あの日見た夢の意味を俺はまだ知らない (tossi104)
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あの日見た夢の意味を俺はまだ知らない

 空は白く、回りは西洋風な住宅。どれだけ歩いても、景色が変わることはない。人どころか虫も植物もない。

あるのはただひたすら続く同じ住宅街と石畳の道、雲はでていないがなぜか真っ白な空。

 

 気がつくとおれはそんな場所にいた。何故そんな場所にいたのか、何故か疑問を持たなかった。さも以前からその空間にいるかのようだった、

 でも今思えば、疑問しかなかった。あんな空間、見たことも聞いたこともない。

 

でも確かに俺は、そこにいたのだ。

 

 

 

 

 

 しばらく歩いていると人を見つけた。石畳の真ん中で突っ立っている。

あれは同じクラスの中村君じゃないか?

 

「おーい。こたろう!」

 

返事がない。聞こえてないのだろうか。

もう一度声をかけようとするとスッと中村が横を向いた。何かを見ているようだ。

しばらくすると一人の女の子が中村に小走りで向かってくる。

小学生くらいだろうか。膝までの真っ白なワンピースを着て麦わら帽子を被っているかわいらしい女の子。

だが、彼女の首からは明らかに大きさのあっていないボストンバッグが下げられていた。

女の子と同じぐらいの大きさのボストンバッグ、形からして中にはそこそこら満載に何かが詰め込まれている。

 

中村と少女は何かをしゃべった後仲良く手を繋ぎ出した。

 

「あいつにロリコンの趣味なんてあったかな?それとも知り合いか?まさかなw」

 

そんなことを呟きながら2人に近づこうと歩を進めると少女を見ていた中村の顔が急に青ざめ始めた。みるみる体が震えだしどんどん表情を歪めていき、ついには少女の手を振りほどこうともがきはじめだした。しかしどれだけブンッブンッと手を振っても、少女の手は一向に離れない。

麦わら帽の少女はひたすらもがく中村に対し微動だにせず、ただひたすら笑みを浮かべるだけだった。

 

中村の様子がおかしくなってどれほど経っただろうか。

おそらく10秒もなかったと思う。

直後少女のボストンバックが爆発し中村を粉々に吹き飛ばした。手や足を撒き散らし、足元の石畳やレンガ造りの家は飛び散った血で赤く塗装された。

 

「え?」

 

おれには何が起きたのか理解できなかった。突如現れた友人が突如現れた麦わら帽子の少女の手によって突如爆殺されたのだ。

そして次の瞬間には中村だった物が目の前から消えた。

道に撒かれた肉片も、壁を染め上げた血も全てが消滅したのだ。

 

状況を把握しきれず目を白黒していると、後ろから視線を感じた。誰かから背中からナイフで刺されているような、そんな視線を感じたのだ。

 

まさか、おれにもあの麦わら帽の嬢ちゃんが来るんじゃ…まさかな。

 

そんなことを考えながら後ろを振り替えると、立っていた。

道の真ん中で、頭には麦わらの帽子を被り、肩からは体の大きさにあっておらず中には大量の何かが入っているボストンバックを下げ、満面の笑みでこちらを見つめる、ついさっき中村を殺した少女が。

 

おれもあいつと同じように殺される…

 

全速力でその場から走り出した。

ひたすらあの爆弾少女から逃げるために。

 

ふと振り替えるとあの少女もこちらを追うように追いかけてきた。

 

「待ってよー、お兄ちゃん!いっしょに遊ぼうよー!」

 

冗談じゃない。どうせおれも爆殺するつもりなのだろう。今はただ走って奴から逃げるだけだ。

 

だがどれだけ走ってもあの少女との距離は縮まらない。どころか少しづつこちらに近づきつつある。

 

どうなってる!?確かにおれは運動に自信がある訳じゃないが、あんな重そうなボストンバックを引っ提げたちっこいガキに負けるほどではないはずだ。

 

後ろから迫る危機とどれだけ走っても変わることはない景色が、余計に恐怖を煽りだんだんと冷静でいられなくなっていく。路地を曲がって出た先も、そこは曲がる前と変わらない景色なのだ。

 

クソッ。教えてくれ、誰か。おれは後どれだけ走ればいい…

 

いい加減息もきれ、速度も落ちていく。

そんな時、変わることがない住宅のなかの一軒の玄関が開いた。おれは迷うことなくそこを目指した。

 とりあえず中に入り戸を閉め鍵を閉める。扉を爆発しないとも限らないのでとりあえず奥へ行くとしよう。 

 床にはオレンジのカーペットが敷かれており、壁にはロウソクがたててあった。先に進むと階段があったので2階にあがってみた。

 

ここまでくれば奴も追ってはこないだろう。入ってきても音で気づくだろうから疲れたし少し休憩しよう。

 そう思い近くにあった椅子に腰をかけようとすると

 

目の前のガラスが粉々に砕け、窓の向こうからてが延びてきた。

 

「見つけた、お兄ちゃん!」

 

「嘘だろ!」

 

やつは玄関からではなくどうやってか壁をよじ登ってここまできたのだ。

 

「あんなに重そうなっ!ボストンバックでっ!」

 

 よく登ってこれたものである。

 とりあえずもと来た道を引き返す。途中部屋を仕切る扉は近くにあった棚や机で塞ぐ。階段を数段飛ばしで降り、なんとか玄関までたどり着くと上の方から何かを吹き飛ばし破壊する音が聞こえた。

バリケードが突破されたのだ。やつはすぐにでも追ってくる。急がねば。

 ドアのロックを解除し外へでると、そこはさっきまでの洋風住宅街とはまったく異なるコンクリートで作られた洋館やビルの廃墟が立ち並んでいた。

 だがそんなことを気にする余裕はなくおれはまた走りだした。

 

そしていつのまにか廃墟の1つに入り込んでいた。後ろを振り向いても奴はいないし、耳を済ましても足音はしない。

 ようやく逃げきれた。あの恐怖から。そう思うと足の力が急に抜けてきたのでとりあえず近くのコンクリートの柱に体を預け座り込んだ。この柱に「4」と白く書かれていた。辺りを見渡すと似たような柱がいくつもあり、それぞれ数字が書かれていた。

足元を見渡すと白い線が何本もしかれており、おそらくここは駐車場なのだろう。そう思った。

 

「捕まえたっ!遊ぼ!お兄ちゃん!」

 

 は?

 

 唐突だった。気がついたら目の前に白いワンピースを着て麦わら帽子を被り、肩からボストンバックをさげた少女が笑いなが俺の服の袖を引っ張っていた。

 そして目の前が一瞬にして真っ白に染まり、目の前には見覚えのある天井が広がっていた。耳元では目覚まし時計がけたたましいサイレンを鳴らしていた。

 

「ゆ、夢?」

 

 とりあえず起き上がる。辺りを見回しても麦わら帽子の少女はおらず、見慣れた勉強机に棚の上に並んだプラモデルの戦闘機。木漏れ日の入るカーテンを開けるといつもの、日本家屋が立ち並ぶ景色が広がっていた。

 

「頭痛い…」

 

 制服に着替えパンをかじり学校に行く準備をする。

 以前新聞かなにかで見かけたが、夢とは自分が見たものや食べた物、会ったことのある人が出てくるものらしい。

 だが、今朝のような摩訶不思議な夢はなんなのだろう。あんな洋風住宅街や廃墟なんて見たことないし、あの少女も知らない。

 大昔、古代ギリシャとかでは夢は神からのお告げだと信じられていたと聞いたことがある。じゃああれは神からのお告げ?そんなわけあるか。馬鹿馬鹿しい。

 

「今日も帰りにあかねちゃんと何処か行くの?」

 

「その予定だけど」

 

「仲のいいカップルだこと」

 

「うるせぇ。行ってきまーす」

 

 あかねとは同じクラスメイトであり俺の彼女でもある。たまにうちに遊びにくるので母さんとも面識があるのだ。

 

 

 

 

 

放課後

 

「なんて夢を見たんだよ」

 

「へ~。麦わら帽子を被った爆弾少女に追いかけられる夢ねぇw」

 

「まじなんだよ?信じろよ」

 

 俺は学校帰りにあかねとよくくる喫茶店でコーヒーとケーキをつつきながら俺が見た夢の話をしていた。

 

「いやいや、嘘だとは思ってないよw?でもあまりにも突拍子抜けた話だったからw」

 

「うわめっちゃ笑いよるやん」

 

あかねとはいつもこんな感じである。よく笑ってくるが、笑う顔がとても素敵なのでつい怒れなくなる。

 

「あーおもしろw。久しぶりに大笑いしちゃったお腹痛い」

 

「あかねはいつも笑ってるだろ?」

 

「えー、そう?」

 

 まったく。あきれつつケーキを口に運んでいく。

 

「ねぇ?」

 

「うん、どうした?」

 

「あれ同じクラスの中村君じゃない?」

 

「あ、ほんとだ。あいつもここによくくるのかなぁ」

 

 振り替えると後ろのレジの列に中村が並んでいた。

 

「よぉこたろう。お前もここよくくるのか?」

 

「誰かと思えばうちのクラスのラブラブカップルじゃないか。いや僕ねー?雑誌でたまたま見かけたここのケーキがおいしそうだったから試しに足を運んだんだ」

 

「ラブラブだなんて///」

 

「お、おう。」

 

「じゃぁお二人はごゆっくr うわっ!急に走って列に割り込まないでよ。倫理観ないな~」

 

 突然、ボストンバッグを抱えた黒ずくめの男が中村にぶつかった。

 

 え、中村?ボストンバッグ?あ…

 

次の展開は用意に想像がついた。だから俺はあかねの方を向いて両手を広げ彼女を包むように立ちふさがった。

 

直後、背中の方からものすごい圧を受け、おれの意識はどこか遠くへ、旅立っていった。



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