コナン短編集 (さくい)
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工藤家の末っ子よ、○○を抱け

 ○月→日<曜日

 

 世間では日本警察の救世主だとか、東の高校生探偵だとか言われている敬愛すべき我が兄の工藤新一。その兄が、幼馴染である毛利蘭さんの都大会優勝の記念にトロピカルランドでデートしたのが数日前。

 

 未だに兄が帰ってこないのはどういう事なのか。

 

 とある筋から入手した情報によると、万年推理オタクの我がバカ兄は折角の幼馴染とのデートをすっぽかして突如何処かへと走り出して居なくなったという。

 そしてその日の夜、我が家に隣に住んでいる阿笠氏の遠縁の男の子が来てその子は工藤家を見学。我が兄を探しに来た蘭さんが、その子を家で面倒みる事になったという。

 

 なんて事だ。

 

 家の住人である私に事の一切を知らされる事なく、この一件は始まって終わっていた。

 

 流石の私も驚愕を禁じ得ない。

 いくら私が寝ていたからといっても、それはあんまりではないでしょうか。

 

 何故その家の住人に話を通す事なく勝手に決めているのか、遺憾の意を表明したいところである。

 そもそも、不法侵入なんですがそれは……。

 ついでに言えば、お父さんの眼鏡と我が兄の幼少期の頃の一張羅が無くなっている事も加味すれば強盗罪も……? 

 

 ところで、何故その男の子は我が家に来ていたのでしょうか、というか江戸川という名字の知り合いっていましたっけ……? 

 

 ……まあ、その事は良い。いや、良くないけど終わった事だからつべこべ言う事は止めよう。

 どうせ私が使う物じゃないし。

 もし、私が使っている物だったら裁判を辞さない所存。

 

 それで私が気になっているのが一つ。

 

 蘭さんに引き取られたという男の子。

 江戸川コナンだとかいう小学一年生くらいの男の子らしいが、我が敬愛(笑)する兄の小学生の頃に似過ぎてやいないでしょうか。

 しっかり確かめようとしてメガネを取ろうとしたら、拒否されて確認は出来なかったから何とも言えないけども。あれ、この眼鏡見覚えあるような……。

 

 ただ、蘭さんに抱きしめられた時に男子高校生の様なえっちぃ表情になった事はこの私が見逃しません。流石に小学一年生にして女体に興味を抱くのは些か早いと思います。

 

 我が兄でさえ女体に興味を抱き始めたのは小学四年生の頃、しかも実の妹である私の胸をチラ見したのが最初でしたからね。

 

 もしかしたら蘭さんの無防備な肢体を楽しみたいが為に兄がちっちゃくなって、毛利家に転がり込んだ可能性もない訳ではなかったりしない訳でもない訳でして。

 だからこそ現実的に有り得ない、工藤新一が江戸川コナンになった。所謂幼児化をしたのではないか、という疑問が尽きないのです。

 

 それに頭のネジが飛んでるんじゃないかという我が兄でも、流石に一言も何も言わずに数日間家に帰ってこないのはおかしいです。

 

 そんな訳で私は両親にその旨を報告した後、両親の勧めによって我が愚兄が帰って来るまでの間阿笠氏の家に居候する事になりました。

 流石に一軒家とはいえ、女の一人暮らしは不安な様でしてその指示に従った次第です。

 

 

 

 

 ×月=日

 我が兄に似て将来が心配な江戸川コナン君と顔見知りになってから暫く経ったある大雨の日のことです。

 

 阿笠氏の家に居候している私は、ふと父が本棚の後ろに隠してあるベーコンレタスな本を読みたくなり家に戻ろうとしたのです。

 

 そうしたらなんと驚き慄き、成人が着るであろう大きさの白衣を纏った小学一年生くらいの女の子が我が家の門前で倒れていたのです。

 

 とりあえず博士にヘルプ要請を出したところ、どういうわけか阿笠邸で一先ず看病する事に。

 普通こういうのって警察とかに連絡する物じゃないんでしょうか? 

 と思うも、今の私は阿笠氏に居候させてもらっている身なのであまり口出しはしません。

 ええ、一線を越えなければ私は何もしませんとも。

 

 女の子を心配に思いながらも、Bレタスな本を読みたい欲求に猛烈に駆られていた私は後ろ髪引かれる思いで父の書斎を漁りました。

 

 そして、気が付けば夜が明けて驚きつつ急いで阿笠邸に戻ると氏がとんでもない事を言ってのけました。

 

「この子は灰原哀といってな、儂の知り合いの子なんじゃがどうやら家出してきたらしいんじゃ。で、連絡したところ、暫く世話してもらえんかと言う事でな、面倒見る事になった」

 

 ほう、で本当のところは? 

 

 と聞きたい欲求を堪えつつ女の子の方を見ると、至って冷静というか、子供にあるまじき落ち着き様と偶に見掛けるサラリーマンさんの様な色々と疲れた目をしていらっしゃいました。

 

 そんな年齢で何を経験したらそうなるのかと、思った私の脳裏にふと成人が着るような白衣を纏っていた事が思い出されました。

 

 もしや、我が崇拝(笑)する我が兄(暫定)の幼児化形態の江戸川コナンくんみたいに、この人も幼児化している? 

 おお神よなんて事でしょう。この世はいつの間にか人がポコポコと幼児化する世界になってしまった様です。

 

 なんて冗談もさておきまして、本人も本当に納得してるし寧ろ今此処で追い出されたら行く当ても無さそうな雰囲気なので賛成しました。

 

 実は私妹がほしかったんですよね〜! 

 というわけで、今日から私がお姉ちゃんです! よろしくね哀ちゃん! 

 

 

 *月+日

 私に哀ちゃんというクールで可愛い妹が出来て幾星霜。

 妹がおっきくなりました。ついでに我が愛する馬鹿兄も帰ってきました。

 

 ……まさか本当に江戸川コナンくんが我が兄だったとは、ついでに言えば妹の哀ちゃんは私より年上だったという現実。

 

 しかも、長期出張していた両親は事の次第を認知していた模様。どういう事か根掘り葉掘り聞きだしました。

 

 どうも工藤家で私1人が除け者になっていたらしいのです。 

 なので、蘭さんに江戸川コナンくんが実は馬鹿兄だという事を伝えるととんでもない事を言い放ちました。

 

「小さくなってまで私と一緒にいたいだなんて新一も可愛いところあるじゃない」

 

 ぇぇ、マジかよマジですかマジなんですかぁ……? 

 兄も大概だと思っていましたが、この人も大概です。ヤヴァイ。

 

 まあ2人が幸せならそれで良いんじゃないのと少しずつ距離を置きながら思う私でした。

 

 で、哀ちゃんならぬ志保ちゃん。

 年上の妹という新ジャンルの扉を開けた罰として、時々以前と同じ様にお姉ちゃん風を吹かせています。

 志保ちゃんも満更でもなさそうなのでwin-winです。

 



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