呪霊操術を使っていたら嫌われた件について (久生蟷螂)
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始まり。過去篇。

 幼い頃から俺は他の人達には見えない異形なモノたちの姿を見る事が出来た。それらはとてもではないがどれ一つとしてまともな形をしていなかった。蝙蝠の胴体に蜂の頭を取り付けた様なモノがいれば、ス○パ○マ○オに登場するク○ボーとノ○ノ○が合体した様なモノもいる。皆異様な姿をしていた。しかも奴らは俺が見ている事に気づいているのか、いつも俺の方に視線を向けて汚らしい笑みを浮かべていた。当時、幼稚園児でまだ物心が付いていなかった俺はそれらが幼稚園の先生からよく聞かされた御伽噺に登場する化け物の類だと思い、とても怖くて怖くて夜も眠れず、必死になって両親に訴えた。

ーお母さん。ヘンナモノが見える。怖いよ。

ーお父さん。助けて。怖い。

助けてくれ、慰めてくれ、少しでも良いからこの恐怖から俺を引き離してくれ。

だが、そんな俺の哀願は当然の如く払われた。残虐な言葉と共に。

『はぁ?あなた何言ってるかるの?頭大丈夫?』

『お前はそんなこと言わずにさっさと寝ろ。』

百歩譲って、両親にあの化け物が見えなかったのだとしても、実の子供。しかも、幼稚園児に対して頭大丈夫?などと言う母親の冷酷さには俺もかなり応えた。今になって思い返してみると。両親は俺の事など心底どうでもよかったのかもしれない。いや、そうなのだろう。両親は俺の事を何とも思っていなかったのだ。母親は仕事のせいかいつも家には居なかったし、それは父親も同じだった。家ではいつも一人だった。小学校に入学してもあの異形のモノ達が見えるせいか、俺は同級生から気味悪がれ、仲間からは外された。家だけで無く、学校でも俺は孤独だった。そんな俺の唯一の友は本だった。本を読むと、その中にいる様々な人物たちが俺に最高の物語を見せてくれた。ハッピーエンド、バッドエンド、メリーバッドエンド。どんな終わり方をしても、それに至るまでの過程が俺にとってはこの上なく面白かった。そんな本の魅せる物語を少しでも理解したかった俺は必死になって脇目も振らず勉強に励んだ。少しでも賢くなれば、本の物語を色んな方法で解釈出来る。少しでも本から学びたいものが、俺にはあった。それに勉強に集中していれば、あの化け物達を忘れることも出来た。何より、賢くなって両親を驚かしてやろうという幼い気持ちも無くは無かった。

 

転機となったのは中学三年生の頃だった。その頃既に行く高校に入学が決定し、卒業の時期も近くなっていた。ある日、卒業式の練習が長引き、いつもよりも帰りが遅くなった俺は家に帰ると何か恐ろしいモノが背中を駆け上るのをハッキリと感じとった。俺は玄関から恐る恐る廊下をゆっくり歩んでいくと近くの扉の影に隠れてリビングを見やった。

 

 

 

そこには今まで遭遇したどんな異形のモノ達の中でも恐ろしいモノが居た。いや、見た目だけで言えば、小学三年生の頃に見た顔が象で体が人間、腕と脚が芋虫でできていたモノがダントツでトップだが、あの時見たソレはまた違う意味で怖かった。ソイツの姿は一言で言えば大きな鯰だった。色は白く、全長は当時、身長167㎝の俺をゆうに超えるだろう。そしてソイツの姿に惹かれてしまったのか俺の視線が奴と合ってしまった。しまったと思ったその時、ソイツは叫び声を上げながら此方に向かって突進して来た。俺は運が良かったのだろう。初撃を何とかジャンプして回避した。何故回避出来たかというと俺は元々身体能力が高い方だったからだ。それに小学生だった頃に自分や他人、そしてアイツらに流れている何かに気がついたのだ。どう例えていいのかわからないが、ドラ○ンボ○ルの気の様なものか。そして、それは体の臍を起点として意識して流せば、身体能力の爆上げに繋がる。この事を俺は何度か繰り返した『実験』により、気づいていた。それを咄嗟の判断で脚に込めて行った為、ギリギリ助かったのだ。鯰のようなヤツはそのまま勢い余って壁に激突し、めり込んでしまった。俺はいつソイツが反撃にでるのかが怖くて怖くて仕方がなかった為、拳に何かの力を思う存分に溜めてソイツの背中に何度も叩き込んだ。最初の頃はヤツも抵抗していたが、動きを学校で習った柔道の固め技の要領で止めて殴り続ける内に、完全に動きを止めた。それと同時に俺も殴打を辞めた。それから暫く続いていた体の震えや緊張により起きたであろう過呼吸を収め、動かないソイツを見下ろす。純白の綺麗な流線形の体に、無駄が無いヒレやヒゲの配置に俺は襲われる前と同じ興味を抱いてソレに手を伸ばした。

 

妙な事が、起きた。

 

突然、それまでその場に居たヤツの体が歪み始め、俺の手のひらの上に黒い球体となって現れたのだ。あまりに突然の事だったので、思わず手を振って仕舞ったが、黒い球体は落ちる事無く俺の手のひらの上にあった。黒い球体は、宝石の様に光り輝き、それはまるで図鑑で見た蝶鮫の卵であるキャビアのようだ。

 

コイツを食べたらどんな味がするのだろうか?

 

そんな巫山戯た疑問が浮かんだのは、単純で無垢な好奇心からだった。よくよく考えてみたら、今まで自分を殺そうとしたヤツが変形した得体の知れない黒いナニカを食べようなど、お前の衛生観念は一体どうなっているのだと言いたくなるが、そんなまともな自制心よりも、バカな好奇心が優った。阿呆な俺は、ソイツを恐る恐る近づけ、口に含み、飲み込む。

 

 

………何の味もしない。

 

無……無……無……。

 

只々、何も感じない。

味も、その後に残るであろう後味も、何もかも感じない。

 

あぁ、矢張り駄目だったか。

昔から俺はそうだった。

味覚が無いのだ。どんなものを食べても、何も感じない。何の感想も浮かばない。思えば、両親が俺を煙たがったのはこのせいかもしれない。俺が何も食べても何も感じ無いから。ただ無口な俺を怖がったのかもしれない。やっぱり俺は両親に避けられている。それを打ち砕いてくれるのかと黒い球体に期待してみたが、結局駄目だった。俺はすっかり意気消沈して暫く自分の手を見ていたが、ふとあの自分を襲った白い鯰の化け物を思い出した。頭の中にあの時の映像が流れる。

突進して壁に激突するヤツ。

ソレを避ける俺。

ソイツを殴り続ける俺。

……ボーっとしていた俺の手のひらから突如として黒い閃光が走ったかと思うとアイツが急に目の前に現れた。驚きの余り、ヒャアと情け無い声が漏れたが、直ぐに冷静さを取り戻し、目の前の状況に対する考察を始めた。

 

答えは直ぐに出た。

 

俺がやったこれは所謂ポ○モ○の様な技なのだろう。倒した相手を食うという特異な手段でとはいえ吸収し、ソイツの姿を想像する事で再び、使役する事が出来るのだろう。仮説を建てたならば、次はそれを確かなものにする為の実験だ。そう考えた俺、只野礼司は、早速、家に巣食うモノ達に好奇の視線を向けて、一歩一歩とゆっくりと近づいていった。

 

 

 

____登場人物紹介。

 

只野礼司(17歳)2018年6月時点。

身長169㎝

体重58kg

術式 呪霊操術

誕生日 10月27日

好きなもの もやし

嫌いなもの カレーライス

趣味 勉強 歌を歌うこと 読書

等級 準二級呪術師

性別 男性

性格 無口で引っ込み事案。なんでも一人で悩み事を溜め込みがち。本当は優しく穏やかだが、嫌われている内に、内気な性格になった。

ストレス 同級生からの批判 上からの圧力

イメージソング

あたらよ「10月無口な君を忘れる」

 

 

白鯰

等級 二級呪霊

只野が初めて取り込んだ呪霊。全長は2、3m位。

術式を持たず、体当たりを武器とする雑魚呪霊。だが無駄に頑丈。

体当たりというシンプルな攻撃なので、相手の手の内を探る為によく使う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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任務

 2018年6月18日。京都府○○廃病院にて二級呪霊の発生を「窓」が確認。祓除の為、只野礼司準二級呪術師及び三輪霞三級呪術師を派遣。

 

 

夏の日差しが段々と厳しくなっている6月の真っ只中に居る俺にとって任地である廃病院に向かう車の中は、至極快適な環境だった。車の中にはクーラーも効いており、そこから送られてくる冷風は自分の肌に当たると、冷んやりとして気持ちいい。昨日は比較的任務が少なく、従って、睡眠時間を多く取る事の出来た俺の頭脳もいつもより正常で明瞭な思考をする事が出来る。その脳をもって今回の任務の資料の整理を俺はやっていた。

どうやら高専から数㎞先の廃病院にて二級呪霊一体が発生したらしい。既に被害者も出ているらしく、肝試しの為に安易に近づいた20代の若者三名が行方不明になったのだ。廃病院は閉鎖されてから久しく、不審者の侵入を阻む為の柵も錆びついて、機能しておらず、ほぼ無防備の状態だったそうだ。つまり、興味本位で入ろうとする馬鹿共を止める策は無かったという訳である。そして、二級呪霊となると術式を持たないとはいえ、そこそこの強さだろう。しかも場所は廃病院。其処で亡くなった人々の無念も深いだろうから、今まで相手にしてきた同級の呪霊よりかは強くなっているかもしれない。それになにより……

「只野さん!二級の案件ですが一緒に頑張りましょう!」

…此方の戦力が非常に心許ない。

 三輪霞。自分と同期の三級呪術師だ。入り込んだ者をフルオートで迎撃する簡易領域を形成出来る門外不出の剣技の流派であるシン・陰流を扱って戦うのだが、三級という階級が示す通り、まだまだ未熟な呪術師だ。スカウトの形で高専に入学したらしいが、それは呪霊が見えるからだろうか?

そう言う俺は彼女より一つ階級が高いだけの準二級呪術師だろうと他の人からよく言われるのだが、それは上層部の圧力の所為だ。なんでも昨年、俺と同じ呪霊操術を使う呪術師夏油傑が京都と東京に使役する大量の呪霊をばら撒いて大規模なテロを起こしたことから、上の俺に対する警戒が厳しいらしい。それなら始めから四級呪術師のままにしておけば良かったのにと俺は思うのだが、そうすると強い手札となる呪霊が手に入らないので、逆に今のままで良かったと今は考える様にしている。そう言えば、と思い自分の使役する呪霊を確認し始める。取り込んだ呪霊の特徴などを全て書き込んだメモ帳を取り出してページを捲り始めた。

今現在使役する呪霊は以下の通り。

 

二級呪霊 白鯰

     虹龍

     髪切

     磯撫

     鬼熊

三級呪霊 89体

四級呪霊 97体

総勢191体もの呪霊を操れる訳だが、この内まともな戦力として機能しているのは五体の二級呪霊のみであり、他の186体の呪霊は攻撃を受けた自身の身代わりや牽制にしか利用出来ない。更に呪霊の強度自体が脆いので消費が早い。しかも頼みの綱の筈である二級呪霊も、術式を持たず、呪力とガタイを活かした肉弾戦でしか活躍出来ないという体たらくであり、少しでも術式を使える呪霊を取り込みたいというのが、最近の自分の課題であり、欲求でもある。今回の廃病院での任務にて二級呪霊がもし、術式を使える様な強力な呪霊に変化していたらと考えていると、急に制服の袖口を引かれた。慌てて横を見やると三輪が頬を膨らませて、如何にも怒っているという様子で此方を見ていた。

「只野さん。何ボーっとしているんですか?もう任地に着いていますよ!」

 

そう言えばそうだったか。ふと外を車の窓越しに見ると目的地の廃病院が目の前にその不気味な姿を言い知れない圧迫感と共に見せていた。その様子に少し胸が締め付けられ、不快な気持ちになったが、直ぐに気を取り直して。

「ごめん。考え事をしていたんだ。とっとと行こう。」

「もぉ〜いつもそうですよ。早く行きましょう。」

常に考え事に没頭してしまうのは俺の悪い癖だ。

小さい頃から一人だった俺はその寂しさを紛らわす為に、頭の中に一人入って思考に没念していたのだ。そうすれば、他人に関わる面倒な事はせずとも孤独の事を忘れる事が出来た。…皆俺を煙たがっていたので、これ位しかやる事が無かったのだ。今もこうして一人物思いに耽っている。既に補助監督に帳を降ろしてもらい、三輪と共に廃病院に走って突入している最中もだ。廃病院の内部に入ると、その場の空気が今までのものとは全く違うモノに変化した。

ソレはとても冷たく、不気味な空気だった。今まで多くの呪霊相手して来 きたが、それでもこの場の空気は異様だった。誰も寄せ付けない様な凍てついた氷の様な異質な空気。ソレに俺は体がガチガチと震えていたが、その一方で、これ程の場所に巣食う呪霊ならば、相当強いのだろう。祓いがいがある。そういう武者震いの類の心の興奮が体を突き動かしていた事もまた、事実である。それから俺は三輪の方を見やった。彼女もまた、病院内の空気の異常さを肌で感じ取ったらしく、青白い顔をして汗をかきながら走っている。普段は明るく、お喋りな彼女が押し黙る様子を見ると改めて今回の任務の異常さを理解した。病院の受付所だったと思わしき場所を通り抜けて、二人で暗い廊下を走っていると、急に後ろから女性の声が聞こえた。 ……肩が、ゾクリとした。

 

『ネぇ、ワ、わタ、わたシ、私綺麗¿』

 

綺麗でハッキリとした声だったが、それが逆に、この状況下では、恐怖心を抱かせずにはいられなかった。ふと三輪の方を見やると彼女は既に全身から冷たい汗を流していた。俺は、思わず心配になって声をかけた。

「三輪さん。大丈夫ですか?」

「は、は、はい!わ、私は大丈夫ですよ!私はこれでも呪術師ですし、怖くなんてないですから!」

どこからどう見ても怖がっているだろうという野暮なツッコミは敢えてせず、彼女と一緒に振り返ってみる。

 

……今まで俺たちが走っていた廊下にコートを着た女性の姿をした呪霊が何かを持ってポツンと一人、立っている。しかも、その呪霊と俺たちの周囲の環境がまるで変わっていた。これまで俺たちがいた筈の清潔感の残る病院の廊下が四角い石をはめ込んだ道に変わり、壁が道と同じ様な石で作られた四角錐の形をした柱の立ち並ぶ異様な場所に様変わりしていた。そして何より、場の空気が今までよりも更に重くなっていた。その空間の中心に立つ女性の呪霊は、先程の質問をしてから何もして来ない。その様子は一見すると無防備に見えるが、油断は禁物だ。今は呪霊に対する攻撃は控えつつ、現状の把握に努めよう。

さて、今、あの呪霊は何を行なっているのだろうか⁈

俺たちは今、ソイツが展開したと思われる領域の様なものに囚われている。では、ソレは一体何なのか!呪霊の展開する領域といったらまず真っ先に領域展開というものが思い当たるが、その可能性は限りなく低い。何故なら領域展開というものは呪術戦の極致に当たるものであり、当然ながら使用可能な呪術師や、呪霊の数は限られている。あの呪霊の様なそんじょそこらの野良呪霊が簡単に扱える代物ではない。それに何より領域展開はとてつもなく呪力を食う。アイツは、俺たちの背後から気づかれもせずに近づいた。そうしたら後は自身の術式を使えば簡単に俺たちを始末出来た筈だ。それなのにそうしなかった。それは何故か?答えは簡単だ。

それはアイツの展開する領域そのものが術式だからだ。

差し詰め、あの呪霊の領域は恐らく簡易領域だろう。しかも、三輪さんが使う様なものとはまた違った代物だ。これもまた推測になるが、さっきあの呪霊が行なった質問に答えない限り、俺たちも、引いては呪霊本人も攻撃が出来ないのだろう。

質問に答えない限り、互いに不可侵を強制する簡易領域を展開する。

なかなか面白い術式を持つ呪霊じゃないか。

これは何としても取り込みたい。その為に、俺は隣にいる三輪に支援を求めようとしたが、したのだが……

 

「ね、寝ている?いや、気絶か。」

 

三輪さんは驚いたことに気絶してしまっていた。恐らく、呪霊にビビりすぎたのだろう。今まで三級の呪霊を相手にして来た彼女は、あの呪霊に純粋に恐怖したのだろう。彼女を放置して、目の前の呪霊について考える。

アイツは術式を持つ点から少なくとも二級呪霊を超えている。等級は準一級位だろうか?しかも、質問の内容からアレは口裂け女の仮想怨霊ではないか?姿が女性だと思われる事もそれを補強していた。そして、結論に至る。アイツは準一級仮想怨霊の口裂け女だろう。

一通りの考察を終えたら、後は行動だ。まずは、口裂け女の質問に答える。

「まぁ、普通だな。ふ、つ、う。」

すると、その言葉に彼女は明らかに反応した。…どうも混乱しているらしい。領域らしきものも解けた。これはチャンスだ。そう思って、手持ちの呪霊を呼び出した。

「白鯰。」

その言葉と共に、白く、流麗な形をした鯰の様な呪霊が虚空から現れた。まずは、相手の攻撃手段を探る。その為に、頑丈さでは一級呪霊にも匹敵する二級呪霊の白鯰を出して口裂け女の方へ突進させる。彼女は、白鯰が自身に向かうのを見て、困惑しつつも左手に持つ何かを握る。すると、白鯰の周りに、幾つもの巨大な握り鋏が現れて、それを切り裂こうとしたが、白鯰の余りの硬さに弾かれ、挙句の果てには自身に対する体当たりを許してしまった。ぶっ飛んだ口裂け女は、直ぐに体勢を立て直そうとしたが、それは為せなかった。

「鬼熊。」

俺の言葉に反応して、暗闇から、身の丈十尺はあろうかという熊の呪霊が現れ、口裂け女に対して猛烈な殴打の連撃を加えた。しかし、彼女も去る事ながら、鬼熊を鋏による挟撃で怯ませ、その隙にその脇から逃げ出したが、直後に、強烈な衝撃を受けて、再び、吹き飛ばされた。犯人は俺自身だ。彼女が鬼熊の脇から抜け出してから直ぐ様、脚に呪力を流して飛び蹴りを加えたのだ。更に俺は、ふらつきながらも立っていた口裂け女の胴に呪力を流しつつある拳をフルスロットルで叩きつけた。

 

…その瞬間。拳が赤黒く光った。

 

黒閃‼︎‼︎‼︎

 

打撃との誤差10万分の1秒以内に呪力が衝突することで攻撃の威力が2.5乗される現象、黒閃を、俺は彼女に容赦なく打ち込み、完全に戦闘不能に陥らせ、いつものようにソレを呪霊玉に変換して、キャビアの様なそれを一気に飲み込んだ。…当然の如く、それに味は無い。だが、

 

これで術式を持つ呪霊を仲間に引き込んだ。それと同時に俺の欲求も満たされた。ふと気絶していた三輪さんの事を思い出して、彼女の方向へ、視線を向けると、彼女は驚いたことにまだ気絶している。そんな彼女に呆れつつも、俺は彼女を自分の背中に乗っけて外で待っているであろう補助監督の元へ、ゆっくり一歩ずつ歩き出していた。

昼の太陽の放つ日光が扉から差し込んで自分の目を射た。

 

それは、とても眩しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

___________解説

 

只野礼司

準一級仮想怨霊の口裂け女を手に入れてルンルンな京都校の二年生。

気絶した三輪霞に驚き、呆れつつもしっかりと運んだ優しい男。

無意識のうちに黒閃を口裂け女に叩き込み、危うく祓いかけた。

実は、人並み外れた呪力のコントロールの才能を得る代わりに味覚を失う天与呪縛持ち。

上層部からありもしない噂を流され嫌われた男。

三輪霞

口裂け女にビビり、気絶した。あんまり活躍出来なかったよ。

だが、自分をしっかり運んでくれた只野に対して好感度が上がった。

と同時に噂が嘘ではないかと疑い始めた。

口裂け女

圧倒的被害者。原作とほぼ同じ強さを持って生まれたにもかかわらず、開始早々に只野に捕まり、白鯰の体当たりや鬼熊の殴打、只野本人の蹴りに加え、黒閃まで受けて死にかけた。彼女は泣いていい。

白鯰

格上の呪霊の攻撃を弾き、更にぶっ飛ばした化け物。

お前は本当に二級呪霊か?

鬼熊

二級の仮想怨霊。妖怪である鬼熊に対する恐れが産んだ呪霊。

筋肉質の体を生かした肉弾戦が得意。ただし、只野本人は黒閃一発で瀕死に追いやった。

 

 

 

 

 

 



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激闘

今回は特級呪霊との死闘です。
それではお楽しみあれ!


 2018年6月24日京都府○○工場跡地にて一級呪霊と二級呪霊の発生を「窓」が確認。祓除の為、只野礼司準二級呪術師を派遣。

 

 

 

 

口裂け女を手に入れてから、六日後、俺はその間も任務に出撃を重ね、複数の呪霊を取り込んだ。その中でも準一級、一級呪術が数体手に入ったことが、何よりも喜ばしい事だった。

以下はその呪霊達である。

準一級呪霊 泥田坊

      蛇蟲

      海座頭

一級呪霊 出世法螺

      胡蝶

どの呪霊も皆術式を使用可能な強力な手札であり、此れによって戦術の幅が広がった事は疑いようが無い。呪霊操術は兎に角、手数が強みである。相手が特定の呪霊に対処しきれない内に矢継ぎ早に他の呪霊を繰り出して数の差で畳みかけるのもありだし、相性の良い呪霊の術式を組み合わせてより強力な攻撃で短時間の内に勝負をつけるのもありだ。戦闘の他にも、移動や、自分の身代わり、索敵や、牽制。様々な用途に呪霊を用いることが出来るのがこの呪霊操術の醍醐味だ。現在使役出来る呪霊は雑魚の三級や、四級呪霊を含めて総勢203体。更に蠅頭を含めると1125体。これからも段々と増えていくことだろう。そうなれば……まぁ、それはそうとして、俺が今目指しているのは、「極の番」の修得だ。

     呪霊操術 極の番「うずまき」

自身の所有する呪霊を呪力に還元し、一つに集めることで超高濃度の呪力玉を生成し、それを相手に叩きつけるという大技だ。その威力は凄まじく、下級の呪霊の呪力だけでも地面に大穴が出来る程だ。それが、特級クラスの呪霊を用いて放ったらどうなるか。文字通り、ただでは済まないだろう。修得すれば、大きな武器になるのは間違いない。ただし、呪霊を呪力に還元して撃つ為、呪霊操術の強みたる手数を捨てることになるので、おいそれとは使えない。まず、「極の番」自体が修得が難しいものだ。なにせ領域展開を除いた呪術戦の極致に至る技だ。使える者達も限られている上、その人達に会うことが少ない事を考えると、修得は今暫く時間がかかる筈だ。昨年、俺と同じ術式を使い、「極の番」の修得者であった夏油傑が死んでいた事もそれに拍車をかけていた。できれば彼とは直接会って話し合って見たかった。なんといっても先輩だ。きっと話せば分かり合える事も多かっただろう。

…糞ったれ!俺が10年早く生まれていたら!彼に出会えていたのに!「極の番」修得出来ていたのに!

……一旦落ち着こう。冷静になろう。

歴史にたらればは無いのだ。もし、ああだったら良かった。こうだったらよかった。

そういったものは人をいつまでも過去に縛りつけて未来に対して深い絶望感を植え付けるだけであり、何の得にもならない。寧ろ損ばかりだ。前を向いて行動出来ない人間は愚図と同じだ。俺は、その様に成りたくない。いつも前だけを見ていたい。それの所為でたとえ向こう見ずと言われても構わない。前に進んで俺は強くなりたいのだ。俺は強くなって少しでも多くの人を助けたい。誰かの役に立ちたいのだ。嫌われようが、噂を流されようがどうでもいい。兎に角、前を歩き続ける以外俺に道は無いのだ。その道は決して平坦では無いだろう。楽なものでは無いだろう。だが、苦しい事や、辛い事、泣きたい事、理不尽な事、どんなものでも受け止めて進むしか、他に寄り道は無いのだ。

俺は、只野礼司だ。

俺は男だ。

俺は俺の道を進む。誰にも邪魔させない。

その強き決意を新たに胸にして、俺は自身のペリカン型の三級呪霊の口の中に入って、目的地の工場跡地に向けて、飛び立ち始めた。雲は厚く、視界を遮っている。風が強い。天気は荒れそうだ。俺は風の冷たさに少し体を震わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目的地の工場跡地に到着し、ペリカン型の呪霊の口から地面に降りた俺は、呪霊を回収し、直ぐ様帳を降ろしてから工場内に走って侵入を始めた。工場内部は暑い外とは対照的に、ゾッとする程の悪寒を感じ、とてもでは無いが震えが止まらない俺は、走りつつ工場の周囲の様子を見やった。工場は閉鎖されてからかなりの年月が経過しているという。任務の資料でも少し触れられていたが、何しろ20年以上も前に、バブル崩壊に伴った企業の倒産により、閉鎖されたらしい。近くでは自殺者や不審死を遂げた人達も数多くいるらしく、それらの怨念がこの場に集結して呪霊が誕生したという事だ。しかも一級呪霊と二級呪霊が同時に発生したとなるとかなり大変な仕事に成りそうだ。しかし、その反面、此方の手札の数も増える事になる。大きな稼ぎ時が来たと思えばいい。そう考えつつ、錆びた機械群を横目に走っていると、俺の耳が何かの異音をキャッチした。ほんの極小さなものではあったが、それは間違いなく、彼が今まで数多く聴いてきた独自の呪霊の足音だった。俺は即座に臨戦態勢を整えたが、直後に、その音の主が目にも止まらぬ速さで此方に近寄り、俺の背後から強烈な一撃を加えた。

…俺がもし、あの時山勘で呪力を背中に集中していなければ、上半身は吹き飛んでいただろう。俺は背中に受けた衝撃に引っ張られて工場の壁に叩きつけられている時も、思考を続けていた。今の一撃は並の術師が受けたら即死だろう。しかも、殆ど音を発さずに背後から奇襲するなど、戦術に関しても知識がある。俺が今まで相手してきた呪霊は皆正面から術式を使って戦っていた。一級呪霊でもだ。奴らは待ち伏せを行うなどある程度知恵はあったが、それでも「ある程度」のレベルでしかなく、待ち伏せ中も溢れ出る殺気を隠そうともしない上、相手(俺)の力量を測ろうともせず、術式を出し惜しみ、結果として自身の敗北に繋がるなど何処か頭が抜けている部分があったが、今回の呪霊にそういったものは無い。恐らく、特級クラスの呪霊だ。上の連中が等級を間違えたのだろう。……いや、故意に間違えたのだ。任務の資料では二体と言われていた呪霊が現在、あの特級クラスの呪霊しか他に呪霊の反応が無い。

恐らく昨年の夏油傑のテロの再来を恐れた上層部が俺を始末するべく特級案件の任務を内容を改竄して押し付けたのだろう。…だが、御生憎、俺はそういった類の「イジメ」はウンザリする程受けている。陰湿な扱いは慣れっこだ。

そんなことを考える内に再び件の呪霊が突撃を始めた。動きは俺が相手したどの呪霊よりも早いが、単調だ。ただ一直線に棒の様に突っ込んで来る。狙いは俺だろう。だが、それは此方にも分かっている。相手の狙いが分かっているなら後は簡単だ。

俺は脚に呪力を込めて呪霊との距離がおおよそ200mを切った所で一気に跳躍し、呪霊の背後に周りこんだ。そして、改めて工場の壁に盛大に突っ込んだ呪霊の姿を眺めた。

…それは巨大な鶏の様な形をした呪霊だった。

巨大とは言っても奴の身長は2m位で、そこまで大きい訳ではない。ただ、鶏にしては巨大だろう。羽は鮭の身の様な鮮やかな紅色で、羽根の一枚一枚が輝いている。脚は太く、鳥というより、寧ろ恐竜を想起させる程ガッシリとしたつくりだった。首はロクロ首の様に長く、頭は壺のように丸く、小さい。その小さな頭の内に目が殆どを占めており、絶えずキョロキョロと動いている。血走った目の焦点は殆ど合っていない。頭の上には、黄色く爛れた見窄らしい鶏冠がおまけの様に情け無くぶら下がっている。凄まじく醜悪な見た目の呪霊は自身が体当たりで崩して巻き込まれた工場の壁の残骸の山から全く無傷の姿を見せて出現した。呪霊は静かに此方を眺めている。…此方の手の内を探ろうとしているのか。

当初の見立て通り、知能は呪霊にしては高いのだろう。

あの呪霊の武器は高い機動力と馬鹿力。先程の攻撃から判断するに相手が認識出来ないスピードで走り、四方八方から持ち前の強力な脚による連撃で一瞬にして打ちのめすのが奴の基本の戦術だろう。それに加えて奴は術式が使える筈だ。その詳細が分からない限り無闇に動くべきではないが、それは彼方も同じだ。何より彼奴は生まれたばかりだ。自分が産まれた場所も分かっていないのではないか。兎に角自分が今どの様な状況にあるのか。それを探ろうとしていたのではないか?そうしている最中に、俺が来た。俺が殺意を持っている事に気づいた奴はすぐに俺を始末しようとしたが、自身の得意とする戦術である体当たりを一度受けただけで完璧に対処されて仕舞った。俺が想定外の強さを持っている事を感じた奴は静観に転じて次に俺が取る行動にかなりの警戒を置いている筈だ。

ならば…相手の隙を狙いたいがその相手は特級呪霊。そう簡単に隙を与えてくれるとは思えない。このまま睨み合いを終始続ける訳にもいかない。状況の打破の為に先ずは此方から先制攻撃を掛ける事にした。

「泥田坊。」

その言葉と共に黒い光が弾け、俺の隣から一体の人型呪霊が暗闇の中から上半身のみの姿を現した。

「田ヲ返せぇ〜田を返セェ〜。」

恨み節の言葉を吐きつつ登場した呪霊は、3日前にある水田にて取り込んだ準一級呪霊の泥田坊だ。此奴はその名の通り泥を操る術式を使う。泥田坊は目の前にいる鶏型の呪霊を見て、敵と認識するや否や両手を地面に打ち付けた。

ドンッ‼︎

低く鈍い音が響くと同時に泥田坊を中心として鈍く輝く泥の海が異臭と共に辺り一体を覆い始めた。これが泥田坊の術式だ。自身の周囲を泥で満たして相手の動きを封じる事が出来る。発動条件は地面を両手で叩くことだ。鶏型の呪霊の武器が機動性にある以上それを封じない手は無い。因みに泥田坊を使役する俺は術式の効果を受けないので、自由に動き回る事が出来る。実質初見殺しに近いハメ技だ。その技を受けた奴はかなり狼狽している様だった。それは当然だろう。いきなり自身の相手の隣から呪霊が現れたかと思うと即座に地面を泥まみれにされて自身の得意技である機動力による体当たりを封じられたのだから。奴は俺の呪霊操術に予想以上に驚いている。それなら正気を取り戻すまでに畳みかけるまでだ。

「出世法螺。」

今度は巨大な螺貝の中に龍の収まった珍妙な見た目の呪霊が闇の狭間から現出した。貝の中の龍は唸り声を上げており、やる気は十分といった所だ。此奴は2日前に取り込んだばかりの一級呪霊であり、俺の切り札の内の一つだ。今回は特級呪霊が相手なので、手札の出し惜しみは一切しない。出世法螺の術式は貝の中の龍の口から放たれる強力な水の砲撃である。その威力は肉弾戦では敵無しだった鬼熊が瀕死に追いやられる程だ。並の呪霊ならば一撃で祓えるし、並の呪術師は一撃で即死に至る。特級呪霊にもダメージは通るだろう。出世法螺が口に水を溜め始めると同時に俺は泥の上を走り、狼狽している奴に呪力を込めた渾身の殴打を決めた。奴の顔がぐちゃりと鈍い音を立てて変形したが、奴はすぐさまその傷を修復して嘴による反撃を始めた。超高速の突き技が俺に向かって放たれたが、バク転で回避しつつ頭を下げた。その瞬間、出世法螺の放った水の砲撃が俺の背中を掠めて特級呪霊の胴に直撃した。奴の胴体が紅く輝く羽を血で汚して撒き散らしつつ吹き飛んだ。頭を下げたのはこの為だ。出世法螺が術式を発動するまでの間に時間が少しばかり掛かるので、奴の気を俺に逸らす為に奴の顔を殴ったのだ。それが上手くいった。今、奴の胴には大穴が空いている。回復にも時間が要る筈だ。その内に他の呪霊を使って畳みかける。

「白鯰。胡蝶。」

空中から暗闇の扉が出現し、それが開くと同時に二体の呪霊が現れた。

俺の手持ちの最古参の二級呪霊である白鯰と新入りの一級呪霊の胡蝶だ。白鯰は術式を持たず、体当たりが武器だが、胡蝶は、自身の鱗粉を浴びた敵に幻覚を見せる術式を持っている。特級呪霊が術式を使用出来ない様に幻覚を見せて撹乱しつつ泥田坊の術式で拘束し、白鯰の体当たりと出世法螺の砲撃と俺の体術で反撃と回復の隙を与えずに嬲る。

此処に至って呪霊操術の強みである手数が活きてきた。

俺は再び白鯰と共に奴に向かって突撃を始めた。それを見た奴は口を開けて何かを放とうとしたが、それは空中から放たれた胡蝶の鱗粉により阻止された。奴が胡蝶の鱗粉を浴びると惚けた表情になって変な方向に首を向けて喚き始めた。幻覚を見ているのだろう。どんな幻覚を見ているのかは分からないが、大きな隙ができた。白鯰が先行して体当たりを奴に仕掛ける。

ヒット。

奴の顔に白鯰が直撃し、俺が殴った時と同じくらい歪んだ。すぐに回復が始めるが、それが完了する前に俺が間髪入れずに口裂け女に放ったものと同じスピードで蹴りを放った。

その瞬間。蹴りが赤黒く光る稲妻を纏って放たれた。

 

黒閃‼︎!

 

呪力と打撃の衝突する際の10万分の1秒の差により、呪力が赤黒く光って威力が2.5乗される現象、通称黒閃を俺は奴の顔に浴びせた。赤黒い雷を纏う蹴りが奴の骨を砕き、肉を抉り、紫色の血を周囲に飛び散らせる。奴は悲鳴を上げる間も無く顔を吹き飛ばされて倒れこんだ。泥と血が混じり、何とも言えない色に変色する。それでもしぶとく奴は再生を続けていたが、俺は奴に馬乗りになって拳による連撃を加えた。始めの方こそ奴は暴れていたが、何度も殴る内に奴は動かなくなった。

それを確認した俺は周囲の呪霊を回収して瀕死の奴に手をかざした。その瞬間、奴の体は歪み、俺の手の平の上に黒い呪霊玉に還元された。俺はその味のしない呪霊玉を飲み込んだ。全てが終わり、俺しか居ない空虚となった工場内に暫く俺は立ち尽くしたが、工場に日が差し込むのに気づいた俺はもう昼かと思い、工場の外へ向けてゆっくりと歩き始めた。特級呪霊を取り込んだにも関わらず、何故か俺には嬉しいといった感情は浮かばず、何かポッカリと穴の空いた心を抱えまま、俺はゆっくりと歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_________解説

 

只野礼司

せっかく特級呪霊を手に入れたのに何故か嬉しくならなかった人。

その理由は?

最近になって東堂と言うゴリラのストーキングに悩まされている人。

あのゴリラは本当にどうにかならないのか?

今は上層部の圧力により、準二級呪術師だが、実際には一級呪術師並の力がある。上はやはり腐っているね

 

炎鶏

工場にて生まれた特級呪霊。もの凄く不憫。

賢いが故に失敗した呪霊。術式は口から炎を放つもの。

周囲の状況把握に努めていたら急に只野が来て理不尽に呪霊たちによるリンチを受けた。黒閃も食らった。もはや此奴は泣いていい。

 

加茂憲紀

只野の任務が特級案件だと判明して急いで救援に駆けつけたが、無傷で現れた只野に驚愕した。それまで噂の影響で彼を避けていたが、彼と雑談をする内に趣味が合う事に気づいてすぐに仲良くなった人。彼から東堂の事を聞いた際に頭を抱えた人。

 



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出会い。前半。

此処からは、あのアニヲタ爺が登場します。では、お楽しみあれ!


 2018年7月9日京都府○○寺にて高専登録済みの特級仮想怨霊化身玉藻前の再発生を「窓」が確認。対処の為に禪院直毘人特別一級呪術師、加茂憲紀準一級呪術師及び只野礼司準二級呪術師を派遣。

 

 

 

 

先日の特級呪霊炎鶏との戦いを終えた俺はゆっくりする間も無く、その後も任務に行かされ続けた。どの任務も一級相当の危険度の高い案件であり、その分強力な呪霊を取り込める事に違いは無いのだが、俺自身が何度か危ない目に遭う事も以前と比べて増えていた。昨日の任務も完遂こそしたものの一級呪霊2体を同時に相手取る事態に陥ってしまい、両方とも取り込んだが、古参の二級呪霊である髪切が祓らわれた。呪霊操術により使役する呪霊は手に入れた時点から成長することは無い上に、二級呪霊1体の犠牲と引き換えに一級呪霊2体を同時に得たのだから、実質的に損は無い訳だが、それでも、使いやすく古参の呪霊である髪切を失った事は少しショックだった。呪霊は人の負の感情から生まれた異形の存在であり、俺たち人間と分かりあえる事は決して無いとはいえ、何度も共に戦えばある程度情が湧かない事も無い訳ではない。これはある種ペットに抱く愛情に近いのかもしれない。情を持っている事は確かだが、その何処かに心が無い。心の奥底では氷の様な冷たさが渦巻いているのだ。それは自身が愛情を抱く相手よりも精神的に上の立場に立っているからこそ発生するのだろうか。俺にはわからない。ただ、一つ言える事がある。

それは真の愛情ではない。愛情とは互いに対等の立場で情を抱き、接することだ。一方からの情だけでは愛情にならない。俺の呪霊操術もそうなのだろうと考えつつ任地の寺に着いた俺はさっきまで乗っていたペリカン型の呪霊を回収して、加茂さんと禪院家の呪術師が到着するまで待つ事にした。

10分程して、先ずは先輩である加茂さんがやって来た。補助監督が運転する黒色の車から和装の男性が降りて来たかと思うと、此方の姿を認めて声を掛けてきた。

「只野さん、もう到着していたのですか。」

「えぇ、呪霊を使ったので。」

「いいですね。呪霊を使うのは色々と便利でしょう。」

「まぁ、便利ですね。」

「そう言えば、禪院家の術師は来てないようですが。」

「俺が一番乗りですよ。一体何しているのでしょうね?」

話をしている人は俺の先輩である高専三年生の加茂憲紀さんだ。加茂の名が示す通り、呪術界の御三家の一角である加茂家の嫡男だ。御三家の名に恥じず加茂家相伝の術式で、自身の血液を操作する赤血操術を使って最前線で戦う立派な準一級呪術師だ。俺とは趣味が勉強だと云う事で一致し、話をする内に、すっかり仲良くなったのだ。話によると加茂さんは俺のことは上の流した噂の影響もあっ避けていたらしいが、特級呪霊炎鶏との戦いを終えて無傷で現れた俺を見て驚愕すると同時に、純粋に俺という人に興味が沸いたらしい。それは兎も角俺は流された噂が気になって加茂さんに聞いてみると、どうやら夏油の再来を恐れた上層部が俺の行動を妨害する為にありもしない噂を流したそうだ。更に噂の内容を尋ねると、その内容は思わず笑いが溢れてしまうモノだった。

俺がテロを計画しているだの、

俺が冷酷な性格だの、

俺の両親が呪詛師だっただの。

皆、有りもしない風聞に過ぎない。確かに、俺は無口で誰にも言わず、一人で思考を完結させるので何を考えているのか分からないと思われても仕方ないとは思う。だが、それでもテロを計画しているなどというのは阿呆の妄言に過ぎない。矢張り、上層部は腐っているのだなと思いつつ、俺は暫く加茂さんと黒閃について話していた。

「只野さんは黒閃を撃った事がありますか?」

「えぇ、何度か。それが何か?」

「黒閃は、放つ事が出来れば呪術の核心に近づくと言われています。」

ここで一旦、加茂さんは俺を見て、言葉を切った。彼は細い糸目を開いて静かに俺を見つめている。一分程して彼は再び口を開いた。

「黒閃を撃つ際のコツの様なものが有ったら私に教えて頂きたいのです。」

加茂さんは、その糸目を更に開いてハッキリと綺麗な声で言った。その顔、その言葉には覚悟の念が宿っていた。そこまでして黒閃を放ちたいという彼の執念にも似た何かに少し気圧された俺は思わず口走って仕舞った。

「一体なぜ?」

「それは私が強くなりたいからです。加茂家の嫡男として、少しでも強くありたいのです。」

さも当然と言わんばかりに放たれたその言葉によって、俺は彼に少しばかりシンパシーを抱いた。俺にも、強くありたいという目標がある。少しでも強くありたいという欲望がある。だから俺は、それと同じ内容である加茂さんの心意気に惹かれたのだ。ただ、俺と加茂さんには少しばかり差異がある。それは目的の差だ。俺が強くありたいのは人の為だ。少しでも多くの非術師を呪いから助け出したいからだ。これは理想論だと他の呪術師が聞けば嗤うかもしれないが、それでも俺は人を助けたい。だから呪術師になったのだ。

たとえ、白い目で見られても。

それに対して加茂さんは違う。彼は、御三家の一角たる加茂家の名を生まれた時からずっと背負って生きている。その分、誰よりも優れている事を求められていたのだろう。加茂さんは優しいから、きっとそれに応えようとかなり無理をしているのだろう。高専での日常を見ても分かる。体術の授業では常に汗をかいて、息を切らしている。相手があの頭にパイナップルが詰まっているゴリラだという事もあるが、無理をしていることは否めない。座学では常に呪いの勉強を欠かさない。授業が終わってもなお机に向かっている。手は努力の証である鉛筆の炭だらけだ。ここまで彼を走らせているのは加茂家としてのプライドなのだろうか。ならばそれは少し違っている様に思える。だから俺は訳を再び聞いた。

「加茂さんは何の為に呪いを学んでいるのですか?」

この言葉に彼は黙った。顔には驚きの表情が浮かんでいる。

「それは加茂家の為ですか?」

「えぇ、そう、ですが。」

彼にしては歯切れの悪い言葉だ。加茂さんはいつも真っ当な事をハッキリと言う質だ。その言葉は至極明瞭で、的を外れたことは一度も無い。それが曖昧胡乱なものになるとはちょっと怪しい。俺は更に問い詰める事にした。

「加茂さんが呪術師になったのもその為ですか?」

「あぁ。」口篭りを始めた。更に問う。

「御家の名声の為ですか?」

「…………。」沈黙。静寂が、広がる。

「では、人助けも名声の為ですか?」

この言葉に彼の体が一瞬だけピクリと魚の様に跳ねた。

「それは、違います!」声に少しばかり怒りと迷いが混じっている。

「私は純粋に人助けをしたいのです!」怒号。

「では、何故最初に黒閃の事を教えてほしいと言った時に加茂家の名を引き合いに出したのですか?」

「貴方は本当に人を助けたいのですか?」

「それは……。」

「貴方は優しい人です。御三家の名を必死に担って生きているのでしょう。その苦労を分かるとは言いません。ですが………溜め込まないで下さい。言いたいことは言って下さい。」

その言葉を聞いた加茂さんは拳をキツく血が滲み出るかと思う程握りしめていた。顔には苦渋の表情が浮かんでいる。細く秀麗な糸目にはちょっとばかしの涙が日の光を受けて輝いていた。そして顔を上げ、天を仰いだかと思うとすぐに顔を戻して俺を真っ直ぐに見据えて言った。

「ありがとうございます。只野さん。お陰で少しモノが良く見えるようになりました。」

その顔には清々しい顔が浮かんでいる。

禪院家の当主である禪院直毘人特別一級呪術師が車で到着したのは丁度その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

禪院直毘人と加茂さんに合流し、目的地の寺に向かう事になったのは良かったが、一つ大きな問題があった。それは俺たちの最大の戦力である禪院直毘人のやる気が余りにも無いと云う事だ。71歳の第26代禪院家当主は、到着するや否や挨拶もせずにデカイ欠伸を俺たちの目の前でかまし、寺に向かう中でも歩きながら大きな瓢箪に入った酒を昼間から浴びるように飲む始末。あれは最早鯨飲に近い。いや、鯨飲だ。まず間違い無い。その様子を見兼ねた加茂さんが注意すると、何も知らない若造は黙っておれ、と言わんばかりに

「黙れ、クソガキ。儂は酒で生きているのじゃ。」と一言。

仮にも御三家の一角たる加茂家の嫡男であり、俺の数少ない友人でもある加茂さんをクソガキ呼ばわりし、酒豪此処に極まれりと言わんばかりの暴言に流石の俺も特級呪霊炎鶏を召喚しそうになったが、歩いている場所が市街地であったことと当の加茂さんから止められたことから辞めた。対応に困る呑んだくれのクソ当主を放置しつつ、加茂さんと黒閃について暫く話しあっているといつの間にか市街地を抜けて、目的地である寺に到着していた。寺は市街地の近くにあり、平安時代から歴史のある由緒正しきモノだったが、老朽化による設備維持が困難となり、止む無く廃寺となってしまったらしい。そしてそこではあの玉藻前を祀っていたらしい。本来、栃木県の妖怪である玉藻前が、何故京都で祀られているのかといえば、任務の資料によると件の寺が、平安時代、鳥羽上皇の御世の頃に民草に流行った病を鎮める為に玉藻前を神として祀る事で機嫌を取ろうとしたらしい。機嫌を取るくらいなら早く討伐しろと思いもしたものだが、当時の玉藻前の力量を考えるとそうはいかなかったのかもしれない。何しろ現代にまで名を残す妖怪だ。この寺に潜んでいると思われる化身玉藻前はその名の恐れから生まれた特級仮想怨霊だ。本物の玉藻前とは訳が違う。しかし、それでも特級なのだ。しかも、同時期にはあの最悪の呪詛師の両面宿儺が暴れ回っていたのだ。そちらを抑える為にも戦力は余り裂けなかったのだろう。討伐を諦めたのも仕方がない事だったのだろう。

寺に到着した俺たちは、早速加茂さんに帳を降ろしてもらった。

『闇より出でて闇より暗くその穢れを禊ぎ祓え。』

その言葉と共に昼が夜に変化して、暗闇が辺り一帯を覆った事を確認した俺たちは直ぐに寺の中に突入した。

寺の中にはまさに平安時代を思わせる清涼な御殿が広がっていた。

そして、その奥には……

 

 

 

 

 

 

_______解説

 

只野礼司

禪院直毘人のやる気の無さにキレかけた生徒。

最近、任務が激しくなってしまったので疲れが溜まっている。でも口には出さない優しい男。

今使役している呪霊は特級や蠅頭も含めて1345体。

極ノ番を早く修得したいと思っている。

加茂憲紀

只野に優しく諭されて吹っ切れた加茂家嫡男。今ならどんな事でもできる。実は只野の方が色々と抱え込んでいる事に薄々気づいている人。でもそれを踏まえて自分を心配してくれた只野に心を動かされた。直毘人さん酒はやめてください。

禪院直毘人

五条悟の代打として任務に高額の報酬と共に行かされた人。やる気は無い。




前半は終わりです。次回も楽しみにしていてください!


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出会い。中頃。

長丁場になりそうなので、一旦切ります。後半はまた後ほど投稿します!


寺の中には平安時代を思わせる清涼な御殿の様な空間が広がっていた。床は高級なことを思わせる茶色の木(恐らく樫の木か。)で敷き詰められており、清潔で塵一つ落ちていない。周りを見渡すと床に使われているものと同じ品種と思われる木材により作られた円柱形の細い柱が寺内の空間の左右の側に立ち並んでいる。更に空間の奥の方を覗いて見るとそこには御座が敷かれ、その上に何かが座っているのが見えるが、その姿を天井から降ろされている緑色の縁取がされた御簾により隠されており、影となっていてよく分からない。影は人の形をしており、メトロノームの様にユラユラと不気味に蠢いてる。あの影こそが件の化身玉藻前だろう。加茂さんも奥のソレに気付いているらしかった。

「アレが……化身玉藻前。玉藻前の恐れから、生まれし呪霊。」

「えぇ、そうでしょうね。今までの呪霊とは雰囲気が桁違いです。」

加茂さんの言う通りだ。御簾の裏から感じる気配は並大抵のモノではない。弱いとはいえ同じ特級呪霊の炎鶏と戦った時も体の鳥肌が立って仕方がなかったが、今回の件はそれ以上だ。ハッキリ言って全身の震えが止まらない。全身の細胞という細胞が恐れ慄き体が戦うことどころか動く事さえ拒んでいる。肌からは冷たい汗が吹き出して、流れだして仕方がない。恐れの余りに腹の中の胃が収縮して口から胃液が漏れ出しそうだ。胃液を吐き出しそうな口を無理やり手で抑える。ふと横を見ると加茂さんも俺と同じ思いらしい。隣の彼を見ると手が冷や汗で濡れており、しっかりと握りしめられている。きっと震えを抑える為だろう。顔は少し引き攣っている細い糸目はこれでもかと見開かれている。やっぱり、加茂さんもあの呪霊に純粋に恐怖心を抱いているのだ。それもそうだろう。この状況ならば誰も怖がらない者は居ないだろう。この時、俺の心の中にはどす黒い不安や後悔が渦を巻き始めていた。それらは積もりに積もるといずれか爆発し、人の自制心を殺し、人を本能のまま動かす機械となって仕舞う。そうなれば戦いどころの話ではない。俺たちは脇目も振らずに逃げて仕舞うだろう。そう言い切れるだけの確信が数多くの呪霊を見て使役してきた俺にはあった。兎も角、このまま恐怖に打ち据えられて固まっていただけでは何も変わらない。それこそ、あの廃病院での口裂け女の任務の際に気絶した三輪さんと同じだ。三輪さんには失礼だが、俺はそう成りたくない。

少しでも行動を起こさなければ。そう思った俺はすぐさま術式を解放し、手始めに俺の使役するものたちの中でも最古参のあの呪霊を召喚した。

「白鯰。」

その言葉と共に空中から現れた暗闇の狭間から白く流麗な長身の鯰型の呪霊がその姿をこの場に現出した。その名を二級呪霊白鯰。俺が一番はじめに手に入れた呪霊だ。此奴は術式を持たない代わりに一級呪霊にも匹敵する硬度を持ち、その身持ちの硬さを活かした体当たりを得意とする。その威力は弱い部類とはいえ特級呪霊の炎鶏に手傷を負わせた程だ。炎鶏とは格が違うが、化身玉藻前にもある程度は効くだろう。その白鯰をまずは牽制の為に放つ。白鯰は奥の動く影に向けて全速力の突進を開始し、そしてそのまま激突した。御簾が吹き飛び、白鯰の衝突した壁が粉砕されその破片と爆風と轟音が辺りに飛び散る。だがしかし、影は既にその場にいなかった。

「後ろ‼︎‼︎」

加茂さんの怒号が空間内に響き渡る。その言葉に反応して振り返ってみると、宙に浮いている化身玉藻前がその姿を目の前に晒していた。…それはとてもあの鳥羽上皇を誑かしたという美しさは感じなれない醜い姿だった。顔は下ぶくれをしていて白粉が塗りたくられている。その上不気味な事に細く黒い目が六つあり、口は狐の様に耳元まで開かれており、口角は上がっている。黒髪は艶を放ち、足の辺りまで伸びているかなりの長髪だ。体には色鮮やかな十二単を纏っている。足は人のものとは思えない程痩せ、枯れており、色は変色している。これが特級呪霊かと背筋に悪寒が走った。と同時に大急ぎで飛び退き壁に激突していた白鯰を呼び戻して体の周りを旋回させ、呪霊の攻撃に備えていると、呪霊の横合いから影が現れ、何かを投げたかと思うとそこから赫い閃光が走り、なにかが呪霊に向かい高速で飛んでいった。

        赤血操術 苅祓

放ったのは加茂さんだ。自身の血液を操る加茂家相伝の赤血操術を使い、投げた輸血パック内の自身の血液を手裏剣状にして放ったのだ。差し詰め不意打ちを兼ねての牽制といった所か。だが、呪霊の方に目をやるといつの間にか加茂さんの背後に浮いている。苅祓を避けたのか。女狐の様に口角の引き攣ったその顔は明らかにそして高らかに笑っていた。今度は、俺が叫ぶ番だった。

「加茂さん‼︎後ろ‼︎」

その言葉に反応して振り返った加茂さんは直ぐに、化身玉藻前との距離を取って自身の輸血パックを放り投げた。俺にはその意図が直ぐに分かった。輸血パックは破裂したかと思うと中に入っていた血液がまるで蜘蛛の糸の様に幾つもの細い線となって飛び出して呪霊の体を包み込んだ。

        赤血操術 血縛

化身玉藻前の動きを封じ込もうとしたのだろう。事実、血縛は効果を発揮して呪霊を縛り付けた。俺はそれに向かい、白鯰を再び突撃させた。他の呪霊も呼び出しそうかとも思ったが、相手は特級呪霊だ。加茂さんの血縛も長くは持たないだろう。少しでもダメージを与える為に白鯰をそのまま使うことにした。だが、その試みも虚しく終わった。俺と加茂さんの目の前で呪霊は突然紫色の煙と共に姿を消してしまったのだ。白鯰の体当たりも当然の事だが避けられた。これが奴の術式なのだろうか。いや、それにしてはショボすぎる。奴は特級なのだろう?呪霊は再び加茂さんの背後に姿を見せた。また俺の叫びが響く。それに気付いて加茂さんが飛び退く。化身玉藻前は矢張り笑い続いている。俺たちを煽っているのか?俺は更にもう二体の呪霊を召喚した。

出世法螺、胡蝶。

その言葉と同時に床から巨大な螺貝に龍の入った珍妙な姿をした一級呪霊出世法螺が闇の穴から出現し、空中からは同じく虹色に光耀く羽を持つ蝶型の一級呪霊である胡蝶が姿を現した。前者は大質量の水による砲撃の術式を持ち、後者は自身の鱗粉を浴びせた者に幻覚を見せる術式を持つ。いずれも手持ちの呪霊の中では1位、2位を争う強さを誇る。相手が瞬間移動を行うならば、幻覚を見せて足止めし、大威力の攻撃で確実にダメージを与えるに限る。早速行動に映そう。指示通りに先ずは胡蝶が空中を華麗に舞い、呪霊相手に鱗粉を浴びせる。その間に白鯰には呪霊の周囲を当たらず触らずの距離を飛ばせて呪霊に牽制を行なって出世法螺が砲撃を行うまでの時間を稼ぐ。加茂さんも俺の作戦を瞬時に察したらしい。俺の方を見て頷いたと同時に自身の術式を起動させた。

 

        赤血操術 百歛

自身の血液を圧縮させ、来るべき攻撃に備え、準備している加茂さん。彼が攻撃されて怪我でもされたらそれだけ化身玉藻前の祓除が難しくなってしまう。奴が遠距離攻撃を行うかもしれないので、それを防ぐ肉壁としてイカ型の三級の雑魚呪霊を二体くらい彼の周囲に侍らせた。矢張り、呪霊操術は便利だ。そう思いつつ隣を見ると出世法螺の砲撃準備も終わっているらしかった。このまま此奴と加茂さんによって同時攻撃を行う。幸いにも胡蝶の鱗粉は効果があったらしく、化身玉藻前が動く様子は無い。俺は万が一の為に拳に呪力を集中させ、いつでもアイツを殴れる様に準備している。加茂さんが手をピストル状に構えたと同時に出世法螺も水を溜めた口を大きく開いた。もういいだろう。そう思った俺は二人(?)の攻撃に巻き込まれない様に白鯰を下がらせた。胡蝶もタイミングを見計らって離脱した。それと同時に轟音が耳を襲い、赤と青の色彩の暴力が俺の視界を奪い去った。加茂さんたちの術式が放たれたのだ。

 



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出会い。後半。

化身玉藻前との戦いが遂に決着をみせます。
長々と待たせて申し訳ない!


俺の視界は出世法螺の砲撃による青一色の洪水により、埋めつくされた。水の塊はその巨大な質量によって対象である化身玉藻前のいた場に轟音と共に衝突した。更に出世法螺の砲撃よりも遥かに高速の赫く細い閃光が右の方から走り、空気を切り裂いて今しがた砲撃が着弾した場所に直撃した。その際に発した音はそれ程大きなものではなかったが、威力は凄まじく、破壊された壁の破片が出て俺の方にまで飛んで来た。放ったのは加茂さんだ。赤血操術の百歛を使い、自身の血液を限界まで圧縮してそれをピストル状に構えた手から弾丸の様にして発射する赤血操術の奥義、その名を………

       赤血操術 穿血

そのスピードは呪力で強化さえすれば音速をも超え、威力は赤血操術の技の中で最も高威力だ。当たったらただでは済まないだろう。先の出世法螺の砲撃も加算すれば、特級呪霊相手にも効果はあるだろう。もしかすると祓えるかもしれない。ただし、それは当たっていればの話である。どんな攻撃も当たらなければ意味が無い。今まで化身玉藻前は此方の攻撃を簡単に回避していた。その上奴の顔には俺たちを嘲笑う笑みが常に浮かんでいた。その表情は二度と忘れる事が無いだろう。穿血と出世法螺の砲撃が弾着した場所からは白煙が立ち上り、奴が生きているとは思えない光景が眼前で展開されていたが、その直後、耳をつん裂く甲高い笑い声が空間内に響き渡った。まるでその声は小さな子供達が童歌を歌っているかの様だ。音は耳の隅から隅まで声は掻きむしるかの様に侵入し、俺の聴覚神経を撫でまわした。そのむず痒さに思わず頭を抱えて、足がふらついて仕舞ったが、辛うじて脚に力を入れて踏み止まり、辺りを見渡して状況を確認した。残念ながら、此方の放った渾身の同時攻撃は化身玉藻前には通用せず、回避されたらしい。あの笑い声が何よりの証拠だ。となると足止めの為に放った胡蝶の鱗粉は効果が無かったらしい。思い返してみると奴は鱗粉を浴びても身じろぎ一つしなかった。流石かの玉藻前から生まれた特級の仮想怨霊だ。同じ特級呪霊とはいえ鱗粉が効いた炎鶏とは大違いだ。しかし、胡蝶の鱗粉が効かないとなると俺たちには奴を足止め出来る手段が殆ど無い。加茂さんの血縛も拘束自体には成功したが、なぜか瞬間移動の類のようなものにより、逃げられていた。これまでの俺たちの連続攻撃を回避されているのを見ると機動性が限りなく高いのだろうか?いや、もしそうだとしたら加茂さんの血縛を逃れたあの瞬間移動の説明がつかない。瞬間移動自体が術式なのだろうか?いや、それならば其れを活かさない手は無い。一級相当の術師である俺たちを軽く手玉に取るほどだ。殺すこと位造作もない筈だ。それこそ赤子の手を捻るが如しだろう。それが何故か彼奴は初めて遭遇してから一度も攻撃を仕掛けてこなかった。攻撃を回避してばかりだ。それは俺たちの消耗を狙っているのだろうか?いや、それよりも先ずは相手の術式について整理したい。

一旦落ち着こう。状況を整理したい。

奴の術式は何だろうか?先ずはそこから始めよう。奴の術式は先程考えた通り瞬間移動なのか。いや、それは無い。その術式は奴にしては弱すぎる。呪霊や呪術師にも言えるが、術式は一つしか持てない。余程のことが無い限り術式を複数持つことは出来ない。相手は特級呪霊だ。その戦闘力の高さは俺たちを軽く凌駕している筈だ。それならばさっき言った通り俺たちは寺に入った時点で既に殺されていただろう。でも何故か俺たちは奴相手に手こずり、この状況に至る。それだけでなく更に不思議な事がある。

 

それは俺たちが今居る空間に全く疑念を抱いていない事だ。

 

寺の中ではあり得ない光景が広がっていた。既に10年以上前に廃棄された筈の寺にも関わらず、内部では埃一つ落ちていない清潔な空間だった。それに柱が立ち並んでいることや御簾、御座があることも可笑しい事だった。この時、俺の脳内に真っ先に浮かんだ言葉は領域展開だ。恐らくこの空間は化身玉藻前の心を写した生得領域なのだろう。領域展開には膨大な呪力を消費する代わりに得られる大きなメリットが二つある。先ず一つ目は

「環境要因による術者のステータスの向上。」

領域内は術者の精神世界を体現した場所なので、術者にとってはホームグランウンドの様なものであり、自身の能力を遺憾なく発揮でき、術式の発動がより早くより強力になる。

次に二つ目は

「領域内で発動した術者の術式の絶対命中。」

領域展開は術者が心の中で思い描く世界を呪力で構築し、それに術式を付与する技だ。つまり、領域に入れば、「既に術式に当たった」という事になり、術式による攻撃は必ず当たるようになる。但し、攻撃自体は呪力で防ぐ事が可能だ。その他にも領域展開には敵の術式や領域の中和作用などの利点があるが、此処で注目したいのは二番目のメリットだ。術式の必中。俺たちはこの空間に侵入した時点で既に術式を当てられた筈だ。ではそれはどんな術式か。恐らくこれは俺の推察になるが、奴の術式は人の精神に干渉することだろう。本来ならば何らかの手順を踏む必要があるのだろうが、領域内なのでその必要が無くなったのだろう。これも推測に過ぎないが、俺たちが今まで相手していたのは化身玉藻前によって意識を改竄され、見せられていた幻覚なのではないか?それならばいくら攻撃してもまるで効果が無かった事に説明が付くし、更に今まで俺がいる空間を疑わずに普通に侵入した事にも説明が付く。では次に奴が何故領域展開をしたかについて考えよう。領域展開は呪術戦の極致にあたる技術であり、先程挙げた欠点の通り呪力の消耗が大きく、修得した術者でもおいそれとは使えない代物だ。それをどうして奴は俺たちが寺に入った時から発動しているのだろう。それは簡単だ。何故なら奴自身が特級呪霊にしては弱いからだろう。たとえ一級相当の術師二人と特別一級術師が来たとはいえ、領域展開を会得した特級呪霊ならば赤子の手を捻る位楽な相手のはずだ。それなのにいきなり領域展開をかましてきたという事は、そうでもしなければ俺たちには勝てない事を奴が悟っているからではないか?それに仮に奴の術式が精神干渉系統のものだとしたら、尚更奴が弱い事に対する根拠になり得る。普通の精神干渉の術式だけでは俺たちを殺すことは出来ない。そう判断したからこそ奴は領域展開をしたのだろう。更に次はどうやったら化身玉藻前の領域を脱することが出来るのだろうかを考えていこう。領域展開に対する対抗策にはいくつか種類があるが、今回の件だとどれも使用出来ない。先ず一つ目に領域を中和する効果があるシン・陰流の簡易領域はシン・陰流自体が門外不出の技術であり、使い手が非常に限られている。現に使える者は京都高専の中では同期の三輪霞さんただ一人だ。つまり、この手は使えない。次に此方が領域を展開して相手の領域を中和するという手段がある。呪術戦ではより洗練された領域が戦闘を制する。だが、この方法も無理だ。何故ならそもそも俺たちが領域展開を会得していないからだ。出来ない事をやれと言われても無理な話だ。一応、俺たちの中で最大の戦力だと思われる禪院直毘人が使用出来そうだが、肝心の彼が酒に酔ったのか柱に近くで寝ているので無理だろう。こんな時に何をしているんだと突っ込みたいが、状況が状況なので矢張り彼はクソ野郎だった。という事で済ました。彼はとうぶん当てには出来ないだろう。そうなれば、自動的に三つ目の対策である御三家秘伝の領域対策、「秘伝落花の情」も使用不可能となる。こう考えると最早万事休すとしか言いようがない状況に陥っているが、俺にはまだ対策がある。化身玉藻前相手にどれ程通用するかどうかわからないが、やらずに死ぬよりかはよっぽどマシだと思う。俺はこの策に一縷の望みを賭けたいと思う。もし、失敗したとしてもやって死んだ方が数倍マシだ。兎に角、やって見なければわからない。

それならば、善は急げだ。

俺は先ず、奴の意表を突く為に目の前にいる奴に対し、すこぶる親しげに語りかけた。

「君は化身玉藻前だろう。君はあの玉藻前から生まれたのかな?道理でこんなに強い訳だ。」

突如として特級呪霊に親しく笑みを浮かべて話しかけてきた俺を訝しんだのか加茂さんは怪訝な表情をしていたが、俺の策略か何かだとある程度察していたのか彼はそれ以上のことはしなかった。俺は更に話し続ける。「僕の術式は呪霊操術と言ってね、言葉通り君の様な呪霊を幾らでも取り込んで使役出来るんだ。かつて僕と同じ術式を使う夏油傑という人がいてね、君を使役していたそうだけど覚えていないのかな?」

俺は一旦言葉を切って宙に浮かぶ奴を見上げた。奴も加茂さんと同じく不審な表情となっていた。俺は狙い通りだと思いつつも決して顔には出さずに言葉を継いだ。

「呪霊操術の性質上、僕は色んな呪霊を見てきたんだけど呪霊というのは矢張り面白いモノだね。君らは人の恐れから生まれるのだけど、興味深い事に一つの物事に対する恐れから複数の違った呪霊が生まれるケースがあるんだ。」

例えば。と言って俺は右手の人差し指を挙げた。

「海から生まれた妖怪がどれ程いるか君は知っているかい?海坊主。舟幽霊。磯撫。海女房。海難法師。それはそれは数えきれない程だよ。ま、それらに対する恐れが君の様な仮想怨霊を生み出すのだろうけどね。それはそうとして、僕の手持ちの中に面白い奴がいてね。紹介するよ。」

そう言って俺は左手をかざした。と同時に手の平から黒い球体が現れ、直ぐにパン!と弾けた。次の瞬間、俺の隣に黒き陰の溜まり場が噴出し、中から身の丈2尺と思しき大男が現れた。男は身を灰色の着物に包み、左手に杖を掴んで、背中には琵琶を背負っていた。顔は闇で覆われ、編み笠を被っている為表情は伺い知れず、頭は禿げ上がっていた。俺は、その坊主姿の呪霊の名を周囲に告げた。

一級呪霊海座頭。元々は準一級の呪霊だったんだけど、術式が判明してから一級に上げられたんだ。その術式とやらが随分と厄介でね。」

俺は何故か込み上げてくる笑い声を右手で抑えつつ、海座頭の術式を説明し始めた。

「此奴の術式は自身の呪力を消費することで琵琶を鳴らし、琵琶の音を聞いた相手の術式を一定時間消滅させるんだ。ま、消滅から復活までの時間は相手の力量によって左右されるけどね。」

一通り説明を終えた俺は隣にいた加茂さんに告げた。

「耳を塞いだ方が良いですよ。海座頭の術式の欠点は音を聞いた者に無差別に発動することだからね。」

「ありがとうございます。ですが、只野さん。あなたは…」

加茂さんはきっと俺が呪霊操術を失わないか心配なのだろう。顔にそう書いてある。この人はどこまでも優しい人だなぁと思いつつ、俺は彼を宥めるように言った。

「安心してくださいよ、加茂さん。使い手には術式はかかりませんよ。ですから大丈夫です。」

「本当かい?」

「本当です。あ、そろそろ海座頭の演奏が始まりますよ。耳塞いで下さい。」

そう言うと、加茂さんは言われた通りに両耳を両手でぎっちりと栓をした。その直後、化身玉藻前の領域内で、甲高い琵琶の音が響き渡った。海座頭は領域内の床にドカッと座り込んで一心不乱に琵琶を掻き鳴らしている。俺は楽器に明るくないのでわからないが、それでも心奪われる清らかな落ち着いた音だと思った。できればもっと聞いていたいなぁと思いつつも俺はそれが到底出来ない事だと分かっていた。琵琶の演奏が始まってから5分と経たない内に変化が現れた。突如としてバシュッと鋭い音が聞こえたかと思うと、これまで俺たちがいた清涼な御殿の様な空間が一瞬にしてボロボロに朽ち、枯れた暗い廃寺に相応しい寂し気な元の風景に様変わりしてしまった。俺は突然の変化に少し戸惑いつつも、直ぐ様海座頭を回収して左隣りの加茂さんの方に顔を向けた。加茂さんも変化に気づいているらしかった。

「奴の領域が解けましたね。」

「ええ、これで奴もお仕舞いです。海座頭の術式は先程言った通り、相手の力量に左右されるのですが、1分でも保ってくれれば充分です。」

「それで良いのですか?」

「えぇ、奴は領域展開を使っていますからね、結構呪力を食っている筈です。然も、この廃寺内では逃げ場も無いでしょう。一網打尽です。」

「そうですか、ならさっさと終わらせましょう。」

そう言うと加茂さんはニヤリと笑い、何かの構えを見せた。肉弾戦に持ち込むつもりだろう。更に、術式を発動させたらしかった。

       赤血操術 赤燐躍動

赤血操術では単に自身の血液の形状や運動を操るだけでなく、自身の体温、脈拍、果ては赤血球量などの血中成分までもを自由自在に操作することが可能だ。その特性を活かして体内の血液操作を行い、身体能力を爆発的に向上させるドーピング技が赤燐躍動だ。加茂さんの狙いは肉弾戦による短期決戦だろう。海座頭が化身玉藻前の術式を打ち消したとはいえ、それは一時的なものに過ぎず、直ぐに復活させられて仕舞う。そうすれば、またジリ貧の戦いを強いられる事になる。戦う時間が長引けば長引く程俺たちが消耗して劣勢になるだけだ。そんな勝敗の見え透いた勝負には俺たちとしては乗りたくない。ならば一気に決着をつける

に限る。加茂さんの考えを読み取った俺は脚に呪力を集中させた。既に化身玉藻前は俺たちの目の前で何もせずに唯浮いているだけだ。海座頭の術式が効いている証拠だろう。そう考えている時、廃寺の天井から小さな木の屑がポトリとおちた。それが合図になった。それまで無言で睨みあっていた俺たちは爆音と共に寺の床を蹴って化身玉藻前に向けて猛スピードで肉迫し、互いの距離を一気に詰めて奴の懐に潜り込んだ。術式を使えず、領域展開によって呪力を消耗していた奴はこの奇襲に対処することが出来なかった。そんな奴の腹に俺たちはほぼ同時に渾身の拳を叩き込んだ。

 

その時、俺たち二人の拳が赤黒い稲妻の様に輝き、命中の瞬間、空間が歪んだかの様に感じられた。俺はそれが何か直ぐに分かった。

 

         黒閃!!!

呪力と打撃の到達誤差10万分の1秒差で発生する現象。通称黒閃を二人同時に放ったのだ。実を言うと俺はこの廃寺に突入する前に加茂さんに対して黒閃を放つアドバイスをしていたのだ。黒閃を狙って出せる術師は存在しない。だが、ある程度発生させ易くさせることは可能なのではないか?俺は加茂さんの赤燐躍動に注目したのだ。赤燐躍動により、純粋な打撃のスピードを速めて呪力が追いつかない様にすれば、少しは黒閃を発生させ安いだろう。だが、唯速くするだけでは駄目だ。それでは呪力と打撃の10万分の1秒差を再現することは難しい。そう抗議した加茂さんに俺はこう提案した。ある程度の血液を他の体の部位に回して腕に送る分の血液を減らせば良いのではないか。加茂さんはぶっつけ本番の形で俺と同時に攻撃することになったが、運良く黒閃を発動させることが出来たのだった。しかも同時に。俺は正直言ってダブル黒閃にはかなり興奮した。恐らくだが、加茂さんも同じ気持ちだろう。二人の2.5乗の威力の拳を食らった化身玉藻前は盛大に吹き飛んで寺の向こうの壁に激突していた。…少し様子を伺ってみたが、動く気配は無い。呪力も殆ど感じられない。さてはこの攻撃で駄目になったかと思った俺は吹き飛んでいった奴の方にゆっくりと近づいた。警戒しつつ奴の姿を自分の目に入れた。奴はスッカリ弱っていた。これまで顔に浮かべていた人を小馬鹿にしたかの様な笑みはすっかり消え去り、6つの目の光はとうに消えかけている。そんな瀕死の化身玉藻前に俺は手をかざした。次の瞬間、化身玉藻前の体が急に歪み始め、細い糸の様に変化して俺の手の平に収束を始めた。かつて特級仮想怨霊だった糸の様なモノは俺の手の内にて暗く黒い球体となって鈍い光を放っていた。俺はそれを呑み込んだ。呪霊玉が口から喉を通り、胃袋に落ちた事を確認した俺は加茂さんの方に踵を返した。加茂さんは顔に笑みを浮かべている。さっきまで見開いていた目はすっかり閉じて元の糸目に戻っていた。浮かんでいたばつ印の傷も消えていた。その表情を見て俺はあぁ、もう戦いは終わったのだなぁと思った。長い様で案外短いものだったのかもしれない。俺は自分の時間感覚が常人とはかけ離れて酷いモノだと自覚しているので、

もしかしたらそれの所為かもしれないと考えて廃寺の穴が空いている天井から空を眺めて見ると…

空はすっかり夕焼けの色に染まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________解説

 

只野礼司

この度化身玉藻前をゲットした。やったね!本人は一人で思考を続けてきた為かかなり洞察力が高く、また日頃の加茂さんとの勉強のお陰か呪術に関して豊富な知識を持っており、初見の術式に遭遇してもかなり高度な予測を立てて戦う事が出来る。

早く極ノ番修得したいなと思っている。最近の悩みは上層部の嫌がらせが続く事。お陰で生傷が結構増えているし、睡眠もろくに取れていない。因みに自身を気遣ってくれる庵歌姫の事が好きだったりする。

 

加茂憲紀

この度黒閃を放った加茂家嫡男。やったねノリトシ!呪術の味を知ったよ!只野と同じく勉強好きでよく彼と一緒に勉強会を開いている。らしくない丁寧語を使って話すのは上層部の圧力に屈せず一人戦う彼の事をかなり尊敬しているから。只野が無理している事には薄々気付いている。

 

禪院直毘人

酒飲んで酔っ払い、ずっと寝ていた特別一級呪術師。実際は起きていて全てを見ていた。二人の実力を来た時から察知して只野が無理している事も一発で見破った老練の71歳当主。この後二人を一級呪術師に推薦する。

 

化身玉藻前

0巻に登場した個体の再発生版。

人の精神に干渉し、自由自在に操作する思惑操術を持つ。領域展開も修得している。

 

 

オリジナル呪霊

 

一級呪霊 海座頭

妖怪海座頭に対する恐れが生んだ呪霊。琵琶法師の様な姿をしており、目は見えない。その代わりに他の感覚が優れて。琵琶を鳴らす事で音を聞いた相手の術式を一定時間消滅させるという凶悪な術式を持つ。因みにこの術式はあの五条悟にも効く。

 

 

 

 

 

 

 




遅れてすみません!
因みに化身玉藻前の設定は捏造です。


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幕間 解説

戦闘ばかり続いたので一旦休憩です。
只野くんの解説に入ります!


只野礼司(ただのれいじ)に関する記述。8月11日更新。

 

只野礼司

性別男性

身長169cm。

体重58kg。

年齢17歳(2018年6月31日時点)

誕生日10月27日。

出身地京都府宮津市。

血液型AB型。

所属呪術高等専門学校京都校二年生。

階級準二級呪術師(現在一級査定保留中。)

術式呪霊操術

…極ノ番「うずまき」未修得。

現在使役する呪霊は1546体。(本人曰くこれでも未だ全然少ないらしい。)

内訳は特級呪霊2体。

一級呪霊(準一級呪霊含む。)21体。

二級呪霊(準二級呪霊含む。)35体。

三級呪霊400体。

四級呪霊430体。

蠅頭658体。

その内術式を行使出来る呪霊は以下の通り。

特級呪霊 炎鶏

特級仮想怨霊 化身玉藻前

一級呪霊 出世法螺

     手長足長

     胡蝶

     海座頭

     恙虫

     塗仏

     姑獲鳥

     雷獣

     ケラケラ女

     氷柱女

準一級呪霊 口裂け女

      思念象

      蟹坊主

      山天狗

      蛇蟲

      オクボ

      鮭の大助

      笑い入道

      灰汁坊主

      陰法師

      泥田坊

      蝙蝠男

尚、術式に関しての詳細な情報は最高機密の為開示せず。許可なく閲覧した者には厳罰が下される。

 

追記。8月13日更新。_____________

只野礼司には天与呪縛がある事が同級生三級呪術師三輪霞及び三年生準一級呪術師加茂憲紀の証言により判明。内容は推測のものになるが以下の通り。

一切の味覚を失う。

その代わりに呪力操作に関する天賦の才を得る。

そのコントロールの才能は五条悟の六眼に匹敵するものと思われる。

また、味覚が無くなった事により、呪霊操術最大の欠点であった呪霊玉の悪味を感じること無く呪霊を取り込むことが可能になると思われる。

その為、要調査の要ありと認む。

その他にも領域展延を使用可能である事が判明。

本人及び庵歌姫準一級呪術師の証言より、同級生三輪霞三級呪術師のシン・陰流簡易領域を見た事からインスピレーションを受けた事及び、書籍による情報収集により、修得に至った模様。

_______________________

家族関係

両親は既に三年前に行方不明になっている模様。

両親の間には只野一人しか子がいなかった。

両親の職業関係は不明。

現在「窓」が背後関係を調査中。

 

嗜好

同級生準一級呪術師庵歌姫、メカ丸及び補助監督らの証言により判明。

勉強。(特に加茂憲紀準一級呪術師と共にしている姿を確認。)

読書(特に二葉亭四迷の小説が好みらしい。)。

歌唱。(U ruの曲が好みらしい。)

カレーライスは嫌いな模様。

イメージソング

あたらよ「10月無口な君を忘れる」

Uru「プロローグ」

 

 

 

 

 

 

 

 




とても短くて申し訳ございません。ですがかなりの伏線を張っています。呪霊の術式がヒントです。


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