ドラゴンxクエスト (ラディスカル)
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原作開始前プロローグ
魔王ウルノーガを倒し、世界の平和を取り戻した勇者イレブン達。過ぎ去りし時を求めた勇者。彼はちゃんとお姉様を取り戻せただろうか…。時を渡った時、残された世界は泡沫のように消えゆくものと思っていたけれど、ifの世界はどうやら消えて無くなるものではなかったらしい。世界を救った私たち、けれども失ったものも多くて・・・
お姉様と勇者様を失った私たちは、シルビアを新たなリーダーとして世直しの旅を続けた。みんなが失ったものを数える中、彼だけは前を見続けていた。彼の明るさと騎士道はリーダーに相応しかったと思う。世直しの旅を続け、世界を回り・・・。
最初はグレイグとマルティナ、ロウだった。世界を2周ほどまわり、デルカダールに戻ってきた。デルカダール国王は病に臥せっていた。父である国王の願いを受け、マルティナが女王に即位し、グレイグはマルティナの夫としてデルカダールを共に治めることになった。ロウは摂政としてデルカダールに残った。
私たちは三人になった。
次は、カミュとシルビアだった。カミュは風穴の隠れ家で黄金の像となった妹のマヤを守っていくために一人残ると宣言し、シルビアはカミュを一人にできないと共に隠れ家に残った。
私は、わたくしは・・・勇者様とお姉様、偉大な二人の旅を語り継ぐために一人で旅を続けた。
そして・・・
3周、4周と世界を周り、世助けを続ける私・・・
気がつくと生き残っているのは私だけになっていた。お姉様の魔力を受け継ぎ、勇者様を見送り、ロウ様を見送り、グレイグ様を見送り、見送り、見送り・・・
私は一人になった。
「セーニャ・B(ベロニカ)・ラムダ・・・行ってしまうんだな。」
「ニマ大使、勇者様と世界を救ってから100年が経ちました。いつまでも私が世話を焼いてしまうのではロトゼトシアの民は強く有れません。私に頼り切りになってしまっては、大いなる邪悪が再び現れた時、民は争うことができぬでしょう。これで良いのです。」
「ニズゼルファか。」
「長く私に頼りすぎたロトゼトシアではついぞ勇者が現れることもなく、結局私一人で戦いましたわ。これではいけないのです。私はロトゼトシアを去ろうと思います。」
「そうだな、命の大樹の力が届かぬ暗黒の大陸。新しい土地で救いを求める民を探すのだな。」
「そうです。」
「大きくなったなセーニャ。お前だけが心残りだった。私も成仏するとしよう。」
「これで正真正銘一人になるのですね。」
「泣くなセーニャ。100を超えてるのだぞ。」
「そうですわ。お姉さまに笑われてしまいますね。」
「新しい仲間を探せ、セーニャ。もう失ったものを数えるな。」
「ええ、新しい出会いを探しましょう。」
こうして私は暗黒大陸へ旅立った。
彷徨い歩くこと5年、世界崩壊後のロトゼトシアから見てもそこそこな強さの魔物たちを鎧袖一触で薙ぎ払いながら、その肉を食う生活を続けた。
「これでは原始人ですわね」
「流石に文明が恋しくなってまいりました。」
久しぶりに水浴びでもするかと、水の気配を頼りにジャングルを進んでいくと、久方ぶりの海にでた。西日に煌めく水面と磯の香り。勇者たちと大海原を公開したことを昨日のようにおもいだす。
「おや、5年ぶりの海水ですね。海の向こうに人の気配がします。はて、どうやって渡ったものでしょうか・・・」
視線を海から横に流し、ふと樹齢500年はありそうな大木に目を止めた。
「イカダを作りましょうか。」
勇者と違って手先がそれほど器用ではないセーニャは三日三晩かけて不恰好なイカダを製作した。
出向して4日、案の定軽い嵐でイカダは大破した。
シーハンターのモラウは弟子のナックル、シュートと共にメビウス胡の外縁、国際条約で立ち入りが禁止されるギリギリの海域で、密猟者を取り締まっていた。暗黒大陸に渡ろうとする向こう見ずな輩をぶち殺すのが今回の依頼だった。
「なんだ、このオーラは!」
モラウは練状態のネテロを100人並べたようなオーラの波濤を水平線に認めた。
「凝をしなくても光って見えるぜ」
ナックルはその迸るオーラを(2000万くらいだな)と評価する。現実感のなさすぎる光景に恐怖心は働かなかった。また、ネテロ会長の植物のような無色透明のオーラではなく、美しい教会で聖歌隊の賛美歌を聞くような神聖さを感じさせるオーラだった。
「おい、まさか行く気じゃなかろうなナックル。」
シュートの哲学から言えば、触らぬ神に祟りなしという至極真っ当な考えからも、本人の臆病な気質からもこのオーラに近づきたくはなかった。・・・彼は臆病だった。
「見ちまったからには確かめるしかねえ。一応ハンター協会に報告してから調査だな。リターンかはたまた災厄か。俺たちが先遣隊として見定める必要がある。十中八九罠だろうがな。」
「師匠、俺も賛成です。見もしねえで判断する。そんなクソな大人みてえにはなりたくねえ。それに俺の勘がいってるぜ。これはリターンだってな。」
「どうするシュート」
「俺は・・・(逃げたい)賛成です。」
シュートはこの莫大なオーラが恐ろしかったが、同時に師匠に失望されること、ナックルに勇猛さで劣ることを恐れた。
後悔すること1時間
「師匠!女の水死体だぜ。」
「凝をしなくても分かるだろ。こいつがオーラの元凶だ。おいシュート、お前の左腕で引き上げてやれ。」
「わかった。」
引き上げられた女は短く切り揃えられた金髪にマント付きのローブを着ている美しい少女だった。水死体にしては血色がよい。普通の水死体は男女の区別もつかないほどブヨブヨになるが・・・
「ん?」
目を覚ました女はパチクリと目を瞬かせる。
「起きたか」
「ふあああああ」
ムクリと起き上がり、大きなあくびを上品に手で覆い隠す少女。
「目が覚めたか嬢ちゃん」
「あら、ここは?」
「ここは海のど真ん中だ」
「言葉は通じるんですね。こっちの大陸の人間は初めて合いますわ。」
「こっちの大陸?」
暗黒大陸から150kmの海域、“こっちの大陸”というキーワードは嫌でもその可能性を暗示させた。
「やはり似通った言語でもかなり訛りを感じますね。まあ、半年もすればなれるでしょう。」
「お前は・・・暗黒大陸から来たのか?」
「暗黒大陸?自分の大陸を暗黒と呼ぶんですね。どういうことでしょうか。私たちもこの大陸を暗黒の大陸と呼んでいるのですが・・・どういう偶然でしょうか?」
「自分の大陸が暗黒大陸?」
暗黒大陸は自分たち人間の住む5大陸の外、メビウス湖の外の大陸のことだ。これは知識のすり合わせが必要だろう。
「お嬢ちゃん名前は?」
「セーニャ・B・ラムダと申します。ええと・・」
「俺はモラウ。こっちは弟子のナックルとシュートだ。」
「はい。よろしくお願いしますね。モラウ様、ナックル様、シュート様。」
その圧倒的なオーラに反して謙った態度に面食らうハンター一同。その所作は貴族や王族の令嬢のようでもあった。相当に育ちのいいお嬢様だったのだろう。
「俺たちの大陸の地図を見せよう。ついてこい。」
「師匠!こんな怪しい女を船室に入れるんですか?」
少女のオーラの強大さを目にしつつも、いつも通りなナックル。内心「やっぱり潜在オーラ1000万とか2000万の単位だな」と慄きつつ、その聖母のような暖かいオーラに絆されつつあった。
「やばい・・・ヤバすぎる」
シュートはその余りに強大かつ聖なるオーラに当てられ・・・怯えていた。
船室にて、パソコンで世界地図を見せられ、この大陸の地理を教わること2時間。
「ロトゼトシアねえ。暗黒大陸のはるか東にそんな大陸があるとは」
「ここはやはり暗黒大陸の内海なのですね。」
「やっぱり見た目通りの年齢じゃなかったな。ビスケット・クルーガーみたいなもんか。」
脳内で例の若造りババアを思い浮かべるモラウ
「ええ、私は120・・・126か127くらいでしょうか。」
流石に長生きしすぎて曖昧なセーニャ
「信じらんねえぜ、ネテロ会長より若いとはいえほぼ同世代なのかよ。」
目の前の美少女が100歳超えときいて、勝手に裏切られた気分になるナックル。
「・・・」
シュートは怯えつつも、これは年長者に対する畏敬の念だと言い訳をしていた。
「それにしてもすげえオーラだな。おい、ナックル。お前こういうの得意だろ。何万オーラくらいだ。」
ナックルの1つの特技は相手のオーラを数値かする能力である。最も念能力ではなく、直感のようなものだ。
「相対的なもので、誰かと比べねえことには何とも言えませんがね。」
「何でもいいやってみろ。」
「師匠がだいたい潜在オーラで70000くらいとするなら師匠500人分くらい・・・ですかね」
冷や汗をかくモラウ。オーラから感じる人格はこの上なく善性で、聖人どころか神のようにも見えるセーニャ。しかし、暗黒大陸・・・厳密にはその外かららしいが・・・その暗黒大陸からやってきた災厄だと否定し切ることはできなかった。
「セーニャ・・・お前を陸に上げることはできない。少なくとも暫くはな。」
「しようがありませんね。私の力を恐れるのもわかります。」
(レベル40くらいかしら)教会系の魔法知識ももっているセーニャはモラウをそう分析した。
セーニャは世界を周りながら人々を救い、信仰を集めることでいつの間にか人間の限界であるレベル99を超えていた。すでにレベル826とレベル1000の大台が見えてきている。彼女はすでに単体でニズゼルファを撃破するほどだ。だからこそ、人の世を乱してはならないとロトゼトシアを去ったのである。
モラウからの連絡を受け、1週間という短い時間で十二支んを集めたネテロ。
ヨルビアン大陸の外洋で相対するハンター世界最強の念能力者ネテロ。勇者に変わってロトゼトシアを100年守護した最強の賢者セーニャ。2人の最強がここに邂逅した。
「お主がセーニャか」
「はい。セーニャ・B・ラムダと申します。ロトゼトシアから参りました。」
「暗黒大陸のさらに外から来たというのは本当か?その証拠は見せられるかね?」
ううむと思案するセーニャ。
「とくにこれと言って証明できるものはありませんね。どうしましょうか。」
「そうじゃのう。お主の実力。暗黒大陸を横断した実力を示してくれれば良い。」
「そうですわね。それでは魔法をお見せしましょうか。」
(魔法・・・念能力のことかのう?)ネテロは長い顎髭をいじりながら興味深そうに笑った。
「あの辺の海域に打ち込めばいいでしょうか?」
「うむ、半径10kmは人を払っておる。好きにやって構わんぞ。」
「それでは。”メラガイアー”」
それはまさに太陽であった。セーニャの杖先から放たれたちいさな火球はみるみるうちに船を飲み込むサイズに膨れ上がり、高速で射出された。
「なんと、変化系・・・いやこの遠距離性能から放出系が近いかの」
百式をはるかに超える火力。何よりも驚くのはその一撃を持ってしてもセーニャが全く消耗していないところだ。
爆音と閃光により五感が麻痺する十二支ん含む乗組員たち、誰もが中堅以上のハンターだった。その誰もがはるか水平線上の爆発の余波で目と耳を一時的にとはいえダメージを与えたのである。
閃光に思わず目を瞑ったネテロ、ゆっくりと目を開けると、むくむくとキノコ雲が生えてきた。
(おもしれえ。放出系のちょっとした一発が薔薇クラスの威力かよ。おもしれえ!面白えじゃねえか!)
「久しぶりだと加減が効きませんね。暗黒大陸だと、これでも死なないモンスターがちらほらいましたからね。」
「「「暗黒大陸怖っ!」」」
十二支んの多くが戦慄したその発言。しかし、この恐るべき暗黒大陸の小話は十二支んの亥と子の心に確かに火を灯したのだった。
「お主に我らの大陸への上陸を許可しよう。条件は3つ。」
「ええ、如何様な条件でも構いませんわ。」
一つ、次のハンター試験を受験し、ハンターとなること
一つ、幾人かのハンターに稽古をつけること
一つ、メビウス湖の外、暗黒大陸やロトゼトシアの情報を提供すること
「ええ、構いませんわ。これからよろしくお願いしますね。ネテロ様。」
「ネテロ→会長。たったそれだけの条件でよろしいのですか!」
ネテロ会長大好き派筆頭の戌、チードルが珍しくネテロに噛みついた。
「おやおやチードルさん。この会長を100人集めて初めてどうにかなるような怪物を相手に人類がどうこうできるとお思いですか?」
「・・・」
ヘラヘラと笑うパリストンに言い返せない自分に何より腹を立てたチードルだった。だが、薔薇の毒を始め、人類の武器は念能力だけではないのだ。緊急事態ならばどうにか・・・できるだろう。チードルは持ち前の知識と頭脳を用いて、セーニャの殺し方を色々と考え始めた。
結論から言えばキアリーやベホマ、瞑想によるMPの回復が間に合わない速度で薔薇の絨毯爆撃でも喰らわせれば殺せる。それだけでなく、ノヴの四次元マンションをうまく使えば、ノヴが死ぬまでの何十年かは封印できるだろう。
最も善性の極地にあるのはその清浄なオーラと謙虚な態度から十二支ん全員が認めるところだった。
パリストンは新しいこの新しいオモチャでどう遊ぶかを考えた。見るからに素直な性格はからかうに丁度よく、騙して利用するにはその力が強大すぎた。
(見たところ正義感の相当に強いタイプ。このタイプは誘導が簡単です。ですが・・・私の琴線に触れませんね。邪魔だけされないように誘導しましょうか・・・)
(((うわー、絶対悪巧みしてる)))
ニヤニヤとするパリストンにドン引きする十二支ん。ジンも一緒になってドン引いていたが、ジンも大概人格破綻者である。そんな十二支んたちを見て(これがハンター!)と勝手に尊敬を深めていたビーンズがいたとかいなかったとか。
このメラガイアーは5000ダメージくらいです。百式観音がネテロに覆い被さればギリギリ生き残れます。
本小説のセーニャは薔薇を15発くらい打ち込めば死ぬくらいの耐久度を想定しています。
また、具現化系や操作系の能力は普通に効きます。条件を満たせればですが・・・。
ノヴの窓を開く者(スクリーム)で首を刎ねた場合、四次元マンションの中でベホマできます。脳みそを切断された場合は即死です。
天上不知唯我独損 (はこわれ)で絶になれば、裏試験前のレオリオくらいの強さです。しかしトぶまでに20分くらい掛かります。それを薔薇クラスのメラガイアーやイオグランデ、九十九の掌に匹敵する五月雨突きを掻い潜りながら達成する必要があります。
ナニカにひき肉にされた場合も普通に死にます。
最も天使の守りを常にかけ続けているのでかけ直すまでの短い時間で2度殺す必要があります。意識を奪う系の念能力とのコンボか薔薇の絨毯爆撃。ナニカのお願いで死を確定させるなどメルエムどころじゃない難易度ですね。
精神面から攻めるには120年以上生きて、性的に枯れている状態のセーニャが結婚し子供がいるという条件。この条件を満たした上で、夫と子供をザオリクで蘇生できない状態にする必要があります。
次回!
『第一次試験』
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第一次試験
トンパからハンター試験受験者の中での注目株を紹介されていたゴン達。
「ぎゃー」
という野太い男の叫び声に驚き、声のした方に目をやると…
「アーラ不思議、腕が消えちゃった。タネも仕掛けもございません♠︎」
群衆の中心では人垣に穴が空いている。誰もその現場に近寄りたくないのだ。人垣の中心にはピエロのような格好の男と片腕を切り落とされた少女が立っている。「女相手に酷えことしやがる」「よく見りゃ美人じゃねえか」と同情と義憤に駆られつつも野次馬に興ずるしかない男達。
「ネテロ様に言われてオーラを抑えていましたけれど、やはりダメですわね。カミュの忍び走りのようにオーラを消すのでなく、オーラはそのままに隠せれば良いのですが」
「気をつけようね、人にぶつかったら謝らなくちゃ」
「あら、ごめんなさい。ええと、道化師様」
片腕が切り落とされているにもかかわらず、ご近所さんに朝の挨拶をするくらいの気軽さでニコニコと謝罪を述べる少女。
「へぇ、並の使い手だと思ってたけど、随分余裕じゃなーい?僕は奇術師ヒソカ。これは名詞替わりさ」
「どうも」
少女は投げ渡されたトランプを残された右手でキャッチする。このトランプにも凄まじい周がかけてあったのだが、少女は難なくとってみせた。
「私はセーニャ・B・ラムダ。セーニャとお呼びください。ヒソカ様。」
少女は落ちている左腕を拾うと、肩口に合わせる。「ベホイム」と唱えると、青緑のオーラに包まれて、腕は元通り接合した。そのオーラの煌めきは、非念能力者をして神々しい光を幻視するほど強い光だった。そこかしこで「今光ったよな」などざわついている。
「へぇ、強化系かな。そうは見えないけど(んんーッ100点満点!!)」
「全く害意を感じませんでしたわ。油断してしまいました。」
うふふと微笑むセーニャ。彼女はヒソカが殺気を感じさせずに攻撃した達人だと思っているが、それは間違いだった。ヒソカはちょっとしたイタズラ感覚であったし、殺すつもりはなかった。
「中堅クラスのオーラ量に見えたけど、絶を中途半端にしてるのかい?面白いモノを見せてくれたお礼にいいことを教えてあげる。」
「きゃっ」
ぐいっとヒソカに引っ張られるセーニャ。そのままヒソカに抱きすくめられた。
セーニャは初心なのである。何せ120年ものの生娘だ。反射的に手を出すのも無理からぬところである。
「グボァっ!」
とっさのビンタにはゴンさんのボッに匹敵するオーラが込められていた。フルパワービンタである。幸いにも格闘スキルが皆無のセーニャビンタにはヒソカの硬による防御が間に合った。洞穴の壁にかっ飛んでいくヒソカ。バンジーガムに繋がったままのセーニャは思わずつんのめった。
「何かしら、見えない…オーラ?この技が有ればしのびばしりを上手く再現できるかしら。…っと、いけないヒソカ様は生きてらっしゃるかしら。」
「奇術師ヒソカがのされた…あの女やべえな、千切れた腕くっつけてたし。」
近寄らねえほうがいいぜ、とアドバイスするトンパ。
「ヒソカでさえヤベエのに上がいるのかよ。でもすんげー美人だな」
「鼻の下を伸ばすなレオリオ。確かに美人なのは同意だが」
首が180度回転してしまったヒソカ。幸いにもまだ心臓が動いていた。鼓動を確認してホッとしたセーニャはオーラを集中する。ノータイムで魔法を放つことはできるが、抱きすくめられた嫌悪感から治療することに抵抗を感じていた。
「いけませんわ。私のせいですもの。」
「うわー、もう助からないよ。首の骨折れてるもの」
セーニャには近寄らないことで同意していたはずのゴンチーム。慌てるトンパとレオリオを尻目に「そういえばゴンは静かだったな」とクラピカは1人諦観を抱いていた。
「あら、坊や。このくらいの治療は私、朝飯前ですわ。魔法使いですから。」
「すごーい!お姉さん魔法が使えるの?」
目をキラキラさせるゴンに対し、(そういえば一般人には能力を隠さねばならないのでしたね)と今になって焦り出すセーニャ。
「見たところ、首の関節が外れてるだけですわ。上手く元に戻せば助かるはず」
「すごい!お医者さんみたいだ!」
嘘である。骨折はしていないが、首の椎間板と脊椎神経がいかれてしまっている。
「ベホマ」ゴキッ!
魔法による再生に合わせて、ヒソカの頭を掴んで無理やり首を回転させた。側から見れば、魔法(物理)に見えるのである。
「「「物理じゃねーか!」」」
ギャラリーのツッコミが重なる。
「あれ?ボク生きてる?」
ムクリと起き上がるヒソカに群衆はたじろぐ。
「はい。治療はうまく行きましたよ。」
「さっきのベホイムかい?他人の治療ができる能力…強化系と放出系かな。その強化率なら攻撃系のやつ(発)にすれば良いのに」
「それでは試験がありますから、ごきげんようヒソカ様。」
ヒソカから距離を取ろうとするセーニャ。そこにゴンが待ったをかけた。
「待ってよ魔法使いのお姉さん!オレたち3人で来たんだけど一緒に行かない?1人よりずっといいよ!」
「「ちょっと待て」」
ゴンの暴走を慌てて止めるクラピカ、レオリオ。
「ええ、かまいませんよ」
ゴンがセーニャを引き連れて来てしまい、どうにでもなれの心境で受け入れた2人と冷や汗を隠せないトンパ。
「おっ、そうだお近づきの印だ。飲んでくれ。」
自らヤバいやつ認定したセーニャにも下剤入りジュースを渡すトンパ。短時間で警戒心を解いたのはトンパの図太さ故か、はたまたセーニャの人畜無害な清浄なるオーラのせいか…
「ありがとうございます」
セーニャは渡されたジュースを飲んだ。後に続いてゴンもジュースを口にするが…
ゴンはジュースをだばーっと吐き出した。
「このジュース古くなってるよ!味が変」
「まあ、私は気付きませんでしたわ。」
セーニャはお腹でガスがグルグルと動くのを感じ、キアリーですぐに解毒した。
(味も匂いもしないはずの下剤なのにこのガキどんな味覚してやがる。それどころかこの女だ。半分は飲んでるのにケロッとしてやがる。さっきの猫目の白髪チビみたいに毒が効かねえのか?)
「あの娘、イイねえ❤️100点満点だよ。ボクがあった中で1番綺麗なオーラをしている。」
「そんなに気に入ったの?確かにヤバそうなオーラしてるね。アイツは眩しすぎる。キルに近づけるわけにはいかないよ。」
「それに見たかい?最初は中途半端な絶でオーラを中堅ハンタークラスに抑えていたのに。今はキミのところの親父さんみたいなオーラ量を隠で隠してる。ボクのバンジーガムの隠から盗んだんだね。」
「ヤバいね。あれで強化系じゃないんだろ。」
「それが全く分からないんだ。あの回復能力は強化系だと思うんだけど、性格的には合わないだろ?」
「オレはなんでもイイよ。キルに近づいたら殺すだけだから。」
『一筋縄ではいかないハンター試験、セーニャの未来はいかに!?』
セーニャ以外に名前のあるキャラはクロスオーバーしません。オリキャラも出しません。
次回!
『終わりの見えないトンネル』
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