結城友奈は勇者である 〜運命に導かれたカリス〜 (プロトタイプ・ゼロ)
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Prolog

俺の名前は黒宮純。かつて運命に抗った仮面ライダーカリスに憧れる普通ではない少年だ。

 

俺の体にはバトルファイトの切り札と言えるジョーカーの血が流れている。元々は普通の人間だったんだが、アナザーブレイドを止めに来た常磐ソウゴ達との戦いに巻き込まれ、一度だけ死んでしまったらしい。死にかけの状態だった俺を偶然通り掛かったカリスに変身する始さんはジョーカーの力を用いる事で蘇生させたらしい。

 

ただ、なんの不備か、俺の体はジョーカーと同じようになってしまい、闘争本能こそないものの、この地球で三人目のジョーカーとなってしまった。 

 

ある日、俺が十四歳になると始さんからジョーカーとしての力と役割、そしてカリスになるためのラウザーを継承し、俺は仮面ライダーカリスとして戦うことに決めた。

 

そして、俺の世界は……最高最前の魔王によって歴史を改善された。ただ一人、俺だけを除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歴史を改善されてから二年後……。

 

十六歳になった俺は、世界を歩き渡しながら仮面ライダーカリスとして怪人達と戦っていた。ジョーカーとしての役割を終えた始さんは写真家として活動しているらしく、今もどこかで写真を撮っている。

 

たまに俺のスマホに画像が送られてきているから、平和に暮らしているんだろうな。そう言えば、旅の途中になんか変な人にあったな。自らを「通りすがりの仮面ライダー」だとか「世界の破壊者」だとか名乗ってるちょっと痛い男性が。

 

まぁ、仮面ライダーとしての実力が本物らしくとても強かった。一度オールライダーにカリスとして参戦したけど、本当の殺し合いって凄かったな。

 

さて、無駄話もここまでにして、俺も頑張らなくちゃな。

 

「ふぅ〜。この辺りのショッカーは全て倒したな」

 

まだ歴史が改善される前にギャレンに変身する橘さんとレンゲルに変身する睦月さんに稽古をつけてもらったおかげで、俺はだいぶ戦えるようになった。

 

実戦形式でギャレンとレンゲルと戦った所、俺の体にはカリスの力が始さん以上に馴染んでいた事で、二人を圧倒することが出来た。だが当時は戦いに関する初心者である俺は、歴戦の戦士二人に負けてしまった。

 

二人からも慰められた。とても恥ずかしかったよ。その後は響鬼にも修業をつけてもらったり、天道総司さんに料理を伝授して貰ったり天道録を教えてもらったりなど、かなりのライダー達から教えをこうむった。

 

「懐かしいなぁ。早く皆に逢いたい」

 

俺の記憶に保存されている皆との生活を思い出し、思わず涙を流しそうになった。オーマジオウとなったソウゴさんが歴史を変えた影響で”俺”を除いた皆は仮面ライダーとしての記憶を失い、仮面ライダーディケイド、仮面ライダーディエンドと俺だけが全てを覚えている。

 

今の始さん達は俺の事を覚えてないし、ジョーカーになることもなかったこの世界の俺も平和に笑いながら学校に通っている。

 

ディケイドとディエンドは例外として何故俺だけが歴史改善に影響されなかったのか。それは俺が本来ジョーカーになる運命ではなかったからだ。そもそもの話、俺はジオウの戦いにすら巻き込まれる運命ではなかった。

 

ただの偶然が運命を変えてしまった。つまり、本来俺の世界には仮面ライダーブレイド達はいても仮面ライダージオウは存在”しない”はずだったんだ。仮面ライダージオウにはならない運命の常磐ソウゴは存在しても、仮面ライダージオウになる運命の常磐ソウゴは存在しないのだ。

 

まぁ、要するに。タイムジャッカーが俺たちの世界に来たことで、俺の世界に存在するはずのなかった仮面ライダーが生まれたのだ。だからこそ俺というジョーカー(イレギュラー)も生まれてしまい、俺だけが元の時間軸の改善に影響されなかったのだ。

 

「もう、あの頃の皆には逢えない。それはかなり悲しいことだ。俺がジョーカーにならなければ、その悲しい感情を思うことも出来たのだろうに」

 

俺はなるべく人間としての姿を見られないように、なるべくカリスの姿で居ることを心得ている。いつこの時間の俺に出会ってしまうかはわからないからな。

 

今では怒りと喜びと恐怖しか感情が残っていない。まぁ、この三つだけ残っているだけでも、俺はまだ人間としていられるのだろうな。

 

「ん?なんだあの洞窟は?」

 

長いこと戦い続けていた俺の目に映ったのは、闇の深そうな洞窟だった。俺は躊躇いもなく洞窟の中に入っていく。

 

洞窟の中は暗く先がほとんど見えない。俺がジョーカーであるからこそ多少は見えてはいるがコレでも明かりぐらいは必要になってくるな。 

 

ヒューマンアンデッドが封印されたハートの2が描かれたカードを、カリスラウザーのスラッシュ・リーダーに通過させる。

 

【スピリット】

 

その後、2年ぶりに俺自身の姿に変化する。この洞窟の中なら誰も居ないし、安全だろうと俺は確信した。

 

「もう少し奥に進んでみるか」

 

俺はポケットからライターを取り出す。予め集めておいた大きめの枝に火を灯す。

 

よし、これで多少は明るくなった。 

 

俺はしばらく洞窟の中を進んでいく。この先に何があるかは知らないし興味もないが、それでも完全に安全を確認した方がいい。そう思って俺は歩き続ける。 

 

二時間ぐらい歩き続けた俺は、洞窟の奥に光が見えるのがわかった。

 

「外につながっていたのか?それとも奥に誰かがいるのか?」

 

どうだっていい。とにかく行けばわかる。

 

俺は洞窟に入る時と同じく躊躇いもなく、その光に向かって歩く。やがて光は大きくなり、俺を飲み込んだ。

 

あまりの眩しさに目を閉じてしまった。これが誰かからの攻撃かもしれないのに、不覚だ。だが、なんだろうか?外に出たのかまだ洞窟の中なのかは知らんが、少し雑音がする。

 

何となくゆっくりと目を開けた俺が見たものは、壁に覆われた世界だった。以前士さんから聞いたビルドの世界だろうか?いいや、違うはずだ。話に聞いていたビルドの世界では黒幕との決着は既に終わっており、仮面ライダービルドこと桐生戦兎は万丈龍我と共に新たな新世界にいるはずだ。

 

「なんだここは?一体どこだ?」

 

こんな訳の分からない場所にいるのは危険だ。そう思って洞窟の中に戻ろうとしたが、

 

「先程の出口がない」

 

出口どころか洞窟すら無くなっていた。今俺の目の前にあるのは、ただの壁だけ。

 

「面倒だな。まずはあの街に行ってみた方がいいだろう。そこで情報収集でもするか」

 

あいにくといろんな場所を歩き渡ったおかげで、財布の中はたっぷりとある。多少の無駄使いは出来るが、そこまで欲望がない俺は多分お金を使わないだろう。

 

そんなどうでもいいことを考えながら、俺は街に向かって歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街についた俺は初めに、腹ごしらえでもしようかと考え、近くにあった「かめや」と言う看板の着いたうどん屋に入った。

 

と言うか、手軽に食べれるものを探してはいたのだが、どこに行ってもうどん屋しか無かったため仕方なくたまたま近くにあった店に入っただけだ。

 

今が何時なのかは知らないが、店の中には多少のサラリーマンとどこかの中学生女子五人組が座っていた。

 

俺は取り敢えず席に着き、メニューで何があるかを確認した。

 

……結果、全部うどんしか無かった。ここの店主は客にうどんしか食わせないつもりなのだろうか?

 

そんなことを考えていると、ガタイのいいオッサンが近寄ってきた。

 

「お?あんちゃん初めて見る顔だな」

 

「あぁ、たまたま立ち寄っただけなのだが、そうだ聞きたいことがある」

 

「おう!なんでも聞いてくれ!」

 

ガタイのいいおっさんはドンと胸を叩くと、豪快に笑った。その様子に別の席でうどんを食べている女子が苦笑いしている。

 

「ここにある店にはうどんしか置いてないのか?」

 

「まあな!なんてったってうどんは香川の名物だからな!!」

 

香川だと?それはおかしい。俺が先程までいた場所は香川ではなく、三重だぞ?なのに洞窟の中を進んだだけで何故香川に着くというのだ?

 

わからない。全く持ってわからない。

 

「ん?どうしたあんちゃん?」

 

「いや、なんでもない。所で、この店のオススメはなんだ?」

 

「おん?おめぇさん、香川の人間じゃねーのかい?」

 

「あぁ、俺は三重から来たんだ」

 

「「「「「なんだって!?」」」」」

 

何故そこで皆は息のあったように叫ぶ?何も珍しいことではないだろうに。

 

「どうした?」

 

「どうしたもこうしたもねぇ!四国には巨大な壁があるのは知ってんだろ?その壁の奥には天の神によって滅ぼされた大地があるのさ。今助かってるのはこの四国だけで、生存者いたなんて誰も知らねぇんだよ」

 

言ってる意味がわからないが、とにかくここの人間からすれば香川以外の人間は本来いないということか。

 

「なるほど。お前達からすれば俺は本来居ないはずの人間なわけか」

 

「いや、まぁ、どう言ったらいいんだろうなぁ」

 

「それよりも飯を頼む」

 

「お、おうよ。ちょっと待ってな」

 

そう言ってガタイのいいおっさんは店の奥に引っ込んだ。しばらくして届いたのは、なんとも美味しそうな……かけうどんだった。うん、まぁ、予想はしてた。一度だけ香川には訪れた事があったし。

 

俺は静かにうどんを啜る。先程から中学生五人組がこちらをチラチラと見ているが、何もしてこないし無視でいいだろう。

 

俺は基本自分からは何もしない主義なのだ。 

 

数分でうどんを食べ終わりお金を払った俺は、取り敢えずどこか人目のつかない場所に行こうと考えた。それからいろんな人に話を聞いたおかげで、今この世界で何が起こっているのかを大体は理解出来た。 

 

まずこの世界には大赦という存在があり、神樹様と呼ばれる守り神を信仰しているらしい。 

 

壁の外には地獄化した大地があり、バーテックスと呼ばれる天の神の下僕?から四国を守る五人の勇者がいるそうだ。

 

一応その勇者によって天の神との戦いは終わったそうだが、この様子だとそれでも戦いは天の神だけではないらしいな。

 

さて、いい所で理解するのが終わったところで、さっきからコソコソついてきている奴と話でもするか。

 

「ついてきているのは分かっている。出てきたらどうだ?」 

 

後ろを振り返って言ってみると、物陰から先程うどん屋にいた五人組が出てきた。やはり付けられていたか。

 

「あはは……バレちゃってたか」

 

「どうしようお姉ちゃん」

 

「大丈夫だよ樹ちゃん!」

 

「その自身はどこから来るのよ……」

 

「油断しては行けないわ友奈ちゃん」

 

なにやら警戒しているらしい五人組。俺には関係のないことではあるが、俺はこの街について詳しくはないため、彼女たちに案内でもしてもらおうか。

 

「悪い。少し頼みたいことがある。俺はつい最近ここに来たばかりで、あまりこの地に詳しくないんだ。出来れば案内してくれないか?」

 

「分かりました!!」

 

「ちょ、友奈!?」

 

赤みを帯びた茶髪の少女が元気に手を挙げ、それ以外の四人が驚く。恐らくいつもの事なのだろうな。いつの時代も慣れていても空気の読まない言動は驚かれるのだ。

 

俺のいた時代にも天然故に空気を読まない人は何人かはいたが、この子のそれは、敢えて空気を呼んでいないように見える。

 

(なるほどな)

 

人を一度見ただけである程度理解できるのは俺のいい所だが、俺自身があまり人と関わりを持とうとしないから正直宝の持ち腐れもいいところだ。

 

「その前に自己紹介からしようか。俺は黒宮純。旅人だ」

 

「私、讃州中学勇者部所属結城友奈って言います!」

 

「同じく勇者部所属三好夏凜よ」

 

「東郷美森です。よろしくお願いします」

 

「私は讃州中学勇者部部長犬吠埼風よ」

 

「わ、私はお姉ちゃんの妹の犬吠埼樹です」

 

お互いそれぞれ自己紹介を済ませ、俺は彼女たちに連れられながらこの街を案内してもらった。だが、直ぐに風達の端末から聞いたことのない音が響く。

 

「なっ、これは樹海化警報!?」

 

「なんだそれは?」

 

「後で説明してあげるわ……ってなんで動けてんのよ!?」

 

なんかよくわからないが、彼女達の顔を見る限りいい事ではないのだろうな。そして何故そう驚く?

 

そんな時、どこからか無数の花弁が俺達を覆い尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Continue to next time!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第一話「5人の勇者」

先程の少女――犬吠埼風が言っていた樹海化警報の音がなくなり、少しずつ瞼を上げていくとまるで海のように広がる無数の樹木があった。

 

「なるほど。だから樹海か」

 

俺は樹海の上を歩きながら考える。少しだけだが、この場所の事は聞いたある。なんでも外から攻めてきたバーテックスを倒すために戦うフィールドのようなものだと。

 

本来勇者しか入れないはずのこの場所に、何故俺は入ることができた?俺は勇者どころか純粋な女の子でもないし、ましてや世界の敵とも呼べるジョーカーアンデットだ。ここにいること自体がおかしい。

 

色々と疑問となることは多いが、今はそのバーテックスだとか勇者だとかの戦いでも見に行こうか。

 

もしかしたらなにか情報を得られるかもしれない。

 

さて、行動をするべきだな。

 

妙な感覚を感じながら、俺は気配のする場所に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数分後〜

 

なるほど…… 俺が昔出会った少女達が戦っていた存在と似ているな。名前も姿も。いや、もしかしたら同じ存在なのかもしれない。 

 

なるほど。バーテックス……頂点を意味するその名を受けておきながら、格下である人間に消滅させられてんじゃねーかよ。

 

どう言った原理かは知らないが、あの五人の服装も髪も変わっているから、恐らくあの五人が噂で聞いた勇者なのだろうな。

 

仕方ないな。

 

「始さん……貴方の力、お借りします」

 

ハートのエースが描かれたカードを持ち、腰にカリスラウザーを出現させる。そしてスラッシュ・リーダーにカテゴリーAをスライドさせる。

 

「変身」

 

たちまち俺の姿は異形の、ハートとカマキリをモチーフにした仮面ライダーであるカリスに変身した俺は、バーテックス達の群れと戦っている勇者達の方に向かって走っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜結城友奈〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今までの経験から樹海化が突然始まるのはいつもの事だった。私達が天の神との戦いを終わらせたのにも関わらず、相変わらずバーテックス達は四国にある神樹様を襲いかかってくる。

 

せっかく人助けのために困っていたと思いたい潤くんの街案内が出来ると思ったのに、本当にバーテックスには空気読んでほしい。

 

バーテックスには知能があるって大赦から聞いたことがあるけど、その知能は悪魔で私達や神樹様を効率良く殺すためだけのものであり、こちらの都合なんか関係ないとばかりに侵攻してくる。

 

そうなってくると私も力で対抗するしかない。バーテックスに対抗できるのは私達勇者と防人と呼ばれる人達だけ。防人より対抗出来る私達だけど、私達だって人間だから疲れてくる。現に立て続けにバーテックスと戦っているから皆の疲労も目に見えるぐらいだもん。だからこそ今日は皆でしっかり休もうと話してたのに(勝手に街案内引き受けたことを棚に上げていることに気づいていない)。本当に最悪の気分だよ。

 

私は暴力が嫌い。殴る側も殴られる側も両方が痛い思いをするから。だから私は戦うのは嫌い。でも私は勇者だから、私達の住む四国を守る為にも戦わなくちゃいけない。

 

胸が苦しい。私達はまだ子供なのに、世界の為に戦わないといけない。そんなの理不尽だよ。バーテックスは絶対に許さない。

 

「大丈夫、友奈?」

 

そんな私を見て夏凛ちゃんが心配そうに見てくる。やっぱり優しいなぁ夏凛ちゃんは。

 

「うん!大丈夫だよ夏凛ちゃん!」

 

仲間に心配かけたくない。だから私は笑う。そうすれば皆は分かってくれる。私が辛いって思ってるとは思わなくなる。

 

東郷さんも言ってたもん。私は笑顔が似合うって。だから私は笑う。

 

「さっさと倒して皆でうどん食べに行くわよ!」

 

「わーい!私うどん大好き!」

 

それを最後にそれぞれ武器を構える。

 

今回のバーテックスはどうやら人型が多いみたい。私達が倒してきたタイプのバーテックスは少ないけど、それでも油断しては行けないのがバーテックス。 

 

私は深呼吸して心を落ち着かせる。大丈夫、上手くやれるはずだよね!

 

「よぉし、勇者部ファイトー!」

 

掛け声を上げた風先輩がバーテックスに向かって走る。大剣を振り回してバーテックスの群れを蹴散らしていく。

 

夏凛ちゃんも両手に持った剣を振ってバーテックスを斬り倒していく。東郷さんがその援護にまわり樹ちゃんがワイヤーを使って風先輩のフォローをする。

 

私もバーテックスに拳を放って攻撃する。人型バーテックスは吹き飛ぶけど消滅する気配もない。普通のバーテックスには攻撃が効いた様子があるのに、あの人型バーテックスにだけは効いていない気がする。

 

「なんなのよ、コイツ!?」

 

全く私達の攻撃が効かない人型バーテックスに風先輩が愚痴を言いました。でも、その気持ちは私もわかりますよ!

 

東郷さんも夏凛ちゃんも攻撃が効かない事に苛立っている様子があるし、どうしたらいいんだろう?

 

「……アァ、勇者、滅スル。滅シナケレバナラナイ」

 

えぇ!?バ、バーテックスが喋った!?さすがの私も驚くよ!?

 

樹ちゃん、なんで目を輝かせているの?

 

「バーテックスって喋るんですね」

 

「いや普通喋んないわよ!?」

 

あ、そういうこと……?

 

樹ちゃんの的外れな言葉に風先輩がすかさずツッコミを入れた。いつもならこういう時のツッコミって夏凛ちゃんが入れてたからちょっと新鮮だなぁ。

 

風先輩もたまにツッコミ役になるけど。あ、夏凛ちゃんがツッコム場面とられてシュンってなってる。なんか可愛い。 

 

「勇者……滅スル」

 

人型バーテックスが最初に目につけたのは、私の大親友東郷さんだった。人型バーテックスは手に持った少し大きめの剣を持って東郷さんに突進していく。

 

今更だけど人型バーテックスの顔がヘラクレスオオカブトに見えるのは私の気のせいかな?

 

って、そんな事言ってる場合じゃなかった!

 

「くっ!」

 

「友奈ちゃん!?」

 

思わず東郷さんに向かって飛ぶ。その最に東郷さんを抱きかかえて、人型バーテックスの剣に斬られそうになっていた東郷さんを間一髪で助けることが出来た。

 

ちょっと右肩を斬られちゃったけどこれぐらい勇者なら大丈夫だよね!

 

私は地味に痛い右肩を押さえつつ、油断しないように拳を構える。東郷さん達がなにか叫んでいるけど、今の私には何も聞こえない。私の目には敵を倒すということだけが頭を支配する。

 

ダメ、心を闇に支配されちゃダメ!私は闇には負けない。

 

どうやら先程人型バーテックスの剣には闇がエンチャントされていたのか、肩を少し斬られた時に闇が体の中に侵入したみたい。内側から私を支配しようと広がっていこうとするのがわかるけど、私は気力だけで抑え込む。

 

でも抑え込もうとしたのが仇となったのか、人型バーテックスの接近に気づかなかった。私が気づいた時にはもう人型バーテックスは剣を振り下げようとしていた。

 

「友奈ちゃん危ない!!」

 

「っ!?」

 

私は思わず瞼を瞑ってしまう。あーあ、もう私死んじゃうのかな。まだ死にたくないよぉ。みんなと一緒にいたいよう。

 

そう思っていたけど、

 

【ドラゴンフライ】

 

【シェル】

 

【ホーク】

 

《スピニングダンス》

 

突然聞こえた音声に訳が分からず瞼を開けると、まるで竜巻のように回転しながら風を纏った何者かが人型バーテックスに蹴りを入れていた。

 

「……えっ?」

 

その何者かは人型バーテックス人間蹴りを入れたあと、私の目の前に着地する。なんだろう?

 

全体的に黒い体にハート型の赤い目をしている。なんでか分からないけど、第一人称としてカマキリが頭に浮かんだ。

 

右手に弓のような武器を持ったその人は私の方を一瞥すると、直ぐに人型バーテックスの方に向かっていく。結局の所なんだったんだろう?

 

見てみれば予想外の登場にみんな固まっていた。夏凛ちゃんなんて両手の剣を落としちゃってるし、それぐらいみんな動揺したんだと思う。

 

一番早く我に返ってのは東郷さん。どんな時でも冷静に物事を分析して対処できる東郷さんは勇者部にとって策士に近い。実際勇者部ではパソコンを使って依頼とかの管理をしているもん。東郷さんだから出来ることなのです!

 

「みんな、さっき友奈ちゃんを助けてくれたあの人の援護を!」

 

「ちょ、待って東郷。あんな奴見た目から信じられないんだけど!?」

 

「そんなことを今入っている場合ではありませんよ風先輩!友奈ちゃんを助けてくれた、それだけでも信じるに値するんです!」

 

「アンタの友奈LOVEは今は置いとけ!」

 

凄い。東郷さんの天然過ぎる言葉を夏凛ちゃんが一言で終わらせた。やっぱり夏凛ちゃんは勇者部のツッコミ係だよね。

 

「友奈……後で覚えておきなさいよ」

 

夏凛ちゃんは実はエスパーだった!?

 

って、そんな呑気なこと言ってる場合じゃなかった!

 

「結城友奈!敵にツッコミます!」

 

「敵に何をツッコむのよ!」

 

「間違えました!結城友奈!敵に突っ込みます!」

 

なんとなくお笑い感じになっちゃったけど、気にすることなく人型バーテックスに向かって走る。

 

「勇者……パアアアアァァァァァァァンチ!」

 

私の渾身の勇者パンチを繰り出すけど予想通りダメージが入っている気がしない!一体どうして?

 

『無闇に突っ込んでくるな!』

 

ほら、さっきの助けてくれた人にも怒られちゃったよ。ん?怒られた?

 

「あなた喋れるの!?」

 

『……』

 

あ、黙り込んだ。仮面の上だからわかんないけど、多分やかしたって感じだと思う。

 

それ以降はただ無言でバーテックスを切り倒していく戦士さん(名前がわからないため勝手に命名)を援護するべく、勇者部の皆も動き出した。

 

戦士さんはカードを一枚取り出すと弓のような武器についている物にスライドする。

 

【ホーク】

 

《ホークトルネード》

 

戦士さんは弓を構えて風を纏った矢を放つ。というかあの矢はどこから出ているんだろう?

 

矢を何発も連射すると今度はその弓で……弓で相手斬るんだ……。

 

戦士さんが助けてくれたこともあり、私達の周りにいたバーテックスはもう人型バーテックスしか居なくなった。

 

「カ……カリス?」

 

『姿を見た時からわかってはいたが、やはりお前には剣崎さんの記憶があるのか』

 

剣崎さん?一体誰だろう?戦士さんの知り合いかな?

 

戦士さんは少し屈んで弓を横にして構えるという独特の戦闘ポーズを取ると、決して油断しないような雰囲気で人型バーテックスを睨む。

 

『お前がもし、剣崎さんの記憶を持っているなら決して油断できない相手だな』

 

そう言って戦士さんはカードを三枚取り出すと、先程と同じように弓に付いている物にスラッシュする。

 

【ドラゴンフライ】

 

【シェル】

 

【ホーク】

 

《スピニングダンス》

 

戦士さんが膝を折って屈むとその場に小さな竜巻のような風が発生し、そのまま戦士さんを覆って中に浮び上がる。

 

戦士さんはその体勢の状態で人型バーテックスに向かっていくと蹴りを放った。戦士さんの蹴りは見事命中して人型バーテックスは爆発し……爆発!?

 

「バーテックスが爆発するの初めて見たわ」

 

「……そうですね」

 

規格外の技を使った事で私を含めた勇者部皆が唖然としていた。すると突然戦士さんは私達の方を向いたから、無意識にそれぞれ武器を構えてしまう。

 

そして、人型バーテックスを倒した影響で今回の樹海化が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜黒宮純〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹海での戦いが終わり、俺は勇者部のメンバーと共にどこかの学校の屋上に放り出された。勇者部のメンバーには人間時の顔を見られているためすぐにハートの2を使う訳にはいかない。

 

俺はすぐさまこの場を去ろうと屋上のフェンスに手をかける。

 

「あ、あの!」

 

分かってはいたことだが、勇者部の確か結城友奈って言う少女が話しかけてきた。あまり話すこともないし聞くだけはしてやってもいいか。

 

そう思って友奈達の方を向くと、あちらのメンバーは友奈以外が身構えた。多分襲ってくると勘違いしているんだろう。だが残念な事にいつ誰が襲ってくるとは限らないので俺は醒弓カリスアローを手放すわけにはいかない。

 

『なんだ?』

 

俺は敢えて突き放すように冷たい声音を出す。聞いたところによると初代仮面ライダーカリスこと始さんも後に仲間になるメンバーに冷たくあしらっていたらしいから。それを参考にしている。

 

「あ、あの、私讃州中学勇者部結城友奈って言います!よろしければお名前を教えていただけませんか?」

 

困った事になった。直ぐにこの場を去りたくてもどうせ次回も会うことになるだろうし、なによりコイツは一度冷たくしてもめげなそうだから、とにかく面倒くさい。

 

仕方ない。

 

『……カリス』

 

「えっ?」

 

『仮面ライダーカリス。それが俺の名だ』

 

結局の所名乗ってしまった。いや、こればかりは仕方ないと思う。あんな名乗ってくれなきゃ泣きますよって感じで見られたらどうしようもない。

 

だからこれは仕方なく名乗ったのだ。

 

俺はそれだけ言うと、今度こそフェンスを飛び越えて友奈達からは見えないように陰に隠れる。こちらからは見えるが、突然飛び降りた俺を心配したようだ。

 

俺は溜息を吐くと誰もいない場所でハートの2をカリスラウザーのスラッシュ・リーダーにラウズする。

 

【スピリット】

 

カードの2の効果で俺は黒宮純としての姿に戻る。

 

あーもう面倒くさい。なんてったって俺がバーテックスと戦わなくてはいけないのか。

 

でも、何故だろうな。バーテックスと戦っていた時、俺の中のジョーカーとしての本能が少しだけ刺激されたのは。俺の予想ではあのブレイドの姿を真似たバーテックスのせいだと思うのだが……こればかりはちょっと調査が必要だな。まぁ、多少長引くだろうが地道にやっていくしかないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Continue to next time!

 

 

 

 

 

 

 

 




所々設定とか弄りながら書き直してます。もし「ここはこうした方がいいんじゃないか?」とか「こういったキャラ出してよ」とか「ここ誤字脱字だゾ」ってことがあれば、遠慮なく感想欄にて教えてください


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