幼馴染との約束、故郷へ (ユフたんマン)
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プロローグ

「よし、俺が鬼だな!」

 

「「キャーー!!」」

 

子供の声が聞こえる。

 

「待てー!」

 

「って、どこ行くのよー!?」

 

「相変わらずの方向音痴…追いかけてるのに…?」

 

楽し気な少年少女の声が聞こえる。

 

「俺はマスタードさんやピオニーさんみたいなサイキョーのチャンピオンになるッ!!」

 

「いーや、チャンピオンには私がなるの!」

 

「ぼ…僕も強いチャンピオンになりたい…!」

 

「ならこの中で誰がチャンピオンになるか勝負だッ!」

 

「望むところよ!」

 

「勝負…勝負だ!」

 

子供たちで夢を語り合った。

 

「あれ?ダンデくんは?」

 

「なんか修行をしに行くって言ってヨロイ島にいったんだって」

 

「へー、すごいなぁダンデくんは…」

 

「私たちも負けてられないわ!私たちも修行しましょう!」

 

「うんッ!」

 

それぞれが一歩ずつ、夢へと歩き始めた。

 

「びぃぇぇぇえええええッ!!!痛いよーーーっ」

 

「ピカチュウにちょっとひっかかれただけで大げさよ、もう…痛いの痛いの飛んでけ~…どう?」

 

「…ぐすん、治ってない…」

 

「男の子なんだからそれくらい唾つけとけば治るわよ!あ、あんなところでワンパチがじゃれあってる~!かわいい~~!!」

 

「ほんとだかわいい!!」

 

「……傷痛く無いの?」

 

「なっ、なおった…」

 

町を走り回り仲を深め合った。

冒険があった。未知があった。発見があった。友情があった。

 

しかしそんな日常は唐突に終わった。

 

「…え?その話って…本当…?」

 

「…うん、お父さんの転勤が決まって他の地方に家族でついていくことになったんだ…」

 

「うそ…」

 

「だからチャンピオンになる勝負には勝てないや…ははは…」

 

「何笑ってるのよ!いやよ私はあなたとダンデと一緒にジムチャレンジして、トーナメントで戦って、ずっとずっと皆で一緒にいたい…!」

 

「泣かないでよ…笑ってバイバイしたかったのに…僕も涙が止まらないじゃないか…!」

 

子供たちは互いに涙を流し悲しんだ。落ち着いたのは十分後、気まずい雰囲気の中、少年は勇気を振り絞る。

 

「ソニアちゃん……!ぼ、僕、ソニアちゃんのことが…」

 

 

 

 

 

旅たちの日彼らは約束した。

 

「俺がチャンピオンになる!だからいつか強くなって帰ってきたら、チャレンジャーとして挑みに来るんだ!それで決着をつけよう!!」

 

「ちょっと!!私がチャンピオンになるんだからね!絶対に帰ってきなさいよ、じゃないと許さないんだから!」

 

「ははは、うん、強くなって絶対帰って来るよ。だからバイバイじゃなくて…」

 

「「いってらっしゃいッ!!」」

 

「うん!いってきますッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ジリリリリリリリリリリリリリリリリ

 

 

枕もとで目覚まし時計が鳴る。だるさが残る体を鞭打ち、喧しい音を鳴らす目覚まし時計を止める。体を起こしてグーッとひと伸び。洗面所に向かい、顔を洗うことでようやく目を覚ます。

 

「そういえば懐かしい夢を見た気がする…これも今日がアイツの帰ってくる日だから…なのかな?」

 

ソニアの視線の先にはアローラ地方からソニア宛に送られてきた便箋がある。便箋を送ってきた者の名はストック、かつてガラル地方から飛び立った幼馴染である。

 

「フンフンフ~ン♪全く、十年とちょっともかかるなんて遅すぎじゃないの?」

 

文句を言いながらも上機嫌に鼻歌をしながら朝食を作る。本人は自覚していないが、普段よりも豪勢な朝食になっており、服装にも気合が入っているように見える。

 

「おばあさま~!朝食できたよ~!」

 

「はーい、いつもご苦労様です。ん?おや、今日は随分と豪勢な…それにおめかしまで…ああ、そういえば今日は彼が帰ってくる日でしたね」

 

「ち、違うわよ!別にそういった理由はないんだから…」

 

「はいはい、ごめんなさいね」

 

全てお見通しとばかりにニコニコと微笑むマグノリア博士にソニアは顔を赤らめながらばつが悪そうに朝食を平らげる。

 

「洗い物は私がしておきます。ソニアはダンデ君を連れて空港に迎えに行きなさい」

 

「え、いいの?」

 

「はい、早くダンデ君を迎えに行ってあげなさい。また迷子になって飛行機に遅れてしまいますよ」

 

「うん、ありがとうおばあさま!!」

 

身支度を終えて元気よく走り出したソニアを見てふと…

 

(若さってものはいいものですね…)

 

そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュートシティ空港にて、無事にダンデを連れてこれたことにソニアは安堵の息を吐く。そんなソニアの気も知らないダンデは、一心不乱に電光板を見上げている。

 

「お、ちょうどアローラからの飛行機が着いたみたいだ!よし、改札口まで迎えに行こう!」

 

「ばっか!そんな人ごみの中突っ切ったらダンデ君また迷っちゃうでしょ!」

 

ダンデが着ているパーカーのフードを掴み静止させる。ぐえっとダンデは悲鳴を上げる。

 

「いやぁ、すまない。少しばかり浮足立ちすぎていたようだ」

 

「本当に気をつけてよね…ダンデ君を探すのも楽じゃないんだから…」

 

ガバッ!!

 

話していたダンデとソニアに覆いかぶさるように何者かに肩を組まされる。突然のことにソニアは恐怖で固まり、ダンデはすぐさま相棒が入っているモンスターボールに手が伸びる。緊迫した空気が流れる。しかしその空気はすぐに飛散することになる。

 

「アローラ!久しぶりだな二人共!元気にしてたか?」

 

聞き覚えの……ない声だ。恐る恐る顔を上げると、アロハシャツを着た青年が…

 

「いや、誰なのよあなた……え?もしかして…噓でしょ?もしかして…」

 

アロハシャツから覗く腹筋は綺麗に割れており、うっすらと肌が焼けている。髪の毛の色は黒色、すこし逆立っており、身長はダンデをも超えている。そして口調。合致している部分が一つしかない。

 

「驚いた…まさか俺より大きくなってるとは…!あの頃の面影はほとんどないが…」

 

「本当に…本当にストックなの?」

 

「ああ、帰ってきたぜガラルに…そして約束を果たすために、なぁチャンピオンッ!!」

 

ストックはモンスターボールをダンデに突き出す。

 

「とまぁ二人には言いたいことや聞きたいこと、アーカラの山のようにたくさんあるがその前に…

 

ダンデ君、ソニアちゃん、ただいま!!」

 

一瞬、大きくなったストックが、あの頃のストックと重なる。ダンデとソニアはキョトンと二人で顔を見合わせ…

 

「「おかえり!!」」

 

満面の笑みで答えた。




男子みっか会わざればなんとやら


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