ドラえもん 響と戦姫絶唱シンフォギア (はんたー)
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出会い
ドラえもん 響と戦姫絶唱シンフォギア


 響side

 

 

 

 

「起きて、響」

 

「ふぁ~。未来、おはよう」

 

 私の名前は立花響。いたって普通の小学五年生。好きなものはご飯&ご飯。今日はお父さんたちがいないから、二人でお泊り会をやっていたんだ。

 

「全く……おじさんたちがいないからって寝過ぎだよ……」

 

「ごめんごめん。ちょっと夜更かししすぎたね……」

 

「私は途中で寝ちゃったけど、そんなに面白かったの? 昨日の映画」

 

「そうだよ。なんていったって、まさか未来から正義のロボットがやってきてオシシ仮面と協力して悪いやつをやっつけたんだから」

 

 いや~、本当に昨日の映画は面白かったな。途中で寝ちゃうなんてまったいないよ。

 

「未来から自分を助けてくれるロボットってなんかいいよね。私の所にもそういうロボットが来てくれたりしないかな~」

 

 ガタガタ

 

「バカなこといってないで、早く宿題しよ」

 

「そうだね。でも、やっぱり憧れちゃうな……」

 

 

 ガタガタガタガタ

 

 アレ? なんか机がすごいガタガタいってるんだけど……。

 

「……なにこの音?」

 

「地震? でも、揺れてないよね」

 

 

 ガタガタガタガタガタガタガタガタ

 

 

 や、やっぱりなんかガタガタいっている!? な、何が起きてるの? 

 

「響っ!?」

 

 未来も何が起こってるのかわからないようで怖がっている。って、私も怖いんだけど……。

 

 

 バン!!! 

 

 

 すると私の机の引き出しが勝手に開き、そこから青いタヌキのような何かが入ってきた。

 

「え~と、君が立花響ちゃんかな? そっちの黒髪の子は小日向未来ちゃんであってるよね」

 

「は、はい」

 

 青いタヌキさんは机から出てくるなり私に向かって笑顔で歩いてきた。未来は少し怯えてるけど、なんだかこのタヌキさんから悪い人って感じがしない。

 

「はじめまして。僕ドラえもん。響ちゃんをサポートするためにやってきた22世紀のネコ型ロボットだよ」

 

 …………へ? 

 

 

「「ええええええええええええ!!!!???」」

 

 

 

 

 

 

 

 ******************************************

 

 ドラえもんside

 

 

 

 

 

 はじめまして。僕ドラえもん。って言っても本物って訳じゃないんだけどね……。

 そうです。よく二次小説とかなろうとかで耳にする俗に言う転生者ってやつです。

 最初の頃は普通にドラえもんの世界に転生したとか思っていましたが、実はこの世界「戦姫絶唱シンフォギア」の世界線であると言うことが判明。

 というのも、ロボット育成学校でノイズやアルカノイズの話、聖遺物を研究する学部などなどシンフォギア世界のものが数多く存在しているんです。

 それだけじゃなく、原作ドラえもんと大きくかけはなれた部分が多々あった。

 まずこの世界、セワシくんがいない。秘密道具を使って調べたりもしたけどこの世界にはそもそものび太君やしずかちゃん。ジャイアンもスネ夫も存在しないみたいなんだ。だからその子孫たちも当然いない。

 これらの人たちが存在しない以上、先のことがまるでわからなくなった。一応、オークションで頑張ってアピールしてみたけどセワシくんがいない以上。誰も僕のことを買ってはくれなかった。

 これからどうなるんだろうと途方にくれていたんだけど、それを見かねたのか、妹のドラミ「過去の子供のお世話をする券」というチケットをくれた。

 これを使って僕は過去に行くことが決定したんだ。でも、誰のお世話をするのかもこの券が抽選で決めるらしい。

 その結果当たったのがシンフォギア原作主人公。立花響ちゃんの家だった。

 最初はすごく悩んだ。響ちゃんと共に生活する以上、僕は色々な事件に巻き込まれるだろう。正直いって怖い。ドラえもんの冒険以上に命がけの戦いがあることを知ってるんだから当然だ。

 でも、僕はドラえもんなんだ。僕の知るドラえもんは怖がりだけど勇気もあり、子供たちに夢と希望を与えるお世話ロボット。それがドラえもん。

 偽物とは言え、僕もドラえもんである以上、子どもに夢と希望を与えなければならない。例えどんな目に遭おうとも。

 だから僕はこの権利を行使し響ちゃんの家に行くことにした。

 

「気をつけてね。お兄ちゃん!」

 

「じゃあな、ドラえもん!!」

 

「何か困ったことがあったら遠慮せず言ってくださいね」

 

「我輩たちはいつでもかけつけるであ~る」

 

「頑張れよ。ドラえもん!」

 

「ガウガウ」

 

「あれれ~。ドラえもんどこに行くんだっけ」

 

 

 ……そりゃないでしょドラリーニョ。相変わらずの忘れっぽさに他のみんなまで呆れている。全く……

 よし! 準備は整った。僕はタイムマシンを起動させ、今までの想い出に想いを馳せる。

 恐怖はある。でも、ドラえもんとして、精一杯頑張って見せるぞ。

 

「いざ、過去の世界へ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、ついた……」

 

 この時空の穴の向こうに響ちゃんがいるのか……。

 まだ、小学生らしいけど仲良くなれるかな……。

 緊張しながらも僕は穴から出ようとする。

 

 

 ガタガタガタガタ

 

「……あれ、建て付けが悪いのかな。えい!」

 

 バン!!! 

 

 

 よし、開いた。あれが響ちゃんか……。

 未来ちゃんもいるな……。少し怖がっているみたい。まあ、いきなり引き出しから青い猫が出てきたんだから無理もないけど……。

 まずは自己紹介。

 

「はじめまして。僕ドラえもん。響ちゃんをサポートするためにやってきた22世紀のネコ型ロボットだよ」

 

 

「「ええええええええええええ!!!!???」」

 

 

 これからよろしくね。二人とも。

 




設定

ドラえもん(転生)
22世紀のロボット育成学校で育ったドラえもんの転生者。
好きなものはどら焼。嫌いなものはネズミ(ここらへんは原作と変わらず、ドラえもんボディに引っ張られている)。
戦姫絶唱シンフォギアのことは大好きだったが、肝心なことは覚えておらず、不思議がっている。
実は彼を転生させた神様が物語の根幹にあたる部分には干渉しないように記憶を封じている。


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日常編
皆でキャンプ


xdのメモリア的イベント。
基本こんなんばっか書く予定。


 ドラえもんside

 

 

 

 

 響ちゃんと出合ってからもう六年もの月日が流れました。

 ルナアタック、フロンティア事変、魔法少女事変、パヴァリア光明結社との戦い。そして、神シェム・ハとの激突。どれもこれも死ぬような目にあいつつも響ちゃんたちと共に乗り越えることができた。

 それだけじゃない。響ちゃんが()()()()()()()()()()()()()()()僕たちは色々な冒険をしてきた。予想外だったけどそれらの冒険は僕たちの絆をより強固にしたんだ。

 本当に、ほんと~うに色々あったなと常日頃思う。

 

「ドラえもん様お願いします!!! アンキパン貸してください!!!」

 

 そんなこと考えながらS.O.N.Gの食堂でどら焼きを食べていると響ちゃんが僕に近づき土下座をしながらアンキパンをせがんできた。

 なんでも近々期末があるのだが、人助けや任務などで全く勉強をしていなかったらしい。

 もし追試になってしまえば僕や未来ちゃん、創世ちゃんたちと一緒に行く予定のキャンプに行けなくなってしまうらしい。

 僕自身楽しみにしてたし一人だけ行けないなんてことになったら可哀想だけど……。

 

「ダーメ。テストは自分でやるから意味があるんだよ」

 

 例え響ちゃんの頼みと言えどこれは譲れない。

 僕だって前世でもロボット育成学校でも期末時は苦労したけど頑張ったんだから。こういうのは自分の力で成し遂げないと……。

 それにこう易々と秘密道具を渡してしまうと悪い癖になってしまう。いや、すでになってたりしてるんだけどここは心を鬼にしないと。

 

「そ、そこをなんとか……。追試になっちゃったら未来たちと一緒にキャンプに行けないんだよ~。ねぇ、ドラえもん~」

 

「ダメなものはダメ!!! そもそもクリスちゃんや調ちゃん、セレナちゃんだってちゃんと勉強してるんだから一人だけ依怙贔屓するわけには絶対にいかないよ」

 

 まあ、切歌ちゃんは少し怪しかったけど……。ここはきっぱりと断るのが響ちゃんのためになるハズだ。

 

「……こうなったら奥の手を使うか」

 

「ん?」

 

 すると響ちゃんは鞄からゴソゴソとなにかを取り出し……ってあれは!? 

 

「そ、それはまさかめったにお目にかかれない幻の特製クリームどら焼き!?」

 

「そう! こないだの任務でたまたま買うことができたんだ。しかも四つ!!!!」

 

 よ、四つだって!!?? そのどら焼きはこの僕でさえまだ数回しか食べたことないのに……。

 

「フッフッフ……。ねえ、ドラえもん。取引をしようよ……」

 

「と、取引だって……?」

 

「アンキパンをくれたらこのどら焼き全部ドラえもんにあげるよ……。どうかな?」

 

 ぜ、全部!? ど、どうしよう。ここはやはり響ちゃんのためにもどら焼きを諦めるしか……。いや、でも四つ!!!! ひとつでも貴重なこのどら焼きを四つも食べられる機会なんてめったにない……。

 あ~もう!! どうすればいいんだ!!! 

 

 

 

 

 

 

 よし決めた

 

 

 

 

 

 

 

「し、しかたないな……。今回だけだからね……」

 

「わーい。ありがとうドラえもん」

 

 ま、まあ仕方ないよね。うん。どら焼きの誘惑には誰も抗えないし、むしろ少し耐えることができた方がすごいよ。しかも幻の特製クリームどら焼きだ。これに耐えられる者なんてこの世に存在しないだろう。

 

「では早速……」

 

 僕はアンキパンを取り出すため四次元ポケットの中に手を突っ込もうと……。

 

「最初から見ていたけど、そういうズルはよくないと思うよ響」

 

「全く、しょうがないんだから……」

 

 その直後、扉が開いたと思ったらそこから未来ちゃんと奏さんの二人が入ってきた。

 

「げ、未来。それに奏さんも!?」

 

「ど、どうして二人がここに……」

 

「たまたま未来と会ってね。それで折角だし一緒に食べるかってなってここに来たんだけど……」

 

「響……。期末勉強はちゃんとやったほうがいいよ。ドラえもんも物に釣られないの」

 

「「……はい」」

 

 ジト目で僕らを見る未来ちゃん。その視線だけですごく辛い……。

 

「でも……どうしても未来やドラえもんたちと一緒にキャンプ行きたかったんだ……」

 

「響……」

 

 響ちゃんは本当に僕たちとキャンプに行きたかったんだな。それを察したのか未来ちゃんはため息をつきながら鞄のなかに手を入れ、期末の範囲表と教科書を取り出した。

 

「じゃあ、みんなで一緒に勉強しよ。分からないところは教えてあげるから」

 

「そうだな。私も教えてやるよ」

 

「未来……奏さん……。ありがとう」

 

 こうしてここにいる皆で勉強会をすることになった。

 分からないところは僕と未来ちゃん、奏さんがそれぞれ教えることとなり、結果響ちゃんはギリギリとは言え赤点を回避することができたそうな……。

 あ、どら焼きはここにいる四人で食べることになりました。

 残念だけど、皆で食べるどら焼きもいつもより美味しかったな……。

 

 

 

 ******************************************

 

 響side

 

 

 

 私、立花響は皆の協力してくれたお陰で赤点を回避することができ、ドラえもんと未来、弓美ちゃん、創世ちゃん、詩織ちゃんと共に無事キャンプに行くことができました。

 皆で水遊びしたり、キャンプファイアやったり楽しいことがたくさんできました。途中、ドラえもんがネズミを発見してレーザー銃とか取り出したときは焦ったけど……。

 

「楽しかったね。響」

 

「うん」

 

「あー遊んだ……。()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「そうですね……。()()()()()じゃないでしょうか? 今は響さんと未来さんは忙しそうですし、遊ぶときはクリスさんたちも加わるようになりましたし……」

 

「そういえば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

 昔を懐かしむ三人。確かにシンフォギア装者じゃない三人は任務に着いていくことができないし()()()()()()()()()()()()が減った。

 大変なこともあったけどどれもいい思い出だな……。

 

「皆~! そろそろ帰る準備をした方がいいよ」

 

「「「「「ハーイ」」」」」

 

 ドラえもんに促され、少し余韻を残しながらも私たちはキャンプ場を跡にした。

 こんどは翼さんたちも誘って行きたいな……。




基本的にこんな感じでドラえもんと装者たちとの日常を書きたいと思います。ガッカリさせてしまったらごめんなさい。本当に申し訳ない。m(_ _)m
一応考えてはいるのでシンフォギア本編についての話もできたら書きたいけど文章にできるかどうか…。


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三人の歌姫とカンヅメカン

 ドラえもんside

 

 

 

 

 

 明日は翼ちゃんと奏さん、マリアさんによる三人のライブがある。響ちゃんたちも楽しみにしてるし、もちろん僕もすごく楽しみだ。

 今は強大な敵なんてものは存在しないはずだから、何の憂いもなく純粋にライブを楽しむことができる。特等席のチケットも貰ったし、いいライブになるといいな……。

 

「ん?」

 

 ライブ会場の下見が終わった後、明日に備えて家に帰ろうとすると、練習室からなにやら声が聞こえてきた。

 なんだろう? 僕は好奇心にかられ、練習室の中を覗いてみた。するとそこには汗だくとなっているヅヴァイウィングとマリアさんの姿があった。緒川さんが見るなか真剣な目付きで練習をしている。

 

「くっそ……。本番は明日だってのに……」

 

「だが、どうしてもここの部分が納得いかない……」

 

「大丈夫。まだ時間はあるわ。やれるところまでやりましょう」

 

「焦らずじっくりやりましょう」

 

 な、なんて凄い気合いなんだ……。本番ギリギリまでずっと練習しているだなんて……。

 これがプロの意地というやつなのか……。僕から見ればその振り付けはまさにプロの仕事とも言うべき完璧なものに見える。それでも本人からすれば納得のいくものに仕上がっていないみたい……。

 

「三人とも、大丈夫? 何か手伝えることはない?」

 

「!? ドラえもん……」

 

「来ていたんですね……」

 

 僕は思いきって彼女達に何か手伝えることはないかを聞くことにした。三人がこれだけ頑張っているんだ。友達として僕も手伝いたい。

 

「この部分の振り付けが上手く行かないんだよ……」

 

「ここは私たちの動きが完璧にシンクロしなくてはならないのだが、どうしても僅かにズレが生じてしまっている」

 

「だけどほら……。この間はぐれ錬金術師を捕縛する任務があったじゃない……。おかげで練習する時間があまりとれてないの……」

 

 なるほど。確かにそんな任務が最近あった。とにかく隠れるのが上手くてパヴァリア光明結社の現局長であるサンジェルマンさん達が手伝ってくれたおかげでなんとか捕らえるこたができたけれど、そのせいで練習する時間がとれなかったと……。

 

「本来、そういったものを管理するのも僕の仕事だと言うのに……ふがいない……」

 

「緒川さん……」

 

 悲痛な表情をする緒川さんを見て、何かいい秘密道具はないものかと僕は考える……。

 練習する時間を確保……、それだけじゃない。体力の問題も考えて休憩する時間とかも確保しないと……。

 

 あ。

 

「あの道具なら……」

 

「? 何かだしてくれんのか」

 

「うん。ちょっと待ってて三人とも」

 

 僕は四次元ポケットの中に手を突っ込み、目的の道具を探す。……しかし、ガラクタが多くてなかなか見つからない……。

 え~と、あれでもない。これでもない……。

 

 あ、あった!!! 

 

 

 

 

 

 

「カンヅメカンと専用缶切り」

 

 

 

 

「なんだい? それは……?」

 

「大きい……缶詰め?」

 

「これは……どういう道具なのかしら?」

 

「カンヅメカンは集中して作業ができるように作られた道具で蓋をしめると缶切りでしか開けることができない。しかも、中と外とで時間の流れが違っていて、この缶詰の中での一日は外での一時間になるんだ。これなら練習する時間も休む時間もとることができるよ」

 

「すごいですね……。未来ではこんな道具もあるんですね……」

 

「さすがドラえもん! 頼りになるな!」

 

「ええ、本当に……」

 

「ありがとうドラえもん」

 

 皆どうやら気に入ってくれたみたいだ。本番まであと十時間だから10日分の時間を確保することができたわけだ。

 

「本当にありがとな。ライブ楽しみにしてくれ」

 

「缶切りは責任持って僕が預かります」

 

 そういうやいなや三人は缶詰の中に入って蓋を閉じた。

 缶切りは緒川さんが使うことになり、僕は明日に備えて帰ることになった。

 これならきっと凄いライブになりそうだ。

 頑張れ。三人とも……。

 

 

 

 

 

 ******************************************

 

 奏side

 

 

 

 

「料理の出前なんかも取れるのか……本当すごいな……」

 

「彼の道具にいちいち驚くだけ疲れるだけじゃないの?」

 

 思わず呟いた言葉に呆れながら返すマリア……。

 本当、ドラえもんの未来の道具には驚かされてばかりだな……。あいつと出会ってもう四年になるけどいまだ持っている道具の底が知れない。

 

 まあ、それは今は置いといて……。

 

「ドラえもんが作ってくれた貴重な時間だ。二人とも、絶対無駄にはするなよ!」

 

「「当然!!」」

 

 ダンスの振り付けをしながら私はドラえもんと初めて出会ったときのことを思い出す。

 あれはヅヴァイウィングのライブ中、ノイズが発生したときだったっけ……。

 当時まだ一般人だった響が私のガングニールの破片に貫かれ、重症を負ったのを見て、彼女を助けるためには絶唱を放つしかないと私は絶唱を放とうとした……。

 そんな矢先、ドラえもんは仲間たち(ザ・ドラえもんズ)と共に空から大きな涙を流しながらやってきた。

 もしあの時彼らが来てくれなければ私はあのまま絶唱を使って死んでいたのかもしれない。

 今、こうして翼と、マリアと歌を歌うことができるのは全部あいつのおかげだと私は思っている。

 私はドラえもんに感謝の気持ちを伝えたい。

 そのためにも、明日は絶対に最高のライブにするぞ……。

 

 ん? まてよ、ここでは時間が違うから10日後か……。

 

 

 ******************************************

 

 ドラえもんside

 

 

 

 

 

「楽しみだね。奏さんたちのライブ」

 

「そうだね……」

 

 超満員の会場の中、特等席ということで特別見やすい席にいる僕たち。

 なんだか予感がする。きっと今日は思い出に残る最高のライブとなるだろう。

 

 ライトが消え、天使みたいに空から降り立った三人の姿を見て僕はそう思った。




ドラえもんは響ちゃんがヅヴァイウィングのライブにて大怪我を負うということ神の干渉で忘れて未来におり、ドラミにその事を言われ思い出し、偶々一緒にいたザ・ドラえもんズの面々と共に大急ぎで戻り、結果、響の大怪我には間に合わなかったけどなんとか奏の絶唱前には到着することができた。という設定です。


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エルフナインと流しそうめん

バーに色が着いただと…?
こんなの初めてだぞ…。
お気に入り数もいつの間にか50以上になっていたりしたのでビックリした。
こんなの今まで小説投稿してきて初めてなので感無量です!
ありがとうございます。


 ドラえもんside

 

 

 

 

「ふう~、暑い……」

 

「こんなに暑いと溶けちゃいそうだね……」

 

 僕と響ちゃんはそこらで買ったアイスを食べながら、キャロルちゃんとエルフナインちゃんの研究室に向かっていた。

 なんでも最近研究に忙しくて食堂にもめったに来ないらしい。

 この暑さで心配になった響ちゃんが様子を見てこようと今向かってるわけだけど……、なんでも廊下の冷房が故障かなにかで機能してないらしく、正しく地獄のような暑さとなっていた。

 

「キャロルちゃん、エルフナインちゃん。大丈夫?」

 

「やあ、二人とも……。大丈夫?」

 

「あ、響さん。ドラえもんさん。こんにちは」

 

「立花響にドラえもんか……。何のようだ」

 

 よかった……。思ったより元気そうだ……。

 あ、でも目の下に隈ができているや……。無理をしてないといいけど……。

 聞いたところによると徹夜で作業をしており、まともな食事も取っていないらしい 。

 最初は元気そうに見えたけど、よく見ると二人とも足元がおぼついていない。相当の無理をしているようだ。

 二人は今、シェム・ハとの戦いで大破してしまった自動人形(オートスコアラー)達を甦らせるために作業してるんだけど、少し位は休まないと身が持たないかもしれない……。

 

「やっぱり少しは休んだ方がいいよ」

 

「これくらいなら問題はない。食事も必要最低限の栄養だけで事足りる」

 

「え? で、でもそれだと体に悪いよ。やっぱりちゃんと食事も取らないと……」

 

「くどい! 問題ないと言っている」

 

「二人とも、心配してくれてありがとうございます。もう少しで一区切りつくのでボクは大丈夫です。

 それに、ボクもできるだけ早くみんなに会いたいですから……」

 

 そう言いながら微笑むエルフナインちゃん。だけど、どこかその笑顔は無理をしてるようにも見えた。やっぱり心配だな……。

 

 

 

 *******

 

「そうか……、それは心配だな……」

 

 その事を弦十郎さん達に報告すると、深刻そうに首を捻った。

 

「どうにかして二人に……せめて何か美味しいものでも食べさせてあげたいんですけど……、師匠は何かいい案ありません?」

 

「う~む。そうだな……」

 

 やっぱり難しいか……。でも、どうにかして二人を休ませてあげたいし、何かいい案はないものか……。

 

「じゃあ、流しそうめんはどうデスか? エルフナイン大好きじゃないデスか」

 

「あ、確かにそんなイメージあるね。今夏だしちょうどいいや」

 

 確かに、エルフナインちゃんは前は錬金術を駆使して巨大流しそうめん機を作ったりしてたし、南極での調査の時も流しそうめんに喜んでくれていた。キャロルちゃんもなんやかんや流しそうめんをエルフナインちゃんと一緒にたくさん食べていたし、上手く行くかもしれない。

 

「だが、今のあの二人がそう易々と部屋から出るとは思えんが……」

 

「まあ、確かにそうだよな……」

 

 翼ちゃんと奏さんの言葉を聞き、確かに今の二人は研究に没頭するあまり外に出ようとしないだろう。

 これで振り出しか……。

 いや、まてよ……。

 

 

「そうだ! 未来の流しそうめん機を使えば!」

 

「え? 未来にも流しそうめんあるの?」

 

「もちろん! ちょっと待ってて」

 

 えーと、どこにあったかな……。最後に使ったのがロボット育成学校時代だったからな……。かなり奥の方にあるはず……。

 あ、あった! 

 

 

 

 

 

「スーパー流しそうめん!」

 

 

 

 

「これが未来の流しそうめんなのか?」

 

「そう。このタブレットにはここら周辺の地図が載ってあって、そこをこうして、ペンで結ぶと……」

 

 僕はタブレットにS.O.N.G基地内の地図をインストールし、現在地からキャロルちゃん達の部屋までを線で結ぶ。

 すると、竹の部分が淡く発光し……

 

「わっ! 伸びた!!」

 

 竹の部分はぐんぐんと伸びていき、キャロルちゃん達の部屋に向かっていく。

 ある程度進むと今まで伸びていた竹がピタりと止まった。どうやら着いたみたいだ。

 

 

 

 

 *******

 

 エルフナインside

 

 

「ふう」

 

 やっとここまできた……。

 ボクは今、キャロルと一緒に自動人形(オートスコアラー)達の修繕作業に取りかかっていた。

 あの時、ノーブルレッドからボクを助けてくれた大事な皆。もし皆がいなければ、ボクはキャロルや皆さんが助けてくれるまで持たなかっただろう。

 あの時のお礼を言うためにも、ボクは皆を甦らせたい。

 その思いはキャロルも同じだと思う。

 このペースならば、あと数日もあれば、四人を甦らせることができるはずだ。

 頑張らないと……。

 

 コンコン

 

「ん?」

 

 ドアを叩く音がしたのでボクはとりあえず開けてあげることにした。また、ドラえもんさんたちが来たのかな? 

 

「はい……ってうわぁ!?」

 

 ところが予想に反して出てきたのはどこから伸びてるかわからない大きな竹筒だった。なんなんだろう。

 

「な、なんですか? これは?」

 

「落ち着け。どうせドラえもんの秘密道具だろう。全く、なにを考えてるんだか……」

 

 キャロルがそう言うと竹筒の先端からモニターが現れ、そこには先程別れた響さんとドラえもんさんの姿が写っていた。

 

『やあ二人とも。ちゃんと見えてる?』

 

「はい。見えてはいますが、これは一体」

 

『頑張っている二人にご褒美をあげようと思って。竹筒の先端にお椀が出てくるから二人とも準備して』

 

 お椀? 確かに少し目を離した隙に先程までなかったお盆があり、その上には汁の入ったお椀とお箸が置いてあります。

 これは……。

 

『じゃあ、早速流すからじゃんじゃん食べなよ』

 

「な、流す? あの響さん。これは一体?」

 

 その時、竹筒の向こう側から何かが水流に乗って流れてきた。突然のことに驚いて唖然とするボクとは対照的にキャロルは冷静に流れてくる何かをお箸で器用に取った。

 

「これは……流しそうめんか?」

 

「な、流しそうめんですか!?」

 

『そう。さっきドラえもんも言ってたけど、頑張っている二人に私たちからのご褒美だよ。たくさん食べてね』

 

 そうか……。響さんはボクたちの体を案じてこんなことをしたのか。本当にここにいる人達は優しい人達ばかりだな……。

 そうだ。皆さんに心配をかけるわけにはいかない。皆さんがボクたちのために用意してくれたのなら、ボクは……。

 

「……キャロル。食べましょう。流しそうめんを」

 

「何故オレが……、と言いたいが、ここまで準備されては仕方ないか」

 

 そうこうしているうちに流れてくるそうめん。そしてそれを食べるボクたち。

 まるで皆の優しさがボクたちの疲れを癒してくれるかのように頑張る力が漲ってくる。

 

「美味しいですね。キャロル」

 

「確かに旨い。なんか癪だがな……」

 

 そして時が経ち、ボクたちも満腹になったところでこの流しそうめんは終了した。

 

『また食べたかったら作ってあげるから、頑張ってね二人とも』

 

「はい。ありがとうございます」

 

 その言葉を最後にモニターは消え、竹筒は元の場所に戻っていった。でもさっきまでの疲れは全て流しそうめんで回復しました。今なら更に作業がはかどる気がします。

 

「頑張りましょう。キャロル」

 

「言われるまでもない」

 

 あと数日でまた会える。待っててね、皆。

 




後日、四体の人形に抱きつくエルフナインとそれを見て微笑むキャロルの姿が目撃されたな貸されなかったとか…。


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復活?オートスコアラー

前回の続き的な…?


 エルフナインside

 

 

「やった……。ついに……」

 

「ああ。遂にあいつらを甦らせることができるな」

 

 ボクとキャロルは先の戦いで大破してしまった自動人形(オートスコアラー)の修復作業を行っていた。連日の作業により、大元となる機体は修復完了。あとはこの術式を起動させるだけ……。

 

「よし、やるぞ」

 

 最後の術式は皆の(マスター)であるキャロルが執り行うことになった。キャロルは掌を掲げ、術式を発動する。

 見ただけでその力が伝わってくるほどのエネルギーを込めたその術式は四つに別れ、それぞれ皆の機体に組み込まれていく。

 

「よし、このまま……」

 

 そう呟くとキャロルの術式に籠るエネルギーが更に大きくなった。これで皆に会える……そう胸を撫で下ろした瞬間、突如術式が赤く発光した。

 

「こ、これは!?」

 

「ば、馬鹿な!? 術式に不具合だと!?」

 

 そ、そんな!? キャロルが失敗するだなんて……。も、もしかしたら連日の徹夜による無理が? 

 ボクたちの徹夜作業がこんな形で仇となるだなんて……。

 するとキャロルの術式は爆発し、辺りは煙で真っ白となった。

 

「くそ、どうなった?」

 

「み、みんなは!?」

 

 ボクたちの焦った声が部屋に響くなか、徐々に煙は晴れていき、そこには昔と何も変わらない皆の姿があった。

 

「……杞憂だったか。術式は成功したらしいな……」

 

「よかった皆……」

 

 無事に復活した皆の姿をみて思わず涙ぐむ。するとガリィがキャロルの一歩手前に来て跪く。

 

「おはようございます。マスター。再びこうしてお会いできるとは思いませんでしたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………ん? 

 

「待てガリィ。なんだ? その口調は?」

 

「ど、どうしたんですか? ガリィ?」

 

 あのガリィがこんな口調を言うだなんて……。ね、熱でもあるのかな(錯乱)

 

「ガリィ? 何を言っておるのですか? 私はファラですが……」

 

 

 

 

 

 え? 

 まさかの返しに混乱するボクたち。

 すると今度はレイアがボクたちに話しかけてきた。

 

「も~、マスターもエルフナインも間違えるだなんて酷いじゃないですか~。ガリィちゃんはこっちですよ」

 

 え!? で、でもその見た目は間違いなくレイア……。

 キャロルもガリィとレイアの思いもよらない返答に困惑している。

 

「それよりお腹がペコペコだぞ」

 

 すると今度はファラがお腹をさすりながら空腹を訴える。……ってこのしゃべり方は!? 

 

「も、もしかしてミカですか?」

 

「な、なんだこの派手な腕は!?」

 

 次はミカがレイアみたいなしゃべり方でまじまじと腕を見つめている……いや、みたいじゃなくて多分レイアなんだ。

 

「チッ……なるほどな、あべこべな人格で定着してしまったのか……。不調とはいえ、このオレが失敗するなぞ……」

 

 悔しそうに拳を握るキャロル。プライドの高いキャロルにとっては許せないことなんだろう。

 

「も、もう一度やりましょう。次こそは……」

 

「なんか爆発あったけど、大丈夫? キャロルちゃん、エルフナインちゃん!!」

 

「怪我はない!?」

 

「響さん? ドラえもんさん?」

 

 バタンと扉が開く音とともにお二人がやってきた。どうやら心配させてしまったようですね。

 あ、そうだ! ドラえもんさんならば……。

 

 

 *******

 

 ドラえもんside

 

 

 

「なるほど、そんなことが……」

 

 突如二人の部屋から響いた爆発音に心配になった僕たちはとりあえずキャロルちゃんたちの部屋に突入したけど、まさか自動人形(オートスコアラー)の皆の人格があべこべになっちゃうだなんて……。でも、人格がごっちゃになっただけならば対処は簡単だ。

 

「ドラえもんさん。どうにかできないでしょうか?」

 

「任せて。こういうときは……」

 

 エルフナインちゃんの嘆願に応え、僕は四次元ポケットの中を探る。あ、あったあった。

 

 

 

 

「トッカエ・バー」

 

 

 

 

 

「なんなんですか? この道具は?」

 

 興味深そうにトッカエ・バーを眺めるキャロルちゃんとエルフナインちゃん。

 

「この道具はその名の通り、人の体を取っ替えることができるんだ。この棒の端と端を二人でそれぞれつかむと体を取っ替える……つまり、心を入れ換えることができるんだ。

 ロボット対応だから自動人形(オートスコアラー)の皆でも使えるはずだよ」

 

「……ホント、なんでもありだなお前の道具は……」

 

 僕の説明に呆れながらそう呟くキャロルちゃん。まあ、無理もないけど。

 早速ガリィ(inレイア)ちゃんとファラ(inガリィ)ちゃんで試すと無事ガリィちゃんはもとの機体に戻った。

 

「次はミカ。お願いします」

 

「任せるんだぞ」

 

 今度はファラちゃんの機体を持つミカちゃんと入れ換えることでファラちゃんがもとに戻った。

 そして最後にレイア(inミカ)ちゃんとミカ(inレイア)ちゃんがトッカエ・バーを使うことで全員が元の機体に戻ったのだった。

 

「皆っ!!」

 

 すると感極まったのか、エルフナインちゃんが自動人形(オートスコアラー)の皆に抱きつく。

 

「あの時、助けてくれてありがとう。皆のお陰でボクは……」

 

「……気にしないでください。私達はエルフナインを守れと言うマスターの命に従ったまでですから」

 

 あの時、拐われたエルフナインちゃんを助けるため、キャロルちゃんは遠隔から廃棄躯体だった皆を甦らせた。結果的に廃棄躯体だった皆はノーブルレッドにやられてしまったけど、皆が時間を稼いだお陰でキャロルちゃんはチフォージュ・シャトーまで間に合うことができた。その事をエルフナインはずっと気にしてたようだ。

 

「よかっだね。エルフナインぢゃん」

 

 号泣しながらその光景を眺める僕と響ちゃん。キャロルちゃんもエルフナインちゃんのそばに寄り添いながら本当に嬉しそうに微笑んでいる。

 

 ……このとき、僕たちは二人のことを見ていたから気づかなかったんだ……。

 

 

 

 

 

 トッカエ・バーを持ちながら邪悪な笑みを浮かべたガリィちゃんのことに……

 

 

 

 

 

「いやぁ~ホント、未来の道具って色々あるんですね……。ホント憧れちゃいますね~」

 

「まあね。なんていったって22世紀の秘密道具だからね」

 

 ガリィちゃんの言葉に気をよくし、ドヤ顔を疲労する僕。その隙をガリィちゃんは見逃しはしなかった。

 

「アー、テガスベッター」

 

「へ?」

 

 僕がドヤ顔をしてる隙にガリィちゃんはトッカエ・バーの端を僕の掌に滑り込ませた。すると、トッカエ・バーは光輝き、気付くと僕は……

 

「わぁ──!!!? ぼ、僕がガリィちゃんに!!!?」

 

「あ、ごめんなさい手が滑っちゃいました。でも、同じ青だし問題ないのでは?」

 

 が、ガリィちゃんはそう言うけど、僕としては冗談じゃない!! 明日は久々にノラミャー子さんとデートする約束してたのに……。

 

「コラ! 何をやっているんだガリィ!」

 

「性根の腐ったガリィらしい……」

 

 それを見たキャロルちゃんは怒ってガリィ(in僕)ちゃんを叱ろうとした。

 いいぞ、その調子だ。

 

「まあまあ、マスターもどうですか?」

 

 そう言いながらトッカエ・バーの端を差し出すガリィ(in僕)ちゃん。すると、キャロルちゃんは差し出されたトッカエ・バーをつい反射的につかんでしまった。

 

「あ」

 

「あ」

 

 時既に遅し、トッカエ・バーはまたも光輝き、今度はキャロルちゃんが僕の身体に入り、ガリィちゃんがキャロルちゃんの身体に入ってしまった。

 

「これがマスターの身体ですか……。人間の身体も意外に扱いやすいんですね……」

 

「オイガリィ!! 今すぐオレの身体を返せ!!!」

 

 完全に怒ったキャロル(in僕)ちゃんがガリィ(inキャロル)ちゃんに掴みかかろうとする。するとガリィちゃんは……

 

「落ち着いてくださいよマスター。これもいい実験じゃないですか? 

 それに、マスター前々から未来のロボットに興味を持ってたんだし、調べるのにちょうどいい機会なのでは?」

 

「……確かにそうかもな」

 

 いやいや、それは困るよ。

 

「納得しないでよキャロルちゃん!!」

 

「……なんか、ガリィの身体でそのような挙動は少し違和感があるな」

 

 そんなこと言ったって……。ん? 

 なんだろう。気のせいじゃなければ響ちゃんがすごいうずうずした目でガリィちゃんを見てるんだけど……

 ま、まさか……。

 

「私もやりたーい!」

 

「あ、ガングニールの脳内お花畑さん」

 

「立花響だよ!!!」

 

「やりたいんですか? いいですよ」

 

「だ、ダメー!!!」

 

 止めはしたが時既に遅し、こんどは響ちゃんがキャロルちゃんの身体に入ってしまった。

 

「わーい。キャロルちゃんの身体だー」

 

「オレの身体で遊ぶな!!!」

 

 身体が入れ替わってはしゃぐ響(inキャロル)ちゃんと響ちゃんに怒るキャロル(in僕)ちゃん……。

 あー、もうすでにややこしいことに……。駄目だ。ガリィちゃんと響ちゃんにこの道具を持たせてはいけない。

 早く回収しないと……。

 

「響ー。いるー?」

 

自動人形(オートスコアラー)たちの修理が完了したと言うのは本当か?」

 

「おお。本当に皆いるのデス」

 

 ………………嫌な予感。

 

「あ、未来。これ持って」

 

「え? えっとキャロルちゃんだよね……。どうし……」

 

 カッ

 

「え? 私の体がキャロルちゃんに?」

 

「わーい。こんどは未来の身体だー」

 

「はぁ? なんだこりゃ!」

 

「まあまあ、イチイバルの装者さんも折角なんで……」

 

 そうこうしている内に二人はみるみる入れ替わっていく。

 

「なんじゃこりゃー!?」

 

「こ、これが奏の身体……。大きい……」

 

「あれ? 切ちゃんどこ?」

 

「調! 私は翼さんの身体にいるのデス。で、調はどこに……?」

 

 ああ、どんどんややこしいことになっていく……。

 一体どうすればいいんだ~。




後日、ちゃんと元の身体に(なんとか)戻ることができましたとさ。
めでたしめでたし。


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翼ちゃんとコピーロボット

今回タイトル詐欺


 ドラえもんside

 

 

 

 

「あ、いたいた。お~い。ドラえも~ん」

 

「どうしたの? 翼ちゃん?」

 

 近頃任務もあまりなく、平和になってきた。それゆえに翼ちゃんたちヅヴァイウィングもS.O.N.Gとしての仕事ではなく本業の、アーティストとしての仕事が多くなってきたように感じる。

 

「実は、コピーロボットを貸してほしいんだ?」

 

「コピーロボット?」

 

 コピーロボットはもう一人の自分を作り出すロボットだ。あまり翼ちゃんが必要とするタイプのものとは思えないけど……。

 

「別にいいけど、なんでコピーロボットなんか?」

 

「ああ、実は私が剣士としてどれほどのものとなっているのかが知りたくてな……」

 

「?」

 

 それとコピーロボット。一体なんの関係がある僕は首をひねった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ******************************************

 

「なるほど……こういうことだったのか」

 

 僕は訓練用のシュミレーションルームにてコピーロボットと戦う翼ちゃんの姿を見ていた。

 コピーロボットで自分自身のコピーを作り、それと戦う。確かにいい訓練になるだろう。

 

 コピーとはいえ剣士として超一流の腕を持つ翼ちゃんだ。やはりかなりの苦戦を強いられている。

 だが、その顔には笑みが浮かんでいた。

 ここにいるシンフォギア装者たちは全員が異なる武器を使っている。

 純粋な剣士同士での訓練なんてなかったから翼ちゃんも楽しそうだ。

 

「あれ? 翼さんが二人いる?」

 

「ど、どういうことデース?」

 

 しばらく眺めていると調ちゃんと切歌ちゃんの二人が入ってきた。二人に事情を説明すると面白そうに話を聞いていた。

 

「コピーロボットを使って自分自身と戦う……。考えたこともなかった……」

 

「なんだか面白そうなのデース」

 

 確かに面白そうだ。こういう使い方があるのなら響ちゃんvs響ちゃんみたいな前世のアプリみたいな戦いを擬似的に再現できそうだ。

 もっとも人格はオリジナルと同じだから完全にではないけれど……。

 

「ハアー!!!」

 

 バシッ

 

 どうやら決着がついたようだ。

 

「おお、どっちの翼さんが勝ったんデスか?」

 

 僕たちはドキドキしながら二人の翼ちゃんを見る。

 すると攻撃を受けた翼ちゃんが元のコピーロボットへと姿を変えた。

 どうやら本物が勝ったらしい。

 

「フゥー。我ながら強敵だったな……」

 

「お疲れ様です。翼さん」

 

「月読。それに暁も……。見ていたのか?」

 

「ハイ! とってもカッコよかったデスよ」

 

「そう言われるとなんだかむず痒いな……」

 

 でも切歌ちゃんの言う通り本当にカッコよかったと思うよ。達人同士の真剣勝負って感じで手に汗握ったし。

 まあ、途中お互い速すぎてどっちが本物なのかわからなくなっちゃったんだけどね……。

 

「私たちもやってみようかな?」

 

「おう、それは面白そうデース」

 

 次は調ちゃんと切歌ちゃんの二人がやってみることに……。

 どちらの二人もすごいコンビネーションを発揮していて面白い戦いになっている。

 すごいと思えるのが調ちゃんも切歌ちゃんもコンビネーションの際にどちらが本物なのかがちゃんとわかっているという所だ。

 普通全く同じ顔の人がいたら混乱すると思うけど、長年の積み重ねからか二人ともそんな気配は微塵も見せず連携を駆使してコピーと戦っている。

 

「へぇ~。そんなことやっているんだ」

 

「確かに面白そうではあるな……」

 

 途中響ちゃんとクリスちゃんもやってきたので二人にも後で貸してあげることとなった。

 しかし、この時僕たちはまだ知らなかった。

 

 

 この訓練を思いもよらない人がやることになるとは……。そして、それが思いもよらない出来事を引き起こすとは……。

 

 

「く、こうしてやってみると……私もちゃんと強くなっているってのがわかるね!!」

 

「ああ、そうだな。自分と戦うってのもたまには悪くねぇ!!」

 

 調ちゃんと切歌ちゃんの戦いが終わり(ちなみに勝ったのはオリジナルの方)、今やっているのは響ちゃんとクリスちゃんのコンビだ。

 こちらも苦戦しつつもきちんと対応し、なんとか勝利を納めることに成功した。いやぁ~。どの戦いも手に汗握る名勝負だったな……。

 

「じゃあ、次は誰かやる?」

 

 数々の名勝負を生んだvsコピーロボット。マリアさんや未来ちゃん、奏さんにセレナちゃんも続々とやってきたし、次はどんな戦いになるのだろうと少し楽しみにしながら訪ねてみる。

 

「ふむ、ならば俺にもやらせてはくれまいか?」

 

 すると扉が開くやいなや、とある男の人が訓練室に入室してきた。

 

 そこに現れたのは人類の最終兵器。歩く憲法違反。生きとし生けるものの中で最強の男。風鳴弦十郎司令その人であった。

 

 

 

 

 

 

 *******

 

 

 ドゴーン!!! 

 

「た、大変だ!! 訓練室から凄まじい衝撃波が!!!」

 

 S.O.N.Gオペレーター・藤尭朔也は衝撃波のあまりの破壊力に顔を青ざめながらそう叫んだ。

 二人の弦十郎が激突したときに発した衝撃波により、S.O.N.G司令室の面々は皆戦々恐々としていた。

 

「こ、このままでは本部が持ちません!!!」

 

 友里あおいもまた二人の戦いに顔を青ざめながら被害を確認する。映像内で二人の弦十郎が拳を交えるごとに発する衝撃波。その衝撃だけで訓練室の壁は崩壊寸前となり……。

 

「うわ!? な、なんだ!?」

 

 S.O.N.G専属の研究員であるキャロルが研究している一部の聖遺物が破損し……。

 

「た、助けて──!!!」

 

 まるで大地震のような振動が本部全体を襲っていた。

 職員たちが逃げ惑うその光景はさながら地獄絵図のようだったとかなんとか……。

 

 

 

 そして当の本人たちはというと……

 

「まだまだ行くぞ!!!」

 

「来い!!!」

 

「あわわ、ど、どうしようクリスちゃん!?」

 

「アタシに聞くなバカ!! ってああ、とうとう部屋の壁が完全に壊れちまったぞ!!」

 

「シンフォギアの攻撃とかにも耐えれるほど頑丈なのに……」

 

「と、とにかく退避──!!!」

 

 久しくなかった強敵との戦いを楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 ******************************************

 

 

 

 その後、コピーした弦十郎のあまりの強さにロボ自体が耐えきれず自ら自壊したことによって一連の騒動に終止符が打たれ、S.O.N.G職員たちは皆後処理な追われていた。

 

「……もう二度とコピーロボットをこんなことに使わないでくれ……」

 

「はい……」

 

 藤尭の懇願にドラえもんは頷くことしかできなかった……。




最初弦十郎とコピーロボットにするか悩んだけど最初この案を出したのは翼さんということで…。

ちなみにコピーロボットでシンフォギアまでコピーできるの?という疑問もあるかもしれませんが、コピーロボットは服などもコピーできるため、変身した状態でボタンを押せばシンフォギアもコピーできるというオリ設定。(ただし、本人の技術はともかく性能はオリジナルほどではないない。)
逆にOTONAはシンフォギアみたいな特別な装束もなく素で強いため完コピできる。(ただし、力が強すぎて自壊する可能性がある。)
矛盾はあるかもしれませんが、こういう設定だと無理やり納得してください。


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響ちゃんと王ドラ

UA10000突破&お気に入り120人越え
皆様
本当にありがとうございます!!m(__)m


 響side

 

 

 

 ふー、つかれた……。今日は大変だったな……。

 結局居残りになっちゃったし……。ドラえもんや未来に慰めてもらおう……。

 

「ただいまー! 未来ー! ドラえもんー! いるー?」

 

 部屋を開けてみるとそこにはドラえもん……ではなく、中国の胴着を着たオレンジ色のネコ型ロボットが背を向けて座っていた。

 

「おや、響さん。お久しぶりです」

 

「あー王ドラさん。久しぶり」

 

 寮に戻ると未来とドラえもんはおらず、代わりにドラえもんの親友「ザ・ドラえもんズ」のメンバーの一人、中国四千年究極のカンフーの異名を持つほどの達人・王ドラさんがいた。

 

「今日はどうしてここに来たんですか?」

 

「実はドラえもんが定期の健康診断に行くため未来に帰ることとなり、今日一日は代理としてわたしがここに来ることになったのです」

 

「あ、そうなんだ」

 

 ちなみに未来は買い物のためスーパーに。

 本当は王ドラさんが行こうとしたらしいが、お客さまということで未来が断ったそうだ。

 ということで未来は今はいないらしい。

 ちょっと残念……。

 

「ただいま響」

 

「!? 未来!!!」

 

 流石私の日だまりだ。ちょうどいいタイミングで帰ってきた。

 

「未来~。疲れたよ~」

 

「よしよし、頑張ったね」

 

 ああ、これだけで疲れがどんどん癒えていく。ほんと、未来の存在は癒しだな……。あ、もちろん未来だけじゃなくてドラえもんも。弓美ちゃんも創世ちゃんも詩織ちゃんだって小学生の頃からずっと一緒にいた私の大事な友達なんだし……。

 でも、やっぱり一番は未来とドラえもんの二人かな……。一番長く私と一緒にいてくれた大親友の未来。血の繋がりとかはないけど家族であるドラえもん。二人とも大事な私の日だまりだ。

 

「相変わらず響さんと未来さんは仲良しなんですね」

 

「へへへ」

 

「/////」

 

 

 

 

 

 

 *******

 

「いやあ、美味しかったな~。ご馳走さま」

 

「ご馳走さまでした」

 

「お粗末様。二人とも喜んでくれて嬉しいよ」

 

 本日のメニューは未来お手製のラーメン、餃子、炒飯。

 中国出身の王ドラさんに合わせたらしいけど、こんなの作れるなんて未来ってやっぱり天才じゃないかな? 

 

「本当に美味しかったです。中国四千年の本場の味にだって負けていません」

 

「王ドラさんにそう言ってもらうと自信つくな」

 

 お皿洗いを手伝いながら未来と談笑をする王ドラさん。

 後片付けも大体終わり、あとはS.O.N.Gに報告に行くだけとなった。

 

「折角だから、王ドラさんも一緒に行く?」

 

「いいのですか? 是非とも行かせてください」

 

 未来の提案により、王ドラさんも一緒に本部に行くことになった。そういえば王ドラさんは共闘とかはしたことあったけど、本部の中に行くのは初めてなんだっけ? 少し楽しみだな。

 あれ? でも王ドラさんって確か……

 

 

 

 *******

 

「こんにちは」

 

「こ、ここここ、こんにちゅは」

 

「やっぱり……」

 

「……そういえば王ドラさんはこういう人だったね……」

 

 本部司令室。王ドラさんは司令室の面々一人一人と丁寧に挨拶を交わしていた。

 でも、あおいさんたち女性職員に挨拶をすることになった途端、私が懸念した通り緊張してろくに話せなくなってしまった。

 王ドラさんは女性を前にすると緊張してうまく話せなくなってしまうのだ。

 例外としては小学生の頃からよく遊んでた私たちとドラミちゃん、それと恋人のミミ子さんぐらいかな? 

 共闘してくれた時も戦いの際は気にならなかったんだけど、戦いが終わると他の装者たち相手にもたちまち骨抜きになってしまったりしていたっけ……。

 

「やあ、王ドラくん。久しぶりだな」

 

「あ、弦十郎さん。お久しぶりです」

 

 そうこうしているうちに師匠もやってきた。

 王ドラさんは同じ拳法の使い手である師匠とは仲も良く、会うたびに軽い手合わせをしている。

 

「どうだ。久々に会ったことだし軽い手合せでも……」

 

「ダメですよ司令。先日の事件を忘れたんですか?」

 

「あ、ああ……。そうだったな」

 

 実は先日のコピーロボット事件の後、しばらくの間師匠は訓練室使用禁止が言い渡されたのだ。

 まあ、確かにあれは凄まじかったからな……。

 

「……なるほど。となると少し困りましたね。久々に弦十郎さんと組手がしたかったのですが……」

 

 確かに王ドラさんは一流の拳法家。強い人と組手とかはしてみたくなるよね。

 あ、そうだ。

 

「じゃあ、私と組手やりましょうよ。王ドラさん!」

 

「! よろしいのですか?」

 

「もちろん」

 

 王ドラさんや師匠みたいに一流って言う訳じゃないけど私だって拳法齧ってるし一度王ドラさんとも組手したかったんだ。

 王ドラさんは私が知るなかでも素手なら師匠の次に強い人だし、学べるところも多々あるだろう。これを機にレベルアップできるといいな……。

 

 

 

 

 *******

 クリスside

 

「それでこうなっているって言うわけか……」

 

 報告ついでに少し体を動かそうと復旧したばかりのシュミレーションルームに向かうとすでに使用済みになっており、窓から覗いてみるとバカと王ドラのやつが戦っていた。

 未来が近くにいたので話を聞くと今日はドラえもんの代わりに王ドラがいて戦えないおっさんの代打でバカが戦っているらしい。

 

「強くなりましたね響さん!」

 

「まだまだこれからですよ! 王ドラさん!」

 

「そうこなくては!!」

 

「全力で行きます!!」

 

「来なさい!!」

 

 更にどんどん戦闘が激しくなってきた。また壊れるんじゃねえの……。

 

「楽しそうだね響。王ドラさんも」

 

 ……まあ、確かにそうだな。あのバカも王ドラも楽しそうに戦いやがる。あのバカは前々から王ドラに拳法教わってみたいとか言ってたし、念願かなってよかったんじゃねえの? 

 ただ、これ以上はあたしのやる時間がなくなっちまう。他の訓練室はまだ修理中だし、どうしたものか……。

 

「折角だからクリスも一緒にやれば?」

 

 確かにそれも手かもしれない。それにドラえもんズ……正確に言えばその中の一人とは前々から戦ってみたいと思っていたし予行演習にいいかもしれねえ。

 

「……そうだな、あたしも混ざるか」

 

 バカも圧されかけてるし、ここはあたしが手を貸してやるか。

 

「おい! あたしも混ぜろ!!」

 

「!? あなたは確か……クリスさんですね。いいでしょう二人でかかってきなさい!」

 

「いくよクリスちゃん!」

 

「おう!!」

 

Killter Ichaival tron(銃爪にかけた指で夢をなぞる)

 

 早速あたしはペンダントを掲げ、シンフォギアを纏うための歌、「聖詠」を口ずさみ、イチイバルのシンフォギアを身に纏う。

 

「先手必勝!!」

 

MEGA DETH PARTY

 

 あたしは大量のミサイルを王ドラに向けて放つが……。

 

「甘いですよ」

 

 王ドラは全てのミサイルをまるで舞うように躱し、最後の一発をヌンチャクで巻き取り跳ね返してきやがった。

 

「くっ、マジか!?」

 

 やっぱ強え……。

 

「大丈夫? クリスちゃん?」

 

「これぐらい! なんともねえ!」

 

 こうしてドラえもんズと戦ってみると壁の厚さがよくわかる。でも諦めねえ。いつか必ずお前も越えてやるぞ。ドラ・ザ・キッド。




知らない人もいるかもしれないので念のため。

王ドラ
ドラえもんの親友。ザ・ドラえもんズの一人
出身は中国
別名、中国四千年究極のカンフー
好きな食べ物はラー油、酢、醤油をかけたどら焼き
苦手なものは女の子。目にすると緊張して喋れなくなる。
嫌いなものは5円玉 ドラえもんのネズミ。ドラミちゃんのゴキブリ並の拒絶反応を起こす、
ロボット学校一の秀才であり、拳法の達人。
漢方医学も学んでおり、自信家だが鍛練を怠らないなどスペックを見ると割と隙がない完璧超人。ただし、あがり症であり、女性の前だと特に顕著。
今回も戦闘時は問題なかったが、クリスとの戦いの後、平常時に戻ると再び緊張して話せなくなってしまった。

最近、回りの人達がザ・ドラえもんズ知らなくて軽くショックを覚えた今日この頃。


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奏さんの誕生日

 ドラえもんside

 

 

 

「フンフンフ~ン♪」

 

「楽しそうだね、ドラえもん」

 

 もうすぐ奏さんの誕生日。というわけで今日はプレゼントを買いに響ちゃんとショッピングモールに来ていた。誕生日プレゼントも買ったし、パーティーの準備もできている。奏さん喜んでくれるといいな……。

 ……おや? あそこにいるのは……? 

 

「翼さーん。何してるんですか?」

 

「立花、それにドラえもんも……」

 

 やっぱり翼さんだ。帽子を被って多少は変装してるつもりだろうけどバレバレである。

 なにやらベンチで本とにらめっこしている。

 何々? 「友達への誕生日プレゼント」だって? 

 

「ああ、実は恥ずかしい話まだ奏になにを送るのか決まっていないんだ」

 

「ええ!? そうなんですか?」

 

 これは少し意外だな……。てっきりもう決めてるのかと思ってたけど……。

 

「……でも、奏さんは翼ちゃんが渡すものならなんでも喜ぶと思うよ」

 

「ああ、実際奏は何を渡しても喜んでくれる。だからこそ、何を渡せばいいのか逆にわからなくなってしまってな……」

 

 ああ、なるほど。奏さんは自分の片翼とも言うべき翼ちゃんのことを本当に大事に思っている。そんな奏さんにとっては翼ちゃんからのプレゼントは皆等しく価値のあるものに違いない。

 でも、何を渡しても喜んでくれるということは、逆に何を渡しちゃダメなのかもわからないということだ。

 それで翼ちゃんは悩んでいるのか……。

 

「候補とかはあるんですか?」

 

「ああ、最近大人気だという菓子なんかはどうだろうと思っている。だが、他にも服だったり本だったり色々あって正直決めあぐねているんだ」

 

 ふむ……。でも、そんなに難しく考える必要はないと思うな。

 

「こういうのは気持ちが大切だと思うよ」

 

「気持ち?」

 

「僕が今まで貰ったプレゼントで一番嬉しかったのはこの時代に来てから初めての誕生日パーティーで響ちゃんがどら焼きをわざわざ手作りで作ってくれたとき。

 慣れない料理で傷だらけになりながらも作ってくれたどら焼きが僕の人生で一番美味しいどら焼きだったんだ」

 

「い、いやぁ~。お恥ずかしい」

 

 響ちゃんは恥ずかしいのか少し照れてるけどこれは事実だ。

 あの時食べたどら焼きの味は今でも鮮明に思い出せる。

 それはきっと響ちゃんの気持ちがたっぷりたこもったどら焼きだったからなんだ。

 

「だから、翼ちゃんもそんな難しく考えずに気持ちのこもったプレゼントを渡せばいいと思うよ」

 

「大事なのは気持ち……か。ありがとう。感謝するぞドラえもん」

 

 どうやら吹っ切れたのか、翼ちゃんは立ち上がって何処かへ行ってしまった。

 一体翼ちゃんはどんなプレゼントを渡すのか少し気になるな……。

 

 

 

 

 

 ***********************************

 

 

 

 

 

「「「「奏さん。お誕生日おめでとう!!!」」」」

 

「ああ。ありがとな皆」

 

 パーティー当日、僕たちはたくさんの料理とともに奏さんの誕生日を祝った。

 途中響ちゃんが切り分けた奏さんの誕生日ケーキを何故か二つ食べるというハプニングがあったものの、皆楽しみながらパーティーを行った。

 

「ふうー、食べた食べた。皆に祝って貰うとやっぱり嬉しいな……」

 

 ビンゴゲーム等の余興を楽しみながらそう言う奏さん。

 喜んで貰えたようで何よりだ。

 

「あ、あの。奏、いい?」

 

「ん? どうした? 翼?」

 

 するとなんだか翼ちゃんが恥ずかしそうにしながら奏さんに話しかける。その手にはなんだか可愛らしい柄の小さな袋が握ってあった。

 

「お、緒川さんに教えてもらって……。少し不格好になったけど……」

 

 翼ちゃんはそう言いながら袋を奏さんに渡す。奏さんが袋を開けてみると、そこには可愛らしいクッキーがあった。しかも、その形は……。

 

「ひょっとして……、これ私か?」

 

「う、うん。上手くできなかったんだけど、それでも! 

 気持ちを込めて作ったよ!! だ、だから……、その……」

 

 たまに翼ちゃんは奏さんと話す際、少し喋り方が乙女みたいになるときがある。

 一期でもそうだった気がするし(あまり覚えてないけど……)奏さんの前だと素が出せるのかもしれないな……。

 

 そんなことを思いながら僕は二人を見つめる。

 

 少し、間が空いたが奏さんは躊躇なくクッキーを頬張る。

 

「ど、どう?」

 

 バリバリゴクン

 

「めっちゃクチャ旨いよ。多分今まで食ったクッキーの中で一番」

 

「本当!?」

 

 奏さんのその言葉に嬉しそうに微笑む翼ちゃん。

 それを見ながら奏さんは残りのクッキーも全部平らげた。

 

「あー、美味しかった。ありがとな翼。また作ってくれてもいいんだぜ」

 

「うん。また、作るよ」

 

「ハハ、ありがとな翼」

 

 こうして二人が仲良くする光景を見るとあの時、響ちゃんを助けに行ったこと、奏さんの絶唱前に間に合ったことは間違いじゃなかったんだと肯定された気になる。

 本来奏さんが生き残ることは原作ブレイクにもなるということ。

 助けたあとになって本当にこれでよかったのかと悩んだこともあったっけ……。

 

 でも……。

 

 あの時、助けることができなかったらこうして誕生日を祝うこともなかった。奏さんと何度も助け合い、友情を育むこともなかった。

 ifの話をしても仕方ない。

 今、僕たちがいるこの世界こそが、僕にとっての現実なんだから。

 

 だから今はただ祝おう。この人が生まれてきた日をむかえることができたことを……。

 

 

 

「ハッピーバースデー奏さん」

 

 

 僕は二人を見ながらもう一度そう呟いた。

 



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調ちゃんと宿題

 調side

 

 

「調~。ここはどうすればいいデスか?」

 

「ここはこうすれば……」

 

「おお、ありがとうデス。調」

 

 私たちは夏休みの課題を切ちゃんと二人で行っていた。

 夏休みは楽しいけど課題が多いのが玉に瑕だな……。

 

「何かわからないところがあれば先輩として教えてやるぞ」

 

 なぜか休み中、私たちの家によく来るクリス先輩がそう言いながら間違ったところを教えてくれる。

 何でここにいるかはわからないけど、心強い味方だ。

 何でここにいるかはわからないけど……。

 

「去年と同じく毎日のようにくるデスね。クリス先輩」

 

「きっと寂しいんだよ……」

 

「聞こえてるぞ!! お前ら!?」

 

 あ、しまった。

 とりあえず謝ったあと、私たちは再び課題に目を落とした。

 うう、やっぱり多くて少し憂鬱になる。

 でも、日記以外は今日中に終わらせよう。

 

「そういえば、クリス先輩の宿題はどうなったんデス?」

 

「そんなのとっくに終わらせたに決まってんだろ」

 

「デス!?」

 

「凄い……。さすがクリス先輩……」

 

 この人は少し寂しがりやだけど、戦闘面でも勉強面でも凄く頼りになる人だ。

 時折聞いてもないのにさりげなく間違ったところを教えてくれるし、本当に心強い。

 

「これくらい当たり前だ」

 

「さすが先輩! 頼りになるのデス」

 

 そう切ちゃんに言われながらドヤ顔になるクリス先輩。

 こういうところ可愛いんだよなこの人。

 

 そんなことを考えてると、家のインターホンがなったので、取り敢えず出ることにした。

 

「あ、ドラえもん。どうしたの?」

 

 ドアを開けるとドラえもんが少し呆れたような顔をしながら私の前にたっていた。

 

「調ちゃん。少ーしの間だけ匿ってくれない?」

 

「? わかった……」

 

 匿う? 一体どうしたんだろう? 

 不審に思いながらも私はドラえもんを家に招いた。

 

「おお、いらっしゃいデス。ドラえもん」

 

「よお」

 

「こんにちは切歌ちゃん。家にいないと思ったら、クリスちゃんもここにいたのか……」

 

 どうやらドラえもんはクリス先輩の家にも来たらしい。

 匿ってくれと頼んだり、何かあったのかな? 

 

「いや、何でもないんだ……。ホント、下らないことでさ……」

 

 ? なんだろう。ドラえもんから何やらものすごく疲れたような呆れたような哀愁漂う雰囲気がする。

 気になるけど、あまり触れないでおこう。

 

「それはそうと、二人は宿題やっているの?」

 

「うん。今日中に終わらせる予定」

 

「クリス先輩も教えてくれるお陰で早く終わりそうデス」

 

「へえ。凄いねクリスちゃん」

 

「これくらい、先輩として当たり前だ」

 

「ホント……、凄いと思うよ……」

 

 まただ。ドラえもんはまたも哀愁漂う雰囲気を纏い始めた。

 本当にどうしたんだろう? 

 

 

 

 

 

 ******************************************

 

 

 

 

 

 ドラえもんが家に来てから数時間が経過した。

 宿題の残りを片付け、時折教えてくれるクリス先輩のことを見て、ドラえもんは実に微笑ましそうにしていた。

 

「もうすぐ終わりそうだな」

 

「うん。明日から思い切り遊ぼう」

 

「たくさん花火をしでかすのデース」

 

 切ちゃん……、花火しでかすは少し物騒じゃないかな。

 そう思いながらも私達はペンを進める。

 私達はラストスパートでペースアップをし、とうとう最後の課題を終わらせた。

 

「終わったデス。長く、険しい戦いでした」

 

「ありがとうございます。クリス先輩」

 

「先輩だからな。これくらい、いいってことよ」

 

 宿題も終わったことだし、明日からは切ちゃんやセレナと一緒に夏休みを満喫しよう。

 

 

 

 ピンポーン

 

 

 

 ん? 誰か来た。

 ドアを開けると今度は響さんがそこにいた。

 汗だくだけど、何かあったのかな? 

 

「ハア、ハア……。調ちゃん。ここにドラえもんいない?」

 

「? ドラえもんならいますけど、どうしたんですか?」

 

「ちょっとね」

 

 そう言いながら家に上がる響さん。

 部屋にはいるとドラえもんがゲンナリした表情で響さんを眺めていた。

 すると響さんはドラえもんを確認するや否や、満面の笑みでドラえもんを見て……。

 

 

 

「ドラえもん! お願い、自動宿題やり機出して」

 

 

 

 見事な土下座をしながらドラえもんに嘆願した。

 響さん……、それは流石に駄目でしょう……。

 クリス先輩も呆れた目で響さんのことを見ている。

 これには切ちゃんも……。

 

「そ、そんな手があったデスか!?」

 

 切ちゃん ……。

 ジト目で切ちゃんを眺めてるとドラえもんがそんなものはない、自分でやれと叫び出す。

 なるほど、匿ってくれってこういうことだったのか。

 

「お願いだよドラえもん~。明日未来と映画見る約束なんだよ~。他にも遊ぶ約束あるし、どうしても必要なんだ。頼むよ~」

 

「駄目! ないものはない! そもそもそんな汗だくになって僕を探す暇があるなら自分でやりなよ!」

 

 正論だ。

 すると寝そべっていたクリス先輩はムクリと立ち上がり、ドラえもんにすがり付く響さんの後ろに立つ。

 すかさずクリス先輩は手に持っていた参考書を掲げ……。

 

 

「お前もこいつらの先輩ならな……、先輩としての威厳をちょっとは持ちやがれ!!」

 

 

「ギャー!?」

 

 

 響さんに一閃を放った。




なお、響の宿題はクリスちゃん、未来さんの二人の手伝いもあり、一週間ほどで終わらせました。


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マリアさんの誕生日

少し詰め込みすぎた。
文才ほしい…


 セレナside

 

 

 

「よ~し、やるデスよ」

 

「マリアのため、頑張ろう……」

 

「はい。頑張りましょう」

 

 今日はマリア姉さんの誕生日。

 だから、私たち三人でケーキを作ることにしました。

 とはいえケーキ作りは難しい。

 私たちは皆ケーキ作りははじめてだから頑張らないと……。

 

「切ちゃん。生クリーム作りは終わった?」

 

「もちろんデス……ってうわぁ、しょっぱい!」

 

「だ、大丈夫ですか? 暁さん?」

 

 どうやら暁さんは砂糖と塩を間違えたようです。なんてベタな……。

 

「そういえば、セレナはちゃんと卵白を冷やしてる?」

 

「あ、はい。ちゃんと冷えるように冷凍庫で……」

 

「……レシピには冷蔵庫で冷やすって書いてある……」

 

 え? そ、そんな間違えてしまいました。

 ど、どうしよう……。

 

「ケーキ作りって難しいんですね」

 

「ううう、このままではマリアに美味しいケーキが渡せないのデス」

 

 私たちはボロボロになりつつもなんとかケーキを完成させたけど、理想としてたケーキとは言えませんでした。

 このままではマリア姉さんのケーキが……。

 

「……奥の手を使おう……」

 

「「奥の手(デス)?」」

 

 月読さんのその言葉に私たちは顔を傾けた。

 

 

 

 *******

 

 

「なるほど、それで僕のところに来たのか……」

 

「うん。ドラえもんならどうにかならないかなと思って……」

 

 なるほど、月読さんの奥の手とはドラさんのことだったんですね。

 確かにドラさんなら何かいい方法を教えてくれるかもしれない。

 

「とはいえ、僕もケーキ作りは専門じゃないからな……。どら焼きなら作れるんだけど……」

 

「そ、そこをどうにかならないのデスか? なんか、「ケーキ作り機」的な道具は……」

 

「ケーキを作れるひみつ道具とかはあるけど、やっぱりこういうのは自分達の力でやった方がいいと思うんだよね……」

 

 確かにドラさんの言うとおりだ。マリア姉さんのためのケーキは道具に頼らず自分の力で作らないと……。

 

「でも、私たちだけでは……」

 

 先程の失敗もあったからか、自信の無さげな暁さん。

 一体どうすれば……。

 するとドラさんが私たちを見て何やら悩む素振りを見せる。

 しばらく考え込むと、なにかを決心したかのように大きく頷いた。

 

「そこまで言うならプロの手を借りよう」

 

「「「プロ?」」」

 

 ドラさんのその言葉に私達は首をかしげた。

 

 

 

 

 

 

 ******************************************

 

 

 

 

 

 ドラさんがタイム電話を使い、誰かと話した後、しばらくすると私たちの家に初めて見るネコ型ロボットさんがいた。

 見た目はイタリアの国旗のような服をしていてよく似合うコック帽と出しっぱなしの舌が少し印象的です。

 

「はじめましてなんだな~。ボクはジェドーラ。よろしくなんだな~」

 

「はじめまして。セレナ・カデンツァヴナ・イヴです。よろしくお願いいたします」

 

「私は暁切歌デース。で、こっちが……」

 

「月読調です。よろしくお願いします」

 

「やあやあ、忙しいのに来てくれてありがとうジェドーラ」

 

「他ならないドラえもんの頼み、大丈夫なんだな~」

 

 なんでも彼はドラさんの学校時代のクラスメートで現在は未来の世界のイタリアで一流のお菓子職人として活躍しているらしい。

 プロの職人さんであるジェドーラさんがいれば、美味しいケーキが作れるはず。マリア姉さんのため、頑張ろう。

 

「ケーキは真心こめて作るのが大切なんだな~。ボクが間違ったところをアドバイスするから頑張って作るんだな~」

 

「「「はい!!」」」

 

 

 

 

 

 

 ******************************************

 

 

 

 

 

「「「「マリア(さん)お誕生日おめでとう──!!」」」」

 

「ありがとう。皆」

 

 お誕生日パーティー当日。

 私達は出されたお料理を楽しみながら、マリア姉さんの誕生日をお祝いする。

 ジェドーラさんも今回のパーティーに参加してくれて、皆さんに挨拶をしながら(響さんと未来さんは既に知り合いみたい)お料理を作る。

 

「お腹いっぱいだよ~。残るはケーキだね」

 

「響、マリアさんの誕生日パーティーってこと忘れてない?」

 

 料理も大半が食べ終わり、残るはケーキを出すだけだ。

 少し緊張しながらも私達三人は箱からケーキを取り出した。

 

「……これは、私?」

 

 そのケーキは桃で作ったクリームをたっぷり使った桃色のケーキ。

 さらに真ん中には私達三人がお菓子で作った小さいマリア姉さんの彫刻がちょこんと置いてある。

 ジェドーラさんにアドバイスを貰いながら作ったものだ。

 

「飴細工で作ったんだ」

 

「我ながら上手くできたのデス」

 

「頑張ってマリア姉さんを作ってみたんです。どうでしょうか?」

 

 少し不安になりながらも感想を訪ねてみる。

 すると、マリア姉さんは微笑みながら……

 

「ありがとうあなた達。とても嬉しいわ」

 

 そう言ってくれた。

 よかった。喜んでくれて……

 

 

 

 ガチャ

 

 

「お待たせたしましたセニョリータ。パーティーには間に合ったかな?」

 

 あ、ちょうど皆でケーキを食べようとしたタイミングでエル・マタドーラさんもやってきた。

 

「エル・マタドーラ。久しぶりなんだな~」

 

「おお、久しぶりだなジェドーラ。オカシナナ王国以来じゃないか?」

 

 エル・マタドーラさんもジェドーラさんとも知り合いなんだ。いや、ドラさんのクラスメートだから当然か……。

 

「遅いよエル・マタドーラ。もう皆料理食べ終わっちゃったよ」

 

「なにぃ!? そりゃないぜドラえもん」

 

「遅かったわね。何をしていたの?」

 

「なに、セニョリータのための薔薇を選んでたら少々時間がかかりましてね……」

 

「カルミンのバイトが長引いただけでしょ……。もしくは昼寝(シエスタ)していたとか……」

 

「そ、そんなわけないだろ!! ドラえもん!!」

 

 相変わらず賑やかな人だな。エル・マタドーラさんは……。

 考えてみれば、ネフィリムが暴走したときこの人が助けてくれなかったら、私は絶唱を放った後の瓦礫で潰され死んでたかもしれない。

 彼が助けてくれたお陰でコールドスリープでの治療が間に合ったんだ。

 

「本当に、ありがとうございます。エル・マタドーラさん」

 

「?」

 

 なんのことかわかってないっぽいけど本当に感謝してるんですよ。

 彼がいなければ、こうしてマリア姉さんの誕生日を祝うこともできなかったんだから……。

 

「改めまして、お誕生日おめでとうございます。マリア姉さん」

 

 私はマリア姉さんと向き合い、改めてそう言った。

 

「ありがとう。セレナ」

 

 マリア姉さんは微笑みながらそう返してくれた。




ジェドーラ
活躍地はイタリア
別名 お菓子職人
好きなもの 生クリーム入りどら焼き
苦手なもの 辛いもの
ザ・ドラえもんズの友達でパティシエをしているネコ型ロボット。常にだしてる舌は成分解析味見ベロというもので触れるとその食材の成分がわかる。
困ってどうしようもなくなると「シュッポ・シュッポ・ダンス」という煙をコック帽から出しながら汽車のように暴走して駆け回るという癖を持っている。

エル・マタドーラ
活躍地はスペインのドラセロナ
別名 スペインの赤き情熱の闘牛士
好きなもの 闘牛の剣で串刺しにしたどら焼き、女の子
苦手なもの 長い物、女装をした男
ザ・ドラえもんズのメンバーでありドラえもんズ一の怪力の持ち主。ヒラリマントの名手で闘牛士を夢見ており、スペインのドラセロナという町で焼肉屋カルミンにてバイトをしている。
プレイボーイであり、女性をすぐ口説こうとする癖があり、のび太と同等とも言えるほどの昼寝の達人でもある。場所や状況も考えずに寝る分にはある意味のび太以上。
また、ドラセロナの町の平和を守る正義のヒーロー「怪傑ドラ」として、町を守っている。






マリアやセレナたちとの出会いは偶然。
焼肉屋カルミンの焼肉を響にも食べさせようとしたドラえもんがタイム電話で出前をたのみ、タイムマシンで向かっていたら、絶唱のエネルギーとタイムホールの波長が偶然ぶつかり落下。回りをみるとネフィリムを倒したセレナが瓦礫に潰されそうになってたため、ヒラリマントで瓦礫を躱し救出。
彼女が治療でコールドスリープしたのを確認した後ドラセロナに戻っていった。(焼肉の出前は忘れている。)


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切歌ちゃんとドラメッド三世

 切歌side

 

 

 

「いや~。映画面白かったデスね。調」

 

「そうだね。切ちゃん」

 

 私達は今、映画を見終わって家に帰ろうとしてるところデス。

 たまたま用事ができて映画を観に行けなくなったという友達からチケットを譲り受けたんデスが、これが最高に面白かったデス。

 アラビアが舞台で願い事を叶えてくれるランプの精霊と共にお姫様を助けるというものでしたが、特に魔法の絨毯に乗るシーンがスリルがあってとても楽しかったデス。

 

「魔法の絨毯……。乗ってみたいデスね……」

 

「そうだね……ん?」

 

 およ? 調が私の方を向くと何か見てはならないものを見てしまったかのような表情を……。

 どうしたのデス? 

 

「切ちゃん! あれ!」

 

「へ……。わぁ!?」

 

 調が指差した方向を見ると、遠目から池で溺れている子供とそれを抱き抱える緑色の人がいた。

 どちらも溺れているように見えるのデス。というか……緑の人が暴れてるような……。

 ってこうしちゃいられないのデス。

 

「助けに行くのデス。調!」

 

「うん。私があの子を助けるから、切ちゃんはあの緑の人を……」

 

 役割分担を決めた後、私達は二人を助けるため水の中へ飛び込んだ。

 

「ギャア──!! 我輩水はダメなのであ~る!?」

 

「大丈夫デスか? ……ってあれ? アナタは確か……」

 

 これは驚きデス。

 近づくと緑の人は人ではなく、ドラえもんやエル・マタドーラと同じネコ型ロボットだったのデスから……。

 しかも、この人確か……

 

「き、君は確か……。いや、それよりもこの子を早く助けるのであ~る」

 

「だ、大丈夫デス。この子は調が助けますから」

 

「切ちゃん。その子を……」

 

 調もここまで泳いでやってきたのデス。

 早速緑の人が抱き抱えていた子供を抱え、調は岸にもどっていった。

 

「た、助かるのであ~る。そして我輩も助けてほしいのであ~る!?」

 

 

 

 

 

 

 ******************************************

 

 

 

 

 

「ふう、助かったのであ~る」

 

「それにしてもビックリしたデス」

 

「どうしてドラメットさんが子供を抱えて溺れてたんですか?」

 

 私達は水ですっかり濡れてしまったお洋服を乾かすため、子供を親に返したあと、大急ぎで帰宅したのデス。

 しかし、どうしてドラえもんズのドラメッド三世があんなところで溺れていたのでしょうか? 

 

「いや~、ドラえもんに用事があってこの時代に来たのだが……道に迷ってしまって……。そしたら溺れてる子供を見かけてしまって思わず飛び出してしまったのであ~る」

 

 我輩泳げないのに……そう付け足しながらドラメッド三世は経緯を説明してくれたのデス。

 泳げないにもかかわらず、子供を助けるために飛び込むだなんて……。

 流石はドラえもんズのメンバーなのデス。

 

「ところでお主たちは何故あんなところにいたのであるか?」

 

「それは……」

 

「二人で映画を見てたのデス。その帰りにドラメッドに会ったデスよ」

 

「そうだったのであるか……。迷惑をかけたのである……」

 

 私の言葉に気を悪くしたのか少ししょんぼりして謝るドラメッド。別に気にしなくてもいいのに……。

 

「ところで、どんな映画を観たのであるか?」

 

「おお、聞いてくれますか? アラビアが舞台の映画でとっても面白かったデス」

 

「アラビア……。我輩、サウジアラビアに住んでいるから少し嬉しいであるな」

 

 なんと! ドラメッドはアラビアに住んでいたのデスか……。

 すごい偶然なのデス。

 

「えっと、○△の□✕って映画なんですけど、知ってますか?」

 

「おお、知っているのである。我輩の時代でも根強い人気を誇る映画である」

 

「未来でも人気なんですね……。とても面白かったです」

 

「そうなのデス。特に魔法の絨毯に乗るシーンがすごくてすごくて」

 

「乗ってみたいよね」

 

 調も魔法の絨毯に憧れを抱いているようデスね。

 本当に憧れちゃうのデス。

 

「だったら、さっきのお礼に乗せてあげるであ~る」

 

「「へ?」」

 

 

 

 

 

 ******************************************

 

 

 

 

 

「わあ、スゴイスゴイ! 本物の魔法の絨毯デス!」

 

「風が気持ちいい……。でも、タケコプターとも違う変な感じ……」

 

「バリアが張ってあって太陽の熱があまり来ないようにしてるのであ~る」

 

 ほほう。それは凄いのデス。これが魔法の絨毯なんデスね。

 

「我輩暇なときはいつもこれに乗ってそよ風にあたるのである」

 

「そうなんですね……」

 

「そろそろ日が暮れるであるな……。よし、いいものを見せてやるのであ~る」

 

「へ、ってうわぁ!?」

 

 そういうと魔法の絨毯はすごい速度で移動を始めたのデス。

 早くて目が回る……。

 

「着いたである」

 

 恐る恐る目を開けるとそこには夕日の光で反射した湖が広がっていたのデス。あたりにある木々も水面に写ってとても神秘的なのデス。

 

「「……」」

 

「ここは以前この時代に来たとき見つけた場所でな……。この時代での我輩のお気に入りの場所なのであ~る」

 

「すごい……」

 

「本当にキレイデス。こんな所を教えてくれてありがとうなのデス」

 

「何、大したことではないのである」

 

 そんなことないデスよ。こんな綺麗な景色滅多に見られないのデス。

 そう思いながら、私は調と共にこの景色を心行くまで味わった……。




ドラメッド三世
ドラえもんの親友。ザ・ドラえもんズの一人
出身はサウジアラビア
別名、古代アラビア砂漠伝説の魔術師
好きな食べ物はこんがり焼いたどら焼き、フリーズドライしたどら焼き
苦手なものは水。くすぐり。
ドラえもんズ最強との噂もある魔術師。工具を出す、雷を出す、炎を出す、変身する、バリア、瞬間移動など様々な魔術を操る。面白いのは秘密道具ではなくマジの魔術という点。タロット占いも得意で命中精度はかなり高い。
また、怒ると巨大化する特殊能力を持っており、酷いときには地球や金星でお手玉をするサイズにまでなることができる。水が弱点だが友達のため、一時的に克服するときもあり、ほぼ無敵に近い。
夢は砂漠に住む子供たちのため、「ウォーターランド」を作ること。
普段はお金持ちの息子アラシンのお世話をしているが、「ウォーターランド」の件については力を借りる気はない。


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キャロルちゃんとタマシイム・マシン

キャロルの誕生日記念


 ドラえもんside

 

 

「お、おいドラえもん。す、少しいいか?」

 

「あ、キャロルちゃん。どうしたの?」

 

 キャロルちゃんは魔法少女事変の後、S.O.N.Gにて悪さをしないように監視……という名目で現在ここで研究員として働いている。

 有事の際にはダウルダブラのファウストローブを使って共に戦ってくれることもある。頼もしい仲間であり友達だ。

 とはいえ彼女の方から話しかけてくるのはとても珍しい。一体どうしたんだろう。

 

「そ、その……。あれだ……、その……」

 

「?」

 

 こんなに歯切れの悪いキャロルちゃんなんて益々珍しい。

 本当にどうしたんだろう? 

 

「た、立花響から聞いたんだが……。お前に貸してほしい道具がある」

 

「貸してほしい道具?」

 

「あ、ああ……」

 

 キャロルちゃんが秘密道具に頼るなんてことは滅多にない。

 というのも大抵の物事はなんでも一人で片付けようとするタイプだからだ。僕に頼むことなんて滅多にないからこんなに歯切れが悪いのかな? 

 それにしたっていつもと様子が違う。なにか緊張してるみたいだ。

 しばらく彼女は黙っていたが、やがて意を決したようにまっすぐと僕の目を見ながら言った。

 

「その……。タマシイム・マシンという秘密道具を貸してほしいんだ」

 

 

 

 

 

 

 ******************************************

 

 キャロルside

 

 

 その道具のことを知ったのは本当に偶々だ。立花響はオレに話しかけてくる際に今まで使ってみた秘密道具の話をする。

 正直実に興味深い。かれこれ400年以上生きてきて、技術的革命も何度も目撃してきたが、わずかあと100年ほどでああも劇的な道具を作ることが出きる時代が来るというのは正直言っていまだに信じられない。だからこそ、ドラえもんの道具は興味深い。

 そんな中、ある秘密道具を使った経験談を立花響はオレに話してくれた。

 それがタマシイム・マシンだ。

 

 タマシイム・マシン。それはタイムマシンの一種であり、魂だけが体から抜け出して、昔の自分に移る事ができるというものらしい。

 

 それは一時の間とはいえ、昔の自分に戻れるということ。

 すなわち、パパが生きていた時代に戻れるということ。

 

 その話をオレは忘れることができず、最近では研究にも手がつけられなくなってしまった。

 心配してくれたエルフナインや自動人形たちに思いきって相談してみたら……。

 

「でしたらその道具を貸していただけるようドラえもんさんに頼んでみたらどうでしょう?」

 

「そうそう。そんなになるぐらい、どうしても会いたいんでしょご主人様(マスター)

 

「派手に業務は私たちに任せて……」

 

ご主人様(マスター)はその道具を借りにいってください」

 

「アタシたちがご主人様(マスター)の分まで頑張るんだぞ!」

 

「お前たち……」

 

 五人の後押しにより、オレはドラえもんからその道具を借りることを決心した。

 もう少しでパパに会える。そう思うとどうしても足がすくんでしまう。

 パパの命題を理解できず、世界を滅ぼそうとしたオレがパパに会っていいものなのか? 

 ドラえもんはオレの様子に不思議がっている。オレはこんなに弱かったのか? 心底情けなくなる。

 やはりやめてしまおうか……。

 

 

 ……いや、それではオレを送り出してくれた五人に顔向けができなくなる。

 

 

 意を決してオレはドラえもんに頼んだ。

 

「その……。タマシイム・マシンという秘密道具を貸してほしいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ******************************************

 

 

 

 

 

 目を開けるとそこは昔パパと住んでいた家のベッドだった。

 窓から見えるあの山はパパと一緒に薬草を取りに行った山だ。

 

「本当に……戻ってきたのか?」

 

 このタマシイム・マシンには制限時間がもうけられている。その時間は一日。短くも長い時間だ。

 懐かしい風景。匂い。もう二度と見ることはも感じることもできないと思っていたのに……。

 

 

 

 ガチャ

 

 

「あ、おはようキャロル」

 

 

「っ…………」

 

 ドアが開く音と共に響く懐かしい声。ああ、ダメだ。落ち着け。ドラえもんの説明を聞いてなかったのか? 昔と同じように振る舞わなきゃ怪しまれるだろう。

 ここは過去の世界。生き返ったわけでは決してない。

 そうだ。あくまで、昔の自分と同じ風に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っうわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! パパァァァ!!!」

 

 

「おっと……どうしたんだい? キャロル? なにか怖い夢でも見たのかい?」

 

 気付くとオレはパパに抱きかかり、激しく慟哭していた。

 そんなオレをパパは心配そうに見つめている。

 

「よしよし。大丈夫。僕はここにいるから……」

 

「ひぐっ……。うん。うん」

 

 パパはオレの身を案じて抱き返してくれた。

 暖かい……懐かしい温もりだ……。

 ごめんなさい。パパの思いを理解できなくて……。

 回り道したけどもう大丈夫。もう間違えない。だからこれからも見守っていててね。パパ……。

 

 

 

 

 

 

 

 ******************************************

 

 ドラえもんside

 

 

「おーい、ドラえもん……ってええ!? キャロルちゃん!? 大丈夫!?」

 

「ん? どうしたんだい? 響ちゃん?」

 

 魂の抜け、脱け殻となったキャロルちゃんに毛布を被せていたら今度は響ちゃんがやってきた。

 

「い、いや……ちょっとお腹がすいたからグルメテーブル掛けでも貸してもらおうかなって思ったんだけど……キャロルちゃん大丈夫!?」

 

 なるほど……。ほんと響ちゃんは食いしん坊だな。運動はしてるから太ってはいないけどもしやめたりしたら大変なことになるんじゃないかな……。

 

 でも目的のものより倒れているキャロルちゃんを心配するところが響ちゃんらしいや。

 

「大丈夫。キャロルちゃんは今夢を見ているんだ」

 

「夢?」

 

「そう……。彼女にとって、世界よりも大切だった過去(ゆめ)を」

 

 今の彼女の体には魂がない。それでも、僕の目には彼女は笑っているように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ******************************************

 

 キャロルside

 

 

「ハハハ。こっちだよ。パパ」

 

「今日は本当に元気だなキャロル」

 

「今日は私がたくさん料理を作ってあげるからね」

 

「そうか……。それは楽しみだな」

 

「うん。楽しみにしてね」

 

 あと半日もすればオレは元の時代に戻る。パパともう会うこともないだろう。

 だから今。できる限りのことで感謝を伝えよう。想いを伝えよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今までありがとうパパ。これからもずっと大好きだよ。



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響ちゃんとグルメテーブルかけ

 響side

 

 

 ぐぎゅるるる~

 

 

 

「……大丈夫? 響ちゃん……」

 

「ぜんぜん……」

 

 無音の空間に鳴り響く腹の虫……。

 ドラえもんの心配する声が私の耳に届いてきた。

 ああ~、お腹へった~。

 今日は未来が盛岡のおばさんの家に行くことになり、そのおかげで現在、未来の作ったご飯が食べられないという事態が発生してしまった。

 そんなことを考えながら私は今朝の未来との会話を思い出していた。

 

 

 

 

 ******************************************

 

 

 

 

『本当に私がいなくて大丈夫なの?』

 

『大丈夫大丈夫。私たちに気兼ねせず楽しんできてね』

 

『うん。お土産買ってくるから楽しみにしててね』

 

『うん。行ってらっしゃい』

 

 

 

 

 ******************************************

 

 

 前言撤回。

 全然大丈夫じゃない……。

 こんな時間じゃ「フラワー」もしまっているし……、なにか食べられるものないかな……。

 私は少しでも消耗するのを防ぐため、ベッドの上に寝転がり、じっとすることにした。

 ベッドはふかふかだしシーツも心地がよい。

 ん、そういえば……

 

「ねえドラえもん。確かどんな食べ物でも出してくれるシーツみたいなのなかったっけ?」

 

 そうだ、確か小学生の時そんな道具を使ったような記憶がある。

 かなり昔のことだからあやふやだけど確か「グルメなんとか」とか言う名前の……。

 

「そうだ。あの道具があったんだ」

 

 それを聞いてドラえもんもハッとした顔となり、四次元ポケットの中を探る。

 しばらくするとお目当てのものが見つかったのか勢いよく秘密道具を天にカカゲタ。

 

 

 

 

 

 

 

「グルメテーブルかけ!!」

 

 

 

 

 

 そうそうグルメテーブルかけだ。懐かしい。

 確かこれに向かって食べたい料理の名前を呼ぶとその料理が出てくるんだよね。

 

「じゃあ何を食べようか」

 

 う~ん。カツ丼、天丼、親子丼どれもすてがたいな……。

 シンプルにご飯にしようかな……。

 よし、決めた。

 

「じゃあ、焼き肉丼。大盛りで」

 

 するとグルメテーブルかけが発光し始める。

 その光の中でどんどん何かが形を作り始め、発光が止むとそこにはホカホカの焼き肉丼があった。

 

「わー美味しそう。いただきます」

 

 ガツガツムシャムシャ

 

 うん美味しい。焼き肉とタレがご飯にとても合って滅茶苦茶美味しい。

 私はあっという間に五杯のどんぶりを平らげたのだった。

 ドラえもんもどら焼を大量に出して食べたおかげか満腹そうにお腹をさすっている。

 

「ごちそうさまでした。あー、美味しかった」

 

「ほんとにね~」

 

 ……でもなんだろう。何か物足りないな……。

 

「? どうしたの? 響ちゃん?」

 

「……わからない」

 

 お腹は満腹になっているのにどうしてだろう。

 私は不思議に思いながらも空となったどんぶりを見つめる。

 

「……未来」

 

 ……そうだ。未来がいないからだ。

 いつもは未来の作ってくれるご飯を未来やドラえもんと一緒に食べてる。

 でも、今は未来がいない。

 だからこそこんなに物足りないんだ。

 

「早く帰ってこないかな……」

 

「……響ちゃん」

 

 でも、帰ってくるのは明日の予定だし、今日は会うことができないんだ。そう考えると無性に寂しくなってくる。会いたくなってくる。

 会いたいよ~。未来~。

 うう、まだまだ早いけどもうお風呂に入って寝てしまおう。

 

 

 ♪ ~♪ ~

 

 

 そう考えていると突如私の携帯が鳴り響いた。

 誰だろう? 

 

「もしもし……」

 

『あ、響』

 

「!? 未来!!」

 

 携帯を開くとそこには無性に会いたかった未来の顔が写し出されていた。

 

「ど、どうして……」

 

『もちろん響が心配になってね。ご飯大丈夫? ドラえもんの道具に頼ってない?』

 

「ウッ!?」

 

 さ、流石未来。鋭い。

 ギクリとなって動揺した私を未来は画面越しからジトッと見つめる。

 

『そんなことだろうと思った……。ドラえもんも甘やかしすぎないの』

 

「面目ない……」

 

 ドラえもんもジトッとした目を向けられてかなり凹んでいる。

 す、少し怖いよ。

 

『まあ、お説教はこれくらいにして……。響、ドラえもん。少しお話ししようよ。今日何があったとかさ……』

 

「「うん!」」

 

 この日はビデオ通話で未来と名一杯お話しをした。

 今日何があったか。何を食べたか。宿題はしたのか。

 そんな他愛のない会話をしながら私は未来がいないと何もできないんだと改めて思いしった。

 もうさっきまでの寂しさはない。

 私は幸せな気持ちで布団に潜り眠りにつく。

 

 明日は未来の帰ってくる日。

 待ち遠しくてしかたがないよ。



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クリスちゃんとドラ・ザ・キッド

 クリスside

 

「遅いな……」

 

「そうだね……」

 

 今日は待ちに待った夏祭りだ。

 べ、別にアタシは興味ないけど、あのバカがどうしてもって言うから仕方なく来てやったって訳だ……。

 まあ、ほんの少しだけアタシも楽しみではあったけどな……。おかげで昨日は全く寝れなかったが……。

 それなのにあいつらときたら……もう集合時間を過ぎてるのに来る気配が全然ない。

 なんだ? 集合場所間違えてるのか? 

 すでにドラえもんが来てる以上それはないと思いたいけど……。

 そんなことを考えているとバカと未来がこちらに向かって走ってくるのが見えてきた。

 あいつらやっと来たのか……。

 

「お待たせクリスちゃん」

 

「遅えんだよ。何してたんだ?」

 

「響ったらご飯を買い食いしちゃって……それで遅れちゃったんだ」

 

「これから祭りなのになんで買い食いしてんだよ!?」

 

「いや~、欲望にはどうにも抗えず……」

 

「本当にあきれた……」

 

 全くこいつは本当にバカだな……。普通祭りの前に買い食いはしないだろ……。

 どうせ屋台で好きなだけ食べるんだしよ……。

 

「それにしても美味しそうな屋台がたくさんだね! 何から食べようかな~」

 

 こいつ本当に飯のことしか考えてねえ……。

 まあ人様の見舞いの品を食べるようなやつだしある意味当然か……。

 とりあえず腹減ったし私もなにか食べるかな……。

 

 

 

 ん? 

 

 

 

「あれ? あれってドラミちゃん?」

 

 人混みのなか私達は見覚えのあるロボットを見つけた。

 それはドラえもんの妹のドラミ……。どうやら誰かと待ち合わせをしているみたい……。

 っ……!? 

 

「あ、遅いじゃないのキッド」

 

「いや~、ワルイワルイ。タイムパトロールの仕事が思ったより長引いて……」

 

 そこに現れたのはドラえもんズ一の射撃の専門家にしてタイムパトロールでもあるネコ型ロボット「ドラ・ザ・キッド」だった。

 

「あれ? キッドにドラミじゃないか。どうしてこの時代に?」

 

「あらお兄ちゃん。久しぶり」

 

「ようドラえもん。実は今日この時代で祭りをやるって話を聞いてな。それで二人で見て回るかって話になったんだ」

 

 な、なるほど……。そ、そういえばこの二人恋人同士なんだったか。

 ロボット同士の色恋沙汰なんてこの時代じゃ考えられないけど、未来じゃあたりまえなんだな……。

 

「ま、お前らも祭りを楽しんでこいよ」

 

「お、おう……」

 

「じゃあね」

 

 そういうや否やドラ・ザ・キッドはドラミと一緒に屋台の人混みに消えてしまった。

 

「……じゃあ、私たちも行こうか」

 

「うん。あ~何から食べようかな……。もう待ちきれないよ~」

 

 少し気にはなるがバカが我慢の限界になったらしく、私たちを急かし始めた。なので私たちもまた祭りを楽しむことにした。

 

「見ろ! アタシ様のわたあめを!!」

 

「わぁ~。でっかい」

 

「いいなぁ……」

 

「あ、くじ引きやってる」

 

「や、屋台限定特製どら焼きだって……!?」

 

 楽しい。アタシは素直にそう思った。

 正直未だにアタシなんかがこんなに楽しい思いをしていいのかと思ってしまう時がある。

 散々犯してきた罪そっちのけでこんなことしていいのかと……。

 

「あ、クリスちゃん! 射的があるよ」

 

「面白そう、やってみようよ」

 

 でも、こいつらの笑顔を見るとそんな憂鬱な気分も少しだけ薄れちまう。

 アタシのやったことの罪の意識これから先も消えはしない。

 けど、今こいつらと一緒にいるときぐらいは楽しんでもいいよな? 

 

「うう、全然取れない……」

 

「大丈夫? 響ちゃん」

 

「バーン!」

 

 バカに進められた射的、まあ楽勝だな。

 私はあっという間に3つもの景品を撃ち抜いた。

 

「おお、さすがクリスちゃん」

 

「百発百中……すごい」

 

「一発で……クリスすごい」

 

「へへん。どんなもんだ!」

 

 こいつらに褒められ少し有頂天に鼻を伸ばす。

 すると、後ろの射的からなにやら聞き覚えのある声が。

 

「ドカーン!」

 

 見るとドラ・ザ・キッドがアタシと同じく射的で景品を打ち落としているのが見て取れた。

 その数は4つ、私よりも一つ多い。

 どうやら一発で二つの景品をとったようだ。

 

「さすがキッドね。すごいわ」

 

「これくらいどうってことねえよ」

 

 そう言って奴は視線をアタシに向けてきた。

 その目はまるで挑発してるかのようにも感じられる。

 

「クリス……?」

 

「負けるかあ!」

 

 私はお金を払ってもう一度射的に挑戦する。

 私は弾丸の跳ね返りを利用してたちまち六つの景品を獲得した。

 

「す、すごい……」

 

「ふん、それくらい!」

 

 するとドラ・ザ・キッドは景品の倒れる角度を利用して10個もの景品を三発で打ち抜きやがった。

 くっ、負けてたまるか。

 

「ちょっせぇ!」

 

「ドカン!」

 

 アタシたちは景品を打ちまくる。

 銃の腕に関しちゃ、アタシだって譲れないものがある。

 絶対コイツにだけは負けてたまるかよ! 

 

 

 

 ***************************************

 

 ドラミside

 

 まったくキッドったら、今日は折角のデートなのに何やってるのよ……。

 

「あらら、二人ともヒートアップしちゃって……」

 

「あわわ、どうしよう」

 

「ふん、しばらくやらせとけば?」

 

 楽しみにしてたのに、これじゃあ台無しじゃないの。

 

「でも、二人とも楽しそう」

 

 未来ちゃんの言葉に私は今一度キッドのことを見る。

 確かにすっごく生き生きしている。

 私とのデートの時も楽しそうだったけど、ああして競い合っている姿も本当に楽しそうだ。

 

「少し焼けちゃうな……」

 

「ん? なんかいった?」

 

「別に……」

 

 しばらくするとキッドとクリスちゃんは私たちの元に戻ってきた。

 

「すまんすまん。ついヒートアップしちまって……」

 

 ほんとよ、まったく仕方ないんだから。

 

「じゃあ、あの屋台のメロンパン私たちみんなに買ってくれたら許してあげる」

 

「え? 本当、ありがとうキッドさん、ドラミちゃん」

 

「えっ、ああ……」

 

「何? 嫌なの?」

 

「い、いや、そういうわけじゃあ……わかったよ」

 

 ちらっと財布を見るともうあとわずかしか残ってない。

 どうやら射的にほとんど費やしたようだ。ほんとバカなんだから。

 

 でも、たまにはこういう痛い目見せるのもいいでしょう。

 そう考えながら私はみんなでメロンパンを食べたのだった。



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奏さんとドラニコフ

 奏side

 

 

 

 

 

「ふう、流石に演技は疲れるな……」

 

 私は今、映画の撮影をしていた。ツヴァイウィングが世界に羽ばたき、沢山の人が私達を応援してくれるようになった。

 それはつまり、沢山の仕事が舞い込むということでもあり、この映画の撮影もその一環だ。この映画は監督もこだわりが強い人で、中々撮影が終わらない。

 

(でも、この台本凄く面白いんだよな……何より、私が演じるこのキャラは……なんていうか、他人とは思えない)

 

 私が演じるのは主人公の側で共に戦うヒロインの役。彼女はある日不条理に家族を奪われ、その復讐でとある組織と対立、主人公に出会うことで、仲間の素晴らしさを知り、仲間のため、世界のために命を懸けて戦った……そんな感じの役だ。

 ……まるで私の写し身だな。私も、翼という片翼に出会えたから、歌を信じることができた。仲間を信じることができた。

 

(だからこそ、この役を完璧に演じたい!)

 

 私にそっくりなこの役を演じて、私達を知ってほしい。そんな思いから、私は更に演技の稽古に熱を帯びる。

 

「カット! 少し芝居がかってるから、自然な感じを意識しよう!」

 

「くっ、駄目か!」

 

 まただ。この部分で私は自分の気持ちを芝居に表すことができない。

 そもそも、演技自体あまりしたことがないし……一体どうすればいいんだ……。

 

 

 

 

 

****************************

 

 

 

 

 

 

「ふう……」

 

 取り敢えず、ジュースを飲んで一息つく。流石に疲れたな……。ノイズとの戦いやライブとはまた違う疲れだ……。

 

「ガウ」

 

「ん?」

 

 犬のような声に目を向けると、そこにはドラえもんズのメンバーである“ドラニコフ”がいた。

 こいつは丸いものをみると狼に変身するという力を持ち、辛いものを食べることで炎を口から出すという凄まじい猫型ロボットだ。……もはや、猫型ロボットってなんなんだよって感じだけど……。

 

「久しぶりだね。こんなところで何してるんだい?」

 

「ガウガウ」

 

「え、え〜と……」

 

 ……なんて言ってるのかわかんないな。ドラえもんズや響達ほど付き合いが長いわけでもないからな……。

 なにか伝えようとしてるのはわかるんだけど……。というか、皆はよくこれで会話ができるよな。

 

「あ、ドラニコフさんと奏さん! 珍しい組み合わせですね!」

 

「響!」

 

「ガウ♪」

 

 よかった! 響ならドラニコフの言葉を翻訳できるはずだ! 私は響を手招きし、ドラニコフがなんて言っているのか耳打ちで教えてもらうことにした。

 

「なるほど……わかりました!」

 

「ガウガウ! ワオゥ!」

 

「あ、なるほどね〜、わかったよ!」

 

 本当にわかるんだな。私は少し呆れながら楽しそうに会話をする二人を眺める。すると、響はドラニコフの言葉を私に伝えてきた。

 

「演技のコツみたいなの教えてくれるらしいですよ!」

 

「……え、演技のコツ?」

 

「ハイ! ドラニコフさん、実は未来ではハリウッド俳優をやってるんですよ!」

 

「っ!? ほ、本当か!?」

 

 なんでも、ドラニコフは未来では“スーパーウルフマン”という映画で主演を演じる大人気俳優らしい。

 人は見かけによらないって言うけど、本当なんだな……これは本当に驚いた……。

 

「よかったら、私が通訳しましょうか? ドラニコフさんの言葉はだいたい分かるんで」

 

「ああ! 是非とも頼むよ!」

 

「ガウ♪」

 

 こうして、ドラニコフと響を交えた私の特訓が始まった。

 

 

 

 

****************************

 

 ドラえもんside

 

 

 

 

 

「……と、いうことがあったんだ!」

 

「へえ〜、それは楽しみだね」

 

 僕は響ちゃんと一緒に奏ちゃん主演の映画を見に来ていた。この映画の撮影にはそんな裏話があったんだな〜。

 

「あ、そろそろ始まるね」

 

 僕はポップコーンを片手にスクリーンに目を向ける。

 そこには、まるで別人と思えるほどの迫真の演技をする奏ちゃんの姿があった。

 すごい演技力だ。その姿からは、並々ならぬ努力の跡が見て取れる。

 

「奏さん、凄く綺麗だね……」

 

「うん、そうだね……」

 

 僕は未来でこの映画を見たことがある。

 後にこの映画は日本の歴史を塗り替えるほどの大ヒットを記録することになるんだ。でも、それは今は別のお話だね。




ドラニコフ
ドラえもんの親友。ザ・ドラえもんズの一人
出身はロシア
別名、氷の大地ロシアさすらいの星
好きな食べ物はどら焼き
苦手なものは寒さ、野生化の制御
ザ・ドラえもんズのメンバーの一人で首に巻く四次元マフラーと狼の耳や尻尾が特徴的な猫型ロボット(?)
丸いものを見ると、狼に変身するという力を持っており、辛いものを食べることで炎を口から吐くこともできる。狼になると制御が難しいらしいが、スーパーウルフマンとして活躍する際は割と大丈夫。
ロシア在住だが、寒さにはめっぽう弱い。職業は俳優で、職業柄ハリウッドに行くことが多い。
基本的に狼のように「ガウ」「ワオ」としか話すことができず、意思疎通は筆談。しかし、今回は紙やプラカードを忘れていた。





色々ある今、ロシア関連のキャラであるドラニコフを出すかはかなり迷いました。しかし、キャラクターに罪はないかなと考え、今回投稿しました。
ひみつ道具博物館の続きはもう少しお待ちください。


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銀河グランプリ編
ドラえもん誕生日スペシャル 走れ!銀河グランプリ①


お待たせしました


響視点

 

 

う~む。どうしよう…

ドラえもんは何をあげれば喜ぶのかな…。

 

「ねえ、ドラえもん。ちょっといい?」

 

「ん?どうしたの?響ちゃん。」

 

「ドラえもんってさ、何か欲しいものとかない?」

 

悩みに悩んだ私は思いきってドラえもんに聞いてみることにした。

サプライズしたいから何故こんなこと聞くのかは言わないけど。

 

「?…ああ!もしかして僕の誕生日?」

 

「うえっ?なんでわかったの?」

 

「わかるよ~。何年の付き合いだと思っているんだ?」

 

まあ、確かにドラえもんとはもう7年くらいの付き合いになる。

毎年サプライズパーティー企画したりしてるし流石に気付いちゃうか…。

 

「僕は響ちゃんのその気持ちが嬉しいから、プレゼント自体は別になんでもいいよ。」

 

「あちゃ~。それが一番困るんだよ…。」

 

翼さんはそれで納得してたけど…。

それはそうとて…。

 

「ドラえもん。ワックス塗りすぎじゃない?」

 

なんだか体全身が光を反射するレベルにまでワックスを塗り、すごいテカテカしてる。

流石に塗りすぎだと思うけど…。

 

「明日はロボット育成学校の同窓会だから、これぐらいがいいの。」

 

あーなるほど。

 

「そうなんだ。同窓会楽しみだね。」

 

同窓会に行くということは、昔の友達にも会えるということだから、気合いが入るのも納得だ。

ところが私のその言葉を聞くとドラえもんはビクンと体を震わせた。

 

「?あれ、楽しみじゃないの?」

 

「ま、まさか~、そんなことないよ。楽しみさ。アハハ。」

 

そうは言うがどう見てもその笑顔はぎこちない。何か無理をしてるのかな。

 

「さあ、寝よ寝よ!早く寝よ!」

 

「う、うん。」

 

そういいながらドラえもんは押し入れ(特別に作ってもらった)の中に入ってしまった。

未来ももう寝てるし、私も寝ようかな…。

 

「あれ?」

 

すると、押し入れの中の電気が付いていることに気付いたので、私はそっと押し入れを除いてみた。そこには鏡を見ながらため息を付くドラえもんの姿があった。

 

「ドラえもん?」

 

「!?あ、ああ。ゴメンゴメン電気消し忘れてたよ。」

 

「そう…。なんか悩んでいることがあったら相談に乗るよ?」

 

「い、いやなんでもないから!おやすみ!」

 

「お、お休み…。」

 

やっぱりどこか無理してる…。何かあったのかな?

あんなドラえもん見たくないんだけどな…。

そう思いながら私は未来の布団に潜り込んだ。

 

 

 

*******

ドラえもん視点

 

 

 

「はあ~。」

 

僕は今、ロボット育成学校の同窓会に行くために22世紀の道路を歩いていた。

なんだか憂鬱な気分だ。理由はわかっている。

他のネコ型ロボットの皆には耳がある。

でも、僕には耳がない。耳がないことが恥ずかしいんだ。

気を付けてはいたつもりだった。原作を知っているからこそ、ネズミに噛まれないように気を付けていた。

ネズミに強くなるように学校の「ネズミ対策講座」の授業は特に真面目にうけ、その科目は上位を常にキープしていた。

でも、少しの油断で結局僕はネズミに耳を噛まれてしまった。

そして、その事がトラウマでネズミが大の苦手に…。

これでは原作となにも変わらないや…。

 

「ん?」

 

そこで僕の目に飛び込んできたのは猫耳専門店。

かつて猫耳が大流行したときに作られた店で今でも人気の高い専門店だ。いいな~。

 

「わあ~。」

 

待ち合わせまで時間もあるし、少し入ってみようかな…。

 

 

 

*******

 

「は~。」

 

その店は本当に色々な猫耳を置いており、とてもいいお店だったけど…僕じゃてが届かないほどのお値段がした。

一番安いのでも僕のお小遣い二ヶ月分はする。

これじゃとても買えないや…。

 

いや、こんなときこそポジティブに!

いつか買うために貯金しよう。そうしよう。

今はそれよりも早く待ち合わせ場所にいかないと…。時間も少し過ぎちゃってるし…。

 

「おーい!パワえもんー。キッドー。」

 

「遅いぞドラえもん。」

 

「なにやってたんだよ…。」

 

待ち合わせ場所にいたのは今回の同窓会の幹事であるパワえもんと僕の親友の一人であるドラ・ザ・キッド。

どうやら待たせ過ぎちゃったみたいだな…。

 

「ごめんごめん。あ、あれまたやるんだね。」

 

二人とも怒ってるので話をそらさないと…。

そう考えながら僕はスクリーンを指差した。

スクリーンに写っているのは大人気のグランプリ「ギャラクシーカーレース」の映像。多分去年のやつだな…。

 

「ああ、大人気だからなギャラクシーカーレース。」

 

「俺はドラミと一緒に見に行く予定だぜ。」

 

「今も世界中からレーサーが集まっている。ここに来るまでも何人か有名どころ見かけたぞ。」

 

「へー。」

 

今年のレースはどうなるのかな…。ちょっと楽しみかも…。

 

「ほれもういくぞ」

 

「うん。」

 

そう答えながら僕は二人の後をついていく。

 

 

ブロロロロ

 

 

「ん…っ!?」

 

すると突如としてとてつもないスピードの車が僕の横を横切り、僕は跳ねた泥を真っ正面から浴びてしまった…。

 

「お、おいドラえもん。大丈夫か?」

 

「なんだあの車!」

 

心配するパワえもん。激昂するキッド。あまりの衝撃で呆然としてしまう僕。

………

 

「レーサーのデポン様よ♡」

 

「サインして~♡」

 

すると泥を跳ねたことにも気づいてないのかその車の主は女の子の声を聞き平然と車を降りた。

 

「俺にブレーキを踏ませられるのは君たちみたいなカワイ子ちゃんだけさ。」

 

「きゃ~♡」

 

そう言いながら車の主であるレーサー型ネコ型ロボットは女の子にサインを書いている。

……僕に泥かけたことに謝りもしないで。

ワックス塗るのに何時間かけたと思ってるんだ!許せない!

 

「コラーー!!」

 

怒り心頭で僕はレーサー型ネコ型ロボットに突っ込んだ。ところが…。

 

「ハイハイ。君もね~。お顔は汚れてるからここにサインを…。」

 

このロボットは僕を回転させ後頭部にサインを書き込んだ。…何て書いてあるか見えないし…。

 

「洗っちゃダメだよタヌキ君。」

 

 

 

 

ブチッ

 

 

 

 

「僕はタヌキじゃない!!ネコ型ロボットだ!!」

 

「え?俺と同じネコ型ロボット?

………プッ、アハハハハ」

 

僕の発言の何がおかしいのかこいつは僕の頭をまじまじと見る。

すると急に大笑いをし始めた。

 

「何がおかしい!?」

 

「だって、耳がねえじゃねえか。」

 

「うっ。」

 

確かに僕にはネコ型ロボットの象徴とも言える耳が存在しない…。故に何も言い返せない。

 

「ちょっと待て!確かにこいつには耳がない!でも、こいつは立派なネコ型ロボットだぞ!訂正しろ!」

 

すると横から来たキッドがレーサーに向かって訂正を求める。

だがレーサー型ネコ型ロボットは聞く耳を待たずに去ってしまった。

 

「耳がないネコ型ロボットなんてタイヤのない車と同じさ…。」

 

そう捨てゼリフを残して…。

 

 

*******

 

響視点

 

 

悪いことしちゃったな…。

私達はドラえもんの誕生日パーティーを祝うために皆で相談をしようということで私の部屋にいた。

皆というのは未来の他に弓美ちゃん創世ちゃん詩織ちゃん。装者の皆にキャロルちゃんエルフナインちゃんだ。(キャロルちゃんは迷惑そうにしてたけど…。)

 

ドアを開けると同窓会に言っていたはずのドラえもんがなにやらダンボールと色紙でなにかを作っており、私達は思ったことを口にしてしまった。

後になって写真を見た際に気付いたのだが、ドラえもんはおそらく自分の耳を作ろうとしていたのだろう。

同窓会で他のネコ型ロボットと再開して耳がないことを突きつけられたのかもしれない。

それなのに…。結構ひどいこと言っちゃった…。

最初私はおにぎりだと思っちゃったし、キャロルちゃんなんか仮装パーティーでもやるのか?と投げ掛けちゃってたし…。

 

「どうやって謝ろう…。」

 

「悪いことしちゃったね…。」

 

「そうだね…。」

 

小学生からの付き合いがある未来たちは事情も察したらしくどう謝ろうか考えてくれる。

う~ん。

 

 

 

 

ガタガタガタガタガタガタガタガタ

 

 

 

 

 

ん?

すると急に私の机がガタガタと音を立てて震え始めた。

誰だろう?ドラえもんズの誰かかな…?

 

 

 

バン!!!

 

 

 

 

「おめでとうございまーす!ドラえもんさんに!ギャラクシーレースの参加資格が当たりました!!!」

 

 

 

「へ?」

 

 

机から現れたのは見たこともない女の人。

その人はなにやらレースの参加しかくがどうだのと私達に言った。

 

このときの私達は思いもしなかった。

これが波乱に満ちた新しい冒険のきっかけになるとは…。




待ってる人いないかもですがお待たせしました。
どっかのだれか改め「はんたー」です。
息抜きで投稿したこの作品に色がつくわ感想もらえるわ困惑してていっそのこと匿名やめるかと思い今回から匿名解除しましたを
改めてよろしくお願いいたします
そして最初からお詫びとして報告しますがもうすぐ学校始まるため、投稿頻度がさらに遅くなると思います。
この銀河グランプリも簡潔いつになることやら…。
まあ気長に待ってくれると幸いです。


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ドラえもん誕生日スペシャル 走れ!銀河グランプリ②

お待たせしました


響視点

 

「ギャラクシーカーレース?」

 

「ハイ。ある方の推薦もあり、ドラえもん様に見事、出場の権利が与えられました。」

 

ある方の推薦?なんだか気になるけど今はどうドラえもんの機嫌を治すかを考えてたしそれどころじゃ…。

 

「面白そうじゃない。私やってみたいわ。」

 

「弓美ちゃん!?」

 

「ちょっとユミ?」

 

「あ、じゃあアタシもやりたいのデス。」

 

弓美ちゃんと切歌ちゃんがやってみたいと言い出し、お姉さんが差し出したタブレットに名前を書く。

そんな簡単に決めていいものじゃないと思うけど…。

見れば他のみんなもそんな弓美ちゃんと切歌ちゃんの様子にあきれている。

 

「登録ありがとうございます。」

 

「あの、優勝したら何がもらえるんですか?」

 

参加する気満々らしく輝く目でそう訪ねる弓美ちゃん。

するとお姉さんは

 

「お望みのものはなんでも!野球場でも、星でも…。」

 

「!」

 

「随分とスケールがでかいな…。面白そうだ。オレも参加しよう。」

 

「キャロルもやるんですか?」

 

「ああ。お前はどうする?」

 

「う~ん。少し不安なのでボクは遠慮しますね。」

 

エルフナインちゃんと話しながらタブレットを操作するキャロルちゃん。

それを眺めながら私はお姉さんの言った言葉を頭の中で繰り返していた。

望みのものはなんでも手に入れることが出きる。

私はドラえもんの残した雑誌に目を向けた。

 

(この大会で優勝すれば、ドラえもんに耳をプレゼントできる…?)

 

「ふむ…、バイクはありなのでしょうか?」

 

「ハイ。バイクでも構いません。」

 

「ならば私もやってみるか…。奏もどう?」

 

「いいぜ。付き合ってやる。」

 

そうこうしているうちに翼さんがタブレットを操作する。それを見て私もあわてて手を挙げた。

 

「私、やります!」

 

どんな大会なのかはわからないけど、ドラえもんと一緒なら行けるはず。

そう思った私はお姉さんの差し出したタブレットに私とドラえもんの名前を書き、その後タブレットを返してあげた。

 

「これでいいですか?」

 

「ハイ、ではポチっとな。」

 

するとお姉さんはタブレットを操作して何かのボタンを押した。

 

 

 

ブゥン

 

 

 

「「「「へ?うわあー!」」」」

 

なんのボタンだろうと思った瞬間、私たちの足元にタイムホールが出現し私たちはそのまま真下にあったタイムマシンに落ちてしまった。

 

「こら貴様‼もっとマシなやり方はなかったのか⁉」

 

憤慨しながら叫ぶキャロルちゃんを無視してお姉さんは再びタブレットを操作する。

 

「ぎぃゃああああああああ⁉」

 

すると今度は空からドラえもんが落っこちてきた。

 

「へ?響ちゃん?みんな?」

 

状況がわかってないのか困惑してるドラえもんに私は言った。

 

「行こうドラえもん。」

 

「へ?どこへ?」

 

「ギャラクシーカーレースだよ。」

 

もうすぐ耳が手に入るよ。頑張ろうドラえもん。

 

 

 

 

 

 

*********

キッド視点

 

 

『続いて紹介するのは前大会の覇者。デポン・アレックス‼』

 

 

 

 

「キャーデポンサマー」   「デポンサマーコッチミテー」

 

 

 

 

 

「ケッ、胸糞悪いぜ。」

 

「?どうしたの?キッド?」

 

「なんでもねえよ。」

 

俺とドラミは福引でたまたま当たったチケットを使い、ギャラクシーカーレースの会場に来ていた。

どうもあのデポンとかいうネコ型ロボットは人気の高いらしい。

だが俺は親友であるドラえもんを侮辱されたことから好きななることができねえ…。

キザな感じがむかつくぜ。

ケチャップ&マスタードどら焼きをほおばりながらそんなことを考えていた。

ともあれこれで参加者は全部か…。

 

そう思っていたら突如スポットライトが何もない虚空を当て照らし始めた。

まだ参加者がいるのか?

 

「「「「うわあああああああ‼⁉」」」」

 

すると空からタイムホールが空き、何者かが弾き飛ばされ落っこちてきた…、ってあれは⁉

 

「キ、キッド。どういうこと⁉」

 

「お、オレもわかんねえよ⁉」

 

動揺する俺たち二人。でも仕方がないだろ。

だって…

 

 

『最後に特別枠として二十一世紀からやってきた!世界を救った英雄でもあるレーサー!シンフォギア装者とそのご友人達の登場だ!』

 

そこに現れたのは俺の親友と見覚えのあるやつらだったのだから。なんであいつらがあんなところに⁉よくわからねえけど実況よ、一つ言わせてもらうなら…

こいつらレーサーでもなんでもねえだろ‼‼(錯乱)




お待たせいたしました。
最近学校でなかなか執筆する時間が取れない。
ここまで来てまだレースが始まらない。
完結いつになることやら。
翼、奏はサイドカーでの参加となります。自転車がありだし別にいいだろうと思いこうしました。

なお参加者は
板場弓美、寺島詩織、安藤創世チーム
キャロル・マールス・ディーンハイム
風鳴翼、天羽奏チーム
暁切歌、月読調チーム
立花響、ドラえもんチーム
となります。

クリス、未来、マリア、セレナ、エルフナインは見学です。


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ドラえもん誕生日スペシャル 走れ!銀河グランプリ③

ドラえもん視点

 

 

 

 

「ちょっとお兄ちゃん!どういうことなのよ‼」

 

「そうだぞ!説明しろよドラえもん‼」

 

「だから、僕は知らないってば‼わからないのは僕も同じなんだよ‼」

 

本当…、なんで僕がギャラクシーカーレースに参加することになったんだ?

だれかの推薦って話だけど、テレビでの放送を見たくらいで関わりなんて一切ないはずなんだけど…。

 

「とにかく、私は反対よ‼みんなもこれを見て…。」

 

そういうとドラミは僕たちにタブレット画像を見せる。

そこにはかつてのレースで大けがを負った人や事故にあった際の写真映像が映っていた。

 

「ギャラクシーカーレースは様々な星を経由してゴールを目指すレース。それゆえに危険もとっても多いのよ。」

 

僕もテレビで見ていたけど巨大怪獣の出る星や氷河期のような極寒の星などいろいろと危険な星も通過することがある。

誰か友達の危機とかで行くならともかくできればあまり近づきたくない星ばかりなんだよな…。

今年はどんな星を通るのかわからないから対策のしようもないし。

 

「うう…。なんだか恐ろしくなってきたデス。」

 

「ハッ。その程度恐れるに足らん。」

 

キャロルちゃんは強気だな…。まあ怖がるキャロルちゃんとか想像つかないけど…。

 

「怖いんだったらやめときな。タヌキや子供が参加するには危険なレースだ。」

 

ムっ、この声は…。

 

「デポン‼」

 

忘れもしない…。苦労してワックスを塗った僕の体に泥をぶつけた挙句謝りもしないで僕のことをタヌキと呼んだいけ好かないレーサー型ネコ型ロボット「デポン・アレックス」がそこに立っていた。

 

「世界を救った英雄といっても所詮子供と歌手にタヌキ…。全員素人だ。

このレースはレースの素人が簡単に勝てるようなお遊びじゃないんでね…。」

 

本当いけ好かない奴。見れば他のみんなも嫌な表情をしている。キャロルちゃんなんか青筋立てて怒っているし。それに僕はタヌキじゃないと何度も言っているのに…。

 

「僕はタヌキじゃn」

 

「ドラえもんはタヌキじゃない。立派なネコ型ロボットだよ。」

 

すると響ちゃんは僕の前に立ってデポン相手に言い返した。

 

「それに、確かに私たちは素人だけど、レースなんだから勝負はわからないよ‼」

 

「なるほど一理ある…。ほら、ご褒美。」

 

そういうとデポンは響ちゃんに何かを渡して去っていった。

 

「何渡されたビッキー?」

 

「パンの耳…。」

 

ムカ、耳のない僕への当てつけか!

 

「嫌な奴…。」

 

「許せないデス。」

 

ほんと…。絶対に許せない‼僕だって耳さえあれば!

…耳さえあれば。

 

「あいつに一泡吹かせるためにもレースに参加するわよ!」

 

デポンの物言いに憤慨する弓美ちゃんは立ち上がりこぶしを握り締める。…でもダメなんだ。

 

「…無理だよ弓美ちゃん。」

 

「な、なんでよ?悔しくないの⁉」

 

悔しいし僕だって一泡吹かせたいとは思う。でも現実問題とある理由で僕たちはレースに参加できないんだ。

 

「僕たちは車を持っていないんだ。」

 

「「「「「え?」」」」」

 

「私やお兄ちゃんの使う道具は全部デパートで買った特売品などが主だから、こういうレース向きじゃないの。だから参加できないのよ。」

 

「そんな…。」

 

「私はバイクを結構な数持ってはいるが、ここにいる全員分となるとさすがにないな…。」

 

車がないんじゃ参加できない。みんなは気分が沈んでどうしたものかと考え始めた。

そんな中、響ちゃんが何かを思い立ったように立ち上がり、何処へと走り出した。

 

「あ、待って響。」

 

そんな響ちゃんを心配してか未来ちゃんも響ちゃんを追って走り出す。

 

「響さん…。何かかなえたい願いでもあるのかな?」

 

するとキャロルちゃんも立ち上がり、何処かへすたすたと歩きだした。

 

「どこへ行くんですか?キャロル?」

 

「どこへ行こうが俺の勝手だ。」

 

そういって何処かへ行ってしまったキャロルちゃん。エルフナインちゃんも少し迷った後会釈をしながらキャロルちゃんについて行ってしまった。

 

「まあ、よくわからねえけどあのレーサーにはオレもムカついているし、できることがあれば協力するぜドラえもん。」

 

「ありがとう…。でも大丈夫だよキッド。それより響ちゃんたち探しに行かないと。」

 

そう言うと僕は何処かへ行ってしまった響ちゃんと未来ちゃんを探しに外へ出た。

 

 

 

*********

未来side

 

「響──!」

 

私は部屋を出ていってしまった響を探すため未来の街に繰り出していた。

未来の街には何度か来ているけど全てを把握することは難しいほど広大だ。見失うと再び見つけるのは難しい。

一体どこにいるんだろう…。

 

「お願いです。そこをなんとか…。」

 

「しつこいぞ!無理なものは無理だ!」

 

探している最中、響の声が聞こえてきたので私は声の方向へ走り出した。5()()ほど走ると響がなにやら車屋さんの人と話しているのが見えてきた。

 

「なにやってるの?響…。」

 

「あ、未来。」

 

響と合流した私たちはその場を後にし、とりあえず近くのベンチに腰かけた。

しばらくすると響が何故ここまでこのレースに執着するのかを語り出した。

 

「未来は知ってると思うけど、ドラえもんには昔耳があったの知ってるでしょ。」

 

「うん。たしか、ネズミに食べられちゃったんたっけ?それでネズミが嫌いになったって。」

 

「うん。多分ドラえもんはずっと気にしてたんだと思う。ネコ型ロボットなのに耳がないことを…。

それなのに、あのとき、私はドラえもんの作った耳をおにぎりだなんて言っちゃった。きっとすごい傷ついたんだと思う。」

 

「………」

 

「でも、このレースで優勝すればどんな願いも叶えられる。だったら耳だってもらえるはず。」

 

そうか。響はドラえもんに耳をプレゼントするためにあんなにレースに執着していたんだ。

ドラえもんを意図せずとはいえ傷つけてしまった贖罪をするために。そしてなにより、ドラえもんを喜ばせたいがために。

 

「そう…。ドラえもんの耳を…。」

 

「うん。絶対プレゼントしてあげたいんだ。

だからお願い。未来も一緒に手伝って。」

 

そう響は強い意思を秘めた目で私を見つめる。

こんな目をされたら断れるわけがない。まあ、元々響の頼みを断る理由はないんだけど…。

 

「…まったくもう。しょうがないな。」

 

「ありがとう未来~!流石私の日だまりだよ~。」

 

私は微笑みながら響と一緒に車を探すことにした。まずは目の前にあるあのお店にしよう。

私たちは目の前にあった『ゴンスケ自車』と書かれた看板に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

*******

ドラえもんside

 

「響ちゃ──ん‼」

 

あたりも結構暗くなった中、響ちゃんと未来ちゃんはいまだに見つからなかった。

二人は未来の世界に何度も来ているから地理は大丈夫なはずなのに…、いったいどこに行ったんだ?

 

「ドラえも~ん」

 

あ、やっと見つけた。

全くどこに行っていたのやら。

そこには満面の笑みで手を振る響ちゃんとそれにつきそう未来ちゃん、そしてなぜか見知らぬゴンスケロボがいた。

 

「聞いてドラえもん。車のめどが立ったんだ‼」

 

「ええ⁉本当⁉」

 

噓でしょ⁉いくら響ちゃんでもこんな短時間で車を用意できるだなんて…

 

「正確には自転車だけどね。」

 

ゑ?自転車?

 

未来ちゃんに詳しく聞いてみたところ、響ちゃんが車を探しているところ、このゴンスケが経営しているという自転車屋にたどり着いたらしい。

最初は自転車ということでレースには使えないと思ったが、翼さんもバイクを使うというし、見た目をそれらしくすれば参加できるかもと考え、彼に協力してもらうことになったらしい。

・・・・・・・・・いいのかな??

 

まあ、でも、響ちゃんは喜んでいるみたいだし指摘するのは無粋かな…。

 

 

 

 

 

 

*******

 

side???

 

 

ここはギャラクシーカーレース観客席…そのなかでも限られた富裕層にしか入ることを許されないVIP席である。

 

この場所に響たちをギャラクシーカーレースに参加させた女性…カレンがグラスにワインを注いでいた。

 

「準備は全て整ったわ…。あとはあなた次第。」

 

そういいながらカレンは暗闇のなかにいる男と乾杯をした。

暗闇のなかには長い猫耳が怪しげに揺れていた。

 

 

 

 

 




走って5分と結構離れてるであろう距離からでも響の声を察知できる未来さん。
遅くなりました。
対面始まるから悪いんや。


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ドラえもん誕生日スペシャル 走れ!銀河グランプリ④

遅くなりました。


sideキッド

 

『さあ、いよいよ始まりました。ギャラクシーカーレース!!頂点に立つのは、いったい誰なのかー!!』

 

すさまじい歓声の鳴り響く中、俺はレーサーたちを尻目にドラミを探す。

あ、いたいた。

ドラミはポップコーンをほおばりながら怒ったような顔をしていた。隣にいるのはパワえもんか…。どうやらあいつも来ていたようだな。

 

「ようドラミ。待たせたな。」

 

「あ、遅いわよキッド。」

 

「おいおい、俺は無視かよ…。」

 

「冗談だっての…。それにしても…。」

 

この食いっぷり…、相当不機嫌な証拠だな…。

やっぱりドラえもんたちがこのレースに参加したことがうれしくないようだな。

 

「全く、お兄ちゃんも響さんたちもあれだけ反対したのにどうして参加するのかしら。」

 

「男には、絶対に負けられない勝負ってもんがあるのさ。」

 

パワえもんの言うとおり、ドラえもんとしては耳がないことを馬鹿にしてきたあのデポンとかいうレーサーをギャフンといわせたいんだろう。

まあ、響たちについてはわからないけど何か確固たる目的があることは想像に難くない。何せものすごい決意を固めたような目をしていたんだからな。

 

「ま、大丈夫さ。あいつらだって伊達に修羅場をくぐってきたわけじゃないからな。」

 

「確かにな。」

 

そうだ。あいつらは何度も世界を救ってきたんだ。

レースごときに負けるわけがないからな。

 

「ん?あれは…、クリスか。おーい、クリス!」

 

「ん?ドラ・ザ・キッドじゃねーか。お前らも観戦か?」

 

少し離れた席からやってきたのはクリスにマリア、未来にセレナ…、エルフナインの五人だった。

どうやらこいつらは参加しないみたいだな。

 

「お前ならてっきり参加すると思っていたんだけどな。」

 

「まあ、気分が乗らないっていうか、今回はアタシはパスだな。」

 

「今回私たちは応援に徹することにしたの。」

 

「はい。姉さんと一緒に応援頑張るつもりです。」

 

「ボクも一生懸命応援します。」

 

まあ確かに応援もたいせつだしな。

ここは俺も気合入れて応援してやるか。

 

「がんばれよー!ドラえもん!」

 

 

 

**********

 

side響

 

「遅いなあ、ゴンスケさん…。」

 

もうレース開始まで30分もないというのに自転車屋のゴンスケさんはいまだに姿を現さない。

何かあったのかな?

 

「おーい、ビッキー!」

 

「あ、弓美ちゃ…ってええ!?」

 

弓美ちゃんの声がしたほうを振り向くと、なんと弓美ちゃん、創世ちゃん、詩織ちゃんの三人が何やら高そうな立派な車を運転しながらやってきた。

 

「どうしたのその車?」

 

「あそこにいるベンガルさんっていう人に貸してもらったんだ。」

 

「すごい数の車もってるんだよ。」

 

「へー、よかったね。」

 

「私たちも貸してもらったのデス!」

 

すると今度は調ちゃんと切歌ちゃんも車に乗ってやってきた。

こちらもかっこいい車だ。

 

「ありがとうございます。ベンガルさん。」

 

「はは、なに、困ったときはお互い様だからね。こちらとしてもシンフォギア装者に車を貸すことができるなんてとても光栄だよ。」

 

そういうベンガルさんもとてもかっこいい車にのっている。

とても速そうだな…。

 

「聞けば、君も車がないというじゃないか。君たちにも貸してあげようか?」

 

「いえ、大丈夫です。私たちも昨日車をもらえることになったので。」

 

「まあ、そうなんですか?」

 

「へえ、どんな車なの?」

 

「それは来てからじゃないと…。」

 

フフフ、デザインは私がやったんだし、早そうでかっこいい車が来るはず。

楽しみだな…。

 

「響ちゃん!あれ!」

 

ドラえもんが指さす方向からやってきたのは何やら大きな荷物を運ぶゴンスケさんだ。

どうやら車が完成したみたい。

 

「遅いですよ。ゴンスケさん。」

 

なんでも徹夜して仕上げたので朝方眠くなって寝てしまったとのことらしい…。

それって徹夜の意味が…。

 

「で、どんな感じになったんですか?」

 

「ああ、こんな感じだべ。」

 

そういってバサッとシートをとるとそこには私がデザインした車……ではなく。

 

「「「「「えええええええ!?」」」」」

 

アヒル型の車?がそこにあった。基本的なカラーリングはオレンジで翼の部分だけが青色になっている。

なんていうかどこかで見たような…。ああ、お風呂屋さんにあるアヒルだ。

いや、そうじゃなくて

 

「いや、私が書いたのと全然違うじゃないですか!?」

 

「わ、上手い。」

 

私の描いたのはツヴァイウイングを少し意識して考えたオレンジと青基調の鳥を意識した車だ。ちなみにこのオレンジと青は翼さんと奏さんだけでなく、私とドラえもんのカラーも意識してたりする。

それがどうしてこんなかわいいアヒルちゃんに?

自慢じゃないけど、私は絵にはかなり自信があってリディアンでも美術の成績は必ず5をとっているほどだ。

 

「昨日の今日でこんなん作れるわけねえだろ。材料も足んねえし、も少し考えてモノを言え。」

 

あ、確かに。

絵でかくのと実際に作るのとでは訳が違うし一日じゃ完成しないか。

 

 

**********

 

『さあ、レーサーたちも自慢のマシンを引き連れて続々入場してきたぞ~!』

 

「…立花、ドラえもん。そのマシンはいったい?」

 

「「…触れないでください。」」

 

うう、恥ずかしい。

観客席の人たちもメチャクチャ笑っているよう~。

 

「なんていうか、頑張れよ二人とも。」

 

奏さんの優しさが逆につらい。いまさら言っても遅いけど、せめてもうちょっとなんとかならなかったのかな?

これなら普通に車デザインしたほうがよかったかも…。

 

「まるで醜いアヒルの子だな。」

 

そういいながらやってきたのはデポンさん。

ドラえもんはムカッとしてるようだけど、なんていうか、反論できない。

いや、可愛いとは思うんだけど、なんていうか、レースで使うとなると少し違う気がするんだよな…。

 

「そんな車で大丈夫なのか?」

 

「キャロルちゃん!?」

 

キャロルちゃん乗っている車は紫基調の車だ。

ボンネットにはダウルダブラのファウストローブみたいに四色の宝石が並べられていてとてもかっこよく仕上がっている。

 

「キャロルちゃんどうしたの?その車?」

 

ドラえもんの疑問ももっともだ。

どう見ても誰かに借りたとは思えない。

 

「俺の錬金術をなめるな。材料は異空間にしまってあるんだ。一日もあればこれくらい作れる。」

 

同じ一日なのにこの差はいったい…。

 

『優勝候補のデポン・アレックスにダイス・チョボイッチ!チャン、リン、ポンの三姉妹やベンガル・リッチーネなどの実力者も勢ぞろい!ほかにも野球の宣伝にて参加することとなった荒川ホワイターズのシロえもんやシンフォギア装者など著名人も数多く参加!はたして、どんなレースになるのか、今からワクワクだぜ!』

 

ふう、緊張してきた。

でも大丈夫。見た目はこんなのでもこの自転車のすごさは昨日思い知ったわけだし、ほかの車にも負けないはずだ。

排気音が鳴る中、私とドラえもんはペダルに足を付ける。

 

『3』

 

ぐっと足に力を入れて…。

 

『2』

 

しっかりとハンドルをつかんで前を見据える。

 

『1』

 

いよいよだ。私たちは目を合わせ、うなずき合う。

 

「「せーの!」」

 

『GOー!』

 

ドン

 

すさまじい音とともに、私たちは走り出す。

ペダルをこぎ、前を見据え、ものすごい勢いで加速させる。

 

『なんだなんだ?すさまじいスピードだぞアヒル号!』

 

先頭を走るデポンさんは笑いながらさらに加速させる。

でも、負けてたまるか。ドラえもんの耳をプレゼントするためにも…。

 

「この勝負、絶対に勝つ!!」

 

『デポン&アヒル号!早くも第二ステージに突入だ!』

 

私たちはスピードを維持しながらそのままワームホールの中に突っ込んでいった。




響の絵が上手いというのは声優さんの絵がメチャクチャうまいからです。


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ドラえもん誕生日スペシャル 走れ!銀河グランプリ⑤

響side

 

ワームホールの激しい光のまぶしさで思わず目を細めてしまう。

ちらっと見ると、デポンさんは慣れているのか平然としている。

そうこうしているうちにワームホールの終点が見えて……

 

「「へ?」」

 

突如私たちを襲った浮遊感。状況を理解する間もなく、私たちは勢いよく岩だらけの世界に落っこちていった。

 

「「うわあああああああああ!?」」

 

ど、どうしよう。ブレーキをかけているのに全然止まらないよ!?

まるで森みたいに景気良く生えている大きな岩。このままじゃぶつかっちゃう。

そうこうしているうちに目の前に大きな岩が迫ってきた。

 

「ど、どうしよう!」

 

「ひ、響ちゃん!」

 

ドラえもんが私の名を呼び首にかけている鈴を指さす…あ、そうか!

私はシートベルトをとって車体の上に立ち上がる。

眼前に迫る岩を見据えながらペンダントを掲げ、胸の歌を口ずさむ。

 

Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)

 

瞬間、私のペンダントが先ほどのワームホールにも負けないまばゆい光を放ちだす。光はみるみる私の体を包み込み、私の腕には大きな籠手が装着され、衣装もまた、オレンジ基調のスーツに代わっていく。

 

『ま、まさかこれはあの伝説の!』

 

「はあ!」

 

ガングニールのシンフォギア。

数々の戦いを支えてきた私のシンフォギアだ。

これがあれば岩なんてへっちゃらだ…。

 

「響ちゃん!」

 

「うん。わかってるよドラえもん。」

 

私は歌を歌いながら岩に向かって拳を構え、力をためる。

 

「おりゃあああ!」

 

私は岩を思いきりぶん殴る。

ドンとすさまじい音が鳴り響き、岩は見事に爆散、パラパラと瓦礫が降り注ぐ。

 

『なんというパワーだ!これがガングニールの力なのかあ!?』

 

「響ちゃん、大丈夫?」

 

「うん。平気へっちゃらだよ。岩は私に任せて、ドラえもんは運転よろしく。」

 

ドラえもんは時たま乗り物の操縦もするし、きっとこの車の運転だって大丈夫。ドラえもんの運転ならほかの誰よりも信頼できる。ならば私はドラえもんの道を切り開けばいい。

 

「最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線に!」

 

岩ぐらいなんだ。私たちが切り開いてきた道は、こんなものじゃものともしないよ。

 

 

**********

 

翼side

 

 

「ふむ、立花はガングニールを纏ったようだな。」

 

「響らしいや。私もそうしようかな?」

 

私の言葉に笑いながら奏は答えた。

確かにこうも障害物が多いとこちらとしてもいささかやりずらいな…。

案外奏の提案に乗るのもいいかもしれない。

 

「まかせるよ奏。」

 

「待ってました。」

 

奏はサイドカーの車体から立ち上がり、聖詠を口ずさむ。

 

Croitzal ronzell gungnir zizzl(人と死しても、戦士と生きる)

 

ガングニールを纏った奏は撃槍を構え、眼前の岩を破壊する。

 

「へへ…って危ない!?」

 

奏が岩を貫くが、その破片が別のレーサーに向かって落ちていく。

見た限りではドラえもんと同じネコ型ロボットのようだ。

まずい、このままでは…。

私たちはそのロボットを助けようと思ったが…。

 

W(ホワイト)ドリフト!」

 

そのレーサーはまるでW字のようなジグザグの軌道を描きながら岩の破片をすべてよけて見せた。

なんという技術だ…。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「余計なお世話だ。」

 

そういうとそのレーサーはこちらに見向きもせずそのまま進んでいく。

その純白の車体には何やら文字が刻んであるのが見てとれた…。アラカワ…?

 

「荒川ホワイターズ…さっき司会の言っていた野球選手ってやつか…。」

 

なんと、あの腕前で本職ではないというのか…。

すさまじいな…。

油断をしていたつもりはないが、どうやらこのレース、一筋縄ではいかなそうだな。

こちらとしても、防人の血が騒ぐというものだ。

 

「負けていられない…。いこう、奏!」

 

「ああ、私たちツヴァイウイングの力、見せてやる。」

 

奏の言葉にうなずき、私たちは再び戦場(レース)へと飛び出した。

 

 

**********

 

響side

 

「響ちゃん。もうすぐで第3ステージだ。何が出るかわからないから気を付けて。」

 

「うん、わかってる。」

 

岩場の多い第2ステージでは私が岩をぶん殴りながら進んでいたけど途中で小さく鋭利な瓦礫の破片がタイヤにぶっ刺さってアヒル号がパンクしちゃうという事故が起きちゃって、そのせいでかなりの時間をロスしちゃった。

びりじゃないのが幸いだけど、それでも順位はかなり下のほうに落ちてしまった。

ドラえもんが古かったタイヤをタイム風呂敷で新品同然にしたからもうパンクはしないと思うけど、どんな星に行くかはわからないから油断しないようにしないと…。

 

「ワームホールに突入するよ!響ちゃん!シートベルトをしっかりして!」

 

「う、うんわかった。」

 

さっきのようにいきなり投げ出されることもありうるし、そろそろ車体に戻らないと…。

そう考えながら私は急いでシートベルトを締める。

再びワームホールに突っ込むと、今度の星は…な、なにこれ?

 

『第3ステージはマグマが水のように流れる灼熱の星だあ!』

 

あ、暑い!

実況の人が言っている通り、マグマが水みたいに流れていてとんでもなく暑いよう…。

 

「車なんだし冷房を入れよう。」

 

「あ、そうだね…。」

 

そう言って私はハンドルの隣にいくつかあるボタンを見つめる…。

どれが冷房何だろう。そう思いながら一つのボタンを押す。

するとアヒル号の首が変形し、ビヨーンとかなりに長さに伸びていった。

 

「「・・・・・・・・。」」

 

え~と、なにこれ?

 

『秘密兵器のろくろ首だ。六六三十六なんつてなアハハハ。』

 

ゴンスケさんからの通信が入り、私たちに教えてくれる。

これが一体何の役に立つんだろう…いや、それよりも。

 

「ゴンスケさん、この車クーラーってあります?」

 

まあ、一応車なんだしきっとあるはずだ。

そう思って聞いてみたが、現実は非常である。

 

『そんなハイカラなものはいらねえ!自転車ってのは汗かきながらこぐものだべ!』

 

「「・・・・・・・・。」」

 

うう、そんな。

もしかして私呪われてる?

 

『ザーザー…。』

 

「え!?ご、ゴンスケさん!?」

 

そうこうしているうちにゴンスケさんからの通信も途絶えてしまった。

 

「ど、どうして?」

 

「たぶん、暑さでショートしたんだ。」

 

な、なるほど…。確かにこの暑さじゃあ仕方ないか…。私もショートしそうだよう。

このままじゃあ暑さで死んじゃうかも…。未来に会いたいよう。未来の冷たい手を触って涼みたいよう。

 

「あ、そうだ。」

 

そういうとドラえもんは四次元ポケットに手を突っ込んで何かを探し始めた。

何かひみつ道具を出してくれるのかな?

 

「あべこべクリーム!!」

 

あ、それ知ってる。

確か暑さと寒さがあべこべになるやつ。

確か昔それを使って水に飛び込んで凍っちゃったんだっけ。懐かしいな。

 

「ん?ドラえもん。あれ…。」

 

「ムっ!」

 

ドラえもんは私の指さした方向を見ると、すごい表情になって向こうを睨む。

そこにいたのは先日少しお話をしたデポンさんだ。

何やら車をいじくって難しい表情をしている。

 

「どうかしたんですか?」

 

デポンさんは話しかけてみると少し驚いたような表情を見せるが、すぐに態度を改めた。

 

「君には関係ない。何か用かい…?」

 

「これ使ってください。暑さが和らぎますよ。」

 

「響ちゃん、こんな奴に…。」

 

「困ったときはお互いさま。確かにドラえもんにひどいことを言ったのは許せない…。

それでも、私はあなたとも手をつなぎたい…。あなたと仲良くなりたいんです。」

 

「響ちゃん…。」

 

私はデポンさんにあべこべクリームを差し出す。

でも、デポンさんは気に入らなかったみたいであべこべクリームをはじいてしまった。

 

「なにをするんだ!せっかく響ちゃんが…。」

 

「悪いな。俺は誰も助けないし、だれにも助けられたくないんだ。」

 

そういってデポンさんは車を走らせ先へと進んでしまった。

 

「本当に嫌な奴!」

 

「…だとしても。私はこの手を伸ばし続ける。」

 

私にはあの人が悪い人だと思えない。

直観だけど、本当は優しい人なんだと思う。

私はそれを信じたい。

 

 

**********

 

切歌side

 

 

「調のお肌は冷たくて気持ちいいのデス。」

 

「切ちゃんも…。」

 

それにしてもここはとても暑いのデス。

私たちの車には冷房があるから涼しいけど、なんていうか見てるだけで熱いというか…。

うう、早くこんなところとはおさらばしたいデス。

 

「あ、切ちゃん。あれ…。」

 

「およ?…あ、次のステージのゲートデス。」

 

ふう、長く険しい道のりでした。

でも、ココを抜ければこんな熱い場所とはおさらばなのデス。

私は思い切りアクセルを踏んで車を加速させた。

そのまま、ワープホールに突入し、新たなステージへと降り立つ。

そこはまるで事故でもあったかのような古びた建物の中…。

うう、薄気味悪いデス。

 

「ここはどこデスかね…。」

 

「地図を開いてみよう。」

 

そういいながら私と調は車についているタブレットを操作しようとする…ってアレ?

 

「つかない?」

 

タブレットはいくらタッチしてもうんともすんとも言わない。それどころか、ザーザーと砂嵐みたいになっているデス。

 

「いったい、どうなっているのデスか?」

 

そういいながら私たちは不穏な空気を纏うタブレットを見ることしかできなかった…デス。



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ドラえもん誕生日スペシャル 走れ!銀河グランプリ⑥

マリアside

 

 

『第4ステージは廃棄された巨大宇宙ステーション!しかし、現在磁気嵐が発生しているため、中継映像に乱れがございます。今しばらく、お待ちください。』

 

砂嵐と化したモニターに向かって大勢の観客たちがブーイングをしている中、私たちは座席に座り、静かに参加者の表示されているモニターを眺めていた。

 

『おっと、リタイア。またまたリタイアだあ!』

 

「明らかにおかしいわ。モニターが付かなくなったと同時に次々リタイアが増えているなんて。」

 

「ああ、こいつは明らかに異常だ。」

 

そう。

先ほどから次々とリタイア者が続出している。

いくらこのレースが危険だからって、先ほどまでの障害を乗り越えて者たちがこうも次々脱落していくには違和感がある。

謎の磁気嵐といい、どう考えてもおかしいわ。

 

「お兄ちゃん…。」

 

「切歌さんや調さんたちは大丈夫でしょうか…?」

 

「くそ、見てるだけしかできねえのかよ…。」

 

「キャロル…。」

 

他の皆もだんだん心配になってきたようね…。

無理もない…。ここからモニターを眺めることしかできないだなんて…。

 

「心配いらねえよ…。」

 

ドラ・ザ・キッドのつぶやきに私たちはいっせいに彼に視線を向ける。

全員の視線が自分に向いたということを確認したのち、彼は静かに語り出した…。

 

「あいつらは、今まで数々の逆境や冒険を乗り越えてきたやつらだぜ…。ドラえもんだって、俺たちドラえもんズのリーダーなんだ。

たとえこのレースにどんな陰謀が絡んでようが、あいつらがそれに負けるわけがねえじゃねえか…。俺たちはあいつらのことを信じて待てばいいんだよ。」

 

「「「「・・・・・・・。」」」」

 

確かに、彼の言うとおりね…。

あの子たちがこんな逆境に負けるはずがない。

私たちはみんなの無事を信じればいいだけなのだ。

 

「どうか無事で…。」

 

 

 

**********

 

ドラえもんside

 

 

「わ、また行き止まりだよ!」

 

どうやらここは大昔に廃棄された宇宙ステーションみたいだな。

さっきっから通行止めや崩れた道といったものが大量にある。

もう一度Uターンして元いた方向に戻ると今度は分かれ道があった。

 

「どっちに行けば…。」

 

ここで時間を食っちゃうとあいつに負けてしまう…。

あのデポンってやつは本当にいけ好かない奴だ。

僕の耳を馬鹿にしたり、響ちゃんのやさしさを踏み握ったり…、絶対にギャフンといわせてやるんだから…。

 

「任せて響ちゃん。こういう時は…。」

 

僕は四次元ポケットに手を突っ込み、目当ての道具を探し出す。

え~と、どこにあったかな…、あ、あったあった。

 

「ミチサキステッキ!」

 

「これはどんな道具なの?」

 

「どちらの道に行けばいいか迷った時に使う道具で、正しい道の方向に倒れて、行くべき道を教えてくれるんだ。」

 

「尋ね人ステッキみたいな感じ?」

 

「そうそう、そんな感じ。」

 

響ちゃんに説明しながらミチサキステッキを地面に立て、手を放す。

すると、ぱたんとステッキは分かれ道の正しい方角を示した。

これに沿って進めばゴールできそうで。

 

「ん?ねえドラえもん…。なにかきこえない?」

 

「え?」

 

言われてみれば何か聞こえてくる。

いったいなんだろう…?

 

「ううう…。」

 

これは…誰かの泣いている声?

こんなところでいったい誰が…。

 

「行ってみよう!誰かがけがをしたのかもしれないよ。」

 

「そうだね。」

 

響ちゃんとともに泣き声のする方向へ行ってみる。

するとそこには大粒の涙を流す参加者と無残にも大破した車があった。

 

「ううう、俺の愛車がブウ…。お釈迦にされたブウ…。」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「うわあ、ひどい事故だ…。」

 

パンク程度ならまだしもここまで大破してしまうとタイム風呂敷は使えない…。

このレースでは車を直接道具を使って修理することが禁止されているんだ…。例外はタイヤ。危険な環境で消耗の激しいという理由でタイヤだけは認められているらしい。

僕たちも気をつけなきゃ……。

 

「事故じゃないブウ!!」

 

「「え?」」

 

事故じゃない…?それじゃあいったいこれは…。

 

「変な猫耳に突き落とされたんだブウ!」

 

「「え?ねこ?」」

 

猫耳だって…?シロえもんはロボット時代の同級生で僕が元ドラーズということもあり、今も時たま会うことがある。

プライドの高い奴だけど、こんな卑怯な真似はしないはずだ…。

となると考えられるのは…デポンの仕業だ。

間違いない。

いくらレースに勝ちたいからってこんな卑怯な真似をするだなんて…。

 

「デポンめ!なんて卑怯なんだ…。」

 

「でも、本当にデポンさんなのかな?」

 

「あいつ意外に考えられない!行こう響ちゃん!」

 

「う、うん…。」

 

困惑する響ちゃんを乗せ、僕はペダルに足を付ける。

デポンめ…、必ずぎゃふんといわせてやる…。

 

 

**********

 

 

あれからしばらくの時間がたった…。

迷路のようなステーション内ではやはり行き止まりや分かれ道も多く、かなりの苦戦を強いられる。

でもミチサキステッキの通りに言ったおかげでだいぶゲートまで近づいたはずだ。

 

「ドラえもん。別の車の音がするよ。」

 

「ん?」

 

そんな中、別の車の走行音がこちらへ近づいてきた。

あの車は……デポン!!

 

「響ちゃんあいつだ!気をつけろ!」

 

「え、ええ?う、うん。」

 

なにやら少し困惑した表情で答える響ちゃんを尻目に僕も思い切りペダルをこぐ。

それに対し、デポンもスピードを上げるが、僕らに追いつけないでいるようだ。

 

「チッ、あいつらよりおそいとはな…。」

 

しかし、デポンもどんどんどんどんスピードを上げていく。

今この場は一本道だ。下手したらさっきの人みたいに突き飛ばされるかもしれない。

もっと早くこがないと…。

 

「ドラえもん!前見て!」

 

「え?ってうわああ!」

 

響ちゃんの言葉に前を向くとそこには分かれ道があった。

ガードレールがないため、このままの勢いだと落っこちてしまう。

 

「「うわああああああ!?」」

 

慌てて僕たちはブレーキをかける。

そのかいあって何とか僕たちは落っこちずに踏みとどまることができたのだった。

ふう、危ない危ない…。

しかしまた分かれ道か…。ここはミチサキステッキで…。

するとデポンは何やら耳を澄まして何かを聞き取ろうとしているようだ。

いったい何を企んでいるんだ?

 

「デポンさん、何してるんだろう?」

 

「さあ、でも油断しないで…。」

 

そして倒れるミチサキステッキ…。

倒れた方向は…左だ。

 

「急ごう!」

 

「待て!」

 

すると突然デポンが僕たちのことを制止してきた。

いったい何だっていうんだ。

 

「そっちはやめたほうがいい。嫌な音がする。」

 

「え?はい。わかりました。」

 

「響ちゃん!ミチサキステッキはこっちを向いてるんだ!」

 

「え?で、でも…。」

 

響ちゃんはデポンの言うことを信用したいらしいけど、僕は信用できない。

さっきの人を突き飛ばしたことといい、絶対何か企んでいるはずだ。

 

「意地を張るな。俺の耳は超高度なセンサーになっている。性能は確かだぜ。」

 

…また耳の自慢か。僕に耳がないことをいいことに。

 

「うるさい!だまされないぞ卑怯者目!お前なんかネコ型ロボットの恥だ!行こう響ちゃん!」

 

「え?う、うん…。」

 

悲しそうな表情をする響ちゃん。

でも僕にはそれをいたわる余裕がなかった。

僕たちはそのまま左へと進んでいった。

 

 

 

 

「しっかりつかまっていろ!!」

 

 

 

すると突然、デポンは僕たちのアヒル号に車ごと体当たりしてきた。

何やら大きな爆発音が鳴り響き、その衝撃でアヒル号の車体は倒れこんでしまった。

 

「何をするんだするんだ!」

 

「あれをみろ。」

 

「?…な、これは!?」

 

デポンの指さす方向を見ると、何か大爆発でもあったかのような跡が残っていた。

道は完全に崩れており、もしデポンが突っ込んでこなければ僕たちも爆発に巻き込まれていたかもしれない。

ロボットの僕はともかく、ギアを解除している響ちゃんが巻き込まれていたら…。

するとデポンは僕の首輪をつかみ、迫ってきた。

 

「お前、子守りロボットなんだろ!レースに勝つことに執着するよりも、大事なことがあるんじゃないのか!?」

 

その言葉にハッとする。

そうだ。僕は響ちゃんを守るという使命がある。

それなのにデポンに勝つことだけを考えて結果危険にさらしてしまった。

折角デポンが教えてくれたというのに…。僕は…。

 

「待って。」

 

すると響ちゃんもまたアヒル号の車体から降りてきた。

しかも足を抱えている…。

 

「響ちゃん怪我をしたの?」

 

「平気へっちゃら。たいしたことないよ。」

 

笑顔を作り、いつも通りのようにふるまうが足はかなり赤くはれている。

相当無理をしているようだ。

 

「ありがとうございますデポンさん。私たちを助けてくれて。」

 

もしもデポンが助けてくれなかったら響ちゃんのけがはこんなものじゃすまなかった。

デポン自身が巻き込まれる可能性だってあったのに…。

 

「…ごめんデポン。君のこと誤解してた。響ちゃんを助けてくれて本当にありがとう。」

 

「ふん。」

 

僕の謝罪と感謝の言葉を聞くとデポンは少し照れたように車のエンジンをかける。

 

「このレース普通じゃない。何かある。お前たちも気をつけろよ。」

 

そうしてデポンはさっそうと去っていった。

 

「…私たちも行こう。ドラえもん!」

 

「…うん!」



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ドラえもん誕生日スペシャル 走れ!銀河グランプリ⑦

三人称視点

 

響たちが車を走らせる中、レース会場では不満やブーイングが鳴り響いていた。

 

『ついにレースは終盤戦!5thステージは未開の惑星です。しかし、残るレーサーはたったの10人!委員長、これどういうこと?』

 

「いや、私にも何が何だかさっぱり…。」

 

司会が疑問のもうのも無理はない。

最初50以上いたレーサーも残るはたった10組だけ。

しかもそのほとんどが車の大破によるリタイヤであり、磁気嵐の影響で長い間何が起きているのかすらわからないのだ。

 

「10組も残っているのならいいではありませんか。」

 

そういったのは響たちをレースに招待したカレンだ。

彼女は10組も残っているのなら問題はないと自信たっぷりに言い放つ。

 

「そうは言いましても、この星は今回初めて取り入れられたコース、何が起きるかわかりませんよ。」

 

10組という状況でそのようなコースを走るのは危険ではないか、と思って位の言葉だが、カレンは堂々と言い放つ。

 

「何が起こるかわからないのがレースのだいご味じゃないですか。」

 

その笑みには何やら不敵なものが混ざっていたことに、ここにいる者たちは気付くことができなかった。

 

 

 

**********

 

キャロルside

 

「ふむ、ずいぶん興味深いな。いったいどんな進化をたどればこれほどの巨大化を…。」

 

やはりこのレース、参加して正解だったな。先ほどの宇宙ステーションといい未知のはらんだ興味深いものを数多く観察することができた。

どうやらこの惑星では虫が主導権を握っているらしく、この車体の数倍という巨躯を誇る虫を多く見かけた。

肉食も交じっているらしく何度か襲われたが問題はないな。

ファウストローブを纏うまでもなく、通常の錬金術で片が付いた。

 

(それにしても…。)

 

引っかかるのがここの昆虫の錬金術を見た時の反応だ。

錬金術の術式を発動すると途端に戦意を喪失し、奥へと逃げていくのだ。

まるで錬金術そのものに対して恐怖しているかのように…。

 

(この虫どもは錬金術を知っている?)

 

だとすればいったい、この虫どもはいつ、どこで錬金術の存在を知ったのだ?

疑問は尽きないが、今はレースに勝つことが優先事項だ。

レースに勝った暁には俺専用の巨大実験場をもらう予定だ。

S.O.N.G専属の研究員になってからというものの、忌々しいことに大掛かりな実験を行う際には場所を考えたり許可をもらったりとかなり手間のかかる手続きが必要となってしまったからな。

だが、俺専用の実験場があれば話は別だ。

どれほど大規模な実験だろうと俺の意志一つで決行できるようになれる。

フフ、今から胸が躍るというものだ。

 

「ん?あれは…。」

 

目の前に見覚えのある車がある。

あのふざけたシルエットは…。

 

「貴様ら、何をしている?」

 

「あ、キャロルちゃん。」

 

目の前にいたのは立花響とドラえもんの駆るアヒル号だった。

車体はかなりがたついているうえ、立花響の様子も少しおかしいように感じる。

何かあったのか?

 

「いや~、ちょっと足を怪我しちゃいまして…。」

 

「何をやっているんだお前は…。」

 

全く、そもそも車ではなく自転車でレースに挑む時点で正気を疑いたくなるな…。

ここでこいつを見捨てても寝ざめが悪い…。仕方がない。

俺は錬金術を使い、立花響の傷を和らげてやった。

 

「わあ、痛くないや。ありがとうキャロルちゃん。」

 

「勘違いするな。お前には借りが多くあるというだけのことだ。」

 

「全く、素直じゃないんだから。」

 

異様ににやにやする立花響の顔が何やらイラつくな…。

だが、感謝されるのは悪くないかもな…。

そう思いながら俺は車を走らせるのだった。

 

 

**********

 

弓美side

 

「虫は苦手だというのに…。」

 

「仕方ないでしょユミ。早くいくよ。」

 

創世の言う通りなんだけど、もう少し心の準備が欲しいというか…。

 

「それにしても、大きな虫ですわね。なんだかとっても強そうですわ。」

 

全くだよ。

アニメだったらホラーとかサバイバルとかそういうのにいそうな虫ばかりだ。

く、私にも響たちのような日朝の美少女アニメみたいな装備があれば…。

いや、あれは案外深夜向けアニメかな?

そんなこと考えていると、突如として私たちの車に誰かからの通信が入った。

こんな機能があったんだ…。

 

「誰からだろう?」

 

「とりあえず、押してみなよ。」

 

創世の言葉通り、着信ボタンを押すと、そこには必死の形相となったベンガルさんの姿が映っていた。

 

「べ、ベンガルさん!?どうしたんですか?」

 

「き、聞いてくれ!今猫耳のロボットに襲われている!猫耳の形からしてデポンだ。今証拠のデータを送るから、これを実行委員に、ぐわあああああ!!」

 

「ちょ、べ、ベンガルさん!」

 

そのままベンガルさんからの通信が途絶えた。

そ、そんな…。

それをみた創世もかなり怒っているようだ。

ただ、詩織は何やら難しそうな表情で考え込んでいる。どうしたんだろう?

 

「こうしちゃいられないよユミ。早く今の映像を実行委員に…。」

 

「待ってください!」

 

驚いたことにそれを制止したのは詩織だ。

いったい何が…。

 

「な、なにを言っているのテラジ?早く送らないと…。」

 

「今の、本当にベンガルさんは襲われたんでしょうか?」

 

「え?ど、どういうこと?」

 

だってこの映像ではベンガルさんが何者かに襲われて…そう思っていると、詩織が口を開き始めた。

 

「私は最近よく演劇などを見ますし、自分自身の演技にも自信がありますわ。」

 

そういいながら詩織はベンガルさんの送ってきた映像をもう一度見直す。

 

「このベンガルさん、映像越しだから定かではありませんが、まるでどこか芝居がかったものを感じましたわ。もしそうだとしたら…。」

 

確かに詩織の家は裕福だし詩織自身メチャクチャ演技が上手い。それこそハリウッド女優並みともいえるほどに…。そんな詩織が言うんだから間違いないかも…。

もしもそうだとしたら、ベンガルさんは本当は悪者ってこと!?

まだ確定はしてないらしいけど、もしかしたら本当に…。

 

「…わかった。テラジがそういうのなら、まずはベンガルさんが落っこちた場所に行ってみよう。」

 

そうして私は一情報を頼りにベンガルさんの車のあったと思われる地点に向かうことにした。

 

 

**********

 

切歌side

 

「そんな…ベンガルさん…。」

 

大変なことになったのデス。

なんと私たちに車を貸してくれたベンガルさんが別のレーサー・・デポンの手によって突き落とされてしまったのデス。な、何たることでしょう…。

 

「許せない…。」

 

「調!とっちめに行くデスよ!」

 

「うん…。」

 

調の目もまた怒りに燃えているのデス。私たちは車を走らせ、前へと進む。

あ、いたデスよ。

私たちのすぐ目の前にはベンガルさんをやっつけたデポンが車を走らせていたのデス。

 

「調。」

 

「うん。」

 

私たちはそのままデポンの車に突撃をした。

 

「うわっ!?なんだ!?」

 

「マストダーイ!」

 

「よくもベンガルさんを…。」

 

私たちはデポンをやっつけるために何度も何度も車を激突させる。

デポンは驚いたように私たちに向かって文句を言ってきた。

 

「何するんだ。走行妨害で失格になってしまうぞ!?」

 

な…。自分のことを棚に上げて…。

許せないのデス。

 

「「お前がいうな(デス)!!」」

 

「はあ!?って前見ろ前!」

 

「へ?ってうわあ!」

 

デポンの言葉通り前を見るとそこにはでっかい木が立ちふさがっていたのデス。

 

「「「ぶつかる────(デス)!!!」」」

 

 

**********

 

ドラえもんside

 

 

 

ドガ────ンと大きな音が鳴り響く。

なんだろう、爆発音?

 

「なんだ今のは…?」

 

「行ってみようドラえもん、キャロルちゃん。」

 

うなずき合い、僕らは爆発音のする方向へと向かっていった。

そこでは何やら言い争っている一団を見つけることができた。

あれはいったい…。

 

「あれってデポンさん…、それに、切歌ちゃんと調ちゃん!?」

 

そこにいたのはデポンと切歌ちゃんと調ちゃんのコンビ。ほかにも何人かのレーサーが集まっている。

 

「神聖なレースを汚すなアル。」

 

「刑務所行きアル。」

 

「勝てそうにないからってベンガルさんを突き飛ばすなんて最低なのデス。」

 

いったい何を言い合っているんだ?

 

「やめろ貴様ら!いったい何をごちゃごちゃ言っている。」

 

キャロルちゃんの言葉に切歌ちゃん隊は僕たちのやってきた方向を見つめる。

そうこうしているうちに翼さんの運転するバイクとシロもやってきたようだ。

 

「なんだ?」

 

「こりゃ何の集まりだ?」

 

「いったい何をやっているのだ?」

 

翼さんたちの疑問に答えるように、切歌ちゃんはデポンを指さしながらにらみつける。

 

「こいつがずるをしたのデス。勝てないからってベンガルさんを突き飛ばして…。」

 

「だから、俺はやっていないって言っているだろ!」

 

「論より証拠!ベンガルさんが渡してくれた証拠があるのデス!」

 

そういって切歌ちゃんが出したのはベンガルさんが何者かに突き飛ばされる映像だ。

それを見たみんながデポンのことをにらみつける。

 

「こいつはさすがにいただけないな…。」

 

奏さんの言葉にうつむくデポン。確かにこの映像は何よりの証拠になるだろう…。

でも、僕と響ちゃんはコイツがどんな奴なのかを知っている。こいつがそんなことをするはずがない。

 

「違う!」

 

思わず僕は大声をあげてしまった。

デポンを含め、ここにいるみんなが僕のことをみつめだす。

 

「デポンは嫌な奴だ。偉そうで、誰の手も借りようとしない頑固者だ。」

 

僕自身、最初はデポンのことをただの嫌な奴だとしか思わなかった。

でも違った。意地っ張りでプライドの高い奴だけど、優しい奴でもあるんだ。

 

「それでも、レースにおいて、こいつは卑怯なことは絶対にしない!そんな奴がこんなことをするわけがない!」

 

僕の言葉にシンと静まり返る。それでも切歌ちゃんは何処か釈然としないようだ。

 

「で、でも証拠が…。」

 

「その証拠ですけど、私たちにも送られてきましたわ。」

 

そういって現れたのは詩織ちゃんたちだ。

それにしても、詩織ちゃんたちにも証拠が送られてきただって!?

 

「この二つの証拠映像、どちらも微妙に違う時間に送られてきました。私たちが先でそのあと送られたのが暁さんたちの映像ですわ。」

 

そして両方とも再生してみると、内容は同じだけど、映像は別物だった。

まるで別々の場所で撮ったかのように…。

 

「これって…。」

 

「はい、映像は私たちとの通信したビデオ通話の映像をそのまま録画したもの。おそらく私たちとの通信の後、暁さんと通信をしたのでしょう。そして、それらの映像は突き飛ばされる点も含め、()()()()()()()()ですわ。つまり、ベンガルさんは()()()()()()()()()()()ということになります。」

 

でも、それはさすがにおかしすぎる。

そもそも一回目の映像と二回目の映像が同じということ自体可笑しいんだ。

それはまさしく、()()()()()()()()()()()()()()()()…。

 

「それに先程、私たちはベンガルさんが落っこちたと思われる場所へ赴きましたが、そこには何もありませんでしたの。」

 

な、なんだって!詩織ちゃんの言葉にみんなが驚愕の表情を浮かべる。

 

「つまり、デポンさんを陥れようとしたものの正体は…。」

 

詩織ちゃんの言葉が鼻垂れようとしたまさにその時、何やら大きな音が近づいてきた。

 

『グオオオオオオオオ』

 

「なっ!?」

 

突如として表れたのは、ビルほどもある巨大な芋虫だ。

 

「くそっ…。」

 

あまりにも突然の出来事のため、シンフォギアを纏う暇も錬金術を使う暇も、道具を出す暇さえない。

 

「「「「「「うわあああああああああ!!」」」」」」

 

僕たちはなすすべもなく巨大に飲み込まれてしまったのだった。



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ドラえもん誕生日スペシャル 走れ!銀河グランプリ⑧

響side

 

 

「響ちゃんしっかり…。」

 

何だろう…声が聞こえる。聞き覚えのある声だ…。

ドラえもん?あれ?私何をしていたんだっけ…?

 

「よかった。気が付いた?」

 

「ドラえもん…。私は…。」

 

私の意識は浮上するように覚醒していく。それと同時にある程度のことを思い出してきた。

そうだ!私たちは確か大きい芋虫に食べられて…。

 

「うわあああああああああ!俺の車がバラバラだああああ!」

 

「こっちもアル。」

 

「ひどいアル。」

 

大きい声のするほうを見ると、師匠のように体格のすごいレーサーさんの車が無残にもバラバラにされていた。

あそこにいる姉妹のレーサーさんの車も同じだ。

 

「どうやら私たちのマシンも同様のようだな…。」

 

「つ、翼さんのバイクもですか?」

 

見るとそれだけじゃない。弓美ちゃんたちの車もキャロルちゃんの車もみんな誰かに壊されていた。

壊れて車をドラえもんはまじまじと見つめる。

 

「間違いない。これは分解ドライバーだ。」

 

確か、どんなものでも分解できるひみつ道具だっけ?でもいったい誰が…。

そう考えていると、別の誰かが私たちに近づいてきた。

 

「俺以外の猫耳の誰かがあっちに行っているのを見たぜ。」

 

「本当、シロえもん?」

 

そういったのは見たことのない白いネコ型ロボットだ。

どうやらドラえもんの知り合いみたいだな…。聞くとロボット学校時代の同級生なんだと。

シロえもんさんの言葉に従い、私たちは猫耳のいたという場所へと向かうことになった。

するとそこには切歌ちゃんたちの車をいじくる誰かの姿がそこにあった。

 

「そこを動くなデス!」

 

「逃がさない…。」

 

確かにあれは猫耳だ。でも、衣装がデポンさんとは全く違う。

切歌ちゃんの車をいじっていた誰かはゆっくりと後ろを振り返る。

 

「やれやれ、この録画映像を委員会に持っていくだけでよかったのに、お子様は思い通りに動かないから困るね…。」

 

「っ…。やっぱりあなただったのですね!ベンガルさん!」

 

そこにいたのは猫の被り物をしたベンガルさんだった。

さっきの詩織ちゃんの推理を聞いて予想はしていたが、それでも切歌ちゃんたちは動揺を隠せないでいる。

 

「猫耳ロボットに攻撃されている~。ハハハ、名演技だっただろう。」

 

「お前が俺のふりをしてこんなことを…。俺の車に爆弾仕掛けたのもお前か…。」

 

く、車に爆弾!?この人そんなこともしていたの!?

ひょっとしてマグマの星でデポンさんが車をいじくってたのって…。

 

「君に小細工は通じないのでね、こうして失格になってもらおうと思ったわけさ…。予備の策でシンフォギア装者を使おうとも考えたけど、上手くいかないね。」

 

「なんでこんなことを…。」

 

調ちゃんの質問には答える気がないようだ。

でも、予備の策?ということは…。

 

「ひょっとして、レースに誘われたのって?」

 

「偶然だと思ったかい?僕たちが招待状を送ったのだよ。デポンの証拠映像を効率よく届けるためにね。

もっとも、子供なら簡単に信じ込むと思っていたけど、失格になったり真相に気付いたりは予想外だったね。」

 

見渡すと此処にいたレース参加者全員がここに集まっていた。

ベンガルさんの言葉をすべて聞いていたらしく、敵意をあらわにしている。

 

「なめた真似を…貴様、生きて帰れると思うなよ。」

 

「おお怖い怖い、さすがは世界を敵に回した最強の錬金術師だな…。」

 

キャロルちゃんの強い言葉を聞いてもベンガルさんは余裕の笑みをこぼさない。

すると突如としてたくさんの虫が地面から出てきた。

すると驚くことに、虫たちは風の息や炎の息、水の息などを吐きだしてきた。

これって…四大元素(アリストテレス)!?

 

「貴様!錬金術師か!?」

 

「そうさ。この虫は私が作った特別製でね。四大元素(アリストテレス)などの錬金術を使うことができるんだよ。この虫を使い、私はこの星の虫たちの頂点に立った。

ここの虫は私の言うことは何でも聞くのだよ。ではさらばだ。」

 

そういってベンガルさんは車を走らせ外へと出て行ってしまった。

 

「逃がすか…くっ。」

 

追おうにも虫たちが邪魔で追うことができない。

私たちはただ相手を見送ることしかできなかったのだ。

 

 

**********

 

ドラえもんside

 

「ごめんなさい(デス)…。」

 

「気にしてないって言ってるだろ…。」

 

ベンガルが出ていってからしばらく、僕たちは今だこの巨大な芋虫のお腹の中に閉じ込められていた。

 

「くそ!!」

 

キャロルちゃんが怒りに任せて錬金術による攻撃を試みる。

しかし、その攻撃は巨大芋虫の腹を貫くことはなく、あえなく霧散してしまった。

 

「なんで…。」

 

「…おそらく錬金術由来のものをはじく術式でも施されているのだろう。」

 

確かに、それにしてもキャロルちゃんの錬金術をもはじくとなると相当強固そうだ。

 

「ならば私が…。」

 

そういうや否や、翼さんは首にかけてあるペンダントを取り出し、聖詠を歌い出した。

 

Imyuteus amenohabakiri tron(羽撃きは鋭く、風切る如く)

 

瞬間、翼さんの体をペンダントの光が包み込み、日本神話の名刀“天羽々斬”のシンフォギアとなった。

彼女は剣を構え、居合の要領で胃袋を切り裂こうとする。

 

「防人の剣、受けてみよ!」

 

一閃。翼さんの剣が胃袋に直撃する。

しかし、胃袋はまるでゴムのようにぐねって翼さんの斬撃のショックを吸収してしまったのだった。

 

「私の剣でも斬れんとは…。」

 

「どうすれば…。」

 

「どうしようもない。そもそももう誰の車もつかえないんだからな。」

 

悔しそうにうつむくデポン。確かに、此処にいる全員の車がベンガルの分解ドライバーで壊されてしまったのだから、このレースはベンガルの……。

…アレ?

いや、残っているぞ。一台だけ。

 

「まだだよ。」

 

響ちゃんが強い目でそういう。そう、この場に車が実は一台だけ残っているんだ。あの時芋虫が地面ごと僕らを飲み込んだ際、ほかの車と違い、小さいから埋まった車が。

 

「私たちのアヒル号は地面に埋まっただけでまだ生きてるんだ!」

 

響ちゃんの言葉にみんなが騒然とする。その表情は驚愕に満ちながらもどこかうれしそうだ。

 

「そういうことははよ言わんかい!」

 

そういったのは強そうなムキムキレーサーであるダイス・チョボイッチさんだ。彼はすごい力で地面に埋まっていたアヒル号を見事に引っこ抜いて見せた。ギアを纏っているわけでもないのにすごいパワーだ。

軽く確認してみたけど異常はなさそうだ。

 

「あとは脱出するだけだな。」

 

それが一番の問題だな。どうすればこの芋虫の胃袋を貫くことができるんだろう。

 

「みんな、絶唱だ。」

 

そうか。S2CAを使えばこの強固な壁を貫くことができるかもしれない。

 

「その手があったデス。」

 

「やるか。」

 

「ハイ。」

 

それを聞いたみんなは覚悟を決めたらしくうなずき合い、シンフォギアを纏うための聖詠をとんなえだした。

 

Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)

 

Croitzal ronzell gungnir zizzl(人と死しても、戦士と生きる)

 

Zeios igalima raizen tron(夜を引き裂く曙光のごとく)

 

Various shul shagana tron(純心は突き立つ牙となり)

 

瞬間、皆のペンダントが美しい光を放ち、シンフォギアを生み出した。

五人は響ちゃんを中心に手をつなぎ、シンフォギアにとっての奥の手を歌い出す。

 

「「「「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl」」」」

 

瞬間、すさまじいエネルギーが五人の体からあふれ出す。

そのすさまじい力にみんな思わず後ずさってしまう。

だが、エネルギーを制御するアガートラームを持つマリアさんやセレナちゃんがいない分、負担がかなり大きいみたいだ。

皆かなりの苦悶の表情を浮かべている。

そこでなんとファウストローブを纏ったキャロルちゃんが加入してきた。

 

「キャロルちゃん!?」

 

「俺が代わりにフォニックゲインを制御してやる!そのままぶちかませ!!!」

 

そうか、70億人の絶唱をも上回るフォニックゲインを生み出せるキャロルちゃんならS2CAの制御もできるかもしれない。

響ちゃんは笑顔でキャロルちゃんを受け入れ、エネルギーを拳にためる。

 

 「「「「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl」」」」

 

そして彼女たちは見事、絶唱を歌い切ったのだった。

 

「セット!ハーモニクス!S2CAセクステットバースト!!」

 

六人分の絶唱の力が響ちゃんの拳に集まり、響ちゃんはそれをもって思い切り芋虫の胃袋をぶん殴る。

その衝撃だけで僕らは吹き飛ばされそうになり、圧倒的なその破壊力の前には絶刀をも受け止めた壁でもあらがうことすらできず、大きな風穴を開けたのだった。

 

「やったでられた!」

 

これでレースに戻ることができ…、ん?なんだ?

何やらたくさんの羽音が僕たちのもとへと迫ってくる。あれは…。

 

「見て、ドラえもん。虫たちが…。」

 

そう、たくさんの虫たちが僕たちのもとへと殺到してきたのだ。おそらくさっきの爆音で…。

まずい、今の絶唱で皆まだ消耗している。このままじゃ…。

 

「どいてろ。」

 

そういったのはシロえもんだ。そこらにあった石ころを追って何やら独特の構えをしだす。

 

「Worldボール!」

 

瞬間、すさまじい速度で石を投げるシロ。すると石はW字のようなギザギザの軌道を描きながら分身したのだ。

分身したボールに当たり、虫たちは驚いたように退散していった。

 

「どういう原理で分身を…。」

 

「あれくらいなら俺が追い払ってやる。ドラえもん。お前は早くあいつを追いかけるんだ。」

 

「うん。」

 

そういって僕たちはアヒル号に向かう。

するとギアを解除した響ちゃんのポケットから何やら紙が落ちていった。

何だろう…と思い、見てみると、それは僕が切り抜いた猫耳特集の雑誌の写真だった。

 

(ひょっとして響ちゃん…。)

 

響ちゃんは僕の耳のためにこのレースに参加したのか…。

僕は響ちゃんの気持ちを知り思わず泣きそうになってくる。

 

「僕のために…。」

 

「愛されてるんだな。お前。」

 

「デポン…。」

 

デポンは笑って僕に激励を告げる。

 

「行け、行ってネコ型ロボットの意地を見せつけてやれ。」

 

「うん!」

 

絶対に優勝してやる。デポンのためにも、響ちゃんのためにも…。

僕たちは再びレースの舞台へと舞い戻ったのだった。




なお、芋虫には再生能力があったらしく、無事でした。


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ドラえもん誕生日スペシャル 走れ!銀河グランプリ⑨

三人称side

 

『ファイナルコース、地球に向けての軌道ハイウェイ、ですが、現在、ベンガル選手のウイニングラン状態だ。』

 

「お兄ちゃん…。」

 

心配そうに兄の無事を祈るドラミ。

彼女だけではない。観客席に座る装者たちやドラ・ザ・キッドにパワえもんといった面々も心配そうに画面を見ている。

それもそのはず、何しろドラえもんや響たちはつい先ほどの第5ステージにて消息を絶ってしまったのだ。

彼らがそう簡単にやられるはずがないと信じているとはいえ、心配になるのも無理はないことだろう。

そのころベンガルはというと…

 

「カレン、これで僕の優勝は決まったも同然だ。ついに僕たちは結婚できるんだ。」

 

『おお、ベンガル…。』

 

ベンガルは恋人であるカレンと通信を行っていた。

彼らは結婚を前提に付き合っていた恋人同士だが、今回のカーレースの責任者であるカレンの父に反対され続けていたのだ。

そこで、優勝の権利を使用し、結婚を認めさせようという腹だったのである。

 

「さあカレン、画面越しのキスを…。」

 

彼らはもはや勝利を確信していた。

自分たちの恋路を阻むものなど存在しないと…。

しかし、そんな余裕にかまけた二人に予想だにもしない出来事が起きたのだ。

 

『おお、きたきたきた‼』

 

「「は?」」

 

二人が慌てて画面を見るとそこに映っていたのは土埃に包まれながらもすさまじい勢いでコースを走るアヒルの映像。

 

『まさかまさかのアヒル号だあああ‼』

 

 

 

**********

 

 

響side

 

 

「よし!追いついた!」

 

「馬鹿な!?」

 

私とドラえもんの二人はものすごい勢いでペダルをこぎ続け、ついに前方にいたベンガルさんに追いついたのだ。

キャロルちゃんが私の足を直してくれたおかげだ。

ありがとうキャロルちゃん。

これで私はまだ戦える。

 

「や、やあ君たち、あそこから脱出するなんてすごいね。」

 

すると突然ベンガルさんは人のよさそうな笑顔で私たちに話しかけてきた。

 

「お兄さんと取引しよう、後で好きなものなんでも挙げるからお兄さんに勝たせてくれないかな?」

 

「お断りします!」

 

「あっかんべー!」

 

そんな取引飲めるわけがない。デポンさんを陥れようとして、弓美ちゃんや切歌ちゃんの信頼を踏み握ったこの人を、許すわけにはも、ましてや勝たせるわけにもいかない。

それがベンガルさんの気に障ったようだ。

額に青筋を立ててかなり怒っている。

 

「こ…の…、庶民のお子様風情が‼」

 

「えっ…てうわああああああ!?」

 

するとベンガルさんは私たちに向かって車を激突させる。あまりの速さにアヒル号はスピンして後ろにまで吹き飛ばされてしまう。

何のこれしき…、と思ったらベンガルさんは何やら画面に向かって叫んでいる。

あれはいったい…。

 

「パージだ!!!」

 

すると次の瞬間、私たちのは知っていた地球の軌道上に浮かぶホースのような道がバラバラに崩れ落ちる。

道が崩れればそこにあるのは当然宇宙空間、私たちはなすすべもなく宇宙に放り出されてしまう。

 

「「うわあああああああああ!」」

 

くっ、まずい。

宇宙空間じゃあ身動きが、というか普通此処までする?

さっき弓美ちゃんたちに貸してもらったテキオー灯を浴びていなかったらそれだけで死んじゃうよ。

 

「あ、ドラえもん!」

 

まずい、さっきの激突でシートベルトがちぎれってしまったらしく、ドラえもんがアヒル号の車体から落ちそうになる。

慌ててドラえもんの手をつかむと、ドラえもんの青い頭と青い地球が重なった。

 

「地球だ。青くて、丸くて、ドラえもんみたい。」

 

帰ってきたんだ。ここまでくれば、ゴールまであと少し。

ならばあきらめてなるものか。

ドラえもんが笑顔でアヒル号に乗り込み、私に告げる。

 

「行こう、響ちゃん。」

 

「うん!」

 

でもそのためにはコースに戻らないと、この無重力下でコースに戻るにはどうすれば…。

すると突然私たちのアヒル号に通信が入ってきた。

 

『無事かおめえら。』

 

「ゴンスケさん!」

 

通信を入れてきたのは私たちにこのアヒル号を託してくれたゴンスケさんだった。

そうか、ショートしちゃった通信機能がさっきの激突のショックで復活したのかも…。

 

『おめえら、必殺ろくろ首を使うだよ!』

 

さっきの首が伸びる機能…、そうか!

アレを使えば元の道に戻れる!

私たちはアヒル号のろくろ首機能を使ってコースへと舞い戻った。びよーんと伸びるアヒル号の首がコースの端を咥え、元に戻る反動を利用して元の道に戻ったのだ。

 

『アヒル号、地球へ帰還しまーす!』

 

「「うおおおおおおおお!!」」

 

全速前進!最短で最速でまっすぐに一直線に!

私たちは力の限りペダルをこぎ、ついにベンガルさんの車へと並んだ。

 

『二台並びました。ついにラストラン!!』

 

ベンガルさんも負けるものかと何やらジェット機みたいな噴射で引きはがそうとするけど、こっちだって負けな…ってうわあ!?

 

『こ、これはどうしたことだ?花火がアヒル号のみをめがけて落っこちてくる!?』

 

司会さんの言うとおり、突如として花火が私たちめがけて振ってきたのだ。

なにこれ…。

私たちは花火をよけながらペダルをこぎ続ける。

すると花火がやむと同時にベンガルさんの表情が変わる。

 

「カレン──────────‼‼」

 

か、かれん!?それってあの時私たちを招待した?

そう思うもつかの間、ベンガルさんは先ほどの錬金術を使う四匹の虫たちを出してきた。

ベンガルさん本人も私たちに錬金術の攻撃を仕掛けてくる。

 

『べ、ベンガル選手ご乱心!?失格になりますよ!?』

 

「知ったことかああ!!優勝者はいない!!全員失格だああああ!!」

 

その形相からは何処か悲壮感が漂っている。

…もしかしたら、ベンガルさんにも何かかなえたい願いがあったのかもしれない。だからこんな凶行に。

……だとしても、私はあなたに勝って見せる!私たちを信じてくれた皆のためにも。

 

「行くよドラえもん。」

 

「うん。デポンのためにも。」

 

「みんなのためにも!」

 

「「絶対に勝あつ!!!」」

 

そして歌う。胸の歌を。

今の私の、皆の思いの、全身全霊を込めて…。

 

Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)

 

瞬間、ガングニールの光が()()()()()()()()()()()()()()()を包み込む。

私のギアはいつものギアとはまるで違う、何処かレーサーを思わせる装飾を持ち、顔にはバイザーのついた“レーサー型ギア”に、そのエネルギーは私だけでなくドラえもんにも、そしてアヒル号にも影響を及ぼした。

ドラえもんはレーサーのような服装となり、アヒル号は私が設計したものと似た車へと変形した。

違うのは色が白基調であり、ところどころに青とオレンジの装飾が施されている点である。

その両翼に備わったジェットのような機構からは美しい青とオレンジのエネルギーが噴射されている。

 

「なあ!?」

 

『なんとお!?アヒル号が美しい白鳥…いや、不死鳥へと進化したあああああ!!』

 

「こけおどしだああ!!」

 

驚愕の表情から動揺を隠す様にベンガルさんの攻撃はさらに激しいものとなる。

でも、進化したアヒル号にそんなもの効くはずがない。

アヒル号の翼は回転し、そのジェット噴射機構からなるエネルギーの放出でベンガルさんと虫たちの錬金術を打ち消した。

 

「馬鹿な!?」

 

「これはみんなの思いが紡いだギア、紡いだ車。こんなものじゃやられはしない!!」

 

「ふざけるなあ!貴様らの思いなぞ、この私が踏みつぶしてくれるわ!!」

 

そういうとベンガルさんはUターンし、虫たちを車と合体させ、逆走…。

このまま突っ込むつもりだ。

虫たちのエネルギーとベンガルさんの錬金術のエネルギーが混ざり合い、途方もない勢いとなっている。

でも負けない。

 

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」

 

ドンと大きな音とともに、二台の車がぶつかったことによる衝撃が鳴り響いた。

そのぶつかり合いはベンガルさんに分があるらしく、徐々に押され始めている。

 

「フハハハハハ!いくら外見を取り繕ったところで所詮は自転車、馬力が違うんだよ!!」

 

くっ、まずい、押される。

このままじゃあ…。

そんな考えが頭によぎった矢先、私たちの耳に聞き覚えのある声が聞こえた。

これは…。

 

「お兄ちゃん、響さん!」

 

「ここが正念場だ!ぶっこめ!」

 

「そのまま突っ切るのよ!」

 

「がんばってください。響さん。ドラえもんさん。」

 

「二人とも、頑張ってください!」

 

「ドラえもんズの意地と…!」

 

「ネコ型の意地を見せてやれ!」

 

「響──!!ドラえもん──!!」

 

ドラミちゃん、クリスちゃん、マリアさん、セレナちゃん、エルフナインちゃん、キッドさん、パワえもんさん、未来…。

そうだ、レーサーだけじゃない、こんなにもたくさんの思いが私たちを支えてくれているんだ。

 

「フハハハハハ!ぶっ壊れちまえ!」

 

させない。この人の思い通りには…。

 

「「負けるものかあああ!!」」

 

私とドラえもんはペダルをこぐ力をさらに加速する。

すると、両翼のジェット噴射もそれの呼応し、より強くなっていった。

 

「ば、馬鹿な、自転車が車に勝るハズなど、ありえるはずがないんだ!!」

 

「「だとしてもおおおおおお!!」」

 

たとえ自転車だろうと車だろうと、皆の思いのこもったアヒル号、負けてしまう道理はない!

エネルギーが最高潮にまで高まり、ついに不死鳥となったアヒル号はベンガルさんの車を吹き飛ばした。

 

「や、やめろおおおおお!?」

 

「「「「「「「「「「いっけええええええええええええええ!!!!!!」」」」」」」」」」

 

皆の叫びと私たちの叫びがシンクロする。

そしてついに私たちはゴールテープを突っ切った。

 

『ゴ──────────────────ル!!!優勝は立花響&ドラえもんのコンビだああああ!!』

 

ギアを解除すると同時にアヒル号とドラえもんも元の姿へと戻っていく。

そして私たちに対し、紙吹雪とともに花火が舞い上がる。勝ったんだ、私。

私は思わずドラえもんと顔を見合わせる。ドラえもんもまた感動で目に涙を握間せている。

 

「「やったあああ!!」」

 

これでドラえもんに耳をプレゼントできる。

 

 

**********

 

「やったべ~、優勝したのは、ゴンスケ自転車店の車だべ!」

 

『いや~素晴らし走りでした。さすがは世界を救った装者たちですね。』

 

「ありがとうございます。」

 

レースで優勝した私たちは表彰台の上でそれぞれ記念のトロフィーを手渡された。

下にはレースに参加したみんなが拍手で私たちを出迎えている。

あれからベンガルさんとカレンさんは逮捕され、警察に連れていかれた。

実はあの宇宙ステーションでの爆発やさっきの落っこちてきた花火なんかはカレンさんの仕業だったみたい。

でも、それがばれてお父さんからすごく怒られたみたいだ。

その理由が結婚のためだとは思わなかったけど…。まあ、連行される時二人とも幸せそうだったし、あれはあれでよかったのかな?

 

『では、チャンピオンに伺いましょう。お望みのものは?』

 

「え、え~と…。」

 

ドラえもんの耳。

そう一言いえばいいはずなんだけど、会場中の皆が注目しているから緊張してのどから言葉が上手く出ない。

翼さんたちはよくこんな視線を受けて歌えるなと思わず尊敬の念を強めてしまう。

ふとドラえもんを見ると、視線が合った。そして満面の笑みを浮かべる。

すると、ドラえもんが笑顔で私と司会さんの間に割り込んできた。

 

『この会場の人たちみんなに、どら焼きたくさん食べ放題です。』

 

「ど、ドラえもん?」

 

ドラえもんの言葉に会場中が静寂に包まれる。

するとデポンさんがクックッと笑い出し、大きな拍手でドラえもんの言葉を迎え入れた。

 

「アッハッハ、いいぞネコ型!」

 

それを皮切りに周りからも大きな拍手と歓声が降り注ぐ。

それと同時に一人では食べきれないほどのどら焼きも…。

 

『さあ、レッツどら焼きパーティーだ。』

 

「何考えてるだおめえ…。」

 

ゴンスケさんがあきれたようにドラえもんを見る。

でも、彼もなんやかんやで振ってきたどら焼きを食べているようだ。

 

「よかったの?ドラえもん?」

 

「うん。僕はこの優勝で満足さ。」

 

そうウインクしながら答え、彼もどら焼きを食べに表彰台を降りる。

回りを見渡してみるとどら焼きにケチャップとマスタードをかけるキッドさんとそれを見てあきれるドラミちゃん。

文句をいいながらも一緒にどら焼きを食べるキャロルちゃんとエルフナインちゃん。

何やら話し合いをしてるパワえもんさんとシロえもんさん。

会場にいるみんなが幸せそうだ。

 

「響ー!」

 

「何してんだ?一緒に食べるぞ!」

 

皆の呼ぶ声が聞こえる。

まあ、ほかならぬドラえもんが決めたことだ。私が何か言うのも違うか。

 

「よーし、私も食べるぞー。いただきまーす。」

 

そう言って私もまたどら焼きにがっつく。

こうしてこの誕生日(レース)は生涯忘れない思い出となったのだった。

 

 

 

お誕生日おめでとう。ドラえもん。

 




後日、ドラえもんのもとにはとあるレーサーから謝罪の手紙と誕生日プレゼントの猫耳をもらったとさ…。

遂に完結しました。
本当に長かった。
これをもって銀河グランプリ編は完結とさせていただきます。


なお、これから短編とともに、二つの長編の案を考えているのですが、一つは
響の恐竜
これは響がシンフォギア装者になる前の物語なので出てくるのは未来と三人娘のみになります。
もう一つが響とひみつ道具博物館
こちらは装者たちも一部錬金術師たちも活躍する章となります。
まだどちらも少しも描きあがっていないので、どっちにしろ、投稿はおそらく数か月後、早くても1~2か月はかかると思いますが皆さんはどちらがいいですか?


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映画ドラえもん 響とひみつ道具ミュージアム
映画ドラえもん 響とひみつ道具博物館


響side

 

 

「ありがとう弓美ちゃん。すごい面白かったよこの映画」

 

「そうでしょ。「ルパン対ホームズ対オシシ仮面」。

あのオシシ仮面がホームズと共に大泥棒であるルパンに立ち向かうオシシ仮面シリーズでも屈指の名作よ!

特に三人が黒幕の巨大ロボと戦うところなんか特にすごいんだから!」

 

「ユミ……、なんかそれごちゃ混ぜすぎじゃない?」

 

学校の休み時間、私たちは弓美ちゃんに貸してもらった映画を返しながら談笑していた。なんだかんだで未来も最後まで一緒に見ていたし、とても面白かったな……

あっ、そうだ……。

 

「ごめん弓美ちゃん。これ、もう少し貸してもらってもいい?」

 

「?いいけど、なんで?」

 

「いや~、そういえばドラえもん見てなかったなぁ~って」

 

ドラえもんオシシ仮面シリーズは大好きでよく一緒に見たりするけど、昨日は未来で用事があったらしくまだ見れてなかったと思うんだよね……。

 

「あ、じゃあ折角だから、ビッキーの部屋で鑑賞会開くのはどう?」

 

「いいですわね。面白そうですわ」

 

おお、ナイスアイデアだよ。創世ちゃん。

それなら皆で楽しめるしね。

となると……。

 

「じゃあ、クリスちゃんと切歌ちゃん、調ちゃんも誘おうよ」

 

「そう言うと思って、もう二人にメール打っているよ」

 

そう言いながら既にメールを送っている未来。流石私の考えがわかっているな~。

 

「じゃあ、家に帰って早速用意しているね」

 

そう言って私は急いで寮にある私たちの部屋に向かった。

やっぱりこういうのはみんなで見た方が絶対にいいと思う。映画の観賞会、楽しみだな。

 

 

 

*******

 

 

 

「とうちゃーく!」

 

部屋に入った私はドラえもんを探す。

押し入れの中を見ると、寝息をたてるドラえもんを発見することができた。

どうやらまだ寝てるようだ。

なら起こすのも悪いかな。

そう思い、私は押し入れを閉めて映画の準備をすることに……ん?

 

「……なんだろうこれ?DX……、でらっくす?」

 

私は鞄を置こうとすると、テーブルの上に変なカードが置いてあることに気付いた。なんだろうこれ?こんなの部屋にあったっけ?

後でドラえもんに聞いてみようかな……。

 

「ただいま」

 

「あ、お帰り。未来」

 

まあ、放置してあるくらいだし、なんでもないだろう。そう考えた私はとりあえずカードをポケットに突っ込んで未来と一緒に皆が来る前の準備を始めた。

 

 

 

 

**************

 

三人称side

 

 

 

ここはリディアン音楽院にある寮。響たちの部屋である。

ここには他の部屋とは違い、特注で作られた押し入れが存在している。

ドラえもんが就寝するためのものだ。そこでドラえもんは日頃の疲れを癒すため、昼寝に興じていた。

 

「スピー、スピー」

 

幸せそうに寝息をたてるドラえもん。

すると彼の前に突然時空間の穴が開き、そこから恐らく機械でできているであろう腕がドラえもんに伸びてきた。

 

「むにゃむにゃ。くすぐったいよ響ちゃん」

 

ドラえもんの寝言に驚いたのか、手は少し警戒するように引っ込む。

しかし、ドラえもんが仰向けになった瞬間。

 

 

チリン

 

 

腕はドラえもんの鈴を奪い取った。

 

「むにゃむにゃ」

 

寝ぼけているのか、ワームホールへと戻っていく腕を見てもあまり反応をしないドラえもん。しかし、自分の首もとをさわった瞬間、彼はあるはずのものがないことに気付く。

 

 

 

 

*************

 

 

 

「こんにちはデース!」

 

「お邪魔します」

 

「お邪魔しますね。立花さん」

 

「いらっしゃい。調ちゃん、切歌ちゃん。セレナちゃんも来てくれたんだ」

 

「たまたま二人の家にお邪魔してまして……」

 

響がアニメ映画鑑賞会のため準備をしている中、続々と皆が集結していく。

クリスは部屋を見渡し、ドラえもんがいないことを確認し、訝しむ。

 

「ドラえもんのやつ、まだ寝てんのか?」

 

「そうみたい。ちょっと起こしてくるね」

 

響はドラえもんを起こすため、彼の寝室たる押し入れの戸を開けようとした。

瞬間……

 

 

「な──────い!!!!!」

 

 

「わあ!?」

 

ものすごい勢いでドラえもんは押し入れの中から飛び出してきた。

飛び出すや否や、ドラえもんは慌てて部屋中を駆け巡る。

この場にいる者たちは呆気にとられてそれを眺めていた。

 

「ない!ない!ない!!どこにもな──い!!」

 

「いてて……。どうしたの?ドラえもん?」

 

「な、なにがあったんだ!?」

 

驚いた拍子に打った頭をさすりながら訪ねる響とクリ。

するとドラえもんはまるでこの世の終わりのような表情で響たちに告げた。

 

「す、鈴が盗まれた」

 

 

 

 

 

 

**************

ドラえもんside

 

 

「鈴が盗まれたって、誰が盗むんだよ」

 

「た、確かに見たんだ!超空間の穴が開いて、そこから手がにゅ~っと……」

 

呆れたように呟くクリスちゃんの言葉を否定する僕。

寝ぼけていたけど間違いない。あれは間違いなく超空間の穴で、その手には間違いなく鈴が握られていた。

 

「超空間ってことは未来ってこと?」

 

「わからない……」

 

未来かもしれないし、もしかしたら別世界とか並行世界とかいう可能性もある。

 

「でも、どうしてドラえもんさんの鈴が盗まれたんでしょうか?」

 

「確かに……。どうしてだろう……」

 

「あ、わかったデス。ドラえもんの鈴は恐らく凄い力を秘めたひみつ道具だったんデスよ」

 

「残念だけどそんな凄い道具じゃないよ。猫集め機能があるだけ……」

 

全く切歌ちゃんは……。これ以前話した筈なんだけどな……。

でも、確かにどうしてだろう……。あの鈴は僕にとってはかけがえのないものだけど、他の人からしたらあんまり価値の無いハズだ……。

 

「とりあえず、師匠にこの事を話してこよう!」

 

「そうだね」

 

「私たちも付いていっていい?」

 

「うん。もちろん」

 

響ちゃんの言葉に頷く未来ちゃん。

すかさず弓美ちゃんも付いていくことになったので、僕は急いで四次元ポケットからどこでもドアを出し、S.O.N.Gの司令室に入った。

 

 

 

 

「!立花響……。それに未来のネコ型ロボット……」

 

「あら?久しぶりね」

 

「ええ!?サンジェルマンさん!?それにカリオストロさんにプレラーティさんも?」

 

司令室に入るとそこには弦十郎さんに何らかの報告をしているサンジェルマンたちの姿があった。

サンジェルマンさんはパヴァリア光明結社の現局長であり、今はS.O.N.Gと協力して旧体制の不正などに対応しながら結社を切り盛りしているんだ。

それでもS.O.N.Gの本部にいるのは珍しいな。

よく見るとプレラーティさんはキャロルちゃんとなんか、喧嘩をしているみたいだし、なにかあったのかな?

 

「キャロルちゃんとプレラーティさんはどうしたんですか?」

 

「なに……くだらない喧嘩だ」

 

「「くだらないとはなんだ(どういうワケだ)!!」

 

なんでも二人は先ほどパヴァリア光明結社から抜け出したはぐれ錬金術師を捕縛し、そいつの持っていた研究成果を持っていこうとしたらしいが、どちらが使うかで喧嘩になっているようだ。

サンジェルマンさんからすればS.O.N.Gとの共同研究がすでに約束されており、どちらが所有しようが構わないようで二人の喧嘩に心底呆れているようだ。

 

「ところで、何やら慌てているようだが、何かあったのか?」

 

弦十郎さんの言葉にハッとする。

そうだ、思わぬ人物の登場についうっかりしていた。

 

「実は……僕の鈴が何者かに盗まれたんです」

 

「ええ?ドラえもんの鈴が?」

 

藤尭さんの言葉に僕ははっきりとうなずき経緯を説明する。

昼寝をしていたら突如として超空間の穴が開き、何者かの手が僕の鈴を盗み出したこと。

その捜索願いのためここに来たことなどを。

 

「ふむ、なるほど。しかし、ドラえもん君の鈴をだれが何のために盗み出したかが問題だな」

 

「こういう時、アニメみたいにホームズのような探偵がいればいいのに……」

 

ん?ホームズみたいな探偵?

……あ、そうだ!

 

「そうだ、この道具を使えば」

 

「え?なになに?」

 

皆の視線が僕に集中する中、僕は四次元ポケットから機能の特売で買ったばかりのひみつ道具を取り出した。

 

「シャーロックホームズセット!!」

 

「シャーロックホームズ?」

 

「そう、この道具を使うとシャーロックホームズみたいな名推理ができるようになるんだ」

 

早速シャーロックホームズを響ちゃんが着て見せた。

なかなか似合っているように見える。弓美ちゃんは自分が着てみたかったかったのか少し不満げなようだけど……。

 

「まずは“ずばりパイプ"これをふくと犯人の頭上にシャボン玉のような大きな泡が飛んでいくんだ」

 

「わかった。やってみるよ」

 

そう言って響ちゃんはパイプを拭こうとする。

ところが、何度ふうふう拭いてもパイプからシャボン玉が飛び出すなんてことはなかった。

 

「はあはあ」

 

不思議に思った僕はパイプを見ると……。

 

「あ、つまってる」

 

ガクッとみんなが脱力した。

 

「というか、未来から来たかもしれない奴のところにまでシャボン玉が飛ぶのか?」

 

「もう少し考えてから使うワケだ」

 

うっ、た、確かにそこまで考えていなかったや。

少し考えればわかることなのに……よほど焦ってたのかも……。

となると、犯人のいる方向に倒れる“レーダーステッキ”もつかえないか……。

 

「じゃあ、この“推理ぼう”を使ってみな。これを使うと頭の回転が速くなって推理がさえわたるんだ」

 

「うん」

 

そして響ちゃんは頭の推理ぼうのつばをはじく。すると響ちゃんの頭がさえわたっていったらしく、推理を披露する。

 

「ひびびび~ん!ひらめいた!」

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

謎の決め台詞にここにいるみんなが固まってしまった。

まあ、響ちゃんはまったく気にしてない……というか気づいていないっぽいけど。

 

「犯人は怪盗デラックスだ!!」

 

「「「「「怪盗デラックス?」」」」」

 

「うん……たぶん……?」

 

「なんだよそりゃ……」

 

「知らないよ!?私の頭に急に出てきたんだから!」

 

「怪盗なんて、突拍子もなさすぎるだろ」

 

なにそれ?

いったいどういう推理をすればそんな突拍子もないものがでてくるんだ?

クリスちゃんが呆れるのも無理はない。

見ると響ちゃんも少し不思議がっている。

 

「ん?でらっくす……。あ、そうだ。さっきの……」

 

そう言って響ちゃんが取り出したのはDXと書かれた謎のカード。

なんだろうこれ?見たことないけど……。

 

「あれ?これなに?」

 

「わからないけど、さっき机の上にあったんだけ……ってうわあ!?」

 

すると、突如としてカードのDXの文字がまばゆい輝きを放ちだす。

するとそこから何者かの立体映像が流れてきた。

シルクハットに漆黒のマント、ロボットのような、それでいて仮面をかぶった人間にも見える。

 

『予告上、本日5分後にドラえもんの鈴をいただきにまいります。怪盗DX……』

 

そう言い残し、映像は終わった。

……まさか本当だったとは。

 

「ほら、私の言ったとおりでしょ」

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

何か釈然としない空気が漂うなか、響ちゃんは自分の推理が当たったことについてはしゃぎだす。

自分でも疑ってたくせに……。

 

「……で、その怪盗デラックスはどこにいるんだ?」

 

「いや、そこまでは……」

 

犯人が誰か、というところまではわかったけど肝心の場所がわからない。

でも大丈夫、こういう時は……。

 

「響ちゃん。この“手掛かりレンズ”を使うんだ」

 

「うん。わかった」

 

手掛かりレンズは虫眼鏡型のひみつ道具でレンズを覗くと事件の手掛かりになる絵が浮かび上がる。

響ちゃんは早速手掛かりレンズを覗き始める。

 

「あ、なんか浮かび上がってきた!」

 

「なんだこりゃ……?」

 

「チフォージュ・シャトーみたい……」

 

そこに浮かんだのは空を飛ぶ大きな城みたいな建物だ。

確かにチフォージュ・シャトーにも似ているけど、違う。

僕はこの建物がなんなのかを知っている。

 

「ドラえもん。これなんなのかわかる?」

 

「これは……ひみつ道具博物館だ!!」

 

「「「「ひみつ道具博物館!?」」」」

 

皆が驚きの声を上げるなか、僕はレンズの建物を見据える……。

これが新たなる冒険の始まりになるだなんて夢にも思わずに……。




お久しぶりです。はんたーです。
大変お待たせしました。
色々あってストックそこまでたまってませんが、ボチボチ再開します。


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映画ドラえもん 響とひみつ道具博物館②

ドラえもんside

 

 

「“ひみつ道具ミュージアム”……ってどういう場所なの?」

 

「“ひみつ道具ミュージアム”はその名の通り、全てのひみつ道具が展示されている博物館だよ。未来で作られた道具はもちろん、完全聖遺物なんかも展示されている、未来でも大人気の施設なんだ」

 

「なにそれすごく面白そう!」

 

「それは……確かに興味深いな」

 

僕の言葉に響ちゃんはもちろん、サンジェルマンさんたちも食いついた。

確かに研究職の彼女たちにとっては未来の道具は興味深いものなんだろう。

 

「そこにドラえもんの鈴があるということか?」

 

「“手がかりレンズ”が壊れていなければ、そういうことになるね……」

 

レンズにこれが写ったということは、その“怪盗デラックス”とやらは“ひみつ道具ミュージアム”に関わりを持っているということになる。

でも、それが判明したところでとある問題も生まれている。

………それは。

 

「じゃあドラえもん!早速ココにいこうよ!」

 

「……入場券がないから無理」

 

響ちゃんの気合いのはいった言葉に対し、努めて冷静に答える。

そう、“ひみつ道具ミュージアム”は大人気のため入場券も簡単には手に入らないんだ。

そのうえ一週間かけても全部は回れないほど広い敷地を持っているし、そもそもチケットがなければお話にもならない。

 

「じゃあどうしようっていうんだ?」

 

「それを今から考えるの!」

 

まずはどうやって入場券を手に入れるか……。

 

『プルルルルル!』

 

「ん?」

 

そう考えていると突如として“タイム電話”が鳴り響いた。

僕はポケットから電話をとりだし、表示された名前を見る。ドラミからか……。

 

「あ~、もしもしドラミ?」

 

『え、お兄ちゃん。聞いてよ!キッドったら酷いのよ!今日は一緒にお出掛けする約束だったのに、仕事が入ったからってそれをキャンセルしちゃったの!』

 

どうやら愚痴を言うために掛けてきたようだ。

こっちもそれどころじゃないんだけどな……。

 

「あ~、わかったわかった。後でキッドに言っとくよ……」

 

『全く、どれだけ苦労したと思っているのかしら!この“ひみつ道具ミュージアム”の入場券を手に入れるのに』

 

 

・・・・・・・・・え?

僕はドラミのあまりにも唐突な言葉に思わず呆けてしまった。

 

 

 

 

 

**************

 

 

「はい!入場券!」

 

「ありがとうドラミ。この恩は必ず返すよ」

 

「当たり前よ。メロンパン50個ね」

 

う、50か………。

ドラミが持っているという入場券は交渉の結果、僕が譲り受けることになった。本人もかなり渋ってたけど、この条件で無事、交渉が成立したんだ。

それでも、50。

いくらメロンパンといえど、それほどの量となるとそれなりのお値段がするだろう。

まあ、この入場券の価値を考えるとそれよりかはずっとマシなんだよな……。ドラミには感謝しないと。

とはいえ、今月のお小遣いは全部使うことになるわけだ……トホホ。

 

「あ、そうそう。この入場券は一枚で15人まで連れていけるからみんなも一緒に行ったら?」

 

「え?」

 

「ホント!じゃあ私行きたい!」

 

「私も!ね、二人とも!」

 

「確かに、興味あるな……」

 

「私も行けるのであれば行きたいですわ」

 

ドラミの言葉に真っ先に反応する響ちゃん。

それに続いて弓美ちゃん、創世ちゃん、詩織ちゃんの三人も手を上げる。

 

「響が行くのなら私も……」

 

「私も行きたいのデース!」

 

「ま、まあ、付き合ってやってもいいかな?」

 

「私も行ってみたい……」

 

「私も……でも、マリア姉さんは……」

 

「私は仕事があるから行けないわ。でも、セレナがそれで我慢する必要はないのよ」

 

「マリア姉さん……」

 

これで10人が決まったわけだ。

翼さん、奏さん、マリアさんの三人はコンサートがあるから不参加。

だけど、未来ちゃんとクリスちゃんに切歌ちゃん、調ちゃんにセレナちゃんは参加するみたい。

すると二人、意外な人物が手を上げた。

 

「俺(私)も連れていけ。未来の道具に興味がある(ワケだ)」

 

見事にハモったのはキャロルちゃんプレラーティさんの二人だ。二人ともお互いを睨み付けながら手を上げている。

 

「おい、プレラーティ何を勝手に……」

 

「面白そう。アーシも行かせてもらおうかしら?」

 

「!?カリオストロ、お前まで……!?」

 

パヴァリア光明結社の局長であるサンジェルマンさんはどうするべきか少し悩んでいるようだ。

そこでプレラーティさんがサンジェルマンさんに告げる。

 

「サンジェルマンよ。錬金術師たるもの知識の探求は常にしなければならん。必要とあらば未来の技術を取り入れることもやぶさかではないワケだ」

 

「ま、まあ確かにそうだが……」

 

「いいじゃない。最近張り詰めてたし、たまには気分転換も必要よ」

 

「……わかった。私も行かせてもらおう」

 

これで人数は14人。これで残るは一席のみ。

あと一人は誰だろうか……。

 

「エルフナインちゃんは?」

 

「ボクは今回は遠慮させてもらいます。本当は行きたいんですけど、皆さんがいくのであれば、今回回収した聖遺物の研究を進めるためにもボクが残らないと……」

 

「……すまない」

 

「大丈夫ですよ。パヴァリアの皆さんも楽しんでください」

 

確かに、元々三人は共同で聖遺物を研究するために来たわけだからな。全員が抜けちゃうと後がつっかえちゃうわけか。

まあ、元々絶対に15人決めなきゃいけないわけでもないし、14人でも問題は…………。

 

「じゃあ、ここはガリィちゃんにお任せ……」

 

「あ~、ズルいぞガリィ!私も行きたいゾ!」

 

「お前じゃ展示物壊しちまうだろ。我慢しな……」

 

「気を付けるから大丈夫だゾ」

 

「おいガリィ……勝手に……」

 

おっとここで自動人形組の二人が手を上げてきた。

ガリィちゃんとミカちゃんは好奇心旺盛な性格だからな……。博物館に興味があるのだろう。

でも、行けるのは一人のみ。

ここは平等にジャンケンで決着をつけるべきだろう。

 

「「ジャンケンポン!」」

 

………勝ったのはガリィちゃん。

ガリィちゃんがチョキでミカちゃんはパーだ。

 

「ううう……行きたかったんだゾ……」

 

「ま、これが勝負の世界ってやつですよミカ~。安心してくださいお土産ぐらいは買ってきてやりますから~」

 

「!本当カ!?約束だゾ!!」

 

こうしてミュージアムにいくメンバーが決定した。

 

 

 

 

**************

 

 

 

そんな感じでやって来たのは“リディアン音楽院”の校庭。休日ということもあり、辺りには一人っ子見当たらない。

 

「……で、ドラえもん。どうして校庭に来たの?」

 

「ミュージアムに行くために少し広めの場所じゃないとダメだからね。少なくとも寮の部屋とかじゃ入りきらないし……」

 

「?」

 

不思議そうな顔をするみんなを尻目に僕は早速招待状に名前を記入する。

それから数秒ほど待つと招待状がまばゆい光を放ち出す。

 

「高エネルギー反応?これは……」

 

「な、なんデスか!?」

 

招待状は宙に浮かび、光と共にかたちを変える。光が収まるとそこには少しレトロな感じの車型タイムマシンがあった。

 

「わー、すごい!招待状がタイムマシンになった!」

 

そうでしょう。そう答えようとした瞬間、一匹の虫が目の前をヒラヒラと漂う。

僕は思わず、それを捕まえようと跳び跳ねた。

 

「すごいですねドラ……さん……?」

 

「ニャ!ゴロニャー!」

 

セレナちゃんの言葉に相槌をうつこともできず、僕は虫と戯れてしまう。

まずい、思ったよりも速かったな……。皆の変なものでも見るかのような視線が痛々しい。

 

「どうしたドラえもん?」

 

「アララ、とうとう壊れてしまったんですか~?」

 

怪訝そうな瞳で僕を見つめるキャロルちゃんと小馬鹿にした様子のガリィちゃん。別に壊れてるワケじゃなく、これが正常なの!

 

「ドラえもんどうしちゃったの?」

 

「私たちネコ型ロボットは長時間鈴を外してるとノラネコ化しちゃうの。鈴をつければ収まるんだけど……」

 

「はあ!?なんだそりゃ!?」

 

「こ、これは大変デース……」

 

「……というか、制作者はなぜワザワザこんな機能をつけたワケだ?」

 

「「「確かに…………」」」

 

ごもっとも。僕たちネコ型ロボットの生みの親はこだわりの強い人だったからな……。

正直、僕もこの機能はどうかと思うし……。

 

「じゃあ、はやく鈴を見つけなきゃだね」

 

「うん。早速出発しよう」

 

こうして僕たちはいそいそとタイムマシンに乗り込む。

全員が乗り込むとタイムマシンはゆっくりと浮かび上がり、タイムホールを形成する。

 

「それじゃあ、未来の世界へ、出発!!」

 

「お土産よろしくねー!」

 

ドラミたちの見送りを尻目に僕たちは出発する。

久々の未来。必ず鈴を取り戻すんだ!



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映画ドラえもん 響とひみつ道具博物館③

響side

 

 

 

 

 

『超空間へ突入します』

 

タイムマシンの音声を聞きながら、私たちは“時空間”へと突入した。

私たちの周りには時計がたくさん浮いていて、とても幻想的な風景だ。

いつ見ても、“時空間”の中は少し不思議な感じがするな~。まあ、私はもう慣れているけど。

 

「これは……」

 

「あら、なんだかすごいわね」

 

「不思議な光景なワケだ」

 

「あ、そういえば、サンジェルマンさんたちは初めてなんでしたっけ?」

 

私の言葉に三人とも頷いている。サンジェルマンさんたちは時間移動をするのは初めてだったらしく、この不思議な光景に目を奪われているみたい。

 

「みんな、そろそろ“時空間”を突破するよ」

 

ドラえもんの言葉に前を向くと、黒い穴みたいなものが見えてきた。

穴を抜けるととってもまぶしい光が目を覆って……

 

「こ、ココが?」

 

「そう、ここが僕たちの世界から少し先の未来の世界……“22世紀”さ!」

 

未来の都市が私たちの眼前に広がった。

もう何回も来てるけど、やっぱりすごいや!

空を飛び車にタケコプターで空を楽しむ子供たち。何もないところに映し出されているテレビの画面やたくさんの大きい建物!

いつ見てもドラえもんのいた時代はすごいな……。正直、私たちの世界がこうなるだなんて想像できないや。

 

『皆様、前方をご覧ください』

 

タイムマシンのアナウンスを聞いて私たちは前のほうを見る。

すると、そこにはキャロルちゃんの“チフォージュ・シャトー”を思い出す空を飛ぶ大きな建物が浮かぶ島が見えてきた。

 

「なんだありゃ?」

 

「と、とてもでかいのデス……」

 

「大きい……」

 

『あの島の頂上に浮かんでいるのが“ひみつ道具ミュージアム”です』

 

ほえ~、あれがそうなんだ!すごく大きいや。

よく見ると、島のほうにはたくさんの建物があるみたい。

 

『あの島には、世界中から集まった“道具職人”や“錬金術師”達が住んでおります。島にはここでしか手に入らない素材や機材なんかもそろっており、皆素晴らしい道具を作ろうと日夜研究に励んでいるのです』

 

「「ほほう、それは興味深いな(ワケだ)」」

 

アナウンスを聞いたキャロルちゃんとプレラーティさんは同時にしゃべる。

すると二人とも怖い顔しながらお互いをにらみつけ合ってきた。

 

「貴様、俺の真似をして何のつもりだ?」

 

「それはこちらのセリフなワケだ!」

 

「あわわ……」

 

ど、どうしよう、喧嘩が始まっちゃった!止めたほうがいいのかな?

 

「気にしないほうがいい、立花響」

 

「そうそう、二人とも楽しそうだし、ほっといたほうがいいわよ♪」

 

え?そうなのかな?

サンジェルマンさんもカリオストロさんも止める気はないみたい。

確かに二人の言うとおり、なんやかんやで楽しいのかもしれないし、いいのかな?

そうこうしているうちに、私たちが乗るタイムマシンは森を抜け、大きな門をくぐった。

────そこにあったのは大きな宮殿のような建物だ。

 

「うわぁ」

 

「すごい」

 

「アニメみたい!」

 

私たちはタイムマシンから降りると、タイムマシンは元の招待状に戻ってひらひらと宙を舞い始めた。

 

「にゃご!にゃご!」

 

「ど、ドラえもん!?」

 

それを見たドラえもんは招待状を取ろうと、まるで猫みたいに飛び跳ねだした。

一体どうして……って、ドラミちゃんが言ってたじゃん!?

ドラえもんは鈴がないと野良猫みたいになっちゃうんだって……。

 

「ど、ドラさん、大丈夫ですか?」

 

「本当に野良猫みたいだ……」

 

そんなドラえもんにセレナちゃんと創世ちゃんが駆け寄る。ほかの皆も心配そうにドラえもんを見ている。

 

「全く、未来の“自立ロボット(オートスコアラー)”とやらもこうなれば形無しですね~♪同じロボット(オートスコアラー)として情けないですよ~」

 

「ちょっとあなた!そんな言い方はないんじゃないですの!?」

 

「そうよそうよ!」

 

「……性根の腐ったガリィらしい」

 

ガリィちゃんのあんまりな言い分に弓美ちゃんと詩織ちゃんが憤慨して注意をする。

キャロルちゃんは呆れているけど、さすがに今のは私も少しカチンときた。

 

「まあまあ、僕は大丈夫だよ」

 

そんな私たちをドラえもんが宥める。

やっぱり早くドラえもんの鈴を見つけてあげないと……。

そんなことを考えていると、建物にポッカリと丸い穴が開く。

何度も見たからわかるけど、あれって“通り抜けフープ”だよね?

穴から顔を出したのは、赤毛の優しそうな男の子だった。

男の子はあたりを確認するや否や、恐る恐る“通り抜けフープ”から抜け出して、そろりそろりと何処かへ行こうとしていた。

 

(何してるんだろう?あの子?)

 

すると、今度は扉から立派なお髭を生やした偉そうな格好の人が出てきた。

その人は赤毛の子を見つけるや否や、怒ったような顔で赤毛の子に近づいていく。

 

「クルト!!!」

 

赤毛の男の子はその大きな声にビックリしたらしく、鬱屈そうに男の人の方へと振り返った。

 

「や、やあ館長……どうも……」

 

「どうもじゃない!!ガイドの仕事をサボって何をしてるんだ!?」

 

館長?じゃあ、あの人がこの博物館の館長さんなの?

赤毛の男の子は少ししょんぼりしながらも、すぐに切り替えて嬉しそうな顔でなにかを懐から取り出す。

……それは可愛い鳩の顔がついた長靴だった。

 

「そんなことより、館長見てください!新しいひみつ道具を作ったんです!」

 

「ほう、また変なへっぽこ道具を作ったのか?」

 

「今度のは自信をもって博物館に推薦できる……その名も“クルクック”です!飛べ……と言うだけで気軽に空を飛べる道具なんですよ!」

 

「タケコプターでいい気が……まあ、そこまで言うなら試してみるか」

 

そう言うと館長さんは長靴を履いて「飛べ」と靴に言う。

すると……

 

『クルック~ッ!!!』

 

「へ?うわあああああああああああああああ!!!?」

 

靴は翼をはためかせながら、全く別々の方向へと飛ぼうとして、館長さんはタケコプターみたいに回転してしまう。

しばらくすると、靴は館長さんから脱げて、何処かへと飛んでいってしまった。

 

「あだっ!?」

 

「か、館長!?」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

館長さんが頭から落っこちたのを見て赤毛の男の子と私は思わず館長さんへ駆け寄っていく。

怪我はないようだけど、大丈夫かな?

 

「あ、ありがとうございます……。コラ!クルト!!」

 

「ひぃ!?」

 

館長さんは私にお礼を言うと赤毛の男の子を叱り出した。

赤毛の男の子は眼を泳がせているし……。

 

「アヒャヒャヒャヒャ!!何ですか今の!?」

 

「わ、笑うなガリィ…… プフ」

 

「フッ、無様なワケダ」

 

「こら、プレラーティ!」

 

そう言いながら皆が私たちに近づいていく。どうやら皆も見ていたみたい。

 

「な、何が可笑しいんだ!!」

 

館長さんは顔を真っ赤にしながら怒鳴るも、笑いを堪えるドラえもんの招待状を見ると、咳払いをして笑顔になる。

 

「これはこれはお見苦しいものをお見せしました。私、当館の館長、“フィークス”と申します」

 

「あ、立花響です。なんか、皆がすみません……」

 

「いえいえ、さっきの醜態を見せれば……まあ、仕方がないでしょう。クルト、ガイドの制服を着てご挨拶しなさい」

 

フィークスさんはそう言いながら赤毛の男の子……クルト君を凄い顔だ睨み付ける。

クルト君はそれに対して怖がりながらも緑のジャージを着ながら挨拶をする。

 

「アルバイトでガイドをしてます。“クルト・ハルトマン”です。よろしくお願いします」

 

「僕ドラえもんです」

 

「キャロル・マールス・ディーンハイムだ。コイツは……」

 

「ガリィちゃんで~す☆」

 

「私は小日向未来。よろしくね」

 

「雪音クリスだ。よろしく」

 

「セレナ・カデンツァヴナ・イヴと申します。よろしくお願いします」

 

「初めまして。月読調です」

 

「暁切歌デース!」

 

「私はサンジェルマン。こちらはカリオストロとプレラーティだ」

 

「よろしくねん♪」

 

「……フン」

 

「私は板場弓美。よろしく!」

 

「初めまして。寺島詩織ですわ」

 

「安藤創世だよ。クルト・ハルトマンだから……“ルトルト”だね。よろしくね」

 

「ルトルト!?」

 

クルト君は創世ちゃんのニックネームにちょっと驚いたみたい。

驚愕したような表情になっている。ここでフィークスさんが何か驚いたように眼を見開いている。どうしたんだろう?

 

「ひょっとして、世界を救ったシンフォギア装者にパヴァリヴァ光明結社の錬金術師の方々ですか!これはとんでもないお客さまがいらっしゃったものですね……」

 

「え?私たちのこと知ってるんですか!?」

 

「それはもう……。貴方達のことはこの時代では非常に有名ですからね……」

 

そうなんだ。そういえば、“ギャラクシーカーレース”の時も私たちのこと知られてたような……。

なんか、少しだけ気恥ずかしい感じがするな……。

 

「それで、本日はどのようなご用件で?」

 

あ、そうだ。早くドラえもんの鈴についてを聞いてみないと。

 

「実は、僕たち博物館に探し物に来たんです」

 

「探し物?」

 

「はい。僕の鈴が盗まれちゃって……怪盗デラックスっていう人が犯人なんですど……」

 

「「か、怪盗デラックス!!??」」

 

「!?知ってるんですか?」

 

「知ってるも何も、この博物館も奴にやられたばかりなんです。ライト館に飾ってあった“ビックライト”を盗まれてしまいまして……」

 

「凄かったんだよ!警備の部隊や錬金術師達をバッタバッタと薙ぎ倒して……」

 

「クルト!!」

 

怪盗デラックス……。やっぱり“手がかりレンズ”の通り、ここにいたんだ!

でも……

 

「なんでビックライト?」

 

別にビックライトなんてこの未来じゃああまり珍しい道具じゃないんじゃないかな?

ドラえもんもスモールライトと一緒によく出してるし、この間、未来のデパートに遊びに来たとき結構お安い値段で売ってたし……。

 

「それが全くわからないんですよ。調査中でして……。別に貴重な初期製作品というわけでもない……どこにでも売ってるただのビックライトですからね……」

 

「“ビックライト”に“猫集め鈴”……共通点は特にないよね?」

 

「うん……」

 

未来の言うとおり、共通点は特にないし……。なんで鈴なんか盗んだんだろう?

 

「異変があれば、警備システムに反応があるはず……私も確認してみましょう。皆さんも折角来たのですから、ぜひ、当博物館をご覧になってください」

 

「「もとより俺(私)はそれが目的だ(なワケだ)」」

 

「私も見たいのデース!」

 

「クルト。案内するんだぞ」

 

「はーい。じゃあ皆さん、早速案内しますので是非どうぞ」

 

そう言いながら、クルト君は博物館の扉を開ける。私たちはそれに期待を膨らませながらついていくのだった。

 

 

 

 

 

****************************

 

 

 

 

 

「うわぁ……!すごい……!」

 

「……大きい」

 

「で、でかい……」

 

扉をくぐるとそこにあったのはすごく大きな扉だった。

それだけじゃない。周りにはいくつもの大きな扉がたくさんある。

地球儀みたいな扉に豪華な装飾のある扉。どれも見たことないドアばかりだ。

それを見たクルト君は笑いながら説明してくれる。

 

「ここはエントランスホール。真ん中にある一番大きなドアが、記念すべき“ひみつ道具”の第一号。“初期型どこでもドア”さ」

 

ええ!?このでっかいのが“どこでもドア”なの!?

 

「……すごい」

 

「今と全然違うんだね」

 

「……ということは、周りにあるのは……」

 

「そう、お察しの通り、周りを囲んでいるのは歴代の“どこでもドア”さ。ここから、管内の色々なブースを回ることができるんだ」

 

クルト君の説明を聞きながら、私たちは初期型の巨大どこでもドアへと近づいていく。

改めてみてもすごく大きいや……。もしかしたら、レイアさんの妹もすっぽりと入れるかもしれない。

 

「随分と無駄にでかいですね~。ここまでのサイズになる必要あったんですか~」

 

「ああ。この初期型は錬金術師の“テレポートジェム”を参考にしたらしいんだ。あれはあらかじめ位置情報を決めておく必要があるけど、このドアはそれを拡張し、地球上のすべての場所……どころか、宇宙空間にまでつながれる。ただ、その莫大な範囲の情報を処理するには当時の技術だとこの大きさにまでするしかなかったみたいなんだ」

 

ガリィちゃんの言葉にクルト君は苦笑しながら答えた。

それを聞いたガリィちゃんは一応の納得はしたのか引き下がり、キャロルちゃんやサンジェルマンさんたちは興味深そうに聞き入っている。

 

「ねえクルト君。この人は誰なの?」

 

未来の言葉に振り向くと、どこでもドアの隣には誰かの石像があった。掲げている右手にはオレンジ色の綺麗な意思がふわふわと浮いている。

 

「この人こそ、“初期型どこでもドア”の開発者にして、“ひみつ道具”を大きく発展させた偉人────“ハルトマン博士”だよ」

 

「ハルトマン博士……すごい人なんですね」

 

「うん。この人は化学や錬金術といったあらゆる分野をおさめ、それを世界平和や貢献に役立てようとしたれっきとした天才発明家だからね。お人好しとしても有名だったんだよ」

 

へえ~。すごい人なんだな。

……あれ?ハルトマン?

ここで私は一つだけ疑問に思ったことができたので、思い切って聞いてみることにした。

 

「ねえ。クルト君。クルト君はさっき“クルト・ハルトマン”って……」

 

「ああ。お察しの通り、ハルトマン博士は僕のおじいちゃんなんだ」

 

「ええ!?そうなの!?」

 

これはびっくり!クルト君のおじいさんがそんなすごい人だなんて……。

それを聞いたガリィちゃんはおかしそうに笑いだした。

 

「アヒャヒャ!おじいさんはそんなすごい発明家なのに、お孫さんのあなたはあんなへっぽこ道具創ってるんですか~?」

 

「ちょっと!あなた!」

 

「はあ……。やめんかガリィ」

 

それを聞いた皆はガリィちゃんをにらみつけ、クルト君も顔を真っ赤にして叫び出す。

 

「へっぽこじゃない!ボクもいつか、この博物館に飾られるほどのすごいひみつ道具を発明するんだから!」

 

クルト君が叫び出すと同時に、蟲みたいな何かが飛んできた。

 

「うわあ!?ナニコレ!?」

 

「や~ん、気持ち悪い~」

 

「落ち着け。害意はなさそうだが……」

 

「にゃご!にゃご!」

 

「ああ!食べちゃダメ!」

 

蟲みたいなのは小さい機械だった。機械は私たちの胸元あたりに留まるとブローチみたいになって服に止まった。

これ、なんなんだろう?

 

「クルトさん、これは?」

 

「これは発信機だよ。博物館内はとても広くてね、昔は遭難者が続出したんだ」

 

「はあ!?遭難者だぁ!?」

 

「うん。四次元空間を通じてるから広さに限界なんてないし、空間拡張の結果、少なくともこの島丸々を覆いつくせるくらいには広くなっちゃったんだって」

 

「どんだけだよ!超常にもほどがあんだろうが!?」

 

クリスちゃんの驚く言葉に私も少し青ざめる。博物館で遭難者って……ここどれだけ広いの?

 

「大丈夫。そのための発信機なんだから。これがあれば、誰がどこにいるのかが詳細にわかるんだ」

 

そう言いながら、クルト君は私に画面を見せてくれた。

そこには確かにみんなの名前が書いてある。これなら安心だね。

 

ブッブー

 

画面を見ていると、いきなり大きなブザーみたいな音が響いてきた。なんだろう?クルト君に聞こうとすると、クルト君は慌ててタブレットをしまっていた。

 

「あ、そろそろドアが開くよ!みんな!早くドアの前に!」

 

クルト君の言葉に私たちは急いで階段を上り、ドアの目の前に立つ。

すると、ドアは蒸気を発し、歯車を回しながらゆっくりと開かれ、あたり一面が光でおおわれる。

 

「うわっ」

 

「……眩しい」

 

その日アリに私たちは思わず目をつぶる。光が徐々に弱くなっていき、私たちはそれに合わせて恐る恐ると瞳を開けた。

────するとそこには。

 

 

「「「「「「うわぁ!」」」」」」

 

 

そこに広がっていたのはたくさんのロボットたちが浮かぶ大きな広場だった。

その光景に、私たちはもちろん、サンジェルマンさんやキャロルちゃん達も感嘆の声を上げて目を見開いていた。

それを見たクルト君はクスリと笑い、手を広げてた。

 

「ようこそ!“ひみつ道具ミュージアム”へ!!」

 

私たちはその光景に魅入りながら、クルト君の言葉に耳を傾けた。



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映画ドラえもん 響とひみつ道具博物館④

次の映画ドラえもん、音楽が主題らしいですね
……出すしかねえ!! ということでおまたせしました


 響side

 

 

 

 

「うわあ~! すごい! すごい!」

 

「これは……」

 

「あらあら。とんでもないわね……」

 

 “どこでもドア”をくぐった私たちをまっていたのは────すごくたくさんのロボットたちだった! 

 大きな広場にはたくさんのロボットたちが浮いている! 

 ……ううん、浮いているだけじゃない! あたり一面にロボットたちが歩いていたり、走っていたりしているんだ! 

 

「これは圧巻デス!」

 

「すごいですね。皆さん」

 

 見たこともないようなすごい光景に圧巻される

 それを見たクルト君はクスリと笑い、手を広げて説明を始める。

 

「ここは“ロボット館”。今までに作成されたすべてのロボット型ひみつ道具が集まっているんだ!」

 

「……なるほど。確かに、オートスコアラーらしきものも見て取れる……っ!?」

 

「あれ、どうかしました? サンジェルマンさん? ────って、あれは!」

 

 サンジェルマンさんの見た方向を見ると、そこにはかつて“パヴァリア光明結社”に所属していたオートスコアラー……“ティキ”の姿がそこにあった。

 こ、この娘って、アダムとの戦いで壊れちゃったはずじゃあ……。

 

「どうしてティキがここにいるワケだ?」

 

「確かに……修復不能なほど破損し、骸も俺たちのもとに回収されたはずだが……」

 

 私達が疑問の声を上げていると、隣にいたクルト君が“ティキ”ちゃんのもとに近づいていく。あ、危ないような……。

 

「大丈夫。これはただのレプリカさ」

 

「「「「レプリカ?」」」」

 

 レプリカ……ってことは、本物じゃないってこと? でも、何でこの娘のレプリカがこんなところにあるんだろう? 

 そんな疑問にクルト君は丁寧に答えてくれる。

 

「“パヴァリア光明結社”のティキ、そしてアダムは神代に作られたオートスコアラー────言うなれば、聖遺物と同じく、先史文明期に作られた“最古のひみつ道具”だからね。流石に現存はしてないけど、こうしてレプリカを展示しているってわけさ」

 

「……つまり、局長……いや、アダムのレプリカもここに展示されていると……」

 

「ふん、いい気味なワケだ」

 

「……でも、なんか気持ち悪いわね」

 

「あ、アハハ……あ~、アダムのレプリカならあっちのほうに展示されてるけど……見に行く?」

 

「「「いや、いい」」」

 

 クルト君の言葉にサンジェルマンさん達はすごく嫌そうな顔でお断りをする。

 な、なんか三人共すごい顔してるし……そ、そんなに嫌なんだ……。

 

 ズゥゥン! ズゥゥン! 

 

 そんなふうに思っていると、何やら地響きが聞こえてくる。

 

「な、なんデスかあのトンデモは!?」

 

 切歌ちゃんの指さすほうを確認すると、とても大きなロボットが悠々と歩いていた。

 あ! あれって私たちが小学生の時、皆で作った……。

 

「わあ~“タイタニックロボ”! 懐かしい~!」

 

「し、知ってるのデスか?」

 

「うん。昔、ビッキーやドララ達と一緒に作ったんだ」

 

「当時はロボットアアニメが流行ってたからね。私がお願いしたんだよね」

 

 懐かしいな~。弓美ちゃんの発案で、巨大ロボットを作ろうってなったとき、ドラえもんが出してくれたんだよね。

 あの時は弓美ちゃん大興奮してたな~。あの後、学校に行くために山を越えないといけないっていう子のために、雪山にトンネルを掘ったりしたんだよね。

 

「しゃああああ!」

 

「ドラさん……また猫みたいに……」

 

「おいおい、大丈夫かよ……」

 

「プッ、ダッサ~い」

 

 ドラえもんはタイタニックロボを見て、野良猫みたいに威嚇している。

 早く鈴を見つけてあげないと……。

 

「さあ、行こう! この館にはまだまだたくさんの道具があるんだ」

 

「え、で、でも……」

 

 た、確かにそれも気にはなるけど……私としては早くドラえもんの鈴を見つけてあげたほうが……。

 

「怪盗デラックスとやらが何処に潜んでいるかわからない以上、現状はすることがない。俺はもとよりひみつ道具に興味があってきたんだ」

 

「癪だが同感だ。とっとと案内するワケだ」

 

 え? それでいいのかな? 私はちらりとドラえもんのほうを見る。

 すると、ドラえもんは私を見て笑顔で答えてくれた。

 

「僕の鈴、速く見つかっってほしいけど、デラックスが持ってるんじゃわからないからね。今は楽しもう」

 

「ドラえもん……うん、わかった」

 

 ドラえもんがそう言うのなら、今は楽しんだほうがいいかもしれない。

 そう思いなおした私はクルト君たちの後を走って付いていった。

 

 

 

 

 

 **************************

 

 

 

 

 

「クルト君。これは?」

 

「これは“木こりの泉”だよ」

 

「“木こりの……泉”?」

 

 調ちゃんが見ているのは水のたまった輪っかだった。ロボット館なのに、輪っかが置いてあるのが気になったみたい。

 木こりの泉かぁ。懐かしいな。

 

「これはね。こう使うんだよ」

 

 そう言いながら、未来はポケットに入っていたお財布からお金を抜いて、お財布を泉に投げ入れた。

 

「え? 未来さん、何を?」

 

「こ、これは不法投棄という奴デスか!?」

 

「違うよ。見ててね」

 

 未来のお財布が完全に泉に沈んでいく。すると、泉からすごく眩しい光が放たれる。

 

 ザバーンッ! 

 

 そこから現れたのは、女神様みたいな服装をしたロボットだった。女神ロボットの手には、未来が入れたお財布と、かなり豪華なお財布が握られている。

 女神ロボットはにこやかにほほ笑みながら、未来に尋ねる。

 

「あなたが落としたのはこの古いお財布ですか? それとも、こちらの高級なお財布ですか?」

 

「いいえ、私が落としたのはこっちの古いお財布です」

 

 未来の言葉を聞いた女神さまは満足げにほほ笑んで……。

 

「貴女は正直な方ですね。正直のご褒美にこちらの高級なお財布を差し上げましょう」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 未来が財布を受け取ると、女神さまは静かに泉へと戻っていった。

 未来はもらった財布を調ちゃんたちに見せると、皆は興味深そうに見ていた。

 

「おお、なんとも豪華デス」

 

「これは……イソップ寓話の“金の斧”か?」

 

「そう。それをモチーフにしたひみつ道具なんだ」

 

「これは……どういう仕組みなんだ?」

 

「無から有を生み出す完全聖遺物“湯津津間櫛”に“打ち出の小槌”、対価を差し出すことで情報を閲覧できる完全聖遺物“ミーミルの泉”を後世の科学者や錬金術師が解析し、再現したのがこの泉なんだ。ロボットは────遊び心の飾りだね」

 

「っ!? 完全聖遺物の再現だと!?」

 

 クルト君の説明にサンジェルマンさんは驚いたように叫ぶ。他の皆も信じられないと言った表情でクルト君を見つめている。

 実際、私も凄くびっくりした! ひみつ道具と完全聖遺物って、何か関係があるってこと!?

 そんな驚きなんか気にせず、クルト君は語りだす。

 

「そう。22世紀では、数多の聖遺物が出土し、研究も進んだことで、それらを参考にしたひみつ道具も多く作られたんだ。“四次元ポケット”だって、元を辿れば“ソロモンの杖”の亜空間“バビロニアの宝物庫”を再現したものだしね」

 

「っ! ソロモンの杖だと?」

 

 クルト君の言葉にクリスちゃんが反応する。

 そんなクリスちゃんにクルト君は説明を続ける。

 

「う、うん。でも安心してほしいんだ。かつて猛威を振るった災害“ノイズ”の生産工場だった部分は君たちの活躍によって完全に壊され、ノイズが生まれることはなくなった。ただ、宝物庫自体は健在だから、時たま宝物庫が開くことがあったらしいんだ。それを、当時の科学者や錬金術師が解析、研究をして作ったのが“四次元ポケット”なんだ。それぞれが完全独自の次元につながるこのポケットのおかげで、この時代に人達はたくさんの道具を一度に持ち運べるようになったのさ」

 

 そう言いながら、クルト君は四次元ポケットをクリスちゃんに見せる。

 

「君がノイズを殲滅してくれたおかげで、これが作られた。全部、君たちのおかげなんだよ。僕のおじいちゃんや師匠も言ってたんだけど、道具そのものに罪はない。重要なのは、道具をどう扱うか……なんだよ。“ソロモンの杖”もそう。悪いのは、それを悪用した人で、君のせいじゃない。どのみち、時代が進めば、悪用する人は必ず出てきたはずだからね」

 

「……そうか。なんか、気ぃ使わせちまったみたいだな。でも、ありがとな……。……そう簡単に、割り切れるもんじゃねえけど、おかげで少しは気が楽になったぜ」

 

「ううん。このくらいなら、平気へっちゃらさ」

 

「……へ?」

 

 クルト君の言葉に私は反応する。

 ……今の言葉って……。

 

「ねえ、クルトく────って、うえぇぇぇ!?」

 

「な、なんだ!?」

 

「体が!?」

 

「な、な、なんデス!?」

 

 私がクルト君に質問しようとすると、突如として私達の身体が引っ張られる! 

 な、なにこれ!? 何かに吸い寄せられてる!? 

 抵抗することもできずに私達は一気にどこでもドアに吸い寄せられてしまった! せ、狭いよぅ! 

 

「「「「「うわあ~!!」」」」」

 

 一気にどこでもドアを潜り抜け、私は思い切り顔から地面に激突してしまう。

 痛たっ……。ここは……? 

 顔をあげるとそこには────

 

 カムカム

 

 手招きをしている猫の置物が置いてあった。

 な、なるほと……これに吸い寄せられてたのか……。

 

「な、なんだ。カムカムキャットに呼ばれてたのか……」

 

「こ、これもひみつ道具なのか?」

 

「う、うん。お店に置くと、お客さんを呼び寄せてくれるんだ……」

 

「あら? これって、以前サンジェルマンやプレラーティと泊まったホテルにも置いてなかったかしら?」

 

「そういえば見覚えが……」

 

「あ、そのホテルってもしかして“つづれ屋”さん?」

 

「そういえば、そんな名前だったと思うが……」

 

「そこは響やドラえもんと一緒に小学生の時にお泊りした場所なんです。当時は少し寂れてて……建て直してあげようということで貸してあげたんですけど……」

 

「もう電池は切れてるとは思うけど、潰れなかったんだ! よかった〜! 今度また遊びに行こうよドラえもん!」

 

「う、うん。そうだね……ところでここは……?」

 

 ドラえもんに言われて当たりを見渡すと、そこにはたくさんのコピーロボットが展示されていた。

 

「こ、これは……」

 

「こ、コピーロボット……」

 

「な、なんでこんなところに……」

 

「ん? どうかしたの?」

 

 こ、コピーロボットを見ると……つい最近起こったあの事件が脳裏に……。

 ……はぁ、あれは本当に大変だったな……。師匠も反省してたけど、壊れるのがあと一歩遅かったら、潜水艦が壊れてたかもっていうし……。

 

「ここはコピーロボットに自分をコピーして遊べるコーナーさ。“イケメンコピーロボット”や“性転換コピーロボット”なんてものもあるし、なかなか面白いよ」

 

「い、いえ、私達は遠慮します……あ、あははは」

 

 クリスちゃんやS.O.N.Gの皆も見れば苦笑いしている。やっぱり、あれがトラウマになってるんだろうな……。

 

 チリンチリン! 

 

 !? 

 今のって、鈴の音!? 

 ドラえもんも聞こえたみたいで、私と同じ方向を振り向いている。

 そこにあったのは────大きな穴だ。これって、“抜け穴フープ”かな? 

 私とドラえもんは目を合わせ、うなずき合うと、滑り台みたいな穴へと飛び込んだ! 

 

「ドラえもんの鈴かな?」

 

「わからないけど、行ってみる価値はある!」

 

 私達はそのまま“抜け穴フープ”の通り道を抜けて顔を出す! そこにあったのは────

 

「すっぽん釣りはいかがだかー」

 

「「ご、ゴンスケさん!?」」

 

「ん? ああ、なんだおめえらだべ」

 

 そこにいたのは“ギャラクシーカーレース”でお世話になった自転車屋さん────ゴンスケさんだった。えーと、こんなところで何を……? 

 

「バイトだバイト。自転車だけじゃ火の車だべ」

 

 な、なるほど……。確かに、言っちゃ失礼だけど、そこまで儲かってなさそうだったし……いろいろなところでアルバイトしてお金をためてるんだな。ご苦労様です。

 ふと、上を見上げると、ゴンスケさんの持っているのぼりには大きな鈴があり、ゴンスケさんの挙動とともにチリンチリンと音を鳴らしている。この鈴の音だったのか……残念。

 

「おめえらもやるか? すっぽん釣り」

 

「「すっぽん?」」

 

「正確にはすっぽんロボだ」

 

 あ、本当だ。カメみたいなロボットが“お座敷釣り堀”の中を悠々と泳いでいる。金魚釣りみたいで面白そう。

 

「すっぽんロボ釣りか……釣り上げたロボはもらっていいのか?」

 

「ん? あ~別に構わんべ」

 

「「よし、ならば俺(私も)がや(るワケだ)ろう」」

 

 全く同じことを言うと、ギリギリとお互いをにらみ合うキャロルちゃんとプレラーティさん。仲がいいのか悪いのか……。でも、二人が釣りに興味を持つなんて珍しいな。あまり興味なさそうなのに……どうしたんだろう? 

 

(ククク、未来のロボットを持ち帰るいい機会なワケだ。“すっぽんロボ”のような一見くだらないものでも、私たちの時代では使われない素材や回路があるかもしれないワケだ)

 

(それを俺の研究室で独自に研究すれば、俺の錬金術のさらなる発展につながるかもしれん)

 

「アラ、面白そう。じゃあ、どっちが先に釣り上げるか競走ね♡」

 

「「ふん! こいつには死んでも負けん(ワケだ)!!」」

 

 カリオストロさんの言葉とほぼ同時に二人は釣竿を投げつける。二人ともただならぬ気迫を感じる。

 二人は思い切り釣竿を投げつけると、すさまじい水しぶきが上がる! その水しぶきのせいで、ドラえもんがずぶぬれになっちゃった! 

 

「わっ! 大丈夫、ドラえもん!?」

 

「……なんとか」

 

 ドラえもんは少し疲れたような目をしながら四次元ポケットからハンカチを取り出す。その次の瞬間────

 

「「俺(私)の勝ち(なワケ)だ!」」

 

 キャロルちゃんとプレラーティさんが釣竿を思いきり振り上げる! そこには、二つの竿に同時につかまっているすっぽんロボの姿があった! 

 すっぽんロボはそのまま重力に従い、ドラえもんのほうに落ちていき────

 

 すっぽん! 

 

 ドラえもんの────四次元ポケットの中に入っちゃった!? 

 

「あ! 勝手に……僕のポケットから出て────って、痛ったあああああああ!?」

 

 ドラえもんはポケットに入ったすっぽんロボを追い出そうとするも、逆に手を噛みつかれてしまった! うぅ、痛そう。

 

「ど、ドラえもん、大丈夫!?」

 

「ハハハ。そんなか気に入ったんだな。しばらく飼ってやれい」

 

「そ、そんな! これじゃあ、ポケットが使えないよ」

 

 ドラえもんが元凶である二人を見ると、流石にいたたまれなくなったのか、目線を合わせず知らんぷりしてしまった。

 そんな二人にドラえもんは何も言わず、ため息をつくだけだ。

 

「アヒャヒャヒャ! 踏んだり蹴ったりですね~! そもそも痛覚みたいな無駄な機能があるからダメなんじゃないですか~?」

 

「ちょっと! あなたさっきから……」

 

「はあ~、性根の腐ったガリィらしいな。すまんなドラえもん」

 

 ガリィちゃんを見て頭が少し冷えたのか、ドラえもんに謝るキャロルちゃん。

 それを見て、サンジェルマンさんはプレラーティさんに謝るように促す。

 

「ほら、プレラーティ」

 

「ふん。すまなかったワケだ」

 

「あ~、うん。別にいいよ」

 

 ドラえもんも謝られたら何も言うことなかったようで、二人を許した。

 ゴンスケさん曰く、すっぽんロボは数日で電池が切れるらしいから、それまでは待つしかないらしい。

 その間、ドラえもんのポケットは使えないのか……。大丈夫かな、ドラえもん? 

 

「ねえルトルト。あれは何?」

 

 私がドラえもんの心配をしていると、創世ちゃんが何かを指さした。

 そこにあったのは、大きい球体だ。ふよふよと飛んでいて、何かを閉じ込めているようにも見える。

 

「ああ。あれは“ガードロボ”を閉じ込めている檻だよ。ちょっと待ってて」

 

 クルト君はそう言うと、手元にある端末を操作して、大きい球体の建物を手元へと引き寄せた。

 すると、扉が開き、階段が私たちのもとへと伸びてきた。階段をのぼり、球体の中に入っていくと、そこには大きな一つ目のロボットが鎖でがんじがらめにされていた! 

 

「これは……」

 

「これは22世紀で最強とまで称されるロボット……“ガードロボ”さ!」

 

 クルト君が紹介してくれた目の前のロボットは、鎖で縛られている。それにもかかわらず、すさまじいまでの存在感を放つのだった。



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映画ドラえもん 響とひみつ道具博物館⑤

 響side

 

 

 

 

 

「ガードロボ……」

 

「うん。これは初期につくれた警備用のロボットでね、博物館も最初はこれを使ってたんだ」

 

「なんだかとても強そうですわ」

 

「あ、アニメの敵が使うロボみたい」

 

 確かに……大きな一つ目に、牛みたいな角。何より、タイタニックロボと同じか、それよりも大きい機体。

 弓美ちゃんの言うとおり、悪者の使うロボみたいだ。

 

「これはアダムを参考に作られたロボなんだ」

 

「なっ!? アダムを……!?」

 

 驚きの声を上げるサンジェルマンさんにこたえるように、クルト君は目の前のロボットについての説明を始める。

 

「そう。アダムの僅かな残骸や映像などからデータを計測して、さらに強力なロボットとして作られたのが、こいつってわけさ。あくまでもただのロボットだから、錬金術とかが使えるわけじゃないけど、単純なスペックなら“アダム・ヴァイスハウプト”の倍以上はある」

 

「あ、アダムの倍以上デスか?」

 

「なんだよそのトンデモは! 警備にしたってやりすぎだろ!」

 

 確かに……最後に戦ったアダムはとんでもない強敵だった。それの倍以上のスペックとなると、とんでもないのがよくわかる。

 クリスちゃんの言葉を着たクルト君は頬を掻いて、説明を続ける。

 

「おっしゃる通り。ガードとしては優秀かもだけど、強すぎるがゆえに過剰戦力とされてね……危険すぎて使われなくなり、今では展示用のこれ一体しか残ってないんだ」

 

 すると、私達の周りに一つ目の小さなロボットがふよふよと浮きながら、私達のほうへと近づいてきた。

 これって、タイムパトロールが使っていた……確か……“パトボール”だっけ? なんでも、今はこれが博物館の警備をしてるみたい。

 

「さてと、じゃあ、さっそく次の館に案内するよ」

 

「うん」

 

 クルト君に言われ、私達はガードロボの檻を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 **************************

 

 

 

 

 

「次の館に行く前に、これを食べてほしいんだ」

 

 そういって、クルト君は私たちにタブレット菓子みたいなのを渡してきた。

 あれ? これ、何処かで見たような……多分、ひみつ道具なんだろうけど。とりあえず、食べてみよう。

 

「あ、美味しい」

 

「これは?」

 

「……なるほど。これを食べるということは次の館は……」

 

「え? ドラえもん、次の館がわかるの?」

 

 このお菓子と関係あるのかな? 

 そうこう考えているうちに、クルト君は“抜け穴ボールペン”であたりを囲みだす────あれ? 確か、これって丸を描くことで抜け穴を作るひみつ道具……だよね? それで囲ったりしたら────

 

「それでは皆さん。落ちる際はくれぐれもご注意を」

 

「「「「落ちる?」」」」

 

 皆がそう言った次の瞬間、地面が突如として消えた! 

 一瞬皆呆けるけど、すぐに顔を青くして真っ逆さまに落ちていった! 

 

「「「「わあああああああ!?」」」」

 

「またか!? 未来人はどうしてこう落下させたがるんだっ!?」

 

 私達はそのまま下へと落ちていく。でも、しばらくすると、空間がうねって滑り台のようになった。

 そのまま私たちは滑り台を滑り、やがて出口のほうへと放り出された! 

 

「うわあ!」

 

「大丈夫?」

 

 出口へと放り出された私達だけど、地面に落っこちる……なんてことはなかった。なぜなら────

 

「ここは……宇宙か?」

 

 私達はキラキラ輝く星がきれいに漂う宇宙の中にいたのだから。

 

「わあ、綺麗ですね」

 

「うん。とても……」

 

「マリアにも見せたかったデス」

 

 セレナちゃんたちもそのきれいな光景に心奪われてるみたい。

 辺りにはロケットやゴムでできた星、本物みたいな地球みたいに宇宙に関連したひみつ道具が漂ってるみたいだ。

 

 ボォォォォォ!! 

 

 汽笛の音がして、振り向くと、そこには宇宙の中を走る“銀河超特急(ぎんがエクスプレス)”の姿があった! 

 懐かしい! 昔、皆と乗って“ドリーマーズランド”で大冒険したんだよね。あの時の電車とは少し違うみたいだけど、それでも懐かしいや! 車掌さん達元気かなー? 

 

「ここは“宇宙館”。宇宙にまつわる道具を展示してるコーナーさ」

 

「宇宙……」

 

「ちなみに、さっき食べてもらったのは“食用宇宙服”! 食べるだけで宇宙服と同じ効果が得られるんだ」

 

「それはすごいわね。わずか100年程度で、文明がここまで進歩するなんて……」

 

「異端技術が表に広まった結果だね」

 

 サンジェルマンさん達が感慨深そうに眺めていると、大きな地球の模型が近づいてくる。

 

「クルト君、これは?」

 

「これは星の一生を見るための道具さ。見てて……」

 

 クルト君が端末を操作すると、地球やほかの星々が消え、大きな渦巻きが現れる。

 やがて、渦巻きは圧縮され、よく知る太陽が私たちの前に現れた。へ~、太陽ってこうやって生まれたんだ。太陽が生まれたことで、他の星々もどんどん生まれ、地球や火星みたいな星も誕生し始めた。

 

『太陽は今から50億年以上前に生まれ、今なお膨張しています。これから先、60億年がたつ頃には太陽は赤色巨星となるでしょう』

 

 アナウンスの声が宇宙空間で響き渡り、太陽はどんどん大きく────って

 

「巻き込まれる────!?」

 

「落ち着け、立花響。ただのホログラムだろ」

 

「え? あ、ほんとだ。熱くない」

 

「そもそも、本当に太陽ならこの距離でも大惨事になるだろう」

 

「そうね~。ファウストローブを纏えばある程度は持つかもだけど……」

 

 確かに、シンフォギアを纏ってないと、この距離でも燃えちゃいそうだよ。見ただけでそんな感じがする。ホログラムでよかった~。

 そんなことを考える私にクスリとして、クルト君はドアを指さし、大声でいう。

 

「じゃあ、どんどん案内するよ! しっかりついてきて!」

 

「「「「おお!」」」

 

 次はどんな道具があるのかな? とても楽しみだよ! 

 

 

 

 

 **************************

 

 

 

「わあ、ここは?」

 

「ここは“カメラ館”。カメラに関連したひみつ道具が飾ってあるんだ」

 

 へぇ~。確かに、すごい数のカメラだな。

 豪華そうなカメラがたくさんあるや~。未来と一緒に写真撮ろうかな? でも、少し不安だな……。

 

「……ねえ、ドラえもん」

 

「ん? どうしたの? 未来ちゃん」

 

 ん? 何だろう? ドラえもんと未来が何やらごにょごにょ話してる。

 しばらくすると、ドラえもんは少し疲れた表情をしながらも大きくうなずいて、未来を撮影用の台に乗せる。

 

「よ、よし、響ちゃん! 未来ちゃんと一緒に並んで~」

 

「響! 早く早く♪」

 

「え? うん、わかったよ~」

 

 どうやら、未来も同じこと考えてたみたい。

 ……でも、何でドラえもん、疲れた表情してたんだろう? 不思議に思いながらもドラえもんに促され、私と未来は撮影用の台の上に立つ。

 22世紀のカメラ……“呪いのカメラ”みたいな怖いのもあるから、ちょっと悩んでたけど、ドラえもんが撮るなら安心だね。

 

「ハイ、チーズ!」

 

 パシャア! 

 

 ドラえもんとクルト君がカメラを切ると同時に、私達の衣装が変わる。

 私は“シャーロックホームズセット”から、びしっと決まったタキシードに……未来はお嫁さんが着る純白のウェディングドレス姿になっていた。

 

「わあ~、すっごい似合ってるよ、未来」

 

「ふふ、響も似合ってるよ」

 

 どうやら、ドラえもんが使ったのは“着せ替えカメラ”だったみたい。少し古い感じだし、昔の奴かな? 

 写真を見せてもらうと、私の服も相まって、なんだか結婚式みたい! 

 ……あれ? なんで、私がタキシードなんだろう? こういう場合、私もドレスにするのが普通なんじゃ……まあ、いいか。未来も綺麗だし、楽しそうだし。

 

「ありがとうドラえもん。後でどら焼き奢ってあげるね」

 

「う、うん。ありがとう……」

 

 ドラえもん、何かあったのかな? なんか疲れてるみたいだけど……そうか、鈴が見つからなくて不安になってるんだ。

 ドラえもんのために、速く怪盗デラックスを見つけないと……。私は元のシャーロックホームズ姿に戻り、ドラえもんを励ますことにした。

 

「大丈夫だよドラえもん。絶対に鈴は見つかるよ!」

 

「え? ……あ~、うん、そうだね」

 

 その為にも、この博物館のどこかにいる怪盗デラックスを早く見つけないと! 

 

 

 

 

 

 **************************

 

 

 

 

 

「おお、雲の上なのに立てるデス!」

 

「ふわふわしてるね」

 

「ここは空館。空にまつわるひみつ道具を展示してるよ」

 

 ああ〜、お日様がポカポカしてて、気持ちいいな〜。雲の上を歩くなんて久しぶりだよ〜。昔はよく雲の上で遊んだっけ……。

 

「たくさんの人が空を飛んでいますね」

 

「空を飛ぶ道具だけでも、これだけの数があるんだね」

 

 そう言いながら、セレナちゃんと調ちゃんが空を飛んでいた。

 調ちゃんは“フワフワおび”、セレナちゃんは……手にタブレットを持ってるから、“ふわふわぐすり”かな? 

 で、切歌ちゃんは────

 

「このストロー、凄い……デースー!?」

 

 “ロケットストロー”を使ってたみたい。でも、ストローから口を離して落っこちちゃってる。

 下は雲だから痛くはないみたいだけど……大丈夫かな……? 

 

「団扇仰ぐだけで空を飛べるだなんて、本当に面白い時代になるものですね〜」

 

「あっ! ガリィちゃん!」

 

 ガリィちゃんは“強力うちわ風神”を使って空を飛んでいる! 

 しかも、団扇を仰ぐたびに調ちゃんとセレナちゃんに被害が出てる!? 

 

「「キャ────!?」」

 

「あ、ごめんなさいね〜。でも、この団扇が強すぎるのが悪いと思うんで大目に見てくださいな」

 

「……アイツ、本当に俺の人格から生まれてるのか……?」

 

 その光景を見てキャロルちゃんは何やら複雑そうにしてる。だ、大丈夫なのかな? 

 

「じゃーん! 雲だるま作ってみた!」

 

「おお! 流石ユメ! 凄いじゃん!」

 

「ナイスですわ!」

 

 弓美ちゃん達は平和そうだな。“雲粘土”を捏ねて、いろいろな形の雲だるまを作ってる。“雲”って、冷たくない雪みたいな感じだし、手が冷えることとか気にせずガンガン作ってるみたいだね。私も後で作ろうかな? 

 

「あっ、ちょうどいい時間だ。もうすぐ、“タケコプター”の歴史についての上映をやるから、よかってら、よかったら見に行かない?」

 

「タケコプターの歴史だと?」

 

「立花響達がよく使う竹とんぼのような形状のひみつ道具か。確かに興味はあるな」

 

 サンジェルマンさんの言葉にうなずきながら、皆どこでもドアの中に入っていく。もう上映は始まっているらしく、タケコプターの設計図みたいなのがスクリーンいっぱいに広がっている。

 うへぇ……難しくて全然わかんないや。でも、サンジェルマンさん達やキャロルちゃんはすごく興味深そうにスクリーンを眺めている。

 

「ふむ。確かにこの設計ならば、頭部への負担を気にせず、宙に浮くことができそうだな」

 

「でも、これじゃあ空気抵抗の問題とか解決できないんじゃない?」

 

「いや、宙に浮くと同時に空気抵抗を軽減する術式が展開され、身を守っているワケだ」

 

「しかも、外からでは俺達ですら感知できん隠蔽術式だな。まさか錬金術の技術が使われているとは、興味深い」

 

 なんかすごく難しそうな話をしている。さすがは錬金術師の皆さんだな……。でも、失敗も多くあって、こんな苦労のもと、タケコプターができたんだなと思うと、なんだか感慨深いね。

 そんな事を考えながら、タケコプターを使って空を飛ぶ人たちの映像を眺めるのだった。

 

 

 

 

 

 **************************

 

 

 

 

「わあ、なんだかとても素敵な場所です」

 

 あたりに広がる雄大な大自然を見ながら、セレナちゃんは感嘆の声を上げた。気持ちはわかるよ~。なんだかポカポカしててとても気持ちいいもん! こんなところでみんなとピクニックができたら最高だろうな~。

 

「ここは“自然館”。自然にまつわるひみつ道具がたくさん展示してあるんだ」

 

「へ~、どんなのがあるんだろう?」

 

 自然にまつわるひみつ道具。色々ありそうだな。

 

「な、な、なんデスか? これは!?」

 

「カブの中からカレーライスが出てきた……?」

 

「あ、それ“畑のレストラン”じゃん」

 

「昔、ビッキーたちと一緒に石器時代に行ったとき、作ったんだよね」

 

「中学生の時のことですね。とても懐かしいですわ」

 

 ああ。以前、家が大変な時に、ドラえもんが静かな場所で少しのんびりしようと提案してくれた時の奴だね。お父さんとお母さんも快く送り出してくれて、申し訳ない反面、楽しくもあったな。まあ、そのあととんでもない戦いに巻き込まれるんだけど……思えばあれが、ガングニールを初めてまとった時だったんだよなあ。

 

「これは、生きたプラモデル? “自動人形(オートスコアラー)”とも違う……確かな生命の息吹を感じる」

 

「“自然観察プラモデル”か。以前、ドラえもんが遊んでいたのを見たことがあるぞ。俺としても、興味深い道具だ」

 

「それにしても広いわね。山の向こうまで続いてそう」

 

「これほどの空間拡張……興味深いワケだ……それはそうと、その姿は何だ? キャロル?」

 

「……聞くなぁ!」

 

 キャロルちゃんは恥ずかしそうにそっぽを向く。その耳には、猫の耳のようなものが生えている。しかも、お尻からは長い尻尾もあるみたい。

 あ、あれって“動物変身ビスケット”! なるほど、それで猫人間みたいになっちゃったのか~。すごくかわいいよ! キャロルちゃん!

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 **************************

 

 ???side

 

 

 

 

 

「あと四つ……あと四つじゃ……」

 

 

 ここは博物館の何処か。館長すらも知らない室内にて、一人の老人が研究を行っていた。

 老人は笑う。あと四つのパーツが揃えば自らの研究が実を結ぶ。そうなれば、世界を変えることができるのだと。

 

「フハハハハハ!!」

 

 老人は嗤う。研究の完成はもう間近であるのだと。

 

「お祖父ちゃん。ケーキ置くから邪魔! 早く退けて!」

 

「あ、はいはい只今!」

 

 

 




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