のいい括りの言葉へと変貌する。

こういう秘密にしておきたい事情についても簡単に仲間というだけで、口を開かせようとする。

そんなことをするような間柄ではないはずなのに。

 

ダイヤ「…仲間だからと言って簡単に話すようなものではないですよ、梨子さん」

梨子「あの時は私を“こちら側”とかいって仲間に引き入れようとした癖に…よく言えますね?」

 

不穏な空気が依然として流れる。

あの時の会話をしているらしいが、俺はその会話をちゃんと聞いていたわけではなかったから何を話しているのかは分からない。

 

優馬「…梨子、ちょっといいかな」

梨子「っ!うん!♪なにかな?」

優馬「…なんで俺がここにいるって気づいたんだ?」

梨子「…なんのこと?なんとなくここかな、って思ってだけど」

優馬「違うよね?恐らくGPSと盗聴器、もしくは監視カメラを頼りに来たんだよね?」

梨子「…根拠は何?」

 

そこで僕は話した。

あの時、梨子が現れたタイミング、そして今のタイミング。

いずれもダイヤが行為をする直前、今は事実に気づいたその瞬間。

全てがベストなタイミングだった。そう、あからさまに狙ったかのように。

GPSはあくまでも位置情報が分かるくらい、ここまでのベストタイミングを図れるようなものではない。

すると、GPS以外の何か別の物が必要となる。

そうなると、恐らく盗聴器、もしくは小型の監視カメラが妥当、とみているとそう話したのだ。

 

梨子「ふーん…」

優馬「…どう?」

梨子「うん、大正解。GPSと盗聴器を仕掛けてたの。」

優馬「…」

ダイヤ「…まるでストーカーじゃありませんか」

梨子「ストー…カー…?」

ダイヤ「はい、本当におぞましい…ストーカー、ですわ」

梨子「…ダイヤさんには言われたくないですね、皆の目を盗んで、その挙句、既成事実を、だなんて淫乱にも程がありますよ」

ダイヤ「淫乱…?」

梨子「ええ…まだ付き合ってもないのに、自分の感情だけで動いて、あんなはしたない…」

ダイヤ「っ!い、一種の愛情表現ですわ!!それよりも、盗聴器やらGPSやら…そちらの方が陰湿的で、気持ち悪いですわ!」

梨子「なっ!?い、陰湿的!?これは優君が心配で心配で…そんな母性本能からしたことですから!!」

 

あれ…なんか、不穏な空気が消えてくぞ?

お互いがお互い、とんでもないことを口走っている気がするけど…

あと愛情表現で既成事実は作らないし、母性本能でGPSはつけないからね?

 

優馬「…あー、一回2人とも落ち着k「「優(君)は黙ってて(ください)!!」」…えぇ?」

 

そうして彼女たちはなんだかよく分からない議論を始めた。

 

梨子「大体!ダイヤさんは優君に対して態度が気持ち悪いんですよ!全般的に!」

ダイヤ「はぁぁぁ!?どこがですの!?どこを見てるんですの!?その気持ち悪い陰湿な目は!」

梨子「陰湿なのは貴方も同じでしょ!?優君目の前にしたら何もできないくせに、いざいなくなったらニヤニヤしながら…薄ら寒い笑顔浮かべて…そういう所が気持ち悪いんですよ!」

ダイヤ「なっ!そういう梨子さんこそ、こそこそとそういうことしていて…何が母性本能ですか!母性本能の裏でニヤニヤしていたのでしょう!?」

梨子「そ、そんなことしてませんよ!!///」

 

ギャーギャーワーワー

鳴りやまない喧噪。練習の時間はもう過ぎているのに、よくもまあこんな時間まで話せるものだ。

俺は時間に遅れることを千歌に連絡して、茶葉を入れて啜っていた。

 

梨子・ダイヤ「「はぁ…はぁ…」」

優馬「…おわった?」

ダイヤ「…随分、落ち着いていますのね…」

梨子「もう少し興味を持ってくれてもよくないかな…?」

優馬「いや、入り込めるような隙が無かったし…」

 

なんだか彼女たちの怒りの矛先が俺の方に向けられているのは気のせいだろうか…

だけど、これは良い傾向かもしれない。

いつも通りの彼女たちに戻りそうな、そんな予感がする。

 

ダイヤ「…まぁいいですわ」

梨子「うん…なんかもう疲れちゃった…」

優馬「…お疲れ様、あと少し話していいかな?」

ダイヤ・梨子「「…?」」

 

今、このタイミング。

間違いなく彼女たちを救うためのチャンスはここしかない!

 

優馬「2人ともありがとう…ね」

梨子・ダイヤ「「え…?」」

優馬「俺はここまで好かれる人間じゃないと思うけど、こんなに想ってくれる子たちがいて、しかもスクールアイドルをしてるくらい可愛い子たちで…」

優馬「確かにGPSとか、既成事実を作ろうとしたとか…まぁ色々あるけどさ…」

優馬「別に嫌な気持ちにはならなかったんだ、不思議とね」

優馬「…多分、好意を持ってない人にこんなことされたらトラウマ物だよ、けど」

優馬「梨子とダイヤなら、全然、むしろ嬉しく感じるよ。」

梨子・ダイヤ「「…っ!///」」

優馬「ダイヤも梨子も不安だったんだよね。ごめん、気づかなくて…」

梨子「そ、そんな!」

ダイヤ「元はと言えば私たちの問題で!」

優馬「でも、不安にさせてしまったのは確かだ。そうだよね?」

梨子・ダイヤ「「…」」

 

問題と言えば確かに問題で彼女たち2人の問題なのかもしれない。

でも、少なからずその問題を発生させた原因は俺にもあると思う。

だから、彼女たちはこういう行動に移ってしまったわけで、やはりそれを償うだけの罪は俺自身、背負うべきなんだ。

 

優馬「だから、もう一度チャンスが欲しいんだ。」

梨子「え…?」

ダイヤ「チャンス…ですか?」

優馬「ああ…俺に2人の不安を拭わせてほしい…そのチャンスだよ。」

梨子「それって…」

ダイヤ「どういう、ことです?」

優馬「俺は…2人に俺の支えになって欲しいんだ。」

梨子・ダイヤ「「…え?」」

梨子「えーっと…?」

ダイヤ「それって千歌さんと曜さんと変わらないのでは…?」

優馬「あー…ニュアンスの問題かな、千歌と曜はいるだけで元気をもらえるし、何より安心するんだ。だから“そばにいてほしい”って言葉を使った。」

優馬「けれど、梨子とダイヤは違う。2人は頭が切れるし、部のことで色々考えてくれる。良き相談相手なんだよ。」

優馬「だから…俺にとっていてもらわなきゃ困る、大切で大事な存在…2人に俺を助けてほしいんだ。」

梨子・ダイヤ「「っ!!」」

 

梨子(そ、それって…!!///私が…!?///)

ダイヤ(わ、私が優にとって大切な存在…!///)

 

優馬「…梨子?ダイヤ?」

梨子「え、あ///いや、ごめんなさい///えっと、その…///」

ダイヤ「わ、私は優にとって大切な存在、なのですよね!?///」

優馬「え、あ、うん、そうだね。」

ダイヤ「ふ、ふふふ…♡」

梨子「ゆ、優君っ!!///私も、私もなのよね!?///」

優馬「あー、うん」

梨子「あは…♡えへへ…♡」

優馬「えーっと…それで、チャンスの程は…?」

ダイヤ「し、仕方ないですわねっ!♡優が私を必要とするなら、黒澤家の女として支えないわけにはいきませんし!♡」

梨子「だ、ダイヤさんだけじゃないですから!で、でも…優君が私のことを求めてるなら…♡」

優馬「あー…なんだかニュアンスが少し違う気がするけど…まあいっか…」

 

うまく行って良かった。

でも、少し違う。なんだか斜め上の方向で良くなった気がする。

が、まあいいだろう。もうとりあえず何でもいい。良くなれば。

 

優馬「じゃあ、練習行こうk「「ちょっと待って(ください)!」」…?」

ダイヤ「行く前に!支える上での条件がありますわ?」

優馬「じょ、条件?」

梨子「そんなに固くならないで、簡単なことよ?」

 

いや怖いわ。

条件って言葉が一番怖い。何を企んでるのか分からない。

 

ダイヤ「…そんな怖いことなんて何一つ企んでいませんわよ?」

 

心読まないで、ダイヤさん?

そういう所だよ、怖いところが

 

優馬「わ、分かったから…とりあえず条件って?」

ダイヤ「ふふ…♡それは…」

梨子「えいっ♡」

ダイヤ「ふふっ♡」

優馬「…えぇ?///」

梨子「ふふ、優君の腕、昔よりもほんとにたくましくなったね?♡」

ダイヤ「優、照れているのですか?可愛らしいですわね?♡」

優馬「そ、そりゃ照れるでしょ…///こんな可愛い子たちに腕組まれたら…///」

梨子「も、もう!///そういうこと言うの反則!///」

ダイヤ「と、とりあえず!条件というのは」

優馬「私たちも構ってくれなきゃ嫌だ…ってとこ?」

ダイヤ「分かってらしたのですね…」

梨子「そういうことだよ!」

優馬「えーっと…このまま練習に?」

梨子「もちろんだよ?」

ダイヤ「優に拒否権なんてありませんわ?」

優馬「…マジかぁ」

 

この光景を見て、千歌たちはどう思うだろうか

鞠莉たちはどう思うだろうか、善子たちはどう思うのだろうか

色んな人たちのことを考えると、恐ろしく感じてくる。

特に千歌と曜。

あれだけのことを言っておいて、今度はダイヤと梨子だなんて

 

優馬「あぁ…先が思いやられる…」

 

足取りが重くなりつつも、ダイヤたちと練習に向かう俺だったのだ。

はぁ…生きて帰りたい。

これは今日の目標になりそうだ…

 




いかがだったでしょうか?
これで最終的に優馬に堕ちたのが4人ですね
次は誰になるのやら…
この展開は恐らく全員堕とすまで行くと思いますが、そこまで精神が持つかどうか…
とりあえず次回こそは本編に合わせた内容を投稿したいと思います!
ここまで読んでいただきありがとうございました!
また次回もよろしくお願いいたします!


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第22話 前へ、前へと俺たちはまた歩みだす

こんにちは。
希望03です。
最新話投稿できました!!
今回こそ皆、出てきます!
お待たせして申し訳ありません!ぜひどうぞ!


 

~浦の星学院・屋上~

 

あれから俺たちは練習のために屋上に向かったのだが…

やはり、というかこうなることは予想できていた分、非常にだるい。

 

梨子「えへへ…♡」

ダイヤ「ふふ…♡」

優馬「…」

花丸「これはどういうことずら?」

鞠莉「…ダイヤ、ついに化けの皮が剝がれたわね」

果南「本性を見せてきた、っていうわけだね」

ルビィ「…お姉ちゃん」

千歌「やられた…まさか梨子ちゃんまで…」

曜「はぁ…」

善子「いつの間に…なんで…」

 

梨子とダイヤの2人は幸せムード全開の訳なのだが、他のメンバーが阿鼻叫喚というか

絶望しきっている者もいれば、イライラをむき出しにしてるやつもいるし…

どう説明したらいいのか分からないが、1つ言えることがあるとすれば、この状況は

正しく修羅場、カオスと言えるだろう。

 

花丸「それで、優さんは何か弁明はあるずらか?」

優馬「あー…それはですね」

梨子「花丸ちゃん、落ち着いて♪」

ダイヤ「そうですわ、私たちは条件を飲んだうえでこのようなことをしているのですから♪」

花丸「…ずら?」

果南「…条件?」

鞠莉「どういうことよ、それ…」

優馬「条件というか、なんというか…」

善子「煮え切らないわね!何かあったなら言いなさいよ!仲間でしょ!?」

優馬「いや、まあそんな重要なことでもなかったというか…ほんと、うん…違うんだよ…」

千歌「何が違うのー!?ゆ~うく~ん!!」

優馬「あぁぁ~~揺らさないでぇぇ…」

曜「優?話して?早く」

優馬「曜、怖いよ…話すから…」

 

そうして、俺はあの時の経緯を話した。

若干、危険性のあることは省いて…

それでいて彼女たちが納得しているかどうかは分からないが、少なくともこの場を収めることはできたんじゃないか、とは思う。

 

梨子「私としては一部始終話しても良かったんだけどなぁ…」

ダイヤ「そうですわね…周りへの牽制になりましたのに…」

 

どうやら2人は納得していないらしい…

あれを一部始終話すのはもはや牽制どころか通報されるのではないか…?

まだ彼女たちも周りが見えていないような気もするが、まあいいだろう。

 

曜「…でも、それで条件からして2人が腕組む必要性はなくない?」

梨子「あら、曜ちゃんったら嫉妬かしら?浅ましいわね?」

曜「は?私たちの優に手を出してきたから怒ってるんでしょ?」

梨子「“私たち”だなんて…助言したのは私なのに、ね。それも知らないんだぁ…」

曜「…どういうこと?」

優馬「あー…2人とも落ち着いて…」

 

なぜ喧嘩を始めてしまうのだろうか、だから嫌なのだ。

落ち着かせようにも2人してヒートアップしてこちらが抑えきれない。

それでいてもう片方のダイヤは、というと

 

鞠莉「…な~んか、臭いのよねぇ?」

果南「隠してることありそうだよね、ダイヤ」

ダイヤ「あら、話の内容は優の言ったとおりですわ、それとも優のことが信じられないのですか?」

鞠莉「信じられないとかじゃないわ、何か知られてはいけない何かがあるんじゃないかな、って」

ダイヤ「そんなものあるわけないじゃないですか」

果南「ふ~ん…まぁいいや、でも腕組むのはいただけないよね、しかも梨子と一緒に」

ダイヤ「腕組むくらい、なんてことないですわ。条件はききましたのよね?」

果南「条件はきいたけど、腕組むのは違くない?しかもあんな堅いダイヤが腕組むなんて…」

ルビィ「何かあったんだよね?お姉ちゃん。」

ダイヤ「…ルビィまで」

ルビィ「ねぇ~、おねぇちゃん♪お兄ちゃんをどうたぶらかしたの…?」

ダイヤ「誑かすだなんて、そんなことはしてませんよ、ルビィ。」

ルビィ「ふ~ん…」

 

こっちはこっちで3人にダイヤが責め立てられてて、なんだか見ていて可哀そうになる…

ルビィちゃんとかそんなに強気だったっけ?

変わりようがすごすぎて正直ついていけない。ただ、かなり3人とも怒っているみたいだった。

 

優馬「はぁ…もう疲れた…」

千歌「ゆ~うくんっ!」

優馬「おわっ!…千歌」

千歌「えっへへ~…♡丁度、梨子ちゃんたち離れたからぁ…ね?♡」

優馬「…暑苦しいんだけど?」

千歌「だからなに?さっきまで他の女の子侍らせてたのに」

優馬「分かったよ…それで、なんで君たちまで?」

善子「リトルデーモンの呼び声が私のもとに聞こえた、からかしらね?」

花丸「ずら。」

優馬「うん。よく分からないな。」

 

2人が離れたと思えば、今度は3人

彼女たちもたまに強引なところがあるから大変なんだ。

でもなあ…

 

千歌「えへへ…優くん…ゆうくん…♡」

善子「リトルデーモン…♡…優♡」

花丸「優さん…優さん…♡」

優馬「…」

 

まあ楽しそうだし、何も言わなくいいや…

あれ、だけど何か忘れてないか?

今日って何日だ?

確かラブライブの予備予選の結果発表って、1週間後…

今日はラブライブ予選から約1週間…

 

優馬「あ…」

千歌「?どうしたの、優くん?」

優馬「いや…今日、ラブライブ予備予選の結果発表じゃね?」

千歌「…あ」

「「「「「「「「「あーーーーーーーー!!!!!」」」」」」」」」

 

完全に忘れてた。

あんな出来事があったからか、ラブライブのことをすっかり忘れてた。

てか、俺らスクールアイドル部だよね、なんで忘れてんの?

いや、悪いのマネージャーの俺だけどさ。

 

優馬「…どうする、見る?」

「「「「「「「「「見ますっ!!!」」」」」」」」」

優馬「はいはい…」

 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

そうして俺はパソコンを開いて、ラブライブのサイトを開いた。

まだ予備予選の結果発表の時間は来ておらず、表示はされていなかった。

どうやら間に合ったらしい。

 

優馬「…ドキドキするな」

千歌「そうだね…でも、あれだけのパフォーマンスができたもん。きっと大丈夫だよ。」

 

相変わらず千歌には元気をもらえるな

いつもいつも励まされて…本当助かる。

 

優馬「…あ、来た。」

 

すると、皆がパソコンに寄ってきた。

…パーソナルスペース近いんだよなぁ

でも、皆気になるもんな、仕方ないか…

 

優馬「…お、あ「あったぁぁぁぁ!!!」…耳元でやめてくれよ」

 

助かる、は訂正しよう。

この馬鹿千歌、何にも考えてない!少しは俺のことも考えろ!

 

千歌「あった!あったよ!優くん!」

優馬「うん、そうだなー」

千歌「…なんかそうでもない?」

 

と言われると、確かに不思議だ。

馬鹿千歌に耳元で叫ばれるのはイラっとしたが、それではない。

なんだか合格したけど、どこか当たり前だ、と思ってた。

恐らく、それくらいAqoursが魅力的で、絶対通ると思っていたからだろう。

 

優馬「…そりゃあ、ね」

千歌「嬉しく、ないの?」

優馬「嬉しいよ。嬉しいけど…」

優馬「俺は千歌たちが合格するのは当たり前だ、と思ってたんだ。それも無意識のうちに」

千歌「え?」

梨子「それは…」

ダイヤ「慢心、ですか?」

優馬「慢心じゃないよ。でも、自信、なのかな」

優馬「これだけ魅力的で可愛い子たちが集まって、あれだけの感動するパフォーマンスを見せてくれて…」

優馬「正直、通らないわけないなって、そう感じてたんだと思う。」

 

「「「「「「「「「っ!!///」」」」」」」」」

 

優馬「だから、冷静でいられたのかなーって…千歌?」

千歌「ふぇっ!?///い、いやうん!そうなんだねっ!///」

優馬「…なんでそんな挙動不審なの?」

千歌「い、いや、うん!なんでもないから!///」

優馬「曜…なんでこのミカン娘はこうなっちゃってんの?」

曜「…可愛い///魅力的///えへ、えへへへ…///」

優馬「…どっかいってんな」

 

2人して様子がおかしい。なんでこうなったのかは分からないが。

それにこの2人だけではない。周りを見渡してみると

 

花丸「優さんに可愛いって…///えへへ…///」

善子「…///」

ルビィ「お兄ちゃんったら…えへ…///」

 

まず1年生だが放心状態が3名。

これは曜と同じ感じになってる。おそらくここから立ち直るのに数分はまだかかるだろう。

次。

 

鞠莉「魅力的、だなんて…///もうっ、ダーリンったら!///いくら私のことが大好きだからと言って、こんな公の場で…///」

果南「鞠莉ってば…可愛くて魅力的って言ったのは私に対してだよ?あとゆうは私のことが大好きなんだから、ね?あー…でもあとで2人きりになった時に言ってくれればよかったのになぁ…///照れ隠しのつもりなのかなぁ…可愛いなぁ///」

ダイヤ「鞠莉さんもダイヤさんも全く分かっておりませんわね?可愛くて、魅力的というのは紛れもなく私に対してですわよ?…やっぱり優は私のことが///さすがにあれはやりすぎにしても想いは一緒、ということですわね…///」

鞠莉・果南・ダイヤ「「「…は?」」」

鞠莉「果南もダイヤも2人して何を彼女面してるの?現実をちゃんと受け入れられていないのかしら?まあそれはAqoursの皆にも言えるけど」

果南「それは鞠莉もでしょ?そもそもゆうは誰も彼女にしてないし、そういうの痛いよ?それにあれだけゆうを突き放して、散々困らせたのに、あの日のことを覚えてて…私を受け入れてくれて…ふふっ、鞠莉とダイヤには無い絆が私とゆうの間にあるんだよ?」

ダイヤ「言わせてもらいますが、貴方たちは結局のところ救われた身でしかないのですよ?…それに比べて、私は優にとって互いが互いを認め合って、助け合い、かけがえのない関係、存在になっているのですから、果南さんや鞠莉さんでは到底及びません。」

鞠莉・果南・ダイヤ「「「…」」」

 

なぜ一言二言でここまで修羅場になることができるのだろうか

まあ喧嘩するほど仲がいいっていうし…

これはこれでいいのか?…いいとしよう。

しかし、三者三葉ではあるものの皆同じような反応しているのだが

あまり納得?していないのが1名いた。

 

梨子「…」

優馬「えーっと…梨子さん?」

梨子「…なに?」

優馬「怒ってらっしゃいます?」

梨子「べっつに!」

優馬「…教えてくれない?」

梨子「いや。」

優馬「梨子、お願いだよ」

梨子「うっ…い、いや!」

優馬「梨子…」

梨子「うぅ…だって、あの時のライブは私、東京でいなかったから」

 

そう梨子はつぶやいた。

きっと寂しかったのだろう。そして俺はそんな彼女の気持ちをなんでわかってあげられなかったのだろう。

 

優馬「ごめん、梨子」

梨子「…ううん、私が勝手に拗ねただけだから」

優馬「いや、梨子のこと分かってあげられてなかった。」

優馬「…あの時、梨子のこと、近くで見てあげられなかったけれどやっぱりあの舞台で自分のトラウマを克服できて、本当に良かったと思うし、帰ってきたときの梨子の笑顔を見て、綺麗だと思ったんだ。」

優馬「…今回はライブに参加できなかったかもしれないけれど、あの時同じように輝いて、同じように最高の笑顔で帰ってきてくれた梨子はやっぱり綺麗で魅力的で可愛い女の子だってそう思ったよ。だから…って梨子?」

梨子「あう…///ゆ、優君…///て、照れちゃうからぁ!///」

優馬「え、あ、ごめん」

 

心外だ。なぜ俺は怒られなくてはならないんだ。

俺は梨子のことを想って気持ちを伝えたのに。

なぜ顔を真っ赤にしてまで怒られなくてはならないんだ。

 

梨子「で、でも優君から綺麗で魅力的で可愛い女の子だなんて…♡」

優馬「え、いやそりゃそうでしょ。梨子は可愛いんだから。」

梨子「も、もうっ!///恥ずかしくなるからやめてよ~…///」

 

まあ色んな学年で修羅場とか放心状態になってる状況があったけども

結果は良かったし、次の地区予選に向けて良いスタートきれたのかな。

そう思いながら、皆を眺めていた。

 

優馬「そういえば、学校説明会の参加者は…」

 

そうしてサイトを見てみると、その参加者の文字には『0』の字。

PVの反響、そして予備予選の結果からの影響をもってしても未だ入学希望者にはつながっていないのだ。

 

千歌「0…」

優馬「…」

 

あれだけのパフォーマンス、そのおかげで勝ち取った地区予選への権利

その裏にはとてつもない練習量。そんな練習をこなしきれたのも学校を救って、輝きを見つけるために必死にやってきたため。

それなのに未だに増えてない、というのはきっと千歌たちにとって辛い現実だっただろう。

 

千歌「優くん」

優馬「どうした?」

千歌「私たちとμ’s、何が違うんだろうね…」

優馬「…」

 

そうだ、μ’sとの違い。

μ’sの人数は9人、彼女たちも同じように9人で同じような状況下

つまり、廃校の危機から救う、その名目から始めたスクールアイドル。

そこまでは同じだった。

だが、何が違うのだろうか…

 

優馬「…」

千歌「優くん…」

 

だめだ。男の俺がここで落ち込んだままでどうする

そう思っていた矢先、鞠莉に声をかけられた。

 

鞠莉「優」

優馬「鞠莉?」

鞠莉「東京、行きましょう」

優馬「え…?」

鞠莉「μ’sとの違いが分からないのなら見てみるべきだわ、いわゆる聖地巡礼ってやつね♪」

 

まるで楽しそうに鞠莉はつぶやいた。

 

優馬「聖地、巡礼…それ、いいかもしれない」

優馬「千歌、皆」

優馬「東京に、行ってみよう!」

千歌「…うん!」

果南「それじゃ、準備しなきゃね!」

ダイヤ「東京行のチケットも買わないとですわね」

花丸「また未来都市ずらぁ…」

善子「ずら丸…遊びに行くんじゃないのよ?」

ルビィ「あはは…」

曜「梨子ちゃんはこの前行ったばっかりだけど大丈夫?」

梨子「うん、大丈夫よ。それに優君の考えたことだもの、行かないなんて選択肢はないわ」

曜「ふふ、だよね!」

 

Aqoursとμ’sの違い。

それを見つけるために、そして自らの糧にするために

もう一度、東京へと俺たちは乗り出したのだった。




ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回、また東京編!
彼女たちは違いを、そして新たに輝きを見つけられるのか
そして優馬は皆をどう導くのか
次もまた更新が遅くなってしまうと思いますが、何とか書き上げたいと思います!
次回もよろしくお願いします!


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第23話 再びの邂逅

こんばんは
今回も投稿が遅くなってしまって申し訳ございません!
今回は原作にまた戻って、書きました!
また、あのグループと…ぜひ見てください!
どうぞ!


 

~東京・秋葉原~

 

千歌「着いたーーー!!」

優馬「なんかこの登場の仕方、デジャヴじゃないかな…」

曜「あはは…気にしない方がいいと思うよ…」

優馬「でも、着いたな」

曜「…うん」

 

今、俺たちは東京にいる。

ラブライブ予備予選の結果が出たあの日、予選は通ったものの

肝心の学校説明会参加人数が0

μ’sが成し遂げた廃校の危機、状況は全く同じはずなのになぜ俺たちは参加人数が増えなかったのか…

その答え、それかヒントかきっかけだけでも掴むべく、こうして東京に降り立ったのだ。

 

優馬「とりあえずどこ行くか、決めないとね」

 

そうこれが問題だ。

μ’sの原点でもあり、廃校を免れた高校、音ノ木坂学院に行くか、それとも秋葉原周辺のスポットを見回るか、はたまたμ’sの練習場所でもあった階段がある神田明神へと向かうか…

 

千歌「あの神社へ行こうっ!」

曜「神社?」

優馬「あー…神田明神のこと?」

千歌「そう!それそれ!」

優馬「どう?皆は」

 

そう聞くと、皆もリーダーの意見に賛同したのか、全会一致で神田明神に決定した。

 

優馬「じゃあ、行こうか」

 

すると、皆は動こうとしない。

 

優馬「…どうしたの?」

千歌「優くんはちょっと待ってて!」

優馬「あ…うん…」

 

彼女たちにとって優馬と街を歩くということはつまりデートに近いということ

隣を歩くというだけで、彼女たちには至福のものと昇華する。

つまり、ここから始まるのは「優馬の隣を歩むのは誰だ決定戦」だった!

 

千歌(ここで勝てば…優くんのそばに…♡)

曜(そばにいてほしい、って言われたからね、責任もってそばにいなきゃだもんね!♡)

梨子(ふふ、優君は私がいないとだめだもんね♡だから私がそばにいないと!♡)

 

花丸(こんなにお互い想いあってるのに…色んな女の子に色目を使われて、大変なんだよね?…オラが救ってあげなきゃ、だからここは…)

善子(リリーも、ダイヤも…ほんとずるい女たちばっかりよね…あんな女たちにリトルデーモンが誑かされないようにしなきゃ、それが主であるヨハネの使命だから…)

ルビィ(…誰にも渡さない。お兄ちゃんはルビィが守らなきゃ…だからここはルビィが…)

 

ダイヤ(ふふっ…♡やっぱりここは一番、信頼を置いている私がそばにいてあげなければ駄目ですわ♡これは運命、必然的な運命なのですから…♡)

果南(ゆうのためだと思って必死に自分の気持ちに栓をしてたけど、ここ最近は雌豚たちがなんだか誑かしてるもんなぁ…これからは私の番だってこと、思い知らせてあげなきゃね♡)

鞠莉(…ダーリンったら最近、全く構ってくれないもの。それなのに千歌っちや曜、梨子やダイヤまで…どれだけ女の子を侍らせれば気が済むのかしらね。一度、優に思い知らせてあげなきゃ、マリーが一番だってこと♡)

 

優馬(たかが隣を歩くってだけでどうしてここまで争えるんだろう…)

 

実は優馬は気づいていたのだ。

というのも皆の目線が明らかに自分の方に向いていて、さらに言えば

その眼の色が獣のような何か狙っているような目線をしていたのだ。

これから出かけるというのに、ここまで本気とは…

 

優馬「はぁ…できるだけ早くね…」

 

とりあえず俺は彼女たちの気が収まるまで、放置した。

 

千歌「よし、始めよう!」

果南「うん、そうだね。ここで時間潰してると(ゆうと一緒にいる)時間が無くなっちゃうからね」

善子「そうね、まあ勝つのは私だろうけど」

ダイヤ「あら、どの口がそれを言うのですかね?」

善子「…」

梨子「まあまあ…とりあえず始めちゃいましょ」

 

「「「「「「「「「最初はグー…!!!!!」」」」」」」」」

 

 

 

優馬「それで決まったんだね…」

ルビィ「うんっ♪」

善子「ま、ヨハネの力をもってすれば当然よねっ♪」

千歌「…ま、いっか。この後、もっと甘えれば。」

曜「千歌ちゃん?それって抜け駆け?私もいいんだよね?」

千歌「うーん、仕方ないなぁ…いいよ!」

梨子「千歌ちゃん?曜ちゃん?勝手に話し進めないでくれる?」

花丸「…1年生内で省かれた感があるずら」

優馬「マルちゃん?」

花丸「はぁ…」

優馬「…ごめん、ルビィちゃん、善子。ちょっと待ってて」

ルビィ・善子「「?」」

優馬「マルちゃん」

花丸「ずら…?」

優馬「…また帰りにでも一緒に街中デート、しよっか」

花丸「…へ?///」

ルビィ「え…」

善子「んな…!」

千歌・曜「「…はあ」」

梨子「…」

ダイヤ「またですか…」

鞠莉「嫉妬ファイヤーメラメラね…」

果南「ゆう…」

優馬「最近、マルちゃんと話せてない気がするし、気分転換がてら、ね?駄目だったかな」

花丸「だ、駄目なんかじゃないずらっ!!!///ぜひお、お願いしますっ!!///」

優馬「そっか、良かった」

花丸「ず、ずらぁ…♡」

千歌「堕ちた、ね」

曜「そうだね」

梨子「優君にはお仕置きが必要かなぁ」

 

俺の後ろで堕ちただのお仕置きとかいう不穏なワードが出ている中で

さっきまでそばにいた2人を見ると

 

ルビィ・善子「「…」」

 

あからさまに落ち込んでいた。

しかし、俺の考えは決してデートとかではない。断じて。

まあ彼女みたいな可愛い子とデートができたらどれだけいいか、と思うことはあるが

今回は以前、断ってしまった彼女たちとの約束を果たす時だったのだ。

 

優馬「ルビィちゃん。善子。」

ルビィ「…?」

善子「何よ…」

優馬「なに落ち込んでんのさ、2人も一緒に行くんだよ。」

ルビィ「…ぴぎぃ!!??///」

善子「はぁぁぁ!?///」

優馬「この前、東京に行ったときに一緒に遊ぶ約束してたのに行けなかったからね。」

優馬「それの払拭というわけではないけど、最近話せてないような気もするし」

優馬「2人は予定があったのかな…それなら申し訳ないんだけど…」

ルビィ「な、ないよっ!!///全然、全くない!!///」

善子「わ、私もよ!///絶対行きましょ!///」

優馬「そっか、良かったぁ…」

ルビィ「ぴぎぃ…♡」

善子「えへ、えへへへ…♡」

 

ダイヤ「優は女を誑かす天才なのですかね…それならきちんと教育してあげないと…」

鞠莉「それ私も参加していいかしら」

果南「私も加勢するよ」

 

そんなこんなで彼女たちとのひと悶着をなんとか抑えることに成功し、

ようやく俺たちは目指すべき場所、神田明神へと向かった。

 

~東京・神田明神~

 

優馬「…久しぶりだな」

千歌「…そうだね」

 

そう、ここは以前、あの東京でのイベントで自分たちの浅はかさを思い知らされた

その時に訪れた場所。そして

 

優馬「ここで初めて会ったんだよね…Saint Snow…」

 

最悪な出会い方をして、ある意味で俺たちに喧嘩を売ったグループ

Saint Snowともここで出会っているのだ。

 

優馬「…なんだか、こんなに離れているのに思い入れが深いような」

梨子「やっぱりスクールアイドルの力、なんじゃないかな?」

優馬「そうだとしたら怖いよ…」

曜「でも、ありえない話じゃないよね!」

ダイヤ「そうですわ。ここ神田明神はかつてμ’sが練習場所として使用していた場所でもあり、あのメンバーがバイトをしている場所でもある…いわゆる聖地、なのですから!!」

優馬「相変わらず熱いね…」

善子「…ねえ、私たちが隣に居ること忘れてないわよね?」

ルビィ「そうだよ、お兄ちゃん?」

優馬「うん、ちょっと怖いよ…?忘れてないから…」

 

彼女たちと話しながら、そしてダイヤのスクールアイドル豆知識や善子とルビィちゃんに思いっきり腕を掴まれて、身動きが取れなくなったり…

そんな感じで神田明神の階段を上がっていくとそこには

 

聖良「…あら」

理亜「…」

 

優馬「…嘘でしょ?」

 

こんな偶然があっていいのだろうか。

なんとそこにはSaint Snowの2人がいた。

聖良はびっくりした様子で俺のことを見てきたが、相変わらず理亜は物凄く睨んでくる。

もはや嫌われているんじゃないか、と思うくらいには。まあ当然ちゃ当然だけど

そしてまるで狙ったかのようなタイミング。アニメとか漫画の世界じゃないんだから…

 

千歌「優くん、どうしたの~…って、え…!?」

曜「優?千歌ちゃん?…っ!?」

梨子「…」

善子「Saint Snow…」

ルビィ「ほ、本物…?」

花丸「な、なんでいるずらか…」

 

東京の時に出会っていない3年生組を除いた皆が驚いていた。

それもそのはず、彼女たちは北海道出身のスクールアイドルであり、ここに来るのに相当なお金と時間、労力が必要になる。

そんな中で来ているのだから、そりゃその反応にもなる。

それにさっきまで話題に出てたし…

 

聖良「皆さん、お久しぶりですね…いや、優馬さんは違いましたか…」

優馬「…その言い方はやめていただけませんか?誤解を生んでしまうので」

聖良「ふふっ、分かりました…以後、気を付けますね♪」

優馬「…直す気ないくせに」

 

本来だったら、μ’sの後を追いつつ、皆で楽しく勉強する予定だった。

しかし、この出来事で空気は大きく、そして重たくなってしまった。

 

優馬「お2人はなんでここに…?」

聖良「…恐らく、貴方たちと同じですよ」

優馬「同じ…?」

聖良「私たちも実際、何が正解なのか分からないんです」

聖良「パフォーマンスも歌も、完璧にできているはずなのに、どこかμ’sやA-RISEと違う。彼女たちにはあるものと私たちにはないもの…」

聖良「一体、私たちは何が違うのか、というのを考えたんです。」

優馬「…答えは見つかりました?」

聖良「それは…」

理亜「勝って、勝って、憧れのグループが見ていた景色に追いついて、そして同じ景色を見る、それだけ。」

優馬「…大した自信だね」

理亜「…馬鹿にしてるの?」

優馬「馬鹿になんてしてないよ。ただ、とてつもない自信だな、と」

理亜「それが馬鹿にしてるっていうのよ!」

聖良「落ち着いて理亜。…貴方にとってはこれは虚栄かもしれませんが、私たちは本気です。その気持ちは踏みにじらないでください。」

優馬「…失礼しました。」

 

勝ち続ける。

それはとてつもない負荷のかかることで、そしてプレッシャーも段違いなのだ。

それを彼女たちはしようとしている。同じ景色を見るというためだけに。

ただ、それは千歌たちの目指しているものではないにしても、俺にはどこか同じような輝きを持っているような、そんなイメージが湧いていた。

すると、俺の隣から声が上がった。

 

千歌「あの、少しいいですか?」

聖良「あなたは…千歌、さん?」

千歌「は、はい!」

理亜「この人が…!」

千歌「?」

聖良「理亜、少し落ち着いて」

理亜「…ごめんなさい、姉さま」

聖良「すみません、妹が…それで何か?」

 

千歌にしては珍しく、弱気だった。

そして、彼女は尋ねたのだ。

 

千歌「…ラブライブ!勝ちたい、ですか?」

 

…これはさっきも俺が感じてた部分と一緒だった。

Aqoursがなぜ、ラブライブに出るのか、それは優勝して学校を救うためでもあり、彼女たちにとっての輝きを見つけるためだった。

それに対して、Saint Snowはラブライブで優勝するために、勝つために出る。

この違いは一見、優勝という目標は同じだが、根本的な中身は違う。

だからこその質問だったのだろう。

 

聖良「逆に聞き返しますが、勝ちたいという思いがないのになぜラブライブに出るんですか?」

千歌「そ、れは…」

聖良「私たちは勝ちたいんです。同じ景色を見たいんです。それが憧れならなおさら…」

聖良「そして、勝って…見つけてほしいんです。見てほしいんです。ある人に…」

 

すると、聖良はこっちをちらっと見た。

何の意図をもってしてなのかは分からない。だけど、どこかその顔は寂しげだった。

 

千歌「ある人…ですか?」

聖良「えぇ…だからその分、想いが強いんです。」

聖良「もう一度聞きます。勝ちたいという思いがないのに貴方たちはなぜ、ラブライブに出るんですか?」

千歌「…」

 

聞き返される千歌。

それに対して、千歌は何も答えることができなかったのだ。

 

優馬「千歌…」

聖良「…それでは私たちはそろそろ行きますから。」

優馬「帰られるんですか?」

聖良「いえ…ラブライブ決勝大会の発表がUTX前で行われるので、私たちはそちらに」

優馬「…そうでしたか。情報不足でした。」

聖良「そういう時もありますよ。」

理亜「姉さま、時間が」

聖良「分かっているわ…じゃあそういうことなので…」

優馬「あ、うん…邪魔して申し訳ない。」

聖良「邪魔だなんて…まあ次会う時を楽しみにしていますね?」

理亜「…またね、兄さん」

 

そうして、彼女たちは決勝大会の発表へと向かっていった。

俺にとってめんどくさい置き土産を残して

 

千歌「…」

優馬「…千歌」

 

まただ。

またかける言葉が見当たらなくなってしまった。

こういう時、どういう言葉が正解なのか、分からない。

頭が良いなんて、何の役にも立たない。

結局、俺は何も声がかけられないのだから。

そんな苦い顔をしていると、千歌から先に声が出た。

 

千歌「ねぇ、優くん」

優馬「…?」

千歌「私たちがしてることって実は間違いなのかな?」

優馬「…それは」

千歌「だって、私は学校を救いたくて、そのためには皆に知ってほしくて、そして出会ったのがスクールアイドルで、あの輝きを私自身が見つけて、それで…優くんと…」

 

そうしてずっと千歌は自分の想いを赤裸々に告白した。

…果たして、ラブライブに出ること、優勝するということに1つの正解があるのだろうか。

確かに第一に優勝を目指している、勝ちたいがためにスクールアイドルをしているグループだって必ずある。

しかし、俺たちみたいな、こんな境遇の中で、こういう思いを持ってるグループだっているのだ。

そんなグループが優勝を目指すのは、間違っているのだろうか…

 

優馬・千歌「「…」」

 

何も言葉が出なかった。

正解が分からないから、余計に混乱してしまって何も出なかった。

すると

 

鞠莉「はぁ…もうっ!!優!!千歌っち!!」

優馬・千歌「「っ!!??」」

鞠莉「なーに迷ってるのよっ!とにかく今は前に進むしかないでしょう?」

ダイヤ「そうですわ。正解なんて誰にも分からないのですから、とにかく私たちは私たちのやりたい事、やるべき事を全力でするしかないのですから」

果南「うんうん。ここでうじうじしてたって何も変わらないよ?」

優馬「…鞠莉、ダイヤ、果南」

 

やっぱり幼馴染の力、なのだろうか

いつもいつも俺の心は彼女たちに見透かされている気がする。

そして、いつも助けられるんだ。

 

優馬「はは…それもそうだ。」

 

しっかりしろ。

もううじうじと悩むのはやめるんだ。

今はやるべき事がある、それを遂行するだけだ。

 

優馬「それじゃ、俺たちも行こうか。決勝大会の発表を見に」

 

こうして俺たちは決勝大会の発表を見るために

Saint Snowの後を追って、UTX前まで向かうこととなった。

 

~道中・Aqours side~

 

千歌「…」

 

学校を救いたい。私にとっての輝きを見つけたい。そして何より…

優くんと一緒に優勝して、ありがとう、と大好きを伝えたい、ただそれだけなのに…

 

千歌「はぁ…」

曜「…ねぇ、千歌ちゃん?」

千歌「曜ちゃん?」

曜「私はラブライブに出るからには優勝したい。勝ちたい。でもね」

曜「それ以上に優と一緒に光を見つけたいの」

曜「それで出会った時から好きだった、ってことを伝えたい。」

曜「千歌ちゃんも多分そうだよね?」

千歌「…」

曜「それに、その想いを抱えてるのは私たちだけじゃないと思う。」

曜「ここにいるメンバー、皆そうだと思うんだ。」

曜「ね、り~こちゃん♪」

梨子「そこで私に振るの!?」

梨子「…でも、そうね。私も中学の時に優君と出会ってから、ずっと好きだった。きっと優君には気づかれてるかもしれないけれど、想いはちゃんと伝えたい。」

梨子「そのために、まずは優君を変えてくれたスクールアイドルで私は彼にもう一度、光を与えたい。だから勝ちたいという思いももちろん大事かもしれないけれど、それが正解だとは限らないと思うわ?」

千歌「曜ちゃん、梨子ちゃん…」

千歌「そうだね、そうだよね!」

 

そうだ。私たちは優くんっていう愛しの人と輝きを見つけたくて、

一緒にこのスクールアイドルを始めたんだ。

勝ちたいからやるんじゃない、正解なんてないんだ!

 

曜「…治ったみたいだね」

梨子「ほんと、良かったわ…」

千歌「えへへ…ごめんね、気を使わせちゃって」

曜「大丈夫!それよりも…ルビィちゃんの顔が…」

千歌「ルビィちゃん?」

 

どうしてここでルビィちゃんの名前が出てくるのだろうか

一体何が起きたのか、確かめるために彼女の顔を見てみると

 

ルビィ「兄さん?兄さんって…まるで昔から会ってたみたいに…まさか…いや、でも…」

 

千歌「…えぇ?」

曜「ね?」

千歌「は、花丸ちゃんや善子ちゃんは!?」

梨子「それが…」

 

花丸「最後の理亜ちゃんの顔…あれは雌の顔してたずら…絶対何かあったずら…」

善子「なによ、兄さん…とか親しげに…あんたは優馬のどういう存在なわけ?あー…イライラするわ…」

 

千歌「怖いっ!」

梨子「ね?」

千歌「かんっぜんに闇落ちだよ~…」

 

確かにSaint Snowの理亜ちゃんは彼女たちと同年代で

ライバル心を持ってしまうのは分かるけど…

 

梨子「…でも、気持ちは分からなくもないというか」

曜「そうだよね~…」

千歌「え」

梨子「千歌ちゃんは感じない?理亜ちゃんもそうだけど、あの聖良さんの感じ…」

曜「あの人ほど優に対して色目使ってる様子があからさまなのなかなかないよねー…」

千歌「…確かに」

 

言われてみればそうだ。

気が付いたら優くんと連絡先交換してたり、何回か電話してるみたいだし…

今日だって、私たちを見てるっていうより、優くんばかり見てるみたいだったし…

しかも顔が女の顔してたし…

 

千歌「…ギルティだね」

梨子「…だよねー」

曜「どうする?思い知らせる?」

 

ダイヤ「少しは落ち着いてくださいな」

千歌「ダイヤさん!」

鞠莉「そうよ~、大体あんな女程度の色目ごときで優が惑わされるわけないじゃない♪」

曜「そうかなー…」

果南「そうそう!それにゆうはもう私にメロメロだと思うしね~」

梨子「それはそれで聞き捨てなりませんね?」

ダイヤ「梨子さん。落ち着いてください。」

ダイヤ「結論、聖良さんに惑わされる前に私たちAqours皆で優を堕としてしまえばいいのですよ。」

梨子「…なるほど」

ダイヤ「その後のことはその始末が終わってからに致しましょう?」

ダイヤ「ほら、ルビィもですわよ。」

ルビィ「ぴぎぃっ!?…お姉ちゃん?」

鞠莉「善子も」

果南「花丸ちゃんも」

善子・花丸「「っ!?」」

ダイヤ「Saint Snowごときに彼は渡しません…徹底的に彼を守ります。いいですわね?」

「「「「「「「「おーーーー!!!!」」」」」」」」

 

優馬「っ!?なに、どしたの?怖いんだけど…」

 

こうして千歌たちは謎の団結を成し遂げ、UTXへと向かっていった。

 

千歌(想いはひとつに!だもんねっ♪)

 

優馬「ブルッ!?」

優馬「さ、寒気が…」

 

そして優馬は人知れず、寒気が止まらなくなっていたとさ。




いかがだったでしょうか?
かなり文量が多くなってしまって申し訳ございません…
なんか原作通りに行くのも面白くないな、と思いおもわずちょっとしたヤンデレ要素も含ませてしまいました笑
というわけで、次回は24話!
まだこのまま原作通りにやっていきたいと思うので、よろしくお願いします!
ここまで読んでいただきありがとうございました!


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第24話 道は続くよ、どこまでも

こんばんは!
遅くなってしまいました!!
AZALEAのストリーミング配信のライブを見ていたら執筆を一時忘れてしまっていました…
ですが、何とか書き上げることができました!
今回もSaint Snowが出てくるので推しの人は嬉しいかもですね!
それではどうぞ!


~UTX前・Saint Snow side~

 

聖良「…少し、早く着いてしまいましたね」

理亜「ごめんなさい…本当はあの時、まだ時間はあったのだけれど…」

聖良「気にしてないわ…私もあの場所は少し居心地が悪かったから…」

 

私たちはあの時、決勝大会の発表前に願掛けのつもりであのμ’sの聖地である神田明神へと赴いていた。

そんな中、偶然にも会ってしまったのだ。

彼女たちに。そして、彼に…

あの時は嬉しさよりも驚きが勝ってしまった。

なんせ、来るなんて知らなかったもの。しかもこんなところで会うなんて

果たして、ここに呼び寄せたのは神なのか、はたまた悪魔なのか…

あの居心地の悪さを生み出したのだからきっと悪魔よね…

すると、理亜が声を出した。

 

理亜「私、兄さんに対してひどい態度取っちゃった…」

聖良「…そんなことないわ、優君だって気にしてなんて「そんなはずないっ!!」っ!」

理亜「だって…だって、あの時の兄さん、私に対して少し敵対心が出てた…」

理亜「それなのに兄さんは気にしてないなんて…そんなのありえない…」

聖良「理亜…」

 

こんな関係になってしまったのは、私が悪い。

覚えていないのなら、思い出させるまで、とか浅はかな思慮で私たちの行動に枷をかけて…

結局思い出してもらえないまま、今まで引きずってしまっている…

それなら私はもう変わるしかないのだろうか

 

聖良「…もう言ってしまいましょうか」

理亜「え…?」

聖良「私たちと優君との関係性、実は…っていうのを」

理亜「だ、だめよ!姉さま!…兄さんを余計に混乱させてしまう!」

聖良「…理亜は良い子ね」

 

なんて良い子なのだろう。

やはり私の自慢の妹。こんなに相手のことを思いやれるなんて

いえ、もしかしたら優君限定なのかもしれませんね?

…その点、私は相変わらず悪い子ですね。

混乱させてしまう。彼を困らせてしまうなんて、分かっているはずなのに…

 

聖良「ごめんなさい…早計過ぎたわ」

理亜「…姉さま」

聖良「そうね…私たちはやるべき事をやりましょう。」

 

彼に関係性がどうとか、過去に捕らわれて見てもらうんじゃなく

今の私たちを見てもらうために。

そうして、私たちは決勝大会の発表まで待ち続けていた。

 

 

~Aqours side~

 

私たちは今、UTX前にいます。なぜかって?

それはラブライブの決勝大会の発表があるからです!

…ていっても、Saint Snowが向かっていった後を追ってっただけなんだけど

まあそれは置いといて!

私たちは発表を聞きに来たのですっ!

 

花丸「か、壁に大きなテレビがあるずらぁ!未来ずらぁ…」

善子「ずら丸…驚き過ぎよ…」

優馬「でも、いつ見ても豪勢だなぁ…」

優馬「…しかも至る所にはスクールアイドルのグループたちが、正しく聖地だろうね」

曜「…目移り?」

優馬「その言い方はやめてもらえません?曜さん?」

 

…優くんが女の子に目移りしてた、っていう事実はあとで追及するとして

今は待つだけ、時間通りであればあと数分のはずなんだけど…

 

千歌「あ」

ダイヤ「来ましたわ!」

 

モニターに表示されたラブライブの文字。

それに圧倒される私たち。そして会場はなんと

“アキバドーム”で行われることとなった。

 

ルビィ「アキバドームってあの…」

果南「ラブライブの決勝ってそんなところでやるんだね…」

鞠莉「ちょ~っと…びっくりで~す…」

 

アキバドームは私でも知ってる分、そんなところでやるんだ、と思わず気負ってしまった。

それは私だけじゃなく、皆も同じで…

そんな中、前からあの人たちが現れたのだ。

 

聖良「皆さんも来ていたのですね」

千歌「…もちろんです」

聖良「気持ちだけは十分、みたいですね?」

千歌「はい…でもその言い方、少し棘がありますよ?」

聖良「あらそうでしたか…申し訳ございません。ですが、あの時のようなおどおどとした感じではなくなりましたね?」

聖良「…まるで私たちを完全に敵視してるみたい。」

千歌「そんなこと…」

ダイヤ「そんなことありませんわ」

果南「うん。それはお互いの捉え方の問題だよ。ただ私たちはあなたたちに憧れを持ってるだけ。そしてライバルとしても、ね?」

鞠莉「だから、敵視なんてしてませーん!」

聖良「そうでしたか、最近すぐに突発的になってしまって…良くないですね」

聖良「それより向こうにいる優馬さんの元へ行ってよろしいでしょうか?少し用事があるのですが…」

梨子「すみません。今、優君は取り込んでいて、手が離せないんですよ。」

曜「…お引き取りお願いできますか?」

聖良「そんなに彼を手放したくないのですね。…余りの過保護で反吐が出そう。」

千歌「はい?」

聖良「いえ、何も。それでは私たちはこれで…お邪魔して申し訳ございません。」

理亜「…貴方たちなんかに、兄さんは絶対に譲らないから」

ルビィ・花丸「「…」」

善子「へぇ…」

 

そんな想いと言葉を残して、彼女たちは去っていった。

 

優馬「今、Saint Snowがいなかった?」

千歌「っ!…い、いなかったよ!」

優馬「…そっか。まあ彼女たちも忙しいもんね。」

千歌「な、なん「なんでそんな心配をするずら!?」は、花丸ちゃん?」

優馬「マルちゃん?」

花丸「…優さんは関係ないよね。あの人たちと。何も。」

優馬「そ、そうだけど…一応、知り合った仲だから」

花丸「知り合った仲?あんなに仲悪そうなのに?…マルは心配ずら。」

優馬「心配?…心配かけるようなことはしてないような気がするんだけど…」

花丸「優さんが気付いていないだけずら…」

優馬「え…?」

花丸「マルは…マルはっ!「は~い。そこまでで~す。」鞠莉ちゃん…」

鞠莉「花丸、落ち着いて?それ以上言ってしまったら優を困らせてしまうだけだわ?」

花丸「あ…」

優馬「困らせるって…どういうこと?」

鞠莉「…今はまだ分からなくてもいいわ?いずれ分かることだから」

優馬「…そう」

 

その間、ものの数分、あるいは数秒の領域だったのかもしれない。

でも、梨子ちゃんが声をかけるまで、その空間はまるで時が止まったかのように

時の流れが遅く感じていた。

 

梨子「ねぇ、優君?」

優馬「どうしたの?」

梨子「これからのことなんだけど…あ、今の話の続きじゃないよ?ちょっと行きたい場所があって…」

優馬「行きたい場所?…う、うん、そうだね。まだ時間があるから大丈夫だと思う。それでどこに?」

梨子「ありがとう!えっと、音ノ木坂に行きたくて…」

優馬「音ノ木坂って…あのμ’sの、というか梨子の元高校?」

梨子「うん!」

優馬「なんでまた…大丈夫なの?」

梨子「あはは…心配してくれるんだね///…うん、トラウマを克服して、またピアノを弾けるようになった今なら行ってみたいな、って…」

優馬「…」

千歌「行こうよ!行ってみよう!私もμ’sが生まれた高校、すごい気になるもん!」

優馬「千歌…」

ルビィ「る、ルビィも見てみたいです!」

善子「ふっ、波動を感じる…」

果南「いいんじゃない?行ってみても」

鞠莉「私も行ってみたいデース!」

ダイヤ「わ、私も時間があるのであれば行ってみたいですわ…///」

曜「行こうよ、優!」

優馬「皆…」

優馬「はぁ…いいよ、行こうか」

 

こうしてこの旅行の締めくくりとして私たちは音ノ木坂へと向かうことになった。

 

~音ノ木坂学院・優馬side~

 

UTX前での決勝大会発表後、俺たちは最後の締めくくりとして(?)

梨子の提案で音ノ木坂へと向かうこととなった。

確かにμ’sの高校で有名な高校なのだが…

 

優馬「果たして関係者でもないのに勝手に入ってしまっていいのか…しかも俺、男だし…」

 

別に行くことに関しては反対なんてしない。

むしろきっかけを見つけられたり、何かしらのヒントを得るためのものが見つかるかもしれない。

だけど、そこには男女の壁というものが存在していて、浦の星は共学になったからこそまだ入るのに困らないのだが、音ノ木坂は今でも女子高であり、その中、男が入ってしまっていいのだろうか、という懸念に駆られてしまう。

 

千歌「もー!気にしないのっ!」

優馬「いや…気にするでしょ…普通…」

 

この楽観的馬鹿な千歌にフォローをいただいたところで…と言いたいところだが

これがまた意外にも心が軽くなるのだ。意外にも。

 

優馬「だけど…俺が入れるかどうかは置いておいて、ほんとに入れるの?」

梨子「うーん…警備員さんとかは特にいなかったと思うけれどなぁ…」

 

警備員がいないからいいというわけでもないうえ、目の前に来て、怖気づいてしまい、結局俺たちは校門の前で立ち往生となってしまった。

すると、

 

?「こんにちは、貴方たちは…もしかしてスクールアイドルの方々?」

千歌「そうです!!」

優馬「ど、どうも…」

 

後ろから音ノ木坂の生徒と思わしき人物に声をかけられた。

東京の女の子ってだけで、怖いのに声をかけられて余計にビビってしまった…

もともと陰キャ、人見知りなのがバレたな、これは…

 

?「あはは、そこの男の子、キョドりすぎじゃない?」

優馬「いや…///うん…///やめてください…///」

 

優馬(あーーー!///恥ずかしすぎるって!!///何の恥さらしだよ、これは!///)

 

顔を真っ赤にする程度で何とか抑えられていたが、優馬はこの時、心の中で転げ回るほどに悶えていたのだ。

しかし、優馬は気づかなかった。

周りの女の子たちも同じように悶えていたことを…

 

千歌(か、かわいい~~~~♡)

梨子(初めて見たわ…///優君の恥ずかしがってる顔…///可愛い…♡)

曜(やばい、破壊力やばいって…♡)

善子(はぁぁぁぁ…♡尊い…♡好き…♡)

花丸(そういうところずらよ~…♡好きになっちゃうずら~…♡)

ルビィ(お兄ちゃんってば…♡ほんっとに可愛いなぁ…♡)

鞠莉(優ってばかわいすぎよ~~♡久しぶりに見たわ~♡)

果南(あ~~♡もう、可愛い、好き♡なんでこんなに誑かすかな~♡)

ダイヤ(はぁ…もっと見せてほしいですわ♡写真に納めなくては…)

 

?「いやぁ…君、可愛いね笑」

優馬「可愛いって…///やめてくださいよ…///」

?「…かっこいいうえに可愛いって罪な男だねぇ」

優馬「かっこよくもありませんし、可愛くもありませんよ…」

?「そんなことないよ~…私、惚れそうだったし!」

優馬「はい?」

千歌「ぬえぇ!?」

曜「ちょ、ちょっと「待つずらぁぁぁ!!!」あ…」

花丸「…優さんは渡さないずらよ??」

?「…ふ~ん、君、愛されてるんだね~」

優馬「あぁ、はぁ…?」

 

確かに愛されてるのか?

最近は狂気じみているような気はするんだけど…

まあいっか、とりあえずこの人に聞いてみなくては…

そうして俺は彼女に聞いてみることにした。

 

優馬「…それで何か用ですか?」

?「あぁ!そうだった!ごめんね~、こっちから声かけといて」

優馬「いえいえ~…それで?」

?「もうせっかちだなぁ!」

優馬「いやあんたが声かけてきたんだからね?」

?「あはは!面白いなぁ」

?「そうだね、とりあえず校舎の中入ろうよ。そこでお話しよ?」

優馬「あ、入っていいんですね…」

 

聞いてみると校舎に入っていいらしい。

ただ、彼女に声をかけられなかったら、と思うとちょっと背筋が凍る…

ということで、俺たちは校舎へと向かった。

 

 

?「はい、とうちゃーく」

優馬「ここは…どこ?」

?「ん?μ’sたちが使ってた部室だけど?」

優馬「ここが!?」

?「あ、今何もないと思ったでしょ」

優馬「いや、まぁ…ほんとにないし…」

 

連れてこられたのはなんと元部室だった場所。

辺りを見渡してみてもそこにはμ’sの面影が残っていなく、何の変哲もないただの教室だったのだ。

 

曜「ほんとに何もない…」

千歌「…なんにも残ってないんですか?」

?「うん、何もない。毎度毎度音ノ木坂を訪れるスクールアイドルたちが多いんだけど、μ’sは何も残していかなかったの。」

優馬「…なんでなんですかね」

?「自分たちのものも、優勝の記念品も、記録も。ものなんかなくても、心は繋がっているから、それでいいんだよ、って。」

優馬「心は、繋がっている…」

?「うん。彼女たちは自分たちの絆は物なんかで繋ぎ止められているようなそんな簡単な物じゃないって言いたかったんじゃないかな?」

優馬「…すごい、ですね」

?「あはは!君、語彙力無くなっちゃってるよ~!」

優馬「すみません、言葉が出なくて…」

?「…そうだね、でも納得できちゃったんだ。そういうグループなんだなって」

優馬「そう、ですね…俺は見たことがないんですけど、なんだかそんな気がします…」

?「そっか、うん!そう言ってくれるとなんだか嬉しいよ!」

?「てことで、これでいいかな?」

優馬「はい、ありがとうございました。」

?「じゃあ戻ろっか」

 

俺たちは元居た校門まで一緒に戻ることになった。

しかし、μ’sの足跡、軌跡が見れるかと思っていた分、最初は拍子抜けしてしまった。

それでも彼女の言葉から出てきたμ’sの想い、それを聞いて俺はなんだか少しだけヒントが得られたような気がした。

 

千歌「ねぇねぇ、優くん?」

優馬「千歌?」

千歌「どうだった?来てみて」

優馬「うーん…まぁ何にも残ってなかったのは正直残念ちゃ残念かな」

千歌「そっかぁ…私は良かった、かな。」

優馬「なんでか、聞いてみてもいい?」

千歌「ふふっ、だってね、μ’sのつながりってどこか私たちと似てるなって!」

千歌「ものとか思い出とかでのつながりなんかじゃない。私たちはずっと心でつながっているって、なんだか私たちも同じだな、って!」

 

そう言って、彼女は俺にはにかんだ。

その笑顔が俺にとって、まぶしくて、綺麗で…

思わず、目をそらしてしまった。

 

優馬「…そっか」

千歌「あ!今、目を逸らしたな!なんで~~!!」

優馬「気にしなくていいんだよ、馬鹿千歌。」

千歌「むぅ!馬鹿じゃないもん!」

梨子「…随分、楽しそうだね。優君?」

優馬「…梨子さん、怒ってらっしゃいます?」

梨子「ううん?私たちを置いて2人で楽しそうにお話してるから、混ぜてもらおうと思って、ね?」

千歌「…梨子ちゃん、邪魔しないでくれる?」

梨子「邪魔なんてとんでもない!私はそんなに楽しそうにしてるなら一緒に話せばもっと楽しくなるかな~って思っただけなんだけど…違ったのかな?」

千歌「…」

梨子「沈黙は肯定、だよ?千歌ちゃん?」

千歌「いいよ、別に一緒に話そうよ。」

梨子「ふふっ、ありがとう♪千歌ちゃん♪」

千歌「…」

 

またか。この展開。

頼むからもう少し仲良くできないかな…

そう思いつつも俺は梨子ちゃんへと話の対象をシフトした。

 

優馬「梨子ちゃんは今回来てどうだった?」

梨子「私は、そうね…」

梨子「やっぱり音ノ木坂が好きだったんだなって…」

梨子「もちろん、浦の星も好きよ?でも、やっぱり今回見に来て、久しぶりに肌で感じて、やっぱりここが好きだったんだなって、はっきり分かったの。」

優馬「…そっか、なら良かったよ。梨子に喜んでもらえたみたいで」

梨子「ふふ、あーあ、でも音ノ木坂も共学になって、そこに優君がいたら私は浦の星じゃなくて音ノ木坂でずっとピアノやってたのかなぁ」

優馬「どうだろうね、でも、それはそれで退屈じゃない?」

梨子「そうかもしれないわね。今、皆とこうやってスクールアイドルができてることが幸せだもの。…ここが私の居場所なんだって。そう感じてる。」

 

そうやって言い切った梨子の顔はどこか強気で、美しかった。

きっと彼女にとってここに来ることは容易ではなかったかもしれない。

本当は怖かったかもしれない。けれど、勇気を出してここに踏み込んで、また新しい道へとスタートを切れた。

本当に強いんだな、って改めて思ってしまった。

 

優馬「…皆、思い思いあるよね」

?「そろそろ校門だけど、やり残したことはないかい?」

優馬「大丈夫です。」

 

そうして、俺たちは校門の前で整列して

 

優馬「…ありがとうございました。」

 

そう小さく呟いて、俺たちは去ることにした。

 

優馬「そういえば、あの女の子は…」

 

ふと気づいたかのように、後ろを振り返ると、そこにその生徒はいなくなってしまっていた。

 

優馬「何の人だったんだろう…」

 

μ’sのことに詳しく、そしてまるでその場にいたかのように、μ’sから聞いたかのように

色々なことを知っていた。

もしかして、彼女は…

 

優馬「まさか、ね。」

 

ただ、俺は今回、音ノ木坂をみて感じた。

このラブライブに終わりはなく、何年も何年もそこに輝きがある限り、

奇跡を信じる限り、道は続いていくのだ、と。

そして、それに終わりなんてない。

俺たちの想いも同じで、ラブライブで優勝するため、学校を救うため、輝きを見つけるため、確かにその目標を聞いていたら、本当に勝ちたい、と思っているのか疑問に思うのも無理はない。

しかし、そういう考え方をする人もいるわけで、目指す人がいる限り、その想いや考え方に固定概念なんて存在しないんだと、そう感じた。

どんな道でも続いていく、どこまでも。際限なく。

俺たちは敷かれたレールをただ歩いているだけじゃない。色んな想いを背負って、俺たちは走り出す。

そのきっかけを俺たちは掴むことができたのかもしれない…

 

優馬「よし、帰るか」

 

そうして俺は先に行った皆の後を追うように走り出した。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
めちゃくちゃ長くなってしまいました…
本当に読んでいただけて嬉しい限りです…
次回も本編に沿いながら書きたいと思います。
その後、何個か小ネタを挟んで、2期シーズン、という流れで今のところ、考えています!
長くなってしまいますが、飽きさせないように頑張って書きたいと思うので
これからもよろしくお願いいたします!
改めて、ここまで読んでいただきありがとうございました!

追記
アンケートもご用意しました!
小ネタで挟んでほしいキャラです…!
今回はSaint Snowがありません…すみませんっ!Aqours限定になります!
やってほしいキャラを選んでいただけると嬉しいです!
よろしくお願いします!


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第25話 思考を巡らせ、輝きは近づく(前編)

こんばんは!
今回は即投稿!!
ようやくペースが戻ってきました…!
でもスクフェスのイベントやってるとまた時間無くなるんですよね…
今回、UR善子ちゃんだし…ずるい!
ですが、一日更新間に合いました!(褒めてほしい)
ということで、どうぞ!


~帰路・電車内~

 

優馬「…」

 

“ものなんかなくても、心は繋がっているから”

 

優馬「心の繋がり、か…」

 

心の繋がり。

それは俺にとって、元々無縁だったもので

いつも周りを無視し、極力誰ともかかわらず、孤立してきた昔の俺であれば到底辿り着けないような言葉。

でも、今だからこそ分かる。

その大切さが。

 

鞠莉「優?大丈夫?」

優馬「…鞠莉、大丈夫だけど、どうかした?」

鞠莉「特に用、というわけじゃないの。ただ、久しぶりにゆっくり話したくて…///」

優馬「そ、そっか…///」

 

確かに鞠莉とこうやってゆっくり話すのは久しぶりのような気がするけれど

いつもの鞠莉じゃないというか、なんだかより一層女の子らしいというか…///

あれ?鞠莉ってこんなに可愛かっただろうか?

 

優馬「えーっと…///それにしても近くない?///」

鞠莉「…駄目だったかしら」

優馬「い、いや駄目とかじゃなくて…俺も一応男だし、さ///」

鞠莉「私はいいのよ?///意識してくれればくれるだけ…///」

優馬「そういうことじゃなくて…///」

 

あまりの鞠莉の距離感の近さに思わずたじろいでしまう。

それもそうだ。顔だって可愛いうえ、香水の良い香りがするし///

幼馴染相手にこんなに緊張する日が来るなんて…///

 

優馬「そ、それでどんな話かな?///」

鞠莉「そ、そうね!///その、μ’sとの違い、とか色々私なりに考えているんだけど、それを聞いてほし「あら、楽しそうですわね?」…は?」

ダイヤ「私も混ぜてもらってもいいですか?」

果南「それなら私も入れてよ~、3年生で私だけ除け者ってのは酷いもんね~?」

優馬「ダイヤに、果南…」

鞠莉「…shit!」

ダイヤ「…貴方だけにその場所は譲りませんわよ?」

果南「目を離したすきにすぐそういう行動取るんだから…次はバレないようにね?あははは!」

鞠莉「…優に聞こえないのを良い事に散々言ってくれるじゃない」

優馬「?」

 

なんだか、ダイヤと果南も一緒に話しに来たと思えば急に3人で話し出すし…

やっぱりこの3人は仲良しだな~とか思いつつ、彼女たちの話が終わるのを待っていた。

 

優馬「…話、終わった?」

ダイヤ「っ!え、えぇ!終わりましたわ!」

果南「ごめんね~…待たせちゃったよね?」

鞠莉「Sorry…気を取り直して、話の続きといきましょ?」

 

どうやら彼女たちの話は終わったみたいだ。

ようやく?元の話へと移ることとなった。

 

優馬「…それでμ’sとの違い、だよね?」

鞠莉「そうね…今回、神田明神だったり音ノ木坂まで行ってみたわけじゃない?」

優馬「うん、そうだね。…何か感じるものでもあった?」

鞠莉「…私としてはまず優から聞きたいわ?」

優馬「全く…どこまでもお嬢様気質なんだから…」

鞠莉「ふふっ、良いじゃない!聞いてみたいわ?」

優馬「はぁ…分かった。」

優馬「…正直、違いなんてないんじゃないかなって」

果南「違いはない?」

優馬「そう。μ’sってさ、もっと偉大だと思ったんだ。」

優馬「学校中で今でも崇め奉られてて、スクールアイドルの頂点に君臨してて…本当に何もかもがかけ離れてる存在だと思ったんだ。」

ダイヤ「…そうですわね」

優馬「だよね、だから学校中もμ’sだらけだと思ってたんだけどまさか何にも残していかなかったとは…っていう衝撃は受けたかな」

鞠莉「そうね~…それは私も思ったわ!せっかく優勝して、学校の名誉なのだから残していけばよかったのに!って!」

優馬「うんうん。でも、それには理由があって、それが…」

ダイヤ「それが?」

優馬「…“ものなんかなくても、心は繋がっているから”なんだってさ」

果南「心…」

優馬「奏姉さんを失って、人との関わりを絶ってた頃はこんなことを言われても響かなかったと思う。でも、今こうして皆とスクールアイドルをやってて、繋がりの大切さを知って、初めて今日言われた言葉に納得したんだ。」

優馬「確かにμ’sはすごい。けれど、すごいのは実績であって、実際の中身って実は俺たちのあまり違いはないんじゃないかなって。」

鞠莉「例えば?」

優馬「うーん…μ’sも何か特別な練習をしていたりとか、講師がいたとかそういうわけじゃなくて、俺たちと同じように目標があって、そのために皆で一丸になって、努力して、それが実を結んで、結果が生まれた。」

優馬「結果はあくまでも副産物であって、大切なのは過程…それは俺たちにも言えるんじゃないかなって。」

優馬「だからμ’sとあまり違いはないと思うんだけど…どうかな?」

 

思わず喋りすぎてしまったな、そう思うくらいには話していた気がする。

彼女たちは退屈ではないだろうか、この話をしていて…

 

優馬「…あれ?」

 

反応がない。

余りに退屈すぎて寝た?

それはそれで泣くんだけど…

 

果南「あ…ごめん!すごいしっくりきすぎて、言葉が出なくて…」

ダイヤ「そうですわね…なんだか、答えが得られたかのような、そんな感覚でしたわ…」

鞠莉「なんだか、私たちが言い辛いデース…」

優馬「マジか…いや、なんかごめん?」

 

ちゃんと聞いてくれてたのは嬉しいけど…

なんだかあまりにも響きすぎ…というか、逆に困るというか…

話を逸らさなくては!

 

優馬「あーっと…まあ俺の意見はこれで終わりとして、後は鞠莉たちの思ったことを聞きたいなぁ」

鞠莉「ふふっ、そんなに“私”の話が聞きたい?♡」

果南「鞠莉…私、の部分を強調しないでくれる?あくまでも私たちの思ったことを聞いてるんだからね?」

ダイヤ「果南さんの言う通りですわ…貴方だけじゃないですから、ね?」

鞠莉「…相変わらずしつこいわね?」

ダイヤ・果南「「はぁ?」」

優馬「喧嘩はよしなって…ここ、電車なんだから。それで、教えてくれる?」

鞠莉「もちろん!♡」

鞠莉「そうね…私は正直、はっきりとこれだ!っていう答えは分からなかったの…」

鞠莉「でも、色んな想いや目標をもってラブライブに出るのは間違いじゃないってそう思ったわ」

優馬「…そっか」

鞠莉「結局何が違うのかなんて分からないわ。でも、私たちは私たちでいいんじゃないのかなって…」

 

鞠莉の想い。

恐らく鞠莉は自分たちのグループが間違いだなんて、言いたくないんだろう。

だから、誰かと比べたがらない。それがμ’sやA-RISEといったレジェンドたちですら。

 

優馬「鞠莉らしいね」

鞠莉「ふふっ、そうかしら?褒め言葉として受け取っておくわね♪」

優馬「そしたらダイヤは?」

ダイヤ「私は…」

ダイヤ「正直、浮かれていましたわ。神田明神と言えばあのμ’sのメンバーである東條希さんがバイトしていた場所でもあり、もしかしたらと思いましたが出会えず、音ノ木坂で色々な資料が見れるかと思えば、それも無く…」

ダイヤ「ショック、と言えばショックでしたわね。」

優馬「ははっ、ダイヤらしいね」

ダイヤ「も、もうっ!///からかわないでください!///」

果南「イチャイチャしてないで、早く進んでくれる?」

鞠莉「時間だって限りがあるデース。早くしないと到着しちゃうよ?」

ダイヤ「…ちっ」

ダイヤ「コホン…それで、ショックではあったんですけれど、改めてμ’sのグループとしての深み、というのでしょうか。そういった部分においては感服いたしましたわ。」

ダイヤ「…やはりその部分でしょうか。違いと言われれば。」

優馬「つまり…グループとしての絆の深さ、っていう部分?」

ダイヤ「そうですわ。」

優馬「なるほど、確かに一理あるね。さすがダイヤだよ。」

ダイヤ「ほ、褒めても何も出ませんわよ!///」

優馬「あはは、純粋にすごいな、って思っただけだよ。」

ダイヤ「むぅ…///ま、まぁ、ありがとうございます…///」

果南「あざといね…」

鞠莉「あざといわね…」

ダイヤ「そこ、何か言いましたか?」

果南・鞠莉「「べっつに~?」」

 

ダイヤはμ’sのことを崇拝してるからな…

だからこそ、違いがしっかり見つけられるし、本当に頼りになるな

あざといかどうかはまず置いて…

 

優馬「じゃあ果南は?」

果南「うーん…私も鞠莉と同じだなぁ…」

優馬「それは結局、違いは分からなかったってこと?」

果南「そうなるかなぁ…あ、でもはっきりと分かったことはあるんだ。」

優馬「その、心は…?」

果南「…Saint Snowみたいにはなりたくないなって」

優馬「それって…」

果南「あ、違う違う!別に彼女たちが嫌いだからとかじゃないから!誤解しないで~~!」

鞠莉「よく言うわ…」

ダイヤ「本当ですわ…あんなに敵意むき出してたくせに…」

果南「…そこ、何か言った?」

鞠莉・ダイヤ「「いえ、なんでも」」

果南「はぁ…ごめん、話逸れちゃったね!」

優馬「う、うん、大丈夫だよ。それで、なりたくないって?」

果南「なんだか、彼女たち…危ないな…って」

優馬「それって…」

果南「うん、多分ゆうが考えてること同じだと思うよ。」

 

そう言って果南は彼女たちがどう似てるのかを詳しく話してくれた。

Saint Snowの強気な発言。優勝に対する、そしてスクールアイドルの頂点に対する異常なまでの憧れ。

果南が言うにはここまで1年生の時の果南たちと同じらしい。

ただ一番の問題は最後、それが…

 

果南「…なんとなく感じたの。どこか狂気じみてる“愛”の眼」

優馬「…はい?」

鞠莉「…なるほどね。」

ダイヤ「それは…確かに今考えてみれば…」

優馬「え、いや。2人ともなに納得してるの?」

 

…理解できなかった。

なんだよ狂気じみてる愛の眼って、どんな眼だよ。

どこぞの廚二病みたいな自称能力者とかじゃないんだからさ。

納得してる2人も2人だけど…

 

果南「あれ?ゆうは感じなかったの?」

優馬「いや感じないよ。そもそも彼女たち、俺のこと嫌悪してるんだよ?」

鞠莉「まっさか~」

ダイヤ「何を見て言っているんです?」

優馬「えぇ…?」

 

あれれぇ…おかしいぞぉ?

…俺がおかしいのか?

 

優馬「い、いや考えてみてよ。聖良さんとはあれだけ口喧嘩するし…」

ダイヤ「聖良さん、恐らく喧嘩と思っていませんよ。むしろ話せて嬉しすぎてか空回りしてるまでありますね」

優馬「そ、それならいつもいつも電話で俺たちの活動を小馬鹿にして、煽ってくるんだぞ?」

鞠莉「うーん…多分、ただ話したいだけかもデース」

優馬「と、時々俺の方見て睨みつけるかのように…」

ダイヤ「ブッブーー!!ですわ。睨みつけてるというか…顔を素直に見れないんでしょう」

優馬「じゃ、じゃあ妹の理亜ちゃんは…」

果南・鞠莉・ダイヤ「「「典型的なツンデレだね((デース・ですわね))」」」

優馬「なん、だと…」

 

もうだめだ、何言ってもおかしな方向に行きそう…

そうして俺は、諦めた。

 

優馬「…それで果南はなりたくないって」

果南「あー、優勝への執着心は確かにすごいなって思うけど…狂気的な愛って…要は私の恋路の邪魔してくるってことでしょ?なりたくないっていうよりは…絶対に負けたくないな、の方が強いかもね?」

優馬「あ、あぁ…」

 

それを聞いて、俺は諦めたはずだったのに…

膝から崩れ落ちた…(気持ちだけ)

 

優馬「頼むから、誰か違うって言ってくれ…」

 

長く話していた気がするけど、どうやら駅はまだまだ先らしい…




いかがだったでしょうか?
アンケートも引き続き行っているので、それも是非やっていただけたらと思います!
そして思っていた以上に長引いてしまうので、前編と後編で分けることにしました笑
次回はこの話の後編!
また見ていただけると嬉しいです!
それでは次回、そしてアンケートもよろしくお願いします!
※ちなみにアンケートの期限はこの話が終わったらなので、そろそろです…投票したいならお早めに…


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第26話 思考を巡らせ、輝きは近づく(後編)

こんばんは…
書き上げましたが…これはどうなんでしょう…
ということで…どうぞ…


~帰路・電車内~

 

あれから俺はSaint Snowがどれだけやばいか、という話を永遠と果南たちから聞かされ…

今は電車の中でありながらヘトヘトとなっていた。

 

優馬「…なんかさらに疲れたんだけど」

果南「ご、ごめんね~…疲れさせるつもりはなかったんだけど…」

鞠莉「つい話しすぎたわ~…」

ダイヤ「思わず、出てしまうのですよね…」

優馬「いや、大丈夫…気にしないで…」

 

そう言って俺は彼女たちをなだめていた。

ふと携帯を見てみると千歌からメッセージが届いていた。

時間帯は数分前だから恐らくSaint Snow談義をしていた時間帯の時だろう。

…気づいてよかった。

さて、内容は…

 

千歌『沼津に帰る前に海を見に行こうよ!』

 

優馬「…は?」

 

いやいやいや…海って…

どこで見るんだよ。唐突過ぎてついていけない。

 

果南「…どうしたの?」

優馬「いや…千歌がちょっと…」

鞠莉「なんて来てたデース?」

優馬「海を見たいって…」

ダイヤ「それなら次の駅で降りないと、駄目ですわね…」

優馬「マジか…準備しなきゃ…」

 

そうして俺たちは千歌のお願いを叶えるべく、次の駅で降りることとなった。

 

~?・海岸~

 

千歌「海だーー!」

優馬「全く…俺としては一刻も早く家でゆっくりしていたいところだったんだけど…」

果南「まぁまぁ、良いじゃん!私も久しぶりに海見たかったし!」

優馬「果南…久しぶりって、ものの数時間だよね?」

ダイヤ「いいじゃありませんの。」

鞠莉「そうデース!…見て、優」

優馬「うわ…すごい綺麗だ…」

 

千歌に(半ば強制的に)連れてこられた海だった。

内心、めんどくさいと思ってた。

だけど…

 

千歌「来て、良かったでしょ?」

優馬「…千歌」

千歌「…分かってたよ。優くん、絶対めんどくさがってるだろうな~って!」

優馬「うっ…気づいてたのね…」

千歌「そりゃあこういう仲だもん…それでも、この景色を見てほしかったの。皆に、そして優くんに」

優馬「…」

 

俺が見ている目の前の光景。

大きく、水平線の先まで続いている広い広い海、そして

その海を照らし、美しい炎のような光を見せてくれる夕日。

その光景全てが輝いて見えていた。

 

優馬「そうか…μ’sは…」

千歌「優くん?」

優馬「分かったよ…μ’sはどうしてあそこまですごかったのか…成長ができたのかを」

千歌「うん…」

優馬「きっとμ’sも最初からスクールアイドルとしてすごかったわけじゃなかったと思う。きっかけはどうであれ、最初は道なんて何もなかった。並大抵の人なら絶対に通らないって思うくらいには険しい道で、それでも彼女たちは自分たちのやってること、そしてそこで培った絆、それらを信じてきたんだ。」

千歌「…」

優馬「そうやって信じれたから仲間たちと一緒にまっすぐ諦めずにそんな何もない道を思い切り走ってこれた…」

千歌「じゃあ、私たちもμ’sと同じように…」

優馬「千歌」

千歌「え、あっ…///」

優馬「それは違うんだ。」

千歌「え…?」

優馬「μ’sみたいに輝きたい、それってつまり端的に言えばμ’sにならないといけない、そういうことでしょ?」

優馬「でも、彼女たちは目印になる目標が最初無かった。そこからスタートしてたんだ。ただただ自由にまっすぐに走ってた、だからあれ程の輝きを放ってたんだ。」

千歌「あ…」

優馬「…気づいた?」

千歌「つまり、背中を追うんじゃなくて…私たちを信じて私たちの足で走りぬく、ってこと?」

優馬「…正解。でも本当に自由に皆が走って行っちゃったらどうなる?」

千歌「そ、れは」

梨子「バラバラに、なっちゃうわ」

優馬「梨子、正解。」

優馬「だから、リーダーの意思が必要なんだ。千歌、お前は…どうしたい?」

 

偉そうなことを言ってしまったと思う。

μ’sが実際にそうだったかも正直、分からない、憶測だ。

でも、きっとここがこれからに向けた分岐点。

…俺が言うのは簡単だ。でも、あくまでもこの部活は彼女たちが主軸なのだ。

マネージャーの俺が言うべきじゃない。

だから…頼んだぞ、千歌。

 

千歌「わ、たしは…私は!」

千歌「あの時のままで終わりたくない!!“0”のままなんかで終わりたくなんかない!」

千歌「私は、“0”から“1”にしたい!」

優馬「…そっか、俺はそれに従うよ。まあ皆が納得するかどうかは分からないけれどね?」

曜「もー、そういう言い方やめてくれる?」

優馬「はは、悪い悪い。…それで?」

曜「千歌ちゃんと想いは一緒だよ!」

梨子「うん、ついてくよ!」

善子「元より、ヨハネはこの使命を全うするつもりだったわ…」

花丸「善子ちゃん…素直に言えばいいのに…」

ルビィ「あはは…ルビィもついていきます!がんばルビィ!」

果南「私も乗り掛かった舟だからね~」

ダイヤ「ここまで来たからには…ついていきますわ!」

鞠莉「マリーもよ~♪…優と一緒に何かを成し遂げたいしね♪」

千歌「皆…」

 

今まで、流れの中で、そして成り行きで形成したグループが始まり、

それぞれの想いを持った彼女たちが集合して、色々なことがあった。

時には喧嘩みたいなこともして、それでも前を向いてここまでやってきた。

だけど、明確な目標はそれぞれ持っていなかった。

ただただ輝きが欲しいってだけで…

でも、これでようやく皆が一つになったと思う。

現にこうして、皆が円陣を組んで…

 

千歌「優くん!何してるの!」

優馬「…うん?」

千歌「優くんが入らなきゃ意味ないでしょ?」

優馬「…はぁ、しょうがないな。」

 

そうして円陣に参加し、さあやろうとしたその時

 

曜「あ、円陣の手なんだけど…」

 

すると、曜が人差し指と親指で0を作り…

 

曜「掛け声は、“0から1へ!”ってどう?」

千歌「それいい!」

 

千歌は大賛成だったようで…

これに決まった。

 

千歌「じゃあ皆、“0から1へ!”」

 

…きっとこれからも困難があって、何か迷って悩んで

そんな日々が続くんだろう。

それでも、俺たちはただひたすらにまっすぐに自由に走る。

全力で輝くために。

 

円陣も組み終わり、皆が海ではしゃいでる時、俺は疲れて浜辺で座ってた時だった。

 

優馬「…」

善子「…どうかしたの?」

優馬「善子…」

善子「ヨハネ、よ。それで何神妙な顔してるのよ?」

優馬「いや…青春だな、って」

善子「何よ、それ。」

優馬「今までの俺だったら多分、こういう経験はしなかっただろうし、したいとも思わなかった。」

優馬「そんな世界に千歌たちが連れてきてくれて、本当にありがたいな、って」

善子「…そっか」

優馬「…The sunset is life’s way of saying, “good job you survive today. Here’s something pretty”」

善子「あー…ごめん、なんて?」

優馬「夕日とは人生が、“今日も一日頑張ったね。ご褒美に、美しいものを見せてあげる”と私たちに言ってるんだよ。」

優馬「とある英語の名言なんだ。」

善子「ふ~ん…あんたやっぱり博識ね。」

優馬「たまたま覚えてただけだよ。…ふと、感じたんだ。」

優馬「…きっと、今を含めて美しいものなんだろうなって」

優馬「良かったよ、ここに来れて」

善子「…私もここに来れて良かったわ」

善子「あの時、ゲーセンで優馬に会ってなかったらここに来れてないもの。」

優馬「…そんな大げさな」

善子「大げさじゃないわよ。…あの時、独りだった私を貴方は見つけてくれた。」

善子「それだけで嬉しかったの。貴方のそばに居たくなった。だから、ここに入ろうって思った。」

優馬「…そっか。」

善子「それくらい、優馬の存在は私に希望を与えてくれたの。」

優馬「そんなこと言われると…自惚れるよ。」

善子「…もっと自惚れさせましょうか?」

優馬「え?…んむっ!?///」

善子「んむっ!…んっ…ぷはっ…///」

善子「…私、ずっと優馬のことが好きよ。誰にも負けられないくらいに。」

優馬「え、え!?///」

善子「…返事はまだいらないわ。これはあくまでもあの時のお礼だもの。」

善子「だから、これからもよろしくね?リトルデーモン!」

 

そう言い残して、彼女は、ヨハネは海へと向かってしまった。

まだ唇の感触は抜けてない。彼女も女の子だったんだな、と再認識させられてしまった…

 

優馬「…はぁ///めんどくさいな…///」

 

その時の俺の顔はきっと空に浮かぶ夕日の明かりに負けないくらいには赤かったと

そう感じていた。

 

 

善子(あーーー///やってしまったわ、ついに堕天使ヨハネ、やってやったわ!///)

 

善子「ふふ…///ふふふふ…///」

花丸「よ~~し~~こ~~ちゃん?」

善子「ぬわぁぁ!!??」

花丸「ねぇ?今、何してたの?」

善子「べ、別に何もしてないわよ!」

花丸「うそ、だよね?…優さんに何したの?」

善子「あ、あんたには関係ないでしょ…」

花丸「関係あるよ!!」

善子「…はぁ?」

花丸「…オラの優さんを盗らないでほしいずら」

善子「優馬は…あんたの物じゃないでしょ?何言ってるのよ…」

花丸「…優さんはオラを受け入れてくれた。ずっと支えてくれて、こんなオラの想いを受け止めてくれた。もう優さんとオラは相思相愛ずらよ?それなのに…」

花丸「善子ちゃんも、他の皆も…優さんとオラの邪魔をして…」

善子「…ほんとあんた、めんどくさい女ね。」

花丸「は?」

善子「いつまでそんな妄想抱いているのかしら、そんな妄想抱いている暇があったらもう少し行動にしてみれば?」

花丸「…」

ルビィ「2人とも落ち着いて?」

花丸・善子「「ルビィ(ちゃん)…」」

ルビィ「今、ここで言い争ったところで皆に迷惑かけちゃうだけだよ?」

ルビィ「それに…お兄ちゃんから嫌われちゃうかもよ?まあ、ルビィとしてはその未来でも十分嬉しいけれど♪」

花丸「…それも、そうずらね」

善子「…」

花丸「いずれ、皆に思い知らせるずら…優さんとオラの想いの強さを…」

善子「はぁ…参ったわ…」

ルビィ「…」

 

優馬が気付いてない間、人知れず1年生間で争いが生まれていた…

いつその綻びが生まれてしまうのか、それは神のみぞ知る…




いかがだったでしょうか?
アンケートもこの話までにしたいと思います!
今現時点で、鞠莉かヨハネか…となっていますが、同点になった場合はもう2人出しちゃおうかな、なんて…
まあ小ネタにもそろそろ移ろうかな、と思ってるので投票の方、よろしくお願いします。
それでは次回もよろしくお願いします。


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第27話 過ぎ去る夏に”ありがとう”を(前編)

こんにちは!
遅くなってしまってごめんなさい…
そしてアンケートでの投票ありがとうございました!
最後の追い上げ、堂々の善子が1位に感動しました~~
僕も善子は大好きなので、書いててちょっと盛り上がってしまって…
ついつい投稿が遅れてしまったのですが、ついに小ネタが完成!
かなり善子とイチャイチャしているのでよろしくです!
それと何人かメンバーも出ているので、楽しんでみてもらえると嬉しいです!
それではどうぞ!



~優馬家・優馬の部屋~

 

昨日の東京旅行も終わりを告げ、気づいた時には沼津に

そして、目を開けた時にはもう家に。

結果、俺は今、部屋のベッドで休養を得ているわけだ。

しかし…

 

優馬「外、暑そうだし、蝉がうるさいなぁ…」

 

相変わらずの日差しと気温。

その日差しに呼応するかのようにミンミンと泣き続ける元気な蝉たち。

一般的な教養があるとするならば、これを見てまた一興。

夏らしさを感じて良い、とでも言うのだろうか。

しかし、今の俺にはそんな教養はいらないし、夏らしさなど感じられなくていい。

俺の思いはただ一つ。

 

優馬「頼むから寝かせてくれ…」

 

そう。俺の部屋は完璧にクーラーをかけ、常時(俺にとっての)適温を保っている状態なのだが、どうにも防音性というものは存在していなく、窓を閉めていたとしても蝉のうるさい鳴き声には勝てないのだ。

 

優馬「…諦めよ。」

 

ちなみに読者の皆さん(メタい)。

諦めよ…というのは決して寝るのを諦めようというわけではありませんよ?

蝉の鳴き声がうるさいのは諦めて、なんとかして寝よ、という意味合いであるので決して間違いのないようにお願いしますね?

それでは今日の話もこれでお終い…俺は夢の世界へとダイ…

 

善子「何してんのよ」

 

優馬「…は?」

 

…うーん?なぜここに堕天使様がいるのでしょうかね?

俺はもう天に召される寸前でございますかね?

いや、幻覚という可能性も捨てきれない、俺は疲れてしまっているのだろう。それなら

 

優馬「うん。もう寝よう。おやすみなさ「ヨハネを目の前にしてなに二度寝決めようとしてるのよっ!!」…ガチかぁ」

 

どうやら幻覚ではなかったようだ。畜生。

 

善子「ほら、起きなさい。さっさと出かけるわよ。」

優馬「え?出かける?俺、そんな約束した?」

善子「はぁ、昨日のやり取りを覚えてないみたいね…」

優馬「昨日の、やり取り?」

 

そう聞くと善子は俺に自分の携帯を見るように指示をしてきた。

そして、俺の携帯を開いて、SNSを開かせるとそこには

善子と出かける約束をした旨のやり取りが繰り広げられていたのだった。

 

優馬「嘘だ…」

善子「嘘じゃないわよ、ちゃんと証拠として残っているじゃない。」

優馬「そ、そうだけど!え、俺がこれ返事したの?」

 

やばい。正直な話、沼津についてからの記憶から抜けてしまっているのだ。

当然、家についてからの記憶なんて全くないに等しい。

それなのに、このやり取り…昨日の俺は何してるんだよ!

…とまあ、過去の自分にキレたところで何も変わらないのは明白なのだが

 

善子「これで分かった?なら急いで準備しなさい!」

優馬「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

善子「…なによ?」

優馬「正直に話そう、俺は昨日沼津についてからの記憶が全くないんだ。つまり…」

優馬「家についてからの記憶も全くないわけで…その中でのやり取りは本人の意思が脆弱だったというわけで…やり取りは無効、とならないか?」

善子「…じゃああんたは私が勇気を振り絞って誘ったで、デートを、なしに、するの…?」

優馬「うぐっ…」

善子「そんな、のひ、どすぎるわ…」

優馬「い、いや、ごめん…そういうつもりじゃなかった、じゃなくて…俺も善子への配慮が足りなかったよ…ごめん…」

善子「…じゃあ、行ってくれるの?」

優馬「…男に二言はない。行くよ。」

善子「さっきまで二言も三言も言ってたけどね…」

優馬「ぐっ…すみませんでした…」

善子「ふふっ、良いわよ!それなら早く準備しなさい!リトルデーモンのくせに主のヨハネを待たせるなんて許さないんだからね!」

優馬「…はいはい」

 

一時はどうなるかと思ったが…

なんとか善子の機嫌を直すことに成功し、俺は急いで出かけるための準備をするのであった。

 

 

優馬「ごめん、待たせた。」

善子「もう、遅すぎ…」

優馬「どうした?」

善子「ふぇっ!?///い、いやなんでもないわ!///い、行きましょ!///」

優馬「う、うん…」

 

急いで準備したのだがそれが悪かったのだろうか…

もしかしたら俺の今の恰好は非常に恥ずかしいものなのかもしれない…

失敗したなぁ…

 

善子(か、かっこよすぎる!///なんであんたはいつもいつもそんなかっこいいのよ!///これじゃ私の身が持たないわ!///)

 

 

~内浦・路上~

 

準備も終え、俺は善子に連れられて出かけることになったわけなのだが…

未だに善子からどこに行くか、その行き先を教えてもらっていない。

 

優馬「善子」

善子「ヨハネ!よ、どうしたの?」

優馬「いや…俺は今からどこに連れていかれるの?」

善子「…思い出の場所よ」

優馬「思い出?」

 

思い出、と言われても最近は思い出作りに励み過ぎてしまっているため

何の思い出で、どこになるのかがさっぱり分からない。

これ以上聞いても無駄だと思ったため、俺はヒント1つで考えることにした。

その矢先、どっかからか見覚えのある声が聞こえた。

 

千歌「あーー!!優くんだあああ!!」

優馬「うわ…うるさ…」

善子「ちっ…外にいたのね…」

 

そこにいたのは千歌だった。

まあ当たり前っちゃ当たり前だけど、俺の家と千歌の家はおよそ数十mしか離れていない。

そのため、普通に会ってもおかしくはないのだ。

のだが、千歌も千歌で珍しく外にいるとは…

 

千歌「ゆ~うくん!おはよ!♡…といたんだね、善子ちゃん。おはよ♪」

優馬「おー…おはよー…」

善子「…ついでみたいに言わないでもらえる?」

 

そしてまるで目があったら即バトルするかのように勃発する修羅場…

朝からお二人ともオゲンキデスネ…

 

優馬「…とりあえず2人とも落ち着いて」

善子「そうね…私たちも急いでるから」

千歌「そうなんだー、どこに行くの?」

善子「秘密よ。」

千歌「へー…私もついていきたいなぁ」

善子「ダメに決まってるでしょ」

千歌「ふ~ん…決まってるんだ~…」

千歌「まぁ、行かないよ!残念ながら私は仕事のお手伝いをしなきゃいけないのだ~…」

優馬「大変だな…頑張ってな」

千歌「うん!優くんが手伝ってくれたら、もっと頑張れるんだけどなぁ…」

優馬「はは、また今度ね」

千歌「ほんとっ!?絶対だよっ!?」

優馬「う、うん。絶対絶対。」

千歌「えへ、えへへへ…♡」

善子「はぁ…全く…なんだかんだでお人好しなんだから…」

 

何とか起こりそうな修羅場をここでせき止め、俺と善子はそのデート?先とやらに向かうこととなったのだが…

 

梨子「あれ?優君?どこか行くの?」

善子「げっ…リリー…」

優馬「梨子もかー…」

 

…本日はどうやらAqoursメンバーとの遭遇率が100%にカンストしているのかもしれない。

まさかの行こうとした矢先にややヤンデレ要素を含んでしまっている梨子と遭遇する形となってしまったのだ…

 

梨子「あ、善子ちゃんに、千歌ちゃんもいたのね?おはよ♪」

千歌「おはよー!」

善子「…おはよ」

梨子「それで優君は…2人とお出かけ、かな?」

 

やめて、そんな真っ黒な目で俺を見つめないで。

彼女の眼球はもはや真っ黒で、闇という言葉では言い表せない、まさに深淵の底を果てしなく覗いているような、そんな視線を俺は感じていた。

…だが、俺は屈しないぞ。

 

梨子「…だんまりは、よくないなぁ。やっぱり私がそばにいてあげないとだめ、かな?」

優馬「あ、いや、ごめん。今、ちょっと考え事してて…」

優馬「それで出かける件については2人で、というより俺は善子と約束があって…」

梨子「…ふ~ん。善子ちゃんと、ね」

善子「そうよ。優馬はこれから私と“デート”なの!…邪魔したら許さないわよ?」

千歌「え、デート…?」

梨子「デート、ね…」

 

善子がそう言い切った時、また冷ややかな雰囲気が漂った。

デート…俺は行き先を知らないんだけどね…

 

梨子「ねえ優君?デートって、ほんと?」

千歌「り、梨子ちゃん!?」

善子「ちょっとリリー!さっきデートって言ったじゃない!」

梨子「善子ちゃんはちょっと黙っててもらえるかな?今、優君に聞いてるんだよ?」

梨子「それで、どうなのかな?」

 

相変わらず目の色は深淵レベルなのだが、顔が近い…

改めて近くで見ると…やっぱり

 

優馬「可愛いな…」

梨子「…ふぇっ!?///」

優馬「ん?」

千歌・善子「「は??」」

 

今、俺声に出てたのか?

目の前の梨子の恥ずかしそうに真っ赤にしている顔、そしてその後ろでさっきの梨子並に目のハイライトを深淵の底並にして俺の方を覗き見る千歌と善子を見る限り…

恐らく俺は恥ずかしいことを口に出していた、というわけで。

つまりギルティである、というわけだ。

 

優馬「…あー、えっと声に出してた?」

梨子「…///」

千歌「…優くん?」

善子「あんた、ほんと何してんの?」

優馬「いや…つい、ね、ほんとに…」

 

しかし、あの問い詰めてきた梨子が謎の反動で動かなくなっているのだ。

これを好機と見ないでどう見るか。

 

優馬「…今がチャンスかもしれない。行こう、善子。」

善子「だから、ヨハネって…ちょ、ちょっと!」

 

ということで俺は善子を連れてさっさと向かうことにした。

 

 

~沼津・市街地~

 

優馬「…それで善子の言うとおりに沼津まで来たわけだけど」

優馬「どこに行くの?」

善子「あー…そういえば行き先を伝えてなかったわね…」

 

行き先を聞こうと善子に聞いたわけなのだが…

どうにも善子が渋っている様子。

こっちとしては連れていかれるところがどこか分からない以上、不安で仕方がないんですけどね。

 

善子「…言わないでおくわ。」

優馬「え、は?」

善子「楽しみにしてなさい。あとそんなに心配しなくても危ないところなんて連れて行かないわ。」

優馬「…うーん、まあうん。」

 

これ以上聞いても恐らく聞き出せないと踏んで、俺は善子の後をついていくことにした。

すると、前を歩く善子が振り返り…

 

善子「強いてヒントを言うなら、思い出の場所、よ。」

優馬「…思い出の場所?」

善子「ふふっ、ちゃ~んと!考えなさいっ!♪」

 

そう言い残し、彼女はすたすたと前を歩いて行ってしまった。

置いてかれるといけないので、俺はついていくのだが…

 

優馬(…///あの顔は善子らしくなくて反則なんだけど…///)

 

自分の顔がいつもの無表情と比べ物にならないくらいに赤くなってしまっているのを感じつつ、それが彼女にバレないように気を付けながら前を追いかけるのだった。

 

 

~沼津・ゲームセンター~

 

優馬「ここは…」

善子「思い出した?」

優馬「思い出すも何も…あれだけ鮮烈な出会い方をしたんだ。覚えてないわけないでしょ?」

善子「確かにそうね!ふふ…あの時を思い出すと懐かしいわ…」

 

俺が連れてこられたのはなんと俺も最近滅法行かなくなってしまったゲームセンターだった。

それもこのゲームセンターは善子と初めて会ったなんとも思い出深い場所だった。

 

優馬「ほんと懐かしいな…それでなんでまた?」

善子「…理由なんていいじゃない!とりあえずまたあの時みたいに遊びましょ?」

優馬「…それもそうだね。よし、今日はとことん遊ぶか!」

善子「ふふっ、そう来なくっちゃ!」

 

こうして俺たちは二度目のゲームセンターへと向かった。

始めは入口すぐにあるクレーンゲームから始まり、1階から2階にかけてのクレーンゲームをひたすら取れるまで網羅し、その後、3階のアーケード系のゲームで善子が熱弁しながらひたすら熱中。そうして4階まで上がり、その階にある至る所の音ゲーをひたすらやり続けた。

 

優馬「は~~~…めちゃくちゃ遊んだわ…」

 

ゲームセンターに乗り込んだ後、まるで子供のように俺たちははしゃぎ回り

ひたすらゲームに没頭した。

その結果、今こうして疲れ果ててしまい、現在進行形でベンチで野垂れ死んでいるところである。

すると、さっきまでいなかった善子が丁度帰ってきた。

 

善子「はい、優馬の分。」

優馬「え、あ、悪い、ありがと」

善子「ふふ、そこは悪いなんて思わなくていいのよ!なんたって私のリトルデーモンなんだから!」

優馬「はは、善子らしいな。ありがたく頂くよ。」

 

どこかに行ったかと思った善子だったが、どうやら俺のために飲み物を買ってきてくれていたらしい。

いつもあれだけ廚二病発言を繰り返しては皆にドン引きを喰らっているわけなのだが、やっぱりこういう所は善子らしくて、素でいい子なんだろうな、と思えてしまう

そうして一息つこうとする中、俺はあの時の疑問を彼女に聞いてみた。

 

優馬「…善子?」

善子「どうしたの?」

優馬「いやちょっと聞きたいことがあって」

善子「何よ、改まって」

優馬「さっき聞いたのと同じなんだけど、どうして今日はゲーセンに?」

善子「…引かない?」

優馬「引かないよ。」

善子「…一種の欲望よ。優馬を独り占めしたかったの。」

優馬「…」

善子「…でも、それだけじゃないわ。独り占めしたかったらそんなの場所なんてどこでもよかったもの。」

優馬「じゃあどうして、ゲーセン?」

善子「優馬に楽しんでほしくて、息抜きになるかなって思って…」

善子「変、だったかしら…?」

 

俺はそれを聞いた時、思わず言葉を失ってしまった。

悪いことが起きたから頭がフリーズするのは分かるんだけど、まさか嬉しすぎて言葉が出てこないことって本当にあるんだなってその時気づいてしまった。

 

善子「…優馬?嫌だった?」

優馬「い、嫌じゃないから!ごめ…嬉しすぎて、つい…」

善子「ほ、ほんとにっ!?///」

優馬「う、うん。」

善子「…良かった///」

 

そうしてまた沈黙が生まれてしまった。

ただし、その沈黙は居心地が悪いとかそういうのではない。

この時間がいつまでも続けば、と思えるほどの沈黙だった。

 

優馬「…あ」

善子「どうしたのよ?」

優馬「善子、この後、まだ時間ある?」

善子「う、うん…空いてる、けど?」

優馬「…ちょっと買いたいものがあるんだけど寄っていい?」

善子「いいけど、急にどうしたのよ?」

優馬「それは、秘密だな」

 

そうして俺は善子を置いて、あるものを買いに行った…




え~、小ネタが小ネタじゃなくなったので、前編、後編に分けました…
文量にしてなんと1万字を超えてしまって…
さすがに多すぎる、ということで続きは後編で!
ちゃんとすぐ投稿するので…許して下せえ…
ということで続きも皆さん、よろしくお願いします!


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第28話 過ぎ去る夏に”ありがとう”を(後編)

こんにちは、立て続けの投稿です!
そしてこの回ではアンケートで2位となった鞠莉も出てきます!
喋ってないで早く行けって話ですよね、それではどうぞ!


~沼津・ゲームセンター内~

 

しばらくして…

 

優馬「お待たせ。」

善子「遅い!待たせすぎ…ってこれ…」

優馬「あぁ、花火。やっぱり夏と言ったらっていう風物詩の一つだからね。やっておきたくて」

 

そう、俺が買いに行ったのは花火だった。

といってもそこらへんで売ってるような花火なわけで少しでも雰囲気を味わおうと買ったものだ。

…それに加えて、せめてものお礼が入っているのはここだけの話だが。

 

善子「ど、どこでやるの?」

優馬「あー…考えてなかった…そこらへんに広場とかあるかな…」

 

と、せっかく買った花火が無駄になりそうで道半ば途方に暮れていたところに

聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた。

 

鞠莉「それならいいところがあるデースっ!」

優馬「え、鞠莉?」

善子「うわ…」

 

なんとそこにいたのは鞠莉だった。

まさかこんな庶民的なところにいるとは…なんて思っているのは言わないでおく。

 

優馬「っていいところ、とは?」

鞠莉「ふっふーん…あるじゃない!私のマ・イ・ハ・ウ・ス♡」

優馬「ほんとに?使わせてくれるの?」

鞠莉「もっちろんよっ!た・だ・し!その花火、マリーも参加することが条件だからね?」

 

そんな条件でいいなんて、なんて良心的なんだろう。

もうこれは即決だ。

そう決めて、俺はマリーにOKを出そうとしたその時だった。

 

善子「絶対にダメ!!!」

優馬「…ん?」

鞠莉「…へ~、なんでNo、なのかしら?」

善子「…マリー、分かってるくせによく言うわね?」

 

また始まってしまった。

なんだか朝にもあったような気もするんですけども…デジャヴでしょうか?

 

鞠莉「私には分からないわ?教えてくれない?」

善子「…今日は私が優馬とデートしてるの、邪魔をしないでもらえる?」

鞠莉「Oh~…それはごめんなさい。でも、もう終わりそうだったじゃない?善子のデート♪」

鞠莉「それに花火をやる場所がなくて困っている優を見過ごせなくて、助けただけよ?そんな人助けをして何が悪いのかしら?」

善子「見返りを求めている時点でその人助けはただの偽善になってるのに気づいてない?そうだとしたらとんだ女狐ね、吐き気がするわ。」

鞠莉「見返りなんて言い方悪いわ?私はあくまでも条件付き、での掲示をしたのよ?人助けは私の良心だけれども必ずしもそれが何もなく、ただ与えるだけなんて都合のいい話なんてないの。」

善子「じゃあその条件とやらを変えればいいじゃない!」

鞠莉「あらどうしてかしら?ただ参加させてもらうっていうかなり割のいい条件な筈なんだけど?」

善子「ちっ…」

 

よく恋愛漫画とか小説とかで修羅場は最高とかほざいている人がいるのだが

それは現実を知ってから言ってほしいものだ。

今、俺は猛烈にこの場から逃げたい。花火を置いて、そりゃもうどこまでも。

 

優馬「あー…ちょっと落ち着きなよ。2人とも…」

優馬「それに俺は人数がいればいるほど、楽しくできそうだな~って思うからさ…」

善子「…っ!そ、そう…」

鞠莉「あら!それはマリーも参加OKってことかしら!?」

優馬「そうだね。なんなら敷地を使わせてもらえるしね。」

鞠莉「ふふ♡じゃあ交渉成立ね!ヘリで来ているからちょっと外で待っててもらえる?」

 

そう言って、マリーは外に急いで駆け出して行った。

相変わらず騒がしい人だ、と思っているとあからさまに善子が落ち込んでいた。

しかし、俺は彼女に何も声をかけられずに、鞠莉の持つヘリコプターまで一緒に向かうことにした…

 

~淡島・オハラホテル内~

 

鞠莉「はい、着いたわよ!」

優馬「…相変わらず豪勢だね」

善子「…」

鞠莉「ふふっ、そうでしょ?ほらここで驚いてばかりいないで、花火、するんでしょ?」

優馬「あ、うん。そうだね。」

 

そうして俺たち3人は花火の準備をし始めた。

その間に小原家のメイドさんたちが色々な食事だったり、色々な種類の花火だったりを用意してくれていた。

それだけでも十分楽しかった。しかし…

 

善子「…」

優馬「…」

 

…最後の夏でここまで豪勢に花火ができたのは嬉しいけど、どうにも引っかかってしまう。

やはり善子がずっと浮かない顔しているからか、どうしてもそちらに目を向けてしまう。

鞠莉もそんな鈍感じゃないタイプだからきっと気づいているだろう。

だからか、あまり善子には触れないように、なるべく場を盛り上げようと努めていた。

 

鞠莉「…優、善子?ちょっと私、他の花火用意してくるわね」

優馬「あ、うん。ありがと…」

善子「…」

 

すると、鞠莉はこの場を察してなのか、花火を持ってきてくれるようだった。

いや丁度俺たちがしている線香花火で最後だったから、かもしれない。

しかし、それにしたってここで待つことになるのだが気まずい…

と思った矢先、善子が声をかけてきた。

 

善子「…ねぇ、優馬?」

優馬「うん…」

善子「私と2人は嫌だった?」

優馬「っ!い、いや違うから!あの時はあくまでも場を収めようと…」

善子「気を遣わなくてもいいのよ?嫌なら嫌って言ってくれた、ら…」

 

すると、善子の目から一筋の涙が零れ落ちた。

 

善子「あ、れ?ち、ちが、これはっ、あの、えと、違うの…う、あ…」

優馬「よ、しこ…」

善子「なんで?涙なんて、一緒に出掛けられて嬉しかったはずなのに、あ、あぁ…うあ…」

優馬「…」

 

それもそうだ。あの時、善子は花火がしたかったわけじゃないんだと思う。

花火はもちろん嬉しいけど、それ以上に今日は2人というのが彼女にとって何にも代えがたい特別なものだったのかもしれない。

しかし、俺はそれを踏みにじってしまった。

ただあの場を収めたいから、という逃げの思考のせいで。

 

優馬「…ごめん、ほんとに」

 

善子が泣き止み、落ち着くまでの間、俺はその一言しか口に出せなかった。

 

優馬「…落ち着いた?」

善子「…うん、そのありがと。」

優馬「いや、これは…どういたしまして。」

善子「…今日は楽しかったわ。優馬と久しぶりにあの場所で遊べて、最後にこうやって夏らしいことができて。」

善子「でも、やっぱり私も他の皆と同じなのね。どうしても誰にも邪魔されたくなかった。できることならずっと、ずっと優馬とこうやって2人でいたかった。」

善子「…花火も本当は優馬と2人であれば少なくても安くても関係なかった。嬉しかった。」

善子「なのに、最後の最後でマリーに…これもこれで楽しいわ、それは間違いなんかじゃない。」

善子「でも、でもね?」

善子「…今日一日は2人でいたかったなって」

優馬「善子…」

善子「…ごめんなさい、こんなしんみりとさせるつもりはなかったの。でも伝えておきたくて」

善子「それじゃ、切り替えて!新しい花火が来るのを待ちましょ!あー、楽しみね!」

 

そう言って善子はホテルの方を見た。

しかし、その時、ふと見えたその表情にはまだ溢れんばかりの涙が流れていた。

 

優馬「…」

優馬「善子」

善子「っ!な、なによ…あ、あとヨハネよ!間違えないようにしなさい!リトルデーモン…」

優馬「また、一緒に遊ぼう。明日でも明後日でも今年の冬でも来年の今日でも…2人で、デート、しよう。俺はいつでも大歓迎だから。」

善子「い、いの?そしたら私、舞い上がって色んなところ、連れ回すわよ?」

優馬「それでもいいよ。善子が楽しそうにしてる姿が見れるだけでも役得だし。」

善子「っ!///じゃあ!約束だからねっ!///絶対、絶対よ!?///」

優馬「…うん。待ってるよ。」

善子「う、うう、うわーーーーん!!!」

優馬「え、え!?待って、なんで!?」

 

こうして俺たちのデートはまた次回、ということに収まった。

…また善子が泣いて、大変だったけど。

すると鞠莉が戻ってきた。

 

鞠莉「…はぁ~い!お・ま・た・せ!最後の特大花火よ~~!」

優馬「あ、おかえり…って何にもないじゃん…どこにあるの?」

善子「ほんとね…どこにあるのよ?」

鞠莉「ふふっ、優も善子も…見えるものばかりじゃないのよ?外を見なさい!」

優馬・善子「「え?」」

 

そういう鞠莉の指示に従い、外を見た時、どでかい音とともに綺麗な花型の花火が目の前で無数に打ち上げられていた。

それはそれは有数の特大の打ち上げ花火だった。

 

優馬「うわ…すっごい…」

善子「綺麗…」

鞠莉「…やっぱりこれくらい派手でスケール大きくなくちゃ、ね!」

優馬「鞠莉…ありがとう…」

鞠莉「ふふっ、どういたしまして!やっぱり優に喜んでもらわないと!」

 

そうしてこれをフィナーレに俺たちの最後の夏、3人だけの特別な花火大会が終わった。

 

 

…気づいたらもう夜遅く、流石に女の子を一人で帰らすわけにはいかないということで、善子は小原家の車で送ってもらうことになり、先に家へと戻っていった。

そうして俺は今、鞠莉と2人に

どうしても聞きたいことがあったので、俺はそれを聞くがためにここに残った。

 

優馬「鞠莉?」

鞠莉「あらどうしたの?」

優馬「ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」

優馬「あの特大花火を打ち上げる前、俺と善子が話していた時、鞠莉、いたよね?」

鞠莉「…何のことかしら」

優馬「とぼけるのは無しだよ。あの時、俺たちの会話、聞いてたよね?」

鞠莉「…ごめんなさい、盗み聞きするつもりなんてなかったの」

鞠莉「でも、善子の様子が気がかりで…」

鞠莉「あの時はあんな態度をとったけど…まさかあそこまで優に対して想いが深いと思わなくて」

 

確かに鞠莉にしてみれば自分は善子に喧嘩を吹っ掛けた側であるため、先輩として気がかりになってしまうのもしょうがない。

鞠莉はこういう時、なんだかんだで一歩引いてしまう人だからこそ、ああいう優しさが出るのだ。

 

優馬「…別に怒ってないからさ。むしろお礼を言いたくて」

鞠莉「お礼?…お礼を言われるほど大層なことなんてしてないわ。むしろ善子にひどいことをしたから…」

優馬「確かにあの時は荒れてたかもしれないけど、こうやって場所とか食事を提供してくれて、色んな花火を用意してくれて、何より善子を気遣ってくれた。…十分、大層なことだよ。」

鞠莉「優…」

優馬「…ありがとね、鞠莉」

鞠莉「…それだけじゃ足りないわ。」

優馬「え…?」

鞠莉「今日、善子とデートだったんでしょ?」

優馬「あー…まあそうだけど…」

鞠莉「なら、私とも今度デート、して?///」

優馬「え?」

鞠莉「…私とは嫌?」

優馬「い、嫌、なんかじゃないけど…いいの?」

鞠莉「良いに決まってるじゃない!///じゃあ決まりねっ、今度の休み、私とデート!///」

優馬「こ、今度!?な、夏休み明けとかでいいんじゃないかな…もう残りも数日だし…」

鞠莉「うーん…まあそうね、それでもいいわ!とにかく、私ともデートすること!OK!?」

優馬「お、おーけー…」

 

 

~内浦・帰路~

 

こうしてなんだかんだあった今日一日、そして夏休み最後の一日休みが終わることとなった。

最初の春こそ、誰とも打ち解けようとせず、孤独に生きる毎日を過ごしていくつもりだった。

けれど、こうして彼女たちと出会って、輝きを知って…俺はまた前に進むことを決めた。

この夏で色々なことがあって、色々なことを経験した。

ほんとは皆とも会えてきちんとお礼が言えたら、と思っていたけどまあそれは致し方ない。

だからそんな想いをこの内浦の綺麗な星空に向けて…

 

優馬「“ありがとう”」

 

さあまた頑張ろう、俺の信頼する仲間たちと一緒に

ラブライブ!で輝きを見つけるために…

と思ったその時、一通の電話が来た。

まさか…と思い、見たらそこには

 

千歌「…あ、繋がった!ゆ~~うく~~~んっっ!!助けてぇぇぇぇぇ!!」

優馬「…はぁ、どうせ夏休みの宿題、でしょ?」

千歌「うんっ!!優くんが手伝ってくれると千歌嬉しいなぁ?」

優馬「却下。」

千歌「え!?え、え~っと…あ!今来ればピッチピチの女子高生がお出迎え!しかも一夜を過ごすことが~できるっ!」

優馬「却下。」

千歌「え~~!なんでなんで!!」

優馬「頼むからそんなことに俺を巻き込まないでよ…」

優馬「…はぁ、しょうがない。行ってあげるから、少しでも宿題、進めておいてね?」

千歌「!!」

千歌「うん!待ってるねっ!それじゃ!」

 

優馬「はぁ…」

 

こうして俺の残りの夏休みは千歌の宿題により、見事に消えていくのであった…

 




いかがだったでしょうか?
第27話、28話立て続けの投稿となりましたが、喜んでいただけると嬉しいです!
こういう小ネタ系は僕自身、大好きなので今後もこういうアンケートをしていきたいと思います!
そして…良かったね、善子!そして鞠莉!選ばれし2名、ということで今回は完全に主役とサブヒロインでしたね~
この小ネタはしっかり本編でも活きてくるので、アドバンテージが上がったかな、と…
ということで今回はここまで読んでいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いいたします!


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第29話 前日譚

こんばんは!希望03です。
活動報告でも報告させていただいた通り、投稿内容にミスがあったため、話の間に挿入という形で最新話を投稿させていただくこととなりました。
改めて、申し訳ございませんでした。
ただ、この話も楽しんでみていただいて、温かい目で見ていただけると幸いです…
それではどうぞ!


~浦の星学院・屋上~

 

優馬「暑い…」

 

夏休み。それは学生にとって至高の休みであり、部活に所属していなければ快適な温度で快適に家で過ごし、素晴らしい休みを満喫しているはずのその夏休み。

しかし、俺はこの暑い中、屋上にいる。

理由は俺がスクールアイドル部のマネージャーを務めているからだ。

なんでも俺がマネージャーをしている千歌をリーダーとしたAqoursは先日の予備予選で見事1位通過を果たし、迫る地区予選に向けて、今も尚、練習を行っているからだ。

1位通過、と聞くと聞こえの良い話だと思うが正直な話、ここまで来るのに色々な事件があったわけで…

と過去にふけっていると、練習が一先ず一段落した皆が戻ってきた。

 

鞠莉「ゆ~う~…暑いわ~…」

優馬「…そういうこと言うならハグするのをやめたらいいんじゃないかな?」

鞠莉「No!それとこれとは話が違うのデースッ!」

ダイヤ「意味が分かりませんわよ、鞠莉さん。」

果南「はいはい、鞠莉は離れる離れる!」

鞠莉「あ~~ゆ~う~~!」

優馬「まぁ…自業自得だね…」

 

鞠莉が果南とダイヤに引きずられ、他の皆は日陰で休んだり、ドリンクを飲んだりと各々で休憩をとっている中、俺はある異変に気付いた。

 

優馬「…そういえば真っ先に来る奴が来ないな」

 

そう思い、ふと視線を先に戻すとそこにはこの炎天下の中でまだ踊り続けている奴がいた。

それがAqoursのリーダーである千歌だった。

さすがにオーバーワークだと感じ、俺は千歌を止めることにした。

 

優馬「千歌」

千歌「優くん?どうしたの?」

優馬「いや…もう休憩だけど…」

千歌「うん、知ってるよ?」

優馬「休憩しないの?流石にこの炎天下の中でぶっ続けでやると死ぬよ?」

千歌「大丈夫!私、太陽を眺めながら熱くなれる夏が好きだもん!」

 

と言って、千歌は俺の意見に聞く耳を持たなかった。

 

優馬「…いやいや、それとこれとは別だよ。人間休みなしでしかもこんな気温が高い中、運動し続けたらどうなるか知ってる?」

優馬「脱水症状、下手すれば熱中症で死亡することだってあるんだ。そしたら今目指してるラブライブどころか、自分の人生すら棒に振ることになるんだぞ。」

千歌「で、でも…」

ダイヤ「優の言う通りですわ。」

果南「そうだよ、千歌。ラブライブで作るステージは千歌だけが頑張ればいいわけじゃない。皆で作り上げるステージなんだよ?それなのにそんな無理して千歌が倒れたらどうなるか分かる?」

千歌「うっ…」

優馬「これで分かっただろ?休憩しなさい。」

千歌「はぁ~い…」

優馬「…ありがと、果南、ダイヤ。」

ダイヤ「ふふ、当然のことですわ。」

果南「どういたしまして!」

優馬「それにしても…この中で練習するのは過酷だよね…」

鞠莉「それなら1番暑いこの時間帯さえ避ければいいんじゃないかしら?」

優馬「時間をずらす、ってこと?」

鞠莉「Yes!そうすれば問題なく練習ができそうじゃない?」

優馬「確かに…次から練習の時間をずらそっか」

果南「じゃあ今日はさ、この休憩時間でアイス食べようよ!」

曜「アイス!?」

花丸「アイス…じゅるり…」

優馬「あー…そうだね、じゃあ俺が買ってくるよ。」

果南「ほんと!?そしたら私も言い出しっぺだし、付いて行くよ!」

優馬「あ、それ助かる。ありがと」

果南「大丈夫大丈夫!なんてことないよ!…実質デートだしね、ふふ♡」

 

最後の方はなんて言ったのか聞こえなかったが、どうやら果南がアイスの買い出しを手伝ってくれるらしい。

そんなに人手はいらないと思うが、やはり女の子が欲しがるアイスは俺のセンスじゃ分からないから助かる。

そう思い、いざ果南と買い出しに出掛けようとしたその時

 

善子「待ちなさいっ!」

優馬「善子?」

果南「…ちっ」

善子「果南にだけ得…じゃなくて、大変な思いはさせられないわ!こういうのは平等にじゃんけんにするべきよ!」

 

果南だけね…俺は対象外なのね…

まあマネージャーだからいいんだけどさ…

 

花丸「善子ちゃん、ナイスずら!」

ルビィ「そうだよね!皆平等にした方がいいよね!」

善子「ヨハネよ!ふふん、そうでしょ?」

果南「私は別に大丈夫だけどな~?」

千歌「果南ちゃんは良いかもしれないけれど、私たちが煮え切らないから、ね?」

ダイヤ「そうですわね、じゃんけんに致しましょう?」

 

やっぱり俺は対象外なんだね…まあいいけどさ…

そうして俺は彼女たちのじゃんけんが終わるのを待っていた。

 

曜「じゃあ始めよっか…優とアイス買い出しデート勝ち取りジャンケン!!」

千歌(少しでも甘えたいから…ここで勝たなきゃっ!!)

ルビィ(最近はお兄ちゃんに構ってもらえてないからここで勝ってデートしなきゃだもんね…!)

果南「はぁ…私が行くはずだったのになぁ…」

ダイヤ(アイスの買い出しと称して…遠回りしながらお散歩デート…それもありですわね…)

花丸(買い出しデート…デート…良い響きずらぁ…♡絶対にここは譲れないずらっ!)

善子「今こそ、ヨハネの真の力を見せるときね!」

鞠莉(勝つのは私…優は誰にも渡さないわ、例えこのデートでも、ね!)

梨子(本当、皆ったら勝つのは私なのに…ふふ、こういう買い出しデートでもアプローチしなきゃ…ふふふ♡)

 

「「「「「「「「「最初はグー!!ジャンケン…!」」」」」」」」」

 

そうして勝ったのは…!

 

善子「…わ、私?やったわーーー!!!」

花丸「おめでとうずら。はい、行ってらっしゃい。」

ルビィ「おめでと~。じゃあおつかいよろしくね。」

善子「なんかあんたたち適当じゃない!?」

千歌「ゆ~うく~ん!千歌ね、買ってきてほしいアイスがあるんだぁ…〇ノの〇味なんだけど~…分からなかったらしょうがないから私も付いて行ってあげるよ!」

曜「それなら私も欲しいアイスが結構マニアックなものだから私も行くよ!」

梨子「それなら2年生みんなで行きましょ?久しぶりに皆で出かけたい!」

善子「ちょっと!あんたたちも勝手にルール違反しないでもらえます!?」

鞠莉「ここは騒がしいわね~買い出しなら善子に任せて、優は私たちと一緒に日陰で休みましょ?」

果南「いっぱいハグ、してあげるよ?」

ダイヤ「私も一緒に休んであげますから…行きましょう?」

善子「そこの3年!優馬を連れてくなー!!私と行くのよー!」

 

どうやら善子に決まったみたいだけど…

すごい騒がしいな、と思いつつ俺は善子とアイスの買い出しに向かうことになった。

この暑い中、善子が腕を組んできて、暑苦しいな、と思いつつも可愛らしい善子の顔を見たら何も言えず、腕を組まされるがままになった。

その時の後ろからの殺気?みたいな冷気がなぜだか感じ、背筋が凍ったのはここだけの話。

 

~数分後・図書室~

 

優馬「ただいまー」

善子「買ってきたわよー」

花丸「ありがとう、優さん!と善子ちゃん。」

ルビィ「お兄ちゃん、ありがとう!と善子ちゃんも。」

善子「だからあんたたちは私に何の恨みがあるわけ!?」

千歌「優くんありがと~…じゃあ食べさせて?♡」

曜「私も腕が練習で動かないから優に食べさせてほしいなぁ…♡」

梨子「私は優君のアイスと半分こしたいなぁ…♡」

善子「あんたたちはまずお礼から言いなさいよ!」

ダイヤ「優、来なさい。こちらで食べますわよ♡」

鞠莉「優は特等席デース!私たちと一緒に…ね?♡」

果南「ほら早く早くっ!♡」

善子「だぁぁぁ!なんで優馬をあんたらに渡さなきゃならないのよ!」

優馬「…善子、ツッコミの天才だな?」

善子「誰のせいよ、誰の…」

優馬「あはは…ありがとね?」

善子「ん…///あ、う…///その、もし良ければ私と一緒にた、食べ…///」

優馬「じゃあ皆で食べよっか」

善子「なんでそうなるのよ!」

 

こうして買ってきたアイスを図書室の涼しい空間の中で食べる、しかも練習中の休憩時間に、という背徳的な事をして優越感に浸っている中、図書室のドアが開いた。

 

いつき「あれ?皆?」

むつ「おー!優馬君もいるー!」

よしみ「図書室で何してるの?」

 

誰かと思えば、よいつむトリオだった。

話を聞くと、どうやら図書室で借りた本を返しに来て、訪れたらそこには俺たちがいた、ということらしい。

そして俺たちが何をしていたか、というのを伝えた。

というのもしていることと言えば地区予選に向けて、練習をする以外何もないのだが…

するとこのトリオは

 

むつ「すごい、すごいよ!皆!」

よしみ「やっぱり意識が違うね~!」

いつき「皆、そんな姿にいつも刺激貰ってるもんね…すごいなぁ」

 

とこんな感じで俺たちのしていることに感激し、激励をしてくれた。

どうやらよいつむトリオも学校のために何かをしたいと思っていたらしく、それは他も同じだということを話してくれた。

そして、それを形として実現してくれたAqoursにできることなら加入して、スクールアイドルを一緒にしたいということ、この思いも他に感じている人がいるということも話してくれた。

 

千歌「ほんとに!?それなら喜んで受け入れるよ~!」

 

と千歌は相変わらず、といった感じだがすごく喜んでいて、その気持ちは俺も分かる。

こんな激励を貰えたら俺自身がやっていたら力になる。

それは皆一緒かと思い、周りを見渡すと意外にもそんな雰囲気はなく、梨子が浮かない顔を浮かべていた。

 

優馬「…梨子?」

 

~帰路・内浦~

 

あの後、図書室でアイスを食べ終わらせた後、再び練習を開始し、ついさっき終わったばかりで今、俺と千歌と梨子は帰り道が一緒のため、帰路についているところだった。

 

優馬「…今日はなんか目一杯やった気がするな」

千歌「そう?いつも通りだと思うけどな~」

優馬「俺の体は夏に対応していないんですよ。」

千歌「あはは、またまた御冗談を~」

 

という感じでいつも通り、冗談を言い合いながら帰っているのだが

どうにも梨子の様子が元気がないというよりも何か考えているようなそんな感じがする。

 

優馬「…梨子、どうかした?」

梨子「あ、い、いや…なんでもないよ?」

優馬「梨子。言わなきゃ分かんないよ。」

梨子「う…」

千歌「どうかしたの?」

優馬「いや…梨子が強情でね」

千歌「ごうじょう?」

梨子「も、もう!分かったわよ!話せばいいんでしょ?」

優馬「ありがと、梨子。」

梨子「あ…///だ、大丈夫…だよ…///」

千歌「…」

 

そうして梨子はよいつむトリオの話を聞いて感じたことを話してくれた。

学校中の皆がそうやって応援してくれるのは嬉しい、しかしステージに立てるのはエントリー時に申請したメンバーのみしか立てないわけであり、その周りにいることすらも許されないのだ。

地区予選に浦の星学院の皆が来たところで一緒にできるわけではない。

そこが少し気になってしまったらしい。

 

梨子「だから…」

優馬「…」

 

俺はそれに対して、また考えすぎてしまい答えを出すことができなかった。

すると、横にいた千歌が想いを伝えてくれた。

 

千歌「ステージに立てないことは分かってるよ。でもね、ダンスが無理なら皆で歌う、それがダメなら気持ちだけでも一緒、それで有名になればきっと入学希望者が増えて、学校を存続できるんじゃないか、ってそう思うんだ。」

千歌「あれだけ皆が応援してくれて、学校やこの町が好きなのに、入学希望者が0ってことはそれだけ伝わってないんだ。」

千歌「それなら…」

優馬「ここの良さを伝えて、1にする?」

千歌「うん!そういうこと!」

梨子「千歌ちゃん…」

 

話し込んでいると既に俺たち三軒の家が並ぶところまで歩いてきたところ、千歌の家から

千歌そっくりの小さな女の子?が出てきた。

 

?「千歌ちゃん、おかえり…それとその2人はお友達?」

梨子「え、えーっと…桜内梨子です…初めまして?」

優馬「あ、空条優馬です…初めまして」

 

千歌と見た目がほとんど変わらず、身長は千歌よりも低いため、普通に妹なにかだと思ったのだが…この話し方からして、なんだか違うような気もしてきた。

そしたらなんとこの人は千歌の母親だったのだ。

話を聞くに、普段は東京にいるらしいのだが、志満お姉さんから千歌の活躍、つまりスクールアイドルをやっていると呼び寄せたらしい。

 

千歌「も~、なんで出てきたの~!」

千歌母「あら出てきたらダメだったかしら?」

千歌「もう戻るからあっち行っててよ!」

千歌母「はいはい…」

 

そうして千歌の母親がもどろうとしたその時、もう一度千歌の方に振り向き

 

千歌母「今度は、辞めない?」

 

と聞いたのだ。

こういった部分はやはり母親としてずっと見てきたからこその言葉なんだろうなと感じた。

すると即座に千歌は

 

千歌「辞めない。絶対に。」

千歌母「ふふ、そう…それと優馬君…だったかしら?」

優馬「は、はい!」

千歌母「千歌を今後ともよろしくお願いします。いつでも千歌をお嫁に貰ってもいいからね?なんならお婿に来てもらって十千万旅館を継いでもらっても…」

優馬「い、いや待ってください。話が飛躍しすぎ…というか、千歌とはそういう関係ではないので…」

千歌母「あらそうなの?でもフリーなのよね?それなら優馬君ならいつでも大歓迎だから♪」

 

すごいマシンガントークだ…

ツッコミが、というか俺の話が通らない…

 

千歌「も、もう!///やめてよ、お母さん!///」

千歌母「あら怒られちゃったわ、じゃあ私は戻ろうかしら…千歌も早く戻ってきなさいね?」

千歌「…もう!///」

優馬「あはは…とんでもないお母さんだな…」

千歌「ごめんね…?///でも、私としてはいつでも大歓迎というか…その、お嫁でもお婿でもどっちでもついて行くというか…///」

梨子「…千歌ちゃん?優君?」

千歌「…あ、梨子ちゃんいたんだ?声が聞こえなかったからとっくに帰っちゃったのかと思ってたよ~」

優馬「あー…バトル始めるなら俺帰るからね~…」

 

俺の一声により、彼女たちはすぐさま止め、それぞれの家へと戻っていったのだった…




いかがだったでしょうか?
ちなみにこの話の内容はあと1話続きます!
とりあえず1期の内容が終わるまであともう少し…
なんだかまだ2期の内容が残っているのに、終わりがあると思うと切なく感じてしまいます…
ですが、これからも書いていきたいと思うので見ていただけると嬉しいです!
それでは次回もよろしくお願いします!


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第30話 私たちの輝き、俺の輝き

こんばんは、希望03です!
遅くなってしまいました…
第30話、第1期の終わりです!!
ついにあの曲の登場…感動のお話になっています…
※作者もアニメを見直して、1期時点で10回は泣きました。
ヤンデレ要素はこの話の中に詰めていないと思いますので、その要素が欲しかった人には申し訳ございません…
それではどうぞ!


~名古屋駅・ラブライブ地区予選当日~

 

そうしてついにラブライブ地区予選当日となった。

内浦にいた時は実感が湧かなかったが、こうして地区予選会場のある名古屋へ辿り着くと否応でも本番なんだな、と思い知らされてしまう。

しかし、今までやってきた練習を思えばきっとまた輝きを見せてくれるだろう、という謎の自信が俺の中であったため、そこまで緊張はしていなかった。

…まあ他のメンバーはどうだか分からないのだが。

 

千歌「…ついた、ね」

優馬「…うん、ついたな」

 

あの千歌が騒がない、となると恐らく緊張しているのだろう。

千歌ですら緊張しているとなると他のメンバーはもっとしている、そう感じた。

すると、後ろから聞き覚えのある声で俺たちに声をかけてきた。

誰だ?と思い、後ろを振り向くとそこにはよいつむトリオを筆頭にした浦の星学院の皆が勢揃いだったのだ。

 

むつ「や!優馬君!」

優馬「え、えぇっ!?ここまで来たの!?」

いつき「そうそう!皆で応援に来たよ!」

千歌「あ、ありがと~~~!!」

よしみ「皆、頑張ってねっ!!」

 

なんとわざわざ内浦のある静岡からここ愛知まで応援のために駆けつけてくれたのだ。

しかし、応援と言ってもステージで一緒に、どころか関係者ではあるもののステージの周りですら近づくことが禁止されているのだ。

 

優馬「…それなのにわざわざ?」

むつ「うん、分かってるよ!」

よしみ「私たちができるのは遠くから応援することしかできない、だからこそ客席から宇宙一の応援をする!」

いつき「その分、宇宙一の歌を聴かせてね?」

 

なんとも健気な子達だった。

たった数人の友人のために、そして彼女たちが背負っている学校の存続という大きなものを知っている上でそれを見て見ぬふりすることだって、他人事のように任せることだってできたんだ。

それなのに彼女たちはそれを良しとしなかった。

何か一緒にできることを探した結果がこの応援なのだろう。

その想いに感激していると、千歌が口を開いた。

 

千歌「…うん!約束する!絶対に最高の!宇宙一の歌をここに響かせる!」

 

…千歌らしいな。さっきまで緊張でガチガチだった癖に。

でも千歌だけじゃない。他の皆も気づけば緊張が吹き飛んでいて、その瞳には闘志が見えていた。

 

優馬「…皆、そろそろ時間だから行こう。」

 

そうして俺たちはよいつむトリオを含む大勢の浦の星学院の皆からの応援を受けながらラブライブ地区予選の会場へと向かった…

 

~ラブライブ地区予選会場・控室前~

 

優馬「じゃあここからは俺が入れないから…」

千歌「…うん」

優馬「…頑張って、皆。俺は学院の皆と同じ場所で応援してるから。」

 

そうしてこの場を去ろうとした時だった。

 

千歌「…っ!待って!!」

優馬「っ!?」

 

千歌から声をかけられ、なんだと思い後ろを振り向いた途端だった。

千歌が抱きしめてきたのと同時に、皆が俺のことを囲うように抱きしめてきたのだ。

 

優馬「…み、皆?」

善子「…優馬、驚かせてしまってごめんなさい。でもね、これはずっと計画してきたことなの。」

花丸「ステージに上がる前、優さんが応援席に戻っちゃうそのタイミングで今までの感謝の気持ちを伝えよう、って皆で決めたずら…」

優馬「…」

 

ルビィ「お兄ちゃん、ルビィはね、お兄ちゃんのおかげでいっぱい色んな事を経験できて、すごく楽しかった…でもどんな時でもお兄ちゃんは私たちのことを支えてくれて、いつもルビィたちの隣に居てくれて…本当に温かくて…どんな楽しい事よりもお兄ちゃんと過ごす時間が楽しくて、ルビィにとってかけがえのないものになってた…スクールアイドルにしてくれて、楽しい時間をもたらしてくれて…本当にありがとう!お兄ちゃん!」

 

花丸「マルもずら…オラも最初の頃はこんな眩しくて可愛い女の子たちがするようなスクールアイドルなんて、向いてないと思ってて、ずっと逃げてきたずら…けど、優さんに出会って、振り向いて欲しい一心でここまで辿り着けて…本当にありがとうずら!だから今日のライブは優さんへ一番に想いが届くように、オラ頑張るずら!だから見てて欲しいずら!」

 

善子「…私はあの時出会ってなければ本当にあのまま逃げてばかりの人生で終わってたと思うし、それくらい優馬っていう存在は私に影響を与えてくれた…それだけで感謝しかないんだけど、それだけじゃない。悩んでいた時も私たちが仲違いした時もいつだって優馬は手を差し伸べてくれた。今はもう私だけじゃない、Aqours皆が優馬に影響を受けて、今があると思うわ。だから…うん、本当にありがとう…今日はヨハネの魅力のありったけを第一リトルデーモン優馬に見せつけてあげるから、瞬きせずに見届けなさいっ!」

 

優馬「…ルビィちゃん、マルちゃん、善子」

 

ダイヤ「…私たちを忘れてもらったら困りますわよ?」

優馬「ダイヤ…」

 

ダイヤ「私もずっと昔から優のことを見てきて…それなのに、あの時、優の辛い思いに気づけなくて、和解するまでずっとそのことが私の中で、辛い痣のように残っていましたわ。この罪滅ぼし…というわけではないのですが、優にはもっと笑顔でいてほしい、前の私たちの知ってる優に戻って欲しいからこそ、今日は今までのライブよりも良い一番のライブを見せて、輝きを見せてあげますわ!」

 

鞠莉「…優にはずっと前から感謝してるわ。外の世界なんて何も知らなかった、家にいるだけの孤独な私を連れだしてくれて…そして、私に色々なことを教えてくれた。内浦の綺麗な景色やそこに住む人達の温かさ、友達の大切さ…恋、もね。…優のおかげで、私の世界は色づいて、綺麗なものになったの、だから本当にありがとう。今日のライブとびっきりのものを見せてあげるっ♪」

 

果南「次は私ね…私はずっと怒ってたんだよ?勝手に塞ぎ込んで、勝手にいなくなっちゃって…私の想いは…伝えられないままで…もう会うことはないんだろうなって思ってた。でも、こうやってゆうは意図してなかったかもしれないけどちゃんと帰ってきてくれて、しかも私たちの関係をまた結び付けてくれて、本当感謝しかないよ。知ってるかもしれないけど、私はそんなゆうのことが大好き、ずっと好き。その想い、このライブで魅せてあげるから!」

 

優馬「ダイヤ、鞠莉、果南…」

 

曜「優、こっちも忘れちゃダメ、だよ」

優馬「曜…」

 

曜「…初めて出会った時、優が転校してうちの学校に来た時だよね。最初先生から男の子が来るって聞いたとき、ちょっと怖かったんだよね。でも、優が紹介された時、そんな心配、全部消えちゃった。…多分、ああ言うのが一目惚れなんだろうね。それから私の世界はさらに色づいて、本当に毎日が楽しかった…今もこうして、千歌ちゃんと梨子ちゃんと…そして私の好きな人と一緒に何かを目指せる、そんな経験ができるのは優のおかげ…本当にありがとね?…今日はそんな色々な想いをステージに乗せて、優に届けるから!」

 

梨子「次は私、かな?…優君、君ってば本当、色々な人に色んな影響を与えてるよね…やっぱりすごいなぁっていつも思ってる。それは私も同じ、初めて会ったあの時、優君と出会ってなければもうピアノとは縁を切ってたかもしれない…だから中学時代に会ったあの時からずっと優君は私にとって、王子様で、一番大切な人…ずっとあの時から優君に感謝しかなかったの、今まで伝えられなくてごめんね、今までもこれからもずっとありがとう!今日は最高のライブを届けるからね!」

 

優馬「曜、梨子…」

 

千歌「優くん」

優馬「千歌」

 

千歌「私たちがここまで来れたのは他でもない優くんのおかげ、本当にありがとう…でもね、きっと私たちはここで終わらない。ずっとずっとこの先も走り続けるの。これからきっとまだまだ嬉しい事、辛い事、色んなことがあると思う。それを全部全部、楽しんで、Aqoursの皆と、そして優くんと歩んでいきたい。」

 

千歌「それが、それがきっと輝きだって信じてるから!!」

 

その時だった。

彼女たちにあるはずのない、白い翼が生えて、これから飛び立とうと、そしてどこまでも飛んでいく姿が見えたのだ。

 

千歌「…優くん、見ててね。私たちの最高のステージ!届けるから!」

 

 

~ラブライブ地区予選会場ステージ・Aqours side~

 

ついにここまでやってきた。

だけど、不思議と緊張は消えていた。もっと緊張すると思っていたのに、そんな不安はどこへやら、気づけばその緊張や不安は消えていたのだ。

とうとう、私たちの番。

確かに学校を救うのも大事、でもそれ以上に大切なことがある。

それは私たちの大切でたった一人の大好きな人に、想いを届ける、ということ。

その想いを持って私たちは、ついにこのステージへと飛び立った…

 

千歌「皆さん、こんにちは!私たちは!」

「「「「「「「「「Aqoursです!」」」」」」」」」

 

千歌「今日は皆さんに伝えたいことがあります!」

千歌「それは私たちの学校のこと、町のこと、そして私たちにとっての大切な人のことです!」

千歌「Aqoursが生まれたのは、内浦という町です。小さくて人もたくさんいない町だけど、それでも魚たちがいて、みかんがいっぱい採れて…温かな人でいっぱいな町…」

千歌「その町にあるのが、小さな小さな学校…今ここにいるのが全校生徒!」

千歌「そんな学校で私たちはスクールアイドルを始めました…」

 

曜「アキバで見つけたμ’sのように輝きたい、同じように輝きたいと思ってた…でもそこには色々な試練があって…いつも壁にぶつかってた…」

 

梨子「そんな時、私たちを支えてくれた、大切な人がいてくれた。」

 

花丸「オラ…私には…スクールアイドルなんて輝くことなんてできないよ。」

 

ルビィ「ルビィも人見知りだし、スクールアイドルなんて…」

 

善子「私もただ自分を見てほしいだけ…本当は普通の女の子でいたいから…でも、彼は話してくれた。」

 

花丸「オラたちにも可能性があるんだって」

 

ルビィ「ルビィたちは輝ける力が、可能性を秘めているって教えてくれた…」

 

鞠莉「でも、そんな大切な人も始めは私たちとそれ以上に人と関わろうとしなかった…」

 

ダイヤ「辛く悲しい過去を持ち、誰かに打ち明けたかったけれど、彼は優しかった。誰にも相談せず、抱え込み、いつしか自分の心を閉ざし、塞ぎ込んでしまっていた…」

 

果南「それを私たちは気づいてあげられなかった…だからこそ、もう一度知って欲しいって君にもまだ輝ける心があるんだよって」

 

千歌「そうして私たちは彼に歌を届けました…すると彼は閉ざした心がまた動き出し、私たちと一緒に前を進んでくれました…」

 

曜「私たちがこうしてスクールアイドルができているのは私たちの努力だけじゃない、彼の想いがなければ成し遂げられなかった!」

 

梨子「私たちを引き合わせてくれて…そして、ここまで支えてくれて、感謝しかありません…」

 

千歌「だから私たちは決めました」

 

曜「さらにもっと上にある輝きを見せてあげられるように」

 

梨子「そしてこれからもこの先もずっと一緒に未来を歩んでいけるように」

 

花丸「この学校や町と」

 

ルビィ「そしてこの仲間と一緒に」

 

善子「私たちと一緒に歩く彼と共に拓き、信じ行く道を」

 

果南「これから起きること、全てを受け止めて」

 

ダイヤ「全てをこの町とそして彼と共に楽しもうと」

 

鞠莉「それが…輝くことだから!」

 

千歌「私たちは気づきました…輝くことはきっと、楽しむことなんだろうって…」

千歌「この私たちの精一杯の輝きを、想いを彼に、町中に響かせるために、“0”だった、私たちのスタートを“1”にするために!」

 

千歌「行くよ!」

 

千歌「1!」

曜「2!」

梨子「3!」

花丸「4!」

ルビィ「5!」

善子「6!」

ダイヤ「7!」

果南「8!」

鞠莉「9!」

 

優馬「じゅーーーー!!!!!!」

 

千歌「っ!ゆ、うくん…」

曜「…千歌ちゃん」

千歌「うん、ごめん!…今、全力で、輝こう!!!」

千歌「0から1へ!」

 

「「「「「「「「「Aqours!サンシャイン!!」」」」」」」」」

 

 

~《MIRAI TICKET》♪~

 

こうして私たちはステージ上で最大限の想いと輝きを自分たちなりに彼に届かせようと動き出したのだった。

その時だった、まるで輝きが一筋の道のように私たちの頭上を照らしていたのを見つけたのだ。

 

千歌「優くーーーーーん!!!!!みんなーーーーーー!!」

千歌「一緒に、歌おうっっ!!!」

 

そうして私たちが見た光景は、本当に一つの光となり

私たちの輝きが、皆の輝きへと変わり

私たちの心を終始、躍らせてくれたのだった

 

私たちの輝きは君に届いた、かな…

 

 

~浦の星学院屋上・優馬side~

 

ラブライブ地区予選から数日…夏休みももう終盤…

俺たちは今日も屋上で練習を続けている

なんでかって?

そんなの決まってるじゃないか。

やりたいから、どこまでも輝きたいから…じっとしていられなかったのだ。

だから俺たちはこうしてまたいつもの場所で、練習を続けているのだ。

たまに思うことがある。

俺は彼女たちに何かしてやれただろうか、輝きを見せてもらうばかり…

つまり、与えられているだけなのではないか、と思う時がある。

でも、そんな時、最終的に辿り着く答えがある。

それは“くよくよしたって始まらない。やりたいと思うなら一緒に歩もう”と

だから今、俺はここにいる。

彼女たちとまた前へ進むために。そして俺自身の輝きを今度は彼女たちに見せてあげられるように。

数年前、数か月前の俺なら恐らく考えられないだろうけど、人生何があるか、分からないものだ。

あんなにひどい時期があったのもまた一興だろう。

ただ、そんな過去の俺自身に会えるとしたなら俺はこう問うだろうな…

 

“君のこころは輝いてるかい?”




いかがだったでしょうか
無理矢理詰め込んだ感じになってしまって少し違和感を感じましたでしょうか…
ですが、この話をもって、1期は終了です!
小ネタも挟んでいますので、次は第2期のスタートです!
次の話も見ていただけると幸いです。
それでは次回もよろしくお願い致します!!
ありがとうございました!

※またもやミス!!
 まさかの原作改変しておりました!突破してなかったです!すみません!!!!!
 


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第31話 偶然か、あるいは必然か?

こんにちは!希望03です!
今回も本編に入る前に夏休み最後の小ネタを挟みました!
この話はほとんどのメンバーを出そうかな、と思っているのでよろしくお願いします!
長々と話しているのもなんなので、もう行きましょう笑
それではどうぞ!


8月31日、世間で言うとほとんどの学校が夏休みの終わりを迎えり、9月から新学期…

そして、それと同時に訪れるのが、「夏休みの宿題」、である。

この宿題をこの最後の日まで貯めてしまい、痛い目にあう、という流れが存在する。

しかし、俺たちはもう高校生…なんなら三年や二年、というのは受験勉強に取り掛かる、もしくは+αで少しずつ勉強を進めていかなくてはいけない立場であり…

ま・さ・か、宿題を貯めている…なんてことはないはず…ない、はずなんだけどな…

 

~千歌家・千歌の部屋~

 

優馬「…」

千歌「う、うわ~~~~ん!!終わんないよ~~~!!」

優馬「…」

果南「う~ん…もう宿題とかやらなくてよくない?将来、これいらないよね?」

優馬「…」

千歌「ねぇねぇ、優くん?とりあえずこれで宿題は終わりにして、リフレッシュに遊びに行こ?」

果南「それいいよ、千歌!私も遊びに行きたいなぁ…ね、ゆう?」

優馬「…」

千歌「あ、あれ?ゆ~うく~ん…?」

果南「あ、ありゃ?ゆ、ゆう?」

優馬「うん。許すわけないよね?馬鹿2人?」

優馬「遊びたければ今すぐ、早急に、宿題を終わらせてね。」

千歌「ひ、ひぃ~~~」

果南「ゆ、ゆうの鬼~~~!」

優馬「は?」

千歌・果南「「ごめんなさい。」」

 

どうにもこの2人は集中力が続かない。

俺一人じゃ手に負えないし…どうするか…

って言いつつ、もう手は打ってるんですけどね。

ということで、そろそろ登場になると思うんだけど…

 

優馬「あ…そろそろ着きます、か」

千歌「え?誰か呼んだの?」

果南「誰?女?」

優馬「…すぐそうやって女かどうか確認するのやめていただけます?」

優馬「まあ秘密、だな。サプライズゲスト、期待しておいて?」

 

そう2人に話してると玄関から声が聞こえた。

ちょうどいいタイミング。ベリーグッドである。

 

優馬「わざわざありがと、ダイヤ、梨子。」

梨子「ううん、全然大丈夫だよ!…むしろ連絡くれて嬉しい、というか///」

ダイヤ「ええ、気にしなくて大丈夫ですわ!…私も連絡いただいた時、どれだけ心が躍ったか///」

千歌・果南「「…」」

 

やはりここで頼れるのは頭が良いお2人さんだよね…

しかもちょっと怖そうだし…っていうのは言わないでおく。

そしてそれを見て、千歌と果南の2人は何とも言えないような表情をしていた。

 

ダイヤ「それで…私たちは何をすれば?」

優馬「そうだな…とりあえずこの2人の監視を一緒にしてほしいのと、もし分からないところがあったら教えてあげてほしい、かな。」

梨子「それだけで大丈夫?」

優馬「う~ん…すぐ気持ち切れちゃうから少しお灸据えてもいいかもしれないね?」

千歌・果南「「ひっ…!鬼ぃ…鬼がいるぅ…!」」

 

鬼ではない。断じて鬼ではない。

鬼だなんてそんな酷いことはしてる覚えないんだけどな。

千歌と果南のためを思ってですけどね?うんうん。

 

優馬「…まぁ、鬼かどうかは置いておいて。お灸据えるとしたら普通に怒るとか、かな?」

ダイヤ「いえ…この2人ならもっと効き目のあるお灸がありますわよ?ですわよね、梨子さん?」

梨子「…あ、なるほど。それでしたら私たちも役得ですもんね!」

優馬・千歌・果南「「「???」」」

 

この2人なら怒るだけでも千歌と果南にはかなり効くと思うんだけど…

他に何があるんだ?

しかも、役得って…

俺には全く理解ができなかった。すると、その時だった。

 

ダイヤ・梨子「「…えいっ♡」」

千歌・果南「「は?」」

優馬「…!?あれ!?え!?」

 

その時、俺はダイヤと梨子に抱きしめられてしまった。

これのどこにお灸を据えてることに繋がっているのか、未だに分からないがとりあえず

とてつもなく恥ずかしい!!!

 

優馬「え、え~っと///ダイヤさん?梨子さん?///」

ダイヤ「あら、どうされました?」

梨子「もしかして、恥ずかしがってるのかな?」

優馬「い、いや///それもあるけど、これのどこがお灸になるのかなって…」

ダイヤ「それでしたら果南さんたちを見たら分かりますわ」

 

そう言われ、千歌と果南の表情を見ると

 

千歌「…優くんは千歌のなのに、なんでそういうことしちゃうかな、ほんと泥棒猫たちはいちいち鬱陶しいなぁ…優くんもデレデレしちゃって、あーむかつくむかつくむかつくむかつくむかつく…」

果南「ゆうったらほんとは嫌だもんね、ほんとはめんどくさいもんね、そういうことされるの。今、私が救ってあげるからね。待っててね。それにしても来て早々そういうことするなんてほんと淫乱雌豚さんたちだなぁ…あー腹立つ。むしゃくしゃする。」

 

その表情はまさに鬼神。そこにいたのは後ろに修羅が控えてそうなオーラを放ち

目はこちらを見て離さない、そしてその目は真っ黒で闇な感じ?が前面に出ているような

そんな表情。

 

優馬「ひえっ…」

梨子「ね?」

優馬「いや、ね?じゃなくてさ…」

 

これはどう考えても危ない。

危ないというのも俺の身が危ないという意味である。

 

千歌「…ねぇ、いつまでそんなひっついてるの?」

果南「そうだよ。ゆうが困ってるからいい加減そういう意味分からないことするのやめたら?」

梨子「あれ?千歌ちゃんたち嫉妬?」

ダイヤ「じゃあ貴方たちがイチャイチャしようとすればいいじゃないですか?」

ダイヤ「た・だ・し!宿題を終わらせてからですけれどね?」

果南「はぁ!?なんでダイヤに言われなきゃいけないの?ゆうの意見聞いてないし!」

ダイヤ「じゃあ聞いてみましょうか?どうなんですか、優?」

 

え、ここで俺に聞くか。

とんでもない無茶ぶりをかまされ、そして今、まさに逃げ道を失ってしまった。

途方に暮れている俺など、この4人には知ったこっちゃないのだろう。

…非常にめんどくさい。付き合ってやる俺は非常に偉いと思う。本当に。

 

優馬「あー…えっと…まあそうだねー…宿題は早く終わらせてほしいかなー…」

 

はい、全く強気でいけませんでした。

なに偉そうにあんなこと言ってたんだろ。この状況でこんな圧、耐えられるわけないじゃん。

すると、目の前には盛大ににやけながらドヤ顔をかましてるダイヤ、梨子の2人と

落胆したと思わせといて、その目にはその2人に対する憎悪の目をしてる狂気的な千歌、果南の2人がいた。

 

果南「…いいよ、ダイヤ。そっちがそのつもりなら…私たちが宿題を終わらせればいいだけだからね!」

千歌「やるしかないみたいだね…今、目を覚まさせてあげるからね、優くん」

優馬「あー…うん…頑張ってね…」

 

なんだろう、このバトルドラマ感。

目を覚まさせてあげるって…俺は囚われの身か何か?

 

ダイヤ「ふふっ♡精々頑張ってくださいね?♡」

梨子「耐えられたら、だけどね♡」

 

そう言うとダイヤたちは俺に抱き着いてた体をさらに密着させて、

すりすりと千歌がいつもしているように甘えてきたのだ。

 

優馬「…へ?///」

千歌「はぁぁぁぁぁ!!??」

果南「ちょ、何してるの、2人とも!」

ダイヤ「なにって…いつも甘えられない分、ここで甘えておこうと思いまして」

梨子「そうですよ!…いつもいつも誰かさんが甘えてばかりですからね…私も優君成分を補充しておこうかと」

 

そう言って、さらに抱きしめる力を強め、まるで彼女たちに見せつけるかのようにさらにすり寄ってきた。

…正直、ドキドキする。うん。俺も男だったね。

 

千歌「むむむ…千歌も甘えたい!優くん!こっち来てよっ!」

果南「そうだよ!私たちだって頑張ってるんだよ!私にもハグさせろーー!!」

ダイヤ「ダ・メ!ですわよ?黙って宿題を進めなさい?」

梨子「そうだよ。そもそも優君がイチャつくなら宿題を早く終わらせてほしい、って言ってるんだからね?その意味は分かってるよね?」

千歌・果南「「…」」

 

そう言い放った後、不服といったような表情をしながら彼女たちは黙々と宿題へと取り掛かっていった。

確かにすごい効果である。さっきまで全く集中する気配のなかった2人がここまで集中するなんて…とは思うのだが…

 

優馬「や、やっぱり2人とも距離近いと思うんだよね…///」

ダイヤ「ふふっ、良いじゃないですか♡」

梨子「あの時の約束、忘れちゃった…?」

 

あの時の約束…

つまりダイヤと梨子が喧嘩して仲違いしそうになった時に俺が止めた。

その時に条件として与えられたことだろう…

確か、たまには構ってほしい…だったかな?

 

優馬「いや…忘れてないよ。最近は、また忙しかったからね。構ってあげられなくてごめん。」

梨子「ううん、大丈夫だよ…むしろ覚えててくれて嬉しい///」

ダイヤ「でも寂しかったのは本当ですから…今日はたっぷり甘えさせてほしいですわ?♡」

 

と、彼女たちが甘えてこようとしたその時

ダイヤに一着の電話が鳴った。

 

ダイヤ「…ルビィ?すみません、優。少し電話してきますわ。」

優馬「あ、うん。行ってらっしゃい…」

梨子「ダイヤさんがいない間、私が独り占め…えへ、えへへへ…♡」

 

ダイヤが部屋を出て行ったあと、梨子は以前の時のようににやけ顔を晒しながら抱きしめる力を弱めることなく、すり寄ってきていた。

それを憎悪の目で見つめる千歌と果南…

すごい光景だ、本当に…スクールアイドル、だよね?君たち…

すると、その時だった。

 

梨子「…え、私にも!?」

 

なんと、ほぼ同タイミングで梨子にも電話がかかってきたのだ。

お相手は…

 

梨子「…よ、善子ちゃん??なんで…」

 

相手は珍しい?善子だったみたいだ。

まさか善子が電話をかけるとは…一体何があったのだろうか…

少し気になるところではある。

 

梨子「…はぁ、ごめんね、優君!すぐに急いで戻ってくるから!」

優馬「…は~い。行ってらっしゃ~い…」

 

すごいタイミングだなぁ…なんて思っていると

千歌と果南がすごい勢いでこっちへ迫ってきた。

…これはやばいかもしれない。逃げるところがない。

 

千歌「…ゆ~う~く~んっ!♡」

果南「ふふっ♡ベストタイミング、だったね♡」

優馬「ち、千歌…果南…」

 

これはまずい。

この状況、俺はまさに彼女たちの捕食対象。このままいけば確実に喰われる…

そう思っていたのも束の間、すぐさま彼女たちは俺に飛び掛かり、先ほどダイヤと梨子がしていたように抱きしめてきたのだ。

 

優馬「…あー、2人とも暑苦しい…」

千歌「…さっきまでダイヤさんと梨子ちゃんに抱き着かれていたのに?」

果南「私たちの時だけ、そうやって言うんだ…へー…」

優馬「い、いやごめんなさい…」

 

押し負けた。

圧ありすぎ、怖すぎ。

でも、まあこうやって甘えられるのも悪くはないというか…役得というか…

って俺は何を考えているんだ?

このまま梨子とダイヤが戻ってきたら…

 

優馬「2人とも、このままだとダイヤと梨子に怒られるよ?」

千歌「怒られるかもしれないけど、喧嘩を吹っ掛けてきたのはあっちだからね?」

果南「私たちでゆうと勉強してたのに…あんな邪魔するような…許せないよね?」

 

全面戦争不可避状態。

目が合って即バトルの可能性が出てきてしまった。

恐らくそれを止めるのは不可能に近いだろう。

…しかし、あんな図ったようなタイミング…誰かが細工したかのようなそんな偶然だったな…

 

優馬「ん…?ベスト、タイミング…?」

 

その時、俺はある疑問が、そしてこの偶然のタイミングがもしかしたら誰かが作り出した必然であった可能性が考えられるある一つの仮説が思い浮かんできたのだった。




いかがだったでしょうか?
小ネタはどうしても文量が多くなっちゃうんですよねー…
なので今回も分けてしまいました笑
前編、後編とは書きませんでしたが、次回の話もこれの続きとなるのでご了承ください。
それではここまで読んでいただきありがとうございました!
次回もまたよろしくお願いいたします!


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第32話 さらば夏休み

こんにちは!希望03です!
今回は前回の話の続きの話となります!
ついに本編までの小ネタはこれでひとまずひと段落となります…
是非楽しんでいただけると嬉しいです!
それではどうぞ!


ベストタイミング。

それは果南の口から出た言葉で、まるで自分たちはそのタイミングを図っていたかのような

そんな言い草だった。

つまり、果南及び千歌の2人はダイヤ、梨子を俺から離すために裏に手を回した可能性がある…

あの2人が何かしらの理由をつけて、ルビィ、善子に連絡を回し、彼女たちがダイヤと梨子へ電話をするように…仕向けた?

 

千歌「…どうしたの、優くん?」

果南「なんだか、元気ない?お姉さんがハグしてあげよっか?」

優馬「…いや、少し聞きたいことがあるんだ。」

 

もしかしたら…という可能性を考えて、俺は彼女たちに聞くことにした。

 

優馬「ダイヤと梨子の電話って偶然にしてはさ、できすぎじゃない?」

果南「…どういうこと?」

優馬「いや…あの2人にかかってきた電話のタイミングがあまりにも良すぎて不自然だな…というか、誰かが仕組んでた、っていう可能性とか」

千歌「そ、そんなの私たちにできないよ!」

果南「そうだよ、いくらなんでも私たちにはそんな高度なことできないよ?」

 

まあ…この2人の頭ならできないかな、とは思うのだが…

それでも可能性は捨てきれない。

彼女たちの好きなものに対する執着心は彼女たちの思考すら変えていってしまう。

つまり、俺が言いたいのは…

この2人ならやりかねない…ということだ。

 

優馬「…じゃあ果南の言ってたベストタイミングって」

果南「だって、あれだけベタベタとくっついてた2人が消えてったんだからベストタイミング、でしょ?」

優馬「…どうしても口を割らないつもりなんだね」

千歌「も~っ!優くんったら何言ってるか分からないよ~!そんな難しいこと考えないで、私と一緒にイチャイチャ、しよ?私、まだ全然甘え足りないよ~!」

果南「そうだよ、ゆう♡今は、私たちしかいないんだから、頑張ったご褒美、貰ってもいいでしょ?私もたまには甘えたいな~…♡」

 

いけない…

この流れは明らかに彼女たちのペースに巻き込まれてしまっている…

どうにかして抜け出さなければ、彼女たちの可愛さに溺れる!

それだけは、男としてまずい。

あと、ダイヤとか梨子とか、善子とかマルちゃんとかルビィとか鞠莉とか…に殺されそうだし…

あれ?全員じゃね?これこのままだとミンチされるんじゃね?

と思ったその時だった。

 

ダイヤ「…貴方たち、何してますの?」

果南「っ!…ダイヤ、もう戻ってきたんだ、早いね。」

梨子「…千歌ちゃん、優君に何を、してるのかな?」

千歌「…梨子ちゃんも早いね~」

 

そこには電話からひと段落ついた梨子とダイヤが目の前にいた。

 

ダイヤ「ルビィから電話が来たと思えば…貴方の仕業でしたのね?果南さん?」

果南「何の話?私はただダイヤが千歌の家でゆうに迫ってて困らせてるっていう事実を伝えただけなんだけど?」

梨子「千歌ちゃんもだよ。善子ちゃんから来たと思えば、内容が優馬に何してるわけ?だって。話を掘り下げてくと千歌ちゃんから連絡が入った…だなんてことを言ってたから、まさか、と思ってたけど…」

千歌「あはは!どうしたの、不服だったの?でも優くんに迷惑をかけてたのは事実だよね?千歌はそれをただ善子ちゃんに連絡しただけだよ?助けて~、ってね?」

 

チェックメイト。

どうやら俺の仮説が当たっていたみたいだ。

やはり善子とルビィに根回しをしていたのはこの2人だった。

 

果南「それで?話は済んだのかな?」

ダイヤ「ええ、もちろん。大丈夫だ、ということを伝えたので。」

果南「あ~あ…本当にそれだけで充分かな?」

ダイヤ「…それはどういう?」

千歌「梨子ちゃんは~?」

梨子「何も変なことはしてないから安心して、って言ったけど…」

千歌「あはっ、それで大丈夫だといいね~?」

梨子「え…?」

 

千歌と果南の言うこと、それはまるで梨子とダイヤに向けての挑発にしか聞こえないが…

果たしてどういう意味なのだろうか、分からないでいると玄関先から声が聞こえたのだ。

しかもすごい勢いで俺たちのいる部屋に向かってきている…

その時、気づいた。まさか、と思っていたがそのまさかだった。

 

ルビィ「お、お兄ちゃん!!」

善子「優馬っ!!」

優馬「え、ちょ、まt…ぐえっ!!」

ダイヤ「…は?」

梨子「え…?」

千歌・果南「「…」」

 

そこに現れたのは先ほどまでダイヤと梨子が電話していた相手である善子とルビィがいた。

…おかしくないか?さっきまでってものの数分だぞ?

ルビィなら、まあ1万歩譲ってまだあり得るかもしれないが、善子に関しては沼津からここまでかなりの距離があるにもかかわらずこの短時間でここに辿り着いてるなんて…

 

優馬「ど、どうやって、てかどうして?」

善子「私は千歌から話を聞いて…いてもたってもいられなくて…」

ルビィ「うゆ…私も、果南さんからお姉ちゃんがお兄ちゃんを困らせてるって話を聞いていてもたってもいられなくて…」

梨子「じゃ、じゃあ電話したあの時、もうすでに向かってたってこと!?」

善子「そうよ、当たり前じゃない。リリーたちが何するか、分かったものじゃないもの。」

ダイヤ「…ルビィ、私は大丈夫だ、ということを伝えたはずですが?」

ルビィ「…じゃあお姉ちゃんはそれを自分に聞かされた時に素直に戻る?戻らないよね?それと一緒だよ。」

 

 

どうやら善子とルビィちゃんは連絡が来た段階で既にこっちに向かっていたらしく、

電話した時には恐らくもう千歌の家付近にいた、ということなのだろう。

俺のことを心配してくれるのは嬉しいのだが…今のこの状況を誰か、どうにかしてほしいんですが…

 

ルビィ「ねぇ、優馬お兄ちゃん?」

優馬「ど、どうしたの、ルビィちゃん?」

ルビィ「千歌さんたちの宿題とかはもうお姉ちゃんたちに任せて、私たちでどこか遊びに行かない?」

善子「それいいわね!せっかく夏休み最後の日なのにもったいないものね?行きましょ?」

 

そう言うと彼女たちはここにいる4人を置いて俺を連れて行こうとした。

すると善子たちを止めるかのように千歌と果南が乗り出してきた。

 

千歌「ここまでしてほしいとは言ってないよ、善子ちゃん?」

果南「勝手に2人で話を進めないでくれないかな?私たちはあくまでもダイヤたちを止めてほしいって言ったはずなんだけど?」

善子「はぁ…確かに言ったわね。優馬を困らせてるリリーたちをどうにかしてほしいって」

ルビィ「でも、ルビィたちは優馬お兄ちゃんを優先して考えてるの。それなら困らせてるのは宿題を手伝わせてる果南さんたちとそれに乗じて無駄にくっついて困らせてるお姉ちゃんたちだよね?」

善子「そういうことよ。だから私たちは優馬と遊びに行く義務があるわけ。分かるでしょ?」

 

…まあ果南たちの言いたかったことはダイヤたちをただ止めてほしいってだけ。

それを過剰に反応したルビィちゃんと善子が止めるべき対象であるダイヤたちとさらに宿題を手伝わせて、俺に労力を使わせてるというところにも腹を立てて…

ということだろう。

そこまで俺のことを気遣ってくれるのは嬉しいのだが…それだったら帰らせてほしいんだよなぁ…

 

千歌「なにそれ!分かるわけないじゃん!!」

梨子「そうよ!善子ちゃん!そんなのわがまますぎるわ!義務とか言ってただ貴方たちが遊びたいだけでしょ!?」

善子「はぁ!?遊びたいだけでここまで来ないわよ!優馬のためを思って私たちは行きましょ?って言ってるのよ!それくらい分かりなさいよ!このメンヘラみかん女!脳内ピンク淫乱女!」

千歌「んなっ…!?その一言は許せないよ…!メンヘラじゃないし!ただ優くんへの想いが誰よりも深くて重いだけだし!」

梨子「私だって淫乱じゃないわよ!ちょっと関係の進展を…とか思ってただけだもん!」

 

こっちはこっちで言い争い…またこっちはこっちで…

 

ダイヤ「ルビィ?先ほど、“無駄”、とおっしゃいましたよね?くっつくのがそんなに無駄ですか?」

ルビィ「うん、無駄だよ。果南さんたちを真面目にやらせることにくっつく必要性なんてないのに…要は自分の私利私欲のためだったもんね?」

ダイヤ「…確かに私利私欲のためのように見えたかもしれませんね。しかし、優にとってはあながち嫌ではなかったかもしれませんよ?」

果南「へ~…あの時、随分と居心地悪そうだったけどなぁ…」

ダイヤ「…果南さんは黙っててもらえますか?」

果南「事実を言っただけだよ。それに…ゆう絶対困ってたと思うなぁ?」

ダイヤ「困ってなどいませんわ。私と優は相思相愛ですから。」

ルビィ「相思相愛は言い過ぎだよ?どう考えてもすれ違いの片想い、だよねぇ」

果南「まあそれはルビィちゃんもだけど、ね。」

ルビィ「…はい?果南さんは何言ってるんですか?」

果南「だから、ルビィちゃんも完全な片想い、だよねって話。」

ルビィ「…ふふ、あははは!そんなの分かっていますよ~?要は優馬お兄ちゃんを振り向かせればいいんです。なのにそんな独占欲の塊みたいなお姉ちゃんたちにはそんなことすらできない…ですよね?だって現にお兄ちゃんを困らせてますもんね♪」

 

と静かな喧嘩が姉妹で、そして果南も参戦して勃発していた。

あちらでギャーギャー、こちらでワーワー…

一向に千歌と果南の宿題は進むことなく、気づけば夕方の16時。

明日には学校が始まるって言うのに、果たして宿題は終わるのだろうか。

そんな心配をしつつ、俺は彼女たちの言い争いが終わるまでお茶を啜ることにした。

 

千歌・善子・梨子「「「はぁ…はぁ…はぁ…」」」

ダイヤ・果南・ルビィ「「「…」」」

優馬「…あ、終わった?」

優馬「そんじゃ、やろうよ。宿題。もう残り時間少ないから急いでやらないと千歌と果南については死ぬよ?」

千歌・果南「「え!?い、今から?」」

優馬「当たり前でしょ。はい、早く。」

千歌「い、いや~…さっきので疲れちゃってて…」

果南「少し休憩が欲しいなぁ…なんて…」

優馬「…勝手に始めた喧嘩で疲れる、なんてことあるんだね?」

千歌「ヴッ…」

果南「め、滅相もございません…今から始めさせていただきます…」

 

そうして千歌と果南に宿題をやらせて、他の皆はというと

 

善子「じゃ、じゃあこれで私たちと遊びに行けるわね!」

ルビィ「う、うゆっ!じゃ、じゃあ行こう!」

優馬「…ごめんね、俺はこいつらの面倒を見なきゃいけないから。わざわざ来てくれてありがとね。遊びに行くのはまた今度必ず行こう?」

ルビィ「ほ、ほんと?」

優馬「うん。本当だよ。」

善子「…なら仕方ないわね。絶対行きましょうね!」

優馬「うん、絶対にね。」

 

俺のことを心配してきてくれた2人には申し訳ないけど、遊びに行くのは次回にして今回は帰らせることにして、残りの2人は…

 

梨子「わ、私はじゃあ優君と一緒に千歌ちゃんの宿題の面倒でも見よっかな~…」

ダイヤ「そ、そうですわね…私たちが呼ばれたのはこのためですものね、それでは私は果南さんを…」

優馬「ああ。それなら大丈夫だよ。もう夜遅くなっちゃうから。」

梨子「…え?」

ダイヤ「ゆ、優?」

優馬「あとは俺が見ておくから、じゃあお疲れ様。」

梨子「ちょ、ちょっと待って!優君!」

ダイヤ「わ、私たちも協力いたしますわ!だからご一緒に…」

優馬「…うん。大丈夫だよ。じゃあお疲れ様。」

梨子・ダイヤ「「…」」

 

そうして半ば無理矢理帰させたのだ。

帰るとき、梨子とダイヤのもの寂し気な表情には俺にもグッとくるものがあったが、

あれだけのことをしていたのだ。俺は心を鬼にして帰した。

 

優馬「はぁ…夏休み最後の夜は長いな…」

 

そう俺は感じつつ、夏休み最後の日をなぜか千歌と果南のために使うこととなったのだった…




いかがだったでしょうか?
メンバー全員出せなかったのが非常に悔やまれますが…
いずれこの埋め合わせで曜ちゃんとマリー、花丸はどこかで良い感じにできればと思います!
それでは次回はようやく本編!
アニメで言うところの2期になります!
かなりテンポが速いような気もするので、2期からの話の流れはゆっくりと進めていこうと思います!
それでは次回もよろしくお願いします!


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第2期シーズン
第33話 もう一度向かう、その輝きへ


こんばんは、希望03です!
ついに二期シーズンがこの小説でも始まりました!
こう話数を数えると少し早めのような気もしますが、今後は色々、小ネタとか挟みながらして、少しヤンデレ要素も含めつつ、のんびりやっていきますのでよろしくお願いします!
それでは第33話、どうぞ!


 

あの光、どこかで…

しかも皆がそれに向かって走って…俺も行かなきゃ…

でも追いつけない、追いついていけない

おかしい、走ろうと思っているずなのに走れない、皆に追いついていけない

どこまでも進む彼女たちと止まった俺

…あぁ、やっぱり俺は、“僕は”、またいつも通りなの、か

 

~優馬家・優馬の部屋~

 

優馬「…ん」

 

頭がぼーっとする…

今、何時だ?

と思い、時計を見てみた。

 

優馬「…あれ?8時、50分?」

 

ちなみに、今日は確か二学期の始まりで…始業式で…

 

優馬「これは、遅刻、なのでは?」

 

…やってしまった。

段々頭が冴えてきて、ようやく事の重大さに気づき始めた

 

優馬「とりあえず準備しなきゃ…はぁ…だる…」

 

そうして、俺は仮病も考えたのだが、昨日思いっ切り練習に行っているため

バレるのも時間の問題。

ということで、渋々準備することにした。

 

~優馬家・玄関~

 

優馬「ふぅ…行く、か…」

 

準備も完了。

はてさて、もう怒られることは目に見えているのでもう覚悟を決めて外に出た、その時だった。

 

千歌「うわ~~ん!!遅刻だ~~~…ってあれ?優くん?」

 

優馬「…噓でしょ?」

 

俺の視線の先にはあのみかんが目の前にいたのだ。

 

千歌「え!優くんも遅刻!?じゃ、じゃあ…一緒、だね…えへへ///」

優馬「うん、そうだね。とりあえず顔赤くしてないで、早く学校行こうか。」

 

こうして俺たち遅刻組は急いで?学校へと向かった

 

優馬「って言いたいんだけどさ?」

優馬「急いで行かないと怒られるんだけど…」

千歌「えへへ…♡」

優馬「いや、えへへ…じゃなくてね?」

 

急いでって言ったじゃん。

千歌が家出た時、めちゃくちゃ急いでたじゃん。

なんで腕組んでゆっくり歩いてるわけ?

 

千歌「だってどうせ怒られちゃうもん!それならこの時間は優くんと2人きりだから…いっぱい甘えたいなぁ…って!」

優馬「うん、事の状況とタイミングを考えようね?2人きりならなんでもいいとかじゃないからね?急がないといけないからね?」

千歌「やだ!!」

優馬「…はぁ」

 

こうなると手の付けようがない。

なんだかんだ言って千歌はかなり頑固だ。

やだ、と思ったことを今更覆すことはできない、そう感じたため、俺は諦めることにした。

 

千歌「えへへぇ…♡」

優馬「はぁ…」

 

諦めた俺が千歌に対して何も言わなくなった途端

好機と見たのか、すぐさま腕を組み直し、しっかり握ってから改めて学校へと一緒に向かった…

 

 

~浦の星学院・2年教室~

 

場所は変わり、2年生の教室では…

 

梨子「おはよう、曜ちゃん!」

曜「あ、梨子ちゃん!おはヨーソロー!」

曜「…ってあれ?梨子ちゃん、優と一緒じゃなかったんだね?」

梨子「え?私はてっきり曜ちゃんと一緒に行ったのかと…」

曜「え!行ってないよ?私もてっきり梨子ちゃんと行ったのかなって…」

梨子・曜「「…え?」」

曜「じゃ、じゃあ優はまだ部屋にいたってこと!?」

梨子「わ、私、起こしてないから…もしかしたらまだ寝てるのかも…」

 

もしかしたら優馬はまだ寝ていたかもしれない、と気づいた2人

そしてそれと同時に

 

曜(それなら私が起こしに行けば一緒に登校できたじゃん!!何してんの、馬鹿!!)

梨子(私が起こしに行ってれば一緒に、2人きりで登校できてた…ってことに…あぁ!もう!なんでいつもいつもこんなに運が悪いの!私の馬鹿!)

 

とこんな感じで、内心ですら同じ男のことを考えるくらい、息ぴったりな2人だった。

そんな2人がふと気づいた。ある存在がいない、ということに。

 

曜「ね、ねえ、梨子ちゃん?聞きたいことあるんだけど、いいかな?」

梨子「き、奇遇ね、私も曜ちゃんに聞きたいことあったの…」

曜・梨子「「千歌ちゃんも…来てない?」」

曜・梨子「「…」」

曜「やっぱり…来てないよね?」

梨子「まさか…優君と一緒に?」

曜「…ま、まっさか~!」

梨子「そ、そうだよね…また千歌ちゃんは寝坊してるだけだよね…」

曜・梨子「「…」」

曜・梨子((やばい!!!))

 

その推測に辿り着いた曜と梨子の2人は冷や汗が止まらなくなっていたのだった。

 

 

~内浦・路上~

 

現在の時刻は恐らく9時20分。

家を出てからおよそここまで1km、かなり歩くのが遅くなっているため、20分前後経ったくらいだろう。

ここまで歩いてきて、未だ千歌は俺の腕を離すことなく、くっついている。

 

千歌「~♪~♡」

優馬「…」

 

ご機嫌である。

遅刻しているはずなのに、かなりご機嫌である。

あと数十分で始業式が始まってしまうのだが…

 

千歌「えへへ~…♡」

優馬「あ~…千歌さん?そろそろ急がないと始業式に間に合わないんですけど…」

千歌「え~…むぅ…じゃあ急ぐ?」

 

ようやく事の重大さを理解したであろう千歌が折れてくれて

学校へと急ぐこととなった。

 

千歌(もう少し一緒に、ゆっくり行きたかったのになぁ…)

 

 

~浦の星学院・体育館~

 

鞠莉「みなさ~~んっ!今日から、セカンドシーズンの始まりデース!」

 

梨子「…結局、優君と千歌ちゃん来なかったわね」

曜「だね…やられた…」

 

鞠莉「…ということで、ってあら?…私の愛しのダーリンは?」

ダイヤ「そういうことは良いですから、とにかく理事長としての…って、え?」

果南「…ゆう?」

 

花丸「…優さん、来てないずら?」

ルビィ「…来てないみたいだね、さっき2年生の場所を見た時もいなかったから」

善子「なんなら千歌もいなかったわよ?」

 

花丸・ルビィ・善子「「「…まさか」」」

 

感づいたメンバーも出てきており、皆がもしかしたら…

なんていう想像している中、もうその予想通り、といったような出来事が目の前で起こってしまうのだった。

 

 

優馬「千歌っ!急げって!もう始業式始まってる!」

千歌「ま、待ってよ~!優くーんっ!」

 

梨子「…今」

曜「聞こえたね。」

 

ルビィ「お兄ちゃんの声…」

善子「千歌の声もしたわね…」

花丸「…やられたずら」

 

果南「…」

ダイヤ「…はぁ」

鞠莉「oh~…」

 

優馬「…すみません!遅くなりました!!」

千歌「はぁ…はぁ…お、遅くなりましたぁ…」

千歌「も、もう立てないよ、優くん…支えて~…」

優馬「はいはい…」

 

そうして優馬が千歌の体に触れようとした途端

 

ダイヤ「ブッブー!!ですわ!!」

 

ダイヤ「あなたたちは何をしてるんですの!!??」

ダイヤ「だいったい!二学期の始まりというのに遅刻、だなんて…!」

鞠莉「まあまあダイヤ落ち着いて~」

ダイヤ「鞠莉さん!」

鞠莉「今遅刻のことは置いておいて、もっと気になることがあるでしょう?」

 

そうして鞠莉はこっちを見た。

…かなりの殺気を含めながら

 

鞠莉「…千歌っち?優と一緒に登校してきたわけだけど、何もしてないでしょうね?」

千歌「ん~?鞠莉ちゃん、気になるの?」

鞠莉「…」

千歌「えへへ…♡もう、い~っぱい!イチャイチャさせてもらったよ~…♡」

鞠莉「ちっ!!」

 

おっと、鞠莉さん

理事長が生徒相手に舌打ちはいかんぜ。

このままだと飛び火が俺に、と思ったので話の最中に俺は行列の中へとこっそり入っていくのであった。

 

鞠莉「…はぁ、まあいいわ。後で事情を説明してもらうから…とりあえず、今日は発表があるの!」

優馬「発表?」

曜「発表って…」

梨子「もしかして?」

鞠莉「えぇ!そのもしかして、よ!次のラブライブが決定したわ!場所は同じアキバドーム!」

 

優馬「本当に!?」

 

ルビィ「ピギッ!?」

花丸「また目標ができたずら~!」

善子「くっくっく…またヨハネの福音をリトルデーモンたちに響かせるその時が来たというのね!」

 

次のラブライブ、というのも俺たちAqoursはラブライブの地区予選、残念ながら敗退してしまい、ラブライブの決勝へ行くことが叶わなかったのだ。

しかし、それでも学校発表会の応募人数が1に、そして1から10へと伸びていったのだ。

決勝に進出、そして優勝という目標は叶わなかったものの、千歌たちは見事、0から1に、それどころか10にまで変えてしまったのだ。

 

優馬「またあの舞台に立てるチャンスができた、っていうことか…」

梨子「うん…どうする千歌ちゃん?」

曜「もう、決まってる、かな?」

 

ルビィ「千歌ちゃん…」

花丸「…ごくり」

善子「千歌ならきっと…」

 

果南「どうするの、千歌」

ダイヤ「千歌さん、ここで答えを」

鞠莉「…出る?千歌っち」

 

優馬「…千歌」

千歌「…そんなの、出るに決まってるよ!1から10にすることができたなら、今度は10から100に!それ以上にできる!」

優馬「そのチャンスがあるなら、挑戦有るのみ、ってとこかな?」

千歌「えへへ、優くん正解!だから出よう!ラブライブ!」

 

こうして俺たちAqoursはチャンスを経て、廃校を止め、輝きを掴むために

もう一度、ラブライブへの挑戦を決めるのだった。

これでまた一段階、Aqoursというグループの絆が深まった…と思ったのだが

俺は忘れていた。今日の登校した時のことを…

 

鞠莉「OK!そうと決まれば、また特訓ね!…でもその前に千歌っちと優はこの後、理事長室でたっぷりお話があるから、来るようにね♪」

ダイヤ「もっちろん、私もいますから…お覚悟を。」

果南「今日は帰さないよ~…?」

優馬「え…えぇ!?」

 

曜「私たちも~…」

梨子「聞きたい事、いっぱいあるんだよね~?」

優馬「よ、曜さん?梨子さ~ん?」

 

ルビィ「お兄ちゃん…あとでお説教だね…でも、それよりも…」

花丸「千歌ちゃんに一歩リードされたようでイライラするずら…」

善子「それは、分かるわ…あとで優馬についてる千歌の匂い、全て消臭しなきゃ…」

優馬(なんか1年生組も怖い顔してこっち睨んできてますけど~…怖いな…)

 

優馬「ち、千歌…なんとか弁明してくれよ?」

千歌「…べんめいって、なに?」

優馬「なんでだよ…うまく説明してくれよってことだよ…」

千歌「あ、なるほど!分かってるよ!」

優馬「千歌…」

 

なんだかんだ千歌は空気を読める。

こういう状況になったのはやばい、というのを理解してきっと適切な説明を…

 

千歌「私たちがまるで付き合ってるみたいにイチャイチャラブラブ♡しながら、腕組んだり、甘い会話をしながら幸せな登校をしたっていうことを具体的かつリアルに説明すればいいんだよね!♡」

 

曜・梨子「「ちっっ!!!」」

 

鞠莉・果南・ダイヤ「「「…」」」

 

ルビィ・花丸・善子「「「はぁ…」」」

 

 

優馬「あーーーー!なんか違うなーーー!!おかしいなーーーー!!」

 

こうして俺たち…

いや俺?は彼女たちの餌食にされてしまうことが確定事項となってしまったのだった…

 

優馬「…もう頼むから、勘弁してくれ」

 




いかがだったでしょうか?
もし不満点や感想などあればコメントを受け付けてるので、どしどし言っていただければ、と思ってます!
次回は少し小ネタ要素あり、ヤンデレ要素も入れていきたいようなそんな話を書いていきたいと思います!
次回もお楽しみに!
ここまで読んでいただきありがとうございました!


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第34話 可愛さ満点。あざとさ満点。腹黒さ満点。

こんばんは、希望03です!
第34話目まで来ましたが、今回の話はルビィちゃんが主役に近いですね…
中々、ルビィちゃんを書くことができなかった分、今回は思いっ切り出ていただきました!
ということで、第34話、楽しんでいただけると幸いです!
どうぞ!


 

~浦の星学院・理事長室~

 

鞠莉「そ・れ・で・?千歌っちたちは一体どうしてあんなに来るのが遅かったのかしら~?」

優馬「あ~…あはは…いや、まあ…うん…普通に登校したはずなんだけどなぁ…」

千歌「え~少なくとも普通じゃなかったよ~あんなに…えへへへ…♡」

優馬「頼むから千歌は喋らないでくれ…」

 

なぜ俺が、俺たちが理事長室にいるのかというと

始業式への遅刻…はもちろんなのだが、もっと深く関わっているのは彼女たちの完全な私情によるものである。

…まあ要は嫉妬である。

 

鞠莉「普通じゃない、ね~?」

ダイヤ「…普通じゃない、となるとどんなことを?」

優馬「あ~、普通じゃないと言われれば普通じゃないかもしれないけど、実は普通、というか…」

ダイヤ「優は少し黙っててもらえます…?」

優馬「なんで俺が怒られてるの…」

 

不憫である。

 

ダイヤ「千歌さん。それで普通じゃないこととは?」

千歌「う~ん、さっきも言ったんだけどなぁ…」

ダイヤ「いいから!はっきりしてください!」

千歌「はぁ…しょうがないなぁ…」

千歌「それはもうばったり玄関先で“運命的に”出会って~“優くんの彼女”みたいに腕を組んで~い~っぱい“イチャイチャ”してたよ!♡」

ダイヤ「…」

優馬「あぁ…」

 

雰囲気最悪。

この理事長室、冷蔵庫と間違えてしまうほどの冷気が漂っていた。

ちなみにこれは恐らく幻覚とかではない。

絶対、皆、何かしらの冷気を放ってる気がするんだよな。

 

優馬「もう聞きたい事はないでしょ…じゃあ俺は戻ろうかなぁ…」

曜「優?」

梨子「どこに行こうとしてるのかしら…?」

果南「まだ尋問は終わってないよ?」

優馬「尋問って言っちゃってるよ…」

優馬「で、でももう聞きたい事ってない、よね?」

梨子「え?あるよ?」

優馬「え?」

 

嘘だろ。何をこれ以上聞き出すというんだ。

もうこれ以上、恥を…というか死にたくはないんだが…

 

花丸「それで、なんで優さんは腕を振り払わなかったずら…?」

ルビィ「お兄ちゃん…実は満更でもなかったり?」

善子「…あと、急ぐんだったらなんで千歌を急かさなかったのかしらね…?」

優馬「あ、標的、俺ね…」

 

人生終わった。

ここで恐らく殺されるだろう。短い人生だった…

 

千歌「優くん優しいから千歌のこと大切にしてくれたんだよね~…♡」

 

大切のニュアンスが少し違うような気がするのは気のせいですかね、千歌さん?

 

優馬「あー…それについては色々、誤解が…というか…」

花丸「誤解…?」

優馬「そうそう、腕を振り払わなかったというか払えなかったというか…千歌の力があまりにも強かったというか…」

千歌「…私が悪いの?」

優馬「あー…いやそういうつもりじゃないんだ。なんて言うんだろうなぁ…」

 

弁明しようとしたら千歌の殺意がこちらに向き、かといって事実を伝えたら8人からミンチにされる未来が視える…

あーもう無理、駄目だ。詰んだかもしれない。

 

鞠莉「…はぁ、しょうがないわね。もうこの事は不問にしましょ?」

ダイヤ「んなっ!?」

優馬「…ほんとに?」

鞠莉「ええ、だって優が困っているところ…私見たくないもの…他の皆はどうだか分からないけど。“私”は少なくとも優のことは困らせたくないわ…」

 

ダイヤ(さらっと自分だけ評価上げようとしましたわね)

果南(さすが鞠莉だね。抜け目ない。)

 

曜(自分だけ良い方に逃れようとしてるなぁ)

梨子(私の部分だけ強調してるし…)

 

花丸(あれは内心、オラたちのこと嘲笑ってるずらね…)

善子(…最低ね)

ルビィ(女の部分が見え見えで引かれるの分からないのかなぁ…)

 

優馬「…ありがとう、鞠莉。そう言ってくれて、嬉しいよ。」

鞠莉「あ…///えへ…///そ、そんな…///私としては当然のことをしたまでよ!///」

優馬「あはは…やっと鞠莉らしくなったね?」

鞠莉「あ、あう…///」

 

ダイヤ「…なんだかイライラしてきましたわ。」

果南「それ私もだよ。」

 

曜「なんか鞠莉ちゃんだけずるくない?」

梨子「せこいわね」

 

善子「…なんであれであんな上手くいくのかしら」

ルビィ「お兄ちゃんってば良くないなぁ…そうやってむやみやたらと好意を振り撒くのは…」

花丸「あとで絶対デートしてもらうずら…」

 

鞠莉「そ、それじゃああの!///仲直り記念としてこれから私とティータイムでも…///」

 

優馬「皆もごめんね。こんな騒ぎになっちゃって…心配かけてごめん…」

ダイヤ「え、あ!///い、いやだい、大丈夫ですわ!///」

果南「ゆうのシュン…ってしてる顔、そそられる…」

果南(大丈夫だよ!気にしないでっ!)

 

曜「果南ちゃん、思ってることと言ってること逆になってるよ…」

梨子「…///」

梨子(あぁぁぁ!!///優君可愛いーーーー!!!///)

 

善子「リリーは…フリーズしてるわね…」

花丸「でも…気持ちは分かるずら…///優さんにあんな顔されたらキュンキュンが止まらないずら…」

善子「…まぁ、ね///」

花丸「ってルビィちゃんは?」

善子「あら?どこ行ったのかしら」

 

ルビィ「ね~え、お兄ちゃん♪」

 

善子「る、ルビィ!?いつの間に…」

花丸「て、手が早い…」

 

優馬「あ、ルビィちゃん…ごめんね、ルビィちゃんにも迷惑かけちゃって…マネージャー失格だね…」

ルビィ「ううん!そんなことない!でも、心配したんだよ…?」

 

鞠莉「…ルビィの方があざといわ」

 

優馬「うっ…ごめん…」

ルビィ「ふふ♪ならこの後、学校終わりにデート、しよ?それで許してあげるっ!」

 

千歌「で、デート!?」

曜「ちょ、ちょっと待ってよ!?」

 

優馬「え…?で、デート?」

ルビィ「うん!デート!だって、あの時言ってくれたもんね?“遊びに行くのはまた今度必ず行こう”って!」

優馬「あ、あー…そういえば…」

 

梨子(お願い、行かないって言って…!!)

 

ルビィ「うゆ…わ、忘れてたの?」

 

ダイヤ「我が妹ながら本当、あざといですわ…」

果南「ウソ泣きうまいなぁ…」

 

優馬「そ、そんなことないから、でも今日練習あるんじゃなかったっけ?」

ダイヤ「そ、そうですわ!今日は練習がありますからデートは…」

ルビィ「それなら練習終わりでもいいよね?」

優馬「いやそれじゃあもう外が暗くなっていると思うし、危ないからやめた方がいいよ?」

ルビィ「で、でも…」

優馬「それに、短い時間のデートはあまりゆっくりできないから楽しくないよ?」

ルビィ「うゆ…確かに…」

優馬「だから今日はやめておこう?」

ルビィ「うん…分かった…」

 

千歌(ふぅ…危ない危ない…)

梨子(練習があって良かったーーー!)

曜(助かった…)

ダイヤ(ルビィに先を越されてしまう所でしたわ…)

鞠莉(ルビィも中々やるデース…)

果南(…これはうかうかしてられないなぁ)

花丸(次はこっそりオラが誘ってみよう…)

善子(ほんと、手が早いわ…私もあれくらい積極的にいかないとだめ、よね…)

 

ルビィ「お兄ちゃん…?」

優馬「どうしたの?」

ルビィ「そしたら、ね?この後の練習の時、特別な個別指導をルビィにしてほしいなぁ…って♡」

優馬「え?」

 

「「「「「「「「は?」」」」」」」」

 

ルビィ「だ、駄目、かなぁ…?」

優馬「俺で良ければそれくらいなら全然構わないよ?」

ルビィ「ほんと!?」

 

「「「「「「「「え!?」」」」」」」」

 

優馬「うん、もちろん。ルビィちゃんのお役に立てるのならいくらでも」

 

ルビィ「えへへ…///ありがとう!♡」

 

「「「「「「「「ちょ、ちょっと待ったーーーー!!!」」」」」」」」

 

優馬「な、なに…?」

ルビィ「ちっ…どうしたの~?」

 

千歌「る、ルビィちゃんだけずるいよ~!」

梨子「私にもお願いしたいなぁ…なんて…」

曜「私もちょっと不安な部分があるから…よく見てほしいなぁ…」

 

ダイヤ「わ、私もルビィの姉として一緒に見てもらえれば…」

果南「ダイヤもずるいよ!それよりも私の歌を聴いて欲しいというか…まだちょっと出し方に不安なところが…」

鞠莉「私にも手取り足取り教えてほしいデース!!」

 

花丸「こ、個別指導なんて…え、エッチずら!!///」

善子「いや…あんたは何想像してるのよ…とにかく個別指導するなら私にしておきなさい!」

 

急に待ったをかけたと思えば、内容は自分たちも…

といったようなものだった。

個別指導くらいならいつも受け付けているのだが…

 

ルビィ「皆、急に待ったをかけたけどね、最初にお願いしたのはルビィだよ?順番ってこの世の摂理として守るのは当然だよね?」

 

「「「「「「「「…」」」」」」」」

 

ごもっともである。

今、俺が最初に誘われたのはルビィちゃんだった。

つまりこの場合、順番で言えばルビィちゃんが最初なのである。

ということはこの場合、個別指導はルビィちゃんを優先的にしなくてはならない。

 

ルビィ「ふふっ♪何も言えない、かな?」

ルビィ「そしたら~今日の練習の時、個別指導よろしくね、優馬お兄ちゃんっ♡」

優馬「あ、あぁ…うん…」

 

「「「「「「「「…はぁ」」」」」」」」

 

珍しく彼女たちが元気を失くしてしまっていた。

そんなにショックだったのだろうか?

そうだとしたらタイミングを見て、色々個別指導に回る、か…

そう思いを馳せ、今日の練習まで待つのであった。

 

 

~浦の星学院・屋上~

 

放課後、2学期最初の練習となるわけなのだが、俺たちはいつも通り、屋上で練習を行おうとしていた。

 

優馬「…9月上旬なのにこんなに気温が違うんだな」

 

あの夏の時の灼熱地獄とは打って変わって、すでに気温がかなり低くなっていたため

練習するにはとてもやりやすいコンディションになっていた。

 

優馬「よし…」

 

そうして気合を入れて、練習に臨もうとしたその時だった。

 

ルビィ「お兄ちゃんっ!♡」

優馬「うわっ!」

 

誰かに抱き着かれたと思えば、そこにはルビィちゃんがいたのだ。

いくら幼馴染の妹とはいえ、もう年頃の女の子、年は1歳しか変わらないのだ。

そうなると抱き着かれただけでも意識はしてしまう。

俺が男だってことを今、ここで呪ってやりたい。

 

優馬「…ルビィちゃん、危ないよ?」

ルビィ「えへへ♡ごめんなさい…♡」

 

このやり取りだけでもほっと安心するわけなのだが、俺は気づいていなかった。

ここは屋上、つまりAqoursの練習場所であり、もうすでに練習の時間。

ルビィちゃんもいるということは必然的に他の皆もいるわけで…

 

ダイヤ「…ゆ~う~!?」

優馬「げっ…ダイヤ…」

 

果南「…ダイヤだけじゃないよ?ゆう」

優馬「あ…果南もか…」

 

鞠莉「その2人だけじゃないよ~?ダ~リン…」

優馬「…鞠莉」

 

あー、これは俺の生命線断たれるかもしれない。

グッバイ俺の人生。

 

ルビィ「お姉ちゃんたち!優馬お兄ちゃんを困らせないで!!」

 

ダイヤ「なっ!?そもそもルビィが優に対して馴れ馴れしくしているからでしょう!?…本当なら私だって甘えたいのに///」

果南「ダイヤに同感だなぁ…ルビィちゃん、もう少し自重してもらえるかな?練習も始まるしさ。あと、“私”のゆう、だからね?そんな汚い手でベタベタと触れないでほしいんだよね?」

鞠莉「そうそう、このままだと嫉妬ファイヤー、が止まらないわよ?下手したら…〇しちゃうかも?」

 

うーん…ダイヤ以外、物騒だな…

ダイヤは可愛らしかったんだけどなぁ…

もう鞠莉は殺害予告レベルなことをしちゃってるからね、俺を手に入れる前に自分の懲役を手に入れちゃうよ?

…とりあえず、まだ1、2年生が来ていないことが不幸中の幸いだったのかもしれない。

 

 

そう俺は今後の練習で何も起こらないことを願いつつ、今日も今日とて練習が始まろうとしていた…




いかがだったでしょうか?
本当にゆっくり進んでます。もしもっと早いペースで書いて欲しいとか要望があれば言っていただけると幸いです!
次回こそ、ルビィちゃん回!
是非次回も読んでいただけると嬉しいです!
ここまで読んでいただきありがとうございました!


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第35話 暴走する歯車

こんにちは、希望03です!
遅くなって申し訳ございません、34話の続きになります。
今回はルビィちゃんの個別指導回!
皆も出てくるのでご安心を。
それではどうぞ!


 

~浦の星学院・屋上~

 

果南「1・2・3・4!1・2・3・4!」

 

優馬「…」

 

今日も今日とて、俺たちは練習をしている。

しかし、夏のような地獄の暑さは軽減され、少しばかりか涼しいような気もしている。

そんな中、俺たちは次のラブライブに向けて気合を入れて練習をしているのだ。

そうして彼女たちの練習を見ていると全体の練習が一段落したのかこちらに戻ってきた。

 

優馬「皆、お疲れ様。」

千歌「優く~ん…疲れたぁ~…」

 

いつも通り、千歌を筆頭に俺の方へと寄ってくる。

可愛らしいので受け入れてしまっているが、絵面的には問題があるかもしれない。

しかし、抵抗してしまうとすごく寂しそうな顔をしてしまうのでとっくに諦めたのだ。

 

曜「千歌ちゃん!ずるいよ!私も優に甘えたいからどいて!」

千歌「い・や・だぁぁぁ!!優くんは千歌のだもん!こういうのは早い者勝ちなんだよ~??」

 

曜「…ちっ!」

梨子「曜ちゃん、気持ちは分かるよ…」

果南「ああ見えて千歌ってば大好きなものには独占欲強めだからなぁ…邪魔だなぁ…」

ダイヤ「果南さん、本音が漏れていますわよ…その気持ちも分かりますが…」

 

鞠莉「はいはい、もう休憩は終わりよ~!」

千歌「えーーー!!まだ全然優くんに甘えてないよーー!?」

鞠莉「シャラップ!ここからはそれぞれの苦手パートに分かれて練習するわよ!」

 

こうやって仕切る姿はやはり最上級生だな、と感心させられてしまう。

鞠莉の意外なカリスマ性は人を惹きつけるからな…羨ましく感じてしまう。

 

鞠莉「…はっ!今、優にすごく褒められた気がする…!///」

花丸「何言ってるずら…」

善子「ほんとよ…ほら、早く行くわよ」

 

そうしてこれからパートごとに分かれて練習…となるわけなのだが

 

優馬「あれ?ルビィちゃんは?」

ルビィ「こ・こ・だ・よ♡」

優馬「うおっ!?」

ルビィ「えへへ…♡驚かせちゃった、かな?♡」

優馬「あー…いや、大丈夫…」

優馬「それよりパートごとに分かれなくていいの?」

ルビィ「も~、今日のこと、もう忘れちゃったの?」

優馬「今日…あ、そうか。今日はルビィちゃんの個別指導だったね」

ルビィ「うん!♡急いで始めよ?時間たっぷり、みっちり教えてもらいたいから、ね?♡」

優馬「あー…うん…なんか含みがありそうな感じはするけど…」

 

忘れてたわけではないのだが、このタイミングか、と思いつつも俺はルビィちゃんに個別指導をする流れとなった。

 

「「「「「「「「…」」」」」」」」

 

千歌(…ルビィちゃんなら何もできないだろうとは思うけど)

曜(な~んか、ちょっと雰囲気が怖いんだよね~…)

 

ダイヤ(…事の顛末は後で聞くとして、仮にもルビィは黒澤家の女)

梨子(意外な頭のキレとか、あざとさとか要注意な部分は多いからなぁ…)

 

果南(ルビィちゃんのあの顔、女の顔、というよりも雌の顔だったなぁ…)

鞠莉(何しでかすか分からない、って感じね)

 

花丸(…最悪、1年生で優さんを堕としにかかれば…)

善子(私たちで優馬を共有して、誰にも触れられないように、監視して…あとでルビィとは交渉の余地がありそうね…)

 

…すごい視線を送られてるんだけど

気になりすぎやしないかな…皆…集中して練習しなよ…

と思いつつも俺はルビィちゃんの個別指導へ向かった。

 

 

そして、休憩も一段落し、それぞれのパートごとに分かれたわけなのだが、

どうにもパートごとの距離が近いような、それも俺たちのパートを中心にして

確認しようと周りを見渡すと

 

千歌「っ!」

曜「あ…」

優馬「…」

 

こっち側も…

 

ダイヤ「ピッ!?」

果南「ありゃ…」

優馬「…」

 

そして…

 

花丸「ずらっ!?」

善子「うわ!?」

鞠莉「Oh~!?」

優馬「…」

 

こんな感じで、俺たちの周りを監視しているような感じだった。

俺は別に構わないんだけど、ルビィちゃんが心配だった。

元々、人見知りなルビィちゃんでもあるため、こうも周りから見られると緊張してしまうのではないか、と。

しかし、それは余計な心配に終わった。

 

優馬「はぁ…皆、練習を「どうしたのかな、皆?」る、ルビィちゃん?」

ルビィ「今日はルビィが個別指導をお願いしたんだから、2人きりでいる権利はあるよね?もしかして邪魔をするつもり?」

 

あのルビィちゃんが皆に食らいつくように顔をしかめて、周りを見渡したのだ。

 

ダイヤ「い、いえ、そんなつもりはありませんが…」

ルビィ「なら、皆も練習に戻らないと!…ね?」

ダイヤ「…」

 

あのダイヤですらルビィちゃんに対して、何も言えなくなってしまっていた。

いくらルビィちゃんの言っていることが正論だったとしてもここまで言葉で言い負かされているダイヤを見るのは恐らく初めてに近いのではないか

そう感じてしまうくらいにはルビィちゃんの剣幕がすごかった。

 

ルビィ「ふぅ…ふふ♡これで集中して練習に取り組めるね!♡」

優馬「そ、そうだね?」

 

恐らくそれくらい集中して練習に取り組みたいのだろう。

ルビィちゃんにとってスクールアイドルは憧れそのものだから、きっと誰にも邪魔をされたくないくらい、強い想いがあるんだろう。

 

優馬「よし、じゃあ始めようか」

ルビィ「うん!お願いします!」

優馬「まずどうする?」

ルビィ「う~ん、まだステップとか上手くいかないときがあるから、“よく”見て欲しいんだよね…?♡」

優馬「そっか、ステップね。おっけー!じゃあステップ踏んでみてもらってもいい?」

ルビィ「うん!」

 

ルビィ「はぁ…はぁ…ど、どうかなぁ?」

優馬「うん、全然問題ないと思うけどな、でも強いて言うならあそこの時のステップが少し甘かった気がする…」

ルビィ「うんうん…それで…」

優馬「そうだね、そこを意識して…」

 

思いの外、何事も起こらず、スムーズに事が運んで行った。

やはり周りの思い過ごしだったらしい。

集中してやっているんだからそんな嫉妬するようなことは一切起こらない、そう思った。

しかし、まだまだ個別指導は続いているわけで、何が起こるか分からないというのは正しくそうだろうな、ここで思い知らされることになるのだ。

 

ルビィ「はぁ…はぁ…ふぅ…」

優馬「ルビィちゃん、お疲れ様。立てそう?」

ルビィ「う、うん…大丈夫…」

 

そうしてルビィちゃんが立とうとした次の瞬間だった。

 

ルビィ「あ…」

 

なんと眩暈を起こしたのか、倒れそうになるではないか!

 

優馬「危ない!」

 

…ギリギリ気づいてよかった。

手を差し伸べて、こっちに抱き寄せ、倒れるのを防ぐことができたのだ。

 

優馬「ふぅ…大丈夫?」

ルビィ「う、うん…///あり、がとう…///」

 

だが、今の状況を客観的に見てみよう。

抱き寄せられている可愛い女の子。

それを平然と腰に片手を回して、もう片方の手をルビィちゃんの手に絡めて…

これは救助に見せかけた一種のセクハラに近いのでは?

 

優馬「ご、ごめん…!///すぐにどくね…///」

ルビィ「う、ううん!///大丈夫…///」

ルビィ「で、でも、まだルビィ足が動かないから…もう少しこのままでいたいな…♡」

優馬「あ、あー…うん///分かった…嫌だったら言ってね?///」

ルビィ「嫌になんてならないよ…///だって、お兄ちゃん、安心するし…♡」

 

そう言って、この態勢で数分は立ち尽くしていた。

その間、まるで無邪気な子犬みたいに顔を擦り付けて、甘えられていた。

 

優馬(…きっと寂しかったんだろうな)

 

そう思い、俺は頭を撫でて、安心してもらうように促した。

 

ルビィ(あ、うわぁぁぁぁぁ!!!///あ、頭なでなでしてもらってるよぉ…♡はぁ…とろけるぅ…頭が、心がとろけるよぉ…♡)

 

ルビィ「えへ、えへへへへ…♡」

 

千歌「いいなぁ…私も今日まだされてないのに…」

梨子「…千歌ちゃん、いつもしてもらってるの?」

曜「…」

 

ダイヤ「私も姉として特別参加…」

果南「どこ行こうとしてるのかな?…行かせないよ。」

鞠莉「じゃあ、私が…」

果南「鞠莉?」

 

花丸「…オラも褒められながら頭撫でてもらいたいずら。」

善子「私もこっそりしてもらお…」

 

優馬からは死角となっているが、彼女たちはそれを良い事に思いっきりルビィの方を見ていたのだ。

誰もが羨むシチュエーションに心を奪われてしまっていた。練習そっちのけで。

しかし、そんなシチュエーションを羨ましそうに覗きながら見ている彼女たちにルビィが気付き、そちらを見た途端…

 

ルビィ「…ふっ♡」

 

「「「「「「「「「なっ…!?」」」」」」」」

 

ルビィ「ねぇ…お兄ちゃん?」

優馬「ん…もう大丈夫そう?」

ルビィ「ううん…もっとして欲しいの…♡離さないでもっと強く抱きしめて欲しい…♡」

 

「「「「「「「「ちょっ!!??」」」」」」」」

 

優馬「…それはちょっと恥ずかしいような///」

ルビィ「大丈夫だよ~…皆、練習してるからだ~れも見てないし、ね?♡」

優馬「いや…でもなぁ…」

ルビィ「…だ、だめ、かなぁ?」

 

千歌(うわぁ…なんかここまでくるとあざとさ満点だなぁ…)

梨子(いつも消極的で人見知りだからこんな感じだと思ってたけど…)

曜(優に対しては完全に女見せてるなぁ…)

 

果南「なんか…すごく嘘っぽいなぁ…」

鞠莉「Oh~…ダーティー、デース…」

ダイヤ「我が妹ながら…策士と言いますか…さすが黒澤家の女、と言いますか…」

 

善子「…これは1年生の勢いでは…ビッグウェーブに乗るときかしら?」

花丸「善子ちゃん、もう少し待つずら…まだ時は経ってないずら」

花丸(今、出たら完全にルビィちゃんに目の敵にされる恐れがあるずら…まあ、全面戦争も構わないけど、まだ仲間として認識されていた方が動きやすいずら…)

 

という感じで、ごちゃごちゃと他メンバーが言っていたり、考えていたりしていると

気づいた時には優馬はルビィをさらに強く抱き寄せて、離れないようにしていた。

 

ルビィ「~~~~~!!!♡♡♡」

 

「「「「「「「「あああああああああああ!!!!!!」」」」」」」」

 

優馬「こ、こんな感じ…?///」

ルビィ「う、うん!すごく、温かい…♡えへへ…♡」

ルビィ(お兄ちゃんの匂い、お兄ちゃんの身体、お兄ちゃんの声、お兄ちゃんの息遣い…♡た、たまらないよぉ~~~~…♡)

 

千歌「優くんっっ!!!???何してるの!!??」

優馬「千歌?いや、まあ頼まれたことをしてるだけというか…///」

 

曜「優ってばすぐ色目にやられちゃうんだから…ふふ♡その目、私だけにしか見えないようにしようかなぁ…♡」

優馬「曜さん?なんだか不穏な響きのように聞こえるのですが、気のせいですかね?気のせいって言ってください。」

 

梨子「ルビィちゃんにやるなら私も…って!そうじゃなくて…いやでも、して欲しい…」

優馬「梨子もして欲しいの?なんならしてあげるよ?」

梨子「えっ!?///」

 

「「「「「「「「え!?」」」」」」」」

 

梨子「ほ、ほんとに!?///」

優馬「うん。そんな減るものでもないし…恥ずかしいけど、梨子がして欲しいなら?」

梨子「じゃ、じゃあ!!///おねが「ダメだよ。梨子ちゃん。」…は?」

ルビィ「今はルビィがしてもらってるんだよ?邪魔、しないでくれる?」

梨子「…ルビィちゃんはもはややりすぎな気がするけどなぁ?むしろ優君からしたら鬱陶しいくらいになってるんじゃない?」

ルビィ「は?」

梨子「なに?」

優馬「あー…落ち着いて…ルビィちゃんも後でまたやってあげるから…」

ルビィ「ほんと!?」

梨子「ちっ!」

 

優馬(まさか割と内気な梨子と人見知りの激しいルビィちゃんがここまで喧嘩してしまうとは…そんなにしてほしかったのかな?お互い恥ずかしくなるだけなんだけど…)

 

こういう時に限ってこの男は気づかないが、やることは一丁前。

修羅場な状況である中、喧嘩と言いくるめて、優馬は梨子に近づき、ルビィにしたように優しく抱きしめた。

 

梨子「~~~~~っっっ!!!!♡♡♡」

優馬「これくらいでいい?」

梨子「ひゃ、ひゃい…♡」

 

声が近い。息遣いが目の前で。優馬の温もりを直で感じている。

色々な情報が梨子の脳内に溢れ、今まさにショート寸前といったところだった。

しかし、そんな幸せに満ち溢れた世界もものの数分で終わってしまうのだった。

 

千歌「…もうだめ、我慢できない!ゆ~うく「ゆう。」え、果南ちゃん?」

優馬「…果南?」

 

動き出したのは我慢できなかった千歌ではなく、果南だった。

この時、優馬は侮っていた、というよりも忘れていた。

最近こそ、落ち着いていつも通りの果南へと戻りつつあったため、優馬は忘れていたのだ。

このグループ一番のヤンデレ要素持ちが誰か、ということを。

 

優馬「ど、どうしたの果南?」

果南「…ねぇ、ゆう?私さ、言ったよね?浮気はしちゃダメって、さ。」

 

ダイヤ「…これは、まずいですわ。」

鞠莉「ええ…果南が暴走してる…」

千歌「と、止める?」

曜「止めるしかないよ…危険だけど…」

花丸「…優さんを傷つけるのだけは許されないずら」

善子「ヨハネの抑止の力をもってして…優馬を守らなきゃ…」

 

優馬「い、いやまあ言ってたけど…そもそも俺たちそういう関係になってないし…」

果南「え?」

優馬「…すみません。」

果南「…だからね、浮気しないように、私しか見れないようにしてあげる♡」

 

すると、果南は動き出した。

そして…

 

優馬「んむっ!?///ん~~~っ!!??///」

果南「んっ!…んむ…んあ…ぷあっ…♡♡」

 

梨子「へ?」

ルビィ「あ」

 

「「「「「「ああああああああああああ!!!!????」」」」」」

 

さすがのフィジカルというか、目にも止まらぬ速さで優馬の唇を奪っていったのだ。

それにしても今日はよく叫ぶな。

 

優馬「ぷはっ…///か、果南…?///」

果南「えへ、えへへへ…♡キス、しちゃった…♡ねぇゆう?この続き、しようよ…♡」

果南「…ハグよりももっとすごいこと♡」

 

梨子「だっ///」

ルビィ「だ!///」

 

「「「「「「だめーーーーー!!!///」」」」」」

 

危うく扉を開けかけたもののどうにか果南を全員で止めることができ、暴走した果南は反省させられていたのだった。

しかし、反省させているものの彼女たちはあの光景を見て、あれくらい積極的に行かなきゃと思っていたことは神のみぞ知るお話。

 

千歌(…次はどさくさに紛れてキス、とか?)

曜(う~ん、もっと甘え全開で強引に行こうかな…)

梨子(次は壁ドンと顎クイを…///えへへへ…♡)

ダイヤ(私もあれくらい行かなくてはいけないのですね…このままでは優を盗られてしまう…)

鞠莉(…誰にもバレないように監禁する必要性があるかもしれないわね。ふふ…♡)

花丸(…うかうかしてられないずらね。マルももう一度キスして…想いをもっと伝えなきゃ…)

善子(私だけのリトルデーモンなのに…はぁ…ずっと優馬のそばにいてあげないとだめね…リトルデーモンの主たる者、それくらいのことはしてあげなくちゃ)

ルビィ(次はもっとイチャイチャしたいなぁ…ふふ♡あははは♡)

 

 

優馬「…さ、寒気?」




いかがだったでしょうか?
こんな感じで2期はちょっとまったりのんびりやっていきますのでご了承ください。
最近、スランプ気味でヤンデレ要素も難しくなってきました。
ちょっと更新速度も遅くなってしまうかもしれません!
ですが、ここまで来たら頑張って書きますので応援よろしくお願い致します!
第35話も読んでくれてありがとうございました!
次回もまた読んでいただけると嬉しいです!


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第36話 似合わない胸騒ぎ

こんにちは、希望03です!
今回は比較的、文量少なめです!ただ、展開はとてつもなく遅いかと…
そこはご了承ください!
ではどうぞ!


 

~浦の星学院・屋上~

 

各苦手パートの練習もルビィの個別指導も、そして起こった修羅場も終わり、練習も終盤を迎えたAqoursのメンバー、今はクールダウンのストレッチをしていた。

 

曜「優、もっと押していいよ~!♡」

優馬「え、でも結構押してるんだけど…」

曜「全然大丈夫だよ!ほらほら体をもっと押し付けて~…♡」

優馬「えーっと…こんなもん?」

曜「~~~っっ!!♡♡」

 

曜(ひゃあああああ!!♡♡抱きしめられてるみたいだよぉぉぉ!!♡)

 

優馬「…曜?」

曜「へ?あ、いやこれくらいで大丈夫だよ!えへへ…♡」

 

 

梨子「…運に負けた。」

千歌「むぅぅぅぅ~~…」

 

ダイヤ・ルビィ「「はぁ…」」

 

鞠莉「…ストレッチ物足りないからやってもらおうかしら」

花丸「行かせないずら。足りないならオラがやってあげるずら。」

 

善子「私にもやって欲しかったわ…あすなろ抱き…」

果南「あれ、もはやストレッチじゃないよね。」

果南(キスしちゃったから何も言えないけど…)

 

Aqoursのメンバーでストレッチをするとなると奇数となり、どうしても数が余ってしまうため、練習終わりには優馬に隠れて実はストレッチを優馬と一緒にやるジャンケンが行われていた。

 

曜(はぁ…♡最近、勝ててなかったから今日は勝てて良かった~!)

曜「幸せ…♡」

優馬「ん?曜、何か言った?」

曜「うひゃあ!?い、いや何も!!」

優馬「そ、そう…」

 

「「「「「「「「…」」」」」」」」

 

この状況からまた修羅場が生まれてしまうその時だった。

間一髪のところで優馬が話題を切り出した。

 

優馬「そういえばさ、ラブライブを志す前にまず学校説明会があるよね?」

ダイヤ「ありますわよ?」

優馬「う~ん、どうせならさ、そこで俺たちのライブとか披露できたりしないかな?」

ダイヤ「ライブ?」

優馬「そう。そしたら学校の魅力もだし、俺たちのことも知ってもらえる。一石二鳥だと思うんだよね。」

ダイヤ「確かに…」

 

千歌「それいい!すごくいいよ!!」

優馬「良かった、リーダーからのお墨付きだ。」

優馬「そしたら、学校説明会内の時間とかって使えるかな?」

ダイヤ「ええ、こちらから進言すれば可能だと思いますわ。」

優馬「さすが、生徒会長だね…お願いしてもいい?」

ダイヤ「分かりましたわ!」

優馬「ありがとう、ダイヤ。いつもごめんね、すごく頼りになるよ。」

ダイヤ「はぅ!?///だ、大丈夫ですわ!///優の期待に応えられるのであればどんなことでも…♡ふふ…♡」

 

鞠莉「…理事長として承諾しなくていいかしら?」

果南「なんか全部ダイヤの手柄みたいになってるよね…」

 

ダイヤ「…何か言いましたか?」

鞠莉「全然!な~んにも?」

 

そうして学校説明会でのライブが決定。

ちょうどストレッチも良い具合に終わり、今日の練習は終わりを迎えた。

 

~浦の星学院・玄関~

 

練習が終わり、外は既に夕暮れ時。

辺り一面、綺麗な茜色に染まっていた。

 

優馬「…もう日が落ちるの早くなったなぁ」

 

夏から秋に、そして冬になるということは少しずつ日が落ちるのが早くなるということ。

となると、夏のようにみっちり練習となると気づいたら日も落ち欠け、場合によっては落ちて、辺り一面、闇の中…ということもあり得る話である。

まして、ここは田舎も田舎、夜ともなると少し危ないのだ。

まさか変質者…なんてことはないとは思うが、やはり女子高生だけで帰らせる、というのは不安な気持ちにもなる。

 

 

~浦の星学院前・バス停~

 

優馬「うお…少な…」

 

不安な気持ちも相まって、果たしてバスの時間はあるのだろうかと思い、確認したがバスの時間は1時間に1本のペース。

終バスの時間も18時台とかなり早くなっていた。

そうなると沼津組である曜、善子の2人にとっては死活問題となってくる。

 

善子「どうしたの…ってあら?…終バスの時間早まってるわね…」

曜「あー…そういえば忘れてたよ。秋になると終バスの時間早まるんだった…」

優馬「マジか…にしたって18時台とは…」

 

これは田舎あるあるだろうが、1時間に1本という時間配分は田舎ならではのあるあるであり、恐らく乗車人口が限りなく少なくなるから、と思われる。

 

花丸「そしたらどうするずら?」

優馬「うーん…さすがに女子高生を終バスの時間まで練習させるのはなー…暗くなって危ないだろうし」

 

曜「…私としては終バス逃したら優の家に泊めさせてもらえれば万事解決なんだけどなぁ」

優馬「え、俺の家…?いやいやいや…男の家はやめた方がいいでしょ」

曜「えー?♡私は優相手だったら信用してるし、全然OKなんだけどなぁ…♡」

優馬「いや…俺の家行く前に千歌の家行きなよ…」

曜「あ」

 

千歌「そうそう、私は全然大丈夫だから!…曜ちゃん、抜け駆けはだめだよ?」

曜「…ちっ」

 

善子「そしたら私が頼れる花丸もルビィも少し遠いからここから近い優馬の家に泊めさせてもらうわ!いいでしょ?」

 

花丸・ルビィ「「え!?」」

 

優馬「あー…まぁ確かにそれはそうだね…そうなったら全然いいけど…俺でいいの?」

善子「全然良いというか…///むしろ優馬じゃなきゃ嫌、というか…///」

 

花丸「…堕天使のくせに、なにデレデレしてるずら」

ルビィ「バスで一緒に帰るんだからそのままルビィの家に来ればいいのに…」

 

優馬「じゃあ…善子は終バス逃したら俺のとこに来るってことでいい?」

善子「っ!///うん!!///ありが「善子ちゃん、それなら私の家でいいじゃない」…リリー?」

 

梨子「私の家だったら千歌ちゃんの家の隣だし、優君のお家とそこまで距離は変わらないから全然大丈夫よ?」

優馬「あ、そうなの?…それなら女子同士の方がいいよなぁ」

善子「え!?」

善子「い、いやでもリリーのお母さんに申し訳ないし…」

梨子「それなら私から事情を話すから大丈夫よ、気にしないで♪」

善子「ぐっ…!」

優馬「そっか…じゃあごめん、お願いできる、かな?」

梨子「うん!任せて!」

優馬「…ありがとう。いつも頼りっきりで情けないな」

梨子「そんなことないよ、私たちの方がいつも優君に助けられてる…だからプライベートくらいはちゃんと確保してほしいの…だから、ね?」

優馬「梨子…」

 

綺麗事を並べて、まるで良い話かのように振舞っているが、優馬が忘れているだけで

梨子は盗聴器、GPSによる位置情報というストーカーを極めた行動を起こして、ちょっとした一悶着があったのだ。

つまり、彼女の言っていることは思いっ切りブーメランが自分に突き刺さっているようなものなのだ。

 

ダイヤ「…一番、プライベートを侵害していた人だったような気がするのは気のせいですかね?」

梨子「…ダイヤさん?何の話でしょう?」

ダイヤ「いえ…なんでも?」

 

優馬「まぁ…終バスを万が一逃した場合、そうするとして…基本的にあまり練習が遅くなるのだけは避けていく方向で考えようか?」

ダイヤ「ですが…説明会までの期間を考えるとそう日がありませんし…練習不足で出来の悪いものをお見せしてしまうのは…」

優馬「そうだよなぁ…そうするとどうするか…」

 

放課後の練習時間が取れない分の時間の確保を考えるのはそんなに簡単な事じゃない。

ただ、朝の集合を早くするなり、昼休みの時間、空いた時間を見つけて少しづつ練習するとか、自主練を主にするとか…様々な方法は考えられるわけだが、結局のところ、どんな点にもデメリットは生じてしまう。

 

梨子「…これ言うかどうか迷ってたんだけど最悪のケースは私の家に泊まるって言うのもしょうがないけれど、善子ちゃん、もう少し早く帰ってくるように言われてるんでしょ?」

善子「え、な、なんでそれを!?」

梨子「私のお母さんがね、ラブライブの時に善子ちゃんのお母さんと話してた時にそういう話題になったんだって」

善子「うぐっ!」

優馬「マジか…」

 

そこまで言われてしまうと心配はかけられない。

そうなると練習を早く切り上げるしか方法が無くなってきてしまう。

 

優馬「そうか…善子のお母さんが…」

善子「そ、そんな気にしなくていいわよ!…でもどうしようかしら」

 

放課後の練習を負担がかからない程度で時間を確保できて、かつ全員がなるべく早めに帰れるようにするにはどうするか。

難問ではあったが、考えているとある答え、ある種の最後の手段と言えるべきものに辿り着いた。

 

優馬・千歌「「あ」」

 

「「「「「「「??」」」」」」」

 

優馬「それなら」

千歌「向こうで、沼津で練習すればいいんだよ!」

優馬「そうすれば時間も確保できて、早めに帰れることも可能…ということだよ」

 

曜「おおっ確かに!」

梨子「だね…それなら時間も確保しやすいし…流石、優君!」

 

千歌「千歌も考えたんだけどなー?」

優馬「はは…千歌もありがとね、考えてくれて」

千歌「えへへぇ…♡もっと褒めて良いよ~♡」

 

曜「…なんかすごいイライラする。」

梨子「勝負に負けた気分ね…」

 

沼津での練習へ変更することにより、沼津組は夜遅くならずに帰ることが可能。

また、内浦組もバスの時間内で帰ることができ、デメリットを消化することができるのだ。

 

ダイヤ「そしたら次回からの練習は沼津で行う…ということでよろしいですわね?」

優馬「そうだね…少しバスのお金がかかるかもしれないけど、こればかりはしょうがない。割り切ろう」

花丸「沼津…み、未来ずら~…」

善子「あんた、沼津に行くたびに未来って言ってるわよね…」

ルビィ「でも沼津だったら、練習が早めに終わった日とかはお兄ちゃんをデートに誘えたりできる、ってことだよね…」

善子「ルビィ…あんた、天才ね…!」

 

一部のメンバーは練習ができるというよりも沼津に行けることが嬉しいうえ、ルビィの最後の一言により、メンバー面々の顔つきが変わった。

 

千歌(デートかぁ…でも、バスで一緒に帰れるってだけでも嬉しいけどなぁ…///)

 

曜(いっそのこと、私の家にでも誘ってみたり!?///ちょ、ちょっと友達呼ぶくらいだもんね…///そしたら今日帰ったら部屋の中、綺麗にしないと…///)

 

梨子(…どこかにデートしたとして、そこで良い雰囲気になって…気づいたらホテルで…さ、さいっこうじゃない…!!♡)

 

ダイヤ(自主練と称して、優に指導を受けてもらいながら、そのまま…♡終バスも逃して、仕方なしにホテルで…♡ふふ、ふふふふ…♡)

 

果南(つまり色々な行動の幅が広がるってことかぁ…♡あはは…♡)

 

 

優馬「不気味だなぁ…」

 

それもそうだ。

目の前で普段は可愛らしい女の子たちが不敵な笑みを浮かべてこちらを一心に見つめてくるのだ。

不気味という言葉以外で表せる言葉が見当たらない。

 

優馬「はぁ…まあいっか…」

優馬「てか、鞠莉は…どこに行ったんだ?」

 

不敵な笑みを浮かべるAqoursのメンバーたちだったが、その中にいつも特別な存在感を放っている彼女がいなかったからなのか分からない、しかしその時、優馬の中では確かな胸騒ぎを感じていた…

 

 

鞠莉「…」




いかがだったでしょうか?
鞠莉…彼女の想いを考えると少し切ないですよね…
誰をヒロインとかは決めているわけではないですが、やっぱり好きなキャラだとついつい出してしまうものなんですよね…
それは本当、申し訳ございません笑
ということで第36話、見ていただきありがとうございました!
次回もまたよろしくお願いします!


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第37話 交錯する想い

こんにちは!希望03です!
本日は鞠莉回!!
と言っても本編ですけどね!!
あと、シリアス系です…ヤンデレはあまり…はい…すみません…
ということで、どうぞ!


~浦の星学院前・バス停~

 

優馬「鞠莉は…どこに行ったんだ?」

 

つい先ほどまで鞠莉はAqoursの皆といたが、なんと気づいた時にはいなくなってしまっていた。

今までそんな急に抜け出すとかいう奇行には至っていなかったため、全く気にしていなかったのだが、こうも露骨に抜け出されると逆に気になってしまう。

 

優馬「…探すか。」

 

そう意思を固めた俺は鞠莉を探そうと駆け出そうとした。

その時だった。

 

果南「…ねぇ、どこに行くの?」

 

優馬「果南…」

果南「答えて。どこに行くつもり?」

優馬「…ちょっと鞠莉を探しに行くだけだよ。」

果南「そっか。それなら私も行くよ。幼馴染だしさ。」

優馬「…いや、大丈夫だよ。」

果南「っ!?なんで!!」

優馬「もう夜、遅くなっちゃうから、ね?ごめん」

 

そうして俺は果南の言葉を振り切って、鞠莉を探しに向かったのだった。

 

果南「…馬鹿」

 

 

~内浦・海岸沿い・鞠莉side~

 

鞠莉「…」

 

結局私は何もできなかった。

あんなに希望に満ち溢れてる皆の想いに応えることができなかった。

“0”から“1”にすることができて、次のステージへと向かうはずだった、それなのに…

私が壊してしまった。

浦の星の可能性を伝えた。スクールアイドルができて、新たな可能性が有ると信じた。

それなのに、何もかも無駄だった。

彼女たちと…そして、優のためだったらきっとできると信じていたのに。

私には何も力なんてなかったんだ。

 

鞠莉「じゃあ…」

 

一体あの時、どうすればよかったのだろうか?

一体私はあの時、どうしたらよかったのだろうか?

やれることはやった。

なのに駄目だった。結局私には答えが見当たらなかったのだ。

 

鞠莉「…うっ、うあ…」

 

己の無力さと絶望に打ちひしがれて、どうしようもできなかった現実を受け入れきれずに私はいつしか、泣きそうになっていた。

すると、その時、背後から声が聞こえた。

 

優馬「ここにいたんだ」

鞠莉「え…?ゆ、う?」

優馬「結構探し回ったな…心配したよ。」

 

そこに現れたのは優だった。

 

優馬「…何かあった?」

鞠莉「…ノープロブレムッ!問題ないわ!さ、帰りましょ?」

 

優が来てくれたのは普通に嬉しいけれど、優相手でもこのことは伝えられない。

だから私はいつも通り、机上に振舞う。

だって、こうでもしないと涙が止まらなくなってしまうから。

そうして私が帰ろうとしたときだった。

あの優がいつになく真剣な顔で強引に私の腕を引いた。

 

優馬「…待ってよ、なんでこんなとこにいたの?」

 

聞かれると思ったその質問。

でも、そんなの答えないわ。答えられるわけないじゃない。

 

鞠莉「…なんだっていいでしょ、私の勝手。」

 

そう言って突き放そうと思ったのに

優は腕を離してくれなかった。

 

優馬「そう…確かにここにいるのは勝手だよ。でもそれなら俺が鞠莉になんでいたか理由を求めようとするのも勝手だろ?」

鞠莉「そんなの…屁理屈じゃない…」

優馬「屁理屈でも何でもいい…教えて、くれないか?」

鞠莉「…嫌、絶対に嫌。」

 

私は頑なに拒んだ。

どんなに彼が愛しい顔をしてこちらを見てきたとしても…

私にだって譲れないものはある。

どうしても彼には頼りたくないから、頼ってしまったらきっと…

溺れてしまうから。

でも、それでも彼は引かなかった。

 

優馬「…俺は引かないよ。どんなに鞠莉が俺を拒んだとしても俺は絶対に引かない。」

 

そんな上辺だけの言葉。

どんなに辛いのか、知らないくせに。

 

鞠莉「やめて!嫌って言ってるでしょ!?優に、優に私の何が分かるって言うの!?」

鞠莉「もういい加減にして!私は誰にも迷惑をかけたくないの!それが優ならなおさら!もう放っておいてよ!!!」

 

初めて、優に対して怒った。

私自身、そんなに怒るような人じゃないし、それが優相手だとなおさら

怒る、だなんて行為をするはずがなかった。

でも、今日、初めて怒ってしまった。

きっと拒まれる。きっと私を嫌いになる。

嫌われるのはすごく嫌だけど、それでも彼が引いてくれるならそれで…きっと正解、よね…

すると、そんなこともなく、優は私の腰を掴み…

 

優馬「…」

鞠莉「…っ!?///ちょ、ちょっと!?///ゆ、優!?///」

 

なんと私は優に抱きしめられていたのだ。

思わぬハグで私自身でも気づいてしまうくらい顔が赤くなってしまう。

そして今までにないくらい私の心拍数は上がっていた。

 

優馬「…分からないんだよ。分からないから聞くんじゃないか。」

 

そう彼は呟いた。

 

優馬「…“僕”も昔はそうだった。周りから見てみれば『天才』だったのかもしれない。」

優馬「でも、でもね?その分、周りの期待には答えないといけない。でもそれは1人で答えないといけない孤独で、頼ろうにも頼ることができない。」

優馬「だって、それは誰かの期待を裏切ってしまうかもしれないと思っていたから。」

鞠莉「そんな!そんなわけ!」

優馬「あるんだよ。鞠莉。」

優馬「…現実は非情なんだ。期待に応え続けなければ、誰も見向きもしてくれない。」

鞠莉「っ!」

優馬「…それは鞠莉にも分かるんじゃない?」

鞠莉「…そ、れは」

優馬「…そうして、いつしか、“僕”という存在は誰かに頼るという行為を怖がるようになってしまった。」

鞠莉「あ…だか、ら」

優馬「うん。だから、“僕”は人と関わることを辞めた。…いや、諦めた、の方が正しいのかもしれない。」

優馬「その考えは高校に入っても続いた。『誰かに迷惑をかけるくらいならいっそのこと自分1人で生きていく方がマシだ』ってね」

鞠莉「…」

優馬「でも、ある時気づかされたんだ。」

優馬「それがスクールアイドルAqoursの存在。」

優馬「Aqoursの皆を支えてきて、変わったんだ。でもそれは“僕”が自分で踏み出したからじゃない。」

優馬「踏み出すきっかけになったのは、鞠莉や果南、ダイヤの3人の幼馴染が“僕”を変えてくれたからだよ。」

鞠莉「ゆ、う…」

優馬「だから今の…“俺”がいる。」

優馬「…俺は鞠莉に助けられたんだ。だから…俺にも鞠莉の抱えているものを分けて欲しい…だって、幼馴染、でしょ?」

鞠莉「っ!」

 

優の想い、そして辛かった経験。

それら全てを聞いて、また泣きそうになってしまう私

…本当、なっさけないなぁ

でも、私だって本当は優に助けて欲しい、頼りたい、自分だけ、自分だけを支えて欲しい。

ずっと思っていたのよ?心の底からの私の願い…

でも、それでもこれは…私が解決しなきゃいけない。

 

鞠莉「…でも、本当に迷惑をかけるわ。優みたいな学生がそんな簡単に解決できるような問題じゃないのよ?だから…」

優馬「鞠莉だって、本来は同じ学生じゃないか。まぁ理事長としての立場ってものもあるだろうけど、それ以前にまだ鞠莉は18歳の女の子だ。迷惑、かけたっていいんだよ。」

鞠莉「っ!で、でも…!」

 

そうして目線を彼に向けた途端、視界が彼の顔で染まっていて

気づいた時には口を塞がれていた。

 

鞠莉「…え?///ゆ、う?///い、今、何を…?///」

 

状況が読み込めない。

何が起きていたのか、いまいち分からなくなってしまっている。

 

優馬「…ごめん、つい///」

鞠莉「…つい、でするものかしら…///」

優馬「それは…うん、ごめん…///」

 

本当だ。

つい、だなんて女たらしにもほどがある。

ただでさえ顔が良いのにこんなことをされたら惚れること間違いなしなのに

 

優馬「でも…鞠莉に頼って欲しいのは本当だよ。こんな強引な形だったけど、さ…」

 

そう言われて、ドキドキが止まらなくなってしまった私は勢いが止まらず…

 

鞠莉「んっ…!んむ…」

優馬「んっ!?…ん」

鞠莉「ぷあ…はぁ…馬鹿…」

優馬「はっ…はぁ…え?」

鞠莉「謝らないで!その、えっと…///」

鞠莉「…嬉しかったわ///優からそんなこと、されたことなかったから…///」

鞠莉「だから…感謝の気持ち!///優のその覚悟に免じて、話してあげるわ…」

優馬「鞠莉…」

 

そうして私は優に学校説明会の一部始終を話した。

募集人数が少ないことからの学校説明会の取りやめ、つまり中止。

そして事実的な廃校となってしまうこと。

 

優馬「そ、んな…本当に?」

鞠莉「えぇ…本当よ…学校説明会は、中止になってしまうの…」

優馬「それ、果南とかダイヤには…」

鞠莉「…言えないわ、こんなこと。」

 

優たちはまだ2年生、つまり廃校になってしまうということは浦の星学院からどこか別の高校へ転校する、ということ。

離れ離れになってしまう、ということなのだ。

 

優馬「…くそ!誰が決めてるの!?そんなこと…」

鞠莉「…もう少し待ってくれるはずだったの。でももう無理だったみたい。」

優馬「また、お得意のパパ、か?」

鞠莉「…えぇ」

 

その時、初めて優馬は大人を憎んだ。

今まで誰とも干渉してこなかったせいか、人というものにあまり興味を示さなかった優馬が初めて殺意を込めて、見えないその大人たちに憎悪を抱いたのだ。

 

優馬「…まだ、話せるチャンスは?」

鞠莉「え?え、えぇあるけれど…」

優馬「いつ?」

鞠莉「…今日の夜よ。パパともう一度話そうと思うの。でもそれで駄目だったらもうお終い…」

優馬「…鞠莉、今日は鞠莉の家、久しぶりに泊まっていい?」

鞠莉「…え?えぇ!?///ちょ、ちょっとどうしたの、優…///きょ、今日は随分と積極的ね…///そ、そんな肉食系な優も大好きだけど…///もう少し段階を踏みたいというか…///」

優馬「意外とピュアなんだね…じゃなくて。鞠莉の親父さんと話すんだよ。」

鞠莉「っ!?だ、だめよ!もし優のことを悪く言うようになってしまったら…」

優馬「…いいよ、その覚悟はできてる。それでも…俺は話を付けないとダメな気がするんだ。」

鞠莉「優…」

 

その覚悟は本当に生半可なものじゃなかった。

優は本当に私たちが好きで、学校が好きで…

心底、お人好しね…

 

鞠莉「ふふっ…分かったわ、今日の夜、ね?」

優馬「…ありがとう。」

 

そうして優は帰って行った…

 

鞠莉「全く…いつも無気力なくせに!こういう時は本当に頼りになるんだから…」

鞠莉「本当、大好きよ…優…ふふっ…♡」

 

そう呟いて、鞠莉は自分の部屋の掃除とおしゃれな恰好を決めるべく、急いで自宅へと戻っていった。




いかがだったでしょうか?
次回、ついに鞠莉父と対峙します…
優馬が意外と熱いキャラになってて、なんだか成長なんですかね…
ということで、ここまで読んでいただきありがとうございました!
Twitterも始めたので、是非そちらもフォローお願いします!
それでは次回もよろしくお願いします!


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第38話 無力な自分、現実は非情。

こんにちは!希望03です!
今回も鞠莉回、というよりも鞠莉父が出てきます!
オリジナル回ですので、気に入らない人はすみません…
それではどうぞ!


~内浦・オハラホテル~

 

優馬「…相変わらず豪勢だなぁ」

鞠莉「ふふっ…なんだか照れちゃうわ…」

 

一度、鞠莉の父親に物申すために訪れた。

だが、久しぶりの小原家ということもあり、大分緊張してしまっている。

 

鞠莉「…」

優馬「…鞠莉の私服ってそんなにラフなんだね」

鞠莉「へ?///あ、そ、そうデース!!///」

優馬「さすがのプロポーションだなぁ…似合ってるよ」

鞠莉「はひっ!///あ、ありがと…///」

 

と、緊張をほぐすために会話を進めていると鞠莉のお付き人がやってきた。

 

「空条様、お久しぶりでございます。」

 

優馬「西園寺さん!ご無沙汰してます。数年ぶり、ですね?」

西園寺「はい。私たち一同も優馬様に会えるのを心よりお待ちしておりました。」

優馬「はは、またまた~」

 

このお付き人は西園寺さん。

鞠莉が小さい頃からずっとそばに仕えていて、俺も何回か会う機会があったため、お互いに顔見知りである。

それは西園寺さんだけではない。

ここにいる鞠莉家に仕えているメイドさんや執事さんは皆、俺と顔見知りであるため、会うのは大分久しぶり、というわけだ。

 

西園寺「それでは鞠莉お嬢様のお部屋へ向かいましょう。」

 

そうして、俺は西園寺さんに案内され、鞠莉の部屋へと向かった。

 

 

~オハラホテル・鞠莉の部屋~

 

西園寺「到着いたしました。」

優馬「ありがとうございます。相変わらず広いから迷いそうで…」

西園寺「いえいえ。またお困りごとがあれば」

優馬「ありがとうございます。」

 

鞠莉「むぅ…なんだか私のこと、忘れてない!?」

優馬「忘れてないよ。」

鞠莉「だって、私の部屋だって私が案内すればよかったじゃない!」

優馬「いや…それくらい良いじゃない…」

 

優馬「それで、お父さんとはいつ電話するの?」

鞠莉「今よ?ちょうど今。」

優馬「…マジ?」

 

すごく事がスムーズに進んでいるが、別に俺が狙ってやっているわけではない。

しかも今って、俺の心の準備が整っていないのだが。

そう言おうと思ったが、もう鞠莉が電話をかけていた。

 

鞠莉「…もしもし、パパ?」

鞠莉「うん…そう、その件…うん…っ!そんなの…分かってるわ…うん…」

 

なんだか不穏な空気が流れる。

今にも鞠莉が泣きだしそうになっていて、いたたまれなくなった。

電話の表情から察するにかなり険悪なムードなのかもしれない。

 

鞠莉「…うん、今ね、パパと話したいって人が来てて…うん、そう。あの子よ。うん…じゃあ代わるわ…」

 

鞠莉「優、いいわよ。」

優馬「…ありがとう。」

 

ついにこの時が来た。

何回か鞠莉の父親と話したことがあるが、やはりいつだって緊張する。

 

優馬「もしもし、お電話代わりました。その…お久しぶりです。空条です。」

鞠莉父「ああ!久しぶりだね…何年振りかな…元気だったかい?」

 

なぜ鞠莉の父親が知っているか、というと

鞠莉とはダイヤ、果南、奏姉さん、俺の4人と何度も遊んでおり、幼馴染の関係であったからか、自然と鞠莉の父親に覚えられていたらしい。

なんなら5人の中の唯一男の子ということで、真っ先に覚えられていたらしい。

 

優馬「はい、なんとか…」

鞠莉父「ははは!それなら良かったよ!昔の君はよく鞠莉たちに振り回されていて大変そうだったからね!」

優馬「ははは…それは今も同じなんですけどね…」

鞠莉父「ああ、スクールアイドル?のマネージャーだったかい?」

優馬「はい、ご存じだったのですね?」

鞠莉父「ああ、鞠莉からよく話を聞くのでね」

 

なにそれ、めっちゃ怖いんだけど。

どういう評価されてるの俺。

 

優馬「あ…あぁ、なるほど」

鞠莉父「まさか、あの時の男の子が今も尚女の子に振り回されているとは…君は女難の相でもあるのかもしれないね!」

優馬「あはは…それだけは勘弁してください…」

 

そうして雑談を始めて数分。

お互いに話を膨らませて、暖まったところで本題に移ることにした。

 

 

優馬「それで本題なのですが…」

鞠莉父「あぁ…浦の星学院学校説明会の中止について、かい?」

優馬「…はい。」

鞠莉父「…その件については、本当に申し訳ないと思っている。」

鞠莉父「すまなかった…折角、君が見つけた居場所を奪うような真似になってしまって…」

優馬「…いえ、居場所についてはいくらでも探せるので…でも…」

鞠莉父「…どうして急遽決定したか?かな?」

優馬「はい…どうしても説明が欲しくて…」

 

本題に入り、早速説明を要求したのだが

どうにも鞠莉の父親は言葉が出てこない。

何分か待ってから、ようやく話が始まった。

 

鞠莉父「浦の星学院はね、優馬君が来る以前では本来、もう廃校になる予定だったんだ。」

鞠莉父「全校人数も年々、減り続け、新入生の希望も減っていった。とうとう全校人数が50人前後、となってから廃校にする予定だったんだ。」

鞠莉父「しかし、仮にもうちの娘、鞠莉が通っている学校だ。何とかして学校が存続できないか模索した。」

鞠莉父「そうして考えたのが…」

優馬「…共学化のスタート」

鞠莉父「正解だよ。その辺は君も知っていたのか…」

優馬「…まぁそうですね」

 

以前にも共学化の先駆けとしてここに転校したのは聞かされていた。

つまり俺は簡単に言うと学校のため、鞠莉のためにここに転校したということだ。

 

優馬「…でもよくそんなことが受け入れられましたね。一応由緒ある女子高だったのに。」

鞠莉父「それはだね…」

鞠莉父「私が君を迎え入れるように学校側に頼み込んだから、だよ。」

優馬「っ!?」

鞠莉父「君が来る前、鞠莉がこの学校がピンチだということをどこからか聞きつけて、言うことも聞かずに留学に行ってる最中に飛び出したんだ。それは、知ってるね?」

優馬「…えぇ、まあ」

鞠莉父「まさか、理事長になってると思わなくてね…学生ならまだしも理事長となると責任が重なってくる。それは非常に良くないと思ってたんだ。」

 

父親として、親として当然だろう。

まだ若い女の子が学校を背負って、理事長を務めるというのだから。

しかし、それならなぜ…

 

鞠莉父「じゃあなぜ君を呼んだのか。それはね、優馬君になら鞠莉を安心して任せられる、と考えたからだ。」

鞠莉父「プレッシャーを与えるわけではないが、実際に天才的な頭脳や無意識的に人の心を掴む掌握術…サポートする力において君は群を抜いている、と私は感じている。」

優馬「そんなこと…」

鞠莉父「謙遜しなくていい。これは本当に思っているのだから。それに…」

優馬「それに…?」

鞠莉父「鞠莉と君との仲がより一層深まるかもしれないしね!!」

優馬「…はい?」

 

ん?シリアス展開が急に方向転換し始めたぞ?

 

鞠莉父「私は君の力だったりを評価して、今すぐにでも後継者として育てていきたいくらいだからね。」

鞠莉父「何より私は鞠莉の幸せを一番に願っている。その幸せには君が必要だ…」

優馬「は、はぁ…」

鞠莉「はっはっは!少し気が抜けてしまったかな?」

優馬「ま、まぁ…」

鞠莉父「…だが、この気持ちは本当だ。それくらい君に鞠莉を支えてほしかった。」

優馬「だから僕をここに…」

鞠莉父「あぁ。」

 

少し親バカな気質があるが、それでも親として子の幸せを願うのは当然で。

やはりその気持ちに嘘はない。

それくらい鞠莉が大事なんだ。でも、それでも世間はそんな独占的な我儘を許してはくれない。だから…

 

鞠莉父「表向き上、こんな我儘は許してくれないからね。共学化を図ることで次年度から男子も受け入れ態勢をとり、募集人数を増やすことができるという名目で君を受け入れた、ということだ。」

優馬「…じゃあなんで、待ってくれなかったんですか?」

鞠莉父「…最終的な期限がこの学校説明会で、希望者の人数が基準を満たしていなければ中止するという条件付きだったんだ。」

優馬「その基準は!?」

鞠莉父「…100人だ。」

優馬「なっ…!?」

 

100人。

俺たちがようやく掴んだ10人、それのさらに10倍。

その数字は俺に絶望を与えてくれた…

 

優馬「ひゃ、くにん…」

鞠莉父「…あぁ、その基準を成し遂げられないようじゃ、廃校も無理ない、という判断だったんだろう。」

優馬「…」

鞠莉父「本当にすまなかった。私が無力で…」

優馬「…」

 

本当ならふざけんな、とかどうにかしてみせる、とか文句の一つや二つ言ってやろうと思っていた。

しかし、そういう言葉すら俺には出すことができなかった。

そこから俺は数分、記憶が無くなっていたから…

 

優馬「…じゃあせめて善子たち…今の1年生たちが卒業するまでは廃校を待ってくれないですか?」

鞠莉父「…もう、無理なんだよ。廃校はもう決まったんだ。」

優馬「そんな…」

 

また絶望した。

じゃあ彼女たちはこの学校で思い出を作ることができないのか?

そんなの…

 

鞠莉父「…優馬君、1ついいかい?」

優馬「…はい」

鞠莉父「廃校は決まった。しかし、今すぐにということではない。今年度までなら存続はできるんだ。」

優馬「つまり…」

鞠莉父「あぁ…鞠莉たち3年生が卒業式を迎えるまでは廃校にはしない、そういうことだ。」

優馬「そ、うですか…」

鞠莉父「…折角来てもらったのに申し訳ない。だけど、これだけは心に留めておいて欲しい。」

鞠莉父「鞠莉たちを最後、笑顔で卒業できるようにそばに、いてあげてくれ。」

優馬「っ!」

優馬「…そんなの、言われるまでもありませんよ。任せてください。」

鞠莉父「…はっはっは、頼もしい限りだ。…ありがとう。」

 

こうして学校説明会の話は一段落着くこととなった…

 

鞠莉父「しかし…折角学校に来てもらったのにこのような終わりは申し訳ないからな…」

優馬「え、そんないいですよ。」

鞠莉父「いや、私が気に食わない!そこでだ!鞠莉が卒業した後、鞠莉と一緒に留学、というのはどうかな!?」

優馬「…はい?」

鞠莉父「いや…いっそオハラホテルの支配人に…?」

優馬「ちょ、ちょっと落ち着きましょう!流石に気が早い気がします!」

鞠莉父「あ、あぁ…すまない。だが、もし気が変わったらいつでも連絡してくれ!」

優馬「は、はい…」

 

優馬「こんな遅くまでありがとうございました。それじゃあ僕はこれで…」

鞠莉父「あぁ…私も君とまた話せて嬉しかったよ。まるで息子みたいだ。」

優馬「はは…それは、また嬉しいですね…」

 

そうして話も終盤になり、別れも済ませ、電話を切ろうとしたその時だった。

 

鞠莉父「あ、待ってくれ優馬君!」

優馬「あ、はい。どうしましたか?」

鞠莉父「もう一つ連絡があったんだ。」

鞠莉父「もしかしたら私の家内がそちらに近々行くかもしれないから、よろしく頼むね!」

優馬「…はい?」

鞠莉父「それじゃあ!」

 

切れた。

というか、家内?家内ってつまり…

鞠莉の母親?そう考えていると

 

鞠莉「優…」

優馬「鞠莉…」

 

ずっと待ってくれていた鞠莉が立っていた。

そして心配そうに俺を見つめてくれている。

そんな顔しないでくれ、この後伝える言葉、伝えたくなくなるじゃないか。

 

優馬「…ごめん」

鞠莉「…ううん、分かっていたの。多分、駄目だったんだろうなって」

鞠莉「だから、謝らないで…」

優馬「…」

鞠莉「…でも思い出が詰まってるあの場所はもう無くなっちゃうのね。」

優馬「…」

鞠莉「そ、れはいや、だなぁ…う、うぅ…うあぁぁぁぁ…」

 

泣いてしまった鞠莉。

本来、ここで何か言葉をかけるべきなんだろうけど

俺はまた以前のようにかける言葉が見つからずに立ち竦むことしかできなかった…

 

 

こうして正式に学校説明会の中止が決定し、事実的な閉校が決まった。




いかがだったでしょうか?
実のところ、この話はまだまだ続きます…
次回の話も是非見てください!
ここまで読んでいただきありがとうございました!


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第39話 計画的犯行の全て

こんばんは、希望03です!
まさか一日のうちに2回も投稿してしまうとは…!
恐らく久しぶりですかね、これだけ連続に投稿したのは
とりあえず今回で鞠莉回が終了します!
是非ご覧ください!
どうぞ!


 

~内浦・オハラホテル~

 

優馬「はぁ…」

 

あれから数分後、お互いに落ち着き始め、少しづつ現実を受け入れ始めた頃

俺はどうしようもないやり切れない何かをどうにかしたくて、とりあえず外の空気を吸おうと外に出ていた。

 

これからどうしていけばいいのか

浦の星学院が事実上の閉校ということは今、しているスクールアイドルの目的は…

何を目標にしてすればいいのか…

そして、Aqoursの皆にはどう伝えればいいのか…

唐突に起きた出来事で頭が回らない。

答えが導き出せない。

 

優馬「はぁ…」

 

こうして何度も溜息をついてしまう。

人間は悩みやストレスを抱えると溜息が多くなる、と聞いたことあるけどまさか本当にそうだとは思わなかった。

 

優馬「…」

 

海がきれいだ。

夜の海は静かでそれでいて、月が反面に映り綺麗で…

と情景の綺麗さに浸っていると…

 

果南「ゆう」

優馬「っ!?」

 

後ろから声をかけられ、びっくりするとそこには果南が立っていた。

 

優馬「か、果南?」

果南「…」

優馬「ど、どうしてここに?」

果南「さぁ…?どうしてだろうね?」

 

果南はたまに見えない怖さがあるが、今まさにそうだ。

俺は鞠莉の家に泊まることなんて誰にも伝えていない。

ましてや先週から決めていたことならまだ分かる。

けれど、決めたのは今日の夕方だ。

それなのになぜか果南がいる。

頭では分かっているけれど、それを認めたくはない。

だってそれじゃあまるで

 

優馬「…ストーキング。後をつけてきたの?」

果南「…ふふっ、あははははははははは!!!だいっせいかい!!」

 

…まさか正解するなんて

でも、なんでそんな真似を…

 

果南「…私がゆうのことをストーキングしてたのは謝るけどさぁ!もっと言うことあるんじゃないの!?」

優馬「…」

果南「何話してるか分からなかったけどさぁ!あの電話相手、鞠莉のお父さんでしょ!?」

果南「…一体何を話してたわけ?まさか、鞠莉との結婚とか…」

優馬「…」

果南「っ!答えてよっ!!」

 

そういうことだったのか…

ずっと気にして、探してたのか…

それなら、言うしかないか…

 

優馬「…分かった。言うから、一回落ち着いて、ね?」

果南「…」

優馬「まず今回、鞠莉の父親に電話をかけてほしいっていったのは俺からだよ。」

果南「っ!…なんで?」

優馬「鞠莉から話を聞いたんだ…学校説明会が中止になる。浦の星学院は事実上の閉校になるって。」

果南「…え?」

優馬「…だから居ても立っても居られなくて俺は鞠莉の父親に直談判したんだ。」

優馬「そうして、電話して話したけど…覆せなかった。」

果南「そ、んな…」

優馬「でも代わりに頼まれたものがあるんだ。」

優馬「それが、最後に卒業するとき、笑顔でいられるようにそばで支えて欲しいってこと。」

果南「っ!?」

優馬「…学校が無くなってしまうのはすごく悲しい。けれど、やることはある。前を向くしかないって思ってるんだけど、結局未だに立ち直れてない、って状況だよ。」

優馬「…理解、できた?」

果南「…」

 

…恐らくショックで頭が回っていないんだろう。

反応がない。何を返せばいいのか、分からないんだろう。

 

果南「…そっか」

優馬「うん…だから、鞠莉と結婚するとかそんな浮いた話じゃないよ。今まで黙っててごめん…」

果南「うん…」

 

そうして数分の沈黙が訪れた。

お互いに何を言えばいいのか分からないからだ。

俺も何をどうやって声をかければいいのか、正直分からない。

 

果南「…私、ゆうのこと疑ってたんだ。」

優馬「うた、がう?」

果南「鞠莉を探しに行って、海岸沿いで鞠莉と話して、抱きしめて、キスして…」

果南「さらに後を追ったら、鞠莉の家に辿り着いて、それで鞠莉のお父さんと電話してて…」

果南「頭が真っ白になってた。こんなに好きだったのに、簡単に置いてくんだって。」

果南「…でも実際、違った。ゆうは必死で学校を救おうとしてて、必死に私たちを守ろうとしてくれてた。」

優馬「…」

果南「なのに…わ、たしは…あんな脅すみたいに…」

優馬「そ、れは…」

果南「違くないよ。」

 

読まれていた。

確かに俺は果南を一瞬だけでも怖がってしまった。

確かにその事実は違いない。

けれど…そんなの知らなかっただけで…

 

果南「…私、最低だね。」

 

そう言った果南はものすごく寂しそうな顔で俺の方を一瞥した。

果南にそんなことない、と言いたいが言葉が出ない。

というよりも言い出そうと思った時にはもう、遅かった。

 

果南「…今日は急に押しかけてごめんね。…さようなら」

優馬「果南!」

 

『さようなら』

そう言い残して、果南は走り去ってしまった…

 

優馬「果南…!」

 

 

~鞠莉の部屋・バルコニー・鞠莉side~

 

鞠莉「ふぅ…果南…」

鞠莉「…ふふ、あはははははははははははははっ!!!!」

 

ここまで全てシナリオ通り♪

残念だったわね、か・な・ん♪

 

鞠莉「はぁ…果南ったら、私の思い通りに動いてくれるんだから…滑稽ね♪」

 

そう、海岸沿いでのことも部屋のことも…そして部屋の外で起きてた果南と優のやり取りも全て私のシナリオ通りだった。

 

全ての始まりは学校説明会の中止の連絡が2学期始まってすぐ私の所に来たところからだった。

最初に聞いた時は本当にショックだった。それこそ立ち直れなくなってしまうほど。

けれど、その時、私にあるアイデアが舞い降りた。

それが今回の計画。

 

まず、この学校説明会の中止という重たい内容、さらには自分にしかまだ知らない情報であるということを上手く使うべく、私は意味ありげな表情をして練習に出ていた。

そうしてさらっといなくなる。

 

するとどうなるだろう。

 

答えは察しの良い優はすぐに気づいて、私を探し始める。

 

そうして、辿り着いた優に問い詰められるが、これもシナリオの通り。

これに私は最初、伝えるのを拒んで、突き放すような態度をとる。

しかし、お人好しの優は引かないことを私は知っていた。

 

むしろ簡単に教えちゃうよりも少し粘ってから教える方がその時のシチュエーション的に燃えるし、ね♡

 

だけど、まさかハグしてキスまでされるとは思わなくて…

少し頭がパニックになったけど…それはそれで役得だったし、良かったわ♡

 

だって…後をつけてきてた果南に対して、私の方が上、って見せつけられたからね♡

 

次に部屋の中での話

 

あの時の流れで上手くパパと話をさせる展開まで持って行けたから

まずはそこで理解のある家族であることを主張、そしてダメ押しで優を受け入れたのは私ではなく、パパでそこにある利害関係があった、という事実を掲示した…

 

そうすることで父親にも恩義を返して、尚且つそんなに想いが深い私へ取り付かれる…

 

そして…

最後のフィナーレ。

私、という女の涙を優に見せた上で優の同情を買い、グッと関係を近づけることができる…

その場面すらも見ていた果南は絶望に打ちひしがれて、勘違いしながら暴走…

優に対して八つ当たりをして、好感度大きく下げて…勝手に自爆♪

 

これが私の組んでいたシナリオだ。

 

鞠莉「それにしても…本当に良く動いてくれたわね、果南は…」

 

予想通り。というか、あまりにも上手く行き過ぎていたから少し不安だったけど…

 

鞠莉「でも、うまくいったのには変わりないから…ふふっ♡」

 

鞠莉「とは言え、やっぱり学校が無くなっちゃうのは悲しいわ…だって」

 

鞠莉「あそこには優との思い出がたくさん詰まっているのに…♡」

 

 

鞠莉「ふふっ…あははははは…♡」




いかがだったでしょうか?
少し短めになってしまいました…
というか2人とも頭のねじが何本か抜けてましたね。
キャラ崩壊がとんでもないことになってました。
この鞠莉を一体止められるのか…!
次回に期待ですね!

ここまで読んでいただきありがとうございました!


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第40話 ”逃げるが勝ち”は時と場合による。

こんばんは!希望03です!
梨子ちゃん、改めてお誕生日おめでとう!
これからもずっと応援してるよ!
ということで、その誕生日もしかり、しっかりこっちも投稿していきます!
まだまだ鞠莉回続きますわ!
どうぞ!


~内浦・オハラホテル~

 

優馬「…」

 

走り去ってしまった果南

本当なら果南のことを追うべきなのだろう。

だが、俺の足はどうにも動く気配がない。まるで鉛のように。

結局俺はここで立ち竦んだまま、どれくらい経ったか分からない

ただただ何もすることができなかった。

 

鞠莉「優!」

 

すると鞠莉に呼ばれた。

 

鞠莉「…もう夜遅いから部屋に戻りましょ?」

優馬「…あぁ」

 

もうそんな時間だったのか、と思いつつも俺は部屋に向かって歩いていたのだが

 

優馬(…果たしてこれでいいのか?これが…正解なのか?)

 

ずっとずっと考えていた。

果南に対して、こんな形でこの話を終わらせていいのか、と

 

鞠莉「…優?」

 

どうやら鞠莉を困らせてしまったみたいだ。

 

鞠莉「どうかしたの?何かあった?」

 

…いっそのこと、鞠莉に聞いてしまった方が良いのかもしれない。

そう思い、俺は鞠莉に今あったことを伝えることにした。

 

 

~鞠莉side~

 

鞠莉「何かあった?」

 

我ながら酷い嘘だと思う。

だって、今あったこと全部見ていたもの。

だから何を話していたかもどうしてそんな不安げな表情をしているのかも全部知ってる。

なんで不安そうな顔をするのか、っていうのは不満だけど

でも、聞いてあげる。

そして…伝えてあげる。私が一番だって!♡

 

優馬「あ、うん…まぁ…」

鞠莉「そう…どうしたの?」

優馬「…さっき果南が来ていたんだ。ここに。」

鞠莉「うん…」

優馬「ちょっと怒り気味でさ…どうしたか聞いてみたら、俺が鞠莉の父親と話している姿を見て、勘違いをしてしまってたみたいで…」

優馬「果南のことをまた置いてくつもりだ、とか色々な感情が溢れて、でもそれが勘違いだって気づいて、信じてやれなかったことを悔やんでしまった。」

鞠莉「うん…」

優馬「…自分を責めながらどこか走り去っちゃって、どうすればいいのか俺にも分からないんだ…どう、すればいい?」

 

本当、優しいのね…

悪いのは果南なのに、そうやって救おうとしちゃうんだもの。

 

鞠莉「本当、お人好しね…」

優馬「え?」

鞠莉「良い?それはもう放置しておいた方が良いと思うわ。」

優馬「…」

鞠莉「だって果南は優を信じ切れずに疑って、ストーキングして、勝手に怒って八つ当たりした後に今度は自分が悪い、とか言って優を振り回して…ヒステリックにも程があるわ。」

鞠莉「そんな色々なものが嚙み合ったうえで私は放置、もしくは突き放す、方が良いと思うわ。」

優馬「…」

 

これで分かってくれたはず。

果南がどれだけ酷いことをしたのかを。

追う価値が何一つ無いってことを。

だが、その時、優から発せられた言葉は私が思っていた言葉と全く違うものだった。

 

優馬「…けど、果南だって大切な仲間で、ずっと向き合えなかった大事な幼馴染だ。」

優馬「あの時は追えなかったけど…今度はやっぱり…」

鞠莉「…は?」

優馬「ま、鞠莉?」

鞠莉「なんでそうなるの!?優はそれくらい果南のこと大事に想ってるのに、果南はそれを信じてあげられなかったのよ!それは一種の裏切り行為よ!それなのに!それなのに…」

鞠莉「果南の肩を持つの…?」

優馬「…肩を持つとかそういう話じゃないよ。ただ俺は果南ともう一度やり直したいんだ。あの頃のように。」

鞠莉「駄目よ!…もう果南のことは忘れましょ?ね?」

 

そうして私は優の手を掴んだ。

すると、彼は…私の手を振り解いたのだ。

そして…

 

優馬「ごめん…行ってくるよ。ありがとう。」

 

そう言い残して、彼は駆け出してしまった。

 

鞠莉「…馬鹿っ!!」

 

 

~海岸・果南side~

 

果南「…あの時と何も変わらない」

 

またゆうに迷惑をかけてしまった。

私、ゆうのお姉さんのはずだったんだけどな。

いつもいつも気づいた時にはゆうに迷惑をかけちゃって…

そしてまた今回も迷惑をかけてって…どれだけ私やらかしちゃってるんだろ。

 

果南「あはは…本当、私ってば馬鹿だなぁ…」

 

これを機にゆうが嫌いになる、なんてことは絶対にない。

だって彼は心優しい人だから。

けど…それが苦しいんじゃない。私が許せないのは

私自身だから。

だから、もうこれっきりでお終い。

だって

 

果南「だって、私には恋愛なんてもの向いてなかったんだから」

果南「だからもう終わり。」

 

果南「…ずっと前から好きでした。さようなら、私の…初恋。」

 

優馬「やっと見つけた。バ果南。」

果南「っ!?」

優馬「こんなとこまで…相変わらず脳筋だなぁ、果南は。馬鹿なの?」

 

馬鹿って2回も言われた。

けれど、そんなことはどうでもいい。

 

果南「…なんでここにいるの?」

優馬「あー…ストーキングかな?」

果南「…へっ!?///」

優馬「嘘だよ。」

果南「…な、なんだ…てっきりほんとかと」

優馬「あはは、辺りを探し回ってようやく見つけたんだよ。」

果南「そ、そっか…///」

 

ん?でも見た感じ、走り回ってた割にあまり汗かいてないし、まさか…

 

果南「ねぇ…ゆう?」

優馬「ん?」

果南「もしかして、全部聞いてた?」

優馬「いや?」

果南「そっか…良かった…」

優馬「“私に恋愛なんて向かなかった…”あたりから聞いてたよ。」

果南「それ全部だよ!///」

 

ゆうのことだからそうだと思ってたけどね!?

…もしかして、だけど

 

果南「…私の初恋がどうとかも?」

優馬「聞いたね。」

果南「…///」

 

終わった。

なんでこういう時に限ってちゃんと聞いてるのかな!?

 

果南「はぁ…諦めるよ…」

優馬「何を?」

果南「話、していい?」

 

果南「…私ね、ずっと好きだったの。ゆうのことが。」

果南「あの時はずっと幸せだったんだ。外に出ればいつも好きな人がいて、ずっとこのままでいいって思ってた。」

果南「でもある時、ゆうが笑わなくなって、気づいた時にはいなくなって…ようやく気付いた。」

果南「大切な存在を失って、初めて失うことの怖さに気付いた。」

果南「確かその数年後にまたゆうに再会できて、嬉しさ反面、またどこかに消えてしまうんじゃないかっていう恐怖心があったの。」

 

優馬「…だから、あんな」

 

果南「うん…だから私はゆうに過剰なくらい付きまとってた…」

 

優馬「…俺をここに縛り付けておきたかったから?」

果南「過剰な言い方するとそうなるのかも。」

果南「でも、今思えば自己中心的って言うか…結局自分のことしか考えてなかったんだ、私。」

 

優馬「…」

 

果南「…だから、もう終わり。こんな迷惑ばかりかけちゃう私はもうお終い。」

果南「だから、ね?もう心配しなくていいよ…」

 

そうやってこの関係をもう終わりにしようとしたその時だった。

 

優馬「…本当に納得してるの?」

果南「え…?」

 

言ってる意味が理解できなかった。

納得していなければこんなこと伝えない。

そのはずなのになんでそんなことを聞くの?

でも気づかなかったのは私だった。

 

優馬「…じゃあ、なんで泣いてるの?」

果南「っ!?」

 

私も気づいてなかった。

ちゃんと笑顔で話せていると思ってた。

それなのに、目から涙が出て、止まらない。止まってくれない。

 

果南「か、関係ないよ!目にゴミが入っただけ!」

 

嘘だ。

無理な言い訳だ。

こんなにボロボロと涙が出てきていて、ゴミが入ってただなんて…

しかもそんな真剣な目でこっちを見つめてきてさ

こっちの気持ち考えたことあるの?

余計辛くなるんだよ…

だって…

 

果南(もう好きにならないって決めたのに…なんでドキドキしてるの?なんでこんなに…)

 

優馬「果南…」

果南「っ!やめてよ!!」

果南「もう私は好きにならないって決めたの!だって…そしたら私はまた同じことを…繰り返しちゃうから…」

 

今度こそ笑顔を作って…私は終わりを告げる。

 

果南「…今まで、ごめんね。さようなら。」

 

…これで良かった。

もう本人にも伝えたし、もう終わり。

これで…正解だったんだ。

 

優馬「…俺は嬉しかったよ。」

 

え?何を言ってるの?

 

優馬「まさか果南が俺に好意を持ってくれてるなんて、自惚れじゃなかったんだな。」

 

やめて、そんなに言わないで。

 

優馬「俺のこと、弟みたいに扱われていたような気がしたから、男として意識されてないと思ってたんだ。」

 

そんなことない。

ずっとずっと好きだった。

だからそんなに私が欲しい言葉を投げかけないで…

 

優馬・果南「「…」」

 

優馬「無理に逃げようとしなくてもいいんじゃない?」

果南「え…?」

優馬「だって逃げるのだって簡単じゃないでしょ、自分自身の気持ちに嘘ついて、これからずっと逃げ続けるわけでしょ?」

優馬「それはいくらなんでも…体力お化けの果南でも疲れて倒れる日が必ず来るよ?」

果南「で、でもこのままじゃゆうにまた迷惑をかけちゃうから…」

 

そう。

逃げるのだって簡単じゃないけど、自分を偽らないとまたゆうを傷つけてしまうから

だから…私が倒れてもいいんだから…

 

優馬「…俺は一度も迷惑だなんて思ってないよ?」

果南「…え?」

優馬「むしろ嬉しいし…///」

果南「…///」

 

思わず、私も顔が赤くなってしまった。

けれど、その言葉はあまりにも温かくて、そして私の冷え切った心をどんどんと溶かしてくれているような気がして…

 

優馬「…果南?///」

果南「へ…?///あ、ご、ごめん…///そ、それで?///」

優馬「う、うん…///だからその…果南が俺のことを好きでいることっていうのは別に迷惑じゃないからあまり気にしなくても…///」

 

話し始めたその時だった。

 

ドキドキしながら話を聞いていた時、背後から私たちの見知った顔が現れ、私たちを引き裂こうとする悪魔の囁きが入ってきたのだ…

 

 

「それ以上はだめよ?…ダーリン?♡」




いかがだったでしょうか?
どちらかというと果南回でしたね。
そして最後に登場してきました。計画的犯罪を犯した黒幕です。
次回でようやく解決!
ここまで読んでいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!


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第41話 ”幼馴染”という関係性

こんばんは!希望03です!
第40話の続き、この騒動もついに終止符が打たれます!
文量はいつもよりかなり少なめになっているので物足りなさが感じられますが最後まで見ていただけると嬉しいです!
それではどうぞ!


 

~淡島・海岸沿い~

 

「それ以上はだめよ?…ダーリン♡」

 

果南「っ!?」

優馬「…鞠莉」

 

鞠莉「ハァ~イ♪あなたの鞠莉よ♪」

優馬「…」

 

まさかここに来て鞠莉が来るなんて思ってもみなかった。

あの時点で鞠莉は納得してくれると思っていた。

…でもあの時、違った。

果南の元へは行かせない、そんな想いが伝わった。

だから振り切って走ったというのに…

 

優馬「…」

鞠莉「…どうしたのかしら?早く帰りましょ?遅くなっちゃうわ。」

優馬「その前に聞きたい事を聞いてもいい?」

鞠莉「ん~?」

優馬「なんで、ここが分かったの?」

鞠莉「…そうねぇ、強いて言うなら…」

 

 

鞠莉「“愛”、かしら?♡」

優馬「…!?」

 

俺は何も言えなかった。

なぜか、それは梨子のようにGPS、もしくは盗聴器といった現実味のある行動によって実現された行動だと思っていたからだ。

だから“愛”と言われて、俺は一瞬フリーズしてしまった。

 

果南「…狂ってる」

 

果南がそう呟いた時だった。

鞠莉は一瞬にして果南の方を向いた。

 

鞠莉「…果南も同じでしょ?私が狂っているのだったら、果南も同じように狂っているわ。」

果南「…っ」

鞠莉「教えてあげようか?優もちゃんと聞いててね。」

 

そう言って、鞠莉は俺たちに聞くように促してくる。

どこまでも質が悪い。

今はもう完全にブラック鞠莉である。

 

鞠莉「果南はね、自分のことを本当に優の彼女だと思って、勝手に彼女だって偽った挙句、優の行動を束縛しようとして、事があれば疑いをかけて、振り回して…」

 

鞠莉「ねぇ、果南」

 

果南「…やめて」

 

鞠莉「自分の罪から逃げてる場合じゃないわよ。ちゃんと向き合いなさい。」

 

果南「もうやめて」

 

鞠莉「…優に迷惑をかけて、ちょっと優しくされればすぐコロッと気持ちが変わって」

鞠莉「浅ましいうえ軽い女ね?」

 

果南「いや…やめて…」

 

鞠莉「これだけ迷惑かけておいて、自分は逃げようとするなんて…それこそ私以上の狂人よ!」

果南「やめて!!」

鞠莉「…」

 

優馬「果南…」

 

果南「そんなの分かってる!迷惑をかけて…逃げようとして…止められたらケロッと気持ちが変わって…本当、軽いと思う…」

果南「でも!抑えられるわけないじゃん!好きっていう想いなんて!」

果南「どれだけ片想いしてきたと思ってるの!?ずっと出会った時からずっと!好きだった!」

果南「いなくなった時もずっと探してて!それで漸く見つけて!」

 

果南の想いが爆発した。

それほど強い気持ちだったらしい。

てか、本人がここにいること忘れてませんか?大丈夫?

 

鞠莉「…だから、だから!ずっとあんなことをしてたっていうの!?そんなのただの自己防衛じゃない!」

 

鞠莉「そんなこと言ったら私だって同じよ!」

鞠莉「あの時、窓の外から私を呼んでくれて…私を連れ出してくれて…」

鞠莉「私だってずっと好きだったわ!ずっと優のそばにいたかった!」

 

鞠莉「…それでも、あの時救えなかった罪が自分を縛り付けて…想いを伝えちゃ駄目なんだってずっと枷をかけていたわ。それが私の贖罪でもあるから…」

 

果南「…何それ、それだって!ゆうと向き合うことから逃げ続けて…今だって逃げてる証拠だよ!!」

 

鞠莉「そんなことない!…いやそうかもね。でも!そうしていなきゃ私が私であることを保っていられなかったの!」

鞠莉「果南だって同じでしょ!」

果南「なっ…!私は違う!」

 

そうしてヒートアップしていく2人の口論

どうやっても収拾がつかない。

鞠莉がこう言えば、果南がああ言い。

果南がああ言えば、鞠莉はこう言う。

その繰り返しだった。

だからなのか、俺はもう我慢の限界だった。

 

優馬「うるせえぇぇぇぇぇ!!」

果南・鞠莉「「っ!?」」

 

…やり過ぎた。

これじゃ俺が一番うるさいじゃん。

 

優馬「ふぅ…」

果南「ゆ、ゆう?」

鞠莉「Why…?ど、どうしたの?」

 

落ち着くために俺はまず一呼吸を置いた。

そして

 

優馬「…2人してヒートアップしてどうするわけ?」

優馬「結局どっちも譲らないからか、収拾がつかなくなってるしさ。」

優馬「それに2人は俺の気持ちとか考えとか、想いとかそういうの考えたことある?」

優馬「ないよね?」

優馬「俺のことを何にも知らずにゆうのためとか、贖罪とか…抱え込み過ぎなんだよ。馬鹿。」

 

鞠莉・果南「「…」」

 

優馬「…俺はもう昔みたいに何も言わずにどこかに行ってしまう、なんてことはしない。これからもするつもりは毛頭ない。」

優馬「こうして今もこれからもここにいるんだ。いくらでもあの頃を取り戻せるんだ。」

優馬「それなら過去の罪とか想いとかに捕らわれるよりも今を楽しむ方が良くない?」

 

鞠莉「それは…」

果南「そうだけど…」

 

優馬「…俺は、2人のことが好きだよ。」

 

鞠莉・果南「「…」」

鞠莉・果南「「ふぇ…!?///」」

 

鞠莉「な、なにを言ってるの!?///」

果南「じょ、冗談はだめだよ!!///ほ、本気にしちゃうから…///」

 

優馬「本気にしちゃうも何も…俺は本気だよ。」

優馬「2人のことが好きだよ。」

 

鞠莉・果南「「~~~~っ!!///」」

 

鞠莉「で、でも二股は…///」

果南「そ、そう?///私は愛してもらえるだけでも…///」

 

優馬「幼馴染として、もう一度やり直したいんだ。」

 

鞠莉「…は?」

果南「…え?」

優馬「…ん?」

 

鞠莉「なんだ、そういうことね…」

果南「はぁぁぁぁ…」

 

優馬「逆になんだと思ったんだよ…」

 

鞠莉「そりゃあ、ねぇ、果南?」

果南「うん…そりゃあ、ね?」

 

鞠莉・果南「「…ふふっ」」

鞠莉・果南「「あはははっ!」」

 

…どうやら元気が戻ってきたらしい。

困った幼馴染たちだ。

ここにダイヤが入ってたら、と思うとまたちょっと違うが…

 

果南「ゆうらしいなぁ!ほんとにっ!」

鞠莉「本当よ!そうやって私たちの想いを持って行っちゃうんだから!本当幼馴染キラーは怖いデースッ!」

優馬「幼馴染キラーってなんだよ…幼馴染キラーって…」

 

始めの頃は見せなかった彼女たちの笑顔がようやく戻ってきたのだった。

 

果南「…じゃあこれからまたやり直そ?」

鞠莉「そうね…でも今度こそ、幼馴染から昇格しなきゃ!ね♡」

果南「それは…うん、そうだね!諦めきれないもん♡」

優馬「あはは…お手柔らかにお願いします…」

 

こうして彼女たちと俺の一夜半の騒動は終わることとなった。

実はあの時、優馬自身は異性としても好き、という想いも込めて“好き”という言葉を伝えた…というのは神のみぞ知ることとなった。

 

だが、こうやって笑い合うのも束の間

彼女たちは大事なことを忘れていた。

 

 

優馬・鞠莉・果南「「「あ、学校説明会…」」」




いかがだったでしょうか?
ようやく次の内容に入ります!遅くなって申し訳ありません。
今まで果南と鞠莉をメインに書きましたが、ようやく皆が出てきます!
それではここまで読んでいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いします。


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第42話 明かされる真実

こんばんは!希望03です!
ついに皆が出てきます!
そして文がかなり長くなってしまいました!すみません!
それではどうぞ!


 

~オハラホテル・鞠莉の部屋~

 

優馬「ん~…うん…?」

 

果南「Zzz…」

鞠莉「すぅ…すぅ…」

 

優馬「そっか…寝ちゃってたのか…」

 

おはようございます、皆さん。

空条優馬と申します。

なぜ俺が冒頭にてこの美女2人と添い寝をかましてしまっているのか、というのを説明させていただきたいと思います。

 

 

~回想~

 

それは昨日の夜、鞠莉と果南との一悶着があり、それが収まりを迎えた時だった。

俺たちは一番重要事項である学校説明会の中止と言うのを忘れていたのだ。

 

優馬「うわぁ…学校の危機だってのに、なんで忘れてたんだろ…」

鞠莉「ふふっ、それって私たちの方が重要…ってことよね?♡」

果南「確かに…そっか~…♡照れちゃうなぁ…♡」

優馬「いや…もういいや…」

 

とりあえずこの時、一瞬だけこいつらあのまま放置しておけばよかった、とも思ったが

それをしてしまうと自分の命の危機だったということを思い出したため、考えるのを止めた。

 

優馬「それで、皆にいつ伝えるか…」

果南「そもそもこれって伝えるべき?混乱しそうだけど…」

鞠莉「…それは」

優馬「だけどな…何も知らないまま、練習をしてきていざ開いてみたら中止…しかも閉校が確定した…なんてそっちの方が辛くない?」

果南「辛いけど…それを伝えてしまったら千歌たちは…」

優馬「…まぁ、数週間は立ち直れないだろうね」

優馬・果南「「…」」

 

鞠莉「…ねぇ、優?果南?」

 

優馬・果南「「?」」

 

鞠莉「もう夜遅くなってるからとりあえず帰りましょう?考えるのはとりあえず明日にして、ね?」

 

そういえばそうだ。

もう気づけば夜も真っ暗で灯りがなければ周りは何も見えない。

ここで話すのは危険すぎるだろう。

 

優馬「…そうだね、確かにそうした方がいいかもしれない」

果南「そっか…じゃあゆうとはしばしのお別れだね…」

優馬「いや…そんなどこかの兵士みたいに言わないでよ」

 

しばしの別れ、というか明日になればまた会うと言うと

果南に雰囲気読んでよ!と怒られてしまった。

すると鞠莉から爆弾発言が出てしまったのだ。

 

鞠莉「果南?帰らなくていいわよ?」

果南「え?それってどういう意味?」

優馬「?」

鞠莉「今日は私の部屋でお泊りパーティーもとい仲直りパーティーするからよっ!」

 

優馬「…俺は帰っていいのかな?」

鞠莉「帰るって言ったって、あっちに戻るためのフェリーが出てないじゃない。」

優馬「くそっ!図られた…」

 

逃げたくなるのも当然だ。

こんなほとんど人と話してこなかった、ただの陰キャがこんな可愛い2人と泊まるのだから。

まして自分の部屋じゃなくて鞠莉の部屋、ともなると言い寄られるに決まってる。

つまり、俺は断固拒否である。

しかし…

 

果南「えー!良いじゃん!私、ゆうとお泊り会したいよ!」

優馬「なんでそんなノリノリなの…」

果南「だって、一日中、ゆうと一緒ってことでしょ?」

果南「想像しただけで…あはっ♡最高っ♡」

鞠莉「ね、そうでしょー?♡じゃあ、果南は…」

果南「行く行く!絶対行く!」

優馬「あぁ…」

 

果南がそちら側に付いた、ということは多数決で言うと2対1で完全敗北、と言うわけである。

 

優馬「もういいよ…お泊り会しよ…」

鞠莉・果南「「やったー!♡」」

 

こうして諦めた俺はお泊り会を受け入れ、鞠莉の部屋へと向かった。

俺にとっては“かなり”不本意だったけど…

 

 

~回想終了~

 

そうして、今俺はこうして鞠莉の部屋でこの2人と一緒に寝ていた、と言うことに繋がるのである。

 

優馬「…起きるか」

 

とりあえず今日も学校がある為、起き上がることにした。

しかし、起きようと腰を上げたがどうにも上がらず、動かない。

不思議に思い、視線を下に落とすと

 

優馬「うわぁ…」

果南「Zzz…」

鞠莉「すぅ…すぅ…」

 

この2人、ものすごい寝息立ててるくせにどこから湧いているのか分からない理解不明の力により、俺の身体はがっちりと掴まれていたのだ。

 

優馬「…外れないんだけど」

 

男の俺がどれだけ頑張って引き剝がそうと思っても体はびくともしない。

 

優馬「もう…いっか…」

 

この状況を受け入れることもできず、諦めた俺はあくまでも仕方なしに(決して寝てたいとかそういう理由ではない)

もう一度寝る決心をつけて、いざ二度寝の快楽へと誘われる…

 

そう思った矢先だった。

 

優馬携帯「~♪~♪~♪」

 

優馬「!?」

果南「うわぁ!?」

鞠莉「What!?」

 

馬鹿みたいにデカい音量で俺の携帯の着信が鳴った。

 

優馬「え?だ、誰?」

 

恐る恐る携帯の画面を開くとそこには“黒澤ダイヤ”と書かれた文字

なんとまあ生徒会長が直々に俺に電話を入れてくれたのだ。

 

優馬「なんつー絶妙なタイミング…」

 

そう俺はぼやきながらダイヤからの着信を取った。

 

優馬「もしもし…?」

 

すると出た直後、ダイヤからものすごい剣幕で怒鳴られたのだ。

 

ダイヤ「今!何時だと思っているんですの!?」

優馬「うわっ!…え?時間?」

ダイヤ「気づいていませんでしたのね…近くの時計でも見て確認してみなさい?」

 

そうして俺はダイヤに言われるがまま、近くにあった時計を見てみると

その針が指していたのは9時10分。

とんでもない、大遅刻であった。

 

優馬「…マジ?」

ダイヤ「大マジですわ…」

 

どうやらダイヤは朝のHRが終わった時点で鞠莉と果南が来ていなかった上、千歌から俺の所在を聞かれたため、心配になって電話してくれたみたいだった。

 

ダイヤ「はぁ…どうせ鞠莉さんと果南さんに唆されたのでしょう?」

優馬「あー…まぁ、間違いではないかな?」

 

ダイヤ「…それなら私も一緒にいたかったのに」

 

優馬「ダイヤ?」

ダイヤ「っ!///何でもないですわ!!///は、早く学校に来なさい!!///」

優馬「はーい…ありがとう、ダイヤ。」

ダイヤ「…いえ///」

 

ただ、ここまで来るとどうにも俺には焦るという感情が抜け落ちちゃうらしく、行動するのが遅くなってしまう。

しかし、流石にこれだけダイヤが怒っているとなると…

いくら俺でもただじゃ済まない。

そう思い、急いで準備に取り掛かろうとした。

しかし…

 

優馬「…」

 

鞠莉「むぅ…」

果南「ハグぅ…」

 

先の会話を電話越しに聞いていたはずなのだが、どうにも彼女たちが俺の身体を離してくれない。

というか、鞠莉は可愛いのだが、果南のそのハグぅ…ってなんだハグぅ…って新たな単語が生まれてるぞ。

どちらにせよ、可愛いからこのままでいいかな、とか思ってしまうのだが、こちらは命がかかってしまっているのだ。

流石に行かないとまずい。

 

優馬「あー…鞠莉さん?果南さん?もう大遅刻なんですけれども…」

果南「それがどうしたの?」

鞠莉「ノープロブレムよ?」

 

の一点張りである。

しかし、俺も俺でここまで来たら行かなくてはならないという使命感が湧いてきたのだ。

 

優馬「いや、でもね、ダイヤがかんかんなんですよ?もうそれはそれは恐ろしいほどお怒りですよ?」

 

鞠莉「…優は私と一緒に寝たくない?いっぱい甘やかしてあげるのにぃ…♡」

果南「…一緒にこのままずーっと寝ちゃおうよ♡いーっぱいハグしてあげるのになぁ…♡」

 

優馬「…///」

 

はい、負けました。

こんな可愛らしく媚びられて勝てない人っていらっしゃいます?

いるなら教えて欲しいくらいですね。

じゃあ、おやすみなs…

 

優馬携帯「~♪~♪~♪」

 

優馬「うおあっ!?」

 

そう思った矢先、携帯の着信が鳴った。

まさかの先ほど切ったはずのダイヤから着信。

 

優馬「もしもし…」

ダイヤ「…分かっていますわよね?至急来るように。」

優馬「…」

 

そう言い切られてしまった。

今の出来事を見透かされているかのように。

なんて恐ろしい子なんだろうか。

 

そうして俺は鞠莉と果南をめちゃくちゃ説得して、ようやく俺たちは浦の星学院へと歩を進めたのだ。(ちなみにここでかかった時間は1時間だった。恐ろしい!)

 

~昼休み・浦の星学院・理事長室~

 

ダイヤ「なんで新学期早々に大遅刻をするのですか!!」

 

ちょうど4時間目くらいに着いた俺たち。

昼休みに理事長室に呼ばれた俺と果南は理事長室へと向かったのだった。

そうして、今、絶賛、俺と果南と鞠莉の3人は大説教中、と言うわけだ。

 

ダイヤ「大体!もう少し、高校生であるという自覚を…」

鞠莉「も~!そんなに怒らないで、ダイヤ!怒ると皴ができちゃうわよ~??」

ダイヤ「お黙りなさい!そもそもこうやって怒っているのは誰のせいだと…!」

果南「はいはい、落ち着きなって~ストレス溜まっちゃうよ~?」

ダイヤ「もう既にストレスは最高潮にまで達してますわ!!」

 

こんなに必死に怒っているダイヤにからかうような態度をとる鞠莉と果南

その光景を見ているだけでなんだかダイヤに申し訳なく感じてしまう。

 

優馬「…ダイヤ?」

ダイヤ「今度はなんですの!?」

優馬「ごめんね…俺たちのために怒ってくれてるのに…」

ダイヤ「っ!///ゆ、優は悪くありませんわ…///その…///次は私の家で…一緒にお泊りしてみたいというか…///うぅ…///」

 

鞠莉と果南への態度とは打って変わって、大分しおらしくなってしまったのだった。

 

鞠莉「…単純ね。」

果南「はぁ…好きな男の前ではああいう態度をとるってねぇ…?」

 

ダイヤ「何か言いましたか?」

 

鞠莉・果南「「別に??」」

 

俺から見てると彼女たちはものすごい爽やかな笑顔を浮かべて話しているけど

どこか禍々しさがあって、なんだか怖かった。

見つめている視線と視線の間では火花が散っているような…そんな感じだった。

 

ダイヤ「…ふぅ」

ダイヤ「茶番はこれくらいにして…とりあえず、一体何があったんです?」

優馬「っ!…バレてた?」

ダイヤ「それはお2人と優がいなければ、何かあったと気づくに決まっていますから。」

優馬「…さすが、ダイヤだなぁ」

 

やっぱりなんだかんだでダイヤには敵わない。

この一件でそう感じた。

 

ダイヤ「…本当、ちゃんと隠すなら隠しなさい?」

ダイヤ「コソコソとするのは、ぶっぶー、なんですから、ね?」

優馬「っ!///」

 

小さく優しい微笑みを浮かべたダイヤに思わずドキッとしてしまったのはここだけの話。

 

ダイヤ「それで、何があったんですの?」

優馬「う、うん…///実は…」

 

鞠莉「待って!」

 

言おうと思ったその時、鞠莉に止められた。

 

鞠莉「…そのことについては私から話すわ。」

優馬「鞠莉…」

 

そうして俺に代わり、鞠莉が話してくれた。

果南の時と同じように

募集人数の基準に満たしていなかったこと、そこから繋がる学校説明会の中止、そうして決まってしまった事実上の閉校…

順を追って、分かりやすく鞠莉が話してくれた。

 

ダイヤ「閉校…」

 

この話を聞いて、もっと驚くかと思いきや、意外にもその表情は驚いた、というよりも

もう来てしまったか…といったような表情だった。

すると、それを察したのかダイヤはこちらを見て話し始めた。

 

ダイヤ「以前から話は聞いていましたから…しかし、そうなのですね…もう、決まって、しまったのですね…」

 

そう言い、悲しげな顔を浮かべるダイヤ

それに対して鞠莉や果南、そして俺は何も言えなくなってしまった…

 

 

~沼津市・ダンス練習場~

 

千歌「うわぁぁぁ!!すっごーーーい!!」

 

意外に広いダンス練習場に興奮する皆。

なぜこんなところにいるのか、というと

以前、夜が更けてしまい、辺りが暗くなってしまうということから沼津組が遅くならない時間帯で帰れて、かつ内浦組も大して時間のかからない場所で、ということで曜が親父さんに頼んで、知り合いのつてでこの練習場の使用許可を得られたのだ。

 

千歌「すごいすごい!これで思いのままに身体を動かせるね!」

 

そう言い、興奮冷めやらないといった様子の千歌たち。

それを見て、俺は微笑みを浮かべられるだけだった…

 

 

ダイヤ・鞠莉・果南「「「優(ゆう)…」」」

 

いつあの事を伝えようか、どうなってしまうのか、色々な考えが巡って、中々切り出せずにいると3年生の皆から千歌たちに声をかけた。

 

果南「千歌、皆!」

千歌「?どうしたの?果南ちゃん?」

果南「…ごめんね、少し、話があるんだ。」

千歌「話?」

 

鞠莉「あのね…実は…学校説明会は…!」

 

鞠莉「中止に、なるの…」

 

 

千歌「…え?」

曜「ちゅう、し…?」

 

ダイヤ「そうですわ。」

果南「説明会は中止。浦の星は来年度の募集をやめることを決定した。」

 

善子「そ、んな…」

ルビィ「そんなの…いきなりすぎるよ…」

花丸「そ、そうずら…だって、まだ新学期も始まったばかりで…」

 

鞠莉「…いきなりじゃないの。ずっと、廃校にする予定で私のパパがそれを止めてくれてたの…でも、もう限界だったみたい…」

 

千歌「…嘘。」

千歌「ねぇ、優君、嘘だよね?…優君!嘘だって言ってよ!!」

優馬「…」

 

千歌「そ、んな…」

 

俺は千歌たちに何も答えてあげられなかった。

これは自分の責任でもあるから。

だからせめても…と思い、俺はなんとか笑顔を作ろうとしたのだった。

 

優馬「ごめん…」

 

しかし、俺の目頭が熱い。

ちゃんと笑顔が作れているのか、不安で仕方ない。

 

梨子「…ごめんって…どういうことなの?」

 

優馬「…実は」

 

そうして俺は鞠莉の父親と話したこと、交渉したものの実は既に父親が文化省と交渉していたが、覆せなかったということ、つまり自分が言ったところで無駄だったということ、という今回の事の顛末を洗いざらい皆に話した。

 

優馬「ごめん…本当に、ごめん…」

 

あの時、既に流しきったと思っていた涙、しかしここに来てまた溢れ出し、止まらなくなってしまった。

すると…

 

梨子「…」

 

気づいた時には梨子に抱き締められていた。

 

梨子「…頑張ってくれてたんだね。ありがとう…気付けなくて、ごめんね?」

優馬「…俺は、何もしてないから。」

梨子「ううん、そんなことない。優君の想いがちゃんと私たちに伝わってる。本当はその話を聞いて、ショックだけど、優君がこんなに頑張ってくれたんだもの。」

梨子「だから、何もしてない、なんて言わないで?どんなに悲しくても、どんなに辛くても“私”だけは絶対、そばで支えてあげるから…ね?」

優馬「梨子…」

 

 

…すごく良い雰囲気であるのは間違いないのだが、この雰囲気はあくまでも梨子たちの空間だけであった。

周りはどうにも不穏でピりついた空気が流れていたのだ。

正直な話、梨子も梨子で思わず感極まった流れで抱き締めてしまい、冷静さを取り戻した時は取り乱していたのだが、役得だ、と考えを改め、この空間をしっかり味わうかのように噛み締めていた。

そして、段々と落ち着いてきたのだった。

 

優馬「…ありがとう、梨子」

梨子「ふふっ、どういたしまして!♡」

 

すごく和やかな雰囲気ではあるが、周りのAqoursメンバーはこのやり取りですら不快に感じていた。

すると、冷静さを取り戻した優馬は今までのやり取りに顔を赤らめていた。

 

優馬(…もしかして、ものすごいものを彼女たちに見せてしまったのでは…!?///)

 

そう思い、焦る優馬を尻目にAqoursメンバーたちは今までにない表情をしていたということで大興奮していた、というのは優馬以外知りえない話である。

 

鞠莉「ふぅ…それで、これから、どうしましょうか…」

 

「「「「「「「「「うーん…」」」」」」」」」

 

しかし、いざ議題を戻すとこの時点では一向に意見は出ることがなかったため、今日はとりあえず解散することとなった…

 

 

~路線バス内・Aqours side~

 

優馬「すぅ…すぅ…」

花丸「可愛いずらぁ…♡はぁ…眼福ずらぁ…♡もう一生、離れたくないずらぁ…♡」

 

疲れて寝てしまった優馬の寝顔を一番近くで見ている花丸はそれはそれはデレデレになっていた。

そして、周りの空気は相変わらず冷め切っていた。

すると、突拍子もなく、車内で梨子が優馬を抱きしめた話へと移った。

 

千歌「…あれはイラっとしたなぁ」

曜「うんうん。やられた、と思ったね…」

ルビィ「…」

ダイヤ「まぁ…あれは確かに…」

果南「やりすぎだったんじゃないの?」

鞠莉「Crazy girl…」

 

梨子「あはは、そうやってイライラしているけど、あそこで優君のために動けなかった皆が悪いと思うんだけどなぁ?」

千歌「は?」

梨子「だって…私は優君を想って行動したまでだもん♡」

 

そう言い放った途端、さらにバス内の空気は冷め切った。

 

梨子「可愛かったなぁ…♡ふふっ…♡」

 

そう自慢げに話す梨子にイライラが募る皆。

しかし、それと同時に彼女たちは…

 

千歌(次は千歌が仕掛ければいいもんね…)

曜(…今度こそ)

ダイヤ(まぁ…今度、私の家でお泊り会をすれば…)

ルビィ(いっぱい甘えて、虜にさせなきゃだね~…)

鞠莉(もっとアプローチしていかないとだめね…)

果南(もう監禁しちゃおうかなぁ…はぁ…)

 

次は自分たちが仕掛ける番だと決意を固めていた。

 

 

こうして違った意味でバスの中は静けさが生まれ、それぞれの家へと帰宅していったのだった…




いかがだったでしょうか?
なんとここまで今のところ、原作の1話です。
まだ一向に進んでおりません。
いつか鹿角姉妹も入れたいんですよ。
タイミング見計らい中です。楽しみにしていてください。
それではここまで見ていただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!


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第43話 因縁と後悔と懺悔

こんばんは、希望03です!
ギルキス2ndLIVE…ついに始まりましたね…!
もう頭の中はNameless Love Songがリピート再生中です…
ただ、今回はギルキスメンバーは出ません!泣
その代わり、ついにあの姉妹との過去が…少しづつ明かされていく?

それではどうぞ!


~優馬家・優馬の部屋~

 

優馬「…」

 

学校説明会の中止、実質的な閉校の件についてを皆に伝えてから、皆、練習に身が入らずといった調子だったため、今日は割と早めにお開きとなった。

そうして今、俺は早々に食事と風呂を済ませて、寝る準備を整えていた。

しかし、寝ようと思ってもあの時の千歌たちの顔や鞠莉たちのやるせなさげな顔を思い浮かべてしまうとどうにも思い出してしまって、寝れずにいた。

 

優馬「…おかしいなぁ」

 

鞠莉と果南とのあの事件の時にもう気持ちを切り替えていたはずだった。

しかし、改めてこの話になると自分の心にはまだ未練があったみたいだった。

 

優馬「はぁ…」

 

今は1人しかいないから、と少し大げさに落ち込んでいると

 

優馬携帯「~♪~♪~♪」

優馬「!?」

 

突然、携帯が鳴りだした。

 

優馬「…だれ?」

 

別段、この時間で電話をする約束も特別な何かがあったわけでもなかったはずだった。

しかし、携帯は鳴っている。

とりあえず確認するために携帯を取るとそこには

 

優馬「鹿角、聖良…」

 

“鹿角聖良”と書かれた名前が表示されていた。

 

優馬「…もしもし?」

 

聖良「っ!///あ…///え、っと…///も、もしもし…っ!///」

優馬「…なんですか?冷やかしですか?」

聖良「い、いえそんなわけ…じゃなくて!」

優馬「何も用がなければもう切りますけど…」

聖良「え!?ま、待って!お願いっ!///」

 

反応からしてあからさまな冷やかし、もしくは間違いかと思ったのだが

どうやら違っていたらしい。

ただ、それでも今のナイーブな気持ち的に話すのは躊躇いがあった。

しかし、何やらすごく必死だったから思わず、会話を続けてしまった。

 

優馬「はぁ…分かりましたよ…」

優馬「それでどうしたんですか?」

聖良「っ!///え、えっと…///ですね…///」

優馬「?」

聖良「た、ただ…///」

優馬「…ただ?」

 

聖良「は、話したかっただけ、では駄目ですか…?///」

優馬「…はい?」

聖良「う、うぅ…///」

 

思わぬ言葉すぎて俺の思考が止まってしまった。

冷静に考えたら嬉しいが、なぜ?の方が俺としては強かったからか

戸惑いを隠せずにいた。

 

きっと今までの自分だったら意味が理解できずに電話を切っていただろう。

しかし、今、ちょうど寂しさも相まってか、話し相手なら…と思ってしまった。

 

優馬「…まぁ、気を紛らわしたいんでいいですけど」

聖良「っ!!///ほ、本当ですか!?///」

優馬「は、はい…」

聖良「あ、ありがとう、ございます…///えへ、えへへ…///」

 

なんだかよく分からないが、どうやら喜んでくれているようだ。

顔は見れないが、電話越しに伝わるくらいには喜んでくれている。

 

 

だが、電話して数分。

話をしようにもその話をするための話題と言うのがないため、今はもう無言の空間となってしまっていた。

 

優馬(…気まずい)

 

どうにも気まずさを感じてしまう。

Aqoursメンバー相手であればいつも会っている相手であり、冗談も言い合える仲だ。

話題を考えなくとも勝手に話は進んでいく。

しかし、だ。

相手は北海道の女子高生で、会ったのも恐らくものの数回。

となると、話をするのもハードルが格段に上がってしまう。

そうなると無言の空間になってしまうのも無理ない。

分かって欲しい。俺はコミュ障とかでは決してない。

 

とは言え、流石にこの空間をいつまでも続けていくのはこちらとしてもどこか申し訳なさを感じてしまう。

そのためにふと思いついた話題で話すことにした。

 

優馬「あー…そのー…」

聖良「?」

優馬「あの妹さんは元気です?」

聖良「…理亜のことですか?」

優馬「そうですそうです。」

聖良「元気ですよ。ふふっ、それはそれはもう毎日…」

優馬「?毎日?」

 

と気になるところで丁度良く?電波が悪くなったのか、続きが聞き取れなくなってしまった。

 

 

理亜「姉さま!!やめてってば!!」

聖良「あら、理亜。聴いていたのですか?」

理亜「あ…///い、いや…///き、聞こえてくるの!!///」

聖良「ふふっ、別にいいじゃない。これで理亜の下がりきった好感度もきっと爆上がりよ?」

理亜「よ、余計なお世話!!///あと望んでないから!///…い、今は///」

 

と、優馬が聞こえなくなったタイミングでこういうやり取りがあったとか、なかったとか…

 

そして数分が経った頃、ようやく電波が回復したのか、聖良の声が聞こえてきた。

 

聖良「すみません…ちょっとお店の方に出ていました…」

優馬「お店?店を構えているんですか?」

聖良「まぁそうですね。私たちの家なんです。ちょっとした和風の喫茶店をしてるんですよ。」

優馬「へぇ…ん?」

 

さらっと受け流そうかと思ったが、なぜか俺の頭の中で引っ掛かりを覚えたのだ。

なぜだか分からないが。

 

優馬「…聖良さんって、ご出身、北海道のどこでしたっけ?」

聖良「出身ですか…私たちは函館ですよ。」

優馬「函館…?」

 

函館、という単語を聞いた途端、謎のもやがかかった何かが俺の頭の中を過ったのだ。

それはまるで昔あった何かにもやをかけているみたいで、俺は大事な何かを忘れていたような、そんな感覚。

…しかし、それが何なのか未だ思い出せない。

 

優馬「函館…喫茶店…」

 

聖良「…さ、私たちの話はこれくらいにして、そちらはどうですか?順調、ですか?」

優馬「順調…」

 

順調という言葉に対して、返答する言葉が無くなってしまって、俺は言葉を詰まらせてしまった。

 

聖良「どうか、しましたか?」

優馬「…いや、何でもないですよ。」

聖良「何かありそうなのですが?」

優馬「そんなことありませんよ。順調です。」

聖良「…嘘、ですよね?」

優馬「…嘘ってなんで分かるんですか?」

聖良「だって、優k…優馬さんは嘘つくときは意固地になりますから。」

優馬「!?」

 

驚いた。

まさかそんなところまで見られてしまっているとは。

 

優馬「…一本取られましたね。」

聖良「ふふっ、ありがとうございます。」

聖良「…それで何かあったんですか?」

優馬「…まぁ、色々と。」

 

こうして俺は話し始めた。

浦の星学院が閉校してしまう、折角学校の危機を目的にラブライブを目指していたのに目的を失ってしまったこと。途方に暮れていることを聖良相手に話してしまった。

 

聖良「そう、だったんですね。そんなことが…」

優馬「つい、最近決まったんですけどね。まぁ仕方ない事だったみたいで…」

 

優馬「…俺、どうすればいいのか分からないんです。閉校が決まったのに、このままラブライブを目指すことを彼女たちに強要していいのか、って」

 

優馬「目的もなく、ただ漠然とラブライブ優勝を…なんて浅ましい考えなんじゃないか、とかそんな理由で果たしてちゃんとやりきれるのだろうか、挫折してしまうのではないか、とか。」

 

優馬「怖いんです。Aqoursが崩壊してしまうのが、彼女たちの運命を壊してしまうのが…またあの時みたいに、なってしまいそうで…」

 

俺はいつの間にか、ぽつ、ぽつ、とずっと考えてきたことが溢れ零れるかのように、話していた。

聖良はそれに対して、無言で聞いてくれて…ただただ相槌に徹してくれていた。

そして最終的に、こんなことまで相談してしまったのだ。

 

優馬「…俺は、もうマネージャーを止めるべきなんじゃないか、と思ってて…」

優馬「このまま惰性で続けてしまったら彼女たちの人生を運命を変えてしまう。壊してしまう。それならいっそ…」

 

聖良「…そう、ですか。」

 

自分でも分かっていたつもりだった。

こんなこと事情もよく分からない他人に相談してどうするんだ、と。

でも、それでも誰かに話さないと自分が壊れてしまいそうで…どうしようもなかったのだ。

 

聖良「…私は優馬さん本人でもないし、Aqoursに所属しているわけでもないので、これをしろとかあれをしろとかは言えないです。」

 

聖良「ただ、言えることはあります。例えば私が優馬さんと一緒に閉校を止めるためにラブライブ優勝を目指していたとします。」

 

聖良「しかし、閉校は免れなかった。止められなくて、目指す目的も失ってしまった。」

 

聖良「…確かにその事実は悲しく、辛いです。けれど、だからと言ってここまで全力で頑張ってきたことが無くなった、と言うわけではありません。」

 

聖良「私は目的がないからと言って、こんな私がいたという証明である頑張りをここで投げ出したくはない。そして…何より…」

 

聖良「私がようやく掴めた優馬さんとの繋がりを得られたスクールアイドルを辞めるなんてこと、したくないですから…」

 

優馬「っ!」

 

思わぬ言葉の連続で驚いてばかりだった。

しかし、聖良のその一言一言はとても重みがあって、心に突き刺さるものだった。

 

優馬「…そんなもんなんですかね?」

聖良「ふふっ…あくまでも私個人の意見ですから、それが正しい答えだとは限りませんよ?」

聖良「…ですが、私ですらこう想うのですから、きっとAqoursの人たちならもっと優馬さんを想っていますよ?きっと。」

 

 

聖良「まぁ、私たちの方が何百、何千倍も想いは上、ですけどね…」

 

最後の聖良の一言は小さく吐息と共に消えて行ってしまった。

誰にも聞こえることもなく…

 

優馬「…ありがとうございます…少し、元気が出たかもしれないです。」

聖良「…それなら良かったです。」

聖良「さ、良い話も出来た所で、この辺でお開きにしましょうか。」

優馬「…了解です。今日はありがとうございました。」

聖良「ふふっ、こちらこそ。楽しかったです。」

優馬「それなら良かった。じゃあ、また…」

聖良「ええ…また…」

 

 

聖良「…頑張ってね、優君」

 

 

~北海道・函館・聖良side~

 

聖良「ふぅ…」

 

どうしても話したくなってしまって、声が聞きたくなってしまって電話をかけてしまった。

迷惑だったかしら、とか忙しかったかしら、とか色々思う所があった。

でも、やっぱり声が聴けるというだけでドキドキが止まらなくなってしまった。

 

聖良「…でも、優君。完全に忘れていた、と言うわけではなかったのね。」

 

出身地を聞かれた時、函館だと答えた後、優君はどこか考えていたような気がした。

函館と喫茶店というキーワードですぐに答えが出てこないあたり、まだまだ思い出せていないだろうが。

あのまま聞かれていたら、堪えきれずに伝えてしまっただろう。あの事を。

しかし、伝えたらいけない。せっかく彼は人並みの幸せを手にしたのだから。

だから…

 

聖良「…これは私たちが償うべき罪。私たちが伝える資格なんてないんだから」

 

それでも、やはりあの楽しかった時をなかったことにするのは辛く、悲しい。

だから、この悲しみは罪への償い。

 

聖良「優君が思い出せた時、ちゃんと伝えるから、ね…」

 

 

あの6年前の事件を…

私は今でも忘れない。あの事件を。




いかがだったでしょうか?
事件とは一体…?
ということで鹿角姉妹が久しぶりの登場でした!
今思ったんですけど、優馬君色々な場所に飛びすぎですね笑
といっても実は優馬君の家は転勤族だったので、こういう事が多々あったんです。
だから色々な場所で色々な女性と関係を…罪な男ですね…
本人は無気力かつ無自覚なんですけどね笑

ということでここまで読んでくれてありがとうございました!
次回もよろしくお願い致します!


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第44話 目指すべき奇跡の道

こんばんは!希望03です!
今回、かなり文量が長くなってしまいました…申し訳ございません…
そして、ヤンデレ要素もまだ特にありません…
どちらかと言うとシリアス強めです!
ですが、今回でようやく!原作2期の1話目分が終了します笑
最後にはまたアンケートがあるので、そちらもぜひ投票お願いします!
それではどうぞ!


 

~浦の星学院・体育館~

 

鞠莉「~説明会は中止。浦の星学院は正式に来年度から統廃合となることが決まりました。」

 

説明会の中止、学院の閉校、来年度からの統廃合の決定が理事長である鞠莉の口から告げられた。

その瞬間、周りは勿論の如く、ざわついていた。

まぁこの反応は妥当だろう。

しかし、そんな反応の中で聞き過ごせない台詞が俺の耳に聞こえた。

 

「あんなに頑張ってたのに駄目だったんだね」

 

正直、そう言われるのは覚悟していた。

だが、それを本当に聞いてしまうと憤りを感じてしまう。

ただ、言ってやりたい。

そんなこと言われなくても分かっているんだ。

しかし、彼女たちの頑張りはそんな言葉で一括りできるような簡単なものではない。

 

Aqoursの発足から色々なことが起きて、最初から決して順調とはいかなかったけどそれでも彼女たちは諦めずに学校のため、自分たちのために我武者羅に突き進んでいた。

それを「頑張ってた」なんて簡単なワードに片付けられて欲しくなかった。

 

…しかし、俺は何も言えない。

実際、その子が言っていた通り何も奇跡なんて起こせなかったんだから。

 

優馬「…くそっ」

 

悔しさから思わず小さな呟きと共に俺は唇から血が滲むくらい噛み締めた。

 

 

~放課後・2年教室~

 

優馬「…」

 

俺は未だに答えが見つからずに悩んでいた。

ただ唯一のヒントは昨日の聖良さんからの一言

“繋がりを得られたスクールアイドルでの活動を目的が失ったから、と言って投げ出したくはない。”

その一言だった。

 

優馬「繋がり、か…」

 

ふと感じた想いを抱えて、俺は少しづつ歩を進めた…

 

 

~浦の星学院・図書室~

 

そうしてまず辿り着いたのは図書室だった。

なぜここに来たのか、というと答えはなんとなく、だ。

直感ではあるがいるだろうな、という確信はあった。

そうして俺は扉を開けた。

 

花丸「あ…優、さん…」

ルビィ「お兄ちゃん…」

優馬「…こんにちは、ルビィちゃん、マルちゃん」

 

分かりきっていたが、そこにいたのはマルちゃんとルビィちゃんだった。

 

優馬「…隣、良いかな?」

 

俺は一先ず彼女たちの隣に腰を掛けた。

そこから数分、結局お互いに話すこともなく、俺自身も話を切り出す勇気もなく、沈黙のままだった。

すると、唐突にこの沈黙は破られた。

 

花丸「…あの、もう、スクールアイドルは、Aqoursはお終い、ずら?」

ルビィ「花丸ちゃん…」

 

“お終い”

そう言われてしまうと正直、そうなってしまってもおかしくない、というのが答えなんだろう。しかし、俺は…

 

優馬「…分からない。結局、俺たちの目的は失ったから…続くのかどうかはまだ…」

 

といったような含みのある言葉でまとめるしかできなかった。

その言葉一つの重みがどれ程のものなのか、俺たちは理解しているからこそ、その言葉をどんなニュアンスであれ、否定するしかできないから…

 

花丸「そっか…」

優馬「…ごめん。」

 

優馬「…2人は、スクールアイドル辞めたい?」

 

酷だと思う。ついこの間、スクールアイドルを始めたばかりで、これから輝きに向けて、全力で楽しもうとしていた矢先にこの現状。

結果的にもしかしたら辞めざるを得ないかもしれない、といった状況が生まれてしまった。

…だから俺は本心を聞き出すしかないと思ったんだ。

 

花丸「オラは…正直、どっちか分からないずら…でも、言えるのはこの繋がりが無くなっちゃうのはすごく寂しいな、って思うずら…」

 

優馬「…そっか。」

 

ルビィ「…ルビィは辞めたくない。」

 

優馬「ルビィちゃん…?」

 

ルビィ「だって、やっとお兄ちゃんと憧れのスクールアイドルを一緒に出来たんだもん。素敵な場所を失くすなんて…そんなの、嫌だよ…」

 

優馬「…」

 

そこには2人の想いがあった。

本心では辞めたくないし、続けたいと思ってるけど、現状を見ると受け入れるしかない、という葛藤に押しつぶされて、答えが定まっていないマルちゃん。

本当にスクールアイドルが好きで、憧れというものを誰よりも抱いているルビィちゃんだからこそ言える本心。

そんな想いが込められていた。

 

優馬「…そっか。ありがとう、2人とも。」

 

そうして俺は立ち上がって、次の場所へと向かった…

 

 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

正直、俺自身もここにはいるはずないと思っている。

なぜなら今日は練習が休みだから。

しかし、なぜか分からないが自分の足がこの部室へと赴いてしまった。

何はともあれ、俺はいつも通り、この部室の扉を開けた。

 

優馬「…よっ」

曜「優…」

善子「優馬…」

 

まさか本当にいると思わなかった。

そこには曜と善子の2人がいた。

ただ、2人はこの部室に何か用があったというわけでもないらしい。

2人を見るに特に何をしているというわけでもなく、ただただ窓の景色を眺めていたり、ぼうっと座っていたり、そんな感じ。

 

優馬「…帰らなかったんだな。」

曜「…うん、なんかどうしても帰れなくて」

善子「私もよ。このまま帰っても、もの寂しいと思って、とりあえず部室に来てみたの。」

優馬「そうだったんだ…」

 

そう言って、また無言の空間が生まれると、曜がこちらを見ていた。

 

曜「…また悩み事?」

優馬「曜…」

曜「相談、乗るよ?」

優馬「…」

優馬「…ごめん。話したらきっと2人を不快にさせてしまうかもしれない。それでもいい?」

曜「…いいよ。大丈夫。」

善子「…」

優馬「ありがとう…」

 

そうして一呼吸。

俺は覚悟を決めた。

 

優馬「2人とも、さ。スクールアイドル、辞めたい?」

 

善子「っ!」

曜「…」

 

善子「それ、どういう意味よ。」

優馬「言葉の通りだよ。辞めたいか、否か。その想いを聞きたいだけだ。」

善子「…あんた、まさか…!」

優馬「勘違いしないで欲しい。善子の考えている通りじゃないよ…ただ、俺自身の答えが分からなくなってるんだ…」

善子「答えって…」

優馬「…続ける方がいいのか、それとも、ここで…きっぱりやめてしまった方がいいのか…」

善子「…っ!やっぱりそうじゃない!!ふざけるのも大概に「善子ちゃん!!」…曜」

 

曜「…落ち着いて、きっと優はそんな意味合いで言ったわけじゃないと思う。」

曜「そう、だよね?」

優馬「…」

 

善子の反応は正しいと思う。

辞めたい、なんてそんな無責任な事、彼女は心の底からして欲しくないと願っているから。

だが、今回は本当に曜には頭が上がらない。

助けてもらってばかりだ…情けないな…

 

曜「…私は、辞めたくないよ。」

曜「皆は学校を救わなきゃいけないっていう目的を失って、どうなのか分からないけど、私は別の違う目的がある。だから、それを成し遂げるまでは辞められない。」

曜「いや…違うか。辞めたくなんて、ない。」

 

善子「…私は、あんたに救われた恩もあるし、何よりここにいる時は一番私自身、楽しかったし、輝いていた。」

善子「それはね、きっと優馬のおかげだから。優馬にあの時、見つけてもらえなかったらきっと私はここにいない。」

善子「…だから、私は優馬との繋がりを得られたスクールアイドルを投げ捨てるなんてそんな無責任な事、絶対にしたくない。」

善子「…だから、もうその質問は私にしてこないで…余計、寂しくなっちゃうから…」

 

優馬「…ごめん、ありがとう。曜、善子…」

 

曜の強い想い、善子の強い想い。

それぞれの抱えている想いはやはりどこか同じだった。

 

優馬「じゃあ…俺はもう行くよ。」

 

そうして俺は立ち上がり、また次の場所へと向かうのだった。

 

 

~浦の星学院・生徒会長室~

 

浦の星学院、生徒会長室。

それはどこか他の教室とは異なる厳かな空気感。

何度も入ってはいるが、いつ見ても圧倒されてしまう。

その扉の前で息を整え、俺は扉を開けた。

 

優馬「…お揃い、だったんだね。」

 

ダイヤ「えぇ…と言っても本当は分かっていたでしょう?」

優馬「…まぁね」

 

鞠莉「お帰りなさい。ダーリン。」

優馬「ダーリンになった覚えはないんだけど…ただいま、またすぐに行くけどね…」

 

果南「意外と早かったんじゃない?」

優馬「そうかな?そんな感じしないけど…」

 

生徒会長室にいたのは果南、ダイヤ、鞠莉の3年生組だった。

この3人は無意識のうちにここにいた、というよりはまるで俺のことを待っていたかのようにここに待機していたような空気だった。

 

しかし。その3年生組もある程度、覚悟していたとはいえ、顔は浮かないものだった。

 

ダイヤ「…それで、何を聞いて回っていたんですの?」

優馬「えっ…まさか、そんなとこまでお見通しとは…」

ダイヤ「ふふっ…女の勘、というやつですわ。」

優馬「あはは…勝てないなぁ…」

優馬「じゃあ…3人に聞くよ。」

 

優馬「…果南、鞠莉、ダイヤはさ。スクールアイドルを辞めたい?」

 

果南・鞠莉・ダイヤ「「「辞めたくない(わ・ですわ)!!!」」」

 

その答えは即答だった。

 

優馬「…即答だったね、理由は?」

 

鞠莉「そんなの私たちが失った苦しみを一番よく知っているもの。」

果南「ずっと先の事なんて分からないし、それに怯えていたって何も良い事ないし、ね?」

ダイヤ「…それに私たちはずっと望んでいましたわ。優との繋がりを。また会えるその時を。」

鞠莉「そうねぇ…だから会えただけでも奇跡だったのが、こうしてスクールアイドルとマネージャーとして一緒に何かをしているのなんて奇跡中の奇跡。夢のまた夢、なのよ?」

果南「そうそう。だからそんな想いを捨てるなんて、もったいない。それならひたすら前だけ見て突き進みたいんだ。それに目的なんていらないよ。」

 

優馬「…そっか。」

 

ごもっともだった。

3人はずっと昔から今日に至るまで色々な喪失を経験していた。

それはずっと昔からの友達だった俺含めて、スクールアイドルや3人の関係性、全てにおいて。

だからこそ、彼女たちは失った苦しみがどれだけのものなのかを知っている。

すごく俺の心に突き刺さってしまった。

 

鞠莉「望んでいた答えが出たかしら?」

優馬「大分、かな?」

鞠莉「ふふっ、良かったわ~…答えられなかったらどうしようかと思ったもの!」

優馬「とか言いつつ、ちゃんとまとまった答えだったじゃない。」

鞠莉「でしょ~?もっと褒めて良いのよ?♡」

優馬「はいはい、偉い偉い。」

鞠莉「むっ!なんか雑じゃない!?」

優馬「そんなことないから…じゃあ、もう行くよ。」

優馬「最後のピースを合わせに」

 

そうして俺は最後の場所へと走り去ったのだった。

 

 

~内浦・海岸~

 

俺が最後に向かったのは家の目の前にある内浦の海岸沿いだった。

きっといるだろうと思っていたが、まさか本当にいると思わなかった。

見えるのはただただ海の向こうを見つめ、寂し気な背中を見せる千歌と梨子の姿だった。

 

優馬「…千歌、梨子」

千歌「っ!…優くん?」

梨子「…優君」

優馬「…驚かせた、かな?」

千歌「驚いたよー!だよね、梨子ちゃん!」

梨子「うーん…私はなんとなく、そろそろかな…って思ってたからそんなにかな?」

千歌「え!?梨子ちゃん、気づいてたの!?」

梨子「まぁ…気づいてたというか…なんとなく?」

優馬「あはは…梨子はすごいなぁ…」

 

千歌は俺が来たことに驚いていたが、どうやら梨子は俺が動き回っていたのを察していたらしい。

 

千歌「それで優くんはどうしたの?」

優馬「あー…ちょっと海を見たくなっちゃって…」

千歌「…そっか。私たちと同じだね。」

 

そして訪れる静寂。

そこに広がるのは広大な海と物静かなさざ波の音だけだった。

するとその波の音に没頭し、揺られていると、梨子から話を切り出された。

 

梨子「優君、話があるんでしょ?」

優馬「え?」

梨子「…そうじゃなかった?」

優馬「…いや、そのつもりだったけど」

梨子「そっか…じゃあ聞かせて欲しいな。私たちに聞きたい事。」

 

ここまで言われるとまるで心を見透かされているようだった。

どうやら俺の行動は梨子に筒抜けだったらしい。

 

優馬「…2人はスクールアイドルを辞めたい?」

 

千歌「っ!?」

梨子「…辞めたい、か」

千歌「…優くん、なんでそんなこと聞くの?」

千歌「優くんは辞めたいの?」

優馬「…それ、は」

千歌「答えてよ。」

優馬「…」

 

言葉が詰まってしまった。

まだ自分の答えが定まっていないから当然も当然だ。

 

梨子「…千歌ちゃん、落ち着いて。多分優君はまだ答えが分からないからこうして私たちに聞いているのよ?」

千歌「…」

 

梨子「…私から話すね?」

梨子「端的に言うと、別に辞めるか、どうかはどちらでもいいと思うの。」

優馬「…え?」

梨子「だってこんな小さな町でよくあそこまで頑張ったな、って思うわ。」

梨子「優秀な美を飾るとも言うし、ここで終わっても誰も何も言わないと思う。」

 

梨子からの言葉も正論だった。

しかし、まさかそんな言葉が梨子から出ると思わなかったためか思わず絶句してしまった。

 

梨子「驚いた?」

優馬「…そりゃあまぁ」

梨子「でも、続きがあるの。…これから話すのは私のわがまま。」

優馬「わがまま?」

梨子「うん…私はね、まだ皆とこれからも一緒に歌っていきたいし、曲もいっぱい作りたい…そして何よりも優君と輝きを見つけたい。」

梨子「そんな私のわがままな想い。」

 

梨子「…恥ずかしいな。じゃあ次、千歌ちゃんね?」

千歌「どぅえぇぇ!?む、無茶ぶりすぎるよ~…」

 

千歌「でも、なんだろう…私はね、諦めたくないな。うん、どんなに無茶でも…私は諦めたくない!」

千歌「…でも、そこに私たち9人だけじゃダメなんだ。“10人目”…」

千歌「優くんがいなかったら私は輝けないし、輝こうとも思わない。」

千歌「だから、私は辞めない。絶対に!」

千歌「…あとは優くんが答えを出す番だよ。」

 

梨子「…私も同じ。千歌ちゃんたちがそう言うなら私だってこの我儘貫いてみるわ。」

梨子「あとは、優君。貴方が答えを出して?私たちは何があっても貴方の想いにちゃんと答えてあげるから…」

 

そうして、2人は自分たちの家へと戻っていったのだった…

 

 

~優馬家・優馬の部屋~

 

時刻は朝6:30、ちょっと早めにアラームをかけておいたおかげか、俺はこの時間には起床していた。

なぜ、こんなに早く起きたのか、というのも行かなくてはならない場所があるからなのだ。

 

優馬「よし…!」

 

そして俺は準備を済ませ、その場所へと走り出した。

 

 

~浦の星学院・校庭~

 

訪れたのはここ、浦の星学院の校庭だった。

 

優馬「…閉校、か。」

 

そう、いつもの学校を見ながら呟いた。

やはりまだ寂しさが残るけれど

 

優馬「決めたんだ。もう答えは導けた。」

 

「じゃあ聞かせてよ!その答えを!」

 

優馬「え…?」

 

こんな朝早いのになぜだか後ろから聞き慣れた声が聞こえてきたのだった。

後ろを振り向くとそこには千歌たち、Aqoursのメンバー全員がいた。

 

優馬「皆…」

 

千歌「聞かせて…?」

 

優馬「…俺の答えを今から話すよ。」

 

千歌「うん…」

 

優馬「それは…足掻く、それだけだよ。」

千歌「え…?」

優馬「どんなに辛い何かが待っていようとも、どんなに過酷な道のりの奇跡でも…ね」

千歌「…」

優馬「そして、これは我儘。おれが唯一抱いた我儘。」

優馬「…俺はどうやら皆との繋がりを離したくないみたい、なんだ」

 

「「「「「「「「「っ!」」」」」」」」」

 

千歌「…じゃあやるんだよね?」

梨子「ふふっ、そう来なくっちゃね?」

 

優馬「もちろん…俺たちの最高の輝きを見つけるために…」

優馬「やるからには…絶対に起こそう!奇跡を!」

 

「「「「「「「「「奇跡をっ!!」」」」」」」」」

 

そうして俺たちは答えを導き出し、想いをひとつにしたのだった。

 

果南「じゃあこれからに向けて!ハ~グっ!!」

優馬「うおぁ!?」

 

「「「「「「「「あぁぁぁぁぁぁぁ!!??」」」」」」」」

 

ダイヤ「ちょ、ちょっと!果南さん!?何してるんですの!?」

鞠莉「ど、どきなさい、果南!そこはマリーが…!?」

果南「ん~?だってこれは早い者勝ちだよ~?遅かった皆が悪くない?あはははっ!」

ダイヤ「ちっ!!こ、この!」

鞠莉「…これは嫉妬ファイヤーの出番かしらね??」

 

優馬「…あは、あははっ!」

 

善子「ゆ、優馬?」

花丸「ハグの反動で壊れちゃった…ずら?」

ルビィ「え、えぇ…?」

 

こうなると本当に気づかされてしまう。

やっぱり好きなんだろうな。この学校が、皆が。

だから俺は奇跡を起こしたい。

ここにいる皆と…

 

優馬「さぁ、もう一度スタートだ!」




いかがだったでしょうか?
さらに絆が強固のものになりましたねぇ…
というより聖良さん…かなり敵に塩を送っているような…
まぁ、必ず報われるのでご安心を…

ということでここまで読んでいただきありがとうございました!
アンケートも行っているので、そちらも是非投票の程、よろしくお願いします!
それでは次回もよろしくお願い致します!


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第45話 気になります…貴方の好み!(前編)

こんばんは!希望03です!
今回は少し小ネタ系を挟みました!
完全にシリアス調はなく、かなりギャグ要素が入っています!
苦手な方には申し訳ございません…

それではどうぞ!!


 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

学校説明会の中止で絶望していた中、新たに気持ちを切り替えて、必ず奇跡を起こして見せると宣言してから数日…

俺、空条優馬はその大奇跡をどう起こそうか、という具体的な案を模索していたところだった。

 

優馬「うーん…」

 

少し早く来てしまったからか、ここにはまだ誰も来ていなかった。

静かな空間の中で少しは頭が働くかと思ったのだが、昨日寝るのが遅かったせいか、正直、全くと言っていいほど、頭が働かなかった。

すると背後から…

 

「だ~れだっ」

 

と抱きしめられたのだった。

こういうことをしてくるのは大体、相場が決まっている。

千歌か…あるいは曜か…それとも果南か鞠莉か…

しかし、今日はどうにもいつものハグとは違う感じがした。

なぜなら…

 

優馬(誰だか分からないけど、胸が当たってるんだよなぁ…)

 

と言った感じで当たっているのだ。頭に。

どうやら俺も男だったらしい。これくらいの事で頭が一瞬固まってしまっていた。

 

優馬「…ふぅ」

 

しかし、とりあえず自分で一呼吸入れ、落ち着きを取り戻す。

そして、しっかり自分の世界へと戻れたところで

 

優馬「…どうせ鞠莉でしょ?」

 

鞠莉「え!なんで分かったの!?」

優馬「…なんとなく。」

 

まさか4分の1を当てられると思わなかったが、正解で良かった。

 

優馬「今、ちょっと考え事してるからもう少し待ってて」

鞠莉「むぅ…つれないわねっ!」

 

 

~鞠莉side~

 

もう折角、優と2人きりだから思い切ってハグしたのに!

すぐに自分の世界に入っちゃうんだから、嫌になっちゃうわ!

 

鞠莉「むぅ…」

 

しかし、私はあることに気付いたのだ。

 

鞠莉(あら?優の耳…それに顔が…)

 

ふと顔へと目線を戻すと自分の世界に入っているようだが、顔は少し赤く、その赤み以上に優馬の耳が真っ赤になっていたのだ。

 

鞠莉「!!」

 

鞠莉(か、か、かわいいぃぃぃぃぃぃ!!♡♡♡)

 

なんでそうなっていたのかは不明だが、何はともあれいつも無表情、無気力な優馬から

こんな表情が見れると思っていなかったので鞠莉の心は最大級の高鳴りを覚えていた。

 

鞠莉(…でもなんでかしら)

 

しかし、なぜまた優馬がこんなに顔を、耳を真っ赤にしているのか、という理由がいまいち分からなかったため今までの行動を振り返って見た。

すると、あることに気付いたのだった。

 

鞠莉(…もしかして?)

 

そうして、鞠莉はもう一度

 

鞠莉「…えいっ♡」

 

自分の胸を頭に押し付けつつ、ハグをしてみたのだ。

すると、優馬の身体がびくっと揺れた。

 

優馬「…鞠莉?///」

鞠莉「ん~?♡何かしら?♡」

優馬「あの、さ…?///その…ハグしてくるのは別に構わないんだけど…その胸が当たってるんだよね…///」

 

と、今まで見ないくらいにすごく恥ずかしそうに顔と耳を真っ赤にして注意されてしまった。

しかし、当の叱られてる本人は、と言うと

 

鞠莉(や~~~ん♡顔も耳も真っ赤にして~~♡可愛すぎるわ…♡癖になりそう…♡)

 

鞠莉「えへ、えへへ…♡」

優馬「…聞いてる?」

鞠莉「っ!き、聞いてるわよ!」

優馬「はぁ…全く…」

優馬「あんまりこういうことを無意識にやりすぎると他の男とか勘違いするよ?」

鞠莉「大丈夫よ!ハグするのは優だけって決めてるもの!安心して?」

優馬「いや、そうじゃなくって…」

鞠莉「?じゃあどういうこと?」

優馬「その…///そういうフレンドリーさとかスタイルの良さとかが…男にとって魅力的に感じるから…その、俺以外であんまりして欲しくないというか…///」

鞠莉「へっ!?///」

優馬「悪い、うまく言えないな…///」

鞠莉「…~~~~~~~っっっ♡♡♡」

鞠莉「もう!そうやって私の心を乱すからもっとしたくなっちゃうのよ!♡」

優馬「いや、えぇ…?」

 

どんどんと優馬と言う存在の沼にはまっていく鞠莉。

まさに言われたい言葉が次々と出てきて、もはや昇天寸前のところだった。

しかし、鞠莉はその立場を逆転させる質問を投げた。

 

鞠莉「…ねぇ優?」

優馬「…なに?」

鞠莉「私ね、ついさっきハグした時に気付いちゃったんだけど…」

鞠莉「優って…胸が大きい方が、好きなのかしら??」

優馬「…」

優馬「はい!?///」

鞠莉「だって、ハグした時、ずっと顔と耳が真っ赤だったしぃ…胸を押し付けた時にびくってしてたしぃ…ね?♡」

優馬「い、いや…別に関係ないよ…///うん…多分…///」

鞠莉「へぇ…?なら、なんで今も顔が真っ赤なのかしら~?♡」

優馬「っ!…この話は終わり!///」

鞠莉「なっ!もっと話聞きたいわ!」

優馬「あーー!終わりだよ!」

 

とてつもないタブーな質問を投げた鞠莉に対して、逃げるような形となってしまう優馬といった構図が出来上がったところでこの話が終わりを迎えようとした…

 

~優馬side~

 

その時だった。

 

ダイヤ「…一体何の話だったんですの?」

優馬「うわぁ!?」

鞠莉「あら、ダイヤじゃない。はぁ~い…」

ダイヤ「…」

 

なんとそこにはダイヤがいたのだ。

どこから話を聞いていたか、分からないが鞠莉との会話がバレていたとしたら間違いなくダイヤに怒られてしまう。

そう直感的に察知したため、とにかく俺は誤魔化すことに徹したのだった。

 

優馬「あー…いや、今日はどんな大きな動きを取り入れようか~とか練習をどうしよう~とか、そんな話だから気にしないでm「あら、そんな話、したかしら?」あぁ…」

鞠莉「少なくとも、練習の話はしていなかったと思うけれど?」

 

ダイヤ「へぇ…ならば、教えていただけます?鞠莉さん。」

鞠莉「ふふっ、そ・れ・は・ね~~…」

鞠莉「ダイヤの~その小さぁ~いお・む・ね♪についてのことよ~♪」

ダイヤ「…は?」

鞠莉「正確には胸のサイズの話をしていたのだけれど、優の好みは大きい方が良いみたいらしくて…ふふっ♡」

 

ダイヤ「…」

 

その時、俺が言った内容もあれば、言ってないようなものもあったりと、もはやしっちゃかめっちゃかだった。

まして、まるで鞠莉はダイヤを挑発するかのように伝えたため、もはやダイヤの怒りは頂点へと達していることだろう。

そうして俺は思ったのだ。

 

優馬(お、終わった…!)

 

ダイヤの表情は完全に目がハイライトオフ。

ブチ切れ不可避のこの状況。いつ怒られてもおかしくはなかった。

しかし、意外にも空間内は静寂で包まれていた。

すると、ダイヤから…

 

ダイヤ「優?」

優馬「は、はい…」

ダイヤ「改めて聞きます。本当に!大きい方が好きなのですか!?」

優馬「えぇ…?」

 

まさかの質問だった。

意外にも怒るとかではなく、普通に聞いてきたのだ。

そりゃあもう戸惑うに決まっている。

あれだけお堅い生徒会長で貫いているダイヤがこのような下ネタ談義に食いつき、俺に構わずグイグイと迫ってくるのだから。

 

優馬「ちょ…待ってよ…落ち着いてって」

ダイヤ「落ち着いていますわ。だから早く言いなさい!」

優馬「えぇ…」

 

そうして、圧に負けて思わず言ってしまうその時だった。

 

花丸「こんにちは~ずら~!」

善子「くっくっく…このヨハネ様が今宵も深淵なる闇を届けに…」

ルビィ「はいはい、早く入って、善子ちゃん。お兄ちゃんに早く会いたいんだから。」

善子「ちょっと!ヨハネよ!…って力、意外と強いわね、ルビィ…」

 

部室のドアを開けて、入ってきたのは1年生組だった。

 

鞠莉・ダイヤ・優馬「「「…」」」

花丸・善子・ルビィ「「「…」」」

 

ルビィ「お姉ちゃん?ちょっと距離が近くない?早く離れなよ。お兄ちゃんが困ってるんだけど?」

善子「マリーもなんで優馬を抱きしめてるわけ?不快だから離れてくれる?」

花丸「…ずるいずら」

 

鞠莉「あら、私がダーリンとスキンシップを取るのは当たり前でしょ?それを邪魔しようとするなんて…不快で害悪そのものなのはまさに善子の方じゃない?」

ダイヤ「タイミングが悪いですよ、ルビィ?それに距離が近いのはいつもルビィがそうでしょう?自分が今その立場じゃないからと言って、嫉妬を前面に出すような真似は見苦しく、恥ずかしいですわよ?」

 

といったようにまさに一触即発。

今すぐにでも戦争が起きるんじゃないか、と思うくらいにはバチバチだった。

正直、まさかルビィちゃんにダイヤがここまで言うとは思っていなかったし、善子についても不快と言う言葉を使ってでも離れさせようとしていて、言葉から棘だらけだった。

 

ただ、この4人が今にもその全面戦争に移ろうとしている最中、俺はもう1人の存在が消えていることに気付いた。

 

優馬「あれ?マルちゃんは?」

 

花丸「こ・こ・ず・ら~♡」

優馬「え?うぷっ!」

花丸「えへへ…♡優さんゲットずら~…♡」

 

なんと花丸は俺が気付かないうちに目の前に来ており、そのままハグをしてきたのだ。

ここで構図の説明をすると、俺は先ほどから椅子に座ったままで、今も現在進行形である。

それに対して、花丸は立った状態。

つまり、身長的に花丸の胸が丁度俺の顔にジャストフィットする形でハグをされているわけなのだ。

 

優馬「…マルちゃん。///その、恥ずかしいんだけど…///」

花丸「ひゃっ///そ、そのまま話さないで欲しいずら…///と、吐息が…///」

優馬「…ごめん///」

花丸「だ、大丈夫ずら…///これは、これで…♡えへへへ…♡」

 

…果たして絵面的には大丈夫なのだろうか?

年上の男が年下の、しかも知り合いのスクールアイドルの女の子に抱き寄せられている…

普通であれば、きっと逮捕案件である。

 

ルビィ「…なんか、そこはかとなくイラっとするね?」

善子「ほんとね…ずら丸ったら、こういう時だけ行動が早いんだから…ちっ!」

鞠莉「はぁ…さっきまでマリーがそこにいたはずなのだけれど…?」

ダイヤ「鞠莉さんがハグしてただろうが関係はありませんが…その、なんとなく腹は立ちますわね…」

 

喧嘩は終わったのだろうか。

さっきまで一触即発の雰囲気を放っていた4人が今度はこちらに向けて殺気を放っていた。

しかし、それに気づいていない(?)花丸はいつまでも俺を抱きしめたままだった。

すると、気になったのか分からないが、ふと花丸がこんなことを聞いてきた。

 

花丸「…優さんはおっ〇いが大きい方が好き、ずら?」

優馬「…はい?」

 

善子「ずら丸!?何聞いてるわけ!?」

ルビィ「そ、そうだよ!お兄ちゃんがそんな…胸で女の子を見てるなんて…そんな…そんなわけ、ないよね?」

ダイヤ「や、やっぱり破廉恥ですわ…!で、でも優の好みですし…それは気になりますし…あぁぁ…」

鞠莉「ふ~ん…花丸も同じことを聞くなんてね~…まぁ、転がり方によっては私のチャンス、もしくはフィーバータイムよね…?」

 

あの花丸が一体どういう風の吹き回しだろうか。

もっとこう純粋で…穢れのない…聖人のような存在だと思っていたのだが…

 

花丸「…どう、ずら?」

優馬「へ…?あー、いや…うーん…」

 

ダイヤ・鞠莉・ルビィ・善子・花丸「「「「「ごくり…」」」」」

 

優馬「俺は…「こんにちは~!」うおぁ!?」

 

ダイヤ・鞠莉・ルビィ・善子・花丸「「「「「ちっっ!!」」」」」

 

と絶妙なタイミングで果南と2年生組が合流し、これで全員が揃った。

 

果南「あ、皆早いね~もう来てたんだ~…は?」

千歌「うわっ!急に止まらないでよ~!」

曜「どうしたの、果南ちゃん…何してるの?」

梨子「こんにちは~…遅くなってごめんなさい…って、何?この状況?」

 

まぁそうなるだろう。

今の状況…俺は花丸に抱き締められ、周りには鞠莉たちがいて…まさに修羅場の状況。

そしたらそれを見て、彼女たちはダイヤの時と同じように目のハイライトがオフになってしまった。

 

優馬「お、落ち着いて…」

千歌「落ち着いてるよ、優くん。」

曜「そうそう。でもこの状況の説明は…必要だよね?」

梨子「…」

 

静かな殺気が駄々洩れである彼女たち。それに加えて、鞠莉たちの殺気。

もはや俺の頭の中には対処の方法が見当たらなかった。

しかし、今聞かれている質問をここで暴露するわけにもいかない。

この質問は伏せて、誤魔化しながら言う覚悟を決めた。

 

優馬「あー…まぁ、いつも通りのスキンシップかなぁ…?」

果南「ふ~ん…?スキンシップ、ねぇ…」

優馬「と、とにかくもう皆も揃ったし、そろそろ練習でも始めようか?」

 

花丸「待つずら。まだ聞いてないずらよ?」

優馬「っ!」

 

千歌「聞く…?ねぇ、優くん?何の話を、してたのかな~?」

優馬「い、いや本当何でもないことだから…「おっ〇いの話ずら。」あぁ…なぜ…」

 

千歌「…へ!?///」

曜「な、なにを話して…///」

梨子「なんでその話になったのよぉ!?///」

 

花丸「うーん…なんとなくずら。でも優さんの好みが聞ければ、アプローチの仕方も変わるずら。だからその話になったずら!」

 

いや、好みが聞きたいのであればもう少しオブラートに包みながら模索するとか、他に方法があっただろうに…

どうしてよりによってこんなストレートに聞いてしまうのだろうか…

 

曜「確かに…気になる…」

果南「これは…練習どころじゃないね?」

 

優馬「え」

 

千歌「…逃がさないよ?優くん♡」

梨子「さ、お話ししましょう?♡」

 

 

優馬「ちょ、まっ、う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

後編へ続く…




いかがだったでしょうか?
とりあえず今回は前編、ということで次回は後編へと移ります!
早く原作の進行しろよ、と思う方もいらっしゃると思いますが、とりあえず2期シーズンは時間をかけてゆっくり進行していきたいと思いますのでご了承ください…

ここまで読んでいただきありがとうございました!
アンケートも引き続き行っていますので、投票をしていない人はぜひ投票にご協力お願い致します!

次回もよろしくお願い致します!


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第46話 気になります…貴方の好み!(後編)

こんばんは!希望03です!
続きました!後編!
なんだか最近は鞠莉が得してる場面を多く書いてしまうんですよね…

ということでどうぞ!


 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

時間はもう16時半。

本来であればこの時間は移動して、もう練習をしている、と言う流れなのだが…

俺たちはなぜかまだ部室にいる。

さて、このなぜか、なのだが、それを言うと少し前の話に戻る…

 

と、言うのも簡潔に説明するとすれば、要は全員が集まったタイミングで花丸から唐突に俺の好みの胸のサイズを質問され、それが今、彼女たちの中で波紋を広げ、こうして修羅場へと化してしまったわけだ。

 

優馬「…ねぇ、もう良くない?練習に向かいません?」

果南「ん?逃げるのかな?」

優馬「いや、逃げるとかじゃなくて…」

花丸「逃がさないずらよ~?」

優馬「逃げないよ!」

優馬「そもそも俺の好みを聞いたところで需要はないでしょうに…」

千歌「あるよ!!全然、大あり!!」

優馬「えぇ…?」

 

と言った感じで、練習に向かうように促そうとすると、まさかの足止めを喰らってしまうのだ。

この質問の答えがそこまで需要があるとは到底、俺の中では思えないし、これを正直に答えたとしたらそれはそれで逆に引くと思うんだけど…

 

鞠莉「それじゃあ聞かせてもらおうかしら?」

優馬「え」

 

ルビィ「お兄ちゃん、はっきりと答えてね?」

善子「…優馬、嘘は、ついたら駄目よ?ちゃんと正直に答えてね?」

優馬「ルビィちゃん?善子?なんだか怖いんだけど…」

 

ダイヤ「優、女は胸じゃないですわよね?…ね?」

曜「あはは!ダイヤさんったら焦りすぎですよ~?…まぁ、私はどちらの答えでも構いませんけど…ふふっ、あははっ♡」

梨子「そうやって余裕ぶってるけど、曜ちゃんも絶望に堕ちるかもしれないのよ?まぁそれはそれで私としては好都合だけどね♪」

曜「…はぁ?」

 

と言った感じでまた喧嘩が始まりそうな予感がしたその時だった。

 

鞠莉「…シャラップッ!!」

 

「「「「「「「「!!」」」」」」」」

 

まさに始まりそうだった瞬間、鞠莉から警鐘が鳴らされた。

 

鞠莉「…貴方たち、うるさいわよ?邪魔するなら早く出て行ってもらえるかしら?」

ダイヤ「…あら、鞠莉さんは随分余裕そうですわね?もしかして、もう自分が選ばれると勘違いしておられるのですか?とんだお門違いですのに。」

鞠莉「べっつに~?私はそんなこと思っていないわよ~?逆にそうやって言うダイヤの方が焦っているんじゃないかしら?♪」

ダイヤ「ふふっ…どの口が言っているんだか…」

果南「はいはい、2人とも落ち着きなよ。そうやってキャンキャン騒いでるの、見苦しいよ?」

ダイヤ・鞠莉「「…」」

 

とりあえず皆の様子を見る限りでは落ち着きを取り戻したみたいだが…

どうにもまだ俺のことは離してくれないらしい。

 

鞠莉「はぁ…ごめんなさい、優。もういい加減にして欲しかったわよね…」

優馬「うん、そうね。そう思うならもう離してもらえる?」

鞠莉「それはNoよ。」

優馬「Oh…」

鞠莉「もちろんよ。それじゃあ聞かせて頂戴?」

優馬「…本当に言うの?」

花丸「当たり前ずら!皆気になってるずらよ!…オラが最初に聞いたのに。」

優馬「…はぁ、分かった。言いますよ…」

 

「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」

 

優馬「そうなぁ…俺の好みは…」

 

「「「「「「「「「ごくりっ…!」」」」」」」」」

 

優馬「まぁ…その人のバランスに合ったものがあれば良いんじゃない?」

 

「「「「「「「「「…は?」」」」」」」」」

 

優馬「あ、あれ?」

 

おかしい。

なんでこんなに皆、俺の方を睨んでくるんだ?

皆が傷つかないように配慮を利かせた最高の答え方だったはずなのに…!!

 

優馬「皆さん…?怖いですよぉ…?」

花丸「オラたち、そういうことを聞きたいんじゃないずら…」

ルビィ「だってルビィ、言ったよね?“はっきり”!って…」

優馬「うっ…!」

善子「正直に、って言ったのに…嘘、ついたのね?そっか…」

優馬「ぐっ…!」

 

心にダイレクトに刺さってしまう。

いや、そうは言いますけどもね?これを正直に答えたとしたらあからさまにショックを受ける人とあからさまに喜び始める人が出てきちゃうでしょ?

配慮だよ、気づいてよ!配慮だよ!

すると、千歌が寄ってきた。

 

千歌「…優くん、どうしても答えてくれないの?」

優馬「千歌…」

優馬「ごめんな、はっきりしてなくて…でも、さっき言ったことは俺の本心だよ。」

優馬「皆違って皆良い。俺は容姿よりもどれだけその人とより添え合えるか、信頼し合えるか、だからさ…」

曜「優…」

優馬「その点、Aqoursの皆のことは本当に信頼してるし、この先、ずっと一緒に居たいと思えるくらいには大事な存在になってるんだ…」

優馬「だから、容姿なんか気にしないで欲しい…こんな曖昧な解答でごめん…」

 

果たしてこれで皆は納得してくれただろうか、と不安になってしまったが、皆の表情が段々と和らいでいっているのが分かった。

 

梨子「もう、優君ったら…」

ダイヤ「本当、全くですわね…」

果南「ま、ゆうがそう言うなら仕方ないね…」

善子「…そうね、優馬がそう言うなら。」

ルビィ「お兄ちゃんってば、本当根っから優しいなぁ…」

花丸「オラも納得ずら。むしろ気にせずアタックできるから聞けて良かったずらぁ!」

 

と言ってくれた。

どうやらほとんどの皆が納得してくれたみたいだった。

しかし、あくまでもほとんどである。

まだ納得できていないのが1人、いるみたいだった。

 

鞠莉「…」

優馬「鞠莉…」

鞠莉「分かっているわ。優がそういう人だって…でも、なんだか納得いかなくて…」

優馬「…」

 

きっと鞠莉は自分に自信が持てていないんだろう。

だから誰よりも見た目を気にしてしまうし、それが…好きな人相手、とかだったら余計だ。

今回だって、一番聞きたがっていたのはなんだかんだで鞠莉だった。

つまり俺の好みに合った容姿にすることで自分が一番愛される容姿を持っている、と自信を持ちたかったのかもしれない。

 

優馬「はぁ…全く世話の焼けるなぁ…」

鞠莉「え…?」

 

そうして俺はそっと鞠莉の身体を抱きしめた。

 

鞠莉「…はわっ!?///」

 

「「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」」

 

優馬「…容姿なんて気にしなくていいよ。気にしなくても十分鞠莉は綺麗で、可愛いと思う。」

鞠莉「ゆ、優…♡」

優馬「性格だって明るくて、でも頼れるお姉さんって感じで、俺にとって本当に頼りになる存在なんだよ…だからこれ以上、何を求めるんだってくらいには完璧だと思うんだよ。」

鞠莉「は、恥ずかしいわ…♡で、でもこれは、これで…♡」

優馬「…だから俺は鞠莉の容姿のせいで嫌いになんてなるはずないから安心して?」

鞠莉「ひゃ、ひゃい…♡」

 

 

善子「ねぇ…リリー?これ何を見せられているわけ?」

梨子「知らないわよ…」

果南「鞠莉だけずるくない?」

ダイヤ「そうですわね…あとで全員にやってもらいましょう。」

千歌「最近、鞠莉ちゃんが得すること多いんだよねぇ…ずるいよねぇ…」

曜「分かるよ、千歌ちゃん。そろそろ世代交代のお時間だってこと、教えてあげないとダメかなぁ?」

ルビィ「お兄ちゃん…ルビィにもやってくれるよね?もちろん…やらないと…」

花丸「…ちっっ!!」

 

一部、 不穏な空気を醸し出していたものの

こうして、『俺の好みはなんだろな事件』は無事解決。

 

と、思いきや鞠莉とのハグを終えた途端に鞠莉以外の全員から襲われ、1人ずつ鞠莉にやったことと同じことをやらされたのはここだけの話…

 

花丸「でも結局、具体的な好みとかは分からず終いだったずらぁ…はぁ…」

 

優馬(まぁ…バレなくてよかったけど…実際のところは大きい方が良い派だからなぁ…)

 

ダイヤ「優…?何か言いましたか…?」

梨子「優君?今、ぼそっと何か言ったよね?」

ルビィ「…お兄ちゃん?」

善子「…」

 

ぼそっとどころかもう心の声だったのだが…

謎の地獄耳で俺の声を聞き、こちらを振り向いた4人の目は完全にハイライトがオフの状態だった…

 

優馬「ひっ!何でもないよ…」

 

危うく、最後の最後でバレかけはしたものの、結果は安全に終わった。

今日も今日とて、Aqoursの皆は元気そうで何よりでした。




いかがだったでしょうか?
少し文面が少なかった気がしますが、とりあえずこの話はここで終わりです!
次話は本編に戻っていきたいと思いますのでよろしくお願い致します!
それではここまで読んでいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願い致します!


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第47話 体調管理は万全に?

こんにちは、希望03です
ようやく投稿できました。
遅れてすみません。
それではどうぞ。


 

~優馬家・優馬の部屋~

 

「ピピッ♪ピピピッ♪ピピピッ♪」

 

けたたましく部屋に鳴り響くアラーム。

そして今日も今日とて、始まってしまう一日。

さぁ今日もこれからの新たなラブライブに向けて、練習をしなきゃな…と思うもののどうにも身体が重く、起き上がれない。

別段、起きたくないから起きない、と言うわけでは断じてない。意識ははっきりとしている。

しかし、起き上がれないのだ。

なんだか体が怠いような、そして心なしか寒気もする。

気持ち悪さもあり、まるで自分が風邪を引いてしまったかのような…

 

優馬「いや、これ風邪だ。」

 

そう、まさかの体調不良だった。

 

 

~浦の星学院・2年教室~

 

千歌「だぁぁぁ!!せぇぇぇふ!!」

曜「千歌ちゃん!おはヨーソロー!」

千歌「おはヨーソロー…あぁ~…づがれだぁぁ…」

曜「走ってきたの?」

千歌「うん…間に合わないと思って~…」

梨子「もう!そうやってギリギリまで寝てるからよ?」

千歌「う~ん…だって起きられないんだもん…」

梨子「?もしかして、夜更かししてるんじゃ…」

千歌「ぎくっ!」

梨子「…千歌ちゃん?夜更かしは美容の大敵だから気を付けようね、って言ってるよね…?」

千歌「だ、だって~!昨日の夜は寝られなかったんだよ~~!」

曜「なんで?」

千歌「そ、それは…///優くんと…電話をしてて…♡えへっ♡」

 

梨子・曜「「…は?」」

 

千歌「はぁ…♡楽しかったなぁ…♡寝落ちするまで話してて…ずぅっと電話つなぎっぱなし…こういうの彼氏と彼女みたいなやり取りで憧れだったんだよね~…♡」

梨子「…聞かなければ良かったわ。」

曜「うん、ほんとにね。」

 

梨子(今日の夜、優君に電話かけてあげよう…きっと寂しいもんね、一人暮らしだし…ふふっ♡)

曜(電話もいいけど、もう直接会いに行っちゃおうかなぁ…どうせ一人暮らしだし、そのまま泊めてもらって…一夜を共に…なんて♡あはっ♡)

 

ここ浦の星学院2年教室では朝早くから優馬がいないところで優馬の気付かないうちに修羅場を形成していたのであった。

しかし、この時、彼女たちはあることに気付いた。

 

梨子「そう言えば…優君は?」

千歌「あれ?来てないの?」

曜「うん。この時間になっても来てないなんて珍しいよね…?いつも少し早めに来て、教室で寝てるイメージなのに。」

 

そう、まだ優馬が学校に来ていなかったのだ。

時間は8時30分、もうすぐで朝のSHRが始まるというのに来てないということで3人は心配になっていた。

しかし、時間は時間。

気付いたタイミングで先生がやってきて、朝のSHRが始まった。

 

それぞれ出席の確認を取るのだが、やはり優馬の名前は案の定、呼ばれることはなかった。

 

先生「はい、空条君以外は来ているわね~」

千歌「…え!?優くん休みなんですか!?」

先生「ん?えぇ、なんだか風邪を引いちゃったみたいで…この時期に珍しいわよね~」

千歌「そんな…」

 

先生「もう質問は大丈夫?はい、それじゃあ朝のSHR始めますよ~…」

 

なんと優馬が来てなかったのは、まさかの体調不良だった。

だが、話を聞く限りではただの風邪らしく、そこまで大事には至ってない。

本来であれば、ちょっと心配だな~くらいのものなのだが、彼女たちは違う。

 

千歌(えぇ~~!じゃあ今日は一日、イチャイチャできないのかぁ…あ!でもお見舞いと称して、優くん家に行けばいいのか…♡)

 

梨子(優君、風邪引いちゃったんだ…無理、させ過ぎちゃったかな…後で様子を見に行ってあげようかな…♡)

 

曜(優ったら体調管理がなってないなぁ…お見舞い、行ってあげようかなぁ…ふふっ♡)

 

と、こんな感じで三者三様想いはそれぞれだが、目的、つまり優馬の家へのお見舞いと称した邂逅は合致。しかも邪な気持ちで。

似た者同士なのか、なんなのか…

そんな優馬大好き3人衆はそれぞれ想いを馳せつつ、午前中は授業を一切聞かず、優馬の家へ行った時のあれやこれやの妄想を考えていた、らしい…

 

~2年教室・昼休み~

 

そんな悶々とした想いを抱えつつ、時が経ち

気付けば昼休みになっていた。

今日も穏やかな浦の星学院…と言うわけにもいかず、廊下から響き渡るくらいに聞き覚えのある声が聞こえてきたのだった。

 

善子「リトルデ~モ~~ン!!ヨハネが会いに来たわよ~~!一緒にご飯、食べましょうっ!」

 

梨子「え…善子ちゃん?なんで2年の教室まで…」

 

花丸「こんにちはずら~…」

ルビィ「る、ルビィたちもいます!」

 

千歌「およ?善子ちゃんたち!こんにちは~!」

 

現れたのは1年生組の3人だった。

 

梨子「私たちに用事?」

花丸「違うずら。」

梨子「…」

曜「…まさか、もしかして優に用事?」

善子「そうよ。」

ルビィ「今日はお兄ちゃんと一緒にご飯食べたいなぁ…と思って!」

花丸「いつも誰かさんたちが教室でガードを固めているせいか、気づいたら独占されちゃってるのが、もう我慢の限界ずら…誰、とは言わないけど…」

 

ちなみに分かっているだろうが、誰か、というのは勿論2年生組の3人である。

(優馬には気づかれていない。)

 

千歌「ふ~ん…まぁそういう理由はいつもならお断り…」

善子「ちっ!相変わらずね…気持ち悪い…」

千歌「何か言った?善子ちゃん?」

善子「い~え?何も言ってないわよ?それより早く続き話しなさいよ。」

千歌「そうだったね!えーっとねぇ…実は…」

 

そうして千歌たちは優馬の不在を話した…しかしその内容は“少し”改変されたもので…

 

花丸「え!?いないずら~…?」

千歌「そうなんだよ~…気付いたらいなくなってて、どこかにいるとは思うんだけど…」

ルビィ「えぇ…残念…でもいないんじゃしょうがないね!」

梨子「…ごめんなさい、折角来てくれたのに…」

善子「別に気にしなくて大丈夫よ。…まぁ何も隠してなければ、の話だけど」

 

曜「…どういう事かな?」

善子「おかしいと思うのよね…今日一日中、優馬の姿が見えないもの。本当にいるのかしら?」

 

善子「実は、風邪引いてて、今日は来てないとか…」

千歌「ふ~ん、私が嘘をついているってこと?」

善子「さぁ?それは貴方たちにしか分からないじゃない。これはあくまでも私の推測よ。」

善子「ここで私たちに悟られないように嘘をついて、看病を自分たちだけで行く…とかそういう姑息な真似、貴方たちならやりそうだけどね?」

 

その善子の推理力は今日に限って、鋭かった。

正しくその通りで、3人は何も言えずにいた。

 

梨子「…」

曜「ふぅ~ん…?」

善子「あら、図星かしら?」

 

千歌「やっだなぁ~!善子ちゃんったら!そんな頭良さげな考え、千歌には思いつかないよ~!」

善子「ヨハネよ!…まぁそうなのかもね、考えすぎだったわ。」

 

花丸「…話は済んだずら?」

善子「えぇ…ごめんなさい、ずら丸。」

ルビィ「じゃあ行こ?早くしないと昼休みの時間が無くなっちゃう!」

 

そうして1年生たちは優馬がいないのを惜しみつつ、自分たちの教室へと昼食を食べに帰っていった。

 

千歌「…うまく、誤魔化せてたかな?」

梨子「…分からないけど、善子ちゃんに核心突かれてたもの…少しは勘付いていたかもしれないわ。」

曜「意外と頭回るんだね。善子ちゃんって…もっとお馬鹿さんかな、って思ってたんだけどなぁ…」

 

彼女たちは侮っていた。

善子がこれほどまでに頭が回るとは思っていなかったのだ。

 

しかし、それは彼女たちも同じ…

 

 

善子「…絶対、千歌は嘘ついているわね。」

花丸「そうずら?」

善子「明らかに挙動不審だったもの。」

ルビィ「それに一度、曜ちゃんと梨子ちゃんが黙ったもんね…もしかしたら」

善子「えぇ…でも意外と頭回るのね、千歌って…」

花丸「それは…確かに…」

ルビィ「やっぱりお兄ちゃん絡みだと皆人格変わるんだね~…」

善子「それはルビィも一緒でしょ?」

ルビィ「だから皆、って言ったんだよ~」

善子「まぁ…少し、千歌たちを侮っていたかもね。」

 

そう、千歌がここまで頭が回ると、彼女たちも思っていなかったのだ。

最終的には結局納得して引き返してしまったから…

 

善子「はぁ…優馬に会いたい…」

花丸「それは、分かるずら~…」

ルビィ「ルビィもだよ~…」

 

~浦の星学院・2年教室~

 

千歌「あ~…優くん成分足りないよ~…」

曜「千歌ちゃんは十分だよね?電話したし…」

千歌「電話じゃ違うんだよ~…」

梨子「優君…優君…優君…」

曜「うわ…梨子ちゃんが壊れた…」

千歌「気持ちは分かるけどね…」

 

こうしてそれぞれの学年同士が同じ人を想い、溜息をついている時だった。

 

 

~浦の星学院・理事長室~

 

鞠莉「もしもし…大丈夫そう?…そう…安静にして、ね?」

鞠莉「うん…あ、その…///もし、良かったらなんだけど…///わ、私たち3年生3人で看病しに…///」

鞠莉「え?いらない?駄目よ!!心配だもの…」

鞠莉「…来てくれるならすごい嬉しい?…えへ、えへへへ…///じゃ、じゃあ!今日この後…///」

鞠莉「練習は?って?…優がいなかったら練習に身が入らないもの…それなら優に早く治ってもらえるようにそばにいる方がよっぽども有意義な時間だわ?」

鞠莉「あ…///ふふっ♡分かってくれるのね…?♡じゃあ今日、3人でお邪魔させていただくわね…ふふふ…♡」

鞠莉「…じゃあ、お大事に、ね?また後で…うん…」

 

 

鞠莉「…貴方たちが独占できると思ったら大間違いよ?♡」

 

果南「鞠莉、話は終わった?」

ダイヤ「はぁ…ジャンケンに負けるなど…一生の不覚ですわ…私も声を聞きたかったですのに…」

鞠莉「ごめんね、ダイヤ♡…でも、おかげさまでちゃ~んと取り付けることができたわよ♪」

 

ここ、理事長室では3年生組が集まって、何やら優馬に電話をかけていたらしい。

どこから優馬が風邪で休んでいる、と言う情報を得たのかは分からないが千歌や善子たちが気付かないところで着々と準備を進めていたのだった。

 

果南「良かったぁ…ゆうは元気そうだった?」

鞠莉「う~ん、少し怠さがあるけど、何とか元気だって…」

果南「うんうん!あー…早く会いたいなぁ…♡」

 

鞠莉「そうね♡でもそのためにはまずうまくあの子たちを撒かないと…ね?♡」

 

 

そう言い残して、彼女たちは不敵な笑みを浮かべながら教室へと戻っていったのだった…




いかがだったでしょうか?
ちなみにこの話はまた続きます…
いい加減、本編入れよって話ですよね。
ほんっとうにすみません。
次の次くらいには本編入ります。よろしくです。

※ちなみに投票の結果、次の小ネタはSaint Snowを書きます!
投票ありがとうございました!!


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第48話 体調不良は修羅場の元になるらしい

こんにちは、希望03です。
今回は前話の続きの話になります。
若干の病みもなぜか入っているので、苦手な方は回れ右で。
それではどうぞ。


~放課後・スクールアイドル部部室~

 

授業もようやく一段落した今日一日。

優馬はいないが、とりあえず部室に来て、皆のことを待っていた。

 

千歌「…皆、遅いよぉ~」

曜「しょうがないよ、私たちが早く終わったんだもん。」

梨子「そうね…でも、今日は優君がいないから早めに切り上げくれないかしら…」

曜「…なんで?何か用事?」

梨子「え?いや?何でもないよ…」

曜「ふ~ん…」

 

ここ、スクールアイドル部部室では浦の星学院のスクールアイドルであるAqoursの2年生組が待っていた。

2年生組は丁度良く帰りのSHRが早く終わったために、スクールアイドル部部室に先に来たわけなのだが…

未だ誰も来ておらず、とりあえず仕方なしにここで待つことにしたのだった。

 

しかし、待ち続けてからさらに数分…

未だにこの部室内は2年生しかいなかった。

 

千歌「むぅ~~…まぁ~だぁ~~!!??」

梨子「もう…落ち着いて、千歌ちゃん!」

曜「あはは…でも、私もこの後用事あったりするからなぁ…早く切り上げたいんだよね~…」

梨子「え…!?まさか優君のところに…?」

曜「え!?いやぁ…?そんなことはないよ…?ちょっとね、うん…」

梨子「…」

千歌「…曜ちゃん、小声で優の家に行ってあげよう…って言ってたけど嘘だったんだね!」

曜「!?」

梨子「は?」

千歌「2人とも用事あるみたいだし、私が代表で代わりに優くんのお見舞いに行っといてあげるよ!ふふ…♡」

梨子「…千歌ちゃんも今日は旅館の手伝いするから早めに上がらなきゃ~とか言ってたよね?」

千歌「…何の話かなぁ?」

梨子「へぇ…ものの数分前の事、もう忘れたんだぁ…頭が弱くなっちゃったのかなぁ?」

 

こうしてまだ誰もいない部室だからいいことに、2年生同士で腹の探り合いを展開していると、部室の扉が開いた。

 

花丸「こんにちはずら~」

ルビィ「今日もよろしくお願いしますっ!…ってあれ?」

善子「貴方たちだけ?」

 

現れたのは1年生3人衆だった。

 

梨子「こんにちは、そうなの…まだ3年生の皆が来なくて…」

千歌「も~~うっ!遅いよぉぉ!早く帰りたいのにぃ!」

ルビィ「…何してるんだろ、お姉ちゃん」

曜「ルビィちゃんの所にも連絡来てない?」

ルビィ「うん…だから、SHRが長引いているだけかもしれないけど…もしかしたら…」

善子「…何か思い当たる節があるわけ?」

ルビィ「…お姉ちゃん、朝から挙動不審だったんだよね。いつも一緒に学校に行ってるのに今日に限って、すぐに学校に向かっちゃったし…」

花丸「急用の仕事が入っちゃったとかじゃないずら?」

ルビィ「うーん…そうだとしたらルビィの考えすぎだったのかなぁ…」

 

こうしてまだ来ていない、3年生に不信感を持っていると、全員宛てにメールが届いた。

 

千歌「あ、メールだ。」

 

届いたメールを開いてみると、そこに書かれていたのはなんと、今日の部活を3年生組が休みます、というメールだったのだ。

 

千歌「…え!?ま、まさか…」

梨子「嘘…」

曜「い、いやでも、あの事は誰にも言ってないはず!」

善子「ちょ、ちょっと!あの事って何のことよ!?」

曜「あ…」

 

そして思わず口に出してしまった一言から1年生組が問い質してきたため、2年生組は本当の事実を話し始めたのだった。

 

善子「ふーん…やっぱりあんたたち独り占めしようとしてたわけね?」

千歌「やだなぁ、私たちで共有するつもりはさらさらなかったよ~、私が代表していくつもりだっただけだよ~」

善子「その事実だけで充分最低よ…」

曜「というか、私個人としては純粋に優のことが心配なんだよ?2人はどうだか分からなかったけど」

梨子「まるで心配してないみたいな言い草はやめてくれる?」

梨子「私だって、優君のことが心配だからお見舞いに行こうって思ってたからね?」

ルビィ「ふーん…でも、3人とも結局下心見え見えだよね?自分だけ独り占めしようとしてたことには変わりないんだし…」

曜「…ルビィちゃんも言うようになったね?」

千歌「というか、ここで喧嘩してる場合じゃないよ!?今、多分…鞠莉ちゃんたちが優くん家に向かっているかもしれないんだし…」

花丸「そ、そうずら!早く行かないと!」

 

彼女たちは考えた。

このままでは優馬を独占されかねない…下手すれば弱っている彼に付け込んであれやこれやと…と

それを何とかして止めるべく、彼女たちは練習をそっちのけでまずは優馬の家へと向かったのだった。

 

…本当にスクールアイドルなのだろうか?

 

 

~内浦・路上~

 

一方その頃、全員宛てにメールを送り終わった3年生たちは3人で優馬の家へと向かっていた。

 

鞠莉「ふふっ♡これで上手く撒けたわね~♡」

ダイヤ「確かにそうですけど…彼女たちの事ですわ。きっとここまでやってくると思うのですが…」

鞠莉「それなら気にしないで?私に考えがあるから…」

果南「考え?」

鞠莉「ふふっ♡そ・れ・は・ね~…」

ダイヤ「…!それは…でも…!…そうですわね…この方法で…ふふ♡」

果南「なるほどね…リスクが…ふーん…確かに、ね…これなら…あはは♡」

 

鞠莉「これで決まりね…ふふ♡楽しみになってきたわ…♡」

 

そうして話し合った後、彼女たち3年生組はそれはそれは周りからドン引きを喰らってしまいそうになるくらいには不敵な笑みを浮かべ、目的地である優馬の家へと向かったのだった…

 

 

~優馬家・玄関~

 

千歌「ハァ…ハァ…急いできたけど…間に合ったかな…」

曜「分から、ないけど…ハァ…行ってみるしかないね…」

花丸「ずらぁーー…つ、疲れたずら…これで優さんがいなかったらもう死ぬずらぁ…」

ルビィ「花丸ちゃん…それ、フラグ、回収不可避だよ…」

梨子「ハァ…ハァ…優君…優君、優君っ!」

善子「ハァ…あ!ちょ、待ちなさいよ!リリー!あー、もう!私が一番最初に行きたかったのに!」

 

そうしていち早く駆け出した梨子を筆頭にして、彼女たちは優馬の部屋へと急いだ。

しかし…

 

~優馬家・優馬の部屋~

 

梨子「う、そ…誰も、いない…」

 

なんとそこには推測であれば先に行っていたであろう3年生はおろか、休んでいたはずの優馬すらいなかったのだ。

 

千歌「…ちっ!!あーーー!!!もーーー!!!」

曜「これはやられたね…完全に果南ちゃんたちに独占されちゃった…」

善子「もうこれは奪われた、と言っても過言ではないと思うのだけれど…?」

ルビィ「お姉ちゃんたち…やってくれたね…」

花丸「…優さん、もうオラ駄目ずら…耐えられないずら…優さん成分が足りないずらぁぁ!!」

 

彼女たちは憤慨した。

今にも3年生たちの狡猾とした表情で自分たちを嘲笑い、そして3人で仲睦まじく、優馬を共有、独占し…

そんなことを考えていると仲間だが憎々しいと感じるようにもなっていた。

 

梨子「…嫌。嫌。嫌嫌嫌嫌嫌嫌、嫌ぁぁぁ!!!」

 

千歌「…」

曜「どうする?」

善子「そんなの決まっているじゃない…」

ルビィ「お姉ちゃんたちに喧嘩を売られたんだもんね…」

花丸「徹底的にやるしかないずら…」

千歌「…探そう、と言っても、大体居場所は割れてるけど、ね?」

曜「鞠莉ちゃん家?」

善子「そうね…可能性としてはそれが一番高い…って!リリー!?」

 

次の居場所を探しに千歌たちが考えていると、先ほどまでヒステリック気味になっていた梨子が誰にも目もくれず走り出したのだ。

 

花丸「どこ行くの!?梨子ちゃん!」

ルビィ「梨子ちゃん!話を聞いて!」

梨子「離して!今すぐ優君のそばにいてあげたいの!!なんで私じゃないのよぉぉぉ!!嫌ぁぁぁぁぁ!!」

 

なぜここまで梨子が恐怖を感じてしまっているのか…

それを彼女たちは恐らく知らないだろう…

 

しかし、梨子は3年生の強引さを知っている。

少しでも気持ちが暴走してしまえば、梨子同様に彼女たちも常人じゃ到底考えつかない方法で奪い去ってしまう。

それは…監禁や既成事実と言った…逃れられそうにない、様々な手段で…

さらに言ってしまえば、梨子はダイヤと約束を、同盟を組んでいたはずだったが…

ここに来て、突然の裏切りに出てこられたのだ。

 

梨子「行かなきゃ…優君が…優君が…」

千歌「落ち着いて、梨子ちゃん。」

梨子「千歌ちゃん…?」

千歌「奪い返そう?果南ちゃんたちの思い通りにさせない…私の優くんを…取り戻さないと…」

 

こうして、もう一度彼女たちは優馬のいる場所を徹底的に探し始めたのだった。

 

 

~鞠莉家・???の部屋~

 

一方その頃、鞠莉たちは、というと…

 

鞠莉「ここなら大丈夫デース!」

果南「確かに…ここなら見つからなさそうだけど…」

ダイヤ「本当…よくこんなところありましたわね…」

鞠莉「ふふっ♡でしょー?♡」

 

優馬「…好奇心旺盛なのは良いけどさ」

優馬「俺、病人なんだけど…?…ゲホッ!ゲホッ!」

鞠莉「優!大丈夫!?今、私の専属医を呼んだからすぐに診てもらいましょう?」

優馬「専属医…相変わらずすごいね…ありがとう…でも、なんでここまでしたの?」

鞠莉「…ごめんなさい、ずっと優のことが心配で…」

果南「そうそう…ちゃんとお見舞いに行こうって話をしてたら1、2年生たちがなんだかお見舞いにかまけて、ゆうに取り付いて困らせようとしてたから…」

ダイヤ「それで私たちが先に優をここに連れてきて、鞠莉さんの専属医の方に直接診てもらおう…ということでしたの。」

優馬「優しいんだか、強引なんだか…」

 

実際のところ、嘘である。

言うなれば、半分嘘、半分本当、という所だろう。

優馬のことが心配でたまらなかったのも本当だし、専属医を呼んだのも本当である。

しかし、これはあくまでも1、2年生を優馬から引き離すためのものであり、決して全てが完全なる善意から…というわけではないのだ。

 

優馬「でも、ありがとね…ちょっと寂しかったから、いてくれるだけで嬉しい…」

 

鞠莉・果南・ダイヤ「「「~~~~~~~っっっ!!!♡♡♡」」」

 

果南「安心して!ずっと!ず~~~っと!!そばにいてあげるから!♡」

ダイヤ「そうですわ!♡私たち“だけ”がそばにいてあげますから!今はゆっくりお休みなさい?♡」

鞠莉「そうそう!♡寂しいときはいつでも駆けつけるからっ♡ふふっ♡」

 

優馬による不意デレに心を奪われてしまった鞠莉たちは完全に優馬の事しか頭になくなってしまったみたいだった。

すると、ドアからノック音が聞こえた。

 

鞠莉「あら…もう来たのかしら?」

果南「意外と早かったね?」

ダイヤ「なんにせよ早いことは良い事ですわ。早く診てもらいましょう?」

 

そうして鞠莉がドアを開けた。

 

鞠莉「はぁ~い…っ!?」

果南「どうしたの鞠莉?…っ!」

ダイヤ「鞠莉さん?…って、貴方たち…!」

 

千歌「こんにちは~…鞠莉ちゃんたち♪」

曜「こんなところにいたんだ~…まるで監禁部屋みたい…」

花丸「全く…酷いことするずらね?」

善子「…さいってい」

 

そこには千歌たちの姿があったのだ。

 

鞠莉「ちっ…邪魔して、散々言って…」

ダイヤ「…どうしてこの場所が分かったのです?例えGPSなどを付けていたとしてもここは繋がらないはず…」

ルビィ「ルビィだよ、お姉ちゃんっ♪」

ダイヤ「ルビィ…あなた、どうやって…」

ルビィ「昔、お姉ちゃんたちと一緒に鞠莉さん家に遊びに行った時に知らない部屋があって、たまたま入ってみたことあるの!…まさか、当たるとは思わなかったけど♪」

ダイヤ「…なるほど、そういうことでしたのね…」

 

毎度毎度修羅場っているのは気のせいだろうか?

いや、全く気のせいではない。

そうして、また一触即発の雰囲気が出た所だった。

 

梨子「優君は…?」

鞠莉「…梨子」

梨子「優君はどこにいるのよっ!!早く出しなさいよっ!!」

鞠莉「っ!…出してどうするつもり?何もできないくせに!」

梨子「なっ…!そっちこそ、何もできないでしょ!?そもそもここに連れてきた意味は何!?優君の部屋でも良かったじゃない!!」

鞠莉「貴方たちもどうせ押し寄せてくるからでしょう!?それは優にとって困ることだから私たちは自ら避けてあげたのよ!」

梨子「そんなの、ただ優君を自分たちのものにしようと縛り付けただけじゃない!そっちの方が困るのよ!」

鞠莉「鞠莉たちはただ看病してあげようとしただけデース!むしろ何を想像していたのかしら?この淫乱娘は…」

梨子「はぁ!?今までそういうことをしようとしてきたのが悪いんじゃない!そこのダイヤさんとか!」

 

ダイヤ「わ、私に触れないでいただきたいのですが!?それに今、ここでその話を持ち出しますか!?」

 

果南「落ち着きなよ…ゆうが寝込んでるって言うのに…」

 

梨子「…そうやって冷静でいますけど、いっちばん、淫乱で愛が重くて、面倒くさいのって果南さんですよね?」

果南「…は?なんで私まで言われないといけないのかな?」

 

梨子「だから!3年生方は今までそういうことをしてきた積み重ねがあるからこういう事になるんですよ!!」

 

ギャーギャーワーワー

これまた喧騒が始まり出した。

いつも通りではあるのだが、実際、辛くて寝込んでいる優馬にとってはたまったものじゃない。

 

優馬「もう何でもいいから…頼む、寝かせてくれ…」

 

 

この後、5分後程で専属医が到着。

普通の風邪と診断され、1日休んで次の日には元通りになっていた

…らしい。




いかがだったでしょうか?
次回こそ、本編に行きます。
そして、間を縫って、Saint Snowの小ネタに移ろうと思っていますので、よろしくお願い致します。

それではここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第49話 New song(未完成)

こんにちは、希望03です。
ようやく本編へと進みました。
と言ってもまだ冒頭部分なので、まだまだ続きます。
では、どうぞ。


~内浦・通学路~

 

優馬「う~ん…」

 

以前、珍しい風邪をひいた優馬だったが、その風邪も無事回復し

今ではその体調はあの時と比べるとすこぶる調子が良くなっていた。

 

優馬「今日もいい天気だなぁ…」

 

いつもの優馬らしくない様子で通学路を歩いていると後ろから声をかけられた。

 

梨子「優君っ!おはよっ!」

優馬「おはよー…朝から元気だね…」

梨子「だって、朝から優君に会えたんだもん…♡ふふっ♡」

優馬「う、うん…?///」

 

ここまで優馬は何も気づくことはなかったが、実は梨子は優馬が家を出てからずっと優馬の後を付けていたのだ。

 

梨子(ふふっ♡だって、こうでもしないと私のチャンスもなにもかも奪われちゃうもの♡しょうがないよね?♡あはは♡)

 

そうしてウキウキの梨子は優馬の隣を歩き始めたのだが、どうにも梨子の足取りが重たいように感じた優馬。

というよりも顔を見ている限りでは顔色がそもそも悪かったのだ。

 

優馬「…もしかして、風邪移った?」

梨子「え?ううん、全然大丈夫だよ?」

優馬「うーん…でも顔色がなぁ…」

梨子「あー…でも少し疲れているのかも…ほら、あれ…」

優馬「?…あ、ラブライブ予備予選と学校説明会に向けての準備か…」

 

なんだか最近は色々なことがあったからか、完全に頭から抜けていたのだが、予備予選もそろそろといった時だったのだ。

何ならこの予備予選で発表できるのは未発表の曲。

そして、それに並行して学校説明会で発表する曲の準備もある…

この説明会でも曲を発表し、なんとしてでも学校の魅力を伝え、希望者の人数を増やさなければならないのだ。

そうなると必然的に未発表の曲を発表し、会場を湧かす必要性が有る。

つまり、結果、2曲の新曲づくりが必須になってくるのだった。

 

優馬「…ご苦労様、だね」

梨子「ありがとー…はぁ…」

優馬「…」

 

この時、優馬自身、何を思ったのか分からないが、梨子の疲れている様子を見て、急に頭を撫で始めた。

 

梨子「…ふぇ!?///」

優馬「あ…嫌だった?ごめん…」

梨子「う、ううん!///もっとお願いしますっ!///」

 

それを聞いて安心した優馬はまた頭を撫で始めた。

傍から見たら朝から路上で頭を撫でている異質な光景が生まれるため、この2人の空間だけ異質な空間となるわけだ。

 

優馬「…これでいい?」

梨子「…うん///ありがとう…///えへへ…///」

 

そうして、2人はこのおかげなのか甘い空気を作り出して、学校へと向かっていった。

 

 

~浦の星学院・屋上~

 

千歌・曜・果南・鞠莉・花丸・ルビィ・善子「「「「「「「はぁ…」」」」」」」

 

優馬「…随分、元気がないね」

ダイヤ「それもそうですわ…なにせ、未だ出来ていない新曲のこともありますし…ここのところ、基礎的な練習しかしておりませんから…」

優馬「そういうことか…」

 

それもそうだ。

それくらいには新曲を作るというのには気合を入れてやらなければならないし、それ程の労力が生じてしまう。

さらに加えて、最近の練習は面白味もない、体幹トレーニングやランニング、補強トレーニングなど…

基礎練習という全く、面白くもない退屈な練習を日夜繰り返しているのだ。

モチベーションを維持するのも一苦労なわけである。

 

千歌「あーーもう無理だよぉ~~!ゆ~うく~ん…」

ダイヤ「なっ…!?千歌さん!!」

優馬「…」

 

すると、根を上げた千歌がいつも通り?こちらに来ては俺に抱き着いてきたのだ。

抱き着かれてはもうどうしようもない。

諦めて俺はこいつの頭を撫でてやった。

 

優馬「よしよし…お疲れさん…」

千歌「えへへぇ…♡」

 

恐らく、これを見て周りはこう思うだろう。

まるで犬みたい、だと。

実際そうなのだから何も言えないが…

 

優馬「…それでなんだけど、千歌って作詞担当だよね?」

千歌「っ…!う、うん…」

優馬「そしたら、さ。もう作詞は出来上がっているの?」

千歌「あ、あー…できてるよ~…でもまだ考えがまとまってなくて…だからもう少しかかるかなぁ~…?」

 

曜「…ここに一冊のノートがあります。千歌ちゃんの歌詞ノートです。その中を見てみると…」

曜「うわぁ…優の名前がぎっしり…次のページは…」

善子「どれどれ…うわ…気持ち悪いくらいの好きの文字ね…うえぇ…」

千歌「…曜ちゃん?善子ちゃん?何を見ているのかな?」

 

俺には見ることが叶わなかったが、恐らくあの感じだと作詞も全くと言っていいほど、進んでいなかったのだろう。

だが、あの一瞬、千歌の目のハイライトが消えていたような…

なぜだか分からないが…

 

優馬「とりあえず今日の練習は切り上げて、部室で考えるか…」

 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

優馬「それで今回の2曲の新曲作りの事だけど…」

優馬「二手に分かれてやった方が効率的には良いんじゃないかな、と」

千歌「二手に?」

優馬「そう。なんせ、鞠莉や果南、ダイヤは元Aqoursだったこともあって、今まで教区は作ってきているんだし、作れないなんてことはないと思うんだ。」

鞠莉「うーん、まぁ、そうね♪」

優馬「ということは、千歌たちに2曲分の負担をかけさせるわけにもいかないし、ここは二手に分かれてやるべきなのかな、と」

 

この二手に分かれるという方法は皆に好評だったみたいで、学校説明会の曲を千歌たちが、予備予選用の曲を鞠莉たち3年生と善子たち1年生が作ることとなった。

 

千歌「優くんはどっちについてくれるの?」

優馬「俺?うーん…」

鞠莉「もちろん、私たちよね?だって、曲作りなんて久しぶりだもの!」

曜「そう言うのは関係ないと思うな~、しかもそっちは6人もいるじゃん。こっちは3人だからね?そしたらこっちに来てくれた方が人員も増えるからやりやすいと思うけどな~?」

優馬「う~ん…」

 

鞠莉たちは作曲も作詞もまだ経験は浅くて、いくら3年生組が以前にやっていたからと言って、簡単にうまくいくわけじゃない…

でも人数は多いのだ。

1年生と3年生の6人という人数はやはり大きく感じる。

その分だけ、効率的に回せるだろうし、経験者にプラスで何名か付くことだってできる。

 

一方で、2年生側は、というと、このAqoursができてからずっと作詞や作曲を担っていて、経験も豊富…とはいえ、人数の壁は大きい。

3人で分担して、作詞、作曲、衣装作りを行うとしてもそれぞれの負担が大きすぎる。

そう考えると…

 

優馬「俺は…千歌たちの手伝いをしようかな…」

鞠莉「え~~~~~…」

善子「なんでよぉ…むぅ…」

優馬「ごめんって、でもあまりにも2年生側の負担が大きいなって思ってさ…」

曜「そうだよね!分かってくれて良かったぁ…ふふっ♡えい♡」

千歌「じゃあ一緒に頑張ろうね!優くん!♡えい!♡」

 

すると、曜と千歌は周りに見せつけるかのように優馬の腕に抱き着いた。

 

花丸「ずらぁーーーーー!!??」

ルビィ「そういうのいらないよね…?おにいちゃん、困ってると思うんだけど?」

優馬「あー…大丈夫だよ…いつものことだから…」

 

ルビィ「…ルビィたちが耐えきれないんです」

 

相変わらず離してくれない千歌と曜、梨子は、というと今日はずっとニコニコしている。

それは不気味なくらいには上機嫌で、こっちが怖い。

 

一方の鞠莉や善子たちは、というと対照的なくらいに機嫌が悪くなっていた。

 

 

ダイヤ「…はぁ、もう埒が明かないですわ。優はもう千歌さんたちの方に行くんですものね?」

 

と、ダイヤが切り出したが、かなり棘がある感じだった。

めちゃくちゃ怖い。

 

優馬「申し訳ない…でも、もし困ったことがあったら連絡して?すぐ駆け付けるよ」

ダイヤ「っ!///…もちろんですわ!///来てくれないと…拗ねますから、ね…?///」

優馬「…ふふ、了解。いつでも呼んで」

ダイヤ「~~~っ!///いつでも、と言いましたわね!?じゃ、じゃあ…夜寝る前に…♡」

 

果南「はい、そこまでだよ、ダイヤ!」

鞠莉「Stopよ、ダイヤ~いくら貴方でもそれは許されないわ!」

 

すると、どこからともなく現れた果南と鞠莉がダイヤを引き連れてしまった。

 

果南「じゃあ…またね?」

鞠莉「出来上がったらすぐ連絡するわ!…もしかしたら、そっちよりも早く出来上がっちゃうかもね♪」

 

優馬「あはは、楽しみにしてるよ…」

 

 

こうして、鞠莉たちはとりあえず鞠莉の家で、俺たちは千歌たちの家の二手に分かれて、2曲の新曲作りが開始したのだった。

 

しかし、この時優馬は全く想像していなかった。

この道のりがとてつもなく険しい道のりになってしまう…ということに




いかがだったでしょうか?
ついに曲作りへ…
頑張って欲しいものですね、はい。
ちなみに投票で決まったユニットの小ネタはこの回が終わってからになるのでまだまだです…
申し訳ない…

それでは次回もまたよろしくお願い致します。
今回も読んでいただきありがとうございました。


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第50話 New Song ~違いはあれども、想いは一緒~

こんばんは、希望03です。
遅くなりました。ついに本編50話目です!
ここまで長かったような短かったような…そんな気がします。
50話目の節目ということもあり、文量はかなり厚めになっていますのでご了承ください。

それではどうぞ!


~千歌家・千歌の部屋~

 

あの後、二手に分かれ、2年生組は千歌家でいつも通り作業することとなった。

男1人、女3人のハーレム状態だったため、部屋に上がるのには若干の抵抗があったのだが、作業の目的もあったため、そこはあえて考えないようにしたのだが…

 

優馬「…」

千歌「…それでこの歌詞…優くん?」

優馬「あ…あー…ごめん、なんだっけ?」

千歌「…不安?」

優馬「…うーん、なんだろう…違うんだよなぁ…」

曜「?でも、さっきからそわそわしてるけど?」

優馬「違うんだよ…不安というより、胸騒ぎがするというか…」

梨子「…とりあえずあっちはあっちできっと良いものができるわ。こっちはこっちで良いものを作ろ?」

優馬「…それもそうだね、ありがとう。」

 

そうしてまた気持ちを改め、千歌たちの方に向きなおしたものの

未だに胸騒ぎのような感覚は止まない。

これが一体何の予兆なのか、何を表しているのかはまだ理解ができなかった。

 

優馬「…大丈夫かな」

 

その想いは見事に当たってしまうことを、彼はまだ知る由もなかった…

 

 

~小原家~

 

一方、鞠莉たちは、というと特に集合場所というのも決めていなかったため、とりあえず鞠莉の家へと訪れることとなった。

 

花丸「何度来ても未来ずら…」

善子「本当ね…」

鞠莉「ふふっ♪こうなればいくらでもサービスシマ~ス♪」

 

いつ来ても豪勢な佇まいな小原家。

早速、1、3年生組は鞠莉の部屋へと向かい、作曲や作詞の構成を進めていこう…

という所だったのだが

 

鞠莉「はい、どうぞ~♪」

 

鞠莉から出されたのは、ケーキにマカロン、フルーツにプリン…ありとあらゆるデザート類の数々…

さらにスナック類やチョコ系など、お菓子づくしでもあった。

これにはまだ女子高生の彼女たちも当の目的を忘れ…

 

花丸「ずらぁ~~…美味しいずらぁ~…天国ずらぁ…」

ルビィ「はぁ…幸せ…これでお兄ちゃんがいたらなぁ…昔みたいに…」

善子「!優馬の昔話…!ルビィ!その話詳しく聞かせなさい!!」

ルビィ「え~…嫌だなぁ…これはルビィだけの思い出にしたいのに…」

善子「そんな勿体ぶらなくていいじゃない!お願い!」

ルビィ「しょうがないなぁ…いいよ~♪」

花丸「お、オラも聞きたいずらぁ!」

 

といった様子で自慢げに優馬との甘い昔話を語り始めるルビィを中心にお菓子をつまみながらその話に花を咲かせていた。

 

ダイヤ「貴方たちっ!目的を忘れて…」

鞠莉「ダイヤもどう??♪」

ダイヤ「わ、私は…」

果南「え~、美味しいよ?」

鞠莉「でしょ~?…優はどういうのが好きなのかしら」

果南「え、急にどうしたの…?」

鞠莉「だって、もう年度も後半戦よ?クリスマスとか、バレンタインとか…色々なイベントがあるわけじゃない?」

果南「いや、考えるの早くない?」

鞠莉「…その甘さが仇となるのよ?まぁ、私としては構わないけど」

果南「…ゆうは甘いものあまり食べなさそうだな~」

ダイヤ「鞠莉さん!果南さん!だから、目的が…」

鞠莉「ダイヤは優の好きなものとか気にならないの?」

ダイヤ「…確かに気になりますけど」

 

といった様子で見事に脱線。

3年生はあれやこれやと優馬の好きなものを目の前のお菓子をつまみつつ、話を広げていた。

 

そして、それぞれがそれぞれの話に夢中になって、数分後…

もう一度我に返ったダイヤが一言

 

ダイヤ「これじゃあ先に進みませんわーーー!!!」

 

 

~黒澤家・黒澤姉妹の部屋~

 

場所は変わり…

鞠莉家では全くと言っていいほど作曲、作詞が進まないことにようやく気付いたダイヤたちは場所を移し、黒澤家へと訪れていた。

 

ダイヤ「それでは!早速まずは曲のテーマから考えていきますわ!何か意見などは…」

花丸「はいずら!」

ダイヤ「まぁ!早速幸先良いですわね♪それでは花丸さん、どうぞ!」

花丸「マルが考えたテーマはね~…」

花丸「じゃじゃーん!」

 

そうして白いボードに書かれていたのは、“無”の一文字だった。

 

ダイヤ・鞠莉・果南「「「…無?」」」

 

これにはもちろん、3年生一同、全く理解ができずにいたのだが、

花丸は意気揚々と語り始めた。

 

花丸「そうずら…“無”とはすなわち、何もないのではなく、“無”という状態がある…ということずら…」

 

鞠莉「Oh…意味が分からないんだけど…」

果南「うーん…?」

 

このテーマを聞いて、得意げに語る花丸に対して、未だに鞠莉と果南は理解が出来ていないからか、首を傾げていた。

しかし、これを聞いていたもう一人の1年生、善子は、というと…

 

善子「か…かっこいい!」

ダイヤ「え!?」

花丸「ずらぁ~!善子ちゃんならわかってくれると思ってたずら~!」

善子「もうテーマはこれで決まりなんじゃないかしら!」

 

とこんな感じでこの場の雰囲気は完全にこの2人の独壇場…と思いきや

先ほどまで首を傾げていた鞠莉がこれではまずい、と感じたのか声を上げた。

 

鞠莉「ぜんっぜん駄目よ!”無“、なんて抽象的過ぎて全く分からないわ!」

善子「なによ!そういう鞠莉は何か考えてるって言うの?」

ダイヤ「確か…鞠莉さん、以前から作曲の方されていましたわよね?」

鞠莉「えー?マリーの曲聴いちゃう?」

ダイヤ「時間もないので手っ取り早くお願いしたいのですが?」

鞠莉「もー!ダイヤったらつれないわねっ!」

 

そうして鞠莉はどこから持ってきたか分からないオーディオを準備

早速、自分のバッグから音楽プレイヤーを取り出し、オーディオへセットした。

 

鞠莉「それじゃあ、いっくわよ~!♪」

 

鞠莉がかけた瞬間だった。

 

「♪♪♪♪!!!!」

 

響き渡るバリバリのロック

轟音と呼べるようなそんな曲がそこにはあった。

 

果南「うんうん、こういう曲は良いね!体が乗っちゃうし…」

鞠莉「そうよね!マリーもこれくらい派手な方が良いと思うの♪」

 

2人で意気投合していると、床に臥している1年生たちがすかさず声を上げた。

 

花丸「よ、良くないずら~…」

善子「み、耳が…耳が痛い…」

 

お互いがお互いに感覚が違うからか、趣向すら正反対であり、これでは良くないと踏んだダイヤがある手段に出た。

 

ダイヤ「…はぁ、これじゃあ埒が明かないですわね…奥の手を使いますわ」

鞠莉「奥の手?」

ルビィ「お姉ちゃん?」

 

そうして、ダイヤが取り出したのは携帯。

そして、電話をかけ出した。

その相手は…

 

優馬『…もしもし』

ダイヤ「もしもし、優?少し相談に乗って欲しいことが…」

 

果南「え!今、ゆうの声聞こえたけど、もしかして電話の相手ってゆう!?」

花丸「ずら!?マルも優さんの声聞きたいずら~!」

 

ダイヤ「お待ちなさい!…ごめんなさい、優」

優馬『大丈夫だよ、それより相談って…もしかしてだけどさ、そりが合ってないとか、かな?』

ダイヤ「っ!どうしてそれを…」

優馬『うーん…やっぱり皆のこと、考えてたからかな?じゃあすぐそっちに向かうよ。』

 

それじゃあ、といって優馬は電話を切ってしまった。

 

果南「それでゆうはなんて!?」

ダイヤ「…心配だから来ていただけるそうですわ♡」

 

その言葉を聞いた皆は狂気乱舞。

曲のテーマなどそっちのけ、優馬が来てくれるという吉報に急いでできる限りの身支度を済ませようと準備に動いた。

全く、こういう時の団結力だけは申し分ない。

 

花丸「やっぱりオラと優さんは相思相愛だったずら…♡」

善子「何言ってんのよ!私のことを心配してくれたに決まってるじゃない!♡」

ルビィ「善子ちゃんもだよ?お兄ちゃんは私のことを心配してくれたんだよ、きっと♡」

鞠莉「何言ってるのよ、マリーのことが心配だからに決まってるじゃない!♡はぁ…早く会いたいわ、My Darlin…♡」

果南「想いを馳せているところ悪いんだけど、ゆうは私の事を想ってるからね?ほんと、会いたいのなら素直に言ってくれれば、お姉さん、すぐに飛んでいくのに…♡」

ダイヤ「何を言っているのでしょうか、皆さんは…電話をしたのは私、つまり、私のことを最優先に心配してくれているに決まっているはずでしょうに…♡あぁ…早く抱きしめたいですわ…♡」

 

ダイヤ・果南・鞠莉・善子・ルビィ・花丸「「「「「「はぁ?」」」」」」

 

前言撤回しよう。

団結力もなかった。

吉報に対しての喜びは一緒なのだが、想いや考えはそれぞれ全く異なり、しかもそれぞれが自分本位で考えていた。

こうして優馬の心配は自分のものだと主張するや否や、火花がそこに見えるかのように、バチバチに散っていた時だった。

 

優馬「皆、大丈夫…え、バチバチじゃん…」

 

愛しの優馬がこの場に現れた。

その声にいち早く反応したのは花丸だった。

華麗なスタートダッシュを放ち、すぐさま優馬の隣を確保、後、腕を取った。

 

花丸「ゆうさ~ん…怖かったずらぁ…」

優馬「マルちゃん?大丈夫?」

 

何も知らない優馬は流れるかのように花丸の頭を撫で始めた。

その仕草にこの場にいる花丸以外のAqoursメンバーがイライラを募らせた。

その殺気を察した優馬は撫でる手を止めようとした、が

 

花丸「止めて欲しくないずら…♡このままで、ね?♡」

 

そんな可愛い雰囲気を醸し出しながら、優馬の手を握った。

あからさまに狙っていて、あざとさが隠れるどころか、見え見えだった。

その仕草にさらに殺気立つ他メンバー

このままではまずいと感じた優馬は花丸に魅せられ、煩悩に捕らわれそうだった所を何とか振り払い、現状を聞いた。

 

優馬「…それで、そりは合ったの?より一層、ひどくなった気がするけど…」

ダイヤ「…そうですわね。ひどくなったのかどうかは分かりませんが、確かにこれ以上はもう発展はしなさそうですわね…」

優馬「うーん…」

 

考えること数分、優馬はあることに気付いた。

 

優馬「やっぱり1年生と3年生の性格の違いじゃない?」

ダイヤ「性格、ですか?」

優馬「そう。1年生に関しては善子やマルちゃんみたいなどちらかというとインドア派な子が多いのに比べて、3年生に関しては昔から知ってたけど、鞠莉や果南みたいな遊ぶことが大好きな…アウトドア派が多い…というのが分かりやすい例かな?」

 

性格というのは変えられるものでもないが、ここまで分かりやすく、顕著に違いが分かると逆に面白い…というのは言わないでおいた。

 

ダイヤ「でしたら、どうすれば…」

優馬「手っ取り早いのは何かしらでコミュニケーションを取れれば、と…」

 

花丸「それなら良い手があるずら!」

 

優馬「…良い手?」

 

花丸がこれまたいち早く手を上げ、良い手があるとのこと。

良い手なら喜んで聞きたいところだったのだが、なぜだか優馬はそれに容認してはいけないような異様な感覚を覚えた。

 

ダイヤ「良い手とは?」

花丸「それは…温泉ずら!やっぱりお互いの裸を見せ合うというのは手っ取り早くコミュニケーションを取る手段の一つずら!」

優馬「…ちなみになんだけど、それは俺、行かなくていいんだよね?」

花丸「え…行ってくれない、ずら?」

優馬「…行かせていただきます。」

 

花丸の寂し気な表情に負けてしまい、思わず行きますと答えてしまった。

行くのは良いのだが、自分は元々、人手が足りない2年生側にいた上、ここには相談に乗るだけ、というだけのつもりで来ただけだった。

それなのに連れ回されるわ、挙句、まさかの温泉へと一緒に行くことになろうとは…

これを千歌たちに伝えるわけだが、どうなるかは想像に難い。

 

優馬「…しんどいぞ、畜生」

 

そうして背中から腕、色々な部位から吹き出るほどの冷や汗に優馬は怯えが止まらなくなっていたのだった。

 

 

~温泉~

 

優馬「…それでなんで来ちゃったんだろう。」

 

あれからバスに乗られ、ここまで来たわけなのだが、もはや優馬には罪悪感しか感じられなくなってしまっていた。

それはなぜか、千歌たちを置いてきてしまったからだ。

別段、彼女たちよりもこちら…というわけではない。

どちらも大事ではあるし、どちらも手伝ってあげたい…しかし、ダイヤたちに捕まってしまった以上、多勢に無勢…というわけなのだ。

 

優馬「はぁ…帰った後、絶対しごかれるんだろうなぁ…」

 

恐らくしごかれるとかのレベルではない。

下手したら殺しにかかるレベルである。なぜなら…

 

優馬「混浴だもんなぁ…」

 

というわけである。

 

そう、まさかの混浴。

温泉に付き添うものの、流石に男女別で入ることになるだろうと思っていた。

しかし、彼女たちはそんな甘くはなかった。

優馬が早速、男湯に行こうとした矢先、すぐさま混浴のあるゾーンへと連れていかれ、気づいた時には服をひん剥かれ、ここに放り出されていたのだった。

それに溜息や罪悪感にさいなまれながら約数分後、ようやく扉が開いた。

恐らくAqoursメンバーのお出ましだろう。

 

鞠莉「優?こっち向かないの?」

優馬「いや向けるわけないでしょ…向いていいよって言われても向かないよ。」

 

なんて紳士的な対応。

倫理的にも紳士的にもこの対応は100点満点であろう。

 

果南「えー…でもどうせ後で一緒に入るわけじゃん!」

優馬「いやだからって裸を堂々と見るのは違うでしょ…」

果南「むぅ…」

 

どうやらお気に召さなかったらしい。

声的には渋々、といった様子で果南たちはとりあえず身体を洗いに向かったのだった。

 

そうして洗いに行って数分後、優馬が浸かっている温泉に彼女たちもやってきた。

しかし、やはりまだ恥じらいがあったのか、ダイヤは少し渋っている様子だった。

女の子としてはその反応が普通であるはずなのだが、残念ながら彼女たちの前ではそれは通用しない。

やると決めたらやる。ダイヤは抵抗できることもなく、ここへと連れてこられた。

 

ダイヤ「あ、あまり見ないで欲しいですわ…うぅ…恥ずかしくて顔から火が出ますわ…」

優馬「だ、大丈夫だよ、うん。き、綺麗だと、思う///」

ダイヤ「き、綺麗!?///えへ、えへへ…♡あ、ありがとうございます…♡」

 

鞠莉「…ずるいわ。」

果南「…はぁ」

優馬「…2人も綺麗だよ、昔とは見違えるほどに、ね。とても綺麗だ。」

 

鞠莉・果南「「っ!!///」」

 

たまにはちゃんと素直に褒めてあげようと言ったわけなのだが、どうやらクリティカルヒットだったらしい。

いつになく彼女たちは何も言わなくなってしまった。

 

花丸「マルも…見て欲しいずら…///」

優馬「…うん、文句なし、可愛い。」

花丸「可愛い!?///」

 

予想していなかった言葉に思わず声量が強まってしまったみたいだった。

 

善子「わ、私は…?」

優馬「善子も綺麗だよ。依り代なのに丁寧に整備されてるんだな?」

善子「よ、余計なこと言わなくていいのよ!…でもありがとう///」

 

いわゆるツンデレというやつだろう。

なんだかんだ言って、気にしちゃうし、素直に褒めるとちゃんと感謝を述べてくれる。

本当、やっぱり善い子だ。

しかし、もう一人いるはずなのだが、姿が見えない。

まだ来ていないのだろうか、と思いきや、後ろを振り返ると

 

ルビィ「あぁぁぁぁ…きもぢいよぉ…」

優馬「…」

 

楽しそうで何よりだ。

しかし、温泉に来たわ良いものの見たところ、特に収穫は無し…

そう感じた所で鞠莉や果南は褒められて満足、もう飽きた、といったところなのか早速つまらない、と嘆きだした。

 

優馬「はぁ…しょうがない。出ようか…」

 

そうして優馬の声を皮切りに着替えを済ませ、温泉を出ようとしたその時だった。

 

優馬「うわ…えぇ…?雨?」

 

外に出ると、土砂降りの雨が降っていた。

とりあえずバスを待つためにベンチで雨宿りをしているのだが、今からバスに乗って帰るにしたって、全員が傘を持ってきていない。

となると、ずぶ濡れになる未来が見えた。

 

優馬「どうするか…」

 

そう悩んでいると、優馬の携帯から着信音が鳴った。

開いてみるとなんと相手は曜だった。

優馬はその時、珍しいな…と思い、何も疑わず、電話を受けてしまった。

 

曜『…もしもし?優?』

優馬「もしもし。珍しいね、曜からかけてくるなんて」

曜『…ねぇ、今どこにいるの?帰ってくるの遅くない?』

優馬「あ…」

 

決して忘れていたわけではないのだが…

こちらもこちらで大変だったために連絡する時間もなく、電話をしていなかったのだ。

 

曜『ねぇ…何とか言ってよ、忘れてたんでしょ…?』

優馬「いや…忘れてたわけじゃなくて…こっちもこっちで忙しくて、連絡ができなかったというか…」

 

嘘は言っていない。

確かに温泉に行って、まさかの混浴に入る羽目になったというのはあるのだが…

忙しいという事実には変わりはなかった。

 

優馬「そ、それよりそっちは曲作り、進んでる?」

曜『…進んでるけど、優がいないってずっと嘆いているよ。こっちの手伝いをしてくれるって言ってたのに…嘘つき。』

 

非常に怖い。

確かに言ったのだが、ここまで付きっ切りで見なきゃいけないとは思わなかった。

しかもこちら側に行くときに一応容認してくれたような気がするのだが…気のせいだったのだろうか…

 

曜『そんなことより優は今どこにいるの?まだダイヤさん家?もし大変そうなら私が空いてるから向かうけど…』

千歌『え!?曜ちゃん!?何抜け駆けしようとしてるの!?話が違うじゃんか!』

梨子『そうよ!皆で行くところじゃないの!?』

曜『うるさいなぁ!2人とも曲作りに集中しなよ!』

 

曜『…そういうことだから私が行くけど、聞こえる限りでは絶対、どこか行ってるよね?どこ?』

優馬「…」

 

うん、非常に危険だ。

ここで居場所を教えてしまったら真っ先に向かってくるだろう。

しかし、言わないと後が大変だ。

どうこの場を対処するか、考えていると優馬の携帯が後ろからひょいっと取り上げられてしまった。

誰だ、と思い後ろを振り返るとなんと花丸だった。

 

花丸「もしも~し、マルずら~」

曜『!?…花丸ちゃん?今、優と話してるんだけど?』

花丸「も~、曜ちゃん怖いずらよ?…執着心の強い女は嫌われちゃうと思うけどな~?」

曜『…余計なお世話だよ。それより優はどこ?居場所を教えて。』

花丸「ん~、今、温泉にいるずら!」

曜『…は?どういうこと?』

花丸「理由は色々あるずらよ…ただ、混浴風呂に初めて入って…ふふっ♡優さんの身体、逞しかったずら…♡また惚れちゃったずら…♡」

 

優馬(まさかそんなところを見られていたとは。全く気付かなかった…)

 

曜『ちっ!…それ作曲とかと関係ないよね?なんでそこにいるわけ!?』

花丸「落ち着いて、曜ちゃん♪…あ、もうバス来ちゃったから、電話切るね~」

曜『は!?ちょっと待って、話はまだおわtt』

 

曜がまだ話を続けようとした矢先、花丸は強引に電話を切ってしまった。

 

花丸「あはは…♪哀れずらぁ…♪」

優馬「…」

 

これは後で殺されるパターンだ。

すると、また曜から着信。出直そうとしたとき、花丸に止められた。

 

花丸「出ちゃダメ、ずらよ♡はい、着信拒否♡」

 

そう言って、曜からの着信を拒否し、拒否設定までつけた。

ここから解放された時、恐らく自分は死ぬだろう。そう悟った瞬間だった。

 

ダイヤ「…どうしますの?このまま帰れば、優は曜さんたちの手に渡りますけど…」

鞠莉「うーん…どこかいい場所無いかしら?」

花丸「もちろん、その対処まで考えているずらよ。近くに知り合いのお寺があるずら!そこで雨が止むまで雨宿りすれば多少の時間稼ぎにはなると思うずら♪」

 

今日の花丸は頭が冴えていた。

こうなることも踏んでいたのだろう。ここまで準備がきちんとされていた。

雨の中帰るのも嫌、帰っても曜たちに殺されるくらいなら心の準備のための多少の時間稼ぎも必要だ。

そう考え、優馬たちは花丸の知り合いのお寺へと向かうこととなった。

 

 

~お寺~

 

知り合いのお寺に到着後、とりあえず広間に集まったわけだが、どうにもやることがない。

そこでせっかくだから、と曲作りに取り組むこととなった。

しかし、やはりというべきか曲作りは一向に進まず、難航を極めた。

すると、果南がどこか怯えていた。

 

優馬「果南?どうしたの?」

果南「え、あ、いや、その…なんか、物音しない?」

優馬「物音?」

 

そうして耳を澄ましてみると、確かに何かが動いている音が聞こえてきた。

 

果南「ひっ!」

優馬「うおっ!」

果南「うぅ…」

 

意外とビビりな果南は怖くなったのか、優馬にハグをかました。

 

優馬「…昔から怖がりな所は変わらないなぁ」

果南「あぅ…///うるさいよっ///」

優馬「じゃあ離してよ」

果南「無理!怖いもん…///」

優馬「しょうがないな…」

果南「えへへ…♡」

 

ダイヤ「…」

ルビィ「良い性格してるね…」

 

ここでもイチャイチャしだす果南に全員がイラっとしたその時、昔からあるお寺で古びていたからかあちこちから雨漏れしだした。

なんとか雨漏れを防ぐために協力して備えてあったお皿や湯呑などを置いていった。

すると、その落ちる雨音がまるでメロディーを奏でているように聴こえてきたのだ。

 

善子「綺麗…」

花丸「ずらぁ…」

 

優馬「…テンポも、音色も、大きさも、全てが違ってバラバラだけど一つ一つが重なり合って、調和して…一つの曲になっていく。」

優馬「そういうことなんじゃないかな…」

花丸「…マルたちも同じってことずら?」

優馬「うん、正解…だからバラバラでもいいんだよ。きっと。」

優馬「同じ目的、目標があって…それに向けてやろうって言う気持ちは皆同じなんだから、ね?」

ダイヤ「…ふふっ、優らしいですわね」

優馬「褒めてるのかなぁ、それ…」

 

笑い声が響き渡る。

そう、皆、それぞれ違うけど、目的も目標も…そして抱えている想いも同じ。

 

ダイヤ(…そうですわね、皆、優への想いは変わらないですものね。)

果南(それなら私たちの想いは一つに出来る…)

鞠莉(それぞれの趣向は違うけど…)

善子(きっと…優馬への想いは一緒だから)

ルビィ(だから、私たちはそんな貴方に届くような歌を!)

花丸(曲を想いのままに作ればいいずら!)

 

花丸「よーっし!このまま曲作り、開始するずらぁ!」

 

善子・ルビィ・ダイヤ・果南・鞠莉「「「「「おぉー!!」」」」」

 

 

優馬「…聞いてたでしょ?曜?」

曜『…うん。そっちも大丈夫そうだね。』

優馬「…ごめん、すぐそっち戻るよ。」

曜『ううん…今はそっちにいてあげて?きっと…優がいないと出来上がらないと思うから…ね?』

優馬「曜…」

曜『で・も!…あとで目一杯働いてもらうから、覚悟しててね♪』

優馬「あはは…もちろんだよ…ありがとう、曜。」

曜『…どういたしまして!じゃあ、切るね!』

 

優馬「…よしっ!始めるか」

 

 

~千歌家・千歌の部屋~

 

千歌「…優くんなんだって?」

曜「…もう少しで曲が完成しそう、だって。」

千歌「…そっか」

曜「は~あ…私もお人好しだなぁ…」

梨子「良い事じゃない…まぁ、恋愛においてはどうだか分からないけど…」

曜「優があんなに頑張ってるからさ、戻って来いなんて言えなくて…」

千歌「千歌たちもきっと曜ちゃんと同じこと言ってたよ。今は待とう?」

曜「…そうだね。」

 

そうして、千歌たちは優馬に触発され、曲作りの仕上げに取り掛かったのだった…

 

 

~千歌家・朝~

 

あれから千歌たちも作曲、作詞ともに終わらせ、あとは優馬たちを待つだけだった。

 

千歌「…」

 

家の屋根に上り、朝日をぼんやりと眺めていた。

ただ、その顔は希望に満ち、その先の輝きへの答えを見出せたような、そんな満足げな表情をしていた。

すると…

 

優馬「千歌」

千歌「優くん、皆…」

千歌「…曲は、できた?」

優馬「…できたよ。ばっちしだ。」

 

曜「そっか、なら早く練習、しないとね!」

 

どうやら曜と梨子も玄関先で待っていてくれていたようだった。

 

優馬「そうだね、急ごう。2曲分あるからね!」

 

「「「「「「「「「おーーー!!」」」」」」」」」

 

2曲分の曲作りも終え、ライブを必ず成功させるために優馬たちはまた気合を入れなおした、その矢先だった。

まさかこんなイレギュラーが起きてしまうとは未だ考えつくことはなかった…

 

 

鞠莉「…あら、着信?」




いかがだったでしょうか?
長くて申し訳ありません…
ですが、これでついに予備予選へと話が進みます…
の前に小ネタが挟めればいいんですが…
あぁ…どこで入れよう…というのが現状です。
必ずどこかで小ネタを入れるのでよろしくお願いします!

それではここまで読んでいただきありがとうございました!
次回もまたよろしくお願い致します。


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第51話 何らかの予兆

こんにちは、希望03です。
今回は繋ぎ目の回なので、割と文量は少なめ、かつそこまでヘビーな回ではないのでご了承ください。

それではどうぞ。



 

これからのライブに向けて、全員が気持ちを一つにした、その時だった。

鞠莉の携帯に一通の着信が鳴った。

こんな朝早くから電話がかかるなんて思わなかったためか、不思議に思う鞠莉。

何か急ぎの用事かもしれないと思い、とりあえずすぐにその電話に出た。

すると…

 

鞠莉「え…延期…?」

 

そこで鞠莉に伝えられたもの、それは学校説明会が天候の悪化により延期になった、という内容だった。

 

鞠莉「ちなみに日にちは…?」

 

そこで伝えられた日にち。

それはちょうどラブライブの予備予選と被ってしまっていたのだった。

神の悪戯か、悪魔の仕事か、何はともあれ、最悪の事態となってしまったのだった。

 

鞠莉「そう…分かったわ…」

 

それぞれの想いや気持ちが前へと向き、希望を見出しているその時だった。

皆と打って変わって、鞠莉はすごく険しい表情をしていた。

 

優馬「…鞠莉?」

 

これを見逃さない優馬ではない。

まだ冷静で会った優馬は鞠莉の表情に何かあったと勘付いたのだった。

 

優馬「…千歌~、2公演ライブに向けて、体力付けに行くぞ~」

千歌「え、え~…もう疲れたよぉ~…」

優馬「そんなこと言って…身体はそわそわしてるじゃんか…」

千歌「あ…えへへ~…」

優馬「はいはい、皆も一緒に走りに行くよ~」

 

そうして優馬の一声で走りに行く、彼女たち。

それに連なって、鞠莉も行こうとしていたので、呼び止めた。

こうして、上手く鞠莉以外の皆を誘導に成功。

2人きりだけで話せる状況を作り出すことまでも成功したのだった。

 

優馬「それで…何があったの?」

鞠莉「…順を追って話すわ。まず…学校説明会が天候の悪化で延期になったわ。」

優馬「…なるほど、それだけ聞いたら急いで仕上げる必要性もないから良いと思うけど…その深刻な顔から見るに、問題点は日にち、というわけかな?」

鞠莉「…正解、流石ね。その日にちなんだけど…ラブライブの予備予選日よ。」

優馬「!?ということは…」

鞠莉「えぇ…どうにかして、同日2公演を成功させる必要が出てきた…ということよ。」

優馬「なるほど…」

 

学校説明会も予備予選も外せない大事なライブ。

同日に開催されるとなると少し厳しいところがある。

 

優馬「ただ…可能性を考えるとするなら…」

 

一番可能性あるものを考えるとするのならば、午前に開催される学校説明会は時間をずらせないという前提を置いたうえで、予備予選の順番の抽選で午後の部を引くことが出来れば、同日にライブを行うことが可能になる。

正直なところ、ハードではあるのだがこれが今のところの最善策なのだ。

しかし、この予定通りに進めるためには多少の運が必要で、理想の順番を抽選で引き当てる必要性が生じているのだ。

つまり、一か八か、ということである。

 

優馬「…ということだね。」

鞠莉「…引き当てるしかないのね。」

優馬「うん…まぁ、そこは俺たちの運を信じるしか、ってことしか言えないかな」

鞠莉「ふふっ、理論的な優らしくない発言ね♪」

優馬「…確かに、言われてみれば」

鞠莉「でも…そういう強引な所の優も大好きよっ♡」

優馬「…冗談はよしてくれよ///」

鞠莉「あら?照れてるの?」

優馬「…行くよ///」

鞠莉「ふふっ♡は~いっ!♡」

 

確かに俺らしくないと言えばそうなのかもしれない。

可能性が低ければ、切り捨て、それが選択肢もなく、1つであれば諦める。

昔の俺はそんな男だったのだが、よくもまぁ、ここまで変わってしまったものだ。

 

優馬「ほんと…千歌たちのおかげだな…」

 

既に駆け出した彼女たちに想いを馳せ、これからの奇跡を願ったのだった。

 

 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

この日の授業も一段落し、練習に向かうわけなのだが、今日は例の件の話をするために全員が部室へと集まっていた。

 

優馬「はい、じゃあ始めようか。」

ダイヤ「…ちょっと待ってください。」

優馬「ん?どうしたの?」

ダイヤ「いや…なんですの?その…状況は?」

優馬「え?」

 

そのダイヤの言う状況、というのはまさに今、優馬にハグをしている果南とルビィの事を指していた。

 

ダイヤ「え?じゃなくて、話しにくくないのですか?」

優馬「あー…諦めたかな…」

ダイヤ「…そう言うのは強めに伝えた方がよろしいですわよ?」

果南「そんなこと言って、ダイヤも羨ましいだけじゃんか。まぁ、素直になれないんじゃ、仕方ないよね?あーあ、かわいそー…あはははっ!」

ルビィ「そうそう。お姉ちゃんもそういうこと言いながらお兄ちゃんのそばに居たいくせに…そういう素直じゃないところはいずれ嫌われちゃうよ?ルビィはそれで構わないけど…」

ダイヤ「…全面戦争ですわね。」

 

果南は遠回しに棘のある言葉で嘲笑し、あのルビィはお姉ちゃん子だったはずなのに男が絡んだだけでここまで戦えるようになってしまった。

しかし、ここでまた争いを始めてしまえば、話は全く進まない。

 

優馬「はい、2人ともそこまで言わなくていいからねー」

 

優馬はそう言って彼女たちの頭を撫で始めた。

扱い方も慣れたものだった。

 

果南「えへへ…♡」

ルビィ「うゆぅ…♡」

 

優馬「…こうなると話が進まないから、もう言わないことにしたんだ。分かった?」

ダイヤ「…えぇ、それはもう十分に」

 

この時のダイヤは笑っていたのだが、その後ろには修羅がいた、という。

 

優馬「はい、ということで話の続きね。」

優馬「まず学校説明会の話から。学校説明会が延期になりました。恐らくこれは学年ごとでも周知されていると思う。」

千歌「ほえ?そうなの?」

優馬「言われているだろ…」

 

そう、学校説明会の延期については書類として学年ごとに今日のSHRで配布された。

確認しているか、していないかは分からないが、とりあえずここは知っている、という体で優馬は話を続けた。

 

優馬「それで問題なのはその延期した日にち。なんとラブライブ予備予選と被ってしまっています。はい。」

梨子「え…?」

ダイヤ「それって…つまり…」

優馬「1日2公演。ぶっ続けで、さらに時間配分もランダム、というまさに鬼畜ゲーです。」

 

この説明だけで頭の回る梨子やダイヤを筆頭に大半のメンバーは勘付いてくれた。

しかし、未だ状況を理解していないやつがいたのだ。

 

千歌「1日に2回もライブができるの!?やったー!」

優馬「…」

 

この馬鹿千歌は…と言いたくなるのを堪え、どうにかちゃんと状況が理解できるように具体的な説明を施した。

 

優馬「…いい?俺たちはこの2つのライブ、絶対に成功させないといけないよね?」

千歌「ほえ?うんうん!」

優馬「けど、1日にこの2つのライブが凝縮されたとしたら午前、午後ぶっ通しでやらないといけないよね?」

千歌「そうだね…大変だけど、頑張ろう!」

優馬「うん、やる気がみなぎっていて、本当、何よりだよ。はい、そこで問題です。」

優馬「ここ、浦の星学院とラブライブ予備予選の場所、どれだけ離れていると思いますか?」

千歌「え、何それー!千歌の事、馬鹿にし過ぎだよ!そんなの大体、15kmくらいじゃ…」

優馬「はい、もし仮に距離がそうだとしますね。学校説明会の時間がずらせずに10時くらいにライブが開始だとしますね。」

千歌「うんうん。」

優馬「それなのに予備予選の順番はランダムで、下手したら午前の部に当たる可能性があるとします。そしたらどうなる?間に合いますか?」

千歌「そんなの決まってるじゃーん!間に合うわけない…」

優馬「…」

千歌「ぬわぁぁぁぁぁ!?」

優馬「はぁ…ようやくか…」

千歌「え、え!ど、どうしよう…このままじゃ、間に合わない可能性が出てきたよー!」

 

ここまでの説明でようやく千歌が気付いてくれたのはいいものの、状況が危機的なことには変わりない。

これで全員が把握しきれたため、優馬は唯一の解決策を掲示した。

 

優馬「そこで1つだけ、可能性を回避するための策があります。」

ダイヤ「なんですの?」

優馬「運、だね。」

曜「う、運…?」

優馬「そう、俺たちがこの危機を回避するためにはまず説明会の時間に当たらない時間帯で歌う必要がある。幸いにもまだ予備予選の順番決めの抽選は始まっていない。つまり…」

梨子「その抽選で、午後の部を引き当てる…!」

優馬「正解。午後の部を引き当てられれば、その日はきついけど、円滑に進めることが可能になる…だから運で引き当てるしかない、っていうわけ。」

 

少し強引な策ではあるのだが、それしかない、と分かった時、全員が覚悟を決めた表情をしていた。

 

優馬「…異論はなさそうだね。じゃあ俺たちの運を信じようか!」

 

 

こうして俺たちは予備予選の抽選へと臨むのだった。




いかがだったでしょうか?
ついに順番の発表となります。
次回は若干長めになるかと、よろしくお願いします。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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第52話 ”輝く”ために必要なものとは?

こんばんは、希望03です。
以前、お伝えしたように少し長めの文量になっています。
ヤンデレ要素が最近、取り入れられず、少し退屈です。
すぐさま小ネタ行きたいです。
それではどうぞ。


 

~予備予選抽選会・会場~

 

あれから数日後、ついにこの抽選会の日がやってきた。

朝早くから準備をし、会場入りした俺たち。

さぁいざ抽選に向けて、ということでこの抽選会では申請したグループ内の1名の代表者が抽選に参加するわけなのだが、絶対に後半の午後の部に出場しなくてはならない、という使命感とプレッシャーからか、どうにも代表として行こう、という意思の固い者が現れなかったのだ。

 

ダイヤ「…誰が行きますの?」

曜「ここは…やっぱり優?」

優馬「残念だけど、俺はあくまでもマネージャーであって、登録メンバーにはいないから抽選会には参加できないんだ。」

曜「あ、そうなんだ…」

優馬「だから…俺が出れない、となるとやっぱりここはリーダーが行くべきなんじゃないかな?」

 

そうして、俺は千歌の方を向いたのだが、千歌は我、関せず。といった様子。

しかし、こちらに意識が向いていることに気付き、ようやく自分の立ち位置を再認識したらしい。

 

千歌「…んえっ!?」

優馬「…他に誰がいると思ってたんだ?」

千歌「で、でも…千歌はこういう時に限って運が悪いからなぁ~…あはは…」

優馬「じゃあどうしろと…」

 

と、悩み苦しみつつ、周りを見渡すのだが、皆は視線を合わせてくれない。

だが、俺もここで引き下がるわけにはいかない。

半年以上、彼女たちと仲間としてやってきているわけで、扱い方には慣れているのだ。

そうして俺はある策をここで投じた。

 

優馬「…はぁ、ここで引き当てたらたくさん褒めてあげようと思ったんだけどなぁ」

 

そう、まさかの甘やかし作戦である。

俺自身、言ってみて恥ずかしいし、自惚れも大概にしろ、と自分に言い聞かせてやりたいのだが、これも作戦と言えば作戦、苦肉の策なのだ。

その実、効果は凄まじいもので…

 

千歌「それ本当!!??」

曜「…絶対、勝ち取るであります…!」

梨子(ふふ…♡ふふふ…♡そっかぁ…褒めてもらえるんだぁ…♡優君にいっぱい甘えさせてもらって…あ、壁ドンとか顎クイとかしてもらったり…!♡えへ…まさに役得じゃない…♡)

梨子「…絶対勝ち取らなきゃ」

鞠莉「そういうことなら、一番のハッピーガールであるマリーが行く方が良いわねっ!」

ダイヤ「何を言っているんですの?毎度毎度、じゃんけんをする度に一番最初に負けてしまうのは貴方でしょう?ここはジャンケン最強、かつ今日の運勢が超吉の私が行くべきですわ!」

果南「ちょっと待ってよ。そもそも超吉っていうのも気になるし…ジャンケンじゃ運は測れないでしょ?こういうのは一番頼りになるお姉さんが行くべきだと思うけどな~…ま、私だけど…」

花丸「…オラ、優さんのためならどんな手を使ってでも…!」

ルビィ「うゆ…運なんかよりももっと確実に取りにいかなきゃだもんね…不正はバレなければ合法、っていうし…あははっ♡」

善子「あんたたち、うるさいわよ!…ここはヨハネの闇の力を行使して、必ずや勝ち取りに行くわ!…優馬に甘えたいし♡」

 

見ての通りだが、皆の態度が180°逆転したのだ。

あれだけ行こうとしなかった皆が言葉一つでここまで変わる…俺自身が絡むとなると、単純思考になるのだ。

それなら最初から出して欲しいものだ、と思うのはここだけの話だとして、このままでは逆に埒が明かなくなってしまうといった状況が作られてしまった。

 

優馬「…はい、もう恨みっこ無しのじゃんけんね」

 

いつまでもいがみ合っているため、もう俺は彼女たちにじゃんけんを掲示した。

すると、いつになく目に炎を灯し、やる気にみなぎっていた。

しかし、これはあくまでも褒められたい、甘えたい、あわよくば色々な…という感情が彼女たちの内側に優先的に働いている、ということを気づいて欲しい。

誰が、とは言わないが。

 

「「「「「「「「「じゃーんけーーんっっ!!!」」」」」」」」」

「「「「「「「「「ぽんっ!!!」」」」」」」」」

 

さぁ、運命のじゃんけんの勝者は…

 

善子「や、や、やったわーーー!!」

花丸「さっさと行くずら。」

ルビィ「もう順番来てるから、早く行った方が良いよ。」

善子「うるっさいわね!嫉妬は見苦しいわよ!」

花丸・ルビィ「「…」」

 

善子だった。

少々不安なところはあるものの、いつもなら負けているじゃんけんで勝つ、という事はそれだけ今日の善子は違う、ということなのだろう。

 

善子「ふふっ♡じゃあ行ってくるわね?甘えさせる準備、忘れないでしておきなさいっ!♡」

優馬「はいはい…」

 

そう意気込みを残し、彼女は壇上へと上がっていった。

 

善子「行くわよっ!」

 

そして、彼女の声と共に、運命のダイスは今、回された。

点滅する目の前の電光掲示板。

次第にゆっくりと点滅していき、最後に止まったマスの番号はなんと

 

優馬「…あの野郎」

花丸「ずらぁ…」

ルビィ「うゆぅ…」

善子「ふっ…決まった…!」

 

決まってねえよ。

まさかの“1”、見事に午前の部。それも最初も最初であった。

こうして俺たちの予備予選及び学校説明会は鬼畜コースへと足を踏み入れることとなってしまったのだった。

 

~ファストフード店~

 

さて、どうしたものだろうか。

お目当ての番号は引き当てられず、むしろ午前の部の最初も最初。

だが、不幸中の幸いだったのは午前の部の最初、ということだろう。

恐らく始まりが午前9時前後だったとして、学校説明会の開始がおよそ午前11時。

間に合うことは間に合うだろう。

しかし、それは何かしらのアクシデントによって時間がずれさえしなければ、の話ではあるが

 

善子「…その、ごめん、なさい。」

優馬「気にしなくていいよ…これはもう運任せだった。仕方がなかったさ。」

 

そうは言ったものの…

やはりこの流れはリスキーでもあるし、体力的にも非常に負担がかかるだろう。

そう考えると、やはり2つのどっちか、を取らなくてはならなくなる。

しかし、今となればどちらも大切なのだ。結局のところ、どちらかを切り捨てるなんて…できっこない。

それは彼女たちも同じ想いだった。

 

果南「…今回のライブ、あまりにも負担が大きすぎるし、当然リスクもある。そうなればやっぱりどっちか、を選ばないといけないんじゃない?」

千歌「…」

 

良くも悪くも果南は…いや、3年生たちはリアリストなのだろう。

きちんと目の前の事象を把握して、それがどれだけリスクの高いものなのかもちゃんと理解して…そのうえで自分の気持ちを押し殺してでも、安全策を取ろうとする。

人間としては非常に理に適っている方法だろう。

そして昔の俺であれば、間違いなく、そして迷いなく3年生側だった。

しかし、今は違うのだ。

俺にとって、学校も、そしてAqoursのそれぞれ皆が大事なのだ。

どちらか一つを捨てることなど、できはしない。

 

優馬「…果南、もう少し考えても良いんじゃないかな」

果南「…でも、この現状は変わらないよ?このままじゃ先にだって進めない」

優馬「それでもだよ。絶対時間はかかると思う…でも、必ず答えは出せる。俺はそう感じてる。」

優馬「だから、今は…もう少し考えよう?」

果南「ゆう…」

 

そうして重苦しい雰囲気はそのままに、この話はその場でお開きとなった。

 

~優馬家・優馬の部屋~

 

優馬「はぁ…」

 

あれから俺は誰とも何も話さずにここまで帰ってきてしまった。

自分自身の想いを伝えるのは簡単。

でも、俺自身の想いをここで伝えたらきっと

 

優馬「俺のことを優先に考えちゃうんだもんなぁ…」

 

俺は俺自身の想いを中心に皆に考えて欲しくなかった。

そして彼女たちの意志を優先的に考えて欲しい、そう思っていたからあの時は何も言う事はなかった。

 

優馬「結局、何が正解なんだろうな…」

 

どちらも大切なライブだからこそ、失敗は許されない。

だからこそ、どちらか一つを選ばなくてはならない。

実際、そう思う。

二兎追う者は一兎をも得ず、まさにその通りだから。

でも…大切だからこそ、捨てた時、後悔が残る。

やり残したことを後悔するのなら、どちらもやりたい。

その思いも分かる。

 

優馬「…不本意だけど」

 

そして、優馬はある人へ電話をかけた。

 

優馬「もしもし…」

聖良『も、もしもし!…どうされましたか?』

優馬「…いや、ちょっと相談に乗っていただきたくて」

聖良『っ!…め、珍しいですね。全然大丈夫ですよ』

優馬「それじゃあ、手短に済ませましょう。お互い、時間も無いと思いますし…」

聖良『…はい。はぁ…つれないんですから』

 

俺はまず学校説明会と予備予選の事情の説明をした後に、グループ内での話の内容。

大切なライブだからこそ、どちらか一つを選ぶべきというリアリスト的な意見、むしろ大切なライブだからこそ、どちらも行うつもりで策を考えて、何とかして成功させたい、という願望が詰まった意見の話を聖良に話した。

 

優馬「と、言う事なんですけど…聖良さんだったらどっちの意見ですか?」

聖良『…』

 

どうやら真剣に考えてくれているみたいだった。

ライバル関係であるはずなのに、相談と言われれば真摯に対応してくれる。

少しずつ彼女への態度を改めなければならないな、と思わされていた矢先

彼女から返答が返ってきた。

 

聖良『…私は後者の意見に賛成ですね。』

優馬「…意外ですね。その、心は?」

聖良『学校説明会で魅力を伝え、何としてでも廃校を止めなくてはならないという大事な目的、そして予備予選で勝ち抜き、ラブライブで優勝したい…いや、する、という目標。その想いはきっとどちらも同じくらいの大きさじゃないですか?』

優馬「…そう、ですね。」

聖良『だとしたら、捨てなくていいと思います。どうせならどっちも成功して、大躍進!なんていう思い切った夢、見たいじゃないですか。』

 

聖良から言われた言葉、その全てが俺の考えの的を得ていた。

だが、それ以上に彼女からそんな言葉が出るのが意外で、思わず吹き出してしまった。

 

優馬「…ははっ、意外と聖良さんってロマンチストなんですね?」

聖良『う…///からかわないでください…///』

聖良『ただ…そうですね。かけがえのない、大切なものはなんとしてでも手にしたいんです。きっとそれは、優馬さんも同じでしょう?…例え、それが望みの薄いものだと分かっていても』

優馬「え?最後なんて…」

聖良『とにかく!…もっとロマンチックな展開を望んでも良いと思いますよ?そちらの方がかっこいいですし、ね?』

 

そう言って、彼女は電話を切った。

最後に言われた言葉が少し気にはなったが、それでも話していてようやく俺自身の中で考えがまとまったような気がした。

それと同時にふとあることを思い出し、2つのライブを行うその方法のピースがようやくはまった感覚に陥った。

 

優馬「…これなら」

 

千歌たちの答えはどうなったかは分からないが、とにかくこの答えを一刻も早く言いたい。そう思いつつ、優馬は眠りに着こうとした。

 

優馬「あ、お礼、言いそびれたな」

 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

そうして、一日明けて今日。

千歌の答えを聞く時間となった。

 

優馬「…答えはまとまった?」

千歌「…うん。じゃあ話すね。」

 

千歌が考えた方法は学校説明会と予備予選を二手に分かれて行うというものだった。

 

梨子「私たちは1人じゃない…9人いる。それなら二手に分かれた方が妥当なんじゃないかな…って」

 

どちらも大切でどちらのライブもしたい、となるならこの方法が一番だろう。

しかし、やっぱり気になるのは…

 

善子「…それで、“Aqours”と言えるの?」

 

間違いない。それは俺自身も感じていた。

この方法が確かに無難なやり方であり、唯一の方法だっただろう。

しかし、Aqoursというグループは9人がいてこそであり、1人でも欠けてしまったら、それはもはやAqoursではないという想いは強いのだろう。

それに…

 

鞠莉「それに…5人で予選を突破できるか、と言われると正直、分からないデース…」

 

不安。

やはりその要素が一番強いだろう。

今までのライブも9人でやってきて、しかし、大事な局面で5人となるとパワーも半減に近い。

となると、余裕で予選を通る力がない限りは予選突破というのは非常に難しいものになるだろう。

そんな不安だ。

 

千歌「…」

 

結局、答えは出ず…といったようで、以前と同様の重苦しい雰囲気が漂ってきてしまった。

このままにしてしまうと、全員の心が持たない。

彼女たちのモチベーションにも関わってくる以上、この局面をどうにかして変えなければならない。

 

優馬(…これじゃだめなんだ。千歌らしくない。)

 

優馬「善子の言う通りだ…その方法は一番効率的だけど、それじゃダメなんだよ。」

千歌「…じゃあ、どうすればいいの!?…優くんも…捨てろっていうの?」

 

優馬(そうじゃない、そうじゃないよ…)

 

今までの俺であったなら、迷うことなく捨てろと言っていた。

しかし、温かみを知って、輝きの兆しを知って…俺はこの9人じゃないとダメなんだ、ということに気付いたんだ。

 

優馬「捨てないよ。なんならどっちのライブにも9人で出る。」

梨子「え…?」

優馬「逆に聞きたいんだけど、千歌たちは諦めたくないんだよね?」

千歌「…もちろんだよ。」

優馬「…それは奇跡を起こせない、としても?」

梨子「…うん、だって今までだって私たちは奇跡を起こせなかったもの…だから、私はどんな策でも一番良いって思えるならその方法で精一杯頑張るしかないもの。」

 

そう、梨子が言い切った時だった。

皆の視線が俺の方を向いていた。その目には闘志を燃やして。

 

優馬「…はは…あはははは!」

曜「ゆ、優?」

優馬「…ほんと、“Aqours”らしいね。諦め、悪すぎだよ。」

 

優馬「でも…安心した。」

 

どんなに絶望した状況でも、彼女たちは諦めていなかった。

彼女たちは今までも奇跡を起こせたことなど、一度もなかった、ということを知っているから。

それでも輝きの向こう側に辿り着くために必死にもがいて、諦めなかった自分たちを知っているから。

 

優馬(あぁ…そんな彼女たちだから、俺はきっと好きになってしまったのかもしれないな…)

 

優馬「…俺から一つ策を考えてあるんだけど、聞いてもらってもいいかな?」

 

 

~予備予選当日・予備予選会場~

 

優馬「…」

千歌「…優くんっ」

優馬「千歌…」

千歌「見て見て!どうかなぁ、この衣装!…似合ってる?」

優馬「うん…すごく…綺麗だよ。」

千歌「えへへ…♡」

 

優馬「…」

曜「…不安?」

優馬「うおっ!?」

曜「ありゃ?驚かせちゃった、かな?」

優馬「い、いや…俺もぼうっとしてたから…」

優馬「不安、なのかな…やっぱりああ言った手前…」

 

梨子「大丈夫よ、きっと!」

優馬「梨子…」

梨子「だって…優くんが本気になって、今まで選択を間違えたことなんてなかったもの!」

優馬「…でも、俺だって神じゃないし、間違えることだって…」

 

ダイヤ「もうっ!うじうじしているなんて、優らしくないですわよ?」

優馬「ダイヤ…」

ダイヤ「例え、これが間違えていたとしても、私たちと優の想いで、正解にして見せますわ…」

優馬「想い…」

 

鞠莉「そうデース!」

優馬「鞠莉?」

鞠莉「もうここまで来たもの…正解とか失敗とか…気にしないで?」

果南「そうそう!私としては、ここまで綺麗に着飾ったんだから、少しは見入って欲しいけどな~?」

優馬「…鞠莉も果南もすごく綺麗だよ?見惚れちゃうくらいだ。」

鞠莉・果南「「あう…///」」

 

花丸「もう不安は消えたずら?」

優馬「マルちゃん…うん、そうかもね。」

 

善子「ほんと、こういう時は一番、弱気なんだから…今日はこのヨハネ様がついているのだから安心なさい!」

優馬「善子…うん、ありがとう…」

 

ルビィ「…行ってくるね、お兄ちゃん」

優馬「ルビィちゃん…」

ルビィ「ルビィの想い…精一杯、お兄ちゃんに届くようにするから!」

優馬「…はは、楽しみしてるよ」

 

千歌「それじゃあ…行こう!次のステージに向けて!!」

優馬「ああ…行ってこい!皆!」

 

 

~《MY舞☆TONIGHT》♪~

 

演奏が終了した…

すると、周りの多くの観客からたくさんの拍手が

もちろんその光景にも感動するのだが、勝負はここから。

 

優馬「よし、皆!走るぞ!」

「「「「「「「「「うんっ(はいっ)!!」」」」」」」」」

 

~ミカン畑~

 

そうして向かった先、それはクラスメイトが所有するみかん畑へと来ていた。

なぜ、ここに来たのか、それは

 

優馬「本当、悪いなぁ…」

「も~、そんな気にしなくていいのに!私たちだってライブやって欲しいもん!」

優馬「あはは…本当、恩に着るよ…」

 

優馬が考えた案というのはみかん畑に設置されていた収穫用のエンジントロッコを使用して、一気に移動する、という大胆な案だったのだ。

 

優馬「…じゃあ、行こうか!」

曜「うぅ~~!全速前進!ヨーソロー!!」

 

「「「「「「「「「「…」」」」」」」」」」

 

全く進まない。

重量オーバーなのだろうか、そもそもスピードがあまり出ないのか。

その時だった。

 

果南「…あーもう!もっとスピード出ないの!?」

 

ガチャン!!

 

優馬「…あ」

果南「…ゆ、ゆう~…どうしよう、取れちゃったよ~!」

 

「「「「「「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」」」」」」

 

果南が思いっ切りレバーを引くと、そのレバーは見るも無残にぽっきりと取れてしまった。

すると、途端にスピードが上がり、大加速。

とてつもないスピードでみかん畑を駆け抜けていった。

 

優馬(ま、まぁ…スピード出たからいっか…)

 

 

優馬「で…こうなったわけなんだけど…」

花丸「ぜぇ…ぜぇ…い、意外と遠かったずらぁ~…」

優馬「も、申し訳ない…」

梨子「あ、あはは…ほんとね…」

千歌「ゆ、優くんもミスするんだねぇ~」

優馬「悪かったな…人間なんだよ…」

 

俺たちはまだ走っていた。

まさかのトロッコが俺の想定していたコースよりも手前で止まってしまい、学校とまだ距離があったのだ。

 

善子「こ、これ…間に合うの!?」

曜「分からないけど…走るしかないよね…!」

鞠莉「優、へこんでる?」

優馬「…あはは、全然!」

ダイヤ「げ、元気ですわね…」

果南「だね…」

 

何かに一生懸命に無我夢中で何かを成し遂げようとしている。

周りから見たらそれだけかもしれないけれど、それでも心を閉ざしていたあの頃から思えば、とても美しいものに思えた。

 

優馬「…奇跡、起こしに行こう!」

 

 

~浦の星学院・校庭~

 

~《君のこころは輝いているかい?》♪~

 

やっぱり俺たちはどっちにするか、なんて選べない。

迷うには迷うけど、想いはどっちも叶えたい。

それだけ、俺たちは貪欲だ。

 

優馬「輝くためには多少の強引さも必要、ってね」

 

俺たちはこれからの道、どんな困難が起きても諦めない、諦めたくない。

あの悔しさをもう、味わいたくないから…




いかがだったでしょうか?
とりあえずこの話も一段落着いたので、また今度はアンケート結果を反映し、小ネタを創作していきたいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もまたよろしくお願い致します。


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第53話 悲しき愛に過去と共に深く溺れる話

こんにちは、希望03です。
投稿が遅くなってしまい、申し訳ございません。
今回は小ネタ、というよりも曜ちゃんと千歌ちゃんが実は過去に…といったものの話です。
ちょっとシリアス、悲しめなところもあります。

それではどうぞ。


 

~浦の星学院・2年教室~

 

優馬「あー…もう疲れた…」

千歌「優くん大丈夫?良かったら千歌の家でお泊りする?温泉入ると疲れが癒されるよ?」

梨子「千歌ちゃん…さらっと家に誘おうとしてるよね?抜け駆けしようとしてる?」

千歌「何のことかなぁ?それに恋は戦争って言うんだよ?今さら抜け駆けがどうのこうので揉めてるような梨子ちゃんはもう遅れてると思うんだよね~?というより、心狭すぎ。」

梨子「…は?」

曜「…まぁこの2人は置いといて、本当に大丈夫?いつもの優に戻ってるけど…」

優馬「それっていつもの俺が大丈夫じゃないみたいな言い方だね?これがデフォルトだよ…」

 

今まで働き過ぎた、というよりも生活に色が付きすぎて、いつになくはしゃいでしまっていたのだが、結局のところ、これが普通の姿だ。

極力、生活にも勉強にも力を使わずになるべく穏便に暮らす。

普段の俺は平々凡々万歳なのだ。

しかし、今までが色々ありすぎて、恐らく今までの10年分くらいの活力では働いていた。

その反動が今、俺自身に来てしまっている、というわけだ。

 

優馬「あー…次の授業寝るわ…」

曜「え!?駄目だよ!せっかく最近はやる気出してるんだから!」

優馬「と言ってもなぁ…完全にガス欠なんですよね~…」

曜「はぁ…優ったら…」

優馬「分かって、くれる?」

曜「っ!///う、うん…今日だけだからね!?///」

優馬「ありがとー…」

 

と、俺はそこで眠すぎて意識がシャットダウンされた。

その後に曜が言ったことも聞き取れぬままに。

 

曜「…その代わり、今日の授業はちゃんと私が責任もって教えるからね?♡」

 

~放課後・2年教室~

 

今日一日の授業も終わり、今日は疲労回復という目的のために練習も無い。

つまり、俺にとってのパラダイスなのだ。

早速、家に帰る準備をして、今日は学校でゆっくりしようと決めていた。

しかし、帰ろうとした矢先、千歌と梨子が現れた。

 

優馬「…俺、帰るんだけど?」

千歌「駄目だよ!今日一日、優くん疲れてるもん!温泉でゆっくり休んでもらうんだからね!」

梨子「違うよ、千歌ちゃん。今日は私の演奏を聞いて、心を癒してもらうんだから。邪魔、しないでくれる?」

千歌「は?話はあの時、千歌の家って決まったじゃん。勝手に過去を捏造しないで?」

優馬「揉めてるなら、もう帰るけど…」

梨子・千歌「「駄目!!」」

 

もはや逃げ道無し。

帰ろうにも帰れずに途方に暮れていると、どうやらその光景を見ていたらしい人物がこちらに駆け寄ってきた。

 

曜「…優、こっち来て!」

優馬「え?うおっ!?」

千歌「あ!優くん!?」

梨子「ちょっと曜ちゃん!!」

 

近づいてきたように連れられてしまった。

一応俺も男ではあるのだが、やはり日ごろのトレーニングの成果なのだろうか。

俺は抵抗できずに(というよりもしなかったが正解)曜に連れ出された。

 

~内浦・バス停前~

 

あれから千歌と梨子を撒いて、俺たちは帰路についていた。

というよりも俺はこのまま家に帰りたいのだが、どうにも曜が離してくれない。

なぜだか分からないが心なしか曜の握りしめる手がより一層、強くなっていた気がする。

まるでもう離さない、と言っているかのように。

 

優馬「曜さん…?あの~…もう手を離して欲しいんですけれども…」

曜「~♪~♪」

優馬「え~っと…俺の家、バス使わないから手を…」

曜「…優」

優馬「はい!?」

曜「私、昼休みの時に約束したよね?」

優馬「や、約束?」

 

果たしてそんな約束をしていただろうか。しかも昼休みという割と最近の出来事。

しかし、今日の事を思い出しても寝ていた記憶しかない。

辛うじて覚えているのは俺が寝る間際で、千歌と梨子が喧嘩していたような記憶しかないのだが。

 

優馬(…あ)

 

そう言えば、朧げに曜が何かを言っていたような気がしなくもない。

しかし、その内容を全く覚えていない。

我ながら酷いものだ。

 

曜「…覚えてない?」

優馬「…い、いやぁ」

曜「…そういうとこ、やっぱり優だよね」

優馬「ごめん…」

曜「しょうがないから教えてあげる!」

曜「あの時、優がものすごく眠そうだったのに、目の前で千歌ちゃんと梨子ちゃんが大声出して喧嘩してたんだ。」

優馬「あー…うん。それは覚えてる。それで?」

曜「うん、それで…私が声をかけたのは覚えてる?」

優馬「あー…覚えてる。なんか、それで寝かせてくれたような…」

曜「そうそう!でも、その前に私が約束したの。」

曜「…私が家でゆっくり休ませてあげる…って!♡」

優馬「マジか…」

 

曜はあの時の出来事と共に俺が問う言う約束を取り付けていたのか、というのを教えてくれたわけなのだが、どうにもそんな約束をしていたらしい。

いくらあの時の思考回路が睡魔によって曖昧だったとして断ったとしたら折角こう言ってくれた曜に申し訳ない。

 

優馬(…俺が悪いな、これは)

 

こうして曜は俺の思いを察したのか、にこりと顔を変えて、また手を握りしめ、丁度来たバスに乗り込み、曜の家へと向かった。

俺もこれには抵抗せず、今回は仕方ない、と割り切り、曜に流されるように家へと向かったのだった。

 

~曜家・玄関~

 

優馬「お邪魔します…」

 

いくら俺の周りが女の子しかいないとしても、女の子の家に上がる、というのは中々に勇気のいる行動だと思う。

 

曜「そんなに畏まらなくてもいいのに、面白いなぁ」

 

いや、流石に固くもなるだろう。

思うだけで、言葉には出さないのだが…

 

曜母「いらっしゃい…って優君?」

優馬「こんにちは、お邪魔させていただきます。というより、僕の事をご存じだったんですね?」

曜母「あら?覚えてないのかしら…まぁいいわ!なんせ、曜がいつも優君のことを楽しそうに話しているから…はっ!ここに来たということは曜のことを…?」

曜「ちょ、ちょっと、も~~!!お母さんは黙っててよ~!」

優馬「あはは…まだそんな年でもありませんから…」

曜母「ふ~ん…じゃあ年が経ったら貰ってくれるのかしら?」

優馬「はは…曜には僕以上に素敵な人が見つかりますよ。」

曜「…」

曜母「そんなことないわよ~…ま、いつでも待ってるからね?」

優馬「あははは…」

 

こういう手は苦手だ。

どう対処すればいいのか分からなくなる。

それに…

 

優馬(曜をお嫁さん、ね~…)

 

ふと、曜のお母さんに言われ、曜を意識してみる。

やはり可愛いのだ。

スタイルも抜群で、それでいて性格もいい。

頭も割と良く(失礼)、全てが完璧超人か、と言われれば意外とそうでもなく、愛おしく感じる部分もある。

 

優馬(俺にはもったいないくらい、というか…俺と住む世界違いすぎるんだよな…)

 

正直、曜と自分では釣り合わない。

それくらいに自分との格差に俺自身が気付いてしまい、心なしか、メンタルが落ちてしまった。

しかし、顔に出てしまっては曜に気を遣わせてしまうかもしれない。

何とか顔に出ないように気を付けながら、俺は曜の部屋へと向かった。

 

~曜side~

 

あそこでお母さんが出てくるなんて思わなかったけど、かなり良い方向に結んでしまった。

あれだけ言われれば、流石の優も意識せざるを得ないだろう。

別に自分を自慢するわけでもないが、やはりスクールアイドルをしている分、そこそこプロポーションには自信がある。

この事については千歌ちゃんも一緒だけど、優と実はちょっとした幼馴染でもあり、距離も近しい。

 

曜(ま、本人は覚えていないけど…)

 

それはそれとして意識してさえくれれば、あとはこっちの攻め次第で割と優も落ちる可能性がある、ということ。

 

曜(今日は…攻め時、だね…覚悟決めないと、だ…)

 

そう、絶好のタイミング。

まるであの時の思い出が蘇ってくるかのように。

 

 

~曜家・曜の部屋~

 

今考えてみたら、曜の部屋にお邪魔するのは初めてかもしれない。

やはりこういう所も彼女は完璧なのだろうか、部屋は綺麗に片付けられていて、ゴミや塵一つさえ落ちていない。

とは言え、無機質な部屋というわけでもなく、普通の女の子の部屋、といったところだった。

 

曜「…あのー…あんまりじっくりと見られると照れるというか…///」

優馬「…ごめん、気が利かなかった。」

曜「う、ううん!///だい、じょうぶ…///へ、部屋に男の子あげるの何気初めてだから…///ちょっとそわそわしちゃって…///」

 

思わず、部屋を見渡してしまっていたのだが、曜の一声でここが知り合いの女の子の部屋ということに改めて気づかされた。

 

優馬「…」

曜「…」

 

ゆっくり休むという名目でとりあえず曜の部屋までついてきたわけなのだが、やはり、と言うべきか、いつものように話すことができない。

いつもなら千歌や梨子、善子や鞠莉など、基本的に曜とAqoursメンバー、一緒に行動を共にしていることが多いため、いざ、2人きりともなると上手く話すことができなかった。

何か話題を探すかのように、ある程度配慮しながら辺りを見渡してみるとふと、気になるものを見つけた。

 

優馬「…ねぇ、曜」

曜「ん?どうかした?」

優馬「机の上に置いてあるその写真って…」

 

少し遠くて見えないのだが、どうやら小さい女の子が2人とその友達だろうか、男の子が1人の仲睦まじい様子が写された写真が立て掛けられていた。

 

優馬「曜の友達?一人はオレンジの髪型だから恐らく千歌だろうけど…」

 

女の子について、推測は簡単だった。

余りにも髪型や髪色が変わっていないから。

しかし、男の子についてはどこかで見たことがあるような感覚だったのだが、結局分からなかった。

 

曜「…千歌ちゃんと私なのは正解。でも、覚えてないんだね?優“くん”」

優馬「曜…?今、“くん”付けして呼んだような…」

 

その時だった。

 

優馬(っ!?)

 

俺の頭の中でとてつもないスパークが起きた。

まるでぽっかりと空いていた記憶の穴が急速に修復されるそんな感じ。

その穴を勢いよく修復するように記憶が蘇っていった。

 

優馬「ま、じか…俺は2人にも会ってたのか…」

 

それは辛い過去の記憶を封じるかのように蓋をしていた遠い遠い過去の話。

俺がまだ内浦にいた頃の話。

今年になってようやくその蓋も外れ、その記憶はゆっくりと戻っていったはずだった。

しかし、未だその記憶の中にあった穴。

その穴こそ、千歌と、曜との出会いだった。

 

曜「良かった、思い出してくれたんだね…ようやく。」

優馬「…ごめん、今まで、気づけなくて」

曜「ううん、大丈夫。むしろ思い出してくれて嬉しいくらいだから、ね。」

 

そういう割には曜の顔はどこか浮かない顔を浮かべていた。

何かまだ、俺が思い出せていないことがあるかのように。

 

曜「…優くん」

優馬「…その呼び方はなんか恥ずかしい」

曜「ふふっ、良いじゃん。なんか昔に戻ったみたいで。」

 

すると、気づいた時には曜が目の前にいた。

動悸が止まない。

それもそうだ。アイドルをしている友人が触れられるくらいに近い距離で目の前にいるんだ。

どんな男でも昂ってしまう。

すると、曜が悲しげな顔をして問いかけた。

 

曜「昔はこうやって…一緒に遊んだよね、楽しかったなぁ…」

曜「…でも、まだ優は思い出せていないものが一つあります。それは、なんでしょう?」

 

思い出せていないもの。

未だ思い出せていない何かがあるのだろうか。

まだ内浦にいたあの頃。

それは鞠莉や果南、ダイヤに…奏姉さんといたあの頃と同時期に出会ったであろう千歌と曜の存在。

同じように遊んだあの頃に加えて、未だ思い出せていないものがある…と言われても俺は結局、思い出せずにいた。

 

曜「…時間切れ。今こうしている間にもきっと皆は探し回っていると思うから、もう言っちゃうね。」

曜「正解は、この家、そして私のこの部屋に来たのが今日、初めてじゃないということだよ。」

 

優馬「え…?

曜「あれだけ昔の事だったから覚えてないのも無理ないと思うけどね…実は優、ここの部屋に来たのってもう何十回もあるんだよ?」

曜「しかも、ただ遊んでただけじゃない。ハグやキス…色々なことを何回も…ファーストキスだって、実は私なんだよ?…ふふっ、あははっ!♡」

優馬「…なんで、そんなことを」

曜「なんでって…優がよく言ってた人、えーっと…奏さん、だっけ?その人ともっと近づけるようになりたいって言うから、その練習台で私がずっと付き合ってあげてた…その反応からして本当に何も覚えてない、って感じだね。」

曜「辛かったなぁ…私は会った時からずっとずっとずっと、一目惚れだったのに…まさかの練習台、なんて踏み台そのものになるなんて、さ。」

 

その時、俺は違う意味で動悸が止まらなかった。

自分がそんな浅ましい理由でこの場所に来て、そして彼女を無邪気に傷つけていたなんて

そんなこと、想像もしていなかったから…

 

曜「…もしかして、気に病んでる、かな?」

優馬「…ごめん、本当にごめん。」

 

曜「…確かに悲しかったけど、でも嬉しかった。だって、あの時、あの空間、あの一瞬だけでも、私は優を独占できた。例え、それが練習台だとしても、私は優に満たされている感覚を覚えて、悲しさよりも嬉しさが勝った。」

 

曜「千歌ちゃんはあの頃、色気より食い気なところがあったから優のことはただの友達だと思っていたかもしれないけれど、私は違った。」

 

曜「初めて優と会ったその時に一目惚れをして、初恋をして…」

 

曜「ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと…」

 

曜「優と結ばれることを信じてた…」

 

曜「なのに…優は消えた。何も、言わずに。」

 

優馬「…」

 

俺が消えたことで傷ついてしまっていたのは鞠莉、果南、ダイヤの3人だけかと思っていた。

しかし、それは間違いだった。

俺はもう1人、傷つけてしまっていたのだ。

俺の、独善的で、無責任な行為で…

 

曜「せっかくこうしてまたあの時と同じ状況になってるから、さ…」

曜「2人でまた、堕ちるところまで堕ちよう…?」

 

その声はまるでゆっくり、ゆっくりと底の見えない何かに深く、深く溺れてしまう。

普段の曜からは考えられない程の妖艶な声だった。

そして俺は耐えきれずに堕ちてしまう時だった。

 

千歌「優くん!!」

 

 

それはまるで光が気まぐれに深淵へと差し込んだその瞬間そのものだった。




いかがだったでしょうか?
曜ちゃんが実はかなり溜め込んでたようでここに来て、爆発しましたね。
この計画はかなりぶっつけ本番です。
思い立ったのはまさに昼休みのあの時間。
まだその時は決意が揺らいでましたが、母親の一言で意識がこちらに向いたことを機に決意を固め、ここに至った、というわけですね。
救世主、高海千歌は曜ちゃんとどう対峙するのか…
それは次回の話で。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もまたよろしくお願い致します。


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第54話 芽生えた想いは成長し、やがて美しく妖艶な花を咲かせる

こんばんは、希望03です。
小説を投稿するのも最近、やっとになってきました。
今回もなんとか投稿ができ、ひとまずほっとしています。
それではどうぞ


~曜家・曜の部屋~

 

千歌「優くん!!」

 

意識が朦朧とする中、そこに現れたのは千歌だった。

なぜここにいるのかは分からないが、とにかく千歌は今の俺の姿を見て、状況をすぐに把握したのか、すぐさま俺の上に跨っている曜のことを突き飛ばし、俺の手を掴み、その場から離れていった。

 

曜「…あーあ、失敗しちゃった。」

 

 

~バス内~

 

千歌「…」

優馬「…」

 

曜の家から2人で飛び出して、約数分後、俺たちは内浦行のバスに乗車し、帰路についていた。

しかし、どちらとも喋る気配はなく、ただただ沈黙が過ぎていった。

すると、千歌から声をかけられた。

 

千歌「…ねぇ、優くん?」

千歌「なんであんな状況になってたの?」

 

やはり気にしていたのだろう。

それもそうだ。幼馴染である2人が自分を置いて、あんなことになっていたのだ。

心配でもあり、取り残されているという疎外感が強かったのだろう。

 

優馬「…今日の昼休みに曜の家に行く約束をしてたんだ。」

優馬「あまりにも疲れていた俺に気を遣って、曜の家でゆっくり休ませてあげるって話をしてくれたんだ。」

千歌「…それで曜ちゃんの所に行ったの?」

優馬「そう。でも、あまり休めなかったというか…俺も俺で緊張してて、ふと周りを見渡したら、千歌と曜、そして…俺との写真を見つけたんだ。」

千歌「…そう、なんだ」

優馬「まさかと思って聞いてみたら、俺ら、昔に会ってたんだってね…」

千歌「…うん、そうだよ。やっと思い出してくれたんだね。」

優馬「本当、遅くて申し訳ない…」

千歌「じゃ、じゃあ…昔の千歌の事とかも、聞いたり…?」

優馬「う、うん…曜が言ってたのは千歌は色気よりも食い気なところがあって、俺のことを昔は友達としてしか見てなかった、としか聞いてなくて」

 

その時だった。

隣で千歌がハッとしたように目を見開いて、俺の方を見ていた。

 

千歌「なに、それ」

優馬「え?」

千歌「友達としてしか見てない…?」

優馬「違う、の?」

千歌「…それ、曜ちゃんに騙されてるよ」

 

その事実に驚きを隠せなかった。

どうやら実際には千歌も当時の曜と同じくらいに俺のことが好きだったみたいで、同じように片想いを拗らせてしまっていたらしい。

 

千歌「…千歌もね、優くんと出会った時からずっとドキドキが止まらなくなって、でもこのドキドキが一体何なのか、分からなくて、でも嫌なものじゃなくて、むしろ心地良いもので…本当に分からなくなっちゃってたんだ。」

 

千歌「だから、お母さんに聞いてみたの。優くんの顔がずっと離れない。顔を見る度にドキドキする。優くんに会うと心が跳ね上がるくらいに嬉しいけど、心が苦しいって」

 

千歌「そしたらね、お母さんが教えてくれたんだ。これが“好き”ってことなんだ、って。」

 

千歌「だから、それ以来、ずっと優くんの事、意識しちゃってたんだよ?」

 

聞いていると、千歌も同じタイミングで好意を知り、そしてその想いの拗らせ方と言うのもほとんど同じだったのだ。

 

千歌「千歌はね。優くんと結ばれるのは運命だと思ってたんだ。だってこんなにずっと好きだったんだもん。」

 

千歌「…前にさ、曜ちゃんと千歌を救ってくれた時あったよね?」

優馬「うん…」

千歌「あの時に優くんが私たちのことを大切な存在だ、って言ってくれた時、すごく嬉しかったんだ。」

 

千歌「今までにないくらいドキドキしたし、そばから離れるなって言葉ですごく期待もした…」

 

千歌「それくらいに優くんのことが大好きで、愛してるの」

 

それはそれは千歌の性格からは考えられないほどの重たい愛のアプローチだった。

重いとはいえ、やはりこんな美少女から昔から好きだったと言われると、やはりドキドキはする。

しかし、結局は曜の時と一緒だ。

自分と言う存在は曜にとっても、千歌にとっても相応しい人物でないのだ。

 

優馬「…ありがとう、でも俺は、その想いには答えられないんだ。」

千歌「っ!なんで!」

優馬「…この辺で降りるね。」

 

そうして俺は先にバスを降り、俺は後ろを振り向かず、真っすぐと家へと向かった。

バスの中では千歌が俺の背中をずっと追いながら、唇を地で滲ませてしまう程に噛み締めていた。

 

 

~曜の部屋・曜side~

 

一方、その頃、曜は、というと意外にもあっけらかんとしていた。

曜の考えとしては千歌、もしくは梨子あたりのどちらかが家に来るということは想定内であったために、この状況は正直、分かりきっていたのだ。

ただ、盗られてしまったのは腹が立つ。せっかく良いところだったのに、邪魔してくるなんてたまったもんじゃない。

しかし、ここで怒りをぶちまけても仕方ない。怒りを抑え、落ち着かせ、とりあえずベッドへと腰を掛けた。

 

曜「はぁ…♡…ふふっ♡」

 

昔から抱えていた想い、そして以前、優馬からもらった一言。

そして、今日の出来事…

意識して、されての関係には十分なほどのものは作り上げられた。

そして、それと同時に曜にとってはますます優馬への好意というのが増していく一方だった。

 

曜「でもなぁ…」

 

しかし、優馬のみの相手だったらまだしも、曜の相手はそこではない。

ここに来て、千歌や梨子、Aqoursメンバーがやはり自分自身にとっての弊害へとなりつついた、ということを曜は自覚していた。

この優馬争奪戦でいかにリードを奪うか、そしてどう奪い去るか、勝ち取るか。

曜はまたの機会に向け、考えを巡らせるのだった。

 

曜「優“くん”…♡」

 

 

~内浦・路上~

 

俺は今、ひどくやつれている顔をしているだろう。

折角、休むと言っていたのに、これでは灯台下暗し、である。

曜のあの一件もそうだが、俺はあの出来事に加えて、千歌と曜が幼馴染同士ということを忘れてしまっていたうえ、曜に迫られて、何もできず、むしろ抵抗もせずに、半ば諦め、受け入れようとして、自分の意志を放棄してしまった。

さらには最終的に千歌や曜の気持ちから逃げ、踏みにじってしまったことに対して、俺は罪悪感を募らせていた。

すると、目の前から見たことのあるシルエットが歩いてきた。

 

梨子「優、君…?」

 

その相手と言うのは梨子だった。

恰好から見るに、完全に部屋着と言った様子でふらっと散歩にでも言った様子に伺えた。

声をかけられたが、今の俺ではいるのが分かっていても反応ができず、ただただ呆然と立ち竦んでしまった。

 

梨子「優君、どうしたの…?」

 

再度声をかけられて、またハッとする。

しかし、何も答えられない。そんな状況が嫌で俺はまた逃げようとしてしまった。

 

梨子「待ってよ!!」

 

梨子の力は意外にも強かった。

俺は梨子に引き留められてしまった。

 

梨子「…なんでまだ帰ってなかったの?何かあったの?」

優馬「質問に質問で返す用で申し訳ないけど、逆に梨子はなんでここにいるの?」

梨子「そっか…それもそうだよね、ごめんね。」

梨子「私はね、時々、作曲に行き詰ったら海の音を聴きたくなるの。それで少し歩いて、海岸沿いの方にまで散歩してきたの。」

 

どうやらその通りっぽく、履いているサンダルには若干の砂浜でついてしまった砂がついているようだった。

 

梨子「じゃあ次は私の番。なんでまだ帰ってなかったの?何かあったの?」

優馬「…曜の家だよ。」

梨子「え…?」

 

俺はここで嘘をつくメリットもなかったため、素直に自分がいた場所を梨子に伝えた。

しかし、伝えたその時の梨子の顔は驚いた、と言うのもあるが、それと同時に一瞬、殺気が出ていたような感覚を感じた。

すると、梨子は突然、顔をにこやかな可愛らしい笑顔に変え、理由を聞き出した。

 

梨子「どうして、曜ちゃんの家に?」

優馬「…曜とは昼休みの時間に家に行くことを約束していたらしいんだ。」

 

そうして俺はここに来る前の内容を梨子に伝えた。

梨子はその話に対して、ただひたすら無表情でここまで引っ張ってきてしまった、と言うわけだった。

 

優馬(…怖い、な)

 

優馬は内心、震えあがり、恐怖を感じてしまっていた。

すると、梨子は俺が話している最中にその話を遮り、質問をまた投げた。

 

梨子「曜ちゃんに何かされた?」

 

確かに何かあった、それは間違いなくあった。

しかし、押し倒され、危うく、色々されかけた、ということを言ってしまうと、梨子は間違いなく逆上してきてしまう。

そんなことをしたくなく、俺はここで嘘をついたのだった。

 

優馬「何もされてないよ、流石に」

梨子「そっか…」

 

どうやら選択は間違っていなかったらしい。

梨子の表情はまた安堵に包まれていた。

それに安心し、俺は自分の家へと戻ろうとしたその時だった。

 

梨子「ここで会ったのも何かの縁だし、良かったら家に上がらない?お母さんとか大歓迎だと思うよ!」

優馬「…いや、いいよ」

 

そうして俺は最後の招待も断り、家へと戻ったのだった。

 

~内浦・海岸沿い・梨子side~

 

あの時、優馬は去って行ってしまった。

間違いなく、何かあったに違いないはずなのに。

考えれば考える度に心がどんどんと真っ黒に変わってしまう。

 

梨子「私が知らないところで一体何を…」

 

私は実のところ、海岸沿いを散歩していたわけじゃなかった。

私はあの時、嘘をついた。

 

実のところは私が帰った時には優君の部屋の明かりがついていなかったのを不審がり、ずっと隣にある優馬の家を監視していた。

なぜこんな時間になっても帰ってきてないのか、一体どこで何をしているのだろうか、まさか誰かの家で…なんていう妄想を重ね、余計な不信感が芽生えていたのだった。

 

梨子「…」

 

そしてその考えは的中。

優君は曜ちゃんのお家にいた。しかし、何をしていたのか、までは教えてくれなかった。

と言うことは何かあった、と言う裏返しでもある。

そんな事を思い、私はそっと強く唇を強く噛み締めた。




いかがだったでしょうか?
ここまで楽しく読んでいただければ僕としては嬉しい限りです。
しかし、正直なところ、少し疲れておりまして、投稿するのも書くのもしんどい状況にありますので、更新の早さには今後、期待しないようにお願い致します。
とりあえずここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第55話 再演

こんにちは、希望03です。
前書きという前書きは特にありません。読んでいただければ嬉しいです。
どうぞ。


 

~優馬家・優馬の部屋~

 

優馬「はぁ…」

 

曜の家で曜に迫られて、それを助けてくれた千歌からも迫られ、逃げて、ばったり会った梨子にも今日の事を問い詰められ、また逃げて…

迫られては逃げて、というのを繰り返していたおかげで俺の心身は心なしか悲鳴を上げていた。

正直なところ、明日も学校というのは辛い。

逃げ続けてきた俺のせいなのだが、彼女たちに会うのが気まずい。

行ったところでお互いに話せなくなるのではないか?

…まぁ、曜や梨子は意外にも気さくに話しかけてくれると思うが、千歌はどうだろうか?

意外にも繊細な千歌の事だ。

話すことはおろか、俺と目を合わせてくれることすら怪しいところだ。

 

優馬「はぁ…しんどいな…」

 

考えれば考える程、憂鬱になっていくし、思い詰めれば思い詰める程、自分を追い詰めてしまう。

 

優馬「今日はすぐ寝よう…」

 

時刻は18時。

夕食を食べるにしてもかなり早い時間ではあるのだが、もう俺には今日一日が重たすぎた。

夕食を食べて、ゆっくり風呂に浸かり、寝てしまおうと考えたその時だった。

 

「~♪~♪」

 

俺の携帯の着信が鳴った。

こんな唐突にかつ絶妙なタイミングでかかってくる電話といえば、恐らくは…

 

優馬(あの人だろうな…)

 

その予感は正解だった。

携帯に表示されていた名前には鹿角聖良、と表示されていたのだった。

 

優馬「…もしもし」

聖良『も、もしもし…!』

 

俺は何回も電話をしているためか、流石に聖良さん相手でも慣れてきたのだが…

どうにも聖良さんの反応を見るにまだ電話には慣れていない様子だった。

いい加減何回も繰り返してるんだから、慣れればいいのに…

なんて考えているのは、聖良さんには秘密にしておく。

 

優馬「それで…ご用件は?」

聖良『あ、えっと…予備予選のライブ、拝見させていただきました。』

優馬「…なるほど、それで?またダメ出しを?」

聖良『そんなつもりで電話はかけませんよ…私をどんな女だと思っているんです?』

優馬「いやぁ…腹黒い女?」

聖良『…へぇ』

優馬「…すみませんでした。」

聖良『…まぁいいでしょう。話が進みませんし』

 

流石に言いすぎた。

いくら聖良さんが相手とは言え、言って良いことと悪いことを履き違えてしまった。

一瞬、電話越しとはいえ、場が凍り付いたような気がして、気だけで殺されるかと思った。

 

聖良『それで予備予選でのAqoursのライブの事ですが…』

優馬「…」

聖良『すごく良かったです!!』

優馬「…そうですか、ありがとうございます。それでは」

聖良『ちょ、ちょっと待ってください!これで終わりなわけないでしょう!?』

優馬「え、でも話の大半は終わったも同然じゃありません?」

聖良『…まぁそうですけど』

優馬「…すみません、流石に調子に乗り過ぎました。それで?」

聖良『そうですね…』

 

そうして、聖良さんは俺が思っていた以上に、Aqoursのこの前のライブを絶賛してくれた。

どうやら長年、スクールアイドルをしている聖良さんの目から見てもかなりの出来だったらしい。

こうして聞いているとやはり俺だけの主観的な評価だけでなく、周囲からの第三者的な評価というのは非常に嬉しい。

しかも、ライバルであるSaint Snowからだ。嬉しくないわけがない。

しかし、ここまで純粋にライバル相手の素晴らしいところを評価できるというのは聖良の人徳の厚さなのだろう。

本当に感心するばかりである。

 

聖良『…きっと、予備予選、通過していると思いますよ。』

優馬「ありがとうございます。それでは…」

 

そうして、俺が電話を切ろうとしたその時だった。

 

聖良『ちょっと待ってください。』

優馬「…?」

 

内心、俺はまたかよ…と思ったのだが、聖良さんが発したその声はさっきのような感じではなく、ものすごく真剣な声色だった。

だからか、一瞬、俺は凄んでしまった。

 

聖良『…優馬さん、何か、また悩みを抱えてませんか?』

優馬「っ!」

 

見抜かれていた。

別段、聖良さん相手に声色を変えていたわけじゃなかった。

いつも通りを意識していたはずだし、そこまで会話はなかったはずだった。

しかし、彼女に見抜かれていたのだった。

 

優馬「…なんで分かったんですか?」

聖良『ふふっ、お姉ちゃんですから!ね?』

 

優馬(…なんだか、敵わないな。この人には。)

 

優馬「じゃあ…聞いてくれますか?」

聖良『…もちろん。』

 

そうして俺は今日起きた全てを聖良さんに話す覚悟を決めた。

 

優馬「実は昨日、Aqoursのメンバーでもある俺の友人に迫られてしまったんです。」

 

聖良『…は?』

 

優馬「その反応は仕方ないですよね、意味分からないでしょうし」

 

聖良『い、いやそうじゃなくて…ま、まぁそれは置いといて…それでその友人ってもしかして千歌さんの事…ですか?』

 

優馬「いえ、違いますよ。その幼馴染の渡辺曜という奴です。」

 

聖良『あぁ…あの子…』

聖良『…それで一体どうして?』

 

優馬「話すと長くなるんですけど…俺が予備予選やら学校説明会やらで動き過ぎて、学校で疲れ果てていた時でした。」

優馬「曜からそんなに疲れているなら私の家でゆっくりしていきなよ、と言われて、ほいほいとついて行ってしまったんです。」

 

聖良『…』

 

優馬「まさか曜からは何もされないだろう、と思っていたんです。でも俺のその考えは甘いものでした。」

優馬「俺も言われるまで気付かなかったんですけど、実は曜と千歌の2人と昔の幼馴染だったみたいで昔から仲良く遊んでいたみたいなんです。」

優馬「曜に関してはその時から、俺のことが、好きだった、と言われて…戸惑っていたら」

 

聖良『…迫られた、と。』

 

優馬「…そうですね、まぁ完全に俺の不注意でしたけど…」

 

聖良『それでどうしたんです?はねのけたんです?』

 

優馬「…いや、もう曜の想いに委ねよう、と」

 

聖良『…それは曜さんの想いを踏みにじるのをためらった、ということですか?』

 

優馬「…そうです。すみません、情けない男なんです。」

 

聖良『そんなことありませんよ…そんな追い詰められたら逃げ場がないでしょうし…』

 

優馬「ありがとうございます。そう言っていただけるだけで少し心が軽くなります。それで話の続きなんですけど…」

 

聖良『あ、はい…それで?』

 

優馬「もう完全に曜に主導権を握らせてしまった時でした。曜の部屋の扉が開いて、千歌が現れたんです。」

優馬「俺自身も何が何だか、分からないまま、千歌に助けられて、曜の部屋を出たんです。」

 

聖良『…』

 

優馬「単純に嬉しかったです。でも、バスの中でほっとして冷静になった時でした。」

優馬「千歌から曜の家にいた時のこと、そして何をされていたのか、というのを問い詰められました。」

 

聖良『あぁ…なるほど…』

 

優馬「嘘をつくわけにもいかないですし、ちゃんと曜の家にいた理由を伝えました。それと…千歌と幼馴染だ、ってことも」

優馬「でもその時でした。昔の千歌のことを話した瞬間、鬼気迫る表情をして、こっちを見たんです。」

優馬「…どうやら曜の言っていたことに嘘が含まれていたみたいで、俺に好意を持っていたのは曜だけではなかったみたいなんです。」

 

聖良『はぁ…』

 

優馬「…すみません、まるで自惚れのように語っていますけど、本当の事なんです。」

優馬「それで千歌からも」

 

聖良『迫られたんですね?』

 

優馬「…という程でもありませんでしたが、ずっと好きで、昔から結ばれる運命だと思っていた、と言われました。」

 

聖良『…それで受け入れたんですか?』

 

優馬「…そんなわけないじゃないですか、普通に考えてみてもスクールアイドルとして活躍している彼女と、俺とじゃ釣り合いませんよ…」

優馬「でも…振ることも無く、かといって受け入れるわけもなく、俺はその場を立ち去り、逃げたんです…」

 

聖良『…なるほど』

 

優馬「…ごめんなさい、まだ話が続くんです。」

 

聖良『いいですよ。それで続きとは?』

 

優馬「はい。千歌から逃げて、家に戻ろうとした時でした。」

優馬「目の前から梨子が現れたんです。」

 

聖良『…まるで狙ったように』

 

優馬「俺も俺でその時はもう心身共に疲労困憊で一刻も早く、家に帰りたくてしょうがなかったんです。」

優馬「でも、引き留められてしまったんです。よっぽどひどい顔していたみたいで。」

 

聖良『でも、引き留められた、ということは』

 

優馬「多分想像通りですよ。」

優馬「もちろん問い詰められましたよ。どこに行ってたの、と。」

優馬「でも、逃げました。彼女の好意からも。」

 

聖良『…』

 

優馬「…それで今に至る、というわけです。」

優馬「明日からどう接すればいいのか分からなくなってて、あはは…」

 

聖良『…上手く良いアドバイスは言えませんけど、これだけは言えると思います。』

聖良『もうそんなグループにいるのやめてしまえばいいのに』

 

優馬「え?」

 

聖良『あ、すみません、もうこんな時間…ここで切りますね?おやすみなさい』

 

すると、聖良さんは電話を切ってしまった。

 

優馬「やめて、しまえばいいのに…」

 

それができたら苦労はしていない。

でもやめてしまえばやめてしまったらで彼女たちが悲しんでいる姿を見るのは辛い。

結局、結果というのは何も変わらない。

 

優馬「はぁ…もう生きるの辛いな…」

 

その一言は誰にも届くことなく、消えていったのだった。

 

 

~翌日・浦の星学院・2年教室~

 

あれから夜が明けて、朝になり、学校に向かったが、やはりと言うべきか寝つきが悪く、この日もまだ疲労感が残っていた。

それでいて教室に入れば、周りの喧騒はいつもどおりなのだが、周りは心配しているような様子であった。

それもそうだ。

昨日の騒動のおかげでいつも仲の良い千歌、梨子、曜の三人がこの雰囲気を作っているのだから。

おかげさまでクラスの雰囲気もギスギスしてしまう。

どうにかしてほしいと言わんばかりにこちらを見ているが、俺にはどうすることもできない。

なぜならこれを作り出してしまった張本人でもあるから。

 

優馬「はぁ…耐えられないな…」

 

~放課後・スクールアイドル部部室~

 

時は放課後。

あれから何時間経っていたのだろうか。

この雰囲気、空気感は学校の終わりまで続いていた。

なんとか俺はこの空気を耐え抜いて、真っ先に部室へと向かった。

そして、俺は取り急ぎパソコンを開いた。

なんでか?

それは今日が予備予選の結果発表の日だからだ。

そうして俺が準備をしていると、徐々に1、3年生も部室へと集まり出した。

 

ダイヤ「あら…早いですわね?」

優馬「まぁ…なんだろ、居てもたっても居られなくて…ってとこかな?」

 

果南「ゆうもなんだか染められてるねぇ」

優馬「…そうかもね。」

 

花丸「良いことずら!それってつまり…オラの虜、ってことだもんね?♡」

善子「はぁ?何言ってるのかしら、このずら頭は?」

ルビィ「はぁ…不毛な争いだなぁ…お兄ちゃんはもうルビィの虜なのに…」

花丸「2人とも負け犬の遠吠えずらね。」

優馬「流れるように修羅場を作らないでいただけます?」

 

鞠莉「でも、優だけ?千歌っちとかは?」

優馬「…あぁ、ちょっとね。」

鞠莉「…ふぅ~ん?♡」

優馬「…?」

 

いつもの和やかな雰囲気が俺の中で戻りつつ、皆と話していると発表の時間となった。

 

優馬「…来ないな」

ダイヤ「…はぁ、もうしょうがないですわ。ここは先に見てしまいましょう?」

優馬「え、でも…」

鞠莉「もう!早く結果みましょ!気になって仕方ないの!」

優馬「…そう、だね。」

 

そうして俺は鞠莉の我儘加減に若干の憤りを感じつつ、ラブライブのサイトを開いたのだった。

 

優馬「…」

 

ゆっくりと流れる通過者。

まだAqoursの名前は出ない。

やはりこういう時間は少なからず緊張してしまう。

しかし、頭の中ではこびりついているかのように昨日の出来事がフラッシュバックされる。

なぜだか分からないが、どうしても彼女たちがいないことが気にかかってしまう。

すると

 

ルビィ「あ!」

 

後ろからルビィちゃんの声が聞こえた。

それに思わず驚きつつ、目の前の画面に意識を傾ける。

するとそこには通過者リストの中にAqoursの文字が見つかったのだった。

このリストに表示されている、つまりは

 

優馬「通った…」

 

 

予備予選の通過がこの瞬間、決まったのだった。

 

 

~浦の星学院・屋上~

 

時は遡り、優馬がちょうど急いで部室へと向かった時だった。

それと同時刻前後、屋上には3人のスクールアイドルが佇んでいた。

それがまさに千歌、梨子、曜の3人だった。

 

曜「…話があるからって、どうしたの?千歌ちゃん。」

 

梨子「…」

 

千歌「とぼけないでよ…全部聞いたんだからね?」

曜「…あー、優とのあの部屋での一件の事?それとも、昔話?」

千歌「…」

曜「それとも…全部?」

千歌「っ!」

曜「…あははっ、その表情…優から全部、聞いてるんだね~」

梨子「ねぇ…勝手に話を進めないで…どういうことなの?」

千歌「…昨日、優くんが放課後、居なくなったのは知ってる?」

梨子「うん、家見たら電気がついてなかったから…」

千歌「実はその時「私の家にいたんだぁ♡」…」

梨子「…は?」

曜「だって…昼休みの時、千歌ちゃんと梨子ちゃん、ずっと揉めてるんだもん。優が疲れ果てて、しんどそうにしてるのに…だから、私の家でゆっくり休んでもらおうと思って♡」

梨子「なにそれ…」

曜「…なに?優を独り占めするのがそんなに悪い?」

梨子「…」

 

曜「…千歌ちゃんも梨子ちゃんも…鞠莉ちゃんもダイヤさんも果南ちゃんも…花丸ちゃんも善子ちゃんもルビィちゃんも…」

 

曜「どれだけ優に甘えてたと思ってるの?」

 

曜「優は皆の甘えをマネージャーだからって必死に受け止めて…悲しませないように必死に動いてた…」

 

曜「なのに…皆は気づかないで…」

 

曜「独り占め?馬鹿なこと言わないで。私は優に少しでも休んでほしかっただけ。」

 

梨子「…でも、その気持ちに多少は私利私欲の考えがあったでしょ」

 

曜「あって何が悪いの!?」

 

曜「皆だってそうだった!私があれからまた我慢して…部活に、優のために打ち込んでいたのに、皆は違った!」

 

曜「…そうだよ。私だって独り占めしたかった。でも、皆とは違う。」

 

梨子「…」

 

千歌「…じゃあなんで過去の話を持ち出したの。言わなくても良かったじゃん!」

 

曜「優に見つかったんだよ。私たちの写真。」

 

曜「私が立てかけてる写真。それを見られて、事情を聞かれたの。」

 

千歌「…じゃあ、なんで嘘をついたの?」

 

曜「…嘘?」

 

千歌「昔から優くんの事が好きだったの、曜ちゃんだけだって…」

 

曜「あぁ…」

 

千歌「私、言ったよね!?昔、曜ちゃんに千歌が優くんの事、好きだって!」

 

曜「…」

 

千歌「それなのに…自分だけ良いように言っちゃってさ…」

 

曜「…だからなに?」

 

千歌「え…?」

 

曜「恋は戦争。千歌ちゃん、知らないの?」

 

千歌「そ、れはそうだけど…」

 

曜「そんなに言うなら自分が始めから言えばよかったのに…」

 

千歌「っ!」

 

梨子「とりあえずこの辺でやめておきましょ?ここで争っていても何も解決はしないと思うし…」

 

曜「…それもそうだね。じゃあ部室、戻ろっか。」

 

千歌「…」

 

 

その時、千歌の口からは一筋の赤く、綺麗な血が滴り落ちた。

誰にも気付かれることなく…




再演、これがまた一波乱起こすのか。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。


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第56話 諦めの悪い女たち

こんばんは、希望03です。
なんだかまた修羅場ってます。
一度救われた彼女たちの闇がまた出てきました。
どこまでも結局、好きな男が軸にあり、中心として回っているんですね。

それではどうぞ。


~浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

優馬「…通った」

 

予備予選通過者リストの欄。

そこにはAqoursの文字が書かれていた。

そう、彼女たちはこの瞬間、予備予選を無事通過できたのだった。

 

花丸「よ、良かったずらぁ!」

ダイヤ「…ふぅ、当然ですわね」

鞠莉「とか言って~…一番、緊張してたくせに~」

ダイヤ「な…!う、うるさいですわよ!」

果南「まぁまぁ、無事通過したんだし、良かったじゃん。」

ルビィ「良かったね!善子ちゃん!」

善子「くっくっく…やはりここに選ばれるのは天命による定め…」

花丸「あー…はいはい、そういうのいいずら」

善子「う、うるさいわよ!」

 

本当に良かった。

通過しないわけがない、と自分でも思っていたが、それでも内心は気が気でなかった。

もし、通過してなかったらどうしよう、という不安でいっぱいだったが、それでも彼女たちは無事通過できたのだ。

安心したし、つい、余韻に浸ってしまう。

そんな思いを抱えて、少しの間、肩の力を抜いていると部室の扉が開いた。

 

梨子「遅れてごめんなさい!」

曜「ごめ~ん!!」

千歌「…」

 

目線を扉へと移すとようやく2年生がやってきた。

何があったとはいえ、部室に来てくれたのは嬉しかった。

しかし、やはり安心と同時に昨日の気まずさがどうしても出てしまう。

 

ダイヤ「もう!遅刻ですわよ!!」

曜「ごめんなさい、ダイヤさん。ちょっと先生に呼ばれてて…」

梨子「そうなんです…この活動について、色々聞かれちゃって…」

果南「そうだったんだ…大丈夫そう?」

曜「うん!頑張って、って!」

果南「そっか、良かった良かった。」

 

こう見ていると、昨日の事は引きずっていなく、いたって普通に話していた。

もちろん、それはメンバーだけでなく

 

曜「ごめんね、優」

優馬「…あ、いや、だい、じょうぶだよ」

曜「…昨日の事なら、気にしないで、ね?♡」

優馬「っ!」

梨子「優君?どうかした?」

優馬「い、いや、なんでもない!」

梨子「…」

 

どうやら昨日のことはあまり気にしていない様子だった。

もっと引きずっているかと思っていたからか、正直、拍子抜けだった。

だが、それでもほっとした。しかし、何か引っかかる。

 

千歌「…」

優馬「…」

 

千歌の方を見ると、なんだか思い詰めているような表情をしていたのだ。

どうにも千歌らしい元気がない。さっき、ルビィちゃんとか花丸ちゃんが千歌に予備予選を通過した、という事を伝えたが、それに対してもあまり良い反応はしなかった。

それよりももっと、何か重たい感情に思い詰められているような、そんな様子だった。

 

優馬「…ち「じゃあ皆も揃ったことだし、練習へGO!」鞠莉…」

鞠莉「ほら、優も行きましょ?」

優馬「…うん」

 

千歌に昨日の事を謝ろうと思った。

謝って何かが変わるわけでもない。ただの自分の自己満だけど、それでも謝らずに後悔するよりも謝って後悔した方が良いと思った。

しかし、まるでそれを許さないかのように鞠莉に遮られてしまった。

それがわざとではないと分かっている。

だけれど、それでも邪魔された気がして、心の中の怒りというのがふつふつと湧き上がるような感覚がした。

 

鞠莉「…あはっ♡」

 

 

~浦の星学院・屋上~

 

果南「1!2!1!2!」

千歌「はっ…はっ…はっ…」

優馬「…」

 

どうしても千歌に目線が向かってしまう。

あの表情が気になってしょうがない。

 

果南「よーっし!休憩にしよっか!」

花丸「づ、づがれだずら…」

善子「な、情けないわねぇ…」

ルビィ「そ、そういう善子ちゃんも足ガクガクだよ…」

善子「うぐっ…」

 

優馬「…」

ダイヤ「…大丈夫、ですか?」

優馬「え…あ、ごめん、ドリンク?タオル?」

ダイヤ「…そういうところはなんで無気力にならないのですか?」

優馬「え?」

ダイヤ「…このあと、練習後、生徒会長室に来なさい。」

優馬「…は?」

 

~浦の星学院・生徒会長室~

 

優馬「…失礼します。」

ダイヤ「お疲れ様ですわ。」

優馬「はぁ…」

 

俺は休憩時間でダイヤに来るように言われたために、ここ、生徒会長室へと足を運んでいた。

なぜ、2人だけなのだろうか、というのはもう察している。

恐らく今の2年生の現状のことだろう。

予備予選を通過したとはいえ、まだ本選に行けるわけではない。

つまり、気が抜けないのだ。そんな中、今の現状は見過ごせない。それは俺でも感じる。

だからこそ、こうして話を聞きたいんだろう。

 

ダイヤ「そこにかけてください。」

優馬「…いや、もう聞きたいことは察してる。ここから口頭でいいよ。」

ダイヤ「…」

優馬「要は今の千歌たちの事でしょ?それなら…」

ダイヤ「違いますわ。」

優馬「は…?」

ダイヤ「千歌さんたちの事など、どうでもい…いえ、千歌さんたちが自分たちで解決すべきだと思いますから。」

優馬「…じゃあ、何を聞きたいの?」

ダイヤ「貴方の事ですわ。優。」

優馬「…俺?」

ダイヤ「そうですわ。明らかに元気がないではないですか。」

ダイヤ「…千歌さんたちと何があったんですの?」

優馬「…なんでも、ないよ。」

ダイヤ「嘘はやめなさい!…そんな表情をして、なんでもない、など…」

優馬「…ダイヤには、関係ないよ。それじゃ。」

 

ダイヤ「っ!ゆ、優っ!」

 

なぜ俺は相談しなかったのだろうか。

ダイヤなら親身になって俺の話を受け止めてくれるはず。

それは長年の付き合いでもあるから、分かっているはずだった。

でも、この問題はどうしてもAqoursの皆には話せないような、そんな気がしていたのだ。

 

 

優馬「…」

 

 

~生徒会長室・ダイヤside~

 

ダイヤ「…はっ…はっ…は、はぁ」

 

優馬(…ダイヤには、関係ないよ。)

 

ダイヤ「っ!」

 

優が私に対して放った言葉。

それ自体は良いのだ。また優らしいというか溜め込んでしまう癖が出ていたのだから。

しかし、問題は言葉を連ねていた時の表情だった。

それはまさしく、以前の優と同じ表情だったのだから。

 

ダイヤ「優っ…!」

 

 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

一方、その頃、優馬とダイヤ以外のメンバーは練習も終わり、部室で帰宅の準備を進めているところだった。

 

善子「あれ?優馬は?」

花丸「そういえば…いないずらね?」

ルビィ「何かあったのかなぁ…」

果南「先に帰ったんじゃない?最近のゆう、疲れが取れてなさそうだしさ」

鞠莉「そう言えば、優が帰るの見たからもう学校にはいないと思うわ。」

善子「えぇ~…今日はちょっとリトルデーモン成分を補給しなきゃいけない日だったのに…」

花丸「それ、どういうことずら…」

ルビィ「お姉ちゃんは?」

鞠莉「ダイヤは生徒会長室に用があるって言ってそっちに向かっていったわ?」

ルビィ「そっかぁ…じゃあ先に帰ろっかなぁ」

花丸「じゃあ3人で帰るずらぁ」

善子「…ま、たまにはいいかもね」

ルビィ「うん!じゃあ帰ろ?」

鞠莉「Good Bye~♪」

 

果南「じゃあ、私たちも帰ろっか?」

鞠莉「ごめんなさい、果南!私、理事長室に忘れ物しちゃって…先に帰っててくれる?」

果南「えぇ~…しょうがないなぁ…」

果南「じゃ、お先に~」

 

そうして、皆はそれぞれ帰宅していったわけだが、未だに部室の空気は晴れずにいた。

 

曜「…」

梨子「…」

千歌「…」

 

そう、以前として曜、梨子、千歌の3人の緊張感というのが途切れていなかったためだ。

この空気感には周りは気づいているのか否か…それとも破滅を願うばかりに何も言わないのか…

恐らく後者の者が多いのだろう。それだけに誰も何も彼女たちには言わなかった。

そしてまたここで修羅場の火蓋が落とされたのだった。

 

千歌「ねぇ、曜ちゃん。」

曜「どうしたの?」

千歌「…ずっと今日、優くんの事、見てたよね。しかもにやにやしながら…気持ち悪いからやめた方が良いと思うよ?」

曜「…へぇ、千歌ちゃん、そういうこと言えるようになったんだね。」

千歌「何?挑発?」

曜「というより、滑稽だな、って」

千歌「…」

曜「だって、そういうこと言いながらさ、すごい怖い顔で睨んでるから…羨ましさから来る嫉妬なのかな、って」

千歌「ち、ちがっ」

曜「何が違うの?」

千歌「…」

 

梨子「まぁ、何はともあれ、あの表情は確かに気持ち悪かったと思うよ?」

曜「…」

梨子「やめろ、とは言わないけど、ね?ふふっ」

 

曜「…はぁ」

 

 

~浦の星学院・理事長室~

 

部室内で修羅場が形成されている一方、それを観て嘲笑っている者がいた。

 

鞠莉「あははっ♪やっぱり部室に監視カメラを設置しておいて正解だったわね♪」

 

今日一日の3人の様子を見て、いち早く気づいていた鞠莉。

何があったのかは具体的に分からないものの、優馬の一言、3人の様子から見て4人にいざこざがあり、特に曜、梨子、千歌の3人に関しては修羅場へと化しているのだろうと。

ただこの時はまだ鞠莉の推測であり、確信ではなかった。

しかし、それもこの瞬間、覆された。

 

鞠莉「このままもっと燃え上がれば…♡」

 

互いが互いに傷つけ合い、そして最終的には3人もろとも道連れになるのだ、と。

自然的にならずとも、この醜い映像を優馬に見せた途端…

だから、鞠莉は気づいていたとしても何も言わなかったのだ。

 

鞠莉「ふふっ…あはは…あはははははははっ!♡」

 

鞠莉「優を変えてくれた時は任せてみよう、と思っていたけれど、結局ここまでだったみたいね~…残念」

 

そう言い、またあの時の妖艶な笑みを浮かべた。

 

 

鞠莉「結局のところ、あなたたちのような欲望の塊で、醜い存在は優にふさわしくないわ…だから、ここで消えてもらおうかしら…ね♡」




いかがだったでしょうか?
なんかどこまでもぐだってて申し訳ないです。
もういっそのこと、もう一度全キャラ闇にでも突き落とそうかなって思いました。
ということで始めは2年生と鞠莉ですね。
少しづつ優馬も取り込まれています。
次回はどうするか、まだ決めかねてます。

とりあえずここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第57話 美しい花の毒、静かに侵食する

こんにちは、希望03です。
美しい花に棘があるように、また美しい花には毒もあるのです。

それではどうぞ。


~回想・浦の星学院・3年教室~

 

昨日の出来事から一夜明け、私は何とか心を落ち着かせ、学校に来ることができた。

もう一度、優と話をしたかったものの足がそちらの方向へと動くことはなかった。

すると、机の中から一枚の紙きれがあった。

そこに書かれていたのは

 

ダイヤ「…今日の昼休みに理事長室、に?」

 

とのことだった。

色々なことが起きていて、何のことなのか逆に検討がつかない以上、選択肢は一つしかなかった。

 

ダイヤ「行くしか、ないですわね。」

 

 

~浦の星学院・理事長室~

 

ということで、私は理事長室前へとやってきていた。

一呼吸して、その扉を開くとそこには

 

ダイヤ「…失礼いたしますわ…って、果南さん?」

 

果南「…あれ?ダイヤ?」

 

そこには私と同じように呼び出された果南さんが先に理事長室にいました。

 

ダイヤ「果南さんも鞠莉さんに?」

果南「まぁ、そういうことになるかなぁ…とりあえず理事長室に来るように、って紙切れが私の机に入ってたから来たんだけど…やっぱり鞠莉だよねぇ…」

 

やはりそうでした。

しかし、果南さんがなぜ呼び出されたのか分からない、となると私にとってもここに呼び出された理由というのは分からないのです。

でも…

 

ダイヤ(そんなことよりもとにかく優と話をつけなくてはならないのに、よりによってこんな…)

 

正直、こんなことよりも私は優と話がしたくてしたくてたまらなかった。

昨日の優の表情、そしてあの言動。

どうしても気がかりで仕方がなかった。

そうしていつまでも当事者が来ない焦りを募らせていると諭したかのようにその扉が開いたのです。

相手は勿論。

 

鞠莉「…あら、早かったのね。ハロ~♪」

 

果南「…鞠莉、遅いよ。呼びつけといて。」

ダイヤ「…」

 

鞠莉さんでしたわ。

ようやく来た鞠莉さんはどうにも楽観的、というかいつになく機嫌が良さげのように思えました。

正直、私はそんな態度に憤りを感じました。

 

鞠莉「Oh~Sorry!ごめんねっ♪」

ダイヤ「…」

 

いつになく私の怒りがピークに達しようとした、その時でした。

まるで制止するかのように、果南さんが前へと乗り出したのです。

 

果南「…はぁ、まぁいいよ。それよりもなんで私たちだけをあんな古典的な方法でここに呼び出したの?」

鞠莉「…そうね、そのことよね。」

 

鞠莉「まず2人に聞きたいんだけど、答えてくれる?」

ダイヤ「…えぇ、良いでしょう。」

果南「まぁ…」

鞠莉「ありがと♪それで聞きたいって言う事が」

 

鞠莉「昨日の2年生の様子なんだけど、どこかおかしいと思わなかった?」

 

果南「…それって答えて良いものなの?」

鞠莉「別に誰にも言わないわよ?」

果南「…そうだね、正直、3人の空気は重かった、というか暗かったような気がする。」

鞠莉「ダイヤは?」

ダイヤ「果南さんに同意ですわ。なんだかお互いがお互いに牙を向け合っているような…そんな空間を感じましたわ。」

 

昨日の2年生たちのこと…確かに気づいていました。

しかし、他人が干渉するべきではないだろうと思い、あまり深堀はしないでいました。

ですが、それを今になってなぜ掘り下げてきたのでしょうか?

 

鞠莉「そうよね、私もそう思ったわ。その答えを聞けたところで、この動画を見て欲しいの。」

 

そうして鞠莉さんが掲示した動画が昨日の物でした。

その動画は監視カメラの映像であり、昨日設置したような新しいもののようでした。

 

鞠莉「…なんで監視カメラを設置したのか、っていうのは不問にしてね。」

 

その条件を飲んだ上でその監視カメラの映像を観てみると、そこには千歌さん、曜さん、梨子さんの姿がありました。

 

果南「これって…私たちが帰った直後?」

鞠莉「そうよ。」

 

昨日は全員がすぐ帰ったと思ったのですが、実は部室に3人が残っていたのです。

その動画を観続けると段々と緊迫とした空気になっていき、果ては言い合いが始まってしまった…まるで一種の修羅場のように。

しかもその内容というのが

 

ダイヤ「…優のこと?」

鞠莉「えぇ…そうよ。」

 

しかし、これを観させられたからといって、どうということはない。

私たちも優の事になるとたまに修羅場になることだってあります。

それなのにわざわざこのような動画を観させられても正直、困りましたわ。

 

果南「…ごめん、これが何だって言うの?こんなこと正直、結構な頻度で私たち、起こってるよね?」

鞠莉「そうね、確かにそう。じゃあもう一つ質問を加えるわ。」

 

鞠莉「…昨日の優の様子は、どうだった?」

 

ダイヤ「っ!」

果南「…え?」

 

鞠莉「…昨日、優の元気も無かったの。気づいてた?」

ダイヤ「…」

果南「言われてみれば、確かに…」

 

鞠莉「そう。なぜ、昨日から今日に至るまで優の元気がないのか、そして昨日の練習中に何か思い詰めているような表情もしていたの…まるで一人で抱え込んでいるかのように。」

 

果南「…そう、だったんだ。」

ダイヤ「…」

 

鞠莉「…そこで考えてみたの。優がなんでこのタイミングで元気がなかったのか、そして2年生がここに来てまた修羅場を形成し始めたのは何が原因なのか。」

 

鞠莉「もしかしたら、これは偶然じゃなくて、この2つに繋がりが存在するとしたらって。」

 

果南「…確かにタイミングはバッチリだし、あまりにも合致しすぎて不自然に感じる。」

ダイヤ「そうですわね…そしたらやっぱりその説は正しいのでは?」

 

鞠莉「そうね…じゃあこの説を仮説として、ダイヤや果南だったらどうする?」

 

果南「どうするって…そんなのできることならどっちも救うよ。」

 

鞠莉「…どうやって?」

 

果南「まだ大まかな内容だけど、まず2年生がこうなった原因を掴む必要があるから、それを突きとめて、解決へと導かせる。そして、2年生を優馬の元に謝りに行かせる…っていう方法かな。」

ダイヤ「…私もそれに同意ですわ。シンプルではありますけれど、それが一番ですわ。」

 

ダイヤ(…まぁ正直なところ、2年生の皆さんはどうでもいいですわ。とにかく今の優は見ていられません…そちらを助ける方が優先ですから。)

 

鞠莉「…2人はそうなのね。」

 

果南「…2人は、って鞠莉は違うの?」

 

鞠莉「えぇ…駄目よ。」

 

ダイヤ「…理由を教えていただきますか?」

 

鞠莉「…考えて見て欲しいの。優の事を。」

 

鞠莉「優は今、まさに苦しんでいる最中よ?それの原因は何か、それが今修羅場を形成している2年生なのよ?」

 

鞠莉「そんな優を苦しめている存在を…なぜ私たちが関係を元に戻すように促さなくてはならないの!?」

 

ダイヤ「そ、れは…」

 

鞠莉「だって今、優を苦しめているのは2年生のはずでしょう!?」

 

ダイヤ「…っ」

 

果南「そうだよ。それは正解だと思う。でも次のラブライブの予選があるのにこんな内輪揉めをしているようだったら、きっとラブライブは優勝できないだろうし、結果として、入学希望者だって集まらない…それが一番、ゆうにとって辛いことだと思う。」

 

鞠莉「…だから、この問題は早めに解決すべきだ、っていうの?」

 

果南「…そうだよ。」

 

鞠莉「なら解決する方向に動いたとして、また同じようなことが起きたとしたら!?これは2年生だけの問題じゃない!もしかしたら1年生の間だって起こる可能性が有る!それに…」

 

鞠莉「もしかしたら…私たちの間でも起こる可能性が有るじゃない…」

 

果南「…」

ダイヤ「…」

 

鞠莉「…いちいち一つ一つ解決したとしてもまた新たな芽が生まれてしまうわ。それならもういっそのこと…根本を断ち切らないと、いけないと思わない?」

 

私にはどう言えばいいか、分からなかったです。

果南さんの言っていることも分かります。しかし、鞠莉さんの言い分も分かります。

正直なところ、もう私の思考は停止してしまっていましたわ。

しかし、ふと感じた疑問が出てきたのです。

 

ダイヤ「…それならその断ち切る方法、というのは?」

 

鞠莉「…問題である2年生たちの事を優馬が嫌いになる、という方法よ。」

 

鞠莉「そうすれば彼女たちもきっと諦めてくれるし、近付こうとも思わなくなるわ。優に嫌われたくなどないから。」

 

ダイヤ「…ですが、それでは今度、優馬が苦しんでしまうのでは?」

 

鞠莉「なら…優を堕とすのみよ。」

 

ダイヤ「堕とす…?」

 

鞠莉「分からない?」

 

果南「つまり、ゆうを私たちの物にするってこと?」

 

鞠莉「Oh~!果南、大正解~♪」

 

優を私たちの物に…

それはずっと願ってきたもの。しかし、何をどう動いたところで今まで優は靡かずに、私たちも物にすることはできませんでした。

今さら、そんなことなんて…

 

果南「できるわけないじゃん…」

 

鞠莉「…あら?意外に腰抜けなのね?」

 

果南「違う!私は…ただ、そんなの出来ていたらとっくにしてるだけってことを言いたいの…」

 

結局のところ、今ラブライブに向けて、そして入学希望者獲得のために奔走する現状がある以上は、その忙しさを考えると、優を堕とす、などと言うことは出来る暇がまずありません。

その意味合いも込めて伝えた果南さんの一言のおかげか、数分間、無言の空間が出来上がってしまっていました。

 

果南「…私、もう行くね。」

 

鞠莉「…」

 

果南「最後に言っておくよ。これ以上…これ以上、皆がゆうの事を苦しめるようだったら…」

 

容赦はしないから。

そう言い残し、果南さんは去って行ってしまいました。

般若のような最大限の怒りが込められた顔をして…

 

鞠莉「はぁ…結局、優の事になると誰も、周りが見えなくなるのよね~」

 

それはお互い様でしょう。

そう言いたいところでしたが、この空気の中で言える程の勇気が私にはありませんでした。

 

鞠莉「ダイヤはどうする?私と一緒に優を堕としに行く?」

 

それも良いでしょう。

ずっと、ずっと恋焦がれていた相手ですもの、またとないチャンスですわ。

ただ、それが鞠莉さんと一緒、という事でなければの話ですが。

 

ダイヤ「…分かりませんわ。ただ、気持ちとしては果南さんと同じです。」

ダイヤ「優をこれ以上、傷つけるようであれば、黒澤家の力を行使してまでも彼を守りますわ。」

 

これはある種の私の決意でしたわ。

1人で戦う。彼を守るという、私の意志…

己の言葉は曲げない。一、黒澤家の女としての矜持。

ここで果たさなけれななりませんから…

 

ダイヤ「…それでは私も失礼いたします。」

 

だから…誰であろうと潰しますわ。

そう…徹底的に、ね。

 

 

鞠莉「…本当、つまらない正義感ね。心の奥底はもっと独占欲の塊だというのに。」

 

 

~浦の星学院・1年生教室~

 

昼休み。

1年生の教室では仲睦まじく花丸、善子、ルビィが昼食を食べていたが、ふと花丸が呟いた一言で話が始まったのだった。

 

花丸「…昨日の優さん、元気が無かったずら」

善子「やっぱり…そうよね。」

ルビィ「うん…」

善子「何か、あったのかしら…」

ルビィ「そう言えばお姉ちゃんも昨日、帰って来た時、顔が真っ青だったんだよね…」

花丸「そうなの!?…なんだか皆、心配ずら」

善子「…リリーたちも様子がおかしかったわよ。なんだか空気感が悪いというか…雰囲気ぎこちなさがあるというか…しかも曜の優馬に対する視線がにやにやしてて、気持ち悪かったし…」

ルビィ「…は?」

花丸「それは…気持ち悪いずら」

善子「とにかく!なんだかおかしいわ、皆…」

ルビィ「そうだよね…お兄ちゃんも元気がないし、お姉ちゃんもなんだか体調が悪そうだし…何かあったのかなぁ」

 

うーん、といった感じで、どことなく行き詰ってしまった。

色々なことを深堀していったせいなのか、余計に分からなくなってしまうようなそんな感じである。

ただ、彼女たちの根底にある考えはただ一つだった。

 

花丸「…何はともあれ、優さんには元気でいて欲しいずら。」

ルビィ「…うん」

善子「えぇ…」

 

 

そうして彼女たちは優馬に思いを馳せつつ、残りのご飯を無言で食べるのだった。

 




いかがだったでしょうか?
毒々しい。それもなんだか切ないような。

次回もお楽しみに。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


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第58話 イレギュラーはどっち?

こんばんは、希望03です。
書き殴りで申し訳ありません。
そして字数もかなり短いです。
それではどうぞ。


~放課後・浦の星学院・2年教室~

 

窓の外、広がる海に、ずっと先の水平線。

まだ夏であれば明るかった日も今では日が落ちるのが早くなり、気づけばオレンジ色が景色いっぱいに広がっていた。

そんな中、俺は未だ教室に残っていた。

別に何か理由があるわけではない。ただただ動きたくなかった。

だが、ラブライブ地区予選が次にある上、やはり顔を出さなければ皆に心配をかけてしまう。

そんな葛藤に苛まれていた。

 

優馬(…疲れたな)

 

何かしているわけでもない。

ただ漠然と毎日を生きているだけだ。

しかし、どうにも俺の心は少しずつ擦り減っていた。

そんな状態からか、俺は今日も練習をバックレよう、としていたのだった。

 

すると、教室の扉が開いた。

誰かが忘れ物を取りに来たのだろうか、と思い、ふとその先に視線を移すとそこにいたのは

 

曜だった。

 

曜「優、練習行こう?」

 

先日から練習場所を沼津に移して練習をしているAqoursは日が落ちる前には移動しなくてはならない。

そのため、順次、各自移動していく形をとるのだが、どうやら曜は未だ向かっていなかったらしい。

さらに言うと、曜がこちらを見る目はいつもの曜の目ではなく、どことなく光が失われていた。

 

曜「…どうしたの?行こうよ!」

 

すると、強引に俺の腕を取り、連れて行こうとした。

俺は思わず、それを振り払ってしまった。

それがいけなかったのだろう。曜はハッと目を見開き、なぜ?といった表情をしていた。

 

曜「…優?なんで?」

 

ゾッとした。

いつもの曜の声とは思えない程の低い声でそう聞かれたから。

 

優馬「…いや、ごめん、なんでもないよ。行こう。」

 

俺は怖かった。ここで下手に刺激してしまったら今度こそやられる、と思った。

だからか、思わず俺は曜に従った。

しかし、俺はずっと考えていたんだ。どうにかしていつもの曜に戻ってくれないか、と。

そんなことも束の間、曜は俺の腕を取り、満面の笑みを浮かべながら練習場所に向かおうとした時だった。

 

千歌「み~つけた。」

 

優馬「え、千歌…?」

 

そこにいたのはまたしても千歌だった。

ここまであまりにも良すぎるタイミング、昔の梨子みたいに俺のどこかにGPSでも仕込んでいるのではないか、と思うくらいにはタイミングが良すぎたのだ。

だが、意外にも慎重派な千歌がそんなことをするはずがない。

となると、考えるのは、ただの勘である。

千歌はなんとなく勘が優れている子だった。直感がとてつもない、というかなんとなくでなんでも気づいてしまうのだ。

それは今回も同じ。

何か嫌な予感がするから、と探したのだろう。

 

曜「…なんでここにいるの?」

 

曜、それは千歌に対して愚問ではないだろうか?

と、言ってやりたいところだが、恐らく曜もそこまで気を回していなかったのだろう。

しかし、これはまさに一触即発。

一歩でも間合いが近づけばまさに暴発する、そう思うくらいには空気が重い。

 

千歌「…なんで?…あははははははっ!そんなの決まってるじゃん!!」

千歌「…優くんを返して?」

 

曜「へぇ…来たと思えば、まだそんなこと…それに応じると思う?というか、結局あっちの練習場で会うんだから良くない?」

 

千歌「今さらそんなこと、信じられると思う?どうせまた優くんを曜ちゃん家に連れてって今度こそ…とか考えてたでしょ!?」

 

曜「妄想が激しいよ。そんなこと考えてる千歌ちゃんの方がそういうこと考えてたんじゃないの?ここまで追いかけてきてさ!」

 

千歌「千歌はそんなことしないもん!!」

 

火花が散るとはこういうことなのだろう。

目の前ではあんなに仲が良かったはずの幼馴染が俺という存在、イレギュラーである存在のせいで不仲と言えるようなレベルにまでになっていた。

でも、この状況に対して俺はあまりにもクリアで、頭の中ではずっと疑問を巡らせていた。

 

俺は彼女たちのマネージャーで良かったのだろうか?

 

俺は彼女たちにとって、実は異分子ではないのだろうか?

 

俺がいなければ、彼女たちがこんなになることはなかったはずでは?

 

俺がいない方が、彼女たちはもっと純粋に目標に向かって努力していたはずでは?

 

 

…俺は邪魔なのではないか?

 

曜「ねぇ、優は私と行くよね?」

千歌「抜け駆けしないで!優くんは千歌と行くから!!」

 

??(…今さら気づいたの?“怪物”!)

 

優馬「俺は…“僕”は…あ、あ、ああああああああああああああ!!!!」

 

曜「っ!?」

千歌「ゆ、優くん!?」

 

俺が彼女たちを狂わせてしまったんだ!

僕が彼女たちの仲を引き裂いてしまったんだ!

俺がAqoursの皆の輝きを曇らせていたんだ!

 

僕が!俺が!僕が!俺が!僕が!俺が!!

 

優馬「…」

 

千歌「ゆ、うくん?大丈夫?」

曜「き、気分悪いならもう帰ろう?ごめんね、急に押しかけちゃって…?」

 

謝らないでくれよ。

悪いのは“僕”じゃないか。

今も、昔も。

何においても“僕”がトラブルのトリガーだったじゃないか。

どうして気付かなかったんだ。

だって“僕”は…人の心が分からない、“怪物”だったんだから。

 

優馬「…今日は帰るよ。ちょっと疲れちゃって。」

曜「う、ん…その…」

千歌「よ、良かったら千歌が送ろうk「っ!触るな!!」…ひっ!」

 

 

優馬「…今回ではっきりした。明日、また話そう。皆と一緒に、ね。」




いかがだったでしょうか?
過去の繋がりは深ければ深いほど、そして大切であれば大切である程、自らの大きな力にもなり、そして大きな枷や鎖になる。
その葛藤ですね。

今回はここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第59話 奏でる”絶望”の音

こんにちは、希望03です。
かなり遅めの投稿、申し訳ありません。
12月ですね。寒いですね。

それではどうぞ。


~浦の星学院・2年教室~

 

夕暮れ時、教室の窓に差し込む夕日

それは静けさが広がる教室に綺麗な色の光が一面に広がり、より一層、寂しさを際立たせていた。

本来、時間的には誰もいないはずの教室。

しかし、千歌と曜の2人だけが外の世界とは隔離されているかのように取り残されているようだった。

そして、様子も普通ではなく、曜は何も言わずに肩や歯をガチガチと震わせながら、座り込んでおり、一方の千歌は茫然自失、といった様子だった。

 

千歌「………」

 

“触るな!!”

 

千歌「ぁ…」

 

“触るな”

それは言うまでもない最愛の人である優馬からの言葉であり、思いがけない言葉だったからか、余計に頭の中で反響する。

言葉からも分かる通り、それは明らかな拒絶だった。

最初は何が起きたのか分からなかったが、徐々に言葉が全身へと行き渡り、ようやく事の重大さを理解し始めた。

 

そして彼女たちはまた同じ過ちを繰り返してしまった、ということにようやく気付いた。

いつも迷惑をかけていたのに、いつしかそれが当たり前になってしまい、優馬がそばにいることも当たり前になった。

だからこそ、彼女たちは甘えてしまっていた、いや優馬の広い心に溺れていた。

 

今の今まで、優馬という大切な存在から完全な拒絶という事をされたことがなかった。

だからこそ、考えなかった。考えようと思わなかった。

そう、それは

「優馬から嫌われてしまう」という末路の事だ。

 

千歌「はっ…はっ…はっ…はっ…」

 

そのことに気付いた時だった。

千歌の身体も曜と同じように小刻みに震え始めた。

そして、徐々に徐々に荒くなっていく吐息。

まさに立っているのもやっと、という程に見えていた。

 

本来であれば、今日は優馬を誘って一緒に“2人”で練習に向かっているはずだった。

しかし、現実は非情にも叶わずに、今、2人ともに教室でうずくまるまま動けずにいた。

そして、もう今の彼女たちからは練習がどう、とかラブライブがどう、ということを考えている余裕は無かった。

 

千歌「ゆ、う、くん…」

 

曜「ゆう…ごめん…ごめん…ごめんなさい…ごめんなさい…」

 

頭の中は優馬の事でいっぱいになるものの、ここには2人以外誰もいない。

その小さな懺悔と小さな呼びかけは誰にも届くことなく、空気に消されてしまう。

そして最後に取り残されるのは後悔と絶望であった。

 

 

~沼津・練習場所~

 

一方、その頃。

先に着いていたAqoursメンバーたちはまだ全員揃わないためか、練習を始められず、ストレッチに励んでいた。

 

ダイヤ「遅いですわね…」

 

千歌、曜、優馬以外のメンバーが来てからおよそ20分。

待てど待てども来る気配がなかった。

一向に現れない3人に不安や心配を抱えたAqoursメンバーのおかげか、この場所の空気は気づけば不穏な空気に包まれていた。

 

果南「…ねぇ、ダイヤ?」

ダイヤ「なんですか?」

果南「これってもしかして、鞠莉が関与してたりとか…」

ダイヤ「っ!…まさか」

 

鞠莉「あら、私はそんな姑息な真似はしないわよ?」

 

果南「…聞いてたんだ。」

鞠莉「だって、怖い顔で私の方を睨むんだもの」

 

ダイヤ「それで本当に鞠莉さんではないのですか?」

鞠莉「私じゃないわ。」

鞠莉「そもそもダーリンを手にかけることなんて…できるわけないじゃない…!」

ダイヤ「…」

果南「…」

 

善子「…ねぇ、リリー?」

梨子「…どうしたの?」

善子「リリーは何も知らないの?」

梨子「…知らない。」

ルビィ「本当に?嘘はつかないで?」

梨子「知らないわよ!私だって…私だって、心配で…優君に何かあったら…私…」

花丸「…ごめんなさいずら」

 

 

ダイヤ「…やはり何かあったのでは、ないでしょうか」

 

その言葉を皮切りに全員から言葉が失われてしまった。

そして不穏な空気はさらに増していく一方だった。

 

「~♪~♪~♪」

 

すると、全員の携帯の通知音が鳴った。

それは優馬からのメッセージで全員一緒の物が送られていた。

 

鞠莉「…っ!?」

果南「…」

梨子「…こんなの絶対嘘」

善子「優馬…」

ルビィ・花丸「「…」」

 

彼女たちは唖然とした表情でメッセージを見つめていた。

 

ダイヤ「…これでは練習になりませんわ。」

 

それぞれ、そのメッセージに思う所はありつつも練習に切り替えられる程の余裕は彼女たちにはなかった。

だからか、最終的にダイヤのその一言で今日の練習は急遽中止、解散することになった。

 

 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室・aqours side~

 

そして、今日この日を迎えた。

学校は休日のため、休み。しかし、練習はいつも通りある予定だったため、こうして部室に集まっているのだが、昨日の沼津の時と同じような空気がこの部室にも生まれていた。

 

ダイヤ「…時刻は…10時20分。」

鞠莉「すこ~し…早すぎたかもデース…」

 

部室にはもう既にAqoursのメンバーが全員揃っていた。

それもそうだ。なぜなら全員が好き、いや愛していると言っても過言ではない人物

空条優馬のお呼び出しであったからだ。

というのも、そんな楽しいような空気ではない。

 

花丸「…皆、優さんから届いてたメッセージは一緒だったずら?」

 

花丸からの言葉を皮切りに全員、携帯をあの時のメッセージの表示のまま机の上へと出した。

その言葉は一言一句同じ。

 

“今日は千歌、曜、僕の3人が体調不良のため、練習には不参加。加えて、連絡事項。大事な話をしたいから、明日土曜日の午前10時30分に部室集合でよろしく。”

 

といったような文章だった。

 

善子「この…大事な話、って何かしらね…」

ルビィ「…ルビィたち、まさか嫌われた、とかじゃないよね?」

善子「やめてよ!そんな…」

ルビィ「でも、もしそうだったr「止しなさい!」…」

 

ダイヤ「…今は信じましょう?彼だってきっと…もっと別なことだと思いますから…」

 

果南「嘘つかないでよ…ダイヤだって分かってるんでしょ?事の重大さをさ…」

ダイヤ「…」

果南「だっておかしいじゃん…“僕”だなんて…まるで昔みたいに…あの時みたいに…」

鞠莉「…果南、落ち着きましょう。今、憶測で考えた所d「落ち着けるわけないじゃんか!!」っ」

果南「言ったよね…これ以上、ゆうを傷つけるのは許さない…もし傷つけたら誰であろうと容赦はしないって…」

鞠莉「それは知ってるわ。だけど、今は…」

果南「今はってなに!?もうこのメッセージ見れば分かるでしょ!?ゆうは今現在進行形で傷ついてるんだよ!?もう遅いの!!」

果南「私は…絶対に…許さないから…!!」

鞠莉「…」

 

梨子「…果南さんの事もすごい分かるし、私だって許せないけど、今は1つ聞きたいことあるの。いいかな?千歌ちゃん。曜ちゃん。」

 

千歌・曜「「っ!!」」

 

梨子「昨日の夕方、何かあったよね?体調不良、だなんて…あんなに楽しそうに動き回ってたのに、ありえないもの。」

 

梨子が果南を制止させ、その言葉を吐きながら千歌と曜を見た時だった。

全員の眼差しはその二人へと向かっていった。

 

梨子「教えて。」

 

千歌「い、や…その…」

曜「あ…うっうぅ…」

 

梨子「ねぇ、教えてよ。これじゃあ私たち、何も知らないまま捨てられちゃうんだよ?お願い…教えて…」

 

梨子は懇願した。

事の重大さを重々に理解した上での行動だったのだろう。

本当は怒り狂ってどうにかなりそうなところを必死で抑えて、ようやく振り絞った一言だった。

すると、少しずつ千歌と曜が話し始めた。

 

曜が優馬との過去の話をしたこと。

そしてそこで曜が優馬にずっと好きだった、と伝えたこと。挙句、行為に及ぼうとしたこと。

千歌も助けに行ったが、結局私利私欲のために自らも行為に及ぼうとしたこと。

そのおかげか、千歌と曜の関係が悪くなったこと。

 

千歌「…全部、全部私たちのせい…優くんがあんなになるなんて思わなかったの…」

梨子「それって…私も…」

曜「…」

 

梨子もその話を聞いて、勘付いたようだった。

なぜなら梨子もそのことには自らも関与していたから。

 

梨子「…私も優君を追い詰めていた、のかも。」

千歌「う…うあ…うわああああああああ…」

 

話を終えて、部室の空気はさらに底へと沈んでいくような空気感だった。

そこへ、荒い音を立てて扉が開いた。

目線をそちらへ向けるとそこには全員を集めた張本人である優馬が立っていた。

 

優馬「おはよう、皆、早いね。」

 

いつもだったらここで皆の取り合いが始まるところだった。

しかし、今日はそんな状況じゃない。

おかげで誰も優馬に返答することができずにいた。

 

優馬「…ごめんね、急に呼んでしまって。」

ダイヤ「…いえ、その…話、というのは?」

 

優馬「そうだね…その話もしないとね…ダイヤたちも練習があるだろうから簡潔に、一言で済ますよ。」

 

優馬「僕は今日限りでこのスクールアイドル部のマネージャーを辞める。」

 

一瞬、何を言っているのか理解できない、といった様子だった。

全員が目を見開き、口を開いたまま。

ただただ呆然と立ち竦んでいた。

 

優馬「…あれ?聞こえてるかな…僕は今日限りでマネージャーを「聞こえているわよ!!」…善子」

 

善子「…な、んでよ、なんでそんな答えに至ったわけ…?私たちが悪かったのよね…優馬に負担をかけ過ぎたから…」

 

優馬「そんなことないよ。もちろんマネージャーとしてやってた時は楽しかった。今までにないくらいに僕は輝いてた。でも、違うんだ。」

 

花丸「違うって…何が…?」

 

優馬「君たちを支えるべきなのは僕みたいな“怪物”じゃない…ってことだよ。」

 

花丸「そんなの優さんが勝手に決めてるだけずら!!」

 

優馬「…じゃああの3人の関係が崩れたのはなんでなのか、分かる?」

 

花丸「っ!」

 

優馬「結局のところ、僕はどんなに時が経っても人間関係を崩してしまう…それは僕自身が人を理解できないから、だよ。」

 

果南「で、も…ゆうはもう過去を克服したはずなんじゃ…」

 

優馬「僕もそうだと思ったんだ。きっと変われるって、そう思ってた。」

 

優馬「でも、人じゃない以上、変わるなんてそんなことは出来なかったんだ。どこまでも過去が僕にまとわりつくんだ。」

 

ルビィ「おにい、ちゃん…」

 

優馬「ルビィちゃん…いや、ルビィ…か。はは、懐かしいね。」

 

ルビィ「…行かないで、お兄ちゃん…行かないでよ!!」

 

優馬「ルビィ。“怪物”は“怪物”の、あるべき場所に行くべきなんだ。俺がここにいるのは邪魔なだけなんだ。」

 

ルビィ「そんなこと誰も望んでない!!やめてよ!そんな自己犠牲は!…ルビィたちが悲しむだけだよ…」

 

ダイヤ「そうですわ…誰も何も生まない…生むとすればただの悲壮感だけですわ。」

 

ダイヤ「馬鹿な事をおっしゃらずに…もう一度考えましょう?」

 

優馬「ダイヤ。」

 

ダイヤ「っ!」

 

優馬「昔からずっと寄り添ってくれてありがとう。」

 

ダイヤ「…」

 

優馬「でも、もう終いだよ。」

 

ダイヤ「え…?」

 

優馬「もう金輪際、君たちには関わらない。これ以上、関係を壊すのはごめんだから、ね。」

 

ダイヤ「あ…」

 

鞠莉「そんなこと…私が許さないわ…!勝手に辞められると思わないで!」

 

優馬「やっぱりお前が一番の障壁だよ。鞠莉。」

 

鞠莉「…もしここでやめるとするなら、パパに連絡するわよ。」

 

優馬「…はぁ、僕がそこに根回ししてないとでも思う?」

 

鞠莉「え…?」

 

優馬「了承済みだよ。」

 

鞠莉「う、そ…だ、だって…」

 

優馬「そんな素振りはなかったって?するわけないじゃないか。」

 

鞠莉「…」

 

優馬「…千歌、曜、梨子。」

 

千歌・曜・梨子「「「っ!」」」

 

優馬「…ごめん。仲良くして、ね。」

 

千歌「あっ…」

 

曜「…っ」

 

梨子「い、いや…」

 

優馬「それじゃ、精々、学校を救えるようにラブライブ、頑張ってね。」

 

 

“さようなら”

 

その言葉を最後にして、優馬は部室を去ってしまった。

追いかけようとも思っただろう。しかし、彼女たちの身体は動けずにいた。

 

泣き崩れる者。茫然と立ち竦む者。過呼吸に陥ってしまっている者。

それぞれが絶望に叩き落された音を奏でているかのよう。

まさにその音が鳴り響いているかのように、彼女たちしかいない学校のチャイムが鳴ったのだった。




いかがだったでしょうか?
優馬の闇落ちはいい加減にしろよ、と感じる方が多くいるかと思います。
果たして優馬はどうするのか、救いの手を差し伸べるのは一体誰なのか。
もしかしたら、北海道のあの子たちかもしれませんね。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第60話 過ちと後悔

こんばんは、希望03です。
書きあがったので早急にあげてしまいました。
明日でも良かったですがとりあえずあげます。

どうぞ。


~浦の星学院・スクールアイドル部部室・Aqours side~

 

優馬が去ってから約数時間。

阿鼻叫喚だった休日の部室はようやく落ち着きを取り戻していた。

しかし、いつもの賑わいというのは無かった。

 

「「「「「「「「「…」」」」」」」」」

 

続く沈黙。

誰一人として話すことはなく、ただただ俯いていた。

すると、一通の電話が鳴った。

その携帯は千歌の物であり、相手はSaint Snowの鹿角聖良だった。

 

千歌「なんで…聖良さんが?」

 

突然のライバル相手からの電話に戸惑う千歌。

やはりと言うべきか、取るのを躊躇っていた。

しかし、タイミングもタイミング。とりあえず出ることにした。

 

千歌「もしもし…」

 

聖良『…もしもし、聞こえますか?』

 

千歌「はい…聞こえて、ます…」

 

聖良『良かったです。突然ですみません。次の確認ですが、そちらにAqoursメンバーは揃っていますか?』

 

千歌「え?あ、はい…揃ってます。」

 

聖良『分かりました、ありがとうございます。じゃあ電話をスピーカーにして皆さんに聞こえるようにしていただけませんか?』

 

なぜ電話をかけてきたか、というのは分からないまま。

ただただ聖良の言うとおりに動くしかなかった。

そうしてその要望に応え、スピーカーにした。

 

聖良『…ありがとうございます。改めて突然、すみません。いきなり電話したのには訳があります。』

 

聖良『優馬さんの事です。』

 

「「「「「「「「っ!」」」」」」」」」

 

聖良『…優馬さんの身に何があったのか、説明をして欲しいです。できますか?』

 

果南「ま、待ってよ!説明って…そもそもなんで部外者の貴方が知っているわけ!?」

 

果南が食って掛かるものの聖良からの返事はなかった。

その無言には早く説明しろ、という圧がかかっているように感じた。

 

果南「っ…分かったよ、説明する。」

 

果南は部外者相手に無視されたことに若干の苛立ちを覚えたが、とりあえず先程、あった事情の説明をした。

 

果南「…ということ。」

 

聖良『…はぁ』

 

話し終えた途端だった。

ものすごく大きな溜息が電話越しに聞こえた。

 

聖良『…本当、昔から何も学ばないのですね。貴方たちは。』

 

鞠莉「…それ、どういう意味?」

 

聖良『言葉のままです。貴方たちは全く!何も!学んでない、ということです。』

 

聖良『今までずっと優馬さんに寄り添ってもらって、支えてもらって、それに気づかずに、意気揚々とやれラブライブ優勝、学校も救おうなど…戯言も寝て言って貰いたいものですね。』

 

ダイヤ「っ!貴方に言われる筋合いはありませんわ!!これは私たちと優との話…貴方には関係のない話でしょう!?」

 

聖良『それ、本心ですか?本心で言っているのであれば、残念です。』

 

聖良『貴方たちだけの問題だと思わないでください。じゃあなぜ優馬さんは苦しんでいるんですか?苦しんでいるのは貴方たちではない、優馬さんです。被害者面しているのがおかしいんですよ。もうとっくに貴方たちだけの問題ではないんです。』

 

善子「被害者面なんて…そんなのしてないわよ!!優馬が苦しんでいるのも知ってる…だけど、どうすればいいか…分からないのよ…」

 

聖良『分かっていないから優馬さんを苦しめているんです。そうやって言ってますけど、じゃあなんで苦しんでいるのか、明確に原因を追究して、理解しようとしましたか?ただただ言われて、ショックを受けて、茫然としていた、なんてことになっていませんでしたか?』

 

花丸「そ、れは…」

 

ルビィ「…」

 

聖良『…はぁ』

 

曜・梨子「「…」」

 

聖良『貴方たちは何も知らない。優馬さんがどれだけの想いなのか、苦しんでいるのはなぜなのか、その真実を。』

 

千歌「分かったような口を利かないでよ!!」

 

聖良『…すみません、言い方がきつかったですね。』

 

聖良『ただ、最後にこれだけ。一度、私たちの家へ来てください。ある物をお見せしますから。』

 

そう言い残し、電話を切られてしまった。

一体その物は何なのか、分からないが聖良が何か知っているのは確かのように思えていた。

 

梨子「…どうする、千歌ちゃん。」

 

梨子の呼びかけで一斉に皆はリーダーであり、また今回の火種である千歌の方へと視線が向いた。

 

千歌「…そんなの、行くしかないよ。」

 

本当であれば敵の手など借りたくはないだろう。

それは全員同じような想いではある。しかし、悠長にそんなことを言ってられるような時間は彼女たちに残されていなかった。

その上での決断だった。

もちろん、それに反対する者はいなく、全員、北海道に行く準備に取り掛かるのだった。

 

 

~北海道・函館空港・理亜side~

 

私はAqoursの人たちに微かな希望を抱いていた。

もしかしたら、私たちじゃなくても彼女たちが救ってくれるかもしれないって思ったから。

しかし、それは幻想だった。

やっぱり彼女たちは兄さんを苦しめる、ただそれだけの存在だった。

なぜそう思ったか、それは数時間前に遡る。

 

~回想・鹿角家~

 

数時間前の事。

私の店番が終わり、部屋に戻ろうとしたところに部屋から誰かと電話している姉さまの声が聞こえた。

恐らく連絡先をゲットしたという兄さんとの電話なのだろう、とすぐに勘付いたが何やらいつもの兄さんの目の前だけポンコツ姉さまではなく、深刻そうに話していた。

私はそれに違和感を感じて、姉さまに申し訳なさを感じつつも部屋の扉を若干開けて聞き耳を立てた。

すると、どうやら兄さんが今後のAqoursとの関係について悩んでいるみたいで、それをずっと姉さまが励ましていた。

 

でも、本当ならもっとそばにいてあげたい思いで胸がいっぱいだろう姉さまはその歯痒さで唇を何度も噛み締めて、震えていた。

 

もちろん、それは私も同じ。

 

直接聞いているわけでもなかったけど、なんとなく兄さんが昔のあの時のように戻ってしまったかのように感じて、一刻も早く駆けつけてあげたかった。

 

それでも兄さんに一番近いところにいるのはAqoursだった。

なのに、何も助けてあげられない、挙句の果てには困らせている。

それがとてつもなく憎くて、悔しさを滲ませていた。

 

すると、兄さんとの電話が終わった途端に姉さまはまた電話を違う人へかけていた。

最初は誰に連絡したのか分からなかったけれど、スピーカーにしてようやく気付いた。

その相手は私が今しがた憎んでいた相手、Aqoursだった。

 

なんでそんな相手に、と姉さまに問い詰めたかったけど、何か考えがあるんだろうな、って思って、私は動けずにいた。

同じように聞き耳を立ててると、姉さまはいつになく怒っていた。

それはまるで般若のようでもあり、修羅でもあるようなそんな感じだった。

そんなこんなで色々Aqours相手に言った後、最後にこう言った。

 

聖良「一度、私たちの家へ来てください。」

 

理亜「え…?」

 

一瞬、なんて言ったのか理解できなかった。

けれど、段々と理解し始めてようやく気付いた。

姉さまがAqoursを私たちの家に招いたことに。

 

理亜「な、なん、で…?」

 

しかし、気付いたものの理解ができない。

なぜそんな敵に塩を送るような真似をしているのか、と。

 

兄さんは救ってあげたい。

だからこそ、私たちが支えるべきだったのに、なぜAqoursを?

なぜ私たちでは駄目なのか、そもそもなぜそこまで姉さまはAqoursに肩入れするのか?

 

考えれば考えるだけ、理解ができなくなっていた。

 

理亜「なによ、それ…」

 

その時、私には怒りが込み上げてきた。Aqoursなんかに兄さんは渡さない。

私が何とかしてみせる、ってそう考えて、私は内浦に行く、つまり兄さんに会いに行くことに決めた。

 

~回想終了~

 

そうして今に至る。

私はもう子供じゃない。ずっと兄さんに守られているような私じゃない。

 

理亜「…兄さん」

 

手元にある一枚の写真。

兄さんと姉さまと3人で撮った唯一の写真。

 

理亜「…」

 

 

兄さんに会うために、そして過去の事をきちんと伝えるために。

私はその写真を握りしめて、函館を飛び立った。




やはりこの子達でしたね。Saint Snow。
会ってどうするつもりなのか、意外と暴走型かもしれませんね。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第61話 抱えていたもの

こんにちは、希望03です。
大なり小なり、人は何かを抱え込む生き物なんです。

それではどうぞ。


~北海道・函館空港~

 

聖良からの電話があってから急いで準備を済ませて、彼女たちは函館に来ていた。

節約に節約をしてきた部費のおかげもあって、意外とすんなりとここまで来ることができた。

 

しかし、着いたはいいものの

 

鞠莉「…ここからどうすればいいのかしら」

 

皆、聖良の家には一度も行ったことはない。

なんなら函館に来たのも初めてである。

何も知らない以上、ここから動けずにいた。

 

すると、千歌の携帯が鳴った。

 

千歌「はい…」

 

聖良『もしもし、聖良です。もう空港に着きましたか?』

 

相手は聖良だった。

事前に千歌から何時ごろの出発で、何時ごろ到着するのか、というのを聞いていたため、函館空港の近くで待機していたらしい。

 

聖良『…着いているみたいですね。すぐにそちらに向かいます。』

 

そう言われて、およそ5分後、言葉通り、聖良がやってきた。

 

聖良「お待たせしました。」

 

やはりライバル校ということもあるが、それ以上に優馬との件について、あれだけ言われた相手ということもあり、聖良が現れてから空気がギスギスとしていた。

 

聖良「…はぁ、行きましょう。ここで立ち往生していても仕方がないですから。」

 

聖良の一言により、空気感は変わらないまま、聖良の家へと向かうこととなった。

 

 

~函館・鹿角家~

 

聖良の家は和やかな雰囲気に包まれた居心地の良い喫茶店だった

 

花丸「お、おいしそうずらぁ~…」

善子「ずら丸!絆されてる場合じゃないわよ…!」

ルビィ「なんだかもう2人とも馴染んでるよ…」

 

聖良「…こちらです。」

 

案内されたのはその奥の部屋だった。

 

~鹿角家・聖良の部屋~

 

聖良「狭くてすみません…」

 

ダイヤ「いえ、お気になさらず…」

果南「それで前に言ってた見せたい物っていうのは?」

聖良「…そうですね、まずそれからでしたね」

 

そうして聖良が差し出したのが、まさに小学校低学年くらいの姿の優馬と昔の鹿角姉妹との写真だった。

 

千歌「っ!これ…」

曜「優…?」

鞠莉「…」

 

ダイヤ「…なぜこんな写真を貴方が持っているのですか?」

 

聖良「その説明を致しますから、慌てないでください。」

ダイヤ「…」

 

聖良「あれは小学4年生の時でした…」

 

~回想・聖良 side~

 

あれは冬から春に変わり、積もりに積もっていた雪が徐々に解け始めてきた時期でした。

入学式も済み、春先のバタバタが少し落ち着いてきた頃、ある転校生が私たちの学校にやってきたのです。

 

名前は空条優馬。

クラスも違うどころか学年すら違う始末、そのためか当時はあまり興味がわきませんでした。

ただ全校集会の時に話していたからか、ある程度、学校での知名度は高かったんです。

 

当時、俗に言う転勤族だった優君は数年間過ごしてきた故郷を離れて、私たちの学校に転勤してきたみたいでした。

 

興味が湧かなかったものの衝撃的なことがその日に起きたのです。

それは。隣に空条家が引っ越してくる、という内容。

最初は誰?と思いましたが、そう言えば転校生の苗字が空条だったことからもしかしたらと思い、隣の家に訪れるとそこにいたのは学校で話題沸騰になっている転校生、空条優馬がいたのです。

 

優馬「…」

聖良「っ!」

 

当時はまだ小学4年生、物珍しさに好奇心が湧いていたので、いつになく話しかけたのです。

 

聖良「あ、あの!同じ学校の4年生で…その、い、家!隣、なので…な、仲良くしてね!」

 

当時の私は人見知りも激しかったので、こんなに話せたのも奇跡に近かったんです。

それなのに彼は…

 

優馬「…そう」

 

それだけ言って、扉を閉めてしまいました。

その態度に憤りを少し感じたものの、あの無表情な顔つき、同学年にはない異色な雰囲気…色々な要素が絡み合って、なんだか心配になったのです。

しかし、それを食事の席で話した時

 

理亜「お姉ちゃんにそんな態度をとるなんて許せない!」

 

と、理亜は私以上に怒り始めたのです。

理亜は実際にその姿を見たことがなかったので、その話を聞いてから優君を毛嫌いするようになりましたが、それでも私はあの顔と雰囲気がどうしても気がかりになってしまい、今でいうストーカーまがいなことをしていたのです。

 

そんなことを始めてから、色々な情報を得られるようになりました。

 

優君は学校でも話さない人で、転校初日にはたくさんの人が机にいたはずも今ではすっかりいなくなってしまったこと。

 

それでも、そのクールさから私の同学年や先輩、後輩の一部や同級生の一部からは人気があったこと。

 

授業では話を聞いているか分からないけれど、テストは満点、聞き分けの良い子でもあったらしく、先生からの評判も良い。いわゆる優等生らしいという事。

 

知れば知るほど、すごいなぁ、と思う事ばかりではあったけど、結局その異色な雰囲気につながる手がかりは一切分からないままでした。

 

ダメ元で理亜にも聞きましたが、優君の話題を出すだけで嫌悪感を丸出しにして、嫌身を連ねていたので、大した成果は得られませんでした。

 

それからさらに数日、情報収集は続けていたものの、やはり成果は全く上げられず、ただただ日は過ぎるばかりでした。

しかし、そんな中、ある転機が訪れたんです。

 

それは私がお店の手伝いのために買い出しへ出かけていた時でした。

お使いも終え、歩いて帰っている中、その帰り道の公園がなんだか騒がしかったのです。

 

聖良「何かあったのかしら…」

 

そうしてちょっと不安になりつつ様子を見てみると、どうやら喧嘩をしているようでした。

 

聖良「なんだ、喧嘩でしたか…」

 

そう思い、帰ろうとした時でした。

 

理亜「やめてよ…!やめて…!」

 

嘘、と思い、引き返すとそこにいたのは理亜でした。

一緒にいたのは私の1個下だろう同じ学校の男の子が理亜をいじめていたんです。

 

私は助けなきゃ、と思い、理亜の下に駆け出そうとしたその時でした。

 

優馬「…ねぇ、君たち何してるの?」

 

そこにいたのはあの転校生、優君でした。

 

「うるせえよ!お前に関係ないだろ!」

「そうだそうだ!あっち行け!」

 

優馬「そうもいかないよ。そもそも自分より年下の子をいじめてて、恥ずかしいと思わないの?」

 

「な…!う、うるさい!」

「ね、ねぇ、もうこっちも一緒にいじめようよ!」

 

どうやら優君の同じクラスの子らしく、優君に標的を変えて、殴ろうとしたその時でした。

 

「パシャッ」

 

写真の音がして、優君の方を見ると携帯を構えて、また再度

 

「パシャッ」

 

と撮ったのです。

 

「なにすんだ!」

 

優馬「いや写真だよ。見ればわかるでしょ?」

 

「やめろ!消せよ!」

 

優馬「もう遅いよ。バックアップ処理もしてあるから一生消えない。ちなみに言うと、さっきその子にしていた暴力行為も、今、僕にしようとした暴力行為も全部動画、写真に収めてあるから。」

 

優馬「これを先生、君たちの親に見せたらどうなるかな?」

 

優馬「…君たちも馬鹿じゃないんだ。これが見られたらどうなるか、分かるよね?」

 

優馬「謝れ。そして早く消えろ。」

 

「う、うぅ…ご、ごめんなさい…」

「ご、ごめんなさい…」

 

そうして優君のファインプレーのおかげでいじめっ子たちは理亜に謝罪し、帰っていきました。

それでも理亜が泣いていたので駆け寄ろうとしたのですが、それよりも先に優君がそばにいて、理亜の頭を撫でていたのです。毛嫌いされているのも知っていたのに…

 

理亜「ひっぐ…ぐす…うえぇ…」

優馬「…怖かったね。もういないから、安心して。」

 

あの時の優君の顔は学校で見ていた無表情なんかではなく、朗らかな優しい微笑みでした。

 

理亜「…う、うわぁぁぁぁぁん!」

 

理亜もそれに安堵したのか、ただただ優君を抱きしめて、泣き続けていました。

 

その一件以来、理亜をいじめていた子達はすっかり理亜を目の敵にすることはなくなりました。

理亜も理亜で…

 

理亜「お兄ちゃん!一緒に帰ろ!」

優馬「…うん」

聖良「…」

 

こんな風にあれだけ嫌悪感を出していた優君の事をお兄ちゃん、と呼び、よく話すように、そして遊ぶようになりました。それは理亜だけでありません。

 

聖良「優君、いつもありがとうね。理亜の面倒見てくれてて…」

優馬「そんなことないよ。苦労だと思ってない。それに、聖良とも遊べるし、ね。」

聖良「っ!///もう!馬鹿!///」

 

私も私であの一件でようやく打ち解けるようになったのです。

お互いがお互いにとても良い関係性を築けていました。

 

そうしてさらに月日が経ったある日、いつも通り3人で遊んでいた時でした。

 

聖良「…ねぇ、優君?」

優馬「…?」

聖良「なんで、内浦ってところから函館に引っ越してきたの?なんでずっと無表情なの?」

 

私は当時、転校してきたあの時から疑問に思っていたことを優君にぶつけたんです。

言いにくいと分かっていたんです。でも、それでも知りたかったから…

すると、優君はすごく思い詰めている様子でぽつぽつと話し始めました。

 

優馬「…まず、引っ越した理由から、ね。」

 

優馬「僕が引っ越した理由は説明もあった通り、親が転勤族で、今回も仕方がなかったんだ。」

 

ここは聞いた話の通りだった。でも、段々と優君の表情が曇ってきたように感じた。

 

優馬「でも、もう一つあって、それは僕のせいなんだ。」

聖良「…え?」

優馬「僕のせいで、内浦に居づらくなってしまったからなんだ。」

 

始めは耳を疑った。

無口で無表情で一見不気味に思われる人だけど、誰にでも優しくて温かい人が自分のせいで居場所を失くしてしまうということに。

 

その話の続きを聞いていると

まず優君には大切な人がいて、その大切な人を優君の何気ない言動一つで傷つけてしまって、病気にしてしまった…

そのおかげでその親からはすごく不気味がられ、挙句それは内浦全体に広まってしまった。

中には擁護してくれる人もいたけれど、それでもその嫌悪感は消えることがなかったという。

 

優馬「…そうして、僕はここに逃げて来たんだ。情けないよね。」

聖良「…」

優馬「…あと、無表情の理由、だよね。」

 

すると、またぽつり、ぽつりと話してくれた。

 

優馬「僕が無表情なのも臆病者の表れだよ。この件で僕は誰かと親しくすることと同時にその人を傷つけてしまう、とそう思ったんだ。」

 

優馬「…結果、僕は人と接するのが怖くなった。」

 

優馬「だから、なるべく誰とも関わらないように。自分の弱さが悟られないように。気づいた時には無表情の仮面を被ってたんだ。」

 

聖良「…」

 

優馬「これが真実。ごめん、本当は弱い生き物なんだ、僕は。」

 

なんで謝るのか、なんでそんな悲しいこというのか。

私には理解できなかったです。だから、気づいた時には

 

聖良「っ!」

 

泣きながら私は優君を抱きしめてました。

 

優馬「…聖良?」

 

聖良「大丈夫、私も理亜もずっと、ずっと優君の味方だよ…どんなに周りが優君に怖い思いさせても、嫌っても…私たちは何年、何十年経っても、ずっと味方だよ…」

 

 

深い話をしたのはこれが最後でした。

それから月日がさらに流れて、時期は学年が一つ上がる春頃でした。

気付いた時には、優君は転校し、函館を離れてしまいました。

 

 

~回想終了・聖良の部屋~

 

「「「「「「「「「…」」」」」」」」」

 

聖良が話し終えると、ただただ沈黙が流れるばかりだった。

 

聖良「…これで分かりましたか?どれだけ優君が辛い思いをしてきたのか」

 

聖良「優君はずっと前から苦しんでいたんです。あなたたちと離れてからも、ずっと…あの出来事を優君は忘れることなんてありませんでした。」

 

聖良「だから、ずっと自分の言動が、行動が、人を傷つけてしまわないように…そうずっと考えながら、ここまで生きてきたんです…」

 

聖良「だから、以前、Aqoursの皆さんにお会いした時に、優君がいて、始めは驚きました。こんなところにいるなんて思いもしませんでしたから」

 

聖良「けれど、久しぶりに会った優君の顔つきは私たちが会ったあの頃とは全く違っていて、本当に楽しそうでした…」

 

聖良「悔しかったですけど、それでも笑って、誰かのために動いているその姿が本当に嬉しかったんです。」

 

聖良「なのに…なのにっ!」

 

「「「「「「「「「っ!」」」」」」」」」

 

聖良「貴方たちのせいで…また、優君は塞ぎ込んでしまったんです…!」

 

「「「「「「「「…」」」」」」」」

 

千歌「ご、ごめn「貴方が謝るべきなのは私じゃないでしょう!?」っ!」

 

 

聖良「…考えを改めてください。これで何も治らないようであれば…貴方たちの事、私たちSaint Snowが許さない…!」

 

 

そう言い、彼女はただただAqoursを涙ながらに睨みつけるのだった。




いかがだったでしょうか?
優馬と共に実は聖良も抱えていたんですよね。
なんとも言えない。もどかしさ。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第62話 雪降り、積もり、解け、”堕”ちる

こんにちは、希望03です。
なんで美しい物の散り際は一番美しいんですかね。

それではどうぞ。


~内浦・海岸沿い~

 

まだ夜明け前、日は浅い。

だけど今、僕は散歩をしていた。

別に理由はない。ただ町を歩きたかった、それだけだった。

今までラブライブの事、学校を救う事、そして彼女たちの事を考えて動いていた時間がもうどこにもない。

元々、日曜日はライブ前でもなければ休みの日だ。だがもう僕には関係ない。

だってもう僕は、彼女たちを裏切ったのだから。

 

優馬「…」

 

綺麗な朝日だった。

海を、大地を、そして僕の心を照らしてくれるようなそんな綺麗なものだった。

 

優馬「綺麗だな…」

 

そう呟いて、また歩き出そうとした時だった。

 

?「…」

 

優馬「え…?」

 

海岸の砂浜に目を見やるとそこには見たことのある髪色と髪型をして、見たことのある制服を着ている女の子が立っていた。

 

優馬「な、なんで?」

 

思わず声が出てしまった。

すると、その声に反応したのか、その子は振り向き、こちらを食い入るように見つめてきたのだ。

 

優馬「り、理亜、ちゃん…?」

 

理亜「に、兄、さん…兄さん!!」

 

完全に嫌われていると思っていた年下の女の子。

しかも思春期真っ盛りの女子高生が泣きそうになりながらその呼び声と共にこちらに駆け寄ってくるではないか。

 

優馬「へ、ちょ、ま…!?」

 

スマートな対応をする紳士はこれを優しく受け止めるだろう。

ただ、僕にそんなものは備わっていない。

そのため…

 

優馬「うおわぁ!?」

 

思わぬ対応にどうすることもできず、呆然と立ち竦み、その突進を受け入れてしまった。

本当、砂浜の上で助かった…

 

優馬「…!?…!?」

 

さてどうしたものだろうか。

正直、何が起きているのかさっぱり理解ができない。

今、僕は嫌われていると思っていた女の子に突然、涙目で突進をされて…

 

理亜「…っ!…っ!」

 

嗚咽なのか、それとも何かつぶやいているのか…

それが何なのかは分からないが、ともかくこの状態のまま、沈黙が続いてしまった。

しかも、何分か、はたまた何秒か、なんにせよこんな状況だ。

とにかく長く感じてしまった。

しかし、この状況をいつまでも続けさせるわけにもいかない。

と、冷静さが少しずつ戻ってきたのだった。

 

優馬「…理亜、ちゃん?」

理亜「っ!」

 

呼んだのは間違いだったのだろうか。

それとも声が嫌いなのだろうか、僕が名前を呼んだその瞬間、彼女は一度、離れた。

すると、なんとも寂しげな顔を浮かべていた。

 

理亜「やっぱり、覚えていない、んだ…」

 

と、すごく意味ありげな、深い一言をつぶやき、また再度、俯いてしまった。

 

優馬(覚えていない?ってなにを?)

 

正直、そんなことを言われても思い当たる節は見当たらなかった。

となると、全く理解ができずに立ち竦んでしまった。

 

優馬「ち、違ったかな…?いや、でも君は…Saint Snowの聖良さんの妹、ラップ担当の理亜ちゃんじゃ…?」

 

理亜「あはは…うん、そうだよ。その通り。でも、私が言いたいのはそう言う事じゃないんだ…」

 

その時、彼女はさっきと同じように無理して作ったような、でも寂し気な笑顔でこちらを見つめた。

なんだかそれが僕にとって、とても悲しくて、辛くなった。

元々、何か失っていた場所、穴が開いていた場所を鋭いナイフで深く抉られたような、そんな感覚だった。

 

優馬「じゃあ、一体どういう…」

 

理亜「…ま、その話は後にして…とりあえず話そうよ。聞きたい事、たくさんあるでしょ?」

 

いや、今話して欲しい…とは言えず、僕は理亜の提案に乗ることにした。

いずれこの事も話してくれるだろうと期待していたために。

 

優馬「じゃあ…歩きながらでもいい?」

理亜「…いいよ。案内してくれる?」

優馬「そんな説明するほど、大層なものは無いよ…」

 

元々、ただの一人散歩で寂しくもあったから、女の子1人いるだけで大分寂しさが消える。

少し、情けないけど。

そんな想いで僕は彼女とまた散歩を再開した。

 

 

そうして歩き始めて、およそ10分くらいだろう。

特に話すことも無く、ただただゆっくりと海岸沿いを歩いていた。

暇じゃないだろうか、そう思い、ふと後ろを見ると彼女は内浦を感慨深い表情で見渡していた。

 

理亜「…ここが、に…あ、あんたの育った場所なのね。」

優馬「あ…そう、なのかな。」

 

 

正直、育った場所、と言われると少し悩ましかった。

この場所は僕にとっての居場所にしていいものか、不安ではあったから。

 

理亜「…違うの?」

 

優馬「違う、とも言い切れない、かな。ただこの場所は…僕の居場所とするのは烏滸がましいというか…罪悪感でいっぱいになるんだ。」

 

理亜「罪悪感…」

 

優馬「…いや、ごめん。こんなしんみりとした話はしたくなかったんだ。歩こう。」

 

そうして僕は半ば強引に立ち止まった足をまた動かし、歩き始めた。

 

理亜「…ねぇ、あんたは今、楽しい?」

 

優馬(楽しい…か。)

 

優馬「分からない…でも、以前は楽しかったよ。」

 

理亜「そうなの?」

 

優馬「うん。毎日毎日…馬鹿みたいに大はしゃぎで…でもずっと学校を救いたい、ラブライブで優勝したい、その思いだけで本当に我武者羅に突き進んでた。」

 

理亜「…」

 

優馬「楽しかったよ…マネージャーだったけど、本当に色んな夢や輝きを見せてもらった。」

 

理亜「…その言い方じゃ、まるで過去の話みたい。」

 

優馬「…もう過去の話だよ。そんな彼女たちを、裏切ったくそ野郎だからね。」

 

理亜「そんなこと…」

 

優馬「…それがあるんだよ。」

 

理亜「あんた、辛くないの?」

 

優馬「…辛い、のかな。それもよく分からないんだ。まだ心ではAqoursの皆と一緒に学校を救おうと思ってる…いや思いたい。けれど…僕が皆の固い友情の結び目を切ってしまう、と思うと…苦しい、かな」

 

理亜「…」

 

優馬「一度は克服したはずだったんだ。皆と乗り越えられた、そのはずだった。でも…彼女たちをまた裏切ってしまった…そういった意味でもこの町に僕の居場所はないのかもね。」

 

理亜「そ、っか…」

 

その時、本当に気を使わせてしまうようで申し訳ないな、と思った。

けれど、吐き出さないと立っていられなかった。

正直、何言われても覚悟はできていた。説教を喰らおうが、励まされようが、決してこの想いは揺らぐことはない、とそう思っていた。

けれど、彼女は励ますわけでもなければ、説教をすることも無く、ただ黙々と僕の話を聞いていてくれた。

なんだかそれが無性に嬉しく感じた。

 

優馬「…じゃあ歩こっか。どうせなら学校まで行ってみる?」

理亜「…うん。」

 

 

~浦の星学院・校庭~

 

優馬「やっぱり見晴らし良いな~…」

 

目の前に広がるのはめいっぱいの朝焼けだった。

まだ時刻は6時半。

ほとんどだれも起きていない時間帯、もちろん僕もいつもであれば同じだ。

でも、そんな時間の中、僕はライバル校の子となぜか一緒に学校にいる。

今考えてみれば、不可思議ではある。

でも、なんだか昔会ったような…そんな心地よさがここにはあった。

 

理亜「綺麗…」

優馬「でしょ?僕もここからの景色は好きなんだ。心が落ち着く…」

理亜「…うん、なんだか分かる気がする。」

優馬「そっか、気に入って貰えたようで良かった。」

 

そうして僕たちはただただ目の前に広がる景色を眺めていた。

何も話すことも無く、ただ囚われていた。

 

優馬「…」

 

理亜「…ねぇ、聞かないの?私の事。」

 

優馬「え?うーん…いやいいよ。」

 

理亜「え?」

 

優馬「わざわざ北海道からここまで来たってことは何かしら事情があるだろうし…聞かない方が良いかなって」

 

理亜「優しいんだね。」

 

優馬「そんなことないと思うよ。ただ臆病なだけ。」

 

理亜「…そういうところ、本当嫌い。」

 

優馬「え?」

 

理亜「いいよ。私から話してあげる。」

 

随分とまた上から目線だった。

しかもこれまたこっちが気を利かせて聞かなかったのに、嫌いと言われてしまった。

少々、ショックだが、話してくれるなら聞かないわけにもいかない。

そうして、僕は彼女の話を聞くことに徹した。

 

理亜「単刀直入に、なんで私がここに来たか、って言う理由からね。」

 

理亜「私がここに来た理由は…兄さん、あなたに会うため。」

 

優馬「…そっか。」

 

理亜「驚かないの?」

 

優馬「驚いてるよ。顔に出ないだけ。」

 

理亜「そっか。」

 

優馬「それと早めで申し訳ないんだけど質問良いかな?」

 

理亜「うん、なに?」

 

優馬「…その、兄さん…ってどういうこと?僕、兄妹の血縁関係は無いはずだけど…」

 

理亜「そうだよね…そこも話していくつもり。」

 

理亜「じゃあなんで私が会いに来た具体的な理由ね。」

 

理亜「兄さんが覚えていないようだったから伝えに来たの。過去の抜けてる真実を。」

 

優馬「抜けてる真実?」

 

理亜「そう…じゃあこっちから質問。」

 

理亜「兄さん…自分が内浦を離れてからのこと、覚えてる?」

 

優馬「そりゃあまぁ…僕が内浦を離れたのは小学3年に上がる頃で…東京に行ったのが小学4年の時…あれ」

 

理亜「…見事に1年間、抜けてる。」

 

優馬「…嘘でしょ。あれ?」

 

理亜「その空白の1年間はね、兄さん、北海道にいたんだよ。」

 

優馬「え…?」

 

理亜「函館の私たちの家、その隣に引っ越してきた…それが兄さん…空条優馬だった。」

 

その時だった。

また千歌と曜の時と同じように記憶が呼び起こされるあの感覚。

その衝撃が僕の頭にかかった。

 

理亜「最初からあの時は無表情で無口だったけど、ある日、私が苛められているところに現れて、私を助けてくれた…それからずっと一緒にいたのに…気づいた時にはいなくなってた。」

 

理亜「ただ、それだけの1年。」

 

理亜「覚えてる?“お兄ちゃん”」

 

優馬「っ!」

 

“お兄ちゃん!一緒に帰ろ!”

“優君、帰ろ?”

“お兄ちゃん!”

“優君、私たちはずっと味方だから…ね?”

 

優馬「理、亜…」

 

理亜「…」

 

優馬「理亜…あの頃、助けた女の子って…」

 

理亜「…私」

 

優馬「それ以来、ずっと一緒にいてくれたのって…」

 

理亜「…私たちだよ。」

 

優馬「っ!そう、だった…」

 

理亜「思い、出した?」

 

優馬「全部、思い出したよ…理亜、ごめんね。」

 

理亜「っ!」

 

すると、感極まったのか。

理亜はまた会った時のように抱きしめてくれた。

 

優馬「…ごめん、理亜。今まで…僕は君たちの事を…」

 

理亜「気にしてないよ。ただずっと寂しかった…!久しぶりに会ったあの神社の時も、東京のイベントの時も、姉さまと電話してる時も!」

 

理亜「ずっと…寂しかった…会いたかった!」

 

その想いはとてつもなく強かった。

そして、その想いを知らず、今まで忘れていた僕はどういう顔をすればいいのだろうか。

理亜にも…聖良にも…

だから僕は、ずっと

 

優馬「ごめん…本当にごめん…理亜…聖良…!」

 

 

謝ることしかできずに

朝日が照らす僕たちはただただ抱き合う事しかできなかった。




いかがだったでしょうか?

なんだか本当、辛い役回りなSaint Snowですね。
雪や氷のイメージってそれだけ美しくて、泣けるんですよ。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第63話 何度目かの再出発

こんにちは、希望03です。

本当何度目ですかね?

それではどうぞ。


~内浦・優馬家~

 

あれから数分。

僕たちは少しずつ落ち着きを取り戻したものの、未だ気まずい空間が続き、沈黙のまま、僕の家へと向かった。

そして、今、気まずい中、2人で部屋にいるわけだ。

 

優馬「それで…理亜?」

 

理亜「…うん」

 

優馬「あの事を伝えるためにわざわざ来たの?」

 

理亜「…伝えるため、もそうだよ。でも、ここに来たのは別の理由もある。」

 

優馬「別の、理由?」

 

すると、理亜は険しい顔へと変わっていた。

しかし、僕にはその理由というものが分からなかった。

 

理亜「姉さまから…というより盗み聞きだったけど…兄さん、Aqoursとうまくいかなくなっちゃったんでしょ?」

 

優馬「っ!…それで様子を見に来た、ってことか」

 

理亜「そう…まぁ、会いたかったから、の方が強かったけど…///」

 

優馬「…///」

 

まさかそこまで理亜が僕の事を想っていると思っていなかった。

完全に敵視されている、と勘違いをしていた分、今になっては本当に生き別れの妹のような思いだった。

ただやっぱり、それだけ想っていた分、苦しめてしまっていたことに悔しさが込みあがってきたのだ。

 

優馬(情けない…そんなに苦しめてしまっていたのか、僕は、また…)

 

理亜「…ねぇ、兄さん?」

 

優馬「?」

 

理亜「まさか、私が心配してるのは自分が悪いとか思っているわけ?」

 

優馬「…まぁ」

 

理亜「…バカ兄さん。違うよ、全然違う。」

 

理亜「言ったでしょ?私が兄さんに会いたかったからだって!」

 

優馬「っ!…はは」

 

情緒不安定だと思われるかもしれない。

だけれど、そう言ってくれるだけで僕の心は少しずつ晴れていくようだった。

 

理亜「それで兄さんに提案があるんだけど」

 

優馬「提案?」

 

理亜「うん。私をここに泊めて欲しい。」

 

優馬「うんうん…って、え?」

 

理亜「私、ここに泊まるから。」

 

優馬「いやいやいや…学校は!?家の事は!?親御さんとか、聖良とか…」

 

理亜「うん、学校は少し休むくらいなら大丈夫。家も親も姉さまも兄さんの家にいるって言えば問題ない。」

 

理亜(まぁ…姉さまは飛んでくるかもしれないけど…)

 

 

優馬「いやいやいや…ちょ、ちょっと待って…そんな簡単に「あ、ちょっと電話出てくるね。」…」

 

電話、おそらく心配した親御さん、もしくは聖良だろう。

さすがに今いる場所が静岡の内浦で、かつ以前から親しかったとはいえ、仮にも男の家。親の立場となると心配でたまらないだろう。

 

理亜「もしもし…うん、今は兄さんの家にいる…うん、そうだよ、空条優馬…ありがとう、うん…大丈夫…じゃあ、何日か経ったら帰るから、うん、それじゃあまたね。」

 

優馬「…親御さん?」

 

理亜「うん。」

 

優馬「それで内容の程は…」

 

理亜「全然OKだって!久しぶりだからたくさん甘えなさいってさ!」

 

優馬「なん、だと…」

 

理亜「まぁ、うちの両親も助けてもらって以来、兄さんには激甘だからね…」

 

理亜「だから急にいなくなった当時は寂しそうだったなぁ」

 

優馬「…」

 

僕の口は開いたまま、塞がらないといったようだった。

まさかこうなるとは…

 

理亜「…ふふっ♡それじゃあ少しの間、よろしくね?“お兄ちゃん”♡」

 

優馬「…はぁ」

 

 

~函館・聖良の部屋・Aqours side~

 

あれから誰も話すことなく、ただただうずくまり沈黙が過ぎていた。

 

聖良「どうするおつもりですか?ここから…」

 

千歌「それは…」

 

考えは色々あった。

でも、結局、自分たちがそれでどうすればいいのか、その答えが分からなくなってしまっていた。

 

千歌「…」

 

聖良「しかし…一度ならず二度までも、とは中々、皆さんも酷な事をされますよね、本当に。」

 

ダイヤ「…ごもっとも、ですわ」

 

聖良の一言は的を射ていた。

そして、それだけにぐっさりとAqours全員の心に深く刺さってしまった。

痛む心、しかしどうしようもできない、何も言えないままだった。

 

曜「…わ、たしは、謝りたい…会いたいよぉ…」

 

果南「曜…」

 

今にも泣き出してしまいそうだった。

しかし、堪えた。

ここで泣いてしまったら、本当に優馬に会う資格が無いから、とそう思い、全員、苦しい思いの中、唇を噛み締めていた。

 

聖良「それが許されると思っているのですか?」

 

曜「っ!」

 

梨子「そんな…貴方に言われる筋合いは!」

 

その冷たい言葉に怒気を込めつつ、言い返した時だった。

聖良の視線は再度、強まり、その中にはやや殺気が込められているように思えたくらいだった。

 

聖良「…言いましたよね、苦しんでいるのは優君の方だって…許す、許さないは貴方たちが考えることじゃないんですよ…!?」

 

梨子「…」

 

善子「…でも、その気持ちを伝えるくらいの事は私たちで行動してもいいじゃない」

 

花丸「そうずら…何もかも許されない、何もするな、はいつまでも進展は無い、と思うずら…ただでさえ何かアクションを起こさないといけないと思うのに」

 

ルビィ「だから、私は、ううん…私たちはやっぱりお兄ちゃんに直接会いたい…そうだよね、千歌ちゃん?」

 

千歌「っ!…うん、そう、だね」

 

千歌は1年生たちのその強い言葉にいつのまにか励まされていた。

その言葉に涙が出そうにもなっていた。

それだけに1年生たちが成長していたのだ。

 

そんな想いが巡っていた中、聖良に一通のメッセージが届いた。

 

聖良「ごめんなさい…」

 

その中身を確認すると

 

聖良「…なっ!?」

 

千歌「ど、どうかしましたか?」

 

そこには優馬と理亜がツーショットで撮られた写真が送られてきていた。

 

聖良「…うちの妹が、優君の所にいます。」

 

果南「…え!?」

 

鞠莉「Oh~…?」

 

見せられた画像はその通り、理亜が優馬と腕を組み、ピースをしている写真で表情からもまさに挑発、宣戦布告と捉えられてもおかしくない、そんな写真だった。

 

善子「…こ、こいつ!?」

 

ルビィ「…ちっ!!」

 

花丸「…ずらぁ」

 

聖良「すみません…うちの妹が…恐らく私の電話を聞いていたんだと思います…」

 

梨子「いや、でも…それで内浦まで行く理亜ちゃんって…」

 

曜「実際の所、私たちと同じくらい愛が重いんじゃ…」

 

千歌「あ、あはは…」

 

まさしくそうだった。

実際、函館から内浦まで、となると函館空港から羽田、もしくは成田空港に

そしてそこからさらに電車、もしくは東京駅に…そしてそこから新幹線で沼津

そして電車で内浦…

といったようにかなり途方もない距離とお金がかかってしまうのだが、それを意図もたやすく乗り越えて、会いに行こうとするくらいなのだ。

恐らくあちらも生半可でない気持ちをもってして、向かったのだろう。

 

ダイヤ「…って!こうしちゃおられませんわよ!?」

 

果南「だよね…理亜ちゃん、ゆうに何するつもりなんだろう…」

 

鞠莉「う~ん…私たちからの略奪愛、といったところデース?」

 

その鞠莉の一言により、Aqoursの皆から殺気が出てきてしまう。

確かにそこまでできる愛の深さはすごい、称賛に値されるくらいだろう。

しかし、それとこれとでは話が違う、と言ったかのよう。

さっきまでのお通夜テンション、謝らなければならない、と嘆いてたのはどこへやら。

その光景はさっきの事が嘘のように思えてしまう程だった。

 

千歌「行かないと、優くんのところに…このままじゃ…」

 

梨子「そうね…いくら愛が重かろうが、今は私たちのマネージャーだってこと、教えてあげないと、ね…?♡」

 

曜「うんうん…辞めるって言ったこと、後悔させてあげないと♡」

 

千歌「それじゃあ…聖良さん、ありがとうございました!また機会があったら一緒に歌いましょう!」

 

そうしてAqoursの皆が出て行こうとした時だった。

 

聖良「…すみません、水を差すようで申し訳ないのですが…」

 

ダイヤ「…?どうかされましたか?」

 

聖良「私も行かせてください」

 

果南「え?」

 

聖良「理亜の問題でもあるので…説教、しなくてはならないので、ふふっ♡」

 

理亜の問題、と言っているが女聖良はただただ優馬に会いたい、それだけである。

 

聖良(感動の再会、と行きましょう?♡優君…♡)

 

千歌「…分かりました!それじゃあ優くんの所に行こう!」

 

そうして聖良も加わり、改めて、千歌たちは優馬の下へと急ぐのだった。




いかがだったでしょうか?
理亜が無事で済むといいんですけどね。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第64話 一寸先は闇

こんばんは、希望03です。

一寸先は闇、捉え方によっては希望にも感じるし、絶望にも感じるもんです。

それではどうぞ。


 

~内浦・優馬家~

 

あれから時は過ぎ、気付けば時刻は23時。

綺麗な月が窓の外から見えていた。

明日は学校があるから早めに寝なければ、と思いつつも今日、家には僕以外にもう1人の居住者がいるからか、自分のタイミングで寝れずにいた。

 

理亜「はぁ~…さっぱりしたぁ…」

 

優馬「…///」

 

そう、函館出身のスクールアイドル、Saint Snowの鹿角理亜である。

昔、僕が内浦から逃げ、北海道へとやって来た時のお隣さんであり、僕の事を兄、と慕ってくれている絶賛家出?中の女の子だ。

 

理亜「…兄さん、目がいやらしいよ。」

 

優馬「っ!///ご、ごめん…そんなつもりじゃ…///」

 

理亜「…ふふっ、分かってるよ。兄さんはそんな人じゃないって…というかむしろもっと見て欲しいけど…♡」

 

優馬「…何か言った?」

 

理亜「何でもないよっ」

 

その顔は以前、久しぶりに会ったであろうあの神社での表情とは全く別反対の顔のように、砕けた表情で微笑んでいた。

その表情に少しグッと来ていると、優馬の携帯からバイブ音が鳴った。

 

優馬(…なんだ?)

 

千歌たちだろうか?

そう思い、確認してみようとすると

 

優馬「っ!?」

 

まだ確認すらしていないのに、なんだかとてつもない悪寒が全身を巡った。

 

理亜「…兄さん?誰からのメッセージ?」

 

理亜は僕の携帯のバイブ音に気付いたのか、それともあまりの挙動不審さだったのか、近付いてきた。

しかし、僕は心配させてはならない、と思い、咄嗟に

 

優馬「い、いやなんでもないよ…大丈夫だから、気にしないで。」

 

そう言ってしまった。

しかし、それが良くない選択だったのだろう。先ほどの微笑ましい表情から一転、理亜の様子が徐々に変わり始めた。

 

理亜「…なんで隠そうとするの?ねぇ、なんで?やっぱり私じゃ頼りないの?ねぇ、なんでよ。なんで、なんで?あの女狐たちの方が良いの?ねぇ、なんで」

 

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで…

それはまるで壊れたラジオのように、同じ単語しか話せていなかった。

そして、一瞬、呼吸を整えたかと思えば、僕の方を向き、ものすごい力で携帯を取り上げようとしたのだ。

 

優馬「っ!?」

 

理亜「見せてよ…見せてっ!!!!!」

 

優馬「待って…落ち着いて…落ち着けよ!」

 

理亜「…落ち着けるわけないじゃん…だって、だって…やっと兄さんは私たちだけを…私だけを選んでくれると思っていたのに…!!」

 

支離滅裂だった。

何言っているのか分からない。選ぶ?どういうことだ。

理亜はただ昔良くしてもらった兄のような存在に会いたかっただけなのではないのか?

 

理亜「ねぇ、兄さん…?携帯、見せてよ…何もしないから、ね?」

 

そう迫ってくる彼女の身にはバスタオル1枚だけ…

男であれば、興奮剤のような欲情的な恰好ではあるが、今の僕にとってはそれどころではないような状況に追い詰められていた。

 

優馬「落ち着いて…まずは着替えた方が良い。風邪引くからさ…」

 

理亜「…逃げようとしてる?私から?」

 

優馬「なっ…!そんなつもりは微塵もない!」

 

理亜「そうとしか聞こえないよ…だって、兄さんの表情、怯えてるよ?」

 

優馬「っ!」

 

理亜「そっか…そんなに女狐たちが恋しいんだね…?」

 

優馬「そもそも…女狐って…どういうこと?」

 

理亜「あぁ、兄さんを誑かしてる女たちの事だよ。ほら、Aqoursの人たち…皆、兄さんに対して、色目使ってるじゃん。」

 

優馬「そんなの…」

 

理亜「兄さんだって気づいているくせに…悪い人だね」

 

優馬「…」

 

理亜「でも兄さんは悪くないよ。全ては誑かす女たちが悪いんだから、ね?だからさ…携帯、貸して」

 

優馬「何するつもりだよ…」

 

理亜「何もしないよ。確認するだけ。」

 

優馬「…」

 

正直、信じられずにいた。

しかし、ここで逆らってしまったらまた彼女は暴走をし始めてしまう。

そんな可能性が少しでもある以上、僕は携帯を渡さざるを得ない状況にいた。

 

優馬「…はい」

 

理亜「っ!…やっと、やっと信じてくれたんだねっ♡」

 

そうして理亜は即座にメッセージを開き始め、全ての内容を確認し始めた。

最初こそはテンポよく動いていた指だったが、徐々に徐々にと、ゆっくりになっていき、またそれに比例するかのように理亜の表情はまた険しい表情をし始めたのだ。

 

理亜「…ちっ!姉さま…あの女狐たちと手を組んだんだ…最終的に自分のものにしようとするために…」

 

優馬「り、理亜…?」

 

理亜「…兄さん、よく聞いてね。大事な話だから。」

 

そうして、今度は冷静になったのか、単調に理亜が話し始めた。

その話の内容は千歌たちの今の状況についてだった。

なんと、千歌たちは今の今まで、北海道にいる聖良の下にいたみたいだった。

それは聖良からの呼び出し…そして僕との空白の時間を知るために。

しかし、今、優馬の下に理亜がいるという情報を聖良が手に入れたことにより、憤怒に駆られた千歌たちが怒り心頭にこちらに向かっているという事だった。

さらにはそこに聖良も参加し、同じように怒り心頭の状態でいる、ということだった。

 

優馬「なんで…」

 

理亜「…逃げようよ、兄さん。」

 

優馬「え?」

 

理亜「ここにいたら危険だから、だから私と一緒に逃げよう」

 

優馬「そんなこと…できるわけないよ…」

 

理亜「大丈夫。だって私はずっと“お兄ちゃん”の味方だから…“お兄ちゃん”を危険な目に合わせたくない!」

 

優馬「理亜…」

 

そうと決まれば、と言わんばかりに理亜は意気込み、早急に出かける準備をし始めた。

茫然としたまま、待っていること数分。

 

理亜「よし!兄さん、行こう。ここから早く離れなくちゃ。」

 

優馬「あ、あぁ…」

 

持っているのは財布や携帯、その他、自分にとって必要な物や大切な物

それらを持ち、僕はこれからまた旅立つ。

 

優馬「…」

 

もうここに戻ることはないのだろうか

このまま彼女たちから逃げ続けたままでいいのだろうか

ずっと昔から彼女たちの事を避け、逃げ続けてきた。

やっとここに辿り着いて、もう一度やり直そう、もう一度向き合おうとしていたはずなのに…

 

理亜「…迷ってるの?」

 

優馬「…っ」

 

理亜「…こう言ってしまうのは辛いかもしれないけれど、Aqoursはずっと兄さんの事を苦しめ続けてた。自分たちの好意ばかりを優先にして、ずっと兄さんの事を蔑ろにしてた…そんな人たちの事をまだ考えているとしたなら…もう潮時だと思うな。」

 

優馬「…そうなのかな。」

 

理亜「…うん…ずっと大切だったのは分かるけど、これ以上は兄さんの心が壊れちゃうから…だから、もう私と一緒に行こう、ね?」

 

優馬「…そう、だね」

 

理亜「…あはっ♡…ふふっ♡」

 

理亜「…ふぅ、じゃあ行こう!♡」

 

そうして理亜が玄関のドアを開け、まだ暗い、けれども綺麗な月明かりが照らす内浦に新しい門出をわずかながらに噛み締めながら、身を乗り出した。

 

まさに、その時だった。

 

 

「…残念でした♡」

 

 

 

そう聞きなれた声が静寂な夜に響いたのだった。




いかがだったでしょうか?
駆け落ちってロマンチックですよね。
失敗に終われば元も子もないですけど。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第65話 愛した人、愛された人、愛する人

こんにちは、希望03です。

問.貴方にとって愛とは?

それではどうぞ




~内浦・優馬家・玄関~

 

「…残念でした♡」

 

その声にゾッとした。

思わず、勢いよく前を見ると、そこには満面の笑みを浮かべる千歌がいた。

しかし、そこにいたのは千歌だけではない。曜や梨子といったAqoursの面々、そしてSaint Snowの聖良がそこに立っていた。

 

理亜「姉さま…」

 

聖良「ここまでよく頑張ってきましたね、理亜…ですが、一足遅かったですね。」

 

そう聖良が言うと後ろから出てきた1年生たちが優馬の腕を引っ張った。

 

ルビィ「お兄ちゃん…!無事で良かったぁ…」

 

善子「全く…リトルデーモンたら、主である私の手を煩わせるなんて100年は早いのよ!」

 

花丸「どこにそんなツンデレ要素を隠していたんずら…でも、本当に無事で良かったずら…」

 

そうして為されるがままに1年生たちに腕を引っ張られ、連れていかれるところだったが、そうもいかなかった。

腕を引いている方向と逆側の方向からさらに力が加えられた。

後ろを見てみると理亜が1年生たちに対抗し、強引に引っ張っていたのだった。

 

善子「っ!…離しなさいよっ!」

 

理亜「渡さないっ!!」

 

善子「なっ…!?」

 

千歌「ねぇ、理亜ちゃん。」

 

理亜「…なによ?嫉妬?」

 

千歌「違うよ、なんでそこまでして優くんを離そうとしないの?」

 

理亜「…は?それは私の台詞なんだけど?」

 

梨子「それって…どういう意味?」

 

理亜「これまでやってきたことを忘れたわけ?散々、兄さんの事を振り回して、誑かして…困らせていることにも気づかずに、よくものうのうとここまでやってきたと思うくらいよ!!」

 

梨子「それは…」

 

理亜「そんな、そんな人たちに兄さんを渡すわけにはいかない…!」

 

曜「それは困るよ!だって…優は私たちの大事なマネージャーで…大切な人なのに…」

 

理亜「そんなの私だって同じ!!あんたたちは良いでしょ!?ずっと、ずっと兄さんがいてくれて!傍で支えてくれて!一緒に過ごせる、そんな生活があるんだから!!」

 

理亜「私は、私だってずっと兄さんの事、待ってたの!助けてくれたあの日から、ずっと兄さんは憧れで、大好きで、大切な存在で…いなくなってから忘れたことなんて一度もない!!」

 

理亜「久しぶりに会えたあの東京イベントの時だって、どれだけ抱きしめて欲しかったか…あんたたちに分かる!?分からないでしょ!?だって、あんたたちはずっと傍にいてくれるんだから!」

 

理亜「私は憎い!兄さんを奪ったあんたたちが大っ嫌い!!大切な傍にいてくれる充実さを当たり前だと思ってるあんたたちの存在が大っ嫌い!!そんな人たちに兄さんを渡すわけにはいかないの!!」

 

聖良「理亜…」

 

理亜「…姉さまもこいつらの味方をするなら私は容赦しない。絶対兄さんは守るから!!」

 

それはまさに錯乱状態、あるいは興奮状態だった。

恐らく周りが見えなくなってしまって、結果的に何を言っても聞かないだろう。

しかし、聞いていると言っていることは正しいようだった。

別に僕を傷つけようとしているわけでもない、ただただ大切な人を守りたい、っていう気持ちだけなのだ。

 

果南「それは、うん…理亜ちゃんに対してもゆうに対しても傷つけてしまって本当にごめんって思ってる…でもさ、理亜ちゃんが今やってることも私たちと変わらないってこと、気付いている?」

 

理亜「そ、れは…」

 

ダイヤ「そうですわ。確かに私たちに非があることは明らか…今さらながら、同じ過ちを繰り返して、ようやく気付きましたわ…」

 

鞠莉「Yes…でもね、どうしようもないことだと思うのよ。だって、結局彼からの愛を受け取れるのはたったの一人だけ…ずっと恋焦がれていた女の子にとってはそれが何物にも代えがたい程、欲しいものだと思うの。だから…やり方が汚いのは分かっているけれど…どうしようもないことなのよ…」

 

理亜「ならやり方を変えればいいじゃない!正々堂々とやれば!」

 

果南「できないと思うよ…だって、そう言う理亜ちゃんだって一緒でしょ?」

 

理亜「え…?私…?」

 

果南「…今やってることも、ゆうを連れて逃げようとしたことも、普通じゃない…ようは誰にも譲りたくない、ゆうからの愛を独占しようとし考えた結果のそのやり方ってことでしょ?」

 

理亜「違う!!私はただ兄さんを守りたかっただけで…!」

 

果南「…」

 

果南の問いかけと同時に皆は理亜の方をじっと見つめた。

それは憎しみを込めて見つめている、ではなく、理亜の事を心配しているようなそんな目に見えた。

 

理亜「わ、たしは…!う、うわぁぁぁぁん!!!」

 

その目に耐えきれなかったのか、僕の腕を離し、その場にへたり込み、号泣してしまった。

 

聖良「理「聖良」…優君?」

 

僕はその姿を見て、ふと何を思ったのか、体が動いていた。

 

理亜「っ!?」

 

千歌「…優くん」

 

優馬「ありがとう、理亜」

 

理亜「え?にい、さん?」

 

優馬「理亜の想い、受け取ったよ。そんなに僕の事を想ってくれていたんだね。」

 

理亜「そんな、こと…わ、たしはあの人たちと同じで、にいさんのためにと思ってたことは全て自分の事ばかりの自己中心的な「理亜」…っ!?」

 

僕はその声に耐えきれなかった。

だってしょうがないじゃないか

その声はまるで、誰かに助けを求めているような、悲しい声だったのだから。

だから、気づいた時には僕は理亜を抱きしめていた。

 

理亜「っ!?ちょ、え!?兄さん!?///」

 

優馬「僕はずっと弱かった。自分から逃げて、他人から逃げて…情けない人間だった。それは多分このままだったら、今後も変わらないと思う。」

 

理亜「っ!そんなことない!兄さん、いや…お兄ちゃんはずっと悲しみや苦しみとか、とにかく重たい何かに押しつぶされそうになっても頑張って、前を向いて生きてきたんだよ!?」

 

優馬「はは…ありがとう、理亜。理亜がそう考えているのと同じ…僕も理亜の事、尊敬してるんだよ?」

 

理亜「え…?」

 

優馬「スクールアイドルへの情熱、それはどういう理由から、というのは僕には分からないけれど、それでも誰にも負けない、という気持ちと同じように誰かを守りたい、って言う強い気持ち…それは誰にも真似なんてできない、理亜自身の強さでしょ?」

 

優馬「…だから、すごいよ?理亜は」

 

優馬「君は自己中心的なんかじゃない…それは理亜だけじゃない。Aqoursの皆だって同じだ。」

 

千歌「!」

 

優馬「確かに僕に対しての想いって言うのは正直、常識的じゃないかもしれなけれど、それだけ僕の事を大切にしてくれてるってことだろ?でも、僕はさっきも言ったけど他人からも逃げたんだ。向き合おうともせずにね。そんな自分が嫌になる、反吐が出る。」

 

全てを語った。

僕自身が彼女たちの事を想っていたことも、逃げていた自覚があったことも。

そして、そんな自分が嫌いな事も。

だけど、そんな自分ともおさらばだ。その時だった。

 

「本当に終わらせるんだね。」

 

優馬「…あなたは、誰?」

 

「嫌だなぁ、忘れちゃった?“優くん”」

 

優馬「…まさか、奏姉さん?」

 

奏「そ、だいせいか~い!!…って言っても君が作り出した紛い物、幻想だけどね」

 

優馬「…今さら何の用なの?」

 

奏「あ、別に邪魔しようなんて思ってないよ。ただようやく踏ん切りをつけようとしてるからその門出を祝おうと思って。」

 

優馬「…」

 

奏「…色々あったねぇ。ここまで、さ」

 

優馬「ありすぎたよ、もうこりごりだ。」

 

奏「ふふ、そうだね。」

 

なんで彼女がここにいるのかは分からない。

さっきまで皆に話していたはずだったのに、目を閉じて、開けた時、ここにいた。

そして目の前には奏姉さん。

どちらにせよ、夢なのは分かっている。

どうせなら最後の会話でもしよう、そう僕は覚悟した。

 

奏「…ねぇ、優くん?」

 

優馬「なに?」

 

奏「そんな警戒しないでよ…何にもしないって」

 

優馬「…」

 

奏「…私の事、好き?」

 

優馬「…それはいつの話?今?それとも過去?」

 

奏「ん~…どっちも!」

 

優馬「…今も昔も好きだよ。姉さんの事が」

 

奏「…そっか。じゃないとこんなとこに私がいるわけないもんね♪」

 

優馬「まぁ、そのおかげで今までの関わり全てを絶ってきたんだけどね」

 

奏「あはは、じゃあ優くんの心には私がズタズタに刻まれてるんだ!…滑稽だね♪」

 

優馬「…そうかもね。でも、もう覚悟は決めたよ。」

 

奏「…は?」

 

優馬「貴方は僕の憧れで大好きで大切な人だった。それは変わりない。けれど、もう貴方を思い出すことはない。」

 

奏「…ふ~ん、君に出来るの?ストーカー君?」

 

優馬「できるさ。」

 

奏「すっごい自信…なんでか教えてくれる?」

 

優馬「皆がいるから。」

 

奏「…そっか。ならもういいよ。」

 

 

奏「今日まで楽しかった。…さようなら、元気でね。愛した人」

 

そうして、目を開けるとそこは元居た場所だった。

数分だったのだろうか、皆が心配そうに僕を見つめていた。

 

梨子「ゆう、くん?」

 

曜「だいじょうぶ…?」

 

優馬「…会ってきたよ。奏姉さんに」

 

ダイヤ「!?」

 

優馬「うん…覚悟は決めた。もう逃げるのは止めるよ。もうお終いだ。」

 

ルビィ「え…」

 

梨子「そ、それってどういう意味?」

 

曜「それって…」

 

花丸「つ、ついに優さんからの告白、ずら…!?」

 

善子「う、嘘…!ま、まだ心の準備が…!」

 

優馬「違うよ…いや、半分は正解か…」

 

ダイヤ「じれったいですわ!」

 

果南「そうだよ、早く意図を言って!」

 

鞠莉「そうデース!hurry!hurry!」

 

僕は彼女たちを見つめた。

僕の覚悟を伝えるために。

 

優馬「…期限は3年生にとっての最後のライブまで。」

 

優馬「その時が来たら、僕が皆のうちの誰かを選ぶ。それは聖良たちも含め、だ。」

 

「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」」

 

優馬「正直、今の僕はまだ皆から1人を選べない…まだ覚悟が足りないし、向き合っていなかった…何より魅力的な女性たちばかりだからね…だけど、もう決めたよ。必ず選ぶ。それまで待っていて欲しいんだ。」

 

ダイヤ「そ、そんなの…」

 

千歌「いいよ、分かった。」

 

曜「え、千歌ちゃん!?」

 

千歌「…その代わり、必ず選んでくれるんだよね?」

 

優馬「…もちろん。」

 

千歌「…そっか!じゃあいいよ!」

 

そんな軽くていいのか?

と思いつつも、その言葉にとても安堵した。

 

千歌「でも、その分、アプローチはたくさんかけるからね?もう勝負は始まるんだから!ね、聖良さん。」

 

聖良「…そうですね。必ず私たちが…いえ、私が優君を奪いますから、覚悟していくださいね?」

 

優馬「…ぷっ、あははははは…」

 

何か月ぶり、日にちにしてみたらたった数日かもしれない、けれどそれが何か月、いや何年にも感じられるほど、ここまでの苦しみは僕にとって濃厚で、重いものだった。

でも、またこうして笑い合える。

やっぱりそんな場所が大好きで、大切で…だから

 

千歌「な、なんで笑うの~!!///」

 

聖良「そ、そうですよ!笑うところありましたか!?///」

 

 

…何度も何度も君たちに惹かれてしまうのかもしれない。




いかがだったでしょうか?

僕にとって愛とは、とても複雑で繊細なもの。それでいて壊れやすい美しいガラスのようなものだと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


P.S.評価もしていただけると嬉しいです。
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  詳細はマイページにて。


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第66話 弱さからの克服

こんばんは、希望03です。

弱さからの克服は2パターンだと思ってます。
逃げるか、薙ぎ払うか。

それではどうぞ。


~内浦・海岸・ルビィ視点~

 

お兄ちゃんが覚悟を決めてから数分…

外に出てみれば、もう辺りは暗くて、明日には学校があるから、という理由で今回はお開きとなった。

だけど、なんだか今日の事がルビィにとって衝撃的な出来事ばっかりだったことと、なんだかあの事件からナイーブな気持ちになっちゃって、なんだか帰れなくなっちゃった。

だから、私は海岸で少し肌寒い潮風に打たれていた。

 

ルビィ「…」

 

お兄ちゃんからの一言、3年生にとっての最後のライブまで、必ず1人を決めるという言葉に私はついに選んでくれるんだ、っていう喜びとこの中から1人しか選ばれないんだ、という焦りや不安が心の中で混在していた。

どうアプローチすれば振り向いてくれるのだろうか、そもそもあの人は私を女の子として見てくれているのだろうか、そんな色々な不安が次々と頭の中に流れていた。

 

そんな時、後ろから声を掛けられた。

 

「ねぇ、ちょっといい?」

 

ルビィ「あ…」

 

それは理亜ちゃんの姿だった。

 

理亜「ねぇ、良いって聞いてるんだけど?」

 

ルビィ「う、うん!どうぞ…」

 

その聞き方はまさに傲慢無礼というか、とにかく高圧的な態度だった。

 

理亜「…あんた、ルビィ…だっけ?」

 

ルビィ「う、うん…ってなんで知ってるの?」

 

理亜「昔、あんたの名前を聞いたことがあるの。兄さんからね。」

 

ルビィ「お兄ちゃんが!?」

 

理亜「っ!うるさいわね…」

 

ルビィ「ご、ごめんなさい…びっくりしちゃって…でも、なんで?」

 

理亜「…兄さんと昔、話していた時に私と同じくらいの女の子で同じように姉妹なんだ、って話をされたことがあったから、覚えてたの。」

 

理亜「こんな偶然があるんだなぁって、驚いてた。」

 

ルビィ「そうだったんだ…」

 

あの時、内浦を離れてからも私やお姉ちゃんの事を忘れてなかったんだ、と思えば嬉しさだけ残っていた。けれど、そう、感じられなかった。

それは姉妹、とそう括られていたこと。確かに昔は甘えてばかりでルビィもずっと兄呼びを繰り返していた。

だから、それがここにまで回ってきてしまって、結果、私は優馬という存在にとって、妹と同じような存在だ、と一言、二言の会話ではあるが、気付いてしまった。

 

ルビィ「…ルビィね、ずっと昔、まだ6歳くらいだったころかなぁ?お兄ちゃんの事、本当に自分の兄だと思って慕ってた頃があったの。あの頃は恋愛感情なんて何一つ分からないし、ただ優しいお兄ちゃんとしか思っていなかった。」

 

ルビィ「だからなのかな、ずっとお姉ちゃんに甘えるのと同じくらいにお兄ちゃんにも甘えてたの。ずっと後ろについて回って、何かあれば、お姉ちゃんかお兄ちゃんって…」

 

ルビィ「いなくなった時も、悲しかったけど、一人の家族を失ったみたいな感覚だった…多分、お兄ちゃんも同じような感覚だったんだと思う。」

 

ルビィ「だから、今でもルビィの事は妹みたいな扱いをするし、私も私でお兄ちゃんなんて呼んじゃうし…」

 

ルビィ「覚えててくれて本当に嬉しい。それは本当だよ。でもね、やっぱり異性として見られてないんだな、ってそう思うと哀しくなってきちゃうんだよね…」

 

理亜「…ルビィ」

 

ルビィ「ごめんね…こんな愚痴みたいなこと、言うはずじゃなかったんだけど、今になってね、彼女として扱ってもらいたいとか、女の子として見て欲しいとか、そんなことを想っちゃうんだ。」

 

ルビィ「本当、お馬鹿さんだよね。結果、こうなっちゃったのは全て自分の自業自得なのにね…」

 

どうしてもぽつり、ぽつりと少しずつ零れてしまう私の言葉

でも、どれも本心からの言葉だった。

私の言葉を理亜ちゃんがどう受け止めてくれているかは分からないけれど、それでも届かないこの想いは空に消えていくんだ、と思うと言葉が零れるのと同じように涙も零れ出そうだった。

 

理亜「…あんた、いや、ルビィはさ、もう諦めてるの?」

 

ルビィ「え…?」

 

理亜「どうなの?」

 

ルビィ「そんなの、分からない「なら私が奪ってもいいんだ。」…」

 

理亜「…私だって同じ境遇だよ。ルビィと同じように姉妹の中の妹としてのカテゴリーにくくられて、そればっかりに弱い存在だ、って思われて…守られてた時は嬉しかった。でも、その時も、そして今も兄さんにとって、私はただの保護対象みたいなか弱い小動物みたいな、そんな存在。妹ってそういう扱いなの。」

 

理亜「姉さまは違う。年齢だって年上で、頼りにもなる。距離が近かろうともどこか相談できる心の拠り所にもなっていて、異性として見られる時が多かった。けれど、私は違う。」

 

理亜「ずっと必死に兄さんについていって、守られて、結果、保護対象…本当弱い存在…」

 

理亜「だから、今回の事件を起こした。もう一度、会って私が守る番なんだって、彼に伝えるために。」

 

ルビィ「…」

 

理亜「そうやって行動を自ら起こさないと今の現状は変えられない…それができなければ、いやルビィが分からない、って駄々こねている間に私も他の人たちも色んなアプローチを掛けに行き始めてる…」

 

理亜「…私は良いよ。そうやって諦めてもらった方がライバルが消えるし、奪いやすい。楽だから。でも、それじゃあフェアじゃない。」

 

ルビィ「…どこまでもストイックだね、理亜ちゃんは」

 

理亜「ありがとう。でも、これからはルビィも変わらないといけないと思う。」

 

理亜「今の話を聞いたうえで、頭で考えずに、自分の心で私の質問を聞いて」

 

『ルビィは、諦めるの?』

 

ルビィ「っ!」

 

諦める、それは誰かにお兄ちゃんを譲るということ

もう私だけのお兄ちゃんでもなくなるし、別の人の大切な存在になってしまう…

それだけは、それだけは…!

 

ルビィ「諦めたくないっっっ!!!!」

 

ルビィ「お兄ちゃんが離れてからずっと、ずっと思い出しては泣いてた!なんでいなくなったんだろう、なんでどこかに行ってしまったんだろうって!」

 

ルビィ「でも、何より一番辛かったのはお兄ちゃんの笑顔が見れないことだった!それからはずっとお兄ちゃんの事しか考えられなくて、でももう内浦にはいなくて、ずっと泣いてばかりだった!」

 

ルビィ「ようやく戻ってきて、またあの日常が戻るんだって思った時、すごい嬉しかった!本当はずっとお兄ちゃんといたい…好きって、言って欲しいし、伝えたいの…!」

 

ルビィ「でも、皆、ルビィより大人で、可愛いし、スタイルも良くて…だから、もう無理だ、って勝てる要素ないんじゃないか、って思ってた。」

 

ルビィ「でも、違う。私には想いがある。誰にも負けないくらいの大きな想いが!」

 

ルビィ「もう諦めたい、なんて言わない!私がお兄ちゃんの心を奪うんだから!」

 

思いの丈を伝えた。

多分この話で理亜ちゃんはまた私と距離を置いちゃうだろうな。

だって、もうライバルだもん…でも、せっかくお友達になれると思ったんだけどな…

 

理亜「…ようやくやる気になったのね。」

 

ルビィ「え…?」

 

理亜「見る度になよなよしていて、後ろに隠れてばかりで…でも、視線だけは一丁前に鋭いんだから…」

 

ルビィ「わ、分かってたの?」

 

理亜「そりゃそうでしょ…あんだけ力強く、独占欲丸出しの眼力で見つめられたら、嫌でも理解するから。」

 

ルビィ「う、うぅ…///恥ずかしいよぉ…///」

 

理亜「…ふふ、ま、いいよ。これからまた頑張ろう。妹同士、ね。」

 

理亜「じゃあ、私は戻るから…気をつけて帰ってね、ルビィ。」

 

そう言って、理亜ちゃんはまたお兄ちゃんの家へと戻ろうとしていた。

 

ルビィ「理亜ちゃん!」

 

理亜「…なに?」

 

ルビィ「ありがとう!今度はルビィのお家にも遊びに来てね!!」

 

理亜「っ!///…全くこれからはライバル同士になるのに…お人好しなんだから///」

 

振り向きざまに見せていたその顔は少しだけ赤かったような気がした。

 

 

~内浦・海岸・善子視点~

 

善子「…」

 

「声、掛けなくて良かったずら?」

 

善子「うをおいぃ!?」

 

花丸「しーっ…!声が大きいずら…!」

 

善子「だ、誰のせいよ!誰の…」

 

花丸「はいはい…そんなことはどうでもいいずら」

 

善子「無視するなぁ!」

 

花丸「…ルビィちゃん、元気戻ったずら?」

 

善子「…さてね」

 

私はあの優馬の一言の時に、皆が我こそは、と目をぎらつかせていた最中、ルビィだけが俯き、不安げな表情をしているのに少しだけ心配になって、思わずここまで追いかけてしまっていたの。

そこはすごく澱んだ闇のような空気をルビィが纏っていたために、いつ声を掛けようか、とタイミングを窺っていたところに、天敵であるSaint Snowの鹿角理亜が現れたの。

何かルビィに酷いことでも言ったらすぐにでも飛び出す準備はしていたけど、そうでもなかった。

どうやら昔話をしているみたいで、表情を見る限りではこいつもこいつで苦労していたんだな、と思うくらいだった。

それからお互いに言い合いを始め、最終的にルビィが思いの丈をすべて吐き出して、もう一度、活気を取り戻したってわけね…

 

善子「…私たちも頑張らないと駄目ね。」

 

花丸「何をずら?」

 

善子「何をって…あんたねぇ!」

 

その時、勢いでずら丸の方を向いてみた。

そしたら、顔は何でもないといった表情だったけど、見るからに青ざめてて、手も小刻みに震えていた。

 

善子「ずら丸…」

 

花丸「…善子ちゃん。おら、おらもね?本当は怖いずら」

 

花丸「他の皆とは違って、初めて会ったのは今年だし、思い出だって他の皆と比べたら少ない…しかも、他の皆と違って、スタイルだって悪いし、方言も出ちゃうし…」

 

花丸「今はまだ大丈夫だけど、いつか優さんにフラれる日が来るって考えると不安で不安でしょうがなくて…」

 

それはまぎれもなく本心だろう。そう感じ取った。

声も震えながら、手も震えていて、顔はなんとか堪えているけど、今にも不安で押しつぶされそうなくらい泣きそうな顔をしていた。

 

善子「…それでもやるしかないのよ。」

 

花丸「で、でもおら「あんたは!!」っ!」

 

善子「あんたは…優馬に好き、って言って欲しくないの?」

 

花丸「え…?」

 

善子「単純な話よ…愛して欲しくないの!?違うでしょ!?」

 

善子「本当は誰よりも嫉妬深くて、いつだって優馬のこと考えているくせに!今さら不安!?馬鹿なんじゃないの!?」

 

善子「そんなこと、私に言わないで!私だって不安なのよ!でも、私は優馬が欲しい!優馬に愛して欲しい!一番の女の子でいたい!…好きって言って欲しい、ただ、それだけなの…!」

 

善子「思い出があるとか、昔から好きだったとか…そんなの私にもないわよ!!けど、一目惚れした以上、しょうがないじゃない!ずっと優馬の事しか考えられないんだからっ…!」

 

花丸「よしこ、ちゃん…」

 

善子「…私だってずら丸と同じだからね。一人だけだと思わないで。」

 

花丸「うん…ごめんね…」

 

善子「…分かったなら、頑張りなさい。不安なのも分かるし、焦るのも分かるけど、それだけで慈悲がもらえるような簡単なものじゃない。」

 

善子「…愛は戦争だから。勝てば愛してくれるし、負ければ傷が残る。承知の上で私たちは戦わなきゃいけないのよ。」

 

花丸「…うん」

 

善子「…今は辛いかもしれないけれど、頑張るわよ。お互いに、ね。」

 

 

あの事件から数時間後

私たちは優馬を振り向かせるために涙を堪え、明日への光を胸に、今日は戻ったのだった。




いかがだったでしょうか。

前を向いて歩くって大人に近づくにつれて、どれだけ大変な事か、分かりますよね。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第67話 A. 笑えばいいと思うよ。

こんにちは、希望03です。

辛い時、不安な時、焦っている時。
どうしたらいいですか?

それではどうぞ。


~優馬家・玄関~

 

梨子「ねぇ、2人とも」

 

何事かと思ったのはここだけの話。

そこには真剣な顔でこちらを見つめる梨子ちゃんがいた。

 

千歌「どうしたの、梨子ちゃん?」

 

梨子「2人はどうするの」

 

曜「どうするって…何が」

 

梨子「優君、多分本気だと思う。」

 

千歌・曜「「…」」

 

分かっていた。

いずれこうなるだろうってことは。

いずれ、優は私たちの中から誰か一人を選んで、幸せになるんだって。

それは私かもしれないし…私じゃないかもしれない、っていうことも。

でも…でも

 

曜「私は分からない。」

 

梨子「え?」

 

千歌「…」

 

曜「だって、私はずっと何かと優を困らせてばっかりで、今回だってまた自分を見失って、優ばかりを追いかけて、その結果…あんなことが起きた。」

 

そう、私は優を困らせてばかりだ。

今振り返るだけでも優には頭が上がらない。

想いを拗らせて、どんな手を使ってでも私が、だなんて。

私の柄じゃないの分かっていた癖に。

 

千歌「…それは曜ちゃんだけじゃないよ。」

 

曜「千歌ちゃん…」

 

千歌「千歌だって同じ。私もずっと優くんを困らせてた。」

 

千歌「昔、初めて会った時、どこか不思議な男の子、って感じででも、段々と好きになっていって…でも、私たちから離れて行った…だからかな、また再会した時から私は優くんを千歌の物にする、ってことしか考えてなかった。」

 

千歌「いくら注意されても、自分で一度、制御しても…何度やってもやっぱり優くんが欲しかった。」

 

曜「…」

 

千歌「…お互い様だね」

 

お互い様。

その言葉が私の中でどこかホッとした気持ちを生んだ。

後悔と焦り、不安は私だけじゃないってそう気づけたから。

でも、私の不安はそれだけじゃない。

 

千歌「…これから、どうしよっか」

 

梨子「…もう、優君は決める覚悟をした、ってことだもんね」

 

そう、ついに優は心に決めたんだ。

必ず大切な人を決めるって。

 

曜「…私、自信ないな」

 

ぽつり、とこぼした本音。

私自身も珍しいと思う程、弱気な発言。

でも、これが本音。元々、自信がないからあんなアプローチを掛けてたわけなんだし、それが全部、失敗に終わって…なんて考えると優馬にとって、私ってどんな存在なんだろう、どう思ってるんだろう、って考えちゃう。

 

千歌・梨子「「…」」

 

2人とも、何も言わなかった。

それは私も、だからなのか、曜という存在から弱気な発言が出たことで私の空気を察してくれたのか、それは分からない。

けれど、この沈黙が私にとって、さらに不安を助長し、押しつぶされそうな、そんな感覚に陥りそうになっていた。

でも、そんな私が奈落の底に堕ちそうになっていた時だった。

 

千歌「…2人とも、今日は千歌の部屋、泊まらない?」

 

え、と思った。

でも、嬉しかった。その言葉だけで千歌ちゃんの温かさが知れたから。

そして、私の心もほんの少し、不安が和らぐようなそんな感じがしたから。

 

 

~千歌家・千歌の部屋~

 

千歌「入っていいよ~」

 

曜・梨子「「お、おじゃまします…」」

 

千歌「散らかっててごめんね~」

 

千歌ちゃんの部屋が散らかっているのなんて日常茶飯事だ。

私も、そして梨子ちゃんもよく家にお邪魔するし、千歌ちゃんらしいと言えば千歌ちゃんらしい。

だけど、この時ばかりはそんなことを機にする余裕がないくらい緊張していた。

それはどこか、千歌ちゃんの雰囲気がいつもと違っていたからだ。

その表情は何かを決心したような表情で、私も何を言われるのか想像ができない。

だからか、ちょっと緊張してしまう。

 

千歌「急に私の家に泊まろうなんて言ってごめんね~、どうせなら千歌だけじゃなくて一緒に考えたいな~って思って。」

 

曜「ううん!気にしないで!」

 

梨子「うんうん…でも、考えるって…」

 

その時、私も察した。

考える、というときっと今後、どういうアプローチをするのか

そして、優にどう伝えるか、とかそういったプランの話、もしかしたら優と一回離れてみようとかの話だ、と察した。

恐らく、私だけじゃない、梨子ちゃんも同じだろう。

でも、千歌ちゃんから言われた言葉は斜め上の回答だったのだ。

 

千歌「優くんの好きな所、言い合おう!」

 

曜・梨子「「…え?」」

 

ついに言葉に出てしまった。

 

曜「す、好きな所?」

 

梨子「これからどうするか考えるんじゃないの!?」

 

千歌「うーん…だって、何考えても不安になっちゃうし、どんどん気持ちも下がっていくし…その度に優くんの言葉を思い出して、って悪い方向に行っちゃうと思うから…」

 

千歌「だったら楽しいこと考えたいな!って!」

 

曜・梨子「「…」」

 

千歌「じゃあ早速やって行こう!まず千歌からね~…えーっと」

 

始まってしまった。

果たしてこれで良かったのだろうか、皆はこうしている間にもどんどん策を講じているかもしれないのに、と思いつつも耳を傾けた。

 

千歌「普通にかっこいいところ!少し髪が長いから片目が見えないんだけど、ふと覗いた時の表情とか、顔つきがかっこい「それ分かるよ、千歌ちゃん!」う、うん…?」

 

梨子「ちょっと影が薄くて、目立たないような髪型で顔も隠れて印象に残らないような感じなのに、顔をパッて上げて髪がフワッと上がった時にのぞかせるあの綺麗な眼と顔!本当、眼福…///」

 

千歌「す、すごい熱量だね…でも分かるよ!///梨子ちゃん!!///」

 

2人ともそれはそれは凄まじい勢いだった。

恐らく優があの発言をしたことによって、皆はそれぞれアプローチを掛けるために様々なプランを練り上げ始めているはずなのに、こんなことを始めてしまっていいのだろうか…

ここは私がしっかりと言わなければならない!

そう決めていたはずだったが

 

曜「あー…た、確かにかっこいい、け…い、いいよねー!///」

 

言えなかった。

この2人がもう優の事しか頭にしか無くて、妄想し始めていたからもう何も言えなくなってしまった。

 

梨子「曜ちゃんもそう思う!?」

 

千歌「あったりまえじゃ~ん!曜ちゃんも千歌たちと同じで優くんのことしか頭にないんだから~!」

 

心外だ。

決してそんな体たらくではない。

ない、ない…ないよね?

あれ?そんなはず…あれれ?

 

千歌「でもでも、一回優くんさ、髪切った時なかったっけ??」

 

梨子「あった!結構バッサリ切った時あったよ!!あの時は心臓止まるかと思ったんだよ~…///」

 

千歌「だよね!千歌も千歌も!全然優くんのこと見れなくて…というか昔の優くんだったね、あれは!懐かしさ相まってあの時は自分を見失わないようにするの大変だったよ~…///」

 

梨子「昔の優君か~…確かにまだ髪が短かったね…!///可愛かったな~…///」

 

千歌「そう言えば梨子ちゃんだけ私たちとは違う昔の優君を見てるんだもんね!」

 

悩んでいた私に興味を湧く話題が上がった。

聞く限りではどうやら優の昔話に花を咲かせているみたいだった。

昔の優については私が一番知っていると言っても過言ではない、それは私自身が自負している。

だから、千歌ちゃんたちがどうのこうの言っていようとも全て私は知っている。

しかし、ここで同じように話を始めてしまったら何か負けたような気もしなくも無かったからか、私は何も言わずに聞くことに徹することにした。

 

梨子「う~ん…簡単に言うと無愛想だった!」

 

…それは私たちのせいだ。

優が無愛想になってしまったのは、一概に私たちと言っても千歌ちゃんと私ではない、恐らく優と関係があったであろう果南ちゃんたち3年生たちも関係しているだろう。

 

千歌「あー…うん…それは千歌たち、というより内浦の時の…だね…」

 

梨子「でも、なんだかその時の男の子たちとは違う、どことなくミステリアスな雰囲気と顔つきの良さが相まって、どんどん惹かれていったんだよね…」

 

もちろん!あの優だよ!?

ミステリアスどころか、どこか大人びていて、でも年相応に見える瞬間もあったり、ちゃんと男の子なんだな、とか思ったりとか、顔つきの良さとか、顔面国宝級だし…///

惹かれるなんて、私はとっくのとうになってるからー!!

 

梨子「最初は気になってた、というか好奇心で話に行ったりとか、コンクールに招待したりとか…色々やってたんだけど全部断られて…」

 

優はそういう所、行かないからね…

それは誘った梨子ちゃんが悪いよ…コンクールって…

 

梨子「で、残念だな、って思いながら音楽室のピアノで練習をしてたの、没頭してたから全く気が付かなかったんだけど、その時に優君が音楽室に入ってきて、ピアノを聴いてくれてたんだ」

 

…ん!?

え、え??優が、わざわざ音楽室に…?

絶対に誘われないと行かなそうなのに??

え…え!?

 

梨子「それで私に言ったの…」

 

『コンクールに行くのは面倒だけど、この特等席で君の演奏を聞いても良いかな?』

 

梨子「…って!」

 

千歌「お、「はぁ!?」おー…?」

 

曜「え、え!?ゆ、優がそんなこと言ってたの!?」

 

梨子「う、うん…///」

 

曜「梨子ちゃんのピアノを聴きたくて、特等席って!?しかも放課後の音楽室!?2人きり!!??」

 

梨子「よ、曜ちゃん!?ち、近いよ…///」

 

千歌「よ、曜ちゃん…落ち着いて落ち着いて…」

 

曜「ご、ごめん…」

 

思わず、前のめりになってしまった。

でも、仕方がないと思う。だって、私の知らない優だったから。

そんな優しい優は見たこと無い。

いや、いつも優しいんだけど、いつも私たちが振り回してばかりだったから。

 

曜「そ、それで進展は…」

 

梨子「…聞かないで。」

 

曜「え?」

 

梨子「お願い…聞かないでぇ…」

 

曜「…」

 

千歌「…プッ、アハハハハハハハハ!!そんなロマンチックな事があって、何もなかったんだ!アハハハハ…お、お腹痛い…アハ、アハハハ…」

 

梨子「千歌ちゃん!!笑いすぎ!!」

 

…正直、ホッとした。

そんな出来事があったなら優は完全に梨子ちゃんに心を奪われているのと一緒だ。

でも、それ以上、進展が無いとしたなら分からない。

一瞬、もう梨子ちゃんの勝利かと思ってたけど、どうやらそうでもないみたいだった。

 

梨子「そういう千歌ちゃんはあるの!?そういう出来事!!」

 

千歌「え、えぇ…千歌は、えーっと…うーん…」

 

あの千歌ちゃんだ。

恐らく過去の話など覚えていないだろう。

というか、そもそも食い意地だけだった千歌ちゃんがそんな甘酸っぱくもロマンチックな思い出などあるのだろうか

少なくとも私が知る限りでは無い。

まぁ、内浦にいた頃の優は私が一番知っているから思い出も私と一緒だろうしね!!

 

千歌「あ!あった!」

 

曜「え!?」

 

梨子「あったの!?」

 

千歌「ふふん!♪やっぱり千歌もお・と・め、だもんね~♪」

 

この千歌ちゃんは何言ってるんだろう。

幼馴染ながらそう思ってしまった。ごめんね、千歌ちゃん。

 

梨子「そ、それで…その話の程は…?」

 

千歌「えへへ~…///えっとね~、これは内浦にいた頃だから小学1年生くらいの時なんだけど…」

 

小1!?

そんな…いつも千歌ちゃんは私と優が一緒にいる所に着いてくるか、果南ちゃんと私で優と遊んでいる時に一緒についてくるか、そんな感じの子だったはずなのに…

一体どのタイミングで…

 

千歌「私は昔はあんまり思いとか考えを外に出すタイプじゃなくて、すごい人見知りだったんだよね…」

 

千歌「そんな時、全然知らない人から声を掛けられたの。」

 

千歌「ここの旅館の子かな、って。その時、一瞬でこの人は悪い人だ、って判断して、本当に怖くて逃げだしたかったんだけど、足がうまく動かないし、声も出せなくて、そのおじさんが無機になったのか、千歌を強引に連れていこうとしたんだ…」

 

千歌「そしたら後ろで私と同じくらいの男の子がいたの。思わず危ないから逃げて!って言おうとしたんだけど、その子が防犯ブザーを鳴らしながらカメラを構えてて…」

 

『誰か助けてくださーい。知らないおじさんに連れてかれそうでーす。』

 

千歌「って、怖かったんだけど笑いそうになっちゃって…そしたらおじさんが怒って、ポケットにしまってあったナイフを取り出してその男の子に向かったの」

 

千歌「今度こそ、危ないと思って目を瞑ったら、倒れてたのがおじさんで…」

 

千歌「とにかく何が起こったか、分からなかったんだけどその子に助けてもらったんだ。」

 

千歌「初めての男の子にしかも助けられたからドキドキしちゃって…///」

 

曜「…まさか、それが実は優だった、ってこと?」

 

千歌「そう!♡」

 

私たちが優と出会う前の話か…

道理で私が知らないわけだ…

でも、ずるくない!?そんなことあったの!?

私はそんなこと一度も無かったのに…

いや、こんな怖い体験はしたくないんだけどね?

だとしてもだよ…なんか千歌ちゃんに先を越された感あって、モヤモヤするな…

 

千歌「あの時の優くん、かっこよかったなぁ…♡今も昔もそういう優しいところは変わらないんだよね~…♡」

 

梨子「いいなぁ…なんだか私までドキドキしちゃった…///」

 

千歌「曜ちゃんも優くんとの思い出何かある??」

 

曜「…へ!?私!?」

 

わざとらしく答えるも正直、ずっと考えていた。

そしてついに振られてしまった、この話題。

今も尚、思い出そうとしてるけど…

全然ない…2人みたいにロマンチックな何かも無い。

 

曜「あー…うーん…」

 

長い沈黙。

私には千歌ちゃんや梨子ちゃんのような幸せそうな思い出は何もない。

ロマンチックな出来事も無い。

だって、そうだよ。

ただ、私は優を引っ張ってばかりで実は優を心から見ようと思っていなかった。

自己中心的に私ばかり、私の事だけを考えてたんだ。

結果がこれ。思い出なんて、何もない。

ずっと一緒にいた?何でも知ってる?

そんなの結局、何も誇れる物なんかじゃない。

 

曜「…」

 

梨子「曜ちゃん…?」

 

千歌「…曜ちゃん!」

 

曜「ふぇ?」

 

千歌「優くんの好きな所はある?」

 

曜「え、え?」

 

千歌「好きな所だよ。曜ちゃんにとって、ここは譲れない!って思う優くんの好きな所!」

 

曜「あ、るけど、でも私は2人みたいに思い出とか「思い出じゃなくたっていいじゃん!」え?」

 

千歌「確かに思い出ってすごく綺麗で、輝いて見える…けど、好き、って言う気持ちはそれの何倍にも綺麗に輝いて見えちゃうよ。だから…だから曜ちゃんの『好き』を教えて?」

 

曜「…っ!」

 

私の好き。

私にとっての大事な、大切な、優の好き。

それは

 

曜「…意外と不器用なところ」

 

千歌「え?」

 

曜「あと、顔もかっこいいのもそうだし、声も透き通っててキュンってなる。」

 

曜「あとちょっとした仕草も好き。その仕草をからかったらちょっと照れくさそうにこっちにジト目を向けるところも好き。」

 

梨子「よ、曜ちゃん??」

 

曜「あとすごく気にかけてくれるところも好き。自分じゃ気付かない部分も全部見ててくれて、ちょっと笑いながら仕方ないな、って言って頭撫でてくれるところも大好き。」

 

曜「そんな優の全部、優の全てが愛おしくて、大好きで、愛してる…」

 

梨子「曜、ちゃん…」

 

千歌「…」

 

曜「あ…」

 

わ、私は一体何を口走っているんだろうか!?

ずっと私ばかり話してて、自分を失ってたよ!?

 

曜「え、えーっと!ごめんね!?つ、次の話に「曜ちゃん!!」は、はい!?」

 

千歌「千歌も曜ちゃんに負けないくらい優くんの事、大好きだよ!」

 

曜「え?」

 

千歌「だから…」

 

曜「だから…?」

 

千歌「ぜっっったい!負けないからね!」

 

曜「千歌ちゃん…」

 

梨子「…忘れないでもらえる?」

 

曜「うわぁ!?」

 

梨子「ずっといたはずなのになんでこんな空気みたいな扱いなの…」

 

千歌「あははぁ…ごめんね!」

 

梨子「はぁ…いいよ、もう…とにかく、私だって2人にも他の皆にもこの恋は負けないから!」

 

曜「梨子ちゃん…」

 

「「「ふふ、あはははははは!」」」

 

 

きっとそれぞれの想いとか、恋路とか、色々あるんだと思う。

もちろんそれは私にもあるし、千歌ちゃんにも、梨子ちゃんも一緒だと思う。

けれど、好きっていう気持ちはきっと一緒。

焦りとか不安とか、皆あったと思うけど、今焦っても仕方ないし、不安を抱えたって仕方ない。

今は、うん。とりあえず笑おう。

 

また君にきちんと想いを届けるために…




いかがだったでしょうか。
今回は少し長めで申し訳ございませんでした。
でも、それだけ彼女たちに思いがあった、ということ、ご理解の程、よろしくお願い致します。

きっと彼女たちはまた落ち込んでは立ち直る、その繰り返しだと思います。
それでも前を向いて歩ける。
そんな強さを持っている、そう思います。
それは彼女たちだけでない、想いの強さは皆も同じということは同じ強さを持っていると思ってます。

これからも彼女たちの道に幸せがあるように願っています。(作者ですがね)

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もまたよろしくお願い致します。


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第68話 心の内

こんばんは、希望03です。

選ばれるのは誰か。

それではどうぞ。


~優馬家・廊下~

 

あの事件から数時間後、外も暗くなり、出るフェリー便も少なくなってきたためにさすがに帰らないとやばい、と焦り始めた。

急いで出なくちゃ、と思って、玄関に出ようとしたら、廊下で話声が聞こえてしまったのだ。

それは優馬と鞠莉の会話で、また私たちを置いて、話してるのか、とイラっとした。

私は鞠莉に嫉妬してしまった。この憤りをかねて話を盗み聞きしようと聞き耳を立てた。

 

鞠莉「…本当に決めるの?」

 

優馬「そのつもりだよ…ごめん、急にこんなことを言って。自惚れ、だったかな?」

 

鞠莉「…違うの。ううん、違う。」

 

優馬「…そっか」

 

鞠莉「優が感じてることはきっと正解よ…皆…皆、優の事が異性として大好き…それに気づいてたのね?」

 

嘘、だと思った。

だって、ゆうはあんなに無関心で、誰にも分け隔てなく笑顔を振りまいてて、全くそんな気なんて優には無いと思ってたのに。

 

果南(もう結構前から知ってた、ってこと?)

 

私の心の鼓動はさらに加速して、息も少しずつ荒くなってきていた。

 

優馬「…そりゃあね。」

 

鞠莉「アプローチ、あからさますぎたかしら?優ってば鈍い雰囲気出しておいて、意外と勘が鋭いもんね。」

 

優馬「うん…それがどうしたっていうのさ?」

 

鞠莉「ううん、別に何でもないわ…ただ、優は超能力者みたいだな、って」

 

超能力者、とまではいかないかもだけど、確かに鞠莉の言う事は当たっているかもしれない、と思ってしまった。

そんな勘が鋭いと片付けられない程にゆうは確かに敏感だった、ような気がした。

 

優馬「え?」

 

鞠莉「…だって、色んな事件も優が解決しちゃうし、まるで皆の心を読んでるみたいに欲しい言葉をくれるし…勘が鋭いんじゃなくて、本当は感じ取ってたりして!ムムム…!って!」

 

優馬「…そんなわけ、ないでしょ。それだけ?」

 

鞠莉「…ほら、そういう所。」

 

優馬「…」

 

鞠莉「そうやって、私の心も読んでるみたいに勘潜って、ね」

 

優馬「違う、鞠莉が分かりやすいだけだよ…」

 

鞠莉「…じゃあ当ててみて、私が今、貴方に伝えたい事、今、たった今、伝えたい事。」

 

…待って。鞠莉、何をするつもり?

どういうこと?私には分からないよ。

2人が感じてるシンパシー?みたいなの、全然分からない。

止めて、お願い、誰か、時を止めて。

…そんな願いなんて、届かないのを知っていたのに、私はその時、なぜか知らないけれどただただ聞き耳を立てながら祈りをささげていた。

 

『ゆうを、優馬を取らないで』

 

優馬「…」

 

優馬「分からない。」

 

鞠莉「っ!」

 

果南(っ!?)

 

優馬「ごめん、分からない。」

 

鞠莉「…そう。」

 

この想いが届いたかどうかは分からないけれど、どうやらゆうは鞠莉に対して、分からないと答えたみたいだ。

けれど、その顔を見ればわかる。

多分、ゆうは私に気付いて、何も言わないことにしたんだ。

バレないように、するために。

でも、ここから先、私は何も覚えてない。

この時は冷静じゃなくて、耳をふさいでただただ祈っていただけだったから。

 

優馬「…焦らなくても、いいよ。僕ももうある程度、決めているんだ。」

 

鞠莉「っ!?それ、って…」

 

優馬「どっちの意味に捉えてもいいさ…とにかく今日はこれでお開き。また明日、会おう」

 

鞠莉「…えぇ、分かったわ。優が例え決めていたとしてもこれからまた貴方を振り向かせてあげる…絶対に!」

 

優馬「…うん、楽しみにしてる。」

 

終わったのか、と思い、顔を上げた時には鞠莉がこちらに迫っていた。

辺りを見渡したけれど隠れるところも無く、すぐに外に逃げ込んだが、結局私は見つかって、聞いていたことも鞠莉にはお見通しだったみたいだった。

 

~内浦・優馬家前~

 

鞠莉「…果南」

 

果南「ま、鞠莉…」

 

鞠莉「…聞いてたのね。」

 

果南「…ごめん、つい、ほんとにごめん」

 

鞠莉「気にしなくていいのに…まぁ、でも見事に玉砕、ね。」

 

果南「…鞠莉は何をしようとしてたの?」

 

鞠莉「告白よ。」

 

衝撃の答えだった。

確かに覚悟を決めたゆうに対して、今のうちに告白をしてしまえばそこでフラれたとしても印象としては残る。

こういった行動力は本当、鞠莉らしいと思ってしまった。

 

鞠莉「…ま、結局言えないし、玉砕しちゃうし、だったけどね?」

 

果南「…私みたいに臆病じゃないだけ良いと思うよ」

 

そう、私は鞠莉があんな行動をしている裏でただただ聞き耳を立てて、聞いているだけ。

様子を窺って、立ち竦んでいた、ただの臆病者だった。

 

鞠莉「…変わらないわよ。それは行動であって、結果じゃない。だって、優は決めているんだから。」

 

果南「え?」

 

鞠莉「あら、そこは聞き取れなかったかしら?まぁ確かにそこのところで少し声のトーンが下がったものね~」

 

鞠莉「…優、もう好きな人、いるわ。」

 

果南「…嘘。」

 

 

「その話、詳しく聞かせてくださる?」

 

 

と、声が聞こえた先にいたのはダイヤと聖良ちゃんだった。

なぜそんなところにいたのか、というのも恐らく私たちの事を待っていたのだろう。

だとしてもこんな肌寒い中、外で待っていたのだろうか。

 

ダイヤ「はぁ…本当、寒い中、よくも私を待たせましたわね…」

 

果南「ぐっ…ご、ごめん…」

 

聖良「ふふ、といっても私たちも不安でここでずっと話してたんです。これからのこと。」

 

ダイヤ「ぎくっ…」

 

鞠莉「ぎく、なんて効果音を人が言うの、初めて聞いたわ…」

 

ダイヤ「鞠莉さんに突っ込まれたら終わりですわ…」

 

やはり、というか分かっていたことだった、と思う。

私たちの事を待っていてくれていたみたいだったけど、それ以上に、2人も不安だったみたいだった。

しかし

 

聖良「それよりもその不安はどうやら消えてしまいそうな話題でしたね…悪い方向で。」

 

…その通りだった。

けれど、悪い方向、なのだろうか。まぁそうか。

可能性としては11分の1、その一人がもう既にゆうの中で決められている、という可能性があるからだ。

 

ダイヤ「それは、本当なのですか?その…」

 

鞠莉「優に、もう好きな人がいるっていう話?」

 

ダイヤ「…」

 

鞠莉「…本当よ。だって、優の口から出た言葉だもの。」

 

聖良「…そうですか。」

 

果南「だから、争っても仕方ない、ってこと、なのかな。」

 

ダイヤ「それは私たちがこれからまた争いを起こさないために言った、という可能性は…」

 

鞠莉「もちろんその可能性も0ではないと思うわ。でも恐らく…」

 

ゆうの事だ。多分、鞠莉にだけ、そんなことを伝えてるってことは心の中ではもう…

 

ダイヤ「それではもう…」

 

聖良「優君の中でもう決めてるってことなんですね…」

 

鞠莉「祈るしか、無いわ…こればかりは…」

 

果南「…」

 

果たして、私が選ばれるのか、他の誰かが選ばれるのか、それは分からない。

でも、もし自分が選ばれなかったとして、他の誰かを私は祝福することができるのだろうか。

 

果南「どうすればいいの、ゆう…」

 

またあの時みたいに、ゆうがそばで手を差し伸べてくれる、そんな期待は無く、ただ私の言葉は夜の静けさに包まれ、空へと消えていった。

 




いかがだったでしょうか。

終盤も近いですね。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第69話 貴方のそばにいたくて

こんばんは、希望03です。

短めで物足りなさあっても文句だけはやめてください。

それではどうぞ。


~内浦・優馬家~

 

あれから夜が明けて、聖良たちは飛行機の時間もあるから、と朝早くにここを出て行ってしまった。

今日見送るときに本人たちから聞いたのだが、実はこの騒動のおかげで聖良たちは今回のラブライブ地区予選には出場しなかったらしい。

どうやら僕の事が心配でライブどころではなかったみたい。

…本当に申し訳ないな。

それでも彼女たちは皆と会えて嬉しかったし、僕とも話せたから、と笑顔で帰って行った。

その心の強さは見習いたいな、と感心した。

けれど、最後に2人が残した言葉がある。

 

聖良「優君?」

 

優馬「ん?忘れ物?」

 

聖良「そうじゃないですよ。あの…」

 

理亜「今日、面白いことが起きるから。」

 

聖良「む…」

 

優馬「面白い、事?」

 

聖良「…理亜。」

 

理亜「ごめんなさい、姉さま。あまりにもオドオドしていたからつい…」

 

聖良「…まぁ、いいです。理亜の言う通りですから、楽しみにしていてくださいね。」

 

と、残して去ってしまった。

一体面白いことって何だろう、と思いながらも笑顔で帰っていく姿には少しドキッとしてしまった。

他の皆は、というとあれからそれぞれ夜のうちに帰って行った。

だから、Aqoursの皆と会うのは今日の学校からである。

僕が発言したあの言葉、皆にはどう響いているのだろうか、どうしても気になってしまう。

そんな2つの事で期待とゾワゾワとした気持ちで僕は学校へと向かった。

 

~内浦・浦の星学院~

 

珍しく(?)誰とも会うことは無かった。

いつもならタイミングよく千歌や梨子が合流するのだが、今日はそういったことが一切なかった。

昨日の今日だったから、いつアプローチを掛けられてもおかしくないだろうな、と考えていたけど…

なんだか気負っていたのが自分だけのようで恥ずかしかった。

 

「あ、空条君、おはよー」

 

優馬「おはよー」

 

いつも通り、女の子しかいない教室へと入る。

もうここに来て、5ヶ月、6ヶ月は経つ。

自然とこの状態にも慣れるものだ。

人数も少ないうえ、唯一の男、ということもあり、おかげさまでこの学校のほとんどと知り合いになったのではないか、と思うくらいには友達が増えた。

そう、こんな感じで挨拶を返すくらいにはね!

と、挨拶だけで終わるはずだったがある話を持ちかけられてしまった。

 

「そういえば空条君さ!」

 

優馬「…はい?」

 

「1年生と3年生に来る転校生って空条君の幼馴染なんでしょ!?」

 

優馬「…ん?」

 

…転校生?

その話すら全く知らない。昨日、鞠莉にも聞かされてない。

しかもその転校生は僕の幼馴染と来た。

 

「あれ?空条君知らない?うーん、じゃあデマだったのかな…」

 

「ごめんね!多分デマかもー!」

 

…固まっている間に話が進んでしまっていた。

まぁ、でも聞かされていない、ということは恐らく今の子が早とちりしてしまったか、本当にデマが流されているだけか、のどちらかだろう。

そう、思っていた。

 

~浦の星学院・SHR後~

 

優馬「…」

 

SHRも終わり、僕は最初の授業に向けて教科書やノートを取り出そうとしていた。

相変わらず、千歌や梨子、曜はこちらを見てはすぐに目線を逸らして、の繰り返し。

けれど、話しかけてもくれなくなってしまった。

一部の女子からはまた喧嘩?と疑われる始末。

なんなら僕もこれがどういう意図なのかを知りたい。

そんな謎の不安と考えが頭を巡りながら悶々としていると、頭上から今日の朝に聞いたような声が聞こえてきたのだった。

 

「ゆ・う・くんっ!♡」

 

「兄さんっ!♡」

 

優馬「…んっ!?」

 

聖良「ふふ、改めて、おはようございます♡優君?♡」

 

理亜「兄さん、びっくりした?♡」

 

目の前にいたのは北海道に帰ったはずのSaint Snowだった。




次回に続く。


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第70話 欲深い人、その真意は如何ほどに?

こんばんは、希望03です。

ではどうぞ。


~内浦・浦の星学院~

 

優馬「…え?」

 

今の僕はどういう表情をしているだろう。

まぁ言われなくても分かる。

口は半開き、目は点に、今この状況を把握しきれていない、といったところだろう。

だが、良く考えても見て欲しい。

だって、目の前には帰ったと思わしき人物、ましてそれは昔の幼馴染でもあり、Aqoursの皆と同じくらい大切な人たちである。

そりゃあもう、こうなる。

 

聖良「…あら?固まっていますね」

 

理亜「さすがにびっくりしすぎ…」

 

千歌「いやびっくりするよ!!」

 

聖良「あ、いたんですね。」

 

千歌「…喧嘩売ってます?」

 

梨子「千歌ちゃん…!落ち着いて…!」

 

理亜「姉さまも落ち着いてください!」

 

「~♪~♪~♪」

 

聖良「予鈴…そろそろ戻らないとですね。」

 

理亜「じゃあ私たち戻るね、兄さんっ!」

 

聖良「また、会いましょう?…なんなら昼食とか「絶対ダメ!!!」…」

 

まるで嵐のようだった。

まぁ僕は会話をするどころか、全く動きすらしなかったわけだが。

そんな情けない姿の僕と怒りに苛まれる千歌、それをなだめつつも恐らくブチギレの曜と梨子の謎の四すくみが出来上がり、教室内は修羅場となり、授業が開始されるのだった。

 

~昼休み~

 

千歌「…」

 

梨子「…」

 

曜「…」

 

優馬「あ、あのー…」

 

聖良「ん?どうかしましたか?」

 

理亜「どうしたの?兄さん?」

 

優馬「いやー…なんだか近いような?」

 

聖良「そんなことないですよ。昔もこれくらいだったじゃないですか。」

 

理亜「そうそう。昔なんてもっと近かったし、一緒に食べさせあいだってしたでしょ?」

 

優馬「いや、あれは昔だからでしょ…しかもあの頃からしつこかったし…」

 

理亜「何か言った?」

 

優馬「いえ何も。」

 

昼休み、朝から長い長い授業を終え、いつもなら束の間のひと時、そしてお楽しみの食事なのだがどうやらそうも行かないらしい。

この教室内には依然として冷ややかな空気が流れている。

その原因が今両隣りにいるわけなのだが、離れて欲しいとも言えず、両隣りもこの空気を読んで離れるという人たちでもない。

つまり、何も解決しないままこの空気は続いていた。

この空気を作り上げているのは両隣りが全て、というわけではない。

それは千歌や曜、梨子の怒りだ。この3人の怒りは目に見えて分かるくらいになっていたからだ。

 

優馬「あー…とりあえずなんで2人はいるんだっけ…?」

 

聖良「そうですね、まずそこからですね。」

 

理亜「理由は簡単。兄さんのそばにいたいから。」

 

ガタッ!!

目の前にいた3人の机といすが揺れた。

一瞬、びっくりしたが続けてこの2人は話し始める。

 

聖良「だって優君は決めたのでしょう?覚悟を。」

 

聖良「なら私たちは答えを出すまでそばで見守りたい。ただ、それだけなんです。」

 

優馬「すごい、覚悟だね。それで学校を転校だなんて…」

 

理亜「まぁ、少し寂しさはあったけど兄さんの事を考えれば当然。」

 

優馬「…そっか」

 

僕にはもったいないほどの美女2人からのアプローチだと思う。

それも僕が決めた覚悟なんかよりも遥かに上の覚悟で。

やっぱりこの2人はすごいn「あーーー!!!もーーーーー!!!」

 

千歌「すごい覚悟なのは分かりますけど!なんで!!ここにいるんですか!!??」

 

梨子「それにさらっと優君の隣に…!宣戦布告ですか!?」

 

曜「そもそも同じ学年でも無いんですけどね!?」

 

良い話で終わりかけていたはずだったのだが…

どうやら耐えきれなかったみたいだった3人が物凄い剣幕で聖良たちを捲し立てていた。

これには2人はたじたじになるだろう、と思っているのも束の間

 

理亜「…時間が無いのをあんたたちは分からないの?」

 

「「「っ!」」」

 

千歌「…分かってる。」

 

理亜「分かってないじゃない。だからいつまでもそんな調子なんでしょ?ずっと一緒にいたんじゃないの?少なくともこの半年以上は。」

 

千歌「分かってる…」

 

理亜「なのに、3人して進展は無いし、むしろ気まずくなってるし…そんなダラダラしてるから私たちに奪われる。違う?」

 

千歌「…」

 

理亜「もう兄さんは覚悟を決めた。なのに何もしないの?あぁ、それとも何もできないの?怖くて」

 

曜「違う!!」

 

曜「私たちだって、焦る気持ちはあるよ!でも、でも…」

 

梨子「今、焦ったところでどうしようもないもの…決めるのは優君。ならその結果を祈るだけだよ。」

 

優馬「あの…」

 

聖良「優君?」

 

千歌「優くん?」

 

優馬「ここに張本人いるんですけど…しかも教室だから皆いるし、やめてくれませんかね…」

 

「「「「「…///」」」」」

 

とりあえずこの場は何とか収まり、続くことなく、午後の予鈴が鳴るのだった。

 

 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室・千歌視点~

 

ああ腹が立つ。

昔は、というよりもいつもの私はこんな感じの子じゃない。

確かに無鉄砲な所があるかもしれないけれど、それでもすぐに怒ったりとか、そんなことはない、はずだ。

なのに、なのに…

 

千歌「なんであの2人がいるのー…」

 

そんなこの学校の噂の渦中にいるであろうSaint Snowの2人の事を考えているとドアが開いていた。

私はそれに気づかずに机に臥せながらただただ時を待っていた。

 

優馬「千歌?」

 

千歌「大体、あの2人が来たらライバルがさらに増えちゃうじゃん…でも、もう優くんは決めてるかもしれないし…うーん…」

 

優馬「…千歌」

 

千歌「でも、2人があれだけ優くんと仲良くしてたら千歌との時間が減っちゃうし…寂しいし…はぁ…」

 

優馬「…」

 

千歌「…あれ?」

 

優馬「気づくの遅すぎ。」

 

千歌「~~~~~~っ!?///」

 

目の前に優くんの顔があった。

それも目と鼻の先、至近距離だった。

 

 

千歌「…///」

 

優馬「落ち着いた?」

 

千歌「…うん///」

 

あれから数分。

私は落ち着きを何とか取り戻した。

居心地は悪いけど、何とかここに座っていられている。

本当は顔から火が出る程で、すぐ逃げ出したいほどだけど。

 

千歌「…皆は?」

 

優馬「梨子は日直、曜は先生に呼ばれてた。1年生たちはまだSHR中、鞠莉とダイヤは学校の書類をまとめてる。果南は休校してた分の補習、聖良は転校したからそれの転校手続的な物をしてる。」

 

千歌「え、あ、そ、そっかぁ…///」

 

見事に皆はまだ何かしらしていて、未だここには来れないみたいだった。

すると、この部室は千歌と、優くんの2人だけ…

意識してしまうと途端に顔が赤くなってしまう。

 

千歌「…///」

 

優馬「それで…そんなに悩んでたのって、昼の件?」

 

千歌「あ…」

 

優馬「…やっぱりね。」

 

千歌「…だって、あの2人と優くんって幼馴染なんでしょ?」

 

優馬「うーん…まぁ、鞠莉たち程でも無いけどそうだね。」

 

千歌「それで、あんなに仲良く腕組んでたりとかしてたから、不安になっちゃって…」

 

優馬「…まぁ確かに幼馴染とか友達の領域は超えてるかもね。」

 

千歌「…だから、ね、その…」

 

優馬「?」

 

千歌「ち、千歌との時間が減っちゃうな…って…///さ、寂しい、というか…///」

 

優馬「…///」

 

い、言っちゃったぁぁぁぁぁぁ!!!///

で、でも良いよね!だって、もう攻めるしかないし…///

理亜ちゃんだって、昼はあんなこと言ってたんだし…///

 

優馬「そっか…寂しい、か…」

 

優馬「僕、覚悟を決めたって言ったよね。」

 

千歌「え、あ、うん…」

 

優馬「だからさ、ちゃんと皆と向き合おうと思ったんだ。じゃないと自分の今の真意が果たして正しいのか、って分からないからさ。」

 

優馬「だけど、そっか…不安、だよね。」

 

千歌「…」

 

優馬「なら、ちゃんと千歌とも向き合わないとね。以前みたいにならないようにさ。」

 

千歌「以前…あっ!」

 

以前の話、と言ってもまだ最近の事だと思う。

私はあまりの嫉妬心で曜ちゃんとも梨子ちゃんとも揉め合いになって、優くんを困らせてしまった。

あれがあったからこの前の理亜ちゃんとか聖良さんの件があったんだけど…

あの事件はもう忘れられてなかったことになったのかと思っていたけど、優くんもどうやら忘れていなかったみたいで、なんだか忘れて欲しかったけど、私たちの事を忘れていないみたいでホッとした自分がいた。

 

優馬「うん。あの千歌とか曜が暴走した時、あの時、僕は逃げ出したんだ。」

 

優馬「別に嫌いになったとかじゃない。ただ、向き合うのが怖かったんだ。」

 

優馬「だけど、もう逃げない、向き合おうって決めた。」

 

優馬「そういった意味での覚悟でもあったんだけど…千歌を不安にさせているようじゃ本末転倒だね。」

 

ごめん。

そう言ってくれた。

気にしなくてもいいのに、でも気にしてくれて嬉しい。

今この瞬間だけは優くんが千歌だけを考えてくれていて、千歌だけを見ている。

それだけで千歌の心は満たされていた。

 

優馬「…できる限り、千歌と話したりとか、千歌と過ごす時間を作りたい、そう思ってるよ。だからさ、その///」

 

…え、え、え!?///

な、なんだろ、この雰囲気!?///

も、もしかして千歌の事を意識してくれてる!?///

やばい、どうしよう!///

と、久しぶりにこんなときめきを、乙女的なドキドキを体験している時だった。

 

優馬「今度、千歌のi「やっと終わったずら~…」…マルちゃん」

 

花丸「優さ~ん!疲れたずらぁ~…」

 

ルビィ「こんにちは、お兄ちゃん!」

 

善子「くっくっく…舞い降りし、堕天使が今宵も「そういうのもういいずら。」最後まで言わせなさいよ!!」

 

やっぱりこうなってしまう。

結局、私は優くんが言いたかったことを聞くことができなかった。

でも、久しぶりにあれだけ優くんと話せたから、私としては結果オーライのような気がした。

 

千歌「…はぁ」

 

それでも溜息は出ちゃうけどね。

 

優馬「…千歌。」

 

千歌「え?」

 

優馬「今度、千歌の家、行っていい?」

 

千歌「…え」

 

優くんが言いたかったこと、それはこの事だったみたいだ。

そう気づいた時、私はこう思った。

もしかしたら、今、恋の神様は私に微笑んでいるのかもしれない、と。

そしてその恋の神様が鳴らしている祝福の鐘のように、私の心は相変わらず、鼓動が止まらずにいた。

 

優馬「…じゃあ、先に練習行こっか」

 

そう言って、彼は赤く染まった私を置いて、先に屋上へと向かってしまったのだった。

 

 

~浦の星学院・廊下~

 

優馬「…///」

 

僕は何を言ってるんだろう。

ただ、友達の関係ならわざわざ家まで行かなくてもどこか遊びに行くとかでいいはずなのに。

なんで、千歌の家に行くと言ったのだろうか。

 

優馬「はぁ…///僕って意外と欲深いのかもなぁ…///」

 

真意は相変わらず自分でも分からない。

けれど、気持ちは本物だ。

ただ、この欲深さは皆には見せないように。

そんな想いを仕舞い込んで、僕は屋上へと急ぎ足で向かったのだった。




いかがだったでしょうか。

終わらせるつもりはあるので、皆さんもそのつもりで。

ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回もよろしくお願い致します。


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第71話 甘え上手と甘え下手

こんにちは、希望03です。

どうぞ。




~放課後・浦の星学院・屋上~

 

ようやく今日一日の最後、部活の時間となった。

いつもであれば沼津の方まで赴き、練習を開始させるのだが、ラブライブ決勝が近づいてきたため今回は調整という形の短めの練習になる。

そのため、今日は屋上でさっと終わらせてしまおうという流れになった。

しかし、今日は少し違うことが起きている。

それは…

 

鞠莉「じゃあ改めて自己紹介、お願いできるかしら??」

 

聖良「そうですね。では、私から…」

 

聖良「北海道函館聖泉女子高等学校から転校してきました3年、鹿角聖良です。皆さんにはお伝えしましたが、『優君の幼馴染』です。よろしくお願いします。」

 

理亜「姉さまと同じ。函館聖泉女子高等学校から転校してきた1年、鹿角理亜…一応この前はごめんなさい。でも、兄さんの事に関してはまだ諦めてないから。よろしく。」

 

…何とも言えない自己紹介だ。

聖良に関しては幼馴染、という部分をやたら強調しているような気がしてならないし、理亜に関してはこの前の事を謝罪しているんだろうけど、全く謝罪しているような気もしないし、むしろ敵意むき出しだった。

 

鞠莉「と、いうわけで2人も転校してきて、とりあえずスクールアイドル部に入部、という形になるからよろしく~♪」

 

ダイヤ「いや、唐突過ぎませんの…?そもそもこれからラブライブ決勝があるというのに、人数を増やして出るというのですか?」

 

鞠莉「も~、ダイヤったら質問が多いわよ~!でもまぁいいわ。そうね、まず何から話した方が良いのかしら?」

 

果南「とりあえず語弊とかないように2人から経緯とか思いとか聞いた方が良いんじゃないの?」

 

聖良と理亜の自己紹介が済んだあたりでまだ疑問があるような雰囲気が流れていた。

それを汲んでくれたダイヤはさすが、と感じるけれど今ここで話をしてしまったら練習時間が短くなってしまう。

まして、もう秋から冬に変わる季節目、肌寒くもなっている。

このままでは風邪だって引いてしまう可能性もある。

そのため、練習の合間、そしてストレッチ中に聞こう、ということになった。

 

 

果南「1・2・1・2!」

 

そうして始まった練習、と言っても最後の振付合わせの練習だが。

それを僕とダンスには混ざれない聖良、理亜の2人と一緒に見ていた。

 

聖良「…やっぱり完成度は上がってますね。」

 

優馬「そう、見える?」

 

聖良「はい。東京で一度見たあのレベルより全く段違いのように思えます。」

 

優馬「…そっか、良かった。聖良に言われるとすごく自信になるよ。」

 

ありがとう。

感謝の気持ちを最大限込めて、聖良に伝えた。

すると、途端に言葉が無くなってしまった。

きっと集中してみているんだろうな、と思い、何も言わなかった。

 

聖良「…っ!…っ!///」

 

理亜「…姉さま、情緒不安定すぎ。」

 

聖良「だ、だって、優君から…!」

 

理亜「気持ちは分かるけど…というか、羨ましいというか…」

 

聖良「ふふふ…やっぱり転校してきて正解でしたね…///」

 

理亜「はぁ…」

 

なんだか2人から声が聞こえたけど、小声で話していて何を言っているかは聞き取れなかった。

盗み聞きみたいで悪いな、と思ったため、僕はまた目の前の皆のダンスに集中した。

 

果南「はい、休憩!」

 

気づいた時にはもう休憩に入っていた。

いつもだったらすぐに水とタオルを渡しに行くのだが、この時、僕は一歩で遅れてしまって、渡しに行くことができなかった。

急いで水とタオルの準備をしなくては、と思っていたら

 

聖良「皆さん、お疲れ様でした。」

 

なんと聖良が既にタオルと水を準備していて、皆に渡しに行っていた。

その光景に僕は思わず、呆然と立ち竦んでしまった。

 

理亜「…姉さまも私も実家が喫茶店だから、こういう気配りっていうのかな、慣れてるんだよね。」

 

優馬「あ、あー…なるほど…」

 

理亜「だから、別に兄さんの仕事を奪おうとか、全く思ってないからね…その、気にしてなかったら忘れて良いんだけどね」

 

優馬「…理亜」

 

理亜「…んぇ!?ちょ、ちょ、に、兄さん…!?」

 

理亜(え、え、え!?なんでこんな近くなってるの!?え!?)

 

理亜「お、お兄、ちゃ、ん…?」

 

優馬「…」

 

僕は理亜のあまりの良い子さに頭を撫でていた。

決してセクハラしようとか、そんな魂胆はない。

ただただ無意識に彼女の事を撫でていたのだ。

 

理亜「あ……///」

 

僕は無意識だったから気づかなかったが、理亜の顔は綺麗な真っ赤に染まっていた。

もちろん、気にしていない僕はほわほわとした気持ちで彼女を撫で続けていた。

 

優馬「…ふふっ」

 

理亜「…っ!///え、えへへ…//お、おにいちゃ「何やってるのかな?お兄ちゃん??」~っ!!??」

 

ほわほわとした気持ちが一瞬にして消えた。

そしてそれは途端に湧き出した悪寒と冷や汗に変わった。

まるで木こりの人形のように首を後ろに捻り、声の先にいる姿を見るとそこには

仁王立ちして冷たい視線を送る、今までにないルビィの姿があった。

 

理亜「る、ルビィ!!邪魔しないで「理亜ちゃんは少しお口チャックしてくれないかなぁ…??」…チッ!」

 

優馬「る、ルビィ、ちゃん?なんか雰囲気怖いんだけど…」

 

ルビィ「え~?そんなことないよ?」

 

そう否定はしているが明らかに様子がおかしい。

周りの皆もこちらを見て、何かあったのか気になっているようだったがそれも気にせずにルビィちゃんは続けて話をした。

 

ルビィ「でもね、ルビィたちが練習頑張ってた時にお兄ちゃん、イチャイチャしてるなんて…お兄ちゃんったらそんなにルビィたちに気にしてもらいたかったのかな~?」

 

優馬「ち、違う違う。そんなつもりじゃ…」

 

ルビィ「…そっか、そうだよね。お兄ちゃんがそんなことしないもんね。」

 

優馬「な、納得してくれた…?」

 

ルビィ「納得、はしたよ…でも、ね、その…」

 

なんだかルビィの様子がおかしい。

というよりもモジモジして、いつも通りのルビィにも見えなくはないのだが

先ほどまで修羅のような顔、そして仁王立ちをかましていたはずなのに、今度は顔を真っ赤に染めていたのだ。

 

優馬「ルビィ、さん…?」

 

ルビィ「ルビィも今日練習頑張ったなぁ…///」

 

優馬「…?」

 

理亜「はぁ…チッ…!」

 

ルビィ「次のラブライブで優勝するために練習頑張ったんだけどなぁ…!!///」

 

優馬「…あぁ」

 

そういうことか。

そうして気づいた僕は手をルビィちゃんの頭に乗せて

 

優馬「…」

 

ルビィ「あっ…///」

 

さっき理亜にやっていたように頭を撫でた。

これで合っているかどうかは分からないが…

 

優馬「…その、お疲れ様。頑張ったね///」

 

ルビィ「えへ、えへへ…///お兄ちゃん…///」

 

うん、多分、合っているとしよう。

考えるのを僕は放棄したのだった。

 

理亜「…もう休憩終わったでしょ。早く戻りなさいよ。」

 

ルビィ「お兄ちゃぁん…///もう少し撫でて~…///」

 

理亜「チッ!!あーもう!戻れって言ってんでしょうが!!」

 

ルビィ「じゃあ理亜ちゃんがルビィの代わりに行ってよ!!今、ルビィはお兄ちゃんに撫でてもらうのに忙しいもん!!」

 

理亜「は、はぁ!?そもそもこれはAqoursの歌とダンスでしょ!?あんたがいないと成り立たないじゃない!!」

 

ルビィ「じゃあ今日、ルビィはもう練習やらない!」

 

理亜「ば、ば、馬鹿じゃないの!?果南呼ぶわよ!?」

 

ルビィ「いいよ!呼んでみなよ!」

 

優馬「…はぁ、2人とも落ち着いて」

 

ルビィ「あっ…」

 

優馬「ルビィちゃん。」

 

ルビィ「お兄ちゃん…?」

 

優馬「甘えてくれるのは嬉しいし、こっちも応えたいって思うけど皆の迷惑になるようなことはダメだよ。やっぱりラブライブの優勝をかけたライブなんだから集中して頑張ろう?」

 

優馬「…それにルビィちゃんの頑張って踊っている姿、もっと観たいな。」

 

ルビィ「……~~っ!!///」

 

ルビィ「い、い、行ってきましゅ!!///」

 

すると、ルビィちゃんは急いで皆の所へと戻っていった。

僕は何とかこの場を乗り切れたのだった。

 

理亜「…兄さん、ごめんね、取り乱しちゃって。」

 

優馬「気にしてないよ。それにこっちこそごめんね。」

 

理亜「…ふふっ、皆、やっぱり兄さんの事、好きなんだね。」

 

優馬「え?」

 

理亜「だって、私が撫でられてる時、ルビィだけじゃなかったよ。見てたの。」

 

優馬「…ほんと?それ」

 

理亜「あの時はたまたまルビィだけ来たけど、姉さまも含めて、皆して、こっちを見て私の事を睨みつけてたくらいだもん。怖かったなぁ。」

 

理亜が言うなら本当なのだろう。

この子が嘘をつくとはあまり思えないし、表情から見ても嘘をついているとは思えない。

まして、ここで嘘をつくメリットも考えてみても無い。

 

理亜「…だけど、今この瞬間だけはお兄ちゃんを独り占めできたから嬉しい、かな///」

 

優馬「…何か言った?」

 

理亜「ううん、なんでもないよ…ただ、やっぱりここ来て正解だったのかもな、って思っただけ。」

 

優馬「…そっか///」

 

その時の理亜は年相応の女の子ではなく、まるで大人の女性のような表情だった。

僕はそれに思わずドキドキしてしまった、というのは僕のみぞ知ることである。

ちなみにこの後、理亜は練習終わりにルビィを除いた皆から説教を喰らうのだった。




いかがだったでしょうか?

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第72話 着信

こんにちは、希望03です。

夜の電話ってなんだかロマンチックですね。

それではどうぞ。


~内浦・千歌家・千歌の部屋~

 

千歌「はぁ…」

 

今日一日、昨日に続いてとてつもなく疲れる一日だった。

だって、昨日の事件で焦りもあったけど寝落ちするまで梨子ちゃんと曜ちゃんと一緒に優くんの好きな所を語り合って、いざ学校でまた優くんへのアプローチを再開させようとしたら、SHRの時に聖良さんと理亜ちゃんの2人が乗り込んできて、挙句の果てに昼食は乱入してくるし…

 

千歌「…千歌だって少しは焦ってるもん」

 

あの時…理亜ちゃんが私たちに言ったこと、それは紛れもない事実。

それは千歌も分かっている。

だけど、だけどね。

 

千歌「やっぱり怖いじゃんかぁ…」

 

私の中にあったのは焦りなんかじゃない。

もしかしたらフラれてしまうのかもしれない、って言う恐怖だった。

これを知られてしまったら今度こそ、私は私でなくなってしまう。

 

千歌「あー…私って結構欲深いんだなぁ…」

 

フラれてしまうのが怖い、だなんて今まででは考えられない。

そもそもこの感情は…優くんだけにしか、向かないから…

 

千歌「でも、優くんからあんなこと言われるなんてなぁ…」

 

『今度、千歌の家行くね。』

 

千歌「…はぁ///あれはびっくりだよぉ…///」

 

千歌「…優くんに会いたいなぁ///」

 

あの時の言葉、目の前の優くんの顔、そして、私の鼓動

全てを思い出しては、それがついさっきの事かのように感じ、その度に悶える。

それがたまらなく心地よい。

あぁ、なんて幸せで、残酷なんだろう。

 

千歌「今、何してるのかなぁ…///」

 

電話でもしてみようかな

そんなことを考えながら、私は彼に思いを馳せていた。

 

 

~沼津・渡辺家・曜の部屋~

 

曜「ふぅ…」

 

今日は何かと精神的に忙しい一日だった。

北海道へと戻ったと思われた鹿角姉妹、Saint Snowの2人の転校。

そのおかげで2人が教室にまで押しかけ、優を盗られてしまう始末。

さらに1つ下の後輩にもあたる鹿角理亜に煽られ、そして私たちの考えを全否定。

 

曜「焦り…ふざけないでよ…」

 

私だって…ううん、なんならAqoursのメンバーの中で言えば私が一番焦っている。

なんとか押さえつけて、周りにバレないようにしているだけだ。

ここに来て自分の偽る才能的なものが輝いたような気がした。

だから今だって本当は…

 

曜「…優、今何してるんだろ」

 

気になってしょうがない。

もちろん純粋に好きな人の事を想っているという意味でもある。

けれど、この考えの8割はもし優が誰かと会っていたら?とか既に電話で誰かが告白しているんじゃ?とか考えてしまう。

ましてやここに来てまさかの幼馴染枠が増え、学校に転校してくる始末。

既に私は気が気じゃない。

 

曜「じゃあもう自分から行動しちゃえばいいのにね…」

 

もちろんこういう考えが無いわけではない。

さっきも言ったが私は焦っている。誰よりも。

けれど、その焦りは行動に移そうとか言う源にはならない。

だって、私は

 

曜「臆病者…」

 

皆は気づかないだろう。

だって普段の私はいつも活発で、何でもできて、明るくて、まさに理想的…

自分で言うのもなんだけどね。

 

けれど、それは違う。

違う、っていうのは普段の私を否定しているわけじゃない。

この理想的な私だって私だ。

 

でも、そうじゃない。

だって、それは偽りの仮面を被った私だから。

 

本当の私はいつも不安ばかり、誰かに縋っていないと怖くてしょうがない。

 

…愛している人に愛してもらわないと生きていられない。

 

“渡辺 曜”という人格を保っていられない。

 

それくらい臆病者な私。

 

曜「…あーあ」

 

 

~内浦・桜内家・梨子の部屋~

 

梨子「…」

 

ペラ、ペラ

 

静寂の部屋には本をめくるような音だけが流れていた。

いつもであれば新曲作りや心を落ち着かせるためにピアノに向き合っている時間だった。

しかし、今日の私は違った。

別に気分が乗らないとかではない。

毎日一回はピアノに向き合う。これは私にとっての一日のルーティンでもあるから。

けれど、そんなルーティンすらも置いて、私は違うことに没頭していた。

 

梨子「あ…♡ふふ…♡」

 

授業がつまらなかったのかぼうっと窓の外を眺める優君。

 

体育の授業で必死に走る優君。

 

虚ろな目で教室の皆を眺めている優君。

 

読書する優君。真剣にノートを取ろうとしている優君。食事をしている優君。

 

優君。優君。優君。優君。優君。優君。優君。優君。優君。優君。優君。優君。優君。優君。

 

あぁ…私の大好きで、大好きでたまらない、生涯でたった一人の私の愛する人。

 

そんな彼との愛しの時間を過ごした当時の写真をアルバムしたものを私は見ていたのだ。

 

梨子「はぁ…♡なんでこんなに可愛いんだろう…♡成長したらあんなにかっこよくなるし…♡」

 

もちろんこの写真は許可を取ったものじゃない。

許可なんて取れたらもっと撮ってるしね。

それでもここまでの写真を撮れていたということ、過去の私に称賛を送りたい。

 

梨子「…この優君を知っているのは私だけ。私だけなんだ。」

 

だから焦る必要はない。

きっと優君は私を選んでくれる。

だって選んでくれなかったら今まで私がやってきたことはなんだったの、って話になるでしょう?

ずっと見守ってきて、ずっと優君の味方でいて…

他の誰よりも私は彼のそばで尽くしてきた。

だからきっと、きっと…

 

梨子「選んで、くれるよね…?」

 

 

~沼津・津島家・善子の部屋~

 

善子「くっくっく…それでは本日の宴はここでお終い…リトルデーモン達、素晴らしい夜を…」

 

善子「…よし、これで今日の配信は終わり、っと」

 

私のチャンネルのリスナーに向けた生配信も終わり、寝る準備を始めた。

 

善子「ほんっと、今日も一日、私お疲れ様ぁぁぁ…」

 

ボフッ!

寝る準備も済ませ、いつもの一日よりもさらに濃厚な今日一日の私の働きに私自身が労った。

なにせ既に北海道に帰ったと思ってた鹿角理亜が私たちのクラスに転校してくることになって、しかも部活にも参加…

気付いたら優馬のそばにいるし…

はぁ…また現れた幼馴染枠がようやく北海道に帰ったと思ったのに…

これじゃあ私の立場がどんどん無くなっていくような気がしてしょうがない。

 

善子「…疲れてるはずなのにな」

 

疲労はある。

だって、昨日も今日も今までの私とは全く考えられない程に濃厚な2日間を過ごしているのは私としても実感している。

なのに…

 

善子「…やっぱり不安なんだ、優馬…」

 

優馬が覚悟を決めた。

あの時はなら私も覚悟を決めなくちゃいけないと思ってた。

けれど、やっぱりまだ私も子どもなんだろう。

もし自分が選ばれなかったら、フラれてしまったら、ということを考えてしまうととても怖い。不安で仕方ない。

 

善子「…声、聴きたいな」

 

眠れない私。

まるでかつて寂しさに苛まれて、1人で寝ることに恐怖を感じたあの頃と同じ私。

そう、私は今寂しいのだ。

 

善子「優馬…」

 

 

~国木田家・花丸の部屋~

 

花丸「あ、もうこんな時間になってたずら…」

 

気付けばもう夜23時。

普段のマルだったら寝る時間だった。

 

花丸「スクールアイドルとして夜更かしはダメ、ずら!」

 

そもそも夜更かしはダメ、というのは昔から習慣づけられていた。

でもオラがスクールアイドルを始めてからこの夜更かしはダメ、っていう習慣に新しいオラの理由ができた。

スクールアイドルとしてという理由。

これは勿論名前の通り、自覚と責任というのもある。

けれど、それ以上にオラの好きな人…優さんにもっと可愛くなった、綺麗になったオラを見て欲しいから。

だから夜更かしも気を付ける、食べるのも好きだけど程々にする、部活も全力でやる。

そうすればきっと、きっとオラの事を見てくれる、って信じてるから。

 

花丸「だから…頑張らなきゃ。」

 

理亜ちゃんたちが来た理由。

優さんが覚悟を決めた理由。

きっとそれぞれの想いがあるんだと思う。

だからオラはそんな理亜ちゃんたちに負けないくらいに全力で、そして優さんの覚悟に真正面から応えられるような女の子になる。

そう、私も覚悟を決めたんだ。

 

花丸「今日は疲れたけど…また明日から頑張るずら!」

 

 

~黒澤家・ルビィの部屋~

 

珍しくルビィは起きていたんだ。

今日一日は色々大変だったはずなんだけどね。

と、言っても私は何もしてない。

というか何もできなかった。

なにせ理亜ちゃんが既にお兄ちゃんのそばにいて邪魔だったからいつも甘えていたはずの時間が取れなかったんだ。

あの時、理亜ちゃんから宣戦布告をされたわけなんだけどやっぱりそれでもイライラはする。

多分、今目が冴えて起きているのもそのイライラのせいだと思う。

 

ルビィ「ルビィって…こんなに性格悪い女の子だったんだね…」

 

自分でも分かってしまう。

だって、理亜ちゃんはちゃんと私と、私たちと正々堂々と戦うつもりでここにやってきた。

だからあれだけのアプローチもしてたんだ。

でも、私はそれに対して良い思いはしない。

だって、今までずっと甘えていた私の立場が無くなってしまうでしょう?

 

ルビィ「…嫌だなぁ。こんなルビィ…お兄ちゃんには見せられないなぁ。」

 

お兄ちゃんの前だけは可愛い可愛いルビィでいたい。

だからこそこんな黒い部分は見せられない。

なんとしてでも隠して見せる。

 

ルビィ「…うん!明日も頑張ろう!」

 

心にもない言葉を口にして。

私は可愛いルビィの笑顔の仮面をつける。

うんうん。可愛いルビィの出来上がり。

さて、もう理亜ちゃんはリードした気でいるかもしれないけれどこれからだからね?

 

ルビィ「…ふふ♡」

 

鏡で見なかったルビィの顔。

それはそれは可愛いとは程遠いほど妖艶な笑みを浮かべていたのだった。

 

 

~黒澤家・ダイヤの部屋~

 

ダイヤ「…」

 

夜23時、本来であればもう既に就寝時刻。

恐らくルビィも隣の部屋で寝ていることでしょう。

けれど、私は違います。

何をしているのかというとこれからのラブライブに向けての練習メニューや時間配分等のスケジュール管理をしているのです。

なぜこのようなことをしているのか?

そんなのは決まっています。

優に頼られるためです。

私が優秀であれば、優はきっと私に頼ってくれる。

困ったときはダイヤに。

そうすれば優にとって私は大切な人、パートナーとしてずっと心に在り続けられるのです。

 

ダイヤ「…はぁ」

 

しかし、時間が無いのは確か。

気付けばもう既に10月下旬。

11月に差し掛かろうとしているのです。

ラブライブの決勝は12月。もう残りも1か月と少ししか残されていない。

そんな中で練習場所も限られ、時間も限られる、となるとかなり模索しないといけないのです。

 

ダイヤ「今日のうちに相談すればよかったですわ…」

 

確かに優が誰を選ぶのかは気になる。

私だって誰よりも彼に尽くしてきたつもりである。

だからこそ、優が決める想い人には興味があります。

しかし…このように時間の限りを考えてしまうとどうしても頼られるのが嬉しい、ということを言ってはいられなくなってしまう。

 

ダイヤ「本当に優という存在に頼られるのはとても嬉しいのですが…」

 

実際の所、それどころじゃない。

というのが、私の本音である。

 

ダイヤ「…少しばかり優の意見、聞いてもいいです、よね」

 

あくまでもラブライブのこと。これからのこと、である。

決して疚しいことはない。

そんな夜中に想い人と秘密の電話をしたい、などという願望は微塵もない、と思いたい。

 

 

~淡島・松浦家・ベランダ~

 

外に流れる海の音。

鼻にツンと来る潮の香り。

私の大好きな、海。

 

果南「でも流石にもう寒いなぁ…」

 

それもそう。

あと少しで11月。

気付けば1年の終わりもあと少し。

そして、私がゆうと一緒に入れるのもあと少し。

 

果南「…まだ誰にも言ってないもんなぁ」

 

私がこの店を継ぐ、となったら別にここ内浦を離れなくてもいい。

そうすればゆうと一緒に入れる時間は長くなるし、私も離れたくない気持ちはあるから別にその選択でも構わなかった。

けれど、私は夢がある。

そしてその夢が叶って、ゆうに見合うほどの女の子になった時にまた再会できたらいいな、とも思ってる。

さらに言ってしまえば、この夢を叶えるために私は海外留学も考えている。

そうすると、本当にゆうと離れることになる。

 

果南「寂しい、な…」

 

これを決めたのは本当につい最近だ。

というのも2日前にゆうが覚悟を決めたあの時、私も決めたんだ。

ゆうもきちんと向き合う覚悟を決めているなら私もそれに応えられるような女の子になりたい。

そう、思ったから。

それでもいざ、あと数ヶ月経ってしまったら彼と離れてしまう、ということを考えてしまうとやはり寂しさがこみ上げてしまう。

 

果南「…ゆうに引き留められたら私、揺らいじゃいそうだよ。」

 

ね、愛しの貴方。

私がここを離れるってなったら貴方はなんて言ってくれるのかな?

 

 

~淡島・小原家・鞠莉の部屋~

 

鞠莉「…うん、大丈夫、問題ないわ。うん…え?優?…ふふっ、彼も人ってことが分かったの…うん…好きな人、とまでは行かないけれど気になる人はいるみたい…私?分からない…ありがとう、パパ。でも、今、優以外は…それはパパも、でしょ?ふふっ、良かった。そこは私と一緒で…ママは?うん、まだ来てないけど…いつ来るのか…はぁ…え、あ、うん。またね、パパ。おやすみ…」

 

 

鞠莉「…はぁ」

 

ちょっと疲れてしまった。

私だって本当は彼女たちを受け入れ難かった。

だって、ただでさえ優を狙う女の子が9人もいるのに、彼女たちも含めてしまったらもう11人。余りにも多すぎる。

けれど、理事長としてその転校を受け入れないわけにはいかなかった。

 

鞠莉「…本当、大人になるって面倒なものね。」

 

昔から私は自由があったわけではない。

色々な習い事、パパたちの会食…普通の女の子として過ごしたことはあまりない。

けれど、ダイヤと果南と奏さん…そして、優と遊んでいるあの時は何も考えることも無く、本当に自由の羽が生えていたかのように駆け回って、楽しい時間を過ごしていた。

 

鞠莉「ふふ…あの頃は楽しかったな…ってあれ?」

 

昔の事を思い出していたら、一筋の涙が私の頬を伝い、落ちた。

 

鞠莉「…っ、なんで、涙なんか…」

 

寂しいから?悲しいから?大人へ近づくのが怖いから?

分からない。分からないけれど、どうしても涙が出てしまう。

それでも分からない理由の中、ずっと頭の中に浮かぶのは優のことばかりだった。

 

鞠莉「優、優…」

 

貴方だったら私がなんで涙を流しているのか、その答えを、答えでなくともヒントくらいは教えてくれるのかしら?

 

 

~沼津・鹿角家・聖良の部屋~

 

今日は大変な一日だった。

まぁ、でも一歩前進した日だった。

 

聖良「やっと皆さんと同じ土俵に上がった、というところですかね…」

 

気持ちとしては誰よりも負けていないと思っている。

しかし、優君と過ごした時間を考えてみれば、やはりAqoursの皆さんに軍配が上がることは確か。

ということは気持ちでは負けていないにしても遅れてしまっていることは確かなのだ。

 

聖良「ここから優君へのアプローチをさらに加速させなくては、ですね。」

 

例え優君が気になっている人を決めていた、としてもだ。

 

聖良「…だって、何年も待たされましたからね。」

 

そろそろ北海道は雪が降る頃だろうか。

やはり何年も過ごしてきた場所、寂しさはある。

けれど、もう二度と帰らない、というわけじゃない。

…今度北海道に戻るときは優君と一緒に。

 

 

聖良「そしたら、一緒にホワイトクリスマスでも迎えましょうね。優君…」

 

 

~沼津・鹿角家・理亜の部屋~

 

理亜「…お兄、ちゃん」

 

頭から離れないあの人。

ずっと探していたあの人。

あの時、冷たい言葉をかけちゃってごめんね。

でも、ずっと会いたかったんだ。

ずっと、ずっと、ずっと。

 

理亜「私らしくない、な…」

 

もっと私はサバサバしていると思っていた。

というより、相手が違えば私の言っていることは正しいんだろう。

けれど、お兄ちゃんを相手にしてしまうと私は全く違う私に生まれ変わってしまう。

 

理亜「…」

 

思えば、私がこうなってしまったのはお兄ちゃんに責任があるんだ。

私を変えてしまったお兄ちゃんの責任。

なら、その責任を償う責務がお兄ちゃんにはある。

 

理亜「だから私を選んでくれない、なんて…そんなことしないよね?」

 

もし、フラれてしまったら、選んでくれなかったら…

そんな怖いこと、想像したくはないけれど想像してしまう。

 

理亜「うっ…」

 

その度にとてつもない吐き気が起きてしまう。

 

理亜「…っ、…っ…はぁっ…」

 

私を助けてくれた憧れの人。

私には想像できない程、多くの闇を抱えた大好きな人。

それでも支えたい、ずっと傍にいたいと思わせてくれた愛する人。

私をこうさせてしまった責任、貴方は取ってくれますか?

 

 

 

 

そんな色々な想いを抱えた少女たち。

恋慕、思慕、不安、焦燥感、狂愛、哀しみ、愛しみ、慈しみ…

残り少ない期間に、愛する人が決めた覚悟、その覚悟が果たされるまでのカウントダウンが刻一刻と近づいているのを感じながらそれぞれが眠りにつこうとした夜23時。

 

 

『~♪~♪~♪』

 

 

突然、町のどこかで、彼女たちの誰かの着信音が鳴り響いたのだった。




いかがだったでしょうか?
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第73話 応答

こんばんは、希望03です。

着信の答えとは。

どうぞ。


『~♪~♪~♪』

 

響く携帯の着信音。

私はもう寝そうだったけど相手の名前を見た途端、目が醒めた。

だって、その相手が『空条 優馬』だったから。

 

曜「も、しもーし…?」

 

優馬『あ、こんな夜中にごめん…寝てた、かな?』

 

曜「う、ううん!大丈夫…それより、どうしたの…?」

 

優馬『あー…いやちょっと気になって…?』

 

曜「き、気になって…///って!何が…?」

 

優馬『だって今日すごい渋い顔してたからさ…何かあったのかな、って。まぁなんとなく察しはついてるけどさ』

 

曜「気づいてたんなら声かけてよ…」

 

どうやら気付いていたみたいだった。

確かに顔に出てたかもしれないけれど…

なんだか今になって今日の事に悩んでいたというのが恥ずかしくなってしまっていた。

 

優馬『ごめんごめん。なんか聞くのも忍びないな、って思っちゃって』

 

曜「もー…でも、話せて嬉しい、な。」

 

優馬『…そっか。それなら良かった。』

 

曜「あ、なんかあんまり嬉しくなさそうだねー。もしかして、私が元気なのに拍子抜けしちゃったのかな?」

 

優馬『…というより強がってるのかな、って思っちゃって。』

 

曜「…別に強がってないよ。」

 

優馬『…そっか。』

 

嘘。

本当は強がってる。

でも悟られるわけにはいかないんだ。ごめんね。

だって、貴方の前ではもう弱い部分を見せたくは…

 

優馬『もう頑張らなくても良いんじゃない、かな?』

 

曜「…え?」

 

その言葉を聞いた時、私の中の時が一瞬だけ止まった。

なんだか本当に優馬の目が私の心を覗いているみたいで怖くなってしまった。

 

優馬『混乱、させちゃったかな?』

 

曜「…正直、何言ってるか分からないよ。」

 

優馬『そうだよね。主語が無かった。でもそれは気づいているかな、と思って言わなかったつもりだったんだけど』

 

曜「…煽ってるつもり?」

 

優馬『そんなつもりはないよ。でも僕には伝えられないような何かを抱えているんじゃないかな、って』

 

曜「…分からないよ。」

 

優馬『…そっか。困らせちゃってごめんね。』

 

これも嘘。

私、理想の私を崩さないための最大限の嘘。

本当は気づいている。優が言いたい事はきっと私が弱い、っていうことを伝えたいんだ。

優は優しいからそれをなんとかオブラートに包みつつ、私に気付かせようとしてくれる。

けれど、違うの。

貴方だから弱いところを見せたくないの。

だから謝らないで欲しい。貴方は何も悪くない。優は何も悪くないから…

 

曜「…」

 

優馬『今日はありがとう。こんな夜中に時間取らせちゃって…じゃあまた明日。』

 

曜「あ…」

 

優馬『…おやすみ、曜。』

 

 

プツンッ…

 

無機質にその音は流れた。

そう、電話が切れた音。寂しい瞬間。

 

曜「…う、あ、あ、あぁ、あぁぁぁ…」

 

守り通せた。

私はまだ優にとって理想の私でいられるんだ。

誇らしい。まさに私の望んだこと。

なのに、それなのに、なぜ私の目からは大粒の涙が流れてくるんだろう。

 

曜「ご、めん…ごめんね…ゆ、う…」

 

でも、これでいいんだ。

貴方にとっての理想の私。

もうきっと貴方に迷惑はかけない。弱さは見せない。

 

曜「…でも、きっと優は」

 

もう二度と振り向いてくれない。

別に会話の中でそんなことを言っているわけではなかった。

だから、これは女の勘。

でももういいんだ。

私の理想が崩されなければ。

 

 

~内浦・優馬家・優馬の部屋~

 

優馬「…間違えたかな」

 

正直、この電話は自分の中で賭けでもあった。

どっちに転んでもおかしくは無かった。

曜は豪快、豪傑、超人、まさに僕とは全く違う本当にすごい女の子。

って、思ってたんだ。

けれど、違った。

この何か月、色々な事があった。

その中には曜と千歌との関係性も明らかになった。

 

優馬「あんなに取り乱してた曜は初めてだったからな…」

 

僕はずっと気づけなかった。

本当に抱えている曜の想いに。

でも、それに触れるのは果たして正しいのか、それとも間違った判断なのか

それは聞いてみないと分からなかった。

 

優馬「これが今まで人との関わりを避けてきた結果、なんだろうな…」

 

いつも行動が遅れてしまう。

それで後悔してしまう。

繰り返す。繰り返す。

何も学ばない。

 

優馬「…千歌だったらもっと寄り添えたのかな」

 

僕とはかけ離れた一人の女の子を想う。

あの子だったらもっと上手く人の心に寄り添えていただろう、と。

 

…僕に輝きをくれたあの時のように




いかがだったでしょうか。

恐らく続きは大分長いです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第74話 笑顔の裏に隠された感情

こんばんは、希望03です。

我慢強いのは良いことなの?

それではどうぞ。


~内浦・浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

優馬「…はぁ」

 

あの件から1週間。

もうすでに11月中旬へと差し掛かろうか、というところ。

となると、ラブライブも近づいているわけなのだが

 

優馬「謎のわだかまりがあるんだよな…」

 

と言っても、全員とわだかまりがあるというわけじゃない。

僕が言っている相手はあの時の電話の相手…曜だ。

あの電話から関係が悪化したわけじゃない。

むしろ『表向き』は良好な関係を築けている。

だが、それが問題なのだ。

 

僕が部室でうんぬんと唸っていたら急に扉が開いた。

 

善子「こんにちはー…ってあれ?優馬だけ?」

 

優馬「こんにちは…今のところはね、じきに皆来ると思うよ。」

 

善子「あ、そう…りょーかーい…」

 

皆が揃っていないことが不服だったのか、あまり良い返事ではなかった。

ノロノロと歩き、荷物を机の上へ雑に置いたと思えば、携帯を取り出して僕の隣に座った。

 

優馬「…なんかいつもの席じゃなくない?」

 

善子「…今日はここの気分なの!///」

 

優馬「なるほど…」

 

思わぬ勢いに負け、僕は納得してないのに納得した返答をしてしまった。

だけど、それ以降はお互い、干渉せずにただただ無言で時間が過ぎて行った。

 

優馬「…」

 

善子「…」

 

優馬「……」

 

善子「……」

 

優馬「………」

 

善子「………ねぇ、あんたなんかあったの?」

 

優馬「…はい?」

 

その時間はあまり長くは無かった。

沈黙からおよそ2分、善子が突然脈絡のない質問をしてきたのだ。

 

善子「いやだって、なんか元気なさそうだし。最近さ。」

 

優馬「…そうかな?いつも通りにしてたはずなんだけど」

 

善子「全然いつも通りじゃない。しんどそうな顔して…それでなんかあったの?」

 

優馬「…いや、なに「真面目に言って。」…」

 

善子「こっちは真剣なのよ。ちゃんと話して」

 

優馬「…」

 

善子「そう…また、頼ってくれないのね。」

 

優馬「また?」

 

善子「…初めて私たちが東京のステージに立つ前、旅館の外で話したの、覚えてない?」

 

はっ、とした。

まさに今、僕はその時と同じ状況な事に気付いた。

 

善子「優馬が聖良に言われて何か引っかかって、でも分からなくて悩んでた時…あの時も私が言うまで誰にも言ってくれなかった。」

 

善子「…そして今も。あの時と同じ顔でまた悩んでる…そんなに私、頼りない?」

 

優馬「ち、ちが…」

 

善子「…言ったはずよ?優馬が背負うものは私も背負う。そうすれば重さ半分だからって…なのに、どうして?」

 

優馬「善子…」

 

善子「これだけじゃない…今までの事もそう。全部自分で何とかしようって、自分がやらなきゃって…」

 

善子「そばにいるのに、いてあげたいのに、頼ってくれない、頼られないって、結構辛いの…」

 

ぽつり。

 

ぽつり。

 

紡がれていく哀しみに溢れる言葉の一つ一つ。

昔の僕だったら響いていなかっただろう言葉の数々。

 

だけど、今は違う。

 

彼女たちと関わり始めて、少しずつだけど人間らしさが戻り始めて…

 

だからなのか、善子の言葉が今まで以上に心に刺さってしまう。

 

 

優馬「…ごめん」

 

善子「…別に謝って欲しいわけじゃない。」

 

優馬「…」

 

また訪れる沈黙。

この時間が何分、いや何時間と感じられる。

今、善子は何を思っているのだろうか。

そして、僕は頼ってしまっていいのだろうか。

言葉は刺さった。

今まで善子の想いを踏みにじってしまっていた自覚もある。

けれど、それでも…

 

優馬「…ごめん」

 

善子「…っ!…そう、あくまでも自分で何とかするのね…」

 

優馬「…」

 

善子「…ふぅ!あーあ!分かったわ!そこまで言うなら仕方がないわ!」

 

優馬「善子…」

 

善子「ヨハネ!よ…今は聞かないであげる、けどいつか聞かせて、この瞬間、優馬が何を考えてて、何を想っていたのか、そして誰を想っていたのか…を」

 

優馬「…うん。その、この悩みが解決できた時、真っ先に善子に伝えるよ。感謝の気持ちも込めて、ね。」

 

そう伝えた時、いつも通りの善子の屈託のない笑顔が浮かんだ。

 

…その裏にはたくさんの哀しみが隠れていたことに気付かなかったんだ。

 

 

~善子side~

 

あーあ。

結構チャンスだと思ってたんだけどな。

勇気出したつもりだったんだけどな。

どうにも私じゃ力不足だったみたい。

 

本当は分かってるよ。

貴方が何を悩んでいて、誰を想っているのか。

 

でも、今は聞かない。聞いてあげない。

もし、これで優馬が言い始めたらはっ倒そうかと思ったもの。

 

だから、気付いてしまった私に蓋をするの。

 

だって、開けてしまったら私の初恋が、終わってしまう気がするから。

 

 

善子(…本当、この時間の間に誰も来なくて良かった。)

 

最近は色んなことで忙しくてろくに話せずにいた。

けれど、ようやく今日、2人きりで話せた。

 

優馬のそばに居れた。

 

私はそれで満足。

満足、のはず。

 

善子(…あ、れ?)

 

頬を伝う一筋の雫。

なんでだろう、涙が出てしまった。

 

 

善子「あ、あー!ちょっと教室に忘れ物したかも!ちょっと一回抜けるわ!!遅れたら優馬、上手く言っておいて!!」

 

優馬「へ?あ、うん…行ってらっしゃい…?」

 

 

 

~浦の星学院・廊下~

 

善子「…は、はは、あはは、あはははははは!」

 

笑うしかない。

こんな無様な姿。

 

なんだもう私ってば、もう気持ち知ってるのに。

振り向いてもらえない、って気づいているくせに。

 

なんで今さら、涙なんて。

 

分かっていたことじゃない。

私は高校で出会っただけのただの一目惚れ。

 

想いが強い相手なんて、そんなの分かっていたはずなのに。

 

善子「は、は、は…あ、あぁ…あぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

私は堕天使ヨハネ。

従者たちを導く、高潔なる天使。

 

なんて、私の幻想。

 

本当はもとより羽も無く、飛べもしない。

ただの人間であり、乙女。

 

失恋して、心がズタズタで、前すら向けずにいる。

 

ただの、弱虫。

 

「あ、善子ちゃ、って…ど、どうしたの?だい、じょうぶ?」

 

善子「っ!」

 

 

優しく声をかけてくれた。

 

でも、ごめんなさい。

 

声をかけて欲しかったのは優馬なの。

 

そう思って、上を見上げた。

 

その時、私の感謝と今の考えに対する自責の念に駆られていたはずの私の心が

 

 

黒い嫌悪感へと変わってしまった。

 

だって、そうでしょう?

声をかけてきた相手が優馬の悩みの種である渡辺曜(こいつ)だったんだから。

 

 

曜「よ、善子ちゃん…?」

 

善子「…ヨハネ、よ。あと大丈夫だから、気にしないで。」

 

曜「で、でもすごい泣いてたし…」

 

善子「あんたには関係ないでしょ!!??」

 

違う。これはただの八つ当たり。

 

それでも止まらない。気に食わない。

 

こんなの違うって分かっているのに。

 

曜「ご、めん…」

 

善子「…私もごめんなさい。急に声荒げて…」

 

善子「それよりこれから部室?」

 

曜「う、うん!そうだよ!」

 

善子「…そう。けど残念ね…まだ皆来てないみたい。」

 

曜「え、あー…そうなんだ…ってことは部室に誰もいない?」

 

善子「…いや、優馬が」

 

曜「っ!」

 

あーあ、本当、分かりやすい。

そんなに動揺しちゃって。

何があったかは知らないけれど、やっぱりあんたが原因だったんだ。

 

善子「どうしたの?」

 

曜「え、い、いやー…そっか、優が一人かー…」

 

善子「そうだけど…行かなくていいの?2人きりになれるチャンスよ?」

 

曜「え、えーっと…あ、あー!まだ先生に聞かなきゃいけないことがあったんだった、あ、あははー…」

 

それじゃあね!

 

そう言って、彼女はまた違う方向に駆け出してしまった。

 

見え透いた嘘だって分かっている。

目が泳いでるのがバレバレだもの。

 

ずっと隠してばかり、嘘つきの曜はちょっと本当の事を突かれたらすぐに動揺する。

…本当、嫌な性格ね。

 

なら嘘なんてつかなきゃいいのに。

 

…なんて、私にもブーメランだけどね。

 

 

善子「…ふぅ」

 

 

私は1人の女の子。

それに乗じて恋もする。ときめく瞬間も、好きだー!って思う瞬間もある。

同じように、嫉妬もする。

 

だから決して”善い”子ではないのだ。

 

善子「…曜。」

 

ぽつり、とただ一人の憎い相手の名前を呼ぶ。

 

憎い、といっても増大な憎悪があるわけじゃない。

 

優馬を困らせるのだけは許せないってだけ。

 

でも、動機としては十分じゃない。

 

 

…曜を蹴落とす(すくう)ための動機、としては、ね。

 




いかがだったでしょうか。

怒らないからと、笑っているからと何してもいいわけじゃないです。

同じ人間、同じような考えをします。
嫌なものは嫌、辛いものは辛いんです。

けれどそれを表に出すことももっと嫌なんです。
だから溜め込んでしまう。

僕はそう、思ってます。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第75話 仮面を被る理由

こんにちは、希望03です。

ライブ前ですが執筆できたので投稿します。

それではどうぞ。


~沼津・津島家・善子の部屋~

 

あれから私は部室へ戻ることは無かった。

Aqoursのメンバーと優馬には体調が悪くなった、という理由で休んだ。

 

しかし、荷物が部室に置きっぱなしだったことを思い出し、どうしようかと思ったが同じ沼津住ということで曜が持ってきてくれるそうだ。

 

本当は優馬に来てほしかったが、曜が来てくれるのならそれはそれで良しとする。

こっちだって聞きたいことがあるからだ。

 

と、部屋でくつろぎつつ、待っていると家のインターホンが鳴った。

 

曜「こんばんはー…善子ちゃん、いらっしゃいますかー…?」

 

善子「ヨハネよ。」

 

曜「あ、善子ちゃん!良かったー…元気そうだね!」

 

善子「だからヨハネよ…心配かけちゃったわね、ラブライブ前なのに…ごめんなさい。」

 

曜「いいよいいよ!元気そうなら全然問題ないからっ!」

 

そうしていつもの曜らしい活気ある笑顔で嘘をつき休んだ…言わばずる休み、をした私にこれでもかという程の悪意のない励ましをしてくれ、鞄を渡してくれた。

 

曜「よし…じゃあ、私は帰るn「ちょっと待って。」え?」

 

善子「…少し、お礼をさせてくれないかしら?」

 

曜「お、お礼なんて…私はただ家が近いからってだけで…」

 

善子「それでもよ。持ってきてくれたことには変わりはないでしょ?ほらほら感謝の気持ちくらいありがたく受け取っておきなさい。」

 

曜「で、でも…」

 

善子「いいからいいから!」

 

少し強引だったかしら。

と、自分でも思うくらいにはかなり不自然だったような気もするけれど、とりあえず上手くはいった。

あとは引き出すだけ…

 

~津島家・リビング~

 

善子「はい、どうぞ…紅茶で良かった?」

 

曜「ありがと…大丈夫だよ。」

 

それからわずかな沈黙。

お互いに紅茶を飲みながらゆったりとした時間を過ごしたいところだけど今はそうもいかない。

 

曜「…ふぅ」

 

善子「どう、美味しい?」

 

曜「あ、うん…すごく染み渡るよー…」

 

善子「そう…良かった。」

 

曜「…ありがとね。」

 

善子「大したことじゃないわ。」

 

曜「ううん、紅茶の事もそうだけど…気を遣ってくれてるでしょ?」

 

善子「…気づいていたのね。」

 

曜「だってあまりに強引だったんだもん。気づかないものも気づいちゃうよ。」

 

さすがにバレてたみたい。

ただ核心に迫ったような言動は無いということはなぜ家に上げてくれたその本心までは見破られていないみたいね。

 

善子「そうね…さすがに強引すぎたわ、ごめんなさい。」

 

曜「全然!むしろ嬉しいよ、ありがとね。」

 

善子「…それで聞いてもいいかしら?」

 

曜「…」

 

善子「曜、あんた、優馬と何があったの?」

 

曜「…気づいてたの?」

 

善子「何も全てに気付いているわけじゃないわ。ただ様子がおかしいのは明らかだったから聞いただけよ。」

 

曜「…そっか。」

 

たまたま曜は俯いて私の事を見てなかったけれど、この時の私は多分殺意も込めた目をしていたと思う。

本当なら今すぐにでも問い詰めて、二度と優馬に近づかないで、とでも言ってやりたいくらい。

 

でも、そうしなかったのは私のわずかに残ってた曜への善意。

 

これでも長い間、一緒にAqoursとして頑張ってきた仲間だもの。

 

だから…結局、私は憎み切れなかった。

 

そんなわずかな私の善意だった。

 

すると、少しの間俯いていた曜が再び、顔を上げた。

 

曜「じゃあ…話すね。」

 

 

そう言って、曜は口を開いた。

 

 

~津島家・渡辺曜の独白~

 

善子ちゃんが家に上がって、と言ってくれた時、私はその言葉を疑った。

善意で言ってくれているはずの言葉の中に何かほんの少しの憎悪も感じてしまったから。

 

なんでここまで私が敏感なのか、と言われると私の性格に起因する。

 

私は基本的に何でもできちゃう子、容量が良い子、と言われ続けた。

確かにやろう、頑張ろうと思えば何でもできるし、他の子と比べてもどちらかというと何に対しても臆せずに挑戦できる子だったような気がする。

 

けれど、それに対しての他の人たちからの嫉妬や僻み、妬みはたくさんあった。

もちろん、裏では陰口も言われてた。

 

私だってそれを聞いてたら嫌になるし、手を抜こう、と思った。

けど、それは大人たちが許さなかった。

 

大人たちは皆して私に期待して、期待して、期待して…

手を抜けば、怒られる。

手を抜けば、なんだ、こんなものか、と見下す。

 

結局、もう私には逃げ場なんてなかった。

私は一生、この嫉妬の嵐と期待の波に呑まれながら生きていくんだ、って思った。

 

そんな時、初めて会った男の子。

初めて、私と同じような人を見つけた。

それが優だった。

 

別に優はなんでもできるわけじゃない。

運動は並以下だし、生活力があるわけでもない。

けれど、誰よりも突出した才能があった。

 

それが頭脳だった。

 

とにかく頭が良かった優は小さい頃から神童だ、天才だ、と大人たちに囃し立てられていた。

けれど、優も普通の男の子。

ましてや、あの頃はまだ小さかった、それなりに遊びたい年頃だろう。

 

なのに、周りはそれを許さなかった。

 

言い寄る女の子たちだって、同じだ。

 

優が好き、と言って近寄ってるけど実際は優の才能による副産物のおこぼれを与りたいだけ。

結局は優の事を好きになんかなってないんだ。

 

つまり、人は皆、裏がある。

特に才能がある人、中心になる人に対しては皆して嘘をつく。

 

私はそれに幼いころから気付いてしまった。

 

だから、私は人の顔をよく見るようになった。

私の事をどう思っているのか、そして一番は

 

優を悪い奴から守るために。

 

けれど、久しぶりに再会した時、優は変わってしまっていた。

 

もうあの頃のような純粋な笑顔を向けてくれなくなってしまった。

 

だから、もう一度、もう一度。

私が一からそばにいて、見守って、大切に直していこう、ってそう思ってたのに。

 

 

気付いた時には遅かった。

優の傍にはたくさんの素敵な人がいて、そして輝きを、光をくれる千歌ちゃん(ひと)がいて…

 

気付いた時には私がいる必要がどこにもなくなってしまっていた。

 

怖かった。

今まで同じだと思っていた人が、一緒の想いで、ずっと守ろうって決めていたはずなのに

 

私がそばにいる理由が、無くなる。

 

そう、思ってしまった。

 

だから私は色んな行動を起こした。

とにかく優に振り向いてもらう、本当に守ってくれるのは(わたし)だけなんだ、って気づいて欲しかった。

 

けど、どれも失敗した。

 

全部千歌ちゃんに奪われた。

 

もちろん、憎かった。

なんで千歌ちゃんみたいな引っ付いてばかりの子が、って何度も思ってた。

 

でも、間違ってたのは全部私だったんだ。

 

優は庇護対象でもない。

守るべき存在じゃない。

 

私は今までずっと、優を対等の存在のように思っていたけど違う。

守るべき存在、つまり私はずっと下に見ていたんだ。

 

大人たちと一緒。

私も優を見下してたんだ。

 

だからずっと私は仮面を被ってた。

優よりも上の存在であると見せるために。

 

それに優は気づいていたのに、もう一度、一緒にって、手を、差し伸べてくれたのに、私は…

 

私は、それを拒んだんだ。

 

だから、私は決めた。

この時から私は優に弱いところは見せないって。

 

 

…それが拒否した者の宿命だから

 

 

曜「じゃあ…話すね。」




いかがだったでしょうか?

話なげえな、って人いると思います。
すみません。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第76話 「善」い子ちゃん

こんばんは、希望03です。

性格によって損する人もいる

それではどうぞ。


~沼津・津島家・善子の部屋~

 

善子「…」

 

顔を上げた曜の顔はどこか覚悟を決めたような顔だった。

 

曜「昨日、寝る前に優から電話貰ったの。」

 

善子「…はい?」

 

曜「だから、私が寝る前に「いやいや、それは分かったわ!」え?」

 

善子「なんで優から電話がかかってきたのよ!?」

 

曜「それは…なんでだろ?」

 

善子「は!?それが一番大事な所じゃない!?」

 

正直、この時点で私は動揺しまくった。

だって、どんなことが起きたか、っていうことを段階踏んで話してもらうはずだったのが、起承転結の結び以外をすっ飛んで、オチだけを話しているように聴こえたから…いやこの通りな気がする…

 

善子「すぅ…はぁー…なにか思い当たることはないわけ?」

 

曜「うーん…」

 

なぜ優馬が曜に電話をしたのか、それは優馬にしか分からない。

でも、アクションには必ずそれをしようとしたきっかけがあるはず。

そのきっかけっていうのは今日までの曜の行動、そして優馬との関係を考えれば…分かるのよ。

 

善子「…はぁ」

 

曜「善子ちゃん?」

 

善子「ごめんなさい、悩ませちゃって…なんとなく私は分かっているの。優馬がなんで曜に電話をかけたのか。」

 

曜「…え?」

 

善子「優馬は曜の事が心配だったのよ。」

 

曜「…っ」

 

善子「あ…その顔をするってことはやっぱり内心気付いていたわけね。」

 

曜「…気付いてなんか…」

 

善子「今さら逃げるの、やめなさいよ。顔で分かるわよ、図星を突かれた時の曜の顔はいつにも増して分かりやすいんだから。」

 

曜「…」

 

そうして、少し冷めた紅茶を啜る。

猫舌の私には丁度いい熱さになっていた。

 

善子「ふぅ…」

 

少し喉を潤せば、頭も冷静になってきた。

私が考える優馬が曜を気にかけていた理由…恐らくこれだろう、という憶測はある。

あとはこれを聞いて、答えを聞くだけ。

 

さて、曜の仮面をさっさと剥がして、と話を進めようとしたその時、先に口を開いたのは曜の方だった。

 

曜「私は、顔に出してるつもりなんて一度も無かった。」

 

善子「…ふーん」

 

曜「でも、顔に出ちゃうんだね。やっぱり。」

 

善子「それが優馬に気にかけてもらえるきっかけになるのならいいじゃない。私からしたら羨ましい限りだけど?」

 

曜「…本当にそう思う?」

 

善子「え?」

 

一瞬、その問いかけが理解できなかった。

だって、優馬からわざわざ電話来て、心配してくれて、羨ましくて

ますます優馬の事を好きに…

 

曜「そう言うことだよ。」

 

善子「っ!…どういうことよ」

 

曜「今、優の事、どんどん好きになっちゃう、とか思ったでしょ?」

 

善子「…」

 

曜「そうやって優への愛…もとい依存心が増大していっていつしか抑えきれなくなる。」

 

善子「っ!」

 

曜「…恋が実らないかもしれないのに好きっていう気持ちが大きくなる…それって辛くない?」

 

善子「…」

 

曜「あはは、今度は善子ちゃんが動揺してるね、面白い。」

 

善子「心読めるの…?」

 

曜「いやいや、そんな超能力使えるわけないじゃん。」

 

善子「じゃあなんで私が考えてたことを「顔に出てたから、かな。」は?」

 

顔?今?

出してるつもりなんて

 

曜「無かったでしょ?」

 

善子「…やめて。」

 

曜「ごめんごめん…でも、私さっき言ったじゃん。顔に出ちゃうんだね、って。」

 

善子「それは曜だけの話で「違うよ?」…」

 

曜「人間、だよ。」

 

曜「人って何か考えてるときって無意識のうちに顔に出てるんだよね。」

 

曜「それは私も例外じゃなかったってだけ。」

 

善子「それがなんでこの話に繋がるのよ…」

 

曜「そうだよね。まずその話をしなくちゃ…って思ってたのに善子ちゃんがどんどん話し始めちゃうんだもん。」

 

善子「…」

 

そうして私は心を読まれていたその恐怖に少し怯えながら曜の話を聞かされることになったんだ。

 

 

曜「善子ちゃんに聞きたいんだけど、優ってすごいよね?」

 

善子「…抽象的過ぎじゃない?」

 

曜「どれがすごいか、は問わないよ。なんでもいい、とにかく優はすごいか違うかを話して欲しいの。」

 

善子「そうね…すごいと思うわ。」

 

曜「…なんで?」

 

善子「…誰に対しても優しくて、寄り添ってくれる。器も大きくて、何より誰かのために動こうとできる勇気もすごい。あと、頭もいいし…あれはもう才能だろうけど…」

 

曜「そう、才能。」

 

善子「え?」

 

曜「優の頭の良さ、賢さ、頭脳レベル…あれはさ、昔からずっと、ってこと知ってるよね?」

 

善子「う、うん…本人が言ってたか、3年生たちが言ってたかは覚えてないけど…」

 

曜「そうそう…優はずっと幼いころからとても賢かった。それもどんな大人たちよりも…」

 

曜「単純に周りからしてみればすごいと思うし、羨ましいと思う…けど、違う。」

 

曜「周りの大人たちはそんな突出した才能に妬みや僻み、あるいは過剰な期待を向けて、優を苦しめてた…」

 

善子「っ!?…なに、それ。」

 

曜「…色んな女の子たちもその才能欲しさに優に近づいてたりしてたの。」

 

善子「…」

 

曜「でも、そういう人たちって皆、共通点がある。」

 

善子「きょう、つうてん?」

 

曜「そう…近づきたいがために、必ず嘘をつくの。」

 

曜「なるべく良い顔して、良い人のように演じて…優を騙そうとしてたの。」

 

善子「っ!?」

 

そんな話、聞いたことが無かった。

騙そうと、だなんて…それも優馬に…

これを今のAqoursの皆が知ったら騙そうとした人全員の住所を特定してボコボコにしそうね…

 

曜「だからそんな屑のような人たちから優を守るために私は…」

 

善子「顔を見るようになった、のね。」

 

曜「…正解。その癖がついちゃって、今ではなんとなくだけど相手がどう思ってるのか、何を考えてるのかがちょっと分かっちゃうんだよね。」

 

善子「…それは、分かったわ。でも、それがなんで優馬から離れようとする理由になるわけ?」

 

曜「気づいたんだよ。」

 

善子「…何に?」

 

曜「優は私がいなくても大丈夫ってこと。」

 

善子「は?」

 

曜「今まではずっと私が優を守ろうと思ってたの。それは守ろうって決めたあの頃から変わらない。離れててもいつか必ず再会して、また守ってみせるってそう思って、再会した後もずっとそうしてきた。」

 

曜「でも、気付いたら優の周りには鞠莉ちゃんや果南ちゃん、ダイヤさん、ルビィちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃん…梨子ちゃんに、千歌ちゃんとか…」

 

曜「色んな魅力的で輝いてる人たちが優を囲んでいた。」

 

曜「何より千歌ちゃんはいつも裏で守ろうと陰湿的な私に比べて、ずっと前に進むために優に手を差し伸ばそうとする光みたいだった…」

 

善子「まさか、それで手を引いた、ってわけ?」

 

曜「…やることは変わらない。優を悪い人から守る、それは変わらない、けど私がどれだけ振り向かせようとやってきても全部、千歌ちゃんに盗られて…私じゃ優の隣には並べないんだって分かったの。」

 

曜「だから、私はもう、いいんだ。」

 

そうやっていつもの曜の笑いに戻った。

でも、その顔はもう諦めてしまった、というか、どこか元気のない笑顔だった。

 

善子「…ま、事情が聴けて良かったわ。」

 

曜「…」

 

善子「でも、なんでそんなことができるのに優馬の好きな相手とかを探ろうとしないわけ?」

 

曜「それはできないよ。」

 

善子「え?」

 

曜「だって、あくまでも嘘ついてそうだなーっていうのがちょっと感じるだけ、ってだけだからね。」

 

善子「…そ、っか」

 

曜「…ごめんね」

 

そう謝る顔はもう泣き出しそうな顔だ。

コロコロと表情が変わるが、本当はもう涙でいっぱいなんだろう。

 

善子「じゃあ明日からどうするわけ?」

 

曜「…いつも通り、かな。」

 

善子「…そう。なら優馬には伝えておくわ。」

 

曜「え!?」

 

善子「違うわよ…心配すること無い、ってことよ。」

 

曜「あ、あー…」

 

善子「そうすれば多少なりとも関係は少し改善するでしょ?」

 

曜「…ありがと、善子ちゃん。」

 

本当よ、とんだピエロじゃない。

だまって話を聞いてあげて、挙句の果てに関係の修復を私がするなんて…

本当は蹴落とそうと思ってたのに…なんて。

 

善子「どういたしまして」

 

曜「…じゃあ私は帰るね?」

 

善子「うん…」

 

 

そう言って、曜は家を出た。

 

 

善子「あんな話を聞かされたら憎むことすらできないじゃない…」

 

 

~沼津・帰路・曜視点~

 

曜「…」

 

もう気づけば夜。

綺麗なお月様が辺りを照らしていた。

 

曜「これで良かったのかな…?」

 

本当は今でも優の事が大好き。

ずっとそばにいたい。

けど、それは優が決めること。私じゃない。

なら私じゃなくてもっと魅力的な人がいっぱいいる。

だから、私は…

 

曜「すぅ…はぁ…よしっ」

 

 

もう、諦めたんだ。




いかがだったでしょうか?

性格って難しい。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第77話 貴方を振り向かせるために、やらなくちゃいけないことだから

こんばんは、希望03です。

誰かとは言いません。
現場、動きます。

どうぞ。


~沼津・津島家・善子の部屋~

 

善子「なるほどね…」

 

『…やることは変わらない。優を悪い人から守る、それは変わらない、けど私がどれだけ振り向かせようとやってきても全部、千歌ちゃんに盗られて…私じゃ優の隣には並べないんだって分かったの。』

 

『だから、私はもう、いいんだ。』

 

善子「…」

 

曜はそう言い切った。

 

もう、私は良いのだ、と。

 

ようはもう優馬の事は諦めた、ということだ。

まぁ、決めるのは優馬だけど。

 

それでも今後、変わるかもしれないアプローチをしない、ということ。

 

果たして曜は本当にそう踏ん切りをしたのだろうか。

 

善子「…私だったら、できないわ。」

 

そう、私だったらできない。

…実を言うと私は曜に対してどこかシンパシーを感じている。

自分は主役になりきれないところ、誰かに譲ってしまう所、自分は裏で支えられればいいという考え方…

 

善子「…本当に踏ん切りはつけられた?」

 

多分…いや、きっと曜は諦めきれてない。

それもめんどくさいことに自分ではそこに気付けていない。

 

善子「…本当、世話の焼ける人」

 

私ができることはここまで。

これ以上干渉したら私のことも疎かになっちゃうもの。

 

 

~内浦・浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

ついに月は師走、12月になった。

そして僕が曜と電話をしてから1週間が経っていた。

12月と言ったらもうラブライブの決勝まで残り2週間も無い。

それなのに僕は未だに…

 

優馬「決めきれてない…」

 

覚悟は決めた。

必ず3年生の最後のライブ、つまりこの調子でいけばラブライブ決勝が最後のライブ。

そのライブ後に…そう決めたのだ。

なのに、僕は…

 

優馬「はぁ…」

 

 

「あれ?優君?」

 

優馬「その声は…」

 

梨子「その声は、って…私を誰だと思ってたの…?」

 

優馬「ごめんごめん…ちょっと考え事をしてて…」

 

梨子「考え、事?」

 

優馬「…うん」

 

梨子「それって…私とかにも言えないこと?」

 

優馬「…」

 

考え事。

僕はなるべく誰かのために力になりたかった。

けれど、僕の悩みは

 

優馬「…僕が解決しなきゃ、いけないことだから」

 

梨子「っ…そ、っか」

 

梨子の顔、まるで泣きそうだった。

その顔はすでに知ってる。

だって、何度もそんな顔をさせてしまったから。

 

ごめんね、でも、こればかりは言えないんだ。

 

だから、

 

優馬「ごめんね…」

 

梨子「…いつか話してくれる?」

 

優馬「…」

 

梨子「そっか…」

 

一瞬の沈黙。

ものの数秒、でも、この感覚も経験済み

数秒がまるで数分、数時間のように感じてしまう感覚。

その沈黙が過ぎた時だった。

 

梨子「ねぇ、優君。」

 

優馬「…?」

 

顔を見合わせた。

梨子の顔は真剣でありながらどこか怒っているようで、僕にはその怒りが何なのか分からなかった。

 

梨子「…ずるいよ、優君。」

 

優馬「ずる、い?」

 

何がずるい?

 

悩みを打ち明けないこと?

 

覚悟を決めてるけど決めきれてないこと?

 

でも、それはしょうがないじゃないか。

僕だって悩んでるんだ。

 

1人で、誰にも打ち明けられずに。

 

僕の覚悟の話だけじゃない。

覚悟を決めたからこそ、曜の態度だって気になってしまっている。

以前、善子から曜は心配ない、と教えられた。

 

けれど、それでもどうしても気になってしまう。

 

覚悟を決めるはずなのに、気になってしまう。

 

…揺らいで、しまう。

 

でも、これを打ち明けてしまうのは同じように覚悟を決めてくれてる彼女たちに対しての敬意として許せない。

 

だから、ずるくない。

 

ずるく、ないはずなんだ。

 

梨子「優君。」

 

気付けば梨子の顔が目の前にあった。

綺麗な眼、白い肌、綺麗に整った顔…

あの頃からさらに魅力的になった、梨子の顔。

思わず僕は見惚れてしまった。

 

梨子「優君、私…私は…!」

 

梨子「ずっと、ずっと!優君の事が、大好き…!大好きなの!」

 

優馬「…り、こ」

 

梨子「…あはは、今まで色んなアプローチをしてきたけどちゃんと私の想い、伝えてなかったから…」

 

驚きはしない、と思った。

でもまさかこのタイミングだとは思わなかった。

 

嬉しい。

 

素直に嬉しい。

 

けど、答えられない。

 

今は、まだその告白には。

だから、どうしても嬉しさの中に後ろめたい気持ちが芽生えてしまう。

 

優馬「そっか…」

 

梨子「…今は答えが欲しいとは思ってないよ。けど、いつか本当にその悩みが解決できた時…私、待ってるから、ね。」

 

優馬「…うん。」

 

 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室前~

 

果南「は…は…は…」

 

今、何が起こったの?

中にいるのはゆうと、梨子…?

それでゆうと梨子が話してて、そしたら梨子が急に、ゆうに告白を…?

え?なんで?

 

果南「だ、いじょうぶ…大丈夫だよ…だって、鞠莉が言ってたじゃん。ゆうはもう好きな人がいるって、だから梨子が告白したところで何も変わらな…」

 

もし、この告白がきっかけでゆうの心が変わったら?

 

そもそも鞠莉の話は本当なの?

 

鞠莉が話してたのは実際にゆうが言ってたこと?

 

ただの鞠莉の憶測じゃなくて?

 

もし好きな人がいる、ってことが憶測だったら?

 

ゆうは今、まだ決めきれてないことになる。

ということは告白した時点でゆうの気持ちが揺らぐ危険性がある。

 

果南「大丈夫、大丈夫、大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫…」

 

やだ、ゆうがいなくなっちゃう。

 

怖い。またいなくなっちゃう。

 

私の初恋の人。大好きな人。愛する人。

 

盗られちゃう。今、動かなきゃ。

 

けど、だけど、動かない。

身体が思うように動かない。

 

想いを伝えるのが、怖い。

 

 

~浦の星学院・廊下~

 

気付けば私は走り出していた。

また逃げてしまった。

皆、覚悟を決めて、勇気を出して、告白やアプローチを掛けているのに

私は、私は…

 

果南「…私、何してるんだろ。」

 

ふと、外を眺めるともう日が落ち、辺りが薄暗いオレンジ色に染まっていた。

それが綺麗で、儚げで、まるで

 

果南「ゆうみたい…」

 

ちょっと暗いけど温かく見守ってくれる。

でも、ふと見せる綺麗な顔、表情、しぐさ。

それが私には輝いて見えて、あぁ、やっぱり私は

 

果南「好きだよ…好きなんだよぉ…」

 

貴方に見て欲しい、貴方をずっと見ていたい。

それくらい貴方の輝きが、ゆう自身が

 

大好きだった。

 

果南「…部室、行かなきゃ」

 

きっともう皆も集まり出してるだろう。

けど、あの空間にゆうと梨子が2人きりで梨子が告白してて…

それを思い出すだけで戻りたくなくなる。

でも、逃げても変わらない。

 

果南「…ゆう、私はもう逃げないよ。」

 

ずっと揺らいでいた私の覚悟。

ゆうの想いを打ち明けてくれる日をただただ待っていたあの時。

突き放されてしまう、いなくなってしまう、その恐怖から動けずにいた私。

でも、もうそんな私はお終い。

 

梨子も鞠莉もすごいよ。

ちゃんと自分の想いを伝えられて。

 

だから、私も…

 

ちゃんと向き合うよ。

 

 

~沼津・ダンス場~

 

優馬「…」

 

あれからいつも通り、僕たちは残り少ないラブライブ決勝にむけて練習を重ねていた。

練習を見るにすごくキレも上がってきていて、歌の調子も上がってきている。

それは分かる。けれど、どこか、どこか…

 

聖良「心ここにあらず、ですね。」

 

優馬「っ!」

 

聖良「…びっくりさせちゃいました?」

 

優馬「い、いや…僕もぼーっとしてたから…ごめん、全然集中できてなかったよ。」

 

聖良「…そうですね、優君もそうですけど、一番は…」

 

そうして聖良の視線はAqoursに向いていた。

 

聖良「…一番はAqoursの皆さんですね。」

 

優馬「…」

 

原因は分かっている、というのは自惚れかもしれないけれど

多分、僕が誰を選ぶのか、ということで頭がいっぱいなのだろう。

 

聖良「…もちろん、Aqoursの皆さんだけでなく私たちも、ですけどね…」

 

優馬「え…?」

 

聖良「理亜や私だってずっと気になってしまって…夜もあまり眠れないんですよ?」

 

優馬「ま、じか…ごめん…」

 

聖良「ふふ、私もからかってしまってすみません。でも、ちゃんと分かってくれて嬉しいです。忘れていると思っていたので…」

 

優馬「忘れるわけないだろ!」

 

聖良「…っ///」

 

優馬「急にごめん…大きすぎた…」

 

聖良「い、いえ…///そう、ですか…忘れてなんてなかったんですね…///ふふふ…///」

 

そうやって聖良と話に没頭していると練習が一段落し、休憩時間となったAqoursの皆が戻ってきた。

 

花丸「はぁ~~…疲れたずらぁ~…ゆ~うさ~…か、なんちゃん?」

 

鞠莉「だ~りぃ~ん…お水とタオルとハグをして~…って、果南?」

 

千歌「ゆうく~ん…充電…ん?果南ちゃん?」

 

それぞれ疲れてくたくたな状態で戻ってきていたらものすごい勢いで僕の下にやってくる果南がいた。

 

果南「…」

 

優馬「…か、なん?お疲れ…?」

 

相当疲れてるのか、目が据わっていた。

でも、なぜか水やタオルは取らない。

不思議に思っていると徐に口が開いた。

 

果南「好き。」

 

優馬「…え?」

 

聖良「は…?」

 

果南「好きだよ、ゆう。大好き。」

 

そう言って果南は僕の持っていたタオルと水を取り、すぐに向こうへと行ってしまった。

と、思いきや後ろを振り向き

 

 

果南「もう残り少ないからさ…毎日、告白して、意識、させてあげるっ♡」

 

 

AqoursやSaint Snowのメンバーがいる中でそんなとてつもない爆弾発言を残して去ってしまった。

 

ラブライブ決勝まで残り2週間弱、僕の覚悟は一体…




いかがだったでしょうか?

少しずつラブライブが近づいてきてるのでいい加減覚悟を決めろって話です。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第78話 ありがとう、貴方のおかげで

こんばんは、希望03です。

迷いはもう、ない。

それではどうぞ。


~沼津・バス停前~

 

今日一日の練習も終わり。

そしてそれは同時に今日一日の終わりでもある。

 

沼津組である善子と曜は徒歩で家へと戻っていった。

あの電話から数日、何か変わったかと言われれば何も変わらない。

曜は相変わらず“いつもの”曜だった。

善子も心配してくれているようで僕にちょくちょく声をかけてくれる。

正直、なんで前みたいに感情を、想いを教えてくれないんだ、って心にショックがあるから心配してくれるだけでも嬉しい。

 

けれど、僕は悟ってしまった。

『多分』、曜の想いは僕に教えてくれないんだろう、と。

 

これまでは曜の事が気がかりでずっと気を向けてしまいがちだった。

けれど、今日はまた違うことが起きた。

それは…

 

果南「…」

 

梨子「…」

 

果南と、梨子からの告白。

まさか今日一日だけで2人から告白されるとは思わなかった。

きっと果南も梨子も色んな想いや葛藤があって、今日に至ったんだろう。

 

『ずっと、ずっと!優君の事が、大好き…!大好きなの!』

 

『好きだよ、ゆう。大好き。』

 

優馬「…」

 

覚悟を決めた。

それを伝えた時、確かに決めなくてはならない。彼女たちに必ず本当の気持ちを伝えなくてはならない。

そう、決めた。

 

だけど、こういった告白だったり、色んな想いを見てしまうと僕は揺らいでしまう。

 

…『好き』という気持ち。

それは暖かな光のようなもの。

 

それと同時に扱い方を間違えてしまうと刃物に変わり、いつかそれが人を傷つけるものに変化してしまう。

 

それを僕が、知っているから。

 

果たして僕が歩み寄っていいのだろうか、彼女たちの想いを受け止められるのか。

 

「…優さん?」

 

優馬「…」

 

「優さん!バス来たずらよ!」

 

優馬「…」

 

花丸「優さん!!」

 

優馬「うおっ!?」

 

花丸「こんな至近距離で声かけていたのに気付かなかったずら…?」

 

優馬「…ごめんね、花丸ちゃん。皆は…」

 

花丸「もう乗ってるずら…マルも乗ろうとしたら優さんが俯きながらずっと考えこんでいたから…」

 

優馬「…そ、っか。」

 

ちらっとバスの時刻表を見る。

そこにはまだこの後、この時間帯に2,3便はあるのが見えた。

 

優馬「花丸ちゃん。」

 

花丸「…?優さん?」

 

優馬「ごめんね、待たせちゃって。先に、皆で帰っていいよ。僕はなんだか疲れちゃって、一休みしてから次の便で帰るよ。」

 

頭はもうオーバーヒート気味、いつ爆発してもおかしくなかった。

だから、もう1人でゆっくりしたかった。

 

そんな感じで1人、バスの外で俯いていた時だった。

 

花丸「…」

 

優馬「え…?」

 

花丸ちゃんがこちらに歩み寄った。

それと同時にバスの扉が閉まってしまった。

 

優馬「な、「なんでって聞こうとしてる?」…花丸ちゃん。」

 

花丸「…もし、1人になりたい、っていうならごめんなさいずら。でも、そんな思い詰めてる優さんをオラ、オラは…見てられないずら…」

 

優馬「…」

 

花丸「…言いたくなかったら言わなくても大丈夫ずら…誰にだって言いたくないことはあるずら。」

 

花丸「善子ちゃんだってマルが再会した時、あんなことをしてた理由を教えてくれなかったし…ルビィちゃんもあんなに独占欲が強い子だと思わなかったずら…」

 

花丸「だから、だから…人って誰にも知られたくない一面がある…それはもちろん、オラにだってあるずら。」

 

優馬「…」

 

花丸「言って欲しいなんてオラは思ってない…でも、そばにいるのはオラの自由、だよね…?」

 

優馬「…そう、だね。」

 

花丸「…えへへ、やったずらぁ~…」

 

そう言って、花丸ちゃんはバス前のベンチに腰を掛けた。

 

花丸「ずっと立ってるのは疲れるから座らないずら?」

 

優馬「うん、座ろうか…」

 

 

花丸「…」

 

優馬「…」

 

残ったところで特にどちらかが話すということも無かった。

 

僕も花丸ちゃんも積極的に会話するタイプではない。

どちらかと言えば聞き手に回ることが多い僕らだ。

だから、別にこの空間が居心地悪い、ということは無い。

今、花丸ちゃんは隣で本を読んでいて、僕はスマホを弄る。

お互いあまり干渉もしないからむしろ居心地は良いかもしれない。

 

だからこの状態のまま、バスが来るまで続く、そう考えながら過ごしていた矢先だった。

 

花丸「優さん。」

 

優馬「…?」

 

本を読み終えたのか、読んでいた本を閉じ、花丸ちゃんがこちらを向いていた。

 

花丸「優さんは…“恋をする”ことって意味があると思うずら?」

 

優馬「意味?」

 

花丸「うん…恋って色々なものがあるずら…」

 

花丸「相手の事が好きっていう純愛、きっと叶うことが無いと悟ってしまうけど好きという気持ちを諦められない悲愛、好きすぎるが故に憎さに変わってしまう憎愛…色々な形の愛があって、それに準じた恋がある…けど、それってオラたちが生きていくうえで必要な物、意味があると思うずら?」

 

そう、彼女は悲し気な表情で、今にも消え入りそうな声で、僕に聞いた。

それはあまりにも高校生とは思えない程、儚げで、哀しみに包まれていたものだった。

 

優馬「…意味は、無いと思うよ。」

 

花丸「…そっか」

 

優馬「正直、“僕が”恋をすることの意味は理解できない。誰かを好きでいることはとても素敵だけどそれと同じようにとても怖いものだって学んでるから。」

 

花丸「“僕が”…それは…奏、さん?の話ずら?」

 

優馬「…そう、だね。」

 

多分、初恋。

あの頃は何も考えることなく、ただ彼女の傍に居たかった。

ただ、彼女に振り向いて欲しかった。

好き、と伝えたかった。

 

けれど、それは間違いだった。

 

僕みたいな天才(ばけもの)が恋をする、される。

それは人とは違う。

 

優馬「…誰かの事を想うこと、好きになること。とても素敵で輝いて見える。けれど、それは自らが視野を狭めるのと一緒だ…だから僕はあの時…」

 

彼女を、殺してしまったんだ。

僕が彼女に恋をしていなければ、想いを抱いていなければ…

そんな後悔が拭いきれていない。

 

花丸「…優さんの言い分は分かったずら…じゃあ、なんで優さんは覚悟を決めたの…?」

 

優馬「それは彼女たちに「優さん自身は?」え?」

 

花丸「優さんの想いは、優さんの恋慕はどこにあるずら?」

 

優馬「…僕は関係ないよ。皆に対しての誠意として応えなくちゃならないんだから…」

 

花丸「…関係なくないずら!それでオラたちが喜ぶと思ってるの!?」

 

花丸ちゃんが出してるとは思えないくらい大きな声だった。

驚いたと同時に僕の心を大きく抉るようなそんな言葉。

 

優馬「実際…喜ぶ、でしょ…?」

 

花丸「…オラたちを甘く見ないで欲しいずら!そんな中身がない答えを出されても嬉しくない…それはオラだけじゃない!皆、同じずら!それが本当に優さんの誠意なの!?」

 

優馬「…」

 

気になる人はいる。

でも、僕のこの想いはきっと誰も傷つけない『正解』じゃない。

だから、想いは捨てなくちゃならない。

ちゃんと誰も傷つかない“理想的”で“論理的”な『正解』を出さなくちゃならないから…

 

優馬「…あれ?」

 

頬を伝う一筋の涙。

気付けば僕は泣いていた。

 

花丸「やっぱり、本心じゃ、ないんだね…?」

 

優馬「…本心さ。僕は、関係ない。皆が傷つかないように、誰も泣かないように、誰も辛い思いをしないようにするために僕は…」

 

止まらない。

 

止まれ、止まれと頭で考えていても、涙は溢れるばかり。

 

余りにも情けない。

 

年下の女の子を前にして、僕は何を泣いているんだ。

 

泣き止め、泣き止んでくれ。

 

そう、思っているのに、止まらないんだ。

 

花丸「…」

 

優馬「…っ」

 

すると、花丸ちゃんは僕のことをそっと、抱きしめてくれた。

 

花丸「…怖かったんだね。ずっと。」

 

優馬「…う、あ…」

 

花丸「…自分の気持ちで、想いで誰かを傷つけてしまうのが、ずっと怖かったんだね。」

 

優馬「…ご、め」

 

花丸「謝らなくても大丈夫ずら…オラたちは優さんがどんな答えを出してもちゃんと受け止めるし、応援する…だって、オラたちは大切な仲間、ずら!」

 

優馬「…あ、あぁ…うあぁぁぁぁぁ…」

 

今まで必死にこらえていた涙が溢れだした。

まるでダムが決壊したように、心のダムが決壊した。

 

そうして、僕が落ち着くまで数十分はかかった。

 

 

優馬「…ごめん、情けないところを見せちゃったね。」

 

花丸「全然大丈夫ずら…むしろ役得ずら!」

 

優馬「そ、そっか…」

 

花丸「…だから、もう優さんの想いのままに動いていいんだよ。」

 

優馬「そう、だね…」

 

花丸「うん…周りを気にしないで、ちゃんと自分の想いと向き合って、ね?」

 

優馬「…ありがとう、花丸ちゃん。」

 

花丸ちゃんのおかげで踏ん切りはついた。

もう、迷いはない。

 

気になる、なんて抽象的で、曖昧な答えは無い。

 

僕は…

 

花丸「…じゃあ、オラも踏ん切りをつけなくちゃ!」

 

優馬「え?」

 

踏ん切り?何のことだろうか、そう考えていた。

すると、花丸ちゃんは口を開いた。

 

花丸「…私は…ううん、国木田花丸は、空条優馬さん、貴方の事をお慕いしています。初めて出会った時から、ずっと、ずっと大好きで、愛しています。だから、付き合って、ください!」

 

優馬「っ!」

 

それは彼女からの精一杯の、覚悟を持った告白だった。

声は震えていて、手も震えていて、今にも泣きそうだけど出来る限りの笑顔での告白。

僕は、一瞬、心を奪われてしまった。

 

 

けれど、僕は

 

 

優馬「…ありがとう、花丸ちゃん。すごく、嬉しいよ。」

 

花丸「…っ」

 

優馬「でも、ごめんなさい。その気持ちには答えられない。」

 

花丸「…そ、っかぁ…そうずらかぁ~…」

 

優馬「…」

 

目の前の女の子は、とても良い子で、努力家で、愛らしい女の子。

告白されてすごく嬉しいし、ドキドキもする。

けれど、僕はもう決めてるんだ。

 

花丸「…すぅ…はぁ…理由、ききたいずら。」

 

優馬「…僕は花丸ちゃんの言葉に助けられた。花丸ちゃんのおかげでようやく迷いが消えた。本当にありがとう。だからこそ、僕は……に好きだ、と伝えたいってそう決めた…それだけだよ。だから、ごめん、気持ちには答えられない。」

 

花丸「…うん、それなら良かったずら!本当に、良かった、ずら…」

 

僕がそう伝えた時、花丸ちゃんは笑っていたけれど、目から涙が溢れていた。

 

優馬「花丸ちゃん…」

 

花丸「…あはは、気にしないで欲しいずら!ちゃんと優さんの力になれて、嬉しいし…」

 

優馬「…」

 

心が痛い。

けれど、この痛みから逃げちゃ駄目なんだ。

ちゃんと向き合わなければならないんだ。

 

花丸「…オラ、多分、諦めきれないずら…叶わないって分かっていても、多分、追い続けちゃうずら…それでも許して、くれるずら?」

 

優馬「…光栄だよ。」

 

花丸「…ありがとうずら!」

 

終始、笑顔だった。

涙目だけど、必死に堪えて、溢れていたけど、最低限に抑えながら、ずっと笑顔で…

とても、可愛くて、綺麗だった。

 

花丸「…最後に良いずら?」

 

優馬「…うん、僕にできることなら」

 

花丸「ありがとう…じゃあ、目を瞑って欲しいずら」

 

優馬「うん…」

 

そうして、目を瞑った瞬間だった。

 

花丸「んっ…!///」

 

優馬「…っ!」

 

僕の唇に何か柔らかいものが触れた。

それは僕よりも柔らかくて、小さい、唇のような…

 

優馬「…って、今…!」

 

花丸「…何も、言わないで、許して欲しいずら。」

 

そう言って、彼女は沼津の街に走ってしまった。

最後に彼女の顔をよく見れなかった。

それにちゃんと感謝を伝えきれてないな、とも思った。

だから、聞こえないかもしれないけれど…

 

 

優馬「…花丸ちゃん、ありがとう。こんな僕を、好きでいてくれて…」

 

いつか届いて欲しい、と思いを込めながら彼女に向けて、感謝をした。

 

 

~沼津・花丸視点~

 

花丸「はっ…はっ…」

 

息が続く限り、オラは走り続けた。

さっき起きたことが真実だ、と受け入れたくなくて、無我夢中になっていた。

止まってしまうと、オラはまた泣いてしまいそうで。

 

 

花丸「う、あぁ…あぁぁぁぁぁ…!!」

 

 

~沼津・公園~

 

花丸「…」

 

ベンチに座った。

どこまで走ったんだろう。

気付けばこんなところまで走っていた。

 

花丸「オラ、フラれたんだぁ…」

 

ようやくさっきまでの夢みたいな出来事がオラの中に落とし込まれた。

そう、オラは大好きな人に、初恋の人に、想いを伝えて、フラれた。

 

花丸「…分かっていたはずだったのになぁ」

 

泣かないって、決めたのに。

考えれば考えるだけ、悔しくて、悲しくて、涙が止まらない。

 

『ありがとう、花丸ちゃん。』

 

花丸「…バカ、バカ、バカぁ!!」

 

初めて会った無気力な人。

どこか不思議な雰囲気で、周りの人とは違って、でも、とても優しくて、いつも笑いかけてくれて…

一目で恋に落ちた、初恋の人。

 

花丸「…もう、オラの初恋は終わったんだ。」

 

この1年間、ずっと想い続けて、ずっとアプローチを掛けてきたけど、それももう終わった。

初恋としての1年間は、もう終わったんだ。

 

花丸「…でも、これが間違いだなんて思ってないよ。」

 

恋を教えてくれた人。

オラは、私は、花丸は、多分、いや絶対、これからも諦めきれずに貴方を追いかけちゃうと思う。

 

でも、もう追いかけるだけ。

決して手は出さないし、アプローチもかけない。

 

花丸「気持ちだけ、ずら…」

 

もう、分かった。

オラはエールを送る側に回らなきゃいけないんだって。

 

花丸「だけど、今は、今だけは…」

 

 

今日だけは恋に破れた悲しい1人の女の子として

 

 

悔しくてエールなんて送れない卑しい女の子でいさせて、ね。




いかがだったでしょうか?

青春っていいですよね。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第79話 想いから想いへ

こんばんは、希望03です。

誰かが行動を起こすと連鎖が起きるものです。

それが勇気ある行動であればあるほど、尚更。

それではどうぞ。


~浦の星学院・1年教室・ルビィ視点~

 

季節はもう12月、冷たい風がすごく沁みる。

別に寒いのが苦手というわけではないけど、寒いよりは温かい方が良い。

そんな寒い寒い一日がまた今日も始まろうとしていた。

 

ルビィ「さむいよぉ…あ」

 

教室に入るとまだ朝早いからか、ほとんど人はいなかった。

けれど、そんな朝早い中、いつも通りルビィが来るよりも早く学校についている友達が席についていた。

 

ルビィ「花丸ちゃん、おはよう!」

 

普段通りだと思った。

ルビィたちとお姉ちゃんたちとの最後のライブが終わるまで、お兄ちゃんが伝えてくれると信じて、ただ待っているだけで。

 

今日も変わらない一日が始まるのだとルビィは勘違いしていた。

 

花丸「…あ、ルビィちゃん。おはようずら。」

 

ルビィ「…花丸、ちゃん?」

 

ルビィの挨拶に応えるように花丸ちゃんも挨拶を返してくれた。

けれど、その挨拶に感じた違和感。

ふと、顔を見てみると笑っているには笑っているけれど、すっきりしていて、どこか寂し気で、大人っぽくて…

 

そう、まるでかつてない程の甘酸っぱい恋に破れてしまった女の子みたいで…

 

花丸「…どうかしたずら?」

 

ルビィ「っ、いや、その…」

 

なんて聞けばいいか分からなかった。

だからなのか、ルビィは思わずたじろいでしまった。

 

花丸「もしかして、マル…今、顔に出てる?」

 

ルビィ「…うん、その、何かあったの?」

 

花丸「何かあった…うん…色々、あったずら…」

 

ルビィ「それって…ルビィたちがバスに乗って帰ったけど、花丸ちゃんとお兄ちゃんが残った…あの時に?」

 

花丸「そこまで見抜かれてるなんて…もう隠せないずらね~」

 

ルビィ「…」

 

そう、努めて明るく話す花丸ちゃん。

でも、すごく、無理してそうだった。

 

ルビィはもう誰かれ構わない。

お兄ちゃんに振り向いてもらうために、なんだってする。

そう決めていたのに、友達が…何かあった、っていうだけでルビィの心はグラグラになってしまう。

 

ルビィ「それって、今、聞いてもいいのか、な?」

 

花丸「…話すと長くなるずら。それでもいい?」

 

そうして、花丸ちゃんが話そうとした時、教室が少しづつざわつき始めた。

 

周りを見渡してみると、さっきまであまりいなかった教室に人が増えていた。

SHRの10分前、皆が登校してきたみたい。

 

花丸「…今はタイミングじゃないね。」

 

ルビィ「…うん。」

 

今はタイミングじゃない。

大した話じゃなければ別にここでしてもいいけれど、余程の事なんだろうって思った。

 

ということで、話の続きは昼休みにでも、ということになった。

 

 

~浦の星学院・2年教室~

 

相変わらず寒い一日。

外に出て、息を吐けば、空に浮かぶは白い靄。

本当、それを見るだけで寒く感じるから勘弁してほしい。

 

優馬「はぁ…さっむ…」

 

千歌「どーんっ!!」

 

優馬「っ!?」

 

余りの寒さに堪えて、思わずため息が出てしまった時だった。

ものすごい勢いで僕の身体に突っ込んでくる馬鹿がいた。

 

千歌「どう?暖まった?」

 

優馬「…うん、よく分からん。」

 

千歌「えぇ~!?なんでよ~!!」

 

むしろ勢いよく突っ込んで、人を温かくさせることができるという思考回路になんでだ、と突っ込んで差し上げたい。

 

梨子「こら、千歌ちゃん!優君が困ってるじゃない!」

 

千歌「むっ!そう言って梨子ちゃんだってくっつきたいんでしょ~?」

 

梨子「なっ…!?///私は…///」

 

優馬「…」

 

一つ一つの仕草が大人っぽいというか、やはり他の同級生とは少し違う一面がある梨子。

…そんな女の子にも告白をされてるんだよな、と思うとすごいことだな、と思う反面で保留にしてしまっている自分が情けなくなってしまう。

 

ただでさえ、昨日、一人の女の子を振ってしまった、というのに。

 

すると、千歌と梨子の登場に少し遅れて見慣れた女の子も教室に入ってきた。

 

曜「あ、千歌ちゃん、梨子ちゃん!おはよう!」

 

千歌「曜ちゃん!おはよー!」

 

梨子「おはよう、曜ちゃん。」

 

いつも通り、とても良い笑顔で明るく挨拶を交わす曜の姿があった。

そして、それは僕にも変わらずで。

 

曜「優も、おはよう!」

 

優馬「…まるでおまけみたいじゃないか…おはよう。」

 

曜「やだなぁ!そんなつもりはないって!気にしちゃってたならごめんごめん!」

 

そうやって、以前のような挨拶を交わして、お互いに席に戻る。

まるで今までの事が何事も無かったかのように。

 

別に気にすることではない。

関係が元に戻ったというだけ、関係というにも別に付き合っていたというわけでもなく。

友達の関係をちゃんと守っている、ただそれだけ。

 

けれど、今までの色々な事が何事も無いようにされて、少しモヤモヤするというのはある。

善子から心配はしなくてもいい、と言われたけれど、こんなのは

 

優馬「心配しない方がおかしいけどね…」

 

 

梨子「…」

 

千歌「優くん、何見てるんだろ?」

 

梨子「えっ!?あ、な、なんだろ、またいつもみたいにぼーっとしてるだけじゃない?」

 

千歌「そっかー、そうだよね!」

 

 

梨子「…いつか、教えてくれる、よね?」

 

 

~浦の星学院・昼休み・ルビィ視点~

 

花丸ちゃんの表情、言動。

それが気がかりで、気づいた時にはもう昼休みになっていた。

ルビィたちはいつも4人で集まって昼食を食べている。

 

花丸「…今日くらいは察して欲しかったずら…」

 

善子「なにが察して欲しいよ!あんたが辛気臭い顔してるから励ましてあげようっていうのに!」

 

理亜「善子、うるさい。」

 

善子「ヨハネよ!なんで私が怒られなくちゃいけないのよ!」

 

ルビィ「あはは…」

 

3人の時も楽しくおしゃべりしていたけど、理亜ちゃんが来てからさらにおしゃべりが活発になった。

花丸ちゃんも善子ちゃんもこの光景に慣れてか、理亜ちゃんとも自然にコミュニケーションを取るようになった。

 

善子「…それで、何があったのよ。」

 

昼食もそこそこに食べ進めて、ある程度時間が経っていた。

そんな時、善子ちゃんが切り出した。

それは、花丸ちゃんの朝の様子の事。

 

花丸「…なんか上から目線で嫌ずら。」

 

善子「教えてください。」

 

…若干のコントみたいなのが入ったけどね。

 

花丸「まず何があったか、っていう結論から言うね。」

 

花丸「…マル、優さんに告白して、フラれちゃった。」

 

善子・理亜「「っ!?」」

 

ルビィ「え…?」

 

花丸ちゃんから出た言葉は告白、という単語。

しかも相手は優さん、お兄ちゃんだ。

 

なぜ?

 

なんで?

 

ただ、それだけだった。

 

花丸「なんだろ…流れに任せちゃったというか…とにかく伝えたかった、というか…」

 

善子「…それで見事に玉砕した、ってわけね。」

 

花丸「…うん。」

 

理亜「…兄さん、なんて言ったの?」

 

花丸「ただ、ありがとう、花丸ちゃん。って…でも、最後にその想いには応えられないからって…」

 

理亜「そう…」

 

ルビィ「…」

 

声をかけようにもなんて声をかければいいか分からない。

お兄ちゃんへの好意を持つライバルが1人減った。

競争相手が減り、有利な立場になった。

けれど、喜べない。

 

以前は自分が最後に振り向いてもらえれば、と思っていた。

競争相手が減ることは喜びだった。

けれど、今は、なんか違う。

 

かけがえのない友達が、最愛の人にフラれてしまう。

 

その事実があって、どちらに味方すればいいか分からなくて…

 

ルビィは何も声をかけられなかった。

 

花丸「でも、オラはすっきりしたずら。」

 

善子「…すっきり?」

 

花丸「うん…確かにフラれちゃったのは悔しいし、ショックだけど…それでもちゃんと想いを伝えて、ありがとうって言われたずら。」

 

花丸「だから、想いを伝えられて、良かったな、って思ったずら!」

 

ルビィ「っ!」

 

理亜「あんた、強いんだね。」

 

花丸「強くなんかないずら…だって、未だに優さんへの『好き』って気持ち、消えない…むしろ、まだ振り向いてもらえるって、現実を受け止めきれてない自分がいるずら。」

 

花丸「でも、受け止めなくてもいい、って…オラは、どうしようもなく優さんが大好きで、愛してるから。」

 

ルビィ「…すごい、ね。」

 

出たのは称賛の言葉。

でも、この言葉が聞こえてるかどうかなんて分からない。

それくらいの小さい声だったから。

きっと周りの人たちの声にかき消されたかもしれない。

でも、本当にすごいな、って思った。

 

だって、今の花丸ちゃんは、自分の保身ばかり考えていたルビィとは大違い。

 

臆病者のルビィとは全然違うから。

 

ルビィ「…」

 

いざ、そんな雰囲気になったとして、ルビィはお兄ちゃんに想いを伝えられるだろうか。

 

想いを伝えられたとしたら、

 

ルビィは妹なんかじゃない。

 

1人の女の子で、

 

恋する乙女で、

 

皆と同じように貴方が大好きな1人の女の子なんだって

 

 

…気付いてもらえるのかな。

 

もし、そうなら

 

ルビィ「花丸ちゃん。」

 

花丸「ルビィちゃん?どうしたの?」

 

ルビィ「ルビィも頑張るね。」

 

花丸「…うん?」

 

 

ルビィも伝えてみようかな、なんて。




いかがだったでしょうか?

告白する順番については何も考えていません。
投票数とかも特に気にしてません。
僕自身がこの子で行こう、と決めてやってます。
ご了承ください。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第80話 初手のJab

こんにちは、希望03です。

あくまでも布石

それではどうぞ。


~浦の星学院・昼休み・生徒会長室~

 

優馬「なんだろう…デジャヴかな…」

 

今、僕は早々に昼飯を済ませ、生徒会長室の前にいる。

なぜ、僕はここにいるのか。

その答えは単純だ。

なぜなら…

 

優馬「…失礼します。」

 

ダイヤ「…そんな畏まらなくても良いですのに」

 

優馬「ダイヤがそんなこと言うなんて、珍しいね…」

 

そう、僕はダイヤに呼ばれた。

呼ばれた理由は分からない。

ただ

 

『少し、相談に乗って欲しい事があるのですが…昼休みに生徒会長室に来ていただけませんか?』

 

と、今日の朝、電話で言われたのだ。

 

だから、どんな相談をされるのか、というのは分からない。

ラブライブのことかもしれないし、ダイヤの今後の将来についてかもしれない、もしかしたら…

 

優馬「…」

 

ダイヤ「優?」

 

優馬「あ、ごめん…考え事してた。」

 

ダイヤ「ふふ…私が相談して欲しいと言ったのに、優が考え込んでしまっていては相談しづらいですわよ?」

 

優馬「っ…面目ないよ…」

 

ダイヤ「そういうところ、可愛らしいですわね…本当に、愛らしいですわ…」

 

優馬「ダイヤ?何か言った?」

 

ダイヤ「いえ、何も言ってませんわ!それで…相談の件なのですが…」

 

少しダイヤが何言っていたのか、聞き取れなかったところがあったが本題である相談の件について話してくれることになった。

 

 

優馬「…つまり、ラブライブに向けての練習メニューが割に合っているか、ということ?」

 

ダイヤ「えぇ…本当に、今のままで良いのでしょうか…」

 

そう言うダイヤの顔は非常に不安に満ちていた。

それもそうだろう。

いくら以前のここ浦の星のスクールアイドルをしていた、とはいえラブライブの決勝という舞台は未知数の世界。

まして、決勝という名だけあって、レベルは地区予選とは桁違いになる。

それだけに不安ばかりになってしまう、と言ったところだ。

 

ダイヤ「…」

 

優馬「…メニュー自体は問題無い、と思う。」

 

それは確かだろう。

もし、問題があったとすれば真っ先に本格派スクールアイドルであるSaint Snowの2人からクレームが入っているはず。

 

『遊びじゃないんだけど?』

 

『こんなレベルで勝てると思っているのですか?』

 

優馬「って言いそうだしな…」

 

ダイヤ「誰を思い浮かべているんです?」

 

優馬「いや…もし問題があったならSaint Snowが黙ってないだろうな…って」

 

ダイヤ「…あぁ、確かに」

 

ダイヤ「それで…メニュー自体『は』、というのは他に問題点がある、ということですか?」

 

優馬「…問題点にあたるかは分からないけど、もしかしたらっていう懸念点、かな?」

 

ダイヤ「懸念、点?」

 

問題点ではない。

あくまでも懸念点。

今、僕が考えているものは別に今後、どうなるか分からない。

もしかしたら、人によっては発破をかけられるし、場合によっては沈む可能性、モチベーションを堕としてしまう可能性が有る。

 

ダイヤ「その、懸念点というのは?」

 

優馬「僕が3年生にとっての最後のライブで1人を選ぶ、という事。」

 

ダイヤ「…それがこれからのラブライブに向けての私たち、Aqoursの懸念点、というのですか?」

 

優馬「うん、そうだよ。」

 

恐らく、納得はしていない。

若干、怒気を孕んだ表情をしているのがその証拠だろう。

 

ダイヤ「すみません…詳しくお聞きしたいのですが…」

 

優馬「なぜ、懸念点になるのか、ってことだよね?」

 

ダイヤ「はい…」

 

優馬「僕のこのリミット付きの選択を彼女たちがどう考えているか、ということから起因する、かな」

 

ダイヤ「??」

 

優馬「昨日、マルちゃんと僕がバスに乗らずに残ったのは覚えているかな?」

 

ダイヤ「え、えぇ…」

 

ダイヤ(あの時は目を見開いてしまいましたが…やはりあれは花丸さんだったのですね…)

 

優馬「実はそのバスが内浦に向かった後、2人きりになって、マルちゃんに告白をされたんだ。」

 

ダイヤ「…は?」

 

優馬「…つまり、僕が選択する前に勝負をつけに行こうとする人がでた、ということ。」

 

ダイヤ「そ、その言い方はちょっとあれですが…ようはそういうことですわね…」

 

ダイヤ「で、ですが、それは果南さんも同じ、なのでは…?」

 

優馬「果南は少し違う。ただ想いを伝えただけであって、僕からの答えというのはあくまでも最後のライブ後で構わない、という趣旨だと思う…けれど、マルちゃんは」

 

ダイヤ「想いを伝えた上で、優からの答えを要求した、というわけですか…」

 

優馬「正k「それで優はなんて答えたんですか!?」ちょ、ちょっと落ち着いて…」

 

ダイヤ「っ…すみません、取り乱してしまいました。」

 

優馬「いやこちらこそごめんね…それで答えなんだけど、Noだよ。」

 

ダイヤ「No…ということは、フった、ということですか?」

 

優馬「…心苦しかったけど、そういうことになるね。」

 

ダイヤ「…そう、ですか」

 

ダイヤ(…今、私はホッとしている?)

 

優馬「…だから、もしマルちゃんのような人が今後出てきたとして、僕の答え次第ではもしかすると今後のラブライブのことを考えられずにモチベーションを落とし、それがダンスや歌、といった自らの能力に影響を与えてしまう可能性が出てくる…というのが懸念点だよ。」

 

ダイヤ「…なるほど、ですが、それはもう自分次第であり、自己責任、なのでは?」

 

優馬「…そうかもしれない。けれど、それでも彼女たちの輝きは失われていい物じゃない。」

 

優馬「それは、ダイヤも同じでしょ?」

 

ダイヤ「…」

 

優馬「だから「それはそれで良いと思いますわ。」…なるほど」

 

ダイヤ「告白、というのは男女ともに勇気を振り絞って、何とか気持ちを、想いを前面にぶつけることができる…」

 

ダイヤ「優が今、口にしようとしていること、恐らく今後は練習、業務連絡以外での私たちとの関わりを断とう、ということですわね?」

 

優馬「…」

 

ダイヤ「沈黙は肯定、と捉えますわ。今、行おうとしているその行動…それは以前、逃げていた貴方となんら変わっていませんわ…」

 

優馬「そう、か…」

 

ダイヤ「あれ程の覚悟、とても素晴らしいと思います…けれど、ああ言った以上は私たちからの告白も受け止める覚悟も持っていないといけないのではありませんか?」

 

優馬「…そうだけど、僕は皆の心のモチベーションを心配しt「甘く見ないでください!」っ!」

 

今の言葉、どこか僕の心に突き刺さる。

 

そうか、マルちゃんに言われたんだ。

 

僕は、心配をしている、と偽って、本当は彼女たちを…見下していたのか。

 

ダイヤ「私たちはそんなやわじゃありませんわ…フラれる覚悟くらい…とっくにできています…じゃないと、恋なんて…できないでしょう?」

 

優馬「…はは、そうだね。」

 

僕よりも立派だと思う。

というより、僕がちっぽけすぎるんだ。

いつも保身ばかり、自分が、他人が、傷つかないようにって。

だけど、彼女たちは違う。

ちゃんと、覚悟に覚悟を通して、僕と向き合おうとしている。

 

優馬「…なら、もう問題は無いよ。ダイヤのしたい通りに、ダイヤの思う通りにしたら…きっと上手くいく。僕が保証する。」

 

ダイヤ「そうですわね…私たちが上手くいくようにサポートする責任、そして…私たちを惚れさせた責任、ちゃんととってくださらないと困りますわ。」

 

 

そうして、彼女の相談は幕を閉じた。

 

 

~昼休み・2年・千歌side~

 

千歌「優くん、どこ行っちゃったんだろ?」

 

曜「…」

 

梨子「そうね…なんだか深刻そうな顔だったけど…」

 

いつもの昼休み、というわけではなかった。

一緒に食べてた優くんがいつにも増して急いで食べて、早々に教室を出てしまったから。

やっぱり優くんがそばにいないと寂しいなぁ…なんて思いつつも志満姉が作ってくれた弁当を頬張る。

うん、美味しい。

 

曜「それよりさ!もうすぐラブライブ決勝だね!」

 

千歌「え、あ、うん!」

 

梨子「…」

 

最近、曜ちゃんの様子がおかしい。

とは言え、それは微々たるものなんだけど…

以前だったら優くんの話題に食いついていたのに、最近は避けてるように感じる。

 

今のだってそう。

わざと話題を逸らしたかのように。

まぁ、でも大したことじゃないだろう。

きっと些細な事で喧嘩しただけ…

 

曜「なんか…緊張するよね~…」

 

千歌「でも…私たちの全力を出すだけだから!頑張ろうね!」

 

梨子「…うん。ここまで支えてくれた人…優君のためにも優勝しなきゃ、ね?曜ちゃん。」

 

曜「っ!そ、そうだね!優勝…優のために…」

 

千歌「?」

 

梨子「…」

 

曜ちゃんの顔はまるで後悔しているようで思い詰めた表情をしていた。

 

余程の喧嘩だったのだろうか?

 

千歌(喧嘩…本当に喧嘩、だよね?)

 

 

 

この時の私は知らなかった。

 

まるで蚊帳の外。

 

リーダーなのに、皆の事、気遣わなきゃならないのに。

 

なのに…私は…

 

何も知らなかったんだ。




いかがだったでしょうか?

一人の少女の告白が歯車を狂わしてしまう。
なんか、素敵じゃないですか。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第81話 『妹』がいたなら、もしかしたら

こんばんは、希望03です。

先に言っておきます。
ルビィ回です。

それではどうぞ。


優馬「責任、か…」

 

あの後、僕は生徒会長室をすぐに出た。

次の授業の予鈴も鳴ったし、相談は終わったから。

しかし、最後にダイヤが言った言葉。

 

『私たちを惚れさせた責任…とってくださいね』

 

優馬「…」

 

覚悟は持った。

自分が結論を出さなきゃいけないということも理解した。

しかし、彼女たちにどう責任を取ればいいのか、そこが問題だった。

 

実際、マルちゃんに対しては正面からきちんと自分の想いを伝えた。

しかし、それで本当に良かったのだろうか。

悲しませてしまったのは事実ではある。

 

優馬「良かった、と思うしかないだろうな。こればっかりは…」

 

 

~放課後・廊下・梨子side~

 

千歌「…~でね、~。~!!」

 

曜「そっか、なら…~!それで!~…」

 

梨子「…」

 

優馬「…」

 

何も変わらない。いつも通りの日常。

唯一変わっているとすれば、優君と曜ちゃんの関係が少し…ぎこちなくなった、という点だろう。

 

梨子「…ね、優君?」

 

優馬「…?梨子?」

 

梨子「…やっぱり何かあったんだよね?曜ちゃんと」

 

優馬「…」

 

梨子「教えてくれないことって…その関係の事?」

 

優馬「さぁ、ね。」

 

梨子「…意地悪な優君。でも、私はいつでも優君の味方だから、ね?」

 

優馬「…ありがとう、梨子。」

 

そんなちょっとした会話。

でも、小声で聞こえないように、ってだけでなんだかバレてはいけないような秘密を共有しているみたいでドキドキしてしまう。

 

願わくば、このドキドキも共有出来たらいいな、なんて。

 

ルビィ「お兄ちゃん!」

 

すると、後ろからルビィちゃんが現れた。

ルビィちゃんらしくない大きな声を出して優君を呼んだと思えば

 

ルビィ「ちょ、ちょっとこっちに!」

 

優馬「え、えぇ?」

 

梨子「ちょ、ちょっとルビィちゃん!?」

 

ルビィ「ごめんなさい!ちょっとお兄ちゃん借ります!」

 

優君の腕を掴み、連れ去ってしまったのだ。

 

梨子「…なんだったの?」

 

千歌「なんか急いでるみたいだったね?」

 

曜「…いいよ、私たちは部室向かわないと…もうライブまで近づいてきて、メニューも忙しくなるだろうし…」

 

千歌「あ、うん!曜ちゃん、待ってよー!」

 

梨子「…」

 

嘘つき。

なんだか馬鹿みたい。

優君が連れ去られた時、一番、悔しそうな顔してたの曜ちゃんだったのに。

意固地になって…

 

そうして、私たちは特に気にすることも無く、部室へと急いだ。

 

 

~放課後・廊下~

 

僕は今、ルビィちゃんに連れられて部室とは真反対の方向へと歩いている。

結構歩いただろうか、気付けばあまり人通りが少ない古い校舎あるあるのいわゆる旧校舎の方までやってきた。

 

ふと、窓の方を見やると

 

ルビィ「…綺麗だよね、ここ。」

 

ここまで無言だったルビィちゃんから声が出た。

そう、窓の外には中庭に立てられている一本の木が夕日で照らされているのだ。

 

ルビィ「実はね、ルビィのお気に入りなんだこの場所。」

 

優馬「そうなんだ…こんなところがあるなんて知らなかったよ。」

 

ルビィ「ふふ、お兄ちゃんの方がこの学校、長いのにね。」

 

優馬「そうなんだけど、ここは来たこと無くて…」

 

ルビィ「…入学してから数日で初めて知ったの。学校で迷っちゃって。」

 

ルビィ「初めてこの景色を見てからたまに辛いときはここに来てたんだ。」

 

ルビィ「綺麗な景色でなんだか、嫌な事も忘れていくみたいで…」

 

優馬「…そうだったんだ。」

 

確かにこの景色を見てるとなんだか今までの嫌なことがちっぽけな事のように感じてしまう。

それくらいにこの景色が綺麗で魅了的で、大きなものだった。

 

ルビィ「…ねぇ、お兄ちゃん。」

 

優馬「ん?どうしたの?」

 

ルビィ「昔の事、覚えてる?」

 

優馬「…昔のルビィちゃんの事は覚えてるよ。」

 

ルビィちゃんは黒澤家の次女でダイヤの妹。

昔からダイヤと親交があった僕は勿論、ルビィちゃんの事もしっかりと覚えている。

昔から可愛げのある女の子で、人懐っこく、まるで妹ができたみたいだった。

 

ルビィ「…そっか、できるなら覚えていて欲しくなかったんだけどな。」

 

優馬「え?」

 

ルビィ「だって、お兄ちゃん…ううん、優さんはルビィの事、妹みたいだ、って思ってるでしょ?」

 

優馬「それは…だって、ダイヤの妹で昔から僕のこともお兄ちゃんって…」

 

ルビィ「…確かに覚えていてくれて嬉しかった。昔みたいに呼べて、嬉しかった。けどね、また昔みたいに戻ってきてるってことは、ルビィに対して『恋愛感情』は湧かないってことじゃないの?」

 

優馬「そんなこと、ないよ…!僕は平等に…」

 

ルビィ「ううん、そう思っていても無意識は違う。あくまでもルビィは妹みたいな存在だって、認めてしまっているんだよ?」

 

優馬「…それは」

 

ルビィ「ルビィは優さんが好き、大好き、愛してるの。千歌ちゃんや曜ちゃん、鞠莉ちゃんや果南ちゃんみたいなAqoursの皆、理亜ちゃんと聖良さんのSaint Snowの2人よりも…もちろん、お姉ちゃんよりも。」

 

優馬「…」

 

ルビィ「やっぱり驚かないってことは、気付いていたんだね。」

 

優馬「…まぁ、少しだけ、ね。」

 

ルビィ「でも、動揺しないってことはやっぱりルビィの事、妹みたい、としか思えないんだね。」

 

優馬「そんなこと「そうなんだよ。」…」

 

ルビィ「優さんがそうしたくない、そう認めたくないって思ってもそう見えちゃってるんだよ。」

 

ルビィ「…いい加減、認めてよ。『妹みたい、としか見てなかった。』って、ね。」

 

優馬「それは」

 

ルビィ「ルビィ、これでも強くなったよ?色んな事があって、すごく身体も心も強くなったの。だから」

 

ルビィ「…どんな答えでも受け止められるよ?」

 

優馬「…」

 

あぁ、苦しい。

だって、そう言ってるくせにルビィちゃんの眼からは涙が零れ落ちてしまっているじゃないか。

…でも、本当に

 

優馬「強くなったなぁ…」

 

ルビィ「え?」

 

優馬「昔のルビィちゃんはよく泣いてたし、入学してからも少し泣いてたでしょ?不安で」

 

ルビィ「う…」

 

優馬「…でも、本当、強くなったよ。しっかり自分の意志を、想いを伝えられて、どんな答えでも受け止めようとして。」

 

ルビィ「優さん…」

 

優馬「ごめん、どうしても兄目線で見ちゃうね…」

 

ルビィ「…」

 

優馬「どうやら僕は、やっぱりルビィちゃんは僕にとって『妹』なんだ。」

 

ルビィ「…そっか、それが答えなんだね。」

 

優馬「…ごめんね。」

 

ルビィ「ううん、分かってたことだもん。でも、『妹』ってことは彼女の次に近い、みたいなところあるもんね!」

 

優馬「…うん、そうかもね。」

 

ルビィ「なら、これからは『妹』として甘えちゃおう!」

 

優馬「バッチこいだよ。」

 

ルビィ「ふふ」

 

優馬「はは」

 

 

「「あはははは!」」

 

 

こうして、僕はまた1人、女の子からの告白を受け、それを断ったのだった。

 

 

 

ダイヤ「…ルビィ」




いかがだったでしょうか?

残り9人、そして日数も残り10日弱かもしくは9日くらいだと記憶しています。

誰が優馬を射止めるのか、そして優馬は誰を選択するのか。

あるいは。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第82話 息抜きでもしようか

こんばんは、希望03です。

試合前は練習量を落としていました。
息抜きというのはあれですけど。

それではどうぞ。


~放課後・廊下~

 

ルビィ「…それじゃ、戻ろ?」

 

優馬「…うん、ありがとう。」

 

ルビィ「?ルビィ、お礼されることなんて…」

 

優馬「僕のこと、好きでいてくれた…それだけで十分理由になるよ。」

 

ルビィ「…それは、違うかなぁ」

 

優馬「え?」

 

ルビィ「まだ、終わらせるつもりはないよ?」

 

優馬「…?」

 

ルビィ「ルビィは多分、この先もお兄ちゃ…ううん、優さんの事が好きなんだ。」

 

優馬「っ…でも、それは…」

 

ルビィ「辛い…けど、もうどうしようもないの。」

 

そうして、ルビィちゃんは笑った。

その笑顔は夕日に照らされて、とても…

 

ルビィ「それに…花丸ちゃんも諦めない、って!」

 

優馬「え?」

 

ルビィ「フラれちゃったのは確かにショックだけど、それでも好きで、大好きでどうしようもないから…って。」

 

優馬「…」

 

僕は知らなかった。

もうあの件はあれで終わりだと思っていた。

きっとショック受けて、立ち直れるかどうか。

そればかり心配だった。

 

でも、やっぱりダイヤの言う通りだったのかもしれない。

 

この子達は、強い。

僕が思っていたよりもずっと。

 

それは身体的にも精神的にももちろんだけど、それ以上に

 

想いが。

 

ルビィ「花丸ちゃんの想い、それはルビィも同じ。」

 

優馬「っ…」

 

ルビィ「ルビィにとっては最初で最後の初恋、だから。やっぱりこの想いは特別なんだ。」

 

ルビィ「だから、お願い。」

 

優馬「…なんだい?」

 

ルビィ「もし、優さんが1人を選んでも…貴方に恋した10人がいたこと、忘れないで?」

 

優馬「…もちろんだよ。まさかそれをルビィちゃんに言われるなんてね。」

 

ルビィ「ふふ、ルビィだって成長してるんだよ!」

 

そうして、ルビィちゃんは胸を張った。

…しかし、その胸はどちらかというと未発達に近かった。

 

ルビィ「…今、さりげなく悪口言った?」

 

優馬「言ってません。それよりそろそろ部室に向かわないと。」

 

ルビィ「あ…そうだね!なんてお姉ちゃんに言おう…」

 

優馬「ちょっと話してたら長くなっちゃったでいける。僕が説明するのは面倒だからルビィちゃん、よろしくね。」

 

ルビィ「えぇ!?そこはお兄ちゃんらしく言ってくれないの!?」

 

優馬「…それはそれ、これはこれ、かな。」

 

 

そうして、僕たちは時間が無いことに気付き、足早に去ったのだった。

 

 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

優馬・ルビィ「「お、遅くなりました~!」」

 

鞠莉「もうっ!遅いわよっ!」

 

果南「…まぁまぁ、良いじゃん。時間的には間に合ってるんだから。」

 

聖良「そうですね、時間は間に合ってますからね。」

 

千歌「おかえり~…って違うか!」

 

梨子「うーん…私たちは廊下で会ってるからなぁ…合ってるかも?」

 

曜「…」

 

花丸「…何してたずらね?」

 

善子「…さぁ?」

 

理亜「何となく察せるけど…」

 

と言ったような感じで皆はあまり怒っていないようだった。

しかし、肝心なのは最後の1人だ。

 

ダイヤ「…」

 

ルビィ「お、お姉ちゃん…」

 

ダイヤ「別に怒っていませんわ。時間は間に合っていますから、気にしないでください。ルビィ。」

 

なんと、許してくれた。

それもあっさり。

 

優馬「聞かないの?事情とか…」

 

ダイヤ「…みだりに他人のプライバシーには干渉したらいけませんから聞きませんわ。それに珍しい組み合わせ…何か大切なお話だったのでしょう?」

 

優馬「…そうだね、大切な話だったよ。」

 

ダイヤ「それだけで十分ですわ。」

 

そう言ってダイヤは皆に今日の昼休みに話した内容を共有するために話し始めた。

いつもだったらもっと怒っていた、というか心配するというか、そんな感じだったのだが今回ばかりは本当にあっさりと終わってしまった。

 

確かに時間には間に合った(しかし、集合時間の5秒前)から咎められる所は無いのだが、几帳面のダイヤの事だから5分前行動は基本だ、と言われると思って、覚悟していたのだが…

 

優馬「…まぁ、ルビィちゃんと一緒だったからか。」

 

最愛の妹と一緒だったから、ということもあったのだろう。

そう思うようにした。

 

ダイヤ「…っ」

 

曜「…」

 

 

~沼津・練習スタジオ~

 

ラブライブ決勝まで残り10日。

実感は湧かないがそれでも近づいてくる事実。

今日もこうして、沼津まで来て練習を行う。

 

優馬「…」

 

見ていると本当に心配するところはない、というかむしろ燃えている。

キレが上がり、素人の僕から見ているとすでに完璧ではないか、と思えてしまうくらいの完成度だった。

 

聖良「…ちょっと危ないですね。」

 

優馬「え?」

 

何が危ないのだろうか。

素人目には分からなかった。

 

聖良「確かにキレもあって、歌も精度を上げてる…ですが、決勝ということを意識しすぎて、『楽しく』踊ったり、歌ったりというのを忘れているように見えるんです。」

 

優馬「…なるほど」

 

言われて観てみれば確かに笑顔が無かった。

とにかく精度を上げる。

それだけを意識しているようでまるでロボットのようだった。

 

聖良「今の彼女たちにはもしかしたら練習よりも息抜き、が必要なのかもしれませんね。」

 

優馬「息抜き…か。時間無いのに良いのかな。」

 

聖良「むしろ時間が無いからだと思います。」

 

なるほど、確かにスポーツ選手の中で試合前はあえて練習をし過ぎないようにして、選手の疲労を溜め込まないようにして、試合にピーキングを合わす…

ということを聞いた事がある。

 

聖良「ということで、優君。」

 

優馬「?」

 

聖良「明日、私とデートしましょう!」

 

優馬「…え?」

 

…何を言っているんだろう。この人。

と申し訳ないが思ってしまった。

 

理亜「…姉さま、何言っているの?」

 

優馬「り、理亜…」

 

聖良「息抜きするにはまず見本が必要かと思ったのですが…優君は嫌ですか?」

 

優馬「い、やじゃないけど…」

 

理亜「兄さん!!」

 

聖良「ふふっ、じゃあ決まりですね♪」

 

そう言って、聖良はとりあえず一段落したAqoursの皆へタオルとドリンクを渡しに行ってしまった。

 

理亜「…兄さんの馬鹿っ!」

 

優馬「えぇ…」

 

そう言い放って、理亜も聖良の後を追うように皆の下に行ってしまった。

 

しかし、あれはしょうがないと思う。

美少女に迫られて断る方が難しい。

 

ダイヤ「お話は聞きましたわ。」

 

優馬「うぇ…ダイヤ…」

 

ダイヤ「…何をそんな…嫌な顔することなんてあります?」

 

優馬「…いや、なんでもないよ。それで話って言うのは…聖良から聞いたの?」

 

ダイヤ「えぇ…少し、笑顔が足りない。だからこそ今はあえて練習量を落とし、不安な部分は個人で自主練習…余った時間は息抜きに使う、と。」

 

優馬「…それで合ってるけど、ダイヤはそれをどう思った?」

 

ダイヤ「良いと思いますわ。」

 

あっさりとダイヤは言い切った。

少し驚いてしまった。

 

ダイヤ「ですが、まさか聖良さんが明日さっそく、優とデートするなんて…聞いてませんわ。」

 

そりゃそうだ。

さっき決まったばかりだもの。

というか、なんで聖良はすぐに言っちゃうのかな。

 

…まさか嬉しすぎて皆に言いふらしたのか?

だとしたら、ポンコツにもほどがある。

 

優馬「それは…許して…もうあれはどうしようもなかったんだ…」

 

ダイヤ「…まぁ、気にしていませんわ。ただ、変な事はしないように!」

 

良いですわね!?

 

そう言って、ダイヤは戻っていった。

 

優馬「明日から僕の負担が大きいような…」

 

心理的にも身体的にも負担がかかる。

皆は出かけることで息抜きになるのかもしれないが、僕の息抜きは家でぬくぬくと過ごすこと。

 

優馬「大変だ…明日から…」

 

 

そうして、明日から始まる何かに思いを馳せていた。




いかがだったでしょうか?

次回から最後の想いをそれぞれが言っていきます。
お楽しみに。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第83話 一生消えない傷痕を君に

こんばんは、希望03です。

傷は修復できても痕は残る

それではどうぞ。


~内浦・優馬家・優馬の部屋~

 

優馬「…面倒だな」

 

なぜ僕が懐かしくこう、呟いたか。

それは今日の練習時から聖良に言われたこと。

 

『今の彼女たちにはもしかしたら練習よりも息抜き、が必要なのかもしれませんね。』

 

『ということで、優君。明日、私とデートしましょう!』

 

息抜きが必要までは理解はできた。

彼女たちのピークをライブに持っていくために必要な処置であるということ。

 

しかし、なぜ聖良?

 

いや、別に嫌なわけではない。

 

むしろ、聖良は綺麗で、気が遣えて、優しいし、たまに見せるポンコツさがギャップあって可愛くて、僕にはもったいないくらいの人だ。

 

だが、僕にも息抜きの時間が欲しい、というのは我儘だろうか。

 

優馬「まぁ…僕の覚悟はついてるしな…」

 

このままだと彼女たちと1人1人、デートすることになるのはやむを得ないだろう。(今までの事情を鑑みて)

 

そしたらまた新たな問題ができる。

 

優馬「そうなったら、マルちゃんやルビィちゃんは…」

 

そう、僕がフッた彼女たち。

彼女たちはフラれた相手とデートする、となるだろうか?

 

優馬「それは…2人に聞いてみるか…」

 

我ながらなんて烏滸がましい悩みだ。

 

改めて言うが、これは僕がモテていると自負しているからとかナルシスト発言を自発的にしているわけではない。

 

あくまでも今までの事象、事情、様々な事件を踏まえた上での悩みだ。

決して、僕は世のモテない男たちを馬鹿にしているわけではない。

むしろ、僕も本来はそちら側の人間だ。

 

優馬「これを周りの男たちに言っても信じてくれないだろうなぁ…」

 

すると、SNSの着信が鳴った。

誰だろうと見てみると相手は

 

“松浦 果南”

 

《大好きだよ》

 

のみ。

 

優馬「…」

 

こういうことだ。

僕は別にモテていると錯覚しているわけではない。

しかし、こうもアプローチがあからさまになると、照れる。

 

来たなら返さねばならない。

そうして、僕はかっこよく、紳士的に返事を返す。

 

《ありがとう》

 

…かっこよさとはなんだろう。

 

優馬「はぁ…どうすんだ、もう…」

 

結局頭の中は明日からの事ばかり。

 

なんでもいいから早く時が過ぎて欲しい。

 

そう思い、僕はスマホを閉じ、目も閉じた。

 

 

~内浦・優馬家・玄関前~

 

優馬「ふあぁ…」

 

あれから僕は寝ようとしたんだけど、なぜか携帯が鳴り響いた。

誰かと思えば、果南。

 

やっぱりちゃんと私の声で言った方が良いな、っていうことで電話をしたらしく、結局、僕は夜通し、果南からのラブコールを受けた。

おかげさまであまり寝てない。

 

そんな調子だがちゃんと制服に着替え、学校に赴こうではないか、と意気込み、外に出たのだ。

偉い。

 

聖良「おはようございます♪」

 

優馬「うんっ!?」

 

突如聞こえた挨拶。

明らかにこちらに向かって言っている挨拶。

それが小学生や近所のおばちゃんとかなら微笑ましい。

しかし、その声は聴きなれた声。

 

そう、目の前には聖良がいた。

 

聖良「そんなに驚くこと無いじゃないですか。」

 

優馬「いや、驚くよ。なんでいるの?」

 

聖良「来ちゃいました。」

 

優馬「…」

 

聖良「さ、行きましょう?今日は一日、暇な時間はデートしますから!」

 

優馬「マジ?」

 

そんな地獄のような発言をされて、意気消沈になったが聖良に引っ張られ、なんとか学校へ向かった。

 

 

~浦の星学院・玄関~

 

聖良「今日、昼休みにまた教室行きますね。」

 

優馬「え。」

 

聖良「…一緒にお昼、食べませんか?」

 

そんな上目遣いで言わないで欲しい。

そういうのに弱いんだから。

 

すると、見慣れた髪型した女の子が僕の目線の先からやってきた。

 

曜「っ!」

 

優馬「あ…」

 

曜「…おはよう、優」

 

優馬「あ、うん…おはよう…」

 

聖良「…」

 

曜「聖良さんもおはようございます。」

 

聖良「おはようございます…」

 

そんな他愛もない挨拶だった。

しかし、どう見ても普段通りの彼女ではなく、元気が無かった。

 

優馬「…曜、元気ないな」

 

聖良「優君。」

 

優馬「?」

 

聖良「今は私だけに目を向けて欲しいです…」

 

優馬「…そうだね、ごめん。」

 

聖良「それで、昼食…一緒に食べても?」

 

優馬「分かった。教室で待ってるよ、それともそっち向かう?」

 

聖良「いえ、私が向かいますね…それじゃあ」

 

そう言って、聖良は教室へと向かってしまった。

悪いことをしたのは自覚している。

もう何度も同じ過ちを繰り返しているから。

こういうところなんだ。

 

優馬「最低だよ、僕は。」

 

 

~浦の星学院・昼休み・2年教室~

 

千歌「優くんっ!ご飯、食べよぉ!」

 

優馬「え、いや、今日は」

 

千歌「ん?何か用事?」

 

優馬「用事というか…」

 

曜「優、今日はちょっと予定有るんだよね?」

 

優馬「え?」

 

千歌「そうなの?」

 

なんで曜が知っているのか、多分、今日の朝の会話を聞いていたからなんだろうけど…

 

優馬「あ、あー…そうそう。予定がね…」

 

千歌「んー、そっかー…残念。」

 

優馬「ごめん、また埋め合わせはするから。」

 

千歌「っ!埋め合わせ…///うんっ!楽しみにしてるねっ!///」

 

梨子「…」

 

曜「…」

 

そうして、僕はなるべくバレないように、かつうまく聖良と鉢合わせするように教室を出た。

 

千歌「えへへ…///優くん、何してくれるんだろ…///」

 

梨子「ねぇ、曜ちゃん。」

 

曜「ん?どうしたの、梨子ちゃん?」

 

梨子「なんで優君が用事あるって知ってたの?」

 

曜「朝会った時にそんなこと言ってたからかな!たまたま聞いただけだよー。」

 

梨子「…そう。」

 

 

~浦の星学院・廊下~

 

聖良「…あれ?優君?」

 

優馬「あ、良かった…」

 

聖良「そんなこっちまで来なくても私が行くって…」

 

優馬「ちょっと…待ちきれなくてね…」

 

聖良「っ!?///」

 

なんだか爆発音みたいな効果音が流れたような気がするけど、流石にそんな近くで爆発なんて…ないだろ。

 

聖良「…///」

 

優馬「聖良?」

 

聖良「優君は少し女性の扱い方に慣れ過ぎてるのかもしれませんよ…///」

 

優馬「どういうこと?」

 

聖良「良いから!///行きますよ!///」

 

 

~浦の星学院・空き教室~

 

聖良「はぁ…ちょっと寒いですね…」

 

優馬「そうだね…でも、なんでここ?」

 

聖良「えー…人気が無いからです…」

 

優馬「…要は2人きりになりたかった、と。」

 

聖良「なんでちょっと察しが良いんですか!?///」

 

そりゃ、こんなところに連れてこられたらそう想像してしまうのも無理ないだろう。

一般男子だったら期待しちゃうくらいだ。

しかも、そこ否定しとかないと自分から墓穴掘ってるからね。

 

優馬「…意外とポンコツなんだね」

 

聖良「…早く食べましょう。」

 

ちょっと拗ねてしまった。

 

聖良「…」

 

優馬「…」

 

聖良「あの…今日の放課後、デート、してくれますよね?」

 

優馬「まぁ、それで聖良の息抜きになるなら喜んで行くよ。」

 

聖良「…ふふ、良かった。」

 

…これだけの話で聖良の機嫌が元通りになった、とは分からないがそれでも笑ってくれたので今はそれでよしとしよう。

 

 

~放課後・スクールアイドル部部室~

 

優馬「…じゃあ息抜きということで」

 

聖良「私と優君は今日、いないのでよろしくお願いします。」

 

「「「「「「「「「「…」」」」」」」」」」

 

皆の顔を見るに恐らく全く、納得してない。

なぜ一番最初がお前なんだ、と言ったような表情である。

しかし、言わない。

提案してくれたのが聖良だから、その想いを無下には出来ないんだろう。

 

聖良「では、行ってきます♪」

 

「「「「「「「「「「行ってらっしゃい…」」」」」」」」」」

 

なんとまぁ元気のない見送り。

まぁ自分たちはこれから練習するというのにこんなことされたらたまったもんじゃないだろう…

 

優馬「…明日以降も空いてるから息抜きしたい人から順次、言ってね。」

 

「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」

 

曜「…」

 

千歌「ならちk「明日、私とデートしてくださいっ!」なぁ!?」

 

優馬「ダイヤ…」

 

ダイヤ「…///駄目ですか?///」

 

優馬「…駄目じゃないよ、分かった。」

 

ダイヤ「っ///」

 

聖良「…終わりましたか?」

 

優馬「あ、ごめん…」

 

聖良「いえ…でも、今日は私ですから…それは忘れないでくださいね?」

 

優馬「…はい。」

 

 

~内浦・海岸~

 

優馬「デート…だよね?」

 

聖良「?そうですよ?」

 

優馬「これじゃあ散歩じゃ…」

 

聖良「いいじゃないですか。結果、息抜きになればいいんです。」

 

優馬「なるほど…」

 

そうして僕たちは砂浜を歩いていた。

こんな寒いのに海辺を歩くってどうなんだろう、と思っていたけどどうやら聖良には息抜きになっているみたいだ。

 

優馬「綺麗だね、海。」

 

聖良「えぇ…まるで函館の海みたい…」

 

優馬「…やっぱり戻りたいって思う?」

 

聖良「そうですね、たまに。」

 

そりゃそうだ。

幾数十年、北海道のあの地で育ってきたのに、この残りの時期に親元を離れて、こっちに来るくらいだ。

ましてや年頃の女の子、帰りたくなるのも当然、と言ったところだろう。

だが、そういう決断をさせてしまったのは、僕のせい。

 

優馬「ごめん、今まで。」

 

聖良「?」

 

優馬「気づいてあげられなくて、ごめん。」

 

聖良「…そんなの今さらだよ。」

 

優馬「ごめん」

 

聖良「もう、今さら遅いよ。優君。」

 

聖良「ずっと耐えてきたんだよ。理亜も、私も。」

 

聖良「あの時、君を救ってあげられなかった後悔に、そしてもう私たちが助けなくても良いんだって気づいたあの時も…ずっと、耐えてきた。」

 

聖良「私は優君に謝って欲しくない。でも、私たちを苦しめていた分、同じだけもう一度、優君には苦しんでほしい、って思ってる。」

 

優馬「…恨んでる?僕のこと。」

 

聖良「恨んでる、かな。けど、なんでなんだろうね。好きなんだよ。」

 

優馬「…」

 

聖良「どうせここまで来たなら付き合いたいし、Aqoursから優君を奪いたい。」

 

聖良「ねぇ、優君。」

 

優君「なに?」

 

聖良「好きです。」

 

優馬「…」

 

聖良「…優君が私だけへの後悔で苦しんでほしいくらい、傷跡として刻みつけられたいくらい、優君が大好き。」

 

優馬「…ごめん、なさい。」

 

聖良「そっか…そうなんですね。」

 

聖良「じゃあ、私をここまで苦しめたこと、一生苦しんで、後悔しますね。優君は。」

 

優馬「…そうだね。本当にそうだよ。」

 

聖良「じゃあ良かった。それだけでも報われた気がします。」

 

優馬「…」

 

聖良「じゃあ、帰りましょう。」

 

優馬「え…」

 

聖良「もしかして、もっと一緒に居たいんですか?」

 

優馬「いや、そういうことじゃなくて…」

 

聖良「もう私は満足しましたから、ね。」

 

そう言って、聖良は家の方向へ歩み出した。

僕はそれを、追うことができなかった。

なぜか、それは後悔と懺悔で足が震えていたからだ。

 

聖良「あ…そうでした。優君。」

 

優馬「…?」

 

 

聖良「私、こう見えても引きずるタイプなので!」

 

 

そう、聖良はとびっきりの笑顔で言い残し、ここを去って行ってしまった。




いかがだったでしょうか?

残り8人。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第84話 巡り合わせ

こんにちは、希望03です。

それぞれの思惑が交錯する瞬間

それではどうぞ。


第84話 巡り合わせ

 

~内浦・海岸~

 

優馬「…」

 

あれから聖良とは別れ、僕は帰路についていた。

 

今日、聖良から告白をされ、僕は振った。

振ったことに後悔はない。

けれど、どうしても考えてしまう。

 

果たして1人を選ぶことが正しい選択なのか

全員と付き合えたら、なんて。

 

優馬「はは…しょうもな…」

 

全員と付き合う、だなんて…

そんなことができていたらとっくにしている。

しかも、結局それは選んでないのと一緒。

 

そして、今、僕は応えなくちゃいけない、その理由がある。

 

優馬「…あれ?」

 

そんな考え事をしながら家まで帰っていた時だった。

 

曜「…」

 

優馬「曜…」

 

曜は気づいていないみたいだけど、練習終わりだろうか、曜がいたのだ。

しかし、なぜ曜が?

本来、沼津で練習した後、善子と曜はそのまま帰宅のはずだった。

それなのになぜか曜がいる。

 

優馬「あ、千歌か梨子か」

 

方角的には千歌の家、もしくは梨子の家のどちらか。

恐らくだがどちらかの家でお泊り会でもやるんだろう。

 

優馬「でも、僕も同じ方向なんだよな…」

 

そう、千歌か梨子の家に行く、となると必然的に僕の家も同じ方向。

本当はこういうやり方はしたくないが

 

優馬「バレないように帰ろう…」

 

なるべく距離を置きつつ、曜の後に続いて帰ることにした。

…ストーカーではない。

 

 

~内浦・優馬家・玄関前~

 

曜「…」

 

優馬「…」

 

とりあえず僕の家には着いたのだが、それは僕だけじゃない。

まさかだが千歌の家でもなければ、梨子の家でもない。

曜は今、僕の家の前にいた。

 

曜「…優」

 

すると、曜は僕の家のインターホンを押した。

 

もちろんだが、僕の家には僕だけしか住んでいない。

つまりはこのインターホンを押しても誰も出ないわけだ。

 

曜「…いないんだ。やっぱりまだデートしてるよね。」

 

何か言っているみたいだったけど、全然聴こえない。

すると、曜はこっちに踵を返し、歩き始めた。

 

優馬「やば…!」

 

僕は間一髪といったところでちょうどいい隠れ場所に隠れた。

もちろん、曜はそれに気づかずに去ってしまった。

 

優馬「一体、なんだったの…?」

 

 

~内浦・海沿い・曜side~

 

曜「そっか、そっかそっか。」

 

楽しくやれてるようで良かった。

私の助けなんて、いらないみたい。

色んな女の子に声かけれて、デートして、モテモテで。

 

曜「私はもう特別じゃないもんね。優と同じじゃ、ないもんね。」

 

理想で特別で心優しい優。

理想の仮面を被って、蓋をあければ別に特別でも何でもない、嘘つきな私。

 

 

曜「やっぱり、身を引いて正解だったな…」

 

 

~内浦・優馬家・優馬の部屋~

 

優馬「明日はダイヤか…」

 

今考えてみればダイヤと2人で遊びに行くとか、出かけるというのは幼少期以来、かもしれない。

 

優馬「やっぱり結構月日経ってたんだ。」

 

ダイヤのあの時の表情、察するに恐らくダイヤも覚悟を決めたんだろう。

 

優馬「ちゃんと、応えなくちゃ、ね…」

 

すると、電話の着信音が鳴った。

相手は恐らくまた果南だろう…そう思っていたが、全く違った。

 

優馬「善子?」

 

善子「…なによ。私じゃダメなの?」

 

優馬「いや、そういうわけじゃ…珍しかった、というか…」

 

善子「ちょっと聞きたいことが、ね…」

 

優馬「聞きたい事?」

 

善子「優馬、聖良に告白された?」

 

優馬「…あー、そう、だね。」

 

善子「反応から察するにされたのね。」

 

優馬「…された。それで振ったよ。」

 

善子「そう…ま、私はもうあんたが誰を選ぶのか、大体分かってるつもりだから予想通りって感じね。」

 

優馬「え?」

 

善子「だから、まぁ、私の事は気にしないで大丈夫だから。デートとかはしてみたいけど、あんただってそれどころじゃないかもだしね。」

 

優馬「…」

 

善子「なんで黙るのよ…まぁ、そういうことだから、ごめんなさい。急に電話をかけちゃって。」

 

それじゃあ。

 

そうして善子との通話は終わった。

善子は色々な所で察しが良い、特に僕が思い詰めているときとか、見透かしているかのように。

だから余計に善子に負担をかけてしまっているようで辛くなってしまう。

 

優馬「ごめん、善子…」

 

 

~沼津・津島家・善子の部屋・善子side~

 

善子「…私も曜と同じものね。」

 

一体私は何をしてるんだろう。

優馬が誰の事を好いているのか、強がって自分は何でもない素振りをして

そして今、私は後悔する。

 

やっぱり一緒にゲーセン行って遊びたかったな、とか

アニメショップに行ってお揃いのグッズとか買いたかったな、とか

本当に些細なもの。

それでも一つの思い出として残したかったはずなのに。

 

結局私は優馬の前では善い子のフリして、結局自分がフラれてしまうかもしれないという可能性から避けて、逃げてるただの臆病者。

 

善子「ずら丸もルビィも…なんで告白できたんだろ…」

 

本当にすごいと思う。

自分の想いを伝えるのだって難しいのに、それでもきちんと正面から向き合って、好きだ、ってことを伝えているんだ。

私には到底、真似なんてできっこない。

 

善子「好き…優馬…大好き…」

 

声に出す。

けれど、それは無情にも彼には届かない。

ただの音として空へ消える。

 

何の意味も無い、ただの言葉の一つにしか過ぎない。

 

善子「本当、馬鹿みたい…私…」

 

情けない私。

堕天使として仮面を被る私。

本当はただの弱虫だけど、見えないように、悟られないように。

 

でも、もう疲れちゃった。

 

 

~内浦・浦の星学院・生徒会長室・ダイヤside~

 

ダイヤ「…ふぅ」

 

ついに今日、優とのデートの日。

そして、私の想いをきちんとお伝えする、大切な日。

 

ダイヤ「黒澤家の女として…いえ、黒澤ダイヤとして…」

 

そうして、教室へ戻ろうとした時だった。

 

鞠莉「はぁ~い♪ちょ~っと待ってくれる?」

 

ダイヤ「鞠莉さん?」

 

そこには鞠莉さんが立っていた。

 

鞠莉「…言いたい事があるの。中、入っていいかしら。」

 

言いたい事?何か学校関係のものであったのだろうか?

いつにない真剣な表情だった鞠莉さんに私は思わず、たじろいでしまった。

 

ダイヤ「え、えぇ…まだ時間はありますから…」

 

鞠莉「ふふ、ありがと♪」

 

 

ダイヤ「それで、言いたい事というのは?」

 

鞠莉「…今日、優とデートね?」

 

ダイヤ「…そうですね。きちんと私の想いを伝えなくては「本当に伝えられるの?」…え?」

 

鞠莉「ねぇ、ダイヤ。悪く思わないでね?私たちはあの頃を忘れちゃいけない。そう誓ったはずよね?」

 

ダイヤ「…もう優は過去を払拭して、前を向いて走り出しています。私たちも過去にこだわらず同じ道を進むべきでは?」

 

鞠莉「それで罪から逃れられると思ってるの?」

 

ダイヤ「逃れられるとは思ってません!!そんなこと、私だって分かっています…けど、それでも…」

 

鞠莉「抑えきれないんでしょ…?」

 

ダイヤ「…失礼します。」

 

 

鞠莉「…ごめんね、ダイヤ。悪く、思わないでね?」

 

 

~浦の星学院・廊下~

 

ダイヤ「…分かっていますわ。私だって、ずっと」

 

罪の意識。あの時、救えなかった私たち。

逃げるように去ってしまった彼。

引き留められなかった私。

 

鞠莉さんが言いたかったのはあの時、寄り添う事すらできなかった私たちに果たして今さら一緒に居たいと言える権利が在るのか、ということ。

 

ダイヤ「じゃあ、彼への想いは…!私の気持ちは…!どこに渡せばいいのですか…!!」

 

 

優馬「…ダイヤ?」

 

ダイヤ「…っ!」

 

 

~理事長室・鞠莉side~

 

鞠莉「…さすがにまずいわ。」

 

花丸に、ルビィ…果てには聖良までもが告白に乗り出した。

フラれようとも告白というイベントにより、優の気持ちが揺らいでしまうのは事実。

 

鞠莉「最初にアプローチを掛けたのは私のはずなのに…本当、皆はすぐ真似するんだから。」

 

腹立たしい。

今までで一番印象に残っていたのは私のはずだった。

優も間違いなく私に心を許して、揺らいで、一番近い存在だと感じていたに違いなかったのに。

 

全てが覆されている。

そして、ダイヤまでもが私の邪魔をする。

 

鞠莉「もうこれ以上、邪魔はさせないんだから…」

 

優の一番は私、私じゃなきゃダメなの…!

 

 

 

~浦の星学院・保健室・ダイヤside~

 

ダイヤ「すみません。わざわざここまで…」

 

優馬「いや…だって、あまりにも顔色が悪かったから…」

 

ダイヤ「…もう、大丈夫ですわ。授業行かなくちゃなりませんから。」

 

優馬「駄目だよ。まだ顔色が治ってないじゃないか。ちゃんと休んだ方が…」

 

ダイヤ「大丈夫ですから…優は、気にしないでください…」

 

優馬「…分かった。今日のデート、楽しみにしてるね。」

 

ダイヤ「っ!」

 

今、楽しみにしてるって…?

 

ダイヤ「今…!」

 

優馬「今?」

 

ダイヤ「今、なんて…?」

 

優馬「分かったって…」

 

ダイヤ「その次ですわ!」

 

優馬「デート楽しみにしてるって…」

 

ダイヤ「…ふふっ///そうですわね…優がそこまで楽しみにしてるなら早く体調を戻さなくてはなりませんねっ!」

 

 

あの出来事は私たちにとって、絶対に忘れてはならない出来事。

そして、一生かけて償わなくてはならない罪。

でも、今、この瞬間、この時だけは忘れよう。

 

だって、もう二度と戻らないのだから。

 




いかがだったでしょうか?

遅くなってしまい申し訳ございませんでした。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第85話 平行線

こんばんは、希望です。
投稿遅れてしまって本当にすみませんでした。

一応これまでの流れの中でのポイントとなる部分を掲載しておきます。

・鞠莉
嫉妬による周りへの怒り、そして自らの遅れを感じ、焦りが出始めた鞠莉
→ダイヤデート当日に鞠莉が何かしら邪魔をする可能性

・ダイヤ
デートの最後に想いを伝えようと考えている段階だったが、鞠莉に言われたことが心残りに。
過去の罪に対する意識がある、しかし、過去に拘って動けないというのも違う、と考える。だからこその葛藤在り
→最終的に優馬に励まされ、気持ちは上向きに。罪は罪。しかし、このデートだけは一人の少女として、楽しみたい、という方向に。

・善子
いわゆる曜の下位互換状態。皆と同じように優馬のことが好きで好きでたまらない、けれど、自信が無いゆえに自分が選ばれるわけはない、と考えている。
「もう疲れちゃった」の部分で抱えている想いと自分自身の自己肯定感の低さがあり、若干鬱気味に。
もしかしたら今後、一騎打ちになるとしたら曜と善子になる可能性も?

・曜
正直一番面倒くさい女の子。
自分はもう一線引くとか言っておきながらしっかり優馬の家までストーキング。
とにかく優馬が大好き、もはや一緒に死にたいレベル。
ただ、自信が無いのもあってあまり積極的にはなれない。(というか、今までの行動から自分は絶対選ばれない、と思ってしまったから。)
でも、相棒、または親友ではいたいからどうしても気にかけてしまう。(むしろこの立場にいることで安心感を得ている可能性有)

・果南
今回の話には出ていないが果南も果南で優馬に対してのアプローチを少しづつかけている。
恐らく全員の前で私はゆうの事が大好き、愛してると伝えたのが優馬の中で心残りになっている。
本人も恐らくそれが狙い。印象を強くつけることによって自分の事を意識づけている。
罪の意識はもう無い。それよりはゆうと付き合いたいという一心。愛したいし、愛されたい。一番愛が重たい。

・優馬
またしても何も知らない優馬。
とりあえずダイヤとのデートでどう振ればいいか、ということを考えている。
ただその時点でダイヤの事は友達でいい、という段階。
しかし、魅力的な女性なのは確かだから揺らいでしまっているのもある。
いわゆる優柔不断な最低な男である。

それではどうぞ。



~浦の星学院・3年教室・昼休み~

 

果南「…遅い」

 

授業が始まるまであと5分。

にもかかわらず、鞠莉もいないし、ましてやあのダイヤすらいないのだ。

 

果南「もう授業始まるっていうのに…」

 

鞠莉はまぁ分からなくもない。

面白いことには首を突っ込むタイプだから授業以上に何か面白いことがあり、授業そっちのけでどっか行った可能性もある。

しかしだ。

しかし、ダイヤは違う。そんなことをするようなタイプではない。ましてやあの真面目なダイヤの事だ。

授業が始まる5分前どころか、10分前には席について授業の予習をするような“ド”が付くほどの真面目生徒会長なのだ。

なのに…

 

果南「いないということは何かあった…?」

 

もし、ダイヤの身に何かあったとするならすぐにでも助けに行きたい。

しかし、そうじゃなければ?

もしかしてゆうと…?

 

果南「今日はちょうどダイヤの日…まさかこの時間からもう?」

 

それはさすがに事を始めるのが早すぎるのでは?と思いつつ、自分がその立場だったら気持ちは分からなくもない。

けれど、何か悪寒がする。

 

果南「…まさかね。」

 

まさか、ダイヤを選ぶなんてこと…しないよね。

だって、ゆうは私のことが一番好き、のは、ず?

 

果南「…」

 

 

私は気づいたら教室の外へ飛び出していた。

 

 

~浦の星学院・保健室~

 

ダイヤ「ん…あれ、私…」

 

目をあけるとそこには白い天井。

寝起きだからか、記憶が朧げだが確か鞠莉さんに諭されたところで優に声をかけられて、保健室へ一緒に…

 

優馬「Zzz…Zzz…」

 

ダイヤ「っ…!///」

 

そうだった。

あれから優とデートしていいのか、自分の好意を伝えて良いのか、とぐちぐち悩んでいたところで優に楽しみにしてる、と言っていただけて…それで…

 

ダイヤ「…ふふ、可愛らしい寝顔ですわね」

 

今日のデートはもちろんだがこの甘いひと時もまた至福の時間だ。

だってまるで

 

ダイヤ「朝の夫婦のやり取り、みたいですわ…///」

 

こんな間近で優の寝顔を見ることは少ない。

だからこそ、この時間は誰にも邪魔は

 

「ふふ、み~つけた♪」

 

ダイヤ「え…?」

 

いつから入っていたのだろう。

聞き覚えがある声が聞こえたと思い、顔を上げたそこには

 

 

果南「ダイヤってばもう授業始まっちゃうのにこんな所で何してるのかな~?」

 

ダイヤ「…あなたこそ、何をしに来たのですか?」

 

果南「いやいや、いつまで経っても教室に来ない幼馴染を心配に思って探してたんだよ?」

 

ダイヤ「っ…心にも思ってないことを…!」

 

果南「思ってたよ…何か間違いでも犯さないか、ね。あ、でもそれはそれでバレた時にゆうに幻滅されて嫌われるから有りだったかもね。」

 

ダイヤ「…」

 

鞠莉さんといい、果南さんといい、こうまで邪魔してくるとは思わなかった。

優が一人を決めると言ったあの瞬間、お互いに邪魔をしないことを皆で決めたはずではなかったのだろうか。

なのに…この人たちは…

 

ダイヤ「…私自身を見てくれるのはやっぱり優だけ、ですわね。」

 

果南「…は?」

 

ダイヤ「いちいち邪魔してくる、というと愛される自信がない、ということでしょうか?」

 

果南「…邪魔?むしろダイヤの方が私の邪魔をしてるんだよ。むしろ!ゆうはきっと私が一番好きで「幻想は止めてもらえませんか?」…はぁ?」

 

ダイヤ「自分の愛が重たいだけであって、別段、優が貴方のことを好き、というわけではない、という事ですわ。まだ優は1人に決めていない…いや決めているかもしれませんがそれは間違っても貴方ではありません。」

 

果南「…へぇ、じゃあ自分だって言うの?」

 

ダイヤ「違いますわ…ただ貴方のような自己陶酔が激しく、かつ自分勝手な人には惚れない、と言っているんです。」

 

果南「…もういい、最後に私が勝てばいいだけの話だからね。」

 

そう言って果南さんは行ってしまった。

今まで大切な幼馴染、だと思っていたがもう違う。

 

優馬「…ん?あれ僕、寝てた?」

 

ダイヤ「…ふふ、おはようございます、優。」

 

優馬「あ、うん…って、もう授業始まって」

 

ダイヤ「そうですわ、もう行かないといけませんと」

 

優馬「うん…顔色も大分戻ったみたいだし、良かった。」

 

ダイヤ「それは…きっと優がそばにいてくれたおかげですわ。」

 

優馬「そんなことないよ…じゃあ今日楽しみにしてるから。」

 

 

ダイヤ「…えぇ、もちろん。」

 

~浦の星学院・2年教室~

 

時は遡り、昼休み。

 

千歌「あれ優くんは?」

 

梨子「え?あ…そう言えば…」

 

千歌「曜ちゃん何か知ってる?」

 

曜「…さぁ」

 

千歌「うーん、そっかー…」

 

梨子「…」

 

そっけない返事。

分からないとでも思っているのか、それとも無意識のままに返事をしてしまっているのか。

それは分からないけれど最近は元気がないのが目に見えて分かる。

 

千歌「…最近、優くん一緒にお昼食べれないよね」

 

梨子「え?」

 

曜「…」

 

千歌「だって聖良さんと理亜ちゃんがこの学校に転校してきて…一時的だけど私たちの部活に入部してくれて…すごく嬉しいけれど、それと同時に優くんが聖良さんや理亜ちゃん…果南ちゃんやダイヤさん、鞠莉ちゃんや善子ちゃん、花丸ちゃん、ルビィちゃんにばかりで…」

 

梨子「千歌ちゃん…」

 

曜「…そんなこと、無いと思うよ。」

 

千歌「なんでそう言い切れるの…?」

 

曜「だって、私からしたら優のことを皆が…」

 

“奪った”

 

曜「…ごめん、なんでもないよ。」

 

梨子「…」

 

千歌「…そっか。」

 

果たして曜ちゃんは何を言いかけていたのか。

なんでそんな悲しい顔をしていたのか。

私には分からなかった。

 

けれど、今日の昼食はなんだか味がしなかった。

 

 

~放課後・スクールアイドル部部室~

 

そうして迎えた今日の練習時刻。

いくら今日がダイヤさんの日だとしても他の人たちはいつも通り練習になる。

だから今日も今日とて自分の日を待ち遠しく思いつつ、部室に来たわけだったけどそこで見た光景はいつもと違う光景が広がっていた。

 

千歌「こんにちは~…ってあれ?」

 

梨子「?どうしたの千歌ちゃん?」

 

曜「…」

 

そこで見たのはガランとした部室。

未だ誰も来ていないようだったけど、カバンだけが残されていた。

 

千歌「まだ誰も来てないのかな?」

 

梨子「そう、みたいね…」

 

いやおかしい。

カバンが置いてあったのに私たちが一番最初、というわけがない。

 

曜「このカバンは?」

 

そうして曜ちゃんが指したカバン。

どこか見覚えがあったが結局誰のカバンか…

 

梨子(なんでこんな胸騒ぎが…)

 

 

~放課後・廊下~

 

ダイヤ「はっ…はっ…はっ…!」

 

なぜこうなるんだろう。

私はただ彼を愛していただけなのに。

なぜこうも私たちの愛を邪魔するのだろう。

 

ダイヤ「くっ…!優…!」

 

~回想~

 

~♪~♪~♪

 

ダイヤ「…?メール?」

 

今まであまり使ったことのなかったメールに着信があった。

不思議に思いそのメールを開いてみるとそこには

 

ダイヤ「っ!?」

 

眠らされている優と鞠莉さんが映っていたのだ。

 

ダイヤ「な、なぜ…今日は、私の…」

 

いやそれはただの口先で約束、ルールを明確にして紙に書きだしているとかそういうわけではない。

だから…

 

ダイヤ「鞠莉、さん…!!」

 

 

~放課後・理事長室~

 

ダイヤ「はっ…はっ…え…?」

 

果南「はぁ…はぁ…は…?」

 

ダイヤ「な、なぜここに…」

 

果南「…ダイヤと同じだと思うよ。ほら」

 

そうして果南さんは届いたメッセージの内容を見せてくれた。

その内容は全て私と同じ内容だった。

 

果南「これ…宣戦布告、だよね。」

 

ダイヤ「…えぇ、そうとしか…」

 

そう考えていた時だった。

 

 

優馬「…あれ?2人ともどうしたの?」

 

ダイヤ「え…?」

 

果南「ゆ、う…」

 

突然扉が開いたと思えば中からいつも通りの優が出てきたのだった。

 

優馬「なんで2人ともここにいるの?」

 

ダイヤ「それは…」

 

果南「なんでもないよ。ちょっと鞠莉と話がしたかったんだ。」

 

ダイヤ「果南さん!?」

 

優馬「あ、そうなんだ。鞠莉ならまだ中にいると思うから…となるとデートの時間はちょっとずれる、かな?」

 

ダイヤ「へ、い、いえ!すぐに終わらせますから待っていてください!」

 

優馬「了解…そしたら校門前で待ってるよ。」

 

そう言って彼は先へと行ってしまった。

 

果南「…あの様子だと何もされてなさそうだけど、どういうことなのかな、鞠莉。」

 

鞠莉「あら、ここにいたのバレてたのかしら?」

 

ダイヤ「っ…」

 

果南「そんなことより答えて。なんでゆうを眠らせて、ツーショットで私たちにだけ写真を送りつけてきたの?」

 

ダイヤ「…」

 

そうだ。なぜあのような写真を私たちに送ったのか。

そして、私の、日という日に限って…

 

鞠莉「ん~…いつまでも平和ボケしてる貴方たちにいつでも私が優の事、奪えるって教えておこうと思って♡」

 

ダイヤ「なっ…」

 

果南「…」

 

鞠莉「なんだか保健室の時とか、今日までの間の時間とか…色々な時を優と過ごして、自信過剰になったのか私が優の好きな人に選ばれるとか、勘違いしてそうだけど…」

 

鞠莉「その気になれば私が簡単に奪っちゃうぞ♡って」

 

果南「知らしめよう、って?」

 

鞠莉「せいっか~い♪大正解よ、果南♪」

 

ダイヤ「鞠莉さん…あなたという人は…」

 

鞠莉「なに?ずるいとでも?」

 

ダイヤ「…」

 

鞠莉「ずるいのはどっち?抜け抜け、こそこそと立ち回って、粘着質で…見ていてイライラしたわ。」

 

ダイヤ「それは…」

 

鞠莉「だ・か・ら♪ちゃんと懲らしめなきゃ…って♪」

 

果南「鞠莉…そっちがその気なら私も容赦しないから…」

 

鞠莉「OKよ、果南…♪」

 

ダイヤ「…」

 

 

 

鞠莉「ま、ダイヤは今日という日を精一杯楽しんできてね…奪われちゃう前の最後の、ふふ、あはははははは…!」




いかがだったでしょうか?
久しぶりに書いたのでちゃんと書けているかどうかは不安ですがこれからちょいちょい更新していこうと思うのでよろしくお願い致します。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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第86話 失恋

こんばんは、希望03です。
今回は割と早く投稿が出来ました。ありがとうございます。

・高海千歌
→一番純粋に優馬を愛している。しかし、最近は昼食を一緒に取れず、放課後も一緒に入れる時間が少なくなり、徐々に不安が募っていく。でも優馬が選んでくれるなら、とずっと待ち続けている。

・桜内梨子
→一番冷静に一番周りを見れている。その要因が“自分が選ばれるに決まっているから”だそう。そのため一番安全圏にいると思えばほんの些細な事で心が崩れてしまうくらい綱渡り状態。

それではどうぞ


~浦の星学院・校門前~

 

優馬「ふぅ…」

 

着実に一歩ずつ。

ちゃんと、終わりへと向かえているはずだ。

花丸ちゃん、ルビィちゃん、聖良…3人の女の子に好意を持たれたなんて昔の自分に言ったら卒倒するだろうな、なんて。

 

ダイヤ「優!」

 

優馬「お疲れ、ダイヤ。」

 

ダイヤ「お待たせいたしました…では行きましょう。」

 

優馬「ダイヤ…?」

 

珍しくあのダイヤが切羽詰まった表情をして先へと行ってしまった。

なんだか保健室で見た時の表情と比べてさらに青ざめていたように見えたのは気のせいだ、と思いたいのだが…

 

~浦の星学院・廊下~

 

鞠莉「…」

 

もう諦めたらいいのに。

だなんて、こればかりは止められない。

ダイヤだって私と同じ恋する乙女。ましてやあの堅物なダイヤが初めて恋をした男の子相手だ。

 

鞠莉「…あら?」

 

ふと校庭を眺めていると果南が先を急ぐように走っていくのが見えた。

 

鞠莉「そうまでして追いかけるなんて、まさにストーカーね。」

 

昔は仲が良かった幼馴染。

別段、今は仲が悪いというわけではない。実際にここまでスクールアイドルを一緒に続けてきて、本当にかけがえのない友達だと思っている。

 

しかし、優のことになるとそれは別。

考えてみて欲しい。友情か、愛か。

貴方がいざその選択肢を迫られた時、どちらを取るか。

私は、いえどんな女の子でも初恋の相手という自分にとって、大切で特別な相手。

そんな人と友情を天秤にかけた時、間違いなく私は愛を選ぶ。

 

鞠莉「まぁ…それは私だけじゃないんだけど…そうよね?果南、ダイヤ…」

 

またそれは果南とダイヤだけじゃない。

それだけの天秤を動かしてしまう優にも原因があるのだ。

ここまで私を焦らしてしまうのだから。

 

鞠莉「もういい加減、口を割って私の事が好きって言ってしまえばいいのに。」

 

貴方がこうやって皆に向き合おうとして最後に伝えようとするから皆が耐えかねて暴走してしまうのよ?

結局、貴方は何も変わらなかった。

でも、そんな貴方も愛してあげるわ。

だって、

 

鞠莉「私たちは相思相愛、そうよね?」

 

 

~内浦・歩道~

 

ダイヤ「…」

 

優馬「…」

 

沈みゆく日の光。

今日は学校そのものが終わる時間が遅かったこともあったのか、日が暮れるのも早く感じた。

そして静かな空間が流れる。

そんな中、どちらからともなく声が漏れたのだった。

 

ダイヤ「ごめんなさい、デートと言っておきながら…」

 

優馬「え、あぁ…いやそれはいいんだけど、それよりダイヤの事が心配というか…」

 

ダイヤ「心配…?あ…」

 

そうしてハッとした表情をした途端、ダイヤは顔を伏せてまた悲しそうな表情をした。

それを見て、僕は何もすることができなかった。

 

ダイヤ「優…私、もうどうしたら…」

 

優馬「え?どうするって「私は…貴方が、優の事が好き、愛していますわ」…ダイヤ。」

 

ダイヤ「もうお分かりかもしれませんが私は、昔から、貴方と知り合ったあの時から、ずっと、ずっと恋い慕っていました。」

 

ダイヤ「けれど…それは皆も同じ、果南さんも、鞠莉さんも…」

 

優馬「…」

 

今までの彼女たちの告白。

全て自分自身の想いを僕に全面的に伝えるような、いわゆる情熱的でまっすぐな告白だった。

けれど、ダイヤは違う。

何が違うのかは正直、感情の起伏にあまり詳しくない僕からしたら分からないが、それでも想いを伝えるというよりもこうするしかない、というような悲しみに暮れたような思いを感じたんだ。

 

優馬「ダイヤはなんでそんな悲しそうな顔をしてるの?」

 

ダイヤ「…」

 

優馬「鞠莉や果南との3人の関係性が崩れてしまうのが怖いから?」

 

ダイヤ「…違いますわ。」

 

優馬「鞠莉や果南に…焦らされているから?」

 

ダイヤ「違います。」

 

優馬「…じゃあ一体「もう既に答えは言いました。」…え?」

 

ダイヤ「好きだからです、愛しているからです。」

 

優馬「それはどういう…」

 

ダイヤ「優には分からないと思いますわ…ただ恋愛というのは全てが全て美しく、情熱的とはいかないということです。」

 

そう言ってダイヤはまた歩みを始めた。

僕は後を追ったがその後、何も話すことができなかった。

 

~内浦・黒澤家~

 

ダイヤ「もはやデートとかではありませんでしたね。」

 

優馬「そう、かもね…でもちょっとした息抜きにはなったんじゃないかな?」

 

ダイヤ「…それで本日の私の告白の答えを聞きたいのですが」

 

優馬「…」

 

正直、どう答えて良いか分からなかった。

結局のところ、僕はダイヤの事が好きだ。なんだかんだ一番そばにいてくれ、見守ってくれ、支え合って…

けれど、それはどちらかというと友愛で…けれどダイヤから改めて好意を伝えられるとどうしても揺らいでしまう。

 

だけど、やっぱり僕は…

 

ダイヤ「…その顔、もっと別な誰かの事、考えていますね。」

 

優馬「え…?」

 

ダイヤ「貴方が、優がそう他の誰かを思い浮かべた段階で私の勝負は決まったようなものです。」

 

優馬「っ、僕はっ…!「止めて!!」ダイヤ…」

 

ダイヤ「それ以上は、もう止めてください…」

 

優馬「…」

 

ダイヤ「優がどんな答えを出そうと、私はずっと、ずっと恋い慕っていますから。」

 

今までが、そうだったように…

 

そう言い残して、彼女は自らの家へと帰ってしまった。

 

 

果南「…ダイヤ」

 

~回想~

 

遡り、数時間前。

 

果南「はっ…はっ…!」

 

今日はダイヤのデートの日。

それは分かっている。邪魔をするのも良くないことも自身できちんと理解してる。

けれど、なんだか今はゆうに会いたくて、ぬくもりを感じたくて、好きだ、と言いたくてしょうがない。

 

果南「どこっ!ゆうは!どこにいるの!?」

 

そうやって内浦中を駆け回っていたら見つかったのだ。

 

果南「いた…!」

 

そこには深刻そうな顔して歩くダイヤとゆう。

もっと楽しそうにしているかと思えば、その逆。

今にも泣いてしまいそうなほどに哀し気な表情をするダイヤがそこにいたのだ。

 

果南「まさかもう終わり…?」

 

彼女たちが出てからまだ数時間しか経っていない。

にもかかわらず、ダイヤとゆうは既に佳境に近づいているように思えた。

 

ダイヤ「…~……~~。」

 

優馬「…!~…~~!」

 

声を聞くのには少し遠いのか、会話は全く聞き取れなかった。

しかし、なんだか揉めているような、そんな気がした。

 

その時だった。

 

唯一、聞こえたのだ。

 

“止めて!”

 

果南「っ!?」

 

ダイヤらしからぬ張り上げた声。

ふと顔を見てみると泣きそうになっていた。

 

それを見て私は…

 

~内浦・黒澤家~

 

果南「ダイヤ…」

 

“あぁ、これでダイヤの恋も終わったんだな”

 

そう思った。

普通の幼馴染であれば同じように悲しんで、励ますだろう。

 

けれど、私は違った。

 

果南「…ふふっ、あははっ!」

 

やっぱりフラれた。

あれだけ自分は好かれていると勘違いしていたからだ。

真に愛されているのは私なのだから!!

 

果南「はぁ…やっぱり走り回ってよかったなぁ…」

 

優馬「あれ?果南?」

 

果南「ひゃあっ!?///」

 

優馬「ご、ごめん、びっくりさせた?」

 

果南「…ううん、大丈夫だよ。」

 

優馬「そっか、なら良かったけど、どうしてここに?」

 

果南「あー…たまたま気分転換に内浦歩こっかな~って思ったら2人を見かけて、ね。」

 

優馬「そういうことか…じゃあさっきのやつも見てた?」

 

果南「さっきのやつ、っていうとダイヤとなんか揉めてた感じのやつ?」

 

優馬「…」

 

果南「なにか、あったの?」

 

優馬「僕はダイヤの想いを踏みにじったのかもしれない…」

 

果南「それって…」

 

優馬「果南には伝えたかもしれないけれど、僕はもう…」

 

果南「…気持ちは分かるよ。ダイヤがちょっと耐えきれなかっただけ…私はちゃんと分かっているから、ね。」

 

優馬「っ!///か、果南…///」

 

そう私は伝えて、そっとゆうに抱き着いた。

だって、今の私、笑みが堪えきれていなくって顔に出ちゃってるからさ。

こうでもしないとゆうに見られたら変な子だと思われちゃうし。

 

果南(ふふ…///ごめんね、ダイヤ…やっぱりゆうはダイヤを選ばなかったよ…?)

 

果南「ご、ごめん…///なんだかゆうが元気なさげだったから、いつものハグ…っていうやつ?///」

 

優馬「…はは、ありがとう。」

 

果南「っ///い、いいえ!///」

 

嬉しいけど、突然の微笑みはちょっと心に来るから控えていただきたいなぁ…///

 

優馬「じゃあ…僕は帰ろっかな。」

 

果南「え…?い、一緒に帰ろうよ。どうせすぐそこだよね?」

 

優馬「あー…ちょっと今日のダイヤの事とか色々考えたいからさ。」

 

果南「そ、それなら!「ごめん、大丈夫だよ。」そ、そっか…」

 

優馬「うん。果南も気を付けて。」

 

それじゃ、と言って彼は行ってしまった。

 

果南「そんな…付き合う前だからって遠慮してるのかな?」

 

もう好き同士だってことは分かってるんだから遠慮しなくていいのに

なんて、ゆうの都合もあるし仕方ないよね。

 

果南「あーあ、焦って損しちゃった。」

 

まぁでも良かった良かった。

ダイヤはあっけなく終わったし、もうゆうは決めているみたいな雰囲気だったし。

 

果南「それならもうあそこで言っても良かったんだけどなぁ。」

 

それもゆうに考えがあるんだろう。

そう思い、私はここに辿り着いた時とは裏腹に足取り軽やかに家路を辿った。

 

 

~内浦・優馬家~

 

優馬「ダイヤ…」

 

“貴方が、優がそう他の誰かを思い浮かべた段階で私の勝負は決まったようなものです。”

 

ダイヤにはお見通しだった、って言うわけか。

 

優馬「やっぱりダイヤだな…こういうところにもすぐ気が付いてくれるのは…」

 

~♪

 

すると、突然部屋のインターホンが鳴った。

もう時刻は夜の20時、一体誰だというんだ。

 

優馬「…はい。」

 

~優馬家・玄関~

 

梨子「優、君…」

 

優馬「え、梨子?」

 

梨子「優君…優君っ…!!」

 

気付けば僕は梨子に抱き締められていた。

一体何があったのか、なぜ梨子がここにいるのか、それで僕の頭はいっぱいだった。

 

優馬「ど、どうしたのさ…?///」

 

梨子「あ…ご、ごめんなさい!///」

 

優馬「い、いや…うん、それは大丈夫、だけど…///それよりもなんでここに?」

 

梨子「それは…」

 

~優馬家・優馬の部屋~

 

聞けば最近、千歌と曜の様子が変だということみたいだ。

千歌は僕が最近、一緒に昼食を取れない上、部活でも中々一緒に居られる時間が少ないからなんだか寂しがっているとなんとも子犬のような悩みだったが問題は曜だった。

 

優馬「自暴自棄?」

 

梨子「に見えるってだけ!なんだか心配で…」

 

優馬「そっか…でも、僕に対しては普通というかまぁたまにいつもよりもそっけないな、って思う時もあるけど?」

 

梨子「…ならいっか。」

 

優馬「え?」

 

梨子「うん、優君がそこまで気にしてないなら大丈夫。」

 

優馬「大丈夫って…梨子は心配だったんじゃ…」

 

梨子「うん、心配だよ。友達として。」

 

優馬「じゃあその切り替えの早さは一体なんだっていうんだ!」

 

梨子「きゅ、急に怒ってどうしたの?」

 

優馬「あ…い、いやごめん…」

 

梨子「うん、心配だけど私は優君が大丈夫なら大丈夫なの。」

 

優馬「え?」

 

梨子「だって、曜ちゃんの態度が急変して優君が傷ついていたらそれは曜ちゃんの態度に問題があるからちゃんと伝えなきゃ…って、でも優君はそこまで気にしては無いみたいだし」

 

優馬「そ、うか…」

 

気にしてない?

本当にか?気付いていたはずだ。曜の態度の急変には。

けれど、なぜこうも気づかなかった?

いや気付かなかったんじゃなく

 

“嫌われた”と思うのが嫌だった?

 

優馬「…」

 

梨子「優君?」

 

優馬「え、あ…ごめん、少しぼーっとしてた。」

 

梨子「そっか…無理は禁物だよ!何かあったら…私が必ず助けになるから…!」

 

そう言い残して梨子は帰って行った。

 

優馬「僕は気づいていたんだ。曜が僕のことを明らかに避けているということに。」

 

気付けば色々な所で僕は嫌われているんだ、と思う節が見つかった。

学校では業務連絡でしか会話が無くなり、僕との会話にも全く興味が無いように話し…

挙句は僕に笑顔を見せてくれなくなってしまった。笑わなくなってしまった。

 

優馬「そうなんだ…僕は、曜に…」

 

嫌われていたんだ。

 

その瞬間、僕の目から一筋の涙が零れ落ちた。

 

これが、“失恋”なんだと教えてくれるように。




いかがだったでしょうか?

これで分かるようにそろそろ絞られてきました。
果たして勝ち取るのは誰なのか、そしてこのままラブライブの優勝はどうなるのか

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。



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第87話 取引

・鹿角理亜
→姉、優馬どちらとも大好きだが一歩優馬の方が好き。そのため、姉だろうとも優馬に手を出せば許さない。ヤンデレ度合いで言えば以前の騒動の首謀者という点からトップレベル。自身が今まで助けられてばかりな分、今度は自分が助ける番だと意気込み、優馬への過保護になりつつある。

こんばんは、希望03です。
上記は今回のキーパーソンです。
それではどうぞ。


~高海家・千歌の部屋~

 

千歌「はぁ~…」

 

最近、溜息が出るようになってしまった。

別に疲れているわけでもラブライブが不安ということも無い。

むしろ、適度な練習量で質高くやっている分、不安も無い。

だけど、この溜息の原因はまた別にある。

 

千歌「優くん…」

 

大好きで大切で、特別な人。

その人と最近、話せていなかったり、会えていなかったり…

今までは家も隣同士で、何かとお互いに気にかけていてだったのに、最近はそんなことも無くなってしまった。

 

本当はもっと話したいし、抱きしめて欲しいし、好きって気持ちをもっとたくさん伝えたい。

けれど

 

(期限は3年生にとっての最後のライブまで。)

 

(その時が来たら、僕が皆のうちの誰かを選ぶ。)

 

千歌「あんなに力強く言われちゃったら待つしかないじゃん…」

 

あくまでも選ぶのは優くんだ。

だから私はもう優くんに委ねることにした。

きっと私を選んでくれる、千歌を見てくれるって信じているから。

 

そんな時だった。

なんだか胸騒ぎがしたのは。

 

足音が聞こえたため、ふと下を見てみるとそこには優くんの家へと向かう梨子ちゃんの姿が見えた。

 

千歌「梨子ちゃん?こんな夜中にどうしたんだろ…」

 

さすがに夜中も夜中。

しかも行き先は優くんの家、それだけで胸のざわざわが収まらなくて…

 

千歌「…行かなきゃ。」

 

私は後を追うように駆け出していた。

 

 

~優馬家~

 

千歌「…」

 

中に入ろうにも勇気が無い。

今、何が起きているのか、梨子ちゃんが何をしているのか。

果たしてここで乱入して優くんに嫌われないだろうか。

そんな考えがずっとあって、前へ進めなかった。

 

千歌「はぁ…帰ろ…」

 

折角来たけどこればかりはしょうがない。

見たくないものは見たくないのだ。

そうして帰ろうとした時だった。

 

梨子「え、千歌ちゃん…?」

 

千歌「あ…」

 

最悪のタイミングでのバッティングだった。

 

 

~内浦・海沿い~

 

梨子「それで、追ってきたってことなんだね。」

 

千歌「うん…」

 

私はなんで優くんの家の前にいたのか、を梨子ちゃんに話した。

なんで海沿いにいるのか、は…まぁここが一番話しやすいからだ。

 

梨子「そっか。じゃあなんで中に入ってこなかったの?千歌ちゃんならやりそうだけど…」

 

千歌「む…それは失礼だよ!流石にちゃんと空気を読むというか、なんというか…」

 

梨子「でも追ってきたってことは少なくとも気にはなってたんだよね?」

 

千歌「…」

 

なんだか梨子ちゃんが怖い。

なんでなのかは分からないけれど、雰囲気かな?ちょっと怖く感じた。

 

梨子「…何も言わないつもりね。」

 

千歌「梨子ちゃんがなんで優くんの家にいたのかをまず知りたいよ…なんで?」

 

梨子「それを聞いて千歌ちゃんをどうしたいの?」

 

千歌「え?」

 

梨子「私が“もし”優君の家で何か千歌ちゃんにとって都合の悪いことをしていたとしたら千歌ちゃんはどうするの?」

 

千歌「い、いや…別に…」

 

梨子「…ごめんなさい、そんな問い詰めるようなつもりは無かったの。」

 

千歌「え、いや大丈夫!だけど…やっぱりどうして優くんの家にいたのかが知りたい、かな?」

 

梨子「…ちょっとした悩み相談、かな。」

 

千歌「悩み、相談?」

 

梨子「ふふ、そうよ。」

 

そう言って話す梨子ちゃんの表情は悩みがあるというよりも悩みを感じさせない程、優越感に浸っているようなそんな表情だった。

 

千歌「…本当に悩みあるの?」

 

梨子「…それどういう意味?」

 

千歌「本当に悩みがあると思えないよ。その顔を見たら…!」

 

梨子「え…?私、顔に出てた?」

 

千歌「うん、思いっきりね。」

 

梨子「…ふふ、ごめんなさい。なんだかさっきの事を思い出すとこれからが楽しみで…ね。」

 

千歌「なに、それ?どういう意味?」

 

ますます意味が分からない。

悩みがあるんじゃないの?楽しみって何?さっきの事って…

 

千歌「優くんに、優くんになにしたの!?」

 

梨子「わ…怖いよ、千歌ちゃん。そんなに怒ってどうしたの?」

 

千歌「そんなの…!」

 

怒るに決まってるじゃん。

とも言えない。

数か月前なら多分言ってたと思う。突っ走って、結局優くんに迷惑をかけての繰り返しで。

それでも止められなくて。

でも今は違っていた。優くんが覚悟を決めたってそう言ってくれたから。

例え私じゃなくても優くんが覚悟を決めたのなら待つだけ。

そのはずなのに…

 

千歌「耐えられないよ、優くん…」

 

梨子「…?千歌ちゃん?」

 

千歌「梨子ちゃん、教えてよ…!何話したの…何を、優くんに話したの!!」

 

気付いた時には私は梨子ちゃんの胸ぐらを掴んでしまっていた。

 

梨子「…千歌ちゃんってば、本当に後先考えないで突っ走っちゃうよね?」

 

千歌「っ…それは…」

 

梨子「そんなに優君を盗られたくないの?」

 

千歌「…梨子ちゃんだってそうでしょ?」

 

梨子「うん!もちろん!」

 

千歌「じゃあ同じじゃ「うん、同じだね。」…え?」

 

梨子「うんうん…千歌ちゃんと同じだよ。私も優君のことになったら周りが見えなくなっちゃうし、誰にも盗られたくない。私にだけ好きって言って欲しい…ふふ、独占欲の塊みたいね?」

 

千歌「独占…」

 

どこかその言葉の響きに私は激しく魅力を感じていた。

優くんが私だけを見てくれる、優くんが私だけを呼んでくれる…

 

優くんが私だけを愛してくれる!!

 

梨子「ね、千歌ちゃん♪」

 

千歌「ふぇ…?」

 

梨子「…一緒に優君、独り占め、したくない?」

 

千歌「っ!?」

 

魅力的だ。それだけは理解できる。

けれど、果たしてそれでいいの?

だって、優くんは私たちの誰かを選んでくれるって、選ぶのは優くんで…

でも、優くんが私以外の誰かと…

 

梨子「…なーんてね、冗談だよ?」

 

千歌「あ…」

 

梨子「もしかして期待させちゃった?」

 

千歌「そ、そんなことないよ!だ、だよね…そうだよね…独占なんて…あ、あはは…」

 

ふと過った私の悪い考え。

誰かに盗られないように、私が大事にしていた宝物のように。

一生私しか見れないようにしてしまえば、だなんて…まるで数か月前の私と一緒…

二度とああはならないって、決めてたはずなのに。

 

梨子「…ふふ、じゃあ私はもう帰るね?」

 

千歌「あ…う、うん…おやすみ~…」

 

そう言って、梨子ちゃんは帰ってしまった。

結局、梨子ちゃんが優君に何を言ったのか、分からないまま。

 

千歌「もし、梨子ちゃんが…優君を唆していたら?」

 

まさか、この期に及んでそんなこと…

と思いたいけれど、Aqoursの皆もSaint Snowの2人もやりかねないのだ。

結局、私と同じで、盗られたくないんだから。

 

千歌「…少し気をつけなきゃ、優くんに危険が及ばないように。」

 

これは私の愛が強いとかじゃない。

周りの皆が優くんに悪いことをしないようにするためだ。

だから、私は悪くない。

 

だって、私が優くんを守るんだから。

 

 

~梨子side~

 

あーあ、やっぱり千歌ちゃんも同じなんだなぁ。

果南さんも鞠莉さんもダイヤさんも、善子ちゃんもルビィちゃんも花丸ちゃんも。

理亜ちゃんも聖良さんも。

そして、曜ちゃんも。

皆、みーんな。

同じだわ。

 

結局優君に好かれたくて、愛されたくてしょうがない。

だから意味の分からないデートの日を設けようだなんて言ったんだ。

 

自分が独り占めできないからって。

 

それで優君がどれだけの苦労を強いられているか。

分かっていない。

 

梨子「でも、千歌ちゃんはもっと突っ込んでくると思ってたけど意外と冷静だったわね。」

 

思わず独占って言葉をちらつかせたけど、やっぱり千歌ちゃんは食いついていた。

それは目を見て分かった。だって、あの言葉を言った瞬間に目が輝いていたんだもの。

 

だけど意外にもこっちの提案には乗らなかった。

 

梨子「何か考えでもあるのかしら?」

 

本当に自分だけ独占できるような策でも?

だとしたら…

 

梨子「まずは優君に危害が加わらないようにしないと、ね。」

 

だって、今優君の事を分かってあげられるのは、助けてあげられるのは私しかいないんだから。

 

梨子「私が優君を皆から守らなきゃ。」

 

 

~優馬家・優馬の部屋~

 

優馬「…」

 

“優!私頑張るから!”

“ちゃんと見ててね、優!”

“懐かしいね、優くん?”

 

“…ごめん。また後で。”

“何か用?”

 

明らかに違っていた態度。

本当は分かっていた、けれど気づかないふりを続けてきた。

 

優馬「はぁ…」

 

~♪~♪~♪

 

優馬「っ!?」

 

急に鳴り出した電話。

 

優馬「…これが曜だったらな。」

 

そうして見た画面には曜…の名前ではなく、理亜の名前だった。

 

優馬「理亜?」

 

理亜「あ、出た。」

 

優馬「いやそりゃ出るよ…どうしたの?」

 

理亜「いやどうというわけじゃないんだけど…ちょっと聞きたい事があって…」

 

珍しい理亜からの電話に驚いたけれどどうやら聖良から色々聞いたらしい。

聖良や他の皆とのデートとの件、その度に僕が振っていると。

 

理亜「本当に覚悟決めたんだね。」

 

優馬「…まぁ、ね。」

 

理亜「?なんか兄さん…元気ない?」

 

優馬「え?あ、あー…普通だよ?」

 

理亜「嘘。声色から分かる。何かあったの?」

 

優馬「…」

 

理亜「…言えないこと?」

 

優馬「言えないわけじゃないんだ…自分でもこんなの初めてでどうすればいいか分からなくてさ。男のくせに情けないよね。」

 

理亜「…兄さん。」

 

優馬「?」

 

理亜「明日、私と出かけて欲しい。」

 

優馬「え」

 

理亜「それとも他の誰かと約束してた?」

 

優馬「い、いやそれは無いけど…急にどうしたの?」

 

理亜「私は直接Aqoursのラブライブ決勝には関わっていないけど、そのマネージャーである兄さんがこんな調子だとAqours全体に響いちゃうでしょ?」

 

優馬「う…確かに…」

 

理亜「だから、私じゃ物足りないかもだけど話、聞いてあげるから…だめ?」

 

優馬「理亜…」

 

優馬「じゃあ、お言葉に甘えて良いかな?」

 

理亜「っ!///任せて!///」

 

それじゃあ!と勢いよく理亜からの電話は切れてしまった。

 

優馬「…もう昔の理亜じゃないんだよな。」

 

 

~鹿角家・理亜の部屋~

 

理亜「…ついに、私の番、か。」

 

元はと言えばAqoursのメンタルヘルスのために始まった兄さんとのデート案件。

花丸やルビィ、果ては姉さままですでにデートをしたみたいで今日はダイヤの番だった。

しかも聞くところによると皆、そのデートの先で兄さんに想いを伝えているみたいだった。

 

本当の所を言ってしまうとさっきの電話でデートに行こう、だなんて伝えるつもりは無かった。

ただ兄さんの声が聴きたくって、電話しただけ。

けれど、兄さんの声がなんだか元気が無いように聴こえたからなんとかしてあげたくて、それで切り出してしまった。

 

“…自分でもこんなの初めてでどうすればいいか分からなくてさ。男のくせに情けないよね。”

 

理亜「情けなくなんてないよ、兄さん…むしろ兄さんの優しさにいつも皆が助けられてる…」

 

私は明日、想いを伝える。

数か月前の私だったら私を選んでほしかったけれど、今は違う。

選ぶのは兄さん。

だから、私は兄さんに私の想いを知って欲しい、それだけ。

 

それだけ…だから。




いかがだったでしょうか。
ダイヤ編は落ち着いて、次回は理亜編。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。


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Aqours 誕生日記念
津島善子 誕生日記念 ~私という刻印~


こんにちは!
今日は善子ちゃんの誕生日!おめでとうっ!!
リトルデーモンになって早6年…月日が経つのは早い!
今回のお話は本編とはあまり関わりがありませんが、読んでいただけると嬉しいです!
それでは、どうぞ!


~津島家~

 

善子「~♪」

善子母「あら、やけに楽しそうじゃない?」

善子「そ、そんな事ないわよ!///」

善子母「そう?まあ帰ったら楽しみにしてなさい」

善子「う、うん。ありがとう///」

 

なんでこんなに機嫌がいいのか

そう!今日は私、ヨハネの降臨した日!

つまり!誕生日なのである!!

皆祝ってくれるかなー、とか優馬からプレゼントあるかなー、とか

そんな淡い期待を抱きながら、私は今日も学校に歩を進める。

 

 

~浦の星学院・1年生教室~

 

花丸「あ、善子ちゃん、おはよ~ずらぁ~」

善子「善子ちゃうわ!ヨハネよ!」

ルビィ「よ、ヨハネちゃん!おはよっ!」

善子「善子よ!…じゃなかったわ、おはよ、ルビィ…」

花丸「あと、善子ちゃんお誕生日おめでとうずら~」

ルビィ「これはルビィたちからだよ!」

 

貰ったのはアロマオイルだった。

どうにも癒し系少女である彼女たちにはぴったりのプレゼントだ。

 

善子「あ、ありがとぅ///」

花丸「ありゃ、善子ちゃん…照れてるずら?」

善子「て、照れてないわい!!」

ルビィ「ふふっ、喜んでくれてよかった」

 

プレゼントをあげてる姿に気づいたのか、教室の皆が私を祝ってくれた。

正直、こんなに祝われたのは初めてだったから、すごくむず痒い…

でも、こんなに幸せなものなんだと噛み締めた。

 

~昼休み~

 

千歌「よしこちゃ~~ん!!」

善子「善子ちゃうわ~~~!!ヨハネよ!!!」

梨子「ふふっ、相変わらずね」

曜「あはは、はい、善子ちゃん!」

善子「ヨハネよっ!…あ、ありがと///」

 

曜たち2年生からもプレゼントをもらった。

しかし、2年生と言えば彼もいるはず。

なぜこの場にいないのか、気になってしまったのでつい聞いてしまった。

 

善子「ね、ねぇ、リリー?」

梨子「リリー禁止!どうしたの?」

善子「あの、ゆ、優馬は…?」

梨子「優馬くん?来てない?」

善子「え…う、うん」

梨子「うーん…ごめんなさい…分からないわ」

善子「そ、そう…」

 

プレゼントを皆からもらえるのは、祝ってもらえるのはすごく嬉しい。

けど、優馬から貰えないのは違う。

それはそれで寂しくなってしまう。

だからせめて言葉だけでも欲しかった。それだけでも嬉しかったから、

なのに…

 

 

 

~スクールアイドル部部室~

 

善子「はぁ…」

 

結局あれから優馬は教室に来なかった。

もしかして、忘れられているのだろうか。

どうしても不安が募ってしまう。

優馬は忘れたりなんかしないって分かっているはずなのに。

 

鞠莉「はぁ~い!今日も元気に頑張りまショーウ!!」

果南「鞠莉、うるさいよ」

ダイヤ「全くですわ…あ、善子さん、お誕生日おめでとうございます。」

善子「あ…ありがと…」

 

3年生が部室にやってきた。

同じようにプレゼントをくれて、同じように祝ってくれる。

すごく嬉しいのは間違いない。でも、どこかまだ満たされない…

 

ダイヤ「…どうかしましたの?」

善子「へ…?」

鞠莉「なんだか、元気ないデース」

果南「何か、あった?」

善子「…ううん、なんでもないわ、プレゼントありがと!」

 

そうして、今日も今日とて、練習へと向かった。

練習に行けば、優馬がきっといるだろうと思っていたから、

けれどその予想が当たることはなかった。

 

善子「くっくっく…今日もこの世の全てを魅了するため、練習に馳せ参じ…ってあれ?」

千歌「あ、善子ちゃん!練習始めるよ!」

善子「あ…うん…ってヨハネよ!」

 

もう練習時間となるのに屋上に優馬が居なかったのだ

もちろんさっき見てきた部室にもいなかった。

 

善子「ず、ずら丸?」

花丸「?どうしたずら?」

善子「え、と優馬は?」

花丸「優馬さん?今日来れないって言ってたずらよ」

善子「え…?」

花丸「はぁ…寂しいずら…ダンスの指導を手取り足取り教えて貰おうと思ってたのに…///」

花丸「…ってどうしたずら?」

善子「へ…?い、いや何でもないわよ!あ、ありがとね!」

花丸「…ずらぁ?」

 

優馬がいない。

おそらく私用なのだろう。それでも今日に限っていないなんて

…やっぱり私はついていないのね

でも不幸体質だとしてもこれはひどいじゃない

私の最愛の人に祝ってもらえないなんて…

 

善子「…こんなの最悪の誕生日だわ」

梨子「…今日の善子ちゃん元気ないね」

ルビィ「…うん、お兄ちゃんが祝ってくれなかったんだって」

梨子「あ…」

ルビィ「梨子ちゃん何か知ってるの?」

梨子「い、いや~、なんでもないよ~、さ、練習始めよっか!」

ルビィ「う、うん」

 

 

~校門前~

 

練習に全く集中できなかった。

どうしても心に引っかかっていたから。

本当だったら祝ってもらって、ウキウキな気分で帰ってたはずなのに

どうして私の不幸はいつもこうなってしまうのだろう。

 

善子「…はぁ」

 

バスの時間も近かったから早く帰ろうとしたその時だった。

 

優馬「…練習お疲れ様」

善子「…ふぇ!?」

優馬「そんなに驚くことないでしょ…嫌だった?」

善子「ぜ、全然っ!!///むしろ嬉しいというか…///」

善子「でも、なんで?今日、用事とかあったんじゃないの?」

優馬「え?梨子ちゃんから聞いてない?」

善子「?なんでそこでリリーが出てくるのよ?」

優馬「僕、梨子ちゃんにプレゼント買ってくるから今日練習出れないって言ったんだけど…」

善子「…は?」

善子「はぁぁぁぁぁ!!??」

優馬「えぇ…こわ…」

善子「じゃ、じゃあ千歌たちがプレゼント渡しに来た時に優馬がいなかったのは」

優馬「プレゼント持ってなかったし」

善子「部活に来なかったのは」

優馬「だから善子のプレゼント買ってたって言ってるじゃん」

善子「…はぁぁぁ…」

優馬「え、なに、どしたの」

 

なんだ、私の思い過ぎだったんだ

やっぱり優馬は忘れてなかったんだ。

そう思った時、私の力が一気に抜けていった。

 

善子「ごめんなさい、気が抜けちゃって」

優馬「…大丈夫?」

善子「えぇ…ありがと」

善子「…私、もしかしたら誕生日祝って貰えないのかなって、私の事、忘れてるのかなってそう思ってたの」

善子「だから…今日、ずっと頭の中がそれでいっぱいで…」

優馬「そっか…ごめんね」

優馬「僕は善子のこと、忘れないよ。何せ君の最初のリトルデーモンだしね」

優馬「…これ、プレゼント、渡すの遅れてごめん」

善子「これ…」

 

渡されたのはとても綺麗な月形のペンダントだった。

 

善子「こんな…高かったんじゃないの?」

優馬「値段なんて気にしないでよ、これを見て、絶対にこれだって思ったんだから」

善子「…綺麗」

善子「…つけてもいい?」

優馬「もちろん」

善子「…どう?」

優馬「うん…とても似合ってる。綺麗だ。」

善子「えへへ…///…ありがと///」

優馬「うん…じゃあ、帰ろっか」

善子「え、でもあんた沼津の方じゃない…」

優馬「夜更けに女の子1人帰らせる訳には行かないでしょ?」

善子「っ!///」

優馬「ほら、行こ?」

善子「あ…///」

 

そうして、私は手を握られながら一緒に帰ることになった。

 

あぁ…なんて素敵な日なんだろうか

不幸体質だと思ったけど、今日は幸せね…

 

善子「…優馬」

優馬「どうし…んっ!」

善子「ん…!ぷあっ…」

優馬「いま…キス…」

 

今までに無いくらいの最高の誕生日。

それは貴方がいてくれたから。

私を見つけて、好きでいてくれる人。

私の、好きな人。

月夜に照らされて輝く月のペンダント。

それにあてられてしまって、つい強引なキスをしてしまった。

でも、構わない。こうでもしないと盗られてしまうから。

だからこうやって盟約を交わす。

 

善子「ふふっ、盟約は交わされたわ!大好きよ、優馬!絶対に離さないんだから!!」

 

大好きなあなたを手放さないように…




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
上手く書けてるか不安ではあるところですが…
喜んでいただけると幸いです!
今日中に本編を上げたいところではありますが、上げられなかったらすみません!
では、次回もまたよろしくお願いします!


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高海千歌 誕生日記念~私の求める輝きは、君と共に~

こんばんは!
そして千歌ちゃんお誕生日おめでとう!!!
急いで書きました…
間に合わなかった…
けど、今回はもう千歌ちゃん推しになった気分でめちゃくちゃ甘々に書いてやりましたわ!!(多分)
本編とはある程度干渉しているようなしてないようなそんな感じです!
時間軸とかもあんまり気にせずに読んでいいただけると嬉しいです!
それではどうぞ!



 

~優馬家・優馬の部屋~

 

暑い夏の一日。

世間では、というか並大抵の高校は夏休み期間であり、部活でもやってなければずっと家にいるようなそんな期間。

こんな暑い夏なんかはあんまり外になんて出たくないのだが…

だがしかし、なぜだか俺は部活に所属していて、しかもせっかくの休みだというのに学校に呼ばれている。

まあ、練習を行うから、なんだが。

それでも行きたくはない。クーラーのある部屋でずっと寝ていたい。

しかし、行かなければ俺の命が危ない。

 

優馬「…って分かってるんだけどなぁ」

 

こんなぶつぶつと話していたが、実はこの間、一度もベッドから動いていないのだ。

 

優馬「時間は…っと」

 

まだ7時半。確か集合時間は9時だったから、なんとまだ30分は寝れるじゃないか。

ということは選択するのはたった一つ。

 

優馬「よし、二度寝だ。」

 

そうして俺が二度寝の態勢をとったその時だった。

 

千歌「ゆ~~うく~~~んっ!!起きろぉぉぉぉ!!」

優馬「…ちっっ!!」

千歌「うわ…そんな露骨に舌打ちしなくても…」

 

舌打ちしなくてもいいじゃないか、とぷんすか怒っているがそりゃあ舌打ちをしたくなるだろう。

なんせ眠りを妨げられたのだ。二度寝だが。

 

優馬「はぁ…千歌、もう来たんだね、早くない…?」

千歌「早くないよ?もう8時半だし。」

優馬「…え?」

千歌「え…って、もうすぐ出ないと遅刻するよ?」

優馬「嘘だ、だって俺の時計は7時半になって…」

千歌「…これ壊れてるよ?」

優馬「はぁぁぁぁ????」

 

そんな馬鹿な、こんな鬱展開があってたまるか。

30分は寝れると思っていたのに、時計の時刻が1時間遅かったなんて。

 

優馬「…はぁ、もう遅刻していいかな」

千歌「だめーーーーーーー!!ほら、急いで準備してっ!!」

優馬「分かったよ…」

千歌「…じゃないと、ここに来た意味がないもん///」

優馬「え?」

千歌「なんでもない!///早くしてね!」

優馬「はいはい…」

 

こうして俺は仕方なく千歌と一緒に練習に向かうのだが

 

優馬(なんだか千歌の様子がおかしいような…)

 

というのも、なぜだかずっとちらちらと俺の方を見てくるのだ。

なぜだか理解ができないから千歌に聞くも

 

千歌「…気づかないの?」

 

と、寂しそうに言われた。

気づかないというが、気づいてないから聞いているのだ。

と、なんだか悶々としつつ、学校へと向かう。

 

 

~浦の星学院・スクールアイドル部部室~

 

優馬「おはよ」

 

いつも通り、挨拶をして、鞠莉が突っ込んで来ようとして、それを冷ややかな目で皆が見てきて…とお決まりの流れが始まるはずだったのだが

 

鞠莉「Good Morning!優!」

果南「おはよ、ゆう」

ダイヤ「おはようございます。」

ルビィ「おはよ、お兄ちゃん!」

花丸「優さん、おはようずら~」

善子「ふっ…ようやくお出ましのようね、我がリトルデーモン…」

梨子「おはよ!優君!」

優馬「…あれ?」

 

なんだか違う。違和感がある。

あの流れもなければ、皆、どこか一線引いている感じがするような?

 

優馬「…?」

曜「あ!おはよ!優!」

 

すると、後ろから曜に声をかけられた。

曜も皆と同様に、なんだか一線引いているような感じがする。

 

優馬「おはよ、曜。ところで…俺何かしたかな?」

曜「え?なんで?」

優馬「なんでって…皆、俺に対しての対応、何か違くない?」

優馬「いつも通りじゃないっていうか…」

曜「あー…」

優馬「千歌も朝からちらちら見てくると思ったら、急に不機嫌になったりでおかしかったし…」

 

すると、曜が俺のことを初めて軽蔑の目で見た。

思わず、たじろいでしまったが、きっと答えを知っているのだろう。

教えてくれるか、と思ったのだが

 

曜「それは優自身が気付くべきだと思うよ。」

優馬「え?」

曜「気づかなかったんだね。」

優馬「気づかなかったってなんだよ」

曜「そのままの意味だよ。」

優馬「いや何もヒントも与えられてないのに、気づくも気づかないもないと思うんだけど」

曜「はぁ…」

曜「ま、私としてはそれくらいの関係だってことで安心してるけど」

曜「それでも千歌ちゃんのことを考えると哀しくなるなぁ」

優馬「…理解ができない」

曜「私は知ってるけど、教えられない。頑張って気付いてね」

曜「それじゃ、練習行くよ。」

 

そうして、皆は練習をしに屋上へと向かった。

ヒントも与えられない、理不尽な問題に苦しむ俺を置き去りにして

 

 

~浦の星学院・屋上~

 

優馬「…」

 

皆の掛け声が聞こえる中、俺はそれを見ながら、ずっと考えていた。

皆が変わってしまった理由、曜が怒った理由、そして千歌が寂しそうに呟いた

“気づかないの?”の意味を。

 

優馬「…はぁ、一体、なんだよ、皆して」

 

答えが分からない。

分かるわけもないこの問いに、誰も教えてくれない苦しみ、焦り。

そして一番心に来るのは皆の対応の仕方がいきなり変わったことだ。

 

優馬「こんなの分かるわけ…」

千歌「…」

 

そんな色々なことを考えていると、千歌がこっちを見ていた。

いつもなら練習が休憩に入った段階で、すぐこっちに来るようなそんな奴なのに

千歌は一瞥したあと、すごく、寂しそうな顔をして、唇を嚙み締めて、皆の所へと行ってしまった。

 

優馬「は…?なんで、だよ…」

 

なんでそんな寂しそうな顔するんだよ。

そんな泣きそうな目でこっちを見るなよ。

いつもみたいに笑えよ、なんで、なんで!!

 

優馬「…くそっ!」

 

~屋上・練習終わり~

 

優馬「…」

 

結局、分からなかった。

分からなかったというか、もう考えきれなかった。

考えるよりも先にあの顔が思い浮かんでしまい、やるせなさが心に広がっていった。

だから、こうして屋上から一歩も動けないでいる。

 

優馬「…きれいだな」

 

空というのは皮肉なもので

こんなに自分が情けなくて、空しいのに、空は広く澄み、俺を照らしてくる。

まるで輝きがそこにあるかのように

すると屋上の扉が開いた。

 

優馬「っ!千歌!?」

梨子「…違うよ、優君」

優馬「あ…ごめん…」

梨子「ううん、大丈夫。それより、分かった?」

優馬「…」

梨子「…分からない、か」

梨子「ふふっ、優君でも分からないことがあるなんてね」

優馬「俺はそんな天才じゃないさ…分からないことだらけだよ、今だって…」

 

本当だ。何がIQ200だ。

余分な知識だけつけやがって、人の気持ちは理解できないんだから、何の役にも立っていないじゃないか。

 

優馬「…」

梨子「あ、もう8月なんだね、半年経ったんだぁ…」

優馬「あー…そうか、もう8月…っ!」

梨子「…気づいた、かな?」

優馬「梨子、もう8月って、今日から8月が始まったんだよね?」

梨子「うん、そうだよ。」

優馬「…ははっ、俺、最低だ。馬鹿野郎だ。」

梨子「うん…本当だよ…」

優馬「…ごめん、この埋め合わせは必ず。」

梨子「うん、期待してる。今は千歌ちゃんのところ、行ってあげて?」

優馬「ああ!」

 

そうして、俺は一心不乱に駆け出した。

千歌に伝えなければならないことがあるから…

 

梨子「…ほんと、私ってお人好しよね、馬鹿みたい」

 

 

~千歌side~

 

千歌「…」

 

結局優くんは気づいてくれなかった。

でも仕方ないかもしれない。ずっとそばにいてくれたから気づいてなかったけれど

考えてみれば、会ったのがつい最近で、そんな会ったばかりの相手のことなんて…

 

千歌「祝ってくれるわけないじゃんか…」

 

スクールアイドルを始めた時は、ただ自分の輝ける場所を知って、

私も同じようになりたい、っていう思いから始めたけど、

いつしか優くんがそばにいてくれて、支えてくれて…

私にとっての輝きは気づけば優くんと一緒じゃないとダメなんだって、

支えてくれてる君だからこそ、一緒に輝きたいって

そう考えるようになった。

そんな君だからこそ、一緒に分かち合いたかったのに

 

千歌「…っていうのはわがままだよね」

 

そう心に思いを押し殺した時だった。

 

優馬「千歌!!」

千歌「ゆう、くん…?」

 

呼ばれた先を振り返ると、そこには優くんがいたのだ。

 

千歌「…どうしたの?」

優馬「まずは謝らせてほしい」

優馬「…ごめん」

千歌「あ、謝るなんて、優くん何もしてないのに…」

優馬「いや、したさ。俺は君を…」

 

やめて、その先を言わないで

 

優馬「傷つけてしまった」

千歌「…」

優馬「ずっと、一緒にいたのに、そばにいてほしいって言ったのに、俺は気づけなかったんだ。」

 

あーあ、言っちゃった。

もう私がわがままだって、気持ちを押し殺すはずだったのに

我慢しようと思ってたのに

だめ、耐えきれないや…

 

千歌「…ほんとだよ」

優馬「…千歌」

千歌「ほんとだよ!!私が迎えに行ったときに期待してた!きっと祝ってくれるって!」

千歌「なのに、祝ってくれなくて、あんなに見てたのに!気づいてくれなくて!」

千歌「皆は今日のために気を利かせてくれて、私は一日優くんを独り占めできるはずだったのに」

千歌「気づいてくれないことの寂しさが勝っちゃって…」

優馬「…ごめんな」

千歌「私は、謝ってほしくなんてない…」

千歌「もっと、言うべきことあるよね?」

優馬「…うん」

優馬「千歌、誕生日、おめでとう。これからもそばにいてほしい、俺と一緒に輝きを見つけてほしい」

千歌「そんなの、そんなの当たり前じゃん!私も一緒に輝きを見つけたい!」

 

こうして私はようやく君から祝われることに成功したのだった。

 

千歌「…それでプレゼントは」

優馬「あー…ごめん」

千歌「あはは…優くんらしいねっ」

優馬「ほんとに悪いって思ってるよ…」

千歌「じゃあ今、貰っていい?」

優馬「え?だから、今ないって…んむっ!?///」

千歌「んっ…ぷはっ…!///えへへ…///」

優馬「ち、か…///」

千歌「…私、高海千歌は優くんのことが大、大、大好きです!!」

千歌「だから、これからもずっと、ず~~っと!そばにいてねっ!♡」

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
千歌ちゃん、改めて見ると本当に素晴らしい女の子だな、と
こんな良い子なかなかいないですよね…
そんなわけで今回は高海千歌ちゃん、誕生日記念話でした!!
本当に、本当に千歌ちゃんおめでとう!
君がAqoursのリーダーでよかった!
これからも輝きを見つけるために頑張ってほしいですっ!!
次の更新は本編になると思いますが、次も楽しく読んでいただけると嬉しいです!
次回もよろしくお願いします!


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桜内梨子誕生日記念 ~もう一度、貴方に~

こんにちは!希望03です!!
梨子ちゃん誕生日おめでとう!!!
可愛くて綺麗で、控えめだけど芯の強さは人一倍な梨子ちゃんが大好きです!!
それでは今回は誕生日記念です!
梨子ちゃん推しはぜひ読んでみてくださいね!
どうぞ!


 

?「こんなものしかあげられないけど…~…~…がん…」

 

梨子「なに?聞き取れないよ、待って!ねぇ!!」

 

~梨子家・梨子の部屋~

 

梨子「っ!はぁ…はぁ…ゆ、め?」

 

何だったんだろう。

目の前にはどこかで見たことがあるような男の子がいて、何かを話していて

どこか聞いたことのあるフレーズに渡された見覚えのある花だったけど、全文までは聞き取れず、男の子は去って行って…

 

梨子「…分からないわ」

 

時計を見るとまだ7時過ぎ、時計のアラームよりも早く起きてしまって、学校に行くまでまだ少し時間があった。

 

~梨子家・リビング~

 

どうせこのまま起きていてもやることもなかったため、私はリビングに向かい朝ご飯を取ることにした。

 

梨子「おはよ~」

梨子母「あら、早いわね?」

梨子「うん…ちょっと目が覚めちゃって」

梨子母「あら…余程楽しみだったのかしらね♪」

梨子「…?楽しみ?」

梨子母「ん?今日の誕生日会じゃないの?」

梨子「たん、じょうびかい…って!またいつものやるの!?」

梨子母「そうよ~!いつも楽しみにしてたじゃない!」

梨子「で、でももうこの年だし…恥ずかしいよ…」

梨子母「恥ずかしいも何もないわよ!今年も盛大にやるわよ~!」

梨子「い、いいよー!」

 

実際のところ、誕生日をこうして祝ってくれるのはむず痒くて、嬉しい。

けれど、流石にもう私も高校2年生。

盛大にやるとなると少し、恥ずかしさが勝ってしまう所があるのだ。

それに…

 

梨子「それに…今は、Aqoursの方が大切、だから」

 

私がようやく見つけた居場所。

ずっと恋焦がれていたあの男の子とようやく一緒に何かを成し遂げられそうな、そんな大事な大切なもの。

そして、何よりずっと弾けないと思っていたピアノもこうして弾けるようになったからこそ、今はピアノを優先したいのだ。

 

梨子「うん…だから今はいい…よね」

 

しかし、だからと言って祝われたくない、というわけではない。

祝われたら誰だって嬉しいし、ましてやそれがAqoursのメンバーとか…

私の想い人だったら、と思うとドキドキが止まらない。

盛大にやってもらうのも嬉しいけれど、結局のところ一番嬉しいのは想い人から

「誕生日おめでとう」

という言葉を貰えるだけで、それだけで良いのだ。

 

梨子「あれ、そういえば…」

 

あの時の夢。

どこかで見たことのあるような男の子。

あの男の子がずっと引っかかっていた。

 

梨子「もしかして、あの子…」

 

そう思ったのだが…

よくよく考えてみたら、あの時の優馬というのは無愛想の塊、みたいなもので誰に対しても冷徹な視線、言動を貫き、それはそれは酷いものだった。

そんな過去の優馬が、私みたいな女の子にプレゼントをあげる、だなんてそんな紳士的な真似するわけがないだろう、ということに気づき、結局私の見たあの時の夢は私が描いていた理想、ただの妄想だったのだろうという結果へとたどり着いた。

 

梨子「そうよね…まさか、ね」

 

そうしてあの夢のことは忘れよう、と決めて私は朝ご飯を食べるのだった。

 

~梨子家・玄関~

 

梨子「いってきまーす」

 

今日は日曜日だけどAqoursの練習は通常通りあるのだ。

ブラック部活、と思われるかもしれないけれど、私たちは好きで集まるのだ。

好きこそものの上手なれ、だからこそ私たちは今日も今日とて練習するのだ。むん。

気合入ればっちり、あとは向かうだけ…のはずが、唐突に電話が鳴った。

 

梨子「…千歌ちゃん?」

 

電話の相手は千歌ちゃんだった。

もしかして優君が電話越しに祝ってくれるのかと思って期待してたのに…

 

梨子「もしもし…」

千歌「あ、梨子ちゃん!おはよー!」

梨子「う、うん、おはよ…相変わらず朝から元気ね?」

千歌「えへへーありがとー!」

梨子「褒めてはいないけど…それで何の用?」

千歌「まずは梨子ちゃん、誕生日おめでとう!!」

梨子「あ、ありがと…要件はそれだけ?」

千歌「あ、と今日の練習はお休みですっ!」

梨子「…え?えー!?」

千歌「あ、もしかしてもう練習向かっちゃってる?」

梨子「い、いや向かってはないけど…」

千歌「じゃあ良かったー…そういうことだから!あ、誕生日のお祝いは皆と決めて、明日一日遅れでやることになったから!当日に祝えなくてごめんね…」

梨子「い、いや大丈夫よ!それだけでも嬉しいから!じゃあ明日また楽しみにしてるね?」

千歌「うん!じゃあ千歌もお手伝い行っちゃうから切るねー!」

 

そうして千歌ちゃんは電話を切ってしまった。

 

梨子「…どうしよ」

 

 

~梨子家・梨子の部屋~

 

梨子「はぁ…誕生日のはずなんだけど退屈になっちゃったわ…」

 

急遽休みと言われても特に出かける用事とかもないわけで

そうなるともう部屋にいるしか時間をつぶすことができないのだ。

 

梨子「うーん…どうしよー…」

 

俗に言う“薄い本”はもう読み漁ってしまったし、本当にやることが見当たらないと思ったその時、ふとピアノが目についた。

 

梨子「とりあえずピアノでも弾こうかな…」

 

そうして私はピアノに手をかけた。

 

梨子「うーん…あ、そうだ!Aqoursの曲を弾いてみようかな!」

 

そう決めた私はこれまでのAqoursの曲を、とピアノを弾いた。

 

初めて3人でスクールアイドルとして人前で歌った「決めたよ、Hand in Hand!」から始まり、「ダイスキだったら、ダイジョウブ!」

1年生や3年生が加入して、皆で歌うことはまだ叶わなかったけど、初めてこの町のすばらしさに気づけた「夢で夜空を照らしたい」

9人全員で初めて歌った「未熟DREAMER」

離れ離れだったけど、その時、初めて皆の想いがひとつになって、心の繋がりを感じられた「想いよひとつになれ」

そして初めて私たちが“0”から“1”にすることができた「MIRAI TICKET」

 

弾き終わったとき、Aqoursとして色々な「初めて」を皆と紡いできたんだなって心の底から感じられた。

あの時、千歌ちゃんたちとそして、優君と出会えていなかったら…

そう考えると…

 

梨子「今頃の私はどうなってたんだろう…」

 

恐らくピアノも満足に弾けないし、音楽そのものが嫌いになってたかもしれない。

そう考えるとすごく恐ろしい。

 

梨子「でもやっぱり…いい曲だなぁ…」

 

Aqoursの曲1つ1つに私たちの想い、そして優君の想いが込められていて、本当に心地が良い。

 

梨子「もう一回、弾こうかな…」

 

そう思い、ピアノに手をかけたその時

ひらりと本棚から一枚の譜面が落ちてきたのだ。

 

梨子「これ…」

 

落ちてきた譜面には“Salut d’Amour”の文字。

これはエドワード・エルガー作曲「愛の挨拶」という曲だった。

 

梨子「あ…」

 

その時、私はふと昔のことを思い出したのだった。

 

~回想~

 

あれはちょうど今日から4年前のこと。

そう、あの時も私の誕生日の日で。

でもその日も今の私みたいに誕生日なんて気にしてなくて、いつもピアノのことしか頭になかった。

だからあの日も週末にある発表会に向けて音楽室で発表曲の練習をしていたところだった。

 

梨子「~♪~♪~あっ…」

梨子「また同じところ…」

 

練習、していたのだがいつも同じところで間違えていた。

非常にゆったりとした曲だけど、曲調が変わったり、けれど柔らかく、流れるように弾かなくてはならないとか…

中学生にしては難易度が高めの曲を弾いていた。

 

優馬「…大変だな」

 

そんな愛想の無い台詞を吐いたのは当時の優君。

以前、曲を聴いてくれて、発表会まで来てくれてた男の子。

それでいて…私の一目惚れした男の子。

そんな優君も口ではめんどくさいとか言ってる割に練習に付き合ってくれていた。

しかし…

 

梨子「…どうしよう。もう発表会まで時間が、無いのに」

 

日にちが近づいているのに、うまく弾けない。

そのプレッシャーからか、私は泣きそうだった。いや、あの時はもう泣いていたかもしれない。

どこかに逃げてしまいたかった。できない自分が嫌で、惨めだったから。

そしたら、ずっと座っていた優君が立ち上がり、私に一輪の花をくれた。

 

梨子「こ、れは?」

優馬「…こんなものしかあげられないけど。誕生日おめでと。焦らなくても大丈夫でしょ。頑張って。」

梨子「綺麗…」

 

プレゼントするのにも本当に無愛想で、でもなんだかんだ私のこと見てくれていて、応援してくれて…

たった一輪の花だったけど、私はその時、この花が優君に背中を押してくれてるみたいに感じて、元気が出てきた。

 

梨子「…ありがとうっ!頑張るっ!」

優馬「…うん。」

 

失敗してもいい、とにかくこの想いを彼に、優君に伝えたい。

これが最後、最後にもう一回。

そう決めて、深呼吸。

 

梨子「…よし!」

 

~♪~♪~♪

 

…音が静寂に包まれていく。私は最後までミスもなく、一番いい出来で引ききることができたのだった。

 

梨子「で、できた!できたよ!優君!」

優馬「うん。聴いてたよ。綺麗だった。」

 

良かった。綺麗って言ってもらえて。

でも、あの時の想いは感謝だけじゃなかった。

あの曲のタイトルは

「愛の挨拶」

優君に私の愛を伝えたかったのだ。

伝わってはいなかったけど、それでも彼にこの曲を聴いてもらえてよかった。

そう、あの時の私は感じていたのだ。

 

 

~梨子家・梨子の部屋~

 

梨子「…そっか、あの男の子。」

 

なんで忘れていたんだろう。

あの夢の中での男の子は優君らしき者ではなく、紛れもなく、あの時の優君だった。

 

梨子「ふふっ…懐かしいなぁ…」

 

譜面を見て、懐かしさを感じながら私はもう一度ピアノに手をかける。

 

梨子「…よしっ」

 

そうして、私はもう一度、あの頃の、あのときめきの瞬間、一瞬一瞬を思い出しながら

「愛の挨拶」を弾いた。

 

 

梨子「ふぅ…」

 

弾き終わったもののまだ午前11時。

何をしようか、と考えていると家のインターホンが鳴った。

 

梨子「…まさか、ね」

 

でも…もしかしたら、という思いを持ちつつ、私は下に降りて、玄関のドアを開けた。

するとそこには

 

優馬「…こんにちは。」

梨子「ゆ、うくん…」

 

なんと目の前には優君が佇んでいた。

さらにあの時の、誕生日に貰ったあの時と同じ花の花束を持って。

 

 

優馬「…こんなものしかあげられないけど。誕生日、おめでとう。」

 

 

それはそれはあの時の優君に重なるくらいには無愛想な表情で…同じ台詞で…




いかがだったでしょうか?
ちなみにこの内容の補足説明をさせていただくと、

優馬があげた花は「ベゴニア」という花です。
このベゴニア、という花はピンク色の綺麗な花で、花言葉が「幸福な日々」、「愛の告白」という花言葉です。
「愛の告白」という言葉は梨子ちゃんが弾いた「愛の挨拶」にかけています(上手くない)。
「幸福な日々」は優馬が梨子ちゃんに対して、無意識下の中で彼女に対して自然と願ったものから来ています。

この説明を聞いて、見てみると情景が分かって、面白く見ることができます。
…多分。

ということで、次はルビィちゃんの誕生日記念ですね!
うん、忙しい!
ルビィちゃん推しの人は次回、よろしくお願いします!
それではここまで読んでいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!


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黒澤ルビィ 誕生日記念 ~めいいっぱいの幸せを~

こんばんは!希望03です!
遅くなってごめん!ルビィちゃん!誕生日、おめでとーーーー!!
可愛い容姿に似合わず強い心を持ってるルビィちゃんに毎度毎度心を打たれてしまいます!
これからもずっと応援してるよ!
ということで、今回もよろしくお願い致します!
それでは、どうぞ!


 

~黒澤家・黒澤姉妹の部屋~

 

ダイヤ「ルビィ!起きなさい!もう朝ですわよ!」

ルビィ「んぅ~はぁ~い…」

 

初めまして!私は内浦の浦の星学院っていう高校でスクールアイドルをしています!

黒澤ルビィです!

今日はルビィの誕生日!ということで、私、黒澤ルビィがスクールアイドルに入れた理由、そして楽しい毎日を紹介したいと思いますっ!

ルビィがずっと憧れてたスクールアイドルだったけど最初に誘われた時は自信がなくて、入るのを諦めてたんだ…

けど、こうしてスクールアイドルに入れたのはお兄ちゃんのおかげなの!

ずっと昔から憧れの存在で…大好きな人で…そんなお兄ちゃんがまた内浦に帰ってきてくれて…こうして一緒に部活ができて…えへへ…///

あ、お兄ちゃんって言うのはルビィの一個上の浦の星学院でただ一人だけの男の子!

お兄ちゃんのことも紹介しなきゃだよね…じゃあ振り返りも含めて紹介します!

 

~回想~

 

ダイヤ「ルビィ~!行きますわよ~!」

ルビィ「ま、待って~…お姉ちゃ~んっ!」

 

あれはとある夏の日。

私、ルビィはお姉ちゃんと遊びに出掛けていた。

あの頃のお姉ちゃんは破天荒…というか、色々なものに興味をもって色々な場所に出掛けていた。

怖い場所には出かけなかったけど、大概ルビィもお姉ちゃんにばかりくっついていたせいかその後ろにずっとくっついていた。

そして今日もいつも通り、お姉ちゃんの後ろについていって、また色々な場所に出掛けようとしていた時だった。

前からお姉ちゃんと同い年くらいの男の子が歩いてきたの。

お姉ちゃんはすごく嬉しそうな顔して男の子の顔を見つめて、駆け出した。

思わず、見ちゃったけど今思えば、あれが最初のお兄ちゃんとの出会いだった。

 

ダイヤ「優~~!」

優馬「あ…ダイヤちゃん!」

 

どうやらお姉ちゃんとお友達だったみたいで私も急いで付いて行ってその男の子を見つめた。

 

ルビィ「…お、お姉ちゃん?この人、誰…?」

 

あの頃から人見知りだったルビィはお姉ちゃんの後ろに隠れながら聞いた。

すると、その男の子は笑顔で声をかけてきた。

 

優馬「初めまして、僕、優馬って言うんだ。よろしくね?」

 

すごく優しげな声、思わず聞き惚れていた。

 

ルビィ「ほわぁ…///」

優馬「…あれ?」

ダイヤ「あのルビィが人見知りしてないですわ…」

優馬「え、でも固まっちゃってるよ?大丈夫?」

ダイヤ「わ、分からないですわ!ルビィ!ちゃんと挨拶しなさい!」

ルビィ「ピギッ!///は、初めまして…え、えーっと、る、ルビィでしゅ!///」

優馬「あははっ!最後嚙んじゃってるよ?ルビィちゃんだね、よろしく。」

ルビィ「はぅ…///」

 

ダイヤ「…むぅ」

優馬「だ、ダイヤちゃん?どうかしたの?」

ダイヤ「知らないですわ!さ、出発進行ですわーー!」

 

初めて遊んだあの日からあの時のお兄ちゃんの笑顔が忘れられなくて、夜寝る時も思い出してはドキドキしちゃってたなぁ…

そして、それからお姉ちゃんとそのお友達とお兄ちゃんに加わって、ルビィもよく遊んでもらってたの!

こんなルビィに優しくしてくれて…本当にずっとルビィの憧れで、大好きな人になったの!

ずっと…ずっとこの幸せが続けばいいな、って思ってた。

けどその幸せも長くは続かなかった。

 

ダイヤ「…ルビィ、お話がありますの。」

 

ルビィ「…おねえ、ちゃん?」

 

その時聞かされたのはお兄ちゃんが笑わなくなってしまったということ。

そしてその原因はお姉ちゃんたちにあるということ。

原因はどうとかは知らないけど、あの時、お姉ちゃんは必死にこの場にいないお兄ちゃんに謝ってたから恐らくそうなんだろう。

その事実を知ってから数日。

お姉ちゃんもあまり笑わなくなってしまった。

 

ルビィ「お、お姉ちゃん…今日は出かけないの?」

ダイヤ「…行きません。」

ルビィ「で、でもお兄ちゃんが…」

ダイヤ「行かないって言ってますの!!」

ルビィ「ピギ!」

ダイヤ「…ごめんなさい。」

 

ルビィ「お姉ちゃん…」

 

きっと私が知らないところで何かあったんだろうなって思った。

こうしてお兄ちゃんには会えないまま、内浦からいなくなってた…

その事実を知ったのと同時に私の幸せはそこで止まってしまった…

 

 

…それからの数年はすごく苦痛でしかなかった。

何も楽しくない毎日で、また怖い男の人に毎日怯える毎日で、頼れるのはお姉ちゃんとスクールアイドル、そして昔の…お兄ちゃんとの思い出だけだった。

 

ルビィ「…おにい、ちゃん。お兄ちゃんっ!お兄ちゃんっ…!」

 

 

そんな怯えていた毎日を何年も続けて、気づいた時には私は高校生となっていた。

 

高校に入学してからは同じクラスの花丸ちゃんのおかげで周りに怯える、なんてことは無くなったけど、やっぱりどこかあの日のような楽しさや幸せがルビィの中で無くて、ルビィの中にあったのは虚無感、しかなかった。

 

そんな毎日を過ごしているとお姉ちゃんから焦った感じで話をされたの。

 

ダイヤ「ルビィ!!」

ルビィ「ピギッ!?ど、どうしたの…?」

ダイヤ「ゆ、優が!優が帰ってきました!」

ルビィ「…え?」

 

 

その一言で私の歯車は動き出した。

 

それから私はお姉ちゃんから色々な話を聞いた。

どうやらお兄ちゃんは浦の星女学院が募集人数を増やすための共学化計画におけるサンプルとして浦の星に来るそうで、明日には2年生の教室に案内されるみたい。

それを聞いて、私は決心した。

 

ルビィ「…待っててね、お兄ちゃん。」

 

それから私は毎日、血眼になってお兄ちゃんを探した。

教室に体育館、廊下に屋上、色々な場所を探した。

 

…でも見つからなかった。

実は転校してないんじゃないかって思うくらいにはお兄ちゃんがいなくて、お姉ちゃんの言葉をずっと疑ってた。

でも、私は気づいたの。まだ探してない場所があるってことに。

 

ルビィ「…ここしかない。」

 

それが図書室だった。

堅く決心して、扉を開くとそこには…

 

花丸「優馬さんも本が好きなんですね!」

優馬「うん。まあ本というよりも図書室って言う空間が好きなのかな。落ち着くっていうか…」

花丸「分かるずら!」

優馬「“ずら”?」

花丸「あ…///こ、これは違くて…その…///」

優馬「あはは、あんまり気にしなくていいと思うよ。可愛いし、さ。」

花丸「ふぇ!?///あう…///」

 

珍しく談笑している花丸ちゃんと

あの頃の眩しさはないけど、確かなあの端正な顔立ちと透き通るような声。

正しくそこにいたのはお兄ちゃんだった。

 

ルビィ「おにい…」

 

昔みたいに呼ぼうと思ったその時だった。

もしかしたらあの時のことを、私のことを覚えていないかもしれない。

なんて思ってしまった。

しかも、今、お兄ちゃんは花丸ちゃんと楽しそうに談笑していて…

昔あったであろうあの苦しみから解放されて、今はもしかしたら思い出したくないのかもしれない。

 

だから、私は昔を封印した。

 

そして、新しい私を見てもらうために…もう一度、歩み始めたんだ。

 

 

~回想終了~

 

ルビィ「まぁ…結局耐えきれずに戻っちゃったんだけどね~…」

 

ダイヤ「誰に話してますの?」

 

ルビィ「ううん!何でもない!」

 

そして今年も迎えた誕生日。

お兄ちゃんに祝ってもらえるかな、なんて、お兄ちゃん、覚えててくれているかな、なんて。

色々な想いが私の中に巡って、多分、今の顔はとんでもない顔になっているだろう。

でも実際のところは気づいているんだ。

きっとお兄ちゃんは覚えててくれてるって。

だって、今日、ルビィには内緒らしいけれどサプライズデートを考えてるみたいで…

必死に計画を練っていたところをたまたま見ちゃったの!

だから気を利かせてくれたお姉ちゃんがわざわざ起こしに来てくれて…

今こうしてお兄ちゃんが来てくれるのを待っているの!

 

ルビィ「お兄ちゃん、早く来てくれないかなぁ…」

 

すると、玄関の方から声が聞こえた。

どうやらお姉ちゃんとお兄ちゃんが話しているみたい。

 

ダイヤ「ルビィ、お客さんですわよ~」

ルビィ「はぁ~い!今行く~!」

 

最初お兄ちゃんになんて言おう。

“ありがとう”かな、“会えて嬉しい”かな…

ううん、もう考えてるの。

それはね…

 

 

優馬「あ、来たみたいだね」

ダイヤ「…えぇ、ずっと、待ってましたから。」

優馬「はは…待たせすぎたね…」

ダイヤ「本当ですわ。…今日はルビィに譲りますが、次は私ですからね?」

優馬「善処します…」

 

ルビィ「お兄~~ちゃ~~ん!!」

優馬「…あれ?俺って気づかれてる?」

ダイヤ「…それじゃ、楽しんできてくださいね。」

優馬「え、ちょ、ダイヤさん?なんか突っ込まれそうな…」

ルビィ「えい!!」

優馬「ぐへっ!?」

 

優馬「…る、ルビィちゃん?」

 

あぁ、愛しいな…

ずっと恋焦がれてた。この感じ。

ずっと…ずっと…待ち望んでたんだ…

 

優馬「…誕生日おめでとう。ルビィちゃん。」

ルビィ「っ!…ずっと待ってた!お兄ちゃん!大好き!」

 

 

この幸せが今度こそ、永遠に続きますように…




いかがだったでしょうか?
急いで書き上げたものだったので、クオリティ的には読者様の期待にそぐわないものになってしまったかもしれません。
ですが、想いは本気で、全文心を込めて、書かせていただきました!
次の誕生日記念は1月1日のダイヤさん!
それまで本編が続くかどうかは分かりませんが…
これからも頑張っていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします!

今回はここまで読んでいただきありがとうございました!
次回もまたよろしくお願い致します!


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鹿角理亜 誕生日記念 ~貴方との恋愛計画~

こんにちは、希望03です。
理亜ちゃん、誕生日おめでとう!
これからも貴方の道に幸多からんことを。

それではどうぞ。


~函館・理亜の部屋~

 

~♪~♪~♪

 

理亜「んぅ~…」

 

~♪~♪~♪

 

理亜「ん~…!!」

 

バチンッ!

 

朝鳴り出すアラーム。

目を覚ますと、やはり寒い。

こんな寒い日は布団を脱ごうとは到底思わない。

 

理亜「あ~…寒い…」

 

しかし、アラームが鳴るということはもう時間なのだろう。

そう思い、時計を見てみると

 

理亜「…え、なんか早くない?」

 

いつも起きている時間と比べると大分、早い時間に設定がされていた。

 

理亜「…なんで?」

 

昨日の自分は一体どんな意図をもってしてこんな時間に設定したのだろう。

全く見当がつかない。

が、まぁ間違えたのだろう、そう思い、私はまた眠りにつこうとした。

 

理亜「おやすm「コンコンッ」…」

 

部屋に響くノック音。

恐らく姉さまだろう。しかし、時間はまだある。少しくらいまだ寝てもいいではないか。

というか、眠気に勝てない。

 

理亜「んぅ~…」

 

どうせ入ってくるならもう姉さまに起こしてもらおう、そしたら姉さまの顔も見れるし、爽やかな朝を迎えられる。

そう考えて、私は再び、眠りにつこうとした。

しかし…

 

コンコンッ、コンコンッ

 

ノック音が鳴り続いた。

 

理亜(あー!うるさいなぁ!)

 

さすがに寝起きは機嫌が悪い。

姉さまといえど、堪忍袋の緒が切れてしまった。

 

理亜「はぁい!!」

 

イライラしながらドアの先を見つめるとそこにいたのは姉さまでもなければ、親でもない。まさかの人物だった。

 

優馬「はは、ごめんごめん。でもやっと起きたな。」

 

そこに立っていたのは昔、私を救ってくれて、ずっと想い続けていた最愛の片想い人

空条優馬だった。

 

理亜「…え、あ、え!?ちょ、え!?」

 

優馬「?…あぁ、おはよう。理亜。」

 

理亜「~~~~っっっ!?///」

 

優馬「本当、どうしたの?体調悪い?」

 

その言葉と共にパニックになっている私に近づき、兄さんは額を合わせた。

 

理亜「なっっっっ!!??///」

 

もちろん私のパニックは加速した。

 

優馬「うーん…大丈夫そうだけどなぁ」

 

状況が呑み込めない。

もうどうすればいいのか分からない。

すると、ドアの前にもう1人、やってきた。

 

聖良「もう、何してるんですか?」

 

優馬「あぁ、ごめん。聖良姉。」

 

理亜「聖良“姉”!!??」

 

優馬「うお…びっくりした…」

 

姉さまを兄さんが、姉呼び…?

なんで?一体何が?

そもそもなんで兄さんがここにいるの?

色んな疑問が飛び交い、私は全く状況が分からなくなってしまった。

 

聖良「…あまり大きな声を出さないでくださいね、理亜」

 

理亜「ご、ごめんなさい…」

 

聖良「それより優君、部活動の時間じゃないのですか?」

 

優馬「あ…そうだった。ありがとう、聖良姉!」

 

聖良「っ!///い、いえ…///大丈夫です…///」

 

理亜「…」

 

そして冷静になって見てみると、今度は姉と想い人のイチャイチャを目の前で見せつけられた。

それはタブーなのでは?…姉弟であれば、だけど…

 

聖良「…ふぅ///理亜も早く起きなさい。朝食、冷めてしまいますよ。」

 

理亜「はぁい…あ!ち、ちが!ちょ、ちょっと姉さま!」

 

聖良「…なんですか?」

 

理亜「え、えっと…なんで兄さんがここに…?」

 

その質問を投げかけると姉さまはきょとんとした顔で私を見つめた。

そして返って来た言葉は私の思いもよらない言葉だった。

 

聖良「なんでって…優君は私の弟で、理亜の兄だからでしょう?ずっと一緒にいたじゃない。」

 

理亜「…はぁ!?」

 

え、ちょっと待って。理解ができない。

その言葉を平然と言ってのける姉さまにとんでもなく違和感を感じてしまう。

いつ自分の兄になったのか、血縁関係にいつなったのか、少なくともそんな予兆は一度も無かった。

もう私は焦る、焦る。

 

理亜「?…?…??」

 

聖良「おかしな理亜ね。ほら早く顔洗ってきてくださいね。」

 

理亜「え、えぇ…?」

 

 

理亜「…ふぅ」

 

一回落ち着いて、もう一度冷静に洗面台の鏡を見る。

辺りを見回しても何も異常はない。それは勿論私の部屋も。

しかし、それは兄さんがいる以外は、という話である。

それさえなければ何も変わり映えのない家である。

そうして居間まで行ってみると…

 

聖良「あ…いいですよ。私が洗っておきますから。」

 

優馬「いいよいいよ。まだ時間はあるし、それに聖良姉も準備とかあるでしょ?俺の事はいいから、ね?」

 

聖良「…///はい…///」

 

理亜「…」

 

なんだこれは、どういう状況?

と言わんばかりに姉と兄(仮)の距離が近い。

さらに肝心の姉については完全に顔が真っ赤、意識しているのが見え見えである。

本当に血縁関係があるとするなら、さっきも言ったが、タブーだ。

私も人のことは言えないから言わないけど…

 

優馬「お、理亜。お目覚め?」

 

理亜「あ…///う、うん…///」

 

優馬「そっか。兄ちゃん、もう部活に行かないといけないから今日は一緒に登校できないんだ。ごめんね?」

 

理亜「…ん!?///」

 

!?ど、どういうこと!?

一緒に登校って…いつもしてたわけ!?///何うらやま…やってんのよ!夢の中の私は!!///

 

理亜「だ、大丈夫…だ、から…///」

 

優馬「?本当、今日の理亜はなんだかおかしいよ?大丈夫?」

 

すると、兄さんが私の顔を覗き込んだ。

それに私は思わず息をのんだ。

 

理亜「っ!///大丈夫だってば!///」

 

優馬「おっと…ごめんごめん。それじゃあ、先に行ってるね。」

 

聖良「はい、行ってらっしゃい。」

 

理亜「…///い、行ってらっしゃ~い…///」

 

 

~函館・函館聖泉高等学院~

 

理亜「…」

 

気付けば昼休み。

とりあえず学校に来たのは良いけれど、これといって特に変化はなかった。

ただ、なぜか女子高から共学に変わっていて、さらにここにいる男子が兄さんだけ、というのを除けばだけど。

 

理亜「どうなってるのよ…これ…」

 

「あれ、理亜さん?」

 

理亜「はひゃ!?な、なに…?」

 

「ご、ごめんなさい!驚かせちゃったね…いや、お兄さんの所に行かなくていいのかなって気になっちゃったからつい…」

 

理亜「…え?な、なんで?」

 

「え?いやだって、いつも行ってるよ?昼休みになったら真っ先にお兄さんの所に。なのに今日はずっと窓の外を眺めてたからてっきり何かあったのかなぁ…って」

 

理亜「…」

 

だから!夢の中の私は!何やってるのよ!?

真っ先に行くって…///そんなの、私に合わないというか…///そ、そもそもなんでそんなことを…///

 

「お、お~い…理亜さぁん…?」

 

理亜「…は!ご、ごめん」

 

「ううん、大丈夫だよ~!それより、はい、これ!」

 

理亜「え、これって…」

 

「誕生日、おめでとう!」

 

理亜「…あ、今日」

 

正直、今日の事が唐突過ぎて、驚きの連続で、今日の事を全く気にも留めていなかった。

日付を見ると、今日は12月12日。

私の誕生日だった。

 

理亜「あ、ありが、とう…///」

 

「あー!私も渡す!」

「私からもー!」

 

理亜「え、ちょ、ちょっと…ふふっ」

 

なんで兄さんがここにいるのか。

一体夢の中の私は何をやっているんだろうか。

この世界に来てから、思う所はたくさん、山ほどあるが、とりあえず今はこの幸せを噛み締めよう。

そう私は決めた。

 

~放課後・通学路~

 

理亜「ふぅ…」

 

結局、クラス中の皆からプレゼントをもらってしまった…

 

理亜「…」

 

すごく嬉しい。

その気持ちは本当。だって、今まで疎遠だと思ってたクラス。そんな皆からプレゼントをもらえるなんてそんなの予測していなかったから。

でも、でも…

 

理亜「やっぱり、兄さんに祝ってほしかったな…」

 

その思いでいっぱいだった。

しかし、兄さんは今日の様子から見て、部活が忙しいんだろう。

今だって、一緒に帰るということは叶わなかった。

 

理亜「はぁ…」

 

私はクールだ。

しかし、心は乙女である。

これだけ思い焦がれている大好きな人が身近にいるのに…とても遠い。

それがどうしようもなく

 

理亜「寂しい…」

 

しかし、その言葉は冷たい空気に溶けていった。

仕方なく、夜道を一人で歩いていった。

すると

 

優馬「理亜!」

 

理亜「え…?」

 

後ろを振り返ると、そこには兄さんが立っていた。

 

優馬「ごめん、遅くなったね。」

 

理亜「え、兄、さん?な、なんで!?部活は!?」

 

優馬「あぁ、今日は妹の誕生日なんで早めに上がるってことを伝えたよ。だから早めに出て行ったじゃないか。その前借だよ。」

 

理亜「~~~っっ!?///」

 

私、このリアクション。本日三度目である。

 

優馬「それじゃ、行こう!」

 

理亜「え、ちょ、どこに!?」

 

優馬「行けば分かる!」

 

 

~函館・函館山~

 

理亜「ここ…」

 

連れられてきたところは函館山の頂上だった。

ちょうど夜。見渡す限りの光。絶景の夜景だった。

 

理亜「綺麗…」

 

優馬「…どうせならこの景色の中で伝えたくて…大げさだったよね?」

 

理亜「う、ううん!全然…!///」

 

優馬「ふふっ、そっか…良かった…」

 

あぁ、やめて。そんな可愛い笑顔。私には毒。

心臓がうるさいくらいに鳴り響く。

鼓動が止まらない。ステージの上に立つ以上にバクバク言ってる。

あぁ、だめ。

貴方の目を見て話せない。顔も上げられない。

だって…だって、今、私の顔、真っ赤で…泣きそうになってると思うから…

 

優馬「理亜…」

 

理亜「…っ!///」

 

唐突に兄さんが私の名前を呼んだ。

その呼ぶ声にさらに高鳴る心臓。

勢いで顔を上げるとそこには真剣な眼で、でも柔らく微笑んで、私を見つめる兄さんがいて…

 

優馬「…誕生日、おめでとう。これからもずっと好きだよ。」

 

理亜「ふ、ふぇ…?///」

 

優馬「プレゼントは…また今度になるけど、今はこれで精一杯だから…うん、これからもよろしく…じゃあだめ、かな…?」

 

ダメ。もう私は、私のこの気持ちは、もう止められない。

そんな顔で見つめられて、

“好き”。

だなんて、言われるともう歯止めは利かない。

もう、気持ちは止められない。

 

理亜「兄、さん…ううん、“お兄ちゃん”!///」

 

理亜「私も…私も大s………

 

 

~函館・理亜の部屋~

 

理亜「…」

理亜「…はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??///」

 

目を覚ますとそこは自分の部屋。

そう、私の一世一代の告白は、まさかの夢落ちという結果に終わってしまったのだ。

 

理亜「なんで!こうなるのよ!!あーーーー!!もう!!///」

 

今度はイライラが止まらない。

どうしてくれようか。

 

理亜「はぁ…はぁ…顔、洗ってこよう…」

 

どうしてくれようとは言ったものの、どうしようもならない。

誰も悪くはないんだから。

と、自己解決の末、何とか頭を冷やすことができたため、私は顔を洗いに洗面台へと向かった。

 

 

「~♪~♪」

 

 

『新着メッセージが一件』

『兄さん:理亜、誕生日おめでとう。今度、函館に行く予定立てるから待っててね。』




いかがだったでしょうか?
理亜ちゃんは本当、報われて欲しいものです。
大好きです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
これからもよろしくお願い致します。


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黒澤ダイヤ誕生日記念 ~新たな1ページ目を貴方と共に~

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。希望03です。

黒澤ダイヤ、未来永劫、美しくあれ。

それではどうぞ。


~内浦・黒澤家~

 

皆さま、明けましておめでとうございます。

黒澤ダイヤと申しますわ。

もう時は早いもので、新しい一年の幕開けですわね。

そして、外を見てみると晴れやかな空が広がっていて、まさに新しい1年を踏み出すためには持って来いの日となりましたわ。

しかし、そうも行かないのが黒澤家なのです。

黒澤家は内浦の名家なので、新年が始まるとなれば色々な場所へと足を運び、挨拶回りに会食など…

いくら私と言えども、こういうのは全て大人たちによる大人たちのためのものなのだから、正直、そちらで勝手にやっていただきたい…というのは昔から良く思っていた。

しかし、今や黒澤家の長女…

その立場で文句の一つは許されない、そう私は考えるようになりました。

 

それでも…それでも私は私…まだ年頃の女の子、思う所はあります…

Aqoursの皆さんと初詣だって行きたかったですし、なにより…綺麗な袴を着て、優に見せたかった…という思いが残るばかりなのです。

 

ダイヤ「はぁ…」

 

はっ、と気づいて周りを見渡してみれば誰もいなかった。

ほっとしたもののこのままではいけないと思い、深呼吸をし、気合を入れて、戻ろうと襖を開けたら、そこには

 

ルビィ「ピギッ!」

ダイヤ「え、ルビィ…?」

ルビィ「お、お姉ちゃん…」

 

そこには妹のルビィが立っていた。

 

ダイヤ「何かありましたか?」

 

ルビィ「あの、その、えっと…」

 

ダイヤ「どうしたのですか?はっきりとおっしゃいなさい」

 

ルビィ「お、お誕生日!おめでとう!」

 

そうしてルビィは私に銀色のブローチをくれた。

 

ダイヤ「まぁ…」

 

ルビィ「…ごめんね、遅くなっちゃって…気に入ってくれるかなぁ…」

 

ダイヤ「…ふふっ、気に入るも何も、他でもないルビィから貰ったものですわ…大切に致しますわ…」

 

ルビィ「…うんっ!」

 

そのルビィの笑顔に心を打たれたのはここだけの話ですわ…

ここで悶えることなく耐えられたのは私の成長ですわ…

 

ダイヤ「…ふぅ…そ、それでは行きましょうか。」

 

そうして落ち着きを取り戻して、戻ろうとした時でした。

 

ルビィ「ま、待って、お姉ちゃん!」

 

ダイヤ「ルビィ?まだ何かあるのですか?」

 

ルビィ「その、ね…もう会食は来なくていいって…」

 

ダイヤ「…え?」

 

なぜ?

まさか見限られてしまったのではないのだろうか?

そんな不安と焦りが過った。

 

ダイヤ「な、なぜ…」

 

ルビィ「ち、違うよ!ここまでずっとお姉ちゃんは動きっぱなしで疲れているだろうから…休んでほしいって…」

 

ダイヤ「…なるほど」

 

見限られてしまったわけではなかったようでした。

そう安堵しているとまだルビィは続けた。

 

ルビィ「まぁ…理由はもっと別なものでもあるけどね…はぁ…」

 

ダイヤ「ルビィ?何か言いましたか?」

 

ルビィ「ううん!何でもないよ!じゃあ…楽しんでね。」

 

ダイヤ「?…楽しむ、とは…?」

 

去り際に言われたその言葉がどうしても理解ができずにいた。

部屋に立ち往生して数分すると、玄関から話声が聞こえた。

 

「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します…えぇ、はは…そうですね…え?いやいや…」

 

ずっと部屋にいるのも私の性に合わない。

そっと玄関の方に向かい、壁に隠れながら見てみると母が誰かと話しているようだった。

声的にはまだ若く、しかしどこか大人びたような声で、どこか同年代のような雰囲気のある声だった。

 

ダイヤ「…誰ですか…?」

 

謎に包まれたその先を見ると

 

ダイヤ「ゆ、優っ!?///」

 

優馬「あ、ダイヤ。明けましておめでとう。今年もよろしくね。」

 

ダイヤ「あ、え、と…///あ、あけましておめでとうございますですわ…///」

 

ダイヤ母「あら…主役の到着ね…ふふっ」

 

ダイヤ「お母様!?///」

 

ダイヤ母「それでは後はお2人で…ごゆっくり~♪」

 

ダイヤ「…///」

 

優馬「…あ、あはは…急に押しかけてごめん…」

 

ダイヤ「い、いえ…///大丈夫ですわ…///それよりもなぜここに…」

 

なぜここに来たのか。

折角新年だというのに他のメンバーと初詣には行かないのだろうか。

ずっとそればかりが頭を巡っていた。

 

優馬「あー…いやここに来たのはルビィちゃんから…」

 

ルビィ『せっかくお姉ちゃんが誕生日なのに、朝からずっとお母さんたちの付添で挨拶回り…すごく寂しそうにしてるからお兄ちゃん来て!』

 

優馬「…ってね」

 

ダイヤ「ルビィ…」

 

思わず、感動してしまう。

そんな裏があったなんて…ルビィも成長しましたわ…

そう思っているとどうやらその続きがあるらしく、優はまだ話を続けた。

 

優馬「そんでもってその続きがあって…」

 

ルビィ『今日はお姉ちゃんに譲るけど、明日はルビィが独り占めする番だからね!!』

 

優馬「…だって…可愛いよねー…本当、できた妹さんだよ」

 

ダイヤ「…」

 

その言葉で思わず固まってしまった。

容易に想像ができますわ…電話の先で無い胸を張るルビィの姿が…

そのがめつさはやはり黒澤家の女、と言いますか…

さすがですわね…本当、抜け目ない…

 

優馬「…ダイヤ?おーい…ダイヤさーん…?」

 

ダイヤ「は、はいっ!?な、なんですか…?」

 

優馬「いや…とりあえずここで立ち話もなんだし、上がらせてもらいたいなぁ…って」

 

ダイヤ「…ふふ、しょうがないですわね…さ、案内いたしますわ!」

 

その時のダイヤはどことなく声が上ずり、ご機嫌のような感じがしたのは神のみが知る。

 

~黒澤家・黒澤姉妹の部屋~

 

ダイヤ「粗茶ですが…どうぞ」

 

優馬「あぁ…お構いなく…ぷふっ、はははっ」

 

ダイヤ「むっ!なんですか?急に…」

 

優馬「いや…やっぱりダイヤはしっかりしてるなぁって思ってさ」

 

ダイヤ「…それ私の事、今までなんだと思っていたのですか…?」

 

優馬「え?うーん…たまにドジしちゃう真面目っ子?」

 

ダイヤ「それ馬鹿にしてますわよね!?もうっ!」

 

優馬「ごめんごめん…それでプレゼントなんだけど…」

 

そう言いながら、優は鞄から何かを取り出した。

受け取ってみると、それは綺麗な花の飾りがついた簪だった。

 

ダイヤ「これ…」

 

優馬「ダイヤにぴったりだな…って、着物映えするだろうし、ね?」

 

ダイヤ「…」

 

すると、私の目から一筋の涙がこぼれ、それを切り目にまるで蓋が取れたかのように涙が溢れ出てきてしまった。

 

優馬「…え!?あれ!?き、気に入らなかったかな…?」

 

ダイヤ「そんなこと、ありませんわ…ただ、本当に、嬉しくて…」

 

涙が出るのは当たり前だ。

だって私からしてみれば優からプレゼントをもらうなんて、あの頃以来

どんな高価なものよりも、これに勝るほど嬉しいものは私にとっては存在しない…そんな代物。

 

優馬「…そ、っか…そうだよね。あれから月日が経ってるからね…」

 

ダイヤ「っ!あ、えっと…あ、ありがt「それでなんだけど…」…え?」

 

優馬「実はプレゼントの延長、というものもご用意してまして…」

 

ダイヤ「…延長?」

 

優馬「そうそう。」

 

ダイヤ「…怖いのですが」

 

優馬「怖がらなくても大したことじゃないよ。」

 

ダイヤ「はぁ…それでなんですの…?」

 

その時、初めて唖然となるというのを体感しました。

なぜ兄?そこは恋人…とかでは!?

と、若干、私欲が入りましたが、恋人の方がよっぽども良いでしょう!?

そう、思うのが当然ですが…

 

ダイヤ「兄…というと私が優の妹になれ、ということですわよね…まさか、そういった趣味が…?もしかして…ずっとルビィの事を…」

 

優馬「ちょ、違う違う!まぁ…確かに語弊が生じるような言い方してたけどさ…」

 

ダイヤ「じゃあ一体なんでそんなことを…」

 

優馬「…ダイヤに休んでほしいからだよ、身も、心も」

 

ダイヤ「え?」

 

優馬「ダイヤって学校では浦の星学院の生徒会長として、家に帰れば黒澤家の長女として…毎日息が詰まるような生活を続けてると思うんだ。」

 

ダイヤ「…それは」

 

優馬「うん、分かるよ。ダイヤもそれが自分の運命だ、って覚悟があるのは。でも僕にはなんだか無理してるような気がしてならない。」

 

ダイヤ「無理なんて…してませんわ。私は私の使命を…」

 

優馬「…」

 

その時、優の顔はいつにも増して真剣な表情で、そして本当に心から心配をしてるような顔で私を見つめていました。

 

ダイヤ「っ…///」

 

そんな真剣な話をしているにもかかわらず私は邪な感情を彼に抱えてしまった。

 

ダイヤ(か、かっこいい…///)

 

本当はこんな気持ちはこの雰囲気にふさわしくはない、というのは私には分かります。

しかし、気持ちの高揚、胸の高鳴り、顔の火照りは抑えることができませんでした。

 

優馬「…僕の我儘だよ。お節介だって分かっていたつもりだったんだ。だから、今日限定でいい。少しでもダイヤにとって甘えられる存在になりたい、それだけだよ。」

 

ダイヤ「…優」

 

優馬「うん…だからそんな疚しい気持ちは微塵もない。安心していいからね。」

 

ダイヤ「…はぁ…少しはあってもいいでしょうに…はぁ…」

 

優馬「溜息2回も…そんなに嫌ならやめるけど…」

 

ダイヤ「嫌なんて一言も言ってませんわ!!///是非お願い致します!!///」

 

ダイヤ(これもまたとない距離を縮めるためのチャンス…これを機に鞠莉さんや果南さん…それに千歌さんたちに少しでもリードできますからね…ふふっ♡)

 

優馬「そ、そっか…それなら良かった、と言ってもまだ兄、っていうのがよく分からなくて…何をすればいいのやら…」

 

ダイヤ「それならまず呼び方からですわね」

 

優馬「呼び方?呼び方なら僕はいつもダイヤの事は呼び捨てだよね?そこまで変わらないような…」

 

ダイヤ「優の事じゃありませんわ。私が呼ぶときの呼び方の事です。例えば…」

 

ダイヤ『お、お兄ちゃん…///』

 

優馬「っ!///」

 

ダイヤ「…///な、何とか言ってくださりませんか!?///は、恥ずかしくて…///」

 

優馬「あ、あぁ…いや…あまりにも今までのギャップがあって、その、可愛くて…うん…///」

 

ダイヤ「っ!///そ、そうですか…///可愛い…♡」

 

それなら、と私は少し調子に乗ってしまいました。

 

ダイヤ「ふふっ♡優お兄さまっ♡」

 

優馬「なっ!?///」

 

ダイヤ「それとも…優兄さん?♡」

 

優馬「ぐっ…///」

 

ダイヤ「ふふっ、これ面白いですわね…」

 

優馬「これ破壊力というか…はぁ、心臓持つかな…///」

 

ダイヤ「優はどの呼び方が良かったとかあります?」

 

優馬「いやもうどれもダイヤの演技がうまくて様になってたからなぁ…優劣付け難いよ」

 

ダイヤ「ふむ…そうですか…じゃあ、優お兄さまですわねっ♡」

 

優馬「うぇ…まさかのそのチョイスか…一番心臓持たないよ…///」

 

ダイヤ「あら、じゃあ変えましょうか…」

 

優馬「いや大丈夫だよ。今日はダイヤの誕生日、僕が言い出したからね。なんでもばっちこいだから。」

 

ダイヤ「ふふっ♡その意気ですわ!お兄さま♡」

 

優馬「うっ…な、慣れないな…」

 

ダイヤ「そんな弱音を吐いてもやめませんわ。」

 

優馬「分かってるよ…なんだか急にやる気になってるような…」

 

ダイヤ「ふふっ♡」

 

それもそうですわ。

なにせ何年も前から貴方の事を想い続けてきましたから

誕生日という特別な日、そんな日くらいは少しのからかいも許してくださいね

でも、そんなからかいだけではありませんのよ?

こうやっていつにない姿で刺激することで今日という日が私にとっても、貴方にとっても、きっと特別な思い出になりますから…

だから、だからどうか、今日という私と貴方との1ページ…忘れないように刻んでくださいね?

 

 

…昔も今も、そしてこれからも、ずっとずっと貴方の事を、愛しています。




改めて、ダイヤさん誕生日おめでとうございます。
これからも美しく清らかな貴方でいてください。
そんな貴方をずっと、これからもずっと、微力ながら応援しています。


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