デート・ア・ラスト (銀煌)
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終スタート
プロローグ
時に笑い、時に泣き、時に怒り。
そして、五河士道と精霊達の物語は、終結した。最終的に、世界の意志によって誰もが笑顔になれる結末になった。
それから一年。再び、意志の力によって物語は動き出す。
これは、五河士道の物語でも、精霊達の物語でもない。想いの力によって、顕現した一人の精霊擬きの物語だ。
****
4月、桜が咲き誇り新たな日々が始まる季節。満開の桜の下、高校一年から二年になる今日。
彼女、
「はぁ...遅い」
燃えるような赤い髪を白と黒のリボンで両サイドで結んだツインテールを揺らしながら、彼女は人を待っていた。
「それにしても、もう一年。いいえ、あの日から含めるともう二年も経っているのね...」
ユーラシア大陸のど真ん中で誕生した〈デウス〉またの名を
しかし、澪の企みも士道と精霊たちそれと〈ラタトクス〉に阻止された。始原の精霊が消えたことにより、純粋な精霊だった
十香は世界の意思によって復活した。誰もが泣いて再会を喜んだ。それから一年経った今でも世界の意思については解明しておらず、〈ラタトクス〉で定期的に検査をしてもっている。
「お、遅れてごめんなさいっ」
琴里が物思いにふけっていると、後ろから焦ったような声が掛かった。
「もー、遅いわよ」
「むん、すまぬ。七罪を起こすのに少々手間取ってな」
「あー、なら仕方ないね」
後ろを振り返って見るとそこには四人の少女がいた。
一番初めに謝ってきたには
次に少し癖のあるしゃべり方をしているのは
「まったく、七罪さんは『行きたくない!行きたくない!ベットで寝ていたい』なんて駄々こねるもんでしたから、連れてくるのに大変でいやがりましたよ」
あきれながらため息をもらしているのは
「だって、だって。進級よ!?担任によってはあれがあるじゃない!自己紹介!!私、あれが何よりも嫌いなのよ!?なに!?自己紹介って!?私のような奴はどもった所を笑われて御終いなのよ!!??!!」
彼女たちは全員、琴里と同じで今日から高校二年生になる少女達だ。
「ふむ...ここで見る桜も二度目じゃな」
「...ですね」
やはり、彼女たちも忘れられないのか桜を見ながら懐かしそうに眼を細める。
「ほら、懐かしむのはいいけど。早くいきましょう?遅刻したら先生に怒られるわよ」
「それもそーですね。ほら、いつまでもうずくまってないでさっさと行くでいやがりますよ」
「ちょ、ちょちょちょっとまって!心の準備させて!?あっまって制服引っ張んないで!?ちょ、真那ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
七罪の心からの静止も虚しく、五人は今日も仲良く来禅高校に向かって足を進めた。
次の瞬間、風が吹くと落ちていく桜が一斉に宙に舞った。それはまるで、何かが起こること示唆しているようにも感じ取れた。
****
無事、琴里達は遅刻せずに始業式を終えられた。始業式前に確認したクラス表は二年三組になっており。〈ラタトクス〉が手をまわし、琴里達は今年も同じクラスであり、担任はまたもやエレン・M・メイザースだった。
そのおかげもあってか七罪が警戒していた自己紹介はなかった。
「皆さん、始業式お疲れ様です。今日から皆さんは二年生になったので先輩としての自覚を忘れぬように」
エレンは長々とした言葉を締めくくると。話を変えるかのように「さて...」と切り出した。
「机の数を見て察しの良い人は気が付いたかと思いますが。このクラスに転校生がやってきます」
それを聞いた生徒たちは一気に盛り上がった。
「転校生!どんな人だろう?」
「男子かな?イケメンだといいなぁ」
「いや!きっと女子だろ!!」
キャッキャッと騒ぎ出す生徒たち。その中で、琴里だけが難しそうな顔をしていた。
(転校生?そんな話、
まぁ、後で聞けばいいか。と下に向けていた視線をエレンへと向けると丁度、エレンは生徒たちを落ち着かせている所だった。
「全員静かにしてください。はぁ、まったく。他のクラスもホームルームをしているのですから。あまり騒ぎすぎないでください」
すると、生徒達は不承不承ながらも返事をして鎮まる。
全員が静かになったのを確認したエレンは一度咳払いをすると教室の外にいる転校生を呼ぶ。
「お待たせしました。村雨さん入ってきてください」
その苗字を聞いた瞬間、琴里は、いや村雨という苗字を知っている。元精霊達と真那も目を見開いた。
「うぃーす」
村雨という転校生入ってきた瞬間、琴里達はさらに驚く事になった。思わず、口から言葉が漏れる程に。
「───似てる...」
似ている、彼女の髪色に、濃いクマはないが眠たそうな眼。性別もしゃべり方も違うのに、どことなく彼女を彷彿とさせる雰囲気。
そう、かつて〈ラタトクス〉の解析官をやっていて───
「えーっと、自己紹介すればいいんでしたっけ?」
五河琴里の元親友でもあり───
「少し遠いい地域から、天宮市までやってきました」
士道を見守るために生み出した崇宮澪の半身───
「
───
やばい、原作読み直してもたまに口調わからんくなる。六喰って「のじゃ」とか言ってたらOK?
あー文章力が欲しい...
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村雨を名乗る少年
さて、転校初日で自己紹介も悪くなかったはず。
いろんな人から、
「「「じーー」」」
なぜかすごい見られている。
えぇ……俺なんかやらかした?
この高校の中でもトップクラスにいるであろう女子五人にみられていた。
俺がチラッと目を合わせればすぐにそっぽを向き、ひそひそと話し合う。かと思うとまたこちらを見つめてくる。
「なぁ、あれ何してるか分かるか?」
俺は前の席で友達と話しているやつに声を掛ける。(席が窓際ぼ一番後ろなので必然的に前か右しかいない)
「ん?どうした、転校生?」
「いや、なんかあそこの五人にすごい見られてて気になるんだが」
例の五人を見た前の席の
「大方、転校生が気になるんじゃないか?」
「気になるなら話しかけてくればいいんじゃないか?さっきまでのように大勢に囲まれていたわけでもないのに」
「まぁ、確かにそうだな。でも多分、氷芽川さんを待っているんじゃないか?あの人、人見知りだって聞いたし」
だからといって全員に疑うような目で見られてるのはどうなのだろうか。
俺は頭を悩ませなががらその五人を見ていると、何を思ったのか山吹が筋違いなことを言ってきた。
「ははぁーん、さては転校生。あの五人の誰かに一目ぼれでもしたか?確かに、転校生の事を気にかけていると思うが。お前も割と見てるぞ?」
「いや、違うから。確かにあの人達はレベルが高いと思うけど別に惚れたとかでは断じてない。」
みなまで言うなとでも言いたげな癪に障る顔をした山吹は、うんうんと頷いた後の肩を竦めながら俺の肩に手を置いた。
「だがしかし、そんな転校生に悲報だ」
「悲報??」
「あぁ、彼女達は可愛い。いや、崇宮さんはどっちかというとカッコいい寄りだけど。まぁ、そこはいい。彼女達はな、告白を全て断っているんだ。それがなぜかって?それはな....」
山吹は世界に関わる重大な事を話すかの如く。仰々しい態度で一拍空けた後。
「来禅高校の伝説の先輩。
と、至極どうでも言いこと言い放った。
「.....は?」
「は?っっではない!告白した身からすれば滅茶苦茶悔しいんだぞ?」
「それって、つまりはその五河士道って人に惚れてるだけなんじゃ?」
「違う!!毒牙にかかったんだ!俺の姉ちゃんはそいつと同級生だったんだが。姉ちゃんが言うには、転校生が来るたびに五河士道のものに集まっていき!キザば言葉で来禅の女子を堕としていったんだ!」
「絶対それ、少しは盛ってるだろ山吹の姉は...」
全く、彼女達の事はある程度
「まっ、いいや。俺帰るわ、まだ引っ越しの片付けあるしな」
「一人暮らしなのか?」
「まぁ、そんな所だ」
俺は通学用カバンを持って席を立つ。HRは既に終わっており、俺に質問してきたクラスメイト達も、もう帰宅している。
「そうか、じゃまた明日だな」
「おう、また明日」
****
山吹に別れを告げた後、俺は学校を後にすると家から少し遠回りして天宮市の街並みを少しだけ見て回った。
「.....ここが、アイツがいた所か。空間震もなくなって、随分とまぁ平和になったもんだ」
俺はここに来たことないはずなのに、何故か懐かしさを感じる。
これは、俺がアイツと繋がりがあったからかもしれない。
「っと、そろそろ帰るか。まだまだダンボールの中に荷物が入ってるからな」
元来た道を戻ろうと踵を返そうとして、ふと俺は動きを止めた。
俺は上を見上げて遠くを忌々しげに睨みつける。
「チッ、最近出てくる頻度が多くなってるな。はぁ、今日はあんまり片付けできなさそうだな...」
家に向かおうとした足を別の方向に向けて、俺は走り出した。
****
「くゎぁ~、ねっむ。まじで出る頻度をどうにかして欲しいわ」
欠伸を噛み殺しながら玄関で靴を履く。
確かに、一般人を巻き込まないから深夜はありがたいのだが、俺がクソ眠い。とはいえ、最近は夕方やら朝やら本当にいつ来るか分からないから更に気を引き締めなければならない。
「あ......」
「んぁ?」
玄関のドアを開け、外に出ると。向かいの家から赤髪のツインテール少女が出てきた。
「あんた.......転校生?」
彼女は、昨日俺の事を見てきた5人の内の一人だ。
ここってこうじゃないか?等の意見があったらどんどん言って欲しいです。
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少女達との語らい
まじでごめんなさい。お久しぶりです。
「あんた......転校生?」
彼女は驚いた様子で俺の事を見つめてくる。
「確か。同じクラスの...」
「えぇ、五河琴里よ、よろしく」
「あぁ、よろしく」
俺と五河の間で気まずい雰囲気が流れる。すると、五河は突然俺の近くに寄ってきた。
「驚いたわ、まさか私の家の向かい側に引っ越してくるなんて」
「俺もびっくりしたよ。こんな近くに同級生が住んでるなんてな」
「そうね...」
再び沈黙が訪れる。五河はなぜかそわそわして自分の髪を指でくるくるしており、俺は気まずさで心の中で頭を抱えていた。
お互いほぼ初対面。それなのに昨日難しい顔をして見られていた事で俺は何故かいたたまれない気持ちになり、昨日の事について聞こうにも空気が重くて聞くに聞けない。
︎ ︎ ︎ ︎どうしよう、いやでもなんか言わないとな。
そして、五河の方に勢いよく向くと、彼女と目が合う。五河の顔は何かの決意をしたような表情をしており、そして───
「「なぁ(ねぇ)」」
奇しくも五河と声が合わさった。
「「え?」」
思わず呆けた声を出してしまう俺達。その拍子にお互い顔を見合わせたまま固まってしまう。
「さ、先、どうぞ?」
しかし、俺は咄嗟に正気を取り戻し先を譲る。
「え?いや、あなたが先でいいわよ。私のはどうでもいいことだから」
「いやいや、俺の方こそクソどうでもいいことだから」
「な、何してるんですか?」
俺と五河が譲り合っていると後ろから声を掛けられた。少し驚きながら後ろを振り返ると青い髪をした小柄で可愛らしい少女がいた。
「な、なんでもないわ。四糸乃、おはよう」
「おはようございます。あの、この人って確か...」
四糸乃と呼ばれた少女は少し緊張した様子で、五河の後ろに隠れながら俺を見てきた。
「昨日転校してきの村雨終だけど...大丈夫か?」
「は、はい。氷芽川四糸乃...です。よろしくお願いします」
「四糸乃は人見知りだから。そこんところ分かって頂戴」
「あぁ、分かった。よろしくね、氷芽川」
彼女の小動物っぽさに、多少の庇護欲を感じが、次の瞬間の叫び声によってかき消された。
「あ、あぁぁぁぁーーー!!!」
「え、何事?」
叫び声を上げながら緑の髪の少女が氷芽川の前に立ちふさがりキッとこちらを睨みつけてきた。
「あ、あんた!転校して間もないのに四糸乃と琴里をナンパするなんて…な、何のつもり!?」
「……ん?」
何を言ってるんだこの緑髪は。
五河と氷芽川を見てみろ、彼女らも突然の事にぽかんとしているぞ。
「いや、あのな?えーっと。とりあえず誤解だから落ち着いて───「落ち着いてるわよ!!」
全く落ち着いてる気がしないのだが。
どうしたものかと頭を悩ませていると、緑髪の奴の後ろから竹刀袋を肩に掛けている活発そうなポーニーテールの女子が歩いてきて、緑髪に向かってチョップをかました。
「いっったぁぁぁ!!?」
「全く、何していやがるんですか。転校生も困惑していますよ」
「だ、だってぇぇ~、あの転校生がもしかしたら…」
「だっても何もねぇですよ。すいませんね、転校生。この子は思い込みがすこーしだけ激しいんですよ」
「あ、うん。そうなんだ」
何と言いうか、やっぱり癖の強い子なんだなと思いながら肩から落ちそうになっていた通学バックを掛け直す。
「そう言えば、自己紹介がまだでしたね。私は崇宮真那。こっちの緑は鏡野七罪です」
「昨日も自己紹介したから知ってると思うけど、村雨終。よろしく」
︎ ︎ ︎ ︎ ︎俺は握手をしようと手を差し出し、崇宮もそれに応えてくれた。しかし、鏡野は未だ俺を警戒しているのか、こちらを睨んでくる。
「よろしくなんてしないわ!男、しかも男子高校生なんてケダモノよ!転校生っていう身分で私らに近づいて、そのままおいしくいだだくつもりなのよ!」
「え、えぇ……」
「気にしないでください。七罪はこういう人なので」
︎ ︎ ︎ ︎男子高校生への偏見が凄すぎないか?いや、まぁ、確かに高校生にもなるとそういうことするようになるのが多くなるのは否定は出来ないけど。
︎ ︎ ︎ ︎俺が鏡野への対応に困りながら腕時計で時間を確認すると、そろそろ学校に行かないといけない時間になっていた。
「あっ、そろそろ行った方がいいな」
「もうそんな時間?六喰は?」
「もうすぐ来ると思いますよ」
︎ ︎ ︎ ︎そういえば、昨日もいた子がいないな。まぁ、俺には関係ないし先に行くとしよう。
「じゃ、俺は先に行かせてもらうよ。後で学校でな」
︎ ︎ ︎ ︎手をヒラヒラと振りながら、学校に行こうと足を進める。
「ちょっと待って」
︎ ︎ ︎ ︎五河の横を通り過ぎようとした時、急に腕を掴まれた。
「え、何?まだなんかあるの?」
「いえ、そんなんじゃないけど。どうせなら一緒に行きましょう?同じクラスなんだし」
「あっ、うん。別にいいけど」
︎ ︎ ︎ ︎別にいいんだけど、なんで?あと掴む力つよない?
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伝説の再来/邂逅
「これより被告人、村雨終の裁判を始める。まずは検察官の佐藤、彼の罪状を述べてくれ」
あの後。星宮六喰と合流した俺たちは遅刻することなく学校についた。
そんな俺は今、二年三組の男子生徒全員に囲まれている。
「はい。彼は今朝、来禅高校5大天使と仲良さげに登校してきました。その姿はほとんどの生徒が見ており。私もその光景を発見しました」
「うむ、よろしい。それでは次は弁護人の近藤。発言をどうぞ」
登校してきたら急にドナドナされて囲まれて、男子生徒には殺すぞと言わんばかりの目をされている。
「はい。私からはただ一言。彼を罰するべきかと」
「いやお前弁護人だろ守れよ」
「静粛に、被告人の発言を許可した覚えはないぞ」
嘘だろ弁護人も敵とか勝てねぇだろ。
「もう時間もないので判決を言い渡す」
裁判長(山吹)が木槌に見立てた筆箱を机に叩きつける。
俺含め全員が固唾を呑み。目を伏せていた裁判長は勢いよく目を見開く。
「死刑だ!やれ!!!」
そうなると思ったよ畜生!!!
「馬鹿野郎!俺は逃げるぞ!」
囲んでいる男子生徒を押し退けて俺は教室のドアへ走り出す。
当然、あいつらも追ってくる。
「追え!絶対に逃がすな!」
「殺せ!殺せ!殺せ!」
「使え!登山用のロープだ!」
「でかした登山部!こいつで縛り上げろ!」
殺意高すぎだろこいつら。まぁでも、もうとっくに教室の扉に着いている!このまま逃げ切っ───
「何をしてるんですか、あなた達。もうチャイムもなりますし、HRするので早く座って、きゃっ!」
扉を開けようとした所に、担任のエレン先生がやってきた。
「おらお前ら!先生が来たぞ席に座りやがれ!学校最高!!」
なんか先生が何も無い所ですっ転んでたけどあの人はああいう感じらしいから気にしないでおく。勝ったなガハハハ!
なお、下校するまで逃走中が始まった。
*******
「マジであいつら許さん」
俺は肩らからずり落ちそうになっているバックを掛け直し、ため息をつきながら道を歩く。
すると突然、背後から声をかけられた。
「おぉ、お前は来禅の生徒か!」
「ちょ、十香!急に声かけたらダメだって!」
後ろを振り向くと、大学生らしき男女が2人立っていた。
女性の方は笑顔で、男性の方は少し申し訳なさげにこちらを見ている。
「あの、何か用ですか?」
「あぁ、ごめん!彼女、というか俺達どっちも来禅の卒業生でさ。思わず声かけちゃったんだよ」
男性の方が苦笑しながら両手を合わせて言ったことを聞いて、俺は納得する。
「あー、そういう事ですか。急に声かけられて何事かと思いましたよ」
「すまなかったな!ここいらで見ない顔だったからつい声をかけてしまった!」
「よく分かりましたね。ついこの前ここに引っ込んたんです」
「やはりか!私は夜刀神十香!よろしくな!」
元気よく手を差し出してきた夜刀神さんに俺も手を差し出す。
「村雨終です。よろしくお願いします、夜刀神さんと
「......? あ、あぁ、悪い。よろしく」
何か考え込んでいる五河さんにも手を差し出すと、慌てて握手してくれた。
*******
「ほー、それじゃあ終は、琴里達と同じクラスなのか!」
「えぇ、そうですよ。まぁ、俺は転校したてなのでそんな話す中でもないですが」
「なに!?いかん、いかんぞ!友達は沢山いた方がいいからな!そうだろシドー!」
「そうだな。まぁ、村雨は良い奴っぽいし、すぐに友達ができるだろ。琴里達とも仲良くしてやってくれ」
奇しくも帰り道は一緒だったため、今は3人で話しながら歩いている。
俺が二年三組っていう話から、五河さん妹と同じクラスということが分かり。2人から仲良くしてくれと言われてしまった。
「同じクラスなんで話す機会もあると思うんで、その時に友達にでもなりますよ」
まぁ、今朝の登校は偶然だし、教室では話さなかったからな。友達になれたかと言えば微妙か。
俺がそう思っていると、『おおっ!』と手を叩いた夜刀神さんが、五河さんの肩を力強く掴んだ。
「そうだシドー!今日はみんな集まって進級パーティーをするのだったな!そこに終も呼ぼう!そうすれば、琴里達とも仲良くなれるはずだ!」
あっ、なんか嫌な予感がする。
「は?いや、確かにパーティーはするし、俺も構わないけどさ。一人分増えるだけだし。でも村雨も都合もあるだろ。あと全員が連れてきていいって言うとも限らないし」
「大丈夫だ!多分!私が説得する!」
いや、気まずいし断りたいんだけど。
「あの、俺はだいじょ──「終も来てくれるな!」
「いや、けっこ──「安心しろ!きっと楽しいし、シドーの料理は世界一美味しいぞ!」
押しが、押しが強すぎる!!!いや、ここで押されるのは良くない。俺は、しっかりNOと言える日本人なんだよ!!
*******
「という訳でこいつがその、村雨終だ!」
「あっ、村雨終です。よろしくお願いします。なんか、すいません。混ぜてもらっちゃって」
うん。まぁ、あんなキラキラした純粋な目で見られたら無理だよね。僕は悪くない。
伝説の再来っていうのは、来禅の5大天使を引き連れて登校してきた彼は、その光景を見た人達から例の伝説プレイボーイ先輩の再来かと思われたそうで。
って理由のタイトルです。
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進級パーティー的なやつ
なんか、気がついたら年明けて2月になってましたね...面目ねぇ...
それではどうぞ!!!
夜刀神さんの純粋な気持ちには逆らえず、大人しく五河宅までついて行く事になった。
「こいつが村雨終だ!」
「あー、どうも。よろしくお願いします」
夜刀神さんに背中をはたかれながら、俺は1歩前に出て挨拶をする。
全員の視線が一気に俺に集まってなかなかにやりにくい。
特に五河妹達同級生組なんて目を丸くして驚いて...驚いて?
あれ、事前に言ってあったんじゃないの?
「な、なんでこいつがここにいるのよ!」
鏡野がテーブルを叩いて立ち上がり、夜刀神さんに詰め寄る。
「さぷらいずと言うやつだ!聞けば七罪達と同級生らしいから、親睦を深めてもらおうかと思ったんだ!」
「い、いや、私たちそんなの頼んでないし...」
「迷惑だったか?」
「うっ、いや...別に、大丈夫...だけど」
鏡野七罪、敗北。やはり夜刀神さんの純粋な眼差しの前には誰も為す術ないのか。
「鏡野、俺も悪いとは思ってるよ、だけど聞いてくれ俺も最初は断ろうとしたんだよ。だけどさ、断るのはさ、分かるだろ?」
「くっ...今回だけよ!」
俺が弁明をすると、鏡野はこちらをキッと睨みつけて五河妹の所に戻っていった。
「あー、それで五河さん、俺はどこに座ればいいので?」
「琴里の横に椅子置いてあるから、そこに座っててくれ。あとそうだ、俺の事は名前で呼んでくれて構わないぞ、琴里も五河だしな」
「分かりました」
士道さんに言われた通りの場所に座る。椅子に座ると同時に盛大なため息が出た。
「うちの十香が迷惑かけたわね。多分殆ど無理矢理だったでしょう?」
「あー、うん。まぁ半ば無理矢理感は否めなかったけど。あの人も悪気があってやった事じゃないのは目を見ればわかるからさ、悪いけど今日はご相伴にあずからせてもらうよ」
「そんな気を張らなくていいわよ。楽しくいきましょう、せっかくのパーティーなんだし」
そうだな、と答えながらテーブルに運ばれていく料理を見つめる。人数が人数だからか、量は沢山あり、どれもこれも美味しそうに見える。
「へいへい、そこの少年〜飲んでるかい?」
むせるような酒の匂いと共に、伸びてきた手が俺の肩を掴む。
「酒臭っ...えーと、どなた?」
「おーっと、これは失礼。あたしは本条二亜。しがない漫画家をしてるよ。よろしくね!」
「ど、どうも。よろしくお願いします。漫画家なんすね」
むせ返るような酒の匂いに顔を顰めながら、肩に置かれている手をそっと外す。
「おっ、気になる?仕方ないなー!そんなに気になるなら教えてあげよう!」
「いや、別にそんな気にしてな「まぁ、そんなこと言わずにさ!」
対して気にしてもいなかった為、断りを入れようようとした所に本条さんが背中をバシバシと強く叩いてきた。
「『SILVER BULLET』って作品を知ってるかな?その作者がこのあたしなのさ!」
「それって...ブラストで連載されてる...」
「おっ、知ってる?見る目あるねー終クン!サイン書いてあげようか?」
「いや、それは結構です」
胸ポケットから取り出したペンをこちらに向けて、ワイシャツにサインを書こうとする本条さんの腕を抑えながら、助けてくれと五河に目線を向ける。
「はぁ...二亜、あんまり彼に絡むのはやめなさい。困ってるわよ」
「えー、そう?」
五河に注意された本条さんは、へらへら笑いながら離れていき、また別の人に絡みに行った。
「悪いな五河。助かった」
「別にいいわよ、慣れてるし。今はここにいないけど、もっとめんどくさい絡み方してくる子もいるから」
「ふーん、なんというか大変なんだな」
「そうね、良くも悪くも個性的な子が多いから」
運ばれてきた料理に舌鼓を打ちながら、会話をする。
おぉ、この唐揚げ美味いな。
「あぁ、それと──」
コップを置き、何かを思い出した五河は、俺の方を向いて薄く笑った。
「私の事は琴里でいいわよ。兄も言ってたけど、ここには五河が2人いるから。ややこしくなるから」
え、なに?その笑顔、どういう感情で出た笑顔なの?やばい(やばい)。控えめに言って反則では???
「村雨?」
困惑気味な顔をした五河が全く反応しない俺の事を呼びかける。
しまった、思わず思考が飛んでしまった。
「あ、あぁ。悪い、それなら俺も終でいい」
「そう、なら改めてよろしく。終」
「そうだな、よろしく、琴里」
「私は鳶一折紙」
突然、後ろから声をかけられる。
うおっ、急すぎてびっくりした。
「と、鳶一さんですか、よろしくお願いします」
「ん、よろしく。そんなことより村雨終、あなたに聞きたいことがある」
鳶一さんは、俺の目をじっと見つめながら、疑惑の表情で口を動かした。
「あなた...何を隠してる?」
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ラタトスクには内緒だよ♪
あっ、タイトルにそんなに深い意味はないです。全部その場の勢いなので。
それでは、どうぞ!!!
鳶一さんから飛び出した言葉で盛り上がっていた空気が一気に死んでいき、一瞬で静かになる。
隣にいるも目を見開いて驚きの表情になっている。
「......隠し事ですか?」
「えぇ、村雨。この苗字だけなら偶然で済む。探せばこの苗字の人なんてそこらにいるから」
俺から目を離さずに、鳶一さんは淡々と語る。
「でも、苗字も同じで尚且つその容姿。偶然で片づけることは私にはできない。みんなも、口に出していないだけでそう思っている。……もう一度聞く、あなたは何を隠してるの?村雨令音に関係があるの?」
「……」
俺は、無言で手元にあるジュースを呷り、空になったコップをテーブルの上に戻し、静かに息を吐く。
「ふぅ…成程、あなた方に会ってから、ずっと好奇の視線に晒されていた理由が分かった。俺がその村雨令音なる人物に関係していると思われているからか」
「早く答えて」
鳶一さんからの圧が増す。
俺は、腕を組み、うんうんと頷き、こちらを見ている全員の顔を見回し、鳶一さんの方に向き直り一言。
「結論から言えば、関係はしてますよ。そりゃあ、鳶一さんの言う通り、苗字は兎も角容姿まで似ていたら疑いますよね」
俺のその言葉に誰かが息を飲んだ。
「でも、今はあえて答えない」
「答えない?答えられないとかではなくて?」
「えぇ、別に俺がここで答えてもあなた方に何かしらの影響があるわけでもないし、バレたから消すってこともないですからね」
「それは、何故?」
俺の態度が気に食わないのか、無表情ながらも少しイライラした様子で詰め寄ってくる鳶一さん。それを両手で制しながら、俺は席を立つ。
「まぁまぁ、少し落ち着いて下さい。なにも答えないって言っているわけではないので。俺の正体が知りたいのならば、少し着いてきてください。あぁ、琴里、今からフラクシナスを呼んで全員乗せてくれ。もちろん俺も乗せてくれよ?」
****
「それで、フラクシナスを呼んで全員乗せたけど、あんたは何を教えてくれるのかしら?」
フラクシナスの艦長席に座り込んだ琴里は足を組んで俺を睨みつける。
「おーけーおーけ。分かってる、嘘はつかないよ。俺の秘密を言えばいいんだろ?」
まずは何から話そうか、そうだな、あれにしよう。
「俺の部屋の本棚、その3段目の右から3冊目の本」
「........なんの話?」
「まぁ、最後まで聞け、その本は俺にとってめちゃくちゃ重要なもんなんだよ。まさしく俺の秘密だ」
ゴクリ、と誰かが唾を飲み込む音が聞こえた。
「......その本は何かと言うと、俺のお気にのアレな本だ」
空気が、凍った。
「あ、あれな本って...つまり...」
「あぁ、エロ本だな」
堂々と言い放つ俺に対して、琴里は惚けた顔をしている。
しかし、直ぐに咳払いをして元の表情に戻した琴里は、声を震わせながら問いかけてくる。
「そ、それは...何か関係のあることなの?」
「大ありだろ、お前らの知りたがってる
少し呆れたふうに喋る俺を見ている琴里は、青筋を立てながら、口元をひくつられせている。
うん、少しからかいすぎたかな。
「終、あなたは私達をおちょくってるのかしら?」
「うん、まぁ、割と」
「あんた!ふざけるのもいい加減に!」
「悪かった、悪かった」
キレだした琴里が、立ち上がって俺に詰め寄ろうとしてくるのを手を出して静止する。
......うん、そろそろいいかな。
「冗談だよ冗談。張り詰めてる空気を和ませようとした俺の小粋なジョークさ」
まぁ、別にあの話が冗談な訳では無いけど。
「話すよ、ちゃんと。でもまぁ、ついでに奴らのことも話そうかと思ってたからさ」
「奴ら...?」
「そっ、奴ら。最近、噂で聞いたことない?怒りっぽい人が怒らなくなった。仕事に真面目な人が怠惰になった。愛していた人に無関心になった。楽しかったことがつまらなくなった。突然、人生がつまらなくなって死にたくなった。っていう噂。学校とかでも流行ってるでしょ?ね、士道さん?」
急に話を振られた士道さんは、少しあたふたしながらも、心当たりがあったかのように頷いた。
「確かに、俺の大学にもいたな。急に大学に来なくなった奴。しっかり者だったって話を聞いたことある」
俺は士道さんに礼を言い、指を立てる。
「そう、今まであった感情が急になくなり、無気力になる。これは、明確な外的要因が存在する」
「その存在は──『お話途中にすいませんが、敵性反応、それも多数です』
突如、けたたましく鳴る警報音。フラクシナスの管理AIが俺の話を遮る。
「敵性反応ですって!?どこのどいつ!?精霊はもういないはずでしょう!?」
動揺で声を荒らげた琴里は、フラクシナスのクルー達に確認を急がせる。
『琴里、この反応は霊力です。恐らく精霊に近しい何かかと』
「精霊に近しい何か...?それって──「
俺は、琴里の言葉を遮って、その名を出す。
「
「人の感情を喰らい、糧として、いつか本物の精霊になることを夢見る悪魔の事さ」
「本物の精霊?」
「あぁ、奴らは言わば大気中に散らばるマナが何らかの影響で集まり、形をなした現象だ。本来ならなにも出来ず、自然と自壊していく存在なんだが。あんたらが言う世界の意識におけるとある人物の再構築で行われた時のバグが影響して、こいつらにはある意思が芽生えた」
「それが.....本物の精霊になること、ですわね?」
重々しい様子で口を開いたのは、時崎狂三。そんな彼女に正解と、手で丸を作り、話を続ける。
「
奴らは『せや!自分に感情がないなら人間の感情を奪えばいいんや!』と言った結論に至ったのだ。
「なら早く、人に被害が出る前に倒さなければ!琴里!早く私を外に出てくれ!」
「ダメよ、もう精霊じゃないのだから。そんな危ないことさせれないわ」
声を張り上げた夜刀神さんを一蹴する琴里。そんな二人の前に祟宮が近づいてくる。
「なら私と折紙さんが出ます。いいですよね、折紙さん?」
祟宮が鳶一さんの方を向くと、真顔で頷いていた。
「そう、ね。数は少し多いけど、霊力は大したことないし、お願いしてもいいかしら?でも、気おつけて」
「分かってますよ。大したことないからって慢心はしねーですから」
ニッと笑った祟宮は、鳶一さんを連れてフラクシナスから出ようとする──所を俺が引き止める。
「二人は出なくていいよ。俺が出るから」
「何も言ってるんですか?確かに、あんたは何かを知ってる感じですが、魔術師でもねーあんたに戦闘能力があるとは思えねーですよ」
眉をひそめながら言ってくる祟宮に俺は苦笑しながら返す。
「大丈夫だよ、アイツらとやり合うの慣れてるから、俺」
そう言いながら数歩歩き、全員と少し離れる。そして───。
「──
光が俺を包み込み、霊装を形作る。
黒いコートに黒いパンツ。街中に出ると一瞬で不審者扱いされそうな全身黒ずくめの格好になりその両指にはそれぞれ単色の指輪が嵌められていた。
「──
第六のセフィロト、
左手の親指の桃色の指輪が光り、形を変えて大きな鍵になった。
されど、
「なっ!?それはむくの!?」
星宮の驚いたような声が聞こえる。いや、星宮だけじゃない、この場にいる全員が驚きの声を上げている。
「まぁ、驚くよな。少し待ってて、あれ片付けてきたら話すからさ」
そう言いながら、虚空に鍵を差し込み、捻る。その場の空間が歪んで人一人分の穴が開く。
「んじゃま、行ってくるわ」
軽い調子で、俺は外に飛び出した。
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