転生してニューゲーム、ただし役職はエキストラ。 (騎士貴紫綺子規)
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プロローグ

 プロローグはオリキャラでスタート。


 はいもしもしー。あ、閻魔。久しぶりー、元気だった? 僕様? 変わらず元気だよー。姉さんたちの結婚式が終わってからずっと暇なんだよねー。え? あ、うんそう。七百年前のアレ。つまり僕様七百年間ずっと暇なの。あーあ、神生って本当に退屈だよねー。あはは。

 

 それで今日は何? どうかした? ……え? 下界で銀行強盗があって? ……はっ!? 職員と客含めて総員八十六名死亡!? マジで!? え、なんでそんなことになってんの? 今日明日って死人一桁予定じゃなかったっけ? ……はあっ!? またあの主人公くんがなんかしたわけ!? うーわー、もうアイツいい加減にしてほしいわ。とっとと死ねばいいのに。……うん、まあね。基本あの魂は根強いうえに伝説級だからどうしようもないんだけど。でも義兄さんならどうにかできるでしょ。うん。あの人元は人間だったし。今でこそ創造神なんてしてるけどね。あー、でも加護持ちだしそうそう簡単に死なないかあ……、とりあえず連絡しとくわ。うん。

 

 で、本題は? ……やっぱり。流石に八十人越えは多すぎたね。ただでさえ地獄って忙しいのにさ、もう本当嫌になるんだろうね~。え? 他人事だよ? 当たり前じゃん! だって僕様神様だし?

 

 んー……どうしようとか言われてもねえ……。

 

 ……あ! いいこと思いついた! ねえ、閻魔。何人かこっちに送れる? うん、僕様がやる。大丈夫だって! 別に罪になることしてるんじゃないんだからさ。ちょっとなんやかんやしてアレやソレするだけなんだから。失礼しちゃうなー。

 

 あ、いい? よかったー! じゃあ一時間後くらいにまとめて送ってよ。こっちで帳尻合わせはしとくから。はーい。いいんだって。困った時はお互い様だしね! んじゃバイバーイ!

 

 

 

 

 ……ふう。あ、ごめんなさいね、皆さん。ようこそ、天界へ。ここでは死んだあなた方に救済措置として別世界への案内を行っております。行く世界や持っていく補正などはランダムですのでご了承ください。え? ……ああ、ランダムというのは「人によって違う」という意味です。行く世界を選べる人もいれば選べない人もおり。持っていくチートを選べる人もいれば選べない人もいる。そういうことですね。来世がどうなるかはあなた次第というわけです。基本的に寿命が来るまでは死にませんのでご安心ください。……え? まあ、そうですね。ですがさすがに救済措置という形をとらせていただいておりますので最低でも四十代後半までは生きられますよ。はい。勿論です。ああ、極稀にトリップの方もいらっしゃいますね。まあ基本的に全員転生なんですが。だって赤ちゃんプレイとか僕様得でしょう? 大丈夫です。オートで「完全原作知識」は全員に備わっておりますので。はい。原作知識が備わっているところにお送りさせていただきます。ですがさすがに死んだ年代はバラバラということもあり原作知識がどこまで備わっているかは個々人によって疎らにございます。その点はご了承くださいますようお願いいたします。

 

 

 ……ああ、そろそろ時間ですね。では、参りましょうか。盛大なパラレルワールドでのゲームを。

 

 

 ……僕様ですか? ああ、申し訳ありません。僕様は娯楽の神、「アガミネ」と申します。日本名ならば「鳴神(なるかみ) (ゆう)」ですね。

 

 心の底から「アガミネ様」と崇めなさい。

 

 

 




 タイトル通り短編集です。ご注意ください。


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IN 名探偵コナン

 気になったので書いてみただけです。更新頻度的には一番遅い。長期休みになったら更新するかな……といった程度。次があるかも不明。ただ、絶対に続かないのは確実。それは胸を張って言える。

 とりあえずはじめは「週刊少年サンデー」からお越しくださいました、「名探偵コナン」です! どうぞ!


 別タイトル
 《喜怒哀楽椅子探偵》


 俺は死んだ。

 

 いや、うん。人間誰しも――一部を除いて――死ぬだろうし、別にそれはどうでもいい。人の最後って呆気ないものなんだな、と思った程度だ。

 

 銃で撃たれて俺は死んだ。

 

 別におかしいわけじゃないとは思う。若干現実離れしているとは思うけど。まあ、ありえないわけじゃあない。

 

 銃で撃たれて俺は死んだ。そして気づいたら神の前にいた。

 

 ……これはアウトだろう。どう考えても現実離れしすぎている。創作小説のテンプレとも呼ぶべき以外この先の展開は考えられない。

 

 

『回想終わったー?』

「あ、はい。大丈夫です」

 

 ぼんやりとしている間に整理がついた。俺はこれからどうなるのだろうか。

 

『そこはテンプレに倣おうかなって。まあつまるところ、「異世界行ってみんか?」って感じ』

「……はあ」

『……君、ずいぶんテンションが低いね。何で僕様のところの転生者はみんなこんな感じなんだろう? ちょっとははしゃいでくれないと楽しみがないんだけどなあ~』

 

 そんなことを言われても。享年七十八歳ともなればテンションを上げろ、というほうが無茶な話だ。もうとっくに老成してしまっている。

 

『ふ~ん……、だったらそんな君には刺激のある日常をプレゼントしてあげるよ』

「……できれば文明の利器があるところと、死亡フラグが少ないところにしてほしいんですが」

 

 まあいくら文明が栄えているとはいっても、科学と魔術の世界とかに飛ばされるのは嫌だなあ……と考えていると、目の前の神がニヤリと笑って言った。

 

『大丈夫。普通に生活している分には少ない世界だから。いくつか《プレゼント》も用意してあるしね。君の行く世界は――――』

 

 ……その言葉に多大な不安を覚えた自分は正しいはずだ。

 

 

 

 

「おお、杜雨(もりあめ)か。久しぶりだな」

「んあ? ……ああ、まっつんか」

「その呼び方はやめんか」

 

 眠気覚ましにコーヒーを買おうと自販機まで来ると同期の松本に出会った。……にしてもコイツ、

 

「お前……、老けたな」

「……当たり前だろうが」

 

 何を言ってるんだコイツ、という目で見られてしまった。いやだってさ、なんか口の髭伸ばしてんだもん。数年前はそんなんじゃなかっただろ? ……あれ? 最後に会ったのって何時だったっけ?

 

「松本管理官、こちらは?」

「おおそうか、話してなかったか。儂の同期の杜雨 帝督(ていとく)だ。こいつは――」

「どうもー、まっつんの同期の杜雨でーす。よろしく」

「おお、これは失礼。警視庁捜査一課、目暮十三です。にしても管理官と同期とは……、ああ、失礼」

 

 言わなくても分かるよ。俺の見た目まだ三十代前半にしか見えないもんね。絶対同期に会うと驚かれるよ。「この裏切り者!」って叫ばれる。別に若作りしてるわけじゃないんだけどね。

 

「お前今何してるんだ?」

「俺? 俺は――」

 

 

「あー! 目暮警部だー!」

「あっ、松本管理官もいますよ!」

「うお、なんか事件か!?」

 

 

 ……突如として聞こえてきた声に邪魔されてしまった。というかこの声、まさか……。

 

「おお。子どもたちか」

「おう!」

「はい、今日は事情聴取です!」

「高木刑事に会いに来たの」

 

 ……会ってしまった。今まで、話には聞いていたし話を知ってもいた。あの、彼らに。

 

「あれ? お兄さん誰?」

「本当だ! 知らない人がいますよ!」

「お? 兄ちゃん誰だ?」

 

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。はい、当然聞かれますよね。にしても兄ちゃんか……。こいつらの目にも俺は「お兄ちゃん」に見えるんだな。

 

「おお、この方は――」

「初めまして、杜雨帝督です。よろしくね、えーと……」

「吉田歩美です!」

「円谷光彦といいます!」

「小嶋元太だ!」

「「「少年探偵団です!」」」

「そう、よろしく。元気がいいね。……後ろの子たちは?」

 

 そこでようやく俺たちを傍観していた三人に目をやる。世界的に有名な赤い帽子をかぶった有名キャラクターみたいな鼻とひげを生やしたハゲたお爺さんと、その両隣にいる、

 

 眼鏡をかけた少年と、大人びている少女。

 

「おお、これはご丁寧に。阿笠博士です」

「江戸川コナンです」

「……灰原、哀」

 

 阿笠博士の背中に隠れて、哀ちゃんはかろうじて自分の名前を絞り出した。瞳孔を開いて動悸も激しい、筋肉も緊張している……完璧に怯えられてるな、こりゃ。

 

 コナンくんはそんな彼女の行動を見て庇うようにしてこちらを睨みつけてくる。……いいね、その反抗的な目。

 

「あはは、怖がらせちゃったかな?」

「これ、哀くん」

「こら、杜雨、何をしてるんだ」

 

 まっつんに呼ばれたのを機に戻る。未だに強い視線を感じるが、まあしょうがないだろう。

 

「お兄さんも刑事さんなの?」

「あはは、まあ近いっちゃあ近いけど、俺は刑事じゃなよ」

「? じゃあ何してんだ?」

 

 大人には敬語を使おうね、元太くん。

 

「俺は科警研で働いてるんだ」

「「かけいけん?」」

「科警研!?」

 

 おや、知識量が豊富そうな光彦君は知っているようだ。うん、物知りすぎるような気がしないでもないけどね。

 

「科警研って?」

「科学警察研究所の略称です。日本の官公庁の一つで、国家公安委員会の特別の機関である警察庁の附属機関ですよ!」

「特別!?」

「兄ちゃんスゲー!」

「ははは、ありがとう」

 

 @wik並みの解説をありがとうございます。凄いね、光彦くん。俺でもそこまで説明できないよ。

 

「よく知ってるね。俺はそこの副所長をしてるんだ」

「副所長!?」

「副所長って?」

「科警研で二番目に偉い人のことです!」

「ええ、兄ちゃん二番目に特別なのか!?」

「まあね」

 

 若干ニュアンスが違う気がするけど訂正する必要性を感じない。面倒くさいし。特にこの子達疲れる。子どもの中でも疲れるよ。まったく、親は何を教えているんだ。事件に首を突っ込む子供なんて危なっかしいったらありゃしないんだから。

 

「お兄さん若いのに凄いね。まだ三十代くらいでしょ?」

 

 ここでコナンくんですか。大人に年を聞くのはタブーだよ、男性女性問わず。……にしても子供っぽさ含めても怪しいことこの上ないな。無理やり感が半端じゃない。若干の警戒心が見えるのもマイナスポイントだ。初対面の人間にいい印象を与えないぞ? ……ちょっと試してみるか。

 

「お兄さんかー、ねえ、君たち。俺、いくつくらいに見える? 当ててみてくれよ、少年探偵団諸君? プラスマイナス三歳の範囲内だったらご褒美を上げるよ」

「本当か!?」

「「よーし!」」

 

 うん、子どもは素直でよろしい、よろしい。実に扱いやすいね。おじさんは将来が心配だよ。

 

「(見た目は二十代後半から三十代前半という感じですね)」

「(実際はもっと年上なのかな?)」

「(もしかして、博士と同い年かもしれないぜ)」

 

 ……この世界の内緒話は声が大きいだろう。普通に聞こえる。

 

 おや? コナンくんも顎に手を当てて考えているらしい。まさか三十代後半とかやめてくれよ、ヒント自体はもう出てるんだから。

 

「決めました! お兄さんは――」

「五十代半ば。大体五十三から五十六ってとこかな」

 

 光彦君の答えを遮ってコナン君が回答する。おいおい、友達なくすぞ? ……まあでも、褒めてやろう。

 

「……ずいぶん年上にいったね。どうしてだい?」

「だってお兄さん、僕たちが来る前に目暮警部たちと話してたでしょ。それも親しげに」

 

 第一ヒント、「目暮警部と松本管理官と親しげに話している」。うん、さすがに洞察力は半端じゃない。

 

「次に目暮警部がお兄さんを紹介するとき、『この方は』って言ったでしょ? 『この方』という尊敬語を使うのは自分よりも身分や年齢が上の人に対して。つまりお兄さんは、目暮警部よりも年上、ってことだよね」

 

 そう。第二ヒントは「目暮十三の証言」だ。たった五文字を聞きのがす者に探偵の資格はない。

 

「警部より年上なんて松本警視くらいしかいない、にもかかわらず警部は尊敬語を使った。――つまりお兄さんも、松本管理官と同い年くらいってことだ」

「……フフフ、あはははは! 凄いね、ボウヤ。大正解だよ! 改めまして、杜雨帝督五十六歳、科学警察研究所の副所長をしています。よろしくね」

「「「えーー!?」」」

 

 おお、さすがにみんな驚いてるね。哀ちゃんの驚愕顔とかレアだ。よし、保存しよう。

 

 ……にしてもさすが主人公ってことか? 油断はできないな。

 

 

 

 

 えーと、#969#6261、っと。本当に「七つの子」って覚えやすいわ。メアド登録の必要性ゼロだしね。……まあスマホは全く音にならないんだけど。

 

 ――プルルルル、ピッ

 

『あら、貴方から電話だなんて珍しいじゃない。何かあったの?』

「あーうん、えっとね……銀の弾丸(シルバーブレッド)に会った」

『! ……へえ、やっと』

 

 はい、やっとです。転生して五十六年、ようやく主人公勢に会いました。これいくらなんでも遅すぎない? いくら好き好んで会いたくない連中って言ってもさ。

 

『バーボンでもとっくに会ってるっていうのに遅すぎるんじゃなくて?』

「いやあ、俺の職場はあの子たちと一切関わりがないからねえ。警視庁とかならまだ関わりがあるだろうけど」

『そんなところにいたらすぐに気づかれたんじゃない? シェリーに』

「ああ、そうそう。そのことで電話したんだ」

『……どういうこと?』

 

 声が硬くなった相手に苦笑して、違う違うと否定する。

 

「俺でも怪しまれたんだ。瞳孔が三十二パーセントも開いてたし動悸も平常のおよそ二倍速で動いてた。筋肉も緊張しっぱなしだったしさ。たぶん気づかれたね、ありゃ」

『……そういうところは変わってないわね』

「みたい」

 

 たぶん灰原哀(あの子)は本能で「黒の組織」の臭いを持つものに気づいているんだ。潜入捜査官だった赤井秀一にまで緊張するくらいなんだから。他の面々の顔は見るからに悪人面だけど俺の顔近所でも評判の「いいお兄さん」顔よ? そんな人でも気づかれるんだからあれはもう才能レベルだと思う。なんていうか……危険人物察知能力EXみたいな。まあ「ただし黒の組織に限る」がつくんだろうけど。

 

「あーあ、俺今の職場気に入ってたのに」

『キールはもう退職したわよ? あなたもそろそろ時期ってことなんじゃない?』

「ああうん。それは知ってる」

 

 原作知識で、が付くけども。いや転生して五十幾年たつけどさ、原作知識が一向に抜けないのよ。にしても時期、かあ……。

 

「せっかく副所長にまでなったのに」

『……何年副所長やってるのよ。まあでも、辞めたくなかったらそれでもいいんじゃない? 下手すると消されるだろうけど』

「それは嫌だなあ。……でもそういやキールは目をつけられたその日に事故ったんだっけか」

『そうね』

 

 だったら早いとこ雲隠れするのが手かなあ。幸い変装術は習ったし、逃げるくらいなら何とかなるだろう。……発信機と盗聴器には気を付けないと。

 

「とりあえず今週中には行方くらませるから。落ち着いたら連絡するわ」

『了解。……それと』

「ん?」

 

 何だ? 何か用なのか?

 

『資料送るから、その事件調べといてくれない?』

「わかった。証拠はいるか?」

『ええ。その方が吐かせやすいから』

「ん。了解」

 

 電話を切りつつノーパソの電源を入れる。この世界の科学技術は半端ないよな。俺初めてソーラー充電できるノートパソコン見たわ。……今なら向こうにもあるのかな?

 

「お、これか」

 

 なになに……。

 

 要約するとこんな感じだ。

 組織に潜入していたある男性(仮にXとしよう)を泳がせ、何のデータを入手しているのかを捕捉。ようやく組織上層部のデータだと分かりXを始末しようとしたがすでにデータをUSBにコピーしていた。しかもそのXを始末しようとした矢先に誰かに殺されてしまった。その誰か(仮にYとする)はXを別件で追っていて、YはXのもつ機密データが欲しかった。そのためにXを殺し、USBを持ち去った、と……。

 

 

「……なんとまあ」

 

 映画編に似ているような気がしないでもないが、「漆黒の追跡者(チェイサー)」はちょっと前に終わった。だからこれは別件と考えていいだろう。警察が事件性ありで捜査を進めていることから犯人が捕まるのも時間の問題だろう、しかし押収された証拠品としてUSBを見られるとアウト、といったところか。……仕方ないな。

 

 一度目を閉じて発動(・・)させてから――眼を開ける!

 

「《開運何でも探偵眼(ディテクティブルーアイズ)》」

 

 発動すると、途端に脳内に流れ込んでくる膨大な量の映像や文字情報。それを流しながら犯人の現在地を知る。

 

 

 

 転生の際に神からもらったチートの一つがこれ、《開運何でも探偵眼(ディテクティブルーアイズ)》である。めだかボックス風に言うなら「探偵になるスキル」。その名の通り、発動させるだけでトリックや犯人像、凶器に証拠の場所や侵入経路、はてには犯人の動機に位置情報までわかってしまうチートスキルである。簡単にすると、

 

 ▼ 事件 が 起きた !

  ↓

 ▼ 《開運何でも探偵眼(ディテクティブルーアイズ)》 を 発動 した !

  ↓

 ▼ 「犯人 は あなた だ !」

  ↓

 ▼ 事件 は 解決 した !

 

 という感じだ。……どちらかというと「探偵が要らなくなるスキル」のような気がするが。このおかげで未解決事件の証拠・犯人・動機をそろえて次々と提出、事件が解決したことで出世。わずか二十代後半にして科警研副所長までになったのだから、ありがたいっちゃあありがたい。

 

 だが思う。

 

 このスキルがあれば主人公(コナン)要らなくね?

 

 超事件吸引体質人間である彼は曲がりなりにもこの世界の主人公である。いくらパラレルワールドとはいえ、転生者(異物)である俺がその場所を奪ってしまってもいいものなのだろうか。

 

 原作知識がなぜか一向になくならないので細部まで鮮明に思い出せることができる。事件が起こる場所、証拠、そして犯人。防ごうと思えば事前に防ぐことはできるだろう。

 

 でも俺はしなかった。なぜなら面倒くさいから。

 

 そもそも「工藤新一」を「江戸川コナン」にしなければ話は始まらないのだが、この世界は死亡フラグにあふれている。探偵といえども例外ではない。むしろ自分から事件に巻き込まれに行く彼――正確には彼がいるから事件が起こるのだろうが――は、事実何度も危ない目にあっている。

 

 なぜそんな第一級死亡フラグ建築士にならなきゃいけない? 近づかなくちゃいけないんだ。

 

 断固として拒否! 健康第一!

 

 そこでもう一つのチート、《危機敵上京(アクシデントバースト)》の出番である。こちらも同じくめだか風に言うと「危機を回避するスキル」になる。自分の危機的状況が鮮明に映像(ヴィジョン)として映る能力で、このおかげで俺は生まれてこの方けがをしたことがない。

 

 まあそんなすごい能力にデメリットがないわけもないんだが。

 

 《開運何でも探偵眼(ディテクティブルーアイズ)》は写真でもいいから事件現場を見る必要があること、《危機敵上京(アクシデントバースト)》はどんな些細な危機にでも反応してしまうことだ。それこそ、机に手が当たった程度でも映像(ヴィジョン)として映る。はっきりいってウザい。

 

 ……幸か不幸か、この能力のおかげで俺は表でも裏でも重宝されている。能力自体をバラしたことはないが、「ちょっとヤバい奴」という印象だ。

 

 

 犯人と証拠、それと現在の位置情報と行先を詳細にして一斉メール。たぶん一番近いのはジンとウォッカの二人だから彼らが行くことになるだろうけど。

 

 

 

 この世界には死亡フラグがあふれてる。常に気を配っておかないと、些細な理由で殺されかねないのだ。いくら能力があるとはいえども結局は自分で自分の身は守らないといけない。

 

 転生してすぐにここが週刊少年サンデーで連載していた「名探偵コナン」の世界だと気付いた。「米花町」に「帝丹小学校」だ。ベイカーストリートの日本語化と探偵のアナグラム、気づかないほうがおかしい。

 

 理解してからは必死に体を鍛えるようにした。訓練が面倒くさい? 死ぬのとどっちがマシかだなんて聞かれるまでもないだろう。せっかく転生したのにまた死ぬの? 嫌だよそんなの。

 

 幸いというか(さい)わいというか。前の世界より裏の世界は身近にある。科学技術も発達しているので、鍛えることには事欠かない。銃にナイフ、体術などなど。基本二次元の面々は運動神経高いせいか、例にもれず俺の運動能力も高い。おまけに転生者ってのは総じて固定能力値が高いのかな? すぐに吸収するチート仕様である。まああって困るもんでもないし、むしろないと死ぬし。限界超えるレベルで頑張ったね。

 

 変装術を学んで黒羽盗一に教えたり工藤夫妻とお茶したり、ちょこちょこ原作キャラにも絡んで生活していくうちに。

 

『メスカルか』

「あ、ジンー? 何ー?」

『終わった』

「……了解。データありったけ送って」

 

 なぜか原作で言うラスボス、「黒の組織」のメンバー、しかも幹部になっちゃっているというね。なんでなんだろう。何を間違ったんだ? ラスボスなんて絶対主人公に倒されるじゃん、俺嫌だよ。

 

 

 まあ取りあえずは退職願出してー、次の副所長にはアイツ薦めとくかーなんて考えているうちに返信が来た。あ、ベルモットじゃん。

 

《内容 悪いんだけどもうしばらくそこにいて探ってみてくれない? バーボンの正体が見破られている今、貴方が鍵なの》

 

「……はっ!?」

 

 ちょっと待って。何それ、俺囮役? マジで?

 

 

 

 拝啓神様、なんで俺をこの世界に転生させやがったんですか。恨むぞ。

 

 

 




 めだ解説にしてるけどスキルではなく特殊能力。中二的名称は主人公がつけた。この世界に転生するならこれくらいのチートがないと生きていけない気がする。
 迷ったけど黒の組織のメンバーにしました。産地が決まってるのが「テキーラ」、それ以外が「メスカル」。
 超特殊能力持ちの安楽椅子探偵って面白くないですかね?


 スペック
杜雨(もりあめ) 帝督(ていとく)
 由来は「モリアーティ教授」より。また名前の由来は「とある」シリーズより。科学警察研究所副所長。五十六歳。既婚者。
 小田切警視・松本管理官たちと同期であるが、外見年齢は変装なしにもかかわらず三十代前半。
 神に転生させられた転生者。望んで「名探偵コナン」の世界に転生したわけではない(当たり前)。原作知識はFILE.895まで。
 変装術や変声術は黒羽盗一に教えるほど。得意な武器は曲弦糸。コードネームは「メスカル」。

  ・開運何でも探偵眼(ディテクティブルーアイズ)
 発動させると被害者が死ぬ数分前から発見されるまでの映像、および証拠の場所や犯人の逃走経路、現在地などのあらゆる情報が一気の脳裏を駆け巡る。探偵要らずの超チート。発動条件は事件現場(遺体発見場所)を見て”念じる”だけ。殺人事件のみならずスリや強盗・詐欺などにも応用可能な万能スキル……だが主人公的には「これなんて中二?」

  ・危機敵上京(アクシデントバースト)
 常時発動(パッシブ)。体質と言ってもいい。開運何でも探偵眼(ディテクティブルーアイズ)と同じく映像(ヴィジョン)が浮かぶ。どんな些細なことにも感知してしまうのが悩みの種。また、敵意・悪意がない人間には通用しないというデメリットも。ある種の予知能力。同時に危機回避能力もあるのでめったなことでは危険はない。




 ……という妄想が昔浮かんだ。詰め込みすぎなので却下、お蔵入りしたネタ。浮かんだ当初は帝丹高校の生徒会長だったし黒の組織のメンバーでもなかったけど。


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IN  ONE PIECE 1

 次は「週刊少年ジャンプ」から「ONE PIECE」です!


 銃に撃たれて死ぬって本当にあるんだね。あれ創作物の中だけだと思ってたけど。

 

 視界が赤に染まる中、私が考えたのはそんなことだった。今から考えると、ずいぶん淡泊だったなあって思う。けど、人は死ぬときに走馬灯なんか見ないって知った時でもあったんだ。

 

 

 

『理解できたところで転生しよっか!』

「あ、いいです」

『転生していいんだよね?』

「遠慮してるんです」

 

 なんだこの悪徳商法みたいな神様。全身真っ白なのはともかくとして、髪がワックスで固めてチャラ男みたいになってるのは理由がわからない。

 

『んじゃあ君は……どこ行きたい?』

「決定事項ですね分かります」

『んじゃあ……よし、「ONE PIECE」で!』

「チェンジ」

 

 数あるバトル漫画の中でも一・二を争うレベルの世界じゃないか。もう死ぬのは嫌だ。主に寿命と安楽死以外では。

 

『大丈夫大丈夫。ってことで――逝ってらっしゃい』

 

 字が違う! テンプレにもほどがあるじゃないか!

 

 

 

 

 生まれ直した私――俺か。まさか転生転性するとは思わなかったけど。慣れると案外いいものだ。今の俺の名前は「ゴール・D・ナシオナル」。……「ONE PIECE」と「ゴール・D」の姓で分かる人にはわかるだろう。そう、ロジャーの血縁者だ。まあ間違いなく死亡フラグだね。何が大丈夫なんだ、あの神。ブッ殺してやる。

 

 ……でも不思議なんだよね。両親も兄弟にも、「ロジャー」がいない。え、なんで?

 

 それにまだ「大海賊時代」が始まっていないらしい。偉大なる航路(グランドライン)もまだ制覇されていないことから、ロジャーがすでに海に出ているわけではない、……ってことはえ、なに? 死亡フラグなし? ひゃっほう! ……でもなんでかな。嫌な予感はしてるんだよね。

 

 

 とりあえず体を鍛えつつ何をしようかな~と考えた結果、貿易商をすることにした。

 

 世界のほとんどが海のこの世界では、貿易商ほど潤う仕事もないと思ったのだ。いやだってさ、海賊も海軍も面倒くさそうじゃん。俺やだよ。将来的に指名手配されるのも海賊たちを殲滅するのも。

 

 

 

 そんな俺は決めた。転生して目標を掲げたのだ。

 

 俺は! この世界に! オタク文化を! 広める!

 

 転生して吹っ切れたのかもうすべてのことに全力を注ぐことにした。しかしオタ文化を広めるといってもラノベが主である。しかしここで重要な問題が発生した。

 

 娯楽物が少ないこの世界では、紙そのものが高級品なのだ。

 

 そこで思いついたのが内政チートでよくある「紙漉」、何となく面白そうだからって覚えておいて本当によかった。関くん、ありがとう。

 

 

 羊皮紙とインクが主な世界に紙を広めるとどうなるか。答えは言うまでもないだろう。

 

 

 結論。爆発的に儲かった。

 

 わずか十二歳にして向こう七年遊んで暮らせるだけの財産が貯まった俺は「豪金児」と呼ばれている。会社名の「金閣寺」とも相まって作られたあだ名だろうが……「児」って何よ。子ども? 子どもなの? 確かに今は子どもだけどあと数年したらどうなんのよ。「黒バス」の花宮みたいに恥ずかしい思いすんじゃねえの? まああっちは童だけども。

 

 でもやっぱり俺元日本人よ? こんな大金不安で不安で仕方ない。宝くじ当たってほしいけどいざ当たったら不安になるパターンですね、分かります。

 

 とりあえず本店は東の海(イーストブルー)のローグタウンに移動、様々な島に支店を作って減らしつつ残りは貯金、的なことをするんだけども支店を作れば作るほど元が取れるという罠。はい、金がたまる一方です。何でっ!? 前世ではあんなにやりくりしても減る一方だったのに!

 

 

 それと並行して身体を鍛えても驚きの連続です。

 

 なぜか覇王色の覇気が使える件について。

 

 原作読んでて思ったのは、「覇王色の覇気が使えるってことは良くもも悪くもカリスマ性があるってことだよね」だった。HUNTER世界で言うところの「特質系」。王になる資格、すなわち他人を引き付ける能力があるものに覇王色の覇気の資質はある。

 

 そこまで考えて納得した。だって俺、たった十二歳で支店三桁の大貿易商人の大社長様ですし? カリスマ性がなかったらやってらんないよな、こんなの。会社一発で潰れるわ絶対。

 

 とりあえず原作で覚えている六式は頑張って模倣している。だんだん登場人物が多くなって途中からほとんど流し読みしかしてなかったにもかかわらず細部まで鮮明に思い出せるという原作チート。結局あの後どうなったんだろうな~と時々思いをはせている。サボ可愛いよ、サボ。青年になっても可愛かった。

 

 

 悪魔の実はどうしようか悩んだんだけども食べるのはやめた。だって売ったら一億Bだし。いい商品だよ。「グラグラの実」とか「イヌイヌの実」とか。海賊にも海軍にも悪魔の実を欲しがる奴はいっぱいいる。まあ売るのは海軍にだけだけどね。海賊のモットーは「欲しいものは奪って手に入れろ」なんだから商売が成り立つわけがない。むしろ積極的に奪いに来るだろうね。カナヅチと引き換えに圧倒的な力を手に入れられるんだから。

 

 でもさ、ほとんど海の上にいる海賊がカナヅチって致命的だよね?

 

 青雉みたいに海を凍らせるとかならまだ大丈夫なんだろうけどもお風呂とかでも力が抜けるってヤバいと思う。

 

 俺日本人だし! 風呂入りたいし!

 

 そんなわけでもっぱら実は売ってる。だから体術や武器で補うしかないんだよね。

 

剣に銃、大砲などなど。前世での防刃ベストや防弾チョッキの発想からとりあえずできるだけ薄く、軽く、着心地よく頑張って改良する。俺用に! だって死にたくないし! 俺は孫の顔を見るまで死なない、絶対に!

 

 

 

 それから数年がたち、俺の妹に子供が生まれた。付けられた名前は「ゴール・D・ロジャー」。

 

 ……はい? え、ロジャー?

 

 慌てて見に行くと黒髪の可愛らしい赤ん坊……マジですか。俺、ロジャーの伯父さん!?

 

 【速報】死亡フラグ復活【俺氏終了のお知らせ】

 

 ……ネット環境がないからスレ立てもできないけど。海賊チャンネルやべえ。スレ民に相談のレベルだよね、コレ。

 

 

 とりあえず今まで以上に資金を増やして、それを貴金属類に変えて持ち運びやすくする。それと並行して次代に引き継ぐ人材を探す。

 

 ロジャーが海賊王になれば、俺たち全員の命がない。

 

 昔から親や兄弟、その親族全員にはいざという時のために体を鍛えてもらっている。皆訝し気だったが、俺が貿易商の社長として有名なこともあり「心配なんだ! いつまでも健康でいてほしいんだ!」というと渋々ながらも鍛えてくれ、それにより弱小海賊程度なら一人で追い払えるレベルにまでなってくれた。……それでも海軍の総戦力で来られたら心配だなァ……、よし。アレ(・・)、実行に移そうか。

 

 

 

「伯父さん! 伯父さん!」

「おっ、ロジャー。どうした?」

 

 ロジャーが生まれてから数年が経ち。俺は見事に懐かれた。いやあ、やっぱり子供は可愛いよね。キャラの有無に問わず。……でも、将来的にこのロジャーがあの髭面のオッサンになるのか……、月日って残酷だね。

 

「伯父さん! 俺、海賊になる!」

「ほう、そうか」

「うん! あの伝説の海賊、『スタンリー・D・レイ』みたいな立派な海賊になるんだ!」

「……そうか~、頑張れよ」

「うん!」

 

 

 スタンリー・D・レイ。偉大なる航路(グランドライン)と新世界、両方の海の全ての島を航海したといわれる伝説の海賊団、「ジパング海賊団」の船長である。「海神 レイ」の通り名を持ち、史上初ともいわれる「ALIVE ONLY」の手配書を海軍に出させた男とも言われている。海賊を目指す者にとってスタンリー・D・レイはまさに「海神」なのだ。またその伝説は数知れず、「古代文字」の解読に「海底遺跡」の発見、宝樹「アダム」と「イヴ」を見つけたのも彼だといわれている。さらに本人は「不老」とまで言われており、撮られた写真の多くが同じ姿で映っている。既に死亡が確認されているが、死んで半世紀以上経つ今でも彼に憧れるものは多い、「伝説」の海賊なのだ――

 

 ……とまあ羅列してみたが、こんな伝説級の登場人物なんていたか? 脳内原作データベースと照らし合わせてみても該当者がいないんだが。……てことは転生者? まあいてもおかしくはないだろうけども。俺と同じく転生した時期がおかしいやつだな。

 

 

「……ってことで伯父さん!」

「なんだ?」

「俺を鍛えてくれ!」

「……ほわっと?」

「やったー! ありがとう!」

 

 ちょっと待て。 俺は賛成 していない  ナシオナル心の俳句

 

 いやマジで待て! なんだその強引な俺様思考! BL王道転校生並みに子供なやり取りだな!

 

「な、なんで俺なんだ? 妹や義弟でもいいだろ?」

「父さんたちに相談したら、『伯父さんに頼んでみなさい』って。『伯父さんはものすごく強いから』って言ってた!」

 

 おいコラお前らか俺を売ったのは! 兄を売るような子に育てた覚えはありませんよ!

 

「やったー! まずはどうすればいいんだ!?」

「いやだから……ああ、もうわかったよ! 鍛えりゃいいんだろ、鍛えりゃ!」

「おう!」

「だからロジャー、修行中は俺のことを『伯父さん』ではなく『師匠』と呼ぶように! いいか、弟子よ!」

「了解! 師匠!」

 

 そういう経緯があって俺はロジャーの師匠になった……なんで? でもいいじゃんか! 「師匠」呼びに憧れてたんだから!

 

 

 

 

 前世では食べたその場から脂肪にかわってた「私」の身体は、「俺」になってから筋肉に変換されるようになった。腹筋ヤバい。八つに割れるとか夢物語が現実になってるんですけど!? これ絶対体脂肪率一桁じゃね!? 五パーきってんじゃね!? うわー、創作小説の理想の身体が今ここに! これでオッドアイだったら超ウケたんですけどー。あはは。

 

「……むぎゅう……」

「あ? もうヘバってんのか?」

「ぐ、……まだ、ま……だ……」

 

 バタン! ▼ロジャー 先頭不能! ナシオナルの勝ち!

 

 ……あ~~、久しぶりにポケモンやりたい。ネットしたい。どんだけ読んでないんだよ。パソコン無いから小説系は全部手書きでやるしかないんだよ! もうやだ。とっととパソコン開発しよう。

 

 

 ――という現実逃避は置いといて。ロジャーの修業を付けるようになってから数か月がたった。……が。

 

 やっぱりさすが未来の海賊王だね! 天然チートとかパないよ!

 

 神様補正のチートボディの俺と同じレベルの吸収速度と上達速度とかどういうことよ。これが伝説補正? 主人公並みじゃね?

 

「オッケー、んじゃあ次は――」

「ふ、ふぁい……」

 

 なんか目覚めそうなくらいに他人(ロジャー)を弄ぶのって楽しいわ。地面に這い蹲って必死で起き上がろうとしている姿とか超快感。けしからん、もっとやれ。

 

「よし。んじゃあ……」

「こ、の……鬼! 悪魔!」

「そんだけ喋れるんならまだまだイケるな。よし、次は倍やるか」

「~~~~!」

 

 オーウ、異世界ノ言葉ッテ難シイデース! 何ヲ言ッテルカサッパリ分カリマセーン!

 

 

 

 

「……よし、こんなもんか」

「…………」

 

 チーン。へんじがない。ただのしかばねのようだ。

 

「生きてるわ!」

「お? まだまだ元気そうだな」

「御免なさい。もう勘弁してください」

 

 すぐさま土下座をしてきたロジャー。全く。何をそんなに怯えているんだ。

 

「この心に残るトラウマのほとんどがアンタによるものだ!」

「俺の言うことは?」

「……ゼッターイ!」

 

 魔王による恐怖政治。ああ、素晴らしい響きだ!

 

「……さて、筋力トレーニングから体術。クセの無くし方に見抜き方。剣・銃の扱いに料理、医術に航海術。覇気の扱いに海楼石の加工方法まで教えたが――」

「……ほとんどやる意味なかったような気がするんだが……」

「何を言っている。将来的には医者や航海士が乗るだろうが、今はまだお前一人だ。お前が死んだら元も子もないんだぞ? 船長(・・)

「っ!」

 

 原作のルフィもそうだったが、船長が間抜けだと船は動かない。その点ありとあらゆることに通じていると最悪なんとかなる。

 

「医者やコックが病気に罹ったりしたらどうするんだ? 船長がしっかりしない船はすぐに沈むぞ?」

「……分かった」

 

 おお、そんな顔もできるんだな。――紛れもない、「ロジャー海賊団船長 ゴール・D・ロジャー」の顔だ。

 

「とりあえず俺の修業は終わりだ。後は旅に出るなりどこかで死ぬなり勝手にしろ」

「……」

 

 何やら俯いていたかと思うとキッと顔を引き締めて真面目な表情をして俺のほうを向いてきた。何だ?

 

「――ありがとうございました! 師匠(・・)

「! ……ああ、お疲れさん。弟子(・・)

 

 ……ちょっと泣きそうになった。くそう、最後の最後で負けた気がする。

 

 

 歩き出そうとするロジャーに空島と魚人島には行くように伝え、港へ行くように伝える。数日前に見かけたし、多分まだそこにいるだろう。

 

 頑張れよ、未来の海賊王(ロジャー)

 

 

 ――そうして彼は旅立った。

 

 

 

 

 ロジャーが旅立って一年経たない内に彼の手配書が出回り、発行された手配書を壁に張り、家族総出でお祝いした。いや海賊だからね? そこ忘れないでよ。貿易大商の社長の甥が海賊ってこと忘れてない? 現代だと絶好のスキャンダルだからね?

 

 手配書が発行されていると分かってから、俺は着々と隠居する計画を進めている。別に会社を大きくしたのは俺だけどもうこれ以上大きくする意味もメリットもない。というかぶっちゃけ潰れてもいいと思っている。だってもう関係ないし。

 

 社員全員と個人面談をして役員を決め、一か月後に引退式をする予定を決め手紙を書く。それと同時に「人工島」の建築を急ぐ。

 

 

 どこかの島に隠居するとしても「海賊王(ロジャー)の血縁者」と分かった時点で回りの人間は手の平を返す。人は目の前の褒美に無欲だ。絶対に裏切らないといえる保障なんかどこにもない。信じられるのは同じ境遇にいるものだけである。

 

 ログをためる必要のない人工島なら、外見さえカモフラージュすれば問題ない、はずだ。そこに家族全員が「移住」すればいい。

 

 「一族郎党」皆殺しになるんだから、「一族郎党」が全員手を貸し合えばそこまで難しくないはずだ。死なば諸共。俺の一世を賭けたギャンブルだ。

 

 さあ、どんな結果になる?

 

 

 

 旅立ってから幾年か経ち。旅立ったロジャーの手紙から、今はシャボンディ諸島にいるらしいことがわかった。……もう半周終えたのか。思ったよりも早かったな。

 

 ロジャーから事細かに書かれているその内容は、どこか原作に近づけるものを感じる。ショタンクスにショタギーが可愛いだの副船長のレイリーのお小言が煩いのなんの。ああ、苦労を掛けているね、レイリー、だとか若干苦労人の気が読めた。

 

 時間がない。島は完成したし、海流の影響から船では絶対に近づけない。海底は海王類や凶暴な魚たちの住処だし、空も気流の影響で近づくことは難しい。そんな場所に造られた「アイラン島」。そこで自給自足の生活を始めよう。

 

 

 

 

 人工島移住計画、別名「ノアの箱島」計画を実行に移した俺は、親族全員を島へと連れて行った。そのころにはロジャーは有名になりすぎて、いい意味でも悪い意味でも周りの視線が煩かったからだれも反対はしなかった。むしろ「静かなところへ行ける!」と喜んでいた。よかった。

 

 

 ロジャーの旅が後半に入り、相変わらず手紙では元気に詳細を語っている――いや、元気すぎる(・・・・・)

 

 新しく入った仲間である、「船医」、クロッカス。

 

 ロジャーが直々に誘った彼がいるということは、間違いなく原作に近づいている。もう終盤に差し掛かっているのだろう。ロジャーの航海も、偉大なる航路(グランドライン)の制覇も――ロジャーの病と寿命も。

 

 「ラフテル」にたどり着くまでもう時間がない。――俺は家族に伝え、「新世界」へと旅立った。

 

 

 



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IN  ONE PIECE 2

 前回も今回もネタ的例えとして使っているだけで、HUNTER×HUNTERの念なんて与えられていませんので悪しからず。


「ロジャー……」

「……何だ」

「……本当にいいのか?」

「……ああ、俺はもう、」

「……」

 

 夜も更けたある島で、レイリーと二人で話しているバカ甥(ロジャー)を見つけた。運よく見つかってよかったよ。

 

「――何がいいんだ? 俺にも教えてくれよ」

「「!?」」

 

 ハンター世界の絶並みに気配を消してすぐ正面まで近づいた俺にはさすがに気づかなかったようだ。……昔のロジャーなら野生のカンで気づいたろうに。……もう限界が近いな。まあ俺はまだまだ現役だし。……ロジャーより老けてるのにね。これマジ不老レベルじゃね?

 

「誰だ!?」

「そう大声を出すな。せっかく忍んできたのに囲まれかねん」

「お、お、お、」

 

 だーかーらー。うーるーさーい!

 

「伯父さん!」

「師匠と呼べ、バカ弟子が」

 

 これほどかというくらいの大声で叫んだロジャーの声で起きたらしく、ゾロゾロと船室から出てくる船員たち。そして俺に気づいた者から、各々の武器を構える。

 

「船長!」

「ロジャー船長!」

「レイリーさん!」

 

「……ふむ、お前の船員にしては教育が行き届いているな。よっぽどその副船長がずば抜けているのか、それとも……」

 

 そこでロジャーを見て、思いっきりバカにしたような顔をする。

 

「お前が極端に単細胞なのか。果たしてどっちだ、バカ弟子?」

「うるせえ! 師匠!」

 

 一拍おいて船全域に「ええぇぇぇぇ!? し、師匠ぅぅ!?」と驚愕の声が響き渡る。だから煩いって。年寄りに爆音は堪えるんだからさ。

 

「……初めましてだな、ロジャー海賊団諸君。俺の名前はゴール・D・ナシオナル。正真正銘そこにいるバカの伯父だ」

「誰が馬鹿だ!」

「違うのか? ……どうだ、副船長くん。君だろ? この船の副船長は」

「あ、え、と……」

「違うよな、レイリー!」

 

 まだ若いレイリーとか超貴重! 年取ってても渋くてよかったけどまだ若い時のも貫禄があっていいよね!

 

「……バカ、だな」

「だろう?」

「なぜだーー!」

 

 頭抱えて絶望しているロジャーだが、事実なのだから仕方ないだろう。

 

「そして同時にそこにいるロジャー(バカ)に戦い方や航海の基本を教えた師匠でもある。……たいへん嘆かわしいことにそのバカは頭脳方面は全く伸びなかった。だから始めにすぐに副船長を見つけるように言ったんだが……、どうやらお前の見つけた副船長は『当たり』らしいな。全く。人を見る目とカリスマ性だけはあるんだ」

「だろ!? レイリーってばスゲエんだ!」

「……だな。なんでお前が船長をしているのか不思議になってくる」

「どういう意味だ!」

 

 ギャーギャーギャーギャー喚いているロジャーを放り、レイリーに向かう。

 

「感謝している。ロジャーを見捨てないでくれて」

「あ、いや、別に……」

「あのバカには苦労を掛けられているだろう?」

「……まあ、」

「……だがアレはアレなりに色々と考えているのだろう。誰よりも船員のことを考え、誰よりも航海を楽しみ――それでいて、誰よりも自由だ。確かに船長になる資格は十分に持っている」

「……ああ。俺もそれに惹かれた」

「……アレは敵だろうと何だろうと、自分の気に入ったものはすべて手に入れたい強欲な男であり、同時に惜しみなく分け与えるやつだ……。これからもあいつを頼むよ、副船長」

「……言われなくても」

 

 ニヒルに笑いながら言ったレイリーにこちらも負けじとニヤリと笑ってやる。そこで空気だった船員たちにいくつもの酒樽や酒瓶を取り出し見せて言う。

 

「お前たちにも感謝するぞ! これはロジャーに今までついてきてくれたお前らに、俺からのプレゼントだ!」

 

「「「酒だーー!!」」」

 

 一拍おいて船中に歓声が上がる。ロジャーも喚いていた顔から一変させて、子どものように目を輝かせながら酒を手に取った。

 

「野郎どもー! 宴だー!」

 

 

 

 宴が始まった序盤もそこそこに、俺はもう帰る旨を言う。

 

「よかったな、ロジャー」

「ああ! こんな俺に付いてきてくれる奴らばかりだ!」

「よかった、……本当に」

「ん? どうかしたか?」

「ああ、いや……、また会おう、ロジャー」

「おう! またな!」

 

 ……まだだ。まだ、時期じゃない。もう少し、もう少しだけ。

 

 あと少しで、ロジャーは「ラフテル」にたどり着く。その時に――

 

 

 

 

《ゴールド・ロジャー 新世界の海を制覇!?》

 

 ラフテルにたどり着き、その名とともに広がる「海賊王」の名。それに俺は「ついに来た」と思った。

 

 ――もう一度、逢いに行く。これが最後になるだろうから。

 

 

 「ロジャー海賊団」を解散させ、ルージュのところで最後に生を謳歌しているロジャー。俺は知っている。――明日、ロジャーは自首をしに行く。

 

 ルージュと最後の別れを終え、夜明け前に出てきたロジャーに声をかける。

 

「――行くのか」

「っ! 伯父さん!? な、なんでここに……」

「御託はいい、質問に答えろ……自首しに、行くのか」

「! ……ああ」

 

 なぜそれを、という表情の後に覚悟を決めた男の目をしたロジャーに一瞬ひるむも、引いてはいけないと思い直し姿勢を正す。

 

「――子どもを置いていくなんてひどい親だとは思わんか?」

「……分かってるさ。だが、俺は行く」

「……そうか」

「ああ」

「――だったら」

 

 俺が持てる覇王色の覇気を全開にしてロジャーに向かう。

 

「――俺を倒して行け、バカ弟子」

 

 驚愕の表情を浮かべたロジャーだったが、すぐに顔を引き締めると同じく覇気を開放する。……やっぱり俺も年だな。

 

「卒業試験だ、バカ弟子」

「あんたを倒して俺は行く――師匠!」

 

 互いが互いに右拳を振り上げて激突し――戦いの幕が切って落とされた。

 

 

 

(……ふむ、さすがにここ数十年遊んでいたわけではないよな)

 

 悪魔の実なしでここまで動けるのだからもう完璧に人外の領域だろう、武器は携帯しているが単純馬鹿という性質を持つロジャーはもっぱら力押しで攻めてくる。やっぱりレイリーとのコンビは最高だったようだ。

 

「どうした!? まさかここまでってことはないよな!?」

「ハア、ハア、……当たり、前だ!」

 

 病魔が限界値まで来ている……そろそろ限界が近いな。

 

「……俺がなぜおまえを止めるのか分かっているか、ロジャー?」

「……」

「お前は何だ、『海賊王』」

 

 別に俺も理由もなしに甥を止める最低な伯父じゃないんだぞ。……違うぞ? そりゃ確かにロジャーを甚振るのは楽しかったけれども。

 

「恐らくお前は自首した後に処刑されるだろう。公開処刑だろうな、場所は……お前の生まれた『ローグタウン』ってとこか?」

 

 予想じゃありません。確定未来です。原作知識の引用です、はい。

 

「そしてその後はどうなるか――考えたことがあるのか!?」

 

 覇気をまとわせた拳を思いっきりロジャーに振り下ろす……チッ、ガードしやがったぞ、コイツ。

 

「恐らく……いや、ほぼ確実に俺たち――『海賊王(ロジャー)の関係者』は皆殺しだろうな、老若男女問わず」

 

 そこでハッとしたように顔を驚愕の表情にするロジャーに隙ができ、俺の拳が腹に入る。ゲホゲホと咳こみながらも倒れるまでには至らない。

 

「お前がちょっと親切にしただけの子供も一泊世話になっただけの宿屋の夫人も、おそらく殺されるんじゃないのか? 海賊王(お前)に関わったという理由だけで、海軍には立派な理由になる。死体がいくつできるかなァ、百や二百で足りるのか?」

 

 ますます顔を青ざめていくロジャーは、もう完全に臨戦態勢ではなくなってしまっている。うわ~、俺今凄い顔してんだろうな。でも平常心、平常心。ここで笑ったら終わりだ。

 

「当然一番殺される確率が高いのが『海賊王(ロジャー)の血縁者』だ。”D”だけならまだしも『血縁者』となるだけで完全に海軍としてはアウトだからな。……分かったか、ロジャー? お前は自分一人なら構わないかとか考えているんだろうが、同時に大勢の人間を死に至らしめることになるんだ」

 

 あれ、顔が青を通り越して白くなってるんですけど。いいのかな~、俺のせいじゃないよねっ!

 

「お前はその覚悟はあるのか、ロジャー? 自分に関係した全員が殺されるだろう未来を背負う覚悟が。今のお前はただの我儘なガキだ」

 

 いや今までも十分ガキでしたけどね! 本心ではそんなこと全く考えてないしね!

 

 でもコイツにそれくらいの覚悟はあっていかるべきだ。……エースのためにも、彼は「悪魔」であってはならない。

 

「オレ、ハ――」

 

 心が折れるギリギリを狙ってかけた言葉だが、果たして結果は――

 

 

 

「――行く。自首しに」

 

 ……目に光が残ってる。折れなかったか。

 

「……そうか、だったら」

 

 途端にまた拳を握り身体を固めるロジャー。……安心しろ、俺の役目はもう終わった。

 

「……行け。どことなりとも勝手に」

 

 その言葉とともに背を向けてその場に座り込む俺。しばらく振るえていた気配があったかと思うと、ガバッと身体を上げて後ろを向く。

 

「……ありがとう、師匠」

 

 ……こういう時まで師匠呼びか。全く、可愛いのか可愛くないのかわからん奴だな。遠ざかる足音と気配が消えたのを感じ、俺も立ち上がって歩きだした。

 

「……バカ弟子が」

 

 あ~あ、原作改変できなかった。ロジャーが生きてるだけで未来は絶対に変わるのに。

 

 ……俺は若くして(外見的な話ね、実年齢はヤバい)甥を失うのか。あーあ、なんで俺伯父なんかに転生したの? ……涙出てきた。うん、年を重ねると涙腺が緩くなって困る。

 

 ――ま、最後の大仕事が残ってる。ロジャー、「立つ鳥跡を濁さず」って諺知ってるか? ……いや絶対知らないだろうな、うん。

 

 後は任せろ。師匠としての最後の仕事をしてやるよ。

 

 

 

 

 

「俺の財宝か? ……欲しけりゃくれてやる。探してみろ! この世の全てをそこに置いてきた!」

 

 ……おお、伝説的名台詞を生で聴けるとは。やっぱり大塚ヴォイスは渋くていい。

 

 その台詞のすぐ後に剣が振り下ろされてロジャーの首が落ちる――さあ、始めよう。ロジャーへの最後の晴れ舞台だ。盛り上げてやらなきゃ可哀想だ。

 

 

   ★   ★   ★

 

 ロジャーの残した言葉に興奮しきった聴衆たちが、ふと耳を澄ませる。港町の方から響く爆発音と悲鳴に、聴衆たちも慌てて静まり返った。

 

「爆発したぞー!」

「逃げろー!」

 

 一拍置いて広場にも悲鳴が上がり、我こそはと逃げる聴衆たち。それに気を取られた海軍たちは、いつの間にか壇上にいた人物に気づかなかった。

 

「あ、あんなところに人が!」

 

 誰かが叫ぶ声がした後、周りの人間がその指の方を見る。遠すぎて見えていなかったものもつられて指のほうを向き始めた。その先は――処刑台。

 

「なっ!?」

 

 海軍のマントを羽織った男が驚愕の声を上げた。それもそのはず、いくら爆発音や悲鳴、観客たちに意識を奪われていたとはいえここまでの接近を許した覚えはなかったのだ。

 

『……意外と海軍もぬけているな。だからこんな風に伸されるのだ』

 

 処刑台に現れた男は一言でいうなら「異質」だった。全身を黒いコートで覆い、黒い帽子をかぶり、口元を黒い布で覆ってしまっている。そのせいで声がくぐもってしまっているが、皆が驚いている一方で、海軍は別の事実に意識を持っていかれていた。こんな見るからに全身真っ黒という怪しげな男の接近を、広場にいる誰も気づかなかったのだから。

 男の足元には処刑を行った海軍兵が二人、口から泡を吹いて倒れていた。広場にいる「覇気」を知る者は全員気づく。目の前の男はこの大勢の中から誰にも気づかれずにたった二人の男にだけ『覇王色の覇気』をあてたことに。

 

 どんなに達人級の存在でも、覇王色の覇気を使ったものは否が応でも周りの全員にその存在を気づかせてしまう。しかし目の前の男はそうしなかった――わざと。その事実に気づいたことで中将以上の全員が目の前の化け物級の存在に対して恐怖を抱いた。そして、一瞬体の動きを止める――が、それがまずかった。

 

『……ほう? これしきで動けなくなるとはしれているな。まあ好都合だ』

 

 そういうなり男はたった今処刑されたばかりの存在の身体と切り取られてしまった首を持つ。そのことに気づいた将校がすぐに意識を戻し、武器に手をかけた。

 

「貴様っ! それをどうするつもりだ!」

『……どうする? 決まっているだろう。死んだ者は墓に入れる、当然のことだ』

「それは許されん! 海賊王(犯罪者)の遺体は海軍が引き取る!」

『……犯罪者、だと?』

 

 途端に広場――否、島中に広がる覇王色の覇気(プレッシャー)に、その場にいたもののほとんどが意識を奪われた。しかし全員が全員同じというわけではなく、一般人と思しき者たちは意識を奪われただけに対し、海軍の思われる人物たちは皆一様に泡を吹いて白目をむいている。そのことから考えるに、この男は完璧に覇王色の覇気をコントロールした、ということになる。かろうじて意識を奪われなかった大尉以上の階級の者は、その事実に気づき恐怖で頭が真っ白になった。

 

 基本的に覇王色の覇気は「使えるもの」と「使えない者」に分けられ、その後に「操れる者」と「操れない者」に分けられる。しかし覇王色の覇気とは、その名の通り「王の資質を知らしめるための覇気」である。一般人とそれ以外を区別するなど、常人には絶対に不可能なことだ。しかし目の前の男は、それをいとも簡単にやってのけた――かの海賊王ですらできたかどうかわからない芸当を、男はいとも簡単にやってのけたのである。

 

 一般的に知られていないことではあるが、覇王色の覇気の使い手、それも上級者(ベテラン)とも呼ばれるものにとって、この程度のコントロールは造作もないことである。むろん乱発は不可能だが、「覇王」にとっては「民」と「敵」を分類することなど簡単なこと。しかし「敵」をさらに「弱者」と「強者」に分類するのは限りなく不可能に近いといってもいいだろう。――そんな芸当を目の前でやられて物がどうなるかというと、実によくわかりやすいこととなる。

 

「あ、あ、……」

『どうした、その場に蹲って――何の反応もないのなら連れて帰る』

「待っ――」

 

 一瞬のうちに処刑台から姿を消した男に、意識の残っている海軍兵たちは動くこともできなかった。かろうじて一人が声を上げることはできたが、所詮それどまり。行方を追うことはできなかった。

 

 そして聴衆たちが目を覚ました時、その場に残るのは静寂だけだった。

 

 

 ――この出来事がきっかけで、名前・姿ともに不明の男が世界的に指名手配されることとなる。かろうじて乗せられている写真には処刑台の上で立っている写真を下から撮影したものである。――その立ち振る舞いは、紛れもなく「王」だった。

 

 

 《ALIVE ONLY 死神皇帝 報酬:――――》

 

 

   ★   ★   ★

 

「うがあぁぁぁぁ! やっちまった~~~~!」

「何やってんだよ、父さん」

「あなた……」

 

 




 正直に言うと後半が書きたかった話です。

 ロジャーを止める
  ↓
 殴り愛
  ↓
 主人公は勝つもそれでもロジャーは自首
  ↓
 主「バカヤロウ……っ」

 的なことが書きたかった。でも私のバトル描写が下手すぎて全然それが生かせなかった。……悔しい。

 一応これでこの主人公の出番は終わり、かな。アナザーストーリーはまたいつか。



  スペック
・ゴール・D・ナシオナル ♂
 名前の由来は「national 意味:国家の・国民」から。ロジャーは「ジョリー・ロジャー」から来てるし、ってことで。少女漫画愛読者なら誰からとったかはわかると思う。
 神に送られた転生者。神ボディを与えられたチートで、「覇気」は全部使える。カリスマ性があって、時々勘違いされやすい。前世は貴腐人、四十歳で死亡。若干のS気質の持ち主。原作知識はサボ再登場まで。
 わずか三歳にして政治に口を出し始め、五歳にして企業、七歳にして一財産を築いた「豪金児」。貿易大商人で、会社名は「金閣寺」である。
 二歳下の妹の息子が「ロジャー」となったことで死亡フラグが復活。何とかして折ろうと「ノアの箱島計画」を考え、実行に移した。
 ロジャーに戦い方を教えた本人で、理由は「師匠」呼びに憧れたから。反省はしていないが後悔はしている。
 何となくロジャーの処刑を防ぎ、原作崩壊を目論むも失敗。実の甥を亡くすことに若干の抵抗があり、八つ当たりもかねてロジャーの死体を奪った。死体は「箱島」で丁重に葬られていることだろう。奪い返す際に全身黒づくめの「中二業」を行ったところ、目出度く賞金首入り、二つ名は「死神皇帝」となった。由来は「ロジャーの死体を回収した」=「死神」と、「王」と同等かそれ以上の力を誇示したこと=「皇帝」から。


・スタンリー・D・レイ
 完璧な捏造者。主人公曰く「転生者」。「海神」の名前で指名手配されている生きる伝説である。今のところ登場予定はない。作者的に名前が中二を詰め込んだ感が半端ない。


 ・ノアの箱島「アイラン島」
 主人公が作った人工島。島の面積はおよそ十万平方キロメートル。主人公が知れるだけ知っている「ロジャーの関係者」が集められている。そのため、海軍は現在誰一人としてロジャーの血縁関係者を殺すことができていない。外からは完全に「島」として認識できない特殊なコーティングがされており、見つけても海流と気流の影響から近づくのは極めて困難である。一方で島から脱出することはさほど難しくない。全員が全員何かしらの自衛手段を持ち合わせている通称「チートの島」と主人公は呼んでいたり。




 ……なんか捏造キャラが出てますけど気にしないでください。「ロジャーが海賊になりたいと言い出したのが誰かのせいだったら」という考えから浮かんだのでこうなっただけです。


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IN 絶対可憐チルドレン

 久しぶりに来たら感想が描かれていたので嬉しくて投稿してしまった。……ストックがあぁぁ……。

 一話前がメジャーだったので今度はマイナー。現実世界の話も徐々に明らかになって……? ま、何も考えてないんですけどね!←

 最近「今までの忙しさは何だったのか」ってくらい忙しいです。加えて夏バテ。いやネタはあるんですよ、時間も。ただパソコンに向かう気がないだけで。

 作者のあまり好きではないクロスオーバー(能力だけ)。さて、お目汚し失礼。


 銀行に行きました。

 

 お金をおろしました。

 

 いきなり覆面を着た男ども? が乱入してきました。

 

 勇敢な高校生が叫びました。

 

「やめろ! 何をしているんだ!」

 

 強盗はニヤリと笑うと高校生の隣にいた少年を撃ち殺しました。

 

 さらに強盗たちは全員が銃を四方八方に向け乱射しました。

 

 (中略)

 

 生き残った高校生は涙ながらに言いました。

 

「俺のせいだ。俺が、俺があんなことをしたから……っ」

 

 誰も少年を責めませんでした――いえ、むしろ悲劇の少年として取り上げられました。

 

 そうして少年はその口惜しさをバネにし、小国の首相まで上り詰めたのでした――

 

 

 

 

 

 ――めでたしめでたし?』

 

「んな訳ないでしょうに」

 

 紙芝居形式で発表された自分の死に様に愕然とする。何よ、これ。本当にあの高校生のせいじゃない。何であいつは生きてて私たちは全員死んでんのよ。何であの少年は祭り上げられないわけ? 誰がどう見たってあいつのせいで私たち全員が死んだんじゃない。

 

『……仕方ないんだ。あの世界ではね』

「どういうこと?」

『あいにくこれ以上は言えないよ。でも彼があんな暴挙に出た責任は僕様達にもある。だから』

「転生させようって?」

 

 昨今の創作小説に出てくる転生がまさか自分にも起こるとわねぇ……と他人事のように考える。いや私も若かりし頃は小説投稿にはまってた時期があったからね。まあ年を経た今でも腐ったのは一向に治らなかったけど。むしろ悪化したけど。

 

「どこに?」

『一応「物語」の中』

「……二次創作、みたいな?」

『夢小説、みたいな』

 

 何よそれ。私がオリ主にでもなるってこと? 冗談じゃないわよ、そんなの。ハーレムも逆ハーレムもお断り。……BLならありだけど。

 

『別に原作のパラレルワールドだから何してもらっても構わないんだ。何もしなかったら「原作」の力が強いから強制的にイベントは起きるけど』

「そっちの方がめんどくさいわ」

 

 原作強制イベント? それなんて介入フラグ?

 

『ああ、いや。イベントが強制的に起こるだけで強制的に介入する必要はないんだ。介入させられたりもしないし』

 

 ……だったら、まあ、いい、かなあ?

 

「ちなみにどの世界?」

『どこでも構わないんだけど……どこか希望はある?』

「ん~……現代と同じかそれ以上で文明が発達していて、マンガやゲームなどの娯楽があふれている、日本が舞台の世界がいいかな」

『ふむふむ』

「あと、死亡フラグはないにしてもそれなりに事件や出来事があふれている世界がいい。魔法みたいな摩訶不思議現象があったら言うことないな」

 

 なるほどね~、と言いながら神――アガミネはブ厚い辞典(らしきもの)をパラパラとめくる。しばらく待っているといくつか候補を上げられた。

 

『【魔法先生ネギま!】とか?』

「ハーレム物は却下」

『んー、【めだかボックス】とかは?』

「いくら生き返るとはいえ死ぬのはヤダ」

『ふーん……じゃあ――』

 

 そんなこんなを数十回繰り返していると。

 

『じゃあ……【****】とかは?』

「あー……」

 

 魔法じゃないけど不思議能力があるし死亡フラグもなし、現代日本が舞台と条件がピッタリだ。

 

「じゃあそこで」

『了解。何か能力はいる? というかあった方がいいよね』

「そうですよね……」

 

 そう思い出しながら考えていると同じ週刊少年サンデー――クラブサンデーでのみ連載していた同じジャンルの作品を思い出した。

 

「あ、じゃあ【***】の全能力を」

『オッケー!』

「あ。あと、男にしてください。それなりのレベルの」

『了解』

 

 ――そうして私は転生した。とか言ってみたり。いや実際転生したんだけども。

 

 

 

 

 

『ザ・チルドレン、解禁!』

 

 ビシイ! と効果音が付きそうな声を発している男性――を()つつストローを吸う。抹茶クリームフラペチーノウマウマ。

 

 

 私――俺が転生した先は【絶対可憐チルドレン】という世界だ。週刊少年サンデーで連載されていた比較的マイナー寄りの超能力マンガである。十歳の少女たちが類稀な力をもって次々と事件をその能力で解決し、同時に彼女たちの主任との恋を見守るロリコン話だ、悪く言えば。簡単にいうならば念動能力者(サイコキノ)の明石薫、瞬間移動能力者(テレポーター)の野上葵、接触感応能力者(サイコメトラー)の三宮紫穂、そして普通人(ノーマル)の皆本光一の四人が織りなす異能サイケバトルマンガ(ラブコメもあるよ!)だ。

 

 ……いや、ね? 二次創作でもマイナー寄りのマンガだったよ? 夢小説とかだと、彼女たちと同い年で彼女たちと同じく超度(レベル)7の女の子の能力者が逆ハーレムを築く、というのが定番だったよね~、とかって今は思う。

 

 だって基本二次元の顔ってイケてるし。

 

 二次元LOVE! みたいにどこぞの中二病患者の情報屋みたいなことは言わないよ? でも現実に二次元並みにイケメンがいるわけないじゃん。オタクに染まりきってたらどうしてもキャラと比べてしまう。そして「やっぱりキャラの方がいい」ってなるんだ、私の場合。

 

 この世界に男として転生した私は小学校全国一斉ESP検査によりめでたく「普通人(ノーマル)超度(レベル)0」の判断を受けた。別にそれに幻滅しているわけじゃない。むしろ嬉しかった。だって私――俺は、原作にかかわる気なんざ一ミクロンもなかったんだから。

 

 神からもらったのは別作品――別世界の能力なので、この世界の常識や理からは外れる。すなわち俺は検査上でのみ「超度(レベル)0」なのだ。

 

俺が神からもらった能力、それは――

 

『――待って、薫ちゃん! あの女性(ひと)、赤ん坊を抱えてる!』

『え!? ……あっ!』

『アカン! もう間に合わへん!』

 

 視ると、どうやら強制的に助けた女性が赤ん坊を抱えているのを知らずに念動能力(サイコキネシス)を使ってしまったようで、それに驚いた女性が手を放してしまったらしい。女性以外にも大勢の人を抑えている薫ちゃんじゃ、赤ん坊を助けることは無理そうだ――……ったく、俺は手は出したくねえっつうのに。

 

「《ZOC(ゾック)》!」

 

 急落下をしていた赤ん坊は徐々にそのスピードを遅め、ゆっくりと方向転換をして母親の腕に収まった。チルドレン三人を含め、全員「訳が分からない」という表情をしている。

 

 

 

 神からもらった能力の一つ、《支配領域展開能力 Zone Of Control――通称ZOC(ゾック)》。【絶対可憐チルドレン】が週刊少年サンデー本誌で連載していたのに対し、クラブサンデーで連載していた、サンデー本誌では【姉ログ】という姉萌え漫画で有名になった田口ケンジの作品、【DCD】の能力である。どうせ転生するなら他作品の能力でいいや、と思いこの力をもらったのだ。

 

 ちなみに今俺がいるのは事件現場から数百メートル離れたムーンバックスである。そして当然のことながらここから現場は見えない……そう、これも俺の能力だ。同じく【DCD】で主人公が使っていた能力、《五感干渉能力 五感リンク》である。主任である皆本に五感を共有させて彼らを覗いていたのだ――ストーカーっぽいな。だがやめる気は毛頭ない。

 

 

 

『今のは……? 薫、お前か?』

『う、ううん。あたしじゃない。あたし、間に合わなかった……』

『ほな薫以外の誰かが? ……もしかして兵部が!』

『いいえ、多分違うわ。彼なら私たちの前に現れてさも「大丈夫だった? けがはないかい?」なんて紳士ぶって皆本さんにドヤ顔するはずだもの』

 

 だったら誰が……なんて話しているのを聞きながら皆本につないでいた五感を切る。ちょうどフラペチーノもなくなっちゃったし、さーて、仕事場行こうっと!

 

 

 

「おはようございまーす」

「おはようございます、匂宮(におうのみや)さん」

「おはようございます……もう昼過ぎですよ」

「にひひ」

 

 受付の常盤さんと野分さんに挨拶してから社員証を見せて入れてもらう。そう、俺の働き先はB.A.B.E.L.である。

 

「やっほ~、カッキー」

「遅えんだよ! それと、カッキーって呼ぶな!」

「遅いって失礼だなあ……まだ二時過ぎだよ」

「十一時から会議だったろうが!」

「そうだったっけ?」

 

 ニッコリ笑顔で首を傾げながら言ってやると米神に青筋が増えた……皺になるぞ? せっかくお前の唯一の良さの顔が見るに堪えないものになるぞ。すなわちお前の存在意義がなくなるということだ。

 

「んなわけねえだろうが! 俺の良さはもちろんこの顔だが、他にもこの鍛え上げられた身体や培われた話術とテクニック、それから――」

 

 何か話しているバカ木は置いて仕事場に行く。さーてと、昨日の続きでもするかね。

 

 「無視すんじゃねえ!」なんて聞こえない。

 

 

 

 

「やあ、匂宮くん」

帰れ(Go home)!」

「つれないなあ。あ、そうだ。P.A.N.D.R.A.に来ないかい?」

「死ね」

 

 研究室(ラボ)に入ると白髪・学ランを着たリアル「見た目は青年中身は老人(ジジイ)」がいた。その名も――兵部京介! ……別作品だな、でも同じサンデーだし構わないだろう。

 

「……ったく、毎回毎回俺なんかを勧誘に来るほど暇なのか、P.A.N.D.R.A.は」

「暇じゃないよ。でもね、君にはそれだけの価値があるんだ」

「……」

「疑似超能力者生成薬《TEHD(Temporary Esp Holder Drug)》の実現化、ESPリミッターの超小型化、ESP(ロック)の擬態化、ECCMの広範囲・長時間への使用可能……ああ、あとは光学迷彩服(オプチカル・カムフラージュ・ジャケット)の最薄化に音消しの機能追加なんてのもあったね」

 

 ……転生してから今まで俺が築いてきた功績(またの名を黒歴史という)を羅列してくれたこの老害をどうしてくれようか。殺していいかな? いいよね。グロ注意タグ並みの現場になってもいいよね、もう!

 

「まったく。P.A.N.D.R.A.の何が嫌なんだ? ……いや、この場合はなぜ君はB.A.B.E.L.を選ぶんだい? の方がいいか」

 

 主人公勢だから。……じゃなくって。いる理由? ……そんなの決まってんじゃん。

 

「何となく」

「……は?」

「いや別に理由なんてないよ? 別にチルドレンたちが可愛いとか皆本のあの苦労性が見たいとか賢木をからかいたいとかそんな理由は全くないし。P.A.N.D.R.A.だったらP.A.N.D.R.A.で、それなりに楽しめてたんじゃないかなあ」

 

 別に犯罪集団だから、って理由で遠慮したりはしないし。就職しやすかったのがB.A.B.E.L.なだけで。将来安泰だし。

 

「……だったら、P.A.N.D.R.A.に入ってくれない? B.A.B.E.L.にスパイとして入ってるってことで」

「別にいいけど」

 

 冗談で言ったつもりだったのだろう兵部は、俺が即答すると案の定目を瞬かせた。

 

「別にいいよ? さっきも言ったけど別にB.A.B.E.L.に固執してないし、P.A.N.D.R.A.はP.A.N.D.R.A.でおもしろそうだし。あ、でも俺の場合開発に物凄い費用がかさむけど、いいのか?」

「フ、フフフ……ハハハ! 分かったよ。費用があればP.A.N.D.R.A.に来てくれるんだね?」

「あと材料ね。うん。別にスパイとか面白そうだし」

「わかった。用意させよう。三日後に君を紹介したいから、『クイーン・オブ・カタストロフィ号』に来てね」

 

 それだけ言って一瞬で瞬間移動(テレポート)した老害。いや、「来てね」? 何言ってんだよ、普通お前が迎えに来るだろうが。俺一応(対外的には)普通人(ノーマル)だからね? ……あれ、これ本当に俺が行かなきゃいけないパティーン?

 

 

 

 

 

 

  ――三日後。休みを取って海岸沿いにぶらぶらと歩いていた俺が遠くに船を見つけ視界がぶれたと思ったら一瞬の後に船上におりしかも不運なことにそこは藤浦葉くんの部屋で侵入者かと思い間違えられて攻撃を受けて逃げた先でさらにP.A.N.D.R.A.のメンバーと悉くエンカウントし追いかける人数が増えたかと思いきや逃げ切った先があの老害の部屋で問い詰めたら「ゴメンゴメン、瞬間移動(テレポート)がズレちゃって」とあっけらかんに言ったことにキれた俺が能力を使って全力でぶん殴ったのはまた別の話。

 

 ……そしてまた、そのことに興味を持った兵部がチルドレンたちとともに俺を勧誘するために直接B.A.B.E.L.まで来て勧誘したことで皆本や賢木たちに疑惑の目を向けられてB.A.B.E.L.に居づらくなって腹いせに今まで書いた論文や発明した機械全部ぶっ壊して局長に退職願を叩きつけて行方を眩ませるのも――些細なことである。

 

 

 




 次は何だろうか……今夏のアニメでは「月刊少女野崎くん」と「ばらかもん」がお気に入りです。「HUNTER×HUNTER」もようやく選挙編突入! あ~、早く見たい。……その前にさっさと続き書かないと。


・主人公スペック
 匂宮(におうのみや) 静無(しずむ)
 名前の由来は兵部と同じく匂兵部卿宮(におうひょうぶきょうのみや)より。「皆本」の「み」と「賢木」の「さ」、その二文字の五十音順で考えて真ん中あたりを取ったらこうなった。で、「に」当たりかな~……よし、匂宮でいいや。って感じ。下の名前は言わずもがなの戯言シリーズより。出夢(いずむ)(いず)()に、理澄(りずむ)()(ずむ)に分けられることから、「だったら男は先に二音だよな」ってことで。「〇ズム」縛りは外せなかった。
 中学編完結までの原作有知の転生者。中学編開始時26歳(賢木の二つ年上)。渋めのイケメン。女性よりむしろ男性からモテる。
 ESP検査では事実上の超度(レペル)0、普通人(ノーマル)。現代ファンタジー好きのオタクで、転生してからは嬉々として発明チートを発揮した。彼の功績の九分九厘が転生の恩恵。


 【DCD】
 田口ケンジ作、クラブサンデーで連載していた姉萌えコメディ。まだ知りたかったらどうぞ検索を。



 以下、作中の能力解説。(本編で出ていないものがほとんど)

  《五感リンク》→《五感ハック》→《五感ジャック》
 主人公:黒須繋介の力。半径五百メートル以内の人間の五感を共有・干渉・支配できる能力である。力の大きさ的には【DCD】の方が【絶対可憐チルドレン】より強い、という設定で、干渉し続ければアンチエスパーと同じ効果を発揮する。

  《ブリッツ》
 電撃能力。電気を始めとした電子機器はもちろん、電磁波や磁気も操作可能。遠隔操作可だが電撃体質になってしまう。ちなみに彼が来ている服や白衣にはマグネシウムリボンが含まれており、どうしようもないときには電撃で熱を発生、炎を出して爆発させたり……なんて。どうでもいい妄想も付け足されつつある。

  《獣王》
 動物使役能力。口から特殊な命令を発している、という扱いから動物との対話も可能。ただし、人間の操作はできず、また使用中、自身の口は使用不可能になる。

  《テンプテーション》
 対男性限定能力。その名の通り女性には効かず、男性にのみ有効なフェロモンを発することで操ることができる。ちなみにこの能力で発生するBLフラグは存在しない。肉親にも効果があるので要注意。

  《一騎当千》
 自発性ドーピング能力。一時的に自身の肉体強度や身体能力を始めとした体内外問わず操作可能になる。ただし、自分にしか使用不可能である。

  《スクリーム》
 殺人音波能力。《獣王》同様口から特殊な音波を発しそれにより「波」を操る。共鳴や共振を操れることから相手の三半規管を壊すことも可能。ただし使用中は口は使えない。超音波で会話も可能。

  《Zone Of Control》
 支配領域展開能力、通称ZOC。自身を中心とした領域内の物体を自由に操れる。意識せずに使えるという利点がある。

  《空間アクセス》
 空間転移能力。いわゆる瞬間移動で、一度に可能な範囲は五百メートル、ただし過度な使用をすると自身が倒れることとなる。使用者(この場合は主人公)に触れてさえいれば複数人による移動も可能である。人・物は問わない。

  《ガチンコ》
 物質硬化能力。そのかたさはダイヤモンドよりも固いが、自身及び自分が直接触れているものにしか効果がない。ちなみに《一騎当千》よりも硬い肉体強化が可能。

  《タッチ ザ ワールド》
 重力操作能力。対象を視覚にとらえて空中で「タッチ」すると捕捉完了、後はタッチパネル操作のようにスライド・タップして操作する。《Zone Of Control》と違い捕捉する必要があるが有効範囲は広く、意識していなくともそのまま留めることができる。

  《ペインキラー》
 痛覚置換能力。自身の痛みや傷を他者に強制的に「押し付ける」ことができる。いわゆる『痛いの痛いの飛んで行け』である。

  《脳内侵蝕(サイコ・クラッキング)
 記憶を統べる能力。自分・他人問わず記憶を操作できる能力。使いすぎると廃人になる可能性アリ。

  《神曲》
 歌唱催眠能力。"歌"及び"声"に文字通り魂をのせるもの。歌を聞いた全員を操れることから有効範囲は広く、また、動画配信でも有効。こちらは《テンプテーション》と違い男女は問わないが、《テンプテーション》よりも効き目は薄い。

  《ラブ&ピース》
 物質分解&再構成能力。対象を原子レベルまで分解したのち、自身が思う通りに復元しなおすことができる。ただし原子量保存の法則により原子を増やしたり別の材質に変えることはできない。


 ……なんて。詰め込みすぎなので倉庫行き。クロスオーバーが嫌いな理由は作品を両方知らないと無意味だから。

 ちなみに能力解説はオリジナル。過剰の脚色は創作だから。


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IN  HUNTER×HUNTER

HUNTER×HUNTER終わったぁぁぁぁ! これからが(個人的に)楽しいのに。ジンがハチャメチャする展開が面白いのに。クスン。

 ――というわけで、そんなかれらのご先祖様のお話()DEATH★ オリキャラしかいない。オリキャラしかいない。(大事(ry)


 ある~日 (ある~日)

 

 町の~中 (町の~中)

 

 銀こ~うが (銀こ~うが)

 

 襲わ~れた (襲わ~れた)

 

 黒いふ~く~め~んの~、男にお~そ~わ~れ~た~♪ 『森のくまさん アレンジ byアガミネ』

 

 

 

 ――って感じ?』

 

「ふざけてんの?」

『酷いよ! 僕様は心の底から真面目に説明してあげてるのに(棒)(かっこぼう)!』

「自分で(棒)(かっこぼう)とか言ってる時点で百パーセント不真面目だろうが」

『てへぺろ』

「タヒね」

 

 およよ……と泣き真似をする超が付くぐらいのイケメン。まあウザいくらいに性格はウザいんだけど。それがすべてを台無しにしていてウザさが倍増ししている……要は、「コイツはウザい」ってことだな、よくわかった。

 

『……はい、茶番はこれくらいにして』

「茶番だったんだ」

『これくらいにして、本題に入るよ。君は死んだ、僕様は神、君には転生のチャンスが与えられた――オーケー?』

「OK」

 

 英語専攻の私に喧嘩を売っているのかと言いたくなる発音だったのでちゃんと発音してあげた。無視された。ムカツク。

 

『君が行けるのは――ふむ、この三か所ってとこかな』

 

 見せられたのは三冊のマンガ、それぞれのタイトルは【ハヤテのごとく!】、【HUNTER×HUNTER】、【はじめの一歩】……なんだこの関連性のない三冊は。

 

『関連性ならあるよ……ズバリ! 「は」から始まる三冊だ!』

 

 ドーン! と二次元なら波が見えるレベルで、ポーズで言い切ったアガミネ……うん、スルーしよう。

 

 でもこの三冊か……基本私ジャンプ派だったんだよね。そしてこの三冊の中で私が細部まで情報を知っているのは――

 

「【HUNTER×HUNTER】で」

『了解! いってらっしゃーい!』

 

 ――そうして私は転生したんだ、けど。

 

 神様、これはちょっと問題じゃありませんか?

 

 

 

 

 

 

「……男になるなんて聞いてない」

「師匠? どうかしたのか?」

「何でもないよ。修行終わったか?」

「おう!」

 

 爽やかに笑って答えてくれたのはドン=フリークス、と言っても孤児であり、捨てられて雨の中蹲っていたのを私――いや、もう俺か――が拾って名づけて育てているのだ。なんでこんな名前にしたかって? ……聞くな。酒が入ってたんだよ。

 

「……んじゃあ今日は水見式をやるかな」

「マジで!? ヨッシャー! あ、皆も呼んでくる!」

「急がんでもいいぞー」

「わかってるー!」

 

 本当に分かってんのかねえ……。大急ぎで走って行ったドンの背中を見ながら、ぼうっ、と考える。

 

 なぜこの世界に転生したのか――それは俺がこの世界を選んだからだ。うん、それはいい。

 

 なぜ男として転生したのか――それ本当に不思議なんだけど。何で?

 

 なぜこの時代、「ハンター」という概念が生まれる前に転生したのか――これも何で? さっぱりわからないんだけど。ショタっ子たちを可愛がったり暗殺一家や旅団と関わってガクブルするはずだったのにさ。まったく予定が狂ってしまった。

 

 そう、この時代――原作が始まるまだ数百年前らしい。

 

 

 意味ないじゃん!

 

 

 普通転生するのは原作に関わりたいから転生するのであって関わらなかったら何の意味もないからね!? ねえ、何あの神、バイト? 上位神? え、上位神なんだ、驚きの新事実。

 

 まだ小さい頃の旅団員育てたり暗殺一家に囲まれたり主人公勢と一緒にハンター試験受けて仲良くなったりするはずだったのにそれが何よこの状況。予定が狂うにもほどがあるわ。

 

 ……まあ、あいつらも可愛いからいいんだけどね。

 

 

「――よし、今までお前らは数々の試験をこなしてきた」

 「ほとんど師匠が無理やりやらせたんだけどね」

「……こなしてきた! そして先日、念の概念を教え、精孔も開いた」

 「無理やり開かれたんだっけ」

 「そうそう、本当にあの時は死ぬかと思った」

 「実際死にかけたし?」

「……開いた! そして、今日、ついに! 水見式をやる!」

 「わー」

 「すげー」

 「やったー」

 

 ……クスン。皆にボロクソに言われ、期待した反応も得られず。俺は悲しいよ。まったく、誰がこんな風に育てたんだ。

 

 「「「師匠」」」

 

 ……なんて聞こえない。聞こえないったら聞こえない。

 

 

 

 

 グラスに水入れて葉っぱをのせて、と。よし、準備完了!

 

「んじゃあ誰からやるかだが……」

『はい!』

 

 全員が一斉に手を上げた件について。え、何お前ら。そんなにしたかったの? ……んじゃあもう誰でもいいや。あみだくじでも作ろう。

 

 

 ――んで決まった順番通り、さあ、どうぞ! カルル=ルシルフルくん!

 

「……oh」

「すっげー! 葉っぱが枯れたぞ!」

「師匠、これは?」

 

 初っ端から「特質系」の反応ってこれどうよ? まあ確かに? クロロ=ルシルフルは特質系だったしカリスマ性もあったけど、さ。それって血筋ってこと?

 

「特質系……」

「それって確か珍しいんじゃなかったっけ?」

「カルルすげー!」

 

 難しそうに顎に手をやり「ふむ……」と考え込んでいるカルル君。まあ特質系は「発」を考えるのが大変だよね。何にでもなりそうだけど手あたり次第に手を出しても意味がないし、「制約」と「誓約」が大変になるだろうしサ。

 

「よし、んじゃあどんどん行ってみようか!」

 

 ……まあ、予想はついてるんだけども。

 

 

 

  結果。

 

 ドン=フリークス→強化系

 

 ハルバ=ゾルディック→変化系(水がお茶の味になる)

 

 カルル=ルシルフル→特質系(葉が枯れる)

 

 エーゲル=マッカーナーシ→操作系

 

 スタン=アイザック→強化系よりの特質系(水の量が無限に増え続ける)

 

 キャンディ=クルーガー→変化系(水が辛くなる)

 

 ロマーリオ=パラディナイト→強化系よりの放出系(水が真っ白になる)

 

 

 

 ――ってね。誰が誰の先祖か分かったらそれなりに原作を読んでるってことかな? まあ俺の場合は一向に原作知識が抜けないけども。これも何で? 謎の一つ。

 そして七人中特質系が二人、そして具現化系がゼロときた。まあいいけどね、どうでも。

 

 ……にしても子旅団育てるとかよく展開にあるけどさ――難しいね! 前世でも(貫いてたわけじゃないけど)独身だったし、でも子どもには憧れはあった、しかし結婚はどちらかと言えばしたくない。人生って難しいね。その夢が叶っただけでも余は満足じゃ!

 

 

「――んじゃあこれからはそれぞれの系統を理解したうえで『発』を考えながらトレーニングしろよー」

『はい!』

 

 おー、いい返事。さーて、と。俺はもう一つのことやるかな。

 

 

   ★   ★   ★

 

『本日正午、「ハンター協会」が設立されるとともに、アイン=ウェーオン氏が会長に就任しました。アイン会長はハンター十か条を定め――』

 

 1712年4月1日正午。全世界のテレビ・ラジオが一斉に緊急速報を発信した。珍獣や幻獣の捕獲・売買や、古代遺跡の崩壊などかねてより疑問視されていた事柄の保護・解決を目的とし、世界的にも有名な出資者たちが資金援助することで解決できる有効な手段であった「ハンター」資格の授与を発表した。協会が一年に一度行うハンター試験をクリアしたものがその資格――ライセンスを受け取ることができ、その権利をもってして莫大な富や名声が約束される。また、そのライセンスを利用することで専用情報サイトの利用が可能になったり、各種公共交通機関の無料利用、一般人立ち入り禁止区域の立ち入り許可などの信用も得ることができる。

 一方で。試験に挑戦して死亡した者はたとえい何時如何なる場合であったとしても事故として処理され、ライセンスの盗難・紛失にハンター協会は一切の関与をせず、再受験はおろか再発行もされないという手厳しいものでもある。

 

 ライセンスだけでも売れば一生遊んで暮らせるだけの金を得ることができたり、殺人などの犯罪が不問になるなど持っていてメリットは多い、しかしその影響は計り知れないというハイリスク・ハイリターンが期待される。

 

 

 

 視聴者の多くがこの発表を眉唾物だと考え、一か月後に行われた記念すべき第1期ハンター試験の受験者は34人という少なさであり、そのほとんどが興味本位による受験者たちだった。「売れば金が手に入る」「犯罪が不問に」という邪なものが多い――そんな中、前に立った試験官は全員を見回して大声を上げた。

 

「これより! 第1期ハンター試験を行う!」

 

 その言葉で瞬時に目の色を変えた数人の少年たちを試験官は見逃さなかった。

 

「第1試験は――ペーパーテストだ!」

 

 続けられた言葉に落胆の声も大きい。中には試験官に野次を飛ばす者もいる。

 

「問題は全部で百問。一般的な常識を問うものばかりだ。制限時間は120分、できたものから前に提出して速やかに退出すること。筆記用具は支給されるものを用い、試験中の退出は禁止だ。その他の禁止事項は黒板を見ろ。――以上。では問題を配る」

 

 そう言って試験官たちが問題と解答用紙を配り始める。配られつつ受験者たちは黒板の文字を丁寧に読んでいく。

 

 

   ***

 

  ・筆記用具は与えられたものを用いること

  ・試験時間中、一切の退出を禁じる。やむを得ず退出したい場合は静かに手を上げ、試験官の指示を仰ぐこと

  ・試験官の開始の合図より試験を開始とし、終了の合図で終了とする

  ・解答用紙の番号記入欄には自分の受験番号を記入し、名前欄には自分の名前を記入すること

  ・試験時間中如何なる理由があっても私語は厳禁とする。やむを得ない場合は静かに手を上げ、試験官と筆談により会話すること

  ・他の試験管の迷惑になると試験官が判断した場合、試験時間中であっても強制退出とする

  ・問題用紙は持ち帰ってもよいものとする

 

   ***

 

 受験者たちは戸惑いと不安の声が上がるが、試験官は無視して配布していき、全員に渡ったことを確認すると開始の合図をした。

 

「――それでは、開始!」

 

 

 

   ★   ★   ★

 

 

 

「――おっ、始まったね~」

 

 会場に仕掛け――ゴフン、ゴフン。設置してある監視カメラから試験会場を覗き――ゲフン、ゲフン。拝見する。今回集まったのは34人か。原作だと400人以上だったからこれはかなり少ないよね。まあ第1期だし無理もないかなとは思う。怪しさMAXだし。

 

 試験の受験年齢は特に設定しなかった。ハンターの数が増えれば増えるほど絶滅危惧種や遺跡が保護されるってことだろうし。でも危険は高いってことを明示したからそれなりに屈強そうな人ばかり集まった。そんな中明らかに浮いた三人の少年少女たち――言わずもがなの弟子たちだ。

 

「気づくのかな~? 気づくよね~?」

 

 できれば三人中一人は受かってほしいな~、なんて。まっ、師匠だからって採点を甘くしたりはしないけど。

 

 

 

   ★   ★   ★

 

 

 

 生まれてすぐに親に捨てられ、山の中でサバイバル生活をしたのが六年ちょい、そこで師匠にあった。

 

『おろ。なんか小汚いガキがいる』

 

 その言葉にキレた俺が飛びかかって逆に叩きのめされた瀕死の重傷を負ってなんやかんやで弟子になって育てられて弟子も増えて修行が激しくなって念を覚えて。ある日師匠に言われた。

 

『……ん。よしっ! ドン、お前、ハンター試験受けろ』

『……へっ』

 

 よくわからないままスタンとカルルとともに地図と金渡されて住まいを放り出されて。何とか目的地に着いた、と思ったら。

 

「(なんだよペーパーテストって!)」

 

 自慢じゃないがオレは学がない方だ。仲間内でも下から数えた方が早い。師匠に教わりはしたもののオレは「考えるな! 体の動くままに動け!」がモットーだ。常識なんて一応習いはしたが……ああ、くっそー! かろうじて選択問題だったのが救いだな。こういう時勘ってモンが当てになる。ふとカルルを見ると何の迷いもなくペンが動いている……くそ! オレもあんな頭が欲しかった!

 

 体の動くままにマークシートを埋めていき、ようやっと最後の問題だ……というところでふと見ると。

 

 

  問100 数字を塗りつぶせ

 

 

 としか書かれていない。問題ミスか? どうせなら全部塗りつぶしちまうか。

 

 ……そこで師匠の言葉を思い出した。

 

 

『違和感があったらまず《凝》をしろ』

 

 

 ……まさか試験問題に、とは思いつつも凝をして視てみると。

 

  《なお、一つだけ、もしくはすべて塗りつぶした場合は失格とする》

 

 ~~~~っぶねえ! 危な! 失格になるところだったじゃんオレ! さっすが師匠! 人の嫌がることさせたら右に出る者はいねえな!

 

 ……にしても、《念》を知らない一般人だったらこの試験皆落ちてんじゃねえの?

 

 

 

 そして時間になる前に提出、退出した。いくら考えてもわからねえモンは分からねえし。だったら俺は直感を信じる。うだうだ考えんのは性に合わねえ。

 

 外に出るとすぐにカルルが近づいてきた。すげえな、お前。もう終わったのか。手を上げてきたのでこちらも右手を上げてこたえる。

 

「ドン」

「おっす、カルル。どうだった?」

「まあ一般教養ばかりだったな。満点は軽い」

「さっすがー」

「お前は……すまん。忘れてくれ」

「おいそれどういう意味だ」

 

 悪い悪い、と軽く笑うが全く反省の余地はないカルル。まあ事実だけどよ。

 

 

 簡単な雑談をしているとすぐにスタンも出てきた。そこから昼食になると、試験問題の最後――問100の話になった。

 

「まさか《凝》を使う試験とはなあ~」

「ああ。あの問題絶対師匠が作ったんだろうぜ」

「うむ、儂もそう思うぞい。じゃが、《念》を知らぬ者も多かろう、そ奴らには単純に運の問題だったんじゃろうな」 

「いくつ塗りつぶすかってことか。まあ大抵の奴は一つや二つだろうけど」

「そして一つだけの奴はその場で切り捨てる……まあハンターになるには運要素も濃く必要となるってことだろうな」

 

 さすが師匠。やることがえげつない。

 

 

 その後、第2試験は単純な面接、第3試験のトーナメント戦で決着した。結局受験者34人中合格者は3人――オレたちだけだった。やっぱり難しすぎるんじゃねえの?

 

 んで説明して終了……正直簡単すぎた。そう師匠に言うと。

 

「やっぱりか……本当ならもっと死人が出るようにしたかったんだが、さすがに十二支んに止められてな。『第1期からそんなに難しかったら以降誰も受験しません!』と言われてしまってな。……徐々に死亡率を上げていくべきだな、うん。だとするとやはり……」

 

 一人考えモードに入ってしまった師匠……スマン、ハルバたち。お前らが受験するときはもっと難しくなりそうだ。

 

 

 そうしてハンター試験を合格したオレ、カルル、スタンの三人は目出度く免許皆伝、師匠からの自立を許された……ようやく! あの! 地獄の日々から! 解放されたぞ!

 

 それからオレはハンターの経験を積み、見事三ツ星ハンターになると同時に暗黒大陸に行くことを決めた。どうしても知りたいことがあったから。

 

 

 ――そして数十年後。師匠が死んだことを知った。

 

 

   ★   ★   ★

 

「オギャー!」

「ああ、私の子……!」

「おめでとうございます。かわいらしい男の子ですよ」

 

 

 (ま た か よ)

 

 




 私は登場キャラ的に親父キャラが好きだということが統計的に判明している。例に盛れずジン=フリークスやシルバ=ゾルディックが大好きです。



 ・アイン=ウェーオン
 いまだになぜ「は」の付く世界しか選択肢がなかったのか疑問に思っているがもうあきらめの境地に至っている転性系男子。若干ショタやオジサマ好きが入ったオタク。念の総量的には化け物並みに多く、実質世界最強。しかし本人はそのことに気づいておらず、「なんか老化遅いな~」程度にしか考えていない。本編の時点ですでに軽く二百歳は越えていたり。
 他人の才能が一目でわかってしまう。なんかはっちゃけたらハンター協会設立したりしちゃったスゴイ御人。
 原作開始前にはすでに死亡済み。しかし――
 ちなみに特質系(グラスが水晶化)。
 名前の由来は「あいうえお+ん」(何となく設立者っぽいし)



 ・ドン=フリークス
 天真爛漫系男子。強化系。頭の出来はそこまでよくはない、が体力的には強い子。誰よりも仲間思いだがその実自己犠牲的な面も。強運の持ち主。
 ちなみにこの子だけ原作にも登場している。(名前だけ)
 しかもまだ生きてる、カモ? いわずと知れた主人公のご先祖様。

 ・ハルバ=ゾルディック
 微S猫目系男子。変化系(水がお茶の味になる)。頭と体のバランスがいい子。悲しいことに人殺しの才能に長けていたのでそこを重点的に伸ばした――結果、史上最悪の暗殺者が生まれてしまった、師匠的にも忘れたい黒歴史の産物。数年後、師匠からククルーマウンテンを遺産として譲り受け、定住することに。
 こちらも誰が子孫かは一目瞭然ですな。

 ・カルル=ルシルフル
 無表情系青年。特質系(葉が枯れる)。頭がずば抜けていい子。こちらも悲しいことに犯罪の才能が。師匠とは本好きで話が合う。ちなみにペーパーテストで満点だったのはこの子だけ。
 こちらも(ry

 ・エーゲル=マッカーナーシ
 世話焼き系青年。操作系。重度のヘビースモーカー。特筆すべき点は何もないが、浅く広く才能が伸びた。そのせいで基本何もやってもできるように。仲間内では苦労人役。
 彼が誰の祖先かわかる人は比較的読み込んでいる部類に入るだろう。(まあ、調べればすぐにわかる人物だが)

 ・スタン=アイザック
 愉快犯系青年。強化系よりの特質系(水の量が無限に増え続ける)。まだ若いのに古風な話し方をするちょっと変わった子。周りより常に一歩引いて行動しているので一番みんなから頼られる。何気に知識は豊富です。しかしたまに突拍子もないことをしでかすのはいつもコイツ。そのせいでハンター試験合格してすぐに会長に仕立てられた。そのことを彼は一生根に持っている。
 まあ誰の(ry

 ・キャンディ=クルーガー
 美容系女子。変化系(水が辛くなる)。誰よりも美容に気を使っているのにいつも仲間内からそのことをからかわれるちょっとかわいそうな子。スタンと一番気が合うせいか若干この子も鬼畜系に。
 彼女の(ry

 ・ロマーリオ=パラディナイト
 気苦労系青年。強化系よりの放出系(水が真っ白になる)。いつも周りに振り回されて後始末をするのはいつもコイツ。でもみんなのことはちゃんと大切に思っており、結局のところで嫌うことができない――というのを皆分かっているから余計に振り回されるという無限ループ。仲間内でのあだ名は「お母さん」。
 彼はまあ問題ないだろう。ちなみに名前の由来は「復活」から。あのナイスミドルが色々な意味で好きなキャラ。


 別に全員が孤児だったとか捨てられたとかそういうのはないです。旅に出てるのを拾って育てたりってのもあると思う。
 ――何このオリキャラ率。もうこれ二次創作でも何でもねーじゃん。俺(以外の誰も)得(しない)小説。


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IN 月刊少女野崎くん

 続編希望をもらっておよそ半年……長かったけど続きが書けた。
 ほとんどネタからの昇格なので、被っているところがほとんどです。細部を変更して加筆・修正を行いました。これだけでも十分楽しめると思います。
 また、今回の原作が「週刊少年誌」ではないため、タイトルと原作名も一新しました。御了承ください。

 ……何時から予約投稿は分単位までになったのかにゃ? (・ω・`)


『おめでとう! 君に転生のチャンスが与えられたよ!』

「……は?」

 

 思わず目の前の全身真っ白なチャラ男を冷たい目で睨んでしまった自分は何も間違っていないだろう。……ん? ちょっと待てよ。嫌な予感がする。

 

「……私どうなったの?」

『死んだ』

 

 ……最後の記憶が銀行強盗が銃を乱射したものだったからそんな感じはしていたんだが……くそう。ようやく明日からアニメ化されるのに、【月刊少女野崎くん】。椿いずみさん、私大ファンなのに。

 

『だったらその世界にしとく? 一応あるよ、そこ』

「原作終わってないのに……」

 

 いや行けるなら行きたいよ? でもさ、原作が終了してないマンガの世界って怖くない? 突如現れたラスボスとか……ああ、忘れてた。あそこは間違えようのない現代学園ラブコメマンガだったな。怖いのは原作で結ばれる人たちが結ばれないことだ。主に野崎君と佐倉ちゃんとか鹿島君と堀ちゃんとか若松君と瀬尾ちゃんとか!

 

『だったらそう行動すればいいんじゃない? 下手に刺激しない限りは原作通りのイベントが起きて原作通りに進むようになってるから』

「……わかりました」

 

 すごく、すごく不安だけど興味はある。だから了承したのだが……

 

 

 

 

 

 ……転生して十幾年。現在二度目の高校生をやっている道阪(みちさか) 雄三(ゆうぞう)です。転生したのは一向に構わない――むしろありがたいのだが、正直「世界を選び間違えた」感が否めない。だってすごく平和なんだよ? 平和一番! とかって思うけどさ、ぶっちゃけると暇。すごく暇。ジャンルが学園ラブコメだから仕方ないっちゃあ仕方ないんだけども、平和すぎて死ぬ。前世とほとんど変わらないんだもん。人生やり直してる意味がない気がする。作者の別作品の【俺様ティーチャー】の方がまだ刺激があった気がするね、あっちは少女マンガだけど。世界軸は(多分)違うから不良な暴力的強さなんてこれっぽっちもいらないよね。

 ……そう言えば、この世界で不良キャラって全くいなかった気がする。無骨系超鈍感男子とか乙ゲーヒロイン系性別詐欺男子とか親バカ系低身長バイオレンス男子とか爽やか真面目系純真男子とかならいたけども。さらに付け加えるとナルシスト目うっとうしい科勘違い属青年と無愛想目クール科敏腕属青年、省エネ目高視聴率属剛胆属男子もいるけども…………あれ? キャラ濃くね? まあマンガの世界だし、それはしょうがないのか。

 

「おい、道阪。今日はどうする? 野崎ん家行くか?」

「ああ、今日は仕事ないし」

「(仕事?) そっか。俺も行くから……来るか?」

「ああ」

 

 堀ちゃん先輩――学年もクラスも同じだけどこの愛称が気に入っているので心の中ではそう呼んでいる――と話しながら教室を出る。向かうは――演劇部の活動場所だ。

 

 

 

『おお、なんと美しい人だろうか。彼女の前ではどんな花も霞んでしまう』

 

 ……アニメ声優美形声で言われているし実際言ってるやつも文句なしの美形なのにどうして台詞がこうも陳腐なのだろうか……ああ、役者の顔的に。まあ実際アイツは顔面はイケメンでも生物学上は歴とした女だけども。でも、イケメンなんだよなあ……。ん? もしかしたらアイツと付き合う奴って、外見BL内面NLか、外見NL内面GLを選ぶことになるんじゃねえ? うっわ、堀ちゃん、ご愁傷様かっこわらい。

 

「鹿島ぁ! てめぇ!」

「はい、堀先輩!」

 

 キラキラエフェクトが目に痛い。ここ現実だよな? なんでエフェクトが見えるんだろう……はい、幻覚ですね。分かってるよ、でもさ、薔薇とかラメトーンが似合う奴なんて他にいなくない? ……あ、間違えた。薔薇トーンは別の奴の特権だった。主にヒロイン役の彼に。

 

 野崎の家に行くのは部活動が終わった後。堀ちゃんは演劇部の部長兼大道具担当なのに対し俺は帰宅部なので、彼の仕事が終わるまで手伝いに来ているのだ。

 

 堀ちゃんは王子の所為で走り回っているし小道具類は壊されるしでもっぱら俺は手伝い要員である。まあリハとかで逸早く演技が見られるし、台本とかにもある程度は意見できたりするから結構この役職は気に入ってたりするんだけども。何よりも、鹿島に振り回されている堀ちゃんを見るのが楽しいし。プークスクス。

 

 

 

 

「堀先輩、これもお願いします。今回はこれで終わりなんで」

「おっ、分かった」

「野崎ー。こここんな感じでいいか?」

「えーと……はい、大丈夫です」

「野崎くん、ベタ終わったよ」

「ありがとう、佐倉」

 

 部活後、千代ちゃんも交えて野崎の家に来た俺たちは、習慣になった漫画の手伝いをしている。なんか前世より作図がうまくなったし、墨汁の扱いを格段に増えているのがいまいち解せない。そして、それが楽しいと思っている自分にも納得がいかない。いや楽しいのだけども。

 

「そういえば、道阪先輩って、どういう経緯で野崎くんと知り合ったんですか?」

 

 野崎がコーヒーを入れて戻ってきて一息ついた佐倉ちゃんが尋ねてきた。いや、どういう経緯かって言っても……

 

「野崎の書いてるマンガは知ってるだろ?」

「え? ……【恋しよっ❤】ですよね」

「そう。読んだことあるから知ってるだろうけど、ドラマCD化されたのって覚えてる?」

「あ、そういえば……」

 

 空中を見ながら思い出そうとしている佐倉ちゃんと、話が気になったのか手を止めてこちらの話に聞き入っている堀ちゃん、そして棚を漁って件のCDを探している野崎。

 

「そのCDで、鈴木の幼なじみの龍之介役を務めたのが俺」

「へー……、ええぇぇぇぇ!?」

 

 わーお、いいリアクションだ。堀ちゃんも驚いたのか凝視してくる。野崎がCDを見つけたようで、それを見せながら説明している。

 

「ほら、これだ」

「えーと、……《龍之介役 坂道雄三》……?」

「ああ、苗字をもじってあるんだ」

 

 ああ、そういえば……といったように思い出している野崎。一方で驚きから回復したのか、堀ちゃんは俺に詰め寄ってきた。

 

「おい、俺知らねえぞ!?」

「前言わなかった? 『声は商売道具だから』って」

 

 あれは確か、ナレーション頼まれた時だったっけ。別に読んでもよかったけど、あの時は翌日にオーディション控えてたから断ったんだっけか。

 

「あれはそういう意味だったのかよ……くそっ、だったら読んでもらうんだった……」

「無理に決まってんだろうが。俺の喉には保険がかかってんだぞ」

 

 誰がするか、んな面倒臭いこと。

 

 即答したことに何でだよ! と不満全開の堀ちゃんだが、一方で野崎は何やら考え込んでいる。

 

「……この名前、他にも見たことがある気が……」

「そうなのか? 俺基本アニメやゲームでしか声使ってないけど。野崎ってアニメとか見るっけ? ゲームはしてそうにないし」

「そういえば野崎くん家、ほとんど何もないよね~……」

 

 野崎の無趣味さ全開の回があったくらいだからな。基本休日はマンガの資料と資材集めで潰れるような奴なんだ、こいつは。

 

「あっ!」

「どうかした? 野崎くん」

「いや、何でもない。そうか、ゲームで見たんだ…………友田」

 

 笑顔が固まりました。ボソッと呟かれた言葉に覚えがありすぎて。

 

 

 基本俺は主役(ヒーロー)はやらない、俺自身が脇役(モブ)だって自覚しているから。でもだからこそ、脇役の中でもそれなりの地位を演じたいと思っている。だから基本的に俺がやるのは、主人公の友人役や幼なじみ役なのだ。そしてとあるギャルゲーで、友人役の中でも莫大な人気を博した奴がいる。友田だ。

 薄い本でも取り上げられて、友田総受けや総攻めアンソロジーなどが出版された。俺は音域が広いせいかなぜかエロボもできる。他作品だとモロにBL作品があって、未だ高校生中の俺に回してくるなよという仕事が山のようにある。いくら見た目や声が異常だからって18禁作品はアカンでしょうに。

 

「友田って?」

「あっ、いや、ゲームのキャラだ。学園物のな」

 

 あっはっは、と誤魔化している野崎にへえーと納得している佐倉ちゃん。だが、内容には触れないあたりさすがだと思う。ギャルゲーはねえ……

 

「あれ? これ、俺もどこかで見たことあるような気がする」

「堀先輩もですか?」

「ああ」

 

 どこで見たんだっけか……と思い出しかけている堀ちゃんを尻目に、俺は佐倉ちゃんに向かってあるセリフ(・・・)を言う。

 

「……ところで佐倉ちゃんは、好きな子とかいないの?」

「でえっ!? べ、別に私は……」

「何? いるじゃん。『ほらほら、センパイに話してごらん』」

「「っ!?」」

 

 ヤベエ。二人の心の声がリアルで聞こえる。絶対「アイツか!」って言ってる。

 

 

 ほとんど少女漫画じみているこの世界だから、そこかしこにイベントが発生する。そしてなぜか現れたのが「男子三人による乙女ゲームフラグ」。そう、さっきの台詞はあの(・・)一部のマニアに絶大な人気を博した乙女ゲーム、≪シークレットDays♡≫の攻略キャラ、日下剛瑠のものである。

 

 陸上部キャプテンという半ニートに近い俺とは正反対のキャラクターだが、見事に演じ切って見せた。仄かなヤンデレ臭漂うお兄さんキャラだったので、ヤンデレを研究するためにバッドエンド監禁系の作品網羅しまくったんだっけか……。そのおかげなのかは知らないが、ヤンデレを見せている時に監督が「もうそれ以上見せるな!」と慌てて止めてきたのは今でも謎である。あれ、なんだったのだろうか?

 

 それより何で俺に回ってくるのはほとんど恋愛ゲームかBLアニメしかないのだろう。たまには舞台の仕事が欲しい。青春スポ根マンガの主人公、のもうひとりの人格とかどうよ? もしくは魔女っ娘主人公の変身用アイテムを持ってくる妖精キャラとか演じたい。『僕と契約して、魔法少女になってよ!』みたいな。できれば俺様か腹黒キャラキボンヌ。爽やか系は俺からは程遠いです。

 

 

 結局その日は仕事が終わらず、佐倉ちゃんは帰って俺たちは止まることになった。野崎のメシ美味えんだよなあ……

 

「あー……、道阪」

「どした?」

「いや、あの……」

 

 何さ、そんなに言い悩むようなことを俺に言おうとしてんの? 怖いよ。

 

「お前、声優してんだよな?」

「そうだけど」

 

 その話蒸し返すの? やめようぜ。

 

「だったらさ――これから練習、付き合ってくれないか?」

「急にどうした」

「いや、だってさ。プロのお前が台詞を指導してくれたら、鹿島の演技がさらによくなって――!」

「お前にはそれしかないのか」

 

 本当大概だな、君は。お前の頭の中には鹿島が成功している場面(シーン)しかないのか。

 でもコイツ、鹿島の「顔」が好きらしいけど「脚」はどうなんだ? 足フェチだったろ?

 

「バッカ、何言ってんだよ! 鹿島はスタイルも良くて背も高くて声も綺麗で足も長くて! それで何より顔がいいんだろ!?」

「……つまり、鹿島は役者として完璧で。まさに演劇部のヒーローってわけ?」

「そうだ! 顔だけのどこぞのアホな芸能人とは違うんだよ!」

「……(本当、親バカだなあ……)」

 

 ――まあ、コイツのこんなところが好きでいつも一緒に居る俺も俺だな。

 

 何気に毎日しか無くて退屈な世界だけど、ある意味平凡が一番なのかもしれない……転生チートキャラが平凡とは言い難いけども!

 

 

 

 ――数日後

 

「あれ? 野崎くん、これ、新キャラ?」

「ああ。思い返せば、何気ない日常の一コマをやっていなかったと思ってな。今日はマミコ一人でお出かけだ」

「隣の家のお兄さん、かな。カッコいいね~」

「実はトップモデルという設定だ。マミコは鈴木君一筋だから、他の男には目も向けないが……」

「それで友達からファッション誌見せられて驚いてるんだ……ああ、身近な人物が実は意外とすごかった、っていうアレ?」

「そうだ。誰が相手かはまだ未定だが」

「ふーん……(あれ? このモデルってもしかして……ま、まさかね)。そう言えば、ちょっと尾瀬くんに似てるね」

「そうか? ……よし、従兄弟設定も追加しよう」

「(それでいいのか、プロ少女漫画家!)」

「(後付設定は大抵のマンガであり得ることだしな)」

 

 




 ナルシスト目うっとうしい科勘違い族にピンときた方はお友達です(ウェルカム)! 今年一番の大発見作だと思う。


以下、人物設定。

 ・道阪(みちさか) 雄三(ゆうぞう)
 転生しちゃった系元女子現男子。ガンガンオ〇ラインで毎回チェックしていたので原作五巻直前までの原作知識はある。でもアニメ知識もファンブック知識もなし。だって直前で死んじゃったし。「椿いずみ」さんの大ファンで、【俺様ティーチャー】も愛読していた。どうせ転生するなら日常バトルがありふれている方が良かったかな~……と思っている。

 声のお仕事、いわゆる声優をしている。その時に使う名前は坂道雄三。その道ではベテランで、かなりの確率で大役を任される凄い人。ただし必ずと言っていいほど主人公格は任されない。絶対サブキャラ。親友キャラや友人ポジションが多い。可声域が限りなく広く、オペラ歌手並みに重く軽い。

 帰宅部だがよく他の部活に入り浸って荒して颯爽と帰っていくあらゆる意味で有名人。見た目も性格も男前なので男女ともによくモテる。でも内面と外面に主人公自体納得していないため絶対に付き合うことはなかったり。だから永遠にぼっち。べ、別に寂しくなんかないんだからねっ! ←


 Profile

 学年クラス…高3/C組
 誕生日…………5月8日(声の日)
 血液型…………B型
 身長………………196cm
 部活………………帰宅部
 趣味………………芸術鑑賞・恋愛ゲーム
 得意なこと…声真似・音当て(絶対音感)
 苦手なこと…リアル恋愛ゲーム(転性したため)
 服の趣味………暗い色を好む。他人からもらうことも。基本的に長袖・長ズボン(日焼け防止)
 家族構成………父・母・弟妹(双子・中学生)
 好みのタイプ…声の美しい子
 好きな食べ物…野菜スムージー・甘いもの
 苦手な食べ物…カレーなどの刺激物(職業柄)
 得意科目………国語(全般)・英語
 苦手科目………物理・化学(それでも二度目なので点数的には高い)
 選択教科………美術
 野崎のアシ担当…基本オールマイティ。特にキャラの台詞の言葉遣いなどの校正
 休日の過ごし方…書店めぐり

 オマケ

 頭脳……B
 運動神経……B(日本武道、並びにルール無用の喧嘩ならA。平均的にはB)
 健康……B
 ルックス……B
 メンタルの強さ……A
 フィジカルの強さ……A
 忍耐力……A

 基本精神面が強い子をイメージ。若干病んでる熊っぽい人をイメージするといいと思う。性格は野崎よりは堀ちゃんに近い、かな。野崎より身長高いとか……。作者の一番好きなキャラは分かるかもしれませんが堀先輩。足フェチ系バイオレンス男子って萌えません?

 ちなみに元から彼にはヤンデレの気がある。監督や共演者はそれに気づきつつも指摘するのが怖い……なんて、裏話も。キレると手が付けられない系。

 入力しているうちに原作読み返して、叔父さんが剣さんのクラスメートとか従姉妹が都ゆかりさんの友達だったり、さらにさらに真由くんのブログあげているのが弟だったり……ての妄想して滾った。でもそこまでするとスケールデカ過ぎるのでカット。

 尾瀬くんは言わずと知れた空気読めない毒舌男子キャラ。ようやくこの間名前が出たので使ってみる。現実(漫画中)より作中漫画のキャラたちの方が進展しているように思えてならない。
 どうせなら低身長俺様×男前女子で、小堀×加嶋とかってキャラを作ればいいのに。とかって考えてしまう。野崎くんはあの二人を出す気はないのだろうか……まあ、その前に背景担当に止められるか。


 ↓できれば入れたかった会話
「ホラ、御子柴。キッチンセット」
「うお! ありがとうございます、センパイ!」
「いや、別に構わねえよ。それにしても、ようやく立派になってきたじゃねーの」
「ハイ! どうやら背景担当の人がオプション作ってくれてるみたいで。どんどん豪邸になっていきます」
「んじゃ次は外側に広げてみるか。ペットとかどうだ?」
「いいですね!」

「(先輩まで!? 何やってんの、この男ども!?)」

 by人形遊びのシーンより



 御子柴と聞いて先にワンコって単語が浮かんだ私は根っからの百太郎派(どうでもいい)。



















 別案として、佐倉ちゃんよりも背が低い俺様キャラも考えてはいた。低身長俺様攻め……アリアリッ。


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IN デュラララ!!

 できれば昨日のうちに投稿したかった……無念。

 ちょっと(私にしては)長めなので、時間があるときにどうぞ。この長編にしては珍しく三人称です。





 甘楽さんが入室されました

 

甘楽【どーもー、甘楽ちゃんでーっす!】

甘楽【……なーんて言っても、まだ誰もいませんね】

甘楽【さて、とりあえず報告をば】

甘楽【とりあえずメンテ終わりました!】

甘楽【また、それに伴い過去ログを纏めさせて頂いたのでご了承ください】

 

甘楽【そう言えば、もうすぐ四月ですけど】

甘楽【皆さんは何か予定はあるのでしょうか?】

甘楽【私は今まで以上に毎日を楽しむつもりでっす♪】

甘楽【刺激のある日常、楽しみですね!】

 

甘楽【じゃあまあ、今日はこのへんで】

甘楽【バイバイビー☆】

 

 甘楽さんが退出されました

 

 現在 チャットルームには誰もいません

 

 現在 チャットルームには誰もいません

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 現在 チャットルームには誰もいません

 

 内緒モード 未元物質【あー】

 内緒モード 未元物質【遅かった】

 内緒モード 未元物質【ま、明日からは楽しめるんだしいいかな】

 内緒モード 未元物質【お休み、いい夢を】

 

 現在 チャットルームには誰もいません

 

 現在 チャットルームには誰もいません

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

 

 

「これは……」

 

 臨也は昨日ようやくメンテナンスを終えて始動したチャットを覗いてみ、絶句した。それもそのはず、入退出ログには誰もいなかった(・・・・・・・・・・・・・・)はずなのに、自分あてに内緒モードで会話している謎の人物がいたのだ。管理人である自分のパソコンには何重にもプロテクトがかけており、ハッキングやクラッキングなどは不可能なはず。いや、そもそも、どうやって退出済みの相手に(・・・・・・・・・・・・・)内緒モードの会話を送ることができたのか(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)が疑問である。内緒モードはもとよりチャット内であるこの電脳世界で、相手がいないのに会話をする(・・・・・・・・・・・・・)ことなど不可能なはず(・・・・・・・・・・)だ。

 

「……そもそも波江さんは、こっちには不干渉だし……」

 

 急いで検査してみても、侵入された痕跡も乗っ取られた可能性もゼロ。しかし犯人であるこの「未元物質」という人物は、まず間違いなく何らかの方法を用いてチャットに侵入し、臨也のパソコンにまでアクセスした上で、入退出記録を消しただけでなく、侵入経路まで綺麗に消していった、ということになる。それも、自分が気付かないように完璧に。

 

 まるで暗黒物質(ダークマター)だ――

 

 そこまで考えて、臨也はこの犯人に興味を持った。無論、誰がどうやって情報屋である自分のパソコンにハッキングを仕掛けてきたのかは気になっている。しかし、自分が一番興味があるのはそこではない。

 

「誰が、何のために、『内緒モードだけ残した』のか……」

 

 そこまで完璧に証拠を消せるプロならば、管理人権限でしかない内緒モード閲覧も簡単に行えるだろう。だが、態々ログを残していく理由が全く説明できない。つまり未元物質とやらは故意に情報を与えてきたのだ。

 まるで「見つけてみろ」と言わんばかりに。

 

「……面白いじゃん」

 

 その挑戦、受けて立つ。

 臨也はマザーコンピューターだけでなく小型端末の電源もすべて入れた――犯人を、未元物質が誰なのかをあぶりだす為に。

 

「……さっそく楽しめそうだ」

 

 そして計算されたかのように足跡を発見できず。おまけに一カ月に一度は侵入されるという間抜けっぷりを晒している現在も、侵入者の影すら掴めないでいるなんて――この時の臨也には知る由もない。

 

 

 

 

 

「お?」

「ドタチン? どうかした?」

 

 いつも通り街中の駐車場にワゴンを止めて駄弁っていた門田京平は、ふとある方向を見て感嘆する。その小さな声が聞こえていたのかは分からないが、向こうもこちらに気づいたようで、小さく手を振ってきたので返事に会釈する。

 

「何すか?」

「誰々?」

 

 電撃文庫を読むのを止めた二人が近づいてくる人に気づき、自分との関係を尋ねてきた。しかし、自分もそう多く彼のことを知っているわけではないのだが。

 

「久しぶりだな。元気だったか?」

「はい。先生もお元気そうで」

「「「先生ぃ!?」」」

 

 そう、かつて自分が通っていた、来良学園の前姿であった来神学園時代の生活指導の先生が、今目の前にいるこの一見ヤクザで一見チャラ男、そして一見ホストな男性だ。在学時代のあだ名も「チャラ教師」や「ホスト教師」であったことから、この男性の見た目がいかに教師という聖職からかけ離れているかは理解できるだろう――

 

「ッだっ!」

「お前今、俺のことホストだのチャラ男だのって思っただろ」

「……被害妄想っすよ」

「見てりゃ分かんだよ、何年教師やってると思ってんだ」

 

 思い切り握られた拳で殴られたことにより痛む頭を押さえながら、目の前の男を睨みつける。昔からこの男はカンが良い。クラスメイトが内緒で持ってきていた煙草やグラビア雑誌を、何度抜き打ちの持ち物検査で没収されたことか。持って来た時に限って持ち物検査を唐突に行うのだから、もうこの男は本当に千里眼か何かの持ち主なのではないかと疑っている。……それか本当の化け物か。

 

「イデッ!」

 

 ぼそりと呟きのように心の中で思ったことに対してなぜ暴力で訴えるのだろうか。そして本当に心を読んでいるのではないかと考えてその発想を頭の中で振り払う。もう殴られたくはない。

 

「そちらの顔ぶれは初めてだな。垣根帝督という。見ての通り、こいつの……何つうんだ? 教え人?」

「本当に変わってませんね、先生。その適当なところ」

「変わるわけねえだろ」

 

 自己紹介にもならない本人紹介をした一方で、金髪糸目の忠犬ワンコ系男子と帽子をかぶった発酵系女子の二人が、何やら興奮で目を輝かせている。

 

「ちょっ、ドタチン!? 垣根帝督って、この人の本名!? マジで!?」

「あ、ああ……、どうかしたのか?」

「これっすよ、門田さん!」

 

 忠犬ワンコ系男子こと遊馬崎ウォーカーが興奮気味に見せてきたのは、最近自分も読み始めた人気電撃文庫シリーズ、【とある魔術の禁書目録(インデックス)】の新約、第六巻だ。それを見て納得したと同時に、ああ、面倒臭いことになったと遠い目をしたくなった。

 

「……ああ、それな」

「見た目からしてそっくりにも程があるっすよ! もうこれは本当の本当にプロのレイヤーさんなみっすね!」

「しかも聞いた!? あの声! イメージそのまま! ヤンキー染みてるけど渋いって何これ! もうヤバい! リアルに孕む! 耳が孕む!」

「「…………」」

 

 混沌(カオス)とはこのことを指すのだろうと思う。鼻息荒く両手を上げて喜んでいる二人を尻目に、唯一の常識人は恩師に声をかけた。

 

「そう言えば、先生の名前ってモロ被りですよね。規制とかかからなかったんですか?」

「俺その頃日本にいなかったんだよな。帰ってきて池袋(ブクロ)とか秋葉原(アキバ)とか歩いてて、『す、すみません! サ、サイン下さい!』ってリアルに言われた時はどこのボカロPかと錯覚したね。んで、本名書くだろ? さらに興奮するだろ? なんだよ、この負のスパイラル」

 

 安易にその状況が想像できてしまった。学生という若々しい年齢とは程遠く、むしろ中ね……ゴホンゴホン、立派な大人の色気を兼ね備えた成人ちょい過ぎの一般男性が、ライトノベルのキャラクターと同姓同名だなんてなんという拷問だろうか。しかも後出しはラノベの方。教師という職業についている目の前の男は、勤務している学校でもかなり言われたのではないだろうか。

 

「それはそれは。ご愁傷様っす」

「まあでもしょうがないんじゃない? アニメ声とかって極々稀に居たりもするけど、そう言う人たちっていざアニメ絵と重ねてみると意外とイメージ違うもんだしね。その点、垣根さんはイメージピッタリだから余計に言われるんだと思う」

「それ、前に生徒にも言われたわ」

 

 ハァ、と溜息をつく姿は絵になる。今現在自分たちと話している間にも、周りの人たちは携帯電話やスマートフォンをこちらに向けている。時々機械音もすることから、おそらく、いや、確実に写真を撮っているのだろう。

 

 それというのも、自分たちは「ダラーズ」という「無色のカラーギャング」に所属しており、所属メンバーであり顔バレをしている数名にも入る。更に言うなれば、『池袋で(良い意味でも悪い意味でも)有名な人物』に入ると自負している。臨也や静雄には負けるが。

 そんな自分たちと軽口を叩きあい、それこそ男は自分たちよりは立場が上の人間だ。そんな人間がいて、噂にならない筈もない。

 

 それに気づいたのか、目の前の男は眉をよせて言った。

 

「……俺、もう行くわ」

「はい。久しぶりに会えて良かったです」

「これからも会うと思うぜ?」

「え?」

 

 ニヤリと口の端を上げて笑った顔に、嫌な予感が過った。まるで、学生時代の抜き打ち持ち物検査みたいな、嫌な予感が。

 

「俺、池袋(こっち)に拠点うつしたからな」

 

 

   *   *   *

 

 

 首なしライダーとの感動的な対面を果たしてホクホクな二人は、ふと通りかかった書店の掲示を見て声を上げた。

 

「あ、黒玖禄(クロクロク)さん、新刊出してる!」

(買う、一択)……」

 

 黒玖禄(クロクロク)とは、数年前にデビューした作家である。ジャンルは、恋愛、SF、戦国、青春など一切問わず、全くバラバラなジャンルを混ぜ繰り合わせた作風で人気を博しており、彼の代表作に、あの(・・)人気俳優、羽島幽平が実写映画化した『吸血忍者 カーミラ才蔵シリーズ』がある。彼の作品にはほとんどの場合にファンタジーが込められており、さらに、別の作品の脇役キャラとして主人公キャラが交流していたりというクロスオーバーも人気の一つとなっている。

 ただし、人気があるにもかかわらず、新刊通知を一切出さないことでも有名だ。彼の書籍類の初版を持っている者は、英雄扱いとまで言われている。通知を出さないばかりか、黒玖禄の新刊の初版は、必ず部数を減らしてあるのだ。

 また、羽島幽平はとあるインタビューで自身と黒玖禄のことをこう語っている。

 

『彼は自分の恩師であり師匠であり友人です。彼がデビューする前から僕は彼の大ファンで、今回、彼の記念すべき映像化において僕が選ばれたことに、彼とのつながりが糸を引いているということには非を唱えません。しかし、彼のファンである方にはもちろんのこと、映像化されることに不安を覚えている方々全員を納得させられる演技をして見せます』

 

 黒玖禄とは長年の知り合いらしいが、顔出しはすべてNG、サイン会も被り物をしており、声もボイスチェンジャーで変えられることから、身長・体重などの身体的特徴以外の全ての露出を禁じられている。しかしそこがまたミステリアス、ということからさらにファンが増えるのだ。

 

 彼女たち、折原九瑠璃と折原舞流もその二人である。もっとも、彼女たちの場合は、「憧れの幽平さんが褒めている」から手にとって読み始めたにもかかわらず、見事にハマってしまったわけだが。

 

 レジに新刊である『世界の中心、針山さん』を持って行くと、何やら一枚の紙切れを渡された。

 

「ほえ?」

「……(わからない)

「そちら、本日行っております黒玖禄さんのサイン会の整理券となっております。15時から開催となっておりますので、良かったらおいで下さいませ」

 

 背後からありがとうございましたー、という定型文を耳に入れつつも、視界は手元の件に集中してしまう。

 

「サイン会だって、九瑠姉!」

(行こう)……」

「うん!」

 

 幻の初版にサイン入り。これはどれだけのプレミアなのか、ファンである彼女たちはよく知っている。せっかくの機会を逃すほど馬鹿ではない。

 

 15時までの暇つぶしを考えながら、二人は再び街に繰り出した。

 

 

 

 

 時を同じくして。

 池袋、とある路地裏。目出井組系 粟楠会の所持する事務所の一つ――の近くでは。

 

「ハルハル。やっほー」

「…………帝督、さん?」

「やっだなー。先輩の顔忘れちゃ嫌よ? ほらほら、昔みたいに言ってごらんよ、『帝督センパイ! 会いたかったです!』ってさ」

「一度も言ったことなんてありませんよ」

 

 突如訪れた男に周りは戸惑うばかりである。あの(・・)四木春也に親し気に声をかけているばかりか、軽口も叩いている。おまけに、その当人である四木は、うんざりともやれやれともいえる表情を出してはいるが、思いの外嬉しそうだ。顔には呆れの意が見えるのである。

 

「いやー、一か月くらい前から帰ってはいたんだけれどね? なかなか時間がとれなくってさあ。ようやく休みが取れたから、どうせなら後輩や教え子の顔でも見ようかなって」

 

 ニコニコという顔を前面に出して発言した男に、自分の部下たちが顔を引き攣らせるのを見た四木は、また溜息をついた。本当に、この先輩は全くといっていいほど変わっていない。

 

 

 自分が高校に入学したころ、当時の生徒会長であった目の前の男性は、孤高の一匹狼ということでも有名だった。知勇兼備、謹厳実直、質実剛健、成績優秀。まさに鶏群一鶴という言葉を体現したかのような先輩だが、なぜかしょっちゅう自分には絡んできた。

 

『んー。なんとなく、かな』

 

 そんな言葉で無理やり生徒会に入れられたのを今でも覚えている。当時、御世辞にもどう表現しても「不良」であった自分だが、先述したようにそんな生徒の模範である会長の言葉を教師が聞き入れないわけもなく。表向きは更正のために、書記職を任命させられてしまった。……実際は会長の玩具であったが。

 だが、それでも、反発はしていた。今から考えると、あの時の男は随分と自分を可愛がっていたということがよくわかる。

 入ってみてから気づいたことだが、生徒会には会長職以外の人材がいなかった。教職員達は何とかして副会長以下の役職を持たせようとしたらしいが、そこはそれ、会長の一言、

 

『役立たずはいりません。仕事の邪魔です』

 

 の一言でにべもなかったらしい。

 

 そんな中、ぽっと出の自分が役職持ちになって周りがいい感情を持つはずもなく。ある日、不満を爆発させた生徒たちに囲まれた。

 

会長(アイツ)もウゼェんだけどよ、アイツやんのって(ムズ)いんだよな」

「いっつも誰かしらが一緒に居るせいでな」

「その点、お前は嫌われモンだからよォ」

 

「ちょっとボコられてくんね?」

 

 一対多数でもそれなりにはできるが、向こうは武器×多数、こっちは素手×1人。あー、これ、無理だ、そう思ったとき。

 

「ねえ、誰のものに何する気?」

 

 そんな声が聞こえたと思ったら、後方の集団が上空にふっ飛んだ。……え?

 

「ソイツ、俺の(オモチャ)なんだよね。……カスどもが、手ェ出すんじゃねェよ」

 

 括弧の中の副音声が聞こえたのは自分だけだろう。そして呆然としている間に――意識があるのは、へたり込んでしまっている自分と会長だけになった。

 

「ほら、行くよ」

 

 そう言って手を引いて歩き出した会長。全く、危機管理が足りないんだから……とか、ボヤいている会長に、小さな声で呟いた。

 

「すげェ……」

「ん? ……ああ、当たり前だよ。いつの時代も、生徒会長は万能超人だ、って決まっているんだよ。現実にも適用されるよねえ」

「……アンタぐれェじゃないんすか」

「おや、ようやく敬語を使ったね。まあ、誰にも真似できたら超人じゃないし」

 

 あはは、と笑っているが、言っていることが無茶苦茶だと気づいているのだろうか――いや、この人は、気づいていて言っている。それぐらいは、自分にもわかる。

 ――なんて、いい気になっていたせいだろう、隣の怪物(会長)の呟きを聞きのがしたのは。

 

 「……にしても、あれだけの人数でやられるなんて……こりゃあ、少し教育が必要かなあ?」

 

 これから先、先輩が卒業するまでのおよそ十か月間、扱きに扱かれることをまだ知らなかった――

 

 

「……い。おーい。ハルハルー? ちょっとー? 無視はひどいよー」

「…………ああ、すみません。ちょっと眩暈が」

「ええ!? 大丈夫? 横になる? ちょっと休んだ方が……あ! 俺の膝枕を提供してあげよう! ほら、どうぞ!」

 

 これ見よがしにソファに陣取って自分の膝をポンポンと叩いている男に、相変わらず溜息が禁じ得ない。

 

 でも、その性格が嫌えない自分は、それなりにこの先輩に憧れているのだろう。――少なくとも、今の自分があるのはこの人のおかげなのだから。

 ――でも。

 

「膝枕はしません。……それと、いい加減、私のことを『ハルハル』と呼ぶのはやめて――」

「『ハルちゃん♡』って呼ばれたい? 女装に猫耳、セーラー服のオプションもつけてあげるけど」

「――すみませんでした」

 

 目が笑っていなかった。男は元が美形だから、基本コスプレと名の付くものは何でも似合う。しかし、すでに四十超えのオッサンが女装……だめだ、堪えられない。

 

「分かればいいんだよ。ハルハルくん」

 

 ――それでも、やっぱり、嫌うことはできないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 田中太郎さんが入室されました

 

田中太郎【ばんわー】

セットン【ばんわです】

甘楽【こんばんわです! 田中太郎さん♡】

田中太郎【すみません。ちょっと用事を思い出したので席外します】

甘楽【ああ、ちょっと! 太郎さんってば!】

甘楽【もう! そんなに私が可愛いからって、恥ずかしがることないのに!】

セットン【あ、私も少し席をはずしますね】

セットン【パソコンがウイルスに感染されているようで。変な文字が表示されるんです】

甘楽【ええ! ひどいですよ、二人とも!】

 

 狂さんが入室されました

 参さんが入室されました

 

狂【あら、皆々様。御機嫌よう】

参【……ばんわ】

狂【おや、何やら多大なバグが発生しているようですね。甘楽さん、ウイルス対策ソフトはちゃんとインストールしておいた方がいいですよ? いつも以上に言動に問題があるようなので】

参【--不適切な単語が検出されたので表示されません--】

甘楽【入室していきなり!?】

甘楽【それに、皆さん。大丈夫ですよ】

甘楽【私のパソコンには、ちゃーんと、対策を立ててあるんです!】

 

 内緒モード 甘楽【まあ、それでも侵入されているみたいだけどね】

 内緒モード 田中太郎【え? どういう意味ですか、それ!?】

 

狂【そう言えば、今日は本屋に行ってきたんですけど】

狂【黒玖禄さんの新刊が出ていて思わず即買いしてしまったんです!】

セットン【ええ!? 本当ですか!?】

田中太郎【今日だったんですか!? 近々出すらしいということはネットで流されていましたけど】

狂【はい! しかも、な、な ん と ! サイン会をやっていたんですよ!】

狂【ここを見てください! →【画像】】

 

田中太郎【うわ、本当だ】

セットン【う、羨ましい……。そして、相変わらず黒玖禄さんは覆面なんですね】

田中太郎【ですね。しかも今回はジェイ〇ンって……】

甘楽【もしかして本当に人をブッ××た後だったりして……】

セットン【やっぱり本格的にパソコン、チェックした方がいいんじゃないですか?】

セットン【あ、私、ちょっと本屋に行ってくるので落ちますね】

 

 セットンさんが退出されました

 

田中太郎【おつー】

田中太郎【あ、間に合いませんでしたね】

甘楽【太郎さん! 太郎さんなら、分かってくれますよね!?】

田中太郎【すみません。僕も本屋に行くんで落ちますね】

田中太郎【甘楽さん、一度、メンテナンスし直した方がいいんじゃないですか?】

 

 田中太郎さんが退出されました

 

甘楽【た、太郎さんまで!?】

甘楽【うう……。皆さん、冷たいですぅ】

 

 内緒モード 狂【さすがですわね、兄さん。いつも以上に狂乱舞してるなんて、やっぱり今日はどこかおかしいです】

 

参【おかしい】

 

 内緒モード 甘楽【まだマイルは内緒モードを使えないのか!】

 内緒モード 甘楽【別に、何でもないさ。お前たちに心配してもらうようなことは何もね】

 内緒モード 狂【今、波江さんから教えてもらいましたわ。最近、兄さんのパソコンに侵入してくる人がいるんですってねえ? どんな気持ちですか? いつも人をおちょくって火種を放り込んでおきながら自分はそれを傍観して楽しんでいるかなり頭がイってしまっている、お兄様?】

 

参【笑】

 

 内緒モード 甘楽【…………お前たちは、よっぽど、俺を、怒らせたいんだな?】

 

 狂さんが退出されました

 参さんが退出されました

 

甘楽【……チッ。逃げたか】

甘楽【……覚えてろよ】

 

甘楽【あれあれー? 皆さん帰っちゃったんですかぁー?】

甘楽【だったら私も落ちますね】

甘楽【お疲れ様です!】

 

 甘楽さんが退出されました

 

 

 現在 チャットルームには誰もいません

 

 現在 チャットルームには誰もいません

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 現在 チャットルームには誰もいません

 

 現在 チャットルームには誰もいません

 

未元物質【甘楽さんへ】

未元物質【『ご愁傷様DEATH』】

未元物質【 m9( ^ Д ^ ) プギャー】

 

 現在 チャットルームには誰もいません

 

 現在 チャットルームには誰もいません

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

「またか!」

 

 

 

 




 最後の台詞はイザイザさん。キーボードをブッ叩いている絵が浮かんだので。
 よく読んだ方なら解ると思うのですが、途中で時間がとんでます。

 作者が好きなキャラ→門田京平、四木春也、赤林海月、平和島兄弟、唯我独尊丸、and more。年上キャラかマスコットしか好きじゃない。なぜだ。


 主人公
 ・垣根帝督
 容姿も名前も【とある魔術の~】のアノ人。調べてみたけど、未だに声がない(、よね? だよね? 記憶にないんだけど)。未元物質(ダークマター)の超能力は使用できる。もともとこの世界は現代ファンタジーだし、あっても別にいいと思った。

 一番初めの予定では、来神時代の生徒会長だった、けれど、世代? が一個ずれた結果、こうなった。じゃあ教師でいいやってことで教師兼小説家に。ペンネームは《黒玖禄》、チャットでのHNは《未元物質》(あれ、カーミラ才蔵書いた人って出てきたっけ?)。そのままだと臨也にすぐバレそうだけど……ま、いっか! ←
 『世界の中心、針山さん』は同作者の別作品です。あれだけクロスオーバーしていないから出してみた。

 初代「怪物」。祖父のような包容力と父のような厳格さを持ち合わせた最強人物。一応知識は全部ある転生者。でもその要素はほとんど入れていない、はず。

 四木さんの先輩にしてしまった、けど後悔はしていない。だって俺得小説だもの! ←
多分だけどこの人、岸谷森厳と同級生だと思う……年齢表的なのが欲しいなあ。そこまで知識ないんだ。原作は一応全部あるんだけれども。ちなみに主人公に女装は抵抗なし。(もう年だし)最近はあまり似合わなくなってきたけど若いときは楽しんでた。人生謳歌系青年。

 実はこれを書いているとき、ボカロを流していました。そのフレーズも用いています。分かる方は十中八九廃人です。



 そしてここから、『デュラララ!! SH』、および、『越佐大橋シリーズ』に続く! (嘘)。





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