アークナイツRTA参考資料「W姉貴のしっとり確率」ついでに「最強の伝説」トロフィーRTAの中途報告 (W姉貴に負けたい人)
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傭兵チャート編
ほんへ


RTAではありません
RTAやろうとしてる人の経過報告です
それだけです


 はい、よーいスタート(棒読み)

 

 はじめまして、脳に鉱石を得た一般投稿者です。

 

 今回はアークナイツRPG RTAの参考記録ではなく、RTAのチャートを組む際の参考資料としての投稿になります。

 私が走ろうとしているRTAはまだ試走中ですので世に出てません。何のRTAだよ? という方もいるでしょうからざっくりと説明しますと、ただひたすらに強さを追い求めることで手に入る『最強の伝説』というトロフィー獲得RTAです。

 

 アークナイツRPGの主流は特定人物の曇らせだったり、あるいはドクター抹殺や惑星脱出、組織設立だとかなどの、所謂ガバがあってもそこまで問題は無い(問題は無いとは言っていない)ものが多いです。というのも、山あり谷ありでエンターテイメント性がちゃんとある、見ていて楽しいRTAでないとクッソ地味な映像をただ倍速で垂れ流すことになりますからね。

 考えてみてください、せっかく原作ありきのゲームやってるのに見せられるのがオリジナル要素ばっかりで原作キャラとはほとんど関わりが無いとか見る意味ありますか? ないです(反語)

 

 まあそんなわけで、マイナーなRTAを走ろうと色々検証を積み重ねていった私ですが、検証の結果様々なRTAで活かせるデータが集まったのでこうして投稿しています。

 本題のそのデータですが……

 

 

 

 W姉貴がしっとりする確率です。

 

 

 なんでW姉貴のしっとり確率が『最強の伝説』で見つかったんだよと思うでしょ? んああぁ、おっしゃらないで。

 ひたすらに闘争に身を置くってことは必然的にW姉貴やらアビサルやらと関わりが生まれてしまうってわけで。当然レユニオンともロドスとも関わりが生まれるわ、感染者ならすぐに保護されちゃうわ、下手に犯罪起こすとそもそも闘争に身を置く前にチェン姉貴とかに殺されるわで、ロクなことがない。

 チャート崩壊要素もたっぷりありますよ。どんなキャラが出てきても大丈夫。どうぞ走ってみてください。ほら一瞬でキャラクターがチャート外れたでしょう? 余裕の崩壊だ、嘆きも違いますよ。

 

 ……失礼、荒ぶりました。

 端的に言えば、「強くあろうとすると否が応でも関わりが生まれてしまう原作キャラクターがいて、高確率でそれらに阻まれてしまう」というわけですな。

 そもそもこの『最強の伝説』、原作時に存在しているネームドキャラ全員に勝利すれば達成できます。難易度そのものはそこまで高くありません。各ネームドの強さに目を瞑れば、ですが。

 ──ええ、はい。別にこのトロフィー、人間関係があっても何の問題も無いんですよ。でもそれを最短で達成しようと思うと人間関係全てが邪魔になるんです。特に操作キャラにとって正負どちらでも特別な意味を持つキャラが存在するだけでリセ案件レベルで邪魔です。

 

 全ネームドに勝利するということは、必然的に求められる能力は尋常じゃないです。アーミヤの超パワーを全身から放てるくらいに強くないと無理です。それに加えてシナリオの都合上、一部のネームドは二度と再戦できません。また厄介なことにタルラと中身の蛇さんは別ネームド扱いです。スカルシュレッダーくんやメフィストくんも同じです。つまりごく短期間だけ存在するスカルシュレッダー(偽)になったミーシャも対象です。

 ウッソだろお前www

 

 で、なんでW姉貴の検証が始まったかと言えば、W姉貴が一番都合が良かったからです。それというのも強さを求めてライン生命に行けばほぼ確実に強くなれますが、シナリオが始まるとサイレンス姉貴やサリア姉貴、場合によってはマゼラン姉貴やらメイヤー姉貴やらフィリオプシス姉貴やらがイフリータちゃんと一緒に「強くなれる理由を知りすぎるな」と説得してきて、強くなるためにイフリータを庇い過ぎるとこの一言でキャラが最強を目指すことをやめてしまいます。お前の事が心配なんだよ! ん、おかのした。やめますやめます……ヌッ。じゃねーよお前を芸術品にしてやろうか!? まあ感染率90%になったので介錯してもらいましたが(ゲス)

 

 次点でアビサルなのですが、こっちはそもそも安定しない。というか良くも悪くもスカジが与える影響がデカ過ぎる。スカジの強さに心がへし折れるか、スカジの呪いに巻き込まれて再起不能になるか、好感度高め過ぎてしっとりしてしまうか。

 なんでスカジばっかり? と思うかもしれませんが、これはスカジが最強格なので得られるモノが非常に大きいという利点だらけだからです。スペクターやアンドレアナも悪く無いのですが、いかんせんスカジと比較すると……君たちのことは嫌いではなかったが、スカジの影響が良すぎるのがいけないのだよ! (アゴい彗星)

 

 ……まあスカジに追い付こうとするとかなりの無理をしなくてはならないので先にキャラの心がぶち折れます。一度だけ追い付くどころかスカジと同格でありながら鉱石病を患い、強力なアーツを備えたキャラが誕生しましたが、何処ぞの光の英雄みたいなバカに育ったのでRTA的なトロフィー獲得は無理でした。

 まあ記念にデータだけはとってありますけど。

 

 アウトローでないと短期間で凄まじい能力向上が基本的に望めないので、龍門近衛局辺りでゆっくり強くなっていくことができません。ペンギン急便も微妙なところです。RTAからかけ離れてしまいます。

 本来なら順当にのびのび強くなって引き継ぎと周回で獲得するトロフィーなので、一周で取ろうとするのが無茶なんですがそこは我々ゲーマーの血が騒ぎたてて、やってやろうじゃねえかとなっているんです。

 

 そこで白羽の矢が立ったのがサルカズの傭兵団──とりわけW姉貴です。

 というのも、立場的に敵になったり味方になったりができるんですよ。効率的に全方位に喧嘩を売れつつ、かつ激戦区に飛ばされたりW姉貴たちに鍛えられて経験値を積むことも楽で、鉱石病を患うこともできるし、改造やら何やらもそこまで難しくない。そして何よりW姉貴は傭兵故のシビアな観点からテレジアくらいにしかデレないし、自キャラは力のみを信奉する頭バエルになることができる(ここ重要)。

 

 つまり理想的な要素がたっぷり詰まった上で安定性もあるという素晴らしい環境なんです。

 

 ちなみに頭バエルを崩されないように「エフイーターの映画を見て強くなれる理由を知りすぎた」したキャラでやったこともあるのですが、エフイーターの性格の良さからモンスターになり切れずに終わりました。(10敗)

 あのおっぱいパンダやべえよやべえよ……包容力が桁外れだ……しっとりさせた方が楽って何よ……? しかもしっとりさせてもそこまで変わりないし、変わるまでしっとりさせようとしたらチャート壊れるしで強すぎる。

 おかげでどのチャートで組んでもエフイーターにビビってますよ、ええ。普通に優しい人って一番強いんです。

 

 ……まあそんなわけでW姉貴の好感度の調査を始めたわけです。

 そこで判明したのがW姉貴、好感度を上げ過ぎなくても特定の選択肢を連続して選ぶと途端にしっとりします。コロッと落ちます。

 まあそんなことくらい走者の皆様ご存知でしょうが、最強と闘争の信奉者であるとテレジアと接触後に自キャラが彼女たちの目指している未来とは相反する存在であると悟られるんです。

 ここである程度W姉貴からの好感度を稼ぎつつ最強をひたすらに追い求めていると、W姉貴から決闘を挑まれることになります。勿論負ければ死にます。

 そしてここで決闘を挑まれるほどに好感度が高いと、W姉貴がほぼ確実にしっとりしているというわけです。

 

 なんであんまり関わってないのにしっとりするのか疑問でした。負けたら死に行く自キャラに手向けのキスをするW姉貴の一枚絵が出てきてびっくりしたんですもん。

 

 そこからスタンス問わずW姉貴との交流イベントや共闘、敵対、時期イベントなどを調査していった結果、W姉貴がテレジア殿下と接触後に自キャラにしっとりしてしまう確率は平均的に好感度を稼いでいると約43.8%であると判明しました。結構高いです。

 そしてこれ、あくまでも平均値です。これに好感度を稼ぐ選択肢を加えるとその可能性は爆上がりします。

 

 テレジア殿下との接触が発生しない限り、本格的に彼女がしっとりすることはありません。こっちがアピールすれば、W姉貴がWになる前にしっとりさせることもできますが。

 弱くても〜みたいなスタンスで友好的だと「守護らねば」を起点にしっとりするかもしれないし、強くて〜みたいなスタンスで友好的だと「背中を預けられるパートナー」としてしっとりするかもしれない。

 そして混沌の中でしか生きられず闘争と力を求めるのであれば、「せめてあたしがあんたを殺す」という愛情で慈悲を与えに来るわけです。しっとり具合は完全ランダムで、下手をすると瀕死状態で犯されて腹上死します。というかされました(2敗)

 

 このようにW姉貴とビジネスライクな付き合いでも、結構しっとりする確率があるということがわかります。そもそもの好感度が低ければ関係無いですが、好感度を普通に稼ぐ必要があるならある程度の予想を立てられるようになります。

 

 そしてこのW姉貴方式のしっとり率と好感度の関係性、結構適用されているキャラが多いです。心のオアシスを見つけて落ち着く時のあるキャラであればほとんどこの関係性があると判断してください。ケルシー先生もこれですので、もしケルシー先生と関係を築くのであればお気を付けを。

 とはいえW姉貴がこの中でも確率が高いのであって、他のキャラでは10%すら稀なのですが。大抵こっちからしっとりさせますし、向こうが勝手にしっとりする確率は低いです。

 

 なんでW姉貴だけ50%近いの? というと敵味方の立場がコロコロと入れ替わるため、関わると決めた場合二倍近く接触することになります。そしてサルカズ傭兵団の場合、それが更に膨れ上がります。加えて敵であっても味方であっても第三者であっても好感度を稼ぐ選択肢はあるので倍プッシュ。もっとも好感度だけではしっとり確率はそこそこです。では何故しっとり確率がずば抜けて高いのか。彼女は安らぎを求める行動を取るから、ということにあります。

 テレジアと出会うとそれが顕著になります。

 

 テレジアが安らぎの枠に収まってしまえばそこでこの話は終わるのですが、ここで自キャラがテレジア並みに大きな存在……例えば好敵手だったりパートナーだったりした場合、安らぎ枠が自キャラで埋まります。テレジアは更に特別な存在になります。

 好敵手が安らぎって何よってなるかもしれませんが、これはW姉貴が同格の存在である自キャラと戦いの中で語り合うのが楽しいってなるわけですな。所謂強敵と書いて友と呼ぶ関係だったり、乙女座の男がガンダムに抱く感情みたいな。

 

 ……とまあ、こんな具合にW姉貴はかなりの確率で好感度を上げやすく、他キャラと同じくらいのしっとり確率が接触頻度によりかなり上がっているというのが、このカラクリとなっています。

 安らぎ、という表現が正しいかどうかはわかりませんが、とりあえず私は安らぎって表現にしました。だってパートナーだったり好敵手といる空間って心が落ち着く……落ち着かない? 柱間ァ……(MDR)

 

 別にW姉貴がチョロいというわけではありません。これだけは真実を伝えたかった。

 この関係性が適用されるキャラと過剰な接触を行うとチャートが崩壊する恐れもあるので、他の走者の方々は是非気を付けて下さい。よくW姉貴に食われてしまうのであれば、概要欄に添付してあるリンクからシュミレーターに飛んで計算してみてください。

 

 

 じゃ、俺レユニオン編終盤まで行ったけどしっとりW姉貴に殺されたED垂れ流して終わるから……

 

 

 ────────

 

「……オレの、負けか」

 

 仰向けに倒れた男を見下ろす。

 

「変わってないわね、あんた」

「そういうオマエは変わったな」

 

 思えば長い付き合いだった。

 自分がまだWとなる前から腐れ縁があって、Wとなった時に同じ部隊に所属していたと知って大層驚いたものだ。

 幼少から続く腐れ縁も、今日で終わりを告げたが。

 

「……何故だ? 何故オレは届かないんだ」

 

 Wは知っている。

 この男が、どれだけ愚直に強きを追い求めていたのかを。このサルカズが、どれだけ力を欲していたのかを。

 略奪などといった理由もなく、力量差も一切顧みず、ただ敵意を持って向かい合ったというだけでそれを対戦相手と捉え、全力で討ち滅ぼす。余程の窮地に陥らない限りは退却せず、完全に決着を付けたと判断するまではまともな休息も取らない。

 サルカズとしても異質な、「戦闘」という行為そのものを好む怪物。

 

「ねえ、一つ質問なんだけど」

「なんだ」

「どうして、強さを追い求めたの?」

「……さて、なぁ。それがオレだからだ」

 

 魂がそう叫んだ。他に理由は要らないと男は笑った。

 昔からそうだった。幼少の頃、自分を助けた理由を問うた時にこの男は、「一人よりも二人の方がやれることも多い」という理由だけだった。

 なんか気に食わなかったし信用できなかったので寝首を搔こうとしたが、負けた。そして言うに事欠いて「もっと来い。オレはそれで強くなれる」だ。修行相手かあたしは、と憤慨したのも今は昔。定期的に戦闘を仕掛ければ報酬として金だの飯だのを寄越してくれるのは有り難かった。

 

 互いに切磋琢磨する間柄に、奇妙な心地良さを感じ始めた頃、彼は消えた。置き手紙に「更なる強さを求めて」とだけ。生きるのではなく強さと来た。まったく理解できなかった。が、そんな男のらしさがバカバカしくって笑ってしまった。

 

 そして自分がWになった時──この男もまた名を変えてその傭兵部隊にいた。目を丸くしていたのは記憶に新しい。そんな顔もできるものかと驚いたものだ。そしてまた、じゃれあいのような殺し合いじみた遊びが始まった。

 それが自分とその男の間で交わされる会話だったから。

 

「……せっかく次に活かせそうな経験が出来たのにな」

 

 男のつぶやきは、今際の際も変わらない。

 右腕が完全に鉱石と化し、サルカズ特有の角とはまた別に左眼を起点に鉱石の角を生やして変わり果てた姿。ボロボロの衣服から見える肌にも、鉱石が亀裂のように走っている。

 

 その近くには源石を生物の骨と皮で包み込んだ悍ましい大剣が転がっている。……彼の得物だ。こんな悍ましい代物を使い続けたからこそ、このような姿になってしまったのは容易く想像できる。

 

「あんたは何で、テレジアと一緒にいることを選んだの?」

「神は自ら歩く者を助くる。茨の道を歩む者には試練が訪れる。その道を行けばオレもまた、茨の棘を踏める。それだけだ」

「……ちょっとでも期待したあたしがバカだったわ」

「何を今更。わかっていたろう」

 

 バベルに傭兵部隊を抜けて所属した時、この男も何食わぬ顔で着いてきた。最初はテレジアに光を見出したのかと思った。だが結局、この男は何一つ変わっていなかった。

 Wが復讐を企てる頃には姿を消していた。死んだのかと思ったが、次にレユニオンとして遭遇した時に、まるで怪物のような姿になっていたこの男を見て、自然と笑みが溢れると同時に確信した。

 

 この男は戦いの中にしか存在する場は無い。

 サルカズの傭兵を体現する、戦いの申し子。

 

 この男を殺すのは、自分だけだと。

 だが何故なのかはわからなかった。

 

「どうだロドスは。楽しいか」

「別に」

「ドクターはどうしている」

「記憶が飛んでる。まるで別人よ」

「ケルシーには借りを返せなかったな。モスティマにも、すまないことをした」

「なに、あんたケルシーに貸しあんの?」

「バベルの頃、彼女に頼み込んでいくつかの薬品をくすねさせてもらった」

「呆れた。ホント、バカみたいに真っ直ぐ生きてるのね」

「それ以外に生き方を知らん」

「で、他の女は?」

「……大した話ではない。コイツも借りを返せなかったって話だ」

 

 そして──今、瀕死に追い込んだ。

 タルラを殺す、レユニオンを滅ぼすのはオレだと、ロドスの妨害を行ない幹部を殺し続けていたこの男。復讐でもなく、理想でもなく、ただひたすらに強者との血沸き肉踊る死闘を求めて戦場に現れる魔物。

 それをどうにかしなければならないとした時、Wは傭兵部隊のネットワークを使い、この男に決闘を申し込んだ。

 

 その結果は、見ての通り。

 左手で取ったタバコを口に咥えて、ライターで火をつけようにも上手くいかないらしい。Wはライターを引ったくって、そのタバコに火を付けたついでに懐からもう一本拝借して咥えてから火をつける。

 

「……何故、決闘を申し込んだ? 物量でオレを殺すなど容易いだろう」

「あたしね、あんたに憧れてた」

「──は? テレジア以外に、オマエが?」

「ええ。悪い?」

「……クッ、ハハハ! あのWが!? なんだそれは……」

 

 ケラケラと笑う姿に、人の気も知らないでと不満を抱く。思えば初志貫徹して、徹頭徹尾自分がこうと決めたことに真っ直ぐに向かっていくその姿に心惹かれていたなど、最近自覚したことなのだ。

 

「仕方ないじゃない! 真っ直ぐに自分がこう、って決めたことに折れずに向かっていくんだから、カッコいいって思ってもいいでしょ!?」

「結局のところそれ、テレジアだろ!」

「違うわよ! あんたとテレジアが一緒なわけないじゃない!」

「あんな頑固者、オレみたいなものだろう!」

 

 互いにタバコを捨てて、ゲラゲラと笑い合いながら──男が血を吐き出す。そろそろ、限界だ。

 

「……やれよ、──」

「そうね。でも……」

 

 永遠とも一瞬とも取れるような、瞬間と瞬間の隙間。

 唖然とする男の顔を見て、優しく微笑んで。

 

「愛していたわ、──」

「男見る目ねぇな」

「……知ってる」

 

 呆れたような言葉に反応してから、ナイフを突き立てて。

 

「また会いましょう」

「覚えてたらな」

「忘れさせない」

「ひっでぇ女」

 

 ずっと焦がれていた男を、殺した。

 

「ひどい男」

 

 

 ────────

 

 

 おま◯け

 

 この時使ったキャラ「G」のステータスは戦闘ガン振りってだけでなく、結構地頭は賢い方です。バカですけど。

 そんなわけでイフリータ脱走後のライン生命を襲撃していくつかの研究データを手に入れることで自己改造を可能にしたんですよね。

 元々はブラッドブルードで、研究者気質も持ち合わせることで多少の知識を手に入れたのが吉と出たケースで、鉱石病の進行を抑えつつ源石と完全に融合した右腕のおかげで理論上は不死の黒蛇を倒せるだけのステータスを手に入れられたんですよ。

 

 ……まあつまるところ、精神と寿命擦り減らして無理矢理にアーツを前衛CEO、戦闘能力をスカジと同レベルまで持っていったキャラです。

 ただし強さの理由の大半が致命的な精神負荷を受け入れることで戦闘能力を限界以上に高めているというだけで、その為に発生する諸々は気合いと根性で耐える(つまり戦闘中の精神状況管理が出来ないと自滅して終わる)とかいう文字通りの時限爆弾というわけです。

 

 逆にこれぐらいしないと一周で終わってくれません。

 

 いやぁ、本当に惜しいんですよねこのキャラ……よりにもよってW姉貴がしっとりしてしまい、決闘を申し込んできたのが残念だった。W姉貴との交流には気を使っていたんですけどね、逆に気を使い過ぎて自キャラに決闘を受ける受けないの選択肢が発生しない状態になってしまったのがメガトンコインでした。

 そしてW姉貴がフル装備で来たので、大剣とアーツだけでは無理でした。(全身メタ装備は)いやぁーキツイっす。

 

 もうちょっと人との交流増やして黒狼鳥じみた戦闘マシーン化するのは避けないといけませんね……感情とか心ってめんどくせー。

 やっぱり鉄仮面が一番! 

 

 以上、ご視聴ありがとうございました。




Gくん

走者が試走に使ったサルカズのブラッドブルードの男キャラ。
アーツは爆発的な身体強化。
幼少からWと関わることで戦闘能力の底上げをしつつ、多種多様な戦術を取り入れることで高ステータスの土台を作り、激戦に参戦することで経験値を荒稼ぎ。その上で既にある程度の安定ラインが見えている人体実験を自分に行うことで極限まで性能を向上させた。

その結果右腕が完全に源石と融合し、源石の角が左目から生えて、致命的な精神負荷が常時襲いかかるようになったけどヨシ! 精神は気合いと根性で維持する!
全身の源石と武器の源石により凄まじいアーツ能力を誇り、歴戦により鍛え上げられた戦闘術と組み合わせて運用することで圧倒的な力を発揮できた。

昔から最強以外に興味が無い振る舞いをして戦いを生業とするサルカズだから誰彼構わず襲いかかるモンスターになれたけど、あまりにもやば過ぎてこれ以上強くなる前に始末しなければとロドスに判断され、完全武装Wによって殺された。

……まあずっとロドスに「レユニオンはオレの獲物! 皆殺しにしたら次はオマエら!」って言ってたらそら殺されますわな。


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後日談と試走の追憶

なんというか前の奴だけじゃあれだと思って初投稿です
今回意図的に地の文を抜いてます。テストみたいなもんです
ご容赦ください


──長かったのか短かったのか、もうわからない。

 

「……目が覚めたか」

「あんたは……?」

「好きに使え。寝首を掻くのも構わん。できるなら、だが」

 

──始まりはそんな出会いだった。

 

「手伝え」

「そうする理由があたしにあると思う?」

「オマエには無いが、オレにはある」

「いやよ、ただ働きは」

「問題無い。不足だが、報酬は用意した」

 

──そこから奇妙な関係が始まった。

 

「Gを殺したわ」

「ああ。死体をこの目で見た」

 

「W」

「何」

「君は、Gを──」

「黙りなさい」

 

「ケルシー、あんたがあたしとあいつの何を理解しているっていうの?」

「だが」

「あたしはGを愛していた。だから殺した。この話はこれで終わり」

「……愛しているから殺すというのは矛盾していないか」

「愛情と殺意は共存するのよ」

 

「戦いの中でしか生きられない男に愛を証明するなら、殺すしかないでしょう」

「……」

「あら、あんたもそんな顔をするのね」

「彼は……研究者としても大成する才覚があった」

 

「でしょうね。どうやら自分を改造してたみたいだし。あいつが感染者のために、なんて殊勝な気持ちでもあればこうはならなかったかもね。もしかしたら、ロドスと肩を並べて感染者たちを救う未来を見てくれたかもしれない」

「何故だW。君ならば説得できたはずだ」

 

「無理よ。Gは感染者の未来のことも、あの人のことも関係なかった。本人に色々聞いてみれば、あの人への感情とかわかったかもしれないけど、どうせ月並みな言葉しか出てこないと思うわ」

「では、彼は何を望んでいたんだ」

 

「──最強の二文字。それ以外は何もない」

 

「は?」

「男って単純でバカだから、強くて雄々しくてカッコいいモノに憧れちゃうのよ。あいつもそう。だって胸が踊るじゃない、最強の傭兵って称号」

「、たった……それだけの為に?」

「それだけの理由よ」

 

「彼はその為に全てを捨てて狂ったというのか」

「全てを捨てて狂ったねぇ。あんたにはそう見えるんだ」

「戦うためだけに自らを削り突き進むなど、生命として破綻した行為だ。何がそこまで、Gを駆り立てた」

「さあ? どーせ理想通りに生きたいって思ったから理想のままに生きて死んだんじゃない?」

 

──共に過ごすようになってしばらくした時

 

「何読んでるの」

「物語だ。正義の味方が最終的に悪に勝つ話」

「ふーん、面白い?」

「全く。負けて特訓する姿がどうしてか気に食わなくてダメだ」

「楽しむ余裕もないじゃない。寄越しなさい」

 

──負けても立ち上がるヒーローを見て失望する者

 

「これ面白いじゃない。勿体無いわねぇ、楽しめないなんて」

「強い者は強いままでいて欲しいってだけだ」

「たった一度の負けすら許さない?」

「最強ならな」

 

──そんなくだらないやり取りの中で、本質を知ったのかもしれない

 

「ケルシー、あいつはあたしたちと違う。ただひたすらに強くあろうとしたのは、そこに生きる理由があると信じていたから」

「捨てたのではなく、初めからそうだったというわけか」

 

「だから言ったでしょ、あいつは筋金入りのバカだって」

「なるほど。……初めから研究者として大成するという選択は、彼の中には存在しなかったということか」

「当たり前じゃない。戦いこそがあいつの世界、戦場こそ魂の在り処。人を治すなんてできるわけない」

 

「……そうだったか」

「あらあら、そんなしょげた顔しちゃって。フラれたのが悔しい?」

「ロドスとも根本的に外れていた存在というのが、悲しいだけさ」

「まあ、そうね。あの人の理想に着いていけるのに、それを選ばなかったし選べなかったのはあたしも残念に思っているわ」

 

──────

 

……一方田所、走者といえば

 

ブラッドブルードとか当たりじゃん! これは可能性ありますねぇ! しかも気質に研究者気質付けてるから自己改造もいけるしレユニオン編まで十分に鍛えておけば大丈夫やな!

あ、W姉貴と接触するの早すぎたけどまあ調整効くからいっかー

うーん、選択肢は無難なものにしておこうかなあ。最強を目指す以上は邪魔な人間関係をぶった切れないといけないんだけど、真っ当な受け答えくらいしておかないと技を教えてもらったりできないんだよなぁ

ん? こいつ、W姉貴にちょっと甘くね?

 

……まともな受け答えをすると、Wへの好感度は上がりやすいんだよなぁ。W姉貴からの好感度の調査はよかったけど、自キャラからの好感度を調査しそびれるとかウッソだろお前www

 

──────

 

「君とは長い付き合いだったらしいが、いつからだ?」

「幼少の頃……まだWになる前からよ」

「素直に話すんだな、君にしては珍しい」

「別にあたしの話じゃなくて、あいつの話だから」

 

「利害の一致から始まったあたしたちの関係は何年も続いた。何年もの間、あたしたちは生死を共にした。潜り抜けた修羅場の数は数えてないし、助け合った回数なんて数えてもいない。でも互いに鍛え合い、補い合い、こいつだけには負けたくないって考え合う。あたしとあいつは言葉では言い表せない関係だった」

「結んだ絆は親子、戦友、恋人などいくつもの面を兼ね備えた非常に強いもの……と言ったところか」

「なんとでも言えばいいわ」

「では君にとってGは半身だった、と」

「ノーコメントよ」

「そういうことにしておいてやろう」

 

「ある日、あいつは突然いなくなった。『更なる強さを追い求めて旅に出る』って置き手紙を残してね」

 

──その日のことは忘れられない

 

「……は?」

 

「あっ、そ。あたしはお荷物ってワケ? 誰があんたを鍛えたと?」

 

「上等じゃない」

 

──捨てられたとかそういう殊勝な感情ではなかった。

 

「いいわ。あたしも好きにする」

 

──強いて言えば、ライバル心だった。

 

 

──────

 

……一方田所、走者といえば

 

さて今のW姉貴だとこんなもんかな。Wになってくれないと効率悪いし。

よし、多少前は崩れたけどリカバリできたし、チャート通りレベリングに行きますよ、行きますよ……行く行く……ヌッ!

 

さてじゃあW姉貴が寝ている間に……

 

>「……どこ、行くの……?」

共用の寝床から、睡魔混じりの声が聞こえる

 

ぁぇ……?

 

>「水を飲んでくるだけだ」

「……そ……」

それを聞いた彼女は、また眠りについた

 

なんでこいつら一緒に寝てるんですかね……? しかも薄着で。

 

>……別にこの女に対して情があるわけでもないが、嘘を吐いた挙句黙って出て行くのは忍びない。せめて置き手紙くらい残そうか

 

待って! そんなところでロスしないで!? 稼ぎ過ぎたか!? クッソ、W姉貴からの好感度調整に集中し過ぎてW姉貴への好感度調整をミスったか……!? でも微ロスだし、メガトンコインに比べればなんともないか。

ヨシ! 目くじら立てる必要無し! 誤差だよ誤差!

 

>彼女は怒るだろうが、これから突き進む修羅の道、冥府魔道はオレだけのものだ。彼女には彼女の進むべき道がある。人は皆、これと定めた道を突き進むものなのだから

 

ヘドリーの部隊に合流したいけど、時期的にしばらく放浪かなぁ。まあいい経験値稼ぎになるでしょう。

 

>……けれど、少し寂しかった。彼女は笑うだろうか。だから頬を撫でて、その温もりだけは覚えておいた

 

……最強を目指していても、人の心は別なんだよなぁ。ましてや、それが十年前後生死を共にした異性なら特別扱いしても何にも不思議じゃないんですよねぇ、GTさぁん

なんでこの走者気付いてないの?

 

──────

 

「それで、再会したのはWになってからだな」

「ええ。──3年と42日11時間ぶりの再会。あいつはG、あたしはW。あんたもよく知るGとWはその日から始まった」

 

「その顔、彼女以外の前で見たこともないぞ」

「そんな顔をしてる? きっとそれは、この手で殺したからでしょうね」

「……続けてくれ」

「あたしがWとなって現れて、それはもうバカみたいな顔をしてたわ」

 

──あんな間抜け面、忘れたくても忘れられない

 

「久しぶりね、──」

「──!?」

「ええ、あたしよ」

「……」

「返事しなさい。喋ることもできなくなった?」

 

──久しぶりに会った彼は、面影こそ残っていたもののかなり違って見えた。

 

「……ああ、久しぶりだな」

「3年と42日11時間ぶりね」

「数えていたのか、バカだろ」

「あんた程じゃないわ。それより武器を変えたみたいね。長剣なんて背負って」

「これが一番しっくり来たんだ。オマエこそ前とは比べ物にならない程に成長しているようだな」

「あら、見るだけでわかるのね」

「オマエの技は全て覚えている。足捌き一つとっても、格段に向上しているさ」

 

──自分も相手も、ほとんどの記憶が朧げになっている。鮮明に思い出せるのは出会いと別れだけ。

 

「ねえ、──」

「オレはG。オマエはW。だろう?」

「G、そう。今のあなたはGなのね」

「ああ。また頼む、W」

「ええ。よろしく、G」

 

──けれどそれだけで十分だった。

 

「それからバベルの護衛依頼を受けるまで、あいつらと色んな戦場を渡り歩いた。けどGとの会話は、いつも模擬戦からだったわ」

「毎回のようにじゃれ合っていたのは知っていたが、再会してからずっとなのか?」

「ええ。いつぞやの借りを返すついでに、あいつの技術を盗むためにね」

 

──あいつ、イネスから嫌われてたっけ

 

「イネス」

「何よ」

「効率は何よりも勝る。私心は殺しておけ」

「黙りなさい。いつから偉そうな口を叩けるようになったの。G」

「オレとWの何が不満だ」

「そういうところよ。私心塗れのあなたに言われたくないわ」

「強くあることに何か問題でも?」

「……へドリー、Gをいつまで連れ回すの。Wより疲れる」

「落ち着け。口下手なのはよく知っているだろう。もう5年以上共にした仲だ」

「交渉だのはイネスやへドリーの仕事だろう。オレが行うのは戦いだけだ。なあ、W」

「あたしに振らないでよね〜……」

「へドリー、オレの実力に問題があるだろうか」

「問題無いさ。だが口下手なのはなんとかしておけ。毎回俺がフォローできると思うな」

 

──まあわからなくもない。「戦闘」と「最強」しか望まない奴と会話したがる奴がいるだろうか

 

──……自分はどうだったのだろうか? それこそケルシーの言う半身だから、理屈とかそういうものではなかったのかもしれない。

 

「そしてテレジアと出会って、バベルに来た。あとはあんたも知っての通り。テレジアが死ぬまで、あたしとGはあんたたちの為に戦った」

「……」

 

──愚かしいところがあるとは思っていた

 

「ケルシー、薬をくれ。抑制剤の方だ」

「アレはまだ臨床試験中だ」

「実験体は一人でも多い方がいいだろう?」

「だが……」

「バベルの役に立ちたいというオレの思いに偽りはない」

 

──その言葉が偽りではないが一番ではないことを知っていた

 

「鉱石病の資料が見たい」

「勤勉な傭兵だな」

「興味があるというだけじゃなくて、テレジアやドクターのためでもある。もちろん、オマエのためでもな」

「Wのためではないのか?」

「なんでそこでWが出てくる?」

「私やドクターが君と会話することが面白くないようだが」

「……じゃれ合う時間が少なくなるからだろうさな」

 

──意図的に無視していた

 

「G、今日の実験資料だ」

「いいのか?」

「君の知見を聞きたい」

「……素人に意見を求めるなよ」

「では解説していこう」

「助かる」

 

──その才覚に期待したから狂気を忘れていた

 

「ケルシー」

「授業の時間だったか」

「ああ。都合は?」

「構わない」

 

──明確に失敗したというなら、それだけだ

 

「あたしがあたしのやるべきことを見つけた時には、あいつはもういなくなってた。久しぶりにあったと思えば──」

「チェルノボーグ、か」

「ええ。随分とまたカッコよくなっちゃってて本気で驚いたわ」

「正気かW」

「あの姿を悲しく思うのはGへの冒涜なのよ」

 

 

──────

 

……一方田所、走者といえば

 

>日数まで記憶していたとは。そこまで執念深い女だったとは思ってもみなかった。これを部下に知られてはからかわれてしまうな

 

あっちゃあ、しっとりかなぁこれ……でも別に別れた日数と時間を数えている程度で済んでるし、まだしっとり確定じゃないからこのままイクゾー!(デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ! )

え、W姉貴から攻撃してくるのは想定外なんですけど。まあいい(ジーパン大天使)

イネス姉貴とへドリー兄貴、先代Wからも鍛えられてステータスも順調に高レベルに成長してきたし、ここでW姉貴とのじゃれ合いで底上げできるのは嬉しい誤算です

 

さてさてさて、バベルの依頼……ヨシ! これでW姉貴と一緒にバベルに残ればドクターが連れて行く地獄で更にレベリング、ケルシー先生から医学系の情報とか薬とかもらえれば……

 

>ケルシーから教わるのは楽しい。彼女はどう思っているかは知らないが。こうした知識をつけるのもバベル……ひいてはテレジアのためでもあるし、オレのためでもある

 

──待て、研究気質ってどうなってた? 下手したらケルシーもしっとりコース? 情報確認……なるほど、こりゃ俺のミスですね。参ったなぁ、研究気質は普通に研究も好きなのかぁ……

これを専門用語で特大ロスと言います。この、馬鹿野郎!(ASRN)

 

>しかし、無理言って試験中の抑制剤を手に入れてしまった。いつか必要になるとは思っているが、すまないことをしてしまった。どうしたものか

 

!?

あー、ケルシー先生と仲良くなれたから抑制剤を合法的に入手することができたと。そう考えるとありっちゃありなのか……? (普段は強奪チャートでやってるからわから)ないです。

 

>テレジアはオレが何なのかわかっているようだ。その上で彼女は、オレと相対する最強であると誓ってくれた。オレの魂はそうすることでしか救われないと。頭が上がらない

 

>ならば義理だ。彼女が、テレジア殿下が死ぬ時まで、オレはバベルに尽くそう。もし仮に死なないのであれば──全て終わったその時に、牙を剥こう。それくらいは理解しているだろうから

 

や っ た ぜ 。投稿者:変態糞最強信奉者

 

はい、これでもし忘れた頃のイレギュラーが起きても勝手に裏切ってチャートのリカバリーが効きますね。そしてテレジアが死ぬまでということは、一番いい時期で離脱できるということ。

これテレジア生存ルートチャートもありなのでは?

うーん……このキャラ捨てがたいな。これは参考資料として残しておこう。選択肢とか全部メモってるし

 

>自室に薬を隠し、また本でも読もうかとふらついていると、Scoutに声をかけられた

「おいG。Wのあれなんとかならないのか」

「アレはアレで意外と初心だ。諦めろ」

「……なんでそんなこと知ってんだお前」

「知っていて問題でも?」

「いや、やめておく。過去の詮索なんかしたらWに殺されそうだ」

「……ふん。だがまあ、あれではド素人のスカウトだな。仕方あるまい……」

 

Scout兄貴は神的に良い人だから(銃声)

実際強いし訓練相手にも戦闘パートナーにもいいんですよね。でも殺人マシーンドクターを人に戻そうとするのはいただけないなぁ……ダメじゃないか! せっかくのレベリングマシーンをただの良い人にしちゃぁ!(トンチキキャラで行ったらエフイーターに10敗したトラウマ)

 

>まるで恋を覚えた幼子のように物陰から覗いているバカに声をかける

「おい」

「きゃ……っ!? 何よ!」

「声もかけられんのか、オマエ」

「ドクターとケルシーが邪魔なのよ……」

「二人きりになりたいのに、どうして邪魔者から剥がそうとしないんだ」

「なんか、畏れ多くて」

 

乙女だァ……

 

>バツが悪そうに目を逸らし、指先をモジモジと合わせているこの女があのWとは思えない。随分と変わり果てたものだ。オレも変わってきたのは否定しないが、それでも目的は変わらない

「しょうがねぇ、手本見してやる」

「は? ちょっ、抜け駆け!?」

見てられない。ここまでの腑抜けとは思わなんだ

 

え、なにそれは。お前やっぱりW姉貴への好感度たっけぇな! これ決闘申し込まれたら断れないゾ……

 

>ツカツカとテレジアへ近付き、ドクターとケルシーに会釈をする

「テレジアを借りても」

「何かあったのか」

「ドクター、オレはテレジアと取り留めのない話がしたいだけだ」

「……なら尚のこと、ダメだ。まだ話が終わってない」

「そうか。残念だ」

「ごめんね、G」

「気にしないでくれ」

隠れているWへ視線を送り、彼女のところへ戻る

まあ、そんな気はしていた。ドクターは戦火に蝕まれ、壊れかけている。テレジアと接するくらいでしか心が戻ってこないのだろう。オレはそんなコイツの連れて行く地獄の業火で己を鍛え上げる。だからコイツには、このままでいてもらう。そして地獄を味方にしたコイツもまた最強。オレが喰い殺すに相応しい伝説だ

戦争に参加するべきではなかった? 当然だ、コイツは研究者なのだ。研究という戦いをすべきだった。だがこうしてオレたちと同じ殺し合いという戦いの舞台に立った以上、たった一度の敗北まで疾走するしかない

……どれだけ何を言おうが、この地獄を誰が望もうが、自由の中から選んだのはコイツだ。こうと決めたら、やり遂げる。貫き通す。それしか道は無い。戻れる場所などとうに過ぎ去りし思い出の中だから

 

Foo↑Foo↑Foo↑

あ^〜、たまらねぇぜ。いらないわよねえ心なんか。それで勝てるっていうんならさぁ!(オカマ) 戦いこそが人間の可能性だよなぁ!? 戦い来いよオラァ! クリーク! クリーク! クリーク!

 

>「何失敗してんのよ!」

脛を爪先で蹴られる。痛い

「……まあ、自明の理か」

「あ、行っちゃった……」

「泣くなよ、W」

「泣いてないわ」

「じゃあ悔しがるな」

「悔しくなんかない」

 

W姉貴かわいい(脳死)

首絞めックスされたい、したい(願望)

 

>機嫌を悪くしたWと共にしばらく食堂でお茶をしたが、オレが声をかけられたというのが堪えたらしい。傭兵時代でも見たことないような視線を向けられている。Scoutに助けを求める視線を投げてみたが、肩をすくめられて終わった

……これがモスティマなら、軽く流してくれるのだが

 

モスティマ姉貴と接触してもあんまり旨味はないんだよなぁ。深く関わる気が全く無いから技ももらえないし、一応モスティマ姉貴と共闘したことはあるけど、スタイル合わな過ぎて。

でもモスティマ姉貴、というかトランスポーター勢と接触すると便利なのは否定できないんですよね。モスティマ姉貴は遠くに出て行くなら適任だから外れでは決してないんだけど……できればエクシア姉貴が良かった。アップルパイ!(死の呪文)

 

>……戦いで喉が渇く日は、血が欲しい日だ。アイツの血が──

 

いつぞやの薄着ってあっ、ふーん……(察し)

しっとり確定コースですね。諦めましょう。さてここからW姉貴対策しなきゃダメか……あーめんどくせーマジで

 

>オレが吸う血は、アイツのものだけだ。それ以外の血など入れるつもりもない。これまでも、これからも

 

うわぁ、半分拗らせてる。

これだから親しい人間がいると面倒なんだよ……こういう執着の対象がいるとリカバリーかったるいんですよね。特に倒す順番が繰り上がったりとかするし……

でも不死の黒蛇と真っ向からやり合えるだけの土台が出来上がりつつあるんだよなぁ。あとは改造手術でどこまで行けるかってだけで。

 

──決めた、これはこれで走り切ろう。

Gくんでのプレイは無駄ではなかった。全てのガバに、意味があったのだ! ガバ走者など何処にもいない! 走り切った時点でそれはもう偉大な完走者なのだ! ガバだらけでもロスだらけでも、実際プレイして研究して走っているならそれだけで誇れる! 無慈悲されても、RTAとして落第モノでも、自分がRTAを走ったという事実は確かにあるのだ!

 

リアル・タイム・アタックでなくてリアルに・楽しく・遊ぶになってしまっても! 数々の先駆者様方が一発で成功しているわけがない! 更なる高みへ連れて行く古傷があるからこそ、彼らは我々にとって偉大なる先駆者として君臨しているんだ!

 

走り切るなり途中で死ぬなりしても、得るものは多い! 目指せ最強! 辿り着け伝説! 不死の黒蛇だけじゃない! ロドスも全部倒して最強を証明しようぜ、Gくん! 俺はお前のデータと心中してやるぜ!

 

……結局、最短で進むことが最速に繋がるわけではなかったということですね。遠回りこそ最大の近道って、それ一番言われてるから

あとやらない人よりどれだけ下手でもやった人、やりきった人はなによりも尊敬されるべきと思います。

RTAとかってめちゃくちゃ疲れるからね

動画投稿も小説投稿も……

 

──────

 

 

──混乱のチェルノボーグ。その中であいつは現れた

 

「G──」

「……W」

 

──その姿は異形の怪物。魔物としか形容できない。源石と融合した右腕、左目を潰すように生える角の如き源石。どんなブラッドブルードよりも恐ろしい魔物。カズデルの生み出した妖魔サルカズ。だがその姿を見て恐怖や嫌悪感よりも、それでこそという気持ちが勝った

 

「幹部どもは、何処だ」

「何するの?」

「殺す」

「……そ」

「オレが最強である証明の為に。オマエも殺す。へドリーも殺す。イネスも殺す。ドクターも殺す。ケルシーも殺す。アーミヤも殺す。タルラも、全てを殺す」

「ついに実行ってワケ?」

「如何にも」

 

──自分の中に凶暴なモノが滾ってくるのがわかる

 

「──じゃあ、あたしがあんたを殺しても構わないってコト?」

「この首を取れるものなら、だが」

「けどあたしを殺そうって気はあんまり感じないわね」

「オマエはオレと殺しあう気が無い。何故なら逃げるからだ。だが他の幹部どもはある。だから先に殺す」

 

──この男を、原初に刻まれた好敵手をこの手で殺し超えていきたい

 

「……そ、残念」

「ドクターを探すなら、オレが殺す前に探しておけ。今日は、強者が揃っているからな。やり過ぎれば、うっかり殺しかねん」

「それは困るわね。アレはあたしの得物よ」

「次に会う時は、殺し合おう」

 

──そしてそこでやっと、自覚した

 

「……初志貫徹、実際そうなってみせた。なによ、カッコいいじゃない」

 

──冥府魔道を迷う事なく突き進み、最強の二文字を求めて戦うこの男に、憧れていたのだと

 

「きっとテレジアは、最後はこうなるしかないってわかってたのね」

 

──あたしにとって光はテレジアだった

──あたしにとって憧れは最初に出会ったこの男だった

 

「後のことは知っての通り。ロドスのオペレーターたちの大多数を打ち破り、あんたたちの目の前でスカルシュレッダーたちを殺し、次は戦場の混乱に乗じてサルカズケントゥリオを殺し、殿を務めたファウストを殺し……」

「私とレッドに気を取られクラウンスレイヤーを取り逃がし、そして──」

 

「フロストノヴァさんを殺した」

 

「アーミヤ」

「……すみません、ケルシー先生。聞き耳を立てしまって。私にはあの人が、どうしても許せなくって」

 

──憎い

 

「何故殺しただと? ……コイツは戦いを放棄した。守るべきものがあるのに、自分が守らず他人に守らせる? Wにちょっと唆されて肉親を離れる程度の覚悟でオマエたちと刺し違える? 愚かなことだ。本当に守るべき者を守る為に戦うこの男こそ、真実の強者になれたはずなのに」

 

──ふざけるな

 

「……おや、喰い殺したヤツが何故生きているかと思ったがそういうことか。復讐の炎で身を焦がすのはいいが、己を焼く炎の熱を知らなければ灰になるだけだ。真の強者として覚醒してない相手と殺るつもりはないが……来るか? いいだろう、夢の中で二度と離れられぬようにしてやる」

 

──理解できない

 

「何故? どうして? はっ、そうすると決めたからこうしている。それ以外の理由などいらん。あの場にいたのは都合が良かったのと、ただ一人への義理だ。オレの望みはただ一つ。今も昔も変わらない」

 

──信じていたのに

 

「アーミヤ。前にも言ったよな、強くあることは何も間違いじゃないって。オレは、オレの為にオレの思う強さを追い求める。それだけだ。オレは初めから、生き物として相容れない性質の持ち主なんだよ」

 

──全部嘘だったんですか

 

「オレは、オレの夢を現実にする。一度空に飛んだなら、堕ちるその時まで──遥か高みを目指す」

 

──本当に気持ち悪いんですよ

 

「でなければ"彼女"に、申し訳が立たない。オレの最後に立ち塞がるべきだった、二度と超えられない無敵の存在に」

 

──その名を、あなたが口にしないでください……!

 

「……は? なんだ、オマエ……地獄すら喰い尽くした怪物として新生していなかった、だと……? ──残念だドクター。オレとオマエだけは、同じ夢を同じ大地で見れると思ったのに」

 

──この人を、あなたが語らないでください……!

 

「ひどい顔ねぇ。憎たらしい相手が死んだんだから喜びなさいよ」

「Wさん」

「何よ、あたしが取ったことに不満?」

「私は彼の全てを言葉で否定した。だから私が彼と決闘しなければならなかった。そう思うんです」

「何を言うかと思えば……アーミヤ。あんたは不満があるかもしれないけど、結局のところ対話を破棄したのはあのバカよ。否定したから決闘しなければならないとかはない。死ぬまで自分の夢を現実にして、中指立てて誇ればいいのよ。『どうだ、お前にできなかったことをやってみせたぞ』って。それも立派な復讐よ」

 

「それよりもほら、ドクターのところでも行ってお悩み相談会でもしておきなさい。この手の話であたしとケルシーが役に立つわけないでしょ?」

「そう、ですね。そうします」

 

「……W。君は初めからアーミヤに渡すつもりなんてなかったんだろう」

「当たり前じゃない。あれはあたしの、花婿(しゅくてき)よ」

 

──悩むことはなかった

 

「Gが贔屓してたトランスポーター、わかるわねケルシー」

「ああ。……一対一か? W」

「それ以外無いわ。あたしが仕留める。それで信用してもらえるでしょ?」

 

──全ての装備を特例的に返却され、徹底的に倒す為だけの兵装で身を固める

 

「ドクター、この戦いは決闘よ。邪魔はしないで。指揮も要らない」

 

──現れる魔物を見て心が躍る

 

「待ちくたびれたわG。こんなに長い時間女を待たせるのは感心しないわね」

「それはすまなかったW。ドレスコードに相応しい格好を探していたら時間に遅れてしまった」

 

──この瞬間を切望していた

 

「まあいいわ。思い切って出したデートのお誘いが破り捨てられてたら泣いちゃうところだったけど」

「まさか。他ならぬオマエからの誘いだ。オマエを蔑ろにすると、テレジアに怒られそうだからな」

「何処まで行っても逃れられないわよ? 自分自身の問題ってヤツからは」

「オマエを問題だと思ったことは一度たりともないのだが」

 

──あんたへの愛情を煮詰めていた

 

「そう。嬉しいわね」

「オマエはオレにとって、最大の敵だ」

 

──そうすれば必ず

 

「奇遇ね。あたしもそう思ってたの」

「……オレはこんな日を、ずっと待っていたのかもしれん」

 

──あんたを殺す理由になるのだから

 

「こういう意味で裸同士になったことはなかったわね」

「そうだな。完全な本音で話し合うのは初めてか」

 

──あんたやあたしが死ぬだけじゃない。……それだけで終わらせない。終わらせたくない

 

「でも、割とあたしは素直に話してたつもりだけどね」

「テレジア以外にオマエが素直になるものか。捻くれ者め」

 

──ここから始まるのよ、あんたとあたしの物語は

 

「ふふふっ、それはあんたの考えるあたしでしょ」

「ではオマエの考えるオレを聞いてみたいものだな」

 

──求愛(ちょうせんじょう)は受け取ってもらえた。次はこの赤薔薇()を胸に挿してあげるだけ

 

「バカ。バーカ」

「なるほど」

 

──最強のサルカズ傭兵は()()()()()だけでいい

 

「オレが進む道に過ぎ去りし屍となれ……!」

「あたしが進む道を見送る残骸になりなさい……!」

 

──あんたはあたしに、あたしはあんたになるのよ。血塗られた最強の字、怪物になった伝説と共に。永遠に一緒だから

 

──名を受け継ぐとかじゃない。GとWは……──と──は、初めから二人で一つだったのだから。どちらが生き残っても、どちらも消えない。どちらか一方が、残った一方と一体となるだけなのだから




G

異形の大剣を振るう最狂のサルカズ、力の求道者。
全身を源石に蝕まれ、右腕は完全に融合し左目から角のような源石が現れているその姿は魔物以外の何者でもない。
無心のままに、ただひたすらに強きを追い求め、最強と伝説を喰らい自らが現実に君臨する超越者となることを望む。

実力だけで言えば最上位のオペレーターやレユニオン幹部に及ばないが、卓越した戦闘技術と自身に施した改造を土台に執念と憧憬、狂気を投じることで技術・アーツの差や相性、あらゆる理屈を踏み躙る猛攻を見せる。
心の速度に肉体が付いて行けずに自壊するが彼が気にすることない。それが彼の望みなのだから。

この世界に生きとし生けるもの全てと相反する、滅びる以外に道の無い者。


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再びのほんへ

根本的に間違えていたので初投稿です


どうも、脳に鉱石を得た一般投稿者です。

どうしたぁ? 付け合わせのミックスベジタブルを見るような目で俺を見やがって……なんで今また投稿してるかって?

 

 

更新点見つかったんだよォ!(ハンバァァァァァァァグッッッッッッッ!)

 

 

……はい。更新点、バリバリありました。というか単に「最強の伝説」最速目指すなら別にキルゼムオールしなくてよかったんですよ。

W姉貴のしっとり率の動画上げた後に、ドクター暗殺RTAを走っている方から連絡がありまして

 

「別にどんな戦闘でも撃破判定出たらトロフィー進行度に引っかかるみたいだゾ。一対一とかじゃなくてもいい。生殺与奪の権を握らなくてもいい。俺暗殺後の怒り心頭ラブ勢を行動不能にしてたけど、その途中で取れたもん。それ以外は模擬戦で倒したくらい、レユニオン幹部はロドス潜伏中にチェン姉貴とつるんでボコっただけなのに」

 

セルマァ……俺、涙が出そうだよ(アレグロ)

 

……は?

何なのだ、これは! どうすればいいのだ?!

 

じゃあ俺が心中したGくんは(RTAとしては)無駄死ってコト!?

いや全く無駄死ではないんですけどね。Gくんのおかげでどれだけのステータスと何の素質があれば不死の黒蛇含めた強敵を短時間で倒せるのか、間違いなくあれが理論値だと思っています(諸々の不安要素は抜きとして)

 

ていうか気付くべきでした。

Gくんはロドス面々はそこまで殺してないんですよね。いや確かに生殺与奪の権を握ったキャラは多かったけど、それでも進行度上がってたし……まあ最終状態のGくんは鉱石病進行度末期、融合率75%で最強とW姉貴以外全て喰い殺す対象と考えてたから、黒狼鳥になるしかなかったんですが。俺にガルルガに……俺ガルルガだったわ(ピネガキ)

それはそれで、これはこれって至言を知らないのかよ。

 

結論としては「最強の伝説」はレギュレーション分けして「最強の伝説 全殺害RTA」か「最強の伝説 判定RTA」にするべきでしょうね。

 

……でも自分が決めたチャートがまだまだ未熟だったと思うとなんか虚しいな……またとりあえず判定RTAのチャート組みの為に調査を始めます

ここで再び使うのはGくん(バベル時代)、バックアップデータから復元っと。

というのもやっぱりGくん戦闘面では理論値行ってるんですよね。スカジ姉貴とかチェン姉貴とかに比べれば二流だけど、あらゆる戦闘・戦術が可能で並大抵のオペレーターやレユニオン構成員では相手にならない高ステータス。素質「狂奔」と「吼える魂」のおかげで能力差を埋めることもできる。

問題は「狂奔」と「吼える魂」の相乗効果に肉体の方が耐えられないという事ですが。

 

そう、Gくん持ってるんですよ「狂奔」と「吼える魂」。

「狂奔」の内容は心底からやりたいことそれだけをやる時にHPが減っていく代わりにステータスに大幅なブーストが入り、「吼える魂」は自分の意志でこれと定めたことを行う時に必要とされるステータスにブーストが入り一時的に必要な汎用パッシブスキルが使用可能になるというものです。

どっちも条件がめんどくさいのでもっぱらハズレ扱いですね。というか使おうと思ったらまともな人間性をほとんど捨て去る必要がありますので。

それに本家と同じ程度の素質にするモードでは両者共にただのバフ素質になります。つまりハズレアという奴です。

 

つまり戦闘しか頭に無いGくんは常にWブースターで加速しているのですが、ぶっちゃけプラマイはマイナスです。「狂奔」は1秒毎のHP減少量が最大HPに対して0.8倍なので、カンストまで鍛えたキャラでも関係ありません。しかも「狂奔」はアーツ適性も上昇させるため、いくら「吼える魂」で鉱石病耐性を上昇させても上昇した耐性以上の耐性が必要となるレベルまで出力を上げてしまう。その上本来のステータスから上がった倍率分のダメージを1行動毎に受ける。

そしてHPなどは本来のステータスしか参照しない。

 

「吼える魂」が上げたステータスをベースに「狂奔」の大幅ステータスアップで発生した反動によるHPダメージと割合ダメージ、鉱石病進行負荷が重くのしかかり、生半可なキャラクターでは自滅するのが関の山です。しかし両者を戦闘で揃えることで「戦闘中HP自動回復」「敵撃破時HP回復」のパッシブを常に獲得、スキルツリーから「HP0になった時に1度だけ半分HP回復」を取って、アーツの身体強化によるあらゆるダメージへの耐性とHP自動回復、ブラッドブルードの自傷ダメージ耐性と合わせて自滅までの間を長くすることができるってわけですな。

 

……まあこれだけやっても負荷の方がめちゃくちゃ過ぎて奇跡でも起きない限り、超一流を真っ向から相手にする場合だと絶対に自滅します。通常なら搦め手も使わないと勝てません。末期状態ならステータスも更に高くなってるので勝てる(勝てるとは言っていない)けどその後に十分な休息を取らないと血袋になって死にます。

 

更に言えば戦闘になれば必ず発動するというわけでもなく、最強になる為の全力の殺し合いか最強になる前に死ぬことを認められない場合くらいでしか発動しません。めちゃくちゃ不安定です。祈祷力が常に必要とされます。

 

……試走ばっかで本走してなかったのはこの辺が理由なんですよねぇ。本走途中で自滅が多発して記録にもなりませんでした。いやぁ、狂奔と魂のレベル上げを目当てに3年でカズデルのブラッドブルードを数百名ぶち殺すレベリングから始まるんですが、その途中で肉体が壊れた時は叫びましたね流石に……

マジであのW姉貴に殺された惜しい試走が一番長く生きられた狂奔魂構成です。

 

さて、データロードが完了しましたので判定チャート用の調査を開始します。バベルに入りたての頃のデータです。

まずはGくんを頭バエルから少しでも戻さない限りW姉貴を殺すかW姉貴に殺される以外の選択肢が無いので、とにかく疑問を突き付けましょう。

その疑問とは『最強って何?』です。

 

そういえばGくんが最強を目指すようにしたルートはまだ見せてませんでしたね。

まずブラッドブルードで生まれた彼に『クイロン』を知らせて憧れを抱かせます。そして『クイロンですら見ることの叶わなかった世界が見たい』『クイロンという現実から現実を超越した"無敵の幻想"を自分という現実から現実を超越した"最強の存在"とする』という思考をさせれば、後は最強の二文字を目指します。

あとは3年かけて数百体もの美味しい経験値をたっぷりと頂いてW姉貴を拾って序盤は終わりです。いやー、ブラッドブルードは恐怖みたいなもんですからね。自分たちが狩られる側になるなんて想像もしてないんですよ。初期ステを狂奔魂Wブーストして奇襲だのなんだのすれば十二分に殺せる奴の多いこと多いこと。おかげでちょっと肉体を折り畳めば一瞬で精神が蒸発して経験値になってくれるんですよ。まあ勝てない奴は勝てないので殺せる奴の中から一番強い奴を殺していく地味な方法ですが。

 

──本気で物語のキャラクターに憧れて本当にキャラクターそのものになって生きようとする。それがGくんの目指す理想の最強なのですが、タルラを見るとその熱から冷めます。

 

不死の黒蛇に取り憑かれたタルラ……というか不死の黒蛇ってめちゃくちゃ強いじゃないですか。圧倒的な戦闘能力にアーツ、他者を扇動するカリスマ、揺るがぬ意思、深淵な計画、永くを生きてでも果たそうとする執念……まさしく非現実の強大なヴィラン(実際ラスボス)なわけじゃないですか。

 

Gくんは100点満点(クソ厳しい自己採点)大好き人間ですが無自覚です。こうと決めたらそう死ぬ以外の選択肢はありません(ないとは言っていない)。

さて、Gくんには半身であるW姉貴がいます(ここ重要)

死んでもなお遺志は受け継がれ、そういう意味で生き続けているテレジア殿下の存在も知っています。

 

「泥まみれでも傷だらけでも突き進むことを選び、自分の信念のために弱くてもただひたすらに生き、最後に魔物と相対することになっても打ち破る決意をした人々」

 

「別に手段も方法も実行者も誰でもいいし、特別も何もない。自分がやるのではなく他人の思考を誘導して、"ウルサス"が膠着状態と内部抗争から解放されればそれでいいだけの怪物」

 

どちらが、カッコいいかな?

もちろん、人だよね。

 

そして、みんなも人間賛歌を大切にして、生きようね!

 

この先はGくんのモノローグと会話そのまま抜き出します。

 

────

 

最強とは弱さが無いこと

無敵の幻想という最強の現実とは、活動する理想図。漫画から気に入った登場人物をハサミで切り出して、空間に糊付けするのと変わらない。

弱さが無いというのは非現実。生まれたての頃は誰しも弱いのだから、弱いなりに生きていく。では真の最強とはどのように生まれればいいのか。非現実を現実とするためにはどうしたらいいのか。

 

答えは単純明快、初めから『そういう存在として』生まれればいい。完成形で誕生すれば、残りの人生は全て理想そのものになる。万事泰平、全て事も無く、ただ成すがままに。

つまりは自然とそこに発生した存在。設計図通りに量産された機械にはそこに至るまでの無数の過程が存在するが、これには過程が無くて答えだけある。

ある日突然、何の前触れもなく、いつの間にかそこにいて、そういうことになっている存在。

 

ステージの上にいるアイドル、バンドメンバー、なんでもいい。魅力的な存在を少しでも知ろうと、中身の人間の『見たくないところ』に当たる。過去の愚行、人間関係、欲深い面、衝突、汗は流すし用は足す。……どれもステージの上に立っている時の存在、ファンに手を振る姿とも異なっている。仕方あるまい、そうした弱さがあってこそ現実なのだから。

 

では、最強とは……?

用も足さない、汗もかかない、涙も流さず、眠りもしないし子を成すこともない。あらゆる生理現象を排して、ひたすらに美形である。それは風が吹くとか花が咲くとか、そういう現象すら超越した──記号だ。

類稀な力と智謀を宿した、幻想という名の記号。 現実的な疑問や困難には一切遭遇せず、また交わりもしない。解決法は最初から知っている、困難も最初から知っていれば困難ではない。自分は一体何になればいい? 誰しもが一度は思う疑問すら最初から答えを得ている。

 

誰もが頭の中で夢想する、最強無敵の超越者。目の前の龍がそう見えて、ソイツの語る絶望や悲しみが、まるで他人の経験と言葉で自分をかざり立てているように聞こえたその時に。

 

なんて、()()()()()

 

こんなもの(きごう)に憧れていたのか、オレは。

 

恐らくわかったのはオレだけだ。オレの理想が、オレの目指した最強が目の前にいる。

誰もが羨む超人に生まれついた存在。人間味の乖離した偶像。頭で夢想しただけの理想像。動き出した絵画。

いつだかのシエスタで、モスティマと二人で見たカンフー映画を思い出す。

銀幕の向こう側の存在、誰もを魅力するスター。その座をたゆまぬ努力によって掴み取った強者。きっと数え切れない挫折があった筈だ。だがそれでも立ち上がって前へ前へと進んだから、熱が見える。

 

ドクターも熱で燃え上がっているからこそ、砕けながら前へ進んでいた。テレジアも同胞を救うと言いながら同胞を傷つけていることを背負って前に進んでいた。

オレが憧れたクイロンだって、こういう伝え方をされているだけで最初から伝説の存在ではなかった筈だ。

 

……誰だって生きている。

生きているから弱さもあるし、強さもある。

 

強さしかない目の前の、銀幕の向こう側の怪物(フィクションのヴィラン)は──ひどく空虚で矛盾だらけ。現実に居場所が無い。頭の中で描いた理想が現実に現れたような嫌悪感と、全部俯瞰している態度への侮蔑。

 

「は、はは……ハハハハハッ、ハハハハハハハハハハッ──!!」

 

他人事のように自分を語り、他人受けの良い言葉で虐げられた者たちを扇動する。最強の黒幕、倒せばそこで終わる絶対悪が現実に存在するとしたら、この龍がそうだ。

 

「何がおかしいの? G」

「くっ、くく……ただ愛想が尽きただけだ。なるほど。ああダメだ──つまらない」

 

Wが不思議そうに尋ねてくる。

コイツは生きていない。ただそこにある。

非現実に焦がれたオレだからこそ、この非現実は現実を適当に切り貼りしてそれらしく振る舞っているだけだと断言できる。よく見ていけば矛盾が見える。

 

レユニオンがその矛盾の極致だ。感染者の為に力で訴えかけようと謳いながら、やっていることは自分たちと同じ立場に来ない、来れない感染者も非感染者も皆殺しにする。政治的な思想も何もない。聞こえの良い言葉で被害者を加害者に変える為の機械。

理想? 戯言だ。感染者の為にと言うなら、賛同しない感染者を殺す必要が無い。ただ無力化して、自分たちが掴み取る未来が正しいって必ずわかるからそこで待っていてくれと言えばいい。全力で抗う者の命だけを奪えばいいのに。

だがそれをしない。そして理想を掲げ悲劇を嘆き怒りを語りながら、何処か他人事のように見ている"強すぎる"龍。

 

「頭で夢想しただけの理想ってヤツは、現実に出てくればこんなにも脆いのか……くく、矛盾だらけだ。それを目指して冥府魔道を行ったオレは何だ……? 嗤えるな、これじゃあバカみたいじゃないか──!」

 

こんなものが『最強』とは。

オレの目指した『最強』は、矛盾だらけの空虚な張り子の虎。

オレがオマエ(タルラ)ならば、本当の最強になれただろう。全ては約束されているのだから、発生した瞬間に。

最強という天頂の星を目指して、数多の同族を殺し尽くした。親も兄弟も、全てオレの最強の伝説を綴る一文に変えた。強きを殺し弱きを殺しひたすらに、あの日焦がれた最強の幻想をオレという最強の現実にするために。同盟を求める者を殺した。命乞いをする者を殺した。最も大切な者だけはと叫ぶ者を無視して纏めて殺した。殺して殺して殺して、全てを殺し尽くした果てに、最強は現実のモノとなるからと信じて。

 

そして気が付いてみれば伽藍堂だった。だが器にならねば最強にはなれない。強いというだけを詰め込まなければ弱さを駆逐できないのだから。

──しかし弱さがなければ現実にはなれない。だが弱さを背負うには理想がなくてはならない。そして現実と理想の狭間で傷付きながら進む──それが普通なのに、オレはずっと現実を生きる事を放棄していた。過去を受け入れ恐怖と向き合うことでしか未来は作られないのに、受け入れるべき過去を捨てて恐怖に自らを飲み込ませていた。

 

そんな中でオレは、あの日──を助けた。助けてしまった。

 

何故かはわからない。死にかけのサルカズなど見捨てればよかったのに、懸命に生きようとするアイツを見捨てられずにあれこれと世話を焼き……そうだ、オレは怖かった。決めたから走り抜くと行動してたのに、現実となった最強の伝説(量産型を超えた存在)であろうとしたのに、オレを──に戻す──が。

 

それを認めたくない。自分が一度でも感動したなどあり得ない。クイロンの伝説以外に揺らされた瞬間は無いし、クイロンの伝説以外で揺らされることはあってはならないのだ。オレは最強の現実に、クイロンの伝説になると決めて走っているのだから、一度でも揺れてしまえば全てがダメになってしまうと思ったから。理想通りに生きられている瞬間しか、自分自身の存在を愛することができていない。

 

正しいことを、正しいとき、正しいようにやって一度も間違えない。

そんな設計図通りの生き方を絶対として、それ以外は何一つとて認めようとしない。こうと決めた道から誤差程度でも外れた途端、それは道そのものを間違えたと考える。他人に強制する気は毛頭ないし興味もないが、自分自身のことにだけは常に完全完璧でなくば満足できない。

 

世界にいるのが一人だけだと思って突き進む。常に世界はオマエ一人だけが世界にいると思うなと冷や水をかけてくるが、それが鬱陶しくてたまらない。つまりそれは……ただの餓鬼だ。

そんなことに目を背けて生きて来て、Wがオレを現実に引き戻す度に幻想へ逃げて、現実で苦労をする心地良さと幻想に挑む楽しさの比重を決めきれなくて、戦火の中だのバベルが使えるだの何だと言い訳してWから離れ切れない。それでもと挑むことも、それまでと諦めることもできずに、中途半端に現実と幻想を行き来して、今こうして幻想の真実を見せ付けられて、自分がどんなヤツよりも愚かだったと叩きつけられる。

 

─道半ばで死ぬことは覚悟していた。できないと突き付けられることも覚悟していた。だがまさか……自分が目指していたモノが、こんなにも矛盾だらけで脆弱なモノだと、そんなモノを最強だと信じて進んでいた姿はお笑いだったぜと、嘯かれるなど。

 

──なんてこった、これが業の報いか。

 

わかったならば……どうしようもない。

オレは強いヤツと凌ぎを削る、血沸き肉踊る死闘が欲しい。全身全霊を賭けて、戦いを楽しみたい。それは嘘ではなかった。だから戦いを求めたし、それ以外で生きていく方法なんかわからない。

だがWから、オレを──に戻す──という痛みから離れたくない。

 

「W」

「何よ急に」

「オレは、苦痛を愛することを決めた」

 

ならばこそ、オレは──現実を生きることで、宿願を果たしてみせる。ただ人として生きて死ぬという、苦難の道を歩んで行こう。きっと何処かでまた性懲りも無く理想を目指そうとして自己嫌悪するだろうが、それはそれだ。

全部含めてオレなのだ。受け入れられないところもあって当然だろう、相反するところがあって当然だろう。幻想を現実に変えたいと狂奔するオレも、現実に苦しみながらも吼えるオレも、どちらもオレで、らしくない行動すら含めて、掛け値無しに本物なのだから。

最強の意味を自問しながら、闘争になれば最強を目指し……そしてまたやってしまったと自己嫌悪する。好き勝手に生きるという、最も困難なことをやってみせよう。

 

「は? ポエミーなところあると思ってたけど、そこまでおかしくなったなんて」

「……」

 

早速傷が一つ増えた。

別にいいじゃないか、ポエミーなところがあったって。

オマエという苦痛を受け入れたんだから。

 

 

─────

 

 

とまぁ、こんな具合です。

要するにGくんは空想を現実にしたかったけど、現実にいた超越者こと不死の黒蛇の、やりたいことはわかるけど根拠がぼんやりし過ぎている感を見て、「オレこんなのになりたくない! 小生やだ! じゃあオレが目指したかった最強とは……ゲッターとは……」ってなるわけです。

そして本当に最強を目指すなら他人なんて気にかけないのに、どうして気にかけた他人から離れることができなかったんですかねぇ? ってなると、W姉貴を受け入れられるわけですな。

 

……まあつまりW姉貴と共にレユニオンに行かないといけないし、不死の黒蛇の薄っぺらさ(語弊)を間近で感じないといけない。

そのためには『最強』であることの空虚さを感じさせなければいけないし、W姉貴がどういう存在なのかを自覚しなければならないってわけです。

 

そんなわけで入りたてのGくんには──休暇中にW姉貴とシエスタでデートしてもらうぜェ! お前のステータス強いからな! 本走でもお前を採用したいんだよ! ……え? なんで最強を目指さなくなったモノローグを用意してあるかって? 別にあの試走の後に気になって別ルートやり直しただけですが? 何か問題でも?

 

>浮き足立ったWが見える。まったくなんだ、人が静かな場所でタバコを嗜んでいるというに

 

さて……デートを受けなくてはなりませんがこいつらはデートだと考えていません。なのでW姉貴もしっかりしっとりしてもらうために好感度爆上げしましょう。

しっとりしてくれないとレユニオンに連れてってくれないからね、しょうがないね。

 

>「G、付き合いなさい」

そら、面倒な話だ

 

こっちからの好感度上げとくとここで素直に頷いてくれるんですけど、これもRTAの為……Wよ、(ブラッドブルード数百殺したりとか最強を求めるムーブとかが)卑怯とは言うまいな。

 

>「今からシエスタに行くのよ。荷物持ちに来なさい」

「断る」

「あ、そ」

無理矢理に手を掴まれ、そのまま引っ張られていく。オレはその手を……

────

心を捨てるように振り払った

>まるで古傷のように振り払えなかった

────

 

後者一択ゥ!

 

>「……わかった。一緒に行くから離せ」

……振り払えなかった。理由は知らない、知りたくなどない考えない心底どうでもいい。

「──意外だわ」

「そんな日も、ある」

Wが珍しく驚いた顔をしている。理由は言うまでもない。そして彼女は手首を掴む手を離し、小悪魔的に微笑んで指と指を絡めてきた

「なんだ」

「こういう手の繋ぎ方に相応しい格好、してきなさい」

「……ああ」

 

信じられるか? W姉貴がGくんを攻略しているように見えて実際にはW姉貴をGくんが攻略してるんだぜ、これ……

まだしっとりしてないからね、しっとり確率上げてかなきゃ(使命感)

正直全員殺害ルートでW姉貴がしっとりしたのはただの運なので、確実にしっとりさせます。

 

>格好の付けた服装……か。思えばWのように、自分の趣味嗜好を反映した服装など考えたこともなかった。この改造した薄暗い鼠色の軍用ロングコート以外に持っているのは、至って普通、平凡な服装と一般的なサルカズ傭兵の装い程度。機能性と見た目を両立している今のWの格好と並んだ時に相応しいものではない。さて……

────

>仕方ない、Scoutでも頼るか

別にいい。他人など気にしたものか

────

 

当然上位置ィ!

 

>……仕方あるまい。Scoutに借りを作るか

「Scout」

「どうしたG。珍しいな」

言いたくない。言いたくないが──Wに恥をかかせるわけにはいかない。オレの恥で済むならば……

「何か……外行きの服装を、貸してくれ」

「Wか」

「Wだ」

オレはどんな顔をしているのだろうか。Scoutはそれはもうゲラゲラと笑い、笑い過ぎて噎せながら、自分の部屋へ案内してクローゼットの一角を指した

「買ったはいいが使ってない服、一応戦闘もできるようなモノだ。好きなのを選べ。それ、やるよ」

────

Wと合わせたような、赤黒の服装

>モスティマのような、黒白の服装

ケルシーの真似事めいた、純白の服装

────

 

ここでモスティマ姉貴を匂わせるとW姉貴のしっとり確率が上がります。流石に自分の半身が知らんところで同族と仲良くなってたら気になりますねぇ! なりますなります……

ちなみにW姉貴リスペクトだと好感度が上がります。ケルシー先生リスペクトだとケルシー先生の好感度が上がりW姉貴のジト目とふくれっ面が見れます。(かわいい)

 

>浮かんだのはモスティマだった。彼女の服装を起点に考えれば、問題はあるまい。そうして出来上がったのは、割と地味ではあるが、雑誌で見たことがあるような見た目のオレだった。黒のジャケット、白のシャツ、鼠色のズボン……まあ、それらしくはなったろうか

「Scout」

「どれどれ。ほーぅ、似合ってるぞ。誰かの真似か?」

「知り合いのトランスポーター」

「……女か?」

「女だが」

Wも大変だな……

 

まあこれから女とデートするってのに他の女の服装をリスペクトした服装で行く男はウッソだろお前wwwなんだよなぁ……いくらなんでも池沼ゾ。怒らせちゃうねぇ、お姉さんのことをねぇ! W姉貴ゆるして。

 

>まあよくわからんが、助かったのは事実だ

「助かった。一つ借りができたな」

「まあ、くだらないことでこの貸しを返せるならいいんだけどな。それよりもWが待ってるんだろ。さっさと行ってこい」

「すまんな、Scout」

「別にいいって」

彼とのやり取りに、奇妙な心地よさを覚えた。それはまるで──いや知らぬ存ぜぬ心底どうでもいい。オレにはいらない。やめろ

 

W姉貴をしっとりさせる選択肢をしつつ、ちゃんとGくんの頭バエルを治していく選択肢を選ばないと戻りきれなくてまた魔物化コースなので注意していかねば。Scout兄貴との交流も強力なピースです。

 

>Wの元へ行く。カジュアルな格好になったオレに驚いているのか、それとも面白いネタだったのか、まじまじと見つめてくる

「……それ、Scoutのお下がり?」

「まあな」

「似合ってるわ。あんたには勿体無いくらい」

──Wは優しく微笑んでいた

「そうか……」

 

女神かな? W姉貴本当にかわいい……私の最期を看取って欲しい……

 

>シエスタは苦手だ。闘争の空気ではないから。Gになる前にモスティマと行った時、あまりの居心地の悪さにモスティマから本気で気を使われたくらいだ。全てに一線を引いたアイツから

 

それにしても観光都市に酷い言い草っすねGくん。

 

>Wとと考えると……どうだろうか。あまり行きたくないのには変わらない。やはり面倒だ。タバコをふかしながら、酒でも飲んでいたい

 

嘘を言うな!(GNGBNJ)

本当はW姉貴と何でもない日を過ごすのが怖いんだろう! W姉貴の側にいると安心するんだろう! 猫か貴様!

 

>……いや待て。この格好を他の誰かに見られたら不味いのではないか。クロージャは問題無いとしても、Aceやテレジアに見つかったら……他の傭兵でも……!

────

別にオレが小洒落た服装でも問題あるまい……

Wを急かす

>Wを連れてさっさとシエスタへ向かう

────

 

この三択は一番下です。何故ならGくんはW姉貴の笑顔を誰にも見せたくないから。

上二つではしっとり率は普通です。それにW姉貴も結構強引なの好きですよねぇ……?

 

>自分でもわけのわからない衝動に突き動かされて、Wの手を取ってそのまま歩き出す。

「あら、照れてるの?」

「照れてない。行くぞ」

「はいはい。そういうことにしておいてあげましょ」

彼女は余裕そうどころか、何処か楽しげだ。ああまったく、何故オレだけ妙に色々考えねばならん……Wめ、何故オマエは普段通りなんだ。クソ、モスティマのように無心であれたら────

 

照れてます。W姉貴はお見通し、サスガダァ……

それより他の女のことばっかじゃねえかお前ん頭ァ!

 

ということで次回はW姉貴とのデートからです。

ご視聴、ありがとうございました。




Gくん
ただのガキ。自分が決めた100点満点以外0点と思い込み、その0点の象徴にしてそのものであるWネキに複雑な感情をいだく。これを自覚すれば魔物にならずに済むがRTAでは魔物が必要だったので走者は彼を銀幕の向こう側の怪物(最強という記号)にした。

走者
Gくんが何を考えているかよくわかってなかったので色々調査をする内に気に入ってしまった

W姉貴
Gの全てを肯定している。愚かさも雄々しさも強さも────
だから愛情を煮詰めて殺す理由にできるし、共に歩むこともできる


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イフリータでもわかる! エロパンダのカンフー講座

ベストを尽くさないので初投稿です


>車を運転してシエスタに辿り着く。……本当のところ、どうせ極秘任務なのだろう。カズデルを離れて武装したまま、あえてシエスタに行く理由など、それくらいしかない

 

まあ実際そうです。

W姉貴はお仕事でシエスタに来ていますが、割とフリーの時間があるのでGくんを誘いました。なので別に傭兵の装いでもいいんですよね、本来なら。二人とも不ぅ思議ですねぇ〜……?

 

>シエスタは事実上の永久中立地帯のようなものだ。無闇矢鱈とデカい揉め事を起こせば場所そのものが敵になる。そのため諜報員の合流地点としてよく選択される。──迂闊なことをすれば、オマエも死ぬぞと。噂では死体は火山に投げられて消されるらしいが……

 

簡単に説明するとシエスタは観光都市である以上、イメージを激しく損なう不祥事にはめちゃくちゃ厳しいです。何せ都市の売りを、商売を汚されるわけですからね。何処ぞの鉛筆1本で3人殺したバーバ・ヤーガな殺し屋のホテル並みにこう……アレです。逆にそういうことをしなければ問題ありません。

 

>そしてそんな裏を知らずに、表では感染者も非感染者も区分無く気楽に楽しんでいる。オレはそういうこの都市が苦手だ。ここにオレの居場所が無いから

 

そうだよ(確信)

君は戦場にしか存在できない魔物だからね、しょうがないね。

 

>周りを眺める。浮き足立つ連中ばかり。モスティマと来た時もこんな感じだった

「楽しくなさそうね」

「空気が苦手だ」

「そう? まああたしも違和感あるわ。でも仕方ないわ。必要だから。それに慣れれば楽しくなれそうよ」

「……慣れないんだ」

その言葉を聞いた瞬間、Wは目を丸くした後に心配するような声を出した

「来たことあんの? こういう場所に興味の無いあんたが? 仕事以外で?」

「ああ。まだこうなる前に一度」

 

W姉貴も戦争! 暴力! 最強! 以外考えないGくんがシエスタに仕事以外で来たことが信じられないみたいですね。当たり前だよなぁ?

さてここで選ぶ選択肢は……

 

────

ノーコメントだ

誰でもいい

無視する

>知り合いのトランスポーター

────

 

会話を広げるためにらしくないことを選びます。W姉貴はちゃーんと拾ってくれる優しい人ですからね

さぁ、Gくん解体ショーの始まりや……

 

>「知り合いのトランスポーターだ。詫びを兼ねて此処を訪れた」

まあ別に隠すことでもないか……

「女?」

「よくわかったな」

Wの勘は異常に鋭いところがある。まあそういうオレもWのことはよくわかるのだが。お互い、声だけでも痩せたかどうかとかがわかる

「あんたが好きそうなタイプね」

「わかるのか」

「ええ。あんたのことだから。どーせ超常的な感じなんでしょ?」

図星だ。しかしモスティマのことは話してないのになんでそこまでわかるんだろうか。表情こそ変わっていないが、拗ねるような視線を感じる

「そういうオマエは彼女に夢中だな」

「今、それは関係無いでしょ」

話しかけたいのに話しかけられない。彼女が自然にあるだけで、胸は高鳴り視線は逸れる。まるで炎に向かうように

「──黙りなさい」

本気の怒りを滲ませて、Wは胸倉を掴んできた。

「これ以上やたらポエミーに表現するなら、本気で殴るわよ。いい?」

「わかった。やめよう」

恋を知った幼子のようだとか表現してみたら、どんな反応をするだろうか。まあ、怒り心頭なWにそんなことを言うのは自殺行為だ。なんとか機嫌を取らねば

 

前々から思ってたけどGくん割とポエマーなところあるわね?

ではここから好感度上げ等々には関わりませんが、こっちのお仕事をしていきましょう。W姉貴がGくんを連れて来たのは、一緒に来たかったが4割で護衛6割です。テレシス側のスパイからデータを受け取ることになっているのですが、安全に受け渡しができる場所なんてシエスタくらいしかないし、それは敵もわかっているのでネズミが紛れ込むわけです。

 

で、ネズミ駆除の専門家としてGくんは頑張らないと行けません。鼠がもう一匹……(剣聖並感)

 

さて、GくんはW姉貴と接触する前の3年で鍛えた技に収容所も真っ青な拷問術・リアルガチの内臓攻撃・効率的な人体破壊・恐怖を与える殺し方・折り畳んで上げる・首を千切り断面に爆弾を仕込んだ生首爆弾などの物騒なモノもありますが、暗殺術の類も一通り覚えております。なのでパッと見れば敵がある程度……

 

>……見つめる。視線を区分して遮断して、血の匂いがするヤツを区分していく。その中で無機質な視線を探して行き……誰一人として見当たらない。

 

……んん? このデータでこのイベント行くと毎回敵いないなぁ。乱数が固定されてる。もしかして、乱数固定可能なイベントと乱数固定不可能なイベントが存在している……? 後で再調査ですねクォレワ……これから大量の略してほもと略してれずが発生しますよ。ヴォエ!

 

>驚いた。敵を区分することにかけては得意だと自負しているオレが完全に見つけることができないとは。認識阻害のアーツか、あるいは凄まじく鍛え上げた技術か……どちらも楽しみだが、億が一本当にバレていないという線もある。……だとしたらつまらんが

 

こうなると絶対にいません。ドクター暗殺RTA兄貴曰く「0章でそれが出たらファウストくんとメフィストくん襲来で死亡確定みたいなもんだが特殊なそういう場面でもなかったら絶対安全やで」だそうです。

となればもう好きにし放題! でもキャラと肉体関係ある時にシエスタで宿泊するのはよろしくありません。ご無沙汰だともっとよろしくありません。メガトンコインです。ねっとり食べられます。今回W姉貴と関係だけはあるので選択しないようにします。

 

>「……どう?」

「見たところネズミはいない。オレたちより上か、本当にいないか」

Wも怪訝な顔をしている。確かにここまで自然に視線一つも見当たらないとなれば、キリングゾーンにいるかキリングゾーンが存在しないかの二択だ。

ここは……誘い出すか。どうやったものか……

────

映画館で群衆に紛れる

海側で群衆からあえて浮く

>ショッピングモールで群衆を見る

────

 

上二つはどっちもロスいので下ですね。水着に悩むW姉貴だとか、ポップコーン片手に退屈そうに映画見ながら手でちょっかい(意味深)かけてくるW姉貴とかが見たければ、自分でたしかみてみろ!

 

>室内で、密閉されない……ショッピングモール。誘い出すには持ってこいだ

「W、時間は」

「あるわ。何処へ」

「ショッピングモール」

「了解」

……なあ、W。オマエ、シエスタ楽しみだったんだな? 更に浮足立ってるぞ。それでも警戒を怠ってないのは、流石だ

 

ちなみにショッピングモールだとエフイーター(頼むからモンスターを人間に戻さないで)の本が買えます。読むとステータス上がります(ありがとうエロパンダ)彼女が鉄意六合拳の習得に何を見出して、どんなコツがあったのか赤裸々に乗ってますからね。役に立たないわけがない。

これ目当てでもあります。

 

>手を握られる。デートのつもりなのだろうか。肉体関係はあっても、オレたちの間にそんな感情は無いが

 

嘘つけ絶対あるゾ

 

>……Wに手を引かれる。時々、オマエのことがわからなくなる。でも、それでこそWだと思う自分がいて──やめろ

気が付けばショッピングモールに着いていた。Wと別れ、お互いに位置を把握して群衆の動向を見る。……やはりいない

 

さて、ここでやるべきは「イフリータでもわかる! エロパンダのカンフー講座」が乗ってるエフイーターのグラビア本買うことです。

 

>「武術を身に付けたワケとその極意」……? 女優が? 女優は武道を身に付けるものなのか? どう見ても女優のグラビア雑誌なのだが、それには似合わない堂々と腰の入った構え。──立ち読みでは隙を晒す。買うか

 

考えてみてください。仏頂面で傷痕もチラチラしているイケメンが人気カンフー女優のグラビア本を神妙な顔で眺めた後、決意したように手に取って購入する姿を──ギャグでしょ? エロ本を買う子供かな?

真剣な表情でそれはどうなの君。

 

>店員はこの女優のファンなのかと聞かれて、適当に誤魔化したが別に知らない。ただ強いて言えば、前にモスティマと見た映画で見かけたような、それだけ。生きる世界が違う者を知る必要はない

……それにしても、俳優というのは難しいものではないだろうか。身体をこう、と作らなければならないなどと。ただ鍛えればいいというわけではない。維持──頭の中であの女優の身体を浮かべて、彼女の努力に敬意を表した

 

エフイーター姉貴のカンフー、同じ土台であれば今のGくんではWブースト前提でしか抜けません。すげぇ! まあ別に邪道戦法使ってしまえばブーストなくてもいいんですけどね。

 

>「どう?」

「見えん」

「……本当にいないっぽいわね」

「オマエはオマエの方に集中しろ」

買い物袋をぶら下げたWと合流し、荷物を受け取りつつ時間との兼ね合いはソッチに任せたと言外に告げる。思ったよりも時間を潰していたようで、確認したWはオレを現場へと連れて行く

 

あとは受け取って帰るだけなので加速。

ということで場面は移り変わりデータを受け取って確認して別れて車の中です。結局短時間の滞在で、観光らしい観光なんてしていませんけどね。内戦中ですしね、当たり前だよなぁ?

 

>「思ったよりも楽に終わったな」

「あいつの情報が何処まで信用できるかの方が重要よ」

「ドクターの能力を鑑みれば、そう難しいことではない。アイツの戦術指揮、戦略眼はまさしく最強に他ならない」

「汚れ仕事ばっかりよね、あたしたち」

「できるのがオレたちだけだからだ」

雑誌を取り出し、眺め始める。グラビアはどうでもいい。インタビューは何処だ

……ねぇ、視界の隅にチラチラ映るやたらセクシーなウルサスは何?

運転しているWが、ガラスに反射した雑誌に気が付いたようだ。視線は向いていないが、声は冷たいし、面白くなさそうな雰囲気を感じる

「人気女優のグラビア本」

「そんなものに頼らず処理する方法知ってるでしょ」

「ああ。で?」

そういう目的は一切無いから心底どうでもいいと言葉だけで伝えてみれば、Wは大きくため息を吐いた後、不機嫌に染まった表情と視線をチラリと向けてきた

「あんたはいいわよね〜。声をかけても気分じゃないとか仕事道具の整理とかで無視する癖にそーやって名前も何も知らないウルサスのエロ本読んでる」

「グラビア本だ」

「何? 胸と尻のデカい女が好みなの?」

「どうでもいい」

「じゃあなんで読んでるの」

「カンフーの達人だ。写真で見てもその技量が読み取れる。そうした点のインタビューが載っているから買った」

「の、割には表紙は水着じゃない。しかもキャッチコピーは『話題のあの女優のセクシー&カッコいいショット大特集』。どう考えてもそういうものでしょ」

「オレは向上に役に立ちそうだから買っただけだ」

うるさい女だな……突っかかってくるな

「そんなことを気にするくらいならテレジアへの愛をしたためたポエムでも書いてろ」

「ねえ、車から落とされたい?」

「冗談だ。やめろ」

流石にこんなくだらんことで死にたくない。と、そんなことを考えていると車が突然止まった。敵かと思ったがそうではない。もうすぐロドスに着くのに、Wが自分の意志で止めた。

「どう──」

言葉は紡げなかった。シートから身を乗り出したWが、無理矢理に唇を奪っていた。口内に舌が侵入してくる。しばらくして彼女は離れて、昂りに染まった顔で一言

「久しぶりに疼くから、いいでしょ?」

「精神修行について書かれていたから、実践しようと思っていたんだが」

「ダメ。あんたの都合を優先させてあげたのよ、あたしの都合を優先しなさい。それくらいの甲斐性は昔からあるものねぇ?」

「……ここでかぁ……?」

「あんたの部屋で、ね」

「どっちにしろ興が乗らん」

「拒否権があるとでも? そんな本を読むくらい溜まってるんでしょ」

だから違うって……

──昔からそうだ。こうなったWはオレの気持ちなど無視して疼きを満たす。何処か楽しげにしているコイツを見て、それがテレジアと会えることであって欲しいと思いながら、雑誌にまた視線を落とした

 

Foo↑ これはもうノスタル爺するしかねぇよなぁGくん! ほらW姉貴が据え膳用意してくれたんだから、食わねば男が廃るだろ! ……と言いたいところですが、W姉貴から逃げます。でないとしっとり率が上がりません。W姉貴という温もりから逃げているとちゃんとW姉貴にアピールしなくてはなりませんからね。

 

>ロドスに戻った。Wは報告に行った。面倒だ、逃げるなら今のうちだろう。さっさとどっかへ行ってしまおうと人気の無いところを目指して……嫌な顔と会った

「なんだ、ワルファリン」

「悪名高い『ジェヴォーダンの獣』が、まさかそんな格好をしているとはな」

言外に笑い者だぞと告げてくる同族を見て、ため息を吐いた

 

知ってるけどジェヴォーダンの獣って誰だよ(ピネガキ)

 

>『ジェヴォーダンの獣』……古い呼び名だ。──と会う前、3年で同族を数百ほど強くなるために殺した折に付けられた仇名。自分の呼び名など気にした覚えもないが、最強を目指す己の在り方に合っているようで、気に入ってはいた

「獣が服を着るなと?」

「別にそういうわけではないぞ、G。妾はただ単に、お前がそうしていることが面白く見えただけだ」

「……」

腹が立つ。殺してやろうか

「冗談だ、そんな顔をするな」

どうどう、と馬でも扱うように微笑を浮かべてオレを宥めるワルファリンに舌打ちをする。コイツは苦手だ。が、その知見は凄まじく、何度も授業を受けている

「しかし似合っているぞ。ああ、確かにそれならばお前も獣にも傭兵にも見えぬな」

「褒めてるのかバカにしてるのか」

「褒めているとも」

 

同じブラッドブルードであるワルファリン姉貴とクロージャはある意味ではW姉貴以上に関係あります。なにせGくんはたった3年で数百名ものブラッドブルードを殺戮した狂人、『ジェヴォーダンの獣』ですからね。最初はとてもビビられましたとも。

 

>医師のワルファリンとエンジニアのクロージャ。同じサルカズのブラッドブルード……血より闘争のオレ、血より機械のクロージャ。ワルファリンから見れば随分と変わり者なようだ。もっともオレもクロージャも、血を飲まないわけではないが──頻度は極めて少ない。

「おいクロージャ、ちょっとこっちへ来い」

さて目の前のブラッドサッカーは余計なことをしてくれたわけだが……悪戯好きの子供みたいな顔を浮かべていやがる

「はーい。どうしたのワルファリン? あ、G。その格好は……」

「何か言いたいことがあるのか?」

「ううん」

「あるんだろ?」

「別にないってば! どうしたの、そんなに気にして」

 

W姉貴絡みだと即バレるからです

 

>しばしクロージャは沈思黙考し──一言。

Wとデートでもしたの?

「何? なんだお前ら、熱いひとときを過ごしたのか。そうかそうか。それならばその気合いの入った格好に納得が行くというものよな?」

「さっさと黙れ。ジェヴォーダンの獣の由来を知りたいか」

「ワルファリン、Gはそういうの好きじゃないんだからやめなよ……Gも落ち着いてってば。ああもう、なんであたしがこんな立場やってるかなぁ。──でもさ、似合ってるし素敵だと思うよ」

何が!?

「服装だけど」

「あっ、ああ……なんだ、その……そうか」

調子が狂う。適当なことを言ってこの場から抜け出した。疲れる。なんだこれは。こんなものオレではない。そんなことより早く逃げなければ。藁にも縋る思いでケルシーを訪ねる

「G、どうしたんだその格好は。似合っているが──」

「感想は要らない他に方法はなかった」

「私は今のように感情を露わにする君の方が好みだがな」

「ケルシー!」

「何が不満だ?」

「……クソ、どいつもこいつも……」

「──驚いた。Gってそういう格好も似合うんだね」

……忘れていた。テレジアはほとんどがケルシーと共にいる。ケルシーを訪ねるという選択した時点で失敗だったのだ

「、テ……テレジア」

「きっと自分の為とかじゃないよね。あなたはそういうことはしないから。となると……Wの為?」

「──違う」

「G」

「違う。オレは、恥をかかせるのが嫌だった。それだけだ」

テレジアは見透かしたように目を伏せた。やめろ、やめろ。鏡のように映すな。炎の如くあればいいんだアンタは。見るな、オレの暗闇を──

「その辺りは私にはわからんが、ところでG。来客だぞ」

「はぁい、G。あたしを放っておいて同族二人と楽しく談笑。その後ケルシーとテレジアにお披露目? あたしを無視してあんな雑誌を読んでた事といい、随分と好き勝手してくれるわねぇ」

……ああ、そうだ。このテレジアのストーカーが此処に来ない筈がない。ケルシーに気付かれないように影からテレジアを眺めるしかできないヘタレ娘は此処に必ず来る。そこにオレがいれば──

「すまん二人とも。邪魔をした」

さっさと離れる。捉えられても逃げ切れば問題無い。テレジアの苦笑をバックにこの場を去ったが……

「逃げんなっつーの」

やはり追いかけてくる。ムキになってないか? 自分で慰めておけばいいものを

「知らぬ存ぜぬ心底どうでもいい」

「言っておくけどAceたちの飲み会は無いって。残念だったわねぇ?」

「なら外で空気を吸うまでだ」

「タバコ? ならあたしもご一緒するけど?」

逃げられん……かったるそうにしているオレを見かねたのか、Wは耳元で──

あたしの血、飲みたいクセに。久しぶりに飲みたいんでしょう? ほら、お互い似たようなもんじゃない……ね?

……その日は結局、抵抗を諦めて渋々と本能に身を任せた。どれだけ何を言おうとも、シエスタを訪れた時から、アイツの血が飲みたかった。そうでもしなければ、あの居心地の悪さを忘れられそうもなかったから

 

……いやぁ、お似合いですねぇ。

少し短いですが今回はここまで。次回はもう少し時間が経ったところから再開します。

おま◯けとして、へドリー兄貴の回想を垂れ流しておきます。

ご視聴、ありがとうございました。

 

────

 

『G』という傭兵は、かなり奇特な傭兵だ。

今の『G』の過去の名前は、『ジェヴォーダンの獣』。たった3年でカズデルのブラッドブルードの実力者数百名を殺し尽くした同族殺しだ。

それが戦場に現れて、一切の区分無く攻撃して辺り一面を血に染めている……だからその首を取ってこいという依頼を受けた俺たちは、そこでジェヴォーダンの獣と交戦し──『G』を失った。

 

ジェヴォーダンの獣の異常なまでの猛攻と耐久力、アーツ出力、精神を蹂躙する戦術……数と練度、装備と条件──全てが有利なのに、如何なる理由かはわからないまま獣に蹂躙されていく。死を覚悟しながらひたすらに抵抗をする中で、その獣を前にGはこう言った。

 

「おい、小僧……俺と一騎討ちをしろ」

 

しばらくの交戦で正気を失ったのかと思ったが、違った。イネスは絶句し、部下たちも驚愕に満ちている。

そして獣はピタリと動きを止めて、告げた。

 

「名乗れ傭兵」

「G。お前は」

「ジェヴォーダンの獣」

「お前の目、飢えてんな。覚えがあるぜ、その飢えを……いや、俺とお前に共通する飢えを満たせるとしたら、互いの命だろうな」

 

俺は耳を、そして目を疑った。

あのGが楽しくてたまらないと声を震わせ、子供のように目を輝かせている。

あの獣が嬉しくてたまらないと笑顔を見せて、憧れの存在と出会ったように感動している。

 

「お互い求めているものは崇高で、刹那的で、快楽的で、麻薬のように甘美な破滅に彩られているもの──違うか?」

「正しいさ偉大な先駆者。アンタは、勝利を求めているのか?」

 

Gは変わり者だった。サルカズの傭兵なんて、言ってしまえば思考停止の結果だ。なりたい自分になるとかじゃない。そうしなければ生きられないから……というだけ。だがGは傭兵になって名を馳せることを目的とし、そのために傭兵になった。

あいつは笑って言っていた。『日々のくだらない生活になあなあで満足して、ちっぽけな幸福を有難がって抱えている人並みの生活なんざ家畜にでもやらせておけ。それが賢いなら俺は馬鹿で十分』と。

そんなあいつが全く理解できなかった。訳の分からない別の何かに思えた。でも今は、ちゃんと人の形に見える。

 

「当然。他にいるモンあっか、小僧」

「魂が叫んだならそれで十分だ」

「俺はよぉ、俺の存在をこのカズデルに轟かせたい。俺という存在を、この大地に刻み付けたい。そのためにお前の首を欲したわけだ」

「オレは最強の字を現実のモノにする。最強という伝説を、オレという現実にして、現実から現実を超えた超越者になる」

 

二人が笑い合う。まるで同じバカを見つけたとでも言わんばかりに。

そして互いに武器を構えて──

 

「最強に敗北は無い。だからブチ殺させてくれ。死んでくれ。オレはアンタを──()()()()()()

「いいぜ、俺に勝てたら俺を喰え。奪え、毟れ、丸呑みにしろ! この名前、財産、職業、経歴──全部お前にくれてやる。だがお前が俺に喰われたら……」

「構わないさ。オレの存在、オレの強さ、全部オマエが使えばいい。ジェヴォーダンの獣という同族殺しの首で、誰もが忘れられない炎になって大地を焼き払えよ!」

「それでこそだ! 悪名高い獣をぶち殺した傭兵なんて英雄みてぇなもんだしよォ!」

 

わからない。

全くわからない……が。

この二人は意気投合している。互いに互いの存在を、殺した方が食い尽くして一体となることを望んで認めている。そんな様子を見て誰も手を出したくなくなった。狂っているが……魅せられたという言葉が正しいかもしれない。

自分がこう、と決めたことを貫き通す。その道中で死んでもいい。そのためならば全存在を賭けられる。

無明にも感じられる──歩むべき道も、貫くべき祈りも見いだせない生き方。 それを自覚しながら、疲れ続けることを怠惰に受け入れる毎日。

そんな疲れ果てた傭兵の世界で、久方ぶりに見た生の光。"頑張って生きる"というシンプルでとても難しい行為。

獣を恨むということはあまりできなかった。感心したからだ。あのイネスでさえも沈黙して見ている。正直感心こそすれど、俺はこのように生きられるとは思えないし、できないだろう。だが……

 

自分は一体、何者になればいい?

その答えを見つけられることはないと思っていたが、答えを見つけた奴らがいる。

 

「俺はお前のように──」

「──オレはアンタのように」

 

それは一つ、俺への救いになった。

答えは出せる。迷いながらでもいい、でもひたすら生きていれば死ぬ頃には見えてくる。なあなあで生きてても、いつか必ず。

 

「「量産型を超えた存在になるんだよォォォ──ッッッ!!!」」

 

そして2人の愚者が激突する。お互いの全存在を賭けた、究極の決戦。

壮絶な殺し合いの末にGは獣に喰らい尽くされ、獣はGとなった。

「傭兵の武器を引き継ぐ人物は、同時にその傭兵の名をも引き継ぐ」という慣習がサルカズの傭兵の間にはある。

 

これはそれすらを超えた相互理解。

互いにその存在に焦がれ合い、殺し合うことで一体となる儀式。喰らうというのは嘘ではない。Gは息の根を止められる前に遺言を残した。

 

「これからはこいつがGだ。こいつをGとして使え、隊長。俺はこいつの中にいるぜ」

 

なんだそれは。殺した相手の中にいる? 訳が分からないが──そこには凄まじい狂気が宿っていて、それは違うとは誰も言えなかった。

 

「やれよ小僧」

 

そしてGとなった獣はGに求められていた役割を果たし続けた。

 

……『W』と出会うこととなった、あの時まで。

 

新たなWとGは旧知の仲だった。

いや旧知なんてものじゃない。誰が見たって家族のようにも、戦友のようにも、恋人のようにも見えるそんな関係。Wと接している時のGは、あの獣と呼ばれGと喰らい合う儀式に嬉々として臨んだ狂奔の存在とはかけ離れていた。

何処にでもいる誰かのように、Wの一言一句にあれやこれやとくだらない茶々を入れ、Wの行動を理解する。一度戦闘になれば、長年連れ添った戦友として無言で背中を預け合い、互いを補い合う抜群のコンビネーションを見せる。

 

たった一人の修羅道を突き進む魔物ではなかった。当たり前に人の温もりを知っている、何処にでもいる誰かだった。イネスはその正体を見て、たった一言だけ俺に言った。

 

「へドリー、Gのことだけど」

「また追い出せとかそういう話か」

「いいえ。そうじゃない。Wと接しているあいつにこっそりアーツを使ったの。それで、あいつが何なのかわかった」

「興味深いな。聞こう」

「ただの子供よ」

 

その言葉を聞いて、血の気が引いた。

子供……? あれが、子供? イネスは何を言っている。

 

「いいへドリー。冷静に考えて。『こうなると決めて、そうして死ぬ』って、裏返せば人生はこうでなければならないっていう理由が無いとダメってこと」

「……つまり、彼は──迷えないと?」

「そういうこと。自分はこの為だけに生きて死ぬんだっていう目標が無いと、あいつは生きられない。子供がヒーローになるんだって言うのは簡単でしょ? ヒーローになるために努力してて、途中で物語のヒーローにはなれないと知ったら、それでもと現実的に考えるか諦めるか」

 

俺だったら諦める。いや……諦めた。

だからこんな生き方しかしていないし、答えが見つからなくて彷徨っている。イネスもそうだ。Wはどうなのだろうか。彼女は──Gとは違うようだが、何かを探しているようにも見える。

 

だが、Gには第三の選択肢があった。

 

「──諦めなかった。現実的にするのではなく、幻想を現実にすることを望んだ」

「大正解。Gは最強の二文字の為だけに生きて死ぬ。幻想を現実にするために」

「……その道を行く先は、自分を超えた何かになる未来じゃない。自分を捨てた何かになってしまう未来だ」

 

例えGの心がそのままであっても、幻想の中の最強の二文字に取り憑かれてしまえば幻想の中の怪物になることしかできない。

それを望んでいるのならば、それを変えることができないならば、何処かで誰かが殺して──いや喰らってやらねばならない。そういう男が確かにいたんだという、生きた証拠にならねばならない。

 

「Wには伝えないわよ。あいつが理解してないはずがない」

 

イネスはいつになく真剣だ。

しかし何故、Wがそれを理解していると思っているだろうか?

 

「どうしてそう言い切れる」

「女の勘」

「……はぁ、そうか。俺たちにできることと言えば、幻想だけじゃなくてたまには現実も見てやれと示すことだけか」

 

くだらない交流、些細な言い争い……それらだけでも十分にその役割を果たすだろう。

 

「手のかかる弟ってのは、こういうものなのかもな」

「私には無いもの強請りをする子供に見えるけどね」

 

選択肢を与えられて、幻想の怪物になる道を選ぶのであれば──その時は、俺たちで葬ろう。

それがせめてもの、純粋な子供の眼差しに救われた大人としての務めだ。

 

「Gがどうするにしろ、今は今を考えなければな」

「それならまず、GとWに朝っぱらから戯れ合うのをやめろって命令してくれないかしら。あの雰囲気苦手なのよ」

「命令で止めるならとっくにやってるさ」

 

あれを止めることはできない。

何故ならあれは、二人の逢瀬なのだから。そんな無粋なことをできるほど、俺は人の心を捨てていない。




時系列的にはW姉貴が盗撮する前です

先代の「G」
傭兵になることが必要に駆られてという理由ではなく、ひたすらに自己顕示欲を満たすために傭兵になった馬鹿。そんな同レベルの馬鹿は所属していた傭兵部隊には存在せず、腕は確かだが奇人変人の類という評価をされていた。
彼の部隊が「ジェヴォ―ダンの獣」討伐依頼を受け、そこで最強の信奉者と出会い、たった数秒の交戦で把握、意気投合。お互いの全存在を賭け、殺し合いの末に獣に喰われた。


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再びのほんへ:2

淫夢要素があまりないので初投稿です


時は流れてW姉貴がカメラをもらう頃です。

今日も元気にGくんは暗殺を繰り返しています。

 

>ここ最近のドクターからの指示は奇妙なものが多い……というよりも、佳境に入りつつあるのかも知れない。テレジアが死ぬかテレシスが死ぬか……そのどちらかが、近いうちに決まるかも知れない

 

まあ原作ルートに乗せるので何があってもテレジア姉貴は見殺しにするんですけどね。テレジア姉貴を救いたいなら原作崩壊ルート……やろう!(提案)

 

>死体から長剣を引き抜き、血を振り落とす。暗殺……とは言うが、これでは剣客だ。まあ楽しいからいいのだが。ナイフだとかを使った方がいいだろうが、これは見せしめも兼ねている。ならば死体がまともな形でない方がいいだろう

 

実際やってることは何処ぞの抜刀斎がござるの峰打ちマンになる前みたいなもんです。今だって長剣片手に奇襲して、ボウガン撃たれる前にズバンですもの。いやあ、欠伸の出る速度で構えられては長剣ももっと速くなるというもの。入力速度が違うぜぇ!

けど身体を斜めにぶった斬った死体とか上半身と下半身がどっか行った死体とか、頭だけ真っ二つにされた死体とかお前やり過ぎ……やり過ぎじゃない?(やらせた人)

ラテラーノ銃とか使えるんだから使って、どうぞ(弾が勿体無くてケチった人)

 

>Wは難民に紛れたスパイを探している。一人に与える任務としてはやや重たいが、アイツならやる。何を言うまでもない

 

(信頼が)太いぜ。

 

>とりあえず任務は完了した。帰還しよう

 

というわけでロドスに帰還〜

ビールビール! ……と行きたいところですが、珍しいものを見たのでそっちに行きましょう。まあケルシー先生に説教されているW姉貴ですが。

あと今回の検証では試走のようにアーミヤCEOにがんばれ()がんばれ()して裏切りません。無理に戦う必要は無いので、CEOに覚えてもらう必要が無いからです

 

>……ケルシーがWを説教している。そして横ではあたふたとするテレジア。何があったんだ? それにあのヘタレがテレジアにアプローチできるとは思えない

「テレジア、何があった」

「Wがカメラで私を撮っただけなのに、ケルシーが怒っちゃって」

 

正直言えばこの状況下で盗撮はそらそうよ

 

>Wを見る。嬉しさ半分鬱陶しさ半分か

「G、君からも何か言ってやってくれ」

「よくがんばりました。ヘタレのWちゃんにしては勇気出せましたねー」

「ははぁ? ねえG。やっぱりあんたあたしに殺されたいのよね?」

「オマエなら構わんが」

Wは間違いなくオレを()()()()……あの偉大なる先駆者、Gとオレの関係のように。だから構わないと思える自分がいる。不思議なものだ──最強に敗北は無い。その思考は……何故だ。何故、やめようにもやめられない……?

 

よしこれで頭バエルは矯正完了も同然。あとは甘さのある選択肢を選びつつ、W姉貴がしっとりしてくれればレユニオン行けますねぇ!

ま、ほぼ確定みたいなもんですけど。W姉貴と再会した時に離れてた日数記憶されてる時点で確率めっちゃ高いし、そこから色々やってるからラインは足りてるんですよね。できるなら100%で安定取りたいので、まだ多少稼ぎますけど

 

>「……そ。まあいいわ」

何か含みのある様子でWは去っていった

「GとWって、なんだか家族みたい」

「そうか」

「私には恋人にも見えるが」

「そうか」

「Gとしてはどうなの?」

「……オマエが聞くな、テレジア」

もう喋ることはないと言外に告げて、オレもまた去る。テレジアの悲しげな視線が、背中に残った

 

……さてここからはやることは変わりません。テレジアを見殺しにします。ということで加速

はい、こっから等速です。

 

>テレジアが死んだ──

「……なんでよ。ドクターとケルシーがいて、テレジアが……」

Wが俯き、血を吐くように憎悪混じりの言葉を紡ぎ出した。いずれそうなるような気もしたが、たった半年で決した。オレがバベルに力を貸す義理も、なくなった

「もうここにいる意味も無いな」

「ええ。もう無い。この場にあたしがいる意味は」

Wは顔を上げて、憎悪と憤怒に入り混じる瞳をオレに向けた。その目を知っている……こう生きてこう死ぬ、それを定めた目だ。オレと同じ。そして彼女は

「テレジアを殺した奴らの首を、墓の下に埋め尽くしてやる。テレジアに尽くしたサルカズの名に懸けて」

そう宣言した。その為に命を使い果たしていいと、そしてその果てに死ぬと決めている。あらゆる方法を使い、全員を殺し尽くすと。その為の修羅道へ足を踏み入れた

「G、あんたはどうする」

「オレは、最強以外に興味は無い。だがオレとテレジアは最後に相対するべき運命だった。それが奪われた以上、対価を支払わせなければ気が済まん」

「なら来なさい。今度は離れさせない」

「W」

「あんたとあたしは一連托生……あの日、3年42日11時間ぶりに再会してから今日に至るまでで思った。あたしの行く先にはあんたがいて、あんたの行く先にはあたしがいる。これを一連托生と言わずになんて言うの?」

 

しっとり確定キター!!!

レユニオンに行けますねぇ!!

 

>Wはぐちゃぐちゃになった感情を向けて、無表情のままオレに近付いてくる

「ねえ、──」

狂気だ、純粋なまでの。この女には似合っているようで似合わない、そんな狂気

「W……」

「今だけは──って呼んで」

……なんだ、そんな目をして。オレに何を求めているんだコイツは

「──、どうした」

「──。あたしにとってあんたは恋人で、家族で、戦友で、好敵手。あんたにとってあたしは?」

「考えたこともない」

「答えて」

「……不思議な話だが、オレは──に殺されてもいいと感じている。最強に敗北は有り得ないのにさ」

「あたしも同じ。──になら殺されてもいいと思う自分がいる」

そして互いに……互いを殺すのは自分だと呟いて暗く笑った。何故だろうか、心地良い。そして()()。そんなオレを知ってから知らずか、Wは……──はオレにもたれかかりながら、言葉を続ける。

「ねぇ、昔に戻りましょう? 今日を生きて明日を掴む利害の一致に心地良さを見出していた、あの頃に。あたしの目的とあんたの目的は違うけど、歩く道は同じだったあの時に」

彼女は笑った。狂気に染まり上がった魅力的な笑顔。本気だ。最終的にWの名と決別してでもこの復讐にして八つ当たりを成し遂げる。そんな彼女にオレは……

────

背を向けてかつて見た光を追う

>何故だろうか、共に行こうと考えた

────

 

はいここはこれ一択。それ以外あり得ない

試走の時はテレジア死亡後即脱走だったのでこういう会話しなかったんですよね。

 

>捨て置くのが正しい筈なのに、何故かできなかった。──と共に再び放浪するのがいいと感じた。ひたすらに最強を目指す自分であると決めたのに、何故か。まあ、この冥府魔道の旅路にも強敵はいる。ならばこそ、喰い殺すまで。だから……

「いいだろう、──。オレはオマエの旅路に連れ添ってやる。そこにもオレの糧はあるんだからな……W」

「嬉しいわ……ありがとう、あたしの半分。──さあ行くわよG。テレジアに捧げる花束を、奴らの血肉で作りに。少しの間だけ大所帯になるかもだけど、いい?」

「ああ。血を啜った骨の茎持つ肉の花を探しにな……大所帯? 構わんよ。オマエとオレは変わらない。そこに互いが存在する限り」

ほんの僅かな時間だけ重なった唇。Wからだったのかオレからだったのかわからない。離れて、Wは狂気を宿した微笑みを見せた。オレもまた、その狂気に劣らぬ妄執を見せて──オレたちは、バベルを去ると決めた部下たちを率いてバベルだったところを抜け出した。そしてある程度離れてから、部下には好きにやるように告げて、二人だけで歩き出した。

テレジアへの手向けの鮮血花を、手折るために

 

あ、そうだ。ここからは似たような話が続くのでみーなーさーまーのーたーめーにー……

GくんとW姉貴による拷問シーンを流してからカットします。

 

>「よう、同胞。元気かな」

「……ぉ、……ぇ……」

「ああ無理に喋るな……手足の腱を切ってからあまり時間は経ってないんだ。舌も噛み切れないようにほとんどの歯を砕かせてもらった」

ボロボロになったそのサルカズに対して、写真を見せる。コイツはテレジアを暗殺した者の一人だ

「これは、テレジア殿下の暗殺を行った人物だな? 首を縦に振るか横に振るかで答えてくれ。正しいなら縦に、そうでないなら横だ」

そいつは首を縦に振らない、横にも振らない。そうかそうか……薄くした木の枝を爪の隙間に入れていく

「答えた方がいいぞ。なあ……オマエだってサルカズが全滅するのはイヤだろ? ようやく掴んだ平穏だ。何処にも行けないし何処にも帰れない。そんな無様な姿のまま、自分の同胞たちが皆殺しにされていくのが見たいか?」

まだ無言だ。枝を縦に回し、爪を剥がす。雑音が激しい。落ち着くのを待ってから、オレは語りかけていく

「オレたちはテレジア殿下を否定したゴミどもを殺すことに何の躊躇いも無いぞ。老若男女問わず、そうだなぁ……テレシスに従った者一人一人首を落として横に並べて、カズデルの大地に植林してみるのも悪くないとは思わないか? もちろん鑑賞者はオマエだ。一人一人の死に顔を眺めてもらってから、それが爆弾で木っ端微塵になる様を見届けて感想も言ってもらおうか。最後にオマエが見るのはテレシスの首だ。最高だよなァ?」

「ほざ、け……言うだけなら……」

「これなーんだ」

指差す先にいるのは、コイツと一緒に捕らえたもう一人だ。コッチは情報が無いってわかってるから手脚の腱だけでなく舌も抜いてある。そんなかわいそうなヤツは今は愉快なイルミネーションになっている。人体を破壊するには不足な小型爆弾を四肢に取り付けてあるからな

「イルミネーションはバッチリか? W」

「ええ。それはもう。火薬の量もテスト済み。ねぇ、そういうわけだから……吐いた方がいいわよ。あんたがコイツの四肢がじわじわと爆散していくのが見たいなら別に言わなくてもいいけど」

「別にオレは、オリジムシの餌やり場面でも見せてやっていいんだがなァ」

「……言うものか!」

「そ」

爆発音が響く。腕が千切れ飛んだ。その腕を拾って、あえて断面の方を向けてソイツの頬をペチペチと叩く

「そら、オマエの選択が招いた結果だぞ? オマエは同じ理想の元に戦った同志が嬲り殺しにされていくのが望みというわけか……哀れだなぁコイツも。そんなオマエにテレジア暗殺という大役を任せたテレシスも。愚鈍な指導者に着いて行くものは愚鈍な存在って相場が決まっているから仕方ないか」

「殿下を、愚弄するな……!」

「ばーん」

「おっと、脚が飛んだぞ。オマエがコイツの四肢の内二つを潰した。よく見るんだ、オマエの行いを」

「ねえ、あんたも無駄なこと嫌でしょ? 言いなさいよ。言えばこれ以上何もしないわ、あたしたちは」

「……そい、つは……」

そうしてペラペラと喋ったソイツにオレは興味を失い、Wが片手片足だけ残った喋らせるための装置に起爆ユニットを渡して、何かを喋った

「んー、ありがとー。さ、行くわよ」

「了解。次は仲間で作った芸術品でも見せてやるか」

「さーんせー! いいじゃない、そういうの。こういう手間のかかる奴より簡単ね」

今回は人が少なかったから手間がかかる方法しかなかったが、次は標的の取り巻きが多い。なら昔取った杵柄が役に立ちそうだ

そしてオレたちが拷問部屋を出た頃に、爆発音がまた聞こえた……

 

……いやぁ、怖いですねぇ。自殺も抵抗もできない自分の真横で、慣れ親しんだ顔の手足が一本づつ吹き飛んでいくなんて。しかも飛ばした腕だので顔面を叩かれる。尊厳破壊も甚だしいですな!(ゲス顔)

Gくんは昔からこういうことを必要だったのでやっていたから得意なんですよねえ。さて次は宣言通り、お仲間を折り畳んで作ったオブジェを爆破して行くところを見せて吐かせて殺し、次は爆弾を付けた生首を目の前で爆破させて吐かせて殺し、その次はジグソーパズルな映画よろしくお互いの信頼を確かめ合うゲームを眺めさせながら吐かせて殺し……うぷっ……加速します……ヴォェ……ッ!

 

>短かったようで長かった。最後の一人だ。効率を突き詰めて殺していったからか、途中から誰も抵抗をしなくなった。居場所を隠すだけ。見つければ懺悔と共に情報を吐き、そしてあっさりと死を懇願する。だんだんと本当にゴミ掃除でもしているような感じになって、虚しさも覚えるようになってきた。全力の抵抗による死闘も無くなり、奇襲や暗殺、尊厳破壊による拷問も要らなくなった。ただアリでも潰すかのような作業感と共に、それでもとやり切ろうとするWに着いて行き……そこではたと気が付いた。オレはオレを優先せず、Wの目的に付き添ってばかり。何故……

「……G、終わったわ」

「そうか……W、どうする」

「どうしようかしら──テレジア……」

Wが天を仰ぐ。虚無に支配された悲しげな表情で。何をやってもテレジアは戻ってこないし、今更こんなことをしても何もならない。それをわかって終わってしまえば……何のために生きたらいいのか、一度見失ってしまう。Wに何かしてやろうとした、その時だった

「サルカズを殺すサルカズ……残虐非道でも徹底的に合理的、計画的な殺し方。ジェヴォーダンの獣が再来したと聞けば、私たちがここに来るのも当然よね。そして、あなたたちは投降を拒み見せしめのように殺した。なら今度はあなたたちの番よ」

懐かしい顔ぶれだ

「イネス……へドリー……久しぶりね」

Wが噛み締めるように呟く。彼らが率いる傭兵たちの顔触れも知っている。中にはオレの部下も、Wの部下もいた。そうか、またこうなったか

「傭兵団がカズデルを彷徨っているのは聞いていた。だから拾い集める旅をしていたが……ジェヴォーダンの獣の爪痕が残されている時に見える情報はたった二人だけ。そして二人だけで精鋭の中隊を数だけで言えば半壊、実際には司令塔を殺し尽くして壊滅状態。いくら優秀なお前たちの部下であってもここまではできない。本物のジェヴォーダンの獣でなければな」

へドリーは苦笑したように言った。まるで証拠を残さないようにやってくれとも、あるいはわかりやすくて助かったとも取れような苦笑だ

「とっくにカズデルに愛想尽かしたと思ってたけど、まだ残ってたんだ。あんたたちも、あいつらも」

「お前たちには常に驚かされるよ……G、W」

「あなたたち、そんなフラフラの身体で何処へ行くの? 傷も本当に応急処置程度。いつ感染が悪化してもおかしくないわ。武器の手入れもほとんどしてない……Gの銃だけは相変わらず新品同然ね。ここはターバ村から二百キロも離れてるのよ。まさか、ずっと二人で行動してたの? しかも徒歩で?」

「あら、たかが二百キロじゃない。それに完全に決着を付けたと判断するまではロクな休息も取らないのは慣れっこよ」

「いい散歩だったさ」

ケラケラと笑ってみせれば、二人は揃ってため息を吐く。これだからコイツらはと言わんばかりだ

「……ていうかここ、あたしがあんたらに拾われた場所ね」

「よく覚えているな。そうだ、『W』が死んだ場所──」

「忘れるわけないもの。3年42日11時間ぶりにこいつと再会したんだから……」

「ねえW、あなた日数まで記憶してたの?」

「当然よイネス。こいつはあたしの半分なんだから……片時たりとも忘れることはないわ」

純粋過ぎて臭気さえ感じるほど、へばりつくような狂気の湿度を纏った一言にイネスは顔をしかめつつ、しかしそんなWの発言に若干の共感を覚えるように、ある意味ではオレたちの関係を羨むように呟いた

「……まあわからんでもないわ。それにしても、部下に安全なルートを教えていたり、丁寧に管理してあげたりなんだり、色々変わったわねW」

「Gも変わったな。以前は獣と話しているようだったが、今では人と話していると実感できる。昔のお前なら一人また修羅道を行くだろうに、Wと共にいるとはな」

「……放っておけ。へドリー」

うるさい奴だ。オレが何をしようがオレの勝手だろう。Wに着いていってもオレの勝手だ。あれこれ言うんじゃない

プイとそっぽを向くと、みんなに笑われた。傭兵団の連中にもだ。ええぃ、クソ……

 

ツンデレではなくデレデレなんだよなぁ……ツンデレみたいな反応するだけで

 

>まるでその時だけはバベルにいた頃のように過去を懐かしんでいたが、不意にへドリーとイネスの表情が変わる。それに合わせてWも表情を変えた

「じゃあ本題に入りましょうか。何の用があって来たのかわかっているし、いつまでもダラダラ喋っているのは違うでしょ?」

「摂政王はカズデルの武装勢力を統一した。誰も彼もが疲れていたからな、少し水を垂らすだけで従う。残った傭兵も間も無く軍隊として組織され各地に派遣される予定だ」

……なるほど。地盤固めはまだ終わっていないのか。合理的だ

「ラテラーノとヴィクトリアが怖いのか、あの簒奪者は」

「どんなものでもホッと一息をついた瞬間が狙い目だからな。お前なら絶対にそうするだろう?」

「違いない。ならばそこで一旗上げるのも容易いということか。クククッ、テレジアへの義理立てはあまり興味が無いが……オレと相対するべき最強を奪った罪は重い。その対価を支払わせてやるのも一興」

「待ちなさいG。あなた一人で摂政王とその関係者の命全てを、テレジアの復讐の名に捧げるつもり?」

イネスがバカを見るように告げた。オレという存在を見くびっているのか、あるいは純粋に心配しているのか、どちらかはわからないが、そこに何某かの感情は見える。だがオレの言葉と行動は変わらない

「まさか。それだけでは終わらない、終わらせない。のうのうと生きてる全てのサルカズもだよ。縊り殺してやるさ、必ず喰らう。やってやれないことはない。否、それを成してこそジェヴォーダンの獣。伝説は伝説らしく行くべきだ、そうだろう?」

「待て。頼むから話を聞け。まだ終わってないんだ」

「そうよ。まだ話は終わってないわ。だから聞きなさい。いい?」

「……わかった」

自分の意見を言っただけなのに、なんでこんなに責められなくてはならんのだ……

 

それはね。君がサルカズ滅ぼすの超coolじゃね? って発言したら、冗談には聞こえないからだよ。いいかいGくん。確かに私と君は3年でブラッドブルードを数百ほどぶち殺したけど、割と制御効いてないんだからね? 俺も君ならやりかねないと思うよ?

ていうか理論上は可能だし。(理論上)不死の黒蛇倒せるなら行けるし。とは言えども不死の黒蛇と同じ存在にでもならない限りは無理でしょうけど。(まだ8章までしか日本版は配信されてないのに何言ってんの? とかは言ってはいけない。これそういう体だし……)

 

>しょげるオレを無視するように、Wは会話を続ける

「へドリー。今あたしたちに付いてきてくれる人の全てが、かつてテレジアと肩を並べて戦ったことのある人よ。そんな人たちが簡単に従うの?」

「サルカズ傭兵のほとんどは、こう生きてそう死ぬという目標が無い。惰性で生きているだけ。だから方針が与えられれば、喜んでそれに飛びつくわ。考えなくて済むから」

「見上げた奴隷根性だこと……イネス、あんたが角を削った覚悟は確かでしょう。でもそうやってその場その場のサルカズのフリをするのはやめなさい。そのツラはサルカズのツラじゃない」

「捻くれた忠告ね。でも感謝するわ」

「──自称サルカズをいつまで続けるつもり? どこまで行っても逃げられないのよ、自分自身の問題からは」

どこまで行っても、逃れられない──その言葉が、嫌に刺さった。オレに向けたものではないはずなのに

「こういう風に生きるって決めたの。こうでしか生きられないから」

「それが思考停止のサルカズの真似事?」

「……」

「サルカズの真似事(レプリカ)で生きる、まあ悪くないわ。そう決めたならそうなんでしょ。でもそう生きると決めたらなら、こう死ぬということも決めなさい。それを目指して間違いだらけの茨の道を歩てみせれば、あたしはあんたを血肉までサルカズを刻んでサルカズになった存在と認められるから」

「あなたから、そんな言葉が出るなんてね」

「あたしと彼の前で、『こう生きる』って言葉が出てくればそりゃあね」

Wは笑った。だから摂政王に敗残兵として投降するという無様を、今すぐにでも意味のある投降に変えてみせろよと

 

ああ、W姉貴もトンチキになった……素晴らしい、素晴らしくない?

 

>へドリーは相変わらず暗い表情のまま、言葉を発した

「テレジアの死後、カズデルの情勢は変わり果てた。さっきも言っただろう、生きるためには垂らされた水を有り難がると。疲れ果てたサルカズにとって、魅力的だったんだ」

……つまり、へドリーたちには見逃す理由は無いというわけか。チラリとWに視線を送る。そして彼女もオレに視線を送り、刹那、互いにニィッと凶暴な笑みを浮かべた

「残念ね。見逃す理由が無いってのは。来るなら来なさい。昔のよしみよ、この首を好きに使えばいい──できるものならね」

「ジェヴォーダンの獣の首は安くないぞへドリー。欲しければ全身全霊を賭けて、腹わたから喰い千切る気で来い……肉が残っていればの話だがな」

やれるものならと戦意と狂気を滾らす。命の使いどころとしては相応しい──あの日つけられなかった決着も兼ねて、ここで全員喰い殺すのも悪くない

しかし、そんなオレたちに対してへドリーは武器も構えず一言だけ

「まず落ち着いてくれ。結論を急ぐな」

……では何のために? オレたちが疑問に思っていると、彼は言葉を続けた

「これからオレたちはウルサスに向かう」

ウルサス……ウルサス? 何故? おかしな話だ

「──意外な答えね。ていうかそれをさっさと言ってくれない? こっちから手を出しちゃうところだったじゃない。でも確かに興味湧いたわ。話してよ、へドリー『隊長』」

 

……とここからレユニオンについての解説が始まるので加速します。まあまだまともな頃のタルラが率いているので、ただのバベルです。はようテロリストになってくれや(クソ野郎)

え? 言うことがよりにもよってそれかって? コラテラルダメージですよコラテラルダメージ。RTAのための致し方無い犠牲です。

ちなみに話を軽くまとめると「まずうちさぁレユニオンって組織あるんだけど……傭兵の待遇がクッソいいですねぇ! 摂政王はそこに自分の手札を忍ばせて感染者を操ろうとしているゾ。カズデルはもう国ですらないし、迫害された存在が集まるレユニオンはサルカズのいい指標になりますねぇ」ってことです。

行き場をなくしたサルカズがレユニオンに流れても不思議では無い上に、色々と都合が良いってわけですな。

 

>「お互いの目的の為に協力し合えるということもあるはずだ。レユニオンまで辿り着けば、あとはなるようになる。どうせお前たちは俺の目的が何なのかわかっているんだろう──?」

へドリーとイネスが傭兵団を率いてここに来たのはそれが理由だった。

「……そうね。現実的なことから進めていけるなら、そっちを選ぶのがベストね。あたしが探している人はGと同じ本物の怪物。簡単にいなくなることは絶対あり得ない。それにあのババアも消えたし、カズデルにもう用は無いわ」

Wは笑顔のまま告げる

「でもあたしたちはあんたの命令に従うだけじゃない。自分の主人は自分だけ……自分のやることは自分で決める。それでいいでしょ?」

「ウルサスに向かう傭兵団に関しては向こうと統合運用されるだろうが、我々の小隊内部のことであれば構わない。俺たちも力になる」

「小隊外なら問題無いわ。上司との上手な付き合い方はよーく理解しているもの。あんたも得意でしょ、G」

「オマエほどじゃないがな、W。交渉だのなんだのは任せた。オレは拷問だの暗殺だのを任されよう。適材適所だ」

互いに笑い合い、武器をしまう。イネスの呆れたような視線が刺さるのが懐かしい。昔からこんな風にお互いに呆れたり軽蔑したり尊敬したり……色々な感情を上手にやり繰りしてきた。そして今また、再び

「──帰属を歓迎する。『W』『G』」

へドリーは確かな決意を秘めた瞳でオレたちを見つめた

……誰もが変わった。Wも、へドリーも、イネスも、部下たちも。変わらないのはオレだけだ。それでもへドリーやイネスに言わせれば人になったらしいが……Wは何も言わない。ただ微笑み、そして普段通りに接するだけ

オレの何が変わったんだ……?

 

そういうところやで

 

では今回はここまで。

ご視聴ありがとうございました。

 

次回はレユニオン合流後、Gくんが幻想に愛想を尽かすところからです。

 

おま◯けはありません。




Gくんの銃だけ新品同然な理由
先代『G』の得物なので、敬意を払って常に整備している。W姉貴との旅路でも隙あらば整備。

Gくん
テレジアネキのことが好き(意味深)だったので、テレジアネキへの手向け花を揃えるくらいわけない。でも求めるものは最強という名の称号だけど、W姉貴という痛みと離れるのも嫌。ワガママ

W姉貴
半分なんだから手放すわけがない。殺すのは自分で、殺されるなら半身。それ以外あり得ない。殺意と愛情が共存している

イネス姉貴
WとGの湿度が高すぎる関係がちょっと羨ましい。へドリー兄貴逃げて!


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Wを受け入れ、他の男に目移りする瞳

ようやく原作突入したので初投稿です


うぃぃぃぃぃッスゥゥゥ……どぅもー一般投稿者でぇぇぇす。

 

今日は続き……と言いつつもある程度飛ばしたりして、もうW姉貴という苦痛を愛することを決め、幻想に愛想を尽かしたGくんからお送りします。

え? レユニオンに従うまでの道中? まあ軽く内容をまとめると……

 

へドリー兄貴「お前Wのことが好きなのか?」

Gくん「えっそんなの関係ないでしょ。最強! 暴力! 混沌!」

イネス姉貴「あっお前さGさ、さっきW姉貴の首筋チラチラ見てただろ?」

Gくん「暴力! 暴力! 暴力! 最強! 混沌! (W姉貴すこ)(テレジアすこ)(W姉貴殺したい)(W姉貴に殺されたい)(テレジアと殺し合いたかった)(W姉貴あいしてる)」

W姉貴「暇ならほら、天災の中で傘も差さずに踊りましょ」

Gくん「参ったな。オマエの誘いじゃ断れない(愛しているぞW)」

へ&イ「まただよ(笑)」

Gくん「解せぬ」

部下s「いつまでやってんだろ」

 

もう飽きたでしょ?

愛想が尽きる時はパート3を見てもらって(露骨な宣伝)

 

>……とは言えども、Wという苦痛を愛するからと言ってオレたちの関係が変わるわけではない。へドリーとイネス、そして部下どもが生暖かい目で見てくるのがムカつく。殴るぞ

 

殴ったら死ぬのでやめろ。

 

>しかし、本当に何をどうしたものか。当初の理念は何処へやら、愚鈍どもの群れに成り下がった場など無意味、無価値。こんなところであのように誇り高きサルカズの戦士が身を置いているなどと

 

まあそもそもレユニオンって不死の黒蛇を満足させるための組織だしGくん的には面白くないよね。ただ彼的には……

 

>スカルシュレッダー……とかいったあのガキ。中々面白そうな雰囲気だ。メフィストとかいうガキは、視線からファウストとタルラにしか意識が向いていない。所詮そんなものか……つまらん。ファウストが意識を変えれば終わるが、アレにそれはできない。何故なら──そうすることなど頭に無いから。まったく、鏡でも見せられているような気分だ。殺したい

 

スカルシュレッダーくんとメフィストくんがお気に入り()の様子。まあスカルシュレッダーくんはミーシャ姉貴を拾ってしまえばただの雑魚になってしまうので……

メフィストくんはファウストくん殺すと途端に雑魚になるので……

所詮その程度なんだよね、子供だし。信念も正義も無い、怒りと狂気に支配された程度では死ぬしかないんですよね。思考停止はダメだよキミタチィ……

真っ直ぐに立てる意志と分別することの出来る理性がないと、より良い存在になれるという希望や人生を連ねていくという勇気があっても無駄なわけ。ムダ!

ま、感染者なんて10の悟りを1個でも持っている方が珍しいですけど。

 

実は私、スカルシュレッダーくん生存ルートかつミーシャ姉貴スカルシュレッダー化は知らんのですわ。今回できるかな。できるならやって生存させて後でボコれば終わりなんだけど、そうもいかんと面倒くさい。そもそもロドスに誰がいるかとか色々あるし、チャートを作るにしてもまずは差し込む隙を見つけねば

あ、ちなみに原作シナリオ開始時にロドスに所属しているオペレーターは完全ランダムです。一定数配置されているオペレーターを倒せばよく、オペレーター全員を無理矢理倒す必要はありません。というかチャートが必要なのは期間限定のスカルシュレッダー、メフィストフェレス、フロストノヴァ、パトリオット、不死の黒蛇です。この中で後に回せるのはフロストノヴァ(ひんし)とパトリオット(ひんし)だけです。スカルシュレッダー(偽)とメフィストフェレスは発生条件を満たさなかった時点でもう無理です

結論から言えば、チャートを組まなきゃいけない理由の大半がスカジ&CEO&黒蛇対策、スカルシュレッダー(偽)&メフィストフェレス発生条件を満たすように動くという一点のみです。まあ後者は無理矢理メフィストくんを石棺にぶち込めばいいんですがね。試走ではファウスト殺害後拉致して無理矢理ぶち込んで変異直後抹殺しましたし

なお1章ではそこまでオペレーターはいません。1章からスカジ姉貴とかいたら終わっちゃーうので……

あ、ちなみに今はレユニオンの幹部と構成員を見て回った後ですね。挨拶終わり。

 

>Wとイネスはへドリーにレユニオンの幹部と構成員に受けた印象を話している

「G、お前はどう見る? ジェヴォーダンの獣という、本物の狂気は」

「そうね。あなたの意見も聞きたいわ。あなたの視点は頼りになるもの」

「あんた、めちゃくちゃつまんなそうにしてたけど。どうなのそのへん」

三者三様にオレに声をかけてきた。なればこそ──

「タルラは、そうだな。()()()()()。視線が何処か遠くで、何か別の存在が、他人の言葉で自分の熱と理想を飾っているような……自分のことすら他人事に見ているような違和感があった」

「それはどういう意味? わかるように説明して」

「オレたちはオレたちだけの熱を持つ。だがアイツからは熱が無い……設計図通り生きて設計図通り死ぬ……とでも言えばいいか。機械か何か。そんな印象だ」

イネスは黙り込んだ。テレジアに心酔していたWも、その理想に共感していたへドリーも、彼女から違和感を感じていたようで、何か思い当たる節があったようだ

「小僧どもは力だけだ。首を斬るのも容易いが……スカルシュレッダーとか言ったか。あの小僧だけは、潜む物を感じる」

「それは得物としてか? お前が喰らうに相応しい存在としての」

「いや、戦士としてだ。素質があるが、所詮それだけ。二本足で立ってすらいない。そして戦士としても、あの誇り高きサルカズと比較するまでもないが……」

吐き捨てるように言い放つ。どいつもこいつもつまらない。テレシスに組した者たちでも、ここまで愚鈍な奴らはいなかった。様々な事情こそあれど、それでもと未来を信じて戦っていた。だがコイツらは違う。薄っぺらい

「誇り高きサルカズの戦士……? サルカズがいたのか? レユニオンの幹部に?」

「ええ。小ウサギちゃんの側にいたわ。本人はウルサス人って言ってたからカズデルとは縁を切ったんでしょうけど。そう……Gがそこまで評価するなんて珍しいじゃない。あんた、間違いなく口説きに行きそうね。疲れる生き方だとあたしは思うけど、そういうのがいいんでしょ?」

妬心混じりでもあり、嬉しさ混じり。Wの複雑な感情がオレに絡まる。やめてくれ、オマエ以上の存在にはなり得ないが、それはそれでこれはこれなんだ。カッコいいモノには焦がれずにはいられない。ていうかカッコいいだろう、あのサルカズ

「まさか、あなたと同意見になるとはね、G。ええ、確かにカッコいい……戦士を超えた戦士。へドリー、特にあなたは一度話してみるべきだわ。どういうわけかそこのバカから一つの悟りを得たみたいだけど、あの人と話せば最低でも二つ以上の学びを得られるわ」

「……彼か?」

「噂をすればって奴ね」

噂をすればだ。全身に鎧を纏ったサルカズがオレたちの元を訪ねてきた。見ればわかる、この全身から立ち昇る光。あんな偶像や小僧どもとは比較にならない程の眩しさ、美しさ。幼少に夢見たクイロンの伝説を彷彿とさせる感覚。心が躍る、魂が叫ぶ、この戦士を──全存在を賭けて喰らいたいと

だがその時ではない。また単なる反乱などでこの戦士と刃を交えるのは無礼極まりない。この偉大なる先駆者にして戦士を超越した戦士と刃を合わせるのであれば……もう一人の先駆者と同じく尋常なる決闘の場に限る

「邪魔する。君たちと、話したい」

 

パトリオットの大旦那ですね

正面から戦うと生半可な初見殺しすら通用しないクッソ強いおじいちゃんです。こういう作品の老人は死に損ないじゃなくて生き残りって、それ一番言われてるから

Gくんセンサーもビンビンです。下手したらW姉貴以上に興奮してるかも

 

「……あなたは」

へドリーがこの二人称で誰かを表現する時は、基本的にその者に対する敬意がある時。まさにそうだ……この偉大な戦士に敬意を払わないなど、絶対にあり得ない。それがサルカズであれば尚のこと。Wですらわざわざ身体を向けているのだ

──喋りづらそうな喉と声……この戦士は、喉に鉱石が……テレジア。オマエが生きてバベルの連中を指揮していれば、この戦士に与えられた「言葉を発し辛い」という枷を外せたろうな。ああ、口惜しい。これほどまで素晴らしい存在が、どうしてこんな……クソッ

「私が、何者かは、今はいい。今の私は、レユニオンの、リーダーの一人、ではない。安心、してくれ」

個人として来たと語る彼の言葉をオレたちは想像できた。そうだ、オレたちですらテレジアと肩を並べて戦ったことがあるのだ。この戦士にそれのような経験がないはずなど、ない

「聞かせて、くれぬか……同胞たちと、故郷で起きたことを。カズデルで、何があったのか。噂は、聞く。だが、それだけだ。詳しく、知りたい」

「あんたはウルサス人でしょ? そう言ってたじゃない」

「ウルサス人と、サルカズは、矛盾しない。流れる血は、変えられない。闇は、根深い、ものだ。気にかけたことは、ないが、それでも、揺るぎない。……君も、そうだろう」

オレに視線が向けられる。──ブラッドブルードという鼻摘まみ者に生まれ、そんな自分が惰性で生きている中で見つけた、クイロンの伝説と最強という輝きは……血を啜らねば生きていけない、他者へ依存した同胞という名のカスどもを否定したかったという思いもあったのが今更浮かぶ。だがオレはブラッドブルードで、それは変えられない。ウルサスとしながらサルカズを捨てきれないこの戦士のように

「ああ、そうだとも……素晴らしき戦士、偉大なる先駆者。よくわかるさ。──聞きに来たのはテレジアのことだな。本当に聞きたいだけなんだろ?」

「私は、テレジアと、かつて、会ったことがある」

「へぇ──」

Wの目が変わる。この存在を認識したのだ、明確に

「君たちの、反応で、わかった。彼女は、君たちに、生きた証を、残した。君たちは、サルカズだから。泥を啜り、血塗れでも──英雄、として、偉大な、戦士。稀代の、君主……少なくとも、そう崇められているし、私も、そう思って、いる。例え、ウルサスに、忠誠を誓い、種族が、サルカズから、放逐されても……私が、サルカズであることに、変わりない。彼女の、カズデルに、何が、起きたか──真実を、知りたい」

──美しい。なんという、美しさ。気高き戦士。本当にどうしてこれほどの御仁が、あんな薄っぺらな虚に従っているのか……

 

多分タルラ姉貴に忠誠を誓ってると思うんですけど

 

>……そうしてテレジアの話を聞いた一人のサルカズは、オレたちに感謝の言葉を告げた。そして去り際に──つい、声をかけてしまった

「偉大なる戦士。いつか、いつか──オレと決闘をしてくれるか? 全存在を賭けて」

目の前に現れたヒーローに、写真を撮ってくれとでも頼むような羞恥心。自分の表情など、どんな眩しい笑顔をしているのかくらいしか想像も付かない。ただ目の前の戦士は、少しだけ悲しげにしながら

「……約束は、できない。だがもし、その時がくれば」

「っ、ああ……ああっ! それだけでも嬉しい……アンタほどの存在が、オレと刃を交わしてくれるだなんてっ……! 待ってるともその時を。偉大なる戦士!」

オレの熱意が少しでもその鎧の奥に届いたのか、ほんの少しだけ苦笑するように肩をすくめると、ヒラヒラと手を振ってくれた

 

ヒーローショーでテレビの中から出てきたヒーローの本物仕草を見て歓喜する子供かな?

 

>やった──ッ! 嬉しい、とても嬉しい! あれほどの戦士に、時がくれば対等に戦うべき存在と認識されるだなんてッ!

「──G」

「なんだダブ──……ッ!?」

殴られた

笑顔のWに、殴られた

なんで?

 

そらお前が半身放ったらかしでパトリオットおじいちゃんに熱を上げてるからだよ。しかも数十分前にお前を受け入れよう、現実をお前と共に傷付いていくって言った直後にパトリオットおじいちゃんにラブコールよ? Gくんは殴られて然るべき。

到底、許される行為ではないと思う。

 

>「あたしはここにいる。苦痛(あたし)を愛することを決めたんじゃないの?」

「それはそれで、これはこれだから……イネス、へドリー。なんて言えばいいんだ、こういう時は」

「自分で考えるんだなG」

「女は面倒よ」

倒れ込んだオレにWが馬乗りになる

「あんたはそうやって誰彼構わず、カッコいい奴の尻を追っかける。何G、枯れ専のホモだったの?」

「枯れってオマエ……ていうか同性愛と一緒にするな。カッコじゃないか彼」

「そうね。で? あんたとあたしの間で交わされたあの言葉は嘘なの?」

「嘘じゃないから退いてくれ。立ち上がれない。あとアレだ、あー……悪かった。やっぱり、オマエがいい。オマエこそオレの苦痛だ。オレが死に就く日にも、オマエだけが心の奥深くに入り共に整然と横たわる存在だ」

こ、これでいい……のか? 一番殺したいし、殺されたいのは──だし……嘘じゃないし……でもあの偉大な戦士に挑みたいし……嘘じゃないし……

「あっ、そう」

Wはなんか面白くなさそうに呟いた後、オレの首に爪を食い込ませてから複雑そうな顔で退いた。いやホントオマエ……どうしたんだ? 誰に熱を上げようともオレの勝手だし、そういうオレだとオマエは知っているだろう? なんだ急に

「G、あんたはいつもそうね。まあ、そう……そういう男だもの。なんていうか……ああ、でも──少しだけ、あたしだけを見なさい。あんたの視線、たまには固定するべきよ」

「……まァ、そうさな。わかった。たまには視線を一方に向けてみる」

その言葉に満足したように、Wはオレから視線を外した。一方、ジッとWを見る

バベルにいた頃、Wは女性陣から顔がいいとか色々言われていた。カワイイだとか、キレイだとか。なんだろう、かわ……いい……のか? わからん。まったくわからん。カワイイだとか、キレイだとか、そも外見的な話の醜美がオレには理解できないのだ。カッコいいモノはカッコいい、それだけじゃないか。そんな時、あの日カンフーの達人であったウルサス人の女優を思い出した。なるほど……? いやでもあれは、努力の賜物だし……んん?

やはり、わからん

「あの顔、絶対他の人考えてるわよ」

「俺は時々、二人がわからなくなるよ」

なんか、へドリーとイネスが呟いている。なんだってんだ

 

……いやホントこいつダメだな、グチャグチャすぎる。とりあえずW姉貴すこ! 戦争! 暴力! 最強! しかないんですけど。

なんでこんな出来損ないのツンデレと天然みたいな反応してるんだこいつ。私が生み出した存在ながらよくわかりません。最強を目指したりW姉貴に苦しむ彼はよーく理解できるんですが、天然ボケしてるところはまっっったく理解できません

 

さてさて後はつまらない話ばかりなのでチェルノボーグ襲撃へと時間を進めましょう。この裏でScout兄貴とW姉貴の裏取引とかあるのでまあちょっと解説しましょうか。

ざっくり言うとドクターに用があるのはWもロドスも同じなので、ドクターを確保させてあげる代わりに、サルカズグループの頭を殺して欲しいという取引です。戦場のゴタゴタで全部誤魔化して、自分たちをテレシスの目から外して動きやすくするというわけです。(本当に外れたかは不明)

W姉貴的にはScout兄貴の処理をへドリー兄貴とイネス姉貴に一任しているので、見逃そうが仕留めようがどちらでも構わないんでしょう

処分は一任するわ(DIAN姉貴)

で、その裏でエンカク兄貴の裏切りもあります。というか色々ありすぎます。……過密スケジュールすぎんか? ロドス側も二週間で不死の黒蛇ゾ?

さて、では等速に戻します。

 

>チェルノボーグの襲撃? ウルサスは感染者を迫害しているから血祭りに上げて狼煙とする? なんだそれは

ウルサスの内情はあまり知らないが、仮に権力闘争が発生している時にでも行えば共通の敵が生まれてしまうぞ? オレなら両陣営に有る事無い事吹き込んで、他国からの干渉し易い土台を作り出す。そこをすかさず強襲し頭を潰す。後は蜘蛛の子を潰す作業にする……なのに

「……へドリー」

「お前もか、G」

「ああ。キナ臭い」

この雰囲気は何か、キナ臭い。レユニオンという烏合の集を使って真の目的を達成しようとするような……オレたちは何をさせられている? 何の手伝いをさせられている? 毎度の如く行われる扇動・奇襲・略奪……途中からやる意義を見出せなくなり、ただ眺めるだけになった。オレの戦場ではない……

「──だろうな。俺たちのやっていることがカズデルよりも酷いことになってきた時点で薄々とは思っていたが……」

「舵取りをWとイネスに任せて正解だったな。オレたちでは後手に回るか、荒っぽいやり方しかない」

「違いない。が、Wの考えは何となく読めている」

「オマエの方は?」

「どの道ヴィクトリアに行くことになる。そうでしかやれない道もある。G、Wの側にいてやってくれ。お前にしかできない瞬間が必ずある」

「わかっているさ。心配は……いらんだろうな、へドリー。オマエにはイネスが合わせる。オレはWに合わせる。オレたち個人個人でできる、オレたちだけの戦いを始めよう」

互いに意志を確認する。為すべきことは決まった。ならば為すだけ。互いにこう生きてこう死ぬと定めた。後は傷だらけになりながら生きていけばいい。見ているがいい、摂政王。歪な名を持つ歪な王よ、最後に"勝つ"のはオレたちだ──

 

Gくんは冷静だけどやれることが殺ししかないのでへドリー兄貴やイネス姉貴に情報戦を任せるようですね。意見はするけど全体的な方針決めはW姉貴に任せ、サルカズの為の戦場では真っ先に火蓋を切る役目を果たす……そして最強になる。いやぁ、覚悟決まるとやることなすことが明確になっていいですねぇ……

 

>へドリーとの確認を終え、テントの外へ出る。夜空を見上げる。決行は明日だ。無駄な殺生が始まる。だが、オレはオレの望みを果たしつつ、W(痛み)と向き合い続ける。そう決めた。ならばそうするだけ

「おい、G。何をしている」

レユニオンの構成員が声をかけてくる。まあ、そうか。突然サルカズ傭兵がテントから出てボーッと空を眺めていればそれは不思議か。ならば、そうだな……

「夜空には誰もいない。星が瞬くのは遠い暗闇の中だ。では、この夜空に浮かぶ光とはなんだ?」

「は?」

「光は太陽が来れば見えずじまい。ならば光はどうやって太陽の光の中で己の存在を証明するか……知られることしかあるまい」

「一体、何を……」

「レユニオンは太陽に照らされた石だ。オマエたちは熱で溶けているだけ。炎から離れる時こそ、蝋の翼が羽ばたけるんだよ」

「我々の思想を愚弄するのか? それ以上の侮辱は、あらゆる感染者への侮辱と同じだ」

「何故惑星は皆が惑星であると思うのかな。時には恒星もあるだろうに。暗闇の中を照らす輝きは、時として目を焼くものだ……」

 

ポエマーすぎる

 

>暖簾を押すような感覚に呆れたのか、あるいは答えているようで答えていない風に答えているのがわからなかったのか、構成員は「明日に備えろ」とだけ言って去る

意外と良いな、この詩的な表現で会話して回りくどい言い方で回りくどく答えるのは。奇人変人のレッテルが付けば、オレに近付く者も少なくなるだろう。傷の舐め合いですらない自慰行為をする連中など、話したくもない……

 

ひっでぇ言い草だこと。感染者が立場を選べるわけないんだよなあ? なまじ生きる意味、意義、価値をパッと見出して最強という曖昧な物を確かな現実にしようとしている男にとっては、ただ眼前の怒りに身を投じるだけの存在は全部塵屑なんでしょうね

 

では加速して──さぁ、チェルノボーグの襲撃です。

 

>市街が燃える。人々が虐殺される。怒りが解消される。吐き気のする場所だ。つまらないヤツらがつまらないようにつまらなく殺している。まったくもって度し難い。結局、あの龍の思想など何処にもなかったわけだ

……ああ、なんて無価値な光景だ。無意味で、どうしようもないほど……虚しい

「G、退屈?」

「ああ、退屈だ。ここまで愚鈍だとは思わなかった」

Wの質問に答えて、眼前の火を眺める。これが正義か、おこがましい。どいつもこいつもつまらないヤツらだ。パトリオットとフロストノヴァを見習ってもらおうか。彼らは思考を止めていないんだ

そして久方ぶりに見たバベルの亡霊……かつての戦友を思い返す。死ねと言ったオレたちに答えてみせた、偉大な戦士たちを

「Scoutは死んだのか」

「さあ? 処分はあの二人に一任しているわ。あの二人ならきっと生かすでしょうね」

「……何故だろうな、()()

「誰だって平穏なひと時を過ごした知り合いが死ぬのは、心苦しいものよ」

ああつまり、W。オマエもか。まあ、そうだよな。アイツには……いやアイツらとは、長すぎた。それが事実だ

「──ヤツらはヤツらの戦争を始めた。オレたちもオレたちの戦争を始めよう」

「そうね……って、あら?」

オレたちも行動に移すかと思ったその時、面白い報告が入った。レユニオンに組するサルカズの一部が、離反したと。骨のあるヤツか、あるいはただの愚か者か……どちらにせよ、楽しめそうだ

 

……エンカク兄貴ですなァ

 

>Wと共にその場へ向かう。そして見つけたのは二刀を携えて、ゴミどもを蹴散らす男の姿。まさしく剣客という言葉を体現するかのような男だった。話を聞いていると、どうやらWの古馴染みらしい……本当にただの古馴染みのようだな。オレが関心を向ける間柄では無さそうだ。色々と見ていたらしい。勧誘しても乗り気ではないようだ

 

立派に嫉妬しちゃってぇ、人間らしくなったねぇ……

 

>ああ、ダメだ。この男の純粋なまでの狂気が心地いい。これだ、この瞬間をオレは戦場に求めていた。オレの魂が居場所を求めている。もう、抑えられない。ずっと待っていたよ……オマエのような、誇り高き戦士を! 前へ進んでしまう自分を止められない。襲いかかるな、まだ抑えろ……!

 

……あれ? 抑えてくれないの? えぇ……ウッソだろお前www

柔軟性もクソもねぇじゃねぇかよ!! この戦闘マシーンめ! モンスター化した時の方が戦闘するしないを選べるとかなんだよもおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉまたかよォォォォォォ

 

>「お前は……ああ、Wの犬か?」

目の前のサルカズはオレをつまらないモノに向ける視線で見る。

「どいつもこいつもつまらん奴だ。砥石にすらなりやしない。お前はどうなんだ、犬」

「ククッ、獣と称されたことあれど、犬は初めてだよ浪人者」

途端、その視線は──覚えのあるものへ変わった。この視線はただ一つ、偉大な先駆者と同じ……

非礼を正すように、その男は姿勢を正し視線をちゃんと此方に向けて尋ねてきた

「それは失礼した。かの悪名高きジェヴォーダンの獣とお見受けするが、如何に」

「そうだ。オレこそジェヴォーダンの獣と呼ばれたブラッドブルード。悪名高き伝説の同族殺し。今は喰らった偉大なる先駆者と同じ名前を、若輩ながら名乗らせてもらっている」

「俺はエンカク。その偉大なる先駆者と雄々しいお前の名を、是非聞かせて欲しい」

「Gだ」

「……G……」

福音を転がすように、エンカクはその名を呟いだ。口元は邪悪な三日月に破れて、剣を握る腕には膂力が伝わっている

「──ちょっとG? 何男口説いてんのよ。あたしたちには仕事あるんだからね」

「わかっている。おい、そこの」

近くにいた構成員に声をかける

「邪魔だ。引け」

「あんたほどの傭兵がいうなら……」

そうしてオレとエンカクの二人だけが、敵意を向け合う形になった。そう意識した途端に……ダメだった

「ああ……ダメだ抑えられんよエンカク。オレはオマエを喰い殺したい。だから、なァ……その刃を噛み砕かせてくれ……!

「いいぞG。お前のような魔物がWの下で共に愚鈍共とつるんでいるのは全くわからんが……証明してみせよう。俺の刃は、獣の皮ごと首を落とせるということを

「あんたたち、まだ話が終わってないんだけど」

Wが何か言っていたが聞こえない。ここでお預けは無しだろう? 相棒……!

「血で血を洗おうじゃないか、G!」

「その刃、へし折ってやるよエンカク!」

 

てなわけでエンカク戦です。まあW姉貴が5分以内にホモ祭りすなとキレるので軽いイベント戦闘みたいなもんです。エンカクを倒せるなら倒してもオッケーですが、ぶっちゃけ難しいです。いかんせん、エンカクは強い奴と戦う時ほど強いので、際限無く限界突破する可能性があります。

Gくんの能力ではエンカクよりも技量が足りません。総合力では優ってますが、技量では後手です。試走では初見殺しによる奇襲で仕留めましたが、今回は正面ですので初見殺しを交えても難しいですね。

 

>駆け抜ける。長剣が震えている。強敵だ、久しく忘れていた強敵だ。魂が叫ぶ、喰い殺せと

向こうは二刀を構える。不足は無い。剣を振るう……防がれる。当たり前だ。相手の方が強いのだから。続けて繰り出される大刀と小刀を巧みに使った二連。一刀では無理だ。引き抜きた短刀と合わせて防御……ダメージは大きい。彼我の実力差は、接近戦に限れば多少の研鑽では埋められない。ならばそれよりも更に更に更に──先を行くしかない。慣れ親しんだ感覚が内側から溢れ出す

「っ、速いな。俺が考えていたよりもずっと。お前の能力以上に」

「限界? 知らんなそんなもの。最強たれば能力の差を埋められて当然。技量差? そんなものはな、限界以上の力を引き出せばまかり通るだけだろう──!」

鋼がぶつかり合う。轟音が響く。エンカクよりも早く剣を凪ぐことで技量差を埋めていく。彗星が飛び交い閃光が弾ける。押されるが問題無い。アーツで出力を上げれば速度もパワーも追い付ける

楽しい、エンカクもオレも笑顔だ。久しく充足できる……喰い殺す楽しみがある。さあ、もっとだ。もっと昂れ、もっと狂え、最強のの二文字の礎になれ──!!

「……面白いな、それだけの力を引き出せば反動も大きいだろうに。それら全てを意志力一つでねじ伏せるだと? 実に素晴らしい。実に斬り甲斐がある!」

「く、くはははは!! 楽しいなエンカク! 血沸き肉踊ってこその戦いだ! ああそうだ、こうじゃなくちゃなァ! 最高だぜオマエ! オレの伝説を彩る花に相応しい!」

「ははははは! お前こそ! 俺の剣を彩る血として申し分無い!」

二刀をまるで踊らせるように炎と刃が揺らめいて暴れる。長剣と短刀を使ってそれに合わせていく。彼我の技量差はまだ埋まり切らない、アーツの差と経験の差が更に差を生み出す。けれど知らぬ存ぜぬと真っ直ぐに向かっていけばそんなものは全て誤差だ。互い更に更にと燃え上がって遂には全てエンカクと並び立ち──

刹那、銃声が響く。エンカクとオレは示し合わせたように後方へ飛び、銃声の発生源を見る。──Wだ

「はいそこまで。話はまだ終わってないわ」

「……W、俺たちの邪魔をするほど重要な話か?」

「勿論。でなきゃ止めないわ。ほらG、下がりなさい」

「……ああ。すまんなエンカク、誘っておきながらお預けとは、なんとも情けない」

「いいさ。忘れられない体験になった。続きはまた今度ということにしよう」

 

……なぁーんでコイツらやり取りがホモっぽいんですかねェ?

 

>その後の事は単純だ。ロドスに向かっていたエンカクに、かつて彼の部隊を葬った男──ドクターがそこにいるとWは告げて、一種のけじめとしてレユニオンの部隊に攻撃指示をした。エンカクはこの包囲網を突破する。オレにはわかる。ヤツは抜ける。それが現実だ。傭兵団は下がり、オレもまた久方ぶりの好敵手と別れてしまった……

「パトリオットに惚れたと思ったら、今度はあいつ? 節操無しね、ほんとに」

「それがオレだ。仕方ない。で……行くのか、アイツのところへ」

「ええ」

Wの表情は見えなかった。狂気の微笑みに隠されたその先をあえて語る必要もあるまい。オレだけが、わかっていればいいのだから

……別に、最近構ってやってないしすぐに他の男へ目移りしていることへの報復が怖いとかじゃないぞ。本当だからな

──オレは誰に向かって言い訳をしているんだ

 

というわけで次回はロドス戦からです。

ご視聴、ありがとうございました。




Gくん
「W姉貴を受け入れる」と決めた途端に他の男に目移りするバイ

W姉貴
誰に目移りしようが別に構わないが、だからといって秒で目移りされると流石に怒る


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戦闘用デンキウナギ

珍しく戦闘描写に力を入れたので初投稿です。


──黒い一陣の風が吹いた。

 

「退くなら何もせん。オレたちはその先に用があるだけだ」

 

黒髪青目の男──レユニオンにしては異質な雰囲気を纏い、危うさと純粋さを感じさせる、現実からズレたような人物。

鼠色と黒混じりのロングコートをはためかせ、右手に山刀のような形状の無骨な長剣を握り、左手にリボルバー構造を採用したラテラーノ長銃を持ったそんな男が、眼前に現れる。

右手の剣の刀身には無数の細かい傷が入っており、また鍔も経年劣化か形が崩れている。そんな歴戦の武器とは対照的に、左手の散弾を装填した長銃は新品同然の外見をしていた。余程丁寧な手入れをしていたのか、銃を手に取る者が見れば、惚れ惚れするほどの整備技術が見えて……同時に、吐き気を催す程の執念が感じられた。

 

「オレとアイツの用事は、ただ話を聞きたいだけだ。危害を加えるつもりは一切無い。……今はそれどころでもないしな」

 

たった一人で行動予備隊の前に現れたサルカズ。その一言一言が、へばりつくような湿度を纏って耳に侵入してくる。なんだ、これは──ギョロリと目が動いた。全員を値踏みするように眺めた後……こちらは臨戦態勢を取った。その様子に感心するように、あるいは敬意を表するように目を細めると。

 

「敵対の意志有り、だ」

 

その背後からゾロリゾロリとレユニオンを率いて、サルカズの女性が現れる。見なくてもわかる……他の偵察部隊を全滅させたのはこいつらだと。

 

「あら、残念。素直に退いてくれれば見逃したんだけど。じゃあ遊びましょうか。適当に構ってあげて、G」

「了解した、W。……全隊、攻撃を開始しろ」

 

ダンッ──と地面を踏んだ音がした次の瞬間には。

 

狂奔の絶叫が轟き渡る。

へばりつく湿度に、生暖かい温度が混じる。

獣が現れた。

怖くて、悪い、恐ろしい獣が。

 

 

────

 

 

どうも、一般投稿者です。

ロドス戦から……とは言いましたが、今回はW姉貴と足並みを揃えて行動しているので、ジェシカ姉貴率いる行動予備隊との戦闘から始まります。

え? 行動予備隊? W姉貴とその部下たちと+αで撤退したんだから楽勝でしょ? と思うかもしれませんがジェシカ姉貴が率いる行動予備隊は戦術・戦略共に質実剛健。生存重視の戦法とハメ殺しを狙ってくるので下手に突っ込むと一瞬で袋叩きにされて死にます。

そして今も血気盛んなレユニオン構成員が一瞬で血袋になりました。ダメだね。

戦いは数だよ兄貴!(DZR)

 

>銃弾を弾き飛ばし、クロスボウの矢は叩っ斬る。近付いてくる剣士は銃撃で牽制し、相手の距離に踏み込まない。別段、倒さなくていいのだ。帰ってくれればそれでいい。見たところ、まだ青さの残るヤツらも多いが……なるほど。あの男の救出作戦に動員されるだけのことはある。いい腕と素質だ

 

まあ、正直行動予備隊に負けるというのは、W姉貴に鍛えられているなら致命的なガバを犯さなければあり得ません。強いことは強いんですけどね、いかんせん新人だし、ジェシカ姉貴は精神的には普通だし……あ、剣神(レア度詐欺)メランサ氏は原作性能とは異なりトキ化しなければまだ脅威ではありません。

原作忠実モードでやると剣神が剣神すぎるので危険です。

 

私「ハッハー! ねじ伏せてやるぜぇ!」

剣神「フン、ハァァァァァ! 血が滾ってきたわ! 行くぞ、走者ァ!」

私「アイエエエエ!?」

 

……いやな思い出でした。

 

やる気無いW姉貴とやる気だけはあるレユニオンのモブたちを上手に使い、こっちは銃身で殴ったり、散弾を掠めさせたり、適当に剣戟であしらったりしておきましょう。

 

非常に退屈な場面なので加速しましょう。相手もそこまでやる気無いし、あくまでも撤退までの時間稼ぎといったところです。上手に退かせつつ、消耗を抑えましょう。傭兵部隊はW姉貴の指示を受けたへドリー兄貴が再編成中なので、彼らは戦闘には参加できません。というか、W姉貴もこういうつまんない仕事やらせたくないでしょうし。

 

>敵は撤退した。確かに負傷者は出ていたが、それでも全員生きて撤退したのだ。司令塔も部下も皆、見事だったと言わざるを得ない

「見事な退き際だな」

「G、追撃するのか?」

「慌てるな。我々の最優先目標はチェルノボーグだ。余計な戦力喪失をしては意味が無い」

Wに視線を移す。彼女は──

「会いに行きましょ」

「感動の再会というヤツか」

「らしいわね」

怪訝な雰囲気のレユニオンどもを無視しながら、二人で若干浮き足立ちながら、古い友人に会いに行くのだった

 

判定勝ちでトロフィー進行しました。……はぁ……なんか、ちょっと悲しいな。やっぱりこう、心が痛い……

W姉貴はあんまりドクターのこと好きじゃないけど、Gくんはドクターのこと割と好きなんですよね。やっぱりホモじゃないか(諦め)

こいつW姉貴という苦痛を受け入れたってちゃんと自覚してるのか? またW姉貴にパンチされても知りませんよ。

 

>──懐かしい男がそこにいる。久しぶりだな、ドクター……バベルにオレたちが所属していた頃以来か。横のコータスは、誰だ? 見覚えはあるが……さて。他の顔も知らんな。再編したらしい。……確か、ロドス・アイランド……ふっ、ロドスか。懐かしい

 

ネームド面子はどうやら原作通り、CEOにドーベルマン教官にニアール姉貴。まあここは固定みたいなもんですからね。完全ランダムと言ってもメインメンバーは固定です。おかげで2章からいきなりサリア姉貴とか、モスティマ姉貴とか、スカジ姉貴とかもあり得ます。ま、今回はエンジョイも兼ねた調査プレイです。誰が来ても発狂しませんよー

 

>Wとドクターを庇うように立つコータスが舌戦を繰り広げている。死ねと言われれば死ぬ奴隷、そんな犠牲で作られた屍の道を歩くにオマエらは相応しいか──ドクターが口を挟んだが、Wはそれを斬って捨てる

コータス……アーミヤと呼ばれた少女は、テレジアのように頑固たる意志と覚悟をその瞳に見せて

「W。彼らは下僕になったわけではありません。彼らは自分で考え、自分で選択してくれた……私が、ロドスが、自分たちの命を預けるに相応しい存在だとして。ロドスの皆さんの命には、等しくかけがえのない価値と輝きを持っています。その光を──これ以上あなたに穢させはしません! ドクター!!」

……なるほど。クツクツと声が漏れた。ああ、テレジア……行動はどうかは知らんが──オマエの意志は、確かに生きている

「ロドス総員、戦闘配置!」

ドクターの号令の下、ロドスの戦闘員たちが戦闘態勢を取る。懐かしい陣形だ

「ふふ……なら、こっちも"あれ"で行きましょうか。G」

Wはオレにハンドサイン──昔から使っていた、オレに先鋒を任せるサイン──を送る。オレはそれに、口元を邪悪な三日月に割りながら、背負った長剣を抜き放ち、腰に下げた銃を引き抜くことで応える。烏合の集はWが直接指示するようだ。戦術パターンは、ドクターの得意なヤツ……当てつけか

「明星への賛美歌を謳えよ、最後の楽園。瓦礫の塔より這い出た魂たるば、虚無には無い光を見せてみろ」 

……Wが目を丸くしている。オマエそんなんだっけ? みたいな視線だ

いや、なんかドクターの様子がおかしかったから、ど直球に色々言うのはどうかと思ったならなんだが……不味かったか? オマエも正体を明かす気は無いんだし、ミステリアスな方が良くないか?

 

さて、ここからはロドス戦なのですが、別に今回は倒す必要は絶対に無いので、ニアール姉貴で何処まで通用するかを把握します。生身Gくんのステは、改造手術の土台用の高ステ……器用貧乏です。全員倒しきれるほどのステはありません。常にかなりギリギリの戦いを強いられるでしょう。Wブーストで自壊しないラインを攻め続けられるか……頑張りましょうか!

あ、今回の戦闘はニアール姉貴視点でお送り致します。私もGくんもすごく淡々としているので、たまには他の人がいいでしょう?

……そういやこのシリーズで初めてまともな戦闘シーン流しますねぇ……最強を探す旅路なのに、不思議ですねぇ。

 

────

 

(……へばりつく湿度、生暖かい狂気……)

 

ニアールはドクターの指示により優先的に対峙している男……Gと呼ばれたサルカズを見る。鉄壁を崩せずにいるが、何か奇妙な歪さを感じていた。

 

(この男……ブレイズらよりも数段低いが、木っ端の者では相手にならない。しかし、なんだ? たった十を打ち合った程度で、私が動きを見切れるような戦士が、生き残れるはずなどない……)

 

ニアールの経験からすれば、何処かの戦場であっさり死んでいるような戦士と変わらない。逆を言えばその程度。盾を貫き斬り裂かんと振るわれる長剣も、彼女自身を害さんと放たれる銃撃も、彼女が打ち倒してきた強敵に比べれば練度が足りない──いや、既に限界なのだ。打ち止めになっている。器用貧乏を自分自身の限界まで突き詰めて……そこで終わってしまっている。

 

(才能を全て使って、そこで終わった……戦士として限界。これ以上強くなることなどあり得ない……)

 

盾を振るい剣を弾く。そのまま盾で殴りつけて、体勢を崩させる。そこにすかさずウォーハンマーを振り上げて──

 

「──当たる」

「……っ!?」

 

散弾銃を地面に向けて発射。そこで得た僅かな推力を、先程とは比べ物にならない脚力で拾い上げて、崩しかけた体勢から銃撃と異常な身体能力で空中で回転することで復帰しつつ、サマーソルトに繋げてニアールの顎を狙ってきた。咄嗟の判断──ウォーハンマーで防ぐ。ギンッと不快な金属音が鳴り響き、彼女の視線がGのブーツの先から出る刃物を認識する。

 

(──仕込みナイフ!)

 

()()だ。

Gの能力では無理だと、ニアールの経験と知識が告げてるのにこの男はやってのけた。先程とは比べ物にならない反射神経と身体能力で。アーツによる強化? いやいくらアーツで強化しても、本人のできるできないに左右される。

才能はそれをできない、能力はそれに満たない──だが、()()()。本人の表情から()()()と踏んでいたのは明らか。それを間違えたら、などの考えは皆無。願望混じりの行動などではない……確信している。

互いに離れ、様子を伺う。隙らしい隙も無く鉄壁の防御と圧倒的な武力を兼ね揃えたニアールを討つには、さしもの獣とて見に徹する必要がある。

 

「……仕留めると決めたんだがな、防がれるとは」

「貴様、どうやって足りない能力と才能を補った? 経験だけではできんぞ、あれほどの無茶は」

「何。少し神経を早く伝達して、少し身体能力を通常以上に発揮しただけだ。人間は信号の塊だからな──伝達速度を上げて足りない能力を引き出せば問題なかろう」

 

Gは医学を理解している。

彼のアーツは、圧倒的な身体能力強化。使ってしまえば人体の限界を超えた機動を実現しつつ、その負荷を飲み込める。その上で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という防衛本能が抜け落ちたような行為を行っている──

 

理解した医学も、掻き集めた知識も、なにもかも全て自分のアーツを極限まで活かすため。あとはできるできないの尺度だが──()()()()()()()()()()()()。それがGという狂気の存在の中で、最も恐ろしい()()()()()()()()()……幻想を目指す(最強を求める)ようになった悪鬼羅刹が、真っ先に手に入れた『異能』である。

 

「戦場という死の中で、更に死に向かって疾走するとは……貴様、馬鹿なのか。静止するべき機能を、何処に置いてきた」

 

ニアールには理解できない。自壊しながら闘争を行うなど。常日頃からこのように、この男は全身を砕きながら再生しつつそれ以上に破壊しながら突き進むこの男が。

 

「止まる? そんな必要は無い。傷だらけでも突き進むのみ。最強の字の前には、死すらひれ伏すものだよ──女騎士ィ!!」

 

先程よりも更に素早い速度で切り掛かってくる。限界など超えたその速度はおかしい。疾い、疾すぎる。先程ニアールの目に映った何処かで死んでしまってそうな存在とは違う。人の形をした、まったく別の魔物に映る。それはまるで、破滅の権化のように。

剣と盾がぶつかり──剣と敵の肉体から青い稲妻が弾けた

 

「ぐ、っ──!?」

 

感電……人間の持つ生体電気を極限まで上昇させて、自滅するスタンガンとして自らの内に存在する稲妻を弾けさせる。当然神経は壊れ筋肉は絶叫し、痛覚は荒れ狂うだろう。だが──ああ、()()()()()()()と無視する。少し意識すればアーツが治すのだし、気合いと根性で耐えて動かせばなんて事は無い。

……そういう理由でこの男は狂気の戦法を行った。

 

「狂人、め……ッ!!」

「はははっ、オレにとっては正常だよ。キサマがオレの狂気を保証してくれるならば、キサマの正気を誰が保証してくれるんだ? ……なァ!!」

 

避けるしか無い。金属でできている鎧や盾、武器である以上一発でアウトだ。仮に即死するほどの電流が流れ切ってしまえばこちらは死ぬのに相手は当然耐えるだろう。

攻撃を受け止めることを得意とする重装オペレーターを殺すためだけの殺人技巧。技量が足らなければ性能を上昇させるなど、何を狂えばここまでの狂気が浮かび上がるのか。

 

(──どうする?)

 

散弾を盾で防ぎ、剣を躱し、反撃にウォーハンマーを一撃で仕留められる頭と胸に繰り出すも、そんなところは狙われると理解しているから当然避けられる。自分の周りの戦況が刻一刻と変わって、ロドスがレユニオンを押し始めても、ニアールとGの戦況は異質なもののまま。

ジワリ、ジワリと追い詰められていく未来がわかる。確実に殺すための技を振るい、最強の信奉者が一歩一歩心臓へと着実に近付いてくる。

 

(盾を、離すか……!?)

 

守る戦いこそニアールの誇り。

敵対者を滅ぼす戦いを行うのは守るべき存在がいない──守り抜く勇気を貫き通さなくてよい時。

そして今は指示系統の混乱を招くことは許されない。その一瞬、たった一瞬迷った。光となればこの男を確実に殺し切れる。そうわかっているのに、何故この男は血袋になっても立ち上がりそうな気さえもするのか。

なればこそ──

 

「ドーベルマン!」

 

そこをすかさずフォローに入る──ドクターの戦略眼はGの脅威を見逃さない。Wはまだ本気を出していない、何か目的が別にあるとわかるがGは違う。()()()()()()()、と記憶を失ったはずのドクターの心が叫んでいる。ここで殺せと叫んでいる。あれはありとあらゆる存在と相反する、破滅の鐘を鳴らす魔人だと。

レユニオンの構成員を蹴散らしつつ、アーミヤの支援を受けてWと交戦していたドーベルマンが一時的に踏み出す。

 

挟撃。

数的不利は見た目以上に戦況を変える。ドーベルマンの鞭がゆらりと動き、完全に不意を突いて襲いかかる。

 

「グッ……!?」

「──ここで、」

 

その怯みは命取りだ。ニアールのアーツを纏うウォーハンマーが振り上げられる。更にドーベルマンが二の太刀を放たんとする。詰み……

 

「温い」

 

刹那、異常な速度で長剣がウォーハンマーにぶつかる。砕け散るだけに留まったその剣と、その謎の行動に困惑した瞬間、クルリと身を翻したGが左手の散弾銃と構えて放つ。咄嗟に回避して、この男は何をしたと思考を巡らせた。

──壁蹴りの要領だ。一時的な反動を得られる場があれば、それを蹴って跳ぶ──自分の武器とウォーハンマーを足場に、力を入れる場を手に入れて……そこから自分の行動を0に戻して回転した。

 

普通の人間ならば間に合わない。ならばそれが間に合うようにすればいい。そして間に合うようにすればできる。ただそれだけ。

そしてすかさず源石爆弾が飛んでくる。G諸共に爆破せんと空中に舞うそれを、彼は跳躍一つで並び、そして掴み──

 

「私の陰に!」

「っ、!?」

 

固まる二人に投げつける。ニアールの陰に素早く隠れたドーベルマンを庇うように盾が壁となり、炸裂した炎が立ち昇る。

 

「──逃がしません!」

 

着地したGを、場所を移動してフリーになったアーミヤがアーツで攻撃する。それを散弾銃をブースター代わりにしつつ強化された身体能力による前方ステップで範囲の内に行くことで回避。そしてすかさず無防備なアーミヤに向けて構え……ない。素早くそのまま離れると、待機してたWと肩を並べるように立ち、リロードする。

 

「まーた剣を潰したのー?」

「爪と指があれば殺せる」

 

まるで獣だ──アーミヤの目にもそう映る。炎の中から戻ってきたニアールとドーベルマンも再び戦線に立ち、オペレーターたちもドクターの戦線指揮に合わせて隊形を組み直す。

 

「──なるほどね。よくわかったわ。アーミヤ……覚えたわ」

 

レユニオンに再び陣形を組み直させたWは、アーミヤに向けてポツリと呟く。

戦況は膠着状態。ドクターの使う戦術と酷似した戦術で迎え撃ったWだが、練度の差かあるいはやる気の差か、ロドスとの戦闘ではやや押され気味であった。

 

「一体何がですか?」

「こっちの欲しいものは手に入った。さっさと行きなさい」

「あなたは──!」

「W……? どういうつもりだ」

「ここに残って死ぬ? あたしは別にそれでも構わないわよ? 無駄死したいならどーぞ」

「……ダウンタウンに撤退する。タルラ様の命令だ」

 

その名を聞いた途端、Gの表情が不快に歪んだ。

──何故この男は、レユニオンにいるのだろうか。ロドスの面々は本気で疑問に思った。

 

「まあいいわ。このままやっててもつまらないもの。つまらないのは嫌いだし。面白くないのは、あんただって趣味じゃないでしょ?」

「中々に()()()強敵が現れたと思ったのだがな……まあいい」

 

WとGの会話口調は軽く、そこが戦場であることを忘れてしまうような雰囲気すらある。ケラケラと笑いながら、Wはロドスへと告げる。

 

「また会いましょう、アーミヤ。それにあなたも。次はあなたの口から真相を引き出してみせるわ──『ドクター』」

「またな『ドクター』……地獄の悪鬼を従えて、やはりオマエは戻ってきたな」

 

ぐちゃぐちゃになった、悍ましい感情が声を通して耳に伝わる。

 

「またね〜」

「ではな」

 

そうして彼らは去っていく。まるで森の中の獣が、満足して去っていくように──

 

 

────

 

……如何だったでしょうか?

セーブはしてますけど中々異常な戦いぶりでしょう? 生体電気の出力を上げることでデンキウナギ化することで感電死と斬殺をこなすとかこいつ頭おかしいっすよ! しかもダメージは耐えて治るとかなんだってんだお前(戦慄)

 

いやぁ、ブースト効かねえかと思ったけど『W姉貴以外に殺されるのはオレじゃない』という思い一つで常時Wブースト維持できるとは思わなかった。多分ニアール姉貴のガチ来ても瀕死時ブーストかかって覚醒と限界突破して倒せましたねあれば。巴の雷を使えば終わりよな!(当たれば)(ダメージが防御を上回れば)

 

おかしいわオマエ! 改造しなくても改造時と同じくらいのアーツ出力出るとか聞いてないわ!!! なんだよオマエ育成面倒だけどやったらガチでイケるくせえじゃねぇか!!! ニアール姉貴を殺し切れる奴なんてほとんどいねぇんだぞ!? しかもロクなダメージ受けずに剣ぶっ壊れただけってなんだオマエは!!!

 

>イネスの戦死……パトリオットの独断行動。そして、へドリーの行動開始。撤退したオレたちに告げられたのは他にもあり、タルラの異質な点……何か別なものがある、二つのアーツ──

「……どう思う? G」

「どうも何も。やることは変わらん。オレたちに立ち止まるという選択はもう無い。走り抜くだけだ」

もっともオレはイネスが死んだとは思ってもいないが。あの女はWと同類だ、簡単にはくたばらん

「そうよね。あーあー、あのバカどもにあんなことを言われるなんて腹立つわ……!」

「……ま、へドリーに任せる他ない」

とりあえず、用意された駐屯地のテント内のベッドにねっ転がる。イネスとへドリーが去った今、二人だけでは少し広いが……流石に寝て忘れたい

 

Gくんだって無益な殺生は嫌いなんです(殺戮の日々を思い返しつつ)

 

>寝ようかと瞼を閉じようとして──Wが横に転がってきた

「……色々あったわねえ」

「まったくだ」

「つまんないものを見て」

「つまらないことをして」

「「懐かしい顔に会った」」

示し合わせたように同じ言葉が出てきて、おかしくてケラケラと笑い出す。ああまったく……

「それにしても、男のケツを追っかけるのはマズかったか?」

「あたしが一番だってちゃんとわかってる?」

「自覚してるが、証拠がいるか」

「そうね……スッキリしたいわ」

「わかった」

 

これからしっとりというところで、少し短めですが今回はここまで。

ご視聴ありがとうございました。

おま◯けはありません。




Gくん
戦闘用デンキウナギ。巴流。イナズマイレブン(物理)。自壊放電しながら再生し自壊するほどの能力を出す化け物。走者の想定を超えて、まさかの改造時と同じ性能を発揮している。剣は消耗品なので遠慮なくぶっ壊す
中の上に過ぎない自分の実力に狂気と妄執と憧憬を流し込むことで異常な戦闘能力、使えるものはなんでも使う戦法を合わせることで限界以上の存在となる。
執念と狂気の無くなった彼はそこらのモブと変わらず、ネームドにすらなれない

ニアール姉貴
殺し切れるはずなのになんでか生きてそうな感覚を感じ取った。Gくんの発する狂気と妄執から的確に読み取ったとも言える。Gくんのデンキウナギ戦法で苦しめられたが、彼女が盾を捨ててたらGくんの腕が飛んでいた。個人の戦闘ではなく集団での戦闘、役割の放棄で敵を一人倒すかどうかを悩んだのは、Gくんがそうなるように向けてたから。敵を殺すならハメ殺しだよなぁ!?

『G』の銃
リボルバー型散弾対応ライフルとかいうゲテモノ。なんかもう色々とあれ。ブラボ出身かな? まともな使い方をされているときはマシだが、大抵はブースターのような使い方をされる。なおこれだけ酷似されて新品同然の整備がされていると見て取れるのは、もはや吐き気がするほどの執着心の表れとしか言えない

Gくんの長剣
ただの無骨な長い剣。いわゆる一般的なロングソードのような柄と鍔に、マチェーテのような刀型の分厚く長い刀身を持つ。量産品であり、無数に存在する
頑丈で色々使えるからとお気に入りだが、大抵は足場にされたり雷返しに使われてぶっ壊れる。哀れな

Gくんのコート
元々持っていた改造軍用ロングコートに、Scout兄貴のお下がりの黒ジャケットを組み合わせて仕立て直したことで、Wの横に並んでもそんなに浮くことはなくなった。
戦友から受け取った一品を組み込んだため、このコートに吐き気がするほどの執着心が現れるのは時間の問題だろう


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準備を一任されたら暗殺以外もしなきゃいけない

実は冷静に考えたら短編なので一話目が存在することで既に完結しているので無理に続きを書かなくてもいいと気が付いたので初投稿です


>「ファウスト」

「G」

「番犬は楽しいか? 物言わぬ道具は楽しいか? おお、見上げた奴隷根性だ。タルラの奴隷をやっているメフィストの奴隷をやっているファウストなど、笑える話も他にはあるまい」

チェルノボーグ殲滅戦が終わり、Wと確かめ合った翌日。オレは敢えてファウストを呼び出した。メフィストには適当なことを言って誤魔化した。その為に言いたくもないレユニオンの為だのなんだのと言ったんだ。吐き気がする

「俺たちを否定するなら、殺すぞ」

「目が揺らいでいる。殺したくない、殺させたくない、放っておいてくれ、何もしたくない、傷付きたくない、ただ静かに生きていたい……そうした感情が見える」

苛立ちを見せながら冷たく告げたこの小僧の内面を当ててやる。オレが殺してきたヤツらにもありふれていた──至って普通の人間だ

「──」

「悪いことは言わん。今すぐにでもメフィストにタルラ関係無しにしたいことやりたいことを考えさせろ。オマエの罪を清算する時だ。やるべきことが見つかっているならばさあ、真っ直ぐに行けよ。暗闇を歩け小僧。未来を目指して歩む暗闇の荒野こそが、人間の行く末なのだからな」

去ろうとして、ああ言い忘れていたと一言

「メフィストは狭い世界を見ているようだが……その世界に冷や水をかけてやれ。オマエがアイツの、苦痛(ともだち)ならばな──」

 

どうも一般投稿者です。

今はファウストくんに少しお節介をしています。今回はメフィストフェレス化を防ぐコースで行くので。ぶっちゃけその必要無いんですけどね……スカルシュレッダーくんは生存させるのにこの二人を無視するのはなーんか気になって。フロストノヴァ姉貴の死亡を防ぐのはそんなに難しくは無いんですけどね。戦闘をさせないようにすればいいだけで。え? パトリオット兄貴? 正直めんど……げふんげふん。手順が多いので簡単には離反してくれません。

ま、有り体に言えば──不死の黒蛇を指摘でもしない限り、無理です。めんどくさい。

……結局、W姉貴と袂を分かってロドスコース? でもそれなら全殺害コースだよなぁ……? そうだよなぁ、ファウストの首見せつければメフィスト壊れるし、そのまま石棺入れれば終わりだし。スカルシュレッダーは殺せば絶対にミーシャがそうなるし。

……ああ、やっぱり皆殺しの方が早いや。

 

──人間性要らねえな。

邪魔だわ、最速記録の称号には。

W姉貴と接触させないようにしよう。もういいや、自力でなんとかするか。

 

ま、今はエンジョイプレイ。この冷徹な思考は捨てておきましょう。

 

>……あの日の事を思い出す。パトリオットに聞かせたテレジアの話……気付かなかったのか、と言われれば嘘になる。既にオレもWも気付いていたのだ。──ドクターだけが、テレジアの居場所を知っていたと

ドクターがテレジアを殺す。何故? とも思う。が、テレジアがその気になればドクターを殺すことも容易かった筈。何か意味があった筈だ。何か……

結局それはわからない。わかるのはタルラがあまりにも不快な存在であるというだけだ

 

不死の黒蛇さん嫌われすぎワロタ。

 

>Wとはピロートークがてら、今後の方針を話し合った。結論から言えば、タルラの言葉を信じないということだ。厳密には、タルラの情報を鵜呑みにしない。今状況を動かしているのはタルラだ。アドバンテージは尋常なものではない……

それにこれは、政治の話も混じってきている。国というものは面子を重んじるものだ。ウルサスが都市を奪取されて──何故、追撃も何もしてこない? 死にものぐるいで来る筈だろう、普通は

 

まあそらウルサスの為でもありますからな。

 

>やたらと政治の話を意識するのは、昔から敵対構造等を利用して組織を潰したりしていたからだったりする。そうした上層部の情報を手に入れておけば、最低限の労力で最大限の成果が出ることがあり得る。なればこそ、Wへの推測として色々と組み立てておかなければならないのだ。今はもう、へドリーもイネスもいない。Wはアイツらとは異なり政治的駆け引きは苦手だ。オレがやってやらねば

 

戦士と政治家の双方ができるのはノースリーブグラサンくらいですけどね。あのグラサンほんまハイスペックすぎてね

 

>ファウストと共に戻って──そして

「ねえ、G。君さ、Wのところを離れて僕のところへ来ない? もちろん死んだら兵隊として扱ってあげるから、大切にね!」

「……メフィスト。それ以上の戯言はオレに殺されたいと判断するが?」

「あははは、それは困るなぁ。きっと僕と君は仲良くできると思ってるんだけどね。あ、そうだ。僕のところに来れば本当に死にそうになるまでで兵隊にせず、アーツでちゃんとちりょ──「やかましいぞクソガキ」

うざい。うざすぎて剣を抜いた

「何故オレだ」

「チェルノボーグで見たんだよ、君の戦いぶり。いやあ、カッコよかったなぁ……」

 

──は?

 

>メフィストは少年のように……いや少年なのだが……目を輝かせながら顔を近づけてきた

「青い稲妻を体内から発しながら、限界以上に戦うその凄まじさ! こうって決めたことにまっすぐ進んでいく姿! タルラ姉さんは凛々しいけれど、君はカッコよかったんだよ! G!」

「ファウスト。メフィストは源石でも食ったのか」

「いや多分ただ単に、お前が強く見えたからだと思うが」

「違うよファウスト! 見たかい!? 自分を壊しながら治しつつ、更にそれよりも速く壊れるほどの力を発揮している姿を! あんなの、僕の兵隊にやらせたら僕が支援してやらないとできないんだよ!? それを一人でやったんだ! そんなの、そんなの──カッコいいに決まってるじゃないかぁ!!」

メフィストは自分の作り上げた家畜に自信がある。往々にして芸術家(クリエイター)とは自分の作品に自信があるというものだ。しかし、この目は……

「僕の兵隊でしかできないようなことを、僕の兵隊でもできないやり方で、僕の兵隊以上にやってのける──いとも簡単に! これに()()()()道理なんてないよねぇ!? あはっ、いいじゃないか……ねえファウスト、僕はこれからもっともっと色んなことを学んで……Gと同じくらい、いやそれ以上にそれ以上をやってのける兵隊を作るんだ。一緒に行こうよ」

「メフィスト。それが、それがお前のやりたいこと……なのか? タルラ関係無しに、お前がお前の意志で、お前の決めたこととして」

「うん。そうさ、僕は強くなる。ファウスト……そうすればきっと、あの日に奇跡は起こったって──」

ああ、オマエ。始まりが喪失からだったのか

「G、少し話がある。メフィスト、すぐ戻る」

「またかい? いいよ。僕は待ってる」

 

──は?

 

>「おいG! お前、メフィストに何を吹き込んだ!」

「知るかバカ。あの小僧が勝手に遅めの目標でも見つけたんだろうよ」

「お前の所為だろうが!」

「そんなことを言われてもな。オレはオレの好きなように在るだけだ。それよりもオマエがメフィストの苦痛ならば、言うべきことを言わねばならぬと言ったはずだが」

「……」

「結論から言えばオマエを殺すのがメフィストで、メフィストを殺すのがオマエだ。それだけの関係に、互いに友情と殺意を向け合う関係となれ」

ファウストは顔を伏せて、わからぬと叫んだ

「──そんなもの、どうやってなればいい」

「なると定めろ。さすればなる。まずはファウストという苦痛に目を向けさせろ。話はそれからだ」

 

──は!?

 

>「きっとメフィストは……かつて耐えてしまった時に、全身全霊を賭けて喰い殺せば手に入れられたって、わかったんだ。奇跡は起こり得たと、お前を見て──」

悲痛に語るファウストに共感ができない。なんだ、そうか、そういう……なんだ、その程度か

「身内にでも潰されて拾われた先の恩師でも死んだか?」

「──ッ!?」

「有り触れた悲劇だな」

知らない、理解できない。大切な人が死んだ? その命を背負って生きればいい。手前勝手に復讐だのなんだの、すればいいだろう。メフィストはそういう道を選んだと。なぁんだ、案外楽しいヤツじゃないか

「……で? オレはその悲劇を防げなかったオマエらに対して欠片も無い哀悼の意でも表すれば気がすむか? 心底どうでもいい。それが仮にこのレユニオンの奇妙さに繋がっているなら多少興味があるが……」

オレとWに関係しないこと。どうでもいい。それに、今更古傷となったものにあれこれと論じることそのものがナンセンスだ。その傷跡を見て自嘲するくらい当然だが

「歪まぬと決めて、歪んだとしても、立ち直ればいい。歪んだままで是とするならば、掲げた理想は子供の戯言にすぎんさ」

メフィストもファウストも、その実を見た時に色々と面白い。ああ、メフィスト自身……嘘は言っていないのだろう。タルラの理想に共感し、自分にとって大切なものを焼き払ったものへの憎悪で復讐と為す……オレが奪ってきて、オレが返り討ちにしてきたヤツらと同じ

しかし、しかしだ。似ているとは、少し思った。なればこそ

「もしもオマエたちが崩れ落ちる時に、妖魔に魂を売ってでも"生きる"ならば……その時は、格安で請け負ってやる。ではなファウスト。メフィストに伝えてくれ」

仮に、茨の道を進むと決めて進むならば

「幻想の先には『何もない』。その『何もない』箱に現実の何を詰めるのか。その答えを見つけた時、オレは後続者(オマエたち)を歓迎しよう」

先駆者として、迎え入れよう……双子の悪魔(メフィストフェレス)

 

……あ、はい。

そう、ですか。

 

──メフィストくん、覚醒ルートですか。

 

怒りと狂気に飲み込まれて好き勝手してたメフィストくんですが、その実、内に秘めたる疑問があります。

虐待を受けていた自分が勇気を出せば、何か奇跡が起こり得たのか──

アリーナの死の時も、自分が勇気を出して行動すれば何か変わったのか──

自分が悪い? 他人が悪い? 一番悪いのは他人だ。でも何もしなかった自分は、つまり──

 

Gくん「奇跡なんて起こせばええねん(当たり前のように限界を超えたアーツ使用+自壊+超回復+超自壊+限界を超えた戦闘)」

メフィストくん「カッコいい!(僕たちが勇気を出せば変わり得たんだ!)

ファウストくん「えぇ……(でも勇気を出すことって大切なんやなぁ)」

 

あの、すいません。

その人奇跡は起こるものとかじゃなくて奇跡という幻想を気合いと根性で現実に変えちゃう人なんですけど。その人指先からライトニングブレード出せる人なんですけど。ライゼクスなんですけど。

 

……まあ、ざっくり言うと。

メフィストくんとファウストくんが"勇気"を得ます。あの日の悲劇を防ぎたかったのは事実だし、感染者というだけで苦しめられるならば誰かが怒りを示さねばならないと思っているのも事実だし、それはそれとしてこの世界や自分たちの苦しみを無視して生きる人たちは憎いから、ぐちゃぐちゃになった狂気のままではなく、狂気を飼い慣らして自分のやりたいことを、やりたいように、やりたい時にやるようになります。

具体的に言うと、一応治療"は"するようになったり、ゾンビになってでもレユニオンに尽くそうとする人間をご自慢の兵隊に加えることで兵隊の質が上がったりとか……要するに割りかし合理的になります。それだけで十分に辛いのに、ファウストくんも腹決めてメフィストくんと一連托生する気になるのですれ違いません。喧嘩だのなんだのもするようになりますが、二人は常に本当の意味で二人一組で行動するようになります。

 

で、これって本来ならメフィストくんとファウストくんと深い交流が必要なのですが──奇跡を当然として現実に落とし込んだ怪物であるGくんと、W姉貴との殺意と愛情の入り混じる異常な関係性を感じ取った上で、死んで当然の事をやってるのに当然のように死なないGくんの戦闘を目撃したことでバグ的に過程をすっ飛ばして答えに辿り着きました。

 

つまるところ、メフィストくんに殺される可能性は0になりました。

 

やったね!

 

……バッキャロォォォォォォォォォッッッッッッッ!!!!!

これ絶対龍門撤退戦参加じゃねぇかァァァァァァァァァ!!!!!!

あれキッツいんだぞ!? 原作通りやるのが一番楽なんだぞ!? ふざけんなよ!? スラムと政治屋どもと近衛局のすれ違いを察して内部分裂をするように差し向けろとでも言うのかァァァァァァァ!? やれるぞ!? 確かにGくんやれるぞ!? フリーの頃も傭兵時代もバベル時代もそういうことやってたしなぁ!? けどなぁ、やるためには情報を回収していく必要があって、結局はバーコードハゲみたく暗殺以外何でもすることになるんだぞオラァァァァァァァァッッッッッ!!!!!

ふっざけんなァァァ!!! メフィストテメエェェェェェ!!!! また目の前でファウストぶち殺して死体見せつけてから泣き叫ぶお前を石棺にぶち込んで出てきたところを即ぶち殺すぞテ゛メ゛エ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ッ゛!!!!!!

 

 

……失礼、Furiosoしてしまいました(黒い沈黙)

 

ま、まぁ……()()()()()()()()ですし、頑張りますかァ……

 

となると龍門近衛局の攻防戦では、綿密な事前準備とリカバリー(ちから)が必要になります。高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応する(要するに行き当たりばったり)ことを強いられるので、マジで常に頭を回し続けることを強いられます……

 

クラウンスレイヤー姉貴は放ったらかしでいいけれど、フロストノヴァ姉貴には頭下げてスラムの情報を入手しつつ、スラムの脱出ポイント調査をして、メフィストくんとファウストくんを助けるために一旦見捨て、戦場になる建物に爆弾仕掛けて逃げるための道を用意しつつ、二人を救出したら黒蓑を引っ張り出す大騒動を起こすのと同時に、スノーデビル隊をロドスに保護させるように動きながら、W姉貴をサルカズ傭兵団と共にチェルノボーグから離脱させロドスに向かわせた上で、自分たちも龍門を離脱してW姉貴に合流する……

 

うっ(野太い声)

これは、かなりキツいですよ……(ひんし)

なんでこんな七面倒なことを……ラーカス事件もびっくりなスパゲティコードですよ

 

でもやるっきゃねぇんだよなぁ……メフィストが暴走しなくなった(ファウストの言葉に全信頼を置くようになった)ので、これくらいやらないとキッツいんですよなぁ……やるしかねえんだよなぁ……

 

やってやろうじゃねえかこの野郎! 国崩しやっちゃるぜェ!

 

まそういうわけで今回やらなきゃならんことはミーシャ奪還作戦でチェン姉貴の相手をして、スカルシュレッダーを『どんな形でもいいから』生還させてミーシャ姉貴をスカルシュレッダーになるように誘導するくらいですかね。

あ、なんでチェン姉貴と戦う必要があるかと言うとラーニングの為です。

 

ラーニングの為です。

 

チェン姉貴の抜刀術を見ることで、技が浮かぶんですよ。鞘に鉄を仕込み、生体電気で加速させて剣を抜刀する──電磁抜刀(レールガン)を。

怪物チャートでは主力技で、こいつを抜き身で放てるぐらいイカれた性能してましたが、今回は鞘に仕込みを入れてやらないと撃てないし、一々納刀しなきゃいけないのが面倒です。剣術を極めると『抜刀術:極』みたいな抜刀系最強スキルとかもらえるんですけど、生憎とそれが無いので(そもそも抜刀術を使うこと自体が考えてない)納刀から抜刀までの隙が潰せません。ジェットストリームなサムライみたいにバンバン撃てるわけではありません。剣と鞘の耐久値が爆速で溶けますからね。

これが例えば、赤霄みたいな超スーパーすごいソードであれば話は変わるんですけどね。そんなん探す暇あったら安くて良いやつ買い込んで使い潰した方がいいです。……探しても良かったけどな! バベル時代の暇な時……に……

 

あ。

 

これ、特大のガバじゃん。

 

バベル時代の暇な時に、レア武器探ししておけば終わったじゃん。会話イベントでケルシー先生やらの好感度上げるよりも良かったじゃん。電磁抜刀使い放題だったじゃん。

 

……バカじゃね!?

 

……セルマァ、俺涙が出そうだよ……

 

……とりあえずスカルシュレッダーくんに声かけときますか……

 

>あれからしばらく。タルラから指令を受けたWはオレと部下を連れて龍門へと潜入した。同伴はスカルシュレッダー隊。任務の内容は──

「ミーシャという人物の保護、か。チェルノボーグを焼き払った女の指示とは思えんな」

「なんでも最優先で保護しろってさ。あたしは正直疑ってるけど」

「実際どうだ?」

「無理でしょうね」

「価値は少ないか」

 

あ、ちなみにGくんはこの段階で最終フェーズの目的をW姉貴からそれとなく聞かされてます。そしてW姉貴もタルラの言うこと全てに疑いをかけてるのでミーシャ姉貴の価値が極めて低い可能性を睨んでくれています。実際パトリオットおじいちゃんがもう一つを回収する上に、緊急ブレーキを作動させられませんしね。要は動かせればなんだっていいのです。その為の体の良い厄払いが、この任務の真相ですな。

そして何かしらのデカい陰謀に巻き込まれていると自覚的です。

 

>何処か冷めた様子でスラムを移動しているオレたちとは対照的に、スカルシュレッダー率いる部隊はやたらと気合が入って見える。何故だろうか……潜むものを感じているのは事実。少し、声をかけてみるか

「随分と浮ついているな、スカルシュレッダー」

「Gか。ミーシャは、俺の姉だ。家族なんだ。必ず助けなければならない。浮ついて見えるなら、それはきっと力が入り過ぎているからかもな」

「そうか。その後はどうする? レユニオンで保護したとて、彼女が外を望んだら?」

ただの疑問だった。誰が好き好んで虐殺する組織に組するものか。スラムに住んでいようが、まともならばそんなこと誰が望む

だがスカルシュレッダーは

「それはそれだ。ミーシャの意志を尊重する。俺は俺の戦いをするだけだ」

その言葉を聞いて、ああ……と浮かんだものはメフィストとファウストへの期待とは正反対のそれ。即ち──失望

「なら目的を達成した後、龍女に渡して要らなくなったら龍門近衛局に引き渡しても同じだろう」

感情が消えた。熱が冷めた。オレの目は節穴だったわけだ。なんてことだ。つまらんと思ったメフィストとファウストの方が思いの外面白くて、潜むものを感じたスカルシュレッダーがこんなにも愚かだとは

「……お前は今、俺に姉を……家族を人間として扱わない場所へ送り出せと言ったのか?」

「ああ。別にいらんのだろう? 捨てる手間も省けるじゃないか」

「貴様ァッ!!」

怒りに支配されたスカルシュレッダーが殴りかかってくる。それを受け止めると、スカルシュレッダーの部下たちがオレに銃口を向けてきた。Wはそんなオレたちがおかしいのか、ケラケラと笑っている

「レユニオンでなければならない理由が無いならロドスでも近衛局でもいいじゃないか。オレは何か間違えたことを言っているか?」

 

正論パンチが常に人の為になるとは限らないゾ。感情が先走っている子供にそういうのいくないゾ

 

>「ふざけるな! レユニオン以外で安全な所など何処にある! ロドスとでも言うのか!? あいつらは俺たちの同胞を殺した奴らだ!」

「それを言い出したらチェルノボーグの話はどうなる。ロドスにもいたぞ、感染者……オマエたちの言う同胞とかいうヤツが」

「死んで当然だ! 滅んで当然だ! 進んで感染者を殺す人間も都市も消えて当たり前だろう!」

「……もういい。オマエは()()()()()。任務は遂行する。それだけだ」

手を離して背を向けると、何やら雑音が聞こえてきた。目もくれずいつも通りの返答をくれてやる

「石を見て宝と笑い、宝を見て石と嘆く。魔女の窯なる現実たれば、亡霊を装うが道理。しかして亡霊を装うあまり亡霊に成り果て、己を塗り潰す。星々の光を受けて映る影は、夜空に千切れて溶け落ちた」

「ウチの駄犬がごめんなさいね、スカルシュレッダー。こう見えて傭兵としてのプロ意識だけはすごいから、ちゃーんと働いてくれるわよ」

「……W。この男は本当にレユニオンに……いや、お前の傭兵団に必要なのか?」

「ええ。なくてはならない存在よ。あたしがいるなら、絶対にね」

残念だよ小僧

 

相変わらずGくんってばポエマー……勝手にキレて話したくない相手にポエムぶつけて帰るとか悪質タックルすぎるゾ……

 

>その後、オレと小僧の間に会話は無かった。部隊の割り振りとしては、ロドスを強襲するのが小僧どもに、近衛局を強襲するのがオレたちになった。装備も人員も充実している近衛局から人員を奪還するのは至難の業。こうした場面においては傭兵の方が慣れている……Wの合理的判断によるものだった。加えてタルラからの指令もあるだろう。まあ、必要に駆られてというヤツか。それにそもそも、どちらが本命かはわからない。奪取後の事も考えてクラウンスレイヤーの派遣も決まっている

「奪取後の撤退戦ってなワケだから、あんたの好きな殺し合いは無い感じね。どう? 退屈?」

「仕事は仕事だ。小僧には失望させられた」

「スカルシュレッダーがそんなに気に入らない? まあ、ただの思考停止を堂々と宣言するのはどうかと思ったけど。正直ロドスをああまで敵視しているのは中々いないわ。メフィストでもそんなことないもの」

Wはオレに対して呆れたような視線を向けてくる。感情とか経験とか色々考えてあげなさい──まあ、あたしはどうでもいいけど……みたいな感じか。正味、オレもどうでもいい

「それで、あんたはどう動く?」

「そうだな……」

────

Wに一任する

>すまないが、少し部下を借りてくぞ

────

 

後者です。ここで集められる情報は集めておかないと厳しいので

 

>「すまないが、少し部下を借りてくぞ」

そう告げるとWは珍しそうな顔をした

「あら、Gが気掛かりになることでもあった?」

「地形の把握をしておきたい。セカンドプランや緊急時に対応するためにな」

「いいわ。あんたの部下貸したげるから、さっさと行って帰ってきなさい」

「助かる、W」

懐かしい顔ぶれと軽く挨拶をしつつ、オレたちはスラムの調査を始めた……

 

さぁーて、こっからは時間の許す限り調査です。ガチガチの撤退戦に備えて、島津の退き口とかもできるように色々と把握しなければなりません。フロストノヴァ姉貴の救出の為にも、区画の把握は必要です。その上、フロストノヴァ姉貴がスラムの住民とかいうロス……じゃなかった、スラムの住民という悲しき人々を助けてしまうため、無理をさせないようにスラムへの被害は最小限にとどめなければなりません

つまり……積極的に黒蓑を撤退させ切るまで殺し続ける必要があります。そのためのカウンターアサシンポイント探りも兼ねています。

 

ウェイ兄貴は政治家ですからねぇ。いつまでもスラムを放ったらかしにはできなくって、けどまともな手段はあるかと言われても無理で、こういう手段を取るしかなかったという色々と複雑な事情が見えて割と好きですよ、チェン姉貴との問答。

逆にチェン姉貴はよくここまで心を殺し続けられたなぁ、と。

 

清濁を合わせ飲まなきゃいけないのに、飲んだら飲んだで文句垂れられる。そしてその文句も一理ある所為であれこれと言うこともできない……政治屋って大変ですな。

 

>……発見したようだ。Wから携帯電話で連絡が入った。十分調査も完了したし、強襲に移る

「G、タイムオーバーか?」

「ディナーの店が見つかった。ビュッフェに行くぞ。向こうはドレスを着ているそうだ」

「了解」

短いやり取りを通して最短ルートで合流地点へ急ぐ。さあ、商売を始めようか

 

そんなわけで若干短めですが今回はここまで。次回はチェン姉貴戦です。

ご視聴、ありがとうございました。




メフィストくん
奇跡は起こり得たのか? という疑問の答えが「奇跡は起きるのではなく起こすと決めて起こすもの」という形でぶつかって来たので八つ当たりではなくなり、自分の憎しみと怒りを飼いならした
でもGくんに憧れるのはダメだって

ファウストくん
自分が何かしていれば変わったのは確かだと知りながら何もしなかったし、何もできないと思ってたらイカれたバカに「素直になあれ!」と言われるは相方は吹っ切れるわで腹をくくった。かわいそうな被害者

スカルシュレッダーくん
「姉貴いらねえじゃん捨てろよ」とバカがのたまったのでキレた
苦難を乗り越えて生き別れの姉貴に再会できる弟に向けたセリフではないだろGくん

Gくん
他人の痛みにはあまりにも興味がないし、ひどいことを言いまくる
そのくせそういうのには敏感。数百の同族を殺した狂人は心を折るために心を感じ取る

走者
ド外道
ガバとガバをやらかしてしまう
W姉貴以外のレユニオン幹部に一回謝れ


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許してください。なんでもしますから……とでも言うと思ったか!

雷返し返し返しをしたので初投稿です


チェンは狂気と相対したことは多々ある。

龍門の近衛局特別督察隊隊長として、そうした真作と贋作の狂気と何度も向き合ってきた。

なるべくしてなった狂気、狂気で飾り立てねばならないほど追い詰められた正気……大なり小なり、なんらかの事情が見えた。

そんな彼らが、まるで真実を隠して生きている己と被って──時折、彼らよりも自分自身が矮小な存在なのではないかと自問する時もあった。

 

感染者であるのに、父によって隠されて生きている──捨てられていないだけの自分。

思わなくもない、あるがままであれたら……と。

 

だが、この日目にした狂気はそれらとは異なっていた。龍門のスラムでミーシャの護送中に襲撃をかけてきたレユニオンを指揮する、幹部と思われるサルカズの男女。

 

その片割れ──黒髪青目のサルカズが纏う狂気は異質だった。へばりつくような湿度、生暖かい温度、吐き気を催すほどに新品同然になるまで丁寧に手入れされた一部の装備品、氷のような視線、そして……強い憧憬と信念。

 

真贋を問うことそのものが間違いだ。こう決めたので、そうする。それだけしかない。迷わないように努めるチェンを含めた特別督察隊の面々とは異なり、この男は何一つ迷わない。

──迷うという機能を廃したような男。雷雨と共に現れる一陣の黒い風。それが吹いた後には何も残らない破滅の風。謬、と凪ぐ空気のように、あるがままにある究極の正気。

ある意味では答えだったのかもしれない。こうなれたら、という自分の理想が形を変えて現れたようなものだ。迷わずただひたすらに行いたいことを行う──

 

「……ははは」

 

ああ、それは確かに格好いいが。

 

「どうやらお前と私は、相容れぬようだな──」

 

そんな絵本の中の登場人物(現実味の無い存在)になるのは、真っ平御免だ。

 

もっともこの男から感じるのは常軌を逸した執念と憧憬、そして狂気と愛情。端的に言ってチェン・フェイゼという人間が認められないタイプだ。自分の為にと様々なモノを轢殺し、鏖殺し、抹殺する。それに対して誰が幕を引こうが最期は勝手に何やら満足して死ぬ──

そして何より、相棒であろう女を見るその視線が。

 

父であるウェイ・イェンウーがフミズキや自分に向ける視線と確かに同じなのに。

 

正反対の、絶対に殺すという狂気を纏っているから。

それは確かに、ネガの自分だ。龍門の全てを守りたいと願うチェンと、自分以外の全てを滅ぼすと決めたこの男。似ているからこそ理解出来て、理解出来るからこそ認められない。

 

「滅びよ! ここはお前の住む世界では無い!!」

 

どうして人を愛することが出来るのに、その愛した人を殺すことを選ぶのか。

守り抜く勇気を理解しているのに、どうしてそれを他人に向けてあげることができないのか。現実と理想のギャップ、素直に生きるということの難しさ。それを貫き通せばこうなるという象徴。そして──父親がそうならないように引いてくれていたであろうレール。

 

感染者も健常者も関係無い、いるのは人間だけという悟りを得ているのに、どうしてこの男はそれらを滅ぼすことを是としたのか。

知りたくもない、わかりたくもない、理解したくもない。心を捨てたが如く、その心のままにある貴様にだけはなりたくない──!!

 

合わせ鏡の後ろ側に映る己の影の如き存在を宿敵だと本能的に感じたからこそ……絶殺の意志を宿して、赤霄を抜刀した。

過去最高の──ともすれば父の域にも達するかの如き斬撃。

 

「相容れぬか。確かにな」

 

「だが迷いを抱えた剣など、魔族(サルカズ)には届かん。溶け落ちる怒りは、すぐに冷まなければならない」

 

「そんなオマエが……W(オレの運命)以外の存在が、オレを殺せると思うな」

 

それを、この男は──

 

────

 

……どうも大ガバやらかしていた一般投稿者です……

場面変わりまして近衛局強襲から始まります。

 

>到着よりも早く着いた。改めてルート取りをしていて正解だった

「プランは」

「爆破、散らし、奪取。移動開始しなさい」

「了解」

重装部隊が正面、強襲部隊が背後。オレとWは上空か。浮ついているのだろうか、普段とは異なる高揚感が身を包んでいる。しかしそんなオレとは異なり、Wはつまらなさそうに告げた

「あの近衛局の隊長さん、疲れる生き方してそうね」

「あの龍の女か。種族なぞ、別に気にしたところではないが」

「そうね。どっかのムカつくクソ女と同じ種族でも、まだあっちの方がマシだわ。でも見なさいよ、あの目。ぐちゃぐちゃに絡まって迷宮に囚われたお姫様みたい。理屈とか常識とか倫理に囚われて、あたしたちみたいに壁に穴を開けてここが出口って叫ぶことを選べないみたい」

……Wの言いたいことは何となくわかる。だが、アイツがこんなことを言うのは珍しいと思った。らしからぬと言えばいいのか、それとも──

「気になるのか?」

「ええ。昔のどっかの誰かさんみたい」

「やめろ」

まあ、オレに似ているというのはわかる。Wを受け入れることも、捨てることもせずにフラフラとしていた時のオレを思わせるのは事実だ。というか、そんなヤツのことをなんで気になっているんだ

「そんなことよりW。奪取はオマエに一任するぞ」

「ふーん? 妬いてるんだ、G」

「……うるさい」

ニヤニヤと顔を覗き込んでくるWからプイとそっぽを向くことで逃げ出し、視線を下に落とす。──そろそろだ

互いに私人として抱く感情が、傭兵としての冷徹な己にすり替わる。さあ、ビジネスを始めようか

「マジックアワーよ」

「ショータイムだ」

仕掛けた爆弾を起爆。重装隊、強襲隊が挟むのに合わせて、オレたちは上空から奇襲する

「──もーっと面白いシナリオにしてあげるから、楽しんでね? 近衛局の皆さん」

「さあ、狩りを始めようか」

 

近衛局のモブたちですが、練度が高いだけでそんなもんです。こうなった時点でハメ殺せます。気をつけるべきはチェン姉貴だけです。赤霄の範囲、威力、速度、どれか一つでも見誤れば真っ二つにされます。特にチェン姉貴は精神状態によって戦闘能力が大きく異なるので、あっさり倒せる時と厳しい戦いになる時があります。

7章以前ならやれ「感染者狩りは楽しかったか感染者」とか「父親に庇護されて正義の味方ごっこは楽しかったか雛鳥」とか「何をどう言おうがチェルノボーグを焼き払ったレユニオンと何も変わらないんだよオマエは」とか煽りまくれば心へし折れるんですけど、覚悟完了してしまうと

 

「戯言を」

 

の一言と共にぶった切られます。(1敗)

 

>適材適所の問題だから、オレが近衛局の隊長に当たるのは必然だった。しかし目を合わせて理解した。これはまるで──

「……ははは」

女の自嘲が聞こえる。見えるぞ、その迷い。確かにWの言った通りだ。壁に穴を開けてここが出口と言い張ることのできない何かに囚われた姿。しかし彼女を捕らえているモノが、彼女を彼女足らしめているし、それが強さの源になっている。なるほどな

「どうやらお前と私は、相容れぬようだな──」

女はそう呟いた。全くだ、オレもそう思うよ

 

……あり? チェン姉貴もしかして

 

>ゆったりと構えていく。あれは確か……抜刀術とか呼ばれる剣技だ。しかしあの動き、誰かに似ている。誰だ……? 何処かで見たぞ、その動き。その呼吸。オレはそれを、つい最近……

「滅びよ! ここはお前の住む世界では無い!!」

女が叫んだ。剣を抜かんとしている。疾く、鋭い。だが──

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?

絶対殺すウーマンのチェン姉貴じゃねぇかァァァ!? テメェェェェェェェ!!!!

ヤバい、このステでガチガチのチェン姉貴の赤霄・抜刀に耐えられ──ない!! どうする!? どう対処すればいい……!? 避けるには速度が足りない! 耐えるにはステが足りない! できることは同じ火力でいなす以外には無い!

 

理論上匹敵する火力を出すには──

 

>「相容れぬか。確かにな」

その通りだとオレも答える。オレとオマエは相容れない。守る者と殺す者は、生きる世界が違うのだから

「だが迷いを抱えた剣など、魔族(サルカズ)には届かん。溶け落ちる怒りは、すぐに冷まなければならない」

しかし迷いを抱えたまま振るわれる剣では、相反する光と影を断ち切ることなどできない。エンカクもこの言には頷くだろう。迷えば敗れると

まあ、色々言ったが

「そんなオマエが……W(オレの運命)以外の存在が、オレを殺せると思うな」

迷えるオマエ程度では、オレの死になり得ない。そして何より、W以外に殺されるオレなどオレではない

「──青雷の剣、見せてやろう」

稲妻を迸らせる。剣を雷が包み込んでいく。軽く飛び上がり……一条の光となったそれを振るう

 

巴流・雷返し

 

>青雷を纏った剣が、赤光を纏う剣と激突する。光刃と光刃がぶつかり、そして光が弾け、凄まじい衝撃がスラムを揺るがし、オレたちはたった一撃合わせただけで、互いに決して浅くはない損傷を受け──オレはそれに耐えるし、アーツで治す。鉱石病が進行するかもしれないが、知らん。耐えると決めれば進行も抑えられる。そういうものだろう。W以外では死なない

「くっ……!」

膝をついた女を見据える。その迷いと向き合えば、オレも納得して殺されてやれるだろうな。まあ死んでやる気は毛頭無いが

「迷える汝が赤光、迷いなき我が青雷には勝てぬ」

「確保完了。口説くのはやめてあたしの相手をしなさい」

「了解。──滝を登り切れよ、錦鯉」

溶け落ちた剣を捨て、信号弾を撃ち、周辺の建物を爆破しつつ撤退していく。部下たちはそれぞれ別ポイントから離脱し、合流することになっている為、今ミーシャを抱えているWと共に離脱しているのはオレを含めてもそれほど数がいるわけでもない

 

っっっっぶねぇぇぇぇぇぇぇ……!!!!

飛んだ! HP9割消し飛んだ!! 雷返し一発の為にHP9割消し飛んだぞオイ!! ふざけんなあの尻の弱い龍女! ウチのGくんが自壊ダメだけで死にそうになったじゃねぇか……!!! ぶち犯すぞテメエ……!!

クソわよ! お排泄物ですわ! 変なところで変な覚醒しやがって……

 

こほん、失礼。

 

──とりあえず雷返しで窮地は脱しましたが、はっきり言えばこの後接近戦できるだけの余裕はありません。スカルシュレッダー回収は遠距離戦かつ無理の無いアーツ使用にしなければ回復速度より負荷が勝って即自滅します。なので……予備の剣を装備しても戦闘では使いません。スカルシュレッダーのグレポンと長銃で制圧戦を仕掛けます。W姉貴の爆弾と合わせての銃撃戦です。

 

クソ、チェンを甘く見ていた……こいつも覚醒組だったかッ。ええい、こんな時に主人公力発揮するなよ面倒な! これだから覚醒できるだけの苦痛を心に持っている奴らはチャートでハメ殺すのが最適解になりがちなんだ……! この前のエンジョイプレイでドクターが覚醒した時とかマジでドクター神拳でボコってきたんだぞ……

 

私「死ねよやー!!」(JNSN)

ド「ロドス製薬を舐めんじゃねぇ!」

私「あんたホントに……研究者かよ……」

 

あのドクターマジで謎だわ。

まあそんなことは置いといて。

 

>連れ帰って装備の補給を行う。何やら小僧とミーシャが喋っているが全て雑音だ。……接近戦は無理がありそうだな。流石にこれは、メフィスト辺りの回復アーツが必要になる。ファウストからの連絡は無い……が、焦る必要もないだろう。あのメフィストのことだ。策は用意してある筈だ。クラウンスレイヤーもこっちへ向かっていると聞く

「どう?」

「接近戦は厳しいな」

「まあ撤退戦だし、撃ち合いの方がいい気もするけどね」

Wとの会話をしつつ、身体を確かめるがやはり短時間での回復は期待できそうもない。無茶は効くだろうがそれだけだ。それでは何の意味も無い。チラリと欠片だけの期待を寄せて視線を変える。小僧がミーシャに戦う術を教えている

「何がしたいのかしらね、スカルシュレッダーは」

Wの呆れ半分な声が聞こえる。当然だ、やれロドスは悪。チェルノボーグは悪。自分たちは正義。レユニオンは希望。聞こえるのはこんな言葉だけ

「なんかしたいんだろ」

守ると言いながら殺戮の術を教えている小僧に侮蔑を抱きながら吐き捨てる。Wがクスクスと笑っているあたり、さぞ酷い顔をしているのだろう

「ふふふ、そんな顔をしないで。ほら」

スルリとオレの視界いっぱいにWが映る。真正面から見つめてきているだけだが

「なんだよ」

「笑ってみて」

「こう?」

「ダメね」

「悪いね」

Wはそんなやり取りが面白かったのか、穏やかな笑顔を見せた。腹の探り合いは疲れるのだろう。こういうことを任せているのだ、これくらいでアイツの気持ちが落ち着くのであれば、安いものだ

会話が聞こえる。やはり追撃戦を仕掛けてきたか。どうやら小僧が殿を務めるそうだ。……は?

何がしたいんだ? 守る? それで? ははは、何の冗談だ。つまらないにも程がある。行動が一貫していない。信念も無い、復讐心も何も感じられない。あるのは怒りだけ。狂気の奴隷になっているだけだ

しかもWがドクターを殺せばいい、などと小僧に言っているが──無理だとわかっているだろうに

小僧の部隊が奇襲ポイントへ向かっていくのを見ながら、Wに声をかける

「無理だな」

「野良犬にはいい死に場所でしょ」

「ふん」

小僧は十中八九死ぬ。まあ、メフィストとファウストとは異なり、あれはレユニオンに忠実な駒だ。いずれ敵になる。だから始末する。当然だ

 

……まあアレックスくんそんなものですからねェ。

ドクターに用がある筈のW姉貴にしては妙だなーって思って考えてみれば、そこらで死んでくれると助かりますよ。それも疑問を抱かれないレベルで。

言ってしまえばミーシャに対する付け合わせのミックスベジタブルですからね、彼。

 

>合流ポイントへ移動していると、ミーシャが何やら悩んでいる様子だ。周りのヤツらとの会話を聞くに、小僧が気になる様子だ。小僧には失望させられたが、コイツはどうなのだろうか。その疑問を抱いたオレは……

────

弟がそんなものなら姉もたかが知れている

>姉は違うかもしれない

────

 

後者です

実際はどうか知りませんけど

 

>「あの小僧、助けてやろうか」

「……え?」

「どんな手でも使って、連れて帰ってきてやろうか。小娘」

気付けば声をかけていた。やはり、目が違う。これは期待できるかもしれない。だから声をかけた。Wは何も言わないようだ

「G……? どうしたんだ、お前」

「黙っていろ。オレは小娘と話している」

「本当に、スカルシュレッダーを助けてくれるんですか?」

「ああ。必ず生きて連れ戻す。だが、オレはタダ働きは嫌いでね。対価を支払ってもらうことになるが、どうする?」

ミーシャは悩むことなく、頭を下げた

「お願い……! 弟を、アレックスを……スカルシュレッダーを! 助けてください! なんでも、しますから……っ」

 

ん? 今なんでもするって言ったよね?

 

>──面白い

「天に吐いた唾は飲めんぞ、()()()()。いいのか?」

「はい……家族を、もう見捨てたくないから……」

「W。少し借りてくぞ」

「あんたが行くならあたしも行かないとね。遅れて着くけど」

踵を返して戦場へと向かう。さて、あの小僧を助けたくもないが、ミーシャの頼みだ。仕方あるまい。助けてやろうじゃないか……どんな手を使ってでも、な──

 

というわけで、スカルシュレッダーくんの自爆特攻に乱入します。まあ今回も視点を変えた方がいいでしょうね。ちなみに速度がこっちのほうが早いので、レユニオンモブ兵は遅れての登場となります。

そんなわけで、視点変更〜

 

────

 

「──え?」

 

アーミヤの間抜けな声が漏れた。鮮血が舞う。腕が舞う。

スカルシュレッダーの自爆特攻。

それを阻止したのは……

 

「、ジ……ィ……ーッ、!?」

「落第だ、小僧」

 

レユニオンの幹部の一人、サルカズの傭兵Wと背中を合わせる男──G。

手にしたマチェーテの如き形状の刀身を持つ長剣で、自爆を阻止していたのだ。スカルシュレッダーの左腕ごと斬り捨てることで。

 

「グッ、くぅぉぉぉぉ……ッ!」

 

声を殺して腕を抑えるスカルシュレッダーに、左腕を見せつけるように持ち上げて、また捨ててからGは心底から馬鹿な子供でも見るようにして近付いていく。

 

「裏切り、か……!」

「ミーシャに泣き付かれたからだが? 別にオマエがここで無駄死しようともオレは構わないんだがな。ああ、あと、オレとしてはドクターに死なれては困る。アイツは聞きたいことが山ほどあるそうだからな」

「……ミーシャが……?」

「しかし色々聞いてたが、なんだオマエ。ロドスは悪でレユニオンは正義で、立ち上がらなかった者たちはそれだけで罪だと? ははは、傑作だな。左の目を閉じたまま世界を見ていてはこうもねじれるか」

 

剣を納めることなく、飄々とした態度でやや詩的な表現をするGの異質な雰囲気は一瞬でこの場を支配した。一体何を、と口にすることすらできない。自爆を阻止する? 何のために? それに片手を切り飛ばして? 理解が追い付かない。それどころか同じ陣営の幹部に向けるとは思えないほどの軽蔑した視線は異常そのものだ。

彼は教授するように語りかける。

 

「いいか小僧。何故感染者は悪とされると思う?」

「それは、っ……! 感染者だからだろう!? いるだけで疫病を撒き散らすからだろう!? そうやってあいつらは俺たちを否定した!」

「そうだな。ではその判断の根拠となるものは?」

「──は?」

「知らんか。なら教えてやる。救う価値が無いからだ」

 

あっけらかんと、このレユニオンの構成員は自分たちを否定した。感染者を救う価値などない、とレユニオンを全否定するようなセリフと共に自分諸共否定した。

 

「不治の病。死体から経由して感染が広がる……そんなもの、受け入れるより排除した方が楽だろう」

「そんな、理由……で」

「ああ。そんな理由だ。感染者は危険だから不当に扱われる。これがこの世の真理で、そしてレユニオンが目の敵にされる理由だ」

 

Gはスカルシュレッダーに対して3本の指を立てて告げる。──回答権は3回で、一問一答だと。

 

「問題。何故ロドスはオマエと同じ立場でありながら、オマエたちを迫害した側とそれなりに上手くやっていけている?」

「知るかそんなもの……」

「回答放棄は死に直結するぞ」

 

長剣が残っていたもう片方の腕を斬りつける。くぐもった声を出すスカルシュレッダーに対して、なんでも無いようにGは血を振るい落とし、もう一度指を、今度は2本立てた。

 

「正解は危険性を理解し、神秘のヴェールを自分から剥がしているからだ。人はなによりもわからないモノを恐れる。正しく鉱石病を知り、研究すればいずれ不当な扱いは無くなるだろうさな」

「……いっ、いつか、では遅いんだ! 今すぐに、でも──!」

「東では滝を登り切った魚は竜になるという。物事は常に暗闇の荒野に光を灯す作業。歩くような速さで進めず、駆け抜けていくのであればそれはただの幻想に過ぎない。無い物強請りも悪くはないがな、せめて現実的にしろよ」

 

なぁ? とまるで同意を求めるように視線を投げかける。もっともそれに答えられる者はいない。値踏みをするような視線と、この救いようのないバカを笑ってくれと言わんばかりの同調を望む視線。そんなものを見て誰が答えたがるものか。

そしてGは、レユニオンの最初の暴挙にも触れていく。

 

「問題。チェルノボーグでの殺戮は有益だったか、無益だったか」

「有益、だ……!」

「残念、無益だ。タルラにとっては有益だったが、オマエたちのような下々には無益だよ。自分たちから迫害を更に受ける道を歩むとは、余程苦痛を愛しているようだな」

「……!!」

「ちょっと考えればわかることだろ? 都市を滅ぼしたのは感染者の群れだ。なら感染者を人は恐れる。その果てに待つものは? 単純、感染者へのより強い迫害だよ。そもそも前提からしておかしいのさレユニオンは」

 

言われてみればそうである。何故チェルノボーグを? という疑問だ。ロドスも近衛局も辿り着いてた疑問を、参加側だというのにこの男は持っていた。それは極めて俯瞰的な物言いであり、寸分の興味も無いことの証明。心底から感染者も何も関係無い、一種の悟りを開いているも同然だ。

更にGは、スカルシュレッダーの持つ致命的な歪みを切開していく。

 

「問題。ミーシャを守るとはどういうことだろうな」

「……それ、は……」

 

スカルシュレッダーは、それだけははっきりと。

 

「彼女の側にいて、襲ってくる敵がいるなら……それを、倒すこと」

「正解だ」

 

正解を告げた。

その正解を鍵に、ジェヴォーダンの獣は狂気に支配された子供に冷たい現実を突き付けていく。

 

「それで今、オマエは何をしている? ミーシャを守るとは程遠いことをしているじゃないか。自分たちの敵を滅ぼすことを優先して、Wからの入れ知恵を変に使って捨て身の特攻……どうして部下に爆弾を持たせて特攻させなかった? どうしてドクターを殺すのは自分だと決めた? ──なっちゃいない、なっちゃいないぞ小僧」

 

ミーシャを守るのは誰でもいいわけがないだろうと。家族を守るなら何故自分が捨て身の特攻をしたんだと。Gの表情は愉悦に歪み、口元は邪悪な狼の如く裂ける。

 

「木っ端の子犬どもが狼の群れを統率できるとでも? できるのは狼だけだ。狼であるオマエが死ねば、スカルシュレッダーに着いてきた連中は一瞬で崩れ落ちる。結局オマエは、ミーシャの為だ感染者の為だ死んだ同胞の為だ叫びながら、自分の中の怒りを吐き出す先が欲しかっただけだ。溶け落ちそうな怒りはすぐに冷ますべき、という。ならばオマエは何の為に戦っていたのか──教えてやろう」

「やめ、ろ……やめ──」

「適当な言い訳で自分を取り繕いながら自分の怒りの為だけに戦っていた。そうだ、オマエはオマエ以外に大切なモノなんてないんだよ。だから言っただろう、捨てる手間も省けてよかったじゃないかってなァ?」

 

がしゃん、と音を立ててスカルシュレッダーが崩れ落ちる。出血での気絶もそうであろうが、それだけではない。Gの指摘で心が折れたということもある。そんなスカルシュレッダーを担ぎ上げつつ、Gは侮蔑の表情で吐き捨てた。

 

「所詮子供か。つまらんな」

「あなたは立場すら掴めなかった人たちに、何を求めているんですか……?」

 

一歩踏み出したアーミヤが、やっとの思いで尋ねる。

 

「何も求めていないとも。ただ少なくとも守ると戦うという違いくらいは知っているかと思ってただけだ。それがこんなバカだったとはな。ああ、チェルノボーグのどさくさで殺しておけばよかった──!」

 

レユニオンという組織そのものへの不快感。スカルシュレッダーへの殺意。全てがぐちゃぐちゃに絡まってへばりつくような湿度を纏った言葉。この男は、何を見て何を考えている……? 理解できるはずなのに理解できない。人の形をした別の何かのように。

そしてアーミヤに視線を向けて、アーミヤへ言葉を投げかける。

 

「見たかアーミヤ。コイツらは思考を止めている。オマエたちを一方的に悪として、自分たちは正義だと。正義と悪を決めるのは歴史、それを自分で定めるのは傲慢だ。オレたちに許されたのは、オレたちがその時正しいと信じた行動を行うことだけ。絶対正義も、絶対悪もありはしない。こんな傲慢なヤツらに救う価値などありはしない」

 

その言葉は、諭しだ。

真剣にロドスという組織を諭す、今までの狂獣のような雰囲気とは全く違う賢者の如き発言。何故レユニオンを救う価値が無いのかを論理的に説明しながら、そんなものの為に労力を使うなと真剣に説いている。

 

「──レユニオンは滅びる。何処かの誰かに使い潰されてな。オレたちサルカズの傭兵は自由だ。誰を選ぼうが金を払うなら仕事をする。……だがウルサスの為にタダ働きなどお断りだ。頭を働かせろ。政治に関心を持て。レユニオンの裏を見つけてみろ。何故チェルノボーグを潰されたウルサスが沈黙しているのか、これはただのテロではない。巨大な陰謀だ。龍門としても調べておくことを推奨するがね」

「そんな戯言を──!」

「信じろとは言わん。だが徒労に終わればそれでよかろう? ロドスはケルシーあたりに伝えておけ」

 

気を遣っている。思わず吠えてしまったチェンですら、呆気にとられる程の気遣いだ。真剣にこの男はレユニオンの裏にある陰謀を警戒し、ロドスと龍門へ警戒を促している。何がしたい? 何を考えている? 何もわからないからこそ不気味に映り、かと言って戯言と流すには真が入っているその様子。

全てがズレているのに一本の線のように芯が通っている。混沌の擬人化の如く複雑怪奇のようでその実単純にも見える。

 

「ミーシャさんを、どうするつもりですか」

「別に。コイツの姉貴らしいが詳しくは知らん。ミーシャが修羅になろうが何になろうが、それはアイツの選択。彩られたタペストリーの色が美しいかどうかは、自分が決めることだ」

 

本気で知らんしどうでもいい──いや、そんな程度自分で決められると言わんばかりの態度。なんだろうか、信頼や信用にも近い。不気味なそれ。正しく理解しようと思うこと自体が間違いなような、暖簾を押すような感覚。

 

「さて、帰してくれるかな。1秒たりともこの生ゴミを触っていたくないんだ」

「──ふざけるな。お前たちはここで終わる」

「残念ですが、私たちはレユニオンを認めるわけにはいきません」

 

戯けたようなGに対して、彼を除いた全員が構える。包囲されているにも関わらず、余裕すら漂わせているが……

 

「手の内は聞いているぞ。生体電気の大幅な増加による雷撃。自傷もただではすまない筈だ」

 

チェンを庇うようにリスカムとホシグマがジワリジワリと距離を詰めていく。エクシアとアーミヤが遠方から抑える。テキサスとフランカがいつでも切り込める位置を陣取る。ドクターを守るようにブレイズとサリアが位置取る。

ふむ、と呟いたGは。

 

「降参だ」

 

片手を上げて、そう言った。

一瞬、呆気に取られる。

 

「もう一度言う。降参だ」

「……なんだと?」

「──そしてオレが降参すると龍門の民間居住区に仕掛けた源石爆弾が炸裂するようになっててな」

「嘘だな」

「メフィストはそうすると言っていた」

「……それは、本当ですか」

 

アーミヤはメフィストの狂気を知るが故に尋ねて──

 

「デタラメだよ。本当は──」

 

刹那、スカルシュレッダーの斬り落とされていた左腕に握られた爆弾が爆発する。凄まじい爆炎がその場を包み、更に採掘場の各所が連鎖的に爆発する。白燐爆弾も煙幕爆弾も電波妨害爆弾も含めた多様な爆弾が炸裂し、一瞬だけ混乱する。その隙を逃さずと無数のレユニオン構成員が雪崩れ込んでくる。

 

「67秒早かったな……」

 

爆炎の中でGはそう呟くと、わざわざやってきてくれた捨て駒たちを囮に、離脱を開始した。

 

────

 

>「早かったなW」

場の混乱に乗じて離脱する中で、思ったよりも早く来てくれた相棒に声をかける

「ミーシャがどうしても急げってうるさかったのよ」

「オレが心配じゃなかったのか。薄情な」

「あなた、どーせ真面目にやる気なかったでしょ? ロドスに捕まえさせて無理矢理延命で約束を守ったとか言うつもりだったくせに」

「バレたか」

小僧の求心力はそれなり以上だ。死ねば英雄になってくれるかとも思ってたから、テキトーに殺しても良かったのだが

 

はい、ということでハッタリと欺瞞降伏を使いました。スカルシュレッダーくんへの授業は時間稼ぎの一つです。いやぁ、サリア姉貴とブレイズ姉貴がいるんじゃ無理です。どうしようもありません。逃げるが勝ちです。異常な事を言いまくれば呑まれてくれるのは助かりますよホントに。

あと時限爆弾的にスカルシュレッダーくんの左腕が爆発したのはアレがアーツに反応する爆弾だったので、ちょっとこっちのアーツを使うことで擬似的な時限爆弾にしました。予想より早く爆発したけど。

 

>追ってくる連中はWと部下たちに任せながら、オレは合流ポイントへ急ぐ。ふと思い付いたのだ──ミーシャはスカルシュレッダーになってくれるか、と。オレが喰らい殺すに相応しい存在になってくれるなら、めっけものだ。ロドスに行こうがどうでもいいが、それだけはやっておきたい

 

というわけで帰ったらミーシャ姉貴をスカルシュレッダーにするため有る事無い事吹き込みます。

 

今回はここまで。

ご視聴、ありがとうございました。




チェン姉貴
迷わなかったらなぁとか考えてたら迷わない奴が来て、その異常っぷりに殺さねばした
だが迷いを抱えていたため、GくんのHP9割を吹き飛ばす程度に終わった

スカルシュレッダーくん
Gくんに片手斬り飛ばされて本音を突き付けられた付け合わせのミックスベジタブル
流石にかわいそうに思えてきた

ミーシャ姉貴
ん? 今なんでもするって言ったよね?
ならこの、スカルシュレッダーマスクを付けてぇ……

Gくん
雷返しでHP9割消し飛んだため滅茶苦茶やせ我慢と空元気
なのでまともに戦闘しないし欺瞞投降までした

W姉貴
疲れたのでGくん成分補給


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そうなったら誰が全力でお姉ちゃんを遂行すると思う?

お姉ちゃんと呼んで欲しいので初投稿です


どうも、一般投稿者です。大丈夫、今回は荒ぶらないよ! ここ最近はやたら怒り狂ってたけど、もう怒り狂わないよ! 私はもう鉄の意志と鋼の強さを手に入れたからね! 何があっても発狂しないよ! 本当だよ!

 

>片手の無い小僧を応急処置していると、心配そうに様子を見に来たミーシャはおずおずと頭を下げた

「あの……ありがとうございました。アレックスを、スカルシュレッダーを助けてくれて」

「自爆を阻止するために片腕は落としたが、大目に見ろよ。どんな手を使ってでも、と言ったしな」

「……それは、はい」

火薬を使い傷口を焼いておく。メフィストはメフィストでやることがあるのだろう。来れないと見るべきか

「ところで対価の話だが」

「っ!」

息を飲む声が聞こえる。ナニを要求されると思っているのやら……

 

え? 違うの? (違います)

私だったら金髪のウィッグと青いカラコンを付けてもらって──

アリスだ! 間違いない、愛しき少女──アリスだ!アリスは何処だ? 早く彼女を愛さなければ。

 

>「コイツの生き死にと、オマエのこれからを決めろ」

「──へ?」

「別にコイツのマスクを剥いで、自分がスカルシュレッダーになっても構わん。ロドスへ逃げ出して、少しでも安心できる生活を手に入れて構わん。近衛局へ自首して、知っている事を全て吐き出して監視の目もあるがそれでも守られた生活をするのも構わん」

「……」

「だが、オマエはオマエのエゴで小僧の命を拾った。小僧に死ぬなと呪いを刻んだ。ならばその責任を全うしろ。これから多くの命がオマエの為に死ぬ。オマエの存在は多くの屍の上に立つ価値があるのか?」

「そんなもの、無い」

「レユニオンは希望ではない。破滅への道だ」

俯いていたミーシャが顔を上げる

「──どうやったら、ここで苦しむ人たちへの希望になれる?」

「ロドスのようになれ。なると定めてなれ。それ以外にはない。同じ立場の存在を苦しめるという苦痛を受け入れ、何もできなかった自分たちの罪という過去を受け入れ、未来を創り出す瞳を持て。さすればなる」

なると決めたらなれるのだ。間違えようが迷おうが、一度決めた目標を諦めない限り必ずなれる。なろうと努力すれば報われる。もっとも、現実の報い方は残酷な形しかないのだが。オレのように

恐怖と向き合い、未来を創る──そうしなければ人は前に進めない

「きっとアレックスは、自分たちの怒りを知って欲しいから行動していた。だから過激な事をしていたと思うの」

「それがチェルノボーグの虐殺と同胞殺しでは随分と愚鈍なようだ」

「そうね。でも私も変わらない。見て見ぬ振りをして、この子を助けられなかったという傷を、他の感染者を助けることで慰めていただけ」

「なるほど。それで?」

意を決したミーシャは、まるでアーミヤのような決意と共にオレに宣言した

「──それを今から、現実に変える。私が……スカルシュレッダーという灯火になる。迷い傷付いた人に、安心を守護を約束する存在に」

「だったらさっさとレユニオンを出て行け」

「出て行かない。ここで戦う。今必要なのは、復活したスカルシュレッダー。だから私がやる。それに戦場に立てば──ロドスと話せる」

「だ、ダメだミーシャ……!」

小僧が目を覚ましたようだ。何処から聞いていたかは知らないが、マスクを外した顔は思った以上に幼い。やはり子供か、心身共に

しかしミーシャは、凛として言い放つ

「あなたこそ休んで頭を冷やしなさいアレックス。向こう見ずに走って間違えるのは、お姉ちゃんの特権なのよ。みんな迷う、みんな傷付く。だから迷いたくないと考えるのをやめて、傷付きたくないと動くのをやめる」

 

ん……? んん? なんだ? なんか……あれ?

 

>「ロドスはきっと安息の地。そこに行けば必ず一息つける、腰を下ろせる。でもそこに行くまでずっと迷い続けなきゃいけない。迷わないで行ける人は少ない」

ミーシャは噛み締めるように告げる。そもそも自分たちは始まりから間違えていたとも言う。それは何故か、それを過ちだと知らないからだと

「だから迷って傷付いて、後ろにいる人たちに正解の道を教えてあげる灯火が必要なの。私が正道を歩めばみんなはついてくればいいし、道を誤ればその道を避ければいい。諦めないで全力で生き足掻くことが、みんなのためになる」

ならば過ちを教える誰かが必要だ。ロドスは敵だからこそそれを示そうにも誰も理解しようとしない。レユニオンの側から、その過ちを教えて正道を考えさせる存在が必要だ

「ミーシャ! そんな苦難の道をお前が歩まなくていいんだ! お前は俺が守るから──」

小僧は叫んだ。守れもしないのに。しかしミーシャは

どきなさいアレックス。私はお姉ちゃんよ

 

なんか……ミーシャ姉貴が、変な方向行ってない……?

 

>は……? この女は何故姉だと主張しているんだ? そんな、堂々とした表情と雰囲気で、どうして姉であると本気で伝えている?

「今度こそ、私があなたを守る」

「違う、俺が──」

「私にお姉ちゃんを、やらせて」

「……なら、弟として……姉を支えさせてくれ」

「違うわ。あなたは私の背中を見て考えなさい。怒りも憎悪もその目から外して、私の歩いた道を見て、正誤を判断しなさい」

まるで、それは戦士のようで……いや、なんか違う。なんだこれ、違うぞ。色々違う。なんだ? 強いて言うなら姉としか言えないが……姉とは、こういうものなのか?

 

……んー……なんか、違う。これは覚醒じゃなくて、お姉ちゃんやってる。全力で遂行してる。なんでそうなるかなァ?

 

>「──G。装備の予備は?」

「Wに聞け」

「わかった。それと、感謝するわ。私にお姉ちゃんをもう一度させてくれる機会を与えてくれて」

なんだコイツは。なんなんだ、なんだっていうんだ。わからない。いやわかりたくない。助けてくれW。助けてくれモスティマ。助けてくれケルシー

「スカルシュレッダー。オマエの姉貴、なんでやたらとお姉ちゃんを連呼するんだ」

「知らない……」

「なんだアレ」

「ミーシャ……なんで?」

流石に小僧が不憫になった。確かに、一理はあるのだが……あるのだが……なんだ、これ。なんというか、違う。期待したものと果てしなく違う

「……あの、G」

「なんだW」

「あのやたらお姉ちゃんを主張してくる謎の生命体は何?」

「知らん」

困惑するWを尻目に、オレは小僧の治療を再開した

 

……ハイパーお姉ちゃんはもう放っておきましょう。スカルシュレッダーじゃなくてありゃもうお姉ちゃんだよ。違うよあんなのミーシャじゃないよ。

 

>「……G、俺は……ミーシャを助けたい」

「まだ戯言を言うのか小僧」

「いや違う。俺には、わかるんだ。あいつはスカルシュレッダーを愚かな存在としてレユニオンに見せつけて、意味を問う気なんだ。無駄死することで、本当にこれが正しいのかを問う気なんだ!」

「ヤツが決めたこと。それまでだ」

そう言い切ると、しかし先程までの愚鈍な男ではなく、はっきりと自分の意志を伝えてきた

「決めたこととは言え、スカルシュレッダーとして戦場に出てしまえばスカルシュレッダーとして死ぬしかなくなる! ミーシャはミーシャなんだ、ミーシャとして生きて死ぬべきなんだ! このままだと……」

「じゃあスカルシュレッダーとして死なせてやろう」

「違う! もし、だ。もし……もし俺の想像が正しければ──」

そして小僧は、オレに対して最も重要なことを告げて──オレは唖然とした。何だそれは……敢えて知ろうとはしていなかったが、つまりそれは……

「オマエはロドスへ行け」

「え?」

「オレの部下をつける。それを護衛にロドスへ行け。そこで匿ってもらえ。ミーシャはもはやどうしようもないが、少なくともアーミヤは殺そうとはしない筈だ。そこに賭けろ」

「何故だ? 何の為に──」

「ヤツの裏を掻く。ブラフの可能性もあるが──少なくとも、一般的な家庭ならば父親は息子にその手の事で嘘は吐くまい」

「……」

「いいかスカルシュレッダー。もしオマエにやってしまったことを、悔やんだり悲しんだりする心が少しでもあるなら今すぐにでも行け。もしもオレの考えがヤツの奇妙な行動と少しでも合っていれば、オマエとミーシャが鍵になる」

「……ロドスを、信用はできない。俺は少なくとも、俺を助けてくれなかった連中を──「四の五の言うな馬鹿者。このまま姉貴の名前を大量殺戮者にしたいか? かつてジェヴォーダンの獣と呼ばれた伝説のサルカズのように」……」

こんな風にオレの名前を使うことになるとは思わなかったが、この状況はある意味では好機だ。パスワードと鍵はワンセットでなければ使えない。逆を言えば……鍵の内どちらもブラフでも、パスワードさえわかっていれば最悪タルラを殺してでも真の鍵を奪えばいい。ヤツが例え事実を理解していても、人の過去に詮索したことはない筈だ。その中でも特に……トラウマとなるような出来事は

これが成功すれば、オレたちは今、組んでから長いが始めてアドバンテージを取ったことになる

「スカルシュレッダー、オマエは守ると言ったな。ならば全てを捨ててただのアレックスに戻ってでも、守り抜いてみせろ。オマエを無学と断じたオレを見返してみろ」

「……俺は、それでもタルラを……」

「姉を怪物にしたいのか! 杞憂に終わればそれでいいが、それですまないと薄々と感じているんだろう!? オレとWですら影に気付くんだ、オマエたちのような長い付き合いが気付かない筈も無い! 目を開けろ馬鹿者が!」

「……」

Wとオレは致命的なミスを犯しかかっている。コイツだ、コイツだったんだ本当にオレたちの計画に必要なものは。ミーシャともう一つの鍵はいくらでもどうとでもリカバリーは効くが、しかし……コイツを失ってしまえば、万一の時に取り返しが付かない

「この事は誰に?」

「Wにだけだ」

「……なあ、小僧。オレはオレの意志で多くの人間を殺してきた。それは何故か? オレの為だ。もしもオマエが、何かよくわからない陰謀の為に死ぬよりも、自分の為に生きて死にたいなら──今すぐにでもここを離れろ」

チェルノボーグの緊急動作キーの片割れの姉と、その緊急停止パスワードを知る弟。Wは色々とやり過ぎてしまうから、アイツの楽観視やオレの愚かな考えに囚われずに済んだ今しかない。大抵こういう緊急キーは分散するが、原本は必要な場所にある。そしてその必要な場所にいるのは……今タルラだけだ

万が一、億が一、あり得ないとは思うが兆が一。オレならば絶対にそうすると踏んだから……

オレがもしこういう立場で最強を成し遂げる為に戦場を必要とするならば。その為にチェルノボーグを制圧したならば──進路を操作し適当な都市にぶつける。ついでに都市コードも付けっ放しだ。止める必要が無い場合、停止パスワードは知らなくていい。仮に知っている者がいても来た時に殺せばいい

何をどうしようが戦争が起こるからな、そうした混乱を引き起こして見に徹して、敵に潰し合いをさせるのは常套手段の一つだから

そして鍵の真贋を理解していて、真をこの手に持っているなら、適当に飾り立てた理由で贋作探しに邪魔なヤツらを向かわせて、手に入れた鍵を真だったとか言えばいいのだ

 

ナチュラルに不死の黒蛇思考やめろ〜? まあ私もそれが最速ならやりますけどね、都市落とし

行け、チェルノボーグ! 忌まわしい記録と共に!(潰えた記録の憎しみ)

 

>……タルラが本当にそこまでするかはわからない。単に動かしたり止めたりするのに必要であるだけの可能性がある。しかしアレだけ薄っぺらい存在が、オレと同じ思考をできない筈がない。思い付かない筈がない。何故ならオレならするからだ。チェルノボーグのように全ての都市を焼き払うにしろ、仮にウルサスと連んで都市を焼き払うにしろ、それが効率的だから……ウルサス?

そうだ、チェルノボーグはウルサスの都市で、オレは疑問に思ったじゃないか。ウルサスは何故この都市を本気で奪回しに来ないのかと。そして他ならぬオレ自身が言った、ウルサスの下儲けをやるつもりはないと

チェルノボーグはウルサスの都市。都市コードを発信しながら適当な都市にぶつけようとして、それを適当に迎撃でもすれば宣戦布告も同然。そしてウルサスと他国を戦争状態に持ち込めば、いくらでも喰い殺し放題で──まさか、いや、まさか……

「……さっさと選べ。狂い出している龍に使われて死ぬか。それともせめて姉の名誉だけは守るか」

「……俺は……あと少しだけタルラを信じていたいんだ。自分自身ですら信じられないから、彼女の見せる希望が、歪んでいても、きっと正しいと……」

殴った。スカルシュレッダーを本気で殴った。胸倉を掴み上げて、怒鳴る

「まだわかっていないようだな。いいか? チェルノボーグの無益な殺戮と占領はそもそもテロ組織の行動としてはおかしいんだよ。それに、自分たちはここにいるって主張すれば一網打尽にされる。四方八方を武器で囲まれれば死ぬしかない。それとも? タルラならなんとかしてくれると思っているのか? だとしたら能天気にも程がある」

言葉を続ける。オレならするであろう行為、オレでもするであろう行為。杞憂に終わればいいが、それは絶対に起きるだろうというある種の同族嫌悪が語りかけてくるからこそ

「オマエがタルラを信じるのは勝手だ。けど最悪の状況に陥った場合、生き残るのは誰だと思う? タルラだけだ。ヤツの力は異常そのものだが、オマエたち全員を救えるほど強力なものじゃない。だからタルラを当てにして寝床を晒すなら、必然的にヤツ以外は全員死ぬことになるんだ。けど、今のアイツはオマエたちですら薄っすらと感じ取れる程に何かがおかしい。オレの考え得る最悪の中の最悪が発生すれば、非感染者は寄ってたかって感染者を迫害する……」

無差別テロはもはやテロではなくただの殺戮だ。テロを──感染者の待遇改善を過激な方法で要求するなら関係閣僚だのなんだのを暗殺すればいい話だ。実際それができるだけの人材が揃っているし、できるだけの協力者もいれば、パトリオットの爺さんがそれを思いつかない筈がない。多少なりとも良心のあるあの爺さん……いやジジイやフロストノヴァが、それをわかってタルラに頷いただけならば、それは──!

「オマエたちがタルラの裏を掻くしかないんだよ。オマエもわかっている筈だ、このままタルラの奴隷をやっているだけでは、オマエたちに未来などありはしないと」

「……それは……」

「何を躊躇っている! オマエには守るものがあるんじゃないのか!今オマエが抱いているミーシャを守りたいという意志も全て嘘なのか! 人の話を聞いて、少しくらい自分を顧みたんだろう!? だったら今すぐにでも本当にミーシャを守ってみせろ! このクソガキが!」

もう一度殴り飛ばし、口汚く罵る。俯くスカルシュレッダーの表情はわからない

「……撤退開始まで少しだけ猶予がある。また来るまでに決めておけ」

 

……さて、これで選んでくれるかなぁ。正直ロドスにぶん投げた方が楽でいいんだよね。保護してやるのも面倒だし。ミーシャが近衛局に確保されたとしても緊急停止パスワードを知っているのはW姉貴とアレックスくんだけ。ミーシャは切り札にはなり得ないから、例え龍門が確保しても結局起動するだけしかできない。それにウェイ兄貴はまともだから極秘裏にロドスに渡したりする筈。ウルサスの都市を悪用できる可能性を持った炎国がどれだけ敵視されるかを理解できない筈も無いから、死亡扱いにしてロドスに引き渡す裏取引くらいする。間違いなく。

ロドス択一ですな。ヤな面倒事はぜーんぶロドスに任せちゃえ〜(OJMJDRM)

 

>オレとスカルシュレッダーの口論は聴こえていたようで色々と聞かれたが、ミーシャの為に捨て石として隊を使い捨てろ、そうでもしなければ絶対に死ぬと言っていただけだと誤魔化しておく。最優先目標はミーシャの確保であり、理に叶っているのだから

Wの怪訝な瞳を無視しつつ、今ばかりは半身を騙すことに心苦しさを覚えた。そして古い部下を4人ほど集め、最悪スカルシュレッダーを強奪しレユニオンから脱走しロドスへ投げ込めとも命令しておく。口の立つ連中だ、義手を与えに昔馴染みに会いに行くみたいな適当な嘘も上手に言ってくれる

 

実際別ルートで幹部を逃すのはそんな不思議でもないですしね。

 

>……時間だ。答えを聞きに行く

「どうする」

「……何が正しいのかはわからない。でも俺は、家族を守りたいという気持ちに嘘をつきたくない。怒りや憎悪に支配されてたって、あいつに言った言葉は嘘にしたくない」

「わかった。──行くぞ」

スカルシュレッダーを連れて部下たちの元へ行く

「彼らが?」

「ああ」

「俺はこれから、同胞を見捨てるのか……」

「違うな。それだけでも流れる血が減る筈だ」

「G、ポイント指定等はあるか?」

「待っていろ」

携帯電話を取り出して連絡をかける。あのトランスポーターがもし、オレのこの電話に出るのならば……

「……はい、こちらペンギン急便」

「久しいな、モスティマ。出てくれるとは思わなかった」

「こっちこそ久しぶりだね、──。君から連絡が来るとは思わなかったよ」

声は変わっていない。が、なんだろうか、少しだけ柔らかくなったか? モスティマ

 

……そっかぁ。トランスポーターの個人連絡先持ってるのモスティマ姉貴だけだもんね、Gくん──待てや。エンカク兄貴にライン生命とエリートオペレーターが早期合流してるのに、そこにモスティマ姉貴参戦? ここで連絡通じるってことはモスティマ姉貴が電波状況いいところにいるってわけで……あははは、まだそうとは決まってない!

 

>「今はGだ。仕事を頼めるか?」

「位置と場所による」

「荷物の場所は龍門から少し離れた採掘場近くにある廃村、目的地はロドス・アイランドという製薬会社だ。オレの古い友人たちが積荷を守っている。安心しろ、条約とかに違反するようなものじゃない」

「……そっか。うん、いいよ。少し近いけど君と私の仲だ。受けるよ、その依頼」

「すまんな。報酬は高く吹っ掛けてくれて構わん」

「いいや──直接会って、話そうか。どうやら君は変わったみたいだ。また近いうちにお目にかかれるだろうし」

なんだその含みのある表現は

「また会おう、私の古い友人。……信奉者(おおばかやろう)

 

はいモスティマ姉貴参戦確定! マジかよわりとしっとりしつつあるし、これはマズイですよ! 下手したらGくんへの友情を煮詰めて死んでもらう理由にしているかもしれない! アップルパイという死の呪文から逃げ出したら堕天使が来ちゃったよ!? ミーシャはお姉ちゃんになるしなんだってんだァ!!

 

>「モスティマ? ……切れた。聞いての通りだ。合流ポイントは……ここで、そこでコイツをトランスポーターに拾ってもらいロドスに流す」

「扱いはどうする?」

「遺体、ということにしてやれ。遺族へ渡すとでも」

「了解。少し窮屈かも知れんが許せよ」

「構わない。……G、ありがとう」

スカルシュレッダーが頭を下げてくる

「利害の一致だ、気にするな。ミーシャの事については、死なせないように声はかけておく。オレもできる限りの努力はするが、ああなっては──」

「大丈夫だ。仮にそうなっても……彼女はそれを納得している。ミーシャは、そう生きてそう死ぬことを選んだんだ。そこに口を挟める程俺は……愚弟じゃない」

先程とはまるで違う雰囲気と視線……なるほど、これが本当のスカルシュレッダーか。最悪姉の名誉を守るだけになってしまうかもしれないが、それでも、と

「……ミーシャを頼む」

「任せろ」

その場から離脱する部下とスカルシュレッダーから背を向けて戻る。スカルシュレッダーをどうしたと聞かれたら、アイツはミーシャの支援部隊に回ったと言っておく。オマエたちを一人でも多く生かすために、怒りと憎しみを捨てて、オマエたちの為に戦うことを選んだと。ヤツの覚悟と命を無駄にしない為にも、早く離脱するぞと告げておく。こうすれば勝手に意味を見出してくれるから、末端は楽なものだ。その上で絶対に死なせるなと告げておけば、彼女を生かそうと全力を尽くしてくれるはずだ

何をしているのだろうか、オレは。さっきまで死ねばよかったとほざいた口で、やれ姉を守るという意志は嘘だったのか、オマエは生きろなどとほざく。コロコロと掌を返して、言っていることが一貫できない。これではただの詐欺師だ。Wを捨てることも受け入れることもできず、体のいい態度を取り続けてきた時と何も変わっていない。苦痛を受け入れたとしても、オレへ冷や水を浴びせかける現実はいつも通り無情だ

……Scout。これが友を殺したオレへの罰なのか? いや、Wはイネスとへドリーが気付くように仕向け、オマエを見逃そうと必死だった。本当は殺したくなかった。それでもオマエはオレたちに何かを伝えるために死を選び、イネスを通じて真実をオレたちに教えてくれたんだ

Scout、オレの古い友人よ。オレは──愚かなのだろうな。だがそういう風にしか、オレは生きられない。なあ友よ、教えてくれ。オレは……オマエを殺したくなどなかったし、Wを殺したくないと思う己もいるんだ

オレが目指していた最強は矛盾だらけの幻想で、そういう生き方しかできないからとしていればその生き方に痛みを覚える。どうしてオレは、傷だらけにしか生きれないんだ……

モスティマ、かつてオマエはオレに言った。『茨の道を進んでも、求める心は捨てられない。心を捨てた怪物になってしまったらもう、それは始まりすら捨て去ったも同然』だと

「……オレは、一体何者になればいいんだろうな」

メフィストの目標、Wの半身、ケルシーの弟子、モスティマの古い友人、そして未だ最強を目指す愚者。本当に思考を止めているのは、オレなのだろうな。Wとの間に揺れ動く心を認めて、真なる現実的な最強を目指そうとしても……それはただ、それがオレだからという昔に決めたことを追いかけているだけ。そういう風にしか生きれないから

オレは変われるのか? オマエたちのように……

 

Gくんはなんだかんだ言って、言葉を受けて変われる人たちが羨ましいんですよね。自分が如何に矛盾だらけの道を突き進んでいるかを自覚するようになっても、それでも変われない変えられないとして未だに走ってるんですから。その意味や正誤を問いながら、いざその機会が与えられると飛び付いてしまう……彼が何よりも憎んでいる、嫌っているのは、何かに寄りかかっていなければ生きていられない自分自身なのかもしれませんね。

 

>どうか解答(アンサー)を入力してくれと願いながら、それでも薄っぺらな幻想にはなりたくない……か。現実で傷付いて幻想ではない最強に生涯をかけてなってみせようと決意しても、結局幻想を求めているのではないかと疑問に当たる。そしてそれでもよいとしながら、それを認めるには器量は狭くて……なんと傲慢なのだ、オレは

「G、何処へ行っていたの?」

「スカルシュレッダーが殿を務めると。ミーシャと入れ違いだそうだ」

「せっかく拾った命を捨てるんだ、あの子」

「いや、アイツの使いたいように使うんだ」

「なるほどね」

Wは何か含みのある視線を向けてきた。それは何か企んでいるのはわかっているし、どうせ嘘なのだろうが黙って騙されていてやるという──そういう視線。ああまったく、自分のことより先に、Wのことが優先だったか。やれやれ、サービスでもしてやらないと機嫌は取れそうもないな

 

ということで今回はここまで。

ご視聴、ありがとうございました。おま◯けはお姉ちゃん関係の垂れ流しです。

 

────

 

両腕が健在のスカルシュレッダーの登場は、レユニオンの士気を大きく上げた。それがアレックスではなくミーシャだと気付いたのはアーミヤとチェンくらいなものだった。それだけ本物のスカルシュレッダーと同じだったのだ。短期間でスカルシュレッダーになってみせるというその凄まじい執念に、だからこそ何故? という疑問がアーミヤに生まれた。

 

「どうして、どうしてなんですか!?」

「どうして? それは単純……だ。誰かが先を進まなければならない。暗闇を切り開いて灯火となり、正道を示さなければならない……んだ」

「レユニオンで殺戮をすることが正道ではありません!」

「スカルシュレッダー! そいつらと話なんか「黙れ。今アーミヤと私が話をしているんだ。お前たちは黙って見ていろ」……!?」

 

有無を言わせぬ……なんというか、どっかの誰かに似てるような似てないような……物言いで部下を制止し、また攻撃を中止させると、ミーシャはアーミヤとしっかり向き合った。マスクの奥に隠された表情は何もわからない。ただこの場にいる全員が薄々と勘付いている。その覚悟、尋常ではないと。

 

「その通りだ。生きるならば必要以上の殺しなんて褒められたものじゃない。でも、それでも、彼らにはそれがわからない……だから誰かがそれが間違いだと背中で示さなきゃいけない」

「それがお前の役割だと? 何故だ、何故そのような愚行を……!」

「隊長さん。出来が良かろうと悪かろうと、常に年長者は後ろにいる人たちの見本になるの。『年長者だからこそ失敗できない』んじゃない、『年長者だからこそ失敗する』──私が正道を歩めばそれに倣ってくれればいいし、私が間違えたならその道を避けてくれればいい」

「待て、それじゃお前は人柱じゃないか!」

 

横にいたホシグマが思わず声を張る。マフィアに身を置いていた彼女は見せしめというものを見てきた。無論そのような行為は許されるものではないと知っているし許すつもりもなく、また許してきたこともない。するつもりも、やったこともない。だがそうした末路を示すのは、秩序における過ちをちゃんと示すということでもある。それを見て、学ぶ──暗黙の了解とはそうやって生まれるから。

 

「ええ……でもそれが諦める理由になる? 後ろにいる人たちのために、絶対に諦めないことが、年長者としてできる最良の行動なの」

 

しかしそれでいいのだ、と目の前の少女は選択した。そもそも感染者の大半は愚かしさがわからないのだと。誰かがこれは愚かであると示さなければならないのだと。

 

「ロドスもレユニオンも掲げる理想は変わらない筈なのに、どうしてこんなにもすれ違うのか。優しい人もいれば怖い人もいる。感染者の扱いが不当なところもあれば、精一杯保護してくれるところもある。でもそうやって判断できるのは、良いところと悪いところを知っていなければできない」

 

わからないから安易な答えに逃げてしまう。その場限りの選択で致命的な間違いをしてしまう。だから誰かが先にそれが致命的な間違いだと示して、それを見た人たちがなるほどと思えば御の字だと。

 

「それぞれに正義がある。ロドスにも、レユニオンにも、龍門近衛局にも。みんなが正しいと信じたことをやっている。けど正しいと信じるあまり、それが間違いかどうかに気付けない──だから私は、全力でお姉ちゃんを遂行する!

 

……いや待て。なんか、おかしくないか? ドクターは訝しんだ。なんでそこでお姉ちゃん? そしてなんでみんな気にしてないんだ? 戦闘態勢に入った全員を見て戦闘指揮を組み立てながら、それはそれとして色々疑問に思う。

 

よく見ておきなさい……アレックス。これがあなたの、お姉ちゃんよ……! 全員、生き残ることを優先しろ! 死ぬのは私だけでいい! 私の行く道を見て、正道に行くんだ!」

「ミーシャさん!」

「アーミヤ、その目に焼き付けなさい! これが私の正道(過ち)よ!」

 

血を吐くように叫び、単身で突撃してくるスカルシュレッダー(ミーシャ)。姉として、年長者として、後ろを歩く二人の者へ。スカルシュレッダーに付いてきてくれた者たちへ──そして相容れない正義を貫く龍たちへ、このような愚かだけは絶対に犯すなという戒めの石となるために。

 

「スカルシュレッダー……」

 

元々疑問を感じていなかったわけではない。本当にチェルノボーグの虐殺が感染者の未来に必要だったのか? 冷静に考えれば誰でも気付くのに、それを理想の狂熱で誤魔化してきて──そして今、自分たちが着いていこうと決めた少年の代わりに、象徴として彼の姉が、感染者を救うという無理難題に挑戦する者たちへ、この愚かさを刻み付けろとする。

 

ならば、もっと年長者である自分たちが為すべきことは? 少女が姉として頑張っているならば、子供を守り導く大人として、目の前の敵に──いや異なる正義を持つ者へ伝えるべきことは?

 

「いや、俺たちこそが示すんだ。安易な答えに逃げた、ダメな大人たちとして──!」

 

もはや迷いは無かった。

彼ら今、たった一つの真実の下に集う。

 

どうか我らの選択を愚かな選択として、より良い正道を歩んでくれ。そのために狂い哭く我らの末路を、何故どうしてと共に伝えてくれ。

もし仮にこんな愚かな選択に潰されるのであれば──その時は、お前たちこそ愚かであったと。

 

──後の事は語るまでもない。

彼らは大人を遂行した。それだけだ。

 

「……現場判断は間違っていない。私からはよくそこでロドスに預けてくれたと感謝するよ」

 

チェンから顛末を聞いたウェイは、割と頭を抱えていた。

誰が考えろというのか。レユニオンに確保対象の弟がいて、血族だからなのかなんなのか、とりあえずなんかよくわからない「お姉ちゃんだから」という理由でスカルシュレッダーとして参戦し、ロドスと近衛局を相手取って殺し合いをするなど。

……いや真剣にわかんねぇ。なんでお姉ちゃん?

ミーシャは鉱石病が悪化しており、まだなんとかなった先ほどとは異なり、精神力一つで限界を超えたアーツと身体能力を発揮した反動で一刻を争う状態になってしまった。龍門で感染者治療を行うよりも、ロドスに預ければとりあえずはなんとかなるという現場判断は何一つ間違いではないし、ウェイも現場ならそうしたであろうと己を理解している。横に専門家がいるなら専門家に預ければ良いし、諸々の事情を考えれば龍門で保護してレユニオンの余計な怒りを買うよりもロドスへ矛先が向いてくれればそれでいい。

 

「ややこしい話になってきたな……」

 

借りとか貸しとかそういう次元の話ではない。ロドスと龍門の方針が異なるのは互い承知の上であるし、ロドスのバックもこちらへ情報提供をしない筈がない。ミーシャの正体が向こうにも伝わっているのだ。政治的判断で考えれば、言わないという事はない。いや、言わないという選択肢は絶対に取れない。

ただそれはそれとしてなんでそうなったんだ……? レユニオンに着くなら別に力尽くで良くなるから単純だった筈なのに、死を約束された殿に自ら進んで参加してチェンやホシグマが戦慄する程の尋常ならざる覚悟で決死の戦いを挑んでくるとか想像もできない。挙句ロドスも近衛局も少なくない被害が出ているんだからなんかもう色々とアレである。

しかも全てのレユニオン構成員がうわ言のように「まだだ、まだだ。まだ俺たちの過ちを全て見せ切っていない」と叫び二重三重の覚醒を繰り返し、ミーシャも覚醒の影響で進行し過ぎた鉱石病で意識を失うまで凄まじい猛攻を繰り出してきたし、ミーシャが倒れれば即座にスカルシュレッダーを名乗る構成員が現れて……俺を殺せ。そうすれば全て終わると叫び出す。なんじゃこりゃあ、わけわかんねえ。

オチとして、その名乗りを上げた男の首をスカルシュレッダーとして持ち帰り、ミーシャは死んだこととしてロドスに保護させる……なんかもうあれやこれやと情報が凄まじい密度でブン殴ってきている。

 

「──しかし年長者だからこそ失敗し、間違える……か」

 

学びの本質を、僅かな経験で得てそれを実践するなどと──ウェイは私人として、ミーシャとそれに従った大人たちの答えに同意し、そして本気で実践してみせたその姿に敬意を表した。お姉ちゃんは理解できないけど。

自分たちが築き上げたこの龍門の秩序だって、多くの先人たちの失敗から学んだことだらけだ。失敗を認めることのできない存在は、破滅するしか道は無い。小さな傷すら嫌がるほどの潔癖症なら、それはもう生きることすらできない。

思えば自分は、チェンに正しいのはこうだとばかり告げていて、間違いはこうだとは告げたことも示したこともなかったのではないか? チェン・フェイゼの意志を無視した、ウェイ・イェンウーの理想とするチェン・フェイゼであってくれと幻想を押し付けていたのではないか? ぐるりぐるりと私人として……何よりも父としての思いが頭の中を駆け巡る。

 

「父親と執政者の狭間で揺らぐ男では、愛想を尽かされるかもな」

 

──だが、それもまた父親というものだろう。お前を育て鍛えた父親ですら、理想と現実と、そして何より心と感情に振り回される大人でしかないと娘に示すのも、父親の役目ではなかろうか。そう思った時、フッと笑った。

 

(チェン。お前が真実、お前の為すべきことを見つけたのであれば……私は、お前にとって最大の試練として立ち塞がろう)

 

しかしウェイにはもう一つ、関心を持って対処せねばならない事があった。レユニオンに雇われているサルカズの傭兵『G』──Wの腹心であり、チェンが守護する者全ての宿敵とまで断じた男。その男の告げた、単にレユニオンだけではなく政治の話だということ。

普段ならば適当な戯言と流すだろうが……確かに奇妙な話である。ウルサスがチェルノボーグを落とされて沈黙する理由が気がかりだった。そしてGは、自分たちはウルサスの下儲けをするつもりはないと。レユニオンの行動はあまりにもおかしいと明確に言った。

 

ウルサス……狂気の行動……そこでウェイはある古傷を思い浮かべて──

 

「まさか……お前なのか、コシチェイ──?」

 

記憶の中の最も忌まわしき古傷(最悪の狂人)が嗤ったような、気がした。

 

 

……ところ変わってロドス。

急ぎ搬送されたミーシャの容体確認と適切な処置の開始が行われた頃、アーミヤはドクターに尋ねた。

 

「過ちを過ちと知らなければならない……ミーシャさんは私たちもまた感染者の希望であるとしたからこそ、あのような行動に出たんだと思います」

「……そうだな。確かにそう思うよ」

 

でもお姉ちゃんは重要なのか? ドクターはやはり首を傾げた。

戻ってきたケルシーが告げるところによれば、精神力一つによる身体の酷使、鉱石病の進行などが相まって意識不明であるという。回復の見込みはあるし、鉱石病の進行抑制治療も行えばある程度は多少の不便程度で済む。しかし目覚めた時に、記憶が欠落していたり人格面に何かしらの影響がある可能性も否定できない──それがミーシャの状態だと。

 

「まるであの男のようだな……意志一つで、限界を超えるか」

 

ケルシーがそれに覚えがないわけではない。かつて目をかけていた、割と可愛げのある弟子であり、どうしようもなく愚かな男。今はWという半身と共にレユニオンに属しているGと同じ凶行。そしてこと戦争に関する嗅覚は異常とも言えるGからの警告。

ケルシーはアーミヤやドクター、その他のロドス職員とは異なり、彼女らの目的を理解しているし、極論は自分と重なる点があると見ている。チェルノボーグで何があったのかも、大体の予想は付いている。そしてWたちが、Scoutらを殺すことになったのは不本意であろうということにも。

 

「あのサルカズの傭兵……Gのことだな」

「G……」

 

アーミヤもドクターも、それはただの人間にできることではないとわかっている。あのGの如く突き抜けた狂人にしか許されない、究極の手段。チェルノボーグで見せた人間の限界値を遥かに超えた狂気の戦法は、誰に真似できるものではないと、ワルファリンは医学的に証明してみせた。

というよりも、そもそも生体電気を人間の致死量まで発電している時点で死亡するのは目に見えているのに何で死なないのかと彼女すら匙を投げて、ケルシーは「気合いと根性」の言葉一つで片付ける始末。あんな二人は初めて見たとアーミヤが唖然とするくらいのテキトーっぷりだった。

 

「……それでドクター、アーミヤ。私に聞きたいことがあるようだな」

「ええ。ケルシー先生、あなたはGと知り合いなのですか?」

「昔の、弟子のようなものだよ。奴は傭兵でありながら傭兵にあるまじき地頭を有していた。研究者としても大成できる素質があった……」

 

途端、ケルシーは無表情のまま、しかしその視線と言葉にへばりつくような湿度を含み出した。

 

「あいつは、死ぬ為に生きている。私はそれを認められない。エゴだと呼ばれても、あいつに人生を生きるという選択をさせたい。奴に恨まれようが知らん。私という医者の前で死にたいなどとほざいたあの大馬鹿者を、一度殴らねば気が済まない」

「ケルシー? どうした? 何か様子が……」

一人旅でもよかったろうに、また私の元へ来てもよかったろうに、結局はWを選んだのか。それはいい。だがやはり闘争こそ己の居場所だと? ふざけるなよ愚か者。あの慌ただしくも穏やかでもあった日々に安らぎや未練を感じながら、今更戦争だの最強だの混沌だの……ああ確かにそうだとも。認めるさ、そうしない君は君じゃないと。でもどうせ今頃あれやこれやと悩みに悩んでああでもないこうでもないと霧の中を彷徨い歩いて、Wを妬かせながら色々な奴らに変な影響を与えているんだろう? そしてWを思わせるような人がいればすぐに口説き出す。ああ、そうだろうな。W、お前が毎回のように私を睨み付けていたのがわかるよ。そしてW、お前はやはり止めないのだな。それがお前たちの関係性であるとは理解しているが生きて欲しいという思いは嘘ではないだろうに何故しない。それにしてもあの男はフラフラし過ぎだ。フラフラしているのにそれを嫌がって真っ直ぐ進もうとしてそれでいいのかと迷ってやっぱり夢を追いかけて──「ケルシー先生!!」……すまないアーミヤ。あの愚か者への恨み節が少し漏れた」

 

ぶつくさと何やら凄まじい勢いで語り出したケルシーに彼女らしからぬ雰囲気と、ケルシーの本音というか人間性の一部を垣間見ながら、でもなんか声も視線もちょっと怖いからやめてくれとアーミヤが声を張った。ドクターは「ケルシーも人なんだなぁ」とぼんやりとした感想が出てきた。

 

「話を戻そう。あの男とは本当に古い付き合いというだけだ。敵であっても問題は無い。確実に排除してみせよう。それにいい機会だ。一度死ねば目も覚めるだろう」

「割と過激なところあるんだな、ケルシー」

「ドクター。私をなんだと思っているのかは知らないが、私だって心と感情がある。理性で様々なことを割り切っているだけだ」

(ぜーったいあれは割り切れてないです……)

「何か言いたいことがあるんじゃないか、アーミヤ」

「別にありませんよ」

「あるのだろう?」

「ありませんってば!」

 

そんな風なやり取りをする二人を尻目に、ドクターは思考を回す。ケルシーの古い知り合いであり、記憶を失う前の自分を知っていて正反対の感情を向けてくるWとG。あの二人はレユニオンとは違う意図で動いていて、その片割れがレユニオンの奇妙さを指摘した上で陰謀とまで言った。

不思議なことに、嘘ではないと感じていた。なんというか、変なところで誠実であるというか……そこまで考えて、Wのことが浮かぶ。まるで家族のような、戦友のような、恋人のような、そのどれもが正しくどれもが異なるような視線を向け合う仲の存在。彼女の真の目的や意図にそぐわない展開となれば、半身の如き存在ならばどうするか……

 

「ケルシー。色々と調べてくれないか? この件、やはり引っかかる。チェルノボーグを占拠して、そこを拠点にしている理由がやはりわからない」

「……わかった。だが時間が必要だ。短期間ではあまり期待しないでくれ。それとアーミヤ、ペンギン急便のエクシアが弾薬費の件で呼んでいたと聞いたぞ。向かってやってくれ」

「はい」

 

ケルシーと別れて、二人はエクシアの元へ行く。と言って執務室なのだが。

 

「やっほー、待ってたよリーダーにアーミヤ。いやあ、思ったよりも弾薬使っちゃったからねぇー。契約範囲超えちゃってて」

「やはりそうなりましたか。勿論こちらで持ちます。ややこしい話に巻き込んだのは事実ですから」

「太っ腹〜、って言いたいところだけど……実際随分と話がややこしくなっちゃったよねー。でもあたしわかんないのが、どーしてあの子はやたらとお姉ちゃんを主張してたのかなぁ……?」

 

ドクターは知るかボケと内心毒吐く。言いたいことはわかるけど、どうしてああいう変な方向になってしまったのかは全然わからない。アーミヤが書面のサインをしていると、執務室がノックされる。開けてみれば、見知らぬ……というわけではないが、名前と顔だけは知っているサンクタが一人。エクシアは驚きのあまり、固まっている。

 

「モスティマ……!?」

「やあ、久しぶり。エクシア。積もる話もあるだろうけど、後にしてくれるかな? 今はペンギン急便としての仕事があるんだ。ロドス・アイランドの代表者宛に、この荷物を届けてくれって」

「私に……?」

 

アーミヤの前にいそいそと複数人が運んできたのは、子供サイズの寝袋のようなもの。なんだこれはと考えて、少しだけ警戒する。

 

「これは一体なんですか」

「曰く死んだある男。まああいつの事だし、格好をつけた表現だね。もっと言えば──」

「……俺だ……ロドス」

 

ひょい、と寝袋のようなものの中から起き上がったのは隻腕の少年。その声も体格も、忘れられなくて──

 

「スカルシュレッダー!?」

「……また、会ったな……」

 

極めて複雑な感情で表情をぐちゃぐちゃにしながら、スカルシュレッダーことアレックスはロドスに『遺体』として運ばれてきたのだった……




ミーシャ姉貴
どけ!! 私はお姉ちゃんだぞ! 全力でお姉ちゃんを遂行する! よく見ておけ、これがお前のお姉ちゃんだ!
WやGとの会話、連れ戻されたスカルシュレッダー、ロドスとレユニオン、近衛局の正義などを見て、何故か脹相と化してしまった……
心一つで鬼となり、部下たちと共に二重三重の覚醒を行って限界突破しロドスと近衛局を凄まじい能力で圧倒。しかし肉体が付いて来れず限界を迎え、現在意識不明
なんだお前……?

アレックスくん
お姉ちゃんとして覚醒したミーシャ姉貴の背中を見て、Gくんの悪辣な言葉と割とガチな説得から正道を選んだ。狂気の殺戮者スカルシュレッダーから、遂にアレックスへと帰還した
……でもシナリオ的にはW姉貴にパスワードを伝えた時点で既に用済みという。まあ、あれだよ……いいことあるって!

近衛局とロドスの皆さん
お姉ちゃんの輝きを見て、愚かを愚かと伝える大切さを改めて実感したけどやっぱりお姉ちゃんがわからない

ウェイ兄貴
ミーシャの謎行動に頭を抱えたり、もたらされた情報からコシチェイが浮かんだり、ミーシャたちに敬意を抱いたり、父親としての失敗をぼんやりと理解したりと大忙し
かわいそう

Gくん
掌モーターコイル、変われない自分の愚かさに嫌気が指しながら、どうか正しい回答を入力してくれと願いながら、幻想にはなりたくないしその回答は自分で見つけなければならないからと傷付き苦痛(W)を愛することを選んでも、それでも最強を目指してしまう
単純で純粋なのに、色々とめんどくさい男

W姉貴
なんか半身が黙って色々やっているので、ちょっと拗ねた。構って

ケルシー先生
存在意義をすぐに見出してみせて、「純粋さ」を持ったまま万物を平坦に見ていて、人らしさを捨てきれず学者としても大成する才覚があるGを彼女なりに可愛がっていた
怪物になれば一種の諦めが付いたろうが、完全に人になった上でWに着いて行く=結局はWと殺し合う運命からは逃れられない(生まれた時から他者を滅ぼすことでしか生きられない理性的にぶっ壊れた存在)ということを自主的に選んだGを諦めきれず、湿度が高い感情を向ける

モスティマ姉貴
遂に参戦する最強の堕天使にして実は一番影響力が高かった人
必要無いと割り切りつつも欲する自分とは異なり、心底から捨てられる素質を持ったGを羨みながら、自分に倣わせて捨てさせるのも忍びないと人になるように色々と現実を見せる言葉を投げかけていた。実は悩みの大半が彼女によってもたらされたもの。彼女と出会わなければ怪物コース確定だったとも言える

チェルノボーグ
ドクター暗殺RTA兄貴の常套手段。常に忌まわしい記憶と共に落ちるアクシズみてーなもん。これをかっぱらってロドスにぶつけるのが最速なのでそうしたのを学会で発表したところ、特定人物殺害RTAや特定都市殲滅RTAなどで都市特攻や都市自爆による走者たちのコシチェイ化が始まってしまったので、今では禁術とされている
今日も何処かで爆散したり衝突したりする哀れな都市


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黒蛇さんたらお手紙書いた

原作シナリオ見返してもなんて表現したらいいのかわからなくなったので初投稿です


どうも、一般投稿者です。

なんか色々と大変なことになりつつあるけど私は元気です。ウッキー! 今年は申年! アーィ!(脳死チンパン)

 

>チェルノボーグへ帰還したが……ややこしいことになった。というのもやはりスカルシュレッダーと揉めていたのが面倒なことになったらしい。オレはヤツらの中では見捨てて逃げ出した臆病者みたいな扱いになっているそうだ。ギャーギャーと羽虫が呻いている

「大変だねぇ、G」

「メフィストか。ファウストは無事なのか」

「うん。近衛局を内部から崩壊させる為に意図的に捕まってもらったのさ。ファウストは絶対に何も喋らないって、僕は信じているから」

「……オマエとファウストは正反対だな」

「そうだね。正直……無理に付き合わせてるんじゃないかなって思ってる。そろそろサーシャも、自分のやりたいことを見つけたんじゃないかなって」

「オマエはどうするんだ」

「もう僕はこの道を選んだ。今更戻っても意味が無い。だったら走り抜けるだけさ」

 

やだ……覚醒怖い……

 

>そう語るメフィストの表情には複雑なものが見て取れる。友情とは矛盾する感情を内包するもの。オレがWを殺したいのに殺したくないように、彼もまたファウストと共に歩みたいのに歩ませたくないんだろう

「で……スカルシュレッダーとミーシャは本当に死んだの?」

「二人まとめてスカルシュレッダーとして死んだ。焚き付け過ぎたのは否定しない」

「じゃあ作戦失敗は君とWの所為、ということになるのかい?」

「いいや。第一、ミーシャに着いて行く構成員たちがいたのが問題だった。そうだな……失敗の原因は二人が家族であり、スカルシュレッダーという偶像に支配された人間が多かったからということだ。オレのミスは誤差程度の話だ」

事実、あの様子ではオレやWが何もしなくても破滅的な選択をすることになったろう。誰も止める気配が無いのだから。どいつもこいつも一連托生だ。まったく嫌になる

「ふーん……まあそういうことにしておいてあげるよ。でも君、居場所割となくなりつつないかな」

「知らんしどうでもいい。オレは傭兵だ、金の切れ目が縁の切れ目。レユニオンの正義に賛同したことは一度も無いし、感染者などどうでもいい。オマエもそうだろう」

「ま、そうだよ。僕らは僕らのことがすべて。そこでおしまい。所詮レユニオンはタルラ姉さんという旗に集っただけの烏合の集。君らもそうだろ?」

「否定はできんがサルカズの傭兵部隊ほどここで戦争慣れしているヤツらもいまい。パトリオットのジジイの遊撃隊は……あれは守る戦いが得意だな」

この後の戦闘をどうしたものかと頭を悩ませる。龍門を落とす話になった以上、釣り出しをしなければならない。それに龍門側の戦力を引っ張り出さなければならない。ミーシャやスラムの態度からすれば、近衛局の信用はあまりない。一方であの隊長、チェンとか言ったか。アレは雁字搦めに囚われているが、本心は恐らく……内部分裂をさせるか? いや、それは政治屋がスラムを問題視──そうだ、問題視させてしまえばいい。どうする? レユニオンの手伝いをさせれば……絶対に問題になるし、その上大規模粛清の口実にもなる。政治屋とは得てしてそういう生き物だ。清潔な空間にしか存在しないから、汚らしいモノを忌避して滅ぼしたがる……

「……君さ、戦闘に向いてないんじゃない? もしかしたら、僕みたいな後方の──」

──刹那、首を掴み上げて壁に叩きつける。絶対の殺意を込めて、オレの憧憬を否定したこの小僧の首をへし折らんと握力を籠める

「もう一度言ってみろ」

「……っ、っ!?」

アーツでゾンビにする? そんなもの、意識させる前に殺せば済むだけの話だ。いくらでもなんとでも、殺し方はあるのだし、所詮は子供。少し増幅した生体電気を頭部に直接流し込めばいい躾になるだろう

──それに、オレに無防備に接近するという時点で死にたいってことだよなァ

「憧れに挑むと決めて挑んでるんだ、水を指すなよ。ひれ伏せ小僧(クソガキ)()()の分際で頭が高いぞ」

言い切って頭が冷える。……何をやってるんだオレは。このままだと本当にレユニオンに居場所がなくなるし、タルラに敵視されるぞ……メフィストを離し、咳き込むコイツを無視して頭を抱える。何をやってるんだ本当に

「けほっ──怖いなあホント。そんなのだと、Wに愛想尽かされちゃうんじゃない?」

「ファウストがオマエに愛想尽かさないのと同じだ」

「なるほど……そりゃ確かに。で、とりあえず指示待ちだし、僕の兵士の改良案を考えてきたんだけど」

「オレをなんだと思ってるんだ。どれ、見せてみろ」

そうしてしばらくメフィストと時間を潰していると、Wが来た。タルラへの報告が終わったらしい。もっとも──本当に報告はしていないのだろうがな。というか何処かで情報を集めて、そこから戻ってきたのだろう

「次の作戦までは少しだけ休息が与えられるって」

「まあ、龍門落としともなれば計画だけでなく手に入った情報で改めて策を練る時間が必要だろう。それでヤツはなんて」

「仕方ないことだった、と。そも予想ができるわけないとも。あとお姉ちゃんについては理解できないってさ」

「……まあ、アレはな……」

「ごめん。君たちが何を言ってるかわからない。けど、これでパトリオットの探している鍵が見つからないと問題だけど……やっぱりあっちが本物だったかな」

「わからなくていいわ。まああの大旦那の事だし、きっと見つけてくるわよ」

 

流石のメフィストくんもこれには困惑。ということで久しぶりのフリータイムです。その間に少しだけRTAの進展について触れておきます。まず最初に結局記録出るの? このレギュレーションということですが、出せました記録。

何をやったかと言えばドクター暗殺RTA兄貴が開発した都市強奪自爆特攻チャートを使うことで強引に世界記録を出しました。やることは単純で自分がコシチェイを殺し(トロフィー判定としてコシチェイだけは例外的にいつ殺しても進行度が加算される)黒蛇になることで超強化され、そのまま都市を一定数強奪してボン、です。コシチェイは気合いと根性で黙らせます。(暴論)

……もちろん記録として認められませんでした。禁術扱いされている都市使用チャートはどの国、どのサイトでもレギュレーション違反です。

 

結局こういった強引な手段でも使わないと中々難しそうというのが判明したのはチャート構築的にも有難いです。だって強引な手段を使えばできるわけですから。真っ向勝負でなくても良くて、強引な手段で楽に終わるならそれに越したことはないでしょう?

 

まあこのRTAの学会は他のレギュレーションに比べると細々としており、現状では無理なのではないかという結論になりかかってますけどね。私はオマケの追加DLCは入れずにバニラでやってますけど、DLC入れても難易度変わりませんし。未だに私だけが日夜研究しているようなものです。

ほとんどは「スカジに守護られたい」「アーミヤ……一緒に戦おうな」「チェンネキの尻すこ。やっぱり気の強い女は──「尻と言ったかァ!? おのれぇ!!」「タルラとよからぬ関係になりたい」「コシチェイメス堕ちRTAのレギュレーションまだ?」「ケルシー先生のいけない個人授業DLC待ってます」「エクシアとアップルパイ(意味深)作るRTA始めます」「エフイーターの傷になりたいRTAの進捗ですが」「ドクターに愛を伝えて死ぬRTAはーじまーるよー」とか戯言を宣っています。求めるのは最強という名の称号でしょうに……情けない奴ら!

え? ああ私がDLC入れてない理由? イベント減らして無駄な時間を削る以外の理由はありませんよ。エンジョイデータは別ですし。

というか理論上バニラで行けるんですからDLC入れる理由もないです。

しっかし……私以外まともな奴いませんね最強RTA学会。ドクター暗殺RTA兄貴といい、エイヤフィトララッキースケベRTA兄貴といい、エフイーターに映画の濡れ場シーン目撃されるRTA兄貴といい、どいつもこいつも奇人変人の類ですよ。

さてこれからはいい感じの武器を調達する為にW姉貴との会話イベントでプレゼントポイントを稼ぎます。剣来いと祈りながらイベントを進めましょう。

 

>パトリオットの部隊が見つけられない筈もない。ミーシャに組み込まれているのは、ハズレと見るべきだ。そもそも人間に鍵を組み込むこと自体がナンセンスと言わざるを得ない。メフィストは下準備の為に去っていた。オレとWは仮拠点の専用のテントへ移動する。聞かれたくない会話をするからだ

「しかし、あんたも思い切ったことをするわね」

「なんのことだ」

しかし二人きりになった途端に説明しろという態度になるのはやめろ。しかもなんだその顔。ふくれっ面しやがって、テレジアの真似事か。似合ってないぞ

「今、傭兵のリーダーはあたしよG」

「あの場は独自判断が必要だった」

「説明を要求するわ」

いやなんだそんな年頃の娘みたいな顔と声で迫ってきて……まあ、なんだ。どうしようか

────

……オマエでもダメだ

>まずはどこから説明したものか

────

 

あ、もうブッパします。隠そうが隠すまいが、タルラから離反する理由は明白になってきているので。でもチェルノボーグ落としは説明しません。言うと傭兵団とレユニオンで全滅戦争です。こうなると負け確です。

 

>しかし、本当にどうやって説明したものか

「あー、W。怒らないで?」

「可愛くない。テレジアくらい可愛くやりなさい」

「無茶言うな」

「あたしはあんた、あんたはあたし」

「可愛いのはオマエだけだろうが」

「あら、あなたも可愛いわよ? そういうトコ。そんなことしてるから、例のモスティマとかいう女に好かれたんじゃない? シエスタでイチャイチャしたトランスポーターってそいつでしょ」

「誰から聞いた。あとモスティマとオレはただの友達だ」

「友達って割には……」

Wがスルリと懐に入ってきて、首筋に噛み付いてくる。そうして少しだけ噛んだ後、舌舐めずりをしながら蠱惑的に一言

「──甘い、味がするわね」

「……わかるのか?」

「わかるわよ。あなたの事だから」

「おい」

「なに」

「やめろ」

「あら、そんな殊勝なこと言えるのね」

「オマエな」

「──」

……黙ってしまう。その名を言われてしまえば、オレは黙ってしまう

「教えて」

「真面目にどこから説明すればいい?」

「そうね、何を知った……から」

そっからか

「とは言えオマエと変わらん。例のコードだけだ」

「そ。信用してあげる」

 

そういうところだぞGとW。

おまいらそういうところだからな! しっとりしやがって!

 

>とはいえ、タルラがそうする可能性を教えてしまえば激情家の──はエライことをしてしまう可能性すらある。流石に言うわけにはいかない。……許せ──、テレジアでもこれは伝えんだろうよ

「そのあとは……基本オマエの想像通りだ」

「そう。じゃあもう一つ質問。生きてる?」

「ロドスは彼女を殺せない。仮にその価値を龍門が知ろうとも、龍門は彼女を手放さざるを得ない」

「そうね。チェルノボーグを動かす鍵は国際問題になり兼ねないから。あなたはそう言うわね」

「そうだ。政治とは氷の表面……割れやすくヒビ入りやすい。迂闊なことはできないから、回りくどい方法しかない」

「だからそうする。それしかないから」

「ああ」

W、わかってて聞くな。何処で誰が聞いているかもわからんのだぞ

「それよりも、あたし聞きたいことあって」

「なんだ」

「ケルシーと話したの?」

ズイと迫るWが怖い。笑顔で迫るな

「いっ、いや……してない、が……? 話したのはモスティマだけで、なんかアイツ、今度会いに行くとかなんとか言ってたけど」

「──あんたはあたしの半身」

「お、オマエはオレの半分」

「ま、別に一人でいいわよ。そこまでは興味ないし。でもケルシーはダメ。いいわね」

何故、ケルシーだけはダメなんだ? オマエがケルシー嫌いだからか? いや、しかし……オレは別に──

────

>なんでケルシーはダメなんだ?

それよりも作戦を伺いに行くか

────

 

W姉貴結構選択肢妙ちきりんなところがあるんだよな。だからここは前者で!

 

>「……なんでケルシーはダメなんだ?」

「あたしからあんたを奪いたがるから」

……あのケルシーが? オレを? なんの冗談だ。テレジアくらいにしか興味無さそうなあの女が、なんでオレを? 困惑するオレに対してWは更に身体を密着させてくる

「わかんないって顔してるわね。だから言うわ。──あの女は……「W、これから廃都市に移動するぞ。スノーデビルと合流する。パトリオットの大旦那が調査していたところだ。近衛局を誘い、だ……す──?」

 

ズイと迫られているGくん。まるで抱き着くように身体を密着させているW姉貴。そして二人きりの空間に指示を伝えに来たクラウンスレイヤー姉貴。

ここから導き出される法則は──?

 

>「あっ、いや、すまない! ふっ、二人がそういうことをしているとは思わなかった! ええっと、あれだその、ごゆっくり!? は、廃都市まで移動してくれればそれでいいから!?」

……なんでクラウンスレイヤーは慌ててるんだ? 別にオレとWがそういう関係だとわかっていただろうに

「もう休憩時間終わりだったかしら?」

「みっ、見てない!」

「生娘なのか、オマエ」

「きむっ……!? 当たり前だ!」

「混ざる? 結構すごいわよ」

「混ざらない!」

Wと顔を見合わせる。真っ赤な顔して横を向いているクラウンスレイヤーが面白くなって、何も言わずにオレたちはふざけあう

「脚を絡めるな。時間無いだろ」

「脚ィ!?」

「別にいいじゃない。見てないってんだからここでヤっちゃっても」

「ここでェ!?」

「オマエの鳴き声割とデカいから困るんだよ」

「鳴き声がデカいィ!?」

「あら、そういうあんたもあたしのことを組み敷いて乱暴にしてくれるじゃない」

「乱暴にするゥ!? ……ん? いや、待て。お前ら私のことをからかっているのか!」

「「あ、バレた?」」

「ふざけているのかァ!」

 

ホンマこいつらこういう時も息ピッタリなんだから……ほら、クラウンスレイヤー姉貴顔真っ赤にしながらナニを想像したのか目が泳ぎまくってますよ。もしかして獣のように激しく揉んだり突いたりされてるW姉貴でも想像したんでしょうか? いやあ、ムッツリスケベやなぁ……

 

>怒り狂うクラウンスレイヤーを適当にいなして、オレたちも移動を開始する。廃都市にタルラを含めた幹部全員集めることで目を誘導。敵がゆっくりと入ってくるだろうから末端の者から流していくという逆の方法で龍門内部にいるファウストを起点に制圧していく……という流れ。無論戦力を多く削るため、メフィストとフロストノヴァが廃都市で戦闘を行う

パトリオットとWはチェルノボーグへ、メフィストとファウスト、クラウンスレイヤーが龍門。フロストノヴァはそのやり方故に存在が露見すると即時マークされるだろうから、十分な休息の後、龍門へ送り出される。タルラは龍門の戦闘に参加し、チェルノボーグへ帰還。その後は必要に応じて支援をするらしい

……さてパトリオットとWの二人がチェルノボーグということは鍵だが……少なくともナンセンスな隠し方をされている以上、ミーシャはスペアキーと見た。パトリオットが本命だろうが、しかし確かめなければわからない。そしてタルラが確かめなければ──それが答えだ

ロドスを誘い出せるなら、会話できるかもしれんな。スノーデビル隊もレユニオンには疑惑的だ。上手くやれば、フロストノヴァとスノーデビル隊を丸ごと離反させられる。しかしフロストノヴァとタルラは古い友人だ。どうやって……あの女の先入観を崩せる? 沈む泥舟に心中する連中が多くて困る

 

まあ、今更プレゼントポイント貯めても間に合うかどうかなんて知りませんけどね。やってみる価値ありまっせ! じゃあ今すぐ走者たちにレア武器を授けてみせろ!

……電磁抜刀ラーニングしたのに剣がダメだとこんなに悩むのか。キッツイなぁ

 

>クラウンスレイヤーの現場入りが先だから、メフィストが二番手、フロストノヴァが三番手か。しかし、タルラは何をしたいんだ? 龍門を落とす必要性は無い。現在のままでなければならない。むしろこの陽動が成功すれば、あとはたった一つ。チェルノボーグの鍵を持って脱出し、顛末を見守ればいい。なのに何故それをしないのか……

そんな風に一人で悩んでいると、思いも寄らぬ人物から声をかけられた

「やはりお前は他の者とは一線を画しているな」

──タルラだ

 

あっ、レアイベじゃーん。本走中でなくてよかった。無駄無駄の極みみたいなイベントですからね。しかしGくん大丈夫かな。選択肢おかしくないよね?

 

>「何の用だ」

「依頼主が傭兵を理解するのに理由が必要か」

「必要無いな。それに頭領はWだ、オレはヤツの部下。それだけでしかない。オレたちの関係はジャンクフードのように気軽なものだった筈だが?」

タルラはしばし目を瞑ると、"まるで歴戦の将のように"答えた

「傭兵との繋がりは金だが、それ故に信用と信頼を得なければならない。特にお前のような、傭兵というものを目的の為に行なっている存在は」

「安心しろ。別に裏切りなんぞ考えちゃいない。リーダーであるWの判断に従うだけだ。なんなら指でも落として証明してみせようか」

「いやいい。そのセリフでよくわかる」

気持ち悪い。吐き気がする。他人の経験と言葉で己を飾り立てるオマエが──!

────

>ダメだ、抑えろ

殺す

────

 

いやあかんて。このデータでは勝てないって

 

>落ち着ける、心を。瞬時に冷えていく怒りを実感しながら、タルラとの会話に興じる

「それで、まさか本当に会話をしに来ただけじゃないだろうな」

「時にお前は何を目指す?」

────

>答える

答えない

殺す

────

「最強」

「誰かに託すか?」

「自分でやる。それ以外は無い」

そんなオレの答えが意外だったのか、あるいは不思議だったのか、タルラは──今度は確かな熱を込めて、オレに問うて来た

「ならば何故Wに従う?」

────

>答える

答えない

殺す

────

「ヤツがオレの半身だからだ」

「そのままに行けば、いつかは相反する存在となり殺し合う運命だぞ」

「知ったことか。互い、互いが運命ならば文句は無い」

「では達成できなかったら? 殺されたら?」

「死ぬさ。納得行く相手であればな」

「……潔いな、お前は」

タルラは本気で感心するように告げる。自分にはできないことを迷いなく行うその姿に何を見たのかなどは知らんが、同類でも見るような視線だ。吐き気がする。ここで──

────

>抑えろ

殺す

────

 

もしかしてこれ会話毎に出てくるパティーン?

 

>なんなんだコイツは。イネスの言う通り、二種類の視線が混じり合っている。気色悪い

「もういいか? オレもオマエもやることがあるだろう」

「嫌われたものだな」

「苦手なだけだ」

「ならばその苦手な奴から、お前に対して謝礼だ」

そうして渡されたのは、一本の長剣。よく手入れがされており、また刃を見ただけでその質の高さがわかると言うもの。これは、余程の金と余程の立場が無い限りは手に入らない業物の一振りだ

「どういうつもりだ?」

わからないから聞く。それだけだ

「どうもなにも。お前のような男ともう少し早く出会っていれば、私ももう少し変わった道を選べていたのではないかと思った。その感謝であり、同時にお前にとって苦手な人間とつまらぬ会話をさせた謝礼だ」

なんでもないようにタルラは語る。熱が見える……二つの熱が

 

うっへぇ……コシチェイもロックオンしやがった。次の器に使おうとか思ってなぁい? それよりもウルサスの指導者がお前のような存在だったらとか思ってない? ウルサス滅ぶぞ?

それにタルラももっと早く出会えていればとか考えてる臭いな……でもダメだぞタルラ! いくらのんびりお散歩でアリーナの時も間に合わなかったからといっても足がぶっ壊れても足で走るようなバカに憧れちゃあダメだからな!

 

>「では遠慮無く受け取っておこう」

正直気味が悪いが、武器に罪は無い。ありがたく使わせてもらおう。背を向けるタルラを見て──

────

>何もしない

殺す

────

 

いやだからやめーや。

 

>流石にここでそのようなことをするのはオレの主義に反する。やめておくとしよう。それよりも試し斬りにちょうどいい相手はすぐに来るのだからな……

鞘から引き抜き、軽く振るう。──よく馴染む。色々と気に食わんが、武器選びの目だけは、認めざるを得ないな

 

へぇー、レアイベでも武器もらえるんだ。まあワンチャンってくらいですね。諸々を考えればロスですので本走採用は無し。しかしこの剣優秀だな……説明文を見るとタルラが今まで集めた刀剣の内一本で、性能は申し分なかったものの本人の体格に合わなかったからお蔵入り。手入れだけはしていたみたいですね。

……つまり何? ラスボスのメインウェポンもらったも同然? いやいやいや……待てよこの数値は──うわ、何これ。今まで使ってた奴の5倍くらい強い。つっよ、何これつっよ。流石ラスボスの収集品。試走で使ってた源石大剣よりも性能だけはいいぞ。うわぁ……取れるならこれ欲しいなぁ……

 

>……なんだったのだろうか、嵐のような女だ

「──Wには黙っておこう。迂闊にタルラからもらったなどと言ってしまえば、一晩寝かせてもらえないかもしれないしな」

ケルシーにすら会うなと言うくらいだ。下手なコト言って下手に独占欲を刺激するくらいならば、黙ってた方がいいというもの

しかしなんと誤魔化したものか……オレは今度は、そちらで悩むことにした

 

さてこれからは移動を眺めつつロドスが近衛局連れてきたところを色々します。まあ私とGくんは特に何をするわけでもなく、スノーデビルとお喋りしつつロドスにそれとなく情報を渡すだけですが。

W姉貴からの信頼度が高いと独断行動も許してくれますからね。そこを上手く使いましょう。

今回は少し短いけどここまで。

ご視聴、ありがとうございました。

 

今回のおま◯けは……はい、遂に参戦する最強の堕天使です。

 

────

 

「……アーミヤ。私の目はおかしくなったのだろうか」

「いえ、レユニオンが蹴散らされていくのは現実です」

 

休暇の影響で少しだけ離れたテキサスとエクシア。それと入れ替わりになるようにロドスに力を貸すことになった堕天使──モスティマ。

彼女は今、もはや嵐と化していた。

 

「邪魔だよ、君たち」

 

少しアーツが発動するだけで木っ端の雑魚が吹き飛んでいく。

 

「今の私は、少し機嫌が悪くてね」

 

怒りとも喜びともつかない声色が廃都市に響けば、広がるのは惨劇だ。

 

「八つ当たりに付き合ってもらおうか」

「なんでモスティマさんはああまで機嫌が悪いんでしょうか……?」

「……」

 

ドクターは沈黙する。実は聞いてしまったのだ。彼女もまたあの変なサルカズであるGの関係者であり、なんかケルシーにマウントを取っていたことを。そしてケルシーにマウントを取り返されて、二人してW許すまじとなったことを。まあそうなった理由はお互い違うけど。

 

「ダメじゃないか。自分に自分を殺させちゃあ。それじゃ君は死ねない。だからせめて、私の手で……殺してあげるよ、──。そのWって人には渡さない。そうしたらその中で生き続けることになってしまうからね。誰にでも平等に、眠りは訪れなければならない。人に非ずとも、悪魔に非ずとも……」

 

……なんだろう。言っていることはめちゃくちゃだけど、割と理解できるのは何故なのだろうか。友情を煮詰めて殺意にしている。そうすればGを殺す理由となるのだから──みたいな

 

「しかし、あの堕天使をあそこまで夢中にさせるなんてすごい男なのね……」

 

ドクターとアーミヤの横にいるスカジがボヤく。

 

「スカジさん、それはどういう?」

「話を聞いたり記録を見たりしてわかったけど、あの男は限界を超えて戦うのが当たり前になっている。裏返せば常に限界を超え続けるのが当然で、何かに挑み続けているのよ。それは限界以上に気を張らなければならない──私が守りたいと願い、そして守り抜けなかった人たちと同じように、本当は戦場に立ってはならないタイプよ」

「つまり、病院で病気なのに身体を鍛えるためにトレーニングをするようなものと考えるのが正しいのか」

「そうね。子供のまま、とでも言えばいいのかしら。頭がいいのに、どうして致命的なところを間違えてしまうのかしら……ああいう人って」

 

つまりバカでは? ドクターは訝しんだ。

そんなドクターを尻目に、スカジはアーミヤに対して優しく語る。

 

「だからアーミヤ。あなたも気を付けなさい。ドクターもその手の可能性があるわ。無茶に無茶を重ねて、当たり前のように無茶を踏破していく。孤独であり続ければそれはあの男のように成り果てるわ。だからちゃんと支えてね」

「はい。ドクターは私が必ず支えます。地獄の底に落ちるときも」

「ふふ、いい覚悟ね」

 

まるで姉妹のようなやり取りだなぁ、と思ってはいたがちょっと待て。私とあのサルカズが同じ? どういうことだ? と首をかしげる。

まったく似ていない筈なのだが……と思ったが、しかし当の本人は何か同族みたいな視線を投げてきていた。

はて、なんなのだろうか……とりあえずなんか貶されてることだけは、感じ取っていた。

 

「獣をやめたら孤高の狼……ねぇ。私は何度も言った筈だけどなあ、獣はやめてせめて魔人になれって」

 

消し飛ぶ。弾け飛ぶ。

 

「──、お説教だよ」

 

ニィ、ッと邪悪な笑みがこぼれる。

モスティマは堕天使らしく、絶望を振りまいた。




タルラからの贈り物
今までタルラが集めてきた刀剣の内一本で、性能だけは申し分なかったが、いかんせん体格や技の相性が悪かったのでお蔵入りしていた業物。
単に彼女と彼的には「割と面白い話だった」と「傭兵団の主力が毎回のように武器を壊していては計画に支障をきたす」という判断の下、贈呈した。
Gの気分的には不思議な感覚。

タルラちゃん
Gと直接話して「もっと早く会えてたらなぁ」と割と本気で思った。でもダメだぞ! アリーナには間に合うかもしれんが、その他が致命的なことになるかもしれないぞ!

コシチェイ
例の黒蛇。Gと直接話して「こいつみたいに真っ直ぐにウルサスがあってくれればなぁ」ってなった。もっと早く見つけていれば自分にしたかったとも(そうするとGはただのモブ黒幕になるが)

クラウンスレイヤー姉貴
やっと出たと思ったらGとWに弄ばれた。
生娘

Gくん
きをつけな おまえのうごきは しっとりに よまれてるぜ

W姉貴
マーキングしなきゃと思った

ケルシー先生
モスティマに先生マウント取ったら悩みの根源マウントをぶちかまされ、そして結局はWという存在がマウント過ぎて共同戦線を張ることにした

モスティマ姉貴
マウント取ったり取られたりした嵐と時を従える堕天使。変わったとは思ってたけどいざ話を聞いてみたら殺戮の獣から人狼になっただけだったので不機嫌

スカジ姉貴
遂にGの本質である「バカ」に言及した人。
ドクターも割とバカだから手綱を握ってねとアーミヤを教育する

アーミヤCEO
荒ぶるモスティマがわからない

ドクター
バカと言われて傷付いた

走者と愉快な仲間たち
全員変人


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会話が少ない人が一番怖い

ブレイズ姉貴に殺されたいと思ったので初投稿です。


「しっかし、よく燃えるねぇ」

 

メフィストのつまらなさそうな声が聞こえる。

 

「レユニオンのシンボル、僕らの復讐の象徴。そうさ、僕らを否定したウルサスへの復讐への第一歩として、このアートは出来上がったんだ。でもさぁ、ロドスも思うよねぇ? 意味無いんじゃないってさ。復讐の為ならこんな自己満足してなくて、ちゃんと殺すべきものを殺さなきゃって」

 

燃え盛る人で作られたレユニオンのシンボル。狂気と憎悪が渦巻く憤怒で壊れた絶叫の象徴。

 

「──でもね、僕が楽しい。僕が嬉しい。それが重要なんじゃないかなって。結局この世は自己満足。なら自己満足を極めなきゃ意味が無いよね。そして自己満足を極めてそのまま真っ直ぐに、真っ直ぐに歩いて行けば奇跡は必ず起こす。Gが示した通りにね。君もそう思うだろ? チェルノボーグで出会った黒うさぎさん」

「これは全てあなたがやったんですか?」

「もちろん。とは言えども、今となってはなんて無駄な使い方したんだろうって思うけどね」

 

無駄──

吐き気がするような言い草だ。フロストリーフの表情も歪む。

 

「感染者にして家畜にして使えばよかった……」

「それは復讐ですか」

「うん。復讐、自己満足。正直ね、僕は、僕たちの人生を、全てを破壊したこの汚れた世界をぶっ壊せればそれでいいんだよ。でも一応、同じ目にあった同胞たちには生きて欲しいとは思っている。これは嘘じゃない」

「ならどうして、あなたはこの道を選んだんですか」

「一度目。僕は家族から源石を喉に入れられて感染者になった。二度目。アリーナ姉さんが無残にも殺された。一度目はまだ許せたさ。この手で殺して、こんな僕の為に感染者になってまでもファウストが付いてきてくれたんだから」

 

けど、とメフィストは前置きして──

 

「でも二度目はダメだ。みんな死んじゃった。僕が悪いわけでもなく、アリーナ姉さんやタルラ姉さんが悪いわけでもなかった。ただそのやり方を気に食わないと八つ裂きにされた。善意には悪意が渡されて、悪意には悪意が渡される。かけた慈悲は無慈悲に破られて、救った命は血の海に沈むんだ。じゃあ世界が間違っている以外に答えはない」

「……」

「わかるだろう? 黒うさぎさん。君だって大切な人の善意が悪意で返されて、最悪の形で殺されたらこの汚れた世界を憎むしかなくなる。僕には他にも道があったけど、自分の意志でこれを選んだ」

 

ククッと笑う。突き抜けたバカを見て少しだけ視野の広がった少年は、世の中の無情さを理解して受け止めて──その上で復讐を選ぶ。

 

「とどのつまり、僕たちはもう平行線なんだ。ロドスもレユニオンも、互いの存在が目障りで仕方ない。ロドスから見ればレユニオンは最悪の未来で、レユニオンから見ればロドスは今更立ち上がってきたノロマだ。わかり合うことなんてできっこない。それに僕は」

 

そして遂に自分の進むべき正道を見出し……疾走を開始する。自らの身体が壊れようが半身たるファウストに見限られようが殺されようが、それでもやらなければならないと心が叫んで妄執(まほう)をかけだす。

遂にメフィストという仮面は剥がれ落ち、イーノという一人の悪魔が目覚める。メフィスト(強い仮面)を喰らい尽くしたイーノ(弱い少年)が、吼える。

 

「──ああそうさ。許せないんだよどいつもこいつも。何が闘士タルラはリーダーだ、誰もタルラ姉さんに寄り添わなかった癖に。アリーナ姉さんがどれだけあの人にとって大切だったかを知らないクセに、大切な人を失ったんだからそっとしておこう? ククッ、ハハハハハ……!! フロストノヴァもパトリオットも、僕もみんなバカだ!! 悲しんでいるなら訳を聞いて自分なりに言葉をかけてあげるのが友達ってものだよねぇ!? みんなタルラ姉さんに理想を押し付けてそこで終わりだ! 理想っていうのはみんなで背負って、一緒に前に進んでいくんじゃないのかなァ!? ロドスゥッ!!」

「──ドクター、指示を。彼と私たちは……決して相容れない存在です。彼が見たかった光景を、せめて見せて送りましょう。この悲しい現実を受け止めて、真っ直ぐに見つめる……起きてしまった過ちを、過ちと伝えるために」

 

絶殺の意を込めて、アーミヤは言った。それはそうなるしかなかった存在への哀悼でもあり、それを選んでしまった存在への怒りでもあり、この無情な世界への怒りでもある。

 

「ああ……そうだな。総員、陣形を。彼を──メフィストをここで仕留める!」

 

凄まじい執念を纏い、部下たちと兵隊に指示を出すイーノ(メフィスト)。ロドスの成れの果てとも言える存在は、確かな決意と絶望の炎を纏って不条理を踏み砕かんとした。

悲しみを根源としていても罪は罪。

自らの意志で加害者となることを選んだ被害者に、奇跡は起こり得たと証明するために、最後の楽園は悪魔に挑む。

 

────

 

どうも、戦慄している一般投稿者です。

……いや、モスティマ姉貴キレすぎだろ。メフィストくんの一世一代の叫びを「興味ないね」「それよりGは何処だい」の二言でぶった斬り、妄執ブースト入った兵隊指揮を真っ向からぶち破るのはおかしいって。それにしてもスカジ姉貴もドクターもCEOもみんな気合の入り方が違う。メテオリーテ姉貴とジェシカ姉貴までなんか覚醒してるし、フロストリーフちゃんすらなんかもうすごい表情してる。

 

何がどーなってんの……?

 

あ、メフィストが追い詰められたけど悠々としている。

 

>「やれやれ。キツネさんは怖いなあ、なんだい? 僕が憎い? でもごめんね、僕は生き汚く復讐し続けるんだ」

「メフィスト……!」

「さあ、雪国から白うさぎさんが来るよ」

 

はいはいフロストノヴァ姉貴登場ですね。

 

>「メフィスト……獣以下のお前をまずは雪に沈めてやろうか」

「はっ。タルラ姉さんに押し付けただけの女が何を言い出すかと思えば。まあいいや、僕たちが殺し合っても得は一つもない。あっちだよ、ロドスは」

 

ということでボケーっと眺めてましょう。

別にここでの勝敗なんて意味を成さないので。

はいボケーッと眺めます。淡々と眺めます。ひたすらに眺めます。紅茶でも飲みながら眺めましょう。私……調律者……強いね……

 

お、二人とも落ちて停戦入った。さて乱入しますか。龍門落としも始まってますし、メフィストとファウストとクラウンスレイヤーに任せましょ。

 

>……ドクターとフロストノヴァが落ちた。マヌケどもめ、とは思うがちょうどいいかもしれん。いつ死ぬかもわからん女を口説くなら、あの男ほど適任はいまい。しかし、掘り起こすのか。手作業で。仕方あるまい、手伝ってやるか

「──何やら面白いことになっていると思っていたが、ロドスもスノーデビルがお手手繋いで仲良しこよしか」

ビルから降り立ち、この場にいる面々を見る。知った顔と知らん顔、めちゃくちゃ覚えがある顔……まあ、色々だな

「G!?」

「よお。雪原の死に損ないども。久しぶりだな」

見つめる目は全て訳の分からないものを見るものだ。当たり前だが、小さな幸せを追い求めているものからすれば、オレのような愚か者は解せぬ存在なのだろう

「ああ、オレだ。スノーデビルは少しアクシデントがあった。結果、ロドスと一時停戦している」

『G、それは本当なの? ならさっさと──「いや、大局的に見てフロストノヴァの存在は重要だ。スノーデビル隊は間違えていない」……ふざけないで!』

通信士に少し声をかけてやったがやかましいな……そんなにロドスが嫌いか

「何度も言わせるな愚鈍が。……そんなにメフィストの家畜にされたいか?」

『っ!』

「うるさいんだよ羽虫が。何も聞かされずに首が飛んでないだけありがたく思え。オレにロドスを潰させたかったら、Wに泣き付いてでもやらせるんだな。できれば、の話だが。理解したか、素人(トーシロ)

通信を無理矢理に切ってしまい、スノーデビルたちに視線を向ける

「現場判断を尊重した。オマエたちの預かりはオレではないが、責任はオレに押し付けるといい」

「いや、あんたの申し出は有り難いんだが……いいのか?」

「安心しろ。あの手の輩には慣れてる。あとロドスには余計な荷物を投げた詫びもあるしな。アーミヤ、あの遺体は元気か?」

「えっ、ええ……」

「ふむ、やはりスカルシュレッダーを遺体として流して正解だったな」

そう呟くと、スノーデビルの一人が胸倉を掴んできた。怒りというよりも困惑で、だが

「おいアレックスが生きてるってどういうことだ!? お前内通者か!?」

「いや別に。そのままの意味だが? オレはオレの目的の為にロドスとレユニオンを利用する。オマエたちもわかっているんだろう? オレがタルラの裏を掻くために色々な下準備をしていたことを」

「……パトリオットの旦那に逆らうつもりなのか?」

「もうあの石頭の頑固者のジジィはどうでもいい。偉大な戦士ではあるが、中身があれではな……」

頑固すぎる。道を少しズラすとか迂回するとかが無い。最短に一直線に、ということでも無い。はっきり言ってしまえば──面倒くさいヤツ。感傷的でこだわりにはとことんこだわり抜く。それだけだった。なんというか、ああいうヤツに熱を上げていた自分が恥ずかしい。そりゃあフロストノヴァと折り合いが悪くなるわなって感じだった。所詮戦士なんだろうな、あの爺さんは。それが良いとか悪いとかではないが──

「とりあえず、オレは狩りに出向かせてもらう。ああ、安心しろ。裏切りなど考えてはいない。そうだな、フロストノヴァの気高さに誓ってと言えばいいか?」

「信用できないわね。第一、君の行動は謎だらけなのよ」

チェーンソー女がごもっともなことを言ってくる。そりゃあそうだ。ふむ、ならば──

「わかった。では行動で示そう。……5分だ。5分で畳んでくる。この銃も置いていく。剣一つでやってこよう。どうだ?」

「いや、そういう意味じゃ……」

「3分ならどうだ」

「君ってバカでしょ」

「実力に疑問があるのかと思ったが……そうだな。おい、オマエ」

チェーンソー女に近付き、耳打ちする。恐らくこの女は……オレの古い友を知っている。その名を告げるとチェーンソー女は目を見開き──偽りであれば絶対に殺すという視線を投げてから

「なんでその名を知っているのか、なんでその死を知っているのか、そしてなんでその意図を知っているのかは今はいい。でもその名前を口にした以上、裏切りは死を意味するわ」

「ああ。かの誇り高き戦士に誓って」

そしてオレはすごい視線を向けるモスティマから逃げるように──

「おっと、ちゃんとお話ししてよね?」

────

嫌な予感がするが無視する

頷く

>誤魔化す

────

 

うん、怖いからごまかそ。

 

>「善処する」

死ぬほど凍り付いた声に、震えた声で誤魔化して、オレは暗殺を開始した。とは言えどもそう難しくはない。血気盛んな愚者なんぞ、この業物を使えば所詮真っ二つよ

難しいことではない。近づいてくるヤツらというものは最短で来るものだ。ならば──

「……そこか」

仮面を着ける。レユニオンの仮面を。そして受け取った業物を落下しながら振るい、まずは術師を一人。素早く納刀し、鞘に稲妻を流して……電磁加速した抜刀術で前衛を二人。残心の体勢から右側に構えて身体強化を行い、瞬間的な電磁加速を伴った刺突を繰り出す。──残ってた術師の上半身と下半身が別れたな

「なっ、貴様は──!?」

「黙ってろ」

指揮を取っていたであろうヤツの頭を掴み、電流を流して殺す。そのまま残っているヤツに投げつけて、オレは駆け出す。まだ戦う気力を残している術師が迎撃に出ようとしたので、剣を振るうと見せかけて地面に刺して、高跳びの棒のように使い上を取る。そのまま体勢を戻しつつ、脚を首に引っ掛けてねじ切り、着地と同時に剣を掴む。地面をレール代わりに使い加速、振り上げて雑兵の中でもやり手のヤツを真っ二つにする

そして真っ二つになったソイツの頭を踏み砕きながら、ギョロリと視線で舐め回せば──ほら、勝手にビビって逃げ出す。あとは適当なポイントに死体と動体探知爆弾を撒いておく。そのままポイントを移動して司令系統と隊長格だけをピンポイントで潰しておき、見せしめのように死体を破壊してまた動体探知爆弾を近くに埋めておく

仮面を外しつつ、元のところへ戻ってみると、中々に愉快な雰囲気が待ち構えていた。スノーデビルとロドスが和気藹々と話し合っている。ウォッカ飲んだ話とかなんとか……

「早いな。2分30秒だぞ、G」

「指揮系統を潰して見せしめを少し作ってきただけだからな。あれくらいの壊し方で帰るのは知っている。手はいるか?」

「いらん。警戒を頼む」

「了解した」

銃を回収して様子を眺める

どっちが早く掘るか、みたいな勝負になっているな。まあどちらが先であろうとも、こうなった時点でフロストノヴァは見逃すだろうが

 

ドクターの口説き文句はチートだからね、しょうがないね。というかどんなキャラクターでも基本ドクターに攻略されないようにしないとえらいことになっちゃ〜うからね。

 

>「……本当に戻ってきたんだね」

「あの名に誓った以上、虚偽を働くことは許されん。オレもWも、皆……彼を知る者は、その名を口にしておきながら不実を働くなどということは決してできん」

チェーンソー女はその言葉を聞いて、少し意外そうにしながら

「ちょっと誤解してたかも」

と呟く。誤解も何も、オレはオレのままあるだけだ

「それはそうと、お客さんみたいよ」

「……ああ」

 

モスティマ姉貴怖いよう……

 

>青い髪、青い瞳。黒い服、二つのアーツユニット。ああ、変わらない。モスティマだ

「や、やぁ……モスティマ。久しぶりだな」

「やあ。久しぶり」

いつものような笑顔だ。何を考えているかわからない、不透明の笑顔。ジロジロと視線を投げつけてきて、その上でふむふむと頷いてから一言

「うーん……やっぱり行ったり来たり?」

「それ以外考えられん」

「そっか。じゃあ、仕方ない。でももし君が貫き通すことを選び、"そう"なったら──」

突き付けられるアーツユニット。冷え切った中に見える友人としての慈悲深さ。つまりそう、モスティマは

「私が、君を殺す」

「そうか。待ってる」

「でも、あのケルシーって医者は君には生きて欲しいみたいだし、そのWって人も余程の事がない限り殺し合いになりそうもないし、そうなるのは本当にいつか遠い話かもね」

アーツユニットをしまい、彼女はどうでも良さそうにそうボヤいた。ああそうだ、昔からコイツはこんなのだった。色々あってしばらく行動を共にしていた頃から、何一つ変わっちゃいない

 

こっ、こえぇ……!!

試走でモスティマ姉貴引かないでよかった! 試走でW姉貴に殺してもらえてよかった! ありがとうW姉貴! 愛してる! 殺して! ……殺されてたわ。

 

>「さて、これは質問なんだけど。レユニオンの動向について言いたいんじゃない?」

────

気のせいだろう

>政治の話ならしよう

────

 

……これはどっちなんだろうな。私はもう止められないからとゲロっちゃう方向にしたけど、結局のところこれで信用稼げるかどうかは別問題なのよねぇ。

 

>「政治の話ならするが」

「政治の話ねぇ。君がそういうことを言い出したら耳を澄ませて聞いておけってケルシー先生が言ってたから、聞かなきゃいけなくなるんだけど」

チェーンソー女は仕事増やすなと言わんばかりにオレを見てくる。そりゃそうだ、ドクターとフロストノヴァの救出が先なのにこんなところで授業なんぞ挟まれたら困る

「まああれだ、話半分にでも聞いておけ。なんならアーミヤの休憩時間がてらにでもしておくか?」

「確かにウサギちゃん、気合い入り過ぎよね。ところで君はどっちに着くの?」

「今は着かん。仕事ではなくフリーだからな。興味無いことはすべて関係が無い。今のオレはただ個人的興味でこの場にいるサルカズだ。特に何もしない。龍門に戻れば確かにレユニオンとしての仕事は真っ当するが──龍門落としはしくじるだろうな」

目に見えた結果だ、としか言えない。たまに上がってくる報告は順調なものばかり。言ってしまえば誘い込まれていたのはオレたちだろう。いや、Wがチェルノボーグでよかった。流石にオレとアイツだけでは全戦力を投入する龍門から脱走することはできん

……やはりスラムの浄化とレユニオンの掃討を行うつもりか、ウェイ・イェンウー。同様の手口でチェルノボーグが落とされているなら、そうするのは確実だろう。そしてタルラはやはり──チェルノボーグを都市に落とす気か。やれやれ、オレと同じ考えだとはな

「どういうこと?」

「自分で考えるんだなチェーンソー女。自明の理というヤツだ。それに掃除も起きるだろう。スラムの掃除がな」

「私はブレイズよ。それにしても掃除……ね」

「そして近衛局がオマエたちを見捨てて龍門に戻った──これが龍門の答えでもある。傭兵の如くジャンクフードの美味いとこだけ食ってポイか。政治とはえてしてそんなものではあるが、しかし捨てられた側からすればたまったものではないな」

「……」

ブレイズとやらは真面目に思案している。驚いたな、コイツ。オレの言うことを真に受けるのか? 立場としては敵だぞオレは

「……信じるのか?」

「あの名前を出されちゃ思案の一つや二つもするよ。そして実際、潰してきたわけだし」

「そういう意図はなかったのだがな」

 

死してなお輝くScout兄貴ありがとう! フラーッシュ!!

 

>「しかしその名を口にした以上は、もう少し流さねばあの男に怒られるな。思わせぶりなことばかり言いやがって、Wみたいに単刀直入に言ってみろ……とかナントカ」

「あの人、そんなこと言うの?」

「言う。そしてできんオレを笑う。このコートの一部だって、元はアイツのお下がりの黒いジャケットでな……ああそうか。もう、これしか残ってないのか」

手元にあるのはこれだけになってしまった。Scoutとの思い出は、もうこれだけに

少しだけ目を瞑り、天を仰ぐとブレイズも同じようにした。黙祷──というわけでもないが、ただこうなることを選び、そして死すら受け入れてオレたちとロドスを導いたあの戦士を偲びたかった

「……Scoutをこの手で殺してしまったのに、オレは変われない。W、へドリー、イネス、そしてロドス……全て変わったのに、オレはまだ荒野を一人で彷徨う。虚しく闇へと吠え続け、光が当たれば人のように……人狼のようだ、まるで。Scoutのように大人として理想を追い、殉じることを選んだアイツらに比べれば──とんだクソガキだな、オレは」

つい、ブレイズとの会話にScoutやAceの面影を見出したのか、ポロポロと本音が溢れる

「……無駄話が過ぎたな。忘れてくれ」

コイツにそんなことを言っても、コイツは困るだけだ。コイツはオレを知らないし、オレはただの敵の一人なんだから

しかしこの女は、何をトチ狂ったのかこんなことを聞いてきた

「──何のために戦ってるの?」

何のために、か……

「最強という名の称号……だったはずなんだがな。本当の最強を見てその矛盾だらけの脆弱さに愛想を尽かし、けれど捨て切れずに挑む。そうやってバカをやるしかできない。何のために──と言われれば、求道のためにと答えるしかない。オマエはどうなんだ?」

「全ての感染者のために。子供の夢って嗤うかな」

「いや、子供の夢はオレだ。オマエがオレを嗤うならまだしも、オレにオマエを嗤う権利は無い。──矛盾だらけの道を走る覚悟など、とうにできているのだろうな。つまらんことを聞いた。すまん」

フラフラとしているオレに比べれば、ブレイズの信念は素晴らしいものだ。そんな女が覚悟できていないなどあり得ない。アーミヤに従うことを是とするならば

「つくづく戦闘時とは印象が異なる人だね、君って。確かにこんなのじゃあケルシー先生がご執心なわけだ」

──Wは怒るだろうか。つい古い友人の面影を見てしまったからと知らん女に本音を漏らしてしまったなどと。それにケルシーの話題まで出されてしまっては……

 

多分ブレイズ姉貴が神的にいい人だからだと思うんですけど。W姉貴もブレイズ姉貴は可愛がると思いますよ。

 

>「……詳しいことは言わんが、もしオマエたちが龍門の面倒事に首を突っ込むのであれば、スラムの浄化は既に計画されていたということを突き付けることだ。大方、あの隊長殿はスラムを焼き払うことを望んでいないからな。ウェイ・イェンウーにはウェイ・イェンウーの正義があるが、チェン・フェイゼにはチェン・フェイゼの正義がある。上手く使い、チェンを引き込め」

ブレイズに対してオレの考えと予測を告げていく。更にリップサービスがてら、龍門で追い詰められるであろう後継についても触れておく

「そしてもう一つ、オレは先達としてメフィストとファウストを救出する。アイツらはそう定めて、そうあると決めた後継たちだ。最悪の状況下なのでな、悪いが手段を選んでいる暇は無い。無益な殺生は避けるが、有益と判断すればする。見逃すのであればこちらからは仕掛けない」

仕掛けてくるなら攻撃するが、何もしないならこちらもしない。敵対は恐らく龍門だけだということも告げる。そして最後に、送り届けた遺体の使い方を教えておく

「タルラの狙いについて詳しくはスカルシュレッダーに聞け。ヤツもバカじゃない。オレなら何をするかは全て伝えてある」

つまり、一番過激かつ効率的な方法でレユニオンが龍門を潰すのであればどうするかは、スカルシュレッダーに聞けば答えが来るということ。これをケルシーに伝えれば、すぐに予想が立てられるだろう

「あとはオマエたち次第だが……この状況であの女を見捨てると、それこそScoutに祟り殺されそうだからな。もう少しだけ、オレは好き勝手にやらせてもらう」

そしてそろそろだろうと目星をつけて、ブレイズにさっさと行ってこいと首でジェスチャーする。さて、あの石頭の娘をどうやって説得したものか──

 

うーん、さすがはブレイズ姉貴。しれっと心の奥底に入ってきて敵としてもカラッとした好敵手になってくれるオペレーターNo.1ですね。すこ

あ、ちなみにブレイズ姉貴はロドスのW姉貴枠みたいなもんで、うまーくやるとすごくしっとりした上で殺してくれます。チェーンソーでもなく首絞めで涙を流しながら殺してくれるブレイズ姉貴は美しい……あれ以上の芸術作品は存在し得ないでしょう!

あ、これから私とGくんは選択肢選ぶだけなので視点変えておきますね。多分そっちの方が面白いでしょうから

 

 

────

 

「……で、いつまで父親離れしないつもりだ? フロストノヴァ」

 

まーた口を挟んできたと。

フロストノヴァ含めたスノーデビル隊は、ロドスとの会話にさも当然のように混ざってきたサルカズの傭兵にため息を吐いた。

 

「父親離れなどではない。私はそうすることを選んだんだ」

「わかってないな。タルラへの義理立てか何かは知らんが、このまま行けばオマエは無駄死だ。スノーデビルも、あのメフィストやファウストでさえも、そしてパトリオットですら、タルラに使い潰されて終わる。それが分からんオマエではないだろう。レユニオンは団結するべきだ──とは言うがな、団結したところで史上最悪の感染者集団にしかなれんのならば、そこにいる意味もあるまい」

 

当たり前のようにレユニオンを否定する言葉。前々からそうだ。スノーデビル隊と言葉を交わす時も、レユニオンという活動そのものについても否定的で、こんなものに縛られるのは何故か? と毎回の如く聞く。一方でロドスの面々と言えばその異常な行動に首をかしげる者もいれば、ある程度の推測が立つからやっぱりと言わんばかりの顔をする者もいるし、約2名は興味無さげにしている。

 

「それとも──龍門落としが上手くいくとでも思っているのか? 都市というものはそう簡単に落ちるものではない。チェルノボーグでやった手口が二度も三度も通用するわけがないだろう」

「見捨てろというのか」

「いや、説得してロドスにでも流れればいい。どうせ今レユニオンで破壊と殺戮を楽しんでいる連中なんぞ、平穏を手にしても殺すか壊すしかできん。そんなヤツらはオマエが救う価値すらない」

 

そういう輩は善意を悪意で返すものだからな、とGは言い切り、改めて本題に入る。

 

「──有り体に言えばな、スノーデビルを連れて裏切れと言っているんだよフロストノヴァ。レユニオンを、タルラを、こんな破滅に向かう組織なぞ」

「……お前が私たちを高く買っていることは知っているが、それならばわかるだろう」

「オマエは感染者のために立ち上がれる戦士だが、レユニオンで共に死んでやるのが感染者たちの為になるとでも言うのか? ミーシャとアレックスは言っていたぞ、愚かを愚かと示す存在がいなければ、それを愚かと理解することすらできない。レユニオンという存在そのものが愚かを愚かと分からせるものだ」

 

高く買っているからこそ、愚かを愚かとわかってくれとする。しかしフロストノヴァとスノーデビルの考えは固く、そしてその程度の言葉で揺らぐほどショボい覚悟ではない。それをわかってるからこそ、Gはフロストノヴァの牙城を崩しにかかる。言葉を選ばずに……

 

「──悪いことは言わん。パトリオットやタルラへの義理立てはそこまでにしろ。待つのは無意味で無価値な死だけだ、フロストノヴァ。それにな、普通の親というものは子が死ねば悲しむものだ。特に目の前に子の死因となった連中がいれば、大義名分で飾り立てても本音は子を殺した者を許せんということになるのだよ」

 

まずパトリオットを引き合いに出した。オマエが死ねばパトリオットは更に頭を固くするぞ、と告げる。スノーデビルは少し顔をうつむかせたが、フロストノヴァは凛として言葉を待ち続ける。

 

「ロドスで戦えなどとは言わん。だがな、スノーデビルの連中は蝕まれるオマエに一分一秒でも長く生きて欲しいと願っている。そしてオマエが死ねばスノーデビルも死ぬだろう、その逆もまた然り」

 

自分には全く理解できないことだが、それでも人が人を思い遣り、そして優しさを忘れないということは美徳だろう? と言葉を繋ぐ。しかしそんな美徳も、沈む泥舟に乗る限り意味など無いのだと指摘する。美しいものが美しいだけで終わってほしくないのだと、フロストノヴァとスノーデビルを尊敬する戦士として狂おしい程の熱を込めて語る。

 

「フロストノヴァ、龍門には来るな。ロドスへ行け」

「断る。私は兄弟姉妹たちと共にある」

「──そうやって共にあることが守ることへと繋がるわけではあるまい。オマエらは何故沈む泥舟に喜んで乗り込み、一連托生を是とするんだ」

 

……どいつもこいつも、と。

縋るものがそれしかないわけでもないだろうに……フロストノヴァですら、Gの表情の変化には驚いた。戦い以外に興味の無いように見えていたし、実際その通りの筈なのだが、まるで一つ一つの意味や価値を理解する哲学者のような顔をする場面などあっただろうか。今のGの表情は──そう、まるで医者だ。酒や煙草をやめろとは言いながら、そういうことに楽しみを見出すのはいいし、実際それで心が楽になるならそれで構わないけど、せめて医者の言うことは聞けと語る……そんなような。

 

「どうして目の前のことでしか考えない。どうしてもっと広くモノを見ない。少しでも考えればわかるはずだ。チェルノボーグの使い道がな。スノーデビルの連中だって薄々とは勘付いているんだろう? アレをどう使うのか──オレたちに与えられた鍵の回収と、チェルノボーグから一人残らずレユニオン幹部が出て行った理由もな」

 

遂に痺れを切らしたGは核心に触れていく。ロドスにどれだけの情報が漏れようが知らないと言わんばかりに。それだけ彼はフロストノヴァとスノーデビルに無駄死をして欲しくないのだが……フロストノヴァの意見は変わらない。

 

「フロストノヴァ、わかるはずだ。レユニオンに義理立てしても死にかけのオマエには、何の意味も無い。千切れて消える夏の雪でしかないのだと」

「わかっているさ。だが私は、タルラを裏切れない。私の兄弟姉妹もまた、私について来てくれることを選んだ。その死を無駄にはできない」

 

わかっていても無理なのだと。いくら正論であったとしても、感情と理性は別物なんだと告げられる。だからこそ無駄にはできないし、無駄にするつもりもない。その果てにどんな無意味と無価値が待ち受けていても……

 

「そうか、ならば──」

 

フロストノヴァの意が硬すぎることを理解し、スノーデビルは落とそうと思えば落とすことができると判断したGは。

 

「オレたちサルカズの傭兵団に、イネスという探知系を得意とする術師がいた。覚えているな? チェルノボーグのどさくさで戦死したとされた、あのサルカズの女だ」

 

──形振りを捨てた。

全力で、フロストノヴァの心を傾けに行く。

 

「もちろん覚えている。ボジョカスティに尊敬の念を送っていたあの女性だろう?」

「そうだ。あの女はタルラにアーツを使い……『タルラには二つの影がある』とオレたちに伝えた。ヤツが虚偽を言ったなどあり得ん。何故ならそれは──オレたちのかつての戦友であり、その命すらロドスに捧げることを是とした偉大な殉教者、Scoutが命を賭してイネスにそうさせたからだ。そしてオレは龍門から撤退した後、タルラと話した。そこでヤツから二つの熱を感じた。タルラであるはずなのに、タルラでない熱。そしてヤツの、他人の経験や記憶で自らを飾り立てるような奇妙な違和感……」

 

アーミヤとドクターは、そこでScoutの名が出てきた事に驚いた。あの嵐の如き怪物が戦友であり、偉大な殉教者とまで評価するなど想像もつかなかった。誰しもから狂気の権化、致命的な間違いを犯したまま進む愚者、滅び行くことしかできない欠陥の生命などと称される存在から、そんな殊勝な言葉が出てくるなど。

そしてタルラの豹変に勘付いていないわけがないだろう? と言外に告げていくGに対して、ドクターとの語らいやロドスの態度で揺らぎつつあったフロストノヴァの心は、一瞬だけ傾いた。

 

「──何が言いたい」

 

そこを逃すほど、ジェヴォーダンの獣は甘くない。

 

「タルラの真実を知りたいんだろう。オマエはアイツの友なのだから」

「……」

「だからレユニオンから離れろ。友の真相を見つけろ。かつてオマエたちがタルラに理想を押し付けて寄り添うことができなかったと後悔するならば、贖罪となるのは友との喧嘩に他ならない」

 

そう言い切った上で、ドクターに視線を投げたGは「まあ、あれこれと言ったが……」と前置きをした上で。

 

「どうせオマエら口説きあったんだろう? この男がせっかく勇気を出してオマエを口説いたんだ、応えてやらなきゃ女が廃るとは思わんかね? フロストノヴァ。ドクターはオマエに応える気だぞ」

「……は? 口説……っ!?」

「姐さんに春が来たのか!?」

「敵側とのラブロマンスが始まったのか!?」

「待てG、私は口説いてなどいない! ただフロストノヴァとは暇潰しに互いについて語り合っただけで──」

「ドクター?」

「あっ、いや違……アーミヤ!?」

 

混沌とする場。それをゲラゲラと笑ってヒーヒーしているGだが、彼は勝利を確信していた。どれだけ何を言おうとも、もうフロストノヴァは『揺らいだ』。龍門には来るかもしれないが、来たところで追い返すなり、あるいはロドスに会わせるなりすれば──流れ落ちる。

何故ならミーシャとアレックスは保護されていて、実際に命を救えるとわかっている。そしてすでにレユニオンを崩さんと動き出している自分の存在があって、タルラへの不信と疑念を植え付けた。その上チェルノボーグ落としまで匂わせたのだ。ここまでやって何も考えないというならとっくに殺している。

それに──今のドクターなら口説き落とせるだろうという確信があった。彼の知るドクターはお世辞にも良い人とは言えなかったが、しかしテレジアには信頼を置かれ、多くのオペレーターたちからその在り方を心配されるくらいには、信用があったのだ。そんな男ならば、フロストノヴァ程度口説き落とすのは簡単だろう。

そしてフロストノヴァが生きてさえいれば──パトリオットをこっち側に持ってこれる。自分には着かないだろうが、ロドスとフロストノヴァには着く。それで十分だ。

 

「次に会う時は、きっと敵だろうな」

 

去り際、フロストノヴァはそう言っていたが、メフィストすら見捨てられたと言えばタルラに反旗を翻すとGは見ている。あとはWに離反を促すタイミングさえあれば──

 

「G、姐御と俺たちのことを気遣ってくれて感謝する。だがこっちにはこっちの考えがあるんだ」

「好きにしろ。誇り高くあってくれれば、それでいいさ……スノーデビル」

 

隊員の一人の感謝の言葉に、彼らしい返答をして──スノーデビルたちが去った頃に、物言いたそうなアーミヤへと視線を向けた。

 

「……G、あなたは……」

「オレとW……そして今レユニオンに雇われているサルカズ傭兵の大半が、ロドス・アイランドの前身であるバベルで肩を並べて戦った存在だ。確かに傭兵同士、知った顔と殺し合いになるのは常だ。だがな……」

 

何故だろうか。彼らに対して言う義理は無いはずなのに言葉は勝手に紡がれていく。

 

「……オレたちは抜け道を用意していた。せめてヤツだけでも生還できるようにとな。それを知りながらヤツは死を選んだんだ。死ぬことでオレたちとの繋がりである証拠を抹消し、その上でオレたちに何をするべきかを伝えたんだ」

 

怪物であれば捨てられた心の本音が、遂に漏れる。

 

「ああそうだ! 本音を言えばオレだって殺したくなどなかったさ! あのバベルにおいて、狙撃において右に出る者などいなかった! あの男を、Scoutをな! Wですら最期の最後まで逃がそうとしていた! だというのに、アイツは捨て石となることを是としたんだ! それがロドスにとっての最良であり、オレたちサルカズ傭兵にとっての最良だとわかっていたから!」

 

何を今更……と自嘲して、心を冷やして彼は話を変える。

 

「……あの男を慕う者は今も多いだろうな、ロドスには」

「ええ……エリートオペレーターを慕わない人は、いません。ブレイズさんのように」

「アーミヤ、ドクター。ケルシーに伝えろ。Wは今もなお、この大地が安らかに眠れるように尽力している。彼女なりの方法でとな。オレはオレの野心があるが──それでも、オレはWの半分だ。彼女がその道を行くならば、共に果てなく行くだけだ」

 

その言葉の意味を知らないアーミヤではない。その言葉が出てくるとはつまりそういうことであり──しかし、Gは自分の言葉としてそれを発していなかった。

 

「あなたはその言葉を、言わないんですね」

「こんな男の何処に、この言葉を口にする権利があるっていうんだ。オレは何処までも闘争を、最強を求めてしまう──あの女の理想とは、正反対の存在だぞ? ……止めたければ早く来い」

 

ではな、と呟いて去っていくG。

正体不明の狂気の獣、狂人Wの半分である存在──そう見えていた男の正体は、ただ純粋すぎる程に夢を目指してしか生きられない、求道の探求者なのかもしれない。あるいは……夢の炎に焼かれてしまった、子供心のままに動き続ける存在か。

複雑ではあるが、その実は単純で純粋。面倒な男……

 

「……思ったよりも彼は、捻くれ者なのかもしれないな」

 

バカや狂人というよりも、捻くれ者。

敵であるはずなのに、何処か親近感を感じる不思議さ。

ドクターもまた、Gに奇妙な感覚を覚えるのだった。

 

────

 

>龍門へ移動する。大方メフィストとファウストは追い詰められるだろう。チェン・フェイゼは甘くない。そしてオレがやらなければならないことは──

 

これでフロストノヴァ姉貴のフラグ立ては完了です。思ったよりも頑固でイネス姉貴について言わなきゃいけなくなったのは想定外でした。でもこれを言うことで色々とスムーズになるからね、誤差だよ誤差!

 

ということで次回、龍門燃ゆからです。

今回はここまで。

ご視聴、ありがとうございました。




ブレイズ姉貴
信用を得る為に出てきたScout兄貴の名前がめちゃくちゃヒット。これでGくんへの信用を稼げた
ちなみにGくんに対して特に思うものはない。不思議な人くらい

モスティマ姉貴
会話は少し。でもそれで十分。
一番怖い

フロストノヴァ姉貴
Gくんお得意の精神攻撃の被害者
パトリオット→スノーデビル→タルラ→死んだ人間たちという強烈なコンボは流石に効いた

CEO
早い段階でWの行動原理を知った。でもGについてはよくわからない

ドクター
バカの所為でアーミヤにすごい目で見られた

Gくん
本音がポロっと漏れた人

ロドス
早い段階でチェルノボーグ落とし、スラム浄化、キーとパスワードについて入手しているのでアタフタはあんまりしてない。むしろ龍門を取り戻したら即座にチェルノボーグをなんとかするために思案中

W姉貴
知らんところで自分の内心と経歴を暴露された人。怒っていいよ


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龍門大脱出! 打倒黒蛇へレディー・ゴー!

これで実質的に最終回なので初投稿です


どうも一般投稿者です。

今は遅れて龍門攻防戦に参戦しております。クラウンスレイヤー姉貴はケルシー先生に任せて、今は直属の部下から受け取った無数のネズミを龍門に放っています。

 

>……"コレ"を使うのは久しぶりだ。何せフリーの傭兵時代に、Wと部下たちだけで敵陣を落とさざるを得なくなった時が最後だからな。あの時はへドリーとイネスは別件で間に合わず、結果コイツを使わざるを得なかったんだったな

 

ただのネズミじゃないだろって? まあそうです。小型源石爆弾を付けたネズミです。

これをスラムでボンすれば、混乱に乗じて黒蓑は来ます。そこでチェン姉貴をぶつけ、混乱する龍門からレユニオンを連れて脱出します。ファウストくんのアーツを短時間使って出る感じですね。

炎国からの使者はチラホラいますが、表立って行動するわけではありません。そこまで大事でもないのでね。だって勝ち確よ?

 

>元々ネズミ爆弾は、オレが同族狩りに考案したものの、爆弾の調達が上手くいかずに頓挫した方法だ。──がWとなる前に、一度部隊で使ったものの、手間と効果は釣り合っていたが、しかし小型爆弾の調達費用がバカにならなくて緊急事態にのみ使うことを決めた。しかも使うネズミに愛着が湧く部下もいて、結局は野生に返したりとかなんとか……Wもこの方法はあまり好きではないと言ってたし、そういうわけで封印していたのだが、今回はそうもいかない

 

で、今回の問題は黒蓑です。戦闘能力が高い上に全てのステータスがアホみたいなレベルでまとまっています。大抵の場合、正面戦闘では2体倒すのが限界で、不意打ちでも5体までやれればいい方です。

今回のルート取りはスラムを利用した敵陣中央突破・最短脱出経路(原作でチェンが脱走に使ったルートが非常に手薄なのでそこまでを強行突破する)なので、スラムで起きた大混乱に表ルートから突入してくる近衛局と裏ルートですれ違いつつ、逆に別ルートから来る黒蓑と鉢合わせしないようにする形となります。このルートの問題点は黒蓑到着までのタイムリミットが短く、下手をすれば即がめおべらです。

 

そういう時の為にメフィストくんの家畜を民間居住区に放っておきます。

 

そう、源石爆弾を持たせて少数だけね。

 

あとの家畜? スラムに潜ませて黒蓑が襲いかかってきたら死んでもらうよ。退き口よろしく捨て石に一体一体使ってけば間に合うし。

 

するとさしもの黒蓑とて、足止めされてしまいます。彼らは善良なる市民の味方。スラムとかいう掃き溜めは浄化しますが、善良なる市民を守る為に行動しているので、それが害されるような場合はそれを止めるのを優先します。まあ浄化と言っても皆殺しというわけではありません。レユニオンと連んでる癌の掃除くらいですから、結構な数死にますけど。本気で何もしてないスラム民には手を上げません。多少の犯罪行為であれば目を瞑りますが、しかしレユニオンと連んで龍門崩しのお手伝いをするようなスラム民には死が与えられます。当たり前だよなぁ?

 

前回のマッピングで民間居住区に繋がるエリアは把握したし、丁寧に流し込めば龍門中大混乱。チェン姉貴が勝手に黒蓑を見つけて勝手にキレ散らかしてくれるでしょう。

 

そしてこっちは死にものぐるいで決死の脱出を行う敗走軍。

追っかけてくるのは勝ち確で龍門の立て直しを早急に必要とされる近衛局と勝手に殺しに来た黒蓑。あとボケーっと眺めてる監察官。

 

どちらが……(士気が)上かな?

もちろん……上だよね。

 

あとは、適切に市街に混乱をばら撒いて、内部分裂を起こしながら……生きようね!

 

さてそういうわけで近衛局とメフィストくんとファウストくんが戦闘をしている近衛局ビルへ急行します。ついでに場を固めているレユニオン構成員に声をかけておきましょう。

 

>「状況は」

「現在近衛局ビルでファウストとメフィストが交戦中だ」

「援軍は来てるか」

「あんたがそうじゃないのか?」

……やはりタルラ、捨てたな

「ロドスがコッチに来ていると聞く。それに龍門がこの状況を想定していない筈がない。全隊、チェルノボーグへの撤退準備を始めろ! 狩られる前に逃げ切る!」

「はぁ!? 何を言ってるんだG!」

「オマエらは捨てられたんだよ。そして逃げると言った。二度も三度も同じ手が通用するならこの世に都市の安全神話ができているわけがない」

「裏切るのか!?」

「死にたいならここで殺してやろうか」

銃口を突き付ける。それもわかりやく他の連中の目につくように

「オレの指示に従わなかったヤツらがどうなったか教えてやろうか──? スカルシュレッダーだよ」

「っ、貴様……!」

「撤退準備を進めない場合──龍門に殺されたいと判断する。二度目は無い。そして指示に従わない場合、武装を取り上げ、爆弾だけ取り付けて前線に捨ててやる」

「G! テメェ汚ねえぞ!」

「虐殺者が綺麗汚いをほざくなよ。さっさと選べ。死ぬか消えるか、泥水啜っても生き延びるのか。オレがメフィストとファウストを拾ったと報告するまでに決めておくことだな」

急いで近衛局ビルまで移動する。連中は……一度だけ様子を見てやるか

 

さて、そういうところですぐにスノーデビルへ連絡を入れます

 

>……スノーデビルに声をかけねばな。ここはもう、生贄の街だ

「スノーデビル。オレだ、Gだ」

「Gか。どうだ龍門の様子は」

「見捨てられた。タルラが援軍を送ってきてない。フロストノヴァに伝えてくれ、あのメフィストですらタルラは捨てたと」

「……何? メフィストが捨てられた? いい気味だって言いたいが、あいつのタルラへの忠誠心は確かなものだった。なのに何故……?」

「そういうことなのだろうさ。安全なところで待機してくれ。オレたちは龍門から脱出し、そちらに合流してチェルノボーグへ向かうつもりだ」

「合流ポイントは? 姐さんの具合があまり良くないんだ。無理の無い範囲で頼む」

「少し待っててくれ。今メフィストとファウストを拾いに行ってくる。いいか、絶対にこっちに来るな。何があってもくるな。一網打尽にされるぞ」

スノーデビルとの通信を切り……今度はアレックスの運搬を任せた部下との通信を繋ぐ

「……Gか」

「ケルシー……」

その返答は、ケルシーのもの。久しぶりの通信機越しの声。少し痩せたのだろうか、気苦労が多いのだろうか、やや疲れ気味だ

「君とこうして話をするのは、3年ぶりか」

「オマエも数えるのか」

「馬鹿弟子のことだからな。で?」

「報告にあったかもしれんが、フロストノヴァを筆頭としたスノーデビル隊を拾ってもらいたい。オマエの事だ、色々と調べはついてるんだろう」

「ああ」

こういう時のコイツは本当に頼りになる。ちゃんと話を聞いてくれるからな

「だが、君から示せるこちらへの利が無い」

「Wを離反させる。サルカズの傭兵団も全てだ。フロストノヴァが生きていれば、パトリオットも引き込めるだろう。タルラへの不信感があるのは事実だからな」

「……ボジョカスティ、か……」

「知り合いか?」

「古いな」

「……まあ、アンタがいくつでも綺麗なのは事実だ。野暮なことは言わんぞ」

「そうか」

 

余計な詮索はしないよをここまで面白おかしく言えるのはマジで才能だよGくん。

 

>しばらくケルシーは黙った後、オレに向かって座標を告げた

「……このポイントにロドスの船が停泊している。流したければ流すがいい。迎えはアレックスたちに任せておく」

「アイツらは元気か?」

「アレックスはな。ミーシャは未だ意識不明だが、容体は快方に向かっている」

「……そうか。助かる、ケルシー。また顔を合わせるだろうが、Wと喧嘩しないでやってくれ」

「善処しよう」

──そういえばWはケルシーとは会うなと言っていたが、別に会話するなとは言っていない。うん……多分、平気だろう

 

多分平気じゃないと思うんですけど(名推理)

 

>通信を切り、スノーデビルに繋ぐ。ポイントを伝え、仮にオレたちの姿が見えなかった場合、裁量は全てそちらに任せておくと言い切った。アレックスなら上手くやってくれるだろう。ミーシャの背中を見たのだ、ミスをする筈がない

近衛局ビルの付近の裏路地を移動していると、戦闘音が聞こえる。その上チェーンソーの音まで。遅かったか──いや、まだだ。Wから借りていたグレネードランチャーを握り、長剣を抜刀……

「ふっ──!」

跳躍。近くの壁に刺して足場を得て、電磁抜刀による壁蹴りを繰り返す。身体強化だけでは遅いと判断したのが功を奏したらしい。展望デッキ付近まですぐに辿り着いた

 

いや電磁抜刀をそう使うなよ(真顔)

電磁抜刀で壁蹴りすな……確かに早急にって選択したけどさぁ!

 

>──そして

「ククッ、やっぱり来たんだね、G!」

「──遅いぞ」

「すまん。説教を食らってな」

メフィストとファウストの声が聞こえた瞬間、ランチャーを構え……発砲。展望デッキを崩しにかかる

驚愕の表情のブレイズたちが見える。どうやって登ってきたと言わんばかりだな。チェンに至っては間抜け面を晒しているぞ

「そぉら急げよチェン隊長! オマエの親父がスラムのゴミを皆殺しにする前になァ!」

そう叫び、二人と部隊の離脱を支援するように上空から全弾発射し、展望デッキを崩壊させる

そしてランチャーを捨てて、長銃を握りオレは飛んでくる破片の中から大きめのものを瞬時に選択し、銃の反動でそれに向かい、電磁抜刀の土台として降りていく

 

……いや世界のどこに銃の反動をブースターに使って崩れ落ちる建物の破片を土台に電磁抜刀による降下を行う奴がいるんだよお前……

 

>地上で二人が率いる部隊と合流する。ニコニコとしているメフィストとは反対に、ファウストはこの状況を理解しているようだ

「……G、撤退するのか」

「ああ。ハメられた。はじめから龍門は読んでいたんだ。それにタルラからの援軍も無い」

「は? タルラ姉さんがミスをするわけないだろ」

「そのタルラがオマエを見捨てる選択をしたんだ。理由がある筈だ。オマエには生きて知る権利がある」

「……」

「メフィスト、わかってくれ。ここはGと一緒に撤退してタルラの真意を問うのが大切だ。だろう?」

「……そうだね。確かにその通りだ、ファウスト。──で、ここに来たからには作戦は考えてあるんだね」

「ああ。だが少し待っていろ」

通信を繋ぐ。クラウンスレイヤーだ

「……クラウンスレイヤー。作戦は失敗した。チェルノボーグへ撤退する。オマエも急げ」

「了解した」

それからもう一度現場指揮官に繋ぐ

「拾った。答えを聞こう」

「我々もチェルノボーグへ離脱を開始する。スラムを使う」

「B26区画を使え。あそこはレユニオンの協力者もいない区域だからな。オレの仕込みもしていない。逃げ帰るだけなら落ち武者狩りには会わんだろう」

「了解。そっちは?」

「──近衛局隊長様御用達のルートを使い脱出する。危険だが最短ルートがここしかないのでな」

通信を切り、オレは行動を開始する。ネズミが炸裂するまであと3分……

「メフィスト、オマエの兵隊を切り離せ。この爆弾を取り付けて残っている半数をスラムに、もう半数を民間居住区に向かわせろ」

「わかった」

「ファウスト。オマエのアーツは緊急事態のみだ。無駄な消耗は避けろ」

「了解」

「──これより隊の指揮はオレが取る。必ず全員を生還させると約束しよう」

無言の返答は──是だ。この状況で歴戦のサルカズが撤退戦を指揮してくれるなど、嬉しい以外の感情もあるまい。だから……

「目標のポイントは──敵陣の向こう。これより中央をスラムからの裏ルートを使い最も手薄となる部分を強行突破、離脱する。特殊部隊が来る可能性もある。各員、警戒を怠るな」

オレは久しぶりに部隊を率いて、調べ上げたスラムのルートを使い敵陣中央の強行突破を開始した

 

ということでここからは死にものぐるいで突破するだけなので加速。途中でスラムでネズミ爆弾が炸裂し、大混乱が起きますが無視。民間居住区で爆破テロの混乱が起きますが無視。どうやら黒蓑もバラけてくれたようですね。まあ、普通はまさか前方に撤退する奴らなんて想像しませんよね。自分に有利な場所へ逃げるのが撤退なんですから。それをまさか、不利な場所が一番手薄だからと前退するのは頭おかしい奴しかいません。

だから強い近衛局の兵士もいないし、瞬殺できます。メフィストのガチ支援とファウストたちの火力支援、そしてGくんの汎用性の高さがあれば抜くのは簡単です。

 

>雑兵を蹴散らし、ポイントへ急ぐ。そこまで遠いわけではないが、この混乱が収まってしまうと厄介なことになる。だから早い段階で抜け出さなければ一貫の終わりだ。まったく、チェンには感謝だな……スラムの連中からヤツのお忍びルートを手に入れて正解だった

「……G、来るぞ! わからない奴だ! 特殊部隊かもしれん!」

「メフィスト、ファウスト!」

「了解……!」

「──任せろ」

漆黒の存在が正面から向かってくる……1人? まあそうだよな、敵陣中央突破を狙うヤツなどヤケを起こした連中にしか見えんのだからな……!

 

おや、幸運ですね。1人だけですか。知ってるルート使ってきたくらいですかね?

 

>剣を向ける。ただ向けるだけ──そして電流を流して先端から放電させる

「!?」

予想外すぎる攻撃に驚いたのか、一瞬黒服の動きが止まる。そこへすかさずクロスボウによる火力支援が飛び交うが、装備が優秀なのか本人の優秀さか仕留め切れない。ならば

「──ホント、いい武器だよなぁ……タルラァッ!」

 

やっちゃうのかなァ? これはァ!

 

>プレゼントしてくれた龍に感謝しながら、オレは空間そのものを加速装置として──()()()()()()()()()()()()()()()()を行う。痛む身体は全て無視して、自らを弾丸として発射。そして振り抜き、完全な不意打ちだ。まさかそんなことをしてくるわけがないという予想もあったんだろう。深々と斬られたソイツの表情は、バカを見るものだった

 

……こいつやりやがった! こいつやりやがった! あのクソ強いことで有名な黒蓑を完封したぞこいつ! 流石最強のGくん! でも二人目は勘弁な!

 

>「メフィスト。コイツは」

「感染者じゃないね」

「そうか」

すぐさまトドメを刺し、メフィストらによる治療を受ける。最低限で切り上げてコイツの黒傘を奪い取って頭に着ける。これで特殊部隊の裏切りも匂わせられるだろう

しばらく走り続けて、雑兵を蹴散らしては進み──そして部隊の損耗率が半分を超える頃、漸くオレたちは龍門を脱出した

 

……はい、脱出完了です。本当ならもっと長いんですけどね、長々と走ったりなんだりするシーンを見るのは退屈でしょう? だから加速しました。

 

>「オマエたちはチェルノボーグへ。オレはフロストノヴァとクラウンスレイヤーを拾ってくる」

「……そういえばフロストノヴァは援軍で来るって言ってたけど、君が来なくしたのかい? G」

「まあな。負け戦なのは目に見えていた。無駄な損耗を避けるために、仕方ないことだった」

「ふぅん……まあ君一人で十分足りてたのも事実か。行こう、ファウスト」

「……感謝する、G」

「気にするな。言ったろう? 生きることを選んだならば、オレは手を貸してやるとな」

こうして二人と別れて、ケルシーが言っていたポイントへ向かおうと移動を開始してしばらく──

 

ん? こんなイベントあった……っけ……?

 

>「はぁい、G。何処行くの?」

自分の部下の傭兵団を引き連れて、Wが姿を現した

「ロドスだが」

「裏切るんだ」

「オマエとてサルカズを使い潰し、チェルノボーグを落とすタルラなどに協力はしたくあるまい」

「そうね。だからこうして隊を引き連れてあんたを拾いに来たわけだし」

そう言うWはえらく不機嫌そうだ。どうしたんだろうか

────

>訳を聞く

聞かない

────

「……どうして此処がわかった」

「ケルシーから連絡があったのよ。しかもあんたの回線から、あんたと話したってね」

「……」

「それであんたならどうするかを考えて、なんとなく此処にいそうだって思ったから来た。それだけ」

「以心伝心で何よりだ」

しかし……Wの視線がすごい。というか、怖い。具体的には剣に向けての視線が

「で、誰からのプレゼント?」

「タルラに直接、オレの剣の壊しっぷりを言いに行った阿呆がいたそうだ。ソイツにタルラがわざわざ使ってない剣を渡して、オレに流れた」

「……ふぅん」

……バレ、てはいない筈だ……バレては……いない筈。うん、絶対、多分

Wは仕方なさそうに頷いた後、オレと共にロドスを目指した。その理由は簡単で──戦略協定を結ぶこと。それだけだ

タルラを倒すために

 

W姉貴怖いっすねぇ。まあ知らんところで嫌いな龍女に自分の半分がツバつけられてたら、そりゃあ気が気でないでしょうな

 

>「アレックスからも連絡があったわ。ロドス本艦の位置ね」

「もう、向こうもなりふり構わずか」

「それにあんたの行いも結構良かったみたいね。あれやこれやとロドスに助言して──それに何? よくもまあ、あたしの腹の中も明かしてくれたわね」

「機嫌なら後で取ってやる」

「けど否定しないわ。殺したくなんて、なかった」

「……だな……」

Wは冷淡なようで、その実優しすぎる。オレとは真逆だ。悲しいくらいにコイツは優しすぎるのだ。だからこうして……オレの前くらいでしか、弱みを見せられない。そんなオマエこそオレの半身に相応しいと思った

「交渉は全てオマエに任せた。オレの行動は全てオマエの指示にでもしておけ」

「じゃあ言い訳は何かある?」

微笑みながらWは単刀直入に言ってきた。ケルシーと話したこと……アウトだったらしいな……

「許せ」

「許してあげな〜い。この後も一緒にいなさない」

「つまり……交渉の場でもか?」

「そうよ。ケルシーにアピールするの、あんたはあたしのモノだって」

「オレはオレのモノなんだが」

「あらそう? ……ねえ、そこの。あなたはどう思う?」

「え? いやあ、どう考えても俺ら以上にWの所有物だろ」

「……もう、いい」

 

Gくん……犬耳と犬尻尾付けてW姉貴の前でワンって鳴いてみない? きっとW姉貴が笑顔で首輪付けてくれるよ……? そのままバター犬END迎えない?

 

>そうしてしばらく歩いて……ロドスに拾われたオレたちは

「久しぶりだな、W」

「ええ、二度と会いたくなかったわ。ケルシー」

……というか、オレは

「何故彼を此処に連れてきた?」

「あんたに見せ付けるためよ。あたしのGは誰にも渡さないってね」

修羅場に巻き込まれていた

 

オメェの所為だよバァカ!

 

>……帰ろうかな

視線を泳がせていると、部屋へやってきたアーミヤとドクターと視線が合い──

「どうも……」

なんか、いたたまれなくなって、軽く会釈をした。二人もおずおずと会釈をしてから、ドクターはオレに対して一言

「ありがとう。フロストノヴァと戦う道を選ばずに済ませてくれて」

「気にするな。タルラを止めるために戦力は多い方がいいと考えただけだ」

「けど、あなたは双方の犠牲が最小限で済むように動いている。違いますか」

「そんな言葉はチェルノボーグの虐殺を防いで初めて言えることだ。所詮オレは今も昔も狂った理想を追い求める、諦めの欠如した大量殺戮者に過ぎん」

善意や防ぎたかったなどという事ではない。オレは今も昔も狂った光を追い求める獣でしかない。効率的に敵を追い詰めて滅ぼすしか能がない

「アーミヤ、オレはただの狂人だ。スラムに爆弾を付けたネズミをばら撒き、最後の仕事を全うするために民間居住区で爆破を起こすような男だ。龍門の特殊部隊を引っ張り出して、近衛局との内部分裂を起こすようにする男の何処に、犠牲を最小限で済ませるなどという殊勝な心がけができるというんだ」

「……やはり、あれはあなたが。先に見つけて対処させることで、暗部を白日のもとに晒す。すると暗部を受け入れられない人たちは、自然と離反する……チェンさんのように」

「……非難したければするがいい。オマエたちにはその権利と義務がある」

そう言うと、アーミヤはオレに対して容赦無く──あの女のように、言ってきやがった

「では苦しんでください。あなたを憎む者もいれば、ドクターのように致命的な場面を見ていないから感謝する人もいるという現実に」

まったく、なんて女だ

「……やれやれ、キッツいな……そういうの」

……誰に似たのやら

 

そりゃテレジア殿下でしょ

 

>Wは気付いた。そして嗤いながら──ケルシーを嘲る

「へぇ? こいつと今は協力してんだ、ケルシー」

「それはそれで、これはこれだからな」

「嘘ね。あんたはそうやって割り切っていても、このド畜生に騙されていたのは変わらない。状況もわかっていたでしょう?」

「何度も言わせるな。お前より理解している」

……その話か。表情を変えていないケルシーと、感情をむき出しにドクターを睨み付けるW。いかんな、この話題が出てもドクターはすっとぼけた反応しかできん。オレが止めてやるか……

「おい、落ち着け二人とも。古傷に思いを馳せるのは構わんが、結局真相は闇のままだ。知り得る者が記憶喪失なのだからな」

「でもG! テレジアのことなのよ!?」

「W、やめろ。テレジアのことだからこそ慎重にならねばならない。ケルシーですら真相からは遠いんだ」

「そうやって損得勘定でテレジアの事を割り切ろうとして!」

「割り切れる訳がないだろう!! オレとてアイツの仇を討ちたいと思う心というものがある! だがな、オレたちは真相から一番遠いんだ! 全てを明らかにしてからこの断頭刃を振り下ろすべき相手を見定める必要がある!」

「ふざけないで! そいつが犯人でないなら誰が──!」

「──テレジアの死を無価値にするつもりか!? ふざけるなよW!」

流石に我慢ならず、胸倉を掴み上げる。久しぶりだ、この女にここまで感情を荒げるのは

「いいかオレだけのクソ女(忌々しいオレの苦痛よ)、テレジアは死んだ。そしてそこのソイツは生きている。そこにはな、必ず価値がある。たとえ意味は無くとも、決して無価値ではないんだ! わかったなら頭を冷やせ大馬鹿野郎! やらねばならないことを理解しているのに感情を先走らせて戯言を続けるなら、オレのやり方で交渉させてもらうぞ!」

──ふざけた女だ。そんなこともう気にしても仕方ないし、残されたオレたちにできるのは真相を知ることだけだというのに、その真相そのものを殺す真似をするなど愚かしい。それがわからない女ではないが……そこまで引き摺られるのであれば、オレのやり方で……ジェヴォーダンの獣のやり方で、やらせてもらうぞ

ある意味では、脅しだ。あらゆる方法を使ってでも最短かつ効率特化で行動するということは、手段も目的も選ばないということ。それをわからないWではない。そしてWは……そうしたことをしたくないのだから

「……わかった……だから少しだけ、落ち着かせて」

「わかった」

Wを下ろして、ドクターとアーミヤに謝罪する

「すまんな。見苦しいところを見せた。そしてドクター、オマエには意味がわからんだろうが、いずれわかる。今は頭の片隅にでも置いておけ」

ドクターはまったくわかってなさそうだが、それが失われた記憶に関係するということだけは理解したようだ

 

……はえー、GくんもW姉貴に対してここまで強く言うことがあるんですねぇー。

 

>後のことは敢えて言う必要もないだろう。極めて冷静にドクター救出作戦での協力、レユニオン内部の情報提供、ミーシャとアレックスの件……それらに救われたのも事実として、ケルシーはオレたちとの戦略協定を是としたが、最終的な判断はアーミヤに任せた。アーミヤはWに信用できる言葉をと言い……

「この大地が、安らかに眠れるように」

少し照れ臭そうに言っているWは珍しかった。それで済んだかと思ったが……

「G、あなたからも信用に足る一言をください」

どうやらアーミヤは、オレの口からも聞きたいようだ

「……オレに言わせるのか? 言わせたところで信用があるとは思えんぞ」

「いいえ。あなたの言葉として、その言葉を聞かせてください」

その時オレは、どんな表情をしていたのだろうか。ひどい表情だったのだろうな、Wがケラケラと笑っていたのだから

「……この大地が、安らかに眠れるように……」

吐き出した言葉は、血を吐くように重く──そして、自分のような存在が彼女の志を語ることに、嫌気の指しているものだった

もっともそれだけ心の内がわかればそれでよかったようで、アーミヤはオレたちとの戦略協定を結んだ

 

 

少し短いですが今回はここまで……というか本シリーズはこれで終わりです。

フロストノヴァがいて、ミーシャとアレックスがいる7〜8章とかスムーズ以外にないので、もう全カットします。必要な情報も手に入りましたしね。

あとは適当にGくんと絡みのあるキャラとの会話イベントをオマケで投稿するくらいですかね。

 

では長い間お付き合いありがとうございました。

本シリーズはこれにて完結です。

では皆様、良きRTAライフを──

 

 

 

 

……あっ、そうだ(唐突)

この前ブレイズ姉貴に心中されようRTAが学会内で発表されま(ry




……え? ここで終わりかよ思うかもしれません。
ですが、残念ながらここで終わりです。どこまで行ってもGくん部外者だし、ロスモンティス姉貴やGuard兄貴と遭遇してもW姉貴と同じ扱いになります。つまり──モブです
まあ元々モブみたいなヤツだったからね、しょうがないね。

今後は時系列無視してのやり取りを書くくらいですかね。
ということで短い間でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。私はこれからW姉貴に負けてヘコってきます。

次の私がどのような性癖を抱えているかはわかりませんが、いつかまた会えれば幸いです。


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傭兵チャートおま◯け
Gくんのプロファイル(使えるwiki風のステータスと解説を追加)


それっぽく書いたので初投稿です
今後は不定期に、テキトーにやり取りとかを投稿していきます。
あと色々と感想や高評価ありがとうございます。泣いて喜んでいます。もっとちょうだいとは言いませんから感想と高評価を投げてくれると嬉しいです(強欲で謙虚な作者)

追記
ステータス作りました。まあそれっぽくなってるはずです……


コードネーム:G

陣営:バベル

職業:先鋒

職分:遊撃手

募集タグ:近距離/火力

専門:武器技巧(軍事)/源石術(身体強化)/暗殺/破壊工作

特性:敵を2体までブロック

入手方法:人材発掘

 

ステータス(昇進2)

HP:1120

攻撃:925+100

防御:113

術耐性:0

再配置:遅い(70s)

COST:11/13/13

ブロック:1/1/1

攻撃速度:やや遅い(1.25s)

 

攻撃範囲

■□

 

潜在能力

2.コスト-1

3.攻撃力+35

4.コスト-1

5.再配置時間-4

6.第一素質強化

 

素質

『狂奔』:HPが50(35)%以下の場合攻撃力が120(150)%上昇、攻撃範囲が+1マス、通常攻撃が2(3)連続攻撃になる

『咆哮』:HPが25%以下で残量が5%を下回る時、1度だけ体力を25%まで回復し2秒間だけHPが10%未満にならない。自傷ダメージは含まれない

 

基地スキル

最初の仕込み
制御中枢に配置時、全貿易所の受注効率7%/初期

凝り性
加工所に配置時、任意の素材の加工時の副産物産出率+70%/昇進2

ティータイムのひととき
宿舎内に配置時、自分の体力回復速度が1時間ごと+0.7/昇進2

 

スキル

スキル1 『レールブレード』

範囲

□□

■□□

□□

初期SP:14

必要SP:25

効果:前方一定範囲内の敵最大6体に攻撃力の400%の物理ダメージを与え、1.45秒スタンさせる

HPが25%減少

 

スキル2 『454C』

初期SP:9

必要SP:29

効果:次からの通常攻撃が6回目まで攻撃範囲が前方3マスの単発攻撃になり、通常攻撃の間隔が延長(+1.55)。また通常攻撃命中時、敵を攻撃方向に向けて普通の力で吹き飛ばす

 

スキル3 『エスタブリッシュ』

初期SP:0

必要SP:20

範囲

  □

 □□□

□□■□□

 □□□

  □

効果:周囲一定範囲内で最もHPの高い敵に対して攻撃力の250%の物理ダメージを9回与え、最後の1回で攻撃力の250%の術ダメージを与える。9回未満かつ他に敵がいる場合、攻撃し続ける

HP最大値が30%減少

 

コーデ

初期衣装

傭兵のGの普段着。

その黒と灰のロングコートに施されている手入れからは、異常なまでの執着心が垣間見える。

 

昇進衣装

ロドスの昇進許可を得ても、彼は何一つ変わらない。

愛用の長剣と長銃は、歴戦の中で血と闇に染まり切り、しかし純粋を決して失わせない。

それは深淵に堕ちても消えぬ憧憬の炎でもあり、闇すら届かぬ最果てへと誘う漆黒の光。

殺意と敬意を束ねた混沌のまま、狂奔の魂は絶叫する。

 

バカバカしいIF

カジュアルさを維持したまま機能性を持った戦闘用衣服。コアなファンに人気を博したモデルで、今では希少価値が高い。

 

プロファイル

基本情報

【コードネーム】G

【性別】男

【戦闘経験】十八年

【出身地】カズデル

【誕生日】不明

【種族】サルカズ

【身長】182cm

【鉱石病感染状況】

メディカルチェックの結果、感染者に認定。

能力測定

【物理強度】標準

【戦闘機動】標準

【生理的耐性】優秀

【戦術立案】卓越

【戦闘技術】優秀

【アーツ適性】標準

個人履歴

サルカズ傭兵団の一員、G。Wの相棒。

長きに渡るカズデルの内戦に参加していた、ブラッドブルードの中でも最狂の殺戮者「ジェヴォーダンの獣」を殺したとされる傭兵。

Wと行動を共にしており、彼女と同じ経緯でロドスと戦略協定を結ぶ。

健康診断

造影検査の結果、臓器の輪郭は不明瞭で異常陰影も認められる。循環器系源石顆粒検査の結果においても、同じく鉱石病の兆候が認められる。以上の結果から、鉱石病感染者と判定。

 

【源石融合率】20%

明らかな感染の形跡がある。診断はまだ不十分である。

 

【血液中源石密度】0.39u/L

長年に渡るカズデルでの活動及び源石軍用品の多用、その他意志による源石術の出力増強などが理由となり感染状況は中期にある。本人は感染状況を全く気にしておらず、本格的な検査と治療をしなければ悪化の一途をたどっていくと推測される。

しかし如何なる理由か、進行速度は通常のサルカズよりも遅い。

GはWと違って艦内に留まっている事が多いから最低限の検査には協力してくれます。けど精密な検査をしようと思ったら「必要ない」の一点張り。けれどこっちが理屈を説明しても彼は「そうか」と呟くだけなんです。そして「ケルシーに言え。オレにはいらん」って言い切って何処かへ行くんです。

正直Wくらい性格が悪かったら色々とよかったんですけどね、変に常識のある振る舞いをするからあのサルカズは気に入らないんです。こっちも仕事って割り切ろうにも割り切れないんですよ! 頭のおかしい傭兵の癖に! 付かず離れずを維持して! うっとおしいったらありゃしない! そのくせ「検査機器の使い方はわかっているから自分で勝手にやるから帰れ」って!? 自分勝手にも程がある! ──某医療部門責任者

第一資料

GはWの部隊に所属しているが、彼女とは異なり艦内に留まることが多い。しかしこれと言って何をするわけでもなく、ただ本を読み、茶を飲み、食事をし、煙草を吹かしながら仕事場を眺める。本当にそれだけである。

W同様、今でもサルカズ傭兵として振舞っているものの極めて理性的な立ち振る舞いで佇んでおり、まるでその観察者の様な姿は超然とした印象を与える。

彼もまたその行動履歴の大半が空白となっているため、一体いつからWと関係があるのかは不明。ただ異常に距離が近く互いに以心伝心の関係であることから、カズデル内戦から関わりがあったであろうことは明白である。

主に比喩などを多分に用いた難解な言い回しと多種多様な表現が入り混じった独特な語り口をするが、作戦時には普通に喋る。

Wとは真逆の、何もかもが読めず浮いたような不気味さを鑑みて、全ての一般オペレーターには極力彼と距離を保つことを推奨する。各部門においても、この異質な協力者を慎重に扱うべし。

【権限記録】

Gがどんな男か、という言葉に答えるならW以外に理解している人物がいるかどうかも怪しい人と言ったところだ。

俺も彼とは長いが、彼の本心を全く掴めない。この前もなんであんな不思議な喋りをしているのかと聞いたら「立場にあった振る舞いだ」としか返ってこなかった。まあ少なくとも、Wより複雑な人間というのは事実だろう。ケルシー先生の弟子みたいなものでもあるが……まあわかろうとする方が間違いなのかもな。かつての彼を知る人は、みんな口を揃えて言ったんだ。「燃え盛る炎を纏う薪」だって。

とりあえず、一般オペレーターは距離を置くに限るってことだ。妙な影響を受けちまうかもしれないし、変に刺激されて荒事になっちまうかもしれない。エリートオペレーターであれば問題は無いかもしれないが……彼には戦闘狂なところもあってな。うっかり挑発すると何が起きるかわからない。片手が飛ぶならまだいいが、最悪艦内が血に染まることになる。自制するとは言っていたが、正直あまり信用ならないだろうな。

それとWで困ったら彼に泣きつけばいい。Wと彼は不思議な関係で独特な距離感なんだが……とりあえずWの手綱を握っていられるし、その逆もまた然りだ。

あとは……そうだな。彼に困ったらケルシー先生に言えばいいんじゃないのか? あの二人、割と変な関係だからな。

──■■■

第二資料

業物の長剣とラテラーノ銃を愛用するが、それだけでなくあらゆる武器を使いこなし、あらゆる戦術を切り替えて戦う。確かに超一流と比較すれば数段劣るが、あらゆる状況に対応する戦闘能力は類を見ない。

敵対者の心を傷付ける挑発や嘲笑から始まり拷問や死体損壊、関係性のある人物の殺害などの精神的攻撃術も習得している。また政治的思考を用いた交渉、戦略決定、手段と目的の双方を選ばない徹底した効率主義なども相まって、彼の率いる部隊は任務に失敗したことが無いと語られる程。

しかし最大の特徴は意志一つで限界を突破し肉体が自壊するほど能力を叩き出す異常な性質。身体強化の源石術と相まって通常不可能な、理論上可能というだけの戦法や攻撃を当然のように実現して繰り出し、遙か格上の存在にすら喰らい付く意味不明さにある。

曰く「そうなると決めたから全力を尽くしてそうするだけ」「できると決めてやればできる」らしいが詳細は不明。一つ言えるのは、その逸脱した精神力は格の差すら覆すほどの、常識を踏み躙る不条理となることだけである。

これらの特徴を鑑みて、ロドスから下される任務遂行の際は、様々な制約を設けられることが多い。

なお彼はWの傭兵団にしては珍しく、ラテラーノ銃の収集を行っておらず、いわゆる『コレクション』はほとんどない。ただいくつかは所持しており、登録の際に禁制品として取り上げられているが、整備の必要性を訴えて返還を申請している。

 

端的に言えば「この為に頑張る!」と思えば肉体の限界を超えて戦える……妾の知る中でも極め付けのバカだ──医療オペレーターワルファリン

第三資料

GとWが同じ場所に存在する時、その日の最初の会話は戦闘から始まる。子供のじゃれ合いのようにも見えるそれが何なのか、理解したくもないが……その時のGの目は異常なまでの妄執、狂気、憧憬を宿している。ともすれば紳士的にも、超然とした存在にも見える彼が、まるでタチの悪い魔物のように見えるんだ。天災のような……それこそ腐臭すら漂わせる悍ましい怪物に。

我々の見てきたGとWと戦闘するGはまるで別物だ。前者をジッと観察してくるカメラの類とするならば、後者は戦うことしか知らない狂気の殺戮者のような──いや、魔族とされる御伽噺のサルカズそのものがそこにいるんだ。真実の怪物が。

昔戦場で見かけた、異常なまでの獰猛さで周りにいる存在全てを血に染めたサルカズを思い出す……それほどまでの狂奔を纏っていたんだ。

ロドスにいる職員のほとんどはこう言うだろう。GとWのどちらかと一日過ごせと言われたらGだと。だが私は……Gの方が恐ろしく見える。なんとなくだが、Wはあくまでもサルカズの傭兵というだけなのだろう。彼女の挑発的な態度は、歴戦の傭兵であれば必然なのかもしれない。我々にとって多くの戦友を殺した張本人だが、彼女たちから見たとき我々も多くの戦友を殺した張本人だ。そこを抑えて動けるからこそ、Wたちサルカズの傭兵はプロフェッショナルと言えるのかもしれない。単に興味が無いだけというならそれに越したことはないが。

もしWへ向けられていたあの目がこちらを向き、Wと相対していたあの怪物と目を合わせて相対しなければならないなら……私は迷いなく自分の頭を吹き飛ばすだろう。

第四資料

【権限記録】

たった3年で数百もの同族を、ありとあらゆる方法で、効率的かつ計画的に殺戮したとされる伝説の存在。最悪最恐のブラッドブルード「ジェヴォーダンの獣」──カズデル内戦でこれを討伐したのがGであり、このことは彼が所属する部隊の名声を上げる一因となりました。

しかしながら、その当時に件のブラッドブルードを如何にして葬ったかというのは記録に残っておらず、当の本人に尋ねても「ひたすらに戦ったくらいしか覚えていない」と言います。それに結局ジェヴォーダンの獣は実在したのか? という疑問もあり、彼は一体何を殺したのか、そして何で名声を得たのかは不明瞭なままです。ですが今のGこそ、かのジェヴォーダンの獣と呼ばれ恐れられた、伝説の殺戮者なのです。これはWの部隊では暗黙の了解となっています。

これは隊に属していた人間ならば知っていて当たり前のことですからね。私も彼が獣として、先代のGと殺し合ったということは知っています。ドクター、これを聞いてあなたは彼に対してどのような印象を持たれるのかはあなた次第ですが、これだけは覚えておいてください。彼は先代のGや自分の似た道を先に走っていた者に対して──そして何より記憶を失う前のあなたに、本気で尊敬の念を抱いています。またその表し方も独特です。

それは殺意であり友情であり、はたまた愛情であり憧憬であり……とにかく複雑に絡まっています。彼がWに向ける視線を見たことがありますか? その視線には無数の感情が重なっていて、全てが正しく全てが間違っているようにも思えるんですよ。そして不思議なことに、そうした視線に戦慄を覚えながら納得も覚えるんです。

Gという苦悩する傭兵と、ジェヴォーダンの獣という迷わない怪物──この二つが同時に存在し、異なる強さと弱さを見せるから、彼は不思議と人に奇妙な感情を向けられるのかもしれませんね。ドクター、あなただってそうでしょう? 理解できない狂人として区分しながら、ただの捻くれた子供のようにも見える……

彼を最も理解していると明確に言えるのはWを除けば、あの方のみであり、しかしあの方は今はもういません。そしてGは求めています。自分の宿敵、最後に立ち塞がるべき最強の存在を。

もしも彼が、あなたとロドスをそうだと認め全存在を賭けて挑むのであれば。ある意味では虚しい終わりなのかもしれませんが……それはあなたが恐怖と向き合い、未来を作り出すことを是としていることの証明です。

──■■■

昇進記録

「本当に意外だわ。またここにいるなんて」

「……オマエか。やはりな。そんな気がしていた」

「ここにいるってことは、そういうことなのね。昔のあなたは何処へ行ったの?」

「人狼みたいなもんだ。月が昇れば獣が来て、日が昇れば人が来る。今のオレはそういうモノだ」

「……呆れた。これだけ変わっても一時的なのってもう筋金入りね」

「で、ヤツは元気か?」

「それはもう。本を出版するくらいにはね」

「算段がついたら伝えろ。借りを返す。その時までは首輪付きをやっていよう」

「まあ、彼女に従っている限りあなたはかなりまともってことね。わかったわ。けど相変わらず頭の回転が異常ね。こっちが喋ることを先読みして余計なことも言わないとか」

「いや、最近は余計なことばかり言って色々と人を怒らせててな。どうしたものかと悩んでいる」

「……そう、なんだ」

「意外か?」

「いいえ。いい気味だわ」

「そう、か……ただでさえ最近色んなヤツらから色んなことを言われて鬱陶しいし困ってるし……だから言わないように煙に巻いた言動をしているのに、それも文句つけられる」

「そういうところよ」

「オマエがロドスに来てくれればな。色々と楽なのだが」

「……なんかもう、あんたホントに元気ね……あと一応、私もロドスに行くつもりだから」

「そうか。まあついでに助けてくれると助かる」

「嫌よ」

「ひでぇなテメェ……」

 

ボイス

秘書任命

「こんな日が来るとは思っていた。それがどのような理由であれな。しかし肝心のオマエは記憶喪失。アイツもいなければオレは牙が抜けちまった。これほど笑える話もあるまい……なァ? 『ドクター』」

 

会話

「艦内に留まることが多いのは何故とな。Wにはできんことをするためさ。ケルシーの授業もあることだしな。……ウソだ? まあ、ケルシーだって人の子、結構アレなところがあるぞ。今度、飯にでも誘ってみるといい。よくわかる」

「なんだ。オレの首を取る許可は出してないのか? どうせケルシーが説明しているのだろうし、分別することのできる理性あってこそのロドスだろうしな。だが仇討ちを本気で望むのであれば、無理に留める必要も無い。その決闘、受けて立とう」

「オレたちはかつてオマエたちと肩を並べて戦った。だが時が流れれば牙を向け合い同胞と殺し合い、そしてまた肩を並べる。因果なものだ。……過去のことは語らんぞ。知りたくば自分で見つけることだ。その方がオマエのためでもある」

 

昇進会話

「あの女とオマエの間であったことには興味が無い。あの女とオマエがそれを選んだのであれば、そこに何らかの価値があるということは確実だ。他の奴らは意味や答えを知りたがっているが、オレはオマエたちだけが知っていればいいと思うさ」

「オレはかつて、修羅だったオマエに親近感を持っていたよ。だがそれがどうして、記憶を失えばこうもなるのか……なんにせよ、オマエであることには変わりない。裸のままのオマエを見れる貴重な機会だ。じっくり眺めさせてもらおう」

 

信頼度上昇後会話

「アーミヤ……クイロンの継承者。オマエを殺せば、彼女はオレと殺し合ってくれるものかな? ふっ、冗談だ。オマエを殺すと獲物を横取りしたとWに殺される。ただ子供の頃に夢見たヒーローが、形を変えて目の前に現れたら誰だって握手を求めるものだよ」

「ジェヴォーダンの獣……また懐かしい名前を言うな。オレがその獣とやらと似ているところがあると。クククッ、真相は謎のままにしておけ。それもまた浪漫だからな。だが気を付けろよドクター。迂闊に深淵を覗き込むと、覗き返す深淵に喰われて、ソイツのガワになっちまうかもしれないからな……」

「Wは何か言っていたか? ……そうか。アイツが、その名を。オレから言うべき言葉があるとすれば、気にするな。古傷が痛んだとて、それを掻き毟る真似さえしなければどうにでもなる。過ぎたことをあれこれ議論しても意味が無い。……が、真相は消えたオマエの記憶の中だ。身構えておけよ」

 

放置

「居眠りしているのか? ……驚いたな。寝るという機能が備わっていたのか、あるいは取り戻したのか。どちらにせよ今のオマエも面白いさ」

 

入職会話

「サルカズの傭兵、Gだ。久しぶりだな。もっともオレとオマエでは意味が違うだろうが。安心しろ。余程条件が悪いだとかしない限り、裏切るつもりはないさ。ああでも、戦いだけは寄越せよ? 傭兵の仕事だからな」

 

経験値上昇

「記憶を失ってなおこれか。恐ろしいヤツだよ。人格がまともになって実力はそのまま昔と変わらんとか、オマエは物語の登場人物か?」

 

昇進

「……なんというか、違和感がすごいな。悪くないが、これはこれで。気を紛らわしてくる。オマエがこうするとわかっていても、奪う方が身に染み付いているからな」

「不思議なものだな。こんなオマエと肩を並べるというのは。契約の続く限り、いい付き合いができそうだよ」

 

編成

「さて、狩りの時間か」

 

隊長任命

「オレのやり方に異があるならさっさと言えよ。考慮してやる」

 

作戦準備

「制約は多いが楽しめそうだ。血が騒ぐぞ」

 

戦闘開始

「本当の戦闘を教えてやろう」

 

選択時

「ああ」

「任せろ」

 

配置

「自己判断で離れるかもしれんが」

「一服できそうだな」

 

作戦中

「オレを満足させてくれよ」

「蜂の巣か、八つ裂きか。好きに選べ」

「投降は早くしろよ。オレが殺すよりもな」

「フッ、フフフ……ハハハハハ!!」

 

★4で戦闘終了

「流石だな。オレすら使いこなすオマエの力量、感服するよ。いつか、喰い殺したいもんだ」

 

★3で戦闘終了

「勝ちたいと思うから負けるのさ。勝つと決めなきゃな。そんな無様な表情を晒すくらいなら、全存在を賭けてオレに挑んでこい」

 

★2以下で戦闘終了

「ふん、らしくないじゃないか。何か悩み事でもあったのか? まあそれでも勝つんだ、オマエの力には驚かされるよ」

 

作戦失敗

「撤退、負傷者を回収しろとな。オマエがそんな事を言うとは、地獄を抜け出したの方が正しかったか。まあいい。了解した、遂行する」

 

基地配属

「変わらんな。中身は。ま、当然か」

 

タッチ1

「過ぎ去りし思い出に浸るくらいの心はあるさ。……ままならんな、現実というものは」

 

信頼タッチ

「──オマエも迷い傷付く存在か」

 

挨拶

「さて、今日はどうするんだ? 何もなければオレはただ眺めさせてもらうぞ」

 

解説

完全特化型ステータスの暴力で敵を踏み躙る最強の信奉者

凄まじいまでの攻撃力の高さと多芸な各スキル、瀕死時の爆発力と保険になる素質を持つ先鋒オペレーター。

凄まじい高さの攻撃力と『狂奔』による高火力の蹂躙劇が最大の特徴になる自己完結型だが、極めて癖が強いのが最大の欠点。

 

素質

最大の特徴となるのが第一素質。

ざっくり言えばヴェンデッタの強化条件を若干厳しくし、攻撃力上昇効果を30%下げた代わりに攻撃範囲と攻撃回数を増したもの。ただでさえ高い攻撃力を更に高めてくれるが、メインが物理ダメージであることには注意。

第二素質はその保険となるものだが、困ったことにHPが25%以下の場合でしか発動しない。ブレイズの緊急蘇生術の劣化版なのが事実。

 

・スキル

スキル1 レールブレード

チェンのスキル2の威力を若干下げて物理ダメージのみにして、スタンを付けたもの。全く同じ感覚で使えるが対空が取り上げられている上、HPを25%消費して撃つので回復無しだと3回しか使えないため注意。

 

スキル2 454C

攻撃力は上昇しない上に攻撃速度の低下が痛い。直線攻撃と吹き飛ばしができるようになるが、これを使うくらいなら吹き飛ばし持ちのオペレーターや直線に強いオペレーターを起用する方がいい。

本当に万が一、どうしても直線あるいは吹き飛ばしが必要となった場合にのみ発動する以外は封印安定。

 

スキル3 エスタブリッシュ

チェンのスキル3、前衛アーミヤのスキル2と同じ性質。攻撃回数が1回減っている代わりに物理ダメージを8回、術ダメージを1回という風に変わっている。

単体にも対群にも使える上に対空攻撃も可能。

複数回使うことは稀であるし、撃ち終わった後に撤退しないのはほとんどないだろうがHPの最大値を30%減少させて使うため、スキル1と同じく3回だけしか使えないことには注意が必要。

 

総評

超バ火力紙障子装甲に瀕死時攻撃力ブーストにガッツ持ち低コストなので差し込み適性はかなり高い。またスキルを使わない場合は一番ややこしいHP周りに気を使わず、素殴り雑ゴリラ運用で使い潰せるので、非常に使いやすい。

一方、先鋒の仕事をさせつつスキルも使おうとするとデメリットが重く、またこれらのスキルが使える頃には大抵布陣が整っており、あえてGを残しておく理由が無い状況の方が多い。

スキルを重点的に使うのか、先鋒として使い潰すのか、差し込み特化で使うのか、作戦を段階的に考えて運用することで最大限の力を発揮する、器用貧乏な上級者向けオペレーターである。

 

なお素直に他のオペレーターを入れる方がよっぽど効果的だし、同じ運用で星6ならスカジが立ち塞がり、差し込み運用ならもっと楽に育成できるオペレーターがいるので基本は基地に篭って仕事していることに。

誰が呼んだか基地スキル最強おじさん。

 

小ネタ

Wの飼い犬。

色々言われる紅茶大好きポエマー傭兵。

色々なキャラから「戦いに向いてない」とか「二流」とか「非才」とか言われるように本来は研究者とか哲学者向きなのだが、最強になると決めたのでそうしている上に、そのためなら誰であっても殺せるし一都市を非人道的行為を含めたあらゆる方法で滅ぼすことも辞さない筋金入りの狂人。

実はいい子説とファッション狂人説が定期的に囁かれている相方とは相対的に、掘り下げられる度にやっぱり頭おかしいと嘆かれる。

 

スキル2の「454C」は454カスール弾由来。

スキル3の「エスタブリッシュ」は英単語ではなくトランプ用語由来。意味としては最強でなかったカードが最強になるという形になり、Wのスキル1「ハートのK」と絡めつつ彼の狂気の象徴のような名称になっている。

 

Gの印

何処かで撮ったWとのツーショット。居心地悪そうなGとは対照的に、Wは楽しそうに笑っている。

写真の片隅には、銀髪のサルカズの女性がVサインをしながら写っている。

 

採用契約

獣殺しの傭兵・G。あらゆる意味で異端のサルカズ。

彼は飛び続ける。たった一度の敗北で、地上に堕ちるその時まで




サラーッと書いただけのGくんプロファイル
W姉貴との対をイメージしたので、似てるところが多々あるのはご愛嬌
イメージとしては先鋒と言いつつ前衛としてもそこそこやれそうな感じ。スキルで銃撃と電磁抜刀かな? コスト稼いで後は置物のテンプレなんだけど、素質とか特性とかがどう考えても前衛として使えと言わんばかりのチグハグな雰囲気
結局どれでも使えるけど特化呼んだ方が早いよねみたいな、でも一発屋としては使えるので先鋒として使うのが根本的に間違ってるような……的な
→追記
書いてみたけどメランサ族なのにチェン姉貴とか前衛ミヤみたいなスキル持ってるクセにHP消費の紙装甲高火力先鋒ヴェンデッタ型とかなんだお前。
わざわざ起用する理由ないのすごいぞ。

敵で出てくるとデバフをばら撒きながらあっちこっちワープして殴ってくるし狙撃マスに銃撃ブッパしそう
でもなんか完封方法見つけられて初見殺しが取り柄のヘンテコマン扱いされそう


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小話:堕天使は信奉者と出会う

招かれざる客が図書館に来たので初投稿です


「……んぐっ、んぐっ……」

「よく食べるね、君」

「……ここ丸3日、何も飲まず食わずでな……すまん。金もなくて」

「いいよ別に。ここ、安いし」

 

なんの気まぐれか。

腹を空かして倒れていたブラッドブルードを拾った。テキトーな顔馴染みの店に連れて行き、面倒を見ていたが、飯屋に行った途端にこれだ。

 

「詫びと言えば……肉体労働か用心棒くらいしかできんが」

「用心棒はいいよ。私強いから」

「だろうな。しかし、何かしなければオレの気がすまない」

「いいって。私は気にしてない。君も変な女に助けられたくらいの感覚でいいさ」

「……」

 

ジッと、目の前のサルカズはモスティマを見つめてきた。それは観察するような、まるで獣のような──

 

「……オマエ、感情と心を切り離してるな」

「そうだね。それで?」

「感動した。その極意、是非お教え願いたい」

「嫌だよ。私はね、感じる心までは捨ててないよ」

「そんなものは捨てられる。捨てようと思えば」

 

これは危険だと。モスティマの心が警鐘を鳴らす。この男はいずれ、怪物に成り果てるとモスティマが見てきたものが語る。いやもう既に怪物になりかかっている。ひたすらに前へ前へと、振り向くことなく疾走している時点で。

そしてこの男の発する独特な感覚──へばりつくような湿度を纏った狂気であり、吐き気を漂わせる程の強烈な憧憬……それ即ち、病的なまでの純粋。

丸3日、飲まず食わず。そもそれがどういうことなのか、という点にある。飲まず食わずは普通あり得ないのだ。このテラの大地で、飲まず食わずという状況は1日くらいはあっても、3日も続くということは基本的に無い。その頃には力尽くで奪い取るからだ。ならばこの男は、それをしなかったということ。なんの為に?

 

(……傷だらけで、血塗れだった。つまり……)

 

殲滅したのだろう。敵対する者全てを。文字通り。

そんな存在はこの世に生きているだけで、滅ぶ。終わってしまう。必要以上の殺しをするものは、いつか必ず終末を迎える。それが理だ。

 

「何故捨てない?」

「不要だとしても、心が無くなったら自分自身すら見失うでしょ?」

「あり得ない。定めてそうあれば、己が何者かは明白だ」

 

無茶苦茶な話……という理屈として成り立ってない理屈だ。完全に子供が意地を張っているようなもの。決めれば大丈夫、などというものは一種の自己放棄そのものだ。決めて貫いて貫いて貫いて……その果てには何が残る? 何も残らない。確かに量産型を超えた存在になれるかもしれないが、幻想の果てに辿り着いたならば、あとは現実に殺されるだけ。幻想を現実に持ち込んでも、結局は矛盾と脆弱性が露わになる。

目の前の男は、それをわかっていない。モスティマは確かに感じる心こそ止めてはいないものの、感情は不要だとしている。しかし、だからと言って己の中の善悪や揺れ動く心すら調律した究極の観測者となる気も無いし、自分の中の特別や腐れ縁の一つや二つはある。

 

まあ、つまりだ。

 

(これ、見捨てたら気分悪いな)

 

道に迷える子羊がいるならば、少しくらいは手を焼かないと、それはそれで気分が悪い。いやそう感じても知らんと割り切れる。しかしだ、こんな自分に本気で憧れ本気で敬意を持った目の前の存在が、こんな単純な事にも気付かずにいずれ何処かで怪物として野垂れ死ぬしかない……というのは。

 

端的に言って、不快だった。不要だと判断した感情が、微かに溢れている。

 

(どうしたものかな)

 

会ったばかりの他人にここまで気を回すことになるなんて、とも思う。だがこれで見捨ててしまえば、それこそ自分は同族殺しの堕天使以下の畜生だ。

 

「うーん、そうだなぁ。詫びを入れたいっていうなら、少しの期間私の仕事に付き合ってよ」

「何処へ何をしに行くんだ」

「イェラグで荷物を受け取ってから、カズデルの近くに滞在しているトランスポーターに会いに行くんだ。少し長いけどいいよね」

「ここは龍門だぞ。随分な強行軍だな」

「そういう君はカズデルから此処へ来たみたいだけど」

「仕方ない。獲物に逃げ込まれた。迷惑にならない方法でブチ殺したから問題あるまい」

「そうは言うけどねぇ……ほら、今日の新聞」

「炎国の文字は読めん」

「じゃあ見出しだけ。『中心街路地裏で血の痕跡を発見』だって」

「知らん」

「何のために?」

「敵だからだ。殲滅したまで」

 

龍門のスラム付近に少し用事があったモスティマは、その帰りにこのサルカズと出会うことになった。感染者も含めて色々な人種のいるスラムだが、このサルカズは絶対にこの場所にはいないと言い切れる程には異質。そして彼の起こした凶行はもはや生命としては異質極まりない。丸3日、飲まず食わずで敵対者を文字通り皆殺しにするなど異常者以外の何と言えばいいのか。

 

「部外者が部外者を掃除しただけ。詫びも残した。あとは後を濁さずに立ち去れば穏便というもの」

「その為に密入国、挙げ句の果てに見つかりづらい路地裏とは言え、痕跡を残してしまうってのは問題だと思うけどね」

「それでも、何食わぬ顔でスラムに住み着き、我が物顔で龍門に居座り続けるよりかは幾分もマシだろう。あらゆる場所にはあらゆる場所の秩序というものがある。秩序に属するならば正しく理解し正当に属さねば、排他されるが道理。それに、ヤツらは中々面白いところと繋がっててな。此処の統治機関がそれを知れば、プラスマイナスゼロというヤツだ」

 

──このサルカズは一体何を言っているんだ? モスティマは困惑した。秩序を理解して、それを乱してしまったことへの詫びも置いていく。そして自分はさっさと去り、適当なでっち上げをしやすい状況にする。義賊でもなく、自分の欲求を満たす為に殺人に及んだわけだが、それが原因でややこしいことになったら、それはそれで詫びを入れて、面倒事のタネはスタコラサッサ……

変なところで常識がある。怪物に成りかけているというのにだ。人と獣の狭間を揺れ動くとしか言えない。なんだこれ。

 

「オレも火種になるつもりはない。行くならさっさと連れてけ。スラムの統治者に迷惑を既にかけてるんだ。帰るという意思表示をして、帰ろうとしてぶっ倒れて助けられただけの今でも、結構危うい」

「よく気付いたね」

 

モスティマは自分を囲む視線に気付いていたが、当のサルカズも気付いていたようだ。本人も流石に飯を食っているのは大目に見てくれと内心思いながら、そこを理解できないほど愚か者じゃないと告げていく。

 

「こうした裏路地には裏路地の流儀と秩序がある。それは多くの人間の尽力によって維持されているというものだ。そしてそこへの尊敬を忘れた時、真の無法者になる。オレは確かに愚か者なのだろうさ。しかし、だからと言って無闇矢鱈に秩序を乱すのは主義に反するし、無益な殺生も好まん。今回はオレとしても不本意だったし、望まぬ結果だった。だから出来る限り迷惑にならない方法と詫びを調べるのに1日使い、もう1日使って計画を練り、1日かけて一人残らず殲滅したんだ。持ちつ持たれつの場を乱すならば、相応の礼節を重んじて対価を払う当然だろう」

 

そんなことを言いながら、同族を数百は殺したのがこの男なのだが。有益ならば殺戮を行うが、無益ならばしない。その在り方、まさしく書に記される獣の如く。

 

「それわかってるなら、そういうのやめなよ。行き着く先は獣だよ」

「目指すのは最強の二文字。獣などとは違う。オレは無敵の超越者になる」

「バカだねぇ」

「バカで結構」

 

サルカズ……悪名高いブラッドブルードにしては比較的礼儀正しい作法で食事を終えたその男は

 

「で、支払いを頼む。本当に申し訳ないが」

「うん。わかった。でも君、ブラッドブルードだろ? 血じゃなくていいのかい?」

「オレの飲む血は、ただ一人だ。ソイツ以外は喉も乾かん」

 

きっぱりと言い切った男を見て、これまた拗らせてそうだなぁ……と、モスティマは面倒くさい奴を拾ったことに、一抹の面倒を覚えて、すぐに切って捨てた。

 

それからしばらく共に旅をして、イェラグで荷物を受け取り、カズデルへ戻る道すがら。モスティマと──は休息や補給も兼ねてシエスタに寄った。

そして……──は、滞在中のホテルで息を切らしていた。

 

「──、大丈夫かい」

「キッツい……気分、悪い……」

 

本気で気分悪そうにしている──だが、モスティマもこんな彼を見るのは初めてだ。戦場では楽しげに身を投じ、節度を必要とされる場へ行けば節度ある行動を心がけるこの男が、こんなにもボロボロになっているとは。

 

「……なあ、ここ、さっさと出たいんだが」

「用意してもらう物がまだないからダメだよ」

「水くれ」

「はい」

 

ぐびぐびと水を飲み干す──を見て、この男も自分がいてはいけない場所にいるのは苦痛らしいとぼんやりとした感想が浮かんだ。

 

「……すまん、モスティマ」

「やっぱり自分がいるべき場所ではないところは苦手?」

「ああ。正直、落ち着かない。オレとは無縁の世界だ。必要に駆られなければ二度と来たくないな」

「でもそうやって苦しいと感じる心こそが、大切なんだよ。いくら不要と思ってもね、捨てきれないし無視できない。君が最強の信奉者であることを選んだ心を捨てたら、それは過去の無い怪物さ」

「……」

 

男は悩む。過去という言葉に何か引っかかりでもあるのか、らしくない……それこそ普段とは全く違う、モスティマが長年見続けてきた人々と同じような表情をしていた。

 

「そんな顔もできるんだね」

 

隣に座り込み、物は試しと笑いかけてみる。──は、自分の表情に気づいたのかバツが悪そうに何やらモゴモゴと言葉にならない音を発した後、忘れろと普段通りの仏頂面へ戻った……いや、無理矢理に戻した。感情や心に蓋をしたという表現の方が正しい。

そういうのが間違いなのだと、モスティマは何度も指摘してきたが、この期に及んでまだ無理に無理を成し遂げてしまう愚かさに、どうやったら変わってくれるものかと諦観にも似た気持ちを抱く。

 

「嗚呼、苦痛よ。お前は決して私から離れなかった故。私は遂にお前を尊敬するに至った」

「……オレはようやくオマエの事を理解できた。オマエは存在するだけで美しいということを」

「──驚いた、知ってるんだ」

「昔くすねた詩集に乗っててな。記憶の片隅に置いていた」

 

──が知名度の低い詩を知っていたことに驚いたが、それ以上に全文を覚えているであろうことに驚いていた。こんな、文学とは程遠い男がそういうことを知っているなどと……とは思ったが、冷静に考えれば色々と教養は殺戮者にしてはかなりあったし、もしかしたら学者や政治屋などが似合っているのかもしれない。

だからだろうか。

 

「ラテラーノではね、10の悟りというものがあるんだ」

「悟りと来たか」

「まあ、悟りなんて言っても大層なものじゃないよ。こういう心がけとこういうものを持てば、より良い自分になれるっていう指標みたいなものさ」

「どんなものだ」

「まずは『真っ直ぐに立てる意志』を持つことから始まる。外を向く為に『分別することの出来る理性』を備え、『より良い存在になれるという希望』を夢に、『人生を連ねていくという勇気』を抱く。そして視点を内に向けて、『存在意義に対する期待』、『守り抜く勇気』、『快く信じて任せられる相手』が在るかを確かめる。それらを見出した時、『鎖を断ち切り、恐怖に向き合う目』と『過去を受け入れ、未来を創造する目』を自然と手に入れ、最後には『考える私』に出会う……だったかな」

 

なんてことのない、ごくごく普通の心がけのようなものだ。だがそれができないのも事実。モスティマ自身、これら全てを兼ね揃えて考える私に出会っても、過ちを犯してしまうことは当然あるだろうと思っている。だが一度でもそれらを持ち、一度でも悟りに辿り着くことが大切なのだとラテラーノでは説かれる。

何度でも間違えていい。過ちを悔いていい。だがたった一度でも掴んだ正解は誇るのだという、実に宗教的な話だ。信心を試されるというのはこういうことを言うのかもしれない。

 

「ふふ、不思議だよね。他人との関わりを通して初めて考える自分が見えるって」

「自分を映す鏡、それが他人だということだろう」

「そうかもね」

「……少し寝る。30分もしたら、起こしてくれ」

 

着いたばかりだというのに睡眠。結構ガタが来てるのかもしれないと思いながら、鍵を閉めて外に出て行き──古馴染みと出会う。

 

「今日はなんて呼べばいいのかな?」

「元凄腕傭兵の売れないコック」

「あいっ変わらずヘンテコなコードネーム付けられるよね、君ってば」

「あいつら本当に頭沸いてんじゃないかしら」

 

例によってまた奇妙なコードネームを与えられた同僚を笑いつつ、さてと真面目な話をする。しかし真面目な話と言ってもすぐに終わり、あとはくだらない雑談になるのが常だが──

 

「あなた、何を拾ったの?」

「んー、私のなり損ない」

「違うわよ。あれは人のなり損ない」

「知ってるよ」

 

だったら何故、と視線で問いかける同僚へ、モスティマは凛として答える。

 

「いやさ、人間って不思議なもので──ああまであなたがカッコいいと思ったって態度や言葉、そして行動で示されたら、案外可愛げを見出しちゃうものなんだよね」

「……え? それだけ? それだけでお気に入りの詩の一節を引用してあげて、あの形だけの悟りの話をしたの?」

「それだけ。まああとは、私になりたいと思っていても、どうやら彼には大切な苦痛があるみたいだ。その苦痛にちゃんと返してあげないと。拾った小動物の飼い主が明確なら、返してあげるのが道理でしょ」

 

そんな言葉に納得したように監視者は頷きかけて──否とする。

 

「違うわ。あなたは彼を殺してあげたいんじゃない?」

 

ラテラーノにおいても、時として殺人とは慈悲とされる場合もある。死ぬしかなくなってしまい、しかし死ぬことができない時、愛を持ってその命に幕を閉じる──監視者はモスティマと共に様々なモノを見てきたが、こうしたモノも見てきた。今のモスティマは、そうした表情をしていると指摘する。

彼女の指摘に、堕天使は唖然として──ああ、と。

 

「……確かにそうかもしれないね。彼はきっと、自分の運命を求めている。それはラブロマンスにも似た一途な想いなんだろう。でも、そうしてしまうと死ぬことができない。運命の中で生き続けることになる。だから──」

 

この手で殺して、その全てに幕を引いてあげたいのかもしれないと、ぐちゃぐちゃな思いがほんの少しだけ漏れた。

ある意味で新しくできた友人とも言える、その男への友情の示し方が──そんなものくらいしかない。

 

「この友情を煮詰めておくさ。そうすれば必ず……君を殺す理由になるのだから」

「──あなた」

「ふふふっ、道は示したよ──。後は君次第。どうなろうとも、私と君は友達だからね。信奉者(おおばかやろう)

 

その日モスティマは。

初めて友を殺すことに、微かな喜びを感じた。

 




──くん
当時はGではなかった。
カズデルで取り零した標的を追って龍門のスラムへ侵入。2日で計画を立て、1日で標的含めて皆殺しにした。この為に不眠不休で行動した結果、スラムからさっさと出て行くことができずに気絶。モスティマ姉貴に拾われ、しばらく行動を共にする。
本来ならスラムの秩序を乱したとして始末される筈だったが、殺した対象がスラムの癌と繋がっていたこと、その証拠を白日の下へ晒せるようにしていたことなどが理由である程度見逃される。

モスティマ姉貴
どう考えても龍門のスラムにそぐわない──くんを見かけ、なんとなく拾ったらそれが怪物になることを望む存在だったので、入れ込むつもりも無いけど少しくらい手助けしてやろうかと思ったら、自分に感動した──くんとの旅路の中で友達にランクアップしていた。
色々と教える中でその愚かしさと対面し続け、監視者姉貴により友情故に殺してあげたいのではという指摘を受けて、怪物と化したら殺してあげようと友情を煮詰めていた

監視者姉貴
なんかモスティマ姉貴が拾った小僧が異質極まりなかったので忠告も兼ねて色々モスティマ姉貴に言っていたが、もしかして殺してあげたいのでは? という致命的な点を指摘した張本人

走者
実は気絶はガバではない。殺されないラインギリギリを攻めたりなど、RTAらしいことをしていた


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パロディモード:ドクターは息がヌけない

ギャグ多めが多かったのでそっち系をメインにしていこうと思いますから初投稿です

今回は地の文意図的にスカスカスタイルです。
あとパロディモードはキャラ崩壊・設定フワフワ・時系列行方不明、「」クターです。頭空っぽにして読んでください

ギャグ小話、シリアス小話、完全に狂ってるパロディモードっていう区分になります。小話の区別はタイトルで察してください


「何の用だドクター。直接オレを呼びつけるなど」

「G、折り入って頼みがある」

「ケルシーの部隊にも任せられないような汚れ仕事か」

「それに近いことだ。お前にしか頼めない」

「言ってみろ」

 

ゲンドウポーズで構えるドクター。

普段通りに佇むG。

異様な雰囲気に包まれた執務室は、壮絶な計画の開始点と化す──!

 

「最近女性オペレーターの一部がやたらと目に毒な行動してきてムラついて仕方ないんだがどうしたら──あっ、待ってくれ無言で帰らないでくれ!

「くだらんことで呼ぶな。そんなもの自分で処理しろ」

「私に自由な時間はほとんどないんだ! そして自室に行ってもアーミヤを始めとした女性陣もそうだが普通に居座る男性陣も多いんだよ!」

「選り取り見取りだ、よかったじゃないか。ネタには困らんぞ」

「最近アンセルでも結構危なくて……」

 

アンセルは男……だよな? 二人して首を傾げる。たまに仕草もそれっぽいし、何より女より女らしくて水着姿もなんかこう……こう!

ドクターの理性にヒットしていた。

 

「……で、自由な時間もないからどうしたものかと」

「うむ」

「そんなもん立て札でも付けとけ。自家発電中とでもな。それか便所でやれ」

「ぶっ……お前は私を殺したいのか!?」

「オレの半分は殺したいだろうな」

「Wはそうだろうな!」

 

「では仕方ない。鎮める方法はいくつかある」

「おお!」

「一つ。ケルシーのところへ行って小難しい本でも借りて読み漁って忘れる」

「うむ」

「二つ。忘れるくらいに仕事をする」

「うむ」

「三つ。誰かに抜いてもらうように頼む」

「いやそれは無理だ。誰かと肉体関係になったら多分……死ぬ」

「四つ。自分でやる」

「それが厳しいからお前を頼っているんだ」

「五つ。アーミヤに泣き付く」

「アーミヤが可愛そうだろう!?」

「六つ。悟りを開く」

「どうやって?」

「エフイーターというオペレーターがいるだろう。彼女を秘書に任命すればいい」

「殺す気か?」

「いいや。彼女の肉体は鍛え上げられ、その美を常に維持されている。かつて銀幕のスターだった彼女ならば、美というものの向き合い方を教授してくれる。あれほどの肉体美は中々無いぞ。オレも様々な肉体を見てきたが、美を維持したまま機能も兼ね備えた肉体というものを持つ人間は中々いない。その努力、その知識、尊敬に値する。機能美に努力を見出せば、他の女体に興奮することよりも先に感動し美を見出すことができるようになる」

「……それ余計にヤバくならない?」

「そりゃあジロジロ見てんだからヤバいに決まってんだろ」

「わかった。お前も割と私を殺したいな?」

 

「心底から興味が無いだけだ。性欲などに惑わされおって。第一、何故オレだ。他に適任は腐るほどいるだろう」

「だってお前、こういうの口外しないし真面目に答えてくれるじゃん。あと外部協力者だし、弱みを見せても問題無い相手ってなるとお前くらいだし」

「アーミヤや他の女性オペレーターを嗾けるネタくらいにしかならんぞこんなもん」

「立派に弱みじゃい!」

「くっだらねぇ……」

 

帰るな! 命令だ!

 

潰れたカエルのような体勢でドクターは飛び跳ね、ドクター神拳を繰り出しながらGの腰にひっつく。流石にあまりにもくだらない事情でさっさと帰りたかったGはらしくない表情でゲシゲシと、いい歳こいて女に振り回される中年みたいな生活習慣をしている男を蹴りつける。

 

「ひっつくんじゃねえ気持ち悪りぃ! ああもう、酒でも飲め! タバコでも吸え! うざってぇからさっさと離れろ! 愚痴くらいなら聞いてやっから!!」

「最近ブレイズも距離感バグってるんだぞ!? マドロックもまさか中身が美少女だなんて思いもしなかった! レイズだって割となんか……なんかこうだし! どうして!? 気軽な感じで行けると思ったエクシアもなんかこう……!! しかも一番程よく付き合えるモスティマからも自分の守護銃渡された! 重いよ! 男たちも気が休まらないの!! こういうこと相談できる人いないの!」

「いいじゃねえか役得だ一人くらい喰っとけ! あとモスティマの守護銃はちゃんと整備しろ、しないと殺すぞ。彼女にとってオマエは真実、友人というに相応しくなったのだからな」

「銃の整備は本人に聞きながらやるけど食べるのはダメ!」

「童貞野郎が!」

「記憶無いからわからないぞ!」

 

「……どうしてオペレーターの距離感はバグってるんだろう?」

「かけて欲しい言葉、的確なフォロー。ドクターがやってきたことの、謂わばツケだな」

「ツケってなんだよツケって……ケツ……魅力的な子多い……うぅ……一人の時間欲しいぃ……少しでいいからさぁ……」

「ええい、大の大人が距離感バグってる女に振り回された程度で泣くんじゃない。オマエ自分がロドスの戦術関連最高責任者だと理解してるのか。クソ、なんでこんなミドルエイジの酔っ払いの相手をオレが……」

 

「そういえばロスモンティスとは折り合いが悪いそうだが、大丈夫か」

「……さてな。彼女とオレの関係性はそういう言葉では現せんよ。だが、憎しみにしろあの男の慈悲を継ぐにしろ、いずれオレの死の運命に相応しくなるに違いない」

「……」

「Wとは異なる運命になってくれそうだ。そういう意味では──少し期待すらしてしまっているよ」

「変わらないな、お前は」

「変われないってことさ」

 

「そういやモスティマも……また政治的な話を抱えてそうだが。それは──」

「その時に考えればいい」

「……先手を、打つなと?」

「ああ。後手に回る。後手でもやれることがある」

「敵を殲滅するのではなくて? タルラを抱えている以上、為すべきは敵を大地ごと焼き払うことだ」

「ダメだ。ロドスは感染者を救う。それが先決だ」

 

「……」

「……」

 

「……ドクター、かつてのオマエならオレを上手く使ったろうな」

「話を聞く限りでは、だが」

「今はオマエの方針に従ってやる。余計なことは考えん」

 

「……オレは何処まで行っても殺戮しかできない、ただの狂人だからな……」

 

「ところでG的には誰がイケる? 私的にはガヴィルかな。同性みたいなテンションで来るのめちゃくちゃイイ。バグ距離になると……うーん、まぁ、なんだ……消去法でウィスラッシュ」

「アイツもどうなんだ? 流石に自分のクレカ預ける女はヤバそうだぞ。悪いことは言わんからもう少しなんだ、純粋な気持ち多めの卑しくない女とかにしておけ。それよりワルファリンとクロージャはどうだ? アイツら、見た目だけはいいだろ」

「正直ワルファリンとクロージャじゃ勃たない。いい人たちなんだけどね、いい人たちなんだよ」

「哀れな。まあオレも無理だな……変人だし」

「で、お前は結局どうなんだ?」

「ふむ……そうだな、性的な魅力を感じるのは……誰だろうな? 正直オレはW以外でそのような感情は──「えっちなことしたんですね!?」──したが、それがどうした」

 

「したんだ! お前たち! したんだ!」

「……別に長く付き合いのある異性だし、昂ぶってしまってその勢いなんて、いくらでもある」

「え、そんななの?」

「どういう関係だと思ってんだオマエ」

「愛を嘯き合う関係かと」

「そんなラブロマンスな関係ではない」

「でも『オレだけのクソ女』ってあの時──「忘れろ」──アッハイ」

 

「……して、誰が一番イケてるかって? オレは……そうだな。改めて考えてみれば……ニアールかな」

「意外だな」

「タッパがデカくて肉の付いた女に魅力を感じない男が何処にいる。それにあの覚悟、戦士としての力量……全てにおいて望外だ」

「やっぱりそっちなんだ」

「むしろそれ以外に何がある」

「でもお前もそうなのか」

「まあな。実のところ、肉付きのいい方がオレの好みなんだが、そんなことアイツに言うとブッ殺されそうで──「ドクター? 本日の秘書はフォリニックさんでしたが、彼女からドクターが一人にしてくれと部屋で何かしていると……」

 

「あ゛」

(酒と食い物が転がり、タバコの吸い殻が灰皿に見え、なんとも言えない表紙の雑誌が数個机の上に放置されている執務室)

(とっ散らかった書類)

(揉めたであろう痕跡)

(無言の逃走)

(ドクター転ける)

(G振り返る)

(アーミヤが二人まとめて確保)

 

「二人とも?」

「……はい」

「元はと言えばこのバカがオマエらが目に毒だなんだ一人の時間が無いから息がヌけないだなんだから始まった」

 

「まだ仕事は終わってませんよ、ドクター。オフの時間に気を抜いてください」

「……すまないアーミヤ。だが色々あったんだ私も」

「あと減給です、Gさん」

「まあ当然か」

「それとケルシー先生に報告します。あなたの偏食的な食生活と日々の飲酒・喫煙などを含めた生活習慣全般に関しては改善するようにと通告されていた筈ですが」

「……チッ、やかましい黒ウサギめ……何を飲もうが何を吸おうが何を食おうがオレの勝手だろう……」

 

「何か言いました?」

「いや」

「そうですか。どうせ愚痴を言っていたんでしょう?」

「!?」

「ケルシー先生から聞きました。『視線を逸らして若干俯いている時のGは文句を言っている』と」

「あンのヤブ医者……! 余計なこと教えやがって!」

 

その後、ドクターの自室には訪問可能時間が設定されたものの、各オペレーター間の距離感のバグは解消されることなく、ドクターの心労はより酷くなった……らしい。一方で距離感バグ勢は何やらそういう情報を手に入れたらしく──一部は悪化したとか、なんとか。恥じらいを持て。

 

「君にはさまざまな罪がかけられている。具体的には『不健康なドクターに喫煙・飲酒強要罪』『クロージャと連んでよからぬことを企んだ罪』『ワルファリンと共にスカジを狙った罪』……いい加減にしろ」

「オレはオレのあるがままにある」

「ではこの件はWに報告させてもらう。そうだな、君がドクターと二人で何やら如何わしい本を片手に酒を嗜んでいたと」

 

「待てケルシー、オレが悪かった──ぬぉっ!? レッド、オマエ!」

「Gはバカ。すごくバカ。レッドの方が、宿題解ける。頭いい」

「レッド。そこの愚か者を見張っておけ……W、聞こえるか」

「やめろケルシー! レッド! 離せ! W! 違うんだ!」

「後日を楽しみにしておけとさ」

「クソババア!」

「──ふんっ」

「ぶぉッ!?」




Gくん(パロディモード)
ドクターが一番気楽に本音を話せる同性として呼び出したバカ
女の趣味はいい具合に肉のある感じの子な、Wガチ勢。女の趣味を言うと殺されそうだと語っていたが、恐らくそんなことを言えば調教される

ドクター(パロディモード)
仕事したいのに距離感バグ勢のおかげでおかしくなり、せめてひとりの時間をと思ったら普通にドクターLOVE勢だのなんだのが押しかけて、そうと言えずにバグってGくんを呼び出して下ネタ話をした「」クター
如何わしい表紙の本は彼の私物

エフイーター
話題に出た人。わざとなのか天然なのか、「」クターは分からず壊れた。そしてGくんは「」クターに彼女の視姦を提案……お前らバカじゃね?

レッド(パロディモード)
Gくんより賢い子

アーミヤ
彼女は純粋に仕事の話や諸々の相談でドクターを尋ねている。もちろん無理に聞きに来ているわけではないが、毎度タイミングが悪かったり

ケルシー
Gくんの暴言に流石に手が出た


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小話:ブレイズのかほり

ブレイズ姉貴の尻尾の付け根をクンクンしたいので初投稿です


「何故オマエはチェーンソーを使っている?」

「へ?」

 

ロドスに所属してしばらく。

その素性、得意とする傾向、経歴、性格などから一部のエリートオペレーターやS.W.E.E.P.と共に仕事をすることも多いGだが、それはそうとして彼が話せるオペレーターは少ない。大半は憎悪や嫌悪の対象ということもあるが、当のGがさして会話する気がなく、ポエムではぐらかした物言いばかりする内に不気味がられて自然と話し相手が減ったのだ。

その数少ない話し相手の内一人がブレイズであり、彼女の同僚に死を与えた張本人ながら、こんがらがった感情を剥き出しにしたことが理由で、彼女は普通に会話ができる。上手に割り切ったとも、あるいは──絆されたとも言えるかもしれない。が、Gは『Scoutがまたいらん気でも回して夢の中でブレイズに入れ知恵でもしたのか』くらいにしか考えてなかったり。

 

「……君、そんなことを聞くくらいならロスモンティスと上手くやってく方法とか考えたら?」

「──無理だな。仕事の時は互いに協力できるが、根本的にアイツとオレは相容れない」

 

しかし、ロスモンティスとGは根本的に相容れなかった。互いに「ああこいつとは合わない」と理解したっきり。基本は会話もせずに無視し合う関係だ。

 

片や、兄弟家族すら最強の字に捧げる生贄に変え、運命とあらば愛しい者すら殺し、そしてその者に殺されることを是とする怪物になりたい破綻者。

片や、崩れ去る記憶を慈しみ、家族を守り異常な力を捨て去って平凡に生きることを望む怪物にさせられた被害者。

 

Wとはわだかまりこそあるものの、その根底にあるものが理解可能であるが故に、そこまで(当社比)険悪な仲ではないが、Gとは完全に合わなかった。そもそもScoutの死を惜しんだ理由が殺したかった・殺されたかったという異常な友情である時点で、ロスモンティスとGはいがみ合う運命だったと言える。

家族は守るもの・大切にするものと考えるロスモンティスと最強を目指し苦痛に嘆きながらそれでも歩みを止めず心と殺意が両立するG。相反する二人の折り合いが悪いのは必然であった。

 

そしてそんなロスモンティスもまた運命になり得ると考えているGなのだから救いようが無い。

なおこのことをWが知った翌日、ロドス艦内で本を読んでいたGを彼女が直接拉致していったのは有名な話だ。

 

「……で、何故チェーンソーなんだ? スカジのように大剣でもいい筈だろう」

「これは威圧効果も兼ねてるんだ。それに、使ってて楽しいもん」

 

なんでもないようにブレイズが言ったが、当のGは首を傾げた。

 

「待てブレイズ。威圧効果はわからなくもない。だが、費用や手間に見合っているのか? 戦闘用の大型チェーンソーでは小技も効きづらく、ましてやいくらそうしたものが必要な環境でも動作不良でも起こしたらどうするんだ」

「その前に終わるから問題ないよ。君でもそうするでしょ?」

「まあ、ああ。そうだが、そうなのだが……なあおい、マジでそれ使えるのか?」

「持ってみる?」

「……うわっ、なんだこれ……確かに切る技術は要らないが。ぬぅ……っ、感覚が狂う。よくこんなもので技術を使えるな」

「逆だよ逆。これに合わせて技術を作るの。自分に合わせようとしちゃダメ。自分が合わせて使うものだよ」

 

ブレイズのチェーンソーを借りて振ってみるも、重心や刀身の位置の関係から上手く振れそうもない。しかししばらく振っていると形だけはサマになっていき、15分もする頃にはそれなりに使えるようになっていた。もちろん、形だけ整えた程度。実戦では使い物にならない。

 

「さっぱりわからん」

 

しかしGはチェーンソーの良さが全く分からなかった。何故? 煩雑な整備性にコスト問題、騒音、繊細さ……どれを考えてもいくら頑丈に作られていようが、ブレイズのアーツや戦闘スタイルと合ってはいるが損耗が激しくないか……と。

 

「チェーンソーの良さわかんない?」

「わかんない」

「楽しさは?」

「武器に使う楽しみがあるのか? 確かに質が良ければ自然と笑みが溢れるが」

 

得物を返しつつ、ポカンとした顔でそんなことを宣うGと、そう言われてもという顔をするしかないブレイズ。なんか根本的にすれ違っているような、そんな気がしてきた彼女は、擦り合わせを行わねばと視線を合わせた。

 

「好きな武器とか無いの?」

「好きな武器……質実剛健で、耐久性がある方がいい。切れ味は別に。クロスボウは色々使ったが、一発毎に装填するのが面倒だ。改造された連射型も、繊細過ぎて壊れやすかったし」

「そりゃ本来単発式のを連射式にしたんだから当たり前でしょ」

「……いや、ラテラーノ銃の設計を流用したとかなんとかで、色々すごかったらしいが、よくわからなかった」

「それ騙されてるじゃん! 悪質な業者に騙されてるじゃん!」

「何!? ……だから買った翌日殺されてたのか。正直あの時は全品100%オフな喜びが勝って何も考えていなかった」

 

……こいつ本当にバカだなぁ、とブレイズはしみじみ感じた。口を開けばこんな具合。戦いが絡まないと天然ボケのすっとこどっこい。ポエムを聞く限りではまるで哲学者の如き語彙力なのに時折飛び出るアホくさい謎な言葉。そしてW、ケルシー、モスティマと話す時だけ出てくる幼い面。

──全てが正しく全てが間違っている存在。

 

(……本当に、なんだろう。こいつは)

 

ブレイズが見てきた何者にも当て嵌まらない。幼き日に見た憧憬を一心不乱に追いかける永遠の少年のようで、それが叶わないと知っている夢破れた大人のようでもある。強いて言うなら、それは──幼少期に抱く、狂気とも正気ともつかないあの不思議な感覚。それがとにかく強すぎる。

いつかロドスの敵に……いや、テラの大地そのものの敵になる。でも敵にならないような気もする。

 

わからないから理解しようとして、理解できないから噛み砕こうとして噛み砕き損ねている。

むむむと悩みながらジーッとブレイズはGを見る。

 

(……顔はいいんだよね顔は。見た目だけなら受けはいい……ブラッドブルードって美形揃いなのかなぁ? クロージャもワルファリンもこいつも、性格や言動にアレなところあるのに腹立つくらいに見てくれはいい。これが格差かぁ!?)

 

ブレイズ。

バグった距離感により一部オペレーターの性癖や思考を破壊しつつ、他人の魅力や長所を見つけるのは得意だが、自分の女性的魅力にはあまり気付かないエリートオペレーターであった。

 

「……熱烈な視線だな」

「へ?」

「なんだ、黙ってオレを見つめてきて。言いたいことでもあるのか?」

「いや、顔いいなぁって」

「……オレの? Scoutみたいなことを言うなぁオマエ」

「え、彼そんなこと言ったの?」

「言う言う。だがそんなことを言ったらオマエだって……すまん。オレには外見的醜美のアレコレがよくわからん。ドクターにでも聞いてくれ」

 

意識したこともなかったと言われても、ブレイズだって困る話だ。とはいえこのクソボケに振り回されてあれやこれやと悩む自分がいるのもまた事実。ならばなんかこう、この男を困らせてみたいと思った。悪戯心という奴だろうか。

 

「じゃあ君から見て、君の感性で私のいいところって何?」

 

別にそんな気もないが、なんとなく、悪戯っぽく微笑みながら、そういう仕草をして尋ねてみた。そしたらこのクソボケは無言になり、腕を組み、3分ほどウンウンと唸ってから一言。

 

「カッコいい」

「……あっ、そう」

「感染者という大雑把な対象を、自分の意思で本気で救おうとして、その為に戦っているオマエは美しい。素晴らしいよ、もしもWよりも早く出会っていたらオレは迷わずオマエを……」

「はいはい殺人ラブコールやめてね」

「あとオマエと共にいると安心する匂いを感じる」

「ふーん……は?」

 

「え……臭うの? 私? 汗臭い? それとも獣臭い?」

「まず一つ。匂う。めちゃくちゃ匂う。そしてそれは汗だの獣だのではない。……まあ汗臭いのはオペレーターの仕事的に仕方ないのかもしれんが」

「やっぱり汗臭いの!?」

「今は汗臭くないぞ 」

「本当!?」

「マジ」

 

なんなんだ急にコイツは……

ブレイズにがっつかれて不思議に思う、繊細な心がわからないGくんであった。

 

「オレが言う匂いとは、オマエといると安心する匂いというだけであってだな」

「それ、どんな匂いよ」

「いるべき場所にいるような匂い」

「母性でも感じたの。この私に」

「いや全く。そうだな……この匂いは、炎の匂いだ。血と硝煙に染まりきった戦場こそがオレの居場所。それを想起させるオマエの、この炎の匂いはとても安心する」

 

……褒められているのかはわからないが、とりあえずブレイズにだってGが嘘を言っていないことくらいはわかる。

そして──

 

「オレは血など興味も無い。オレの飲む血はただ一人だけ。そう誓ってしまったから浮気はできん。しかし、しかしだ……なあ、オマエの血でタバコの火付けてくれないか? 頼むよ、オマエという炎の血を、オレの身体に取り込んでみたいんだァ……!」

「そういう意図も感情も無いのは知ってるけど──ごめん、気持ち悪いからパス」

 

憧れのヒーローにでも会ったような、キラキラとした目のままの飲血できないからせめてその成分が混じったタバコが摂取したいという異常な欲求に、ブレイズは嫌悪の表情と共に心底から拒絶した。

 

「……そうか。なら、あれだ。Wには言わないでくれ」

「わかった。W"には"言わないよ」

「助かる」

 

 

……あれ以来Gは私の血を絶妙に欲しがるようになりました。ケルシー先生、流石にあれ気持ち悪いのでなんとかしてください。アーミヤちゃんやドクターからもなんとか言ってください。目をキラキラさせながら私の匂いが〜とか、血が〜とかそれとなくアピールしてくるんです。実害が無いからいいのですが、なんか妙なセクハラされてるみたいであんまり落ち着かないんです。

──強襲オペレーターブレイズ

 

了解した。こちらで対応する。

──ケルシー医師

 

Wさんに文面で連絡しておきます。

──アーミヤ

 

別に血でタバコ付けるくらいいいんじゃないか? 一回で終わるならそれに越したことはないかと思うぞ

──ドクター

 

一体いつからあたし専用の採血機は他所のメス猫の血を欲しがるようになってしまったのかしら?

──匿名希望




Gくん
ブレイズ姉貴の匂いに安心し更に燃ゆる血を欲しがった変態。
W姉貴への誓いから、せめてタバコの火とすれば摂取可能では? というあまりにも変態的な発想の元に迫った為、関係各所からお灸を据えられることになった
チェーンソーは使ったことはないが、実は鉈とノコギリは昔使ってた

ブレイズ姉貴
Gくんに安心する匂いを感じ取られ、血でタバコ付けてくれという異質なセクハラを食らった被害者。
チェーンソーを使っていることが全く理解されなかったが、一方で彼女も「何よ散弾と強装弾対応のリボルバー型のラテラーノ銃って……」とゲテモノ銃を理解できなかった。何故Gに懐かれたのかの疑問は解消できたが、クソボケ変質者なところは知りたくなかった

ケルシー先生
Gくんの奇行相談先その1。
この一件でそういやこいつブラッドブルードだったっけなと思い出した。ただ気持ち悪いのも事実なので説教はした

アーミヤCEO
Gくんの奇行相談先その2。
もう諦めきっているので、W姉貴には言わないという約束を守りつつW姉貴に書面で通報した

ドクター
一回で済むならそれでよくない? と良くも悪くもGくんのことを理解した一言を言ったが、ブレイズの猛反対によって却下された

匿名希望のW姉貴
Gくん関係の通報先
やたらとメス猫に気を引かれている専用の採血機へのお説教も兼ねてお灸を据えた。誰に目移りしようとも運命だからいいやと思っていたが、流石に他人の血を飲みたがったのは腹が立った


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小話:わからないヤツとわかってる人

ケルシコに目覚めたので初投稿です


アーミヤ。

ロドスのCEOであり、多くのオペレーターたちを支える立場。そしてドクターとケルシーに支えられながら健気に現実と戦う少女。

現実を現実と受け止めて、幻想を如何にして矛盾なく現実に落とすか。そしてそれがどれほどの苦痛を必要とするかを理解しているし、インテリだしレスバも強い。

 

更にバベルの謎をその身に宿し、Wからはテレジアの継承者として目され、Gからクイロンの後継者として目される。

 

「クイロンの後継者」

「アーミヤです」

「……すまない」

 

まーたやってるよと。

ロドスでは珍しいことではない。アーミヤのことをGがクイロンと呼ぶのは。

酷い時はもう──

 

「アーロン」

「誰ですか!?」

「いや、クイミヤだったか」

「アーミヤです!」

「そうだ、クーロン」

「だからアーミヤですってば!」

「……クロサワ?」

「違います! アー! ミ! ヤ! です!」

「そうそう、アーミヤだ。うん。すまんな。つい憧れの存在の後継者が目の前にいるもんだからゴッチャになった。それはそうと鎧展開して握手してくれないか? あと写真を……」

「ヒーローショーの記念撮影会気分ですかあなたは!? ミステリアスで狂奔のままに闘争を楽しみ最強を目指しながらWさんの尻に敷かれているGさんはどこへ!?」

「何を言うか。オレがクソガキだとオマエもよくわかっているだろう。考えてもみろ、ブレイズの血で騒動を起こすようなヤツがマトモな訳ないだろ」

「うわ……その言い方すごく腹立ちます……」

 

意図して惚けているのか、それとも天然で惚けているのか。Gと会話をすることのある人間で、それを判別できるのは余程の人物だけだ。エンカクのようにわかった上で乗ってくる人間もいれば、Wのようにマジレスする人間もいる。そしてわからないで振り回される人間もいる……今のアーミヤのように。

 

「で、だ。少しは気が晴れたか。大声を出すというのは精神衛生的にもいいことだ。感情の発露を妨げてしまうと、心身共に悪影響を及ぼすという。時には理性を緩めるのも良いと、古の格言にはある。ロドスの為にと身を粉にして働くのはいいが、詰め過ぎれば壊れるぞ。ドクターやケルシーのように、程よく息を抜け」

 

──とは言え、意図してボケる時は大抵そうやることが話し相手にとって良いことに繋がると理解している時だ。アーミヤのここ最近の働き詰めを見兼ねて、Gは自ら助け舟を出した。

そういうことだったのかと理解したアーミヤは、なんとも言えない表情をした後にため息を吐いた。

 

「息を抜け、と言われましても。仕事の最中にどうやって息を抜くんですか」

「いつだかにはシエスタで水着姿をドクターに披露したと聞くが、そういうことではない。音楽に身を任せるなり、酒を飲むなり、眠るなり、安心できる者の側で温もりを感じるなりで、一時の安らぎを得る程度で良いのだ」

「……そうなると、やはりドクターの側にいることが私にとっての一番の安らぎになりますね」

「ならば少しだけ、時間を貰えばいい。アイツとて心を取り戻したんだ、娘の如きオマエとの語らいを拒むほど甲斐性がないわけでもあるまい。Wからテレジアの継承者と言われ、気を張るなというのは無理な話であろうが、気を張り過ぎるのもまたいかん」

「あなたの望む最強のクイロンは、そんなことをしないのでは?」

 

意地悪な質問だなとは思ったが、この男からそんな言葉が出てくるとは驚いた。だからと尋ねてはみたが、当人はさして気にする様子も無いまま。

 

「美味い飯に憧れて、レシピも知らないままそれを自分のものにしようとする料理人と同じなんだよオレは。確かにファン心理としてはどういう経緯とどういう材料で、どういう過程を経て焦がれた形になったのかは気になるし、聞かせて欲しいとも思うさ。こう見えてもミーハーなものでな。オレはクイロンの在り方に最強を見出したが、クイロンに最強であってくれとは望んではいない」

 

最強でありたいのは自分であり、クイロンはあくまでも憧れに過ぎないのだとあっさり告げた。例えクイロンが実は女々しい人物だったりしてもそれがどうした? 我も人、彼も人。人なのだから中身がどうあってもそれはそれだ──真実と伝記は違うと理解している大人の視点。

そういうことができるのにどうして、と思わなくもない。だがこの男は愚かにも最強を目指すのだと、アーミヤもそうした視線を向けられる側となってようやく理解した。

故にテレジアは最後に立ち塞がる宿命となることを是とし、Wは一連托生の運命となることを是とした。

それが彼に対する最大限の情の現れとなるから。

 

「……本当にWさんも大変ですね。あなたみたいな厄介者と一連托生の道を選んだんですから」

「望んで選んだ道だ。とやかく言うのは本人に失礼だぞ」

「わかってますよ。でもそう呟くくらいは自由でしょう? それに、そんな意図の無いことくらいあなたが一番わかっている筈です。Gさん」

 

子供扱いするなと視線を送ってみれば、おお怖いと言わんばかりに肩を竦める。

 

「まったく、何処の誰に似たものやら」

「少なくとも、あなたが苦手な人たちですね」

「ふっ、違いない。ところでCEO」

「なんでそう呼ぶのかはわかりませんがなんですか」

「最近、Wがオレに黙って散財しているらしくてな。ただでさえ補充などで結構使ったってのに、ロドスから資金が降りても、それは貯蓄に回すべきだ。ウチの懐事情はラテラーノ銃で荒稼ぎしたとは言え、これからのことを考えれば貯めておくに越したことはない」

 

……そういえばWがこの前、ドクターの秘書に任命された時に散財してきたと会話していたのを聞いたことがある。実際洋服だったし、チェックも通したのは記憶に新しい。まさか知らないのか? とアーミヤは怪訝な顔をする。一方、そんな彼女に気づかずに、Gはぶつくさと文句を垂れる。

 

「冷静に考えれば、あんなものに金を使うのはわからない。必要分と予備を用意してあるし、他にいるものは消耗品などだし、それに備えた金は用意しておくべきだろう」

 

この男、使うときはとことん使うが使わないときはとことん使わない、ドが付く程のケチである。故にWの考えがわからない。

 

「……なあ、アーミヤ。見せる相手もいなければ、どうせ使いもしないのに服を買い溜めるWのことがわからんのだ。オレには」

 

言いやがった。この男言いやがった。愕然としながら聞き返す。嘘だろお前、見せる相手も使う場面もあるだろうと。

 

「えっ、本気ですか」

「マジ。まっっったくわからん」

「誰だって着飾って綺麗になりたいと思うものですよ?」

「……その手の話は、まったく共感できん。無論、理屈は理解しているがな」

 

外見的醜美に囚われることがなくなってしまったGは、着飾る美しさなどを理解できても共感できない。見てくれだけ良くても中身がダメならそれは腐った大木だと彼は判断して焼き払う。最強というモノに囚われて、外見よりも中身を重視するようになった彼が外見的醜美について何かを言う瞬間とは、それこそおべっかを使う時くらいだ。

──そしてWがどんな格好をしていようが、それが愛しき苦痛(忌々しい古傷)である以上、すべて受け入れる。

 

「待て、まさか──W……お、っ……男でも、できた……のか?」

「いやいやいや落ち着いてください。なんでそうなって勝手に動揺しているんですか」

 

無いってわかってそうな人がそういうのあるんじゃないのかと思うのはバグなのだろうか。

本人の許可をもらってアーツで読心した際に見えてしまったが、WはGに対してぐっちゃぐちゃに絡まった感情を抱いている。恋人の独占欲にも見えて、家族の反骨心にも等しく、戦友の信頼と信用がある。つまりもうそれらを超越した関係にあり、Wにそれとなく聞いてみたところ帰ってきたのは。

 

「あたしが抱くのも抱かれるのも、あいつだけよ」

 

という男らしいセリフが帰ってきた。

なのであり得ないとわかっているが、一方でそっちのアホは「いや……あんなクソ女に惚れる男とかいないしクソ女が惚れる男とかいないって……」とか呟いている。バカじゃないのか。

 

「落ち着いてくださいGさん。Wさんですよ? テレジアさんの忠臣です。ドクターを殺害リスト3番目に入れている人ですよ? そんなことありません」

「いいや、人の気とは移ろいやすいものだよアーミヤ」

(別れてからの正確な日数まで記憶していて、隠し撮りの写真もいくつか持ってるような女性ですからそんなことあり得ないと言っても……いえ、これはWさんに失礼ですね)

 

流石に乙女の秘密を気軽に暴露できるほどアーミヤは黒ウサギではない。

 

「……あれ、待てよ。そういやアイツ、3年ぶりに会った時正確な日数をオレに伝えてきてたな。それになんか気分悪くなるとオレに構えとアピールしてくるし、最近なんかやたらと駄犬扱いしてくるし……まさかオレは、ペットか何かの扱いなのか……!?」

 

このボケは独自の仮説を弾き出しているし。

 

(これ、Wさんに言った方がいいかなあ……? なんか、わかっててそうしてそうだけど)

「すまないアーミヤ。オレは急用が出来た」

「え? ちょっとGさん!? 急に銃を取り出して何処へ……」

 

ズガァー……ン(発砲音)

(ドアを蹴破る音)

 

「ドクター! Wから何か聞いたか!?」

「なんですか貴方は!?」

「あっ、ダメだG! 今私の執務室にはイグゼキュターが親切心で設置してくれた地雷が……」

「たかが地雷原の一つや二つ!!」

「バカな……!? 跳躍中に銃の反動を利用した、バレルロール……だと──!?」

「頼むから真顔でバレルロールしつつ私に近づくなG! W関係ならケルシーに聞け!! 私は何も知らないぞ! あと執務室で発砲するな! 強装弾を使ったくらいで気遣いにはならないぞ!」

「本当だな!? 実はWとふしだらな関係になってたりとかしてないよな!?」

「私が一番なれるわけないだろう!? 彼女の事を理解しているお前がどうしてそんなことを言うんだ! 正気に戻れ!!」

 

(銃ブーストして部屋を出るG)

(全力疾走)

(ケルシーの部屋に全力で入り込む)

(部屋を出ようとするケルシー)

(ぶっかってしまい押し倒すように倒れ込む)

 

「ケルシー!」

「なんだ」

「Wから何か聞いているか!?」

「何も。洋服に金を使ったくらいだが」

「用途は!?」

「用途……? ああ、そういうことか」

 

何故彼がここまで変になっているかを理解したケルシーは、押し倒すGの頬に手を当てる。

 

「君が、彼女の言うメス猫にうつつを抜かしているからじゃないか」

「は?」

「君は妬いているのか。新しいWの装いを真っ先に見れないし、内緒にされていることが」

「……いや、まったく……」

「私の前で下手な嘘はやめておけ。君のことは、そうだな……少なくとも心がどう揺れ動いているかについては、私以上に詳しい者もいまい」

 

ここはWよりもよく知っていると自負している。どういうタイミングでどういう言葉をかければ、Gの人間性が出てくるのかというのは、長きに渡る授業の中でよく理解した。それに──

 

「……それで、退いてくれないか?」

 

ケルシーとて人の子だ。

悪戯心が沸く時は、ほんの少しだけある。

 

「退かないのならば、私はMon3trで抵抗しなければならなくなるが。仮に愛を嘯くのであれば、もう少し時間を遅くするといい。寝静まった時間ならば、大きな音を出しても誤魔化せる。それにWにも気付かれない」

「──アンタ、何言ってんだ?」

「君こそ何を言っている。こうして私を熱烈に押し倒してくれたじゃないか。側から見れば、そういう場面になるぞ」

「すまない──!」

 

急いで離れるGがバカのようで、呆れたため息が出る。最強や戦場から離れればすぐにこんなものだ。そもそもこの男は研究者や哲学者などが適任なのだ。意味を問い、価値を問い、無情を問い、真理を見つめ、その中で己を見出す。

願いと素質が悲しいくらいに正反対な存在。

身体を起こしつつ、まったく厄介な馬鹿者を弟子として取り、気に入ってしまったものだと自嘲する。こんな馬鹿は、永く生きていてもそうそういない。

 

「ああそうだ」

「……なんだよ」

「状況に気付いた時の君の顔、可愛かったぞ」

「──じゃあな」

 

そら、下手くそな照れ隠しだ。

全く変わりない馬鹿を見て、ケルシーはやれやれとため息を吐くと、今回の騒動で発生した諸々の被害の補填について考え出した……




Gくん
賢いけどバカなので超理論を弾き出して暴走した人
アーミヤを彼なりに気遣っているが、その気遣い方は滅茶苦茶独特
ミーハー

アーミヤ姉貴
名前を間違えられた人
ロクでもないこの男の手綱は大変だなあとW姉貴を尊敬する
始末書はキッチリGくんにつけた

ドクター
あらぬ疑いをかけられた人
考えてみてほしい。無表情のまま地雷原をバレルロールで突破してくる男の姿を。こわい

イグゼキュター兄貴
地雷原をバレルロールで突破する変態に戦慄した人

ケルシー先生
色々あって押し倒された人
最初は何事かと思ったが、Gくんの暴走具合を見て事情を察した。押し倒されたことに思うものはなかったが、求められたらまあと答える気くらいはあった
どっちにしろオイシイ思いをした人

W姉貴
わかっててやってる人


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小話:盆栽と追憶

W姉貴の表情差分に猫を見出したので初投稿です


Gという存在はロドス内部でも独特だ。

 

かつてレユニオンに雇われていたサルカズ傭兵団の一員にしてリーダーたるWの腹心的存在、カズデルの内戦で最狂の殺戮者『ジェヴォーダンの獣』を殺した凄腕の傭兵という異色の経緯と立場。

口を開けば難解かつ回りくどい言葉が飛び出て暖簾を押しているような感覚を与えてくるのに、作戦遂行時には的確な行動とフォロー、普通の会話という意味不明な二面性。

サルカズの中でもブラッドブルードという変わり種であり、特殊性故にほとんど本艦に滞在しない傭兵団であるが艦内に滞在することが、Wたちと比較した時と付くが比較的多い。

 

更に言えば揉め事を起こすわけでもなく、ただ艦内を観察するように眺めて、茶を飲み本を読み煙草を嗜み──言葉こそ詩的過ぎて理解が難しいが、犠牲者に対する尊重らしきものが見えて、基本的には騒動を起こす気が全く無く、突っかかったエリートオペレーターに対して粛々と艦内でこうした騒動を起こすことの危険性とやるなら作戦行動中の事故に見せかけるか正式な許可を取れなどと説く。

 

端的に言えば……ロドスに所属するオペレーターの中で極め付けに浮いていた。

 

言動さえ除けばロドスのオペレーターと比較しても上位に位置するような常識的対応。かつての敵であり仲間の仇でありながら、何をするわけでも何を言うまでもなく、小難しい哲学書や医学や政治学などの書物を読み耽る──Wの腹心たるサルカズの傭兵にして悪名高いブラッドブルードとは思えないような紳士的な態度。

 

これが"あのG"なのか? そう思ってしまうほどには、 あまりにも異なり過ぎていた。その不気味さにはチェンが無表情になり、ホシグマは唖然とし、そしてスワイヤーが仮眠を取った。龍門でかなりの騒動を起こしたあの男が、これかと。

さて、そんなGだが四六時中ポエムを言い続けるわけではない。相手によっては普通に話すし、花を愛でるくらいのことはする。そして花を愛でるのは一人ではない……

 

「──どう思う?」

「ここは──これじゃないか?」

 

エンカクとG。

二人して盆栽の形作りに悩んでいた。

 

「むぅ、木の形そのものがマズかったか」

「いいや。この形はイイ。とてもイイ。この種らしいからな」

「観賞用としては落第の形ではないか?」

「知らないのか? この形はな、もうしばらくすると毒々しく捻れるんだ」

「初耳だな。やはりやることもないからと慣れないことをやるのはいかんか」

「草木の世話は難しいものだ。一朝一夕で身につくものではない。技術と同じだ。刀剣を磨き上げる行為の中に美を見出そうと思って、簡単に見出せるか?」

「それもそうか。ならば……何を以って生命の美とするんだ、エンカク」

「お前のようにあるがままである花こそ、さ」

 

嬉しいことを言ってくれるな、と穏やかに笑ったGは剪定する枝に悩みつつも、草木が自然のまま自然であることの美しさについて触れていく。

 

「好きに生きて好きに朽ち果てる花を美しいか」

「当然。最期には皆枯れ朽ちる。美しく咲き誇る花でさえもだ。しかし枯れ朽ちた花はそれもまた美しい。そう、好きなように生きて好きなように死ぬ。誰の為でもなく……草木はそれが簡単にできる」

「──なるほど。だがオレたちは好きなように生きれば、理不尽に死ぬのが約束されている。なればこそ……か」

「不思議なものだ。俺は奴らの主義主張にはさしたる興味も無く、お前もまた興味は無かった。だがこうして世の無常さを感じてみれば、Wが心酔した女の主義も、なんとなくは理解できるというものだ」

 

かの内戦。

互いの立場は違ったが、闘争を求めていたというのは変わらなかった。それを実感し、互い顔を合わせて刃を交わしたのがチェルノボーグの一件だけだったというのは、しこりとなって残っており、ロドスで初めて顔を合わせた時に互いにまず一発殴り、そのあとにまた今度と約束したくらいだ。

 

「だが理解できるというだけ。それだけだろ。オレもオマエも、魂がある場所は闘争の世界だけだ。オレは最強という名の称号を求めるが故に。オマエは生と死の狭間にこそ生を見出すが故に」

「ああ。所詮、俺たちはそういう風にしか生きられないし、生きるつもりもない。いつか滅びるしかないとすれば、運命諸共森羅万象を切り裂いてみせよう……違うか?」

「違いない」

 

クククと笑い合い、そこで視点がズレたからか、何かを発見したらしいGはチョイチョイと手招きをすると、エンカクと距離を縮めながら真上から盆栽を覗き込む。

 

「……やっぱりこの枝じゃないか?」

「いいや、こっちの枝の方が──おい見ろ、ここは幼いぞ。切るならこっちの成長し切った枝にしておけ。これは切っていい。だが見栄えを考えると……そうだな。まずは横から落としていけ」

「あっ、やべ、切り過ぎた」

「貸せ」

「なるほど」

「力み過ぎだ」

「あんたたち何してんの?」

「「盆栽」」」

「男二人で植物弄ってるなんてホモくさいわねぇ」

 

ヒョイと顔を出したWは、自分の半身がやたらと口説く男と一緒に盆栽をやっているなど想像もしてなかったらしく、半分くらい妬みの篭った視線を投げ付ける。一方のエンカクはさして気にする様子も無く、クルクルと盆栽を回して全体の様子を見ていく。

 

「しかしバランスはいいな。何か芸術に手を出してた時期でもあったのか」

「昔の話だけど、こいつ木彫りをしてた時期があるのよ」

「ほう、木彫りか」

「下手の横好きだよ。期待するな」

 

WとGがまだ傭兵となる前の頃である。暇を持て余したGが、なんとなく木を彫ってそれっぽいオブジェを作った。勿論、それは画伯と呼ばれるようなものであり、それはもう酷い有様のモノを「人だ」と言われて出された時など、むせる程に笑ったのは忘れられない。

 

「本当に下手でねぇ。レユニオンに行く前にもたまに彫ってたけど、見れたもんじゃないわ。見たら笑い死んじゃうもの。バベルの頃は──作ってたとは聞いたけど」

「……そんなに下手だったか……だがクロージャに見てもらってそれなりには上達したんだぞ。ワルファリンにも『独創的だな』と言われるくらいのレベルにはなった」

「団栗の背比べという奴だろう」

「なんだと。ならオマエは生花とかできんのかよ」

「できるが」

「クッ……」

 

なんでこいつは悔しがってるんだとエンカクはGのしょうもなさに呆れ、Wに問う。

 

「この男いつもこうなのかW」

「戦場以外だとこんなもんよ、エンカク」

「気が抜けるな」

「そうね。本当に別人みたいで面白いでしょ」

「俺としてはギラついたGの方が好みだが」

「あら。あたしとしては腑抜けたGの方が好みよ」

「オマエらどういう張り合いしてんだ」

 

ふふんと胸を張って威張るWと、そんなWに対してわかってないなと言わんばかりの視線を送るエンカク。そも何故自分のことで張り合っているのかがわからなくて、盆栽を眺めながらボヤくG。三者三様の光景である。

周りから見ている職員たちもざわついている。具体的には普通に喋っているし、普通の人間のように反応するGに。

 

「まあ、いい。……しかし、うむ……なんだ。ここからどうしよう。なあW」

「え、それあたしに聞く?」

「頼むよオレの半身」

「わかんないわよ。それこそエンカクに聞きなさい」

「何度も言うが、基本はお前の感性で構わん。何をもって美しいかを決めるのはお前なのだからな。盆栽で競い合うこともあるらしいが、そこでもやはり重視されるのは当人のセンスを如何にして現実的な美しさに仕上げるかということ。他人にばかり尋ねても答えはない。お前の言う、考える私こそが答えだ」

 

そう言うとエンカクは訓練の時間らしく、趣味ではなさそうに去っていく。WもGも時折訓練に呼ばれるが、本気で趣味ではないのでテキトーにやってしまう。エンカクの嫌そうな顔に対して細やかな同情心を見せた後、また再びGは盆栽の手入れを始める。

 

「まったく芸術とは哲学だな」

「美に終わりはないものよ」

「ケルシーは科学に完璧というものがあってはならないとしていたが、物事すべてに該当しそうなものだ」

「探求の旅に終わりはない。あんたの口癖じゃない」

「そうだな」

 

──とはいえ、盆栽というのものは長く長く手入れするもの。やることがなくなったのでしばらく眺めてから、暇そうにしているWにGは声をかける。

 

「この後暇か」

「そりゃ暇よ。補給と報告を兼ねて立ち寄ってるんだから」

「少し時間をもらえるか」

「いいわよ。何すんの?」

「場所を変えよう」

 

そうして二人は移動して──制御中枢の一角にある空き部屋に辿り着く。

 

「懐かしいだろう?」

「この部屋、まだあったのね」

「どうやらクロージャあたりが気を利かせてくれたらしい」

 

バベルにいた頃、内密な話をする時によく使っていた秘密の会議室だ。大体はテレジアとどうやって接したらいいか問題やら、盗撮写真の現像とかの用途であり、会議室とは言うものの誰かに聞かれてややこしくなったら嫌だからと駄々を捏ねたWに対応するべく、Gが夜なべして見つけた一番バレづらい部屋だった。

言ってしまえば二人の共有倉庫のようなものでもあり、仮眠兼用のソファーが設置され哲学書や詩集が本棚にぎっしり詰まっている他、買ったはいいものの使い道も無かった衣服が死蔵されていれば、整備用の簡易工房としての役割を備えているなど、色々とゴチャゴチャしている。しかし一定の居住スペースを確保しているので、見た目ほど狭くはない。

 

どうやらクロージャが見つけていたらしく、そのままの形で残されていた。部屋の扉には関係者以外立ち入り禁止の掛け札があり、バベルを偲ぶ思い出の一つとして保管されていたようだ。

思わぬ形でバベルの名残りを見つけたからか、Wは微笑みつつ少しだけ過去に想いを馳せてから、それらを飲み込み、傭兵Wへと回帰する。

 

「……いい仕事するわね、昔から」

「そうだな。ん? これは……誰かが使っていたようだな。少し物が増えているし、オレの趣味じゃない本もある」

「残してくれてるんだし、四の五は言わないわ。ここを知ってるのはバベルの面子だろうし、あたしたちが使ってたって知ってて使えるとしたらかなり限られてくる」

 

二人でソファーに腰掛け、ぼんやりと部屋を眺める。

 

「──不思議なものだな。心が落ち着く。ここにいると、テレジアが生きているような気さえもする」

「彼女は死んだ。でも確かにその遺志と力はアーミヤに受け継がれている。ある意味では生きているという表現もできるわ」

「言葉遊びとは、らしくないな」

「そのらしくないも含めてあたしよ」

 

キャラじゃないというものは、それは認識の話であり、らしくなさを含めて人間だとWは言い切る。彼女自身もまたそう演じる……というよりも、使い分ける人間であるが故に、自分のらしくなさというものを、ある意味では大切にする。らしくあろうとすればあろうとするほど、途端に薄っぺらくなっていくものでしょう? ──そう視線を投げてみれば、返ってきたのはそれをオレに言うかという視線。

いたたまれなくなったGは、そういえば煙草の保管所はどうなっていたのかを見るために箱を開けると、見知らぬ銘柄を見つけて記憶を漁り……思い出す。

 

「……このタバコ、ケルシーがたまに吸ってたヤツだな」

「あいつもここを物置にしてたの?」

「どちらかと言えば喫煙所か?」

「なんでもいいわ。ていうかこれ葉巻じゃない」

「似たようなもんだ。どっちも嗜好品だし、吸うし」

「細かいこと気にする奴ならぶん殴られるわよ」

「避けて殴り返してみせよう。──おや、コーヒーメーカーが設置されてる。最近設置されたものらしいな。豆は結構いいヤツか。オレは紅茶の方が好みなのだが」

「昔ラテラーノの商隊を襲った時、高級な茶葉が手に入って大喜びしてたわね。銃をむしり取ってるあたしたちを尻目に、扉をぶち破って茶葉入れ見つけた途端にあんな風になっちゃってまあ」

「……忘れろ」

 

数少ない趣味というのもあるが、しかも紅茶など傭兵業に身を投じて以来中々手に入らないもの。本当に久しぶりに紅茶を──しかも高級品を手に入れたGは、喜びのあまり一日中笑顔でいた程。煙草や酒は嗜む程度だが、紅茶に関しては割と本気なのだ。

 

「まあ誰が何をどう使おうと問題は無い。オレたちが一番使っていたというだけで、別に専用の部屋という扱いではなかったのだからな」

「ねえ、わざわざそんなことを言うってことは何? モヤモヤしてんの?」

「いいや」

「ふーん……ま、そーゆーことにしておいてあげる」

 

微笑むWは知っている。

Gは意外と嫉妬深いのだ。エンカクと面識があると知った──つまりチェルノボーグを占拠した後、ミーシャ奪取作戦に至るまでの日々でかなり聞かれた。やれどこで会ったのかとか、やれ撃ち合ったのかとか、やれどんな関係なのか……とか。

まあ、普通過ぎて面白みのない会話しかしていなかったのだが、珍しくやたらと突っかかるGが面白くて散々揶揄ったのだが。

 

「あ、ダメよその葉巻吸っちゃ」

「え、なんで」

「ムカつくから」

 

しかし自分もまた随分と嫉妬深くなったものだとWは内心で自嘲する。半身だと認識したのはバベルから出て行く時だったが、以来手元に置いておかないと落ち着かなくなった。憧れの存在でもあり、愛しい恋人でもあり、頼れる戦友でもあり、反骨精神を抱く家族でもある──そんな間柄だから他の誰にも渡したくないし、他の誰かの匂いを付けるのだって気に食わない。

独占欲……とはまた違ったものだろうか。誰に視線を向けても構わないし、離れてもいいのだが、真の運命たる自分を差し置いて他の運命にうつつを抜かすのは見逃せない。

死を与えるのがモスティマ、生を与えるのがケルシーならば、永遠を与えるのがWだ。正直自分以外の運命もあり得るのは業腹だが、この三竦みのままでこれ以上を作らせたくない。ただでさえ「エンカクもいいなぁ」とか「ラップランドも捨てがたい」とか「ロスモンティスがScoutを殺した報いならば、ブレイズはScoutの残した慈悲だ」とか「アーミヤは絶対に外せない」とか「ニアールとは決着を着けたい」とか……掌にモーターコイルでも仕込んでいるのかというクルクル具合。

 

それがGだと知っていても、気になるものは気になる。どれだけの付き合いだと思っているのだ。多少のことでは目くじらを立てないし、並大抵のことで立てた試しはないが、なんかもう自分のことなんて忘れたみたいに口説き回るのはいただけない。

程よく距離を置き、しかし忘れず、視線で追うモスティマを見習ってほしいとすら思う。

 

(あたしとあんたは、噛み合う双頭の毒蛇)

 

互いの毒牙に魅力されて、毒の無い日など考えたくない……そんな関係だろうか。

 

「そういえばさ、あんたエンカクと随分仲良くなったみたいね」

「ん? まあ話す相手もほとんどいないしな。暇さえあればあれやこれやと会話するし、酒も飲めばビリヤードだって二人でやる」

「あんた、せっかくあのメス猫だのケルシーだのいるんだから、エンカクばっかり構うのやめたら?」

「いや口説き文句が上手くてなぁ、エンカクは。ああいう目と言葉で誘われちゃ断れない。あとケルシーはつれないし、ブレイズは酒癖が悪過ぎてダメだ。何が悲しくて暴れ回るメスゴリラの相手をしなければならんのか……」

 

酔っ払ったブレイズの相手をした結果、Gは精神的に瀕死の重傷を負うことになったのはつい最近のことだ。

そのことを思い返して、苦い顔をする。

 

「アイツ、沸点ひっくいんだよ。人がチビチビ飲んでるのにバンバン頼んでるから、少し程度を考えろって言ったら『なにぉぅ!? 毎度の如く頭のおかしい戦法で頭のおかしい戦果を上げる癖に、四六時中ポエム吐いてる男に常識説かれたくないんだけどぉ!?』とか言われてな……任務先で感染者軽視を見て腹が立っていたらしかったから、気晴らしの酒に誘っただけだったんだが──わかんねえ」

「それ、流石にそいつに同情するわね。そういうところよ、昔から変わってない悪癖。自分は非常識を当然としてるのに、他人には常識を言うのは反感買うに決まってるわよ」

「むぅ……でもオマエは気にしないじゃないか」

「昔はぶっ殺してやりたいくらいに嫌いだったのよあんたのこと」

「拾った頃のことか。……あの時のことはあまりほじくり返すな」

 

──思い返してみれば、利害の一致で始まった共同生活だったのに、いつの間に家族同然になってしまったのか……

 

Gは倒れ込む……Wの膝へと。

 

「人の足勝手に枕にしないでよ」

「寒いんだ」

「どうしたの」

「さてな。なんとなくそうしたいと思ったからこうしただけだ」

「……タバコ出しなさい」

「あ? ……ほれ」

「火」

「ライターやるから自分で──」

 

「あんたのタバコで火付けなさい」

「……めんどくせえ」

 

「これでいいか」

「ええ。満足」

 

「結局、あんた何がしたかったの」

「ただ、オマエと過ごしたかった」

「ふふっ、ありがと」

 




Gくん
美術センスが割とアレなトコのある紅茶ガチ勢
エンカクの勧めで盆栽を始めたが、中々上手く行かずモヤってる。木彫りの腕もそうだが、絵もお察し
ある訳ねえだろの精神で空き部屋を見に行ったらあったので、久しぶりにW姉貴とそこで過ごしたかったという可愛い奴
なお誰と殺し合い、誰に殺されるのが一番嬉しいのかを考えていたり

W姉貴
珍しく可愛いところを見せてくれたGくんにご満悦な人
やたらエンカクと仲良くなっていることに若干の危機感と独占欲を発揮する
実は膝枕は初めて

エンカク兄貴
花を愛でる剣鬼な人
Gくんと再会した時に一発ずつ殴り合い、以来健全なお付き合いをしている。大体彼からGくんを誘って色々と友好を深めていった。ある意味では親友みたいなもの


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小話:能天使は獣の宝を聞く

タチャンカがピックされたので初投稿です


「ねえG。その金ピカの物体は何?」

 

ある日。

愛用の長銃のオーバーホールをクロージャに頼む折、Gが右手に握っていた黄金の物体を彼女が指摘したところから話は始まった。

 

「ん? ああこれか。コイツは……ボールペンとライターとタバコケース、それからカフスボタンだ」

「全部金ピカって趣味悪いね〜。略奪品?」

「昔のな」

 

クロージャとて付き合いの長い人間だ。そういうこもにとやかく言うわけではないが──しかし、あのGがこんな趣味の悪いものをわざわざ手元に置いておく理由がわからなかった。

何か意味がある筈だと睨んだが、しかし外見は完全にそれらである。黄金の、趣味の悪い。

 

「あやしい」

「まあそうだな。言葉通りのものではない」

「……Gが持ってるってことは、何かのガジェット? 例えばジャミング発生装置とか」

「いや、タネが割れればしょうもないものだよ。わざわざ全部、外装は本当に金で作られているボケた代物だ。価値はあるが価値だけしかない」

 

金になりそうもないし持ってても邪魔だからやる、とだけ言ってから、クロージャにその金ピカセットを押し付け、Gは去って行く。

厄介なものを押し付けられたなぁ、とボヤきながらマジマジと金ピカセットを眺めていると──

 

(……あれ? 構造が……)

 

見たことがあるような、無いような。

当然何か別なものだったのだが、金ピカセットの構造に見覚えがあった。特にライターはシンプルに中身の機構が全くの別物で……しかし何処かで見た覚えがある。

次にボールペンを触っていくと、先端の蓋が取れた。中身は重さから察していたが空洞だ。

なんとなくライターとボールペンを合わせて──

 

「銃じゃん」

 

それがなんなのかを、完全に理解した。

 

「ボールペンのバレル、ライターのチャンバー、シガレットケースのグリップ、カフスボタンのトリガー。単発型の暗殺用ラテラーノ銃って言ったところかな。口径的には専用の弾を使ってそうだ」

 

ガチャガチャと組み立てて出来上がった黄金の拳銃を眺めつつ、なるほどと分析を始める。それぞれの部品が雑貨ならば疑われないし、一撃で仕留められる位置取りならば、弾は殺傷能力に優れたものを一つ用意すればいい。

確かに機能としては優れたものだろう。だがそれは同時に、機構的に無理をさせていることの証明でもある。連続しての使用は想定されていない。略奪品の一つという出所を考えれば、このラテラーノ銃は金持ちの道楽で作られたものなのだろう。

然るべきところに──カズデルのブラックマーケットあたりにでも──売り捌けば、コレクション的価値は計り知れない。確かにこれは価値があるが、価値しかない。

何せ実用性という観点では、完全に産廃と言わねばならぬという代物なのだから。

 

(でもこれが手元にあったってことは……いつでも殺せたってことだよね。それに協定を結んだ時に回収したコレクションからは外れてたし、それに──)

 

「うん、これちょっとマズいからアーミヤにチクっとこ」

 

確かに同郷の同族にして同じ変わり者ではあるが──クロージャは頭がおかしいように見えても、ワルファリンとGよりかはまともなのだ。まあ、逆に言うとその二人がおかしいとも言えるのだが。

とにかく、流石にダメなものはダメだ。すぐさまアーミヤへのホットラインを使い、このバカっぽい黄金のラテラーノ銃について報告した。

 

さて、一方密告されたGだが。

 

「回転弾倉型の小銃……なのだろうかな。アレは」

「随分変なの使ってるなって思ってたけど、君って結構テキトー?」

「まあな。偉大な先駆者が使っていたものを引き継いだ時に、整備方法と使い方を身体に叩き込んだだけだ」

 

アップルパイな天使とダベっていた。

というのも彼の使うあの長銃はラテラーノでは古い型であり、市場では全く流通していない一丁に当たるからだ。

 

「オレの手に渡った時にはもう、限界まで手が入っていてな。以降、そのまま使ってる。ラテラーノではあの手の銃はウケが悪いのか?」

「ウケが悪いっていうか、手間がかかるから、あたしが使ってる奴みたいなのが主流だね。個人個人の趣味もあるし、一概には言えないけど──しっかしサンクタじゃないのによく使えるね」

「ああ……アレは構造が単純でな。サンクタでなくても、それなりには扱えるものだったんだ。あとは技術をひたすら磨いて、そこそこ使えるようにしただけだ」

 

血を吐くような努力ではあったが、偉大な先駆者が手本を見せてくれたので迷う必要もなかった。やろうと思えばできるし、実際できた。Gがただのお飾りとしてあの回転弾倉式長銃を持っていないのは、多種多様な弾薬を扱える対応力の高さに加えて、初見殺しとして十二分に機能することが理由であった。

 

かつて撃たれた時も、散弾か単発かを見切り損ねて左腕を潰されかけたということから、その有用性をはっきりと認識していた。その銃を継いでからわかったのは、なんとなくしか理解できなかった銃というものの中でも、その構造から整備が単純であるということ。更に彼の属する傭兵団はラテラーノの商隊を頻繁に襲撃し、守護銃の収集を行っていたことから弾薬も手に入れる機会が多く、銃を運用する上での『運用コストと整備の手間』のほとんどを無視できた──だからここまで長持ちしていたということでもある。

 

銃というものは、繊細なアーツコントロールを要求される。その上効果的とは言い難い。ラテラーノの切り札のようなものである以上、サンクタの使用に適したようにコピー品は作られている。

故に単純かつ高威力、どの種族でも使えるクロスボウが大陸に蔓延しているという事情もある。

 

しかし、時折サンクタ以外でもそれなりに扱える調整の施されたラテラーノ銃が細々と出回るのだ。どのような事情があるのかは不明だが、とにかくそういうものが本当に、僅かに流通することがある。先代のGは運良くそれをブラックマーケットで手に入れ、こうして今のGに受け継がれている。

ちなみにあのヘンテコ銃の価値は低かったそうな。

 

「そこそこって……あれがそこそこ?」

「下駄を履いてあの程度しかできんのならばそれはそこそこだろう」

「謙遜も過ぎれば傲慢だよ」

「オマエから見れば、ただ撃てるだけ程度であろうよ」

「撃つ以外にも使えるならそれは立派に使いこなしているってことにならない?」

「逆を言えば撃つ以外でしか使えないということだ」

 

専門家とは物事を専門とするから専門家なのだ、とGは告げる。所詮自分はその為に作られているものを、それ以外の用途でしかまともに使えない落伍者なのだと。

Gが銃撃を行うのは、牽制か迎撃か移動用である。明確な攻撃の意図で運用したことはほとんどない。散弾をよく使うのは精密射撃の必要が無いから。

クロスボウは肌に合わなかったというのもあるが、彼の求める威力と携行性を満たすものが少なかったということもある。そもそも破裂するボルトだの爆発するボルトだのを要求するのが根本的に間違っているのだが。

 

なおそんな彼でもクロスボウの収集は行なっており、近代的な単発式から古式ゆかしいもの、果ては連射機構を備えたものや芸術品とまでされる大型モデルまで所有している。

中でもお気に入りは傭兵時代に城塞を攻略した際固定されていたものを剥ぎ取って個人携行用改造と近代化を施したアーバレストである。辛うじてまだクロスボウと呼べるシュヴァルツの大型モデルとも異なり、彼のアーバレストは両手で抱えて使えるバリスタも同然。

そもそも城塞設備を剥ぎ取って個人携行用に改造するのが間違いそのものなのだが、これを片手で扱うのだから気が狂ってるとしか言いようがない。

 

ちなみに彼はその他、略奪した戦利品を解体し、ロアーをそのままにアッパーをコンパウンドタイプの銃身に取り替えたヘンテコなモデルも所持している。そしてこのヘンテコクロスボウ。あくまでもクロスボウなので押収はされなかった。姑息!

 

「しかしエクシア、何故オレに話しかけた? あの銃がそんなに気になるなら、クロージャあたりにでも聞けばいいだろうに」

「え、だってキミはあれじゃん。モスティマの友達……? うーん、言うこと聞かないペットみたいな関係性じゃん」

「……ペット……」

 

がっくりと肩を落とすGを見て、そういうところがペットらしいんじゃないかなあとエクシアは感想を抱いた。一方、肩を落としつつもエクシアとモスティマの関係など露知らぬGからすれば、さて困ったというところだ。

 

「とは言ってもだな、オレも全く知らんぞ。オマエの方が詳しいまである」

「そもそもどういう経緯?」

「腹を空かせて死にかけたところを拾われた。それでアイツがあんまりにもカッコよかったから憧れた。そんだけ。スターとファンみたいなもんだ」

「他には何かあるの?」

「うーん……そうだな。剣だの、仕込み武器だの……そのへん」

「なんか変わってるね。その辺を集める人は中々いないよ」

「刀とかカッコいいだろ……リストブレードとか」

「飛び出し式刃の仕込まれた籠手だよね。あれ、絶対ああいう使い方するものじゃないと思うよ」

 

大元は暗殺用の一品だったのであろう、と予測するエクシアは正解を踏んでいた。目立たない殺し方として、Gがバベル時代に作らせた暗殺用の仕込み武器であった。指につけたリングを動かすとブレードが飛び出すというものではあるが、分解して持ち運べるなどの隠密性も高い。

とはいえ扱いは難しく、一歩間違えれば指が飛ぶ代物でもあり、ちょっと使ったっきり埃を被っていたのだが、前回の任務の際に必要になりそうだからと引っ張り出した。

 

そしてエクシアはそれを、接近戦で切り結びあった瞬間に首元を狙う必殺の一撃として使う場面を目撃した。

普通にナイフとかを左手で持てばいいじゃんと感じたのは間違いではなく、当のGも「わざわざこれ使う必要無いなぁ」とすら思っていた。そもそも暗殺用のブレードをどうして戦闘に活用しようとするのか。根本的に間違っている。

Gも苦い顔をしながらボヤく。

 

「確かにミスだったよ。ブレードが折れちまった」

「無茶な使い方するから……」

「やはりあの業物のような扱いは無理か。電磁加速による投射も無理そうだし」

「いやいやいや、キミバカでしょ」

 

そもそも電磁投射に耐え得る刃などよっぽどのモノを要求されるだろうにと。

 

「そうだ、エクシア。これはその……ただの疑問なんだが」

 

そしてGは唐突に話題を変えて、

 

「……モスティマ、オレのことなんて言ってた?」

 

バツの悪そうな子供のように尋ねてきた。ふむ、とエクシアは沈思黙考する。なんて言っていたか……と言われれば、なんにも言っていなかったというのが正しいのか。エクシアが聞いたのはたった一言だけ。

 

『バカだよ』

 

正直な話。

エクシアから見たGは壊れた存在だ。

 

友に終焉を与えられるのか、恩師に生存を与えられるのか、運命に永遠を与えられるのか……あるいは友を、恩師を、運命を殺して先に進むのか。どちらがいいかをどちらも魅力的に感じながら、敵を作り味方を作り部下を作り上司を作り──そして、それらに等しく愛情と殺意を抱く。

 

そういう表現しかできない、ということでは無い。彼は普通に人を愛せるのだ。普通に喜び、普通に悲しみ、普通に怒り、普通に泣く。何処にでもいる人と変わらない。だがそれらを全て強烈なまでの最強への憧憬で包み込んで殺意として昇華している。

 

哲学的、そして宗教的。

最強という名の光を追い求める、殉教者の如き存在。奴隷、亡者──そうしたものでもあるが、そうしたものではない。

 

そもそもこのテラで『最強』などというそこらで打ち捨てられているような塵にも等しい称号に執着し求めているという時点で、何かが壊れているのだ。

だからなんと言っていたかという質問に対して、言葉通りに返す以外の選択肢が浮かばない。

 

「……エクシア?」

「えーっとねぇ……」

 

だが問われているのは意味だ。

だからエクシアは頭を悩ませる。『バカ』の一言に含まれている意味がわからないから。

あのモスティマが言うバカなのだから、それはきっと意味があると思うのだが──

 

「……バカってさ」

 

わかんないから一言。同じことを言った。

困ったような表情を見せながら、呆れ返ったように告げてみるとGはケラケラと笑った後。

 

「アイツらしい。結構難しい質問して申し訳なかったな。詫びと言ってはなんだが、オマエが外したい仕事を代理として手伝おう。言ってくれれば荷馬車の如くな」

「キミ、案外面倒見いいんだね」

「誠意には誠意で対応したいだけだ。善意には善意を、悪意には悪意を。そういうものだ」

 

そう告げてからGは館内放送で呼び出されて──

 

死ぬほど面倒くさそうな顔をしながらアーミヤとケルシーの元へ向かっていた。

エクシアは爆笑した。




Gくん
ラテラーノ銃よりもクロスボウや刃物を収集している人
気に入ったものは片っ端から掠奪しており、城塞に備え付けられたアーバレストを剥ぎ取った話はその象徴
金ピカセットは面白がって持っていた

エクシア姉貴
Gくんの持っていたヘンテコリボルバーライフルに興味を持って話しかけたところ、意外な事情を明らかにした人
彼女的にはGくんは「なんかモスティマがやたらと気にかけている人」程度の存在であり、色々な事情を加味しても「モスティマと友達になれている」という時点でそれなりにはまともだろうという判断

クロージャ姉貴
いきなり金ピカセットを押し付けられた可愛そうな人
ワルファリン姉貴とGくんよりも遥かにまともなのでアーミヤにチクった

黄金銃
全てが黄金で作られたバカみたいな銃
元ネタはロケットランチャー、モーションセンサー爆弾と並ぶ神器の一つ。あのスパイ映画の悪役が使ってたアレ


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小話:音楽性の違い

Art of Bladeを爆音で流したので初投稿です。


「おはよう、G」

「ああ、おはよ──」

 

早朝。

──朧げな昨日の記憶を再生していると、彼女から声をかけられたGは。

 

「……え、」

 

とても間抜けな声を出した。

 

「ケル、シー……?」

「覚えていないのか」

「あっ、ああ……何も……覚えて、ない」

 

ラフな格好のまま、ケルシーは困ったような表情をした。

考えてみれば、部屋の日差しもWと共用の部屋と違った。漂う香水の匂いも、ベッドから漂う甘ったるい女性の香りも──全てが違った。

寝惚けた頭では、どうも回転が鈍かったらしい。

 

「なあ、昨日何があった?」

「何があった、か。ふむ」

 

ケルシーもまたしばらく沈黙してから、情報を簡潔に整理して説明を始めた。

 

「昨夜はバーで二人きりで飲み明かしたろう? その後は部屋で少し追加で飲み──君を抱いて寝た。今回は言葉通りの意味だが」

「つまり、アンタの匂いがオレには染み付いているというわけか」

 

ひどい言い草だと呟いたケルシーに対して、内心では心にもないことをと思いながらも、この事に一番激怒するであろう人物を浮かべてどうしたものかと真剣に考える。

一方ケルシーはなんでもないように、しかし悪戯心を含めて表情を変えずに告げる。

 

「マーキングするつもりはなかったのだがな、君がやたらと暖かったのが悪い」

「人を湯たんぽ代わりに使うな」

「それで感想は」

「さすがフェリーン。体温も高くて布団要らず、ついでに柔らかい。最高の抱き枕だ。背中にアレを仕込んでいるから硬いのかと思ってたが。あと結構胸あるのは意外だったぞ」

 

思い出したらこれかと、しかもしっかりと堪能しているじゃないか。あと誰と比較したのかは聞かないでおこうと。

さしものケルシーとて、このふてぶてしさには呆れた。だがGは事情を理解すると意外そうに尋ねる。

 

「……しかし、なんだ。ストレス発散に喰われたのかと思っていたが、オマエ平気なのか? 色々最近疲れてるだろ」

「そうだな。本音を言えば、君なら後腐れもない、そうした気持ちがあったとも」

「違いない。なら何故」

「君は別に、私に対してそんな気などないのだろ」

「確かに。まあオレも男だ、アンタみたいな美人を抱けるなら確かに喜ぼう。しかし、それ以上に大恩ある師だ。邪な感情を抱くことはあまりしたくない」

「だろうな。私も君に対してあまり邪な感情のままに動きたくはない。異性というよりも手のかかる弟のような位置だ」

 

結局のところ。

いくら後腐れが無い関係であったとしても、片や尊敬する恩師、片や手のかかる弟子。そちらの方が強すぎて、ただの発散程度でも理性無き振る舞いはあまりしたくないという、お互いにちっぽけだが強大な意地を張っているだけ。

師匠に対して無礼を働きたくない、弟子に対して不甲斐無い姿を見せたくない。ただのそれだけではあるが、それ故に彼らはあっさりとフルブレーキをかけられる。しかもその制動距離は極めて短い。異性との理想的な関係の一つとも言えるだろう。

 

「とはいえ」

 

だがケルシーとて女だ。

 

「囁かれた睦言は、中々に疼いたぞ。責任を取れと迫ったらどうする?」

 

口説かれることに悪い気はしない。

それがそれなりに気に入っている異性であれば尚のこと。

 

「一夜だけなら。というかオレは何を言った。まさかからかってるんじゃないだろうな」

「さて、どうかな」

 

実のところ、ぼんやりとしか思い出せないGは気が気でない。楽しげなケルシーとは対照的に、不機嫌なWがすぐそばにいるような気がしてならないし、なんなら後ろからもたれ掛かって耳元で『へぇ……ケルシーはあったかいんだぁ?』と囁いている気がする。首元に触れる指や、首筋に立てられた歯まで鮮明に浮かび上がるほどだ。

 

「Wにはなんて言えばいいんだ……今日戻ってくるじゃないかアイツ……」

 

しかも今日は任務から戻ってくる日。

端的に言って、詰んでいた。

 

「機嫌取りは大変だろうな」

「昔からそうなんだが、アイツ怒ると面倒なんだよ」

「まあ、私の責任もある。今回の件は全て私の所為にして構わない。派生する問題も、全て私が解決しよう」

「……火に油を注ぐなよ」

 

こういう時のケルシーは厄介ごとを起こしそうだと経験則から考えつつ、様々な事情から、教育水準低め組の臨時教師を務めることになってしまったGは仕方なくレッドの元へと向かっていく。

 

なおイフリータだが、Gの本質的な点を考えドクターとケルシーを交えてサリアやサイレンスとの協議を行い、臨時であっても一切教育に関わらないこととした。

決め手となったのは、大切な人を守りたいイフリータに対して大切な人であろうとも最強の生贄に捧げられるGという対極に位置する関係であることだった。

 

そしてこの件でライン生命組はやはりGのことが理解できなくなった。自覚してるのにやめないし、それが悪いことだと知ってちゃんと弁えている。なのに一度戦場に出れば狂奔のままに最強を追いかける。二重人格もかくやという有様などどうやって理解しろというのか。

まあ元々シレッと医療オペレーター向けの研修会や研究発表会に参加してる上に学会用資料を持ってくるようなヤツだし……

つくづく暇なインテリバカである。

 

「──さて、臨時教え子よ。今日のオレは色々と不安事が多い。妙なことを言っても無視するように」

「G。今日はケルシーの匂いと酒の匂いがする」

「ぶっ!?」

 

なーんかヘンテコな雰囲気でやってきた臨時教師にど直球にモノを言うレッド。吹き出す監視役のフロストリーフ。

仕事を共にする内にそれなりに親しくなったGとレッド。だがフロストリーフから見ればGはフロストノヴァの一件で手を貸してくれた、ロドスとは深く複雑な関係にあるレユニオンに雇われていた傭兵に過ぎない。Wのようにわかりやすい態度ならまだしも、四六時中ポエムを吐き出しながら紅茶を飲んで本を読んで盆栽やってる変人である。

そんな風に見ている彼女だからこそ中立的監視役に選ばれたのだが。

 

「まあ色々あった」

「大変?」

「武器をどさくさに紛れて掻っ払う時に甘いもので釣ればいいオマエと違って、アイツはなぁ……」

「いや待て。G、私の聞き間違いか? 今コレクションを増やしていると聞こえたんだが」

 

流石に聞き捨てならぬとフロストリーフが声を上げてもGは何食わぬ顔で。

 

「偽物が喋り出す前に、私は干し梅飴を噛み砕いた」

「おいちゃんと答えろ」

「タ、タリラル、リラテュ。ラ、テュラリ、ラルリル」

「普通に喋れ!」

 

速攻で誤魔化しにかかったのでフロストリーフも怒る。しばらく沈黙が広がった後、遂にGは吐き捨てるように告げた。

 

「……チッ、五月蝿いな。いいCD貸してやるから黙ってろ」

「物では釣られんぞ」

「ならわかった。オマエ好みの曲がかなり入っているレコードも付けてやる」

「だから釣られないぞ」

「黙ってろ小娘。説教は聞き飽きた」

「お前の蒔いた種だろうが」

「G、相変わらずバカ」

「黙れレッド」

 

茶々を入れたレッドに向かってピシャリと言い放つと、Gは仕方なくフロストリーフにそれっぽいことを語り出した。

 

「考えてもみろ、オレに与えられるのは機密性の高い任務。満足な武装もできないことが多い。現地調達でもしなければ危うかったことが何度もあった。たとえその際に調達した武装を持ち帰っても問題は無い筈だが?」

「持ち帰るのは自由だがせめて申請くらいはしておかないか」

「そもそも任務に就いていたことすら言えない極秘任務だったこともある。どうやって申請しろと言うのかね」

「むっ……」

「それに、ちゃんとクロージャには事情を話して武器を預けてある。ちょろまかしたとは言っても、然るべきところに然るべき対応をしている。これでもオレを責めるか?」

 

理が通ってるからムカつく。

実際問題、GとWが率いる傭兵たちに与えられるのは公にできないような裏方の仕事の中でも、特に選りすぐったものが多い。もちろん一般オペレーター業務も行うが、比率で言えばそっち側だ。だからGの言う言葉には一理あるのだが──詭弁でもある。

 

「まあ、安心しろ。申請はしてないにしろ報告の時についでに伝えている。言い方が悪かったよ。すまない」

 

実のところ、戦闘中の武器現地調達に見せかけて、いくつかはどさくさに紛れてチョロまかしてきているが実際報告はしている。必要になったから奪取した武器として。

だからこの場合、Gは嘘を言わず本当のことを言っていることになる。面倒だからと黙っていることはあるが。

レッドが口封じ代をもらうのは、奪取の状況についてだ。

 

「……なんだ、そうなら早く言ってくれ。焦ったじゃないか」

「つい面白くてな。さて今日は……フロストリーフもいるんだしせっかくだ。芸術の授業でもしようか。数学より面白いだろう」

「退屈じゃない、やった。でもいいの? 数学、やらなきゃいけないこと」

「基本は復習と応用だ。ちょっとの時間でできる。前に渡したアドバイスの紙を使えばすぐにでもできるようになるさ。数学は作文だと前に言ったろう」

 

レッドはアドバイスの紙──数式の解体方法と簡易化について図式で表したもの──に目を落とすが、こうした分解・簡易化による理解しやすいように落とし込むことはケルシーより上手いのではないかと少しだけ思った。

もっとも総合力で言えば年の功もあり、彼女に軍配が上がるのだが。

 

気合いと根性とかいうふざけた理由で現実を蹂躙する不条理であるGだが、忘れられがちなものの本質的には学者側だ。資料に目を通す際のコツと理解するための効率的なプロセスはかつて様々な本を読み漁っていたら自然と身についたし、そこに傭兵としての経験を積み重ねることで更に理解力を向上させた。そしてバベル時代ケルシーやワルファリンに師事する中で先鋭化されており、そんじょそこらの研究者とは比較にならないレベルで頭脳は完成されている。

非常に高度な専門知識が必要とされる資料すらある程度読んで噛み砕ける上に、専門性の塊と呼べるラテラーノ銃の解体・整備・改造までできるのだ。

非常にハイスペックな男である。

 

……まあ、本人の傾向の所為で「学者として大成する可能性が極めて高いのに、それらの才能を全部投げ捨てるどころか無駄なことにフル活用した挙句、とっくに限界まで伸び切った二流の傭兵を趣味でやっている」ようなものなのだが。

なおワルファリンに師事したと言っても本人たちの間柄は師匠と弟子というよりも悪友のような関係であったと記しておく。

 

「芸術の話……そうだな、音楽に関係することの方が共通の話題があっていいか。フロストリーフ、お前は歌を歌ってみて思ったことがあるか?」

「急だな。まあ、聞いている音楽ほど上手くいかないとは常々思うよ」

「その通り。芸術とは即ち、研鑽によって生まれる。例え天才的な素質があったとしても磨かねばただの石塊だ。だがそれと同時に評価すべきところがもう一つある。何かわかるか、レッド」

 

レッド自身、芸術というものに興味はあまりなかった。確かに趣味嗜好はあるが、そこに芸術が絡んだことはあまりない。だがここで問われている意味を考えて──

 

「やる気」

 

できることとやりたいことは違うと理解しているから、とりあえずこれじゃないかと告げてみる。

 

「正解。やりたいことだからやっているんだ、これがやりたいんだという思いのこもった作品は熱を持つ。芸術とは単なる上手い下手ではない」

「確かにな。どれだけ歌が下手でも、不思議と聞き入ってしまう曲は沢山ある。趣味ではないはずなのに魅力的に感じて、ついつい聞いてしまう」

「レッドもある。狩りに適さない格好や武器から目を離せないとき、ある。好きでも嫌いでもないのに」

「それはレッドが、そこに篭った熱を感じ取ったからだろう。物に込められた人の心を確かに見つけ出したんだ」

 

フロストリーフが優しく告げると、レッドは何かの答えを見出したのかそれとも尻尾を掴んだのか、口元を若干緩めた。

そんなレッドを見て、『完成』しつつある気配を感じ取ったのか一瞬だけ日食が起きたものの、Gは己が欲望を鎮める。結局レッドに構っているのはウルフハンターとして作られたであろうレッドが、人の心を完全に手に入れた挑むべき存在になるのが待ち遠しいだけ。

もちろん彼個人として、何故か放って置けないという父性めいた理由もあるが──それと同時に殺意が沸き立っているから。

 

『殺意と共存できない感情はない。そして殺意はたった一つの感情だけで破滅的に加速するものであり憎悪、嫌悪、怒り、悲しみといったそれらよりも遥かに危険な、天啓にも似て、だが決して理解できぬものである』と彼が匿名で書いた心理学書のように。

 

「──さて、レッド。ここで大切なのは熱を、つまり心を感じ取ることであるが、同時にそれが善意か悪意かを判断するのも忘れてはいけない。それによって芸術品に向けるべき感情が決まるからな」

「込められた心の善し悪しは難しいはず。だってそれが物ならある程度予想するけど、映像や音声なら、いくらでも偽れる」

「そうだ。エフイーターのように役柄を羽織ってもなお熱が溢れ出る存在であれば混ざり合ったそれを見分けるのは難しい。紅茶やコーヒーに入れたミルクを分離することはできないし、その味がどちらのものかを判断するのも至難の業だ」

 

フロストリーフは酒を飲む都合、たまにバーで箸休めの紅茶を振舞っているGと出会うことがある。まずはゆっくりと淹れてから冷めるまで長い時間をかけて飲み、もう一杯となって初めて砂糖やミルクをほんの少しずつ入れていくのは何故かと常々疑問ではあったが、味の変化などを楽しみ理解するためだったのかと納得がいった。

この前なんてセイロンとシュヴァルツを交えて紅茶談義をしていたが、彼女から見れば意外な趣味に見えた。

──今度紅茶をゆっくりと飲んでみよう、と思ったり。

 

「まあ完全に理解しろなんて言わんよ。だが目の前に現れた芸術の後ろ側に少し思いを馳せるだけで、より楽しみ方や深みが増すというものだ。何故? どうして? 何のために? ──それらを含めて味合わねば、損というものだろう」

「深み……」

「例えばそう、オマエで言えば尻尾だな。ループスの尻尾を単にモフるのもいいが、どんな手入れをしていたらこんなにもフカフカになるものかみたいなことを考えると、結構楽しいだろ?」

「なるほど。今度からレッド、やってみる」

「じゃあこれから数学と行こうか。フロストリーフ、手伝ってくれ」

「……残念」

「芸術の話はもう終わりなのか?」

 

もうちょっと深いところも聞きたかったと言わんばかりのフロストリーフに対して、Gは少しだけ微妙そうな顔をした後。

 

「飴と鞭だ。気になるなら終わった後にでも話そうじゃないか……と言いたいところだが、まぁ、なんだ……多分、暇は無いと思うからもうしばらく後になるだろうが……あれだ、いつかだ。うん」

 

モゴモゴと答えづらそうに、何処かの怖い半身を思い浮かべながら、ふにゃふにゃとした言葉を発したのであった。

 

授業を終えて、休憩がてらスコーンと紅茶を三人で楽しんでいる中で、フロストリーフはふと思い出した。レッドはGからケルシーの匂いがすると言っていたなあ、と。

 

(……結局二人はどういう関係なんだろうな?)

 

考えてみればよくわからない。親しげに話しているような場面は見たことないし、更に言えばケルシーとGの過去の話などほとんど知らない。Wやエンカク、モスティマやブレイズなどのいわゆる明確な会話になる組ですら、その関係を言葉に表すのは難しい。特にWと話す時のGは、最もわからない姿をしていると言っても過言ではない。アーミヤとドクターに対しては比較的わかりやすいが、逆を言えばそれだけである。

 

(聞いてみよう)

 

フロストリーフ。

その辺、割と気になる年頃であった。

 

「G。ケルシー先生とはどういう関係なんだ」

「一方的に湯たんぽ代わりの抱き枕にされる間柄?」

「……なあ、その……それって……つまり……」

「冗談だ。別にそういった関係ではない。互い後腐れは無いが、学者としての師匠と弟子だ。理性的に判断してこそ研究者というもの。そのような獣の如き振る舞いを、是とするわけにはいかん。そうしたものを否定する側であるからこそな」

 

そうは言うものの、一回だけ酒の勢いでワルファリンとやってしまったことがあったが、完全な事故であった。それ以外は全てWである。それ以外の女の影も形もない。

 

「師弟関係だったとはな。道理で教え方や解説が似ていると思った」

「そういえば何故だフロストリーフ。芸術の話をやたら聞きたがったのは」

 

モッキュモッキュ……ズズ〜ッとしているレッドを尻目にGは素直な疑問をぶつける。するとフロストリーフは少しだけ視線を逸らしてから、恥ずかしそうに小さく一言。

 

「……バンド、やってみたくって」

「バンドか。ヴィグナに聞いてみたらどうだ? 方向性が同じメンバー集めには苦労しそうだが、幸い楽器が弾けるのは多いからな。数撃ちゃ当たるだろうさな」

「G。レッド、楽器弾くとしたら、大変?」

「大変というわけではない。何事も反復練習と言ったろう。楽器を音楽に合わせて弾くこと自体は研鑽するだけでなんとかなる。だが問題は、楽譜を正確に読み取りどの音が正しいのかを瞬時に判断するというだけでなく、使う楽器を己に馴染ませるようにチューニングすることだ」

 

なんか実感篭ってるなぁ……と二人は感じたがその通り。

バベルの頃だがScout、Ace、G、Wでバンドを組んだことがある。ただの罰ゲーム程度の話であったが、四人で慣れない楽器と楽譜に四苦八苦しながら、バラバラの方向性で大揉めして、片手で足りる回数演奏したっきりで解散してしまった。

その時の担当はScoutがベース、Aceがドラム、GがギターでWがボーカルだった。が、本当にやりたかったのはScoutがギター、AceとGがベース、Wがドラムというボーカル希望不在という有様。

 

それはもう燦々たるものであり、この話をすると途端にみんな不機嫌になるほどであった。

 

今ではもう古き良き、過ぎ去りし思い出なのだが──

 

(……葬送歌がてら、Wを誘ってやるのもいいか)

 

だからこそ、受け入れられるような気がした。

しんみりしたのは少しだけ。

 

「フロストリーフは落ち着いた曲が好みだったな。本気でやりたいならやはり、ヴィグナを頼れ。専門家というものはこういう時に頼るものだ」

「そうだな。勿論1日2日で出来るとは思ってもいないし、戦闘訓練よりもある意味では過酷かもしれないが──挑まないというのは、夢に失礼というものだろう」

「そうでなくては」

「じゃあ、レッドもバンド作る。ライバルバンド、必要。もう色々決めた」

 

え、早くない? と二人が困惑していると、レッドはえへんと胸を張ってから。

 

「エイヤフィヤトラ、メインボーカル。ホシグマ、コントラバス。シャイニング、ベース。グラベルとヴィグナ、ギター。エクシア、ドラム。アスベストス、リードボーカル。ブレイズ、演出担当」

「待つんだレッド。ブレイズに演出担当なんてさせたらロドスが燃えるぞ」

「……レッド、オマエこのメンバーでは音楽性が違いすぎるというか……」

「でもヘドバンするエイヤフィヤトラ、見たい。二人は?」

 

何処でそんな言葉を学んだ? と二人は頭を抱える。レッドが善意でエイヤフィヤトラをボーカルに推しているのは流石にわかる。聴力が蝕まれている彼女にこそ、声を出し音を聴く喜びを大きく感じて欲しいという気持ちはわかるのだが──実際Gもエイヤフィヤトラの論文を読み敬意を払っており、普段の彼からは信じられないほど紳士的な態度で接しているし、彼女の聴力に関して色々と心配している──しかしなんだろう、エイヤフィヤトラってそういうキャラじゃないよねと二人だって思う。

でもそれはそれとしてノリノリでマイク持って楽しそうにヘドバンする彼女は見たいとは思うけど。

 

「え、ええっと……G。どうする?」

「どうもなにも、ドクターとアーミヤに告げるぞ。レッドの純真無垢さを利用して妙なことを吹き込んだヤツがいるとな。フロストリーフは洗い出しを頼む」

「了解した」

「……エイヤフィヤトラの歌声、レッド、聞いてみたいな」

 

純粋に彼女の歌声が聴きたいと願う赤ずきんの狼女をとりあえずはスルーして、休憩終わりを起点にフロストリーフとGは行動を開始したのであった。

 

 

一方その頃。

 

「──ケルシー、何か弁明を頂戴」

「意外と白いのだな、彼の肌は」

 

戦争が始まりそうだった。

 

「人の相棒と酒を飲んだまではいいわ。けど、何? 口説かれてそのままの勢いで抱き枕にして寝た?」

「安心しろ。肉体関係には発展してない」

「逆に安心しないわよ。あんたたちに限っては、ヤると後腐れないから綺麗さっぱり終わりにできるけど、そうじゃないならそうならないってことだからね」

「何をそんなに苛立っている。最後に選ばれる運命は自分だと声高らかに宣言していただろう。ならば構えていればいいものを」

「それはあんたがあたしのGを、運命から変えようとしているからよ。あいつはこう生きて、そう死ぬという以外にあり得ないのにね」

 

「──彼はお前のものではない」

「あいつはあたしのものよ──」

 

「あたしのGは、他の誰にも渡さない。あいつと共に生まれて、あいつと共に生きる。それこそがあたしの運命なんだから」

「運命とは後出しの予言だ。先んじて言うものではない。全て終わった後に、明確な理由が見当たらない時にのみ理由となり得る、間に合わせの概念だ」

 

「平行線ね。とにかく、人の男に唾と匂いを付けないでくれる?」

「彼から付けられに来ているような気もするがな。まあ善処しよう」

 

「……で、どういう風に口説かれたのよ」

「……それを知ってどうする? 向こうはその辺りの記憶がほぼ無いぞ」

「いいから教えなさい」

「まあ、いいだろう」

 

「あいつ……」

 

「あまり怒ってやるなよ。今回は私に非があるのだからな」

「わかってるわよ。これであいつを責めるほどバカな女じゃないわ。ああでも……」

 

「あいつ、そんなこと言うんだ」

「私も驚いたぞ。あんなことを言ってくれるなんてな」

「ま、いい機会だったんじゃないの?」

「確かにいい気分転換にはなったとも」

 

なんだかんだ仲のいい二人でしたとさ。




Gくん
たまに臨時教師してる人。ギター担当
忘れがちだけど学者としてはハイスペック。できないことは超一流の戦士になることくらい
教養がある上に話術もそこそこなので、雑学博士としては楽しい奴

レッドちゃん
モフりたい欲望の赤ずきん
Gくんとは割と友好な関係を築いている。彼女にしてみても、たまにやるティータイムは結構好んでいる

フロストリーフ姉貴
色々とキャラの濃いキツネ
変人Gくんがまともに喋ってまともにしているのがとにかく意外だった。音楽愛好家だったので芸術の話をしつつ、バンドやってみたいなと思った
ティータイムは中々に楽しかった

ケルシー先生
酔った勢いで口説かれて、Gくんを湯たんぽ代わりにして寝た人
マーキングするつもりもなかったが、しかし思わぬところで役得だった
W姉貴とはGくん性の違いから揉めるものの、変なところで変に仲がいい

W姉貴
思わぬところでメス猫に自分の運命がマーキングされていたことに流石に起こった人。ボーカル担当
ただケルシー先生がどんな風に口説かれたとか、その辺は気になった。半身が自分に見せない部分の情報収集も怠らない、運命の鑑

ヘドバンするエイヤフィヤトラ
アークナイツの某MADを参照


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小話:『Wの日』

ケモ耳33歳に可能性を見出したので初投稿です


GとWの間には、奇妙な約束が数多く取り付けられている。ベッドの使う位置だの距離だの、飯を食う順番だの本のしまい方だのなんだの……一般人が聞けば大抵はその不思議さに首を傾げてしまう。

その内の一つに、『Wの日』というものがある。

 

これはWがGを振り回す日であり、傭兵時代の賭けの結果生まれた日だ。そこには色々と複雑なドラマがあったが、ここでは省略しよう。

かつて二人が傭兵となる前の共同生活の決まりごとを源流とするこれは、いつの間にかGの鬼門になってしまっていた。

 

「……来ちまったか……」

 

昼夜逆転のブラッドブルードにしては珍しく、一般的な人間同様昼に起きて夜に寝ることができる……当然その逆も可能だが……Gであるが、この日ばかりは朝寝て夜起きたかった。しかし、悲しいかな。染み付いた習性は中々に治るものでもなく、朝に自然と目覚めてしまった。

 

(ケルシーのところに逃げ込むか)

 

そして尊敬する老猫の師匠に泣き付きに行くことにした。

 

「君に任せる仕事は無い」

「そうか……」

「というか君は非番だろう」

「今日は仕事したいんだ」

「どうしても仕事が欲しければ、人を訪ねるといい」

「まあ、オレに出来ることなどたかが知れている。だが書類仕事でも十分だ」

 

非番だというのにとにかくなにかとつけて逃げたいようにも見えるGの様子から、ケルシーは少し思案して──その理由を思い付いた。たまにWがGを振り回している日がバベルの頃からあったのだ。それが『Wの日』とは知らないが、彼女とて想像はつく。

 

「あの日か」

「……」

 

無言で視線を逸らすGを見てため息を吐く。

そら、こうなのだ。こいつは世捨て人でも仙人でも何でもない。ただのバカなのだ。Wから逃げ回る理由など、ケルシーにだって察しが付いている。

Wとて女性、自らの魅力を磨いたり着飾ったりしたい日とてある。しかしそこの相方はそういうことに興味が無いどころか、ボケた反応しか返せない。つまりそういうことである。

恋愛とかそういう感情をどっかに捨ててしまったこの男、女を褒めることが真剣に苦手であった。

 

「なあ、ケルシー」

「釣った魚には餌をやることだな」

「ありゃ打ち上げられた魚だ」

「大して変わらん。責任は取れ」

「面倒なことになったな……」

 

心底から面倒だと呟くGを見ながら、内心「Wもこんな男の何がいいんだか」と自分のことは棚に上げてボヤくケルシー。

 

「Wから逃げる」

「最強は逃げないのでは?」

「最強は無敵じゃない」

「変わったな」

「受け入れただけだ」

 

結局、ケルシーには助けてもらえず。

Wの移動ルートを理解しているからこそ先回り、背後取りなどを駆使してすれ違いつつ、アーミヤに仕事を要求してみれば。

 

「非番なんですから、休まないと」

「いや、だがな」

「Wさんが不憫ですよ」

「む、ぅ……あの女のようなことを言う……」

 

テレジアみたいなことを言われては弱り果て、苦笑されるのであった。

 

「……オレとWは確かに運命であろうさな。だがアイツは、何故オレに褒められたがる……」

「たまに思いますけど、Gさんって信じられないくらいに変なところで妙なものをわかってないですよね」

「よく言われる」

 

とても苦手だからやりたくない。だから逃げ回る。もっともアーミヤにはWはそれを含めて楽しんでいるということが手に取るようにわかる。だがそれと同時につれない彼に対してやきもきしているのだろうとも。

 

「なあ」

「ダメですよ。Wさんは昔からあなたに真剣に向かい合ってるんですから、ちゃんと応えてあげてください」

「……女の扱いは苦手だ。オマエも、アイツも、ケルシーも、あの女も……」

 

ぶつくさとブー垂れながら去っていくGを見て、流石のアーミヤとて笑いを堪え切れなかった。

 

そして結局、Wの元へと行くしかなくなる。

 

「やあ、運命(W)

「ええ、運命(G)

 

そういう意味で言いたいんじゃないけどこうでも言わないと逃げられなかったどころか、外堀埋められているような状況を、飲み込めなかった。実につまらない意地である。

 

「今日は諦めが早いわね。どうせケルシーとアーミヤに仕事強請りに行ったら蹴られたんでしょ」

「エンカクは」

「お仕事。残念だったわね」

「マドロック」

「しーらない。というか、あんたマドロック苦手じゃなかったっけ?」

「少し前に話してな。相入れぬところはあるが、別にそれだけだ」

 

争いを好まず、過激化するレユニオンから抜けたサルカズ傭兵──マドロックとその一味。リターニアでの地獄から抜け出してロドスに保護された同胞。

サルカズ傭兵だからと言って全員が全員、戦いを生業とすることを是とするわけではない。マドロックはその象徴のような人物だった。巫術にも優れ、まさに正当なるサルカズと言うべき存在。ボジョカスティと対を成すかの如きだったとGは思っている。

 

普通にその辺りに興味があったから久方ぶりに声をかけてみたが、案外話せた。やはりというかなんというか、Gの異質さにはさしものマドロックも顔をしかめたものの、それさえ除けば互いに驚くほどスムーズな会話ができた。ウマは合うが、根本は合わない。なんとも不思議な関係である。

 

「ふぅん。また強敵認定?」

「そこまで堕ちてはいない。嫌がる相手に牙を向けたところでそれは決闘、挑戦ではない。ただの殺し合いだ」

「あっそ」

「絶対信じてないだろオマエ」

 

ニヤニヤとするWにげんなりしつつ、彼女の横に座る。

 

「そういえばあんたのヘッドホン借りてたんだけど、炎国風のラブソングなんて聞くのね」

「音楽の趣味は雑食でな」

「ピアノ曲やらオーケストラが多かったからそっちが趣味だと思ってたわ」

「ロックも聞くぞ」

「それは知ってる」

 

いくつか知らない曲があったのはWの所為かと思いながら、まあ別にいいかと適当に流すG。

 

「あとあの曲何? あの……なんていうか、気持ち悪い曲」

「好きだから入れてるだけだが」

「ちょっと考え直したら?」

「オレの自由だろう」

 

実際音楽の趣味は平凡かつ雑食なGからすれば、Wのこだわりがよくわからないところもある。

 

「それで、今日はどんな風に振り回すんだ。このオレを」

「とは言っても最近はネタ切れよね」

「そりゃ明確に定める前含めて何十年もやってんだ。ネタも無くなるだろ」

 

出会ってから何年などと数える方が無粋な程に長い二人。戯れ合いふざけ合い殴り合い、喰らい合ったのか。数える方が馬鹿らしい。そういうわけで、ネタ切れ感否めない『Wの日』をどうしたものか。二人は揃って頭を悩まし始めた。

 

「……何もすることがないな」

「もうやめる?」

「やめるか。そもそもオマエの接し方が変わった以上、関係性がはっきりする前のことをダラダラと続けても意味が無い」

「そうね。こんな日を作らなくてもあんたを振り回すくらいいつでもできるんだし」

 

G的には物凄く気になることを言いつつ、あっさりとちっぽけな約束の日は消滅した。というか、毎日が約束の日と化した。

そしてWは笑顔で一言。

 

「じゃ、あたしを楽しませなさい。相棒」

「無茶言いやがって。オマエのオモチャでも眺めてりゃいいだろうが、相棒」

「今のドクターは……まあ、そうね。まだ観察期よ。楽しむ楽しまないの話まで行ってない」

「じゃあアーミヤ」

「あの人の遺志を継ぐ人で楽しむなんて無礼でしょ」

「そうだ、オマエは元々常識的で真面目な女だったな」

「まるであんたは非常識でも真面目な男みたいに語るのね」

「事実だ」

「でもあたしの前では、あんたは今でもあの日見た遠い月の光のまま」

「ならば彼女は?」

「あの人は暗い荒野を照らす太陽よ」

 

珍しいものを聞いたとGは驚きながら、今聞いたことは自分の中にしまっておこうと一瞬で決めて、何も言わずに話題を変えることにした。Wの本音を誰にも渡したくなかったから。

 

「──さて……どうしたものか」

「もう何もしなくていいんじゃない」

「オマエの日だぞ」

「あら、気を遣ってくれるの?」

「腹を決めて来たんだ。肩透かしだと気が済まん」

 

変なところで生真面目な相棒の返答を聞いてWは。

 

「そ」

 

小さく呟いてから、彼女は立ち上がった。

 

「じゃあ買い物行きましょ」

「……」

 

鬼門を笑顔で告げられては、無言にならざるを得ない。

 

「返事は?」

「ああ……」

 

さてどんな無茶振りなのか、戦々恐々としながらロドスを後にする。

そうして連れて行かれた場所と言えば。

 

「川とはな」

「釣りするわよ」

「釣り、か」

 

現在ロドスが停泊中の地域から少し離れたところに、大きめの川がある。そこだった、連れて行かれた場所は。

しかし、実は釣りなどほとんどしたことがない二人。カズデルで長く過ごしている中で、食料の調達は色々としたことはあるが、釣りをしたことはなかった。水辺が無いとできないし手間かかるしで、やると言ったら素潜りだった。

 

「できないわけじゃないでしょ」

「オマエがこんな渋いことをするとはな」

 

釣り竿を受け取りながら、意外だと伝えてみれば返ってきたのは膨れっ面。

 

「ラブソング聴くような男に言われたくないわ」

 

心外だと言わんばかりの皮肉。

そう言われては弱ってしまいクツクツと自嘲も兼ねた笑いが出てくる。さっさと準備を終えて近くの岩場に腰掛けて、釣り竿を垂らす。

 

「日が暮れるまでいるのか」

「飽きたら帰るわ」

「さっさと飽きることを願おう」

 

しかし考えて欲しい。

黒と赤の衣服に身を包んだ美少女と並んで、黒と灰の衣服に身を包んだ長身痩躯の男が釣り竿を川に垂らしている姿を。

どう考えても珍百景だ。

 

それからしばらくして、日も暮れる──までもなく。

 

「ねぇ、もう帰らない?」

 

なんとも言えない表情のまま、困った声色でWはボヤくが……

 

「帰らない」

 

一方のGは普段の無表情のまま、しかしムキになったような声色で答えた。

 

約一時間、二人は釣りをしたが──Wのバケツには結構な数の魚がいて、Gのバケツには水しかなかった。この男、成果0である。

結果は目に見えているし、これでは飽きる飽きない以前の話だとして、Wは宥めるように言う。

 

「ムキになっても釣れないものは釣れないわよ。というか、釣れなきゃいけないなんて釣りのルールにあるわけないじゃない」

「一匹も釣れないのがムカつくだけだ」

「そんなこと言って……」

 

本音はどうせ、自分の前なのだから対等であろうとしているだけなのだろうがと目星をつけながらも、流石にあのザマでは無理だろうとWは考える。如何なる理由か、Wの釣り竿にやたらと食い付いてくる魚が多く、Gの釣り竿の近くに魚は寄るものの、すぐにWの方へと向かって行ってしまっているのだ。

 

(……無意識的に殺気出てんじゃないかしら、このアホ)

 

動物は死に機敏という。

死という影をもたらす者たるGが避けられることに何の不思議も無い。不思議があるのは当人だけで、Wからすればまあ当然といったところである。

 

「ねぇ、帰らない? 今日はツイてないだけよ」

「帰らない」

「帰ろ?」

「やだ!」

(めんどくさっ! 何よ普段は可愛くないクセに!)

 

可愛いのは責められている時か、責めている時くらいなのに、今日は変なところで可愛げが出ている。ムキになって力み過ぎて、釣れる魚がいるかどうかはわからないけど釣れるものも釣れなくなっている。

 

「そろそろご飯とかどう?」

「食わぬ。寝れぬ。休めぬ。釣らねば死する。無理矢理でも釣る」

「……ねぇ、あたし帰りたいんだけど」

「帰ればいい」

「あんたと帰りたい」

「ならば釣れるまで待て」

 

いやもうなんだよこれと。

Wはゲンナリしながら、さてこの大馬鹿野郎をどうやって釣りから離そうかと思案する。しかしこうなってしまったGはテコでも動かない。

仕方ないと、Wはため息を吐いてから──最終手段を切り出した。

 

「あのさ、G」

「なんだ、W」

「──センス無いんじゃない?」

「……なるほど。釣りでは魚が取れぬというわけか。まあオマエが言うんだ、確かにそうかもしれないな」

 

センスが無いと告げてみる。これが一番効く。

というのも、できないことをできないままできるまでやることを否として、できないことをできるようにした上でできるようにやることを是とするGに、切り上げるタイミングを与えることはムキになった頭をクールダウンさせるに等しい。

ので、元に戻りやすいというわけだ。もっともWとしてはこういう手はあまり取りたくない。そこまでGをコントロールしたいわけではないのだ。だからこのように、テコでも動かなくなった場合にのみこうしている。

 

クールダウンしたGは、無駄なことをしていたと釣りを切り上げて、荷物を整理し始める。バケツをぶら下げて帰る中で、Gはずっと抱いていた疑問をWにぶつけた。

 

「……何故、オレと釣りをしたんだ?」

「え?」

 

Wは彼女らしからぬ純粋な笑顔で。

 

「兄貴みたいなあんたと遊ぶのに、理由がいる?」

 

そんな答えに呆気に取られてから、一本取られたなと笑ってみれば、Wは不思議そうに首を傾げるのだった。




Gくん
釣れない男。音楽の趣味は平凡。
W姉貴から逃げ回るという無駄なことに時間を費やし、ムキになって魚を釣ろうとするなど無駄なことにやたらと時間を費やした。
W姉貴の返答に、彼女の行動一つ一つに理由を求めていた自分のバカさ加減を知って自嘲した。

W姉貴
釣れる女。音楽の趣味はイカしている。
無駄なことに時間を費やしているGくんを見てご満悦。釣りに誘った理由は特に無く、なんとなく彼とそうしたいからというだけ。
普段は可愛くない言い方をするが、今回は可愛い言い方が少しだけ見えた。が、迫真のスルーで軽く流された。

『Wの日』
傭兵時代、かつての感覚でGくんにちょっかいをかけていたW姉貴だが、その頻度を下げてくれと頼まれたことが原因で押してダメなら引いてみろという結論に至ったW姉貴が、賭けに勝ったことで要求した『Gくん1日奴隷権』の日。
GくんはW姉貴が忘れていても、何故かこの日を決して忘れなかったという。


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小話:光を包む闇

冒険はどこまでだって続いていくので初投稿です

不意に考えたW姉貴を選ばずにロドスを選んだGくんは……
1.チェルノボーグでScout兄貴と共に裏取引で死ぬ
2.チェルノボーグでAce兄貴と共にタルラに挑む
3.チェルノボーグで脱出時にW姉貴に殺される
4.龍門でW姉貴に殺される
5.モブ落ち(ケルシー先生の護衛枠で)
6.そもそも7章まで出番が無い可能性
7.8章で「なら……魂ごと持っていけ!」(唐突に流れ出す『影をもたらす者〜ハーデス前哨戦〜)でアーミヤCEOが暗黒として覚醒する。(なお死亡済み)

……なあお前、どうしてこう極端なんだい?



Gとシュヴァルツはお互いに選べなかった道を進むものである。

 

一方は闘争に心惹かれながらも平穏を選び。

一方は平穏に心惹かれながらも闘争を選び。

 

相反する存在であるが、不思議と互いを嫌いになれなかった。

チェンとGは不倶戴天の関係性であるが、似たようなシュヴァルツとは、何故かウマが合った。

Gとしては、あまりこういう表現をしたくないが──チェンがいわゆる「温室育ち」だったからではないか、と原因を推測している。無論、侮っているわけではないのだが、適切な言葉がそういう点しか出てこなかったという問題もある。

チェンは秩序に属する人間である。

故にGは、無秩序から生まれたシュヴァルツとはウマが合うのだろうと考えていた。

 

「……どうだ?」

「渋みが少しだけキツい気もします」

「万人受けは」

「するかと」

 

そんな二人は今紅茶を飲んでいる。Gの淹れた紅茶を。

 

「あの」

「おい」

「「……」」

 

被った。黙る。ややあってから、Gが一言。

 

「……お先どうぞ。レディファーストというヤツだ」

「レディではありませんよ」

「女性はいくつであってもレディだという」

「あら、お上手ですね」

 

クツクツと笑うGに対して、シュヴァルツは彼の狭すぎる友好関係を思い返して──レディなどという可愛らしい言葉の似合う女性など一人とていないなと感じた。そしてレディ呼びされないと不機嫌になる者もまたいないと。

では素のままでこれなのだろうか? 処世術にしてはピンポイントすぎて逆におかしいが……

結局答えは出ないまま、適当なところで思考を打ち切って話を続ける。

 

「何故紅茶を嗜むようになったので?」

「前に言わなかったか、勝利の美酒だったからだと」

「それはセイロン様へ気を遣った言い方でしょう」

「……本当だよ。殺すべき存在を初めて殺した、その後に飲んだのが紅茶だった。だから気に入っているんだ」

 

事実。

彼が血の繋がった汚物を皆殺しにした後、住処に転がっていた紅茶を、充満する死の香りと共に楽しんだのだ。いわば思い出に残る誕生日のバースデーケーキのようなものであり、初めて生の実感を覚えた瞬間である。

──だからGは紅茶を好む。

自分が生まれた日の象徴であるから。

 

……まあ、それとは別に普通に好きというのもあるのだが。

 

「名実共に勝利の美酒だった。あと普通に好きだから。これで満足か?」

 

大した話ではないし、実際大した話にもならない。大事になるところと言えば──精々殺したのが家族であり、徹底的に殺し尽くしたという点くらいか。

 

(……まあ、敢えて言う必要もあるまいて)

 

シュヴァルツの資料を読んだGだが、きっとそれを伝えても大して変わることはないと思っている。だがそれでも言わないのは無駄なことはしない主義でもあるし、同時に無闇やたらに自分を明かすことはしたくない──というのもあるが。

流石に両親と悲劇的な別れをした相手に、嬉々として己の意志で惨殺したことを伝えるなど気が引ける。Gは狂人であるが、それでも他人に気を遣えるのだ。

まあ鈍感なんだけどネ。

 

「本当にそれだけだったんですね」

「それだけの理由だがな」

 

シュヴァルツとしては意外だ。これもまた嘘に塗り固められた言葉だと思っていたから、まさか真実だったなんて。

狂気と憧憬で武装した少年の心のままに生きている男に、結構可愛いところがあるなど想定外にも程があった。こうしたところが意外とモテる理由なのか──

 

「で、あなたからの用件とは?」

 

まあそんなことはどうでもいい。本題は何かと尋ねてみれば、帰ってくるのは妙な表情。バツが悪そうとも、あるいはどう切り出したかと悩んでいるようにも見えるその表情は、Gらしからぬと感じさせる。

そして彼は、一言。

 

「ああ。いや、大した話ではないんだが……オマエ、セイロンおじょーサマの事は妹分認識か?」

 

なんでそんなことを聞くのか。理解に苦しむレベルで当然のことである。呆れながらもスラスラと言葉は出てくる。

 

「……そう、ですね。確かに妹のような雰囲気であると思っています。家族というには、私は血で汚れ過ぎていますから妹分という表現が一番でしょう。無論、従者と主人であることを忘れる時などありませんが」

「そこだ」

 

そう答えたシュヴァルツに、Gはある疑問を提示する。

 

「オレは気になっていたんだが……血で汚れた手で愛しい者を触ることを何故拒む?」

 

……この男は、何を言っている?

シュヴァルツが真っ当な倫理観で否定していることを、Gはして当然だと言わんばかりに拒む理由を尋ねてきた。

彼女は察している──彼はいたって普通に尋ねているだけだと。だからこそ聞き返さなければならない。

命を賭して戦い、血沸き肉踊る死闘に悦を見出しながら、守るべき者の前ではその獣性を抑えられる者として。

 

この眼前の、獣性を是とし心すら憧憬に向かう燃料とする人狼に。

 

「──ならばあなたは、血で汚れながら愛しい者に触れられるのですか」

「当然。罪も罰も知ったことか。愛する者を愛して何が悪い……と、恋愛したことも家族愛も感じたことない男がほざいてみよう」

 

Wは運命だし、モスティマは友で、ケルシーは恩師だ。他の奴らも含めて、そこに敬愛や友愛はあっても、家族愛は無いと思っている。

そもそもGにとって"家族だったもの"は単なる血が繋がっているだけの赤の他人、殺したくて殺した奴らというだけだ。彼は家族愛など、感じたこともない。そもそも親に親らしいことをされず、兄姉に長子らしいこともされたことはないのだ。

……そしてGもまた、平凡なブラッドブルードとして他人の生き血を啜り、平凡な下位者らしく両親と兄姉にねじ伏せられる生活を送っていた。

 

だがある時、たまたま手に入れた本に記されていたクイロンの伝説に、最強を見出した時。最強の字に心奪われた時。

──まず殺さねばと決めて実行した。

家畜がいなければ生きられない、弱者に飼われる強者。食物連鎖の奴隷にも関わらず、愚かにも自らを最強などと騙る汚物。

 

『まず目の前にあった自称最強を完璧に葬ってこそ伝説の始まりに相応しい』

 

必ず殺すと()()()

だから()()()

 

ある時は寝込みを襲い、源石を切っ先とした槍を頭蓋と心臓にぶち込んだ。

ある時は地の利と罠を駆使し、脚を奪ってから解体して臓物を抉り出した。

ある時は敵対勢力を誘導し、疲弊し孤立したところを仕留めた。

ある時は捥いできた首に、源石爆弾を仕込んで目の前で爆発させ生じた隙を突き、肉体を折り畳んでやった。

 

全て殺し尽くし、死に満ち溢れた生家で深呼吸をして、初めて今を生きていると実感できた。そして強者との死闘、全力と命を賭して奪い取った勝利を噛み締めて……最強の字を勝ち取ることこそ己が意味であり価値として、勝利の美酒たる紅茶を飲み干してから、まずは同族殺しを始めた。

 

闇夜に隠れて悪逆を為す?

弱者を狩って強者と威張る?

そんなものは、最強ではない。

目障りな()()()()()()()()共よ、オレの最強の伝説に捧げる生贄としてその命を使ってやろう──それがジェヴォーダンの獣が生まれた日だ。

 

力の差、練度の差、経験の差──それら全てを乗り越えるために自らは憧憬と狂気を燃料として限界を超越して現実を踏み躙る。ロクに知らぬ文字を丸一日かけて解読して得た兵法と知識を元に確実に殺せる状況と方法を導き出し、『全て都合良く進められる状況になるまで』腹が減ろうが喉が渇こうが血に飢えようが心一つでねじ伏せてひたすら待ち続ける。

 

如何にして殺そうか、殺すべきか……そう突き詰める内に、気付けば忍耐と智略は自然となり当然に限界を超越し格上を殺す。生命としては異質な行動と選択を迷いなく選べる存在と化した。

 

だがそんなジェヴォーダンの獣は、懸命に生きようとする死にかけの女に魅了されて眠ってしまったのだが。

 

「詮索はしません。ですが人の暖かみを違う世界に感じるということは、とても──痛いんですよ」

 

日陰でしか生きられないのに、日向に愛しさを覚えて、その度に悲哀の呪縛に嘆く。守るべき者を守ろうとして、仰ぐべき主に従おうとして、隣のメモリ番地に指し示されるのは常に己の手で燃やした本。やめてくれと叫んでも、本棚は倒れて留まる自分に苦痛は追いついてきて、痛みを抱えて明日の自分は勝手に道を歩き出す。

常に真っ直ぐ進み、踏破することしか選択しないし諦めないGに初めて憐憫を抱きながら、シュヴァルツはせめてそれをわかって欲しいと、彼女らしからぬ表情で告げた。

 

そんな彼女に対して、彼は告げる。

 

「『嗚呼、苦痛よ。お前は決して私から離れなかった故。私は遂にお前を尊敬するに至った』」

「へ……?」

「──オレの友が好きな詩の一節だ。これは受け売りだがな、苦痛とは死ぬ時も心の隙間に入り込み、自分と共に整然と横たわってくれる存在だという」

 

呆然とするシュヴァルツに対してGは言葉を続ける。

 

「セイロンとそのオヤジがオマエの苦痛ならば、全部含めて愛せばいい。苦痛は存在するだけで美しいのだから」

 

かつてモスティマが諭したように、彼もまた──血で汚れたことを罪と認識できるだけの良心と良識を備えた者へ、悟りを告げる。

 

「シュヴァルツ、オマエにとって最大の苦痛を愛する方法を見つけるといい。大切に思うとかじゃない、心を蝕む苦痛を受け入れる方法だ。鎖を断ち切り、恐怖と一度でも向き合わなければな」

 

一度でもいい。

罪深さを忘れてそれも己と受け入れるのだ。

 

「光に焼かれることを恐怖と苦痛に思うなら、闇で光を抱き締めてみろ。自分が光になってしまえばいい。一度でもそうすることができれば、何度だってできる。オレに言われなくてもいつかできるだろうが、今すぐにでも求めるならば、たった一度でも断ち切るんだ」

 

──そして、敢えてこの言葉を告げる。

 

「ドン底まで落ちたなら、後は這い上がるだけだ。光に向かって這い上がれ、奈落の深淵で渾沌に呻く者」

 

光に照らされることが痛みならば、光を包んでしまえばいい。飼い慣らすとは何も片方が絶対的な主導権を握ることではないのだから。

 

「……驚いた。そんな言葉が出てくるんですね、あなたから」

「これでも教養はある方なのでな」

「では、あなたは闇で光を包めたと?」

「オレにはオレなりの苦痛と、その愛し方はあったが、オマエのように世界が違うということはなかった」

 

そもそも平穏に心惹かれていたなど、つい最近自覚したばかりでもあるのだ。最強という称号以外やはり目指すつもりなどないが、そういう己もいるということはちゃんと認めている。だからシュヴァルツの悩みというものはわからないのだが、まあ、望まずして自分のような道を選ばざるを得なくなった相手に対する慈悲は持ち合わせている。

それと同時に、『完成』したシュヴァルツに挑んでみたい──という殺意もまた。

 

「まあせいぜい、ドクターや仲間たちと共に悩むことだ。後ついでにあの理想主義にも程よく現実の味を教えてやれ。理想ばかり追い続けているとオレのようになるぞ」

「それは困りますね」

 

「──オマエが暗殺に向かわされるような相手で、オマエを助けながらオマエの手伝いを受け入れられるような男ですら女を愛し子を作ってるんだ。結局、罪深いとか闘争に悦を見出すとか、何も関係ないのさ」

「……つまり?」

「好きに生きてりゃ、後で好きに生きた咎が帰ってくる。遅いも早いもあるものか。好き勝手生きて、その咎を受けて死ぬ。いいじゃないかそれで。人生なんぞそんなもんだ」

 

そう言われても、シュヴァルツにはわからない。好き勝手に生きるということの意味が違うから、Gの語るそれらがあまり見えてこない。そしてそこに決定的な違いを垣間見て、つい苦笑が漏れた。色々と似ているのに向いている方向が根本的に異なり過ぎていて、だからこそその助言だのなんだのが奇妙にも染み渡る。

 

「私にはできない生き方です、それは」

「なるほど。オレにはオマエの生き方ができんな」

 

ケラケラと笑うGを見て、シュヴァルツはこの男は自分以上にロクな死に方ができないだろうなと容赦無く考えた。

好き勝手生きているならば、その分の咎が来るのだと自分で言っていたのだし、それすら受け入れているのだろう。全て、彼女にはできぬ生き方だ。ただ友達としては……それなりに上手くやっていけるだろう。不思議だが。

 

「で、次に淹れる紅茶はもう少し薄めてみようと思うんだが」

「まだやるんですか……」

 

それにしても。

あくなき紅茶への探究心に付き合わされるこちらの身にもなって欲しいと本気で思う。一人でやっているか、それかもう少しフリーにさせてくれと、彼女は研究者の如くまた紅茶を淹れ出したバカに呆れた。




Gくん
実は昔は何処にでもいる小悪党の子供のオマケで生まれたという出自。
つまり望まれぬ子故に父母と兄姉にはほぼいないもの扱いされていた。
平凡なブラッドブルードらしく区分なく血を飲み、平凡な弱者らしく血の繋がっているだけの存在に虐げられていた。
が、覚醒した彼は全てを殺し尽くした。そこで紅茶を勝利の美酒として好むようになり、最強の生贄として贋作の出来損ないたる同族を全部殺そうと画策した。
……まあ、W姉貴と出会って色々変わったんだけどネ。

シュヴァルツ姉貴
家族に恵まれずこの手で殺したGくんとは反対に、家族に恵まれたものの悪意で奪われ傭兵になった人。
不思議と仲良くなれたのが疑問だったから紅茶のテスターを務めるついでに色々聞いてみたが、斜め上の回答とかが飛び出してきてもっと不思議になった。
流石の彼女とて散々誤差レベルの紅茶を飲まされれば嫌になる。


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小話:不倶戴天の龍

新作のネタが浮かんだので初投稿です。
そろそろ本編を小話が超えそうなので、色々とお悩み中。
仮に新作を出す場合、スカジ姉貴がメインになるかと。

あ、プロファイルにステータスとか追加しました。
役に立たない感頑張って出したので、よかったら見てネ。


 1組の男女が剣戟を繰り広げる。

 チェンとGだ。

 

「……あいつ、荒れてるわねぇ」

「隊長もあの傭兵にはただならぬ感情を見せていますし、仕方ないことですよ」

 

 それを見るのはスワイヤーとホシグマ。

 一体いつ爆発するかわからなかった爆弾は、ある日唐突に爆散した。3カウントとかの前触れもなく。

 

「それ言ったらあんたも結構イラついてるんじゃない?」

「言われてしまうと否定できません。私はあなた達とは違って普通の育ちではないので、ああいう者を見てもそこまで感じるものはありません。ただ……」

 

 それが相反する二人が訓練用の剣を片手にかなり本気でやり合っている理由だ。たったそれだけの理由であり、そのやり取りはひどいものだったので見ている二人も半ば呆れている。しかしそれでも目の前で繰り広げられる戦いは思わず息を呑んでしまうような、それほどにレベルの高い闘争であった。

 

「守ること、殺すことの違いを知っているし、その上で破滅的な選択を嬉々として選ぶあの男がわからない?」

「ええ。何一つとてわかりませんし、わかりたくもありません」

「同感ね」

 

 破滅的な選択肢──ブラッドブルードの肉体ですら悲鳴を上げる程の負担を常に負いながら、理論上可能な行動を狂った方法で実現し、挙句友人だろうが恩師だろうが何の躊躇いもなく嬉々として殺せる。

 そんなものを誰が理解したいと思うのか。

 

「それにしてもチェンの嫌いようも不思議ね。話したことは数えるほどしかないんでしょ?」

「守護する者全てと相反する存在だと一目見てわかった、とのことです」

「チェンってば、そこまで野生的でもなかったでしょうに。──でもGって言ったっけ、あの傭兵」

 

 模擬戦という名の喧嘩に目を向ける。

 チェンの卓越した剣技に喰らい付けないはずなのに、当然の如く限界を超えて喰らい付くG。

 攻防は目まぐるしい。Gが一太刀振るえばチェンはいとも容易く弾き、受け流して切り返す。斬撃、刺突、柄での打撃、体術を絡めた攻撃……矢継ぎ早に繰り出しても、幼少より剣の道を行く龍には届かない。

 

(──何故だ?)

 

 だがそれでもチェンは心中に疑問を抱く。こうして自分に喰らい付いてくる男の感情がまったくわからない。そもそもこんなもの、売り言葉に買い言葉で始まった喧嘩のようなものなのだ。言ってはなんだが、Gに挑発の意思はなかったとわかっている。だとしてもチェンには認められないことを言っていたので、遂に我慢の限界を迎えただけだ。

 

 縦斬り──横にした剣で防がれる。すかさずそこに突きを繰り出して防御を崩し、続け様の横斬りで追撃する。それを返すことができず、防戦一方に追い込まれるG。これは明確な差だ。チェンの方が疾く、Gの方が遅い。いくらどれだけ限界を越えようとも、元来の才覚と向き不向きだけはどうしようも無い。

 この理屈を不条理で踏み躙るのは彼にとって容易であるが、単なる喧嘩でそれをするほど馬鹿ではない。

 押され気味の剣戟の中、不意に右の肘打ちが飛んでくる。懐に入り込む一撃に、彼女は真後ろに下がるしかない。間髪入れず脳を揺らすための顎狙いの掌底が繰り出される。2発の押し込み──ならばと判断したチェンは真っ直ぐに前へ進み、後ろに下がった一瞬を狙った背撃にタックルをぶつける。

 密着状態、剣が振れない以上は離れるしかない。

 

(何のために……?)

 

 息を吐く一瞬、彼女は考える。彼が何故この八つ当たりの喧嘩を買ったのか。

 ──だがわからない。

 

 一方、眺めているスワイヤーとホシグマは冷静に分析する。

 

「向いてないわね」

「あなたもやはり?」

「ええ、どう見ても戦うべき人間じゃない。デスクワークに交渉とかが適任よ。彼は」

「……まあ、男の子には意地があるといいますし、我々が四の五の思っても何一つ無意味でしょうなぁ」

 

 Gは近衛局の一般戦闘職員と比較しても、中の下程度。やはりというか、彼女たちの目で見ても所詮その程度に過ぎない。しかしそれを覆せるのがこの男であり──事実、本来倒すことは不可能であるはずの黒蓑を一人初見殺しとはいえ瞬殺している──その狂気と憧憬の異常さがよくわかる。

 チェンと打ち合っても、7合打ち合えればいい方……そんな程度であるにも関わらず、本気でもなんでもない状況で当たり前のように喰らい付いている。

 

「……何故だ? 何故この喧嘩を受けた」

「うん? オマエはオレを殴りたかったのだろう。そしてオレはオマエと手合わせしてみたかった。利害の一致だ、いいじゃないか」

 

 零れ落ちた疑問に返ってくるのはそんな答え。呆気に取られて動きが止まるが、律儀にこの男もまた止まり、続きを促してきた。

 

「本気で言っているのか」

「戯れ合うのもまた研鑽だろ」

「お前にとって運命とはなんだ」

「運命、か」

 

 運命をあえて言葉にするという状況は無かったので、少しだけ言葉を考えてから──

 

「もう一人のオレであり、オレでは出せぬ答えを持ち、オレとソイツの間で相互理解が成立し、そして殺し殺されるならばコイツのみで、例え殺されても生死を超越し共に在り続ける──それが運命だろうな」

 

 自分でも首を傾げるくらいに抽象的な言葉で告げた。案の定、チェンは飲み込むのにしばしの時間を必要としたが、それでもかなり早く飲み込んだ方であった。困惑した表情から納得の行く表情に変えた後、どのようにしてを問う。

 

「コシチェイのようにか」

「いいや。あの蛇ほど言葉通りではない。言うなれば、殺した相手こそが殺された相手の生きた証──」

 

 そこまで言ってから、Gは自分が如何に愚かなことをしているのかを自覚した。そもそも人と人との関係など、全てを言葉で表すことなど困難な代物だ。一側面をピックアップして言うならばまだ可能であるが、「運命」はどという陳腐な一言でまとめ上げている関係を、どうして言葉で表現できると思ったのか。

 

「いや、やはり言葉などでは表せない。忘れてくれ」

「なら自分でどうやって運命だと判断しているんだ、お前は」

「運命とはそういうものだ」

 

 判断するしないとか、そういうものではない。運命は運命なんだから本能的に理解できるし互いに自覚する。完全に全てを放棄した返答に、チェンはため息を一つ。

 

「……はぁ、理解できんな」

「させる気も無い」

 

 ばっさりと切り捨て合いながら、さてと剣を構える。ただ気になることはまだ色々あるので、チェンは構えただけで何もせずに更に問う。

 

「私とお前は運命ではないのか」

「オレとオマエは不倶戴天というだけで運命にはなり得ない。相反するというだけで、運命になれるわけではないだろう。せいぜい気に食わないものというだけで終わりだ」

「……ふむ、確かに」

「そもそも、オレたちは互いを理解できるか? 無理だろう。根本からして相反するのだから、知ることはできても理解することはできん」

 

 ──不倶戴天であることは理解できる。

 が、互い何故そういう道を選び、どうしてあのような行動を取っていて、そして傷付き続けるのか。そこはどうしても理解できない。万物を殺し尽くし最強の字を勝ち取ることはチェンには理解できないし、Gもまた龍門を守りたいのに感染者になったからと恥じてウダウダと内心で見て見ぬフリをし続けてコシチェイの陰謀でようやく吹っ切れたなど理解できない。

 

 最強を目指すのはいいが森羅万象を血と闇で染め上げる必要は無いのに何故殺戮の旅路を進む? 

 理想と現実に苦しむのはいいが早くなると決めてなれば終わりだというのに何故そうなろうとしない? 

 

 そこに至るまで色々あったのだろう。我々は同じではないのだろう。その決断や道に羨望が無いとは決して言えない。しかしどうして──こんな簡単なことをせずにあえて困難な道を進む? 結局はそこなのだ。

 

「チェン・フェイゼに対するタルラ・アルトリウス……このような関係性こそ、運命になり得る可能性があるのだ」

「理解できて、尊敬できる。しかし道を誤ったなら殺し合うことができて、例え殺したとしても納得するし、殺されたとしても納得できる……」

「まあ、そういうことだ」

 

 彼女は自分とタルラの関係をGとWの関係に当て嵌めてみて、視点を変えてみて、思いを馳せてみる。すると確かに不思議と、どんな結論に至ったとしても殺されてもいいが殺すのは自分以外あり得ないとは思えた。

 

「……ああ、確かに知れはしたな。理解はできんが」

 

 しかしそれを是とできるか否かは別。

 思えただけ、知っただけでやはり理解はできなかった。

 

「やはり……気に食わん」

 

 笑みが浮かぶほどに気に食わない。

 虚しいほどにGという男とは仲良くできない。チェンは静かに力を入れ始める。

 そろそろお喋りは終わりにする──気迫でそう伝え返ってくるのは、切先を右に流した、ともすれば無防備にも見える独特の構え。

 しかしチェンはその構えを見ても、もう少しばかり言葉を告げる。

 

「……実はお前に対する詫びを考えていてな」

「よせ。オレとオマエの仲だ」

「不倶戴天だろうが私の八つ当たりに付き合わせてるんだ。詫びの一つや二つ、しなければ示しがつかないだろう」

「ではまあ、聞こう」

 

 何を言い出すやらと怪訝な顔をするG。

 彼らしからぬ表情に、チェンは人間性を垣間見た。だからこそ余計に不快になるのだが。

 

「生憎と今の私たちは、認めたくないが同僚だ。組織という秩序に属する人間が、気に食わんとか殺し合いたいなどという理由だけで血を流し合うのはご法度というもの。だから赤霄を抜いてやれんが──殺す気で行くぞ」

「素直になったのか?」

「一度ぶちのめせば私は気が晴れる。そして殺す気の私と戦えればお前もそれなりに満足する。ほら、win-winという奴だ」

「……どうやらオレは、オマエのことが好きみたいだよ。チェン」

「お前のような人狼に好かれて有り難がる女などいない。吐き気がするな。もう少しナンパ術を覚えてから口説け、G」

 

 空気が変わる。

 目の前の何もかもが正反対の相手をぶちのめす建前が手に入ったのだから、内に燻る殺意の炎を曝け出さない理由がない。

 

「剣が折れても止めんぞ」

「望むところだ。殴り殺してやる」

「──最高だな」

 

 ニィッと凶悪な笑みが浮かび、悍ましい怪物が姿を表す。龍と吸血鬼は同時に力を込めて、一秒後の爆発で枷を外す。殺してしまってもいいという同意があるのだ。

 訓練中の不幸な事故として処理もされよう。

 

 ──そしてそれを見る鬼が、危険な領域に達した両者の戦闘欲を見抜けないわけがない。

 

「……ミス・スワイヤー。これから無許可で般若取ってきますから事後報告と弁明の手伝いをお願いできます?」

「チェンだってバカじゃないでしょ。そんな必要無いわ」

「あります。一度火が入れば数も数えられないようなバカになるのはご存知でしょう」

「心配し過ぎよホシグマ」

 

 スワイヤーはそこまでチェンがバカじゃないと信じている。彼女が見てきたチェン・フェイゼは色々と問題こそあるが、訓練中の不幸な事故にかこつけて気に食わない相手を殺すなどという方法を取らない人間だ。

 

「バカは怖いですよ。なにせバカですからね、何をやらかすかわからない」

「それでも犯罪者や悪党、外道よりマシよ」

「あの傭兵は、そうした括りではありませんよ。あれは──人をバカにするバカの中のバカ。最悪最恐のタイプです」

 

 チラリとホシグマが視線を変えた。スワイヤーも続けて視線を変えてみれば……

 

 袈裟、逆袈裟。流れるような左右の横薙ぎからの背撃、体勢が崩れたところに強烈な一閃。たまらず押されたGに対して、チェンは剣を右に構えて突きを放つ。

 

 それを踏んで飛び、背面に回る。刀剣を踏み台に飛ぶという訳の分からない解決法で刀身がへし折られるが、彼女は気にせず前へ進み折れた先端を空いている左手で掴み取る。その頃には、先ほどまで彼女の喉があった場所を剣が通り過ぎていた。

 

 先端を投げる、弾かれる。しかしその瞬間と瞬間の隙間、踏み込んだチェンが切り上げの姿勢を取る。先ほどのような曲芸は通用せず、真っ向勝負を強いられると見たその時、逆手に持ち替えて剣を剣で絡め取る。ガッチリと噛み合った剣を動かすことができず、両者は一歩も動かずに殴り合う。しばし殴り合った後、Gが蹴り上げを放ちつつ側転で距離を取った。

 

 しかし移動と攻撃の隙間は刹那的であるが、致命的である。素早く剣を捨てたチェンは格闘戦へと移行。Gの重心が戻り切るまえに剣を握る右手を掴み、適切な打撃と関節技で剣を落とす。そのまま最大接近距離での徒手空拳戦が繰り広げられる。

 片方が関節を破壊しようと掴めば、片方が回り込むような動きと共に後頭部に肘を叩き込む。片方が投げ倒せば、片方は素早く蹴りを放つことで追撃を阻止する。投げ技には投げ技で返し、互いにクルクルと踊るように回る。建前すら忘れて殺人技をなんの遠慮も無くぶちかまし合い、あわよくば目の前の相手をぶち殺してしまおうという魂胆が見える。

 

 それはまるで仲の良い男女の戯れに見えるが、しかし圧倒的なまでの殺意と殺意の交差が起きており、これらの本質が訓練という名の撃滅戦であることを見る者へ訴えかける。

 

「あれを見ても? スーお嬢様」

「……アタシが悪かったわ! とりあえず言葉で止まるとは思えないけど仲裁行ってくるから!」

「ではそのように」

 

 どう考えても素手での殺し合いに移行した二人を見て、二人の女傑はバカ二人を止めるべく奔走することとなった。

 

 チェン・フェイゼ氏があまりにもイイ女だったのでつい、興が乗ってしまった。オレはほどほどで抑えようとしたが、アイツがオレに対して熱烈なラブコールをしたのが悪い。オレは被害者だ。なのでWとケルシーへの報告はやめてくれアーミヤ。やめろドクター、それに手を伸ばすな……!! ──G

 

 確かに事の発端は私だ。だが向こうも向こうで私をその気にさせるようなことを言い続けて、挙句断ればいいのにあんな子供じみた挑発に乗ってきた。あれは悪質な当たり屋としか表現できない。しかも途中で切り上げればいいものを、もっともっとと強請ってきたのは彼の方だ。原因という点では私が悪いが、事態が悪化したのはGが悪いと客観的に言わせてもらう。 ──チェン

 

 アンタ、アイツのことになると自制効きづらくなるのはヤバいわよ。抑えなさい。子供じゃないんだから……あとでホシグマに謝りなさい。 ──スワイヤー

 

 四の五のは言いませんよ。ただお二人とも反省してください。関係各所に迷惑がかかっているんですから。 ──ホシグマ

 

 お二人の言い分はどうでもいいですけど訓練施設の修理費払ってください。 ──アーミヤ

 

 私のバカ弟子がすまないな。 ──ケルシー医師

 

 ウチの駄犬がごめんなさいね。でも色目使うのも問題じゃないかしら、龍女さん? ──匿名希望

 

 え、私とはあれこれ付けて戦ってくれなかったのに!? ──ブレイズ




Gくん
無意識的にチェン姉貴を挑発してしまい、その詫びも兼ねて殴られることにした人。
しかし途中でその気になってしまい、半ば殺し合いに発展してしまった。
彼的にはチェン姉貴のことは好き。両成敗ということで訓練施設の修理費は割り勘しようとした。

チェン姉貴
Gくんの言動に我慢の限界を迎えてしまい、つい喧嘩ふっかけてしまったら何故か了承された人。
途中でやり過ぎる提案をすることで、いい具合にやめられるかと思ったが向こうがやる気になってしまい、建前も手に入ったことで彼女の方もだいぶやる気になってじった。
彼女的にはGくんのことが嫌い。訓練施設の修理費は原因として全額負担しようとした。

スワイヤー姉貴
チェン姉貴の常識力を信じたスーお嬢様。
思ったよりバカだったので困惑中。

ホシグマ姉貴
チェン姉貴の常識力を信じなかった任侠者。
Gくんには特に思うことはないが向いてないことをするスタイルは理解できない。

Gくんの飼い主二名
こんなところでもアピールしないでください。

暗黒CEO
それなりには常識があると思っていた二人に暴れられたので理性0に。

ドクター
無言でチクった。

ブレイズ
誘っても色の良い返事がもらえなかったのにチェンはいいんだぁ……と複雑な気持ち。


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小話:昔話

新イベントがケルシー先生のファッションショーだったので初投稿です
みんなはどのケルシー先生が好き? 僕は男装ケルシー先生!


「アーツユニットを小型化して人体に埋め込み、背中あるいは肩から源石の武器器官を発生。更に擬似的な自立兵器としての運用のため、溶接された外骨格的な存在として認識するための人体改造も行う。こちらは鉱石病を意図的に進行させる薬とその抑制薬を同時に装備した鉤爪と籠手……腕を切除し体内の源石と繋げることで進行度を上昇させずに末期状態のアーツコントロール能力と性能を獲得。および神経系光学繊維化、肉体強化……」

 

 発案をまとめた書類の束。

 どれもこれもが倫理的にも問題がありつつ、そしてあまりにも突き抜けている。

 

「全部ダメだ」

「そうか」

 

 容赦ないダメ出し。それを諦め気味に受け入れる声。

 珍しくGが笑顔でやってきたと思えばこんなものだ。諦め気味にボヤきたいのはケルシーの方だった。暇な時間がようやく出来て、一息付いていたらこれである。まったくひどい話だ。

 一体何に着想を得たのかわからない物の数々。非人道的・倫理的に問題のある行為ではあるが、確かに後々に様々な応用を効かせられるからタチが悪い。趣味なのか実用性を突き詰めたのかわからないから更に困る。

 

「……この格納式の源石剣翼は「ダメだ」……カッコいいのに……」

「そういう問題ではない。普通に考えろ、耐えられない」

「アンタも似たようなもんじゃないか。背中にあんなデカブツ仕込んで」

「私はいいんだ」

「なんだそれ」

 

 それはそれでこれはこれだと、ブーブーと抗議するバカを無視しながらそもそもの問題に呆れながら触れていく。

 

「しかし仮にこんなものを本当にやるとしても、被験者はどうするんだ」

「オレを使えばいい」

「……」

「サルカズの中でも輪をかけて頑丈だし、最悪血を吸えばなんとでもできなくもないからな。ついで本人が発案して本人が被験者で本人が乗り気なんだ。問題なかろう」

 

 ──この馬鹿者は何を当たり前のように言っているだろうか。

 ため息、そして頭を抱えてから天を仰いで、ギロリと睨み付ける。

 

「問題だ」

「えー」

「可愛くない」

「知ってる」

 

 棒読み気味の反応に一度本気でぶん殴ってやろうかとすら思う。昔の危うい頃の方がまだウザくなかったような気がするが、そうしたところが安定して素が出てきているのがいいことだとはわかっているものの、それはそれとして腹が立つものは腹が立つ。

 

(本当に君という男は、こんなのだったな……)

 

 なんでこんなのを気に入ってしまったのだろうか。理由はわかっていても自省せずにはいられない。こんな馬鹿者だと知っていれば──いや、変わらないか。ケルシーがケルシーであり、GがGであるならばこの関係は必然だったと結論付けて、一応納得はしておいた。

 本当に一応だけど。

 

「じゃあコッチはどうだ」

「剣に噴射機構など付けたらどっちの負荷も酷いことになるに決まっているだろう、馬鹿者」

「ならコレ」

「鞘にラテラーノ銃の弾丸発射機構を移植して剣を撃ち出したところで、どうやってそれを掴み取って抜刀術にするんだ」

「……電磁抜刀の負荷を軽減しようかと考えたんだがな……」

「できるのは君だけだ」

「だったらアレはどうだ」

「鞘に刃を付けて、剣と接続することで大剣にしたところで、重いものは重い」

「こんなの」

「……わざわざ7本の剣を分離・合体させることに何の意味が? 嵩張るだろうに」

 

 どれもこれもが卓越した技量に加えて判断力を要求される。限界まで能力を使用できる者が使用することの許されるものであり、そしてそれらは自分の適性というものを無視することで初めて実現される。

 極端なことを言えば、効率的では無い。確かに使いこなせれば効率的になるだろう。が、そこに至るまでが問題なのだ。誰しもが短期間で、慣れ親しんだ武器以外を極められるはずもない。

 それができるのがこの男であり、そんなことができるのはこの男以外に存在しないだろう。

 

「君は昔からそうだが、戦いから離れない限り壊れているな」

 

 なんでそう常識的な部分が変にあるのに、自分の趣味だのなんだのになると、途端におかしくなるのか。バベルの頃からそうであったが、そういうところだけはどうにかして欲しい。

 

「闘争は闘争だ。そうでない場であれば当然空気は読む。明確な敵でなければ不要な殺しは行わないし、理由がなければ女子供だけに留まらず無闇やたらに殺さん。悪意には悪意を、善意には善意を。物事には誠実かつ真面目に。ただそれだけだ」

 

 つまり意味のある殺戮ならば女子供も皆殺しにするということであって。実際意味があるからカズデルのブラッドブルードを全滅させようと殺戮の旅を始めたGだが、特に理由がなければ無益な殺生はしない。仕事は仕事で使命は使命。

 ──グチャグチャに混ざり合ったそれは、人間にあるまじき機械の如き判別である。もはや規範や概念にも等しい。そうしたものになろうとして、さてそれを現実的にした場合はどうなるかを模索しているからこの考えが生きているのか、それとももうそういう思考しかできなくなっているのか……

 

(さて、どちらなんだ)

 

 実のところ、本人もわからんだろうしケルシーだってよくわからない。そもそも最後のお楽しみを取っておくという風に、順序を与えている時点で規範や概念と言ったものから外れているのだ。

 だからそこに関してはわざと見て見ぬフリをしている。多分、その答えを出してしまうとGは完成してしまうだろうから。

 

「でだ、全て認められないぞ」

「……むぅ」

 

 不満げなGを置いておいて、ふとケルシーは思い立った。

 彼女はさまざまなことを知っている。その中でも聞いたことがあった。『ジェヴォーダンの獣』の逸話──彼は一体、何故そのようなことをしたのか。ブラッドブルード殺しは理解できるが……だとすればWとはいつ出会ったのか。

 

「そういえば、Wとはいつ出会った」

「忘れた」

「即答とはな」

「仕方ないだろ。あの頃は時間の感覚すら忘れていた」

 

 そういうとGは黙って紅茶を淹れ始める。ケルシーの執務室に勝手に持ち込んで勝手に置きっぱなしという代物だが、これを片付けられなかったケルシーもケルシーだ。

 そんな様をモスティマに知られたとき、ケラケラと笑われたのは彼女の記憶に新しい。

 

「──あの時は、なんだったか。ブラッドブルードが集まってる集会を皆殺しにしようとしていた時だったな。殺さねば殺さねばと殺意をたぎらせていたオレは、目的地に向かって突き進んでいた」

 

 そんな風に語りながら、紅茶を黙々と煎れて持ってくる。二人でゆっくりと飲みながら、彼は更に言葉を続けた。

 

「その道すがらだ。見知らぬ死に損ないの小娘が倒れていた。ボロ布を軽く羽織った程度、全身に見える傷。まるで潰された虫みたいな有様だ」

「それで?」

「──その瞳には、強い生への執着があった。綺麗だった、美しかった。そんな素晴らしい輝きが失われると思ったら、オレは自分が許せなかった。だから拾って助けた」

 

 そうした自分の行動を口に出して説明した時に、冷静に分析してみれば当時、そして悟った時に見えなかったものが見えてくる。そして現れた真実にGは自嘲しながら、ケルシーに誰にも言っていない本音を語り始めた。

 

「それを思えば、ああ……一目惚れなんだろうな。完璧な敗北だよ、膝を折って手を差し伸べるしかあるまい。だがオレは、アンタも知っての通り口下手な挙句ヘンテコな人間なものでな」

「……うん?」

 

『好きに使え。寝首を掻くのも構わん。できるなら、だが』

 

「嗤ってくれよケルシー。あれは醜態もいいとこだ。よりによって一目惚れした女に向かって『殺す気あるなら殺してもいい』だなんて言うとか、愚者というにも程があるだろう」

「実にらしいじゃないか。笑う理由が無いな、私には。それで君は初めから彼女を選んでいたのか?」

 

 素朴な疑問。運命などとWのことを称するのであれば、最初からそういう気だったという状況だったのか。何処となくそういうわけではなさそうにも見えたから、ケルシーはそこを掘り下げることにした。

 

「いや。選んではいなかったが、コイツなら一応いいかくらいには感じた。そうだな、一人孤高を貫き通して死ぬのもいいが、一目惚れした女に命を奪われて死ぬのも悪くないくらいの話だ」

「そんな彼女がどうして運命になったんだ」

「自分の意志でコイツにはコイツの人生があって、オレに付き合わせる必要は無いから自由に生きてくれと願った。──その時は自分の意志で、自分の願いを優先した。だがある意味では、オレはWから逃げたんだ」

「選んだではなく逃げたか」

 

 違和感のある発言だった。

 逃げたとは、当時の彼らしくない。何もかもを投げ捨てて一心不乱に定めたことに向かって突き進む男にしては、初手からあり得ない行動だ。

 

「こうと決めていると話し合って離れたらなら、逃げたとは言わないはずだ」

「……夜逃げした」

「……だと思った」

 

 バツの悪そうなG。

 呆れ返ったケルシー。

 よく見る光景である。

 

「あのままアイツといたら、オレが何処かで折れてしまいそうな気がしてな。まさに愛しい苦痛だったというワケだ。結局逃げて、戦いの日々を送った。その中でモスティマに助けられたことがある。それが彼女との出会いだ」

「無茶をやったのか?」

「大した話じゃない。3日ほど飲まず食わずで標的を皆殺しにしたが、終わった後に倒れてな。そこを助けられたというだけだ。龍門のスラムで大騒動だったからな、正直殺されてないというだけであの時は驚いたよ」

 

 ──飲まず食わずで皆殺しはあまりにも執念が過ぎる。少なくとも選んで殺してはいたのだろうが、その行動様式は異常そのものだ。

 

「それからしばらくモスティマと行動を共にした。色々とアイツはオレに世話を焼いてくれた。おかげで視野も広がって、ほんの少しだけWに会いに行ってもいいかなとか思ったが──また戦いを選んだ。探しても見つかりそうもないし、オレが覚えてても向こうは忘れているんじゃないかと思ってたしな。そしてオレは……Gになった。もちろんサルカズ傭兵の伝統に則ってGになったわけじゃない。あの偉大な先駆者を、先代のGを殺してヤツから全てを譲り受けた……いや、喰らっただけだ」

 

 喰らうとはどういうことかとは聞かない。あの隊にGとして存在するということはつまりそういうことなのだから。しかしGとなったということは──あえてケルシーは言葉を先取りした。

 

「必然のような偶然か。属していた部隊がヘドリーの指揮する部隊だったから、君たちは再会してしまった」

「正確にはGになってから少ししたら、ヘドリーとイネスがアイツを拾ってきたんだが。……信じらんないが、時間数えてやがったんだ。オレと別れてからの時間。なんだコイツとか思ったけど、そこで初めてオレはアイツを運命だと感じた。あとはオマエも知っての通り。ケルシー先生に教えを請いながら、あれこれと迷って心を決めてもやっぱり最強を目指してしまうバカの完成ってワケだ」

 

 そういう経緯だったのかと納得しながら、しかしケルシーは少しばかり不機嫌であった。『こう死にたい』という欲求しかなくて、そしてそれがバベルの頃になってようやく『こう生きたい』という欠片が出てきたとばかり思っていたが──まさか、ずっと『こう生きたい』という欲求から逃げ続けていたなんて。

 しかも挙句の果てに、時間を数えていたWのことをわからないと言う。前に『アンタも時間数えるんだな』とか言っていたが、そういうことだったのか。思いっきり口をへの字に曲げながら、更なる疑問点について尋ねる。

 

「逃げ回ってその様か。だが何があってようやくそれと向き合うことを決めた?」

「不死の黒蛇。アレを見て愛想が尽きた。過去に色々あって、実際積み重ねたモノはたくさんあるんだろう。しかし──何故だろうな。自分でやってしまえばいいのに、自分はあくまでも思考を操作して他人任せで手段も目的も選ばないと来た。まるでそれはフィクションの悪役だ。それが薄っぺらく見えて、自分が何を目指していたのかを知った」

「世界広しと言えど、彼を薄っぺらいと表現するのは中々いないだろうな。アーミヤでもそのような表現はしないだろう」

 

 紅茶を飲み切り、二人は一息をつく。

 

「スコーンいるか? いるならまた淹れるが」

「いや」

「わかった。──してみれば不思議だな。オレたちの腐れ縁も。狂気の体現者は記憶を失い、永いときを生きる賢者は拗ねる。オレは理想と現実の狭間で揺らぎ、オレの運命は真実を追い求める。なんだろうかね、この奇妙な感じは」

 

 拗ねる。

 ケルシーはそういう表現をされたことが不思議でならなかった。

 

「私は拗ねてなどいない」

「拗ねてるよ。悪巧みに混ぜてもらえず、二人でこっそり物事は実行された。終わったあとにも真実は教えてもらえず、当事者の片方は……本当に死んだのかも怪しいが、とにかく死に、もう片方は記憶喪失。別にアンタがドクターに気があろうが無かろうがどうでもいいが、一人の人間として友達からハブられちゃあ、拗ねると思うがね」

「拗ねてない」

「クククッ、ケルシー……オマエ、ホント可愛いなァ」

 

 ケラケラと笑うGに対して一度本気で殴ってやろうかとも考えたが、そういうのは何か違うと思ってやめた。というよりも永い時間の中でこのようなことを言われたのは初めてでもあった。まあ不快というか気に食わないところあるけど。

 どんな表情を自分がしているのかは知らないが、Gが笑っているということは笑われるような表情をしているのだろう。

 

「何が可愛いんだ。言ってみろ」

「そういうところだよケルシー。努めて冷静であろうとするが、ある時急に感情が現れる。それも微かじゃない、デカい感情だ。けどオマエはそれを微かだと見せかけようとする。これを可愛いと言わずしてなんと言う?」

「……」

「アハハハ、そっぽ向くなよケルシー。別にいいじゃないか、そういうアンタもさ。オレはアリだと思うぜ。いっそどうだ、メイド服あたり着てドクターに甲斐甲斐しく世話を焼いてみるとか──「君は私が彼に対してどういう感情を向けているかわかっていってるのか」……知ってるよ。だが肩を並べて進むって決めたなら受け入れるしかないだろうに」

「メイド服は意外と動きづらい。私は着ないぞ」

「それって一度着たって暗に言ってないか?」

「さあな」

「メイド服のケルシーねぇ……アンタ綺麗だからな。何着ても似合いそうだ。それこそスーツとかでもな」

「……そういうことを、どうしてWに言ってやらない」

「あ? ……別にアイツ、褒めたって面白くないもん。それが当然みたいな態度されたら誰だって何も言わなくなる」

 

 思わず無言になった。

 考えてみれば、GはWの服装について何か言ったことが全くない。一般的なサルカズ傭兵の装いから変えた時も、彼は「あーうん」みたいなことしか言っていなかった。

 その答えがこれだったか。幼少の頃から共に過ごし、たまに洒落た服装もした事があっただろうに、Wは中々素直になれずに「ふふーん」みたいな態度を取っていたのだろう。

 

 確かに、Gでなくても何も言わなくなる。

 

 これはWが悪いな、とケルシーは一つため息を吐いた。

 

「ところで、君はお洒落はしないのか?」

「アンタも大概な物好きだよな……」

「話は聞かせてもらったわ。ファッションショーをやるのよねケルシー?」

「……いや、私はやらない。やるなら二人でやっててくれ」

「嫌よ。あんたのことだからあたしの知らないところで役得するに決まってるわ」

 

 突如として乱入したWを無視しつつ、ケルシーとの口喧嘩から目を逸らして、Gは無言で退出するのであった……

 

「逃げちゃダメよG」

「君が原因なのだからな」

(助けてモスティマ)

 

「てい」

「Mon3tr」

 

「──は?」

 

しかし まわりこまれて しまった !




Gくん
発想が啓蒙+10くらいの発想ばっかりしている人
人として軸がブレているので、仮にアビサルハンターの真相を知ってしまうと嬉々としてやりかねない
ケルシー先生を可愛いヤツと思うくらいには色々ヘン。ちなみに彼の好みのケルシー先生は修道士ケルシー先生

ケルシー先生
新イベントがファッションショーだった人
Gくんのアホ発想を全部ボツったら、色々とからかわれた
拗ねてるとか言われると、流石にムッとする。可愛い

W姉貴
乱入してくるとはとんでもない奴だ


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パロディモード:混沌聖夜・馬鹿騒

クリぼっちだったので初投稿です
最近執筆してなかったのでリハビリも兼ねて軽いのを書きました


「───今日はクリスマスだな」

 

 泥沼化したカズデル某所の戦場。

 

「ヘドリー、どうしたのよ」

「いや、不意に思い出しただけだ」

 

 戦況は膠着状態。

 遮蔽物に隠れながら隙を伺うヘドリーのボヤきにいの一番に反応したのはイネスだった。

 

「あらクリスマス。いいじゃない。歌いながら殺し合いでもしてみる?」

「……殺し合いかはともかく、この状況でなら僅かな時間を稼げるかもな」

 

 Wは茶化すように提案し、横でリボルバーに弾丸を装填しているGは例によって冷酷に告げていく。

 

「で、どうするんだヘドリー。迂闊に手を出すべきではないが───」

「無理をするべきではないな。許可するまで撃つなよ。だが……W。人員は好きに使って構わないからトラップを。向こうも同じ考えだろうな」

「りょーかーい」

「G。先陣を切れるか?」

「問題無いが……イネス、手を貸してくれ」

「足並みは揃えなさい」

「ああ」

 

 その時であった。斥候が帰還する。

 

「ヘドリー。ターゲットはどうやら孤児院に寄付するサンタを装っているようだ。子供も見えた」

「子供……あまりいい気はしないな」

 

 変に巻き込むとなればややこしいことになる。

 特に子供というものは、大人にとっての癒しのようなものだ。下手を打てば作らなくていい敵を作りかねない。さて困った──

 

「ヘドリー。オレに任せろ。すまんが武器を頼む」

「!? おい、G!」

 

 Gは武器を預け、そして去っていく。

 ───故に現れたのは。

 

 ブラックサンタだった。

 

 長い時間が過ぎても人はそう簡単に変われるものではない。

 

「クリスマスよ」

「邪魔だ」

「クリスマスだね」

「退いてくれないか」

「クリスマスだが」

「あんたに渡すもんはない」

 

 そういう行事など心底から興味が無い。

 そしてこういう平和なひと時というものに身を浸した時、どうしたらいいかわからない。

 なので素気ない対応をする。

 ───この男はそういう生き物であった。

 

「ドクター」

「どうした?」

「仕事を寄越せ」

「……まだやるのか?」

「仕事」

「無い」

「じゃあなんか雑用、パシれ」

 

 製薬会社であるロドスには、クリスマスなどただの平日だ。というか祝日など存在しない。年中無休だ。

 

 ただそんな彼らとて諸々の都合上、仕事の無い日がそれに該当することもある。

 そして戦いの申し子、異端のサルカズ、最強の信奉者たるGは───平和なひと時に一息付く日に限って仕事の無い日になってしまう、そんなジンクスがあった。

 クリスマスのこの日も例外では無く、彼は休日を自主返上してドクターの補佐をやっていた。

 

「世間はクリスマスだってのに、働き者はいるものねぇ?」

「第一、顔も知らんヤツのことを祝ってどうする」

「風情が無いわね。詩とか本には興味を示すのに、どうして祝日には興味ないのかしら。そういうところよ、まったく」

 

 そして今日の秘書はなんとW。

 運の無い男である。

 心底からどうでもよさそうなGを見て、ため息を吐くW。そんな二人に挟まれてはさしものドクターとて。

 

「二人ともサボっていいんだけどなあ」

 

 ───別に何とも思わない。

 

「断る。流石に浮ついた子供たちの前に現れたくない」

「お断りよ。平和ボケした連中の平和ボケを眺めるのがいいのであって、一緒に踊るのはごめんだわ」

 

 このサルカズ語を一般的なテラの公用語たちに直そう。

 

 G『子供たちに悪影響及ぼしたくない』

 W『嫌いなヤツが楽しいところに現れて欲しくないでしょ?』

 

 サンタみたいなカラーリングの女とブラックサンタみたいなカラーリングの男はなんだかんだ言って気遣い上手なのだ。

 

「はいはい、二人ともそーなんですね」

「なによその言い方」

 

 サルカズ語3級なドクターにとっては、この程度の翻訳は手遊びに等しい。

 

「あ、そうだドクター。そこのバカの面白エピソード教えてあげる。クリスマスにちなんだね」

「やめろ」

「まだあんたたちと出会う前にね、依頼がたまたまクリスマスと被ったのよ。依頼内容はごく単純、ある人物の暗殺。方法は問わないけどスマートにやってくれって至って普通の暗殺依頼。ただ一つ問題があってね」

「要塞とか?」

「そいつの居場所が民間居住区……それも難民たちを受け入れている場所と隣接してたのよ」

 

 伝えられた状況から素早く戦場を描き俯瞰。彼らの能力と作戦目標を考えてから、問題となっている部分を組み込んで──対抗策まで考えそうになったのをカット。

 

「なるほど。狙撃は難しく、Wはできないこともないが犠牲が大きすぎる。Gではまず無理。そして他の傭兵たちも手をこまねいた。というところか」

「せーいかーい。賢いわね、さすが『ドクター』」

 

 ウキウキとしたWとは正反対の、普段より輪をかけて沈んでいるG。彼に纏わる面白エピソードとは言うが、一体何なのか────ドクターは続きを促す。

 

「もういいだろ」

「で、結局あたしたちは作戦を強行した。潜伏がバレるのも時間の問題だったから、民間人への影響を無視せざるを得なかった。いくらサルカズ傭兵って言ってもね、そういうのは好まないのよ。あたしやこいつは例外だけど」

「で、オチは公衆の面前で殺したブラッディクリスマスだったのか」

「いいえ。この話はここからがミソなのよ」

「W」

 

 静止の声を無視してWは笑顔のまま続ける。

 

「ターゲットはサンタの格好をして子供たちと触れ合ってた。子供たちは無邪気にはしゃいでたわ。目の前のサンタが多くの恨みを買っている奴とは知らずにね。そんな状況にあたしたちは困り果てた。傭兵に付いた悪名ってのはそう簡単に取れない。特に傭兵部隊が再編成したばかりだと、民間人の前でサンタを殺した傭兵団なんて評価は足枷になる。商隊を襲うのとは訳が違う。何をしでかすかわからない傭兵なんて誰でも怖がるでしょ?」

 

 商隊を襲うのはまだ合理的だが、無関係な人物の前で暗殺するのはあまり良くない。特にその関係性が不明瞭な場合など、変なところで妙な恨みを買う恐れもある。更に言えば、スマートな暗殺とはそういう暗殺ではない。強硬手段を取るということは、それ相応リターンが無ければならない。

 

「そこでこのバカは───」

「黙れ」

「近くにあった商店でサンタの衣装を買って着替えて、その男を素手でぶちのめしたの。うろ覚えのクリスマスソングを歌いながらね」

 

 え、なにそれ。

 ドクターの頭は混乱した。

 

「……」

 

 嘘かと思って件の人を見たら無言で顔を逸らした。気まずそうに。ということはどうやら────真実らしい。

 なんとも言えない空気を投げ捨てるが如く、カラカラと笑いながらWはその珍事の仔細を語り始めた。

 

「あれ笑っちゃったのよ、みんな。黙って武器を預けて神妙な顔で移動したと思ったらサンタのコスプレして現れて、その次はクリスマスソング適当に歌いながらターゲットに向かってローリングソバット。そのままマウント取って気絶させて持ち帰っちゃうんだから」

「つまり?」

「こいつにサンタやらせない?」

「やらせよう。───ケルシー!」

 

 鶴の一言に合わせて、色々なバカたちが飛び出してきた。

 Gは固まった。生きていて誰にも見せたことのない表情で困惑している。

 

「話は」

「聞かせて!」

「……もらった」

「W! ケルシー! ブレイズ! ロスモンティス! レッド! エンカク! スズラン! Gにジェット・セット・エクストリーム・アタックをかけるぞ!」

 

 ドクターの掛け声と共にバカたちが一斉に襲いかかってくる。

 

「待てレッドとエンカクは──は? スズランとロスモンティスだと!?」

「いい機会だから、いい加減に意地張るのをやめたら?」

「クソ、オマエほどの女が何故だロスモンティス!」

「木彫りのおじさん、サンタさんだったの!?」

「おじさんサンタさんじゃないからね!? おじさんはサンタさんのカッコしたことあるだけだよ!」

「お前、前におじさんはやめろとか言ってなかったか?」

「やかましいぞエンカク!」

「あら、おじさんらしい趣味じゃないG」

「何処がジジくせぇんだ!」

 

 バカな──!? と叫びながら人の海に溺れていくG。

 一体誰がこんなことを、と思って辺りを見渡せば物陰から見える蒼と紅の頭。なるほどなるほど……と認識した彼は有らん限りの怒号を飛ばした。

 

「モスティマァ! エクシアッ! テメェらなァ!」

「いやあ、クリスマスくらい慣れないことしたらどうかなって」

「サンタやれば仕事増えるよ〜」

「そういう意味では──うぉぉぉぉぉっ!?」

 

 そしてロドスでは、仮面のサンタが誕生したとさ。

 

 

 そして仮面サンタは散々辱められた後、ガックリと肩を落としながら同胞の所へと救いを求めに行った。

 

「……酷い目にあった」

「妾の勝ちだなクロージャ」

「くっ、なんでもっとこう抵抗してくれないのG」

「Wに何でもするとか言われてはなぁ」

 

 ぼけーっとした顔でそんなことを呟かれては、ワルファリンとクロージャも唖然とする。そんなことで釣られなさそうなこいつが、どうしてそれで諦めたのか。

 

「ナニをさせるつもりだ? G」

「んー……ミニスカサンタのコスプレでもさせて写真撮って顔見知りたちに見せてやるかねぇ」

「ぶっふぉ……あのWのミニスカサンタ姿ってちょっとなんか、キツくない?」

「普段の悪ぶりようから考えれば……ククッ、いかんな。そんなものを見たらケルシーでも笑いそうだ」

 

 どんな反応をするのかとワクテカするブラッドブルードたち。

 

「あ、あんたら……」

 

 しかし半身が何処へ行ったのかと追いかけたWはそんな会話を耳にしていたわけで。

 

「え、なによG。あんた可愛い女の子のサンタ服とか見たかったの?」

 

 ニヤニヤとしながら即からかいに移行する彼女の変わり身は流石としか言いようがないが、一方で詰められている彼はどうでもよさそうに一言。

 

「いや別に」

「は?」

「似合わなさそうだから、着せてみたかっただけだが。そもサンタ服が似合うのはクロージャだろうしな」

「妾はブラックサンタという方であろう?」

「オレもな。そこのバカは……何を着ても色気なぞあるわけでもなし。クロージャの方が可愛げがある」

「……待って? 私消極法?」

「然り。というかオレらみんなサンタってガラじゃねえだろ。サンタクロースというかサタンクロースだろう。吸血魔、戦闘狂、爆弾魔、機械狂。ほら、サンタも近づかないラインナップ」

「吸血魔……いや吸わなきゃダメだろう、種族的に」

「爆弾魔って、あたし爆弾しか使えないわけでもないんだけど?」

「機械狂じゃないもん! 人並みには他の物に興味あるよ!?」

「……なんとでも言ってろ。とりあえず、オマエらが色気ありそうな格好をしても目の保養にもなりやしない、萌えないゴミってのには変わらんからな」

 

 刹那、WがGにタックルをしかけてマウントを取った。その表情は羞恥とか嫉妬とかなんかこう色々混ざっている。流石に萌えないゴミ呼ばわりは効いたようだ。

 一方ワルファリンは「まあそうなるな」と納得しているし、クロージャは「萌えないゴミ……」と沈んでいた。

 

「萌えないゴミに欲情したあんたが言えた口かしらねぇ?」

「それとこれとは話が別だ。退け」

「何よ昨日だって散々楽しんだクセに」

(性の6時間?)

(6時間だろう)

「誘ったのはオマエだろう」

「乗ったのはあんたよ」

「どうしてもって言うからだろうが」

「その割には準備が良かったじゃない」

「丸1日入り浸ってたアホの所為だ」

 

 こうして始まった口喧嘩はいつまでも終わらず、結局どっちかが話題を変えなければならなくなる。付き合いきれないとばかりに、グダグダと惚気てるんだか愚痴を言ってるんだからわからないバカ2名を捨てて、賢いブラッドブルードたちは各々のリフレッシュスポットへと向かうのだった。

 

「……元を正せばオマエが!」

「いいやあれはあんたよ!」

「いつまでやっているんだお前たちは……」

 

 4時間後、様子を見に来たケルシーによって、この口喧嘩は終わりを迎えたそうな。




Gくん
木彫りのおじさん
さんた・にこらうす様を本当にやった人
ミニスカサンタのWを見たかった

W姉貴
Gくんの黒歴史を暴露した人
まんざらでもなかった

ドクター
クリスマスも仕事の人

ケルシー先生
クリスマスも仕事の人
バカ一号

ブレイズ姉貴
クリスマスにはシャケを食べる派
バカ二号

ロスモンティス
クリスマスはドクターと過ごす派
バカ三号

レッド
クリスマスはサンタ役をやりたい派
バカ四号

エンカク
クリスマスとかどうでもいい派
バカ五号

スズラン
クリスマスは楽しみな我らの光
植物エリアで木彫りをしているGを『木彫りのおじさん』と呼ぶ
エンカクに木彫りのおじさんをサンタにしよう作戦を吹き込まれ、乗った
バカ六号

ワルファリン
ブラックサンタならやってくれる人
クリスマスよりハロウィン派

クロージャ
クリスマスとか関係無い人
萌えないゴミは流石に効いた

ジェット・セット・エクストリーム・アタック
某有名な三連星のフォーメーションのパロディ
わかった人は破壊神


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ロドスチャート編
再試走


お久しブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブリ大根ですわ。
ということで今回からロドスチャート編です。
多分傭兵チャートよりも短い話になると思います。


 どうも、脳に鉱石を得た一般投稿者です。 

 どうしたぁ? 付け合わせのミックスベジタブルを見るような目で俺を見やがって……なんで今また投稿してるかって?  

 

 

そういやロドスチャートやってねえなって気が付いたんだよォ! (ハンバァァァァァァァグッッッッッッッ!)

 

 

 ……というわけでですね。今更ですがロドスチャートというか研究職チャートやってなかったなと気が付いたんです。傭兵チャートって人間関係断ち切りやすくて能力は上がりやすくても武装更新がめちゃくちゃ難しいんです。

 そういうわけで、ステータスにある一定の完成度を持った状態で武装更新と(できれば)人体改造で何処まで可能性を伸ばせるかとタイム試算を行うためにこれからロドスチャートの試走始めます。

 

 はい、よーいスタート。

 

 そんなわけでロードするデータはテレジア死亡直後のGくんのデータ。今回はW姉貴について行かず、バベルに残ってケルシー先生の横で好き勝手にやり続けることを目的にします。人間関係が煩わしいですが、これがどれだけの実際ロスになるかを知るための調査も兼ねています。

 要は実際にやってみないとわからんこともあるだろ、ということです。ドクター暗殺RTA兄貴がレユニオンチャート走り始めたことに着想を得ました。ちなみに学会ではブレイズ心中RTAが研究中らしいですよ。発表されて以来、ヤンデレブレイズに死ぬほど愛されて鉱石病くらいでしか死ねないチャートとして研究はされていましたが、上手に心中されようと頑張っているそうです。

 

 いやあ、怖いですねえ。

 でも私は健全な最強を目指す少年なので、みんなも最強になって、屍の上に立とう! 

 

 そういうわけでW姉貴に脱走と復讐を誘われますが断ります。ごめんね……

 

 >……Wと共に行く未来もいいが、しかしオレにしかできないこともあるはずだ。敢えて道を違えることで、オレたちは更なる深みへと辿り着けるのではないか? そしてオレの望みはただ一つ。Wの道とは相容れない。

「すまない」

「……知ってた」

「────」

 有無を言わせず彼女を抱き寄せる。

「なによ、今更」

「離れるからな。オマエの鼓動は覚えておきたい」

 なんて言ったが、これは理由の一つに過ぎないのだろう。そんな気がする。色々な感情が浮かんでは消えて、そして胸の中の鼓動だけが残る。

 顔は見ない。見る必要などない。

「殺すのはオレで、殺されるならオマエだ。それを忘れるな───。オレは忘れない。何があっても、オマエ以外に運命は無い」

「ありがと、───」

 その言葉を聞き、離れる。

「生きろW。テレジアもそう言う」

 気休めの言葉だと知っていても伝えたかった。そんなオレの言葉に彼女は少しだけ唖然としてから、寂しげな笑顔で一言。

「頼まれなくたって生きてやるわ」

「それでこそだ」

「じゃあねG」

「またな」

 部屋を去っていくW。いつか必ず───殺し合うぞ、オレの運命。その時までオレは死なないし、オマエも死ぬことはない。何故なら互いこそが真なる運命だからだ。ならば片方が片方の知らぬところで死ぬなどというのは絶対に有り得ない。

「一蓮托生、ならば……」

 だからオレはオレのやり方で、オマエはオマエのやり方で、この血の対価を払わせよう。そしてその先にこそ。

 

 というわけでロドスルート確定です。

 しっとり確定W姉貴と敵対する上、こちらの好感度も高いので「柱間ァ!」「マダラァ!」みたいなことになります。認識してしまうとそうなります。制御不能です。できる限り避けましょう。

 

 >結局、残ったメンバーは少ない。テレジアがいたからとかカズデルに関わってるからとか、そういう理由で身を置いていたヤツの方が多かったのは事実だ。見知った顔のほとんどもいなくなり、袂を分かったと実感したのはやけに広い艦内を見て回ってのことだった。テレジアもいない、ドクターもいない、Wも、ヘドリーも、イネスも……

「あの部隊の関係者で残ったのは君だけか」

「意外か」

「残る可能性はいくらでもあったが、残らない可能性の方が高かった。確かに私の感想を単純に表現すればそうなるが、とても一言では言い表せないな」

 横に座るケルシーは、結局オレだけが残ったことを予期していたとは言っている。つまりそれは、この奥底にあるオレの願望の欠片ではなく、しっかりと塊を掴んだという証拠でもある。

「鉱石病問題の治療と対処、だったか。残った連中も大半が傭兵だ。いくらワルファリンやアンタが寝食を惜しんで解明しようにも、闇をまずは照らすところから始まるぞ?」

「わかっている。だがやらなければならない」

「ついでにクロージャの頭を押さえつつ、あの小ロバも育てながらか」

「あくまでも私は知識面での教育だ。触れ合いは他の者に任せる。クロージャは君がやればいい」

 休憩は終わりだと言わんばかりにケルシーは立ち上がる。オレもインテリの真似事をしなければならないが……いっそ、肉体を鍛えるよりも知識で強くなれるかを確かめて、できそうなら真似事から本業にしてみるか……? 

 浮かび上がる選択肢を、オレは

 ────

 オレにデスクワークはできんな

 >座るのも悪くないかもしれん

 ────

 

 キャラクターを戦闘ばかりに鍛えていると中々デスクワークに向かってくれなくなるんですよね。脳筋ゴリラに計算は無理というヤツです。その逆もまた然り。まあ真っ当な神経していれば合わない仕事を好んで続けることを是とすることはないでしょうが、Gくんはほらバカだから、戦い以外に行こうとしたら嫌々言うんですよ。ほんの少しでもズレるだけで嫌がるんですよ。

 あ、このルートだとタルラと黒蛇の真実が見えないので、当然の権利の様に万物滅殺の最強ルートになります。コワイ! W姉貴という苦痛がいない上に銀幕の向こう側の怪物を一眼でも見ることができないからね、しょうがないね。

 まあだいぶ緩やかになってるし、W姉貴との殺し愛を優先するケド。

 

 >「ケルシー」

「まだなにかあるか」

「研究職と政治関係の補佐、いるか。ついでに戦闘も十分にできる上に実戦経験も豊富だ」

「……仮にWたちを呼び戻すのであれば、新たなバベルが軌道に乗り出してからになってしまうぞ。それどころかテレジアのいないロドスに価値を見出すか。他ならぬ君自身が理解しているはずだ」

「違う。そしてYESかNOで答えろ」

 きっぱりと言い切れば、惚けた顔を見せるコイツは珍しい。普段のケルシーならばオレの言いたいことがわかるだろうに。

 ケルシーはしばらく沈黙した後、首を縦に振った。つまりはYES。戦力は低下し、わかるヤツらも減ってしまった。それこそ喉から手を出すほどに人材はバックは欲しいだろう。組織というのは人と後ろ盾があって初めて機能するのだから。

「目の前にいるヤツとか適任じゃないか」

「……君がか? できるのか? というか、やってくれるのかG」

「どうせ暇だ────というと嘘にはなるが、戦うだけが傭兵じゃない。それにわからんヤツらを教育するよりも多少はわかるヤツを少し仕込んで後は勝手にやらせた方が何かと都合がいいだろう」

 ケルシーは更に沈思黙考した。大方、オレが本当に新しいバベルのために動くかどうかを考えているのだろう。まあそうだ、オレがコイツらに味方していたのはWがいたからとテレジアへの義理だけ。双方を失ってしまえば共に立つ理由が無い。

 だがケルシーに色々と教わったという義理もあるしな……まあ腐っても色々と縁はある。役に立つ立たないはともかくとして、使えそうなら片っ端から使ってやるさ。

「君の本音が聞きたい」

「『君はもう本当はわかっているのではないか?』」

 願望には触れさせてやるが、魂には触れさせてやらん。オレの運命はただ一人。たとえそれがケルシーであったとしても、そう簡単には触れさせない。

 なのでヤツがよく言うセリフを返してみた。

「……G」

「睨むなよ」

「本音を聞かせてもらおう。最強を目指しているのは知っている」

「ならそれが答えだ」

「そのために、我々を裏切るのか」

「裏切りが必要になればな。普通にやる分なら、素直に出てって素直に正面から行くさ」

 裏切るとはすなわち、陣営を内側から破壊すること。別にそこまでする必要も感じられないが、やらなければならないならやるだけ。

「相互破壊確証だったかな、双方が確実に仕留め切れるものを持っていればビビりあって撃てなくなる……って理論」

「ああ。概ねその理解であっている。そうなれば君は、私たちに監視をしろと言っているのか」

 ケルシーは初めて、オレに対してドクターを見ていた視線と同じものを向けた。今までは手のかかる反抗期のガキでも見るような視線だったが、それらが全て変わった。よく見れば表情も冷たい。

「そうだ。オレが不安定要素なら取り除けるようにすればいい。不安定要素であることを自覚しているんだ、迂闊なこともできまい。そうしてオレはオマエたちとは利害の一致で共闘する存在になる」

「ではいつ裏切るかもわからない存在を中枢に置けるわけがないと、理解しているだろう。私からはその申し出を断る以外に選択は無い」

「手綱を握る自信が無いのか? 冗談、腑抜けるなケルシー。付き合いの長さだけで言えばヘドリーとイネス、あの二人と大して変わらんぞ。そんなオマエがオレのようなバカを制御できない筈がない」

「Wがいたからだろう」

「いなくても大して変わらなかった」

 何をバカなとか呟かれたが、実際いようがいまいがあの傭兵団でのポジションは変わらなかった。まあいたから、あれくらい受け入れられたのかもしれないが……

「────で、どうする? オレを使うか? それとも飼い殺すか。あるいは……ここで、敵になるか? なんでもいいぜオレは。選べよケルシー。今のバベルの指導者はオマエだ」

 さてどうする、ケルシー。

 

 あ、ちなみにこんな会話してますけど、これ好感度稼いでなかったら不穏分子として即処分とか有り得ますからね。傭兵チャートでは無駄行為だった好感度稼ぎもこういうところに生きてくるんです。ガバが起きても即セカンドプラン、これRTAの鉄則……ま、これ RTAじゃないんですけどね。

 

 >ケルシーは色々と考えた後、ため息をひとつ。そして呆れた顔で告げた。

「そういう提案をして、自分ならこうするということを告げるなど、腑を見せているようなものか。察するべきだったな」

「では?」

「いいだろう。その申し出、受けてやる。ただしこちらに対する不利益が確認された場合、お前を裏切り者として抹殺する。いいな、G」

「ああ構わない。よろしく頼む、ケルシー」

「それと君はこれから名実共に私の弟子だ。師である私とこの新しいバベルを貶めるような真似はするなよ」

「弁えてるよ……ああそうだ、テレジアの髪の長さは確か────ここくらいだったな?」

「それがどうした?」

 キョトンとした様子のケルシーに、オレは悪戯っ子のように笑いながら。

「リスペクトさ」

 "正義を貫き通した偉大な先人"への敬意を表するのだと、宣言した。

 

 そういうわけでこれからは政治屋兼研究者として働くことになります。戦闘から離れますが、どーせゴタゴタしているので色々な戦場に放り込まれるでしょう。戦闘行ってねは突発イベントなのでコントロールは難しいです。

 で、人材はケルシー先生が勝手に拾ってきたり集まってきたりするのでスルーでオッケーです。人に構っている暇があったら研究して武器だの防具だのを作成し、自己改造だのなんだのの成功確率を上げて行きましょう。

 ここからは本を読んだり政治捌いたり鉱石病研究したり上司として指示したりとか退屈なので加速します。

 あ、ちなみに監視役はScout兄貴になりました。話しやすくてありがとー! フラーッシュ! 

 

 >……バベルの残骸がロドス・アイランドという名の製薬会社になってからかなり経った。鉱石病治療専門の企業であり、鉱石病患者にも分け隔てなく接することから瞬く間に人が集まった。鉱石病の研究を続けている人間も来たこともあって、オレは政治部門と医療部門から離れて結局総合研究部門の管理人になっていた。同時にエリートオペレーターであるが、ケルシーの指示で動く私兵。なのにS.W.E.E.P.の連中とは別口。全く窮屈なことだ。

 最高責任者はアーミヤとケルシー。まったくわかりやすい構図だこと。そこにドクターを加えればほら、バベルの残影というわけだ。ケルシーのノスタルジックも結構深いらしい。まあヤツはいないのだが。

 オレも研究者や学者としてはそこそこ有名にはなった。暇潰しに出している論文が学会で受けたりしているそうだ。オレの見識を求めてロドスにやってくるヤツもチラホラと増えている。

 そんなことよりも、オレは兵器開発やら人体改造の研究を進めたいんだが。

「────で、お前さんは黒いスーツに黒いネクタイ締めて、白衣を肩から羽織る嫌な奴になったと」

「……どうして残ったかを聞きに来ただけならさっさと出てけ。まだ仕事があるんだ」

 監視役ではあるが、割と暇しているScoutは何故かオレの部屋に入り浸っていた。

「髪は伸ばしてたの、なんでポニテにしたんだ?」

「伸ばしたはいいが鬱陶しくてな。纏めた」

「今のお前のカッコ、結構洒落てるよな。Wの横に立ってもよく見えるだろうよ。髪飾り状のアーツ制御ユニットもバッチリ決まってるぜ」

 ケラケラと笑っているが、言われるコッチとしては何故そこでWの名前が出るのかが不思議で仕方ない。というかオマエ、ロスモンティスの世話任されてたろうに。

 ちなみにアーツ制御ユニットは、ケルシーがアーミヤに渡したもののデータを流用して作り上げた。能力増幅と制御系の向上を目的としているから、方向性としては正反対だが。おかげで生体電気のコントロールがかなり良くなった。ロスモンティスに移植された感染器官のデータが入ったのもデカい。

「やかましい。からかってるならロスモンティスのところにでも行っておけ」

「あいつはもう立派に独り立ちできるよ」

「ふん、どうだか……ブレイズはどうだ」

「面倒見てやってるお前がわかってんだろG」

 

 加速中の出来事ですが、アーツの使い方がおかしい点とかを何処からか知ったブレイズ姉貴に弟子入りされて師匠してました。ブレイズ姉貴は才能の塊なので、一緒に訓練するだけで色々と得るものがあります。

 ロスモンティス姉貴とは……まあ、それなりには仲良しですね! (お互い苦手なところ多数)

 

 >ブレイズ……面白い女。まあ、何処かのアホを思い出したのもあったのだろう。比較的多めに世話を焼いてしまった。

 ロスモンティスとは────アイツが記憶障害を抱えているというのはあるが、なんというか絶妙にお互いに噛み合わなさを感じている。無論、それなりに上手くやろうとは努力しているが、何かこう……すれ違っている。互いに自覚的なのが救いか。

 他のヤツらとはそれなりに。あくまでも上司として接することが多い。患者とも医師としてという点ばかりだ。結局、ありのままのオレを見せられる瞬間は少ない。窮屈だ。

「……何処かのバカを思い出したからかもな」

「そういや、お前手紙出したんだってな」

「返信は期待してないし、届くことも期待してない。知ってそうなヤツに託しただけだ」

「素直じゃねえよな。……出てっても誰も責めなかったろうに」

「オレにはオレの道があった。ヤツにはヤツの道があった。それだけだ」

 少し前のオレからは想像もできない日々だ。嫌気が無いということもないが、しかし実際自分をより強くしていくものを研究できるのは嬉しい。しかもそれを鉱石病治療の為だとか色々言い訳を付けながら、豊富な予算で調べられるなど。そして実際鉱石病治療に役立つ部分があれば切り取って持っていく。文句はあるまい。

 ……まあ、クロージャ経由で色々と機材ちょろまかしてんだけど。

 

 あっそうだ(唐突)

 現在のGくんは装備を更新しており、アーツ制御ユニットのおかげでアーツ適性が一段階伸びてます。繊細なコントロールが可能になったのでかなりいいです。

 そしてこの黒スーツも特殊繊維を採用して自作したもので、防御性能も傭兵時代よりちょっと上がってます。問題は武器ですが……これは赤霄みたいな源石で直接鋳造した武器のデータをパクって自作中です。チェルノボーグに間に合わせたいところですが無理でしょう。

 見た目は黒いスーツ姿の、ボリュームあるポニテの黒髪青目の色白イケメン……うーんこの。

 総合的に見れば戦法は制限かけられてるし、傭兵時代のような無茶が厳しいのでどっこいどっこいってところですかねぇ。

 

 >「……で、雑談は終わりか?」

「ま、話すネタもあんまり無いし。邪魔したな」

「一応オマエ、監視役なんだがな」

「名目上だろ? ケルシーさんもお前が裏切ることはないってわかってるさ」

 ……ま、実際裏切ることなどするつもりも無い。裏切るメリットが無いからな。

「また来い。クセで紅茶を作り過ぎてしまう」

「今度は他の連中も連れてくるよ。スコーンも用意しておけよ」

 ヒラヒラと手を振りながらScoutは去っていく。オレは背もたれに身体を預けて、天井を見上げる。

「……オマエは今何をしている……何処にいる……早く来い。オレを殺しにな……」

「おーい、G〜」

「ブレイズ?」

 最愛の運命に想いを馳せようとしたら、その運命の面影を感じる女が乱入してきた。思わずガタガタと急いで身体を起こす。

 少し笑われた。クソっ。

「何しに来たドラ猫」

「そろそろ他の誰かじゃなくて私を見てーって言いに来たんだけど」

 

 わおバレテーラ。

 今回のGくんはどうやらW姉貴と離れたことにより運命を沢山見つけるよりもたった一つの運命に固執しているようですね。ブレイズ姉貴を鍛えたのもW姉貴味を感じたからというだけで、別にブレイズ姉貴個人への興味はほとんどありません。

 おい? 

 更に言えばロスモンティス姉貴のことも気遣っているけど、お互いの方向性が完全に反対だから絶妙に仲良くなれません。ま、やっぱり望まずして自分を滅茶苦茶にされた子と望んで家族を殺し同族を殺し自分を弄り回して、愛しい運命をこそ殺したいし運命にこそ殺されたいと願う狂人は仲良くなるのが難しいですって。

 こら? 

 そしてW姉貴に対するしっとり率を高めています。

 あかんですわ。

 ちなみに副官はクロージャ姉貴です。総合研究部門は文字通り様々な研究を雑多にまとめているので、クロージャ姉貴の万能さ加減からここにほっぽり込まれています。

 かわいそう。

 

 >……バレていたか。まるで昔の恋人を重ねられる今の恋人のように拗ねた声と顔。しかしそう言われてもオレには関係無い。

 というかオレの瞳からWの影を打ち消すほどの光を出せないのが悪い。さもオレが悪いように言わないで欲しい。

「他の誰か? 何を言っている」

 面倒なので惚けよう。どうせ問答自体が無駄なのだ。

「ボケるな! それでも私の先生か!?」

「やめろ。その呼び方他のヤツらに移ってるからな。この前アンセルやアドナキエルに先生呼びされた時は流石に困ったぞ」

「Gって可愛げのない名前ずっと名乗ってるからでしょ」

 意外とGの名前は呼びずらいようで、「Gさん」だと「爺さん」になるからとかで特に名前ではなく管理人とか先生とか……正直誰を呼んでいるのか紛らわしいからGで呼んでくれないものか。

 ガーっと吠えるブレイズだが、そんなことを言われても困る。この名前は特別な名前だ。

「その程度の用件なら出て行け。さっきScoutと雑談してて仕事が進んでないんだ。あと帰る前にそこのシガーケース、コッチ持ってこい」

 喫煙頻度は下がったが、別にオレは医者でもなし。この執務室で吸ったところで文句は……無いな。ああいや……レッドが嫌な顔するくらいか。

「そんなのだから不良先生とか呼ばれるんだよ」

「患者どもが。あとオレは医者じゃなくて学者。知ったことか。さっさと寄越せ」

 投げ渡されるシガーケースを掴み取り、シッシッと追い出す。不満げな表情のブレイズだが、オマエ一人に構ってる時間は無い。

 一人になったわけだし、そろそろ仕事を────と考え出したら通信端末が起動する。かけてきたのはクロージャ。……またなんかやったのか? 

「なんだバカ」

「G! 人事決まんないよ!」

「オマエの計画だろうが。オマエが草案くらい決めろ。計画を見てオレが適任だと思った人材を決めろとでも言うのか」

「だって人事上手じゃん!」

「他のオペレーターに自分だけができる分の仕事を押し付けるな。オレやオマエみたいなバカがそう簡単にいると思うな。オマエ宛のクレームが止まった日が無い。あとで現場シフト表持ってこい。どうせ休み取らせてないんだろ。無駄な仕事を増やすな」

「私エンジニアだよ!! なんで貿易所や製造所、その他基地内の設備の管理までしないといけないの!?」

「製造所に関してはオレたちの自業自得だ。諦めろ。貿易所に関しては購買部なんてモンを始めたのが原因だな。他はまあやるヤツもいないし……ところで各チームはどうした。こういう時の為のものだろう」

「え? 今は別の仕事に当たらせてるけど」

「何故」

「私がやった方が早いから。あと好き勝手できないから」

「……自分から仕事を増やしてどうする。何のための3交代チーム編成だ、バカバカしい。オレがクロージャ、オマエを自由にさせているのはペース管理くらいできるだろうからという信頼からだったんだが────説教が山ほどある。楽しみに待っていろよ」

 そう言って通話を切った。

 ────クロージャのワンマンプレイもいい加減にして欲しいものだ。バベルの頃の感覚でやれるほど、人がいるわけでもあるまいに。

 どうせオマエが好きにしていても誰も文句を付けない。何故そうやって誰にも見られない時間を作るのか。オレなんて個人端末からレイジアンの社内製品データにアクセスしたの仕事中だぞ。

 

 はい、赤霄のデータぶっこ抜くためにレイジアンにハッキング仕掛けました。もちろんクロージャ姉貴に手を貸してもらったので、その借りもあってかなり自由にさせてます。

 

 >……まあいい。仕事に戻るか。

 ケルシー曰く、そろそろドクターが何処にいるか割れるそうだからな。身構えていることに越したことはないだろう。

 

 武器は間に合わないな。下手したらパトリオットおじいちゃんと鉢合わせるかもしれないってのに。

 次回はドクター救出編からになりますね。

 ご視聴、ありがとうございました。




Gくん
ロドスルートに乗ったので総合研究部門管理人を務めながら、ケルシー先生だけが使えるエリートオペレーターとして汚れ仕事を担当している。
人を育てたり研究したり好き勝手にやったりと忙しくなった。
軍用ロングコートと傭兵衣服から、黒いスーツに白衣を羽織るスタイルに。テレジアリスペクトで髪も伸ばしてポニテにしている。
W姉貴がいなくなってしまったので異常なまでに彼女に拘り、彼女以外の存在は運命になり得ないとまで切り捨てるくらい頭がおかしくなっている。更にロドス内でも独特な雰囲気と立ち位置のお陰で本質を理解できない人の方が多く、あんまり慕われていないケルシーみたいなポジションに。
ブレイズ姉貴に構っているのはW姉貴の雰囲気を感じたからという理由しかなく、ブレイズ姉貴の事をカケラも見ていない。アーミヤのこともテレジアの後継としか見えてない重症っぷり。ロスモンティス姉貴やら行動隊やら予備隊やらライン生命組やらBSWやら、色々と関わっている人は多いが、ほとんどの相手にはストイックな学者として振る舞っているため本来の苛烈な性格は旧バベルメンバー以外知らない。
ケルシー先生には獅子心中の虫扱いされているが、下手に下の立場にするよりも上の立場で忙殺した方がいいと判断されて管理人に。とはいえお互いにそんなことは無いとしているので監視役のScout兄貴もテキトーな対応をしている。
自己改造よりも武装開発などで自身を強化する方針に行った。戦闘能力は変わらず。

W姉貴
Gくんと別れて原作ルートへ。
生きろのギアスがかけられてしまったので原作よりも気合いと根性がやばくなった。

ケルシー先生
獅子心中の虫としてGくんを飼い慣らす人。
最強を忘れて生きて欲しいと思う気持ちはまだあるが、上司と部下になってしまった為、接する時間は少なくなり、W姉貴を運命と定めて失踪し始めているGくんを遠巻きに見るだけになってしまった。

クロージャ姉貴
変わらず接してくれる友達。
二人でバカやって、ハッキングとか色々好き勝手やっている。

Scout兄貴
変わらず接してくれる友達。
段々とおかしくなっていくGくんを心配して、色々な人をぶつけてみたりしている。

ブレイズ姉貴
師匠と弟子の関係。
傭兵チャートと違い、W姉貴と似た雰囲気を感じる相手としか認識されていない。
師匠が一切弟子を見ていないことに腹を立ててアピール中。


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震える走者

ただ泣きたいので初投稿です


 >────ドクターはチェルノボーグにいる。ロドスの戦力のほとんどを投入し、これを奪還する。もはや部の悪い賭け、ただの博打だ。

 

 どうもこんにちは。

 一般投稿者です。

 ちょっと時は進んでドクター救出作戦の組み立てからですね。

 

 >「アーミヤも投入だと?」

「本人が希望した」

「ふん、踏ん反り返って部下どもに死ねと言うのが仕事だろうが。道楽やら子供心やらで出撃されても邪魔だ。弾けケルシー」

 天災が来る前に合わせてのチェルノボーグ突入作戦……正規軍との戦闘は確実、更に言えば最近活動が活発化しているレユニオンも便乗する可能性がある。考え得る最悪の事態が重なる危険────こういう時にモノを言うのは戦闘経験値の差だ。

 強い弱いなど、簡単にひっくり返せる。単純な武力だけで戦局を覆せるのは、その武力が極めた先の先であること……この世ならざる圧倒的な伝説の中の伝説、すなわち最強の字を頂く天頂の星でなければならない。

 ケルシーを見る。まあお互い、鏡写しのように冷たい表情をしていることだ。

「ダメだ。士気高揚も兼ねている」

「……鉱石病を治すためのロドスに必要な人を、これから全戦力を投じて奪還しに行きます。偉い人もみーんな出て行くので顔も知らない人のために死んでくださいってか?」

「身も蓋も無い言い方をすればそうなるが、そういう意図が無いことくらい君もわかっているだろう」

「どうだか」

 ドクター一人の為に全戦力を投入など、バカバカしい。確かに行動予備隊の連中も使えるようにはなったが……練度の高い部隊を相手取っても正面では3分行くか行かないか。しかもケルシーまで出るという。そうなれば予想されるのは撤退戦……それも不利な状況でだ。

「ヤツの命に命運がかかってるなどと。沈む泥舟はお断りだが」

「君がその気になればここから脱走するのも容易いだろうに、何故ここにいる」

「わかっていて聞くのか? バカかオマエ」

 

 ん? あ……やべ。

 人間関係ガン断ちの影響が変なところに出てる……沈む泥舟呼びしてんならなんでいんの? みたいな問答は大幅ロス確定────! 

 

 >「最強を目指して何が悪い? オレはそういう風にしか生きられない。そう決めたから。オレがここにいるのは、最強の足掛かりであると同時にテレジアの死の真相を知りたいからだ。邪魔するなケルシー。生きて欲しい? 生きるってなんだよ。オマエの生きるとオレの生きるは違う。どうせ最後は死ぬのが生物だ。なら自分のやりたいことをやりたいように貫き通してこそ生きるってもんだろ? 多少妥協はするにしてもな」

 

 あっやめて暴走しないでお願いだからケルシー先生に喧嘩売らないで。しっとりケルシーはヤバいからやめてお願い。

 ……えー、最強目指しているのを隠しながらロドスでそれなりには普通にやっているからどうやらケルシー先生に今は置いているのではと勘違いされたようですね。W姉貴を選ばずに、口ではアレコレ言いつつも精々ハッキングくらいしかしなかったからもしかしてと思われたみたいですね。

 残念ながらこいつは……モンスター。俺の中で沸き立つ、(記録出ないことへの)怒り、(乱数最悪だったり本走しようとした時にレア引いてエンジョイになったりすることへの)憎しみ……つまり、俺そのもの(ままならない現実を踏み潰したい存在)だ。

 いや私は単にガバしてるだけですけど。

 

 >「オマエはWじゃない。運命なんかじゃない。オレの生にはなり得ない。オレの死にはなり得ない。その程度のヤツがオレに口を挟むなねじるな揺らがせるな。オレは既に自らを自我を以て道を開く剣とした。最強になると決めたあの日からな」

「G」

 胸倉を掴み上げられて壁に押し当てられた。

「私は君がそうやって破滅に向かうことを望まない。何故そうし続ける。君の周囲にいる人間はそれを望むことは無い。君はもう少し自分の周りに、私以外にも君に生きて欲しいと思う人物がいることを自覚するべきだ」

「言葉で救って来れた程度の連中と同じにするな。オレを救うなどと宣うならば全身全霊を懸けてみろ。片手間に相手していればいい連中とはワケが違う。オレを侮るなよケルシー。数千年生きてマトモであり続けられる程度の存在が、たった数ヶ月で同族皆殺しを企てたヤツを指先だけで拾い上げられるとでも?」

「指先だけで君に触れているつもりは……」

 すぐさま振り解き、逆に壁にケルシーを追い詰める。少し驚いたような表情だ。

「指先だろうが! オマエにオレの何がわかる!? あの日見たクイロンの伝説を! それがオレにもたらした熱い憧憬を! 感動としか表現できない心を! 福音にすら似た響きが胸を満たす感覚を! 死にかけの女の瞳に見た生へと渇望を! 何も知らない、知ろうとしなかったこれを指先と言わずに何と言う!?」

 実際、ケルシーは察していただけだ。それがどういうものから生まれたかは知らない。語っていないだけ、とも言えるだろう。一種の逆上だ。しかし、オレの本音を語ってもいいかと思えるような相手ではなかった。何故ならこの女は他の道を示してくれた恩師だから。

 付かず離れずが一番いいのだろう。だが間違えてしまった。ケルシーはテレジアでもWでもない。オレの宿命、オレの運命ではないのだ。

「オレが何故あんなつまらないヤツを演じているかわかるか? 精神感応のアーツを警戒しているかわかるか? どいつもこいつもウザったるいからだ。オレの求道を、たった一つの冴えた答えを! アイツらは自分達の人生ってヤツから簡単に否定する! そこにどれだけの想いが込められているかも理解せずに!」

「破滅に向かう道は生きるということではない。断頭台へと行進しているだけだ。理解しようともやめてくれと言葉にするのは当然だろう」

「一つの事柄に執着すれば、狭量な価値観だと嘲笑われる! 周囲に合わせて柔軟に対応すれば、八方美人と蔑まれる! 厳とした自分を持つだけで、他者の言葉は否定の剣に姿を変える! ならば世渡りを極めれば、自我が希薄だと冷笑される! 有刺鉄線で作られた茨の森が現実だ! オマエたちの言う"生きる"など、要するになあなあってことだろうが!! そんなモノは家畜にでも喰わせろ!」

 オレにはできない。

 できなかったからこうなっている。できていればオレは虐げられたブラッドブルードとして復讐し、そしてカズデルの内戦の何処かでくたばっている羽虫に過ぎなかったろう。

「オレが求めるのは無敵の幻想、生の希求! 全身全霊を懸けて手に入れる最強という名の現実! そしてオレの前に立ち塞がるべき最強の運命! 現実は辛く苦しいし大変だけど、幻想になってはいけないから飽いていろだと? 飢えていろだと? それはオマエらが勝手にやってりゃいい! オレはこう生きてそう死ぬ! 道端の塵芥どもがこのオレの邪魔するな! 愚かな矜持だ無意味な時間だ独りよがりだ恥ずべき行為だ? ふざけるな。賢い貌して言えば相手が素直に頷くとでも? 死ねよオマエら、塵屑だろうが。向いてないだのなんだのと、そんなことはわかってんだよ。オレが望んで病まない称号は全身全霊を懸けても姿すら見えない。なのに最強の道探しに始めた学者業ではあっさりと終着点が見えてくる!」

 あまりにもバカらしくて笑ってしまった。向き不向き、やりたいことできること……何もかもが噛み合っていない。それを見抜いてやめろとほざいてくる連中なんぞごまんといるだろう。

 放っておいてくれ。オレはそう決めた。だからそうしているんだ。くだらん偏見でオレを縛るな。オレは自由だ。

「ケルシー。オレの魂を破壊してでも、その家畜のような生を歩ませたいと示すなら折れてやるさ。もっとも、運命でも宿命でもないオマエにできるとは思えんが」

 彼女から離れながら、オレにとって恩師であるオマエは口うるさくやめろと言い続ける先生として接するのが一番だ、と言外に告げてみる。

 深く接するには、お互いに上手くない。永く生きる賢者と短く死ぬ愚者では水と油、炎と氷の関係だろうて。きっと親のように口うるさく注意するケルシーと、それをやかましいと言いながら恩義故に無下にできない関係こそオレたちに相応しい。

 しかし近すぎる今、それができないならば恩師以外の何かになるしかない。

「……やってみせよう。私とて、伊達に長く生きていない。侮るなよ、G」

 ケルシーが告げる。否、宣戦布告する。

 運命を破壊し、最強を取り上げてみせると。目の前の患者を全身全霊を懸けて救ってみせると。

 その表情は普段と変わらないがオレにはわかる。バベルのケルシーが帰ってきた。ああ、そうだ。このケルシーだ。テレジアの横にいた、ドクターの横にいたケルシーが帰ってきた。ギラギラしたケルシーだ。オレの好きなケルシーだ。

 今の腑抜けたケルシーなんかじゃない。あの戦乱で、オレの中身を察しておきながら意図的に無視していたケルシーだ。

 オレの、オレだけの先生だ。

「いいね、ケルシー。オレは乱暴なアンタの方が好きだ。やってみろ、オレを運命から離せるものならばな」

 久しぶりに視線を向ける。喰い殺したい存在を見る目。オレの敵────そうか、アンタはオレの敵なのか。敵、そう、敵。

 敵だ。

 オレを最強の幻想から引き剥がすモノ、オレを運命から遠ざけるモノ、それは敵と言うに他ならない。

 オレの、敵。敵か……ふふふっ、あっはははは……最後に殺し合う運命ではない。受け入れた上で殺し合える宿命ではない。しかし全てが相反するも理解し合える敵。

 アンタは恩師で敵だ。Wは半身で運命だ。モスティマは友達で最後だ。テレジアは最強で宿命だった。

 ならばオレはそれらを喰らい尽くして、飲み干して、テラの大地を斬り捨てて、最強を勝ち取る。

 ……そういや脱線してたな。

「んで……まあドクター救出作戦はオレも出るか」

「君たちは作戦目標さえ達成してくれれば、自由にやって構わない」

「形振りは構えないか。余裕は無いものな。わかった。単独か?」

「いや、Scoutの隊と合流してもらう」

 

 い゛

 

 >「救出隊のサポートか……」

「不満が?」

「適任か?」

「君の過去の戦果から考えれば、これほどまでに適したこともあるまい」

「なるほど。ということは露払いがオレたち、Scoutたちが直接的に、か。オペレーションパターンはD……だな」

「いや。君たちにはレユニオンを相手取ってもらう。恐らくは彼らも動き出す」

「レユニオン? 所詮は有象無象だろう。ウルサスを相手するんじゃないのか」

「サルカズの傭兵団を雇ったとも聞く上に、相当な実力者も多い。正面からでは無理がある」

「……サルカズの、傭兵……────まさか、アイツが……? いるのか? そこに?」

「わからない」

「……そう、か。で、優先して対処するべき敵は」

 

 ……ここで出てくる名前によってエンカウントするレユニオン幹部が決まります。なおメフィストくんはランダムなのでお祈りしてください。メ ガ ト ン メ フ ィ ス ト

 ちなみに超クズ運なのはらりるれろおじいちゃんと出くわすことです。勝てません(絶望)。勝とうと思ったら相討ち前提です。それでも無謀ですけど。

 勝ち筋的にはスカルシュレッダーとクラウンスレイヤーがハメ殺しも通用する弱い部類で、タルラとフロストノヴァはまあなんとかならんこともないけど基本無理ゲー。メフィストくんとファウストくんコンビは撤退ラインが早すぎてそも戦いになり辛い。パトリオットおじいちゃんは強過ぎて無理。W姉貴はハメ殺してくる。

 レユニオンクソゲー! お前全員都市爆弾で殺してやるからなァ!? 

 

 >「暗殺部隊だ。救出隊とサポート隊の二段構成とはいえ、素早く抜けて来る凄腕の対処をしながらというのは非常に厳しい」

 

 クラスレ姉貴か。まあ霧出すだけで本人以外は雑魚。覚醒してないクラスレ姉貴程度、フル装備Gくんの敵ではありません。

 持っていける装備も改造長剣、リボルバーライフル、ナイフ、仕込み銃、アーツ制御ユニット、使い捨ての指輪型アーツ発動ユニットの試作品……身体性能強化型アーツ『R』、超高速移動型アーツ『W』、医療アーツ『K』の3つ。これに狂奔ブーストに魂ブースト、妄執覚醒に加えて初見殺し戦法を付けていくわけです。トロフィー進行度は余裕で取れるでしょう。ついでにメフィストくんも判定取っておきたいところ。

 ま、所謂強キャラを正面から倒せるのはこれだけ積んでも4割あればいい方ですが。相性ゲーすぎんよ……

 

 >「仮にそうならなかった場合」

「いつも通りだ。君たちが露払いを行なってくれ」

「了解」

 

 さてここから先は退屈な時間が長いので、

 

みーなーさーまーのーたーめーにー

 

 60倍速でレユニオン蜂起まで飛ばします。

 

 まあ学会の近況でも報告しておきますか。

 アビサルハンターチャート学会も頭がおかしくなり始めたらしくてですね、魔法少女になってみようチャートとか作り始めてるんですよ。この人頭おかしい……

 龍門チャート学会は「開けろ! 龍門近衛局だ!」を言うだけの爆速 RTAを研究し始めるし、なんなんでしょうねこいつら。暇人なんでしょうか。

 更に人の心がない奴らはパトリオットをフロストノヴァが庇って死ぬ RTAとかやり始めるし。最強称号チャート私しかしなくなるし。スズランのお兄ちゃんになる RTAとかもあるし。なんだろう……お前も走者にならないか? なると言え! 何故ならない? 言ってみろ。私を置いていくなぁぁぁあぁぁぁ────!! 

 いやまあどうでもいいんですけど。

 

 さて加速を止めて現在の状況をば。

 チェルノボーグへ侵入し、Scout兄貴たちとは違う方面を警戒中……でした。

 レユニオンの武装蜂起が始まってしまい、今はあっちこっちの混乱の所為で一旦身を隠しているところです。

 流石のGくんと言えどもウルサス軍と真っ向正面からやり合って平気というわけでもありませんからね。さて、そろそろScout兄貴たちがW姉貴と接触する頃合いですが。

 

 >「G、ちょっと離れる」

「Scout、どうした。何があった」

「悪りぃな。独断で古い知り合いの手を借りた」

「おい」

「……ドクターたちを頼んだぜ」

「おい!」

「あと……元気そうだったぞ、あいつ」

「────Scout? おいScoutテメェ!」

 通信が切れた。古い知り合い? 元気そう? いやまさかそんな、あり得ない。こんなところにいるべきではないだろう。Wにしろヘドリーにしろイネスにしろ……!! アイツら全員、何やってんだ!? 

「クソッ、全員に告ぐ! 救出部隊に合流しろ! 壁は一人でも多い方がいい! アーミヤへ指揮権を移せ!」

「あんたは!?」

「オレは……」

 ────

 Scoutたちを追う

 >レユニオンを殺す

 ────

 

 まあScout兄貴を追っかけるとロスいのでここは下ですかね。ヘドリー兄貴とイネス姉貴とお喋りしたかったら後者ですけど。

 

 >「当初の予定通りレユニオンの暗殺部隊を叩く! 正面から来る連中はどうにでもできるが、闇に潜む連中は面倒だからな!」

「単独で!? 無茶だ!」

「Scoutたちが抜けた穴は誰かが埋めねばならん!」

 部下たちを無視して駆け出す。

 ────さらばだ、Scout。我が友よ、いずれ地獄で会おう。

 

 さて、とりあえず移動開始してクラウンスレイヤー姉貴の出現ポイントを全部周ります。マラソンです。無駄な戦闘は避けていくので問題ありません。勝手に潰しあってくれます。

 一箇所目……いない。

 二箇所目……いない。

 三箇所目……いるぅ! 

 

 しかも先手が取れますねぇ! 

 日頃の行いがいいからでしょうか!? まあなんにせよ死ねよやぁぁぁぁってことで先手取って進行度上げて帰り────

 

 >「ガルシンがやられた?」

「Wが今、部隊を再編しているそうだ」

 ……だ、ぶ……りゅー……? 

 

 

 >聞こえた。聞き間違えるはずなどない。

 運命の名を。そうかScout、古い知り合いの協力とはつまりそういう────読めたぞ、わかったぞ。

 

まって

 

 >そしてオマエは命を賭して……か。わかった。運命が本気になったとすれば、オレも本気で応えねば。ではまず────レユニオンで、勘を戻すか。

 

やめて

 

 >懐かしい、この感じ。

 たった一人で不利のまま、強敵に挑む。

 やってみせよう。

 

おねがい

 

 >「さあ、処刑の時だ」

 歯車が回り出す。

 オレが、帰ってきた。

 

なんだよもおおおおおおおおおおおおお、またかよおおおおおおおおおおおおおお!!!!!! 

 

 ……視点変えます。もうダメだ。チェルノボーグで殺戮ショーだ……

 

 ────

 

 ズドン、と何かが降ってきた。

 長剣が、見慣れたメンバーに頭上から突き立てられている。

 亡骸を踏み付けて一瞥するその男はあまりにも異質だった。ポニーテールにまとめられた長い黒髪と冷た過ぎる青い瞳。黒いスーツに武装を抱えたそのサルカズには、異常さだけがそこにある。

 

「なん、だ……お前は────!?」

 

 辛うじて出てきた声は震えていたとクラウンスレイヤーが自覚するのは、その無機質な瞳が此方を見つめた時だった。ギョロリと周りの人員を眺めてから、無機質に、しかしへばりつく湿度に、生暖かい温度が混じる声を発した。

 

「Wは何処だ?」

 

 唖然とする。

 Wは何処だ? 何故? 何故この男は万感の思いを込めてその名を口にしている? 

 困惑だけが広がり、そして支配された場でクラウンスレイヤーだけが思考を回していた。

 

「貴様、ロドスだな」

 

 ウルサス軍でもない、レユニオンでもない。ならばロドスだと判断し、素早く戦闘態勢を取る。包囲している上に見たところ……そこまでは強くなさそうだ。

 クラウンスレイヤーは冷静に観察する。

 

 が。

 

「Wは何処だ?」

 

 もう一度繰り返される一言。

 ぐちゃぐちゃになった感情がまた響き出す。

 

「じゃあ、会いに行こうか。手土産に同僚の首でもぶら下げてな」

 

 誰も何も見ていない。

 見えているのは夢の先だけ。

 指輪がパリンと音を立てて、青い輝きを発する。

 

「っ、さん──── 「遅い」……っ!?」

 

 一瞬。

 一瞬で血飛沫が肉片と共に赤い霧を作り出す。何が起きた……!? 敵を視界に収めつつ、状況を理解しようとして唖然とする。

 部隊の半数が、死んだ。たった一回の攻撃で。

 Gがやったことは単純、高速化の使い捨てアーツユニットを使用して、信号伝達速度を上げて、ただ素早く切り刻んだだけである。無論、高速化のアーツは反動がひどい上、本来ならば彼のアーツではない。他人のアーツを宿した源石を人工生体パーツに組み込み、それを指輪サイズにダウンサイジングした上で強化した生体電気による反応で発動する仕組みだ。

 全て反動の方が大きい。しかしそれを捻じ伏せてこその、ジェヴォーダンの獣である。

 

 指示も追いつかないほどの急な事態の変貌。

 とにかくこの敵を倒さなければならない、そして部下を逃さねばならない。クラウンスレイヤーはアーツを使用して濃霧を作り出す。

 

「お前たちは先に行け! 殿は私がやる!」

「だ、だが!」

「私でしか倒せない!」

 

 実力差はあるかもしれないが────危険だ。並の存在では勝てない。自分がやらねばとクラウンスレイヤーは有無を言わせず部下を下げる。

 濃霧の中でロクに視界が効かないとしても、Gは変わらず佇み、聞こえてきた言葉に無表情のまま、悍ましく答えていく。

 

「運命でもないオマエが? イキがるなよ小娘」

「運命……? 訳の分からないことを! 偽善者どもが!」

 

 完璧なタイミングでの奇襲。

 濃霧で見失わせたところに、フェイントに重ねた首狙いの一閃。クラウンスレイヤーにしてみれば、必勝のパターンだ。

 あれはアーツによって行われた行動。ならば認識を難しくして、反応さえさせなければいい……! 

 

「舐めるな」

 

 ギンッ、と鉈の一閃が長剣で弾かれる。当然、これはアーツによって強化して対応した。

 

(こいつ、何故見えている!?)

 

 完璧に見えている反応に驚いてしまい、一瞬だけ空白が生まれる。

 刹那、彼女の顔面が掴まれ、そのまま近くの建物に投げ付けられる。轟音と共にガラガラと崩れ落ち、その音に気が付いたレユニオン兵の一部がフォローするべく戻ってくる。

 

「クラウンスレイヤーをやらせるなっ!」

「吼えるな」

 

 散弾銃が咆哮する。皮膚と肉が舞う。長剣が振り下ろされる。骨と肉が斬り裂かれる。二人を同時に相手取るのが限界であるため、アーツやクロスボウでダメージを受けてしまうが当然のように無視する。

 レユニオン兵が倒れていくのと比例するように被弾が増えていく。しかしその勢いは衰えることなく、むしろ更に更に疾く鋭くなっていく。

 

「こいつ、メフィストの兵隊と同じか!?」

「崩れて堕ちろ」

 

 長剣を投げつける。一人が死ぬ。死んだ奴を踏み台に飛び、散弾銃を発射。もう一人が死ぬ。空中で飛びかかりながら術師に足を首に引っ掛けて、捻じ切る。そのまま空中で捩じ切った首を蹴り飛ばして剣士にぶつける。着地と同時に突き刺さった長剣を引き抜き、目に付いた重装兵に斬りかかる。正面からでは防がれ────暴走させた生体電気で感電死させる。

 ギョロリと視線が生き残りを舐め回す。狂奔のままに殺戮が始まる。

 クラウンスレイヤーが瓦礫の中から脱出した時には、フォローに入った人員全てが徹底的に殺され尽くした後であった。

 

「……貴様、なんだ。何者だ」

 

 刺さったボルトや剣を引き抜きながら、傷だらけの身体で次なる獲物へと視線を向けるGに対して、彼女はその訳の分からない怪物へと問う。

 こんな怪物をロドスは飼い慣らしているとでも言うのかと、心底に恐怖を隠しながら。

 

「いいや、なんであろうとも────ここで葬る!」

 

 確実に仕留めるしかない。手負いの今だけが……チャンスだ。

 全力で打ち破る────強い決意がクラウンスレイヤーを、リュドミラを一つ上の段階に引き上げる。限界以上の速度で身体が動く。

 鉈を心臓目掛けて投擲し、同時に()()()()()()()()()()()()

 Gが目を見開く。

 投げられた鉈を避けようとすればクラウンスレイヤーに首を取られ、飛び掛ってくるクラウンスレイヤーを防げば鉈に心臓を貫かれる────絶殺の二段構え。

 

(鉈と小娘はほぼ同時……実質回避不可能というわけか)

 

 なるほどよく出来た技だと感心する。

 しかしその観察眼は歴戦のモノ。瞬時に技を解体し、理解するのは難しくない。

 

(────惜しいな)

 

 Gの目はクラウンスレイヤーの弱点をはっきりと見抜いている。それは彼女の戦闘経験値が少なく、またその能力が発展途上であること。磨く前の原石……いや、少し磨いた原石と言ったところか。

 そして何より、自分程度に一度飲まれるくらいには未熟で、必殺のパターンを破られて動揺するくらいには若いこと。

 若さ故の熱さ。それ故の無鉄砲さ。そしてそれ故の強さ。しかしそれらは同時に弱さとなる。

 弱いが故にあらゆる手段で敵を殲滅した獣から見れば、いつの日か潰した敵と同じ。奴らよりも才覚は上。そして自分よりも強くなるだろうが……

 

「オレは、オマエみたいに熱いヤツは嫌いじゃない」

「……!?」

「だが運命になり得ない以上」

 

 迫り来る二択の死を、彼はシンプルな方法で迎撃する。散弾銃を後ろに構え……

 

「ここで死ね」

 

 炸裂、飛翔。

 散弾銃を地面に向けて発射。そこで得た僅かな推力を、赤く輝くアーツ指輪────身体強化と自前の身体強化による二重強化で、1秒後の爆発に変えて見せた。

 鉈とクラウンスレイヤーの間を、Gが通り抜け────そして、着地と同時に刀身に雷がまとわりつく。

 

「……っ!」

 

 刹那、鉈を蹴り落とし地面に突き刺す。急な方向転換故に自由落下が始まり、彼女は鉈の上に着地する。跳躍、予備の鉈を引き抜きながら間合いの内に踏み込む。

 先ほどまで自分がいた場所を雷刃が両断する。振り切った後は隙が生じる、そこを突く。絡め手ではダメだ。正面からでしか突破できない。

 

 右に振り切った長剣。

 左手には何もない。

 組み付いてしまえば……! 

 

(勝っ────)

 

 途端、左肩に激痛が走った。

 体勢が崩れて地面に落下する。

 

「甘い」

 

 仕込み銃……Gの左の袖口に仕込まれた、単発装填式の銃。殺傷力は一般的なラテラーノ銃よりも低く、当てる箇所もきちんと選ばないとまともなダメージにはなり得ない旧式。

 それが左肩に直撃した。

 

(さっきの斬撃は、ブラフ……!)

 

 勝ちを確信したところで確実に仕留める攻撃を繰り出す。ジェヴォーダンの獣とは、このようにしてブラッドブルードを殲滅していたのだ。

 素質や能力だけで言えばクラウンスレイヤーがGを倒すことは容易い。だが、それだけで勝てるならばとうの昔にこの男は死んでいる。それと同時に、クラウンスレイヤーもまた、片手を潰されて裏を掻かれた程度で死ぬような甘い女ではない。

 振り下ろされる長剣を倒れたまま、横に転がって避ける。起き上がりつつ蹴りを放ち、それが防がれる。

 立ち上がりの睨み合いは一瞬。仕掛けるのはG。最後の散弾が火を吹く。当然、卓越した身体能力の前には簡単に避けられる。

 踏み込みと斬撃。長剣と鉈という、質量の差があり過ぎるものをクラウンスレイヤーは裁き切る。

 

 積み重ねた技量に、狂える魂と妄執が重なってなお本物には見切られる。

 実際、クラウンスレイヤーは先ほどまでの攻防で動きと傾向を見切っている。見切ってはいるが……その先に進めない。

 

(……強い)

 

 見切ったところで対応できなければ意味が無い。動きが見切れても次に出てくる手が想像できない。わかっていても、対処ができない。

 とにかく次の手を打たせないようにと密着しての接近戦を繰り広げているが、結果的にそれはお互いに膠着状態に陥ってしまっている。

 よってその閉塞を破るとなれば。

 剣戟の隙を狙い、一撃を捩じ込むしか────

 

 何度目かもわからぬ得物の激突。

 刹那、青い稲妻が迸る。

 

 それはクラウンスレイヤーが取ってしまった唯一の悪手であった。剣と鉈を鍔迫り合うことは、単に敵の動作を封じるという他にも隙あらば自らの一撃を捩じ込めるということでもある。

 攻防は一体。攻めとは守り、守りとは攻め。Gの危険性を理解しその行動を接近戦に固定させたのは見事と言う他ない。しかし鍔迫り合いを中心に戦略を組み立てた────それが間違いであった。

 長剣さえ破壊すれば残っているのはリボルバーライフルとハンドガン、そしてナイフ。何をするにしても彼女の方が早い。武器破壊による先行、および生じた隙で確実に殺す。

 素晴らしいまでの堅実な一手、そして的確な判断。

 

 だが問題は、眼前の敵は剣を媒介に生体電気による自分の被害を無視しての感電死を狙うバケモノであるということ。

 本来やるべきは、速度と身体能力を活かした一撃離脱と地形戦だった。

 

「ぐ、っ……!?」

 

 痺れる身体。

 後頭部に叩き込まれる柄の一撃から、胴を穿つ膝蹴り。

 崩れ落ちるクラウンスレイヤーに、逆手に持ち替えた長剣が心臓に狙いを定める。

 

「一つ」

 

 しかし、その時である。

 Gが突然そのまま剣を薙ぐ。パキン、と歪な金属音が響くと同時に彼は大きく飛び退く。さっきまでGのいた場所を無数の攻撃アーツが襲い掛かり、その爆炎を突き抜けてサルカズ剣術士が接敵する。

 

「……ああ、そうか」

「恨むなら暴れ過ぎた自分を恨むんだなG」

「ほざけ。W以外にオレを殺せるものか」

 

 視界の片隅に治療アーツ使いの傭兵たちと共に移動していくクラウンスレイヤーを捉える。

 

(手土産が確保できなかったな)

 

 だがあれだけの手傷だ。片手は元に戻るだろうが、戦力の低下したロドスでもあしらうのはそう難しくないレベルまで落ち込むだろう。その次は本調子に戻っているだろうが。

 

「あの日オレに殺されかけてた雑魚どもが、揃いも揃ってまあ壮観だな。今度こそなどと思っているであろう辺り、遣る瀬無さを感じずにはいられないよ」

 

 ズラリと構えるサルカズ傭兵たちに知らない顔は誰一人としていない。

 Wの采配なのだろう。自分の手の内を知り尽くしたメンバーで固めて確実に仕留める。

 

(わかったよ、────)

 

 ふっ、と笑ってから半身の期待に添うべく殺意を氾濫させていく。それはあの日、『G』が生まれた日の再現のように。

 それがわからない傭兵たちではないからこそ、あの日仕留め損ねた魔物を今度こそ殺してみせると息巻く。

 

「あの時と同じだと思うなよ畜生風情が! テメェはここで殺してやるよ!」

 

 治療アーツを宿した指輪はまだ切らない。

 何故ならそんなことをすれば鋭く尖った渇望が鈍るから。

 リボルバーライフルを収め、大剣だけを握る。

 運悪く感電の影響で使い物にならなくなったアーツ制御ユニットを外し、自分のギアをニュートラルからいきなりハイに突っ込む。

 なあに、()()()()()()()だ。

 この程度の不利、覆してみせてこその最強だろう。

 

「さて、やろうか」

 

 ────ロドスがドクターを救出し、天災で大被害を受けたチェルノボーグから首の皮一枚で脱出してから約5時間後。

 

 音信不通となり生存は絶望視され、死んだものとして扱われていたGは。

 

 全身に大小様々な傷を提げて、全ての武装を使い果たしてもリボルバーライフルだけは持ち続け、そして何食わぬ顔でロドス・アイランド船に合流した。

 

(W……見つけらんなかったなぁ……)

 

 その内に深い失望を宿して。




Gくん
善意で自分を否定されるのがわかってるからそういうのが嫌な人。
ケルシー先生が敵となったことを喜んだ。Wは何処だ?(鳴き声)
人工生体パーツに源石入れて生体電気で動かしたりとか倫理観は結構捨ててる製品を作ったりしてる。
天災降り注ぐチェルノボーグで散々暴れ回り、単身で生還したバカ。とは言っても撤退するレユニオンの隙間を抜けて、邪魔なヤツらは蹴散らしてというルートを通ってる。

ケルシー先生
バッドコミニュケーションからパーフェクトコミニュケーションを叩き出した人。
こちらでは言葉じゃダメだと悟ったのでアプローチが変わる。なお本来なら口うるさいカーチャンポジなので言葉で十分救えたり。

クラウンスレイヤー姉貴
スイッチの入ったGくんに強襲されてメタられた可哀想な人。
正面からなら上位互換みたいな性能をしているが、残念ながらイカれ野郎が相手だったので選んだ攻撃を悉く潰された。
体重は軽い。

使い捨ての指輪型アーツ発動ユニットの試作品
他人のアーツを少し込めた源石を人工生体パーツに組み込み、それを生体電気による反応で強制起動させる特殊兵装。
イメージとしてはスノーデビルが使ってたアーツ入り源石を小型化、能力を薄めたもの。
今回Gくんが使ったのは身体性能強化型アーツ『R』、超高速移動型アーツ『W』、医療アーツ『K』の三種類。
お前爪みてぇだな?


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ドクターはそんなこと言わない

腰をぶち壊したので初投稿です
いたい


「何その顔」

「W……奴は何者だ?」

「ドクターのことかしら」

「いや────サルカズだ。ロドスのサルカズ」

 

 チェルノボーグ陥落後。

 クラウンスレイヤーはWを訪ねていた。

 理由は一つ、恐るべき戦闘能力で暴れ回ったGを知るためだ。

 

「あぁ……あれのことね」

 

『あいつは元気だぞ。今ここにいる』────なんて教えてもらった時はついその気になりかけたが、グッと堪えて本来の目的を遂行した。ただクラウンスレイヤー隊が化け物に襲われていると聞き、もしやと思って精鋭部隊を差し向けたが……誰一人として帰って来なかった。

 

「お前を探しているようだが、何処で恨みを買った。あんな奴の」

 

 思い返すだけでも身震いする。悍ましい怪物のこの世ならざる視線、あり得ざる力。戦いの申し子としか形容できない凄まじさ。そんな相手に探されているとは、という同情を込めた発言だったが、一方Wはそんな言葉を聞いて何を勘違いしているやらと呆れる。

 

「あんた、あいつの態度見てよく恨みだと思えたわねぇ」

 

 あれは恨みではなく歓喜なのだ、などと解説してやるつもりもないが、そういう誤解は頂けない。複雑な乙女心である。

 が、クラウンスレイヤーからすればあれが恨みでなくてなんだというのだというわけであって、怪訝な視線を投げ付けつつゲンナリとした表情をするしかない。

 

「あれは本当にロドスの一員なのか。私にはもっと悍ましく恐ろしい何かにしか見えなかった」

「ま、心はロドスには属してないでしょ」

 

 あんな奴が『感染者みんなを助けるんだ!』とか言ってたらWは笑い死ぬ自信がある。そして笑い死ぬ前に殺す自信もある。

 そこまで言って、どうせ理解されないのだから本当のことを言ってはぐらかしているように見せかけてみようと思い立った。

 ……別に惚気とかじゃないからね、と内心でケラケラ笑ってる半身に言い訳しながら。

 

「何者か……だったわね。いいわ、教えてあげる。あれはあたしの半分よ」

「何の冗談だ? 自分の部隊員を殺した存在が半分だと?」

 

 意味がわからない。半分とは? そもそも敵ではなかったのか? 

 クラウンスレイヤーが、リュドミラが知っているあらゆる人間関係に当て嵌まることの無い返答に、彼女はただ困惑することしか出来ない。はっきり言えば────気味が悪かった。

 半分だと断言する熱を帯びた声と異常な雰囲気。臭気さえ感じられる悍ましい感情と共にある深い親愛の感情。なれば理解する気も失せるというもの。

 そんな態度をしっかりと感じたWは、しかしストッパーの無いGと戦ってよく腕の一本や二本を失わずに無事で済んだものだと話題を変えることにした。

 

「いいのよあれは。あいつら、色々複雑だから。それにあたしの半分とは言ってもあのくらいで死ぬようならそれまでだし。けど流石ね、散々暴れ回った挙句チェルノボーグから逃げおおせるなんて。腕は鈍ってなくて何よりだわ。……しっかし、よくあいつと戦って五体満足で持ち堪えられたわね」

「敵の戦術が確かだった。実力はそれほどではなかったように見えるが……結果だけで言えば片手を潰された。迅速な治療がなければ間に合わなかったよ。────メフィストに感謝することになるなんて」

 

 サルカズ傭兵隊に救出された後、応急処置を受けながら自分の隊と共にメフィスト・ファウスト隊に急行。そこで迅速な治療を受けて戦線に復帰することができた。

 傷は治ったが、あの恐ろしさは深く刻まれた。多種多様なアーツを使い、致命傷以外はほぼ全て無視して殲滅する。自身の必殺の二段構え、その隙間を狂気の防御で通り抜けて反撃。それすらブラフに本命を撃ち込むなど……ロドスとの戦闘でそんなことをする奴がいなくて少しホッとした。

 

「ふぅん……弱っちく見えるんだ。そういえばあんた、出身は?」

「────ウルサス」

 

 はて、このサルカズはいきなり何を聞いているのだろうか。それにあまりいい気はしない。感染者に出身を尋ねるなどと。そのほとんどが感染者というサルカズだからこそなのか、このデリカシーの無さは。

 などとは感じたが、別にそういう意図は無いようだ。Wとの付き合いは極めて短いが、ふざけているようでふざけている時と、ふざけているようで真面目な時の区分は一応付くようになっていたのが理由だ。

 

「なるほどね。じゃあカズデルの内戦については全然知らない感じかしら」

「噂に聞いたくらいだ。あのサルカズもそこに?」

「あいつ、ちょっとした有名人なのよ。ある狂人を殺したね」

 

 ────さて、嘘だらけで行こうか。

 Wはニコニコとしながら、あることないこと吹き込んだ話を始めた。

 

「その狂人の名はジェヴォーダンの獣。カズデルにいたサルカズの大半が、名前を聞いただけで嫌な顔をするくらいの化け物。レユニオンに雇われてる傭兵も例外じゃない。あのブラッドブルードを知る人は最悪の異端者や真実の怪物とか、好き勝手呼んでるわ。ここで問題。彼は一体何をしたでしょうか?」

「……すごい偉人を殺したとか」

「残念。でも殺したは正解」

 

 ……大将首だったか? と考えたのは束の間。

 

「三年でカズデルに潜むブラッドブルードを数百名をたった一人で殺し尽くした。文字通りありとあらゆる方法で、老若男女、善人悪人、一切の差別無く皆平等にね。……しかもその全てが実力者と名高い連中だった」

 

 Wの発言で全てが凍り付いた。

 つまり、つまりそれは種族の根絶を考えていたということであり、現実的には到底不可能なことだ。

 倫理や法からの明らかな逸脱。

 途方もない企てであり、ブラッドブルードを知る者や常識的な存在ならば、嗤い出すか投げ出すであろう目標。それを躊躇いなく実行するなど────いくら何かと悪魔扱いされがちなサルカズとてあり得ない。

 何故ならそれは、幻想の中の怪物だから。そんな、魔物のような存在がこの世にいていい筈などない。

 

「目的は不明。けれどその行動がブラッドブルードの根絶に繋がるということだけは、後ろに広がる血の河と屍の山が証明していた。史上最悪最凶の同族殺し、稀代の殺戮者として一部の阿呆どもには神格化され、あらゆる倫理や掟さえ通用しない模倣犯まで生み出してるとかなんとか。ま、大抵は足元にも及ばないけど」

「流石に、作り話だろう」

「あはは、そうよね。あり得ないわよね……でも事実なの。あたしの部隊に討伐依頼が来て、多大な犠牲を払いながら7日7晩続いた死闘の末に、あるブラッドブルードの男がその首を落とした。かつてのあたしの相棒、Gよ」

 

 Wの言葉はまるで嘘のような話だ。

 だが実際に相対したあの男の圧倒的な戦闘能力は、その化け物の影をチラつかせる。

 

「次は負けない。私が首を落とす」

 

 だがどうした。次こそ勝つのは私だと吼える。

 そんな彼女を見てWは精々頑張りなさいな、と心にも無い応援を呟いた。

 

 ────

 

 >「Gさん、もう一度説明を」

「Scoutたちが音信不通になった上に、レユニオンの武装蜂起が重なった。奇襲により戦死したものと判断し、隊を救出隊の補助に回らせてオレは単身でレユニオンの暗殺部隊を強襲。隊の半数を削り、幹部にそれなりの手傷は負わせたもののサルカズ傭兵部隊の精鋭に包囲され幹部は取り逃した。その後は傭兵を全滅させ突破。天災の影響もあって本隊への合流は断念し、単独でチェルノボーグから脱出した」

 ポカンとした顔をするアーミヤを筆頭としたロドス上層部。またか、と言わんばかりの表情をした生き残りのオペレーターたち。意味不明過ぎて理解の追いついていない行動予備隊たち。そして呆れた顔のケルシー。

 まったくわかりやすい反応だ。

 

 ……どうも、一般感染者です。

 流石に死ぬかと思いました。

 リュドミラ姉貴をハメられたのは幸いでしたが、初手で『W』を切らされた上に『R』まで使わされることになるとは。流石潜在能力が極めて高いだけのことはある、と言ったところでしょうか。

 更にその後、元部下たちに包囲された挙句にそれを強行突破。天災降り注ぐ中で安全なルートをうろ覚えかつW姉貴と遭遇しないように行動することになるとは……

 そもそも天災降り注ぐチェルノボーグで行動すること自体がロスofガバなのでリセなんですけどねえ本当なら!! 

 

 ああクソあれもこれもロクな情報のねえレイジアンが悪りぃ! チェルノボーグ落としてやる!! チャート通りならマルチウェポンが間に合ってロスモンティス姉貴のアーツを宿した指輪が作れてたのに!! 

 

 >「つ、つまり……孤立無縁かつ絶対絶命の状況から逃げ延びたと」

「まあ、慣れているんでな。要は広域殲滅攻撃持ちを避けて雑魚を丁寧に殺していけば問題無いということだ。その為にレユニオンに変装したりなど色々やったが……」

「慣れ、てる?」

「ん? あぁ……部隊の半数が死に、部隊の半数が残って包囲された戦場から生還したことくらい多少はある。それと同じようなものだ」

 

 あれは地獄でした……精鋭部隊の中の精鋭部隊────剣士、狙撃手、攻撃術士、補助術士のフルパーティに地の利の無い市街地で囲まれ、初動で半数を落とされた状況からヒーヒー言って逃げ切りましたよ。ええ。

 

 >「あらゆる条件を考えれば、君が生還することは予期していた。君にとってはあの状況こそが最高のコンディションが発揮できるだろうからな。その様子だとひと目見ることすら叶わなかったようだが。君が欠けるとクロージャが潰れかねん。帰ってきて早々で悪いが、治療完了後は管理人として仕事をしてくれ」

 いつも通りのオレに対して、ケルシーはいつも通りに声をかけてくる。しかしそんなことを言われても、運命がいるとわかって様々な運用データも揃ったのだ。研究開発を優先したい。

 それに……人の上に立つのは、適任がいるだろう。

「ドクターにやらせりゃいい。どうせ暇してんだろ」

「あの、ドクターは記憶喪失なんです」

「知るか。激務に放り込んでおけば勝手に戻……なんだと? アーミヤ、冗談はやめろ」

「本当なんです! 戦術指揮はそのままなんですけど、その他の記憶は全て忘れてて……」

 迫真の様子から、それが偽りではないとわかるのだが……あの男が記憶喪失、だと? しかもケルシーの微妙そうな顔から察するに、人格の方にもメスが入ったか。

「────はっ、なんだそれは」

 つまりなんだ? ヤツらは記憶喪失の寝ぼけた戦闘マシーンの為に死んだってワケか。屍で出来た椅子に座るのが白痴の殲滅者とはな。まるでファルスだ。

「あなたがドクターを認めない、というのであればそれは仕方ないことだと思います。しかし彼は十分にそれに報いるだけの存在であると、私は思っています。もちろん、その為に命を懸けてくれた人たちも」

 そんなオレを見て、ドクターに対する不審を募らせているのではと思ったであろうアーミヤは、真剣な表情で月並みな言葉を並べ立てる。普通ならばその言葉に納得が行くのであろうが……

「決めるのはオマエたちではない。これからのヤツだ。そしてヤツのことなどどうでもいい。興味も無い。どうせ初対面だ、顔を出す義理も無い。オマエらのタイミングで勝手に来い。手が空いてたら紅茶くらいは出してやる」

 どうでもいい。

 テレジアの死の真相が知りたいだけで、それが語れないヤツなど興味が無い。仕事以外で話す気も無い。知れないということがわかった以上、オレがここにいる意味がほとんど無くなった。

「……使わないティーカップが増えたことだしな。二人分調達するのもわけない」

「っ」

 物言いたげに、しかしその言葉に思うところがあるのか俯くアーミヤ。テレジアならばこの程度で俯くことはなかった。未熟すぎる。2年もあれば百を殺して慣れるなど簡単だろうに。

 仕方ない、話題変えてやるか。腹の決まってないヤツなど所詮そんなものだ。

「アーミヤ」

「はい」

「次にレユニオンとかち合うなら、オレも前線に呼べ。特にサルカズ傭兵どもの手口は熟知しているんでな」

「いいんですか?」

「スマートにやれるオレを出し渋るワケにもいかんだろ。なあケルシー」

「最終判断はドクターだ」

「ふん……」

 まあ戦果としては十分か。あの男がそのままであれば、オレを使わないという選択はあり得ん。

 

 さて、これから治療を受けます。

 サクッと治るのでいいのですが、残念なことに会話イベントが挟まってしまいます。しかもW姉貴と関わりがあるため、アドナキエルくんとの会話イベントが固定されてしまっています。

 ……まあいいでしょう(良くない)

 

 >そんなこんなで治療室に運ばれ、色々と聞かれる。差し障りの無い辺りで答えて、自傷に関しては無茶せざるを得なかったと言い訳しておく。

「それで騙せると思うなよ」

「黙ってろよワルファリン」

「……はぁ」

 諦めたようなため息。コイツ相手にはどうせバレてるからと気にする必要は無い。ワルファリンには後でいい血液を渡さねば。口封じに。

「……先生もボロボロですね」

「オマエほどじゃないさ、アドナキエル。それよりも爆発をモロに食らったと聞いたが、よく四肢が残ってたな」

「あくまでも撤退戦でしたから。下がりながらやってたのが功を奏しましたよ。でも、この程度の傷でみんな生還できたんですから」

「流石と言ったところか。オマエもそうだが、退き際を解しているジェシカたちもな。どーせやる気無かっただろうが、ヤツを前に全員残して脱出してみせるのは中々にいないぞ」

「ヤツ……? 知っているんですか、あのサルカズを」

 驚いた様子のアドナキエルだが当然だろう。敵を知っている、などと伝えられては。

 ……しまったな。口が滑った。ええい、どうする……

 ────

 誤魔化す

 >有る事無い事混ぜて言う

 本当のことを言う

 ────

 

 8割の真実に2割のウソを混ぜて相手を信じさせる手法こそが最強なのでここは真ん中ですね。

 

 >……仕方あるまい。ヘドリー仕込みの煙の巻き方。とくと味わえよ。

「ああ。ロドスに流れるまではフリーの傭兵でな。ヤツ……Wとは何度も戦場で出会った。時に敵として、時に味方として。だからお互いに手の内はよくわかっている。オレもアイツも、言うなればライバルの関係だった」

「先生って、傭兵だったんですね。てっきり学者が先で趣味で身体を鍛えてるのかと」

 趣味で身体を鍛える学者ってなんだオマエ……ま、まあいいけどな。何であっても。ただアドナキエルの言うことももっともだ。オレがケルシーだけが動かせるエリートオペレーターという眉唾物の存在である以上、オレが戦えるとは新参には信じられてもいない。

「カズデルの内戦が終結した以上、食い扶持を求めてのことだろうが。ここで再会するとは因縁を感じずにはいられんよ。傭兵とは因果なものだな」

 などと感慨に耽っていると、カルテ片手にアンセルが険しい顔をしてやってくる。

「でもその因縁の相手とは会えてないんでしょう? ワルファリンさんがホッとしてましたよ。このカルテが文字いっぱいで埋め尽くされずに済んだと」

「……余計なことを」

「G先生は我が身を削り過ぎです。皮どころか肉、その先の骨まで削り落とす人が何処にいるんですか」

「ここにいるが?」

「あなたという人は……とにかく、ドクターの容態の確認や権力構造の再分配が完了するで前線には出ないでくださいよ。訓練もダメです。デスクワークしててください」

「チッ」

「……ケルシー先生に言い付けますからね!」

「待て、ケルシーはやめろ。ヤツの説教は長くてオレの研究時間が無くなるんだ。ワルファリンも適当な血で黙らせる予定なんだ。これ以上自由時間は失いたくない」

「ほーぅ? ならば妾の言いたいことはわかるなバカ男よ」

「ワルファ……っ!?」

 このあと滅茶苦茶説教された。

 

 前々から感じてましたけどGくんってたまにボロが出ると途端に年相応になりますよね。こういうところがW姉貴にかわいいと言われる所以なんでしょうか。

 さて時は少しだけ流れて、マルチウェポンが完成しつつあります。ミーシャ争奪戦にはギリギリ持ち込めるようになるでしょう。アーツ指輪は間に合いませんが。予備も少ないし、無駄遣いできません。

 

 >渋々とデスクワークをこなす日々。そんな日常に変化があるとすれば────

 ノックの音。

「どうぞ」

 誰でも構わないが……

 

 さて、ドクター訪問イベントです。

 普通ならここで色々と好感度を高めたりしますが、Gくんは紅茶とポエムで追い返します。

 ……まー、何の思い入れも無いもん。今のドクターに。

 

 >「失礼します」

 アーミヤとドクター。そうか、暇になったから来たのか。

「ドクター。こちら、ロドスの総合研究部門の管理人でありエリートオペレーターでもあるGさんです」

「……G? コードネームか何かなのか」

「然り。その通りだよドクター」

「君の本名はなんだ?」

 誰だコイツ……このとぼけた男が、あのテレジアの横に立っていた伝説的な戦略家だと? 本名を聞く? ふざけているのか。ますます相手する気が失せた。記憶が無くなればこうも変わるのか。それともそういうフリなのか。気色が悪い。ケルシーがあんな顔をするわけだ。

 ちょっと遊んでやる。

「そも、本名とは何を以て本名と成すか? 名前とは即ち記号。如何様にでも自らを飾り立てられるものであり、他者がそう呼ぶだけのものである。オレはこのGという名こそが己を示す記号であるとする」

「???」

「オレのことなど知る必要が無いということだ。まあ、かけたまえ。アーミヤもだ。淹れたばかりの紅茶がある。飲んでいくといい」

 ────まあなんにせよ、せっかくの客人だ。紅茶くらいは出してやるか……

 

 正直幹部が最高権力者に対して「勝手に顔出せ」「知らなくていい」とかほざくのは大問題だと私思うんですが。

 まあ古参メンツでケルシーの弟子、そして結構な権力持ちだから多めに見られてるんでしょうな。アーミヤCEOも物言いたげに見てきてますし。

 

 >かけた二人に黙って紅茶を出す。

 スコーンは……いらんか。

「美味しい……」

 本当に美味そうに飲んでいるドクターだが、コレがアレと同じだとは全く思えんな。アーミヤは、まあ黙って飲んでいる。というか意外そうだ。本当に出てくるとは思ってもみなかったのか。

 さて本題に入るか。

「良い香りがする茶葉と美味しい茶葉は全くの別物だ。紅茶という一括りではあるものの、本質的には全くの別物になる。今のオマエのように」

「……」

「そのティーカップは誰のものか知っているか? ────チェルノボーグの戦死したオペレーターの中でも、オレの部屋に入り浸ってた友と呼ぶに相応しい者たちの物だ」

「っ、!」

 ……ここまでとぼけているとはな。アーミヤは前の言葉で予想は付いていたからそこまで何かを感じるものもないようだが、そこの男は別だ。

「特にScout……あの男ほどオレを理解している人間はこのロドスには存在しなかった。そしてもう二人ともいない。ドクター。オマエは屍で作られた玉座に座り、瓦礫で作られた王冠を被ってなお人を納得させられるのか?」

「それはこれから行動で示す」

「ならば犠牲の上に立つ者として相応しい行動を取らねばな」

「覚悟の上だ」

 ……気色悪い。これがあの戦闘マシーンか。

「どうだか。時にアーミヤ。きっとオマエも言われたのだろう? オマエは犠牲の上に立つに相応しいのかと」

「何故それを……」

「アレとは少し面識があってな」

 まあ、少しどころか濃密な面識しかないが。

「だからですか。あの提案は」

「然り。話を聞くに相も変わらず生き抜いていると見える」

 ……羨ましいな。オレは会えなかったってのに。

「話を戻そう。いずれ最大の敵が現れる。ロドスがロドスたる所以であり、そうなるべくして捨てた苦痛の記憶……その象徴」

 少々驚いたような顔をするアーミヤ。そういやコイツとはバベルだった頃に会ってないし、更に言えばそこまで話すこともなかったしな。知らなくて無理も無い。どいつもこいつも、苦痛を受け止められずに────いや、過去を受け入れられずに目を背けているだけに過ぎん。

 それにしてもケルシー、言ってたって構わないんだが、なんで黙ってたのか。まあいいか。

 苦痛、過去を受け入れる……モスティマの真似事でもしてみるか。

「嗚呼、苦痛よ。汝は決して我から離れぬ故。我は遂に汝を敬うに至る。我は漸く理解した。汝は在るがままに美しいことを。さあ、茨の森で過ごすがいい。その棘に塗られた毒がオマエを蝕むとき、自らの忘却が幸福であったと知る。果てに見えるは怪獣かそれとも……」

 

 ポエムしか話さねえな!! 

 そうするようにしたの俺だけどね!? 

 

 >「塔の瓦礫で出来た明日の方舟は、もう知り尽くしたかね」

「ロドスのことなら、まだあまり。職員なら覚えたけど。というよりもその喋り方やめてくれないか? 煙に巻く理由もないだろう? それにコミニュケーションの妨げにもなる」

「上に立つならば装飾の奥に潜む形を見つめてみることだ。あらゆる知識を捨てて在るがままに万象を見る。今までに得た物を捨ててただ在るがままのオレを見てみたまえ」

 自分で気付いてみろ、とはぐらかして言ってみるも、向こうはそう言われてもといった態度。だがオレの言葉でオレを説明してやる理由など無い。勝手に気付け。気付けぬならばそれまでだ。

 それにしても、面影だけしか似ていないな。これではまったくの別人だ。

「謎かけをしたいんじゃないんだ、私は。君たちの上に立つ以上、君たちのことを理解しなければならないと思っている」

 ……オマエ誰だよ! オレの知ってるドクターを返せ! 

「タペストリーを彩る糸は、作るものによって定まる。先程と言うことは変わらんよ。在るがまま、それを見なければ理解するという土台にすら立てん」

 蕁麻疹出そうだ。さっさと帰れ。気持ち悪りぃ。Wに会いたい。

 

 私もW姉貴に会いたいよぅ……

 というかGくん記憶喪失ドクターへの反応面白いね? 

 

 >「G! 私は……!」

「茶を楽しんだら、次を巡りたまえ。オレは多忙故な」

「Gさん。何故そこまで煙に巻くんですか。あなたは別に、普通に喋れるでしょう?」

「だからこそだよ。オレにはそうする理由がある。紅茶の香りが恋しくなったらまた来るといい。そのときは話し相手になってやろう」

「……ドクター、他のところに行きましょう。今はその時ではないということです」

 ……やっと静かになったか。

 

 いや本当になんなんでしょうねこいつ。

 ルート一つでここまで変わるんかいって感じで。こんなウザい奴でしたっけ? 腹立つ奴なのは熟知してますけど。

 

 >……さて、アレの各パーツは完成したとクロージャから連絡があったし、組み立てはオレが行うとするか。テストは────まあブレイズにでも付き合わせよう。

 

 ひゃあ、ブレイズ姉貴に殺されても文句は言えませんねクォレワ……

 

 >ケルシーはアレとどう向き合うのか気になるところではあるが、はてさて。オレはWと再会できることを楽しみにするだけだ。

「……結局殺ししかできない男……か」

 焦がれた女を殺したがり、カッコいいと思った男を殺したがり、現実に現れた英雄を殺したがり────今も昔も判断基準はそれらを殺して我が魂の一部として、最強を形作るピースとしたいと思うか否か。最強に対して一片の足しにもならなければ塵屑と断じ、相応しいと見れば喰らうべき獲物とする。

「────アンタならどうする、G」

 自分の心は────と再会できることを喜んでいるのか、それとも運命と刃を交わせることを喜んでいるのか。その判断に困り、偉大な先人に尋ねても、彼は「んなもん自分で考えろや」と笑うばかり。

 それにしても何故、オレはあの女の事ばかり考えているのか。話を聞いてからというもの、考えるのは────ばかり。運命だからか? いや、ブレイズだけがその存在を感じ取っていたことを考えれば、ブレイズくらいでしかその残影を見れなかったということ。それくらいにはオレは彼女から離れていた。

 しかし今になって、途端に浮かび上がるのは────。

「……会いたいな」

 鼓動を再び感じたい、その命の温もりを感じたい。まったく、これでは初恋のようではないか。

 いや待て、初恋……? 

 ……恋、か。

 テレジア。オマエはわかっていたのか? 無粋な問いか。わかっていなければあのようなことは言うまい。

 だが、オレの望みは変わらない。たった一つだけを、最強を……全て殺し尽くして、求める。ただそれだけ。

 

 ……ホンッッット現実を認めない人だねお前は。

 これ、またW姉貴に殺されるんじゃねえかな。

 

 さて、今回はここまでです。

 ご視聴ありがとうございました。




クラスレ姉貴
鳴き声を頼りにW姉貴に会いに行って、稀代の殺戮者「ジェヴォーダンの獣」を知った。
まだ流石にGがそれだとは気が付いていない。次こそはと意気込んでる

W姉貴
疼いちゃったり、惚気たりした人
あることないこと吹き込んだりと元気に活動中。

Gくん
血塗れで帰ってきた人。
医療スタッフからはその頭のおかしい状況のカルテのせいで疫病神扱いされがち。しかも黙らせるために賄賂送ったりするからワルファリンは怒る。
最高権力者相手に「勝手に来い」「茶飲んだら出てけ」「会話するつもりないよ」とか抜かしやがるアホ。いっぺん殴られろ
W姉貴に早く会いたいが、その会いたいという思いはどうなのかを考えて、殺意が塗りつぶした。

アドナキエルくん/アンセルくんちゃん
割と仲良い子たち(当社比)
Gくんが戦闘できるとはまったく思ってなかった。何やら謎めいている彼に少し興味が湧いた。

ドクター
人が変わり過ぎて塩対応された人。
気分は1話のリリーナ様

アーミヤCEO
血塗れで帰ってきたバカを見て心底驚いた人。
気分は1話のリリーナ様

ケルシー先生
どーせ帰ってくるだろうと思ってた人。


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お偉いさんのやり方じゃない

ロドスルート、前々から分かっていたけど首突っ込むのが難しいので初投稿です


 どうも、一般投稿者です。

 特に変わったこともなく、龍門入りました。とは言えどもケルシー先生の護衛枠にいるので、あくまでも現場代表者その2くらいで会談に参加していました。

 ま、会話参加自体はしていないし、外で待機していただけに過ぎませんがね。

 

 ただ話の流れは知っておきたいのでこっそりドクターの服に盗聴器は付けておきました。それが私物の小型端末に音声データを送ってくれています。楽ですねえ。

 

 >しかしドクターが記憶喪失だと知ってから、ケルシーは避けていたようだがこうして会わねばならなくなってしまった。まったく、なんだあの顔。拗ねてるじゃないか。

「ケルシー?」

「……なんだ」

 ドクターとアーミヤが去った後、少し用があると呼び止めると見るからに不機嫌な顔をしていた。

「とりあえず言っておくが、アレは別人として処理するのが一番だ。吐き気がする」

「その感想には同意しよう。しかし能力は確かに彼だ。別人とは割り切れない」

「まあいい。それにしても、龍門とはな……」

「何か思い出でも」

「ふふっ、まあ、そうだな。カッコいい女の子と出会った、かな」

「……」

「仕事に戻るぞ。スラムでの作戦行動もあり得る。ペンギン急便と契約を結んでおく必要があると思うが」

「既に話は通している」

「流石、仕事が早い」

 話はそこで終わった。ケルシーもオレも話すことがなくなってしまった。

「……彼女が、レユニオンにいるとはな」

 そんな中で、呟かれたのはWの事。

「食い扶持を求めてだろうよ」

「だろうな。引き込めるか」

「わからん。会ってみないことには始まらない。ただアイツだ。素直に頷くとは思えん。抱いて堕せ、モノにして寝返らせろってんなら、まあ……やれなくもないが……」

 

 あ、無理でした(別ルート事後報告)

 

 >思い返す。彼女と過ごしたあまりにも長い時間を。

 ……果たしてあの生活、オレと──のどちらが主導権を握っていたのか。オレはそういう方向で、アイツに勝てるのか。できると決めてやればできる、が……なんだろうか、できるだけで終わりそうな気がする。

「……いや、その、なんだぁ。最終手段にして欲しいなと」

「元よりそのつもりだ」

 ケルシー的にはこの話はかなり何とも言えないようで、YESともNOとも言えない顔をしていた。というかあんまり面白くなさそう。……妬いてる? まさかな。

「それにしても、よくもまあクロージャが誤魔化していた予算を自分に横流しした挙句、レイジアンや私の研究データに不正アクセスして新兵器を作ってくれたな」

 

 やべ、バレてる……

 どこだ、どこから漏れた? 隠蔽工作は完璧だった筈。もしかしてあれか、パーツ取りに行った時か? いや待て、パーツ自体は偽装して納品していたはず。

 って、あー! ウィーディか! 几帳面なあいつなら確かに気が付いてもおかしくない! やっべやっちまった……あんまり好感度高くねえと思うから見逃してくれるかなケルシー先生……どうする? 逃げ出すか? 

 

 >「すまなかった。が、データ自体はロドスに戻しているから、試作兵器ってことで納得してくれないか」

「できない」

 さて、どうしようか。

 ──

 >謝る

 無視する

 泣き落とす

 ──

 

 ……ど、どうしよう。

 謝るしかなくね? 

 謝るわ。

 おねいさんゆるして! 

 

 >「すまない」

 頭を下げる。それしかあるまい。

「……私が言ったことを覚えているよな」

「ああ。だがやった。個人的な興味で。そしてその結果、色々と面白そうなデータが出てきそうではある」

「G」

「ああ」

「今は目を瞑る。人材不足で戦力もかつての足元にも及ばないからな」

「すまない」

 ケルシーはオレの行動に呆れているようでもあり、やはりと納得が行っているようでもあった。しかしその中に複雑な感情が垣間見える。

 ……ま、決めても納得できるかは別だよな。

 

 へっ甘ちゃんが、二度と俺を脅かすなよけるしこ! 

 一度ヤンデレケルシー先生ルートで遊んでみたんですがまあ……怖かったですよ。やばかった。あの人の執着心が変な方向向くとあんなに怖いんですね。

 だから頼むからここでそうなるなよ……暴れんなよ……暴れんなよ(懇願)

 

 >「アーミヤには君を実働部隊として扱うように進言しておく」

「ドクターに喧嘩売ったが」

「他に手の空いている者は少ない。それに喧嘩を売ったということは、煙に撒いて毒を吐いたのだろう。彼の人格が本当に正反対ならば、君を理解するために起用するだろう」

 そう言い切ったケルシーの顔は、まるで苦虫でも潰したかのようだ。おいおい、アンタ本当に踏ん切り付けなくて平気か? 

「人事の読みは、アンタに勝てそうもない」

「ただ経験が多いだけだ。いずれ君もできるようになる」

「……どうかな」

 この先、どうしたものか。オレは……

 

 あ、このデータは乱数的に確実に起用されるので安心です。ターゲットとしてはサルカズケントゥリオとスカルシュレッダーとミーシャなので、最悪ドクターアーミヤ組に同行できなくても命令無視とかすればどうにでもなります。まあ狙えるなら狙ってみましょうかね。調査プレイも兼ねてますし。

 最速を狙うならこのタイミングで三人は撃破しておく必要がありますが、まあチェルノボーグで撃破しても問題無いのでここは安定か速度かで選ぶとしましょう。

 でもスカルシュレッダーを殺るならミーシャと会わせてからにしましょう。スカルシュレッダーを穢土転生できませんからね。

 

 さて、今回からメインウェポンがオリジニウムウェポンになります。高い攻撃力に圧倒的な耐久度、アーツを切り裂けるなど強力な反面、アーツ感度が高過ぎて雷返しとか迂闊にすると過剰出力が出て即死する恐れがあります。

 今回作ったオリジニウムウェポン……そうですね。名前付けましょうか。

 名前、名前……長剣と大剣と長槍に変形するマルチウェポンだろ? しかも見た目は普通のロングソード、普通の切っ先の無い大剣、普通の長槍。せいぜい特徴が機械的なくらいで、取り立てて何かこう、ミミクリーな感じもない。

 うーん……KBSは安直か。アクナイって結構名称が独特だから、漢字ネタで行くか? いや待て、サルカズが古代ギリシャ語だし、ギリシャ語で攻めよう。

 まあ愛着も無いし名前は道具(エルガレイオン)で。

 

 というわけでオリジニウムウェポンことエルガレイオンですが、これは源石マシマシな挙句、人工生体パーツを生体電気による反応で動かして各種部位を稼働させるため、HP削って使う武器です。しかも生体電気ってことはアーツの副産物なので、下手すりゃアーツ感度の高さでコントロールが狂って死にます。

 だから、外部のアーツコントロールユニットが必要なんですね(メガトン構文)

 

 ちなみに耐久度が圧倒的とは言っても、赤霄などの単純な物と比較すれば途端に脆く繊細な方になります。変形機構を詰んだ影響で本来の源石兵器よりも脆くて変な使い方すると即アボンします。しかも間に合わせるためにスペアパーツより早く本体パーツを納入させたため、迂闊に壊すと使えなくなります。

 なので気を付けましょう。とても気を付けましょう。すごく気を付けましょう。

 

 >名付けてなかったな。アレ。そうだな……エルガレイオン、という名前にしておこう。分かるヤツには笑える名前だ。

 さて、これからはどうなるか。どうせ部下どもと一緒に色々することになるんだろうが。チェルノボーグで多くの部下を失った。傭兵時代から直接続いて戦った者は、もう4人しかいない。

 テラーン、シケイダ、エルドス、オルクス……あの偉大なる先人の部下である以上、オレに仇討ちを挑んできても不思議ではないし、なんならその権利があると踏んでいるが……何も言わずに付き従ってくれている。彼らの中で納得がいっているのであれば、それでいいが。

 

 んじゃまあ、特に面白い展開も無いので任務まで加速しますね。

 

 >その後の事だ。近衛局からロドスに下されたのはスラムに侵入した未登録感染者の摘発という、実にらしい命令だった。

 ……盗聴器を介してオレは知っていたんだがな。アレはまあ……バレてないと見るべきか。バレているような気もするが。どうでもいいか。

 結局、オレたちも出ることになった。アーミヤは悩んだ末に、龍門のスラムについて多少なりとも明るいオレを連れて行くことにしたそうだ。ドクターが危機に瀕した場合、そこで力があるのはオレだと判断したそうだ。エリートオペレーターの中でも融通の効きやすいアーツや戦闘傾向もあってのことだろう。なんとも言えない顔をしたブレイズがオレを見ていた。あとで機嫌を取ってやるか。

 モスティマは元気だろうか。今の彼女がオレを見て、まだ友達と言ってくれるだろうか。

 モスティマ。オレの古い友達。そう、まさか……その面影を感じるサンクタと出会うなど。

 エクシアとか言ったか。モスティマの苦痛の一つが、彼女なのかも知れない。

 

 あ゛

 まって……ロックオンしないで……エクシア姉貴の扇情的なケツ見て楽しくならないで……

 

 >今回同行するリスカムとフランカはオレが作戦に駆り出されると知ると、とても嫌そうな顔をしていた。まあコイツらBSWとは色々と仕事を共にした仲だ。その中でどうしてもやらかさねばならない場面があり、その瞬間を見せてしまった。

 ……おかげで、貴重な紅茶仲間のフランカに白い目で見られることになってしまったが。

 

 フランカ姉貴とは紅茶関係で仲良くなれたんですがね。最速目指す際にちょっと敵陣をたった一人で徹底的に殲滅して制圧するのを目撃されて以来ドン引きされました。

 

 >「……懐かしいな、この景色。どうやらあまり変わっていないらしい」

「あれ、カズデル出身じゃ?」

 フランカの疑問はもっともだが、考えてみたらモスティマとの旅については何一つ言っていなかったな。

「色々あって龍門のスラムに行ったことがあってな。そこでこう、地形を知らなくてはならなくて」

「君は不思議な男だな、G」

「クククッ、不思議か。まあ、在るが儘を見ようと努力しているようだな。ドクター。いいぞ。その努力に免じて煙に巻くのはやめてやる」

 ドクターの胡散臭そうな視線と共に、ホッと一息ついたアーミヤが見える。どうやら作戦行動中まであんな言動をするのかと不安に思っていたらしい。

「安心しろアーミヤ。短期間でこうしようとするコイツに対して礼を欠かすことはない」

「私はあなたを誤解していたから、気が気でないんですよ」

「オレは昔からこんなのでな」

 ……しかし、スラムの治安も悪化したな。レユニオンのシンパが増えている。どうも暴力沙汰も増えたらしく、感染者同士でも色々と割れているようだ。今もアーミヤが子供と大人の揉め事に首を突っ込み、アーツをチラつかせて大人を追っ払ってる。

 それなりの秩序を保っていたこのスラムが、途端これか。

「……あのネズミの王サマがいるのにここまでひどくなるとはな」

「そこまで知ってるのは中々珍しいね〜」

「昔、黒い角を持つサンクタから知識だけでもって教えられてな。アイツ、まだフラフラしてるのかね。まあ本人の自由だが」

「ふーん、そっか。あとでその話詳しく聞かせてくれる?」

「年単位で会ってない上に、共に過ごしたのも2月程度だぞ」

「それでも貴重な情報だよ」

 多分、エクシアが知りたがっている情報は手に入らないとは思うが……まあそうだな。いい茶葉を振る舞ってやろう。それで詫びになるかは知らんが。

 そんな風に考えていると、部下たちから攻撃する感染者が確認されたという情報が共有される。

「……リスカム。敵性感染者と遭遇したと報告があった。単なる暴徒かレユニオンかは不明だ」

「わかりました。それと、チェン隊長から新たな指令が」

 

 ミーシャ捜索はアーミヤドクター組のところが正解なので、別にアレコレと頑張る必要すらありません。イベントに任せるまま、テキトーにしていれば見つかります。というか本来ならロスですねこれ。

 別にうまテイストが何一つ存在しないので、ここで敢えて何かをするという行為自体無駄です。

 ロドスチャートの問題点はとにかくそういうところにあります。ボケーっと眺めて確実に倒せるタイミングで判定取って倒して終わり。メッッチャ退屈だし、その上シナリオ進行させないと条件揃わない。つまり爪を従えて現れる調律者ムーブが最適解なのです。

 

 そういうわけで、ロドスチャートをやる気はほとんどなかったのですが……まあこうしてやってみると不自由極まりないですねぇ。マジで過密スケジュールなもんだから変な行動したかったら、第三者チャートが一番いいですね。

 結局、源石武器作ったところでってのもありますし、色々困ったもんですな。

 

 >「チェンさんの言っていた、ミーシャというウルサス人の少女……近衛局が求める理由はなんでしょうか」

「知らなくていいという一点張りなら、恐らくは政治方向かと」

 龍門が血眼になって探す小娘。さて、その価値は如何程のものか。ま、大体予想はつくが。……二重三重に考えておくとするか。とは言えども、大したことはないだろう。チェルノボーグの動力関係などの開発に関わったのが親かそこら。

 子供が何を知っているかはわからんが、使えるなら取っておきたいというのが龍門の思惑と見たな。

 

 君、頭の回転早すぎて俺楽だよ。

 

 >「大方、チェルノボーグの関係者だろう。親族が都市中枢の関係者という線が濃厚だ。子供だろうが貴重な情報源、近衛局としてはさっさと手に入れておきたい。それだけだろうな」

 想像し得る最悪の中の最悪。オレならやることが起きてしまえば、まあ龍門は滅ぶ。あのウルサスが沈黙していること自体、なんらかの裏があると見える。と、なれば……レユニオンは都市コード出しっぱなしで特攻が最適解か。自爆では単なる事故と見られるからな。

 ……頭領のタルラがオレと同じバカでなければ起こり得ないだろうがな。

「後々のことを考えれば、ウルサスに対する強力な政治カードにもなり得るわけだ。チェルノボーグの重役の家族を保護していたと言えば恩も売れるしな。ウルサスの沈黙に対して先手を打たねばならない。感染者だった場合は色々と変わるかもしれんが……少し向こうの立場を理解してやれ」

 あれこれと推測を交えて解説してやると、その場にいる全員が不思議そうな顔をしていた。なんだ、オレがそうやって政治に明るいのが意外か。そんなに意外なのか! 

「ロドスに情報を渡したくないのではなく、渡したところで意味が無いと判断されたんだろうさな。だから言わない、伝えない。言ったところで我々には何一つ関係が無い」

「ではこの協力関係自体、薄いものだと?」

 不安そうにアーミヤが尋ねてくる。

「薄さは関係が無い。使い捨てるならもう少し利口にやるさ。そうだな、これはイレギュラーと見るべきだ。チェルノボーグの関係者がスラムに紛れ込んでいるが、それを知ったところでロドスに何ができる?」

「……何もできない。知っているだけだ。私たちが何をする理由にもならない。知らなくても変わらないこと」

 ドクターが鋭く指摘する。そう、ロドスは政治とはやや外れたところにある。そんな連中がミーシャとかいう小娘について知っても、却って扱いに困るだけだ。

「ま、そういうことだ。近衛局としてはさっさと確保したいが、かと言ってその正体を言うと協力者に困惑を生むだけ。ならばいっそ黙ってしまえばいい。大体そんなところだろう。あとは感染者保護という名目で政治カードを取られたくない……くらいか。まあ重症化していた場合は流石に渡すだろうが」

 救たくとも、相手が既にがんじがらめになっている以上、我々にできることは抜け道しかない。現実なんてそんなものだ。

 アーミヤが暗い顔をする。彼女としては救たいのだろうな。だが所詮それまでだ。

「気を落とすなアーミヤ。絡め手を使えばコッチに連れてくることは難しくない。まあ龍門との関係性は悪化するが」

「あまりアーミヤをいじめるな、G」

「事実を言っているだけだ。そういうつもりじゃない。で、どうする? やるんだろ、仕事」

 ドクターは素早く囮作戦を提案する。切り替えが早くて助かる。

 しかしレユニオンか暴徒かはわからないが、ミーシャとやらは追われているようだ。何故……いや、それだけの価値があるとでも? 

 

 この後は単なる雑魚散らしなので加速〜

 その後はミーシャ姉貴迫真の脅しが見れますが加速〜

 

 >アーミヤが感染者であることをミーシャに明かしてまでも説得をしている。

 

 なんで等速に戻す必要があるんですか。

 

 >「……どうしてあいつらが私を捕まえようとしているか知ってるの? あなたたちだって……どうして私を保護しようとするの?」

「そりゃオマエの家族にでも聞いてくれ。ココにいるってことは死んでるだろうが」

 

 てっめぇ!? 

 アーミヤ様迫真の説得に口を挟むなよアホ!! 

 

 >「オマエが知らんなら家族だろ? どうせチェルノボーグ関係だろうが。となると、レユニオンがオマエを探す理由が益々わからん」

「それはどういう意味ですか? どうしてチェルノボーグ関係なら、ミーシャさんをレユニオンが追う理由がわからないと?」

「簡単だよ。レユニオンにはそうする必要が見当たらない。チェルノボーグを制圧した以上、マニュアルだなんだを手中に収めているはずだ。それを焼き払うほどのバカじゃない。仮にそこの小娘がチェルノボーグについて詳しかろうとも、もういらない。そうなれば自然と絞られてくる」

 などと訳知り顔で言っているが、実のところオレも確信が持てない。

 浮かび上がる可能性としては、やはりチェルノボーグの一部施設や動作関係。生体キー? あり得んな。ナンセンスなセキュリティを採用する必要は無い。あり得てスペアキー。線としてはアーツなどが強力で、レユニオンの戦力として欲しがっているか……ただどうもそっちではないと思うが。

 となると……やはりキーか? それか、身内か。なんにせよそこまで重要ではなさそうだ。ここはスペアキーと仮定しておこう。

 ではオリジナルだが、まあ大体予想は付く。そういうものは、得てして本拠に置いてあるものだ。

「まあオマエにはもう選択肢が残されていないワケだ。近衛局はオマエを政治材料として見做しているし、更に言えば諸々の理由から丁寧に保護せざるを得なくなっている。そしてレユニオンは理由は不明だが、チェルノボーグ関係でオマエを求めている」

 地面に刺していたエルガレイオンを引き抜きながら、オレはミーシャに言う。

「ただ、そこのアーミヤは本気でオマエを救たいと思っているし、故あれば近衛局にも噛み付いて当然の女だ。近衛局でもオレたちロドスでもなく、アーミヤを信じてみる価値はあると思うぞ」

「……」

「言いたいことはそれだけだ。警戒態勢に移る」

 リスカムとフランカの何とも言えない視線が背中に刺さる。キャラじゃないことはするもんじゃないな。

 

 ……フラグ折れてないよな? 

 フラグ折れてないよな!? 

 ダメだコイツ根本からロドス向きじゃない! いかん、いかんぞ! どうするんだよ何をやっても仮組みチャート破壊してくるぞコイツ!! てめぇ!! 

 こんなふうにしたの誰だよ!? 俺だよ!! バカ! ウカツ! 

 

 >思案の末、ミーシャは近衛局に保護される道を選んだようだ。

 そしてアーミヤがチェンに報告するが……

「……あくまで理由を言うつもりはないようです……」

「今のあたしたちは、あの人の使いっ走りってところね」

「けどあの焦りよう。近衛局から見てもミーシャさんはかなり重要な人物のようですね」

「であれば当たりだな。チッ、お互いに微妙に信用し切れない状況になってきやがった」

 第一印象はとにかく最悪だ。円滑な協力関係などこれでは結べるはずもない。それにあのウェイという男、一度オレを見逃しているというから相当なキレ者だ。使い潰そうにもこんな杜撰な手を取る筈がない……燻り出しか? まあ他のヤツらがどうかは知らんが、傭兵でない組織に傭兵としての在り方を求めるとは随分とまあ、よくできた執政者だ。

 

 良かったァァァァァァァァァ!!!!! 

 

 >「とにかくさっさとコイツを連れて帰るぞ。レユニオンに渡っても大して変わりはないだろうが仕事は仕事だ。遂行する」

 そしてレユニオンにはこの手の事のプロフェッショナルが存在する。W率いる傭兵団……スラムにレユニオンが簡単に入れる状況では、恐らく何をしようともヤツらに先手は取られる。

 隙ができるとすればミーシャを奪い、退却する瞬間。そこを叩くのが効率的だ。向こうも丁寧に扱うだろう、流石に。

 が、問題はヤツならそれすら読み切ってくるということ。オレならそうするし、ヤツならそれをわかる。その逆もまた然り。

 帰ってきたエクシアの調査した情報を整理していく。包囲されているようだ。

「早いな」

「レユニオンはどうやって私たちの情報を……」

「アーミヤ、冷静に考えろ。スラムの連中の大半が感染者だ。そんな中でオレらみたいな近衛局の犬が来てみろ。どっちの味方をする? いくら見て見ぬフリをしようが、外があれでは内も反感を持つのが必定だろうて」

「……ですよね」

「近衛局も杜撰な仕事をする。どうせ人間扱いなどしていないんだから、見せしめに1区画ぐらい浄化してみせろ。それくらいやって初めて牙が折れるんだ、バカが」

「協力関係にある組織のやり方思いっきり批判するなんて本当にGってば嫌な男。あんた組織の一員で、かつお偉いさんなのわかってんの?」

「理解してるからここで言ってるんだよフランカ」

 

 ……ロドスルート完走できるか不安になってきた。ダメそうならエンジョイプレイに即切り替えましょそうしましょ。

 

 >敵を斬殺する。この斬れ味……この感覚。オレの求めていた兵器とは正にこれだ。ブレイズ相手に変形機構と受けのテストはしたが、やはり実戦に勝るものはないな──! 

 長剣で斬り裂く。そのまま大剣に変形させて大きく薙ぎ払う。振り切った姿勢のまま長槍に変形させ突き穿つ。素晴らしい。手に馴染む。

 オレの求めた武器がココにある。

 

 エルガレイオンは木端のレユニオン構成員では耐えることすらできません。理論上で行けば赤霄とまともに打ち合っても互角は硬いですからね。ま、複雑な機構の所為で脆いんですけど。

 ドクターの指揮下である以上負けることはないからもう加速しますね。

 

 >結局、ミーシャは近衛局に引き渡した。

 アーミヤは鉱石病悪化を理由に、何とか色々と聞き出そうと努力はしていたが、全て徒労に終わったようだ。

 しかしあの目、なんだあの龍女。迷いが見える。いや迷いしかない。やるべきことが現れなければ剣の如き己を出せない。気に食わん。

 ……スラムを抜け出そうとしたところで、その動きは読まれていると見るべきだ。Wたち以前の問題か。仮に全戦力を投入してきた場合、ミーシャは取られる。そしてレユニオンに拾われたが最後、ヤツらのシンパに成り下がるだろう。ロドスも近衛局も信用ならないのは事実だから。

 ……負け戦とはな。

 ──

 自分の考えを伝える

 >成り行きに身を任せる

 ──

 

 別に無理になんかする必要も無いし、ここは成り行きに任せましょう。ロドスでレユニオン幹部と仲良くするの、本当に無理ですし。

 というか自分達の仲間を殺した人たちと仲良くしろってのがまず無理じゃないですか? 状況が状況だったり傭兵ならまだしも、ロドスもレユニオンも所詮は軍でも何でもないですからね。

 

 >……いや、理由が無いな。

 このままでいい。最適解を打つのはオレのやり方。ロドスのやり方ではない。なれば在るが儘に、任せてみよう。

 帰ってきたのだ。テレジアが夢見たその時を、ロドスが実現できるか否か。オレが試してやる。

 たった一つの、宿命を奪ったオマエを。

 たった一つの、運命を引き裂いたオマエを。

 この──が。

 やってみせろよドクター。できなければ、オレは最強の夢を追うだけだ。

 

 こわ。

 ……ダメですね、W姉貴がいないと初めから敵以外に無い。

 まずいな、どっかで切り上げる? いや走り抜け! 初走もデッドエンド確定だったろ俺! 今更怯える事はない! 

 

 >任務はレユニオンの殲滅へと移行した。

 しかし、数がやたらと多い。有利な地形ということもあって、数を減らす事自体はそう難しいわけではないが、援軍を送り込んできているという事実だけは引っかかる。

 エルガレイオンの性能を試すように、それぞれの形態を思う存分に振り回す。斬り裂かれるのは雑兵に過ぎず、チェルノボーグで戦った時のような、強いヤツはカケラもいない。それどころか、少し乱暴な殺し方を見せるだけでビビり散らす雑魚ばかりだ。

 つまるところ、暴徒というべきか。レユニオンの雑兵にもあった気骨が無い。

「つまらんな」

 ……捨て石、ではない。何らかの戦略的意図があって送られてきている。それは確かだ。

「総攻撃の可能性もあります。皆さん、隊列を立て直してください」

 アーミヤの指示に従い、各員が隊列を立て直さんとした時である。

 小柄な人影が現れた。レユニオンの幹部の一人か。

「ロドス……まさかあいつを、龍門に引き渡したのか」

 ──執着が見える。ミーシャへ執着している、この小僧。

「それがあなたと何の関係があるんでしょうか」

 冷たく言い切るアーミヤ。

「……貴様!」

 吠える小僧。なるほどな、そういうことか。わかっていて何故引き渡したと。そんなもの、自業だと何故気付かんのか。

 愚鈍の集まりに、破壊対象を与えて使役する。タルラは随分と怖い女だ。バカの使い方をよく理解している。

「同胞たちよ、かかれ!」

 同胞……ねぇ? 面白くないヤツだ。

「烏合の衆の間違いだろう」

「なんだと……? そうか貴様が、Wの言っていた──!」

 ほう? さも対等な扱いのようだな。こんな面白くない小僧が、オレの運命と。

 

 

まって 

 

 >決めた。

 絶死だ。千切れて彷徨い、散華しろ。

「アーミヤ、ドクター。悪いが好きにやらせてもらう」

 

 なんだよもおおおおおおおおおおおおお、またかよおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!  

 

 >「待て、G。勝算はあるのか?」

「勝つ」

 ドクターの問いに既に決まった現実を返し、エルガレイオンを強く握る。

「喜べ小僧。敗北をくれてやる……オマエは今、オレの運命を軽んじた」

 さあ──処刑の時だ……! 

 

 ……

 

 ……

 

 ……

 

 ……次回、アレックスくん戦からです。

 ご視聴ありがとう、ございました……




Gくん
代表者同士の会談を盗聴し、予算を横領し、他企業の極秘データに不正アクセスし、ついでに自分の上司の極秘データに不正アクセスし、協力関係にある組織をバカにする偉い人。こっちでもナチュラルにチェルノボーグ落としを考えるが、誰にも言わない。
本気で組織人向いていないと思うレベルでアレ。嫌なヤツ。何か発言する度にアーミヤの胃が痛い。
これも全部W姉貴がいないからなのだが、本編入るまではそれなりにマトモなフリはしていた。が、チェルノボーグでW姉貴の名前を聞いた途端に壊れ始め、暴走しがち。
ストッパーがいないと危険人物としての側面があっという間に出てくる好例。

ケルシー先生
本音を言えば処分択一だったが、現状を鑑みて見逃した人
カッコいい女の子と会ったと聞き、不安が少し出てきた。

エクシア姉貴
モスティマ姉貴の知り合いからはどんな情報でも引き出そうとする人
割と仲良くなれるのは変わらず

アーミヤCEO
Gくんのふざけた言動に色々と頭を抱えている人
かわいそう

ドクター
Gくんの言動はともかく、どういう使い方をするのがいいのかなんとなくわかってきた人

リスカム姉貴
レズその1。
Gくんの残虐極まりない戦闘を一度見たことのある人。
戦力としては信頼しているが、色々とビビってる

フランカ姉貴
レズその2。
紅茶仲間だったが、性格が結構アレなのでなんとも言えない間柄。

部下4人衆
テラーン、シケイダ、エルドス、オルクスの四人。特に出番とかない。
名前の元ネタ、わかる人いるかな?

エルガレイオン
古代ギリシャ語で道具を意味する名を付けられた、試作源石兵器。
源石の刃を持ち長剣、大剣、長槍に変形するが、その変形には電気を必要とする上に複雑な機構故の脆さがある。
実質的にGくんの専用兵器。なお傭兵チャートで使ってたタルラからの贈り物の方が強い。


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決定的にオリジニウム的な何か

オルファンは沈まないので初投稿です。


「──Wは、何処だ」

 

 またこれだ。

 壊れた蓄音機にように繰り返される同じ台詞。万感の思いが込められたそれを聞き飽きるほど繰り返す。

 その一方で感情の揺れ動きや命の勘定から解き放たれた冷たい刀剣のように、縦横無尽の殺戮劇を描き出す。

 

 振るわれるエルガレイオンは、赤い血化粧を纏い悍ましく濡れている。それは狂気の結晶たる爪牙であるはずなのに、何故だろうか、血塗れ鴉の翼にも見える。

 戦闘指揮から外れたのは、今の自分が指揮に従えるほど理性的ではないからだろうというのが、ドクターの見立てであった。

 積み重なる不満、求め焦がれる相手と逢えない寂しさ、そして自分の好きなことから長期間離れていたこと。それらが原因でこの()()()()()を始めてしまったのだろう。

 

(……しかし)

 

 Gという男を見れば見るほど、その内側は単純なように見えてくる。

 目覚めて間もないドクターだが、アーミヤの判断の青さも見抜いているし、同時にまだ若すぎるとも思っている。しかしそれ故の真っ直ぐで折れない心、そして優しさがある。

 ──それとは真逆だ、あの男は。

 戦闘という行為そのものに悦を見出す生物として異質な性格に加えて、冷酷に思考し、政治的な事柄すら含めて考えを纏める。

 まるで恐ろしい怪物か何かのようだが、その裏に純粋さがあるのだ。それも、憧れた職業を目指す少年のような──あるいは、命を費やしてこそ得られる喜びのある冒険を、心の底から楽しんでいるようにも。

 夢中になれる刹那にこそ、己の生きる価値がある、理由がある。そんな気がしてならない。

 

 今も愉悦に歪んだ口元と共に、レユニオンを蹴散らしその命を喰らい尽くしている彼を見ても、常にブレて映る。

 

 エルガレイオンが長槍に変形し、重装兵の盾に突き刺さる。そのまま盾を力任せに引き剥がし、流れる様に大剣に変形させてその硬い防具の上から文字通りに叩き斬る。人体がひしゃげ千切れた。片割れを掴んで盾に使い、諸共に敵を長剣で斬り裂く。

 それはどう考えても常人では思い付いても実行不可能な戦法。荒々しく、悍ましく、恐怖を叩き付けて心ごと殺し尽くす戦技。術士や狙撃手の攻撃を受けても、ダメージが最小限になるような動きで対応する。

 今自分が指揮しているロドスのオペレーター、今相対しているレユニオン、その全てに該当しない異なる何か。

 

 まるで血を啜り、猛り狂うように道具は斬れ味を増していく。手に馴染んでいっただけだろうに、それがまるで生きているかのように思えるのは担い手の所為なのか。

 不利であっても自らを奮い立たせているレユニオン構成員を相手取っているアーミヤたちとは正反対に、血塗れになりながらもたった一人で絶望の渦へ叩き込むG。

 それは殺し方だけではない、彼自身から溢れ出る渇望が理由だ。

 

「Wは何処だ」

 

 対は何処と呟く姿には寂しさを覚えるが、口元が邪悪な三日月を描き出す姿が嫌悪感を呼び覚ます。愛しい半身を探さんとする一途な想いと同時に奈落の底よりも深遠に位置する殺意が氾濫する。純度が高すぎるあまり、臭気さえ漂わせる少年の如き願望と、心一つで鬼となるのは当然とする現実が悍ましさを掻き立てる。

 

「……何処だ……!」

 

 単独で暴れ回るからこそ、スカルシュレッダーも優先して狙う。それを倒せれば士気を挫けると見たのもあるだろうが、もう一つ理由があった。

 

「貴様、その目で俺を……俺たち(感染者たち)を見るな!」

 

 塵屑を見る目。

 ウルサスの採掘場で散々見た、あの忌むべき記憶。この男はそれよりも酷い目をしていた。

 すべからくを生贄とする、その瞳。

 今のGにとって、レユニオンと名のつくものは全てがWと再会するための生贄だ。一人残らず殲滅すれば、あの日見惚れた美しい瞳をまた自分に向けてくれる。全身全霊を懸けて運命が立ち塞がってくれる。

 それはかつて、Gとなる前の──がジェヴォーダンの獣として同族殺しをしていた時と全く同じ思考回路。どんな事情があろうが善人だろうが悪人だろうが命乞いをしようが何であろうが一人残らず殲滅する。

 確かにそこには()()()()()も含まれているだろうが、本質は全くの別物。

 ──Wに会うための生贄を捧げる。ただそれだけ。

 殺戮とは即ち儀式。自らを最強とするために、自らの半身を呼び覚ますために、数多の血を捧げる。

 

『ああそうそう。スカルシュレッダー、もしも黒スーツのブラッドブルードと会ったなら気を付けなさい。呑まれたが最後、喰い殺されるわよ』

 

 作戦の前にWはスカルシュレッダーにそう忠告していた。

 Wにはわかっていた。このあまりにも若すぎる少年では、半身たる運命には勝てないと。激情のままに動くだけのスカルシュレッダーが、伝説の同族殺しであり最強の幻想を己という現実に変えようとする魔物と戦って無事で済むものかと。

 通常であれば物の数秒で解体されて終わりだ。

 ただ、運が味方したのはスカルシュレッダーの方であった。

 

 彼は今"死ねない"のだ。

 決意というものは限界以上の力を引き出す。

 ミーシャを、姉を取り戻すまでは死ねない。その決意が彼らレユニオンを突き動かすが故に、普段よりも慎重に、そして時間稼ぎに徹している。

 

 またロドスも撃退に注力している。大切なのは近衛局がミーシャを運ぶことと、そしてこの場から離脱することなのだ。

 だから何も言わずにGを囮と殿にする形で移動しているが、意を汲んだのか汲んでないのか、ただひたすらに暴れ回る。

 

 泥沼の消耗戦が如き形相を見せるスラムの中で、ただ一人殲滅の意を持つのはGだけだ。故に、いくらその精神が逸脱していようとも。

 自らの身を顧みぬ者に、臆病者は倒せない。

 自分を愛せぬ者に、自分を愛せる者は殺せない。

 それだけの現実であった。

 

 結果、無駄に疲れて終わる。

 有刺鉄線の森に飛び込んだ男は、自らの欲望に振り回されていた。

 

 ──

 

 >殺意が塗り潰していく中で、離れていく本隊を認識した。

 ああ、そういやそうだったな。これは撤退戦だったな。つい、忘れていた。

 

 いや、つい忘れるんじゃねえよ。

 ほぼ制御不能になって暴れ出したから困るわボケェ。

 ……ドーモ、一般投稿者=です。

 

 >グレネードランチャー。中身は源石爆弾か。放たれた弾頭を蹴り返すが当たらない。なるほど、効果範囲はしっかりと把握しているようだな。

 それになんだ? 時間を稼ぐ様な……ああ、やはり本命はあっちか。全戦力を投入すれば奪取も難しくないということか。負け戦ここに極まれりだな。

 変形させて鉈としてくるが、甘い。簡単にいなして後退できるほど、まだまだ武器に振り回されている。才能はそれなりと見たが、あの鉈女ほどではないな。

 鍔迫り合ったのは一瞬、蹴り飛ばして即離脱。そのまま本隊に合流する。

「……すまん、興が乗った。だが追撃部隊の大半は潰した」

「色々と言いたいことありますけど、今は黙っておきますからね」

「助かる」

 アーミヤの射抜く様な視線。まったく何処の誰に似たのやら。

 ……オマエなのか? テレジア。

「指揮官はどうした」

「離れた。どうもオレらよりもミーシャらしい。近衛局ならば問題無いはずだ」

 ドクターに答えつつ、リスカムたちと肩を並べる。

 

 うん? 

 エルガレイオンの耐久値がおかしい……試算では半分切ってるくらいの筈なのに、もう75%近く耐久値使い切ってる。

 ……あー。あれか。スカルシュレッダーと打ち合ったせいか。

 本来この撤退戦ではスカルシュレッダーとの戦闘は発生しないんですが、あんまりに目立ち過ぎると狙ってくるんですよね。特に自分が何かやらかしている場合は優先的に狙ってきます。向こうから。

 ──チッ、完全なロスだな。どうリカバリーする? 

 ま、キャラ変えろって話なんですけど。

 

 >退路を塞ぎ、奇襲をかけてくるレユニオンを叩き潰す。手元に爆弾の一つや二つでもあれば、人体に仕込んで炸裂させたものを。

 参ったな、オーバーホールが必要なほど銃を酷使した挙句、ほとんどの武装を失ったツケが回ってきたな。

 ……結局、エルガレイオンを持ち出したのはテストという以外にも、武装の大半を喪失していたから緊急で手に馴染むものを用意しなければならなかったということでもある。

 

 銃が無いので戦法の半分は封じられ、源石術兵器は予備が無いので作り直す以外にありません。ロスモンティスの念動力を宿したものはまだまだ時間かかります、

 つまり、ここでエルガレイオンぶっ壊すと素手です。Gくんのアホみたいな使い方に耐え得る剣はロドスにはありません。え? 普段使いしてた長剣はどうしたって? 

 買い込んでないんですよ。傭兵時代に手元に入れた分しかありません。その大半を元手に改造した一本を作ったので、余裕というものが存在しません。

 丁寧丁寧丁寧丁寧丁寧丁寧に行きましょうね。

 

 >周りを気にする必要は無い。あの男の戦闘指揮に敗北は存在しない。

 指示に身を任せて殺戮に舞う。追撃部隊を全て殺し尽くし、安全を確保した。

「──何処に隠れるつもりだ」

 先程とは比べ物にならないほどの殺意を束ねて、あの小僧がやってきた。アーミヤとフランカが主力の方角──どうやらターゲットはアーミヤに移行したようだ。

 わざわざこんな狭いところでグレネードランチャーを連射してくるなど、随分と荒っぽいヤツだ。ひょいと顔を出せばコッチにも憎悪の視線を向けてくる。

「逃げられないぞ、ロドス。お前たちを粉々に……木っ端微塵にしてやる。感染者の裏切り者どもが!」

 は? 

 コイツ、何を言っている? 

「お寒い台詞だこと。って、行き止まりじゃない!」

「アーミヤさん、どうやら強行突破以外に無いようです」

 ゾロゾロと集まって戦闘体勢に入る面々を尻目に、オレは固まる。

 裏切り者? オレたちが何を裏切ったというのだ。

「感染者の身でありながら、龍門に手を貸し感染者を迫害するとは。同胞の命、その血で償え!」

「元はと言えば、チェルノボーグを焼き払ったあなたたちから始めたことでしょう! 裏切り者? じゃあ感染者の正義の名の下に何の関係も無い人たちを殺したあなたたちは許されるとでも言うつもりですか!」

「正当な復讐だ! 見て見ぬフリをする連中も皆同罪だろうが! お前たちもそうだろう! 感染者のためと宣うならば何故ウルサスで苦しめられる彼らの為に行動を起こさなかった!」

「──そうですか。あなたたちは……ですが、それが理由だとしても今のあなたたちは、ただ殺したいだけの殺戮者です」

「ならばそこの男もそうだろう! 俺たちをゴミの様に、いや炉に焚べる薪のようにしか見ていない!」

 ……話を振られた。

 仕方ない。話してやるか。

「じゃあ聞くが、何のために殺す? いや、誰の為に?」

「感染者のためにだ!」

「なるほど? ではこのスラムで細々と暮らす感染者の方々の生活を滅茶苦茶にしていることはどうなる」

「……何を言っているんだ?」

 かかった。なんだ、所詮そんなものか、オマエ。てっきり何が断固たる芯があるとでも思っていたんだが。

「なあおい、オマエたちのお仲間もいるんだろ? ココ。そこでオレたちを追いかけるためにドンパチ賑やかに騒ぎ立てたら家も何も消し飛ぶだろうが。これが感染者のためか?」

「ふざけるな! こんなところの何処が家だ! 家というのはこんな、こんな埃と瓦礫の中にあるものじゃない!」

「家を捨てて、嬉々として虐殺してるような阿呆に家の定義を説かれるとはな……家など所詮、帰る場所に過ぎん。物体としてしか認識していないオマエには理解できんよ。ところでレユニオンは感染者のために行動しているんだったな?」

「そうだ。お前たちとは違う」

「龍門に流れ込んできた感染者の内一人に、ウルサス採掘場で働かされていた感染者がいたそうだ。チェルノボーグの虐殺で帰るべき場所も、温かな家族との絆も失い、縋る思いで龍門を訪ねて、そして牢獄にぶち込まれたんだとさ」

 ドクターが静止するようにと手で合図を送ってくるが、もう少しこの小僧を煽ってやりたくなった。

「いやレユニオンの起こす暴力沙汰をバカにしていたさ。がねぇ、いやぁ……その時ばかりはレユニオンの情の深さに感動したァ」

「貴様ァ!」

「ハッハハハ! 普通こういう話は面白がるもんだぜ? オレたちと違うってんならそこは『ロドス流の強がりだ』って切って捨てろよ! そういう反応するってことはなんか引っ掛かってるってコトだよなァ!?」

 

 わあオーガニック的な煽り技ですねえ。

 

 >「貴様だけは殺してやる! もはや感染者ですらない、お前は奴らと同じだ!」

「すまない、言い過ぎたな」

 至って普通に謝る。煽るわけでもなく、普通に。ただただ謝る。

「だが一つ現状報告をしておくと、そうやってこのオレに指摘されないと気付かなかったような男がオマエだってことだ。ということはオマエの家族もそうやって目の前の憎たらしいヤツに何かを指摘されなきゃ気付けもしないバカなんだよ」

 無言で殺意を向けてくる小僧。

 ふうむ、これくらいで十分か。動きも単調になるな。容易いな、ありふれている。

「ドクター、オレを上手に使えよ」

「……やりすぎだ。重装オペレーターは術士オペレーターの前に! 狙撃オペレーターはGが敵指揮官を引きつけている隙を狙え! 前衛隊は部下の方を! ここで仕留める!」

 

 さて、では始めましょうか。

 スカルシュレッダーとガチる場合、何よりも気を付けなければならないのはグレネードランチャーです。

 範囲攻撃であるというのもそうですが、6連装のそいつを両手に、つまり12発あるというのが大問題です。別に鉈モードとか狂乱モードとかはどうにでもなるしできるからどうでもいいですが、一度後ろに引かれてそのままグレポン連射されると何もできずに沈みます(12敗)

 

 >……部下と共にオレの首狙いか。

 本当に容易いな。コイツら、本当に理想を信じてレユニオンにいるのか? 

 おかしい……というよりも、レユニオンの歪さがある。暴力による感染者の解放を謳っているが、さて末端の者まで浸透しているか。答えは否、だ。

 まばらだ。聞いた話もそうだが、こうして見てみるとよくわかる。コイツらは理想の旗の下へ集ってはいない。

 まあ結局、適当に共感できる立場で、適当に頑張っているヤツをヨイショして神輿にしているというわけか。誰でもいいし、何でもいい。復讐の大義名分さえあれば、と。

 ──落第だよ、オマエら。

 妄執は揺らいでいる、我執がねじれている、復讐者にすらなっていない。内に生じる源石の刻印は破滅の称号じゃないんだ。これは切符だ。新しい自分を始めるための、たった一つの冴えた片道切符。

 それを闇への誘いだと決め付けて……それで終わりか。復讐とは新たなる己を始めるための儀式。赫怒の炎に身を焦がして万物を怒り喰らうなどとは。

 憤怒に依存した逃亡者、オマエたちに黒き王の祝福は不似合いだ。

 

 あーあーあー、こんなにイカれてまあ。

 こいつってばこんなんだしなんですねあれですね。

 頭おかしい。鉱石病を黒き王の祝福て……一般的なサルカズですらそんなこと言わないぞ。

 

 >小僧が先鋒、前衛が遊撃手……後衛は術士で重装が後詰め? 変わった布陣だな。

 荒らし回ったところを遊撃手が掻き回して、術士がトドメか? まあオレは優先して小僧を相手すればいい。そもそも連携をするという時点で、ある程度はパターン化される。

 ならば──小僧目掛けて一気に接近する。そうだ、乱戦において爆発物ほど恐ろしいものはない。それが仮に銃撃機能のみならばオレから下がりながら撃ちまくるという選択を強いられただろう。

 

 グレネードランチャーを封じればスカルシュレッダーに対してアドバンテージを取ることができる。

 つまり……最適解は密着することです。密着してしまえば向こうの援護はほとんど意味をなさないし、重装が間に入っても何ら問題ありません。何故なら彼らの仲間意識は強く、それは一種の崇拝です。

 そんな人たちが作戦遂行の合理性だけで仲間を巻き込んだ攻撃ができますか? 感情に任せて仲間ごと敵を撃つことができますか? 

 ──できるわけありませんよね。だってレユニオンは家族なんですから。

 じゃあ、遠慮なく肉盾にしましょう。

 

 >「……ふっ」

 ほら、乗ってきた。小僧が感情に任せて剣を手にして誰よりも早く向かってくる。バカめ、戦略を考えればオレごと絨毯爆撃してしまえば一網打尽なものを。

「小僧、わざわざ乗ってきたのか? お優しいことだな。ご自慢の銃火器で味方諸共爆撃すれば安い犠牲でオレたちを殺し尽くせたものを」

「黙れ!」

「黙らんよ。黙らせない限りはな。まあオマエのようなヤツにできればの話だが」

 ヤツの怒りに任せた連撃を長剣で捌く。ふむ……技量自体はやはりそこそこか。だが、ヤツを動かす決意そのものは硬いと見える。惜しいな。怒りを飲み干して、新たなる自分になれば話は変わったものを。

 ──最大接近距離での格闘戦ほど厄介なものは無い。誤射覚悟の横槍が入らなければ逃げ出すことはできないからだ。ここでオレが接近戦を選んだ以上、オレもリスクを背負うことになるが……だからどうした? Wという最愛の運命が待っているんだ。この程度のリスク、踏み躙って当然だろう。

 剣と剣がぶつかり合う。二刀流とは攻めではなく、守りだ。小僧はそれをしっかりと理解している。片方を攻め、片方を守りに。そして僅かな隙も見逃さずに二刀を攻撃に持ってくる。

 エルガレイオンは脆い。性能としては優秀だが、変形を繰り返せば当然に機構に異常が発生する。よって長剣から切り替えるのは得策ではない。

「どうした、それだけか!」

 どうもオレは小僧の地雷を踏み抜いたらしく、さっきまであった理性的に連携してくるということもない。綺麗に司令塔がオレに張り付いている。

 確かにさっきの比ではない、この猛攻は。しかしそれだけだ。複数対複数において重要なのは、如何にして効率的に敵の数を減らしていくか。活動可能な行動予備隊や、イェラグのお偉いさんのご家族サマが出ている以上、強いヤツを強いヤツにぶつけて足止めし、その隙に落とせるヤツから落としていかざるを得ないワケだが……なんだ、結構正面から来るな。

 自信があるのか? いや違うな。

 どうも他のヤツらも煽りが効いたらしい。オレを包囲網の中心に持っていこうとしているか。

 

 ふーん包囲網か。ちょっと目立ち過ぎた感じですかね。

 んじゃまあ、そろそろやりますかね。試走でスカルシュレッダーを仕留めた攻撃を。

 

 >包囲網が完成した。オレも小僧も少なくない傷を負っているが、味方の援護が受けられない以上オレの方がやや深いか。

 そしてズラリと囲む重装兵。ふん、そういうことか。術士の奥にオレを誘導すれば勝てるとでも。

 剣戟を続ける。どの道小僧がオレから離れられなければ意味が無いのだ。ヤツらもただの木偶になる。

「っ、この……!」

 防戦に徹しているオレに不気味さを感じたのが、小僧は更に踏み込んでくる。早めに仕留めないとロドスに全滅させられると踏んだのかは知らん。だが──

 その剣を素手で掴む。複合兵器の弱点は、敵に奪われた時に二つの武器が奪われるということ。

「借りるぞ」

 力づくでヤツのランチャーを破壊しながら、蹴り飛ばしつつ感電させ、無理矢理に奪い取る。アーツで回復性能を底上げしながら適当なところを握る。

 ……機能そのものには異常は無いな。奪い取ったそれを発射する。ポンと小気味良い音と共に術士の隊列が爆炎に包まれる。当然それを阻止せんと重装兵が盾になり、襲い掛かってくる。

 仲間意識の強さが、オマエたちの死因だ。

 向きを変える。立て直すべく小僧を中心に集団になっている連中目掛けて発射。爆炎が生まれる。

 

 はい。これが私の編み出したスカルシュレッダー絶殺ムーブこと「煽って怒らせて武器取ってグレポンで仲良死」です。

 まあ今回は仕留め損ねたんですがね。

 

 >ウォーハンマーによる一撃を回避、そのまま首元の装甲と装甲の隙間にエルガレイオンの先端を突き入れて殺す。死体を足場に跳躍し、真下に一発。炎に群がる蛾にはいい薬だ。悲鳴一つ無く死んでくれるのは助かる。うるさくなくて済むからな。

 残り3発……しかしWのようにはうまくいかないな。やはりオレもランチャーを作るべきか。

「よくも同胞を!」

「すぐに会わせてやろう、あの世でな」

 寒い台詞を言いながら襲い掛かるゴミを適当にいなす。怒りに支配されたヤツの攻撃など単調。弾いてそのまま仕留めることすら容易い。剣を弾き、脇の装甲の甘いところを切り裂けば簡単だ。

 

 いやあ、仲良しってのは仲間殺すだけですぐ怒りに飲まれてくれるから楽ですよねえ。それが格上であっても付け入る隙は必ず生じるわけですから。

 そんなわけで、正面からだとキツイ相手は倒しやすくて大切そうなヤツを仕留めていきましょう。これすごく楽になりますよ。

 特にレユニオンチャートでロドスに勝てねえってなったらキャラクター同士の関係性と自キャラとの相性を把握するのが一番です。まあ強くなる人の方が多いけどネ……

 

 >残った3発を重装兵を減らすべく発射。爆炎を抜けて寄ってくる近接兵に対して、弾切れになったそれを逆手に持ってメイス代わりに撲殺する。大半の遊撃と術士はどうやらロドスが潰しているようで、邪魔は少ない。

 グシャグシャになったランチャーを捨てた頃には、立て直したであろう小僧が遂にランチャーを撃ってくる。

「……はっ」

 しかし6発しかないランチャーなんぞ、直撃よりも爆撃に使うもの。そしてその用途は逃げ道を潰す詰めだ。だから──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 悩むことなく全速力で前進。確認したのは4発。1発は蹴り返す。2発目は跳躍して避ける。3発目は斬り捨てる。4発目は──掴んで投げ返す。

 反射神経の加速と身体強化の同時使用により激痛が走り血管は破裂する。だがどうしたそんなものか。致命傷でないなら問題無い。続行する。

 残り2発、どう切って見せる? 小僧──! 

 重装1、術士1、小僧の布陣……スリーマンセル。

 エルガレイオンの変形を切る。大剣に切り替え……一瞬だけ動作が止まって、異音と共に変形した。

 

 クソッ! 

 ぶっつけ本番で動かすもんじゃねえな! エルガレイオンが壊れやがった! 変形できねえ! 

 けども問題ありません! 何故ならしっかりドクターの指揮に従えば勝てるからです! そして今ここで進行度上昇条件を満たせば……残るはモブケントゥリオと穢土転生シュレッダーだけ! 

 

 >……まずいな、異常が発生したか。

 しかしぶっ壊れるまで使えばいい。

 重装を無視して大剣を術士に叩きつけんとすれば、小僧が邪魔をしてくる。取り回しの悪い大剣ではヤツの攻撃を完璧に捌ききれない。取れる手段は捨て身の防御、それか感電。

 だが、ここまで層が薄くなれば──

「よく耐えてくれた」

「それでこそ」

 刹那、オレと小僧の間に割って入るリスカム。更にグラベルが高速で奇襲をかける。

 視線をドクターの方へと向ける。あの鉄仮面越しにはわからないが、オレを使ってみせたのだ、それはもう──感激に値する。

 

 あ、向こうの掃除の方が早かったですね。

 なあんだ、こんな終わりかぁ。

 あとはロドスの面々が残党をボコるだけなので加速です。今回はロドスの面々と戦うわけでもないので特にこれといった説明もいらないでしょう。

 

 >……結局、残りは取り逃した。元々そこまで派手にやりあうつもりもなかったのか、余力は残しているようだった。単にオレだけは殺したかったと見える。

 しかしそれだけではない。レユニオンが強力な単騎を投入してミーシャを奪取したというのが、チェン隊長から伝えられた。

 面倒なことになってきたな。

「……W」

 だが、それ以上に嬉しい。

 レユニオンの発言、聞き逃すはずもない。Wから連絡がと聞こえた。ならばもう、いるのだアイツが。

「あはは」

 会える、会えるぞ。

 運命よ、オレはここにいる。

 待っていてくれ。今行くとも。

 レユニオンどもの首をこさえてな。

 

 ……はあ。

 ロドスチャート、もうダメかもわからんね。

 ということで今回はここまで。

 次回は近衛局との合流からです。

 ご視聴、ありがとうございました。




Gくん
イカれ野郎。煽って言うに事欠いてそれかよ感がひどい。
しかもロドスの面々の前でこんな言動してるんだからもうダメ。
台詞の大半が悪役。†黒き王の祝福†

スカルシュレッダーくん
煽られた人。グレネードランチャー引き撃ちが最強戦術
嫌いじゃないけど、相手が辛辣なので辛辣なことしか言ってあげられない。
きっと、殴ってくれる人がいれば変わっただろう

ドクター
もう流石にわかった人。使い方は完璧

アーミヤ
色々言いたいことたっぷり

エルガレイオン
早速壊れた

走者
Gくんがロドス向きではないので困ってる人


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この竹達ボイスが聞こえた時がテメェの最期だ、ガバ走者!

展開に悩んだので初投稿です、


 どうも一般投稿者です。

 ぶっちゃけエンジョイプレイできるかどうかもだいぶ怪しくなってきました。

 

 >「おい」

「……? なんですかチェン隊長」

 近衛局と合流し、ミーシャ奪還のため協同作戦に当たるという運びになった。一応、ロドス側の戦力も消耗していない人員を追加で出すように申請はしておいた。

 特にこういう状況では医療オペレーターがいるといないとでは話が変わってくるからな。

 ──そんな中であった。龍女に話しかけられたのは。

「貴様、何を知っている」

 ──

 惚ける

 >素直に聞き返す

 ──

「何故そのようなことを?」

「疑わしいものは疑わねばならないのでな」

 要するに、アーミヤの納得行った反応から推測し、視線の先からオレを導き出したというわけか。

「ただ推測しただけですよオレは」

「どうも、お前はロドスとは異なって見える」

「ご冗談を。オレはロドスの一員です」

 実際、オレという存在はロドスの一員なのだから。その一員が理由を推測し、それが当たっていただけのこと。そして可能性を黙っていること。

 ただのそれだけ。

 そして今現在、イニシアチブを握っているのはオレたちだ。仕事をやり遂げたオレたちとは反対に、連中はしくじった挙句、尻拭いをしてくれと頭を下げている。

 どれだけ何を言おうとも、情報を出し渋りコッチに矢継ぎ早に持ってこいとだけ言い放ち、いざ持ってきたら奪われましたってのは変わらない。

 睨み合う。──迷ってばかりの目だ。ロドスに助けを求めてきているヤツらと変わらない、ありふれた目。

「で、オレなんかに油を売っている時間あるんですか?」

「確かに。今は無いな」

 去っていく龍女。

 ……迷い続けている分際で迷いないように動きやがって。気色悪い。まだレユニオンのヤツらの方がマシだ。

 自分の何たるかも包み隠さず誇れないような、こんな女が龍門の守護者か。ウェイ・イェンウーめ、この出来損ないのトカゲに何ができる……

 

 迷うことの何が悪いんでしょうかね。

 そもそもそんな簡単に自分がどんな風に生きてどんな風に死ぬか見つけられますか? いや見つけられない。

 でもRTAには迷いなんていらないよネ! お前こそ俺の求めた操作キャラだよGくん! 

 

 >近衛局の別働隊と合流、レユニオンの追跡を開始。

 増援オペレーターの到着は遅れそうだ。まあ、元来彼らは戦場に立つことのない存在。そのための装備やら何やらは与えねばならない。ケルシーも今頃、あれやこれやと指揮をしているだろう。

 それからエリートオペレーターを一人呼び戻してくれと個人的に頼んでおいた。

 Wがいるのだ。互い目が合ったが最後、どちらかの命を喰らい尽くすまで止まることは決してない。Wの真なる目的の為にもストッパーは必要だろう。止めてみせると宣言したケルシーとの対決もまだなのだ。

 故にその点を考慮し、オレという存在が抜けてもフォローできる上に、オレを止められるオペレーター……エリートオペレーターの中でも武闘派を頼むと。

 ま、Wの戦闘スタイルの相性もある。ブレイズが来ることはないだろう。

 

 ……あー。

 実はですね、この応援イベントは、好感度の高いキャラが増援に来るんですよ。ロドスでのGくんへの好感度の高いキャラってなると、もうほとんどいないので自然と狭まってくるんですよねー。

 ブレイズ姉貴確定です。頼もしいけど今は帰ってお願いだから。あんた来ると被害大きくなって始末書書くのに時間かかるの。

 

 さてこの後はまあ……雑魚ばっかりですからねえ。近衛局強いし。はいはい加速加速。別にケントゥリオはそんなに強くないし、サクッと首を跳ね飛ばしましょう。

 いかんせん大剣形態から無理に変形させようとしたらエルガレイオンがぶっ壊れるのでできませんが、乱戦を利用して背後から近づきチェスト関ヶ原するのが一番です。

 

 >……下っ端が捨て石に使われているようだが、それにしては何かがおかしい。派閥、とでも言えばいいのか。何か信じるモノがあるヤツもいれば、怒りに飲み込まれた愚者もいる。それなりに戦えるヤツらからチンピラ崩れまで。戦術もバラバラ。数だけは多い。

「……不思議だな」

「何がです?」

「思想が一致していない。行動だけが同一なだけで、他は全てが噛み合ってない」

 リスカムの言葉に答えを返しつつ、戦場を俯瞰する。

「近衛局と駆け引きをそれなりにできているヤツらもいた。ということは軍事的思考がある程度共有されているが……意志が同一されていない」

 結局はそこなのだ。しかもあの戦法、オレの目に間違いがなければ──

「しかしウルサス軍の戦術に似ていた……」

 おかしい。ウルサス人中心の反乱者たちが何故、ウルサス軍の戦術と似た方針を取れる? いや待て、あの小僧……スカルシュレッダーとか呼ばれてたヤツの憎悪と憤怒を考えれば、何故これだけ生き残りがいるんだ。

「……ウルサス軍人が反乱でも起こしたか」

 ──統率、それも軍隊式。確固たる規律を以てして、最低限の殺しで済ませる。まあ済ませられたかは別だが。

 しかしそれは、同時に敵の強大さを知らしめることになる。一個師団……いやそれ以上の可能性もあるな。だが派閥が分かれている以上、頭を潰せばあとは有象無象。

「厄介だな」

「正規軍の一部が離反しているとなれば、龍門とロドスを合わせても厳しいようにも感じます。特に過酷なウルサスの装備ともなれば──」

「さてどうだろうな。単なる暴力装置の方が面倒かもしれんぞ。軍人は型にハマっているが、バカはなにせバカだ。何をするかわかったもんじゃない」

「……あなたもバカでしょう」

「否定はしない。だが、もっと気がかりなことがある。何故、サルカズの傭兵が仕掛けて来ないかだ」

 ヤツらに限っては切り札的運用をするものではない。傭兵は効率の良い戦争道具。ファーストフードよろしく腹が減ったら食って、要らなくなったら捨てるだけ。小腹を満たすも八分目まで食うも自由。

 だから本来なら、手軽に使える優秀な駒として運用するのが正攻法なのだが──

「Gさん、 サルカズ傭兵の実力はどれほどのものになりますか」

「端的に言って、レユニオンの中でも最大になる。こと戦争においてはヤツらの右に出る者は早々いない。そしてここにいるということは、あの内戦を生き延びてあの男に降ることなく、戦場を選んだということ。如何なる理由であれ、今まで生き残ってきたという点においては、やり合えば龍門とて苦しい戦いを強いられるだろう」

 近衛局の装備・実力・判断能力、それらは全て高レベルで練り上げられている。ウェイの隠し球もあるだろうし、総戦力としては申し分ない。正面から行けばロドスだろうが傭兵だろうが多くの犠牲を払うことになる。

 だが、ああやってレユニオンが入って来れる隙間があるだけで、それは十二分だ。テロリストという大義名分を得たあの傭兵どもが、民間人を盾にするやら居住区を囮にするやら浮かばないはずがない。

 ま、オレなら()()が。感染者の死体でも投げ込んでやれば、源石の船に生まれ変わるだろうさね。

「侮ってもらっては困るな」

「勝てないとは言っていないさ。ただ無事では済まないというだけだ」

 鬼女……確かホシグマとか言ったか。ソイツの文句に事実を返しつつ、この解せなさの真相を探らんと戦場に目を置く。

「そこまで重要ではないのか、ミーシャは」

 ドクターの不思議そうな発言に、その答えは明確なものではないにせよとしつつ、事実だけは返す。

「わからん。だが何にせよ奪われるのだけは阻止しなければならないのは事実だ。レユニオンがそれだけ血眼になって取り返すんだ。ヤツらにとっても、何らかの意味があるはず──もっとも、ヤツらの中の誰にとって意味があることかは知らんがな」

 風の噂で聞いていたが、ヘドリーとイネスはテレシス一派として迎えられたらしい。Wと連んでいる以上、心からというわけではないだろうが。相手はあのテレシス、テレジアの兄。そう考えてみると、サルカズ傭兵の9割はヤツの配下という線もある。

 ……ただ、ヤツだって無用な戦乱は好んでないはずだ。旧テレジア派を手中に収めていることから考えればそれは一目瞭然。そもそもカズデルが割れたのは、テレシスとテレジアの方向性の違いであり、その目的がカズデルおよびサルカズ統一であることは変わりない。

 ヴィクトリア辺りで王をやっているとも聞く。そんなヤツの息がかかった連中がレユニオンにいるということはつまり……泥舟かと思っていたが思ったよりもややこしい話になってそうだな。

 アイツ、孤立無縁もいいところだな。昔の仲間くらいしか金をぶら下げられても断ってくれるヤツいないだろ。

 大方、チェルノボーグでScoutと利害の一致から共闘し指揮系統は奪取したものの……ってところか。そうなるとその責任取りと報告にヘドリーとイネスがヴィクトリアに向かって──

 

 おっと、ここまで考え付くとは流石頭のいいバカ。3年間虐殺の旅を歩ませた甲斐がありました。

 

 >──待て。

 サルカズ傭兵を温めておく理由。このレユニオンの派閥めいたズレ。さほど重要でもないようなミーシャの扱い……厄介払いなのか? わからんが……

 ……本拠をチェルノボーグにしているならば、そういう使い方もできる。つまり、オレと同じバカなのか。ははは。

 まあいいだろう。そうであっても潰せるさ。いくらでもやりようはある。そう、いくらでもな。

「ボス」

「……? どうしたエルドス」

「いや、なんでも」

 なんだというんだ? ……まあコイツらのすることだ。何か考えがあるのだろう。

 

 ──裏切りか? 

 いや、ここまで着いてくるなら裏切りではない筈……なんだ、一体。

 

 >追撃を続ける。近衛局との共闘はオペレーターたちにもいい刺激になっているようだ。負けじと奮戦してくれるのは大いに助かる。

 さて、とりあえずはミーシャの奪還に……いや、尻拭いでもしてやるか。

 しかしこの指揮は身に覚えがありすぎる。まったく、食えない男だよオマエは。都合が良すぎる。ケルシーのヤツ、受け入れ切れるか? アイツだってテレジアの件でキレ散らかしてるだろうに。

 ……割り切れそうだが、さてあの女、あっさり風味に見えてその実中身はドロドロのこってりだからな……

 

 ん? このルートはケントゥリオが──しまった、ドクぴに任せっきりなもんだからルート取りミスったな。下手に勝手に動いて睨まれるのも面倒だし、ここはもう諦めましょう。

 別にやってもいいんですけどね、近衛局がやかましいんですよ。変に弱みを見せるくらいなら堅実に行きましょう。うん、やっぱりこのチャートボツだな……トロフィーと相性が悪過ぎる。

 ただ、序盤からさっさと強力な兵器が用意できるし、ちゃんとやれば効率的に回せるだろうことが判明したのは大きいですね。スペック欲しさにこのバカ使ったのが間違いだったか……

 

 >大剣に固定されてしまった以上、取り回しが悪い。武器の補給もままならない状態で出撃するものではなかったな。

 せめてサブウェポンくらい用意するべきだったか。

 

 ま、素直に雑魚を散らしてましょう。

 なんとかスカルシュレッダーだけはこの手で仕留めたいところですが──仕留められるかなあ? いや仕留めると決めれば仕留めるんだ。そう心の中で思った時にはって奴ですね。

 てな訳でペンギン急便のガンダムとテキサスに合流。更に負けなくなりました。じゃあ流しますね……

 

 >サルカズ傭兵が出てきても、それは囮としての役回りだった。それなりにやれそうだから、首を落としてみたかったのだが、まあ仕方ない。

 ……さて、Wがいるということはつまり──ドクターを狙ってくる可能性もある。警戒するに越したことはないな。

「敵がいない……!?」

「落ち着けフランカ。敵の痕跡が0なら、それは移動していないという線もある。退路は塞がれているのだからな。──アーミヤ、少しドクターから離れてくれないか? それからええっと……ホシグマだったな。ドクターを守って欲しい」

 不思議そうな二人だが、敵の手を知っている人間の発言である以上は一理あると思ったのか、まあそれはそれとしてというような雰囲気のまま少しだけ位置を変える。

「重装オペレーターはドクターの後ろに。近衛局の重装隊も同じようにしていただきたい。遠距離攻撃が可能な攻撃員はドクターを中心に左右に展開してくれ」

「私も?」

「エクシアはクロスボウ隊の前へ。火力が違うからな。前衛は適当にバラけてくれ」

 ──血気盛んな子供は、自ら手柄を立てることに非常にこだわる。特に嫌いなヤツがいれば、ソイツを殺したがるもんだ。獲物を逃がさないとは聞こえが良いが、それは行動の単純化の裏返し。それに、ホシグマならば受け止め切れるだろう。武器の質が違う。

 アイツが司令塔で一番槍なら、このままやれば。

「そのままドクターたちを先頭に中央に入っていくぞ」

「Gさん、それはドクターを──「黙っていろアーミヤ。これが一番早い。そのためのオマエだ」……」

 ゆっくりと歩いていけば、ほら。

「地面から!?」

「姑息な手を──!」

 そしてあの小僧が、ドクター目掛けて突っ込んでくる。まあそうだよなそうするよな。だからこそ狙い目なんだよ。突出してくるクセは見抜いたから。

 両翼に展開していた遠距離部隊が一斉掃射をかける。アーツが、矢が、弾丸が、それらに肉を食い千切られても全力で向かってくる。だからこそホシグマに防がれて──自爆するだろうことは読んでいたさ。ドクターを守りたいと強く思うことで強化されたアーツを放ったアーミヤに穿たれる姿を見る。

 ……やはり正解だ。ドーベルマンからAceが単身で立ち向かうまでのことは聞いていた。アーミヤのアーツは感情に応じて能力が増しているかもしれないと。

 ドクターが死にかければ、テレジアから受け継いだであろう力を覚醒させるに違いないと思っていたが──どうやら功を奏したな。あのアーツ、オレが見間違えるものか。

「──じゃあな」

「きさ……っ」

 ゲームオーバーだ、小僧。

 隊列の後ろから飛び出して大剣を振り下ろし、心臓含めて左半身ごと叩き切った。これで完全に殺した。あとは安全確認のために、頭でも撥ね飛ばしたいところだが、まずはこの包囲網を破壊するとしよう。

 

 はい、これでスカルシュレッダーくん討伐完了。

 やー、こうやって見抜けるとサクッと始末できるから俺は君が好きだよアレックスくん。世辞の句一つ読ませねえけどな! 

 

 >ホシグマたちを除いた全員は、何を言われるまでもなく殲滅に動き出した。また神輿を亡くしたレユニオンは統率を失い、敗走を開始する。怒りのままにぶつかってくるヤツらもいたが、何を言うまでもなく叩き潰されていく。

「……ほう」

 どうやら、コイツがそんなに欲しいらしい。どうにもホシグマを優先的に攻撃してくるのを確認すれば、嫌でも想像が付く。

 そうやって拘ることもまた隙になる。そんなに死体が欲しければ、くれてやるのもやぶさかじゃない。すぐに再会させてやろうか。

 ──そう、思った時だ。

「──ッ!?」

 すぐ真横が爆発した。そのまま爆発は続き、オレとドクターたちを分断する。

 狙いはオレだ。オレ目掛けて飛んでくる擲弾を認識した。爆発から逃れようとすれば離れざるを得ない。しかし、離れなければならない。近くにいると巻き込んでしまうのだから。

 この感覚……間違いない。W……!! 

 

 ……来やがったか。

 来ましたねW姉貴が。

 

 >完全に分断された。孤立した。しかしそれは向こうにも言えること。

 主戦場から外れたこの場所が、運命との再会となる。

「久しぶりね。運命(G)

「久しぶりだな。運命(W)

「あんたとのデートのために気合い入れた服にしてきたから、ちょっと時間かかっちゃった」

「気にするな。それだけおめかししてくれるなんてオレとしては嬉しい限りだ」

 互いに笑い合う。状況は最悪だが、同時にオレは()()()()()。我が身という時計に紛れ込んだ砂が除去され、ほんの少し油が差される。

 言葉にすればその程度。しかし僅かそれだけで十二分。何故かを敢えて説明する必要は無い。乾いた砂漠で与えられる一滴の水は、されど天よりの恵となるのだから。

 

 ……ん? 

 待てよ? 

 あれは、あれは──! 

 

 >ならばそれはヤツにも言えること。オレが回帰したならば我が運命が回帰していても何もおかしなことはない。

 右手に持ったグレネードランチャー。左手にはアサルトライフル。腰にぶら下げられた刀剣──全身にどれだけの武装を施しているかなど、見ればわかる。

 余すところなく、完全武装。爆弾だけでなくクロスボウまで装備している。

 

 ア……アッ、アイエエエエエエエエ!?!? 

 完全武装!? 完全武装ナンデ!? ゴボボーッ!! 

 いやおいどう見てもどう考えても現実見ても完全武装Wじゃねぇかァッ!? 

 いやおいふざ……ふざけんなよ!! いけねえいけねえいけねえ、なんてこった! 

 

 >ライフルが咆哮する。弾丸が迫り来る。更に擲弾が退路を立つ。さてどう対処するか。

 

 無理無理無理無理! 壊れかけのエルガレイオン大剣形態で完全武装Wは倒せないって! 大剣でやって失敗したのが最初の試走なんだからさ!! スペックガタ落ちしてるんだぞ!? 

 というか完全武装Wがここで出てくるのはどう考えてもおかしいだろ!? なんでだ!? チェルノボーグで暴れ過ぎたからか!? クソッ、Wについてはほぼ完璧に理解したと思っていたのに──!! 

 

 だが、しかし! 

 別に倒さなくてもいい! 

 ともなれば攻略法はある程度通用する! 

 

 >無論、前に出る。弾丸なぞ潜り抜ければいい。どうせ爆弾が擲弾が構えているだろうが斬り捨てればいい。最大接近距離での大剣で圧をかけていく。それしかない。

「やっぱり抜けてきたわね」

「せっかくだ、鼓動を感じたくてな」

「あら、情熱的」

 投げ付けられる源石爆弾と投げナイフ。片方に対応すれば──ということだろうが、何こんなものはな。

 投げナイフは左手で受けて、その勢いを利用して宙返りしつつ爆弾は蹴り送る。更にエルガレイオンを地面に当てて、棒高跳びのように上へ飛ぶ。

 そのまま縦に振り下ろしつつ落下──当然回避される。そのまま横に薙ぎ払い、爆発により生まれた煙幕を振り解く。

「悪いが乱雑にやらせてもらうぞ」

「趣味じゃない大剣振り回してるのはそれが理由? それにしても見えるわね他人の影が。デカブツの振り回し方が随分とサマになってるじゃない」

 擲弾と弾丸をくぐり抜けながら大剣を振り回していくが、やはりこの手の大物を相手取る経験はWの方が上だ。当たらん。というか、擦りもしない。どうにかして当てるとなると──血で盛り上げてみるか。

 当たらない剣戟を続ける中で、刃に指先を滑らせる。流血が弧を描き、それを媒介に雷撃がWを襲う。

「へえ……血を使ってそんなことできるようにしたの、ねっ!」

 オレと血が繋がっている僅かな時間、生体電気を増幅して血を介して感電を狙うが、刀剣を避雷針代わりに使われる。

 更にもう一本抜刀、そのまま大剣の範囲外を目指さんと接敵してくる。生物学的に当たり前の話、そう何度も連続して使えるわけではない。

「チィッ、インターバルを攻めてくるか」

 ──だが。

 エルガレイオンを逆手に握り、腕を思いっきり振り切る。更に振り上げる。

 刀剣を使い捨てるように防ぎ、そのままライフルを至近距離で発射……される前に空いている手でライフルの側面を押して射線をズラす。

 直後、腹部に衝撃。蹴って離れたか。追撃に順手に持ち替えて振り下ろす。見えるのは布の切れ端。掠めただけか。横に構えて踏み込む。

「あはっ、鼓動を聞きたいんじゃなかったの?」

「今のオマエは少しデカいからな、コンパクトにしてやるよ」

「いいの? 上半身と下半身別れちゃうわよ」

「はっ、繋げて治してやる!」

「怖いわねえ、あんたは!」

 振るう。横斬りなんぞ当たらないが、近づけないようにするには面での攻撃を選択しなければならない。止めた瞬間、オレは死ぬ。

 ──だが、Wも同じだ。電流の隙を突くべく接近戦を選択した時点で大剣の射程範囲内に踏み込んでしまっている。更に何に取り替えようが、それよりも早くオレが首を落とす。当たらない攻撃、できない攻撃……一瞬でオレたちは何一つできなくなった。

「なぁんて、ねっ」

 ──!! 

 刹那、ランチャーから擲弾が発射される。よく見ればあれは、空いた手で腰に触れ、そのままランチャーを向けて逆手で発射したのだ。

 至近距離、できることと言えば盾としてエルガレイオンを使うこと。

「くっ、……!」

 煙幕の向こう。音が聞こえる、この風切り音は──クロスボウか! 強引に素早く剣を振り上げて、なんとか逸らす。

 が、その僅かな隙を逃さぬと擲弾と時限式の爆弾が襲いかかる。時間差で爆発する上に、誘爆をするともなると、途端に予測不能の凶悪な攻撃となる。

 しかし、こんなところで固まっていて何になる? オレは何を黙っているのだ。そうだ、ここで燃え尽きてもいいのだ。何故ならば運命がいるのだから。

 技と経験と勘を費やしてなお届かないなら、全霊を注ぐとしよう。オレの前に立ち塞がるのは常に強敵だが……その全てを喰らい尽くして来たのだから。

 踏み出す。前へ前へと。エルガレイオンを担ぎ、全速力で被弾を無視して駆け抜ける。炎に焼かれるが大したことはない。アーツの強化は能力そのものの向上。再生能力もまた上昇する。

 無論、突き抜けてくるのはわかっているから目の前には爆弾の壁が用意されている。W自身も攻撃体勢、更にコッチよりも早く動ける。

 だが問題無い。跳ぶ、ただひたすらに。そして弾丸が掠める。擲弾を直撃させるための牽制か、あるいは他の本命か。どちらにしろ──オレには関係無い。肉を貫く弾丸を無視してWの後方に着地……しない。

 逆手に持ち替えたエルガレイオンを、地面に突き刺す。そしてそれに──()()

 手に入れた足場を蹴り、自らを一方通行の弾丸と化す。

 再びボルトが飛んでくる。右手で受けて引き抜く。これで武器は手に入れた。構えていたライフルとクロスボウが降りる。格闘戦に乗るつもりか? 全く、男に合わせる健気な女ではなかった筈だがな、オマエは──! 

 

 まだか! まだ来ないのか援軍! 助けてブレイズ姉貴! 

 

 >生体電気による感電は、金属から金属を通した時に最大限の効果を発揮する。素手ではこちらの被害が大きい。故に素手でやられると絡め手が封じられる。

 だからできることと言ったら、真っ向正面からの肉弾戦。拳を互い弾き合い、蹴りは当たってはならぬと避けあう。少ない隙を見つけてはその関節を破壊せんと技を向け合うが、百千、いや那由多の彼方程も互いの技を見合った間柄故に次に何をするかが手に取るようにわかる。

「なーんか、いつもと変わらないわねえ」

「手を知り尽くしてるんだし、仕方なくないか」

 こんな風になんともなく会話できるくらいには、格闘戦に関してはお互いに知り尽くしている。

「新しい先生でも見つけたの」

「弟子だ。デカブツの才能があるイイ女でな」

「ふぅん。イイ女、ね。それってあたしよりも?」

「いや、オレにとっては悪い女だ。自己主張を余りしないのでな。オマエと混同する」

「お邪魔虫……って訳じゃないわね。見りゃわかるわ」

「そう見えるか。ではなんだ?」

「かわいい妹分ってところかしら」

「……あり得んな。オレにとっては何者でもない」

「どうかしら?」

「どういうことだ」

「教えてあげない」

「つれないな」

「それよりも、このままじゃれあい続ける? あたしとしてはそろそろ仕事をしたいんだけど」

 ボルトが弾かれる。しかしそのまま接近戦を続ける。完全な膠着状態。さっきの大剣を使っていた時とは訳が違う。オレが詰めないと完封される。イニシアチブを握っているWが退屈そうに声をかけて来た。

「ていうか、あんたこっち来なさいよ」

「はぁ? オマエ正気か?」

「龍女の首を狙うと一人じゃ難しそうなの。だから手を借りようかと思って」

「寝返れとはな」

「組み敷いて理解(わから)せてもいいのよ」

「できるものならヤってみせろよ」

 取っ組み合い、睨み合ってから不敵に笑い合う。

 

 それ負けフラグなんですけど!? 

 メスガキに負けるルートなんですが!? 

 

 >刹那、感じ取る気配と騒音──このチェーンソーの音は、いや待て何故だケルシー!? どうしてここでブレイズを投入するという判断を──!? とかく急いで蹴って離れる。そんなオレから何かを感じ取ったのか、Wもまた防御に徹して下がる。互いの間に何かがド派手に落ちて来た。

 

 きた! 

 ベストコンブきた! 

 これで勝つる! 

 

 > 「──へえ、あんたが先生の運命なんだ」

 聴こえてきたのは、ゾッとするほど低いブレイズらしからぬ声だった。怒りとも哀れみとも取れるその声色は、一体何に対して儘ならぬ感情を示しているのか──

「生意気なフェリーンね。どっかのクソ医者思い出すわ」

 それに対してWは、一瞬にして雰囲気を変えた。先程までの楽しげな感覚は消滅し、鬱陶しいと声だけでなく全身から感情を表現している。

「悪いけど、これ私の先生だから」

「それはずっとあたしの物よ」

「オレはオレ以外の物にはなり得ないんだが」

「私の先生」

「あたしの物」

 ……いや、まあ、抑えてくれるのは助かる。エルガレイオンを取りに行くか……

 あっという間に激闘を繰り広げ始めた二人を尻目に、さっさとエルガレイオンまで戻って引っこ抜く。

「──気に入らないわその目。何? 遠巻きに見ているのが正しいって? 何者にもなれないからこそ、何者でもない自分が肯定し理解する必要があるって? あははは、その枠はとうに埋まってんのよ」

「だから何? 二番煎じだろうがなんだろうがなりたい自分になるのが大切なんじゃないの。そうやって運命だからって見下してると愛想尽かされるかもね。あとそれを決めるのは君じゃないと思うんだけど」

「ふふふ」

「あはは」

 微かに聞こえてくる内容は、なんというか耳を防ぎたくなるようなことばかり。エルドスたちを呼び戻し、ブレイズと共闘させてWを確保してしまおう。

「消し炭にしてあげるわドラ猫! あたしとこいつの間にあんたはいらないのよ!」

「燃やし尽くしてあげるクソ女! そんな風にしてるから先生にデレてもらえないんだよ!」

 激情のままに二人は闘争の目と化す。チョイスを間違えたかもしれん。さっさと戻って来い……! 

 

 ……レユニオン蹴散らしてさっさと部下拾いましょう。このままだとスカルシュレッダーを穢土転生できない。

 

 >「何者にもなれない端役風情が大きく出たものね」

「運命風情が端役に意見するの? 何者にもなれるのが端役の特権よ。そうなるしかない運命さんにはわからないだろうけど」

「何者にもなれない分際が!」

「何者かになるしかない分際で!」

 いや、あの……オレはオレのモノなんだが……

「こいつを奪わせないんだから──!」

「運命なんて言わせるもんかァ──ッ!」

 助けてケルシー。助けてモスティマ。

「本当に運命なら殺し合う以外にも何か道があるんじゃないの!? 君が先生に合わせる必要なんて何処にも無いわ!」

「そう生きてこう死ぬって決まってる男の運命たるばそうなるしか無いのよ! 知った風な口を聞かないで欲しいわね──特にこの、あたしの前では!」

 

 ロッチナみたいなこと言ってるW姉貴。愛に溢れてますねえ! 

 

 >「先生は確かにこう生きてそう死ぬということを選んでる。だってそれが先生にとっての幸せなんだから!」

「わかってんなら黙って見てなさい!」

「わかってるから文句垂れてんのさ!」

「君も幸せになるべきじゃないの!?」

「これでいいのよあたしは!」

「嘘つけ! 本当は普通に過ごしたいクセに!」

「何が!」

 

 天パとグラサンみたいな言い争いになってる……

 

 >「じゃああんたは何なのよ! こいつの何者かになりたいっていうのは殺し合いの舞台に立って当然でしょう!」

「そうならずとも問題無いっての! 先生の道楽に付き合う理由なんてないからね! 引っ叩いて納得させればいいでしょ!」

「はぁ!?」

「首輪付けて飼っちゃえばいいのに! 君なら飼い慣らせるんでしょ!?」

「そんなのは解釈違いなのよ、にわか!」

「それはそれで美味しいとか思ってんでしょ!」

「知ったような口聞くわねホントに──二度とそんなこと言えなくしてあげるわ!」

 

 あ、来た来た。

 

 >「ブレイズ! ドクターが危ない!」

「っ、わかったテラーン! 先生、任せていい?」

「そのつもりだ」

 ブレイズがWから離れていくのと同時に、オレたちは一瞬で包囲網を完成させる。……いや待て。何故テラーンは、ドクターが危険だと? 

 

 ──ん? 

 

 >どういうことだ、と聞き返す前に。

「ぐ──っ!?」

 後頭部に、強い衝撃。

 視線を送るとそれは、エルドスがクロスボウのケツで打ち付けた姿。

「──エル、ドス……ッ!」

「悪りぃなボス」

 全く謝罪の意も無さそうな一言。

 オレの意識が、閉ざされる……

 

 は? 

 

 は?? 

 

 は??? 

 

 えっ、まっ、は? 

 

 なにが、どうなってんの……?




Gくん
スカルシュレッダーくんをハメ殺したところが見せ場な人。
W姉貴といちゃつき、ブレイズ姉貴にチクチク言葉された後、部下に殴られた
Wゥ……(フルフルニィ)

W姉貴
まさかまさかの完全武装仕様で乱入してきた人。
まあ運命が張り切ってるからね、しょうがないね。なお張り切りすぎてGくんの勝ち目が育成失敗の野良レースに皇帝が出てきた時並みに薄い模様。
にわかに色々言われて怒り心頭。
走者のガバによって生まれたイレギュラーその1。

スカルシュレッダーくん
かわいそう。
今回は見せ場無し。ごめんね。

ブレイズ姉貴
乱入してくるとはとんでもない奴だ。
別にGくんの何者かになりたかった訳ではない人。純粋に見られてないのが不満なだけで、視界にさえ入れて貰えば特に文句は無い。
ただW姉貴のなんとも言えない態度には頭来てしまい、喧嘩を始めた。
Gくんの狂った理想は、本人の救いならまあ仕方ないんじゃない? と大目に見ている。ただ止められるなら殴って止める、そういうふうに決めている

部下四人衆
オンドゥルルラギッタンディスカ!?

走者
メ ガ ト ン コ イ ン


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小話:自由な虜囚

完全に悩み行き詰まったので初投稿です。


「テレジア。何故だ?」

「理由は無いの。あなたと同じ」

「オマエたちは腹の内が見えるらしいな」

「何処でそれを?」

「さあ、何処だろうな」

 

「Gはさ」

「ん?」

「どうして私のことを敬ったりしないの?」

「生憎と敬虔なサルカズじゃないからな」

「違うわ。そういう意味じゃない。みんな、その……なんて言うのかしら。ちゃんとこう、王族って認識してるじゃない」

「ああ、なんだそんなことか。どうでもいい」

 

「……アンタは──魔王、なのか」

「そう言われるかもしれないし、そうでないかもしれない」

「答えてくれ」

「秘密」

「教えてくれ、オマエが選ばれたワケを」

「──選ばれた?」

 

「誰しも天より与えられるモノがある。それは凶運すら含めて。だがオレにはそれが見つからない。全て自力で掴み取ったモノばかりだ」

「きっとあなたには人の縁が与えられたのよ」

「人の縁? このオレに? 殺すしか能の無いヤツに、縁なんぞ何の意味も無い」

「どうしてそんな態度になるの? それは違うとかそういうのは当たり前。だってあなたにとっては、あの血塗られた道こそ救いなんだから。でも、どうして人の縁とかWのこととか言われると、そんなムキになって否定するの?」

 

「……言われてみりゃ、そうだな」

 

「オレも、わからない」

 

「ねえ。考えたことある? 自分がもし、平和に生きられたらって。Gという名でもなく、ジェヴォーダンの獣でもなく、ただ一人のサルカズとして」

「考えたこともない」

 

「オレは望まれて生まれたワケじゃない。ヤツらが欲しかった後継の臍の緒に絡まって出てきた存在だ。生まれた時から一人で、掴み取るしか方法が無い」

「そうじゃなくて。物は試しよ。想像してみて? 戦いとは完全に無縁で、隣には大切な人がいて、剣じゃなくてペンを握って、普通に暮らしている自分を──」

「テレジア」

「しなさい」

「……わかったよ」

 

見えたのは、何処かの学生をやってる自分。

隣にいるのは、コイツら。

バカみたいに笑い合って、くだらないことでふざけあって、そして──が側にいる。

 

……違う。

何故こんなものに、叶うならと思うのだ。

 

オレの始まりは簒奪と排除、破壊と殺戮だ。

そんな男がこんな風に生きられるはずなどない。作れるモノと言ったら死体と残骸だけ。

 

普通に生きている人間には、武器を作るよりも簡単に凝った料理を作れるし、殲滅の策を練るよりも簡単に明日の予定が立てられる。剣を振るよりもペンを握るのが得意で、爆弾を組み立てるよりも家を建てるのが得意だ。

人を殺すより人を助けて、隣人と会えば切っ先を向けるのではなく挨拶を交わす。

すべてオレには無縁なモノだ。

 

ならば今想像して、言葉に出来ぬ恋しさを感じるこの光景とはつまり、羨望なのだ。

願望ではない。断じて。

 

……捩じ伏せるまでだ。

オレの邪魔になるモノは全て。

一つ余さず、一切の例外も無く、文字通り、ありとあらゆる存在を。

 

「オレは悩まない。前に進む、進み続ける。最強の字を勝ち取るまで。だから──」

「無理にやめろとは言わないわ。ただ振り返るくらいのことはしないと──」

 

 

「オレは」

 

「あなたは」

 

 

自由/囚人




久しぶりに更新して千文字程度の番外編ってどういうことだ!?
と問い詰められそうですが真面目な話、原作確認して「こいつの出番ないじゃん」ってなって手が止まっていました。

本当に話が膨らまない。
元々わかっていて、それでもできると踏んで進んでいたのですが、見通しが甘かったとしか言いようがない。
完結までのルートと奴の存在感をアレコレ考えた末に前回はあんな話となってしまったのですが、この先が真っ二つに割れてしまっている。自分でもすごく困ってしまった。

しかし打ち切りにして逃げたくないし完結させるためにアンケート取って逃げ道潰します。
後書きにダラダラと言い訳並べるバカで申し訳ないです。


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助けてらりるれろ

エルデの王になったので初投稿です

──いや、違うんです。
エルデンリングやってたのもあるけど、いざ道が決まっても筆が中々進んでくれなかったんです。
マスターデュエルやってたけど。9章来たけど、10章近づいてきてるけど。

てなわけで本編進めていた時よりも遥かにスローリィでグダグダな進みですが、それでも暇潰しの足しになれば幸いです


 >「っ、……」

「おはよう、G」

 冷や水をぶちかけられたらしい。見知らぬ部屋でバケツを片手にオレを見るWが目の前にいる。

 ここは──どこだ? 前線基地ではあるまい。ならば……

「チェルノボーグ、か」

「惜しいわね。正確にはチェルノボーグから外れた廃棄都市よ」

 

 どうも、キング・オブ・ガバリストです。

 前回は──わかりません。何故あんなガバが生まれたのか。ただチェルノボーグに連れてこられてしまった時点でチャートは崩壊しました。

 

 >「で、これは何のつもりだW」

「だから言ったでしょ。こっち来いって」

「……グルか?」

「いいえ。別に大したことはないわ。利害の一致よ」

「オレ一人と引き換えにオマエが帰るなら儲け物と考えたのと、内部に送り込む算段か。で? ミーシャはどっちが貰ったんだ」

「死んだわ」

 Wの一言で思考が停止する。

「……は? 待て。何故死んだ? あり得ん、どっちにしろ保護するのが思惑に……」

 あり得ない。保護をするのが双方の目的。何故それが、どうなって死んだというのだ。

「……言葉をミスったの。実弟のアレックス──スカルシュレッダーが生かすために戦死したし、更にあいつだって別にレユニオンに着かなくていいって言ったのにね。スカルシュレッダーになって──結果戦死したわ」

「は、はは……バカバカしい。そんな簡単に自身の舵を他人に任せるとは」

 Wらしからぬ表情は、自分のミスを責めるものか、あるいは死んだミーシャへの哀悼か。

「……どれくらい経った」

「1日も経ってないわ。ここはあたしが請け負ってる場所。だからほとんど顔見知りよ。それなりの扱いは保証するわ」

 

 更に言えば、武装はエルガレイオン一本。ロクな整備もできないし、これから用意するはずだったメタ武装ももう手に入りません。開発がストップしています。

 無茶した分の治療も自然治癒のみであるため、フルスペックの7割で行ければいい方でしょう。

 

 >「チェルノボーグを落とすのか」

「可能性としてはあり得なくもないわ」

「まあ、オレならそうする。それだけだ……エルドスたちはどうした」

「知らないわ。でも責任は取らされてると思うわよ」

「──ケルシーと連絡は取ったか。オレの手元にはヤツとのホットラインがある」

「取りたくもないわ。ていうか何? あのクソババア、あれと連んでるってワケ?」

「そうだが」

「気でも狂ったのかしら」

「それで? タルラと事を構えるのならば、オレ一人では限界があるんだが」

「タネはあるわ」

「……そうと決まったわけではないだろう」

「タルラに全幅を置いてるスカルシュレッダーが違和感を感じるのよ? そしてあんたもヘンな顔してる。だったら最悪を想定して先を打つべきだわ」

 

 うげぇ、これタルラ直行コースだな……勝てるようにするためのアレコレも全部パァだから敗走確定。死なないようにするか、特攻か石棺入ってしまうか……

 

 >……とはいえ、牢獄に囚われた捕虜という扱いには変わりない。

 Wの古い知り合いで、そこまでロドスには興味が無いという態度故に、寝返れとは言われるだろうが──さてどうやって命を繋いだものか。ヘマをする前にヘマを0にするのがオレの流儀だったが、まさか部下に後ろから殴られるとはな。

 ただあのバラバラ具合から察するに、幹部同士も情報共有をあまりしていないと見える。極秘裏に連れてきたのであれば、一応の安全は保証されているだろう。

 というか……上裸じゃないか、オレ。道理で寒いわけだ。

「服は?」

「尋問するって名目よ」

「返せ。風邪引く」

「あんたバカだから風邪引かないでしょ」

「水かけは別だ。もっといい方法があっただろうに何故こんな方法で叩き起こした」

「だって、ねぇ? 弱ったあんたが見たいんだもの。それにしても少し痩せたわね」

「デスクワーク中心の生活だったからな」

「らしくないことして退屈だった?」

 ──

 >退屈だ

 別に

 ──

 

 まあ、もう修正不可能だし突っ走りましょうかねぇ……石棺にでも入ってもらって、魔王にでもなってもらいましょうか。

 

 >「まあ、そうだな。とても退屈だったよ」

 だが彼女は何やら気付いたようで、らしからぬ穏やかな表情をしている。

「その割には楽しそうじゃない」

「あり得んな」

「はー、すぐそういうこと言うんだから。それにしても──」

 複雑そうに、しかし嬉しそうに。あるいは──心地良い失望と共に。

「変わったわね」

 彼女はそう、優しく告げた。

「そういうオマエは何一つ変わらんな」

「話を変えない」

「変えてない」

 ……なんだ、その顔。

 

 んんん……? 

 なんか、予想してたのと違う。

 

 >「まあいいわ。ちょくちょく顔は出すから、ちゃんと構いなさいよね。でないと──殺しちゃうから」

 楽しげにWは去っていく。

 ……会えて、しまった。自分の中の熱が急激に冷めていくのがわかる。殺すだのなんだの息巻いていたが、しかし──いざこうして顔を合わせて変わらないのを知ると、少し安心する。

 Wには変わって欲しくなどない。この女はずっとこのままでいて欲しい。ヤツがオレに変わったと言ったならば、何処かオレは変わってしまったのかもしれない。

 だが、どうした。捻じ伏せよう、そんなこと。オレは最強を目指す者。修羅となることを是とした者。こう生きて、そう死ぬのだ。それ以外の道を行くオレなどオレではない。最強たるを探究し、最強として生き、最強として死ぬ。その為に同族どもを殺して回ったのだ。追手を返り討ちにし、それがどんな存在であろうと喰らい尽くしてきた。

 アレがオレの運命なれば、そうなるしかないのだ。

 なあ、ケルシー。オマエが手を差し伸べた愚者とはそういうモノだろう? わざわざ、他の方面を視界に入れろと言わねばならないほどの存在とは、そういう愚か者でなければならない。

 

 ……待て、なんでこいつ、こんなにも『そういうものとはつまりこういうもの』みたいな思考をしているんだ? 

 あり得ない筈だ。この最強の幻想からの脱却は、Wが横にいる状態でタルラを目撃するのが条件。だから自力では脱却できないし、ケルシーに薮を突かれて蛇を出したんだろう。

 おかしいな……何かが。

 

 >……脱獄はやめておくか。

 下手に抜け出して追い詰められては問題だ。

 味方には優しいが敵にはキツい。典型的な犯罪者気質の集団で無闇矢鱈に動く事自体が無謀。

 まあやれないこともないが、やってどうなる。敵陣のど真ん中で何をしろと言うのだ。それにWが相手だ。そう身構える必要もあるまい。

 仮に殺しに来るならば、嬉々として殺すまで。

 ただ、それだけだ。

 

 待てよ? 行けるか?

 これもしかして、生存ルートワンチャンある? 

 ここで仮に掴み取ったら、それは偉大なる兄貴よ、ご照覧あれぃ! ってことじゃん? やれたら今後祈祷力が試される場面でブースト入るってことじゃん?  

 知り得たか? チャートのリカバリーをってなるじゃん? 

 やってみせろよ私! 

 なんとでもなる筈だ! 

 ノーミスだと!? 

 

 >しかし武器はどうしたものか。暗殺に付き合わされるとなると、壊れかけのエルガレイオンでは無理がある。

 ……いや待て、パーツの調整さえできれば大剣で固定にはなるが、それでも十二分だ。

 あとは、対となる剣の一つや二つを調達できれば……いや、無い物強請りか。

 まあいい、やれるだけやってみるさ。

 ──なあ、ケルシーよ。オレは……オマエの小指には救われんなどと宣ったがそれは構って欲しかっただけなのか? いいや、違うな。アレは、敵が増えて嬉しいだけだ。

 そうでなければなんだという。オレはそうなのだ、そうあるべきなのだ。

 でなければテレジアが、ケルシーが、Scoutが、Aceが、クロージャが、アスカロンが、ヘドリーが、イネスが、オレに対してあんな反応をする訳がない。

 そしてオレ自身が、今ここにいることすらできない。それを裏切ることなかれ。故に我は闇の底で産声を上げた怪物なれば。

 

 ……なるほどな? 

 こいつ、もう揺らいでたのか。

 どのタイミングで揺らいでいたのかは知らないけど、とにかく揺らいでいる。

 あー、だからケルシーからは言えないんだ。一言、「Wを殺したくなどないんだろう」とか「テレジアをその手で殺すこと以外にも、テレジアと共に歩む未来を見ていたかったんだろう」って言えば即終了なんだけど、それ言っちゃうとGくんにとっては自己矛盾になっちゃう精神性してる所為で、暴走どころが「そうだ、腹を切ろう」ってなる可能性の方が高すぎるし。

 なるほどなぁ、ブレイズ姉貴がやたらと「私を見ろー!」するわけだ。すごく緩やかでも効果あるやり方だ。

 となると、このGくんを突き崩さずに意識改革を起こすには三つの条件がある。

 

 1. 戦闘時は決して迷わず殺すからダメ。精神面での隙が一切無い、完成された怪物だからNGなので戦闘時でないこと。

 2.自分の運命を受け入れた上で色んな事に心惹かれつつも、それでもと決めた道をひたすらに進み、惨たらしく死のうが関係無いと言い切って死ねる人であること。

 3.Gくんが殺したい、尊敬する、喰らい尽くしたいと思うのが正の感情を由来とする相手であること。そしてそれなりにシンパシーの感じる相手であること。

 

 ────無理ゲーじゃね? 

 

 まず1がキツい。戦闘時でないという条件一つで、できるメンツが限られる。

 そして更に2が重くのしかかる。運命受け入れてその為に生きて死ねる奴なんかいるわけねーだろ。誰もが生きる為に頑張ってんだ、死ぬ為に頑張ってんじゃねーんだよ。

 ついでに究極の3だよ。このキチガイがシンパシー覚える相手でズケズケと物を言って挙句納得させられる、平常時に会える相手とかいるわけねぇだろうが。

 

 は? 

 

 "あの"けるしこですら「言えば死ぬ」って躊躇うのに、それを他の奴らでやれと? 

 W姉貴は絶対に言わない。だって彼女はずっと自分を助けてくれたGくんに最高の形で借りを返すためだけに、何も言わずに運命として相対してくれているんだから。

 モスティマ姉貴はどうなんだって? あの人への感情は「好き」(幼少期のそれと同じ)だから、向こうが迂闊なことを言うと切腹丸になるのは変わらない。

 それにそもそもモスティマ姉貴はそんなこと言わないし夢の中で死ねる様にってぶっ殺す。

 

 言えるとしたら死んだ時のテレジアか、テレジアを殺した時のドクターだけど両方ともいないし、そもそもあの場面に立ち会うこと自体クッソむずいし。

「それでも生きる」じゃなくて「だから死ぬ」……テラの大地でその精神を持っている奴なんていねーよバーカ。

 基本的にみんな「頼まれなくたって生きてやる」だわ。誰が生きる為に戦ってんだわ。どんな敵だろうとも、死ぬ為に戦ってる奴なんて一人も存在しないんだわ。生きる為に血を流し、生きる為に殺してるんだわ。

 そんな風に思考誘導し固定化した人だーれだ? 

 オレだよオレ!! ハンバーグだよォ!! 

 

 というか何処だ、何処で揺らいだ? そもそも揺らいだ原因は何処にある? 

 このキャラクターは揺らがないように調整した。だからこんな頑なになっている。だからこうして頭を抱えていることになる。

 それはつまり、俺の調整方針は正解だったということだが──怪物となって失敗した時と基本骨子が共通しているにも関わらず、意図的に揺らがせた前回とは異なり、最低限の人間性だけを引っ張り出す筈がこうまで揺らいでいるのは想定外だ。

 

 これは知るべきことだ。

 Gが何処で揺らいでしまっていたのかを。

 ミスとは言い難い。想定よりも早く出会ったWとも必要最小限の接触および期間であったし、更に言えばあの時点で自発的に離れたのだから我ながら見事な引き際だったろう。

 なれば、何が原因なのだろうか。ケルシーやブレイズに突かれ続けて揺らぐほどのヒビとは、なんだろうか。

 

 さて、そういうわけでとりあえず脱獄タイミングを伺いましょうかね。

 もっとも脱出ではありません。エルガレイオンの整備です。いかんせんあんなポンコツでタルラと真っ向からやり合うのは無謀ですから、できる限りの調整はしなければなりません。

 でも生存ルート踏むってことは最大の武器である妄信と狂気と執念が無くなって凡百のサルカズ傭兵(雑魚)に成り下がるってことだよなぁ。どうするんだよお前。ガチガチに精神武装して初めてそれなりには戦えるってのに。

 なんとか維持できないかなあ。まあ最悪尻尾巻いて逃げましょ。

 

 >……しかしまあ、やることないな。せいぜい看守の確認だが、顔見知りということは余程の事でもない限りは融通が効くだろう。

 手錠と鉄球鎖は自力で破壊できるからどうでもいいとして、風邪を引くのは不味い。大人しく静かにして、体力回復に努めるとしよう。

 

 あ、こりゃ思ったよりも体力消耗が激しかったな。

 というわけで色々加速。寝たり起きたり動いたり壁を確認したりなんだり。1日経ったくらいですかね。

 ……って、あり? 

 待って、あの人影は──

 

 >この足音は、誰だ? 二人……それもデカい。騒つく声も聞こえる。想定外の事柄が起きたらしい。

 ……チッ、面倒なことになったのか? 

 しかし事態はそう単純ではなかった。オレの前に現れたのは、それこそオレが書物の中でしか知ることのなかった伝説の存在。

「アンタ、ウェンディゴか」

「如何にも」

 ウェンディゴ……サルカズの中でも古き存在、消え果てた筈の者。如何なる理由かはわからないが、横にウルサス人の部下を連れてココを訪ねてきた。

「だがウルサスだ」

「何故、わかる」

「見りゃわかる。横のヤツウルサスだろ? だってのに随分と仲良くしてる。これは実質的に種族が同じってモンだろ」

 ──もっとも、あの内乱に顔を出さなかったということは、そういうことなのだろう。レユニオンの中でも一際武装が違うことが見て取れる。

 しかしこの感じは……

「喉は鉱石病だな。その服装から推測するに、源石と身体の割合は3対7くらいか。ケルシー程正確ではないが」

 職業病だな。まさか敵地で敵の容体を確認するなど。

 ただポロッと出た名前に、そのウェンディゴはしばしの沈黙の後に、感傷に耽るように呟いた。

「……懐かしい、名前だ。士爵とは、どのような?」

「上司と部下、師匠と弟子、あるいは──同じ旗の下へ集った同志」

「下がって、くれ。彼とは、サルカズとして、話したい」

 その言い草はある種の回帰だ。オレを警戒するのか、部下の方はジロリと観察した後に

「……了解しました、大尉」

 随分とお行儀良く下がった。これでこの場にいるのはブラッドブルードの中の鼻つまみ者と、サルカズを捨てたウェンディゴという訳だ。

「大尉、か。やはりウルサス正規軍からの反乱部隊。それが何でこんな先の無いテロ屋やってる? ウェンディゴともなればその知識は生きる図書館だ。武器を捨てて器用に生きることもできたろうに」

「生憎と、それは、できない」

「……ケルシーの知り合いってのは、どうしてこう……」

 頑固者ばかりだ。死んだヤツも生きているヤツも皆。

「なあ、ウェンディゴ」

「どうした。ブラッドブルード」

 ──その問いはある種の同族意識からか。

「故郷の一部を焼いた気分は」

 衝動的だった。この言葉を口にしていたのは。オレがまさかこんな問いをすることになるとは。

「今更、何も、感じない」

「かつてからとは。筋金入りだな」

「感染者、だからと、虐げる者に、かける慈悲は、無い」

「……ウルサスを選んだのは間違いだったな」

 この男がレユニオンに加担した理由はウルサスだからだろう。国の行く末を憂い、反乱を起こすというのはよく理解できる。オレもまた国の行く末を巡る戦乱に身を投じていたが故に。

 キサマはそのようにして、テレジアと事を構えるとしたのか? なあテレシスよ。未来を憂いて行動を起こしたのには変わりあるまい。そういう意味では──似た者同士なのだろう。流石は兄妹と言ったところか。

「人生に、間違いなど、無い」

 ある意味では感傷に耽っていたからか、即答された言葉に対して悪態が出てきた。

「テレジアみてぇなこと言いやがって」

「彼女を、知っているのか」

 ……意外そうな発言だ。失礼なヤツめ。噂に聞くロドスのバーサーカーがテレジアを知っていて何が悪いというのか。

「昔の部下の一人だ」

「元々は、Wたちと、共に?」

「まあな」

「……君は、違う。あらゆる、サルカズとも。何故、"光"を求める」

「ウェンディゴ、その先を言う義理は無い」

 切り捨てた。この男に話してやる理由が無いというのもあるが──何故かわからないが、不快だった。

 本当に、自分でも困惑する程に不快な感情。この男の発言を聞きたくないと本気で思うくらいには容赦無く叩き切った。

「また、来る」

 来るのかよ……ヘンなヤツだな、このジジィ。

 

 ……パトリオットか。

 使えなくもない、か? 上手くやれば突き崩してくる筈だ。

 よし、ここはパトリオットを中心にしていくか。でもパトリオットでわかるか? 最初の歪みが。

 まあ生存ルート乗せないと話にならんか。

 とりあえずパト爺とお話するとしましょう。

 てな訳でまた加速〜

 

 >「来たぞ。ブラッドブルード」

「暇だな、ウェンディゴ」

 Wは忙しいらしく、顔見知りどもは冷やかしてきた。どうでもいいと唾を吐きかけて追い払い、手錠を外したり付けたりして遊んでいたが、この訳のわからんジジィはまたやってきた。

「……さて、今日の話題は何にするか」

「私は、ロドスの、オペレーター、を知っている。サルカズ、傭兵たちから、単身で、逃げ延びられた、男だ」

 誰のことかなど言わずともわかる。だが、オレにとってのあの男について知ったような口を聞くならば、それは誰であれ何であれブチ殺すと決めているのだ。

「ほう、その男について何を知った気になったかは知らんが──」

「彼の、最期を、見届けた、人物が、いる。私の、隊に」

 ……意味合いがわからなかったが、しばらく考えてそれに行き着いた。

「ウチから裏切り者が出たとはな」

 別にどうでもいいのだが、裏切り者とは。やれやれ。何を言ったのかは気をつけねば。

 

 お? 

 風向き変わってきたな? 

 

 >「……で、そんなヤツの話題出してどうした」

「彼が、話を、したい、そうだ」

 出てきたツラは最近入ってきた新人。

 覚えているぞ、キサマは──

「お久しぶりです、G先生」

「どのツラを下げてきた、Guard」

「……相変わらず、厳しい人ですね」

 一番ケツの青かったヤツ。それはもちろん、向いていなさそうという意味だが。

 どうも擦り切れたようには見えんが……大方、Wあたりが手を貸したんだろうな。流石に直接Scoutから何かを伝えられているならば、あの女が手を貸さないワケもない。

 しかし、裏切り者か。

 ────

 >話ぐらいはしてやるか

 話すことなどない

 ────

 

 よしよしよしよし……ご照覧あれ! 

 

 >「ふん、血迷ったか。こんな歪な泥舟に身を委ねるなどと。あのウェンディゴといいどいつもこいつも」

「先生。俺を助けてくれたScoutさんは──」

「どうせWの一味が殺したんだろ。で、手を貸せって?」

「……そういう、わけではありませんが」

「あのウェンディゴが隊長なら命令には従うことだ」

 珍しくもない。オレが何度、同族の死を看取ってきたと思っている。

 そして殺してきたと思っている。慣れたよ、その手の切り替えは。

 ただ、向こうはどうやら違うようだ。

「憎いとは思わないんですか」

 まあ……仲の良さは周知の事実だったからな。

 ふっ、ああなる前はほぼ全員に蛇蝎の如く嫌われていたし、アスカロンには剣を向けられた挙句、クロージャには半ば謀殺されかけたし、色々と思うところはあるワケだが。

 それでも真摯に向かい合ってきたのだ、コチラも真摯に対応せねば、無作法というモノ。気付けば馴染んでいた。いや──正確には、向こうが受け入れていたか。

 ……居場所、というモノを指して言うならば、バベルは唯一の居場所だったのかもな。

 戦場以外で、と付くが。

「別に。何を期待していたかは知らんが、WがScoutを殺すなど、余程の理由がなければ有り得ん。そして当人たちの間で同意と納得があるならば、オレがやれ復讐だなんだと騒ぎ立てる必要は無い。それが運命なのだから」

「どういう意味ですか」

「そのままの意味だ。あんなに懐いていた男を殺すなど、あの女が重大な理由無くするまいて」

「どう見ても狂人ですよ」

「アレはアレで可愛い女だ。まだまだ観察が甘い。広い視野を持てと言ったろう」

 アレほど可愛い女もいるまいよ。必死になって狂ったフリをして、完全に"W"となっているのだ。それを可愛いと言わずにして何と言う? 

 やれやれ、戦術面は問題無かったが、人を見る目の方も鍛えてやるべきだったか。

「……先生はどうしてしまったんだろうか」

「これが、素の、彼、という、ことだ」

「なんだが、イメージと違う。厳格な人だと思ってたのに」

「オレはずっと昔からこんなのだ。何をイメージしていたかは知らんが、そもそもオレはサルカズ傭兵だ」

 立場にあった振る舞いはしていたからな。Guardがそう思うのも無理は無い。

「では何故、学者の道を先生は選んだのですか?」

 ならばこそ、その質問は当然か。

「学者として才能があった。ただのそれだけだ。あとはまあ、ケルシーの手伝い。その程度。目的も無い。せいぜいがオレの役に立つと思ったからくらいだよ」

「今も戦士を続ける理由は」

「最強となるためだ」

 ──ああ、ほら、いつも通りだ。

「……さい、きょう……?」

 その理解し難い目。鬱陶しい。吐き気がする。哀れみ、あるいは、悲しみ。そんなモノをオレに向けるな。どいつもこいつも、オレの見出した答えを軽んじる。ふざけるなよ。

「理解する必要は無い。ただそれはそういうものなのだと、単なる事実として認識しろ」

 驚くほど素早く出た言葉は、現場を見た新人オペレーターに告げている言葉とよく似ていた。

「先生、それは──それはつまり、全てを葬り去るということですよね」

「ああ」

「一切の例外無く」

「当然」

「先生は、あんなに仲の良かった人たちでさえも、最強の為に捧げるというのですか!?」

 やかましい。

「だからどうした。そうと定めた。ならばこうする。それだけだ」

「思考停止もいいところだ! 先生、あなたは……何故そうなったのですか!」

「ハナっからこうだった。勘違いするな」

 ばっさりと切ってみせれば、何やら唖然とした様子。まったく、これだから面倒くさいんだ。いわゆる普通の人間ってヤツは。理解できないクセに入り込んでくるんじゃない。オレの内に。

「はぁーいそこまでー。面会は終わりでーす。帰ってくださらない?」

「W!?」

「あ、そうそう。あんたの娘が探してたわよパトリオット」

「そういう、こと、らしい。戻ろう」

「……また来ます、先生」

「不毛な話をするつもりなら二度と来るなよ」

 何やらつまらなさそうなWが割り込んで話は終わった。助かるのだがやけにタイミングがいい。

 

 あ、新衣装もらえたW姉貴だ。

 新衣装可愛いっすね。

 

 >「面会時間なんてあったのか?」

「別に無いわ。ただあんたが不機嫌そうだから助け舟出してやっただけ。それにしても随分可愛がられてるみたいね、パトリオットに」

「愛国者が反逆者とはな。笑えない冗談だ」

「化け物が医者よりマシでしょ?」

 ケラケラと笑うWは、紙とペンを渡してくる。

「やって欲しいことあるならそこに書いといてね」

「オレは捕虜だぞ?」

「捕虜? 冗談。あんたはあたしの半分よ。何があっても、何になってもね」

 小悪魔チックに微笑みながらウィンクまでしているが、何をしているやら。まったく可愛くない。

「ねえ、パトリオットに名前を聞かないの?」

「パトリオットってのは、ウルサスである為の名前だろう。サルカズとして向き合うなら互いに名乗る必要も無い。オレもヤツも、死んだ存在だからだ。あの瞬間は単なるサルカズの亡霊に過ぎん」

「じゃあ今は違うの? あたしの前はサルカズじゃないんだ」

「オマエの前では"ただのオレ"だ。オマエもまた、"ただのオマエ"を見せるように。互い刹那の逢瀬。されど永遠なればというわけだ」

「……ねえ、そんなにあたし出てた?」

「オレから見たらだが。オマエから見れば、オレが一瞬には映らないようにな」

 

 なんでこいつこんなに小っ恥ずかしいことをシラフで言えるの? 

 面白いんだけど。

 

 >はーん、と何やら納得したようにWは頷くと急に首を掴み、そのまま爪跡をつけた。なんでだ急に。というかどうしたW。

「泥棒猫の匂いより、あたしの痛みの方がいいでしょ」

「甲乙は付け難いな」

 などとは言うが、まあどっちもなんというか、むず痒い。更に言えば、よくわからん。ブレイズは擦り寄って匂いを付ける猫だが、この女は噛み付いて傷跡を残す悪魔。比べようもない。

 ……タイプが違う。

「……さて、これだ」

「ふぅん? あれそんなのなんだ。てっきり普通の剣かと思って雑に投げちゃったけど」

「マジか」

「悪かったわ。でもわかんないんだもん。質実剛健で枯れた技術に信頼を置くあんたがそんなヘンテコ武器に手を出してたなんて」

 それを言われてはなぁ……確かにあの手のモノは趣味ではない。なんなら作る時も割と抵抗はあった。実験兵装故と無理矢理に納得させていたが、まあアレだ。

「色々あったんだ」

 ……個人的には、固まるまでもうちょっと粘りたかったんだがな。さっさと書いた紙を渡す。

「この手順通り?」

「ああ」

「そ。わかったわ」

 

 ……そういやあ、どうやったらGくんとW姉貴だけの呼び名ってわかるんですかねえ? 

 ずっとノイズが掛かっててわかんないんですよね。どんなデータでも見れない。

 なんでだろ。

 

 >「おい、──」

「今はやめて、──」

 互いに唖然とした。二人きりで気が緩んでいたということでもない。流れるように古い呼び名を呼んでしまったし、それに対して古い呼び名で返ってくるなど。もはや反射だな。

 ミスしてしまったら片方が気付かねばならないなど、面倒な関係性になったものだ。

「すまん。他意はなかった」

「いいわ別に。あたしも言ったし」

 さて、ここからは共通の敵を相手取るのだ。ならばかつてのように行こうか。

 ……そんなのだから呼んでしまったのか? 

「"最後に勝つ"のはオレたちで」

「"最初に笑う"のはあたしたち」

「「ならば敵は無く、屍山血河を広げるだけ」」

 不敵に笑い合い、スイッチを入れる。

 どうせ近いうちに挑むことになる。ならば気合を入れておくものだろう。

 

 ……さて今回はここまで。

 ご視聴ありがとうございました。今後も私の探究の旅にお付き合いください。

 私も、やったんだからさ(無言の圧力)




Gくん
実はとうの昔から揺らいでいた人。いつから揺らいでいたかはまだ不明。
こうと決めたらそう貫く、それが達成できないなら意味が無いとする精神性故に、異なる道筋を見ていたと自覚するだけで自決しかねない危うさを持っている。
「何故この手の面倒なヤツの対処法を知るケルシーが慎重だったのか?」のアンサーが、この極めて不安定な精神である。勿論、戦闘中にはそんなことおくびも出さないので味方にしか刺せない。
バベルに入りたての頃は素性が素性なのでアスカロンやクロージャに危うく殺されかけたりした。Scoutからも吐き捨てられるくらいには敵視されていたが、戦闘から離れた途端にその揺らぎが簡単に顔を出していたので、最終的に受け入れられるだけの理由になった。
その揺らぎ故にテレジアやケルシー、ドクターには可愛がられていた。

W姉貴
ペットなGくんに手と足の枷を嵌めた人。
Gくんの揺らぎをいの一番に感じ、その歪み故に破滅するしかないと知りながら、それを選んだ男に救われたのだからと、敢えて放置し続ける。その果てに殺してやるのが最高の恩返しだからと。
故に運命である。

パトリオットおじいちゃん
W姉貴が捕虜にしたロドスのサルカズがいる、という眉唾物の噂話からフラリとやってきた隙な人。(隙じゃない)
異質な精神性を有し、懐かしい名前を出したGくんに興味が湧いている。
ただのボジョカスティとして話しかけている、このルートのキーパーソン

Guard兄貴
何気ない疑問からGくんの内面に踏み込んだ人。
パトリオットおじいちゃんでは引き出せない部分を引っ張り出したファインプレー。


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エレーナは、デカいかも、しれない

うぉ、デカデカアークナイッなので初投稿です


 どうも。

 記録無き未完走の王、ガバ走者です。

 本日も廃棄都市の牢獄からお送りします。

 

 >……そういえば、モスティマは結局どうしたのだろうか。まだフラフラと旅をしているのだろうか。ロドスとなってから、各地を回ってはいたが、それでも彼女と出会うことすらなかった。

 エクシアのようないいケツの女に思わせぶりな態度だけとは、オマエも罪深い女じゃないか? 

 

 何言ってんだこいつ。

 

 >まあヤツもヤツで複雑だからな。相当の悲劇は経験しているが故にああなったのだろう。

 ……寝言で言ってたあの名前、女の名前だったな……オマエも運命と出会ったのか? わからずじまいだが。

 あれからあまり時間は経っていない。聴こえてくる会話は龍門がどうたらこうたら。大方主力を誘い込んで本拠を叩くのであろうが、それをわからぬ向こうでもあるまい。なれば、やはり──落とすか。

「彼だ」

 と、思案していると聴こえて来るのは鬱陶しいジジイの声。まーた誰か連れてきたらしい。

「……また来たのか。って、コータスの女だと? おいおい、しかもソイツ知らんぞ。Guardやあの暗殺者ならともかく、顔も名前も知らんヤツを連れてきてなんとするつもりだ、ウェンディゴ」

「少し、話すと、いい。私だけ、では、飽きも、するだろう」

「……マジで? そんだけ?」

「では、外す。Wには、伝えて、おく」

「おい待てよジジイ!?」

 

 うわ、珍しいですね。こいつからこんな言葉が出てくるのも。

 

 >「……苦労するなウサギ女。ジジイの道楽に付き合わされるなど。オレのことはWのペットとでも聞いたか?」

「ロドスのブラッドブルード──異質な怪物とは聞いている」

 奇妙な話だが他にやることもない。仕方ない、癪だが話でもするか……

「さて、楽しくお話でもしようか……で、オマエ誰だ」

 問いかけてみれば、探るような視線と共に静かに告げられる名前。

「フロストノヴァ。お前は」

 ──まあ、名乗る名前などたった一つだが。

「Gだ。なるほど、オマエがあのウェンディゴの拾い子か。オレから何を聞き出したかったのかは知らないが、人選ミスじゃないか?」

 哀れみで声をかけてみれば、返ってくるのは困ったような顔だけ。まさかジジィのヤツ、自分の娘にロクに教えずにただ話してこいって言ったのか? まったく度し難いな……

 

 頼むぞーフロストノヴァー。

 このバカの歪みの原因に俺を近づけてくれー。そして次の走りへのデータ収集をさせてくれー。

 もっと疾く走りたい、走り切りたいんだ俺は。

 一度も成功してないから。

 

 >「──鉱石病の治療が可能になったとして、感染者は虐げられなくなるのか」

 まるで現実を教えるかのような語り口調だ。上から物を言う感じ。しかしその実、淡々と現実を告げているようにも見える。ああ、単純に言えばわからないヤツに言い聞かせてるとか、そんなもの。

 大抵のヤツらは、それでもと吠えるか無理だと諦めるかだが──

「知らん」

 オレにそんなことを聞く、という時点でまず愚かとしか言えない。もっと言えば、そんなことはオレたちロドスの管轄外だ。

「無責任な」

 軽蔑と共に吐き捨てられるが、知ったことでは無い。そもそもロドスは鉱石病の治療を目標に掲げ、そのために努力しているのであって、一言足りとも『感染者の地位向上を目的としている』などと言っているわけではないのだから。

「当たり前だろう。オレらはやるだけやるが、感染者を理解するかしないかなんぞ他人が決めることだ」

「働きかけを行おうなどはしないと」

「オマエらがそれを言うのか? 感染者は制御不能の化け物だとチェルノボーグを焼き尽くして、民衆に知らしめたオマエらが」

 ──平行線だ。焼いた分際でオレらに戯言をほざくクソテロリスト共と、助けなかった分際で自分たちに戯言をほざくクソッタレ共。分かり合える筈などない。互いのことを理解できる筈もない。殴って言う事を聞かせる短絡的なヤツらと、地道に活動を続けて根本から変える長期的なヤツら。ここの何処に交わる点がある。

 しかしこれはジャブだ。本質的な話ではない。

「くだらん茶番はする主義じゃない。単刀直入に来いよ」

 だから、防御を捨てて殴り合うとしよう。

「パトリオットはお前のことをやけに気にかけている」

「あっそ。で?」

「私にはその理由がわからない。こうして見るとますますだ。いや、何故お前のような奴がロドスにいるのかがわからない」

「事の成り行き。それ以上でも以下でもない。前身の組織への義理立てだ」

 ──ふむ、そういうことか。ならば、色々と引っ張り出してやる。何処で物を言わせていたかは知らんが、かつてカズデルで最も忌み嫌われた怪物を甘く見ないでもらおうか。

「オマエはなんでここにいる。いや、もっと言えば何故戦う」

 まずは、思想を確認する。レユニオンではない。コイツ自身の思想だ。

「感染者の自由のために」

 だが迷う事なく繰り出される一言は、組織的な物だ。まあ当たり前だ。

「自由? 自由とは不自由だ。囲いの外に出ればまた新たな囲いが。世の中はそうなっている。例え自由を求めて不自由な暗闇から這い出ても、その先の荒野という名の自由は、自覚した途端に不自由へと変わる。哲学には終わりがない」

 だから重箱の隅を突く。

「何が言いたい」

 怪訝な顔を見せた瞬間を逃さず、話のスケールを大きくしていく。

「終わりなき戦いへと漕ぎ出していく覚悟があるのか? 決して讃えられぬ闇の道を。世界の全てを敵に回してでも覇道を突き進む決意が。こうしてここに立っているってことは、そうと定めてこうしてるんだよな?」

 無論、そんな考えなんて無いのは百も承知だ。あるならこんなことする筈もない。

「そんな大層な考えは無い。ただ助けたいから立ち上がっただけだ」

 ただこの手の連中はえてして、やれ「手の届く範囲を守りたいだけ」だの「身内を守るだけ」だのと言う。そして実際言ってくれた。

 つまりレユニオンの始まりは、ただ感染者が感染者を保護していただけの組織。虐げられる苦しみを知る者が虐げる側に回る理由──自分たちが嫌う存在と同じ者になるなど、たった一つ。

「それでオチがテロリストとは。単に大切なお仲間が殺されて理想吐けなくなっただけか。もういい、興味も失せた」

 要はこれだ。無論、これが外れていても文句は無い。何故なら訂正される。

「まるで一度でも折れた者には価値が無いとでも言いたげだな」

 ──どうやら当たっていたようだな。フロストノヴァの態度を見ればわかる。立腹しているのであれば、間髪入れずにこうまで棘の立つ言葉を投げてくることもあるまい。

 普通、否定するならオレの否定をするだろう。だがこの女は、自分以外の連中に対して投げ付けられた侮蔑の言葉に反応した。

「事実だろう。綺麗事一つで世界は救えないとわかっていながら、それでも進んだならばありとあらゆる不条理と悲劇は背負って然るべきだ」

 とはいえ、オレの返す刀に変わりはない。それを背負って歩いていた者を、一番よく知っている。もっともテレジアと比較するな、と言われればそれまでだが、彼女程の覚悟が無ければ進めないのも事実。

 あの大馬鹿野郎なら、例えケルシーが死のうがドクターが死のうが背負って進む。それが破滅と知っていても。

「人一人には限界がある」

 目の前のウサギは、実に平凡な事を言い放った。つまらない、凡人の戯言を。

「限界とは超越すべき線に過ぎん」

 そんなものは、その先があるという素晴らしい証明にすぎん。乗り越えてこその限界、踏み砕いてこその限界。

 無理だなんだなど、やらないヤツの言葉だ。やって出来なかったヤツは、『できなかった』と言う。そしてこうと定めればそうなのだ。

 一蹴したが、しかし何が癪に触ったのか、フロストノヴァはより強い口調でオレに問う。

「──では、前に立つ者の最も大切な者が死んだら? それも最も無残な形で、善意を裏切られる形でだ」

 やけに具体的だな。ふむ……

「まず人間なら泣いて悲しむべきだろう」

「……何?」

 ──ごく、普通のことを告げた。

 これは医者としての知見でもある。

「感情を抑圧するなど危険なことだ。憎悪にしろ悲哀にしろ、降り積もった感情を一旦全て吐き出してしまう方がよほどいい。それが無意味な復讐だとしても、死んだ者に何を言われようが自分が決めたことならやっても文句はあるまいよ」

 よく復讐は良くない、などと言われるがくだらん話だ。復讐することが悪などと、だからどうした? したいと思ったならすればいい。自分にとって大切な何かを踏み躙ったならば、それを殺すことに何の躊躇いがあろう。殺すのだ。そうでなければ他のことが考えられないならば。

 他者の事情? 知ったことか。そんなものは皆殺しにしてから考えればいい。後悔も懺悔も、全て終わった後に来るモノだ。強者も弱者も、その悉くを鏖殺するんだ。

 まあ組織の頭領ならば話は別だ。特に平和主義を掲げているのなら。殺害は極めて特殊な理由以外では許容してはならない。途端、恐るべき存在となるのだから。ま、隠し切ればいいんだが。

「驚いたな。そんな言葉が出てくるとは」

 折れるな、と言った手前否定するとでも思っていたのか。

「無論それで止まっていいとは思わんがね」

 それを前へ進む一歩に変えることができないのなら意味が無い。自力にしろ他力にしろ、前に進むしかないのに立ち止まる理由もあるまい。

 ただ。

「──ところで、だ。どうしてそんなことを聞いた?」

 わざわざこんな条件を付けたことがひっかかる。

「……気になったからだが」

 誤魔化すように、やや沈黙を保ってから告げる。一言、切って捨てるように。

「いいや違うな。オマエはオレの言葉に反感を覚えた。だから踏み込んできた。大切な者が死んだらどうすると。咄嗟の質問だ。尋ねた後に動揺が見られた。それにしてはやけに具体的な条件付けだ」

 

 大丈夫か? フロストノヴァ姉貴突き崩すなよ……! 

 

 >逃がしはしない。土足で踏み込む。

 その程度の隙を、このオレが見誤る訳が無い。

「そこから推測するに、この条件は比較的最近あったことだ。それも身近に。──いや、どちらかといえば可能性か。起きたことには起きたが、単なる事実としてしか知らず、中身が何なのかはわからずじまいと言ったところだな。自分からはやや遠い人物に起きた悲劇か?」

 答えは沈黙。帰ってくるものは何一つとてない。

「まあいい。話を戻そうか。復讐は蜜の味だ。平穏を失い、友を失い、家族を失い、生きる意味すら失った者に舞い降りる唯一絶対の正義──現実にあるどれほどの傷薬を以てしても、これほど傷を埋めることに特化した物はあるまい。自らの尊厳を取り戻し、全てを穢した相手を底知れぬ絶望の淵へと叩き落とす快楽は、この世の何よりも勝るのだからな」

 もっとも、俺には理解できなかったが。復讐よりも先に最強が現れたが故に。

「ただ、復讐とは埋めるだけだ。治すわけではない。その悲劇にピリオドを打つだけ。しかも埋めると言っても上部だけだ。更に復讐は一度消費すれば消え失せる儚いもの。復讐を成し遂げたという刹那の自己満足……それこそが復讐の先にある虚しさの正体だ。埋める物はまた別途見つけなければならない」

 我が運命がそうであるように、復讐とは新たなる目的を見つけるための旅路だ。

 埋まらない、と自覚している者は果て無き復讐を得る。そして自らさえも復讐の対象とし、全てを殺し尽くした果てに心臓を抉り出して死ぬ。そういうものだ。

「あの龍女の下に着いて良い──少なくとも我が戦友たちはそう考えた。つまりマトモで、そして何よりもそれなりの理想を掲げていたのが絶対だ」

「戦友? サルカズ傭兵たちのことか」

「そうだ。彼らは怨敵にして戦友。皆すべからく、同じ未来を異なる旗の下に目指した存在。掲げる理想が確かでなければ首を叩き切っているとも。どちらの陣営であってもな。ぬるま湯育ちのキサマらとは比べものにならん──あの地獄に身を投じた、カズデルのサルカズを舐めるなよ」

 もっとも、命令があるなら切らんだろうが。テレシスの介入があるであろうことは確かだ。

 W単体ということはあり得ない。そして世渡り上手のヘドリーとイネスがテレシス陣営に渡り、そして個人としてあの女を拾わないことなど、無い。

「と、なれば単純だな。サルカズは後発組だろうし、その前のタイミングで龍女の理解者でも死んだんだろう。そして復讐したのかは知らんしわからん。ただ憎悪を激らせるに相応しい何かがあって、心の傷は復讐の美味に埋められたんだろう」

 でなければ、一気に武力に傾倒するわけがない。それとなく連中からレユニオンの変化を尋ねておいてよかった。こんなところで役に立つとはな。

「そして新たな復讐先を求めている──という線は違うな。計画的だ、あまりにも。天災に紛れてチェルノボーグを奪取。そのまま寝床にして龍門への難民を利用した侵攻作戦。それを以て計画的な復讐という表現もあるだろう。しかしそれはおかしい。狙うべき要所がわかってるなら、もっと効率的に狙い撃ちができる。暗殺部隊もいるなら、そういう使い方をするのが筋だろう。だがそれをしていないということがミソだ」

 ──そう、ここだ。

 やっているのは合理的な殲滅戦だ。ゲリラの強襲戦ではない。じっくりと時間をかけて相手を翻弄し、捨て駒たちが時間を稼いでいる裏で都市コードを出しながら特攻。戦争の引き金をチラつかせながら盤面を拘束し、仕留める。

 オレの目的が龍門の殲滅なら必ずこうする。

 何故なら自分が死のうが死ぬまいが、絶対に滅びるからだ。

「怒りに身を任せている、これも違う。その行動は合理的だ。行き当たりばったりのものではない。しかしオマエたちと来たらどうだ。実につまらない大義名分を掲げて暴力を正当化し、更に盲目的に従うだけだ。自分は正しいことをしている、という確信も無い。ただ誰かに虐げられたから自分より弱い誰かを虐げて強者の側に立ちたいだけだ。実に醜い。より強い者を喰らい自らがそれになるという発想さえないバカどもが」

 冷気が部屋に伝わってくる。……冷気系のアーツか。研究そのものはあまり進んでいないな。いいサンプルだが、あのジジイの拾い子ともなれば流石に手を出すのは気が引ける。

 ──テレジアの関係者でなければ、無視したものを。

「脱線したな。それを引っ込めろ」

「軽々しくそのような表現をするのはやめてもらおう。もっとも、理解できるとは思ってもいないが。だが命を握っているのは私だ」

 怒り。恐るべき無表情と絶対零度の声色に込められているのは、灼熱の憤怒だ。それは本当にこのコータスが自分の守るべき者の為に戦っているということの証明。それは気高い在り方と言うべきなのだろう、個人としては。

 ああ、オレとしては好きだが──秩序はそれを受け入れない。どのような理由であれ、暴力は秩序の前に駆逐されるだけ。コイツらは、最早国際的なテロリストなのだから。

 ……そういう意味では、オレは運が良かったとでも言うべきか。

 だが結局何もしなかったヤツらの事など、何一つとて理解できない。いいや、したくもない。それに──

「サルカズにそれを言うのか? 感染者も非感染者も関係無く、同じ大義の違う旗の下で殺し合い、最後に国は消え果て、勝者もヴィクトリアに雲隠れせざるを得なかった。失っても簡単に手に入ったオマエこそ、文字通り全てを失ったオレたちの何を理解できるというのだ」

 キサマらの地獄など、憎悪無く殺し合ったあの戦場と比較すれば子守唄に等しい。

 まぁ、オレがあの内戦で失ったのはテレジアだけなのだが。コイツらがふざけたことをしなければ、Wがアイツを殺さずに済んだものを。まったく……

 

 お前本当に最悪だな……身内同士で憎悪無く正義だけで殺し合いするよりかはマシとか滅茶苦茶嫌な発言すぎる。

 しかも被害者ぶってるわけでもなく、ただただ事実を並べてる。

 でも内心では嬉々として闘争に身を置けるから全然苦しいと思ったことはない。なんなら親は自分の手でぶち殺して、虐待されていたことに対する復讐の念さえ持ったことすらない。

 そんな風に育って俺も鼻が高いよ……

 

 >「……まぁいい。これ以上の不幸自慢は不毛だ。話を続けようか。結論として、これは陰謀だ。歴史の裏で糸を引く蜘蛛の巣。だがここでも一つわからないことがある。そんなタペストリーを作り上げられる程には人間味の無い存在に対して、感情に振り回されるだけのオマエたちが信頼を置けるか? 当然無理だ」

 こんなにも感情的なヤツらが信頼を置いた、という事実一つで見えてくる。何か精神操作系のアーツでも食らったとでも仮定しなければ辻褄が合わないこの現実が。

 あのジジイすら頭を下げることを是とした相手がこんなことをするものか。今の今まで生きているものか。

「武力ではダメだとして、一線を越えることがなかったが、その時を境に超えてしまった。しかしそのまま、まるで歴戦の将のように淡々と策略を立てて実行している。どうにもその姿にピントが合わん。いきなり別人になった、と言った方が適切なくらいには」

 そろそろ頃合いだろう。敢えて尋ねる。

「どう思う?」

「お前が知る必要は無い」

「そうか。じゃあ話は終わりだ。いるんだろう? W」

 ──話はそれで終わった。Wがさっさとフロストノヴァを帰らせる。

「よかったの? あんなに言って」

 戻ってきた彼女は、珍しくムキになったオレの態度を刺してきた。それは嘲笑うものではない、純粋な疑問。

 かつてオレたちがまだ確固たる名を得る前に、ぼんやりと交わしたやり取りの時に見せたものだ。

「自分たちの身を守る為に何を一つ害を与えてない連中を攻撃する筋違いなヤツなど知ったことか」

 まあ確かに、無関心であることは罪であろう。無自覚な罪だ。

 だが他者を気遣う余裕が、今日だけを生きる者にあってたまるか。普通の人間には、明後日の未来よりも、数時間後の食事や睡眠がキチンと取れるかの方が大切なのだから。

 ──ごく当たり前の話、自分の身の回りと同じように、大地の裏側で起きている出来事を受け止められる筈など、ないのだ。

 しかしWは何かに気づいたように、尋ねる。

「あんたが言えた義理?」

「十把一絡げにするな」

「……ふぅん。まぁいいけどね〜」

 こんなヤツらと異なることくらい、オマエが一番良くわかってるだろうに。

 

 まあ矛盾はしてないからね……

 最強になるために無差別な攻撃はしたことがない。ちゃんと敵は選んでますよ、ええ。

 

 >「ジジイはどうした」

「知らないわよ。慰めてるんじゃない?」

「戦況は?」

「そろそろ。でもそう決まったわけじゃない」

「……わかった。で、アレは?」

 そう尋ねれば、返ってくるのは深いため息。そして冷たい現実。

「見たけど結構やばいわね。あんたの書いた図面と睨めっこしてみたけど、現在の状態を保っているので精一杯。下手に取り外すと根本から壊れかねないわ」

 それは同時に、もう無理な使い方ができないということ。Wももう、次の武器を調達する方へシフトしているのは目を見ればよくわかる。

「耐久性に難ありとは分かっていたが、ここまでとはな。ブレイズが心配していたわけだ」

「あんたに振り回された程度でぶっ壊れる物なら、あの糞猫が使ったら一瞬でへし折れるでしょうね」

 そもそも試運転段階でブレイズからは「これ絶対壊れるよ先生」って言われたのだ。だがここまでとはな。多機能故の脆弱性とはよく言ったものだ。駆動系も耐久性を確保したつもりだったが、あの程度の戦いで破損するようではまだまだ実用性に欠けると言わざるを得ない。

 やはり攻撃用兵器はシンプルな物に限るな……

「そういえばあれ、鍛えてるみたいだけどあんたより強いわよ。どーすんの?」

「喰い殺す」

 一言、迷いなく告げる。

「ロドスで雁字搦めになってんのに? やめておきなさいG。もう傭兵じゃないのよ。それに、ジェヴォーダンの獣でも」

 何を今更。

「だからどうした? オレがオレである限りは、オレだ」

 殺すことに、複雑な理由などいるものか。オレがオレ足ればそうである。それは皆も知るところだろう。

「それでこそあたしの運命よ」

 満足そうにWは笑った。

 それでこそ、と。何も悩むことはない、と。

 誰に何を言われようとも崩れない存在こそが、最強なのだと。

 

 Wがそう言うくらいにはもう揺らぎが酷くなってるってことは、なんとか生存ルートに乗ってきているな。これで続けられそうだ。

 いやぁ、一安心ですね。

 

 しかし──やはり何処だ、何処が原因だ? Wか? いや違う。Wは原因ではない。それどころかむしろ加速させた! ならモスティマ……これも違う! じゃあ誰だ、ケルシーたちが付け入るだけの隙を与えやがったのは何処のどいつだ!? 

 完璧だったのに何故だ。完全なるコシチェイを見なきゃ自分の歪みに気付けないくらいには頑固な男を作れたのに、どうして他人の付け入る隙をそのままにしている! 

 仮にこの隙が、Gを作った最初の試走から在り続けたのであれば、俺は絶対にこのチャートおよびキャラクター構想では記録が出せない、完走できないということになってしまう……! 

 

 初見のパトリオットが見抜いたんだぞ? 選択肢が無いってことは、俺の意志が介在する余地が無いんだ。つまり何をしようとも理解される。

 それだけ大きな隙だぞ? それを何故見逃し続けた? 俺の視線は何に誘導された!? 

 

 クッソ、そこさえわかれば……でもわかってどうする? 

 結局、こうするのが一番だと試算に試算を重ねて導き出したチャートだぞ? 

 それを否定されては、チャートそのものが失敗だったってことになる。また1から作り直しだ。

 

 いや、しかし。

 

 それが、なんだと言うのだ。

 

 ──この後の全ての行動で次に繋がる有力な情報が出るかもしれないので。

 

 

 続行します。

 

 

 

──

 

 

「ボジョカスティ、なんなんだ。あの悍ましい化け物は」

「そういう、男だ。そう、とだけ、理解、しておけ」

 

 ──何故と問われればそう、としか答えられない。

 パトリオットはGがそういう人間だと理解したから問題などないが、フロストノヴァはそうではない。彼女たちのような、苦しみ足掻き、やっと立ち上がった人間とは対極に位置する存在だ。

 

 生きとし生けるもの全員持っている、「己は一体、何者になるべきなのか」という問いに解を出せない、一つに生き方を定められない自己への漠然とした不安。この答えを見つける時など、人生が終わるその時であるというのは当然だろう。

 仮にすぐ見つけて実行できたとしても、本当の答えなど知らず分からず、簡単なことで次の答えを見つけられる。挙句の果てに見出した答え、そのどれもが誤りかもしれないという可能性に怯えることになる。

 しかも答えを必要とする時に限って時間が無いのが現実だ。死んでから後悔すればいいとはよく言うが、そう考える前にその絶対性が脆弱ではないかと考えるだけで、答えは脆弱性を帯びる。

 

 故に死んでから後悔できる者とは、究極の夢想家において他ならない。それは現実に馴染めないはぐれ者か現実を超越した逸脱者……この二者のみ。

 零か無限の一方しか存在しない、それこそ御伽噺の登場人物かのような規範の権化。まさに美学や哲学といった抽象的物事の境地たる彼らだけが、自らが見出したたった一つの冴えた答えに殉教し、運命の喉首を締め上げる権利を有するのだ。

 何故なら、現実に随伴する筈の大小の煩悶や苦悩がゴッソリ抜け落ちている。それが何者にも触れられぬ幻想故に。

 

「あんな怪物を、狂気を、どうしてそのままにしている……!」

 

 感情の揺れ動きや命の勘定から解き放たれ、無尽の執念を以てあらゆる条理を噛み千切る魔物。『絶対に殺し、滅ぼし尽くす』という唯一の誓いだけが、あの男の中身だとわかった。

 それは本物の怪物だ。人間性を捨てて、そういうものだからこうなのだという。嵐が吹く、地震が起きる、火山が噴火する、天災が降り注ぐ──そういった現象。

 

 パトリオットから話を聞いて、そして直接会話したフロストノヴァが抱いたのは、その意味不明さに対する嫌悪感だけ。正気と狂気より織り成される純粋だが異質な構造が、螺旋を描いて一本の線となっている。

 理解できない。最強を目指すが故に万人を滅殺するなどということが。

 それは途方もない企てであり、真なる恐怖を知る者や「常識的な」人間ならば、嗤い出すか投げ出すであろう目標。

 まずはできることから始めたレユニオンですら戦慄する、できないことを初めから行う凶行。

 

 だが、たった一人で世界の全てと戦い、運命のままに死んだ"魔王"に魅せられた『少年』は、これこそが己を救い得るたった一つの冴えた答えだと確信し、猛者たちの血に塗れた路が己にとっての全てだと、躊躇なくこの冥府魔道に身を投じたのである。

 

 その内側は知らずとも、一度も迷わずにその道を選んだことは察したが、だからと言ってそれを賞賛などできない。現実を理解し、こんな筈では無かったことばかりの世界を知っているのにも関わらず、それに打ちのめされた者を無価値な弱者と断じる姿勢が、彼女には許せなかった。

 

「士爵と、殿下は、優しい人、だからな」

 

 そんな男を何故置いているかなど単純なことだ、とパトリオットは答えを告げる。

 

「たったそれだけの理由だと?」

「それだけの、理由だ」

 

 ……あの二人なら決して見捨てないだろう。だからこうして自分が見極められるくらいには、隙が生じている。

 若き日にGと出会っていれば、彼に世話を焼いただろうことは簡単に想像できる。それほどまでに彼は無鉄砲で若い。息子を思い出すような芯の強さに、テレジアとよく似た方向性の苛烈さ。折れず、迷い無くその道を進み続けられる強さ。

 

「もっとも、私は、彼に、親近感を、抱いた。お前から、聞いて、益々だ」

 

 そしてなによりも己と通ずる、宿痾がある故に。その言動から見える悍ましき死屍累々の所業に嫌悪感を抱きながらも親近感を覚える。

 ウルサスの伝説的な兵士たるパトリオットではなく、カズデルのサルカズたるボジョカスティとして。

 同じ道を進み続ける者であると確信する。

 

「……やめてくれ、父さん。あんな奴と一緒だと、自虐しないでくれ。父さんは──!」

「そう、ではない。私と、彼は、自分の、定めた道を、決して、裏切れない。そこなのだ」

 

 それを自虐と受け取ったフロストノヴァだが、彼にとってはそうではない。自虐ならばその程度のことではない。

 本当に父親が娘に言い聞かせる様に、言葉を続ける。

 

「私は、この先を、理解している。賢い、お前だ。わかっている、筈だろう」

「……」

「お前には、選択肢が、ある。逃げる、立ち向かう、追従する……それこそ、無限に。だが、私と彼には、そんなもの、一つだって、存在し得ない。何故か、わかるか」

「頭が、硬いから」

 

 直球な物言いに苦笑する。

 

「そうだ。しかし、言葉が、適切では、ない」

 

 真理を突いた言葉だが、この場合は適切ではないと、ゆっくりと訂正していく。

 

「正しいことを、正しいとき、正しいように、行い一度も、微塵も、間違えない。設計図通り、の生き方を、絶対として、それ以外は、何一つとて、認めない。こうと決めた、道から誤差、程度でも、外れた途端、道そのものを、間違えたとする。それが、我々の、変えられぬ、宿痾。そして最期、運命のままに、死ぬのだ。こう生きて、そう死ぬ。そういう、人種だから」

 

 するとその道を外れてしまったらどうなるのか──いくら思考してもフロストノヴァ、否エレーナにはわからない。

 そもそも、設計図通りに生きるということが理解できない。

 

「だが、それでもなお、我々が、こうして、葛藤と、煩悶に、揺れ動きながら、生き恥を、晒しているのは、未だ、捨て切れぬ数多、の未練と後悔、があってこそ。故に死に場所、だけは、決して、間違えない。そう決めたから、我々は、ここにいる」

 

 死を選びたいほどの重圧、後悔。それを背負ってなお、何故ここに立ち続けているのか。死に場所だけは間違えないため。

 彼にはわかる。Gはもう既に、始まりに近い時に、一度己を裏切った。しかしそれを振り切って前に進んでいるが故に全てが狂っているのだと。

 そして、その歪みの原点が。

 

「エレーナ。私たちは、馬鹿なんだ、止まれないんだ。そうと定めた、その時から」

 

 だが時期が違っていようが、辿っている道は全く同じである。最後には雁字搦めになって動けなくなり、前に進むしかなくなる。立ち止まることも周りを見ることもできずに、運命のままに死ぬ。

 そうやって初めて、自分たちは満足行く死に場所を得られる。

 故にその道を歩いてしまった者としてやらなければならないのだ。

 

「彼の、真の道に繋がる、ものを示して、やらねば、ならない。それが、サルカズの、ボジョカスティ、として為すべき、最後の、使命だ」

 

 息子を殺した時に思ったのは、殺さなかったらという未来。

 何故殺すことになったのかと言えば、部下と共に病を隠蔽したことが根底にある。

 そして何故その選択をしたかと言えば、愛する息子の為。

 家族への気遣いが、巡り巡って家族を殺した。

 他にいくらでもどうとでもやり様はあった。だが隠して見守ることこそが正しいことだと信じて選んだ。

 

 息子を裏切った、妻を裏切った、感染者となった戦友たちを裏切った──なんとでも形容できるが、なによりも裏切ったのは己自身。

 テレジアの思いを汲み取り切れず、ケルシーの気遣いを信じ切れず、渡った果てでも殺戮と破壊しかできない自分こそが、無益な殺生を行わずに愛する者たちと静かに生きて死にたいと願っていた自分を、最も裏切ったのだ。

 

 現実に翻弄されながら取捨選択を積み重ねた自らの道を、傷だらけで無様な人生を誇ることなどできない。

 重すぎる後悔が血肉となり、それらは棘となって自身を責め恨み続け、痛みと共に己という存在を呪う。この茨の道はどんな選択をしようとも、最初の一歩に後悔を感じている時点で永劫に苛み続ける。

 

 しかし望んでいなかろうが、肯定できなかろうが、在ってよかったなどと、口が裂けても言えなかろうが、今この背を押しているのは、刻まれた過去の痛苦と無数の苦難だ。

 肯定、否定、葛藤、後悔──それらをただ己の一部であると受け止めて、己自身と向き合う覚悟になった。

 

 故にボジョカスティは恥に塗れて進軍する。

 愚かで矮小で、どうしようもない大馬鹿野郎として、幻想を飲み込んだ現実として強者となり、残酷な運命を超えんとする者への試練として立ち塞がる。

 それを選んだ。陰謀があろうがなかろうが、そうすることでしか、正しい己の死に場所が得られないから。

 

「父さん……」

「エレーナ。これだけは、させてくれ。私を、向き合わせて、くれ。もう一人の、私と」

 

 だがそれでも。

 己と同じそれが正しいと信じ選択するが故に、自らが犯した過ちを──『愛する者を信じた正義と運命のままに殺す』などという、悍ましい"正解"を、殺し合う運命を選び続ける男女に選択させたくない。

 

 それが、自分の悪癖を更に悪化させて先鋭化させた挙句、それこそが救いとなってしまうほど悲惨な環境に身を置いていた存在ならば、尚の事だ。




Gくん
クッソ最悪な話術で巧みに情報を引き出した人。
「親を殺され採掘場に送られました」という人に対して言う言葉が「かわいそうだね。でも憎めるだけでマシでしょ?」で腹の中では「じゃあ衛兵殺してウルサス潰すくらいやれよ」とか思ってる。人の心とか無いんか?
しかもロドスはあくまでも鉱石病を治療する組織で別に感染者の地位向上を目的としているわけではないとか、綺麗事言うなら折れるなやとかフロストノヴァ姉貴に向かって言う。ドクぴを見習え。
珍しくこいつが最悪過ぎて中々筆が進まなかった。グラグラなのに隙を見せてくれないの最悪だぞお前。

フロストノヴァ姉貴
最大の被害者。多分この人にボロクソ言う二次ってウチくらいだと思うの。
パト爺に事情を話され、どんなもんかと蓋を開ければ最悪の存在だった。それでも彼女なりに父の助けになろうと思ったが、まるで理解できなかった。
そもそも始まりが「両親を国に殺され、悲惨な環境で死を待つだけだったが、ある時大人に助けられた少女」に「誰一人として味方が存在せず、悲惨な環境で死を待つだけだったが、ある時たった一つの冴えた答えを見出した少年」を理解するのは無理難題というもの。
『失っても簡単に手に入ったオマエこそ、文字通り全てを失ったオレたちの何を理解できるというのだ』というGの彼女に対する不幸自慢は、無意識的な敵意の表れなのかもしれない。
早くドクぴに癒されてほしい。

パトリオットおじいちゃん
独自解釈の結果、Gくんと同じタイプの大馬鹿野郎になった人。
多分、静かに生きて死にたかったんじゃないかなぁ……って。
色々と抱えてそれでも進軍していたら、昔世話になった人たちが可愛がっている、自分そっくりな歪みを持って自分そっくりな道を正しいと信じて歩もうとする若者が現れた彼の心境や如何に。


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人は最初にして最大の無自覚なガバを突き付けられると死ぬ

サンブレが月末なのを信じられないので初投稿です


「あいつ? ……何を言われようとも認められないな。なまじ、"理解"できた分」

 

「それを言うならあなただってそうじゃないか。やけに気にかけている」

 

「── 選ぶのはあいつだ。何を選ぼうとも変らないなら認められない。でもそれを忌避するだけというのは筋が通らない。だからまあ、こんなことをしている。あなたと同じだよ、ケルシーさん」

 

「育て甲斐があるんだろ? ならやるだけやってみたらどうだい。きっと、必ず価値がある筈だ。でもWはそうやって変わるのを、嫌がっている。彼女はただこの環境に適応しただけの、普通の人間だ。片割れの破滅願望が止まるなら喜ぶだろうに、そうじゃない」

 

「……あなたなら何か知ってるんじゃないか?」

 

 

「さあ?」

 

「なんでもいいし、どうでもいいわよそんなの。添い遂げるのは、このあたしなんだから。あいつはどうなろうが何に成り果てようがあいつのまま。そういうもんよ」

 

「ええ。そして止めない」

 

「でも本人がなんか満足して死ぬなら、それでいいでしょ? あたしはまだ借りを返してないから」

 

「うるさい。その先を言うな。あたしとあいつを、歪ませるな。ケルシー」

 

 

「ケルシー、君はどうやら彼の危うさを正しく理解しているようだ」

 

「……テレジアがどうかはわからないが、彼女のことだ。完全に理解していると信じよう」

 

「彼のバランスは極めて不安定だ。迷いなく進む限り最強のままで在り続けるが、その混沌の形相を示す精神性は、適切な衝撃を与えれば致命的に壊れる。元々の実力自体は二軍であっても、頭脳としては一軍だ。それを失わせるわけにはいかない」

 

「だが改善の兆しもある。Wの反応を鑑みるに、本当に僅かだが。私は彼に好かれているが、彼に良い影響は与えられない。行えるのは君だけだ」

 

「……強い者を倒すことは、すなわち理解すること。理解するとはすなわち、敬意を払うこと。真なる強者との死闘は、儀礼に乗っ取った正々堂々の決闘でなければならない。勝てないまま挑むのは失礼極まりない。だから勝てるようにしてから挑む。その為ならば敬愛するべき強者を蔑めることになんら躊躇いは無い──か。まったく歪な話だ」

 

「全て楽しい夢のままで死ぬか、心臓に杭を打ち込まれてなお醜く生き足掻くか。彼は、どちらを選択するかな。結局最後はなるべくしかならないだろうが」

 

 

 

「そうなることを選んでこうなった……彼の心はとても単純よ。そこに憎しみは無かった。強いと言っていたから挑み、そして殺した。ただそれだけだった。本当に目が合ったから襲い掛かられた程度。最凶の同族殺しは突然変異のように目覚めた」

 

「外界から隔絶され、手に入る情報は餌として飼われている人間たちから聞ける細々としたものだけ。文字の読み書きという概念すら無い状態。そんな状態から気になったという理由だけで文字を頭に叩き込み、文法を理解し、無数の本を読み漁って英雄を見つけ、そこに最強たるを見出して憧れを抱いた」

 

「たった一人で全て成し遂げた。常人には理解できないそれ。きっと私たちにもわからないわ。でもケルシー、あなただってドクターだって……ううん、彼と話した人はみんな気付いているはずよ。完成された最強無敵の魔物であったGが、何故こうも半端に引き戻されているのか」

 

「クロージャは嘘だって叫んでたけど、あなたならわかるでしょ?」

 

 

「んー、先生はすごく単純だよ。単純すぎるからかえって複雑に見えるだけで、一皮剥けば別になんてことない」

 

「……ていうかケルシー先生が私にそれ聞くんだ」

 

「や、私としては変に何かしようってつもりはないよ。必要なのは、あるがままに見つめて欲しいって伝えることだけ。あとは勝手に自分で変わってくと思うんだ」

 

「だって先生、基本的に口ばっかりだもん。ケルシー先生だってわかってるでしょ? というか……ねぇ? 子猫ちゃん。あれはどう見ても──」

 

「うん。あれは……最後にそうなるのは仕方ないよ。でもそれを気付くことを、そんなに嫌がる?」

 

 カズデルの戦乱。

 その中で最も悍ましき怪物とされた闇。

 それこそがジェヴォーダンの獣。

 理不尽を塗り固めし最悪の異端者。ブラッドブルードを狩るブラッドブルード。自覚なき怪物……己が同族を絶滅させんとばかりに活動し、サルカズ社会を震撼させた悪名高き同族殺し。たった3年で数百ものブラッドブルードを、ありとあらゆる方法で、効率的かつ計画的に殺戮したとされる伝説の存在。

 

 活動期間は3年と数年挟んで数ヶ月。

 しばらく活動を止めていた理由は不明。

 

 ──活動を止めていたという、事実。

 

 暗闇の中に舞い降りた光を見つけた信徒は、教祖とまでなる。しかし教祖とは誰も実態を把握できない不確かな物であるが故に、宗教は完全性を帯びる。

 

 不確かとは、完全である。

 

 これは物事における真理だ。

 わからず理解できない時ほど、それは確かな形となり、わかって理解した時ほど、それは不確かな概念となる。

 わかるとはつまり、物事の不確かさを正確に理解するということだ。

 

 この大地における鉱石病がそれを体現している。テラで暮らす者の中で、どれほどの人間が鉱石病について理解しようとするだろうか。ただ恐れ、忌み、そして嫌うだけ。我々は人種差別や職業差別、能力差別を当然に行う存在だが、その根底には何か理由が存在する。

 目的にそぐわない能力、社会的地位の低い職業、過去の歴史に根ざす特定の人種への攻撃意識──理由無く差別するというのは、余程の狂人である以外にはあり得ない。

 そして差別を止めるということは、それが現実であり確かなものであると受け止めた時からだ。

 

 始めるだけの理由があるが、同時に止めるだけの理由もある。全ての物事はそういうものだ。

 

 だが究極の答え。歩むべき人生、死ぬべき場所。全てを見出し、その為だけに生きて死ぬという究極の存在になった彼には本来、止まる理由など無い。

 こういう人種は、えてして零か全の二択しかない。あらゆる生物の思考回路から外れた幻想の中の登場人物にのみ許されるその選択を享受できる。

 そんな最強の存在が、何故現実的になるまで零落したのか。

 

 ──それは止まったから。

 本来あり得ないことが起きたに他ならない。

 

 幻想とはあり得ないから幻想である。

 現実とはあり得るから現実である。

 

 結局のところ。

 いつからではなく最初から。

 だから彼女は歪ませるなと叫んだのだろう。

 始まりたる彼と彼女と関係こそが、歪みそのものなのだから。

 

 私は運命を後出しの予言と考える。あるいは、それ以外に適切な言葉が無い時に出てくる、間に合わせの概念だと。

 それは今でも変わらない。彼と彼女が互いを運命などと陳腐な表現で自分たちの関係を表現していることには、怒りを覚える。

 

 だが──その出会いだけは別だ。

 死にかけの女と魅せられた魔物の出会いだけは、正しく運命だった。

 誰が何と言おうとも、それだけは運命にあると定める。この私さえも。

 

 自力で己を救済した者は、自力救済のみを是とする。故に他者からの過剰な干渉は、自己否定に繋がる。

 ──そうなってしまえば、もう己に己を救わせるしかない。他人にできるのはそれとなく口を挟んでやるくらい。

 救ってやりたいのはやまやまだが、彼と私はあまりにも近過ぎた。何を言おうとも、何をしようとも、彼にとって私がそうすること自体が、彼への強烈な否定──今にも噴火しそうな火山にガソリンを持ち込むようなことだ。

 

 敵になってやる、などと言ったがそれだけだ。敵になるしかなかったのだ。

『敵になる程近過ぎた』という事実。

『敵になれる程には近づいた』という事実。

 そう認識される存在になったという事実。

 ……そうなるしかなくなったという事実。

 

 よって彼に広がる罅を抉るのは、私たちではない。

 極めて近く限りなく遠い存在だけが、その歪みと向き合わせる。

 

「死にかけの女の瞳に見た生への渇望を」

 

 ──その時点で矛盾していると気付いているだろうに。

 いや、無自覚なのだろう。だからこうして、私は彼を救えなくなった。離れていれば話が変わったろうが。

 しかし、言われるまで気づけなかったと言えばそれまでだ。

 最強のヴェールに覆い隠されたその先が、一目惚れなどという究極の狂気であるなどと、誰が考え付くものか。

 

 死という概念すら超越した、文字通り命を共にする存在。

 全てを超えた特別な感情と絆で繋がった存在。

 男女を超えたもっと深い、私にはわからない関係。あぁ、半身にして運命とはよく表現したものだ。

 それ以上に適切な言葉が存在しない。

 ──故に彼は、自らの生を理解できないのだ。

 

 

 ……しかし、だ。

 現在に目を向けると話が別だ。

 彼らが過去を引っ張り出したのであれば、私もまた過去を引き摺り出さねばならない。

 目の前の愚者4人の行動は、非常に目に余る。

 

「Gの救出を、お前たちだけで行え」

「それは遠回しな死刑宣告って奴じゃないっすかね」

「これは命令だ。お前たちは自分の上官に作戦を伝えなかった上に、この戦況で貴重な最大戦力の一つを、誰の了承も無しに、みすみす敵へと渡したのだ。その責任を取れ」

 

 ──彼女を信頼して行動する。それはいい。

 ──彼を信じて敢えて送り込む。それもいい。

 だが何も言わない。それはダメだ。

 

 

「元々俺たちは殿下への義理立て、そしてボスの遺言に従ってただけだ。今のボスはもう傭兵Gじゃねえ。──つまり遺言で従う相手じゃない。敵前逃亡をしても筋は通っているがねぇ?」

 

「戯言はそこまでだ」

「ならどうすんだよオルクス。俺としてはもう潮時だし、逃げるべきだと思う」

「悩むことはない。作戦を遂行するだけ」

 

「おいおいやる気なのかよ。真面目かっての」

「テラーン。バベルに、殿下に逆らうのか」

 

「ケルシー士爵は言ったぞ。かつてを引っ張り出したならば、こちらもかつてに戻るのだと。ならば俺たちはバベルの兵士だ。兵士として、隊長を敵に引き渡すという賭けを行った責任を果たさなければならない。そしてWは未だバベルの兵士だ。俺たちもまた、バベルの兵士として戦わねばならない。隊長もまたロドスではなくバベルなのだ。故にその配下たる俺たちが、バベルならざる事は決して許されない」

 

「この残骸がバベルって呼べるなら俺も素直に動くが、そうじゃねぇだろう」

「シケイダ。前々から泥舟は御免、などとくだらぬことをほざいていた貴様の事だ。このロドスで得た情報と隊長の研究成果を土産にテレシスに降ろうと考えているか」

「んなことできるわけねぇだろうが!! 殿下を裏切るなら、自分で首を括るっての!!!」

 

「そういうこった、ハナから全部決まってんだよ」

「じゃあなんで言ったんだよエルドス……」

「ん? 裏切り者がいれば殺す為さ。だって俺らはバベルだぜ? 製薬会社じゃねぇ、軍隊だ」

「心臓に悪りぃって」

「んじゃまぁ、連絡取るか……」

 

『はぁーい、あたしよ』

「何処だ?」

『離れ』

「回収しろ」

『手土産くらい用意しなさいよ』

「武器の予備パーツと、試験段階の武装をいくつか。あとはこっちで使ってるもんをバレない程度に流す」

『いいわ』

 

 

 ■

 

 

 どうも。

 過去の自分を疑わないように努めないと心が辛い走者です。

 

 >独房生活も長い。

 そろそろ手錠と足枷くらい外して欲しいものだが。

 

 そろそろタイミング的にはいい具合なのですが、まだまだ動けません。ていうか通常兵器でタルちゃんから生きて帰れないので、なんとかいい具合の高性能な一本を手に入れたいところ。

 ベストなのは遊撃隊の武装を借りパクできることですが……これもピンキリだから困る。

 

 >「G」

「W」

 我が運命がこうしてまた顔を出す。

 ちなみに食事はレーション1個。慣れっこだが。

「お友達から連絡があったわ」

「エルドスか」

「エルドスよ。ケルシーに色々とネチネチ言われてこっち来てるって。まあ当たり前よね? 敵であるあたしに、後ろから殴り付けて気絶させた上官を引き渡した挙句、見逃してもらったわけだし」

「しかも何も聞かされてない。連中の独断だ。反逆罪として問われても文句は言えん。アイツらは謹慎と減俸、ついでに閑職行きだな」

 エリートオペレーターではないが、ケルシーの管轄下にあるアイツらは、それなりの地位ではある。一気に落ちこぼれて雑用にでも使い回されたらいい。

 ただそんな風に考えていたオレが面白い顔でもしていたのか、Wがケラケラと笑った。

「謹慎、減俸、閑職行きって相当頭に来てんじゃないあんた。武器だのなんだのを持ってきてくれてるっていうのに」

「せめて上官には何か伝えて欲しいもんだな。それと例え整備パーツを持ってきてもエルガレイオンは形状固定で運用せざるを得ない」

「道具にエルガレイオンって」

 鼻で笑われた。

 

 まあ道具を道具呼びですからね。

 形状固定かぁ。何がいいかなぁ……というか部下よく処分されませんでしたね。全く困った奴らだ。なんか言えっての。

 

 >「それにしても随分とあのウサギちゃん、慕われてるのね」

「ケルシーが手塩にかけて育てたテレジアの後継だ。そうでなくては困る」

「……テレジアの後継……ねぇ? あんた的にはどう?」

 すごく思わせぶりに尋ねてくる。

 さて、アーミヤはテレジアの後継として見た時に、真にそうと言えるのかどうか。

 無論、答えはただ一つだ。言えない。

 立場としては言えるが、中身がまだまだ青すぎる。故に伸び代がある。単なる後継として終わるならばそれまでだが──そうでないなら喰いたいとは、思う。

「……知らんな」

「あら冷たい」

「あのガキがどうなろうともオレの知ったところじゃない」

「で、どうなの?」

「しつこい」

「気になるんだもの」

「──正直を言えば、好きにはなれない」

 理由が思い当たらない。何故かを考えても何一つとしてわからない。

 効率的とか効果的といった言葉は馬耳東風──好き嫌いというものが理屈や道理を拗らせるとは有名な話ではあるが、生まれながらに不倶戴天とかそういうわけでもあるまい。

 境遇が似ているだのなんだのは掠りもしない。理解ある連中に囲まれた温室育ちに、最強という名の光を目指し、たった一人で闇の中を生きていたオレを理解されてたまるか──とは思うが、だからなんだという話。そんなもの、誰に対してだって感じる。このオレの冴えた答えを否定する全てに対しても。つまりアーミヤに限った話ではない。

 ……してみれば、何故オレはアーミヤが好きになれないのか本当にわからない。もしかすると性格や思考の相性が悪いというだけなのかもしれんが。

「珍しいわね、あんたがそんな風に感じるなんて」

「理由がわからん。何故アーミヤが好きになれないか、オレ自身もアテが無い」

「あ、でもなんかわかったかも」

「何?」

「眩しくて嫌い」

「あり得んな。眩しいだけで嫌うなら、青すぎるブレイズも嫌わねばならないだろう」

「それもそうね。じゃ同族嫌悪」

「同族ではなかろう。オレなぞと一緒にされてはされてはあの小娘も心外というものだ」

 

 あ、GくんがアーミヤCEOに微妙な意識を持ってるのは、本人の認識的にテレジアに選ばれたのが、ポッと出でかつ特別でもなんでもない彼女だからですね。

 要するに拗ねてます。

 人物的にはどストライクで、W姉貴と出会わずに最初にあったのが彼女なら運命認定してたくらいには好きな方ではあるのですが、テレジア関係が入った途端、色々と複雑になります。

 例えるなら、初恋の女性が選んだ相手なら誰だって認める半分認めない半分の微妙な気持ちありますよね。そういうもんですよ。

 

 >「随分と複雑ね」

「オマエとてそうだろう」

「そーねー……後継として見た時には、見所があるって程度。好きも嫌いも無いわ」

 ダメだ。この手の話ではコイツと楽しくキャッチボールできる気がしない。

「……話を変えよう。見込みは?」

 とりあえず、現状の勝率について尋ねる。コイツが楽観的でないことは知っているが、それでも一応聞いておかねばならない。楽観的ではないとは知っているが、それでもな。

「良くて6:4、悪くて8:2。条件を変えると4:6」

「Aceは単独でやった」

「そりゃタルラじゃあいつとは相性最悪だもの」

「騎士と元軍人、そしてアーミヤを合わせても逃げるのが精一杯だったが、アーミヤのアーツが感情によって強化されると互角と仮定する」

「ケルシーかアスカロンを想定してもあたしとあんたよ? 変わんないわ」

「状況的にアーツは使えないとしても7:3くらいを見積もった方がいいだろうな」

 ──タルラの戦闘能力は未知数だ。少なくとも殲滅特化というワケでもあるまい。個人戦闘能力に加えて大群攻撃能力を備えた理想的な遊撃手と見るべきだろう。いくらオレとWの2人がかりとはいえ、手の内や可能な事をよくわからないまま仕掛けざるを得ない状況では、敵を高く見積もって損はない。

 そもそも、わかった上で何もしないジジィの存在もあるのだ。牙を剥くだけの理由にもなるだろう。

 そう頭を回していると、渋々といった様子で相棒が提案する。

「──やっぱり当てにする?」

「ヤツらにジジィどもを超えられるならな。全戦力を投入してもジジィとタルラの二段構えに加えてココへ残る連中全てを倒すのは不可能だ」

 ──ロスモンティスまで投入してもかなり瀬戸際だろう。ケルシーが前線に出ても、ヤツは動力源を止めに行く為戦力としては数えない方がいい。

 タルラの生死を問わなければどうにでもできようが、パトリオットとその部下を相手取るには今のロドスでは不足だ。例えドクターが完璧な戦術指揮を行なったとしても、個人個人の練度が比較にならん。いくら装備の劣化や進行度によって本来の能力を発揮できないとしても、くぐり抜けた修羅場の違いで覆せる。

 なんとかしてフロストノヴァを鉱石病で衰弱死させて精神的なダメージを狙いたいところだが……あの女、どうも取り巻きがいるようだな。まあ一蓮托生のようだし、片方が死ねば片方も死ぬだろう。

 とはいえ、単に殺すだけでは亀裂とはならん。あの男が抜けた地獄と比較すれば、拾い子が敵に殺された程度では何も変わらん。最も虚しい死に方をした時、あの男は苦しむだろう。──誰の為でもなく、ただ自分を信じて逝ったのであれば、アイツは必ず苦痛を抱く。

 絡め手無しでアレと正面からやりあって突破するなら、バベルでも引っ張り出さねば無理だろう。

「停止の可能性」

 ついで尋ねられる、技術的知見に基づいた見解。

 Wは戦士だ。技術職ではない。反面オレは戦士だが技術職でもある。より確実性を増すために、異なる視点からの意見を求めるのは自然なことだ。

 ……だが、オレも都市のブラックボックスについては全く詳しくない。かつてウルサスにいた上、チェルノボーグに勤めていたらしいケルシーであれば、詳しい可能性がある。

 そういやドクターがチェルノボーグにいると持ってきたのはケルシーだったな……

 まあ、いい。

「ケルシーが動力部に突入するのなら確実だ。だが緊急ブレーキも必要となる。ごく当たり前の話だがな──始動キーはタルラが持っていると仮定した場合、何らかの手段で奪う必要がある」

「パトリオットのジジィが持ってるのを借りたら?」

 ──それは正論だ。

 しかし、問題は都市の機能を考えた時に、スペアキーにどれだけの機能を詰め込むかということ。

「重要な物のスペアキーは、大抵最低限の機能しか持たない。W、何故移動都市は移動する」

 そして我々は、往々にして移動都市というものの機能と目的を日常として受け入れている。そして類似した自動車や二輪車も受け入れている。故にそれこそが盲点になるのだ。

 敢えて聞き返してみると、Wは呆れた顔で一言。

「バカにしてんの?」

 まあ普通に考えて、ロクな教育を受けたことのない子供ですら知ってそうなことだ。ここでそれを問う理由が見当たらないのだろう。

「言ってみろ」

「……天災から逃れるため」

「そうだ。都市にとって必要最低限の機能とは、"移動"することだ。停止することじゃない。車やバイクとはワケが違う」

 そう、極論移動し続けられればなんでもいい。それはもちろん、移動し続けることのリスクを無視した時の話であるが、そんなもの彼我が移動しているのだから密に連絡をして避けるなり、あるいは確認された段階で進路を変更すればいい。

 錨を下ろす瞬間があるとは言え、移動こそ真髄。都市の本質とは移動よ。

 

 うーんこの『移動』都市なんだから停止機能がスペアキーにあるわけねえだろという。

 確かに移動と停泊を繰り返す都市の基本的な機能と考えると、スペアキーで緊急ブレーキを作動させられそうなものですが、別に都市が停泊し続ける理由もありませんものね。

 そうなるとスペアキーで緊急ブレーキを動かす必要が無い。移動して天災から逃れるのが目的なのだから、オリジナルキーが紛失・破損した場合における最優先事項とは移動システムの起動。

 学者らしい思考ですな。

 

 >「この仮説が正しくタルラがオリジナルキーを処分していた場合は、どうしようもない。諦めて龍門には苦渋の決断をしてもらい、炎国とウルサスで戦争をしてもらおう」

「G」

「そうなった場合ははじめ初めから詰んでいただけの話だ。気に病む必要は無い。やれるだけのことはやった」

「あたしは止める。そう決めた」

「では進路を変えるしかないな。タルラをなんとかして」

 キーを使わなくてもやれる手段の方が現実的だが……さて。

「どうする?」

「隙を見て爆薬をセットするわ。勝負の土台に乗った時にはもう勝ってるくらいやらなきゃね」

 爆薬、ね。確かにWの十八番だが……炎を操るアーツ持ちには、ちと効果が期待できそうもないが。

「W。無駄を削ぎ、確率を高め、完璧かつ確実に嵌め殺そう……などというのは、大概上手く嵌らんぞ。物事を仕組む時点で臍を噛むのは道理というものだ。どちらに転ぼうとも美味しい思いをするのが策の肝要だとオマエもよく知るところだろう」

「じゃ、どーすんのよG。行き当たりばったりで勝てる相手じゃないでしょうが」

 ウダウダ考えても仕方ない、やれること全てやって当然だと言外に告げられる。それに関しては頷く他ないが、まず条件を整理しなければならん。

「オレたちの勝利条件はなんだ。改めて聞きたい」

 何を以てWの勝利とするか。そしてオレの勝利とするか。

「勝利条件は都市の停止」

「そこにオレたちの生存、タルラの撃破は必須となるか?」

「極論、緊急ブレーキの作動か進行方向の変更さえできれば目的を達したと言えるわ。でもそれは完全に防いだと言えるわけじゃない。問題の先送りよ」

 ……まあ、結論としてやはり必要なのはオレたちの生存およびタルラの撃破。そして緊急ブレーキの作動と動力機関の停止──

「つまり、ここで求められるのは完全勝利のみということだな相棒」

「そうよ相棒。あたしたちに許されるのは成功でも敗北でも失敗でもない。ただ一つ、勝利。実にわかりやすいわねぇ」

「そうなるとロドスをコチラに誘導することも必要だ。だ。オレたちだけでは完全勝利ができん。しかし……どの面を下げる?」

「下げる面も無いでしょ」

 あっけからんと告げるW。あくまでも利害の一致で協力するという立場のようだ。となると頭を下げることになるのはオレだろうが……それはそれとして、色々と問題が山積みだ。

「まあそうだな。だがオレは──色々と面倒だ」

「あんたはあたしのものよ。クソババァに貸しっぱなしにできるほど安くないわ。それに、貸し続ける理由も無くなったことだし」

「ScoutとAceか」

「そんなとこ」

 オレはオレのモノなんだがなァ……ブレイズもWも、その辺ちょっとでもいいから理解して欲しい。

「……ドクターはどうする。記憶喪失だ。頭の中を覗き見ても、本人が忘れているならどうしようもない」

「どの道殺すわ。ところでアーミヤはどう」

「ありゃ当時はガキだ。覚えているわけがないだろうよ」

「一応聞くけどケルシーは」

「オマエも知っての通り。それどころか探ろうともしてない。ドクターに見せる顔に悩んでる」

「はっ、贅沢なお悩みだこと。何処まで行っても自分自身の問題からは逃げられないって知ってるだろうに、あいつがウジウジ悩んでるのはいい気味だわ」

 ……同族嫌悪かね。コイツのケルシーに対する嫌いようは中々に酷い。

 まぁケルシーもWも、腹の底ではドクターへの殺意を煮詰めている。オレは2人の間で完結しているならばどうでもいいが。

 コイツらが似ているとは思わないが、案外根っこは通じるものがあるやもしれんな。

 

 実際、似てはいるんでしょうね色々と。

 ま、それ以上にテレジアの件だと思うんですけど(名推理)。自分が恨んでもいないからってナチュラルに省くのは良くないよ。

 しかし戦力補充がされたからと言って有利になるわけでもなし。精神面での改善が見込めない限り、生き残る術すら見当たらないので詰みです。

 

 >「結局、ヤツら次第だ。仕掛け時は?」

「合わせるわ」

「手薄になり次第、か。そう考えると──逐次投入?」

「ええ」

「普通は愚策だが、ここでは効果的だな」

 足止めなら逐次投入に勝るものはない。しかし……

「主力は」

「タカ派。混じってる」

「やはりな」

 それ見たことか。何で黙っているのかの答えが出たが、やはりそうか。

 ウルサスのタカ派──少なくともフロストノヴァやジジィと話して、この組織がハナから下儲けではないとは理解している。

 しかしそうなると……何故タルラは下儲けに成り下がったんだ? ただ暴れるテロリストよりもタチの悪い存在だぞ。ましてや、国の都合で振り回された者たちというに、それを解せぬほどの愚鈍では絶対に無い。

 感染者に手を差し伸べる存在であったのにも関わらず、こうまで落ちぶれるのは何かがおかしい。

 やはり何者かが精神干渉のアーツを……? 

 だとしたらジジィが気付かないのも不思議だ。

 一体何が……

 

 まあわかるわけないですもんね、コシチェイの存在。

 というか知らずに見切ったらそれはそれでお前なんだよの世界だし。

 

 >どちらを優先するか。

 タルラの撃破に失敗したとしても、タカ派を始末すれば自然とレユニオンを内側から崩壊させられる。

「どっちだ?」

「両者」

「付けるとしたら」

「……上ね。雑魚を散らしても頭目を潰せないなら意味が無い」

「了解した」

 ──さて、やらねばならないことは定まった。

 その時まで英気を養っておくとしよう。そう判断した時だった。

 聞き慣れた足音、鎧の軋む音、そして呼吸音。暇なジジィが遊びに来たようだ。しかし今日はソロらしい。

「W。オレ宛だ」

「へぇ。じゃあ席を外すわ。仲良くね」

「さてな」

 入れ替わるようにあの男が現れた。

 迷いなく、滞り無く、そして真っ直ぐに。そして貫くようにオレを見つめてくる。

 わざわざなんだというのか。敢えてそのような態度をする理由が見当たらない。

「少し、踏み入った、話を、しよう。ブラッドブルード」

「最強を目指すことへの問いか? 理解できるものでもあるまいよ」

「確かに。しかし、わからない、ことを、わからない、と知ることは、必要だ」

 ……ジジィの魂胆がわからない。

 だがまあ、素直に答えてもいいだろう。知っているのだ、理解できないとわかってもらおうじゃないか。

「そう定めて、というならば、いつ、定めた」

「憧憬を抱いた時」

「原初……か」

「ああ。始まりから」

 しばらくしてから彼は口を開いた。

「私は、しばらくしてから、だった」

「同類とでも言いたいのか」

「そうでは、ない」

 同類ではないとしたら、なんだというのか。

 何一つとして意図が見えない。

 それこそまるで、親戚の子供に不器用ながらに歩み寄る大人のような……そうしたもどかしさを感じる。

「じゃあなんだ。何が言いたい」

「Wとは、なんだ」

「運命だ」

「運命、か」

「ああ」

 最強たるばアレが運命であるなど、不思議なことでもあるまいて。そう思うが故に告げると、ジジィは合点が言ったように。

「なるほど。士爵が、苦労する、わけだ。これは」

 苦笑するような一言。

 ……は? 何故ケルシーとオレの相性が悪い話に繋がる? Wの意味を問うたのに、どうしてそれがケルシーになる。話の前後がわからない。そこは「Wも哀れな」とかじゃないのか? 

「君は、士爵とは、相性が、悪い。目に、浮かぶようだ。まるで、反抗期の──」

「黙ってもらおう」

 ……そんな、理解できるものである筈がない。オレとヤツの関係は。

 オレはヤツを尊敬しているが、同時に嫌っている。オレの事をわかる筈なのにわからない、互いの距離は程よく離れていることが好ましいと知っておきながら、敢えて踏み込んできたその事が。

 何故だケルシー。オマエほどの者が、オレ程度への対処を間違えるなど。オマエならきっと、ヘドリーやイネスのように、オレの友のように、間違えない筈なのに。

「そんなモノは、オレには存在しない」

 故にオレはこう言う。続く言葉が家族だと理解しているから。

 そしてオレの知る家族というモノは、互いを理解し合っているモノだ。どのような形であれ、な。

「そうか。ならば、運命となる、Wとは、如何にして、それを理解、したのか」

「……過ごした時間があるからだが」

 何も不思議な話でもないだろう。何故、敢えて言わせるのか。オレにはわからない。

「私は、君の、ように、自分の、信じた道を、ひたすら、真っ直ぐ、歩き続け、第一の、故郷も、家族も、同胞も、失った。そして、少しでも、マシな未来の、ために、第二の、故郷に、牙を、向けて、いる。実に、愚かしい、こと、だ」

 ──突然、そう語り出した老人の意図が更にわからなくなる。

 同類というには、その始まりが健全過ぎる。しかし同類に非ずと断ずるには、その道筋はよく似ている。

 オレと彼は同質だろう。だが同じ位置にいるモノではない。言うなれば鏡合わせの存在か。もっとも、それさえも我々を形容するには不足であろう。方向性が異なるのであって、彼とオレを同類とするのは暴論にも等しい。

「殿下への、誤解から、私は、カズデルを、去った。人を、殺めるのに、辟易、していた、というのも、ある。だが、結局、殺すことしか、できなかった。私も、始まりは、排除と、簒奪、だ」

 オレは自らの殺戮を恥じない。しかしこの男は自らの殺戮を恥じている。

 つまりオレは殺戮こそ王道とした。この男は殺戮もまた目的の為の選択の一つに過ぎなかった。それだけの話だ。確かに始まりこそ同じだろうが、その道を混同することはこの男への侮辱に当たる。

 しかし当人はオレたちが同じと語る。卑下しているとでもいうのか。いいや、そんなことはあるまい。この男は本気で思っているのだ。

「……老人の、戯言、だとしても、聞け。君と、私は、よく、似ている。私は、妻を、愛する資格を、失った。息子を、この手で、殺したから。父親で、ある資格も、失った。家族を、裏切ったから」

 ──悔いているのだろう、家族を裏切ったことを。

 しかしそれは、家族に対する裏切りになるのだろうか? オレはそうは思わん。きっと納得している筈だ、子も妻も。この男がそういう存在だと理解しているのだから。

 故にオレは、この男は何も裏切っていないと考える。裏切りではなく、己の答えに忠実だっただけ。それが結果的に善き人々の思いに背く形になっただけであり、より善きを求めているのは痛いほど伝わっているのだと。

 だが──だからこそオレに何を伝えたいのかがわからない。

「何が言いたい? わかってんだろジジィ。オレが、あの伝説の怪物──カズデルの大地に巣食う、ジェヴォーダンの獣。あの塵屑どもの悉くを鏖殺し、全て伝説を綴る一文に書き換えた存在だ」

 故に、オレは過去の字を名乗る。撒き散らす死を喰らい尽くし、孤高のままに天頂を目指して駆け抜けた時の名を。

 オレはそういう存在だと。故に最強を目指すのだと。始まりからして違うのだと。なれば、その身の上語りは意味が無い。気質が似ていても、考えが異なれば傷を晒しているだけだ。痛みを飲み込む者は、自らを卑下するモノではない。例え誇れないとしても。

 そしてこの男の本音を引っ張り出すために。

 「では、何故、やめた。生きて、いたのだろう。微塵も、疑わず、道理も、常識も、損得も、己自身も、顧みず、"理想通り"に、生きて」

 その男の言葉にオレは止まった。

 ──何故、"やめた"? その理由がいくら探しても出てこない。何故だ、何故。助けた理由はいくらでも出てくるが、その後の少しの間やめていた理由が浮かばない。まるでポッカリと穴が抜け落ちたように。

 

 やったぜ。

 もう気が狂う(確信)ほどの闇をドバーッと駆け抜けて、ワシは遂に本題に入ることができたんや。

 あぁ^〜たまらねぇぜ。

 生きられるぅ〜!! 

 メスを通ずるっこんできてくれてありがとう! ケルシー先生ー! ケルシー先生見てるかー! ボジョカスティありがとう! 

 

 >「その理由は、ただ一つ」

 

 フラ──

 

 >「Wこそ、死に場所と、定めたからだ」

 

 は?

 ……死に場所、だぁ? 

 待て待て待て。死に場所ってなんだよ死に場所って。別に俺はWに殺されてやるつもりも無いぞ? 

 

 >「おかしいのだ、そもそも。最強とは、並ぶ者無き、存在。即ち、孤高の王者。死を選ぶ、権利すら、無い」

 

 いや、別にW姉貴を助けたって現実で矛盾しているから、W姉貴関係が揺らぐ理由にはならないだろ? だって矛盾を飲み込んでるのが今のこいつだし。

 だから別にWが運命であることと最強を目指すことは矛盾しないだろ。

 

 >「だがWを、運命とした。最強に肩を、並べる存在を、見出した。見つけたのだ、居場所を。理解する、為に共に生きて、そして見えたから、離れる。お前は、Wこそを、最強の、存在とし、それに、挑みたいのだ。でなければ、敢えて、離れても、なお、互いを運命、と呼ぶなど、あり得ない」

 

 ……へ? 

 ………………ん? 

 ……………………あれ? 

 ………………………………待って? 

 …………………………………………世話を焼いた理由じゃね? 

 

 >──すんなりと、言葉が入ってくる。

 否定でも肯定でもない。言われてみればそうとしか思えない。

 これがケルシーに指摘されたのであれば、何をと叫んでいただろう。アイツは同族ではないからな。

 しかし似て異なる道を歩んだこの男であれば、それも納得が行く。理想を目指して前を進み、その中で起きたことに後髪引かれる己を自覚しながらも、それでもとたった一つの冴えた答えの為に、その歩みを止められない……因果な人種。それがオレたちだ。

「そして、殿下にも、挑みたい。士爵にも、挑みたい。だろう? だから、死ねない。生き足掻く」

 果て無き最強への求道──それを一度でも止めた理由。

 それは、この男に言われて初めてわかった。その最果ての権化を、既に見出したからだとは。

 心惹かれたモノになってみたい。それは自己否定ではない。漫画の主人公になってみたいと思い、そうすることとなんら変わらん。そういう意味でオレは、──になってみたいと思ったのか。

 死に瀕してもなお気高く、貪欲に生きる孤高の存在。クイロンに見出した運命を飲み込んで死ぬ存在とは対極に位置する、同質の存在。

 ──のように強く生き続けたいという無自覚な願望と、クイロンのように強く生きて強く死にたいという自覚している願望。

 片方だけでは地に足が着き過ぎている。理屈として正しいが故に、算数の域を出ていなかったろう。しかし両者が混在することで、『こう生き続けたい』し『そう生きてそう死にたい』という矛盾螺旋を描き出し、オレは文字通りの幻想の存在となっていたのか。

 なるほど、それは無敵の超越者だ。自らの命をひたすらに尊重しているのに、その命をベットに冥府魔道を進むのだから。

 現実には決して存在し得ない、死に場所を探しながら死に場所を定めた生き物。絶対に死なず、殺し尽くす悪逆無道の怪物。

 ──誤った道を進んでしまったのにも関わらず、生き恥を晒して現実に苦しめられながら、なおそれでも運命のままに進み続け、その喉元を噛み裂かんとする理由。

 この男にとってそれは、後を進む者への試練となるため。

 オレにとってそれは、あの日見出した『コイツになってみたい』ということ。

 

 あ、そうだね! 

 クソが! そりゃそうだわ! 

 確かに助ける理由は勝手に生まれたけど、その後の世話を焼く理由は生まれてもいなかったわ! 

 ──てことは、これGくんだと絶対に記録出ない? 

 俺、走者ですらない? ……まあ、いっか! 

 

「……まさか、オレが──」

 既に生きる意味を見出していたとは。

 盲点だった。

「──感謝する。オレはどうやら、運命に対して失礼極まりないことをしていたようだ」

 自然と出てきた言葉は、オレにしては珍しい心底からの感謝だった。

 我が身に根差す、無自覚な願望──これほどの狂熱を、己自身が知らぬままにしておくなど……無礼にも程があろう。

「最強を、目指すのを、やめないと?」

「アイツのように生きてみたいという願望と、最強のままに生きて死にたいという願望は矛盾しないからな」

 そこに見出したのは同じ感情だ。こんな風に強くありたいという強烈な羨望、あるいは憧憬。

 ま、今までと何も変わらん。せいぜいケルシーとブレイズに謝るくらいだ。それにオレは他の生き方も知らんし考えたこともない。どうせそう生きて、そう死ぬしかできない。

 なるほど、ブレイズが敢えて何もしないわけだ。これは自分で気付くか、あるいは程良く離れた誰かに諭される以外に無い。

 

 ……しかし、そっかぁ……

 W姉貴を拾うことはミスではなかったけど、拾った後に「変に恨まれたりするのもあれだしレベリングも兼ねて〜」って欲出したこと自体がガバで、それが巡り巡って記録が決して出ない今になってしまったのかぁ。

 人間性捨てたキャラを作っても、ふとしたキッカケで致命的な欠点が無自覚に生まれちまうのかぁ……俺、最初から間違えてたのか……なんもかんも間違えてたのか……

 あはは……こいつ、本当に戦闘には向いてなかったんだなぁ……

 

 フフフ……ハハハハハ! 

 ヒャーッヒャッヒャアア!! 

 

 ──わかった。

 俺が間違っていた。

 全てやり直そう。チャートもキャラも、新しく作り直す。Gくんとは、お別れを……

 

 するわけねぇだろそんなもん!!! 

 

 何回Gくん使って検証してたと思う、この俺が!!! 

 RTAじゃない? 

 うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!! 

 テメェらだってRTAにガバとかウンチー理論とかドスケベテロリストとか求めてんだろうが!! RTAが好きって言ってRTAの何処が好きだか言ってみろや!!! 

 俺だって好きだよレー◯ング◯グーンのRTA見た時ずっとY◯K◯HAMA言葉喋ってた……冗談じゃねぇ……

 

 >……まぁ、そうだな。

 この男はそういう意味でオレと同じだ。

 ならば、何も言うまい。

「それにオマエとて、やめる理由も無いだろう?」

「そうだな」

「ならばそれが答えだ」

「……しかし、我々は、他の物へと、心惹かれる」

「人だし、仕方ない。第一、心惹かれることさえ拒絶するのは無理がある。が──やってみたいと思うし、自覚しなければ突っ走ったろうよ」

 自覚した誘惑を全て断ち切ってこその一本芯の通った決意。人の域を超えた、まさに最強と呼ぶに相応しい。やはりそういうモノがカッコいいと思う。自らの全てを理解し、それでも己の願望に忠実で、全てを投げ捨てることを是とする……そうありたいと思う己に偽りは無い。

 ──とはいえ、オレとこの男のソレとは方向性が異なる。互いを認め合い尊敬し合うことはないだろう。それどころか、いがみ合う筈だ。

 どれだけ何を言おうとも、オレは初めから生命として破綻した選択を好み、そして撒き散らす死にこそ意味を見出す存在なのだ。そうでなければあのケルシーが怒る訳がない。

 こうと決めたらそうなのだから、突き付けられてもああそうかで終われる。──自らに近すぎる存在でなければ。

 

 単純明快な己を知り得た者は全てを理解するという、すごい信頼があるけど、だからと言って知らんところで歪みを生じて不安定になるのはNGでお願いします……

 

 >「まあ、そういうわけだ。これが最後の会話になる」

「そうだな。我々は、結局、そうなるしか、ない。他に交わす言葉が、無いのだから」

 何故も何も無い。根本から異なるが故に互いに感心する。ガードを下げた時には意見が合うだろう。思考はよく似ている。しかしそれは絶対に無い。我々は"それ"が嫌だ。

 だからこうして、なんでどうしてを語り合ってもこんな淡白に終わる。

「次に会うことがあれば、戦場だろうが」

「会わんさ。私と、お前は、もう、二度と」

「何故?」

「元鞘に、収まったお前は、無敵、だからだ。さらばだ、ブラッドブルード」

「……無敵、ねぇ。まあいい。じゃあな、ウェンディゴ」

 クツクツと笑いながら老人は去って行く。

 ──数奇な話だが、偶然の中の必然。オレたちは最後に己の鏡を見て、それでも選んだ道のままに、後悔と苦痛を背負って進むことを再確認した。

 ならば後は、運命のままに。

「話は終わった?」

 ……人生最大の汚点が、ニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべて入れ替わるように現れる。

 思えば最初から全て気が付いていたのだろうか。あるいは──

「聞いていたのか」

「別に? 聞く価値も無いもの」

 微笑むWの内心は伺えない。本心をあまり語らないこの女が、より本心を語らない時は。

「……まあ、敢えて問うまい」

 掌の上、ということだろう。

 しかしそれで、オレとコイツの間柄が変わることなどない。

 元よりそんなものなのだから。

 

 ……やー、まさか初動こそ真なる失敗だったとは。

 うん、気分変えても凹みますね。

 ま、せめて走り抜けるとしますか!! 

 ……いやでもやっぱり……俺ガバってたどころかオリチャーでチャート破壊してたのか……そっかぁ……

 くそぅ……くそぅ……ううっ……記録出してテンニンカ……




Gくん
精密機器に致命的なバグが生まれながら正常に動作しているような奴。

初走の時点からずっと矛盾を抱えた失敗作。
『原作キャラとの接触が早まっても問題は無い』と考えた走者の完璧なリカバリーが最悪の形で裏目に出たキャラ。
親しい人間もおらず、森羅万象を殺し尽くして自らを最強とすると考えた存在が、死に損ないの女を拾う理由として相応しいのは生を貪欲に求める姿に感動したというのは自然だが、だからと言ってしばらく行動を共にし、最強への求道をやめる理由にはなり得ない。
ずっとW姉貴がフラフラしている理由であるとはしていたが、やめた理由は明らかになっていなかった。
その理由こそ『コイツになら殺されていいかもしれない』と一度でも思ったこと。故にGがGである限り、W姉貴に殺される。
だから記録は決して出ない。
存在そのものがクソ重ロードのメガトンコインで血の盾で夜の騎兵。事ここに至ってはウンチー理論も通じない。

走者
完璧なリカバリーが最悪のガバであることを理解せられた敗北者。
始まりから正しく、それ故に間違っていた。
めちゃくちゃ凹んだ。

W姉貴
Gくんの歪みそのものにして、彼を彼足らしめるのに必要不可欠なファクター。
"彼"と共に生まれた"彼女"、半身にして運命なる存在。
本人も自覚しているので何も言わない。というか、どう考えても人間らしい感情が無かっただろう人物が自分を拾い、長年生死を共にし、頃合いを見て姿を消して再び怪物となったともなれば流石に察する。
その無自覚な矛盾こそGくんであるとし、敢えて放ったらかしにする。

ケルシー先生ら旧バベルメンバーの大半
Gくんの歪みを認識したものの、変に突くと変に拗れて自決しかねないから手をこまねいてた人たち。
迂闊になんかやって、気合いと根性で覚醒するバカをただの雑魚に変えたくなかったという戦略的観点からでもある。
ケルシー先生だけは行けるか? と踏んだものの距離が近すぎたので失敗。

部下四人衆
バベルの頃の話を持ってきたもんだからバベルのやり方でケツ拭きを命じられた。
まあ、黙って上官を殴って敵に引き渡すもんじゃないよ!!


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小話:原初の姿

久しぶりに初投稿です

色々と忙しかったのでまた小話です
次回はいつになるかわかりません。すみません


 Gは、医者としては完璧だった。

 どのような患者であろうとも、言うべきことを容赦無く言う。隠すことは決してせず、相手の真実や慟哭に冷徹に向き合う。

 無情な医者と呼ばれることもあったが、安易な同情心に敗北し、自らの心の保身に走るような愚者など医者ではないとして厳しく向き合った。

 

 学者としても非凡な才能を見せていたが、特に優れていたのは理論の応用と発展だった。新しい物を生み出すのは得意ではなかったようだが、それでも並大抵の者を超えていた。

 ──能力や適性は、きちんと育て上げれば非常に素晴らしいものだ。半端かつ独学であった頃からその片鱗は見えていたのだ。

 

 しかし何よりの問題は──精神が「この為に死ぬ」「その命題に挑戦する」「戦って勝ち取る」この三つを至上とする性格であったことだ。強さに対して貪欲である事は悪ではないが、それが突き抜けているならば話は別だ。

 初志貫徹の意志を微塵も崩さず、決して迷わず行動する。生物として狂った選択を、自分で選んで行い続ける。そこに付随するはずの煩悶を全て無視し、生じている歪みが無自覚になるほどに強靭すぎる精神強度。そして──それ以外の道を選択したくない潔癖症。

 

 実物を見た時に感じたものは、今でも憶えている。

 危うさと純粋さが入り混じる異質な雰囲気、現実からズレたような異物感、へばり付くような湿度を纏った狂気──これが伝説の怪物、ジェヴォーダンの獣かと戦慄した。

 

 が、その内側にいたのは何処にでもいる青年だった。

 年相応に軽い青年と、典型的なサルカズ傭兵、そして恐るべき最強の魔物。これらが目紛しく入れ替わる。どれもが本物で、どれもが彼。

 その最たるを理解したのは、彼がサルカズでありながらラテラーノ式の弔いを見せた時だった。

 

 影があったのだ、Wたち以外の影が。

 

 私はその影を──サンクタだと考えた。

 弔い方がラテラーノの中でも高位の者が行うそれに酷似していたからだ。リーベリの可能性もあったが、恐らくはサンクタだろう。

 ……確かにサンクタとサルカズの種族間対立は根深い。歴史の闇に埋もれ理由など誰もわからなくなった対立を今日に至るまで続けている。一般的なサルカズとサンクタを向かい合わせた時、余程の理由でもなければ会話さえしないだろう。

 しかし彼は話したことがあるどころか、行動を共にしていたであろうことが見える。そうなると相手は──恐らく堕天使か、余程の物好きか。

 思えばラテラーノ銃に対してやたらと知識があったのも、それが理由なのだろう。でなければ自分で整備できるだけの土台は無い。ましてや、十全に使うことすらままならないだろう。

 

 ──そこに活路を見出したはいいものの、Wとの関係性を理解するのに時間をかけ過ぎた上に、G本人の感情の向け方と距離感を見誤ったのは失態としか言えない。

 比較的対象は多いが、その中でも彼は特殊すぎた。

 

 エリオットやハイディのように、何らかの強い影響を与えるような振る舞いをした覚えすらない。確かに過ごした時間は長いが、それを言い出せばバベルで彼と接していた者全てが当て嵌まる。

 互いを対象として素を見せたこともあまり無い筈だ。

 

 情けない話だが、私は奴の不安定さを見くびっていたということだろう。まさか、子供よりも惚れっぽいとは。

 思えばある時を境に好意を前面に出してきていた。あれは単に技術を知ることが楽しいのだとばかり考えていたが……素直な方が良いと、素の反応を他人に見せる奴を肯定していたが、あれも原因か……純粋すぎる。

 少し優しくされただけで、人を信頼する幼子か、お前は。子犬か子猫でもあるまいし。ジェヴォーダンの獣の名が泣くぞ。

 

 ──だからテレジアはやけに甘かったのかもしれない。

 下手をすれば、Wよりも余程幼いのだから。

 

 

 ────

 

 

「弱い」

 

 少年がそう呟き、ぐちゃぐちゃに折り畳まれた肉塊を踏み砕く。

 

 カズデルの僻地にある屋敷。

 

 悪逆非道なブラッドブルードの中でも、一際忌み嫌われる一族が住まうそこは、血と臓物に塗れた、凄惨極まりないタペストリーと化していた。

 臍の緒に絡まって出てきた忌み子を虐げ、自らを強者としていた彼らは、その忌み子に抵抗すら許されずに惨殺された。

 

「これで強者を驕ったか」

 

 最初に殺されたのは長女だった。

 寝込みを襲われ、尖った源石を棒に括り付けただけのモノで、心臓を打ち貫かれた。胸を貫く激痛と共に目覚めた瞬間、二つの眼球を潰されてそのまま頭蓋に風穴を開けられた。

 完璧に都合の良い状態をじっくりと待った少年の奇襲は、自身が這いつくばるのを愉しんでいた強者を、弱者以下の虫ケラへと貶めた。

 

「心臓を貫かれ、目を潰されただけで泣き喚く屑」

 

 二番目は長男が殺された。

 家督争いではないかと父母に疑われた長男は、外に味方を作りに行った。内にいないなら外に作る。なるほどそれは確かに合理的だろう。

 故に少年はそれを把握し、時を同じくして屋敷より脱走。彼がよく通過するルートの地形を知り尽くし、徹底して脚を破壊するトラップを仕掛けた。

 罠に掛かった哀れな獲物は、鋸と見紛う程に刃こぼれした刀剣と先端が鋭利に折れ曲がった鉄棒で、じっくりと時間をかけて、丁寧に足先から頭頂まで、皮膚を剥がされ肉を抉られ臓物を引きずり出された。

 人体を理解する為に少年が行った徹底的な素人解体は、自身が血を流す事を愉しんでいた強者を、腐敗して朽ちるのを待つだけの塵屑へと貶めた。

 

「潰された脚を切り離して逃げればいいのに、何もせず命乞いしかしない阿呆」

 

 三番目に夫人が死んだ。

 長男の情報から敵対勢力となり得る者たちをピックアップした少年は、長男の使者を騙り接触し、襲撃の手引きをした。

 家主が家を空けなければならない他のゴタゴタの種を撒いて、徹底的に千載一遇のチャンスを待った。

 手の内を知り尽くされた上多勢に無勢、それでもなんとか生き延びた夫人に対して与えられたのは、背後からのずっしりと重い斬撃。左腕ごと切り落としたその一撃に唖然とした刹那、少年により脊髄ごと首を引っこ抜かれた。

 完全なる奇襲と人体に致命打を与える一撃という、少年が子供たち二人で学んだ手法をぶつけられた挙句、引き抜かれた首に源石爆弾を付けるという行為は、自身に存在意義と無価値であることを解いていた強者を、動揺を誘う為だけの兵器へと貶めた。

 

「勝利に酔いしれ、自分を狙う者がいる可能性すら考えない塵」

 

 最後は家主──この家で最も強い者だった。

 くだらんゴタゴタを処理して戻ってきてみれば、屋敷は半壊し、自分の収集した物の大半は失われ、家畜として飼っていた他種族どもは反逆し、少なくない傷を負って見たものは、首の無い妻の死体。

 怒りを感じる間も無く投げつけられる、脊髄ごと引き摺り出された首。様々な思い出がチラつくそれが爆散し、血飛沫と化す。

 刹那、少年は接敵し脚をへし折る。そのまま腕を逆に曲げ、激痛で思考を潰す。更にロクに使い方もわからないアーツにより、自身への負荷が甚大になるほどの能力を発揮しながら、自然に、呆気なく、頚骨をくるりと螺子折る。続け様に肉体を強引に畳んだ。 関節を逆にへし折り、あらゆる箇所を破壊しながら曲げて、最後に胸部と腹部をくっつける。それが三、四回程行われた末に決着を迎えた。

 

 粘土を捏ねるように行われたそれが作り上げたのは、奇怪な肉団子(オブジェ)

 肉と骨が見えて血が流れる無残な姿は、無垢な子供が折り曲げては直して丸めるを繰り返した針金細工だ。一家で得た技術を総動員して生み出された、血と汗と努力の結晶──自らの全てを否定した強者は、文字通りの汚物へと貶められ、辱められた。

 

「そして親しい者の首が四散しただけで固まる馬鹿。こんなものから生まれたとは。我ながら反吐が出る」

 

 そんな傑作を踏み砕いた少年は、そこがキッチンであることに気がついた。

 色々と耐えた所為なのか、喉が乾いて仕方ない。適当に地面に転がっていた袋を適当な容器に入れ、蛇口から水を注ぐ。

 それが紅茶であるとわかったのは、茶葉の香りが漂ってきた時だ。しかし水だろうがお湯だろうが代わりない。

 少年はそれを一気に飲み干し、容器を投げ捨てて邪悪な笑みを浮かべた。

 

「そうか、これが勝利の美酒。悪くない……これほどまでに美味いのならば、オレが最強となるのに相応しい困難な強敵を殺して飲む紅茶は、さぞ美味いのだろうな」

 

 ボロボロの身体で堂々と、十分な休息も取らぬまま、少年は暗闇の荒野へと歩を進める。

 虐待されて衰弱している少年は、長男を殺すのが本来の限界だった。

 だが何故か耐えられたし、何故か限界を越えられた。ならば何も問題無い。どうせ勝手に治るし、どうせ直面すればできるのだから──そう考えるが故に彼は最強への道に屍の山と血の海を築いていく。

 

 それこそが、全ての始まりだった。

 

 闘争に身を投じた少年は次々に合理的な戦術を以て強者との死闘に臨んだ。武器が失われれば奪い、練り上げた戦術や戦略が覆されれば死力を尽くして戦い、そして最後は『覚醒』という究極の理不尽で敵手を殺し尽くす。

 源石術という概念も知らなかった彼は、ただ黒い石が近くにあると限界を超越しやすいという理解があり、それが自らのアーツであると知る頃には、右胸から右上腕部にかけて源石が出現する時期であった。

 ──しかし、殺し尽くした後の休息は、基本的に読書と紅茶であった。そこに本があるなら奪い取って読み尽くし、紅茶があるならゆっくりと飲む。

 

 奪い、貪り、殺し尽くす。学習と実践、応用を繰り返し、より能力を高めていく。思案に思案を重ねて動いてもなお不可能であれば限界を越える。常識を逸脱した思考回路のまま、目の前に立ち塞がる敵と認識した全てを駆逐する。

 ただひたすらに、徹底的に自らをより鋭く頑丈な剣へと打ち直して行く作業。無論、鋭き刃となれば自ずと磨り減り頑丈さは失われる。しかし剣自らが再生し続ければ良いのだという思想が、常に薄く鋭い状態を維持しながら頑丈さを決して失わせない。

 そして感情の揺れ動きや命の勘定から解き放たれ、その身に残る唯一無尽の執念を以てあらゆる条理を踏み拉く魔物へと変貌していく。

 

 ──負けの無い人生ではなかった。

 ありとあらゆる手を尽くしてもより強い者には負け、ありとあらゆる手を尽くしてもより頭のキレる者には裏をかかれ……しかし、最後には必ず彼は全てを屍に変えて立っていた。

 

 空想の存在と断じることこそが、その者を現実の存在とし、そしてもたらされる現実こそが、その者を空想の存在とする。

 矛盾を呑み込んだ存在が、現実にも空想にも居場所の無い迷子の怪物が、勝手気ままに行き来しては命を喰らう。

 それ故に名も無き少年は、単身でありながら忌み嫌われたのである。

 

 誰とも群れぬ血染めの孤狼でありながら、獣の秩序さえも捨て去った魔物。戦闘という行為そのものを好むという生物として異質な性質を有し、あらゆるものから外れた存在。

 

「類似しながらも決して相容れぬ者」というループスに伝わる伝説、博識のフェリーンはそれに因んだ名で呼び、自然と浸透していったその名こそ──『ジェヴォーダンの獣』。

 

 何者にも属さぬ最強の存在として。

 蒼き瞳のブラッドブルードは、真の怪物となった。

 

 

 そして、時は現在。

 

「……さて、どうしたものか」

 

 ケルシーは、なるようにしかならないこの状況において悩みの種へと思考を向ける。

 今は龍門との共同作戦の方が重要だ。できる限りの種は蒔いたが、所詮それだけ。

 そもそも不確定要素が多すぎる上に、貴重な手駒を5つも手放しているのだ。さしものケルシーとて、目覚めてからそこまで時間の経っていないドクターと、経験の薄いアーミヤの補助をせずに自らが動くなどという暴挙には出られない。

 しかもGによる資材横領と独断による武装開発、首脳会談の盗聴など身内の問題も非常に多い。更に言えば今は不問にしているものの、立場ある人間の行い故に処罰はしなければならない。

 

 ──そこにのしかかる問題は、Gがサルカズであるということだ。

 通常、部門管理者の暴挙ともなれば退任させるのが筋である。しかし彼はサルカズで、感染者で、ブラッドブルードだ。さて、あの戦争で行き場を無くしたサルカズの行く末はたった一つ、ヴィクトリアである。

 あの国は今や、摂政王を中心としたサルカズが牛耳る国だ。

 

 ……Wが単身でいること。

 かつて行動を共にしていたヘドリーの傭兵団の方針。

 そして、ジェヴォーダンの獣は故あらば軍門に降ることを是とし、その頭を垂れる魔王はたった一人であること。

 

 ロドスへの挑戦権を得たかの怪物が取る行動とは? 彼は魔王に従い、ロドスの前に立ち塞がる。

 しかも死ねない理由を得て、死ぬ為に生を疾走する究極の怪物となった状態で。

 

 そうなればWが殺すしか道が無い。

 ケルシー自身、殺し切れる自信が無い。せいぜいできて無力化──つまり勝てないのだ。海の中の怪物さえも、真なる魔物と化したGの敵ではないだろう。いや、魔王さえも飲み込み吸収したとなったら、星そのものを砕けるかもしれない。

 

 唯一の弱点とも呼べるのは、人への愛着や殺されても良いという理解者や友達への情だけである。

 そして『敵』であるケルシーにできるのは、否定だ。否定とは会話や議論で起こり得るものであり、戦闘という殺しの場では決して起こらない。

 

 ──野に放たれてはいけない。

 ──しかし組織としては野に放つべきである。

 ──そしてそれは、この男が……Gという存在が伝説のジェヴォーダンの獣と知らない者こそが望むのだ。

 

「……だが」

 

 真に恐るべきは、自らロドスを去ることを選ぶ可能性。あれは筋を通す主義だ。

 なんらかの要因で自らの歪みと向き合わない限り、あの男は怪物へと回帰する。現実と空想の狭間に存在する、最強無敵の吸血鬼へ。

 真のサルカズ……万人が想像する残虐非道な悪鬼羅刹。そんなものを前にした時、被害無く切り抜けられる存在があるだろうか? 

 

「──私はどういう人間だったか」

 

 ならばどうするのだ? 

 どうしたらいいのだ? 

 

「……だが、もし」

 

 可能性に賭けるとしたら。

 

「あの男の意識に、なんかの変化の兆しがあれば」

 

 全てに、意味があったとしたら。

 

「その意を試す、番人として立ち塞がるのだろうな」

 

 最強を求めながらも、ロドスの運命の前に立つ審判者として、その責務を全うするのだろう。




Gくん
案外内面は幼い人。そしてW姉貴に出会うまではとっくに最強になってた人
最強状態ならケルシー先生お墨付きの化け物ではあるのだが、弱点はチョロすぎること

ケルシー先生
頭痛の種がたくさんある人。実は『ジェヴォーダンの獣』の名付け親。
変に放り出すと10章で敵になりそうなバカの始末に困っている。そしてバカが勝手に出ていきそうで困っている。
でも奇跡が起きればワンチャンって考えてる。

そしてパト爺によって起きている。


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うぅ……タルラ……負けるとこ、ご照覧あれぃ!!

何が妄想で、何が現実なのか?

それを確かめる術はただ一つなので初投稿です。

や、大陸版は11章とかグローバル版は10章とか、コーデとかアニメとか、色々熱くなってきましたよねアークナイツ。
そして僕はノソノソと書いている。でももうすぐ終わらせられるんだ!!


 どうも。

 四天の記録を統べ、第五の無慈悲が君臨する究極走者です。

 

 この前、同じように試走してくれた方がいたんですよ! ここまでで得た情報全て学会にぶん投げてみたら、ギャルゲーレギュRTAを走っている兄貴が挑戦してくれたんです!! 

 今まで綿密なチャートでキャラを攻略してきた兄貴が挑戦して私に言ってくれたんですよ!! 

 

「無理ゲーやんこんなん。ところでこのRTAをソロで走ると決めた理由は?」

 

 もろちん、「仲間に情が湧くと敵を倒す邪魔になるし、そもそも仲間なんて作ってる暇なんて無いでしょ。そいつも倒すんだから」って返したんですよ。

 そしたら

 

「全殺害は現実的じゃないなんだから、仲間作った方が絶対良いって。判定勝ちで好敵手関係いいじゃん」

 

 とか抜かしやがったのでギャルゲーレギュ兄貴と喧嘩しました。

 ま結局、一番エッッッッッなケルシー先生はどんなケルシー先生かを議論した後、一番エッッッッッなケルシー先生を見る攻略RTAで勝負して負けました。さすがレコードホルダーは格が違った。

 今度W姉貴攻略RTA挑んで無慈悲してやりますともええ。私の方が理解してるもん。

 

 ちなみにソロ全殺害チャートも走ってみたそうですが、曰く「こんなん真面目に走ろうすると頭おかしなるで」とのこと。は? 最強という名の称号は、正気じゃあ手に入らないんだよなぁ!? 

 たった一人を最速で攻略するために、あんたが人の心が無いようなマッチポンプ上等のチャート組んでるのと何一つ変わらんだろうに。むしろこっちは本音で(ぶち殺すと)向き合っている分、良心的でしょう? 

 好きだろうが嫌いだろうが、それを偽ることなく殺すんですから! 

 

 さてー、話を戻しましょうか。

 

 例によって独房からです。

 暇になりすぎて筋トレしてます。

 

 >「……暇だな」

 ちょこちょこ流れてくる噂話を聞くに、龍門では派手にやっているらしい。まぁ誘い込まれて始末されるのだろうが。

 スラムのあの有様、纏めて掃除するにもちょうど良かろう。

 "荷物"は知らん。だがもうそろそろだろう。

「元気?」

「まぁな。それでどうした」

「……そろそろよ。着替えなさい」

 投げ入れられる上着、そしてレユニオン戦闘員の仮面と衣服。

 ──どうやら、仕事の時は近いようだ。

「幹部は?」

「みんな龍門。あたしとパトリオットが残る」

「使い捨てる気か。裏切らない、裏切れないジジイと外様の傭兵を主力にすれば……と。合理的だ」

 手錠と足枷を破壊、力任せに引き千切る。そうして拘束を解除してから着替える。少し視界が狭いが、堂々としていれば意外とバレないものだ。

 Wが扉を開け、ようやくオレはこの狭い檻から出ることができた。

「娑婆はどう?」

「身軽だな。オマエを除けば」

「武器は自力で調達しなさいよ。あたしがいちいち案内してちゃ怪しまれるから」

「わかった」

 まぁ、やることはシンプルだ。そう悩むこともないだろう。

 

 さぁてここから始まりますはヒットマン。

 でもイタズラハゲみたいに万能でもなければおじ↑サム↓ほど強くも無いし、ダンボール箱ほど超人でも無いのがこのGくん。せいぜいがヤンちゃんレベルです。

 まあ頑張りましょう。こんなんでも私レユニオンスパイRTA走ったことありますんで、テクも知識もあるんですよ。フンス。

 

 >「すまねぇ、クロスボウがぶっ壊れた。どうも不良品を引いたみたいだ。なんかあるか?」

「予備の武装はなかったのかよ」

「コッチにはパトリオットさんもいるし、余計な事はしない方がいいかと思って、余ってた武器は龍門攻撃隊に渡したんだ」

 ……雰囲気が変わった。これは、バレたか。いや怪しまれているというところだろう。

「あぁ、もちろん個人的にだぞ?」

 

 あ、バレましたねこら。

 運が無い。殺すのが手っ取り早いけど殺したら殺したで判定を超える必要がある。さてこういう時の安定チャートって言えば──そう、大人しく従って気絶させてしまうことですね。

 

 >「……そうか。ちょっと着いてこい」

 そしてこういう場合、無用な混乱を避ける為に内密に処理するものだ。例えバカどもの集まりだとしても、それくらいはあって当然だろう。

「バレないとでも思ったのか。妙な嘘吐きやがって。裏切ったのか、それともスパイか」

「……オレを忘れたのかよ? 全く……」

「黙れ。そしてゆっくりと振り向け」

 振り向いても、まずは仮面を剥がして誰かを確認しなければならない。そして剥がされると同時に──

 ────

 始末する

 >黙らせる

 ────

「お前──!?」

 首を掴み引き寄せてから膝蹴りを叩き込む。直後肘打ちで追撃し、さらに蹴り飛ばす。そして念入りに更にもう一発拳を打ち込み、沈黙を確認する。

 

 手間をかけさせるなよ、たった一人に。大勢待ってんだからな。

 ……やっぱ殺すか。いや、それはそれで面倒だ。このまま早いところ終わらせるとしよう。

 

 ──さぁて、黙らせたのでしまっておきましょう。ガサゴソとそこいらにあった箱に押し込み、仮面を被って武器探しと。いやあ、向こうから武器庫に近いところへ案内してくれたのだけは感謝しておきましょう。ここまでくればバレる心配もありません。

 さーて、できればツリー解放してある武器とかがいいけど何があるかなー。

 

 ……おっと、レユニオンの前衛隊が使用している剣ですね。ロクに使えたものでもありませんが、無いよりマシですが、本来欲しいものからは遠く離れています。

 なんだかんだGくん、武器は質のいい奴使ってますからねぇ。質が悪いの使う時は数を揃えてましたし。

 

 んー……ウルサス軍正式採用の刀剣か……質はそれなりですね。暫定的にこれ使いますか。

 ああ、援軍忘れガバかと思われているかもしれませんが、私は初めから期待してないだけです。投降を装うのも無理がありますし、どーせ道端でくたばってるのが関の山でしょう。

 というか期待しろって方が無理でしょこんなん。敵陣のド真ん中で味方の援軍を待って内部に潜り込み、制限時間以内に首領を討ち取るとか。あるものでどうにかする算段を立てる方が現実的でしょ? 

 

 昔使ってた二刀流で行くかぁ。これあんまり強くないからやりたくないんだけどなぁ。でも他にいい武器も無いし、仕方ないよなぁ……絶対タルラに勝てないけど生き残れる確率上げる方向で頑張るかねぇ……

 なんか長物ないかなー。ハルバードとか欲しい。大剣でも可能。何でもいいからリーチ取れる武器ないかな。

 ……ないか。しゃーね、状態のいい曲剣と短剣の二刀流で行こ。

 

 武装完了って訳でしれっと警戒しているレユニオン構成員に紛れ込みます。

 それからしばらくはずっと化けているだけなので。

 

 みーなーさーまーのーたーめーにー

 

 女ドクターがクレイディーアとスカジと素ペクターにスマブラ(淫夢)されてる映像でも流しておきますね。

 

 走者上映中。

 

 ……そーれにしても、なんだろう。

 Gくん、裏切りそうな気がするんだよロドスを。絶対アーミヤCEOがクイロンコピーしたと知った瞬間に「挑戦! 最強! だぶち大好き! 愛してる!」って叫びながら斬りかかりそうで……ふぅしぎですね〜。

 いやまあ、そういう風にしたのは私ですけどね、ははは。

 

 ん? 待てよ……? 確かあれって……

 すみません、ちょっと前回の録画見直してきます。気になることがあるので。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 あ、ダメだやるわこいつ! 

 だって"最強を目指す"ことはやめてないもん! パト爺の説得があくまでも歪みを指摘しているだけだし、パト爺もこいつもそれを分かって突き進むことを選んでしまうからなみたいな会話してる!! フラグ消化したからもうW横に置いてタルラ見ても変わらない!!! 

 

 終わりです! はいもう終わりです!! クソだよクソ! ははは!!! 

 どうしろってんだよ、この流れで裏切りがデカい壁として立ち塞がるのかよ!! 平穏に終われないじゃん!? 

 俺こっから穏便な縁の切り方と、テレシス陣営への頭の下げ方と、9章以降のロドス対策考えなきゃいけないの!? もう後ろからアゾって終わりでいいかな!? ダメだよね!! みんな山あり谷ありのエンターティイ↑メントが大好きだもんね! 俺も好き! 

 

 俺が始めた物語だから俺が責任取らなきゃね! 

 はい。

 

 はぁ……

 他のこと考えよ。

 

 部下たち生きてるかな。生きてればいいな。五体満足だと尚更。武器とか持ってきてれば最高。

 ギリギリ入れなくもないくらいでしょうけど……ま、現実的でないからやっぱ期待するだけ無駄か。

 

 >連中に紛れて警護に参加してWを待っていると、案外早くその時は訪れた。

「ちょっとあんた、着いてきなさい。人手がいるわ」

「了解」

 何故かすぐに見つけられたが、あまり気にしないことにしよう。どうせ臭いだのなんだと訳のわからん理由で見分けられたのだろうし。

 

 うん、まぁ君バター犬だもんね。

 飼い犬だもんね。

 

 >「……どうだ?」

「無理。流石にキツいって。それどころかロドスの仕事が急遽入れられたみたいで、二人きりの狩りになりそうね」

 

 あ、遅かったみたいですね。でも生存してるらしいから上々ってところです。……これ後で間に合う条件とかを検証しよ。あんまり知らないし。それをベースに検証用のテストデータから細かい条件見てこうかな。

 

 >二人だけでやれるのか。敵は無いにしろ勝てる勝てないは別の話だ。

「厳しいな」

「二の矢よ」

「了解。眺めている。指示は」

「しくじっても生きて合流なさい」

 他に選択肢も無い。やるしかない。

「……いいのか?」

「二人で死ぬ気? 舐め腐ってるならそれを利用するだけ。種を割ってタマネギの皮を剥く作業も必要よ。手札は全部使うわ」

「わかった。オマエに従う。……やってみせよう」

 やるだけやる。それしかない。ならばやる。それがオレたちだ。

 

 さて。

 あとは正直皆さんご存知の7章8章が始まってしまうわけですが、こうなった以上私やGくんは流れに沿った運転くらいしかできません。なのでW姉貴が先行して負けるまでは加速します。

 そして先に言いますと、後はもうロドスのモブ Aくらいなので見所さん以外は全て加速して飛ばします。知ってる物語と流れを二度も三度も見る理由は人それぞれにしろ、横に知らんモブが生えてる程度の差分なら飛ばすでしょう? そういうことです。

 

 と言っても、見所さんはたった一つ、タルラ戦くらいですけどね。

 さて、じゃあGくんの最後の勇姿を見ましょうか。

 

 ────

 

 愚かこそ、馬鹿の故。

 力こそ、覇者の故。

 

 周囲に惑わされず己を通す、才能の差を努力で覆す、どれだけ絶望的であっても諦めない。 その悉くを試練と捉えたならば、後は超越するだけ。

 鍛えた五体と技、培った経験と勘、そして天運を見切る力と、強い意志力と精神力さえあれば、後は恐れるモノなど何もない。

 

 ──そうして輝きを放つ者を、腐るほど見てきた。

 そしてそういう者ほど、早々に死んでいった。

 

 夢半ば、というものですらない。

 夢に殺され、現実を受け入れられず、幻想のままに消えていく。未来ある若者たちが、思い描いた夢に押し潰され、現実にへし折られ、そして最後に居場所が失くなってしまう。

 ──"彼"もまた、そうした若者たちが潰れていくのを悲観していた。"彼"が信じる救済者とは、まさにそのような逆境であっても力を削がれることの無い、究極の存在であった。

 

 そして今、身体としている哀れな龍もまた、『へし折れた』存在だった。

 元々『かなりの素質』はあった。そして『かなりの下地』を揃えてくれた、実に素晴らしい龍だ。

 

 無知な感染者。

 雁字搦めで動けない馬鹿。

 都合良く動いてくれる強力な駒。

 全てを利用すればそう難しいことではない。

 知る頃には手遅れというもの。

 何やら可愛らしいサルカズが色々やっているようだが、やれることはタカが知れている。

 

 ──詰みだ。

 

「……ほう。噂には聞いていたが、ロドスの狂人がWと組みしているとはな」

「──なるほどな。実物を見て感じるが……炎という能力は単純故に厄介だ」

 

 しかし、その詰みの中で足掻く連中には面白いのが一人だけいた。

 ──今、二人に増えたが。

 

「二人で掛かれば良かったものを」

「現状では確実な排除手段は無いのでな。一矢でダメなら二矢、三矢と用意しなくてはならん」

 

 なんでもないように、連んでいた相手を見捨て後詰めとして出てきた吸血種の若造。

 見るからに平凡で、何処にでもいる二流の傭兵。永き世界を見てきた"彼"からすれば、ここに立っているのが不思議でならない程に──弱い。

 

 それがどうして、あのサルカズが態々連れてくる相手になるのか。

 珍しく個人的な興味が湧いた。

 時間を稼げばパトリオットも来ることだ。勝ちは揺るがない。ならば少しばかり、雑談に興じてもいいだろう。

 

「その割には、Wを見捨てたようだが」

「アイツについて知った風な口を効くな。特にこの、オレの前ではな」

「まるで対等かのような言い草だが、貴様わかっているのか」

「なんだ? オレがヤツとは吊り合わんと言いたいのか。くだらんな。オマエの価値観では、ということだろう。本人がどう思っているのかこそが本題だ」

 

 不快そうに、そして雑に話を断つ。

 どうやら本当に、自分以上にWを理解している存在などいないと言わんばかりの態度は、奈落の如き深さを感じる。

 そうなると、眼前の相手は絞られた。

 

 Wが奇妙な反応を示すサルカズ。

 凄まじい戦闘能力のブラッドブルード。

 ──ロドスの狂人。

 

「確か、獣殺しだったか」

「まさか知っているとは思ってもいなかった」

「貴様の殺戮の噂はよく聞いているとも。それで、Wに属している貴様が何故ロドスにいる? 忠誠を誓ってるわけでもあるまい」

「まぁな。ついでに言えばWが止めると言ったからここに立っているだけだ。オレ個人としては別に"コレ"がどうなろうと知ったこっちゃない」

 

 爪先で床を叩きながら、本当に興味無さそうに告げる男の姿は随分と滑稽でもあった。

 まるで勝ち目が無いのを言い訳するようでもあり、あるいは自分の保全にしか興味が無いかのような。

 

「ならレユニオンに降れ。サルカズの傭兵だろう。金は出す」

 

 そういうものは引き込むに限る。故に口約束でも十分だとしてそう言ってみたが。

 

「オレは傭兵だが、金だけで決めるほど愚かじゃないんでね」

 

 これまた、何やら面白そうな気配がした。

 

「では何を望む」

「最強という名の称号」

「果て無い旅路だ。道行く全てを殺してもなお足りない」

「だが焦がれた。ならばやる。そういうものだろう? 憧れは止められない」

 

 ──馬鹿だ。

 イカれている。その中でもとびっきりに。

 理論・理屈として破綻している。それを即答し、愚かと知りながらもそれこそが王道と定めている。人間として当然に、他にも心惹かれている物もあるだろうが、それはそれとしてその願望こそ第一としている。

 "彼"の中でも該当する種類の人間は少ないが、しかしこれは──完全に初めてだと言っても過言ではない。

 

 過去見てきた者たちは、皆一同に原点と経験を併せ持ったが故に、愚かなる者として覚醒していた。

 

 だが、この男はまるで違う。

 一眼見ればわかる。若すぎる。まさに若造、小僧。もっと言えば幼子。そういうレベルだ、"彼"の目から見れば。

 

 故に"無い"。

 

 決意を後押しする経験が、それを選び続ける経験が、抜け落ちている。その域に達する為に必要な経験が無い。そう言わざるを得ない。

 しかしこの即答、そしてこの馬鹿さ加減。ならばそれは、生まれ持っての強靭な決意と素質だけで、既に答えと完成形を見出しているに他ならない。

 確かに二流だ。どれだけ血を吐いても、超一流や規格外にはなれない。無理をすればその辺で野垂れ死ぬような、何処にでもいるありふれた、平凡な戦士に過ぎない。

 だが──原初より完成され尽くした、人の域を超えた意志力と精神力は、まさに特異点に他ならないだろう、と素直に評価する。

 

 例えば、素晴らしい戦士がいたとしよう。

 敵に敬意を払い、義に熱く、名も知らぬ誰かの為に戦えるような存在だ。

 そう至るまでには、幾百の経験がなければならない。いきなり零が百になるような夢幻が生まれるような土壌は、現実には存在しないのだから。

 

 が、その男は"そういうカタチ"が先に在った。言うなれば先に百があり、その百の中身を詰め込む人生だ。

 決意のままに生きて、決意のままに死ぬ。

 猿真似だの後追いだの、過ちだの愚行だのは一切関係無い。己の全てを懸けて挑むとしたら挑む。

 是非とも使いたい程には素質がある──が、こういう人種が己を捨てるその時とは死する時に他ならない。非常に惜しい。

 

「惜しいな」

「それは光栄だな。ウェンディゴの爺サマが頭を下げるに相応しいと判断される程の、我が同胞たちが即座に首を取らない程の、そんな理想を掲げて全てを裏切ってみせた──棺の中の骸骨サマ」

「ほぅ?」

 

 ──気付かれている。

 

 "彼"の心は久しぶりに踊っていた。

 強敵、久しく覚えていなかった感覚。単純な武力ではなく、しっかりと情報を整理し、真実を考察できる存在。それこそが真の強敵だと。

 ……ただ舌戦ではあるが。

 

「タカ派の下儲けだからというのは知っている。しかしタカ派ということは、政治闘争の場にもいたであろう爺サマが気付かない筈がない。そうなるとオマエ──いや、『タルラ』という存在は一体何なのか? とりあえず抜き出してみれば、自分諸共死ぬかもしれないってのに自爆特攻をさせる……典型的なタカ派だ」

 

 まずは事実が並べられる。しかしただの事実だ、故に"彼"は何も語らず反応もしない。

 

「そうだ、オマエという存在は特別な誰かである必要が無い。感染者の大義名分を掲げる必要すらない。チェルノボーグを落とし切れて、ついでに適当などっかに都市を落とせるヤツなら誰でもいい」

 

 なんでもいいし、どうでもいい。

 結果的に新しい展望があればそれで、という考えが透けて見えるぞと、若きブラッドブルードは指摘する。

 

「感染者の地位向上などというあやふやな目的を大義名分として掲げているクセに、タカ派の下儲けをやっているのか。そして配下のヤツらとの信頼関係があるのか。洗脳にしては違う。ありゃ本気だ。オレにはわかる。だが所々疑問はある上に、やり方がまるでゲリラだ。確かに戦争を理解し、戦争に身を投じた者だけが行える戦術」

 

 理想のままに生きて死ぬ者たちを率いる捨て石。

 チグハグなのにしっかりと歯車が回っている。

 それは異なる存在と化した、ということに他ならないのだと、単なる事実として告げる。

 

「──そしてオマエを見て理解したよ。天上から見下ろして自身を含めた何もかもを平等に扱うその姿勢。未来を求めている筈の連中なのに、今を変えることにしか興味のない行動。別に『タルラ』じゃなくてもいい。なのに他のヤツらは『タルラ』であることを求める」

 

 ……『オマエ』は誰だ。

 哀れな女に潜む者よ、何故己を誇ることをしない。能力があるのにも関わらず。

 そういった視線であった。

 

「今を変えるのは未来のために。より良い明日のために、自分が変えてやる。自分が救うんだ。"それ"が無い。やるのは自分なのにな。条件も何もかもをわかってんなら自分がやってやるって気兼ねの一つや二つくらい見せるのが、愛国者ってもんだろう?」

 

 ──オマエは一体何をしている? 

 ウルサスを救う特別な誰かであらんとしないのは何故だ? 

 

 単なる疑問。

 しかし、眩しい疑問でもあった。

 

「──確かにそうだな。だが私にはそれができない。国を憂いておきながら、こうすることしかできない」

 

 結局、できない。

 "彼"は自分が、あくまでも現状を打破することしかできない存在であると深く認識している。様々なモノを見てきたからこそ、己の不足を知るが故に、己の役回りに徹するのだと。

 

「だから地盤だけ揃えて他人に託すと? 温いぞ。できるできないではない。やるのだ。道理を蹴り飛ばし、現実を踏み躙る不条理に成り果てることを是とし、自分が賭けられる全てを差し出し、掴み取る」

 

 しかし光へと殉教する者は、それがどうしたのだと切り捨てる。"やる"と定める。ならば"できる"のだと、己がそうであるならお前もそうだと告げる。

 

「それができない。やったから知っている」

 

 それは数百年前に通り過ぎた道だと、諦観を伝える。

 

「くだらん。やれるようにしろよ」

 

 それは理由にならない。改善を繰り返して前へ進むのだと、当たり前に語る。

 

「貴様と私では、見たものが違う」

「要するにすごいヤツを見てコイツよりできない自分はゴミだって卑下してるんだろ」

「事実だ」

「そのままにしておくのか。わかった欠点を」

「改善もできん。貴様ならわかる筈だろう」

「性格的な話じゃないだろう」

「ならば心の問題とでも言うのか」

「そうだ」

 

 水掛け論が続く中で、それは心の問題だというある意味の極論が提示される。

 心か、ならば──"彼"は、端的な答えを告げる。

 

「心の問題ならば、私はそういう生き物だ」

 

 お前がそうであるように、私もそんな生き物だ。それが答えだ、それが真理だと断ずる。

 だからこうしているのだと示してみれば、若きブラッドブルードは鼻で嗤い。

 

「なら滅んじまえ、そんな国」

 

 長くを見てきた賢者が救えないなら死ね、と実に"らしい"ことを告げた。

 

「オマエがアレコレやっても、結局は他人任せ。ならオマエが立てばと言えば無理だと言う。だったら何をする必要も無い、あるがままに滅びて死ね。かつてカズデルがそうであったように、地図からウルサスの名前が消えるだけだ。そして生まれる何某かを祝福するといい」

 

 盛者必衰の摂理に従い消えるがいい。そしてそれを苗床として、また新たなるウルサスが生まれるだろう。

 生まれるには、一度死ななくてはならないこの世の常。永くを知る者ですら延命できないなら、死ぬべき時が来たのだと、"彼"が絶対に認められないことを、実に愉しそうに告げた。

 それを祝福せよ、生まれる者全てを祝福せよ。それが悪であろうが善であろうが、世界が壊れていようが、苦痛と絶望があろうが、それでも新しい命が生まれることは尊いのだと。

 そんなある種ラテラーノ的な──サルカズらしからぬ価値観で、不死の黒蛇に対してジェヴォーダンの獣は嘲る。

 

「それはさせんよ」

「じゃあやれよ」

「できないと言ったが」

「なら指を咥えて見てろ」

 

 ──水と油。

 

「首を突っ込むな、未来が腐るぞ老害」

「過去を知らずに、未来を知るか小僧」

 

 ──炎と氷。

 

「すごいヤツには焦がれて当然。自己と比較して卑下するなど愚か者のすること」

「英雄たる者を見て自ら以上とするならば、その者にこそ託すことが必定」

 

 ──光と影。

 

「貴様は見たことがあるのか? 不当にも自らを傷付け、瀕死に追い込んだ者を『殺してはならない』とした、ただの感染者を。あの聖女の如き女の前では、私の存在など霞む」

「誰でもないオマエにそこまで言わしめる女とは、さぞ素晴らしい女だったんだろうな。素直に哀悼の意を表するよ。だが──だからといって自分がしない理由には決してなり得まい」

「では貴様はどうだ? そうした相手と出会い、存在の差を、器の差を、格の差を感じたことは?」

「あるさ。だからこそ、それを喰い殺したい、超えたいと奮い立つ。世界はまだ広いのだ、オレには更なる高みへと昇る機会が与えられているとな。そっくりそのまま返してやろう──オレはそういう生き物だ」

 

 決して交わらざる存在。諦められないからこそ夢を己が為す悪魔と、諦めたからこそ他者を信じる悪魔。

 どちらも他者の存在が必要になる。しかして、それが自ら喰い殺して養分するか──それに自らを潜ませてそれとなく誘導するか。

 

「……ククッ」

 

 ──焦がれるならば託し潜む。

 

「ハッ──」

 

 ──焦がれるならば喰い殺す。

 

「失せよ小僧。夢見心地のままに死ね」

「くたばれ亡霊。墓の下でカビてろ」

 

 どちらにせよ、互いに互いが嫌いなのだ。

 同族嫌悪でもあり、相反する者として。

 狂える者は狂える者こそを憎む。故に滅ぼし合う。

 

 彼我の力量差は明確だったが──そんなもので挑むのをやめるなどという選択肢があるのならば、こんなところに立ってもいないだろう。

 

 ……刹那の死闘が始まる。

 

 一歩。

 Gが踏み込む──元来の闘法である曲剣を順手に、短剣を逆手に持った独特なもの。

 

 二歩。

 タルラが構える──爆弾の所為もあって不用意にアーツが使えないが、仕留めるには剣技で十分。

 

 三歩。

 二人の視線が交差する──短剣が前に、曲剣は後ろに。

 

 四歩。

 タルラが踏み込む──より素早く、より疾く、一太刀で迎え撃つ為に。

 

 五歩。

「──!」

 刺突と斬撃が同時に煌めく。

 

「……!」

 二刀ごと潰す剛剣が閃めく。

 

 六歩。

 曲剣が逆手に切り替わり、刀身を滑る。

 

(防御の為ではなく、仕留める為の短刀か──なるほど)

 

 このまま行けば曲剣が右腕を裂き、流れるように短剣で首を裂かれ死ぬ。

 しかし繊細なアーツコントロールを持ってすれば奇策を突破する程度、そう難しいことではない。

 

(ならば熱で、溶かし切る)

(熱で溶かし切るしかないのはわかっている)

(そのまま首元を掴み、燃やす)

(そして殺すなら燃やすだろう、喉を掴み上げて)

(──無論見切っているだろう)

(しかしこれは予定調和だ──)

 

 それを理解しているのは二人とも。

 

((それしか選択肢は無いのだから))

 

 こうなった以上それしかない。

 

(その均衡を崩すとなればオレからだが)

(それをすることはないだろう)

(向こうがそれを望んでいる以上)

(向こうが確実に仕留めたがっている以上)

(だがこのままでは──)

(──読み合っても無駄というわけだ)

((ここは考え無しに行くしかない))

(……などと考えれば読まれて終わる)

(かと言って読み合いをやめればそれまで……)

(ではどうするか? まぁそんなものは決まっている)

(ならば私の選択など、初めから一つしかない)

 

 互いに邪悪な笑みが浮かぶ。

 

((踏み倒す))

 

 青光と赤光が交差。素早く発動した互いのアーツが互いのアーツを阻害したことで、即座に発動を停止する。

 潰し合う技を見せたところで意味が無い。剣技に移行したが、それも一瞬。刀剣が重なり合って火花が散る──それだけで、タルラが退いた。

 いくら龍とはいえ、尋常ならざる出力を誇るサルカズ、それもブラッドブルードの腕力はそうそう受けられるものではない。更に言えばアーツで強化されているのだ。何度も何度も殴り合えるわけではない。

 僅かな打ち合いで有利の取れる短剣を使っていないのだ。付き合ってやる道理も無い。

 器用に受け流せるとしたら、その癖や腕力を十二分に把握した上で、長年殴り合った相当な馬鹿者に限る。あるいはその負荷を麻痺させて無視するか──それくらいだろう。

 

(炎熱系ともなればコントロールはしくじりたくあるまい)

(なるほど、嫌な相手だ。確実に殺す術を会得している。最悪の殺戮者の字は伊達ではないか)

(されども、Wがしくじる相手。無策で挑んで勝てる筈など無い)

(やはり二流だが、こういう相手は爆発されると面倒だ。確実に消すしかあるまい)

(自爆は選択……できんな。オリジナルキーごと吹き飛ばしかねない)

(諸共に、というのはまずい。まだ死ねない)

(狙うのは瞬間と瞬間の隙間)

(相手が狙ってくるのを返すだけ)

 

 刹那に鞘走るが如く両者は再び接敵する。

 二度も三度も同じ手が通用する相手ではない。しかし奇策を打ったところで所詮は付け焼き刃、素直に相手を上回るしかない。

 もっともタイムリミットがある以上、博打を打つのは──Gだけだ。

 

「──やるしかないよな」

「来るしかないだろう──」

「が」

「、しかし」

「「負けると分かっていても、勝ちを目指す性分だな」」

 

 片や自嘲、片や嘲笑。

 読まれ尽くした殺し合い。

 制するのは防衛であり、能力で勝り、技量で勝るタルラ。

 

(古代アーツ、現代アーツ……物理的な現象として現れるものと、効果として現れるもの。同じ源石と感染者の組み合わせでありながら、何故こうまで違うのか。全員同じ素質で全部同じ事ができるが、引き出し方はそれぞれ異なる為に、氷山の一角を切り取って異なる性質を発揮していると仮定する。ならば、出力方法さえ変えてしまえば一人が複数かつ同一のアーツを持つことも可能なのではないか──しかし、所詮は仮説だ。更に言えば学術的な裏付けのある仮説ですらない。だが創造する神がいて、創造された存在があって、自然と生まれたものがあり、全てを蝕む源石があり、そしてアーミヤが複数のアーツを身に付けているのだから……)

 

 おいおいおいと唖然とする天啓は、"そんな選択肢"が出てきたことに頭が止まる。

 いやそれマジ? 土壇場にも程があるけど土壇場すぎるでしょ? 確かにアーツの進化はそういうルートを辿るけどさぁ……など考えたのは刹那。

 彼もまた、全てを殺して最強になるバカなのだから──ま、いっかくらいのテンションで破滅的な選択を喜んで行う。

 

 再び稲妻が弾ける──ただし、蒼ではなく漆黒の稲妻が。

 源石から人体・アーツユニットを通して発現するのが現代アーツ。儀式によってなされるにしても通す物は変わらない筈の古代アーツ。結局違いがわからない。

 違いがわからないなら、時代を逆行すればいい。源石がよくわからないものだった時代のやり方で行えば──天啓は舞い降りる。

 

「──馬鹿な、貴様は……」

 

 結果、それが間違っていてそれで破滅しようが関係無い。仕留めると定めてやればやれるのだ。

 刀剣に纏わりつく黒い光。それが何なのかは想像が付くが、仮にそうだとしたら受け切れないし、仕留められる。それだけは何としても避けなければならない。

 

 両手に構え、その一撃を受ける。

 受けた刹那、アーツを発動する。刀剣が叩き折られそのまま両断されるよりも早く。

 爆発、そして吹き飛ばされるGとタルラ。小規模なものとは言え、直撃を受けたのだ。それを分かっている者と分かっていない者では、受ける被害は異なる。更に片方は無茶な方法で無茶苦茶な事をした以上、普段ならば隙とならないものが、隙になる。

 息を吐く間も無い刺突──逃げ場は無い。ならばどうするか。

 

「……オレの負けか。だがッ」

 

 飛び降りる。Wが落ちた場所から、寸分違わぬように。

 

「戦争の勝ちは譲らんぞ、亡霊──!!」

 

 それは自暴自棄などではない。

 絶対に生き残り、貴様の野望を打ち砕くのだという、決意。

 この高さなら通常生きてなどいられないだろうが、こういう類はどうせ生きている。そして戻ってくる。気にするだけ無駄というものだ。

 何故ならそういう人種だから。

 

「……しかし、貴様では届かぬ」

 

 だが間に合うものではないと、"彼"は淡々と告げるのだった……

 

 タルラの、『運命』が来ることを知らずに。




Gくん
認めたところで変わる理由が無いから変わらないんだよなァ!?
結局変わることの無い人。世界の全てが最初から敵なのだから、全てに挑むのだ。

不死の黒蛇
バカ丸出しのボケナスに少し興味が湧いたらアホだったので消すことにした
滅ぶべくして滅ぶなら受け入れよう! とか言われて認められる訳も無し。

走者
苦しみ続けるバカ。学会内ではかなりおかしいヤツ


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夜明け前

元より世界とは悲劇なので初投稿です

あ、あと一話で終わります。

そしてもう明確な視点の主体がいないのでセリフばっかりになります
手抜きじゃないよ!!
これだけは真実を伝えたかった。

最終話は10章のネタバレあるからちょっとどうしようか迷ってるけど待たせることはないと思います、ハイ。

追記
10章ネタバレは無くなったZE!


 ……へぇ、この展開は初めてだな。

 何が理由だ? まぁいい。でもこれで遂に、俺は先に進めるってことだよな? 

 そうだな、10章以降はまだ検証が甘いもんな? なら……やるしかねぇよなぁ? 

 

 かもしれない、じゃなくて確定したんだ。

 ならやるだけ。だろう? 

 

 じゃあ、この選択は──

 これしかない。

 こうすれば後の面倒な事は全て無くなる。

 俺は好き勝手できる。頭回さなくていいどころか成り行きに身を任せることさえできる。完璧だ。

 

 

 

 ……皆さま。

 ここまでのご視聴、本当に、本当にありがとうございました。

 色々と見苦しいところもありましたが、私はこれから再び、『最強の伝説』全員殺害チャートに挑戦致します。

 これまでのプレイで見えてきた物があまりにも多すぎるので、学会に持ち帰って隅々まで検証し、そして『最強の伝説』RTA動画を上げる時には、完走した時であることを誓います。(他のRTA動画を上げないとは言っていない)

 

 あっそうだ(唐突)

 実は最近、学会で『アンセルきゅんで性癖を捻じ曲げられるRTA』が発表されまして(ry

 

 

 ────

 

 

 事の顛末はそう難しい話ではない。

 

 レユニオンは崩壊し、タルラはロドスで軟禁された。

 炎国とウルサスの戦争は回避され、黒蛇は去り、龍門には平和が戻り、そして多くの血が流れた事変は幕を閉じた。

 

 ただ一つ、ロドス・アイランド結局総合研究部門代表管理人兼エリートオペレーターであるGが、辞表を自室に残して失踪したこと以外は。

 

 ケルシーでさえも、理由がわからない。古参のオペレーターたちも何もわからず、何故今のタイミングなのかさえも浮かばない。

 ただわかるのは再び出会う時、一筋縄ではいかないということだけ。

 

 Gという男は、実に愚かな男だった。

 しかし優しくもあり無慈悲でもあり……複雑だが単純、歪な天秤だった。故に慎重に接する傍ら、表裏無く純粋に敬意を表したり慕ったりする子供っぽいところは、戦乱で荒んでいた戦士たちにとって妙な心地良さがあった。

 

 稀代の狂人、理解不能な殺戮者……最初はそれ以上でも以下でもなかった、傭兵Gを演じる男。しかし彼と接した者たち全てが、その中で見えたのは──"ジェヴォーダンの獣"など何処にもいないということ。

 ただ不幸の中で勝ち残ってしまった、捻じ曲がり過ぎた子供に過ぎないということを、知っていた。

 

 そんな男が、誰にも何にも言わず、義理を重んじる自らの流儀を曲げるように姿を消した。

 それはつまり、それだけの『何か』があったという事だ。

 

 後始末に奔走する傍らで、かの戦乱に身を投じた戦士たちは全盛を取り戻すべく研ぎ澄ます。

 そのとき眼前に現れるのはただのブラッドブルードではない。

 

 伝説の殺戮者、ジェヴォーダンの獣なのだから。

 

 

 

 

「……起きろ」

 

「起きろ阿呆!」

 

「うっ、さい」

 

「動くな。処置をする」

「いらないわ。問題無い」

「医者の言うことは黙って聞け……応急処置だが」

「構わないわ。これだけ動けば──」

 

「ケルシーか。ドクターも久しぶりだな」

「G、無事だったのか」

「元気そうで何よりだ。肩の荷が降りたか?」

「世話焼きの爺サマにちょいとな」

 

「……実物を見ると吐き気がしてくるわね。弁解くらいあるでしょ、ケルシー」

「お前に何の弁解をする必要がある。どうせGから有る事無い事を聞いているのだろう」

「──そいつが殺したのよ、テレジアを……!!」

「状況証拠としてはな。だが、その場面を誰も見ていない。ならばそれを真実とするのは暴論だろう」

 

「ケルシー、人員は?」

「間に合わない者以外の総力戦だ。惜しんでいる暇は無い」

「妥当だな。ところでウェンディゴの爺サマはどうした」

 

「彼は我々の前で、命を落とした」

「理想主義の終焉ね。残念だわ」

「その様子だと、何やら満足して死んだのか爺サマは。となると娘の方も、満足して逝ったか。無駄死とはな──よく似た親子だ」

 

「黙れG」

「本人が承知でやったのだ。ならば言葉を飾ることに意味は無いだろう、ドクター」

「それは二人に対する侮辱だ! 無駄死という言葉はやめろ! 彼らの死は決して無駄なんかじゃない!」

「──無意味にこそ価値を見出し、その運命のままに生きて死んだ! ならその無意味を無意味としないこと、それこそが真なる侮辱だろうが!!」

 

「議論なら後ですることだ。言い争っている暇は無い。状況は」

「暗殺を仕掛けたが返り討ち。オレはまあ平気だが、コイツはモロに受けてな」

「は? 平気なんだけど」

「……ってことだケルシー。オレとしては拾ってやることをオススメするがね」

 

「W。お前がいなければ我々はここまで辿り着くことはなかった。そのことには感謝している。しかし、件の取引によりオペレーターを13人失った」

「つまりなによクソババァ」

「Gのおかげで棺桶代は残りそうか」

「見りゃわかんでしょ。あたしの団は取られて、このままだとケツの毛まで毟られるわ。だからさっさと取り返さないと──」

「利害の相殺もある。そしてなによりも、かつて彼女の元へ集った同志としての縁だ。ドクターを恨むのは構わんが、情報の出揃わない現在が全てだと思うな。腹に一物を抱えているのは何もお前だけではない……Mon3ter。ブリッジまで運べ」

「……こんのクソババァ!!! 今度あったら楽に殺してやらな──」

「期待しておこう」

 

「私たちは動力路を止める。君はこっちに来い」

「アンタ一人いりゃ申し分無いはずだが」

「──来い」

「……爺サマの入れ知恵か?」

「ボジョカスティは関係無い」

「どうだか」

 

「ドクター」

「……わかっている、ケルシー」

「嫌われたモノだな。オレだってその生涯に感服しているんだが」

「その言葉が真実だとどう証明する」

「無理だ。証明なんてできない。オレが何を言ってもオマエが嘘だと思えば嘘になる。嘘を嘘と見抜くのは簡単でも、真実を真実と定めるのは非常に難しい。ま、そこの先生とさっきのアイツはオレの比ではないぞ。せいぜい寝首を掻かれんようにな」

 

 

 

「……結局、奴は辞表だけ残して消えたか」

「一体どうして……」

 

 ──ケルシー、どう思う──

 ──勝手な奴だ。愉快犯なのか──

 

「彼とは長く、その心底の願望も理解しているが……だからこそわからない。ボジョカスティがGを、再び修羅へと変えるられる筈もない。ならば自発的ということになる。しかし己に課した規範には極めて厳格だ。厳格な規範を捨てるに相応しいだけの理由……心底の願望が関わっているなら、ますます浮かばない」

 

 ──Gの心底の願望? ──

 ──Wと親しかったようだが、Gは何者なんだ──

 

「それを語るには、長い話になる。そしてまだ語るべき時では無い話題に切り込まねばならない。だが今回語るとすれば……そうだな。焦点を絞る。彼についてだけならば話そう」

「ケルシー先生、それはどの道触れなければ……」

「問題無い、アーミヤ。あの男の過去を話すだけだ。君も聞いておけ」

 

「まず前提として、Gというサルカズ傭兵の男は、既に死んでいる」

 

 ──待て、どういうことだ? ──

 ──コードネームを受け継いだ誰か……? ──

 

「単純な表現をする場合、こうなる」

 

「──我々の知るGというブラッドブルードは、サルカズの傭兵Gを殺し合い、勝利し、その存在全てを喰らい尽くした存在だ」

 

「ではその前の存在は、彼はGとなる前にはどのような名前だったのか」

「過去、カズデルは内乱が起きていた。なら彼に名前があるとすれば、それは名も無き孤児ということになる筈です」

「……ああ、そうか。君は知らなかったな。かつて共に戦った者は皆知っていたし、それ故に心を痛めていた。だから知っているものだと思っていたよ」

「え?」

 

「古い話だ、私たちがある傭兵団と取引をしていた頃のこと。新しく『W』となった女のことを聞く前──信じられない報告を聞いた」

 

「ある、伝説的な殺戮者についてだ」

 

「当時のカズデルでは内乱が起きていたが……それと同時に、どちらの陣営も警戒するべき唯一人の恐るべき存在があった」

 

「理不尽を塗り固めし最悪の異端者。ブラッドブルードを狩るブラッドブルード。自覚なき怪物……己が同族を絶滅させんとばかりに活動し、サルカズ社会を震撼させた悪名高き同族殺し。たった3年で数百ものブラッドブルードを、ありとあらゆる方法で、効率的かつ計画的に殺戮したとされる、僅かな時間で伝説の域にまで達した本物の怪物」

 

「その恐るべき存在を、私はこう名付けた。ループスに伝わる決して交わらざる同族に因んで、"ジェヴォーダンの獣"。その傭兵から伝えられたのは、ジェヴォーダンの獣を、Gが仕留めたということだった」

 

 ──まさか、Gの過去の名前は……──

 ──つまり彼が、ジェヴォーダンの獣か──

 

「そうだドクター。サルカズの傭兵であり、テレジアに従った戦士であり、そして私の弟子でもある彼……その過去の名前こそが、"ジェヴォーダンの獣"という、最悪最凶と恐れられたブラッドブルードだ」

 

「……そんなこと!」

「残念だが事実だアーミヤ。我々はその事実を飲み、バベルに彼を受け入れた。そして彼はテレジアが死ぬまで尽くし、そして死んだ後も、彼女への義理を果たす為、今の今までこのロドスに利をもたらした」

「彼が……"先生"が伝説的な殺戮者なら、どうしてあの人に従えたんですか!? ロドスに尽くしてくれたんですか!? どうしてあんなに……医師として、オペレーターとして、他人を導くようなことを……!!」

 

「彼はそういう男だ。言ったろう、己の規範には極めて厳格だと。テレジアに首を垂れることを是としたならば、彼女への義理としてロドスに尽くすと定めたならば、"そう"なのだ」

 

「君のことも本来なら疎ましく思っていただろう。彼はブラッドブルードであることに誇りを抱くことはないが、しかしサルカズとしてカズデルに生まれ、サルカズとして自らが存在することに誇りを抱いている。サルカズではない君が、このロドスで指揮を取っていることを──テレジアの後を継いでいることを、彼は心底から気に食わなかった筈だ。だがそれを一切表すことなく、ロドスに必要な人材を完璧に演じ切った。……もっとも、友が死に、ドクターが目覚め、Wの存在を確認した後は、それに綻びが生じていたようだがな」

 

 ──逆を言えば、そうでもなければ綻びは生じなかったということか──

 ──本当に人間なのか? その在り方は──

 

「問題は、そんな強靭な精神を持つ男が、恐らくは真の願望に由来する何かが原因で、自らに課した厳格な規範を捨て去るような行動に出ているということだ」

「……一つ聞かせてください、ケルシー先生」

 

「彼は何故そんな道を、歩んだんですか」

「その先に生きる理由と、死ぬ理由があったからだ」

「そんな……」

「それにそもそも、彼は真っ当な生まれではない。曰く臍の緒に絡まって出てきた忌み子、だそうだ。ついでに言えば教育も満足に受けたわけではない。名前もなければ価値も意味も無い。言葉も、文字も、食事も、何も知らずにただ虐げられていた」

 

「が、彼は全て自力で得た。そしてある存在から、人生の答えを見出した。故に憎しみも無く、強いと傲っていた家族と呼べる他人を皆殺しにし、運命の旅路を歩み出した」

 

「彼の適性は、医師や学者といった方向だった。クロージャを差し置いてトップを張っていたのは伊達ではない。更に研ぎ澄ませばドクター、君や私にも匹敵する程の頭脳となったろう」

 

「だが運命を見出し、生きて死ぬ理由と形を既に作り上げていた彼にとって、そのような天職は自らの願望を阻害する癌でしかなかったのだ。自らを適性のままに成長させればさせるほど、それが夢を蝕み、現実へと引き戻す。そして痛みを他人に分け与えれば、それで感謝される……甘い現実では、苦しい夢から醒めることを許さなかった」

 

「そうまでして夢見る、苦痛の果ての運命とは何なのか? 君たちには想像が付くか? 私はそれが何なのかを知るまでそれなりの時間を要した」

 

「──最強の二文字だ」

 

「あらゆるものが首を垂れる、最強の字を求めたのだ」

 

 ──それは不可能だ。堂々巡りだ! ──

 ──終わらない研鑽だ、自らが朽ち果てるまで──

 

「ああその通り。しかしそうと定めた。ならばそうする。ボジョカスティのように、自らの道を決して曲げることを許さない。Gは先天的に、ボジョカスティは後天的にという違いこそあれど、二人は同質にして対極の存在だ」

「鋼の決意、強靭な精神……自らの意を曲げる瞬間があるとすれば、心の底から納得できたその時しかない。つまり彼は──決して辿り着けない夢を見ている……周りに沢山の人たちがいるのに、見ないフリをするなんて」

「そして、それを達成するまでは死ねない。死ぬ理由は明白であるのに、死ぬことを認めない。矛盾を抱えたまま突き進み、あらゆるものから解脱して全てを葬り去る。最強無敵の存在……それがジェヴォーダンの獣だった」

 

「しかし当然人間であるからこそ、変わる兆しや歪みの一つや二つが存在した。恐らくボジョカスティはその点を指摘できたのだろう。似た者同士だからな。私たちがそれを言えば、奴は自らの命を絶ったろう」

「そんなものが死ぬ理由になる筈がありません」

「なる。完璧主義者だからな。親しい者が自らの過ちを指摘したとなれば、Gはそんな指摘をされる己の不甲斐なさは最強より程遠いとして即座に自決する」

「歪ですよ、そんなの……」

 

「Wだけは例外だが」

「Wさんが?」

「詳しいことは本人に聞け。どうせ言わないだろうが。私の口から説明すると奴に面倒なことをされかねん」

 

「アーミヤ、覚えておけ。自らで自らを救済した者は、他者からの救済を拒む。奴は光を得て、運命を得た。それだけは決して否定してはならない。その瞬間、奴は君をテレジアの後継ではなく、たった一つの冴えた答えを頭ごなしに否定する邪魔者と認識し、あらゆる手段を以て排除する」

 

 ──しかし、何故失踪したのか。辻褄が合わない──

 ──失踪した原因は、Wから聞いたか──

 

「奴を知り尽くしているWさえもわからないと。それにそんな兆しは無かったとも言っていた。ボジョカスティとの会話がいい方向に作用していた筈なのにともな。考え得る可能性はあることにはあるが……」

「待ってください。監視カメラの映像はどうなっていたんですか? 少なくとも、何処かへ行ったなら記録の一つや二つ……それに、見た人だっている筈です」

「何一つ痕跡が残っていない。誰も見ていない。通常不可能だが、やると定めてやったのは明白だ。だからこうしてできている」

 

 ──……それは人間業じゃない……──

 ──できるとすれば、全て都合の良い要素が完璧に揃った時だけだな──

 

「……最悪の可能性、ということですね?」

「そうなる。だがボジョカスティに対しては色々と複雑なものが見えた。そして死者への敬意は忘れない男だ。最強の字を得る為だったとしても、ロドスが真にバベルの後継たるかを確かめにもくるだろう」

 

「──次に会う時は、確実に敵だろう。奴と言葉を交わすならば、全てを理解せずとも、共感できずとも、そういう道もあるとして、その上で自らの本音をぶつけろ」

 

 

 

 

「あら、あたしのことは言わなかったの?」

「どうせ言っても理解できん」

「それはそうね。……思えば、昔と同じね」

「活動を再開した時か」

「ええ。急にいなくなって置き手紙一つだけ」

「……ヴィクトリアにいると思うか」

「わからないわ。いるかもしれないし、いないかもしれない。でも普通に考えて、敵対組織の一員で、投降もしなかった奴をわざわざ拾う理由は無いわ」

 

「お前はどうする」

「もちろん、運命だから……と言いたいところだけど、あいつがあたしの他にターゲットを作ったってことがどうしても気に食わないのよね〜。だから、躾が必要だと思うの」

「どういう心境の変化だ? 有無を言わせず運命に殉じそうなものを」

「当然無理なら運命のままよ。これは真剣に向き合ってくれた爺さんへの手向け。相棒がまた一皮剥けそうなわけだし、そういう環境に身を置かせてもいいかなって」

 

「それにしても、どうしてかしら」

「理由は思い当たる。だがどうしてそうなったのかだけがわからない」

「あんたも? ……まあバカだし、なんかやったとか?」

「一体何をしたやら。連れ戻したらきっちり聞かねばな」

「どういう風にするつもり? 腐っても裏切り者よ」

「辞表がある、ということは奴は裏切ったということにはならん。転職したということだ。ならば再就職をさせてやろう。その方がお前も嬉しいだろう?」

「あら、あたしにちゃんと渡すのね。飼い主が誰かよくわかってるじゃないの」

「……やはりお前ではなくブレイズに渡すべきか」

「あは。ぶっ殺すわよ? あれは、あたしの。あたしだけの、花婿なの。あんたたち泥棒猫には絶対に渡さないわ」

 

 

 

 

「……望まれずして生まれた忌み子。名前も無ければ、価値も意味も無い。育てるべき人たちからすらも虐げられる……そして自分で自分を救ったなら……誰ももう、救うことなんてできない……」

 

「……私の知るGさんは、とても愉快な人でした。クロージャさんと勝手に物を作り、ワルファリンさんの小言から逃げ回り、酔ったブレイズさんに絡まれて蹴り飛ばし、Aceさんとグラスタワー作ったり、Scoutさんと肩を組みながらスツールに乗って艦内を爆走してLogosさんに自慢したり、ウィーディーさんと一緒に読書して考察し合ったり……暗い側面なんて欠片もなかった……」

 

 ──……なんて? ──

 ──結構楽しんでたんじゃないか──

 

「あんなに楽しそうに過ごしていた人が、かつての伝説的な殺戮者で、真っ当な生まれですらないなんて信じられないんです。私と接する時もそうでした。ただ先達として……だから例え同じ夢を見ていなくても、ロドスのことを居場所と認めているんじゃないかと、そう思ってたんです」

 

「でも違った。初めからそんなものではなかった。ずっと彼は……戦いの中にしか生きられない。背負った物や矜持故に、そうならざるを得なくなったということでもない──ただそういう人間だったから。……平穏の中で決して生きられない人を、どうするべきなんでしょうか」

 

 ──アーミヤが望むことを、押し付けるしかない──

 ──悩むことなんてない。正義と正義のぶつかり合いだ──

 

「ままなりませんね……どうして、世界とは悲劇ばかりなのでしょうか」

 

 

 

 

「こんなところで会うとはね。バベルにいたんじゃないの」

「いる理由が無くなり、去る理由が生まれた」

「ふぅん。まあいいわ。で、どうするわけ?」

「どうする、か」

 

「……待ちなさい。その目、まさか──」

 

「ヤツはヴィクトリアだな。ならオマエの首を土産にぶら下げていけば、あの男も本気でオレと殺し合うことになる」

「っ……あんた、遂に狂ったわけ? あの子も殺したの?」

「そんなものよりも、挑戦するべき原点が現れた。ならばそれを喰らい、原初の願望を叶えるだけだ」

 

「いるっていうの? 魔王が」

「ああ、いる。だから殺す」

「その為に、バベルから出てったって?」

「それだけではない、オレは自由になった」

 

「ふざけないで」

「オレはただ、挑戦するだけだ。最強という名の称号に」

 

「その果てに、この大地を灰燼に帰してみせよう。このオレを嘲笑う現実にも、いい加減飽きたのでな」

 

「そう──ならその根性、叩き直してやるわ。"ジェヴォーダンの獣"」

「損得抜きでオレに挑むというのか。後衛に過ぎず、ヤツも部下もいないオマエが、このオレとやり合って勝てるつもりか」

「ええ。戻りたてのあんたなら、私だけでも勝機はある」

「ふっ……何の損得もあるまいに、こんなところで命を賭けるとはな。そんなバカとは思わなかったが」

「あんたが私たちの邪魔になる可能性が高いからよ」

「それだけか?」

 

「本音を言うとね、あんたたちが納得していても、多少情に絆されてるところがあるにしても──同じ釜の飯を食った仲間を殺した奴を、一度でいいからぶん殴ってやりたかったのよ。あたしだけでなく、あの人もね」

「……仇討ちとはな。いいだろう、あの日の続きと行くか──傭兵ェッ!!」

 

 

 

 

「……逃げられた、か」

 

「確かに、最初から『勝機はある』『殴りたい』としか言ってなかった。その気になっていたオレの方が阿呆だったな」

 

「そうか……クッ、ククク……楽しみが増えたな……」

 

「……さてどうしたものか。考え無しに出てきて、考え無しにカズデル近郊を彷徨いてただけだからな……まずヴィクトリアへの侵入方法を探るか。ヤツが入れるなら、オレも入れる」

 

「そうだな。原点を越えたなら、次はサルカズそのものへと挑むとしよう。どうせアイツも、そこにいる」

 

「だがその前に、禍根を消し去らねば」




Gくん
失踪した。理由は不明

ケルシー先生
失踪した阿呆に頭を悩ますついでに正体を教えた

W姉貴
相棒の奇行の理由が浮かばないけどターゲットできたろうから自分に釘付けにする為に全力を尽くす乙女

アーミヤCEO
ドクターが目覚めるまではGくんと信頼関係が割とあった人
悪い人ではなかった為、正体が最悪の殺戮者と言われて割と困惑中

ドクター
パト爺とノヴァネキを無駄死と断じられて怒った人
しかしGくんはその無駄死こそ素晴らしいと思うからタチ悪い
多分ずっと仲良くやれない

太ももの人
諸々に配慮してこの表現。まあみんなわかってるよね?
あれこれ言ってたけど愚行に不満が爆発。殴りかかった


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憧禊天傷/最強の伝説

許せサスケ、これで本当に最後だなので初投稿です。

あ、別に10章のネタバレとか無くなりました。
安心して見てください


 感情も無く、しがらみも無い。ただ挑戦すると定めたから、光を掴み取る。その先がどうであろうと、そう生きて、そう死ぬ為に。

 過ちに気付いても止まることはない。他の道が見えても変えることはない。失敗しても諦めることはない。挫折も妥協もできなければ、自暴自棄も煩悶もできない。一度定めたら"そう"なのだ。

 奈落の底で産声を上げた怪物。

 死へと疾走する生を是とし、この世を薪として燃えろ燃えろと贄を捧げる。

 やがて灰となる運命だとしても、彼は喜んで挑戦する。最強という名の称号へと。

 

 進撃し、撃滅する。自らに課した宿命のままに───

 

「この時を待っていたぞ。あの日見た、伝説の中の伝説に挑む時を。"最強の魔王"に挑戦するその時を」

 

 薄っぺらい男が、そこにいた。

 ひどく空虚で矛盾だらけ。現実に居場所が無い、そんな存在。

 影法師──そんな言葉がピタリと当て嵌まる。かつて見た黒蛇の方がまだ奥行きがあった。だがこの男にそんなものはない。

 

「あの炎、見間違えるはずもない。あの鎧、見間違えるはずもない。蒼き炎を傍に連れ歩く黒い鎧を、このオレが間違えることなどあり得ない。誰の為でもなく、オレはオレの為に此処にいる!」

 

 "そう"死ぬという結論だけが存在し、"そう"生きるという過程が抜け落ちている。

 確かに過去を紐解けば序章がある。しかし序章とは起承転結の最も大切な部分である。それが『憧れたから殺し始めた』という一文で締め括られて良いものか。それは結だ。起ではない。

 もっと言えば、かつてバベルに属していたことも、ロドスに属していたことも、サルカズ傭兵団の一員として戦ったことも、堕天使と旅をしたことも、Wと過ごしていたことも、何もかもが彼の中では燃料として焚べられてしまっている。

 故に彼にあるのは、起と結のみ。

 

「オマエは既に"魔王"だ。オレが挑むべき、最強の存在だ。"魔王"ならば受けてもらおう、この挑戦状を! 背を向けるとは言わせんぞ!」

 

 故にアーミヤは、まず言葉を交わしてみようとした己の浅はかさを恥じた。

 一眼見てわかった。

 かつての苦悩し感情をガツンと見せる姿の方が人間的だった。

 しかし今、アーミヤの目の前にいる者は──"何"だ? 

 

「記号に用はありません──目障りだと、言っているんです」

 

 そうだ、記号だ。

 ジェヴォーダンの獣という、突然この現実に現れた頂点捕食者という名の、記号だ。

 

「己を表現する称号は、やがて己自身を塗り潰す。それが一夜限りの悪夢なら許されるとしても、恐るべき妖魔羅刹と成り果てれば、個我はその身に纏う闇で覆い尽くされる……」

 

 だからこそ、アーミヤはその闇を暴く。

 今まで誰も見ることが叶わなかった、一人の男と向き合う為に。

 

「だから答えてみてください。あなたの名前は何ですか」

 

 凛として、魔王ならざる一人の感染者として。

 一切の虚偽も許さぬと鋭く視線で射貫きながら、彼女は告げた。

 

「"ジェヴォーダンの獣"という代名詞でもなく、最強無敵の殺戮者という偶像でもない! あなた自身は、一体何処にいるのですか──!!」

 

「知らん」

 

 その溢れんばかりの怒気を込めた問い掛けは、淡々とした即答と共に叩き斬られた。無表情のまま、変わらぬ姿で薄っぺらな男は続ける。

 

「確かに──とモスティマが呼ぶ──という名称はある。が、それはオレ自身を表現する単語ではない。オマエもわかっているだろう。アレはあくまでも、名前の無い者同士が利便性の為に与え合った呼び名であり、面倒だからと名乗っていただけだ。オマエの求める答えではない」

 

 まず──という呼び名は、あくまでも呼び名。個体識別名称程度の話であり、そのものを表す名前ではない。

 

「Gという名前はオレの物だが、元々は偉大なる先駆者のものだ。よってオマエの答えにはなり得ない。"ジェヴォーダンの獣"さえ、好き勝手にやっていた頃、人様から呼ばれた識別名だ。これもオマエの求める答えではない」

 

 次に出す名前はG。しかしこれは他者を喰らい同化したことで得た名前。よって後継者たるを示す物であるとしても特定個人を示す名前としては前任者の物だ。ジェヴォーダンの獣は異名であり、彼個人というよりも最悪の殺戮者を示す名前だ。

 

「故にオレ自身は何処にいると問われた時、こう返そう。目の前にいるヤツがそうじゃないか、とな」

 

 だからこそ、彼は声高らかに宣言する。

 オレ自身は此処にいる。名前などいらない、過去などいらない。今此処にある全てがこのオレだ、と。

 

「もっとも、そんなものを問うたところで何もならない。オレが抱く願望と憧憬はただ一つ。最強となり、魔王さえも超え、現実をも踏み躙る。その為だけに生きて死ぬ。オレの一般的な定義など、オレが死んだ後にでも勝手にやってろ」

 

 だからこそ、くだらん定義などするつもりはない。そんなものは部外者が勝手にやっていろ──実にシンプルな答えであった。

 故に知らんと切り捨てた。

 

 言葉が詰まる、そして後ずさった。

 しかしそれは恐怖ではなく、嫌悪感から。眼前の男という絵に描いたような超人の薄っぺらな答えを前に吐き気が止まらない。

 求めるものは活動する理想図という異形。それは完全に子供の妄想。絵本から気に入った人物だけを鋏で切り抜き、現実へ糊付けしたかのような存在。

 

 まさに伝説の魔王そのもの。

 

 だから現実的な事を尋ねただけで"そう"なのだ。

 Gを喰らったならばその男を指し示す言葉はGなのだ。後継者だとか前任者だとかではない。その男こそGに他ならないのだ。

 だというのにこうやって悉くを否として、今にのみ存在する己こそ己を定義するのだとして過去を拒絶する。

 

 己の理想とは、そんな俗事に縛られぬ崇高なる答えだからこそ、と。

 

 ……自走するものは急に止まれない。

 もし仮に平然と止まれるものがいるとすれば、そのものにとって走っていた理由とは、どうでもいい理由なのだろう。

 裏返せば、あっさり捨てられるということだから。

 

 眼前の男の場合、何故ここにいる、という問いに対して「オマエたちと過ごした時間や経験が、自分に新たな選択を与えた。しかし自分は最初の願いを裏切れない。故にその未練を断つ」とでも言えば、まさに最強の存在だったろう。

 されども、この男はそれらをあっさり捨てられなかったのにも関わらず、さもあっさり捨てたように振る舞っている。

 

「……ダメですね、これは。()()()()()

「何?」

「言い直しましょう、がっかりしました。論じる価値も意味もありません。ただ面倒なだけです」

 

 ああ、つまり、この男は今そうしていることで、己の真なる欲求たる最強への挑戦を無碍にしているのだ。

 それでもと最強を目指すのではなく、それ故に最強を目指しているのだから、その道を外れることは許されない故に重い過去を軽く捨てたフリをしているだけの存在。

 

 かの愛国者が只人として示した、無敵の存在というものから限りなく遠い存在。現実に存在する確かな理由を原動力に、幻想の怪物の如き力を発揮する存在ではない。ただひたすらに現実逃避の末に生まれた幻想の魔物だ。

 

 俗事に縛られてなお崇高な答えならばまだしも、俗事に縛られぬが故に崇高など──俗事に縛られない物事など無い。

 この男はもう、致命的に矛盾しているのだ。結局、現実を打ち破るだなんだの言いながら、認めたくない影を振り返る事なく、永遠に焼かれた光を追い求める事で自らの理想から外れてなお足掻く大人になることをやめているのだ。

 

「オマエ如きがオレの何を解しているという。──でも、モスティマでも、ケルシーでもないオマエが」

「は、はははは……ハハハハ、ハハハ──ッ!!」

 

 故に笑った。

 生涯最高の侮辱と、その光に焼かれてしまった過去への哀れみを込めて。

 

「何がおかしい……!」

「ははっ、く──こういうのって、知らない内が花なんでしょうね。まるでサンタクロースの正体を知った子供の気分ですよ……本当に」

 

 笑いと嫌悪で腹が捩れそうだ。

 目の前の偶像足らんとする男と、そしてそんな男に手を差し伸べた多くの人たちが察した真実に、溜め息が吐きたくて仕方ない。

 

「何を知っている? ではこう答えましょう。あなたの事なんて何も知りません。知らないから知ろうと努力してました。そして今、この問答で知れました。あなたがあまりにも──脆くて、矛盾だらけで、つまらない存在だということに」

 

 凄まじく子供だが、子供なりに努力して現実に折り合いをつけて、理想を目指す存在──それが中身だった。

 しかし様々な事実を得るにつれ、その事実の重みに耐えられず、かつて見た最強という名の光に縋り付いているだけの、どうしようもない馬鹿だ。

 それでいて、夢に向かって邁進することに関しては本物だから余計タチが悪い。この男はそういうものだ、と知っていればそれを受け入れて殺すしかできないだろう。

 だが、彼女は違う。

 

「これではパトリオットさんが報われません。こんな相手の為に時間を割いたなんて、まるで馬鹿みたいじゃないですか……」

 

 殺意すら向けられているにも関わらず、アーミヤはどこまでも投げやりに、そして感情を向けられていることすら億劫に、何一つとして伝わっていなかったのだと心から落胆の意を表した。

 

 過去、他人の心の中に土足で入り込む力を持っているが故に、善意のままに人間の触れてはならない部分や、指摘してはならない点を指摘してしまっていた。

 その度に触れられた者は、そんな力に頼るならばと怒りを露わにしてきた。理想や善意を押し付けるな、情報だけで相手を理解したつもりになるなと。

 

 しかしこれはそれとは違う。

 相手に本気で落胆し、本気で失望して、本気で吐き捨てている。

 

「オマエのような小娘が、あの男の名を口にするな」

「──もうたくさんです、まったく」

 

 だがそれはほんの少しでも期待していたことの裏返し。もしも、かつてのことを憶えているならば自分の問いに哲学的に返していただろうに──どうしてそう愚かになることを盲目的に選んでしまったのか。

 

 テラの大地で生きとし生ける者全てと交わらぬ怪物。過去も無く、未来も無く、今も無く、結末しかない悍ましい存在。

 そんな人間味の乖離した偶像となり、つまらないままつまらないように死ぬことを望む男。

 

 アーミヤ個人としては、こんな男勝手に死んでしまえと思っている。

 向けられる善意にも悪意にも応えることなく、偶像足らんとする愚か者。

 痛みを直視し受け入れる──それができない環境ならまだしも、できる環境でやらなかった挙句、それをしないことが最強の由縁などと言われれば勝手に死んでいろとしか思えない。

 

 だが。

 

 それでも。

 

「……これでもあの一件より前は、あなたのことを尊敬していたんですよ、"先生"」

 

 この男にも生きて欲しいと願っているのもまた事実なのだから。

 だからせめて──現実に引き戻すくらいはしなければならない。そう思って結論付けた者として、やらねばならない。

 誰もが諦めていた『引き戻す』という事を、自分しかできないのだから。

 

「何を言うかと思えば──オマエもそう呼ぶのか、"魔王"」

 

 そして引き戻して荷を背負わせ、彼の周りの人間たちが望んだ、「それでも」と目指すことには目指すが現実という痛みを受け入れる存在にする。

 それこそ真なる最強の存在なのだから。誰も最強を目指すこと自体は否定していないのだから。

 

「あなたを撃ち破ります──あなたの夢見た魔王ではなく、ただひとりの感染者として。一度でも完全に幻想と成り下がれば、あなたはもう……後戻りできなくなる!」

「ほざけ、オレはそれを望んでいる! オレが望んだ最強という名の称号は、オレの生きる意味とは、そこにしかないのだからな!」

 

 

 ───

 

 

 何が現実(苦痛)で───何が妄想(理想)か? 

 それを確かめる術はただ一つ……

 

 (オレ)は何を見た? ……何を信じる? 

 始める為には、終わらせねばならぬ……

 

 存在を赦されるのは、(ジェヴォーダンの獣)か、(オレ)か……ただ独り……

 

 それは現実に起きたことか? ……それとも、(オレ)がそう信じることか? 

 

 

 

 

 ──見てしまった。

 

 "繋げてしまった"影響だろうか? 

 学術的な見解は全く無い。しかし、原因があるとすればそれだけだ。普段と違うことはアレしかなかったのだから。

 コチラ側がひと段落着いた時のことだ。頭痛と共に見えたモノ……

 

 その右腕を覆う、漆黒の鎧。

 そして蒼光を揺らめかせる、漆黒の剣。

 

 "アレ"が何なのか、その意味をわかる者はこのロドスの中でも極めて限られる。

 それは古代サルカズの歴史に詳しい学者や、生き証人の類。Logosやケルシーのような、長生きばかりだ。

 

 そしてもう一つ──伝説を読み漁る程の、物好きくらいか。

 

 オレはその輝きを知っている。

 オレはその輝きに魅せられたのだから。

 数え切れない程読み返した伝説の一説──それが現実に降りて来た。

 

 ……最も忌々しいコータスに重なることで、という時点で唾棄すべきところだが、現実とは常に冷や水をブチかけてきやがる。

 オレが見つけた魔王の影を背負って、オレが出会った魔王の力を受け継いでいるという、このオレの夢をブチ壊しやがった。

 

 きっと遺志を継いだだけで、力はアレ個人のモノだろうと考えていたが……どうやらアレは、既に魔王だったようだ。

 

 歓喜と羨望が混沌として心底より芽生える。

 まさに福音。

 オレを祝福し呪うソレは、オレの道を決定付けた。

 

 ……ボジョカスティの爺サマは、オレが元鞘に収まったと表現した。

 アレは、Wの下へ帰ったという意味だったろうが、もはや事ここに至っては真の回帰を意味する。そういう意味でボジョカスティの爺サマへの裏切りとなるだろう。きっとあの爺サマは、オレに修羅道を歩む意味を考えさせ、そして自らの意志で立ち止まることを望んでいたのだろうから。

 しかしそうはならなかった。爺サマは、最後の最後でオレの馬鹿さを見誤ってしまった。例え予想不可能であっても、見誤ったという表現以外に相応しいものはない。申し訳なさが無い訳では無いが、その程度。

 心惹かれる程度では、オレが止まる理由にはなり得ない。

 

 オレは、かつてなると定めた故になったのだ、無敵の存在に……最強の存在に。

 それは挑戦だった。かつての伝説をオレは超えられるのかという、オレが夢見た伝説の魔王を、現実のソレとして実現させられるのかという究極の目標だった。

 

 そして今──忌々しい存在が、真なる魔王より引き継がれた力を以て新たなる魔王として再誕した。

 ならば……オレはこのGという傭兵の、偉大な先駆者のレプリカであるということを、辞めなければならない。いやそもそも、もはや傭兵ですらなくなったオレは、傭兵Gの死骸を被る存在でしかなかったのだ。あれこれと理由を付けて自らに貸した役割すら捨てていたのだ。なんと愚かしい。どっち付かずの半端者……傭兵Gでもなければ、ロドスの一員でもない。どちらにもなりきれない塵屑。

 そんなザマではテレジアも、ケルシーも、ヘドリーも、イネスも、Gも、モスティマも、──も、血が繋がってるだけの汚物たちでさえも、オレをこう表現するだろう。

 

「蛆が沸いて蠅の集る腐肉」と。

 

 それを以て、人として生まれかかっていたなどと表現できるかもしれない。悩み、苦しみ、傷付き、それでもなお生きる現実の存在として。

 

 だが、そんなものはオレの望みではない。

 オレはそんなつまらないものになる為に生きているのではない。

 そんなもので終わることは許されない。既に──という人生最大の汚点があるのだ。ならば、それ以上増やすことはあり得ない。

 

 故に──

 

 オレは、名も無きブラッドブルードとして再びこの世に蘇る。

 この死骸を喰らい尽くし、華々しく再誕する。

 オレを縛る存在たち、オレの夢を覚ませようとした存在たち……そしてGよ。これでさらばだ。

 我が身を縛る鎖は全て断ち切り、オレは自由という名の不自由を行使する。この素晴らしき暗闇の荒野を歩いていく。

 

 目標が現れた。かつて達成すると決めた。ならばそうする。立場も、あらゆる手段を使って捨てる。

 世界の全てが敵だ。この命が続く限り挑戦し、全て殺す。そしてオレが最強たるを証明する。

 現実に在りながら幻想の夢を見て、幻想に在りながら現実の敵を殺す。そして幻想を現実に刻み付け、現実こそを幻想と成す。

 

 こう生きて、そう死ぬ。

 ならばそうなる。

 

 オレに名は無い。

 オレは何者でも無い。

 

 最強を目指す求道者。

 魔王に挑戦する簒奪者。

 ただのそれだけ。

 

 待っていろ、"魔王"。

 待っていろ、──。

 

 オレが、キサマらを。

 

 喰い殺す。

 

 

 ───

 

「……お前さ、命名イベントやった?」

「? 命名イベントってあれだろ? 名無しキャラが名前を得るイベントだろ? あれでこいつはGって名前を───」

「違うって!! 最初の名前入力の名前が与えられるんだよ!! お前どうしたんだよあれ」

「入力速度考慮して名前入れてねぇよ」

 

「なあ上手くいってないのそれが原因じゃね? 名前が無いってことは存在が無いってことだからさ」

「あ゛」

「明確に個人を定義する名前だって自覚するような選択肢とか選んだ?」

「するわけねぇだろそんなもん。ロスだロス」

 

「つーか名前程度無くたってこのゲームちゃんと動作するしキャラが動くしで問題ねーだろ。全員に勝てば!」

「そういう思考がどーして記録に繋がってないってわからんかね……?」




というわけでこれで本当に完結でございます。
長らくお付き合い頂きありがとうございました。

……いやまあ、読者の方々も薄々とは勘づいていらっしゃるでしょうが、蛇足なのは否めないですよね。大人しく切り上げておけばよかったものを……思いついた時に10章のシナリオ翻訳読んじゃったから……!!! 俺の愚か者め!!
だからこうやって四苦八苦しながら光の中に無理矢理完結させる物語になったんだろうが!
見切り発射ダメ、絶対!

でもやっぱりこのアホとアホを書くのは楽しかったです。

今後RTA的小説書くはわかりません。
ですが何処かで、またお目に掛かれれば幸いです。

本当に、本当にありがとうございました。


・"ジェヴォーダンの獣"
攻撃方法:近距離
耐久:B
攻撃力:C
防御力:C
術耐性:C

かつて最強の名を欲しいがままにした、伝説の殺戮者たる名も無きブラッドブルード。研ぎ澄まされた刃であった頃と比べれば、その斬れ味は見る影も無いだろう。
それでもなお、たった一つの運命とたった一つの宿命以外、彼と対等に戦える者は存在しない。


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