虚無之王 (おにぐも)
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転生、魔王になる

どうも。この小説を読もうと思って下さりありがとう。

ここでのウルキオラは少し饒舌です。

よろしくお願いします。


ここはどこなのか。

 

 

 

 

 

 

彼は思考する。

 

 

 

 

 

ここに同族はいない。

 

 

 

 

ここは前の世界ではない。

 

 

 

 

 

そう、()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして同刻、銀世界に住む悪魔は、己に達しうる力を持つものの現れを感じて、その赤髪を揺らし、笑う。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

俺の名は、ウルキオラ・シファー。

 

藍染様によって創られた十刃(エスパーダ)が一人、第4十刃(クアトロ・エスパーダ)だ。

俺は藍染様の命により虚圏(ウェコムンド)にある虚夜宮(ラスノーチェス)と井上織姫という女を守っていたが、侵入者の死神である黒崎一護の手により殺されたはずだ。

 

しかし俺は今生きている。

ここにはなぜか破面(アランカル)(ホロウ)、死神の気配でさえ全くと言っていいほど感じない。

代わりに俺の知らない気配や唯の人間の気配ならあるが。

また、ここには尸魂界(ソウルソサエティ)虚圏(ウェコムンド)も存在しないようだ。

霊圧のようなものはあるが、霊圧とは少し違う。

 

おそらく俺が死んだという事実は変わらない。

ここはあの世界とはまた別の世界、破面や虚、死神が居ない世界なのだろう。

 

俺の今の姿は、帰刃(レスレクシオン)前の通常の姿だ。

斬魄刀は左腰に健在。

前の世界と容姿は変わらず戦闘力も変化なし、むしろ強くなっている。

「4」の数字は消えているがな。

 

 

この世界には【スキル】というものがあるようだ。

前の世界では当たり前だったこともほとんどがスキルとなっている。

また、前の世界とは少し違うと感じた霊圧はこの世界では魔素というものらしい。

霊圧感知は【魔力感知】、霊圧操作は【魔力操作】といったようになっている。

響転(ソニード)虚閃(セロ)、帰刃、刀剣解放第二階層(レスレクシオン・セグンダ・エターパ)などは普通に使用可能のようだ。

超速再生能力は【無限再生】となり、脳や臓器も再生可能。

そもそも俺自体が精神生命体とやらになっており、死んでも死にきれない体のようだ。

 

俺自身の事についてもまだ知らない事はあるだろうが、前の世界とこの世界の違いも詳しく知っておかなければならない。

俺は死ぬ直前に、「心」というものを少し理解した気がする。

以前の俺は何も無かった。あの女や死神のおかげというのは癪だが、この世界で俺はさらに「心」についての理解を深められると思った。

 

目的がある以上、俺はこの世界で生きなければならない。

その割に俺はこの世界について知らなさすぎる。

 

俺が今居るのは巨大な森の中だ。

一先ず人間共の居る場所に行くとしよう。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

やはりこの世界に破面や虚、死神はいないようだ。

だが唯の人間以外にも、人間と獣が混ざった獣人や、魔物、悪魔といったものが居るらしい。

ここは知らない地であるし今回は観察のみのつもりだったので魔素は抑えていたが、どうやら悪手だったようだ。

俺の容姿は魔物に見えるらしい(間違ってはいない)。

見たことないが(当然だが)弱そう(魔素を抑えているからな)だからと、俺に襲い掛かってくる者共が居た。

無論、俺からしたら唯の塵に過ぎないが。

人間とは理解出来ない。

あちらから来たにも関わらずどういう訳か俺は討伐対象と見なされたようだ。

あのような雑魚共を殺すことで危険視されるとは俺も思っても見なかったが、この世界の人間の実力を図るのには丁度良い。

 

 

「弱すぎる……」

 

思わずそう呟いてしまうほど。

雑魚の死神よりも雑魚だ。

俺の中でこの世界の人間の戦闘力は底辺に値すると確信した。

 

俺の辺りには大量の死体が転がっている。

見慣れた光景だな。

塵共がどれだけ掛かってきても無駄なので、俺の能力の実験に使用した。

結果は虚閃を幾つか撃てば国が消滅したので帰刃の能力確認などは出来なかったが。

ちなみにこの世界でも響転は感知されないようだ。

 

国が消滅してはもうする事もないので、森に戻ろうとした。

 

 

異変。

 

すぐさま後ろに飛ぶ。

 

 

俺が()()()()()()()()()()()に現れたのは、赤髪の男。

人間ではない。

 

「俺は魔王ギィ・クリムゾン。お前、魔王になれ」

 

俺からしたらふざけた事を言っているようにしか聞こえないが、この男は間違いなく強い。

それほど実力が離れているという訳ではないが俺より強い事は間違いない。

先の塵共とは比べ物にならない。話を聞く価値は大いにある。

 

「なぜだ」

 

「端的に言えば、お前が人間の国を一つ滅ぼしたからだな」

 

「あの雑魚共を殺したのがどれほどなのか俺には理解できないが、俺が魔王とやらになった時のメリットは何だ」

 

「そうだな、お前は生まれたばかりだろう。魔王になればお前の言う雑魚共、つまり面倒な奴等に態々メンチ切られることもないし何より自分の住む場所が得られるな。正直に言えば、お前が魔王側の、というか俺の戦力になるからだ。話すつもりは無かったがお前は俺とほぼ互角のようだしな」

 

「馬鹿を言うな。お前の方が強いだろう。あと俺はお前側の事情に興味はない。だがまあ、俺の目的のためにも特定の場所で静かに過ごせるというのは良いな」

 

この世界にもやはり俺より強い奴は居た。この男がこの世界で最強クラスなのはわかるが、このレベルが他にどのくらい居るのかはわからないし余計ないざこざは面倒だ。

俺は目的が果たせればそれでいいしな。

 

「………わかった。魔王になろう。ただし、俺の目的を邪魔すれば殺す」

 

「フッ、強気だな。お前は4人目の魔王になる。特にこだわりも無さそうだしお前の領土はこちらで適当に決めておくが、いいか?」

 

「ああ、助かる」

 

「お前と俺以外にあと二人魔王が居るんだがな、そいつらは放っておくと勝手にお前に会いに行きそうだからこちらから紹介しに行くぞ」

 

「、今からか?」

 

「当たり前だ」

 

他の二人とやらは十刃のように脳筋なのだろうか。そうでない事を願うばかりだ。

 

そういえば、俺はまた「4」らしい。

特に関係もないが。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「おお!お前がギィの言っていた面白い奴なのだな!」

 

俺が室内に入ったと同時にそんなことを叫ばれた。

 

「誰だ」

 

「おお、すまん。ワタシは魔王ミリム・ナ―ヴァ。初めましてなのだ!」

 

言動は子供っぽいが此奴も強い。ギィと同じぐらいだな。

 

「お前は何て言うのだ?」

 

「そういえば俺も名前聞き忘れてたな」

 

確かに、向こうには名乗られたが俺はまだ名乗ってないな。

 

「俺の名はウルキオラ・シファー。今日から魔王になった」

 

「アンタ不愛想ね。アタシは魔王の一人、ラミリス!あんたはギィと同類のヤバそうな匂いがするから、ふざけようと思ったけどやめたわ。この精霊女王様に感謝しなさい!」

 

ふんぞり返ってそんな事を言うのは、黄色い髪の小さい精霊。こちらはまず間違いなく弱い。

しかもふざけるのをやめたといっているが説得力はゼロだ。

 

「ギィ、こいつは何だ」

 

「何だとは何よ!失礼なヤツ!」

 

「此奴も元は強かったんだがな、俺が暴走したミリムの相手をしていた時に力を使って俺達を止めたのさ。色々あって此奴は堕ちて魔王になったって訳」

 

「アタシだって今は弱いけど、全盛期の時は凄く強いんだからね!」

 

「……そういうのは自分で証明しろ。お前の全盛期とやらに興味がない訳でもないがな」

 

「フフン、アンタもちょろいわね!」

 

此奴とはまともに取り合わない方がいい。自分勝手な十刃を思い出すな。

 

「まあそういう訳だ。此奴は何か目的があるらしく其れを邪魔したら殺すのだと」

 

「何よそれ!?目的がわからなきゃ意味ないじゃない!その忠告」

 

「静かな時に煩くしないでくれれば其れでいいが、まあギィやミリムだったら別にいい。そもそも殺せるかわからないしな」

 

「え、ねえ、アタシは?」

 

「ラミリスは殺すまでもない」

 

「ひどい!ギィ、ミリム、何とか言ってよ!!」

 

「うはははは!仲間外れは良くないぞ!ラミリスには友達がいないからな!」

 

「其れを言うならミリムもでしょ!」

 

「ふ、ふん。…………ワタシにはウルキオラがいるぞ」

 

「俺はお前等の友達ではない」

 

「そうよそうよ!抜け駆けは許さないわよ、ミリム!」

 

此奴らは煩いが、悪い気はしない。まあ此れを四六時中続けられたら困るのだが。

 

「まあ、こいつ等はこんなんだが魔王だ。これからよろしくな」

 

「ああ」

 

「あと暇だったら俺と戦ってくれ。ラミリスは今は無理だしミリムは馬鹿だからな」

 

「苦労性だな。腕を訛らせないためにも丁度いいかもな」

 

 

「では、これにてウルキオラの紹介は終いだ!」

 

 

それからギィに俺の領土を教えてもらい、ラミリス、ミリム、ギィと別れ俺は領土に向かった。

ついでに茶会の会場への転移道具をもらった。

これから魔王が増えるのかはわからないが、脳筋はやめてほしい。

そんなことを秘かに思った。

 

 

 

 




実を言うと今書籍版読んでる途中なので、ところどころにweb版の設定が入っているかも。



書いてて思ったけど、いつかウルキオラの口調が崩壊しそう。


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原初の赤

俺は領土に着いてすぐに能力の確認を始めた。

ある程度わかってはいるが自分の力であるのだから誰よりも詳しく知っていなければならない。

 

俺の種族は破面(アランカル)ということになっている。

種族と言っても俺以外にはいないがな。確か竜魔人(ドラゴノイド)もミリム一人だったか?

 

固有スキルは『無限再生』『万能感知』『魔王覇気』

魔力感知は万能感知の一部のようだ。

ユニークスキルは『虚閃(セロ)』『虚弾(バラ)』『反膜(ネガシオン)』『探査回路(ペスキス)』『鋼皮(イエロ)』『超速再生』

究極能力(アルティメットスキル)は『虚無之王(タルタロス)

【思考加速】【解析鑑定】【森羅万象】【未来予知】【響転(ソニード)】【黒翼大魔(ムルシエラゴ)】【黒虚閃(セロ・オスキュラス)】【王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)】【刀剣開放第二階層(レスレクシオン・セグンダ・エターパ)】【虚数空間】【多次元結界】【共眼界(ソリタ・ヴィスタ)

前の世界とほとんど同じだ。思考加速や虚数空間、未来予知は便利だな。

戦い慣れている能力が多いから訛ることもない。だがとりあえずギィが居ると言っていた氷土の大陸に行くか。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

一面の銀世界。辺りは全て氷で覆われている。何も存在しない、それほどに静かな空間。

そこに佇む城。ひどく幻想的なセカイ。

虚圏を連想させるような景色。感覚。とても懐かしい。

 

 

「よぉ、さっき振りだな」

 

銀世界に浮かぶ二つの存在。

一人は赤。暗黒皇帝(ロード・オブ・ダークネス)の二つ名を持つ原初の悪魔。そして真なる魔王の一人。深紅の髪を揺らし、其の名に相応しい傲慢な笑みを浮かべる。

一人は黒、いや、白とも言える。この世に唯一の破面。真なる魔王の一人だが、まだ二つ名はない。黒髪の左部に白い仮面を身につけ、目の下には翡翠の仮面紋(エスティグマ)が現れ、その首下に空く漆黒の穴は、虚無。表情は氷の様に冷たく、動かない。

 

正反対。それは外面だけではない。

一人は好奇心旺盛。一人は一つの物事に忠実。

 

 

だが、本質は同じ。

この世界の強者であり、自らの目的を果たすために動く者。

一人は、自分の飽きを補うために。一人は、自分の感じたモノを信じるために。

 

「能力の確認は終えた」

 

黒髪は言う。

 

「そうか。つまり戦いに来たってことでいいんだな?」

 

赤髪は其の口元を楽しげに歪める。

 

「ああ」

 

黒髪も無表情に応える。

 

「ここだったらある程度俺たちが本気を出して戦っても影響はないだろう。まあ一応結界は張るけどな」

 

「そうか」

 

そう、彼らが本気で戦えば、それはこの世界に多少なりとも影響を及ぼすだろう。それ程の最強格。

この世界の頂点である創造主に最も近しい才を持つものなのだ。

 

「鎖せ『黒翼大魔(ムルシエラゴ)』」

 

黒髪が言う。

其れと共に辺りを渦巻く膨大な魔素。手には光の槍(フルゴール)

赤髪は油断なく笑う。悪魔たるもの怯えることはない。

 

「へぇ、其れがお前の能力か」

 

赤髪は悟る。これは究極能力ではあるが種族固有の能力でもある。これをコピーしても精々力が増すのみだと。

 

黒髪は悟る。帰刃を使用しても勝利には及ばない。それ程相手は強者であり、己の認めるべき者であるということを。

 

唯両者とも考えることは同じ。互いに強者であり慢心など不要。只々思うがままに戦う。

 

黒虚閃(セロ・オスキュラス)

 

これは開戦の合図であり、お互いに気を向けていない。にもかかわらず、其の黒い光線がたどった場所には大地がむき出しになる。

 

 

 

ただ静かな空間に、突如として鳴り響く轟音。

其れは単に剣と槍が交わった音。強者同士の戦いにして成せる音である。

 

 

熱龍火覇(ナパームバースト)

 

虚弾(バラ)

 

 

爆煙。しかし両者は止まることを知らない。

 

「ルス・デ・ラ・ルナ」

 

「フッ、中々やるじゃねえか」

 

「受け止めている癖によく言う」

 

確かに黒髪の技は強かった。普通ならば一撃だろう。()()()()()の話だが。

現在の素の実力は赤髪の方が上であり、彼の持つ剣は神話級(ゴッズ)である。

 

「お前の強さはまだまだこんなものじゃないだろ?」

 

「言ってくれるな。だがいくら同じ魔王と言えどそう簡単に手の内を見せる訳にもいかない」

 

そう、普通手の内とは相手に見せないものである。其の言い分は赤髪も納得出来るものであった。

 

「じゃあここで止めておくか」

 

「ああ、其の方がいいな」

 

お互いに理解していた。自分と同等に戦える者などそうそう居ないと。これ以上戦えば世界への影響など頭に入らなくなるかもしれない。

故に、互いの意見は一致する。

 

「久し振りに楽しかったぜ」

 

「そうか」

 

赤髪は笑う。良い退屈しのぎになったと。

黒髪は思う。これが楽しいという気持ちなのだと。

 

お互いに目的は満たした。

こうして魔王同士の壮絶なる戦いは終わりへと向かった。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

ギィと戦った。予想通りだったとは言え、フルゴールを受け止めたのには少し驚いた。

ギィには二段階目はまだ見せないほうがいいだろう。存在自体は気づかれていそうだがな。

 

「お前に紹介する。ミザリーとレイン、俺が前に召喚した悪魔だ」

 

ここは白氷宮というらしい。

緑の髪と青の髪か。少しカラフルだな。

 

「あら、ギィ。新しい客が来ているのなら私も紹介してくれたっていいじゃない」

 

突如として現れたのは真っ白な女。まあ何か来るのはわかっていたが。

此奴は強いな。ミリムに少し近い雰囲気がする。

 

「私は”白氷竜”ヴェルザード。あなたが新しい魔王ね」

 

「ウルキオラだ」

 

「これで大体の紹介は終わりだ。他にも悪魔は居るが紹介する程でもないだろ。そういえば、お前は従者は作らねえのか」

 

「今は必要ない。必要だと思った時に作ればいい」

 

今は従者が居てもいいことはない。逆に守られたりするのは面倒だ。

 

「フッ、お前らしいな。」

 

レインとやらが紅茶を持ってくる。流石というか、美味いな。

 

「お前はこれからどうするんだ?俺は適当に魔王を集めるつもりだが」

 

「俺は目的を果たすだけだが、時間がかかるモノだから忙しくはない。むしろ暇だな。人間に擬態でもして旅でもしようと思う」

 

「お前の目的って何なんだ?」

 

「ああ、「心」を知ることだ」

 

「へえ、其れだったら旅をするのはいい選択かもな。お前が知りたいモノは一人では知ることが出来ないだろうからな」

 

言われてみればそうだ。俺はあの女や死神に会うまで、全く理解出来なかった。

多種族との交流か。其れを考えれば従者の一人ぐらい居てもいいかもしれん。

 

「ギィ、先程お前は魔王を集めると言っていたが、もう少し知性的なのを頼む。あれらが増えては煩い」

 

「其れは保証できねえな。一応気には止めておくが。まあ其の気持ちがわからないわけでもない」

 

憂鬱というのは嫌な気持ちだ。

 

「ああ、旅をするんだったらこの間渡した茶会の会場への転移道具なくすなよ」

 

「わかっている。ではまたな」

 

 

旅と言ってもまず俺は人型になれるのか。其の練習からだな。

暇ではあるが、俺が破面になる前の虚無感に比べたらマシなものだ。其の面ではミリムやラミリスの様な煩い奴らにも助けられているのかもな。

 

 

 

 

 

 

「………心か、あいつの究極能力は恐らく『虚無之王(タルタロス)』。虚無が心を知るとは、難儀なものだな」

 

 

 




書いていると思うんですけど、やはり鰤の技名とかクソかっこいいです。
思わず帰刃させてしまいました。
ヴェルザードって白いし氷だからシロちゃんを思い出します。

早く原作の所書きたいんですが、旅の話を幾つか書こうと思います。
旅途中はウルキオラがアホに見えるかもしれない。

今の所従者は適当に作るつもりですが、作って欲しくなかったり、こんな従者はどう?とかの案があったら感想にぜひ書いてほしいです。書いてくれたら喜ぶ。


リムルの虚空之神とこの話の虚無之王って名前がすごく似てました。ウルキオラもいつか虚無崩壊を覚えるでしょう。
タルタロスは奈落の神です。余談ですが、配偶者はガイアらしいです。ミリムのペットだった……


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バイト、新入り

こっから旅の話です。
キャラ崩壊しないよう頑張る。


人型になる、と言うが俺は人型になれない。

まず俺に擬態など出来ない。ギィによれば、幻覚魔法とやらで()()()()()()()のが良いらしい。

俺の場合は詠唱などせずに姿を想像するだけで可能のようだ。

とりあえず仮面と仮面紋(エスティグマ)、孔を無くせば人間らしくなるだろう。

ついでに魔素を押さえておく。今回は人間に視えるだろうから襲いかかられることはないはずだ。

 

今回の旅の目的は、多種族との交流で「心」をより深く知ること。とりあえず色々な者と交流を持てばいいか。

人間とは面倒臭い生き物だから、こちらから問題は出来るだけ起こさないほうが良いだろう。面倒だ。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

武装国家ドワルゴン。ここでは国内での争いは禁止されている様なので丁度よい。

人間共以外にもドワーフやエルフなどが居るようだ。

所々から金属音や飯の匂いがしてくる。何より煩いのは話し声だ。煩くはあるが、ここなら他の国の情報も多く集まるだろう。

鉱山の影で薄暗いのかと思ったが住んでいる奴らはひどく活気的だ。

多種族との交流というのは良くわからないがとりあえず適当な建物に入るべきだな。

 

カランカラン

 

扉に鈴が着いていて開けると音がなる仕組みか。音を鳴らさずに入ることも出来ないことはないが、よく出来ているな。

 

まず目に入ってきたのは銀色に鈍く光る物。

この店は武器屋のようだ。俺以外にも冒険者?と思われる奴らが居る。

 

武器屋という訳で多くの武器が売っているな。流石に俺の光の槍(フルゴール)やギィの持っていた神話級(ゴッズ)とやらはないが。

だが幾つか他の武器とは違う物がある。これはおそらく作る際の材料が違うのだろう。武器に魔素がこもっている。

 

「お。そこの兄ちゃん、目の付け所がいいな」

 

この店を経営していると思われる奴が話しかけてきた。まあ当たり前だが敵意はないな。

 

「これは魔法武器(マジックウェポン)といってな、魔鋼が使われているのさ。"成長する武器"とか言われているな」

 

この世界には其の様な物があるのか。多種族との交流以外にもこの世界について詳しく知るという目的が増えたな。

 

「其の中でもこれは特に自信作でな、特上級(スペシャル)の武器だ。お前さんはこれの凄さに気づいてくれたしな、少し安くしてやってもいいぞ」

 

特上級(スペシャル)と言っても、おそらく神話級(ゴッズ)には遠く及ばないのだろう。一目瞭然だが。

しかし此奴は余程馬鹿なのか。自信作なのなら普通は安くしないだろう。よくわからないやつだ。

 

「おーい、聞いてるか?」

 

「!ああ、済まない。悪いが俺は今ほとんど金を持っていなくてな。其の武器は買うことは出来ない」

 

そう、俺は特に金を持っていない。国を滅ぼした時は硬貨も燃えてしまったようだしな。

 

「そうか……。お前さん、よく見たら少し青白いし大丈夫か?何かバイトでも探してやれたらいいんだが」

 

「バイトだと?」

 

「ああ、飲食店とかなら働けばいくらか硬貨が貰えるぞ」

 

ふむ、適当な冒険者を国外で殺すしかないと思っていたが、其のバイトとやらをすれば多種族との交流やこの世界の情報収集、金を稼ぐことも出来るだろう。

これはやるべきだな。ずっと建物を出入りしている訳にもいかないし丁度良いか。

 

「すまない。良ければ紹介してくれないか?」

 

「ああ、いいぞ。お前さんその様子だと宿も取ってないようだからな、宿舎付きのバイト先を紹介してやろう。金が溜まったらまたここに来て武器を買っていけよ。これは其れまで取っておいてやる」

 

「ああ、助かる」

 

なるほど、紹介代がこの店の武器を買う、という事か。

 

「ここが〜〜〜。〜〜〜。〜〜〜〜」

 

にしても此奴は気前が良すぎるような気がするが。この国の奴らはこれが普通なのか。不思議だな。

 

「これでいいか?」

 

「ああ、ありがとう」

 

「次に会った時は血色が良くなってる事を祈ってるぞー!」

 

カランカラン

 

 

この状態は青白く視えるのか。まあそう云う体質という事にしておけばいいだろう。

バイト先は酒場らしい。そこの店主もどうやら”とても良い奴”らしいが、其れを決めるのは俺だ。

だがまあ、交流というのは煩いし面倒だが、悪くはないな。

 

バイト先はここからそう遠くはないらしい。精々500mといったところか。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

ここが俺のバイト先か。道中にも似たような酒場や武器屋が多くあったが、其れ等と比べても少し大きめの店だ。

 

「お。お前が新しいバイトって奴か。確かに青白いな、大丈夫か?」

 

「唯の体質だ。問題はない」

 

「はっはっは!聞いていた通りの奴だな。こんな根暗がここで働けるのかと思ったが、十二分に気は強そうだな。歓迎するぞ。お前の宿舎は後で紹介するから、とりあえず早速店を手伝ってくれ。よろしく頼むぞ」

 

「ああ、よろしく」

 

俺は根暗だと思われていたのか。やはり青白いからなのか。まあ体質で通るのなら其れでいいが。

ここは酒場のようだし冒険者が多いな。満席のようだ。

 

「おーい!ボサッとしてるんじゃねえぞー。とりあえずこの肉運んでくれ!」

 

「ああ、了解した」

 

言われて行動しているわけだが、命令に従っているといった感じはしないな。

それにしてもこの肉は美味そうだ。ここが繁盛するのにも頷けるな。

どうやらあそこの4人組のとこへ持っていけばいいようだ。パーティとやらだな。

 

「お。あんちゃん新入りか?」

 

「バイトだ。この店はいつも満席なのか?」

 

「いや、そういう訳じゃないぜ。実はこの間近くの国が丸裸にされてな、辺り一面焼け野原になってたのさ。新しい魔王が増えたって噂も流れるもんだから、冒険者の奴らは皆この国に武器を買いに来てる。今この国には冒険者がたくさんいるからな。一応国内での諍いは無しになっているが、あんちゃん弱っちそうだし影で何かされないよう気をつけろよ」

 

「忠告感謝する。肉はここに置いておくぞ」

 

「ああ、ありがとな!バイト頑張れよ」

 

「ああ」

 

国が消滅したことはすぐに気づかれると思っていたが、魔王になったことにも気づかれるとは。

そう言えば、ギィが「魔王は人間共が傲慢になり過ぎないための見せしめでもある」とか言っていたし、必然か。これなら新しい魔王が生まれてもすぐにわかるな。

やはりここは情報収集には最適の場所のようだ。あの男には感謝をしておこう。

 

「おい、そこの奴!」

 

「なんだ」

 

「この酒をいくらか頼みたい」

 

「ああ、わかった」

 

 

ここも終始煩いが、悪い所ではない。

うざい冒険者も居たりしたが、基本的にはお人好しな奴らばかりだ。

戦闘面ではありえんが、普通にすごしている分にはいいものだな。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

「ここがお前の部屋だ。ちと狭いがそこは我慢してくれ。今日はいい働きぶりだったぞ。冒険者の絡みも楽にかわしていたし、お前優秀な奴だな」

 

「いや、俺を雇ってくれて感謝する。部屋は小さくても構わんしな」

 

「そうかそうか。じゃあ明日からまた頼むぞ!給料は机の上に置いてあるから、其れであいつの武器を買ってやってくれ。飯はうちの余りもんでいいならやるぞ」

 

「ああ。では飯は貰っておこう」

 

確かに部屋は小さいが、ベッドと椅子、机があれば十分だ。掃除も隅々まで行き届いているしな。

飯が貰えるというのは嬉しい誤算だ。あの男もいい場所を紹介してくれたな。やはりこの国の奴らはお人好しばかりだ。いい国だな。

 

銀貨3枚か。この世界では銀貨1枚で千円くらいらしいからな。店主も随分と奮発してくれたみたいだ。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

あれから一週間程たち、今日は休暇だ。とりあえずあの店に武器を買いに行くか。

 

カランカラン

 

「お。久し振りじゃねえか、バイトは順調か?」

 

「ああ、あんたが紹介してくれた所はいい所だったぞ。今日は休暇だからあの魔法武器(マジックウェポン)を買いに来てやった」

 

「そうかそうか、今取ってくるからちと待っていてくれ」

 

あの武器自体のレベルは全くと行っていいほど強くないが、俺の魔素で改良するのもいいかもな。

 

「銀貨10枚だ」

 

「ああ」

 

「お前さん、巾着は幾つかに分けた方がいいぞ。今は冒険者が多いし、スリが多発してやがる。気をつけておけよ」

 

「忠告感謝する。記憶に留めておこう」

 

「おう!もう貸しもないが、良ければまたここに買いに来てくれよ」

 

「ああ、世話になったしな。またいい武器が出来たら買うぞ」

 

「ああ、また来いよー!」

 

カランカラン

 

[おい、茶会やるぞ。今すぐ来い]

 

!ギィか。人使いの荒い奴だ。

まあ今日は休暇だし用事も済んですることもないから丁度いいか。

路地裏に行って転移するか。この装置を使わないと場所がわからないのが面倒だ。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

ここはとある茶会が開かれる場所。

茶会と言っているが其れは彼らが思っているだけ。人々からすれば、恐ろしい裏の会談と言ったところだ。

 

そこにいるのは、赤髪の悪魔。

そして、気怠げな印象の堕ちた天の使い。物静かだが巨大な体躯を持つ巨人族。

 

そして新しく加わったのが、黒髪の破面(アランカル)

 

最後に、桃色の竜魔人(ドラゴノイド)と黄色い妖精族(ピクシー)

 

一見すれば異様な組み合わせだが、彼らには共通点がある。

 

それは、魔王であること。

 

堕天族と巨人族は新入りである。

今日はその報告に、彼らは集まったのだ。

 

「久し振りだな。まずは自己紹介だな」

 

赤髪が言う。その間を縫い、緑と青の悪魔が紅茶を運ぶ。

紅茶を運び終えた彼女らはまるで影のようにひっそりと、赤髪の側に立ち、存在を消す。

この場での彼女らは、弱い。立場、という意味もあるが、第一に実力だ。それ程に魔王というものは強い。

圧倒的強者の前で、弱者に為せる事などない。

 

「俺はギィ・クリムゾン。こいつらはミザリーとレインだ」

 

赤髪が名乗る。彼は最古で最強の魔王。

今回魔王たちを招集したのは彼であるため、進行も赤髪がする。

 

「ワタシはミリム・ナーヴァ。よろしくなのだ!」

 

桃色がいう。彼女も古参である。子供のような容姿と話し方だが、内蔵する魔素量は”無限”。彼女も最強格の一人である。

 

「アタシはラミリスよ。新入りはアタシのことを敬いなさい!」

 

ここでは一際小さな妖精が名乗る。反対に、態度はデカイ。

 

「ウルキオラ・シファーだ」

 

黒髪が名乗る。先の3人の少し後に入った魔王。しかしその強さは彼らのお墨付きである。

 

「俺はディーノ」

 

堕天使は名乗る。名乗った後すぐに船をこき始めたが。其れでも彼の強さは本物だ。前4人、いや3人には及ばないが。

 

「ダグリュールだ。よろしくのう」

 

最後は巨人族。その巨躯に比例した膨大な魔素を内蔵する。堕天使同様前3人には及ばないが。

 

「紹介は以上だ。わかっていると思うが、今回招集したのは新入りの魔王が入ったからだ。ついでだが何か報告がある者は居るか?」

 

赤髪が問うが、応えるものは居ない。

 

「特にないな。では解散だ」

 

その一声を気に、其々が会場を出て行く。

 

「魔王が増えて嬉しいのだ!」

 

「お前魔王なのにチビだな」

 

「何をー!!アタシが本気を出せばアンタなんかちょちょいのちょいよ!」

 

「其れよりもダグリュール、今日も泊めてくれ」

 

「またかよ」

 

そんな話をしながら魔王たちは出て行く。

 

残るは赤髪と黒髪。

 

「久し振りだな、ウルキオラ。旅は楽しいか?」

 

「彼奴等は熟不思議な奴らだ。だがつまらなくはない」

 

「そうか」

 

「ギィ、俺はもう行くぞ」

 

「ああ、またな」

 

そんな会話をして黒髪は出て行く。

 

残された赤髪も、口元に笑みを浮かべ、従者を連れて出て行くのだった。

 

 




もう次から原作入るかも。
というかさっさと原作入りたい。

ダグリュールの口調と一人称がわからん。
誰か教えてくれ。


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旅の終わり、魔王達の宴

原作少し入りました。


あれから一年が経った。

ずっとバイトを続けていた肉屋の店主や、武器は買わないが立ち寄るだけ立ち寄っていた武器屋の店主とも懇意の間柄だ。

武装国家ドワルゴンは何も変わらず、相変わらず活気的な場所だ。

 

「俺はそろそろ次の旅に出ようと思うから、今日でバイトは終いにしようかと考えている」

 

ここを出るのが少し名残惜しい様な気もするが、ずっとここに停滞していては意味がない。

金もだいぶ集まったし次の国に行くべきだ。

 

「そうか、寂しくなるなあ。今日は扱き使うから覚悟しとけよ!」

 

「ああ」

 

寂しい、か。ここでも色々なことを教わったな。

 

「おーい!アンタ今日で止めちまうんだろ?だったら折角だしここに居る皆で宴会でもやろうぜ!!」

 

「「「お〜!」」」

 

誰かが叫んだと思えば、周りの冒険者たちも雄叫びを上げて一気飲みをし始めた。

宴会をしてくれるのは俺は勿論のこと店の売上的にも嬉しいが、コイツラは馬鹿なのか。

 

「お前さんのための宴会なんだぜ!主役が働いててどうするよ。飲んだ飲んだ〜!!」

 

此奴は既に酔っているな。顔がアホ面になっている。

しかし最後のバイトなのに働くな、とは。どうしたものか。

 

「其れもそうだな。お前の今日の仕事は、店の売上に貢献するってことで!」

 

この店主も上手く纏めやがった。まあ店主本人が言うのならいいか。

俺は酒に強いし悪酔いもしないからな、今日くらい存分に飲んでやろう。

 

「ありがとう。とりあえずこの酒をいくらか頼む」

 

「お!兄ちゃん行くね〜!」

 

「当然だ。飲める時に飲んでおくべきだろう」

 

俺は煩いのは嫌いだが、酒が入れば多少は気にならなくなるしな。

楽しいことには違いないので、悪くはない。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

「お前以外皆ほとんどぶっ倒れてるじゃねえか」

 

「コイツラが酒に弱すぎるんだ。俺に勝つなど300年くらい早いな」

 

「ふははっ!そうかそうか。………寂しくなるな」

 

豪快に笑った店主だが、今日はいつになくしおらしい。

 

「ああ。だがこの国を出た後もここには寄ろうと思ってるからな、二度と会えなくなるわけではない」

 

次の国と言っても隣の国だ。距離はそう遠くない。俺からすれば、だが。

まあ色々世話になったしな。感謝ぐらいはしておくべきだろう。

 

「俺はもう行くぞ。世話になった。ありがとう」

 

「ああ!元気でな!」

 

 

 

俺がこの国の者を殺さなければいけなくなった時、今の俺に出来るだろうか。

いや、それは多分簡単に出来るのだろう。俺は虚無。心などない。殺す時は非常だ。

「心」を深く知れば知るほど、冷徹な感情も増えていく。俺にこの孔がある限り、俺が虚無であることに変わりはない。「心」も興味深いが、やはり俺は俺だ。

 

次の街に行くか。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

次の国は、この間俺が消滅させた国の後にまた立てられた国だな。名前は忘れたが。

人間共は馬鹿で理解できない生き物だが、技術力で言えば目を見張るものがあるだろう。ドワーフの技術力は素晴らしいと言われているが、人間も負けず劣らずだ。

ここは唯の人間の国のようだが。興味を引くものもないし適当に店に寄って他の国へ行くか。

 

カランカラン

 

一番人が多そうな所に入ったんだが、ここもどうやら冒険者御用達の店のようだ。

売っているのは回復薬。俺には全く必要ないが、金の使いみちにも困っていたし買うか。少し使ってみたいしな。余り質が良いとは言えないが。

 

「これを頼む」

 

「銀貨15枚です」

 

「ああ」

 

5本程買ってみたが、少し高い気もする。

まあ回復薬というのは貴重なのだろう。人間は再生できないなんて面倒だな。

 

カランカラン

 

後は特に目立った場所はないな。

まあこの国はこの間立ったばかりのようだし、無理もないか。

 

さっさと次の国へ行こう。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

次はイングラシア王国。ここには互助組織の本部があるらしい。噂だとトップは老いぼれで、権力に固執しているとか。

やはり人間は醜いな。

 

俺はこの世界で転生者というらしいが、俺以外に召喚者や異世界人という者が居るらしい。

召喚者は国に縛られており、異世界人は好待遇で傲慢さが滲み出ている。所詮人間の醜い姿でありギィ程ではないがな。

 

とりあえず宿に泊まろうと思ったが、この国も互助組合の本部があるということ以外に目立ったことはない。

武装国家ドワルゴンはかなり発達していたのだと思う。あそこを始めの国に選んでよかった。

この調子だと旅もすぐに終わりそうでつまらないな。まあ旅が終われば自分の領地に帰って城でも建てておくか。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

あれから5年。特に面白いこともなく、ギィに東の帝国には行くなと言われたおかげで俺は旅を終え、自分の領地に戻った。

ギィによれば普通は領地に住民が住んでいるが、俺は煩いのが嫌いだから住民が居ない所にしてくれたのだと。少しありがたいな。

 

俺が旅をしている間にも、魔王が増えた。

ヴァレンタインと、、もうひとりは名前も覚えていないが。

まあ名前を覚える価値もない程塵だったということだろう。名だけの弱い魔王などには興味がない。

そう言えばヴァレンタインはおそらく従者の方が本物だろうな。本人としていた方では弱すぎると思ったが、従者はそれなりに強かったしな。

ギィやミリムは気づいているだろうが、ラミリスは絶対に気づいてないだろうな。

最近ラミリスが少しずつ大きくなっている。おそらくもう少しで全盛期とやらになるのだろう。

 

 

 

其れからも弱い魔王がたくさん入ってきたりなどしてルールが出来た。

茶会は気づいたら魔王達の宴(ワルプルギス)などと呼ばれていたが、あの雑談からこんな大層な名前になるとはな。

あとは天使の軍勢と戦ったな。

アレのおかげで魔王の入れ替わりが激しいんだが、ミリムやギィは問題なさそうだった。

勿論俺も、意志のない者共に負けるほど軟弱ではない。

ラミリスは、全盛期とやらは確かに強かったが其れ以外の時はずっと迷宮にこもってやり過ごしていたな。

時々俺やギィ、ミリムが様子を見に行ったりと面倒だった。

 

其れから何回も天使の軍勢と戦うことはあったが、やはり弱いな。数が多いと言うだけだ。

そしてレオンという名の魔王が入った。

あの男は元勇者らしい。存在自体が変な奴だが、それなりに強いだろう。ギィのお気に入りだしな。

そう言えばギィは男ではないらしい。性別が自由に変えられるんだと。一度女の姿になってもらったが、傲慢さは変わらずだった。

 

其れからもなんか色々出たり入ったりしていて、今では十一魔王(イレヴンス)などと呼ばれている。

 

ギィ、ミリム、ラミリス、俺、ディーノ、ダグリュール、ヴァレンタイン、レオン、、あと3人だな。

名前は言わずもがな。弱いが、ギィのお気に入りが居たような、、。まあ俺に興味はない。

 

次の天使の軍勢が来るまではおそらくこのメンバーで安定するだろう。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

あれから数十年経ったころ、ジュラの大森林を庇護していたヴェルドラの気配が消えた。

ヴェルドラとは何度かあったことあるが、ダグリュールと張り合っているようでは俺には勝てない。

無限牢獄からはギリギリでヴェルザードが出すつもりだったようだし、特に気にしていなかったが。何があったのか。あいつのことだから勝手に消滅したという事はないだろう。第三者の干渉があったと見るべきだな。ギィもおそらくそうだと言っていたし。

 

俺はすることもなく、ミリムやラミリスが遊びに来た時の相手をするか、ギィと話すか、自分の領地でじっとしているかしてたんだが、最近ジュラの大森林に魔物の国が出来たらしい。

領主はスライムなのだと。ヴェルドラが消えたことといい、スライムが領主になったといい、何か関係があるかもしれない。

その国は人間の国やドワルゴンと友好を結んだらしい。その御蔭で技術力も素晴らしいのだとか。

もう少し国が発達したら言ってみてもいいかもな。

 

もう一つ気になることと言えば、イングラシアに自由組合が出来たことだな。

自由組合総帥(グランドマスター)というのがいて、異世界人らしい。人望も大層熱いようだ。

西方聖教会との協力もあり、魔物の討伐量が増大しているようだ。やはり異世界から来るものというのは他よりはマシな強さのようだ。

俺も異世界と言えば異世界から来たが、ギィによると例外なのだそう。

俺の前世の話を少ししたが、元々力を持っていたのは特殊らしい。その影響で転生した時にいきなり究極能力(アルティメットスキル)を得られたとか言っていた。

 

 

最近はミリムやラミリスが煩い。どうやらあのスライムと友達になったらしいが、コイツラが仲良くなるという奴には興味がわくな。

ついでにそのスライムは魔王種になったらしい。このままいけばいつか魔王になるのだろうか。

ミリムによれば、あのスライムは魔王になりたがっていないらしい。勧誘したのだと。馬鹿だな。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ 

 

魔王達の宴(ワルプルギス)の招集がかかった。招集したのは弱い奴だったが、内容があのスライムについてらしい。

ギィにも念を押されたことだし、雑魚の招集だが行こうと思う。

 

最近はあのスライムが真なる魔王に覚醒したり、ミリムが何か企んでいたりと起こっていたからな。おそらくこの魔王達の宴(ワルプルギス)で決着がつくだろう。

 

取り敢えず行くか。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

俺の名はリムル・テンペスト。最近真なる魔王とやらに覚醒した、可愛いスライムだ。

会談中にラミリスが突然訪れて「この国は滅びる!」的なことを言われてどうなるかと思った。

この魔王達の宴(ワルプルギス)はクレイマンを殺すのにいい場所だ。他の魔王も見れるわけだし、注意深さは必要だが。

そんな俺は今大きな円卓に座っている。

 

今俺以外には二人の魔王がいる。

一人目はラミリス。

一応古参だからなのか奥の方に座っている。まあアイツは放置でいいだろう。

 

もう一人は俺の正面に座っている。

コイツはヤバイ。もう魔素云々でヤバイ。隠し方がヤバイ。

表に出ている実力はカリオン並だが、その本質はわからない。

コイツは明らかなる別格だ。コイツが”ギィ”だな。

 

その後、ダグリュール、ヴァレンタインと入ってきた。

ヴァレンタインは従者が本物な気がしてならない。

 

そして次に、ディーノ。

ラミリスを弄ったと思えば、自分の席についた途端、寝た。

古い魔王みたいだが、やる気が全く感じられない。

何気に解析を妨害してくるので、油断は出来ないが。

 

次はフレイ。

取り敢えずエr……俺は紳士だからな!

従者も色々とすごかった。獅子の仮面を付けた奴がいたが、カリオンではないだろう。

 

お次は金髪美女。コイツがレオンらしい。

シズさんについての会話をしたあと、特に話すこともなく黙った。

 

そして暫くした頃、また一人魔王が来た。

残っている魔王を考えれば、コイツがウルキオラなのだろうが、ヤバイ。

ギィと同レベでヤバイ。顔は翡翠の紋に左頭部に仮面があり、なんとも特徴的だ。表情は全く動かないが。

ギィと何かを話し、アイツも奥の方に座ったから古参なのだろう。まあギィと同格だしな。

魔素を押さえているらしいが、ギィと同様少しだけ出しているようだ。その表情も相まって、威圧感がパない。

 

其れから40分ぐらい経った頃、クレイマンとミリムが来た。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

ミリムと塵が入ってきたかと思えば、塵がミリムを殴った。

ミリムのことだから操られているわけがないし、何か企んでいるのだろう。今のによく我慢出来たと思うが少しイラつくな。

試しに魔素を少し出そうか。もうこの塵はさっさと殺すべきか。

 

[面倒なことするんじゃねえぞ。ミリムの企みが見れなくなる]

 

[、そうだな]

 

ギィに止められた。まあ良くわからないが、あの塵はスライムが殺す気のようだ。

ミリムの企みのついでに様子見しておくか。

 

 

 

 

 

 

あのスライムかなり強いな。究極能力を持っているとは思わなかった。しかもヴェルドラはやはりアレに関係していたか。

弱っているように視えるが、魔素を押さえているだけのようだ。些か性格が変わり過ぎな様な気もするが。あのスライムが特別(ユニーク)だと言うことにしておこう。

 

スライムは魔王に認められたようだ。

個人的にはミリムが所々でガッツポーズをしているのが面白かったな。

 

その後に、弱いやつがミリムの配下になると言った。俺的には丁度良いと思う。

そしてスライムの一声により、十一人ではなくなったことが指摘された。

 

「新人のお前の仕事だ」

 

名前などに興味はないし、ラミリスが賛同しているのでこれでいいだろう。ギィは悪魔の笑みを浮かべている。あのスライムは気の毒だな。

 

結局はあのスライムのネーミングセンスが高かったため、九星魔王(エニアグラム)とすぐに決まった。ディーノが大げさに感激していたが、確かにすごいと思う。

 

それからはほとんどの物が去っていき、いつもどおり俺とギィのみになった。

 

「あのスライムは究極能力を持っていたな」

 

「ああ、しかもアレは大罪系だ。他にも何かありそうだし、アレは強くなるぜ」

 

「少し興味深いな」

 

「お前が言うなんて珍しいな。次の天使の軍勢の進行では、あのスライム含め全員残りそうだ。楽しくなってきたぜ」

 

「俺は例の魔物の街とやらに言ってみようと思う。ついでだが、少し前にレオンが話していた協力者についてだ。余り関係ないかもしれないが、自由組合総帥(グランドマスター)には気を付けたほうがいい。あれは胡散臭い」

 

「そうか。まあレオンの不興を買う訳にもいかねえし、気にだけ留めておく」

 

「ああ。じゃあ」

 

「お前も油断するなよ。最近は色々と怪しいからな」

 

 

ギィの忠告は耳に入れておくとして、いつ魔物の国に行こうか。

人間共の国に行くときの姿で行ってみるか。




少し市丸ギンの名言みたいな物が入ってしまった。

今回はいっぱい書いたから。次回投稿は遅くなりそうです。


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開国祭

一気に話が進んだ気がします。

この話はウルキオラの性格が少しおかしいかも。



この間の魔王達の宴(ワルプルギス)でいつ魔物の国に行こうか迷っていたが、丁度良い機会が出来た。

俺が魔物の国に行きたがっているのを知るミリムが、近々魔物の国で開国祭とやらが開かれるので其れに来れば良いと行ってきたのだ。

その開国祭では色々な出し物が行われ、其のうちの一つに武闘大会があるらしい。

其の武闘大会には、魔王リムルの配下数名と各国の人間共が参加するようだ。

俺には部下もおらず興味もないため他国の情報収集は基本行っていない。警戒するべき者や、急に情勢が変わったりした場所の事は嫌でも耳に入ってくるので、特に問題もないのだ。

なので、魔物の国も具体的にいつ行こうとは決めておらず、開国祭の話もミリムに聞くまで知らなかった。

武闘大会に参加しない者も多くいるようだが、俺の場合は見るだけで大体の実力がわかる。戦力の確認とまではいかないが、祭りとやらを楽しむついでに各国の重鎮やスライムの配下の実力を見るのは良いかもしれない。

だが、俺が魔王だと知られた状態でいけば、色々と面倒だろう。俺の場合は完全に人間に()()()ことも可能だ。俺が完璧に視せようと意識していれば、真面目に俺に気づくのはミリム、ヴェルドラは勘で気づくと言ったところだろう。俺の人間の姿は仮面と仮面紋と孔をなくしただけなので、魔王としての俺の姿を見たスライムもおそらく勘で気づく。

其れ以外の条件で気づいたものがいれば、大した者だろう。

取り敢えず、ミリムには俺が開国祭に行くというのは黙っていてほしいと言っておいた。其の方が後で面白いことになるとでも言っておけば、ミリムは言うことを聞くからな。

 

まあ、一番の目的は魔物の国の飯なのだが。ミリムによれば最高に美味しいそうだ。

ギィの配下の用意したものとどちらが美味いのか、魔物の国の方が上手ければ、ギィに自慢してやろう。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

今日はいよいよ例の開国祭の日だ。

スライムの挨拶を市民たちに紛れて聞いていたが、其れなりにカリスマ性はあるようだ。俺からしたら甘いように感じるが、そもそもの考えが違うので俺は特に何かを言える立場でもない。素直に拍手をしておいた。

 

演説が終わった後は自由行動となるわけだが、歌劇場という場所で演奏会が開かれるそうだ。

俺は静かなのが好きだが、音楽は嫌いではない。まあ煩くない音楽に尽きるが。

良い音楽というのは俺の中では精神を安定させ、思考を加速させるものでもある。

貴族に紛れて演奏会を聞いて以来、暇なときなどはよく聞きに行っていた。なのでここでも演奏会が開かれるというのなら、聞きに行かないという選択肢は存在しない。

 

 

歌劇場に来たわけだが、ルミナスが居るとは思わなかった。

演奏会が終わった途端一番に拍手したのも意外だ。まあそれ程素晴らしい演奏だったというのには同意だが。

歌劇場に来る前に焼きとうもろこしというのを食べたが、其れも中々のものだった。見た目は質素で唯のとうもろこしだが、味は、手入れされた最高級の料理ほどではないが美味い。

これからは暇になったら魔物の国を訪れるのも良いかもしれない。

だが、懸念するべきは、この国の技術発達の速度だ。このままいけば遠くないうちに天使の軍勢が襲ってくるだろう。

まあ演説の時に見た感じでは、配下もそれなりのようだったし大丈夫だろうが。まさかギィと同類の奴が居るとは思わなかったが。

まあ其奴もギィと比べればまだまだなので俺にとって驚異でもなんでもない(原初という時点で性格は油断できないな)。

 

演奏会の後は昼食の時間だったため焼き〜をたくさん堪能した。どれも良い焼き加減でうまかった。

 

歴史資料館のようなものもあったが、特に興味もないので通り過ぎ、しばらくはずっと食べ歩きを続けていた。

途中でルミナスと対面したが、流石に向こうも気づいたようだ。まあ魔王だしな。其れで俺が意外と食いしん坊だとかここの飯は美味いだとか、ミリムに誘われてきただとかを話して別れた。

ルミナスも随分と満喫していたようだ。やはりこの国はどの方面にも充実しているな。

 

温泉とやらもあったが、人も多く、貴族がほとんどだったため行かなかった。俺が魔王だと知れば一人で入れるのだろうが、大きい風呂には余り興味はない。

 

俺が飯よりも興味を示したのは武器だ。

俺が始めてもらった魔法武器(マジックウェポン)はギィに色々教えてもらいながら育てていたら、俺の魔素を大量に含んで神話級(ゴッズ)となっていた。

ギィによれば、千年以上所持していて、なおかつ俺がギィ並に強かったからこその結果なのだと。普通はここまでの進化はしないらしい。

この魔物の国の鍛冶屋は物凄く腕がいいようで、希少級(レア)を幾つか売っていた。おそらくこの国では既に特質級(ユニーク)の制作も成功しているだろう。表に出さないのは当然と言える。

 

武器屋を見て回り、食べ歩きをして、俺はすっかり武闘大会の存在を忘れていた。

まあ本戦は明日からのようだし何も問題はない。逆に今日ほとんど全ての飲食屋台を制覇したことの方が重要だ。

虚数空間に美味しいと思ったものを幾つか入れておいた。今度ギィに上げて貸しを作ってやろう。

 

まさかこんなに楽しめるとは思わなかった。スライムに会うのは、開国祭の3日間を満足にすごしてからでも遅くはないはずだ。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

開国祭二日目、今日は忘れないよう早めに闘技場に来た。既に観客は山の様だったが。

武闘大会は一応見ると決めたからな。

 

防御結界は二つ。まあ納得だ。出場者のレベルを考えても、アレを破壊することは不可能だろう。

 

そして出場者の説明を聞いていたわけだが、どうやら迷宮があるらしい。

最近ラミリスが忙しいアピールをしながら魔物の国周辺をウロウロしていたので、おそらくラミリスが作ったのだろう。

どうやら其の迷宮ではスライムとラミリス含め、ヴェルドラやミリムも関係していそうだし、開放されたら見に行くか。

 

出場者に獅子覆面(ライオンマスク)というのが居たが、どこかで見たことがある気がする。しかもアレに伝言を頼んだとういのは口調からしておそらくミリムだ。

大方魔王達の宴(ワルプルギス)でミリムの配下に入ったものだろう。弱いやつは記憶に残らないからあくまで推測でしかないが。

 

 

戦闘は見たが、ほとんどが大したことはなかった。

だが、あの勇者はかなり特殊なようだ。普通の勇者と比べて、強さとは別次元で違う雰囲気がした。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ 

 

三日目。今日は武闘大会の決勝と迷宮開放の日だ。

締めの日としてのスケジュールは完璧だと思う。いかに客に金を落とさせるか、といった思考さえ見え隠れしてくる。

 

決勝は、ホブゴブリンと勇者だ。

もはやアレはホブゴブリンではないが。嵐呀狼と合体している時点で種族不明だ。まあ制御出来ずに壁に激突したがな。

ミリムが合体後の姿を見て叫んでいた。とてもミリムらしい。

 

あの勇者はやはり特殊なユニークスキルを持っているようだ。洗脳に近い気もするが、アレに其れをしようと考える頭はないだろう。実際の実力は皆無だ。

まあ存在自体は面白いし、ギィが食いつきそうな感じではあるが。

アレがあそこで負けを認めたのはアレにとっての最高の選択だろう。弱すぎてバカバカしい気もするが、逆に不思議な気もする。

ギィやミリムは勇者が特殊だと言っていたが、其れを実際に感じたのは今回が初めてだ。

 

其れなりに充実した決勝だったな。

 

 

 

 

次は迷宮開放だ。だが、どうやら体験だけのようで、正式開放は後日らしい。

俺は体験などに興味はないので、また食べ歩きをすることにした。

迷宮を普通の人間として攻略するためにも、今日スライムに会うというのはなしにしようと思う。

 

そろそろ新しく食べるものもなくなってきたのだが、俺にはまだやりたいことがある。

 

記者になりすまし、各国との取引の様子を見ることだ。

 

せっかくこの国に来たのだから、知りたいことは全部知っておくべきだ。

 

 

 

……………………………

 

 

この光景は共眼界(ソリタ・ヴィスタ)を使って魔王たちに見せてやりたいな。

 

記者という存在を上手く使いつつ取引を有利に勧めている。

 

結構な話術だと思うし、あのスライムとの雑談は楽しそうだ。

 

実際に対面するのはまだ後にするつもりだが、この開国祭では随分と魔物の国の良さを見せつけられたものだ。

商魂たくましいな。

 

ここでは自由組合総帥(グランドマスター)を目にすることも出来たわけだし、いい収穫がたくさんあったな。

 

次にこの国に来るのはおそらく正式な迷宮開放後だろう。

スライムやヴェルドラ、ラミリスを驚かせたいらしくミリムに見た目は一般人として攻略するように言われた。

攻略速度は通常でいいらしい。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ 

 

 

俺の名はリムル。

ついこの間試験開放の後にマサユキの助言を受け、正式に迷宮開放をし、配下を集めるというディアブロを送り出したばかりだ。

 

ついに、マサユキ一行が三十階層突破者となった。()()()

 

実を言うと、昨日の昼頃訪れた無名の冒険者が、半日で五十階層まで到達したのだ。

流石にこれを他の攻略者に公表するわけにはいかず、()()()というわけだ。

 

本来だったら物凄く焦るんだが、俺達は其の姿を見て瞬時に納得した。

 

 

 

オーラは唯の人間そのものだったが、姿はウルキオラの面影がありすぎるのだ。

 

初めに気づいたのはラミリス。

 

ウルキオラは仮面と翡翠の仮面紋、首下の孔を無くしただけの状態だったので、長年一緒に居たラミリスが其の既視感に気づいたのだ。

 

 

だが、やはり俺の予想した通りギィ並だ。

智慧之王(ラファエル)さんでさえ魔素に関しては一般人にしか見えないらしい。とんだ恐ろしいヤツだ。

 

たまたまミリムが来ていたのだが、急に雰囲気がぎこちなくなったため、コイツが一枚噛んでいるのだろう。

大方俺たちを驚かせたかったみたいだが、ウルキオラの外見が適当過ぎたためすぐにバレる、なんてことは予想外のようだった。

正体不明の凄い人という感じにしたかったらしい。

 

結局流石は魔王と言ったところか、俺の配下やミリムの連れてきた竜を一瞬で倒し、一日でヴェルドラが担当するこの階にたどり着きやがった。

全くの化け物である。

 

 

 

「リムルよ、我、ウルキオラとは戦いたくないんだけど」

 

などと言っているが、ここまでくれば仕方ない。

智慧之王(ラファエル)さんも偽装を見抜けなかったことを悔しがっているようだし、ヴェルドラと戦っているところを見て少しでも技を盗んでやろうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、当然盗めなかった。

 

この迷宮で一番の権限を持つラミリスが脅され、情報は遮断されて戦闘シーンを見ることが出来なかったのだ。

 

結局、ヴェルドラが部屋をでていき、ボコボコになって帰ってきたのを見ただけだ。

末恐ろしい魔王である。

 

ヴェルドラが伝言を頼まれたそうで、

「この迷宮は割と楽しめた。開国祭の時の屋台をまたやってほしい。あと、近々お前らが集まって会議をしている時に現れるかもしれない」

だそうだ。

 

うん、まず開国祭来てたのかよ。おまけに屋台って、なんかイメージと違う気がする。

まあ一番重要なのは最後だが。

アイツが本気で隠れようと思えばさ、、、

 

《解。個体名:ミリム・ナーヴァが居ない場合100%の確率で会議室に現れるまで誰も気づかないでしょう》

 

うん、だよな。

 

一体あの魔王は何を考えているのだか。

初めの印象は物凄く無表情という感じだったが、ミリムの策略に参加している辺り割と悪戯好きなのかもしれない。

 

ディアブロを冥界に送り出したわけだが、早く帰ってきてほしくなった。

 

 

 

その後智慧之王(ラファエル)さんがラミリスから迷宮の干渉権限をゲットして戦闘を解析鑑定したが、驚くことに一瞬の爆発的な魔素の放出以外は全て体術で戦っていたようだ。

其の魔素の放出は、きっとあたったらヤバイやつなのだろう。

 

 

俺は魔王の恐ろしさをしかと感じました。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

幕間-白氷宮にて-

 

 

「よお、お前から来るなんて珍しいな、ウルキオラ」

 

そう、本当に珍しい。魔王達の宴(ワルプルギス)以外で会う時は、基本ギィが呼んだりしていたのだ。まあ其れすら数えるほどしかないが。

 

「久し振りだな。実はこの間魔物の国の開国祭とやらに言って屋台とやらで売ってるものを食べてきたんだが、其れをギィにも食べさせようと思ってな。高級料理以外の物を食べるのも大事だぞ」

 

 

あの国にコイツが興味を示していたのは知っていたし、大方ミリムに誘われでもしたのだろう。

 

初めて会った時は無愛想だが強いやつ、そんなイメージだった。

だが、此奴も自分では気づいていないだろうが、旅から帰ってくる頃には少し変わっていた。まあ長年の付き合いの奴じゃなければ気づかない程の誤差程度のものだったのだが。

旅の飯がうまかったらしく、其れなりに食い意地の張った奴になっていたのだ。性格も、変なところで真面目だが、ある程度の悪戯好きでもあるという、かなり以外な性格だということが発覚した。

其れがほとんど表にも内面にもでていないのが面白い。

 

「焼きとうもろこし、焼きそば、たこ焼きだ」

 

そう言って俺の目の前に3つの品を取り出し並べる。

 

「見た目は質素だが、美味いぞ」

 

「そうか、じゃあ貰っておくぜ」

 

俺も並べられた其れを虚数空間のコピーにしまい込む。

 

「ああ、あと、面白い勇者が居たぞ。ついでにお前と同類の奴も。黒だった」

 

黒。やはり俺の予想通り、原初の黒(ノワール)が配下に居るようだ。アレに名前をつけるなんてあのスライムは面白い奴だ。

だが其れより、

 

「面白い勇者?」

 

「勇者マサユキといって、全然強くないが、雰囲気というか魂そのものが他の奴らとは違う気がした。スキルも面白そうな物だったしな」

 

「へえ、お前が弱いのに名前を覚えているなんて珍しいな」

 

此奴は基本的に一定以上弱いやつの名前は覚えていない。おそらくフレイやカリオンと言われても誰だかわからないだろう。

弱いのに此奴が覚えているということは、其奴の魂の格がそれ程印象に残ったのだろう。

勇者マサユキか。会いに行くつもりは今の所ないが、誰かの転生者だろうか。

 

「あと、自由組合総帥(グランドマスター)も居たんだが、やはりアレはきな臭い。あのスライムも疑っていたようだしな」

 

「そうか。楽しめたのか?」

 

「ああ。あそこの国はとにかく料理が美味いから、ギィも食べに行ったらどうだ?紅茶もきっと美味いぞ」

 

「そうもいかないぜ。魔王同士は基本的に不可侵だし、俺の目的に影響しない限り俺は行くつもりはないからな」

 

「そうか。彼処は暇つぶしには丁度良いと思ったんだが。ミリムもラミリスも楽しんでるしな」

 

「フッ。だが、あの国の行動で東の帝国が動き出すかもしれねえからな。其れまでは干渉するつもりはないぜ」

 

ジュラの大森林は位置的にも魔王達の中で一番東の帝国に近い(ルミナスもいるが)。

今はまだ大丈夫だが、あのスライムは配下に名付けまくっているようだし、配下の中にも魔王種が大量発生することもありえなくはない。

まあ推測の話だからこそ、会うつもりもないのだが。

 

「ギィ。俺は今お前に色々情報を渡したことになるからな。これで貸し一つだ」

 

結局はこれが目的だったりもするので、なんとも言えない。

まあウルキオラやミリム、ラミリスであれば貸しなど無くとも助けるのだが。

 

「ヘっ、よく言うぜ。俺だってお前に貸しの一つぐらいあるからな、相殺だっつーの」

 

「フン、まあ話したいことは話したからな。俺はもう行くぞ」

 

「ああ」

 

結局一方的に話された感じになったが、まあ彼奴の言う通り情報だって入ったわけだし、まあいいか。

 

彼奴の話す感じだと、天使の軍勢が早めに来そうだからな。

あのスライムがどう対処するのかは見ものだぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




作者、11巻以降の書籍持ってないため、お金を奮発してさっさと買おうと思ってます。
今の所次話の話何も考えていないので、次の更新はもっと遅くなるかも。


なんか話が進むごとに一話分の量がどんどん増えていく。
今回は6000字ちょいまでいきました。


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