永久機関のアーク (岬サナ)
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五人の≪超級≫

「これがInfiniteDendrogram(インフィニット・デンドログラム)か‼️」

 

これは1人の青年が無限の系統樹と銘打たれるVRMMOのインフィニット・デンドログラム(ここからは基本カタカナ表記)が世界各国に同時に販売され、今インフィニット・デンドログラムの世界に赴こうとしていた。

 

「ゲーム、スタート!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インフィニット・デンドログラムサービス開始から1年と8ヶ月────

 

 

王都封鎖PKテロが終息した翌日──

 

「アルター王国の王都アルテア周辺の東西南北にいたPK連合は悉くデスペナに追い込まれました」

 

「全ての狩り場のPKがですか」

 

「南はフィガロさんだ。他の狩り場は一体誰が?」

 

レイ・スターリングとルーク・ホームズと〈エンブリオ〉のネメシスとバビは〈DIN〉所属の情報屋であるマリーから王都封鎖テロの顛末を聞いていた。

 

「アルター王国に属する5人の≪超級(スペリオル)≫。その内の4人が動き、1人1ヵ所ずつ対処して解決しました」

 

「≪超級≫」

 

「はい。〈エンブリオ〉を現行最終到達の第7形態まで上げた100人もいないトッププレイヤーである〈マスター〉達ですねー」

 

「一体、どのような人達が解決したんですか?」

 

ルークがレイも気になったことをマリーに聞く。

 

「“正体不明”【破壊王(キング・オブ・デストロイ)】、

“無限連鎖”のフィガロ、

“月世界”扶桑月夜、

“酒池肉林”のレイレイ、

この4人が動いて東西南北のPK集団ほぼ全員をデスペナにしましたね」

 

そう言ってマリーは何かしらの道具を机の上に置く。

 

「それは?」

 

「映像メディアみたいな物ですよ。これには今回の事件の一部始終が映されてます。まずは南ですねー」

 

南でのPKの対処をしたフィガロの圧倒的なまでの残虐ファイト。

東でのPKを対処した扶桑月夜率いるクラン月世の会による集団での数の暴力という名の殲滅。

西でのPKの対処をしたレイレイによる打撃からの水風船のような破裂。

 

それぞれが圧倒的な力により他のマスターと一線を斯くしていた。

 

「最後は北ですね」

 

(来たか)

 

レイは自身が殺された場所ゆえに1番聞きたいと思っていた。

 

「・・・・」

 

「ん?」

 

「どうしました?」

 

先ほどまでは景気よく話していたマリーが無言になり、レイとルークはどうしたのか気になった。

 

「とりあえず再生しますね」

 

映像メディアによって北にあった出来事が映し出される。

だが、それはすぐに消え、また別の映像が映し出されては消えを何度か繰り返した。

 

「あの、これって……何でしょう??」

 

「これは“正体不明”【破壊王】と同じく正体不明のPKである、通称“超級殺し”の戦闘映像、らしいです」

 

らしいと言う言葉に首を傾げる2人。

 

「それなら、その2人という確証はないんじゃないのか?PKの方も姿は映ってないし」

 

「いえ、“超級殺し”の方は得た情報からほぼ確定なのですが、【破壊王】の方は被害の規模からの推察が大きいですね。そもそも【破壊王】自体が情報露出の少ない人ですから……」

 

映し消えが何度か起こった後に森から離れた場所からの映像に代わりようやく映し続けれるようになった。

森の中ではなく俯瞰して見下ろす角度で映し出される。

 

「それでも【破壊王】だという高い確証もあるんですよ!ここを見てください!」

 

マリーが破壊される森の映像を停止してからある部分を指指した。

燃える森林の向こうに夜闇に紛れて巨大な黒い影のようなものが存在する。

それは山にしては稜線が鋭角で木々としても形がおかしく見える。

 

「謎の多い【破壊王】ですが、確度の高い情報として彼の〈エンブリオ〉は“戦艦”と言われてます」

 

「戦艦の〈エンブリオ〉もあるんですね」

 

ルークはそちらに驚いていたが、レイは兄の戦車を知っているからか、そういうケースもあるだろうと考えている。

 

「これだけ大規模にやらかしてるし、北のPK……“超級殺し”以外にも被害はあったんじゃないのか?」

 

「それは大丈夫でしょう。PKのいる往来には他に人もいませんし、そもそも【破壊王】だって他者を巻き込まないのを確認したからこれだけ派手にしたと思いますしね」

 

「なるほど」

 

その言葉にレイとルークは納得した。

 

「でもこれだけ破壊されているなら、その正体不明の“超級殺し”もデスペナになってるだろうな」

 

「あぁ実は驚きの追加情報があるんですよ」

 

「それは?」

 

「この森も消し飛ぶ砲火の中で“超級殺し”は生還してるらしいんです」

 

「……ほぅ?」

 

これまで水晶の映像に興味を持たずにバビと共に飯を食っていたネメシスが反応した。

 

「それは朗報だのぅ」

 

レイはネメシスがそう言った理由を理解した。

 

「そういえばマリーさん?」

 

「何ですか?」

 

「先ほど王国に属する≪超級≫は5人と仰ってましたが最後の1人はどんな方なんですか?」

 

ルークが気になった最後の≪超級≫についてもマリーに聞いた。それはレイも気になったのかマリーの方を見ている。

 

「最後の≪超級≫は“永久機関”アークという人物ですね」

 

「“永久機関”ですか?」

 

「はい。彼は今回のPKテロには一切対処してませんけどね」

 

「一切なのか?」

 

「はい」

 

一切の対処してないことに驚くレイにマリーは肯定し、こう答える。

 

「まぁ彼の場合は対処できなかったとも言えますね」

 

「できなかったですか?」

 

対処できなかったの発言でルークは言葉を繰り返した。

 

「〈DIN〉で得た情報では彼は今、天地に行ってますからね。そりゃ対処も出来ないのは当然ですね」

 

それを聞いてレイとルークも、それでは対処はできないと理解した。そもそもPKテロが起こってる時には国にいないのだから対処しようがない。

 

「戦争の参加もしてませんでしたからね」

 

その理由はレイも兄のシュウから聞いていた。アークが戦争に参加しない理由は「リアルでの用事」と聞いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ、アルター王国に戻るとするかな」

 

左手に〈エンブリオ〉の紋章を持っている1人の青年である〈マスター〉が自身の所属国の方を向きながら言った。

 

その青年の後ろには討伐されたUBM(ユニーク・ボス・モンスター)が1体、光の塵となり消えた。

 

【〈UBM〉【天罰神 アラストール】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【アーク】がMVPに選出されました】

【【アーク】にMVP特典【天罰輪 アラストール】を贈与します】

 

「中々、手強かったな」

 

「ふん!さっさとあれ(・・)を使っておれば楽に勝ててたものを使わずにしたからだ」

 

「手厳しいな。それよりレヴィとシュテルは何処に行ったんだ?」

 

「あやつなら街に買い食いに行っておるわ。シュテルはその付き添いだ」

 

そこには2人の男女の姿があった。その内の1人はレイ達が話題にしていた≪超級≫の1人である“永久機関”の二つ名を持つ〈マスター〉のアークであった。

 

 




天罰刀を天罰輪に武器からアクセサリーに変更しました。


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アークと王国最強の1人

アークは超級激突を観戦するためにギデオンまで来ていた。

天地からアルター王国の決闘都市のギデオンまで乗り物などを使わずに黄河やカルディナを横断して渡った。

 

アーク達は街を歩いていたらある人物に出会った。

 

「やぁアーク」

 

「フィガロか。久し振りだな」

 

「うん。久し振り」

 

その人物はアルター王国三巨頭の1人、決闘ランキング1位の“超闘士(オーヴァー・グラディエーター)”のフィガロだった。

 

「彼女達はいないのかい?」

 

「レヴィは買い食いでディアーテェは付き添いだ。シュテルとユーリはあそこだよ」

 

アークが指を向けた方向に2人の少女がいるのをフィガロも確認した。

 

「それより今回は何処まで潜ったんだ?」

 

「今回は48階まで行ったよ」

 

「前回よりも記録更新したんだな」

 

「まぁね」

 

アークはフィガロが墓標迷宮に何処まで潜ったのか聞き、フィガロも到達階層を普通に教えてくれる。

 

「てっきり超級激突の事を忘れてないか心配したけど大丈夫みたいだな」

 

「それは大丈夫さ。僕だって楽しみにしてたからね」

 

俺とフィガロが話していたら離れていたユーリとシュテルが戻ってきた。

 

「あら、フィガロですか?お久し振りですね」

 

「あ、フィガロさんお久し振りです」

 

「うん。久し振りだね2人とも。そういえばアーク、天地では何をしに行ってたんだい?」

 

「あるUBMと戦いにだよ」

 

ユーリとシュテルがフィガロに挨拶をし、フィガロも2人に挨拶を返す。

フィガロはアークが天地に行った理由を聞き、アークも特に隠す事ではないのか答える。

 

「勝ったのかい?」

 

「あぁ勝ったよ。奥の手を1つ使わされたけどな」

 

「また君と決闘がするのが楽しみになるよ」

 

「さすがに人目がある決闘だと使わないかもしれないけどな」

 

「それを引き出す楽しさもあるから大丈夫だよ」

 

アークとフィガロは互いに楽しそうに笑っている。それを見ているユーリとシュテルはアークが楽しそうにしているのを嬉しそうにしていた。

 

「じゃあ、また後でな」

 

「うん。また後で」

 

そう言ってアークとフィガロは別れた。

 

「ディアーテェ達は何処かな?」

 

「中央通りに行ってると言っていたのでそこでしょうね」

 

「大丈夫ですよ!レヴィにはディアーテェも付いてますし!」

 

「そうだな」

 

アークはユーリの頭を撫でながら答える。

 

「………」

 

「ん?」

 

そのままアークがユーリの頭を撫でていると、シュテルがアークの腹に自分の頭を擦り付けグリグリとしていた。

アークはシュテルが何を言いたいのかを察して、シュテルの頭も撫でた。

 

「「~♪」」

 

撫でられてる2人の幸せそうな顔をアークは見ていた。自身がインフィニット・デンドログラムに来て正解だったと思う。

 

「闘技場にでも行くかな」

 

レヴィはともかくとして、ディアーテェならこちらの気配を察して何処にいるかは理解してくれるだろう。

アークはその様に考えて闘技場の方に足を向けた。

 

「~♪」

 

それでもユーリとシュテルの頭を撫でるのを止めたわけではないのだけど。

アーク達を見たティアンや〈マスター〉の人から暖かい目で見られていた。

 

「あ~!何やってるのさアーク!」

 

「何って?」

 

「2人の頭を撫でてることだよ!」

 

「……ハァ」

 

そんなアーク達に声をかけたのは、アーク達の側から離れていたレヴィだった。後ろにはため息を吐きながら頭を抑えるディアーテェの姿も確認できた。

 

「レヴィも撫でてほしいのか?」

 

「当たり前だよ!」

 

アークの質問に即答で答えるレヴィは凄く良い笑顔で答えられた。どうやら自身の頭も撫でてほしかったようだ。

ユーリは満足したのかアークから少しだけ離れてレヴィを撫でられやすくして譲るようだ。

 

「ほらよ」

 

「ムフー♪」

 

撫でてほしいレヴィの頭をアークが撫でれば嬉しそうな顔をしているレヴィを見るだけで心が暖かくなっていくアークであった。

 

「……」

 

「ん?」

 

ディアーテェが不機嫌そうな顔でアークを見ている。

 

「ディアーテェも素直になればいいではありませんか?」

 

「何がだ!」

 

不機嫌顔なディアーテェにシュテルが言い、ディアーテェは反論した。

 

「あぁ」

 

「ディアーテェもやっぱり撫でてほしかったんですね♪」

 

アークはいつものかと思い、ユーリもディアーテェも同じ気持ちだったことに嬉しそうである。

アーク達はそのまま中央にある闘技場に着いていた。

 

「それよりも奴ら(・・)は放置でいいのか?」

 

「時期的にも彼がどうにかするからな。それに彼が救うからこそ意味があるんだ」

 

「そうか」

 

ディアーテェの問いにアークはさも当然と言った風に答える。その答えには一切の迷いも無く信じていると伝わってきた。

 

「それに彼がそこで決意を強くするからこそ、後の出来事で救われる人がたくさんいるからな」

 

「御主が決めたことならば我は何も言わん。ただ御主の行く道を共に歩むのみよ」

 

「ありがとう、ディアーテェ」

 

「ふん!//////」

 

アークがディアーテェに礼を言えば、ディアーテェは照れたように顔を背けるが横から見える肌は紅く染まっていた。

 

「僕だってアークと一緒にずっといるからね!」

 

「私もです」

 

自分も忘れるなと主張するようにレヴィとシュテルもアークに言う。

 

「何があっても一緒ですよアーク」

 

「あぁ」

 

最後にユーリからも言葉を貰い、アークは気持ちを強めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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熊の着ぐるみとアーク

アークがギデオンの街を歩いていたら、ある存在を見かけた。

アークはその熊の着ぐるみ(・・・・・・)を着ている男に話し掛ける。

 

「何してんだシュウ?」

 

「おぉアークじゃないかクマー」

 

「クマ語尾やめろや」

 

「そんなことを言われても困るクマ」

 

アークは熊の着ぐるみを常日頃から着ているシュウ・スターリングに話し掛けた。シュウもアークに話しかけ互いに親しい雰囲気を出していた。

 

「そういえば、前に言ってた弟はこっちに来たのか?」

 

「来たクマよ」

 

「お前の弟だから、そいつもかなりのトラブルメーカーなんだろうな」

 

「否定したいけど、来た初日に緊急なクエストを一緒にやったから否定できないクマー」

 

それに対してアークはシュウに、それ見たことかと言うような視線でシュウを見る。

そして、アークは思い出したように懐から試験管に入っているアイテムを数本シュウに渡す。

 

「これは?」

 

「ちょっと試作で作ったもんだよ。効果は30分間STRを2倍にするやつと30分間AGIを+2000上げるやつだな」

 

シュウの疑問にアークはすぐに答えを言った。

 

「何でこれを俺に?」

 

「また【犯罪王】みたいな時の為の保険だよ」

 

シュウはクマ語尾を止めて真面目に話しを続ける。アークもそれに気付いて何のために用意したのかを言う。

 

「他にも作ったがお前の切り札と平行して使えるのは、それだけしか出来なかったからな」

 

「なるほどな」

 

「それにしても」

 

「何だ?」

 

シュウに渡す物を渡したアークはシュウに言いたいことを言う。

 

「熊の着ぐるみのままだと真面目な話をしてるのにしてない雰囲気になるよな」

 

「それは言わないでほしいクマ」

 

シュウの落ち込む雰囲気を感じてアークもそれ以上は言わないようだった。

 

「それよりも、これをあげるクマ」

 

「キャンディか?」

 

熊の着ぐるみのポケットからキャンディを5つほど渡すシュウにアークは受け取りながら聞く。

 

「そうだクマ。あの子達と一緒に食べるといいクマ」

 

「礼を言うよ。シュウ」

 

「気にするなクマ」

 

アークとシュウは互いに手を振りながらその場を離れる。シュウは大通りの方に歩いていたのを見てアークは、また子供達と戯れるんだなと思った。

 

「すみません!」

 

「ん?」

 

急に声をかけられたアークは、そちらに身体を向け声をかけてきた人物を見た。

 

「リリアーナじゃないか。どうかしたか?」

 

声をかけてきたのは近衛騎士団副団長のリリアーナ・グランドリアだった。アークは彼女が自身に聞きたいことが何かを知っていたが知らない振りをして聞く。

 

「実は人を捜していまして、貴方が見かけなかったのかを聞こうと思いまして」

 

「あの第二のヤンチャですか」

 

「……えぇ」

 

アークが言葉を濁しながら聞いた人物にリリアーナも疲れた表情で肯定した。

 

「それなら見てませんね」

 

「そうですか……では見かけたら役所の方に連絡をください」

 

「分かった」

 

「……あの娘は“超級殺し”が守るから安全だろうな」

 

「アーク!」

 

「レヴィどうした?」

 

アークの紋章から目の前に現れたレヴィにアークは落ち着いた対応で聞く。

 

「あそこの店が凄く美味しかったんだよ!今後はアークも連れていこうって思ってたんだ!」

 

レヴィが指を指した方向を見たアークは、その店がシュテルがレヴィと一緒に行き、その後の感想を教えられた店だと店名からアークは理解した。

 

「お待ちなさいレヴィ」

 

「ん?どうしたのシュテるん?」

 

レヴィがアークの手を引いて歩こうとしたら、またしてもアークの紋章から出てきた存在であるシュテルがレヴィを止める。

 

「私も一緒に行きます」

 

「いいよ♪」

 

「俺もだよシュテル。それとディアーチェとユーリは?」

 

「2人なら何やら先にすることがあるとの事で今回は参加しないようです」

 

「なら、後でお土産を買っておかないとな」

 

「うん♪」

 

「はい」

 

シュテルも一緒に行きたかったからしくレヴィは普通に了承し、アークも了承した。アークは紋章から出てこないユーリとディアーチェの事をシュテルに聞いて出てこない事を知り、後で2人にお土産を買うことを言った。

 

「ん?」

 

アーク達が店の近くを通ろうとした時に鳥の面を付けた指揮者がモンスターかエンブリオのガードナーと共に路上で演奏を奏でていた。

 

(彼は…)

 

「どうかしたのアーク?」

 

「いいや、何でもない」

 

「そうですか?」

 

シュテルとレヴィがアークの方を見ていて聞いたが、アークは何でもないと答え、そのまま3人で目的の店まで行った。

 

その店の料理を食べた3人は満足したように店を出る、ユーリやディアーチェの分のお土産も買ってある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ギデオンにおいてのビッグイベントの≪超級激突≫が開催される。

その裏で着々と行われる皇国によるギデオン襲撃も同時に進められていく。

 

これにより王国の運命が決まる。

 

──破滅か

──存続か

 

このどちらかの運命が────

 

 

 

 

 



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賭けと着ぐるみ2人との話し合い

ここはどうしようかと悩んで、こないするか!って感じで書きました。


『ワァァァァァ‼️‼️』

 

ギデオンの闘技場による決闘の勝敗が付き歓声が上がる。

 

そんな中でアークは闘技場にあるギャンブル受付カウンターで賭けをしようとしていた。

 

「フィガロは1,2倍か……」

 

フィガロと迅羽の倍率が知っている通りでアークは安心してした。

 

「賭けたいんですけどいいですか」

 

「はい、大丈夫ですよ。幾ら賭けられますか?」

 

俺はこの時に幾ら賭けるかを今まで悩んでいた。この後の劣悪なゲームでの被害を考えるならば多く賭けすぎると受け取りに時間がかかる可能性が高いが、少ない金額でやるならばそもそも賭けをする必要がない。

 

「ここまで来てるからな………6億リルで」

 

6000万賭ける人(予定)もいるし6億くらいなら大丈夫だろう。

 

「御主は鬼畜だな」

 

「鬼畜とは酷い言い草だなディアーチェ」

 

「前もってどちらかが勝つかを知ってる者からしたら勝てる賭けであろうが」

 

賭けの受付を済ませて俺達は集合場所に向かっていた。

 

「確かに前から情報を持ってはいるけど、それは俺が介入してることで何かが変わってる可能性もあるから絶対に勝てる賭けとは言えないな」

 

「だが、あやつが勝つと信じているのだろう?」

 

「当然だよ。なんせフィガロは──アルター王国の決闘王者だからな」

 

「信頼の厚さは変わらないようだな」

 

ディアーチェの言葉に当然といった風にアークは返答を返した。これは知識として知っているからの信頼ではなく実際に接して一緒に過ごしたからの信頼だった。

 

「フィガロは彼が戻ってきて、また決闘するまでは決闘王者であり続けるからな」

 

そう言いアーク達はスタッフオンリーと書かれている場所に入る。

 

 

 

そこでアーク達が見たものはクマの着ぐるみとライオンの着ぐるみを着た2人が──シュウとフィガロがいた。

 

「シュウ。フィガロ」

 

「おー、アークじゃないか」

 

「君も来たんだね」

 

「この決闘を見逃すなんて無理だからな」

 

「それよりもこやつらの格好については言わんのか?」

 

「言っても無駄でしょう。シュウの方はキャラメイクを失敗してしまっているので」

 

「僕は笑っちゃったよ!」

 

「レ、レヴィ~」

 

アークは2人が座っている席の近くに腰を下ろし、ディアーチェやシュテルにレヴィやユーリも近くに腰かける。

 

「アークも来たんだし、話すか」

 

「話し?この場所に来てる他国の≪超級≫の事か?」

 

「あぁ、観客席に2人いたからな」

 

「カルディナとドライフの2人だよな」

 

アークは自身も軽く見かけ、そして元々ここに来るのを知っていた為に驚きはなかった。

 

「カルディナのあいつに──」

 

「もう1人はドライフの【獣王(キング・オブ・ビースト)】で間違いないよ」

 

「アーク達は知り合いなのかい?」

 

「昔、とある理由で戦った事があるくらいだな」

 

「あ~あの時だね~」

 

「面倒なのに目を付けられたわ!」

 

「おいおい“物理最強”と()り合ったのか、お前」

 

アーク達はこの場所に来ているもっとも危険度が高い存在について話す。

 

「色々と大変だったけどね。それはフィガロにも言えるけどな」

 

「確かにね。注目されているようだね」

 

「お前が闘技場で≪超級≫と戦るのは初めてだからな。今度こそ情報が入手できると踏んでいるんだろうさ」

 

「別に隠してはいないのだけどね」

 

「効果自体は地味だからなぁ、お前の〈エンブリオ〉」

 

「更に単独で行動するフィガロだから余計に分かりずらくなってるんだろうな」

 

「墓標迷宮でパーティーでも組んで潜れば誰でも気付けるくらいですからね」

 

「そうかもしれないね」

 

アークとシュウはフィガロの情報を手に入れる為にいる存在たちの事も考えていた。

 

「それと……少し街の熱気に混ざってキナ臭い感じがする。王国所属っぽいのに挙動不審な連中もいるしな」

 

「そういえば、そんな奴らもいたな」

 

「何か陰謀を企んでるのがいるかもしれないから用心しとけよ。お前そういう話に鈍いからな」

 

『あ~』

 

シュウの鈍い発言にアーク達は心当たりがあるように声を出す。

 

「わかった。でも、僕ってそんなに鈍いかな?」

 

「絶対に鈍い」

「確実に鈍いな」

「鈍いです」

「フィガろんは鈍いよ♪」

「え~えっと、その‥‥」

「フィガ公は穏やかな脳筋だからな」

 

「そうかな?そんなことはないと思うけれど」

 

フィガロが自分の鈍さに気付いていなくアーク達とシュウは即答で鈍いと答える。ユーリだけは言葉を濁していた。

 

「なら確かめてみるか?」

 

「ダンジョンで怪しい人影が出てきたらどうやって対処する?」

「中距離から【紅蓮鎖獄の看守(クリムゾンデッドキーパー)】を撃ち込む」

 

アークの確かめてみると言う言葉に最初はディアーチェが聞きフィガロは即答した。

 

「では、PK集団にエリアを占拠されていたら?」

「構成員を皆殺しにしてから退去要求を突きつける」

 

次にシュテルが聞くとまたも即答する。

 

「手元にこん棒1本しかないのにモンスターの群れがいるとどうするの?」

「殴りかかる」

 

レヴィの質問にも即答した。

 

「最後にこん棒さえない状態でモンスターの群れを相手にするとなったら?」

「同じように殴りかかる」

 

最後にしたシュウの確認にも即答したフィガロ。

 

「脳筋ではないか⁉️」

 

「……そうかもしれない」

 

ディアーチェが指を指しながらの叱責にフィガロも認めた。

 

「ブフゥ……⁉️」

 

誰かが吹き出した声が聞こえたので、この場に全員がそちらの方を見る。

こちらを覗いていた相手が見た目からレイ・スターリングだとアークは気付いた。

 

「よー、ティータイムぶりクマー」

 

「おや、レイ君にネメシスちゃん。無事にこの街に辿り着けたみたいだね」

 

「シュウ。フィガロ。この子は誰だ?」

 

取り敢えずは面識はないので知っている2人に聞く形を取っておく。

 

「あー、悪いなアーク。俺の弟のレイだ」

 

「あぁ、噂の弟くんね」

 

「このトラブルメーカーの弟か」

 

「同じようにトラブルに愛されているのかもしれませんね。マスター」

 

「ちょっと泣きそうクマー」

 

アーク達の認識のされ方に泣きそうな声を出すシュウ。だけど、ある意味で自業自得だから誰も擁護できない。

 

「貴様のせいであの事件(・・・・)に巻き込まれた我らの気苦労を考えれば当然であろう‼️」

 

「言い返せないクマー」

 

「……ハハハ」

 

流石のシュウの弟であるレイでも空笑いが出てしまう。

 

それからアーク達はフィガロの控え室に行き、そこで話しをすることにした。

 

「それで、どうしてライオンの着ぐるみを?」

 

「僕はこの街では有名人だからね。素顔で歩くと大変なんだ」

 

「仮面やマスクでもいいのに着ぐるみを着てる奴だけどな」

 

「どうせなら全身隠した方が楽だろう」

 

アークのツッコミも天然のフィガロは気付かずに躱す。

 

「ちなみにこれはバザーで買ったネタ装備。シュウみたいに〈UBM〉の特典装備ならいいのだけど、MVP特典って要るものしか出ないからね」

 

「むしろ、こいつみたいに特典装備で着ぐるみが出たら大抵がハズレだと考えた方がいいな」

 

「僕もこれまで何体も〈UBM〉を倒したけど、着ぐるみが出たことはないよ。むしろどうやったら出るんだいシュウ?」

 

「〈エンブリオ〉の外部リソースや後付け装備とかもあるのに着ぐるみばっか出るもんな」

 

フィガロの疑問の視線がシュウやアーク達にもありありと伝わった。

 

「……そうは言うがなフィガ公にアーク、出てきたのが1つを除いて着ぐるみとかいう結果は流石に困るんだぞ。着ぐるみは重ね装備出来んし」

 

「逆に凄いよねー」

 

「そうですね。逆に着ぐるみにそこまで愛されている男として売り出したらどうですか?」

 

アークは、むしろその1つが着ぐるみにならなかったことを喜ぶべきだろうなと考えていた。

 

「売り出さないクマ!」

 

「まぁこやつの場合は、そこにいるフィガロと違い特典で武具を出されても意味はないからな」

 

「そうだね。システムからも「彼にはとりあえず着ぐるみ渡しておこう」って空気なんじゃないかな?」

 

ディアーチェとフィガからの止めとも言える言葉をシュウはもらう。

 

「ハンプティの奴……許せんクマ!」

 

「管理AIってそこまで制御してるんだっけ?」

 

「知らぬ!」

 

「さすがにそこまではしてないとは思うけどな」

 

3人の気兼ねない会話を見てレイやネメシスは付き合いはかなり長いのだと感じていた。

 

「しかし御主らは仲が良いのぅ。友人というのはクマニーサンから聞いていたが」

 

「デンドロの初期からの付き合いになるからな」

 

「友人……うん、まぁそうなるかな。知ってるだろうけど僕とアークにシュウもこの国の≪超」

「この国の〈素敵大好き着ぐるみ愛好会〉の仲間クマ!ちなみに会員数は三名クマ!」

 

「っ⁉️」

 

まさか、その存在しない愛好会に入れられてたアークは驚いたようにシュウの方を見た。

 

「勝手に入れられておるな」

「いつの間に入ってたのアーク?」

「レ、レヴィ~⁉️」

「そんなことを言ってるとアークが泣きますよレヴィ」

 

この流れからして自身も入れられるのか⁉️とアークは項垂れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 



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兄から弟への渡し物

難とか書けた~~(´゚ω゚`)
あんまり原作の内容から変わってる部分はまだ少ないけど、それでもオリ主のアークを交えた会話の内容を書くのは中々に疲れたよ(´・∀・`)y-~~

特にタイトルも思い付かないからある意味で適当にサブタイを付けたしね~♪


アークが意気消沈してしまったが、その姿にさすがのフィガロも話題を変えるためにレイの装備を見る。

 

「え、えーと……。そうそう、特典と言えばレイ君のその籠手とブーツも特典だね?中々良さそうな武具だ」

 

「あ、はい。これまで二体倒しました」

 

アークはその言葉に知ってはいるが鑑定で装備を見る。

 

「へぇ……ふむ、【瘴焔手甲(しょうえんてっこう) ガルドランダ】と【紫怨(しえん)走甲 ゴゥズメイズ】か。ああ、噂になっていたあの山賊団を退治したのはレイ君だったのか」

 

「はい」

 

「ガルドランダもギデオンまでの道筋に出るって話だったから、ここに来るまでに遭遇した感じか?本当に兄弟って分かるな。シュウみたいにトラブルに愛されてる所がな」

 

「あ、兄貴……」

 

アークはジト目でシュウの方を見て、レイも兄の見る。

 

「……クマー」

 

「それにしても山賊団の方にも行くとはシュウの弟だってのがよく分かる」

 

「それにどっちもいいスキルと……君の思いの乗った武具だ。大事にするといい」

 

「はい」

 

「俺としてはガルドランダの3つ目のスキルの解除条件にマジで⁉️って言いたくなるよ」

 

アークの言葉に驚愕の表情を見せるレイとネメシスはシュウの方に顔を向ける。

 

「人の装備を鑑定するときはマイナス補正掛かるけど、フィガ公は≪鑑定眼≫ほぼマックスだから粗方見えるクマー。無理なのは隠蔽効果ついた特典武具くらいクマー」

 

「これとかね」

 

フィガロはシュウの熊の着ぐるみを指指しながら言う。

 

「こんな見た目からしてネタ装備みたいな感じだけど特典武具としての性能は高性能だから複雑な気持ちになるよ」

 

「着ぐるみとかが出ないお前が言うと嫌味に聞こえるな」

 

シュウは着ぐるみからは分からないがジト目をアークに対して向けているような視線をアークは感じていた。

 

「こっちのアークは特殊な≪鑑定眼≫を使ってるから隠蔽効果ついてる特典武具でも全部ではないけど、ある程度は見れる」

 

「それでもシュウの着てる着ぐるみの特典武具みたいに隠蔽に特化してるのは鑑定しにくいけどな」

 

「それでも鑑定しにくいってだけで鑑定できないわけじゃないからな」

 

こんなネタ装備全開みたいな見た目なのに性能で言えば特典武具としては高性能の部類に入るのが軽くショックするアークであった。

 

「それでも俺から君の特典武具のスキルを言うつもりはないし、今言っても無意味だから言わないけどね」

 

「無意味、ですか?」

 

「特典武具のスキルには条件を満たさないと使えない物もあるクマ」

 

「そういった物は元から設定してあるか、複数ある中から持ち主に合わせた条件になることが多い」

 

レイの疑問に兄のシュウが答えディアーチェが補足説明をした。

 

「つまり、今の俺は条件を満たせてないから言っても無意味だと……」

 

「そうだよ」

 

「そうだな」

 

レイに聞かれたことをアークとディアーチェは正直に肯定した。それでもネメシスは気になったのかアークに聞く。

 

「それでも満たさなければいけない条件とやらは知りたいのぅ」

 

「それは自分達で確かめるといいよ」

 

アークはこれでこの話は終わりと言った風に壁にもたれる。

 

「ところでどうしてスタッフオンリーの通路にいたクマ?」

 

「何でチケットあるのにボックス席に来てなかったんだ?」

 

「あー、ちょい野暮用があってメインイベント前にあちこち回ってたクマー」

 

その答えにアークは他国の最強達の事だと理解していた。それは勿論この後に試合をするフィガロも、だ。

 

「そっか。でもそろそろ来てくれよ。フィガロさんの試合が始まる前に俺のパーティを紹介しておきたいし」

 

レイのパーティメンバーか……探偵と怪盗の息子と超級(スペリオル)ではないのに超級をPKした〈マスター〉の"超級殺し"か。

 

「そうだな。もう少ししたら行く。っと、そうだ。昼に渡し忘れていたものがあった」

 

そう言ってシュウはアイテムボックスから【テレパシーカフス】を取り出してレイに渡す。

 

「これは?」

 

「【テレパシーカフス】クマー。同じアイテムを装備中のフレンドと念話出来るクマー」

 

「へぇ」

 

アークも一時期はそのアイテムを持っていたが、自身の持つ魔法スキルやら色々と加味したら無用の長物となってしまったので売ってしまった逸話がある。……無駄金になって少し泣いた。

 

(だから少しは考えてから買えと言っておるのだ)

 

ディアーチェの言葉の針が更にアークに突き刺さった。

 

「かなり便利だな、このアイテム」

 

「距離に限りはあるが、このギデオンやその周辺くらいの範囲なら繋がるクマー。これ本当なら王都で別れたときに渡すつもりだったクマ」

 

アークは無用の長物となったが、その時は暇潰し程度の気持ちで効果範囲などを調べてシュウに教えたのだ。

 

「過保護だな」

 

「大事な弟だからな。当然クマ」

 

「そっか。でも今で良かったよ。最初から受け取っていたら兄貴を頼っちゃいそうだし」

 

レイの言葉にシュウは頷いて返答する。

 

「自立精神旺盛で結構クマー。でも、一人じゃどうにもならないことがあったら頼れよ」

 

「ああ、そのときは頼むよ」

 

「頼まれる」

 

2人の兄弟の関係を眩しそうに見つめるアーク。互いが互いに誇らしく感じる家族というのはアークからしたら羨ましく思った。

 

「ああ、そろそろ時間だね」

 

フィガロに言われて時計を見れば試合開始まで残り15分ほどになっていた。

 

「フィガロさん、試合頑張ってください」

 

「ありがとう。あ、まだ受け付けているだろうから、受付で僕に賭けておくといい」

 

フィガロは不適に笑ったように宣言する。

 

「僕が勝つからきっと儲かるよ」

 

「分かりました」

 

その言葉から感じた重みにレイは乗ることにしたようだ。

先に賭けの受付を終わらしておいて良かったと思うアークであった。

 

(知っておるからといって6億も賭ける御主はバカだとは思うがな⁉️)

 

ディアーチェの説教に項垂れる気持ちになるアークであった。

 

「俺はもうちょっとフィガ公と話していくから先に行っていてほしいクマー」

 

「うん、分かった」

 

「それじゃあねレイ君にネメシスちゃん」

 

「はい、それでは」

 

そう言ってレイとネメシスは控え室から出た。

 

「お話終わった~~?」

 

「レヴィよ。もう少し丁寧に食べんか‼️」

 

「えへへ~」

 

レヴィは口元に食べ滓を付けていた。静かにしていてくれたけどユーリとシュテルも一緒に食べていてくれたから思ったよりかは大人しかった。

ディアーチェの自然に出るオカンスキルの高さにレヴィの楽しそうに口元を拭かれる。

 

 

 

 

そしてアークはシュウの方を向いて先程の会話であることについて詰問しようと見る。

 

シュウもアークの雰囲気に気付いて少しだけビクッと反応していた。






次の更新?……未定だよ。







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メインイベント

書けたぁぁ( ̄▽ ̄;)フゥー

中々に大変だった。


「……ところでさ~〈素敵大好き着ぐるみ同好会〉って何だよ、シュウ~?」

 

「とっさに思いついたのがそれしかなかったんだクマ」

 

アークの詰問にシュウは冷や汗が出る気分で答える。

 

「ひょっとして自分のこと明かしてなかったのかい?」

 

「その話は今はいいクマ」

 

「いや、俺からしたら全然良くないんだけどな」

 

「それは謝るクマ。後で謝礼もするさ。それよりも問題はこれからのことクマ」

 

「そうだね」

 

フィガロから明かしてないという質問にシュウは話を戻そうとしているが、それが肯定を意味してるとは流石に分かってはいるだろう。

 

「お前、必ず勝てるみたいに宣言してたが、そこまで楽な相手じゃないだろ。つーか俺の見る限りほぼ五分だ。むしろ少し悪いな」

 

「我の見立てもその辺りだな」

 

「そうだね。シュウやディアーテェの見立ては僕も同じさ。相手は黄河の最強プレイヤー層〈黄河四霊〉の一人」

 

シュウとディアーテェの見立てにフィガロも同感だと頷く。

 

「対するこちらはアルター王国最強のソロプレイヤー、"無限連鎖"のフィガロ、ですか」

 

「あ~ぁ、ボクも参加したいくらいだよ!」

 

シュテルとレヴィもこの対戦への興味が高いようだった。その聞いたフィガロも。

 

「……自分で言うのも何だけど面白そうなカードだね。観戦したいくらいだよ」

 

「おいおい」

 

「録画しといてやるから安心しろ」

 

「ありがとうアーク、それにシュウ。安心してほしい」

 

フィガロの闘志の圧がアーク達に伝わってくる。

 

「僕はこういう戦いのために……命を燃やす瞬間のために〈InfiniteDendrogram〉にいる」

 

フィガロからの闘気をアーク達は感じた。

 

 

「だから……今の僕の全てで勝つさ」

 

 

そこには最強であり続ける王者の姿があった。

 

そこからシュウとアークは控え室を出て互いに別れる。

 

「ボックス席じゃないクマ?」

 

「今回は立ち見席に行くさ。……あの2人もいることだしな」

 

「……そうか。もしもの時は2人への対処を頼めるか?」

 

「あぁ」

 

シュウの頼みにアークは苦笑いをしながら頷く。そしてアーク達は客席へと向かい、アークとレヴィとシュテル、ユーリとディアーテェの2組に別れてそれぞれの場所へと向かう。

 

アークが目的の人物の隣に座った瞬間、隣にいた女性が腕をアークの方へ動かしていた。

 

「随分な挨拶だな……レヴィアタン」

 

「鈍ってはいないようですね」

 

アークはその腕を即座に掴んで抑えたために周囲の人達には気付かれていない。

 

「久し振りベヘモット♪」

 

「久し振りですねベヘモット」

 

「久し振り」

 

レヴィアタンとアークの殺伐としたやり取りを感じないかのようにベヘモットにレヴィとシュテルは挨拶をする。

 

「あなた方に会ったら聞きたいことがあったんです」

 

「何だよ」

 

ベヘモットの〈エンブリオ〉のレヴィアタンは俺へと殺気をぶつけながら聞いてくる。

 

「何故、前回の戦争に参加しなかった」

 

まるで嘘は許さないといった雰囲気を出しながら"物理最強"の二つ名を持つベヘモットの〈エンブリオ〉のレヴィアタンはアークを見据えた。

 

「外せない用事があったから、ただそれだけさ」

 

アークは特に重い理由などを言うわけでもなくサラッと答えた。

そのアークの解答に真面目に答える気がないと判断したレヴィアタンは殺気が漏れる。

 

「俺との戦闘なんて"物理最強"様からしたら退屈なもの程度だろう」

 

あくまでも自分は下ですよと言った風にアークは答える。その反応にアークの実力を知るレヴィアタンは怒りを感じた。

 

「レヴィ」

 

「…………分かりました。取りあえずはその言い訳で追及はしないであげますが、次は参加しなさい」

 

マスターであるベヘモットからの言葉に殺気などを抑えたレヴィアタンは渋々アークへの追及を止める。

 

「次の戦争には参加するさ」

 

「そうしなさい。そうしなければ私達の相手が居ずにこの国が滅びるでしょう」

 

「それはどうかな?」

 

「何ですか?」

 

アークはレヴィアタンの問いには答えずに闘技場に視線を向ける。

 

「この後のフランクリン(・・・・・・)のゲームが起これば分かるさ」

 

「あぁ、知っていたのですね」

 

「俺が動かなくてもあいつのゲームは失敗に終わる」

 

アークは確定した言い方で告げる。それは勿論、アークがフランクリンが起こすゲームでどうなるのかを知っているからとも言えるのだが。

 

「今は試合を見た方が楽しいしな」

 

「私達の相手ができる相手がお前以外にも出会えるのなら構いません……ですが居なかったのならば今後こそお前との決着を着ける!」

 

「その時は全力で相手をしてやるさ」

 

アークはレヴィアタンとの会話を終わらせて闘技場の方へと視線を向けた。

 

『会場の皆様ぁ!お待たせいたしましたぁ!これより本日のメインイベント、〈超級激突〉を開始致しまァす‼️』

 

丁度いいタイミングで試合開始時間になったようだ。

 

『まずは東の門!ゲストからの入場でェす!』

 

アナウンスに応じ、スポットライトが入場門の一つに向けられる。

 

『遥か東方の黄河より来訪したぁ〈超級〉ゥ!"応龍"の二つ名を持つ大武仙ン!【尸解仙(マスター・キョンシー)】‼️迅ッ!羽ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ‼️』

 

アナウンスからの絶叫から爆音、音楽、そしてスモークまでも炊かれる。

煙が立ち込める中、黄河の決闘ランキング2位の〈超級〉の迅羽が入場してきた。

 

そして、アナウンサーが次の登場する人物の紹介を始める。

 

『そしてぇ!西の門!ギデオンの誇り!絶対王者の登場だぁ‼️』

 

音楽が変わり、今度は反対側の門にスポットライトが当たる。

 

『王者にして孤高の探索者ァ!"無限連鎖"の二つ名と【超闘士(オーヴァーグラディエーター)】の称号を持つ最強の男‼️フィガロォォォォォォォォ‼️』

 

アルター王国の決闘ランキング1位にして王国三巨頭の1人に数えられている〈超級〉のフィガロが現れた。

 

フィガロの登場に会場の観客たちも一斉に歓声を上げる。

 

『フィーガーロ!フィーガーロ!』

 

今ここに〈超級激突〉が開始される。




次、どうしよう?
フィガロと迅羽の戦闘シーンを入れるか(殆どそのままのパクり強しアークの主観がある程度の違い)、終わった後にしてフランクリンのゲームに行くか、ちょっと悩んでる( ̄~ ̄;)

この悩みが解決してから続きを書くかな。


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〈超級激突〉決着!

フィガロと迅羽の試合について悩んで構成に迷ってましたが、思いきって殆ど書かずに最後の部分だけにすることにしました!
数ヶ月くらいに悩んでこれを書き上げましたが、そこまで進めれてないのが辛いですが必要な部分だし仕方ないよね‼️


ギデオンで開催された≪超級激突≫はフィガロと迅羽の白熱した戦いに最終局面を迎えようとしていた。

そうフィガロが自身の持つ最強の武具である〈超級武具〉の【極竜光牙剣 グローリアα】を呼び出す。

 

「あれは……フィガロが勝負を決めにきたな」

 

「あれは〈超級武具〉ですね」

 

アークの隣に座る物理最強のエンブリオのレヴィアタンはそう言う。

 

「あぁ、俺やお前達が持っている(・・・・・)のと同じな」

 

そして会場は更なる緊張感を迎えようとしていた。

 

『面白いもの持ち出してるなァ、フィガロォ。ゲァハハハハハッハ‼️』

 

迅羽が笑う。この場においてなお、笑う。

この闘技場で最もあの刃の威圧感を感じているだろう迅羽は笑っていた。

今は両者の攻防も止まり、笑い声は静寂な闘技場に響く。

 

「さて、迅羽はアレをどう相手にするのかな?」

 

「僕も迅羽と戦ってみたいな!」

 

「そうですねレヴィ」

 

レヴィは楽しそうに言いシュテルもそれを肯定した。

そして迅羽の笑い声もやがて鎮まり……。

 

『じゃあ、こっちも使うかナ!』

 

迅羽が袖から短剣を取り出した。それはこれまで武器として使っていた〈超級エンブリオ〉の義手を越える威圧感を出していた。

まるでフィガロが出した【グローリアα】と同じ威圧感を。

 

『【応龍牙 スーリン・イー】。テメェの得物と"同類"──オレたちが黄河に襲来した〈SUBM〉を狩ったときに手に入れた〈超級武具〉ダ』

 

「そうなるよな」

 

「当然の帰結ですね」

 

「アレが迅羽の〈超級武具〉か~♪」

 

迅羽が出した【スーリン・イー】にアークとシュテル当然といった風にレヴィは楽しそうに見ていた。

 

『が、このままぶつかればステータスが数倍になっているお前には敵わないのが道理だよナァ』

 

「そりゃ気付くよな」

 

「当たり前です。あそこまで分かりやすい結果が見えたのですから秘匿は無理でしょう」

 

アークの言葉にレヴィアタンはそう返す。

この戦いによってフィガロの〈超級エンブリオ〉の能力の"装備数反比例強化"に"戦闘時間比例強化"が大々的に判明したからだ。

だが、アークは別にフィガロは頑なに秘匿してた訳じゃないんだよな~と思っていた。

 

『けど安心しナ。オレの【応龍牙】はMPとSPを注いだ分だけ威力は上がル』

 

迅羽は【応龍牙】を構え、

 

『この一撃にオレの全力を注ぎ込ム──次が最後ダ』

 

宣言を皮切りに、再びの静寂。しかし、会場の緊張感は増大の一途。

 

フィガロの〈超級エンブリオ〉の力が込められていく【グローリアα】。

超級職である迅羽の莫大なMPとSPの全てが注ぎ込まれる【応龍牙】。

 

空間が破れるのではないかと危惧するほどに空気が張り積める。

その緊張感がMAXに達した時、フィガロと迅羽は同時に動いた。

 

2人の超音速を超えた動きに、観客はAGI型の戦闘職に就いているマスターでさえ最大に減速した結界越しですら目に映らない。

それが映ったのはごく一部の絶対強者の〈超級〉達のみであった。

 

その超音速かで行われた事の結果を言うならば。

宙を舞う2つの腕、フィガロの左腕と【応龍牙】を握った迅羽の右腕だった。

残った片腕でフィガロは【グローリアα】を握り締めながら、迅羽の懐へと飛び込む。

 

「隠し武器がありますね」

 

「あぁ」

 

シュテルの言うように迅羽は残った左腕をフィガロの胸に突き出す。そしてフィガロの胸に──"黄金の爪"が突き立った。

 

『殺ったゾッ‼️』

 

「これは猿山のフィガロの敗けですね」

 

「──いや」

 

レヴィアタンがそう断定した横でアークは否定した。

 

「アイツのエンブリオはそれを覆すよ」

 

「?」

 

『──⁉️』

 

レヴィアタンは首を傾げたがその疑問はフィガロと迅羽を見たら判明した。

黄金の爪はフィガロの身体を貫通してなかったことに迅羽は驚いた。

皮膚を引き裂き、大胸筋を破り、心臓を潰し、背骨を砕き、背中から貫通するはずの黄金の鋭爪は、胸を突き入れたところで止まっていた。

 

「そういうこと」

 

「やはりここまで情報が判明したら分かりますか」

 

ベヘモットは納得したような声を上げ、シュテルはさすがにここまでバレたら分かるかと声を洩らす。

 

そう、皮膚は引き裂き、大胸筋を貫きながら、あるモノによって止められた。

〈超級エンブリオ〉の一撃を止められる物がそこにはあった。

 

それは──心臓(・・)

 

それがどの試合でも使っていながら誰にも判明せず、そして必勝を期した迅羽が掴み損ね、今まさに貫けなかったフィガロの超級エンブリオの正体である。

 

『ありがとう。君は、素晴らしい敵だった』

 

フィガロは試合中に使っていた《フィジカルバーサーク》を解き、最高の敵手に賛辞を送り、

 

『《極竜光牙斬(ファング・オブ・グローリア)》──』

 

──迅羽を脳天から一刀で両断した。

 

『ィィィッ!』

 

両断されても動こうとする迅羽に、

 

『──《終極(オーヴァードライブ)》‼️』

 

刃を返して切り上げられた【グローリアα】からの光の奔流──《爆龍覇》をも遥かに上回る熱量の光柱が放たれた。

 

「流石だよ。フィガロ」

 

アークは視界がホワイトアウトするほどの眩い光の中、健闘したフィガロへと賛辞の言葉を呟いた。

光によって何も見えなくなり、光は無音のまま、内部にいるものを蒸発させる。

そして光が過ぎ去った後にはただ一人、フィガロだけが立っていた。

 

「相手の迅羽は消し飛んじゃたね」

 

「そうですね」

 

『今回のメインイベントォ!超級激突の勝者はフィガロォォォ‼️』

 

二拍遅れて、勝利を告げるアナウンスが聞こえる。

そして会場から歓声が上がる。

 

「茶番ですね」

 

決着に熱狂する周囲の者と全く異なる感想を、一人のメイデンが口にした。

けれど、聞く者によっては乱闘にでも発展しかねないその発言も、周りの熱狂の中では搔き消えて、殆ど誰の耳にも届いていない。

彼女の声を聞く者がいたのは……彼女の膝の上にいるベヘモットと隣に座る自分と同じ規格外の〈超級〉のアークとそのエンブリオの2人だけであろう。

 

(〈超級〉と〈超級〉のぶつかり合い。期待してなかったと言えば嘘になる。けれど蓋を開ければ……どちらも見るに堪えない。それでも本当に〈超級〉なのか、と問いたくなる。どちらも小細工に小細工、小枝に小枝。……みみっちい。最後の攻防以外、ろくに見られたものではない。心臓と手足なんて半端なモチーフだからその程度のことしか出来ないのか?貴様ら、それでも私やコイツと同じ……)

 

険のある表情で舞台を睨みながら、レヴィアタンは苛立ちを濃くする。

やがてそれが彼女の内側だけでなく、殺気となって外に発散されかけた時、

 

「止めろ」

「Know your role,and Shut your Mouth」

 

隣にいるアークと自身の膝の上に乗っているベヘモットから言葉を掛けられた。

 

「そうですね。少々口汚い内心でした。自重します。危うく晒しかけました」

 

「K」

 

「もう少し我慢を覚えさせた方がいいんじゃないのか?」

 

その言葉に再びレヴィアタンの殺気が出そうになるがベヘモットに膝を叩かれてそれをしまう。

 

「先の言葉の礼も次の戦争で返すとしましょう」

 

「そうかい」

 

レヴィアタンは舞台の様子を窺い、詰まらなそうに呟く。

 

「あぁ、始まってますね。第一王女が来てない以上、我々には関係がないのですが」

 

「お前らが動かないなら俺も動かないさ」

 

「spec」

 

「そうですね。それなら続けて観戦いたしましょう。これから始まる"座興"を」

 

レヴィアタンが言う座興にアーク達は動かない。……いや動けない。

何故なら動けば隣にいる物理最強の獣王が動くのが分かるからだ。

 

「まぁフランクリンの座興は失敗するさ」

 

「確定するように言うのですね」

 

隣にいる者が動かないのなら失敗すると断定のように言う理由は何かと思うレヴィアタンである。

 

「まぁ見てればその内分かるさ」

 

それに対してアークはそれ以上は何も言わずに舞台の方へと視線を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次もいつ更新するかは不明ですけど待っててくれるなら嬉しいですね。
次は皇国の性格最悪と言われてる超級のアイツが出てきます。


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【大教授】

出来上がった(;-ω-)ノ
そしてあんまり状況が進んでいない~ヽ(;゚;Д;゚;; )ギャァァァ


アークやレヴィアタン達がそんな会話をしていた間、他の観客達も今起こっている異常事態に気付いていく。

 

何故ならば、試合が終わったはずなのにフィガロは迅羽にトドメを刺した体勢のまま微動だにせず、迅羽の方も試合が終わったにも係わらず復活する様子がみられない。

決着を迎えた結界の内部が、完全に停止していた。

 

「へぇ~。まさか姿を出してくるとはな」

 

「意外ですね」

 

アークとシュテルは闘技場に張られた結界──その上部の一点にいる一人の、否、一体の影を見て呟く。

 

「あれってペンギンの着ぐるみだよね」

 

「正確にはアデリーペンギンですよレヴィ」

 

アイツ(シュウ)のような特典武具じゃなくて市販品かある程度の性能があるオーダーメイドだろうがな」

 

シュテル、レヴィ、アークが話していると、そのペンギンはマイクを持った。

 

『はぁい!みなさんこんばんはぁ!いい勝負でしたねぇ!面白かったですねぇ!』

 

会場中の視線が自分に集まったのを感じたのか、ペンギンは喋りだした。

 

『さぁて!面白い勝負の後には伯爵や王女なのかの、面白くもない演説なり訓示なりがある予定でしたけどねぇ。そんなことは取り止めて代わりに面白いことをしましょう!』

 

「絶対にろくでもないことだな」

 

「そうだね」

 

「それ以外にありえません」

 

3人は即答で面白くないだろうと言った。それもそうだろう。あのペンギン(・・・・・・)が言う面白いは自分にとって面白いことだと理解しているからだ。

 

「何だ貴様は‼️」

 

その時、ボックス席の中でも一際大きな席──貴賓席からペンギンへ誰何(すいか)の声があった。その声の主が誰かはここにいる誰もが知っているだろう。彼はアッシュバレー・ギデオン伯爵なのだから。

 

「何のつもりでこのイベントに泥を塗らんとする!」

 

「愉快犯かな?」

 

「面白さ?」

 

「弱者の考えなど知りません」

 

「もう少し優しくしてはどうですか?」

 

ギデオン伯爵の言葉にアーク、レヴィ、レヴィアタンがそれぞれ言うとシュテルがため息を吐きながら言った。

 

『ハッハッハ!言ったでしょう?面白いことをするつもりですよ』

 

そう言って──ペンギンは腹を抱えて笑って……自らの後頭部に手をやった。

 

『けれど、私が何者であるかは言ってませんからねぇ。教えましょう!』

 

そう言って──ペンギンの着ぐるみを着ていた奴は着ぐるみを脱ぎ捨てた。

 

『はーい、これが私の本体のハンサム顔でーす。なーんてねぇ』

 

そこから出てきたのは、アーク達の予想通りの相手、左手の甲に〈エンブリオ〉の紋章を持ち、皇国のクランランキングのトップにいる〈超級〉。

 

「貴様は、貴様は……!」

 

その正体にギデオン伯爵も驚愕と共に言葉を詰まらせている。

 

『おやおやぁ!どうやら私の名前をご存知の方々が沢山いるようですねぇ!』

 

「王国で知らない奴の方が少ないだろうな」

 

「最近始めた新人マスターくらいでしょうね」

 

そう、その相手は、

 

「なぜ貴様がここにいる……Mr.フランクリン‼️」

 

『だぁぁぁいせぇぇぇぇぇかぁぁぁぁぁいッ!』

 

ギデオン伯爵の言葉にMr.フランクリンが笑顔で答えると同時に、どこかから花火が上がる。

 

「凝った演出だな」

 

「ベヘモット達とかが手伝ったの?」

 

「そんなわけないでしょう」

 

レヴィがベヘモットとレヴィアタンに聞くとレヴィアタンは嫌そうな顔をして答える。

 

『はぁい!私がこの国の王様とその他諸々をモンスターの餌にした張本人!ドライフ皇国の〈超級〉!ロボットとモンスタークリエイトの最先端!【大教授】のMr.フランクリンでぇす!』

 

「クランランキングにまともなトップはいないのか?」

 

「いないでしょうね」

 

そんなことをアークは呟き、シュテルはそれの返答を返した。

 

そして、フランクリンが名乗った直後、会場中から無数の矢と銃弾、攻撃魔法がフランクリン目掛けて放たれた。

 

「避けたな」

 

「身代わりのアクセサリー関連と後は《キャスリング》での一時的な避難でしょうね」

 

「《ライフリンク》は使ってない感じだね~」

 

「必要となれば使うでしょうね」

 

アーク達はその攻撃でフランクリンが死んだとは微塵も思っていない。むしろ攻撃したマスターが狙われるだろうと感じた。

結界の上で約100人分はあったであろう攻撃の雨。

 

『さっすが、脳筋の集まった決闘都市。判断が早いねぇ』

 

フランクリンはアーク達の予想通りに生きていた。

 

『言っておくけどねぇ!もう攻撃しないでほしいねぇ!君達も"監獄"行きにはなりたくないだろう?』

 

「まぁ正確には監獄行きの切符だけどな」

 

「それさえ、所詮は負けなければいいだけの話です」

 

フランクリンの言葉にアークと物理最強の片割れのレヴィアタンがそれぞれに言う。

すると、フランクリンの腕の中に一羽の小鳥が止まっており、

 

『──罷り間違ってこのおちびさんに当たったら一発で"監獄"行きだからねぇ』

 

フランクリンがそう言った直後、小鳥と入れ替わりフランクリンの腕の中に何かが現れる。

 

それは一人の少女。

 

その少女は、このアルター王国にとって重要人物の一人である──第二王女のエリザベート・S・アルターなのだから。

 

「まぁこれで攻撃する馬鹿はほとんどいないだろうな」

 

「理解してない者がいるのでは?」

 

「確か一人いたよね?」

 

「そこは用意周到なフランクリンだからな。大丈夫だろ」

 

アークとシュテルにレヴィの会話は普通では何を言ってるのかと思う者が大半の会話をしていた。

事実、隣にいるベヘモットとエンブリオのレヴィアタンは首を傾げていた。

 

『ご理解いただけたかなぁ?王族殺しは即"監獄"だからねぇ。気をつけて……ってぇ私が言えることじゃないかぁ!ハハハハハ!』

 

「フランクリンが言えたことではないな」

 

「そうですね」

 

「この国の王様を殺したの、アイツだしね」

 

腕の中のエリザベートの父親を殺したフランクリンは、面白いジョークでも言ったかのように高笑いした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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