特集 トレセン島の生物「ウラライオン編」 (日之谷)
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特集 トレセン島の生物「ウラライオン編」

ここはトレセン島と呼ばれる場所、ここには様々な生き物が生息している。

 

今回我々が調査した生物、それはウラライオンである。

 

ウラライオンはライオンと呼ぶには非常に小柄である。可愛らしく愛嬌もあり、元気いっぱいに草原を駆け回る姿は非常に人気だ。

 

そんな彼女の一日を見てみよう。

 

早朝、目が覚めたウラライオンは大きな欠伸をする。そしてすぐにそのまま二度寝を始める。

 

取材班が遠くでその様子を眺めていると、ウラライオンの近くに一頭のライオンが現れた。キングである。

 

キングは眠っているウラライオンに一声上げる。

 

ウラライオンはキングに気づいたのか尻尾を振りながらキングの側に寄る。

 

キングは寄ってきたウラライオンに毛繕いをし始めた。

 

解説をするとキングとはその名の通りまさに王者とも言える貫禄の持ち主で別名、トレセン島の一流とも呼ばれている。

 

性格はまさしく王であり、誰かに靡くなどせず、常に強者としてのオーラを持っている。また、王として自らを慕うものには甲斐甲斐しく面倒を見る側面もある。特にウラライオンには毎日に顔を出して毛繕いなどをしているのを目撃される。

 

王気質ではなく、単に面倒見の良い姉御肌とも言われており、学会ではたびたび論争が行われている。

 

お昼頃、お腹が空いたのかグゥ〜とお腹を鳴らすウラライオン。

 

そこで取材班はあらかじめ用意しておいた特製人参ハンバーグをそっと近くに置く。

 

人参ハンバーグの存在に気づいたのか目を輝かせて駆け寄る姿は非常に可愛らしい。

 

小さな口を大きく開けてかぶりつこうとした瞬間、近くの草むらから1匹の黒豹が現れた。

ライスジャガーと呼ばれるこちらも小柄ではあるが耳の大きいという特徴がある。

 

ちなみに乾季の長いトレセン島ではライスジャガーは雨を呼ぶものとして祀られていたりする。

 

どうもお腹が空いているらしく、ハンバーグの香りに釣られてきたようだ。

 

ウラライオンはお腹を空かせたライスジャガーを見るとそのままライスジャガーの方にハンバーグを寄せる。

 

喜びの表情を浮かべるライスジャガー、しかし耳の良い彼女はウラライオンも自分と同じで空腹でお腹を鳴らしているのに気づく。

 

ライスジャガーはハンバーグを半分食べたらそのまま器をウラライオンの方へと戻した。

 

つまりは半分こである。

 

ウラライオンも喜んでハンバーグを食べて始めた。

野生というのは弱肉強食の世界ではある、だからこそ互いを思いやる行動とは実に尊いのである。

実際にウラライオンとライスジャガーは非常に相性が良く共に行動している事が多い。これを『ウラライス』とトレセン島の生き物に詳しい学者のデジタル氏は呼んでいる。

 

しかし同時にこの2匹が揃うと非常に危険だとデジタル氏は言う。

 

「迂闊に近寄れば命に関わる事態になりかねないので2匹が一緒いるときは決して間に割り込もうなどと考えてはいけません」

 

そう言ったデジタル氏は過去に自分に起きた事を語り始める。

 

「あれは2匹が追いかけっこをしていたときの事でした、もちろん私は眺めていただけで間に入ろうだなんてそんな畏れ多いことなどは考えてません」

 

「偶然、本当に偶然だったんです、追いかけっこに白熱していたのか周囲を見ていなかった2匹が突然、私の前に現れたんです」

 

「そしたらですね、私に警戒したのか2匹とも唸り声を出して吠えてきたんです」

 

「がおーー‼︎」

「が…がおー…」

 

「それを見て聞いた瞬間、私は死を覚悟しましたね、だって可愛いすぎるんです!ウラライオンはただ元気いっぱいに声を出しているだけで、ライスジャガーはウィスパーボイスでそれはもうやばかったです」

 

「あまりの尊さに気絶してしまいましたが、あのままくらい続けていたら間違いなく尊死していましたね、ちなみに目が覚めたら2匹ともいなくなってました。」

 

そう言ったデジタル氏だが恐怖というよりは法悦の表情を浮かべていた。

 

この番組を見ている視聴者も偶然なら仕方ないにせよ、意図的に間に割り込むのはやめておくべきだと我々スタッフ一同も警告しておこう。

 

本日の特集は以上となります。次回は最近発見された喧しい蛙、マチカネフクラガエルを見ていきましょう、それではまた次回。



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トレセン島season2 「調査編」

まさかの続き。
友人からのリクエストでスズカとテイオーを登場させるお話が欲しいとの事、たぬきの使用はダメと言われてないからセーフでしょう。
続編のようなものですが、直接的な繋がりはありません。


幻の島、トレセン島は実在した!

今回、この島を調査すべく3名の調査員が送り込まれた。 

 

「とゆーわけで、この島に生息している幻の生物を捕まえんぞ」

 

密林地帯でそう言うのは探検服姿のゴールドシップ。

 

「ここ…どこ?」

 

「こんなに草木が生い茂ってると走れない…」

 

何が起きたのか理解できていないジャージ姿のウマ娘、トウカイテイオー、大体いつも通りのサイレンススズカ

2人はトレーニングの準備運動中に突然現れたゴールドシップによってこのトレセン島に連れてこられた。

 

「さっきまで学園にいたのに何でボク達はジャングルにいるの?」

 

当然の質問をゴールドシップにぶつけるテイオー

 

「ワームホールってやつよ」

 

「確か、時空にある一点から別の離れた一点へと繋がるトンネルみたいなので元々は虫食いの跡が…」

 

ゴールドシップの答えに捕捉するように話すスズカ。

 

「スズカも真面目に答えなくていいから!というかなんで知ってるのさ!」

 

「まーまー、目的の生物を捕まえたら帰るから少し付き合ってくれや、見つけられなくても夕方くらいにここ出れば門限までには帰れっからさ」

 

「このジャングル、日帰りで帰れる距離にあるの!?」

 

ジャングルの奥へと進むゴールドシップと巻き込まれた以上諦めて着いて行くテイオーとスズカ、ジャングルではあるが思っていたより気温も湿度も高くなく過ごしやすい環境だ。

 

「ねーゴルシ、結局ここってなんなのさ」

 

「知らねーのか?ここはトレセン島と呼ばれるところでな、特徴としてはどの図鑑にも載っていない独自の生命体が多数生息している幻の島さ、細かい事は実際に見てもらう方がはえーな…そこだ!」

 

ゴールドシップは近くの藪に手を突っ込むと何かを掴んだらしくこちらに見せてきた。

 

「ナ゛ァァァァ!!!」

 

「ちょっうるさっ!」

「うぅ…」

 

突然の大音量にテイオーもスズカも耳を押さえる。

ゴールドシップは動じていない。

 

「こいつはマチカネフクラガエル、危険を感じるとでかい叫び声を出して相手を威嚇するんだ、特徴は頭にある達磨や四葉のクローバーっぽいツノがある事だ」

 

「フンギャロー!フンギャロー!」

 

マチカネフクラガエルと呼ばれる蛙はジタバタしながら叫び声を上げ続ける。

 

「何故かしら、とても騒がしいのに妙な親近感が湧くわ…」

 

スズカは興味津々にマチカネフクラガエルを指でつつく

 

「アー!ゴムタイナー!」

 

しばらくの後、マチカネフクラガエルを藪に戻すゴールドシップ。

 

「とまあこんな感じで通常の生態系にはない謎生物だらけの島なんだここ」

 

「納得したけど納得できないような…というよりここ外国?」

 

「んなわけねぇだろ日本に決まってんだろ」

 

「国内かつ、日帰りで帰れる距離にあるんだ…幻なのに」

 

「さて、ターゲットをサクッと見つけるために今回は現地の協力を仰ぐ事にするか」

 

「協力?」

 

ゴールドシップは胸ポケットから1枚の写真を取り出す。

写真にはパフェを幸せそうに食べているマックイーンが写っていた。

 

「マックイーンの写真?これをどうするの?」

 

「まー見てろって」

 

ゴールドシップは写真を地面に置く。

しばらく待っていると草陰から何かが飛び出してきた。

 

「よし来たな」

 

「えっ何これ」

「これは…何?」

 

ガッツポーズを決めているゴールドシップと困惑する2人。

2人の目の前にはマックイーンの写真を持って喜ぶ、ウマ娘が着るような黒と緑色の市松模様の勝負服を着た小さな生物がいた。

 

 

 

 

 

 

「おっし!んじゃあ頼むぜ」

 

謎の生物は頷くとそのまま歩き出そうする。

 

「いやいや、ストップストップ!」

 

「んだよ、テイオー」

 

「ゴルシ、あれ何?」

 

「何ってたぬきだろ」

 

「たぬき…なの?」

 

スズカは謎の生物をまじまじと見る。

 

「紹介が必要か、こいつはスグニゲテという名前のたぬきだ、それ以上でもそれ以下でもましてやそれ以外の何者でもない」

 

スグニゲテと呼ばれるたぬきは振り返ると2人にお辞儀をする。

 

「ど…どうも」

「ええと…こんにちは?」

 

スグニゲテは特徴的な瞳で2人をじっと見た後、再び歩き出した。

 

「うっ…何だろう、あの目で見られるとやる気が無くなりそうな気がする」

 

「そうかしら?可愛い目だと思うけど」

 

「ほら2人ともぼさっとしてんな行くぞー」

 

密林を進む3人と1匹。

 

「ねぇねぇゴルシ、ふと思ったんだけどさ」

 

「何だ?」

 

「スグニゲテってすぐ逃げてって日本語にもなるじゃん」

 

「おう、それで?」

 

「でさ、英語で言うならジャストアウェ…」

 

「シャラップ、テイオー!あいつが反応してるぞ」

 

スグニゲテがものすごい速さでジャングルを走る。

慌てて追う3人、たどり着いた先にいたのは眼鏡をかけた物凄い毛量のたぬきとその側ではしゃいでいるスグニゲテであった。

 

「あちゃー!当てが外れたか」

 

「ゴルシこれは?」

 

「こいつはケルヌンノスというたぬきの一種だ、特徴は見て分かるとおり毛量が凄い、あとでかい」

 

でかいという言葉に反応したのか抗議するようにジタバタするケルヌンノス。

 

「こいつには悲しい逸話があってだな、話すと長くなるから割愛するけど」

 

ゴールドシップはケルヌンノスの側で今だに喜んでいるスグニゲテの肩を叩く。

 

「次はほんと頼むぜ、なあ?」

 

いや違うんだ話を聞いてくれと言うように慌てているスグニゲテ。

 

「ね…ねぇ2人とも」

 

そんな中、スズカが話しかける。

 

「どうしたのスズカって…うわー!なんか小さいスズカがいるー!?」

 

サイレンススズカの周囲を左回りしながら渦巻き走りをするスズカそっくりな謎のたぬきがいた。

 

「おう、こいつはスズキだな」

 

「鈴木?もう人の名前じゃん!?」     

 

「離れないんだけど、どうしようかしら」

 

「多分、似ているからスズカの事を仲間だと思ってんだろ、特に気にしなくていいと思うぞ」

 

再び歩き出す3人と2匹、到着したのは先ほどと違いジャングルではなく、だだっ広い平原だった。

 

「ここにいるんだな?」

 

ゴールドシップを見ながらスグニゲテは頷く。

 

「ゴルシ、結局ここに何がいるって言うのさ?」

 

双眼鏡で周囲を見渡すゴールドシップにテイオーが聞く。

 

「未確認生命体だよ、知ってのとおりこの島は通常の生態系には無い生き物ばかりでな、偶然この島を見つけたアタシがここの生き物に名前をつけて図鑑コンプリートすんのが目的さ…っていたぞ!」

 

ゴルシがある先を双眼鏡で見ていたのでテイオーも双眼鏡で見る。

 

「えっ何…アレ」

 

テイオーが見たのは白い毛並みの四足歩行の生物で、顔は細長く、何より目をひいたのは自分達そっくりな耳の形をしていた。

 

「うわぁぁ…なんか理解しちゃあいけないような…」

 

「テイオー!あまり見るんじゃねえ!戻ってこれなくなるぞ!」

 

ゴールドシップがテイオーの双眼鏡を奪う。

 

「よーし、アレがターゲットのUMA・Gだ、早速捕まえるぞ!」

 

UMAに向かって走り出すゴールドシップ。

 

「ちょっとゴルシ待って!スズカも見てないでゴルシを止めるの手伝って…」

 

テイオーが振り向くとスズカとスズキと呼ばれるたぬきの姿は無かった。

 

(何にもない広い草原…走らずにはいられない!)

 

(…!……)

 

スズカとスズキは草原を別々の方向に向かって走っていた、恐らくは互いを邪魔しないよう、無意識のうちに先頭の景色を譲り合ったのだろう。

 

「ぐぼぉぉ!」

 

ゴールドシップはUMAを捕まえようと飛びかかったところ後脚で思いっきり蹴り飛ばされた。

 

「ゴ…ゴルシ〜」

 

UMAはゴルシを一瞥したあと、そのまま舌を出しながらパカラパカラと足音を鳴らして走り去っていく、スグニゲテも興奮気味にUMAを追いかけていった。

 

その後、ゴールドシップを回収したテイオーは走って満足したスズカも連れ戻し、ゴールドシップによるワープのおかげで門限までに学園に帰る事が出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…今日のは何だったのかしら」

 

寮へと戻るスズカ、今日はよく分からない事に巻き込まれて疲れたが無事に帰って来れたし、何より故郷にあるような草原を思いっきり走る事が出来たのでそれなりに満足していた。

 

「スペちゃん、ただいま」

 

「あっ、おかえりなさいスズカさん!見てくださいこの子、夕方にターフを走ってたら出会って、可愛いですよね!」

 

「ウソでしょ…」

 

唖然とするスズカが見たのは、ニコニコしているスペシャルウィークの周りを左回りで渦巻き走りしているスズキの姿であった。



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