転生したら融合竜だったよ (捏造の階指定司書)
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序章な〜り〜
たかが紙切れ、されど紙切れなのである★


(くそっ…あの通り魔絶対に許さん…)

 頭が痛い。足も痛い。と言うか全身死ぬほど痛い。まあもうすぐ死ぬんだけど。笑えんわ。

僕、加藤(かとう) 瑠衣(るい)。中学2年生です。僕は今、車に撥ねられ虫の息となっております。

 

 なんで開幕で死にかけてるかって?それは話せば3分くらいかかるんだけどね。

 

 あれは確か二年前…いや36万…いや、1万4000年前だったか…10分くらい前だったかな。

 

 

 

 

 

 

_____________________________________

 

 

 

 

 

 

「スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンの攻撃!猛毒のアロージョン・ソーン!」

 

「イワァァァァァァク!!」

 

 どこぞの凡骨デュエリストよろしく断末魔を上げるこいつは田中太郎。僕のデュエル仲間であり、レッドアイズと城之内の大ファンだ。

 

 僕の休日はもっぱらこいつとのデュエルか、大会出場に費やしている。ちなみに今の戦績は79勝72敗1引き分けなので、これで僕の80勝達成というわけである。

 

「くそう!俺のレッドアイズが…!」

 

「ふっ…特殊召喚されたモンスターで僕のスターヴに勝てると思っているのか?」

 

「いうて効果を受けないモンスターとか無効にするモンスターとか対処のしようはいくらでもあるけどな。あとは…特殊召喚しないテーマ(ふわんだりぃず)とか」

 

「おいやめろ」

 

 カードショップから出ながら、他愛のない話をしていく。

 

 やれリボルバーネタにされすぎ案件(リローデッド・シリンダー)とか、やれ絶対環境入りするだろあの鳥(ふわんだりぃず)とか、そんなくだらない事ばかりを話しつつ、デュエルで競い合う。ここ最近…というか昔からの僕達はデュエルしてバカ騒ぎしての繰り返しである。

 

「しっかし…お前ホントにスターヴヴェノム好きだよな。オリジナルの技名まで作ってさ…」

 

 そうなのだ。何を隠そう、僕は【スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】が大大大大好きなのだよ。命掛けても良いレベル。

 

 「当たり前だ!あの毒々しい赤と黄色と紫のコントラスト、細くすらりとしたフォルム、最高だろ!」

 

「そうか…?よく分からんな」

 

「お前がレッドアイズを好きな理由と同じだ」

 

「そうか、なら仕方ないな」

 

 そこで納得してしまうのがデュエリストである。誰だって好きなカードの1つや2つは有るものだ。そこを譲る訳には行かない。

 

「おい見ろよ、リア充がいるぞ」

 

「ん?」

 

 そう言って田中が指差したのは、笑顔で歩く爽やかな青年と、その横に並ぶ美人さん。なるほど、確かにリア充オーラがムンムン出ている。二人が歩いて行く先には、柱に持たれてふらふらとしている中年男性がいた。そのまま、3人は会話を始めたようだ。

 

「よーし加藤、いっちょリア充観察と行こうぜ」

 

「やめろよ、失礼だろ。…ふむ、年齢が離れているし、二人のどちらかの親戚…いや、親戚の態度じゃないな。会社の同僚か?」

 

「割とガチめに観察してんじゃねえか…お前こそ失礼だろ」

 

 相手の観察はデュエリストの基本だからね、仕方ないね。

 

「そんな事より…

 

          「「キャーーーーーーーー!!」」

 

                             …およ?」

 

 突如として町中に悲鳴があがり、混乱が場を支配する。そして、男がこちらに向かって走ってくる。手には…包丁。 包丁!?ヤバい!

 

「おい加藤!逃げるぞ!」

 

「あ、ああ…さっさと「どけ!殺すぞ!」…は?」

 

 包丁を持った男に突き飛ばされる。刺されなくて良かった…と思ったのも束の間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宙に浮く、紫色のデッキケースが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「_____ッ!!」

 

 

 

 手を伸ばす。地を脚で蹴り飛ばし、駆け出す。

 

 ただ、一心不乱に手を伸ばして、伸ばして____

 

 

 届いた。

 

「良かっ、」

 

 

 

 

 赤い車が、こっちに走って来るのが見えた。

 

 

 

 

 あ____

 

 

 

 

 

 

______________________________________

 

 

 

 

 

 

 という訳で、今出血大サービス(物理)中なのだよ。後悔はしていない。

 

「助けられて良かったぜ…僕のスターヴ・ヴェノムと【捕食植物(プレデタープランツ)】。」

 

《確認しました。ユニークスキル『支援者(タスケルモノ)』を獲得…成功しました》

 

《確認しました。ユニークスキル『捕食者(クラウモノ)』を獲得…既に所持個体が存在する為、失敗しました》

 

《確認しました。身体を植物で作成します…成功しました》

 

 やべえ。なんか変な声が聞こえる。とうとうおかしくなったか、僕…

 しかも体がすごく熱い。熱すぎる。

 

《確認しました。対熱耐性獲得…成功しました》

 

「お、おい、加藤!?大丈夫か!?お前、血が…!」

 

 うるさいな田中。血くらい出るだろ、人間だもの。

 

 ただ、痛いのは嫌なんだけどね…

 

《確認しました。痛覚無効獲得…成功しました》

 

「うっせえ奴だな……そんな顔すんなよ、田中…」

 

 しかし、車にぶつかって死ぬのか…ちょっと想定外だったかな………

 

 ないわー…。

 

《確認しました。打撃耐性獲得…成功しました。続けて物理攻撃耐性獲得…成功しました》

 

「でも、お前、頭から、そんなに…お前、お前…!」

 

 僕を抱える田中。顔は真っ青で、顔が涙でグチャグチャだ。泣くな気持ち悪い。

 視界が霞んできて、熱の代わりに寒気が僕を襲う。マジかこれ…熱いと思ったら今度はめっちゃ寒い……キツイな……

 

《確認しました。対寒耐性獲得…成功しました。

 対熱対寒耐性を獲得した事により、『熱変動耐性ex』にスキルが進化しました》

 

 さっきから変な声が止まない。何を言ってるのかは全く分からないがとにかく煩い。

 だが、そんな事よりも優先すべき事がある。

 

「心配すんな田中…これ……お前にやるよ…」

 

 そう言って僕が渡したのは、【スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】のカード。これだけは渡しておきたい。

 

「お前、これ…」

 

「野郎の泣き顔なんか見たくないしな…どうせなら美少女に抱えられたかった…」

 

「……お前らしいな」

 

 むしろ田中が性転換して美少女に変わればいいのでは?誰得だよ。

 

《確認しました。ユニークスキル『変化者(カワリモノ)』》を獲得…成功しました》

 

「スターヴ・ヴェノムを頼む、田中……

 

                      デュエルで、笑顔を………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何ということは無くはない人生だった。

 親に捨てられはしたが、拾ってくれた人達は優しくて…今思えばとても幸運だった。

 欲しい物だって買ってくれたし。その時行ったカードショップで、僕はスターヴ(相棒)と出会ったんだ。

 学校でも、顔はいい方だったから、友達も出来た。

 いつか恩返ししたいなって、思ってたのに、なぁ…

 マジかー……僕死ぬのかー………

 

 あ、でも異世界転生とか出来たりして。でも撥ねられたのトラックじゃなくてただの車だからなー……

 

 

 

 

 まあ…もし生まれ変われるとしたら、スターヴ・ヴェノムみたいなかっこいいドラゴンに転生したいなぁ。

 

《確認しました。『スターヴ・ヴェノム』を検索…成功しました。『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』を元にスキルと身体を製作します》

 

《ユニークスキル『飢餓者(ウエルモノ)』『毒殺者(ドクスルモノ)』『融合者(アワサルモノ)』を獲得…『飢餓者』『融合者』は既に所持個体が存在する為、失敗しました》

 

 昔、想像した事あったっけなあ…誰よりも強くて、かっこいい(ドラゴン)になって、空を飛び回りたいって…………

 

《種族を「竜種」に設定…失敗しました。再試行……失敗。代行措置として種族を「小竜(ミニドラ)」に設定…成功しました》

 

 ……………いや、なんで失敗したんだよ。2回失敗したくらいで諦めんなよ!僕竜種がいーい!さらなる再試行を要求する!

 

 ………………

 

 …………………………………

 

 ……………………………………………………………応答は無い。

 

 くそっ、へなちょこな奴だな…… そんな事を思考しつつも、急な睡魔に抗えず、僕は眠りに落ちていった。




 ステータス
 名前:加藤 瑠衣
 種族:小竜
 称号:無し
 魔法:無し
 技能:ユニークスキル『支援者』『変化者』『毒殺者』
 耐性:打撃耐性、物理攻撃耐性、熱変動耐性ex、痛覚無効


 いかがでしたでしょうか。
 作者はにわかなので、おかしいところが有ったら流すか報告して頂けると嬉しいです。


 追記:「カワラヌモノ」は既に存在してたので没。あとこれからのストーリーも考えて「変化者」にしておきました。それと瑠衣くんには植物になってもらいました。ユルシテ
 余談ですが、作者の年齢が主人公と同じであり、ハーメルンを使いこなせて無かったり学校とかがあるので(今日から夏休みなので出来るかもしれませんが)コメントをあまり返せなかったり更新が遅くなったりするかもです。ユルシテ…ユルシテ…


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転生したよ
目が覚めると、そこは洞窟でした。★☆


 眠い。とても眠い。寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地面がめちゃくちゃ硬かった。

 

 

 

 

 

 

 

 (ここ、どこ?)

 

 確か僕、変な声に竜種がどうとか言ったと思ったら失敗して小竜とかいうのにされて……

 

 意識がゆっくりと覚醒する。嘘、覚醒してない。まだぼんやりしてる。

 

 僕は加藤瑠衣、14歳。包丁を持った男に突き飛ばされて、僕のデッキが道路に飛んでいって、それを取ろうとして……車に撥ねられて死んだ、よな?

 

 周りをキョロキョロと見回してみる。どこもかしこも、ゴツゴツした地面が奥まで広がっており………

 

 

 

 あれ?なんで地面がこんなにゴツゴツしてるの…って、え?

 

 

 

 

 

 よく見たら…ここって、洞窟?

 

 なんで洞窟……と腕を組み、混乱しながらも思考を巡らせようとして、ふと気づく。

 

 

 

 腕の色、おかしくない?んでもって、なんか視点低くない?

 

 今になって、自分に起こっている異変に気付いた。

 

 お尻の辺りに変な感触があるんですけど。前はこんなに視野広く無かったよね?足の感触も何だかおかしい気がする。

 

 自分の体の異常に焦りつつ、どうにかして自分の姿を確認できないかと周囲を探すと、後ろに巨大な湖があったことに気付いた。それを覗き込むと、

 

 

 

 紫と緑の毒々しい体躯。

 

 

 

 体の至る所に付いた赤と黄色の球。

 

 

 

 僕のよく知る、飢えた牙持つ毒竜の姿がそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 (スターヴ・ヴェノムだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)

 

 

 

 アイエエエエエ!?スターヴ・ヴェノム!?スターヴ・ヴェノムナンデ!?

 

 ゴボボーッ!(歓喜) 

 

 

 

 ……………………………ふう。

 

 さてと、落ち着いて情報を整理しよう。僕は車に撥ねられ、死んだ。それは間違いない。そして、死ぬ直前に変な声が聞こえて…気が付いたらこの洞窟らしき場所に居た。それで自分の体がおかしいことに気付いて、その姿が【スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】だった…という訳だな。なんかちんちくりんになってるけど。

 

 

 

 うん、どゆこと?誰か説明してくれー…

 

 そう願っても、ここには誰も居ないから応える声ももちろん無い。だが、1つ分かる事がある。

 

(転生、ってやつだよな、これ…)

 

 死んだと思ったら竜になっていたなんてありえない事、夢か転生したかじゃないと説明出来ない。つまり、僕は今運良く生きていたが昏睡しており夢を見ている、または死んでしまったが転生した、ということだ。

 

 それさえ分かってしまったのなら……

 

(楽しい洞窟探検の始まりだぜー!)

 

「グルルァ♪」

 

 僕は今この瞬間を、全力で楽しむことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて。楽しむとは言ったものの、数時間(時計があるわけじゃないから知らんけど)探索したが、地面と草と変な石しか見つからないな。まあ、石はなんか怪しく光ってて、ゲームなんかのレアな鉱石っぽい感じがするけど。それを確認する方法はないしなぁ。

 

 どうしたものか…なんて考えていたら、ふと、1つ疑問に思った事があった。

 

 腹が減らない。

 

 かなりの時間が経ったはずであるが、腹の虫が鳴る気配は無い。

 

 ドラゴンはお腹が減らないのだろうか?生まれ変わった以上、自分の体の事は知っておかなくてはならない。とは言ったものの、誰かが教えてくれる訳でも無いのだが。うーむ、どうなっているのだろうか…。

 

《援。身体が植物で構成されているため、栄養分の摂取は不要です》

 

 どわああああああ!?何だ今の!?

 

 急に頭の中に声が響いてきたので、びっくりしてしまった。

 

 体が植物?ほんと?というか今の声、ここに転生する前に聞こえた声でしょ?

 

 いや、声とは少し違う、か?聞こえるというより、言葉が浮かび上がる感じ、か。しばらく待ってみても、新たに声が聞こえてくることは無い。何なんだ一体。

 

(だが、植物、か……)

 

 今のが本当だとしたら、僕は自ら栄養を作り出せることになる。もちろん、水などが必要になるだろうが。

 

 水は最初にいたあの湖でいい。問題は光合成だが…洞窟でも普通に草生えてるし、問題はないと信じたい。もしかしたら、あの植物が日光を必要としないやつで、あれだけが生きてるという線もあるが。それで死んだら草生えるわ。

 

 とりあえず、自分は食事を必要としない物と考えよう。懸念していた事項の1つが消えたので、ほっと一安心だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暇なので、草を食べる事にした。とにかくやることが無いのだ。

 

 ちょっと齧ってみたが、体に異常は診られなかったので、もっしゃもっしゃと貪り食っている。僕の体は植物らしいので、偶に湖で水を飲んだり浴びたりしつつ。

 

 暇潰しとして色々試して見たのだが、できる事は全部やり尽くしてしまった。

 

 デッキの回し方、メタ対策を考える。

 

 捕食植物とレッドアイズ、いくつかの環境デッキの回し方しか知らないので、すぐに終わった。

 

 自分でオリカを考える。

 

 100枚くらい作った所で飽きた。

 

 戦闘の練習をしてみる。

 

 相手が居ないし戦い方など知らん。こちとら日本人やぞ。平和主義者やぞ。

 

 一日中寝たりもしてみたのだが、後日眠れなくなったので本末転倒である。

 

 そんなこんなで、暇の極みに辿り着いた僕は草を食っている。草生えるわ。2ヶ月くらい前にも言ったぞこのネタ。

 

 あと、僕に排泄は必要無いようだ。植物だからね。水は蒸散で放出されるからね。

 

 だが、1つおかしい事がある。

 

 さっき言ったように僕は草を食べてるのだが、それは何処へ行ったのだろうか。

 

《援。『変化者』により身体へと変換されています。》

 

 どわあああああああああ!?

 

 この声か!また驚いちゃったよ……悔しい。

 

 それはそれとして、カワリモノって何?僕の事言ってるの?

 

《援。ユニークスキル『変化者』です。『変化者』の効果………

 

 

 

 万物変化:あらゆる物の性質及び形状・色などを変化させる。ただし、性質変化には変化前の対象及び変化後の性質の情報が必要。対象に抵抗された場合、成功率は大幅に減少する。

 

     効果の対象は、有機物、無機物に限らず、スキル、魔法にも及ぶ。

 

 

 

 自己変化:魔素を使い、自身を自在に変化させる。他の物体を自身と融合することで、その物体の性質を得る事が可能。

 

 

 

 数値変化:あらゆる数値を増減させる。増減の幅は相手との力量差で決まる。

 

 

 

 以上の3つが主な能力です》

 

 

 

 へえ。  ……………………強くね?

 

 

 

 何それ。何でも好きな物に変えられるって事?そこらの石を金に変えられたりすんの?

 

 

 

《援。対象の性質を変化させる場合、変化前と変化後の対象の構造及び構成している物質の情報が必要です。》

 

 

 

 何それ(絶望)そんなの知らないよ、どうしろって言うんだよ。

 

 

 

《援。自己変化で取り込むことにより、ユニークスキル『支援者』による解析が可能です。また、『支援者』のスキル「森羅万象」により、一度見た対象の情報を取得可能です》

 

 

 

 何それ(驚愕)支援者すげー。ってか、さっきから出てきたその、支援者?ってどんなスキル?

 

 

 

 そう聞くと、その声は支援者のスキル内容を教えてくれた。

 

 

 

 

 

 思考加速:通常の500倍に知覚速度を上昇させる。

 

 

 

 解析鑑定:対象の解析及び、鑑定を行う。

 

 

 

 並列演算:解析したい事象を思考と切り離して演算を行う。

 

 

 

 詠唱破棄:魔法等を行使する際、呪文の詠唱を必要としない。

 

 

 

 全効率化:身体の動き、魔法等の威力及び効果、解析、鑑定の速度等を強化する。

 

 

 

 森羅万象:この世界の、隠蔽されていない事象の全てを網羅する。

 

 

 

 

 

 うん、ヤバい。かなり有能だよ、支援者さん。これからは支援者さんって呼ぶわ。

 

 流石に森羅万象は一度目にした物しか分からないらしいが、逆に言えば一度目にした物のどんな事でも解ると言う事だ。こんなんチートやチーターや!

 

 支援者さんのスペックは十分にに理解出来たので、色んなことを聞いてみた。

 

 世界の言葉がどーたらこーたらって言ってたけど、死ぬ前の声と支援者さんは別者……別スキル?なのは分かった。

 

 僕が今まで食べてた草がヒポクテ草って言うのが分かったり、それを取り込んだせいで自分の体が回復薬になってたり、その辺の岩と魔鉱石を取り込んで、ハードなボディを手に入れたり……あと、最後のユニークスキル『毒殺者』についても。

 

 そんなこんなで、僕は毎日毎日、色んな事を試していった。

 

 

 

 

 

 

 

 そんなある日。僕は最初の湖に戻ってみることにした。ここに転生してきた頃と比べて、体がちょっと大きくなっている。支援者さん曰く、この洞窟には危険な魔物が居るらしい。脱出する前に、ある程度強くなっておきたい。

 

 閑話休題。

 

 この湖に戻って来たのは、ここの水を僕に取り込もうとしているから。僕は空気中の魔素をエネルギーにしてるみたいだから、水自体は必要無いんだよね。なら何でそんな事をする必要があるのかというと、どうやら水属性に耐性が得られるらしく、多く取り込めばその分耐性も強くなる様なのだ。水属性を無効化出来るようにまで吸うつもりである。

 

 そして、俺とお前(水)で超融合!しようとしたその時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然、湖の水がゴッソリ減った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……………およ?)

 

 不審に思い、湖の中心に目を向けてみると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 水色の、ぷるぷるとした生き物がいた。

 

(……………………………およよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あいつが水を飲んだのか?と観察してみる。するとどうだろう。

 

 

 

 突如として水を吹き出し、こちらへ向かって突っ込んでくるではないか。

 

(………………………………………待てや)

 

 ちょっとー、シエンシャ=サーン?何あれ。

 

 思考加速を発動し、支援者さんに聞いてみる。

 

《……………援。スライムだと推測します》

 

 あら、支援者さんが困惑してる。珍しいなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………………うん。現実逃避はやめようか。

 

 このままだと僕に直撃コースなんだけど、どうにかならない?

 

《………『変化者』で最もダメージを減少させるように身体を変形。さらに、数値変化で対象の速度を減少します。耐性も含め、予想ダメージ軽減率、41%》

 

 それだけやってもあんまり減らねえ!?だがそれが最適ならそれしかない!頼む支援者さん!

 

 思考加速を解除し、衝撃に構える。

 

 腹にスライムがぶつかり、吹き飛ばされる。かなり押されてしまっているが、あまりダメージは無く、いつ止まるのかな、なんて考えたのも束の間、

 

 

 

 ドン、と、何か、壁の様な物にブチ当たった。

 

 

 

「RRRRRRYYYEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!?!?!?」

 

 

 

 腹を挟まれ、頭を打ち、想定外のショックに意識が点滅する。スライムの勢いが止まり、ボヨンボヨン、と転がり、自分はドサッ、と地面に倒れる。

 

 

 

 

 

(………………………きゅう)

 

 

 

 

 

 意識が遠退いていく。

 

 

 

(聞こえるか?小さき者よ…そして……っておぬし、大丈夫か?)

 

 

 

 何か声が聞こえたが、僕が気付く事は無かった。解せぬ。




 支援者は、大賢者さんとはちょっと能力が違います。思考加速は500倍と半分ですが、全効率化というスキルを追加しました。変化者の能力とか、おかしくないといいんですけど。


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もう少しかわいい名前が良かったと思わなくもない☆

※今回はキャラや設定が崩壊してたりするかもしれません。お読みになる場合はご注意を。

 怪猫蜜佳さん、誤字報告ありがとうございます!


 ※ちなみに瑠衣君は年上や目上の人に対しては、相手が何か言わない限り敬語です。当然ですが。
 ただし、仲が良くなってしばらくすると、途端にはっちゃけ始めます。


 

 

 

(おーい、大丈夫かー?)

 

 

 

 背中の上で、何かがボヨンボヨンと跳ねているのを感じる。僕、何してたんだっけ……?

 

 

 

(そろそろ起きるのだ、小さき竜よ)

 

 

 

(えぇ……あと5分寝かせてぇ……。)

 

 頭がぼやぼやする。確か、スライムが僕に激突して来て……

 

 

 

 

 

(ええい!いい加減に起きんか!!)

 

 

 

 

 

 グワーッ!!ごめんなさい起きます起きます!

 

 シュバッと跳ね起き (ヌワーッ) 背中に乗っていた何かを跳ね飛ばしつつ、正座の体制を取る。そしてそのまま恐る恐る声のした方向を向いた。そこに居たのは、

 

 

 

 

 

 

 

(フハハハハハハ!!ようやく起きたか、待ちくたびれたぞ!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 なんだか嬉しそうな高笑いを上げる、とても大きく、邪悪な姿をした黒竜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(げええっ! ドラゴン!!!!!!)

 

 

 

 思わず、心の中で絶叫してしまった。いや、まじでデカイ。あと怖い。

 

 

 

(何がげええっ、だ!!こやつと同じ事を言うでないわ!!第一、お主もドラゴンであろうが!!)

 

 

 

 怒鳴られてしまった。とりあえず素直に反省しておくことにする。

 

(す、すいません…確かに僕はドラゴンですけど、貴方みたいに大きくて強そうなドラゴンは見た事が無いですし…)

 

 

 

 確かに、いきなり会って驚くなんて失礼だよな。だが、流石にこれで機嫌を直してくれはしないだろう。

 

 

 

(強そう、か。………ふふふふ、ふははははっ!!お主、なかなか見る目があるではないか!!ふむ、見たことが無いのなら、しかとその目に焼き付けるがいい!!我は"個にして完全なる者"であり、4体しか存在しない"竜種"が一体!"暴風竜ヴェルドラ"とは、我の事である!)

 

(お前だって、俺と会った時と同じ事言ってんじゃねえか!……あ、何でもないっす)

 

 

 

 どうやら、許してくれた、のか?ちょっと褒めるだけで許してくれるなんて、見た目に反してチョロい優しい竜なんだな。それはそうと、この黒い竜、ヴェルドラさんと言うらしい。そして、傍らにはさっきのスライム。一見弱そうなスライムと強そうなヴェルドラさん。会話を聞くに、知り合いのようだ。どういう組み合わせなのだろうか?

 

(あー、お前、さっきはごめんな?俺、さっきまで目が見えて無かったからさ。)

 

(あっ、うん。スライムって、あんなに早く飛べるんだね……)

 

(いや、俺って実はただのスライムじゃなくてさ。話せば長くなるんだけど……聞く?)

 

(そうなの?じゃあお願いしまーす。色々気になる事もあるし。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         〜スライム説明中〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(と、言うわけで、俺は転生者なんだ。多分、お前もそうだろ?)

 

 

 

 なるほど。だいたい分かった。道理でこのスライム(三上悟さんと言うらしい)はあんな芸当が出来たわけだ。

 

(………なるほど。確かに僕は転生者ですよ。しかし、三上さんって僕より年上だったんですね。)

 

(ん?お前は何歳なんだ?)

 

(僕は14歳ですよ。包丁を持った男に突き飛ばされて、そしたら車に…)

 

(14歳!?中学生かよ!マジか…… あー、俺も、包丁を持った男に刺されて死んだんだ。もしかしたら、近くにいたのかもな)

 

(あ、聞いた年齢からして、電柱に寄りかかったり、リア充っぽい人達と話してたあの人かな?)

 

(……………多分それ、俺だわ)

 

(おお!本当に奇遇ですね!ちなみにあの時って何を話して___)

 

 

 

(お前等!!我を忘れるでないわ!!!!)

 

 

 

 やっべえ。ヴェルドラさん忘れてた。

 

(すいません、ヴェルドラさん。自分と同じ世界の人と会ったから、嬉しくて……そうだ、ヴェルドラさん、竜種について教えてくださいよ。僕、竜種に興味があるんですけど)

 

 

 

 転生する時、竜種になろうとして失敗してしまった。だが、それで諦めるというのは何だか癪だ。

 

(む?竜種に興味がある、か。ふふふ……良いだろう。何でも教えてやろうではないか!)

 

 

 

 自分の種族に憧れていると聞いて、ヴェルドラさんは少し誇らしげだ。

 

 ヴェルドラさんは、竜種について色々な事を教えてくれた。

 

 

 

 竜種は全ての種族の中で最強の存在である事。

 

 

 

 魔力や魔素量、パワーが突き抜けており、漏れ出した魔素で魔物が生まれる事もあるらしい事。

 

 

 

 竜種は消滅せず、また子供を作るのは禁忌である事。

 

 

 

 昔、1つの街を灰に変えたのだが、人間の"勇者"と呼ばれる存在に敗北し、300年ほど封印されていた事。

 

 

 

 途中から竜種じゃなくて自分の事を話していたような気もするが、とても興味深かったので、面白かった、竜種って凄いんだ、と思った事をそのまま伝えたら、とても嬉しそうな声で言われた。

 

 

 

(そうだろうそうだろう。我は凄いのである!フハハ、我はお前を気に入ったぞ!)

 

 

 

 

 

 最初は少し怖かったのだが、暫く話すと、ヴェルドラさんは悪い竜じゃあないのかな、なんて考えが浮かぶようになり、怖いなんて感情は無くなっていた。そしたら、三上さんも同じ事を思ったのか、こんなことを言い出した。

 

(よし!じゃあ、自分……いや、俺と友達にならないか?)

 

(何だと?す、スライムの分際で、"暴風竜ヴェルドラ"と恐れられる、この我とトモダチだと!?)

 

(僕は良いと思うけど?)

 

(いや、嫌ならいいんだけど…)

 

(馬鹿!お前!!!誰も嫌などと、言っておらぬだろうが!!!)

 

(え、そう? じゃあ………どうする?)

 

(………そうだな。どうしても、と言うなら………考えてやっても………)

 

 

 

 言動は偉そうだが、三上さんの事をチラッチラッ、と見ており、とても分かりやすい。

 

 美少女ならかわいいのだが、このいかにも邪悪といった感じの竜がやるとどうにも面白くてたまらない。

 

 そんな事を考えていると、ヴェルドラさんが折れたようで、友達になってやるから感謝しろなんて言っている。だが、言葉とは裏腹にすごい嬉しそうだ。ツンデレって感じがする。

 

(じゃあ、宜しく!)

 

(ああ、宜しく頼むぞ!)

 

 

 

 こうして、スライムと暴風竜という、異質なタッグが生まれる事になったのである。最弱種族と最強種族が友達とは……

 

(二人共、良かったじゃないですか)

 

(全然良くないわ。まだお前をどうするか決まってないだろ)

 

(え?僕何かされるんですか?)

 

(そうではない。我とこやつが友達になったのに、お前だけ赤の他人では嫌だろう。かといって、ならお前も友達だ、と言っても味が無い)

 

(そんなもんか?普通に友達でいいだろ)

 

(我が嫌なのだ!)

 

 

 

 我儘な竜だな。確かに、僕だけ仲間外れって言うのも癪だとは思うが。

 

(そうだな………我の弟などどうだ)

 

(は?)

 

 

 

 急にそんな事を言われ、驚きで固まってしまう。何故に弟?

 

(ストーーーップ!!何だ弟って!!そんなん認められるか!!!)

 

(なぜだ!!良いであろう別に!!!我だって弟が欲しかったのだ!!姉上達には毎回毎回酷い目に合わされて………我は素直な弟が欲しいのだ!!!)

 

(何だよそれ!!ただの我儘じゃねえか!!認められるかそんなもん!!!)

 

 

 

 二人はぎゃあぎゃあと喧嘩を始めてしまった。お互いに大声で叫ぶので、頭によく響く。

 

 というかヴェルドラさんって、お姉ちゃんがいたんだな。確かに、ヴェルドラさんは我儘な末っ子って感じがするが。この竜の相手をしたお姉ちゃん達は苦労したであろう。

 

(とにかく!弟なんて絶対に許さんぞ!)

 

(ぐぬぬ………仕方ない。友で我慢してやろうではないか)

 

 

 

 なんでそんなに弟にこだわるのか。いや、姉に散々な目に合わされたので、自分を慕ってくれる弟が欲しいという気持ちは分からなくもないが。というか、三上さんはなんでそんなに反対してるんだ。

 

(ふん……………む?そうだ、忘れておったわ。お前達に名前をやろう。お前達も我に名前を付けよ!)

 

 

 

 ヴェルドラさんが急に名前を付けるなんて事を言い出した。このタイミングで言う必要は無いような気もするが。それに、ヴェルドラさんには既に名前があるだろうに。

 

(え?突然何を?)

 

(我等が同格と云う事を、魂に刻むのだ。人間でいうファミリーネームみたいなものだ。我がお前達に付けるのは、"加護"になる。お前達はまだ"名無し"だが、これでネームドモンスターを名乗れるぞ!)

 

 

 

 なるほど。ファミリーネーム共通の名前か。確かにそれならヴェルドラさんにも付けられるな。そうと決まれば、どんな感じにすればいいかな。だが、名前なんてそう簡単に思い付く物でもない。

 

 三上さんと話し合い、いろんな名前の案を出していくが、あんまりセンスのある名前は思い浮かばない。どうしたものかと思ったが、三上さんが1つの案を出してくれた。

 

(暴風だから、テンペストとかでいい………かな?)

 

(決まり、だな!!! 素晴らしい響きだ)

 

 

 

 どうやら、気に入ってくれたようだ。シンプルではあるが、ヴェルドラさんが気に入ったのなら良いだろう。

 

(今日から我は、ヴェルドラ=テンペストだ!そしてお前は………"リムル"の名を授ける。リムル=テンペストを名乗るがよい!!そして、お前は…………"セルガ"だ!お前はセルガ=テンペストを名乗れ!!)

 

 

 

 ヴェルドラさんがそう言うと、セルガという名前が僕の魂に刻まれる感じがした。セルガ。かっこいい名前だと思った。リムルのほうが響きがかわいいので、そっちのほうが良いと思ったのは内緒である。

 

 こうして、僕はセルガ=テンペストとなった訳だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(セルガよ、敬語はやめろ。我等は同格となったのだ。もっとそれらしい態度を取れ)

 

(そうだよ!俺もさっきからそう思ってたんだ!急に畏まっちゃってさ!) 

 

 

 

 リムルさんとヴェルドラさんに、敬語を使うなと言われてしまった。でも、三上さんは年上だし、ヴェルドラさんも多分年上だし………。

 

(そう、かな………分かったよ。リムル、ヴェルドラ。これで良いの?)

 

(おう!)(うむ!)

 

 

 

 確かに、同格である以上、敬語を使う必要は無い………のか?まあ、二人が良いのならそれで良いのだが…………。

 

 その後、話はリムルが外に出ようとしていると言う事、そしてヴェルドラの封印の話になった。この封印は勇者のユニークスキル『無限牢獄』によるものらしく、ヴェルドラのユニークスキルも封じられているらしい。リムルがユニークスキルによる解除を試みたが、失敗したようだ。

 

 依代を用意して、それに意識を移すという案も出た。しかし、話の内容は難しくて分からなかったが、どうやら不可能らしい。

 

(さて、僕も試してみるかな……)

 

 

 

 折角なので、僕も『変化者』で『無限牢獄』をどうにか出来ないか試してみた。すると、

 

《ユニークスキル『変化者』でユニークスキル『無限牢獄』を変換します…失敗しました。続けて、ユニークスキル『変化者』でユニークスキル『無限牢獄』を個体名:セルガに融合します…失敗しました》

 

 やはり失敗したか。だが、『無限牢獄』をほんの僅かに取り込むことが出来たようだ。あくまでほんの僅かであり、解析くらいしか出来ないようだが。一応、何回か『変化者』で『無限牢獄』を取り込んでみる。

 

 そんな事をしていたら、リムルがユニークスキル『捕食者』なるものでヴェルドラを胃袋に移す、という案が出た。胃袋の中で『無限牢獄』を解析し、『無限牢獄』を消すことが出来るかもしれないと言う。ヴェルドラもノリノリで賛成した。こうして、ヴェルドラはリムルの胃袋の中に収まる事になった。

 

移す、という案が出た。胃袋の中で『無限牢獄』を解析し、『無限牢獄』を消すことが出来るかもしれないと言う。ヴェルドラもノリノリで賛成した。こうして、ヴェルドラはリムルの胃袋の中に収まる事になった。

 

(じゃあ、さっさと『無限牢獄』から脱出して来いよ?)

 

(クククッ!任せておけ!そんなに待たせずに、お前の前に合間見えよう!)

 

(頑張れ、ヴェルドラ!)

 

 

 

 リムルがヴェルドラに触れると、ヴェルドラはあっけなく消えてしまった。さっきまで其処に居たというのに。ほんの少しだけ、寂しい気持ちになる。

 

(そんじゃ、行くぞセルガ)

 

(よし来た。…………ねえ、リムル)

 

(どうした?)

 

 

 

 

 

 これを言うのは、ほんのちょっぴり恥ずかしいのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(これからよろしく、リムル!)

 

(………ああ!よろしくな、セルガ!)




 ステータス
  名前:セルガ=テンペスト
  種族:小竜
  加護:暴風の紋章
  称号:なし
  魔法:なし
  技能:ユニークスキル『支援者』『毒殺者』『変化者』
  耐性:熱変動耐性ex
     物理攻撃耐性
     痛覚無効


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残念だったな、どく・ドラゴンだよ!☆

 変化者マジ有能。




 ヒラタさん、誤字報告ありがとうございます!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リムルがヴェルドラを喰ってから、数日が経過した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日経っても進む気配が無く、どうかしたのかとリムルに聞いてみたら、

 

(俺スライムだぞ?魔物に襲われたら、どうやって戦えっていうんだよ!)

 

 

 

 との事。

 

 

 

 確かにそうである。リムル曰く、必要なのは攻撃手段だと言う事なのだが、スライムにまともな攻撃ができるとは思えない。まあ、転生者ってだけでまともなスライムとは言えないが。どうしたものかとヒポクテ草や魔鉱石を二人で喰ったり取り込んだりしつつ、うんうんと唸っていたら、初めて会った時に水を噴射して飛んで来たのを思い出した。そして、それが出来るのなら、水をうまく噴射して水の刃的な物が出来ないかと提案してみた。リムルはそれだ!と喜色満面に(線目のスライムなので顔自体は変わっていないが)その案を採用し、一週間の練習の結果、岩を切り裂く程に水を操れる様になった。どうやらエクストラスキル『水操作』を手に入れたらしい。

 

 

 

 新しいスキルを手に入れ、喜んでいるリムルを見て、1つ思い付いた。

 

 

 

 これ、僕も新しいスキル習得出来るんじゃね、と。

 

 

 

 今の僕の体は植物である。外見自体はスターヴなのだが、『変化者』を使えば蔓や葉の再現は容易い。そこで、背中からしなやかで丈夫な蔓を生やした。スターヴとしての外見は損なわれるが、戦闘手段の為なので仕方が無い。そして生やした蔓を、ブンブンと振り回してみる。ある程度動かすのに慣れたところで、さっきリムルが両断した岩に向けて、蔓を振り下ろしてみた。

 

 ドゴッ!と、岩が凹んだ。これだけでもそこそこ威力があることが分かるが、まだ物足りない。そこで、蔓を少し太くし、一部分だけを硬質化させてみる。

 

 

 

《スキル『成長促進』を獲得しました》

 

 ここで予想外のスキルを獲得した。いや、存在するとは思っていたのだが、意外と簡単に獲得することが出来たな。

 

 

 

 気を取り直して、成長させた蔓を再び、岩の凹んだ部分に対し振り下ろした。そして、

 

 

 

 ドガッ!!と岩は大きな音を出して破壊された。

 

 

 

《スキル『蔓の鞭』を獲得しました。続けて、スキル『岩砕き』を取得しました。》

 

 

 

 いやポケ○ンかよ。いや、確かにポケモンの技から思い付いたけどさ。

 

(新しいスキルだってさ。『蔓の鞭』と『岩砕き』だって)

 

(何それ!ポケ○ンじゃん!)

 

(全くだよ。でさ、まだ2つほど獲得できそうなスキルがあるんだけど………ちょっと見てて)

 

 

 

 この蔓を“茨”に変えて、壁を砕く。トゲトゲで当たったら痛そうだ。僕には痛覚無効があるので触っても痛くはないが。

 

《スキル『茨の鞭』を獲得しました》

 

 世界の言葉が響いた。思った通り、スキルを取れたようだ。

 

 今度は、手から巨大な葉っぱを生やす。そして腕を大きく振りかぶり、葉を別の大きな岩へと飛ばした。

 

 

 

 スパッ、と静かに音を立て、岩は両断された。

 

 

 

《スキル『葉刃』を取得しました》

 

《スキル『成長促進』『蔓の鞭』『茨の鞭』『葉刃』を獲得した事により、エクストラスキル『植物操作』に進化しました》

 

 

 

 やったぜ。(完全勝利)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新たなエクストラスキルを手に入れ喜んでいるセルガを横目に、リムルはこう思った。

 

 

 

(セルガって、くさ・ドラゴンタイプだよな………)

 

 

 

 

 

 今、失礼な事を考えられた気がする。僕はポケットじゃなくてデュエルのモンスターズなんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな事がありながらも進んで行った先には扉があった。その扉からは3人のボウケンシャー………違う、冒険者が入ってきた。僕とリムルはすぐに隠れて様子を伺ったのだが、ここで思わぬ問題が発生したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「____________________________」

 

「___________________________________」

 

 

 

 そう、言葉が分からない。異世界だから、言語は違うのだろうかと考えた事もあったが、案の定であった。

 

(マジか………言葉が通じないとは。これは前途多難だな………)

 

(え?何言ってるんだ?)

 

(うん。どうにかして、言葉が分かるようにしたい所だけど………)

 

(だから、何言ってるんだよ。俺は普通に言葉が分かるぞ?)

 

(え?)

 

(何でお前だけ………え、何?  ………ああ、言われてみれば)

 

 

 

 リムルが急に誰かと会話を始めた。おそらく彼のユニークスキルである『大賢者』であろう。一体何が「言われてみれば」なのだろうか。

 

(セルガ。とりあえず、あいつらがどっか行ってから話すよ)

 

(あいさー)

 

 

 

 今は、あの3人から身を隠す事にした。うーむ………何を話してるかちょっと気になる。どうやら、仲が良さそうなのは分かるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3人をやり過ごした後、扉を潜り、リムルから『魔力感知』について教えてもらった。なんでも、意思のある音ならば脳内で勝手に理解できるよう変換されるらしい。また、周囲の感知もできるようなので、暫く練習して、『魔力感知』を獲得した。脳内に溢れ出す情報量に頭がパンクしそうになったが、支援者さんのフォローにより無事、全方位がバッチリ見えるようになった。

 

 そんなこんなで、ゆっくりと安全第一に進んでいた所だったんだけどね………

 

 

 

 

 

 

 

 合ってしまった訳ですよ。何って?目だよ、目。

 

 前世の記憶とはかけ離れた、とても禍々しい大蛇と、目が合ってしまったのである。

 

(………………目と目が合う〜しゅんか〜ん好〜きだと〜気付〜いた〜)

 

(うおおおおい!?正気に戻れ、セルガアアアアア!?)

 

 

 

 れれれ冷静になれ、僕。いくら怖いからって見た目で判断しちゃあ駄目だ。そうだ、きっとこの蛇は見た目に反して優しい心を持っているんだ。彼の目をご覧、こんなに澄んだ優しい瞳を………

 

 

 

 キシャーーーーーーーーーーーー!!

 

 

 

 どう見ても獲物を見る目です本当にありがとうございました。こうなったら仕方が無い。大蛇は僕とリムルを威嚇し、臨戦態勢を取っている。だが、こちらには『植物操作』がある。『葉刃』の餌食にしてくれるわ!と、大蛇を見据える。

 

 

 

 するとどうだろう。

 

 

 

 大蛇が大きく息を吸い込む動作をしたかと思ったら、

 

 いかにも毒です、という見た目の霧状のブレスを出してきたではないか。

 

 

 

(………ゑ?)

 

 

 

 僕は無言で『思考加速』を発動した。

 

 

 

(おい!どうすんだよ、セルガ!あれ絶対ヤバイやつだぞ!)

 

(………………どうしよう)

 

(くそ!とりあえず全力で逃げろ!俺が『水刃』で倒すから!)

 

(………了解)

 

 

 

 だが、僕が離れるよりも、このブレスのほうが速い。吸わなければ大丈夫、という風には見えないし………マジか………2度目の人生、こんなところで終わるのか………

 

《援。ユニークスキル『毒殺者』の『毒操作』により、『毒霧吐息』の無効化が可能です》

 

 支援者さんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

 完全に忘れてたわ、『毒殺者』。

 

 リムルとスキルの情報共有をしていたのだが、詳細まではよく知らなかった。

 

 もし支援者さんが居なかったら死んでたね。

 

 ありがとう、支援者さん!とお礼を言ったら、ハァ、と返された。自分のスキルにバカにされた………死にたい。

 

 

 

 というわけで、『毒殺者』のスキル内容をば。

 

 

 

 

 

 毒攻撃:自分のあらゆる攻撃に毒を追加する。自分の身体に毒性を持たせる。これらの毒は『毒生成』で作り出した物を使用可能。

 

 

 

 毒生成:魔素を使い、毒を作り出す。毒は効果を作り変える事が出来、『毒攻撃』で与える毒として使用可能。

 

 

 

 毒操作:自分の周りの毒を操作可能。毒の移動、効果の変化が出来、自分が干渉した毒への完全耐性を得る。

 

 

 

 

 

 ものすごい毒!って感じ。

 

 

 

 

 

(リムル、何か大丈夫みたいだよ)

 

(どこがだよ!全然大丈夫じゃないだろ!それこそ毒を無効にするスキルでも無い限り………まさか)

 

(ふっ………今の今まで完全に存在を忘れてたけどね!)

 

(………………後で説教だからな)

 

(どうして)

 

 

 

 何故か怒られる羽目になってしまったが、もう恐れる物は何も無い!

 

 『思考加速』を解除し、『毒霧吐息』に正面から突っ込んで行く。大蛇は僕が『毒霧吐息』をモロに受けたのを見て、勝ち誇っている。僕が死んだと思っただろう。

 

 生きてるんだな、これが。

 

 大蛇が驚愕で硬直した隙に、『植物操作』を発動。『葉刃』を大蛇の首元へと飛ばした。

 

 

 

 ズパッ、ストン。

 

 

 

 かなり呆気なく、大蛇の首は地面に落ちた。我ながら、かなりの威力である。

 

 この『葉刃』、『変化者』で作り出した葉を使っている。この変化には魔素しか使っておらず、またその消費も微々たる物である。

 

 何百発撃っても魔素切れは無さそうだ。当分のメインウェポンは『葉刃』となるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リムルから長々とお説教を喰らってしまった。やれもっと慎重に行動しろだの、やれ自分の事をもっと把握しておけだのと、ごもっともすぎて耳が痛かったので、大蛇の死体に話を逸らすことにした。リムルからはまだ何か言いたげな視線を受けたが無視しておく。

 

 リムルが大蛇を『捕食者』で捕食しようとしたので、『葉刃』で2つに分け、自分も『変化者』で取り込んだのだら、リムルに引かれた。解せぬ。

 

 だが、そのお蔭で『熱源感知』と『毒霧吐息』を手に入れたので結果オーライである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 色んな意味で紆余曲折な道のりを抜け、僕等は遂に洞窟の入り口に辿り着いた。ここに着くまでに何度か戦闘を行った。百足、蜘蛛、蝙蝠、蜥蜴。それら全てと戦闘し、捕食ないし取り込んでいる。その結果、『麻痺吐息』『粘糸、鋼糸』『吸血、超音波』『身体装甲』のスキルを手に入れた。

 

 

 

「ワレワレハ、ウチュウジンデアル!」

 

「ベツノワクセイノヒトカラミタラボクラガウチュウジントモイエル」

 

 

 

 『変化者』で声帯を作り出し、『超音波』で発声することに成功した。

 

 これで人間と意思疎通が出来るだろう。この見た目じゃ受け入れられるか怪しいけれども。

 

 声を出せるようになったのはいいが、もう一つ試したいことがあった。大蛇と百足から『毒霧吐息』『麻痺吐息』を手に入れたのだが、この2つを『変化者』でくっつけ、もっと強力なブレスに進化させられないか、というものだ。

 

《援。ユニークスキル『変化者』でスキル『毒霧吐息』『麻痺吐息』を統合することは可能です。実行しますか? yes/no》

 

 当然、yes、だよ!

 

 

 

《確認しました。『毒霧吐息』『麻痺吐息』を『変化者』により統合………成功しました。スキル『毒霧吐息』『麻痺吐息』はエクストラスキル『猛毒吐息』に進化しました》

 

 

 

 よっしゃ。名前に同じ部分があると関連性を疑っちゃうのよね。新しいスキルを手に入れたら、とりあえず色々試して見るのも良いかもしれない。

 

 

 

「サテ。ヨウヤットソトニデテキタワケダケド、コレカラドウスル?」

 

「ソウダナ。マチトカムラニデモイッテ、ココロヤサシソウナニンゲンニコエヲカケテミヨウカナ」

 

「ヘー。ソノマチトカムラハドコニアルワケ?」

 

「………ワカラン」

 

「ヒトソレヲイキアタリバッタリトイウ」

 

「ウッセ」

 

 

 

 会話の練習をしつつ、色々と試しながら僕等は道を進んでいた。途中で狼に襲われたりしたが、リムルがちょっと凄んだだけで逃げていった。臆病な奴だなとリムルは言っていたが、リムルからは魔素がダダ漏れなのでビビるのも仕方が無いと思うが………まあ、魔物が近寄って来ないので楽ではある。と思っていたら………

 

 

 

 目の前に、数十体の魔物が現れた。

 

 彼らは人形で小柄。薄汚れて貧相な格好をしている。しかし、粗末だが武器を作れる程の知性はある。

 

 RPGでもよく見る緑色の魔物。ゴブリンである。

 

 

 

 冒険者を襲うまさにテンプレといった奴らなのだが、怖いとは思わない。

 

 洞窟の魔物と比べれば、全然かわいい物である。襲って来るようなら、新しく手に入れた『猛毒吐息』で殲滅するまでだが、どう来るか………

 

 

 

「グガッ、強キ者ヨ…。コノ先二、ナニカ用事ガ、オアリデスヵ?」

 

 

 

 敵対の意志は無さそうだ。どうやら、僕等と会話を試みるつもりらしい。

 

 

 

 せっかくなので、ゴブリン達と会話してみる事にした。




 ステータス
  名前:セルガ=テンペスト
  種族:小竜
  加護:暴風の紋章
  称号:なし
  魔法:なし
  技能:ユニークスキル『支援者』
     ユニークスキル『変化者』
     ユニークスキル『毒殺者』
     エクストラスキル『植物操作』
     エクストラスキル『猛毒吐息』
     エクストラスキル『魔力感知』
     獲得スキル…『熱源感知』『粘糸,鋼糸』『超音波』『身体装甲』

     耐性:熱変動耐性ex
        物理攻撃耐性
        痛覚無効


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数十匹に勝てる訳ないだろいい加減にしろ!

 今回、間が開いた割に内容が薄いです。いつも薄いけど。
 鬼人族のところが書きたかったけど飛ばしたくは無かったんです………ユルシテ………


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして、でいいのかな?俺はスライムのリムルと言う」

 

「僕は小竜のセルガ。よろしくね」

 

 

 

「グガッ、強キ者ヨ! アナタ様方ノオ力ハ十分ニワカリマシタ!!!声ヲ沈メテクダサイ!!!」

 

 

 

 僕等はゴブリン達を一瞥し、自己紹介をする。するのだが、リムルが声を発する度にビクついてるゴブリンもいる。リムルからは魔素が大量に出ているため、仕方ないのだが………

 

 教えるべきか迷うも、急に魔素を引っ込めるのも不自然かと思い、そのままにしておく事にした。

 

 

 

 会話はリムルに任せ、傍観に徹していた。彼等にはお願いがあるらしく、話の流れで彼等の村に案内してもらって(リムルはここでようやく魔素が漏れていることに気がついた)話を聞いたところ、牙狼族なる新参者の種族がこの村を襲い、多くの戦士たちが殺された。

 

 その亡くなった戦士たちの中にネームドモンスターがいた事で、この村の戦力は激減。他のゴブリンの集落に見捨てられてしまったらしい。

 

 本来、ゴブリン10匹で牙狼族1匹に勝てるかどうかというところなのだと言う。そんな相手に、この世界に産まれてすぐの僕等で勝てるのか………いや、洞窟で得たスキルを上手く使えば何とかなるだろうけど。

 

 

 

「村長、1つ確認したい。俺がこの村を助けるなら、その見返りは何だ?お前達は、俺達に何を差し出せる?」

 

 

 

「………我等の忠誠を捧げます!我等に守護をお与え下さい。さすれば、我等は貴方様方に忠誠を誓いましょう!!!」

 

 

 

 ゴブリン達が一斉に平伏する。彼等からは必死な気持ちがよく伝わって来ており、僕等が最後の希望だと言わんばかりの勢いだ。

 

(リムル、助けてあげられない?)

 

(うーむ、忠誠なんか別に要らないんだけど………でも、久しぶりに会った話し相手だからな。………よし!)

 

 

 

「良いだろう!その願い、聞き届けよう!」

 

 

 

 リムルが大きく頷く。彼等を見殺しにするのはとても心が痛むので安心した。

 

(良かった………ありがと、リムル)

 

(おう。………まあ、仕方ないな)

 

 

 

「おお、リムル様、セルガ様………ありがとうございます!!」

 

 

 

「ふふん。任せてくれたまえよ」

 

 

 

「気にするな。えーと………まずは負傷者のいる場所に案内してくれ」

 

 

 

「はい、畏まりました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、俺が負傷者の治療をしておくから、セルガは村を守る柵を作らせてくれ」

 

 

 

「了解。んじゃ、皆注目して下さーい」

 

 

 

 リムルからの指示を受け、リムルの治療を観察しているゴブリン達を纏める。軽く言ったものの、柵の作り方なんて分からないが。とりあえず、どんな柵を作ればいいかを考える。牙狼族と言う名の通り、奴等は狼。村長の話を聞くに、牙狼族の大きさは前世の狼より少し大きいくらい。とはいえ、狼よりも身体能力は遥かに高い。

 

 奴等の進行を防ぐには………と色々考えていたら、いい事を思い付いた。

 

 

 

 名付けて、長篠の戦い戦法である。

 

 

 

 まあ、普通に縦横に木を組んで、柵の後ろから弓で牙狼族を射るだけであり、戦法と言うには程遠いのだが………真正面から突っ込んで来るのならば、非常に有効だ。

 

 

 

 そんなこんなでどう作るかが決まり、柵を作るにあたり僕も手伝うことにした。

 

 ゴブリン達は家を取り壊して柵を作ろうとしていたので慌てて止め、仕方ないので木を『葉刃』で切り倒して、『変化者』で表面や大きさを整えた。また、木に穴を開け、組み立てるだけで柵を作れる様にもした。

 

 

 

 半日ほどかけて柵が完成したら、さらに『変化者』を使用。木を構成する物質を変化させ、魔鉱に変化させる。これならば、牙狼族であろうともそう簡単には破れないだろう。

 

 あと、弓を作るのも並行して行った。木をよくしなるようにして、糸は『鋼糸』で作る。ついでに魔鉱も編み込んだので、かなりの強度を持つ糸が完成した。ちなみに、柵を作るのは男に任せたが、弓を作るのは女性に任せた。僕は作業分担が出来る賢いドラゴンだからね!

 

 

 

「ふふん、どうよリムル」

 

 

 

「うーむ、ちょっとやりすぎじゃ無いか?何でもかんでもお前に頼ってたら、自分の力で何も出来なくなるぞ」

 

 

 

「大丈夫だよ。確かに全部魔鉱にしたのは反省してるけど、僕は材料を提供しただけだし。それに、組み立てるのだってゴブリン達にやらせたよ」

 

 

 

「そうか…でも、あんまりやりすぎるなよ」

 

 

 

「あいさー」

 

 

 

 リムルは心配性だと思うのだ。ゴブリン達だって意外と器用だったし。ある程度のことは彼等だけで出来そうである。

 

 こうして僕等は、この世界での最初の試練へ向けての準備を着々と進めていったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜になり、リムルが送り出した斥候が帰ってきた。軽くではあるが、怪我を負ってしまっている。だが、全員が無事に戻って来られたようだ。彼等によると、今夜にでも牙狼族がこの村を襲いにくるようだ。

 

 リムルが『粘糸』『鋼糸』で作ったトラップなんかも用意しているので、十分に防衛出来ると思うのだが………

 

 

 

 暫くして、牙狼族の群れが攻めてきた。僕とリムルは、ゴブリン達と共に牙狼族と正面から向かい合う。見たところ、奴等の動きは素早く、統率が取れている。確かに、ゴブリン達では相手にならないだろう。

 

 

 

 先に動いたのは、牙狼族だった。十数匹の牙狼族が柵を壊そうと襲いかかって来たが、そこは魔鉱製の柵である。また、蜘蛛の糸による補強、鋼糸によるトラップ、ゴブリン達の弓による迎撃もある。牙狼族は一匹もこの防御を突破する事は叶わず、また、数匹を仕留める事に成功した。

 

 正直、柵を魔鉱にする必要は無かったかもしれない。糸の補強だけで十分に防衛出来たであろう。

 

 

 

「よーし!そこで止まれ。このまま引き返すなら何もしない。さっさと立ち去れ!!!」

 

 

 

 一応、リムルが呼びかけてみるものの、リムルの忠告を完全に無視し、奴等は一斉に攻撃を始めた。

 

 それと同時に、僕はゴブリン達に指示を出す。指示を受けたゴブリン達は一斉に矢を番え、牙狼族へと射る。

 

 

 

 ……………あの、村長さん?矢、打てて無いよ………

 

 

 

 ………因みに、この矢も僕のお手製である。丁度いい感じに、魔鉱で矢じりを作って、羽の部分に使う葉っぱや、丈夫で細い木など………

 

 

 

 作り過ぎて魔素が無くなりかけたけど、命が掛かった戦いだからね、仕方ないね。

 

 

 

 牙狼族を迎え撃っていると、何時まで経っても柵を壊せない事に苛立ったのか、ボスと思わしき牙狼が単独で向かって来た。

 

 はっきり言って、愚行である。十匹以上でも破れなかったのに、一匹で破れる訳も無い。

 

 奴が他の牙狼族を凌駕する強大な力を持っているなら別だが、それは無いだろう。

 

 まあ、確かに他の牙狼よりは素早いが、『思考加速』を使用して見れば遅すぎると言わざるを得ない。

 

 

 

 案の定、牙狼族のボスは『粘糸』で瞬く間に捕らえられた。

 

 粘糸を切って脱出されてしまうかも知れないが、一度捕まった時点で____リムルに一瞬でも隙を見せた時点で終わりである。

 

 牙狼族のボスは、リムルの『水刃』で首を刎ねられた。

 

 

 

 

 

 

 

「聞け、牙狼族よ!お前等のボスは死んだ!お前等に選択させてやる。服従か、死か!」

 

 

 

 リムルが声を上げる。

 

 

 

 結論から言うと、牙狼族達は服従を選んだ。リムルがボスを『捕食』し『擬態』する事で、牙狼族のスキルを獲得。『威圧』により、奴等は服従を宣言したのである。

 

 

 

 こうして、牙狼族との戦いは、僕等の完全勝利で終わったのである。



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