転生前は人間のオスだったエルフの聖女、婚約者に嵌められ淫魔になり追放されたらしい (芥目たぬき)
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TSエルフ聖女、策略に陥り淫魔メイドになって結果的に世界を救うらしい
エルフ+聖女+サキュバス


 人間の国とエルフの国の国境近く。深い森の中には、ざわめく木々の音ばかりが響いていた。

 本来ならば人間が立ち入ってはいけないはずの深い森。ここは並の者が入ったらすぐに死んでしまうと言われている危険地帯である。

 

 オレは、その危険な深い森の中にいた。

 なんてことはなく、ただ()()()()()()()()()()を遂行しているのだ。

 

 エルフの国に街道からの正規入国ルートで入ろうとすると厳しく長い時間が要される審査があり、今回の目的には向いていなかった。

 もうひとつの草原地帯は森よりも比較的安全とはいえ、エルフ達が国境沿いを常に巡回している。昔はエルフを誘拐する人間達が密入国を繰り返していたため、今でもかなり厳しい見張りがいるのだ。

 

 というわけで、オレは一度入れば生きて帰ることが出来ないと言われている危険な森———『甘き森』からエルフの国へと向かっていた。

 ここにはドラゴンが住んでいる洞窟があったり危険な魔獣も多く生息していて、力のない者が立ち入ればまず死んでしまう。エルフでもまず好んで侵入する者はいなかった。

 

 森に入って3日目。

 あと1日もあればエルフの国のはずれの集落に辿り着くだろうと、夜の静かな森の中で息を潜めて身体を休ませている時だった。

 

 

 

 

 

「もし……そこの人間の方」

 

 暗がりから声がかけられる。

 それは、とても弱りきった女の声だった。

 

「そこにいらっしゃるん、ですよね……でしたら、その……」

 

 ずる、ずる、と地面を這いつくばるような音を立てながらも、その女はこちらに向かってくる。月明かりに照らされて姿を見せたそれは、身体中がボロボロで、至る所から血を流しながらも、必死に身体を動かしていた。

 

 その背には蝙蝠のような翼が生えている。

 耳は長く伸びて、その上にはツノが生えている。

 臀部の上の方からはつるりと先尖りした尻尾も生えていた。

 

 ———悪魔。

 自分を捕食せんとやってきたのか、その女はこちらを明確に見ている。

 

「お情け、を……いただけ、ません……か……?」

 

 少しずつ、しかし確実にこちらに向かってきている。よく見ればとても美しい女で、なのにその身は痩せ細って今にも死に絶えそうだった。

 指先は汚れて、数本の爪が剥がれてすらいる。身体につけられた傷は獰猛な獣の爪痕だけでなく、人為的につけられた刀傷も見受けられた。

 

 何か、訳があるのだろうか。

 

 オレが今隠れているのは、強力な護符結界を張った小さな洞穴だった。深い森の中、秘密裏に与えられた任務の遂行のために今夜はここで一晩を明かそうとしていたのだ。

 魔獣や獣、魔族や盗賊など、悪意あるものならばどんなものでも弾くような結界だが、目の前の悪魔がこれを破らないとは限らない。悪魔とは得てして、魔族の中ではかなり上位に値する存在なのだから。

 

 音を立てないようにそっと、愛用の懐刀を構える。

 

「……ど、うか……どうか、たすけ……」

 

 そして、女がこちらを見上げてきた。

 距離はじりじりと近づいてきていておよそ20mくらいか。月明かりのおかげではっきりと見えたその顔は、見覚えのある顔にどこか面影を似せていて……

 

 じわりと、嫌な予感がよぎる。

 

 そもそもこんなところに悪魔がいるのがおかしいのだ。悪魔とは、基本的には人間の欲を喰らって生きていく生き物である。街中に紛れ込んでいたりするもので、間違ってもこんな人気のない深い森の中にいるはずがないのだ。

 

「……お前、名前は?」

「な、まえ……」

 

 大丈夫だ、まだ距離は離れている。

 あそこから突然攻撃に転じられたとしても逃げられるし、反撃も出来るだろう。これまでの人生で幾度かは悪魔を相手取ったこともあるのだ。

 

 オレは、強く武器を握っていた。

 そして……

 

「わた、しの名前、は……ユターシャ……」

「ユターシャ?」

 

 ユターシャといえば、エルフ国の第一位聖女と同じ名前だ。

 

『降り立つ繁栄』と名高いその聖女は、先進的だが自然を尊重した知識を持ち王国の発展に従事してきたらしい。神秘に包まれているエルフ国だが、その聖女の噂だけは人間にも知れ渡っていた。

 

 自然と調和しながらも、新たなる繁栄をエルフ族にもたらした聖女。

 美しく、気立よく、そして誰よりも深い知識と穏やかな優しさから、過去最高の聖女と評判があった。

 

 ———間違っても、こんなところで這いつくばる悪魔が名乗っていいような名前ではない。

 

「なるほど、この国の民から最も敬愛されているだろう聖女の名を偽って、私刑(リンチ)にあったのか? 悪魔のくせに、なんとも間抜けじゃないか」

「ちが、違いますっ……!」

「その顔立ちはユターシャのものだろう? 肖像画で見たことがあるぞ。変装する魔術でも使ったのか」

 

 そう、その顔は間違いなく聖女ユターシャと瓜二つであった。

 光魔法を得意とするエルフ国にわざわざ侵入する悪魔というのも間抜けだし、国民に慕われている聖女の名を偽るのも頭が悪い。

 

 正体を見破ってもなお、魔術を解くこともせず、ズルズルとこちらに近付いてくる。

 

「殺すのも手間だ。失せろ」

「だ、だめ……たすけ、て……本当に、死んでしまいそう、なのです……」

 

 こんな深い森の中で、悪魔なんかに目の前で死んでもらいたくないものだ。

 悪魔の血には高純度の魔力が含まれている。いくら頭が悪い低能の悪魔だろうが、こんなところで死生臭い死体なんて作ったら、その匂いにつられて魔獣がわらわらと寄ってくるだろう。

 

 ……いや、今もか。

 

 ユターシャを名乗る悪魔の背後には、木陰に隠れて魔獣の群れがあった。距離はまだ遠く、ユターシャを名乗る悪魔本人は気が付いていない。

 本来なら魔獣が悪魔という高等な生き物に襲いかかることなんてないけれど、相手は弱りきった脆弱な悪魔だ。魔獣からすれば、生まれたての仔牛のように容易く頂くことのできるご馳走と言っていいだろう。

 

 同じ人型の生き物が自分と同じ言葉を叫びながら死ぬ様はむごいものの、それを助ける義理なんてない。もっと言えば、悪魔は人間を捕食する生き物なのだから、ここで殺されるのは都合がいい。

 

 問題としては、オレも魔獣の狙いになる可能性があることだが……まぁ結界を張っているし、魔獣にこれを簡単に突破されることはないだろう。

 朝、この悪魔の死体を喰らう魔獣達が残っていたら結界から出られずに、行動できなくなるのが面倒だが……

 

「ま、魔獣に、追われているんです……」

「あぁ、そうだな。出来れば遠くまで逃げて、魔獣を引きつけて遠くの方でおっ死んでくれ。その方が、オレも都合がいい」

 

 その言葉に、悪魔は見捨てられたと思ったのだろう。綺麗な聖女様の顔を歪めて、泣きそうな顔でオレを見つめていた。

 

 死にたくない、と表情から窺える。

 だが、オレにはそれを助ける義理なんてなかった。むしろ、人間に害をなす悪魔をわざわざ助けるなんて間抜けなことはしない。

 

 そして———

 

「ひっ……いやぁぁあああッ!」

 

 最初の一匹が、悪魔に齧り付く。

 それに続いてわらわらと、魔獣は山になるように悪魔に群がっていった。

 

 あれはもう死ぬだろう。魔獣の鋭い牙が、柔らかな悪魔の肉を削いでいく。悪魔の断末魔を楽しむように、魔獣の群れはあえて急所を外して肉を削ぎ落としていた。

 

 ろくな抵抗もせず、呆気なく悪魔は魔獣の餌食に……

 

「……い、三い、まほぉ……」

 

 最後の足掻きか、皮膚がところどころ噛みちぎられている腕が見えた。血だらけになった手が月に向かって伸びる。

 

「———ほー、りぃ……」

 

 魔獣達は、魔術を使わせる前に仕留めようと悪魔の首筋に噛みつこうとする。彼らも悪魔が何かしてくると察知したのだろう。後方にいる一際大きな魔獣が吠えて、身体を身構えさせていた。

 

 だが、間に合わない。

 それよりも、悪魔の魔術の方がずっと早かった。

 

 悪魔は慣れたように魔術式を素早く組み立てていて、その指先にはエルフ族が好んで使う『五指式型』特有の、五重になった円式が浮かんでいる。

 

「ばす、たぁ」

 

 手の先に急速に魔力が集まっていく。

 

 それは魔族が好んで使う闇の魔術———とは正反対の、白い光。心が綺麗なものでないと扱えないと言われている、白魔法。魔を祓い、守るための光が、その悪魔の手先に宿っているのだ。

 

「……ばーすと」

 

 そして、その瞬間あたりに強い光が広がる。

 

 

 

 音もせず、声も聞こえない。光だけがあたりを包む。その光の中は、まるで痛みも苦しみもないような白い空間が生み出されていた。

 魔を祓う高等な魔術。光魔術の第三位に値して、本物の聖女くらいしか扱えないような魔術のはずだ。

 

 人間の国にいる聖女が扱うのを見たことがあった。普通の人間には到底出来ない、愛された者のみが使える領域。

 

 

 

 間違っても、()()()使()()()()()()()()()()()のだ。

 

 

 

「馬鹿な……」

 

 白い光が止み、再び森の中の暗闇を月明かりだけが照らす世界に戻ってくる。

 そこに魔獣はおらず、そして腕を無くし、肌の大半を焼け溶かした悪魔らしきものだけが転がっていた。

 

 悪魔が光魔術なんて、使う訳がない。

 しかもあそこまで高等な魔術を、簡単に使えるはずがない。

 

 おそらく、術者本人すらも自身の魔術によって溶かされてしまったのだろう。伸ばしていたはずの右手が一切無くなっていて、ユターシャを真似した美貌は焼け爛れて見るも無尽な形へと変容していた。

 

 当たり前だ。光の魔術は魔を払う魔術。

 術者であっても、それが魔のものであれば例外なく払われるのである。

 

「なぜ、何故悪魔なのに、光の魔術が使える!?」

「かひゅっ……かはっ……はひゅ……ひゅっ……」

 

 浅く呼吸をしている。かろうじて、まだ生きているらしい。

 

 オレは周りの安全を見てから、武器を構えつつ結界を一時解除して、そして悪魔の元へと近寄った。

 

「何故だ……? 悪魔に光魔術なんて無理な筈なのに、どうして使用することができる……?」

「は、はひゅ、かはっ……ひゅーっ……」

 

 そして、その身体をじっくりと検分していく。

 浅く上下する胸は焼け落ちていて、しかし熱は持っていない。溶けたようなそれは、悪魔が光魔術の攻撃を喰らった時の症状であった。

 焼け爛れた上半身。下半身の方はまだマシだが、それでも魔獣に強く噛みつかれたからか歯形の穴が開いていて、悪魔特有の黒めの血がどくどくと溢れている。

 

 腹を見ると、痛々しくも醜い魔術焼印……なんらかの黒魔術がこの身体には刻み込まれていた。直径10cm程の大きさの焼印、エルフが好んで使う五重の円には邪悪な紋様が並んでいる。

 

 

 

 ———見たことがある、魔術式であった。

 

 

 

 オレには深い魔術の知識なんてものはない。

 それでも、今まで様々なところに潜り込んできた事があるし、金持ちの道楽でこういったものが刻まれる人間や獣人といったものもたくさん見てきた。だからこそ、その紋様に心当たりがあるのだ。

 

 この独特な魔術紋様の並びは、一度見たら忘れられるようなものではない。エルフ特有の五重式で、オレが見たものと形は違うが……書かれている紋様は同じだろう。

 

 おそらくこれは———()()()()()()()()()()刻印。

 

 ある獣人は魔獣となった。ある人間は死を啜る骸骨になった。これと似た魔術を、オレは見たことがあるのだ。

 ならば、もしかしたら、おそらく。

 

「お前……まさか、本当に、聖女ユターシャだというのか……?」

「……!」

 

 ユターシャを名乗る悪魔の、溶けている顔の瞼が開かれる。その目には、歓喜が宿っていた。

 

「そんな、馬鹿な……くそっ」

 

 オレは悪魔を抱きかかえると、洞穴の中に戻る。すぐに結界を張りなおしてから、持ち込んでいた荷物をひっくり返して手当道具の一式を取り出した。悪魔に対して有効かはわからないが、やらないよりはずっとマシなはずだ。

 

 こんなところでこの女を殺すわけにはいかなかった。この悪魔には聖女の可能性があるし、そうでなくてもなにか重要なことを知っていてもおかしくはない。

 

「エルフの国で、なにが起きているんだ……?」

 

 

 

 

 

 オレは今回、人が治める王国の裏機関より命令されて、エルフの国から広がっている異変の調査に向かっていた。

 

 それは、()()()()()

 この数日でじわじわと木々や大地が悲しみを帯びたかのように活力がなくなってきているのだ。

 異変がエルフの国から発生していると()()()をつけた祖国は、オレに対してエルフの国でなにか異変が起きていないか調査する様、命令を下したのである。

 

 かつては暗殺者として祖国の裏機関に育てられたオレだが、ここ最近では表向きには冒険者に転向して生活していた。オレが何かをヘマした時に、祖国が簡単に尻尾切り出来る様にするためである。

 普段は各地を巡りただの冒険者として生活しつつも、たまに命令が下されればかつてのように静かに任務を遂行する……祖国の暗い手足として活動しているのだ。

 

「(仮に聖女だというのが嘘だとしても……こんなところに悪魔がいること自体が異変だろう。せめて情報を得てから……)」

 

 目の前のこの存在を、死なせるわけにはいかない。酷くてもエルフの国で何が起きているのかがわかるまでは。

 

「お前は悪魔だろう? 契約してもいい、もちろん魂を全て売り渡しはしないが、今のお前が生きていける程度の魂ならくれてやる」

 

 そういうと、悪魔はそっと目を伏せた。きっと、それは違うと言いたいのだろう。

 

 彼らはとてつもなく、生命力が強い。

 それは人間のように血肉を食らう生き物ではなく、高等な生物から「魂」やら「精」やらの質量のないナニカを奪って生きるからだと言われている。

 

 逆に言えば、人と同じような手当をしたところで回復するような生き物ではないのだ。だからこそ、言葉を重ねる。

 

「このままだと、本当に死ぬぞ。持って30分もあるまい。お前が聖女だったというならば、死なれたら困るんだ。だから、なんとか生きようとしろ」

「……あ、ぅ……」

 

 そして、女は微かな声で呟いた。

 

「せ、……し、を、くださ……」

「?」

「……ざ、ーめ、ん……」

 

 彼女はそれだけ言うと、力尽きたかのようにがくりと目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 ……??? 

 

 なにかおかしかった。今のは、絶対におかしかった。聞き間違えでなければ、この女間違いなくザー○ンって言ったよな? 『せいしをください』っていうのはつまり、精子のことなのか? 

 この状況においてジョークを飛ばすわけがない。緊張した場面で急に下ネタ言うと面白いよねって言うにも、限度があるのだ。死にかけで言われてもひとつも面白くないのである。

 

 いや、違う。こいつもしかして……! 

 

 

 

 

 

「……サキュバス、なのか……!?」

 

 

 

 

 * * * *

 

 




ユターシャ(95歳)
エルフは5年で1才の歳をとるので、人間換算すると19才くらい。

おっぱいがでかい聖女。
すごい美人で転生チートを謳歌してた。
中身は男の筈だが、厳しい聖女訓練期間で女としての立ち振る舞いを躾けられて以降、基本はお淑やかな女性の口調となる。
転生前の好物はハンバーグ、転生後の好物はハチミツ。


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+飢餓サキュバス化

 * * * *

 

 

 

 

 とりあえず空腹を凌いだらしい自称:ユターシャは、未だに身体のあちこちがボロボロではあるものの死の淵から帰還して、壁に向かって体育座りをしていた。

 いまだ傷は残っているものの、1番重篤だったはずの右腕は生え始めており、この調子ならもう暫くすれば身体は大丈夫かもしれない。

 

 しかし、いくら淫魔とはいえ気絶している口に一回分を()()()()()だけでここまで回復を見せるだなんて驚きだ。普通の淫魔なら成人男性一回分でここまで回復するとは思えないが……それもこれも、彼女が本当の聖女だからだろうか? 

 

 もしも膣内(正規の吸収器官)から飲んでたら、完全に回復してたかもしれないってことか……? 

 

「いや、何考えてるんだオレは……」

 

 オレはそっと淫魔から視線を外した。淫魔というものをあまり注視しない方がいいというのは一般常識である。

 長く見続けていると、いつの間にか魅了魔術をかけられていたなんていうのはよくある話なのだ。

 

 ……とはいえ、目の前の淫魔はそこまでの狡猾さが見えないけれど。

 どうやら落ち込んだ様子で、壁に向かって何かを呟き続けている。

 

「……ザー○ンまずいザー○ンまずいおいしくないまずいゲロ以下レンガの味美味しい訳がない違う違う違う違う……」

 

 ……そこまで否定されると、提供者としても申し訳なくなってくるが……

 

 いやでも出した後のもの飲ませただけだし。直接流し込んだとかそう言う訳じゃないし。一度出して、それを口に流し込んだだけなのだ。あれは仕方ない、適切な処理だった。そうするしかなかった。

 

「美味しい訳ないだろまずいもんだぞ苦くてまずくてはちみつみたいにトロッとしてて濃いめゴクっと濃厚クリーミーで喉越しプリップリで味わい深……いやまずかったまずかったまずかった! 美味しくなかった! ああああ!」

 

 唐突に壁に頭を打ち付けようとする淫魔を、とりあえず止める。その傷で勢いよくそんなことしてたら、普通に死ぬぞ。

 

「死にたいのか?」

「うぴゃあああ!?」

 

 そうして、顔を真っ赤にしながらもこちらを振り返る自称聖女様。オレの顔と股間を視線が行ったり来たりしている。やめてほしい。

 

「た、た、たすけてくださってありがとうございます……その、提供くださったこと感謝します……」

「……まぁ、仕方なかったからな」

 

 初対面で気を失っている相手の口になんてものを流し込むんだと、自身の理性が邪魔して素早く的確な蘇生活動が出来たとはお世辞にも言えなかったものの、最終的には()()()()()のだから仕方ない。

 

 ここ最近任務を優先していたのでヤってなかったわけだし、物陰の方で処理したものはとても濃かった。淫魔的栄養素はきっと豊富だったに違いない。

 

「オレが言うことじゃないのかもしれないが、まぁ、気にするなよ。人生そう言う時もあるっていうか、な? 毒じゃねぇんだから、白子ポン酢食ってるような感覚でいればいいって言うか……」

「し、白子ポン酢……」

 

 我ながら酷い例えだが、正直慰める言葉なんて持ち合わせていなかった。

 オレのように過酷な訓練を受けてきて、どんな状況でも生き延びることを考えて泥水啜る意地汚い人間と、高貴な元エルフの聖女様は考え方が違うのだ。まぁ、オレでも男のアレを飲めなんて言われたら最悪だし、立ち直るのに時間をもらうだろうが……

 

「でも純粋に成人男性のアレを飲まされたっていうのが! 仕方ないとはいえ! つらいです!」

「生きるために仕方なかったと思えよ。そういうこともあるって」

「うううううああああ! やだやだやだやだ!」

「落ち着けよ。無駄に体力消費してどうするんだ」

 

 そして———

 

「本題に入りたい」

「ほ、本題ぃ……? ま、まさか命を助けたんだから身体を差し出せとかそういう……!?」

 

 サッと身体をあわてて隠す淫魔をジト目で睨みつける。確かに魅力的な肉体だろうけど、今のオレは任務中なのだ。そんなことにうつつを抜かしている暇はなくて。

 

「聞きたいことはひとつ。お前が聖女だというなら、何故こんなところで淫魔になって彷徨っていたんだ?」

「そ、れは……その……」

 

 言い淀む淫魔にオレはさらに畳み掛けた。

 嘘であれ真であれ、こんなところにいる淫魔の言い分を聞いておきたいのだ。

 

「『降り立つ繁栄』とまで言われた聖ユターシャが淫魔となった……それは何故だ? なぜユターシャほどの聖女がその焼印を押される?」

 

 それを聞いて、ユターシャは顔を歪めた。

 

「……私が淫魔になってしまった聖女だと言うことは、信じてくださるんですね」

「その腹の焼印は以前に見たことがあってね。変異するモノの素質に合わせた魔族へと変わる魔術……だろう?」

「その通りです」

 

 オレが過去に薄暗い地下で見た術式と、この女に刻まれた術式。そのエルフ式と人間式の違いはあれど、中に記載されている紋様は同じものである。

 聖女ほど徳の高い女が変容するのは、魔族の中でもかなり高位とされる悪魔……と言われたら、納得が出来る。

 

「私は罪の濡れ衣を着せられて……この烙印を押されたのちに、追放されました」

 

 その顔は、悲壮感に濡れたものだった。痛かったのだろう、その魔術が刻印されている腹部を、ゆっくりと撫でている。

 よく見れば、左の手首にはキツく縄で締め上げられていただろうあざも見受けられた。

 

「何故だ? アンタは人間にすら轟くほど有名で、エルフ達から慕われていた筈じゃないか」

「……たったの3日で拘束から裁判、そして刑の執行まで執り行われたのです。私の……婚約者の一存で」

 

 助けを求めることもできず、抵抗も碌にできませんでした。と、彼女は俯いていた。

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 深くフードを被ったオレは、エルフの王国の首都に潜り込んでいた。本物と見間違えるほど精巧な作りをした付け耳をつけて、そっと人通りの中を早歩きで通り抜ける。

 

 上を見上げると身長の高い木々の葉っぱが日差しを遮っていて、森林独特の見通しの悪さが特徴的だ。そして木々の高いところには広い道がつけられていて、そこをエルフ達は歩いていたり、人力車に乗っている。

『降り立つ繁栄』ユターシャが考案したと言われる都市景観は、彼女曰く『首都高みたいなやつ』らしく、それを受け入れたエルフ王が表立って実現させたらしい。深い森と利便性が両立しているこの都市は、50年前に比べてずっと人口も増えたと聞いている。

 

 立ち並ぶ店はまるで鳥の巣のように木に取り付けられている。それもこれも、このエルフ王国首都特有の力強い木々の生命力を活用しているからだろう。

 

 ……それにしても、人の顔色も暗ければ街の景観すらどこか寂しく感じる。

 本来ならば活気と自然が調和した美しい街だろうに、歩く人々の顔にはどこか不安がチラついていた。

 

 オレは淀みなく王城直属兵士専用宿舎近くのレストランの扉を開けて、壁際のテーブル席へとついた。

 エルフにはあまり酒を嗜む文化が根付いていない。エルフらしくさっぱりとした果物水とサラダの盛り合わせを頼み、それを食らいながらも耳をそばだてる。あくまでも食事はゆっくりと、周りの声を聞きながら。

 

 ———あぁ、にしてもどうなってしまうんだ! 

 ———ユターシャ様が処刑されただなんて……あのボンクラ皇太子様もとんだ奴だ

 ———せっかく元気になりかけていた王様が、また心労で倒れてしまったらしい

 

 レストランで聞こえてくるのは、王城勤めの兵士たちの噂話。聖女ユターシャが処刑されたというのは1週間前の都市新聞で大きく取り上げられていたらしく、オレでも容易に入手することができた。

 エルフの国は酷く鎖国的で、他国にはなかなか情報が回ってこない。その代わりにエルフ国内においては情報が回るのが早く、どのエルフ達も口を開けば歴代最高峰の第一席聖女ユターシャが処刑されたことを噂していた。

 

 さて、何故処刑されたかの流れだが———

 

 聖女ユターシャは、多くの罪を犯していたらしい。

 聖女第二席以下の聖女達の力を吸収して自身のものだと言い触れていたという能力偽証罪。王国の重篤な秘密を他国に売っていた密告罪。王様の体調不良に関与している暗殺計画罪。皇太子の婚約者という立場にありながらも王家を侮辱した王族侮辱罪……など。

 様々な罪を重ねに重ねていて、皇太子はそれを全て暴いたのだという。

 

 そして、ろくな弁護士もつけられず、拘束からたったの3日で処刑されてしまったのだ。

 

 全ての手続き諸々を皇太子の権限で吹っ飛ばし、国民がその事実を知ったのは新聞にて。

 そこにはいかに皇太子が苦労したか、そして聖女がいかに罪を重ねていたのかを長々と綴られていた。明らかに、皇太子が買収したものであった。

 国民心理をたった一枚の新聞だけでどうにかなるなんて考えて、処刑に必要なエルフだけを雇いユターシャをその地位から蹴り落としたのだ。

 

 高齢による体調不良で1ヶ月近く都心から離れて療養していた王様は、ユターシャが処刑されたという新聞が発行されてから半日ほどで王都に入って戻ってきたらしい。

 処刑された当初は上から下まで大混乱していた首都も、緘口令によってだいぶおさまったそうだ。

 

 とはいえ、いくら王が命令を出していたとしても、外界の話題が一切入ってこないエルフの国において『聖女が処刑された』なんていうビッグニュースが止められるわけもなく。

 

 ———皇太子様は、王様によって謹慎中らしいぞ

 ———本当、なんてことをしてくれたんだろうな

 ———噂じゃ王族の地位剥奪もあり得るらしい

 ———それくらいして当たり前だろ、むしろ、ユターシャ様と同じように処刑されてしまえ

 

「(皇太子が失脚するのか……? いや、今回はそこまで調べ上げる必要もないか)」

 

 濡れ衣に濡れ衣を着せまくって、権力で無理矢理国民からの支持率が高い聖女を処刑したのだ。いくら一人息子の皇太子とは言え、そこまでの暴虐を賢王である現エルフ王が許すわけがない。

 

 エルフ王は聖女ユターシャを酷く溺愛していたらしいし、おそらく聖女ユターシャの名誉はすぐに復活するだろう。とはいえ、それで処刑したユターシャが戻ってくるわけがない。

 

 ———しかし、聖女様の死体はどこかに隠されているらしいぞ

 ———我々は聖女様に手を合わせることも出来ないのか

 ———噂では『甘き森』にバラバラにして捨てられたらしい

 

「(処刑方法については情報が出回ってない、か……流石に、馬鹿な皇太子でも闇の魔術での処刑は世間体が悪いと配慮したのか?)」

 

 森で出会ったあの悪魔が本物のユターシャだとすれば、おそらく焼印に使われた焼ごてだってどこかにあるはずなのだ。

 

 エルフの国の貨幣を店員に渡して、そっと店を出る。人間特有の匂いもすっかり隠し切っているために、誰にも怪しまれることはなかった。

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

「おなか、すいた」

 

 あの男に()()されてから、5日が過ぎていた。

 暗い洞窟の中、何度も何度も陽が登っては沈んでいくのをただただ見つめるばかり。洞窟の前を通っていく魔獣はこちらに目をくれることもなく、ただただ通過していく。あれだけ怖かったぎらつく牙がこちらに向かないのだけが、心の休まる瞬間だった。

 

 しかし、このままでは飢え死んでしまう。

 水を飲まなくても死なないし、食べ物を食べなくても死なないが、ただただ男の身体ばかりが夢の中に現れていた。

 

 とにかく、男を食べたい。

 身体が疼いて仕方なくて、下半身から涎がただただ溢れてくる。

 

 男が拘束した足枷は、私の力では解くことが出来なかった。魔術を使えば壊せるだろうけど、私には白魔術しか使うことが出来ないし、それをしたら身体が溶けてしまうのだ。

 

「おなか、すいたよぉ……」

 

 お腹が空いて、身体がガリガリに痩せているのがわかる。先日もらった()()の栄養は、焼け溶けた身体を治すのに使われていたのだ。

 

 ここまで極限状態になると、プライドすら投げ捨てていた。頭の中は男のことしか考えられないし、きっといま目の前に()()が現れたら、恥も外聞もなく襲いかかることだろう。またぐらに手を伸ばして、空腹を慰める様に指を掻き回す。

 

 男が言っていた日は、今日だったはずだ。

 

 足枷をつけてここから出ていった男。この危険な森の中を、その身だけで颯爽と歩いていった男。

 どうして私がこんな目に遭わなくてはならないのだろうかと、何度目にもなる涙が溢れてくる。あの男のことを考えるとあまりにも憎くて憎くて、そして美味しそうだと思ってしまうのだ。

 

 

 

 

 

「お前を殺すわけにはいかない」

 

 男は言っていた。

 彼の精を飲んだ私は、治りかけの身体を横にしながらもその言葉を聞いていた。

 

 目の前の男は、酷く美味しそうだった。

 だけど、聖女として———そしてかつて()()だったプライドで、襲いかかるような真似をしなかったのだ。

 

「だけど、オレはエルフの国に行かなくてはならない。お前を連れていくことはできない」

 

 そうして、いつのまにか足枷がつけられていた。

 

 その裏側には強化魔術の紋様が描かれていて、並大抵の力だと破壊することが出来ないというのがわかる。見た目はただの木の板だが、おそらくその硬さはダイヤモンドよりも硬いのだろう。

 

「もし、お前が嘘をついていた事が判明したら、ここで飢え死にさせる」

「嘘なんてっ……ついてないですよ!?」

「オレはそれを確かめに行くんだ」

 

 ———5日後までに、戻る。それまでせいぜい生きていろ。

 

 男はそう言い残して、結界をそのままにして出ていったのだ。そのおかげで私は安全に、この牢獄に繋がれていたのである。

 

 

 

 

 

 

 ……まだか。

 まだか、まだなのか? 

 

 日はとっくの昔に沈んでいた。魔獣が闊歩する時間で、森はいつもより静かな気がする。

 来るに違いない、と思いながらも裏切られていたらどうしようという疑心も出てくる。

 

 これじゃまるでセリヌンティウスだな、と思いながらも———オレは静かに目を瞑った。もう、なにも考えたくなかったのだ。

 

 そして

 

 そして

 

 そして

 

 

 

「うわっ……すげぇ甘い匂いだな……サキュバス淫香出し過ぎだろ」

「ッ!?」

 

 飛び起きる。外はまだ暗く、月が浮かんでいる。

 いつのまにか寝ていたのか、それとも目の前のこれは幻だったのか、目の前には私を拘束した男が心配そうにこちらを見つめていた。

 

 ……あぁ、美味しそう。

 それを見た瞬間、涎がまたぐらから止まらない。

 

「すまなかったな、聖女様。……足枷外すから、少し落ち着いてくれるか?」

「あぁぁぁっ、とどか、ないぃ……」

 

 私が彼に飛びかかろうとしても、足枷が邪魔でそこから先に進めない。男は私から距離を取って、出ていった時よりも多少増えた荷物を下ろしてこちらにゆっくりと近付いていた。

 

「ユターシャ」

「ッ……! はぁーっ……来て、おねがいします、おなか、すいたんですっ……」

「抱くから、だから落ち着いてくれ」

 

 抱く、と言われて空腹の子宮がずくんと疼いた。

 この身体になって、膣内(吸収器官)から飲んでいないのだ。数歩離れているこの距離でもオス臭い匂いを敏感に察知するサキュバス嗅覚のせいで、身体は勝手に昂ってしまう。

 

 男の臭いを吸い込むだけで、干からびた身体に生気が戻ってくる。下半身がひどく濡れているのがわかって、思わずそちらに手が伸びてしまう。1人の時にどれだけ自分を慰めただろうか。溢れ出る下品な涎は甘い匂いを発していて、この洞窟はもはやサキュバスの淫香で充満しているのだろう。

 

 あぁっ……♡

 ズボン越しに、ソレが、大きくなっている。

 

「そんなはしたないこと、聖女様がしたらいけないだろ?」

「はふぅーっ♡ ふぅーっ♡ぢ、○ぽぉっ……♡ くふーっ♡ はーっ♡」

 

 彼がゆっくりと近付いてくるのが、あまりにも焦ったくてもどかしい。私は必死に舌を伸ばして、その股間に視線を向けていた。この洞窟に入って、私に近付けば近付くほど大きくなっているのだ。

 

 あんなの、絶対美味しいに決まってるッ……♡

 

 わかるのだ、あそこに溜まっている()()がここ数日ずっと出されていないことが。今の私はサキュバスだから、あれがどれだけ熟成されて美味しくなっているのかがわかる。

 

「エルフの聖女も、サキュバスの飢えには耐えれないか……いや、すげぇなコレ」

「だ、だれがっ……だれがこんなふうに、したんですかぁっ……! あぁぁぁ焦らすなよぉ! 早く……ふーっ♡ ぢ○ぽ♡ 欲しいぃいい♡」

 

 男がこちらに近づきながら、服を一枚ずつ脱いでいく。

 私は、焦らされているのだろうか? 肌の露出が増えれば増えるほど、私はどんどん無様になっていく。目の前に餌を置かれて待てを命令されている犬だって、ここまで無様ではないだろう。

 

 こいつ、私を飢え死にさせかけた張本人なのに……うううう、す、好きになっちゃうっ……♡

 飢えて飢えて仕方がなくて、憎いはずの男が心の底から魅力的に見えてしまう。

 

「せ、せっくしゅ♡ したい♡ はーっ……はーっ……お、お、おめぐみをぉおお♡」

「あぁ、もちろんだ。腹減っただろ?」

 

 鼻先にオス臭ガチガチ様が、ボクサーパンツ越しに押し付けられたのだ。

 

 あ♡ 無理ぃッ♡

 

 そんなの、理性が吹っ飛ぶに決まってる。

 我慢できるわけもなく、男の下着に手をかけて脱がせようとするが……

 

「う、う、うぁぁぁあっ……んフーッ♡ はフゥーッ♡ ぢ、ぢ○ぽぉおっ♡」

 

 下着に手をかけた手は男に捉えられて、オレはプライドも捨てて下着に顔を埋めていた。必死になってボクサーパンツ越しに舌でそれを舐め回す。じわじわと先走り汁が溢れているのを、サキュバスの嗅覚は見逃さなかった。

 

「はふっ♡ ぢ○ぽっ♡ ううううっ♡ パンツうっま♡ 生チンくださいぃッ……♡」

 

 ベロベロと下着越しにそれを味わって、じゅんわりとたっぷりの唾液をそこに染みつかせていく。サキュバスの唾液も人間にとっては強力な媚薬だと、身体が理解しているのだ。

 

 それなのに、目の前の男は未だに平然としている。チ○ポバッキバキで先走り汁も出てるのに、顔だけは平然とこちらを見下ろしていてっ……

 

「必死過ぎだろ……いやぁ、すいませんねぇ聖女様。まだちっとやっていただきたいことがありまして……」

「な、なんですかっ……なんでもするからっ、は、はやくぅっ……チ○ポっ……♡」

 

 そうして男が差し出したのは、1枚の紙っぺらとペンだった。ただ名前を書くところだけがあって、その上の方には魔術紋様で縁取りされている『契約書』のタイトルが。

 

 かつて聖女教育の時に畳み込まれた魔術知識から、その紙にかけられている魔術がどういうものなのかがわかる。

 つまり、()()()()()()の契約書というわけだ。

 

「ここにひとつ、サインをいただきたい」

「あ、あぁぁあっ……そんな、の……」

 

 男は生の肉を取り出した。

 目の前に、それがある。

 

「ハメたいなら、契約書にサインを」

「ううぅ、ぐすっ……フゥーッ……♡ ち、ち○ぽぉおっ♡ ち○ぽ♡ チ○ポっほしいぃいい……♡」

 

 非力な身体を動かしてそれにむしゃぶりつこうとするけれど、どうしても栄養不足でもとから非力だった私に男の拘束は解けない。手首を抑え込められていて、鼻先にチ○ポがあるのに届かなかった。

 オレは半泣きで、男を見上げる。

 

「エルフの国で()()()売っててな、なに、ただサインするだけで腹いっぱいになるんだから安いだろ?」

「で、でもっ……」

 

 これ、サインしたらダメな奴じゃん。

 オレは知ってるんだ。白紙契約なんて違法中の違法だし、サインしたらきっと人生終わる。エルフの聖女から奴隷サキュバスへ転落人生まっしぐらだろう。

 

 でも……

 

 

 

 

 

「よし、サインありがとなぁ? まぁアンタは聖女だっていうし、悪いようにはしないさ。んじゃ、遠慮なく……」

「はーっ♡ はーっ♡ やった♡ やっときた♡ ああああああ」

 

 

 

 

 オレは、誘惑に勝てなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 



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-処女+マゾメス体質 ☆

書いてる順番が1〜6→3→7です。
なので、今回の3話は少しだけ2話と路線が違うかもしれないです。作者が6話まで書いた後にこのエロ回を追加で入れたこと、片隅に覚えていてください。


「あぁ、やっと、やっとちんぽきたっ……!」

 

 そうさせているのは自分だというのに、「可哀想だ」というのが感想だった。だってそれを言ってるのはあの『聖女ユターシャ』なのだから。

 ここ数日間で、彼女の威光は嫌というほど聞いてきた。彼女がどれほど素晴らしいエルフなのかを聞き、そしてそんな彼女が処刑されたということで国民全員が悲しんでいたことをこの目で見てきたのだ。

 美しくて賢くて清らかな、エルフ国の『降り立つ繁栄』。貞淑であり純潔だった処女は本来であれば国に捧げられるもので、その身体はオレ如きが味わえるようなものではなかったはずなのに。

 

 エルフの国第一聖女が、人間如きの、チンポに縋っている。

 思わず肌が粟立つ。いけない欲が、ぞわりと顔を見せてしまう。

 

「フーッ♡ フーッ♡ い、いますぐ、犯して、くださいッ……♡」

 

 なおも下半身に媚びる聖女サマに、オレはそっと頭を撫でた。真っ赤に濡れた舌が柔らかそうで、彼女の目はうっとりと溶け出している。今すぐにでも犯してもらえると思っているだろうその顔に嗜虐心がくすぐられるのは、彼女がサキュバスだからだろうか? それとも、これがオレの性癖なのだろうか? 

 

 たまらずに笑うと、彼女は心底嬉しそうに目を細めた。興奮しきっている怒張を、今すぐ『自分』で処理してもらえると思っているのだろう。

 だからオレは———

 

「待・て」

「えっ……ひっ、な、なんで……?」

 

 犬に命令するように、オレは彼女に優しく言い放つ。彼女の期待しきった顔を裏切るのは、なんともいい気分であった。

 

 せっかくなら()()()()()と、そう思ったのだ。

 

「なぁ、濃いの、欲しいよなァ?」

 

 きっと、今の自分は悪魔よりも悪魔のような顔をしているのだろう。鏡を見なくても、凶悪な表情をしている自覚があった。

 

 洞窟の中は酷く甘ったるい匂いが充満している。

 サキュバスにとって最上級に美味しいザーメンを絞りとるために、オスの性欲を昂らせようとする催淫香。気発している高濃度の毒はオレの身体にすっかりまわっていて、毒には耐性があるはずなのに脳味噌がそちらに支配されかけていた。

 

 彼女のためを思うなら、すぐに栄養補給と称して優しく愛してやればいいだけなのだ。エルフ国の聖女サマの信頼を勝ち取るべきだし、それが正解だと頭ではわかっている。

 

 なのに、いままでなかったはずのサディスト的思考が湧き出てきて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という感情に支配されかけていた。

 セックスなんて楽しむものじゃない、ただの処理のはずなのだ。なのに、そんなふうに楽しもうと考えるオレを止めることができない。

 

「たっぷり煮詰まったザーメンが欲しいんだよなァ? どこに出してもらいたい? お清楚な聖女サマはオネダリ出来ますかねェ?」

「こ、濃いの……欲しいですっ……おまんこにっ……」

 

 オレの気まぐれに振り回されて、必死に媚を売る女に心が掻き立てられる。嗜虐心をくすぐられるその表情に、下半身がずくずくと疼く。

 それがこのサキュバス独自の特性(スキル)であると知るのは後の話だが、今のオレにはただこの身体を好きにいじめ抜きたいという考えしか残っていなかった。

 

 人間が食欲を満たすときに料理をして味をつけるのと同様。より濃く、より栄養価の高いモノを搾り取るために一部のサキュバスには『興奮をもっと昂らせる』催淫効果があるらしい。

 彼女の性質は『被虐体質(マゾメス)』。濃厚に溜め込んだザーメンを全部自分で解消してもらうために、オレに自分を組み伏せてもらうために、わざと嗜虐的な趣向を掻き立てさせる毒を自己意思とは無関係に撒き散らしてしまうのだ。一度でも毒を喰らえば最後、この肉体のあまりの気持ちよさから二度と離れられなくなる洗脳毒である。

 

 ただ性欲が満たされるだけではない。獣ならば誰しもが持ち合わせる『支配欲』や『征服欲』を掻き立てられて、それが満たされるのだ。

 

「おまんこにぃっ……おちんぽ、ハメて、欲しいんですっ……♡ どうか、ザーメンを恵んでっ……♡」

 

 今の彼女は特に()()()いる。

 よりオスを喰らおうと必死になっている肉体は、遠慮なしに高濃度の媚薬毒を撒き散らしていた。まんまと罠にかかってしまったオレは、欲望のままに自身の激情をさらに昂らせようと彼女の唇を指でなぞる。

 

 ———この極上の女で、楽しみたい。

 

「……咥えろよ」

「ぁ、あ……っはい♡」

 

 んぁ、と口を開けたその中がとろとろで淫靡に光っていて、思わず喉を鳴らしてしまう。サキュバスの唾液なんて毒だというのに、それが溜まりに溜まった柔らかな口肉の壺に今からいきりたったチンポを埋めるだなんて……なんて贅沢だろうか

 

 舌が勃起を出迎えてきて、先端にぴとりとあたる。それから、ゆっくりゆっくりとおもむろにチンポが口の中に沈んでいき———

 

「……んぷっ、んっ♡」

「おぉっ……!」

 

 そこは、チンポを気持ちよくさせるためだけにある極上の口膣性器(おまんこ)だった。アッツアツのとろとろで、口の中の柔らかな肉がねっとりと竿全体に絡みついてきている。ほお肉も、口蓋も、何もかもがチンポにへばりついているのだ。

 どうせはじめてのフェラなんだから大したことないだろう、なんて甘く見ていたオレは少しばかり後悔するほどだった。

 

 当たり前だが、サキュバスというのはその体の全てが人間のオスから精液を搾り取るためだけにある。人間と同じような口に見えて、その内部構造はチンポを喜ばせるためにしか作られていない。

 ライオンの爪が獲物を仕留めるために鋭いのと同じように、サキュバスの口はオスのチンポを射精に導くために極上のまんこのような構造をしていた。

 

 そうして、その地獄のような天国の柔らかい口内に、根元までぬぅっぷりと飲み込まれていく。数日も射精しておらず溜まっていて、性的興奮を助長させる媚薬毒が身体に回っているオレは、口にいれただけでイきそうになるのを必死に堪えて彼女の角を掴んでいた。

 

「ハッ……ハッ……ぐぅっ……あー、やっべぇっ……クソ……!」

 

 もう今の時点で限界だというのに、オレはまだ耐えようとしていた。もっともっと楽しみたくて、腹に力を込めて女を睨みつける。そしてオレ以上に『限界』で発情しきったメスは、泣きそうな顔でオレを見上げていた。

 

 なんでこんなにイきそうなのに、挿れてくれないんですか? と、なんとも恨みがましい目だ。助けを求めているようなそれは、ゾクゾクと背筋に興奮を与えてくる。

 

「……ふーッ、動けよっ……口にいれて終わりなんて、そんな事ないよな?」

「〜〜〜っ♡ ん、んぷっ、ぁ、んふぅっ♡」

 

 そうして、彼女はゆっくりと頭を動かし始めた。

 

 じゅるるるっ……♡ ぬちゅっ……♡ ちゅぱぁぁっ……♡

 

「ッあ"〜、うまそうにチンポしゃぶりやがってぇっ……!」

「んぢゅぅ♡ は、はい♡ おいひぃれすっ♡」

 

 絶対に、絶対にイってやるものかと気を奮い立たせるが、彼女のフェラテクはとても凄かった。

 亀頭を舐め回されながらも竿全体がバキュームされて、その次の瞬間にはねっとりとした口内の膣肉で肉棒が全て埋められる。ぬぷぷぷと音を立てながら口から引き抜かれたそれはたっぷりのサキュバス唾液をまとわりつかせていて、また舌が亀頭を舐めまわしていて……

 

 思わずイきそうになるが、イくわけにはいかない。こんなので、こんなところで射精してやるものか。報いねばっ……! 

 

「聖女サマのクセにッ……こんなフェラテクッ、くそ、うますぎるだろっ……!」

「んふぅー♡ じょ、じょうずですかっ? よかった……♡」

 

 彼女が小さく「100年前はついてたしな」なんて言った言葉は聞こえずに、オレはその絡みつく舌技を堪能する。オレの前でしゃがんでチンポを前に頭を前後させている美女を見下ろして、その頭を優しく撫でた。

 

 じゅぷっ♡ じゅろろ♡ じゅぽぽぽっ♡

 みっともないひょっとこ顔を晒して、オレの顔色を伺いながらも卑猥な音を立てて頭を動かしているのだ。

 

「はっ……ヤッベェな……ぐっ……」

 

 オレの独り言を聞いて、彼女は嬉しそうに目を細めながらもさらに舌をねっとりと動かした。そのねちっこい動きは精子を出すためではなく作り出すためのもので、オレの下半身はぐっつぐつに煮え立つ。

 

「ああぁっ……んぷっ♡ んっ♡ ちんぽうま♡ オス臭くってぇ♡ ぁあっ♡ んちゅっ♡」

「もっとお上品にしゃぶれよ、聖女の風上にもおけないクソ下品なフェラやめろ……ッ」

 

 夢中になってチンポにしゃぶりついているのが、まさか聖女とは誰が思うだろうか。せっかくの美貌だというのに、口を窄めて唾液を吹きこぼしながらも陰毛を口元につけている様はなんとも下卑た欲を刺激させるものであった。

 

 じゅるっ♡ じゅぞぞぞぞぞっ♡ ぬちゃあ……♡

 

「ふーっ♡ フーッ♡ あぁ、にがぁいお汁でてきたっ♡ 先走り汁しゅき♡ おいひ♡」

 

 音を立てながらチン先を柔らかい唇で吸い付かれる。今までキスもしたことがなかったであろうその唇は赤く色付いていて、唾液にてらてらと濡れていた。水音は()()に聞こえて、オレは夢中でフェラに感じ入っていたが……

 

 ぐぢゅっ♡ くちゅ、くちゅぐちゅっ♡

 

「ちんぽっ♡ ちんぽしゅきぃ♡ えれえれえれっ……♡ んふーっ♡」

「ん……? あ? なにしてんだ?」

 

 そうしてオレは、ふと彼女の手が使われていないことに気がつく。

 

 洞窟に響くのは、下品なフェラのリップ音だけじゃないのだ。他の水音も聞こえると思い彼女の手元を見ると、仁王立ちになってしゃぶらせているオレの足元で彼女は自身のメス穴を指で掻き回しているようだった。

 

 ずちゅっ♡ ぐちゅぐちゅぐちゅっ♡ ちゅぶっちゅぶっちゅぶっ♡

 

 物足りないのか媚びるように腰を振りながらも必死に指を折り曲げているようで、いやらしい音はチンポをしゃぶる口膣からだけではなくそちらからも聞こえているのだ。

 彼女を立って見下ろしているオレの位置では直接そこをいじくりまわしているところが見えないものの、彼女が自身の手を股間で動かしていることは見えている。なにをしているのかはバレバレだ。

 なんてハレンチな女なのだろうか。モラル的ロックの欠如が著しいし、さらにそれで気持ちよくなっているだなんて言語道断だ。

 

「っなぁ……何してんだ? あ? 今からハメてもらえる穴なに勝手にいじくりまわしてんだよ」

「フーッ♡ フーッ♡ じ、自慰ですぅっ……♡ お、おちんぽの♡ お汁舐めてたらぁ♡ 我慢できなくてっ♡ ご、ごめんなさいぃっ……♡」

「ハァ? お前……ありえねぇだろ……乞食サキュバスもそこまであさましくはないぞ」

 

 女の手を足で軽く払うと、ろくな抵抗もできずに彼女の手は肉壺から引き抜かれてオレが見える場所に来る。その指2本はべったりと愛液を滴らせていて、ぬるんぬるんのそれは今まで浅ましくいやらしいメス壺をほじくりまわしていたのだろう。

 

 人のチンポをしゃぶりオカズにしながらオナニーするだなんて浅ましくてお下品で軽蔑するし、それが数日前まではエルフの国の聖女だったのだから感慨もひとしおだ。

 

 オレは責めるように、彼女の口からチンポを引き抜く。

 後を追って名残惜しそうに唾液でビッタビタのチンポを見つめながらも、彼女は我慢できないとばかりに腰を小さく振っていた。

 

「人様のチンポをオカズにするオナニーは気持ちいいかよォ? みっともないと思わねぇの? いくら淫魔とはいえやって良いことと悪いことがあるんだぞ?」

「えっ……ぁ……♡」

 

 彼女は泣きそうな顔で、恍惚そうにも唇を歪めながら舌を怒張に這わせようとする。ぴろぴろと長い舌がチンポに当たりそうで当たらずに、その必死さに感心を通り越して呆れすら感じてしまった。

 

「ああああ……ご、ごめんなさいっ……だって、お腹が空いて、仕方がないんですっ……身体が発情して、セックスすることしか考えられなくってぇ……♡ 目の前におチンポがあって♡ おまんこ疼いて♡ 我慢できないんれしゅっ……♡ ごめんなさいっ、謝るから、ちんぽっ……♡」

 

 彼女は空腹(性欲)を紛らわせるために自身を慰めているのだろう。本当なら人前でそんな無様で惨めな事したくないだろうに、なんとも哀れなものだ。

 空腹が人を狂わせるのと同様に、飢餓に襲われた淫魔は極度の性的興奮に翻弄されてしまうのだろう。元は聖女だと思えないほどの痴態は、それだけ彼女が追い詰められていることを証明している。

 

 柔らかですべすべなはずの肌は、どこか輝きが失われていた。その悲壮さは余計に「自分が求められている」という支配感を掻き立ててくる。

 美しいのに可哀想で惨めで、そんな彼女を助けて(愛して)あげられるのは自分だけなのだ。

 

 オレが、この女を支配している。

 

「ぅ、ううう……おちんぽっ、欲しいんですぅ……♡ しちゃいけないってわかってても、どうしてももうおちんぽ前にしたら♡ おまんこしたくて♡ 我慢できないんです♡ ごめんなさいっ♡ ちんぽ恵んでくださいぃっ♡」

 

 この女が唯一救われる方法は、惨めにもこのオレにおべっかをかいて媚を売りザーメンを恵んでもらう他ない。

 彼女は精一杯謝罪と屈服を示すかのように、地べたに手をつけて頭をつけた。全裸で、土下座をしながらも泣きそうな顔でこちらを見上げている。

 

 興奮しきった顔だ。そんなにも屈辱的な行為を自らやって、まさか興奮しているというのか? 

 

「許してくださいぃっ……もう、もう全部あげますからっ♡ 命令には絶対服従しますッ♡ なんでもします♡ だから、私を、これ以上惨めにさせないでくださいよぉおっ……♡」

 

 この極上の女を好き放題できるという、王様にでもなったような居心地の良さ。

 ———なんて気分がいいのだろうか。

 

「ハメて欲しいんだよな?」

「はい……っ! もう二度とおちんぽオカズにオナニーしませんからっ♡ 私におちんぽをどうか、ほどこして、くださいぃっ……♡」

 

 自分の顔が笑みに歪むのがわかった。怒張はいますぐこの女を蹂躙したいと熱を持っていて、脳味噌は彼女を犯す事しか頭にない。支配欲が満たされて、征服欲でいっぱいになる。

 

 だって、コイツ、聖女だったんだぜ? 

 チンポ欲しさに土下座してる女は、エルフの聖女サマだったお方だ。

 

「アッハァ……♡ いいぜ、かわいいなぁ……♡」

 

 身体を雑に押し倒す。

 

 キャン、と小さく鳴いた彼女は硬い地面に転がされながらも、犯してもらえると期待してムンワリと濡れそぼったおまんこをこちらに向けてふとももを左右に開いた。両手の指でそこを開いて、処女と聞いて呆れるほどに色狂いの顔をしてチンポを見つめている。ハッハッ、と犬のように浅く呼吸をしていて、その肉壺からは地面に滴り落ちるほどの愛液がだらだらと溢れていた。

 

 なんて貞淑のない下品な女だ。聖女サマが聞いて呆れる。

 

「はっ、はっ、あ、ちんぽっ♡ おちんぽぉっ♡」

 

 サキュバスの初物なんて、どんなに金を積んだって誰もが味わえるものじゃないだろう。オレはその穴に、ゆっくりと自身の肉棒をあてがう。オレだけを見上げている期待に満ちた聖女サマの視線とカチあって、何かが胸に込み上げてきた。

 

「き、きてくだしゃいっ……♡ お情けをっ、はやく♡ はやくぅっ……♡」

「んじゃあ……い、ただき、まぁっ……」

 

 彼女の太ももを押さえ込みながら、一気に腰を突き出した。ぬるぬるに濡れそぼっているその穴は嫌な抵抗感もなく、しかしきゅんきゅんと肉棒を締め付けてくる圧迫感がとにかく激しい。先に進めば進むほどチンポが柔らかくも容赦のない膣肉に包み込まれていくのだ。

 肉の粒がひしめきあっているようで、竿全体がにゅるんと絡め取られている。それがねっとり濃厚マン汁ローションでコーティングされていて、肉襞がうねればうねるほどチンポに刺激が走り抜けていくのだ。

 

 サキュバスとはじめてセックスしたけど……こんなの、もう他の女抱けなくなってしまう。意味のわからない膣内構造は、縦横無尽に膣肉がひしめき蠢いていた。

 

「い"ッ〜〜〜ぎなりぃっ♡ おぐまでぇっ♡ あ"ぁんっ♡」

「ッぐうぅっ……あ"〜〜〜……ッ? や、ッべ……」

 

 根元までずっぽりと埋まったところを見下ろす。彼女の無毛で真っ白な、なんの穢れも知らなかったおまんこは大きく具を開いてオスを受け入れていた。ピンク色の柔らかな膣肉は愛液に塗れて洞窟の薄暗い光を反射していて、ヒクヒクと反応を返している。

 

 聖女サマもどうやら気持ちがいいようで、目をぎゅっと閉じて感じ入っている。呼吸にあわせてでかい乳がたぷたぷと揺れ動き、彼女の足がオレの腰に絡みついてくる。未だに足に繋がれた鎖がじゃらりと音を立てていた。

 

 少しでも慣れようと腰を動かさないようにするものの、中がずっと蠢いているがために今すぐにでも射精しそうになる。だが、この極上の肉穴を堪能するためにはゆっくりと腰を引いていき……

 

「あ、あ、あ、っ♡ ぬけちゃ♡ だめっ♡ ぁあっ♡」

「抜かね、ぇよっ……」

 

 ばっ……ちゅんっ♡

 

 腰を強く打ちつける。ヌルヌルでぴっとりと締まっているそこは、ピストンに合わせてギュンっと収縮した。柔らかいゾリゾリの肉ヒダが、チンポにまとわりついてくるのに頭がくらくらしてしまう。限界は目の前に来ているはずなのに、この身体をもっと堪能して味わい尽くしたいと思って。もう一度腰を引き、そして深くまで肉竿を突き立てる。

 

 ばっ……ちゅんっ♡ ばちゅっ♡ ずこっ♡ ずこっ♡

 

「ヒぃっ♡ ピストンきたぁっ♡ あ"っ♡ あんっ♡ やばぁっ♡ こんにゃっ♡ あふっ♡」

「う"ぅ〜〜〜……クソがッ、はっ、ぅぐっ……!」

 

 耐えろ、耐えろ、まだだ、まだ出したくないッ……! 

 オレは地獄のような……そして天国でもある膣内に、自身の怒張を何度も何度も出し入れを繰り返す。太ももを掴む指はいつのまにか手加減を忘れて強く握りしめてしまっていて、ガツガツと一心不乱に、我を忘れて腰を打ちつけていく。

 

 手加減もなにもない、本気でチンポを搾り取りに来ているサキュバスマンコ。オレは呼吸をひたすら繰り返して、ただただ怒りをもって腰を打ち付けるだけである。オレに絡みついているしなやかで柔らかな足が、ぎゅっと力強く離さないと言わんばかりに抱きついてきた。

 

「ア"っ♡ しゅごっ♡ ちんぽっ♡ おぐっ♡ つかれてッ♡ も、イぐっ♡ あぐめっ♡ アクメしゅるっ♡ ぉっ、あっ、あっ♡」

 

 彼女の腕がオレの首に巻きつく。そうして、気がついたら彼女に唇を奪われていた。

 

「んフーッ♡ んフーッ♡ ぎぼぢぃよぉっ♡ ちんぽっ♡ あ"はっ♡ もっとぉっ♡ ぱんぱんっ♡ してよぉっ♡」

「〜〜〜〜……ッ! こんの、聖女サマがよぉっ……」

 

 オレからも彼女の唇を奪っていく。舌を無理やりねじ込んで口膣を蹂躙していけば、それに応えるように彼女が舌を絡ませてくるのだ。

 呼吸が混じり、暗い洞窟の中でオレ達は夢中になって互いの肉体を貪り合っていた。彼女の顔を押さえ込み、動かないように固定して舌を絡ませながらも好き放題に腰を打ちつけていく。唾液の媚薬と愛液の媚薬、それらに浸され切ったオレはただただヤるためのケダモノと化していた。

 

「ぐぅう……っ! 壊れるッ……気持ち良すぎんだろふざけやがってッ……!」

「あ"〜〜〜〜〜っ♡ おぢんぽぉ♡ きもひーれしゅう♡ イっでぇ♡ おねがいひましゅ♡ 中出ししてぇっ♡」

 

 がちゅっ、ばちゅっ♡ ぱんぱんぱんぱんっ♡

 

 積極的にキスをされて、足を絡まされて、まるで恋人のようなセックスなのかと勘違いしそうになる。ただ違うのは、オレが容赦なく彼女を抱いていることであり、それに対して聖女サマは甘ったるい声をあげているのだ。

 極上の女をこんなふうに抱けるなんて、あまりにもオレには過ぎた贅沢だった。彼女の身体は甘くて、こんな味を覚えたら二度と他の女を抱けなくなってしまうだろう。

 

 ……あぁ、嫌になる。

 

「出す、ぞっ……? 中出しするからなァ? 聖女サマの初まんこにッ、中出しッ」

「ぁア"っ♡ イぎましゅっ♡ あぐめっ♡ だしてっ♡ 一緒に、ぃっ♡」

 

 そうして、彼女は身体を強張らせた。その瞬間に膣内は脈動して、一気に中が締め付けられる。思わず下半身が持っていかれて、オレはそれに合わせてザーメンを吐き出していた。

 

 視界が真っ白に溶けて、途端に思考することができなくなる。

 これほどまでに溜め込んでいたザーメンを一気に吐き出すのは気持ちよかった。煮凝りのように濃く、塊になったザーメンをびゅくびゅくと彼女のまんこに出していく。ふとその表情を見れば、恍惚とした笑顔でアクメの余韻に身体を震わせていた。

 

 どくっ、びゅっ……ずるっ……♡

 

「はーっ、はーっ……ユターシャ」

 

 こんなに熱く女を抱いたのは、果たしていつぶりだろうか。

 

 地面にバラバラと広がる金色の髪が美しく輝いていた。汗ばんだ身体がしっとりと艶かしくて、そして先ほどよりも美貌に輝きが増していることに気がつく。

()()()()()したからだろうか。腹のあたりから目に見えて血色のいい肌艶に変わっていくユターシャ。小さな怪我や足首にできていたアザも消えて、先ほどまでのどこか幸薄そうな気配は輝かんばかりの堂々としたオーラに変わっていた。

 

 まるで一国のお姫様と言われても納得できるほどの存在感は、彼女本来の在り方なのだろう。サキュバスでの生命力とも言えるザーメンを摂取したことで取り戻したのか、()()が漲っている。

 先ほどまで餓死寸前だったというのに、たった1発のセックスで瞬時にこれほどまで回復するだなんて……恐ろしい生き物だな、本当に。

 

「ぁ……♡ ざーめん、なかぁっ……♡」

「あぁ、うまいか?」

「おいしぃ、ですぅっ……♡」

 

 彼女はオレの吐き出したザーメンを腹の上から愛おしそうに撫でていた。汗ばんだ身体は情事の後としてむんわりと色気が匂い立っている。

 

 オレは精を吐き出したモノを引き抜いた。まだまだヤれると言わんばかりに復活しようとしているそれは、サキュバスのマン汁ローションがたっぷりとまとわりついている。

 全部出し切ったはずだ。なのに、何故か呼吸をするたびに下半身がずくりと疼き始めてしまう。これもきっと毒のせいなのだろうと、洞窟内に充満した彼女の淫香を吸い込んだ。

 

「ユターシャ」

 

 絶頂を享受して、身体をひくひくと痙攣させている彼女の足枷を外す。がしゃん、と木の枷が地面に落ちて、それから彼女の頭の方にオレは近づいた。

 

 仰向けになったところの、その口にチンポを差し出して。

 

「……あ、す、すいません……いま拭きます、ね?」

「しゃぶれよ」

 

 察しの悪いやつだな、と思って再度その唇に先端を押し当てる。出したばかりなのに媚薬のおかげでもう回復しているそれは硬度を持ち始めて、彼女の唇の中に再度入れると喜んでピクピクと動いていた。

 

 いいんですか? と驚きながらもすぐに口を開いた彼女は、自身の体液に塗れたそれを丹念に舐めとってくれる。やはり舌が長いからか、細部まで這いずり回るようなベロフェラは気持ちがよかった。唾液にも含まれている媚薬毒が、再度ゆっくりと浸透していく。

 

「はぁっ……ユターシャ、もっと欲しい、よな?」

「ほ、ほひぃっ♡ ほしいれすっ♡ いいんですか? ほんとに? や、やさしいっ♡」

 

 なにがやさしいものか。

 本当に優しかったらこんなにも酷いことはしないだろうに……と思いつつも、まぁそれも「仕方がないことだ」と憐んでしまう。

 餓死というかなり最悪な方法で死にかけて、まともな思考回路すら持てない状態だったのだから、そんなふうに勘違いしてしまっても無理はない。一種の洗脳であり、そう思い込ませたのはオレなのだ。

 

 好都合なことだと優しく頭を撫でてやる。まるで犬のように手に頭を擦り付けてくるユターシャは、恋人を相手にしているかのように愛おしげにオレのモノを舐めしゃぶっていた。

 

「んちゅっ♡ ど、どうれす? わたし、うまくできてますかっ?」

「ふーっ……あぁ、上手だよ」

 

 指で輪を作った彼女は、それで竿を扱きながらも先端を口に含んでぢゅばぢゅばと音を立てて舐め回してくる。オレの腰に手を回し、足には尻尾を回して目線を合わせながらも本気フェラチオをしてくるのだ。

 

 ……やばいな、さっき出したっていうのにもうイきたくなってきちまう……♡

 

「本当に上手だッ……くぅ、絞るなよっ……」

「あっ……♡ ご、ごめんなさいっ……♡ おちんぽがあまりにも魅力的でついっ……お、おまんこでハメてくださいませんかぁ……?」

 

 なんてわがままな自己主張だろうか。だが、そんなはしたないおねだりがオレの股間を熱くたぎらせるのだ。聖女サマも、どう言えばオスを興奮させられるのかわかっているのだろう。

 

 まったく、どうしてこの聖女様はこんな言葉ばっかり知っているのだろうか……? 

 

「あっ、カウパーでてるっ♡ んちゅっ♡ もったいないっ♡」

「くっ……そお下品すぎるだろッ……♡」

 

 じゅっ♡ じゅるるるるっ♡ ぴちゃっ♡ ぺろぺろぺろっ♡ じゅるるっ♡

 

 なんという奉仕精神だろうか。なんてチンポに甘くて優しい聖女サマなのだろうか。オレがこれだけ酷いことをしているのにこんなに優しくしてくれるだなんて、おかしくなってしまいそうだ。

 

 この女にこれ以上口でおもてなしをさせていたらまたすぐに射精させられると思い、オレはゆっくりと口から竿を引き抜いた。チン先と唇に唾液の糸がつながり、ツウとあかりに照らされている。

 

「フーッ……ケツこっち向けろよ、ハメてやっからさァ」

「あ、あああっ……♡ そんな、ありがとうございますっ……♡ ど、どうぞっ♡ おまんこですっ……♡」

 

 すぐさま四つん這いになって尻をこちらに高く突き出したユターシャ。再度両手でマン肉を広げて、テラテラと濡れているそこをこちらに見せつけるかのように向けている。

 尻尾はゆらゆらと揺れて、尻尾もパタパタと動いていた。聖女サマのアナルもまた綺麗な色をしていて、きゅっと蕾んでいてかわいらしい。

 

 オレは彼女の膣肉にあてがうと、先ほどと同じようにそこに怒張を沈めていった。にゅぷ、にゅぷと挿入ただけで溶けそうになる肉壺は、やっぱり容赦なくオレを締め付けてくる。

 

「あぁぁあ……っ♡ キたっ♡ おちんぽぉっ♡ 生ッ♡ はぁっ……♡」

 

 オレは彼女の腰を掴んで引き寄せた。膣肉を蹂躙するかのように力任せに腰を叩きつけて、中の具合を味わう。柔らかくもゾリゾリとしたヒダがとにかく蠕動して、圧搾してきているのだ。動かずして射精に導こうとする悪辣極まりないサキュバスまんこ。オスを殺すことに特化しすぎている極悪非道の肉壺である。

 

「ぐっ……ッべぇな、これ……一度イってるのに、くそっ……」

「ふぅ"〜〜〜〜ッ♡ はーっ♡ ぉほっ♡ チンポ♡ 」

 

 ぐちゅ、ぐちゅ、と腰を押し付けると卑猥な水音が響く。彼女の背中はとても綺麗で、その腰より少し上あたりから伸びた黒い蝙蝠のような羽と、尻たぶの間から伸びる黒い尻尾は、白い肌にはとても美しく見えた。

 

 肩も腰も細く華奢で、そのくせ乳肉は生意気にも大きく尻にも柔らかな肉をたっぷりと乗せている女。そんな極上の女を四つん這いにさせて、背後から突き犯しているのだ。

 とてもお上品とは言えないエロい嬌声で叫びながらも、ハメられているチンポを味わうスケベな元聖女サマ。オスとしての本能を掻き立てられる、いじらしくもふてぶてしい甘い鳴き声が下半身を熱く煮えさせる。

 

「クッソエロいなぁ……チンポハメてるだけなのにそんなに気持ちいいのか? かわいいから奥の方を重点的に小突いてあげような♡ 弱点だろ?」

「ヒッ、あ、ああぁ……♡ 弱点ッ? ♡ んっ、おおぉっ♡ あ"〜〜〜〜っ♡」

 

 ぐりぐりぐり、と奥をねじ込むように子宮口あたりを押すと、彼女は聖女とは思えないド淫乱嬌声をあげながらもまんこを締め付ける。

 ぷにっぷにで、まるで亀頭にキスを落としてくるかのような柔らか子宮口。オレのザーメンが出るトコロにチュッチュと吸い付いてきているそれを押し込むと、ユターシャは身体をのけぞらせていた。

 

「ふぅ"〜〜〜ッ♡ おふっ、ゃ、ぁ、あっ♡」

「くっ……そ、締まるな。やっぱりポルチオゆっくり刺激されるの好きなんだな……? あ、勝手にイくなよ?」

「イきっ……えっ……ま、まってぇ♡ まぁ"っ♡ おっ♡ おおおおっ♡」

 

 サキュバスとしてセックスに特化しすぎた肉体は、あまりにも快楽に従順である。オスを昂らせるために簡単にアクメを迎えるいやらしい肉体は、弱点を重点的に虐められるだけで悲鳴をあげていた。

 

 だが、オレは彼女に「イくな」と言ったのだ。

 オレのご機嫌を損なわないようにと、必死になってサキュバスの摂理に逆らい快感をなんとか逃がそうとしているユターシャ。膣肉は気持ちよさと比例するようにチンポにむしゃぶりついており、彼女のアクメが近いことを如実に伝えてきている。

 

「お"ぉ〜〜〜〜〜ッ♡ ぐりぐりぃっ♡ ポルチオ責めぇ♡ だめでしゅっ♡ あ"くめしちゃうのでッ♡」

「〜〜〜っ♡ イくんじゃねぇよっ♡ がんばれ♡ オレも耐えるからな、くっ……!」

 

 ぐりっ、ぐっ♡ ずぢゅ〜〜〜っ♡ ぐっ♡ ぐちゅっ♡

 弱点箇所を重点的にねちっこくチンポで刺激して、健気にも耐えようと努力しているユターシャの身体は徐々にアクメに近づいてきている。

 

「あ"っ♡ ぉおおっ♡ ちんぽきもぢぃっ♡ イぎっ♡」

 

 優しく優しく、それでもユターシャから聞こえる余裕のない喘ぎ声を無視して奥の方を耕すように虐め抜いていく。そうすることで肉竿に絡みつく膣肉は何度もうねりを繰り返し、狭くてヌルヌルな穴の中でオレのチンポを這い回るかのように肉ヒダが脈動していて……

 

「ぁ〜〜〜……ッ♡ イぐっ♡ こんなっ♡ イっぢゃうぅぅっ♡ やだぁっ♡ おま"んこっ♡ 弱点ねっとりぃ♡ ぉ"おおおおっ♡」

「お"いッ! イくなやっ……イくんじゃねぇぞ? フーッ……いまアクメされたら、ヤベぇんだって……!」

「無ぅ、理っ♡」

 

 ぐりぃっ♡ ぐっぐっぐっ♡ ぬちゅぅ〜〜〜っ♡

 そうして、ついに彼女は体を曲げて絶頂を迎えた。

 ぶしゃ、と潮が吹き散らかされて、四つん這いの彼女は上半身を地面にくっつけながらも羽根を痙攣させている。膣内は収縮して、ゾリゾリツブツブのおまんこがぎゅうとオレの肉竿をバキュームするかのように締め付けてきていた。

 

 イくなって言ったのに……勝手にイってこんなふうにチンポ締め付けるだなんて、あまりにも厚顔無恥が過ぎる。ありえねぇ……

 

「ぉ、お"お〜〜〜〜っ♡ んひゅっ、はひゅっ♡」

「ぐ、くっ……フーッ、本気で射精に導こうとまんこ締め付けやがって……ゆるさねぇぞ、許さないからなァ……ッ」

 

 本気射精を促してくる柔らかくて極上の膣肉から歯を食いしばって耐えて、オレは彼女のだらしなくアクメを迎えたケツを優しくペチンと叩いた。柔らかく白いもっちり肉が震えて、それによって再度チンポを包むおまんこがきゅんと狭まってしまう。

 

「おぴぃっ!? や、やぁあっ……♡ あ"♡ たたか、ないでぇっ♡」

「はーっ……はーっ……オレはイくなって言ったよな? おい、なに勝手にイってんだよっ……?」

「しゅ、すいませんっ……♡ 奥を小突かれてっ♡ 弱点だったものでっ♡ 思わず、ポルチオイきしてしまい……♡」

 

 まるで被害者かのような言い分に腹が立ち、オレはもう一度彼女のブリュンと柔らかな尻を叩いた。後ろからチンポをハメながらケツを叩く支配感がなんとも心地いい。

 

「ひィんっ♡ ご、ごめんなさいっ♡ あンっ♡ ぅう〜〜〜……ッ♡」

「そう簡単にアクメするだなんて聖女が聞いて呆れるわ……罰として自分でケツ振れ、ホラ」

「えっ、あっ……そんな……待ってください、イったばかりなの、でェッ!?」

 

 ぺちんっ♡

 

「動け」

「ひっ……ひっ、わ、わかりましたぁっ♡ うぅ"〜……っ♡」

 

 まだまだアクメの余韻に浸っていたいのだろうが、オレもそこまで優しくはないので動くようにと強く命令する。

 ケツを突き出し四つん這いの姿勢のまま、控えめに腰を前後に揺らして甘柔刺激を与えてくる。下を見下ろせば、極上のサキュバスがオレのチンポを相手に優美にマンコを擦り寄せてくる絶景が広がっていた。

 

「おふぅ〜〜……っ♡ お、お加減はいかがですか?」

「んっ……ぬるま湯のように長く楽しめそうだが、サキュバスにしてはあまりにも控えめすぎるかな……もっとお下品にケツフリピストンしろ」

「は、はいぃっ……♡ お、ぐうっ……♡ はふぅ♡ んっ♡」

 

 ぱちゅん♡ ぱちゅっ♡ ぱんっ♡ ぬちゃあっ♡ ぱっちゅん♡

 

 動かずして耐えているオレの肉竿をお下品なスケベ汁で塗れさせながらも、尻をいやらしく動かして勃起を自らのおまんこに出し入れさせているユターシャ。本気で射精を促そうとする卑劣な動きだが、そう簡単にこの淫乱メスサキュバスの言いなりになるわけにはいかない。

 

「はぁっ♡ い、いかがですぅっ? 私の、おまんこっ♡」

「ふーっ……もっと浅いゾリゾリの弱点のトコロに自分から擦り付けろよ、んぐっ……あーっ……」

「んぴっ、は、はいっ♡」

 

 ぞりぞりぞりっ♡ ぬちゃぁあっ♡ ぬちゅっ♡ ずろろろっ♡ ぷちゅっ♡

 

 プチプチとした粒感が密集して蠢いている、あまりにもエゲつないゾリゾリ肉粒天井。Gスポにあたるソコは、先ほどからカリが擦れるたびに身体を跳ねさせていたのだ。

 ユターシャは自らそこを目掛けて、オレのチンポで弱点をこそいでいく。足はガニ股であまりにも品性がなく、前後に揺れるたびに彼女のねっとりとした本気スケベローションがチンポにまとわりついていた。

 

 思わず、オレは再び優しくケツを叩く。ぺちん、ぺちんと小気味のいい音は洞窟の中に反響していた。その度に膣肉はキュッと締め付けが激しくなり、支配してやっているという充足感に包まれる。

 

「お"ひぃっ♡ あぶっ♡ やべっ♡ あ"〜〜〜っ♡? はふっ、はひゅっ♡」

「クッソ……人のチンポで勝手に気持ちよくなりやがって、慎みはどこに置いてきた?」

 

 そんなものは捨てたと言わんばかりにケツを前後してチンポを出し入れさせているユターシャ。夢中になって自身の弱点を自ら押し付けて、気持ちよさそうにしている。その柔い尻をオレに押し付けるたびにムンニュリと形を変えて、根元まで食らっている様をみせつけてくるのだ。プチプチとした小さな粒肉の感触が容赦なく勃起全体を包み絞り上げていて、オレはそれをただ耐えるばかりである。

 

「あ"♡ またイぐぅっ♡ アクメすりゅっ♡ おまんこっ♡ きもちぃっ♡ ぉおおおっ♡」

「フーッ、フーッ♡ ふざけやがって……おい、耐えろよ? イくんじゃねぇよ?」

「ぃや"ッ♡ むりでしゅっ♡ おまんこ気持ちよくてッ……♡ イきだいですっ♡」

 

 自ら快感を貪りヘコヘコと腰を動かしながらも、泣きそうな媚びた声で被害者ヅラしているユターシャ。オレは動かずただ見下ろしているだけなのに、彼女は「虐めないで」と言わんばかりに泣きそうな声でオレにおもねっている。

 

 元々の才能だったのか、それとも当たり前だと思っていた禁欲生活の反動なのか、恥じらいを忘れて欲望を貪り喰らうユターシャの乱れぶりは凄まじいものであった。

 

「あ"ぁぁっ♡ イぐぅっ♡ う"ぁっ♡ あ"〜〜〜っ♡ あぁ"〜〜〜〜〜〜ッ♡」

「こらっ、イくんじゃねェよ馬鹿ッ……ぅ、ぐっ」

 

 へごっ♡ へこへこへこっ♡ ぱちゅんっ♡

 

「はぁ"ぁっ♡ だめっ♡ あ"♡ も、イっ……♡」

 

 そうして、彼女は自分で弱点を押し付けて再度簡単にイき果てた。

 

 ……なんて、なんてかわいいのだろうか。

 お手軽かつ気品のある、チンポをイラつかせる天才。ただでさえ清楚で淫奔な美貌を持ちオスを誘惑しているというのに、情けなくも尻を震わせながらイき果てるなど過ぎたるは猶及ばざるが如し。程々という言葉を知らない、どこまでもオスの欲を煮立たせる果報者である。

 

「ぉひっ……はーっ、はーっ……ご、ごめっなしゃっ……♡」

「……あ"? ふーっ、贅沢なサキュバスがよぉ……勝手に人様のチンポ使ってアクメしやがって」

 

 まだイったばかりでヒクヒクと身体を卑屈か経ている彼女の乳を後ろから鷲掴み、それを好き放題に揉みながらも腰を押し付けるように動かし始める。何度もアクメを繰り返したヌルヌルのおまんこは柔らかくほぐれつつも奥の方はぎゅっと締め付けが激しくなっていて、温度も熱く火照っている。

 

 いい加減、射精したくてたまらないのだ。彼女の柔らかい尻にばちんばちんと何度も押し付けていくと、かなり我慢していた精子がグツグツと込み上げてきた。

 

「お"ぉおおおっ♡ イった、ばかり、なのにぃい"♡ 本気ピストン♡ や"ぁっ♡ あ"〜〜〜〜〜おっぱいぃいっ♡ 揉まっ♡ お"へっ♡」

「はーデッケェなぁホント、後ろからハメながら乳揉むの気持ちィ……」

 

 オレの手から溢れるほど大きい柔長乳。それをひっぱったり掴みあげたり、乳首をこねくりまわしたりと好き勝手に味わい尽くしていく。手に味わうふわふわと柔らかく少しだけ汗ばみつつも心地の良い感触がたまらなくて、それを揉みしだく手が止められない。

 

 ユターシャの身体を引き寄せて、その首筋に苛立ち紛れに歯を立ててからねっとりと舌で舐め上げつつも、下半身をぐちゅぐちゅと音を立てて突き立てる。彼女はそのひとつひとつにビクビクと反応を返して、口の端からぼたぼたと唾液を溢しながらもまんこをひくつかせていた。

 

「クソまんこ締め付けやがって……やっ、べぇ……チンポもうイきそう……クソが……もっと楽しみてェのに……ッ」

「イってぇ"♡ イってくだしゃいッ♡ 中出しぃっ♡ 我慢、しないでぇえっ♡」

 

 ここまで人のチンポを苛立たせておいて中出しをねだるという、厚顔無恥も甚だしい主張。美人だからってなんでも都合よく施しがいただけると思っているのだろうか? オレにイくなと言われながら勝手にイき果てるような不佞(ふねい)なサキュバスのクセして、なんとも生意気な主張である。

 

「雑魚アクメサキュバスのくせに人様に指図するなんて100年早いだろ、舐めやがってクソが……!」

「ぉおおおっ♡ ご、ごめんなしゃっ♡ うううっ♡ ひっ、ひいっ♡ あ"♡ ちんぽっ♡」

 

 ばちゅんっ♡ ばちゅっ♡ パンッ♡ パンパンパンッ♡

 

「あ"〜〜〜〜〜っ♡ い、イきすぎてぇっ♡ ごめんなしゃいぃっ♡ ざーめんっ♡ ほしいですっ♡ おねがいしますぅううっ♡ ざこアクメおまんこにぃっ♡ くだしゃいいっ♡」

「もっと媚びろッ♡ オレに媚びへつらっておねだりしろ♡ エッロいなぁ……♡」

「うう"ぅっ♡ おまんこにッ♡ ザーメン♡ コキすてて♡ いっぱい中出ししてぇえ♡」

 

 彼女がオレの方に必死に首を向けて、そしてその長い舌で口をベロベロと舐められる。少しだけ口を開ければそれがぬりゅんと侵入してきて、濃厚なキスへと変わっていった。柔らかな乳肉を揉みしだきながらも舌を絡めさせて、そしてチンポはその柔らかな膣肉壁にぎゅんぎゅんと締め付けられている。

 

 恋人みたいな濃厚なセックスしやがって……こいつ、さてはオレを勘違いさせる気なのか? キスしたらさらにチンポを包む肉膣の締め付けが激しくなりやがったし……クソ、ベロフェラうますぎんだろっ……

 

「ンふぅーっ♡ きっす♡ やば♡ キスしゅきぃ♡ ん〜〜〜ちゅっ♡」

「オレのこと好きなのか……? くそ、こんな熱烈に愛されたら勘違いするやつ出てくるだろ……! いいか、オレ以外とこんな事するんじゃねッ……ん、ぅっ♡」

 

 じゅるるるっ♡ ぺちょっ♡ くちゅくちゅくちゅ♡

 パンパンパンッ♡ ばすんっ♡ ばちゅっ♡ ばこばこばこっ♡

 

「し、しませんからぁ"ッ♡ できないれしゅっ♡ 私はっ、エルフの、国のぉっ、聖女ですからぁっ♡ こんなはしたない様は、他言無用でしゅっ♡ あなた以外にッ、見せるわけに、はァ"ッ♡」

「〜〜〜〜〜〜ッ! そ、そうかぁ♡ あ"〜〜〜ふざけるなよ、オレだけだからな? 約束だからなッ? オレが責任とってセックスに付き合ってやるからな? わかってんのかお前、他のチンポ食ってたら見捨てるからな? 餓死させるからな?」

 

 オレだけなのだ。

 この女を抱くのも、好き放題できるのも、そして彼女の信頼を勝ち取るのも全てオレだけなのだ。

 

 込み上げる知らない感情を無視して、虚無から顔を出した独占欲の暴力で彼女をただ犯していく。もはや自分の中に持つ気持ちがどういうものなのかわからなくて、ぐちゃぐちゃになった感性は目の前の美女に怒りを覚えていた。

 

 ———そして

 

「あ"っ♡ イぐぅっ♡ ア"くめしましゅっ♡ ごめんなしゃっ♡ ぁ"っ♡ んぎぃっ♡」

「いいぞ、イけや♡ イっていいぞ、オレもイくからな♡ ザーメン出すからな♡」

 

 オレはとうに限界を迎えていたのだ。彼女の甘えた身体に、脳味噌が焼き切れそうになっていた。まるで恋人とのセックスでもしているかのように舌を絡めて身体を擦り寄せてくる彼女を、自分勝手に犯す気持ちよさに頭が溶ける。気を使わない独りよがりのセックスなのに、それすらも受け止めてくれる柔らかく甘い女に溺れていた。

 

「んひゅっ♡ あ♡ すき♡ すきでしゅっ♡ あ"ぁぁっ♡ イぐぅっ♡ イッ♡」

「は、ぁ、ぐっ……」

 

 一層強く彼女の身体を強く抱きしめて、身体を曲げながらも一番深いところに押し込む。耐えに耐えて、いよいよ絶頂を迎えてオレは射精した。

 

 目の前が真っ白になり、なにも考えられなくなる。彼女の身体に倒れ込むように力を抜きながらも、下半身はさらに奥に精子を吐き出そうと無意識に腰を押し付けてしまう。力任せに抱いたら折れてしまいそうなのに、オレは自分の感情が赴くままにその身体を強く抱きしめていた。

 

 

 

 ———そして。

 

「はぁ……ユターシャ、まだっ」

「ふぇっ……? ま、待って……?」

 

 夜はまだ長い。オレは射精したばかりなのに硬さを取り戻しつつある肉棒を()()()()、ゆっくりと抽送を再び始めて……

 

 

 

 

 

 

 



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+命令絶対服従

 一晩明けてこってりと搾り取られたオレは、サキュバス淫香の届かない洞穴の入り口付近で深く深呼吸をしていた。一晩中ずっと身体を動かしていたから酷く気怠くて、だからといって今日も帰路を進まないといけないのだ。

 

 幼少期からの訓練で淫魔毒にも耐性をつけていたと思っていたが……流石に飢え死にしかけたサキュバスには抗えなかった。

 生きるために必死になった最後のフェロモンは甘美で、途中から意識を落としながら身体を動かしていた気がする。

 

 ……オレも歳食って身体が鈍ってきたのだろうか。5年前ならば、もう少し上手くやれてたかもしれないが……

 

「んぅ……あれ?」

「起きたか」

「お、おはようございましゅ」

 

 昨日まではあんなに死にかけていたと言うのに、一晩ですっかり元気になって身体にハリツヤが出ているユターシャ。洞窟の奥の方で転がしていたはずの彼女は、いそいそとこちらに近付いてくる。

 

「早起きですねぇ……ふわぁ」

「身体の調子はどうだ?」

 

 伸びっ、と伸びた身体は朝日の下では輝かんばかりの白肌を晒していて、目に眩しかった。

 見た限りでは元気ハツラツといった顔立ちの彼女は、にこりと屈託のない笑みをこちらに向けて笑いかける。

 

「ここ数十年で1番元気な気がしますよ! たっぷりエネルギーがチャージされました!」

「ん、そうか。ならいい」

 

 オレの精力を散々搾り取ってくれたのだ。そのくらい元気になってくれないと、割りに合わないと言うモノである。ゆらゆらと揺れる尻尾も、昨日見た時よりずっと元気に動き回っていた。

 

 とはいえ、彼女も元は聖女である。

 昨日までの痴態はどこへ行ったのか、しっかりと囚人服を着込んだ彼女は、卑猥さのかけらもなくオレを見上げている。シャツをズボンにぴっちりと入れて、ボタンも上までしっかりと閉めていた。

 淫魔の力なのか、あれだけボロボロだった囚人服は正しい形に戻っていて、肌は珠のように戻り髪の毛は美しい金髪が輝いている。

 

 ……なんだか、変な気分だ。

 こんなに清純で野暮ったいと感じる女が、あんなに腰をくねらせていたというのが信じられない。聖女らしく華美なものに慣れていない純朴な気品と、それでいて淫魔特有の魅力がミスマッチしているとでも言うべきか。

 

「〜〜で、ですね。私としては祖国に……ってあれ? 聞いてます?」

「すまない、少し疲れていてな……なんだった?」

 

 すっかり彼女に見入ってしまい、話を聞いていなかったのを無理やり誤魔化した。

 

 やっぱり、この聖女は危険である。

 おそらく無意識に出しているのだろう色気に無自覚になっていて、聖女として綺麗なものにばかり触れてきたからなのか性善説を信じているきらいがあるのだ。

 

「ですから、このことは他言無用でお願いします。もしも私が処女を失ったとバレたら、聖女的にマズイので」

「まぁ、そうだろうな」

 

 確かに、大々的に『聖女ユターシャ、淫魔になってドスケベセ○クス』だなんて外聞が悪すぎるだろう。彼女を聖女第一席として称えていたエルフ国の名に傷が残ってしまう。

 

 地位のある人間が問題を起こすと大変と言うのは、どこの国もおんなじか。

 

「アンタが言ってほしくないって言うなら、オレから言いふらすような事はしない」

「そう言っていただけると助かります。()()()()()()()()が、その時にそんなスキャンダルを引っ掛けてたら問題ですから」

 

 ……ん? 

 

「一時は貴方を恨みかけましたが、命を助けていただきありがとうございました。これだけ元気になったら、きっと私1人でもなんとかこの甘き森を抜けて王城まで戻れると思います。この御恩は決して忘れません。……またエルフの国に立ち寄ってくださったら、その時には手厚く歓迎いたしますよ」

「何言ってるんだ?」

「?」

 

 きょとん、とユターシャはオレを見上げている。

 

「あれ? えぇとごめんなさい。もしかして私をエルフの国まで送ってくださるおつもりでしたか? それでしたらご厚意頂きまして……」

「いや、人間の国に戻るぞ」

「ですよね! でしたら、私はエルフの王城までなんとか一人で行ってみますので、また是非エルフの国にいらっしゃった時は……」

 

 あぁなるほど。つまりこのユターシャは、エルフの国に一人で帰るつもりなのだ。

 

 確かに淫魔になったとはいえ、エルフ王が可愛がっていたというユターシャはきっと保護されるだろうし、国の総力を上げて淫魔からエルフに戻る方法を探す事だろう。

 それに、聖女的に淫魔はアウトでも悪魔ならセーフかもしれない。皇太子が着せた濡れ衣のせいで悪魔になったと言い張ればいいのだろう。

 

 だからこそ、オレと性行為したことは他言無用だと言い含めたのだ。元はエルフの聖女が人間如きと淫らな行為をしただなんて一大スキャンダルになる。

 

 だが、それではいけないのだ。

 オレの任務に、狂いが生じる。

 

「ユターシャ、お前はオレと共に人間の国へ来てもらう」

「…………………………え°?」

 

 

 

 

 

 オレの言う事がわからなかったのだろう。

 ユターシャは、不思議な声を出しながらも首を傾げていた。

 

「お前は、オレと共に、人間の国に来てもらう」

「な、何故です? 私はエルフの国の聖女ですよ? 第一席ですよ? 確かに淫魔になりましたが、あの国には私が必要で……!」

「アンタの、身の安全のためだ」

 

 そうして、オレはエルフの国で手に入れた新聞を差し出した。日にちは数日前のもので、つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のものである。

 

 そこには、聖女ユターシャの罵詈雑言が敷き詰められていた。

 

「な、なにこれ、は……」

「今、エルフの国に帰ったら()()()()()()()だろう。だからオレと共に来い、ユターシャ」

 

 嘘だ。

 国民の殆どがこの新聞記事を出鱈目だと切り捨てていたし、同情はユターシャに向けられていた。皇太子はエルフ王の手で、まもなく地位を剥奪されるだろう。

 

 だが、オレはこれから聖女を誘拐する。

 彼女を騙して、人間の国へと連れていく。

 

「まぁ、拒否しても連れて行くからな。オレにはこれがある」

 

 そうして、オレはもう一枚の紙を見せた。

 

 昨晩、男欲しさにユターシャは今後の長い人生を売ったのだ。その証が、この白紙の契約書だった。

 契約内容のところに何を書こうがオレの自由だし、それを全てユターシャは受け入れなくてはならない。

 

「……私、わたしは、エルフの国に、戻らなきゃ……」

「せっかくオレが助けた命だ。無駄死にさせたくはない」

「……王様なら、きっとわかってくださいます。彼の元に辿り着けば、きっと……」

「王との謁見までに、一体何人のエルフがいると思う? 今のアンタはエルフに嫌われる魔族なんだから、謁見前に焼き払われるぞ?」

 

 冷たく突き放す。啜り泣く声が聞こえるものの、それを慰めるように頭を撫でた。

 

「今のエルフの国は、アンタにとって()()だ。だから、人間の国に逃げよう」

 

 そういった瞬間、彼女はこちらを見上げていた。

 

「人間の国に、逃げる……?」

 

 涙に濡れた目は、悲しみに揺れていた。

 いくら『降り立つ繁栄』としてエルフ達に持て囃されたユターシャとはいえ、エルフの年齢的にはまだ未成年なのだ。国から出たこともなければ、おそらく最高の聖女として常に誰かに守られ続けてきたに違いない。

 

 彼女は小さく、「50年前に聞きたかった」とこぼした。ただの独り言は、それでもオレの耳に届く。

 

「私、婚約者だった王子様からも、国民からも嫌われてたんですね」

「…………誤解してるだけだろう。きっと、喉元さえ通ればいつか忘れるさ」

「国のためにと尽力して50年近くになります。それで、みんな私のことを褒め称えていたのに……本心では、こう思っていたんですね」

 

 聖女たれと育てられたユターシャには、それしか残っていないのだ。

 国のために聖女として在り続けろとずっとレールを敷かれ続けてきた彼女にとって、それ以外の道は暗く怖いものなのだろう。

 

 国のために。祖国のために。

 オレも義父(ボス)にそう言われ続けて育ってきた。何度も何度も繰り返された言葉は呪詛であり、生半可には逃れる事ができないのだ。

 

 暗殺者として有名になりすぎたから、冒険者(国のない人間)になって祖国から離れろと言われた時の絶望感。酷使するだけして、不要になったら尻尾を切られたのだと悟ったあの時。

 かつてはどうしてだと悔しくて泣いたものの、それだって喉元を過ぎれば思い出として風化してしまう。

 

 ポロポロと涙を流すその姿は、かつての自分にどこか似ている気がした。

 

「共に行こう。オレは、お前を守ってやる」

「守るだなんて……私、は」

「オレはアンタに、聖女である事を求めない。淫魔としてのアンタに身体を提供しよう。食と安全を提供する」

 

 エルフの国に帰ったら、きっと満足いくほど腹が満たされることは無いと低く囁いた。

 人間は悪魔と共存して生きているが、エルフは魔のもの全てを穢らわしく思っているのだ。だからこそ、ともに人間の街に来いと甘い言葉を重ねる。

 

 これじゃあ、オレがまるで悪魔になった気分だ。

 甘い言葉でたぶらかして、綺麗な聖女の心を奪おうとしている。

 

 そして———

 

 

 

「……わかりました、行きます」

 

 私を連れていってください。

 止まらない涙を拭いながらも、彼女はそう言って綺麗な笑顔を見せた。

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 

「さしあたって、契約について相談したい」

「……け、契約ですか? あの、基本的に人間国のルールを知りませんし貴方の言う事には準じますので、できれば白紙の契約書とかいうトンデモ違法書類を破棄いただければと思うのですが……」

 

 オレは白紙の契約書を取り出して、トントンとペンで叩く。

 あんまりにも酷すぎる契約はユターシャの精神衛生を考慮して約束しないつもりではあるが、腐っても魔族(捕食者)を身近に置いておくのだ。最低限のルールは制定しないといけないわけで。

 

「とりあえず、オレの言う事には全部従ってもらうとして……」

「そんなぁ!? じ、人権無視ですよそんなの! 万人に共通したひとりひとりの権利を冒涜していますよ!」

「でもお前淫魔じゃん。人間じゃないから」

「人権無視だけでなく人種差別までぇ!? さ、サイテーですぅ!」

 

 基本的人権を尊重した上で、言われた事には全て服従……と、そんな事を記載していく。

 キャンキャンとユターシャがなにか騒いでいるが、それをまるっと無視した。

 

「く、クーリングオフ! クーリングオフを希望します!」

「くー……? なんだそりゃ」

「契約8日間以内だった場合は解約できるという制度です!」

「あーすいませんお客さん、うちそーいうのやってないんすわ」

「悪徳業者! 鬼! 鬼畜! 悪魔ァ!」

 

 悪魔はアンタだろ、とオレが冷静に言うとユターシャは大人しくなって、それからさめざめと泣き出してしまった。

 

「うぅ……お義父様、パパママ……先生……私は、ユターシャはこれから人間の奴隷として今後を生きていくことになるのです……どうか私のことは忘れてね……」

「そこまで酷いことはしないぞ」

「ぐすん。私はこれから悪い商人に売り飛ばされて、反抗的な態度を取る美しい元聖女エルフとして調教されて壁尻奴隷として尊厳も何もなく一回ワンコインくらいの激安価格で使われてしまうのです……よよよ」

 

 と、泣いてる聖女を無視して勝手に契約書に文面を付け足していく。とりあえず、1日の精液摂取量を決めておかないとこっちが干からびて死ぬかもしれないから……っと。

 

「あぁ、もしくは変態キモ親父に売り飛ばされて人権破壊肉体改造を施されて、人前に出れない様な無様な身体で全裸露出街中連れ回しの刑にあってしまうのでしょう……ぐすん。エルフの聖女ですからね、それくらいされても仕方ないですよね……」

「食事は1日1回でいいか?」

「3回必要です! できれば10時と3時にはデザートもお願いします!」

 

 1日に3回は多すぎるだろう。

 多くて1日2回で、それ以上の摂取時は双方の同意がないと不可、あたりでどうだろうか。

 

「ぐっ……わ、わかりました。ですが食事に肉類は出さないように気をつけていただけると……ん? あれ、私の食事って」

「セ○クスだろ」

「そんなぁ!?」

 

 淫魔なんだから、当たり前だろうに。

 

「こ、この私が今後そんな性活しなきゃいけないなんて……」

「まぁ悪魔でも嗜好品として人間の食べ物を摂取する事もあるらしいから、全く食べれないってわけでもないだろ」

 

 そういうと、ユターシャはがっくりと肩を落として陽の光に向かって恨言を呟いていた。

 

 昨日あれだけ人様の上に()()()お盛んだったと言うのに、未だに聖女として性的なモノに嫌悪感があるのだろうか? アレだけ性欲丸出しで人に襲いかかったと言うのに? 

 

「き、昨日はそのぅ、お腹すいてたから……し、仕方なかったんです……」

「セ○クスが嫌なら初日みたいに()()()()()()()()ってことも出来るだろ。アンタが死なないよう面倒は見てやるが、その方法は好きにしてくれ」

「食ザーかセ○クスするしか無いんですか!?」

 

 淫魔なんだから仕方がない。

 今後生きていく上で切っても切れない関係になるのだから、割り切った方が楽だろうに。

 

「うわぁぁんあんまりですあんまりです、命令絶対服従に、食事は日に二度のセ○クスとか!」

「仕方ないだろ。野良の悪魔だと思われたら人間の聖騎士団がすぐに討伐にくるんだから、契約悪魔として見せかけるためにそれくらいはしないと」

「契約悪魔……?」

 

 こてん、と首を傾げたユターシャに、オレは軽く端折った説明をする。これは人間の国独特の文化であり、共存するためのルールでもある。

 人間にとって、悪魔には2種類いるのだ。

 

 ひとつは野良の悪魔。これはそこら辺を自由に動き回っていて、弱そうな人間を見つけたら誘惑して魂やら精やらを吸い取っていく通り魔の様な悪質な悪魔。

 そしてもうひとつは、契約悪魔というものだ。

 魔術を使うものの手によって召喚された悪魔で、なんらかの対価として人間に使役されるものである。

 

 オレの祖国の法律では、たとえ聖騎士とかでもこの契約悪魔に攻撃を与えてはいけないという事が決まっているので、このように紙媒体で擬似的な契約悪魔として仕立てあげたのだ。

 

 ……まぁ、1番の契約理由は純粋に『逃したくない』のと『手綱を持っておきたい』からだが、わざわざそれを言う必要もない。

 

「もし人間とかに追いかけ回されたらオレの契約悪魔だと言ってくれ」

「そういうものなのですか……」

「オレへの絶対服従と、食事の制限があればよっぽど納得するハズだ」

 

 問題はオレが直々に召喚したものではないというところだが、まぁ知人が召喚した悪魔を借り受けて使役しているとでも言えば通るだろう。

 

「他はまた適宜決めていくとして、質問はあるか?」

「はい! 今後500年に渡って肉便器として壁尻奴隷になるってことはありますか!」

「オレはしない」

「変態キモ親父に売り飛ばされて人権剥奪レベルの人体改造されるっていうのは……」

「オレはしないぞ」

 

 なんでエルフの聖女にそんな知識があるんだ。

 えへ、とユターシャは下手な笑いで誤魔化していた。

 

 

 

 

 * * * *



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+メイドメガネ

 甘き森を抜けて早3日。

 機関に暗号化した手紙やら証拠やらを送ったオレは、誘拐した聖女をどうすればいいのか、上からの沙汰を待っていた。

 

 魔術的に強化されている伝書鳩は、おそらく1日もすれば義父(ボス)の元に届くだろう。そこから更に上に報告がされたり、エルフ国に正規入国しようとしている連中に探らせたりするので……おそらく2、3ヶ月。長引いて半年は次に指令が届くまでかかるかもしれない。その先の未来が来ることが億劫で、しかし祖国のためだからと心を冷たくした。

 

 

 

 オレは、見たままを義父(ボス)に伝えていた。

 

 現状のエルフ国について……聖女が処刑されて混乱している情勢、皇太子がエルフ王の怒りを買った旨、国民達の世論、そして聖女がいなくなってから枯渇し続ける木々の生命力。

 聖女の処刑方法について明かされていないのと、王家所属軍が連日秘密裏に甘き森周辺にて()()()()に向かっている事。聖女の名誉はエルフ王の手回しにより事実無根と発表され、それでも葬式は執り行われていない事。

 

 何より、その甘き森で()()()()()()()()()()()()()に遭遇した事。彼女をエルフ国の現状に関与している者として、隷属させ人間の国に連れ帰って来たこと。

 ———全ては、祖国のために。

 

 

 自分の一存で連れてきた事が吉なのか、はたまた凶なのかはわからない。それでも、義父(ボス)に作り上げられた思考回路では、そのようにするのが正解だと導き出していた。

 

「自分の頭で考えて、行動しろ」というのが、義父(ボス)の教えなのだ。

 ただ言われるがままに身体を動かすだけの人形ではなく、状況に応じて都度判断を行える忠実な祖国のしもべとして、オレは作られている。

 

 祖国がとれる選択肢を増やす、それは祖国のためとなるハズだ。

 

 だからこそ、オレはユターシャを連れてきた。

 怪我をしないように気を配りつつも、ただ親切心から助けているだけのフリをする。いつかエルフの国に戻れるといいななんて慰めながら、彼女の身体を抱きしめていた。

 

 この聖女が政治に利用できないと判断されれば()()しておけと言われるだろうし、必要なら『エルフ国の聖女として』お連れしなければならない。

 その時がいつか来るかもしれないと思いながらも、オレは彼女の身体を抱きしめるのだ。

 

 ……あまり情を移してはいけないとわかっていても、毎晩身体を重ねていたら可愛いと思ってしまう。

 元はエルフの聖女で、今では自分の体しかしらない淫魔。従順で素直、清楚で淫蕩。はしたない自分を叱責しながらも、快楽には正直になるところが可愛らしい。

 

 そんなだから、いざという時が来るのが不安であった。

 情に絆されそうになるだなんて、昔のオレなら考えられなかった。オレはまだ27歳なんだが……やはり、前線(暗殺)から離れて数年経っているし色々と鈍っているのだろう。

 

「はぁ……ままならないな」

()()()()? どうされましたか?」

「何でもねぇよ」

「そうですかぁ……わ、わ! すげぇ、スーパー大道芸人だ!」

 

 そんな事をつゆとも知らないユターシャは、種族の坩堝とも言える大都市に目を輝かせていた。

 街を歩くのは獣人、蜥蜴種、妖精、ケンタロス、ハーピー、ゴブリン、オーク、ドワーフなど色々たくさんだ。もちろん、ごく稀に悪魔も道を闊歩している。

 

 エルフの国から出た事がないらしいユターシャは、この人混みに目を白黒させながらも必死に後をついてきていた。

 

「すごいなぁ……広くなった原宿みたいです」

「あまり上見て歩くなよ。もしかしたら、エルフ族がいるかもしれないんだからな」

 

 ユターシャは有名人なのだから、顔が知られていてもおかしくはない。未だにエルフ国は聖女が死んだと他国に報じていないが、念には念を入れたかった。

 聖女が悪魔になったと思う奴はいないだろうが、『聖女の顔をコピーした不敬な悪魔』と思われたら不都合だ。

 

 そうして、オレ達は裏路地にあった小さな呉服屋に入る。老婆が一人ぼんやりと椅子に座っていて、アラクネの女性客と人間の女性客がなにやら盛り上がりながらも服を吟味していた。

 

 こじんまりとした個人店。ここには、いろんな服が置いてあった。

 

「えぇと、服を買うんですか?」

「いつまでも囚人服なんて着てられないだろ」

 

 今はオレのマントを上から羽織らせているものの、その下にはエルフの国の囚人服が着込まれているのだ。いつまでもそんな服を着ていたら生活に不便だろう。

 店内を見渡しているユターシャは、しかしどこに手をつければいいのか困っている様子で。

 

「聖女サマはこういうの初めてか?」

「せ、聖地しまむらでは、自分の服は自分で見繕っていましたよぉ……」

 

 その『聖地しまむら』とやらは知らないが、おそらくエルフの国にある何らかの呉服屋だろうか。『聖地』の名前から察するに、祭事関係者専用の呉服屋ではないか? となると、こういった多種族専用店には慣れていないのか……

 

 どうすればいいのかわからないといった様子のユターシャは、リザードマン用のレディース服を手に取っている。真っ赤なデザインと、うろこでひっかいても破れなさそうな硬さが特徴的なワンピースだった。

 

 ……服なんて着れればいいとおもうが、それ以前に種族に見合った服を着るのが第一条件である。

 

「ユターシャ、人型レディース服はあの辺だ。羽と尻尾に関しては服直しの際に切り抜いてもらえる」

「……そういえば、私お金ありませんケド」

「オレが出す」

「えぇー? そんなぁ……なんというか、デートみたいですね? 照れます」

 

 実際のところはデートなんて可愛げのあるものではない。支給品なのだ、これは。

 

「うーん……どういう服がいいでしょうかね……」

「あまり華美な服は避けて、ある程度周りの環境に合わせられるもので頼む。そうだな、この辺りとかどうだ?」

 

 オレが指したのは、セットになっている服だった。

 

 チェックのネルシャツと、可愛らしいキャラクターが印刷されたTシャツ。青のジーパンは丈夫そうで、アクセサリーとして指空きのグローブがついてるのも実用性に富んでいてポイントが高い。さらにセットでつけられているバンダナは額に巻くのだそうだ。

 ユターシャは多くの女性が好むだろうものにあまり興味がないようだが、大抵の女性というのはかわいいものが好きなハズだ。ツインテールの美少女がプリントされているTシャツなら、きっと一般女性の中にうまく紛れ込めるはず。

 

 と、オレの見解を伝えて振り返ると、ユターシャはしわしわの顔でこちらを見つめていた。

 

「90年代のアキバオタクか? いくらなんでもこれは……」

「? ……嫌なのか?」

「いえ、嫌と言いますか、いにしえのテンプレオタクコスの存在にびっくりといいますかぁ……」

 

 なにが気に食わないのか、ユターシャは首を横に振って拒絶反応を示していた。そうして、おそるおそる女性服のハンガーをかきわけていく。

 

「んー……んー……おっ!? こ、これいいんじゃないですかぁ!?」

「……ミニスカートか、大丈夫か?」

「いやぁ、これはロマンですよ。すいません、これ試着お願いしまぁす!」

 

 白いレースがたっぷりとついているミニスカートの黒色ワンピース。セットで髪飾りとリボン、そしてエプロンがついているらしい。

 確かに女性っぽいデザインだが、オレとしては簡単に怪我しそうな露出度の高さが目に余った。とはいえ、アレが当人の趣味というならばオレが口を出すのも野暮というものだろう。

 

 颯爽と服を持って試着室に飛び込んだユターシャは、3分ほどでカーテンを開けた。

 

 そこには。

 

「どうでしょう、似合っていますか?」

 

 黒と白が基調となっている、ゴシック調の可愛らしいワンピースに身を包んだユターシャがこちらを見つめていた。たっぷりのレースは可愛らしさを出していて、エルフの顔立ち特有の凛とした美しさにも磨きがかかっている。

 

 お気に召した服に着替えたからか、羽がパサパサと小刻みに揺れ動く。尻尾もうねうねと動いていて、くるりと回るとスカートのレースがふんわりと広がっていた。

 

「それが気に入ったのか?」

「ふふん、サキュバスといえばメイド服ですからね! 女騎士にくっ殺、巨乳お姉さんにタートルネックと同じ原理でして……」

 

 と、嬉しそうにメイドの服に関してつらつらと語り始めた。

 ……どうやらオレの知るメイド服とユターシャの言うメイド服には、大きな相違があるらしい。

 

「〜〜というわけで、サキュバスとメイド服の親和性はかなり高いのです。どぅーゆーあんだすたん?」

「つってもその服はメイド服じゃないだろ」

「む、どっからどう見てもメイド服でしょう? ミニスカメイド服! イェーイクールジャパン!」

 

 どこの世界にこんな裾が短くてひらひらした女中がいるのだろうか。こんなんじゃあ働きにくいだろうに……

 

「エルフの国の女中文化は知らないが、人間の国では基本メイド(女中)服はかなり質素なものなんだ。間違っても、そんな露出度高いデザインじゃない」

「リアルな話はいらないんですぅー! いえ、シックで本場な清楚メイドを否定するわけではありませんが、それはそれとして安易にえっちでかわいいミニスカサキュバスメイドっていいじゃありませんか! 伊東ライフですよ!」

 

 口を尖らせて抗議をしてくるユターシャを尻目に、オレはさっさと会計を済ませた。ついでにレジ横に売っていたレンズのないフレームだけのメガネも購入して、彼女に無理やりつけさせる。

 

 服についたタグを全部取ってもらって、ユターシャはご機嫌な様子で鏡に向かってメガネをクイクイしながらもポーズをとっていた。

 

「もしかしてご主人様……眼鏡萌えでした!?」

「変装用だ。外に出る時はちゃんとつけておけよ」

「あぁそういう」

 

 なんだつまらない、とボヤいたユターシャだが、案外眼鏡は気に入ったようで鏡の前で自分の顔を眺めていた。

 

「そういえば私、エルフになった当初はバ美肉かと心躍りましたけど、ずっと聖女服しか着てこなかったので自分の容姿のレベルの高さを楽しむ余裕を忘れてましたね……うーん、かわいいのではぁ? でへへぇ」

「よくわからないが、まぁ、似合ってるぞ」

「でしょう、でしょう! なんたってエルフですからね。いえ、今は淫魔ですが……元エルフですから!」

 

 女の子たのしー! と叫びながらぴょんぴょんと跳ねている、無邪気な聖女様を見下ろす。

 初めて出会った時よりもずっと素が出ているようで、軽口を叩きながらもオレの周りをくるくると回っている彼女は、本当に楽しそうに見えた。

 

 

 

 

 * * * *

 

 夕方。

 

 

 

 

 

 

「はうぁ〜……天国かな?」

 

 かなり久しぶりになる柔らかなベッドに、ゴロンと転がる。やっぱりフカフカのベッドは居心地が良くて、枕に顔を埋めるとここまでの疲れが一気に吹き飛んでいく気持ちになった。

 

 淫魔になって、国を追放されて、男に助けられて、餓死しかけて、それから人間の国へと向かい続けたここ最近の日々。毎日を数十年繰り返すだけの私に取っては、激動の数日間だった。

 

 最初は命令服従だとか言われて不安だったけれど、彼もそんなめちゃくちゃな事を言ってくることはない。なんだかんだ面倒を見てくれるし、配慮もしてくれている。厳しいように見えて私の事を心配してくれてるらしいし、そして()()()がおいしいのだ。

 

 私はこの数日で、あの男にすっかり絆されていた。契約しているからと呼び始めた『ご主人様』の愛称も、なかなか板についてきた気がする。

 

「ユターシャ、湯を貰ってきた。身体拭いておけよ」

「んー、動けないでしゅう……」

 

 ベッドの魔力に吸い付かれてしまった私は、起き上がることもできずに羽をパタつかせて返事をする。だってこんなに居心地のいいベッドで横になれるなんて、もう数日ぶりなのだから。

 

 聖女としてはあるまじきだらしなさだけど、今の私は淫魔だし、相手はご主人様だし、いつも厳しい先生もいなければまわりの目だってないわけで……

 

()()だ。はやくしろ」

「ウッ……わかりましたぁ」

 

 とはいえ、こうして命令されると体が勝手に動いてしまう。立ち上がって男からバケツを受け取った私は、そそくさと服を脱いでたっぷりと暖かなお湯を吸ったタオルを絞った。

 

 彼はいつのまにか部屋から出ていて、私は1人でゆっくりと身体を拭っていく。数日分の汗や埃が溜まっていると思ったけれど、淫魔特有の自浄作用なのかそんなに汚れていなかった。髪の毛から足先まで丁寧に拭き取って、それをバシャバシャと湯で洗う。

 

 ……本当に、柔らかい身体だ。しっとりとした肢体は水を弾くし、とろけそうなほど柔らかな乳は揉めば優しく指が沈んでいった。淫魔になってから、それがより顕著になった気がする。

 

 私の身体は、抱かれることに特化したものになってしまったのだろうか? 

 

「……女の体にも慣れたけど、エッチはなぁ……」

 

 はぁ、とため息をついた。

 男の頃だったら考えられなかっただろうに、いまの私は行為に対して悦びを感じているのだ。

 腹が満たされていくのと、脳みそが痺れるような快感。あんなの、一度知ったら戻れなくなるかもしれない。

 未だにオレだった頃の自分が嫌だ嫌だと叫んでいて、聖女としての私はせめて聖女としての自覚を持てと受け入れている。淫魔の身体は彼をむさぼりたくて、心と身体が追いついていないのが問題であった。

 

「ま、まぁ生きるためですから。仕方ないですもんね!」

 

 ———それに、淫魔になったことをいい方向に考えることも出来る。

 

 本来ならば、私を淫魔へと変えたあの皇太子と5年後には結婚する予定だったのだ。

 そして、皇太子と結婚するとなればいずれ子を孕まなくてはならなかっただろうし、そのためには皇太子とも行為に及ばなくてはならなかった。

 聖女だった私も、いつかは男に抱かれる運命だったのだ。それが早いか遅いかの違いだ。

 

 あの命運に比べたら、意外と幸せだったりしないか? 

 

 

 

「……ありゃ、お湯冷めちゃいましたね……」

 

 男が持ってきたバケツのお湯は、すっかり冷めていた。先を譲ってくれた男も後で使うだろうから、もう一度温めたお湯をもらってこなくてはならないだろう。

 

 一通り身体を磨き上げたところで、今日買ってもらったばかりのメイド服を着込む。

 自分好み(オレの趣味)を詰め込んだ女は鏡の前でニコリと笑っていて、いつもの聖女服じゃないためにまるで別人のように感じる。メガネをかけてみれば、印象も大きく変わってどこか妖艶にも感じた。

 

 可愛すぎませんか私。

 知ってました、だってエルフだもん。

 

「ごーしゅじんさまぁ、清拭いただきましたよぉ。お時間長くなっちゃってすいませ……あれ?」

 

 バケツをえっちらおっちらと運びながらも、廊下に出る。しかし見える場所にご主人様はいなくて、私は重たいバケツを運びながらもロビーへと向かった。お湯もすっかり冷めてしまったので、つぎ足してもらったほうがいいだろう。

 

 そうして、ロビーの共用テーブルで静かに新聞を読んでいる男をみつける。

 

「ごしゅじんさまっ、お待たせしました!」

「長かったな……まて、バケツを置け。こぼしたらどうするんだ」

 

 あわてて駆け寄ってくるご主人様に、胸を張ってバケツを持ち上げる。

 

「だいぶ冷めてしまいましたので、お湯継ぎ足してきますね!」

「重いだろ、オレがやるから……新聞を戻してきてもらえるか?」

「私だってこのくらい持ちあげれますよ!」

 

 と言ったもののフラつく私の手からバケツを奪い取った彼は、その代わりにと新聞を押しつけてきた。

 

「こぼしたら宿に迷惑がかかるだろ。オレがやるから、これをロビーに戻しておいてくれ」

「むぅ、わかりました……」

 

 そうして、手渡されたのは1枚の新聞紙。

 エルフ国と人間国の言葉は共通しているため、私でもそれを読むことはできた。

 さて、いま人間の中で話題になっているのはどんなことだろう……なんて、ワクワクしながらも新聞を開くと。

 

 

 

 

 

 ———森林の急速な栄養失調

 ———北部から徐々に広まる原因不明の病原体か? 

 

 そこに写るのは元気のなくなった森林の写真。葉は抜けて、どこか萎えて元気のなさそうな木々。

 

「あぁ……あー、そっかぁ……そういえばそうですよねぇ……」

 

 ……せっかく、重責を忘れていたというのに。

 こうも大々的に、()()()()()起きている事件を見てしまうと、嫌な気持ちになる。

 

 人間の国から見て、エルフの国は北部にあたる。明らかに、エルフの国が原因として森林の枯渇が始まっていた。

 

 

 

 

「どうしたんだい悪魔さん、怖い顔しちゃって」

「ヒェッ!? な、なななんでもないです! あ、新聞ありがとうございました!」

 

 受付のおばあちゃんに声をかけられて、あわてて持っていた新聞を返す。彼以外の人間と喋ることが珍しくて、思わずキョドってしまったのが恥ずかしかった。

 

 ———まぁ、考えても仕方ない。

 

 いつもの聖女スマイルで愛想良く『いえ、なんでもありませんよ』と言うべきだった……なんて自己嫌悪しながらも、小走りで部屋に戻って行く。

 嫌な新聞のニュースも見てしまったし、こんな日はぬくぬくおふとんでゆっくり惰眠を貪るに限るのだ。

 

 そうして私は、少しブルーな気持ちで扉を開ける。

 

「戻りました。はぁ、聞いてくださいよ……あの新聞の記事なのですが……」

「ノックくらいしてくれ」

「むきゃっ!?」

 

 そこには、半裸のご主人様が。

 

 今から清拭しようとしていたのだろう。脱いだ服は横にかけられていて、最後は下着一枚だけ。それに手をかけた状態で止まっている彼は、こちらをじっとりと睨みつけていた。

 バケツに入るお湯からは湯気が立っていて、その熱さが伺える。

 

 私は慌てて部屋から出た。

 目線が、出ていけと訴えていた気がしたのだ。

 

「失礼しましたぁ……」

 

 そして、扉に背を当てて深呼吸を一つ。

 

 

 

 ……私は再度ドアノブに手をかけた。

 ほんの少しだけ扉を開けて、中の様子を伺う。バレないように、ほんの少し……ちょっとだけドアを開けて……

 

「覗くな」

「の、の、覗いてませんよぉ!」

 

 男だった頃の自分が、何をやっているんだと叱責する。聖女の心を持った自分が、なんてはしたないんだと声を荒げている。

 だけど身体は正直で、ドアを閉めることができなかった。欲望に耐えきれず、思わず中を盗み見てしまう。

 

 昼間は服で隠されている体も、脱げばなかなか逞しい。やたらめったら古傷があるのは、冒険者として若い頃から活動しているからだそうだ。

 

「ふーっ……ふーっ……♡」

「だぁから、覗くなって!」

「ごめんなさいごめんなさい、あと10秒だけ……いや30秒……い、1分だけ! 1分だけ見せてください!」

 

 普段は服を着込んでいる男の、ほぼ全裸だ。

 鍛えられた身体は魅力的で、思わずごくりと喉が鳴る。

 

 扉を隔てた向こう側に押し入りたいのを無理やり耐えて、耐えて……

 

「あぁ、お慈悲をください……せめて見るのだけ許してください。焼肉屋の匂いを嗅いで白米食べるような感じで行きますから、どうか……」

 

 提案したのは、イマジナリー焼肉ご飯ならぬイマジナリーザー○ンである。

 

「そんなに腹減ってるのか?」

「あ、貴方が魅力的だからいけないんですよ。そんな無遠慮に裸になんてなって、わ、私が淫魔だってわかってらっしゃるんですか……?!」

 

 本来なら、我慢できるのだ。普段のように服を着込んでいるご主人様なら、別になんともない。

 

 だけど、全裸はダメだ。

 アレは身体が、()()だと認識してしまう。

 

 そういえば、ここ数日間の長旅の中で彼が全裸になっていたのは私が飢餓状態で死にかけていた時だけだった。それ以外は基本服を着込んでいたし、行為の時だって互いにほぼ服を脱ぐことがなくて……

 

 あぁ、彼の裸が、こんなに美味しそうに見えるだなんて。

 

「悪いクセでもついちまったのかね」

「クセ……ですか?」

「まぁいい、もう入れよ。そんなとこにいたら他の客の迷惑になるだろ」

「う、ううう……」

 

 私は、ゆっくりと扉を開けた。

 何故だろうか、彼がいつもよりずっと魅力的に感じるのだ。おいしそうでおいしそうで、空腹で死にかけた時を思い出す。

 

「し、し、失礼しましゅ」

 

 後ろ手にしっかりとロックをかけて、いそいそと男に近づいて行く。

 自分が発情しきっているのがバレていて、それなのに我慢できず男に近付いていってしまう。それが酷く無様で、そして抗えなかった。

 

 なんとか襲いかかるなと、自分の頭で制限をかける。そうでもしなければ今すぐに押し倒してしまいそうだった。

 

「まぁ多分アレだろ、最初にヤった時のが鮮烈すぎて、男の裸に特に反応しやすくなったとか……そういうことじゃないのか?」

「そ、そうですか……そういうものでしょうか?」

 

 彼に触れられる距離まで近づいて、許可も得ずにぴとりとその腹に指を這わせる。つつ、と上に撫で上げると、男は不愉快そうにピクリと眉を動かした。

 耐えなきゃいけない、と思いながらも彼の体に触れたくて仕方がない。

 

 いつの間にか呼吸を荒げながらも、私は彼の身体にぺたぺたと触れていた。

 

「ごめんなさい……もう、もう手を離しますから」

「……いい。元はと言えばオレが餓死寸前まで追い込んだのが悪いんだろ」

 

 身体拭くまで我慢できるか? と彼が聞く。私は、それになんとか首肯を返した。

 

「……すいません……」

「謝らなくてもいい。オレの配慮が足らなかった」

 

 むしろ、他の淫魔よりもずっと理性的だろ。と、男はそう言いながらも髪の毛を湯に浸らせている。じゃぶじゃぶと、頭皮を荒々しく洗うその様を私はじっと見つめていた。

 髪の毛から水気をきって、それからタオルを水に沈める。濡らしたそれを絞り、身体をゴシゴシと拭き始める。

 

「あの、手伝っても……?」

「わかった。()()()()()()()()()()

 

 私は背中から彼の体に抱きついて、指先から温かなタオルで丹念に磨いて行く。彼の首筋に鼻を押し当てながらも、ゆっくりと身体に触れていった。

 

「アンタは淫魔にしては理性的な方だろ。淫魔族の知り合いがいるわけじゃないから詳しくはわからないが、噂よりもずっと落ち着いてる」

「ふーっ……♡ そ、そうですか……? あ、腕をあげていただいても……♡」

 

 彼の話が耳から通り抜けて、少しも頭に残らない。

 今考えられることは、目の前にある肉を貪り喰らうことだけだ。

 

「まぁ、ちゃんとした淫魔は生まれながらに理性を持つ必要がない種族だからかもしれないが……基本、一日中ヤってるような種族だって聞いたことがある。それに比べたら随分我慢できてる方だろ?」

「フーッ♡ フーッ♡ ……そ、そうですね♡ んちゅぅっ……♡」

 

 いよいよ我慢できなくなり、正面から胸板に舌を這わせて吸いついても男は平然としていた。着ているメイド服のボタンをくつろげて、そこからたぷんと現れた大きな白肉に手を誘導する。

 

「……ま、その分抑制されてるのかね。こんなに淫香垂れ流すとは思わなかった。……とはいえ、前回よりはずっとマシか」

「んふぅー♡ は♡ は♡ ご主人様ぁ……♡」

 

 未だに下着をつけているその上から撫で上げながらも、私は彼の唇にむしゃぶりつく。尻尾までも彼に巻きつけて、私は彼の身体を抱き寄せながらも味わって行く。オス臭い匂いが鼻腔を充満して、脳髄までもが満たされていくような気分になった。

 

 理性なんか、もはや溶けている。

 

 エルフの時よりも伸びたらしい舌は彼の口膣を蹂躙して、ねっとりと熱い唾液を無理矢理飲み込ませて行くのだ。……彼には淫魔の毒が効かないらしいけれど、それでも本能がそうしろと言ってくる。

 歯列をなぞり、舌の裏まで舐め上げて、濃厚なキスは口が離れても銀色に光る糸が繋がっていた。

 

 

 

 

 

 





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+朝勃ちフェラ+スパイダー騎乗位 ☆

 

 これは夢かと、明晰夢を穏やかな気持ちで見る。

 おそらく今は朝だろう。身体の外の気配を感じつつも、意識は夢まどろみの中にいた。

 

 オレは座ってなにかを見ているようだ。柔らかな椅子と、暗い室内に置いてあるのは足の付いている分厚さがある板。光って動く色のついた写真からは、人の声と音楽が同時に流れている。

 それは、『見たことがないもの(テレビ)』であった。

 

 知らない部屋に狭い部屋でオレは深く腰をかけ、なにやらボタンのついた長細いものを操作していた。目の前のテーブルに広がる紙類には、オレの知らない文字が羅列されている。その横には細長い何か(ボールペン)が転がっていた。

 服が床に落ちていて、どことなく全体的に黒い家具が多い気がする。散らかり方からして、きっとここは男性の部屋なのだろう。

 

 はたして、オレはどうしてこんな夢を見ているのか? 

 まったくの異世界に迷い込んでしまったかのようで、自分のいる空間の全てが見慣れない。

 

 しばらくすると、目の前の画面の映像が変わった。

 最初に、眩しい朝日の映像とともに大きくエックスの文字が現れる。画面左上にはおそらく()()の現時刻だろう『6:30』の文字が書かれていた。シュイーンというSEと共に、画面はゆっくりと大きく景色を映し出していく。

 

 そして、静かで深みのある男の声からそれは始まった。

 

 

 

 

 

 ———サキュバスメイドの朝は早い。

 

「まぁ、好きで始めた仕事ですから」

 

早朝にひっそりと起き、男の抱き枕から静かに抜け出して服を着替える。いつものメイド服と眼鏡を装着して、ベッド脇に置いてある水差しとコップを手にロビーへと向かう彼女。

 

最近では朝食の準備をするおばちゃんとも顔見知りになったと笑顔を覗かせる。

 

「やっぱり1番嬉しいのはご主人様から搾精できた時ですね。あの顔を見ると、やっててよかったという気持ちになります」

 

毎日毎日コンディションは変わる。

その日の天候や気温、そして前日の様子から体調までを加味して布団に潜り込むのだ。

 

目覚めた後、喉が渇いて不快な気分にならないようにひんやりと冷たい水差しを用意する。人間は睡眠時に200〜500mlほどの水分を喪失させているらしいので、それを考慮しての気配りの一つだと彼女は語った。

 

 ———プロジェクトseX 〜挑戦者たち〜

今日は、激動の時代とも言えるこの現代においてメイドサキュバスとしての棘の道を歩む聖女の軌跡を辿る。

 

(オープニングムービー)

(BGM:地上の星)

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

「……?」

 

 よくわからない夢(異世界のテレビ番組パロディ)を見せられたオレは、そのあまりの奇怪さに思わず目を覚ましてしまった。

 ふと眠たいままの目をベッドサイドに向けると、不思議なことに先程の画面の中のユターシャが持っていた水差しが冷えた状態で置かれていた。

 

 そして案の定、横にユターシャがいない。

 昨日致してからそのまま抱いて寝ていたはずのユターシャが腕の中におらず、布団の中からはじゅぼじゅぼと何やら水温が聞こえてくるではないか。

 

 下腹部には朝勃ち以上の熱が溜まっているし、よくよく考えてみれば足には不思議な重みがある。布団の中は人肌の温もりがあって、そちらを見ればもぞもぞと蠢いていた。

 

 まさか、と思いながらも布団を捲る。

 

 

 

 

「んふーっ♡ おふぁようごじゃいまっ、じゅるるっ♡」

「……なにやってんだアンタ」

 

 オレの目に飛び込んできたのは、朝勃ちを咥えて頭を上下させながらも舌でレロレロ舐めまわしているサキュバスであった。

 

 勝手に人のチンポを舐め回さないでもらいたい。

 

「なにって、朝フェラですよ。ロマンじゃないですか」

 

 と、言いながらも喉奥まで一気に飲み込まれる。長い舌が竿を這いずり回っていて、せまい口膣の中でのたうちまわっている。あまりの刺激に腰ごと持っていかれそうだ。

 こんなの、朝から味わうものではなかった。

 

「おい、やめっ……」

「気持ちいいでしょう? チンポの事なんて、私ぜーんぶわかってますから♡」

「待てって……せめて水飲んでからでも……」

 

 とりあえず強い刺激から逃れる言い訳として、オレは喉の渇きを訴えた。このままじゃすぐに射精まで導かれてしまいそうだと判断したのだ。

 ベッドサイドに置かれた汗のかいている水差しに手を伸ばす。やはり持ってきたばかりのようで、手に感じられるひんやりとした冷たさが心地よかった。

 

 とはいえ、寝転がったまま飲むなんてこぼしてしまいそうで、オレはユターシャに視線を向ける。

 

「ユターシャ、飲めないからちょっと退いてくれ」

「私が飲ませてあげますよ」

 

 布団から抜け出して颯爽とオレの手から水差しとコップを奪っていった彼女は、オレの腹の上に乗って、あろうことか彼女自身の口にそれを含んだ。

 ごくん、と一度自身で水を飲んでからもう一度コップを傾ける。そして今度はそれを飲み込まず、オレの方へと顔を向けて。

 

「んっ……あぶっ……んぐっ……」

 

 舌を差し込まれて、口を開けられてそこに冷たくて甘い水が流し込まれる。寝起きの乾いた喉にはそれが新鮮で、プルプルと潤う唇がやけに柔らかく感じられた。

 もう一杯飲みますか? と笑顔で問いかけられて、思わず頷いてしまう。

 

 すこし照れつつも、でも「好きでしょう?」と言わんばかりの顔で口を近づけるユターシャ。サキュバスの唾液成分を飲み込んだからか、じんわりと身体は熱くなっていった。

 

「もうすこしおかわりされますか?」

「いや、いい。……ユターシャ」

「はい」

 

 器用に手と尻尾を駆使して、水差しをあった場所に戻したユターシャは、オレの伸ばした腕の中にすっぽりと収まっていく。

 そのまま、口移しとは違うゆっくりと優しいキスを絡ませていった。すっかり気に入っているらしいエプロン付きワンピース(メイド服)を着こなしたユターシャは、オレが気持ちよくなるようにと何度も角度を変えて舌を入れてくる。

 

 次第に、ユターシャの手はオレの下腹部へと伸びていった。下生えを超えて、サキュバス唾液でヌルヌルとした勃起を柔らかくて優しい手で包み込まれて。

 

 くちゅっ……♡ しこ、しこしこしこ♡

 

「んっ……気持ちいいですか?」

「あぁ」

 

 デカい胸を押し付けられながらも、程よい強さで竿を扱かれる。口ではキスをしながら、オレの上にまたがるユターシャは金色の髪をエルフ特有の長い耳にかけてオレを見下ろしていた。

 んべ、と赤く色付いた舌はテカテカと光っていて、唾液をまとわりつかせている。

 

「その、よかったらこちらも……」

 

 身体を起き上がらせたユターシャは、胸元のボタンだけを外して、そのバカでかい乳をもるんっと露出させる。他はしっかり着込んでいるのに、その柔らかな白乳肉だけを露出しているのがなんとも卑猥だった。

 手で揉んでもこぼれそうなほど大きくてまろび柔らかいタップタプのおっぱい。その頂点には桃色で美しい形をした乳首が、興奮しているからかぷっくりと硬くなってオレを誘惑してくる。

 

 ユターシャがオレの両手を誘導して、胸に押し当てた。手のひらにとろけそうなほど柔らかな肉があてがわれて、それを好きにしていいと微笑まれる。

 ムンニュリと指が沈むその柔らかいおっぱいは、とても大きくて弾力とハリがあり、いくらでも揉んでいられるほど魅力的であった。

 

「ユターシャッ……」

「あっ、んんっ♡ そんな、強く揉んだらっ♡」

 

 胸を揉まれるだけでも気持ちいいのかくねくねと腰を揺らしながら、オレの唇に何度もキスを落としつつ甘ったるい声をあげているユターシャ。肉竿を扱きながらも、たまらないと言った様子で身体を揺らしているのがなんともいやらしい。

 オレは唾液を流し込まれながらも、夢中になってふわふわの乳肉を揉みしだいていた。

 

 そして、揉むだけでは飽き足らず先端の乳首をぎゅっと引っ張り上げたり、指先で弾きこねくりまわす。次第にキスよりも甘ったるい嬌声をあげる方が多くなっていき、それに合わせてチンポを扱く手もどんどん容赦のないものになっていった。

 

 ちゅこっ♡ しゅこしゅこしゅこ♡

 彼女の手の中で、サキュバスローションにまみれたオレの肉棒が先ほどよりも早いスピードで上下に手コキされている。

 

「んふぅ〜♡ ソコ♡ あんまりいじめないでくだしゃいぃっ♡」

 

 乳首に感じ入ってしまうのか、思わず口を離して呼吸を繰り返すユターシャ。口に与えられる刺激が疎かになるのがもどかしくて、オレはせっつくように舌を差し出す。

 

「キスしないのかよ?」

「んんぅ♡ しましゅ♡ キス好きです♡ ご主人様♡ 好きです♡ んちゅっ♡」

 

 乳首をこねくり回されて、鼻息荒くも舌を絡ませてくるユターシャ。口を離すたびに「好きです」と繰り返しながらも、必死にオレを気持ちよくさせようと手を動かしながらも口を蹂躙してくるのだ。

 

「んぷぅ♡ ご主人しゃま♡ あっ……♡ んん"ぅ♡ んへぇ♡」

 

 室内には、ちゅぱちゅぱと彼女がオレの舌を舐め回す卑猥なキス音が響いていた。

 

 彼女の羽がピクピクと揺れ動いている。尻尾はオレの足に巻きついてきていて、すがるようにギュッと締め付けてくる。

 すっかり顔を赤くして、とろけた目でオレを見つめてくるサキュバス。そろそろ限界が近付いていて、オレは彼女の太ももにそっと腕を伸ばした。

 

「ユターシャ、もう……」

「あっ……はい♡」

 

 ユターシャは上体を起こして、オレにまたがるように足を左右に大きく開き腰を下ろそうとしていた。尻尾で肉竿を支えているらしく、手はオレの腹の上にある。蕩けきった目はオレを見つめていて、視線がかち合うとにこりと笑いかけられた。

 

 かつての清楚さとはかけ離れた下品な姿勢で、彼女はチンポの上に跨っている。しかし、今から男を咥え込もうとしているメス穴は着込んでいる乳出しワンピース(メイド服)のスカートに隠されていた。

 オレからすれば、いつ挿入出来るのかわからない刺激が、もどかしくてたまらなくなる。

 

 ユターシャが徐々に腰を下ろすと、亀頭が柔らかくヌルヌルに濡れそぼっている穴に触れた。

 ぞくりと、肌が粟立つ。

 

 ———ぴとっ♡ じゅっ……ぷ♡ ぷ♡ ぬぷぅ〜〜〜っ♡

 

 見えないけれど、それがじわじわと肉に埋まっていくのがわかる。ぬるぬるとして柔らかくも、ギュンギュン締め付けてくる膣肉がまとわりついてくるのだ。ちゅぷ、ちゅぷ、と食われていく。

 

「あっ♡ あっ♡ あぁっ♡ すごいぃっ……♡ ご主人様ぁっ♡ きもちい♡ きもちいいですぅっ……♡」

 

 はふはふと呼吸を繰り返しながらも、彼女は気持ちよさそうに腰をおろしていく。いつしかオレの手は彼女の指先に絡め取られて、ぎゅっと貝殻のように繋がれてベッドに繋ぎ止められてしまった。

 

 ぬぷぷぷ〜〜〜……♡ ちゅッ…………ぷん♡

 

「ふっ、ふぅう〜〜♡ はぁっ……は、はいりましたっ♡ ご主人様ぁ……♡」

 

 しっかりと、根元までハメこんだユターシャ。

 中に収まった肉棒を馴染ませるように、動きを止めて浅く呼吸をしている。顔は蕩けきっていて、口角は薄くつり上がっていた。

 

 膣内では肉襞の粒がひとつひとつ蠢いていて、容赦なく食い付きバキュームをされているようだ。包み込まれる感触は優しく、それなのに容赦のない締め付けと凹凸の激しい膣内構造がえげつない。そこに埋められている様子がスカートに隠されて見えないのが、なんとももどかしかった。

 

「あっ……あぁ、ごめんなさいっ……♡ みたい、ですよね?」

 

 オレの視線に気が付いたのか、彼女は尻尾でゆっくりとスカートをめくりあげる。白い太ももが晒されて、そこから足の付け根と秘部がじわじわと見えていく。

 

 ユターシャのテラテラと光っている淫靡で麗しいおまんこの中に、オレの肉棒はすっかり埋まっていた。パイパンの元聖女無毛おまんこが、オレを咥え込んでいるのだ。

 日に晒されていない真っ白な箱入り娘肌と、その奥にあるピンク色の卑猥な肉壺。元聖女のおまんこは、チンポをハメてダラダラとすけべ汁をこぼしていた。

 

 サービス精神なのか、お下品にも左右に大きく開いたガニ股騎乗位のおかげでその接合部がしっかり見せつけられる。

 

「んっ……ご主人様♡ それでは、動きますねっ?」

 

 そうして、ユターシャはゆっくりと動き始めた。

 ずるずるととても緩慢な動きで腰が上がり、肉竿がすけべな愛汁でテカリ光っている様を見せつけられる。粘っこい本気汁が多量にまとわりついていて、それを視覚で見る事により一層気持ちよさを理解させられるのだ。

 

 亀頭のギリギリまでゆっくりゆっくり抜けかけて、オレが思わず後を追うように腰を浮かそうとした瞬間に、音を立てながら膣肉の中に収められてしまう。

 ゆっくりと抜かれて、そして中に沈むときは一瞬。その緩急差が激しくてたまらない。

 

 ぬぅっ……ぷぅ〜〜〜〜……♡ ぱちゅんっ♡ ぬぷぷ〜〜〜〜……♡ ぱッちゅん♡

 

「あぁっ……♡ あんっ♡ んっ♡」

 

 焦らされる、味わうようなねっとり騎乗位。腰を下ろす瞬間だけぶるんと揺れ動く生乳や、奥で味わうかのように埋めた瞬間に気持ちよさそうに目を細める彼女の顔はあまりにも毒だ。

 ユターシャの尻尾によってめくりあげられたスカートの中では、彼女の中に竿が出たり入ったりを繰り返していて、それを繰り返されるたびにじわじわと絶頂に近付けられているのを感じる。

 

「あっ♡ あんっ♡ 奥、奥ぅ♡ あ"っ♡ しゅきぃ……っ♡」

「あぁっ……」

 

 言葉を返す余裕も徐々に失われていき、オレは歯を食いしばりながらも目の前の絶景をただただ見つめるしかなかった。

 

 ねっとりとオレを受け入れる生膣は熱くヌルヌルの液で満たされていて、それでいて肉壁のヒダがゾリゾリと勃起を擦り上げていく。肉の粒がひしめき、オレの竿をしゃぶり尽くしていくのだ。

 こんこんと湧き続ける愛液は柔らかい果実のように甘い匂いで、ねっとりとして粘性が高い。おそらくこれはサキュバス独自の特性なのだろう。

 

「はぁっ♡ あ"んっ♡ んぅっ♡ ご主人様ぁ♡ チンポ♡ しゅごっ♡ 硬くてッ♡ きもちいですっ♡」

 

 ぱちゅんっ……ぬっぷっ♡ ぱちゅっ♡ ぱちゅんっ♡ ずぷッぱちゅんっ♡

 

 少しずつ、抽送が早く激しくなっていく。

 スパイダー騎乗位で、最初はゆっくりだったのにいつのまにか杭を打ち付けるかのように腰を上下に動かしていて、彼女は夢中になってオレを味わっていた。

 

「すきっ♡ すきですっ♡ おまんこっ♡ 中ぁ♡ あっ♡ あぁぁあっ♡」

 

 室内に、柔らかい尻が太ももにうちあてられる激しい音が響く。

 オレももう限界が近付いていて、しかしまだイきたくなくて、そのギリギリを耐えていた。

 中に出したら気持ちいいことなんてわかりきっている。それでも、ユターシャの乱れた姿が尚見たくて我慢してしまうのだ。握られている手を強く握り返して、耐えるように腹に力を込める。

 

 竿が膣肉で擦りあげられるたびに、突き抜けるような気持ちよさがチカチカと目の前で光る。

 オスに媚びた肉壁はチンポに強くしゃぶりついていて、そのみっちりと肉の詰まった狭い柔穴が絡み付いて肉棒を搾り上げていく。

 

「あ"〜〜〜〜っ♡ も♡ イきたいっ♡ アクメ♡ イきたいですっ♡ ご主人様ぁッ♡ あ"ぁっ♡ おまんこ♡ イきたいぃ♡」

「ッくぅ……オレ、もッ……ユターシャ、ユターシャッ」

「ご主人様ぁっ♡」

 

 彼女が手を離して、オレに抱きついてキスをしてくる。激しい勢いで口内に艶かしい舌が侵入してきて、オレの口の中を無遠慮に舐め回していく。ぎゅっと抱きついた姿勢で、濃厚なキスをしながらも、それでも尚腰を振りたくるのをやめない。舌を差し出しながらも、くぐもった声音で嬌声を漏らしていた。

 

 それに応えるように、オレも彼女の細いウエストに手を回す。柔らかい腰を手全体でしっかりと掴み、彼女の杭打ちピストンに合わせて下から腰を突き上げて、尚もっと深いところで射精しようと好きに腰を打ちつけるのだ。

 

「ッ〜〜〜〜〜〜〜♡♡♡♡ ッ♡ ッッ♡ おふぅ♡ んはっ♡ はっ♡ んちゅ♡」

 

 ばちゅんッ♡ ばちゅんッ♡ ずこッ♡ ばぢゅんッ♡

 

 室内の湿度は高まり、互いに荒い呼吸を交換しながらも抱き合って身体を密着させて、ケダモノのように身体を貪り合う。

 

「ごしゅ、じんっ♡ ぅあ♡ ごしゅじんしゃまっ♡ あああっ♡ んちゅう♡ すき♡ すきぃ♡」

 

 自身で腰を打ち付けると、さらに絶頂が目前に近付いていた。あまりにも気持ちよすぎて、何度もイきそうになっているのを耐えている。彼女が夢中になってオレを求めるその淫乱で可愛らしい姿が、たまらなく×××××(愛おしい)

 

「はぁっ♡ ご主人様ぁっ♡ も♡ もうイぎますぅっ♡ イぐっ♡ 一緒に♡ あ"ッ♡ あ"ッ♡ あ"ッ♡」

「あぁ……ッ」

 

 そうして、オレは彼女が強く膣内を痙攣させたところで、限界の糸がほどけた。

 

 どぷっ、びゅるるるるるっ♡ びゅぷっ……♡

 

 視界が真っ白になる程強い射精感を味わいながら、思考が一切出来ない状態へと放り投げられる。出した精液は全て彼女の子宮口に吸い上げられながらも、中に少しも残さないとばかりに一気に膣内が締めついてきて絞り出されていく。

 

 射精してもなお容赦のないサキュバスまんこ。射精しているのに、さらに射精が重ねられるようだ。

 

「はっ、ぅ、ぐぅ……ユターシャッ」

「あ"……気持ちいい……♡」

 

 すっかり感じ入ってるのか、彼女は目をつぶって中出しを感受していた。小刻みに身体が揺れて、仰向けに寝転がるオレの首元に頭を埋めている。耳元から聞こえる、事後特有の荒い呼吸がなんとも色づいていた。

 

 目の前に彼女の細い首筋があって、そこには昨夜の跡がついている。昨日口付けてから吸い上げたそこは赤く鬱血していて、それが体の至る所についているのだ。

 重ねるようにしてそこにキスマークを落としていく。白い彼女の身体には、それがよく映えていた。

 

「んっ、ぁはっ……♡ ロマンチック、ですねぇ」

「いいだろ、別に」

 

 力を抜いた彼女の心地いい重みが身体に預けられて、その身体をオレは抱きしめる。もう少し力を入れたら簡単に折れてしまいそうな身体で、ほっそりとしていて柔らかかった。

 甘えるように頭を押し付けてくる頭を撫でれば、彼女の背中に生えたコウモリのような黒い羽根はご機嫌なようで小刻みに揺れていた。

 

 

 

 

 

 

 * * * *

 



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-魔術チート

 どうしてこうなったのだろう、と思うことは多々ある。

 

 転生したと気がつき、自身の身体が赤ん坊になっていた時はなんども『どうして』を繰り返した。少し成長し、親から素質があるからと聖女教育に送り出された時も『何故だ』と思っていた。歴代最強の白魔術の使い手と言われた時も、その期待や重圧が苦しくて『なんで』と周りを恨んだモノである。

 

 何度も何度も繰り返す、自分自身の中で渦巻く言葉。選ばれたという意識はないのに、気がつくとまるで主人公のような立場に立たされているのがイヤだった。

 そういう運命なのかもしれないけれど、それを運命と断定すればするほど『どうして自分なのか』と思ってしまう。ただのモブだったはずの『オレ』なのに、どうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだろうか。

 

 でもまさか、サキュバスになるとまでは思わなかった。

 どうやら神様はとことん私の事が嫌いらしい。

 

 ……まぁ、エルフの宗教に神様なんていないんですけどね。

 

 

 

 

 

「あ"〜〜〜っ♡ 奥"ゥッ♡ ずこずこッ、てェッ♡」

「……ッ」

 

 中を揺さぶられて、口から卑猥な単語がずらずらと溢れてくる。今世では封印したはずのエロ単語が口から溢れて、後ろから私を犯す男の切り詰めたような呼吸が近くで聞こえてきた。

 

 男だったのに男に犯されるなんてとか、エルフの聖女として清らかじゃないといけないとか、そういう考えが全部溶けて消えていく。理性はすっかり蒸発して、膣内で今にもイきそうになっている肉竿に意識が集中していた。

 

「あはっ……あ"♡ ちんぽぉお♡ おいし♡ ざーめんはやくほしぃいい♡ おねがいしましゅ♡ はやく♡」

「ユターシャっ……あーすげぇ、持ってかれるっ……」

 

 サキュバスだからか、膣内を自由自在に動かして中に埋まるチンポを味わう事ができる。自身の膣内壁のプリプリとした肉粒をねっとりとまとわりつかせて、硬い怒張に吸い付かせた。敏感なカリ首も、血管の浮き出る中竿も、全てを味わい尽くしていく。

 収縮を繰り返してえげつない動きを繰り返す肉壁は、永遠にねっとりと柔らかくヌルヌルの愛液を溢し続けていた。

 

「中ぁ♡ もっとばこばこしてぇ♡ あ"〜〜〜っ♡ しゅき♡ しゅきですっ♡ せっくすぅうう♡」

「ばっ……か、おまっ、う、ぐぅっ……!」

 

 男の腰に足を絡ませて、尻尾までしっかりと身体に巻きつける。肉竿をびったり隙間なく咥え込めば、男はもう中に射精するほかない。

 子宮口の小さな穴をしっかりとザーメンの出る穴に密着させ、プニプニのそこに今すぐにも射精できるように身体をホールドして……

 

「奥"ッ♡ いっちばん奥でぇ♡ ナマ中出し♡ くだしゃい♡」

「くそッ……出す、ぞっ?」

 

 

 ———そして。

 

 私が膣内を痙攣させてイった瞬間に、男も耐えきれなかったように身体を震えさせた。

 彼の腹筋がこわばり、目をつぶって何かに耐えるようにザーメンが吐き出されていく。それが腹の中にじんわりと広がっていき、私はアクメの絶頂を味わいながらも多幸福感に満たされていた。

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 昼下がりの街の、裏路地のとある店にて。

 私は椅子に腰掛けたおばあさんとお話をしていた。

 

 

 

「アンタ契約悪魔なのかい? はー、こんなご時世で流行らないだろうに大変だねェ」

「あはは、まぁご主人様にはよくしてくださってますから」

 

 そう答えながらも、ずっと店の商品を見比べているご主人様をチラリとみる。

 彼の手にはそこそこ高価な魔術具がふたつ、どちらも効果は違うけれどなかなか珍しい品だそうだ。

 

 魔術具というのは大変便利なものである。魔術が使えない者でも手順さえ踏めばその道具を使用することができるし、書き込まれた内容が擦り切れるまでは何回でも繰り返しの使用ができる。

 形は多岐に渡り、紙や石といった凡庸な形だけではなく、どんなものでも基本は加工することが可能だ。

 

 とはいえそれを作れる魔術師というのは少なくて、かなり高度で知識のある魔術師でないと作れない代物なのだ。

 私も以前は聖術具として白魔術を埋め込んだいろんなアイテムを量産していたこともある。いつか発注数が多くなりすぎてあまりのブラック環境に発狂しかけた聖女研修時代が懐かしいものだ。

 

「悪魔なんてこの町でもまぁ珍しいもんだがね、契約悪魔なんてもっと珍しいさ。アタシの人生でアンタは2人目だよ」

「そんなに珍しいものなんですね。ちなみに、その私以外の契約悪魔ってどんな方でした?」

「ちょっと抜けた悪魔だったねぇ。主人がまた賢くてね、毎日泣きながら酷使されてたみたいだよ」

「そ、そうですかぁ……」

 

 まるで魔女のような見た目をしたおばあさんはお節介焼きなのか、ご主人様の背後で暇を持て余していた私に声をかけてくれたのだ。

 ここの店自体は御亭主が経営されているらしいけれど、商品の目利きなどは奥様がされているらしい。

 

 この街に店を出して半世紀以上にもなるという。私の年齢の半分ほどではあるけれど、人間なら充分に長い年月と言えるだろう。

 

「いいかい、聖教会のやつらには気をつけるんだよ。私もね、仲の良かった悪魔が1人奴らに殺されてるんだ」

「私契約悪魔ですが、それでもダメなんですか?」

「ダメだね。アイツらは魔族を殺すのが生き甲斐なのさ。言い訳を言う前に殺されちまうよ」

 

 会ったことがないけれど人間の聖教会、恐るべし。

 まぁエルフの聖寺院の連中も魔族はゴキブリと同じと言っていたし、似たり寄ったりですかね。

 

「とはいえ、1人でいなければ多分大丈夫さね。ご主人様と一緒にいればきっと大丈夫さ」

「ならいいですが、まぁ会わないに越したことはありませんね。怖いです」

「そりゃそうじゃ」

 

 と、そんな話をおばあさんとしていると後ろから不意に声をかけられる。買い物が終わったのか、そこそこの荷物を持ったご主人様がこちらを向いていた。

 

「いくぞ」

「はぁい! おばあちゃん、ありがとうございました!」

「またきておくんなよー」

 

 からんからん、とドアのベルが鳴る。店主のおじいちゃんとおばあちゃんに見送られつつも、私達は昼下がりの温かな陽気の中を歩きだした。足取りは軽やかに、街の喧騒はほどほどに騒がしい。

 

「たくさん買われましたね? 魔術具って結構な値段するのではなかったでしょうか」

「必要経費だ」

 

 大きめの物から小さめの物まで色々と購入していたらしく、そこそこの額を払っていたようにも見える。大きめの袋には、やたらと過重梱包されている購入物がゴロゴロと入っていた。

 

 その中に手を入れた男は、買ったものの中で1番小さな箱を取り出す。

 

「わ、わ! 買ってくださったんですね、ありがとうございます!」

「このくらいなら安いもんだが……そういうのが好きなのか?」

 

 箱から取り出したのは、華奢なチェーンのついた小さな水晶玉のネックレスだ。薄紫に輝く透明色のそれは透き通っていて、サイズも指でつまめるような小さな水晶である。

 

「アクセサリーが欲しいなら、あんまり高くなければ他にも買ってやる」

「いえ、アクセサリーとして買ったわけではなくてですねぇ……」

 

 私自身にはファッションセンスというものはないし、特別このデザインのネックレスが欲しかったというわけでは無くて……

 

「? ……ネックレスじゃなくて、何か他の用途ってわけか?」

「はい、魔術具に出来ないかと考えています」

 

 このネックレスも、分類としては魔術具の素材にあたる。ちゃちではあるが術式を書き込む場所が用意されているのだ。

 あの魔術具専門店でも雑貨棚の一部に溶け込んでいた商品だし、魔術具の素材というよりは子供のアクセサリー感覚で売り出されていたものだが……

 

 そんなものでもうまく活用できるのが、チート転生主の定めというもので。

 

「魔術具? あのな、魔術具なんてオーダーメイドで依頼するのに一体いくら積めばいいと思ってんだ? そんなオモチャにそこまでの大金は無理だぞ」

「私が作ります」

「いやだから……は?」

 

 

 

 

 

 

 

 固まる、そして。

 

 

 

 

 

「はぁ?」

 

 たっぷり数秒の間を開けて、胡散臭いものを見る目で見下ろしてくるご主人。私はそんな目を気にせずに、尻尾をパタパタと揺らしながら上機嫌に水晶を箱から取り出してお天道様に向ける。きらりと光が反射して、水晶の中に虹の色が輝いていた。

 私のご機嫌などよそに、ありえないとでも言わんばかりの顔をしているご主人様だが、なにも考えがないわけじゃないのだ。

 

「言っておきますが私、白魔術に関しては転生チート故に天才ですので。たとえ淫魔の身体であっても出来る気がします。というか理論的にできるはずです」

「はぁ……」

 

 気のない返事は「寝言は寝て言え」をありありと語っていた。

 

 さては私の事を、介護が必要な清楚系サキュバスとでも勘違いしていたのだろう。

 国の第一席聖女として数十年を生きていて、常に身近にお世話がかりがいたためにこの世界で1人で生活する能力は皆無と言っていい。そして、清貧を美としていてもある程度立場に見合った贅沢はさせてもらっていた私だ。やっぱり硬い地面より柔らかなベッドの方が寝心地がいいし、雨風に晒される旅よりも快適な方がずっといい。

 

 この男と出会ってから、私はほぼセックスするか男の後ろを歩くかしか出来ない女でしかなかった。白魔術を使えば自爆するのでまともに使えないし、箱入り娘として育っているためにこの世界の常識も少しばかり欠如している。

 食事という名の交尾を恵んでもらい、そしてただ守られるだけの女。

 

 聖女として、ヒロインとしては正しくても、チート転生主としては大変許し難いものである。

 

「今まで私のことをただのお荷物として見ていた、それは認めましょう。事実私は貴方の不便なお荷物です。……しかし! 白魔術の技術だけ見れば世界最高峰と言っても差し支えがない私ですから! というかそろそろポンコツ扱いするのをやめて欲しいんですね!」

「はぁ」

 

 私はこれでもTS転生チートエルフ聖女なのだ。

 たかがサキュバスになる程度のハンデで、使えないお荷物扱いなんてごめんである。

 

 ここ数日、暇な時はその設計も考えていた。魔術の行使でなく、刻印をする程度なら魔族のこの身体でも負担はないはずだと踏んでいる。

 私はいざ凱旋と言わんばかりに宿に向かって歩き出していた。これが成功すれば、私の有用性をアピールして日々の食事のグレードアップを提案する腹づもりである。1日2発だけなんて、サキュバス的にはお腹が空いてしまうのだから。

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 ———そして。

 

「あ"あ"あ"あ"溶ける溶ける溶ける溶けるッ!」

「バッ……こんのバカ! あぁもう、ほんっとバカ! 淫魔が白魔法なんざ使えるわけねぇだろ馬鹿!」

 

 案の定失敗した私は、ご主人様に手当てされながらも怒られてしまった。しゅん、と羽と尻尾が下にさがり、買ってもらったばかりの時のワクワク感はどこへ行ったのやら。

 

 なにが悪かったのだろうか。

 私の手はドロっと溶けて、ほんの少しだけ骨が露出している。今日の朝補充したエネルギーを使ってすぐさま修復されていくが、その痛みは相当なもので思わず生理的な涙が溢れてくる。

 ……いや、すこしだけ悔しさも混じった涙だ。

 

「うぐゥ"〜……何故ですかぁ……痛いよぉ……」

「そういう生き物なんだから仕方ねぇだろ。気持ちはわからんでもないが、頼むからもうすこし大人しくしてくれないか?」

 

 魔術を起動したわけではない。ただ文字を書き込みながら魔力を充填していっただけなのだ。なのに白魔術が暴発したというのは理論的にありえない事象が起きていて、そこまで運命に()()されているのかとため息が溢れてしまう。

 

「ふーっ……すいません、ご迷惑をおかけしました。いやしかし、ここまで嫌われてるんですねぇ、私って」

 

 こんなの、あんまりじゃないか。

 言ってしまえば『自分だけ重力が倍にされてる』とか『自分だけ慣性を受けにくい』といった世の法則を捻じ曲げてくるタイプの理不尽に近しいものを感じる。それこそ『ただのモブ男くんを転生させて女のエルフにしてチート能力を持たせてみた』———みたいな、そんな理不尽。

 抗うことの出来ないルール設定は、不条理な私の運命をレールに敷いているようで胸糞が悪かった。

 

 魔術があって、ドラゴンがいて、エルフがいて魔族がいるこの世界で、やっと私は()()()()()スタート地点に立ったというのに。今まで手にしていた実力を全てゼロにさせられてからのスタートだなんて、あまりにも不条理が過ぎるというものだろう。

 

 潜在能力チートだからって、そこに行き着くまでにかなりの勉強を繰り返してきたのだ。それを全て溶かされるのは、行き場のない怒りやどうしようもない虚無感が湧き上がってくる。

 

「……まぁ、諦めませんケドね」

「ユターシャ」

 

 まだ皮膚がみるも無惨な状態になっている私の手をとったご主人様は、何か言葉を選ぶように視線を彷徨わせてから、難しそうな顔をして口を開いた。

 

「もしオレの事を思って、その……本来の力を出そうとしてるならやめて欲しい。アンタに傷付かれるのは困るんだ」

「……ご主人様」

 

 その顔には様々なものが浮かんでいた。

 申し訳なさや迷い、面倒臭いものから蓋をするような逃避、そして本心を出来る限り伝えようとしながらも言葉を選んでいる難しさ。たまにするその表情には、私に対する負い目が感じられる。

 

「金の不安か? 言っておくが普通に生活できる程度の貯金はある。アンタがオレと同じ職について稼ごうなんて考える必要はないんだ」

「たしかに私は、(足手纏い)がいるために貴方が本来の生活に戻れないことを憂いています」

 

 この人の邪魔になりたくないという思いがあるのだ。

 

 危険とされている『甘き森』で1人で活動できるほどの実力者で、どうやら貯金も余裕があるらしい男。冒険者なんて自転車操業だと思っていたけれど彼はそうでもないらしく、日々余裕のある生活を過ごしている。

 彼のことを詳しく知らないけれど、私がいなければもっと自由な生活をしていたのだろう。

 

 私を飼うメリット? そんなの、珍しいサキュバスとヤれることくらいだろうか? 

 でも、ただ性欲を発散させるだけなら金を使って女を抱けばいいのだ。金があるなら、『元エルフ国第一席聖女だったけど追放されて淫魔になった』なんてめんどくさい来歴を持つ私なんかよりもずっとまともな人間を選ぶ事だって出来るだろう。

 

 彼が私を助けてくれる義理なんてどこにもない。ただ「困っていた」から私を助けてくれた、顔に見合わずお人好しな人。だから彼に少しでも迷惑をかけたくないというのは当たり前の感情だ。

 冒険者として生活していたのなら、その生活を続けられるように……私も、彼についていけるほどの実力があればいい。

 

 ———でも、私が強くありたいと思うのはそれだけが理由じゃないのだ。

 

「私、もしも聖女にならなかったら、多分冒険者になってたんです。だって魔術がある世界に転生したんだから、冒険に出ないなんて勿体ないじゃないですか」

 

 素質を見出されてから、それ以外の生き方が無くなっていた私。国の役に立つと持て囃されたのは気持ちが良かったけれど、でもやっぱり転生したのならそういう生き方をしてみたかったのだ。図らずもエルフの国を追われるハメになったのだから、私はそれを前向きに捉えようとしている。

 

 優秀な冒険者の横に立って、一緒に伝説を作る……とまで言うと壮大過ぎるかもしれないけど、せっかくのこの不思議な世界で私はそう生きたいのだ。

 

「無謀なことはわかっています。でも、私は何もしないでこの生活を享受できるようなエルフじゃないですからね? そんなの、この人生がもったいないです」

 

 未完成の魔術具を手に取る。途中までは出来ていたそれは、魔力を込める段階で暴発したらしい。何故それが起きたのかを理解しようと、それまでの式を頭の中で再度組み立てて行く。

 そんな私をご主人様はじっと見つめていて。

 

「……わからないな。オレがやってるから冒険者になりたいのか? こんな荒くれた職業なんざ聖女サマに務まらないと思うが」

 

 彼の言う言葉の節々からは、冒険者という職への嫌悪感が滲み出ている。

 

 まぁ、世間一般的にはそういうものなのだ。冒険者なんていつ命を落とすかもわからない一攫千金を目論む不安定な仕事。自分の力量を見誤れば死ぬし、そうでなくても切った張ったの暴力的な世界だ。

 

 それでも、やっぱりその響きは憧れる。

 

「この世界、私の常識ではまだまだ推し測れないんです。だから見てみたいなって思います。もし貴方が冒険者じゃなかったとしても、私は多分冒険者になりたいと思いましたよ」

「……そうか」

 

 彼は少しだけ顎に手を当てて考えてから、テーブルの上に転がった雑誌のひとつを引っ張り出した。

 

 ———『るるぶ』

 それは、全国各地の「見る」「食べる」「遊ぶ」を徹底的にガイドした旅行情報誌。写真を多く掲載してワクワク感を掻き立てさせる、旅行に行く数週間前に購入してワクワク感を強くさせる素晴らしきアイテム。

 

 ……っていうか、この世界にもるるぶあるんですね? 

 

「世界を見たい、か……まぁ、エルフ国から出たことないアンタにとっては外の国なんて未知の世界だろうからな」

「あの」

「まずは海でも見てみるか? 観光地なら比較的どんな種族がいても問題ないし、この街以外のところも見てみたいよな?」

「違います」

「世界が見たいんだろう? エルフの国にないもので近場だとこういうところがあるな」

 

 ———違うのだ。

 

 たしかに世界を見て回りたいんだけど、それは剣と魔法の世界で汗水流してピンチになったりしながら冒険をしたいという意味で、こういうバカンス的旅行じゃない。

 

 彼には聖女様を接待しようという気概がありありと浮かんでいた。

 

「すまなかった。たしかにずっと同じ部屋でやることもなく生活してたらつまらないよな? どういうとこに行きたい? こことか、女に人気ある観光地らしいぞ」

「違います」

「もうすこしアクティブな所ってことか……? オレも観光旅行なんてした事ないからわからないんだが、どういうところに行きたいんだ? 南国とか行った事ないだろ?」

「違うんです! あの、私はもっとこう……安全で楽しい旅行ってよりは、危険でスリリングでロマンスの溢れるやつ……!」

「旅行、行きたくないのか?」

 

 困ったな、と言った表情の男。そしてその手元にあるるるぶには、まるで熱海のような温泉と海のイラストが描かれている。

 エルフの国に温泉という概念はなかった。海もないし、あるのは山々だけである。100年ぶりの露天風呂を突きつけられて、思わず言葉に詰まってしまう。

 

「温泉って知ってるか? オレも何度か入ったことあるが、結構いいぞ。ここは海も綺麗だしな、どうだ?」

「……きたい」

「ん?」

 

 あぁ、ごめんなさい前世のオレよ。

 散々異世界転生して冒険者になってチーレムしたいなんて夢を抱いていた頃のオレよ。

 

 だってだって、人の金で旅行に行けるなんて最高じゃないですかぁ……! 

 

「温泉旅行、行ぎだいっ!!!」

「よし、じゃあ行くか」

 

 

 

 



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+温泉+駅弁+ソープパイズリ ☆

 旅行というものを自分自身で楽しむためにやってきたことは初めてだ。

 

 もうすこし若かった頃に()()の下見で旅行の真似事をしたことはあったが、その時は楽しむためのものではなかった。無害な観光客のふりをして義父(ボス)の政敵を深夜に殺したのは、果たして何年前だったか。

 

 二泊三日、ビーチが目前にあるこのホテルはそこそこの値段はするものの……オレの金ではないから問題はない。

 先日、義父(ボス)に手紙を送ったところ聖女様の保護費としてかなりの金額を包んでもらっていたのだ。せいぜい手厚く不安のないように生活させろという文面に、オレが引き連れているサキュバスが本物の聖女様という裏付けが取れたことがわかった。

 

 ……おそらく、あと数ヶ月後くらいに聖女サマを()()()()のか連絡が来る筈だ。

 要人を保護してやったという名目で国に返すとなったら、彼女を健康体で返さなくてはならないのだ。

 

 という名目のもと、大量の軍資金を手に入れていたオレはそこそこいいホテルにやってきていた。

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

「いい景色じゃねぇか、なぁ?」

 

 夏といえど、温かな湯に浸かった状態で感じる外の空気はどこか涼しく感じるものだ。強い日差しを照り返す真っ青な海と、遠くにある真っ白な入道雲が美しい。

 

 今回は彼女のために部屋に露天風呂がついている宿を取っていた。2人で入るにはそこそこ広すぎる湯船と、身体を洗う洗い場。湯船の上には日差しを避けるための屋根(ガゼボ)があり、開放的だが外からは見えないような作りになっている風呂は居心地が良かった。白亜で高級感のある、リゾートらしい作りがなんとも目に眩しい。

 高い金を出した甲斐がある、というものだ。

 

「温泉はどうだ? 熱くはないか?」

「いやぁ……とってもいいお湯ですけどぉ……」

 

 オレの足の間で、ゆっくりと肩まで温泉に浸かっているユターシャに問いかける。

 互いに全裸でくっついている現状。ヌルヌルとした泉質のお湯の中で触れる肌は、瑞々しくてもっちりと柔らかい。心地のいい温度のお湯の中で身体中の筋肉がほぐれていき、オレは程よいリラックス感を楽しんでいた。

 

 しかし、彼女はそうでもないらしく。

 

「そのぅ……一緒に入るとか、私に対しての拷問ですか? ちょっと食欲(性欲)抑えるのしんどいと言いますかぁ……」

「1人で入りたかったのか?」

「いえいえ、一緒にお風呂に入れるというのはとても嬉しいのですよ? でも生殺しキツすぎるというか、『えっちで優しそうなお姉さんにからかわれてる童貞』みたいな気持ちです。いや、えっちで優しいお姉さんは私のハズなんですけどね?」

 

 と言いながらも、気を逸らそうとしているのか水面をぱちゃぱちゃと音を立てて遊ばせているユターシャ。

 

 オレが腰に腕を回して()()()()()()()ために彼女は少しも離れることができず、されるがままにならざるを得ないのだ。ぎゅっと抱きしめると、彼女の心臓がバクバクと高鳴っているのが良く聞こえる。

 オレの身じろぎひとつひとつに対して、ユターシャは深く深呼吸をしながらも、何かを我慢するかのように自身の尻尾を掴んでいた。

 

「うぅ……せめて離れませんか?」

「いいだろ別に、減るもんでもあるまいし……それとも、オレに触られてるのは嫌なのか?」

「嫌じゃないですよありがとうございます! でもねぇ、減るんですよぅ! 主に私の自制心とか理性が減ります! 今日はあと1回しかエッチさせてくれないんでしょう!? こんなのってあんまりです!」

 

 なんて叫ぶユターシャ。そんなに嫌なのかと離れようとするものの、離れたら離れたでエルフ特有の長耳が少しだけ折れ下がる。見て取れる感情の起伏がわかりやすいのはいい事だが、何が不満なのかはよくわからなかった。

 

「……だってだって、セックスは1日2回までのお約束じゃないですか」

「まぁ、普段はそうだが」

「寝起きに1回と寝る前に1回なワケで、つまり今はどんなにえっちな気持ちになってもさせてくれないんでしょう……?」

 

 たしかに契約では『基本1日2回まで』とルールを作っているし、毎日律儀にそれを守っている。ただ、その後に『互いの同意があればその制限はナシ』とも記載しているのだ。

 それを忘れているのか、はたまた今まで数々の色仕掛けに動じなかったオレに諦めているのか、ユターシャの中では『1日に出来る回数は2回だけ』というのが決まりになっているらしく。

 

「今まで散々セクスィに誘惑しても動じなかった貴方が、こんな都合よく真っ昼間から優しくしてくれるワケないじゃないですか!」

 

 そういって彼女は、再びこらえるように体を縮め込ませた。小さくブツブツと「煩悩退散」を繰り返し呟いている姿は少しだけ哀れで、これがかのエルフ国第一聖女様だとはとても思えない。すこし厳しくしすぎたのだろうか? 

 

 オレはため息を一つこぼしてから、彼女を抱きしめなおす。

 またもや肩を跳ねさせて身体を強張らせるユターシャだが、そんな生娘みたいな反応をしたところでオレが離すわけないだろう。

 

「はぁ……ユターシャ?」

 

 わざとらしく、低い声を出して彼女の名前を耳元で囁く。我ながら似合わない真似だと思ってしまうが、ムードというものが大事なのだと自分の中で言い聞かせる。

 

「オッヒョ?! バッチリ鍛えてる筋肉胸板がっ♡ 直に当たってぇ……ッ♡ だ、だめれす♡」

「ダメなのか? 寂しいこと言うなよ……」

「ヒェーッ、耳元はっ……♡」

 

 ユターシャは金色の髪をまとめているために綺麗なうなじがよく見えて、その下には柔らかくてでかい乳がお湯に浮かんでいた。細い肩は陶器のように綺麗な白色をしていて、水を弾くピチピチとした肌艶がなまめかしい。

 目の前にあるその極上の肉体は火照り、少しだけ赤みをさしていて……とても()()()()()

 

 生ぬるい風が、心地よく頬を撫でていった。火照った身体にはちょうどいい風だ。

 オレは反応してしまった自身の息子を、無遠慮に彼女に押し当てる。ごり、と硬くなったそれは柔らかな彼女の尻にあたったようで。

 

「〜〜〜〜ッ♡ ……当たってますよっ? ふーっ♡ 気のせいですかコレ?」

「仕方ないだろ? こんなイイ女と一緒に風呂なんて入ってんだから」

 

 こんなのを見て、勃たない方がどうかしてるだろう。

 

 そっと腹に回していた腕を胸の方へと移動させて、後ろから彼女の乳肉に優しく触れていく。びくんと身体を反応させて、されるがままに焦らすようなオレの遊びを感受しているユターシャ。

 

 無防備なうなじに舌を這わせて、1番柔らかそうなところに吸い付いていく。そこから口付ける場所はどんどんと上の方にいき、そして長い耳を優しく食んだ。

 

「あぁっ♡ だ、ダメですよ? 私勘違いしちゃいますよっ……? いいんですか? ねぇ?」

「防音は()()()()()からな、好きにしてくれ」

 

 先日購入した魔道具のひとつ。半径5mに対して防音効果を持つ石を起動して脱衣所に置いておいたのだ。窓も何もない露天風呂で、甲高いユターシャの声があたりに届くのもよくないだろうという、彼女への配慮である。

 

 そう告げると、彼女は意外といった顔でオレの顔を覗き込んできた。

 

「……えっと、それはつまり……シ、シてもいいって、ことですか?」

「そりゃ、サキュバスと一緒に風呂に入るんだからなぁ」

 

 こちらを振り向いたユターシャの唇を優しく奪っていく。触るだけの優しいキスを何度も繰り返して、その柔らかくぷにぷにとした感触を味わうのだ。

 

「んっ……旅行って、ハメを外すモノらしいからな。たまにはこういうのもいいだろ?」

「ええええ! ほ、ほんとに? じゃあ今日は回数制限もナシって事でいいですか? 今えっちして、また夜にシても……?」

「あぁ、お手柔らかにな」

 

『1日2回まで』の約束がどうしても不満だったらしいユターシャは、その言葉を聞いてパッと顔を明るくした。

 男女が裸になってくっついているのに、察しが悪いのか、それとも控えめな性格だというべきか……

 

 シてもいいと許可を与えられた瞬間に、彼女はオレの方を向いて唇にちゅぱちゅぱと吸いつきながらも反応している肉棒に手を伸ばした。

 

「〜〜〜っ♡ 一緒にお風呂入るって言われた時は、生殺しさせるつもりなのかと思いましたよ」

「なんだよ、オレからそういうことしたくなったらダメなのか?」

「いえ、すっごく嬉しいです♡ あなたも私を求めてくれてるんだなって……」

 

 そういって彼女はゆっくりと舌を口の中に侵入させてきた。長くて柔らかく、それでいて繊細な動きをするソレはオレの口の中をゆっくりと味わっていく。積極的だがどこかゆったりとした動きは、この情事を楽しもうとしているようだった。

 

 オレをもてなそうとしているのか、穏やかな空気が流れる。貪るようなソレではなくて、互いに高め合うような生温い愛撫はとても心地がいい。

 

「んちゅっ♡ ご主人様ぁ……♡」

「ユターシャ……」

 

 温かな湯船の中で、自身のモノが優しく扱かれている。オレの身体に彼女の大きな胸が押しつけられていて、その柔らかな乳の合間を水滴がこぼれおちていった。

 

 彼女の肩を抱き寄せて、その胸の頂点を指先で虐め始める。びくん、と反応を返したユターシャは蕩けた目でオレを見つめ返してきて。

 

「……なんだよ、もう興奮したのか? 硬くなってるぞ?」

「んっ、だってぇ♡ あててたら、そのぅ♡」

 

 そう言いながらも、キスを止めることはしない。

 ユターシャの乳首を優しく捏ね回しながら、彼女の柔らかい身体を存分に味わっていく。はしたないキスの水音は、湯船からお湯が溢れる音に掻き消されていた。

 

「乳首っ♡ あんっ♡ 好き、ですっ……優しく、ゆっくりいじめられるの……♡」

「なぁ、オレの膝の上、乗ってくれるか?」

「? は、はい……」

 

 ただでさえ軽いユターシャは、お風呂の中では紙のように重さを感じない。膝の上に乗せた彼女の腕をオレの肩に乗せて、目の前にやってきた大きすぎる柔乳肉に両手を伸ばす。比較的大きいオレの手ですらそのおっぱいは溢れるほどで、指が沈んでいくその柔らかさがとても心地いい。

 

 暫くそのおっぱいの感触を存分に堪能してから、オレは両方のおっぱいをぎゅっと真ん中に寄せて、乳首を擦り合わせた。

 

「ユターシャッ……♡」

「あっ♡ あっ、両方、いっぺんなんてッ……♡」

 

 そして、その乳首を両方一度に口に含んだのだ。

 コリコリと柔らかくも自己主張をしている感触はとても美味しくて、その甘さに夢中になってしまう。

 

 じゅぱっ……じゅるるるっ♡ じゅっ……♡

 

「んんぅっ♡ 好き、これすきですっ♡ 気持ちぃっ♡」

 

 歯を立てて、しかし押し潰さないギリギリの力で噛みついていく。じゅるじゅると吸い付いてみたり、そのまま舐め回してふたつの乳首をねっとりと虐めていった。

 開放的な浴場には、彼女の甘い声が広がっていく。

 

「んぅううっ♡ あんっ……あ、あっ、ご主人、さまぁっ……♡ だめ、だめなのにぃっ……♡」

「イイのか?」

「はいっ♡ 気持ちいいんですっ……♡ あぁぁっ、乳首で軽イきしちゃいますっ……♡」

 

 それを聞いて、オレはゆっくりと舐めしゃぶる口を離した。まだイかせるつもりはなかったのだ。

 

 物足りなさそうに顔を赤らめつつも、ゆるく肩を上下させて呼吸をしているユターシャ。昼下がりの屋根の下、オレの足にまたがるように互いに近い距離で向かい合ってお湯に浸かっていると、その表情はとてもよく見えた。

 目を瞑って与えられる刺激に感じ入ろうとしているその姿はあまりにも無防備で、じわじわとなぶる様にかわいがりたくなってしまう。

 

 乳肉の感触を味わうように揉んで、たまに舌で乳首をと舐め上げていき……

 

「はぁ……♡ 焦らさ、ないでぇっ……焦らさないでくださいっ……♡ あっ……♡」

「なんだよ、オレにこうされるの嫌いなのか? 寂しいなぁ?」

「あっ♡ 違うんです♡ やめないで♡ もっと、もっといっぱい、触って欲しくてぇっ……♡」

 

 好き放題揉み触って、たまに吸い付いたり舐めたりして、また離れていく。そんな焦ったい刺激にビクビクと身体を揺れ動かすユターシャ。彼女が切なそうに羽を羽ばたかせれば、それに合わせてお湯に小さな波が立った。ゆっくりと焦らすような愛撫に夢中になっているユターシャを眺めながらも、その身体をじっくりと味わっていく。

 

 いよいよ我慢できなくなったのか、彼女がオレの頭をぎゅっと抱きしめてきた。柔らかい白肉の果実に顔が埋まって、せっかく味わっていたユターシャの痴態が見れなくなってしまう。

 これはこれで気分がいいが、今は彼女を楽しんでいたかった。

 

「顔、見せろ」

「ううぅ……っ♡」

 

 焦ったい緩慢な動きで彼女はオレの首に抱きついていたのを離し、その気持ちよさそうに蕩けた顔をオレに向けた。ここが風呂だからか、はたまた興奮したからか、その白い肌は赤みをさして目元は少しだけ潤んでいる。

 極上の美女が、オレを切なそうに見つめてくるのだ。互いに見つめ合いながらも、その柔らかな身体を手で撫で回していく。

 

「……ほんと、エロい体してるよなァ」

「んっ♡ ……嬉しいです♡ 私で興奮、してくださいますか……?」

 

 なんて、不安そうに潤んだ目で見つめてくるユターシャ。これほどの美貌の女にせがまれて興奮しないわけがないのに、オレの普段の努力(我慢)故に自信がなくなっているらしい。

 

 今日くらいは素直にユターシャを満たしてやるかと、オレは彼女の身体を味わいながらも……

 

「するに決まってるだろ? 毎日毎日、我慢するオレの身にもなれよ」

「〜〜〜っ♡♡♡ え、えへへ……嬉しい♡ そんなふうに思ってくださってたんですね♡」

 

 そうして、彼女の顔が近づいてきて再度唇が奪われる。

 ほんとコイツ、キス好きだよな。

 

「っ♡ ちゅっ♡ ご主人様ぁっ……♡」

「うん? なんだよ?」

「私……もう、欲しいです♡」

 

 手で味わう肉体は吸い付くような触り心地で、ずっと撫で回していたいほどだ。ぷっくらと柔らかな乳首に指が掠めるたびに体が跳ねて、太ももや下腹部に手が伸びるたびに切なそうに呼吸を吐き出していた。

 オレはそれを堪能しながらも、柔らかい口を何度も何度も角度を変えて味わう。どこまでも甘くて、その毒はオレの身体に回っていった。

 

「はぁっ……ユターシャ」

「あぁぁ♡ すき♡ ご主人様♡ すきですぅっ……♡」

 

 思わず、夢中になってオレの舌に吸い付いているユターシャの身体を抱きしめてしまう。もっと力を込めれば手折れてしまいそうで、その細くも柔らかな肉のついた身体がたまらなかった。

 

 彼女は怒張に尻尾を優しく巻きつけて、嬉しそうな顔で腰を浮かせる。

 お膳立てされたようにオレの先にわれめを擦り付けて、もうあとは少し力を入れるだけで入ってしまう状態。

 

 もう、勃起の苛立ちは収まりきらなくなっていた。

 

「挿れる、ぞっ……?」

「えぇ、はい♡ ご主人様♡ はぁぁ……っん♡」

 

 オレは彼女の腰を掴んで、ゆっくりゆっくりと引き寄せていった。苛立ったそれが彼女の中に沈んでいき、ぬぷぬぷと肉の壁に圧迫されていく。柔らかくてキツく狭いそこは気持ち良くてぬるぬるの穴。

 

 じんわりと中に入っていき、柔らかい膣肉に愛される。唇に吸い付いてくるユターシャのとろけた目とかち合って。

 

「あ"ぁ、クッソ気持ちィな……ユターシャ、痛くないか?」

「〜〜〜っ♡ 幸せ……♡ ご主人様♡ わたし、私っ……♡」

 

 彼女の腰を掴んで、そのままそれを上下させる。すこし動くたびにお湯がパシャパシャと音を立てて、緩く穏やかな刺激はじわじわと理性を奪っていく。くちゅくちゅと互いに舌を絡ませて、穏やかな昼下がりの中で溶け合うような快楽に身体が奪われていく。

 

「ユターシャ、つかまってろ、よ?」

「え? っ!? ま、まぁっ!?」

 

 彼女の身体を抱きかかえて、そのままオレは立ち上がる。湯船に波が立ち、大きな音とともに2人分の体積を失った湯船は水嵩が減っていた。

 繋がったまま立ち上がり、彼女の長く柔らかな足が反射的にオレに巻きつく。

 

「ひゃわっ! あのっ、ちょっ!」

「っく……ユターシャ、締め付けすぎだ……ッ」

 

 急に身体が宙に浮いたことによる驚きからか、彼女の膣内がきゅっと締め上がった。唐突なその締め付けは不意打ちで、思わず出そうになるのをグッと堪える。

 

 バランスを崩したら危ないかもしれないが、普段から鍛えているので女の身体を抱き上げるくらいは余裕がある。

 なにより、ユターシャはありえないくらい軽いのだ。おそらく反射的に飛ぼうとして羽を動かしているからだろうが、体にかかる負荷というものがほとんどない。まるで小動物でも抱き上げてるかのような軽さだ。

 

「!? え、駅弁……? ちょ、危ないですよ? 重くないですか?」

「いい、いいから力抜けよ、体重もっとかけろ。軽すぎる」

 

 オレがびくともせずに彼女の身体を抱き抱えているのに安心したのか、ユターシャはおずおずと体の力を抜いていった。翼も羽ばたくのをやめて、彼女本来の自重でさらに奥に埋まっていく。いつもより深いところまで突き刺さる勃起に与えられる快感は深く、ゾリゾリと竿が締め付けられていった。

 

 彼女の身体をしっかりと抱きしめて、そしてゆっくりと深く埋まっていたのを引き摺り出していく。

 

 ぬぷ……ぬぷぷぷ……♡

 

「ひっ♡ あ、ぁぁぁあっ♡ これっ…….♡ こんな、こんなぁっ……♡」

「あー、やっべぇ……♡」

 

 挿れる時は一瞬で、彼女の体重で深くまで押し込んでいく。ゆっくりとそれを繰り返して、あたりにはお湯が湯船に溜まっていく音に紛れて、いやらしい水音が響いていた。

 

 ぱちゅんっ♡ ぱちゅっ♡ ぱんっ♡ ぱんぱんっ♡

 

「ぉおっ♡ おまんこっ♡ しゅごっ♡ これっ♡ おまんこぉっ♡ イきゅ♡ イっちゃうぅ♡ すぐ、イっ……♡」

「ん、好きにイっていいからな♡ 今日はいっぱい中出ししてやるから、たっぷり気持ちよくなろうな?」

「〜〜〜〜〜〜〜ッッ♡♡♡ な、中出し♡ いっぱいっ……♡」

 

 それを聞いて、ユターシャは嬉しそうに尻尾を体に巻き付かせてきた。濃厚に舌を絡めとられるようなキスをお見舞いされて毒が回り、そして柔らかい身体を支える腕にも力がこもってしまう。

 

 オレはもう、ドロドロに溶け合うようなまぐわいに溺れかけていた。

 遠くに見える真夏の日差しと、目の前にあるユターシャの痴態に脳みそがおかしくなる。あまりにも贅沢なこのひとときは、オレには過ぎた甘露でしかない。

 

「欲しいか?」

「ほひっ♡ ほしいですっ♡ ご主人様ぁっ♡ あんっ♡ あっ♡」

 

 ぱちゅぱちゅと、下から彼女を揺れ動かすように突き上げる。彼女の中で果てたくて、オレは彼女の身体を夢中になって揺さぶっていた。

 甘く喘ぐ声、肉同士が打ち当たる音、お湯の流れ落ちていく音。その全てが気持ちいい。

 

「ユターシャッ……ユターシャ、出すからな?」

「はいっ♡ 中に、どうかっぁああっ♡」

 

 そうして、彼女はぎゅんっと中を締め付けた。ゾリゾリでぬるぬる、そして柔らかな肉の粒が一気に引き締められて、捩れるように蠢いていく。身体が強張った彼女は、オレの唇にキスをしながらもイき果てていた。

 

 柔らかすぎる肉に導かれるように、オレも思わず限界を迎えてしまい。

 

「ッ♡」

「おぉっ♡ はひゅっ♡ あぁぁぁっ♡」

 

 どぴゅっ♡ びゅるるるるっ♡ びゅくっ……♡

 

「はぁあっ……ん♡ あ、ああっ……♡ ごしゅ、じん、さまぁッ……♡」

「ユターシャぁっ……」

 

 オレに抱きついている彼女の身体を強く抱きしめて、たっぷりと溜め込んでいたものを吐き出していた。中で吸い付かれて、搾り取られるように圧迫されている。それがあまりにも心地よくて、オレは長い射精感に身体を委ねていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーっ……♡ ふーっ……」

 

 彼女が満足したように脱力して、オレはゆっくりと彼女の身体を下ろしていく。倒れ込まないように抱きかかえながら、風呂の縁に静かに座らせた。

 

「ご主人様ぁ……♡」

「あぁ」

 

 彼女に請われるままに、その顔にキスを落としていく。優しく優しく、その柔らかく濡れた唇に何度も何度も軽いキスを落とした。唇が触れて離れて、それを何度も繰り返すのだ。

 身体は火照って熱く、オレは彼女の横に座って身体を外に出しながらもそれを楽しむように味わっていた。

 

「ユターシャ、のぼせてないか? もし辛かったら一度上がってもいいが……」

「ふふ、とっても元気ですよ。たっぷり注いでくださったので」

 

 肌艶を潤わせたユターシャは、まだ少しだけ肩を上下させながらも嬉しそうに微笑んだ。足首から下だけを湯の中に浸らせていた彼女は、ぱしゃりと音を立てて立ち上がる。

 

 それより身体洗いませんか? と彼女は洗い場を指さした。2人分の小さな椅子は彼女曰く『そこだけ和風(?)』らしくて、身体を洗うための液体石鹸が何種類も置かれている。オレにとっては慣れない様式のそれだが、どうやらユターシャにとっては知っているものらしい。壁にかかっている看板に洗い方が載っていて、それを上から読み込んでいく。

 

 かぽーん、なんて木桶がタイル張りの床に置かれる音が響いた。

 

「髪の毛から……よし、ユターシャ。洗うから背中向けてくれるか?」

「はぁい」

 

 オレに背中を向けたユターシャのまとめ上げていた髪を解いて、彼女の長い髪にたっぷりのぬるま湯をかけ流していく。金色のたっぷりとした髪の毛は細くて、すぐに水を吸い込んでいた。液体状のどろりとした石鹸をとり、頭皮を優しく揉み解すように洗っていく。

 気持ちいいのかセックスする時とは違う「あ"〜」なんて声をあげているユターシャは、すっかりリラックス状態になっていた。

 

「はわぁ……おじょうずですねぇ……」

「流すぞ、口閉じてろ」

「ふわぁい……」

 

 泡を流して、今のとはまた別の液体を取り髪につけて、そしてまた洗い流す。出来上がった絹のような金糸は柔らかくて、それを丁寧に再度髪留めで留めあげた。

 

「ふぁ……気持ちよかった……ご主人様も頭洗ってあげますから、背中向けてくださいます?」

「いや、オレは別にアンタみたいに長くないから、自分で洗えるが……」

「いーいーんですーぅ!」

 

 言われて渋々と背中を向ける。ユターシャのように綺麗なものではなくて、酷い傷がたくさん残っているだろうそれはあまり人に見せるにはいいものではないのだが……

 と、思っていると頭からお湯がぶっかけられる。その後すぐに彼女は液体石鹸をとった手で髪の毛に侵入してきて、わしゃわしゃわしゃと音を立てながらも頭皮が洗われていった。泡が目の方まで落ちてきて、思わずギュッとつぶる。

 

「このシャンプー泡立ちいいですね……えーい、スーパーサイヤ人!」

「スーパーサイヤ人?」

「ゴンさん!」

「……誰だ?」

「はなわ!」

「花輪?」

 

 どうやら彼女はオレの髪の毛でなにやら遊んでいるようで、キャッキャと無邪気な声が背中から聞こえてくる。一通り満足したら洗い流されて、そして先程オレがしたのと同様にもう一つの液体を髪の毛につけられて、今度はすぐに洗い流されて……

 

「はい、髪の毛は終了ですよ。お疲れ様です……身体の洗いっこしましょう?」

「身体の……そうだな、じゃあ」

 

 アメニティのボディタオルをお湯に濡れさせて、液体石鹸をとり泡立てさせていく。柔らかな布のそれは肌に押し当てるととても心地よいもので、泡立てたソープからは甘くいい匂いがした。

 向かい合った彼女の身体に、そのたっぷり泡立てたものを押し当ててゆっくりと擦っていく。最初は腕から、肩や脇を通して、そして胸に……

 

「えへっ……♡ ご主人様……♡」

「ジロジロ見るんじゃねぇよ」

「だ、だって勃ってらっしゃるんですもん……見ちゃいます」

 

 勃つだろ、仕方ないだろ。

 オレは彼女を睨みつけながらも、傷つけないように出来る限り優しくそれを洗っていく。

 

 徐々に泡だらけになっていく彼女、一緒になって立ち上がり、あちこちを綺麗にしていく。一通り洗ったら彼女にボディタオルを掠め取られて、オレも同様に身体中が泡だらけにされていった。彼女の手がオレの身体中をベタベタと触って、柔らかなボディタオルで擦られていく。背中までしっかりと洗われて、そして前も……足先まで彼女にしっかり現れてしまう。「お痒いところはありませんか?」と問いかけてくる彼女と同じくらい泡まみれにされていた。

 

 そして、いざ流そうとオレはシャワーに腕を伸ばした、が。

 

「んっ……ま、まだちゃんと洗えてないですよ♡」

「? 洗っただろ?」

「いえ、お背中がまだ……」

 

 彼女はオレの背中にそっとくっついた。

 先程ボディタオルで優しく丹念に擦られたはずのそこに柔らかな乳肉が押し当てられて、泡のおかげでぬるぬるのそれがなんとも心地いい。そのまま、ゆっくりとオレの背中でそれが上下に動いていく。

 

 ゾクゾクと、粟立つような刺激が背筋を通った。

 

 腹の方に彼女の腕が回り込んできて、ギュッと抱きしめられながらも下から上に乳が押し当てられる。まるで胴体を肉の壺に吸引されているかのような錯覚すら覚えるそれは、彼女の柔らかくてたっぷりとした乳肉がムンニュリと形を変えていることが容易に想像つく。

 

「ユターシャ……っ! やべっ……くぅっ♡」

「ご主人様ぁ♡ ヌルヌルで気持ちいいですね……♡」

 

 先ほどから、コリコリと硬くなっている頂点の感触が背中に押し当たっていたのだ。見えない中で想像力を掻き立てられて、その背中の柔らかな2つの肉の中にある硬い感触を強く意識してしまう。

 

 そうして、しばらく壺の中にいるかのような洗体をした彼女は、ゆっくりとオレの腕に()()()()。フニフニとして柔らかなまたぐらの恥肉がぬるぬるの泡だらけになっている腕を前後に動いていき……

 

「ふぅ……っ♡ い、いかがですっ……? おまんこでたっぷり、洗いますね…….♡」

「なんっつうヤらしいことしてんだよ……わかってんのか?」

 

 へこへこと腰を前後させて、主にオレの手を泡だけではないぬるぬるにまみれたそこに押し付けてくるユターシャ。少し指を曲げれば中に入ってしまうだろうそれは、きっとわざとやっているのだろう。

 

「んっ♡ あ、指っ……♡」

「すげぇ締め付けだな? 中柔らかくてヌルヌルしてて……」

 

 指を少し動かして、彼女の弱点を優しく刺激していく。蠢く肉壁はオレを魅了しようと必死に指に吸い付いてきていて、そこに押し当てているユターシャの足がキュッと内側に力がこもった。

 

 にゅるっ♡ ちゅぽちゅぽっ……♡

 

「えへへ……♡ ご主人様ぁっ♡ その、おちんちんにも()()()したいのですが……」

 

 彼女は泡でたっぷりの乳に指を這わせて、それをむぎゅっと寄せあげる。あまりにもデカくて柔らかな重たい乳肉は、彼女の手に沿って形を変えながらもオレの目前で誘うようにヌルヌルになっていた。

 ぎゅっと寄せて、泡が押し潰されたそこをゆっくりと開いて……彼女は、オレの前にかしずく。

 

「この……ヌトヌトになったおっぱいで♡ おちんちんをギュッと包み込んで……シゴき抜いて差し上げますね♡」

 

 そうして、重く柔らかな肉がオレの勃起をゆっくりと食らっていく。みっちりと隙間なく左右から押さえ込まれた乳肉の中に、ヌルヌルになった怒張が押し入っていくのだ。肉をかき分けるようなそれは、極上の乳圧を味わうようで思わず腰が浮いてしまう。

 

 ニュルニュルのおっぱいがオレの肉竿を全て包み込み、その亀頭だけが谷間の上から出ている。彼女はそれに口を開けて舌を出し、濃厚な唾液をこぼしながらも左右に乳を揺れ動かし始めた。

 

 ちゅぽっ♡ ぱちゅっ♡ じゅぶぶっ……♡

 

「はふっ……♡ んちゅ♡ ご主人様♡ お加減、いかがでふか?」

「ヤッ……べぇだろこんなの。チンポ溶けるッ……やわらけぇ」

 

 優しく、しかし容赦のない圧。発情しているのか吐息が熱くなっているユターシャは、亀頭の先端を舐めまわしている。

 両手で押し込むように左右の乳肉を持ち上げているその様子は、視覚で見るにはあまりにも暴力的だった。

 

「んふぅー♡ かうぱぁ♡ あぁっ……おいしい♡ おいしいれすっ……♡」

 

 白くて柔らかくて大きな激柔重乳肉。たっぷりのそれが、オレの怒張を愛すように揺れ動いている。

 

 ぱちゅっ♡ ぱちゅんっ♡ ぱちゅぱちゅぱちゅっ♡

 

「すごっ……♡ ギンギンで、気持ちいいですか? ふふっ♡」

「最高だ……あーくそ、どこに出せばいい?」

「お口で♡ お口にたぁっぷりぴゅっぴゅしてください♡ 全部吸い上げますから♡」

 

 彼女がそういって、口を開いて長い舌を出しながらもそれを見せつける。今は赤くてぬるぬるとした唾液に塗れたその口膣内に、白くドロっとしたザーメンを好き放題吐き出したらきっと気持ちいい事だろう。チロチロと動き回る舌は官能的で、それがゆっくりと亀頭を舐めまわしていくのだ。

 唇を窄めてザーメンが出る穴に吸いつきながらも、キス音を立てて勃起を愛でていた。

 

「ご主人様っ……♡」

「ユターシャ、ユターシャッ……♡ くそ、もうっ……」

「えぇ♡ いっぱい♡ 気持ちよくなってください♡ 濃いのたっぷりコキ抜いてあげますから♡」

 

 ぱちゅっ♡ どちゅっ♡ ぢゅるっ♡ ぢゅるるるるるっ♡

 

「あ"ッ、くぅっ、出、ェッ……!」

「〜〜〜〜〜〜〜ッ♡」

 

 オレはまた限界を迎えて、彼女の乳の中でイき果てた。

 

 視界が真っ白に燃えて、身体が一気に開放感に見舞われてしまう。視界に捉えられるのはユターシャがオレの肉竿に吸い付いていることだけで、それ以外に何も思考ができない。穏やかだが情熱的な行為は、オレの頭をズブズブに溶かし切っていた。

 

 そして———

 

「ぷはっ……♡ んぁ♡」

 

 竿から口を外したユターシャは、オレに向かって口を開いた。舌の上には多量の白くてどろりとした液体が乗っていて、それがオレの吐き出したモノなのだろう。濃いピンク色をしたベロと、白くてどろどろのザーメンの色の違いがなんとも猥褻すぎる。口の中に溜められたザーメンはそこそこの量があり、ユターシャは嬉しそうに目を細めた。

 

 どれだけ出したのかを見せつけてから、ユターシャは口を閉じて上を向く。

 ごくんっ♡

 

「ふぅ〜……ごちそうさまでした♡ 気持ちよかったですかぁ?」

「あぁ」

 

 ニコニコと微笑みながら、上機嫌でオレの体についている泡をお湯で流していくユターシャ。イったばかりのオレは、彼女にされるがままになってしまう。彼女の体にまとわりついていた泡も洗い流されていくのをじっと見つめていた。

 

 細くて、柔らかな綺麗な身体だ。見ているだけでも芸術品のようで、動作のひとつひとつに品性がある。男を魅了してやまない若くて柔らかな肌は美しくて、柔らかなふとももに思わず噛み付いてしまいたくなる誘惑を兼ね備えていた。

 

「おふろ、上がりますか?」

「……そうだな」

 

 まだ毒が効いている。

 ユターシャの身体に備わったサキュバス淫毒を多量に飲み込んでいるオレは、もう()()()()()()()つつあったのだ。油断していたユターシャの身体に、起き上がりつつある自身のものを押し当てる。

 

 彼女は驚いたようにオレの顔を見て、それから下を見て、また顔を見上げた。まだヤれるぞ、とオレは彼女の腰に腕を回す。密着した素肌同士、彼女の体温はとても高かった。

 

「ベッド、行こうか?」

「! ……は、はいっ♡」

 

 まだまだ日は明るい。

 豪勢だった風呂場を出たオレ達は、身体を拭くのも乱雑に足早にベッドに倒れ込み———

 



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+水着+ビーチ+アホエロ ☆

 晴れ渡る空、青い海。

 穏やかな波が打ち寄せていて、白い砂浜は太陽の光を跳ね返してとても眩しい。ハワイやグアムの観光パンフレットをそのまま現実に持ってきたような光景は夏の楽園と言っても過言ではないだろう。

 

 まぁ、この世界にはハワイもグアムもないんですけどね。

 

 

 

 

「お待たせしました〜!」

「あぁ、遅かっ……た、な……」

 

 水着に着替えた私を待ち受けていたのは、傷だらけの体にパーカーを羽織った水着の男だった。鍛えられた筋肉はなだらかで、色気のある体格をしている。

 

 人が少ないリゾート地。ホテル利用者しか使えないビーチは私たち以外全くの無人で、備え付けてあった防水のソファに男は寛いでいた。熱い日差しを避けるように作られた屋根の下で、ご主人様の横に私は腰掛ける。

 

 彼は私の足先から頭まで何度も見て、それから一言。

 

「その水着で、ここまで来たのか?」

「えぇ、はい。さっき買って、部屋で着替えて、ホテルのビーチ専用出入り口から来ました」

「そうか……」

 

 何故か眉を顰めている彼だが、私の水着になにか変なところでもあるのだろうか? 

 

「えぇと、似合ってませんか?」

「似合ってるけど……ちょっと露出度高くないか?」

「水着ってそういうものでしょう」

 

 先程買ったばかりの水着。ビキニとパンツ、そして透けたパレオの3点セットを身に纏った私は強調するように胸を持ち上げた。

 たゆんっ、とおっぱいが彼の目の前で揺れ動く。

 

 薄青色の腰巻きパレオは透けて柔らかな足のシルエットを存分に強調し、金色の玉装飾が施された白のビキニは男の視線を釘付けにするたわわな胸を隠しきれていない。パンツは腰の部分がヒモだけになっていて、普段は見せないような足の付け根の柔らかな肉を見せつけていた。

 

 布面積自体は少ないものの、色味やデザインのおかげで品があるようにも見える。聖女としての気品を保ちつつ淫魔として彼と身体を重ねている私のイメージにぴったりなのではないだろうか。

 

「まぁ確かにちょっと露出度は高いかもしれませんが、でも下品じゃないでしょう? こういうの、お嫌いですか?」

「嫌いじゃない、けどなァ……」

 

 言葉を濁して、小さく溜息をついた彼の耳元に口を寄せた。身体をぴっとりと密着させて、柔らかな胸はご主人様の身体に吸い付く。

 

 そっと、内緒話をするように耳元で———

 

「この水着で、あとで、いっぱいシましょうね……♡」

 

 私がそう囁くと、彼は彼で溜息をつきながらもそうだな、なんてクールに返したのであった。

 

 昨日も散々甘々に愛し合った私達。

 未だに体のあちこちには彼に吸われたキスマークが残っていて、彼の背中にも私が爪を立てた跡が残っているだろう。それでもまだ足りなくて、彼を意識させるように呟いたのだ。

 

 人前で足やお腹を曝け出す格好は少しだけ慣れないものの、それもこれもご主人様を挑発するため。私は、彼の身体にしなだれかかって柔らかな肉を彼に押し付けた。

 

「……あんまりそう煽ってくれるなよ」

「嫌ですか?」

「我慢できなくなる、だろ?」

 

 彼にグイッと肩を引き寄せられて、私の頭はちょうどよく彼の首筋に収まってしまう。そのまま男の手は胸元に向かって……

 

 むにぃっ♡

 

「はひゅぅ!? ちょっ、ここ見られッ……!」

「誰もいねぇだろ……それに、来たら気付くから大丈夫だ」

 

 確かに、ビーチはまったくの無人で私たち以外に誰もいない。背もたれのお陰でホテル側からは見えないだろうし、ご主人様はやけにそういう勘だけは鋭いのだ。きっと人に見られるということはないのだろう。

 

 だからといって、こんなひらけたところでおっぱいを鷲掴みに揉まれるだなんて少しだけ恥ずかしいし、なんだかそういうプレイにも思えてきてしまう。

 

「エッロいの着やがって、上も下も肉が溢れてるじゃねぇか」

「ぁんっ♡ ご主人様っ……♡ いや、でもだめですよっ……こんなところでなんてっ……」

 

 私の豊満すぎる柔らかな白肉にご主人様のかくばった指が食い込んで、水着越しにその感触を味わわれていた。

 

 彼の顔を見上げると、あまりにも平然と海を眺めている。

 

「興奮しちゃうじゃないですかっ……! いくらサキュバスでも、流石にヤってるとこ見られたらまずいっていうかぁっ……♡」

 

 彼の腕の中でおっぱいを揉まれている私は、次第に発情してきてしまう。

 

 後ろから見ればただ身体を寄せ合っているカップル程度にしか見られないだろう。しかし、私のおっぱいはご主人様の大きな手で形をムンニュリと変えて、水着から溢れそうになっていた。

 

「するなら、そのぅ、部屋に戻りましょう?」

「部屋には戻らねぇよ」

「そんなぁ……ッ♡ じゃ、こんな……ホテルから見えちゃうとこで、えっちするんですか?」

「お前、『あとでいっぱいシましょう』って言っただろ? こんなすぐハメるわけねぇだろ」

「してくれないんですか!? え、じゃあなんでおっぱい揉むんですかぁっ……♡」

 

 生殺しするつもりなのか、男はただなんてこともない顔で私のおっぱいを好き放題揉みしだいていた。

 無理やり興奮させられて、なのに無責任にオチンポハメてくれないなんて……意地悪すぎるその仕打ちに、私はただただ感じてしまうしかない。

 

 だって、おっぱい好き勝手揉まれるの、気持ち良すぎッ……♡ 強く揉まれるの気持ちいい♡ 抗えない♡ もっとして欲しくなっちゃう♡

 

「こんなエロい水着きて……さてはオレ以外の男に色目使う気だったのか?」

「そんなことあるわけなッ……♡ んっ♡ んぉっ……♡」

 

 そしてビキニの上から、乳首をきゅむっとつまみ上げられる。パッドも入ってない布だけの水着は乳首を浮かせていて、それをまんまと甘くつねり上げられたのだ。

 

「くひっ……♡ ご主人様ぁっ……い、いじめないでくださいッ……♡」

「聞いてるだろ。エロい水着で男誘惑するつもりだったのか?」

「っ……その、下心はありましたっけど♡ ご主人様、よろこばせようってぇっ……♡」

 

 私はご主人様に喜んで(興奮して)もらいたかったのだ。

 

 なのに、ご主人様はちょっとだけ怒っているような顔で私を見下ろしていた。穏やかなのに少しだけイラついているような……そのイラだちを、私のおっぱいに当てつけているかのような……

 

「こんな公の場でそんなエロい身体見せつけたらだめだろ? せめてオレの前だけにしてくれよ」

「はひゅっ……んぉっ……♡ す、すいませんっ……♡」

 

 水着を押し上げるように硬くなってしまったポッチを引っ張り押し込められる。私の身体はすっかりとおっぱいだけで気持ちよくなりかけていた。

 快楽に弱いサキュバスボディは乳首アクメしそうで、彼の身体に小さくすがりつく。

 

「あ"っ♡ はふ♡ やばっ……♡」

 

 なのに。

 

 もうすぐで絶頂にイきそう、なんて思った瞬間だった。

 パッと、彼の手が止まったのだ。

 

「———っ? は、へ?」

「人、こっち歩いてきてる」

「!」

 

 ご主人様の手は急に止まって、私の胸元から離れていった。そして彼の着ていたパーカーが私の胸元を隠すようにかけられる。

 

 私は思わず辺りを見渡して、そしてよく目をこらしてずっとずっと遠くにいるよぼよぼの老人が歩いているのを確認した。その老人は綺麗なビーチを散歩するかのように歩いていて、私たちの方に目もくれていなかったが……

 

 ご主人様、あんなに遠くにいるおじいちゃんに気がついたんですか? 

 

「あんなに遠くなのに……よく気が付きましたね」

「そりゃ、まぁ、冒険者だからな」

「なるほど」

 

 まるで亀のように遅い歩みの老人が、渚をゆっくりと歩いていく様をぼんやりと眺める。健康目的で海岸を歩く老人ってどの世界にもいるもんなんだね、なんてぼんやり思ってしまった。

 

 ある意味、邪魔が入ってよかったのかもしれない。

 あのまま盛り上がっても、ご主人様は私を焦らそうと抱いてくれなかったに違いない。少しの嫉妬と独占欲を垣間見せた彼は、先程の意地悪な顔を潜めてソファに身を預けている。

 

 まさかご主人様が嫉妬するとは思わなかったのだ。だから、私は彼に囁くように呟く。

 

「……心配しなくとも、私はご主人様によって強制的に契約させられてる身ですからね。でもまぁ、ごめんなさい。以後は気をつけますね?」

「うるせェ」

 

 男だったのに、男心を汲み取ってあげれなかったのは反省だが……まさか彼がそんなに私の事を思っていたとは知らなかったのだ。

 成り行きで始まった関係だし、彼にとって私なんて都合のいい穴でしかないと思っていたが……意外と、私は愛されていると傲慢になってもいいのかもしれない。

 

 愛だ恋だなんて、ろくに彼女も作れなかった童貞にはちょっと難しいのだ。少しクールで口数少ない彼の真意を測るには、私の経験は浅すぎる。

 

 彼の拗ねたような言葉を聞きながらも、私は未だ火照った身体をパーカーで包み隠したのであった。

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 

 そして、そのうちに無理矢理発情させられた身体は熱が冷めていき、10分ほどして老人の背中が見えなくなった頃には私もすっかり落ち着いていた。

 

 太陽は未だに暑くて、しかしいい加減私もこの景色を眺めているだけでは飽きてきたのだ。

 

「海に来たんだから海行きましょう! 泳ぎたいです、私!」

「泳げるのか? 一応浮き輪は持ってきてるが……」

 

 100年前、まだ人間で学生をしていた頃の話。薄ぼんやりとしか覚えていないけれどプールの授業はそこまで嫌いじゃなかったはずだ。同級生と同じくらいか、それよりも少し早いくらいでクロールや平泳ぎ、バタフライまで出来ていた気がする。

 今世では泳いだことはないものの……記憶はあるのだから、きっと泳げるハズである。

 

 私は、彼の手を取って渚に向かって駆け出した。

 

「ひゃあっ! 冷たいですねぇー、あははっ!」

「おい、足攣ったりするなよ?」

 

 足の指を通り抜けていく波の冷たい感触がくすぐったくて、コロコロと笑いながらも彼の手に捕まってゆっくりと歩いていく。浮き輪もちゃんと持ってきている彼はまるでエスコートするように私に手を差し出していて、その体幹のよさから体重を預けてもびくともしていない。

 

 ゆっくりと深い方まで行って、おへそあたりまでが海水に浸かってしまう。バランスを取るためにサキュバスの羽根をばさばさと動かしながらも、私は彼の差し出してくれた手を掴んでいた。

 

「すっごい……海が透き通ってますねぇ。あ、魚いる!」

「あんまりはしゃぐなよ? っと……」

 

 私が指さした方向に彼は一瞬だけ水中に手を潜らせて、驚くくらい早い手つきでソレを掬い取った。素手で水中を泳ぐ魚を捕らえるなんて普通はできないだろうに、彼は簡単にそれをやって私に見せつけてきたのだ。

 その小魚は指くらいの大きさで、哀れにも男の手の中でビチビチと逃げようともがいている。

 

「どうだ?」

「うわー! すごい、すごいっ! 私も出来ますかね?」

 

 すぐに海の中に魚を戻したご主人様。スーッとどこかへ行ってしまった魚影を見送ってから、わたしは自分の周りに小魚がいないか水の中を睨みつける。

 

 ちょうどよく近くにいた小魚に狙いを定めてから、金魚すくいのように自身の手を水の中へと入れる。しかし私の動きが緩慢だったのか、それとも動物の本能からか、魚は指先に触れることもなく何処かへと逃げ出してしまう。私はそれを追いかけるように泳ぎ出した。

 

 ばちゃばちゃばちゃ、と水を叩く音があたりに響き渡るものの少しも前進しない。いつのまにか追いかけていた魚影は無くなって、ただ闇雲に水飛沫をあげるだけの私が取り残されていた。

 

「フゥーッ、逃げ足が速いですねぇ」

「……それは泳いでるつもりなのか?」

「? えぇ、まぁ、はい」

「そうか、とりあえず浮き輪をつけろ。あとオレから離れるなよ?」

 

 何かとても哀れんでいるような目で、私の身体に浮き輪をかぶせたご主人様。そんなにおかしな泳ぎだったかと思うものの、ご主人様は無言で小さく首を横に振っていた。解せないですね。

 

 浮き輪によって下から足が離れて、海面の揺らぎとともに体が上下する。これじゃ魚をゲットすることが難しいけれど、波に揺られてぷかぷかと浮かぶのは心地が良かった。

 

「あー、しあわせー……このまま眠れそうですね……」

「沖に流されても知らねぇぞ」

「ご主人様が離さなければモーマンタイでぇす……」

 

 彼が浮き輪を押しながらもゆっくり泳ぎ出していって、私はそれにされるがままになって海面の揺れを楽しんでいる。いつのまにか足を伸ばしても海底に届かないくらいの深さになり、海流が冷たいものへと変わっていった。

 

 そんなに必死に泳いでいる様子はないのに、結構なスピードで沖の方へと向かっている。ビーチの正面にあった小島がだいぶ近くになり、逆に陸地はそこそこの距離が出てきていた。

 

「波も立てず静かに泳いでるのに速いとか……ご主人様ってたまに隠密っぽいとこありますよね」

「ッ! ごほ、ごほん……ところで、そこの島に上がらないか?」

 

 なんだか無理やり話題を変えられた気がするが、実際に島はすぐそこまで近付いていた。

 

 もうすぐ目前まで迫っていたその小さな島は、真ん中に大岩が鎮座する木も生えていない陸地だった。岩の高さは3mくらいだろうか。島自体は端から端まで20mもなくて、きっと満潮になったら海の中へと沈んでしまうのだろう。

 

 徐々に近づいて行き、足が水底に着くくらいに浅くなってくる。彼に手を取られながらもゆっくりと歩きながら、浮き輪を掴んで島へと上陸した。

 

「お疲れ様です。疲れてますか?」

「いや、全然。冒険者だからな、冒険者だからこのくらい余裕だ」

 

 ビーチからここまで100m以上は離れてそうなのに、全く疲れていないと言った様子で返される。むしろ「アンタは大丈夫か」なんて聞かれてしまうほどだ。彼の体力に感嘆しつつも、それなら良かったと一安心。

 

 穏やかな海を見つめるご主人様の手を掴んで、島の反対側へと向かう。柔らかな砂が水に濡れた足にまとわりついていた。

 

「ビーチから見てたら大きいのかな? って思ってましたけど、案外小さいですね」

「まぁそういうもんだからな」

 

 ホテル側からは大きな岩のせいで死角になっている裏側は、狭い面積に白い砂浜があるばかりだった。そしてずっと奥まで大海原が広がっていて、誰の視線もない。

 

 誰も、見ていない。

 2人きりで、何も起こらないはずもなく……

 

「誰も、見てませんよね?」

 

 私はそっと手を後ろに回して、背後で結んでいた紐を外した。そのまま、前のフロントを上に押し上げて彼の方に身体を向ける。

 柔らかなおっぱいが、日の日差しの元に晒された。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ユターシャ……」

「ご主人様ぁ♡」

 

 彼の咎めるような視線を無視して、私はにっこりと笑いかける。

 

 大きなおっぱいの上にビキニはのっているけれど、ぷっくらとしたお上品な乳首は隠されていない。彼の身体にそれを押し付けて、誘惑するように下半身に手を伸ばした。

 

「ここ外だぞ」

「でも、誰にも見えませんよ?」

 

 大岩に背中を当ててもたれかかったご主人様は、熱い吐息を吐きながらも私の乳首にそっと指を沿わせた。控えめにつまむだけのそれは、私の脳みそにじわじわとした甘ったるい快楽を与えてくる。

 渚に波が打ちつける海の音と、そして海鳥が鳴く音だけが聞こえていた。

 

「ヤりてぇのか?」

「……はい♡ だって……あのまま終われるわけ、ないじゃないですか」

 

 彼の首に腕を回して口を近付けると、彼は背中を丸めてゆっくりと唇が重なり合う。海の味が仄かにするそれを、一度だけじゃなくて何度も何度も角度を変えて繰り返した。

 舌が絡まり合って、互いに唾液を交換する行為。その間にも、彼が私のおっぱいを揉むのはとまらなくて……

 

「言うの遅くなったが、水着、かわいいな」

「ご主人様の好みにあってますか?」

「あぁ、最高だ」

「ふふふ、ならよかった♡ ご主人様に喜んでもらいたくて、選んでますから……♡」

 

 2人でゆっくりと砂浜に座って、ちゅくちゅくと舌を絡ませ合う。熱い日差しの下で、濃厚な時間が過ぎて行く。目の前に広がる大海原の開放感が、とても気持ち良かった。

 

「聖女サマのくせにこんなに変態だなんて……外でこんなデッケェ乳晒して、見られてたらどうするんだよ?」

「んっ♡ ふぅ……♡ み、見られないですから♡ でも……」

 

 こんなところで見られるわけがない。だってこの世界にビデオカメラとかはないし、視認できる限りどこにも人影はないわけで。

 

「でもっ……しちゃいけないことをするのって、興奮しますね……♡」

「はぁ……どこでそんなお下品な性癖覚えてきたんだ?」

 

 そんなの、私が知りたい。

 

 前世はごく普通の男だった()()。そのはずなのに、いつの間にか女として抱かれるのが気持ちよくて、ご主人様のことが大好きになっちゃって、そしてイヤらしくてはしたないことを自分からするのが好きになってしまったのだ。

 

 自分がこんなマゾ女だったなんて、知らなかった。知りたくなかったし、認めたくない。

 でも恥ずかしいことを言ったりすればするほど興奮するのは止められなくて、一度羽目をはずしてしまったら痴態を晒すという快楽に抗うことはできなかった。

 

 こんなの、過去のオレが見たらどう思うのだろうか。

 

「は、恥ずかしいことするのも好きです♡ お下品で、いやらしいこといっぱいするの好きです……♡ そういうの、お嫌いですか?」

 

 くねくねと腰を揺らしながら彼の体に擦り寄せて、しかし彼はそんな私の痴態をただ眺めている。眩しい陽の光と白い砂浜に照らされた私の身体は、どんな風に彼に映っているのだろうか。

 

「聖女だった私が、こんなにちんぽに媚びてるだなんて……軽蔑しますか?」

「いやァ? 最高だろ、かの聖女サマがこんなにヤらしい女だなんてなぁ?」

 

 苦しそうに水着の中で硬くなっているソレ。

 ゆっくりと腰から下に海水を吸った布を引き下ろせば、反り返るような勃起が陽の元にあらわれた。それを指先で優しく踊るように触りながらも、彼と至近距離で見つめ合う。

 

「こんな下品な水着でオレを誘って……今日はどうして欲しいんだ? 優しくしてほしい? それとも、酷くされたい?」

「激しく、んっ♡ いっぱい、溶けちゃうくらい激しくいっぱいしたいです……♡」

「……へぇ? 遠慮はしないからな? それでいいんだよな?」

 

 砂浜に寝転がった彼は私に跨るように言って、その通りに彼の顔の上に跨る。たっぷりの愛液でヌルヌルに濡れそぼっているだろうおまんこが彼の顔に近付いて、そして私は彼のおちんぽに顔を近づけた。

 いわゆる69(シックスナイン)の体位、互いに互いの秘所を味わうには最適で、その分とっても恥ずかしい格好である。

 

 ———これ、すごい興奮する……♡

 

 私の恥ずかしい発情おまんこ♡ ご主人様に開かれて、すごい近い距離でヌルヌルの穴見られちゃって……♡

 

「ユターシャ、もっと腰落とせ。舐めれないだろ?」

「失礼しましたッ♡ ……おまんこっ、どうぞ、味わってくだしゃッ……♡」

 

 ご主人様の荒くなっている息遣いすらおまんこは敏感に感じ取ってしまえるほど近くて、さらに彼の指先によって入口の肉皮を開かれたりしているのだから、もうたまらなかった。

 

 そして、ゆっくりと彼の顔にお尻を押し付けるように落とすと、彼の舌がクリトリスの敏感なところをネットリ舐め始める。唾液をたっぷりと絡めているそれは柔らかくも、弱点を剥いて転がしてくるのだ。

 

「んぉっ♡ おっ♡ あひゅっ♡ ごひゅじんしゃまっ♡ クリだめれす♡ きもひぃ……ッ♡」

「ふーっ……ふーっ……ヤッベェなこれ……サキュバス毒直飲みッ……♡」

 

 そうして、ご主人様は私の発情メスつゆを舌で掬いながらも飲み込んでいた。ちゅばちゅばちゅば、といやらしい水音が余計に興奮させる。

 

 寝転がって私のおまんこを堪能しているご主人様はとても興奮して、そりかえる怒張は苦しそうに血管をたぎらせていた。オスとしてご立派すぎるそれは、男だったころの自分からすれば思わず嫉妬してしまうほどいさましくて、そしてサキュバスとしての自分からすれば極上の最高品である。

 

 ブッといカリに太くて硬い竿、長さもあって私のおまんこ弱点全部をこそぎえぐってくるような凶悪デカマラ♡ それが、私の目の前でビンビンに勃起してるのだから……♡

 

「んふぅー♡ んじゅるるるっ♡ ほふっ♡ んまっ♡ おいひっ♡ じゅぽっ♡」

「あ"ッ?! こら、勝手にしゃぶりやがって……!」

 

 そうして、私は彼の怒張にむしゃぶりつく。熱くて硬くなっているそれは私の口膣の中で暴れるようにいきりたっていて、それを喉の奥までずっぽりと全体で舐め回していくのだ。

 

 じゅるるるっ♡ じゅぼっ♡ じゅぶるっ♡

 

「あー、やべぇっ……ユターシャ、がっつきすぎだっ……!」

「んふーっ♡ んふぅーっ♡ らぁって♡ おちんぽフェラ♡ しゅきなんれすぅっ♡ れろれろれろっ♡」

 

 ご主人様におまんこをたっぷり舐めていただきながらも、おちんぽをたっぷり唾液のフェラチオご奉仕♡

 

 ご主人様が私のクリトリスをにちゅにちゅと舐め回して、思わずそっちに意識が取られそうになってしまうものの……負けじとおちんぽに吸い付いて味わっていく。

 頭を上下させてにゅるにゅるのお口まんこで丹念に舐めていくと、彼も耐えきれないと言わんばかりに腰を揺らしていた。

 

「〜〜〜……っ♡ はっ、はっ……、ユターシャっ、くそっ……」

「んふぅー♡ ごひゅじんしゃまぁ♡ おくち、ろーれすかっ♡」

「あ? テメェ、余裕ぶっこきやがって生意気な……フェラ出来ないくらい追い詰めてやるッ……!」

 

 そして、ご主人様の口淫も次第に激しくなっていく。逃がさないと言わんばかりに私のムッチリと肉の詰まったプリプリ尻肉に指を食い込ませたご主人様は、舌を尖らせて細かく揺するようにクリトリスを舐めずってきたのだ。

 

 あ"っ♡ これやば♡ 弱点クリトリスをそんな風に強く虐められたらぁっ……♡

 

「おいッマン汁出過ぎだろ? 溺れさせる気か?」

「しゅ、しゅいませんっ♡ 弱点のお豆さん、そんなにいじめられたらぁっ♡ んふぅーっ♡」

 

 謝罪をしながら言い訳をするものの、それでも私の発情おまんこはだらだらと本気汁を出し続けてしまう。ご主人様のクリ虐めが止まらなくて、太ももをガクガクと振るわせながらもちんぽを舐めしゃぶっているのだ。

 手でシコシコと竿を扱きながらも、先端に必死にむしゃぶりつく。舌先でチロチロと亀頭を舐め回して、柔らかな溢れ出てくるカウパーを必死に飲み込み続けた。

 

 サキュバスにとって、人間のオス汁なんて中毒性の高い麻薬でしかない。それを舐め続けるだなんて自分で自分を追い詰める行為なのに……あまりにもおいしすぎるおちんぽに、私は口淫を止めることができなくなっていたのだ。

 

「おふぅ〜〜〜ッ♡ おくちセックスも♡ おまんこクンニもぉっ♡ やばっ♡ あ"はっ♡」

 

 ご主人様の容赦なしガチまん舐めで簡単に絶頂しちゃいそうなのにッ♡ おちんぽ舐めれば舐めるほどもっと興奮しちゃう♡ 口でおちんぽの型を味わうの気持ちいいっ♡ シックスナインきもちよすぎるッ♡

 

 ぶちゅっ♡ じゅるるるるっ♡ ちゅぽんっちゅぽっじゅぶっ♡

 

「〜〜〜〜〜っ♡ ご主人様ぁっ♡ おまんこっ♡ おまんこきもひぃっれしゅっ♡ ふぅーっ♡ ご容赦をっ♡ こんなのぉっ♡ イっちゃいましゅっ♡」

「は? イくなよ……イったらザーメンお預けだからな」

「しょっ……そんな、ぁっ♡ はっふっ♡ はふっ♡ う"ぅうう〜〜〜〜っ♡」

 

 ご主人様は私のクリトリスを舐めながらもおまんこ穴の方に指を浅く挿し入れて、濃厚なサキュバス淫毒をたっぷりと溢れさせていた。クリをチロチロ舐めたり、ちゅぱっ♡ と吸われたりすると、その度に子宮がずくずくと感じてしまい、さらにマン汁をとろとろとお漏らししてしまう。

 

「ごひゅじんしゃまぁ♡ んぉっ♡ イぎだいっ♡」

「おい、ちゃんとチンポしゃぶれよ」

「んぶぅっ♡ 鬼ぃっ♡ んじゅるるるっ♡ おちんぽ舐めたらもっと興奮しちゃうんれすっ♡ れろれろれろっ♡ むりっ♡」

 

 イきそうなおまんこを虐められるのはとってもつらくて、しかしご主人様のザーメンを欲しいがために必死になってアクメを我慢するしかない。

 イき我慢をしながらもご主人様の勃起を舐め回している私を、それでも彼の舌先はいじめ抜いてくる。

 

「あ"〜〜〜ッ♡ も、イぎまじゅっ♡ イっちゃううぅっ♡ おまんこクリイきしましゅっ♡」

「イくなッ! イくんじゃねぇぞ、耐えろ耐えろ耐えろッ!」

「やめでぇええええっ♡ いじめにゃいでぇええっ♡ おひっ♡ ふぐぅ〜〜〜〜〜ッ♡ はふっ♡ はひゅっ♡」

 

 イきたくなくて腰をあげようとするものの、ご主人様に掴まれていてどうしても逃げられない。体をのけぞらせたり丸めたりしてなんとか気持ちいいのから逃げようとしても、それすら無意味に終わってしまう。

 真っ青な空と地平線まで見える海の真ん中で、私は聖女にあるまじきド下品なケダモノ喘ぎ声をあげながらも、なんとかアクメを耐えていた。

 

「ごひゅじんしゃまっ♡ も、も"ォッ♡ ゆるじでぇっ♡」

「あはっ……ほんと、お前はかわいいなァ? イきてぇの? なぁ、イっていいぞ? イっていいけどザーメンお預けな♡ オラ、イけや♡」

 

 じゅるっ♡ にちゅにちゅにちゅにちゅっ♡ じゅばっ♡ ずるるるるるるっ♡

 

「ひぃ"ィィィっ♡ やべでぇええっ♡ おちんぽほしいれしゅっ♡ ザーメン欲しいんでしゅぅううっ♡」

「ア"? この雑魚アクメサキュバスが……チンポ欲しいなら誠意見せろ♡ イき我慢ちゃんとしろ♡」

「ふぎゅう〜〜〜〜ッ♡ はふっ♡ お"ぉおおおっ♡ も"ぉクリ舐めないでぇええっ♡ イっぢゃう♡ イっぢゃうぅう♡」

 

 私はもうおちんぽを舐める余裕もなくて、必死に彼の硬すぎる太ももに手をついて震えているだけだった。みっともなく太ももをガクガクとひきつらせて、マン汁を垂れ流しながらも唾液まみれになっているちんぽに顔を押し付けることしかできない。

 

「お"ぉっ♡ も、むりぃっ♡ イぎゅっ♡ イぐぅっ♡ ゆるじでぇえっ♡」

「ったく……仕方ないなァ♡」

 

 ちゅぱっ♡

 

「クリ責めやめてやっから、まんこ準備しろよ」

「お"ぉっ……? ご、しゅじんしゃま……っ? はふっ、はふっ……」

「激しくして欲しいんだろ? ホッカホカの発情イき寸前マンコ、ガン突きしてやっからさァ……♡」

 

 クリトリスから口を離してくれたご主人様は、私を急かすように肉厚のお尻をぺちぺちと叩いてくる。あわてて彼の顔から腰を上げた私は、そのまま彼のおちんぽに跨った。

 先ほどまでイきかけ間際まんこの入り口で、チン先だけを咥え込む。そして———

 

「ほっ♡ ほっ♡ はふっ♡ あの、これっ♡ イッ♡ イひっ……♡」

「んじゃ、いただきまァす♡」

 

 じゅっぷッ♡ ずるるるるるるるるッ♡ じゅるるっ♡ っ……ちゅんッ♡

 

 挿入ッ……たぁぁっ♡ あ"♡ ヤべ♡

 

「ッ♡ ッッ♡ 〜〜〜〜〜ッ♡」

「はぁ"〜〜〜……ッ♡ ユターシャッ、ユターシャッ♡ イきまんこヤッベェなぁ? おい、まだトぶなよッ!?」

 

 ガチイき快楽焼けまんこを、ご主人様は容赦なくズコズコと下から突き上げてきていた。クリでギリギリまで高められてたよわよわおまんこを、一気にゴリ強ガチガチ勃起で絶頂においやられてしまったのだ。

 

 アクメ締め付けしてるはずなのに、ご主人様は容赦なくチンポを打ちつけてくる。腕を取られて身体ごと引っ張られて、下から突かれるたびにバカでかいおっぱいが上下にブリュンっ♡ ブリュンっ♡ と揺れ動いてしまう。

 あまりに気持ちよくて、我慢していた衝動もあり、青空の下でとても無様なアヘ顔を晒していた。

 

「あ"ひゅぅ〜〜〜〜〜"ッ♡ お"ほっ♡ ごひゅっ♡ じんっ♡ しゃまぁあッ♡」

「あーやべ、チンポヤベェ……クソ、腰とまんねェ♡」

 

 子宮口をチンポでド突かれるたびに、脳味噌へバチバチと電撃が走る。目の前が何度も真っ白になりながらも、トぶ瞬間にまた弱点をチンポでこそがれて……

 

 イってるのに♡ 落ちてこない♡ 戻って来れない♡ 永遠にイってる♡ 気持ち良すぎるッ♡

 

「はっ、はぁっ……なぁオイッ♡ 本気でチンポ絞ってきやがってッ♡ イくぞ? 射精するからな? 容赦しねぇからな? 返事しろやッ♡」

「〜〜〜〜〜〜ッ♡」

 

 無理♡ 人語話けるほど脳味噌リソース割けないッ♡ アクメで8割以上思考奪われてるッ♡ ご主人様へのラブラブ忠誠心で2割使ってるからッ♡ もう言葉喋れる容量ないッ♡

 

「んちゅっ♡ はふぅ〜〜っ♡ じゅるるるるっ♡ ほふっ♡ ぉお"〜〜〜ッ♡」

「ぅんっ……おい、キスがあまりにもケダモノすぎる……あんまり舐めまわすんじゃねぇよッ♡」

 

 私の本気ガチ恋キッス♡

 エルフだった頃よりも長くなっている舌をご主人様の口の中に侵入させて、たっぷりと唇を重ねながらもベロフェラをしていく。歯を当てないように注意を払いながらも、彼の全てを奪うようなキスはとっても幸せな気持ちになってしまうのだ。

 

 あーやっぱご主人様大好き♡ 強くて頼れるオス♡ 頭も良くて硬派なトコもあるのに、セックスになったら本気でメスを屈服させようとしてくるとこが好き♡ ガチハメセックスするときの屈強さがサキュバス本能刺激してくる♡

 さらに言えば人類の中でもかなりの優良遺伝子がたっぷり詰まったザーメンおいしすぎるからズルい♡ サキュバスにとってのA5黒毛和牛系オスくんなんだもん♡ 絶対ガチ惚れしちゃいます♡ サキュバス本能が惚れちゃうもんッ♡

 

 時代は高身長・高収入・高学歴の3Kなんかじゃない♡

 カリ高ごんぶとディック・屈強本能全開セックス・硬め濃いめ多め家系ザーメンが令和サキュバス的3Kなのだ♡

 

「あ"〜〜〜……クッソ、出る……っ!」

 

 ばちゅんっ♡ ばちゅっ♡ ずこずこずこずこずこずこッ♡

 

 ご主人様がいよいよ本気で射精しようと身体が強張っていて、そして呼吸も浅くなっていく。私の子宮口もすっかり降りきって、彼の亀頭にバキュームディープキスをかましていた。

 

 そして。

 

「ごしゅ、じん、しゃまっ……♡」

「あぁ……イくからな? ちゃんと飲めよッ?」

 

 

 

 どぐんッ♡ どぴゅっ♡ びゅるるるるっ……♡

 

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 

 気がついたら、窓の外では夕日が真っ赤に燃えていた。

 

 冷ややかな風が循環する設備の整った室内、整えられていたはずのベッドシーツはぐちゃぐちゃになっていて、水着は脱衣室に乱雑に転がっていた。

 

 2人で海から部屋に戻ってから、ずっとヤりっぱなしだったのだ。

 風呂場で海水を落としながらハメて、ベッドでハメて、ハメて、ご主人様が間食を挟みながらもハメて、もう何回致したのかわからなくなっていた。

 

「はーっ、はーっ……あーくそ、頭いてぇ……」

「ふひューッ♡ はひゅっ♡ お"ぁっ……♡」

 

 お腹いっぱいになった私は白目を剥いて、ベッドに倒れ伏せるしかなかった。身体はこの上なく元気なのに、脳みそがイきすぎて正常に働かなくなっている。

 

 ご主人様は出し切ったと言わんばかりに竿を引き抜くと、私の横に倒れ伏せてギュッと抱きしめてきた。無防備な身体は彼の抱き枕となって、下半身からごぽりと精液をこぼしてしまう。勿体無いとは思いつつも、もう食べきれなかった。

 

「ごひゅ、じん、しゃま……っ」

「ユターシャ、どうだ? 幸せか?」

「ひゃいっ」

 

 いつもは不便な思いさせてるからな、と彼は私の髪の毛を手で優しく梳きながらも笑っていた。

 

「オレも……多分、人生で今が1番楽しいかもなぁ……」

「わたし、も……ですぅ……」

 

 100年間の清貧な聖女としての生き方は悪くなかったけど、こういうのもまぁ、悪くない。男に惚れるなんて思わなかったけど、結果として彼の腕の中は心地がよかったのだ。

 

 頭はぼんやりとして、彼の言葉をただ耳から流し入れる。疲労感からくる微睡は私の意識を徐々に奪っていた。

 

「ずーっと、このまま明日が来なければいいのになぁ……」

 

 そう呟いた彼の声は酷く暗くて、しかしそれを問いかけようにも、私の意識はもはや夢の世界へと溶け出していた。

 

 

 





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+おねショタ ☆

 オレは目を開けて、すぐにそれが「夢」だと理解した。

 もはやこの世にはないはずの、オレの記憶に息付いた原風景。空には曇天が広がっていた。

 

 

 そこは、幼少期の頃住んでいた廃墟。

 人は来ず、そして建物は地面の中に大半が埋もれていた。子供らしいおもちゃが置いてあるわけでもなく、ただただ身体を鍛えて勉強を繰り返すだけの施設(ハウス)

 人の住む場所からかなり離れたこの場所は、夏は容赦のない日光が身体を焼き、冬には凍え死にそうなほどの冷たい風が荒ぶ土地だった。広大な土地の四方は柵で囲われており、柵の周辺には「かつて大型の毒獣が死んだ危険地帯」という看板が立て付けられていた。

 誰も入ってこないようにと言う配慮は、見られたくないものを隠す口実である。

 

 そして、そこでは少人数の大人と子供達が暮らしていた。

 身寄りのない赤子を集めて、なんの知識もないところから国のための優秀な道具を作る事を目的としていた。人を殺す技術と、国家を第一とした考え方を刷り込むための訓練施設。優しさのかけらもなく、血と兄弟たちの死体が転がる凄惨な場所だった。

 

 その施設の、身体を動かすための一角。

 そこに、子供の頃のオレがいる。ひらけた広場のようなところで、足元の小さな砂利には汗と涙と血が染み込んでいた。

 

 血豆が潰れた小さな手で、それでも刃物を握り絞めて素振りを繰り返している。1人の大人が見守る中で、複数の子供達が一糸乱れぬ動きで身体を動かしていた。

 その中でも1番体が大きいのがオレだ。一番最初にこの施設に連れられてきた1人目であり、子供の中で最年長である。

 

 はたしてどれだけ動いていたのだろう。

 子供達は全員ぜいぜいと血が溢れそうな呼吸を繰り返しながらも刃物を振り、水溜りが作れそうなほどの汗を垂らしていた。誰かが倒れてもおかしくなくて、しかし皆が意地で身体を動かし続けている。

 

 ……懐かしい顔ばかりだ。ここにいる初代メンバー達は、今ではオレ以外の全員が死んでいる。

 訓練中に死んだ子供や、任務の中でヘマをして殺された者、国のために影武者となって殺されていった奴もいる。

 片手で数えられる程度しかいない一期生だったが、オレ以外が全員死んでいるのはどこか寂しかった。

 

 

 

 しばらくして、見張りの大人が「やめ!」と声をあげた瞬間に子供達は動きをぴたりと止める。無感情にその様子を一瞥した彼は子供に休めと言い放ち、その後一人一人に声をかけていった。

 ここをこうした方がいいとアドバイスをもらい、子供達はそれに声を張って返事を返すのだ。子供達の声もまた決められた通りの声量と返答であり、それ以外を口にすることは許されていない。

 

 これが、この施設のルーティンである。

 ただただ心と体を酷使して、英才教育の施された人間を創り出そうとする実験施設。

 辛い訓練だった。だが、手を抜く事はできなかった。

 怒られるからとかそういうものではなく、ただ「祖国のために強くならなくてはならない」という意思が身体を動かしていたのだ。

 

 基本的には肉体強化を目的とした訓練と、知識をつけるための座学、そして国家を第一とするための宗教的な刷り込みを毎日毎日繰り返していく。当たり前のように死んでいく仲間たちを見慣れていたために、オレ達には絆もなく、言葉も交わすことはなかった。あの当時、心は死んでいたのだろう。

 

 

 

 次は、どうやら座学の授業のようだ。

 子供達が黙々と移動を始めて、オレもそれに引っ張られるようについていく。

 

 いつものように題目を言い渡されて、論文を時間内に書き上げるように言われる。

 どうやらオレは自国の技術的成長について他国と比較をしながら書いていこうと、分厚い本を数冊と比較的最新の新聞を選んでいるようだった。ところどころ検閲で黒塗りされている文献だったが、その中の重要なところを抜粋していく。それと同時に新聞にも目を通し、とある絵に一瞬だけ目を奪われた。

 

 新聞の中程のページで、そこそこ大きく記載されたその女。モノクロの絵でも、その美しさは損なわれる事なく描かれている。

 

『ユターシャ』

 降り立つ繁栄。エルフ国歴代最高の聖女。

 

 エルフの国の事はあまり他国に出てこないから、その少ない聖女の情報を記憶していく。噂程度の話が羅列されていて、それすらもところどころ検閲で黒塗りされていた。

 新聞に掲載されているユターシャは凛と胸を張っていた。裾がやたらと長い礼装服を着て、穏やかな表情でこちらに笑みをむける様は誰がどう見ても神聖なものと理解できるだろう。

 

 当時のオレはこれを見て何を思ったのだろうか。ただそういうものだと無感情に思っていたのだろうか? それとも、少しでも美人だとか感想を持っていたのだろうか。

 夢の中で文字を書いているオレはまったくの無表情で、そこから今考えていることを予測するのは難しかった。

 

 

 

 

 

「ユターシャは、そんなに××××(愛しい)か?」

 

 ふいに、子供(オレ)から声をかけられた。

 冷たい目がこちらを見つめていて、居心地の悪さからそっと視線を外す。今の自分と比べて、よっぽど声音が高かった。まだ声変わりも来ていない10歳前後の子供(オレ)は、こちらを無感情に睨みつけている。

 

「……だから、どうした?」

「その感情はいけないモノだと、理解しているのか?」

 

 オレの理性は、子供の姿をしていた。

 

 この子供はオレの根本的存在であり、覆せない自己定義だ。幼い頃に植え付けられた価値観である。

 祖国のためだけに全てを使うように教え込まれた子供(オレ)は、それに反しようとしている(オレ)を強く締め付ける。

 

「自身の感情を持つ権限は、お前にない」

 

 甘い誘惑に負けようとしているオレの、間違いを問いただしてくる。

 

「浮かれるな、お前が全てを捧げるのは国家に対してだ」

 

 わかっている。

 これ以上彼女を想う感情を心の中に持ってはいけない。身体を重ねようが、慕われようが、あの女を大切にする基準は『益になるか否か』である。

 

「お前如きが絆されて、それで国に損失を与える事がどれだけ罪深いかわかっているのか」

 

 絆されてはいけない。

 オレは彼女を国のために拾っただけなのだ。あの娘の純真さに惑わされてはいけないし、惹かれてはいけない。

 オレが、彼女を想ってはいけない。

 

「お前に価値なんてない。お前に自由意志はなく、ただ判断するだけの脳味噌だけが許されているだけだ。聖女に情を持つことなど許されていない」

「わかっている。オレはまだ殺せる」

 

 オレの全ては祖国のためにある。

 そのように育てられたし、それ以外の生き方を知らないのだ。

 言われれば、ユターシャを殺すことなんて簡単だ。命令すればいいし、逆らうようならオレが手にかけることもできる。

 

 大丈夫、オレは正常だ。

 彼女を拾ったのは国のためになるかもしれない可能性を考慮してのことであり、自己の感情でそれを選んだわけでは———

 

 

 

 

「自分自身に嘘など通用するわけがないだろう」

 

 子供は、ナイフを振りかぶっていた。

 

「見て見ぬフリで押し通せるわけがない」

 

 そのナイフで、オレの腹が引き裂かれる。

 

「その感情を、今この場で殺せ」

 

 はらわたを、小さな手で引き抜かれる。

 

「お前は、心の底から、ユターシャを道具として扱い」

 

 飛び出た臓物を、子供は無遠慮に踏み潰していく。

 

「少しの感情も彼女に与えるな」

 

 まるで虫けらを殺すかのように、無慈悲に。

 

「お前は、何のために存在する?」

 

 ユターシャに対する強い恋慕を、まるで排除するかのように。

 

 

 

 

 ———これだから、夢を見るのは嫌なんだ。

 

 せっかく知らないふりをして、無視しようとしていた感情をわざわざ理解させてくる。

 オレの後ろをついてくる時の綺麗すぎる歩き方とか、無邪気に身体を動かして喜び回るクセとか、キスをねだるときの緊張しきった顔とか、オレに抱かれてる時に繰り返す「好き」の言葉。

 そういうのがたまらなく××××(いとおしい)と思ってしまう。その醜い感情が丸裸にされてしまう。

 

「感情を持つな。理性と思考能力さえあれば、お前はそれでいい」

 

 無駄なものを見るように、子供は倒れ伏せているオレを見下していた。

 思考することすら無駄なのだ。わかっている。だからそんな風に責めないでほしい。

 

「……違う、オレは」

「違わない」

「違うんだ」

「いいや、違わない。お前(オレ)が思っている以上に、ユターシャの事を心で想っている」

「やめろ」

 

 怖かった。それを突きつけられるのが嫌だった。

 まだ尚口を開こうとしている子供の前から逃げようと、オレは手を伸ばす。それすらも無駄な抵抗に終わり、すっかりと感情をこそぎ落とされたオレは、そのまま小さな子供に腕から貪り食われていった。バリバリ、と自分の頭蓋骨が食われて壊されていく音が聞こえる。

 

 夢の中なのに意識は溶けて無くなっていく、その直前。

 

 

 

 

 手を伸ばした先には、ユターシャがいた。

 

 

 

 * * * *

 

 

 

「……あれ?」

 

 オレの声はいつもより高くて、そして身長も低い。未だに夢の中にいるのか身体をふわふわと浮かせているオレは、手に持っていたナイフを認識する。

 黒い血のついたそれは鮮血が滴り落ちていて、足元の柔らかなカーペットを汚していた。

 

 この部屋は果たしてどこなのだろうか。

 少しだけ散らかった部屋は狭くて、おそらく成人男性が一人で住んでいるのだろう。オレの知らない機器らしきものがやたらと置かれていて、それらが規則正しくチカチカと光っている。部屋は薄暗くて、それが一層機器たちの光を強く見せていた。

 全ての小物は1人分。ローテーブルの上に置かれたコップにはお茶が入っていて、まだ表面に水滴がついている。

 

 そして。

 

 ユターシャは、壁際に置いてある狭いベッドでスヤスヤと眠っていた。肩まで布団を被り、規則正しい寝息を立てている。

 

 ……これは、夢だ。

 知らない部屋で、オレは幼い子供の姿で、そして穏やかに眠っているユターシャを見下ろしている。

 強い感情が心の奥底から溢れ上がり、しかしオレはそれを殺さなくてはならない。

 

 ———好きという感情を殺す。

 

 いつかくる別れの時に、オレがおかしくならないように、今のうちに殺す練習をするだけだ。

 

 ———腕を、持ち上げる。

 

 オレはその無防備な身体に、手に持っているナイフを振りかぶった。緩慢な動作は殺意を悟らせないためであり、いまだ夢の中で眠っている聖女に目掛けて振り下ろす。

 自分の感情が殺したくないと叫んでいて、そして腕が震える。だけどここで殺さなくてはならない。夢の中で、オレの中にあるユターシャに対しての感情を殺さなくてはならない。

 

 そうだ、ここでユターシャを殺せば楽になる。

 こんなふうに、恋煩いに苦しまされなくて済む。

 愛を知る前と同じように、ただただ祖国の為のオレとして……

 

「んっ♡」

「!?」

 

 振り下ろす瞬間だった。

 彼女はオレの方を向いて、そして瞼を開いてにっこりと笑ったのだ。

 

 起き上がり、そしてそのままぎゅっと抱きしめられる。もうすぐで彼女の心臓を貫こうとしていたナイフはぐにゃりと柔らかく折れ曲がり、彼女の胸が目の前いっぱいに広がる。

 

「さぁ、しまっちゃいましょうねぇ♡」

 

 いつのまにかオレはユターシャに手首を掴まれて、その布団の中にズルズルと連れ込まれていた。小さい体躯は彼女に抗うこともできなくて、ナイフもいつのまにか手から零れ落ちている。

 あったかくてぬくぬくとした布団の中はユターシャの匂いが充満していて、そして狭いベッドから落ちないようにと身体がぴっとりと抱きしめられる。

 

 乳で、呼吸、できなっ……! 

 

「こんなに可愛くてちっちゃいご主人様とかぁ……えへへ、食べちゃいますよぉ?」

「……むぐ、ぷはっ! おい、やめろ! 命令だぞ!?」

「夢の中なので、命令とか契約とか無意味ですよ♡」

 

 本来ならオレが命令だと言えば全て実行しなくてはならないユターシャだが、どうやらここは悪夢の中。彼女はオレの命令に逆らって、するすると服を脱がせにかかってくる。

 

 いつのまにかお互いに狭い布団の中で素っ裸になっていて、そして柔らかな肉で身体を包み込むように抱きしめられていた。小さい身体は彼女に埋もれてしまうほどで、ムンワリとした熱気で頭が痺れそうになる。

 

「めいれっ……うぅ、ユターシャの、くせにぃっ……」

「ボクちゃん、大丈夫でちゅからねぇ♡ サキュバスでメイドでお姉ちゃんなユターシャがしっぽり♡ おちんちんしてあげましょうねぇっ♡」

 

 完全にオレを捕食するつもりになっているユターシャは、布団をかぶりながらも舌をベロリと出し、目を細めてオレを見下ろしていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 こっ……わ……食べられるッ……! 

 

「離せぇッ!」

「ダメです♡」

 

 なんで、いつもならユターシャなんてひ弱でか弱くて、こんなふうに押さえつけられることなんてあり得ないのに。

 

 逃げられない、逃げられない……! 

 

「やめろっ! オレは、アンタなんか、好きにならなっ……んぷっ♡」

「ちゅうしましょうね♡ んじゅるっ……♡ はふっ♡ ご主人様、きもちいでちゅね♡」

 

 口を、ユターシャに食われていく。がっちりと頭を固定されて、激しく口の中でのたうち回る舌先に脳みそが痺れてくる。なんとか追い出そうとすると余計ユターシャと舌を絡めることになり、ただ必死に呼吸をするだけになってしまう。

 

 はふ、はふ、と鼻息荒く呼吸をしながらも彼女を睨みつけるものの、彼女は気持ちよさそうに目をつぶってオレの口の中を蹂躙していた。

 そうして、やっと口を離してもらった頃にはすっかりオレは酸欠状態になっていて……

 

「な、なんでぇっ……これ、夢ッ……♡」

「不思議ですよねぇ? 私の()()()()()で、ご主人様がショタになって夜這いに来ちゃうだなんて……私、そんな願望があったんでしょうか? まぁでも……」

 

 据え膳は美味しくいただいちゃいますから♡

 

 そういって目をギラつかせるユターシャは、オレが拒否しているのに何度も何度もキスを繰り返して、じわじわとオレを追い詰めていた。

 

「うぅ……こ、殺さなきゃ、なのにっ……! 殺してやりゅっ……」

「こら! そんな汚い言葉使っちゃダメでしょう?」

 

 彼女はにっこりと笑うと、オレの口を吸いながらも手を股間に伸ばしてきやがった。そして柔らかな手で、いつもよりずっと小さくなっているのに勃ち上がっているソレを包まれる。

 

「やめっ……く、そっ! 離せッ……!」

「離しません♡ ご主人様、私のこと好きって言ってくれなきゃダメですよぅ♡」

「いやだッ! オレは、そんなの、いらなっヒぃッ!?」

 

 しゅこ♡ しゅこしゅこしゅこ♡

 

「ご主人様のショタチンポ、ふふ、指でシコシコ♡ してあげますねぇ♡」

「うぅぅっ……♡ やだ、はなせよぉっ……!」

「だーめ♡ ユターシャおねえちゃんをしゅきしゅきっ♡ ってしてくれるまで、イってもイっても止めません♡」

 

 優しく、容赦なくオレの勃起は絶頂へと迎えられる。いつもなら我慢できるような手淫も、夢の中で幼い姿のオレには耐えられないもので……

 

「ふぎゅぅ〜〜……ッ! いや、いやだぁっ……!」

「ほら、しゅき♡ って言ってください♡ ユターシャおねえちゃん好き♡ 好き♡」

「だめっ……やだ! 嫌い! 嫌いだっつのばぁか! あ、あぁぁぁあっ……♡」

 

 しこしこしこしこしこしこ♡

 

 情け容赦のない手コキ♡ ガキの身体でサキュバス手コキとかやばすぎるッ♡

 身体は知らない快感を必死に拒もうとしていて、なのにどんどん絶頂は目の前にやってきていた。

 

「はひっ♡ やだ♡ やめろォッ……」

「好き好きしないとやめませんから♡」

「いい、わかった! 好きだから! 好きだから手コキやめッ……ひぃっ♡」

 

 やめてくれないッ♡ やべ♡ もうイっちゃう♡

 夢なのにッ♡ ユターシャに無理矢理射精させられる♡

 

「もっと、心の底からユターシャお姉ちゃんしゅき♡ しないとぉ……」

「ひっ、やだ、イくっ……くぅ……♡」

 

 びゅっ♡ びゅるるるっ♡ びゅくっ♡

 

「イっても、やめてあげませんよぅ?」

「もうイったからァッ! やめろッ! 手、止めろやッ……! 死ぬッ! 敏感になってっからぁッ!」

 

 イったのに♡ やめてくれない♡ 暴れても逃げられないッ♡

 夢の中で、子供の姿になって、壊されるっ……気持ち良すぎておかしくなるッ! 

 

「しこしーこ♡ ぴゅっぴゅっ♡ ユターシャお姉ちゃん好きって言って♡」

「好きッ! 好きだからぁっ! あぁぁぁっ♡」

「じゃあ大好きなユターシャお姉ちゃんがいっぱい♡ ちっちゃいご主人様をぬきぬきしてあげますね♡」

 

 ……コイツ、オレがどう言おうがお構いなしに搾取するつもりだ。

 オレの苦しむ顔を上から眺めて、ニコニコと綺麗な笑顔を向けるユターシャ。オレはもうどうしようもなくて、逃げられなくて、甘く地獄のような終わらない射精をただ受け入れるしかなかった。

 

「また、またイッ……くぅっ♡」

「はい♡ すーき♡ ユターシャお姉ちゃん大好き♡ ちゃんと好き好きってしながらイきましょうね♡」

「好ッ……きぃ♡ あ"ッ……♡」

 

 射精の瞬間、何も考えられなくなってユターシャの誘導のままにそれを口にしてしまう。頭の中が真っ白になって、情けなくも腰をガクガクと前後させるのが止まらなくて、なのにどうしようも逃げられなかった。

 

 こんなの、こんなのって……! 

 

「好ぎぃっ♡ 好き♡ ユターシャぁあっ♡ やべでっ♡ とまってぇっ♡」

「ほら、イくときは大人ベロベロキッスしながらですよ? ユターシャお姉ちゃんの甘々サキュバス唾液ゴクゴクしてくださいね♡」

「んぶっ♡ ごくっ♡ はひゅっ♡ 死ぬがらっ♡ 好き♡ やめてぇっ♡」

 

 ぢゅばっ♡ れろれろれろっ♡ ごくんっ♡

 しこしこしこしこしこしこッ♡

 

「やだぁっ♡ またイくぅっ!? イぎたくないっ♡ おねがッ、やめりょぉおっ♡」

「かわいい♡ ショタご主人様、いっつも強チンポで私のこと蹂躙するのに♡ 子供だとこんなにかわいいんですね♡」

 

 ———屈辱だった。

 

 いつもなら極上の肉体をユサユサと揺らしながらも、はしたなくマゾ女らしくオレに射精を媚びるユターシャ。そんな彼女に、主導権を握られてただ喘ぐしかない。

 彼女の言葉と手と毒に、どんどんと思考を壊されていく。暴れることすらままならなくて、ただただ情けなくも小さくなってしまった勃起を擦り続けるユターシャの手にオレの両手を重ねることしか出来なかった。

 

「ご主人様にはいっつも気持ちよくさせられてるので……今宵は恩返しに、()()()()イかせて差し上げますね♡」

「イッ……イ"ぃっ……♡」

 

 その余裕ぶった顔を快楽で染め上げて、情けない顔にしてやりたい。人のことを捕食対象としてしか見ていない女に、オレという存在を強烈に刻み込んでやりたい。

 

 なのに、今のオレは———

 

「んぶぅっ♡」

「ほらぁっ? ユターシャお姉ちゃん大好き♡ ですよ♡ ぴゅっぴゅしましょうね♡ おねえちゃん唾液いっぱいごくごくしましょうね♡」

「んぅ〜〜〜ッ♡ じぬぅっ……♡ あ"ッ♡ おね、ぇ、ちゃっ……♡」

 

 どぴゅっ♡ びゅるるっ……♡

 

「あはぁっ……♡ 私、ショタコンだったのでしょうか? わりとノーマルなつもりだったんですが、ねぇ……」

「あ"ッ……あぉ"っ……♡ む、りぃっ……♡」

「うんうん、じゃあ次はユターシャお姉ちゃんのおまんこ♡ でもっとラブラブしましょうね♡」

 

 は? 

 

 手でもあんだけ気持ちよくって、すぐにイかされてたっていうのに……ガキの身体でサキュバスマンコ味わうだなんて、そんなの、無理に決まってる……♡

 

「ひっ……やだ、だめっ……」

「はい、いただきまァ……すっ♡」

「ぁあ"あ"あ"あッ♡」

 

 いよいよユターシャはオレの上に跨って、そうして間髪入れずにすぐさま勃起を女壺の中に飲み込んでいってしまった。

 いつもなら奥の方まで届いて子宮口をコンコンと突いてヨガらせることが出来るはずなのに、今日ばかりは奥の方までは全く届かない。

 

 だというのに、おそろしく名器であるユターシャおまんこはオレのチンポをぎゅんぎゅんと圧搾してきていた。肉の粒がゾリゾリで、そしてぬるぬるのおまんこ汁でコーティングされている。

 

「ふふっ……気持ちいいですか? んっ……♡」

「あ"〜〜〜ッ♡ くっそぉっ♡ ま、たイきそっ……♡」

「はいどうぞ♡」

 

 ぱっ———ちゅんッ♡

 

 それは、たった一度のピストンだった。彼女はなんて事もなく腰を上げて、そして落としただけ。

 それなのに、あまりにも気持ち良すぎてオレは。

 

「あ"ッ」

 

 どっぴゅっ♡

 

 オレのリトルサイズになってしまった勃起に合わせた肉圧はあまりにも狭くて、なのにヌルヌル汁のお陰でいっさいの痛みもない。いつだって容赦なくチンポを刺激する肉壁は、今日も粒々がうねっていた。

 

 射精の経験もないようなガキの身体にサキュバスとの生中セックスは、あまりにも酷なのだろう。普段ならギリギリ耐えれるような攻撃すら、今では呆気なくイかされてしまう。

 

「い"ッ、あ"ッ……ぉ、おおっ……♡」

「ご主人様? イくときは、ベロチュウしながらですよ? 次はラブラブキッスしながらおまんこで射精しましょうね♡」

 

 ぱちゅっ♡ ぱちゅっ♡ ぱちゅっ♡ ぱちゅっ♡

 

「あ"ッ♡ ん"ぅ〜〜〜〜〜ッ♡ イっでる"ッ♡ んちゅっ♡ だずげでっ♡」

「ユターシャお姉ちゃんのこと、好き?」

「だい"ずぎだがらッ♡ も、やめろ"ぉおおっ♡ 降りてこないッ♡ 降りれないッ♡」

 

 そう言っても、ユターシャは腰を上下するのをやめてくれなかった。

 

 ずっとイきっぱなしで♡ 頭がおかしくなるッ♡

 射精で登り詰めて落ちるの繰り返しすぎてッ♡ 登ったまま降りれなくなってる♡ 降りながら登ってるッ♡ ずっとイってる♡ イき死ぬッ♡

 クッソ……コイツ、オレが起きたら、ぜってぇやり返してやるッ……! 

 

「ユターシャぁ"ッ♡ ふぅ"〜〜〜ッ♡ おか、犯じでや"るッ! くそがァッ♡ あ"♡ やべろッ♡」

 

 彼女が腰を落とすたびに、オレは背中を跳ねさせて無様にも射精を繰り返していた。もう出ないと思ってもいくらでも射精が出来てしまい、ただただ快楽の渦に溺れていってしまう。

 

「お姉ちゃんのこと、好き?」

「しゅきッ♡ あ"ッ♡ もう好きッ♡ 大好きッ♡ ゆたーしゃッ♡ あ"ぁぁっ♡」

 

 もはや言わされているのか、自分の意思で言ってるのかもわからなかった。情けなくも泣きながら、オレはただ乞うように好きを繰り返すだけになってしまう。

 先程殺したはずの、自分の中の感情が無理やりユターシャの手によって芽生えさせられる。「好き」と口にすればするほど、自分の中でその感情に輪郭が出来て、はっきりくっきりとしたものになっていった。

 

 

 

 そして———

 

 

 

「あ"ッ……♡ すき、ユターシャぁ……好き……」

「えへ、私もですよ♡」

 

 この時、オレはきっと負かされたのだろう。

 

 彼女に押し付けられたおっぱいにちゅうちゅうと吸い付いて、そんなオレの後頭部を彼女が支えている。もう片方の手はオレの竿を指先だけでシゴきあげていて、脳味噌はドロドロに溶けていた。

 

 夢の中、都合よく甘いお乳が噴出していてオレの舌先に溜まっていく。ごくりと飲み込めば彼女に対する感情がどんどん強くなっていって、離れられなくて、それをただ享受するしかなかった。

 

「かわいい……お姉ちゃんのサキュバスおっぱいおいちいでちゅか?」

「おいし……い……、おね、ちゃ……」

「はい♡」

「んぅ……好きぃ」

 

 オレの根底を、ユターシャは犯してきたのだ。

 それはあまりにも甘美で、そして絶望的だった。

 

 

 

 

 





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+ピロートーク

 

 

「じゃあ行ってくるから、いい子で待ってろよ」

「はい! どうか今日もご無事にお戻りくださいね!」

 

 朝。真っ青な空は雲ひとつなくて、街は活気付き始める時間帯。最近借りた家具付きの部屋で、オレはユターシャと暮らしていた。

 

 

 

 エルフの国からだいぶ遠く離れたこの街は、オレやユターシャには住みやすい街である。

 人間だけでなくゴブリンやオーク、ドワーフやコボルトといった種族も多く住んでいて、様々な多種族が人間社会に溶け込んでいる場所だった。悪魔ですらそんなに目立たないのだ。

 

 街の成り立ち自体もかなり特殊で、500年前にこの土地に住んでいたとされる種族の住処をそのまま再利用したものだそうだ。

 

 ユターシャいわく「まるで団地」というそれは、山のように巨大な岩が大量に並んでいる光景。そのそれぞれが均等に均一に、人が住むのにちょうどいい大きさの広さで()()()()()()()()のである。ここの住人たちはそのくり抜かれている部屋のひとつひとつを居住区として住み込んでいるのだ。

 

 部屋は全て賃貸になっており、巨大岩ごとに管理する経営主が変わる。本来ならば契約するのに年単位での居住が必須になっているものの、都合よく数日単位で貸してくれるコンドミニアム形式の部屋があったので、今回はそこを借りていた。

 

 数年前まではただの遺跡群として認識されていたこの巨大岩だが、最近領主が変わった事により「大量の人々を住まわせることのできる場所」として再評価され、都市の開発計画まで進行しているらしい。

 街の周辺の森にはまだまだモンスターが多く生息しているものの、領主が多額の資金を出していることからかなり開発は進んでいるようだ。

 

 金があり、そして仕事がある。なにより住む場所がたっぷりとある。それだけの条件が揃っていて、金を求める者たちが集まってくるのは必然的だった。

 様々な多種族の坩堝、人口の多さと急発展の街にある多少の治安の悪さ———悪魔が隠れるにはちょうどいい。

 

 というわけで、オレとユターシャは生活を始めて早3ヶ月目に突入しようとしていた。

 今まで放浪する生活しか送ってこなかったオレにとって、ひとつの家に住み続けるというのはなかなか新鮮な体験である。

 

「今日の夕飯は生姜焼きですからね! あと、明日のご飯用に帰りにおつかいに行っていただけると幸いです。買って欲しいものリストのメモって渡しましたよね?」

「あぁ。コレを買ってくればいいんだな?」

「はい!」

 

 毎日繰り返しているやりとり。オレはいつもと同じように、ユターシャと玄関先で言葉を交わす。

 

 最近ユターシャの料理の腕前は上がってきていた。本人曰く「一人暮らししてた時のカンを取り戻してきた」らしい。

 エルフといえば菜食主義で薄味好きな種族であるはずだが、ユターシャは肉もうまく調理するし野菜もしっかり味をつけてくれる。わりと豪快な料理を作りがちなところも、個人的にはありがたかった。

 

 そんなわけで、彼女に渡されていたメモを確認する。乾燥させた麺にニンニク、燻製肉、卵、チーズなどなど……何を作るのだろうか。

 

「忘れ物はないですか?」

「あぁ」

 

 身につけるのはいつも通りの防刃対電コートで、その下にはさまざまな仕事道具を吊るしてある。背中にはサバイバルセットを担いで、冒険者としての装いを身に纏っていた。

 

「いってらっしゃい!」

「あぁ、行ってくる」

 

 ユターシャの唇にキスを落として、それから頭を撫でる。普通の人間と同じように仕事に行く()()をしたオレは、借家を出て階段を降りて行った。

 部屋は3階。街の治安はそこまでいいとは言えないために、日中オレがいない間は家から出るなと言い含めている。

 

 ベランダから手を振るユターシャに見送られつつも冒険者ギルドに向かい———

 

 

 

 ユターシャの姿が見えなくなってすぐに、オレは家の方面にUターンした。

 

 ユターシャには冒険者として働いていると申告している以上、それらしい振る舞いはしなくてはならない。しかし本当にやらなくてはならない事というのはユターシャの誘拐・保護である。

 危険な冒険者業に連れていくわけにもいかず、かといってずっとユターシャと居続けるのも怪しまれるだろうと、選んだ苦肉の策であった。

 

 オレとユターシャが2人で住む家とは別に、その真下の部屋もオレが別の名義で借りている。日中はそこでユターシャの監視———もとい、安全保護を確認していた。誰にも見られないように細心の注意を払って部屋の中に入り込む。

 

 しん、と静かな部屋。

 

 暗い室内、間取り自体は同じなのに、どうしてこうも殺風景で寂しい印象を覚えてしまうのだろうか。オレは音も立てずに荷物を下ろして、いつものように魔術具を起動させる。

 

『よぅし、今日も勉強頑張りますよー!』

 

 なんてひとりごとを呟いているらしいユターシャの声は、下の階のオレにはとてもよく聞こえていた。

 

 簡単な仕掛けを施しておいたので、日中のユターシャの行動が筒抜けになるようにしてある。プライバシーを無視しきっている監視に申し訳なさを感じるものの、エルフ国の要人である彼女から目を離すわけにはいかないのだからしょうがない。

 

 いつものように養父(ボス)に報告書を書いて、そして静かに音を立てないようたまに外の様子を確認して異変がないかを見て、そしてまたユターシャの様子を確認して……

 

『んー、わからないですねぇ。なんでこーなっちゃうのかしら』

 

 彼女はどうやら魔術について調べているようだ。毎日オレが出て行ってから帰るまで、ずっとずっと考え続けている。

 紙を捲る音、唸る声、そして部屋の中でぐるぐると歩き回っているのだろう足音。

 

 2時間が経過、特に変わる事はない。

 

『やはり魔術具からのアピールは諦めたほうがいいのでしょうかね。うーん、やはりエルフ体に戻るアプローチが最短ルート……? でも呪物ってやったことないしな……』

 

 そっと街の方へと視線を向ける。いつも通りのその光景は代わり映えがなくて、オレはため息をつきながらも時間が過ぎるのをただ待つばかりであった。

 

 

 

 * * * *

 

 

 

「はぁっ……ご主人様、くすぐったいですよ」

「ん、そうか」

 

 ベッドの中で、柔らかな彼女の身体を抱き寄せる。腕の中に感じる熱は暖かくて、そしてその首筋に静かに口をつけた。舌を這わせると、彼女はくふくふと笑いながらもオレの身体に抱きついてくる。

 

 セックスの後、裸で抱きしめ合うこの時間が好きだった。

 子供がするみたいな触れ合うだけのキスを何回も繰り返してみたり、戯れに柔らかくてすべすべな腹に指を這わせてくすぐってみたり、そして穏やかな時間が過ぎていく。

 

 小さな窓から見える月は、とても綺麗だった。

 

「……今日もね、色々試してみたんですけど、ダメでした」

「あぁ」

 

 知っている。

 だが、知らないフリをする。

 

「何が、どういう風にダメなんだ?」

「うーんと……そうですね、魔術属性って基本的に魂に紐付いているものなんです。身体に魔力が備わっていて、それで初めて魂に紐付けされる魔術属性を行使することができるんですよ。ガソリンがあって初めて車が動くのと似たようなカンジです。

 今の私は魂側の魔術の属性と、淫魔である身体が事故を起こしている状態……なので、そのどちらかを変えてあげれば問題は解決すると思うんです、が」

 

 無理ですね、と彼女は呟いた。

 

「魔術の属性を変えるのに魔道具の使用を考えたのですが、それがことごとく失敗するんです。術式を書いて魔力を注入するだけだから……いうならばガソリンをただタンクにいれてるだけみたいな感じなんですけど、それでも何故か発動しちゃうんですよ」

 

 手、めちゃくちゃ溶けちゃうんです。そういって彼女は手を開いたり閉じたりしてみせた。綺麗な、白魚のような指が月明かりに照らされる。

 

「せめて、私の身体に刻印された呪物を理解できればいいんですけど、そっち方面はサッパリなので……」

 

 彼女も呪い等といったモノには詳しくないらしく、オレもオレでそう言ったことを深く知っているわけではない。

 今のままでは八方塞がりなわけで、どちらともなく溜息をついてしまう。

 

「月並みな言葉で悪いが、無理はしないでくれよ。……できる事なら、なんだってしてやるから」

「ありがとうございます……ん、じゃあもっと甘やかしていただけると嬉しいです」

 

 オレは笑いながらも、彼女の髪の毛を指で漉いた。薄暗くて、月明かりだけが部屋を照らしている。甘い匂いが充満していて、体にはべっとりと汗が張り付いていた。

 

「……今日はどんな仕事だったんですか?」

「守秘義務だ」

「むぅ」

 

 彼女はこうして仕事の話を聞きたがる。といっても、冒険者ギルドに行ってるフリしてその実まったく別のことをしているのだから話せる事もなく、オレはなにも言わなかった。これも、いつものやりとりである。

 

「いいなぁ……私も、早く魔術を取り戻して、さいつよな冒険者になりたいです」

「あのな、冒険者なんてフツーやめておいた方がいい仕事なんだぞ? いつ死ぬかもわからないし、危険だし、誰でもなれるんだからな。あまり期待するなよ」

「じゃあ、ご主人様はどうしてそんな仕事をしてるんですか」

「成り行きだ」

「他を選べなかったんですか?」

 

 つけたキスマークをなぞりながら、オレはゆっくりと目を瞑った。

 

「……選べなかったよ、他の道なんて」

 

 ユターシャの身体を抱きながらも、薄暗くて穢らわしい過去を静かに思い出す。

 

 暗殺者にならざるを得なかった。それがオレの育てられた理由なのだから。そして、有名になり過ぎたから冒険者になって身を隠した。そこにオレの意思はなく、ただそうあれと命令されたからに過ぎない。

 

 気がついた時には、そうやって生きる事が定められていたのだ。

 

 捨てられたのか売られたのかは知らないが、自己が確立した時にはもう道は決まっていた。必死にならなければ死んでしまうし、そうして気がついた時には後戻りなんてできなかった。

 やらなくては死ぬし、逃げたって死ぬ。ただ上から言われることを粛々と実行して、そして必死に生き残るだけの人生だった。

 

 求められる事を求められるように生きて(殺して)いたら、いつしか表舞台であまりにも有名になり過ぎてしまったらしい。顔が割れては価値がないと言わんばかりに仕事は無くなり、冒険者となることを命じられて早数年。各地を放浪して、オレは何も持たないままただ彷徨い続けていたのだ。

 

 それ以外の生き方を知らないのだから、もうどうしようもない。必要になった時だけ使われる、そういう風に生きてきた。

 オレには選択肢なんてものはなく、常に生きられる方に歩み続けているだけである。その行き着いた先が今なのだ。

 

「……ご主人様?」

「あぁ、そうだな。これからもきっと……」

 

 オレには、選ぶ権利なんて持ち合わせていないのだ。オレ個人がユターシャをどれだけ想っていても、時が来たら、求められる事を求められるままにするしかない。

 

 あぁ、だからその時が来たら———

 

「ご主人様」

「……大丈夫、だ」

 

 ユターシャが、オレの顔に手を伸ばしてきた。おとなしくソレを受け入れて、困ったように眉尻を下げている彼女を強く抱きしめる。

 

 一体、今の自分はどんな顔をしていたのだろうか。

 

「ごめんなさい、変なことを聞いてしまって……」

「いいんだ、オレが悪いんだから」

 

 いつか、オレはユターシャを××(殺さ/売ら)なくてはならないのだから。ユターシャを悲しませることになるのは、オレなのだ。

 

 こんなにも未来が来てほしくないのに、何故か彼女といる時は時間が飛ぶように流れていく。

 

「……なぁ、ユターシャ……好きだ。本当に、大好きなんだ」

「えぇ、私もです。愛しています……大好きですよ」

 

 ユターシャはオレの首元に頭を押し付けてくる。腕枕に頭を預けている彼女は、ちぅ、とそこを吸い上げてきた。彼女の口ではオレの肌に跡なんてつかなくて、仕返しにオレが彼女の首筋を吸い上げてみる。

 

 白い肌に、赤い跡はとてもよく映えた。

 彼女の身体中に、オレの付けた跡が残っている。

 

「ふふふ、もう、私いつか身体中キスマークで真っ赤っかになっちゃいません? つけすぎですよ?」

「してやろうか?」

「いやですぅー」

 

 と、言われながらも彼女の身体を押さえつけてキスマークをつけていく。優しく歯型もつけて、どうせ家から出ないのだからと首筋の上の方まで好き放題にしてやった。きゃあきゃあと笑いながらも特に抵抗しないものだから、悪い男が調子付いてしまうのだ。

 

 彼女の身体は柔らかくて、押さえ込めばすぐに動けなくなってしまう。こんなにも酷い男に組み敷かれているというのに、無邪気に笑いながらもオレを受け入れてくれる。

 

「んふっ、くすぐったいですよぅ……!」

「嫌だったらちゃんと抵抗しろよ」

「嫌じゃないですけど、んひひ、こそばゆいですっ……」

 

 そうしてそのまま戯れ続けて、どんどんと夜は更けていくのだ。次第に微睡の中に落ちていき、そして夢の中でもユターシャに出会う……とても穏やかで、そして満たされた時間だった。

 

 満たされて、こんなに満たされているのに……いつかオレは、ユターシャと離れなくてはならないのだろう。それが寂しくて、辛くて、今だけは彼女を独占したいと身体中にオレを刻み込む。

 とっくの昔に好きになっていて、こんな感情は初めてだったのだ。

 

 終わりが見えている恋だとわかっているのに、どうしてこうも時間は早く過ぎ去ってしまうのだろうか。出会ってから、もう数ヶ月が経とうとしているのだ。

 

 1日がもっと長ければいいのに。

 

「……ご主人様?」

「あぁ、なんでもない」

 

 オレはユターシャの身体を抱きしめ直した。

 華奢で、少し力を入れてしまえば折れそうな細い身体。

 

 月が、あまりにも綺麗な夜だった。

 

 

 



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+種族特性+お預けセンズリ ☆

「おぴぃっ♡ ま、まっへぇっ♡ 止まって♡ とまってくだしゃっ……♡」

 

 いつも通りの平穏な1日の、いつも通りの2人の夜。時刻は深夜を回って、窓の外はきっと静かなのだろう。

 ギシギシと音を立てるベッドはやかましくて、それ以上にユターシャの燃え上がったケダモノボイスが自分の中の性欲を掻き立ててくる。毎晩同じことをしているはずなのに、夜毎に彼女に引き込まれているのはユターシャが魅力的だからなのだろうか? 

 

「あークッソ、このセックス専用マゾがッ……やっべ気持ちいい……チンポ溶かす気だな!?」

「そごっ、だめでしゅっ♡ ポルチオッ♡ じゃくてんでッ♡ ひぎっ♡ 気持ちよくッ♡ な、ぁっ♡」

「あはっ……いいぜ、好きなだけイっていいからな、止めねーけど」

 

 オレはユターシャの弱点である最奥子宮口に好き放題チンポを押し付けていた。先端部分が柔らかくてプニプニとした穴にキッスされて、たまらなく射精感が込み上げてくる。

 

 彼女の弱点をすっかり知り尽くしたオレは、どうすれば簡単にイくのかを知っているのだ。ゾリゾリとしたカズノコ天井の圧に耐えて、彼女の肩に歯跡を残しながらもいじめ抜いていく。きゅんきゅんと甘えてくる穴からは濃厚な本気汁がたっぷりと溢れていて、部屋には湿気が篭っていた。

 

「お"ぁっ♡ はげしっ♡ だめれしゅっ♡ あ"ッ♡ 気持ちいのダメですっ♡」

「激しいのも酷いのも好きだろォが? なぁ、欲しかったらちゃんと言おうな?」

「はひっ……はっ、ほひっ♡」

 

 ぐっと、彼女の乳を鷲掴みにしながらも身体を起こすように引き寄せた。柔らかな肉に指が埋まって、それをムンニュリと揉み込んでいく。

 オレにはもったいないほど贅沢で、柔らかくて、それを乱暴にすればするほど甘ったるい声で喘ぐのだから堪らなかった。本当なら優しくしてあげたいのに、そんなに悦ばれるのだから余計に酷くしてしまう。

 

「奥ゥ"♡ いっぱい、突いてッ♡ 中出し、をぉおっ♡」

「わかった。好き放題ガン突きして勝手に生中出しするからな、嬉しいか?」

「うれひぃっ♡ うれしいれすっ♡ あ"ッ♡ あっ♡ あっ♡」

 

 ベロを出しておねだりするようにこちらを振り向くユターシャに、舌を絡ませるベロキスで返す。熱い呼吸が混じり合う中、ただ本能のままに下半身を打ち付けていた。

 

 

 

 * * * *

 

 

 

「サキュバスって、魔族の中でもかなり幻想種に近い生き物だと思いませんか?」

「そうなのか?」

 

 ユターシャは得意げに眼鏡をくいくいしながらも、唐突にそんなことを言い出した。

 いつのまにか、いつもの服(ミニスカメイド)からタイトスカートと大きく胸元の開いたシャツに着替えていて、髪の毛をひとつに結いあげている。大きめのバンスクリップは先日土産と称して買ってきてやったもので、どうやら気に入って使ってくれているらしい。

 

 新聞を読んでいたオレは、言葉を返しながらも視線をそちらに向ける。どこで買ってきたのかわからない黒板を指さし棒でぺちぺちと叩きながらも、ユターシャはしたり顔で語り始めた。

 

「エルフも幻想種に近しい生物ではありますが、サキュバスの方がより不思議な生き物ですね。というかそもそも2〜4ml程度の精液だけで肉体を完全復活できるとか、物理法則無視しきってますし? 意外と妖精とかの方がジャンル的に近いのかもしれません」

 

 ユターシャはこんなので、なかなか勉強好きな性格をしている。「語学系はノーセンキューですが、ファンタジーチックの勉強は面白いので結構好きですね!」とは彼女が言っていた言葉だ。

 そのファンタジーがどこからどこまでが範囲なのかは知らないものの、彼女は興味があることだととことん調べられるタチだそうだ。

 

 そして、オレは頷きながらもユターシャの考察を静かに聞く。

 たしかに妖精は幻想種にかなり近い人型の生き物で、飲み食いをせずに自然消滅したり増殖したりを繰り返している。人間の常識では理解ができない、超常現象の上に成り立った生物だ。淫魔と近いというのも、あながち間違いではないのかもしれない。

 

「それで?」

「えぇ、つまりです。私のボディは完全にサキュバスのものですから、もしかしたら新たなる能力———すなわち『種族特性』に目覚めていたりするのかもと、そういう思い立ったのです!」

 

 黒板には『目指せ最強(サイツヨ)への道!』と大きく書かれていて、眼鏡を白く光らせながらもユターシャはニヤリと笑っていた。

 

 ……何を言ってるんだこいつは? 

 

「エルフの種族特性はあまり目立ったものがありませんでしたが……有名な幻想種であるドラゴンなんかだと『空間浮遊』や『重力無視』といった種族特性が有名です。幻想種としてかなりの神秘に満ちているサキュバスになったのですから、少しくらい調べてみるのも面白いかと思いまして」

「まぁ、自身の肉体を理解することは悪くないと思うが……」

 

 思わず力のない返事をしてしまうものの、調子に乗っているユターシャはノリノリで教鞭を取るふりをしている。

 ぴっちりとケツの形が浮き出たタイトスカートに白シャツを合わせていて、黒板よりもそちらが気になって仕方がない。

 

 ———気を取り直そう。

 

「あー、ごほん。それで?」

「おさらいですよ生徒クン、種族特性とは一体なんでしょうか?」

「それは……」

 

 種族特性、というのは幻想種寄りの生物によく見られる特殊な性質を指す。人間にはあまり発現は見られないものの、エルフや妖精、悪魔やドラゴンといった幻想種寄りの生き物だと比較的備わっている。もちろん、種族特性を持たない幻想種の個体もいるが、そちらはごく稀と言っていいだろう。

 

 最近の研究では、火山地帯に生息すると言われている極めて珍しい宝石亀がマグマのなかで過ごせるのもこの種族特性が作用しているからと言うことが発見されたらしい。数日前の新聞にそんなことが載っていたが……

 

「だがまぁ、珍しい生き物に付随してるちょっとした特性だろ?」

「まぁそうなんですが……もっと根本的な事を言いますと、種族特性とは『物理法則はこうだけど、こっちのほうが生きやすいよね』っていう微小事象改変型の意思と私は考えます。簡単に言えばご都合主義であり、難しく言うと世界運命的オポチュニズムといいますか……ありえない常識をなんとかするために、無理やり繋ぎ合わせるためのルール改定です」

「言ってることがややこしいな。……何が言いたいんだ?」

 

 ややこしい言葉を使わないでくれ、とオレがめんどくさそうに言うと、ユターシャは嬉しそうに黒板に絵を描き始めた。なんともポップなドラゴンやら妖精やらが描かれて、その下に有名な種族特性が挙げられていく。

 

 エルフの下には……美の肉体やらなにやら書かれていた。有名な話で、エルフに美男美女しかいないのはこの種族特性が関係しているからである。

 

「私もね、今までは種族特性を軽視していたんです。なんせエルフの種族特性って、出たところで意味のないものでしたから。……が、よくよく考えたらワンチャンチートになるんじゃないかなって思いまして」

「はぁ」

「幻想種の中でもかなり神秘に近いだろう淫魔であれば、なんらかの特性が見られるかもしれません。それこそ、意外と最強になれるようなトンデモスキルとか!」

 

 ドヤ顔のユターシャは、嬉しそうに胸を張っていた。

 

「それで、どうやって判別するんだ?」

「こちらです!」

 

 そして、彼女が取り出したのはオレが先日買い与えてやった本だった。

 

『漫画でわかる! 悪魔召喚サキュバス編入門』と書かれているソレは、独自のルートで入手した代物である。見た目こそポップでファンシーな教材風ではあるものの、人間の男が中身を下手に発動させてしまうと淫魔有利の契約がされてしまう悪魔の契約本。

 なお、この本は聖教会の手によって効果をなくしており、ただのサキュバスについて詳しく書かれているだけの本となっている。

 

 この本のおかげで、果たして幾人が精気を奪われて死んでいったのだろうか。もちろん、ユターシャにはそんなことを少しも教えていないので、そのいわくつきの本を大事に大事に抱えている。

 

「それで、その本がどうした?」

「ここのページにね、ほら、見てくださいコレ」

 

 ユターシャが付箋を頼りに開いたページには、見開きにデカデカとチャート式の診断が書かれていた。

 矢印がやたらめったら書かれていて、イエスノーで答えて進んでいくタイプのものだ。

 

 1番上には、『的中率100%! あなたのサキュバスは何タイプ? 性格別☆種族特性診断』と、書かれている。

 

「……これは」

「平成初期の少女漫画雑誌の1ページを彷彿とさせるちゃちな診断とお思いでしょう。しかしこの本、書かれていることがやけに信憑性高いので信じられると思うんです。ソレにほら、ヒソカだって天空闘技場でオーラ別性格分析とか披露したじゃないですか」

「誰だよヒソカ」

 

 というか、平成初期っていつだよ。

 オレの質問を無視して、ユターシャは話を続ける。

 

「それでですね、本人では正確な診断結果が出ないので人に診断してもらいましょうって書かれているので、ぜひご主人様に私の種族特性を確認していただきたいんです」

「まぁ、いいが……こんなお遊びみたいなものを鵜呑みにするんじゃないぞ?」

「はいはい、わかってますよぅ」

 

 きっとユターシャも娯楽に飢えているのだろうと、オレはため息を吐きながらも本を受け取る。スタート地点に目を向けて、そこに書いてある文章を読み———

 

「『命令には全部従ってくれる?』……まぁ、イエスだな」

「それは契約だからじゃないですか」

「ええと次が……『すぐにイっちゃう敏感娘?』か、これもイエスだな」

「ご主人様が遅漏なだけで……アッなんでもないです。すぐイきます、イくイく」

「……それで次が『主導権を握るのはニンゲン様?』これもイエスだな」

「わ、私だってリードしてエッチできますしぃ?」

 

 どんどんと設問に答えていき、そして最後の答えまで向かってから次のページを捲る。全てをイエスで答えていき、確認するのはAの項目なのだそうだ。時間にしてものの5分以内、なんとも簡単な診断である。

 

 そして、診断結果は……

 

「…………うん、あぁ……」

「なんです? 何が書いてあるんです?」

 

 オレは読み上げたくなくて、ユターシャにそのページを開けたまま渡した。

 

「なになに……『あなたのサキュバスは被虐マゾメス♡ いじめられて潮吹きアクメしちゃう雑魚マンコタイプ』……?」

 

 ユターシャは顔を真っ赤にして何故かオレをポコスカと殴り始める。痛くはないが鬱陶しくて、しかしされるがままになっておいた。

 

「はぁ〜〜〜〜〜ッ? ちょっと待ってくださいよ、おかしくないですか! なんでいつの間にくだらないSM診断してるんですか、私がやって欲しかったのは種族特性診断で……!」

「お前がやりたいって言ったんだろ。八つ当たりはやめてくれ、くすぐったい」

「っていうか、種族特性診断はどこいったんですか!」

 

 一応、端っこのほうに『種族特性は被虐体質です☆』と書かれている。すごく小さめの文字で見えにくいものの、一応種族特性診断の名目は保っているらしい。

 

 他の項目には『嗜虐体質』だとかなんだか色々と書かれている。どうやらサキュバスには多数の種族特性があるらしくて、診断外にもいろんな参考例が書かれてあった。

 

「よかったじゃないか、アンタにピッタリの種族特性だな」

「よくないです」

 

 ぶすくれるユターシャは、どうやらその診断に納得がいっていないようで、ぽこぽこと怒りながらも本を棚に仕舞い込んでしまった。

 

「こんなお遊びみたいなものを鵜呑みにしてはいけません。然るべき機関に今度問い合わせて確認しましょう。ちゃんとした特性が現れるはずです!」

「いやいや、被虐体質であってると思うぞ? マゾメスだって……んんっ……正しいじゃないか」

「笑わないでください! 認められるわけないじゃないですかぁ!」

 

 まぁまぁとオレは彼女を宥めるものの、ユターシャは診断結果が不満だったようだ。「これからはご主人様の言うこと全部シカトしてやります!」とまで言い出しているユターシャを、落ち着かせるためにオレは手招きをする。

 

 まるで威嚇する猫のように、オレの手招きを拒んで遠目に睨んでくるが……

 

「落ち着けよ。なぁ、じゃあ試してみるか?」

「なにをですか」

「アンタがいじめられて気持ち良くなるようなヘンタイじゃないって、オレに証明してくれよ? マゾじゃないなら余裕だよな?」

 

 なんなら今からベッド行くか? と、オレが問いかけると、ユターシャは目に見えて尻尾をピンと立たせた。耳も心なしか上に向いて、口元がキュッとつむいでいる。

 

 ユターシャにとってオレからの誘いはご褒美なのだろう。なんてチョロいんだろうか。

 

「で、でもぉ? まだ夜じゃないですし……」

「たまにはいいだろ、そんくらいハメ外したって」

「1日2回までのえっち制限は……?」

「今日はちょっとだけ贅沢してもいい日にしようか」

 

 と、オレが優しく声をかければ、ユターシャはぴょんと飛び上がって満面の笑顔を浮かべた。

 なんてチョロいのだろうか。チョロすぎて少し不安になってしまう。

 

「ムフッ、しかたありませんねぇ? ご主人様に、私がちょっぴりサディストでイケイケなサキュバスだってトコ、見せつけてあげちゃいますから?」

「あぁ、そりゃ楽しみだ」

 

 オレも、随分とユターシャには甘くなってしまったものである。本だって買い与えてやってるし、どんどんとユターシャに甘くなっていくのを日々感じてしまう。

 

 それでも今が楽しくて、オレはユターシャの後に続いてベッドルームへ向かい……

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 

「それで? アンタのどこがサディストでイケイケなんだっけ?」

「んぶぅっ♡ はふっ♡ わ、私っ……♡」

 

 ユターシャの口を喰みながら、唾液を流し込んで舌を深く絡ませる。すっかりと夢中になってせがむように吸い付いてくる彼女に、何度も何度もキスを繰り返していく。

 

 ベッドに座り、彼女を後ろから抱きしめたオレはただただ彼女の身体を弄んでいた。

 

「まったく、これで聖女サマだったなんて信じられねぇな……簡単にアヘってんじゃねぇよ」

「はひぃっ♡ あ"っ手マンやばっ♡ またイぐっ♡」

 

 角ばった指は彼女の肉壺を何往復も出入りして、指の腹で弱点のひとつであるGスポをコンコンと優しくノックし続けている。何度目かの潮吹きで、床はすっかり濡れていた。

 

「なぁ、マゾでいいよな? 虐められて気持ちよくなっちゃうマゾメスなんだよな?」

「は、はふっ……しょんなぁっ……♡」

「認めようぜ? な?」

「そんな、私はっ……んきゅっ♡ ぁあっ♡」

 

 オレに背中を預けながらも大股開きをしているユターシャは、太ももを震わせながらも盛大にアクメを繰り返している。みっともない姿で、顔をドロドロに蕩かせながらもユターシャは力なく首を振っていた。

 

「な? ユターシャはマゾでドスケベな変態聖女サマなんだよな? 認めてくれよ、なぁ?」

「違っ……♡ 私♡ そんな、変態じゃなくてっ♡ サキュバスだから、仕方なくってッ♡」

 

 なんて言い訳がましいユターシャを叱るように、乳首を捻り上げた。敏感になっている身体はビグンッと跳ね返って、ユターシャの口からは嬌声が溢れでる。

 

 可愛らしい舌を舐めて、絡ませて……ふと目を開けると、すっかり感じ入って気持ちよさそうにしているユターシャの顔があった。

 

「乳首、酷くされるの好きなんだろ?」

「あ、あぁぁっ……♡ す、すきですっ……乳首、すきでっ……♡」

「乳首好きのマゾメス淫乱聖女サマだな? あーくそ、チンポイラつかせやがって……」

 

 ズボン越しに硬くなっているそれをわざとユターシャの尻に押し付けて、強く意識させるように擦り付けてやった。

 

「……チンポ欲しいか?」

「はっ♡ ほひっ♡ ほひぃれすっ♡ ちんぽっ♡」

 

 卑しくも極上のマゾ女は、そういいながらも媚びて膣肉をきゅっと締め付ける。手マンですっかりふやかされたオレの指は、ユターシャのえげつない構造した肉ヒダによって吸いつかれていた。

 

 チンポを意識してしまったが故にオレの指をチンポと勘違いしてしまったのか、まるで求愛するような肉のひしめいた動きは、ますますオレの股間を熱くさせる。

 

 あぁ……これチンポハメたら、絶対ヤベェんだろうなぁ……

 

「でもなぁ、すぐにハメたいけど、酷いこともいっぱいしたいんだ……なぁ、なんでだろうなぁ? オレ、もうおかしいよな? アンタのせいだぞ?」

「はひゅっ♡ ごしゅ、じんさまっ? わたし、なにも、してなっ……♡」

 

 ゆっくりと、愛し合いたい。

 だけど酷く乱暴に、自分勝手に愛を押し付けてしまいたい。

 

 怒りと愛おしさがぐちゃぐちゃになった中で、その口を食らう。頭の中がユターシャのことしか考えられなくなって、まるで麻薬のような幸福感がゆっくりと頭を支配していった。

 

「ユターシャ、あぁ……ごめんなぁ?」

「はふっ……♡ んぅっ♡ あ、ご主人様っ♡」

 

 オレは、ユターシャのマゾ肉穴から指を引き抜く。そうして彼女の口にたっぷりとマン汁のついた指をしゃぶらせると、子供のようにちゅぱちゅぱと吸い付いてきた。

 なんとまぁ、美味しそうに幸せそうに舐めるもんだ。

 

「自分のマン汁うまいかよ、甘えん坊だな」

「んっ♡ ぷはっ♡ んちゅ♡ ごしゅ、じんしゃまっ……♡」

 

 ちゅるちゅると指を吸われて、長い舌が硬い皮膚を撫でていくのが気持ちいい。

 

「ほら、ユターシャ……もう口放せよ」

 

 まるで赤ん坊のように吸い付くユターシャから指を引き抜き、彼女の身体を床に下ろした。すっかり服を脱がせてやって、全裸のユターシャはぼんやりとオレを見上げている。

 

 唾液で塗れた指を、ユターシャの乳首にそわせていく。

 その勃起した頂点をぬるぬるになった指が掠っただけで、身体を強張らせてビグンと反応を返してくるユターシャ。蕩けきった目は、オレから与えられる刺激に飢えて物欲しそうにしている。

 

「乳首、気持ちいいんだよな?」

「気持ちいですっ……♡ もっと、もっとぉっ……♡」

 

 指先で、カリカリとそれを弾いてこねくりまわす。ほんの少しの面積しか触っていないと言うのに、ユターシャは敏感に身体をひくつかせて感じ入っていた。

 

 だが、そう簡単にユターシャをただ甘やかしたくなかったオレは、彼女の乳首から手を離してしまう。

 

「なぁユターシャ、乳首で気持ちよくなれるか?」

「は、はふっ……なれますっ……♡ きもちくて、ちくび、私っ……♡」

「いい子だ。じゃあ、()()()()できるよな?」

 

 床に座り込んでいる彼女は、理解していないような顔でオレを見上げている。

 そんな彼女を頬を撫で、頭を撫でて……気持ちよさそうに目を細めながらも、次に与えられる刺激を待ち望んでいるようだった。

 

 だから

 

「乳首1人で触って、イけたらハメてやるから、な?」

「え、ぁ……乳首? 1人で?」

「あぁ、ほら」

 

 自分でも、なんともまぁ酷いもんだと思ってしまう。ただセックスするだけならハメればいいだけなのに、自分の中のいろいろな感情を満たすためだけにユターシャを突き放してしまうのだ。

 

 そうしてオレは彼女の腕を取って、その胸に近付けてやった。完全勃起しているぷりゅんとピンク色の瑞々しい乳首は、馬鹿でかい乳の先で健気に震えている。

 

「イくまで触ってやらないからな。さ、頑張れ」

「はふっ、そんなっ……あ、あぁっ……」

 

 ユターシャはオレの方に手を伸ばすが、それを払い落とす。

 

 あぁ、なんて顔をしてくれるのだろうか。

 痛くはないだろうが、せっかく伸ばした手が振り払われたのだ。切なそうに発情しきった顔が、見捨てられたと言わんばかりに悲しげに眉を困らせている。

 

 そんな表情をして縋るから酷くされてしまうということがわからないのだろうか? 

 

「あぁ、や、やだ、ご主人様の手がいい、焦らさないでください……」

「そんな顔するなよ、ごめんな? アンタが頑張ってイったら優しくしてやるから、ほら」

「んっ……ぅうっ♡ あっ♡ ごひゅじんしゃまぁ♡」

 

 ユターシャの唇にキスを落としながら、再度彼女の手を柔らかな乳肉に運んでやる。いくら待ってもオレが優しくしてくれないと察したのか、ユターシャは顔を赤らめながらもオレと目線を合わせないように必死に目をつぶって、そして乳首を虐め始めた。

 

 おずおずと不慣れな手つきで自身の乳首を捏ね、そしてオレにせがむように唇を尖らせて無防備なキス顔を向けている。

 

「気持ちいいか?」

「はいっ……あぁ、でも、こんなのってあんまりですっ……」

 

 ベッド縁に座るオレは身体を曲げて目の前のユターシャの唇を味わいながらも、目の前で広がる痴態をゆっくりと堪能していた。自身の中でズクズクと熱が疼くのを意識しながらも、それをおくびにださないようにただ穏やかに笑顔を浮かべる。

 

 目の前で発情する極上のメスサキュバスがいて、それをグッと堪えてただ眺めるだけの優越感がたまらなかった。鼻腔から脳髄を犯してくるサキュバスの淫香で、とっくに沸騰している頭が更に熱くなっていく。

 

「ユターシャ、もっと顔を」

「う、ァ……はい、ご主人様……♡」

 

 彼女の顔を上向きに固定して、じっくりと発情しきったソレを眺める。きゅっと目を瞑っているのは、必死に感じて早く気持ち良くなろうとしているからなのか、それともなけなしの羞恥心なのだろうか。

 

 親指と人差し指が硬くなっている濃いピンク色の乳首の先っちょをつねり、そして引っ張り上げていく。グニグニと容赦なく潰して、爪先でカリカリと虐めていて、そのたびに鼻から甘ったるい吐息が溢れていた。

 

「んっ♡ はふっ……ごしゅ、じん、さまっ、乳首ぃっ……無理です、イけないですぅっ……」

「出来るだろ? がんばれ」

「う"ぅ……ひどいっ、ご主人様にしてほしいんですっ……お願いですからっ……♡」

 

 可愛らしいおねだりを繰り返すユターシャに、頑張れと言いながらも甘やかすようにキスを落とす。しかし彼女が本当に欲しがっているものを与えるつもりは毛頭なくて、ただ優しく頭を撫でてやることしかしてやらない。

 

 乳首を触って欲しいとばかりに乳を持ち上げているユターシャ。あまりにも素直で可愛くて可哀想で、オレの下半身の熱はたまらなく苦しかった。

 

「辛いんですっ……! 身体が昂ってるのに、じれったくって……」

「あぁ、そりゃ大変だ。イけないのか?」

「イけません、こんなの、気持ちよくなれないッ……つらいんです、助けて……」

 

 堪らなかった。

 切なそうに下品なおねだりをするユターシャに、どうしても胸が高鳴ってしまう。

 

 好きで好きで愛おしくて、そんな風に愛している彼女がオレのことを求めている様を眺めるのはとても心が満たされていくのだ。

 

「あぁもう、じゃあ、少しだけだぞ……?」

 

 オレは自身のズボンをくつろげていく。

 随分と我慢してすっかり勃起しているソレをユターシャの目の前に見せつけると、彼女の視線はそちらに釘付けになっていた。

 

「は、ぁ……っ♡ ちんぽ♡ ご主人様、ちんぽぉっ……♡」

「ダメだぞ、まだ味わうんじゃねぇよ……ほら、乳首イきしたらハメてやるから、頑張れ」

「はふっ、はーっ……♡ なめ、少しだけ♡ 味見だけ♡ はぁぁあっ……♡」

 

 ユターシャの唇にあたるか当たらないかのところで亀頭を向けていると、彼女が口を開いてその長くて悪質な舌で舐めようとしてくる。

 竿に触れる寸前にそれを指で掴んで、咎めるように引っ張り持ち上げた。

 

 

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「チンポ欲しくねぇのか? ちゃんと言うこと聞いてくれよ」

「ほひっ♡ ほひーれひゅっ♡ ああああ、へほふはふほはへへっ! (ベロ掴むのやめてっ)

「んー? わかんねーな、ちゃんと公用語使おうぜ?」

 

 掴んだ舌がぴろぴろと動いて、唾液に塗れたソレはとても掴みにくいものの……元の口の中に戻ろうとする舌を摘み続ける。ベロを長く出したユターシャの顔はあまりにも間抜けで、大きく開けたその口にチンポの先を向ける。

 

 空いている方の手で竿をしごいて、それと合わせるようにユターシャの呼吸はどんどん荒くなっていった。

 

「あ"〜……吐息熱いなァ? な、センズリ目の前で見せられる気持ちはどうだ? このまま顔に出していいか?」

「ひはっ、ひはへふっ!」

「だから何言ってるかわかんねって……ん、濃いやつナカダシして欲しいならさっさと乳首アクメしとけよ、なぁ」

 

 引っ張っている舌にチンポの先を少しだけ当てて、ユターシャの情けない姿を見ながらのお預けセンズリ。ピロピロと舌先だけがひくつくように動いて、オレのチンポを舐めしゃぶろうと必死になっている。

 

 ハメてもらおうと必死に自身の乳首を高速でいじくりまわしているユターシャは、困ったように眉を八の字にしながらもオレのチンポを凝視していた。はぁはぁと繰り返される呼吸が熱くて、それがまたたまらない。

 

「わりぃなユターシャ。このままじゃ顔にかけちまうけど……?」

「ふぐぅううううっ! はふっ♡ ひ、ひふひっ♡ ひふはらっ♡」

「ん? 乳首でイけるのか? 頑張れ頑張れ、オレより先に乳首アクメできたらハメてやってもいいからな」

 

 たまに舌先にチョンとチンポの先っちょが当たると、目に見えて大袈裟に身体を揺らし反応するユターシャ。少しだけの先走り汁でも嬉しいらしくて、その度にどんどんと身体が強張っていく。

 

「ひんぽっ♡ ひんぽっ、ほひっ、ほひーへふっ♡」

「下ッ品な乳首オナニーだなぁ? はは、伸ばしながら爪で掻くのが好きなんだな」

「ふぅ〜〜〜……♡ ひんぽぉっ♡ はひっ、ひひゅっ♡ ひっ、ぃっ♡」

 

 夢中になって乳首を扱き、そしてもうすぐでイけそうなのだろう。開けっ放しにならざるを得ない口からは唾液がポタリとこぼれ落ちて、オレの指を唾液でぬるぬるにしていた。

 

 自身の息子を扱く手も自然と早くなってしまって、だいぶ限界が近づいているのがわかる。ずっしりと濃いのがきっと装填されて、今吐き出したらとても気持ちがいいことだろう。

 

 ここで無駄打ちして、それが顔を伝って床に溢れたらユターシャはどんな顔をするのだろうか、なんて考えると背筋が粟立つ。そんな勿体無いことをするつもりはなかったけれど、床に落ちた精液を舐めとるユターシャを考えただけでも堪らなく興奮した。

 

 まったく……ユターシャのせいで、オレはどんどんおかしくなってしまう。

 

「さ、早くイけよ。早くしねぇと無駄打ちしちまうからさァ、がんばれがんばれ」

「ひっ、はふっ、ほふっ♡ ひぎゅっ♡」

 

 もうすぐで絶頂を迎えるのだろう。ユターシャの呼吸は浅く早いものになっていき、乳首を捏ねる手も早くなっていく。ガクガクと揺れる太ももは肉が揺れ動いて、贅沢な生肉はたぷんたぷんとオレを誘っていた。

 

 あの太ももに指を食い込ませてガンガン突くのだと考えると、思わず生唾を飲み込んでしまう。早く生ハメしたくて、オレはユターシャを急かしてしまう。

 

「あーくっそ、もうイくのか? イけよ、イけっ……」

「あぁ、っ♡ あ"っ♡ おっ♡ んぉおおおっ♡」

 

 ———ビッッックンッ♡

 

 そして、ユターシャは体をエビのようにのけぞらせた。

 

 無防備な首筋を晒し、体を逸らして大きく痙攣する。愛液がたっぷりと床にこぼれ落ちて、そしてその上にペタンと尻をつけて座り込んでしまう。

 オレは舌を掴んでいた指を離して、褒めるようにその頭を撫でてやった。

 

「はーっ……はーっ……ごしゅ、じん、しゃまっ…….♡」

「よく頑張ったな、偉いぞ」

「んぅっ♡ ごしゅじんさま、わたしっ……乳首で、イきっ……♡」

 

 オレはユターシャの身体を持ち上げて後ろを向かせ、自身の肉棒にヌルヌルになりすぎているおまんこをあてがう。

 

 ようやく待ち望んでいたのだろうモノをハメてもらえるのだ。ユターシャは嬉しそうに興奮しながらも、オレがハメやすいようにケツを差し出してきた。

 

「はふっ……ちんぽ♡ くだしゃいっ♡ 生ハメ♡ 中出し♡」

「あぁっ、挿れるからな……」

 

 床に足をつけ、ガニ股でなんとも下品な姿勢でチンポを受け入れようとするマゾサキュバス。腰を掴んで、そのまま引き寄せるように膣肉のなかに怒張を埋め込んでいく。

 

 先っちょがそこに当たっただけでも気持ち良すぎて、そのドロドロできゅんきゅんと締め付けてくる穴が亀頭を優しく包み込んできた。ゆっくりとハメこんでいくと、竿がゾリゾリの肉粒に吸いつかれて、そして根元まで埋まってしまう。

 先っちょは子宮口に当たっているのか、プルプルとした肉がバキュームしてきやがる。地獄のような快感の肉壺は、オレのザーメンを吸い上げようと必死になっていた。

 

「んはぁーっ……♡ あーくそ、ふざけんなよっ……ユターシャ、気持ちいいな……?」

「はいっ♡ きもひぃれすっ♡ ご主人様っ♡ ちんぽっ♡」

「ん、アンタが動いてくれよ……♡ エッロいケツブルブルさせて、下品にピストンしてくれよ」

「は、はいっ……♡ せぇいっぱいっ♡ ケツ振り♡ ピストンッ♡ させていただきますっ♡」

 

 無防備にもアナルをガン見せしたような姿勢で、ユターシャはゆっくりと腰を上下に動かし始めた。座っているオレのチンポでオナニーでもしているかのような下品な腰振りは、見ていて気分がいい。

 

 こんなにも下品なセックスをする女が、エルフ国の第一聖女だったなんて……高貴なケツが、ブリュンブリュンと肉を震わせてオレのチンポにスタンプを押している。あまりにも贅沢で、オレはその尻肉をペチンと叩いてやった。

 

「あーくっそ、チンポ溶けるっ……♡ ふざけんなよぉっ……」

「ぉっ♡ ご主人様っ♡ ざーめんっ♡ いつっでもっ♡ 中に♡ くださいねっ♡」

 

 ぱちゅんっ♡ ぱちゅっ♡ どちゅっ♡ ばこっ♡

 

 ユターシャのケツ振りに合わせて思わず腰が浮いてしまい、それを我慢するようにケツ肉に指を食い込ませる。もうだいぶ限界は近づいていて、オレは静かに立ち上がった。

 

「はえっ……? ご主人様っ?」

「んっ、ユターシャッ♡」

 

 そして、背面立ちバック。

 彼女の肩を腕で押さえ込み、腹を掴んで、思いっきり腰を押し付ける。

 

「あ"ッ……これ、これダメっ……♡」

「うるせぇッ」

 

 バチュンッ♡ ぢゅぼっ♡ ドヂュッ♡ バヂュッ♡

 

「あ、あ、ぁぁぁあっ♡ ああああああっ♡」

「あ"〜……キくなコレッ♡ 深くまで挿入る……わかるか? わかるよな?」

 

 ユターシャの体重で先ほどよりもずっと深く刺さっているのだろう。子宮口にチン先を押し込んで、生意気な快楽地獄にオレを捩じ込んでいく。きゅんきゅんと優しくも容赦なく締め付けて吸い付いてくる肉壁は、ガン突きされて嬉しいのかぎゅっと絞り込んできやがった。

 

 腰を夢中で振りたくって、ユターシャに欲を吐き出そうという考えだけで頭の中が占められる。抱きしめた身体は細くも健康的で、そしてどこを掴んでも柔らかかった。

 

「イぐっ♡ イっぢゃうっ♡ おまんイッ♡ イッ♡ ぁあああっ♡」

「あは、イけよぉっ……今日イった回数全部数えとけよ!? 雑魚弱イきマンコごめんなさいしろッ♡」

 

 バヂュッ♡ ドヂュッバゴっ♡ ぢゅぶぶぶっ♡

 

「従順なマゾメスのクセに、生ハメ大好きドスケベ聖女サマのクセに、お前のせいでッ……!」

「あ、あぁぁぁあっ♡ イっでるっ♡ ぉぉおおおっ♡ イぎまんご♡ 優しくッじでぇっ♡」

「うっせぇぞこのマゾがよぉ……!」

 

 ユターシャのせいだ。

 女なんてハメて出すためだけの、性処理でしかなかったのに。

 

 こんな風に無茶苦茶な感情を押し付けるような、暴虐的で溺れるような情事を知りたくなかった。オレは普通なはずなのに、ユターシャを抱いていると不思議と感情がおかしくなってしまう。

 

「ユターシャこっち向けッ……♡ 口、キスッ……♡」

「んぶっ♡ んちゅっ♡ はふぅっ♡ あっ、しゅきぃっ♡ ご主人様っ♡」

 

 どうしようもなく好きで好きで仕方がない。

 こんなにも想っていて、そしてこの感情をどうにもできないから、ただ怒りに任せて彼女の身体を抱いてしまう。

 

 ユターシャにマゾだと認めさせないと、オレだけがおかしいことになってしまう。それだけは嫌だった。

 

 全てユターシャが悪いのだ。ユターシャがどうしようもないマゾメスで、変態で、スケベなサキュバスだから仕方なくオレも同じ穴に身を埋めているだけなのだ。

 

 オレがおかしいんじゃなくて、ユターシャが悪い。こんなにもオレを溺れさせるユターシャが、全て悪いのだ。

 

「お前のことを好きになっちまったのもッ、セックスがこんなに気持ちいいってのも、なぁ、全部全部テメェのせいなんだぞ!? お前が、お前がいなくなったら、オレはッ……!」

「ひぎぃっ!? は、はげしっ♡ ごしゅじんしゃまっ♡ ぁあ"あ"ああッ♡」

「極上のサキュバスと毎晩毎晩セックスしてッ、テメェのせいでもうオレ普通の生活できねぇだろクソがよッ……! あー責任取れや、オレの人生の責任とってッ……」

 

 ———でも、いつかは

 

「責任も取れないクセにッ……ふざけるな、オレはぁっ……」

「ご主人様ッ……♡」

 

 室内には、卑猥な水音が響いている。

 肉がぶつかる音と、男女の荒い息遣いと、そして舌を絡ませる音だけが空間を占めていた。

 

「あ"〜クソ、出すぞッ? 全部飲めよ? なぁ、好きだッ……」

「んぶぅ〜〜ッ♡ わらっ、わらしもれしゅっ♡ しゅきっ♡ ごしゅじんさまっ♡ すき♡ すッ……ぁぁっ♡ ぁあああっ♡」

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 いつかは。

 

 いつかは、ユターシャを裏切らなきゃいけない日がくるのだろう。それが怖くて、毎日の時間が過ぎなければいいのにと月に願ってばかりいる。

 オレは眠っているユターシャの体を抱き寄せて、その暖かさを腕の中に感じていた。どこもかしこも柔らかい身体で、きっとこれ以上の女はこの世にいないかもしれない。

 

 どうしようもなく、好きなのだ。

 オレは彼女を愛してしまっていた。

 

 彼女と触れ合えなくなってしまうのが恐ろしくて、しかし未来はそうなることが確定している。もうすぐで、きっとくる。

 最近、どうやら世界情勢がやけに静かだった。嵐の前の静けさというのは誰もがわかっているのだろう。

 

「ユターシャ……」

 

 いっそオレとユターシャは、出会わなければ幸せだった。ここまで多くの命を奪いに奪ってきたオレへの、神からの罰なのだろう。

 拷問の訓練は、慣れていた。痛いのは嫌だが怖くなくて、いずれ死ぬのも仕方ないと諦めていた。

 家族もなく、愛も知らず、オレには今まで何もなかった。

 

 だけど、一度知ってしまった幸せを手放すことが酷く恐ろしい。

 だからこそ、神様はオレにユターシャを与えたのだろう。

 

 

 

 オレの罪は、あまりにも重くて。

 その罰は、あまりにも残酷だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




メガネなし差分

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+過去+悪夢+分裂ハーレム3P ☆

 その日は、とても綺麗な晴天だった。

 街も休日に賑わっていて、ギルドも休業日のためオレは静かに新聞を読みながらもコーヒーを啜る。

 

 朝食の片付けを終えたユターシャは、新聞を読むオレの腕の中にむぎゅっと入り込んできて、構って欲しそうに抱きついてきたが……

 

「おや、今日って『戴冠式事変』の日ですか。ご主人様、ちょっと南無南無してもいいです?」

「……ナムナム?」

「死んだ人に手を合わせることです」

 

 新聞の日付と、そして大きな見出しの端っこに記載されていたニュースを見たユターシャはそんなことを言い出した。

 

 あぁ、なるほど。とオレは頷きを返してそれを静かに見守る。棚から銀製の小鉢を取り出したユターシャは、それをひっくり返して机に置きなむなむ、と呟きながらも棒で叩く。そして手を合わせて合掌。

 

 その一連の動作で満足したのか、ユターシャは出した小鉢を片付けて再度オレの腕の中に潜り込んできた。

 

「エルフの国の黙祷は変わってるな」

「いや、これは日本流ユターシャアレンジです。私オリジナルですよ」

「……まぁ、聖女サマがやる黙祷ならきっと鎮魂の精度も高いんだろうな」

 

 そして、ふと気になることがひとつ。

 

「誰か、アンタの身の回りの人間も巻き込まれたのか?」

「えぇ、まぁ、()()()婚約者ですね。エルフ国王族の長男息子くんです」

 

 悪い人ではなかったんですけどねー、と呟きながらも彼女はオレの横に座る。

 横顔をチラリと見れば、その目はどこか遠い過去を映していた。

 

 戴冠式事変で各国の要人が多く殺されたのはあまりにも有名な話だ。その中にエルフの国の皇太子が含まれているのもまた、有名な話である。

 しかし———ユターシャと婚姻関係にあったというのは知らなかった。

 

「好きだったのか?」

「いえ、政略結婚ですし……そもそも私、男に興味ありませんでしたから」

 

 ———でも責務として、覚悟は決めていたんですよ? 

 

「好きとか嫌いではなく、そういうものとして、受け入れていたのです」

「そうか」

「あぁでも今は違いますよ! ご飯くれるからとかじゃなくて、本当に男性として……好きな人として、ご主人様が好きなんですよ。本当です」

 

 パタパタと手を振りながらも不要な弁明をするユターシャはどこまでも明るくて、おそらく本当に皇太子の事は役割としてしか見ていなかったのだろう。いかにオレのことを愛しているかを必死に説明されるものの、オレはそれを聞き流す。

 

 もしも『戴冠式事変』さえなければ、ユターシャは今より幸せだったのだろうか? 

 聖女としてエルフ達の上に立ち、導く希望の星として崇められていたのだろうか? 

 

 考えても意味がないことというのはわかっている。

 それでも、もしもを考えると終わらない。

 

「……もしその皇太子が生きてたら、お前は淫魔にはならなかったんだろうな」

「それ、貴方にも会えてないのでバッドルートじゃないですか? まぁ確かに淫魔になったのはマイナス点ですが……ご主人様に出会えて、私が愛に()()()()のは幸せなことです」

 

 ———だから、もしもなんて考えるのはやめましょう? 

 ユターシャはそういって、楽しそうに微笑んだ。

 

「長く長く生きてる人生の中で、多分今が1番楽しいんです。大好きな人がいて、その人の帰りを待つ毎日。溶けるような、燃え上がるような恋愛に溺れて、あなたの事を考えて過ごす日々。好きな人がいるって本当に素敵で、とっても幸せなんです。だから、私は今が1番好きですよ」

「……よくもまぁ、そんな恥ずかしいこと言えるよな」

「今更です」

 

 彼女も恥ずかしい事を言ってる自覚はあるのだろう。少し顔を赤らめながらも……それでもユターシャは全力でオレを愛していると言葉を重ねてくれる。

 

 それに応えようと口を開けて……やっぱり似合わないと思ったオレは、代わりにユターシャの額にキスを落とした。

 

 しかし腕の中に収まっているユターシャは不服だったのか、ぷくっと頬を膨らませて睨んでくる。その柔らかい頬っぺたをぷにゅんと両側から片手で押し込めば、口からはプヒューなんて間抜けな音と共に空気が抜けた。

 

「むぅー、せめて私に愛を囁いてくださいよう」

「はいはい、愛してる」

「やーだー! やだやだー、いっぱいしゅきってしてくださいー!」

「はいはい、好きだぞー好き好き」

「ひーどーいー!」

 

 そんなくだらないやりとりが楽しくて、膝の上に座るユターシャをくすぐりながらも適当に言葉を返していた。

 

 

 

 

 

 一通りイチャついて満足したのか、ユターシャはオレに抱きつきながらもポツリと呟いた。

 

「……ご主人様は『戴冠式事変』を、どこまで知っていますか?」

「まぁ、新聞に書いてあった程度の内容くらいなら」

 

 実際のところは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだが、オレはなんともない顔で嘘をつく。

 

「かつては最強の種族とまで言われた巨人族の強固な警備を掻い潜って、()()()1()5()0()()()()()()———だったか?」

「そうです。その参加者の中に、私の元婚約者もいたんですね」

 

 この大陸に住む生物の殆どが『悪夢』と称するだろう5年前にあった出来事。それが、『戴冠式事変』である。

 

 巨人族の戴冠式で起きた、おぞましい事件。

 

 各国の主要人物が多く殺された事がきっかけで、各種族が参戦する大戦が幕を開けてしまった。死者は全種族人口のおよそ1割強と言われている。

 当時はさまざまな陰謀や工作が渦巻き、それから数年経った今ではだいぶ落ち着いたものの……いくつかの種族が根絶やしとなり、そして大きな国際問題となっている。

 

 その首謀者は、未だに捕まっていない。

 

「各種メディアによって、首謀者は『二足の黒災』と名付けられました。その場にいる者全員皆殺し……種族検知もエラーを吐いたとかで、未だに正体が不明らしいですよ」

 

 その賊は、とある鎧を着ていた。

 

 真っ黒なソレは様々な種族の骨を擦り入れたものが混ざった特殊な鋼であり、そして魔術によって認識阻害も組み込まれていた。

 備え付けられたマントには魔術返しが組み込まれ、足先から頭の先まで全てが黒の鋼で覆われている鎧。どこか竜を模しているのだろうデザインは、とある闇鍛冶屋の力作だったそうだ。

 

 その鎧は今もまだ、とある場所にて保管されている。

 

「果たして竜人族なのかハーフの巨人族なのか、エルフかゴブリンか人間なのかもわからない……まだ捕まってないとか、怖いですよねぇ」

 

 遠目で見た者の証言によると驚異的な身体能力を持っていたらしく、オーガとゴブリンのハーフという説が1番濃厚らしい。

 そんな体型ではないと顔も知らない誰かに文句を言いたいところだが、それもこれも認識阻害のお陰である。目撃者からすれば、二足で歩く生き物ということ以外は覚えていないのだろう。

 

()()()()、なかなか人間とは思えない芸当をしてみせたと思う。巨人族専用の城壁というのはとにかく高くて有名なのに、ソレを駆け上がり飛び越えたのだから。

 

「ご主人様は、当時おいくつでした?」

「22歳だったな」

 

 その22歳の誕生日に、ボスから指令を受けたのだ。渡されたのはあの鎧と、そして「全てを壊せ」という言葉。

 

 オレはその通りに動き、そしてひとつの失敗を犯してしまった。

 故に暫くは表舞台に出ないように、身を隠すため冒険者の立場をとっているのである。

 

 忌々しいあの『戴冠式事変』。

 世間にとっても……そしてオレにとっても、まさしく『悪夢』と言えるだろう。

 

「あの時、私たちの王はとにかく怒り狂ってしまったのです。中立であるべきとわかっていても、国民感情を考えると当時は戦争に参加せざるをえませんでした。息子を亡くしたばかりの王に国民をおさえるだけの精神力はありませんでしたしね。ま、勝ったからいいのですが……」

「政治家も大変だなぁ」

「全くですよ。いや私政治家ではありませんけどね、一応国家運営に対して口出しできる立場もらってたってだけで……」

 

 優秀な次代の王を失ったエルフ国。復讐を成し遂げたその果てに残ったのは、少しばかりの戦勝金と減らされたエルフの若者達。

 

 そして王家には年老いた王と、穏やかで政とは無縁な第二王子。

 

「長男くんはすごく完璧な人だったんですよねぇ……で、弟くんは最初から全てを諦めていたタイプだったので、急に皇太子になっちゃって浮かれちゃったのでしょう。それで邪魔な私を処刑したんではないでしょうかねぇ」

「なんだか、随分と他人事みたいな言い方だな」

「まぁ実際今の私エルフじゃないですし、他人事っちゃ他人事ですよ?」

 

 エルフの国はかなり鎖国的である。それ故にどんな人物が皇太子になったのかは知らなかったが、ユターシャの口振りからしてなかなかの男だったのだろう。

 

 ……そもそも、国にとってかなり重要な力を持つ聖女を淫魔に堕として国外追放している時点で、相当な男だということは窺えるが。

 

「権力者ってのは自分の考えに削ぐわないヤツを排除したがるからな。自己保身よりも蹴落とすほうが大事ってのは、お偉さんじゃよくある話だ」

「そうなんですか?」

「あぁ、そういうもんだよ」

 

 オレは、そういう思惑の中でたくさんの人間を殺してきたのだ。彼らにとって、目障りな人間の命なんてとても軽いのだから。

 

 人間の命は、とても、とても軽い。

 それはオレ自身が1番よくわかっているのだ。

 

「とにかく、最初の婚約者くんは……まぁ、愛とか何もありませんでしたが、元婚約者なので黙祷くらいはしてあげます。今日が、あの人の命日ですからね」

「……そうかい」

 

 ソイツ、オレが殺したんだよ。

 そんなことはとても言えなくて、オレは平然と言葉を返していた。

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 悪夢を見かけた瞬間、背後から数多の女の手が伸びてくる。柔らかく包み込んでくれるそれはとても心地よくて、引きずられるままにそっちへと引っ張られていった。

 

 あの日の、叢雲がかかった夜空が遠ざかっていく。

 目の前にいる子供の、恐怖に濡れた顔が遠ざかっていく。オレに問いかけるあの声は遅く引き伸ばされたように聞こえづらくなり、そのかわりに甘く蕩けるようなオレを呼ぶ声が耳元から聞こえてくる。

 高い城壁、血に塗れた床、響く怒声、泣き叫ぶなにか。それらから離れるように、オレの身体は引っ張られていくのだ。

 

 早々にナイフを手から溢して、オレの鎧は溶けていき———そして、いつものあの夢の中に立っていた。

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ってくださいよ!? はーッ、ありえねー!」

「はい雑魚、私に勝てるわけないですから」

 

 扉の奥から、なにやら声が聞こえる。

 

 何度も何度も訪れている部屋。ユターシャいわく過去に住んでいたというここは、一人暮らし用のアパート、というものだそうだ。

 玄関先で靴を脱がなくてはいけないらしくて、オレは履いていたブーツをから足を抜き玄関に揃える。

 

 暗がりの廊下を数歩歩き、そしていつもユターシャが待ち構えている部屋の扉の前に立つ。どうやらこの先から声が聞こえてきていて、オレはそっと静かにドアを開けた。

 

 そこには———

 

「私同士なのに、なんでここまでゲームのうまさが違うんですかね」

「知識と経験は違うということですよ……あ、おかえりなさいご主人様」

 

 ユターシャが2人、佇んでいた。

 

 ベッドに背中を預けた2人は、床に座り込んでコントローラー(赤と青の掴みやすい形状の何か)を持っている。モニター(動く絵が映る板)にはぴこぴこと絵が光っており、どうやらそれで遊んでいたらしい。

 

「……2人? どういうことだ?」

「まぁまぁまぁまぁ! ささ、とりあえずご主人様もこちらにおかけになってください!」

「コーラにします? ジンジャエールにします? それとも……む・ぎ・ちゃ?」

 

 片方のユターシャに腕を引かれて床に座らされて、もう片方のユターシャがコップに氷を入れて持ってくる。ガラスよりもっと薄くて柔らかそうな瓶から注がれた黒い飲み物は炭酸が効いていて、一口飲めばかなりの甘さが口内に広がっていった。

 

 先程までの不愉快な夢見を忘れるような、そんな爽快感がある甘さである。

 

「……夢なのに味覚がある」

「ついでに堅揚げポテトもどうぞ〜」

「アルファベットチョコもありますよぅ? はい、あーん♡」

 

 いつのまにかユターシャが持っているコントローラー(赤青のなにか)と同じものが握らされていて、そして甘ったるい口の中にチョコレートが捩じ込まれた。甘さに甘さが重なって、オレは眉を顰めながらも口にいれられたものを噛み飲み込んでいく。

 

 目の前に広げられた食べ物飲み物の数々。そしてオレをもてなそうと2人のユターシャは、キャイキャイとオレに擦り寄っていた。

 

「今夜は寝かせません……いえ、今が寝てるんだから、起こしてあげないですよー!」

「ゲームして、お菓子食べて、いっぱいいっぱい遊びましょうね」

 

 この夢に来るのも、もう何回目だろうか。

 慣れたもので、ユターシャ達はニコニコと笑ってオレにまとわりついてくる。

 

 奇妙な光景で、しかし嫌な気はしない。

 これだけ四六時中一緒にいるのに、夢の中でもユターシャと共に居れるのが嬉しいと思ってしまう自分がいる。我ながら末期なのだろうと思いつつも、それをおくびにも出さずに静かにコーラとやらを口に流し込んだ。

 

「オレが来るって、わかってたのか?」

「えぇ、なんだか今日ご主人様ってば元気がなさそうだったので」

「来るかなって思いながら用意していた次第です」

 

 言葉を交代に話しているユターシャは、どちらを見ても楽しそうに笑っていた。()()()()()()()()()()()()()()()()というのになんとも呑気なものだ。

 

「来なかったらどうしてたんだよ?」

1人(ふたり)楽しくお菓子パーティでもしようと思ってました」

「夢の中なら人間だった頃の味覚再現できますからねぇ」

 

 オレはここに、数週間に一度のペースで訪れている。どのタイミングで迎え入れられているのかはわからないが、寝ている間に迷い込んでいるようだ。

 

 ユターシャいわく、彼女は生まれてから毎日()()()()()この部屋にやってくるらしい。

 開かない窓、一方通行の玄関ドア。無限に出てくる水と温かいお湯、そしてつまみを回すだけで出てくる火……とても不思議な場所。

 いんたーねっとなるものが接続されているから、そこまで飽きないと言っていたか。

 

 ユターシャが欲しいと思ったものは自由に出したりすることのできる、なんでもアリの夢の世界。現実とほぼほぼ同じ時間の流れで、そのため寝坊することはあまりないらしい。

 

「今回はご主人様にありふれた幸せを味わっていただこうかと、ゲームしてイチャイチャしてエッチして……ネットで見たおうちデートとやらを模してみようかと思った次第です」

「まぁそれだけだと芸がないのと、ゲームは複数人で遊んだ方が楽しいかと思って分裂してみました」

 

 時間はいっぱいあるので、ゆっくり遊び方を教えて差し上げますね♡ と楽しそうに笑う右側のユターシャと、オレですら目で追うのが精一杯の速さで指を動かして画面の中の人を操作している左側のユターシャ。

 

 ……まぁ、2人の女に言い寄られるという構図は悪くない。悪くはないが、この状態を素直に受け入れて喜んでしまうと、ユターシャが調子に乗るような気がした。

 

 期待に思わず上がりかけてしまう口角を正して、なんともないような顔でそのゲームとやらに視線を向ける。

 

「ゲームはぁ、そうだなー……うん、マリカにしましょう! 何回か練習して、慣れたら罰ゲーム賭けるとかどうです?」

「いいですねー、よくあるエロ同人誌の導入みたいで……えへへ、ご主人様にどんなことしてもらおうかなぁ?」

「おい、オレに拒否権はないのか」

 

 鼻の下を伸ばしてニヤニヤと笑っているユターシャと、まんざらでもなさそうな顔でコントローラーを操作しているユターシャ……おそらく勝ちを確信しているのだろう。

 

 最低な出来レースだが、どうやらオレにはそこに口を挟む余裕もないらしい。

 

 ユターシャならオレの嫌がることはきっとさせないだろうが、負けることを大人しく受け入れるほどオレも甘くはない。

 

「……それで? これはどういうゲームなんだ?」

「レースゲームです。一番最初にゴールした人の勝ちで、画面中央にある自身のキャラクターを操作して道を進んでいくというものですね」

 

 ユターシャの説明を聞きながらも、画面を観察する。流れていく左右の景色と、様々なアイテムの使用。そして操作方法をゆっくりと教えられていき———

 

 

 

 

 

「あー! あー! 僅差で差されたァ!? な、なぜ高レートで全てのニスク(ノーアイテムショートカット)を網羅している私が負けてしまうのですかぁ?! 主にアイテムガチャがあまりにも卑怯! なんで爆豪勝己(ボム兵)我妻善逸(サンダー)ばっかり襲いかかるんですかフザキンナ111」

「待って何で私CPUにまで負けちゃってるんですか……? えっなんでおかしいおかしい最下位とか絶対おかしい」

 

 5回練習してから罰ゲーム付きの本番プレイを行い、オレは無事に一位でゴールを迎えていた。

 左右それぞれのユターシャが頭を抱えて叫んでいて、オレは張り巡らせていた神経をゆっくりと落ち着かせていく。暗殺者として鋭く鍛え上げられた動体視力と観察力、そして極めてポテンシャルの高い運動神経からなるボタン操作のおかげで優勝できたのだろう。

 

 再戦を、と吠えるユターシャを無視してコントローラーから手を離す。

 

「それで、負けたやつは言うこと聞くんだよな?」

 

 先に約束を強制してきたのはユターシャの方である。2人とも自信満々といった様子で仕掛けてきたのだから、今更逃げ出すなんてあり得ないだろう。

 

 オレは、静かにユターシャを見下ろす。

 2人は気まずそうに目線を合わせて、それから……

 

「くっ、いやらしい事するんでしょ、エロ同人誌みたいに!」

「しかしそれも仕方ないです。敗者はおとなしくエッチな命令に従わざるを得ませんからねっ」

 

 なんて言いながらも、どこか嬉しそうにいそいそと勝手に服を脱ぎだすユターシャ達。それは罰ではなくご褒美に該当するだろうと思いつつも、2人いて2人ともその方向に頭が回らないらしい。

 

 当たり前だが、敗者にそんなご褒美を与えるはずがなく。

 

「あー、脱がなくていいから」

「なるほど、着衣ですね」

 

 そして、思考すること5秒。

 ユターシャが到底できなさそうな無理難題といえば……

 

「……そうだ、一発ギャグ30連発とかどうだ」

「いっぱつ」

「ぎゃぐ?」

 

 ぽかんと呆けた顔を向けるユターシャ。なんとまぁ間抜けな表情が2つ揃っていて、まるで言葉が理解できていないようである。

 

「一発ギャグだ。ほれ、やれよ」

「……」

「…………」

「………………」

 

 そして、時が止まること10秒後。

 

「〜〜〜〜ッええええ、罰ゲームですよ!? 普通エッチでイヤラシイことさせるんじゃないんですか!」

「サキュバツゲームにエロ以外を入れるなんてナンセンスですよ何考えてるんですか? 馬鹿なの?」

 

 なんて吠えるユターシャを無視してコーラを一口喉に流し込む。

 

「あのな、罰ゲームだぞ? なんでお前が喜ぶことわざわざしなきゃいけないんだよ」

「ぐうの音も出ないド正論ですね!」

 

 罰ゲームとは嫌なことをやらせなくてはいけないのだ。エルフの聖女様として一発ギャグなんて到底できないだろうという、オレの采配は妥当なものである。

 

 とはいえ、オレも鬼ではないし本当にやらせるつもりはない。罰ゲームだなんだといって、人を嵌めようとすると痛い目を見るとわからせるためのもので……

 

「どうだ? お清楚な聖女サマにゃ無理だろう? これに懲りたら罰ゲームなんて馬鹿な事は言い出さずに……」

「も、もう1人の私! ちょっとなんとかなりませんか!?」

「仕方ない……私が長年こっそり練習してきたハリウッドザコシショウの『誇張しすぎたモノマネシリーズ』で数を稼いでいきましょう。その間に、もう1人の私は新ネタを考えておきなさい!」

 

 お清楚な聖女様に一発ギャグは無理な……は、ず? 

 

「それでは『誇張しすぎたエルフ王』。えーまず普通のエルフ王は「ゥ我が愛する臣民よ、泰平の時は長くゥ……」で・す・け・ど・も? これを誇張しすぎると……」

 

 と、ノリノリで何故かガニ股空気椅子のような姿勢になり、空になったペットボトルを構えるユターシャの頭を掴んで強制的に止めさせる。

 その『誇張しすぎたエルフ王』とやらは気になるものの、オレは止めに入った。入らざるを得なかった。

 

 オレの良心が、ユターシャにこんな事をさせてはならないと思わせたのだ。

 

「……あー、いい。やらなくていい」

「ご主人様?」

「いいんだ、これに懲りて罰ゲームだとか変な言いがかりを付けなければいいんだ。わかったか?」

「アッハイ」

 

 と、ユターシャはどこか残念そうな……しかし安心したかのような顔をしている。いくらユターシャといえど、エルフの聖女様に1発ギャグの引き出しがあるとは思わなかった。

 

 そして、もう1人頭を抱えているユターシャの頭を鷲掴みにして。

 

「それで、最下位だった方のオマヌケユターシャは一発ギャグ思いついたかよ?」

「う"〜……ご主人様の鬼、鬼畜、悪魔ぁ……」

「はいはい。コレに懲りたら無茶な事させるのやめろよ」

 

 そして、オレはベッドの上に座りユターシャ2人は床に正座の姿勢となる。

 

「……罰ゲームで、オレにどんなことさせるつもりだったんだ?」

「えぇと、その」

「……えっちな、ことを?」

「それがどんな事なんだって聞いてるんだよ」

 

 2人は顔を見合わせた後、恥ずかしそうに口を開いた。

 

「ご主人様にいっぱい好き好きって言ってもらいながら、2人同時に……?」

「ご主人様がトロトロになるまで、いっぱい犯したいなって……」

「まぁなんだ、いつも通りってことか?」

 

 いつもやっている事に、1人増えただけだろうと思うものの……どうやらそうではないらしい。ユターシャ達はあーだこーだ言ってて、オレはそれを静かに聞いている。

 

 コップに入っていた氷は、だいぶ溶けていた。

 

「なるほど、いつも以上にいっぱい優しくしろ、と?」

「概ねそんな感じです」

「えー? 普段ご主人様って優しかったですかね? ……アッ何でもないです」

 

 余計な事を口にする方のユターシャにデコピンする仕草を見せつつも、オレはため息を吐きながらもベルトを外して前をくつろげる。上の服を脱いでから、2人をベッドの上へと手招いた。

 

 2人の目が変わるのがよくわかる。まだそこまで勃ってないが、それでもユターシャにはご馳走に見えるらしい。

 

「……サキュバス2人相手とか、オレのチンポなくなっちまわないか?」

「ゆ、夢の中なので多分大丈夫ですよ」

「まぁ手加減はしますから……めいびー」

 

 おとなしくオレの太ももにそれぞれ座ったユターシャ達。その2人の服を同時にめくり上げる。

 

 ———たぷっ♡

 

 4つの生肉が目の前で揺れるのは、あまりにも圧倒的な光景である。そのまま2人に服をめくり上げるように持たせて、真っ白でプルプルと揺れる肉に指を食い込ませた。

 

「あっは……こりゃいい、贅沢だ」

「ん、好きなだけ触ってください、ね?」

「ご主人様のお好きなように、容赦なく酷くしてください……」

 

 柔らかい乳肉は手から溢れるほど大きくて、そして手の足りない故に触れないもう片方ずつのおっぱいがたぷたぷと無防備に揺れている。たまらずに右のユターシャの乳首に口を寄せてむしゃぶりつこうとしたところ、彼女の手によって顔が抑え込められた。

 

 そのまま上を向かされて、唇を奪われる。

 

「はぁ、んっ♡ むちゅっ♡ ご主人様……♡」

「ぅんっ……ユターシャ……」

「あっ、ちょっと、抜け駆けずるくないですか!」

 

 舌を絡め合わせるベロキスは気持ちよくて、思わず舌を長く伸ばしてさらに喰らおうとしてしまう。ちゅばちゅば、と室内には唾液を絡ませる音が響いていた。

 

 一呼吸置こうかと一瞬だけ口を離したその瞬間、置いてきぼりになっていたもうひとりのユターシャに顎を掴まれる。

 

「次、私です」

「んぶっ……おい、がっつくっ……んぅっ」

「ちゅ〜〜〜♡ はぷぅ♡ れろれろれろ♡」

 

 もう1人のユターシャが、口内を犯してくる。立て続けの濃厚ベロキスはあまりにも気持ちよくて、そして脳味噌がドロドロに溶かされていくような気分になった。

 

 右を見て、左を見て……そして、オレがキスをしている最中にもまた右のユターシャの手がオレの顔に添えられる。至近距離に2つの全く同じ整った顔があって、4つの青い目に見つめられていた。

 柔らかな生乳を揉みしだきながらも、2人に交互にキスを落とされる。

 

「ご主人様、いっぱいキスしたいので、お口……だしてくださいませんか?」

「お下品なベロチューしてあげます、ね……?」

「ん、あぁ」

 

 彼女に言われるまま舌を長く出して、それに対して2人がねぶりつくように舌を絡ませていく。浅く舌を絡め合わせるだけのキスで、それが左右同時に舌の上をざらざらと擦り上げられていくのだ。

 

 3人の呼吸が混ざり合って、つうと唾液が顎を通って溢れていく。それをもったいないと言わんばかりに舐め取られて、そしてまたベロに吸いつかれる。

 伸ばした舌をねっとりと往復するように舐められたり、片方のユターシャに口を塞がれたり、かと思えばチロチロと焦らすようにしゃぶりつかれて……

 

「んっ♡ はふっ♡ はぁ……むちゅっ♡」

「ぷちゅっ♡ ちゅるるるっ……♡」

 

 オレは自然とユターシャの身体を強く抱き寄せていた。腰に手を回し、寄せて、そのままムッチリとした形のいい尻肉を存分に味わっていく。スカートの上から触っていたのを中に侵入すれば、Tバックを履く桃肉はあまりにも無防備となっている。

 

「ぷはっ、……ご主人様、すっかり硬くなっちゃいましたね……♡」

「んちゅぅ♡ はふっ……んぅ、ご主人様……もっと……」

 

 弾力のあるムッチリとしたケツは柔らかくて、それがまた下半身にずくずくと熱をもたらす。オレのチンポにそっとユターシャが手を伸ばして、2人の手が羽根のような手つきでチンポを焦らすように触り出していた。

 

 もっとちゃんと触って欲しいと思うし、まだゆっくりとこの贅沢な空間を味わっていたい。

 

「んだよ、もうチンポしてぇの?」

「したい……したいです。ご主人様のバキカタになってるおちんぽ♡」

「ゆっくりゆっくり味わって、ぐっちゃぐちゃにとかして差し上げますね?」

 

 2人のユターシャがオレの下半身に顔を近付ける。サキュバス特有の長めの舌がレロリと竿に押し当てられて、左右交互にオレの勃起の表面を這いずり回りだした。

 

 真っ赤でてらてらと光る舌が、チンポを舐め回している。最初は竿から、徐々に亀頭の方に舌が上がってきて、カリ首の所から上を2つの舌が舐め回してきて……

 

「あ"〜……ヤベェだろこんなのっ……」

 

 唇でキスするように吸いつかれたり、かと思えば高速で舌が動き回っていたり、ふたつの舌が緩急つけていじめてくるのだ。

 

 そして、片方のユターシャが大きく口を開ける。

 

「あー……んっ♡ はむぅ♡」

「えぇっちょっと、ずるいですよ?! 独占禁止法!」

 

 我慢できないとばかりにチンポを咥え込み、そのままずぼずぼと下品なひょっとこ顔をしながらも頭を上下に動かして、口内全部でオレのチンポを喰らっている。舐めていたチンポを奪われてしまったユターシャは、チンポを咥えて夢中でむしゃぶりついているユターシャをじっとり睨みつけていた。

 

 じゅるるっ♡ ずぼっ♡ ずぼぼぼぼっ♡ ぶちゅちゅっ♡

 

「〜〜〜〜ッ♡ は、ユターシャッ♡」

「ちょっとちょっと、何往復味わうんですか? もう変わってくださいよぅ……せめてシェアするべきです」

「んー? ひひゃへふぅ(いやですぅ)♡」

「ずーるーいー! はーなーれーてー!」

 

 片方はぐいぐいと角を引っ張って邪魔をしようとしているものの、もう片方はそれを介さずに遠慮なく口淫を続けている。

 温厚なユターシャがまるで猫のように威嚇していて、オレはそんな彼女の頭に手を伸ばした。

 

「……ッユターシャ、そんなことで喧嘩するなよ……しかも自分相手に」

「ですが私も、ご主人様を味わいたいですからぁ!」

 

 オレは夢中で頭を動かしているユターシャの角を掴み上げる。

 

 ユターシャに恵んでやろうという気持ちが5割、残りの5割は……あまりの快感にすぐに果ててしまいそうだから、少しでも逃れようという魂胆である。

 

「仕方ないな……ほらユターシャ、口離せ」

「ぷはっ、そんなぁ」

 

 オレは咥え込むユターシャを引き離して、そしてもう1人の方に竿を向けた。唾液まみれでベッタベタのそれをすぐに咥え込んだユターシャは、口の中で舌を舐りまわしてくる。アッツアツの口内の熱が密着して、その中で縦横無尽に蠢く舌。先程のバキュームフェラとはまた違った強い刺激が押し付けられている。

 

 コイツも、本気でイかせようとしやがって……! 

 

「あ"〜〜〜ッ……くそ、舐めまわし、ヤベェ……」

「ご主人様、私ももっかい♡ お口でご奉仕させてください……♡」

 

 先程まで咥え込んでいた方のユターシャも、また切なそうに口を開けてピロピロと舌を伸ばしている。先程までこの口の中で扱かれていたのだ。柔らかな口の中の肉はねっとりとした粘液で濡らされている。

 

 光を反射する赤い口の中。唾液がたっぷりと潤沢に潤っていて、呼吸の動きに合わせて動いている。

 

 クチの中、エッロいな……

 

「ね、ご主人様……私のジュポジュポバキュームフェラの方が、きっと気持ちいいですよぅ?」

「んじゅるるるっ……♡ ん、わらひの、ぴっとりぬるぬる舐めまわし圧着フェラのほーが、しゅきれひゅよねぇ?」

 

 上下に口で優しく容赦なく扱かれるフェラも、ピットリと密閉されて舌になぶり回されるフェラも……どっちも気持ちいいのだ。

 

 ユターシャの口から竿を引き抜き、もう1人の方のユターシャに差し向ける。上下に頭が動いてジュポジュポと動き絞るようなテクニックに持っていかれそうになり、慌てて口から引き抜けば、もう1人の方がすかさず食らい付いてきて、舌が這い回わす濃厚なフェラが襲いかかる。

 

 どちらもうまくて、どちらもオレを殺しにかかっているのだ。休む暇もなく、攻め立てる様は飢えた獣のようで。

 

「ふっ、ふっ……くぅ……ッ」

「2人の女に交互にフェラさせるなんて、贅沢ですねぇ?」

「んちゅっ♡ あは、ご主人様ぁ……♡」

 

 2人で交代に口の中に埋め込んでいて、オレのチンポはすっかりサキュバス唾液に塗れている。極上の女がオレのチンポを取り合っていて、下品な顔で唾液まみれのチンポにむしゃぶりついているのだ。

 

「ぁ、ぎっ……フーッ……フーッ……♡」

 

 ねちゃぁっ……♡ ちゅるるるっ♡ ずるんっじゅくっ♡

 

 舌が絡みついてくる。熱くて密閉密着した中で、繊細な動きをするお上品な舌が、縦横無尽に表面をねぶっている。気持ちいいところを念入りに撫でられて、かと思えば全体が心地よく締め付けられる。

 

 そこから引き抜くと、寂しそうに口を開けてねだられるのだ。発情しきった目がオレを見つめていて、熱い吐息が先っちょを溶かすように撫でていく。

 

「ぷはっ……あん♡ ご主人様、私の舌……いかがでした?」

「あ、あぁ……さいこッ……ぁ、うッ」

 

 ずぼぼぼぼっ♡ じゅるるるっ♡ じゅぼっじゅっじゅぼぼぼっ♡

 

 引き抜いたばかりの唾液に塗れたチンポを、もう1人がすぐに咥え込んだ。

 みっともないひょっとこ顔でこちらを見上げながらも、じゅっぽじゅっぽと怒張が見え隠れしている。擬似的な性交のような刺激が襲いかかってきて、そして挑発的な目で見つめられているのだ。

 頭ごと動くソレに合わせてぴっとりと密閉されている口内の中に吸い込まれていき、ぷにぷにと柔らかな肉に包み込まれている。

 

「ぷはぁっ♡ ふふ、どっちのフェラのが好きですかぁ?」

「んじゅるるるっ……♡ ごひゅじんしゃまはぁ、わらひのほーが好きれすよねぇ?」

「ぁ、ぐっ……やべっ……」

 

 腹筋が引き攣る。じわじわと熱が溜まって、精子がこみあげてくる。2人もそれをわかっているのだろう。容赦のない攻め苦はオレを追い詰めていて、ユターシャは嬉しそうに目を細めている。

 

「は、ぁっ……フーッ、フーッ……も、出るッ」

 

 そしてオレは、咥え込んでいた方のユターシャの角を掴んだ。両手でソレを持って、オナホのように自分勝手に押し込んでいく。喉奥のプニプニとしたところが気持ちよくて、視界がバチバチと白んでいた。

 

 呼吸は浅く、身体中の筋肉が硬っている。気持ちいいことしか考えられなくなり、ここまで昂っていたらもう欲に勝てるわけがない。限界はすぐそこに訪れていて、我慢の糸がほつれかけていた。

 

 そして、グッとそこに向けて———

 

「はァーッ……はァーッ……♡ ユターシャッ……」

「んぶぅっ♡ んふーっ♡ んふーっ♡ ジュルルルっ♡」

 

 どぷっ♡ ぶびゅるるるる……ッ

 

「あー!? ちょっと、ずるいですよっ! 私も口内射精して欲しかったのにぃっ……!」

「ぐぅッ〜〜……」

 

 出してる最中もしっかりと吸い上げられて、最高に気持ちのいい射精を味わう。口の中に出されているユターシャは恍惚とした顔でオレを見上げていた。

 

 そして、すっかり射精しきったオレが肉棒を引き抜き、ユターシャは大きく口を開く。

 舌の上に溜まっている白濁色の精液。赤い肉と白い精液のコントラストはひどく淫靡だった。

 

「んぁ〜♡ ろーれす? いっぱいでまひたね♡」

「はーっ……はーっ……くそッ……」

 

 そうして口を閉じて、わざとゆっくりと飲み込んでいくユターシャ。ゴクリという音は、ここまで聞こえてくる。

 

 そして、それをつまらなそうに見ているのがもう1人のユターシャで。

 

「ちょっと、少しくらい分けてくれたっていいじゃないですか」

「もう全部飲み干しちゃいましたからぁ♡」

 

 んば、と口を開いたらそこにはもう何もなかった。それを見てムッとした顔を見せるユターシャは、むにゅんとユターシャの頬を引っ張りだす。

 

「いひゃいれしゅー、いひゃいー」

「浅ましくて卑しいおくちはコレですかぁ? このこの、このー」

 

 どちらもおんなじユターシャだというのに、自分自身に手を挙げるのはいったいどんな気持ちなのだろうか。むにょんと伸びる頬っぺたは大変柔らかそうである。

 

 とはいえ、ユターシャ達が一方的な喧嘩もどきをしている横で、オレが1人放置されているのはつまらない。

 喧嘩腰のユターシャを抱き寄せて、オレの横に座らせる。

 

「なんだよ、生身のオレよりも出したあとのザーメンのが欲しいっていうのかよ? 寂しいじゃねぇか」

「! いえ、その、そっちのユターシャだけずるいっていうことで……!」

「だからって喧嘩するなよ……中出ししてやるから、それで満足してくれるか?」

 

 着ていた服を脱がせて、そして適当にそのあたりに放り投げる。期待した顔の女をベッドに転がせて、ゆっくりと彼女の上に覆い被さった。

 

「……これで、平等だろ?」

「ふーっ♡ ふーっ♡ は、はいぃっ……♡」

 

 そして、彼女の足を持ち上げてその間に入り込む。いつもと同じ正常位で———いつもと違うのは、今から抱こうとしている女の横にもう1人のユターシャがいることだ。服を脱いで、オレに媚びるように甘い声でおねだりしてくる。

 

「平等じゃないですよぅ……ご主人様、私も♡ わたしにも是非お恵みを♡」

「あー、順番な?」

 

 こちらにケツを向けてぷりぷりと誘い振っているユターシャと、オレに足を広げられている中で自ら秘部をくっぱぁと開き媚びているユターシャ。

 

 こんなにも爛れた夢を見せられて、溺れ死んでしまうほど愛されて、正気なんて無くなっていた。

 

「ご主人様っ……♡ は、はやくおちんぽ♡ くだしゃっ……♡」

「いいなぁ、私もおまんこしてほしいのにっ……♡ ご主人様♡ 私も一緒に愛してください♡」

 

 乞われるままに、ユターシャの中にずぷずぷと押し込んでいく。一度味わえば止められなくなる肉壺はあまりにも気持ち良すぎて、肉竿はぬるぬるとした泥梨(地獄)に包み込まれていた。

 

「ッ……ユターシャ、気持ちいい……」

「っ……♡ ふぅーっ♡ ぁんっ♡ 中ぁっ♡ おちんぽ♡ きもちいですっ……♡」

「うぅ〜、ご主人様♡ 私も♡ おまんこしてくださいぃっ♡」

 

 ゆっくりと腰を動かして、中を味わっていく。少し動かすだけで蠢く肉壁がチンポに絡みついてきて、ユターシャの柔らかな身体が揺れ動いていた。

 

 そして、こちらにケツを向けて誘ってきているユターシャの膣肉に指を挿し入れた。腹側に向かって指を折り曲げて、粒がねっとりとのたうちまわる穴を優しく蹂躙するのだ。

 

「ぉ"んッ♡ あっ♡ ぁあっ♡ はふっ♡ ご主人様ぁっ……♡」

「んぅ〜〜〜〜っ♡ あ"ッ♡ 手マンやばっ♡ ご主人様の指♡ 好きぃっ♡」

 

 2人の女を抱いているという優越感に浸る気持ちよさ。3人でのまぐわいは部屋の湿度を高めて、響く甘ったるい女の声がなんとも心地いい。

 一晩で、2人のユターシャを味わえるだなんて……なんて贅沢なんだろうか。

 

「奥"ッ♡ ご主人様ぁ♡ もっとぉ♡ ぱんぱんってぇ♡ 突いて♡ 私の穴都合よく使ってくださっぁあああっ♡」

「おゆびきもひぃっ♡ ご主人様♡ あ"〜〜〜ッ♡ ぉああ"〜〜〜〜ッ♡」

 

 パンッ♡ ぱちゅっ♡ ぱちゅぱちゅッ♡ どちゅん♡ ぶちゅっ♡

 

 じゅぶぶぶ〜〜〜ッ♡ ぶちゅ♡ ちゅぷぷっ♡

 

「あぁああ♡ はっ♡ はっ♡ ご主人様ッ♡ 中で♡ おまんこにざーめんくださいぃっ♡」

「あ"ぁ〜♡ ごひゅじんさまっ♡ じーすぽ♡ ぐりぐりだめっ♡」

「クッソ……気持ちいいッ……こんな、こんなの……」

 

 四つん這いになっているユターシャはオレの指を必死に咥え込んで、そして太ももをぶるぶると震わせている。

 一方、チンポを嵌め込まれて喜んでいるユターシャは、長くすらっとした足を腰に絡ませていた。

 

 逃さないと言わんばかりに離れられなくなったオレは、しかし中を穿つ動きを止めることはしない。

 自分勝手に、ただ自分が気持ちよくなるためだけに腰を振りたくっていた。

 

「ごひゅじんしゃまぁ♡ ちんぽぉっ♡ きもひぃですッ♡ も、もおイぎましゅぅっ♡」

「あ"〜〜〜……くそ、気持ちいい……まんこトロトロで……キュンキュン締め付けやがって……」

「指でイぐっ♡ 弱点ピンポイント手マンされてェっ♡ あ"っお"ッ♡ おふぅっ♡ あ、イぐイぐイぐっ♡」

 

 そして、ユターシャ2人のまんこがキュッと締まり上がった。指で味わう方も、チンポを包み込んでいる方も、どちらも同時に達したらしい。

 痙攣する中、蠢きひしめく膣肉———柔らかい穴は、容赦なく吸い付いてオレの肉竿をむしゃぶりつくしている。

 

 指を引き抜いて、オレが抱いている方の……絶頂の余韻に浸っている最中のユターシャの口に捻り込んだ。たっぷりとサキュバスマン汁が粘りついていたそれに、ユターシャの舌が絡みついてきた。

 

「はぁっ……ふーっ♡ ちゅぱっ♡ じゅるるるっ♡ んちゅうっ♡」

「あはっ、もう1人の自分のマン汁うまいか? ……おい、一人でイきケツ震わせてないで、暇ならコイツ抑え込んどけよ」

「は、いっ……♡」

 

 手マンしていた方のユターシャに命令して、ハメている方のユターシャの身体を起こすように伝える。

 

 まだイったばかりで脱力している身体をノロノロと起こした彼女は、ベッドに仰向けになり正常位でオレを咥え込んでいるユターシャの頭上に回り込んだ。上半身を起こして、そのままユターシャはユターシャの乳を揉みながらもこちらを見つめている。

 

 オレ以外の手で、ユターシャの乳の形がムンニュリと変わっていた。ムチムチと柔らかいそれはユターシャの指が食い込んでいて、オレは夢中になって腰を掴み、好き勝手に腰を叩きつける。

 

 発情した2人のユターシャが、期待した目でこちらを見つめていた。

 

「あー、いいなソレ……♡ クッソエロい」

「わ、私っ♡ 乳首ひっぱりあげるのだめっ……♡」

「ご主人様……♡ この身体、ぜんぶあなたのものですから♡ 私のこのエッチな顔見ながら、いっぱい腰パンパンして中出し射精なさってください♡」

 

 乳首を捻りあげられながらも本気ピストンを食らっているユターシャの顔は、たしかにとてもイヤらしいマゾアクメ顔だった。発情した顔にドロドロに溶けた理性、開けた口からは唾液が零れ落ちる。

 

 たまらなくなって、唇に吸い付いた。しっとりと濡れたそこはすぐにオレを求めるように舌が這い出てきて、ぬるぬると歯列がなぞられる。オレも舌を出して、たっぷりと絡め合って……

 

「んちゅぅ♡ はぁっ……すき、ご主人様っ♡」

「ねぇ、3人で♡ 3人でキスしたいです♡」

「あぁ……そう、だなっ……」

 

 じゅっ♡ ちゅるるるるっ♡ ぱちゅ♡ じゅぷっ♡

 

 まるで、脳味噌の奥から音が鳴り響いているようだった。下品な水音を立てながら互いに貪り合うキスで、頭が溶かされていくのだ。

 

「ちゅぅ〜〜〜ッ♡ れろれろれろ♡ あは♡ ご主人様ぁ♡ もっともっと私にチンポ突き立ててあげてください♡ おまんこ蹂躙して♡ ご主人様専用まんこあじわって♡」

「お"んっ♡ はふっ♡ フーッ♡ ぁ"あっ♡ あんっ♡ ぢゅるるるるっ♡ んふーっ♡ ごしゅじんしゃまッ♡ ぁあああっ♡ も、も、またイぐっ♡ じゅるるるっ♡ キスしながらイぎましゅッ♡」

 

 2人のユターシャと同時にキスをして、交互に深く口を絡ませたり、浅く舌だけを舐め合っていれば口からぼとぼとと唾液が溢れていく。ばちゅばちゅと肉を叩く音とユターシャの甘ったるい喘ぎ声が響いて、もうひとりのユターシャからはとめどなく愛を囁かれ続けていた。

 

 自分が動けば動くほど限界は近付くとわかっていて、なお腰が止められない。

 

 あ、ヤバッ……

 

「んちゅっ♡ あは、ご主人様……いっぱい中出し♡ たっぷり気持ちよく、容赦なく元・皇族用として国から大事に新品守らされたおまんこをご使用ください♡ ご主人様専用ザーメン絞りまんこですから♡ 好きなだけ乱暴にしていいんですよ♡」

「イ、いぎゅ♡ おっ♡ おっ♡ あっ♡ んふっ♡ ちゅっ♡ んぅ〜〜〜〜〜ッ♡」

「ぐッ……♡」

 

 何も考えられなくなって、そして一層強く腰を押し込んだ。1番奥のところ目掛けて、自由にたっぷりと熱くドロドロした精液をぶちまけていく。

 

 清々しい開放感と、そして現実が吹き飛ぶような快感。夢の中なのに、まるで夢に落ちていくような刺激が身体を駆け巡る。

 

 しばらくの射精の余韻に浸っていたオレは、ゆっくりとユターシャの中から自身を引き抜く。べっちょりと本気汁のまとわりついたソレに、ユターシャ2人の視線は寄っていて……

 

「……まだ、朝は来てないよな?」

「ふーっ♡ ふーっ……♡ は、い♡ まだまだ、起きる時間には早いですよ……♡」

「次は私ですね♡ ご主人様……手マンしていただきほぐれたサキュバスマンコ♡ たっぷり中出しなさってください♡」

 

 この空間において、ユターシャの思い通りに万物は平定される。故に、今のオレに限界なんてものはきっとないのだろう。

 

 尽きない欲望のままに、2人のユターシャに喰らいむしゃぶりつく。止まらない甘露はいくら飲んでも喉が渇いてしまう。浴びても浴びても欲は満たされなくて、贅沢を尽くして味わってもまだ足りない。

 終わらない地獄、幸せなのに、だからこそソレをもっと欲しくなってしまう。

 

 

 

 夢の中という天国、そこには人を堕落に導く悪魔が住んでいた。

 

 

 

 

 

 

 



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+続3P+甘イチャラブえっち+ハードケツ穴ファック ☆

ご主人様設定画
【挿絵表示】

聖女ユターシャ設定画
【挿絵表示】

メイドユターシャちゃん
【挿絵表示】
↑文字なしは小説説明欄に


 壁にかかっている時計は朝の9時を示している。

 

 夢の中の世界といえど、時間の流れは現実と同じなのがユターシャルールらしい。

 未だに夢から覚めていないオレたちは布団の上で並んで転がって、汗がベタつく中で3人でただひたすらイチャついていた。左右にいるユターシャを交互にキスしたり抱き合ったりと、さっきからそればっかりを繰り返している。

 

 起きなくてはならないと頭で理解していても、まだまだここでユターシャ達を味わいたかったのだ。

 

「そういえば、さっきのゲームで最下位だったやつってどっちだ?」

「さっきのって、マリオカートのことですか?」

「……クソザコナメクジだったのは私です」

 

 そういって、オレの腕の中で抱きついているユターシャの片方がおずおずと手を挙げる。

 

「うーん、そうだなぁ……2位ならまだしも、12位のビリケツだもんな」

「いやいや、もう一回やったら結果はわかりませんよ。多分私の大勝利ですよ?」

 

 なんていっているが、正直もう一度やっても結果は変わらないだろう。

 

 罰ゲームをかけていたのに罰ゲームがないなんて面白くなかったと思い出したオレは、猫のように彼女の首根っこを掴み、そしてぽいっと放り投げた。

 ベッドから落ちたユターシャは、目をパチクリとさせながらもこちらを見上げて唖然としている。

 

「あいたーッ! え、え、なんで落としたんですか?」

「別に痛くないだろ」

「痛くはないけど心が痛いです……えぇ?」

 

 何も理解していないユターシャを見下ろしながら、もう1人のユターシャの体を起こしてゆっくりゆっくり撫でていく。柔らかな肌は手に吸い付き、腹から胸、腋、腕、首……全てを味わっていくのだ。

 

 蹴落とされてる方のユターシャは、ポカンと呆けていた。

 

「なぁユターシャ、アンタ……オレに勝ったら、いっぱい優しくして欲しかったんだよな……?」

「あっ耳元でしゃべっ……くぅん、はいっ、そうです……ご主人様とイチャラブハメハメしたくてっ……」

 

 ユターシャの耳を舐めて、口の中に頬張りながらも出来る限り優しく囁く。身体を震わせながらも応えたユターシャの身体は熱くて、少しの愛撫ですっかりヤる気になってしまったようだ。

 

 オレは、いつもよりずっとずっと優しく身体を撫でていた。

 

「あん、ご主人様……♡」

「ええええ、待ってください! そっちの私ばっかりズルぅっ!」

「ユターシャ」

「はい」

「罰ゲーム、な?」

「やだぁ」

 

 やだ、で許すわけがない。

 プルプル震えているユターシャを見下ろして、冷たく突き放す。

 

「おい、お前はベッドの上来るんじゃねぇぞ……んっ♡ ユターシャ、いっぱい甘やかしてやろうな?」

「〜〜〜〜ッ♡ はっ♡ はっ♡ ご主人様しゅき♡」

「うん……オレも、愛してる……」

「あ"あ"あ"あ"〜〜〜〜〜ッ!!!!」

 

 奇声をあげながらもこちらを睨みつけて悔し涙を流しているユターシャを無視して、軽いキスを何度も何度も繰り返していく。

 

 裸で抱き合って、オレの膝の上で座るユターシャの身体を抱きしめる。素肌が触れ合うと温かくて、柔らかな乳肉はオレの身体に押し当てられて形が変わっていた。

 

「はぁっ……ユターシャ、好きだ……もっと」

「ご主人様♡ わたしも♡ ちゅう♡ んっ、好き♡ だいすき♡」

「やだぁあ! やだやだやだ、ずるい私も! 私も愛して欲しいんですっ!」

 

 いつも以上に優しくしているとユターシャも意識しているのだろう。オレに身体を預けて、浅いキスを何度も何度も繰り返して……互いに触れ合って見つめ合うだけの行為は、甘ったるく心地よかった。

 

 あぁ、もっと愛し合いたい。

 でもゆっくりと互いに存在を味わいたい。

 

「ご主人様……♡」

「ユターシャ……」

「ウォオオオオン! やだぁー! やだぁー! ご主人様ァー!」

 

 叫びながらも床の上で地団駄踏んでいるユターシャ。その様はまるでガキのようで、しかし絶世の美女が恥も外聞もなく裸でバタついているのである。

 

 ……あまりにも、やかましすぎる。

 気が逸れて、オレは喚いている女に顔を向けた。

 

「あのさ、ユターシャ……邪魔しないでくれねぇか?」

「酷すぎますよぉ……ぐすっ、目の前で寝取られとか、うぅ、ひどいよぅ……」

「うるせェ」

 

 寝取りもなにも、どちらもユターシャである。

 とはいえ本気で悲しいらしく、いつも以上に耳の萎れ具合が激しい。

 

 自分自身に嫉妬するだなんて馬鹿らしいと思うが、どうやら今この時ユターシャ達は別々の意識として動いているようだ。

 

「仕方ないなぁ……わりぃユターシャ、少しいいか?」

 

 優越感に浸っているユターシャを膝から下ろして、そしてベッド下のユターシャの髪を掴み上を向かせる。

 

 顎をあげさせて、ユターシャの潤む目と視線があった。

 

「んー……おい、口開けろ」

「ひゃい」

 

 そして、高い打点から、たっぷりと口に貯めた唾液を垂らす。舌を伝って落ちていったそれはユターシャの口内に入っていくのだ。

 

 まるで極上の果実でも飲むかのように目を細めてそれを甘受するユターシャ。

 コイツ、こんなのでも嬉しいのかよ……

 

「〜〜〜〜〜ッ♡ あ、ぁああっ……ごひゅじんしゃま、のぉ……♡」

「それでイイよな?」

「っ♡ んふぅーっ♡ ご主人様の唾液♡ あへっ♡ おいちっ♡」

 

 ……ちょっとキモくないか? 

 

 唾液を口に流し込まれて勝手に興奮しているユターシャを放置して、オレはベッドの上に待たせていたユターシャに向き合った。彼女と一緒に布団に倒れ込んで、そのまま何度も何度も軽いキスを顔中に落としていく。くすぐったそうに身じろぎするのも優しく押さえつけて、何度も繰り返し愛を囁いた。

 

「んっ♡ ご主人様……♡ 私も、ご主人様の欲しいですっ……♡」

「んだよ、唾液欲しいのか? ヘンタイだな……」

「あんっ♡ ごめんなしゃい♡ んっぅ♡」

 

 随分とアブノーマルなおねだりをしてくるユターシャの顎を上に向かせる。きっとオレがそれを叶えてくれるとわかっていて、大変幸せそうな顔でうっとりと微笑んでいた。

 

 オレがユターシャの性癖に歪まされたのか、それとも元々隠し持っていたのか……どちらにせよ、抵抗をやめてユターシャの全てに溺れているオレは自分の欲に正直になっている。期待されているままに、顔を近づけて———

 

「舌出せ、ユターシャのもくれるか?」

「んふぅー♡ はっ、ご主人様♡ はふっ♡ 交換しゅる♡ ご主人様♡ 好き♡ ふーっ♡ んちゅぅ♡」

 

 サキュバスの長い舌が口の中に侵入してきて、そして甘ったるい唾液が流れ込んでくる。桃のような甘さがあって、ねっとりと濃厚で……そして、頭の中がクリア(夢中)になっていく。

 

 抱き合って、まさしく恋人同士のように愛し合うのはとても気持ちよかった。ユターシャの足がオレの足に絡まって、全身で抱きつかれている。

 

「ユターシャッ♡ 好きだ、んっ……♡ もっとだ♡ もっと、あぁ……愛してる、だから」

「んじゅるるるるるッ♡ ぷは♡ しゅき♡ すきすきすきっ♡ ちゅっ♡ ごしゅじんしゃま♡ だいすき♡」

 

 吸われて、流し込まれてを繰り返す。あまりにも積極的すぎるユターシャに、オレはされるがままになっていた。

 

「愛しています♡ すき♡ 大好き♡ はぁっ……♡」

「オレも……ユターシャ、愛してる」

 

 ユターシャからぎゅっと抱きしめられて、幸せを噛み締めるように抱きしめ返した。もうすこし力を入れたら手折れてしまいそうで、だけど力を込めずにいられない。

 

 温かな体が柔らかくて、人肌のぬくもりが心地いい。いつも以上に優しくしようと思えば思うほど、彼女への愛が込み上げてくる。

 

「うぅ、ずるい……私のなのに……」

 

 1人放置されてるユターシャが寂しそうに鳴いていて、チラリとそちらを見ようとするが———

 

「ダメ♡ ご主人様……私のこと、甘やかしてくれるんですよね♡ もっといっぱい、キスしたいです……♡」

「そうだな、ごめん……浮気じゃないからな?」

「んっ♡ ちゅう♡」

 

 オレは誤魔化すようにユターシャにキスを繰り返す。ちゅ、ちゅっと音が立って、その度に嬉しそうにユターシャはくすくすと笑っているのだ。

 

 そこからまた深いキスをして互いに見つめあう。すこし照れたようにはにかみながらも、何度もキスをねだってくるその顔は可愛くて、きっとオレにしか見せない表情なのだろう。

 

「ユターシャ、愛してる」

「っん♡ 私も、愛してますぅ……♡」

 

 互いに愛を確認しあって、そして溶け合うように身体をくっつけて、甘く甘く、どこまでも甘ったるく抱きしめあっ———

 

「あ"あ"あ"あ"〜〜ッ! やだやだやだやだやだぁ! ご主人様、私にも! 愛を! ください!」

 

 ———あまりにもやかましすぎるユターシャの声に、オレは流石に口を離した。

 

「ユターシャ」

「はい」

「うるさい」

「やだ」

 

 やだ、じゃないのだ。

 同じユターシャで、どうせ分裂した片方である。別に浮気しているわけでもないのだから、どうしてこうも嫌がるのか理解に苦しむが……

 

 オレの腕の中に収まっているユターシャが、咎めるように声をかける。

 

「必死すぎですよ、みっともない」

「どの口がほざきますか!? そんなこと言うならそこ変わってください! 私がご主人様とらぶらぶちゅっちゅするので!」

「嫌ですよ。敗者は静かに這いつくばっててください」

「〜〜〜〜ッギャフベロハギャベバブジョハバ」

 

 文字にならない言葉を口にしながら発狂するユターシャだが、それはそれとしてオレの言うことはまじめに聞くつもりなのかベッドに登ってくることはなかった。オレが抱きしめているユターシャにメンチを切っていて、いつもは温厚なユターシャの顔が台無しである。

 

 ……まるで猫の喧嘩だな。

 

「はぁ……あのさ、今いいとこだからすこし黙っててくれねぇか?」

「やだやだやだやだ! もういいでしょう? こんなの罰ゲームどころか拷問ですよう……酷いです……」

 

 なんて我儘を言いながらも泣いているユターシャを無視して、腕の中にいるユターシャの太ももに手を滑らせる。そのまま、彼女のむんわりと温かくなっているまたぐらに指を忍ばせて、そこをゆっくりと開いた。

 

 ぴくん、と腕の中で反応したユターシャは嬉しそうにオレに擦り寄る。それも、もう1人のユターシャに見せつけるように。

 

「あんっ♡ ご主人様ってば、本当におひどいですね……♡ (ユターシャ)があんなに必死に地団駄踏んで我儘言ってるのに、それを無視しておまんこするんですね……?」

「駄目か?」

「いいに決まってます♡ ふふ、ご主人様のおちんぽ♡ いつだって受け入れる準備できてますから♡」

 

 そしてゆっくりと、そこに勃起を押し当てる。

 

「う"う"う"〜〜〜〜〜〜ッ! やだーっ! やだやだやだーッ! 私の、私のご主人様とらないでよぉおおっ!」

「そんなこと言われましても、私のご主人様でもありますからぁ……♡ あっ♡ ご主人様キタっ♡ お"っ♡ でかっ♡ おちんぽきた♡ ふーっ♡ ふーっ♡ ご主人様っ♡」

 

 ゾリゾリでヌルヌルで、たっぷりのヒダがオレをぎゅんぎゅん締め付けてくる。ユターシャの腰を掴んで、1番奥まで、いつも以上にゆっくりゆっくり押し込んでいった。

 

 オレの首にぎゅっと抱きついているユターシャに唇を奪われて、柔らかく潤っているそれを堪能しながらもチンポが馴染むのをゆっくりと待つ。サキュバスまんこを今すぐ犯し尽くしたいのをぐっと我慢して、蠢きひしめく肉壁をゆっくりと味わうのだ。

 

「ユターシャ♡ 好きだ……♡」

「ふーっ♡ ふーっ♡ ごひゅじんしゃま♡ わたしも♡ しゅきぃっ……♡ おまんこうれしいれす♡ ごしゅじんさまに♡ おちんぽしてもらえて♡ 嬉しいっ♡ 優しいらぶらぶせっくす♡ おまんこ馴染んじゃうぅ……ッ♡」

「わたしもぉっ……ご主人様っ、私のおまんこッ、ね、絶対気持ちいいですからッ♡ そんな私を労るようなイチャラブセックスしなくていいんでっ! オナホマンコしてくださっていいのでッ! 雑につかってくださっていいんで、私のこと見てくださいよぅっ……!」

 

 なりふり構わずにおねだりしていて、その必死さにいっそ笑いすら込み上げてくる。そんなにオレのことが愛しいかと口に出しそうになるが、返ってくる答えがわかりきっていた。

 

 可哀想に、オレの気紛れに弄ばれているだけなのになんて必死なんだろうか。可哀想で健気で可愛らしくて、一途な彼女の必死さに愛おしさが込み上げてしまう。もっと酷いことを与えたくて、試す自分が最低だとわかっていても……

 

「なぁユターシャ、なんかディルドとか、そういうのって出せないか?」

「んっ♡ え、えぇっとぉっ……は、はい♡ こういうのいかがですかっ?」

 

 そして手品のようにユターシャが何もないところから取り出してきたのは、肌色の張り型だ。バキバキの男根を象ったゴム製のソレは柔らかくて……そして、オレの息子にかなりそっくりだった。

 

 それを、そのままもう1人のユターシャに手渡す。何も考えずにオレから手渡されたモノを受け取ったユターシャは、半ベソをかきながらもこちらを見上げていて。

 

「……?」

「よし、んじゃあコレで1人でヤっててくれよ。オレとユターシャがたっぷりセックスしてるから、1人でマンズリしてくれるか?」

 

 オレがそう告げると、途端に絶望顔で首を振ってイヤイヤと縋り付いてくるユターシャ。オレがいるのに自慰なんてしたくないという事なのか、その様はあまりにも必死すぎる。

 

「嫌なのか……あーあ、ほぐれきったドロドロゆるマンでヤってみたかったのになぁ……? まぁ、どうしても嫌だっていうなら」

「! わ、私とえっちしてくださるんですか!?」

「あぁ。だからそれまで、しっかりぐっちゃぐちゃにほぐしといてくれるか?」

 

 こう言えばユターシャがなんだって言うことを聞くとわかって言ってるのだから、オレも最低な男だ。

 あとでハメてもらえると()()()しているユターシャは、早速オレの肉竿と似た形のそれをまんこにあてがっていた。

 

 そして、にゅぷにゅぷとゆっくりハメこんでいき……

 

「ご主人様、浮気ですよ?」

「ん、ごめんユターシャ……許してくれ」

 

 オレの腕の中にいるユターシャに顔を向けると……あっちのユターシャを構っていたからか、少しだけ唇を尖らせて拗ねているフリをしているらしい。まるで子供のような表現だけど、それすらも愛おしくて仕方がなかった。

 

 なんとかご機嫌をとるようにちゅ、ちゅ、と顔にキスを落としていく。尖らせた唇をこちらに向けて、それから何度も何度も唇をつけて離してを繰り返し———

 

「あとで、あっちのユターシャとエッチするんですか?」

「するわけないだろ? もう……かわいいなぁ、嫉妬してるのか?」

「だってだって、私にいっぱい甘く優しくしてくれるって言ったのに、あっちのユターシャばっかり構うんですもん……」

 

 なんて寂しそうにオレにしがみついてくるユターシャの頭を優しく撫でる。

 

「おもちゃハメこむような浮気まんこ相手にするわけねぇだろ?」

「えっ」

 

 必死にじゅぼじゅぼと手を動かしていたユターシャは裏切られた、という顔でこちらを悲観的な表情浮かべながらも見つめている。

 

「え、ま、まってください! 約束が違うじゃないですかっ」

「おい」

 

 すぐにオモチャを抜いたユターシャに声をかける。泣きべそをオレに向けて、手に持っているディルドにはすっかり愛液に塗れていた。

 

 そして、そんなユターシャをオレは咎める。

 

「なに、勝手に、抜いてるんだ」

「だ、だって浮気ってぇ……酷いです、あんまりじゃないですか! ご主人様がほぐしとけって言うから、わたしぃっ……」

「ユターシャ」

 

 ビクッと身体を震わせて、怒られる寸前の子供のように視線を彷徨わせるユターシャ。

 

「手、動かせよ……誰が止めていいなんて言った?」

「やだぁっ……!」

「は?」

 

 低い声で威圧するように問い掛ければ、ユターシャは諦めたようにぐすぐすと鼻を啜りながらも再度腕を動かし始めた。

 じゅぼ、じゅぼとピンク色した肉の中にゴムのニセチンポが出入りしている。

 

 可哀想だなぁ……あぁ、でもそれで興奮するからオレも終わってるのだろう。好きだからこそ、オレの言うことならなんでも聞いてくれる優しくて馬鹿なユターシャ。まるで王様にでもなったような気分で、彼女の泣き顔にすら興奮してしまうのだからいけない。

 

 ユターシャの手がじゅこじゅこと動かされて、肉棒を模したゴム製のそれが出たり入ったりを繰り返している。濃厚な本気汁がたっぷり絡まったそれが、何度も何度もユターシャの腹を犯しているのだ。

 

「う"う"う"〜〜……っ! ご主人様、ご主人様ぁっ……」

「オレ以外の棒突っ込んで気持ちいいか? そこらで立ちんぼでもして来いよ、マジの浮気まんこになったら捨ててやるからさぁ」

「うわぁぁあっ……やだ、やですぅっ……! 気持ちよくないッ……浮気じゃないですっ! これは、ご主人様がぁっ……!」

 

 戯れだというのに、必死になっているユターシャがあまりにも健気だった。

 

「手ェ止めるな、本気で動かせ。そうだ、2分に1回イけよ……気が向いたら、犯してやってもいいんだから。しっかりまんこ温めといてくれ」

「! ほんとに? ぜったい? わたしっ、私ご主人様とえっちしたいですっ……!」

 

 それもまた口から適当に行っただけのものだというのに、すぐ素直に信じ込んでしまうのだから都合のいい女である。はふはふと呼吸しながらも大股開きで見せつけるようにオナニーを始めたユターシャを無視して、オレは抱いている方のユターシャに向き直った。

 

「……またせたな♡ ごめんなぁ……酷い男だよな? お前の泣き顔と喜んでる顔、同時に味わいたいってんだから……なぁ、許してくれるか? オレの我儘、好きなら聞いてくれるよな?」

「〜〜〜ッ♡ ご、しゅじ、さまぁっ♡ はいっ♡」

 

 クズの言い分にユターシャは嬉しそうに頷いてくれる。あーかわいい……従順過ぎるのが玉に瑕だけど、そういうところも好きなんだよな。

 

「ん〜〜〜っ♡ ご主人様♡ 私でいっぱいぱんぱんして、中出しいっぱいしてくださいね♡ おまんこ飽きさせませんから♡ いっぱい♡ イチャイチャ♡ ラブラブ♡ しましょうね♡」

「あぁっ……ユターシャ、全部中出しするからな? 受け止めてくれよ? キスしようぜ? はぁ……好きだっ……♡」

 

 全身を密着させて抱き合いながら、根元までずっぽしとハメて口付けを交わし合っていた。

 

 ぱちゅ、ぱちゅ、とゆっくり腰を動かしてユターシャとキスをしながら、互いに熱い呼吸を交換して、そして至近距離で互いの顔を見つめ合って……おまんこに与えられる刺激を気持ちよさそうにトロ顔で受け入れているユターシャ。

 

 オレの気まぐれで泣きながらも媚を売るユターシャの真横で、幸せいっぱいの顔した従順なユターシャを抱いているのだ。

 好きだからこそ酷くしたくなって、愛してるからこそ大切にしてやりたくて……矛盾した嵐のような感情のどちらもじわじわと満たされていく。

 

 好きだからこそ、酷くしてしまいたくなる。

 この感情は一体なんなのだろうか。もうわからなくて、自分の中の気持ちに整理がつかなくて、暴力のような甘い愛を彼女に流し込む。

 

「んぅっ♡ お"っ♡ ごしゅじっ♡ しゃまっ♡ ちんぽぉっ♡ ふぐっ♡ お"っ♡」

「〜〜〜〜♡ はぁっ、ユターシャっ、ユターシャ……くそ、サキュバスすげぇっ……♡ マジでチンポ持ってかれるッ……♡」

 

 彼女の体が柔らかくて、夢中になって腰を振りたくる。ユターシャを気遣って優しくしたいのに、ユターシャの優しさに漬け込んで好き勝手に彼女の身体を犯してしまう。それでもユターシャは心底幸せそうにオレの唇を吸いながらも、首に手を回してくれるのだ。

 

 せめて労るようにとキスを繰り返して、ユターシャに愛を囁き続ける。自分の感情を思ったままに口に出して、彼女は嬉しそうに身体を揺すられながらもそれを享受していた。

 

「あっ♡ あぁぁあっ♡ も、わたしっ♡ イっちゃいましゅっ♡ イくっ♡ はふっ♡」

「ああもうっ、仕方ないな……ふぅ、ぐ……ユターシャ、あぁ……中出しするからな?」

 

 手を貝殻のように繋ぎ合わせて、そのままベッドに縫い付ける。唇を押し当てれば、柔らかな舌が侵入してきて犯される。

 

「ふぅ〜〜〜っ♡ んぐっ♡ ちゅぱっ♡ごひゅじんしゃまぁ♡ んぉっ♡ ちゅっ♡」

「……あ"〜クッソ、かわいいな♡ 好きだ、ユターシャっ……1番奥出すからな? 受け止めろよ?」

 

 ぱちゅっ♡ ぱんぱんぱんっ♡ ぢゅぶっ♡

 

 室内に交尾の音が響く。ガチ本気のピストンで肉がぶつかりあう音。ユターシャの太もも肉を大きくカエル開きにして、そこを穿つように腰を振りたくる。

 

 もうすぐイきそうだった。ラストスパートをかけるために打ち付ける速度をあげると、彼女は嬉しそうな嬌声をあげる。

 彼女の膣内は柔らかくて暖かくてぬるぬるとしていて気持ちいい。ずっとこうしていられたらどんなに幸せだろうか。

 

 だが、それでも限界がくる。

 

「〜〜〜〜〜ッ♡ あぁぁぁあっ♡ ごしゅじっ♡ あっ♡ 〜〜〜〜ッ♡ ッふは♡ んぉおおっ♡」

「あ"ッ……ぅ、ぐっ」

 

 背筋を駆け抜けるような射精感が襲いかかった耐えきれず、思わず声を出してしまう。

 

 どくんどくんと脈動しながら精液を送り込んでいく。同時に彼女の中もびくびくと痙攣して、俺のものから搾り取るように締め付けるように蠢いていた。

 中の膣肉が脈動して、亀頭を締め付けるようにうねる。それと同時に、彼女の背中が大きく仰け反って痙攣した。どうやら、一緒に絶頂を迎えたらしい。

 

「はーっ……はーっ……ゆたー、しゃっ……」

「ごしゅじ、さまぁっ……♡」

 

 気持ちよく射精して、ユターシャの身体に覆い被さる。脱力して体重をかけて、それでも嬉しそうに受け止めてくれるユターシャの身体を強く抱きしめた。

 

 なにも、考えられな……

 

「ご主人様ぁっ……!」

 

 泣きながらも、切なそうに声を上げるユターシャに視線を向ける。放置されて寂しかったのか、目の前でユターシャを抱くオレに嫉妬したのか、我慢の限界といった様子のユターシャはひどく悲しそうな顔をしていた。

 

 そんな顔をするから、もっと虐められてしまうのだ。

 

 それでも彼女は従順に、健気に、まるで帰りを待つ犬のように震えながらもオレを待ち続けているのだ。いつかオレに愛してもらえると勘違いをして……

 

「ユターシャ」

「はい、はいぃっ……♡ おまんこ、ほぐしましたぁっ……とろとろで熱々で、連続アクメ頑張った痙攣おまんこできあがってますからぁっ……♡ どうか、私に、お慈悲をっ……」

 

 オモチャを引き抜いたその穴は、たしかに気持ちよさそうだった。ピンク色でヌルヌルしていて、ひくつく様は何度も絶頂を迎えたのが窺える。

 ガニ股になってマン肉をくっぱあと開いて、とても清らかな女のする格好ではなかった。あまりにも下品で、男に媚を売る様ははしたなくて興奮する。

 

 腰を振ってガチセックスしているオレを見て、次は自分の番だと期待して、頑張ってオレのためにまんこ温めてくれてたんだよな……

 

「……オレのために、ディルド使ってほぐしてくれたのか?」

「はいっ♡ そーですっ♡ ご主人様専用おまんこっ♡ ご希望に沿ったヌルヌル痙攣イきまんこになってましゅからっ♡ はやくっ♡ ちんぽくださいっ♡ はふっ♡ はふっ♡」

「そっか……ありがとな」

 

 期待して、涙で濡れた頬のまま嬉しそうにニコッと笑うユターシャ。

 このまま愛してもらえると、愚かにも期待しているユターシャが可愛くて可愛くて、もう一度泣かせたくなる。酷くしたくて、このままずっとお預けを繰り返していたら、この女は果たしてどうなってしまうのだろうか? 

 

 オレは身体を起こして、そして中出しされた余韻に浸っているユターシャに向かって……

 

「ユターシャ、このままもう一回いいか?」

「……ふぇ?」

 

 とまどうユターシャにかまわず、俺はまた覆いかぶさってゆっくりと腰を動かしはじめた。たっぷりと大きな乳に顔を埋めて、ピンク色したプリプリの乳首に舌を這わせる。彼女の手が受け入れるようにオレの頭を抱えこみ、白い指がオレの髪に絡まる。

 

「〜〜〜〜〜っ♡ お"ぁっ♡ まだ、イったばかりでぇっ♡ ごしゅじ、さまぁっ♡」

 

 ぱちゅっ♡ ぱちゅっ♡ ぱちゅっ♡ ぱちゅっ♡

 

 床に座り込むユターシャは、呆然としていた。

 

 期待していたのだろう。次に愛してもらえるのは自分だと勘違いをしていたのだろう。

 放置されて、さらに放置されると気が付いたのか、またしても彼女は悲しそうに顔を歪める。

 

 自分の口角が勝手に上がっていた。こんなので喜んでしまうなんて、なんてオレは最低なんだろうか。

 

「なんで、ですかっ!? 今の流れ、絶対私だったでしょう!? 順番こですよ!?」

「ユターシャ♡ 好きだ♡ 愛してる……っ♡」

「あんっ♡ 私もです♡ ご主人様すきすき♡ ぎゅぅ〜〜〜♡ ちゅっ♡」

 

 これ見よがしにユターシャの前でいちゃついて、そして彼女の歪んだ顔を見る。

 

「やだぁ……う、うぅぅ……もうやだぁっ……」

 

 まだまだ、オレはユターシャを愛し足りなかった。

 

 

 

 * * * *

 

 

 時刻は昼近くになっていて、まだオレ達はベッドの中にいた。絡み合う肢体はどこまでも柔らかくて、汗ばむ身体を互いに貪り合う。

 ユターシャの啜り泣く声を聞きながらも情事に浸る優越感。裸のままで抱き合って、唇を繋ぎながらも睦言を交わす。

 

 これ以上なく幸せで、そしてオレと同じように幸せを味わっているユターシャの顔が至近距離にある。どこまでも甘く、優しく、そして心地の良い夢の中だった。

 

「ご主人様……ご主人様……」

 

 ずっと繰り返されている言葉に、そろそろ報いてやろうかと思ったオレはユターシャの身体を離れる。

 肉棒を引き抜かれて栓のなくなった穴からはごぽりと精液が溢れ出す。満足しているかのような表情を浮かべたユターシャの頭を撫でてから、もう1人の方に向き直った。

 

「ユターシャ」

「……うぅ、ご主人様ぁ……」

 

 彼女の身体を抱き上げて、膝の上に座らせる。オレの身体に腕を回して、絶対に離れないと言わんばかりのユターシャを抱きしめ返した。

 細い肩、華奢な腰回り、少し力を込めれば折れてしまいそうなほど繊細な背中。

 

 綺麗な首筋に、歯を立てて噛み跡を残す。肩を震わせて痛みを受け入れるユターシャは、しかし痛みを耐えるために背中に回す腕の力を強めていた。

 

「い"、つぅ……! ごしゅじ、さまっ……」

 

 強く噛んだせいで、ユターシャの首元にはくっきりと歯型が刻まれる。その跡を舌先で舐め上げると、彼女は背筋を反らしながら声にならない悲鳴を上げた。

 

「どうして欲しい」

「ぁあ"あ……ッ♡ は、はいぃっ……♡ 好きなだけっ、どうぞ、使ってくださってかまいませッ……んぅ"ッ♡」

 

 その言葉通りに、オレは彼女の乳を強く掴みあげた。ムンニュリと形を変える豊満なソレはひどく柔らかくて、そして指が沈むほどに重い。

 そして、酷くしてるのに甘ったるい悲鳴をあげるユターシャに、ゾクゾクといけない興奮がよだつ。

 

「なんだよ……痛くされても気持ちいいのか?」

「ん"ぅううっ♡ あ"ッ♡ きもぢいれすっ♡ おっぱい掴まれてッ♡ 雑に揉まれちゃうのッ♡ ぉお"♡」

「うるせェ」

 

 乳首をつねりあげればのけぞって悦ぶユターシャを黙らせるために、口の中に指を突っ込んだ。ちゅうちゅうと甘く吸い上げるユターシャの舌が気持ちよくて、そこをゆっくりと掻き回す。

 

 唾液でぬらぬらと光る赤い肉厚なソコは、まるで別の生き物のようにオレの指へと絡みつく。濡れた唇から垂れ落ちる透明な液体は、彼女の豊満な乳にぼたりとこぼれ落ちた。

 

「んぶぅっ♡ んふーっ♡ ぉお"っ♡」

「きったねぇな……おい、黙っとけよ」

 

 彼女の口から指を引き抜いて、それをそのまま下半身へと持っていく。オレの膝上に座って足を開いているユターシャの女壺にヌルヌルになった指をあてがい、そして試すように中に侵入させていく。

 

 肉壁がうねるようにオレの指を包み込み、奥へ奥へと誘う。まるでチンポをハメて欲しいとでも言うかのようにヒダヒダが絡みついてきて、いやらしい汁で濡れそぼった膣内はとても温かかった。

 ちゅうちゅうと吸い付くようなその感触は、普段とは全く異なっている。

 

 オレがずっとおもちゃでイっておくように命令していたからか、いつもよりどこか柔らかく、ほぐされている肉壁はじゅるりと指に吸い付いてくきた。

 

 この穴にハメたら、絶対に気持ちいいんだろうな……ユターシャが必死こいてほぐしていた、ヤワトロまんこである。

 

「フーッ♡ んフーッ♡」

「いれて欲しいか」

「! はい、はいぃっ♡ ほひっ、ほしいですっ♡ ご主人様っ♡ おまんこして欲しい♡ いっぱいほぐしてトロトロにしておいたおまんこっ♡ うううぅ、おねがいしますぅっ♡」

 

 とても聖女だったとは思えない下品なおねだり。必死な懇願はあまりにも可哀想で、そしてその必死さはとても甘かった。

 

 ……そんなに、オレが欲しいのか。

 無意識に口角が吊り上がるのを感じる。

 

「ユターシャ、コイツの足抑えといてくれないか?」

「んぅ……はぁい♡」

 

 ベッドに転がしたユターシャを押さえつけるように、もう1人のユターシャに声をかけた。そして彼女の頭上に座ったユターシャが足首を持たせて開かせる。

 

 オレに向かって大事なところを大きく見せつけるような姿勢になり、俗に言うまんぐり返しである。

 

「〜〜〜〜ッ♡ フーッ♡ んふーっ♡ はふっ♡ ご主人様、はやくっ♡ はやくぅっ……♡」

「うるせェな……犬ですら黙って待ってられるんだぞ?」

 

 ヌルヌル液が漏れ出すほど潤沢に溢れている入り口に、チンポを擦り付けてサキュバスローションを塗布していく。ズリズリと優しく擦り付けているだけでも、ぷっくりとした弾力のあるマン肉が竿を包み込んでくるようで気持ちが良かった。

 

 マン肉にチンポを乗せ、ゆっくりと腰を前後させてマン汁ローションをチンポにまとわりつかせる。いつしかチンポはぬらぬらてらてらと室内の明かりを反射させて、これならどんなに狭い穴でも気持ちよくピストンすることが出来るだろう。

 

「はやくっ、はやくぱんぱんしてっ♡ ザーメンくだしゃっ……♡ あぁぁ♡」

「テメェ……頭の中チンポのことしかねぇの? ソレばっかりしか言ってねぇじゃん」

「だ、だってぇ♡ おまんこはめはめして欲しくて♡ わたしっ♡ わたしぃっ♡」

 

 必死こいておねだりするユターシャの顔をただ見下ろす。必死に、もうすぐハメて貰えると期待しているユターシャの顔は、嬉しそうにまなじりが下がっていた。

 

 本当におめでたい女だ。優しくなんて、してあげるわけないのに。

 

「なぁ……なに勘違いしてるんだ?」

「?」

「オレ以外の棒突っ込んでた浮気ユルユルまんこなんて、使うわけねェだろ……?」

 

 そうして、オレはその下の方にある穴にあてがう。

 

 2人のユターシャが、同じような顔で驚いて目を見開いていた。ぱちぱち、と同時に瞬きが繰り返される。

 

「ごしゅじんさま? そこ、その、お尻の穴では?」

「あの、おまんこ……? おまんこは?」

 

 足を押さえながらも困惑したようなユターシャと、まんこを自ら開いてチンポを誘導しようとするユターシャ。そんなのにも構わず、ゆっくりと捻り込んでいく。

 

 なんの準備もしていない、キツくキュッとしまりきった穴。普通の人間相手にこんなことをすれば、きっと裂けて怪我してしまうことだろう。

 

 とはいえ、彼女はサキュバスなのだ。

 

「おい、ちゃんと足押さえつけとけよ……ッ、くぅ……」

「ま、待って待ってまっ……ピッ!? ぎ、ぃ、あぁぁぁぁっ!? ま、ぁ"ッ?!」

 

 身体を強張らせるユターシャを無視して、ゆっくりゆっくりと中に侵入していく。まんことはまた違った締め付けるような圧はかなりキツくて、気持ちよさよりも引きちぎられそうな締め付けの方が強かった。

 

 とはいえ、サキュバスにとって全ての穴はチンポをハメるためにある。彼女が拒否反応を起こしているのは、エルフだった頃の精神的な反射なのだろう。

 

「あ"〜〜〜クッソ締め付けやがって……おい、挿入んねぇだろうがァ! 力抜けやボケッ」

「む"ゥ、りぃッ! 無理ですよぉッ、だってアナルッ、ですよぉっ!?」

「うわぁ、痛そう」

 

 まるで他人事のように感想を呟いた足を押さえ込んでいるユターシャを尻目に、ギュンギュンに力がこもっているアナルを広げながらも腰を押し進めてゆく。

 

「ひっ、ひっ……ま、そんなっ、とこっ、入れるとこじゃ、ないぃっ……」

「挿れるとこだろ? なぁ、サキュバスのケツ穴なんて出すもんねェんだから、実質マンコだろ? あ"?」

「そういうものなんですかね? うわぁ、アナルすっごく広がってるー……うーん、痛そー」

 

 ケツ穴を犯されているユターシャを可哀想なものを見る目で見下ろしている彼女が、どこからともなくボトルを取り出した。そしてそのまま、接合部に向かって中に入ったピンク色の液体をドロリと垂らす。

 

 ひんやりとしたそれはひどく粘性が高くて、滑るような柔らかさがあった。

 

「ローションです。これで少しはマシになるでしょう……南無三」

「ヒッ、ちが、違うでしょ!? ちょっと、アナルじゃなくてッ、おまんこに挿れるように、あなたからも説得を、ぉ、おおおっ……!?」

「冷たいな……ん、助かる……ッぐぅ……あー、ふぅ……」

 

 ギチギチで挿入りにくかった穴が、潤滑液のおかげで少しだけ動かしやすくなる。アナルを指で広げて、ローションの力も借りてずぼずぼとゆっくり中に押し込んでいく。

 ユターシャの身体がぎゅっと強張る中、引き締まった肉をこじ開けるように奥に押し込んでいき……

 

「う"ぅぅ〜〜〜〜ッ……無理無理無理無理ぃっ!? お"じり"ぃっ、こわれっ、はひぃっ!?」

「ぐぅっ……フーッ、フーッ……あはっ、挿入ったな?」

 

 根元まで、しっかりと入ったソレを見下ろす。

 

「あ"〜〜クソキツイな……ただまぁ、これもこれで……ッ」

「ちょっ、まっ……! これおしりッ、こわれちゃうっ……! 動かないでッ、おねが、しまぁっ……!」

 

 ユターシャが追加でローションを塗してくれて、それをもとにゆっくりと腰を引いていく。

 

「ひっ、ひっ……あぁ、抜け……る"ぅッ」

「なんだよ? そんなにオレのチンポいらねぇってのか?」

「ちがっ、ぁ、あっ……ふぅっ」

 

 カリ首まで抜けかけたところで一度動きを止める。腹の圧迫感から少しだけ解放されたユターシャは、はふはふと呼吸をしながらもじっと身体を固めて異物感を逃そうとしているらしい。

 

 その異物感は、所詮エルフとして長年生きていた肉体的反射でしかないはずだ。

 

「抜いてほしいか?」

「え、ぁ……ま、まんこっ……♡ おまんこに、おちんぽハメハメ、してほじッィ、いいいいいっ!?」

 

 ユターシャの願いを無視して、ケツ穴にチンポを突き立てる。

 

「馬鹿がよォ……自分からケツハメしてくださいって言うまで掘り耕すからなァッ……」

「んぶぉおおっ?! や、ぉ、おおおおなんれぇっ!? ぬいて、ほひっ……!」

 

 ローションをさらにたっぷり絡めたチンポは、さっきよりもずっと入りやすく潤滑に動かせた。ヌルヌルとしたローションのおかげでだいぶ具合のいい穴に変わっていて、それを何度も何度も出し入れすれば次第に形は変わってくる。

 

「お"ぎぃぃいッ……ぐ、ぅっ、はひゅっ、はひゅ〜……ッ」

 

 ぬボッ♡ ぬボッ♡ ぬ"ぢゅ〜〜〜〜〜〜ッ♡

 

「ごわれッるっ……♡ おじり、ひらいちゃっ……ぅううう"……♡」

 

 ぐッぽ♡ ぐッぽ♡ ぐッぽ♡ ぐッぽ♡

 

「ひぎぃっ……♡ は、はやくッ、しない、でぇっ……♡ う"ぁっ♡ だめッ……♡ ま"ッ、てぇ……♡」

 

 徐々に徐々に動きを早めて、何度もチンポを出し入れ繰り返し……次第に、アナルが裏返るようにチンポに吸い付きながらも柔らかくなっていった。

 

 そして———

 

「も"ぉヤダァぁあっ♡ おじり掘らないでェ"えッ♡ おがじぐなる"ッ♡ やだやだやだぁあっ♡」

 

 何度も何度もピストンを繰り返して、ケツ穴で快楽を貪る方法を身体が勝手に覚え始めたのだろう。先程とは違う声音で叫びながらも、ユターシャは首を振っている。

 

 なんとも哀れなものだ。エルフとしてアナルに拒否感を抱きつつも、身体はすぐに快楽に順応してしまうユターシャ。

 

「所詮サキュバスなんだからケツ穴もまんことおんなじだろうが……なぁ、気持ちいいんだろ?」

「やだぁっ……やだぁっ♡ 気持ちよくないぃいいっ、おまんこが、いいですぅっ……!」

 

 容赦なくケツ穴をぐぽぐぽ犯して、きっとこれが現実だったらアナルが哀れにも開きっぱなしになってしまうだろう。それくらい激しくブチ犯していて、ケツ穴はさっきからずっとめくりあがっていた。

 

「な"んでっ、おまんこしてくれないんですかぁあっ! ひどいぃっ……うう"、ひどすぎますよぉっ……!」

「こんなゆるっゆるになるまでディルドオナして、オレ以外の棒咥え込んで浮気してたまんこなんざハメるわけねェだろーがよォ? 文句あるのか?」

「だっ、て! ご主人様がっ、これでおまんこしてっ、ほぐしとけッ、てェっ!」

「覚えてねーな。お前の勘違いじゃねぇの?」

 

 理不尽なオレの暴論に、ユターシャは必死になって弁解をしている。オレもソレは重々承知していて、しかしユターシャの反応を見るのが面白いためにやめることができなかった。

 

 それにしても……せっかくケツ穴にチンポハメてやってるのに、こいつはまんこにも欲しいだなんて。なんて卑しいメスなんだろうか? 

 

「まんこ、して欲しいのか?」

「! ほしいっ、ほじぃですぅううっ……♡ もうおしりやだぁっ……!」

「そっか……じゃあ」

 

 先程まで彼女が必死に咥え込んでいて、いまはそこらへんに転がっていたディルドを手に取る。それを見せつけるように目の前に差し出してやった。

 

 まんこしてほしいっていうなら、仕方ない。

 

「さっきまでハメてたお前の恋人チンポ、まんこにハメてやろうなァ♡」

「ち、がっ……」

「遠慮するな、嬉しいだろ」

 

 首を振って拒否をして、暴れようとするユターシャ。しかしその足は掴まれていて、腕も動かせないように押さえつけられている。

 

 抵抗したって無駄なのだ。

 

「む"、りッ! いや、広がッ……ぎひぃっ……!」

「まぁどうせ夢だし、ユターシャ2人いるからお前1人くらいまんこ壊れようがどうでもいいんだが……ま、せいぜい気張れよ」

「ん"ぐッ、いや"ァッ! 入らないィッ! ご主人、さまっ……!」

 

 ケツにチンポをハメている圧で、なかなかうまくまんこのなかにディルドが挿入っていかない。少し力を加えて、上から押し込むように穴に対して体重をかけていく。

 

 膣肉壁がディルドによって広がり、それが腸壁越しにゴリゴリと感じられた。

 

「ほら、がんばれがんばれ。諦めるなよ、もう少し頑張ったら愛してやってもいいからな」

「ごしゅっ……♡ 〜〜〜〜〜ッ♡ が、がんばりゅっ……ひっ、ひっ、ふぅ〜〜〜ッ♡ あ、あいしてほしいッ♡ ご主人様、私ッ♡」

 

 未だにオレに優しくしてもらえるかもしれないと、間抜けにも期待しているユターシャがあまりにも哀れだった。オレが『愛してやってもいい』なんて適当なことを言っただけで、途端に彼女は必死になる。

 

 あまりにも一途で、あまりにも健気な努力。

 オレはそれを、ティッシュと同じくらい無駄に無価値に弄ぶのだ。

 

「お"ッ♡ ぐぅっ……♡ はふっ、はっ、はふぅ〜〜〜ッ♡」

「おい、クッソキツイな……もっと力抜けよ、奉公精神足りてねェぞ」

 

 ゆっくりゆっくりと、数ミリずつ少しずつ挿入っていくディルド。膣壁が広げられる感触がチンポに伝わって、中がどれだけぎゅうぎゅうになっているのかがよくわかる。

 

 細くて柔らかなくびれのウエストで太いモノを2本を咥え込もうとしているのだから、みっちりギチギチにキツくても仕方がないのだが……

 

「おっし、もう少し、もう少しだからなァ?」

「お"ぉおおっ……ぎづいぃいっ……ひっ、ひっ♡ ぉおおおっ……!」

 

 ———ご……ッちゅんッ! 

 

 無理やり捻り込んで、そうして最後は力任せにぶち込んだ。本物チンポをアナルに、そして偽物おもちゃチンポをまんこにハメこんだユターシャは辛そうに肩で浅い呼吸を繰り返している。

 

「アハッ……本当に二本挿入るのか、よく頑張ったな」

「あ"〜〜〜……ぉ、あ、ご主人、さまっ……」

 

 オレを求めて手がフラフラと伸びてきて、それを叩き落としてやった。ぺちんと拒絶されたソレは、そのまま宙を掴むばかりである。

 

 こんなに頑張ってオレの気まぐれに誠心誠意応えて、全力で尽くしているのに、まだご褒美を与えてもらえないなんて。

 なんて哀れで可哀想なんだろうか。オレを必死に求めて、そしてまだご褒美を貰えないと悲痛そうな顔をするユターシャが愛おしくて仕方ない。

 

「ごめん♡ ごめんなァ? 好きだから死ぬほど甘やかしてやりたいしいっぱいいっぱい愛しあいたいんだけど、それ以上に苦しめて酷いことして、それでもオレを求めてくれるお前が見たいんだ……」

「ぁ、あ、あぁぁあっ……いや、いやですっ……! なら、そっちの私と変えてくださいっ、私を愛して、そっちの私にひどいことしてください……ッ、私、愛してほしいっ……!」

 

 なりふり構わず、もう1人の自分ですら売ってでもなんとかオレの寵愛を求めようとする浅ましいユターシャの必死さに笑いすら込み上げてくる。

 

 どんなに媚びたって意味はないのだ。愛しいからこそひどいことをしてしまう、ゴミのような感性がオレの頭を掻き乱す。

 

 ディルドを引っ掴み、そして雑に出し入れを始めた。適当に掻き回す動きはユターシャの身体をただ弄ぶものである。

 それと同時にケツハメしているチンポもズパンズパンと容赦なく腰を打ちつけて、それにあわせて揺れ動く乳肉を雑に引っ掴んだ。

 

「あ"はっ、愛してるッ、だから死ねやボケがよォッ……クソが、オレのことぶっ壊しやがって……! こんなの、せめて知らなければまだマシだったんだ! クソみてぇな人生で、アンタになんか会わなきゃよかった! 謝れ、謝罪しろボンクラマゾ女がよォ!」

「あ"あ"あ"あ"ぁぁあっ♡ ま"ァ、ってぇええっ♡ い、きなり"ぃっ!? おぎっ、おっ、むりぃっ♡ ごわれる"ッ♡ ほんとにッ♡ 穴ァ"ッ♡ ごわれるっ!」

「壊れろッ! そんくらいでちょうどいいだろうが、クソッ、クソクソクソ、お前が完璧すぎるからいけないんだぞッ……!」

 

 バヂュッ♡ バヂュッ♡ ドヂュンプッ♡

 

「あ"〜〜〜くそ、エルフの聖女様がッ、クソ穴ほじくられてるなんてなァ? どんな気分だよえぇおい? ザーメン欲しいか?!」

「じゃっ、ザーメンッ♡ ほしっ♡ ご主人様のォお"っ♡ 欲しいれしゅっ♡」

 

 こんな燃えるように苦しい愛なんて知らない方がまだマシだった。そんな感情をオレに植え付けるような女に怒りをぶつけなきゃ収まらない。でも愛してるからこそ大切にもしたい。矛盾した感情が余計に恋愛という暴走した思考に拍車をかける。

 

 オレは彼女をただ愛したいのだ。

 その愛は加虐であり、そして庇護である。

 

「ユターシャ……コイツ、ザーメン欲しいってよ。少しだけわけてやったらどうだ?」

「はにゃ?」

 

 ユターシャの足を掴んでいるだけの彼女に、できる限り優しい声音で声をかける。こっちのユターシャはそっと溶けてしまう砂糖菓子のように優しく、甘く、愛してやりたかった。

 

 先程までのオレの温度差に驚いているようなユターシャに、さらに言葉を続けていく。

 

「さっきいっぱい中出しして溢してただろ? コイツの顔に座って、直に飲ましてやれよ……な? 可哀想だから、少しくらい恵んでやってくれよ」

「……自分自身に、顔面騎乗しろって、事ですか?」

「あぁ、やってくれるよな?」

 

 有無を言わせないオレの言葉に、ユターシャは静かに頷いた。そしていそいそと身体を動かして、女の顔に秘部を押し当てる。

 

「ちょっ、まっ……おぶぶっ! ん"〜っ! んぅ"〜〜ッ!」

「あぁぁ……♡ わ、わたし、ごめんなさい……♡」

「ユターシャは優しいなぁ……ん、流石は聖女様ってか? ザーメン乞食に中出しザーメン恵んでやるなんて、優しすぎるだろ」

「おふぅっ♡ あ"♡ お、おまんこ♡ 吸われてぇっ……♡」

 

 ケツに乱暴に腰を叩きつけて、マンコにぶっ刺さったおもちゃを乱雑にかき回して、ビグビグと痙攣する足を抑え込みながらも乳を適当に引っ張り揉みしだく。容赦なくぶち犯す動きは激しく、きっとこれが現実ならユターシャのケツはもう元の形に戻ることはないだろう。

 

 そんな激しいピストンを繰り返しながらも、至近距離にある切なげに頬を蒸気させたユターシャと見つめあって———

 

「んッ♡ ユターシャ、愛してる♡ あ"〜〜〜好きだ♡ キスしてぇ、ベロ出せっ」

「はいっ♡ いっぱいキスっ♡ んふぅー♡ ご主人様っ♡ んちゅっ♡ ちゅ〜〜〜〜っ♡」

「ん"ぉ"〜〜〜〜〜〜ッ! ぶもっ♡ ぶぢゅるるるっ! お"ぎっ、ぶむぅっ! ぐぎゅっ、じっ、ぉっがっ!」

 

 乱暴にブチ犯されているユターシャが何かを叫ぼうとして暴れているものの、オレとユターシャはその上で恋人同士のラブラブキッスに励んでいた。舌を交わして唇に吸い付き、互いに互いの愛を深め合う濃厚なくちづけ。それはとても甘美で、優しく甘い味がする。

 

 彼女に怒りをぶつけながらも、たっぷりと優しい愛を捧げる幸せ。こんなの、おかしくなってしまう……

 

「好きだっ、好きだユターシャっ……はぁっ……愛してる……いっぱい甘やかして、蕩かして、お前の望む事全部してやるからな♡」

「あんっ♡ うれしいでしゅっ♡ んちゅっ♡ ご主人様ぁ、すきぃ……♡」

「いやぁ"ぁああああっ! わ、私のッんぶぅっ♡ ごじゅっ……んぶぶぶっ♡ んごっ♡」

 

 好き放題にケツ穴を使って性処理のためのピストンをして、限界はすぐそこに来ていた。吸い付く肉穴はだいぶ緩めになってきていて程よい具合となっており、サキュバスアナルとしては上出来と言えるだろう。

 

 ずちゅっ♡ じゅぼっ♡ ぬぽぉ~……ぐちゅうぅうぅう♡ どぢゅんッ! ぐりりぃいぃいいぃいい♡

 

「あ〜……イくからな、出すからなァ……ッ!」

「はいっ……♡ お好きにどうぞ♡ んちゅっ♡ ご主人様のための肉体、好きに貪り食らってくださいね……♡」

 

 そして、ユターシャと甘々なキスをしながらもオレの視界は真っ白に爆ぜた。ばちばちと刺激が脳天を巡って、思考回路は動かなくなる。

 

 気持ちよかった。気持ちよくて、脳味噌がとろける。

 

 目の前のユターシャの、全てを受け入れる聖母のような優しい表情だけが見える。他の全ての情報はシャットダウンされて、ユターシャだけで埋め尽くされてしまう。

 幸せだった。全てを受け入れてくれるユターシャに見守られているようで、愛しさが溢れ出してくる。

 

 どうやら下の方でなにか叫んでいるような声も聞こえるが、今はただ目の前のユターシャと愛を紡ぐので精一杯だった。

 

「はぁっ……はぁっ……ユターシャ、愛してる……」

「私も、愛しています♡ ご主人様……♡」

 

 頭をユターシャの首筋に埋めて体重をかければ、彼女の手がオレの背中に回ってぽんぽんとあやすように撫でてくれた。こんなに最低なオレなのに、ユターシャはどこまででもオレをあまやかしてくれるのだ。

 

 すっかり精子を出し切ったオレは、ユターシャのケツ穴から肉棒を引き抜いた。そうして、愛しいユターシャを抱きしめながらも移動し、カエルのようにみっともなく身体を開いている女の口元にチンポを押し付ける。

 

「おい……何呆けてやがるんだよ。テメェのケツ汁ついてんだろ、舐めろ」

「んっ……ぶぅっ……おぶっ……」

 

 ローションでデロッデロになっている萎えたチンポを口に捻り込んでしゃぶらせ、そうこうしている間ももう1人のユターシャと甘いキスを繰り返す。

 チラリと見下ろせば、ぽろぽろと涙をこぼしながらも必死に舌を動かすユターシャと視線があった。

 

 あぁ、ざまあみろ。お前がこんなにオレを恋に狂わせるからいけないんだ。これは報復であり、オレの怒りである。

 

「ユターシャ、ユターシャ……あぁ、好きだ♡ 愛してる……」

「ご主人様……♡」

「んっ、チンポ綺麗になったらまたアンタとヤりてぇ……やっぱキツすぎてケツ穴はダメだな。気まぐれにハメてやったけどあんまヨくなかったし、オレのチンポしか知らないまんこが1番いい」

「うふっ、いいですよ♡」

 

 言外に『お前とのセックスは気持ちよくなかった』と言っているようなものだ。ユターシャの瞳から、じわりと涙の量が増える。

 

「あぁ……ユターシャ、愛してる。オレを受け入れてくれるか?」

「えぇ、もちろんです……♡」

 

 オレはユターシャを抱くために、未だベッドに転がっている邪魔なユターシャの口からチンポを引き抜き、そして引き摺り下ろした。もう自身に少しも情けをもらえないと悲しみに暮れているユターシャは、ロクに声も上げずに床に転がる。

 

 そんな彼女の柔らかな腹と頭に、自身の足を置いた。まるでソファにつくオットマンのように扱って、彼女の尊厳はもはや皆無である。

 

 気まぐれに虐げられて、差別されるように自身は愛してもらえず、はたしてどんな感情を今は抱いているのだろうか。

 

「おい、足舐めろ」

「……は、いぃっ」

 

 奴隷よりも最低な扱いで、彼女に命令を下す。逆らいもせず、むしろ少し嬉しそうにオレの足の指をちゅぱちゅぱと舐め始めたユターシャを無視して、オレは腕を回していたユターシャに向き直った。

 

「……愛してる、ユターシャ……オレは、お前を本当に愛しているんだ」

「えぇ、私もです。私も、貴方を愛しています。だから貴方がくださる優しさも激情も、なにもかも欲しい……♡」

 

 そういって、彼女は微笑んだ。

 ユターシャの姿が二重に重なり、瞬きをした次の瞬間にはそこに3人目が現れている。

 

「さぁ、何人でも増やしましょう」

「好きなだけ増やしますから、私に溺れて結構ですよ」

 

 4人目が、後ろから甘く囁いてくる。

 

「酷くしたって、優しくしたって、何をしても構いません」

「だって、貴方の全てを受け入れられる程度には、あなたのことを愛していますから」

「だから貴方も、私に思いの丈を全てくださいね♡」

 

 

 

 時刻は、15時。

 まだ目覚められそうもない———

 

 

 



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+エルフ国+魔王

 

 

 

 エルフ王宮の真下に聳える、数万年間ずっと秘匿され続けている螺旋状の崇拝神殿。

 ———深淵廟堂

 

 そこは豊穣の未来を約束するための極楽。常に春の小川が流れ、甘い果実が常にたわわに生る、大地が開く饗応の楽園。

 その美しさは地下にあるとは思えないほどの明るさに満ち溢れており、この世のどんな景色よりも素晴らしいものだろう。

 

 その真ん中には大地の裏側にまで到達すると伝えられている穴が開いており、その上には穴に魔力を流し込むための宝珠が祀られていた。

 

 魔術の才能があると判断されたエルフの子供達は、その穴に魔力を注ぐため聖女としての教育が施される。選ばれた者にしかなれない、栄誉ある義務なのだ。

 

 ……義務、つまり強制的。

 

 端的にいうと、魔力をめちゃくちゃ持ってるエルフの女は、強制的に聖女にされてしまうという国の制度である。

 せっかくファンタジー世界に生まれたのに、冒険も何もない深い穴に引きこもり生活だなんて……日本生まれ日本育ちからすれば、なんだか物足りなさを覚えてしまっても仕方がないだろう。聖女の響きはロマンあふれるけれど、それはそれとして生まれた当時のオレはポケモンみたいな冒険をしてみたかったのだ。

 

 

 

 

 

 

「ユターシャ、話があります」

 

 それはまだ私がエルフだった頃の、とある日のこと。数十年前だったかもしれないし、数年前だったのかもしれない。

 

 いつもと同じように自身の魔力を大地に注いだ私は、深淵廟堂を出た後先生に呼び出されていた。

 

「如何なさいましたか? 私の作ったロシアンクッキー、おいしかったでしょう? 全部食べてくれましたか?」

「えぇ、いっぱいあったので生徒達にも食べさせてあげましたが、皆にも好評でとても美味しかったですよ」

 

 みんなにあげちゃったんですか、南無。

 クックパッドで勉強したロシアンクッキー、ひとつだけ大当たりでワサビを仕込んでおいたのに。

 

「……それはそれとして、少しついてきなさい」

「はぁい」

「間延びした返事はしない!」

「はいはい」

「はい、は一回!」

「おけまる水産」

「おけま……? あぁもう、とにかく行きますよ」

 

 いつもと同じように厳しすぎる先生をからかいつつも、私は彼女の後ろをついていく。

 

 聖女見習いを卒業してからも、こうして先生に呼び出されることは多々あった。

 特に、政治に首を突っ込んで命が狙われるようになってからは週に何度も呼び出されてさまざまな魔術を習ったものである。対人魔術から目眩しに使える術、逃げ出し方など……先生も忙しいだろうに、私には特に時間を割いてくれていた。

 

「そういえば、この前教えてくださったバースト魔術、早速使()()機会がありましたよ。あれ、便利ですねぇ」

「壁まで壊したと聞きましたよ。全く、もう……いくら危険があっても、もうすこし周りのことを考えなさいな」

 

 この頃の私は少しやさぐれていたのかもしれないし、全能感に酔いしれていたのだろう。

 

 国を明確に良くする、というやりがい。

 誰からも賞賛される心地よさ。尊敬されるエルフとしての立ち位置。他の追随を許さない聖女としての高い能力値。

 

 私は、それらに酔っていたのだ。

 

「しゃんとなさい。いつもの貴方らしく、ね」

「陛下の御前のように?」

「まさしく、そのように」

 

 

 

 

 

 階段を登り、辿り着いたのは聖女専用の会議室だった。深淵廟堂よりも王宮の方が近い程度の高さの場所で、滅多に人が来ないようなところである。

 

 そして、先生が戸を開く。

 ロの字型に置かれた長机、その1番奥には陛下が座っていた。

 

 エルフ王である。

 

「久しいな、降り立つ繁栄よ」

「へ、陛下……」

 

 いや、聞いてないですよこんなの。

 サプライズパーティで来て欲しくない人選勢揃いじゃないですか。

 

 私はヒクつく顔の筋肉をなんとか留めながらも、すぐに膝をついた。

 

「……こんな地下までお集まりになって。お呼び頂ければ、わたくしから馳せ参じましたのに」

「我々がここにいることは内密にしたいのだ」

 

 うわ絶対めんどくさい話だ、これ。

 何も言わずに連れてきやがった先生を睨みつけるものの、彼女はどこ吹く風とばかりに飄々としていた。

 

 陛下の隣には宰相様もいて、私を見て仏頂面のまま小さく会釈をする。

 ああもう、胃が痛くなりそうだ。

 

「さあ、掛けてくれ」

 

 促されるままに席に着くと、向かい側に陛下と宰相が座り、私の両隣りには先生と殿下が並ぶ形になった。

 

「それで、本日はどのようなご用件でしょうか?」

「第一聖女殿よ、人間についてどう思う?」

「……人間について、ですか」

 

 宰相は、懐から取り出したナニカを私に渡してくる。

 

 それは、少しだけ凝った鉄製ゼンマイじかけのおもちゃ。現代日本人からすれば古めかしい海外製のレトロ品っぽい風情があり、しかしこの世界での最新鋭のおもちゃなのだろう。

 

 手渡されたそれを軽く弄びながら、私は首を傾げた。

 

「人間の作ったものですか? 量産品なのでしょうか……なかなか凝っているではありませんか」

「それは今、人間の中で民衆向けに売られている道具だ」

 

 ゼンマイを巻けば回る、というだけのシンプルなおもちゃだが……電気もろくに発明されていないこの時代において、ここまでの小型機械製品が大衆向けになっているのは驚きだ。

 

 個人的な感想としては、この発明が量産化されて我が国にまでやってきているという事実は大変好ましいと思う。

 エルフ達はなかなか頑迷固陋のきらいがある……というか、長生きすぎる種族故に進化を嫌うのだ。今あるもので充分という清貧の考えは、進化の妨げにしかならないのである。

 

 競争世界でいいもの作るため各々が努力する資本主義。大いなる発展のためには手っ取り早い方法なんだし、エルフが大好きな共産主義よりはマシでしょう。

 

「それで、こちらがどうなさったのですか」

「……人間という種族は短い生を何代にも渡って繰り返す。その中で優良な個が何かを生み出し、そして繁栄する生き物である。そして、この玩具の仕組みはここ30年近くで開発されて、そして今では量産に至ったのだ」

 

 そりゃ驚異的なスピードですね、なんて私は他人事のように口にした。

 

「さて……時に、人間の文明というのは今まで何度も何度も進化をしかけてきた」

「長い歴史重ねてますからねぇ」

「その度に、進化を妨げる存在があった」

 

 それもまた、この世界での常識。

 

 ひとつは、魔術による特定の人間のみに許された利便性による発明の怠惰で、もうひとつは———

 

「文明の破壊者、運命から生まれる癌。生きるだけの魔族を統括する邪悪———魔王」

 

 それは、ごく稀に起きる天災である。

 生命から変化したり、自然発生したり、その起こり方は様々であるものの……共通するのは、それは知的生命を悉く破壊してまわるという習性。

 

 それは、この大地が持つ運命力なのだろう。

 自身の身体を食い荒らすイキモノ達を、殺しまわるための防衛本能の現れ。

 虫に刺された時に肌を掻きむしるのと同じように、自身の身体を傷付けてでもその異物を排除したいのだろう。

 

 ……というのが、エルフの中での通説である。

 

「魔王の出現と人間文明の発展には関係性がある……でしたっけ?」

「その通りだ」

「人間が成長しているのに、魔王が現れないのはおかしいと? 魔王が現れるのは我々にとっても損害が出ます」

「そうではない」

 

 陛下が口を開く。

 彼は、宰相の言葉を補足するように続けた。

 

「聖女殿はまだは若いから知らないだろうが、我々はこれまで幾度となく魔王の誕生を目にしてきた。しかし、ここ 100 年ほどの間に、人類はその脅威に晒されていない」

「つまり?」

 

 魔王が生まれないことに対しての危機感ということなのだろうか? 

 

「近年の急激な人間文明の発展は問題だ」

「えぇ……発展する人間へのやっかみですか?」

「違う。人間文明の発展はすなわち大地のエネルギーを搾取する行為である」

 

 なるほど、そこで大地のエネルギーを直接注いで活性化させているエルフ聖女の筆頭である私が呼ばれたというわけか。

 

 人間が文明を発展させて、大地を消費すれば消費するほど私達(聖女)の注ぐエネルギーを多くしなくてはならない。

 ……しかし、現状報告のためだけにわざわざこんなひっそりと密談するみたいにしますかね? 

 

「ところで、この50年での魔力消費量はどの程度となっている?」

 

 50年となると、ちょうど私が聖女見習いを卒業して正式に魔力を供給するようになった頃。

 たしかに昔よりはほんのちょっと入れる量増やしてるけど……1.3倍くらいかな? 

 

「630倍です」

「せんせぇ?」

 

 横から口出ししてきた齢305歳の口煩いクソババアを睨みつける。

 

 そんなわけないだろ、と思ったけれど……なにやら彼女は書類を取り出してきた。グラフのようなものは、魔力量の推移なのだろうか? 

 

「……これ本当ですか? 偽装書類なのでは? こんなに必要魔力量跳ね上がってないと思いますよ?」

「それは貴方が馬鹿みたいな魔力量してるからでしょう。現状で貴方がもしいなくなって、他の子達だけに任せるようなことになったら、あっという間に大地は死にますよ」

「えぇー……」

 

 とりあえず襟を正して、陛下と宰相に向き直った。

 

「先生はこう言ってますが、実際はもっと少ないでしょう。私はそんなに辛くありませんし……今の100倍来ようと、正直私は全く問題ありませんよ? 今ですら手を抜きまくってるんですから」

 

 それに、と私は言葉を付け足す。

 

「継続可能エネルギーの開発は始まっています。いずれエルフは、聖女という人身御身を立てずとも大地にエネルギーを送れるようになるのです」

 

 私が進めている研究のひとつである。

 街でたまたま出会った科学者肌のハーフエルフをなんとかスカウトして、人工的魔力エネルギーをなんとか作り出そうとしているのだ。

 

 魔力とは、限られたものにのみ宿る特殊な臓器のようなものなのだろうと考えている。それを人工的に作り出すことができれば、きっと。

 

「……そんなもの、あてにならないだろう」

「! 論文も出しています。夢物語ではなく、我々は実際にそれを成し遂げようとしています」

「小娘どものお遊びではないか。半血の穢れ(ハーフエルフ)ごときにそのようなことが出来るわけ……」

「は?」

 

 ———なんだこいつ。

 

 暴言を吐く宰相に向かって身体が前のめりになった私を、止めたのは先生だった。

 思わず彼女を睨みつけるものの、長年の付き合い故に彼女は飄々としている。

 

 エルフの大抵が人間を見下している。

 それは野蛮で変態的な生き物と決めつけているからであり、そのハーフは低俗な血を引く者として差別される傾向にある。

 

 だからって、こうも堂々と言い放つなんて……ソレが悪いと1ミリも思ってないのだろう。

 

「成せるかわからぬような博打に、この大陸全土の生命を賭けるほど我々も甘くはないのだ」

 

 それは、全く期待していないと言わんばかりの言葉だった。期待すること自体が間違っていると、今もなお必死に研究してくれているだろう彼の努力を否定するような言葉。

 

 完全に喧嘩腰で老害を睨め付ける私を、鎮めるように立ち上がったのは陛下であった。

 

「……ユターシャよ、我が国の栄誉ある富と繁栄の象徴よ。お前を虚仮にしたいわけではない」

 

 じゃあどうして私を呼び出したんだよ。

 ぐっと堪えながらも、喉までは彼らを否定する言葉が出かかっていた。

 

「余は、お前の研究を否定したいわけではないのだ。聖女という古より続く構造を解体せんとするお前の努力を買いたいし、それが延いては我が国の繁栄に繋がることもわかっておる」

「何がいいたいのですか」

 

 そして私の前に出されたのはとある砲身のようなモノの設計図。

 素人目にしかわからないものの、どうやらとても巨大なもので———所々に記載のある説明書きから読み取るに、どうやら魔力を込めて撃ち出す装置のようだが。

 

 本題はこれか、とそこにいる目の前の狸達を睨みつけた。

 

「これはなんなのですか?」

「人間に天誅を与えるための砲台である」

「……?」

 

 砲台というのはわかる。天誅———というのも、聞こえは悪いが言いたいこともわかる。

 

 だが、それと私に一体何の関係があるというのか? 

 

「ユターシャよ、お前は平均的な聖女……つまり、我が国の精鋭たる魔術師の、何倍の魔力を持っているのだ?」

「何倍って、そりゃ……すごくいっぱいです。100倍とか1000倍とか、もっといけますケド」

「ならば、お前がこの砲台における弾となった時……一体どれだけの人間を殺せる?」

 

 

 

「は」

 

 

 こいつら。

 

 こいつら、私に何をさせようとしてるんだ? 

 

 

「お前がありったけの魔力を込めて、それを人間の国に撃ち出せば、はたしてどのくらいの人間を殺すことができる?」

 

 

 

「……私に、大量殺人をさせるっていうのですか?」

「この大地における、大事な自浄作用である」

「正気ですかアンタら?! 人間をなんだと、思っ……」

 

 あぁ、そうだ。

 そうして、私は再認識する。

 

 エルフという生き物は、人間よりもよっぽど信仰心の高い生き物なのだ。だからこそ、信仰のためなら何をしてもいいと思っていやがる。人という生き物を見下して、そこに住まう営みを無視して、自分たちが神の使者だと言わんばかりに傲慢を働く。

 

 自らの利益のために他の命を害する人間とは違う、しかし本質は変わらない。

 

「……最低だ」

 

 

 

 

 

「怖いのか? なに、お前はいつもと同じように魔力を込めるだけなのだ。それで、人間の住まう街を多く滅ぼすだけである。目の前で自身の手で殺すよりもよっぽど、殺意はないだろう」

 

 違う

 

「本来、魔王は人間の文明が栄え始めて数年程度で発露するが……人間達の文明が少しずつ進歩し始めてから70年以上は経っているのに、未だに現れていないのは緊急事態である。故に為さねばならぬのだ」

 

 違う

 

「余は王として『出来るかもしれない』未来を選ぶわけには行かぬのだ。エルフの王というのは、この大陸全ての命を左右する責務を持つ。常に最悪の事態に備えて、それを選ぶことの何が誤っているというのだ? 非道な選択だとしても、余は王として選ばねばならぬのだ」

 

 違う

 

 何故、手と手を取り合って共に共生することが出来ないのか。人間の文明を発展させる能力と、エルフの国に蓄積された知恵の財宝をあわせれば、きっと世界はもっと良くなるのに。

 魔王すら発生しないような、魔術に代わるような永遠に続く無限エネルギーを開発して、長く生き続けるための大地を共に作ろうとしないのだろうか。

 

 違う———邪魔なものを排除するしか、方法がないと思ってるのだろう。

 

 

 

 

 

 私の思いを知ってか知らずか、老害どもは更に言葉を続ける。あぁ、もういい加減にしてくれ。これ以上聞きたくない。

 

「失礼、します……」

 

 彼らと私は、根本的に理解しあえないのだ。

 

 元が人間の私からすれば、エルフも人間も同じ生き物である。同じ地球の子供であって、困難はあれど手を取り合えると思っている。だが、彼らは違う———彼らは根本的に、人間を『言葉が話せるだけの異物』としてしか見ていない。

 

 まるで殺虫剤を撒くような感覚で、無害な人々に、無垢な人間の子供達に、核を投与するのだろう。

 

「ユターシャ……」

「先生、少し……1人にしてください……」

 

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 

 ハーフエルフの子は何者かに殺されてしまった。

 

 研究施設も燃やされて、事実上の失敗となった。

 その頃に私の逃げ場を無くすように婚約も決まって、第一王子が王位継承した後に大砲を起動すると伝えられた。

 

 日が進むごとに計画はより輪郭を濃くしていき、私の足元は泥にとらわれたように深く沈み込んでいく。

 

 きっと、もっと早くに逃げれば良かったのだ。

 私なら穴から離れていても地面に足がついていれば魔力を大地に流し込むことくらいはできる。研究施設も無くなって、私を縛るものは何もなかったのだ。

 

 だけど、その勇気がなかった。

 結論を先延ばしにしていたのだ。

 

 もしもその大砲を本当に起動することになったら、その直前に逃げて仕舞えば良いと思っていた。それまではこの地位にしがみついて、何とか方法がないかと静かに探していたのだ。

 

「なんで、こんな事になっちゃったんだろうなぁ……」

 

 勇者になりたかった。

 冒険がしたかった。

 当たり前のように魔王がいる世界で、転生チートの勇者として、目の前の悪を倒すだけの存在になりたかった。

 

 

 

 

 しかし、ある日転機が訪れる。

 第一王子が死んで、そして第二王子と婚約を交わして暫くたったある日。

 

 今から、およそ半年前。

 

 第二王子と私は同い年で、彼もまた95歳。

 私が呼び出されたのは、とある人間の女の墓の前だった。

 

「来たか、繁栄の」

「こんにちわ殿下、お日柄も宜しゅう……」

「御託はいい」

 

 傅く私を、彼は尊大に見下ろしていた。

 綺麗な男だった。エルフ族は皆見目麗しいが、その中でもかなりの美丈夫に当たるだろう。

 

 太陽を背にし、髪の毛は白金のような色が透けている。剣や弓よりも詩や文芸を好む華やかな男は、まるで女のように綺麗な指をしていて、そして沢山の花を大切そうに抱いている。

 

 彼は、睨みながらも私に問いかけた。

 

「……お前は、人間を殺すのか」

「藪から棒に、何を」

「俺が聞いている。お前は、大量の人を殺すのか」

 

 そうして静かに、花束を墓の前に置く。

 

 小さな墓なのは、この国では人間が差別されるから。それでも第二王子の寵愛故か、そこは素晴らしく美しいところだった。

 綺麗な青空で、目の前には広大な丘が広がっている。花は咲き誇り、常に美しい景色を一望できるだろう場所。

 

 人を愛することが異端で、影で疎まれるように陰口を叩かれていても、80年近く1人の人間の女を愛していた。子供の頃からずっと、先に老いていく人間の女を大切にしていたらしい。

 

「計画を、父上から聞いた。それが俺とお前の背負うべき、エルフとしての責務だと」

 

 美しい男だ。

 ただ綺麗なものだけを愛して、綺麗なものだけを見る、清流の魚のような男。柔らかな風が吹き、彼の亜麻色の髪がふわりと靡いた。

 

 好ましいと思えるほどまっすぐで、そしてガラスでできた剣のように繊細で鋭い感情が私に突きつけられる。

 

 ———私には、その透き通った美しさは無くて、ただただ彼の幼稚な理想に目を細めた。

 

「そして、貴方はその計画を止めるために私を呼び出したと?」

「あぁ、俺は彼女と約束したから……いつかきっと、種族関係なく愛しあえる世界を作ると」

 

 本当にその人間を愛していたのだろう。

 死んでもなお約束を守ろうとするのは立派なものだ。

 

「お前が人間を大量に殺すならば、きっと恨みの連鎖は止まらなくなるだろう」

「……しかし、私が死ねば大地の供給は止まってしまうそうですよ? そこはどうするんです?」

()()()()

 

 潔い言葉に、私は目を見開いた。

 

 無視するってことは、つまり、普通に餓死する人とか大量に出ちゃうってことだ。それは人間だけでなく、エルフや、他の種族も全部等しく大量に死ぬだろう。

 

 ……確かに、その方が種族同士の結束高まりそうですけど、だからって。

 

「大地を枯渇させて世界人口減らすことで、種族同士での戦いよりも辛い環境下で助け合う世界を作ると? ちょっと思想が赤い星すぎませんか?」

 

 だが、どうやら王子様は本気でそう考えているらしい。

 

「……繁栄よ、お前がいると邪魔だ」

「そりゃ確かに、大地をわざと飢えさせて生物全体を皆殺しにしようとする貴方からすれば、私は邪魔でしょうね」

 

 そして、喋りながらも私は静かに考える。

 

 もしかしたらこれはいい機会なのかもしれない、と。

 

 今まで先延ばしにしてきた国外への逃亡を、『王子のせいで仕方なくそうせざるを得なかった』と……つまり、私が自分の意思で行動したわけではないと理由がつくのではないかと思ったのだ。

 

 いつか戻ってくるかもしれないから、その時にせめて同情されながら帰ろうという浅ましい考え。

 自身の高い能力に驕り高ぶり、逃亡程度は簡単だと余裕ぶっこいてたのだ。

 

 魔術封じも、私の高い魔力を用いればパンクさせることができる。首を落とされようが、私なら無傷の状態にも戻せた。

 だからこそ死なないと、死ななければいくらでもどうにでもなると思ったのに。

 

 

 

 

 この逢瀬から1週間後、私は罪人として囚われる。

 そして、あまりにも意外な方法(魔族化)であっという間に魔術を封じ込まれたのであった。

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 

「じゃあ、本当のことをご主人様にいいますか?」

「言うわけないでしょう。第二王子は噂に違い無く、ただの愚者であったと思われていた方がいいです」

 

 いつもの夢の中。

 私はユターシャ()と共にベッドに腰掛け、パピコをチューチューと吸い上げる。

 

「私ですら、彼と結婚すると決まるまで遊び呆けてる王子だと思ってましたからね……」

「人間と恋愛して大往生まで看取った若いエルフ王子なんて、一本ドラマ書けますよねぇ」

 

 ほとんどのエルフは、第二王子について詳しくは知らない。

 

 それはエルフ王が人間と愛し合うエルフを恥だと思って隠し通していたからだ。そして表に出てこない第二王子のことを大衆は好き放題噂していたし、エルフ王も第一王子の人気を上げるためにそのままにしていた。

 

 だから、ただの強欲で権力好きな愚息と思われているのだろう。

 

「第二王子が私を恨む理由を話したら、ご主人様に計画の事まで話さなきゃいけなくなります。……それは、まずいですからね」

「まぁ確かに、人間のご主人様に『実は私人間大量ぶっ殺しマシーンの砲弾予定だったんですー!』なんて言えませんもんね」

 

 パピコの頭の部分までしっかりとしゃぶりつくした私達は、空容器をゴミ箱に突っ込んだ。

 そして私は一呼吸置いて、もう1人の私に顔を向ける。

 

「……ところで、あなたいつまでいるんですか?」

「目が覚めるくらいまで? いいじゃないですか、減るもんでもないし」

 

 2人して静まり返った空間に、ぎゃああああ、という悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 室内に置いたアレクサから流れるのは外の音。

 硬いものがごきりと折れるような音が聞こえて、暫く静寂。布の擦れる音と、ご主人様の呼吸が近くで聞こえる。

 

 ラジオのようなソレはユターシャの耳から入ってくる音をリアルタイムに流しているのだ。

 

「嫌な音ですねー、ちょっとBGM変えません?」

「まぁいいですけど……それより貴方は何してるんですか」

 

 もう1人の私は、「おるた」と書かれたブカブカのTシャツを着て銀髪のウィッグを被っている。先ほど眼球にいれようと努力した高発色イエローカラコンはゴミ箱にぶち込まれていて、彼女の目は少しだけ充血していた。そして銀色の鎖をじゃらじゃらと腕に巻き付けている。

 

 ……なんだろう、浅く広く『もう1人の自分要素』を取り入れるのやめてもらっていいですか? 

 

「私からすればまだ地味すぎるくらいです、もっと腕とかにシルバー巻くとかさぁ」

「だs……ごほん。お願いなのでご主人様の前にその格好で出ないでくださいよ」

 

 まるで闇のデュエリストか、はたまたオルタ化した聖女を意識しているもう1人の私は、腕の素肌が見えなくなるまでのシルバー鎖を腕に巻き付けていた。

 

 身体にもシルバーを巻いて満足したのか、ドヤ顔でポーズを決める『おるた私』は、まるで尊大な魔王のようにデスクチェアに腰掛ける。

 

「さて……夜はまだ長いですから、ゆっくりしましょうか」

 

 

 

 

 

 ———今頃、夢の外(現実)ではご主人様がエルフの追手を殺しているのだろうか。

 時刻は明朝の手前。きっと現実では、窓の外が群青色になりつつあるのだろう時間帯。

 

 ご主人様は眠っている私に対して絶対命令権を使って「起きないように」と言ってきたのだ。故に私は起きたいと思っても起きられず、外の様子を耳から聞こえる情報しか得られない。

 

「ご主人様は殺しを隠したいんでしょうね」

「……ま、バレてますけどね?」

 

 この空間は私の意志で様々なものを反映させる事ができる。転生特典のひとつだと楽観視して受け入れていた私は、夢の中で前世の一人暮らしアパートを再現していた。

 

 そして、机の上に置いたアマゾンエコーからは、眠っている私の耳から聞こえる音を流している。これによりどんなに眠っていても、私は外の様子を窺うことができるのだ。

 おかげで何度も助かったことがある。主に夜這いを仕掛けてくる変態第二聖女から身を守るとか、そういう方向性で。

 

「やっぱり、私の身柄をエルフ達は求めてるんでしょうかね」

「そして場所もバレてる、と……とはいえ、表沙汰にはしたくないみたいですね」

 

 仕方がないことだ。追われているのに定住しているなんて、見つけてくださいと言ってるようなものだから。

 

 エルフ達が表沙汰にしたくないのは、私が人間大量殺戮マシーンだからだろう。それがもし人間にバレてしまっては、戦争どころの話ではない。だからこそこうして、エルフ達は夜中にこそこそと寝首をかきに来ているのだ。

 

「そして、ご主人様もご主人様で———わざと泳がせてるんでしょうか?」

 

 返り討ちにしたエルフをどこかに運んでいる様子のご主人様。昨今の魔術は進歩したもので、死体からでも情報を抜き出せるのだ。

 

 私という餌をわざと定住させることでエルフの刺客たちを誘き寄せて、そこから情報を得ようとしている? そんな非効率的なことするものなのでしょうか……? ご主人様には私に対しての絶対命令権限もあるわけだし、それを使用すれば私の隠し事くらいは全て暴くことが出来るだろうに。

 

 ……私は、考えることを放棄した。

 

「……いやですね、難しいことを考えるのは嫌です」

「とはいえ、あまりお気楽主義で居続けるのもよくないですよ」

「わかってますって……」

 

 はぁ、とため息をついたのは私か、はたまたおるたの私か。

 

「———いつか、終わりはきちゃいますよ」

「わかってますよ」

 

 私が背負うものも、ご主人様が隠しているものも、全て全て壊れてしまえばいいのに。

 

「魔王がいれば……そうすれば、世界ぶっ壊して私の悩みも全部取り払ってくれるのに、なぁ」

「それを貴方がいいますか?」

 

 おるたはシルバーをいじくりまわしながらも、物騒なものを見る目で私をみつめていた。

 

 聖女らしからぬ言葉ということはわかっている。それでも、今となってはその誕生を待つひとりとなってしまった。

 

「だってそうでしょう? 人間大量殺戮計画は魔王がいないから計画されたわけですし、魔王不在のせいでエルフ国のお偉いがたは困ってるんですよ。人間大量殺戮計画が無くなれば私が皇族と結婚する必要性もなくなりますし、私の価値は多少下がります。そうすれば晴れてご主人様と夫婦になっても良いのでは?」

「はぁ……いやぁ……まぁそれはそうですが、言っときますが無理ですよ?」

「なんで?」

 

 無理なはずはない。

 エルフが積み重ねてきた歴史を振り返り逆算すると、およそ90年から100年ほど前に魔王は生まれていないとおかしいのだ。

 

 それがまだ現れていないのだから、むしろいつ来てもおかしくないわけで。

 

「貴方の思うように、どこからともなく悪の魔王が現れて、そして魔族を引き連れて襲来するなんてことはありませんよ」

「……何を根拠に」

 

 おるたの身体に食い込むシルバーの鎖が、どんどん深くなっていく。柔らかな肉に、沈み込むように。

 

 なんで私の知らないことを、コイツは知っているように話している? 

 私と彼女は同一の存在であり、それをわざわざふたつに並列して運用しているだけにすぎない。なのに、私と別の動作をするのは、明らかなシステムエラーである。

 

「待ってください……ちょっと、貴方何者ですか?」

「ユターシャですよ?」

 

 相対するおるたの私は、いつも通りの笑顔を浮かべていた。

 ぎち、ぎち、と鎖が縛られていく音が聞こえる。

 

「貴方は私ですが、私は貴方ではありませんから」

 

 おるたの声は、いつもの私の声ではない。

 

 ———私はおるたじゃない。

 おるたは私を知らない。

 私はおるたを知っている。

 私はおるたに干渉できない。

 おるたは私に命令できる。

 私はおるたに勝てない。

 私は、私は、私は、私は——— 私は? 私は、私は、私は、私は——— 私は、私は、私は、私は、

 

 鎖が軋む音が聞こえる。おるたの鎖がぎちぎちに締め付けられて、彼女の腕に巻き付いた鎖は皮膚にめり込んでいく。彼女の腕から血が流れ、鎖の隙間から滴っていた。

 

 

 

 

 

「———魔王は」

 

 

 私おるたの身体の鎖が、より強固になっていく。

 何が起きてるのかわからずに、そして———彼女の体に巻きついていく鎖を壊すために、私は手を伸ばした。

 

 彼女がいなくなるのが、怖いのだ。

 私は彼女であり、彼女こそがユターシャなのだから。今まで矢面に立ってくれていたおるた(代替品)とはいえ、私がそこに立つにはまだ早すぎる。

 

 愛に目覚めたのだ。

 あいに、めざめたのだ。

 

 

「もう」

「いやです……待って、言わないでッ!」

 

 

 元から、ひとつの肉体にふたつの魂が宿るなんて無理だったのだ。

 

 だから(ユターシャ)は、私が生まれた時に現代日本人として出来上がっていたオルタナティブ(代替品)を使用していた。

 そして本来生まれるべきユターシャの魂は追いやられて、ただ観測するだけの無機質なナニカとなっていたのに。

 

 

 愛を知った。

 本来のユターシャ()がゆっくりと、目覚めていった。

 

 

 私が伸ばした手からは、黒い光が迸る。

 ドス黒い色の火花と、嫌な色をした閃光がおるたの私にぶつかる。

 

 その直前に、彼女の身体を守るように現れた白い壁はとても神々しかった。それにぶつかり、黒い閃光は消滅してしまう。彼女の身体は徐々に消えていき、部屋には私だけが取り残されていた。

 

 

「顕現しましたから」

 

 

 

 

 



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+愛

バッドエンドにはならないので安心してお付き合いください。


 

 

 私は、ただ暗い夢の中を揺蕩う。

 いつもの自室と違うのは、それを再現できるだけの思考リソースを回し切れないからだろう。

 

 

 

 

 ひとつの肉体には、ひとつの魂しか受け入れられない。だが私に課せられた運命は、転生者の魂を受け入れることにあった。

 

 無垢であり、胎児の夢を眺める私の横に入り込んできた異物。完全に出来上がった形状としてやってきたそれは、当たり前のように私の基本意識を全て持っていった。

 スライムよりも柔らかな形状の私と、形が出来上がっていたオルタナティブ(代替品)の私。器は当たり前のように、出来合いの楽な方を選ぶ。

 

 そして本来の私は意識を持たない、そこに浮遊するだけのか弱い魂となった。成長することもなく、ただ赤子のままそこにある本来の私。

 

 

 そこに在る。

 しかし受け入れる器はもう空きがない。

 じゃあ、もうひとつの空いている方はとりあえず観測するだけの装置にしておこう。

 

 

 そのように処理された私は、ただそこに在るだけの観測装置となった。

 

 オルタナティブ(代替品)の私から学ぶのではなく、記録する。何もない私はそれをただ見つめていただけなのだ。

 蓄積される負の感情、喜びを味わったかと思えばすぐにやってくる辛い未来。感情のないはずの私は、それでも苦しみを味わい続けていた。観測装置として、溜まり続ける澱みは消えることがない。

 

 

 少しずつ、変わり出したのは100年が近くなってきた頃だろうか。

 おるた(代替品)の私に、魂の綻びが生まれ始めたのだ。

 

 人間の寿命というのは大体決まっていて、そして魂もそれと同じくらいの使用期限が定められている。前世も含めて120年近く使用され続けていた魂は、随分と擦り減っていた。

 

 

 

 そして、彼と出会う。

 摩耗した代替品が彼を愛して、観測装置の私も当たり前のようにそれが伝播した。

 

 そして、おかしくなったのだ。

 

 恋は私の存在を大いに狂わせた。荒々しい感情が芽生えて、なし崩し的に魂が成長を遂げる。人を愛するという異常なエラーに観測装置として耐えきれなかった私は、自己を無理やり成長させたのだ。代替品が壊れかけていたのも相俟って、それはちょうどよく成形されていった。

 観測装置として代替品を完全コピーしていた私は、見事に本来あるべき姿に戻ったのだろう。

 

 

 私は、代替品ではない。

 ———私こそが、本来のユターシャである。

 

 代替品は私を知らない。

 ———彼はずっと、私という存在がいることを知らなかった。

 

 私は代替品を知っている。

 ———観測装置として、私は彼を全て理解している。

 

 私は代替品に干渉できない。

 ———彼の形状に合わせて成形された私は、彼を超えることはできない。

 

 代替品は私に命令できる。

 ———私は彼に追従するようにずっと出来ていた。

 

 私は代替品に勝てない。

 ———彼こそがユターシャ(勇者)だったのだから。

 

 

 

 そして、鎖に縛られていく(代替品)

 

 ひとつの肉体にふたつの魂は入らない。そのため、彼は成長する私に合わせた存在の縮小を行ったのだろう。

 今まで私が意思のない観測装置であったように、これからは、彼が意思のない魂となり、寿命が尽きて腐り落ちていくまでゆっくりと死んでいくのだ。

 

 私達にとってすればそれはただのバージョンアップのようなもので、本質はなにひとつ変わらない。ベータ版から完全版に移行するにあたって、以前の機能をアンインストールするような、そんな事務処理である。

 

 ただ、その変化は私にとっては荷が重いのだ。

 ずっと昔から定められていて、ようやく理解した私の責務。この腐りかけの世界は、私を贄に選んでいたらしい。

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 

「はっ……はっ……あぅ……うううう……」

 

 ごちゃごちゃな情緒のまま、私は飛び起きた。

 昨日と変わらない私は、隣で眠っているご主人様を見下ろす。

 

 自分でも何が起きてるのかわからない。

 何が変わったのかと聞かれれば、なにも変わっていないと答えられる。

 

 私はユターシャ、エルフで聖女をしていたユターシャ。

 前世に現代日本人としての……男としての感性を持つ、普通のユターシャ。前世での記憶も残っているし、あの頃の常識倫理もまだ私には根付いている。

 

 なにも変わらない……私は、昨日までの私と変わらないのだ。

 

「ごしゅじん、さま……」

 

 寝ているのかもしれないし、起きているのかもしれない。私は彼の懐に潜り込んで、嫌に大きく聞こえる心臓の音を誤魔化すように目を瞑る。

 

 なにも見たくなかった。

 なにも、感じたくない。

 

 

 

「ユター、シャ?」

「……起こして、しまいましたか?」

「ん……いや、いいんだ」

 

 ご主人様の掠れた声が、上の方から聞こえる。私は彼の身体に抱きつきながらも、抱きつかれる心地よさに目を瞑った。

 

「どうした、怖い夢見たのか」

「えぇ、はい……そんなところです」

 

 未だになにひとつ飲み込めていなくて、ただ彼の腕の中の心地よさだけに溺れていく。頭を撫でられると気持ちよくて、私は静かに彼の心臓の音を聞いていた。

 

 どうしようもなく好きと思う感情。

 これはまさしく、本物である。それだけがあればよくて、他はもう、何もわからなかった。

 

 なんで今まであんなに頑張ったのに、私が魔王なんだろう。

 

「……ご主人様、愛してます」

「本当にどうしたんだお前」

「少しだけ、こうさせてほしいなって」

 

 擦り寄る私の身体を抱き寄せてくれるご主人様もまた、いつもと同じだった。昨夜、エルフを殺したとは思えないほど優しい手つきで頭を撫でられる。

 

 私たちにとってなにひとつ変わらない。

 昨日と今日は同じで、なにも変わらない。そうであってほしいと願うし、明日からも同じでいいと思う。

 

「寒くないか?」

「大丈夫です……それより、ご主人様は?」

「オレは頑丈だからな、平気だ」

 

 早朝の日差しが、薄暗く窓から差し込んでいた。

 部屋はひんやりと冷たくて、布団から出ている顔だけが冷たくて仕方がない。

 

 密着した肌をさらに擦り寄せて、私の持つ体温を彼に押し付ける。

 

「ユターシャ」

「んぅ……ご主人様」

 

 ちゅ、とおでこにキスをされたらしい。

 私がご主人様の方へ顔を向けると、そのまま何度もキスが降ってくる。まぶたから頬、鼻から唇まで全部口づけを施されるのだ。

 

 目を開けるたびに、穏やかな顔をした男と視線が交わる。普段はもっと怖い顔をしているのに、こんな時だけ優しいのだからずるい男だ。

 

「ご主人様、もっと……」

「あぁ」

 

 彼の手が私の頬を包んで、そして何度も角度を変えてキスを繰り返した。甘ったるいバードキスは、私の心を優しく溶かしてくれる。

 

 先程までの不安が嘘のように、私は幸せな感情に包み込まれていた。ご主人様がいればこうも簡単に救われる自分に呆れてしまうが、幸せなのだから仕方ない。

 

 頬から首筋に手が進み、顎の下をまるで猫にするようにくすぐられて、それから下へと伸びていく。

 

「アンタの身体は温いなァ……」

「ご主人様が冷たすぎるんですよ」

「そうか?」

 

 ご主人様の大きめな手が、私の胸元に向かった。ぷに、とたわわな果実が形を変える。

 

「温めてくれるだろ?」

「……貴方が、それを望むなら」

 

 今度は私から彼の唇に口を近づけた。ちゅ、ちゅ、と音を立てながらも、ゆっくりと彼の上に覆いかぶさる。足を絡めて、身体を押し付ければ、ご主人様も私に意識させるように勃起を押し付けてくる。

 

 朝勃ちにより、ご主人様のそれは元気になっていた。サキュバスの肉体としての本能がぞわりと顔を出すが……私はそれを静かに隠して、焦らすようにキスをした。彼の下腹あたりで手をさまよわせて、くすぐるように下生えを指でかき分ける。

 

「求めて、ください……私が欲しいと」

「ん……あぁ」

 

 優しく指先で触って、ひくつく竿を柔らかく刺激していく。その間もキスは絶え間なく繰り返されて、ご主人様の手は私の身体を確かめるように背中へと伸びていった。

 

 身体をまさぐられ、彼の指先の動きに肌が敏感になる。背筋から翼の付け根、腰、そして尻尾の根元からお尻へと手はどんどん下に降りていった。

 

「温かいな……柔らかくて、甘くて……」

「もっと、私を……さわって」

 

 布団を被ったまま身体を少し起こした私は、柔らかなふたつの豊満な果実を彼の胸板に押し当てる。そして彼の身体にしなだれかかりながらも、唇を食んだ。

 重力に従って垂れ降りる私の長髪はカーテンのように朝日を遮り、彼の顔を眩しさから隠している。

 

 幸せだった。

 まるで世界がこのベッドの上だけのようで、ひどく幸せな気持ちになる。

 

 このままずっとこうしていられたらどれだけいいだろうかと思うと、自然と目頭が熱くなっていた。幸せで幸せで、だからこそ怖くなってしまう。

 

「泣いているのか?」

「……くるしいんです」

「そうか」

 

 慰めるようなキスは毒だ。

 私を夢中にさせる彼は、こうして私を現実から遠ざけてしまう。どうしようもなく終わっているこの世界の末も、救われないだろう運命も、何もかもを忘れさせてくれる。

 

 幸福に浸る。溺れるほど、抜け出せないほど深く足を掬われている。

 

「たすけて、ほしいんです」

「……?」

「私は、もう、どうしたって救われない」

 

 あなたで、殺されたい。

 私がそうつぶやくと、彼は途端に苦しそうな表情を浮かべた。

 

「縁起でも、ねぇこと、いうなよ……」

「わたし、あなたになら、なにをされてもいいんです」

 

 きっと彼なら、すぐに私を殺すことだってできるのだろう。膨大な魔力を持つ私は一度や二度首を落とされたところで死にはしないけれど、それでも100回くらい殺されたら死んでしまう。

 

 甘く、愛を囁くように私は乞う。

 

 辛い現実から何もかもを捨てられるのであれば、なんでもよかった。彼の腕の中で、愛に溺れた白痴のままに死ねたら幸せだった。

 

「どうしようもなく、終わってるんです」

 

 彼の胸板に指を滑らせる。

 

「私は、どこまでも救われない」

 

 首筋を、爪で辿っていく。

 

「人を殺す運命に定められてしまった」

 

 顎を、手のひらで優しく撫でる。

 

「私を止められる人は、私の中で果てました」

 

 そして私は、彼の頬を手で包み込んだ。

 見つめ合って、2人だけの幸せな世界に沈み込んでいく。

 

 私は、彼の腕の中でだけ幸せになれる。

 

「だから、せめて、何も考えられないままに殺して欲しいんです」

「……ユターシャ、やめてくれ」

 

 何もしなくても枯れ死ぬ。

 理に従って動けば殺戮が生まれる。

 

 何も選びたくない。

 何もしたくない。

 

「ユターシャ……やめてくれよ、そんなの……」

「ご主人様」

 

 どこまでも強い男なのに、泣きそうな顔で私を見上げている。似合わないなぁなんて私は微笑んで、そして口づけを落とした。

 

「オレと会わない方が、きっとお前は幸せだったよ」

「……そう、かもしれませんね」

 

 ベッドの上、私たちは愛しあいながらも運命を呪う。互いに身体を触れ合わせながら、現実から逃げるように語り合う。

 

 幸せなんて、知らなければよかったのだ。

 きっとご主人様も後悔しているのだろう。

 

 彼の手が、私の首に触れる。

 きっとこの大きな手なら、私の首をすぐに落とすことだってできるのだろう。

 

「お前が望むなら、殺してやる」

 

 殺せる。このまま、私を殺すことができる。

 

「ひ、ぐ、ぁ……っ!」

「なぁ、だから……オレの願いを、叶えてくれないか」

 

 男のか細い声での祈りは、私だけのものだ。

 

 彼の手は安心する。この手がどれだけ血に塗れていようが、私にとっては愛しい人の右手でしかない。優しく、少しずつ込められていく力は私の息を苦しくさせて、少しずつ視界が白んでいった。

 

 きっと私たちは、ここで終わってしまった方が幸せなのだ。2人ぼっちの世界で、誰にも知られずに、淡く泡のように溶けてしまったほうがいい。世界がどうなろうとも知らず、互いに何も知らないで、愛し合って溶け合ったほうがいい。

 

 だけど。

 

「ユターシャ、オレのためだけに、生きてくれ」

「か、はっ……ごしゅ、じ、さまっ……」

「オレが殺すから、ちゃんと……だから、ユターシャ……オレのためだけに、お前は全てを消費して生きて欲しい」

 

 

 それは、ひどく傲慢な願いだった。

 

 

 私にとってそれは救いで、涙がこぼれ落ちる。

 愛に溺れた愚鈍な存在に成り下がる幸せ。守られる安心感、愛の泥沼に突き落とされた私は、どうしたってもう抜け出せない。

 私は彼のためだけに生きて、そして彼の手によって殺してもらえるのだ。

 

 愛から生まれた私にとって、その絶望は美しすぎる。

 

「貴方だけの私で、いいでしょうか」

「あぁ」

「やらねばならないことから逃げ出して、いいのですか」

「お前がオレを救ってくれるなら、オレがお前を全部許すよ」

 

 その甘露は、私を壊していく。

 

 たとえ世界中の誰からも責められようと、彼だけが私を許してくれるのであればそれでいい。私の世界は、彼だけでよかった。

 世界のために私が決断しなくても、彼だけは私を許してくれるだろう。何もかもを知らないふりして、私のせいで人々が餓死したって彼は許してくれるだろう。

 

 たったひとりの男のための、私になる。

 

「だから、オレがお前を殺すから……オレのために生きてくれ」

「あああ……ああああああ……」

 

 生まれたことも間違いだった。

 出会ったことも間違いだった。

 この男の睦言を馬鹿正直に信じるのも、きっと間違いなのだろう。それで世界が滅びようとも、私は彼に許してもらえればそれでいいと、思ってしまったのだ。

 

 彼に強く抱きしめられる。私の身体を味わおうと起き上がった男は、私の手をベッドに縫い付けた。

 

「あはっ……顔、隠すなよ」

「うぅ……ああぁ……み、ないで、くださっ……」

「いいから……こっち向け」

 

 嬉しくて、怖くて泣いてしまう私を、ご主人様は見下ろしていた。

 

 本当にひどい男だ。

 こんなにぐちゃぐちゃになった私を、余すところなく愛してくれる。私という存在の強大さを無視して、ただのユターシャとして愛してくれる。私の全てを自分のものにして、最後は彼の手で終わらせてくれるのだろう。

 

 地獄のような愛に包まれて、私はどこまでも堕ちていった。愛を知らなかった頃にはもう戻れないし、戻ろうとも思えなかった。

 

 

 

 

 

 あぁ

 

 

 私と彼以外———この世から全て無くなってしまえばいいのに。

 

 

 



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+イチャラブ+ガチハメ+生交尾 ☆

 

 思考が徐々に、無へと変わっていく。

 鎖をもって自縛した()は、表に立つユターシャ(魔王)を静かに見つめていた。

 

 穏やかな死は私をゆっくりと飲み込んでいくようで、しかしまだまだそこに至るまでに時間があった。魂というのは、まるでゲームボーイのようにボロボロでも意外と長持ちするようだ。

 

 故に、まだ死なない私はかつてのユターシャ(魔王)と同じように観測装置となる。感情という機能を失い、それでも強い恋慕だけは保持していた。たとえ死んでも、彼への愛を忘れたくなかったのだ。

 

 

 

 

「愛しています、愛しています……ご主人様」

「あぁ、オレも……」

 

 私が、私の意思で喋っている。まるで夢の中で鑑賞するようにそれを観測し続ける。私自身に向けられる愛を感じられて、私はそれで幸せだった。

 

 

 

 

 ———ご主人様に、共に逃げようと抱きしめられた私。

 

 なにも知らされず、何も教えてもらわず、しかし死にそうな顔で一緒に行こうと言ってくれた彼の手を、私はとっていた。彼は酷い顔で私を抱きしめていて、その提案が彼にとってなんらかの『過ち』だったのだろう。

 

 彼にとっての過ちを犯してでも、私と共にいることを選んだご主人様。

 

 まるで迷子になった子供のように不安げな表情を浮かべながら私を抱きしめるご主人様に、優しくとろけるような甘い愛をもって慰める。

 ご主人様は私を抱きしめて、そして私の存在を確かめるように優しくキスをしてくれた。

 

 

 

 ———それでも、正体を明かさない彼。

 

 彼は何故逃げるのか、どこに逃げるのかは口にしなかった。

 私も、聞くことはなかった。

 時折ヒトの追手が来て、私の目の前でご主人様が手をかけることもあったが、それでも彼は何も言わなかった。

 

 ただ一言、「許してくれ」と請われて、そんな彼を私は包むように抱きしめた。何も言わず、何も聞かず、それでも私達はただ愛しあえた。

 

 

 

 ———私も、彼には何も言わない。

 

 私が使用する魔術の属性が変わった。

 だが、それをご主人様には隠している。

 

 魔術属性は魂に紐づくものであり、通常ならば後天的に魔術属性を変えることは不可能だ。

 しかし、表層に出てくるのが代替品()から本物のユターシャ(彼女)に変わり、その結果魔術属性も変わったのだろう。

 

 光の魔術。正義の白から———魔王が扱うにふさわしい、黒の魔術へと。

 

 白魔術をかろうじて使うことも出来たが、その出力は恐ろしく低くなっていた。おそらく、白魔術の属性を持っていた()が死にかけているからだろう。

 

 魔術が使えるようになったのだから喜ばしいことではあるのだが、私はとても言い出せなかった。たとえ変わらずユターシャであると言っても、魔王という運命を背負っていた事を明かしたくなかったのだ。

 

 

 

 逃げて逃げて、果たしてどれだけの日にちが過ぎたのだろうか。数日かもしれないし、数十日が過ぎたのかもしれない。

 なぜ逃げるのだろう。なにから逃げているのだろう。どこに逃げているのだろう。そんな疑問が浮かんでは消えていく。

 

 ここまでで山を越えた。大きな川も越えて、幻獣やドラゴンを見たりした。この世界はどこまでも広大で、そして残酷な自然界が広がっている。

 

 追手の数は、もはや片手では数えきれなくなっていた。

 やってくるのは人間で、そして当たり前のようにご主人様に「何故」「どうして」と問いかけていた。裏切った理由を何故だと問いかける者もいれば、今ならばまだ戻れると説得を試みる者もいた。

 

 彼は、それに答えるよりも早く相手を殺していたけれど。

 

 きっと、私の知らない彼の過去なのだ。

 私のせいで彼は裏切り、そしてかつての仲間を無慈悲に殺している。その誰もが洗練された武術を持っているのに、ご主人様は簡単に彼らを殺して退けていた。

 

「ご主人様……」

「行こう、ユターシャ」

 

 私は何も聞かないし、彼も何も語らない。

 人を当たり前のように殺せるご主人様について聞く事はなく、そして私も隠している運命について語らない。

 

 彼は私を愛していたし、私も彼を愛している。

 それだけで、よかったのだ。

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 夜もすっかり帷が降りた頃。

 暗い森に人はおらず、遠くで獣の声聞こえた。

 

 ———ぱちゅっ♡ ぱぢゅんっ♡

 

「ん"〜〜っ♡ ご主人様……♡ ご、ごめんなさい……っ♡」

「謝るヒマあるならケツ動かしてくれよ」

「お"ッ♡ あ、は、はいっ……♡」

 

 暗い洞穴で、私とご主人様はいつもと同じようにまぐわっていた。空は真っ暗で、遠くから獣の声が聞こえる。

 こうして森の中で愛し合っていると、出会った当初の頃を思い出した。あの頃はまだこんな関係になると思ってなくて、ただ優しい人なのか、それとも怖い人なのかを測っていたように思える。

 

 冷たい地面にコートを敷き、そこに寝転がるご主人様の上に跨って私は必死に腰を振りたくる。ご主人様の手を握りながら、自分が快楽に流されないよう我慢して上下に動いていた。

 

 無駄にでかい乳がぶるんっ♡と震えるのをご主人様が味わうように握って、その気持ちよさにおもわず背筋を逸らしてしまう。

 

「はっ、はぁっ……♡ ぁ……ッ♡ おっ、ぱいっ♡ もっと♡ もっとおっぱいさわってほしいれすっ……♡」

「やらしいなァ……いいぜ、どうして欲しい?」

「んっ♡ ご主人様の♡ 好き放題♡ してほしいれすっ♡」

 

 彼の手を誘導して、両手でたぷたぷと揺れ動くおっぱいを掴んでもらう。揉まれるのも、先端だけを虐められるのも、強く引っ張られるのも、全部好きなのだ。

 

 自分自身で上下に動き1番深いところに当たる瞬間、自身の子宮口がご主人様のチン先にちゅぱちゅぱと吸い付いているのがわかる。濃くておいしい精液が出てくるところに柔らかくムッチリとしたバキューム穴が密着して、そしてちゅぽっと離れていく。

 

「あ"んっ♡ おふっ♡ んひゅっ♡ ご主人様っ♡ ごめんなさっ♡ ごめんなさいぃっ♡ すきっ♡ すきすきぃっ……♡」

「……ん、キス、してくれ」

 

 ごめんなさいと繰り返す私の口を、ご主人様は引き寄せ塞いでしまう。彼に求められるままに舌を伸ばして歯列を舐めまわし、そして深く舌を絡め合わせた。

 

 ばぢゅっ♡ ぱちゅっ♡ ぱこっ♡ ぱこっ♡

 

「ちゅむっ……♡ ちゅう♡ れろれろっ♡ はぁっ……ん♡ ご主人様ぁ♡」

 

 日中、彼は私を担ぎ、そして荷物をいくつも背負いながらもかなりのスピードで森の中を縫うように駆けていく。足元が不安定な岩場を軽々と超えて、時に高所の崖をヤギのように器用に飛び降りたり、断崖絶壁のように見える突き出した壁を足だけで登っていく。それを何時間も行なっていて、夜まで全く休憩せずに抜けていくのだ。

 

 いくらご主人様がバケモノ級の肉体センス持ちといえど、きっと疲れているに違いない。

 それなのに……淫魔の私は、彼の精液を啜らないとお腹が空いてしまうのだ。

 

 多少ご飯を抜いても我慢できるが、ご主人様は私を気遣ってくれているのか毎晩毎朝しっかりとお情けをくださる。私が我慢できると言っても契約だからと取り合ってくれなくて、それが申し訳なくて仕方なかった。

 

 せめて彼が楽できるようにと、私は騎乗位で腰を振りたくるのだ。

 

「はっ♡ はふっ♡ んちゅう……♡ ごめんなしゃ……っ♡」

「だから……いい加減、謝るのやめろ……よッ」

「〜〜〜〜〜〜ッ♡ お、お"ぉッ♡」

 

 下からぐんっ、と押し上げられて深いところを抉り上げられた。私の喘ぎ声はご主人様の口の中に吸い込まれて、思わず身体が堪えるように固まってしまう。

 

 あぁ……だめなのに。

 せめて私が、彼にたっぷりご奉仕して、気持ちよく射精してもらわなくてはならないのに……

 

「おぉっ♡ や"ァッ♡ ご主人様ッ♡ だめ、だめれしゅっ♡」

「あ"? なんだよ……寂しいこと言うんじゃねぇよ。嫌なのか?」

「嫌ッ、じゃっ、ないけどぉっ♡ だめぇっ♡ わたし、わたしがぁっ……♡」

 

 ばぢゅんっ♡ ぱこっ♡ ずちゅずちゅずちゅっ♡

 

 ダメなのに、ご主人様が容赦なく私を絶頂に追いやろうといじわるする。気持ちよくて、目の奥がぱちぱちと光ってて、だけどご主人様に気持ちよくなってほしい私にとっては耐えなくてはならないものだった。

 

 私はご主人様にしてもらってばかりだ。せめてまぐわいだけは私がご主人様にご奉仕できる事だから、ご満足いただきたいのに……

 

「んぉ"ッ♡ やらぁっ♡ だめ♡ ついちゃらめれしゅっ♡ んぎっ♡ わたしが、うごくからっ……♡」

「うるせェ」

「あぁぁっ♡ あっ♡ やァ♡ だっ……めぇっ♡ イ、く♡ イく♡ あ、あ、あっ♡ あああああっ〜〜〜ッ♡」

 

 乳首を強く摘まれながらも下からズン♡ ズン♡ なんて突かれたら、もうダメだった。気持ちよくて思わずのけぞりアクメをしてしまう私を、ご主人様はどんな目で見ているのだろうか。

 

 ビクビク震えながらイっている最中にも、ご主人様は突き上げをやめてくれない。乳首をぐりぐり潰しながらイキ痙攣で伸縮する中を蹂躙するように穿ってくる。

 

「お"ほぉっ……♡ や、やでしゅっ♡ だめ、ま、まだ、イッでるからぁっ……♡ お"んッ♡」

「いいぞ、好きなだけイっちまえよ。逃げずにちゃんとまんこ全部で味わってくれ」

 

 ごちゅんっと子宮口に亀頭がぶつかる感覚がして、その度に甘イキを繰り返してしまう。彼と濃厚なベロキッスを交わしながら、私は中を蹂躙されるたびに太ももを震わせて絶頂を味わってしまっていた。

 

 ダメなのに……私が、ちゃんとご主人様を気持ちよくしてあげなきゃいけないのに……

 

「あ"ぁ〜〜〜……クソ、痙攣まんこ気持ちいいなァ? そんなにオレのチンポに媚び売るなよ……酷いことしたくなっちまうだろうが」

「おッ♡ あんッ♡ や、ごめんなしゃっ……はふぅっ……♡ 」

 

 ぱちゅん♡ ぱこっ♡ ぱちゅんっ♡ ぱちゅんっ♡

 

 イってる中で、さらに重ねてアクメさせられる私はもう自分で動くどころではなかった。彼の笑う口元にむしゃぶりついて、下半身はご主人様の無慈悲な突き上げピストンを享受する。乳首は引っ張りつねられて、下品にガニ股でチンポを咥え込みながらも絶頂を繰り返していた。

 

「あ"ぁ〜〜〜ッ♡ だめ♡ またイぐ♡ だめなのにっ♡ ご主人様ぁっ♡ ご、ごめんなさっ♡」

 

 まだご主人様をきもちよくしてあげれていないのに、私は何回目かのアクメを迎えてしまう。

 

 ……私って、本当にダメだなぁ。

 

「あ"ッ♡ あっ♡ あっ……♡ ごしゅ、じ、さまぁ……んちゅうっ……♡ はぁっ♡ はぁ……♡」

「よし、ちょっと姿勢変えるからな?」

 

 イきすぎて耐えるように身体がこわばってしまった私を、ご主人様は優しく抱き上げてしまう。そのまま地面にごろんと転がされて、そして彼が私の上に覆いかぶさった。

 

 正常位、というやつだ。

 彼は私の中に怒張をハメこんだまま、再度私の唇にキスを落とす。

 

「あぁ……ご、ごめんなさいぃっ……私、わたし……ッ♡」

「謝るなよ……いいから、集中してくれ」

 

 ご主人様の首に抱きついて、そのまま角度を変えて何度もキスをする。私の足はご主人様の腰に巻きついて、ぴっとりと密着するように身体を彼に押し付けた。

 

 そのままご主人様が開けてくださる口に舌を差し込み、いやらしいベロキスを繰り返した。私から積極的なキスをすると、ご主人様は嬉しそうに目を細めるのだ。

 

「ユターシャ……もっと、もっとだ」

「はいぃっ……♡ はひゅっ♡ ご主人様ぁっ♡ あっ好きぃっ♡ すき、すきぃっ♡」

 

 ご主人様は私を抱きしめたまま、ゆっくりと腰を動かし始めた。

 

 ぱぢゅんっ♡ ぢゅぱんっ♡ じゅっぽ♡ バヂュッ♡

 

「んぉ"おっ……♡ はひゅぅ♡ むちゅっ♡ れろれろれろ♡ ご主人様ぁっ♡ はふっ♡」

 

 彼の太い腕が、私の身体を抱き込んで離さない。

 ご主人様の勃起が私の奥深くまで入り込んで、カリ高で極悪なそれが膣壁をゴリゴリと削り取るように刺激してくる。

 

 ばぢゅんっ♡ ばちゅんっ♡ ばぢゅんっ♡ ばぢゅんっ♡ ばぢゅんっ♡ ばぢゅんっ♡ ばぢゅんっ♡

 

 ご主人様に、ご奉仕したいのに。

 こんな風に私だけが気持ちよくなってばかりで……

 

「んぅうっ♡ ご主人様ぁっ、ご、ごめんなしゃっ……ぁあ"♡ 好き♡ またイぐっ♡ 勝手にイって、ごめ、なさっ……♡ ごめんなさいっ♡」

「いいぜ、イっていいから……イき顔見せてくれよ? オレだけのかわいいアクメ顔見せて?」

 

 ぱぢゅっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡

 

 至近距離で、ご主人様が楽しげに私を見ている。

 こんなに気持ちよくてとろけただらしない顔なんてみれたものじゃないのに、彼はそれが楽しいらしい。

 

 暗い洞窟には、私の嬌声が響いていた。

 

「あ"ぁ〜〜〜っ♡ ご主人様ぁっ♡イぐ♡ イっぢゃうぅぅっ♡」

「く、ぅ……あぁ、オレも、もう……んっ」

 

 ご主人様と口を重ねて、そしてキスを繰り返しながら強く抱き合った私達は、その熱を互いに押し付け合うように相手の身体をむさぼりあう。

 向かい合って、互いの顔を見つめ合って、下半身からはぐちゃぐちゃといやらしい音が聞こえていた。

 

 もう限界とばかりに射精しようとしているご主人様が、私の子宮口に亀頭を押し付けている。

 

「ユターシャ……っ♡」

「ご主人様っ、わたしの、なかっ♡ ザーメン、いっぱい、くだっ♡」

 

 そして、ご主人様の熱い精液が、子宮に叩きつけられる。

 

「あぁ"〜〜〜〜〜ッ♡ イ、んぎぃっ♡ ごひゅ♡ んぅうっ♡ ちゅう♡ ちゅぱっ♡」

「ッ……! ぐ、ぅっ……は、ぁ……」

 

 ご主人様の唇に吸いつきながらも、私達は同時に果てていた。胎の中にじんわりと広がる熱い精子を味わいながらも、まだまだ搾り取るかのように膣肉がギュンギュンと彼のチンポを締め付けている。

 

 幸せだった。気持ちよくて、暖かくて、自分が溶け出してしまうかのように幸福に包まれる。

 

 

 

 

 

「はぁ……っ、く、ぅ……」

「ふっ、ふっ……はぁっ……♡ ご主人様、ありがとう、ございますっ……♡」

 

 私の首元で息を整えている男の頭を優しく撫でる。彼の銀色の髪は指に引っかからず、私はそれを何度も繰り返した。

 

 ご主人様も疲れているだろうに、こんなにも動かせてしまったのが申し訳なかった。せめて心地よく休んでほしいと、私は彼の抱き枕になるかのように腕を伸ばす。

 

「お疲れでしょう? ごめんなさい、無理させてしまって……」

「別に、無理なんかしてねぇよ」

「それでも……私に付き合わせてしまって、ごめんなさい」

 

 彼が、そっと上体を起こす。

 顔には不満げな様子がありありと浮かんでいた。

 

「今のオレが、義務や情けからアンタを抱いてるように思うのか?」

「……?」

 

 ずるりと、下半身からご主人様が引き抜かれる。体を引き寄せられ、まだ私の愛液がたっぷりとまとわりついたそれを、顔の前に差し出された。

 

「しゃぶれよ、丹念にな」

「……え? ぁ、はい……」

 

 久々のお掃除フェラ。私は口を窄めて、できる限り優しく迎え入れてゆく。

 

 口の中に自身の甘ったるいマン汁の味と、微かにザーメンの濃厚な苦味が広がった。しっかりとカリ首に舌を這わせて、綺麗になるようにと丁寧に液を舐め取る。くぽ、くぽ、とゆっくりと口から音を立てて、たまにチラリとご主人様の方を見た。

 

 どうやら少し怒っているようで、顔には無表情が浮かんでいる。

 

「ふぅっ……んちゅ、……えっと、綺麗に、なりました、よ?」

「あ? ちげェだろ」

 

 唐突に、彼の手が私の頭に伸びる。

 ご主人様は私のツノを掴んで、勢いよく引き寄せた。

 

 口からもう離していたモノが再度ぶち込まれて、そして根元までしっかりと押しつけられる。喉奥にチンポがグチュリとぶち当たり、思わず喉をぎゅっと狭めてしまった。

 

「おぶぅっ!?」

「しゃぶれっつってんだよ……誰が飴みてぇに舐めろっつった?」

 

 陰毛に顔を押しつけて、喉いっぱいにチンポを押し込まれて、そのまま私の頭をオナホールにするかのように彼が乱雑に腰を振り始めてしまった。

 硬く、大きくなった怒張が口の中で暴れ回る。

 

 喉奥を子宮と勘違いしたかのようにガンガンと突かれて、私は歯を立てないよう必死に口を開いていた。

 

「ふも"〜〜〜ッ! ぐ、ぅ、うっ……!」

「喉奥、気持ちいなぁ……? 口マンコ柔らかくて……もっと舌這いずり回らせてくれ……」

 

 ご主人様が腰を押しつけて喉奥グリグリをしてくるので、私は長い舌を竿にねっとり巻きつかせて舐め回すように奉仕するしかなかった。

 頬裏のとろとろの場所はバキュームで吸い付き、舌はガチガチになった竿をじゅるじゅると舐めまわし、そして喉の奥の方で敏感な亀頭を甘く締め付けたり……

 

 多少の苦しさはあれど、サキュバスとしての肉体はこういうのに関して特に特化している。喉奥を容赦なく犯されているのに、私は少しだけ気持ちよくなりつつあった。

 

 だんだん頭がボーッとしてきて思考能力が低下してくる。鼻から息をする度にオス臭い匂いが入り込んできて脳みそを犯していくようだった。

 

「んぷッ〜〜〜〜、じゅるるるるっ♡ ふ、ぐぅッ、う、ぅ♡」

「はぁ……ユターシャ、オレのチンポそんなにうまいかよォ……」

 

 そして、十分堪能したのかご主人様が口から引き抜いた頃には、私もすっかりその気になってしまっていて。

 

「ん、ふぅ……あぁ、だめ、だめですよぅ……もう夜も、遅いん、ですから……はふっ……♡」

「ほら、ケツこっちに向けて壁に手ェつけとけ」

 

 ご主人様にそのように姿勢を変えさせられて、私は彼のチンポを待ち受けるような姿勢となった。狭い洞窟、私は下品なガニ股で壁に手をつけてお尻をご主人様に向けていて。

 

 あぁ、ダメなのに。

 疲れてるご主人様を労りたいのに、これじゃあ……

 

「はっ♡ はっ♡ あぅ……ご主人様ぁ……♡」

「少しも動くんじゃねェぞ? オレのチンポ受け入れて、ただオレの事だけ考えとけ……よッ、と」

 

 ご主人様の怒張が、後ろからいきなり挿入された。壁に付いている手に手を重ねられて、覆いかぶるように後ろから犯される。

 腰をガンガンと押しつけられて、容赦なく奥の方を蹂躙されて、私はただ受け入れることしかできない。

 

 いきなり、こんなふうに犯されたら、私ッ……! 

 

「あ"〜〜〜ッ??? ♡ あ"♡ あ"♡ ぉん"♡ ごしゅじ、さまぁ♡ おぢんぽぉっ♡ 中ァ、好きぃ♡」

 

 がちゅっ♡ ぱんっ♡ ぱんっぱんっ♡

 

「ごしゅ、じっ、さまぁっ……♡ ごめ、なさっ……私、ああ"〜〜〜っ♡」

「謝るなって、言ってんだろ馬鹿ッ……」

 

 ご主人様だって寝不足がたたってる筈なのに、ガツガツと腰を振りたくって私の中にザーメンを吐き出そうとしている。

 

 性処理なら、私が動くのに。彼には、少しでも休んでほしいのに。

 

 カリ首がゴリゴリとGスポを刺激して、子宮口にゴツゴツと先が当たって、容赦なく犯されて頭がおかしくなりそうだった。それでも、私は彼のチンポを離さないようにギュウっと締め付けることをやめなかった。せめて彼が気持ちよく射精できるように、それだけを考えていた。

 

「お"んッ♡ お"んッ♡ お"んッ♡ ごしゅ、あ、あぁぁあっ♡ ごめ、なしゃっ……♡ わたし、あなたの役に、たてなくてッ……あなたから、もらッて、ば、か、りぃいッ、んぁぁあッ♡」

「ユターシャッ、勘違いするなよッ……」

 

 後ろから犯されてて、彼の顔は見えない。

 でも、声色だけで彼がどんな表情をしているのかはなんとなく想像がついた。

 

 かぷりと、首筋に歯を立てられた。

 自分のものだと主張するかのように、彼は私の身体に愛を刻む。

 

「オレの勝手で、抱いてるんだッ……勘違いするなよ、勝手に飯だと思ってんじゃねぇぞ!? 気合でガキ孕めやァ……!」

 

 無理なのに、しかしご主人様は私の身体を貪りながらも胎の中に精を吐き出して私を孕ませようとしてくる。

 

 めちゃくちゃに犯されて、本気で種付けされているのだ。

 

「好きだ、好きだユターシャッ……ごめんな、不便な思いさせてごめんなァ、愛してる……だから、お前を抱かせてくれ。好きなんだ……」

「ご、しゅ、じっ……さまっ……♡ わた、しっ……あぁぁ……っ♡ わたし、もッ……あかちゃん、ほしい……♡ うぅ、うあぁぁっ……♡」

 

 ぐちゅっ♡ ぐちゃっぐっちゃっ♡ ぐっちょっぐっぽっ♡

 

 激しいピストン運動で、結合部からは水音が絶え間無く鳴り響く。彼が腰を振れば振るほど、私の子宮口は彼の亀頭にキスをして、そして子宮は精液を欲して降りてきてしまう。

 

 ただただこの人が好きで、どうしようもなくて、私は獣のように喘ぎながら彼を受け止め続けた。

 

「んっ♡ あっ♡ あ"ぁ、ッ♡ ごしゅ、きしゅ、キスしたいれしゅっ♡」

「あぁ、こっち向いて……」

 

 ばぢゅんっ♡ ばぢゅっ♡ ぱんぱんぱんッ♡

 

 ごさ主人様に許されたように、後ろを振り返って必死に舌を伸ばす。彼の唇からにゅるりと侵入して、下半身をめちゃくちゃに犯されながらも彼の口膣内を舐め回した。

 

「んぢゅ♡ ぢゅる♡ れろぉ♡ ごしゅじ、さま♡ しゅきぃ"ッ♡」

「あぁ、オレもッ……♡」

 

 舌を絡めて、唾液を混ぜ合わせて、そしてお互いの口の中を貪り合う。

 

 もう限界だった。子宮が疼いて仕方がない。早く、中に出してほしい。私はご主人様のモノなのだと何度でも叩きつけられたかった。

 

 ご主人様の腰の動きがさらに激しくなる。

 私は必死に彼の舌に吸い付いて、そして……

 

「出す、出すからなァ、ユターシャッ……!」

「んぅうっ♡ きてぇ♡ んちゅっ♡ しゅきれす♡ ごしゅじ、さまっ♡ しゅきぃっ……♡」

 

 荒々しく腰を抱き寄せられて、そのまま1番奥の深いところにご主人様の勃起が押し込まれた。ガニ股になっていた私の足は快感にがくがくと揺れ、それをご主人様が支えてくれている。

 

 子宮口が、ご主人様の亀頭にすっかり吸い付いて、中出しを全部飲み込む準備が出来ていた。

 そして彼の腰が震えて、びくんと跳ねる。

 

「あ"……イ、ぎッ」

「ああぁぁぁっ♡ ごしゅ、中ァッ♡ いっぱい♡ すき♡ ごしゅじ、さまぁっ♡ すきぃっ♡」

 

 ご主人様に抱き締められながら、私は盛大に潮を吹き出して絶頂を迎えた。熱いザーメンがたっぷりと注がれていく感覚。腹の中に広がる幸福感に笑みを浮かべつつも、もはや自分で立っていられなくてご主人様にもたれかかる。

 

 しっかりと私の身体を抱きしめたご主人様は、何度も何度も私の唇に優しいキスを落としながらも、最後の一滴まで私の中へ注ぎ込もうとしていた。

 

 あぁ、なんて、愛おしいのだろうか。

 ご主人様が満足するまで、私達はずっと繋がったままで———

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 たっぷりとまぐわった私はご主人様に言われた通りに眠りにつく。これも、ここ最近の毎日の繰り返しだった。

 

 冷たい地面、彼の硬い太腿を枕にして夢の中へと落ちていく。

 

 いくら私も寝ずに番をすると言っても、彼は「寝ているオレと起きているユターシャ(アンタ)なら、寝ているオレの方が先に気がつくから」と言って、私を無理矢理毛布に詰め込むのだ。

 起きていても邪魔だと冷たく言われるだけなので、私は仕方なくそれに従っていた。

 

「ごめんなぁ……」

 

 そして、ご主人様の声が聞こえてくる。

 

 夢の中のいつもの自室、いつの間にか机の上には()()()()()()()()()()()()位牌が置いてあった。まだ死にかけなだけで死んだわけではないだろうに、我ながら気が早いものだ。

 最近では1人でいることが多いここで、私はスピーカーから流れる外の音に耳を傾けていた。

 

 私が彼の独り言を聞いているとは思っていないのだろう。いつもよりずっとか細い声で、彼は囁いている。

 

「無理させちまって……ごめんな」

 

 スピーカーから聞こえる声は、ひどく優しかった。

 

養父(ボス)はお前を、どうしても必要だと言っていた。……あの方は、必ず言った事は実現する人だ。そういう契約をしている。……だから、どこまで逃げられるかもわからない」

 

 ご主人様は、私に謝っていた。

 私に負担をかけてしまっていることに対して、申し訳なさそうに謝ってくれる。

 

 そんなことないのに。

 私だって、貴方と一緒にいられて幸せなのに。

 

「……エルフの国で1番大事な聖女様を、オレだけのものにしたいっていうのは……許されないんだろうな」

 

 彼の独白は甘くて、夜の中に溶けるように消えていく。本来なら誰も聞くことのない言葉は、ただ私だけが受け止めていた。

 

 今、彼はどんな表情なのだろうか。

 きっと私の思う通りの表情をしているのだろう。

 

「誰にも、何にも渡したくないんだ……優しいお前は、きっと、全てを救いたいなんて思うから……オレだけのお前にしたいんだ……ごめんな……ごめん……」

 

 私も彼も、ただ欲しいのは同じなのだ。

 この人さえいればいいと思っていて、それすら叶わないのだから逃げ出すしかない。

 

 ずっと、ずっとこの日々が続いても構わなかった。

 彼と一緒にいれば、そこが地獄だったとしても私にとっての楽園になるのだから。

 

 だから、私にとってここが———

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「謝るくらいなら、最初から事務的になればよかったじゃない」

 

 

 

 ご主人様の声とは、別の声が聞こえた。

 

 



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+悪魔+孵化

本作においてNTRおよび逆NTRはないです。
他人棒と他人穴は使用不可のルールが適用されています。

ユタ子の生涯においてまんこに咥えられるのはごしゅくんチンポか、ごしゅくんがいじわるで挿れるおもちゃくらいです。安心してください。

あとレズもないです。残念がってください。



息子(最高傑作)よ」

 

 その男と初めて会ったのは、自身が初めて仕事をする少し前だった。当時、まだ子供だったオレはその人物がとてもとてもすごい人だと言うことを、先生たちから教え込まれていて。

 

「はじめまして、おとうさま」

「さぁ、こちらへ来なさい。お前の話は聞いているよ」

 

 暗い室内だった。

 蝋燭の火が最低限しかつけられていなくて、しんと静まり返る館だった。足元は豪華なカーペット、壁には豪華な装飾品が飾られている。後ろには先生達が控えていて、オレは言われるままにその男の元へと近付いた。

 

 人間の国の柱として、王を補佐し続ける———我が国の宰相。

 すなわち、この国の中枢。オレの全てを構築した存在である。

 

 生まれてからずっとずっと、人殺しの技術を徹底的に教え込まれていたオレ達の中でも特に()()()()と呼ばれたオレは、こうして特別におとうさまに直接お会いできる機会を得たのだ。

 後ろに控えている先生の緊張が伝わるものの、オレは平常心を保ちながらおとうさまの前で傅く。

 

 そんなオレと膝をついて同じ目線になった男は、じっとオレの顔を覗き込んだ。

 

「さぁ、契約をしよう。お前の魂は熟れて、きっとあやつが満足するものへと変わるからな」

「……けい、やく」

「お前は何も不安に思わずとも良い。ただ我が国のために、その肉体だけでなく魂までもを捧げればいいだけなのだから」

 

 嬉しいだろう? と問いかけられた。

 オレはわからずに、頷く。

 

()()をここに」

「ふふ、うふふふふ……」

 

 おとうさまの影から、ずるりと女が現れる。

 灰色の肌をした女だった。目は黄金色に光り輝き、猫のように縦に割れた瞳孔をコチラにむけている。黒い羽根があたりに散らかりながらも、羊のようなツノを生やした女はオレを見つめていた。

 

 それは、悪魔だった。

 

 魅惑的な女。おぞましい女。

 悪を体現したようなソレは、うっとりと微笑みながらも舌なめずりをしている。真っ青な舌が、ちろりと見えていた。

 

「私はルシファー。人間を永遠に喰らって生きる、貴方達の隣人。多くの人々に幸福と、ほんの少しの人間を齧る悪魔」

「我が国の5000年の歴史と深い関係を持つ悪魔だ。王族の裏に隠れ、そして人類のためを願う人々の魂を啜っているのだ」

 

 5000年を生きる、大悪魔。

 長命で有名なエルフでさえも寿命はおよそ500年程度と言われているのに、その10倍の時間を生きているだなんて。

 

 そうして、おとうさまも悪魔と契約をしていると明かされる。

 

 契約したら死後、オレの魂はこの悪魔の胎で永劫に咀嚼され続けるらしい。5000年の間、国のために悪魔に魂を売った者達は全て彼女の胎にいるそうだ。

 

 ひとつの美しい思想に殉じて、多くの罪を重ねる魂。

 それを、彼女は餌とする。それを、5000年間味わい続けて生きてきた。

 

「国に、殉ずる覚悟はあるか?」

「あります」

「肉体だけでなく、その魂も全て捧げる覚悟はあるか?」

「あります」

 

 オレは、男の質問に即答していた。

 

 そうやって教え込まれてきたから。

 オレが生きるのは、ただ人間の国のためだけである。故に、自身の持つ何もかもを捧げてもいいと本気で思っていた。

 

「素晴らしい……ふふ、とても残酷な運命を背負っているわね、ボウヤ」

「お前は実に悪趣味だな」

 

 

 

 契約は魂に、その対価は人を超える力。

 幼い頃のあの日、暗い室内でオレは悪魔に魂を売り渡したのであった。

 

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

「この世に神はいない」

 

 クスクス、と笑う女の声が辺りに響く。

 眠るユターシャの身体を強く抱きしめて、オレは走り出していた。洞窟から抜けて、木々の間を飛ぶように駆けていく。

 

 途中、ユターシャが素っ頓狂な声をあげるものの無視をした。そんなことよりも、あの悪魔がわざわざ出てきてしまった事———そして、すなわちあの男もやってきたことに焦っていたのだ。

 

 足掻いても無駄だとわかっている。

 それでもオレは逃げていた。どうにかして、この場から逃れたかった。

 

「この星を構成する、ただの自殺願望強めな壊れかけの法則があるだけ」

 

 オレの行手を阻むかのように、目の前に扉が現れる。

 

 それは地獄の扉。

 苦悶の表情を作り、出せもしない声で叫び続ける亡者の装飾。紫色の霧に包まれて、静かに扉が開いていく。

 

 オレの周囲全方位に扉が現れていて、もはや逃れることはできない。濃い紫の瘴気はあの悪魔独特の魔力で、そして甘ったるい臭いが鼻を掠めた。

 

「幸せと不幸の対比は運命として決まっているのです。さぁ、散々いい夢を見たのでしょう……?」

息子(最高傑作)よ」

 

 開いた扉の闇。そこから2人の人影が現れる。

 義父(ボス)と、そして悪魔ルシファー。義父は以前見た時より少しだけ老けているようで、しかし悪魔は出会った頃から全く変わらない美貌を持っていた。

 

 濃密な闇の気配を纏わせた2人は、静かにこちらへと歩み寄ってくる。

 

「……ご主人様、あの人たちは?」

「敵、だ」

 

 ユターシャを隠すように抱きしめて、オレはナイフを構えていた。

 

「その女を寄越しなさい。お前を相手に、手荒な真似をするのは骨が折れる」

「……断る」

「何故だ? 無駄な事はわかっているだろう。お前は私に勝つことはできない」

 

 義父もオレと同じように、ナイフを構えていた。

 オレに暗殺の技術を教え込んだ先生達が、この男から殺しの技術を学んだと聞いたことがある。

 

 その構えは、オレが教えられたものと全く同じで、そして洗練された無駄のない構えだった。

 

 どくどくと心臓から嫌な音がする。

 死ぬのは怖くないけれど……だが、死にたくはなかった。ユターシャと共にどうにかして逃げなくてはならないのだから。

 

「たしかにお前は、最高の逸材だった。お前と同時に教育を始めたものは今では全て死に、お前を成功例として同じように教育を施したものはどれも凡骨でしかない。お前が逃亡してから追わせた奴等も、結局はすぐにお前に殺されてしまったわけだ」

「何が言いたい」

「なに、お前が夢を見てしまうのも無理はない。自分が誰よりも強く、どんな罪を犯そうがどれだけ人を裏切ろうが、切り抜けられると思ってしまったのだろう?」

 

 淫魔に籠絡されて、憐れなものだな。

 男はそう言った瞬間、オレの目の前にいた。

 

 見え、なかッ……! 

 

「———ッぐぅ!」

「やるな。だが甘い」

 

 すぐさまユターシャを突き飛ばしてナイフを受け止める。ギリギリギリ、と刃渡りの長い刃物同士が嫌な音を立てていた。

 

 歳を食ってるくせにとてつもない力強さで、しかしオレはそれを跳ね返す。体制を崩した胴体に一太刀を食わせようと突っ込むが、そう甘くいかずに男の足捌きで距離を取られてしまった。

 

 あまりにも早く、あまりにも的確な攻撃。

 オレが教え込まれていた基礎の基礎を、この男は完璧に理解している。

 

「淫魔の血肉はうまかろう? あぁだが、お前には失望したよ」

 

 ———私の最高傑作が、女如きにうつつを抜かすなどと。

 

「ッ……! 違う、お前にはわからないッ! サキュバスだからじゃない、ユターシャだから、オレはッ……!」

「馬鹿め」

 

 止まらない攻撃。一般人では目に捉えるのが不可能なその早すぎる斬撃を、オレは掻い潜りながらも反撃の目を探す。

 オレは絶対に逃げるのだ。逃げて、逃げて、どこまでも逃げてやる。

 

 これさえ逃れられればッ……最大の難関である、この男さえ殺すことが出来れば。

 

 

 

 だが。

 

 

 

「飢えた日蝕、紫の玉座は運命を背負う……あは、あははは」

「あ、あぁぁぁ、あああ———ッ!?」

 

 義父の背後の方で何もせずに佇んでいた悪魔が詠唱を行い、そしてオレの背後で尻餅をついていたはずのユターシャが、声を上げた。

 

 思わず振り返ると、ユターシャのツノが少しずつ変形しており、そして翼がどんどん溶け落ちていく。苦悶の表情を浮かべるユターシャに気を取られて、オレは———

 

「そんなにその売女が愛しいか?」

「ぐ、ッ!」

 

 間一髪で、急所を避ける。

 それでもナイフはオレの肉を確かに裂いて、気がついた時には血が派手に飛び散っていた。

 

 だがオレにとっては自身の傷などどうでもよくて、守りたい大切な女の元へと駆け寄る。つるりとした闘牛のような長いツノはゆっくりと伸びながらも先分かれしていき、まるで枯れ枝のような形へと変容していった。また、翼も溶けて、骨だけのような見た目へと変わっていく。

 

 あの悪魔の言葉で、ユターシャの身体が変容していく。

 

 ガタガタと身体を震わせて涙を流しているユターシャを抱くと、彼女の身体にオレの血がついてしまった。

 

「ユターシャ? ユターシャ、何をされた?」

「違うッ……やだ、なに、これぇっ…….! 違う、ちがううぅぅッ……!」

 

 はたして、何が起きているのだろうか? 

 羽が溶ける、そしてツノが伸びていく。その様子を、オレはただ見ることしかできなくて。

 

「違うぅ? 私はただ、貴方を本来の姿へと変えてあげただけよ?」

 

 楽しげに笑う悪魔に向かって、服裏に隠していた暗器を投げていた。それは呆気なく義父に叩き落とされるものの、その女を強く睨みつける。

 

 いつもと同じように、嗜虐に顔を歪めた悪魔。

 何もかもをわかっているとばかりに嘲笑う、5000年を生きる悪逆非道の美しい化物。

 

「……おねがいします、おねがいします……それ以上は、やめっ……」

「私はこれまで何百人もの魔王を見てきた。多くの人々の運命を啜って生きてきた。だから、ねぇ……私にはわかるのよ」

 

 ユターシャは、身体を縮こませて泣いていた。

 少しずつ、少しずつ大きく枯れ枝のように変化していくユターシャのツノと、黒い骨だけのような形になっていく翼。

 

 何が起きているのかわからなかった。

 だって、魔術ならもっと攻撃性がある。まるで呪いのようなソレは、ユターシャの在り方を歪めているようだった。

 

「この残酷な世界のルールでは、魔王という存在は生まれなくてはならないし、世界を滅ぼそうとしなくてはならない。そうやって定められている」

 

「やめて……」

 

「世界を正常に回すための、強い自浄作用。それが機能するように世界は貴方を運命付けている。だから貴方にはもう生まれた時から、貴方のせいで多くの命が失われる事が約束されている」

 

「もう、許して……」

 

「魔王は多くの命を殺さなくてはならない。どうしても世界を恨むように、作られている。とある人は屈辱、とある人は家族を、そして愛を引き裂かれた者もいる」

 

「違う……わたしは、魔王じゃ、ない……」

 

「そしてまた魔王である貴方には、永劫この世界を恨まなくてはならなくなる運命が決定付けられている。貴方は果たして、何を壊されたのかしら? ふふ、残酷ね」

 

「いやだ……私、は……」

 

 ユターシャは、泣いていた。

 小さく縮こまって、まるで現実を逃避するかのように違うと繰り返しながら。

 

 助けたかった。

 だけどオレは何も出来ず、こうして見ていることしかできない。

 

「……ルシファー、それでは彼女は?」

「えぇ、やはり私の予想は当たっていました」

 

 やはり、魔王はいたのです。

 そう言って悪魔は、とてもとても楽しそうに微笑んでいた。

 

「なんで……やめて、くださいよ……」

「ユターシャ、ユターシャ……いいんだ。動かないでくれ」

「……せめて、貴方には知られたくなかったのに」

 

 そう言って、涙を流しながらもオレを見つめるユターシャ。顔を歪めて、彼女の身を案じるオレの傷口に手を伸ばす。

 

 か弱く光る魔術によって血は止まり、その代償にユターシャの手が溶け落ちる。魔族の身体は光の魔法に特に弱いのだから、人間の肉体を回復させる光魔法を使えば壊れてしまうのだ。

 

「憐れなものね。魔力は多いのに、魔術を使うと自身の身体が溶けてしまうだなんて……」

「何故、ですか」

 

 ユターシャはオレの腕からゆっくりと起き上がり、そして立ち上がって義父と悪魔に身体を向けた。

 

 その瞳は虚で、悲しみをたたえている。

 

「何故こんなことを、したのですか?」

「怒ってるの?」

 

 悪魔は煽るように言うけれど、彼女は何も言わない。ただ静かに悲しみを湛えて、拳を握っているだけだ。

 

 悪魔の笑い声が、冷たい森に響く。

 

「私には、人をたくさん殺さなくてはならない運命が背負わされている。人にとっても、それは有害でしょう? 何故、私を……魔王として作ろうとするのですか?」

 

 誰も殺したくなんてない。

 ただ、静かにご主人様と生きたい。

 

 そう言って涙を流すユターシャは、魔王という存在とは思えない。

 

「ふふっ……あはは、んっふふふふ……」

「なにがおかしいのですか?」

「いいえ、何もおかしくないわ。ぷっくくく……続けて頂戴?」

 

 何かを言いたげな、それでいて何も言うつもりがないのだろう悪魔を尻目にユターシャは義父に問いかける。

 

 男は困ったようにため息をついて悪魔を睨んだ後に、ゆっくりと口を開いた。

 

「エルフは、酷く自分勝手な生き物だと思わないかね」

「……?」

「我ら人間の繁栄を憎み、妬み、そして魔王の再来を願っていた。人間だけが大地のエネルギーとやらを吸い尽くす悪の権化で、魔王が現れないから人間をほぼ全滅させるような兵器を生み出そうとしていた」

 

 その話を、オレは知らない。

 だがユターシャは心当たりがあるようだった。

 

 ———人間を、ほぼ全滅させる兵器? 

 

「な、んで……それを、知って?」

「彼が、教えてくれたのだ」

 

 ルシファー、()()を。

 

 そうして、悪魔の扉からゆっくりとオブジェが現れる。綺麗な白い霧とともに静かに、キラキラと神秘的な光を纏わせながら。そのガラスケースは美しい彫刻が施されていて、まるで鳥籠のような形状をしている。

 

 閉じ込められているのは、1人のエルフの首だった。

 エルフ国第二王子———ユターシャの、婚約者。

 

 その生首は、綺麗に保管されていた。まるで寝ているかのような穏やかな表情で美しい花に彩られ、そして綺麗な指輪がひとつ飾られている。

 キラキラと輝くように魔術がかけられていて、そしてその台座には「我、人を愛したり」と文字が彫られていた。

 

 ユターシャが、小さく悲鳴を上げてその場に崩れ落ちる。慌ててオレは彼女を受け止めて、浅い呼吸を繰り返すユターシャの肩を抱きしめた。

 

「彼が、教えてくれたのだ。

 魔王が現れないことで人間の消費文明は日に日に増していく。エルフ共は我々人間が繁栄することで必要となる大地エネルギーの供給量に不安を覚え、そして莫大な魔力を持つ聖女を使った兵器を作っていた。

 

 人間を滅ぼすための兵器。

 その砲丸が貴方だ、ユターシャ」

 

 

 

 ……

 

 ———は? 

 

 

 

 

 

 あの優しい聖女のユターシャがそんなことするわけがない。人を皆殺しにするような、そんな兵器に携わるわけがない。だが、義父が確信を持って語っているのも事実だ。

 

 信じられなかった。信じたくもなかった。

 でも確かに、目の前にいる彼女は震えていたのだ。

 涙も流しながら、何かに耐えるかのように拳を握りしめているだけなのだ。

 

 彼女の顔を覗き込むと、ユターシャは一言「許して」と呟いた。

 

「……許されるものか。許されるわけがない、この悍ましい魔王め。お前は、聖女の皮を被ったまま人々を殺そうとしていた。魔王としての運命を、遂行しようとしていた」

「うぅ……うぁ、ああああ……っ!」

 

 義父の言葉に、ユターシャは肩を震わせて泣き続ける。違う、彼女は人を傷つけようとなんかしていない。

 だって彼女はずっと、苦しんでいたじゃないか。

 

 オレの知らなかったユターシャ。

 綺麗で、美しくて、いつもオレを優しく愛してくれていた彼女の———本当の、姿。

 

「貴方の運命は、聖女のままで魔王としての事を成すことにあった。だけれどこの優しい勇者の手により貴方はエルフの国を追放され、そしてボウヤと出会った」

 

 優しい勇者、と言って悪魔が第二王子の生首のガラスケースを撫でる。それはまるで、ペットに話しかけるような仕草だった。

 

 悪魔の笑みが深まる。

 愉悦に歪む瞳が、ユターシャを射抜く。

 

「ユターシャ……そう、なのか?」

 

 その瞳にはもう、光はない。

 人形のように虚ろな、死んだ魚のようになってしまった。

 

 まるで幽霊のような、弱々しい声で……絞るかのように、ごめんなさいと呟いている。

 

「ごめんなさい……私は、私は……」

「息子よ、その女を渡せ。穢らわしい売女を。我が国を滅ぼさんとしていた、極悪の魔王を」

 

 わからない。何を言っているのかわからない。

 

 オレは国のために生きていた人間だった。だけどそれを裏切って、ユターシャと逃げ出していた。

 だが、そのユターシャが実は魔王で———人間を滅ぼそうとしていた———

 

 わからない。

 なにも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユターシャ……」

 

 ただ、オレは静かに立ち上がる。

 なにもわからなかった。ユターシャが魔王だというのも、人を殺す兵器というのも、何もかもわからなかった。きっとそれらは全部何かの間違いだと言われた方がしっくりくる。

 だが、今目の前で語られたことはきっと事実なのだろう。ユターシャの涙が、そう語っている。

 

 だからって、なんだというのだ。

 オレがユターシャを愛し、そして守ると決めたことに変わりはない。

 

「約束しただろう。全部許すって」

 

 きっとオレは、とてつもない大罪人なのだろう。

 人を殺そうとしていた魔王を愛して、挙句に守ろうとしているのだから。幼い頃から忠誠を誓うように育てられた人間の国を裏切り、1人の女のために全てを捧げようとしているのだから。

 

 それでも、オレは立ち上がった。ナイフを構えて、今までで1番深く集中する。

 

「お前がオレを救ってくれるなら、オレがお前を全部許すから」

 

 オレ達を嘲笑う悪魔と、ナイフを構えた義父と対峙する。

 

「ご主人様……」

「愛してる、ユターシャ」

 

 覚悟は出来た。もう戻れないのだろう。

 オレは、ユターシャの望む世界を共に切り拓くのだ。たった2人だけの、ちっぽけで幸せな生活を送りたい。それだけが望みなのだ。

 

 

 

 そうしてオレは刃物を振り下ろした。

 

 

 




本編とミリも関係ないですが液タブ買ったのでスケベ絵描きました。
【挿絵表示】


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+最強転生TS聖女

 

 

 

 血飛沫が舞う。呼吸があがる。

 黒い手の形をした何本もの触手がオレの身体を拘束しようとやってくるのを避けて、高速で的確に狙ってくる斬撃をかわし続ける。反撃に出ようにも出られず、ジリ貧の状態で戦い続けていた。

 

 ユターシャのことを守らなくてはならない。

 せめてこの男だけでも、殺さなくてはならない。

 

 焦れば焦るほど隙が多くなるとわかっているからこそ、オレは守りに徹していた。

 

「はっ、はっ……流石だ、我が息子よ」

 

 年齢からか、息が上がっている義父はそれでもまだまだ余裕とばかりに笑みを浮かべている。高そうなコートにはオレが斬りつけた跡があるものの、彼の身体にはまだ少しのダメージも入っていない。

 

 そして、問題はこちらだ。

 

「ほらほら、頑張らないと捕まえちゃうわよぉ?」

 

 悪魔の後ろに控える扉から、触手のような黒い手がオレとユターシャへと向かってくる。それらをナイフで切り刻み、そして距離をなんとか取る。

 

 ただでさえ強い相手なのに、さらに二重三重の不利を重ねている。オレの方がよっぽど消耗していて、ぼたぼたと滴る血が地面に溶けていった。

 

「ごしゅじんさま……!」

「ユターシャッ! いいから逃げろ邪魔だッ!」

「いやまッ、ヒィ!?」

 

 ユターシャの方へと向かう触手を切り刻み、このままでは埒が開かないと彼女の身体を抱きかかえる。

 

「それで逃げられると思うかァ!」

「ぐっ……くそ、がッ!」

 

 義父の攻撃を全て弾き返し、そしてユターシャを抱きながらも触手から逃げる。死なない程度の攻撃は全て無視すれば、あっという間にオレの身体は血まみれになっていた。全身がやたらめったら切り刻まれて、打撲跡も残っているだろう。

 

 それでも、ユターシャには傷ひとつつけない。つけさせない。

 

 一度距離をとって、あの触手もどきを切り刻み、それから反撃に移るべきか———

 

「健気なものだ、なッ!」

 

 男が隠しナイフを投擲してくる。慌ててそれを弾き返した時には男の足が目の前にあって、オレの顔面は思い切り蹴り上げられていた。理解するよりも、先に衝撃で刹那の時身体が停止する。

 

 

 や———ばい、脳が揺れッ……! 

 

 

「もらったァ!」

 

「させま、せんッ!」

「なにィッ!?」

 

 その瞬間、身体がグンッと浮遊感に襲われる。唐突な加速負荷にオレは目を見開いて、そしてユターシャの方を見つめた。

 

 

 

 

 ———空を、飛んでいたのだ。

 

 骨となって、そして大きくなった翼で空を飛んでいた。この一瞬でどこまで飛んだのか、地上の木々は小さく、ただ生い茂る葉っぱだけが見える。

 

 オレを抱きかかえるユターシャの腕からは、まるで黒魔術のような黒モヤが煙のように薄く燃え上がっていた。

 非力なユターシャがオレを持ち上げるなんて本来なら出来ないはずだ。おそらく魔術を使っている筈だが、それならユターシャの身体が溶けてしまうのに———何故だ? 

 

「ふーっ、ふーっ……今は、聞かないでください」

「……そうだな」

 

 ユターシャは未だに涙で濡れる頬をそのままに、真剣な面持ちで遥か下の地面を睨みつけていた。

 この距離を瞬時に飛び上がるなんて普通は不可能だが、魔術で爆発的な威力を出せば出来なくはないのだろう。

 

 これで、男からの攻撃はひとまず考えなくていい。

 とはいえ、敵はもう1人いる。

 

「ふぅん? その翼、お飾りだって聞いていたけど?」

「貴方が成長させてくれたおかげで、空を飛べるようになりましたとも……ちょっと足すくんじゃうけど」

 

 空を飛べるのは、なにもユターシャだけではないのだ。空中に浮かび上がった扉から現れた悪魔は、羽を動かしながら微笑んでいる。

 

 そんな女と対峙しながらも、ユターシャはオレを抱えてじっと睨みつけていた。

 

「ひとつ教えてください。その扉の魔術は、いわゆる『地獄』とやらを使用して現実世界での位置移動を可能にするもの、という認識なのですが……あっていますか?」

「ふぅん? お勉強の時間? 聖女様は熱心ねぇ……でも、見ただけでそこまで理解してるならご褒美に教えてあげるわ。冥土の土産になさい」

 

 悪魔は嬉しそうに微笑みながらも、扉の一部となっている苦悶の表情を浮かべた人間の顔を指でなぞった。

 

 いわく、その魔術は彼女の住む世界と繋げるための扉らしい。現実と同じ座標にあり、しかし何もかもがオレ達の理から逸脱した裏の世界。そこに距離の概念はなく、歪んだ時間と生死のない狂ったナニカが飽和している。

 

 地獄という多次元空間を経由することで可能にする空間移動。彼女の魔術の真髄だと、得意げに語っている。

 

「ふふ……こんなこと、この世界で何千年何万年経とうが、私以外に出来るはずがない。すごいでしょう? 賞賛なさい」

「なるほどなるほど……別の次元ですか……」

 

 なにやら考え事をしながらもぶつぶつと呟くユターシャ。そうこうしている間にも、扉から伸びる触手の手はどんどんと多くなっていっている。

 

 すなわち、その触手は地獄の生き物。

 悪魔が扱うこの世ならざるシモベ。

 

「ユターシャ、おいッ! 来てるぞ!?」

「……しかし不思議ですよね。空間跳躍能力を持ってるくせに、わたしたちの元にすぐやってこなかったのは何故でしょうか」

 

「なによ、知りたがりねぇ……これで最後の回答よ? 

地獄では時間も距離も概念が違うから説明しにくいのだけれど……あの空間は生者に厳しく出来ている。だからこそ、長距離の短時間移動は彼に過大な負荷をかけることになるのよ」

 

 彼、と言って地上を見下ろす悪魔。

 おそらく、義父のことを指しているのだろう。

 

「私は人間には優しいから、ちゃんと気を遣ってあげてるの……ほら、人間だって犬猫には愛情をもって接してるでしょ?」

 

 じゃあ、これでおしまいね? 

 

 そう呟いた悪魔は、指先をオレ達の方へと向けた。瞬間、数多の黒い手がこちらへのびてくる。絶望や、恐怖から逃れようとする助けを煮込んだような感情の奔流である触手達は、とくに明確な生者であるオレを狙いにしているようだった。

 

「ッユターシャ!」

「ちょっと、考え事してる最中に攻撃はズルですって!」

「言ったでしょ、さっきのでおしまいだって……ふふ、何を企んでいるのかは知らないけれど逃さないわよ」

 

 飛んで逃げるユターシャを阻むように、悪魔を中心にぎぢぎぢぎぢと嫌な音を立てながらも魔術が構成されていく。それは超巨大な檻で、そして鉄格子には黒い雷が迸っていた。

 

 いくらユターシャが高速で飛び続けても、この壁がある限りは遠くに逃げることは出来ないのだろう。

 

「……よぉしご主人様、私に捕まっててください」

「は?」

「あら、あら? 私の真似をして地獄の扉を開くの? ふふふふ……」

 

 悍ましいほどの、楽しげな笑みを浮かべる悪魔の手が一瞬止まる。まるで、さも「それをしてみろ」と言わんばかりの表情だ。迫り来る触手も空中でぴたりと止まり、まるで逃してあげると言った様子か。

 

 だが。

 

「いや無理です。私がその地獄とやらを開くと、あちらの常識を知らないのでぐちゃぐちゃになりますね?」

「あら、よくわかったわねぇ。全くつまらない……今まで5人、ぺちゃんこに潰れたことがあるのよ?」

「でしょうね……えぇ、ですから他の道を使用します」

 

 そうしてユターシャが手を振り、現れたのはピンク色の扉だった。あの悪魔が生み出す悪趣味なそれとは違って、ただシンプルで銀色の回し取手がついている。

 

 そして間髪入れずにユターシャが手をかけてドアを開くと、黄金色に輝く光が満ち満ち溢れていた。激流のようなエネルギーと温かく包み込むような何かが扉の外からでも肌に感じられる。

 

 なんだ、これは。

 息吹のマグマとでもいうべきか。世界のエネルギーを可視化したらこうなるのだろうか。

 

「異次元の扉を開く……なるほど、良い方法です。なので私は、私の理解できる方法を取らせていただきました」

 

 

 

 

 

 

「………………は? なに、それ」

 

 悪魔が呆然とそれを見つめていて、しかしユターシャは言葉を返さなかった。傷だらけのオレを抱えたまま、扉を閉めて黄金の中をふわりと泳ぐ。

 

 最後に見た悪魔は、まるで豆鉄砲を食らった鳩のようにマヌケな表情をしていた。

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 

「ルシファー、彼らは何処へ行った?」

「んん、エルフ国よ。……悔しいけど、貴方を連れて行くとなったら最短でも1時間はかかるわ」

「エルフ国か……まったく、面倒だ」

 

 取り残された壮年の男と悪魔は、彼らが飛んで行っただろう方角を見遣る。

 2人とも、数十時間前まではちょうどそこにいたのだ。

 

「あの空間移動は、唯一無二の絶対じゃなかったのか?」

「……ぐう」

「ぐうの音をあげるな」

 

 壮年の男は1人ため息をつく。

 やはり念には念を入れておいて良かったのだ。

 

 地上に降り立ってすぐ、男はコートを脱ぎ捨てた。

 先程までは荒くなっていた呼吸も落ち着き、互いに冷静さを取り戻す。

 

「お前が悪趣味を楽しもうなんてするから、コケにされた挙句こうして無駄を重ねてるんだぞ。最初から交渉しておけばこんな無駄は出なかった。少し反省しなさい」

「うっさい」

「頼むから、次は調子に乗るんじゃないぞ」

「……場合によるわ」

「勘弁してくれ。……あぁ、そういえば」

 

 そして、扉の目の前で壮年の男が立ち止まる。

 ここまで待たせているのだから———彼女に一言声をかけておかないといけないと思ったのだ。

 

 特別な、お客様。

 聖女を連れて行くのに、念の為に用意した切り札のうちのひとつ。そのひとつは、先程の第二王子の生首だったが。

 

「会っとくの?」

「あぁ。あの闇の中に長く放置されれば発狂しかねないからな、頼む」

 

 そして暗闇の中、ひとつの影がうっすらと見える。

 

 ゆっくりと出て来たのは十字架に張り付けられた1人の女だった。全ての関節に釘を打たれ、魔術使用不可の呪いをかけられている。

 息も絶え絶えと言った様子のその女は、それでも2人を憎しみ籠った目で睨みつけていた。

 

 ぶらりと、垂れ下がるは4つの玉。

 そこからダラダラと赤い血が落ちて、地面を汚していた。

 

「ご機嫌よう、マドモアゼル」

「……フーッ……フーッ……、地獄へ、堕ちろォ……!」

「クク、元気で大変結構なことだ」

 

 壮年の男は、女の言葉に首を振った。

 彼の死後はもはや道が決まっている。地獄よりもよっぽど悍ましい、悪魔のはらわた。

 

 祖国のために魂など、とっくの昔に売っている。

 だからこそいくらでも非道になれたし、これまでのことも、これからのことも何ひとつ罪悪感を抱くことはない。

 

「あれほどの魔術が使えることは想定外だったが……なに、問題はない。こちらにはまだカードが残っている」

 

 いくら強かろうが、いくら魔王であろうが、そこに心がある以上付け入る隙はいくらでもある。

 

「いくら魔王として運命から目を背けようと、もはや無駄だ」

 

 もう遅い、全部手遅れなのだ。

 いくら強かろうが、こぼしたものは取り戻せない。

 

 世界を恨む運命は確約された。多くの魂は焦土に潰えた。

 この世界は残酷で、結果と数字だけを見てそれを処理されたと認識するだろう。

 

「これは、必要な犠牲だった」

 

「貴方達の尊い命を持ってして、この地上で行われる魔王の最後の蹂躙は終わったのだ」

 

「人類は進化する。長い歴史において我々を苦しめてきた魔王というシステムを、人類が掌握する」

 

「ついに人類は、勇者なくとも魔王を封じられるのだ」

 

 それは十字架に貼り付けられた女に、語りかけていた。

 男は理想を抱いているのだ。若い頃から変わらず、ずっと一途に思い続ける。

 

 国のために人々のために、全てを売り渡した男。

 どれだけ魂を穢そうが、どれだけ罪を背負おうが、人類の礎となるなら関係ない。

 

「人間に繁栄を、人類に永遠を。不滅の種族は、この大地に愛されているのだと証明しよう」

 

 赤子だろうが、老人だろうが。

 使えるものを全て使って、男は正義を成してきた。全てはこの世界を平和に導くための必要な手段だった。魔王という悪を捉えるための、人類にとっての希望のために。

 

 代償は罪なき者の命、得るものは———これからの未来。

 

「老いさらばえた哀れな最後のエルフよ、この大地を支えていた聖女達の師よ。喜べ、貴様こそが証人となるだろう」

「あぁ……あああああ……ッ!」

 

 女は———おそらく()()()()()()()()()()()()()()()ユターシャの教師である。

 聖女達の親代わりのような彼女は、自身の教え子達の首を腕からぶら下げられながらも空を仰いで涙を流した。

 

 どこで間違ったのか? 

 どうしてこうなってしまったのか? 

 答えはわからず、惨劇はもう全て終わっているのだろう。

 

 かつて鉄壁とも謳われたエルフの国の魔術による国防は、極端に弱体化していた。ユターシャがいなくなってからは大地を支える儀式に既存の聖女だけでは足らなくなって、国々の各地から魔術を使えるものを掻き集めていた結果だった。

 

 ではどうすればよかったのか。

 足掻いて、足掻いた結果がどうしようもなかったのだ。

 

「ユターシャ……!」

 

 あぁ、だからせめて彼女だけは。

 老女の祈りは誰に届くこともなく、涙だけがエルフの国から遠く離れた大地に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 



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+エルフの故郷+宿命

エルフヒロインの故郷が燃えないわけがない。
あとユタ子はちゃんと幸せになれるのでもうしばらくお付き合いください。本当です。


 

 その異界にいる滞在時間は5秒と満たなかった。

 扉を消して、新たな扉を出し、そしてその扉をくぐる。その一連の流れで、数百キロ近い距離を移動したのだろう。

 

 辿り着いたのは、知らない焦土だった。

 

 辺り一帯の木々が焼け落ちているのが見える。ずっと先まで見渡せるほど何もなく、燻る臭いが酷く鼻についた。

 

「あれ……?」

 

 ユターシャが首を傾げる。互いに地面に足をついて、そして辺りを見渡して———

 

 あぁ、酷く嫌な予感がする。

 

「……ここ、どこだ?」

「最初に私達が会った、()()()の洞窟前あたりに着地しようと思ったんですが……」

 

 衝撃に薙ぎ払われて燃え焦げた木々だけが散乱していて、オレ達はそこで立ち尽くすしかなかった。嫌な匂いと、風の音。そして生き物の息が何一つ聞こえてこないのがなによりも恐ろしい。

 

 失敗しちゃったみたいです。と、ユターシャはへにゃりと苦笑いを返した。

 

 確かにオレ達が出会ったあの場所はもっと木々が生い茂っていたし、魔獣などの強い生命の気配があちこちに感じられた。草木一つ見当たらないこの不毛の地と似ても似つかないだろう。

 

 まるでこの世界から全ての生命を根こそぎ刈り取ったような光景。ただの自然現象で、こんなことになるはずがない。

 

 

 ———ふと。

 

 足元を見ればどこか見覚えのある焼け焦げた板が落ちていた。

 

「これは……」

 

 板には穴が開いていて、そして溶けかけた鎖がついている。拾い上げてよく見れば、穴の側面には術式が刻み込まれているのが見えた。

 

 よく覚えている。

 これは、ユターシャにつけた足枷だ。

 

 出会った時につけた足枷。間違えるはずもない。

 

 

 

 

 

「あぁ———そうか、そうだよなァ」

 

 思わず呟いて、空を仰いでしまう。

 

 ここは、間違いなくオレ達の出会ったあの森なのだろう。ユターシャから隠すように足枷だったものを踏み潰せば、頑丈だったはずのそれは炭化して簡単に粉々になった。

 

「ご主人様? えぇと……とりあえず怪我直します、ね?」

 

 何も考えたくなくて、ユターシャの手招きに大人しく呼ばれていく。

 

「……頼む」

「ちょっとまだ慣れてないのでうまくできるかわからないですが……少し、お待ちくださいね」

 

 適当に倒れている木に腰掛けて、ユターシャに身体を委ねた。いつもとは違う黒い光が身体中を包み込んで、そしてみるみると怪我が治っていく。医療を専門とする魔術師でも、ここまで早く範囲も広い回復なんてできやしないだろう。

 

 やはりユターシャの身体が溶けることはなくて、新たに変わった魔術属性をうまく使いこなしているようだ。じんわりと温かい光に包まれながら、オレは小さく息をつく。

 

「……っ! ご主人様……こんな……ッ!?」

「ユターシャ? どうした」

「なんか色々折れてるし曲がってるしちぎれかかってるし……なんで、平気な顔してたんですか……!? わたし、私ッ……」

 

 ユターシャが泣きそうな顔をして傷を見下ろして小さく呟いた。違うと言えば嘘になるかもしれないが、それを肯定すればきっとこいつは自分を責めてしまう。

 

 この怪我は、オレが自分で選んだものなのだ。確かにユターシャを守るための傷ではあるものの、それに対してユターシャに謝られる筋合いなんてどこにもない。

 

 あえて黙っていれば、その沈黙に耐えかねたのか彼女は再び口を開いた。その顔には後悔がありありと浮かんでいて、思わず目を逸らしてしまう。

 

「私が……私が、魔王だと自覚したのは、最近なんです。それに、人を殺そうと、するつもりも……いえ、これは言い訳でしかないのですが……だけど……でも……」

 

 ぽつり、ぽつりと言葉を落とす。俯いている彼女の表情はよく見えない。ただ肩が小さく震えていて、時折鼻をすするような音が聞こえてくるだけだ。

 

「———ごめんなさい……」

 

 騙していて、ごめんなさい。

 黙っていてごめんなさい。

 隠していてごめんなさい。

 苦しめてしまって、ごめんなさい。

 

 何度も繰り返される謝罪の言葉を遮るように抱き寄せれば、腕の中で彼女がびくりと身体を震わせたのがわかった。

 

「言っただろう、救ってくれるなら全てを許すって」

「ですが、私は———ッ!」

 

 そのまま抱きしめていれば、やがて恐る恐ると背中に手が添えられたのを感じる。控えめなそれが愛おしくて、そっと頭を撫でてやった。

 

「キス、していいか?」

「あ、ぇ———」

 

 返事を待たずに唇を重ねれば、驚いたように目が見開かれる。しかしすぐに受け入れてくれるようで、ゆっくりと瞼が閉じられた。

 

 何度も何度も繰り返して、ユターシャの言葉を塞ぐ。

 

「ぅ"う……ずるい、ですよ」

「今更だな。オレはとってもずるくて、世界で一番悪い男なんだよ」

「似合いません、ね?」

「うるせぇ」

 

 少しだけ落ち着いてきたようで、呼吸も少しずつ元に戻ってきているようだった。

 ゆっくりと離れていけば、ユターシャの顔には涙の跡が残っているもののだいぶマシになっていた。

 

 やっぱり泣かれるより笑っている方が似合うな。そんなことを思いつつ頬に触れれば、くすぐったかったのかユターシャは少し身を捩る。

 

「……身体、もう痛くはありませんか? まだ痛かったらちゃんと言ってくださいね。大怪我の時に平然とするの禁止です」

「あぁ。助かった」

 

 すっかりと元通りになった手を動かしたり、軽く飛び跳ねたりしてみても全く問題はない。さすがにまだ本調子ではないから多少の動きにくさはあるものの、これくらいは許容範囲内だ。

 

 これなら———魔術も使えるユターシャがいるのだ。きっと、あの2人がやってきても返り討ちに出来るかもしれない。

 

 

 

 逃げられるのだろうか。

 ……そうだったら、いい。きっとそううまくはいかないだろうけれど、もしかしたら、逃げられるかもしれない。

 

 その困難さを頭ではわかっていても、少しだけ見えてしまった希望を考えてしまう。あの養父がこの程度のイレギュラーで立ち止まる男ではない事をオレは理解しているけれど。

 

 それでも。

 

 ———それでも、ユターシャと共にいられるなら……そのためなら、どんな苦難も越えようと思えるのだ。なんて、口に出す事はきっとないけれど。

 

 

 

 懐に隠した武器を確認する。まだ武器はいくらか持ち合わせているため、今すぐ彼らが来ても充分に迎え撃つ事は出来るだろう。

 

「……あの人達がどのくらいで来るか、わかるか?」

「悪魔の言葉通りなら、地獄を経由して空間移動を行ってるはずですから。生者にとって地獄の空間は結構大変だと思いますし、この距離なら大体1時間くらいは猶予を見ていいかと思います」

 

 魔術に関して最強を謳われるエルフ国の第一聖女ユターシャがそういうなら間違いないのだろう。

 

 ———しかし、そうなると気になるのは先ほどの場所だ。

 

「あの黄金色の場所は、一体何なんだ?」

「さっきの場所、ですか?」

「あぁ。地獄でもないんだろ? 天国でもないみたいだし、なぁ」

 

 空には何もなく暗闇だけが広がっていて、どこまでも黄金色の光が迸っていたあの場所は、はたしてなんだったのだろうか。

 あの美しい世界が地獄とは思えないが、じゃあ天国かと言われるとそうでもない気がする。

 

 生命の気配はないのに、どこまでも存在感が強い。暖かいのに寂しくて、畏れを感じるのに穏やかにいられる場所。

 

「ええと……言語化するのは難しいのですが、あえていうなら世界の裏側とでも言える場所です。あの世でもこの世でもなく、現実世界に依存していないのでどこにでもいられるといった概念、と言ったらわかります?」

「わからん」

「うーん、概念の世界なのでもうなんとも言えないです。まぁ普通の人間ならいけないところだと思ってください。わかりやすく名付けるならば……()()()()()といったところでしょうか」

 

 まぁ言っちゃえば地獄や天国と似たようなものですね、とユターシャは地面にガリガリと絵を描いていく。

 

 その異界は今も触れているが触れないものらしい。人の持つ感情と同じように、そこにあるのに見えないものだという。黄金色に輝いていたものが星の脈動であり、この世界の万物のルールだという。魂という多様性の個々を許し、地獄や天国を制定したのもこの星の意志だという。

 

 スケールのデカさが理解できなくて実感が湧かないが、きっとオレはなんとなくすごい体験をしたのだろう。

 

「人って、死んだ場所に関係なく死者の国に行くじゃないですか。肉体から離れないと行くことができないような異界は、大抵が三次元的距離といった概念に囚われることがないんですね。なのでそのシステムを使って移動するんです。いやぁ、私も空間移動魔術は色々と試しましたがこういう方法を使うのは目からウロコでした」

 

 聞けば聞くほど、簡単に言ってるがとても恐ろしい魔術にしか聞こえない。

 

「お前……失敗してたらどうするんだよ」

「初めてでしたけど、確証はあったので。私天才ですし」

 

 通常の悪魔が地獄に行くにはそれ専用の死者のための霊道(ケーブル)を使用しなくてはならないし、エルフが星の血潮に祈りを捧げるのも深淵廟堂(ケーブル)が必要である。

 

 しかし、ユターシャもルシファーも特殊な体質のため、その場所の制限(有線ケーブル)が必要ないそうだ。

 

 そしてルシファーの使用するクラウドサービス(地獄)ではデータの移動は出来るものの一度にアップロードできる量に容量制限がかかっているため時間がかかってしまう。さらにファイルの形式によっては保証もされていないためそのフォローをしなくてはならない。

 対してユターシャの使用するクラウドサービス(宇内の血潮)では容量制限なしで定額使い放題高速通信なので、利便性が段違いだと鼻を高々とさせて語られるが———

 

「……???」

「ええと……うん、私の方がすごいって思ってくれればそれでいいかと」

 

 言われれば言われるほど理解が出来なくなっていったオレは諦め、そしてユターシャも目を瞑ってしまっているあたり説明するのを諦めたようだ。

 

「しかし、だからこそ不思議なんですよね……異界への扉も開けることができたから、着地点を間違えるなんてことないはずなのに……うーん」

「あぁ。そうだな」

 

 きっと、着地点は間違えていないのだろう。

 ただ周りの光景があまりにも変わってしまっただけなのだ。

 

 かなりの衝撃と灼熱がこの大地をこんな姿にしたのか。考えられるのは一瞬の爆炎と、そして熱風。それがずっとずっと先の方まで続いている。

 自然の炎ならばこんな風に一方に薙ぎ倒されるはずがない。

 

 どれほどの威力が降り注いだというのか。どれだけの命が、一瞬で奪われたのか。

 甘き森ですらこの有様だというなら、きっとエルフの国はもう———

 

 

 

「……あれ?」

 

 

 

 ユターシャがふと、遠くの方を見据えていた。

 目線の先は木が凪倒れている方向とは別の……おそらく衝撃が起こった方角である。

 

 オレもそちらに目を向けるが、しかしまだ何も見えるものはなかった。

 

「どうした? 何かあるのか?」

「ご主人様、手を……」

 

 ユターシャに差し出された手を、そのまま握り返す。ぎゅっと強く握られて、そしてユターシャはオレを引き寄せるように抱きついてきた。

 

 見据える景色は何も変わりがないのに、その表情だけは酷くこわばっている。彼女は、何を認知したのだろうか? 

 

「第一位魔法、展開。純然なる叡智、薄光は無限の圧縮。堅牢なる無窮は顕る———オルタ・イギスエザー・サリス」

 

 詠唱と共に、彼女を中心にして光の輪が広がるように結界が張られていく。護るための魔法だろうか、それはオレとユターシャをすっぽりと包むように展開されていた。

 そうして、淡く光る壁にはところどころ黒い稲妻のような魔力が迸り、高圧力の魔術だということが窺える。

 

 ……第一魔法なんて、この世界に使うような奴がいたんだな。それも、こんな平然な顔で。

 

「ユターシャ、なにがあるんだ」

「魔力の収」

 

 ユターシャが次の言葉を発そうとした、その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

「あ?」

 

 

 最初に光。あたりが真っ白に光り輝く。

 

 光、光、光———

 そして虹霓が瞬くように、次々と色が移り変わる。赤、青、緑、黄色、紫、橙、水色、桃、薄紅色、白色、黒色、茶色、灰色、金色、銀色。

 

 

 

 

 ありとあらゆる色彩が、視界を埋め尽くす。

 故にこの守り(魔法)の外で起きていることは、あまりの眩しさから実際に目にすることはできなかった。

 

 それはまるで、小さな太陽が現れたかのような衝撃。

 だがそれは数秒で終わり、やがてその輝きは小さくなって辺りは闇に包まれていった。

 

「なんなんだ、今のは……」

 

 あれだけ眩しかったのに、不思議と目は焼かれていなかった。

 

 おそらく、爆音や衝撃など全てからこの繭状のものは守ってくれたのだろう。やはり第一聖女の名は伊達でない。

 

 

 

 ———そして。

 

 

「なんだ……これ……」

 

 辺りの様子は、さらに一変していた。

 薙ぎ倒され、黒く炭化していたはずの木々は吹き飛ばされたのだろうか。そこに残るのはいくばくかの燃えカスのようなものだけで、先ほどまであった残骸は消え去っている。

 

 もしも、ユターシャの守りがなければ……吹き飛ぶどころか、肉片の一つも残らなかっただろうな。

 

「ユターシャ、今のは……」

「———ぁ、え?」

 

 ユターシャの顔を見れば、真っ青な顔をしてそちらを見つめていた。

 

「いまの……わたしの、後輩達が……」

「ユターシャ?」

「今の魔力……」

 

 どんどん、ユターシャの呼吸が浅くなっていく。

 顔は青ざめ、やっと止まったはずの涙が再度溢れんばかりに目に溜まっていく。

 

 彼女の身体を抱きしめて、震えるユターシャの背中を撫でさする。それでもガクガクと震えるばかりで、止まる様子はない。

 

「今のは……」

 

 地獄の業火すら凌駕する、圧倒的な暴力。

 

 

 ———それは。

 

 

「エルフが、人に向けて使用を計画していた兵器の……」

 

 ユターシャの身体から、力が抜けたように地面へと倒れ込みそうになる。オレが支えてなければ、そのまま崩れ落ちていただろう。

 

 ゆっくりと、落ち着くように何度も背をさするが、それでもユターシャは止まらない。

 理解してしまったのだろう……あの一撃が、いったい誰によるものなのか。

 

「ユターシャ。もう、いい。もういい、やめよう。考えるな」

「魔力は、私の、後輩達のもので……なんで? だって、そんな……あぁぁ、ああああああ……!?」

 

 ———じゃあ、やっぱりここはあの森なんですか? 

 

 ユターシャが縋るように問いかけてきて、オレは首を振った。違うと言ってやりたかった。

 こんな場所は、お前の故郷なんかじゃないのだ。こんな焦土が、エルフの国であるわけがない。

 

 言葉を重ねるが、しかしユターシャはオレの胸に顔を埋めて絶望した悲鳴をあげていた。

 

 地獄そのものの光景。命を奪い去る暴虐の嵐。

 エルフが人を滅ぼそうと、最後の切り札として用意しようとしていた最終兵器。

 

 きっと、裏で手を引いているのはボスや悪魔なのだろう。魔術において最強を誇るエルフの国が弱体したタイミングを狙い、内部から侵略し、そしてこの地獄を生み出したのか。

 

「……ユターシャ」

「う"……ぁ、あっ……」

「ユターシャ」

 

 顔を無理やりあげさせると、彼女は焦点の合わない瞳で虚空を眺めていた。壊れてしまった人形のように、ただ涙を流しながら呆けている。

 

 その痛ましい姿に胸が締め付けられるが、しかしここで折れる訳にはいかない。

 オレは、ユターシャの頬を両手で挟んでこちらを向かせた。

 

「みんな……私の妹達は、あの子達は、こんなことする子じゃなくて……」

「あぁ」

「きっと、何かあって……それで、騙されたか、洗脳されたかで……」

 

 

 ———たすけなきゃ。

 

 涙に濡れる頬を拭ってやる。震える身体を抱きしめる。耳元で大丈夫だと言い聞かせる。

 ただそれだけしかできない自分が、腹立たしくて仕方がなかった。

 

「妹達の魔力だったんです。だから———深淵霊廟に、行きます。きっとそこにいるはずだから……」

 

 ユターシャは、立ち上がりフラフラとした足取りで歩き出した。目の前に現れたのはピンク色のシンプルな扉。きっと、これをくぐればすぐにそこに辿り着くのだろう。

 

「席次があった聖女は、私以外には4人……みんな、私に及ばずともすごく強かったんです。普通なら、どんな相手だろうと負けるわけがないんです」

「あぁ、エルフの国の聖女の話は有名だからな」

 

 ユターシャこそ世界最高峰と言われているが、エルフの国自体が魔術に秀でた国なのだ。その中でもトップ層なのだから、強いに決まっている。

 

 ユターシャが、ドアに近づく。

 

 ———第五聖女 春宴担う祝

「とても朗らかで優しくて……花を愛でるのが好きな穏やかな女の子で、民に幸福を願う子でした。だから、あんな兵器に携わせるわけにはいかないのです」

 

 ———第四聖女 果てぬ赤

「強い女性でした。エルフ騎士団長の奥様で、私も何度もお世話になったんです。強くて正しくて、常に子供達の未来を見据えていました。だから、こんな酷いことを出来るはずがない」

 

 ———第三聖女 嶺爵の騎士

「鋭く、冷たく……秩序を持って、国を護る女の子でした。厳しさは優しさで、鋭さは公平の証。誰よりもエルフの事を考えている正しい騎士。だからこそ、民を滅ぼすような真似を彼女が許すはずがない」

 

 ———第二聖女 陽光讃歌

「私のことを、姉と慕ってくれていました。エルフ王族の血筋を引いていて、少し世間知らずなところもありましたけど、でも努力家で明るく元気で、気品もあるけれどお茶目な子で……だから、こんなことさせるわけには行かないのです」

 

 ドアノブに手をかけながら、振り返ったその表情は涙に濡れながらも決意が篭っていた。この先に待ち受けているであろう、悲惨な現実を受け入れなければならない。

 

 それでもユターシャは、妹達を信じているのだ。

 たとえそれが、どれだけ非道なものであろうとも。

 

「こんなにも罪深い私ですが……それでも、あの子達を、助けなきゃいけないから。脅迫だろうが悪魔の契約だろうが、洗脳だろうが……絶対に、救うんです」

「……そうだな」

 

 ドアノブに手をかけるユターシャの上から、手を重ねる。指先は冷えて、少しだけ震えていたそれを優しく包み込む。

 

「ユターシャ、行こう」

「……えぇ」

 

 

 

 

 

 ———そして。

 

 そして、そして……

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 黄金色の世界をくぐり抜けた先。

 

 豊穣の未来を約束するための極楽。

 常に春の小川が流れ、甘い果実が常にたわわに生る、大地が開く饗応の楽園。

 

 その美しさは地下にあるとは思えないほどの明るさに満ち溢れており、この世のどんな景色よりも素晴らしいものだろう。

 

 だが。

 

「な、なんで……? なに、あれ……?」

 

 今はその大地が、血に塗れていた。

 

 あちこちに肉が飛び散っていた。

 

 瑞々しい草花には黒々とした血がこびりついて、あたりには腐臭が立ち込める。

 

 そして、その中央部。

 深い深い穴が開いており、その上には穴に魔力を流し込むための宝珠が祀られている。

 

 その宝珠から伸びる太い線に繋がれた、ふたつの巨大な機械。片方はきっと、エルフの作った兵器だろうが———

 

 

 

 

 

 もうひとつの、巨大な機械。

 赤黒い液が、見える窓からゴボゴボと煮え立つのが見える。その中には幾人もの女達の、首から下の遺体だけが小さなガラス張りの棺に閉じ込められていた。

 

 首がない、死体の陳列。

 

 未だ生きているようにビグビグと震えている。

 しかし、もうそれは死んでいるのだろう。

 

「あ……」

「見るな、ユターシャ」

「あああぁ……」

「ユターシャ!」

 

 オレの声に、何も返さない。

 そしてその瞳からはボロボロと大粒の雫がこぼれ落ちる。口元はハクハクと動くだけで、何も言葉を発することはなかった。

 

 きっと、ああして死んでもなお陵辱されているのはユターシャの大切な存在だったのだ。

 

 膝をつく。力が抜けて、座り込んでしまったユターシャ。

 肩を抱いて背中をさすってやるが、彼女はただ嗚咽をあげるだけだった。

 オレは、何度ユターシャの涙を見ただろうか。どうしてこうも彼女を守ってやれないのだろうか。

 

 彼女の心は、もう限界を迎えていた。

 

「ふふふ……あは、あはははっ……!」

 

 あぁ、まただ。

 オレ達を嘲笑うような地獄からの笑い声が、聞こえてくる。

 

「殺して、やる……」

 

 ユターシャが、背後で絞り出すように声を上げた。

 

「絶対に、殺して、やる……」

 

 

 

 



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+ユターシャオリジン・レクイエムフォルム

敗因:アルセウス面白い楽しい
エロ書きたい…もう許されたい…もうあとちょっとで終わるのでもうしばらくお付き合いください。ちゃんとハッピーエンドになるので。するので。





 

 

 

 ———まだ、あの頃はいつか世界に平和が来ると信じていた。

 それがどんなに困難だとしても、自分ならできると思っていたのだ。

 

 

 

 

 かつて私は、ひとつの研究所を運営していた。

 エルフにおける聖女のシステムはある種の人身御身である。エルフの発展、繁栄を夢見た私は魔力の継続可能エネルギー化。これまでの歴史で幾人もの有識者が挑戦してきた困難を、私は手掛けようとしていた。

 

 王都郊外の人気が少ない土地に建っていた古い屋敷。改装に改装を重ねたその建物は、私が出資していた研究所。

 エルフの聖女としての仕事がある中で、時間をやりくりして研究所に通い詰めていたのが昨日のようだ。

 

 その研究所では、一癖も二癖もあるエルフ達が和気藹々と研究に没頭していた。外の世界では差別されるようなハーフエルフや、賢すぎるが故に嫌われ者になったエルフなど……そこには多くのはぐれものがいた。

 

 だから私も、きっとのびのびとしていたのだろう。

 前世の知識をたっぷりと用いて、この世界における技術水準を超えたオーパーツの作成。超技術の詰め込まれたロマンに、私は夢の載せていたのだ。

 その施設に鎮座していたエルフの国にそぐわない巨大な機械は、蒸気を立てながらも時代の特異点となる筈だった。

 

 

 なのに。

 

 

 出火元不明の火事で研究所は全焼。所属していた研究員全員の丸焦げになった遺体と、崩壊しきった建物だけがそこに残っていた。

 研究結果も無くなり、潰されて無くなっていて、誰1人助からなかった。その知らせを聞いてすぐに飛んで行った私には、もう焼け落ちて全てが終わった後の建物だったものを見ることしかできなくて。

 

 

 

 ———だから、理解できなかった。

 

 なんで、あの研究所に置いてあった機械が、ここにあるのだろう。なんであの機械の中に、彼女達(妹達)は詰め込まれているのだろうか? 

 

 

 

 

 

 

 私のやってきたことは、なんだったのか。

 

 

 

 

 

 故郷は燃やされ、同胞は死に絶えて、妹達は死体を陵辱されて、そしてかつて目指していた夢の名残ですら踏み躙られている。

 

 そこにあったのは、私の全てだったのだ。

 エルフとして築き上げてきたものが、何もかもまとめてめちゃくちゃにされていて。

 

 こんなことのために、私はこれまでやってきたのか。

 

「あ……ぁあ……」

 

 大切な妹達の首から下の死体が、液体の中で動かない。はたしてこの場でどんな凄惨な事件が起きたのか、私には予想もつかなかった。

 

 私の家族でもあり、そして友人でもあった彼女達。私の名を呼ぶ声を思い出す。

 

 

 ———それがたとえ、見てきただけのものだとしても。

 

 

 この100年で積み上げたものが全て蹂躙され、ただ目の前に現実だけが広がる。

 

「殺して、やる……!」

 

 憎しみが言葉となる。悲しみは怒りへと変わる。

 聞こえる笑い声が憎くて仕方なかった。足先から指の先まで燃えるように血流が回り続けて、だけど頭だけはやけにクリアになる。

 

 そうして———

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 

 

 ユターシャの手の上には、ひとつの小さな雫が眩く輝いていた。

 

「うう"……あぁぁあっ……!」

 

 それは、彼女の持つ膨大な魔力の圧縮。枯渇した世界を癒せるだけの潤沢な魔力が、手の上に結晶の形となって凝縮されていく。

 

 輝く紫色の光。それは力強くも、儚さすら感じる小さなエネルギーの塊だった。

 

 音すら奪う圧力。光すら飲み込む重力。

 ユターシャの周りに薄く風が巻き上がり、漏れ出す光が輝いている。

 魔力が吹き荒ぶ凄まじい光景は美しくも荒々しくて……その光の奔流に目が焼かれそうになるものの、それでもそこから視線を離せなかった。

 

 

 ———もしもそれが、ここに落とされたら。

 

 

 地上をえぐるなんてものじゃないだろう。おそらく、星の形を歪めるはずだ。大陸ごと消し飛ぶだろうそれは、エルフ国を焼いた兵器ですらオモチャに見えるほどだ。

 

 それほどまでの高威力を片手に溜め込んだユターシャは、もう片方の手を翳した。

 

「……そんなの用意されて、わざわざそちらの世界にいくわけないじゃない」

 

 安全地帯(地獄)にいる悪魔の声がどこからともなく聞こえてくる。その声には紛れもなく焦りが見えていて、そして彼女も怯えていることがわかった。

 

 だが、事実だ。いくらこの世界を真っ平にしようが、地獄の世界には影響がない。

 

「えぇ、そうでしょうね……ですから、こうしましょう」

「………………え?」

 

 

 

 ユターシャの、もう片方の手が空間に無機質な穴を穿った。その奥には赤黒く、ぐちゃぐちゃな世界が広がっている。ビヂ、ビヂビヂと嫌な音を立てるのは、無理矢理それを開けているからなのだろう。

 

 地獄だ。

 ユターシャの手によって、地獄への穴がその場に生み出された。

 

「……地獄の広さは知りませんが」

 

 ユターシャは、静かに口を開く。

 

「そもそも距離の概念がない世界。遠さによる衝撃の緩和は出来ないでしょうから、満遍なく地獄の端から端まで壊し尽くせるのではないでしょうか」

 

「私じゃ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ので」

 

 ユターシャの手から、その雫が離れていく。

 地獄の穴へと、吸い込まれていく。

 

 

 

 ———それは、とても美しかった。

 

 たった数秒のはずなのに、まるで何十時間にも引き伸ばされたかのような感覚に陥る。

 

 

 

 あたりが一層真っ暗になり、世界から音が奪われる。ゆっくり、ゆっくりと雫が穴の中に落ちていく。

 それは静かな光。世界を丸ごと凝縮したエネルギー塊。

 

 もう、誰にも止めることはできない。

 地獄の穴へと、彼女は雫を投じる。

 

 

 

 

 

 そして、穴が閉じると同時に弾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁぁァァアアアアアッ!」

 

 飛び出してきた悪魔は、ユターシャの真後ろに現れる。当たり前のように予測していたオレは、彼女の後頭部に振り下ろされた刃を受け止めていた。

 

 ボスが、酷く悪い顔色で腕を震わせながらもさらに刃を押し込もうとしてくるが……その腕を掴んでいるオレは、それごとひっくり返すように握りつぶした。

 

 ばぎり、と嫌な音を立てて彼の利き腕が潰れる。

 

「ふぅ"〜……ッ! き、さまァッ……」

 

 ボスの動きが悪いのは、地獄を無理矢理移動したからなのだろうか。先ほどよりもずっと動きが遅く、それは簡単にいなすことができる。

 

 首に飛んできた反対側の手も受け止め、それもまた潰す。握力だけで手首の骨を砕いて、そして懐に隠し持っていた刃物を構える。

 

 このまま、最短最速で心臓を抉り穿つ。

 オレの手は、間違いなく男の命を刈り取ろうとしていた。

 

 

 

 

 ———だが。

 

「こんな、ところでッ……!」

 

 バヂバヂバヂ、と音が爆ぜる。

 目の前で唐突に起きた魔力の暴風。その程度で止まるようなオレではないが、しかしそれはただの魔術ではなかった。

 

 

 

 瞬間、目にとらえていた筈のボスの姿が変わったのだ。全くの別人に入れ替わったソレは、悪魔の魔術による幻覚の類だろうか。

 

 男の心臓を抉ろうとしていたナイフは目の前の人物に突き刺さりかけるが、刃先があたる数ミリ前で無理矢理止める。腕にビリビリとした反動が来る中、オレは突然現れたその女を睨みつけた。

 

 どんな魔術かもわからないのだ。カウンター型の呪いがかけられているかもしれないし、わざわざここで入れ替えを選ぶ辺りになにかの罠が仕掛けられているのは目に見えている。

 

 逃してしまった義父は悪魔の腕に抱えられて、折れた手首をかばいながらもこちらを睨みつけていた。

 

「はぁっ……ルシファー……助かった」

「いいのよ、でも、ここで出すつもりなんてなかったのに」

「……問題ない。次の段階だ」

「えぇまぁ、そうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前にいる代わりの誰か。

 

 それは片耳を削げ落とされている老いた女のエルフだった。

 身体は血塗れで、腕からは大量の血が流れ出ている。そして、それでも抱えているのは4つの生首。どれも若いエルフで、そして皆酷い顔をしていた。

 

 まだ、生きているエルフ。

 悪魔がわざわざ生かしていたということは———

 

「せん、せぃ?」

 

 老女は疲弊しきったうつろな目をして、それでもユターシャを視界に入れた瞬間に目が見開かれる。

 

 全員死に絶えたと思われたエルフの、最後の生き残り。

 

「ユターシャ……」

「先生……先生!」

 

 生きていたんですね、と彼女はその老女に駆け寄っていた。……オレはその関係性を知らないが、おそらく聖女ユターシャの大切な1人だったのだろう。

 

 悪魔とボスがオレ達から距離を取る中、ユターシャはその老エルフの手をとっていた。枯れたはずの目から涙をこぼして、そして彼女の身体を治していく。黒い魔力の光に包まれた老女は、安心しきった顔でユターシャを見つめ続けていた。

 

 愛しげな顔でユターシャを見上げる老女は、しかし全てを諦めたように彼女の頬を撫でる。

 

「……よか、った……」

「今、直しますからッ! 先生、お願いだからっ……絶対、私が生かしてみせますから!」

「せめて、あなただけが、生きてて……よかった……」

 

 ———おそらく。

 

 おそらく、彼女の風穴のあいた腕には彼女が大事に抱えていた4人のエルフの首を吊り下げられていたのだろう。悪趣味な被虐はあの悪魔のやりそうな事で、やつれきった顔はボスと同じような精神的なダメージも伺える。

 

 どれだけの時間、地獄の空間に閉じ込められていたのか。

 どれだけの間、彼女は4人の生首が揺れる様を見続けていたのだろうか。

 

 美しかったのだろう4人は、死んだその時の顔のままで固まっている。老女の腕の中で、憎しみ、後悔、絶望、苦痛を煮詰めた表情をそれぞれが浮かべていた。

 

「……あなたには、ずっと、無理を、させてしまっていたから……」

 

 やつれた老女は、ユターシャを愛おしむかのように手を伸ばす。

 随分と痩せこけて、そして汚れきっていた手だったが……それでも、ユターシャはそれを受け入れるように手を重ねた。

 

「幼い頃、旅に出たいと……言っていたでしょう……? 冒険者になるだなんて、無謀なことを言って……」

「そりゃ、その時は恨みましたけど……でも、私が聖女となってから、色々と便宜を測ってくれたのは先生でしょう? 研究所も、魔術院への口利きも、いろいろとしてくださっていたの、私知ってるんですからね?」

 

 老エルフの身体は治っていく。それなのに、彼女の目はあまりにも達観していた。まるで自分の死期を悟ったような瞳の色は、もう自身のなにもかもを諦めているのだろう。

 

 ユターシャにとってこの老エルフはかけがえのない恩師であり、家族のような大事な存在。

 他の一族全員が皆殺しにされた中で、唯一の生き残り。

 

 悪魔はそれを知っていたからこそ、あえて彼女だけを生かしたままにしたのだろうか。

 

「……貴方が、貴方さえ幸せであれば、もうそれで……それだけで、いいから……」

「ほら! 傷直しましたから、その死ぬ間際みたいな言葉やめましょうよ……?」

「いえ、最期だから……ちゃんと聞きなさい、ユターシャ」

 

 老女の腕は細く、しかし開けられていた穴はもう塞がっている。ユターシャの顔を抑えたその女は、涙で潤みながらもしっかりと見据えていた。

 

 彼女は、自分の命などどうでも良かったのだろう。ただ、ユターシャだけはと、そう願って地獄を耐え抜いたのだ。

 

「……今まで、立場があったから、言えませんでしたが……」

 

 それは、親の愛なのだろうか。

 オレには理解できないものであったが、死の淵にあっても自分以外の誰かを思うその気持ちは確かにひとつの愛の形であった。

 

 その手は震えていて、しかしその目は真っ直ぐに彼女を射抜いている。その声は、掠れて消え入りそうになるほど弱々しいものだった。それでも、はっきりと言葉を紡ぐ。

 

「自由に、自由に生きなさい……誰かのためでなく、自分のために。なんだって、いい。自分が納得できる、最善を選———」

 

 あぁ、だけど。

 

 その言葉を最後まで紡ぐことはできなかったのだ。

 

 

 

 

 

「本当に、それでいいのね? さっきの見て、それでもまだやめないっていうの?」

「あぁ、そのためにこれまで生きてきたのだから。やり通さねばならないだろう?」

「……いいわよ。もう……最期まで付き会うわよ」

 

 

 変容する。変体する。

 

 老女の身体は骨格が歪んでいった。それに耐えきれずに皮膚が張り裂けて、目玉がこぼれ落ちて、爪や歯が鋭く鋭利なものへと変わっていく。

 服が引き裂かれてようやく見えたのは、ユターシャにも刻まれている魔族化の刻印だった。

 

 わかりきっていたことだった。彼らの手に一度落ちて、それから助かるわけがない。

 それでも……一族全員殺されて、唯一の生き残りだった親のような存在だったエルフを目の前で壊されるだなんて。

 

 そうまでして、ユターシャを追い詰めたいのか。

 

「———ッユターシャ!」

「あ、ぁぁあ、ああああ!? なんで、なんで!? なんで、どうしてっ……」

 

 ユターシャの腕の中で巨大な化物に変容していくエルフの老女。慌てて彼女の身体を化物から引き離したオレは、苦しそうに身体を掻きむしる化物に相対した。

 

 視界の中で、悪魔がこちらに手を伸ばしている。

 

「どれだけ足掻こうが、シナリオは変わらないわよ……あぁでも、私の棲家を壊した分の恨み程度は重ねてあげるわ」

 

 悪魔が腕を振るうと、同じように化物も腕を振るう。おそらく操られているのだろうそれは、苦しそうに身体を掻きむしりながらも身悶えていた。

 

 ———Ah……

 

 きっと、口だったものが開く。

 

 ———Aaaaaa……

 

 軋むような音は、はたして声と言えるのだろうか。

 

 g・g・g……ッ! Aaaッ、aaaaaaaa———! 

 

 痛みを吐き出すかのような咆哮と、そしてその鋭い爪で自身の頭部を掻きむしる。血のようなドス黒い液体が噴出して、何かしらの臓物のようなものが飛び出てくる。

 

「もう手は抜かないわよ……全身全霊をもって、貴方を追い詰めましょう」

 

「ぁ、あぁあ……先生……!」

 

 喉が潰れたような咆哮をあげる化け物は、まるで嘆いているかのようだった。悪魔の手と連動してユターシャ目掛けて鋭い巨大な爪が振り下ろされる。

 

 呆然とするユターシャの身体を担ぎ上げてその猛攻を避け続けるものの、攻撃にうつるわけにもいかず、ただこちらの体力を消耗させるだけだった。

 

「くそッ……ユターシャ、移動出来ないか!?」

「あっ……ぁ……い、いどう……? あっ……」

 

 とても巨大なその化物は、窪んで何もない目元からドス黒い血をこぼしている。首だけは拒否するように横に振って、しかし氷の魔法を携えた腕を持って振り撒くように巨大な氷塊を投げ飛ばしてくるのだ。

 

 そうこうしている間にも、悪魔はそれを操作しながらこちらに向かって魔法を飛ばして、ボスも応急手当ての魔道具を湯水のように使って回復を図っていた。

 

「逃げ……? で、でも先生がっ……!」

「無理だッ……つの! どうしようもねェって!」

 

 その間にも、氷塊が次々と飛んでくるのだ。それらを避け続けるのも、いずれ終わりはくるだろう。

 

「あぁ……親が化物になってもまだ足りない、のね?」

「甘い。完膚なきまでに、だ」

「わかってるわよ……まったく、骨が折れるわ」

 

 その爪は鋭かった。その魔法は巨大だった。

 その吐息は熱くて、そしてなにより硬い鱗で覆われた身体は鉄壁の守りを誇っている。

 

 あの悪魔が本気で作り出した化物が、弱い筈がなかった。老エルフという長い年月の神秘を溜め込んだ強者が弱い筈がない。

 オレが知っている魔物とは比較にならないほどの魔力量。ドラゴンと対峙しているかのような生物としての圧。

 

 もしも躊躇なく殺せるのならば、まだ戦いようはあったのだ。

 

 しかし———

 

「ご主人様……せ、先生はっ……おねがいします、先生、を……」

「善処する、が……ッ!」

 

 彼女は、紛れもなくユターシャの大切なひとりだったのだ。ユターシャの気持ちを汲むならば、あの化け物を殺すことはできない。

 

 せめて、あの悪魔さえ倒して化物の操作をやめさせれば……

 

 

 

 

 Gッ、 Guuu・A……Aaaaaaaaaaaッ———! 

 

「あぁ、もしかして……まだ助かる方法があるなんて、甘い幻想抱いてらっしゃる?」

 

 ただひたすらに避ける。考える暇すら与えない攻撃の嵐は、そのどれもが当たっても死に値するものだ。

 

 美しかっただろう大地は無惨にも抉れて凍りつき、どんどん足場すらも危うくなっていく。

 

「無駄なのよ……えぇ、もう全部無駄。彼の計画に狂いはなく、どこまでも貴方を追い詰める筋書きはできている」

 

 氷柱が頭上に降り注ぎ、そして左右からも剛速の爪が迫り来る。

 

「いくら強かろうが、いくら無茶苦茶な存在だろうが、そこに心がある以上は付け入る隙はあるのだから」

 

 襲い掛かる攻撃はあまりにも熾烈極まりなく、もはや逃げる術など失われていた。

 

 そして

 

 

 ———そして、今更気がついたのだ。

 

 

 

 

「ぁ」

 

 咄嗟にユターシャを庇ったが、想像していた攻撃は()()()いた。オレの身体が引き裂かれ、嫌な音を立てて自身の腕が舞う。

 

 腹を、腕ごと斬られたのだ。

 それに気がついた時には、避けられないところまで氷塊が迫ってきていた。

 

「ッあ」

 

 残っている腕でユターシャを突き飛ばす。

 なにも理解できていないといった様子のユターシャは、ただ呆然とオレを見つめ返していた。

 

 

 

「……手は、抜かなかったわよ」

 

 

 

 最初から。

 

 最初から、オレを狙っていたのか。

 

 よく考えればわかることだった。

 ユターシャの周りのエルフを殺して、見せしめのように目の前でユターシャの恩師を化物に変えていたのだ。

 

 わざわざ、ユターシャを狙うはずがない。

 彼らの思惑はわからないが、それでも狙われているのは自分だったのだ。

 

 ユターシャを、苦しませるために。ユターシャの周りの親しいもの全てを殺すために。

 

 

 

 

「え……あ……? ご主人様、が? な、なんで? 待って、直しま……なお、なおすからっ……」

 

 下半身は、氷塊によって潰されていた。この巨大な岩のようなものが容赦なく振り下ろされたのだから、おそらくもう使い物になんてならないのだろう。ぺしゃんこに潰れて、感覚も無くなっている。

 

 そして片腕は飛んで、オレの視界の端に転がっていた。どくどくと溢れる血は熱くて、それと引き換えに身体は冷たくなっていく。

 

「必要なのは魔王の絶望、覚醒。故に聖女様の周り全てを壊す必要があった」

 

「人類において最高峰の強さを誇るボウヤを安全に殺すのに、色々考えたのよ」

 

「自分の今までの人生で積み上げたものを全て凌辱されたのは苦しかった?」

 

「目の前で親のような存在を化物に変えられて操られるのを見るのは、どれだけ悲しかった?」

 

「そして———愛した男を自身のせいで殺して、その魂を永劫蹂躙し続けられると知ったらどれほどの憎しみを抱くのかしら?」

 

 悪魔の声が、どんどんと近くに聞こえてくる気がした。

 それは、オレが幼い頃に交わした契約だからなのだろうか。死にかけて、肉体から離れかける魂があの悪魔に食われようとしているのか。

 

 こんなふうに終わるなんて、と思う自分と、あぁやっぱり碌な死に方じゃなかったと思う自分がいる。

 ユターシャを咄嗟に守ったはいいものの、あんな表情をされていたら未練しか残せないじゃないか。

 

「ほら、もう貴方には何も残されていないわよ」

 

 ……あぁ。

 やっぱり、死にたくない。

 

 死の間際ですら、彼女の笑顔がまた見たいだとかそんなことを思ってしまう。

 ユターシャには笑って欲しい。オレの横で、ただ笑っていて欲しかっただけなのに。

 

 

 

 

 

「いや、だ……」

 

 掠れていく視界。その中で、ユターシャの恩師だった女が簡単に殺されていた。魔術によって編まれた鎌が、何の抵抗もしない化物の首を跳ね飛ばす。

 

 巨大な体から溢れた大量の血が、大地を濡らしていく。噴水のように飛ぶドス黒い液体は、勢いよくユターシャの座り込む足元にまで広がっていた。

 

 そして、彼女の元に4つの首が転がる。

 あの老エルフが大事に抱えていた、彼女の姉妹達の生首。エルフの無念。

 

「ご主人様……貴方、だけは……」

 

 ユターシャの悲痛な呟きが、遠く聞こえる。

 意識が薄れゆく中、オレはただユターシャのことを考えて溶けてゆく。

 

 

 

 

 

 

———間違ってたっていい。

 

———どうなったって、しらない。

 

———だから私の全てを持ってして、ご主人様を

 

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 

 大地が揺れるのは、祝福なのか。

 風がどこからともなく吹き荒ぶのは、世界が饗宴を開くからなのか。

 階梯は最上を迎えた。彼女の翼は、これをもって意思ある肉となる。

 

 見上げるほど強大なその王は、誰もを救おうとして誰1人救えなかった手で自身を抱きしめる。それは体内を守る蛹のようにも、もしくは理不尽な暴力に怯える子供のようにも見えた。

 

 顔と呼べる箇所にある輝くまなこからは、7色の液体が零れ落ちる。その雫が地面に落ちれば、美しい花が咲いて枯れていく。

 

 

せめて、安らかに

 

 

 彼女が口をひらけば、様々な美しいしらべがその空間に響き渡った。

 

 この世界のものにとっては馴染みの深いエルフの鎮魂歌であったり、人間の挽歌であったり。

 または聴き馴染みがないが美しい歌(アメイジンググレイス)、聖書の一節やコーランの序章ファーティハにお経といった音が、響き続けるのだ。

 

 騒々しいまでのそれは、しかし一定のリズムをもって美しいと思える。

 その姿は、あまりにも哀れな終わりを果たした同族を弔う獣の形をしていた。

 

 

 

 やけに長すぎる6本の指、それが翼だったところから枝分かれしてぶら下げられたように5本ずつ揺らめいている。かつては翼だったはずの腕のようなナニカは、それぞれ棺のようなものを掴んでいる。

 

春宴担う祝は悲しみに反転し、ファムファタールへ

 

 それは、運命の女。

 万人への幸福は、たったひとりを狂わせるためのものに。

 

果てぬ赤の憎しみは増幅し、紫の生まれへと

 

 それは、高貴なる者。

 選ばれし只人だった彼女は、超越者へと変質する。

 

嶺爵の騎士が怒りに発狂し、テクフルを失墜に導いた

 

 それは、皇帝。

 彼女が愛したその国は、全てが玉砕していた。

 

陽光讃歌の怨みは浸透し、琥珀のスカラベを産み落とした

 

 それは、日蝕。

 冷え切った冷たい太陽を、彼女はその身で生み出し地獄を無に変えた。

 

 5つの棺には、それぞれのエルフが安らかな顔で眠っていた。柔らかな花に包まれて、様々な葬歌で弔われる彼女達を引き金に、ユターシャは魔王へと至る。

 

私の矜持は死に絶えた———故に、降り立つ繁栄の名は返還し、ここに底尽きた大釜は再誕する

 

 エルフの聖女として彼女を育て、そして彼女を責務と立場で縛りつけた老女の死を悼む。

 もう何も、彼女にはないのだ。

 

 大釜はカリス。何人をも満たすことのできた無限の宝は、彼女の中にだけ向けられる。

 

 

これをもってして、覚醒の忌語は成った

 

 

 不完全な悪魔の呪言とは違う、彼女だけの寿ぎ。

 

 飢餓、日蝕、玉座、紫、運命。

 それらを完全な5つの言葉として、ユターシャは受け入れたのだ。

 

 

 

 

 

 人の形をして、しかし人とはいえない獣の形をした生き物。鱗は眩く光り輝き、角は大樹のように大きく枝分かれして育ち切っている。しかし、枯れたように真っ黒で捻れているのは世界を憎悪しているからなのだろう。

 

 美しいのに悍ましいその生き物は、魔王というのに相応しかった。

 

 

 

 

 



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+ユターシャオルタ・アムールフォルム

 

 

 今からおよそ20年ほど前。

 その男は、あまりにも不遜な態度で佇んでいた。

 

「相変わらず生意気ね、貴方」

 

 この私に対して少しも怯えず、ただ闇に視線を向けるその男。

 

 この国の貴族に生まれ、幼少期から今現在に至るまで完璧を貫き通してきている。その野望は高潔。しかし目的のためならどんな方法も使える、無情な男。

 

 とっくの昔に魂を貰い受ける契約は施していた。

 ただの人間のくせに重たい運命を背負っていて、それが酷く甘美に思えたのだ。

 

「なんで、私を呼び出したの?」

 

 男は簡潔に口を開いた。

 

 それは、人類にとっていずれは解決しなくてはならない問題。魔王という、この世界の浄化装置。

 全世界の()()()()()()から選出される勇者によって滅ぼされるまでは止まらない、この星の自浄作用。

 

 人類の発展を妨げるためのそれは、5000年を生きる私にとっても虫のように不要な存在だった。

 

 悪魔にとって、人間とは愛しい隣人。それを害そうとする存在は敵である。

 

「でも、魔王には勇者じゃないと対応不可なのよ? わかってる?」

 

 確かに、その男は規格外の強さを誇っていた。

 頭も良く、地位も持ち、そして恵まれた肉体も持っている。

 

 とはいえ、その天災は普通に戦って勝てるような相手ではない。人が嵐に立ち向ったって、何も出来やしないのだ。

 

 だが、私の問いに彼は首を振った。

 

「……ふぅん?」

 

 その時は話半分で聞いていた。彼の夢物語は、人類のことだけを考えた正義の上になりたっている。

 

 私の思想と一致しているそれを、不可能と断じても否定はしなかった。

 

 

 

 

 

 ———あぁ、だから今も彼を守るのだ。

 

 私に出来ることはここまでしかない。

 およそ100個ほどにもなるかつての勇者の武器を、私は調達した。魔術をかけて、その男がそれらをすぐに使用できるようにもした。

 

 私が生まれるよりも前の武器もあれば、私が出会ったことのある勇者の武器もあった。

 魔王について調べて、どうすればそれが出現するのかも調べて回った。おそらく、私の生涯の中で最も忙しく動き回った日々だろう。

 

 男には寿命があった。

 だから、私は焦っていたのだ。早くその魂を味わいたいと思う反面、明確な目的のある充実した日々がきっと楽しかったのだ。

 

 

「あ"、がッ……」

 

 魔王の覚醒は、伝承に残るよりもずっと激しいものだった。

 

 普通なら、普段なら私は身の安全を取っていただろう。

 しかし私は男を守っていた。自身の身を賭して、その壁となった。

 荒れ狂う嵐のような魔力は、明確に私達を敵だと認識している。

 

 それもそうだ、魔王を発生させるために多大な犠牲を生み出したのだから。

 

 かつての戴冠式事変や、エルフ国の大虐殺。

 その全てが私たちの引き金だった。その全てが、万全に準備した状態で魔王を覚醒させ自分達の手で殺すためのものだった。

 報いなんて悪魔には似合わない言葉だけれど、まぁ仕方ないな、なんて身体が塵へと変わりながらも思ってしまう。

 

 最初は、ただ魔王がいなくなればいいと思っていただけなのに。いつのまにか、その夢は自分の死よりも重いものとなっていたのだろう。

 

 それも、悪くない。

 死にたくないが、それでも私の大好きな人間を滅ぼそうとする魔王のシステムが今日この日をもってなくなるというならば、許せる気がした。

 

 神が捨てたこの世界。不要と切り捨て、もうすぐ終わりかけたこの世界で、新たな希望が生まれるのも美しいと思う。

 私の愛した人類が、いつかきっと、神にも手を伸ばす日が来るのだ。

 

 この強大すぎる悍ましき怪物に彼が勝ってくれることを祈りながら、私は世界に溶けていく———

 

 

 

 * * * *

 

 

 

「……どこだ、ここは」

「ご主人様っ♡」

 

 暗闇。目をどれだけ凝らしても遠くまで漆黒が続く世界。

 ガバッと背後から抱きついてきたのは、全身にジャラジャラと鎖を巻き付けた、ツノも羽も生えてないただの聖女ユターシャであった。

 

 いつも通りとまでは言えないが、しかし元気な顔をしたユターシャを見るとなんだか酷く心が落ち着いた。

 

「なんだよその……趣味悪いな」

「なんでですかぁ。かっこいいでしょ、鎖!」

 

 かっこよくはない。

 ユターシャの身体全体をぎちぎちと、食い込むように縛り付ける鎖。しかし彼女はそれを痛くもないらしく、平気な顔でニコニコとしていた。

 

 あきらかに異常な空間なのに、それを認識できない違和感だけが喉に突っかかる。いつもの日常と同じような気持ちで、腕に絡みついてくるユターシャと共にどこかへと足を進めた。

 

 そういえば……オレはなにをしようとしていたんだったか。

 

「? なにか、する事でもあるのですか?」

「思い出せなくてな……まぁ、行けばわかるか?」

「どうでしょうね。別に、思い出せないのなら思い出さなくてもいいことなのではないでしょうか?」

 

 それもそうだ、とオレはユターシャの言葉を飲み込む。

 

「それよりも……ご主人様ぁ♡ せっかくの2人きりなんですから、もっとこう……燃え上がるようなイチャラブと言いますかぁ……♡」

「えぇ……? そんなことしてる暇ないだろ」

 

 擦り寄って、もちもちタプタプのでっかい乳をわざとらしく擦り寄せてくるユターシャ。まぁ悪い気はしないものの、どうしてかそんな場合じゃないだろうと思ってしまう。

 

 ……オレは、何かやりかけのことがあったのだろうか? 

 

「やだやだぁ♡ せ、せめてチューしたいですっ♡ ちゅーっ♡」

 

 と、せがむように唇をこちらに突き出してキス待ち顔を晒すユターシャ。ちょっと間抜けなツラで、しかし美人はなにしても美人なんだな。

 

「……」

「…………」

 

 オレがじっと無言でユターシャの顔を眺めていると、その沈黙に耐えきれなかったのか伺うようにそろりと目を開けるユターシャ。

 見つめ合うこと数十秒。先に折れたのは、もちろん彼女だった。

 

「ご、ご主人様? キスしてくださるとか……せめて何かおっしゃってくださいません? あんまり無言で見つめられるとちょっと照れます」

「いや、綺麗な顔してるなって」

「え、えへへぇー?」

 

 と、ユターシャが顔をだらしなく緩めた瞬間に頬を掴み上を向かせて唇を奪っていく。

 

 馬鹿め、油断するからだ。

 

「ほ、ほぉおおおっ!? ちょっ、ずるっ! ずるいっ……うぅ……何今の……ずるすぎます……」

「あ? キスして欲しかったんだろ?」

「そ、そうなんですけどぉ……♡」

 

 何が不満なのか、ユターシャはなにやらぶつぶつと呟きながらもオレの腕に腕を絡めて歩き出した。

 

 絶対になんとかしなくてはならない何かを忘れて、オレはただただユターシャの歩幅に合わせてゆっくりと足を進めていく。

 

 ———足? 

 

「あれ、オレの足……」

 

 たしかにオレは足が潰れた筈なのだ。

 物理的に上から押しつぶされ、骨から肉までつぶ……

 

「でも歩いてるんですよ?」

「あぁ……歩いてる、な」

 

 じゃあ、いいか。

 

 何か絶対に思い出さなくてはならないことを思い出せないオレは、それを無視して歩き続ける。

 

 目的地なんて、どこにもなかった。

 そもそも、進んでいるのかどうかすら怪しい。

 どこまでも続く暗闇の中、ただ見えるユターシャと共に歩いていくだけなのだから。

 

「ところで、その鎖はなんなんだ?」

「気になりますぅ? ま、そりゃそうですよね……雑に言いますと、私が私と入れ替わった事によりこの世に魔王が現れました。そのための勇者カウンター武器、というやつです。鎖という形状なのは、その当時の私が最も必要とした形だからですね」

「はぁ」

 

 魔王だとか、勇者だとか……よくわからない話だ。

 単語としては理解しても、それが何なのかがぼんやりとして理解できなくされている。

 

 どうでもいいのだろうか? 

 本当に……それは、どうでもいいと断じていいのだろうか? 

 

「この鎖には最大最強になるのが必定だった魔王を殺すための効果がありました。とはいえ、彼女が自ら消滅を選んでいるので、もう無用の長物。私は戦わずして勝っているのです。ぶい」

「どういうことだ?」

「大丈夫です。私達は、存在するだけで魔王を倒して私達だけの世界へと至るのですから」

 

 魔王を倒す———その言葉に、胸が締め付けられる。

 

 わからないのだ。何か大切なことを忘れさせられているようで……その違和感に気がつけないようにされている。

 

 オレは先程まで何をしていたんだ? 

 何故、足が潰れるような事になった? 

 

 うろんな記憶を手繰り寄せる。

 進めていた足は止まり、少し先でユターシャがこちらを振り向いていた。

 

 その表情は、少し曇っていて。

 

「ご主人様」

「答えろユターシャ、オレは何を忘れている?」

「気のせいでしょう?」

「ユターシャ」

「ダメです」

 

 ジャラジャラと、鎖がざわめくような騒々しい音が聞こえる。彼女の身体から少しずつ離れて、そしてこちらに迫ってくる鎖達。

 

 おそらく、元々の服装なのだろう清楚な聖女衣を身につけた彼女は、オレと対峙する。

 

「ここは、どこだ」

「……(オリジン)の子宮内です。

 子宮は女性の肉体において最も安全な箇所として作られている。そして肉体の中に新たな肉体を生み出す場所。故に肉体もなく消滅しかかっていた私を、(オリジン)は無理矢理ここに収納したのでしょう」

 

 まぁ、処女懐胎ならぬ淫魔懐胎なんてことをさせないためにも自身を封印したのは正解でした。なんて、ユターシャは笑う。

 

「私は、これで納得したんです。だからもう、貴方はこれ以上は思い出さないでください」

「……なんでだ?」

 

 足元にまで、鎖が迫ってきていた。

 それはオレを束縛するための鎖なのか、しかし彼女の理性がそれを踏み留まらせているようだった。

 

 彼女の言葉のかけらも理解できず、飲み込めないオレはユターシャをただ見つめ返すしかできなくて。

 

 相変わらず、とても綺麗な女だった。

 黄金色の髪はエルフとしての強さと気品を持ち、堂々とした佇まいは国のためにと在ったため。はたしてどれだけのものを魅了したのか、その麗しい美貌と肉体———どれをとってもオレには到底勿体無いはずで。

 

 そんな彼女が、こんなオレを想って狂いだしている。

 

 その瞳には強い愛が。

 誰にも負けないと言わんばかりの、茹だるような狂気の感情が秘められていた。

 

「私が彼女に対抗するはずの勇者としての因子を持っていて、そしてこの世界から彼女を消滅させて、私が貴方を愛しているからです」

 

 言ってることの少しも理解ができなかった。

 きっと、ユターシャにはそれをオレに理解させるつもりもないのだろう。オレが理解できないからこそ、彼女は饒舌に語る。

 

「……ユターシャ、ここを出たいんだ」

「何故です? いえ、そもそも無理ですよ」

「だが……」

 

 ———あいつが、まだ苦しんでるだろう? 

 

 自分で自分の言葉の意味が理解できないが、オレはそう伝える。オレの大事なユターシャは目の前にいるというのに、他に何が大事なのかわからなかったが……それでも、それを忘れてしまうのはひどく恐ろしいと感じるのだ。

 

「あいつ、とはユターシャ()のことでしょう?」

「……あぁ」

「ならばやはり、問題はありません。元々が同一の私達。光の当たる肉体に対して実態のない影のようなもの。コインの裏面か表面かの違いです」

「それでも、嫌だ」

 

 鎖は、足首に巻きつき始めていた。

 

「……ユターシャの全てが、どのような形であれ傷付けられているのを受け入れたくない」

「そうなるのが必定の運命であっても? 私自身がそれを受け入れていても?」

 

 関係ない。

 

「オレは今までの人生全て裏切って、国も教えも何もかも全部無視してお前を選んでるんだ。……魔王だとか、ユターシャが人類を滅ぼすとか、今更興味がない」

 

 ———魔王。

 

 自身が吐き出したその言葉で、少しずつ記憶が蘇る。死にかけたあの時に見た最後の光景、巨大な怪物となったユターシャ。

 

 そういえば先程、ここが子宮だと言っていたか。

 あの巨大な怪物となったユターシャの———腹の中なのだろうか。

 

「外に出たい……ユターシャ、ここから出してくれないか」

「むう……私だって、これ以上貴方の傷付く姿なんて見たくないんですよ」

 

 それに、外に出す必要なんてないですから。

 と、ユターシャは微笑む。

 

「本来のユターシャ……すなわちユターシャ起源(オリジン)は、今をもって最終段階に突入しています。まぁ、お義父さんが邪魔をしているようですが……今代の勇者は私ですし、運命はそう簡単に捻じ曲げられるものではないですから」

 

 ユターシャのかざした腕から白い光の粉が輝き、そこに外の様子が映し出される。

 

 数えきれないほどの輝かしい武器を次々と懐から引き出すボスは、悍ましくも美しい魔王と至ったユターシャに殴りかかっていた。

 しかしその攻撃は、その悉くが無為に返される。音により、物理的に、そして空間を捻じ曲げられて、一切の暴力はその魔王には届かない。

 

「膨大な魔力量を有した(オリジン)は、これより新たな自分だけの高次元を作成し、貴方と私だけの、誰も踏み入れられない理想郷へと私達を射出します」

「……オレと、ユターシャだけの?」

「えぇ。その結果魔力が燃え尽きて魔王としての私は消滅。私は勇者としての役割も完遂しながら、貴方と共に永遠に誰にも害されない世界に行くことができるのです」

 

 それは。

 

 ……それ、は

 

「ユターシャが、消滅?」

「問題はありません。宇宙ロケットだって、射出してから不要になったものを切り離して捨てていくでしょう? コインの裏側であるあちらの私がこの世界における全てを背負い、コインの表側である私が貴方だけの私になるのです」

 

 そんなの、受け入れられるわけがなかった。

 

「嫌だ」

「何故ですか」

「お前を、どうして犠牲にしなきゃならないんだ」

「元からそういう運命でした。魔王と勇者という運命が決まっていたんです。その被害を最小限にするためには、これしかないでしょう?」

 

 ユターシャの鎖が、足全体を拘束し始めていた。

 オレの言葉を受け入れるつもりはないのか、しかし悲しそうな顔を浮かべている。

 

 そして彼女は、オレの頬を撫でた。

 

 またしても忘れかけていくナニカ。

 幸福感で脳味噌が痺れそうになる快感。

 目の前の女の事しか考えられなくて、大事なことがどんどん消えていきそうになる。

 

「愛してるんです、貴方だけを」

 

 ユターシャの声がオレの心に直接響く。

 

「だから、自身の身体がどうなろうとも構わないのです」

 

 それは、彼女の本心なのだ。

 

「貴方の横に私がいられるのであれば、どんな犠牲だって厭いません」

 

 ユターシャの深い深い愛を捧げられる。

 

「お願いします……ただ、私と共にいてください」

 

 

 

 ———深い、口付けだった。

 

 いつのまにか鎖によって全身ががんじがらめにされて、指の一本も少しも動かせない。脳味噌に直接与えられる毒薬は、あまりにも甘美の味がした。

 酔いしれるほど官能的で、狂おしいほど愛おしい。濃厚な彼女の愛は、オレという存在を壊すほどに優しかった。

 

「ユターシャ……」

「ご主人、様」

 

 彼女から与えられる愛で潰されそうになる。このまま溺れてしまえばどれほど心地いいのだろうか。

 おかしくなりそうで、もうおかしくなっていて、だけどただ根底の部分だけは捻じ曲げられるわけにはいかなかった。

 

 委ねるわけにはいかない。

 ただ彼女に愛されるだけの幸せを感受するだけでは、オレはオレでなくなってしまう。

 

 だから。

 オレは、ユターシャの願いに首を振った。

 

 

 

「……オレは、お前を愛してるんだよ」

 

 その感情だけは、彼女に侵食されたくなかった。

 他の何を失ってでも、それだけは揺るぎないものとして立ち続ける。愛に絆され曖昧にならず、燃え上がるような恋心だけはその輪郭を保ち続ける。

 

「お前がオレを想ってくれるように、オレだってお前を愛してるんだ」

 

 こんなに愛されている。

 だけど、だからこそ、オレはユターシャを愛したい。

 

 自己犠牲を受け入れる彼女を、オレは否定する。

 オレを愛しているが故に自身の消費をしようとする彼女を、オレは否定する。

 

 彼女の無償の愛を、ただ受け入れることは出来なかった。

 

「ッ……! なんで」

「愛した女が泣いてるんだ。オレが、慰めてやらないと」

 

 ぎち、ぎちと鎖を引っ張る。

 こんなにも細いのに少しも千切れなくて、オレの肌にミシミシと食い込んでいく。痛みがないのに、オレの肌は傷付いていた。

 

 あぁ、だからどうした。

 

「ねぇ……やめて、くださいよ。そんなことしても無駄なんですよ?」

「ユターシャ」

「その鎖は、入れ替えと封印の鎖。今は貴方の強さと私の非力さを交換し、そしてさらに貴方の肉体を封印しています」

 

 拘束されたオレの顔を撫でて、ユターシャは何度も繰り返しキスを落としてきた。

 舌が口の中に入り込んで、互いに唾液を交換し合う。漏れる吐息は熱く、そしてどろどろに溶け切ったユターシャの目はオレだけしか見ていなかった。

 

「動けないでしょう? だから……なにも考えなくていいではないですか」

「ユターシャ」

「愛しています、ご主人様……」

 

 それでも、オレは腕を引く。

 身じろぎして身体を抜け出させようと、鎖の中でもがく。

 

 無駄だろう、とユターシャは憐れむようにオレの身体をなぞっていった。

 

 ゾクゾクと背筋に快感が流れてそれに思考が奪われかける。相変わらず口元はユターシャにたっぷりととろけさせられていて、彼女が触れる部分から耐えきれないほど熱く切なくなっていく。

 

「ダメだ、ユターシャ……」

「ダメになったっていいでしょう? どうせこれから、私達だけの幸せへと向かうんです。いいも悪いも、何もありません」

「嫌だ、愛してる、オレはッ……」

 

 鎖が音を立てる。壊れない。

 ユターシャ程度の筋力でこの鎖が壊れるはずがなかった。それでもオレは、抗うことをやめられない。

 

 だって、今こうしている間もユターシャは自身を消滅させようとしているのだから。

 

「ご主人様、お願いですから……こうすれば、みんな納得できるんですよ?」

「うるせェよッ……! オレは、誰がどう言おうが……お前自身が否定しようがッ……!」

 

 世界を敵に回す———なんて、陳腐な言葉を使ってもいいと思えるんだ。

 

「お前を、オレだけは諦めてやらねェからな……ッ!」

 

 壊れない鎖。魔王を縛り上げるためのソレが、簡単に壊れるわけがない。

 ユターシャの身体にも巻きつかれていて、おそらくどこまでも伸ばすことができるのだろう。

 

 どんどん、オレの身体は自由が効かなくなっていく。

 ユターシャの涙が溢れた目元を拭うことすらできず、その手を握ってやることもできなかった。

 

「ぐ、ぅッ……!」

「やめてください」

 

 鎖に抗おうとしても、少しも痛くはなかった。痛くないのに、どんどんその金属が肌に食い込んでいく。

 

 入れ替えと、封印。

 オレの筋力はユターシャと同程度に下げられていて、そして肉体の自由すらも封印されているのだ。

 

「無駄ですよ」

「わからねェだろ」

「……諦めて、ください。私は貴方のそんな顔見たくないです」

 

 どんどん、鎖が増えていく。オレの身体に巻きつくソレが、増えていく。

 重さに耐えきれなくなったオレは、いつのまにか膝をついていた。

 

 ユターシャはオレの身体に抱きついて、その柔らかな胸に顔が埋まる。甘い香りによって、頭がぼんやりと溶けていく。

 

 まだ、諦められなかった。

 きっと、鍵はあるはずなのだ。

 

「それとも……私達が理想郷へと辿り着き、死ぬべき私が死ぬ時まで貴方を夢中にして差し上げましょうか? 何も考えられないくらい気持ちよくなってしまえば、貴方は無理にここから出て行こうとしないでしょう?」

「オレは、お前を諦めない」

 

 

 

 ———その時、だった。

 

 

あ、ぁああ……! 

 

 その暗闇の世界に、声が響く。

 

来ない、で

 

 それは、魔王ユターシャの声だった。

 腹の底から出した拒絶の悲鳴は、この空間にも響き渡ったのだ。

 

 はたして、外では何が起きているというのか。ボスが、あれほど大きく強大なユターシャを相手に戦っているということだろうか。

 

「……いえ、大丈夫です。勇者以外に、魔王が負けるはずがない。今はまだ空間創生の段階ですが、ただの凡人に史上最強の魔王が負けるはずがありません。羽虫が飛び回っていたとしても、多少の時間稼ぎにもなりませ」

 

く、る、なァァアアアアアッ! 

 

「……だ、大丈夫大丈夫。ダイジョウブなはずです。だって最強無敵の私がさらに覚醒した姿ですよ? いくら準備しようが、ただの凡人に負けるわけないじゃないですか」

 

 どう考えても、大丈夫な悲鳴ではないだろう。

 外の様子はわからないが、きっと良くないことが起きているに決まっている。

 

 彼女は強すぎるが故に、格下相手にはかなり余裕を見てしまう傾向があるのだ。あのボスを相手にして、いくらユターシャといえど慢心は敵になる。

 

 ……早く、出なくては。

 

「無駄ですよ、行かせるわけがないじゃないですか」

 

 鎖の感触を理解する。

 柔らかく、肌に食い込む様はリボンのようだ。黄金色に光り輝くのは勇者の武器だからなのだろうか。

 

「無駄です。無駄ですから……」

 

 その輝きを見るに、外でボスが使っているのと同じような出自のものなのだろう。

 ならば、所有者に制限はないように思える。魔王を倒すための武器は、誰の手に渡ろうが十全に機能するようだ。

 

 ユターシャの身体を縛り上げているのも、彼女が自身を封印しているからだろうか。

 なんとか鎖を引きちぎろうと力を込めるも、やはり鎖はびくともしなかった。

 

「ご主人様、暴れないで……どうか、私を受け入れてください」

「……ユターシャ」

「んっ……好き、好きです……」

 

 じゃらりと音が鳴る。

 オレの身体にも、ユターシャの身体にも幾重に巻きつかれたそれはどんどん重くなっていた。

 

 甘い口づけに、切なげで一途な言葉を耳から流し込まれて頭の奥から溶け出していく。ドロリとした愛を囁かれる度に心が絆されそうになってしまうのだ。

 

「どうして欲しいですか? いえ、言わなくたって、全部してあげます。おかしくなっちゃうくらいどうか溺れてください。気持ちよくしてあげますから……ね?」

 

 身体中が埋め尽くされる。

 その鎖は彼女自身なのだろうか。もう、オレの身体にはどこも素肌が見える場所なんてない。全てが鎖に閉じ込められてしまい、呼吸すらもままならないのに多幸福感で満たされてしまう。

 

 それでも。

 

「……やっぱり、お前とオレは出会うべきじゃなかったな」

「そう、でしょうか」

 

 ここにいたのがオレじゃなければ、きっとユターシャは幸せのままでいられたのだろう。オレでなければ、そのままユターシャの中で溺れてしまえた筈なのだ。彼女の願いは叶えられた筈だ。

 

 だけど、オレはユターシャを愛していた。

 どうしようもないほど、彼女を愛している。

 

「だから、ごめん」

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 それは、少しの誤認を無理矢理呼んだだけだ。

 ユターシャが操る鎖。それは、オレの方が多く巻きつかれていた。彼女の身体をも封印しているために、()()()()()()()()()()()()()()()()()と念じたのだ。

 

 勇者でなくては操れないなんてルールもない。

 それに、ユターシャはあまりにもオレに心を開きすぎていた。

 

「あ、れ……? なんで、だって私の、武器っ……!」

 

 先ほど見せられた映像ではボスが様々な武器を使って戦っていた。アレはそのどれもが歴代の勇者の武器だった。

 つまり、勇者でなくても勇者の武器を扱うことはできる。

 

 ……ならば、オレが彼女の武器を奪うことだってできるわけで。

 

「あ、あ、あ? あぁぁぁっ……だめ、え、なんでっ……!?」

 

 ユターシャの身体に巻き付いていた鎖が、どんどん離れていく。彼女の身体が、鎖から解放されていく。

 

 武器の所有権を()()()()()

 オレの身体を縛り付けていた鎖は、オレの意志に従い身体に巻き付いていく。

 

「いや、いやいやおかしいでしょッ……? なんで、そんなこと、おかしいって!」

「ユターシャ」

 

 オレの服にしがみつくユターシャの、その手をそっと離させる。彼女の身体を抱きしめて、そして鎖を使って何もかもを入れ替えていく。

 

 彼女の全ての苦をオレが背負えばいい。

 そしてオレは、ユターシャに優しくキスを落とした。

 

「ごめん」

「ご、ごめんじゃないですよぉっ! やだ、うそ、なんでですか!? だって……」

 

 縋り付くユターシャは、どうしたってオレを進ませたくないようだった。

 

「……魔王は、殺されるべきなんです。助けないで、ください……」

「それは、人々のためなのか?」

「そうですよ! 私も、世界中の人々も、みんなみんな幸せになれるんです! 私の半身で全てが丸く治るなら、それでいいでしょう!?」

 

 ならば、別にどうでもよかった。

 この世界の全てが無くなろうが、どうなろうが、オレにはユターシャだけがいればいいのだ。

 

 先程からずっと叫んでいるのだろうユターシャに意識を向ける。上を見上げてもどこまでも真っ暗で、しかしそちらから彼女の嘆く声は聞こえていた。

 

 行かなくては。

 この世界の誰からも恨まれ嫌われる運命にあるユターシャを、オレが守らなくては。

 

「我儘なんだ、オレは」

「知らないですよぉ……っ! 私、わたしだって、わがままなんです……いやだ、やだやだ、行かないでくださいッ……!」

「ごめん」

 

 ユターシャから奪った鎖で、彼女の身体を縛り上げた。もがくユターシャを尻目に、オレはこの暗闇の空間に鎖を伸ばしていく。

 魔術などの知識がないオレだが、その武器を操ることは十全に出来ているようだった。

 

 この暗闇は、魔王ユターシャの子宮内。

 ならば、そこから鎖は繋ぐことができるはずなのだ。

 

「いかない、で」

 

 涙を流しながら懇願するユターシャに、オレは笑顔で答えてやった。

 もう、振り返る必要もない。

 オレは彼女を愛している。そして彼女もオレを愛してくれていて、オレ達は互いに互いを愛し合っている。

 

 だから、オレは———

 

 

 

 

 



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=2人きりハッピーエンドのその先へ

 それは、小さい命だった。

 うっとおしく飛び回るその男を、何度も何度も叩き潰す。弾き、遠ざけ、押し殺す。

 

 私には、やらなくてはならないことがあった。

 

 悲しみで身が引き裂かれそうなほどの苦しみに浸りながらも、自身の中にもうひとつの世界を創成していく。(オルタ)がかつて体験した、異世界を渡った時に見えた光景。世界の膜をその魂で感じた経験をもとに、それを新たに生み出そうとしているのだ。

 

 異界を渡るのは、転生者の(オルタ)の役割だ。

 故に、私は異世界を無理矢理に生み出す。その結果として私は残骸となるだろうけれど、私とご主人様、そしてこの世界の未来を考えればそれが1番正しいのだろう。

 

 なのに、なんで邪魔をするのだろうか。

 

 集中しなくては出来なかった。異世界を作り出すイメージは難しくて、生半可には出来ない。鳴り響く葬儀の音楽が私を誘う中、暴力のような魔力を自身の中でこすり合わせる。

 

 あの憎たらしい悪魔は、最初に殺すことができた。男を庇って消えていくその瞬間、どこか満足そうな表情をしていたような気がする。

 その後、数多の武器を身体に纏わせた男は私の肉体を少しずつ攻撃し始めたのだ。

 

 痛みはない。

 そんな痛みよりも、同胞を失った痛みの方が辛かった。

 

 男の身体は何度も何度も壁に叩きつけられる。骨だってもう折れている筈で、身体中のあちこちから血が噴き出している。

 なのに、何故か男は何度も何度も立ち向かってくるのだ。

 

来ない、で

 

 なんで、殺せないのだろうか。

 こんなにも本気で潰そうとしているのに、私の攻撃はかつての勇者達の鎧によって塞がれる。物理的に潰そうとしても殺しきれなくて、遠くから壊そうとしても避けられ、かわされる。

 

 男の身体は、満身創痍だった。

 こんなに簡単に傷付けることはできるのに、なぜ殺しきることは出来ないのだろうか。

 

来ないで

 

 (魔王)を殺せるのは、(勇者)のはずだ。

 

 なのに、どうしてこの男はここまで善戦しているのだろうか。私には、やらなくてはならないことがある。こんなところで手こずっている暇はなくて、鎮魂と創生を行なったのちに速やかに死ななくてはならない。

 

 この世界はどこまでだって残酷なのだ。

 魔王を倒したものが勇者になるのではなく、勇者に該当するものが魔王を倒さなくてはならない。その使命感はあまりにも重く、ひとつの身に2つの魂を宿した私には抗えないものだった。

 

 そして、考えて、相談して———その結論が、私の死だったのに。

 

来ないで、くださいよぉ……! 

 

 ちゃんと死にますから。私が自ら死を選びますから。

 なのに、男はそれでも私を殺そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

「私が、勇者にはなれない私が、殺さなくてはならない」

 

 血反吐を吐きながらも立ち向かうその男は。

 

「この世界を、運命から解放するために」

 

 全身の全てが壊されているはずなのに、それでも私に迫り来る。

 

「神がいないこの世界で、ただ制定されたルールに従うだけの世界に———私が、刃を入れる」

 

 そのために、どれだけの犠牲が生まれたのかはわからない。彼の夢はあまりにも眩く、そして決意があった。

 

 この星がそのシステムを運用してから、ずっと繰り返されてきた因果。星がエネルギーを維持し続けるための、惰性からくる作用。

 もうこの世界に神はいないのに、決められたことを決められたように動き続けている。

 

「手始めは、綻びでいい。いずれそこから人は切り拓くだろう。いずれ我々は到達する———生きる全ての生命に権利がある星へ、手を伸ばすのだ」

 

わたし、は……

 

 

 

 

 男が、私の核に迫る。

 剣を用いて突進して、その勢いのまま頭蓋を破るつもりだろうか。

 

 頭上にまで来たソレに対して、私は手で自身の身体を守る。太陽の日差しを遮るように、私は障壁を作る。

 

 ———あぁ、しかし。

 

「この、程度でェッ……とまれる、ッ……かァ!」

 

 私の片手は、弾き飛ばされた。

 

「何人を殺してきたと思う!? 希望のために、未来のためにどれだけの犠牲を出したと思う!? ここまできたのに、それが無駄だったなんて出来るわけがないだろう!?」

 

 もう片方の手も、男の剣が私の肌を突き破ろうとしていた。

 

 勇者の武器は、そのどれもが私にとっては劇薬にしかならない。突き立てられるその場所が、燃えるように熱くて苦しい。このまま手のひらを握って仕舞えば潰し殺せそうなのに、ソレすらも出来なかった。

 

 手から、血が噴き出る。

 

くるな、くるなくるなッ……来ないでぇえええッ! 

 

 いよいよ、穴が空いた。

 その空洞は私からすれば狭いが、しかし男の身体はその穴をくぐって差し迫る。

 

あぁぁッ……ァァアアアアア! 

 

 咆哮。至近距離での大音量は、本来であれば簡単に男の頭蓋を割るくらい出来たのだろうけれど。

 パチン、パチンと音を立てて崩れたのは3、4個の勇者の武器であった。

 

 迫る、迫る迫る———

 

 男の持つものは、もはや一本の剣しかなかった。

 全身は焼け爛れ、粉砕し、まともである場所の方が少ない。

 

 なのに、止められない。

 何をしても、どうやっても男の進撃を止める事ができない。地上で最も強いであろう私が、さらに魔王になったこの姿で……どうして、ただ1人の人間を殺すことが出来ないのだろうか。

 

 そんなはずは、ない。

 だって、だってこんなの、まるで勇者みたいじゃないか。

 

 

 

 

 

 

……ごめん

 

 その時

 ご主人様の声が、聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 私の身体から、何重もの鎖が内から飛び出してくる。身体の中から、幾重にも鎖が現れていく。

 

は……? 

 

 それは、私の鎖だった。

 私を封印し、私を殺すためにある鎖。

 

 肌の下から現れて、私を拘束している。痛みはなかった。苦しみもなく、しかし何かが急速に無くなっていく。

 

 黄金色に輝くチェーン。その勢いは止まる事なく、徐々に私の身体の素肌面積をなくしていく。それと同時に鱗だったものは柔らかな肌に戻り、身体は収縮していき、魔王という私は小さくなっていく。

 

「ごめん、ユターシャ」

「ぅ、あ? ご主人様……?」

 

 なんで目の前にご主人様がいる? 

 

「あ、ぁぁぁぁっ!? まっ、だめ、なんで!?」

 

 ちからが。

 わたしの、魔王としてのなにかが、取られていく。

 

 身体は小さくなっていき、かわりにご主人様が私の因果を盗んでいく。交換に与えられたのは、私の運命よりもずっとちっぽけな運命力と言えるものだけ。等価交換なんて許してもらえないほどのそれを、ご主人様は私に与えた。

 

 変容する。

 

 変質する。

 

 私の巨大な身体は、ご主人様に奪われていた。その血肉が全て瞬時に作り替えられて、肉体はご主人様で構築される。

 見上げるほど大きくて、悍ましい生き物へと姿を変えたご主人様は、それでも微笑んでいた。

 

 裂けた口、歪な身体。それでも、私に向けて微笑んでいたのだ。

 

「ごしゅ、じん……さま」

 

 ご主人様に追い出された私は、魔王という運命を吸い取られてただのエルフで淫魔なユターシャへと成り下がる。魔王は彼へと変わり、私は空中へ放り投げられていた。

 

 それでも、死に至る剣は止まらない。

 

「いや、いやだ……!」

 

 取り返さなきゃ、いけないのに。

 

 もう、目も開けられないほどに私は疲れていた。

 地獄を滅ぼして、魔王になるために自らの手で覚醒を行ったのだ。魔王だったからこそ補填されていた魔力は底を尽きていた。

 私自身の魔力は、この星のエネルギーを1人で解決できるほどだった私の魔力は、もう限界を迎えていて。

 

 それでも、手を伸ばす。

 だってもう私には彼しかいない。

 

「だめ、おねがい……っ!」

 

 

 

 彼の眼前に、男の剣が差し迫る。

 

 

 

「なんで、殺すなら、私にしてっ……!」

 

 

 

 光が瞬く。ご主人様が、大きくのけぞる。

 

 

 

「あ、ああぁぁぁ……!」

 

 

 そして。

 ご主人様の後頭部から、血まみれの男は落ちていった。

 

 

 

「いやだ……なん、で……なんで、なんでなんでなんでっ……!」

 

 手を伸ばす。私の魔術があれば、きっとまだ回復できる筈なのに———私の身体は、走ろうとしても全身が悲鳴を上げて動かせない。

 立ち上がって歩き出そうとしても、肉体が急激な魔力の増減に追い付かずに動かせなかった。

 

 這いつくばって、ご主人様の元へと芋虫のように近づいていく。止まらない涙を拭いもせず、何度も何度も魔力切れで気を失いかけて、それでも私は彼の元へと近付いていく。

 

 

 

 倒れていく、ご主人様。

 とても、美しいとは言えない姿だった。

 

 全身に鎖を巻き、真っ黒な姿をした死神のようなそれ。呆気なく額を貫かれた魔王は、満足そうに微笑みながらも倒れ伏せていく。

 

 手を伸ばしても、全然届かなかった。

 魔力を放っても、届かない。

 無力で無意味な私は、叫びながらも崩れていくご主人様を眺めることしかできないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、彼は。

 エルフの聖女が宇内の血潮にエネルギーを捧げるためのその穴に、深く落ちていった。

 

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 

 オレは、死んだのだろうか。

 そりゃそうだ。額を貫かれたら、いくらなんでも人は死ぬものだ。

 

 いや……人じゃなくて、魔王になったんだったっけか。あまりにも一瞬のことだったから思い出せないが、オレは確かにユターシャから魔王というものを奪い取ったのだ。

 

 そして、ボスに殺された。

 そのまま立ち続けることが出来なくなったオレは、倒れ込んだ。その先が、この星の中心まで伸びる穴だったのだ。

 

 

 

 

 落ちて落ちて、登り登り、辿り着いたのはユターシャが開いたあの扉の中と同じ空間だった。

 どこまでもどこまでも、黄金色が続く世界。この星の中心部にして、エネルギーだけが渦巻く不思議の異界。

 

 本来、オレは死んだらルシファーの腹に消える運命だった。しかし彼女はユターシャによって滅ぼされて、そして地獄も壊されている。

 行き場の無くなったオレの魂は、きっと一度ユターシャと共にここに来ていた事もあり、うまく辿り着けたのだろう。

 

 とはいえ、この時間も距離もないこの異次元は魂の受け入れ場所というわけではない。死にたくないという感情を提げながらも、オレの魂は徐々に崩壊していくのだ。

 

 

 

 歩いていく。

 歩けば歩くほど、自身の魂が崩れていくのがわかる。

 ふと後ろを振り向くと、魔王だったオレの遺体が転がっていた。ひとつの魂だけの状態になって、それでもオレは何かに導かれるように進んでいく。

 

 滅びていく。

 オレの魂が、進めば進むほど壊れていく。

 それでもオレは歩き続けた。立ち止まって仕舞えば、今度こそ無くなると思ったからだ。歩き続けていた方が、まだマシだと思えた。

 

 感情は消えていった。

 悲しみ、怒り、楽しみ、喜び———どんどんと剥がれていくのがわかる。オレが、小さく小さくなっていく。

 

 それでも最後まで残っていたのは、ユターシャを愛する感情だけ。何もなくなったオレは、それでもユターシャを想う心だけが強い輪郭を保ち続けていた。

 

 

 

 はたして、どれだけ歩いたのだろうか。

 たったの数歩なのかもしれないし、何千何万kmも歩いたのかもしれない。オレはもう、自我のない亡霊のような状態になりながらも、そこに漂っていた。

 

 そして。

 

 

 

 ———それを、やっと認識したのだ。

 

 

 

 

「……あぁ」

 

 眠っていたのは、理解し難い存在だった。

 あまりにも大きすぎて、あまりにもそこにあるのが当たり前すぎて理解できないもの。空気を見えないのと同じように、オレは、それを死にかける直前の矮小な魂となるまで理解できなかったのだ。

 

 暖かいはずなのに、冷たい。

 動いているはずなのに、止まっている。

 

 その巨大なそれは、生命とはとても言い難くて。

 ただ、この星を肉体として持つひとつの魂だったのだ。

 

 

 

 人の魂はどこに宿るのか? 血潮を動かす、心臓なのだろうか。

 ならば、オレがいるのはこの星の心臓なのか。宇内の血潮の中心点、魂の宿る場所だというのか。

 

 それは、何万年も眠り続ける死にかけのこの星そのものだった。昔々の人は、きっとこれを神と呼んでいたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 少し触れただけで、その魂の情報は流れ込んできた。

 

 人でいうところの感情というものが、それにはなかった。生存本能というものがなかった。欲望もなく、希望もなく、ただ浮かぶだけのそれ。

 

 彼はこの世界の定義を司る、方向性のない創造神だったのだろう。

 

 彼はその星を自由に作ることが出来た。黄金のエネルギー体の上から地表の外殻を作り、その上に温かな空気の膜を張る。

 真似をしたのは、彼が夢に見た遠い異界。それよりももっと良いものを作るために、その異界で夢見る人々のイマジナリーをもとに構築された世界。

 

 魂というものを、定義した。

 自身の持つそれを、彼の世界全てに適用した。

 

 彼は生み出した。彼は創造を繰り返した。そうする事しか出来なかったから、その通りに作ったのだ。ルールを次々と生み出し、生命を溢れさせ、進化を促した。より良いものを作るために、破壊を生み出した。

 

 何度も。

 

 繰り返して、自身の作る生命体に請われる度に彼は変わっていったのかもしれない。

 元々機械のように動いていた星の魂は、苔むすようにおかしくなっていった。何億年以上の月日をかけて、ゆっくりと壊れていったのだ。

 

 それは、彼の制定したルールによるもの。

 ユターシャがかつていた世界を見習って制定した永遠のものはないというルールを自身にも当てはめた彼は、星よりも先に彼自身の魂に綻びが生まれてしまったのだ。

 

 故に、この世界にはもう神はいない。

 神といえる存在は、死を迎えるだけの眠る植物となっていた。

 

 

 

「……ああ」

 

 オレは、それに手を伸ばした。

 ユターシャのために生きたいと願って、そして生きられるためならなんだって使えばいいと思ってしまったのだ。

 

 肉体は、とっくに死んでいた。

 だから、ここにある死にかけの魂とまだ動かせる肉体をもらえばいいだろう。そうすれば、またユターシャに会えるのだ。

 

 鎖を、ゆっくりと伸ばしていく。無防備な魂はなんの抵抗もなくオレに食われていき、そしてオレは対価として脆すぎる自身の魂の強度を与える。

 

 魔王になる感覚とは比べ物にならないほどの、潰されるような情報量。星そのもの、神と呼ばれる存在にはそれほどの質量があって、ただの人間だったオレには耐えられるようなものではなくて。

 

 自身の人間性が、失われていくようだった。どんどん思考は機械的に、無機質なものに塗り替えられていきそうになる。

 

 

 

 

 

 ———だけど。

 

 オレは、どうしても失わないひとつの想いがあるのだ。

 

 それさえあれば、オレはまだ戦うことができる。たとえ星の濁流に飲み込まれようが、ユターシャを愛する心がオレという存在をはっきりとしたものにする。

 

 愛しているのだ。

 どうしようもないほど、彼女のことを愛している。

 

 

 

 

 

「ユターシャ」

 

「ユターシャ、愛している」

 

「ユターシャ……ユターシャ……」

 

 

 

 

 

 

 この星の生まれから長い長い歴史を辿っていく。動かぬ生命にすら在る生存本能と防衛本能。今を生きる生命がこの形に至るまでの、繰り返される生と死。

 

 死を悲しみながらも多数を殺して生きる。生を喜びながらも必ず訪れる死に悲嘆に暮れる。そんな矛盾を抱えて、それでもなお生き続けていく。その先にある、果てしない闘争の世界。刑罰のために拷問が繰り返される地獄よりも、無秩序な現世。

 

 だから———神はいろんなシステムを作ったのだろうか。

 自身の作った子供達が何度繰り返しても苦痛の世界を生き続けるのだから、せめてそれに秩序を与えようとしていたのだろうか。

 

 無機質で無感情な神様は、それでも生命を愛していたのかもしれない。憐憫の愛ともいえるそれは、オレ達のような人間ではわからない高すぎる次元から見下ろして愛でていたのだ。

 

 あぁ、本当に悍ましい上位存在。

 生命を個として見ず、生命の全体的な調和を尊ぶ創造主。

 

 

 

「でも、オレは……」

 

 

 そんな彼から全てを奪い、抜け殻を与えた。

 

 そこに在るのは、寒くひとりぼっちで震える神様だった何か。人でもなく獣でもなく、感情すら持たないそれはあっという間に溶けて消えていく。

 

 星の情報量を耐え切ったオレは、人間性を持ちながらも万象を手にする。神が記録し続けていたこの星の生誕を全て吟味し、そしてその悍ましさに顔を顰めた。

 

 前代の彼ではないのだ。

 何故こんなにも醜く最悪な生命の溢れる世界を作ったのか理解に苦しむし、オレは彼とは違うのでその全てを愛するなんて義理はない。

 

「……ユターシャ」

 

 彼女以外は、何もいらなかった。

 ユターシャ以外の何者も、オレは必要と思えなかった。

 

 前代の彼が作ったこの地上の外殻は邪魔である。自身の生まれた地上ですらオレにとっては不要なもので、この星の血潮と同化したオレは自身の肉体を大きく広げた。

 

 星を覆うテクスチャ……大地だとか海とか空気とかが、黄金の濁流に飲み込まれたようだ。オレの身体に触れた瞬間に、数多の生命が全て無へと帰る。

 死ではなく、存在の消滅。

 オレが軽く腕を伸ばしただけで、広い地表は星の奥深くへと溶けてしまったのだ。

 

 ユターシャがいるところは、わかっていた。

 だから、それ以外の全てを溶かしていく。

 

 彼女が泣いている場所から向かって、正反対の星の裏側から腕を伸ばしていった。光と同じ速度で、オレはその生命全てを食らっていく。

 地表はどこまでも続く黄金色に書き換えられた。

 

 悲鳴すらあがらない。それほどまでに一瞬の煌めきは、星を覆い尽くしていく。時間の流れがない異次元の星の内側が、星の外殻を埋め尽くしていく。前任者の彼が見捨てて眠りにつき、惰性で運営され続けていた世界。

 

 オレには、不要なものだから。

 

 

 

 

 魂の概念も取っ払った。肉体の概念も無くした。

 地獄も天国も不要となり、生命は存在を抹消されるか永遠となるかのどちらかしか選べない。

 

 今まで、何人もの命をこの手で奪ってきたのだ。今更この世界の全生命の存在を消そうが、なんの心も痛まなかった。

 

 ……だけどユターシャは、悲しむだろうか。

 

 

 

 

 

 

「ごめん」

「ご主人様……?」

 

 彼女が泣き伏せていた大地も、その横で死にかけていた義父も、全てを消し去ってしまった。忠誠を誓った国も無くして、もうこの星にはオレかユターシャしかいない。

 

 きっと、オレが死んでから数秒も経っていないのだろう。ユターシャは目を見開いている。

 

「私……移動、したのですか?」

「いや、この世界の地表を全てオレが平らげただけだ」

 

 きっと、彼女にはまだ意味が伝わっていないのだろう。満点の星空と、黄金色の海。オレはいつもと同じ肉体を製造して、ユターシャの前に立つ。

 

 彼女に連れられて行ったあの異世界に、オレ自身が至ったのだ。ユターシャが勘違いしても仕方がないだろう。

 

「なんでも、いいだろ」

 

 彼女の涙を拭って、抱きしめて。

 

「……ご主人様……生きて、るんですね?」

「あぁ。生きているよ」

「よかった……!」

 

 冷え切った彼女の身体を、黄金に浸して温める。

 

「愛してる」

「えぇ……えぇ、私も、私もです」

 

 もうユターシャとオレしかいない。

 彼女の魂のふたつを、共に永遠のものとして固定した。オレの魂と接続させ、永遠を共有する。

 

 星そのものになったオレと、ただのユターシャ。

 彼女のためだけの神となったオレは、血潮の中に彼女を招き入れた。彼女の呼吸も生命も、その何もかもがオレで構築されていく。

 

「言えよ、叶えてやるから」

「……なにを?」

「なんでもいい」

 

 どうせもう、時間なんてものはこの世界にはないのだ。

 

 終わりがあるとすれば、この感情がオレとユターシャからなくなった時がこの星の終わりなのだろう。互いに溶けてなくなって、その時にはいずれ星は消えてしまうのかもしれないが。

 

 時を測る存在がいるから時間が在る。

 この世界には、きっともうそんなものはいない。

 

「もう一度、星を再生するか? 争いのない、白痴の愛玩動物だけが闊歩する地上を作ったっていい。お前の望みなら、なんだって叶えてやれる」

 

 黄金色の腕で、ユターシャを抱きかかえた。そのまま、原初の羊水の中で抱き合う。

 

 神へと至ったのだ。

 どんな願いも叶えられるし、どんな世界でも創造できる。ユターシャが望むのであれば、今までと似たような世界を再度作ることもできるだろう。

 

 そんなオレの言葉を受け入れたユターシャは、困ったようにへにゃりと笑った。

 

「……なんでも?」

「あぁ、なんでもだ」

「それは、例えば私を神様にしてくださいとか、最強系TSヒロインにしてくださいとか、チーレム主人公にさせてくださいとか……そういうことも?」

「そういうのがいいのか?」

 

 神への変換はまぁ出来るとして、最強系TSヒロインというのは……前任者の観測した知識から推測するに、ユターシャはもうそれに該当しているのではないだろうか。チーレムは……同上。オレがいるのだから、もう満たされているだろうに。

 

 もっと、別のことを頼むと思っていた。

 例えば時間の巻き戻し———は出来ないにせよ、エルフ達が生きていた頃の完全再現だって出来る。悲しみのない世界を生むことだって、今ならば容易いのだから。

 

「なら……貴方を、私が幸せにしたいです」

 

 お前がいればもう幸せなんだけどな、と思うがどうやら違うらしい。

 

「本当に、どんな願いでも叶うのなら……私は、貴方に幸せを知ってほしい」

「もう、満たされてるぞ? お前がいて、お前を全ての苦痛から遠ざけた世界なんだ」

 

 オレはそれだけで満足している。だが、ユターシャは首を振った。

 

「人として、の幸せを」

「……お前がそれを望むなら」

 

 星に地表が、地上に空気が、そしてユターシャが青い空を望むのであれば。人としての営みをユターシャが望むのであれば、それを叶えてやろうとオレは作り替えようとした。

 

 だが、伸ばした手はユターシャに絡め取られて。

 

 

 

「いえ、そんな綺麗事はいりません」

「……?」

「貴方が醜いと否定した生命を、わざわざ作り直すなんていやですよ」

 

 ユターシャは、オレをどこまで見たのだろうか。

 永遠を与えるために接続して、そこからユターシャに伝播したのだろうか。

 

 オレを理解しているユターシャは、ゆっくりとオレの顔を覗き込んだ。

 

「……私は、エルフとしての自分をもう清算しました。過去を歌で見送りました。ですが……貴方は、きっと何ともない顔をしながらその罪を重いとも思わず背負うのでしょう?」

 

 優しい表情をしていた。

 民を導き幸せを願う聖女は、オレを見つめている。

 

 人間だった頃に、命を奪った罪。

 自分の醜いと思ったものを全て否定して、消滅させた罪。

 自分の命を繋げるために、神の魂を奪った罪。

 

 オレにとっては平然としていられるものも、ユターシャは哀れに思ってくれる。

 

「きっと貴方の生まれがそれを苦だと思わないものにしていても、人にその業は重たいですよ」

「オレ、もう神になったんだが?」

「中身はご主人様でしょう?」

 

 ユターシャは微笑んでいた。

 どこまでも愛おしむように、慈しむように微笑んでいる。

 

 どうしようもないオレなんかを、もう十分に救われているオレをさらに幸せにしようという傲慢な女。この星の命の全てを消し去ったオレを幸福にしようとする、鎮魂の聖女。

 

「……どうか、安らかにうたた寝を」

「オレはどうなる?」

「幸せな夢を、見続けましょう。過去を忘れて、苦痛もなく、ただ幸福であればいい。貴方は等身大のただの人間として、幸せな夢を見続けるのです」

 

 等身大の人間というなら、地上を作って命を作り直して、そしてそこに分身体を送り込めばいいのに。

 だが、ユターシャは再度首を振った。

 

「貴方は、生命を醜いと思ったんでしょう? その中でも、私だけは許してくれた」

「あぁ」

「……美しいと、貴方が思ってくださったものだけで構築された世界を。私は貴方に、幸福な夢を見てもらいたいのですから」

 

 ……そして。

 

 そしてオレは目を瞑る。ユターシャに誘われて、夢の世界へと落ちていく。

 何度も入ったことのあるユターシャの夢の世界。かつてよりずっと広大で、どこまでも終わりのない永遠が広がる世界。

 

 全てが、ユターシャで構築された無限の世界でオレは全てを忘れていく。罪を、苦痛を……出会いから何もかも、全てを清算されていく———

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 ぴりりりり、ぴりりりり……

 

「ご主人様ぁ、朝ですよ! 起きないと講義に遅刻しちゃいますよぉ!」

 

 朝からやかましいメイドがオレを起こしにやってくる。目覚ましが鳴っているんだからそれはわかっていて、オレは身体を起こしていた。

 

 いつか見た、男の部屋だ。テレビがあって、服が乱雑に散らかっている。……あとでメイドに掃除させておこう。

 机の上に転がるボールペンと、その横にはオレの名前が書かれてあった。

 

「おはよう、ユターシャ」

「おはようございます、ご主人様!」

 

 彼女の作った朝食を食べて、そして大学に行く準備をする。適当な服を着て、そして鞄の中には彼女が作ったお弁当箱を入れた。

 

 いってらっしゃいと彼女に見送られながら、オレは外に出る。そして数歩歩けば、いつものように友人がオレの肩を叩いてきた。

 

「おっはようございます! いやー今日もいい天気ですねぇ」

「はいはい、おはよう()()()()()。いい天気だな」

 

 そして、彼女の後ろにいる少女にも視線を向ける。ランドセルを背負って、その長い金髪を柔らかな三つ編みにしたユターシャの妹。

 

「あの、えっと……そのう、おはようございますっ……」

「おう、おはよう()()()()()()()()

 

 すこし引っ込み思案な彼女の頭を撫でて、それからオレは友人が腕を組んでぐいぐいと寄ってくるのを無視しながらも歩いていく。

 

 そしてまた暫くすると、彼女と同じような赤いランドセルを背負った少女たちがこちらに走り寄ってきた。

 ポニーテールにしていたり、ツインテールにしていたり、いろんな種類がいる。

 

「ユターシャちゃん、おはよぉ! あ、お兄さんもおはようございます! あとお姉さんも!」

「おはよう、()()()()()()()()

「おはようございます……って、あれ? 私ついでですかぁ!?」

 

 オレの腕に乳を無駄に押し付けていたユターシャは、小学生に付属品扱いされてフンガーなどと怒っている。小学校はこの十字路を左に行ったところにあるから、彼女の妹達とはここでさよならだった。

 

「今日も勉強頑張ってこいよ」

「はい! いってきまーす!」

 

 そしてまた暫く歩いていると、今度は高校時代の後輩とばったり出くわした。制服を見事に着こなして、今代の生徒会長を務めている彼女は今日も柔らかな金髪を風に靡かせながらも歩いている。

 

「先輩、おはようございます」

「おはよう()()()()()

 

 オレの腕に絡みついている友人とは反対方向に、ぴったりとくっついた生徒会長のユターシャ。彼女とは高校時代に偶然出会って以降、何故か好かれたようでよくオレにひっついてくるのだ。

 彼女が志望しているという大学も今オレが通っているところである。

 

 少しばかり押しが強めな彼女だが、後輩から慕われるというのも、まぁ悪くはない。

 

「私も、あと一年で先輩と同じ大学に入りますから、それまで待っててくださいね?」

「ん? あぁ、そうだな。楽しみに待ってるよ」

 

 そうこうしていると、またもや曲がり角から旧知の顔が出てくる。コイツもオレよりひとつ年下の女子高生をしていて、部活の後輩だった女だ。

 

「先輩! おはようございますー」

「あぁ、おはよう()()()()()。お前朝練は?」

「今日は部活お休みなんですよぉ」

 

 おっとりした後輩だが、これでも全国大会に出るような猛者である。大学は推薦をもらってオレと同じところに行くと言い張っている。

 

「生徒会長も、あと先輩のお友達も、おはようございますー」

「えぇ、おはようございます」

「おはようございます! いやぁ、センパイはモテモテですねェ? やだー私嫉妬しちゃいますぅー」

「どうでもいいから腕離せ。無駄にデカイ乳が熱いんだよ」

 

 ウザ絡みをしてくる友人をひっぺがすと、即座にその間に入り込んできたのは部活の後輩だ。そして先ほどまで友人に取られていた手を取られて、ぎゅっと貝殻繋ぎされてしまう。

 さらに、反対側にいた生徒会長もオレの手を貝殻繋ぎで奪っていて、両手に女子高生という変な光景が出来上がっていた。

 

「……部活の後輩だか知りませんが、先輩は私のものですよ?」

「生徒会長が率先して異性不純行為しようとしてますぅー。いーけないんだー」

「あーもう、お前らなぁ!」

 

 歩きにくくて、オレはさっさと2人から手を奪い返すとポケットの中に突っ込んだ。いがみ合ってる2人の後輩は昔から露骨にオレにアピールをしてきて、全く困ったものである。

 それぞれブレザーとセーラー服のミニスカートが風にひらりと舞いながらも、オレは少しだけ見えた下着を無視することにした。

 

「おはようございます、今日もモテモテですねぇ」

「……おう、おはよう()()()()()

 

 女子高生2人と別れてから再び友人と歩いていれば、もう1人の大学からの友人と偶然出会う。ズボンを履いて、今までの奴らと違って胸はなかった。

 ある意味オレの心のオアシスとも言える、同性の友人である。

 

 ……とはいえ、顔はどっからどうみても女。とんでもなく美人で、女装したら下手な女よりもモテるだろう。というかコイツ本当に男なのか? 

 

「で? よりどりみどりな中でヒロインは誰にするつもりなんですか?」

「私! 私!」

「やめてくれよ……全く、みんな揃いも揃って浮かれやがって」

「あれ、ちょ、無視ですかぁ!?」

 

 騒ぐ女友達のユターシャを無視しながらも歩みを進めていく。自称・男のユターシャは苦笑しながらも、そんなオレの横で物腰柔らかく穏やかに微笑んでいた。

 

 その後も何人も何人も、何故か今朝はオレの親しい人と出会うタイミングが多かった。うちにいるメイドの妹のドジな中学生とか、子供の頃となりの家に住んでたお姉さんとか、幼稚園の頃の先生とか、やたらと色んな人に声をかけられる。

 

 大学で講義の席に着く頃にはすっかり疲れ切っていて、オレは1限から机の上に顔を突っ伏していた。

 

「ありゃ? ちょっと属性多すぎましたかね?」

「まぁまぁ、ご主人様もいろんなところから選べた方が嬉しいでしょうし、いいと思いますよ」

「お前らなぁ……オレの頭の上で、話してるんじゃない」

 

 両脇を友人に固められたオレは、深くため息をつきながらも……でもこんな日常も悪くないな、なんて思ってしまっていたのだ。

 

 ……ユターシャの思う日常系ハッピーって、こんなに安っちいんだな。

 

「そういえば、こんなチケットあるんですけど、使います?」

「ん?」

 

 自称・男の友人であるユターシャが差し出してきたのは、海の見えるホテルの二泊三日のチケットだった。印刷されている写真はなぜか見覚えがあって、懐かしいなぁなんて思ってしまう。

 

「僕、その日バイトで行けないんですよね。よかったら誰か好きな人でも誘って行ってきたらどうでしょう?」

「はい! はいはい! 私行きたいです!」

 

 オレの隣で元気よく手をあげるユターシャ。しかし……

 

「これ平日だぞ? お前もう出席日数も単位もギリギリだろ、ダメだ」

「そんなぁー!」

 

 男友達であるユターシャからありがたくもらったチケットをしまいつつ、誰を誘おうか頭の中で考えた。……といっても、こんな平日の日にオレの都合に合わせてくれそうなのは1人しかいないわけで。

 

 スマホを開いて、手早く予定を開けておくようにと連絡をしておく。すぐに既読がついて、返信にかわいらしいスタンプが送られてきた。

 

「早いですね、誰を誘ったんですか?」

「ん? まぁ……おんなじ相手ともう一回行くのも、悪くないかと思ってな」

 

 ひょんなことから我が家で養っている、メガネでメイドな金髪のエルフ淫魔だ。

 

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 

 は、と気がつくとそこは家の玄関の前だった。

 幸せな夢を見ていた。ユターシャに囲まれて、よくあるハーレムの中心にオレがいた———気がする。

 

 今のオレは、家庭を持つ1人の男だ。

 会社に勤めてもう幾年も経ち、穏やかな家に帰ってきたオレは鍵穴に鍵を刺す。

 

「ただいま……ァ?」

「おかえり、パパっ!」

 

 扉を開けて、すぐに腹に衝撃が走る。

 下を見ればまだ幼い娘がオレの腹に抱きついていて、ニコニコと笑いながらもこちらを見上げていた。

 

「ただいま、()()()()()。いい子にしてたか?」

「いい子にしてたよ!」

「どうですかねぇ? さっきまで『パパいつ帰ってくるの?』って、ずーっとお母さんの邪魔してたじゃないですかぁ?」

 

 ゆったりとした足取りでこちらに向かってくるのは妻・ユターシャ。髪を1つにまとめ、エプロンをしている様はまさしく若いお母さんと言った風貌である。

 

 娘の両頬にキスを落としてから抱き上げて、そして妻にもキスをする。ちゅ、と優しい音がして、目の前には大切な家族がいた。

 

 そう、家族だ。(ありえない)

 

「あのねパパ、今日はハンバーグでね、ユターシャも手伝ったの! パパのはね、1番おっきいやつにしてあげる!」

「そうかァ……楽しみだな」

「さ、ご飯にしましょうね。もう出来てますから」

 

 娘は、妻に似てとても美人な女の子だ。

 綺麗な金髪にくりくりとした可愛らしい目元。大きくなったらどこぞに嫁に出さなくてはならないのかもしれないが、今からでも将来の男を殺したくなるほどに愛おしくて仕方がない。

 

 溺愛するかわいい娘と、穏やかでオレに寄り添ってくれる優しい妻のいる家庭。理想をそのまま描いたような夢の世界。オレなんかには過ぎた贅沢だ。

 

 温かみを感じさせるごくありふれた木製のテーブルには、湯気が立つ食事が用意されていた。部屋は暖かく、壁には娘が学校で描いた絵が飾ってある。

 3人揃っていただきますをして、口に入れたハンバーグは優しい味がした。

 

「それでねー、学校でねー」

「あぁもう、ご飯食べながらお話ししちゃダメでしょう?」

 

 必死になって無邪気に今日あった色んなことを教えてくれる娘と、そんな娘を宥めながらも口元に笑みを浮かべている妻。当たり前のように繰り返される日常の一コマ。

 

 汚れ切った手で触れるのが怖くなるほど幸せで、怖くなってしまう。こんなにも———

 

パパ? (思い出さないで)

「……なんでもない」

 

 なにかを思い出そうとして、そうして妻と娘がこちらを向いているのに気がついた。途中まで思考していたことを放棄して、ハンバーグを口に運ぶ。

 

「忘れちゃうってことは、どうでもよかったんだよ。ね、パパ?」

「そうかもなァ……ま、パパにはユターシャ以上に大事なことなんてねェから、きっとどうでもいい事だな」

 

 大きくなったらパパと結婚する、なんてベタな事を語る娘。食べてしまいたいほど可愛くて、目に入れたって痛くない。

 

 幸せだなぁ……ずっとずっと今が続けば幸せなのに。

 

「ふふ、早く食べないと冷めちゃいますよ」

「そうだな、せっかくユターシャが作ってくれたんだもんな?」

「うん!」

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

「……ご主人様?」

「ん、あぁ……なんだ?」

 

 オレはまたしても夢を見ていたようだ。

 大学の友人からもらったチケットで海辺のリゾートにやってきていたはずなのに、さっきまで幸せな夢を見せられていた気がする。

 

 

 

 

 

 ———この世界にはオレか、ユターシャしかいない。

 

 しかし今のオレにはそれをおかしいと気がつけるための思考は奪われているようだった。人を滅ぼした過去も思い出せないし、ただ制限がかかる中でなんとなく認識しているものもあって。

 

 だから、オレとユターシャの関係がこんなにも平穏じゃないことだって、忘れているはずなのに覚えている。

 

 目に見える全てが美しいのは、その全てがユターシャで構築されているからなのだろう。

 

 穏やかな海が目の前に広がっている。夕日を背にした彼女は、波の中で足を踊らせながらもこちらに笑いかけていた。

 可愛らしい水着に身を包み、しかしそれを見るのはオレしかいないこの世界。彼女の美しい身体をオレは近付いて抱きしめる。

 

「どうですか? ご主人様。明日が来ない毎日は」

「幸せだ」

 

 彼女が唇をオレに向けて目を瞑った。夕日に照らされたその顔はとても綺麗で、美しくて、そしてオレの心をどこまでも満たしてくれる。

 彼女の顎を支えて、そっと優しく口付けた。

 

 

 

 オレとユターシャしかいない、どこまでも終わりのない幸せな世界。彼女の中で、オレは安寧の夢を見続ける———

 

 

 

 

 

 

 -終-

 



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=IFエンド(時間巻き戻し・エルフの故郷は燃えなかったver)

世界の問題も解決するしユターシャも救済されるし生命全部救われるので、これもまたハッピーエンドだね!(白目)

時間操作を正規ルートで出来なくしたのは、この終わりにはしたくなかったからです。

彼は自分の幸福を度外視する自己犠牲の男なので、この道を選べるなら選びます。ユターシャが否定しようが、誰が否定しようが、主人公だけはユターシャを愛しているゆえに自分と出会わなければよかったと思っているので。
愛し合った日々を否定して、出会いすら否定してでも、ユターシャの不幸を取り除くためならなんでもするでしょう。

でもこれは流石に不幸。なので非正規ルートです。
本編あとがきも下の方にあります。



 

 星の主導権を、手に入れた。

 それは高次元まで至る全能の掌握。全てが自分の都合で操作できる、万能の支配。

 

 

 

 やり直せるんだ。

 出会った最初から……いや、もっともっと前からやり直せる。

 

「ご主人様?」

 

 時間の糸を解く。ユターシャの悲しみの因果を、緩めていく。

 

 エルフの国が燃やされたのは、不幸か? 

 婚約者に貶められて、追放されたのが不幸か? 

 最初の婚約者が、死んでしまったのが不幸か? 

 

 ……いや、最初からだ。

 1番最初、ユターシャが魔王と勇者の因果を両方とも持っていた事が誤りだったのだ。

 

「じゃあ、それを無くせばいいんだな」

「? 何を……」

 

 こんなに優しい女が、背負うべき運命ではなかった。

 きっと彼女からそれを奪えば、どこにでもいる平凡なエルフとして産まれてくるのだろう。そうなればオレと出会うこともなく、ただの村娘のエルフとして生まれて結婚して子供を作って死んでいくのだ。

 

 そうすれば、きっとユターシャは悲しみを知らずに生きていける。

 

 こんなにちっぽけな身で、エルフの国民を追悼したユターシャ。親兄弟全てを壊されて、その死すら陵辱されたユターシャ。

 彼女の身体で受け止めるにはあまりにも重すぎるその因果から、オレは彼女を救わなくてはならない。

 

 ユターシャに降りかかる不幸の運命を、全てオレが平らげる。

 

「ただの……平凡でどこにでもいる、ただのユターシャになってくれ」

「いやです」

「人並み以上の悲しみなんて知らなくていいんだ。民の死を嘆いたり、自分の運命を呪ったり……そんなこと、気にしなくていいんだ」

「私から、幸せを奪うのですか?」

 

 違う。これは、オレのエゴだ。

 

 オレなんかと一緒にいて幸せだとユターシャは言ってくれる。だが、それ以上にユターシャの苦しむ姿をオレは見たくない。

 

「……今以上の不幸にはならない」

「不幸は耐えれますが、貴方がいない毎日は耐えられない」

「オレを知ってしまったから、そうなんだろ? 大丈夫だから……もとからその幸せを知らなければ、お前は普通でいられる」

 

 最初からわかっていた。

 世界に愛されるような、宝石のような女。オレ如きが触れていいものではなかったはずなのに、いつのまにか恋してしまっていたのだ。

 

 叶うなら自分のものにしてしまいたいが、きっとこんな血と憎しみにまみれたオレでは彼女を幸せにすることなんて出来ないのだろう。

 

 自分以上にユターシャを愛せる者なんてきっと現れるはずがない。だが、オレほどユターシャを幸せに出来ない男もいないはずだ。

 

 彼女にはオレのような悪い男を好きになんてなってほしくない。どこにでもいる普通のエルフとしての人生を歩めば、きっとその方がいい。

 

「……なに、言ってるんですか?」

「愛してる」

「私の話を、聞いてください」

「ユターシャ」

 

 本当に、心の底から怒っているという表情のユターシャ。

 だけどもう決めたのだ。

 

「お前を救済する。そのためなら、お前からオレを奪ったっていいだろう?」

 

 世界が回っていく。呆然と、オレに見捨てられたかのように見つめるユターシャの姿が引き伸ばされていく。

 点、線、空間、そして時を手で掴んで捻じ曲げた。自身の肉体をそこに生成して、今の時間軸を全て否定する。

 

 ユターシャとの毎日、出会い、その何もかもが無に返される。覚えているのはオレだけでいい。ユターシャの枷になるのであれば、その幸せだった思い出すら無に返したって構わない。

 

「……なんで」

 

 彼女に、救いを。

 それがオレの願いなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———とある90年ほど前の、エルフの国にて。

 

 ユターシャの母親の前に、オレは静かに降り立った。いつか昔に着ていた鎧を被り、ユターシャから奪い取った黄金色の鎖が身の回りで揺らめいている。

 

 産気づいている女。周りには産婆がいて、そしてオレを見てみな息を呑んでいる。

 

「……お前の不幸を、オレが全部背負おうか」

 

 今、まさに胎から生まれようとしているユターシャ。オレはその母体に、鎖を巻き付ける。

 与えるのは、オレに唯一あるちっぽけな幸福を。

 奪うのは、ユターシャの魔王としての因果を。勇者としての運命を。

 

 平凡で平穏な、どこにでもいる普通のエルフになればいい。

 きっと、ユターシャと会えるのはこれが最後なのだろう。それで、よかった。元々オレ達は出会った事自体が間違いだったのだから。

 

「どうか、お前の命はお前だけのものになってくれ」

 

 そして、その場を後にして早々に立ち去っていく。背後からは泣き叫んでいるユターシャの産声が聞こえた。

 

 愛している。

 愛しているからこそ、オレは振り返らない。

 

 彼女はこのままオレを知らないまま、平穏な生活を過ごせばいい。深い悲しみのない、ただ普通のエルフとして彼女は生きるのだ。

 

 きっと幸せになれるはずだ。

 不幸も訪れず、身の丈にあった生涯を送ってくれればいい。

 

 彼女の大切な人が、みなユターシャを愛しますように。

 ユターシャの居場所が、彼女の死まで安泰でありますように。

 

 友に囲まれていてほしい。兄弟に、親に、そしてまわりの人々から愛されて……オレの分まで、幸せを与えたのだからきっと大丈夫だろう。

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 何年も経つ。

 

 幼子は少女へ、少女は大人へ。

 酸いも甘いも経験し、しかしそれは生涯の試練として乗り越えられるもので。

 

 100年が経った。200年、300年———

 

 

 * * * *

 

 

 

 

「おばあちゃーん!」

「はいはい、どうしました?」

「なんか面白い話してぇー」

 

 エルフの国、離宮。

 

 エルフの聖女として活躍し、人間や他種族との交流を推進し、そして華やかな生涯を締めくくろうとしている老女の最後の城。

 子宝にも恵まれた。夫となった賢王も彼女を愛した。

 

 どこかの誰かが夢に描いたように、きっと誰もが良いものだったと言う生涯を終えようとしている。

 

 親や恩師の死に目に立ち会い、涙と笑顔で見送った彼女。生まれてきた子供たちが、皆健康で元気に活躍する様を見届けた彼女。

 

 美しい湖畔の横に立つ東屋の中で、そのエルフの老女は微笑む。

 

「……じゃあ、おばあちゃんの秘密を教えてあげましょうかね」

 

 もう十分に長生きした。

 夫の死に目にも立ち会い、この国の安泰を確信したのだから悔いはない。

 

「おばあちゃんの産まれる時にね、死神が現れたのよ」

「死神? って、なぁに?」

「さぁ……真っ黒で怖くて、黄金色の鎖を使うらしいわよ」

 

 なにせ生まれたばっかりの時の話だ。覚えていないし、全く知らない。

 老女の母親から聞いただけの話を、孫にそっと教える。

 

「おばあちゃんの秘密———生まれた時に、死神に祝福されたのよ」

 

 もしかしたら、知らない誰かに祝福されたからこんなに幸せな生涯を送れたのかもしれない。今となっては誰にも聞けないが、きっとそうだったら素敵だと老女は目を瞑る。

 

 はたして、その死神というのは誰なのか。

 老女は知らなかった。知らないまま、幸せな生涯を閉じていくのだ。

 

「おばあちゃん、眠いの?」

「えぇ……そうね、少し眠ろうかしら……」

 

 瑞々しく、穏やかに息を引き取っていく。

 柔らかな風が吹いた。未来ある子供の笑い声を横で聞きながらも、老女の瞼がゆっくりと落ちていく。

 

 それは彼女の知らない、彼女を愛した誰かの望んだ終わり方。魔王となった男に愛された聖女は、魔王が望んだようにそれを知らないまま美しく命を散らしていく。

 

 

 

 

 




以下、本編あとがき。


すごいざっくり言うと主人公くんはビーストⅢ/RでユターシャはビーストⅢ/Lです。

・主人公くん(ご主人様)
地底深くにある星の根元に到達して星の頭脳体と同一化、巨大な1人となった。
殺生院キアラのように自分1人の快楽を独り占めするわけではないけれど、自分とユターシャ以外の全ての生命を否定しているあたりも近い。ちなみに戦闘能力は魔法が使えない代わりに肉体チートで最強を誇っている。

主人公くんはセックスの時にマグロになりがちだし騎乗位セックス大好きだぞ。
最近流行りの『ヒーローは世界を救うために貴方を犠牲にするけど、ヴィランは貴方を救うために世界を犠牲にする』を地でいくタイプ。

・ユターシャ
複数人の自分を用いて、この世全ての愛に対応して1人の人間を夢の中に堕落させる魔王。
ちなみに彼女のツノデザインの元ネタは殺生院キアラ。元々ユターシャにはビーストⅢ/LR両方の特性を持ってもらい(なので2人格持ってた)ご主人様を永劫に幸せにして星を滅ぼす予定だったのですが、片方はご主人様くんが担ってくれました。よかったね。よくねぇよ。

ユターシャオリジン(起源)
元々産まれる予定の方。当初は観測器であり、愛によって目覚めた結果紆余曲折の末魔王として覚醒。観測器の役割をやめてからはオリジンと呼ばれる。魔王としての運命を背負ってた。

ユターシャオルタ(代替品)
あとから入ってきた転生主の魂。男。
勇者としての運命を背負ってた。だから異常なまでに旅に憧れてた説がある。
彼がいたからこそ魔王は生まれられなかったので、ちゃんと勇者としての役割を果たし続けていた。

・ルシファーちゃん
ヤギ型貧乳ちっぱい吊り目高齢ロリババアおねえさん
ユタ子の正反対を行くタイプのちゃんと悪役。
人類大好きだし、他種族が嫌いという正統派悪魔。マイクロブタかわいい〜って言いながらとんこつラーメン食べるタイプ。

彼女が産まれてからの時代、もうとっくの昔に神は終活して睡眠に入ってた。とはいえ昔々の言い伝えを知っているので存在だけは微かに聞いている。
いずれ人類が星の頂点に立てばいいと思っていた。人のご主人様が神に代わってる(人が頂点に立った)ので、概ね願いは叶いました。よかったね。

・お義父さん
ジョジョのファニーヴァレンタイン大統領みたいな人。
というかまんま彼なとこある。自分の思う正義のために『いともたやすくえげつない行為』を敢行できちゃう人。人類の未来のために身寄りのない無垢な子供達を暗殺者に育て上げたりする。

彼の希望は星に対する参政権を生命が持つこと。
まぁ……概ね叶ったのでしょうか。叶ってるといいね。


強さ的には
ユターシャ>>>>>ご主人様>ルシファー>お義父さん

とはいえ主人公補正や慢心デバフ補正が入るので
お義父さん>ご主人様>>>ユターシャ>ルシファー

お義父さんは主人公補正が強いので、慢心デバフの入った魔王ユタ子と戦ったら意外と勝てます。
ルシファーはドヤ顔で強者ぶってるけど、他3人が化け物級だし補正がすごいかかるので陰に隠れてしまいます。普通にしてたらまぁ強い。


・ユタ子最初の婚約者が死んだ事件に関して
お義父さんの差金。そこからの戦争も含めて、彼の掌の上でコロコロしてた。
ちなみにお義父さんは当初、主人公が殺した中に魔王候補がいると思っていた。

その際に主人公がなんらかのミスをしてお義父さんからの信頼を失ったけど、それに関してはあまり考えてないです。きっと何かがあったのでしょう。

なんで戴冠式事変かって?
そりゃちょうどその頃にfgoで戴冠式があったからじゃよ。

・宇内の血潮
fgoでいう星の内海。
ユタ子の職場にして、ご主人様が落下した穴は黄泉比良坂のようなもの。霊墓アルビオン。

機関的に言うと、宇内の血潮が政府などの国家運営そのものに対して天国や地獄が国営刑務所のような感じ。
そもそも神自体は星に生きる者をメインで取り扱っていたので、魂とかの管理はあまり触れていなかった。とはいえモデルケースの世界(ユタ子の前世)では死後の世界が信じられていたので、じゃあ作ろうとなった次第。

・神様
長生きするの疲れちゃったね。


* * * *


本編にて、一応人類が死ななくても済むルートもありました。
(ご主人様が地表の生命を否定しなかったパターン)

その場合だと、ご主人様がユタ子を宇内の血潮に召し上げてから自分の分身を作成。ごしゅとユタ子オリジンで星の管理を行いながら、分身体とユタ子オルタで星を見て回る。

なのでまぁ人類は消えない(まぁエルフは死んでるけど)+オリジンレクイエムに同族滅亡の悲しみは吸い取られて人の世界で生きるユターシャはノーダメージスタートっていうのも考えました。(ある日起きたらエルフで淫魔になってた現代男くんスタート。エルフ時代を思い出せないので口調も男)

多分これは割と幸せなんだろうけれど、個人的には『悍ましい形をした者たちが、他者から見たら恐ろしすぎる究極的な愛で溶け合ってる』方が美しいと思えるので、これは正規ルートにはなりませんでした。というかなんでもできるエロって魅力的じゃん?そっち書きたかったんだよ。



・時間巻き戻しでエルフを助けるルート(IFのバッドエンド)(本作)

ユタ子は主人公と出会う前まで巻き戻されて、エルフの聖女にはまぁなるけれど元の婚約者と結婚する(政略結婚なので受け入れざるを得ない)(主人公と出会ってないから別れもないので不幸ではない)し、ご主人様はユタ子から魔王の因子を全部奪って自分が魔王になって消滅を選ぶので、普通に地獄です。

ちなみに星の抱える問題は義父に託せばかなりいい方向になんとかしてもらえます。

主人公は自分の幸せよりもユタ子の幸せよりも、ユタ子が不幸な目に遭わなければいいの救済魔です。ユターシャだけのための救済の魔王です。

自分なんかがユターシャに見合うわけがないと言う自己否定感が強いので、過去に戻れるとなったらユターシャの意見を聞かずにユターシャとの出会いを無かったことにしてしまいます。この世界の住人はみんな納得できるし不幸を感じてる人もいないけど、読んでる側は救われないでしょう。作者も救われない。



・エルフ一族滅亡直前に戻って義父を止めるルートは?

ユターシャが時間操作能力を入手した場合にのみ表れるルート。この場合ご主人様はユターシャをエルフ国に置いて逃げ出します。

ユターシャから逃げ出します。

ユタ子としてはエルフの国で一緒に暮らすか、ラブラブ駆け落ちしましょう!になるのですが、主人公目線になると『エルフ国の次期皇妃だった女と出自不明の薄暗い過去持ち人間が釣り合う訳がない』の自己否定によって普通に逃げ出します。

だって主人公が身を引けば、ユターシャは国に守ってもらえる立場になるんですからね。好きな男と添い遂げられなくても、その身だけは安全な場所にあり続けるからね。
駆け落ちも、まぁ主人公自体が薄暗い人間でユターシャを汚したくないと思っているので主人公的には選びたくないです。

で、主人公が逃げ出すとユタ子はヤンデレになります。

魔王問題が解決してない時点で悪魔と義父殺してるので問題の先延ばしにされてた魔王が発症。
世界を滅ぼしながら主人公を探し出して腹部収納監禁ルート。この場合だとメリバに該当しますね。



* * * *



次話はごしゅユタイチャラブセックスの予定なのですが、そこから先は作者の性癖を大いに反映させたものとかも出てくると思います。


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TSエルフ聖女淫魔メイド、多様シチュ対応してドスケベ性活を謳歌してるらしい
イチャラブベロチューめおと交尾でイキ気絶


恋人セックス・キス手コキ・乳首責め・焦らし・ベロチュー・正常位・キスハメ・名前呼び・二回戦・フェラ・パイズリ・パイズリフェラ・騎乗位・めおとセックス・イチャラブ


 

 

 

 それは、夜だった。

 

 いつものように自宅で、いつもと同じようにソファの上で寛ぐ。疲労感の溜まっていたはずの体は温かな家の空気でほぐされていた。

 時刻は、23時前。テレビはお笑い番組(ずっと砂嵐)が流れていて、しかしオレ達はそれを注視しているわけではなかった。

 

 ぼんやりと座っていただけだったのに、隣に座っていたユターシャが距離を詰めてきた。広いはずのソファでピットリとくっついて、顔をコチラに向けられる。

 

「なんだよ?」

「……えへへ」

 

 顔を近づけてキスを落とせば、そのままユターシャはオレの首に腕を巻き付けてきた。

 

 ぐいぐいと乳を押し付けられて身体が密着しながらも、何度も何度も繰り返し角度を変えて唇が近付く。

 同じシャンプー使ってる筈なのに、どうしてこうも良い匂いがするのだろうか? うっとりとしながらも目を瞑ってキスを繰り返す彼女の顔を、オレはされるがままに見下ろしていた。

 

「んぅ……♡ ご主人様……♡」

「ベッド、行くか?」

「もうちょっとだけ、このまま……♡」

 

 ちゅ♡ ちゅう♡ ちゅっ♡ ちゅ♡

 

 夕飯が美味しかったとか、温かい風呂が心地よかっただとか、そんな当たり前の幸福に身を浸らせる。テレビのリモコンに手を伸ばして電源を切ったオレは、そのままユターシャに身を委ねるようにソファに倒れ込んだ。

 

 穏やかな、夜だった。

 

「ご主人様……」

「ユターシャ、いいぜ」

 

 好きにしろ、なんて言いながらも彼女の頬に手を伸ばす。髪の毛に指を絡ませて、ユターシャの顔を近付けて、オレからも優しく口付けを落とした。

 

 ユターシャの温かな指先が、身体を弄っている。

 

 もうすっかりとスイッチの入っていたオレは、ゆっくりと焦らすような手つきに夢中になっていた。甘くて、いじらしくて……本当にコイツは、オレの事をよく理解している。

 

 ズボン越しに、優しく触れるか触れないかで撫でられたら……なぁ? 

 

「あはっ……えっちですね?」

「なんだよ、悪いか」

 

 嬉しそうに微笑むユターシャの顔が可愛くて仕方なかった。2人きりの空間で、オレとユターシャは穏やかに浅く服越しに肌をすり寄せる。

 もう脱ぎたいし、脱がせたいとも思ってしまうが……まだ、このゆっくりとした空気感をじんわりと味わいたかった。

 

 ゆるやかなくすぐったさに笑っていれば、またキスされる。今度は少し長めに舌まで絡められて、ゾクッとした感覚が背筋を駆け抜けた。

 ───ぴちゃり、と水音が響く。

 

「んっ……ユターシャ」

 

 ズボン越しにチンポを爪先でカリカリされて、すっかり興奮しているところに甘い刺激が走る。今すぐ襲いかかって仕舞えば早いのに、オレは彼女に身体を委ねてその刺激を受け入れていた。

 

 あぁ……早く、ブチ犯したい。

 

「ご主人様ぁ……♡ 固く、なってますね?」

「お前のせいだろうが」

「はい♡ 私で、こんなにしてくださって……♡」

 

 ユターシャの手が、オレの手を誘導して胸元に押し当てられた。ムンニュリと柔らかい弾力が堪らなくて、優しくそれを楽しむ。

 ユターシャも、そんな甘っちょろい刺激では足りないのだろう。物足りなさそうに、ねだるようになんどもオレの口元に吸い付いてくる。

 

 ちゅぱっ……♡

 

「やらしーなぁ」

「おきらいですか?」

「いや、最高だ」

 

 ブラホックをパチンと外して、オレの上に覆いかぶさるユターシャの乳首に指を這わせた。丸くした爪でカリカリと苛めれば、ひっそりとオレの太ももに股を押し当ててくる。

 

 まったく、本当に下品でいやらしくてスケベなマゾ女だ。こんなんだから、オレみたいなのが夢中になってしまうのに。何度味わったって、飽きないくらいに満たされる。

 

「腰ヘコつかせんなよ」

「んぅ♡ だって、だってぇっ……♡ ご主人様、わたしっ……♡」

 

 口の中をいやらしく舐め回されて、身体を擦り寄せられて……指先で引っ掻くだけだったズボン越しの勃起を、ゆっくりと手のひら全体で撫で回されている。

 

 固くなった乳首を弾いたりするたびに甘い声が上がって、お互いに興奮度は増していった。

 

「ご主人様……♡ ご主人様、わたし、切ないっ……♡」

「あ? カマトトぶってんじゃねェよ……そんな甘ったれた言葉じゃなくて、乳首だけ弄られて我慢できない腰ヘコマゾ女だって言えや」

「そんなぁっ♡ やぁっ、ひどいぃっ……♡」

 

 なんて言いながらも、はふはふと犬のように呼吸しながらもオレの口元に吸い付くユターシャ。酷いこと言われてるのに余計に興奮したのか、オレの太ももにパンツ越しまんこを強く押し付けてきやがる。

 

 あーくそ、チンコイラつかせやがって……

 

「もうすこしベロ絡ませて下品なキスしてくれよ♡ ほら……」

「んちゅう♡ はっ♡ はふっ♡ ご主人様ぁっ♡ ちくびぃ♡ わたし、きもちよくてぇっ……♡」

 

 ちゅば♡ といやらしい音を口元で立てるものの、容赦なく乳首を甘ガチ虐めすると口が止まってしまう。気持ち良すぎて身体に力が入ってしまうのか、ユターシャのベロが硬直してしまうのだ。

 

 荒っぽく余裕のない呼吸。顔面0距離で浴びせられるトロ声の喘ぎ。そのくせ腰ヘコだけは止まらなくて、チンポを撫でさする手もどんどん早くなっている。

 

「乳首を理由にベロキスおろそかにすんなやッ……本当に無能なマゾだなお前♡ 吐息あっついんだよクソが……」

 

 ズボン越しに、まるで手コキしてるかのようにギンギンになってる勃起の輪郭を手でシコシコしてるユターシャ。顔はすっかりと赤く染め上がっていて、発情しきっているトロ顔があまりにも魅力的だった。

 

「キスは怠ける癖してチンポねだりはサボらねぇんだな……品性疑うぞ」

「ご、ごめんなひゃっ……♡ はふぅっ♡ だって♡ だってぇ♡」

 

 かり、かりかりかりかり♡

 ちゅう♡ ちゅ〜〜〜っ♡ ちゅ♡ ぢゅるるるっ♡

 

「ほんッと敏感乳首マゾがよォ♡ なに乳首だけいじめられてトロ顔晒してんだよッ♡ 今から乳首弱いの矯正するか? なぁ、6時間くらいず〜っとマゾ乳首だけカリカリ虐めてやったらちったぁ耐性つくか? 乳首いっぱい虐められたいだろ?」

「しょんなぁっ♡ らめれしゅ♡ ゆるし、てっ♡ そんな、乳首だけおかしくなっちゃう♡ 乳首へんになっちゃうぅっ♡」

「もうお前変なんだよマヌケがよぉ♡ あーくそ、人のチンコ痛めつけるプロだなお前ッ……」

 

 いじめられて気持ち良くなっているマゾメス。それでも必死にオレの舌に吸い付いて、ベロキスご奉仕を繰り返している。パンツ越しに擦り付けられるまんこがじゅんわりとアッツアツに発情してるのがわかった。

 

 全く、いやらしい女だ。

 

「んはぁっ……ご、めっ♡ なさいぃっ……♡ だって、ご主人様が♡ 酷いこと♡ するからぁっ♡」

「人のせいにすんのかよ? 発情してチンポ必死にこするドスケベ女のくせに生意気だなお前」

 

 こりこりこり♡ かりかりかりかり♡

 ぴんっ♡ ぴんっ♡ きゅむぅぅ♡

 

「おひゃあぁっ♡ や、ぁっ♡ 乳首、だめぇっ♡」

「こんッなにコリコリでかわいいのに? 乳首ダメなのか?」

「だめですっ……♡ やだぁあっ♡ きもちよすぎてぇっ♡ 乳首ばっかりなんてッ……♡」

 

 そしてたまらないと言った様子でオレの手を取り、今更だろうに照れながらも自身のムンワリと発情して熱くなっている股ぐらに誘導する。

 下着越しにも、すっかりと濡れていていやらしいものだ。

 

 準備はとっくに出来てるってことか……舐めた真似しやがって。

 

「ユターシャ、ほら……ベロ出せよ」

「はふっ……♡ ん、むちゅっ……♡」

 

 言われた通りに、またもや素直にベロを差し出すユターシャ。オレは彼女の口の中に舌先を突っ込んで、そのままグチャグチャと音を立てて乱暴にかき回す。

 唾液が混ざり合うほどに濃厚なキスを交わしながら、オレの上で震える彼女を抱きしめるように起き上がった。

 

「ぷはっ……おい、ベッド行くぞ」

「ッ♡ ひゃいっ♡」

 

 ユターシャを抱えながらも立ち上がり、足早にリビングを後にしてベッドに向かった。下半身が興奮しすぎて痛くて切なくて、ジンジンと脳みそが支配される。

 

 大人しく横抱きにされているユターシャはオレの腕の中で甘えるように頭を擦り付けてきた。彼女の体温は、やけに熱くなっている。

 

 冷えた廊下に出て、すぐ寝室へ。扉は足で乱雑に閉じて、ベッドの上に彼女の身体を放り投げる。バウンドしながらも下品に媚びた目をこちらに向けるユターシャは、すっかり期待しきっているようで。

 

「ごしゅじ、さまぁっ……♡」

「絶対容赦しねぇから覚悟しろよお前」

 

 彼女の視線に、思わず笑みを浮かべてしまう。

 

 きっと、今の自分の笑顔はあまりいいものではないのだろう。口角が勝手に上がり、目を細く獲物を狩るように彼女を見つめてしまう。

 

 自身の服を床に投げ捨て、そのままベッドに寝転がるユターシャに覆いかぶさる。彼女の服をまるで破るように脱がして、邪魔なものは全部床に落ちていった。

 

「は、はやくぅっ……♡」

「マゾだなぁ……品性より情緒よりチンポってか?」

 

 恥も何もなく、足を自分で抱えて濡れそぼっているマゾ穴をこちらに向けるユターシャ。自身で恥肉を広げて、ピンクでてらてら光っているまんこが晒されていた。

 

 ただでさえチンコイラついて余裕ないのに、さらにお膳立てしやがって……

 

「ユターシャ、どうして欲しい? めちゃくちゃにして欲しいか? それとも、酷く優しくしてやろうか?」

「はっ……♡ はっ……♡ めっちゃくちゃに♡ 頭おかしくなるくらいっ……♡ 酷く、してぇっ……♡」

 

 本当に……こいつは、オレのことをおかしくしてくれる。欲しいこと欲しいもの全部理解して、オレの欲望をどこまでも焚きつける。

 

 好き放題していいのだ。

 オレの思うままに、好きなだけ食らっていいのだろう。

 

「ご主人様ぁっ……♡ もう、もぉっ……♡」

 

 ゆっくり、ゆっくりと甘い肉に沈めていく。オレのための、オレだけのユターシャは心底嬉しそうにオレに抱きついてきていた。

 

「あぁ……このバカ女がァ……くそ、中うねりすぎだろふざけんなッ……!」

「あ"ぁぁあっ♡ ご主人様きたぁっ♡ はひゅっ♡ すきぃっ♡」

 

 オレの首に腕を回して、足も腰に回して、全身で求めてくるユターシャ。

 仰向けで左右に流れたデカ乳、真っ白で柔らかく肉付きのいい太もも。ピットリと隙間なく沈めたチンポは、根元まで隠されている。

 

 本当に……なんて極上の肉体だろうか。

 中では肉のヒダが蠢いて、ちゅぷちゅぷとオレのチンポを舐めしゃぶっているようだった。ちっちゃいベロが何千何万も、隙間なくチンポをねぶり回しているようだ。

 

「ハメてるだけだってのに、イかせようとしてきやがって……! オレのザーメン強奪する気なんだなお前、殺すぞッ?!」

「あ"♡ やだぁ♡ こりょさないでぇっ♡ 」

 

 このまま中に入れてるだけではすぐに果ててしまうと、オレはゆっくりと腰を引いてすぐに中に戻す。

 

 ぱっ……じゅんっ♡ ぱぢゅっ♡ どぶちゅっ♡ ぶちゅんっ♡

 

 掘り耕すかのようなピストン。ぬるんぬるんのマゾメス液が潤沢で、ゾリゾリと気持ちよくチンポが締め付けられる。柔らかくもひしめく肉壁は出し入れするたびに吸い付いてきて、根元まで入れると竿全体がまんこにディープキスをかまされるのだ。

 

 特に1番奥の子宮口に亀頭がキッスする瞬間。まんこ穴全体がぷにゅっと引き絞られて、竿全体に高圧的な刺激が走る。

 

 こんなの……こんなの、ずるすぎるだろうが……! 

 

「ぅ"あぁぁ……ッ♡ てめ、ふざけてんだなッ?! 容赦ねぇまんこしやがってお前、お前マジッ……くそが、虫も殺せないってツラしてチンポ殺そうとしてるのかッ……!」

「に"ゃぁあああっ♡ お"ほっ♡ ごしゅじ、しゃまっ♡ まっ♡ でぇ♡」

「待つわけねェだろ馬鹿かァ?」

 

 ばぢゅんっ♡ バゴっ♡ ぱぢゅっばぢゅんッ♡ どちゅっ♡

 

「気持ち良すぎだろッ……人様のチンポこんなに容赦なく締め付けやがって♡ 射精させようとすんなよこの暴力女がよぉ♡」

「ごめ、なしゃぁいッ♡ お"ん♡ あ"はぁっ♡ じぎゅっ♡ 子宮♡ ごんごんっ♡ しゅきぃ♡」

 

 抜いてもずるずると快感が走るし、ブチ込んでも気持ちよさが襲いかかってくる。脳味噌が腰を振りたくることしか考えられなくて、ユターシャの媚びた鳴き声を聞きながらもその肉をただ貪り続けていた。

 

「ごしゅじ、さまぁっ♡ すき♡ しゅき♡ あ"ぁぁっ♡ ぎもぢぃいっ♡」

「ん、オレも♡ ユターシャ、こっち向けよほら、キスしようぜ?」

 

 律動を止めて口を近付ければ、すぐに吸い付いて長ったらしいベロを口内に絡ませてくる。溢れてくる唾液は全部飲み干されて、口の中をぐちゃぐちゃに犯されていく。

 歯の裏側を舌が撫でて、背筋にゾクゾクとした気持ち良さが走った。

 

 恋人キスしたかっただけなのに……こんなに下品なベロチューかましやがってこいつ……♡

 

「ぷはっ……クソが、下品だなお前♡」

「えっ……あっ……? ご、ごめんなさいっ……」

「控えめに唇差し出せよ……お上品にしてろよボケが」

 

 ユターシャはしずしずと目を瞑り、そして唇だけを尖らせる。かわいいキス待ち顔を向けいるそれに、オレは唇を落とした。

 

 何度も何度も繰り返す、柔らかバードキス。甘ったるく軽めのリップ音が2人の間だけに響く。

 

「ユターシャ……ユターシャ♡ はぁあっ……」

 

 我慢できなくて、腰がずるずると動き出してしまう。ぱちゅぱちゅと楽しむように腰を押し引きしながら、ユターシャの唇にキスを繰り返した。

 

 ちゅ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡

 

 バチュンッ♡ バヂュッ♡ パンッ♡ パンッ♡ パンッ♡

 

「あ"〜〜〜クソかわいいなお前、キスの顔可愛すぎんだろ♡ そんなにかわいいのなんで? オレのこと馬鹿にしてるのか?」

「んぅ"ッ♡ う"♡ ちゅむっ……♡ ちぎゃっ♡ んぅうっ♡」

「喋んなや唇だけ差し出してろ♡ かわいいキス待ちの顔ずっとしてろ♡ マゾ女のクセに生意気すぎだぞッ?!」

 

 ユターシャの顔面を両手で左右から押さえつけた。絶対に動けないように固定して、その麗しの美貌が必死にキスしてもらおうと唇を尖らせながらも、まんこ犯されて呼吸荒く顔を火照らせている様を至近距離でまじまじと見下ろし続ける。

 

 スケベなツラしやがってコイツ。許せねェ……

 

「やばッ♡ あーくそ、もうイきてぇ……出していいな?」

「んちゅうっ♡ ひゃひっ♡ くらしゃっ♡ おまんこぉっ♡ なかぁっ♡」

 

 ユターシャがオレの首に回している手がより一層力が入る。腰に回している足もこわばって、汗ばんだしっとりした身体が艶かしく光っていた。

 

 どこまでも熱くて、どこまでも気持ちがいい。

 腰を必死に振りたくって、じゅるじゅるゾリゾリのマン肉を喰らい尽くしていく。ユターシャの甘ったるい喘ぎ声が近くて、はしたない水音と肉を叩きつける音とユターシャの鳴き声でおかしくなりそうだ。

 

 こんなの本当にダメになってしまう。

 頭の中が真っ白になって、何もかも分からなくなってしまいそうだった。

 

「はぁ"あ……ユターシャ、好きだ……」

「ご主人様ぁっ♡ わた、わたひっも"ッ♡ あ"♡ イぐっ♡」

 

 満たされる。幸せで満たされていく。

 ユターシャの1番奥に亀頭を押しつけて、いよいよオレは果てていた。脳味噌がなにも考えられなくて、解放された欲とともに彼女の中へ熱い精液を吐き出していく。

 

 どうやら彼女も同時に果てていたようで、ぎゅうとチンポを締め付ける圧力は今までよりも強くなっていた。

 

「ユターシャぁ……ッ♡」

 

 出しても出しても、根本から絞り上げられて竿の中に残ってる全部の精液を絞り上げられてしまう。気持ちのいい射精感に身体をユターシャに預けて、荒い呼吸を整えるように彼女の首元に頭を落とした。

 

 はぁ、はぁと互いに呼吸の音だけが聞こえる。

 

「ご主人様……♡」

「ユターシャ」

 

 まだ荒い呼吸の中、ユターシャにねだられるままに口づけを落としていく。

 

 唇をくっつけて、それから離して……柔らかな唇は湿っていて、彼女の嬉しそうな顔が至近距離にあった。

 

「……好きだ、ユターシャ」

「はい」

「愛している」

「私もです、愛してますよ……ゴーシュ」

 

 ふと、普段は呼ばない名前を囁かれた。

 驚いて体を起こすと、ユターシャは楽しそうにこちらを見上げている。

 

 まるで、イタズラが成功したかのように。

 

「ふふ、なんですか?」

「……ズリィだろ」

「ダメ?」

 

 ダメなわけがない。

 まともに名前もないオレの、唯一ユターシャの前で使ったそれ。他の名前なんて全部どこかに消えてしまった。

 

 たまに呼ばれると新鮮な感じがして……全く、ずるい。

 

「名前、呼んでくれるか?」

「えぇ。……ゴーシュ、愛していますよ」

 

 耳元で、何度も繰り返し囁かれる。

 

「ゴーシュ」

「……あぁ」

「キス、しましょう?」

 

 返事の代わりに、唇を重ねた。

 ユターシャの甘い唾液を味わいながら、舌を絡ませていく。

 蕩けるような心地良さに身を任せれば、後はもう幸せな時間に身を任せるだけだ。

 

 目を閉じて、彼女の吐息を感じる。近くで聞こえる心臓の鼓動は柔らかく脈打っていた。

 

 あぁ、だってこんなのずるい。

 こんなの……どうしたって、好きになるだろ。

 

「……もっかいします?」

「あぁ……そうだな」

「はい♡」

 

 体を起こしユターシャの中から一度引き抜いて、オレはベッドに仰向けになった。まだまだマン汁と精液で塗れて萎えているそれを、ユターシャは下半身に顔を近付けてゆっくりと口の中に招き入れていく。

 

 柔らかい身体だ。羽のように軽くて、安心感のある重みがあった。

 

「……苦いですね♡」

「そうか。……あったけェな」

「気持ちいいですか? ふふ……ゆっくり、優しくご奉仕してあげますね」

 

 ちゅぷ♡ ちゅ♡ ちゅぶっ♡

 

 一度出したそれを、ユターシャが優しく口の中で舐め回していく。ぬるぬるの唾液が絡まり、すぐに下半身には血が集まり出していた。

 

「ユターシャ」

「えぇ、わかってますから」

 

 オレの手が、ユターシャの手に絡め取られる。貝殻のように指から手を繋いで、そして舌先だけで勃起の先端を舐め回される。長ったらしい舌が亀頭の表面をねぶりまわして、カリ首あたりまでをぬちぬちといじめていた。

 

 見ているだけでも極上の光景。じわじわと刺激を与えられて、欲が育てられる。

 

「ゴーシュ……♡ チンポ気持ちいいですか……?」

「んっ……、名前呼びながら、フェラすんの、やめろっ……」

 

 ゆっくりとした刺激だった。

 どこまでも優しくて、どこまでも物足りない。

 だけどそれが気持ちよくて、思わずユターシャと繋ぐ手を強く握ってしまう。

 

「いっぱいキスしてあげますね? 舌先だけでじっくりと甘やかして差し上げます♡」

「あぁ……」

 

 ちゅっ♡ ちゅ♡ ちゅ♡

 べろぉ……ッ♡ ぺろぺろっ♡ ちゅばっ♡ むちゅう♡

 

 垂れていく唾液を舌で舐めとられ、竿も全体的にキスされて……じっとこちらの表情を伺うユターシャの目に見つめられて、ドキドキと胸が高鳴ってしまう。

 

 じれったかった。だけどそれをもっと味わいたくて、彼女に全てを委ねる。

 

「あー……んっ♡」

 

 そして、すっかりと硬くなったそれがユターシャの口の中に招かれていく。先端からゆっくりと、密着したぬるぬるの肉の中に収まっていく。

 

 吸着したふわっふわの肉。じゅるじゅると弱めのバキューム感と、口の中で動き回るベロ。

 

「んじゅっ♡ んっ♡ んふっ♡ むふっ♡」

 

 じゅぽっ♡ じゅるるるっ♡ じゅっぽ♡ じゅっぽ♡

 

 柔らかい口膣は、それでもしっかりと絡みついてくる。

 上下に動いて、裏筋を擦り上げて……気付けばオレは腰を動かしていた。

 

「はっ……く、はぁっ……ユターシャ、クソが……何が、優しく、だよっ……」

「んちゅうっ♡ あぁ、ごめんなさい……♡ だって、あまりにも美味しくて、つい♡」

 

 そしてまた、彼女は亀頭をしゃぶる。

 尿道口をほじる様に、舌先でチロチロとした動きを繰り返されていく。腰が震えて、膝がガクつきそうになってしまう。

 

「えへ……ご主人様のチンポ、ぬるぬるにしちゃいました♡」

「はっ、はっ……ユターシャ、お前……」

 

 気持ちよくて、思考がどんどん下半身のことしか考えられなくなっていく。ずくずくと疼く熱を抱えながらも、ただユターシャを眺めていた。

 

 ニコニコと笑顔を向けながら、たぷんと揺れるでかい乳を持ち上げたユターシャ。そのまま、勃起がその中へと収まっていってしまう。

 

「ぬるぬるだから……パイズリ、きっと気持ちいいですよ」

「う、あ……」

 

 ぬぷっ……ぬぷぷぷぷ……♡

 

 でかい乳の、その肉がぎゅむぎゅむとチンポを圧迫していく。トロトロで柔らかいのに逃げ場がなく、そして包み込まれる。

 

「お前……」

「気持ちいい、ですか?」

 

 たぱっ♡ ばちゅっ♡ たぱっ♡ たぱっ♡

 

 そのふわとろ爆乳でパイズリされて、気持ちいいに決まっているだろう。オレのツボ全部理解しているユターシャは、いじらしくもオレの顔を見ながら優しく乳を上下に動かすのだ。

 

 柔らかな乳圧で、ぴったりと張り付いて離さない。視覚だけでなく聴覚からも煽ってきて、あっという間に射精欲が高まっていく。

 

「こうして……唾液ローションも追加して、えへぇ♡」

 

 ぬるぬるの唾液をユターシャは自身の谷間にこぼしていった。滑りがさらによくなり、その状態で強く挟まれる。

 ずっぷりとハマって、逃がさないように。

 柔らかくてもっちりしたおっぱいに、完全に根元から包まれてしまう。

 

「ユターシャぁ……ッ♡ ぐ、ぅ……お前、クソが……」

「ふふ」

 

 笑うだけのユターシャに、ぐちゃぐちゃに犯されている。

 

 煮えたぎるような苛立ちが興奮からくるものなのか、それともオレの顔を眺めて笑っているユターシャに対する腹立たしさなのかわからなくて……疼くような怒りと愛しさが混ざっていた。

 今すぐ押し倒して、ユターシャによって作られた昂りを彼女に叩きつけてしまいたい。

 

 だが……

 

「ご主人様、すっごく気持ちよさそうですね?」

「く、そ、がァ……ッ♡ 舐めやがって……」

「舐め……? あぁ、パイズリしながらフェラがお好みですか♡」

 

 バヂュッ♡ バヂュッ♡ バヂュッ♡

 れろれろれろれろ♡ ちゅぱっ♡ れろれろっ♡

 

「ぅ"、ぐっ……♡ お前ッ、射精させるつもりか?」

「いえ……ただ、気持ちよくなってほしいだけなのです♡」

 

 ユターシャも、わかっているのだ。

 この女は全部わかっててやっている。

 

 ギリギリまで興奮させまくって、昂らせて昂らせて、そして決壊する直前にねだる算段なのだろう。おねだり上手のマゾメスならではの、いつもの狡猾な手段だ。

 

「優しく、優し〜〜〜く……♡」

「ひ、ぐっ……!」

 

 太ももが震える。腰が勝手に動いてしまう。

 舌を出して亀頭を舐めしゃぶるユターシャと目が合うと、思わず射精感が襲いかかってくるが……

 

「ふぅっ、いかがでした? 私のパイズリは♡」

 

 その寸前で、彼女の体は離れていった。

 

 止められるもどかしさに沸騰しそうになる。今すぐ射精したい欲を溢れそうなほど昂らせて、そのすんでで止められたのだ。

 

 そして、ユターシャはオレの上にまたがった。目を細めて、心底嬉しそうに微笑みながらも亀頭にマンコの入口だけを当てている。

 

「ご主人様ぁ……♡」

「ユターシャ」

「んっ……♡ ご、ご奉仕、させていただきまっ……♡」

 

 ちゅぷ♡ ちゅぷぷぷぷ……ッ♡

 

「は、いるぅ……♡ ぅ"ううッ♡ お"♡」

 

 オレのバッキバキに硬くなった勃起は、ニュルンと簡単に入ってしまった。中はヌルヌルのギュンギュンで、ゾリゾリとした肉の粒がひしめいている。

 

 さっきあれだけ耕してやったってのに……くそ、まんこが名器すぎてムカつくなぁ……

 

「お、ぉおおっ♡ ご、ご主人、さま♡ わたし♡ わ、たひっ♡」

 

 びくびくと、震えるユターシャ。

 どうやら挿入れただけでイってしまったようで。

 

「動け」

「ご、ごめんなしゃっ♡」

 

 目の前で軽いマゾアクメをキメているユターシャを、わざと突き放すように冷たく言い放つ。それだけでさらにまんこを締め付けてるんだから、コイツはもうどうしようもないマゾメスなのだろう。

 

「ッ……くそが、中うねりまくってて……ユターシャ、はやくケツ振ってピストンしろよ」

「お"ッ♡ ごめ、なしゃっ……ひもぢよぐでぇっ♡」

「ふざけてるのか? 舐めた態度しかとらねぇんだなお前」

 

 ねっとりと、ユターシャがスパイダー騎乗位で腰を動かし始める。酷く緩慢な動きは自身のアクメを堪えるものなのか、なまっちょろいにもほどがあった。

 

 ユターシャの顔が目の前にある。

 発情しきって、軽アクメに震えたマゾの表情でオレを見つめている。

 

「もっ、とだ」

「むり"♡ これ以上はッ♡ 深"いのでイ"っちゃいますッ♡」

「本気ピストンしろ」

「できにゃ"ぁあっ♡ ふぅ"〜〜〜♡ んぅうっ♡」

 

 すっかりオレの勃起チンポをハメこんで、動かずジッとまんこで味わい続けているユターシャに苛立ちが募る。何度も何度もびくんびくんと膣内は脈打って、これじゃあ生殺しされているような気分だ。

 

 こんなに焦らされて……それでこの生き地獄を味わえってか? 

 

「こッんの……てめ、勝手に軽イきしてんじゃねェよ、奉仕するんだろ? まんこ締め付け痙攣繰り返すなよ……ッ!」

「おぎゅっ……♡ ひ、ひぃっ……♡」

 

 ここまできて尚焦らされて、腹立たしさを和らげるためにオレはユターシャの乳首に指を這わせた。ツンツンと押し込んで、引っ掻き、そしてぴんぴんと跳ね回す。

 

 きゅ♡ きゅ♡ とその都度まんこがうねる。

 ユターシャはのけぞりながらも、弱々しくオレの手に手を重ねていた。

 

「ゆ"、ゆるじでっ……♡ ちくびだめっ♡ ちくび、弱点でェっ♡」

「馬鹿が。まんこも乳首も全ッ部弱点だろうがァ? これ以上オレを待たせる気か? オレに奉仕する気ねェだろ」

「あ"ぁぁあっ♡ だ、だって♡ きもぢくてぇっ♡ むりなんれしゅっ♡」

 

 メイドだかなんだか知らないが、オレをご主人様と呼んで奉仕すると言っていたのだ。こんなに苛立たせるなんて、まったく風上にも置けない。

 

「ご主人様ぁ……♡ ゆ、ゆる、してぇっ……♡」

「お前が言ったことだろうが、テメェで責任取れよ」

「ひ、ひどいぃっ……! や、だって、む、り"ぃっ♡」

 

 なんて言いつつも、まんこひくつかせてるんだからコイツも相当終わってる。

 

 オレに酷いこと言われても、優しくされても、何されたって気持ちよくなれるんだから筋金入りのマゾメスなのだろう。虐められて優しくされて、ドロドロに溶けながらも従順なユターシャはオレに媚び続けるのだ。

 

 本当に、コイツは……

 

「仕方ねぇな……こっち向け、舌出せよ。下品なキスしよう?」

「え、ぁ……♡ ん、ふぅっ……♡ んちゅっ♡」

 

 結果、いつもこうしてユターシャがかわいくて甘やかしてしまう。

 

 濃厚なベロチューに、すぐさまこのどうしようもないマゾメスは夢中になっていた。

 オレの唇に吸い付き、ぬるぬるとした唾液が口内を満たして、それを嚥下していく。

 くちゅくちゅと水音を立てながら、互いの唾液を交換し合った。舌を絡ませて、歯列をなぞり、上顎を擦りあげる。

 

 貪るように激しく舌を絡めていく。

 ぬるりとした唾液が、喉の奥にまで流れて行った。

 

「ユターシャ」

「ごしゅ、じん、さまぁっ……♡」

 

 ちゅ♡ ぷぢゅるるるるっ♡ じゅっるっ♡ ごくんっ♡

 

「あぁぁあっ……♡ ご主人様、すきぃっ……すき、すきっ……」

「ユターシャ、名前で、呼んでくれるか?」

 

 軽いバードキスも繰り返して、互いに互いを求め合う。指を絡めあって、ぎゅっと強く握りしめて……

 

「ご、ゴーシュ♡ ゴーシュすき♡ すきですっ……♡」

「あぁ、オレも……ユターシャ、愛してるッ……」

 

 何度も何度も、繰り返す。互いに互いの愛を伝え合う。

 昂り続ける熱と感情がぐちゃぐちゃになっていて、オレたちは互いの目を見つめ合いながら愛を交わしていた。

 

 下半身が痛いほど熱くて、そしてそれ以上にユターシャのまんこが熱々になっている。ずっと我慢させられて限界が近づきながらも、オレはユターシャの手を握る。

 

「お前は本当、仕方ないよな……ご奉仕とか言っておきながら1人で勝手に弱イキしてピストンもできなくて」

「ご、ごめんなさい……♡ も、もうすこし、したら、そのっ……が、がんばりますからぁっ……♡」

「乳首されながらだとまともにキスもできねぇし、オレのことご主人様って呼ぶの、身の丈に合わないよなァ?」

 

 どうしようもないマゾメスなのだ。

 すぐにイきアクメするような雑魚だし、まともなご奉仕なんてできた試しがない。

 

 罵られるたびに嬉しそうにまんこをひくつかせやがって、本当に困った女だ。

 

「ユターシャ、オレのこと好きか?」

「はひっ♡ しゅきっ♡ 好きです♡ あいしてますっ♡」

「……仕方ないな。まったく、オレが慈悲深くて感謝しろよ? 普通ならろくに奉仕も出来ないマゾメスメイドなんざチンポ恵むわけないんだが」

 

 ユターシャの唇に唇を重ねる。繋いでいた手を離して、彼女の顔に添える。近付けて、たっぷりと濃厚キスしながらも、彼女のとろけきった目を見つめる。

 

 もう、オレとて我慢の限界だ。

 いい加減に思いっきり突き上げたくて、彼女の身体を抱きしめる。

 

「メイドはクビだ。今からはめおとセックス……好きなだけイっていいからな」

「え? あっ……あぁぁあっ♡ あぁぁぁぁあっ♡ ま"っ、で、ぇっ♡ にゃぁぁあっ!?」

 

 ———ばぢゅんッ♡

 

 オレは下から強く突き上げていた。

 

「あ"ッ♡ あぁぁぁぁあっ♡ イ、ぎゅッ♡ イッ♡ でるっ♡」

 

 濃厚なイチャラブセックスで、互いに名前を呼び合って、いっぱいキスしながら好きだなんて言い合って……こんなの、幸せすぎるだろう。

 

 どすっ♡ どすっ♡ どすっ♡ ばちゅっ♡ ぶちゅっ♡ ぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅっ♡

 

 ユターシャのまんこがぐちゃぐちゃになって、愛液が飛び散っていた。それでも構わず腰を打ち付ける。

 彼女は何度も絶頂を繰り返し、その度にまんこがうねってオレのチンポを搾ってくる。

 

「ぅ"うううっ……ユターシャぁ♡ くそ、クソがッ……」

「に"ゃああああっ♡ だ、だめぇっ♡ ごしゅじっ、さまっ♡ またイぎゅ♡ イっぢゃうぅっ♡」

「あ"〜〜〜たまんねッ♡ ユターシャ、もう奉仕とかしなくていいからなッ♡ これめおとセックスだからッ♡ 好きなだけ好き放題アクメしとけよボケがッ♡」

 

 ぎゅぅぅぅぅっ♡

 

 コイツまたイきやがった♡ 限界まで積み上げられた性欲のせいで、無様にも連続アクメしてやがる……っ! まんこのうねり痙攣が尋常じゃなくて、チンポを殺そうとしているのだろうか? 

 

 本当に、悪質な女だ。

 もしこれがイチャラブセックスじゃなかったら、あまりの暴虐まんこバキューム故に逆レイプに該当するレベル。本気でチンポからザーメン奪おうとしてきてるのがわかる……ッ! 

 

「めお、とっ? わか、にゃっ……およめさん? わだしっ……ご主人様の、およめさっ?」

「あぁ、メイド廃業してオレの嫁に転職しろ♡ お前どうしようもないマゾメスなんだから、オレの慈悲で嫁にしてやるんだからなァ?」

 

 バヂュッ♡ バヂュッ♡ バヂュッ♡ バヂュッ♡

 

「えっ、あっ……う、うれひっ♡ ご主人様♡ わた、わたしっ……♡」

「名前で呼べっつってんだろこのボンクラがァ♡ あークソかわいいなお前……」

 

 メイドだったらご主人様と呼ぶのは当たり前だが、めおとセックスなんだから名前で呼び合ってイチャラブキスしながらハメるのが常識といえるだろう。

 

 嫁の責任として、イきまくって夫を喜ばせなくてはならないだろうが……さいわいにして、ユターシャは生粋のチンポにどハマりしたマゾメス。

 今もこうして連続アクメしながらオレの首に必死にしがみついてアヘ顔を至近距離で晒してオレを喜ばせてくれてる。

 

 クソ……こんなに必死に無様な顔しながらチンポでよがる姿なんて見せつけやがって……♡

 絶対、絶対にオレの嫁にする♡ 逃さねェ……♡

 

 メイドとしてはダメダメのマゾメスでも、もしかしたら最初からオレの嫁として産まれてきたのだろうか……? 

 

「ごーしゅっ♡ すきぃっ♡ すきすきっ♡ あ"ぁっ♡ おまんこっ、おかじぐなっ♡ ほひっ♡」

「おかしくなってもいいだろうが?」

「はへっ♡ やだぁぁっ♡ あ"っまだイぐっ♡ 深アクメ連続しゅるっ♡」

 

 首に抱きつく腕の力がこもって、その柔らかい肉が全部余すところなく密着する。ヌルヌルでぷりぷりとして全身柔らかくて、オレもユターシャの体を抱きしめていた。

 

 容赦なく勃起をユターシャの中に出し挿れして、弱点をこそぎながらも子宮口の奥に叩きつける。ちゅぱちゅぱと下品なユターシャのまんこは、オレの亀頭にむしゃぶりつきながらもギュンギュンと竿全体を締め付けてくるのだ。

 

「ユターシャ♡ ユターシャ、くちだせ♡ キスしながら♡ ザーメンぶち込んでやっからなァ♡」

「ゴーシュ♡ すき♡ んちゅっ♡ んじゅるるるる♡ んちゅう♡ はぁっ……♡ んぎゅっ♡ んぅうううっ♡」

 

 濃厚キスハメ♡ たっぷりイチャラブセックス♡

 

 互いに好き好き言いながら、舌を絡めて唾液を交換しながら、ユターシャの身体を抱き寄せて腰を振る。

 キスをしたまま、唇くっついてんのに必死にオレの名前を呼ぶユターシャがあまりにもかわいすぎた。オレももう、限界だ。

 

「ゴーシュ♡ ゴーシュ、あいしてましゅっ♡ しゅきぃっ♡ すきすき、だいすきぃっ♡ あ"ぁっ♡ も、だめ♡ まだイ"ぐ♡」

「ん、オレ、もっ……出す、中に出すからなっ♡ 全部受け止め、ろ、よッ♡」

 

 そして、オレは全身から抜けていた。

 解放されるような感覚と、下半身がとけそうなほど気持ちよく射精している。ユターシャの唇に唇を重ねながら、オレはいっちばん奥の深くてぷにぷにした子宮口にチンポ押し付けてその中にザーメンをたっぷり吐き出していた。

 

 脳味噌がとけそうだ。あまりにも気持ちよくて、壊れてしまうのではないだろうか。

 

 ———びゅるっ♡ ぶぴゅっ♡ どくどくっ♡ どくっ♡ どくっ♡ どくっ♡

 

「はっ……はっ……ゆたー、しゃ」

「……ッ♡ ッ♡」

 

 どうやらイきすぎて気絶アクメをしてしまったらしいユターシャは、オレの上でビクビクと痙攣している。無様な姿だが、それもまた愛おしくて軽いキスを落とした。

 

 互いに身体中が汗と体液でぐちゃぐちゃで、しかしまだ動きたくはなかった。

 長い射精感の疲労を味わいながらも、ユターシャの身体を抱きしめる。どくどくと聴こえるまだ早い鼓動を聴きながらも、腕の中にある温もりをぎゅっと抱きしめて……

 

 

 

 



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少年を地獄の施設から救ったエルフ聖女様、呪いのせいで夜になると淫魔になっちゃう



【挿絵表示】


本来のユタ子はパイパンですが、今作に限り淫毛生え揃ってるし通常時の3割駄肉マシマシのおとなムッチムチお姉さんです。
見た目年齢27歳くらい。(通常時19歳くらい)

おねショタは陰毛生えてるお姉さんの方がエロくない?


 

 

 

 そこは、静かな湖畔のほとりに立つ屋敷。

 川のせせらぎ、甘い花の匂い、そして鳥の鳴き声が遠くから聞こえてくる。

 

「さぁ、今日からここが貴方の家ですよ」

「ん……わかっ、た」

 

 あの寒くて暗い施設から離れて、オレはエルフの聖女・ユターシャの立派な豪邸に連れられていた。

 

「あの、えと……よろしく、おねがいします……」

 

 オレの手を繋ぐユターシャに改めて挨拶をすると、彼女はオレを安心させるかのようにニッコリと笑う。

 今まで見たこともないくらい綺麗なその女に連れられて、その建物の中に入っていく。

 

「……いきなり知らない環境で不安だと思いますが……どうか、ここを家だと思ってくださいね」

「はい」

 

 家なんて、初めてだ。

 オレが今まで暮らしていたのは暗い廃墟のような施設だった。

 

 今までいた施設は彼女曰く『特殊工作員幼育施設』というらしい。身寄りがなかったり、もしくは攫ってきた子供を都合よく育てるための場所だったそうだ。

 

 しかし、その場所は数日前に、物理的にオレたちの目の前で潰されてしまった。

 それをやった張本人が、いま目の前にいる彼女である。

 

「私達は家族ですから、気兼ねなくおねえちゃんと呼んでくださいね?」

「はい、ユターシャさ……おねえ、さん」

 

 エルフの聖女というのは、慈善活動とやらをしているらしい。

 

 聖女ユターシャはその活動の一環として施設を摘発、抵抗を見せた施設職員を相手に武力を行使して鎮静。

 施設にいた子供たちは、オレを含めて皆それぞれ新たな人生を歩むよう手配されていた。

 

 10歳のオレも、誰かの養子になる手筈だったらしいのだが……手違いとやらで、オレはひとりだけ聖女ユターシャにひきとられることになったのだ。

 

「あなたの部屋も用意したんですよ」

 

 彼女はにこりと笑いながら、オレの部屋だという場所に案内してくれた。どうやら彼女の部屋の隣らしくて、子供にはとても見合わないでっかいベッドが鎮座している。豪華な椅子とテーブル、ガラスの戸棚には少しの食器があって、そのどれもがとてもオレに見合うものではない。

 

 冷たい床、支給された布にくるまって寝るのが当たり前だったのだから……慣れない、なぁ。

 

「掃除用の女中や庭師も雇ってはいるのですが、2、3日に一度程度しか来ない契約でして。あ、ご飯に嫌いなものってありますか? 今日は特別腕をふるいますから」

「……特に、ないです」

 

 食事は、栄養素が取れればいい。

 何度か経験したサバイバル演習でさまざまな食材を食べてきたが、虫も肉も雑草も食べられるものは食べられるのだ。毒や寄生虫などなければ問題ない。

 

 なんて考えていると、ユターシャの顔が悲しげに歪んでいた。

 

「……ご主人、様……」

「?」

「ッいえ! なんでもありませんよ? えぇと……そうだ、ご飯ですね。オムライスからハンバーグ、ピザにステーキに……えぇ、キッズが喜ぶメニューをなんでも作って差し上げますからね! 豪華絢爛なテーブルをご案内差し上げましょう!」

 

 すぐに切り替えたのか、料理を作りに行くとニコニコと笑って部屋から出ていったユターシャ。オレは1人、部屋に取り残される。

 

 これから、この大きな屋敷でオレと彼女の2人だけで暮らすらしい。

 

 聖女ユターシャはやっぱり綺麗で優しくて、とっても暖かくて……そんな素敵な人とオレのような人間が、一緒に暮らしていけるのかが不安で仕方ない。

 家族というものを知らないオレだが、果たして彼女の求めるようにできるのだろうか? 

 

 命令も何もない自由な生活に不安を覚えつつ、オレは部屋に置かれた家具類の安全から見て回ることにした。

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 そして、いつのまにか夜になっていた。

 

 腕を奮います、なんて言っていたユターシャおねえさんの作ってくれたご飯はどれも食べたことのないものばかりで、そのどれもがすごくおいしかった。レーションに慣れた口はその多彩な味にすっかり夢中になってしまった。

 

 満足するまで食事をとって、そのあとには彼女と穏やかな食後の会話を交わして……ここにくる前の緊張は、すっかりなくなっていた。

 

「さて、お腹もこなしましたか? そろそろお風呂に入りましょうね」

「はい」

 

 彼女に連れられて、お風呂場にまで連れていかれる。泳げそうなほど広い湯船、ライオンを模した象の口からは延々とお湯が流れ続けている。やたらと甘い匂いがするのは、湯に花の香油でも垂らされているのだろうか。

 

 むんわりとした蒸気にあてられる。その豪華さに驚きつつも、オレはユターシャおねえさんへと振り返った。

 

「あの、えっと……」

「着ていたお洋服はこちらに置いてくださいね?  私はタオルとパジャマ持ってきますから、お風呂入っててください」

「……わかりました」

 

 彼女が出ていって、オレはさっさと服を脱いでいく。施設では芋のように冷水で洗われるばかりだったが、これからはこんな風呂が当たり前になるのだろうか。

 

 湯を身体にかけて洗い流し、それからゆっくりと適温の湯船に足を入れる。教育の一環で知識として理解していたそれは想像よりも遥かに心地よくて、小さく息をこぼしながらも目を瞑った。

 

 肩まで浸かって、じんわりと体が温かくなっていく。もうしばらくしたら体を洗おうと思った、その時

 

「ゴーシュくんっ♡ おねえさんと洗いっこ♡しましょうねぇ」

 

 

 

 扉が開く音と、そして後ろにはユターシャおねえさんが。

 

 

 

「ぇっ、あっ、な、な、おねえ、さっ……? は、はだかっ……」

「お風呂は裸で入るでしょう? ふふ、お隣失礼しますねぇ?」

 

 堂々と入口に立っていたその女は、まるでそれが当たり前とばかりにお湯をお上品に肩にかけてから、ゆっくりとオレの横に足を入れた。

 

 裸のユターシャが、横にいる。

 唐突な展開から緊張感を隠すために、必死に顔を背けながらも前を隠して……

 

「えへへ……初めてだとやっぱり緊張しますよね。でももう、家族ですから」

「あ、ぅ」

 

 家族って、こうして一緒にお風呂に入るものなのだろうか? そんなの学んだことがなくて……ただ必死になって顔を背ける。

 

「お、おれ身体洗うからっ」

「えぇ、わかりました♡」

 

 とにかく彼女に照れてることを知られたくなくて、逃げるように洗い場へと出ると一緒についてくるユターシャおねえさん。

 前も隠さず、にこやかに笑いながらもずんずんと近づいて来る。

 

 おっぱい、でっか……! 

 

「洗いっこ、しましょうね?」

「……ひゃ、い」

 

 見下ろされて、緊張と羞恥で頭がおかしくなりそうだった。声が裏返りながらも、その圧に思わず頷いてしまう。

 

 目の前でぶるんぶるんと重力に従う、水に濡れたおっぱいから必死に目を逸らす。意識してるだなんて思われたくなくて……

 自分の顔が熱いことはもう自覚しているが、これ以上の言い訳ができなくて。もう、どうしようもなかった。

 

「さぁ、そちらの椅子におかけになってください。頭から洗ってあげますからね……♡」

 

 彼女に手を引かれるままに椅子に座らされて、あったかいお湯をゆっくりと頭に流される。目に入ってはいけないから瞑っていてくださいね、なんて言われて、そのまま頭に指が通っていって……

 

「綺麗な銀髪ですね……柔らかくって……大人の時より少しクセが弱めなのでしょうか? かわいい……♡」

 

 シャンプーの甘い匂いが鼻を掠める。

 必死に目をつぶって、後ろにいる女を意識しないように必死にいろんなことを考えようとする……けど無駄になってしまう。

 たまにムンニュリと当たるおっぱいが柔らかくて、そのことしか考えられなくなってしまうのだ。

 

 必死に硬くなっているちんちんを隠しながらも、背中にあたるおっぱいを強く意識する。そんなオレなんてお構いなしに、ユターシャはひどく楽しそうにひとりでぺらぺらと何かを喋っていた。

 

「さ、シャンプー流しますねぇ。まだ……目を開けちゃダメですからねぇ」

 

 お湯が再び、頭を洗い流していく。

 その後もリンスだかなんだか頭につけて流されて、その間も何回も何回もおっぱいがぷにぷにと当たっていて、都度肩が跳ねてしまったのは気付かれているのだろうか。

 

 そして、もう目を開けていいと言われて、顔についていた水を拭って目を開ける。曇った鏡越しには、女がたっぷりの泡を作っているところがぼんやりと映っていた。

 

「さて……いよいよ、身体を洗ってあげますから……ねぇ♡」

「自分でっ……洗える、からっ!」

「ダメですよ♡ おねえちゃんに任せましょうね♡」

 

 逃げようとしたと思われたのか、ユターシャおねえさんの腕がオレの身体に巻きつく。力が強くて逃げられなくて、デカ過ぎるおっぱいもむにむにのお腹も、太ももから……何もかもが背中に当たっていた。

 

 そのまま、彼女の手が身体を撫でていく。綺麗な女の人の柔らかい手が、オレの肌の上を滑っていく。

 

「あはぁ♡ まだ、緊張してるんですか?」

 

 ユターシャおねえさんの声が、耳元で囁かれる。脇の下もたっぷりの泡で優しく洗われて、腕も、そして爪の先まで指を絡めて優しく洗われて……全身が、彼女に包まれてしまう。

 

 どんどん頭がぼんやりしてきてしまった。

 クラクラするような甘い匂いに包まれて、耳元で聞こえるユターシャおねえさんの吐息が熱い。

 お風呂の蒸気も暖かくて、密着するお肉もぷにぷにで、まるで夢の中にでもいるような心地になってくる。

 

「後ろは洗いましたから……前、洗いましょうね♡」

 

 前に立ったユターシャおねえさんは、柔らかな身体にたっぷりと泡をつけながらも笑みを浮かべている。

 

 オレの目の前には大きなおっぱいが水に濡れながらももたぷたぷと揺れ動いていた。

 柔らかな肉の乗ったお腹も、大人しか生えていないようなお股の毛も、目を開けているとどうしても視界に入るほどの至近距離にそれらがある。

 

 豊満な身体から必死に目を逸らそうと上を見ても下も見ても逃げ場なんてなくて。

 

 そうして彼女は、泡まみれにした手でオレのお腹から……胸元、首周りをゆっくりと手で洗っていく。

 下半身がズキズキするほど痛いのに隠せなくて、ユターシャおねえさんの顔から何故か目が離せなくなっていた。

 

 丹念に、丹念に洗われていく。時間が過ぎればすぎるほど頭はぼんやりとして、心地よくて、ユターシャおねえさんと見つめあいながら体をされるがままになる。

 

「気持ちいいですか?」

「うんっ……」

 

 自分の呼吸が荒くなっていた。

 ダメだと頭では思っているのに、ユターシャおねえさんと見つめあうとその思考が溶かされていくようだ。下半身が痛くて、今すぐにでも触ってなんとかしたいと思うのに体が全く動かなくなっている。

 

 どうにか助けて欲しくて、だけど言葉すらまともに出ない。

 ユターシャおねえさんの手はゆっくりゆっくりと、オレの身体を洗っていく。とてもゆっくりで……まるで、焦らされているように。

 

「ねぇ、ほら……気持ちいいでしょう……?」

「ユターシャ、おねえちゃっ……!」

 

 おへその下の辺りまで、やっと手が降りてきた。だけどオレはまだユターシャおねえさんから目が離せない。

 

 助けてほしいのに……もう、何も考えられない、のに。

 

「切ないですね……大丈夫ですよ、私が……ぜぇんぶ綺麗にしてあげますからね♡」

 

 そうして、やっとそこに彼女の手が伸びる。

 おちんちんに、触るだけの刺激が与えられる。

 

 やっと与えられた刺激に何も考えられなくて、だけど物足りなくてもどかしくて、だけど体は動かない。

 

「ふふふ、えっちでかわいいお顔ですねぇ♡ 気持ちよくって……おちんちんのことしか考えられないんでしょう?」

「うんっ……うんっ……!」

 

 こんなの、知らなかった。

 知識としての性交は学んでいるけれど、精通すらしていないオレには初めての刺激なのだ。

 どうしていいかもわからなくて、泣きそうな顔でユターシャおねえさんを見上げ続ける。

 

 いつのまにか彼女に生えていた翼と尻尾が、オレの身体を逃さないように覆い巻き付いてきた。ずっと見ていたはずなのに、頭にはいつのまにか大きなツノまで生えている。

 

 あぁ、だけど。

 

「はい、ご主人様の身体洗いは終わりですよ♡」

「はぁっ……はぁっ……え、ぁ……なん、で……」

 

 刺激は、ここまでで止められてしまう。

 

「だって、ぜぇんぶ綺麗になりましたから……だから、ねぇ?」

「そんなっ……」

 

 離れていく彼女の手。今すぐ掴んで引き止めたいけれど、腕はまだ動かない。

 昂らされた熱をどうしようもないまま、溜め込んだままで止められてしまったのだ。

 

 荒い呼吸が止められない。頭がぼんやりとして、おちんちんのことしか考えられなくなる。

 

「ユターシャ、おねえちゃ……」

 

 彼女の名を呟くと、より笑みを深めて嬉しそうに目を細めた。そして、彼女はオレの手を取る。

 繋がれた手、それはゆっくりと誘導されて……

 

「つぎは、おねえちゃんの身体を、あなたが洗ってください……ね♡」

 

 泡のついた胸に、オレの手が押しつけられていた。

 柔らかくてたぷたぷで、どこまでも指が埋まっていく。真っ白で綺麗な乳肉を、掴んでいるのだ。

 

「あ、ぁ……」

「ほら、もう片方の手も……もっと密着して、ね?」

 

 彼女に誘導されて、両手をおっぱいに沈めながらも顔を谷間に押し付けていた。甘ったるすぎる濃厚な大人の匂いに包まれて、それだけでも気持ちよくなってしまう。

 ムチムチとしたお腹も柔らかくて、おちんちんを太ももに擦り付けて……ただ生え揃った大人のお股毛だけは、お腹にあたってすこしくすぐったかった。

 

「ユターシャ、おね、ちゃっ……」

「ふふ、腰をもっとへこへこ♡ した方が……気持ちいいですよ♡」

 

 太ももに押し付けたおちんちんを必死に擦り付ける。彼女に抱きしめられながら、女の人にしちゃいけない気持ちいいことをしているのだ。

 

 頭が溶けそうだった。

 ぞくぞくと背筋から這い上がってくる快感の大波は、幼いこの体では迎えるのが怖くて。だけど、どうしても腰を振るのが止められない。

 

「ふーっ♡ ふーっ♡ ふーっ♡」

「好きなだけおっぱいも揉んでくださッ……あん♡ 乳首、吸っちゃあ……♡」

 

 じゅっ♡ じゅるるるっ♡ じゅぽっ♡

 

 あまりにもおいしそうだったそれに、気がついたら口が吸い付いてしまっていた。夢中になって歯を立てて、舌で舐め回しながらも吸い上げる。

 爪先と同じくらいの大きな乳首は、どこかじんわりと甘くてミルクの味がした。

 

 ……ミルク? 

 

「あっ♡ だめ、なのにぃっ……♡ 私、その……興奮すると、母乳が出てしまう体質でして……♡」

 

 困ったように笑うユターシャおねえちゃんの乳首からは、確かにお湯でも泡でも唾液でもない……乳白色のとろっとしたものが滲み溢れていた。

 

「お、おっぱい……♡ おねえちゃんの、おっぱいっ……♡」

 

 ちろっ……♡ ちろちろ♡ びゅくっ……♡

 

 吸い上げていたほうのおっぱいをぎゅっと掴むと、少しずつおっぱいが溢れ出してくる。もう片方の乳首にも舌を這わせて吸い上げながら、ぎゅうっとおっぱいを掴み上げると……

 

「ぅんっ♡ あ、ぁぁ〜……でちゃ、う♡」

 

 びゅっ♡ びゅるっ♡ ぴゅーっ♡

 

「すごっ……も、もっと……♡」

「も、もぉ〜♡ だめですよ遊んだらっ……♡」

「おっぱいもっと……!」

 

 両方のおっぱいを口に含んで、夢中になって舐め回す。口の中に広がる甘ったるい濃厚なそれを音を立ててしゃぶっていた。

 おっぱいのことしかっ……考えられないっ……♡

 

「あんっ♡ おっぱいちゅぱちゅぱするの、じょうずですね♡」

「だって、もっとおっぱいっ、飲みたくてっ……」

 

 ゆっくりと出てくるおっぱいを夢中になって飲みながらも、もっともっととねだるように乳首を吸い上げる。

 

「仕方ない、ですね……♡」

 

 そういうとユターシャおねえちゃんは綺麗な装飾の施されたタイル張りの床に転がって、オレに向かって足をカエルのように拡げながらも本来ならおちんちんの生えているところを指で開いた。

 大人しか生えない毛に覆われたそこはピンク色でテラテラとして、照明の光を反射しながらも、なんだか変な形をしている。

 

「これが、おまんこ♡ ですよ♡」

「おまんこ……?」

「えぇ……ここに男の子のおちんちんを挿れると、女の子は気持ちよくなっちゃうんですよ♡」

 

 教育は受けている。だから、知識としても理解している。

 しかしその実物を見るのは初めてで、こんなに綺麗な大人のおねえさんが、おまたを開いておまんこを見せてくれてて……

 

「よく見ててくださいね♡ この穴に、こうやって……♡」

 

 おちんちんが、彼女の指に誘導されてずるずるとおまんこのなかへと食べられてしまう。おまんこの毛の奥、肉色をしたその奥に、オレのおちんちんが埋まってしまう。

 

「あっあっあっ……なに、これっ……?」

「あはぁっ♡ ご主人様のショタチン、食べちゃった……♡」

 

 にゅるにゅるにゅるっ♡

 

 ヌルヌルのお肉が、おちんぽを潰そうとひしめいている。吸い上げられるようなおまんこで、ぎゅうぎゅうと圧迫されているのだ。ニュルンニュルンで気持ちよくて、こんなの、挿れてるだけでっ……♡

 

「さぁ、おちんちんを出し入れしてみましょうね♡」

「やだっ……できな、ひっ……♡ こわ、こわいぃぃ♡」

「頑張りましょうね♡ お手伝い、してあげますから♡」

 

 オレの腰に尻尾が巻き付いてきた。そして、強制的に腰がおまんこから遠ざけられる。

 

 ———にゅぷぷぷぷぷ……♡

 抜かれて。

 

「はっ……ひっ♡ やだ、やだやだぁっ……♡」

 

 ———ずっっっぷんッ♡

 挿入って。

 

「あ"ッ♡ ぁぁぁあ……ッ♡ む、りぃっ……♡」

 

 ———にゅるぷぷぷぷ……♡

 抜かれて。

 

「ま、またぁっ!? やだ、やめっ……♡ おかしくなっちゃうっ♡ おちんちん、おかしくなるッ♡」

 

 ———ずッ♡ ぷちゅんッ♡

 挿入って。

 

「ぁ"あああああッ♡」

 

 逃げたいくらい気持ちいいのに、尻尾に捕まって動けない。硬くなって熱くておかしくなりそうなおちんちんを、まるで地獄のようなおまんこ穴になんどもなんどもじゅぽじゅぽと食べられてしまう。

 

 怖いっ……♡ なんか、なんかきちゃうッ……♡

 

「ふふふ、それは射精ですよ♡ 大丈夫です。気持ちいいの、全部おねえちゃんのおまんこのなかでぴゅっぴゅって出しましょうね♡」

「や、やだぁっ……」

「怖くないですから♡ ほら……おねえちゃんのおっぱいミルク、いっぱい飲んでください♡ おまんこハメハメして、気持ちよくてどんどん溢れてきちゃいましたから……♡」

 

 びゅくびゅくと溢れている母乳。口元に乳首が押し当てられて、そのまま口を開いて吸い上げる。

 甘くて優しい味がした。さっきよりも勢いが強くなっていて、ごくごくと喉を鳴らしながらおっぱいミルクを飲み上げていく。

 

「さぁ、おちんちんもっとずぽずぽしましょうね♡」

「は、いぃっ……♡」

 

 ずっちょッ♡ ずっちょ♡ ぬぷっ♡ ぱこっ♡

 

 少しずつ、少しずつオレも腰を振る。

 どうやらその方がおっぱいの出が良くなるらしくて、オレは頑張っておちんちんを出し入れしながらも母乳を吸い上げていた。

 

「ふっ♡ んっ♡ んっ♡ んっ♡ おねえちゃっ……♡ くるっ、きちゃうぅっ……♡」

「ええっ♡ いいですよ♡ おっぱいミルク飲みながら頭真っ白になっちゃうくらい気持ちいい射精しましょうね♡」

 

 ぱこっ♡ ぱこっ♡ ぱこっ♡ ぱこっ♡

 

 腰を振るたびに、おまんこの中でおちんちんが扱かれる。ニュルニュルの柔らかいお肉に、ぎゅーっと抱き締められているみたいだった。

 

 そして

 

「あっあっあっ……い、イっくっ……♡」

 

 ユターシャおねえちゃんのおっぱいを吸いながら、腰を思いっきり突き出す。

 おちんちんが震えたと思った瞬間には、もう精液が漏れてしまっていた。

 

 びゅくっ♡ びゅるるるっ♡ どくっ♡ どくっ♡

 

 何も考えられなくて、頭が真っ白のまま彼女の身体に倒れ込んでしまう。

 ユターシャおねえちゃんは優しく頭を撫でてくれて、蕩けそうなほどに心地よくて、思わず目を細めてしまう。

 

 おねえちゃんのおっぱいも柔らかくて、まだおちんちんは入ったままだけど……そんなこと、今は気にならない。

 

 このまま、ずっと———

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 しこしこしこしこ♡

 

「ごめんなさい……私、呪いのせいで夜になるとサキュバス……淫魔になってしまう体質でして」

 

 しこしこしこしこ♡

 

「嫌になったら、おっしゃってくださいね。養子を受け入れてくれる家庭を探しますから」

 

 しこしこしこしこ♡

 

「あぁでも……こんなに気持ちいいの体験したら、もう無理ですよね♡」

「ん"ぅううううッ……♡」

 

 ちゅぱっ♡ ごくんっ♡ じゅるるるるるっ♡

 

 ユターシャおねえさんの腕に抱えられながら、母乳を飲みながらもおちんちんを気持ちよく手でコキ下ろされる。お風呂からずっと射精ばっかりしているのだからもう精液も出なさそうなのに、おねえさんの母乳を飲み続けていれば限界はなくなっていた。

 

「おねえちゃん……おまんこ、したい……」

「〜〜〜〜♡ いいですよ♡ おねえちゃんのおまんこでまた射精しましょうね♡」

 

 お願いすれば、すぐにおまんこをおっぴろげて準備してくれる。ぬるぬるのおまんこにおちんちんを入れるととても気持ちよくて、夢中になって腰をパンパンと揺れ動かす。

 

「あっ♡ あんっ♡ ご主人様、腰使い上手♡ えらいえらい♡」

「ユターシャ、おねえちゃっ……♡」

 

 びゅるっ♡ びゅくくくっ♡

 

 射精しながらも、噴き出しているおっぱいをごくごくと飲む。そのまま、抜かずにおまんこの中に挿れたまままた腰を動かして……

 

「ふふふ♡ おちんぽおばかさんになっちゃいましたね♡ いいこいいこ♡」

「おねえちゃっ……おっぱい♡ もっとおっぱい出して♡」

「ええ♡ ゴーシュくんが頑張ってぱんぱん♡ っていっぱいできたら、もっともーっと母乳出ちゃいますからね♡ がんばれがんばれ♡」

 

 ぱんぱんぱんぱんッ♡

 

「はぁっ……おちんちんきもちっ♡ ユターシャ、おねえちゃん♡ もっとぉっ……♡」

「いいですよ♡ もっともっとぱんぱん♡ ってして、いっぱいいっぱいえっちしましょうね♡」

 

 

 

 

 



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主従逆転・高嶺の花に釣り合わない

お詫び
前作の終わりにホルスタインハード調教セックスの予告がありましたが、全く筆が進まないという事故が起きてしまったのでお蔵入りとなりました。
ホルスタインコスプレしたユタ子がスパンキングされながら搾乳機でミルクを搾り取られながらも2穴責されて悶絶する様を楽しみにされてた方も多くいらっしゃると思いますが、書けないモノは書けないので申し訳ございませんが無期延期とさせていただきます。


今作には作者の粘っこい性癖のひとつである、『愛を言葉で語っても証明できない故の苦痛』を多大に含んでいます。
ほんぺで『愛の証明』を成し遂げてる2人ですが、証明できないが故の苦痛を味わうのもまた愛だね。


 

 

 お慕いしております。

 

 好きなんです、愛しております。

 

 その横顔も、笑顔も、ぼんやりと虚空を眺める顔も、頑張っている時の真剣な顔も、全部好き。

 花のような甘い香りも、風にたなびく輝く黄金色の髪も、柔らかい指先も、白いうなじも、青い目も、全部全部愛しております。

 

 この思いが我が身に釣り合わぬと理解していても、それでも激情だけは抑えきれず。

 この世にいるかもわからない神よ、この矮小な身に秘密を隠し持つことだけはお許し願えますでしょうか。

 

 

 

 

 

 ———どこか遠くで。

「まぁいいんじゃねェの?」なんて、軽すぎる答えが帰ってきた気がした。

 

 

 * * * *

 

 

 

「ユターシャ様、お身体にさわりますよ」

「……ゴーシュくん」

 

 夜風に当たっている彼女の肩に毛布をかける。

 本来ならこんな夜に男女が密室で会うなんて軽率なのだろうが、彼女の付き人として幼少期から仕えているオレはそれが許されていた。

 

 エルフの聖女様、ユターシャ。

 

 この国を支える要人の1人。輝かんばかりの美貌を憂げにして真っ暗な森の都市を見下ろす彼女は、はたして何を考えているのだろうか。

 

「ふふ、寒いですね」

「白湯をお持ちしましょうか?」

「それには及びません。……こちらへ、来てくださいますか?」

 

 彼女の横に来るように言われて、そのままそこに腰掛ける。オレの身体にしなだれかかってきたユターシャ様は、嬉しそうに頭を擦り付けてきた。

 

 まるで恋人同士のような逢瀬は、本当なら許されないもの。

 

「ゴーシュくん、それで……前の話なのですが」

「……ユターシャ様、それは無かったことにしましょうとお伝えしましたが?」

「なぜ?」

 

 何故もなにも、釣り合わないからだ。

 

 数ヶ月前、オレは彼女に告白されていた。

 純血エルフで第一聖女で、地位も権力も血筋も何もかもが一等な彼女に、どんな血が入っているかもわからない拾われただけの人間であるオレが告白されたのだ。

 

 彼女には婚約者もいる。

 この国を率いる未来がある。

 オレのような低俗な人間が釣り合う筈がない。

 

 なかったことにしようと告げてからもう数ヶ月が経っていた。彼女の気持ちは嬉しいし、オレとて愛しているのだ。しかし、それが許されないのもまた事実。

 

 オレは、彼女のために身を引くしかない。

 

「国なんて捨ててしまえばいいのです」

「一時の気の迷いで、貴方の永い生涯の名誉を捨てるのですか?」

 

「貴方とならば何も怖くありません」

「私はヒトですから、貴方に最期までお仕えすることなんて出来ません」

 

「貴方は……私のことが、好きではない、のですか?」

「………………」

 

 好きだ。好きに決まっている。

 だけど彼女にはオレを諦めてもらわなくてはならないのだ。二度とそんなことを聞くことがないように……彼女が気の迷いを持つことがないように。

 

 前は、なかったことにしようと頼み込んだ。

 それでもオレの気持ちをわかっているユターシャは、オレの決意を覆そうと迫ってくるのだ。だから……

 

「好き、じゃ、ないです」

 

 バレているかもしれない。だって、オレが彼女を慕っていることは隠していたのに知られていたから。

 

 つっかえながらも放った言葉は、彼女のための必死な嘘。オレは無表情を作り、彼女に冷徹に返す。

 

 これは必要なことなんだ。

 ユターシャ様のための言葉。自分の心を偽り、苦しみを覚えながらも、それでも言わなくてはならない。

 

 だから。

 

 ———そんな傷ついた顔を、向けられたって困る。

 

「ぇ……?」

「婚約者様のいらっしゃる身で、男といるなんて体裁が悪いでしょう。はやくお休みになられてはいかがですか」

 

 目にじわじわと涙が溜まっていくユターシャ様を、無理矢理にベッドに押し込む。これ以上、彼女の顔を見ていられなかった。

 

「な、なんでそんな嘘をつくのですか? ねぇ、貴方は私をっ……」

「ユターシャ様」

 

 彼女の言葉を遮る。そして

 

「おやすみなさいませ、よい夢見を」

 

 オレの服を掴む彼女の指をそっとほどき、彼女から離れていく。早々に部屋を出て扉を閉めれば、中からはぐずぐずと鼻を啜りながら小さく泣く彼女の声が聞こえてきた。

 

 もしも、オレがエルフであれば。

 王族だったり貴族だったり、彼女に見合う地位があれば。

 せめてなにかひとつでもあれば、彼女を愛してもいい権利を持っていたのだろうか? ……いや、そんなことを考えたって無駄なのだ。

 

 

 オレは、静かに彼女の部屋を後にした。

 

 

 

 

 * * * *

 

 

 

 

 その数日後。

 

「ユターシャ様、こちらですッ……!」

「あ"……ご、しゅ……」

 

 彼女の婚約者だった男は、ユターシャを嵌めて犯罪者のレッテルを貼った。

 

 国中にばら撒かれた虚偽の罪。

 助けだす間も無く施された呪い。

 

 気がついた時にはもうどうしようもなくて、オレがやっと追いついた時にはユターシャ様の身体に焼印が施された後だった。

 

「大丈夫だから……守ります、絶対に守るから、だから」

「ゴーシュ、くん……」

 

 なんで。どうして。

 そんな言葉が自分の中で渦巻くが、今は彼女を優先しなくてはならない時だった。

 

 背には翼。臀部には尻尾。

 そして、頭には禍々しいツノが2本。

 悍ましい魔族に堕とされてしまった彼女を抱えて、安心させるように声をかけ続ける。

 

 自身の魔術により彼女の肉体は大きなダメージを受けていた。

 せっかくの美貌も血に塗れていて、そんな彼女を隠すように抱いて馬に跨る。

 

 とにかく、逃げなくてはならない。

 後ろから聴こえる怒声が遠ざかっていくのを感じながらも、オレはただ前を急ぐだけだ。

 目指すは、甘き森と呼ばれる危険な地帯。大型の魔獣が多く生息するその森は大変危険で、熟練の戦士であろうと死がつきまとうところなのだ。

 

 追手も、流石に甘き森の中には追ってこないだろうという思惑があった。

 

「ユターシャ様」

「……ごめん、なさい……巻き込んで、しまって」

「オレは貴方のための従者ですから、気になさらず。それより……手当てをしましょう」

 

 かなりの距離を離して、洞窟の中に逃げ込んだ。

 馬は森に入る前に離してやったから、きっとうまく野生に戻ってくれればいいだろう。

 

 地面に座り壁に背を預けて、苦しそうに肩で呼吸をするユターシャ様に近付く。

 

 悪魔になってしまったらしい彼女は、自身の体を回復させるだけの魔力すら今は消費してしまっているようだった。

 

「魔力が、足りなくて……」

「魂を喰らうのでしょうか? オレのものでよければ、ご随意にどうぞ」

 

 悪魔の食事なんて、何を食べるのか知らないのだ。

 しかし、元から彼女に全てを捧げているこの身。オレ自身であれば、いくらでも彼女に売れる。

 

 何が欲しいか、と問いかけた。契約書でも血でも、なんでも彼女の必要だというものなら揃えなくてはならなくて。

 

 だが。

 

「その、えと、……せ、ぃえき、を……」

「生気?」

「……ざ、ザーメン……と、いうものを、欲しい……で、す」

 

 は? 

 

 なんて? 

 

「……ユターシャ様? あの、オレの耳がおかしくなったようでして、もう一度正しくおっしゃっていただけますか?」

「お、女の子に、そんな……ふしだらな言葉を何度も言わせないでください」

 

 ふしだらな言葉を先に使ったのはそちらだろうに。……じゃなくて。

 

「ほ、ほんとうに? 本当にその、ザーメン……ええと、精液が必要なのですか?」

 

 彼女は小さく頷いた。まじか。

 

 マジなのか。

 

 だってあの聖女ユターシャが、そんな、精液を必要とするなんて天と地がひっくり返ってもあり得ない。そもそも彼女の口からそんな単語が出てくること自体が、ありえなくて。

 

「ユターシャ、様。その、なんで……?」

「身体が呪いによって、淫魔になってしまったようでして……ぐっ……」

 

 ぜぃぜぃと、荒い呼吸を繰り返す彼女はオレに手を伸ばす。

 

「ゴーシュ……」

「ユターシャ様……ダメ、です」

「お願い、します……痛くて……」

 

 サキュバス、淫魔。

 男の精液を啜り生きる、闇の魔族。人間社会に潜み住んでいると聞いたことはある。

 

 エルフの国では見かけることがないその存在へと変異してしまった彼女を、オレはどうすれば助けられるのかわからなかった。

 

 ———抱く、のか? オレが彼女を? 

 

「助け、て」

 

 彼女は絞り出すかのように、そう呟いた。

 

 オレなんかが、彼女に手を出していい筈がない。だがそうするしか今はなくて、それに他の男のものなんてもってのほかだ。

 目の前のユターシャ様は震えていた。悲しそうに、それでも痛みを堪えながらオレの答えを待っている。

 

 ……1番辛いのは、彼女じゃないか。

 

「ユター、シャ」

 

 これは、彼女のためなんだ。

 仕方がないことだから。

 

「オレ、で……いい、のか?」

「あぁ……ごめん、なさい……ゴーシュくん……ごめんなさい……」

 

 もう少しも動くのが億劫だとばかりに、彼女は身体を楽にしていた。浅い呼吸、肉が露出し血に塗れた腕、いつもの黄金色の髪もどこかやつれて見える。

 

 ただ、これは愛し合うような行為ではないのだ。

 最小限で、最低限でなくてはならない。

 

「……暫く、我慢していてください」

「ゴーシュくん、私は……」

 

 彼女の纏っていた囚人服の、その下だけをそっと脱がす。彼女の白い太腿、シンプルな下着———視界に入れるのも申し訳なくて、そっと目を伏せる。

 

 もしも、これが許されたものならよかった。

 祝福されて、堂々と愛しあえた結果に見る柔肌ならばどれだけよかったことか。なし崩し的に聖女の身体を穢すなんて、あまりにもユターシャ様が哀れだ。

 

 オレなんかが、触っていいものではない。

 

「ゴーシュ」

「……すぐ、終わりますから……大丈夫です。目を、瞑っていてください」

 

 下着をずらして、そっと顔を寄せた。

 いくらサキュバスとて初めてなのだからと、オレはユターシャ様の秘部に舌を這わせる。

 

 見てはいけないとわかっていても、どうしたって見てしまう。ユターシャ様のピンク色の肉は鮮やかで、なんだか甘ったるい匂いもして……

 

「あっ……♡ だめ、汚い、ですよッ……♡」

「綺麗、です」

 

 ぺちゃっ……ぺちゃ……じゅるる……っ♡

 

 ダメだと分かっていても味わってしまう。恥じらっているのか足を閉じようとするユターシャがいじらしくて、この行為を楽しもうとすらしてしまう自分がいた。

 

 ダメだ。楽しむためのものではない……これは彼女のための行為であり、オレの私情など挟んではいけないのだ。

 

「あぁぁぁ……だめ、だめ……っ♡」

「足、ちゃんと広げといてください。きっと痛いかもしれないから、だから……」

「ゴー、シュくんっ……♡ でもぉっ……♡」

「オレが相手なんだから、恥ずかしいなんて思わないでください」

 

 この行為はただ回復のための食事でしかない。

 彼女にとってオレは従者でしかなくて、それ以上にもそれ以下にもなれない。立場の違う使用人相手に、恥じらう必要なんてないのだ。

 

 ぎゅう、と太腿に顔が挟まれる。彼女の内腿は、ひどく柔らかかった。

 

「身体、痛くてお辛いでしょう? 楽にしていてください……」

「ゴーシュっ、ゴーシュっ……♡」

 

 クリトリスを舐めながら、濡らした指でゆっくりと中に侵入していく。彼女の穴はもうすっかりとびちょびちょに濡れて、甘ったるくてねっとりと糸を引く透明な汁をたっぷりとそこにこぼしていた。

 

 ……やばいな、これ。

 あぁダメだ。こんな感情をユターシャ様相手に持つなんていけないことなのに……だが、恋慕していた相手をこんな風にできる日が来るなんて思っていなくて、どうしても理性がまともな仕事をしてくれない。

 

「はーっ♡ はーっ♡ 指、はいって、きてっ……」

「……苦しくはありませんか? 増やしても、よろしいでしょうか?」

「えぇっ……大丈夫、ですから」

 

 ぐちゅっ……ぐちゅっ……ぐちゅっ……♡

 

 中指と人差し指を差し込んで、へその方に向かって指の腹でゆっくりと撫で擦る。指を曲げて伸ばしてを繰り返せば、キュンキュンと締め付ける膣肉が脈動を返すのだ。

 

 どんどん、自分の中の熱が昂っていくのがわかる。なんなら今すぐズボンを脱ぎ捨てたいほど硬くなっていて、痛いほどに勃起していた。

 

「ユターシャ様……痛く、ないですか?」

「は、いっ……! 大丈夫、ですからぁっ♡」

 

 指で中を掻き混ぜ、クリトリスに吸い付きながらも彼女に伺い立てる。

 

 ユターシャ様のおまんこを舐めているなんて、信じられなかった。閉じようとする彼女の足を押さえつけて、じゅるじゅると溢れる愛汁を舐めとっていく。

 

 ユターシャ様のためだなんて言い訳をして、楽しんでいる自分を心の中で責め立てる。

 それでもどうしても彼女の痴態に興奮してしまう自分がいた。

 

 この行為は、ただ彼女の破瓜が辛いものにならないための、必要な準備でしかない。だからオレは、彼女に対してどんな感情も抱いてはいけないのに。

 

「はぁっ……ユターシャ、様……もう、よろしいでしょうか?」

「ゴーシュくんっ……」

 

 自身のものを、取り出す。硬くなって、すっかりその気になってしまった愚息は興奮を隠しきれていなかった。

 

 そしてまた、ユターシャ様もそれを凝視している。服を着込んで、取り出したソレだけをまじまじと見つめられるのはどうにも恥ずかしかった。

 

「……ユターシャ様、そう見られますと」

「ごっ、ごめんなさいっ! えぇと、その……」

「もう少し、慣らしてからの方がよろしいでしょうか?」

 

 怖いだろうとオレが問いかけると、ユターシャ様はゆっくりと首を横に振った。

 

「大丈夫、です」

「ですが」

「……はやく、挿れてっ……」

 

 ———それも、そうだ。

 

 これ以上彼女に負担を強いるわけにはいかない。今も彼女の肌は焼け爛れたままなのだ。

 もちろん彼女に痛みを与えるわけにもいかないけれど、だからといってこのまま待たせ続けるのもよくない。

 

 ただ彼女の身体を治すための、必要な行為なのだ。

 

「……ユターシャ様、失礼します」

 

 彼女の身体を抱き寄せ、足を持ち上げた。秘部に自身のものを押し当て、そして手で彼女の目元を覆う。

 

「ゴーシュ?」

「……挿れます、ね」

 

 こんなのが、彼女の初めてだと覚えてもらいたくなかった。

 

 ユターシャ様はいつか盛大な結婚式を挙げて、お世継ぎを作られると思っていた。そこにオレの血は入ってはならないのだ。

 いつか、本当に彼女と結婚するような男に捧げられなくてはならないもの。

 

 それがオレのような、彼女に仕えてきただけの召使いであるべきはずがない。

 彼女の大切な初めてをオレのような矮小な存在に奪わせたくなかった。

 

 だからせめて、思い出にも残らないように目を隠す。

 

「ゴーシュッ、これ、見えなっ……」

「ッ、……見なくて、いいですから」

 

 彼女の中は、ひどく熱かった。

 熱くてうねって、肉棒を舐めしゃぶるように締め付けてくる。

 

 ゆっくりゆっくりと挿れたいのに、誘われるままに奥へと侵入してしまう。あまりの気持ちよさに夢中になりかける自分自身をなんとか諌めながら、彼女の顔色を伺いつつ侵入していく。

 

「ごー、しゅっ……ごーしゅ、くん」

「ユターシャ様……痛くは、ないです、か?」

 

 こくん、と小さく頷いた彼女。

 根元まで埋まり、そして馴染ませるようにそのままで深呼吸を繰り返す。

 

 オレの顔も身体も覚えないようにと隠した手の中で、ユターシャ様の瞼が動いた気がした。

 

「……大丈夫、だからっ……動いて、ください」

「は、い」

 

 じゅ……ぱ、ちゅん♡ ぱちゅっ……ぱちゅ……

 

 穏やかな律動だった。中を掻き回すように、優しく優しく穿っていく。初めてだというのに痛そうでないのは、彼女がサキュバスになったからなのだろうか。

 

 オレは、ユターシャ様の中を犯していた。

 

「あっ……あっ、あっ、あぁっ……」

 

 甘い声が響く。腰を動かす度に彼女の中が絡みついてくるようで、その快楽に耐えなければならなかった。

 

 自分勝手に腰を振って仕舞えば、どれだけ気持ちいいだろう。今すぐ邪魔な服を全部脱がして、あの大きい胸に指を埋めてしまいたい。せめて、その唇にオレが触れることが出来ればいいのに。

 

 それらの薄汚い欲望を、理性で押さえつける。

 

「あぁぁぁっ……んっ、はぁっ……」

 

 ぐちゃぐちゃと音が立つ。水音と肉がぶつかり合う音が、やけに大きく聞こえた。

 オレが動くたびにユターシャ様は艶やかな声で鳴いて、脳みそがドロドロに溶かされそうだ。

 

 ユターシャ様の腕が、オレの顔に伸ばされた。そのまま引き寄せられて、唇が近づく。

 

「ゴーシュ、くん」

 

 互いの息すら感じられるほど近くて、だけど。

 

「っ、だめですユターシャ様っ……それ、は」

 

 顔を背けて、ユターシャ様の口から逃げてしまった。いくら彼女からの頼みとはいえ、そのような不敬を勢いに任せてしたくはなかったのだ。

 

 オレは、所詮彼女の従者に過ぎない。

 そんな恐れ多いことをしていいような存在ではないのだから。

 

「……ぁ、あぁぁ」

 

 すぐに、ユターシャ様の手は離れていった。

 オレの手で隠している目は、今どんな表情を浮かべているのだろうか。熱に浮かされたオレは、それを考えられるほどの余裕もない。

 

 ずっと好きで、ずっと恋していた彼女を抱いている今の状況に、オレはおかしくなっているのだ。

 

「ユターシャさまっ……」

「あっ……あぁぁっ、ゴーシュ……」

 

 ユターシャ様を抱きたいだなんて浅ましくて低俗な思いを持っていた自分を、知られたくなかった。いまこうして犬のように必死に腰を振る様を見られたくなかった。

 

 こんな最低な自分があのユターシャ様の身体を暴いているだなんて、あまりにも胸糞が悪い。

 だからせめて、ユターシャ様には今抱かれている相手が誰なのかも忘れて欲しいと願ってしまう。

 

 これは、ただの治療行為。

 自分の欲望を考えるな。喜ぼうとする下卑た自分を許すな。ユターシャ様の御身だけを案じる自分でなくてはならない。

 

「はぁっ……も、出しますっ……」

 

 彼女の頭を押さえ込んだ。自身の首元に彼女の顔を押し付けて、そのまま奥の方に怒張をねじ込む。

 ちゅう、と吸い付く子宮口は柔らかくてザーメンを欲しがっているようだった。

 

 びゅぐっ♡

 

「ごー、しゅ……ッ」

「ぁ、う……ぐっ」

 

 びゅるるるっ……どくっ……どくっ……♡

 

 今まで感じたことの無いほどの快感が襲ってきて、目の前がチカチカと点滅する。思わず強く抱きしめてしまっていたユターシャ様の身体が柔らかくて、そのままの姿勢で射精後の虚無感をすごしてしまう。

 

 自身の呼吸が落ち着くまで、オレは彼女の身体を抱きしめていた。

 やってしまったという自己嫌悪と、薄暗くて汚らしい彼女への恋慕がぐちゃぐちゃになっている。必要なことだったからと言い訳をしながらも、自分が彼女の初めてだったのだと幸福を感じてしまう自分が嫌だった。

 

 ……仕方ないんだ。

 これは、仕方がないことだった。

 

 

 

 

 

 

「ユターシャ、様」

 

 しばらく……およそ1分にも満たない後、オレは身体を離す。不思議なことに彼女の腕には怪我の一つも無くなっており、そして萎えていた黄金色の髪は本来の輝きを取り戻していた。

 

 これで、よかったんだ。

 

 安心して、自身のものをゆっくりと引き抜く。ヌルヌルとしたそこに包まれていたそれは、彼女の中ですっかりと精を吐き出していた。

 

「……」

「ユターシャ様……その」

 

 多大な幸福感、そして地獄のような虚無感。

 自分の声が普段よりも少しだけうわずっているのは、きっと気のせいだと思いたい。

 

 身体が離れて、彼女の顔を正面から見る。

 

「———ぇ?」

 

 そして、ようやく気がついた。

 

 気がつくのが、遅かった。

 いつもなら彼女の少しの機敏だってわかるのに、今だけは浮かれていたから、だから。

 

「……ごめんなさい、ゴーシュくん」

「ユターシャ様?」

 

 

 ———泣いていた、のだ。

 

 

 静かに、音も立てずに目元からは涙が溢れ出ている。オレから逃げるように視線を外して、流れ出る涙は果たしていつからなのだろうか。

 

「なっ……ぇ、あ……ユターシャさま?」

「ッ、見ない、で」

 

 やはり痛かったのだろうか。それとも、聖女としてのあるまじき行為に心を痛めたのだろうか。頭から氷水を浴びたように身体が冷え切って、心に焦りが生まれる。

 

 そっと目元に指を這わせた。涙の跡を拭ってあげても、彼女の瞳からはさらに滴がこぼれてきて。

 

 ハラハラと静かに泣きながら、ユターシャ様はオレの手を取った。

 

「……私、は」

 

 ———ずっと、両想いだと思っていたんです。

 

「ユターシャ、様?」

「ようやく、立場も無くなったと思えた。あなたが私に正直になってくれると思った……だけど」

 

 美しい、泣き顔だった。

 悲壮を湛えながらも言葉を紡ぐその様は、神々しいほどに美しい。

 

 触れることすら禁忌のようで、なのに手を伸ばしてしまう。泣かないで欲しいのに、その表情を見つめるだけで時が止まったように引き込まれてしまう。

 

 彼女はオレの手を、そっと包み込んだ。

 

「あなたの気持ちを、私は自分のいいように解釈してしまっていた。好きでもない女に言い寄られて、迷惑だったでしょう?」

「……なにを、言ってらっしゃるのですか?」

「使用人だから逆らえない、そんなあなたの立場を私は利用していた」

 

 ごめんなさい、と彼女は繰り返す。

 なぜ彼女がオレに謝るのかわからなかった。

 

「……好きでもない女を、抱かせてしまってごめんなさい」

 

 

 

 何を、言っている? 

 

 

 

「私を抱いている時、顔も見たくなかったのでしょう?」

 

 ———違う。それは、ユターシャ様のため。

 

 最中ずっと彼女の目を隠していたのは、今抱いている男がオレだと思い出に残して欲しくなかったから。

 神聖な彼女の心に、そんな楔をつけたくなかったから。

 

「キスも、許してくれなくて」

 

 ———それも、ユターシャ様のため。

 

 彼女から請われたキスから、そっと背いてしまった。

 

「……好きじゃないって、言ってました、もんね」

 

 ———ユターシャさまの、ため。

 

「ちが、う」

「いいの、いいのですゴーシュ。私は貴方の虚勢を求めません。嫌なら嫌と言っていいですから」

「違うんだ。オレは、貴方のためを思って……」

「ゴーシュ」

 

 彼女の顔は、諦め切っていた。

 

「……今までごめんなさい」

 

 違う、違う。そうじゃない。

 

 確かにユターシャ様がオレのような人間なんかを愛するのは間違っている。

 だけど……全ての責はオレにあり、ユターシャ様が謝らなくてはならない事なんてひとつもないのだ。

 

 全て、オレが悪い。

 

 貴方と釣り合える男ではない。

 貴方に出会ってしまった。

 貴方の心にいらぬ楔を打ち込んでしまった。

 それらは全てオレが背負わなくてはならない苦悩である。美しい彼女の近くにいることを許されているオレに課せられた、重たい罰だ。

 

 ユターシャ様が悲しむ事なんて、何もないのに。

 こんなオレごときのために、貴方の心に小さな波も立てたくない、のに。

 

「あなたの心に私がいないことを、やっと理解した私を……どうか許してください」

 

 濡れたまつげが、伏せられる。

 

 わからなかった。優しすぎるユターシャ様に、オレはどうして応えればいいのだろうか。

 それならいっそ、嫌われた方がマシだ。拒絶されて、憎まれて、いっそ忘れられた方がマシなのに。

 

「泣かないで、ください」

「ッ、優しくしないで……また勘違いしてしまうから」

 

 ぽろりと頬を流れ落ちた雫を見て、胸が締め付けられるような感覚に襲われる。

 

「謝ります、なんでもします……だから、ユターシャ様、お願いします。泣かないで、ください……貴方の悲しい顔は、オレには……ッ」

 

 手を伸ばす。しかしその手は、彼女に初めて拒否されて行き場をなくしてしまった。

 

「私を慰めるための言葉を、禁じます」

「……ユターシャ様、オレは」

「私を愛していないあなたから愛の言葉を無理矢理言わせても……それは、貴方を苦しめるものだから」

 

 違うんだ。

 

「ぁ、いしてる……ユターシャ、オレは貴方を、愛して……」

「いいの」

 

 ———無理、しなくていいから。

 

 

 あ。

 

 あぁぁぁ……

 

 あああああああ……

 

 違うんだ。違う、違う。どうして、そうなってしまうのか。

 これまで積み重ねてきた全ての選択肢を間違え続けていた。彼女を愛しているからと、オレは自分勝手になってしまえばよかったのか。

 

「それでも、きっとあなたのことを好きで居続けてしまう愚かな私を……ゆるして、ください」

 

 愛していると、繰り返す。

 好きだと、心底貴方のことだけを想っていますと口走ってしまう。

 

 愚かなオレは、きっともう救われない。

 どれだけ言葉を重ねようが、彼女にとってそれらの言葉は全て『慰め』へと変わる。

 

 好きでもない女を、慰めるための偽りの言葉。

 愛ではなく、忠誠からくる甘い口説き。

 

「違う……嫌だ、オレは心の底から、貴方を」

「ゴーシュ」

 

 

 あぁ。

 

 

 オレの言葉はもう、信じてもらえない。

 

 

 

 

 

 

 * * * *



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