ハイスクール・フリート ~転生の護衛艦~ (メトロえのしま)
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終わりと始まり 
プロローグ


皆さんこんにちは!(もしかしたらお久しぶりの方もいらっしゃるかも…w)
メトロえのしまです。
今回から、全く新たな二次創作を手がけることとなりました。
今までは鉄道関係のものを中途半端に書いておりましたが、本腰を上げて筆を取るのはかなり久々です。
さらに艦艇ものを書くのは私自身、初の試みですので…至らないところが多数出てくるかと思いますが、何卒お付き合いくださいますと幸いです。
それでは、早速本編へ参りましょう!!


~Side ???~

とある世界線 2007年 日本

 

あれはいつの話だろう。もう何年も前だから、詳しくは覚えていない。私の記憶が正しければ、自分が小学校に入ったくらいの頃だから、だいたい6歳辺りだろうか。

私には2人の幼馴染みがいた。私はその子たちといつも一緒に遊んでいた。それに、私たち3人には共通の夢もあった。

 

「もうすぐ通るよ。もかちゃん、はなちゃん!」

「うん!」

「早く来ないかな~♪」

 

あの時、私はその幼馴染み2人と一緒にある岬の上に立っていた。前方には青々とした海が広がっている。やがて、水平線の向こうから、一つの大きな影が見えてきて、やがて私たちはその姿に興奮する。

 

「キターー!!!」

一緒にいた一人の幼馴染みが、その興奮のあまり大声を発する。私たちが見たもの、それは…

 

 

戦艦「大和」であった。

 

 

あの洗練されたフォルムは、今でも脳裏にはっきりと残っている。その辺の船とは比べ物にならない、文字通りケタ違いの大きさ。あの姿を見れば、私たちのような状態にならない人はいないだろう。

 

「おーーい!おーーい!!」

その大和に向かって手を振っていると、こちらに気づいた乗員の一人が、かぶっていた帽子を取り手を振り返してくれた。船の姿もそうだが、その乗員さんたちの姿も凄くカッコよかった。私の…いや、私たちが目標にする存在だったのだから、尚更だろう。

「もかちゃん、はなちゃん。私たち、絶対ぜーったい、“ブルーマーメイド”になろうね!」

「うん!」

「もちろん!」

 

『ブルーマーメイド』

 

それは、海の安全を守り、海で事件・事故があった時には真っ先に駆けつける女性のエキスパート集団。例えていうなら、『海の警察』といったところか。パティシエや看護師さんなどと同じくらいかそれ以上に、女の子が憧れる職業だ。

 

「海に生き!」

「海を守り!」

「海を往く!」

 

「「「それが、ブルーマーメイド!!」」」

 

私はこの2人の幼馴染み、岬 明乃(みさき あけの)ちゃんと知名 もえか(ちな もえか)ちゃんと「ブルーマーメイドになる」という夢を誓い合った。あの時の私は、絶対にブルーマーメイドになれるという自信を持っていた。根拠はなかったけれど、この3人なら絶対になれる気がした。そう思っていた。

 

 

“あの日”が来るまでは…

 

~Side out~

 

 

別の世界線 20XY年 日本国 

 

この世界での日本が戦前から領有権を主張してきた「波留間群島」。そこは近年になって、世界の行方を左右する最前線の場所となってしまっていた。

数年前にベトナム北部の群島を領土とする「東亜連邦」と呼ばれる国家共同体が樹立。国家樹立にあたりロシアが経済面や軍備面を中心に協力をしたことから、建国からわずか数年で先進国並みの軍事力を手に入れ、その力を利用して過激な領有権主張と武力行使を繰り返してきた。

勿論そのような行為を世界各国が許すはずわけがなく、地理的な事情によりこの国際的な混乱の影響を受けやすい日本と、その同盟国であるアメリカを中心に幾度となく政治的な圧力をかけ続けてきたが、東亜連邦はそれを無視し続けていた。

 

時を同じくして尖閣諸島沖合では中国海軍がEEZ(排他的経済水域)内に侵入する行為を取り続け、さらには周辺海域の調査のために佐世保から出航した海上自衛隊の護衛艦「あたご」に対し、戦闘機が無誘導のミサイル射撃をぶちかますなどといった挑発を行ったことから両国の緊張状態は悪化に向かっていた。

そんな中で日本政府は、政権交代直後より自衛隊の護衛力を増加する目的で進めていた「ペガソス計画」の前倒しを強行。第二次世界大戦の敗戦以来1隻も保有していなかった「空母」を、先に就役していた「いずも」型の設計図をベースに2隻建造し、それらは「いぶき」「あかぎ」とそれぞれ命名。自衛隊創設以来初となる空・海共同運用となったこの2隻は、新しく設立された2つの護衛隊群の旗艦として、前者は横須賀へ、後者は佐世保へ配置された。

そして同じ年の9月より、まず第5護衛隊群の演習航海が伊豆諸島の鳥島沖で実施され、それの終了と入れ替わる形で第6護衛隊群の演習航海が太平洋上で行われた。

 

事態が急激に動いたのは、その演習航海が実施されている最中のことであった。

東亜連邦がいきなり「波留間群島」の実効支配を宣言。現場へ急行した海上保安庁の船を砲撃して乗組員を拘束した上、周辺空域を飛行する航空機は国籍関係なく撃墜する可能性を示唆するなど、今まで以上に固くなな姿勢をあらわにしてきたのだ。

これを受け日本政府は、太平洋上で演習航海中の「あかぎ」を旗艦とする第6護衛隊群を波留間群島へと向かわせ、群島周辺の制海権および制空権の奪還へと動いたのだった。

 

 4月5日 波留間群島沖合

 

この日の夕方頃、旗艦「あかぎ」と共に行動していたミサイル護衛艦「たかお」のSPYレーダーが、東亜連邦の空母から飛び立った戦闘機の集団を捉えた。このことは直ちに「あかぎ」及び市ヶ谷の防衛省等へ報告が行われ、間もなく「あかぎ」から全艦へ対空戦闘用意の命令が下された。

 

「たかお」のCiC (Combat Information Center 日本語訳「戦闘指揮所」)内部では、3人の士官が敵の位置などを表示するモニターを睨みつけていた。室内の暗さとモニターの明るさが入り混じった青白い光が、士官たちの顔を照らしている。

 

「一体ヤツは何機上げてくるつもりなんだ…」

副長兼船務長の半沢 智久(はんざわ ともひさ)二等海佐は、こちらへ接近してくる戦闘機のマーカーを見てそうつぶやいた。通常、空母艦載機の編隊は1つのグループにつき4機から5機程度で構成されるのだが、今回接近してきている戦闘機の数はなんと8機以上。複数の編隊が同時に向かってきている、ということになるのだ。

 

「この戦闘機が全て対艦ミサイルを撃ってくるとなると…我々だけで対処しきれるかどうか…」

半沢へ顔を向けてそう不安を漏らしたのは、この艦の戦闘を指揮する砲雷長の望畑 真(もちばた まこと)三等海佐だ。

この『たかお』を含めた日本のミサイル護衛艦は、ミサイル攻撃の指令をかける『イルミネーター』という装置が3つ搭載されているのだが、1つの装置につき敵を1度に対処できる数が決まっており、日本のミサイル護衛艦が1度に対処できる敵の数は10発程度。これに対し敵戦闘機が1機あたり搭載しているミサイルの数は2基。敵戦闘機がミサイルを全て撃ってくるとなると、『たかお』のミサイルだけでは艦隊を守りきれないのだ。

 

すると、2人の間に座っていた女性士官が檄を飛ばした。

「2人とも、何も私たちだけでこの戦闘機の群れを対処する訳じゃないんだから。冷静に判断して、『あかぎ』を守り抜こう」

この言葉に2人は「はい!」と言って再び目の前のモニターに向き直った。この檄を飛ばした女性士官が、『たかお』の艦長を務める羽村 七海(はむら ななみ)一等海佐だ。

平成の時代に突入すると、日本国内では女性の社会進出が叫ばれた。2000年代になると新幹線運転士に女性が登用され、政府も国務大臣に女性を積極的に選ぶようになった。自衛隊も例外ではなく、今では潜水艦を除く全ての艦艇に女性が最低3人以上配置されることとなっている。羽村は自衛隊における女性活躍の第一人者で、同期の2名を含め、現在は3名の女性士官が護衛艦の艦長を務めている。

羽村は再び目の前のモニターを見た。マーカーの数を見るに、戦闘機の数は12機だと推察した。だが先述の通り戦闘機には2つのミサイルが搭載されているため、艦隊に向かってくるそれは24基。ミサイルだけ撃つようでは間に合わない。かと言って自分たちから先に砲を向けることもできない。

 

「先程の航空機、右旋回を開始!ミサイル発射の可能性が高い!!」

レーダーを見張っていた士官から報告があがった。戦闘機はミサイルを発射したあと、回避行動を取るため旋回をするのだ。この右旋回が回避行動だとするならば、戦闘機はミサイルを放ったことになるのだ。

「目標探知!120°方向12機、『あかぎ』に接近するミサイルと思われる!」

 

レーダー画面に、戦闘機とは別のマーカーが新たに浮かんだ。戦闘機がミサイルを放ったと見て間違いない。羽村は望畑へ命じた。

「よし、始めよう!」

望畑はそれに応えるように声を張り上げた。

「対空戦闘!CiC指示の目標!SM-2攻撃始め!!」

『SM-2』は艦隊防空用のミサイルで、戦闘機や相手の船から放たれた対艦ミサイルを迎撃するためのものだ。

「発射用意…てぇー!!」

『たかお』の前甲板にあるミサイル発射装置『VLS』から次々と発射されていくSM-2は、敵のミサイル目掛けて飛んでいく。僚艦からもミサイルが発射され、同じく敵のミサイルへと向かう。レーダー画面には、敵のミサイルと『たかお』達が発射したミサイルのマーカーが急速に接近する。

「インターセプト(命中) 10秒前!!」

羽村たちは何も言わず、ただレーダー画面を見つめていた。やがて近づいていたマーカー同士がぶつかり、一気に消えていった。

「マークインターセプト!」

迎撃が成功した報告を受け、望畑は「よしっ!」と言う声とともに小さくガッツポーズをする。

「まだ早い!まだ向こうの半分しか来てないんだから、気を抜かないで!」

羽村は望畑を注意した。望畑は気を落ち着けると再びレーダー画面を注視した。敵のミサイルは計24基のうち、残りの12機がまだ来ていない。レーダー画面には艦隊へぐんぐん接近してくる戦闘機のマーカーが写っている。これ以上接近されると厄介だと考えた矢先、SPYレーダーが残りの戦闘機がミサイルを発射したことを捉えた。

「主砲攻撃始め!EA攻撃始め!」

望畑はすかさず主砲弾の発射と、敵のミサイル誘導を妨害する電波を発するよう命じた。甲板上では主砲の『127mm単装速射砲』が敵ミサイルの方向へと回頭していく。

「主砲、撃ちぃ方ぁ始めぇ!!」

CiC内部の砲術士がコントローラーを操作すると、主砲は轟音をたてながら大きく火を噴いた! 発射された主砲弾は敵ミサイルへと飛んでいき、1基、また1基と少しずつ撃ち落としていく。

しかし、ここで想定外の事態が発生した!

「4発がさらに突っ込んでくる!!」

主砲弾による迎撃をする抜けた4発の敵ミサイルが、艦隊目掛けて突っ込んできたのだ!

「砲雷長、CiWSだ!CiWS使え!!」

半沢は声を裏返らせながら望畑へ叫んだ。

「CiWS、攻撃始め!!」

船の前部にある20mm機関銃がチェーンソーのような音を放ちながら迎撃を開始する。羽村は自身が愛用している懐中時計、迎撃成功を祈るかのように左手で強く握りしめた。

「1基撃墜!残り3基、真っ直ぐ近づく!!」

「爆発閃光およびミサイル視認!右90°真っ直ぐ近づく!!」

1基の迎撃に成功したものの、残りの3基がまだ残っている。艦隊との残距離も近い。早く全て落ちてくれと全員が願ったその時、艦橋から絶望的な情報が届いた。

「『はつづき艦橋付近より爆発閃光!被弾した模様!!」

僚艦の汎用護衛艦『はつづき』にミサイルが着弾した。はつづきは大きな爆発をあげると、みるみるうちに速度を落としていった。

「ミサイル、来ます!!」

残りの2基のミサイルは、『たかお』へ向かってきている。羽村は最悪の事態を想定して、乗員へ命令を下した。

「総員、衝撃に備え!!」

その言葉を合図に、全員がその場に伏せて頭を守る姿勢を取った。

次の瞬間、艦内に激しい揺れがおこり、モニターや照明のほとんどが電源を落とし、わずかに残ったそれらがかすかな光を放つ。ほとんどの乗員は気絶し、無惨にもその場に倒れている。

羽村は頭を2回強打したため、椅子から崩れ落ちている。だがすぐに気絶はせず、なんとか意識を保っていた。左手に握っていた懐中時計を開き、中にはめ込んであった写真を見た。そこには、軍艦をバックに笑顔を見せる、3人の少女が写っていた。羽村はそれを見て涙を一筋流すと、ゆっくりと瞼を閉じた。

 

2016年 4月5日、海上自衛隊の『なち型ミサイル護衛艦 たかお』と『あきづき型汎用護衛艦 はつづき』は、太平洋上にて力尽きた。1度に約500名もの自衛隊員の命が奪われたこの戦闘は、日本どころか世界中に大きな震撼を与えた。そしてこの戦闘を受けてアメリカの共和系大統領が、在日米軍の波留間群島沖派遣を表明したことから「戦争が始まるのではないか」という長期的な国際混乱へと発展していくこととなった…。

 

 

 

 

冒頭の世界線 2016年4月6日 日本 太平洋

 

伊豆諸島の南、鳥島沖を航行する1隻の船がいる。

将来の『ブルーマイメイド』隊員を育てるための専門高校『横須賀女子海洋学校』所属の実習艦『陽炎型駆逐艦 晴風(はれかぜ)』である。

艦内では、実習中の生徒たちが困惑の渦に巻き込まれていた。

この『晴風』は、クラス31名と猫1匹を乗せ、鳥島沖で行われる演習に向かっていた。しかし、航海長の知床 鈴(しれとこ りん)が針路を誤り、そこへ艦の心臓とも言えるボイラーが故障。予定より3時間遅れて演習海域に到着したところ、担任の古庄 薫(ふるしょう かおる)が乗る教官艦から実弾砲撃を喰らい、慌てて謝罪の電文と通信を送ったものの問答無用で撃たれ続けた為、艦長の判断で模擬弾の魚雷を発射。命中させて戦闘能力を喪失させ、この鳥島沖へ逃げてきたというわけである。

「…それにしても、あの砲撃は何なんだったんでしょう?」

主計長の納沙 幸子(のさ こうこ)が呟いた。遅刻したとはいえまだ未成年の生徒に対して、警告も無しに実弾を放つなど本来ならあり得ない話だ。

「ちゃんと逃げられるかどうかの抜き打ち特訓だったんじゃない?」

「確かに、その可能性も無くはない…」

そこに、水雷長の西崎 芽依(いりざき めい)と、副長兼砲雷長の宗谷 ましろ(むねたに ましろ)が加わる。

「それにしては本気すぎだよぉ…」

「はうぅ…」

航海長の知床 鈴 (しれとこ りん)と、砲術長の立石 志摩(たていし しま)は、あくまで否定的な立場をとっていた。入学してまだ間もない生徒の命を、いきなり危険に晒すようなことをするだろうか、という考えだ。すると、納沙が素っ頓狂なことを言い始めた。

「もしかして、『さるしま』がクーデターを起こしたとか!?」

『さるしま』とは、担任の古庄が乗っていた教官艦の名前である。

「我々はぁ、ブルーマイメイドの教官艦というちっぽけな存在ではない!宣言するッ!我々はぁ『独立国家 さるしま』ァ!!」

「真面目に考えてるのか!?」

納沙のボケに、宗谷の冷静なツッコミが入る。

「でも、大きな怪我の子が出なくて良かった。みんな、かすり傷程度みたいだし」

茶髪のツインテールに制帽を被った女子…艦長の岬 明乃だ。彼女は幼馴染みの1人である知名 もえか(知名 もえか)と共に、この横須賀女子に入学した生徒だ。本当はもう1人の幼馴染みと合わせて3人で入学するはずだったのだが、その幼馴染みは数年前の自然災害により故人となってしまったため、それは叶わぬ夢となってしまっている。

 

「被害状況をまとめたら、学校に報告した方が良いよね?」

岬は、学校と音信不通になっていることを心配していた。これでは、こちらの状況を伝えることができないし、逆に学校から指示を受け取ることもできない。

「どれだけ叱られることか…」

副長の宗谷が、学校からの叱責を恐れてため息をついた時、艦橋内にブザー音が鳴り響いた。

「あ、無線ですね?取りま〜す!」

納沙が無線通信用の受話器を取り、内容を把握する。宗谷がボソボソと独り言を述べていると、納沙の顔が徐々に青くなっていき、

「…大変です」

と小さく一言だけ発した。

「え?」

上手く聞き取れなかったのか、それとも何が大変なのか知りたいのか。岬が聞き返すと、納沙は切羽詰まった声でこう叫んだ。

「『晴風』が…我々の船が、反乱したって…!!」

「反乱!?」

「っ…!?」

艦橋にいる全員が絶句した。先に攻撃してきたのは向こうじゃないか。なのに何故自分たちが反乱者扱いを受けることになったのか。状況に対する理解が追いつかない中、見張員の勝田 聡子(かつた さとこ)から緊迫した声で報告があがる。

「前方に艦影2隻!距離5000ぞな!!」

岬たちは大慌てで双眼鏡から前方を覗いた。そこには見かけの全長が160〜170mほどで、前部に「178」と記した艦と、見かけの全長が150mほどで、前部に「119」と記した艦の2隻の姿があった。どちらも全体が灰色に塗られている。

「あんな船、見たことない…」

岬は恐怖で言葉が出なかった。早くも自分たちが拿捕されてしまうのではないかと。

しかしこの2隻の艦との遭遇が、『晴風』の運命を大きく変えることになるのだが、それはまだ誰も知らない。




約2年ぶりの執筆となります今作は、お読みいただいた通り「ハイスクール・フリート」が元の物語となります。
一言でいうならば、「はいふりの世界に自衛隊の艦艇がお呼ばれされたらどうなる?」という感じです。先駆者の先生方も数多くいらっしゃる中、そこそこな後発となりましたが、無事完走できるように頑張っていきたいと思います!

1年ほど前から執筆活動と、それに必要な資料集めを行なってきました。
既にご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、この作品に登場する護衛艦「たかお」と「はつづき」はどちらも架空の護衛艦です。脚本制作当初は実在の護衛艦「きりしま」と「あさひ」を登場させる予定でしたが、作品上とはいえ実在の護衛艦を沈めるのに抵抗を感じまして、このような形となりました。
この2つの護衛艦『たかお』と『はつづき』については、後々ご紹介したいと思います。
また『たかお』の砲雷長である望畑 真 三等海佐ですが、この人物は私が普段お世話になっている方の友情出演となっております。
こちらは普段からYouTubeにて鉄道関連の動画投稿とライブ配信をされておられる、もっちバターさんのご出演です。
もっちバターさんのYouTube
https://m.youtube.com/channel/UCAtrvGtpHSwZfChH5ajIULA

同Twitter
https://mobile.twitter.com/mochi_beat
前々からもっちバターさんのライブ配信内にてこの小説の宣伝と近況報告を行わせていただいておりましたので、その返礼品(?)として登場人物の中に混ぜ込ませていただく運びとなりました。こちらも合わせて御礼申し上げます。

さて次回は晴風の前に現れた艦艇と、ミケちゃんの過去について触れていきたいと思います。
既に勘づいた方もいらっしゃるかと思いますが…あまり詮索しないでくださいね(苦笑)
次回はいつになるでしょう…なるべく早いうちにお見せできるように頑張ります!
それでは、また次回お会い致しましょう!!


(追伸)
海自と言ったらやっぱりジパングだと思うんですよ


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第一話

〜都内某所〜

納沙「まだ、この会見場には現れていませんねぇ…ちょっと遅れているようです」

\パシャパシャパシャパシャ…/

納沙「あ!来ました!!」

馬鹿「え〜本日は、お忙しい中、え〜。お集まりいただき、ありがとうございます。え〜この度の、最新話投稿における、遅延につきまして、え〜。関係者を代表して、筆者の私、メトロえのしまより、謝罪と…釈明会見を、執り行わせていただきます」

\パシャパシャ…/

馬鹿「え〜まずは、その〜…1ヶ月以上もお待たせして、すみませんでしたァ!!」

\パシャパシャパシャパシャ…/

\コーン!!/

望畑「質問よろしいですかぁ?」

馬鹿「あ、はい。どうぞ」

望畑「あの〜、まずは今回の事態に至った経緯を教えて欲しi…」

馬鹿「ウオォォォォォォ!!!((号泣)」

望畑「おい!泣くの早えよ!まだ何も聞いてねえよ!!」

馬鹿「ウェー、私は、プロローグ上げただけで、UA数が298件、お気に入り登録16件もいくだなんて思ってなくて!本当に、読者の皆様には、感謝の気持ちで、っぱいデェヨッホッホッホ~!!」

馬鹿「でもまた!スーツ着た、学畜の大人どもに目をつけられ!そうかと思ったら、突然乗ってた電車が人身事故起こすし!!ワクチンに至っては、副反応が全然治らず!!」

馬鹿「でもね!皆さんに何がわかるって言うんですか!副反応の何がわかるって言うんですか!!」

望畑「何言ってんだかよくわかんないんですけど!?」

馬鹿「ですから、私がこの場で、皆さんに申し上げたいことは!! こんな感じだよォ~!! オ~↑ オ~↓!!」

馬鹿「…今謝ったんで、第一話、始まりま〜す((キリッ」

望畑「っざけんなぁ!!」((パイプイス投球

馬鹿「ジュントッキュウ!!」((直撃


〜羽村 Side〜

 

「…ん、んん…」

気がついたら私は、どこかにうつ伏せで寝ていた。いや、倒れていた?どちらにしても見た目は同じだからどっちでもいい。少しずつまぶたを開けると、筋のように真っ直ぐとした光が、起きろと言わんばかりに差し込んでくる。まだ視界がぼやけていて自分がどこにいるのかわからないけど、大体の予想はつく。

あぁ、私は遂に天国へとやって来たのか。

あの後、艦隊はどうなっただろう。『あかぎ』に被害はないかな。波留間の奪還はできたのかな。乗員のみんなもこっちに来てるのだろうか。だとしたら『はつづき』のみんなもいるよね。あの艦長とは同期だから仲良かったのに…取り返しのつかないことをしてしまった。一自衛官としてみんなを守れなかったのは本当に申し訳ない。もし会えたらすぐに土下座してでも謝らなきゃな…。

 

そうこうしているうちに目の焦点が定まってきた。薄暗い部屋の中、目の前には大きなモニターがいくつもの機械と一緒に青白く光っている。そしてその上にはオレンジに光るボードがあって…アレ?この風景なんか見たことあるんだけど。というかさっきまで私ここに居たよね。CiCでしょここ。もっと言えば、私が死んだのここじゃん。

あぁそうか。『たかお』も一緒にこっちへ来たんだね。ごめんね、あなたを守ってあげられなくて…。本当は私、天国に来ちゃいけないよね。乗員のみんなも、そしてあなたのことも、私が殺してしまったようなものなんだし。アハハ……。

そう言えば、あの時右手に握ってた懐中時計。どこかにいっちゃってたりしないかな…。あ、艦長席にある。アレだけは失くしたくなかったんだよね。私の大事な思い出だもの。

アレ?何か変な感じがするな…。艦長席ってこんなに高かったっけ。それに座ってるとなんだか足が変な感じ。ついさっきまではドッカリと座れてたのに、なんだか足が床にしっかりつかないな。私ってそんなに身長低かったっけ。それにモニターとかも少し顔を上げないと見えづらいような…。

 

「あぁ、艦長!お目覚めになられましたか!良かった…」

 

後方からいきなり誰かの声。驚いて振り向くと、そこには青のつなぎを着た、見た目10代半ばくらいの少年が2人並んでいた。

え、どちらさまですかあなたがた。こんなイケメンこの艦に…って言ったらみんなに失礼なんだけどさ。ていうか本当に誰?

「そのお顔は「お前誰?」って感じですね…。私は護衛艦『たかお』副長兼船務長の半沢 智久二等海佐であります。」

「同じく、護衛艦『たかお』砲雷長、望畑 真三等海佐であります。失礼ですがあなたは、羽村艦長でお間違えないですよね…?」

え、2人ともこんなに若かった?いやもっちくんはウチの艦の中だと若い方の部類になるんだけどさ。こんなに背丈低くないし、声も高くないでしょ。

「え、えぇ。私は羽村 七海で間違いないわよ。そっちこそ、本当に半沢くんと望畑くんなの?」

「はい、間違いありません。いやぁ、しかし…」

「やはり艦長もお姿が変わられていると…」

え?自分の姿?私そんなに見た目変わってます?? しばらく自分の体を眺めてみる。言われてみれば確かに気持ち足が短くなっているし、手も少し色白くなってツヤが増してるような…いや私はそんなに老けとらんわい。でも小さくなった半沢くんと望畑くん共々、明らかに何かおかしい。嫌な予感がしてくる。

「あ〜、あ、あ、あ〜…テステス」

うん、私も声高くなってる。この感じの声は10代の頃にそっくりだ。もう目の前のモニターを見ることすら怖いんだけど…。そっと見てみよう。そっと。

「…な、なにこの顔!?若返ってる!?」

そこには自分ではない誰かの顔が反射されていた。いや自分の顔ではあるんだけど、これは間違いなく中学を卒業した辺りの見た目じゃん。なにこの展開、怖すぎるんですけど。

驚いてふっと振り返ると、半沢くんと望畑くんが私をじっと見つめていた。そんなに見ないでよ恥ずかしい…。

「な、なにこの状況!?」

「それが我々もさっぱりですよ…起きたらこの体になってるし、他の人たちもみんな子供の姿になっているし。まるで訳がわかりません」

安心してもっちくん。私も訳わかってないから。

「他のみんなも?」

「えぇ。士官たち以下、乗員全員がこんな若くなっちゃってて…とりあえず副長の判断で他の艦や市ヶ谷に連絡を取ってみたんですが、応答があったのは『はつづき』だけ。しかも向こうも同じような状況になっているらしく…」

「『はつづき』がいるの?」

「目の前のモニターをご覧いただければ」

半沢くんにそう言われたので見てみると、そこにはこの艦を示すマーカーの右隣に、「119 HATSUZUKI」と表示されたマーカーが浮かんでいた。なにこれ、マジじゃん。

「…意味がわからないけど現状はとりあえず理解した。『はつづき』も混乱しているはずだから、こっちは一旦士官のみんなを集められるだけ士官室に集めて。すぐに」

「士官室に集められるだけ…ですか?」

「とりあえず今どういう状態なのか把握しないと。なるべく早くお願い。あと半沢く…いや、副長。私たちがいない間、ここの指揮をお願い。いいね?」

「は、はい!」

今ある情報をできるだけ多くかき集めなきゃいけない。私は目の前のモニターに浮かぶ、自艦と『はつづき』のマーカーを数秒見つめた後、CiCの外へ出た。

 

〜Side Out〜

 

〜 数十分後… 〜

 

羽村と望畑を含めた士官たちは、CiCを任されている半沢と艦橋を取りまとめている航海長を除いて、全員が士官室にいた。

みな、中学から高校生くらいの見た目に変わってしまっている。この状況を受け入れることなどできるはずなどないが、これは夢ではない。

とにかく事を進めなければならないため、羽村は情報を集めようとする。

「『はつづき』も同じ状況なのよね…。乗員以外で何か変わったことはある?」

「私から報告いたします。先の戦闘で消費したはずの魚雷やミサイルなどの武器の数が、どう言う訳か増えていまして…」

「私からも!食料などがなぜか減ってないんです…そこそこの量を消費していたんですが…」

「機関長より申し上げます。簡潔に述べますと…燃料の残量が上がっています!」

次々上がる報告に、羽村は困惑の表情を浮かべた。

「物資が全部減ってない…?具体的には?」

「佐世保を出港する際に補給を行いましたよね。その時と同じです」

「要するに満タンってことね…一体どこから出てきたのよ……」

そんなのわかる訳ないじゃない、と心中でノリツッコミをする羽村。

「そういえば、今の現在地点はわかる? ここまで状況が不一致だと、位置も変わってると思うけれど…」

「現在、『はつづき』と共同で調べています。『あかぎ』や佐世保の司令部、市ヶ谷には変わらず通信を試みていますが…いずれも返答がありません」

半沢の答えに、羽村はもう頭を抱えるしかなかった。

対艦ミサイルが直撃して容姿が変わったと思ったらお次は物資の数が増え、僚艦との連絡は取れず救援要請もできない。もはやお手上げと言っていい状況だ。

「…とにかく、今は現在位置の特定と周辺状況の確認を最優先させましょう。続きはそれから。みんなそれでいい?」

士官たちは口を揃えて「はい」と返したが、彼らも、そして羽村も。こう言うしかなかったのだ。いかんせん他に打つ手が無いのである。

 

会議を終え、痛みを抱える頭を気にしながら歩く羽村とそれを心配する望畑がCiCへ戻った時、事態は動いた。

「水上レーダー反応!左90度に艦影1、リンク16およびIFF(敵味方識別信号)、いずれも応答なし!」

「CiC、艦橋!左90度方向に艦艇1隻視認!まっすぐ近づく!!」

「FC(レーダー)系は出てる!?」

「現時点では何もありません!」

CiCの空気は凍りついた。もしや、東亜連邦が新たな船を出してきたのか。羽村と望畑は駆け足で所定の席に座った。

「艦長、配置につけます!」

「うん、お願い。」

「対水上戦闘用意!!」

半沢は号令をかけると、机上にある「一般警報」のスイッチを押した。艦内は鳴り響く警報音とともに、自分の持ち場へと乗員たちが急いでいた。見た目は変われど、中身は海上自衛官のまま。みな黙々と戦闘の準備を行なっている。ただ、身体状態が変わってしまったこの状況下において、まともな戦闘ができるか不安ではあるが。羽村は状況確認のために艦橋へ通信を取った。

「艦橋、CiC!一体どんな船が来てるの!?」

すると、艦橋からは素っ頓狂な返事が飛んできた。

「東亜連邦の船でないことは間違いありません。間違いないんですが…どこの船なのか見当がつきません…」

「見当がつかない?そんなわけないだろう!」

望畑が苛立ちを露わにする。

「本当かどうか信じてもらえるか…接近中の艦艇は、戦前につくられた旧日本海軍の駆逐艦のような見た目をしています!」

「旧日本海軍の駆逐艦だと?何を訳の分からないことを…」

羽村は「なんの漫画の世界観だよ」と思いつつ、軽く手を挙げて望畑を制した。

「待って。その駆逐艦はどんな見た目をしてるか、確認できるか?」

「…5インチ程と思われる連装砲1門、小型の航空機と思われる物体2基、艦橋窓の下部分に赤のラインあり、艦番号は…Y-467!」

その言葉に、羽村は驚愕の表情を浮かべながら顔を上げた。そして隣の半沢と目を合わせた後、こう述べた。

「副長、ちょっとここを頼みます」

「え、いやしかし艦長、今は非常閉鎖中…」

突然の事態に戸惑う半沢。

「すぐ戻るから。ごめん、お願い」

羽村は半沢の言葉を遮ると、CiCから飛び出した。

 

〜羽村 Side〜

 

さすが戦闘配置中…誰もいない…。何度か足早で移動したことはあるけど、戦闘配置中にCiCの外へ出たことは無いから少しビックリ。いや普通の人はそんなことしないから当たり前なんだけど。

しかし閉鎖中の扉を1枚ずつ開けて閉めてを繰り返すのは余計に体力使うな…背丈が小さいから余計に力を入れる必要があるし。

やっと着いた艦長室。配置が変わってないなら、あの中にあるはず…。デスクの一番下の、資料をまとめてある引き出しに冊子が混じって…発見。この真ん中あたりのページに確か…。

「12.7センチ主砲、艦橋下に赤のストライプ、Y-467…!!」

頭の中で立てていた仮説が全て確信へと変わる。相手と砲弾の応酬など嫌よ。早くCiCに戻らないと。

「いかんいかん、冊子を持たないと意味ないじゃん…」

ここへ来た理由がわからなくなるじゃない。何してんのよ私…。あ、わかりやすくなるように付箋を貼っておこう。

 

〜Side Out〜

 

息を切らした羽村がCiCへ戻ってきたのは、彼女がここを飛び出してからわずか数分のことであった。

「艦長!どちらへ?」

「ちょっと艦長室に。それより副長!相手艦はまだ発砲していないな!?」

「あぁ…はい!まだ向こうも我々も攻撃はしていません!!ですが、呼びかけに応答しません」

「無線に反応しないと?」

「はい。『はつづき』と共に何度か通信を試みましたが相手からの反応がありません。国V (※国際VHFのこと) もダメでした」

「…了解」

羽村は無線機を手に取った。

「Hull Number Y-467. Hull Number Y-467. This is Japan Navy. This is Japan Navy. We observed that you are approaching to us. What is the purpose of your act? over.」

英語で呼びかけるも、応答がない。

不明艦が旧日本海軍のそれと酷似していることはさておき、軍艦に乗るような人間が英語での呼びかけに反応しないなど通常はあり得ない。

現代の軍隊 (※自衛隊も含む) は、自国以外の様々な国の軍隊と合同で演習を行うことがあるからだ。仮に不明艦の乗員が英語を理解できていないとするならば、どこかの軍に所属するものではなく海賊である可能性が高くなる。

だが、羽村だけは先方に英語が通じないことについて、1つ心当たりがあった。羽村はそれに賭けた。

大きく息を吐くと、今度は日本語でこう呼びかけた。

「…こちらは日本国海上自衛隊、護衛艦『たかお』である。そちらは横須賀女子海洋学校の航洋直接教育艦『晴風』であるか?」

この言葉に、CiC内部の乗員はみな困惑した。

聞いたこともない学校名と艦名である。この人は一体何を言っているんだと言わんばかりの表情をしている。

「こちら『はつづき』。羽村艦長、アンタ何を言っているんだ?」

『はつづき』の艦長から説明を求める無線が入るが、羽村はそれに答えない。ただじっと、不明艦からの応答を待った。

そしてついに…。

「…こちら、横須賀女子海洋学校航洋艦『晴風』です。」

少しばかり震えた少女の声。

羽村は「きた!」と心の中で叫ぶと、無線機を握りしめた。

「こちら『たかお』。君たちは『晴風』の乗員で間違いないのね!?」

「…はい、私たちは『晴風』の乗員です。…あの、あなた方は『ブルーマーメイド』の方たちとは違うんですか?」

「それについては、残念だけど今はまだお答えできない。そちらの艦長と直接お会いして、対談がしたいわ。その内容次第では、こちらの情報をそちらに開示しても構わない」

少し間が空いた後、『晴風』から回答が来た。

「…わかりました。艦長と副長がそちらへ向かいます」

「いや、こちらの艦長2人でそちらに向かうわ。内火艇で向かうので、受け入れの準備だけお願いしたい。『はつづき』、それで良いか?」

「え?あ、は、はい…」

『はつづき』を勢いで押し切った羽村は、対水上戦闘用具収めの令をかけると、内火艇を準備するよう伝達し、再びCiCを後にした。

 

 

「…なぁ、羽村。なんであの艦について詳しく知ってんだよ」

『たかお』が用意した内火艇の上で、『はつづき』艦長の平井 翔太(ひらい しょうた) 1佐が問う。羽村と平井は同期生で、一般幹部候補生学校に入校した時からの仲である。

「お前が無線で口にした学校。あんな名前の学校、俺らは見たことも聞いたこともない。何で知っているんだ?」

平井が問い詰めるも、羽村は表情を一切変えずに無言を貫く。

「…質問を変える。お前、一体何者なんだ?」

わずかに羽村の眉が上がる。

「…ごめん、今はまだ」

「…遅かれ早かれ、説明はしてもらうからな」

羽村と平井はそれ以降何も話さず、目の前の『晴風』を見つめた。

 

 

「艦長!『たかお』と『はつづき』の艦長がお見えになりました!」

羽村と平井の乗る内火艇が、『晴風』の横に到着する。

『晴風』艦長の岬は、小刻みに体を震わせていた。

「(…やっぱり、実際会ってみるとなると少し怖いな…。『かいじょうじえいたい』って言ってたっけ。聞いたことない名前だけど、大丈夫だよね…?)」

元々、自衛隊との対談については乗員の中でも反対意見が上がり、特に西崎は

「攻撃して向こうが動けない間に逃げようよ!」

と言い出したくらいだ。

しかし、岬は対談を承諾した。

「いきなり私たちを拿捕すると言ってきた訳じゃないんだから、受け入れようよ。話してみないと、何もわからないままだよ」

この言葉に、西崎たち反対派も渋々ながら納得したのだ。

 

やがて、外から複数人の足音が聞こえてきた。ついに対面だ。

岬は気持ちを切り替えようと両手で1、2発頬を叩くと、制帽を被り、その時を待った。

 

「初めまして。自分、日本国 海上自衛隊 護衛艦『たかお』艦長の羽村 七海一等海佐であります」

「同じく、日本国 海上自衛隊 護衛艦『はつづき』艦長の平井 翔太一等海佐であります」

羽村と平井は、敬礼をしながら自らの名と役職を名乗った。

「航洋艦『晴風』副長の宗谷 ましろです。そしてあちらが…」

宗谷がそう言いかけた時、岬は目を見開いたまま動かなくなった。

「はなちゃん…?」

誰も聞き取れないようなそのか細い声に反応したのは、羽村だった。

「…え?う、嘘…ミケちゃん…?」

岬は小さく一歩、また一歩と羽村へと近づいていく。

「はなちゃん…?はなちゃんだよね!?」

「う、うん…そうだよ。七海だよ…!」

その言葉に、岬は顔を真っ赤に染めながら羽村へ抱きついた。

「はなちゃん!ごめん!!ごめんねぇ!!」

羽村は一瞬、目の前の状況が信じられずに呆然としていた。

だが、抱きついてきた岬の温もりを感じ取ると声を殺して泣き出し、2人ともそのまま膝をついた。

平井や他の『晴風』乗員は、呆気に取られた様子で2人を見つめていた。

 

 

「…ごめんねはなちゃん、いきなり飛び込んじゃって…」

「ううん、こっちこそごめん…泣いちゃったから、制服濡らしちゃって…」

数分後、やっと涙が収まった2人は抱き合っていた互いの体を離した。そして岬は、羽村に改めて尋ねる。

「それで、はなちゃん。その着てる服にも書いてある『海上自衛隊』って、何の組織なの?」

「なぁ羽村。こっちも理解が追いついてねえんだから説明してくれ。何だよ『ブルーマーメイド』って」

「え…?あなた、『ブルマー』をご存知ないんですか?」

「それはこっちのセリフですよ。日本人なのに、我々『自衛隊』を知らないだなんて。というか、どうやったらこんな駆逐艦が動けるようになるんです?第一陽炎型は…」

平井と宗谷が軽く口論になるが、羽村はそれを抑えた。

「それについてなんだけど、少しいいかな。これは、私の推測でしかないんだけど…」

「…はなちゃん?」

 

 

「「「異世界転生!?」」」

羽村を除いた艦橋にいる全員が、異口同音を口にした。

「じゃあ、あんた達はこことは別の世界から来たってこと!?」

「そんな幼児向け読本みたいな話あるかよ!?」

羽村は頷く。

「私たち『自衛隊』と、ミケちゃんたちの『ブルマー』が同じ環境下にいることなんて、本来はあり得ないの。だって、こっちの世界に『自衛隊』は存在していないし、逆に向こうの世界にも『ブルマー』は存在していないから。でも、今私たちはこうして顔を合わせている。となると、私たちがこっちの世界へ飛ばされてきた…そう考えるのが1番現実的なのよ」

羽村の仮説に、平井が質問を飛ばす。

「でも、さっきの抱き合いを見るに、お前と『晴風』の艦長と友達のようだが…それはそれで話の辻褄が合わねえぞ?」

すると、納沙が割り込んできて1人語りを始めてしまう。

「もしかして、お二人は生き別れた恋人同士的な!?「はなちゃん!私もうあなたを離したくない!」「ミケちゃん!私も!これ以上離ればなれなんて嫌よ!!」みたいな!」

この瞬間、艦橋の空気は一気に白けムードとなる。

「失礼にも程があるだろ! すみません、ウチの者が…」

「あ、アハハ…。でもね、それあながち間違いじゃないのよ」

「えっ?」

「…私、元はこっちの世界の人間なの。9歳くらいまではこっちで育ったの。でもある日、色々あって私は向こうの世界に飛ばされた」

平井と『晴風』乗員のほとんどは驚いた表情を見せるが、岬は暗い顔をして俯いてしまった。

羽村は岬の表情を見て「しまった」と思った。慌てて岬へ話しかける。

「あ…ミケちゃんごめん。大丈夫?」

「…う、うん。大丈夫だよはなちゃん」

岬は精いっぱいの笑顔で羽村へ返すが、精神的に無理をしているのは誰が見ても明らかだ。

「…ともかく、私はこっちの世界のことと向こうの世界のこと、両方を知っているの。こっちの世界については知識が古い部分もあるかもしれないけど、ある程度のことはわかるから、とりあえず現在の状況などを知りたいんだけど…。その前に、ちょっとごめんね」

羽村はそう言い残し、岬を連れて艦橋の外へと出て行った。

 

 

艦橋の外へ出た2人は、他に誰もいないことを確かめると、再び抱き合った。

「はなちゃん…ずっと会いたかった…!!」

「私もだよミケちゃん…会いたかった…!」

岬はまた涙を流し始めた。

「あの時、はなちゃんがいなくなっちゃって、もかちゃんと雫さんと、みんなではなちゃんを探して…。ブルマーの人たちも探してくれたけど、見つけられなくて…もうダメだと思ってた。はなちゃんには会えないと思ってた…」

羽村は岬を抱きしめたまま、彼女の背中を優しくポンポンと叩く。

「はなちゃんがいないまま小学校を卒業して、もかちゃんは松本に帰っちゃって…。必死に勉強して横須賀に入学して、またもかちゃんと一緒になれたのに、「『晴風』が反乱を起こした」って言われて…また1人なんだって。もう1人はいやだって。寂しい思いはしたくないって思ってた…。だから、はなちゃんに会えてよかった…よかったよぉ…!!」

抱きしめている腕の力を強くさせ、わんわん泣きながら自分の思いを打ち明ける岬。羽村は、途中ものすごく重大なワードが入っていることに気づいていたが、まずは岬の気分が落ち着くまで待とうと判断した。

「ごめんね…寂しかったよね…」

しばらくすると岬は落ち着いたのか、抱いていた腕の力を弱め、やがてその腕を離した。

「はなちゃんごめん、流石に痛かったよね…」

「ううん、大丈夫だよ。ミケちゃんが変わらず私を大事に想っていてくれて、私嬉しいよ」

ここで羽村は、つい先ほど聞こうと考えていた疑問をぶつけた。

「ねぇ、ミケちゃん。さっき、「『晴風』が反乱を起こした」って言っていたけれど、それどういうこと…?」

「う、うん。実はね…」

 

 

岬の話を聞いた羽村は、驚きと憤りで胸がいっぱいになった。

横須賀を定刻に出港したもののトラブルが重なり、演習を実施する予定だった海域に182分の遅れをもって到着した『晴風』。

すると、担任の教官が乗っていた艦から実弾砲撃を受け、乗員の1人が軽傷を負ってしまう。

断腸の思いで、岬たちは演習用の魚雷を相手に命中させ逃走。

その数時間後、『晴風』が行った雷撃は学校に対する反乱行為と認定されてしまったという。

その時、艦橋の方から「反乱!?」という平井の絶叫が聞こえてきた。艦橋でも、同じような説明がされているのだろう。

「…私たち、他に頼れる人たちもいないし、方針も決まっていなくて…。どうすればいいのかわかんなくて…」

羽村は、岬が自分に向けて「助けてくれ」と言っているように思えた。

「…わかった。ひとまず、艦橋に戻ろっか?」

2人は、ゆっくりと艦橋へ足を向けていった。

 

 

「羽村、正直言ってこの艦やべえぞ?」

「わかってる。今ミケ…岬艦長から教えてもらった」

羽村は平井の方へ向き直ると、こう言った。

「平井艦長、私…『晴風』を助けたい」

平井は血相を変えて否定した。

「なに言ってるんだ!そんなのできるわけないだろう!!」

「幸い私たちには防衛出動が発令されている。もし私たちを狙った攻撃が飛んできたら、それに対抗することができる」

「そうを言っているんじゃない!この艦は反乱認定されているんだろう!?そんなのと一緒に行動したら、俺たちまで日本の敵になっちまうよ!!」

だが羽村は折れない。

「だからこそよ。この艦は反乱なんか起こしていない。正当防衛と緊急避難の上での行動だったと、ちゃんと主張できるようにしてあげなきゃ!」

「言いたいことはわかる。だがお前はそのために乗員300人の命を危険にさらすのか!?」

西崎が「えっ!?300人!?」と驚きの声を上げるが、2人は全くと言っていいほど気にしていない。

「じゃあ私たちは味方が誰一人いないまま逃げ回るっていうの!?物資や燃料は現時点だといっぱいあるけど、それだって永遠にもつ訳じゃない。でも今の段階では私たちは補給を受けることはできないに等しいのよ?そうなったら私たちも晴風も、みんな危なくなるじゃない!」

「っ…!!」

平井は反論する言葉を失った。艦にとって重要な燃料や、乗員が生きていく上で必要な物資が補給できない…。そうなった時に自分たちへ訪れる結末は、この世界の『ブルーマーメイド』や各国海軍に拿捕されるか沈められるか。はたまた餓死するのを待つかである。

ならば現状の『たかお』『はつづき』『晴風』の3隻を臨時的な艦隊として設定し、自衛隊の2隻は『晴風』を護衛。そして『晴風』の母港である横須賀を目指した方が、まだ希望が持てるのだ。

「何せ私たちは "おたずねもの" 扱いだからな…。あなたが不安になる気持ちも十分理解できる。下手すれば私たちはテロリストとして、この艦ごと捕らえられてしまうかもしれない。しかし残念ながら私たちは、この艦の乗員を守れるほどの力を持っていないんだ。突然会ったばかりなのに、無理難題を押し付けてしまって申し訳ない。だがどうか、どうか、私たちを助けてはくれないだろうか。この通り…!!」

「シロちゃん…」

宗谷はそう訴えると、羽村たちに深々と頭を下げた。

羽村はその言葉に頷いた。「今すぐにでも晴風を助けたい」という、羽村の固い意志の現れである。

平井は目を閉じて腕を組んだ。

『晴風』との行動を選択すると、この世界の日本と対立しなければならなくなる。

だが『晴風』の乗員はみな日本人。日本国民を守る自衛隊の一員として、簡単に見捨てることなどできない。

平井はしばらく考えこんだ後、やがて決心をしたのか、ゆっくりと目を開けた。

「…岬艦長、乗員の皆さんは、全員日本国籍を持っていますね?」

「え…?は、はい。みんな日本人です」

「では、この『晴風』を建造する際に使われた資金は、何処から支出されていますか?」

「『晴風』を含めて、海洋学校の直教艦は全て旧海軍からの払い下げなので、日本政府がお金を出していると思います」

「…なるほど、わかりました。 おい羽村、乗員を説得するぞ」

羽村は一瞬、驚いたように目を見開いた。

「…いいの?」

「国民の命、そして財産を守るのが、俺たち自衛隊の使命だ。今の話から、俺はこの『晴風』が日本所有の財産であり、乗員は日本国民であると判断する。そしたら、俺たちがやるべきことは1つだけだろう」

平井は、覚悟を決めていた。

「…わかった」

2人は、岬たちへ顔を向けた。

「今から、我々の乗員を説得します。申し訳ないが、宗谷副長の要請に対する回答は、その結果次第ということにさせてください」

「…わかりました。どうか、よろしくお願いします」

宗谷は、2人へ向けてもう一度頭を下げた。

 

 

「はなちゃん!」

岬は、『たかお』へと戻っていく羽村を呼び止めた。

「…大丈夫。必ずミケちゃんたちの力になれるようにするから」

羽村はそう告げると、岬へ笑顔を見せた。

「わかった。私、待ってるからね」

「うん、じゃあ行ってくるね」

岬は胸の前で自分の手を握りながら、内火艇で『たかお』へと戻っていく羽村の背中を、じっと見つめていた。

 

 

『たかお』へと戻った羽村は、再び士官たちを士官室へ集めた。先ほどは参加していなかった、半沢たちも一緒だ。

「…以上が、『晴風』と会談した上で得たこの世界の現状です。私のせいで君たちを巻き込むことになってしまって、本当にごめんなさい」

羽村は、岬たちと話した内容と自らの過去についてを包み隠さず話し、謝罪した。

黙って天井を見上げる者、表情を一切変えずに聞いている者など、士官たちの反応は様々だ。

「…それで『晴風』の副長から、横須賀への帰還にあたって、我々に護衛を依頼されたの。私と『はつづき』の平井艦長としては、晴風の要請に応じたいと考えている。けれど、その前に君たちの意見を聞きたいと思う。賛成でも反対でもいい。思っていることを私に聞かせてほしい」

早速、1人が手を挙げた。副長の半沢だ。

「正直申し上げて、私は反対です。平井艦長のおっしゃる通り、反乱容疑をかけられている艦と行動を共にするのは、あまりにもリスクが大きすぎるかと」

対して、砲雷長の望畑は真逆の意見だった。

「具申します。私は、艦長のご意見に賛成です。『晴風』単艦で横須賀へ戻るのは危険です。敵艦隊に遭遇した時、いくら現代艦より装甲があるとは言え、駆逐艦1隻だけでは荷が重すぎる。幸いにもこちら側は、弾薬などは満載になっています。ならば、やるべきだと思います」

他にも、賛成派・反対派で数多くの意見が上がった。羽村はそれら1つ1つをしっかりと受け止めた。

やがて全員の意見が出揃った頃、最後に羽村が自分の思いを口にした。

「…私はさっきも言ったように『晴風』の護衛活動には賛成している。でもそれは、『晴風』に私の幼なじみが乗っているからではない。1人の自衛官として、『晴風』の乗員全員を助けたい。そう思っている。だって考えてみて?なぜ私たちは、自分たちが死ぬ覚悟をしてまで、あの波留間に向かって行ったのか。東亜連邦の軍隊と戦闘をしたのか。それらは全部、自衛隊が日本国民を守るために存在しているからでしょう? 今みたいに違う世界へ来ようとも、その信念は揺るがないものだと思うの。私たち自衛隊は、今まで何度も災害や有事の際に出動して、日本国民を守ってきたじゃない。今回もそれらと同じだと、私はそう思う」

誰一人として、それに異を唱えるものはいない。みなじっと、羽村のスピーチに耳を傾けている。

 

 

一方同じ頃『はつづき』の士官室においても、平井による乗員への説得が行われていた。

しかし、こちらは『たかお』と比べて反対派が多く、説得に時間がかかっていた。

中には「単純に自分たちが生き残る選択をするのであれば、この世界の日本政府に泣きつけば助けてくれるのではないか」という者までおり、平井は最初戸惑ってしまった。

平井の思いは羽村と一緒だった。平井は、羽村と同じように自分の思いを乗員たちにぶつけた。

だがどうしても折れない士官が1人だけ残ってしまい、最後の最後で説得に陰りが見え始めてしまった。

そこで平井は、羽村と共通している部分とは別の、彼なりの思いを語り始めた。

「…なぁ副長。さっき貴官は「この世界の日本政府が助けてくれるだろう」と、そう言ったな」

「…はい。私たちは日本の組織です。政府も鑑みてくれるかと思います」

前述の意見を述べたのは、この艦の副長 兼 船務長であり女性士官の 五香 三咲 (ごこう みさき) 二等海佐である。

「だがな副長。それでは、政府は助けるついでにこの艦や『たかお』を接収しにくるかもしれないだろう」

「接収…ですか?」

五香は感情こそ抑えつつも、「あり得ない」とでも言いたげな表情をしている。

「あぁ。護衛艦1隻を造るのに、何百億、千何億という莫大な金がかかるだろう?その艦が2隻同時にタダでやって来たとなったら、いくら民主主義を掲げている日本だって、手段を選ばずにかかってくると思うぞ」

そして平井は、こう口にした。

「それにこの艦はな、俺たちに遺された『最後の故郷』なんだよ」

「『最後の故郷』…?」

「仮に俺たちがこの世界の日本に泣きついて、政府がそれを受け入れたとしよう。するとどうだろう。この艦は自衛隊を離れて、この世界の日本政府の持ち物になっちまうし、俺たちはこの世界の人間になっちまう。いくら地形や面影が似ていたとしても、この世界に俺たちの親は家族はいない。あくまでも俺たちの故郷は、元いた世界の日本だ。この艦は、その証明代わりみたいなものなんだよ。だから俺は、そう易々とこの艦を手放したくはない」

五香は、自分の意見が間違いであることに、少しずつ気がついていた。

「俺たちは海上自衛官であり、この『はつづき』の乗員であると、高々と胸を張って言うんだ。そしてそれを名乗る以上、自衛官として日本国民を守るためにあらゆる手段を尽くす。それが、俺たちの故郷を守る最後の手段だと思っている。…どうだろう、五香ちゃん」

平井が五香のことを"ちゃん"付けで呼ぶのは、1佐や2佐といった階級は取り払い、1人の先輩として語りかける時だけだ。

「…艦長のおっしゃる通りです。私は少し、考えが甘かったのかもしれませんね」

少し苦笑いを浮かべると、平井へ向き直った。

「私も『晴風』の護衛に賛同します。自衛官として、今後も使命を全うしていく覚悟です」

五香は、平井の考えを受け入れる決断をした。

「ありがとう、五香ちゃん!」

「いいえ。今後もよろしくお願いします、艦長」

 

 

『晴風』艦橋では、重苦しい空気が立ち込めていた。

自衛隊の艦長2人が戻ってから、すでに1時間近く経とうとしている。

2人が戻ってくる気配は一向になく、『晴風』乗員は不安を抱えている。

「ねぇ、本当にあの人たちは協力してくれんのかね?」

西崎が疑念を呟いた。

「もしかしたら、ここで交渉決裂なんてことにならないですよね? 「反乱の疑いがかけられているお前たちに協力はできん!今ここで沈めてやる!!」\ドーン!!/ みたいな…」

納沙は相変わらず1人芝居を打ち続けているが、知床や立石にとってはそれが洒落にならなかったようで…。

「こ、怖いよ〜…!!」

「うぃ〜…」

と悲鳴を上げてしまった。

「ろくでもないことを言うな!今、羽村艦長と平井艦長が説得をしてくれているはずだ。それが終わるまで、大人しく待っておく他ないだろう…」

と言った宗谷であるが、彼女自身も多少の不安は持っていた。

「大丈夫だよ。はなちゃんは、絶対私たちを助けてくれる」

岬だけは、自衛隊が協力してくれることを確信していた。

「…そんなに信頼していらっしゃるんですね、羽村艦長のことを」

「うん。だってはなちゃんは、私の大事な幼なじみの1人だもん」

その時、自衛隊側から再び内火艇が近づいて来るのが見えた。

岬たちは迎え入れるための準備に取りかかったが、1時間前と比べて緊張度が上がっている。

そして、遂に羽村と平井がやってきた。

「お待たせしてごめんなさい、皆さん」

「いいえ、とんでもありません。それで早速ですが…」

宗谷が1番に結果を聞いてきた。自分たちの今後に関わることだ。急かしてしまうのも無理はない。

「結果ね。実は『たかお』『はつづき』共に、同じ結論が出たの」

岬たちはみな、真っ直ぐ羽村たちを見つめた。心臓は既にこれ以上ないくらい高鳴っている。

自分たちは横須賀へ帰れるのか、それともここで終わってしまうのか。

全員が前者であってほしいと願った。

 

 

「私たち海上自衛隊は、貴艦 横須賀女子海洋学校 航洋艦『晴風』を保護し、貴艦の母港である横須賀まで護衛することを決定いたしました」

 

 

その瞬間、艦橋に拍手と歓声が沸き起こった。

岬は嬉しさのあまりまたしても涙を流し、羽村へと飛びついた。

「ありがとうはなちゃん!本当にありがとう!!」

「ううん、私だけじゃない。うちの乗員や『はつづき』のみんなが賛成してくれたおかげ。だから、お礼はみんなに言ってほしいな」

羽村はあくまでも、自分は立役者ではないと言った。

「平井艦長!ありがとうございます!!」

「いや、いいんですよ。貴方たちの安全は、どうぞ私たちへお任せください」

「なにカッコつけてんのよ!ドラマ撮影でもしてる気?」

「はぁ?ちげえよ!!」

羽村のツッコミに、歓声は一気に大きな笑い声へと変わった。

 

 

この瞬間『海上自衛隊』にとっては先の波留間有事に匹敵し、『ブルーマーメイド』にとっては創設以来最大規模となる、壮絶な物語が幕を開けることとなった。

 

 

 

次回予告

 

明乃「さぁ始まったね!私たちの航海!!」

 

七海「 「反乱を起こした〜」なんて言われるなんてとんでもはっぷんだよ!2人とも大変だったね〜…」

 

ましろ「全くツイてない…」

 

明乃「そんなにツイてないことばっかりじゃないよ〜。だって次回は、みんなでカレーを食べるんだよ!やっぱり船と言ったらカレーだし〜♪」

 

ましろ「まぁ、私もカレーは嫌いじゃないが…」

 

七海「自衛隊のカレーは凄いんだよ!何人もの給養員さんたちが、学校の給食室みたいに大きなお鍋と木べらを使って、勢いよく食材を炒めながら作っていくの!!」

 

ましろ「私たちからすれば、戦闘艦に300人も乗るだなんて考えられないからなぁ。自衛隊は凄いんだなぁ…」

 

明乃「というわけで次回『ハイスクール・フリート』!「シロちゃんつまずいて、お皿をひっくり返す!(仮)!!」

 

ましろ「ほ、本当なのかそれは!?じゃあ、やっぱりツイてないじゃないか…」

 

七海「…今度、ウチのカレーをご馳走してあげるね?」

 

明乃「明日へ向かって、ヨーソロー!!」

 




皆さんこんにちは!メトロえのしまです。
転生の護衛艦シリーズ、第一話をお読みいただき、ありがとうございます。

大変お待たせして申し訳ございません…。
私自身、前回のプロローグを出してから1ヶ月あれば次を出せるかなと思っておりましたが、実生活が多忙な上に執筆も納得のいくような形にならず…((←言い訳 
※いやね?人身事故起こした電車の中で執筆活動する作家さんなんか早々いないと思いますよ私( ) 頼むぜK◯さん…

その代わりと言ってはなんですが、今回はボリュームたっぷり!14,000文字を超える特盛でお送りいたしましたがいかがでしたでしょうか?
前回が7,000文字弱だったことを考えると、2倍以上の増量になっております!!
一つのお話でこんなに書いたのは本当に数年ぶりです。ですので所々に誤字脱字があるかもしれません。その時はご遠慮なさらず筆者までお知らせください((他力本願寺

さて、次回から本格的にわたくし流の「ハイスクール・フリート」が始まるわけでございますが、その前に自衛隊側の登場人物がどういった人たちなのか?ということで、人物紹介のコーナーを設けさせていただいております。皆さんのお気に入りや推しとなる人物は現れるのでしょうか?
((いてくれるといいなぁ…

次回は第二話!vs.アドミラル・シュペー 第1回戦!!
ポケット戦艦相手に、装甲ペラペラの護衛艦がどうやって立ち向かうのか…頑張って形にしていきたいと思います。
今年中に出せるように頑張ります!!気長にお待ちください!!それでは!!

※自衛隊側 登場人物紹介(一部)

[DDG178 たかお]

艦長
・羽村 七海 (一等海佐)

この物語の中心的人物。長野県松本市出身。
ブルーマーメイドに勤める母とホワイトドルフィンに勤める父との間に産まれたものの、5歳の時に両親ともに海賊対処へ出動して殉職。広島県呉市の孤児院へ送られ、明乃に出会う。
後にもえかも孤児院にやってきて3人で楽しく暮らしていたが、9歳の時に自然災害に巻き込まれ別世界に転移。
孤独を感じながら必死に努力し、海上自衛隊に入隊。平井と同期生になる。
明乃が海のお父さん、もえかが海のお母さんだとするならば、七海は海のお姉さん的な存在。
年次や階級関係なく気さくに話しかけ、相談を持ち込まれたら優しくアドバイスを与えたりしていたため、乗員たちからの人望が厚い。

好きな食べ物:焼肉

嫌いな食べ物:なし

得意科目:体育

苦手科目:化学

好きな言葉:「事件は会議室で起こってるんじゃない!現場で起こってるんだ!!」

モデル人物:「探偵はもう、死んでいる。」より 夏凪 渚



副長 兼 船務長
・半沢 智久 (二等海佐)
群馬県安中市出身。JR信越本線の横川駅付近に実家がある。
幼い頃から海に接点が無く、強い憧れを持っていたことから海上自衛隊へ入隊。
だが、プライベートでは山の中でキャンプをするのが趣味と、言っていることとやっていることがチグハグな人物。
戦闘態勢においては、自艦にとって最も最適なプランを選択し実行する、頼れる攻撃指揮官。

好きな食べ物:釜めし

嫌いな食べ物:なし

得意科目:公民

苦手科目:美術

好きな言葉:「どんな難問にも、必ず答えはある」

モデル人物:「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」より 白銀 御行



砲雷長
・望畑 真 (三等海佐) ※もっちバターさんの友情出演です。
海上自衛官の中では珍しい鉄道マニア。東京都府中市出身。
幼い頃から鉄道が好きで将来は運転士になる夢を描いていたが、ある日駅前で地本の人に声をかけられ、自衛隊にも興味を示すようになる。高校生の時に鉄道会社へ入社するか自衛隊に入隊するかで迷っていたが、進路指導の教員に勧められて自衛隊の道を選ぶ。
だが本人は運転士になる夢を捨てきれなかった為、波留間有事の終結をもって自衛隊から除隊し、地元を走る大手民鉄へ中途で入る予定だった。

好きな食べ物:チャーハン

嫌いな食べ物:なし

得意科目:社会

苦手科目:古典

好きな言葉:「速さは正義」



[DD119 はつづき]

艦長
・平井 翔太 (一等海佐)
羽村と同期生の自衛官。愛知県名古屋市出身。
一般大学から幹部候補生学校へとやって来た数少ない人物で、前職はなんと国民的アイドルグループのメンバーという異色の経歴の持ち主。
彼がグループを抜けると宣言した時は日本中が話題に包まれ、連日所属事務所や防衛省に多数のファンや報道陣が詰めかけた。
DDG176 ちょうかい艦長の浮舟に育て上げられた逸材で、戦闘態勢になると浮舟同様好戦的な性格になるが、平時ではアイドル時代に根付いた優しさを誰にでも振る舞う。

好きな食べ物:カレーライス

嫌いな食べ物:里芋

得意科目:体育

苦手科目:数学

好きな言葉:「常在戦場」

モデル人物:「幼なじみが絶対に負けないラブコメ」より 丸 末晴



副長 兼 船務長
・五香 三咲 (二等海佐)
ピンクっぽい色の髪が特徴的な女性自衛官。千葉県鎌ケ谷市出身。
高校生の時に公共の場で働きたいと思うようになり、その中から自衛隊を選択。体力に自信はないものの、それに取って代わる自慢の明るさで周囲を和ませるムードメーカー的存在。
姉が地元の鉄道会社に勤めるほどの鉄道マニアで、プライベートではよく姉のブレーキ役になっていた。

好きな食べ物:シチュー

嫌いな食べ物:かぶ

得意科目:国語

苦手科目:体育

好きな言葉:「好きこそものの上手なれ」

モデル人物:「艦隊これくしょん〜艦これ〜」より 潜水母艦 長鯨


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第二話

みなみさんハピバ〜!(大遅刻

皆さんこんにちは、メトえのです。
ここ最近、他の先生方が執筆されているはいふり二次創作や、他の軍艦系のお話を読ませていただいているのですが…。
いやもう私とはレベルが違いすぎてですね…。
こんなペーパー初心者の作品は足元にも及ばないくらい、物語の展開や戦闘描写が濃密なんですよ!
メンタル削られつつも、私が筆を取る際の参考にさせていただいております。

さて今回は、 vs.シュペー戦ROUND1!(ボウリング違いますよ?

1発でも当たれば海の藻屑と化する明乃たちは、どのように戦いを進めていくのでしょうか。
それでは、お待たせいたしました。本編へどうぞ!!


第二話 原稿

 

 

〜西之島新島 沖合〜

 

一路演習海域へと向かう、横須賀女子の直教艦『武蔵』。

「明日から、他のクラスと合流ですね」

「うん!」

この艦の航海員を務める 吉田 親子(よしだ ちかこ)が、艦長へ明日からの予定を尋ねる。

その声は明るく、どこか待ち遠しそうに思える。

艦長の名は 知名 もえか。

今年行われた横須賀女子の入学試験にトップで合格した優等生だ。

身に纏っている制服が他の生徒と同じセーラー服ではなく、海上自衛隊の第1種夏制服に似たようなものになっているのは、彼女が首席生徒である証だ。

知名は、窓の外に貨物船がいるのを発見した。

「航海艦橋へ連絡」

「んっ?」

目の前に広がる海図に夢中になっていた吉田は、顔を上げて知名の方へ目をやった。

「左舷60度10,000に貨物船。注意して」

「了解しました」

吉田は近くの受話器を手に取ると、貨物船のことを伝達しようと航海艦橋を呼び出した。

しかし中々返事が来ず、受話器から伸びているコードに人差し指を絡めては離し、絡めては離しを繰り返す。

「…もしもし?」

あまりにも返事が来ないため、吉田は相手に電話の感度があるか確認を取ろうとする。

「どうかしたの?」

「…艦長、応答がありません」

「えっ?」

知名は最初、感度が悪くて相手が聞こえていないものだと思った。

しかし、突如前甲板の46サンチ主砲が旋回を始めたのだ。それも、貨物船の方へ向けて。

「えっ…!?」

知名は慌てて主砲へ目をやった。

そして次の瞬間、主砲は貨物船を目掛けて発砲した!

砲弾はなんと初弾にもかかわらず、貨物船のすぐ近くに着弾した。俗に言う "夾叉(きょうさ)" である。

「射撃指揮所、応答して!」

知名はすぐさま伝声管から射撃指揮所を呼び出すが、こちらも応答がない。

それどころか、今まで聞いたことがないような雑音や機械の異音が耳に届いてくる。

「なっ…!?艦長!!」

「ちょっと見てくる!」

「私も行きます!!」

一体、この艦の中で何が起きているのか。2人はたまらず艦内へ駆け出した。

 

 

「角田さん!!」

「艦長ッ!!」

2人が艦内をしばらく走り回っていると、応急員の1人である 角田 夏美(つのだ なつみ)が血相を変えて駆け込んできた。

「落ち着いて。一体、何が…?」

「みんな…みんながあっ!!」

息が上がっているのか、あまり詳細な内容が伝えられずにいる。

「みんなって…?」

その時、吉田が廊下の向こう側に多くの乗員が並んでいるのを発見した。

だが、その乗員たちはどこか様子がおかしい。なぜなら全員、瞳の色が赤く染まっていたからだ。

「ひゃあっ!?」

たまらず悲鳴を上げる角田。

「あなたたち…一体……?」

乗員たちは知名の問いには答えず、まるで洗脳されたロボットのように真っ直ぐ知名たちへ近づいていく。

「っ…!?走って!!」

「えっ!?」

「こっち!!」

知名は "このままでは自分たちが危険だ" と判断し、角田の手を引っ張ると吉田と共に走り出した。

 

 

『武蔵』が貨物船へ砲撃を開始してから数時間後、他の艦でも同じような異変が起き始めていた。

太平洋上を航行する、1隻の大型直教艦。

艦内は横須賀女子の生徒たちが暴れ回り、本や書類が床にばら撒かれていようともおかまいなしだ。

そして視界に艦艇や船舶を捉えると、容赦なく主砲弾を撃ち込んでいく。

そんな中、艦橋付近に1人の生徒がうつ伏せになって倒れている。

彼女は自身が艦長であることを示す制帽をかぶっているが、非常に息が荒く苦しそうに胸を押さえている。

「…私が、いけなかったの…?私が、弱いから…?」

自分のせいで生徒が変わってしまったのかと問うが、それに答える者はいない。

「私が、もっと強ければ、こんなことには…」

彼女は先天的な理由で、幼い頃から体が弱かった。

それでもブルーマーメイドを目指し、反対する親を押し切って横須賀女子に入学していた。

"自分の部下を守れないのなら、艦長を引き受けるべきではなかった" と、自分を責めている。

「…みんな、本当に…ごめんなさい……」

そして彼女は生徒たちへの謝罪を口にすると、それまで持っていた自らの意識を手放した。

のちにこれらの異変は、反乱疑惑をかけられている『晴風』そして羽村たち自衛隊を巻き込んだ、日本の安全を揺るがす大騒動へと発展していくこととなる。

 

 

 

2016年 4月8日。

鳥島沖南方を航行する、3隻の艦。

横須賀女子の航洋艦『晴風』を挟むようにして、その左側に海上自衛隊の主力イージス艦『たかお』が、そして右側に最新鋭の汎用護衛艦『はつづき』が並んでいる。

羽村たちがこの世界に転生して2日目。

当初は混乱状態だった自衛隊側の乗員たちも今は落ち着きを取り戻し、それぞれが受け持つ作業をこなしている。

そんな中『晴風』では、前日に起こった『さるしま』との戦闘の際に負った損傷の確認作業が行われていた。

「うぁ〜大変…。後部甲板も応急修理しないと…」

「こりゃメチャクチャっす…」

確認作業を行なっていた機関科の 和住 媛萌(わづみ ひめ)と 青木 百々(あおき もも)は、『晴風』が負った予想以上のダメージにショックを受けていた。

そんな中…。

「1000%マジかっこいい〜!!」

まるで空気を読んでいないような少女が1人。同じく確認作業を行なっていた主計科の 等松 美海(とうまつ みみ)である。

どうやら彼女は航海科の野間 マチコ(のま まちこ)に一目惚れしてしまったようで、先ほどから確認作業そっちのけで野間がいる見張り台の方を向いている。

「美海ちゃんは野間さんに夢中っす…」

「等松さんもヒマなら手伝って〜…?」

2人は等松のことを注意するが…。

「マッチ〜!!」

全くもって彼女の耳には届いていない様子である。

「はぁ…メロメロっす……」

2人は呆れるしかなかった。

「はぁ〜…マッチと撮った写真、妹に送りたいんだけどなぁ。今は携帯の通信は禁止だしなぁ…」

自前のスマートフォンを取り出して、待ち受け画面を楽しむかのように眺める等松。

反乱の疑いがかけられている『晴風』は、岬の判断で携帯電話を含め現在位置が特定されるような機器の使用が禁じられていた。

それは自衛隊側でも同じで、艦の位置情報およびビーコンなどがシャットダウンされている。

「媛萌ちゃん、百々ちゃん、美海ちゃん。お疲れ様!」

そこへ、現状を把握するために艦内を巡回していた岬がやって来た。

「被害状況は?」

「見ての通り、応急修理しないとね。艦長…」

「わかった!あとで手伝うね!!」

岬は足早に艦内へと戻っていった。

「…本当、バタバタっすね」

岬の後ろ姿を見た青木が呟く。

2人も同じことを思っていたのか、それに頷いた。

「…そう言えば」

青木は、ふと思い出したように後ろを向いた。その視線の先には、艦首に「178」の番号を浮かべる『たかお』の姿があった。

見ると、乗員たちが忙しなく甲板上を動き回っている。

「あの艦、本当に頼りになるんすかね?」

「あ〜、艦長が言ってた『自衛隊』ってやつだよね? なんか艦の迫力はとてつもないけど、もしブルマーとかと戦闘になった時、ちゃんと戦えんのかねぇ?」

3人から見た『たかお』と『はつづき』は、どうやらイマイチ頼りなさそうである。

 

 

その頃機関室では、先ほど後部甲板から移動してきた岬が顔を出していた。

「麻侖ちゃん、状況どう?」

『晴風』の機関長 柳原 麻侖(やなぎわら まろん)が、頬を膨らませながら怒っている。

「前進一杯にしたせいだ、総点検が必要になっちまったんでい!」

まるで江戸っ子のようなその口調は、自身の祖父から移ったのだという。

「全く、無理させるわね」

機関助手を務める 黒木 洋美(くろき ひろみ)が、ドスを効かせた声で岬を睨みつける。

「クロちゃん、ごめんね?」

顔の前で手を合わせながら謝る岬だったが…。

「馴れ馴れしく呼ばないで!"黒木さん"って呼んでくれる!?」

逆に黒木を余計に怒らせる原因になってしまった。

「わかった、クロちゃん!」

だが岬はそんなことお構いなしなようで、適当に返事をして機関室から出て行ってしまった。

黒木は呆然としてしまった。

「全然わかってないじゃん…」

「アレが艦長…?」

若狭 麗緒(わかさ れお)と 伊勢 桜良(いせ さくら)は、黒木に同情するかのように言葉を漏らした。

 

 

次に岬が訪れたのは医務室。

『さるしま』との戦闘の際に、何人か怪我をしてしまったため、その見舞いも兼ねてやってきた。

「光ちゃん、大丈夫? 瑠奈ちゃんと空ちゃんも怪我ない?」

医務室の中ではちょうど、砲雷科の小笠原 光(おがさわら ひかり)が怪我の治療を受けているところだった。

駿河 瑠奈(するが るな)は、岬が早くも乗員の名前を覚えていることに驚いた。

「うぇ〜!?もう名前覚えたの!?すご〜い!!」

「さすが艦長殿」

広田 空(ひろた そら)は、驚きこそしなかったものの関心した様子である。

「他に怪我人はいないよね?」

「ない」

衛生長の鏑木 美波(かぶらき みなみ)が端的に答えた。

彼女はなんとまだ12歳。

6歳の時に医学免許を取得するという超人的な実績を持ち、その経歴が評価され飛び級で横須賀女子へ入学した、いわば「天才」である。

「良かったぁ…でも、こんなことになるなんて…」

岬は、小笠原たちを怪我させてしまったことに責任を感じていた。

「青天の霹靂」

想定していなかった大きな事件、という意味のことわざだ。

「これからどうしたらいいんだろう…」

岬はそう言うとため息をついた。

「知者は惑わず 仁者は憂えず 勇者は恐れず」

中国の孔子が遺した言葉と言われており、「かしこい人は迷わずに判断できるし、心がしっかりしている人は心配しない、勇気がある人はおそれない。この三つの心が大切」という意味のことわざだ。

小笠原・広田・岬の3人は、鏑木がなぜこんな言葉を知っているのかと不思議に感じるとともに、彼女へ対して若干引いたような表情を見せる。

だが駿河だけは、鏑木の言っている意味がわからないのか、笑顔のままだった。

「艦長!至急艦橋にお戻りください!」

宗谷の声が、医務室の中に響いた。

 

 

「ごめん!お待たせ!!」

「被害状況どうでした〜?」

納沙は主計長ながら艦についての記録員も務めているため、現在の状況について尋ねてきた。しかし肝心の記録を取る様子はなく、目の前の羅針盤に居座る猫 五十六(いそろく)へ意識を向けていた。

「後部甲板が結構やられて、爆雷があと1発。魚雷もないし…機関室も総点検だって」

「あっ!可愛い!!」

自分から質問してきた割に、納沙は全くもって話を聞いていなかった。

「そんなもの撮ってないで、被害状況を記録して自衛隊に報告しろ!!」

宗谷はそんな納沙を叱りつけたが、これは当然の結果である。

「学校側から連絡は?」

「ない…」

「私たち見捨てられたんじゃないの〜…?」

西崎は "国に反乱者扱いされている自分たちを、学校が助けるはずなどない" という考えのようだ。

「今、事実確認中なのかも」

「こ、このまま、鳥島沖10マイルまで退避でいいんだよね…?」

知床はどこか不安そうな表情だ。

「うん。私たちが反乱して『さるしま』を攻撃したみたいに言われてるけど、違うってことを説明しなきゃ」

「ご、合流地点に着いた途端に捕まっちゃわないかなぁ…?」

その言葉に反応するかのように、またしても納沙が1人芝居を始める。

「「お前ら!何故『さるしま』を攻撃した!?」「違うんです!先に攻撃したのは『さるしま』の方で!」「嘘を言うなぁ!!」」

「ひっ!?」

あまりにも迫真すぎる演技に、立石が怯えてしまう。

「信じてもらえないってこと?」

西崎は、納沙が何を言いたいのかなんとなく理解したようだ。

「だが我々に反乱の意思などない。自衛隊が付いてくれているとはいえ、このまま逃げ続けられないのだから、羽村さんたちと協議して速やかに近くの港に入ろう。艦長」

いつかはブルーマーメイドか他の直教艦に見つかってしまうだろうし、それ以前に食料や燃料などの物資が足りなくなってしまう。

昨晩、羽村が警戒していたものの1つだ。

「うん、そうだね。港に入れば、攻撃されることも無いだろうし…。鈴ちゃん、横須賀までどれくらいかかりそう?」

「巡航で、38時間かな…?」

最速でも2日弱かかってしまう。それまでに誰にも見つかってほしくないというのが、岬たち全員の願いだ。

「全く、"こんなクラス"になったばっかりに…ツイてない」

宗谷の発した "こんなクラス" という言葉が頭にきたのか、西崎が強い口調で反論する。

「なによ "こんなクラス" って。そりゃ『晴風』は合格した生徒の中でも最底辺が配属される艦かもしれないけれど、それはアンタも一緒でしょう!?」

「一緒にするな!!私は入学試験は全問正解していたはずなのに、解答欄を1つズラして解答したから…」

"なんだか可哀想…" と同情する岬と知床。

"お前マジかよ…" と言いそうなほどに呆れる納沙と立石と西崎。

艦橋の空気は、地味に重たくなってしまった。

「ツイて、無いんですね…」

「うるさいっ!!」

なんて声をかけていいかわからず、宗谷の 「ツイてない」発言を事実として認めてしまう納沙。そりゃキレる。

「そ、そっか〜。私なんて、受かっただけでも奇跡なんだけどね〜。たまたま勉強してたところが出て、ましてや艦長なんて…」

「こちらは強運の持ち主ですかぁ…」

「うぃ」

岬に関心する納沙と立石。

しかしフォローする相手の宗谷に対しては、傷口に塩を塗り込む形になってしまったのだが、岬はそれに気づかなかった。

立石がふと窓の外を覗くと、艦隊の上をカモメが飛んでいるのが目に入った。

「こんな風に、学校へ戻れたらいいんですけど…」

納沙はどこか羨ましそうに、カモメたちを見上げた。

「水素やヘリウムを使わない空飛ぶ船って、造れないですかね?」

「はぁ…あんなもの空想の産物だ。バカバカしい」

宗谷はぴしゃりと言い放ったが、その空想の産物が自分たちを護衛している艦に搭載されていることを、彼女たちはまだ知らない。

 

 

「艦長、『晴風』から被害状況きました」

『たかお』CiCでは、羽村と半沢、それに望畑の3人が海図台を囲んで話し合っている。

納沙が送ってきた『晴風』の被害状況をメモした紙をもとに、今後自分たちが『晴風』をどうサポートしていくかを考えている。

「後部甲板破損、魚雷残弾数なし、負傷者も何人か出てるのね…ミケちゃん本当によく頑張ったよ…」

「爆雷が残り1発だけなのが不安要素ですね…まぁ万が一対潜戦闘になったとしても、こちらから短魚雷やVLA (※アスロックミサイルのこと) による攻撃を行えば良いのですが」

望畑は、『晴風』が潜水艦と対峙した時のリスクを心配していた。

戦前艦・現代艦関係なく、水上艦にとって潜水艦からの魚雷攻撃は1発被弾するだけでとてつもない破壊力を持つため、最も恐るべき脅威といえる。

その潜水艦に対抗する手段が爆雷1発のみという『晴風』は、仮に羽村たちと遭遇せず単艦行動を続けていた場合、非常に危険であった。

対して自衛隊側の『たかお』および『はつづき』は爆雷こそ無いものの、魚雷やアスロックに加えて『はつづき』の艦載ヘリであるSH-60Kが対抗手段として用意されており、対潜戦闘の準備も万全である。

「対空に関しては、この世界に航空機の概念が無いようなので心配はいらない…ですよね?」

半沢は自分たちが元いた世界と違い、航空機の開発が失敗していることを聞かされていた。

そのため、イージス艦の本業とも言える対空戦闘は、行われる確率が極めて低いものと推測していた。

「飛行機とかヘリは無いんだけど、飛行船みたいな無人機はあるんだよね〜。けどこっちのシーホーク(SH-60K)よりも速度遅いから、仮に攻撃火器を積んで向かってきたとしても、迎撃手段にSM-2とかシースパローをわざわざ選ぶ必要性は低いかなぁ…」

羽村は、仮に無人機が飛んできたとしても、主砲弾の射程内に入ってきたところで迎撃すれば問題ないと考えている。

その方が無人機がどういう武装をしているのか目視で確認できるし、補給ができないミサイル類の消費も抑えられるので合理的、というわけだ。

「となると、やはり心配なのは…」

「対水上戦、だよね…」

ミサイル攻撃が主流となった現代において、水上艦同士で主砲を使った近接戦闘を行うことは殆ど想定されておらず、水上戦闘を行うにしても "ハープーン"や国産の "90式艦対艦誘導弾" と言った対艦ミサイルが主な攻撃火器となっていた。

そのため現代艦の装甲はとても薄く、敵の主砲弾を1発喰らっただけで大破してしまうくらいには弱くなっているのだ。

「インディペンデンス級やあきづき型との戦闘に支障はそれほど無いと思われますが…問題は学生艦ですね」

旧海軍からの払い下げである海洋学校の学生艦は、まさに大艦巨砲主義の全盛期に生まれた艦である。

主砲弾の直径は大きく、装甲は現代艦とは比べ物にならないほどぶ厚い。

そのうえ砲弾の装填などがそこそこ自動化されているため、砲弾の威力はそのままにしつつ1分間あたりの発射速度が向上している。

そんな艦を相手に戦闘態勢をとったとしても、自衛隊側にハンディが大きすぎるのだ。

「幸い『たかお』のハープーンと『はつづき』の90式は、それぞれ8発全て揃っていますが…正直あまり使いたくないんですよね…」

望畑は、対艦ミサイルの使用には消極的だった。

現代艦相手ならまだしも、学生艦に対艦ミサイルを撃ったとしても1発だけでは大きな効果は期待できないからだ。

「まぁ、水上戦闘に関してはケースバイケースで考えるしか無いよね…私たちだってそれ程実戦を積んできたわけじゃないから」

先の波留間有事では、相手戦闘機から発射された対艦ミサイルを迎撃することが多かったため、羽村たちも水上戦闘の経験はあまり無かった。

なお羽村たちがこの世界へと飛んだ後、第6護衛隊群は残りの艦艇で水上戦闘を何回も行っているのだが、羽村たちは当然ながらそのことを知らない。

「そうですね…とにかく、戦闘があまり起きないことを願うばかりですよ。ここから38時間、横須賀入港までがヤマ場ですね」

「せいぜい停船命令くらいにしてくれれば良いんですがね〜…」

最悪の場合、自分たちも『晴風』と同じように国賊扱いされて交渉のチャンネルを失うかもしれない。

戦闘状態になることは極力避けたかった。しかし…。

「水上レーダー目標探知、右60度方向1隻。真っ直ぐ近づく」

「CiC、艦橋!戦艦と思われる大型艦艇1隻を視認!真っ直ぐ近づく!!」

その思いは、無情にも打ち砕かれてしまった。

 

 

「右60度、距離30000。接近中の艦艇は…『アドミラル・シュペー』です!!」

「『アドミラル・シュペー』!?」

「ドイツからの留学生艦です!」

正式名称『アドミラル・グラフ・シュペー』。

ドイツが製造した『ドイッチュラント』級装甲艦の3番艦である。

「とりあえず、総員配置に!!」

「総員配置!」

岬の指示と宗谷の復唱により、『晴風』では直ちに戦闘態勢がとられた。

『たかお』と『はつづき』も対空・対水上戦闘用意の令が出され、乗員たちが持ち場へと向かっていく。

「そ、速度20ノットで接近中!」

「見つかっちゃいましたね…」

「…そのようだな」

さらに事態は、悪化の一途を辿っていく。

「シュペー、主砲旋回しています!!」

「っ…!?」

シュペーは既に『晴風』へと目標を定めている。

つまり、"お前の墓場はここだ" と暗に示しているのと同じだ。

「撃ってくる…!!」

「問答無用ですね…」

宗谷と納沙は、自分たちがここで死ぬのではと絶望した。

「野間さん!白旗を!!」

岬はとっさに、敵対意識はないことを示すよう指示した。"これで止まってくれれば" そう願った。

「シュペー主砲発砲!!」

しかしシュペーは、主砲の照準を合わせるとすぐさま砲弾を発射した。

「なんで…!?」

「エンジンを止めないと駄目だ!」

機関を停止させて始めて、敵対意識が無いことを証明できる。そのため、白旗を振っただけでは意味が無いのだ。

「でも、逃げるんだよね…?」

知床は岬に、シュペーと戦闘するつもりは無いだろうと確認する。

「うん、180度反転する!面舵一杯!前進一杯!!」

「面舵一杯!」

『晴風』たち3隻は右方向へ艦首を向け、飛んでくる砲弾を避けようとする。

「着弾!!」

シュペーの放った砲弾は、『晴風』と『たかお』の間に着弾した。

次々と飛来する砲弾の合間を縫うように進む3隻は、やがて向きを180度回頭し、シュペーに艦尾を向け逃走を図る。

「シュペーも速度を上げました!」

しかし、それに合わせるかのようにシュペーも速力を上げ、追尾してくる。

"意地でもここで沈めてやる" と言わんばかりの猛追である。

「シュペーは、基準排水量12,100t、最大速力28.5ノット、28cm主砲6門、15cm副砲8門、魚雷発射管8門、最大装甲160mmと、"小型直教艦" と言われるだけあって、巡洋艦並みのサイズに、直教艦並みの砲力を積んでいます!」

これが故に、シュペーを含む『ドイッチュラント』級装甲艦は "ポケット戦艦" という異名を持っており、対戦する中で非常に厄介な相手である。

「着弾!!」

この間にも、シュペーは次々と砲弾を撃ち込んでくる。

しかし偶然なのか、はたまた岬の幸運がはたらいているのかはわからないが、砲弾はどれも命中はせずに海中へと消えていく。

「主砲の最大射程は、約36,000m!重さ300kgの砲弾を、毎分2.5発、発射可能で!1発でも当たれば一瞬で轟沈です…。まぁ15cm副砲でも、ウチの主砲よりも強いんですけど…。自衛隊の『はつづき』が初速と最大射程を上回っているので、そこで対峙できるかどうか…」

『はつづき』が搭載している主砲は、アメリカ海軍が開発した "Mk.45 5インチ砲" の "Mod4" と呼ばれるタイプで、長らく量産され続けているMk.45シリーズの中で最新バージョンの主砲だ。

砲弾の重さは31.75 kg、砲弾の発射初速は1,051.6m/sで、最大射程は約37,000m。シュペー副砲弾の重量が45.3kg、発射初速が875m/sで最大射程が22,000mであるため、重量以外では僅かに『はつづき』が上回っている。

「だがそれは副砲が相手の時の話だろう?それに『はつづき』の主砲はそうでも『たかお』の主砲では届きやしない。砲力と装甲は向こうが遥かに上…」

『たかお』の主砲は、イタリアのオート・メラーラ社が開発した "127mm単装速射砲" 。砲弾の重量は "Mk45" と同じだが、発射初速808m/s、最大射程23,000mと『はつづき』に比べ劣っている。

「ウチが勝っているのは、速度と敏捷さだけ…」

「このまま機関全開にし続けたら、間違いなく壊れちゃうよ…」

前進一杯は、エンジンに多大な負担をかけてしまう。そのため、長い時間出し続けることはできない。

「魚雷撃って足止める?」

「もう無い!」

「っちゃ〜!そうだった〜!!」

『晴風』が搭載していた魚雷は、演習用の1発のみ。それも『さるしま』との戦闘で使ってしまったため、残弾数はゼロだった。

「こっちの砲力は?」

「70で5」

「7000(m) で50mm!?シュペーの舷側装甲は?」

岬はどうやら、砲撃戦を視野に入れているようだ。

「80mmです!」

「30」

「30まで寄れば抜けるのね?」

岬が考えついたのは、自分たちがシュペーから最も距離を離し、なおかつ最もシュペーへダメージを与えられる場所で発砲するというものだった。

「ちゃんと会話が成立してる…?」

「これが艦長の器ってヤツですか〜…」

西崎と納沙は、岬へ関心した様子だが、

「そんなわけ無いだろう!!」

宗谷は顔を真っ赤にして否定した。

「麻侖ちゃん!出し続けられる速度は!?」

「第4戦速まででぃ!」

言い換えれば、最大戦速と前進一杯は継続することができないということだ。

「第4戦速…27ノットか……」

「向こうの最大戦速と同じです」

「どうしたら…」

その時、立石が小さく呟いた。

「…ぐるぐる」

最初は、立石が何を言っているのか聞き取れなかったが、すぐに立石が何を言いたいのかを理解した。

「…ぐるぐる!」

「あっ…!!」

「鈴ちゃん!取舵一杯!!『たかお』と『はつづき』に発光信号!『たかお』は急いでここから離脱、『はつづき』はウチに付いてきて!!」

「取舵一杯!取舵30度!!」

宗谷は、その指示が一体何を意味するのかわからなかった。

「何をする気ですか!?」

「煙の中に逃げ込むの!!」

 

 

「CiC、艦橋!『晴風』より発光信号!「我に続ケ」!繰り返す、「我に続ケ!!」」

「艦橋!第4戦速!!取舵!30度ヨーソロ!!」

平井は即座に、『晴風』の後をつけるように指示を出した。

「一体、岬さんは何を…?」

五香は、『晴風』からの突然の指示に困惑した。

何かしらの意図があっての指示だということは理解できるが、それが何なのかまではわからない。

「艦橋、CiC!状況に何か変化は!?」

平井は、『晴風』がどういった行動をとっているのかを確かめる。

「CiC、艦橋!『晴風』煙突部からの黒煙により、目標を視認できません!!」

平井は、岬が何を狙っているのかを察した。

「っ…!!そういうことか。案外やるじゃねえか」

「えっ…?どういうことですか?」

まだ理解が追いついていない五香に、平井が説明する。

「『晴風』のエンジンを不完全燃焼させて、通常より多くの黒煙を発生させる。そんで、不規則な舵をとることで黒煙の中に自分の身を隠し、相手に照準をとらせないようにするってことだ。こんなの、乗艦したての人間が思いつくような芸当じゃないけどなぁ…」

平井はそう言い終えると腕を組んで唸った。

ガスタービンエンジンを機関とする自分たちにはできない、『晴風』ならではの技だ。

「『晴風』転舵!」

「戻せ〜!面舵!30度ヨーソロ!!」

『晴風』と『はつづき』は、右に一回転、左に一回転を繰り返しながらシュペーを撒いていく。

シュペーは手当たり次第に主砲を撃ち続けている。砲弾は『晴風』の艦首付近に着弾したり、『はつづき』のすぐ真横に着弾したりと、まるで姿が見えているかのように砲撃を出してくる。

「…副長、判断はどうか?」

五香は、少しのあいだ考えたような表情を見せた後、こう述べた。

「我々は、既に何度も敵艦から砲撃を受けています。敵艦の主砲弾の威力はこちらの倍以上。このままでは我々は轟沈を免れません。『急迫不正の侵害』に当たることは確実です。正当防衛と緊急避難の名目で反撃できるかと。ただ当然ながら、我々の艦と戦前の巡洋艦は実戦で対峙した経験はありませんし、そもそも自衛隊には今までそんな記録が記されたこともありません。どの程度の効果が見込まれるかは未知数です。それに、戦艦を相手にして護衛艦と駆逐艦のみで近接戦闘を行うのは、リスクも大きく危険です。かなりの博打にはなると思いますが…」

砲弾による物量攻撃が主流である敵艦と、ミサイルによる遠距離からの攻撃が主である『はつづき』。

そして、速力と小回りの効きが自慢の『晴風』。

砲撃戦では、相手に対して自分たちが持つチップの数は圧倒的に少ない。勝算は限りなくゼロに近いだろう。

「だがウチの主砲の威力と、『晴風』の速力を考えれば、やってみる価値もあると…?」

「そういうことです」

相手の主砲弾よりも高速で飛翔する『はつづき』の主砲弾なら、敵艦の装甲を貫けるかもしれない。

弾着した後は『晴風』が出せる最高速度に合わせる形で、海域から離脱すれば良い。

「…具体的に、相手のどこへ当てれば1番効果的か?」

五香は、納沙から共有されたシュペーの設計図を取り出した。

「向こうの乗員が学生であることを鑑みると、甲板部や艦橋付近にはあまり持っていきたくはありませんね。ですが確実に仕留める必要があります。とするならば…」

そう言って羽村が指差した場所は、艦尾部分だった。

「…スクリューシャフト?」

艦の推進・後進を掌るスクリューシャフトを撃ち抜けば、乗員に大きな怪我を与えるリスクを低くしながらダメージを与えることができる。

「だが海中にあるスクリューシャフトなんか、どうやって狙うんだ? 海中に入ったら砲弾速度が大きく低下するから、狙えるかわからんぞ?」

「理論上は5インチ砲…127mm砲でも同じなので構いませんが、その場合では海中に没した後も10mほどは前進すると言われています。特に本艦の5インチ砲は速度が速いので、それ以上に進むか、海中の速度が速くなるものと考えます。30まで接近すれば、可能性はさらに上がるかと」

それを聞いた平井は、五香の考えを尊重した。

「わかった、攻撃しよう。責任は俺が持つ」

「…了解。対水上戦闘行います」

その時、『晴風』から発光信号が送られてきた。

内容は「我レ、『アドミラル・シュペー』へ砲撃ス。援護サレタシ」だった。

どうやら『晴風』も同じことを考えついていたようだった。

『晴風』と『はつづき』は、ともに主砲を敵艦のスクリューシャフトがある方向へ旋回させながら、接近していく。

「目標主砲発砲! 主砲弾、『晴風』へ直撃する!!」

距離を詰めたことが仇となってしまった。

敵艦は先ほどより照準を正確にしてきている。

「副長攻撃だ!出し惜しむな!!」

「はい! 対空戦闘!近づく目標!CiWS攻撃始め!!」

『はつづき』前甲板の20mm高性能機関銃が、『晴風』の右舷に弾幕を張るかのように射撃を開始した。

やがて接近してきた主砲弾は、『晴風』を目の前にして大きく爆発した。

「爆発閃光視認!!」

主砲弾の破片は、バラバラと『晴風』の甲板上へと落下していく。

土壇場のところで何とか迎撃に成功した。

だが一息つく暇も無く、更なる報告が寄せられる。

「敵艦より、小型艇がこちらへ接近!乗員は…1名!!」

長い金髪の少女が舵をとる真っ白な小型艇が、敵艦から全速力で向かってくるのが見えたのだ。

「小型艇、目標の右舷副砲より攻撃を受けている!!」

混乱しているのか、敵艦は仲間であるはずの小型艇にも発砲している。

「艦長、どうしますか…?」

想定外の事態に、五香は平井の指示を仰いだ。

「…作戦変更、対水上戦闘だ。副砲を攻撃しろ!小型艇の乗員を保護するんだ!!」

「ですが、敵艦の乗員ですよ? 我々に乗り込もうとしているんじゃあ…」

相手が1人だけであるということはさておき、反乱の疑惑をかけられている『晴風』と、それに随伴する2つの艦。

制圧を仕掛けられても状況的には何らおかしくない。

「だったらこっちから迎え入れてやろうじゃねえか。生身の人間が実弾喰らったら、命どころか体が残るかどうかの話だ。人道上の配慮による攻撃だ!」

「…了解しました。対水上戦闘、CiC指示の目標!主砲攻撃始め!!」

スクリューシャフトの方向へ狙いを定めていた『はつづき』の主砲は、敵艦の副砲へと照準を合わせていく。

「主砲目標よし!砲口監視員、砲口よし!射撃用意よし!!」

主砲の準備が整った。遂に『はつづき』が反撃する番がやってきた。

「主砲、撃ちぃ方ぁ始めぇ!!」

「発砲!!」

砲術長の合図により、砲術士がトリガーの引き金を引いた。

主砲は轟音をたてながら、敵艦の副砲めがけて砲弾を次々と発射していく。

それを知ってか知らずか、目標である副砲は未だに小型艇へ向け発射を続けている。

その間に『はつづき』から発射された主砲弾は、ついに目標へ命中した。

艦橋からは、副砲が大破して炎上する様子が確認された。

だがそれと同時に、接近中だった小型艇の近くで水柱が大きく立ち、その姿が見えなくなってしまった。

「目標の破壊を確認!しかし、小型艇が爆発!敵の副砲弾が命中したものと思われる!!」

平井は思わず舌打ちした。タッチの差で届かなかったのだ。

「間に合わなかった…!!」

五香は顔をしかめた。

乗っていた少女が助かる確率は極めて低い。

CiCの空気は、たちまち冷たく重いものへと変わった。

誰もが少女の生存を諦めていたその時、耳を疑うような報告が飛んできた。

「『晴風』から1隻の高速艇が発艦!操縦者は…岬艦長です!!」

平井は自席から飛び上がった。

戦闘中に救助活動を行うなど、自殺行為と言ってもいい。

その上艦長が飛び出すなど、艦内の混乱を引き起こしかねない。

「…たとえ部下でも上司でも、一緒の艦になりたくはねぇな……」

平井は、小さく呟いた。

 

 

「なんで敵なのに助ける!?」

宗谷は、岬がこれから何をしようとしているのかがわかっていた。

"相手は自分たちを攻撃してきた敵ではないか。敵に塩を送るようなことをして、いったい何になる。そのまま見殺しにしておけ"

宗谷はそう思っていた。

しかし、岬の考えは宗谷のそれとは全く逆だった。

「敵じゃないよ。海の仲間は、"家族"だから」

宗谷は目を見開いた。

「行ってくるね」

岬は、艦長職を受け持つ生徒が被る制帽を宗谷へ預けると、スキッパーに飛び乗った。

 

 

「艦長落ちた子助けに行ったの!?」

西崎は、岬の行動が信じられなさそうに声を上げた。

「距離30まで近づけ」

宗谷は西崎の言葉を躱し、知床へ操艦の指示を出した。

「距離、32…31…」

『晴風』と『はつづき』は、徐々に目標へ向けその差を縮めていく。

「撃っちゃえ撃っちゃえ撃っちゃえ〜!!」

さっきの動揺はどこへ消えたのか。

西崎は自艦がこれから攻撃を行うことに対し、テンションが上がりきっている。

「2番砲、右 攻撃始め!!」

宗谷の号令と同時に、照準を合わせていた第二砲塔が火を噴いた。

続けて、『はつづき』の主砲が再び攻撃を行う。

初弾が目標の近くに着弾した直後、目標の近くから大きな閃光が上がった。

「目標に命中!シュペー速度落ちてます!!」

「やった〜!!!」

野間からの報告を聞いた艦内は、大きな歓声に包まれた。

すかさず宗谷が知床へ指示する。

「取舵一杯!第4戦速、ヨーソロ!!」

「取舵一杯〜!!」

ついさっきまであたふたしていたとは思えない程の素早い操艦に、納沙が半分呆れるような声でツッコんだ。

「逃げる時は、テキパキしてますねぇ…」

 

 

「大丈夫!?しっかりして!!」

岬は現場に到着すると、すぐさま救助活動を開始した。

金髪の少女は、副砲弾によって粉々になった小型艇の残骸に上手く引っかかるような状態で海に浮かんでいた。

その左手には、艦長が被るものと思われる制帽が握られていた。

いくら呼びかけても返事はない。今は彼女が息をしているのかどうかもわからない。

岬は少女を乗せると、彼女の脈が正常かどうかを調べ、次に自発呼吸があるかを確かめた。

「大丈夫。あなた、生きてるよ…!!」

岬は、少女の耳にそっと囁いた。

 

 

『晴風』へと戻った岬は、甲板上で鏑木に少女の治療を頼むと、艦橋へと戻った。

「シロちゃん!」

艦橋上から前方を見張っていた宗谷は、岬に気づくと岬の方へ軽く振り向いた。

「ありがとう!」

「…確実な指示をしただけだ」

宗谷はそう言ってそっぽを向いたが、その顔はかすかに赤くなっている。

「最大戦速!現海域から離脱する!!麻侖ちゃん!よろしくね!!」

機関室は、機関士たちのため息でいっぱいになった。

「ぶっ壊れちまうよ〜!!」

柳原の叫びが、悲しくこだましていく。

 

 

「…これからどうすればいいんだろう」

救助活動の際に海水をかぶった岬は、ひと段落ついたところで浴室に向かい、シャワーを浴びていた。

「私が不安そうにしてちゃダメだ!」

そう言って岬は、自分の頬を叩く。

「私は、艦長なんだから! …そうだよね?はなちゃん、もかちゃん!」

 

 

「美波さん!」

「あぁ、艦長…」

入浴を終えた岬は、先ほど救助した少女を心配し再び医務室へ向かった。

少女は海水でずぶ濡れの制服から、病院に入院している患者が着るような患者衣に姿を変え、ベッドの上で静かに眠っている。

「どう?」

「外傷は無い。脳波も正常。あとは、意識が戻るのを待つしか…」

副砲とは言え、ほぼ直撃に近い攻撃を喰らったのにも関わらず、怪我が無かったのは奇跡と言ってもいい。

岬は、ほっと胸を撫で下ろした。

「そっか…ありがとう。私、見てるから、美波さんは食事行ってきて?」

『晴風』では、既に乗員たちが交代で夕食を摂っている。

鏑木は少女が運ばれてきてからずっと、付きっきりで看病をしていたため、夕食のタイミングを逃していたのだ。

「感謝極まりない…」

鏑木はそう告げると、少女を起こさぬよう静かに医務室を後にした。

食事へ向かう鏑木を見送った岬は、少女の上にかかっている羽毛ふとんを直すと、少女をそっと見守った。

 

 

「はぁ〜汗かいたぁ…」

「やっとサッパリしたねぇ…」

浴室では、機関室の生徒たちが入浴する時間になっていた。

「はぁ〜本当にぶっ壊れるかと思ったぜぃ〜…」

戦闘中、第4戦速からの最大戦速で航行し続けていたため、エンジンは故障寸前まで負荷がかかり、室内は高温状態が続いていたのだ。

「さぁ!待ちに待ったカレーだ!カレー!!」

 

 

「さぁ!食べてよ〜!!」

『晴風』艦内では、今日が金曜日ということもあってカレーライスが夕食に出されていた。

自衛隊においても、曜日感覚を忘れないためとして旧日本軍時代からの風習として、金曜日の食事はカレーライスとなっている。

世界は違えど、海に生きる者同士で似ている部分もあるようだ。

「120%マジ美味しい〜!」

「これが晴風カレー…!!」

乗員たちは皆、カレーに舌鼓を打っている。

一口にカレーと言っても、それぞれの艦や部隊ごとにそのメニューは異なっている。

いくら曜日感覚のためとはいえ、レシピが同じでは乗員たちは流石に飽きてしまう。

国防に携わる者や運輸に携わる者にとって、食事は数少ない楽しみである。

給養員たちは隊員に少しでも活力を与えようと、各部隊でそれぞれ工夫の凝らした料理を作っている。

これも、自衛隊と共通している部分の1つである。

「やっと食べられますね〜!」

納沙は、やっとの思いでありつけられる食事に歓喜していた。

元々は昼食に提供されるはずだったカレーだが、シュペーとの戦闘に巻き込まれたこともあり、昼食自体が飛ばされていたのだ。

「…美味い!」

立石は、頬を赤く染めながらカレーを堪能していた。

「甘口だけどコクがあります…!」

「ブルーベリージャムを、隠し味に使ってるから…」

そう答えたのは、この艦の給養員長である 伊良子 美甘 (いらこ みかん) だ。

周囲からも続々とカレーに対する称賛の声が上がり、伊良子は嬉しそうに皆が食べている様子を見つめた。

「「やった〜!!」」

キッチンからその様子を見守っていた給養員、杵崎 ほまれ (きねさき ほまれ) と杵崎 あかね (きねさき あかね) は、双子の姉妹だ。

「マッチにも持っていってあげよ〜っと!」

先に食事を終えた等松は、当直のために食事に来られない野間へカレーを差し入れすることにした。

「何がマッチよ〜…」

和住は、朝から晩まで野間のことで頭がいっぱいな等松に対して、呆れを通り越して怒りを感じていた。

「美化委員長はクロちゃん派っすか〜?」

「はぁ!?」

青木の少しばかり煽るような言葉に、顔を真っ赤にする和住。

だが、話題に上がった黒木はと言うと…。

 

「あれ?宗谷さんは??」

こちらはこちらでガールズラブに陥っている様子。

「さぁ?艦橋じゃねえのか?」

共にやってきた柳原が、まるで "そんな事どうでもいい" とでも言いたげな表情をしながら答える。

 

 

その宗谷は、食事に出た知床に代わって環境で操艦していた。

「宗谷さん、お疲れ様。カレー持ってきたわ」

黒木は、宗谷のぶんのカレーを艦橋へと持ってきた。

「あぁ、すまない…」

皆と一緒ではないが、久々に摂れる食事に宗谷も思わず笑みをこぼす。

「あまり無理しないでね!」

黒木はそう言うと、左手を軽く振りながら食堂へ戻っていった。

宗谷は、左腕でカレーの乗ったトレーを支えながら、右手でスプーンを手に取った。

 

 

一方、『たかお』と『はつづき』も夕食時となっていた。

『たかお』の食堂では、乗員たちのおよそ半数が食事を摂っていた。

『晴風』などの学生艦とは異なり、乗員の数が莫大な海上自衛隊の艦では、乗員たちを半分ずつに区切り、それぞれが交代で食事を摂るというシステムが採用されている。

「なぁ?お前見たんだろ?『アドミラル・グラーフ・シュペー』」

「あぁ、まさか戦前の巡洋艦が動いてるところを生で見る時が来るだなんて思ってもみなかったぜ。」

「主砲を撃たれた時は、流石に今度こそは死んだと思ったわ…。」

「『はつづき』がヤツの副砲を撃ち抜いたと聞いた時ゃ、それはそれで驚いたけどよぉ」

乗員たちの話題は、昼間に起こった戦闘のことで持ちきりだった。

艦橋にいた者は当時の様子を事細かに話し、CiCなど艦内の奥で配置についていた者はその時のデータなどを持ち寄った。

「なぁ、この世界には『アドミラル・グラーフ・シュペー』が現存してんだ。もしかすると、大和型の姿が拝めたりしねえか?」

「どうたろうなぁ、俺らの知らない世界だから起こりうる話かもしれんが…」

「大和型をこの目で見られたら、それこそ自衛隊の冥利に尽きるぜ…」

そうして食事を運ぶ手が止まらなくなっていた。

 

 

一方、羽村たち幹部も士官室で食事を摂っていた。

「まさか、岬艦長が戦闘中に艦から飛び出すとは…。同じ国防の人間とは思えないほど度肝を抜かされました」

半沢はそう言うと、水の入ったコップに手を伸ばす。

「しかも1人だけでですよ? 艦長、ちょっと聞きづらいんですがその…この世界の海軍連中は、皆あのような人ばかりなのでしょうか?」

望畑は、"もしや、自分たちもこの世界で生きていく以上は、あのような行動を起こすような人間にならなければならないのか" と多少不安を感じていた。

「あ〜…いや、そんなことはないと思うよ?私だってこの世界で育ってた頃にそんな話を聞いた覚えは無いし、ミケちゃ…岬艦長の個人的な思惑があっての行動だと思う」

そう言った羽村の顔は、苦笑いを浮かべている。

「無理に言い直さなくてもいいですよ?艦長のお友達であるなら、変に他人行儀にするのもアレですし」

「そ、そう?じゃあお言葉に甘えて…」

半沢の勧めに、羽村は「では、改めて」と言葉を挟んで続きを語り始めた。

「そもそもミケちゃんがあんな風に、助けを求める誰かへ真っ先に突っ込むようになったのは、ミケちゃんに昔あった出来事が原因だと思うのよね…」

「出来事…ですか?」

「そう。その出来事っていうのは2つあるんだけど、そのうち1つは私が関わっていてね。 実は…」

羽村がそこまで言いかけた時、艦内通話用の受話器が鳴った。

部屋の中で共に食事をしていた最下級の幹部が、電話を取りに小走りで向かう。

「はい、こちら士官室。 …はい、はい。…艦長、CiCからです」

それを聞いた羽村は自席から立ち上がり、受話器を受け取った。

「はい、こちら艦長の羽村…」

すると受話器の相手は、とても緊迫した声で話してきた。

「艦長!至急CiCへお戻りください!緊急通信を使用した救援要請を傍受したとの報告が!!」

「何ですって!?詳細は!?」

「この世界に存在する艦艇の情報が乏しいため、艦種等については『晴風』に問い合わせています。ですが、救難信号を発した艦の現在位置については特定済みです!」

「了解、すぐに戻る!!」

羽村は急いでカレーをかき込むと、半沢と望畑を引き連れてCiCへと急いだ。

 

 

羽村たちがCiCへ戻ると、再び救援要請の通信が流れていた。

「…こちら『武蔵』、こちら『武蔵』。非常事態が発生、至急救援を…!」

その声を聞いた羽村は、驚いて目を見開いた。

「もかちゃん…!?」

何故ならその声は、彼女が明乃と同じように大切にしていた、もう1人の幼なじみの声だったからだ。

「現在、アサンシオン島沖北西。アサンシオン島沖北西! …至急、救援を。至急、救援を!!」

この言葉を最後に、通信は途切れてしまった。

羽村は目の前の状況に理解が追いつかず、ただその場に立ち尽くしていた。

 

 

(次回予告)

 

明乃「今回のゲストは、ココちゃんと『はつづき』副長の五香2佐で〜す!」

 

幸子&三咲「よろしくお願いしま〜す!」

 

明乃「いや〜それにしても、今回も大変だったな〜…」

 

幸子「えぇ。危うく 「コノママデハ、ワレワレハ、ウミノモクズデス!!」 「受け入れるしか、あるまい…」 みたいになってしまうところでした〜…」

 

明乃「いつもノリノリだね、ココちゃん!」

 

三咲「私このテンションについていけるのかなぁ…」

 

明乃「大丈夫だよ三咲ちゃん!そのうち慣れるって〜♪」

 

三咲「ッ…!? 私、女の子からちゃん付けされたの久しぶり…ちょっと感動…!!」

 

幸子「で、次回はどのようなご予定で?」

 

明乃「みんなのパジャマ姿を大公開するよ! 次回『ハイスクール・フリート』! 「ガールフレンド かっこ… 」」

 

三咲「いや待って!それ以上喋っちゃダメ!!絶対にダメ!!!」

 

明乃「え〜なんで〜??」

 

三咲「なんでも!!」

 

幸子「そうですよ!理由を教えてください理由を!!」

 

三咲「あ、あぁえっと…あ、明日に向かってヨーソロー!!」

 

幸子「あ、逃げました!逃げましたよこの人!!」

 

 

 

※今回のオマケ

 

登場する護衛艦の紹介

 

 

・DDG 178 『たかお』

 

海自初のイージス艦『こんごう』型の就役後に、朝鮮半島の軍事問題が活発化してきたことを踏まえて追加製造されたイージス艦『なち』型の2番艦。

(※という設定。忠実の『こんごう』型と『あたご』型の間で建造されている。なお『あたご』型は、第5・第6護衛隊群の新設計画により建造されたものとしている)

『こんごう』型での実績を反映させつつ、同型で浮かび上がった反省点などを大きく向上させ、ステルス性のさらなる向上を図っている。

当初、『たちかぜ』型護衛艦の代替として『なち』が舞鶴の第3護衛隊群へ、『たかお』が佐世保の第2護衛隊群へそれぞれ配属された。

後の第5・第6護衛隊群の新設に伴い、『なち』は横須賀に新設された第5護衛隊群へ、『たかお』は母港を同じとする第6護衛隊群へ転属されている。

なお、BMD改修については諸般の事情により『あたご』型に先行されたため、未実施のままであった。

 

[諸元]

基準排水量:7550t

 

満載排水量:9780t

 

全長:163m

 

全幅:21m

 

駆動方式:COGAG制御

 

出力:100,000馬力

 

速力:30kt以上

 

レーダー:SPY-1D (V) フェーズドアレイ・レーダー 、 OPS-28D 対水上レーダー 、OPS-20 航海レーダー

 

砲熕:54口径127mm単装速射砲 1基 、 高性能20mm機関砲 (CiWS) 2基

 

ミサイル:Mk.41 VLS 96セル (64+32) ※SM-2・VLA併用 、 ハープーンSSM4連装発射筒 2基

 

水雷:3連装短魚雷発射管 2基 (97式 / Mk.46)

 

艦載機:SH-60 J / K 1機 (後日装備)

 

乗員:約300名

 

 

 

・DD 119 『はつづき』

 

僚艦防空の機能を有する唯一の汎用護衛艦として活躍する『あきづき』型の5番艦。

第5・第6護衛隊群の新設に伴い増備されたグループ。

従来の『あきづき』型に比べて変化はほぼ無い。

 

[諸元]

 

基準排水量:5100t

 

満載排水量:6800t

 

全長:150.5m

 

全幅:18.3m

 

駆動方式:COGAG制御

 

出力:64,000馬力

 

速力:30kt

 

レーダー:FCS-3A フェーズドアレイ・レーダー 、OPS-20C 航海レーダー

 

砲熕:Mk.45 62口径5インチ単装砲 1基 、 高性能20mm機関砲 (CiWS) 2基

 

ミサイル:Mk.41 VLS 32セル ※ESSM(シースパロー)・VLA併用 、 90式SSM4連装発射筒 2基

 

水雷:324mm3連装短魚雷発射管 2基 (12式)

 

艦載機:SH-60K 1機

 

乗員:約200名

 

 

 

(※他にも電子戦に対抗する手段など、装備は沢山ありますが書き切ろうとすると大変なことになりますのでここで区切らせていただきます。

許してください!何でも…するとは言っていない。

 




今回もお読みいただき、ありがとうございました!
今回の第二話、早くも難産でした。
なんてったって文字数約2万文字ですぜ!?
こんなに書いたのは流石の俺も初めてダァ…(コマソドー

実を言うと前回の第一話を投稿してから、およそ10日ほどで今回の8割を書き終えていたのですが…。
中の人が「探偵はもう、死んでいる。」と「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」にハマりまして、それが原因で残りの2割をそっちのけにしていたんです…。
いやさ、シエスタちゃんにカタリナちゃん。可愛すぎひん!?((殴打

いや〜これはちょっと世間は許してはクルルルェアセンヨォ (アキバのオタク

え?最後ら辺に違うマンガものの名前が挙がったって?
気のせいじゃないかなぁ…((明後日の方向

いつもの如く、次回の投稿予定時期は未定です!!
気長にお待ちください!!((現実逃避

また今回も、感想やご意見、お待ちしております!
誤字脱字の報告なども、どしどしお寄せください。


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