担当を持たないトレーナー (暁桃源郷)
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登場ッ!担当を持たないトレーナー

始まり始まり〜


四月、入学学シーズンである。

そんな中、俺は人生最大のピンチに陥っていた。

 

「決定!これから一週間以内にウマ娘一人の担当に就くんだ!」

「断る」

 

目の前に座っている小さな女性に向かって俺は瞬時にそう返事を返した。

目の前の女性の名は秋川やよいと言いこの見た目でここ、日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園の理事長であり俺はそこでトレーナーをさせて貰っている。

もちろんヒエラルキーで言えば理事長のほうが圧倒的に高い。

では何故こんなに理事長に強く出れるのか、理由は簡単。

 

「俺はあの日、日本ダービーを見に行ってただけの一般人よ?なのにいきなりアンタにスカウトされて?いきなり資格取らされて?もう訳わからず一年過ごしてんだよこっちは!」

 

理事長の机をバンっと叩いて理事長室の部屋の出口に向かう。

ドアの取っ手に触ろうとした瞬間ドアが外から叩かれた。

 

シンボリルドルフです』

 

理事長が少し頷いて俺はドアを開ける。

入ってきたのはトレセン学園の生徒会長、シンボリルドルフ。

無敗の三冠を達成したまさに『皇帝』と言えるウマ娘である。

 

「失礼します。用があると伺いましたが・・・。何となく察しました」

 

シンボリルドルフが俺をジトッと見てから理事長を見る。

 

「な、何だよ・・・」

「別に、トレーナー君が昔のままで良かったと思っただけさ」

「・・・・・・・」

 

俺が昔の事を思い出そうとして理事長が咳き込む。

それで俺も理事長に顔を向けると理事長は頷いて口を開く。

 

「一週間、シンボリルドルフには彼の監視をお願いする」

「分かりました」

「分かっているな?」

 

理事長が俺に目を合わせる。

俺は舌打をして理事長を睨み返す。

するとシンボリルドルフに頭を殴られた。

 

「〜〜〜〜〜〜ッ!」

「それでは失礼します」

「うむ」

 

 

 

シンボリルドルフに引き摺られて理事長室を出る。

先程殴られた頭を擦りながら俺は立ち上がった。

 

「タタタ・・・、力考えろよシンボリルドルフ!「ルナ」・・・タタタ・・・、力考えろよルナ!」

 

そう、シンボリルドルフ・・・長いからルドルフは何故か俺と二人だけだと頑なにルナ呼びさせてくる。

なんでもそう呼べるのは俺以外にはルドルフの両親だけだとか。

 

「仕方無いじゃあない。私だってこれでも力をセーブしたの!」

「お前ほんっと俺の前じゃそれなのな・・・。他の奴の前じゃあ皇帝感マシマシなのによ・・・」

 

ルドルフが少し歩いてこっちを見つめてくる。

 

、貴方は他のトレーナー君には無い何かを持っているわ。だから貴方の力で生徒達の夢を叶えて上げて欲しい」

 

ルドルフが真剣な目で俺を見てくる。

 

「だとしても、俺には俺のやり方がある」

「・・・・・・・・」

「でもま、上の指示には従うさ」

 

俺はそのまま頭を掻きながら水筒に入ったカルピスを飲む。

それをじっと見てくるルドルフに気づいて俺は水筒をルドルフに渡す。

 

「飲むか?」

「良いの?」

 

ルドルフが水筒を手に取り飲み始める。

そして俺はふと思ってしまった。

・・・・・よく考えたらこれ、間接キスじゃね?



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スカウト・・・出来るかな?

「出来るか出来ないかじゃあ無くってやるの!」

「なんでサブタイにツッコんでんの?」

 

ルドルフがサブタイのプラカードを見ながらそう言ったので俺はツッコむ。

 

「零も零で何でそんなに自信ないの?」

「人と話すの、恥ずかしいじゃん?」

「・・・・・・・はぁ」

 

ルドルフがため息を付く。

いや、だって知らない娘に話しかけるのって恥ずかしいじゃん?恥ずかしいよね?

それに一歩間違ったら不審者よ?

 

「兎に角、明日は入学式で一緒に居られないから今日は誰かと話す練習をしましょうか」

 

そういうとルドルフが電話を取り出した。

 

「もしもし、あぁ。申し訳無いが少しこっちに来てもらえるか」

 

 

 

しばらくして生徒会の一人、ナリタブライアン、通称ブライアンが近づいてきた。

ブライアンもルドルフと同じ三冠ウマ娘だ。

しかし・・・・・。

 

「なぁ、人選間違ってない?」

「厶・・・・」

 

ブライアンがしかめっ面でこっちを見てくる。

俺はルドルフの背中の後ろに隠れて顔を出す。

 

「すまないなブライアン。少しトレーナー君の人見知り克服を手伝って貰いたいんだ」

「それならアマさんとか私よりもっと面倒見のいいやつがいるだろ?」

「アマさん?・・・・だれ?」

「・・・・・・・・・・」

 

また一層ブライアンが睨んでくる。

だから俺は小さい悲鳴を上げてルドルフの後ろに隠れる。

 

「トレーナー君の知り合いと言えば私とブライアン、後はエアグルーヴだ。私には気兼ね無く話せるからブライアンが適任なんだよ」

 

ブライアンがこっちを見る。

ルドルフが俺から離れてブライアンに丸見えになる。

 

「えっとさ・・・今日はお日柄も良く?」

「お見合いか!」

「ご、ゴメン・・・」

「謝るな!それくらいの事で!」

「お、おう・・・」

 

そんな会話をしているとルドルフが笑い始める。

 

「それじゃあ私は執務に戻るよ。頑張ってくれ」

「え!?ちょっ!ま!」

 

俺がルドルフを追いかけようとして動かない。

後ろを見るとブライアンが俺の首根っこをひっ捕まえていた。

 

「何処に行こうと言うんだぁ?」

「に、逃げるんだァ・・・」

 

俺はブライアンを振り切って逃げ始める。

 

「あ!待て!」

「待てと言われて待つバカは居ない!」

 

さて、皆は三冠ウマ娘であるナリタブライアンから逃げて逃げ切れるとお思いだろうか?

答えはNOである・・・・・・。

しかし!

 

 

 

「ま、まいたか・・・・・?」

 

逃げ切れるんですねぇ。

ん?なんでかって?

ギャグ漫画の法則よ!

例えば漫画のギャグ回ではどんな深い怪我をしても次のコマには治る法則あるだろ?大体はあれだから。

 

「あ、まだギャグのタグ付けてねぇや・・・」

 

そう呟きながら辺りを見渡す。

何処だろここ?学園の外って言うのは分かるんだけど・・・・。

 

「ちょ!退け退け退け〜!」

「え?」

 

いきなり走って来た少女にぶつかり俺は尻もちを付く。

 

「悪ィ!」

 

少女を見ると人間にはない尻尾と耳がある。

と言うことは・・・・。

 

「ウマ娘?」

「おう!今年からトレセン学園に入学するウオッカってんだ!」

 

ウオッカが手を差し伸べてきて俺はその手を掴んで立ち上がる。

尻を払ってウオッカを見る。

なるほど脚の筋肉も良い。

コイツは将来大物になるかも知れない。

そう思っているとウオッカが走る体制には入る。

 

「んじゃあ、気を付けろよ!arrivederci(あばよ)!」

「待て!それ使い方間違ってねぇか!?・・・・行っちまった・・・。なんだったんだ、アイツ・・・」

「さあな。それより私は逃げたお前に何だと言いたいな」

 

俺が走っていったウオッカを見ていると後ろから声をかけられた。

振り向くとそこに居たのはやはりと言うか何と言うか・・・。

 

「ゲェ・・・、ブライアン・・・」

「帰るぞ。これだけ手間をかけたんだ。今日は奢って貰うからな」

「は、はい・・・・」

「それはそうと・・・・」

 

しょぼくれながらブライアンのあとを歩いていると急にブライアンが振り返ってきた。

 

「喋れていたんじゃあないか?あのウマ娘と」

「・・・・・・あ、確かに」

 

そう考えると何だか嬉しくて奢るのも苦じゃなくなってきた。

 

 

 

そう思ったのも束の間。

何故かルドルフとマジで分からんがオグリキャップと言う地方から来たウマ娘にも奢ることになって俺の財布は大打撃を受けマジで

arrivederci(さようなら)になったのだった。




ネタ・・・分かったかな?


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入学式と謎の薬と選抜レース

今回はちょっと長い?


さて、何だかんだで入学式当日になった。

見たことの無いウマ娘達が校門を抜けていく。

隣に居るルドルフを見るとじっと新入生の顔を見つめている。

 

「トレーナー君。良く見ておくと良い。君の担当するウマ娘がもしかしたらこの中にいるかもしれないのだから」

「へいへい・・・」

 

しばらく見ていて新入生の中に昨日あったウオッカを見つけた。

何やら知り合いらしきウマ娘と言い争いながら歩いてるみたいだが・・・。

 

「俺には関係ないね」

 

そう呟いて手に持っていたカルピスを見る。

紫だ。

何故か白いカルピスが紫になっている。

可笑しいな?今日は通常のカルピスで葡萄味じゃあないんだけどな・・・。

 

「あ!カイチョー!」

 

いきなりドロップキックを決められ倒れ込む。

 

「君はトウカイテイオーか!そうか、今年からこの学園か」

「踏んでます・・・」

「うん!見ててね!会長みたいなスッゴイウマ娘になるから!」

「踏んでるって・・・」

「あぁ、楽しみにしているよ」

「だ〜か〜ら〜、踏んでるっつってんだろうが!」

 

何とか頭を上げて叫ぶ。

それに気付いたのか二人がこっちを見る。

 

「わわっ!ごめんなさい!」

「大丈夫か、トレーナー君?」

「あぁ、ギャグパートで良かったぜ・・・」

「ぎゃぐぱーと?」

 

テイオーが首をかしげながら聞いてくる。

 

「そんな事よりもうすぐ始まるぞ、急げよ」

「わっ!ほんとだ!じゃあまたねカイチョー!」

 

テイオーが走っていきルドルフも歩き始める。

 

「では、私も式の準備があるから行かせて貰うよ。トレーナー君も遅れないようにな」

「あ〜」

 

ルドルフの背中を見送ってカルピスを一口飲む。

よし、カルピスも補給出来た。

元気溌剌、勇気凛々!今日も一日始めますか!

 

「こらー!もうすぐ式が始まるのに何してるんですかタキオンさん!」

「あぁ、待ってくれ!せっかく面白いモルモット君を見つけたんだ!そんな無駄なことに時間を割いている暇はない!」

「良いから行きますよ!」

「何だ彼奴等?」

 

 

 

そんなこんなで式が始まった。

初めは理事長の挨拶から始まりルドルフの祝辞と色々プログラムがあるらしい。

どれもこれもウマ娘に取ったら目を引く物だろう。

なのに・・・・。

何故かさっきから視線を感じる。

と言うより皆が皆こっちを見つめている。

たくさんの人に見られるのはやはり怖い。

 

「トレーナー君トレーナー君」

「・・・・・何だよ?どうした?」

「いや、それはこちらのセリフなんだが・・・。何故君の身体は黄緑色に発光しているんだ?」

「発光?」

 

俺が自分の手を見ると確かに黄緑色に発光していた。

 

「な、な、な、何じゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「な、何かおかしな物を口にしたりはしていないか?」

「おかしな物?・・・・・・あ、超紫のカルピスのんだ」

 

俺がそういうとルドルフがため息を付いた。

 

「話は後でしよう。今はトレーナー室に戻って居てくれ」

 

 

 

そうルドルフに言われて待つこと三十分。

もうすでに眠くてソファーに寝転がろうとしていた。

 

「すまない。待たせたね」

 

いきなりドアが開いて起き上がる。

眠った頭をいきなり動かそうとすると頭が痛くなる。

あるあるだと自分では思っている。

 

「お〜・・・。お帰り〜」

「疲れているな?」

「いやいや、会長。これはただの偏頭痛だよ」

 

聞いたことのある声にドアの方を見るとそこに居たのは今朝見たウマ娘であった。

 

「紹介しよう。アグネスタキオンだ。君のカルピスに薬を盛った張本人だよ」

「え?薬?」

「あぁ、薬と言っても効果は身体が黄緑に発光する位だがね」

 

アグネスタキオン・・・。

確か聞いたことがある。

名家のウマ娘らしいがその性格故にトレーナーやウマ娘、職員などから距離を取られているとかなんとか・・・。

 

「ん?どうしたんだい?まさかモルモットにされたのを怒っている訳ではあるまいね?言っておくがこれは・・・「あ、いや、別に薬に関しては怒ってねぇよ?」ほぉ・・・」

 

タキオンが興味深そうに俺を見てくる。

対するルドルフは驚いたように目を丸くして俺を見てくる。

 

「では、何が不満なのか参考までに教えてもらえるかい?」

「いや、何で皆お前を奇人って言うのかな〜って」

「・・・・・言っている意味が良く分からないなぁ」

 

タキオンが顔をしかめ始める。

俺は薬を入れられたカルピスを見る。

 

「実験?をするタキオンは何て言うのかな〜・・・。そう、例えば走ってるルドルフみたいな楽しいそうな顔をしてる。何の目的が何かまでは知りゃあしないけど少なくとも俺には奇人には見えなかったな〜。あ、でも変な薬飲まされんのは勘弁な!」

 

話し終わってタキオンを見る。

さっきのしかめっ面は何処へやらポカンとした顔をしている。

ルドルフに至ってはもう呆れ顔だ。

そんなに可笑しな事言ったかな?

そんな中、誰かが吹き出す音がした。

犯人はタキオンだった。

 

「アハハハハハハハハハハハハハハッ!何だいそれは!私自身奇人と言われるのは仕方が無いと思っていたがこんな事を言い出す奴は初めてだ!」

「え?そんな変?」

「いや、トレーナー君。君は至極当然の意見を述べたまでさ」

「そ、そうか?じゃあ俺せっかく発光してるし木でコガネムシの真似でもしてくるわ!」

「え?」

 

 

 

私がトレーナー君を止めようとした時には既にトレーナー君は部屋から姿を消していた。

 

「ハァハァ、フゥー。私に言わせれば彼のほうがよっぽど奇人だがねぇ」

「あぁ、真面目であり不真面目。表裏一体の彼を私は・・・」

 

続きを言おうとして口を噤む。

 

「今のは、聞かなかった事にしておくよ」

「・・・・・すまない」

 

 

 

「「ミ〜ンミンミンミンミ〜ン」」

「そこの二人!早く降りろ!」

 

その頃トレーナー君はセミの真似をしていたもうひとりのウマ娘と一緒にエアグルーヴに捕まっていたらしい。

 

 

 

そして次の日、四月の選抜レースが行われる事になった。

新入生も参加するため四月はトレーナーもウマ娘も熱気が籠もっている。

 

「今回の新入生はやっぱりトウカイテイオーとウオッカ、ダイワスカーレットメジロマックイーンが目玉ですかね?」

「あぁ、この四人辺りが取り合いになるだろうな」

 

おぉっと?知ってる名前半分知らない名前半分出てきたぞ?

ダイワスカーレットとメジロマックイーン?

出走表を見てみる。

おぉ、全く何書いてるか分かんねぇ・・・。

 

「あ!アンタは!?」

 

いきなり大声が聞こえて頭を上げて見る。

そこではウオッカが指をこっちに指している。

辺りに知り合いがいるのだろうか?

辺りを見回して確認する。

 

「アンタだよ!」

「にゃ?俺?」

「アンタトレーナーだったのか!?」

「そーだよ」

 

俺がウオッカと話していると昨日ウォッカと言い争っていたウマ娘がウォッカに近付いてくる。

 

「ちょっと、ソイツ誰よ?」

「ん?一昨日街でぶつかったって言ったろ?それがアイツだよ」

「あ〜・・・そんな事言ってたわね確か・・・。私はダイワスカーレットよ」

「おぉ、宜しく」

 

俺はスカーレットに挨拶して目を離す。

すると何故かスカーレットがムッとした顔になる。

 

「ちょっと!何処見てんのよ!」

「ん?あぁ、メジロマックイーンって奴を探してんだよ。今回の目玉はお前ら二人とテイオー、マックイーンだからな」

「って、返事しながら頑なにこっち見ないわね・・・。いいわよ!レースで一番になってアンタを見返してやるんだから!」

「おい!レースでカッコよく一番になるのは俺だぜ!?」

「何言ってんのよ!」

 

言い合っている二人を無視して辺りを見渡す。

つか、名前知ってても顔を知らなかったら分かんないんだろうな。

 

『それでは第一選抜レースを始めます。選手の皆さんは所定の位置に集まってください!』

 

こうして俺とウマ娘達の運命を決める選抜レースが始まった。




いや、短いか?


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WRYYYYYYYYYYッ!

WRYYYYYYYYYッ!


第一、第二、第三レースと経過した。

それぞれにテイオー、ウオッカ、スカーレットが参加しておりやはり目玉なので一着をそれぞれが取っていった。

勿論その後に色んなトレーナーが三人をスカウトしに行ったが皆が皆三人に玉砕されて行った。

そして新入生最後の第四レース。

このレースの一番人気はメジロマックイーンと言う俺のまだ会ったことのないウマ娘だ。

 

「お、ようやくマックイーンか!?」

 

隣に居たウマ娘が立ち上がる。

良く見るとそのウマ娘は昨日一緒にセミの真似をしてエアグルーヴに大目玉を食らった奴だった。

気付かれる前に退散しよう・・・。

そう思ったが最後、そのウマ娘と目が合った。

 

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・焼きそば食う?」

「え?焼きそば?」

 

良く見るとソイツは腹の方で焼きそばを腹あたりに沢山持っている。

しかも後ろの方でオグリが十倍位のデカさの焼きそばを食っている。

その光景に少し驚いていると腹がなる。

 

「はい、焼きそば一丁!」

 

焼きそばを押し付けられて仕方なくお金を払う。

そんな最中、とうとうレースの火蓋が切られた。

全員が一斉にスタートし、走り始める。

ふと隣を見ると横を見ると何故かルービックキューブをイジっている。

 

「さてさて、マックイーンは・・・・」

 

レースを見るとすでに終盤のカーブに差し掛かっていた。

マックイーンは現在二位

しかしここからが本領発揮なのか、マックイーンがどんどん一位のウマ娘を追い上げている。

資料を読めない俺だが辛うじてマックイーンの枠に先行と書いているのがわかる。

そしてそのまま3バ身離してゴールとなった。

 

「あれ?終わった?」

「あぁ、お前がルービクってる間にな」

 

名前も知らないウマ娘の持つルービックキューブを見ると全ての面が完璧に揃っていた。

 

「えぇ・・・・」

「どうした?この私、ゴールドシップ様の顔に何か付いてたか?」

 

この名を聞いた瞬間衝撃が走った。

ゴールドシップと言えばゴルシと呼ばれ、黙れば美人、喋れば奇人、走る姿は不沈艦と呼ばれているウマ娘である。

 

「て、良く見たらお前昨日発光してセミの真似してた奴じゃねぇか?何してんだ?」

「君、自分もやってただろうが!」

「こうしちゃ居られねぇ!マックイーンイジって来よ!WRYYYYYYYッ!」

「聞けよ!」

 

俺の指摘を無視してゴルシがマックイーンに向かってタックルしている。

それを見たトレーナー達が驚いた顔をして居る。

俺は一息ついて焼きそばを食べようとする。

その時後ろから腹の虫が鳴くのがなった。

 

「・・・・・・・・・・」

 

後ろを見るとオグリがこっちを、正確には焼きそばを見てくる。

 

「食べる?」

「良いのか?」

「うん」

 

オグリに焼きそばを渡し欠伸をするともう既に焼きそばが無くなっていた。

 

「手品かよッ!」

 

それしか言う言葉が見つからなかった。




コメントとお気に入りありがとう
それしか言う言葉が見つからない


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ピスピース!ゴルシちゃんだぞ♡

そんなサブタイを叫ぶ声が聞こえて起き上がる。

潮の匂い、波が波打つ音、カモメの鳴き声、身の前に広がる真っ青な海と空。

そう、ここは・・・。

 

「う、海・・・・?」

 

一体何が起こっているのか、まだしっかりしない頭を動かして思い出す。

確か俺は選抜レースを見終わって誰をスカウトするか考えて歩いているといきなり何かを被せられて気を失って・・・・・・。

 

「・・・・・・・・犯人は・・・まぁ、サブタイで察した・・・」

 

とりあえず海と言うのは分かるが何処の海なのか、帰る方法など色々模索しなければならない。

流石に一日待てば捜索は出る。

何はともあれ先ずは散策だ。

後ろの森を向き歩き始める。

 

「~~~~~~~~~♪」

 

鼻歌を歌いながら森を見る。

開けた場所に出たと思ったら何か歌が聞こえてくる。

 

「~~~~~~~~♪」

 

そこに居たのはギターを低く持ったゴルシだった。

つか、何あれ?めちゃくちゃ低く持ってる割にはいっちょ前に手は弾いてる。

 

「よぉ、待ってたぜ。弾き語りしながらな!」

「弾けてなかったよな?」

「実は弾けないんだよ。スーパーオールマイティゴルシちゃんにしたら意外なことなんだぜ?」

 

ゴルシがギターを置いて近付いてくる。

 

「さ、行くぞ〜」

「行くって何処に!?」

 

ゴルシがどんどん歩いて行って追いつかない。

辺りが暗くなって来て余計ゴルシの背中が見えなくなってくる。

もう諦めてへばっているとゴルシが来て俺をロープで縛って引っ張ってくる。

そうして着いたのは洞窟だった。

 

「洞窟?」

「おぉ、今日はここで野宿すんぞ〜」

「は?」

 

何を言っているのだろうかこの不沈艦は?

野宿?何故?

探せば宿位あるだろう?

 

「帰ったぞ〜」

「・・・・・・ん?帰ったぞ?」

 

その可笑しな物言いに疑問を抱くが次の第三者の声が響き渡り疑問が打ち切られた。

 

「ゴールドシップさん!早く開放してくださいまし!」

 

聞き覚えの無い声に目を見開くとそこに居たのは何とメジロマックイーンだった。

 

「マックイーン!?」

「貴方は・・・誰ですの?」

 

それがマックイーンとの図らずともファーストコンタクトとなったのだった。

俺はマックイーンの拘束を解く。

 

「何だよ。せっかくトレーナーも連れてきてやったのに・・・」

「そもそも貴女が私を帰してくれたら良い話ではありませんか!」

「え〜・・・」

 

ゴルシがブーブーとブーイングをしているが俺はゴルシの頭を叩いてそっぽを向く。

ゴルシが睨んでいる気配がするが気付いていないフリをする。

 

「あ、そう言えばゴールドシップ。お前俺等を何処に連れてきたんだ?」

「無人島」

「「・・・・・・はい?」」

 

淡白に言われたその答えに俺・・・いや、俺とマックイーンは目が点になる。

しばしの間静寂が続き痺れを切らしたのかゴルシがまた。

 

「無人島」

 

一言そう言った。




ゴールドシップのノリが意外と分かりにくい
こんなノリで合ってるのかな?


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私は今、無人島に居ます

気付いたらお気に入り70人超えてた!?
ありがとうございます!


結局無人島と言うこともありその日は洞窟で寝泊まりしました。

朝になって起きた時には焚き火の火は消えていて寝袋に包まったゴールドシップさんの姿だけがありました。

あのトレーナーさんはきっと逃げ帰ってしまったに違いありません。

洞窟の外に出ると眩しい日差しが私に照り付けてきます。

 

「おろ?起きたのか?」

 

声を掛けられて振り向くとそこには魚を三つ焼いていたトレーナーさんが座っていました。

トレーナーさんは焼けた魚を取って私に差し出してきます。

私はそれを受け取って一口咥えてみます。

 

「ッ!?美味しいですわ!」

 

それだけではありません。

ふと近くの木を見ると枝から枝に植物のつるが張られています。

おそらくは洗濯物を干すための物でしょう。

 

「そりゃ良かった。ほれ。飲み物だ」

 

トレーナーさんが出してきたのはココナッツの上の方を切って居て葉による簡易的なストローを刺したココナッツジュースでした。

 

「あ、あの・・・こんなにどうやって調達してきましたの?」

 

私はふと疑問を口にしてしまいトレーナーさんが笑います。

 

「どうやってって・・・普通にだよ?」

「だからその普通にを聞かせて欲しいんですの!」

「流れてたペットボトルで罠を作ったり木登りしたり・・・。まぁ、最低限のサバイバルグッズはゴルシが持ってきてくれてたからな」

 

トレーナーさんも自分の魚を食べ始めます。

 

「お、美味ェな」

 

無邪気に目を輝かせて魚に齧り付きます。

そんな姿はまるで子供のようで気付けば私はトレーナーさんの頭を撫でていました。

 

「?どうしたんだマックイーン?」

「・・・・え?な、何でも無いですわ!」

「グッモニン」

 

淡白なその挨拶に私達は洞窟をみるとゴールドシップさんが眠そうに欠伸をしながら洞窟を出てきました。

 

「遅いですわよ。ゴールドシップさん」

「悪ぃ悪ぃ。ゴルゴル星から通信があったんだよ」

「そう言う夢ってのは理解した」

 

トレーナーさんがゴールドシップさんに魚とココナッツジュースを渡して立ち上がります

ゴールドシップさんが魚をココナッツジュースに付けて食べ始め、トレーナーさんは洞窟に入っていきます。

 

「・・・・はぁ、今頃私、朝練の真っ最中でしたのに・・・」

「ん?何か言ったか?」

「私をここに連れてきた張本人はこの調子ですし・・・」

「そう言うと思ってたよ」

 

私がため息混じりに呟くとトレーナーさんがタブレット端末を持って出てきます。

 

「ん」

「え?」

 

トレーナーさんがタブレット端末を差し出してきて私が受け取りゴールドシップさんが顔を覗かせてきます。

気にせずにタブレット端末を見るとそこに書いてあったのは今日のトレーニング表でした。

 

「おいおい、これって・・・・・ッ!?」

「腐っても俺はトレーナーだからな。脱出の手段は俺が考えるから、お前等はトレーニングに集中してろ」

「あ・・・・ありがとうございます!」

 

自然とそんな言葉がこぼれていました。

トレーナーさんとゴールドシップさんが驚いた顔をしていましたがしばらくすると二人も少し笑っていました。

 

「なぁ、トレーナー。私は何すればいいんだ!?」

「ゴルシはそうだな・・・。浜で穴掘ってそれを埋める。それの繰り返しだ」

「それ・・・何の意味がありますの・・・?」

「分かってねぇなぁ。マックイーンは。ゴルシちゃんにはお見通したぜ!これはそう!徳川埋蔵金発掘だ!」

「絶対違いますわよね!?」

一繋ぎの大秘宝(ワンピース)見つけたらどうしよっかな〜」

「徳川埋蔵金じゃなくなってますわよ!?」

 

こうして、私とゴールドシップさん、そしてトレーナーさんの奇妙な無人島合宿が始まったのでした。

 

「あ、トレーニング終わったらこの島の食材でスイーツ作ってやっからな〜」

「スイーツ!?」

 

俄然やる気が出てきましたわ!




ロマンじゃねぇか・・・


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何事もやり過ぎは良くない

皆もやり過ぎには気をつけよう!


「今日はトレーニングは無しです!」

 

無人島生活三日目。

何だかんだで拠点の辺りが充実してきています。

私がトレーニングをしている間、ゴールドシップさんは穴を掘っては埋めを繰り返し、トレーナーさんはお風呂やトレーニング機器等を作ってくれていました。

そんなある日トレーナーさんが突然そうおっしゃったのです。

 

「ど、どうしてですの!?」

「どうしてって言われても・・・。マックイーンもゴルシも疲れてるだろ」

「もう無理〜。身体の穴という穴から醤油が垂れてきそうだぜ〜」

「ウマ娘の身体の構造上そんな事ありえません!」

「いや、どんな生物でも無理だと思う・・・」

「って、そんな事はどうでも良いんですの!」

 

ゴールドシップさんのせいで話が脱線しかけてしまいました。

そう、疲れていても関係ありません。

 

「デビュー戦に向けて皆さん精進していらっしゃると言うに私だけウカウカと休んでいられませんわ!」

 

私は強くそうっ言ってしまい私はその場を離れて行きました。

 

「・・・・良いのかよ?」

「・・・・本当は駄目なんだけどなぁ。アイツの言ってることも御尤もだ。確かに努力は必要だが、でも・・・」

 

 

 

何時もの浜辺に来て走り始めます。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、・・・」

 

何時ものように島の周りを一周し終わって水着に着替えて海を泳ぎ始めます。

しかし、何時もと違って今日はトレーナーさんの顔が脳裏にチラついて仕方がありません。

確かにトレーナーさんのおっしゃる事は最もです。

しかしこうしている間にも皆さんは・・・『トウカイテイオー』さんは努力を惜しまず走っているでしょう。

私はメジロマックイーン・・・。

メジロ家のウマ娘としての使命がありますの。

 

「えっ・・・」

 

次の瞬間私は足に違和感を感じながらも気を失って暗い海の中に沈んで行くのでした。

 

 

 

「・・・・ン!マ・・・イーン!マックイーン!」

「う、ううん・・・」

 

誰かに呼ばれる声がして目を開けるとそこにはずぶ濡れのゴールドシップさんが顔を覗かせていました。

 

「トレーナー!マックイーンが起きたぞ!」

「そら・・・良かったわ・・・」

 

隣を見ると私と同じように寝転んでいるずぶ濡れのトレーナーさんが居ました。

 

「そうですわ・・・。私、溺れて・・・」

「あん時は焦ったぜ。マックイーンのトレーニングを陰から見てたらいきなり溺れてるしよ、真っ先に助けに行ったトレーナーは泳げなくて溺れちまって、結局オールマイティなゴールドシップ様が二人を助けたって訳だ」

「・・・・・・・・・・」

 

お二人にはとんだご迷惑をおかけしてしまったみたいです。

何だか申し訳なく、自分の不甲斐なさにガッカリしているとそれに気付いたのかトレーナーさんが私の頭を撫でてきました。

 

「すまんかったなぁ、マックイーン。オラマックイーンの気持ちに気付いてやる事が出来へんかった・・・」

「そ、そんな事ありませんわ!もともとトレーナーさんの指示を無視してトレーニングをした私の不祥事ですの!トレーナーさんは何も悪くなんてありませんわ!」

 

私が力強く上半身を起こしてトレーナーさんの非を否定するとゴールドシップさんがトレーナーさんの額のタオルを取って水に付けて絞り直してトレーナーさんの額に乗せます

しかしトレーナーさんは直ぐに上半身を起こして私を見ます。

 

「いや、俺の責任や。事前に何をしたいか聞いとくべきやった・・・」

 

そう言うトレーナーさんはフラフラしながらも瞳だけは私を向いています。

まるで父親が小さい娘に向けるようなそんな優しい瞳を・・・。

 

「まだ寝とけって!海に入って身体が冷えて風邪ひいちまってるんだから!」

「ッ!?」

 

その言葉を聞いて私は更に自分の未熟さを思い知りました。

自分だけの怪我ならまだしもトレーナーさんにまで迷惑をかけ、風邪までひかせてしまっています。

 

「大丈夫や、ゴールドシップ。それよりマックイーン・・・。お前は、誰や?」

「・・・・・・メジロ、マックイーンです」

「そうや、ない。お前は何を成し遂げる、ウマ娘なんや・・・?言うて、みぃッ!」

 

トレーナーさんが私の肩を強く掴んで私を力強い瞳で見てきます。

風邪をひかれているせいか顔も赤くて少し、強くなり過ぎている気もします。

 

「私の目標は・・・『天皇賞』制覇。それが・・・私の目標・・・いえ、夢ですわ!」

「・・・・いい目やないか。せや、お前は、メジロマックイーン!『天皇賞』の制覇を成し遂げるウマ娘や!」

 

トレーナーさんはそれだけ言うと何か大切な糸が切れたかのように倒れてしまいました。

 

「たく、無茶しやがって・・・」

 

ゴールドシップさんがトレーナーさんを元の場所に寝かせて額に冷やしたタオルをおきます。

それにしても何でしょうか、この胸の高まりは・・・。

トレーナーさんの顔を間近で見てから胸の鼓動が止まりません。

 

「私、決めましたわ」

「決めたって何を?」

「この方に、私のトレーナーさんになってもらいますわ!」




さて、何時になったら無人島を脱出出来るのか、それは誰にも分かりません
あ、後途中から関西弁になってますがキャラ変でも何でもございません


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初めての担当は・・・

百人突破!
ありがとうございます!


目が覚めると何故か見たことがある屋根だった。

起き上がって周りを見るとそこはトレセン学園のトレーナー寮の俺の部屋だった。

確か俺は無人島で風邪をひいて寝込んでいたはずだが一体どう言うことなのだろう?

 

「起きた?」

 

声が聞こえて振り向くとそこに居たのはエプロン姿のルドルフだった。

 

「ルド「・・・・・」ルナ。何で俺はトレーナー寮に居るんだ?」

 

ルドルフの無言の威圧に負けてルナ呼びに直す。

流石皇帝と言うべきかこれが覇王色の覇気なのか、さっきの睨みはガチで怖かった。

 

「昨日零がゴールドシップとメジロマックイーンと一緒に帰ってきたの。三人が行方不明だったから心配してたけど四日間の無人島生活ツアーで合宿してたなんてびっくりだよ」

「へ〜、無人島生活ツアー・・・・・・・・・えぇ!?」

 

あれだけ頑張ったのは何だったのかそんな事を思いながら俺は大きなため息を付く。

 

「それとね、メジロマックイーンとゴールドシップが零とトレーナー契約をしたいって名乗り出てるんだけど・・・」

「え?なんで?」

「何でも無人島でのトレーニングで一緒に過ごしてそう思ったみたい」

「ま、まぁ、俺もアイツラとだったら上手く出来そうだけどよ・・・」

 

ほんとに良いのだろうか?

俺みたいな奴が担当して・・・ほんとに・・・。

 

「もしかして、不安に感じてる?」

「ッ!?」

 

見透かされて目を丸くする。

しかし直ぐに冷静になって水を飲む。

 

「・・・・・悪ぃ。ちょっと風に当たってくる」

 

 

 

寮の外に出てみると既に夕方になっていた。

コースではウマ娘達がトレーナーとトレーニングをしているのが見える。

俺にあんな事ができるのだろうか?

 

「あ!居た!」

 

声が聞こえて振り向くとそこにはトウカイテイオーが立っていた。

テイオーは息切れをしていて汗も沢山かいている。

 

「テイオー・・・」

「ねぇねぇ!トレーナーが昔カイチョーのトレーナーだったって本当?」

「・・・・・・サブ、が付くけどな」

 

そう、俺は理事長にスカウトされて一年間ルドルフのトレーナーの下、サブトレーナーとして勉強していた。

当然ルドルフのトレーニングを何時も見ていたわけでルドルフの走りの事なら俺の右に出るのはルドルフのトレーナーだった人位だ。

 

「それでもカイチョーのトレーニング見てたんでしょ!?だからボクのトレーナーになってカイチョーがやってたトレーニングをボクにつけてよ!」

 

目を輝かせながら俺に近付いてくる。

 

「無理だ」

「え?」

「む・り」

「え〜!何でさぁ!」

「確かに俺はルドルフの走りを知ってる。語らせたら右に出るのがルドルフのトレーナーくらいには」

「じゃあ!」

 

テイオーの言葉を遮ってでも、と付け加える。

 

「俺は一回ルドルフの走りをタブレット端末で撮影して解析してただけでトレーナーみたいな事は何もしてないんだ。悪いが俺はお前のトレーナーになる資格が無い」

 

俺がその場を立ち去ろうとしてテイオーに肩を掴まれた。

肩から手をどけようとするが全然動かない。

 

「それでもボクは君にボクのトレーナーになって欲しいの!カイチョー言ってたよ?トレーナーは確かに部屋に籠もりっぱなしだけどウマ娘の事を一番に考えてるって」

 

ルドルフがそんなことをテイオーに言っていたことに困惑しながら恥ずかしくなる。

何でこんな簡単な事にも気付けなかったのだろうか。

俺の答えなんて端から決まっていたんだ。

 

 

 

「俺は担当ウマ娘をとったりしない!」

 

次の日ルドルフと一緒に理事長室に向かい一言強くそう言った。

 

「衝撃ッ!理由を聞かせてもらえるか?」

 

俺は座っている理事長に数歩近付く。

 

「俺は皆が走っている姿を見たい!皆の走る手伝いがしたい!だから俺はここに今!トレーナーはトレーナーでもこの学園の全てのウマ娘の臨時のトレーナーになる事を宣言してやる!」

 

それだけ言うといきなり理事長が笑い出す。

 

「承諾ッ!零トレーナーの提案をのもう!これより君は学園内全てのウマ娘の臨時のトレーナーだ!」

 

こうして、本格的なトレーナー稼業が始まったのだ。




まぁ、結局皆好きすぎて一人に決めれなかったのよね


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地方の怪物

ニコニコ漫画でシンデレラグレイ一話だけ読みました
めっさおもろい


「よーし、あと一周で今日は終わりな〜」

「「「はーい(うぃ〜す)(ですわ)」」」

 

あれから俺は担当トレーナーとはなっていない物のゴールドシップ、メジロマックイーン、トウカイテイオーのトレーニングをしていた。

理由としては彼女達が自分から俺にトレーナーになって欲しいって言っていたのと俺も彼女達の行く末が見たくなったというのである。

 

「ねぇ、トレーナー!帰りにはちみー奢ってよ!硬め・濃いめ・多めね!」

「ズルいですわ!それなら私だってトレーナーさんのつくるスイーツが食べたいですわ!」

「おいおい、トレーナーは今から私と宝探しに行くんだぜ?」

「あー、はいはい。奢ってやる作ってやる!但し、ゴルシ。お前のそれはデビュー戦に勝ったらな」

 

嬉しそうなテイオーとマックイーン、残念そうなゴルシを見て俺は、あ、また俺の財布に穴が空くのか・・・、と思いながら残高の計算を確認していると俺の腹の虫が鳴り始めた。

 

「あら?トレーナーさんどうしましたの?」

 

マックイーンがこの音に気付いて不思議な顔をする。

マックイーンの言葉にゴルシとテイオーも見てくる。

無性に恥ずかしくなる。

 

「い、いやさ、三人の走りを昨日からずっと見ててトレーニング練ってたら練習時間になっちまって今の今まで寝ずに食わずに居たからちと腹が減っちまってよ」

「えぇ!?大変じゃん!早く食べに行こ!」

「ですわ!」

 

 

 

テイオーとマックイーンに引っ張られて着いたのは学園内にあるカフェテリアだった

そこでは何故か人集りが出来ている。

 

「お?何だ?遂に火星からのメッセージが来たのか!?」

「そんな訳無いでしょう・・・」

 

俺は人集りをかき分けて中心に向かう。

中心に着いて見た光景は最近出来たメニュー、超超超超超超超超超超超超超超超超超超超超超エキサイティング丼略してバトル丼ム(訳せてはない)を食べているオグリキャップだった。

確か時間以内に何杯も食べて杯数を競うのだとか。

しかも5杯食べれば料金はタダなんだとか。

 

「なぁ、何やってんだ?」

 

俺は隣に偶然居たウオッカに聞いてみる。

 

「おぉ、トレーナー。「おかわり」オグリ先輩がバトル丼ムに挑戦してるから見てたんだよ。「おかわり」にしてもスゲェよな。「おかわり」これで二十一杯目だぜ?「おかわり」」

 

確かにウオッカが説明している間に既に四杯のおかわりをしている。

あまりにも美味しそうに食べるオグリを見ていると何だか俺も腹が減ってきた。

 

「おばちゃん。俺にもバトル丼ム」

「あいよ〜」

 

カフェテリアのおばちゃんに注文してオグリの前に座る。

 

「君は・・・この前奢ってくれたトレーナーか。おかわり」

「その節はどうも」

 

俺に気付いたオグリが俺を見ながら食堂のおばちゃんにおかわりを要求する。

おばちゃんが俺とオグリの下にバトル丼ムを置く。

 

「「いだだきます」」

 

俺とオグリがバトル丼ムを食べ始める。

うん、なかなか美味しい。

 

「そう言えばよ、おかわり、元々地方に居たんだろ?おかわり、地方ってどんなとこなんだ?おかわり」

「そうだな・・・。おかわり、とてものどかな所だ。おかわり、自然はいっぱいだし空気も美味い。おかわり、皆優しくて、おかわり、学校のクラスメイトは初日で私に一人部屋をくれた、おかわり」

「ヘェ~、おかわり」

 

バトル丼ムを食べながらオグリの話を聞いていると後ろから視線を感じる。

振り返るとそこに居たのはウオッカ、マックイーン、テイオー、ゴルシとここまでは分かる、分かるんだ。

ウオッカは最初っからここに居たしマックイーン達は一緒にここに来たのだから分かる

問題は・・・・。

 

「何をしている。この戯けが・・・」

 

そう、副生徒会長のエアグルーヴだ。

 

「えっと・・・・お話し?」

「そうか、そんなに()()()がしたいなら好きなだけさせてやる。但し、生徒会室でな」

「わ、わ〜い」

 

俺がエアグルーヴに引きづられているとそれを見たオグリが・・・・。

 

「トレーナーは何時も楽しそうだな」

「「「「何処が(ですの)(だよ)!?」」」」

 

ちなみにその後俺は校門が閉まるまでルドルフの膝枕で眠っていたとか居ないとか。

( ˘ω˘)スヤァ。




( ˘ω˘)スヤァ


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終わりがなn思い出したァァァァァァァァァァァ!

「うおっ!何だよいきなり!?サブタイ突き抜けてんぞ!?」

「トレーナーさん、どうかいたしましたの?」

 

俺の叫びに驚くゴルシとマックイーンがこちらを見る。

ちなみにテイオーはいつものように生徒会に行っている。

 

「い、いやさ、レースに出るのってチームに入ってなきゃあいけないんだよ」

 

チームと言うのはまぁ、簡単に言えばグループだ。

この学園はウマ娘の数に対してトレーナーが圧倒的に足りない。

だからトレーナーはチームを作って何人ものウマ娘を見ることになる。

そのひとまとまりをグループと言うのだ。

 

「なら早くチーム申請してこいよ」

 

そう、だったら申請すれば良い。

ゴルシの言うとおりなのだが・・・。

 

「・・・・・たりねぇんだよ」

「え?」

「人数が足りねぇんだよ!」

 

如何せん人数が足りない。

チームには最低でも五人必要だ。

今ウチは三人だから後二人いないとチームと申請が出来ないのだ。

 

「スカウトしてくれば良いじゃねぇか?」

「俺に、そんな度胸は、無い!」

「うわっ!真っ向から言いやがった!」

 

俺がカルピスを一気飲みしてどうしようか考える。

あ、カルピス美味しい・・・。

どうしてカルピスはカルピスなのだろうか?

これはもう国民にカルピス一日三本を義務付けるべきではないだろうか?

 

『すいませ~ん』

 

そんな時、扉が叩かれる音と聞き覚えのある声が聞こえた。

恐る恐る扉を開けてみるとそこに居たのは芦毛のウマ娘がいた。

 

「えっと・・・誰?」

セイウンスカイだよ〜。たづなさんから話聞いてないですか?」

「たづなさん?」

 

たづなさんとは理事長の秘書の駿川たづなさんの事だろう。

毎日校門で挨拶をしている。

俺が学園長室に呼ばれた時は居なかったけど・・・。

そう言えば朝確かたづなさんから電話があった。

・・・・・・・眠くてよく聞いて無かったけど。

 

「あーうん。聞いてる聞いてる」

「・・・・・・本当に?」

「本当本当」

 

セイウンスカイが疑いの眼差しを向けてくる。

ついでに後ろに居たマックイーンとゴルシも・・・。

 

「トレーナーさん、正直になった方がよろしいですわよ?」

「うっ!」

「ほら〜、温か〜いカツ丼やるからよ〜」

「・・・・・・・私が、やりました・・・」

 

俺がひざまづいて地面を叩いた。

 

「アイツが・・・アイツが悪いんだ!俺にハンガーを投げつけてきて・・・それでカッとなって・・・」

「そんな理由で人一人殺したのかね!?」

「何の話をしてますの!?」

 

俺とゴルシで茶番をしているとマックイーンがキレのいいツッコミを炸裂させる。

それを見ていたセイウンスカイが困惑した表情をのぞかせる。

 

「えっと・・・・」

「あ、悪ぃな。セイウンスカイだっけ?正直たづなさんの話は十割頭に入ってなかったけど、まぁ話は大体スカイの臨時トレーナーだろ?」

「え?あ、はい。よろしくおねがいします」

 

こうしてセイウンスカイがうちに来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

って、これだけで終わったなら話は早いんだけどねぇ・・・。

だけサブタイ的にそうはいかなそう。

 

「次の読者諸君のセリフはサブタイってお前が潰してただろ、だ!」

「どうしたんですか〜、トレーナーさん?」

 

スカイに呼ばれて振り返る。

そこには制服では無く釣り師の格好をしているスカイが居た。

 

「いや、何でもねぇよ。それよりスカイは今から釣りか?」

「あ、はい。今近くの河川敷にお魚さんの大群が居るって情報が入りまして〜。トレーナーさんもどうです?」

「釣りか〜・・・。最後にやったのいつだったかな〜・・・。ブライアンと一緒に居た時か?」

 

そんな事を呟いているといきなり部屋の扉が開いた。

現在はスカイの教室の前で開いた扉の部屋は確かそう、アグネスタキオンの研究室だった筈だ。

予想通り出てきたのはアグネスタキオンだった。

 

「だ、誰かテイオーを止めてくれ!私の薬を飲んで帝王化してしまった!」

「何いってんだ、アイツ?」

 

次にアグネスタキオンの研究室から出てきたのはテイオーだった。

しかし何処か様子が可笑しい。

見た目は何時ものテイオーだがどっかの戦闘力五十三万の様なオーラを放ちギャングの帝王の様なポーズをしている。

 

「彼女の狙いはこの薬だ!この薬を飲むと力に目覚める!モルモット君!早くその薬を飲むんだ!」

「おおっと、もうモルモット扱いですかそうですか」

 

タキオンが投げつけてきた薬を受け取って見る。

圧倒的に緑色。

飲んだらどうなるか分からない。

そう、正しく目の前のテイオーの様に・・・。

 

「トレーナーさん・・・?」

「待ってトレーナー!この世でその薬が相応しいのは誰か、もう一度よく考えてよ!トレーナー!薬の効果を支配するには貧弱な者じゃあ務まらない!」

 

テイオーが俺に向かって走ってくる。

もうちょっとで薬が取られそうになった時。

 

「トレーナー?何だその薬?」

 

ゴルシが薬を飲んで二人、四人、八人とどんどん増えていく。

・・・・・・なにこれ?

 

「倍化の薬さ。延々と人数が倍化していく薬さ」

「なにそれ!?」

「終わりが無いのが終わり・・・・それが、ゴールドシップ'sレクイエム!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんてのはどうだ?」

 

何故か今俺たちはゴルシ自作の紙芝居を聞かされている。

またゴルシの思い付きだろうと聞いてやる事にしようと皆で聞いていた。

つか、聞かなくてもゴルシなら無理矢理聞かせてきそうだけど・・・。

 

「私とトレーナーさんいる?」

「ボクが悪役なんて納得いかないよ!」

「私なんて登場すらしていませんでしたわ!」

「つか、なんでゴルシはタキオンが俺の事モルモット呼びしてくんの知ってんだよ?」

 

見ての通り大不評である。

まぁ、何はともあれ一言言わせてもらおう。

 

「やれやれだぜ・・・」



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サイボーグ

スカイがうちに入って必要人数は残り一人。

俺は誰かスカウトしようと学園内を彷徨いていた。

勿論そのような度胸は無いため最初は渋っていたがマックイーンとテイオーに凄い剣幕で迫られてしまいました仕方なく探している。

 

「つってもなぁ・・・俺みたいな無名トレーナーのスカウトを受ける奴なんて居ないだろ・・・」

 

カルピスを飲みながら愚痴を零す。

去年まで俺はリギルと言うチームでサブトレをさせてもらっていたしがない新人に過ぎない。

四人集まっただけで幸運だ。

しかしデビュー戦まで後三週間。

時間は無い。

そんな事を考えていると・・・。

 

「何故言うことがわからないんだ!」

「ん?」

 

何処からか怒号が聞こえてきた。

辺りを見渡すとそこには一人のトレーナーとウマ娘が居た。

トレーナーは何度か顔を見たことがあるでベテラントレーナーだ。

ウマ娘の方はたまに夜散歩していると練習しているウマ娘だ。

 

「ブルボン、お前には適正がないんだ。何故それが分からない!?」

「マスター、私の目標は三冠を達成することです」

「その話は何度も聞いた・・・。だがリスクが大きすぎる」

 

何やら言い争っている様だ。

俺はさっと割り込んで二人の距離を開ける。

 

「ままままま、ちょっと冷静になりましょうや」

「何だね君は?」

「顔認証開始。・・・完了。トウカイテイオー、メジロマックイーン、ゴールドシップ、セイウンスカイのトレーナーと断定」

 

まるでロボットの様にそう言ったウマ娘を見つめる。

 

「?」

 

首を傾げるそのウマ娘に背中を向けトレーナーを見る。

 

「俺は夜に散歩してるんですがね、たまにコイツの練習している姿を見ます。そのときの目はものすっごい真面目っすよ」

「だとしても、彼女に向いていない!向いていないものは大きなリスクになる」

 

言っていることは最もだ。

だが俺はここで引き下がる訳にはいかない。

 

「・・・・・・分かりました。一週間後の種目別大会、2000メートルを走らせて上げて下さい。そこで一着ならコイツの三冠挑戦を認めてやって下さい」

 

トレーナーが嫌悪の表情で俺を見てくる。

後ろのウマ娘は無表情にも不思議そうに見つめてくる。

トレーナーがしばらく黙ってから大きなため息を漏らす。

 

「分かった。一着を取れたなら認めよう。ただし、トレーニングは君が付ける事だ」

「・・・・分かりました」

 

トレーナーがそのまま去って俺と件のウマ娘がぽつんと残る。

俺はそのウマ娘を見ながら少し笑う。

 

「とりあえずお前の名前を聞かせてくれ」

ミホノブルボンです。私のせいで申し訳ありません」

「・・・・・・そうか。よし、ミホノブルボン!これから一週間宜しくな!」

「・・・・・・はい。よろしくおねがいします、マスター」

 

ミホノブルボン、後にサイボーグと呼ばれるそのウマ娘と俺の出会いはこんな奇妙な出来事から始まった。

・・・・・・・そう言えば後一人どうしよ?



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怪物(ナリタブライアン)化け物(風切零)(前編)

ちょっと遅れた


マックイーン、テイオー、ゴルシ、スカイ、のデビュー戦とブルボンの種目別大会に向けてトレーニングを続けていたある日、ソイツ等はいきなり来た。

 

「おっす、トレーナー!」

「お邪魔しま〜す・・・」

「ウオッカ?スカーレット?どうしたんだいきなり?」

 

ウオッカとダイワスカーレットが来たのだ。

まぁ、もうトレーニングは終わっていて皆にスイーツをご馳走していた所なので問題は無いのだが・・・。

テイオーはいつも通り生徒会室に、はちみー代は渡したから今ははちみーでも舐めているのだろう。

 

「ちょっとトレーナーに聞きたいことがあってさ」

「聞きたいこと?て、コラ!ゴルシ!俺のスイーツからフルーツを抜くんじゃあない!」

「げぇ!?バレた!?」

 

俺はゴルシの手を叩いて払う。

マックイーンはゴルシを見ながらスイーツを頬張っていてスカイは眠っていてブルボンは先程からアホ毛と尻尾をブンブン振りながら無表情でスイーツを食べている。

 

「トレーナーがあのブライアン先輩に芝の中距離で勝った事があるって聞いたんだけど本当か?」

「嘘に決まってるで「本当だよ?」・・・・え?」

 

一瞬周りの空気が固まったのを感じた。

 

「だーから、本当なんだって・・・何だ?何おかしいか?」

「マスターの態度、言動から嘘は付いていないと判断します。つまり、マスターの言っていることは真実です」

 

この部屋に居た俺とブルボン以外の四人が目を丸くして俺を見てくる。

その視線を不思議に思いながら俺は口を開いた。

 

「なら、話してやるよ。何でブライアンと走ることになったのか・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

そう、あれは俺がチームリギルのサブトレだった時の事。

学園一を誇るチームリギルのトレーナーである東条ハナさん俺はおハナさんと呼んでいるがまぁ、俺のトレーナーの先生は凄い人な訳で、当然出される課題もやばかったわけだ

その中の一つが・・・。

 

「ナリタブライアンのスカウト?」

「えぇ」

「ナリタブライアンってあのナリタブライアン?」

「えぇ」

「あぁ!急に腹がぁ!これはスカウトに行けそうにない!あぁ!残念だけど腹が痛いんじゃあ仕方ない!」

「そう、それなら仕方ないわね」

 

いけるって最初は思ったよ。

でも・・・・。

 

「またルドルフとエアグルーヴに報告かしら・・・」

「不詳この風切零!死力を尽くしてナリタブライアンを口説いてきます!」

 

結局、おハナさんとルドルフ、エアグルーヴには敵わなかったよ。

て事でブライアンのレースを見に来た。

最初は飛ばしに飛ばして大差だったのに途中からスピードを落とし結果は5着だった。

周りのトレーナーは体力不足だと言っているが。

でも、何か違う。

具体的には分からないが何処か渇いているようなそんな感じだ。

 

「・・・・・・何だ?」

「え?」

 

いつの間にか俺はブライアンをじっと見つめていたらしい。

それに気付いたのかブライアンが不審な目を向けて聞いてきたのだ。

 

「お前は・・・・あぁ、よく会長が話しているサブトレーナーか・・・」

「ルドルフが?」

 

何故俺の話を?と思うのも束の間でブライアンが何処かに行こうとする。

 

「あ、ま!」

「・・・・・トレーナー契約なら結ばんぞ」

 

そういうとブライアンは本当に何処かに行ってしまった。

俺はそのまま観客席に座って考えた。

何故ブライアンはあんなに渇いたような、悲しそうな顔をするのだろうか?

レースだってわざと負けた気さえする。

 

「だぁ!もう!考えても埒が明かねぇ!」

「・・・・・何か、考えごとか?」

「あぁ・・・」

「何を考えている?」

「ブライアンについて・・・ん?」

 

俺は知らない声に返事をしていた事に気付いて振り向く。

そこに居たのは白い髪のウマ娘だった。

 

「・・・・・・・・誰?」

「いきなり話しかけてすまない。私はビワハヤヒデ。ナリタブライアンの姉だ」

「ブライアンの?」

 

俺は首を傾げながらビワハヤヒデを見る。

なんとなく雰囲気がブライアンに似ているのが分かる。

 

「で、そのブライアンの姉のビワハヤヒデさんがなーんで無名のサブトレーナーの所に来たんで?」

 

俺はブライアンのレース中に撮っていた映像を見ながらビワハヤヒデに聞き返す。

 

「君にはさっきのレース、どう見えた?」

「どうって?」

「レースを見に来たトレーナーの中で君だけがブライアンを違う様に見ていた」

 

確かに違ったのかもしれないが俺はそんな出来たトレーナーじゃあ無いため何故ブライアンがあんな顔をするのか分かっていない。

俺にはどうする事も出来ないし理解することも出来ない・・・・。

 

「・・・・・いや、待て・・・。いるじゃあねぇかここに!理解する方法が!」

「な、何だいきなり!?」

 

俺が立ち上がって振り向きビワハヤヒデの肩を掴む。

ビワハヤヒデも驚いたのか尻もちを付く。

 

「お前、ブライアンの姉ちゃん何だよな!?」

「あ、あぁ・・・・・・」」

「なら分かるよな!?ブライアンが何であんなに渇いた悲しい顔してるかんよ!」

「ッ!?・・・・やはり気付いていたか・・・」

 

ズレた眼鏡を掛け直して俺を見てくる。

それもジロジロ、グルグル回りながら・・・。

 

「周りを見てみろ」

 

そう言われ周りを見ると誰もいない。

時計を見ると既にレース終了から五時間過ぎていた。

 

「ヤベ・・・、ルドルフのトレーニングもう終わってんじゃあねぇか・・・」

「君はブライアンの事を考え続けていたんだ。人が居なくなるのも、トレーニングの時間になったのも気付かずにな」

「・・・・・・えっと・・・」

「つまり、君はそれだけウマ娘第一になれると言うことさ」

「は、はぁ・・・・・」

 

正直にビワハヤヒデが何を言いたいのか分からない。

分から無さすぎて今頭の中で延々と駅の名前、円周率の暗唱。

終いにはラ・リ・ル・レ・ロと頭で復唱していた。

 

「おっと、話を脱線させてしまった。私から話すのは簡単だがそれでは意味がない。これは君自身で理解する事だ。違うかい?」

 

やはり良く分からない。

理解できないから最も理解しているやつに聞こうとしているのに、自分で理解しろ?

俺はそんなに理性的じゃあ無い。

・・・・・でも。

 

「やるべき事は分かったよ。ありがと、ハヤヒデ。正直に頭が鍛えられるような話だったけどさ」

「誰の頭が大きいって!?」

「誰もんな事言ってねぇよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

て事であれから一週間、俺は来る日も来る日もブライアンに中距離の芝を挑んでいる。

勿論今まで負け続きで負ければその後にメチャクチャトレーニングをする。

そんなある日、ルドルフに生徒会室に呼ばれてしまった。

来たらいきなり座れと言われ今俺はルドルフとエアグルーヴに見つめられている。

 

「サブトレーナー君、君は最近ブライアンとレースをしているみたいだね」

「お、おう・・・」

「理由を、聞いてもいいかい?」

 

俺はすこし考えてから二人を向く。

 

「ブライアンがあんな顔してんのが気になってな、理由を聞いても教えてくれなさそうだからレースをして理解しようかなって・・・」

「だからレースを?」

「あぁ」

 

ルドルフの質問に俺が頷く。

 

「この戯け!お前がブライアンに勝てるわけないだろ!」

「いや、そりゃ分かるけど・・・」

「何か、気になる事でも?」

「それは大体わかったんだ。後は・・・・」

 

勝つだけだ。

そう言いかけて言葉が喉に支えた。

 

「ふむ、彼女をスカウトする気分の重さは重()()と言う訳か」

「会長・・・」

「気分の重さは重機分って・・・・ップ」

 

エアグルーヴのやる気が下がった。

零のやる気が上がった。




作者の疲労が上がった


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怪物(ナリタブライアン)化け物(風切零)(後編)

もしかしたらタグに愛は重バ場入れるかも?


最近妙なトレーナーに付き纏われている。

一日一回、会うたびに芝の中距離のレースを挑まれる。

断る事も出来る。

だが、しない。

 

「あ・・・・・」

「ん?」

 

声が聞こえて振り向く。

例のトレーナーだ。

 

「ヘイ!ブライアン!今日もレースしてもらうぜ!」

「・・・・・・・・好きにしろ」

 

最初の方こそ大差だった。

アイツがコースの四分の一を走る間に私はゴールしている状態だった。

だが・・・・・。

 

「クッソー!また負けた〜!」

 

今日は5馬身差。

毎日そうだ。

段々と差を縮めて来ている。

 

「何故だ?」

「え?」

「何故、アンタはそこまで私に拘る?トレーナーに私を必ずスカウトしてこいとでも言われたか?」

「あ〜?んー・・・・・・忘れた!」

 

私の質問に無邪気に笑って答える。

 

「忘れただと?」

「あぁ、忘れた!あ、でも一つ思い出した!」

「・・・・・・それは、なんだ?」

「ブライアンが楽しんで走るのを見たい!」

 

そう行ってトレーナーは寝てしまった。

余程疲れていたんだろうか?

 

「どうした?何か悩み事か?」

「姉貴・・・・・・」

 

後ろから姉貴が近付いてくる。

私は姉貴に振り向いてからトレーナーを見る。

 

「何でもない・・・」

「そうか。それにしても彼は本当に私の計算外の事をするトレーナーだ。お前を理解する為にまさかお前にレースを挑むとはな・・・」

「姉貴だったのか!?コイツを焚き付けたのは!?」

「勘違いをするな。私は彼にお前を理解するなら私に聞くのではなく自分で理解しろと言ったまでだ」

 

どうやら本当に姉貴の思惑があったらしい。

しかし思わぬ形で動いている。

 

「更に計算外なのは彼が日に日にブライアンに迫ってきていると言うことさ。彼ならお前の言う心の渇きを湿してくれるんじゃあないか?」

「・・・・・・だと良いんだがな」

「・・・・・・これも意外だな。お前が否定しないなんて・・・」

 

姉貴が驚いた顔をして眼鏡をかけ直す。

私はトレーナーを背負って歩き出す。

 

「何処へ行くんだ?」

「生徒会室。会長がコイツを呼んでいた・・・・」

 

私の心が湿う事はない。

トレセン学園(ここ)にいても決して・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからもブライアンに挑戦しているが未だに勝てる兆しが無い。

何とか2馬身差までは来たがそれでもまだ足りない。

俺はラップタイムを意識しながら毎晩毎晩走り続けた。

おかげで学園中で夜に走るウマ娘の亡霊などと言う七不思議が出来てルドルフとエアグルーヴの胃を痛め、俺も始末書を書かなければいけない大惨事。

そんなこんなでまたまた一週間が経過していた。

 

「ったく、ブライアンの奴何処に居るんだ?」

 

今日に限ってブライアンを見ない。

何時も寝転んでいる場所や生徒会室にも・・・。

ルドルフとエアグルーヴに聞いても苦虫を噛み潰したような顔をして教えてくれない。

 

「・・・・・・何なんだこのまるでやりたいことがあるのに思い出せないような胸のざわめきは・・・」

 

夕方になりとうとう最後は学園の屋上となった。

屋上に続くドアを開くとそこに居たのは・・・・・。

 

「そろそろ来る頃だと思っていたよ」

「ハヤヒデ・・・・」

 

ブライアンでは無くその姉、ハヤヒデだった。

夕日に照らされているからかハヤヒデの髪がオレンジに見える。

 

「君に話しておきたい事がある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今、河川敷に向かって走っていた。

その間も屋上でのハヤヒデの話を思い返す。

 

『ブライアンがトレセン学園を辞める!?なんで!』

『ブライアンの心は既に渇き切っている。幾ら格上に挑んでも勝ってしまうが故に・・・。そこにはもう君も気付いているだろう?』

『あぁ。だから俺はブライアンに勝とうと思って・・・・・』

『私の計算では君がどのように走ってもブライアンに勝てる確率はゼロに等しい。ブライアンは自分と並び立てる者を探しにここに来た。つまりは心躍るレースがしたい訳だ』

『・・・・・・教えろよ』

『ん?』

『ブライアンは今何処に居るんだ!とっとと教えやがれ!』

『・・・・・・その目、なるほど君がブライアンに勝てない理由が分かった気がするよ。・・・・・・ブライアンは今、河川敷にいる』

 

 

 

 

 

 

 

 

河川敷に着いて辺りを見渡す。

見つけた。

河川敷にある芝生に寝転がっている。

 

「はぁ、はぁ・・・見つけ、た・・・」

 

俺に気づいたのかブライアンは起き上がってこっちをみる。

 

「アンタは・・・・・なんの様だ」

「レース、しにきた!」

「・・・・・」

 

ブライアンが鬱陶しそうな顔をこちらに向ける。

しかし俺は怯まずにブライアンの前に立つ。

 

「言っておくが、私はもうトレセン学園を去る身だ。今更来たってスカウトは叶わないぞ?」

「スカウト?んなの知るか!俺はお前に勝つために来たんだよコンニャロー!」

「勝つ?今まで一度として勝てていないのにか?」

 

ブライアンが目の前に歩いてくる。

いつもよりもブライアンが大きく見えてしまい後退る。

しかし頬を叩いて前に出る。

 

「だから今日こそ勝つ!」

 

場所は移動して学園の芝、中距離のコース。

俺とブライアンがスタートに立つと不意にハヤヒデが現れた。

 

「試合の見受けは私がしよう」

「「ハヤヒデ(姉貴)・・・・・」」

「では、始めるぞ?」

 

ハヤヒデが腕を上げって一気に下ろす。

それを皮切りに俺とブライアンは駆け出した。

 

 

 

まず最初に前に出たのはブライアンだった。

だがトレーナー君も負けじとブライアンの後ろに付いていく。

そしてそのままレースの中盤に縺れ込んだ。

 

(何だ。この違和感は・・・)

 

私は二人の走りを見ながらそう思った。

何時も私は二人のレースを隠れてみていた。

だが今までと何かが違うのだ。

空気と言うか・・・。

熱意と言うか・・・。

兎に角、私の計算外のことが起きているのは間違いない。

その証拠にブライアンもどこか落ち着きが無い。

 

「これはもしかするかもしれないぞ・・・・ッ!?」

 

ふとトレーナー君を見る。

何時もと違って超が付くほどの前傾姿勢。

それに何時もの死んだ魚のようなだらけた目では無い。

目の前の獲物を、ブライアンを狩るような獣の瞳。

いや、あれは・・・・・。

 

「鬼の、瞳・・・・」

 

 

 

まだだ。

まだ仕掛けるタイミングじゃあ無い。

ブライアンを差し切るならこの程度じゃあ駄目だ。

 

「・・・・・もっとだ。へへ、ブライアンに勝つにゃあもっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと気高く飢えなきゃナァッ!」

 

一気にスパートを掛ける。

ようやくブライアンに並ぶ。

 

「ッ!?」

 

ブライアンがさらに加速する。

 

「まだだ!」

 

ブライアンを追ってさらに加速する。

もう息も出来ないし頭も真っ白で視界も真っ暗だ。

だが道が見える。

光っている。

俺はそれを一歩一歩伝いながら走る。

 

「「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!」」

 

そして俺達はゴール板を通過した。

そのまま俺は倒れ込む。

ブライアンも倒れはしなかったが汗をかいて座り込んでいる。

 

「いい勝負だったよ」

 

ハヤヒデが近付いてくる。

 

「どっちが・・・勝ったんや・・・」

「・・・・・・私にも分からない。何せほぼ同時だったからね」

「何やねんそれ・・・」

「・・・・・・いや、この勝負、トレーナーの勝ちだ」

 

ブライアンが立ち上がる。

俺は今も全身が痙攣している状態で顔面が地面を向いている。

 

「トレーナーの頭が微かに私より早くゴール板通過していた」

「はは・・・・そうか・・・。やっと勝てたんやなぁ」

「一つ、聞かせてくれ」

「何や?」

「アンタがサブトレーナーをしているチームにはアンタみたいな奴が居るのか?」 

「・・・・・・・・・あぁ、居る。そいつ等は皆トゥインクル・シリーズを目指して更に強くなるッ!」

 

ブライアンが微かに笑う声が聞こえる。

 

「・・・そうか。なら決めた。私はアンタの居るチームリギルに入る。だからお前は、私をトゥインクル・シリーズへと連れて行け!」

「・・・・・・・・・・ようこそ、チームリギルへ」

 

こうしてブライアンはチームリギルに入った。

 

「・・・・・・・・・ふむ、トレーナー君の態勢のせいかいまいち心に響かないがまぁ、良しとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こうして、俺はブライアンに勝ってチームリギルへのスカウトも成功したのでした。て、あれ?皆どうした?」

 

話終わって皆を見ると何故か鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をしている。

 

「志村ー、後ろー」

「後ろ?」

 

ゴルシに言われて後ろを振り向くとそこに居たのは鬼の形相をしたブライアンだった。

 

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

 

暫く見つめ合ってから俺は逃げる体制を取る。

しかしブライアンに首根っこを引っ掴まれた。

 

「あの話は他のやつにはするなと言ったよな?」

「・・・・・・・・・・」

「言ったよな?」

「はい!確かに仰られましたました!」

 

ブライアンに睨まれて敬礼をしながらそう言う。

そのまま俺はブライアンに引きづられ並走させられたのだった。

 

「・・・・・・・・シチュエーション「修羅場」を確認しました」

「トレーナーは私達の心の中で生き続けるさ・・・」

「まだ死んでませんのに!?」

「ZZZ・・・・」

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

残されたブルボン、マックイーン、ゴルシ、スカイはその光景を特に気にする事はなく、ウオッカとスカーレットは目の前で起こった光景に未だ唖然するのだった。

 



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商店街の人気者

今回はおそらく皆大好きなあの娘!


ブライアンと併走トレーニングをして白目になりながら部屋にトレーナー室に帰るとウオッカとスカーレットの入部届けがあった翌日。

俺は基本引きこもって資料などと睨みあっているので気付かなかったのだ。

そう!冷蔵庫を見て!気付いてしまったのだ!

 

「・・・・・・・・・・・・・買い出し行かねぇと」

 

冷蔵庫の中がもぬけの殻だと言うことに・・・。

 

 

 

今まではルドルフかエアグルーヴにお願いしたら行ってくれていたが最近は俺の独り立ちを目標にして自分で行ってこいと言われることが多くなった。

そりゃあ、零さんも二人に頼りすぎた節はあるよ?

でも、こんなの小ウシを腹を空かしたライオンのど真ん中に放り込むような暴挙だよ!

 

「でも来ちゃうしかないんだよね〜」

 

てこで今近くの商店街まで買う物リストとカバンを携えて足を運んでいる。

先ずは八百屋だ。

欲しいのは玉葱と人参、ジャガイモを一ヶ月分位。

 

「あ、あの・・・・」

「いらっしゃい!兄ちゃん何が欲しいんだい?」

「ヒッ!」

 

八百屋のオッチャンの勢いに負けて顔を隠してしまう。

やはり俺には買い物は無理なのだ。

 

「に、兄ちゃん?どうしたんだ?」

 

オッチャンが何かを言っているが分からない。

ヤバい、気分悪くなって来た・・・。

 

「貸して」

「え?」

 

いきなり買い物リストを取られて驚きながら取ったやつを見る。

どうやらウマ娘の様だ。

 

「え〜と、なになに・・・うわっ!こんなに買うの!?」

「やぁ、ネイちゃん。そっちの兄ちゃんは彼氏か何かだったのかい?」

「違う違う。この人は学園専属のトレーナー。たまに学園内で見かけるし・・・」

 

そうなのか?

俺はコイツを見たことがない。

 

「それよりオジサン。玉葱と人参とジャガイモ、一ヶ月分ね」

「い、一ヶ月分!?わ、分かった!直ぐに用意してくっから待っててくれよ!」

 

そう言って八百屋のオッチャンは店の裏に行ってしまった。

俺はそれを呆然と立ち尽くしながら見ていた。

 

「ねぇ、この野菜で作るってもしかしてカレー?」

「ん?あ、あぁ・・・・」

「一ヶ月?」

「うん。寝かしたほうが美味いだろ?」

「一ヶ月も寝かしたら腐るってふつう・・・」

「あぁ、通りで何時も一週間目には腹が痛くなる訳だ・・・」

「既に実践済み!?」

 

目の前のウマ娘が苦笑いをしながら買い物リストを見る。

 

「そういや、お前は俺を何で知ってんだ?会ったことは無いだろ?」

「そりゃ、入学式で発光してたら嫌でも覚えてるって」

 

その言葉に俺は思い出した。

たしかに入学式に発光したのは俺だ。

・・・・・・・・・タキオンの薬で。

 

「あれはまぁ・・・解決・・・したのか?」

 

あれから毎日タキオンの弁当を作って持っていき、薬を飲まされ発光する。

そしてそのままトレーニングに向かい昼には治る。

そんな毎日を今は繰り返しているので解決したとはいえないだろう。

 

「て、まだ名前聞いてなかったな・・・」

「私はナイスネイチャ。気軽にネイチャって呼んで」

「おう、じゃあそう呼ばせてもらうわ」

「おまたせ!玉葱人参、ジャガイモ一ヶ月分だよ」

 

そんなこんな話しているとオッチャンがダンボール三つを持って出てきた。

俺はお金を渡してダンボールを三つ持つ。

 

「さて、後は肉十キロにカレールー30箱にカルピス百本買ったらおわりかな・・・」

「それ、持って帰れるの?」

「・・・・・・・・あ」

 

こうして買っては寮の自室の冷蔵庫に詰め買っては寮の自室の冷蔵庫に詰めという世界一無駄な時間を過ごし休日が終わったのだった。

 

 




キャラ上手く出来たかな?


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あの湿度100%の曇り空に青雲を

今回はまぁ、とある試みで


「ゴメン、もう一回言って」

 

地獄(買い物)が終わった次の日の朝。

俺はタキオンに弁当を届けてトレーニングに向かう途中に何故か理事長室に呼び出しを食らってしまい今の状況に至る。

 

「だから、君には教師としても生徒達を支えてもらいたいッ!」

「え〜・・・・」

 

どうやら教師が一人事故で休んでいるのでその代役に抜擢されたようだ。

たづなさんを見てみるがニコニコ笑ってこっちを見るだけ。

せめて何か反応を示してほしいです。あれ?作文?

 

「君に担当ウマ娘を持つように言ってから早一ヶ月。遂にはチームを作ってしまった!是非ッ!その手腕を勉強方面にも奮って貰いたいッ!」

「えっとさ、アンタも知ってると思うけど俺中卒」

 

そう、俺は中卒である。

当然教員免許は無い。

何故なら俺は両親の居ない捨て子で施設で育ったからだ。

 

「だが君は教える立場としては申し分ない物を持っているッ!」

「・・・・・・・何言われようが俺は行かないからな」

「そうか。ならまかないとしてカルピス3本を毎日奢ろうッ!」

「是非行かせて貰います!」

 

 

 

 

 

 

 

などという事があり現在は教卓の上である。

皆の視線が突き刺さる。

偶然このクラスだったスカイを見てみるが・・・・。

クソっ!寝てる!

 

「・・・・・・・・・・・・」

「あ、あの・・・・・」

 

クラスのウマ娘の一人が手を加える上げる。

 

「ひゃい!・・・・えっと・・・」

グラスワンダーです。・・・・と、言うよりも去年から会ってますよね?」

「・・・・・・・え?」

 

グラスワンダー・・・・グラスに言われて俺は去年の事を思い出す。

おハナさんに雑用から書類整理を押し付けられ、宿題として皆のトレーニングを一日分作っておハナさんを納得させたり・・・。

その為にはトレーナー室に籠もりっぱなしな訳で・・・。

 

「・・・・・・・ゴメン。基本俺引き籠もりだったから」

「そうですか・・・・」

 

グラスが耳を垂らしている。

非常に心が痛い。

 

「ハイハイハーイ!」

 

次に手を上げたのは覆面アイマスクをしたウマ娘だった。

 

「どうぞ」

「世界最強のウマ娘!エルコンドルパサーデス!」

「・・・・・・・・え?それだけ!?」

 

俺はクラスの皆を見る。

若干一人寝てるけど・・・・・。

 

「他に無いようだったら・・・・・って、ん?」

 

よく見たらスカイの呼吸が可笑しい。

スカイに近づいてみると呼吸が粗く顔が赤い。

これだけなら皆風邪だと思うだろう。

 

「なぁ、スカイ。お前、起きてるだろ?風邪引いてるフリまでしやがって・・・。発汗してないからバレバレだぜ?」

 

俺がそう言うとスカイがケロッと起き上がる。

そのまま笑顔で身体を伸ばす。

 

「いや〜、やっぱトレーナーさんは騙せませんね〜」

「当たり前だろ・・・。こう見えてちゃんとお前の事見てんだから・・・」

 

俺は教卓に戻ろうとする。

その時だった。

 

セイちゃんもず〜っとトレーナーさんの事見てますよ♡

「何か言った?」

「何でも無いですよ〜♪」

「?」

 

周りの皆が冷や汗をかいているがどうしたのだろうか?

皆が思っている事を俺は察せなかったが本能的に察しては駄目なような気がした。

 

(セイちゃん・・・・この数週間でいったい何があったんデス!?)

(セイちゃん()すっかり恋する乙女ね♪)




これは・・・・・重バ場なのか?
批判や意見待ってます!


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ミホノブルボンは笑わない

ミラクル9
見てたらキタサンブラックの問題が出た
鳥肌立ちましたわ
よし、書こう!


俺とブルボンは・・・遂に来てしまった。

 

「とうとう来ちまったな〜・・・」

「・・・・・はい」

 

目の前では大歓声が起きている。

そう、今日は種目別競技大会当日だ。

 

「ブルボンは2000メートルだったよな?」

「はい」

「テイオーとウオッカ、スカーレットも2000メートルだけど皆別々のグループだもんな・・・」

 

スカイとマックイーンは長距離でこちらも別々。

そして残るゴルシはと言うと・・・・・。

 

「はーい!ゴルシちゃんお手製の焼きそば一個三百円だぜ!」

「十個貰おう」

「ウチは一個!」

「じゃあ私は5個で〜」

 

焼きそばを売っていた。

オグリを筆頭に関西弁のウマ娘や、バブみを感じさせてオギャらせそうなウマ娘が買っていく。

それをみながら俺も金を払って焼きそばを十個貰う。

 

「マスター」

「どうした?お前も食うか?」

「いえ、大丈夫です」

 

俺は食いながらレースを見る。

今はテイオーの出るレースの様で最終直線でテイオーが前に出ている。

 

「やっぱスゲェな・・・テイオー」

「ム・・・」

 

そんな声が聞こえて隣を見るとブルボンが無表情のまま尻尾をプラプラさせて耳を垂らしてこっちを見ている。

 

「・・・・・・・何で怒ってんの?」

「ステータス『怒り』は起こっていません。ただエラーが発生しています。先程のマスターの発言がモヤモヤします。このステータスは何と言うのでしょうか」

「知らねぇよ・・・」

 

再び歓声が巻き起こってみてみるとテイオーが手を振っていた。

どうやら一着でゴールしたらしい。

 

「次は私の番ですね。それではマスター、行ってきます」

「おう。勝ってこい」

「了解しました」

 

俺が笑って答えるとブルボンは何時もの調子でそういった。

 

「焼きそば如何っすか〜」

「おい、ゴルシ。お前も応援しやがれ」

「お?うっしゃ!任せろ!」

 

ゴルシが前に出ていきなりブツブツ言っている。

 

「・・・・・何言ってんの?」

「邪魔すんなよ!今ブルボンに勝てって念送ってんだから!」

「お前が送ってんのは念じゃあなくて呪いの類だろ・・・」

 

俺は焼きそばを啜りながら次のレースを待つ。

ゴルシもまだ呪いを送っている。

 

「それにしても、何故ミホノブルボンが中距離に出走してるんしょうか?」

 

不意にそんな言葉が耳に入った。

 

「トレーナーの指示らしいぞ?」

「えぇ!?あのベテランの!?」

「ばっ!チゲぇよ!ほら、去年までリギルでサブトレーナーをしてた、アイツが臨時でトレーナーやってんだとよ。元のトレーナーはバリバリの短距離路線で考えてたらしい」

「それが普通ですよ。僕もトレーナーになってまだ若輩ですけどそうします。そのサブトレーナーは相当なバカですよ」

「チゲぇねぇ。ミホノブルボンが可愛そうだねぇ。いっそ俺がスカウトしようか」

 

笑い声が聞こえてくる。

いつの間にかゴルシが呪いを送るのを止めて声が聞こえた方を睨んでいる。

 

「・・・・・・ちょっと、ぶっ飛ばしてくる・・・」

 

ゴルシが行こうとして俺は肩を掴む。

 

「やめとけ。何も間違っちゃあいねぇよ」

「でも!」

「好きなだけ言わせてやれ。・・・・・だがよ、アイツラは分かっちゃあいねぇんだ」

 

俺は笑ってスタートのゲートに入るブルボンを見る。

既にゴールだけを見据えているあの目・・・。

・・・・・・・いつも通り無表情だけど。

 

「トレーナー!ボクのレース見ててくれた?」

「お、おう!スッゲー早かった!」

「えへへ~」

 

頭を撫でてはちみーを渡す。

 

『さぁ!始まりました!』

 

実況が聞こえてレースを見る。

 

『一番初めに前に出たのはミホノブルボン!次に・・・・・』

 

「あれもトレーナーの指示?」

 

テイオーがはちみーを飲みながらこっちを見てくる。

ゴルシはと言うと・・・・・・。

 

「勝て〜勝て〜・・・」

 

また呪いを送り始めている。

 

「いんや、ありゃあブルボン自身の判断さ。俺はよっぽどの事がない限りお前らに作戦は任せてるからな」

「ふ〜ん」

 

しばらく目を離している内にブルボンが第二コーナーに差し掛かる。

まだ息切れなどは見れない。

この状況に周りのトレーナー人から感心の声が聞こえてくる。

 

『さぁ!遂に第三者コーナー!先頭はミホノブルボン!後続とは1バ身差!』

 

 

最終直線に差し掛かり後続のウマ娘との差が僅かになる。

 

「勝て・・・」

 

そう零れた。

目を閉じる。

周りの声援も聞こえない。

 

「イッケェェェェェェェッ!ミホノブルボンッ!」

 

今度はハッキリわかる。

今俺は本気でブルボンに声援を送っている。

 

「「!?」」

「・・・・・・了解しました。マスター」

 

ブルボンがまた加速する。

 

『ミホノブルボン!伸びる伸びる!後続との差は2バ身!3バ身!そして今ゴールッ!一着はミホノブルボン!ミホノブルボンです!素晴らしい走りを見せました!』

 

息を整えたブルボンがこっちに近付いてくる。

俺は何も言わずブルボンに向けて親指を立てる。

そして心の中で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ミホノブルボンは三冠ウマ娘になれるウマ娘だ』




しばらく種目別競技大会の話が続きます!
多分シリアス?
後、お気に入り200人超えました!
皆様本当にありがとうございます!


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絶対的な壁

アニメ、アプリ一応どっちもやっております
漫画?私の財布がarrivederciするよ(笑)


「・・・・・・・・・・(笑)ってスゲェよな」

「どうしたのよ急に?」

 

スカーレットの試合が終わって今度はウオッカの試合になった。

スカーレットの試合は勿論スカーレットの一着。

3回連続うちのチームが一着だ。

 

「噛ませ犬(笑)、死亡フラグ(笑)etc・・・・。悪いことが書かれていても(笑)で中和されて少し柔らかい印象を持つ」

「長い。もっと簡潔に」

「つまり何が言いたいかと言うと・・・・・・」

 

俺は出走表をスカーレットに渡す。

 

「ウオッカやべぇブロックに入っちゃったよ(笑)」

「ふん!」

 

スカーレットに足を踏みつけられる。

俺は足を抑えてしゃがみ込む。

 

「何すんだよ!?」

「いや、これ!ウオッカは知ってるの!?」

「あぁ、さっき教えた」

「さっき!?」

「んだらウオッカなんて言ったと思う?」

「大方先輩方に勝ったらカッコいい!とか言ったんでしょ?」

「お、流石ライバル大☆正☆解」

 

何故かもう一発蹴り飛ばされる。

もう骨が折れないのが不思議なくらいである。

 

「そう言えばブルボン先輩達は?」

「焼きそば売り」

 

俺はついでに買っておいた焼きそばを食べる。

カルピスも常備しているので焼きそば、カルピス、焼きそば、カルピスとルーティンを作りながら食べている。

 

「・・・・・・・それにしてもウオッカは大丈夫かしら・・・」

「大丈夫じゃあないだろうな。何せブライアンが居るんだ。何人も別ブロック移動してラァ」

 

その他にも、と言うよりウオッカ以外の全員がGⅠウマ娘だ。

ブライアンのおかげでこうなったのだが・・・。

デビュー前のウオッカが何処まで行けるか。

 

『さぁ!今ゲートが開いてスタートしました!』

 

実況が聞こえてレースを見る。

先頭と2バ身開いてブライアンが四番手、ウオッカがハナ差で五番手だ。

ペースは序盤からなかなかはやい。

もはや、GⅠレースのそれと大差がない。

 

『ここでウオッカが上がってきた!』

 

しかしウオッカも懸命に着いている。

だがそれも長くは続かずに終盤に差し掛かるとズルズルと準備を落としていく。

対するブライアンはスパートを掛けて先頭に立つ。

必死に食らいついていたウオッカの顔が曇ったのが分かった。

そして・・・・・。

 

『ゴールッ!一着はナリタブライアン!スパートからの牛蒡抜き!流石三冠ウマ娘!』

 

歓声が響き渡る。

ブライアンがゴールしたウオッカに何かを喋っている。

ちらっとこっちを見た気もしたが気のせいだろうか?

 

「それにしても何故ウオッカはこのグループでレースをしたのかしら?」

「あの娘、例の臨時トレーナーの指導を受けてるらしいっすよ。ソイツの指示って噂が」

「所詮は新人トレーナー、か。ウオッカの才能を潰さなきゃ良いんだがな」

 

そんな声を聞きなら俺は踵を返す。

 

「ちょっと!どこ行くのよ!」

「・・・・・・・・飯」

 

俺はそれだけ言い残して観戦席を降りた。




こういうストーリーは基本アプリに沿ってます
まぁ、アレンジはしてますけど・・・・


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カッコいいの定義

カッコいい・・・・・
銀さんとか?
露伴先生かな?


俺はレースに負けて立ち尽くしていた。

あんだけトレーナーに啖呵切って出たのに。

 

「今の俺、最高にダセェなぁ・・・」

 

ふと、そんな言葉を呟く。

そしてゴールしたあとに言われたブライアン先輩の言葉を思い出した。

 

度胸と無謀は違う

 

あれからずっとその言葉の意味を考えている。

俺のした事は無謀だったのだろうか。

ふと前を見るとそこにはトレーナーが立っていた。

 

「よっ」

「トレーナー・・・・」

「飯、食いに行くぞ」

 

 

 

こうして俺達はカフェテリアの席に座った。

トレーナーがラーメンで俺が人参ステーキ。

 

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 

会話が進まない。

トレーナーもきっと俺にがっかりしてるんだ。

あんだけ啖呵切ったのにあっさり敗けて・・・・。

やっぱ俺・・・・・・。

 

「カッコよかったぞ」

「・・・・え?」

 

そんなトレーナーの言葉に食べる手を止める。

 

「トレーナー、それマジで言ってんのか?」

「お前にとって俺はこの状況で、冗談を言うような非常識な奴に見えんのか?」

「うん」

 

俺の答えにトレーナーがずっこける。

体勢を立て直すとラーメンのスープを飲み干す。

相変わらず食べるのが早い。

 

「プハァ!・・・確かにお前がやったのは無謀に等しい行為だ。まだまだ荒削りの奴が努力を重ねたGⅠウマ娘、ましては三冠ウマ娘のブライアンに勝てるわけないわな」

 

俺は下を見る。

段々とトレーナーが分からなくなって来た。

褒めたり批判したり・・・。

 

「何が言いてぇんだよ・・・」

「度胸と無謀は違うぞ」

「ッ!」

 

この瞬間ブライアン先輩の言葉が頭に過ぎっていく。

 

「・・・・・・分かってんだよんな事・・・。だから俺はダセェ」

「あ?何いってんだ?」

「だから、度胸と無謀を履き違えてレースに出た俺はカッコわりぃだろ!?」

 

段々トレーナーに苛ついてきた。

それが間違いだって分かってる。

八つ当たりだってことも。

でも当たることしか出来なかった。

 

「・・・・・・・何だ。何か会話が噛み合わねぇって思ったら・・・。あのな、俺がカッコいいって思ったのは格上に臆さず挑んだこと。無謀って言ったのは諦めてレースを走った事はだぞ?」

「・・・・・・・・・・・は?」

「お前、途中で諦めただろ?」

「・・・・・・・・・・・・あぁ」

「そりゃあ、無謀だぜ?」

 

トレーナーは立ち上がって俺の隣に座り直す。

するとその小さな手を俺の頭に乗せた。

 

「ま、無謀だろうがなんだろうが負けから得られるもんもあるさ。次はデビュー戦だ。そこまで気張ろうぜ、相棒」

 

トレーナーが俺の前にグーの手を出してくる。

それを見た瞬間さっきまでの自分を責めるような感情は無くなっていた。

俺もグーの手を作ってトレーナーの手に合わせる。

 

「勝ったら、俺と二人乗り(タンデム)してくれよ?」

二人乗り(タンデム)って今日日聞かねぇな・・・・。わかったよ」

 

こうして俺達は改めて相棒の誓いを立ててまだデビュー戦で勝つことを誓った。

 




そういや風切トレーナー見た目とかプロフィールとか書いてなかったね
必要そうなら(絶対に必要だと思うけど)次の話か前書きに書こう!
あと、皆がかっこいいと思う人とか教えてね


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レッツ☆ダンシング

て事でトレーナープロフィール
名前:風切零
性別:男
年齢:16歳
身長:155cm
体重:46kg
特徴:童顔、癖毛(アホ毛)、カルピス大好き、黒毛
得意な事:家事全般、計算
苦手な事:幽霊
経歴:産まれてから4歳まで不明
   5歳にてとある児童所に入る
   6歳〜14歳まで特にこれと言った経歴なし
   15歳にて理事長よりトレーナーにスカウト
       チームリギルのサブトレーナーとなった


「俺にうまぴょいを教えてくれ」

 

生徒会室に入って開口一番、彼はそう言った。

私とエアグルーヴは少し思考を停止された後に意識を戻して頭を押さえる。

 

「と、トレーナー君。君はその言葉の意味を分かっているのかい・・・・・?」

「あぁ」

「相手は、私で本当に、良いのかい?」

 

トレーナー君が頷く。

そうか、トレーナー君も・・・零も遂に決めてくれたんだ。

ルナと一生を誓うことを・・・・・・ッ!

 

「分かった。とりあえず先ずは仕事を終わらせよう。トレーナーは一旦部屋で待機していてくれ」

「お、おう・・・・・」

 

トレーナー君が部屋を出て扉を閉める。

するとエアグルーヴが立ち上がって近づいてきた。

 

「会長。絶対に会長の考えているような事にはならないと思いますよ?」

「何故だい?もしかしたら、あるかもしれない」

「よく考えてみてください。あの、朴念仁で子供っぽく恥ずかしい口説き文句を顔色一つ変えずに言う、あのトレーナーが、うまぴょい(意味深)の意味を知っていると思いますか?」

「・・・・・・確かにエアグルーヴの言うとおりだ」

「なら・・・「だが!」ッ!?」

「極限の選択を迫られた時、人は己の選択を信じるべき時がある。それが今だ!」

「良いふうに言ってますけど全然これっぽっちもカッコよく無いですからね!?」

 

 

 

よう、皆。

ルドルフにうまぴょいを教えて貰えると言うことでちょっと安堵している零さんだ。

何故こんな事になったのか。

ことの端末を説明しよう。

それは今朝まで遡る。

 

 

 

「と、言うわけでミホノブルボンさんは正式にそちらに移籍になりました」

 

朝からたづなさんにブルボンの移籍の報告を受けた。

と、言うよりもウチは臨時トレーナーなんだけど?

チーム作ったのも俺が担当してる時にレースに出してやれるようにだし・・・。

言いたいことは山ほどあるが勿論言えるわけもなく・・・。

 

「あ、はい」

 

そこからはいつも通りタキオンに弁当を持っていき身体を発光させながら皆のトレーニングを見てスカイと一緒に教室へ。

その時のスカイとの会話である。

 

「トレーナーさん」

「どうした?」

「セイちゃん達のメイクデビューって、いつでしたっけ?」

「忘れたのか?えっとな・・・」

 

俺はポケットに入れていた手帳を取り出して開く。

隣のスカイの視線が痛いが気にしないでおこう。

 

「・・・・・・・来週だな」

「あ〜、来週か〜・・・」

「あ?どうしたんだ?」

「ウィニングライヴのダンスレッスンってどうするのかな〜、て」

 

次の瞬間一瞬の静寂に包まれる。

いつの間にか俺の手から手帳が零れ落ちていた。

 

 

 

まぁ、こんな感じでルドルフにお願いしたわけだ。

流石生徒会長。

何か受け答えが可笑しかったけど二つ返事でOKしてくれるとは器がデカい。

部屋で待機と言われたがやはり自習で踊ったほうが良いだろうか?

 

「ま、物は試しだな」

 

て、事で一度テレビでうまぴょい伝説を流して真似てみる。

しかし足と頭がこんがらがってしまう。

大体アイツラがハイスペックなんだよ。

歌って踊って速く走ってって・・・・・。

 

「やっぱ俺絶対トレーナー向いてねぇわ・・・・」

「諦めるのはまだ早いよ!」

 

声が聞こえて辺りを見渡す。

しばらく高らかな笑い声が聞こえた。

声を追ってみるとそこにあったのは私服を掛けてある物置だった。

バンッ、と扉が開き中から俺の服に身を包んでいる王冠を被った栗毛のウマ娘が出てきた。

 

「何故なら王者の中の王者!世紀末覇王のこのボク!テイエムオペラオーが君にレッスンをつけてあげるんだからね!」

 

いきなりこの不審ウマ娘は何を言い出しているのだろう?

と、言うよりもだ。

テイエムオペラオー?

どっかで聞いたことのある名前だ。

 

「まさか忘れてしまったのかい!?君がサブトレーナーの時に、ボクと永遠のビクトリーロードを歩むと誓ってくれたじゃあないか!」

 

はて?そんな事を俺は見ず知らずのコイツに言ったのだろうか?

 

「悪いがアンタと会ったことも話したことも永遠のビクトリーロードを歩むと誓った覚えもねぇよ!ってか、どうやって家に入った!?」

「フッ、去年借りた鍵で合鍵を作っただけさ」

「はい、ギルティ」

 

笑いながら合鍵を見せつけてくるテイエムオペラオーから鍵を奪おうとするが交わされて逆に担がれる。

 

「さぁ!行こうじゃあないか!ボクと君の輝かしい舞台へと!」




うん
気づいたら評価バーに色が付いてました!
皆さんありがとうございます!
と、言ってもあそこの仕様が分かっておりませぬ


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レッスン4、敬意を払え

喋り方がよく分からない・・・


「さ、着いたよ」

 

下ろされて見るとそこはウマ娘が授業やトレーニングでダンスレッスンをするダンススタジオだった。

 

「・・・・・・・えっとさ・・・」

「ん?どうしたんだい?ダンスのレッスンをしようじゃあないか。先ずはこのボクが!華麗なるダンスで君を虜にしよう!」

 

そう言ってオペラオーが踊りだす。

・・・・・オペラを。

え?ダンスレッスンじゃ無かったの?

これじゃあテイエムオペラオー主演のオペラ鑑賞会じゃあないか。

まぁ、せっかく踊ってくれているのだ。

最後まで見せて貰おう。

 

 

 

 

「・・・・・・ッフ」

「終わった?」

「あぁ。それで、どうだったな?脚本ボク!演出ボク!主演ボク!豪華キャストで送る、史上最高の超大作オペラの感想はッ!」

「オメェオンリーで豪華キャストって・・・・。まぁ、いいや。感想だろ?正直言ってすべて謎」

「え?」

「いや、だって基本自分褒めてただけだし効果音も口って・・・今一迫力に掛けるっつうかなんつうか・・・」

 

俺がとりあえず感想を上げているとオペラオーが肩を掴んでくる。

しかも物凄い強い力で。

 

「君は何時もそうだ!この覇王にここまで意見を叩きつける!」

「何時もって・・・俺はお前と会ったことはないっつってんだろうが!」

「先ずそこからだ!何故君はボクを覚えていないんだ!?」

「零さん実はルドルフと逆で定期的に会わないやつの事は忘れます」

「なっ!?定期的に会っていただろう!?」

 

その後も色々言い合いを続けていると・・・。

 

「ダンススタジオで喧嘩をするウマ娘とトレーナーが居ると苦情を受け来てみれば・・・・」

 

聞き慣れた声に振り返る。

 

「何をしている、キサマ?」

「え、エアグルーヴ・・・・」

 

トレセン学園副会長である女帝、エアグルーヴだった

 

「そもそも今日は会長とダンスの練習じゃあ無かったのか?」

「そのつもりで待ってたら何故か俺の服を着て部屋に居たコイツに連れてこられたんだよ」

「ほお・・・・」

 

エアグルーヴがオペラオーを睨む。

オペラオーはポージングをしながら袖の上から俺の手を掴む。

 

「ボクは彼にボクの事を思い出して欲しかっただけさ!呪いで記憶を無くした姫を相手取る王子のようにね!」

「言っている意味がよく分からん・・・。兎に角、ソイツを直ぐに開放しろ」

 

エアグルーヴが俺の反対の袖の上から手を掴む。

 

「断る!」

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」

「我慢しろっ!」

「理不尽ッ!?」

 

ビリッ!、とそんな音が響き渡った。

 

 

 

 

夕方。

俺は結局ルドルフが待っているだろう自室に来た。

 

「る、ルナ・・・怒ってる?」

「・・・・・・怒ってない」

 

・・・・・嘘だ。

絶対に怒ってる。

耳も尻尾も垂れ下がっている。

 

「・・・・・なぁ、ルナ。面白い話をしてやろうか?」

「?」

 

興味を持ったようでルナがこっちを向く。

 

「俺な、とあるロボットを使うオンラインゲームをしてたんだけどよ、ハマりすぎて一騎当千の無双状態よ。でもな

ある時全プレイヤーが一気に俺に襲いかかってきたんだ。これぞ正しく一揆当然ってね」

 

ルナが驚いた顔になる。

それから飛び込み額を床に擦付ける。

 

「本っ当にゴメン!・・・・・これは一気に頭身!」

 

ルナを覗くと更に驚いた顔をしたと思ったら笑い出す。

 

「アハハハハハハ!仕方無いトレーナー君だ!うん、仕方無い!良いよ。それじゃあ寝室に行こうか」

「え?寝室?」

「うまぴょい(意味深)するのだろ?」

「うまぴょいならここで出来るだろ?」

 

お互い頭を傾ける。

何かが食い違っている。

そんな気がしてならない。

 

「ルナ?ダンス教えてくれるんだよな?」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・ルナ?」 

 

ルナが俯いて黙り込む。

 

「零のバ鹿ァ!」

「ペプシッ!」

 

ルナが俺を突き飛ばして部屋を飛び出す。

全く訳がわからない。

 

そして次の日。

オペラオーと一緒に学園中の窓を拭かされたのは内緒である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、我に帰ったルドルフが思ったこと、それは・・・。

 

「昨日のトレーナー君はやけにワイルドな服装だったな・・・。袖が両方千切れていて・・・」




サブタイ関係ねぇじゃん!


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メイクデビュー

絵が上手く書ければ・・・
あとエイシン狙ってるのにスキーと水着スペちゃん・・・
未だにAを作れません


今日は待ちに待ったメイクデビューの日だ

距離で分けられているこの大会。

ブルボン以外のメンバー、テイオー、マックイーン、ゴルシ、ウオッカ、スカーレット、スカイの六人が出走予定となっている。

勿論場所も違う。

先ず阪神レース場に行くのは中距離でメジロマックイーン、マイルでウオッカ、中山レース場に行くのは中距離でセイウンスカイ、中京レース場に行くのは中距離でトウカイテイオー、京都レース場に行くのは中距離でダイワスカーレット、札幌レース場に行くのは中距離でゴールドシップと見事に別れてしまったのだ。

そして俺はマックイーンとウオッカの付添として阪神レース場に向かっていた。

 

「あ!見ろよトレーナー!甲子園球場だぜ!」

「お、本当だな・・・」

 

電車で席から乗り出して甲子園球場を見るウオッカを撫でながら元の席に戻す。

 

「トレーナーさん、レースの後にスイーツを食べに行きませんか?」

 

甲子園球場を見ながらマックイーンがそう言う。

関西のスイーツ・・・・何があっただろうか?

 

「とりあえずレースな」

 

さて、皆も気になっているだろう。

残りのみんなはどうなったのかと・・・。

勿論他にも付き添いをお願いした。

ゴルシにはたづなさん、スカイにはブルボン、テイオーにはルドルフ、そしてスカーレットには・・・・・・。

 

「あ、スカーレットから電話だ」

 

俺は電話をビデオ通話にして見る。

勿論電車内なのでイヤホンをして。

 

「もしも『もしもしトレーナー!』・・・どうした?もうレース終わってる頃だろ?』

『えぇ!終わったわよ!ぶっちぎりの一番だったわよ!』

「おぉ!おめでとう!」

 

俺はウオッカに親指を立てる。

するとウオッカもガッツポーズをして尻尾を振る。

 

『そうじゃなくて!私の付き添いの話よ!』

「何だ?居るだろ付き添い?」

『二人もね!しかもなんでオグリ先輩とタマ先輩なのよ!?』

 

そう、スカーレットの付き添いに頼んだのはオグリキャップとタマモクロスだ。

何でも一度大阪に戻る予定があったのでついでにと引き受けてくれたのだ。

ちなみにオグリは大阪に付いて行ったらたこ焼きを食えると思ったらしい。

 

「まぁまぁ、お前が一番しっかりしてるからさ・・・」

『私が・・・一番・・・』

「そうそう、俺達の前じゃああれだが、一応優等生キャラ貫いてるみたいだし。一人でも一番安全そうだったからな〜」

 

俺はスマホを耳と肩で挟んでウオッカを席に座らせる。

まぁ、楽しみなのは分かるけど・・・。

 

 

 

そんなこんなでレース場へと到着した。

既に観客がひしめき合っている。

 

「先ずはウオッカのレースからで次がマックイーンな」

「わかりましたわ」

「おうよ!行ってくるぜ!」

 

こうして運命のメイクデビューが始まった。

 




現在デビューを果たしたメンツ
・ダイワスカーレット
・ミホノブルボン


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浪花のド根性みせたら!

何故だろう・・・。

 

「トレーナー!たこ焼き食おうぜ!」

「アンタにだけは負けないんだから!」

 

何故だろう・・・・・・。

 

「トレーナーさん!彼処に行きましょう!」

 

何故だろう・・・・・・・・・。

 

「タマ!ここは天国か!?」

「おうおう、もっと言え!ここが天下の台所、大阪やぁ!」

 

・・・・・・・・・・・・本ッ当に何故なのだろうか。

 

 

 

時は遡ること2時間前。

ウオッカとマックイーン、スカーレットのメイクデビュー勝利祝いに大阪の道頓堀をみんなで回っていた。

観光で言うところの食べ歩きである。

しかしそれが間違いだったのだ。

何故なら今この場にはあの芦毛の怪物、オグリキャップが居るのだ。

彼女のおかげで既に金欠の状況からマグロ漁船とカニ漁の豪華ツアーまっしぐらになりかけている。

 

「ホンマスマンな〜。ウチ等まで奢って貰って」

「タマァ!お前だけやわ!心の癒しはァ!」

「うわっ!何や気色悪い!」

「シンプルに傷付くやつ!」

 

俺はタマに抱き着くのを止めて欠伸をする。

 

「そう言やトレーナーは何で関西弁喋ってんの?オグリと話してるときとか東京弁やん」

「俺は元々関西育ちの関西弁やで?東京やと伝わらんと思て東京弁喋ってるだけや」

「ふ〜ん・・・」

 

何ならガチで疲れたときとかは関西弁になってしまう。

まぁ、そんな事はどうでも良い。

今更訂正も出来ない。

暫くは鍋に入った腐ったカレーだな・・・。

そう思いながらスマホを確認する。

うまインの通知が100を超えていた。

通知を見ているとアグネスタキオンから六十三件、テイエムオペラオーから三十四件、たづなさん、テイオー、スカイからそれぞれ一件だ。

後ろ三人はそれぞれの勝利報告でスタンプを送り返す。

オペラオーは訳の分からんポエムと・・・・・。

 

「あ?」

 

最後に目に止まる文章が出た。

 

『ボクの居場所を当てて見てくれ!』

 

文の下の写真は明らかに俺のタンスの中だった。

・・・・・・・・・いやいやいやいや!何やってんのこの世紀末覇王!?

 

『俺の部屋からでろ!今すぐ!』

 

そう打とうとしてタキオンのうまインの通知が出る。

急いでタキオンの方を見ると基本弁当の催促だった。

 

『弁当はまだかい?』

『モルモット君?』

『無視するのかい?』

『ならこちらにも考えがある』

『君の部屋のカレーライスを頂こう』

 

どいつもこいつも何故部屋に忍び込もうとするのだろうか。

腐ってるから辞めとけって・・・・。

 

『も、モルモット君!何故カレーライスに下剤が入っているんだ!?』

 

遅かったよ!

既に膀胱カレーで決壊寸前だよ!

またオペラオーのうまイン通知が来る。

 

『さっきからうめき声が』

 

そこまで見てうまインを閉じた。

まぁ、うん。

タキオンにはまたお詫びにとびっきり美味しい弁当でも作ってやろう。

 

「どうしたんや?」

「何でもあらへん。それよりそろそろ帰る時間やで。食べんのもそこら辺にせんと太ってまうわ」

 

俺がそう言うとオグリが絶望した表情を見せる。

 

「待ってくれ!まだ腹3分なんだ!もう少し!」

「だーもう!また、飯作ってやるから今は我慢してくれ頼むから!」

 

こうして、無事全員がメイクデビューを果たし俺たちのチームが始動したッ!

 

 



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学生だからね

学生の本分は・・・・・


「はい、6月も中旬に差し掛かりました。君たちにとっておそらくは来てほしくないもの、期末テストの時期です」

 

トレーナーさんが気だるげに欠伸をしながら一学期中間テストの成績を見る。

特に成績不振な娘は居ないみたいで特に表情を変えることはない。

 

「走るのも大事だけど勉強もしっかりな〜」

 

俺は出席簿を閉じて身体を伸ばす。

 

「はい、朝のホームルーム終わり。んじゃ、期末頑張ってね〜」

 

トレーナーさんはそれだけ言うと教室から出ていった。

しばらくの静寂の後教室が賑わい始める。

 

「全く何なのかしら彼は・・・」

 

私の席に近付きながらそう呟くのはキングヘイロー・・・私はキングって呼ぶけど・・・。

キングはそのまま私の横に立つと机に突っ伏したの肩を揺する。

 

「ほら、スカイさんもそろそろ起きなさい!」

「大丈夫だよキング〜。まだまだ時間あるし〜」

「そういう問題じゃあ・・・・」

 

キングが頭を抱えていると今度はエルが私の机に走り込んできた。

 

「大変デース!」

「どうしたの?まるでトレーナーさんがゴルシとタキオン先輩に追われてるときみたいな表情して・・・」

 

私は身体を起こしてエルを見る。

するとキングが「やっと起きたか」と言わんばかりにため息を付く。

 

「実はエル、先生とたづなさんが話しているのを聞いしまったんデース!明日転校生が来マス!」

 

エルのその発言にクラスは静寂に包まれ、しばらくして騒然となるのだった。

 

 

______________________________________________________________________________

 

この物語は私、スペシャルウィークが走り出す物語です。

肉体・・・・もそうですけど青春から大人と言う意味で・・・。

 

・・・・・・・って、格好付けちゃいましたけど実は私は今すっごく困っています。

道に迷ってしまったんです!

 

「可笑しいな〜?ちゃんと地図は合ってるはずなんだけど・・・・」

 

学園最寄りでお母ちゃんの言うとおり同じ制服を着たウマ娘さんに道を聞きましたが帰ってきた返答が「考えるな。感じろ」でした・・・・。

他の人にも聞こうとしましたが身体が虹色に光っていたので諦めました。

 

「どうすれば良いんだべ、お母ちゃん・・・・」

「・・・・・・・・もし、そこのお嬢さん」

 

頭を抱えて悩んで居るとさっき虹色に光っていた人が話しかけてきました。

でも今度は虹色に光っていなくてサングラスを掛けて手にはアンパンと牛乳を持って、コートを羽織っています。

まるで刑事さんみたいですが見たところ年齢は私と同じ位です。

 

「君、トレセン学園の生徒?今は授業中だぜ?見たとこ迷ってリみたいだが・・・。送ってやろうか?」

「結構です!お母ちゃんに知らない人には付いていくなって教わりましたから!」

「でも知らない人に付いて行かなきゃたどり着かないのも事実だろ?」

 

私は怪しい人のその言葉に口を閉ざしてしまいます。

しかしそんな事を気にしない様子で怪しい人は笑いました。

 

「な、何ですか・・・・」

「もう直ぐ指定された時間なんじゃあないか?」

 

そう言われて怪しい人が駅前の時計を指さして私もあとを追います。

 

「そろそろ十二時半、約束の一時まであと半時間しかねぇ」

「・・・・・・・何で約束の時間を知ってるんですか・・・?」

 

私がそう言うと怪しい人は驚いた顔をして見せたあとまた笑いました。

 

「何でってそりゃ、俺がお前の担任として今日中に学園を案内する為にたづなさんに時間変えてもらったからな」

「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

こうして私、スペシャルウィークの学園生活が幕を開けました。

 

「あ、俺お前の担任の風切零ね」

「今更!?」




因みに零さん担当教科は中学範囲ならオールマイティです


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先頭民族?

これで誰か分かる人は挙手!


何とか一時までに学園に到着して俺とスペシャルウィーク・・・・スペ、そして何故か駅前で踊っていたゴルシは理事長室に来ていた。

 

「歓迎ッ!ようこそトレセン学園へ!」

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

スペが頭を下げて理事長が満足そうに笑う。

 

「君の案内は隣に居る零トレーナーに任せてあるから安心してくれ!」

「荷物の方ですが、学園を抜け出した罰としてゴールドシップさんに運んで貰いますね」

 

たづなさんが笑顔でそう言うとゴルシが逃げ出そうする。

俺はゴルシの首根っ子を押さえて逃さないようにする。

 

「ご、ゴルシちゃんの危険察知センサーがビンビン反応しているぜ!まるで初めてエロ本を見た小学生の下半身みたいに・・・」

「女の子がそんな事言っちゃいけません」

 

俺はそれだけ言ってゴルシをたづなさんに引き渡して俺達は理事長室を出た。

だが、会話が弾まない。

授業中だから?俺がチビだから?

 

「あ、あの・・・・」

「へ?」

 

スペがいきなり話しかけてきた。

 

「今、何処に向かってるんですか?」

「・・・・・・・・・・」

 

言われてあたりを見渡してみる。

ここら辺は確か・・・・・。

 

「・・・・寮だな。ほら、彼処でゴルシがお前の荷持を運んでる」

「あ、本当ですね・・・」

 

俺は踵を返して学園の方に戻る。

スペも不思議そうに後を付いてくる。

こんな事を続けながら学園を見て回り最後は何時も練習をするコースとなった。

 

「ここがコースな。練習時は大抵こっちかあっちの観客席付きの方・・・・・・っとそろそろ始まるかな?」

 

俺がコースを見るとそこにはルドルフやエアグルーヴ、ブライアンにオペラオーと言ったチームリギルの面々だった。

 

「見てな。今からリギルの併走特訓だから」

 

スペが頷くとコースを真剣に見る。

ちょうど始まったようでエアグルーヴと栗毛のウマ娘が走り出す。

 

「うわぁ」

 

そんな声を聞きスペを見るとキラキラした目で栗毛のウマ娘を見る。

あの栗毛ウマ娘は何度かテレビで見たことがあるから忘れ易い零さんでも知っている。

確か・・・・・・。

 

「サイレンススズカ・・・・」

「スズカさんって言うんですか?」

「あぁ・・・・って、待て待て!併走に混じろうとするんじゃあない!」

 

サラッと併走に混じろうとするスペを止める。

流石ウマ娘と言うべきか力が強い。

 

「走りたいなら今日は俺今日休みでフリーだから!河川敷で見てやれるからァ!」

 

何とかスペを引っ張って引き離す。

しっかし、まじで力が強い。

 

「ハァハァハァ・・・ったく、とりあえず学校は明日からだからちゃんと準備しとけよ?後5時に校門で待っとくから服着てこいよ」

「はい・・・。すいません」

 

俺はしょぼくれるスペを見て頭を撫でる。

 

「スペ、お前の夢ってなんだ?」

「日本一のウマ娘です!お母ちゃんと約束したんです!絶対なるって!」

 

スペの言葉を聞いて何かが込み上げてくる。

 

「・・・・・そうか」

 

踵を返してスペから離れてまた振り返る。

 

「ようこそ、トレセン学園へ」




カフェよ。
君はいつ来るんだい?
タマよ。
絶対に迎えに行くぜ。


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二人乗り(タンデム)の末

タマよ。
君は何時実装なんだい?


「トレーナー!行こうぜ!」

「行くって何処に?」

 

俺がトレーナー室で書類仕事をしているといきなりウオッカが部屋に入って来た。

とりあえずウオッカを宥めて麦茶を渡す。

 

「で、いきなりどうしたんだ?」

「約束だったろ。メイクデビュー勝ったらタンデムしてくれるって!」

 

そんな約束をしただろうか?

したような気がする。

いや、確かにした。

 

「・・・・・・あぁ〜」

「忘れてたのかよ!」

「ごめんごめん。タンデムだったよな?待ってろ準備してくる」

 

書類も停滞していたのでいい機会だと思い席を立ち上がる。

自分のバイクの鍵をポケットにあるのを確認してウオッカと部屋を出るのだった。

 

 

 

「おい、トレーナー!このバイクって・・・」

「ハヤブサ」

「まじかよ!最新型じゃあねぇか!」

 

ウオッカにヘルメットを被せて自分も被りバイクに跨がる。

ウオッカも後ろに跨がり俺の腹に捕まる。

 

「じゃあ、飛ばすぜ」

「おう!」

 

ハヤブサを飛ばして三十分ほど走ると郊外に来た。

すでに峠のカーブで車もすれ違わない。

 

「なぁ、トレーナー。何処に向かってるんだ?」

「着けば分かるよ」

 

そう話していると隣に車が走ってきて並走してきた。

 

「?」

「ハァイ、サブトレーナー君。て言っても最近会ってなかったからマルゼンお姉さんのこと忘れてるんだろうけど・・・」

「ま、マルゼン先輩!?どうして!?」

 

ウオッカが後ろで大声を出す。

あまりの煩さに耳がキーンとなった。

 

「なぁ、ウオッカ。知り合いか?」

「なっ!?トレーナーお前マジか!?マルゼン先輩って言ったらチームリギルのスーパーカー!マルゼンスキー先輩だよ!」

 

リギルに居た?

駄目だ。記憶にない。

 

「悪いな。俺よっぽど初対面が印象的じゃないと覚えてないもんで」

「大丈V!問題ナッシングよ!」

 

マルゼンスキーが偉く古い死語を連発しているが・・・。

いや、そんなことよりも、だ。

 

「ここに来たってことはお前も?」

「えぇ。その為に使い捨てカメラも持ってきたんだから!」

 

俺とマルゼンが互いに笑い合って両者スピードを上げる。

 

「うわっ!ちょ!」

「ウオッカ、スピード上げるぜ?」

「もう上げてる!上げてる!」

 

カーブに差し掛かって俺はマルゼンの車の位置を見る。

一バ身・・・いや、一車身だけこちらがリードしている。

 

「ウオッカ、曲がるからちゃんと身体曲げとけよぉ」

「えぇ!?」

 

更にスピードを上げて差を作る。

そのままカーブを曲がる。

しばらくして後ろを見るとマルゼンも難なくカーブを曲がり切って俺に並んでくる。

後は直線。

車のスペックとガソリンの残量が勝負を決める。

 

「おい!何処まで行くんだよ!?」

「喋ってっと舌噛むぞ。・・・見えてきたぜ~。目的地!」

 

数ミリだ。

ほんの数ミリで決着がつく。

正確にガスを出せれば・・・ッ!

頂上に辿り着く。

同時だった。

全く同時に吹かした。

だから同時のゴールだった。

 

 

 

「スッゲェェェ!」

 

目の前に広がるのは山に沈もうとしている夕日だった。

夕日に真っ赤に照らされて山がオレンジ色に見える。

 

「ここの景色、お気に入りなのよ」

「あぁ、悩みも月までぶっ飛ぶ絶景だぜこりゃあ」

「え?トレーナー、悩みあんのか?」

 

ウオッカが心配そうな顔でこちらを見てくる。

 

「そりゃあ、トレーナーさんだって立派な社会人ですから、悩みの1つや2つや3つ4つ・・・」

「増えてる!?」

 

ウオッカにはこう言ったが正直なとこ今の悩みは一つだけだ。

 

「サイレンススズカねぇ・・・」

 

リギル所属のウマ娘、サイレンススズカのことだ。

昨日のこと、リギルのトレーナーである、おハナさんがスズカの脚質を逃げではなく先行にしたいと相談しに来た。

確かにエアグルーヴとの併走でも物凄い大逃げを見せていた。

 

「まぁ、なんだよ・・・。悩みがあんなら何時でも相談してくれよ?俺らはパートナーなんだからよ」

 

ウオッカがそう言って顔を覗かせてくる。

それを見ると何だか悩んでいたのがバカみたいに思えてくる。

やるだけやる、それだけだ。

 

「ありがとよ」

 

ウオッカを撫でる。

顔を真っ赤にして頭の上の手を払いのける。

 

「お姉さんが励ますまでも無かったみたいね」

 

マルゼンが何かを呟くがよく分からなかった。

しかしすでに夕日も沈みそろそろ帰らないと二人の寮の門限も恐らくやばいだろう。

 

「・・・・・・うし、こっから俺は引率者としてお前達を無事寮に門限までに帰さなきゃあいけないわけだが問題がある!」

「「?」」

「・・・・・・・・バイクの燃料切れちゃいました」

 

結局マルゼンの車、タッちゃんにバイクごと乗せてもらって帰りました。

でもムッチャスピード出てるわ揺れるわで着いたときには秒で二人で吐いてたづなさんに怒られたのはナイショ。




カフェが残り一日で来てくれました!


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日本総大将(スペシャルウィーク)異次元の逃亡者(サイレンススズカ)

キタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサンキタサン~~~~~~(狂気)


諸君、前回俺は言ったね?

今の悩みと言ったらスズカのことだけと言ったが訂正しよう。

ありゃあ嘘だ。

正確にはもう一人・・・・。

 

「こっから出てくるのはなんだぁ?接点tッ!a,bを通るときの、接点tッ!だぁからぁ、この点とこの点とこの点が出るわけだ!この点はでねぇよぉ!えぇ?a,b通らない接線なんだからぁ!」

「うぅ・・・はい・・・」

「あ!ごめん!別に怒ってるわけじゃなくって!」

 

スペの勉強面についてだ。

スペの経歴を見たが実家が北海道の田舎の方で学校も遠くて行けなかったらしい。

だから母親に勉強を教えてもらっていたらしい。

 

「まぁ、これから頑張っていけばいいさ。んじゃあ練習行って来い」

「はい!ありがとうございました!」

 

スペが教室を出ていって教科書とチョークを直す。

次はスペでも分かるような問題から編集して持ってこようなどと考えながらふと思った。

何で俺ここまで真面目に先生をしているのだろうか、と。

元々ここの担任の代理のハズなのに気付けば数ヶ月は担任をしている。

何なら授業までさせられるようになってきた。

ここは国が認める超が付くほどのホワイトではなかったのか?

未成年の教員免許も持っていない中卒青年を働かせるのが果たしてホワイトなのか?

 

「・・・・・・はぁ」

 

教室を出て鍵をしてめ、ため息を付いて歩きながらコースを見る。

マックイーン達もトレーニングメニューを順調にこなしている様だ。

 

「俺も早く用意しなきゃあな・・・」

 

トレーナー室に入り教科書を置いてタブレット端末を持つ。

昔まで部屋に籠もってのパソコン作業だったが今ではおハナさんの影響でタブレット作業になった。

 

 

 

「よーし、今日はこれで終わりな。ちゃんと息整えてから帰るように」

『はーい』

 

トレーニングが終わって歩き出す。 

うん。やっぱ可笑しいよね?

俺臨時なんだけど?皆ちゃんとトレーナー見つけられるのか?

 

「まぁ、そんときはそんときか」

 

そんな事を考えを巡らせながらトレーナー室に戻って椅子に座る。

何時もは速攻帰ってゲームをしたりトレーニングを寝るのだが生憎今日から教員はテストを作らなければいけない。

オールマイティなトレーナーさんはなんの教科もバッチグーだが、今回は数学を作らされている。

 

「・・・・・・・ふけるか」

「トレーナーさん?」

「な、何でもございません!」

 

そうだ、忘れていた。

今日からたづなさんの監視が付くんだった・・・・。

しかもたづなさん・・・・。

 

「今日もトレーナーさんのお家にお邪魔しても大丈夫ですか?」

 

何か知らないけど俺の部屋にたまに来ます。

 

「・・・・別に良いッスけど、片付けくらいさせてくださいよ?」

「お構いなく」

「構うわ!家汚いんスよ!」

「お構いなく」

「でも!」

「お構いなく」

 

駄目だこの人・・・・。人? 

何言ってもお構いなくで返してきやがる!

この人には来ると言ったら来るスゴみがあるッ!

 

「・・・・・・あの、大問3まで作り終わったんで今日は帰してもらう訳には・・・」

「・・・・そうですね、もう時間ですし今日は上がりましょうか。では、少し用意をしてきますのでトレーナーさんは校門前で待っていてくださいね」

「・・・・・・ウス」 

 

クソッ!抜け目のねぇ!速攻帰って片付けしようと思ったのに!

今部屋は俺の趣味全開なんだよ!

アニメとかゲームが床一面に広がってんだよ!

 

「じゃ、じゃあ、お疲れ様した・・・」

 

これが、社会人かと社会人の厳しさを実感しながら俺はトレーナー室を後にしたのだった。

 

 

 

たづなさんが来るまでしばらく時間があると思い校内をブラブラすることにした。

と言ってもほとんど閉まっていて今居るとしたらテスト作ってる先生どもと俺とたづなさんと生徒会のルドルフとエアグルーヴってごめん結構いたわ。

 

「にしても、もうすぐ夏休みか~。・・・・・あれ?これが終わったとして次は採点と夏休みの宿題の編集と・・・・」

 

しばらく俺に休息は無さそうだ。

ふと、辺りを見るとここはトレーニングコースだった。

 

「やべ、考えに耽ってたらこんなとこまで・・・。早く行かねぇとたづなさんに殺される・・・」

 

急いで戻ろうと後ろを振り向いた時、視界の片隅に一つの人影が写った。

よく見るとそろ人影の持ち主は件のサイレンススズカだった。

近付くと何故かスズカが辛そうな顔をしているのが見える。

何か変だと思っているといきなりスズカがふらつき始め、そして倒れた。

急いで駆け寄る。

 

「・・・・・寝てるだけみてぇだな。ったく、無理しやがって・・・」

 

とりあえずスズカを背負って寮に向かう事にした。

たづなさん?

良いよ。多分帰ったら居るだろうし。

・・・・・・・まぁ、大目玉食らうだろうけど・・・。

どう言い訳をしようか考えながら歩いているとすでに寮の前だった。

 

「・・・・・どうしよ。零さんこう言うの苦手なんだよ。よし、こうしよう。ノックしたらスズカを置いて走り去る。うん。完璧だ。名付けて『ノックしてもしも~し大作戦』!よし、さっそく・・・」

「さっそく、何をするんだい?」

「ッ!?」

 

声がして振り向くとそこには見知らぬウマ娘が立っていた。

なんだろう、うん。とても女子ウケ良さそう。

 

「あはは、見知らぬウマ娘は酷いな~」

「????何で地の文読めるの?」

「それは私が寮長だからだよ」

「ワケワカンネーヨー」

 

俺が頭を抱えて蹲っていると寮長が俺を立ち上がらせる。

 

「そう言えば君は一週間定期で会わないと顔も名前も忘れてしまうんだったね。なら、改めて自己紹介しようか。私はフジキセキ。チームリギルに所属しているよ」

「その、ホントすいません・・・・。忘れられるっていい気しねぇよな・・・」

 

俺が頭を下げるとフジキセキが俺を抱きしめる。

風呂上がりなのかほんのり温かくシャンプーのいい匂いが髪から香ってくる。

 

「大丈夫。大丈夫だよ。私は君に元気を分けて貰ったんだ。忘れられた位で怒ったりはしないさ」

「・・・・・・・・・」

 

フジキセキから離れて自分の背中を揺する。

 

「お~い、起きろ。門限だぞ。練習は良いがオーバーワークだアホ」

「うぅん・・・・」

 

スズカが起きたことを確認して地面に下ろす。

しかし、寝ぼけているのかまだ船を漕いでいる。

 

「んじゃ、後は頼んだわ。流石に持ってこれなかったスズカの荷物はトレーナー室で預からせて貰うぜ」

「うん。お疲れ、サブトレーナーさん」

 

こうして、スズカを寮に送り届けて俺はたづなさんの口に一晩中付き合わされるのだった。




ダブルジェット!お前じゃあないっ!


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ようこそチーム『    』ヘ(芦毛の怪物編)

最近嫌われにハマってる


皆、お気付きだろうか?

このチーム、チーム名が無いのだ。(実際には空白なだけだが・・・)

チーム名は全部かどうかは知らないし興味もないが大抵星の名前が付く。チームリギル(ケンタウルス座)然り、アルタイル(ワシ座)や、デネブ(白鳥座)何てのもある。

 

「伝令ッ!これから君にチームの引き継ぎをして貰うッ!」

 

俺が理事長に呼ばれたのは昼休み。

丁度昼飯を食おうとしたときだった。

タキオンに弁当を渡して食堂に行こうとしたのだ。

 

「・・・・・・・とりあえず、話を全部聞く。拒否はそれからだ」

「驚愕ッ!既に拒否の体勢!?」

「まぁ、良いんだよ。で、その肝心の引き継ぎチームのトレーナーは?」

「俺だ」

 

後ろから声がして振り向く。

そこには帽子を被り杖をついた老人だった。

 

「む、ムスカの爺さん・・・」

「六平だ。お前は知ってて間違えるから質が悪いな」

 

俺は頭をかきむしって六平(ムサカ)の爺さん、本名六平銀次郎トレーナーを見る。

 

「ったく、あんたら揃いもそろってこんの忙しい時期に・・・」

「どうやら小僧は受ける気は無いようだな」

 

爺さんが溜め息を付いて杖を向け来る。

 

「なら、小僧。オグリと模擬レースをして貰うぞ」

「は?」

 

理事長とたづなさんを見るとまるで予定調和のような顔だ。

 

「距離は1600メートルでどうだ?」

「待て待て待て待て!何で俺がやることになってんだ!?オグリと俺なんて比べもんになんねぇだろうが!」

「・・・・・直に分かる。何故俺が小僧を指名したのかも、小僧が何者なのかもな」

「え?何?まだ半年も経ってないのに漫画終盤の謎に迫るみたいな感じ?」

 

俺は爺さんを見て溜め息を吐きながら理事長を見る。

しかし理事長が目を背ける。

この野郎・・・・。

 

「・・・・・・・・まぁ、いいや。そっちがその気ならこっちも好きにやらして貰うぜ」

「了承ッ!話は付いたな!では、日時は後日知らせる!」

 

 

 

話が終わり屋上で弁当を食べる。

今日も空が青くていい風が吹いている。

 

「・・・・・トレーナー」

「あ?」

 

誰かに呼ばれて振り向くとそこにはオグリが居た。

俺は再び弁当を食べ始める。

 

「ろっぺいから聞いた。ろっぺいが引退してトレーナーが私のトレーナーになるのだろう?」

「・・・・・・まだ決まった訳じゃねぇよ」

 

空の弁当箱に蓋をしてそのまま景色を眺める。

 

「ちょっとした愚痴なんだがよぉ・・・」

 

そう、前置きをして話し出す。

 

「俺、もともとトレーナーになる気は無かったんだよ。バ鹿だし面倒くさがりだし・・・。でもよぉ、な~んでかな。早く皆がトレーナー見つけられるようにあんま顔も出さねぇダメトレーナー演じてんのにどんどん増えてきてやがる・・・」

「それも・・・トレーナーの良いところだ」

 

オグリが隣に座ってくる。

俺はチラッとオグリを見てから寝転がる。

 

「良くねぇだろ・・・」

「・・・・・・トレーナーを例えるのなら銀杏だ」

「銀杏ン~?」

「あぁ。銀杏は臭い」

「・・・・・・・そうだな」

「だが美味い」

「え、そうなの?」

 

銀杏はウンコの臭いがする。

俺も嗅いだことがある。

何なら横断歩道に置いて車に潰させる今では何ともゲスいと思うそんな遊びもしていた。

そんな銀杏が美味いのか?

 

「・・・・・・・まぁ、何だ・・・。言ってることは意味不明だが言いたいことはなんとなく理解できた。まぁ、あれだ。レースは本気だ・・・」

「ッ!あぁ!」

 

俺は身体を起こしてオグリの頭を撫でる。

そうしていると何故か変な気持ちになってくる。

いや、そういうのじゃあなくて・・・。

犬や猫などの小動物とふれ合ったときのあの気持ち。

 

「お前が妹ならなぁ・・・」

 

俺が呟くとオグリが俯く。

 

「・・・・・どうした?」

「・・・・・私には兄がいるらしい。だが、産まれてすぐに行方不明となったらしい」

 

・・・・・・・・・やはり、オグリは俺と似ている。

俺の場合は親だが・・・・。

 

「・・・・・・・・・っし!腹は決まった!」

 

俺は立つ上がって大きく息を吸う。

 

やったるぞォォォォォォォォォォォォ

 

因みに後でエアグルーヴに叱られました。

 

 

 

レース当日

俺はお気に入りのジャージとスニーカーを着てトレーニング場なの立っていた。

 

「あの・・・・・・」

「お、来たな」

 

俺は後ろに立っているスズカを見る。

 

「何故、呼ばれたのでしょうか?」

「お前、どうしてそうも逃げに固執するんだ?」

「ッ!?」

「いや、やっぱ言わなくて良いや。走れば分かる」

 

スズカが困惑した顔を見せてくる。

 

「今からオグリと俺の模擬レースがある。それにお前も参加しろ」

「・・・・・・え?」

「いいか、俺が勝ったらお前はおハナさんの言う通り先行策を取れ。お前が勝ちゃ逃げを貫き通したらいい」

 

俺が振り返るとそこには既にムスカの爺さんにおハナさん、オグリと知らないウマ娘が居る。

 

「トレーナー。来たぞ」

「おう、じゃあ始めっか。お前ら二人の運命を決めるレースをよ」

「ッ!?」

 

もう誰も引き返せない。

レースの火蓋は切られたのだから・・・・。




後掲示板


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ようこそチーム『    』ヘ(異次元の逃亡者編)

タマモクロス実装決定!


「それじゃあ始めるぞ」

 

おハナさんが手を上げる。

その手が振り下ろされた瞬間三人が駆け出した。

 

「距離はマイル。オグリの得意な距離だが・・・ベルノ。お前はどう見る?」

 

六平トレーナーが隣りにいたウマ娘、ベルノライトに聞く。

ベルノライトはオグリが居た笠松トレセン学園の生徒であり彼女もまた、オグリと共に移ってきたウマ娘だ。

詳しくはシンデレラグレイを読んでくれ。

 

「分かりません。あの人、人間なんですよね・・・?」

「・・・・・・・・・そうだ」

「それなのに・・・それなのに、オグリちゃんの前を走ってるんですよ!?」

 

 

 

今回の俺の脚質は逃げ。

スズカと同じ脚質だが流石逃げまくってただけあって早い。

オグリは差しなのでまだ後ろ。

 

(・・・・・・・ブライアンとレースしたときは・・・あん時は追い込みだった・・・。マイルとは言え流石に体力が持たねぇか?)

 

スズカとのリードは1馬身程。

オグリは必ず後ろから差してくる。

既に残りは直線のみ。

 

「・・・・・・やるしかねぇッ!」

 

一気に地面を蹴って掛ける。

それを見たスズカも続いてくる。

しかも後ろからは・・・・・・。

 

「差し切るッ!」

「来やがったな・・・」

 

オグリが近付いてきた。

だから俺はもう一度地面を蹴ろうとした。

しかしバランスが崩れる。

 

「ッ!?」

 

オグリに当たりそうになって咄嗟に大外に出る。

バランスを立て直してもう一度地面を蹴る。

脚が痛い。

何か鋭い針が刺さっているようだ。

痛みを誤魔化すように叫ぶ。

 

ウオォォぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッッッッ!!!!!!!

 

しかし結果は虚しく三着だった。

気付かぬ間にオグリはスズカを刺したようで一着だった。

寝転がって青空を見る。

 

「決まったな・・・・」

「・・・・・せやな。約束は約束や。オグリはウチで預からせてもらうで」

「・・・・・いや、実はだな・・・」

 

俺は爺さんを見る。

 

「理事長も言ってただろ?小僧にチームの引き継ぎをしてもらうって」

「つまり?」

「小僧のとこはチーム無かったろ?」

「一様あれ空白で正体不明(unknown)だったんやけどな・・・」

「てことで小僧は俺のチーム『シリウス』のトレーナーだ」

 

嵌められた。

まんまと爺さんと理事長に一杯食わされたわけだ。

だが、してしまった物は仕方ない。

約束は約束だ。

そしてもう一つ守らなければいけない約束がある。

 

「ハァハァ・・・・・」

 

俺は息が整っていないスズカとおハナさんに身体を地面に引き摺って近付く。

そのまま俺は立ち上がろうとする。

しかし脚に鋭い痛みが走りよろける。

 

「大人しくしておけ。裸足であそこまで走ったんだ」

「裸足?」

 

よく見ると確かに裸足だ。

靴を探すとボロボロの状態でコースに落ちている。

 

「マジか~・・・、おニューだったのに・・・」

「それで、言いたいことがあるからここまで這って来たんだろ?」

 

靴を残念に思いながらおハナさんを見て頭を下げる。 

 

「「ッ!?」」

「頼んますッ!スズカの逃げ策を許してやって下せェ!」

「・・・・・・・・・・・」

「な、何で・・・・・」

 

スズカの声が震えているのが分かる。

 

「スズカは賭けにかったんや!逃げ策で俺から逃げ切った!」

「そこまで言うということは、覚悟はしていると言うことだな?」

「端から覚悟の上や・・・。少なくとも、俺は臨時でもトレーナーや。スズカが逃げて走りたいってゆうならそれを手伝うんが自分の役割や」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・ハァ」

 

おハナさんがため息をついているのが分かる。

 

「・・・・・・最終的にはスズカの判断だ。スズカ、お前はどうしたい?」

「私は・・・・・、走り、たいです。先頭の景色は、誰にも譲りたくありません!」

「そうか・・・・。スズカ、お前にはチームリギルを抜けてもらう」

「!?・・・・はい!」

 

スズカの返事を聞いてようやく力が抜ける。

既にターフにへばり付いているが更にへばり付いている。

 

「トレーナーさん・・・・」

「心配せんでもじき動けるよ」

「トレーナー。すまない、何か作ってくれないか?」

「待ってガチでシンドイ。自分体力の無さ舐めんなよ?」

「オグリちゃん!また後にしよ?早くこの人をベンチに運ばないと!」

「あ、待ってちょっと叫ばせて。スゥ~タマモクロス実装おめでとうォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!!ぎゃあ!脇腹がァ!」

「もうバ鹿ですか!?」

「申し開きもございません・・・・・」

 

その様子をじっと見ていたおハナさんが口を開く。

 

「もともと、彼を中央に連れてきたのは六平さんでしたね」

「あぁ、トレーナーとして育てる前に理事長にスカウトされるとは思わなかったがな・・・」

「彼が、真実を知ったとき、いったいどうなるのでしょう・・・」

「さぁな。それは俺の知ったことじゃあねぇが、なんとなく、小僧なら大丈夫な気がするぜ」

「・・・・確かに」

 

二人が笑う。

 

「ようこそチーム『シリウス』へ」

 




当ててなる!
俺ならやれる!やれるぞ!


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ルナちゃんDays

タマモクロスが来ない・・・。
はい、今回は現在一着シンボリルドルフ回でございます。


それは突然の出来事だった。

チームシリウスとしてスズカ、オグリ、ベルノが来ていつもどおりにテストと夏休みの編集をしている時だった。

とある放送が鳴ったのだ。

 

『パターンR・U・N・A、風切トレーナーは直ちに生徒会室に来るように。繰り返す。R・U・N・A、風切トレーナーは直ちに生徒会室に来るように』

 

それはエアグルーヴからの放送だった。

所で、パターンR・U・N・Aとは何なのか、それはすぐに分かる。

 

「来たぞ~・・・「嫌だァァァァ!ルナ、零と一緒にいるんだもん!」」

「おい、まだ来ないのか?煩くて仕方がない・・・」

「呼び出しはした。後はアイツが来るのを待つだけだ」

 

目の前に広がるのは泣き叫ぶルドルフとそれをあやすブライアン、やる気が下がっているエアグルーヴだ。

パターンR・U・N・Aとはつまり、ルドルフが、うー☆な状態になっちゃったの略だ。

こうなる理由は主にストレスだ。

生徒会には常日頃からブラック企業顔負けな仕事が舞い込んでくる。

只でさえブライアンはサボるのにエアグルーヴがいない日はその仕事を一人ですることになる。

そんなストレスが限界値に達するとこうなる。

因みに周期は月一位。

 

「わぁ、零だ!」

「よぉ、ルナ。あんま二人を困らせちゃあいけねぇぜ?」

 

ルドルフ、この状態なときはルナと呼ぼうか。

とにかく、ルナが俺に抱き付いてくる。

 

「ごめんなさい・・・」

「よ~し、よし、んじゃ、一緒に遊ぶか!」

「うん!」

 

ルナの頭を撫でてソファに座る。

 

「で、お前らはどうすんだ?」

「残った仕事を片付ける。ブライアン」

「分かっている。こんな時にまでサボりはしない」

 

俺はポケットからトランプを取り出す。

 

「よし、マジックを見せてやろうフジ直伝だからヤベェぜ~」

「お~」

「・・・・・こう見ると兄弟みたいだな」

 

ふと、エアグルーヴが呟く。

 

「・・・・・あぁ」

 

ブライアンがチラッとこっちを見たあとまた資料に目を落とす。

 

「ほら、これがルナの見たカードだろ?」

「うん!すごーい!」

「よし、次はだな・・・」

「私としては父と娘が良かったが・・・・」

 

 

 

数時間後・・・・

ルナが寝てしまった。

遊び疲れたのだろうか。

ルドルフの頭を撫でる。

 

「オラ小さい時からルドルフを知ってるがコイツの夢を知ったのはサブトレーナーになった時だ」

「・・・・・初耳だな。会長とは昔馴染みだったのか?」

 

ブライアンの手が止まる。

 

「まぁな。俺は中学で笠松に行ったんだがな、まぁ、バイトしながら暮らしてたんだよ。んで、ゴールドジュニア?観に来たらムスカの爺さんに連れてこられたって訳だな」

 

ルドルフを寝かせて書類を取る。

 

「俺も手伝ってやるよ。これやればいい?」

「あぁ、頼む」

 

その日は結局ルドルフが起きるまで俺も生徒会の仕事をするのだった。




イナリの勝負服見ると・・・ね?
次はイナリ貯金か?
それともキタちゃん貯金か?


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ラリホー

メリクリ(当日12月24日)


「おい、ルナ。行くぞ!」

「え?いや、何処に?」

「何処って決まってんだろ?」

 

ワイワイと笑う子供の声。

若者達の絶叫。

そう、ここは・・・・。

 

「遊園地!?」

 

そう、今日は某有名なネズミが居る夢の国・・・ではなく、府中にあるそれなりの遊園地に居る。

 

「前回、ルナ化してから日が浅い。今は大丈夫だろうがお前には上手いガス抜き法を伝授してやる。先ずはLesson1だ」

「Lesson1?」

 

零はティーカップを指指す。

 

「いや~、流石にあれに一人でのる勇気は無くてなぁ、チラ。一緒に乗ってくれるカイチョー様が居ればな~、チラチラ」

「わかった。だからチラチラ見るのは止めてくれ・・・」

 

そうしてティーカップに零と乗る。

調子に乗って回しまくる。

 

「オロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ」

「全く、回しすぎだ・・・・」

「ウプ・・・・つ、次はあれや・・・」

 

零が次に指を指したのはジェットコースターだ。

今でさえ、大変なグロッキー状態なのにあれに乗ってどうするのだろうか?

 

「辞めといたほうがいいと思うが・・・」

「辞めへん。ルナが今日だけでも生徒会長でも皇帝でもなくて唯のウマ娘、唯の女の子、唯の幼馴染みのシンボリルドルフとして楽しめるようにしたりたい!」

「ッ!あぁ、分かった。なら、一緒に乗ろう!」

「いや、俺は怖いから乗らないよ?」

 

私は零の肩を掴む。

 

「もちろん、一緒に来てもらうよ?私をその気にさせたのは零なんだ。責任は、取ってもらうよ?」

「あはは・・・・、お手柔らかに・・・」

 

 

 

視点は変わってトレーナーさん視点ですよ~。

何だかんだ色々飛ばして学園内。

その日は夜まで遊園地で遊び共に夕飯を一緒に食べた。

 

「ったく、バンバン遊びやがって・・・。もう俺金欠なんだけど・・・」

「遊べといったのはトレーナー君だろ?」

「もう、門限なんだけど・・・」

「ヒシアマゾンには断ってるさ」

 

てことは、こいつ最初から門限より遅い時間まで出かけるつもりだったと言うことか?

そう聞こうと思ったが怖くてやめた。

 

「では、私はこれで失礼するよ。トレーナー君」

 

そのままルドルフが美浦寮に歩いて帰ってしまった。

 

「・・・・さて、俺も明日の用意だけして帰るか・・・」

 

そう思ってトレーナー室に帰ろうとして気付く。

トレーニングコースに三人の人影が見える。

スズカといい、皆何故門限ギリギリの時間にトレーニングするのだろうか?

 

「・・・・・・・・・・俺には関係ねぇか・・・」

 

今日はガチで疲れた。

主に心臓と肝っ玉と胃が・・・・。

今度見つけた時は注意しようと心に決めて俺はトレーナー室に向かった。

 




この無料10連ガチャ期間にタマモクロス来てくれ!


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後ろを往く者

無料10連ガチャ!
来たのは花嫁エアグルーヴ!花嫁エアグルーヴ!


そろそろセミが煩くなってくるこの時期。

今日は終業式で、クラシック級以上のウマ娘達は皆合宿に出掛けていく。

そんな中俺は二人のウマ娘を見ていた。

 

「スペ、エル。俺が二人を呼んだ理由、分かる?」

 

「はい・・・・・」

「デース・・・・」

「いや、まぁ、俺の責任でもあるがさ、二人だけだぜ?赤点あったの・・・」

 

まだスペは分かる。

上京して日が浅いし、何せ今まで勉強と言う勉強をして来なかったのだ。

今回のテストはスペがいなかった範囲から多く出題されていた。

 

「とりあえず補習はしなくちゃあいけない。だが、俺もそんな面倒なことはしたくない。よって・・・」

 

俺は紐で束ねられた厚さ十数センチの紙束を二人の前に置く。

 

「二人のテストから苦手な範囲纏めて作った補習プリント。休み終わって提出な」

「分かりマシタ・・・」

「がんばります・・・」

 

二人が部屋を出たのを見送り机の中に入れていたスマホを取り出す。

最近ハマったFPSを始める。

言っておくが今は勤務中とは言えやる事は終わっているしトレーニングは夕方から。

俺はゆっくりできる訳だ。

 

「・・・・・うっし、ドン勝」

 

気付くと既に昼飯時をとっくに過ぎ日が傾きかけている。

そろそろ間食でもしようかと立ち上がった時だった。

 

「失礼する!トレーナー君は居るだろうか?」

 

何故かビワハヤヒデが入ってきた。

俺はいきなりのことに机の下に隠れた。

 

「・・・・・・は、ハヤヒデか・・・。どうした?」

「直ぐに来て欲しい。いや、そうでないと間に合わない!」

「待て。まず説明しろ。納得は全てに優先する。俺はお前が考えるほどお人好しじゃあ無いんだ」

 

俺は机から出てソファに座る。

 

「・・・・・今、説明できる時間がない。頼む。私の大事な好敵手()なんだ」

 

頭を下げるハヤヒデを見る。

俺は溜め息を付いて頭を掻いた。

 

 

 

生徒会室

そこには生徒会長のシンボリルドルフと副生徒会長のエアグルーヴ、そして、もう一人、ナリタタイシンが座っていた。

あまりに重々しい雰囲気が外にも出ていて誰も近付けない。

そう、彼以外は・・・。

 

「こんちゃーッス。三河屋でーす」

「「「・・・・・・・・・・・・・」」」

 

トレーナーの登場にその場の全員が無言になる。

 

「貴様、何しに来た・・・?」

「え?あ~・・・・・」

 

トレーナーが目を反らす。

彼には一切の考えがない。

彼は基本能天気に生きているのだ。

そう、例えるのなら初期のモンキー・D・ルフィ、斉木楠雄のΨ難の燃堂力、ジョジョの奇妙な冒険の虹村億泰の様に、こころの中でしたいと思ったことしかしないのだ。

 

「おい、トレーナー君!何をしているんだ!確かに何とか説得してくれとは道中に言ったがこれは余りに計算外だぞ!?」

「ビワハヤヒデ、話を聞かせて貰えるかな」

 

廊下からトレーナーを抑制するビワハヤヒデ。

それを見て説明を求めるシンボリルドルフ。

 

「HEY!YO!お前がナリタタイシン?」

「・・・・だったら?何?あんたも諦めろって言うつもり?」

「いや、別にそう言うつもりじゃあ・・・「フザケンナッ!!」ッ!?」

「ふざけんなふざけんなふざけんなッ!どいつもこいつも私がチビだからって無理だ無理だって言いやがって!私は勝って勝って勝ちまくって!バかにした奴を見返してやるッ!」

「・・・・・・・・・・・・」

「どうしたんだよ!言い返してこいよッ!あんたもどうせ思ってるんでしょ!?私には無理だって!」

「おい、タイシン!落ち着け!」

「うっさい!」

 

トレーナーが黙りこくる。

ビワハヤヒデがナリタタイシンを押さえようとするが離される。

しかし、エアグルーヴは違った。

彼女はナリタタイシンを見たのではない。

黙ったまま動かないトレーナーを見ていた。

普通ここまで言われると人は困惑するか、呆れるか、怒るかだ。

しかし意外!

トレーナーはその逆!

泣いた。

 

「う~~ううう あんまりだ…H E E E E Y Y Y Y あ ァ ァ ァ ん ま り だ ァ ァ ア ァ AHYYY AHYYY AHY WHOOOOOOOHHHHHHHH!!」

「な、何なんだいったい・・・」

「エアグルーヴ、君は知らなかったな。彼は身長が低い。学園内では余り目立たないがね。だから彼は身長をバかにされると怒るんだ」

「・・・・・・・泣いてますけど・・・?」

「彼は激おこしそうになると泣いて頭を冷静にする癖があってね」

「嘘ですよね?」

「嘘だぞ?」

 

トレーナーがパッと泣き止み立ち上がってエアグルーヴを見る。

 

「んな、エシディシみたいな事有るわけねぇじゃん。皆を一回冷静にするためだよ。ルドルフに上手く伝わってくれて良かったぜ」

「伊達に君と付き合っているわけじゃあないさ」

「会長、後でお話が。・・・・貴様もだ」

「あ、はい」

 

トレーナーが咳払いをする。

そしてナリタタイシンを見る。

 

「えっと・・・何だっけ?あぁ、そうだ。チビって所だったか?お前さぁ、それタマにも言えんの?」

「ッ!?」

「よく、考えてみろ。あの為りでよ、勝ってんだろ?そして想像してみろ。そいつが園児服着てるんだぞ!?」

「それは・・・タマモさんがスゴいだけで・・・」

「かもな。・・・・・なぁ、誰かコイツのレースの映像今ない?」

「それなら私が。研究の為にな」

「ちょっと見せて」

 

トレーナーがビワハヤヒデからスマホを受け取り映像を見始める。

数分後、見終わってビワハヤヒデにスマホを返すとナリタタイシンに振り返る。

 

「いいか?これは大事な物の考え方だ。世の中、経過を重視するものと結果を重視するものがある。レースは・・・まぁ、分かるか」

「さっきから何が言いたいの・・・?」

「・・・一言、ヒントだけやる。ナリタタイシン、お前は後ろを走れ」

「「「ッ!?」」」

 

その場の全員が驚いた顔をトレーナーに向ける。

 

「・・・・・・ハヤヒデ。やることはやったぞ」

「・・・・・・!?あ、あぁ。ありがとう」

 

トレーナーが生徒会室を出て廊下でブリッジをして去っていった。

 

「・・・・・・・あのたわけが・・・。待て!廊下でブリッジしながら動くんじゃあない!」

 

エアグルーヴがトレーナーを追いかけ生徒会室に残ったのはシンボリルドルフ、ナリタタイシン、ビワハヤヒデの三人。

不意にシンボリルドルフが口を開く。

 

「彼は君に虎視眈々と一着を狙えと、そうすると言いたかったんだ。余り気に病まないでくれ」

「・・・・・・・・・・・」




さぁ!タマは一体何時来てくれるのか!
キタサン貯金は何時になったら貯められるのか!?


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夏休みを謳歌したいトレーナースレ

タマモクロス来た!タマモクロス来た!二体引き!
コメントで運を分けてくれてありがとう!


1:名無しのトレーナー

まぁ、こう言う事なんやけど・・・

案ある人

 

2:名無しのヒトミミ

その前にイッチがトレーナーである証拠をみせてくれ

 

3:名無しのヒトミミ

後スペック

 

4:名無しのトレーナー

残念ながら男や

年齢は16歳

身長は155cm

体重は46kg

 

5:名無しのヒトミミ

はい、嘘乙

 

6:名無しのヒトミミ

まだ高校の年のガキがなれるわけ無いやろ

 

7:名無しのヒトミミ

ほら、はよ釣り宣言しな

 

8:名無しのトレーナー

いや、嘘や無いって

 

9:名無しのヒトミミ

なら、早く画像上げろ

 

10:名無しのトレーナー

 

        〖画像〗

 

11:名無しのヒトミミ

マジかよ

 

12:名無しのヒトミミ

え?マジで16歳のトレーナーなん?

 

13:名無しのトレーナー

せやで

 

14:名無しのヒトミミ

因みに地方?中央?

 

15:名無しのトレーナー

中央

 

16:名無しのヒトミミ

マジかよ死ねよ

 

17:名無しのヒトミミ

神も残酷やな

こんなガキにばっか才能渡してワイらには引きこもりの才能しかくれやんし

 

18:名無しのトレーナー

で、本題や

正直夏休みはゆっくり遊びたい

 

19:名無しのヒトミミ

は?

 

20:名無しのヒトミミ

は?

 

21:名無しのヒトミミ

は?

 

22:名無しのヒトミミ

ワガママやなイッチ

 

23:名無しのヒトミミ

お前、夏休みも担当ウマ娘とトレーニングやろ?

美少女と一日一緒なんてご褒美やんけ

しばきまわすぞ

 

24:名無しのトレーナー

怖ッ・・・

 

25:名無しのヒトミミ

うん、しゃあないな

 

26:名無しのヒトミミ

いっぺんイッチはしばかれた方が良いわ

 

27:名無しのヒトミミ

これはしゃあやい

 

28:名無しのトレーナー

既にシバかれまくってるw

 

29:名無しのヒトミミ

 

30:名無しのヒトミミ

 

31:名無しのヒトミミ

既にシバかれまくってるは草

 

32:名無しのトレーナー

何笑ろてんねん

 

33:名無しのヒトミミ

分かった

とりあえず夏休みに遊びたいんやな?

 

34:名無しのトレーナー

そそ

でも自分こう見えて箱入りって言うか世間知らずやからどこ行けばええか分からんねん

 

35:名無しのヒトミミ

どう見て箱入りやねん

世間知らずってかイッチは只の生意気なクソガキやろ

 

36:名無しのトレーナー

さっきから皆ワイに辛辣すぎん?

 

37:名無しのヒトミミ

順当

 

38:名無しのヒトミミ

イッチに対しては妥当やろ

 

39:名無しのトレーナー

よし、こうしよ

お前ら大好きな安価や

〉〉60

 

40:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

41:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

42:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

43:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

44:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

45:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

46:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

47:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

48:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

49:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

50:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

51:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

52:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

53:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

54:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

55:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

56:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

57:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

58:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

59:名無しのヒトミミ

びっくりするほどユートピア

 

60:名無しの不沈艦

缶蹴り

 

61:名無しのヒトミミ

ちょw

 

62:名無しのヒトミミ

 

63:名無しのトレーナー

お前ら息合いすぎやん?

 

64:名無しのヒトミミ

イッチを社会的に抹殺するためにワイらは手を組んだ

 

65:名無しの不沈艦

私がそれを許さねぇから

 

66:名無しのヒトミミ

〉〉60誰?

 

67:名無しの不沈艦

イッチの担当ウマ娘

 

68:名無しのヒトミミ

ふぁ!?

 

69:名無しのヒトミミ

ファァァァァォァァァァwwwwwwwww

 

70:名無しのヒトミミ

え?まじ?

 

71:名無しのヒトミミ

マジ

 

72:名無しのヒトミミ

 

73:名無しのヒトミミ

wwwwwwwwwwww

 

74:名無しのヒトミミ

え?ウソ?お前掲示板してたん?

 

75:名無しの不沈艦

掲示板?何それ?

 

76:名無しのヒトミミ

知らんのかw

 

77:名無しのヒトミミ

よし、こっからはラーメンスレや!

 

78:名無しのトレーナー

うん

もうラーメンスレで良いです・・・

 

79:名無しの不沈艦

よっしゃ!じゃあトレーナー早速山でジョリー・ロジャーの宝さがししようぜ!

 

80:名無しのトレーナー

アイアイサー

 

81:名無しのヒトミミ

・・・・・・・ワイら要った?

 

82:名無しのヒトミミ

なんやねん!只のクソスレやんけ!

 

83:名無しのヒトミミ

時間返せよ!

 

84:名無しのヒトミミ

仕方ない

ワイらでラーメンスレに有効活用したろ

 

 

以下もスレが続くがそれはまた別の話・・・。

 




スレってムズいね
あけおめ


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ロリコンじゃあない

今回は書き始め時点ではシンボリルドルフに並んでいたあの娘が来る!


夏休み。

それは学生にとっては至福の一時だ。

学校から解放され何をしていても自由。

基本怒られることもない。

 

「だから俺が何処ほっつき歩こうが怒られることもないもんに~」

 

俺は近くの住宅街を散歩していた。

何時もなら散歩なんて面倒くさいとそこら辺に寝転がって職質を受けるまでがテンプレだが今日は寝る気にもなれなかった。

 

「にしても住宅街なんてもん久しぶりに歩くぜ。今までは基本引きこもってたからなぁ・・・」

 

独り言を呟きながら歩いていると公園の前に来る。

 

「たまには・・・・俺も子供みたいにはしゃいで遊んでもいいよな?」

 

辺りに誰もいないのを確認して走り出す。

滑り台、小さくて滑れなかった。

シーソー、そもそも一人なんです。

登り棒。

何か人間の皮を被ったゴリラが登り下りしてた。

仕方なくブランコで遊ぶ。

ブランコで遊ぶ16歳。

シュール過ぎて言葉も出ない。

なんか虚しくなってもう帰ろうとしたその時だった。

 

「ねぇ、お兄さん!」

「あ?」

 

後ろから女の子の声がした。

振り向くとそこには黒毛のウマ娘が居た。

まだ小学生だろうか?

タマくらい小さい。

 

「何って・・・遊んでんだよ。何?悪い?」

「楽しいの?」

「・・・・・・お嬢ちゃん。世の中にゃ聞いていい事と悪いことがある。例えば今回の話、構成なんざ作者考えてないから。思い連ねたこと書き連ねただけだから。あれだよ。銀魂で言う面白い回はクソ面白いけどよくわからない回はよく分からないあれ」

「そうなの?」

「そうなの」

「ふ~ん・・・。で、一人で遊んで楽しいの?」

「困ったな。聞く耳無いやつだこれ」

 

俺は困り果てて考える。

そこで俺は思いついた。

 

「分かった分かった。じゃあお嬢ちゃんが俺の遊び相手になってくれよ」

「いいよ!何するの!」

「かくれんぼ。範囲は住宅街中」

「分かった!」

「俺が鬼やってやるから早く隠れな」

「うん!」

 

黒毛のウマ娘が走り去り俺は逆方向に歩き出す。

あの娘も暗くなったらとっとと帰るだろう。

 

「本当に良いのかい?」

「え?」

 

いきなり声を掛けられて振り向くとそこには人間の皮を被ったゴリラだった。

 

「君はあの娘と遊ぶと言ったのだろう?なのに何故帰ろうとしてるんだい?」

「と言うか、何なんだよ・・・。え?只の一発キャラじゃなかったの?」

 

俺はゴリさんを見ながらどうしようか考える。

まず状況を整理しよう。

散歩に来て年甲斐もなく公園で遊んでいたらロリウマ娘に話しかけられて逃げるためにかくれんぼの鬼になってバックレようとしたら人間の皮を被ったゴリラに咎められている。

 

「あんな小さい子を騙して恥ずかしくないのかい?」

「いや、あんな小さい子が遊ぶような場所であんなアホなことやってた奴に言われたくは無いんだけど・・・・。大人として恥ずかしくない?」

 

俺はそのまま歩き出す。

変態と話し合っても埒が明かない。

 

「・・・・・・・・じゃあな」

 

しばらく歩いているとあることに気付いた。

 

「・・・・・・・何処ここ?」

 

道に迷ったのだ。

確かにこっちから来たはずなのだが訳がわからない。

まさか新手のスタンド能力?、等とくだらない事を考えながら歩き続ける。

 

「・・・・・・・・この住宅街からはあの子と遊ばないと出さないと言うスゴみを感じるぜ・・・。だが俺は遊びはしない。帰るったら帰る!」

 

そしてまた歩き出そうとしたその時だった。

 

「おら!大人しくしろ!」

「いやぁ!放して!」

 

誰かが争う声が聞こえてきた。

 

「おい!さっさっと運ぶぞ!」

「へい!」

 

男二人がロリウマ娘の腕を掴み引っ張っている。

一方の男がこちらに気づいて近づいてる。

 

「・・・・・・放してやって下さい。そいつ俺の知り合いなんですよ」

 

男が鼻をほじりながらこっちをジロジロ見る。

 

「あ?舐めんなよガキが」

 

男が指を鼻からだし鼻糞の付いた指を俺の頬に付け鼻糞を付けてくる。

そしてまた鼻をほじる。

 

「いや、甚だ疑問なんだよ。何故あんた等はこんな事をするのかって」

「金が欲しいからに決まってんだろ!いいか!右頬に鼻糞を付けられたなら左頬にも」

 

俺は男の鼻をぶん殴る。

男の指が鼻を突き破る。

 

「ホゲェ!は、鼻が!」

「図に乗るんじゃあない!」

 

男が倒れてロリウマ娘を捕まえている男がナイフを取り出す。

そのナイフをロリウマ娘の首筋に付けた。

 

「ち、近づくんじゃあねぇ!」

「それ以上近付いたらガキを殺すぞ!」

「I see、I see。近付かなきゃあいいんだろ?」

 

俺は雪踏を脱ぎ捨てて男に投げる。

男が雪踏に驚きのけ反る。

 

「舐めやがって!もう頭にきた!刺してる!本当に刺してやるからな!」

 

男がナイフを振り上げそのままロリウマ娘の心臓めがけて振り下ろした。

俺はその前に手のひらを突き出してナイフが刺さった。

 

「な、ナイフを刺して止めやがった!」

 

傷口が熱い。

感覚はない。生暖かい何かが垂れている。

男は怯んだのか女の子を放した。

 

「お兄さん!」

「大丈夫。大した怪我じゃあない・・・。それより早く逃げろ」

 

俺はロリウマ娘の頭を撫でる。

涙を浮かべながらロリウマ娘が頷く。

 

「絶対に助けに来るから!」

 

それだけ聞いて俺は気を失った。




まだ名前は出ない!
多分次回には出る!


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ミスパーフェクト

チヨちゃんだと?
サイゲよ
俺の財布を空にする気か?


俺の担当するチーム、『シリウス』。

その中でも何時も一番に練習に来る娘がいる。

そう、ダイワスカーレットその娘だ。

 

「ほら、リンゴ剥いてあげたわよ」

「・・・・・・・すまん」

 

スカーレットの話によると俺は商店街の脇道に倒れていて、ネイチャが救急車を呼んでくれたらしい。

逆転裁判やダンガンロンパをやった事がある人なら気付くだろうか?

俺は確かに住宅街で倒れたはずなのだ。

しかしスカーレットが言うには商店街の脇道だった。

 

「で、なんであんなとこで倒れてたわけ?」

「それが俺にもさっぱりだ」

「何よそれ ・・・」

 

俺は自分の掌をみる。

刺し傷が無い。

やはりあれは只の夢だったのか、と思うが直ぐに否定した。

夢にしてはやけに痛みがリアルだった。

考えに耽っていると病室の扉が開いた。

 

「今、医者の話を聞いてきたよ。栄養失調みたいだ」

 

入ってきたのはルドルフだった。

 

「生徒会長さん。すいません」

「なに、彼とは旧知の仲だ。これくらいなんて事ないさ」

 

さてと、と切り出して二人がこっちを見る。

 

「説明してくれるかな?」

「だから分からねぇって・・・」

「そうじゃなくて、何で栄養を取らなかったかです。ご飯ちゃんと食べました?」

「・・・・・・・んなもん食ったに・・・」

 

そう確かに食った。

あれは確か・・・・・・・。

 

「あ、ずっと置いてたカレーを食った」

「何故、間が開いたのかな?もしかして、数日前に腐ったカレーを大量に食べたからしばらくは食べたと動議と考えたんじゃあないだろうね?」

 

ヤバイ。

何がヤバイかと言うともう全体的にヤバイ。

腐ったカレーを食って腹が極限と言うのもあるが今日のルドルフはガチ目にキレている。

皇帝の威厳マシマシでそっちでも緊張して腹が痛い。

 

「ゆ、許してクレメンス・・・」

「反省してくれたかい?」

「Yes mam」

「いや、これ絶対反省してませんよ!?」

「何を言う!トレーナーさんはそれはもう反省しまくってるよ!」

 

俺は立ち上がろうとするが上手く立ち上がれずに膝を付く。

 

「ほら、まだ安静にしてて下さい!」

「すまねぇ・・・」

 

俺はスカーレットの肩を借りてベッドに座る。

 

「それではまだ執務が残っているので私は失礼させて貰おう。ダイワスカーレット、後は任せたよ」

「はい。ありがとうございました」

 

スカーレットが頭を下げて俺が手を振る。

少し笑ってそのままルドルフは立ち去っていった。

 

「・・・・・・で、あんたまた何やらかしたわけ?」

「ホントにお前の猫被りはスゲぇな。女優目指せんじゃね?」

「誤魔化さずに教えなさいよ!アンタが栄養失調で倒れないことくらい知ってるんだから!」

 

不意をつかれ驚いたが話そうかどうか迷う。

 

「そもそも今回の話は不可解な点が多すぎるのよ。ネイチャは見付けて直ぐに救急車を呼んだらしいけど五分で来たらしいわ」

「ホントお前はパーフェクトだよな。弁護士目指せんじゃね?」

「アンタさっきからそれしか言わないわね・・・」

 

そんな軽口を叩きながらもあのロリウマ娘がどうなったかは気になる。

帰れたのだろうか?

そんなことを考えながらスカーレットの剥いてくれたリンゴを一口齧った。

 

 

 

「リンゴ美味しいねキタちゃん」

「・・・・・・うん」

「どうしたの?」

「ううん、なんでもない。ごめんね、ダイヤちゃん」

「?」



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真夏の夜の幽波紋(スタンド)

何だかんだもうすぐウマ娘も一周年


病院を退院してしばらくが経った。

結局全員から説教を受けた。

特に驚いたのはベルノ。

何だかんだベルノが一番説教が長かった。

 

「ほら、ちゃんと噛んで食べてください!」

「は~い・・・」

「ハイは短く!」

「オカンかお前は!」

 

今、ベルノにご飯を食べさせられている。

何故か俺の飯に監視が就いたのだ。

 

「い、いやさ、俺数日分食えば何とかなるし・・・」

「その結果倒れたんですよね!」

「おっしゃる通りです・・・」

 

俺はカレーを食べながらオグリを見る。

どんどんと溜めていたカレーが無くなっていく。

 

「トレーナー、おかわりはないのか?」

「それで最後だよ・・・。ったく、俺の一ヶ月飯食いやがって・・・」

「一ヶ月、これで持たすつもりだったんですか?」

「・・・・・・・・・・あ」

 

 

 

あれから一時間、ベルノに正座させられて説教れて既に俺のライフはゼロ状態だった。

だが最近はそんなことも気にすることがなくなった。

その理由は・・・・。

 

「・・・・・・まただ」

 

最近ずっと部屋の電気が消えたりテレビが勝手に付いたりドアが何回も叩かれる現象が起きている。

おかげで寝不足はいつもながら更に加速している。

 

「き、きっと部屋に気流かなんか生まれてんだよ。うんそうだ。そうに違いない。今どき幽霊とか・・・・。この科学の時代に・・・」

 

ガタッ、と物音がなり振り向くが誰もいない。

そう思ったが居た。

微かに尻尾が出ている。

 

「・・・・・・・・誰かいるのか?」

 

返事は無いが尻尾は動いている。

ゆっくりとライオンが獲物を狩るように近付くが次の瞬間消えてしまった。

 

「・・・・・・気のせいか?」

「いいえ、気の所為じゃあありません」

「ッ!?」

 

振り返るとそこには黒毛のウマ娘がコーヒーを啜りながら座っていた。

ゆっくりと今度は人間がクマから離れるように距離を取る。

 

「警戒しなくても私もお友達も貴方に危害を加えるつもりはありません。そこにいるタキオンさんと、オペラオーさんにも」

 

その言葉を聞きクローゼットを開けると中から案の定オペラオーが出てきた。

 

「何してんの?」

「決まってるじゃあないか!君はボクのフィアンセなのだからいるのは当然だろ?」

「フィアンセじゃあねぇ!」

 

オペラオーはいったんあとにしていつの間にか紅茶を嗜んでいるタキオンを見る。

 

「何で己までいんだよ!」

「私はカフェの付き添いさ。何でもカフェの言うお友達と同種の何かが君の背後に見えるらしい」

マンハッタンカフェです」

 

カフェはそれだけ言うとまたコーヒーに口を付ける。

てか、このコーヒーや紅茶は何処から出るのだろうか。

家はそんなの置いているわけがない。

あるとしたらおハナさんとたづなさん用の缶ビール位だ。

 

「・・・・・・そういえばよ、さっきからお友達お友達って、一体誰のことだ?」

「先程貴方が見えたと言う尻尾。あれは、お友達の尻尾です」

「いや、理由になってないんだけど・・・・・」

「ハーハッハッハ!ボクには君達に何が見えているのかわからないがそれはそばに居るのだろ?」

「はい、基本はずっと一緒です」

 

オペラオーがポーズを決めて笑い出す。

 

「ならば!そばに現れ立つと言うところからそのお友達を名付けて『幽波紋(スタンド)』!」

 

辺りが静寂に包まれる。

 

「お前唯クローゼットに閉まってたジョジョ読んでただけじゃあねぇか!」




そういやリトルココンとビターグラッセ逆輸入されたね


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半透明な奴は基本幽波紋(スタンド)

オペラオーとタキオンとカフェを寮に帰して漸くゆっくり出来るとカルピスを入れてテレビを付ける。

ちょうどジョジョが始まっていた。

 

「最近は奇妙なことが多かったからな。この植物のような平穏な日常が、恋しかったぜ」

 

アニメの声を聴きながらクローゼットにしまってあったマンガの該当する話を開く。

マンガと言う紙にアニメと言う音、まさに至福のときだ。

そんなときだった。

いきなりスマホが鳴り響く。

 

「?非通知?」

 

非通知から電話が来たのを見るとテレビを切って一度出る。

イタズラなら即切りしてやろう。

 

「・・・・・・もしもし」

『ホントに出た!?』

「そりゃ出るよ。俺のスマホだし」

『と、とにかく今から学園近くの河川敷に来て!ナカヤマが!ゴルシが!』

 

涙混じりの切羽詰まった声。

どうやら嘘ではないようだ。

 

「5分で着く」

 

 

それだけ言い残し俺は電話を切った。

急いで駆け出し寮を出る。

既にあたりは暗く街頭の明かりしかない。

明らかに門限は過ぎている。

ようやく河川敷に着くとそこには三人のウマ娘と数人の黒服、後は猫を撫でているおっさんだった。

 

「・・・・・・来たか」

 

おっさんが振り向いてくる。

チラッとウマ娘を見ると3人のうち二人がねむっている。

そのうちの一人はゴルシだ。

 

「・・・・・・うちの生徒がご迷惑をお掛けしました。それでは門限も過ぎていますので失礼します」

 

ゴルシともうひとりのウマ娘に近づいて起こそうとしてある違和感を感じた。

脈がない。

よく見たら呼吸もしていない。

 

「し、死んでいる・・・・ッ!?」

 

起きているウマ娘を見ると肩を震わしておっさんを見ている。

おっさんが得意気に手の中にある賭けに使われるチップを見せてくる。

 

「先ずは自己紹介をしようか。私の名はダービー。D、A、R、B、Y。Dの上にダッシュが付く」

「ご丁寧にどうも。だが御託はいい。やるのは何だ?ポーカーか?」

「君がそれで良いならそうしよう。だがポーカーは私の最も得意なものの一つだ」

 

椅子に座って深呼吸をする。

そしてこいつの最も言ってほしいであろう言葉は・・・・。

 

「このポーカーに、俺の魂を賭けよう!」

「Good!」

 

やはりそうだ。

名前といい状況といい明らかにジョジョ3部のダービーではないかと思ってしまう自分がいた。

俺は辺りを見渡して見る。

 

「よし、あそこの派手な格好したグラサンの女の人に配って貰うとしよう。お互い、イカサマが出来ないようにな」

「まぁ、良いだろう」

 

俺は立ち上がろうとして止まり後ろで涙目で立っているウマ娘を見る。

 

「お前さん、名前は?」

トウセンジョーダン・・・・」

「頼めるか?」

「う、うん・・・」

 

ジョーダンが走って向かっていく。

 

「・・・・・ところで、貴方は来週催されるあるパーティをご存知ですか?」

 

セーフティシールの付いた箱を取り出して机に置きダービーが聞いてくる。

 

「んな縁もゆかりも無ぇ催しに参加する訳ねぇだろ」

「おや、おかしいですねぇ。確かそのパーティには名家が参加するのだとか・・・。当然、その家のトレーナーも例外ではない」

「・・・・・・何が言いたい?」

 

さっきからこいつは何を言いたいのだろうか?

そろそろムカついてきた。

 

「その名家にはサトノ家や秋川家、もちろんメジロ家も居るでしょう。貴方に、その中で蠢く邪悪を退ける事ができますかな?」

「・・・・・・・・・・・」

 

ダービーが立ち上がり歩き出す。

 

「何処へ行く気だ!」

「勝負は君の勝ちで良い。私は勝負を降りる。それと、覚えておけ。君のその身に背負っている性は直に君がその手に抱いた大切な者まで跡形もなく消し去るだろう」

 

ダービーが土手にある自転車に乗って走り去る。

次の瞬間ゴルシともう一人のウマ娘が起き上がる。

 

「あれ?トレーナー?」

「・・・・・・ッチ」

 

どうやら話を聞かなければならないようだが今は助かったことを喜ぼう。




このダービーは別人です。
サトイモ当たればキタサトいける!


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金持ちの道楽

キタサト揃った!


ダービーと話してから一週間が経過した。

今日はゴルシに誘われてバイトに来ていた。

どっかの金持ち共が集まるパーティらしい。

俺が仕事を始めようとするといきなりスタッフ専用の通信機が鳴り始めた。

 

『良いかトレーナー。今回のトレーナーの任務は空になったグラスの交換や料理の補填だ』

「・・・・・ゴルシいや、大佐。それは料理長から聞いているぞ?」

『確認のためだ。トレーナーは忘れっぽいからな』

「了解した。任務を開始する」

 

俺がグラスを取りお盆に置くとまたスタッフ専用の通信機がなりだした。

 

『グラスを取ったようだな。盆一杯になったら一度戻れ。ゴルシちゃんが替えを置いてやる』

「・・・・・・・了解だ大佐」

 

しばらく動き回りグラスで盆が一杯になる。

するとまたまたスタッフ専用の通信機がなり始めた。

 

『大変だトレーナー』

「何だ大佐」

『材料が無くなった』

「何の」

『料理のだ』

「大佐、嘘は止めてくれ」

『嘘じゃあない』

「嘘じゃあないとすると用意したやつはとんだ間抜けだな」

『アタシだ』

「よし、きるぞ」

『待てって!ここからが本題なんだよ!』

 

いきなり元の調子に戻ったゴルシを見てもう一度通信機を耳に付ける。

 

『料理長が材料を狩りに行ったんだ』

「狩りに!?」

 

買えよ!、とも思ったが料理長なりの考えがあるのだろう。

ちなみに料理長は今参加している名門家の料理長の集まりから一人が選ばれている。

そんな奴が何も考えてないわけがない。

 

『て、ことで代理はトレーナーだってさ。良かったじゃあねぇか。幹部昇進支部長就任イイ感じだぜ』

 

前言撤回。

料理長クソだわ。

 

 

 

ところでこのパーティには名門家が参加していると言った。

秋川家やサトノ家、桐生院家、勿論メジロ家も参加している。

因みに料理長はこのどこでもない別の財閥お抱えらしい。

イタリア料理の名人と名高いらしく料理を食べた者は健康になると専らの噂だ。

 

「それ以外の方も負けず劣らずの料理の天才ばかりです」

 

マックイーンが道を歩きながらチームシリウスの面々を連れて歩く。

 

「本当に何でも食べていいのか!?」

「オグリちゃん、涎垂れてるよ・・・」

「そういやトレーナーは?」

「用事があると断られました・・・」

 

マックイーンが残念そうにしているとテイオーがマックイーンの後ろから首を出す、

 

「トレーナーならゴルシとバイトだって。ブルボンが言ってた」

「はい、マスターの予定は一ヶ月後までインプットしています」

「何でブルボン先輩が把握してるんですか・・・?」

 

スイーツを睨み葛藤していたスカーレットが振り返る。

後ろから着いてきていたスカイとスズカ頭に?を浮かべながらブルボンを見る。

そんなときだった。

 

『それでは皆様、料理長のメインディッシュ紹介のお時間ですが只今料理長不在の為、急遽代理の料理長がご説明致します』

 

視界の声が聞こえて全員が舞台上を見る。

 

『ご紹介しましょう!風切料理長です!』

 

そこにいたのは付け髭と丸眼鏡を付けたトレーナーとゴールドシップだった。



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ゥンまああ〜いっ

「な、何故トレーナーさんとゴールドシップさんがあんな所に・・・?」

 

マックイーンの疑問を他所にトレーナーはため息をついてこの状況をどうしようかと考える。

一応作ったには作った。

料理長がイタリア料理の名人だったのでとりあえずイタリア料理を作ってみることにした。

 

『それでは料理長、料理の説明を』

「あ、はい」

 

トレーナーがゴルシに合図を送るとゴルシが皿の蓋を取る。

後ろのモニターに料理が映し出された。

 

「モッツァレラチーズとトマトのサラダです」

「モッツァレラチーズって?聞いたことあるけどよくわかんないんだけど」

 

スカーレットがウオッカの肩を叩いて聞く。

 

「何でオレに聞くんだよ!?」

「アンタ料理出来るんだから知ってるでしょ!」

「あ~、モッツァレラチーズってぇのは脂肪抜きした柔らかくて新鮮なチーズの事です」

「はい、料理長」

 

トレーナーのとなりに立っていたゴルシが手を上げる。

 

「なんだね、ゴルシシェフ」

「こんなヘルシー料理は健康を追及しすぎてはクソマズゲロマズだと思います」

「そうだね、では実け・・・試しに誰かに食べて貰おうか」

 

トレーナーが舞台の下の観客を見る。

 

「じゃあ、そこのPC弄ってる奴」

「あ?」

 

そこに居たのはパソコンに大量のステッカーを貼っているウマ娘だった。

 

「お前さん、名前は?」

「・・・・エアシャカール

「よし、シャカールこれからお前はモルモットAだ。タキオンの薬飲む感じでこのサラダ食ってくれ」

「はぁ!?んで、オレがそんなロジカルじゃあねぇめんどくセェ事しなくちゃあなんねぇんだよ!」

 

トレーナーがまた深い溜め息をついて料理を持ってシャカールの席に行き机に置く。

 

「食って感想を言ってくれるだけで良い。不味いなら不味いってそう言え」

 

シャカールが黙ってトレーナーを睨み付けるとしばらくして舌打ちをし、フォークとナイフでチーズを半分切り取り口に居れる。

 

「まぁ、中々上手いんじゃあねぇの?でもよ、このチーズ、味があんまりしねぇんだよ」

「それだけじゃあな。トマトと一緒にだ」

「あぁ?トマトと一緒にだと?ったく、外国の食い物はヨォ、んで、そんなロジカルじゃあねぇんだよ・・・」

 

シャカールがチーズとトマトをフォークで刺し口に入れる。

 

「・・・・ッ!?なんだこれ!?クソ美味ェ!」

 

周りの客がどよめき出す。

 

「サッパリとしたチーズにトマトのジューシー部分が絡み付く美味さだ!トマトがチーズを、チーズがトマトを引き立てる!ハーモニーっつうのかァ?味の調和っつうのかァ?例えるならサイモンとガーファンクルのデュエット、ウッチャンに対するナンチャン、高森浅尾の原作に対する芝哲也の明日のジョー!トマト加えただけでこんなになるなんて一体どんなロジックだァ!?」

 

ゴルシが全部の机に置いた辺りで全員が食べ始める。

 

「ッ!美味しいですわ!トレーナーさん、料理もお得意ですのね!」」

「ステータス『美味しい』を検知しました」

 

トレーナーが舞台に戻るとマイクを持つ。

 

「一応それサラダだからね。メインがまだだ。さ、料理を続けましょう・・・・「ちょっと待った!」」

 

トレーナーが格好付けようとすると静止の声が上がったのだった。




ピスケスどうしよ・・・


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庶民のメインディッシュ

サラダを出してからトレーナーはゴルシとキッチンに戻りしばらくするとまた舞台に立つ。

静止されたことなど気にも止めないで。

今度はどんな上手い料理が出てくるのかと期待の眼差しを向ける。

 

「え~、はい。続きましてメインディッシュなんすけど、先ず俺は庶民です。さっきのイタリア料理はまぁ、うん。料理長の奴の見よう見まねです」

 

いきなりの何の話かと全員が全員思う。

 

「疑問ッ!君は一体何が言いたいんだ?」

 

秋川理事長が前に出て問い質す。

トレーナーは何で居るのだろうか?、などと思いつつ一息吸う。

 

「例えば、仕事が忙しくて帰るとしましょう。しかし、時間は既に深夜。飯を作る気力も残ってないと思います。だからはい。本日のメインディッシュ、カップラーメンです」

 

トレーナーが蓋を開けると出てきたのはなんとカップラーメンであった。

置かれているのはカップヌードル、スープヌードル、ラ王等など様々だ。

 

「好きな奴取ってお湯入れて3分待って食ってくださーい。はい、解散」

「貴様~!私の静止を無視すると申すか!」

 

トレーナーもカップヌードルを手に取りお湯を入れようとすると知らないウマ娘が声を上げる。

周りの皆が彼女を見てざわめく。

 

「・・・・・・・・・・俺は知らない奴とは余り話さない主義でな」

「シャカールとはなしてたじゃん」

「気紛れだ。んで、ラーメン食うのか?食わねぇのか?」

 

トレーナーがカップヌードルを前に出すとウマ娘が受け取り抱きしめる。

 

「食うんじゃあねぇか・・・」

 

トレーナーはため息混じりにカップにお湯を入れ置いてあった重しを蓋の上に置く。

隣のウマ娘にもお湯を渡す。

 

「理事長もどう?美味しいよ?」

「・・・・い、いただこう!」

「マックイーン等は?」

 

トレーナーがマックイーン達にカップ麺を差し出すとしぶしぶと言った形でカップ麺を手に取る。

 

「・・・・・なァ」

「ん?」

 

シャカールの呼び掛けにトレーナーは覇気無く答えて振り向く。

シャカールは何か困惑したかのように語りだす。

 

「アンタ、まさかソイツが誰か知らねェ訳じゃあねェよな?」

 

シャカールの視線を辿るとそこに居たのは先程自分に突っ掛かってきたウマ娘だった。

彼女が何なのだろうか?等と思う間にトレーナーは天井を見ていることに気付く。

 

「先程からの貴様の不敬、もう許さん!」

 

また知らないウマ娘がいきなり激昂しトレーナーを投げたのだ。

 

「落ち着きなさい、隊長」

「しかし殿下!」

「ラーメン好きに悪い人は居ません」

 

トレーナーの腕をトレーナーを投げたウマ娘が放しまた周りがざわめく。

しかしトレーナーはそれを気にしなかった。

トレーナーの頭の中ではとある単語が反復していた。

 

「・・・・・・殿下?」

「はい。申し遅れました。私、アイルランドから日本に留学生として来ました。ファインモーションです」



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合宿初日の憂鬱

この俺、風切零はチームシリウスのトレーナー以前にチームリギルのサブトレーナーである。

トレセン学園では、七月と八月の約二ヶ月間、トレセン学園が貸し切った浜辺で一年の後半にあるレースに向けてトレーニング合宿が行われる。

 

「・・・・・・ファインモーションって王族だったの?」

 

自分のスマホで先日会ったウマ娘を調べて俺はそう呟いた。

隣に座っていたブライアンが俺がコンビニで買ってやったビーフジャーキーを食べながらスマホを覗いてくる。

 

「エアグルーヴが嘆いていたぞ。等々塩素タイプの洗剤に酸性タイプの洗剤が混ざり合ったってな」

「俺の扱い洗剤なの?しかも有毒ガス発生してんじゃあねぇか」

 

扱いの酷さにショックを受けながらも目の前の大海原に視線を落とす。

風が暖かく、潮の匂いがする。

 

「潮風が気持ちいいな。なぁ、ブライアン」

「・・・・・興味ない」

 

ビーフジャーキーを一つ取ろうとしてブライアンに手を払われる。

 

「ケチ」

「何とでも言え」

 

俺は立ち上がり波打ち際へと近付く。

押し寄せては引き返しを繰り返す波を見てまるで社会の縮図だなぁ、とか感慨に浸っていると海から誰かが上がってきた。

どうやらトレセン学園の生徒のようでトレセンの指定水着を来ている。

 

「あ?」

「あ?」

 

ソイツは俺に気付いたのかずっと俺の顔を眺めてくる。

しばらくの間、微妙な空気感に包まれる。

ブライアンに助けを呼応としたが腹が膨れたのか昼寝をしている。

諦めてまたソイツに向き直るとソイツはハッと笑った。

 

「なぁ、アンタ。少し付き合えよ」

「は?」

 

ソイツは俺の腕を掴んだと思ったら腕を引っ張り俺はソイツに着いていくしかなかった。

 

 

 

こうして連れてこられたのは宿泊施設の裏だった。

濡れた髪から水が滴り落ちるのも気にせずにソイツは俺を壁に叩き付けると今度は自分の掌を俺の耳元の壁に叩き付ける。

 

「・・・・こんなとこに俺を連れてきて何のつもりよ」

「お前、ルドルフの事は知ってるよな?」

 

俺の言葉を遮り気味に呟く目の前のソイツに俺は疑問が止まらなかった。

 

「ルドルフ?当たり前だぞ。俺の居る場所は大抵トレーナー室かチームの部室、後は生徒会室だしな」

 

今思っても何故俺は生徒会室に居るのだろうか?

別に顧問でも無ければ生徒会に属しているわけでもない。

時たまブライアンの穴埋めをさせられ、ルドルフが大変な時はテイオーの相手をする位の男なのだ。

 

「・・・・・・気に入らねぇな」

 

今度ははっきりと聞こえた。

声も、その声に込められた怒りと悲しみを。

 

「皇帝様の事は忘れずに覚えてるくせに私の事はあっさり忘れるのか?」

「な、何怒ってんだよ。だ、誰なんだよお前・・・」

 

俺は奴の勢いに押されてヘタレ込む。

 

シリウスシンボリだ。覚えとけバカ」



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シリウスシンボリと言うウマ娘

「シリウスシンボリ・・・・・・」

 

昨日の昼間に聞いたその名前をずっと反復しながら呟く。

何かが頭の片隅で引っ掛かって頭痛が起こる。

たまにあることだから今さら気にしなくなったがそれでも痛いものは痛いのだ。

宿舎に生えてある二本の木にハンモックを掛けて寝転がり空を見上げる。

 

「どうしたんだいトレーナー君?」

「ルドルフ・・・・」

 

首だけ回しルドルフを見る。

何時ものように冷静沈着な顔をしながらそれでも心配するように俺を見てくる。

 

「別に、何でもねぇよ」

「何も無い者はそんな顔はしないものだ。後トレーニングをサボって居る君を呼びに来たのさ」

 

後ろポケットに入れたスマホを起動して今日の予定とやることを確認してみる。

 

「俺がやることは終わってんだよ。・・・・ところでさ、ルドルフ。シリウスシンボリってウマ娘、聞いたことある?」

「・・・・・・何処でその名前を?」

 

先程とは違い低い声に俺は空を見ていた時の穏やかな気持ちは無くなりハンモックから飛び起きる。

 

「昨日、会った」

「・・・・・・そうか。少し、彼女への監視を強めた方が良さそうだ」

「あ?」

 

何故だかルドルフから黒い何かが出ている気がするが気のせいにしてハンモックから起きる。

 

「なぁ、ルナ。お前何か隠してるな?」

「・・・・・隠してはいないよ。少なくても君にはね」

 

ルドルフが歩き去り俺はため息をつく。

ハンモックを掛けた右の木に背を預けて空を眺める。

そして背を預けた木の後ろを覗く。

 

「で、君はそんな所でなーにやってんの?」

 

そこには俺と同じように木に背を預けて座り込むシリウスの姿があった。

シリウスはチラッとこっちを見ると目を瞑る。

 

「・・・・・ルドルフがあんなになるなんて、お前一体何したんだよ?」

「覚えてないのか?」

「何を?」

「そこまで行くと病気だな」

「失敬な。こちとら物心付いた時から健康優良児だわ」

 

俺はシリウスの隣に座ってポケットに入れていたココアシガレットを咥える。

 

「お前は、ルドルフの夢をどう思う?」

「ルドルフの夢?・・・・・良い夢なんじゃねぇの」

 

全てのウマ娘が幸せに暮らせる世界を造ると目を輝かせるルドルフを今でも思い出す。

 

「そうじゃあねぇ。あの皇帝様の掲げる夢は只の理想論だろ?」

「その心は?」

 

ココアシガレットを口から出してシリウスを見る。

 

「どんな器でも溢れ出る水はあるって事だ」

「なるほど」

 

俺は再びココアシガレットを咥えて空を見る。

シリウスが言いたいこともガキながらになんとなく分かる。

いくらトレセン学園でも理由は何であれ学力方面に問題があれば補習は行う。

そうすれば中々トレーニングの時間が取れずにトレーナーの目にも止まらない。

その措置として合同トレーニングが開催されても都合が合わなければ意味がない。

そしてまた溢れた者への措置が行われる。

何と言う堂々巡りだろうか。

 

「・・・・・・なぁ、お前私のモノになれよ」

「あ?」

 

シリウスの言葉に驚いて口からココアシガレットを落とし振り向く。

すると俺の口に柔らかい何かが触れ気付けばシリウスが目と鼻の先にいた。

 

「な、何しやがんだ!?」

「お前が私のモノになるなら今以上に私の身体を好きにしていいぜ」

 

俺はシリウスから急いで離れようとするが悲しきかなウマ娘に人間が力で敵う訳もなくそのたわわな実を身体に押し付けられる。

 

「悪い条件じゃあないだろ?」

「確かにな・・・・・」

 

俺はうんうんと頷いて欠伸をかく。

そして・・・・・。

 

「ッ!」

「ッ!?」

 

舌を思い切り噛む。

舌からダラダラと血が流れるが気にせずに血を吐き出す。

 

「テメ!何を!」

「確かに・・・・お前の提案は思春期男子にとっては夢の様な提案だ」

「なら・・・」

 

シリウスが言い終わる前にだが、とシリウスの言葉を遮る。

 

「俺は腐ってもトレーナーだ。生徒に手は出さねぇ!この風切零を無礼るなよ!」

「・・・・・だいぶルドルフに似てきたな」

 

俺から離れてシリウスが立ち上がる。

少し笑いながらそれでも少し悲しそうな顔をして。

 

「気が変わったら私の元に来い。歓迎してやるよ」

 

そう言うとシリウスはルドルフとは別の方向に歩いて行った。



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