一人暮らしを始めた僕の高校生活はバラ色でした。 (チャンドラ)
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大家さんと隣人の出会い

「ああ、ようやく終わったぁ......」

 俺は額の汗を拭い、ぐったりと木で出来た椅子に腰を掛けた。

 このアパートの一室に越してきた初日、俺は絨毯をセットしたり、家具をセットしたりして、新生活の準備にかなりの時間を費やした。

 

 俺の名前は竹内優馬(たけうちゆうま)

 中学時代までは地方に住んでいたのだが、上京し高校進学に当たって一人暮らしを始めることにした。

 そこで、このアパートに住むことに決めたのである。

 

 このアパートーー『キンキィ梅田』は最寄駅から徒歩五分という場所に位置し、非常に交通の便がいい。

 その上、近くには食堂やコンビニもあり、非常に恵まれた所に位置している。

 

「さて......荷解きも終わったことだし、行くか」

 俺は地元のお土産用のお菓子を手に持ち、部屋から出た。

 

 俺の住むアパートは202号室であり、両隣の部屋がある。

 隣人にも挨拶に行くつもりだが、まずは大家さんに挨拶に向かうことにした。

 大家さんは俺の真上の部屋、302号室にいる。

 階段を上がり、302号室に向かった。

 

 俺の部屋と同じく赤色でコンクリートの扉であり、扉の上には302と書かれている札がついていた。

 俺はインターホンのボタンを押した。

 ピンポーンという音がなる。

 

 しかし、中々大家さんが出てこなかった。留守かもしれない、俺はそう思い、戻ろうとすると、

「はいはーい!」

 ガチャっと中から大家さんが出てきた。

「う......お......」

「あら!」

 

 一瞬、体が硬直してしまった。

 驚いたのは大家さんの服装。

 ところどころ、穴が開いたボロボロの白いTシャツと下はピンク色のパンティを履いているだけという無警戒にも程がある格好をしていた。

 大家さんは見た目、二十代半ばくらいの年齢に見え、赤色のメガネをかけていた。

 さらに、つい見入ってしまうほどのものすごい大きさの胸がついていた。

 

「は、初めまして......今日からここに越して来ました。竹内優馬です。こ、これ......つまらないものですけど」

 胸に目が行かないように細心の注意を払いながら、俺は持って来たお菓子を大家さんに差し出した。

「あらあら、わざわざありがとう。私はこのアパートの大家の梅田薫(うめだかおる)よ。ごめんね、こんな格好で。いつも女性しかこの部屋に訪ねてこないもんだからね、つい」

 薫さんは恥ずかしそうに頰をかきながら微笑んだ。

「い、いえ......」

「せっかくだから上がっていって!」

 

 薫さんは俺の腕を掴み、部屋の中に招き入れようとした。

 

「え? そんな、悪いですよ......」

 さすがに女性の部屋に入るというのは気が引けた。

「いいから遠慮しないで!」

 

 しかし、薫さんは俺の心配などつゆ知らずといった感じで半ば強引に部屋の中へと連れていった。

 俺は靴を脱ぎ、薫さんの部屋へと上がった。

 

「適当に座ってて。今、お茶を淹れるから」

「分かりました」

 

 俺は床に正座した。部屋の中は有り体に言って、ものすごく散らかっていた。

 空き缶やお菓子の空箱、さらには下着まで床に脱ぎ散らかっている。

 

「はいお茶。良かったら飲んで」

「あ、ありがとうございます......」

 

 薫さんが淹れてくれたお茶を飲む。温かく程よい苦味と渋みがあるお茶で結構美味しいと思った。

 お茶を飲みながら、俺は床に落ちている黒色のブラジャーをチラ見した。

 こ、これはまさか......

 

「あれ、今日の朝脱いだやつなんだけど、欲しい?」

「ブホ!!!」

 

 思わずお茶を吹き出してしまった。吹き出したお茶のせいでテーブルが汚れてしまった。

 

「あっははは! そんなに慌てるなんて、竹内くん面白い! ちょっとからかうだけのつもりだったんだけど、なんかごめんね」

 腹を抱えて大爆笑する薫さんだった。笑い終えると布巾で俺が吹き出したお茶を拭き始めた。

 くっ......この大家さん、ちょっと苦手かも......

 

「まーからかうのはここまでとして、確か竹内くんって高校生だったよね?」

「ええ。進学するに当たって上京することにしました」

「まだ若いのに一人暮らしなんてすごいわね。このアパートの人たちはちょっと変わってる人が多いけど、基本いい人ばっかりだから仲良くするといいわよ」

 そう言うと薫さんは立ち上がり、台所に向かった。

 

「はいこれ。良かったらどうぞ」

 部屋に戻って来た薫さんはタッパーを俺に渡してきた。

 中を確認すると、野菜の煮物が入っていた。

「ありがとうございます」

 俺はありがたくそのタッパーを受け取った。

 その時だった。

 

 カサカサカサ。

 

 俺の視界に、いつもニコニコ私たちのとなりに這い寄る黒光りのGが映り込んだ。

 しかも、結構デカイサイズである。

 

「うわあああぁぁぁぁ!!!」

 

 圧倒的恐怖に苛まれた俺は薫さんに抱きついた。

 Gを初めて生で見たがかなり不気味な姿をしている。

 東京人はこんなのと共存しているのか!?

 

「ちょっと......竹内くん? あらあら、急に抱きついてくるなんて、もしかしてホームシックかしら?」

 よしよしと薫さんは優しい手つきで俺の髪を撫でてきた。

 ん? 何やら手に柔らかいものが......これってもしかしておっ......いや、今はそれどころではない。

「ちちちち、違いますよ! 見てください! あれ、ゴキブリですよ!」

「あ、本当だ。ちょっと、離れて」

 

 薫さんは立ち上がり、テーブルに置いてあったティッシュを一枚取った。

 ゆっくりと奴に狙いを定めてティッシュを被せるとぐぐっと握りしめた。

 

「どーよ! あっという間に捕まえたわ! こんなの男の玉だと思って握り潰せば楽勝よ!」

 

 ドヤ顔でGの死骸が入っているティッシュを俺に見せてきた。

 つーか、なんだそのめっちゃ痛そうな表現は。まさかやったことがあるのか。

 

「わ、分かりました。分かりましたから早くそれ、捨ててください!」

 俺はガクガク震えながら薫さんに懇願した。 

「分かったわよ、もう......もしかして竹内くんってもしかして虫苦手?」

 薫さんは小馬鹿にするようにニヤニヤしながら訊いてきた。

「ちょっと苦手ですね......」

 本当は大の苦手なのだが見栄を張ってそう答えた。

「ふーん、そっか」

 薫さんはティッシュを捨てに行った。

 

 

 しばらくすると、薫さんは右手には缶コーラ、左手には缶ビールを持って、部屋に戻ってきた。

「はい!」

「ありがとうございます......」

 コーラはキンッキンッに冷えていた。

 薫さんは缶ビールを開けた。プシュッという泡の音が耳に入る。

 

「それじゃ乾杯しよっか!」

「まだ明るいですけど、もう飲むんですか?」

 今の時間は午後四時頃。夕暮れ時前で、部屋の外はまだ明るかった。

「うん、教えておこう竹内くん。ビールってのはいつ飲んでもいいんだよ」

「さ、さいですか......」

 俺はコーラを喉に流し込んだ。

 

「あー! うめぇ! この為に生きてるよんなもんだわぁ!」

 退社後のおっさんのような見事な飲みっぷりだった。

 

「あ、あの大家さん。飲んでるところ悪いんですけど......」

「んー? どうした竹内くん?」

 

 薫さんぐいっとは顔を近づけてきた。

 すでに薫さんの頰は赤みを帯びていた。肌がきめ細かく、とても綺麗な顔立ちをしている。

 まじまじと見つめられて、俺の心拍数がいつもより上がった。

 

「その......下履いてくれませんか?」

 薫さんは俺と会った時の姿と変わらず、穴が開いたボロボロの白いTシャツと下はピンク色のパンティのみという警戒心ゼロの姿だった。

 

「え? ああ、そっかー。高校生にはまだ刺激が強いのかー」

 薫さんはうふふと蠱惑的な笑みを見せた。

 って、履かないのかよ!

 さらに薫さんは飲むペースが上がり、ごくごくごくと一気にビールを喉に流し込んだ。

 

「あー......なんか、酔っ払っちゃってきちゃったな......」

 

 薫さんは俺に寄っ掛かってきた。

 この人、本当に酔っ払っていやがる。

 香水のような香りが俺の鼻腔をくすぐった。薫さんの体はなんだか柔らかくて落ち着いた。

 

「か、薫さん......ちょっと離れてください!」

「んー? なんでー?」

 薫さんは上目遣いで俺を見つめてきた。

 やばい、すっごい緊張してきた。身体の温度が一気に跳ね上がるようだった。

 

「うーん、なんか暑いわね......」

 薫さんは腕を伸ばし、身体をほぐし始めた。

 腕を伸ばした事で白いシャツから大きな胸の形がくっきりと浮かび上がった。

 

 おお、で、でかい......すごい、すごいぞ東京は!

 こんなラッキースケベに出会えるなんて、地元じゃこんなことはなかった。

 

「ちょっと脱ごうかしら」

「ふぇ!?」

 すると、薫さんは上に羽織っている白いTシャツを脱いだ。

 

 ピンク色のブラジャーをつけた大きい胸が視界にガッチリと映った。

 興奮のあまり、俺はごくりと生唾を飲み込んだ。

 しっかりと俺の記憶メモリの中に永久保存しておきたい。

 

「いやー! やっぱり下着姿が一番落ち着くわねー」

 

 ビールを片手に下着姿と化した薫さんが俺の腕に肩をかけてきた。

 なんだか少し酒臭い。

 この人っていつもこんな感じなのだろうか。

 男といる前でもこんなことを......

 まさか、この大家さんビッ○なのでは。

 

「薫さん!」

 俺は力強い眼差しで大家さんを見つめた。

「なーに? 竹内くん」

 薫さんはキョトンとした様子で首を傾げて俺を見つめた。

 ちょっと可愛いじゃないか。

「え、エッチなのはいけないと思います!」

 俺は人差し指をピンと立てて薫さんにそう伝えた。

 これ、俺が言うのなんかおかしい気がするけど......まぁいいか。

 

「えー! いいじゃん。竹内くんはこういうの好きじゃない?」

 薫さんは俺の背中に手を回し、抱きついて来た。

「ほぁ!?」

 思わず情けない声が出てしまった。

 

 肩からムニュっとした薫さんのおっぱいの感触が感じられた。

 

「うふふふ。竹内くん、可愛い......竹内くんってドーテイ?」

 

 うっとりした様子で俺を見つめる薫さん。

 下着姿の薫さんを俺は直視することができなかった。

 

「邪魔だしこれも脱ごうかしら」

 薫さんは抱きつくのをやめると、ブラジャーのホックに手を回した。

「ちょ、ちょっと薫さん!?」

「うふふふ。竹内くんもおっぱい見たいでしょ?」

 ホックが外れ、薫さんは生乳を俺の前に曝け出そうとした。

 

「す、すみません! 俺、そろそろ行きます! それじゃ、今日からよろしくお願いしますー!」

 俺は目を瞑り、タッパーを持って玄関の扉へと移動した。

 

「あ、ちょっと、竹内くん!」

 薫さんの引き止めようとする声が聞こえてきたが俺は振り向かず、部屋を飛び出した。

 

「ハァハァ......」

 

 慌てて部屋から飛び出したため、俺は息を切らした。

 それにしても、すごい大家さんだった。

 美人で少しときめいてしまった。なんといってもエロすぎる。

 大家さんのおっぱいを見たいという気持ちがあったことを否定できないが出て行って正解だった。

 あのまま薫さんの部屋にいれば何か間違いが起こる気がする。

 

 俺は一度部屋に戻り、薫さんからもらったタッパーを冷蔵庫に入れた。

 今日のオカズにさせてもらおう......もちろん夕食の方の。

 

 俺はお菓子を二袋持って、再び外に出た。

 今度は隣人の部屋に挨拶に行く。

 

 まず向かったのは201号室。

 インターホンを押してみたが反応がなかった。

 どうやら留守のようである。

 

 仕方ないので先に203号室に挨拶に行くことにした。

 203号室のインターホンを押した。すると、

「はーい!」

 明るい声とともに、金髪の女性がやってきた。

 ハーフのような顔立ちに黒のキャミソールに紺色のデニムのショートパンツを履いていた。

 肌は雪のように色白く、背は女性にしては結構高めで、雑誌の表紙に載ってそうなくらい美人である。

 

 本当にすごいな東京。こんな綺麗な人が近くに住んでいるなんて。

 

「初めまして。今日から202号室に越して来ました。竹内優馬って言います。これ、つまらないものですけど......」

 俺は持ってきたお菓子を203号室の女性に渡した。

「あらあら。わざわざありがとう。私は朝日留衣(あさひるい)。近くの大学に通ってるんだ。よろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」

 俺は深々と頭を下げた。

「あらあらしっかりした子ね。優馬くんって高校生?」

「ええ。明日から高校に通います。進学するにあたって引っ越して来ました」

「そっかぁ。ねぇ、優馬くん。せっかくだからちょっと上がっていかない?」

 

 留衣さんは家に上がるよう勧めてきた。

 薫さんといい、高校生とはいえこのアパートの住居人は始めて会った人を部屋に上げるのに抵抗はないのだろうか。

 

「いえ、そんな悪いですし......」

「いいって遠慮しないで! ね?」

「そ、それじゃ、ちょっとだけ......」

 

 俺は留衣さんの提案に乗り、部屋に上がることにした。

 留衣さんの部屋は薫さんの部屋と違い、綺麗に片付けられていた。

 全体的に部屋はピンク色のものが多く置かれており、可愛らしい部屋だなと感じた。

 ピンク色の絨毯にピンク色のテーブル。

 布団もピンク色である。

 もしかして下着もなのだろうか......って! 何を考えているんだ俺は.....

.

「どう? なかなかいいでしょ。この部屋」

「はい。きちんと片付いていて素敵だと思います」

 すると、なんだか突然トイレに行きたくなってしまった。

 さっき、薫さんの部屋でお茶とコーラを飲んだせいだろうか。

「すみません。留衣さん、ちょっとお手洗いを借りてもいいですか?」

「うん、いいよ」

 

 俺はトイレへと向かった。

 当然のことながら留衣さんの部屋の作りは俺の部屋と同じであるため、部屋の間取りは分かっていた。

 トイレの隣にはお風呂がある。トイレの扉に手をかけた時だった。

 ガチャっとお風呂の扉が開いた。

 

「ふ〜。いい湯だった」

 

 バスタオルを手に持った、全裸の女性と出くわした。

 桜色の突起物が乗っかった大きい果実が真っ先に目に留まり、下の毛が整えられている割れ目もバッチリと目に焼き付けた。

 全裸の女性は留衣さんとよく似た顔立ちで、銀色の髪をしていた。

 

「きゃあああ! お姉ちゃん! なんか男の人いるんだけど!」

 

 慌てた様子で銀髪の女性は留衣さんのいる部屋に向かった。

 び、びっくりした。

 それにしても女性の裸なんて初めて見たな。しかもあんな美人のなんて。

 

「これは......やばい......」

 

 俺はトイレに入り、尿だけでなく、自分の股間を扱き、溜まっている精を吐き出すのだった。



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大家さんの職権乱用

 トイレで性液を出し尽くし、すっきりとした気分になった俺は留衣さんの部屋へと戻った。

 

「おかえりー! 優馬くん」

 

 留衣さんは戻って来た俺に対して声を掛けてくれた。

 留衣さんの横には先ほど全裸姿を俺に晒した留衣さんの妹さんが横に座っており、訝しんだ様子で俺のことを見つめていた。

 妹さん、留衣さんに勝るとも劣らないくらい美人であるが少し恐そうだな。

 まぁ、事故とは言え俺が全裸姿を見たせいでもあるのだが。

 

「お姉ちゃん......誰か来てるなら声掛けておいてよもう......」

「あはははー。ごめんごめん」

「そ、その。さっきはすみませんでした......」

 俺は留衣さんの妹さんに対して深々と頭を下げた。

「いいよ。元はと言えばお姉ちゃんのせいだし」

「優馬くん、どうだったルカの裸は? 私ほどじゃないけど、結構おっぱい大きかったでしょ?」

 留衣さんが余計な茶々を入れてきた。

 ぶっちゃけ、かなり大きかった。というか、留衣さんはもっと大きいのか。

 あかん! さっき出したばかりだっていうのに、思い出したらまた大きくなってきた。

 

「ちょっと、お姉ちゃん!」

「あて!」

 妹さんは留衣さんの頭を叩いた。

「いい? さっきのことは忘れるのよ? フォガット! オーケー?」

「い、イエス......」

 勢いに押されて、なぜか英語で返答してしまった。

 

「そういえばまだ紹介してなかったわね。私は留衣の双子の妹の朝日瑠夏(あさひるか)よ。お姉ちゃんと同じ大学に通っていて、二人暮らししてるの」

「二人暮らしですか......俺は地方から引っ越してきました竹内優馬って言います。よろしくお願いします」

 自己紹介する俺を瑠夏さんはジロジロと観察してきた。

「優馬くん、あなた結構背大きいわね。身長どれくらいあるの?」

「えっと......百八十です」

 

「へー! なかなかの高身長なんだね! 中学時代は運動部だったの?」

 留衣さんが興味津々とばかりに会話に入り、部活について訊いてきた。

「バスケ部に所属してました。東京に引っ越して来たのも、スポーツ推薦が理由っていうか......」

「スポーツ推薦? それはすごいわね。私と留衣も高校時代、バスケ部に入っていたからなんか懐かしいわ。どこに高校に通うの?」

「私立パーバード学園っていう高校に通います」

 すると、二人の目が大きく見開いた。

「す、すごい! 確かあそこ、超名門校じゃなかった?」

「そこまででもありませんよ......」

 

 確かに俺の通う予定の高校は全体的に部活に力を入れている。

 バスケ部においてもそれは例外ではない。

 しかし、今のバスケ部の実力は全盛期には遠く及ばない。

 それでも古豪と言われるほどにはまだ強いのだが。

 

「またまた! 謙遜しちゃってこのこの!」

 留衣さんは肘で俺の脇腹を突いて来た。少しくすぐったい。

「ちょ、ちょっと。留衣さん、やめてください!」

「あははは! ごめんごめん!」

 

 陽気に笑う留衣さんだった。

 留衣さんはちょっと子供っぽい感じの人だな。

 対して瑠夏さんは大人びていて、こう言っては何だが少しキツイ印象を受ける。

 

「ねぇ、優馬くんのポジションはどこなの?」

瑠夏さんが俺のポジションについて訊いてきた。

「中学時代はフォワードでした」

 

こう見えても俺は中学時代、バリバリの点取り屋だった。

高校でも活躍できるように頑張りたいと思っている。

 

「そっか、フォワードか。私も高校時代、フォワードだったわよ。留衣はガードだったわね。二人で一緒に試合に出ていたわ」

「そうなんですか。やっぱり、スリーポイントシュートとかバンバン打ってたんですか?」

「ええ! こう見えても私は現役時代、この辺りではミラクルズジェネレーションなんて呼ばれてたのよ!」

 厨二心がくすぐられる二つ名に思わず俺は身を乗り出した。

「ミラクルズジェネレーション? 何ですか、それは?」

 

 しばらくの間、俺は瑠夏さんから話を聞いた。

 現役時代、瑠夏さんミラクルズジェネレーションと呼ばれるようになった経緯や得意なプレイなど、どれも聞いていて面白い話ばかりだった。

 

「ねぇ、盛り上がっているところ悪いけどさ、せっかくだし優馬くんに一緒に夕食食べていってもらわない?」

 留衣さんが会話に割って入り、俺に夕食を一緒に食べるよう勧めてきた。

「そ、そんな......悪いですよ!」

 

 今日は挨拶するだけの予定だった。家に上がらせてもらっているだけでもかなりおこがましいのに、夕食までご馳走になるのはさすがに気が引けた。

 

「いいって、いいって! ねぇ、瑠夏は構わないわよね?」

 瑠夏さんに対して同意を求める留衣さんだった。

「ええ。別に構わないわよ」

 

 渋々承諾した――という感じではなく、本当に構わない様子に見受けられた。

 

「それじゃ、これから夕食作るから。ここで待っていてもいいけど結構時間掛かるし一度部屋に戻る?」

 留衣さんは自分の部屋に戻るか尋ねてきた。

「はい、そうします」

「そう、分かった。それじゃ、六時半頃また来てくれる?」

「はい、それじゃまたお邪魔させていただきます」

 

 そういう訳で俺は一度、自分の部屋に戻ることにした。

 

 自分の部屋のドアの前に立ち、鍵を取り出した。

 鍵穴に鍵を入れ、反時計回りに回す。

 その時、俺はある違和感に気が付いた。

 

「あれ......開いてる?」

 俺は部屋を出る前、確かに鍵を掛けたはずである。

 まさか......泥棒か?

 

 ドアを開けると、玄関に見慣れない靴が置いてあった。女性用の靴であった。

 慌てて部屋に入ると、見知った人が椅子に腰掛けて来た。

 

「お帰りなさい!竹内くん」

 

 俺の部屋にいたのは大家の薫さんだった。

 ちびちびと一人でビールを飲んでおり、勝手にテレビをつけていた。

 

「か、薫さん。どうしてここに......」

「ふっふっふ......教えてあげよう。私は全ての部屋の合鍵を持っていてどこの部屋も行き来可能なのよ! 四次元マンションみたいでしょ!」

「すみません、意味が分かりません。ってか、普通に不法侵入でしょ! いくら大家とはいえ!」

「てへ! 細かいことは気にしないの!」

 ポンと自分の頭を叩いて誤魔化してきた。

 

 薫さんはさっき出会った時のだらしない格好と違って、黒と白の縞々のVネック、ブラックデニムという、少しラフではあるが普通の服装に着替えていた。

 ボサボサだった茶色の髪もしっかりとミディアムの髪型に整えられていた。

 ぶっちゃけ、さっきのズボラな薫さんとは別人に見え、とても綺麗な大人の女性に見えた。

 

「全然細かいことじゃありませんよ......一体、何でわざわざこの部屋に来たんですか?」

 薫さんは立ち上がり、ゆっくりと俺に近づいてきた。

「だって竹内くん、いいところで逃げたんだもん......」

 そう言うと、薫さんの顔が紅潮した。

「え......」 

「私ね。三ヶ月前、彼氏と別れてね......しばらくその、エッチしてないの......」

 薫さんは身体をクネクネとさせてきた。な、なんだその動きは。

「そんなこと言ったら、俺なんて......」

 すると薫さんは「ふふっ」と微笑んだ。

「やっぱり、竹内くんって童貞なんだね」

「ぐ......」

 図星で何も言えなかった。俺はセックス経験どころか女性と付き合ったこともキスも手を繋いだこともない。

「それじゃ、私が教えてあげるね。さぁ、脱いで。童貞おちんぽを私に見せてちょうだい」

「か、薫さん......」

 

 薫さんがうっとりとした目つきで俺のことをじっと見つめてきた。

 ドクンドクンと、心臓の鼓動が激しくなってきた。

 俺は言われるがままズボンをずり下ろした。

 

「すっごい......パンツ越しからでも分かるくらい、大きくなってる......」

 うっとりとした表情で薫さんは俺のちんこをヤラシイ手つきでいじってきた。

「う......」

 生まれて初めて女性に性器を弄ばれて、とても気持ち良かった。

「あら? そんなに気持ちいい? うふふふ。竹内くんって結構エッチなのね」

 

 薫さんは俺の穿いているトランクスに手をかけ、ずり下ろして来た。

 大きく反り上がった先走りの汁が出てしまっている肉棒が、薫さんの前に露見されてしまった。

 

「す、すっごい......竹内くんのおちんぽおっきい......」

 

 悦に入ったかのような表情で俺の肉棒を眺める薫さんだった。

 生のちんこを薫さんは軽く握ったり、金玉を手で触って来たりしてきて、とても気持ちよかった。

 

「うふふふ......こんな悪ーいおちんぽはこうだ!」

「え?」

 

 ぱく。

 

 なんと薫さんは俺のちんこを咥えてきた。

 今まで感じたことない快楽が押し寄せてくる。

 

「薫さん......! き、気持ち良い!」

 肉棒は薫さんの口に中に入れられ、生暖かく、ザラザラとした下で敏感な裏筋を責められ、すでに射精直前まで来ていた。

「ひほいいほ、はへうひふん? ほう、いっひゃいほう?」

 

 訳:気持ちいい、竹内くん? もう、イっちゃいそう?

 普段の薫さんは小顔で大人びた美人系の顔立ちであるが、今の薫さんのフェラ顔は誠に卑猥で興奮度が半端なかった。

 

「い、イキそうです! 薫さんのフェラ、気持ちよすぎます」

「ほっは、ほれふぁ......」

 

 訳:そっか、それじゃ......

 すると、薫さんは顔を素早く、上下に動かし、俺の肉棒にどんどん刺激を与えてきた。

 まるで子供がキャンディーでも舐めるかのように実に美味しそうに舐めてくる。

 薫さんが顔を動かすたびにどうにかなってしまいそうなもどかしい快感が押し寄せて来た。

 

「あああ! イく、イきます! 薫さん!」

「んっんっんっ......」

 

 次の瞬間、薫さんの口から溢れんばかりの精液が放出された。

 全て出し切ると、薫さんが一滴残らず、ペロペロと拭き取ってくれた。

 肉棒から口を離すと、大きく口を開けて俺が放出したザーメンを見せつけ、ごくんと飲み込んだ。

 

「あぁ......竹内くんのザーメン、すっごい濃くて美味しかったぁ」

 

 俺の精液を飲み干した薫さんは満足そうに味の感想を述べた。

 すると、薫さんは突如服を脱ぎ出した。

 

「ちょっと、薫さん!?」

 

 俺の動揺などおかまいなしといった感じであっという間に薫さんは全裸姿になった。

 小柄な薫さんの身体に付いている大きいおっぱい(何でも出来る証拠)に真っ先に目がいってしまった。

 

「ほら、竹内くん触っていいんだよ?」

 

 薫さんの言う通り、俺は薫さんに生えている大きい果実に手を伸ばした。

 その果実は俺が今まで触った物質の中でも一番柔らかいのではないかと思ってしまった。

 俺は指で果実のベージュ色の突起物の部分をつまんだ。

 

「ひゃ......! 竹内くんったら、そんなところを触ってくるなんて、本当悪い子ね」

 

 薫さんの顔は真っ赤になっている。どうやら感じているようだ。

 興奮しまくった俺は理性が崩壊し、果実の味を確認してみることにした。

 本能の赴くままに、俺は薫さんのおっぱいにしゃぶりついた。

 

「ふ、ふふふ......おっぱいを舐めるだなんて、竹内くんってば赤ちゃんみたい」

 

 薫さんは「よしよし」とあやすように俺の頭を撫でてきた。

 果実の味は舐めれば舐めるほど遺伝子レベルで落ち着く――そんな味である。

 

 これを舐め続けていくうちに俺はいずれ、赤ん坊に退化してしまうのではないかと思ってしまった。



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大家さんと初体験

「あん......あ......! 竹内くん、そ、そんなに舐めたら......」

 おっぱいを舐めていると段々、薫さんの息が乱れ始めた。

「薫さんのおっぱい、柔らかくて......すっごく美味しいです」

 

 俺はチュパチュパと薫さんのおっぱいに吸い付いた。

 あぁ......出来ることなら薫さんのおっぱいから母乳が出て欲しいなと思ってしまう。

 すると、薫さんはおっぱいに吸い付いている俺の顔を引き離した。もう、いいところだったのに。

 

「竹内くんがこんなに吸うもんだから、私、こんなに濡れちゃったじゃない......」

 

 そういうと薫さんはブラックデニムを脱ぎ始めた。

 ピンク色のパンティが眼に写る。

 大人っぽい生地の薄いパンティは女性特有の蜜によって、ネットリと濡れていた。

 パンティも脱ぎ去り、薫さんの秘所が目に入る。

 アンダーヘアは逆三角形の形に整えられており、とても綺麗であった。

 薫さんは全裸(一糸纏わぬ姿)になった。

 今日だけで女性の裸を二回見たことになる。

 俺はごくんと生唾を飲み込んだ。

 

「どう......? 見えるかしら? 私今、すっごい濡れてるのよ......」

 

 薫さんは虚ろげな表情で自分の指で割れ目を広げてきた。

 割れ目の中身はピンク色で少しグロテスクのような印象を受けたが、初めて見るその光景に俺は激しく興奮した。

 

「す、すごいです......な、舐めてもいいですか?」

「ええ、もちろん」

 

 俺は恐る恐る薫さんの秘所に顔を近づけた。

 ツーンとした今まで嗅いだことのない特有の刺激臭が鼻腔を突いた。

 ぺろっと舐めて、薫さんから溢れ出る愛の蜜の味を確かめた。

 

「ひゃ! あ、ううん......」

 

 快楽に溺れかけ、感じている声を上げる薫さん。 

 薫さんの淫靡な声を聞き、一気に興奮度が急上昇した。

 さらにペロペロと強く舐めた。

 

「あ、ああ......気持ち良いわ! 竹内くん。もっと......もっと舐めて!」

 

 薫さんの秘所からとめどなく感じた時に流れる液体が分泌された。

 俺は薫さんの言う通り、俺は薫さんのアソコをたくさん舐めた。

 味は何と言うか、ほんの少し酸っぱく、わずかに甘かった。ものすごく美味しいという訳ではない。

 しかし、こんな綺麗な女性から分泌されているものであると思ってしまうと、これがまるで高級な飲み物か何かのように思ってしまうのであった。

 

「あああ! き、気持ち良いわ! 竹内くん!」

 

 ビクンと薫さんは身体を仰け反らせた。

 仰け反った際の反動で薫さんの凄まじく大きなおっぱいがタプンタプンと大きく振動した。

 激しく揺れる様はものすごい迫力である。

 

「薫さん......」

 俺は秘所を舐めるのをやめ、立ち上がり薫さんのことをじっと見つめた。

「た、竹内くん......」

 全裸でしかも行為中だというのに、俺に見つめられた薫さんは乙女のように恥ずかしそうに俺の視線を逸らした。

「薫さん、その......キスしても良いですか......?」

「い、良いわよ」

 枝毛を弄りながら、薫さんは承諾した。

 

 俺はそっと――薫さんのピンク色の唇に自分の唇を合わせた。

 

「ん......」

 

 薫さんから甘い吐息が溢れる。

 全裸の薫さんに身体を引き寄せ、抱き合った。

 お互いが全裸の状態で抱き合っているのである。

 自分の胸より少し下くらいの身体の部分から薫さんの柔らかいおっぱいの感触が伝わってきた。

 股間部分からはフサフサとした薫さんのアンダーヘアの感触が伝わり、少しくすぐったかった。

 

 十秒ほど、ディープキスをした後、俺は唇を離した。

「薫さん......キスすっごい良かったです......」

「わ、私もよ。竹内くん......」

 

 薫さんの顔色が赤色になっていた。

 顔が赤くなったのはお酒を飲んだせいだけではないだろう。

 

「竹内くん......一つになりましょう」

 

 そう言うと、薫さんは俺のベッドに寝っ転がった。

 自分のベッドに全裸の女性が横たわっている。

 薫さんの肌はやや小麦色で艶っぽくとても綺麗である。

 全裸で俺の挿入を待っているその様はエロすぎるという感想しか思い浮かばない。

 この信じれらない状況(シチュエーション)を目の当たりにして、これが夢なのか現実なのか分からなくなりそうだった。

 

「薫さん、本当に良いんですか?」

「ええ。もう私、我慢できないの......早く、ここに竹内くんの童貞おちんぽを挿れて欲しいな......」

 そう言い、薫さんは指で割れ目を広げ、再び中身を見せつけてきた。

 

 この中(薫さんのおまんこ)に俺の肉棒を入れるのか。

 一体、どれほどの快楽が待っているのだろうか。

 

 俺はベッドに向かい、薫さんの横に寝っ転がった。

 

「竹内くん......」

「薫さん......」

 見つめ合い、まずは二回軽くキスした。

「それじゃ、行きますよ......」

 自分の肉棒を薫さんの割れ目部分に近づけた。

「い、良いわよ、竹内くん......挿れて頂戴」

 ゆっくりと肉棒を薫さんの割れ目に挿入する。

 ズブズブと膣内に侵入していく様子に俺は緊張しまくりだった。

「あああ!」

 

 気持ち良すぎて思わず大きな声を上げた。

 半分入った時点で、薫さんの膣の中のザラザラとした感触の肉壁がねっとりと俺の肉棒にまとわりついてきた。

 

「うん......! た、竹内くんのおちんぽ、結構大きくて良いわね......奥まで、奥まで挿れて頂戴!」

 薫さんの言う通り、俺は自分の肉棒を奥までぶち込んだ。

 

 は、挿入った――それは実に感動的な光景であった。

 十五年余り、童貞であった俺はこんな綺麗な大家さんで卒業できたのだから。

 

「竹内くん、腰を動かして......もっと私を気持ち良くさせて頂戴!」

「分かりました!」

 

 俺はゆっくりと腰を動かした。俺の肉棒は入ったり戻ったり、入ったり戻ったりと忙しく薫さんのおまんこの中を移動する。

 

「い、良いわ......竹内くん、童貞とは思えないほど上手よ!」

「ありがとうございます......あ、あぁ!」

 

 挿入した時よりも強く薫さんのおまんこが俺に肉棒をぐっと強く締め付けてきた。

 

 セックス。こんなに気持ちの良いものだなんて思っていなかった。

 気持ち良さすぎて、すぐにでもイっちゃいそうである。

 

「あらあら? 竹内くん、涎垂れてるわよ......おちんぽの方も先走っちゃってるし、上も下もだらしないわね」

 

 薫さんが不意打ちでキスをしてきた。

 何だこれ......上も下も滅茶苦茶気持ち良い。

 脳がとろけるような、今まで感じたことのない心地良さである。

 

 中学時代は、一人で好きな子の淫らな様子を想像しながら自分の体を慰めていた俺だったが今日は違った。

 誰かと気持ち良くしてもらうというのがこんなに病み付きになりそうなものだとは思わなかった。

 イきたい......薫さんと一緒にイきたい。

 

 そう思った俺はさらに激しく腰を振った。

 それに応えるかのように薫さんの息がどんどん荒くなっていった。

 

「はぁ......ああ! う......き、気持ち良い......すごい気持ち良いわ、竹内くん。私、もうイっちゃいそう」

 薫さんのことを気持ち良くさせることができたことが嬉しく、俺は内心ガッツポーズした。

「俺もです薫さん。一緒にイきましょう!」

「ええ、そうね......」

 

 目を細め、虚ろげな表情で応える薫さん。

 

 腰を動かすたびに接合部分から『グチュグチュ』と卑猥な音が鳴るようになり、そこからいやらしい雫が滴り落ちている。

 

 やがて、快感が絶頂まで達した。

 

「で、出る! イきます! 薫さん!」

「良いわよ! 出して! 竹内くんのあっついの、私の中に出して!」

 

 次の瞬間、ドピュドピュッと俺に肉棒から白濁液が発射され、薫さんの膣の中に注ぎまれた。

 

「はうううぅぅぅ......」 

 

 快感のあまり薫さんは大きな声を上げ、身体をビクンビクンと痙攣させた。

 肉棒を膣から抜き、俺はバタンとベッドの上に倒れ込んだ。

 

「か、薫さん......すっごい気持ちよかったです。」

 薫さんもベッドに倒れこみ、俺の顔を覗き込んだ。

「私もよ、竹内くん......うふふふ......明日から高校入学なわけだけど、こっちの方の卒業おめでとう」

 

 薫さんが抱きついてきた。

 さっき出したばかりだと言うのに、柔らかい薫さんの肌の感触が感じられ、徐々に肉棒が硬くなってきた。

 

「あらあら、さっきしたばかりなのに。まだまだ元気なのね。竹内くんのおちんぽ」

「いや、これは......」

 すると、薫さんがにっこりと微笑んだ。

「どうるす? もう一度する?」

 薫さんの提案に俺の心が踊った。

「そうですね......」

 

 俺と薫さんは二回戦をおっ始めるのであった。



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淫らな隣人

「はぁ、はぁ......気持ちよかったわね、竹内くん」

「そうですね、薫さん......」

 俺と薫さんはあれから何度も互いの精力がなくなるまで身体を慰め合っていた。

「あー、竹内くんとたっくさんできて満足だわ......」

 薫さんはそう言うと、下着を履き、服を着始めた。

「俺もです」

 俺は薫さんに釣られるように服を着た。

 

「今日は楽しかったわ。竹内くん。お礼に今月の家賃、特別に半額でいいわ」

「ほ、本当ですか?」

「ええ」

 

 可愛しく微笑む薫さんだった。まさかセックスをして家賃半額だなんて。

 普通は逆になりそうなものだが。

 

「あ、ありがとうございます!」

 俺は深々と頭を下げ、お礼を言うと薫さんが近づいて耳打ちしてきた。

「また一緒に......しようね?」

 身体中がゾクゾクとした。なんとも蠱惑的な声をするのだろうかこの人は。

「は、はい」

「それじゃ、またね」

 薫さんは自分の部屋へと戻っていった。

 

 薫さんが帰った後、俺はテレビを見たりして時間を潰した。

「そろそろかな......」

 時計を確認すると、時刻は六時二十七分。

  

 そろそろ朝日姉妹との約束の時間である。

 俺は隣の朝日姉妹の部屋へと向かった。

 

 203号室の扉の前に立ち、インターホンを押す。

「はいはーい」

 

 出迎えてくれたのは、妹の瑠夏さんだった。

 先ほど、俺が部屋に訪れた時はすっぴんと思われる状態だったのだが、今はバッチリとメイクしており、ものすごく綺麗な顔だなと思ってしまった。

 肌の露出が少ないもの(おっぱい)のラインがはっきりと分かるニットを着ていることもあってかなりドキドキした。

 先ほど童貞を卒業したばかりなのに、俺の中身はほとんど変わっていないようである。

 

「あ、優馬くん。ちょうどいい頃に来たね。ちょうど今、夕食できたんだよ。上がって上がって」

「それじゃ、失礼します」

 

 部屋の中に入ると、テーブルの上には、ポテトサラダ、唐揚げ、シチュー、うさぎ形に切り飾りされたりんごが三人分置かれていた。

 すでに食卓には姉の留衣さんが座っている。

 

「やぁ、優馬くん! ほら、座って座って」

「し、失礼します」

 ほら隣に座りなとばかりに手をコイコイさせている留衣さんの隣の椅子へと俺は腰をかけた。

「どう? 美味しそうでしょ!」

「ええ、すごいです」

 すると、留衣さんが何故かニヤニヤしだした。

「いやー、瑠夏ったらさー、優馬くんも一緒に夕食食べることになったもんだからすっごい張り切ってたんだよね。唐揚げなんてめったに作らないのにさ」

「な、んな......!」

 すると、瑠夏さんの顔がみるみるうちにりんごの皮のような色になった。

「ありがとうございます。瑠夏さん」

「か、勘違いしないでよね! 別に優馬くんのために一生懸命作ったわけじゃないんだから!」

 

 ビシッと指を立てて俺にそう告げてきた。

 ツンデレみたいなセリフだなと思わず口走りそうになったが言ったら怒られそうなのでそこは我慢しておく。

 

「はぁ......今日の料理は全部瑠夏さんが作ったんですか?」

「いやー? 私も作ったよー」

「ちなみに留衣さんは何を作ったんですか?」

 すると、留衣さんが不敵に笑った。

「ふっふっふー。私はこの白米を炊いたのであーる!」

 お米を指差し、自信満々に宣言した。

「そうですか......」

 

 それしかやってないのかよ。

 

「おや? もしかして今、それしかやってないのかよって思ったなー。このこの!」

 突然、留衣さんが俺の脇腹をくすぐり出した。

「あははは! や、やめてください。留衣さん!」

 

 俺は脇腹をくすぐられるのが苦手である。そもそも得意な人がいるのかは分からないが。

 すると、瑠夏さんのほうからどす黒いオーラのようなものが流れているのを感じた。

 

「ちょっとお姉ちゃん!」

 留衣さんは俺をくすぐる手を止めた。

「何、瑠夏?」

 怒鳴る瑠夏さんをもの止めせず、微笑んでいる留衣さんだった。

「遊んでないでさ、早く食べよう」

「ふふ、そうね......それじゃいただきます」

「いただきます」

 

 俺もいただきますをし、夕食を食べ始めた。

 まずはじめにシチューをスプーンで掬い、口に入れた。

 

「美味しいです......!」

 心からそう思った。ちょうど良い味付けで、具材のじゃがいもはホクホクとしており、正直、うちの母親のシチューより美味しいと思った。

「と、当然よ! 私が作ったんだもん!」

 瑠夏さんは自信満々にそう言うが、なんだが照れ臭そうな表情をしていた。

「あらあら、瑠夏ったら照れちゃって。うふふふ......」

「べ、別に照れてなんかないし! それより、優馬くん次は唐揚げ食べてみなよ」

「はぁ......」

 

 瑠夏さんに唐揚げを食べるよう勧められ、俺は大きめなサイズの唐揚げに箸を伸ばした。

 唐揚げを箸でつまみ上げ、一口齧った。

 衣はさくさくとしており、中から肉汁が溢れ出て、とってもジューシーだった。

 

「美味しいです......!」

 感想を述べると、瑠夏さんの表情がパァ......と明るくなった。

「そうでしょう! 育ち盛りなんだからたっくさん食べないとダメよ」

「ふふふ、瑠夏。すごい嬉しそうだね」

「べ、別にそんなんじゃないし!」

 

 それから俺たちはご飯を食べながらたわいもない話を始めた。

 中学時代の部活の出来事や地元の話。

 ずっと東京に暮らしていた瑠夏さんたちにとってはそれなりに興味深い話だったようである。

 

 しかし雑談中、突然会話の方向性が大きく切り替わる話題を留衣さんが切り出した。

「優馬くんは今彼女いる?」

「いや、いません」

 

 彼女いない歴=年齢の俺である。想像できないが、おそらくいればかなり楽しいことだろう。

 中学時代に彼女持ちの部活の友人はものすごく充実した日々を送っているように見えた。

 

「優馬くんは中学校の頃は彼女いたの?」

「へ? えっと、その......い、いませんでした......」

 俺は観念して中学時代、彼女がいなかったことを伝えた。

「そっかー。まぁ、まだ若いしこれからいくらでもできると思うよ」

 励ましのつもりなのか、そんな言葉を投げかけた。

「甘いなー。お姉ちゃんわ。女ってのはグイグイいく男が好きなわけよ。だから、優馬くんもガンガン行かないと。それこそ、バスケでリバウンドをアグレッシブに取りにいくみたいにさ」

「は、はぁ......」

 なんだその例えは思ったがここはあえて黙っておいた。

「優馬くんがフリーなら私、彼女になっちゃおうかなー!」

「ええ!? 何言ってるのお姉ちゃん!」

 すごく驚いた様子を見せた瑠夏さんだった。

「うふふふ......冗談だよ。優馬くんだって私よりもっと若い子がいいでしょ?」

「いえ、そういうわけでもないですよ」

 からかってるんだよな、そうだよな?

「お姉ちゃん、未成年に手を出したらダメだよ!」

「分かったってば、冗談だって!」

 

 冗談か。ま、そりゃそうか。少し期待してしまって恥ずかしい。

 こんな美人の女性が俺に相手するはずがない。

 まぁ、薫さんは特別だったわけだが。

 

 ご飯を食べ終えた俺は皿を洗うべく台所まで持って行った。

 

「皿洗うので、ここのスポンジと洗剤借りていいですか?」

「え? あ、いいよ。それくらい。私がやるから」

「いいえ、留衣さん。ごちそうになったんだからそういうわけにはいきません。留衣さんと瑠夏さんの分も洗いますから」

「そう、それじゃお願いしようかな。スポンジと洗剤は自由に使って大丈夫だよ。ありがとうね、優馬くん」

「いえいえ」

「お姉ちゃん。ちょっと買いたいものあるからコンビニ行くけど、何か欲しいものある?」

「それじゃ、ちょっとアイス買ってくれる。スーパーバニラカップのやつ」

「分かった」

「それじゃ、はいお金」

「うん、それじゃ行ってくる」

 瑠夏さんがコンビニへと向かい、俺は留衣さんと二人きりになった。

 

 俺は無心で皿洗いに勤しんでいると、突然隣に留衣さんがやってきた。

 微笑みながらじっと俺の顔を見つめる留衣さんだった。距離が近く、俺は少しドキドキした。

 

「留衣さん、どうしたんですか?」

「いや、ちょっとね......見れば見るほど似てるなって......」

「へ? 誰にですか?」

「最近まで付き合っていた元彼にね......」

 留衣さんは寂しげに呟いた。あれ、この展開はまさか......

「そ、そうですか......まぁでも留衣さんは美人だし、すぐにいい人が見つかりますよ!」

「そうかな、それよりさ。優馬くんはこういうの......好き?」

 

 留衣さんは俺の背後に周りこみ、胸を押し当ててきた。

 ムニュっとした柔らかい感触に俺の意識が集中した。

 皿洗い中だと言うのに俺は手を止めた。

 蛇口からジャーと水が流れっぱなしである。

 

「ちょっと、どうしたんですか留衣さん?」

 この人も酔っ払ってるんじゃ。いや、でも夕食の時はお酒は飲んでなかった。

 

「ちょっと、優馬くんのこと見ていたらムラムラしてきちゃって。今日、初めて会った時なんかビビってきたんだよね......」

 すると、留衣さんは俺の耳をパクッと加えてきた。

「ひゃ......!」

 身体に電流が流れたかのようにビクッとなった。耳元でふーと息をかけられるのよりもはるかにこそばゆさを感じる。

「ふふふ......優馬くんは耳が弱いんだね......」

 容赦無く耳をハムハムしてくる留衣さんであった。かなり気持ち良くて、俺はおかしくなりそうだった。

「や、やめてください......留衣さん、なんかおかしくなりそうです」

 そう告げると、留衣さんは耳をハムハムするのをやめてくれた。

「仕方ないな。それじゃ今度は......」

 じろっと俺の股間部分を覗き込んだ。留衣さんはズボンに手をかけ、ずり下ろしていった。

「もっこりしてるね。瑠夏が戻ってくる前に早く終わらせないとだね」

 

 ズボンも下ろし、まじまじと俺の愚息を見つめる留衣さんだった。

 留衣さんの表情は法悦に満ちているかのようだった。

 

「すごい......ちんこまで彼氏のとそっくりだ!」

 留衣さんは感動した様子で、人差し指でちんこの裏筋をツーと撫で上げた。

「うぅ!」

 ぞわっとした快感が流れてきた俺は思わず身体を仰け反らせた。

「すごい、反応までそっくりだ......」

 

 すると、留衣さんはパクッと俺の愚息を咥えてきた。

 身体を小刻みに上下に動かし、巧みなフェラをしてくる。

 それにしても、すっごい気持ち良い.....これは薫さんよりも巧いかもしれない。

 

「優馬くんはどこが気持ちいいの? 先っぽ?」

 重点的に股間の敏感な先端部分を舐めてきた。

「それとも裏筋?」

 肉棒の下に顔を移動させ、根元から裏筋を舐め上げてきた。

「それとも、こうやって咥えられるのが好きなの?」

 

 留衣さんはパクッと肉棒の半分以上を口で咥えてきた。

 あぁ――どれもこれも気持ちいい。

 

 留衣さんは色白く、ハーフっぽい顔立ちをしており、金色の髪型とも相まって少し日本人離れした容貌をしている。

 整った顔立ちをしており、スタイルも良く、間違いなく男性からモテモテだろう。

 そんな留衣さんの今のフェラ顔はとっても淫らであり、一生記憶の片隅に焼き付いてしまいそうだった。

 

「ああ......気持ちいいです、留衣さん......もう、イっちゃいそうです......」

 

 本当に身体に芯からイっちゃいそうだ。

 すると、留衣さんは絶頂寸前でフェラをやめた。

 どうして、こんなところでやめるのか。俺は思わず駄々を捏ねて、抗議したくなった。

 

「そんな悲しそうな顔しないで、よしよし」

 

 留衣さんはまるで赤ん坊をあやすかのように俺の頭を撫で撫でしてきた。

 そして、右手で力強くまだまだ元気な俺に肉棒を握った。

 

「最後は手でイかせてあげるからね......」

 

 そう言うと、留衣さんはゆっくりと俺の愚息を扱き始めた。

 最初はゆっくりだったペースが徐々に加速しておき、『クチュクチュ』とイヤラシイ音を奏で始めてきた。

 

「クチュクチュしてる、おちんちんすごいね......」

 

 段々と肉棒を扱く手の動きが早くなり、発射直前にはこれでもかと言うほど、留衣さんは力強く、そして早く手を動かしていた。

 

 ――クチュクチュ......グチュ、グチュ......

 

 う、これは......

 

「あ......い、イく......」

 

 思わずそう呟くと、俺の発射口のところに留衣さんは顔を近づけ、口を大きく上げた。

 

 二、三億もの子作りするための種が入っている俺の精液はドピュドピュっと勢いよく発射せれ、留衣さんの口に入っていった。

 下の根元まで白濁液でいっぱいになった口元を俺に見せつけてきた留衣さんは『ごくん』と全て飲み干し、満足げにこう言った。

 

「優馬くん......すっごい美味しかったよ!」



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妹の居ぬ間にセックス

「いらっしゃいませー」

 

 機械的な口調で挨拶をする店員の声が耳に入った。

 私、朝日瑠夏は買い物をしに、アパートの近くのコンビニへとやってきた。

 コンビニの中は今流行りのアーティストの曲が流れていた。

 この時間帯は比較的空いており、店内にはお菓子コーナーを眺めたり、本を立ち読みしている客が何人かいるくらいである。

 そんな中、私はトイレへと向かった。

 スカートとパンティをずり下ろし、便座に腰をかけた。

 

「はぁ......はぁ......優馬くん......」

 

 自分の人差し指と薬指を性器(まんこ)性器の中に突っ込み、クチュクチュと中を弄った。 

 私は優馬くんに犯される妄想をして、自慰に耽った。

 

 初めて優馬くんに裸を見られた時、恥ずかしいと思ったと同時に今まで感じたこともない不思議な気分になってしまった。

 あの女性に全く耐性のない感じの反応......平たく言って、ものすごく最高だった。

 今まで私が付き合った人は女性経験が豊富な年上が多く、自分もそういう人がタイプだと思いこんでいた。

 しかし、女性経験はないが背が高く、なかなかのイケメンである優馬くんは割とアリだと思った。

 

「はぁ......ああ、アァン!!!」

 

 さらに指を奥まで突っ込み、激しく膣の中を弄った。卑猥な妄想をしたせいで、まんこから『クチュクチュ』と激しい水音が奏で、愛液がたくさん溢れ出してきた。

 私は巨大なペニスをした優馬くんに犯される妄想をした。

 

 ――優馬くんのペニスが欲しい......

 

 私は性器を弄っている方の反対の手で自分の胸を揉んだ。大きい優馬くんの手で揉まれる妄想を始める。

 

「はぁ......はぁ......優馬くんとセックスしたいよぉ......」

 

 私は望んではならない願望を口に出してしまっていた。

 

 

 ※※※

 

「優馬くん......すっごい美味しかったよ!」

 満足げに俺の精液を飲み込んだ留衣さんが満面の笑みを浮かべた。

「留衣さんのフェラ、すっごく気持ちよかったです」

 性欲を吐き出した俺は下半身を露出したままペタッと座り込んだ。

 

 すると留衣さんは黒いキャミソールを脱ぎ始めた。

 白い大きめな双丘を包み込む、ピンク色のブラジャーが目に入った。

 さらに紺色のデニムのショートパンツも脱いだ。

 留衣さんが履いているのはピンク色の生地の薄いとってもセクシーな紐パンである。

 留衣さんと瑠夏さんの部屋がピンク色で満たされているのを見て察したが、やはり留衣さんはピンク色が好きなようである。

 瑠夏さんの下着もやはりピンク色なのだろうか。

 

「うおお......」

 

 思わず感嘆の声が溢れた。

 全裸もエロいが、下着姿というのもなかなかどうして妖美であった。

 むくりと勝手に俺の愚息が起き上がった。

 

「おやおや? また大きくなってきたね。本当、優馬くんってエッチ......♡」

 

 肉棒を力強く握られ、身体中に電撃が走った。

 留衣さんはそのまま何度か上下に俺の肉棒をしごいていったが、やがて手コキするのをやめて、こう訊いてきた。

 

「優馬くん、私の裸......見たい?」

 見たい。いや、見たい以外あるだろうか。いや、ない。

「み、見たいです! 留衣さんの裸!」

「うふふふ......しょうがないなー!」

 嬉しそうにブラジャーのホックを外す留衣さんだった。可愛らしいピンク色のブラジャーを取るとポロンと、薫さんほどではないが大きいおっぱいが目に映った。

「おぉ......!」

 

 今日だけで三人の女性の生おっぱいを見たことになる。今日が人生最良の日か。

 白くピンク色の突起物が乗っかっているその果実は男を惑わせるために存在しているかのようであった。 

 

「すっごい見てる......優馬くん、オンナの人の生おっぱいを見るのって初めて?」

「え......あ、まぁ、そうですね......」

 さっき、薫さんの生おっぱいを見てしまった俺は本当の言うのがなんだか心苦しくなり、留衣さんから顔を背けて答えた。

「え、本当?」

 

 俺の態度に違和感を感じたのか、留衣さんが顔を近づけて確かめようとしてきた。

 見つめているといつの間にか吸い込まれてしまいそうな眼力(めじから)である。

 

「ほ、本当ですよ......」

「ふーん、まぁいいや」

 すると、留衣さんはチュッとキスしてきた。不意打ちでキスされてしまい、思わず顔が熱くなった。

「優馬くん、この中身も見たい?」

 留衣さんはパンティの、ちょうど割れ目を隠している部分を指差した。

「はい、見たいです」

「そう、それじゃ脱がしてくれる?」

「へ?」

 

 ドクンと心臓が大きく鼓動した。俺が留衣さんのパンティを脱がせる......

 

「ほら、早く早く!」

 留衣さんは急かすように自身の紐パンをパンパンと叩いた。

「わ、分かりました......」

 

 俺はゆっくりと留衣さんの履いている一番大事なところを隠す役割を持つパンティへと手を伸ばした。

 緊張のあまりバクバクバクと心臓が破裂しそうなくらい振動している。

 ごくんと生唾を伸ばし、紐パンの上の部分を手でつまみ、ゆっくりと下にずり下ろした。

 

「おわ......!」

 留衣さんが全裸へと変貌を遂げた。驚いたのは留衣さんの秘所。

 下の毛が全くない――いわゆる『パイパン』だった。

 

「つ、ツルッツルですね......」

「まぁね。もしかして優馬くんは毛が生えているのが好みだった?」

「いえ......そういうわけでもないですよ......」

 

 下の毛がないのもなかなかいい。

 色白く、下の毛もないツルッツルの肌を見ていると思わず、理性が崩壊してしゃぶりつきたくなってしまう。

 

「ねぇ......私の裸と瑠夏の裸、どっちが好み?」

 

 留衣さんは選択するのが難しい、究極の質問をしてきた。

 留衣さんの裸と瑠夏さんの裸......

 おっぱいの大きさは見た感じ、留衣さんの方がやや大きいと思う。

 

 しかし、瑠夏さんのは乳輪がやや大きめですっごくエッチだった。

 下の方は、パイパン好きか毛がある方が好きかで意見が別れることだろう。

 

「分かりません......」

 正直に答えると、留衣さんが微笑んだ。

「もう、正直なんだから......こういう時は嘘でも私の裸の方が好きって言っておくものだよ」

 

 すると、留衣さんはガチガチに硬さを帯びた俺の肉棒を大きめの胸で挟んできた。

 気持ち良い......パイズリというものがこんなに気持ちの良いものだなんて知らなかった。

 これはお金を支払ってでも男性はしてもらいたいはずである。

 

 俺はそんなことを超絶美人の留衣さんにしてもらっているのである。

 留衣さんは両手でおっぱいを抑え、俺の肉棒に幸福の圧迫感を与えてくる。

 やがて上半身を上下に移動させてきた。

 俺の肉棒に、縦方向からも横方向からも圧力という名の快感を与えてくる。

 

「あ......イ、イきます! 留衣さん......」

 

 ドピュっと濃い精液が俺に肉棒から発射された。

 勢いよく発射された精液は留衣さんの顔や髪にまでかかってしまった。

 

「もう......本当元気の良い、いけないおちんぽさんだね、ちょっとこっちきて」

 留衣さんは俺の手を掴むと、台所から部屋にベッドまで誘導した。

「優馬くん、上も脱いで。全裸になるの」

「分かりました......」 

 

 留衣さんが見ている前で全裸になった。俺の裸を見た留衣さんは法悦に満ちた表情をした。

 

「すごい......さすが運動部。なかなか良い身体してるね」

 留衣さんは俺の腹筋を撫でてきた。ちょっとくすぐったくて思わず変な声が出そうになった。

「え、ええ......まぁ」 

 すると留衣さんはベッドにバタンと倒れこみ、チョイチョイと手招きした。

「ほら、優馬くんも横になって」

「い、良いんですか?」

「もちろん。したいでしょ? セックス」

「はい......」

 

 留衣さんに誘われるがまま、俺はベッドに寝っ転がった。

 仰向け体勢の留衣さんは自身の割れ目を指で広げた。

 

「ほら、挿れて優馬くん......」

 

 留衣さんの割れ目の中はぱっくりと開いており、少し赤っぽい色でヒダヒダがついている膣の中が垣間見えた。

 自分の肉棒を握りしめ、ゆっくりと留衣さんの割れ目の中に近づけた。

 

「い、挿れますよ。」

「ええ......」

 俺はゆっくりと自分の肉棒を挿入した。

「あぁ......」

 

 挿入した瞬間、留衣さんは小さい喘ぎ声を漏らした。

 膣の中の肉壁が俺の肉棒を圧迫し、すごく俺は気持ち良くなった。

 ブツブツとした生暖かい感触が俺の肉棒を支配する。

 俺はゆっくりとピストン運動を開始した。

 

「あ......あ......あ......あ......」

 

 腰を振るたび、喘ぎ声を出す留衣さんだった。目を閉じており、顔を耳まで赤くし、とても気持ち良さそうな顔をしていた。

 興奮しまくった俺は徐々に腰を振る速度を速めた。

 

「あ......あん......! あ......! ひゃん!」

 

 声の感じから察するにどんどん留衣さんは気持ち良くなってきているようである。

 俺は留衣さんのおっぱいに手を伸ばし、二つの果実を揉みながらピストンを続けた。

 

「ひゃん! ああん! 優馬くんのおっきいおちんぽ......中でたくさん暴れてて、すっごい、気持ちいい......♡」

 息を激しく乱しながら、快楽に溺れている表情は実に妖艶であった。

「お、俺もです! 留衣さんのおまんこ、すごい気持ち良くて......ああ!」

 

 

 ※※※

 

「ありやとございやっしたー」

 

 コンビニ店員からレシートを商品が入っている袋を受け取る。

 欲しかった化粧用品、お姉ちゃんから頼まれたスーパーバニラカップ、優馬くんに渡してあげる飲み物、そして自分でもどうして購入してしまったのか分からない『ある物』を購入した私はコンビニを後にした。

 

「はぁ......なんでこんなの買っちゃったんだろ......」

 

 袋から取り出して『ある物』を眺めた。

 買ったのはハリケーンコンドームという商品。

 パッケージには『極薄0.01ミリ! 生とほとんど変わらない感触!』という謳い文句が記載されている。

 こんなもの、全く買うつもりなんてなかった。でも、自分でも良く分からないけど、なぜか購入してしまった。

 やっぱり、私......優馬くんとそういうことするの期待してる!?

 

「い、いやダメよ......優馬くんはまだ未成年だし、そんな......」

 自分にそう言い聞かし、私はアパートへと戻った。

 合鍵で鍵を開け、部屋の中に入る。すると、

「あん! あん!」

 というどう考えても『そういうこと』をしているとしか思えないお姉ちゃんの声が聞こえてきた。

「え......まさか......」

 

 心臓の鼓動が高まった。

 リビングの扉をゆっくりと開け、見つめると二人の人間が性行為をしていたのが目に映った。

 二人は私の存在に気が付いてないようである。

 

 その人間はもちろん、お姉ちゃんと......優馬くん。

 二人は性欲を貪るかのようにお互いの身体を刺激し合っていた。

 優馬くんは今まさにお姉ちゃんの裸体に自分の欲望をぶつけており、その証拠に激しく腰を振り続けている。

 二人の行為を見ていた私は『羨ましい』という気持ちが芽生え始めたと同時に何やら身体が熱くなり、変な気分になってきた。

 

 ――私もあんな風に優馬くんとセックスしたい......

 

「ああ! い、イく!」

「いいよ! 優馬くんイって! 私の(おまんこ)にたっくさん出して!」 

 

 お姉ちゃんと優馬くんの身体が痙攣しはじめた。 

 どうやら二人とも『イった』みたいだ。

 

 その時、私は自分のパンティに何やら湿ったものついていることに気が付いた。



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瑠夏さんの誘惑

「はぁ......はぁ......優馬くん......」

「留衣さん......」

 

 お姉ちゃんと優馬くんは熱い口づけを交わした。離れたところから二人を眺めていた私は、興奮したのか、自分のパンティがしっとりと濡れているのが分かった。

 

 二人が気づいていないうちに私はリビングから出た。とりあえず、二人が服を着たらまたリビングに戻ろう。

 私はドアに耳を近づけた。

 

「優馬くん......また、しようね?」

「は、はい......」

「そろそろ瑠夏が帰ってくる頃だろうから服着ましょうか」

 ごめんねお姉ちゃん。もう帰ってきてるよ。

 

 五分後、私は何食わぬ顔でリビングに入った。

「お待たせ! 二人とも!」

「おかえり、瑠夏」

 お姉ちゃんと優馬くんも何事もなかったかのように振舞っていた。

「はい、お姉ちゃん! これ!」

 

 私はお姉ちゃんに冷たいスーパーバニラカップを差し出した。二人が服を着て落ち着くまでの(賢者タイムになるまでの)時間、溶けないようにアイスを冷蔵庫に入れておいたのである。

「ありがとう」

 お姉ちゃんは微笑みながらアイスを受け取った。

「それと、優馬くん! はい!」

 私は優馬くんにアクエリアスを差し出した。

「え? ありがとうございます。すみません、わざわざ。あとでお金渡しますね」

「いいの、これくらい。気にしないで!」

「ありがとうございます。それじゃ、ありがたく受け取ります」

 優馬くんは私からアクエリアスを受け取った。これもアイスと一緒に冷蔵庫に入れておいた。

 

 その後、夜八時くらいまで私たちは雑談したり、ゲームをして時間を潰した。

「くらえ! この......この!」 

 

 今やっているのは『大激闘! スキップシスターズ』という格闘ゲームである。今ので十戦目になる。

 お姉ちゃんが操作しているキャラクターは早々に倒し、優馬くんと一騎打ちであった。

 

「ほりゃ! ほりゃ!」

 

 隙の少ない、小攻撃を連打するが、絶妙なタイミングで避けられる。

 これまでの優馬くんとの対戦成績は五対五の同点。

 ここは絶対に勝ちたい。たとえ、ゲームであっても。

 

 優馬くんの表情を観察すると、無表情でコントローラーのキーを叩き続けていた。優馬くんが操作しているゲームのキャラクターの背後に回り込み、強攻撃を繰り出したがあっさりと防御された。

 

「嘘!」

 

 絶対に決まったと思い込んだ私は思わず声を上げてしまった。そして、優馬くんが操作するキャラクターに投げ技を決められ、危うく場外に落ちそうになった。

 

「まだまだぁ!」

 上手くジャンプアクションを駆使して、ステージに復帰した。

「おお! さすが瑠夏、上手だね!」

 

 お姉ちゃんは感心しているが、私はすでに百近くのダメージを負っている。そんな私に対して、優馬くんのダメージはわずか四十程度。力の差は歴然だった。

 まともにやり合っても勝てないと踏んだ私は遠距離攻撃で攻撃する戦法を取った。

 格闘技では分が悪い。これならと思ったが、ひょいひょいと躱され、徐々に私が操作しているキャラクターとの距離を詰めてきた。

 

 ここまでかと思った瞬間、ゲーム画面上にフワフワと宙に漂うあるアイテムが現れた。

 

「あ、あれは......」

 

 そのアイテムの名は『ラスト・ジョーカー』というアイテムである。

 このアイテムを使うと操作するキャラクターごとに異なる必殺技を放つことができる。

 これを使うことで絶体絶命の状況から大逆転なんてのも珍しくはない。

 

「もらったぁ!」

 

 遠距離攻撃でラスト・ジョーカーの破壊を試みた。ラストジョーカーに一定以上の攻撃を与えると破壊したプレイヤーにその効果が発動する。

 私は一発、遠距離攻撃を与えたが、ラスト・ジョーカーを破壊するに至らなかった。

 すると、優馬くんの操作するキャラクターがジャンプした。

 近距離攻撃で破壊するつもりのようである。

 

「や、やばい!」

 

 急いで遠距離攻撃を発射した。おそらくはもう一発当てるとラストジョーカーが発動する。

 コンマの差で優馬くんの操作するキャラクターの方が早かった。

 

「終わりです......瑠夏さん!」

 優馬くんの操作するキャラクターから虹色のオーラがでてきた。

 かっこいい演出とともに、そのキャラクターの両手から画面一帯を覆い尽くすほどの巨大な炎が発射された。

 一かバチか防御アクションを試みたものの、耐え切ることができず、あっさりと場外に吹っ飛ばされ、K.O.となった。

 

 私はコントローラを床に起き、ストレッチがてら腕を上に伸ばした。

「あー! 負けちゃったな! 優馬くん、強いわね」

「い、いえ......それほどでもありませんよ......」

 

 優馬くんは恥ずかしそうに私から顔をそらしたが、私が腕を伸ばした時、胸に目線が入ったことに気づいた。 

 

「そう? それじゃ、もう一戦やる?」

「すみません、そろそろ遅くなってきたので、帰ります。明日から学校もあるので」

「そっか。どうせなら泊まっていけばいいのに」

「何入ってるんですか、留衣さん......そんなことできませんよ。すみません、夜遅くまでお暇して」

「いいのいいの。また来てね、優馬くん」

「優馬くん、次は勝つから。また遊びに来てね!」

「ありがとうございます。留衣さん、瑠夏さん」

 

 

 こうして、優馬くんは自分の部屋に戻っていった。私はゲーム機を片付け、適当なバラエティ番組を視聴することにした。

「いやー、優馬くんっていい子よね。背も高いし、かっこいいし」

 さっきまで、優馬くんとエッチしていたお姉ちゃんは嬉しそうにそんなことを言った。

「そうだね......お姉ちゃんが手を出すくらいだもんね」

「あれ......瑠夏、もしかして見てた?」

 驚いた様子でお姉ちゃんは私の方を振り向いた。

「うん、まぁね。優馬くんの前だったから気づかない振りしてたけど。で、どうだったの?」

「どうだったのって?」

 

 キョトンとした様子で訊くお姉ちゃんだった。

 全くもって白々しい。

 

「優馬くんとのエッチ......その、気持ち良かった?」

 すると、お姉ちゃんが不敵な笑みを浮かべた。

「うん、とっても......優馬くんのおちんぽ、大っきくて、私の中でもっのすごく暴れるようだった。ザーメンも濃くて......久々にすっごい気持ち良くなったよ」

「お姉ちゃんが今まで付き合った人とのセックスより気持ち良かった?」

「うん、間違いなくね」

 私は頭の中で優馬くんの大きなペニスを想像した。皮がしっかりと向けていて、少し黒みを帯びた膨張している肉棒。

「そっか」

 

 

 ※※※

 

「ふー、今日は色々あったな......」

 

 シャワーを浴びた俺は髪をドライヤーで乾かし、椅子に腰をかけた。

 今日一日で本当にいろんなことにあった。

 大家さんとの出会い、隣人の美人姉妹との出会い。

 そして、今日は脱童貞記念日でもある。

 俺は薫さんと留衣さんの裸を鮮明に思い出しながら、愚息を右手で撫でた。

 

「気持ち良かったな......」 

 すると『ピンポーン』というインターホンの音が聞こえてきた。

「なんだ、こんな時間に......」

 俺は渋々、玄関へと向かった。玄関の扉を開けると、瑠夏さんが立っていた。

「瑠夏さんじゃないですか。どうしたんですか?」

「ごめん、ちょっと入ってもいい?」

「え......まぁ、いいですけど......」

「それじゃ、失礼するわね」

 

 瑠夏さんはズカズカと中に入り込んで来た。リビングに入り、キョロキョロと部屋の中を見渡した。俺のベッドに目をやると、瑠夏さんはベッドに腰を掛けた。

 

「優馬くん、ちょっとここに座ってくれる?」

「わ、分かりました......」

 瑠夏さんの突然の指示に戸惑いながらも俺は瑠夏さんの隣に座った。

「あの、どうしたんですか瑠夏さん?」

 俺は瑠夏さんが部屋に来た理由を尋ねた。

「優馬くん......」

 瑠夏さんが五秒ほど俺のことを見つめると、ピンク色のジュールを塗った唇を俺の唇に重ねてきた。

「る、瑠夏さん......」

 瑠夏さんの顔が赤みを帯びており、目は何やらトロンとなっていて、とても淫靡であった。

「お姉ちゃんとしてるところ、見ちゃったの......私ともしてくれないかな?」

 

 俺に寄っ掛かり、甘えるように言う瑠夏さんに理性が崩壊してしまいそうであった。



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高校生活から始まるエロ物語

「る、瑠夏さん......」

 

 突然の瑠夏さんの誘惑に俺はドギマギしていた。

 瑠夏さんが俺としたいと言っている。

 というか、さっき俺が留衣さんとしていたの、瑠夏さんに見られていたのか。

 

「ダメ?」

 瑠夏さんがズボン越しから俺の股間を手で触ってきた。

 俺の手をいやらしく触ってくるその手はとても心地良く、いつしか勃起していた。

「逆にいいんですか? 僕なんかと、その......」

「ええ、もちろん」

 

 すると、瑠夏さんは目を閉じ、唇を突き出してきた。

 これはキスをして欲しいということである。

 俺は無言のまま、自分の唇をピンク色の瑠夏さんの唇に重ね合わせる。

 

「んん......」

 瑠夏さんの艶っぽい声が耳に届いた。瑠夏さんの唇は柔らかく、時間が経つにつれ、段々と脳がとろけるかのように気持ちよかった。

「瑠夏さん......」

 キスをやめ、瑠夏さんから顔を離すと瑠夏さんの顔が真っ赤になっているのが分かった。

「それじゃ、しよっか......」

 

 そう言うと瑠夏さんは着ているニットを脱ぎ始めた。

 身につけていたのは留衣さんと同じピンク色のブラジャー。

 しかし、留衣さんがつけていたのと微妙にデザインが違っていた。

 

「優馬くん、外してくれる?」

「分かりました。それじゃ、失礼します......」

 

 瑠夏さんの背中に手を回し、ホックを外した。

 すると、ポロンと大きめなサイズのおっぱいが目の前に現れた。

 白く、釣鐘型の形の山に淡いピンク色の突起物。

 大きさこそ留衣さんより少し小さめだが、綺麗な形のおっぱいで思わず惚れ惚れしそうである。

「ど、どうかしら?」

 

 瑠夏さんは自身のおっぱいについて、感想を求めてきた。

 ここはなんと答えるべきだろうか。

 

 ――いいおっぱいですね! いや、

 ――ナイスおっぱい! さっきとあまり意味が変わってないか。

 ――エッチなのは素敵だと思います! いくらなんでもこれは正直に答えすぎている。

 

「ええ。すっごい素敵です......」

 悩んだ末、俺はこう答えた。

「そ、そう。良かった。それじゃ、ちょっと触ってもらえる?」

「わ、分かりました......」

 恐る恐る俺は瑠夏さんのおっぱいに手を伸ばした。

 ちょんと触れると、ムニュっとした感触が感じられた。

「ひゃん!」

 

 瑠夏さんが声を上げた。さっきの部屋だとツンツンした感じだったので、今とのギャップに興奮した。

 俺はもっと力を込めて、瑠夏さんのおっぱいを揉むことにした。

 

「い、いいよ......優馬くん。もっと揉んで!」

 段々と瑠夏さんの息が荒くなり、体温が上がってきているのが分かった。

「ここなんかどうですか?」

 俺は人差し指で器用に乳首を弄った。

「ああん......! そ、そこは......」

 効いている。間違いなく効いている。

 効果は抜群だ!

「気持ち良いんですか?」

「う、うん......」

 そうか。ならば、もっと責めて気持ち良くしてやろう。

 俺は両手の親指と人差し指で瑠夏さんの二つの果実に付いている突起物を摘んだ。

「あぁあ......」

 

 瑠夏さんは身体をピクピクと痙攣させていた。

 俺は力を入れては緩め、力を入れては緩め、瑠夏さんの乳首を摘んだり離したりした。

 気持ち良くなったせいで瑠夏さんの乳首がツンと立っているのが分かった。

 さらに、瑠夏さんの身体からたくさんの汗が溢れ出してきていた。

 俺は乳首を摘んで、おっぱいを手前に引っ張った。

 張りのある瑠夏さんのおっぱいは面白いように伸びて細長い形になった。

 

「ちょ、ちょっと優馬くん......私のおっぱいで遊ばないで......」

 乳首を離すとおっぱいはぷるんと二、三回振動し、元の形へと戻っていった。

「すみません」

「もう......」

 瑠夏さんは少し拗ねたような表情を見せると、立ち上がり、黄色いショートスカートを脱いだ。

「なんか、パンティだけってのも恥ずかしいわね......」

 恥ずかしそうに身体をモジモジとさせる瑠夏さんに俺はもう大興奮だった。

「ねぇ、優馬くんも脱いで?」

「分かりました」

 

 俺は辛うじて動揺を隠しつつ、無表情で服を脱いだ。

 瑠夏さんもパンティを脱ぎ去り、一糸まとわぬ姿へと変貌を遂げた。

 

 裸になった状態でお互いの身体を見つめあった。

 

「すっごい......これが優馬くんのおちんぽ......」

 瑠夏さんは興味深そうに俺の肉棒を見つめると、右手で触り、刺激を与えてきた。

「気持ち良い?」

「ええ、ものすごく」

 

 俺は頷いた。気持ち良すぎて理性がオーバーフローしそうなくらいである。

 自分で触るのとはまた違う心地よさ。

 いや、自分で触るよりも遥かに気持ち良い。

 挿れたい――早く瑠夏さんの中(おまんこ)に挿れたい。

 瑠夏さんに刺激を与えられて、そんな欲望が強まっていった。

 そんな俺の気持ちを察してくれたかのように肉棒の発射口から先走り汁が出てきた。

 

「瑠夏さん、あの......挿れてもいいですか?」

 我慢できなくなった俺は瑠夏さんにそう訊いた。

「え? あ、ううん。良いけど、ちょっと待って」

 瑠夏さんはゴソゴソと鞄の中を探し始めた。

「あった」

 瑠夏さんが取り出して来たのは、『ハリケーンコンドーム』と記載されている箱だった。

 箱を開封し、中から円形型の物体を渡してきた。

「はいこれ!」

 俺はそれを受け取った。

「セックスする時はちゃんとつけないといけないからね!」

 

 コンドームの話は中学時代に友人から聞いたことがあった。

 しかし、実物を目の当たりにするのは初めてのことであった。

 正直のところ、つけ方が分からない。

 

「あ! もしかして付け方分からない?」

 戸惑っている俺の様子を見て察したのか、瑠夏さんがそう尋ねてきた。

「すみません、分からないです」

「それじゃ、貸して! 私が付けてあげるから」

 

 コンドーム を瑠夏さんに渡すと、瑠夏さんは俺の肉棒にコンドーム を付け始めた。

 俺の大きく膨れ上がった肉棒は黒色の薄いゴムに包みこまれた。

 ゴムの締め付けが中々心地良かった。

 

「それじゃ用意もできたし、しようか......」

 

 瑠夏さんがゆっくりと股を開いた。割れ目が開き、赤みを帯びた少しグロテスクな印象を持つ中身が見えた。

 興奮する。確かに興奮するのだが、『生でしたい』という気持ちが強くなってしまった。

 本来、セックスする時はコンドーム を付けるものらしいから、薫さんと留衣さんとした時が特別だったのだろうが、そう分かっていても生でしたいと思った。

 

 とりあえず、俺はそんな気持ちをなんとか押し殺し、自分の肉棒を薫さんの中へと挿入していった。

 

「はぁ......ああ、ううん......」

 瑠夏さんは挿入され、気持ち良さそうな声を出した。

 俺はピストン運動を始めた。突く度に連結部分から『グチュグチュ』という音が奏でる。

「気持ち良いですか? 瑠夏さん」

「ええ......」

 

 アヘ顔のような表情から察するに確かに気持ち良くなっている。

 それは俺も同じなのだが、どうしても生でやったらどれほど気持ち良いのだろうかと考えてしまう。

 そんな邪念を払うべく、俺は瑠夏さんのおっぱいを揉むことにした。

 欲望に任せるかのように強く、目一杯強く揉んだ。

 豊満な瑠夏さんの胸は俺の手では包み込むことができず、指の隙間から溢れてきた。

 

「優馬くんは本当におっぱいが好きなんだね......そんなに激しく揉むなんて......ああ! お、おかしくなっちゃいそう!」

 

 もちろん好きである。

 おっぱいは生命の神秘。

 大いなる生命の源と言っても過言ではない。

 

 瑠夏さんの方を見ると、口から涎が出ていた。

 

「優馬くん......私、イっちゃいそう......」

 俺はさらに腰を激しく動かした。俺の肉棒が瑠夏さんの中を掻き混ぜる時に発生する音が一層大きくなっていった。

「お、俺もです......イきます! イきますよ!」

「う、うん! いいよ! イって!」

 

 次の瞬間、身体の全身の力が抜けていった。

 射精した。肉棒から白濁液が抜けていった。

 しかし、子作りするための液体は決して瑠夏さんの膣に付着することはない。

 

 俺は肉棒を中から抜いた。

 

「はぁ、はぁ......すごい気持ち良かった......」

 

 瑠夏さんが満足そうにそう言うと俺はベッドから立ち上がり、コンドームを外し、ゴミ箱の中に捨てた。

 俺はベッドに戻り、瑠夏さんにこんな頼みごとをすることにした。

 

「瑠夏さん、生でしちゃだめですか?」

「ふぇ!?」

 瑠夏さんは鳩が豆鉄砲をくらったような顔を俺に見せた。

「ダメですか?」

 瑠夏さんと距離を詰め、俺は必死に懇願した。

「さ、さすがに生はちょっと......妊娠しちゃうかもだし......」

 俺から顔を逸らし、そう答える瑠夏さんだった。

「大丈夫です。俺、運は良い方なので。絶対に妊娠させません」

「運って......そんな問題じゃ......」

「お願いします! 先っぽ! 先っぽだけですから!」

 

 某SNSのアカウントのとある選手権によると、これは絶対に信用できない言葉の一つらしい。

 流石にこれは断られるか。

 

「優馬くんったら......しょうがないな......」

 なんと、賛同した瑠夏さんは股を開いた。『先っぽだけ』という言葉を信用したのだろうか。

「え? 本当に良いんですか?」

「だって、優馬くん。もう我慢できないんでしょ......?」

 

 蠱惑的な声で答える瑠夏さんだった。瑠夏さんの言う通り、俺はもう我慢できそうにない。

 断られても、もはや強引にこのまま押し倒してしまいそうな気さえする。

 

「はい。それじゃ、失礼します」

 俺は緊張しつつも、何者にも包まれていない裸の肉棒を割れ目の中に挿入した。

 

 ああ、気持ち良い。これが生の感覚か。

 いくらゴムを薄くしようとも、いくら性能を向上しようとも決して生には程遠い快楽。

 昨日まで童貞だった俺だが、すでに生セックス の虜になってしまったようである。

 先っぽだけというのは勿論嘘で、肉棒を根元深くまで挿入した。

 

「ふぇえああ! ゆ、優馬くんの生おちんぽひもちいい......♡」

 瑠夏さんは創作物で良く見るようなビッチ女のアヘ顔のような表情になっていた。

 瑠夏さんが気持ちよくなっている最中、俺は間髪入れずピストン運動を始めた。

「ひゃん! 優馬くんのおちんぽが中で暴れて......おかしくなっちゃいそう!」

「瑠夏さん......先っぽどころか根元まで入ちゃってますけど、良いんですか?」

 頭の中で某音楽グループが歌う、とある歌詞が流れてきた。

「いいよ優馬くん......もっと突いて! もっと激しく」

 

 どうやらいいようである。

 俺は瑠夏さんの言う通り、中を激しく突いた。

 瑠夏さんが快楽の波に溺れている。

 雪のように白い美しい瑠夏さんの身体を俺は気持ち良くし、弄っているのである。

 そう思うと、ドンドン――身体の奥底から性欲が湧き上がってくるかのようだった。

 スタイル抜群で美人である瑠夏さんの体は本当に淫らで美しい。

 

 やがて、俺の肉棒の射精感は発射直前までやってきた。

 

「で、出る! 出しますよ! 瑠夏さん!」

「うん、いいよ! 出して! 優馬くん! 中に、中にいっぱい出してーーー!」

 

 次の瞬間、俺の身体が痙攣した。肉棒からドピュドピュと精液が発射されている。

 それはまるで名器である瑠夏さんのおまんこに精力を吸い取られているかのようだった。

 

「ああ......気持ち良い......」

 十秒ほど射精した後の余韻に浸った後、俺は肉棒を抜いた。

 ぐったりしていると、俺の身体に瑠夏さんがもたれ掛かってきた。

「もう、こんなに私の中に出しちゃって......責任ちゃんととってよね......」

「瑠夏さん......分かりました」

 俺は瑠夏さんにキスをした。

 

 ああ――この瞬間、一人暮らしを始めた俺の高校生活はバラ色になりそうだなぁと思った。 



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高校生活の始まり

「ここがパーバード学園か……」

 

 入学式当日、俺は立派なクリーム色の建物がそびえ立っている校門の前で立ち尽くしていた。

 今日からこの学び舎で夢と希望に満ち溢れた高校生活が始まるのである。

 周りには俺と同じく、緊張した様子の新入生が次々と校門を潜っていた。

 

「さて、行くか!」

 俺は意を決して教室へと向かった。

 

 教室にはたくさんの机が並んでおり、机の上には出席番号と名前が書いてある紙が貼ってあった。

 紙を確認し、自分の机に座った。周りにはすでに楽しそうに話している生徒も数名いた。

 中学からの付き合いなのか、それともすでに打ち解けたのか。

 後者ならすごいと思う。

 

 俺も頑張って話しかけた方が良いのだろうか。

 ふと隣の席を見ると机に突っ伏して寝ている生徒に目がいった。

 突っ伏しているため、顔が見えないが、少し長めの髪をした女子生徒だった。

 入学当日にこんなに熟睡できる精神に俺は思わず感心してしまった。

 ある意味で黄金の精神。

 すると、突然その女子生徒がバタッと立ち上がった。

 寝起きのせいか、なんだか不機嫌そうな表情をしており、俺と目が合った。

 訝しそうにジッと俺を見つめるその女子生徒は目尻が釣り上がっており、その目は徐々に大きく見開いていった。 

 髪はいわゆるビビり染めというのだろうか、薄い茶色をしていた。小顔で男ウケしそうな顔をしていると個人的に感じた。

「おはようございます」

 女子生徒に挨拶された。女子生徒の声は一般の女子生徒より少し高めのように感じた。

 

「あ……えっと、そのおはようございます……」

 

 俺はぺこりとお辞儀し、挨拶を返した。

 とりあえず、喧嘩越しではなくて安心した。「おい、貴様! 何みてんだコラ!」とか絡まれたらどうしようかと思っていた。

 

「名前聞いて良いですか?」

 女子生徒が聞いてきた。

 まさか、高校入学初日に初めて会話した人が女子生徒になるとは思いもよらなかった。

「えっと、竹内優馬って言います。地方からこっちに引っ越してきました」

「へー! 地方から! 珍しい! どこ出身なの?」

 女性生徒は興味津々とばかりに敬語を使うのをやめ、出身地を訊いてきた。

「えっと、宮城県から……」

「宮城県! 確か、その……伊達政宗が有名な!」

 

 仙台ですね、それは。

 俺が住んでいたのは、あの仮面ライダーやスーパー戦隊で有名な石ノ森章太郎の記念館『石ノ森萬画館』がある石巻市である。

 休日に仙台もよく部活の練習試合やショッピングで行っていたが。

 

「ああ、まぁそうだね」

「やっぱり! それじゃ、私も自己紹介するね! 私の名前は渡嘉敷綾女(とかしきあやめ)。江戸川学園中学出身なんだ! よろしくね!」

 綾女は可愛らしく微笑んだ。江戸川ということは春日部のあたりか。

 そうであるなら、埼玉県出身ということになる。

 

「ああ、よろしく」

「そういえば、優馬くんは部活何に入るのかもう決めた?」

「ああ、まぁ一応スポーツ推薦で入学してるからね」

「え? そうなんだ! すごい。何部なの?」

「バスケ部だよ」

 

 当然ながらスポーツ推薦はその部活に入ることが入学の条件となっている。

 なので俺に部活の選択権は無いに等しい。

 顧問から許可を貰えば兼部できるケースもあるようだが、少なくとも俺は兼部しようという考えは持っていない。

 

「え? 本当に? 私もマネージャーとしてバスケ部に入ろうと思ってたんだ!」

 

 ほう、女子のマネージャーか。

 俺の中学ではマネージャーという役割がそもそもなかった。

 下級生がタイマーやスコアシートの記入など、そういった役割をこなしていた。

 正直、女子のマネージャーなんてのはフィクションの世界だけだと思っていた。

 

「そ、そうか。これから三年間部活で一緒になるんだな。よろしく!」

「うん!」

 

 すると、ガラガラと扉の開く音が聞こえ、前を向くと教師と思われる若い女の人が教室に入ってきた。

 俺も含めた男子生徒がその先生に注目した。

 サラサラとした黒髪で背が高く魅惑的なスタイルをもつその女子教師は『美人』という他、形容しようがない。

 真面目に薫さんとヒケを取らないレベルである。

 白い薄めのワイシャツは薫さんクラスの胸を強調しており、ミニスカート、黒タイツは先生の脚を引き立てており、男子の視線は先生に釘付け状態になっていた。

 

「みんな、席についてくれ」

 先生は教卓の前に立ち、俺たちに席につくよう指示した。

「今日から一年間、みんなの担任を務める霧島梓(きりしまあずさ)だ。まずはみんな、入学おめでとう。

 この私立パーバード学園は毎年学問、スポーツともに優れた人材を輩出している。みんなもこの貴重な高校生活、学問、運動に励んで立派な人物へと成長して欲しい。

 それで九時半から入学式が始まるのだが、その前に一人ずつ自己紹介して欲しい。それじゃ、まずはそこの君から自己紹介を頼む」

「話す内容だが、名前と出身中学校とあと趣味とか紹介してくれ。紹介が終わったら、続いて後ろの人が自己紹介をしていってくれ」

 梓先生がそういうと、指名された前の生徒が立ち上がった。

「えっと、板橋晃(いたばしあきら)って言います。出身中学校は東京都立小石川中学校です。趣味はえっと……読書です」

 

 メガネをかけたヒョロッとした、いかにもガリ勉という感じの生徒は自己紹介を終えると、いそいそと席に座った。 

 続いて後ろの生徒が自己紹介を始めた。自己紹介か……こういうの苦手なんだよな。

 どんな感じに自己紹介すべきなんだろうか。ウケを狙うべきなのか無難に自己紹介を終えるべきなのか。

 やがて、梓の自己紹介の番になった。

 

「渡嘉敷綾女です! 出身中学校は江戸川学園中学です。趣味はえっと……」

 綾女は顔を赤らめ、こう言った。

「お、男同士の絡みを観察することです!」

 

 教室がなんとも言えない雰囲気に包まれた。

 すごいな、こいつ。BL好きを公言してしまったぞ。

 だから、男子部のマネージャーになりたいのだろうか。

 

「そうか。それじゃ、次の人自己紹介頼む」

 

 梓先生は特にフォローを入れることなく後ろの生徒に自己紹介するよう促した。

 よし、俺は普通に自己紹介しよう。

 綾女の後、何名か自己紹介を終え、ついに俺の番がやってきた。

 クラスの注目を浴びる中、俺は立ち上がり、ゆっくりと言葉を発した。

 

「竹内優馬って言います。出身は宮城県の石巻東中学校です。趣味はえっと、バスケットボールで部活もバスケ部に入る予定です。一年間よろしくお願いします」

 

 クラスのみんなが好奇の目で俺を見ていた。

 やはり地方からやってくる生徒は物珍しいようである。

 だが、特におかしいことは口走っていない。

 クラスで浮くくこともなく一年間、無難にやっていけることであろう。

 俺は穏やかな心中で席に座ろうと思ったその時だった。

 

「あー、優馬。お前、確かスポーツ推薦だったか?」

 突然、梓先生がスポーツに推薦について話題を振ってきた。

 なんだ、終わりだと思っていたのに。

「へ? ええ、まぁそうですね」

「そうか。実は私、バスケ部の顧問でな。と言っても指導は別の先生が仕切っているんだが。よろしく頼む」

「よろしくお願いします」

 

 俺に推薦を持ちかけてきたのは四十代くらいのいかにも名監督という感じのオーラを持っている男の教諭だった。

 梓先生もバスケ部の顧問であることに俺は少々驚いた。

 だが、さっきの言葉を察するにあまり練習には関わらないのだろう。

 

「ところで優馬。少し聞きたいんだが……」

 おいおい、まだ続くのかよ。

 早く次の生徒に出番を回してくれ。

「好きな女性のタイプはどんな人だ?」

 梓先生が質問すると、クラス中が『ざわ、ざわ』しだした。

「え? あの、その……好きなタイプですか?」

「そうだ」

 こくんと梓先生が頷いた。なんで、そんなことを聞いてくるんだ。

「ちょっと、分からないですね。あははは……」

 俺は愛想笑いして、誤魔化そうと試みた。

 焦りからか、俺の背中に冷や汗が滴っているのが分かった。

「そうか。なら年上と年下、どっちが好みだ」

 

 年上と年下か。ってかなんでそんなこと聞いてくるんだ。

 俺は昨日の濃い一日を思い出した。

 薫さんや留衣さん、瑠夏さんと交わった昨日のことを。

 いやぁ、気持ち良かったなぁ……

 って! こんな時に何を考えてるんだ俺は!

 

「年上……ですかね」

 クラスのみんなから失笑の声が聞こえてきた。え? おかしいのか?

「そ、そうか……うふふふ。それじゃ次の人、自己紹介を頼む」

 

 てめぇ、この野郎。笑ってんじゃねぇぞ。

 俺はやりきれない思いを胸にしまい、着席した。

 やれやれ。無難に自己紹介を終えたと思ったらとんだ罠(トラップ)が待ち受けていたものだ。

 きっとクラスでは俺を年上好き野郎と記憶されてしまうことだろう。

 というか、年上好きで一体全体何が悪いのか。

 

 全員自己紹介を終えた後、始業式を行うべく体育館に移動した。

 始業式は生徒会長や校長が特に面白くもないお祝いの言葉を述べた後、新任の教師の紹介、そして締めに校歌を歌い、およそ六十分で終わった。

 ちなみに新入生のほとんどは校歌を覚えておらず、雰囲気で歌うものが大半だった。中には全く口を動かさないものもいた。

 

 始業式が終わると、授業ガイダンスが始まり、各授業の説明を聞いた。

 授業ガイダンスも終わるとあっという間に放課後がやってきた。

 今日から部活が始まる。正確にはまだ仮入部期間だが、もう部活を決めている生徒は早々と教室から出て行った。

 さてと、俺も行くか。

 

「ねぇ、優馬くん。一緒に部活に行かない?」

 鞄を持っている綾女が俺に声をかけてきた。

「え? ああ、そうだな」

 俺も教科書類を鞄にしまい、鞄を手に持つと、二人で部活に向かうことにした。

「部活初日ってなんか緊張するよね!」

「そうだな」

 

 むしろ、女子と二人で歩くことの方が緊張するのだが。

 体育館の中に入るとバスケ部と思われるたくさんの部員がセンターサークルの近くに集まっていた。

 

「たくさん、人集まってるね!」

「だな。俺たちも集合するか」

 俺と綾女は急ぎ足でセンターサークルへと向かった。

「あの、すみません。一年の竹内優馬って言います。バスケ部に入部したいと思い、来ました。よろしくお願いします」

 

 角刈りのやや褐色肌で、俺よりも一回り背の高い部員に話しかけた。逞しい身体つきをしており、いかにも強者という雰囲気が出ている。

 この人は見覚えがある。俺が中学一年の時に全国大会(インターハイ)を見に行ったときにこの人が試合に出ていたのを記憶していた。

 

「同じく一年の渡嘉敷綾女です。マネージャー希望です。よろしくお願いします」

「おお! 入部希望か! 今年はたくさん入部希望者がいて、戦力アップに期待できそうだ。えーと、それじゃ、練習着に着替えたらあっちの列に並んで貰ってくれるか? 更衣室はそこの階段を登った先のすぐ前にあるから」

「分かりました」

 

 俺と綾女は着替えた後、一年が並んでいる列に並んだ。

 背が高い人や見るからに雰囲気を持った上手そうな部員がいて、何だかとても緊張する。

 一年は俺を含め、およそ二十名ほどいた。

 仮入部だし、全員入部するとは限らないものの、これはレギャラーになるのに一苦労しそうである。

 

「みんな! まずは入学おめでとう! 俺はキャプテンの石崎渉(いしざきわたる)だ」

 俺が話しかけた角刈りの先輩はどうやらキャプテンらしい。

「まだ仮入部期間だから、全員入部しないかもしれないが、個人的にはたくさん入部して欲しいと思っている。それで今日の流れなんだが、アップまでは俺たちと一緒にやってもらい、ボールを使った練習からは別々で練習しようと思う。一年生はドリブル練習やパス練習をしてもらい、六時から一年生対二、三年生で試合をしようと思う」

 試合という言葉を聞いて、一年生みんなの表情が明るくなった。俺も結構、楽しみである。

「一つお願いしたいのが、一年生は一人一回は必ず試合に出れるように配慮してくれ。それ以外は特に指定しない。試合に出る順番も交代のタイミングも自由に決めていい。それじゃ、まずはランニングから始まるぞ」

 

 そうして、高校生活初めての練習が始まった。

 アップまで二、三年生と一緒に練習をしたが、これが中々ハードであった。

 シャトルランやディフェンス練習など、動く量の多い練習が大半でアップというにはかなり過酷だった。

 一年生の様子を見ると、俺と同じくみんなヘトヘトになっていた。

 

「それじゃ、ここからは別行動だ! 未知瑠(みちる)、後は頼む」

 キャプテンは一年生の練習を未知瑠というマネージャーに依頼した。

「はーい! それじゃ、一年のみんなついてきて」

 

 案内されたのは隣のサブコートだった。

 それにしても、隣のコートまで使えるなんて、すごい恵まれているな。

 俺の中学校は他の部活と時間を決めて共同で使っていた。  

 大抵はそういうところばかりであると思う。

 

「それじゃ、ちょっと自己紹介するね! 私は二年のバスケ部のアイドル、星空未知瑠(ほしぞらみちる)だよ! よろしくね!」

 

 未知瑠さんは小柄で茶髪のツインテールをしており、可愛らしい容貌をしていた。胸も中々に大きい。

 女性に免疫の無さそうな男子部員のほとんどは未知瑠さんに注目していた。

 ウィンクしてるあたり、どうにも計算している感が否めないが可愛いのは事実である。

 ちなみに綾女はというと、未知瑠さんの隣で紙のような物を持って突っ立っている。

 

「それじゃ、まずはドリブル練習から行くよー! 端から端までドリブルして戻ってくるように! みんなは『がんばー!』とか『ファイトー』とか声を出してね!」

 一年だけで基礎練習が始まったが、これがまた中々にして過酷だった。

「遅いよー! もっと、スピード出して! もっともっと! ほら、他のみんなも声出す!」

 未知瑠さんが指示を出す練習は容赦なく続いた。

「それじゃ、次は四角パスね。いい? 自分の出せる最高の速度でやってね!」

 そういうわけで四角パスを始めたわけだが、

「遅い遅い遅い! ほら! そこ、ショートカットしない! 次、ショートカットしたらシャトルラン十本やらせるからね!」

 本当に容赦なかった……

 

「お疲れ様ー! それじゃ、五分休憩ね!」

 ものすごく疲労した俺はコートに座り込んだ。他の一年生もぐったりとしていた。

 さすがは高校バスケ。練習も中学とはレベルが違うな。

「大丈夫? 優馬くん?」

 心配してくれたのか、綾女が俺に話しかけてきた。

「ああ、ちょっと疲れただけだ。問題ない」

「そっか、もう少ししたら試合だね! 頑張ってね!」

「ああ」

 そう、試合である。この試合で俺の実力をみんなに知らしめてやろう。

 

 休憩後、いくつかメニューをこなすと、二年の男子部員がサブコートにやってきた。

「おい、そろそろ試合するから準備してくれ!」

 

 お、いよいよか。 

 一年同士で話し合って、試合に出る順番を決めた。

 俺は最終クォーターに出ることになった。

 出番が少々待ち遠しいがまぁ我慢しよう。

 

「おい、先生が来たぞ! 集合!」

 キャプテンの点呼を聞くと、みんな先生のところに集まり始めた。

 俺をこの高校に勧誘した先生と梓先生だった。

「「「よろしくお願いします!」」」

 部員全員で先生に挨拶した。

「今年は一年生たくさんいるね。私はバスケ部の顧問の山口明宏(やまぐちあきひろ)だ。よろしく頼む」

 

 山口先生は長年、バスケ部で監督を勤めている。実力のある指導者であることは確かである。

「同じく顧問の霧島梓だ。私はあまり部活には口出ししないが、まぁよろしく頼む」

 梓先生は教室にいた時も同じ服装をしており、俺と目が合うと、梓先生は意味ありげに薄っすらと微笑んだ。な、なんなんだ。一体……

「山口先生、これから一年生対二、三年生で試合をしようと思います」

 顧問の先生二人が紹介を終えると、渉さんがこれから試合をすることを伝えた。

「そうか。分かった。一年生のみんなは先輩たちの胸を借りるつもりで試合をしなさい。逆に二、三年生のみんなは一年生だからと言って手を抜かないように。高校バスケのレベルの高さを教えてあげなさい」

「「「はい!」」」

 

 先生とのミーティングが終わり、サブコートでシューティングをして試合に備えた。

 シューティング中、一人気になる選手がいた。

 ツンツンとしている髪で長い切れ目をした、俺より少し背が高めのアシックスのTシャツを着ている選手。

 スリーポイントラインの手前からシュートを何本もシュートをしているのだが、全く落とさない。

 かなりの腕前であることは確かである。

 

 俺も負けじとスリーポイントラインの手前からシュートを打つ。

 シュートは美しい弧を描き、リングに吸い込まれていった。

 今日は調子がいいため、全く落とす気がしない。

 

「ナイスシュート! 調子いいね、優馬くん!」

 球拾いしていた綾女がそう声をかけた。

「まぁね」

 そうこうシューティングを続けているとそのうちタイマーのカウントがゼロになり、ピーという音がなった。

 

「それじゃ、試合するぞ! 試合に出る選手はセンターラインに集まってくれ!」

 

 いよいよ、試合が始まる。 

 俺はシューティングをやめ、これから始まる試合に注目した。

 果たしてこの試合でどんなプレイが巻き起こるのか、ワクワクが止まらなかった。



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バスケ部のマネージャーがビッチだった件

 いよいよ始まった一年生対二・三年生の試合。

 飛び出るスーパープレイの数々に思わず俺は目を奪われていた。

 

「おお! また決めた! すげぇなあいつ!」

 俺の横に立っていた同学年の部員が騒いだ。俺が注目していたツンツンしている髪の部員は先ほどからものすごいプレイを連発している。

「おい、チェックしろ! ゴール下でシュートを打たすな!」

 エンドライン側にいる石崎キャプテンが指示を出した。

「打たすかぁ!」

 パワーフォワードを担当している先輩がジャンプし、ツンツン頭のシュートを止めようと試みるがやつはあっさりと空中でボールを持ち替え、先輩のブロックを難なく交わし、シュートを決めてしまった。

「ナイス、輝! お前すごいな!」

 

 輝か。苗字は確か……佐藤とかだった気がする。

 佐藤輝。おそらく奴とは熾烈なレギュラー争いをすることとなるのだろう。

 しかし、先輩たちのプレイも負けてはなかった。

 

「オラァ!」

 

 キャプテンが迫力のあるダンクシュートを決めた。

 それにしても、ものすごいジャンプ力。

 キャプテンの身長は見たところ百九十にも満たないように思えるがそれでもダンクできるというのはかなりの身体能力である。

 激しいダンクを叩き込まれたリングはまるで『行為』をしている時のベッドのように激しくギシギシと揺れていた……って何という例えをしてるんだ俺はあああぁ!

 

 兎にも角にも、先輩たちのプレイは上手い。これぞ、高校レベルという感じで、確実にシュートを決めてくるし、ディフェンスも固かった。

 

「ナイスブロック! 明彦!」

 明彦さんというパワーフォワードの先輩が渾身のブロックショットをかまし、ボールはコートの外に出た。

 まだ一年生チームのボールだが、五点差で残り時間は一分を切っていた。

 

 一年生のスローイン。

 二・三年生チームのディフェンスは厳しく、危うく五秒が経過しそうなその時だった。

 

「くれ!」

 ディフェンスを振り切った佐藤がボールを求めた。

「頼んだ。佐々木!」

 あ。苗字、佐々木だったか。

 佐々木はボールを受け取ると、すぐさまドリブルでフリースローライン近くまでペネトレイトした。

「行かすかぁ!」

 しかし、相手のディフェンスはしっかりと佐々木のドライブに喰らい付いている。

 すると、佐々木はスリーポイントライン手前までステップバックした。

「何!?」

 

 ディフェンスは完全に虚を突かれたようで慌ててスリーポイントライン付近までディフェンスしにいった。

 スリーを打ってくると予測したのだろう。

 だが、これはおそらく……

 

「しまった!」

 

 再び右側前方向にドライブを仕掛けた佐々木は今度こそ、ディフェンスを抜き去った。

 

 フリースローラインより少し後ろの位置からミドルシュートを放った。

 綺麗な縦回転がかかったボールは一度、ボードに当たり見事にリングに吸い込まれていった。

 

「みんな! 当たるぞ! プレスだ!」

『おう!』

 二・三年生チームに対して、オールコートプレスを仕掛ける一年生。

 しかし、幾ら何でも即席チームでプレスなんて厳しいのでは。

 そう思ったのだが。

 

「何やってるんだ! 小嵐!」

 キャプテンが怒気を強める。

 意外にも付け焼刃であるプレスがうまく機能し、相手のポイントガード(小嵐さん)を上手くダブルチームでエンドライン側に追いやっていた。

「俺がフリーだ! 出せ!」

 二・三年生チームの選手の一人がキャッチボイスをする。

「ば、バカ! 出すな!」

 

 キャプテンがパスを出さないよう声を出したが、もう遅かった。

 小嵐さんのパスを読んでいた佐々木がパスカットした。

 残り時間は三秒。

 佐々木は横にドライブし、スリーポイントシュートを放った。

 スパッとそのシュートは決まった。

 タイマーの得点には三点加点され、同点となった。

 

 第一クォーターは同点で終わった。

 

「ナイスシュート、佐々木!」

「お前、すげぇな!」

「よく決めたな! あそこでさ!」

 佐々木とともに第一クォーターに出場した選手達は佐々木を褒め称えた。

「いやぁ……みんなのおかげだよ」

 

 佐々木は照れ臭そうにそう答えた。

 あいつ、めちゃくちゃ性格良さそうだ。全く自分の実力を鼻にかけない。

 佐々木がすごいセンスの持ち主なのは確かだが、他の四人にも目を見張るものがあった。

 

「馬鹿野郎! 二・三年生、何やってるんだ! 本気でやれと言っただろうが! もっと、ちゃんとプレイしろ!」

『押忍!』

 

 山口監督は二・三年生に喝を飛ばした。

 隣にいる梓先生はというと、椅子に座りなんだか眠そうにしていた。

 何しに来てるんだあの人は……

 

 その後、第二クォーター、第三クォーターと試合を行なったが、本気を出した二・三年生の前にどんどん点差が引き離されていった。

 一年生も頑張っていたのだが、やはり経験の差は大きい。

 第三クォーター終了時には点差は二十点差まで広がっていた。

 

「よーし、第四クォーターを始めるぞ! 試合に出る選手は用意してくれ!」

 キャプテンの声を聞き、俺はコートへと向かった。

「頑張ってね、優馬くん」

 綾女が声をかけてくれた。

「ああ、ありがとう」

「ゆ、優馬くん……どんどんキャプテンに向かっていって欲しいな」

「はぁ? 何でだ?」

 キャプテンはディフェンスが上手い。

 わざわざ向かっていく意味が分からない。

「こう……ぶつかって押し倒す体勢になったら、あああ! 良い妄想が止まらないよぉ!」

「あー、はいはい。丁重にお断りします」

 

 さすが綾女。腐っているようだ。

 そんなこんなで第四クォーターが始まった。

 他の四人と上手くプレーできるか不安だが、やるしかない。

 まずは一年生チームからの攻撃である。

 

「お願い、優馬くん!」

 

 味方からボールを受け取った。

 ちなみに俺のポジションはシューティングガードというポジション。

 外からのシュートを得意とする選手がこなすことが多いポジションである。

 中学時代は主にフォワードをしていたのだが、俺のチームは結構背の高い選手が多く、結果としてシューティングガードとなった。

 

「七番チェック!」

 先輩がディフェンスしてきた。

 今、スリーポイントより少し手前でボールを持っているが先輩は少し俺から距離を離している。

 これはイケるか。

「何!?」

 

 俺は思い切ってシュートを打ってみた。

 先輩は慌ててブロックに飛んだものの、先輩の手はボールに触れることなく、空を切った。

 シュートはフープに触れ、『ガゴン』と決まった。

 くそ、『スパッ』と決めたかったな。

 

「すごい! ナイスシュート! 優馬くん!」

 

 ポイントガードを担当している味方の部員が褒めてくれた。

 確か、名前は内山将吾(うちやましょうご)だったか。

 小柄な体系で少し焼けた黒い肌のくりっとした大きい目が特徴の選手である。

「あ、ああ。運良く決まって良かった」

 

「お前ら! すぐに取り返すぞ!」

『おお!』

 キャプテンの激に感化されたかのように他の二・三年生も気合いを入れ直した。

 キャプテンはポストでボールをもらうと、パワードリブルで一気にゴール下まで押し込んだ。

「堪えろ! 高橋!」

 高橋という百九十以上もあるセンターに俺はそう言ったが、

「甘い!」

 キャプテンは高橋のディフェンスを物ともせず力づくでダンクシュートを決めてしまった。

「うわぁ!」

 無残にも高橋は吹っ飛ばされて尻餅をついた。

 

 審判をしていた未知瑠さんが笛を吹いた。

「バスケットカウント! ワンスロー!」

 

 ディフェンスファールを取られてしまった。

 普通ならキャプテンの方がオフェンスチャージを取られてもおかしくない場面なのだが、ノーチャージエリアというオフェンスチャージが適用されないエリアであるため、結果としてこっちのファールとなった。

 フリースローのボーナスショットのチャンスを得たキャプテンは落ち着いてこれを決めた。

 

「よし! お前ら、ディフェンスだ! 一年、遠慮するな! どんどん来い!」

 くそ、すぐに返してやる。

「内山。どんどんボール渡してくれ」

「う、うん。分かった」

 

 俺たちの攻撃の番。

 内山はすぐに俺にボールを渡してくれた。

 俺をマークする先輩は先ほどよりも厳しいディフェンスをしてきた。

 

「沓沢! いけ、どんどんプレッシャーかけろ!」

「はい!」

 ぴったりマークしている。

 俺はドリブルで仕掛けたが、あっさりと反応された。

「くっ!」

 抜けないと判断した俺は一度、内山に戻した。

 内山は次にセンターの高橋にボールを入れたが、何も出来ず、あっという間にキャプテンからボールを取られてしまった。

「カウンターだ!」

 キャプテンは速攻に走っていた選手にロングパスを出した。

 

 まさに独走。

 誰も追いつけず、シュートを決められた。

 

「ドンマイ、ドンマイ! みんな落ち着いていこう!」

 

 内山はポイントガードらしく、みんなに声を掛けた。

 そうだ、まだ試合は始まったばかり。

 まだ慌てるような時間じゃない。

 

 しかし、どうしたものか。

 悔しいが、俺に先輩をドリブルで抜く技量はない。

 再び、内山からボールをもらうものの、ドリブル、シュートのいずれもせず、トリプルスレットの体勢をキープし続けた。

 

「どうした? 来いよ」

 先輩が挑発してくる。

 くそ、もう一か八かドリブルで仕掛けるか……いや、ここは。

「高橋! スクリーン頼む!」

 俺はポストでボールをもらおうとしていた高橋にそう指示した。

「わ、分かった」

 高橋は俺をマークしている先輩にスクリーンをしてくれた。

 スクリーンを活用し、ドリブルでゴール下まで切り込む。

「沓沢、スイッチだ! 来い!」

 

 今度はキャプテンが俺にマークしに来た。 

 よし、見てろ。綾女。お前が望んだものを見てやる。

 

 少し、体勢と距離がきつかったが、俺は強引にレイアップシュートを打ちにいった。

 『パン』という音が耳に届く。それと同時に腕に痛みが走った。

 すると、未知瑠さんが笛を吹いた。

 

「ファール! ツーショットです!」

 俺はキャプテンからファールを取ることができた。

 すまんな綾女。押し倒す体勢には至らなかった。

「やるな。確か優馬だったか。中々良いプレイだ。どんどん来るがいい」

「それじゃ、遠慮なく行きますね」

 フリースローを二本決め、再び点差は二十点差になった。

 

 しかし、次のディフェンスでは、

「橘! ダブルチームでキャプテンを抑えろ!」

 そう指示をしたのだが、キャプテンはフリーになった選手にパスをすると、あっさりその選手がシュートを決めてしまった。

 

 キャプテンは高橋一人では抑えることができない。

 かといってダブルチームでマークさせると、フリーになった選手にパスを出されて決められる。

 

 ふっ……まるで詰将棋だな。

 

「高橋、またスクリーン頼む」

「オーケー!」

 高橋のスクリーンを利用し、再びドリブルを仕掛ける。

「もう、同じ手は通用せんぞ!」

 

 キャプテンの言う通り、ピッタリと俺をマークして来た。

 だが、狙いはそこではない。

 俺はゴール下からスリーポイント付近まで下がった。

 シュートを打ちに来るのだろうと考えたキャプテンは当然、俺を追ってきた。

 

「高橋、合わせろ!」

「うん!」

 俺はリングの真上にボールを上げた。

 高橋は空中でボールを受け取ると、そのままダンクシュートを受け取った。

 

「おお!」

「すげぇ!」

「な、何だ今の!? アリウープ!?」

 

 高橋が見せたスーパープレイにみんなは驚いていた。

 先ほどからキャプテンにやられっぱなしだった高橋だが、その恵まれた身長とポテンシャルは底知れぬ強さを持っていると俺は感じた。

 おそらくマークがキャプテンでなければガンガン点を取っていることだろう。

 

 その後はひたすら打ち合いが続いた。

 キャプテンを中心に点を取り続ける二・三年と、スクリーンプレイを使って点を稼ぐ俺たち一年。

 

 残り時間もいよいよ一分ちょいほど。

 点差は二十三点差だった。

 せめて、試合開始時の二十点差よりは差を詰めたいと思った。

 内山がボールをキープし、誰にパスするか検討していた。

 ボールを持っていない俺は上手くフェイクを使い、ディフェンスを振り切り、フリーの状態でゴール下へと向かった。

 

「う……」

 

 ――内山、パスくれ!

 そう言おうと思っていた。 

 しかし、言う前に内山から絶妙なタイミングでパスが来た。

 なんて、良いパスなんだろうか。

 

 四十五度付近からゴール下でシュート体勢に入る。

 だが、当然カバーのディフェンスがやってきた。

 フリーとなったパワーフォワードの橘にパスすると、見事橘がシュートを決めてくれた。

 

「お前ら! 最後は一本決めて終えるぞ!」

『おお!』

 意気揚々と先輩たちが攻めてくる。

 

「みんな! ここは絶対に止めよう!」

 内山が俺たちに声を掛けてくれた。

『ああ!』

 ここは絶対に止めて、シュートを決める。

 

 必死に俺たちはディフェンスし、なんとか、二十四秒守りきれそうであった。

 

 バスケには二十四秒ルールというものがあり、ボールをコントロールしているチームは二十四秒以内にシュートしなければならない。

 シュートがバスケットに入るか、ボールがリングに触れるとシュートが成功しなくても二十四秒計はリセットされ再度二十四秒がカウントされる。二十四秒以内にシュートできなかった場合は相手チームのスローインとなる。

 

 二十四秒ルールの適用時間まで残り四秒というところでキャプテンにボールが渡った。

「これで終わりだ!」

「ぐ……!」

 高橋も頑張るが、ジリジリとゴール下まで押し込み、ダンクシュートを打つべくキャプテンがジャンプした。

「決めさせるか!」

「止める!」

 高橋、そして橘もキャプテンのダンクを止めるべく、ブロックに飛んだ。

 いくらキャプテンでも二枚のブロックは無理と判断したのか、橘がマークしていた選手にパスを出した。

 

 そう来ると思っていた。

 

「フリーだ、明彦! 打て!」

 明彦先輩はミドルシュートを放とうとした。

 パスコースを読んでいた俺はそのシュートを後ろからはたき落とした。

「う、嘘だろ!」

 

 明彦先輩はとても驚いていた。

 まぁ、無理もないか。

 俺の身長は百八十で明彦先輩は俺よりもおそらくは五センチほども高いのだから。

 自慢じゃないがジャンプ力はそこそこある。

 

「高橋! ルーズ拾ってくれ!」

「おう!」

 高橋はルーズボールを拾うと内山にパスを出した。

「みんな走って!」

 内山がみんなに指示を出す。

 タイマーの時間を確認すると、残り時間は七秒ほど。

 俺はフロントコートめがけて全力失走した。

「みんな戻れ!」

 キャプテンの言葉を聞き、先輩たちは急いでディフェンスに戻った。

 

 先輩たちの戻りは早く、内山は必死にシュートチャンスを探していた。

 残り時間はあと三秒。

「内山! くれ!」

「頼んだ、優馬くん!」

 

 ぴったりとマークしてくる先輩だったが、俺はステップバックし、スリーポイントラインの一メートル後方からクイックモーションでシュートを放った。

 幸いにもそのシュートは先輩のブロックを掻い潜ることができた。

 

「入れぇ!」

  

 しかし、俺の願いは届かず、ボールはリングに触れることなくボトンとコートに落ちていった。

 そして、ブザーの音が鳴り響いた。

 結果は五十二対七十三と二十一点差で紅白戦は幕を閉じた。

 

「集合!」

 試合が終わり、整列をすると、キャプテンが山口先生のところに集合するよう声を掛けた。

「みんなお疲れ様。一年生は荒削りの部分もあったけど、いいプレイが見られて良かったよ。二・三年生は反省点がいくつかあったからちゃんと練習で克服するようにな。それじゃ、今日はストレッチして終わりだ。ゆっくりと休むように」

「ありがとうございました!」

 キャプテンに続けて他の部員も、

『ありがとうございました!』

 山口監督に礼を言った。

 

 ストレッチを終えると、今日の練習が終わった。

 いやぁ、中々刺激的な試合だった。

 同じ一年でも佐々木や内山、高橋など能力の高い選手がゴロゴロいる。

 これから練習、頑張らないとな。

 

 俺は第四クォーターで一緒になった選手と一緒に帰宅していた。

 ちなみに先輩たちはまだシューティングをしている。

 まだ、仮入部期間であるため、俺たち一年は遅くまで自主練することはできない。

 

「優馬くんのプレイすごかったなぁ。そういえば、優馬くんってどこの中学校出身なの?」

 内山が出身中学校について聞いてきた。

「俺は宮城県の石巻東中学校出身なんだ。推薦で入学した」

「へー! そうなんだ。宮城県から。あの伊達政宗で有名な」

 

 仙台ですね。それは。

 宮城県といえばやはり伊達政宗の印象が強いのだろうか。

 もっとこけしの発祥地とか鳴子漆器とか蔵王とか猫がたくさん生息している田代島とか色々あるのだが。

 

「まぁ、そうだな。みんなはやっぱり東京の中学校出身か?」 

 話を聞くととやはり他の四人は東京や神奈川など、関東圏の中学校から進学していた。

「それじゃ、俺こっちだから。みんなまた明日な!」

 交差点にて、帰る方向がみんなと違うため、俺は別れを告げた。

 

 四人と別れ、しばらく歩いていると途中で俺は体育館で忘れ物をしたことに気が付いた。

 更衣室に勉強道具を入れた鞄を置き忘れてしまった。我ながらなんというアホなのだろうか。

 鞄の中には学校の宿題のプリントも入っている。

 仕方がない。まだそう学校から遠くないし、取りに戻るか。

 

 俺は再び学校へと舞い戻り、更衣室に戻った。

 体育館にはまだ灯が点いており、まだ先輩たちがシューティングをしているようだった。

 俺は更衣室に置いてあった鞄を手に持ち、更衣室から出た。

 

「さてと、帰るかな……ん?」

 更衣室から少し離れた倉庫から何やら音が聞こえた来た。

 気になった俺は倉庫に近づいてみた。

 

「あ……先輩……!」

 聞こえてきたのは何やら聞き覚えのある声。

 俺は倉庫の扉を少し開け、中を覗いてみることにした。

 

「未知瑠……相変わらず、お前のおっぱい気持ち良いな……」

 

 倉庫には未知瑠さんとキャプテンの石崎さんがいた。

 二人はお互い、全裸の状態であり、石崎さんは気持ち良さそうに未知瑠さんの大きめな双丘を法悦に満ちた表情で揉んでいた。



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覗いた先にあるもの、それはお家デート

「未知瑠、挟んでくれるか?」

「はい、もちろんです」

 未知瑠さんは慣れた手つきで石崎さんの肉棒をたわわな胸で挟んだ。

 身長は石崎さんの方がやや大きいが、あそこの長さは多分、俺の方が高いな。やったぜ。

「石崎さん、気持ち良いですか?」

「ああ、すっごい気持ち良い」

 

 いいなぁ。石崎さん、すごく気持ち良さそうだ。

 見ていたら、ムラムラしてきた。

 未知瑠さんの裸体、ものすごくエロい。

 白い大きな胸の膨らみは大きめで、肉棒を挟んで貰えば強烈な快楽が得られそうであり、下の毛は永久脱毛でもしているのか、ツルッツルであった。

 やりたい、超やりたい。

 健全な男子であれば普通は俺と同じことを思うことであろう。

 

「未知瑠……」

 石崎さんは興奮したのか、未知瑠さんにキスをした。

「ん……」

 未知瑠さんは甘い吐息をこぼしつつ、目を閉じて、石崎さんの濃厚なキスを受け入れた。

 

「ねぇ、ちょっと」

 不意に誰かが後ろから話しかけてきた。

「うわ!」

 突然、話しかけられて驚き、振り向くとそこにいたのは綾女だった。

「なんだ、綾女か……」

「どうしたの、優馬くん。確か、一年生はまだ自主練できないはずでしょ?」

「ああ、まぁな。ちょっと、更衣室に忘れ物して取りに来たんだ」

「そうなんだ、奇遇だね。私もだよ。それでさ、さっきから優馬くん倉庫覗いたけど」

「う……!」

 

 あかん。どう誤魔化そう。

 キャプテンとマネージャーがパコっていたのを覗いてましたってか?

 さすがにそれはなぁ……

 

「な、なんでもないよ……」

 口笛でも吹いて誤魔化そうと試みたが、出て来たのは乾いた息の音だけだった。

 そういえば俺、口笛吹けなかった。

「怪しい……ちょっとどいて!」

 綾女は俺を無理やりどけて、倉庫の中を覗いた。

「お、おい!」

 俺が制する間も無く、みるみるうちに綾女の顔が真っ赤になっていった。

「は、はわわわわ……」

 綾女はバタンと倒れ込んだ。

「お、おい! 大丈夫か!? 綾女!」

「男と女が愛して合っていた。これが純愛。ノンボーイズラブ……」

 

 ああ、そういえばこいつ腐女子だったな。こういうのは見慣れていないのだろうか。いや、そもそも普通、誰かがセックスしているところなんて見ないか。

 綾女が倒れている間、俺は再び倉庫の中を覗いてみることにした。

 

「アン! アン! 先輩! もっと突いてください!」

「ああ! 分かった!」

 

 二人はご丁寧にもマットを敷き、性行為をしていた。

 石崎さんが未知瑠さんの上に乗っかっており、石崎さんが激しく突くたびに未知瑠さんの胸が盛大に揺れていた。

 ベッドでやっていれば確実に『ギシ、ギシ』と激しく揺れることだろう。

 

「おお……」

 他人のセックス を見るなんて初めてであったが、他の男と女がエロいことをしている瞬間を生で見られたことを俺は感動したものの、それと同時に何とも言えないやるせなさを感じた。

「優馬くん、優馬くん」

 コンコンと綾女が俺の肩を小突いて来た。

「なんだ?」

「石崎さんと未知瑠さんが気づかないうちに退散しない?」

「そう……だな……」

 

 確かにバレたら色々と厄介である。

 是非とも未知瑠さんの絶頂シーンをこの目に収めておきたかったが、(悪いがキャプテンのは別にいい)仕方があるまい。

 

 そうして、俺と綾女は一緒に帰宅することになった。

 

「はぁ……わ、私、あんなの初めて見た……」

 どうやら綾女は興奮が覚め止まぬようである。

 まぁ、無理もないか。

 ちなみに俺も鮮明に未知瑠さんの美しき裸体を思い出そうと格闘していた。

「ねぇ、ちなみに優馬くんはああいう経験ってしたことあるの……?」

 何を思ったか、綾女が突如そんな疑問を投げかけてきた。

「何だよ突然……」

「ご、ごめん。こんなこと聞いて……けど、気になったから」

「そうか。なら、そっちから先に答えてくれ」

「へ?」

 綾女が顔を見上げてきた。

「綾女はその……処女なのか?」

「な、ナナナなんてことを聞いて来るの! 優馬くんたら! セクハラだよもう!」

 ここちょっと理不尽だな。

「答えたくないか。それじゃ、それについてはお互い黙秘ということにしよう」

「う、うん」

 

 交差点に差し掛かり、俺はアパートの方向へと向かった。

 綾女も同じ方向についてきた。

 

「綾女もこっちなんだな」

「うん。実はアパートで一人暮らししてるんだ」

 

 奇しくも俺と同じ状況であることに驚いた。 

 高校生で一人暮らししている者なんて、そうそういないものであると思っていた。

 

「へぇ。奇遇だな。俺もだよ」

「そうなんだ。なんていうアパートに住んでるんだ?」

「キンキィ梅田っていうアパートだよ」

 キンキィ梅田……どこかで聞いたことある気が……

「それ、俺が住んでるアパートだ!」

「え? 本当に?」

 

 話を聞くと、綾女は進学するに当たって、通学時間を少なくするために一人暮らしを始めることになったという。

 まぁ、キンキィ梅田は家賃のわりにセキュリティがしっかりとしているからな。(大家さんが勝手に侵入するという点は除いて)

 雑談をしているうちにアパートにたどり着いた。

 

「優馬くんは何号室に住んでるの?」

「202号室だ。綾女は?」

「201号室だよ。隣だったんだね」

 大家さんと隣人の朝日さん達と挨拶にいった昨日、確か留守に201号室には誰もいなかった。

 どこかに行っていたのだろうか。

「そうだな。まさか、隣とは。同じ部活だし、これから色々とよろしくな。それじゃまた……」

 

 俺は自分の部屋へ戻ろうとした。 

 すると、綾女は俺の肩を掴んで来た。

 俺はゆっくりと振り向き、綾女の顔を見つめた。

 

「ど、どうした?」

「その……ちょっと、優馬くんの部屋に行ってもいい?」

「いや、何でだよ……」

 正直、女子に自分の部屋に行きたいと言われて嬉しくないわけではないが、幾ら何でも部屋に連れ込むというのは気が引けた。

 まぁ、薫さんは大家の特権で俺の部屋にやってきたわけだが。

「その……ちょっと、男子の部屋ってのがどんな感じなのか気になって」

「分かった。それじゃ、少しだけな」

 渋々、俺は承諾し綾女を部屋の中へと案内した。

 

「お邪魔しまーす!」

 綾女は興味深そうに俺の部屋の中をキョロキョロと見渡した。

「別にどうってことないだろ。普通の部屋だと思うんだが」

「男子の部屋に入ったことないからよく分かんない。それにしてもダンボールが多いね」

「まぁ、まだ荷ほどきが終わってないのもあるからな……」

 俺はバツが悪そうに答えた。思ったより、まだ結構ダンボールあるな。

「よっと……」

 綾女は絨毯の上で体育座りをした。

 体勢的に見えそう......ってあかんあかん。

 部屋の中で変な気を起こすのは危険である。

「お茶飲む?」

「うん、ありがとう」

 俺は冷蔵庫の前へ移動し、コップにペットボトルの綾鷹を注ぎ込んだ。

 部屋へと戻り、コップを二つ、テーブルの上に置いた。

 

「部屋の造りは……うちの部屋とあんまり変わらないみたいだね」

 緊張した様子の綾女がそんなことを言ってきた。

「そりゃ……まぁ、そうだろ」

 隣の部屋で造りが大きく変わっているアパートなど、そうそうあるまい。

「これが優馬くんのベッドかぁ……」

 綾女は俺が使っているベッドに目を移すと何を思ったか、バタッと俺のベッドに寝っ転がった。

「お、おい綾女……」

「ふふ、優馬くんの匂いがする」

 綾女は俺の掛け布団をクンクンと嗅ぎ始めた。

 

 俺の匂いって、会ってまだ初日な訳だが。

 もう匂いを覚えたのか。

「恥ずかしいから布団を嗅ぐのはやめてくれ」

「分かった」

 

 綾女はやや不服そうな顔をすると、起き上がりベッドに座り、脚をプラプラさせた。

 細く程よい肉が付いている綾女の脚は見ていると変な気が起きそうなので、部屋の壁でも見つめることにした。

 綾女は五秒ほど脚をプラプラさせていると、俺の方をちらっと見た。

 

「優馬くん、隣に座って」

 どうしてだろうと思ったが、ここは従うことにした。

「ああ」

 綾女の隣に座るとほんわりとしたフレグランスの香りが鼻腔をくすぐった。

 

 いつの間にか俺の心臓がバクバクと大きく振動していた。

 やがて、綾女が俺の方に寄っ掛かってきた。

 程よい綾女の重さが肩に感じられた。

 

「おい、綾女……」

「私も石崎さんと未知瑠さんみたく、私も優馬くんとしたいんだけど……ダメ?」

 

 じっと綾女が俺の顔を覗き込んだ。

 綾女の大きめな瞳はトロンと蕩けそうになっており、頬は紅潮していた。

 

「そ、そういうのは本当に好きな人とした方が……」

 そうアドバイスを告げると、唇に熱い感触が感じられた。

 綾女は俺に口付けしてきた。

「ん……」

「わ、私……さっきの石崎さんと未知瑠さんのを見てから興奮が収まらないの……私の処女を優馬くんに奪って欲しい。それで、優馬くんの童貞を奪いたいな」

 

 法悦に満ちた表情でそう言う綾女なのだが、生憎俺はすでに童貞ではないのだった。




 大方、主要人物は出揃いました。次回からVRMMO編が始まりますのでご期待ください。


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VRMMOゲーム――『ビーストファンタジー』

「んん……」

 

 俺と綾女は濃厚なキスを交わしながら、お互いの身体を弄りあっていた。

 俺は綾女の胸を、綾女は俺の股間をお互い服越しから揉んでいた。

 キスをやめると、唾液の糸が引いているのが目に映った。

 綾女の頬は赤く、目はうっとりとしており、なんだか少し眠たそうにも見える。

 

「優馬くん、脱がして……」

 

 綾女がそう言うため、俺は綾女が来ているブレザーの制服を脱がせた。

 綾女が着けていたのは白を基調とした花の刺繍が施された可愛らしいブラジャーであった。

 胸は小さめで慎ましやかである。小さいため、薫さんみたいな深い谷間が作れていない。

 だが、これはこれでいい。

 

「ブラジャーも脱がしていい?」

「う、うん……」

 

 恐る恐る、俺は綾女が着けているブラジャーに手を伸ばした。

 一体、どんなおっぱいをしているのか。

 おっぱいの形、乳首の色など想像しながらブラジャーを脱がそうとした。

 その時だった。

 

 ――ピンポーン。

 

 インターホンの音が鳴り響いた。

「……」「……」

 無言になる俺と綾女。

 なんでこのタイミングで俺の部屋に訪れようとするんだ。

 

 ――ピンポーン。

 ――ピンポーン。

 ――ピンポーン。

 

 しつけぇ……正解は越○製菓ってか? 早く帰れ。

 

「優馬くん、出なくても大丈夫?」

「まぁ、大丈夫だろ」

 多分、薫さんかな。

 

 今の状況を見られたらややこしいことになりそうだから、ここはいないふりをしてやり過ごすことにしよう。

 だがしかし。

 

 ガチャっと、ガチャっと、ガチャーン!

 レベルアーップ!

 

 は! 落ち着け、俺よ。

 驚きのあまり、脳内でマ○ティアクションXの変身音が流れてしまった。

 

「え? 今、ガチャって音がした……」

「綾女! すぐに制服着てくれ!」

「へ?」

「早く!」

「う、うん。分かった!」

 

 綾女には悪いが詳しく説明している時間はない。

 こんなおっぱじめようとしている状況を大家である薫さんに見られたらややこしいことになる。

 

 リビングのドアが開き、薫さん、そして留衣さんが俺の部屋にやってきた。

 薫さんの右手には何やら白い大きな袋を持っていた。

「あら、竹内くん。いるじゃない」

「薫さん……勝手に俺の部屋に上がるのはやめてください」

 

 大家さんとはいえ、お客さんに賃貸した部屋に無断で上がりこむのは不法侵入である。(注:本当です)

 

「ごめんごめん。それにしても、入学一日で女の子を家に連れ込むなんて、とんだプレイボーイね!」

「本当だよ。優馬くん。瑠夏が見たら泣くよ〜」

 薫さんに続いて、留衣さんまでも俺が綾女を部屋に上げたことを非難し始めた。

「ゆ、優馬くん。この人たちは?」

「ああ。このアパートの大家の薫さんに、隣の部屋の留衣さんだよ。昨日、挨拶しにいったんだ」

「へ、へぇ。そうなんだ……初めまして。渡嘉敷綾女です。私もこのアパートに住んでいます。ちょっと、優馬くんの部屋が気になって上がらせてもらいました」

「そっか。それはちょうど良かったわ! 実はこんなの持ってきたの! てれれれっってれ〜」

 

 未来の世界の猫型ロボットが便利な道具を出すときに流れそうなBGMを口ずさみながら、薫さんはゲーム機を取り出した。

 

「こ、これは……VRゴーグル」

「その通り。これはRSFラボが発売した最新のゲーム機よ! ちょうリアルな映像ですごい面白いって噂なのよ! このゲーム、最大四人までプレイできるから留衣と瑠夏、それに優馬を誘おうと思ったんだけど、瑠夏ったら、今日サークルの飲み会らしくって夜遅くに帰るらしいのよね。だからちょうど良かったわ! ねぇ、綾女ちゃん。一緒にプレイしない?」

「え? いいんですか?」

 

 綾女は嬉しそうな顔をした。やりたいのか。

 ちなみに俺はヤりたかったのに、それをこの二人に妨害された。ちくしょう。

 

「もちろんよ! 早速、始めましょう!」

 

 薫さんが俺たちに一台づつVRゴーグルを渡してきた。

 まぁ、今日のところは我慢しよう。

 ゲームは普段、あまりしないが、RSFラボのゲームはどれも面白いと評判である。 

 俺はVRゴーグルを装着した。

 すると、画面には辺り一面、水色の空間が広がった。

 

「ようこそ、ビーストファンタジーの世界へ。この世界では様々なモンスター、種族が存在しています。今日からあなたは冒険者として、この世界で大活躍するのです」

 女の人が声が聞こえてきた。ゲームについて説明してくれた。

 黙って話を聞いてくると俺の目の前に『ポン』と電子音とともに小さな画面が出現した。

 画面には『Men』、『Women』という二つの選択股がある。

「まずはあなたのアバターを作成します。男か女か選んでください」

 へぇ。結構、本格的だな。

 俺は男を選択した。その後も身長や髪型など、細かくアバターについて選択したが、ところどころにおかしな選択肢があった。

 

 ――ちんこの長さを入力してください。

 

 いやいやいや。おかしいだろ。

 なんだ、それ。ってか伏せ字にしろ運営。

 消されるぞ。

 

 何センチに設定するかな。せっかくだから実際より大きめに設定するか。

 14.7と……

 

 次に現れたのはこんな選択肢。

 ――SEX回数を入力してください。

 まぁ、これは実際の回数でいいか。三回と……

 

 その後も神経が擦り切れるような選択股を選んでいき、ようやく全ての選択肢を埋めることができた。

 

「お疲れ様です。それではアバターを作成します。この世界では盗賊や騎士など様々な職業が存在しますが、職業はランダムに選ばれます」

 職業は自由に選べないのか。できれば、魔法使いとかやってみたい。

 

 すると、次の瞬間、あたりに木が視界に映った。

 ここは……どこかの森か?

 そんでもってここがビーストファンタジーの世界か。なかなか面白そうじゃないか。

 

「えっと、優馬くん……」

 何者かに話しかけられ、後ろを振り向くと、右から綾女、留衣さん、薫さんが並んで立っていた。

「おお! みんな一緒にいたんだ!」

 

 三人を見ると、全員のステータスが表示された。

 まずは綾女のステータスを見てみることにした。

 

 ーーNAME:アヤメ JOB:忍者 武器:クナイ SKILL:高速移動 LEVEL:1

 アヤメは黒色の露出が大きめな忍者服を着ていた。生足があらわになっているのと、胸元が大きく出ていて、なかなかセクシーだった。

 残念なことに胸は小さいが。

 留衣さんはというと、

 ーーNAME:ルイ JOB:騎士 武器:ランス SKILL:フレイムスピアー LEVEL:1

 銀色の鎧に包まれた留衣さんはかっこよかった。

 おかげで抜群のプロポーション(おもにおっぱい)は鎧によって隠れてしまったが。

 

 最後に薫さんのステータスを確認した。

 ーーNAME:カオル JOB:魔法使い 武器:杖 SKILL:エクスプロージョン LEVEL:1

 黒いローブを纏い、杖を持っている薫さんはなかなか様になっている。

 薫さん、魔法使いか。いいなぁ。

 それにしてもスキルがエクスプロージョンか。某ライトノベルのお陰でどんなスキルか想像がつくな。

 

「優馬くん……」「その格好は……」「ふ、ふふ……」

 三人が笑いを堪えたり、顔を赤くしたりしていたので、何やら違和感を感じた。

「格好? え!?」

 なんと、俺の格好はほぼ全裸だった。

 股間部分に葉っぱがのっかているだけである。もはや服ですらない。

 なんじゃこの格好は!

 

「ちょっと優馬のステータス見るわね。職業、変質者。武器、性欲。スキル、痴漢ですって。あはははは!」

 薫さんは俺のステータスを見て、笑い焦げていた。

 

 ふ……俺の職業は変質者か……

 

「なんだその職業はーーーーーー!」

 俺は空を見上げ、思いっきり叫んだ。

 何の役に立つっちゅうねん。その職業。

 

 だが、俺のスキルがこれから大活躍することになろうとは、パーティメンバーの誰も知る由もないのだった。

 

 とりあえず、こうして俺たちの偉大なる(?)冒険が始まった。




 


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魔王の手下はチートスキルによって苦しめられる

「それじゃ、早速みんな冒険に行きましょう!」

 薫さんが高らかに手を挙げると、

「「「おおー!」」」

 と、みんなも釣られるように手を挙げた。

 

 周りは木ばかりで、どこかの森であることは確かだが、どこを向かって歩いていけば森を抜けるのか全く分からない。

「ここ、どこなんですかね?」

「ちょっと、待っててね」

 薫さんがそう言うと、画面を操作した。薫さんの顔の前に映し出されたのはマップのような画面。

「どうやら『始まりの森』ってところらしいわ。あっちの方向に街があるらしいわ。とりあえずはそこに向かいましょう。それと、操作でマップを出せるから出しておいた方がいいわね」

「へぇー便利ですね」

 留衣さんは感心したように呟くと、マップを開いた。俺と綾女もマップを開く。

 

 マップを頼りに俺たちは街を目指し、森の中を歩いた。

 森に生えている木のグラフィックはとてもリアルでどこからどう見ても本物にしか見えない。

 森だから当然だが、木が多い。モンスターとか飛び出してきたらどうしよう。

 四人もいるから、何とかなるとは思うが。

 

 そんな悪い予感が敵中したかのように木の陰からモンスターが現れた。

 そのモンスターは狼のような生き物で、白く荒々しい毛並みをしており、「ぐるる……」と犬歯をむき出しにして、睨んでいた。

「うわ! なんか出た!」

 綾女が驚いたように声を上げた。

 モンスターを見つめると、モンスターのステータスが表示された。

 

 ――シルバーウルフ LEVEL1 HP50 

 

 シルバーウルフか。HP50という数字の横には体力ゲージのようなものも表示されており、満タンとなっていた。

 

「みんな、早速戦闘よ!」

 薫さんは目を爛々とさせながら、杖を取り出した。

「え、ええっと。どうすれば……」 

 急な戦闘に綾女はアタフタとしていた。俺もどうしていいか全く分からない。

 普段、あまりゲームとかしないため、こういったゲームにあまり心得がないのである。

 

 そんな中、留衣さんはテキパキと操作画面を操作していた。

「えーっと、これが戦闘画面で、これがスキルね!」

 操作画面を留衣さんがタッチすると、留衣さんの右手に持っていた槍(ランス)が炎を纏始めた。

「喰らえ、『フレイムランス』!」

 ノリノリでスキル名を叫びながらシルバーウルフに攻撃を仕掛ける留衣さんだが、あっさりと躱されてしまった。

 攻撃を空振り、無防備になった留衣さんに引っ掻き攻撃をシルバーウルフが仕掛けると、留衣さんに表示されている体力ゲージが四分の一ほど減少した。

「いて! あれ、痛くないや……」

 リアルに痛みを伴うゲームなんて、怖過ぎてそうそうやるものはいないだろう。

 さすがにゲームでダメージを喰らっても本当に痛みが走るなんてことはないようである。

「留衣! 一度、下がって!」

「分かりました!」

 薫さんの指示に従い、留衣さんはシルバーウルフとの距離を置いた。

 

「綾女ちゃん! 優馬くん! スキルを使って、あいつを攻撃して!」

「わ、分かりました! えーと、戦闘、す、スキルと……」

 綾女は薫さんの指示に従い、戸惑いながらもスキルを使用すべく、画面を操作し、スキルを選択した。

「スキル発動! 『高速移動』!」

 綾女はものすごい速度で移動し、一瞬にしてシルバーウルフの後ろに回り込み、

「やぁ!」

 と叫ぶ、クナイを奴に投げ出した。

 見事にクナイはシルバーウルフに命中し、奴の体力ゲージは三分の一ほど減少した。

「いいわよ! 綾女ちゃん! 優馬くんも攻撃頼むわ!」

「分かりました! スキル発動! 『痴漢』!」

 戦闘画面からスキルを選択する。

 シルバーウルフに手を差し向け、スキル名を発動した。

 

 だが何も起こらない。

 

 よく考えれば、モンスターに痴漢って何だろうか。獣姦だろうか。

 ケモナーにしか喜ばれんな。

 何もできない俺に見かねた薫さんが杖をシルバーウルフに向け、スキルを発動させた。

「喰らいなさい! 『エクスプローーーーーーージョン』!」

 

 シルバーウルフの真上に大きな炎の塊が降り注ぎ、ものすごい轟音を立てて爆発した。

 

 ものすごい威力だった。

 しかし、それと引き換えに薫さんの体力ゲージに下に表示されているHPポイントが一気にゼロになった。

 

「凄いです! 薫さん! あんな凄いスキルを使えるなんて!」

 留衣さんは先ほどの攻撃に感銘を受けたようだった。

「そんなことないわ。留衣のフレイムスピアだって当たれば強力そうだし、綾女ちゃんの高速移動も見事だったわ」

 俺のスキルにはあえて何も触れない薫さん。

 ぶっちゃけ、俺のスキルは何の役に立つのだろうか。

「あ! 見て見て! レベル上がったわ!」

 薫さんのステータスを確認すると、確かにレベル2になっていた。

 留衣さんと綾女さんも同様にレベル2となっている。

 自分のステータスを確認すると、俺のレベルも上がっていた。

 

「よーし、この調子で行きましょう!」

 

 その後も森を歩くと様々なモンスターに出くわした。

 

 ――隈ベアー LEVEL2 HP70

 

 隈ベアーは文字通り、目の下に隈がついている茶色い剛々しい毛並みをした大きな熊(ベアー)である。

 隈に熊……ダジャレか。くだらんなぁ。

「ここは私に任せてください! 『フレイムランス』!」

 留衣さんは炎の槍(ランス)で隈ベアーの身体を突きにいった。

「クマーン!」

 隈ベアーはブンブンと腕を振り回すと、パンチを打ちにいった。

 隈ベアーのステータスによると、『ベアーパンチ』という技らしい。

 なんとも捻りのないことか。

 槍を持っている分、リーチの長い留衣さんの攻撃の方が先に命中し、隈ベアーの体力が一気にゼロとなった。

「クマーン……」

 隈ベアーはバタンと倒れた。なんか、ちょっと可哀想だな。

 すると、隈ベアーの屍がキラキラと消滅していくと、小さな黄色い宝石のようなものが残った。

「何か残りましたね」

 俺は黄色い宝石のようなものを拾い上げた。薫さんはそれをまじまじと見つめた。

「そうね、一応持って行きましょうか」

 

 そろそろ森を抜けようとした時には、俺たちのレベルは5になっていた。

 ちなみに俺はほとんど何もやっていない。

 スキルはなぜか発動しないし、一応素手で何度かモンスターに攻撃してみたものの、雀の涙程度のダメージを入れることができたくらいである。

 なのにみんなと同じように着々とレベルを上げている。

 

 まさに寄生プレイ。

 

「もう少しで森を抜けるわね」

「そうですね。早く街に着きたいです」

 薫さんと留衣さんが話している中、俺は向こうの大きな生え木のてっぺんに人影がいるのを見つけた。

「なぁ、綾女。あそこに誰かいるの見えるか?」

 俺は人影のいる場所を指差した。

「え? うーんっと……ほ、本当だ。誰かいる……」

 すると、人影はタンと木から降り立ち、ものすごい速さで俺たちの方へとやってきた。

「だ、誰か来ます!」

「「え?」」

 俺が叫ぶと、薫さんと留衣さんが前を見つめた。

 

 やって来たのは、褐色肌で可愛らしい顔立ちをした女性。

 見た目、俺と同じくらいの年齢に思える。

 黒いツノ、尻尾を生やし、露出の多い黒いドレスを着用していた。さらに網タイツを履いており、とてもセクシーな格好であった。

「ふははは! こんなところに我と出くわすとは不運であったな!」

 女性は腕を組み、大きく身体を逸らして笑い焦げた。

 身体を逸らした際、主張の激しい胸に目がいった。

 

 うん、結構でかい。Dよりはあるか……? 薫さんと同じくらいか、少し小さいくらいだろうか。

 

 胸を観察してると、女性のステータスが表示された。

 

 ――ヴィネ LEVEL15 体力500 魔力100

 

「レベル15!?」

 レベル15という高レベルを見て、思わず驚いた。さすがにこれは勝つのは厳しそうだ。

「ん? 何のことだ? 我の名はヴィネ。魔王に仕えしもの。貴様ら冒険者を抹殺するのが我の使命! 貴様らまとめてあの世に送ってくれるわ!」

 ヴィネはビシッと俺たちのことを指差した。

「ふん……やるしかないようね!」

 薫さんは闘志を剥き出しにしていた。やる気満々である。

「薫さん! レベル15ですよ! 幾ら何でも倒すなんて」

「フフ、レベルの違いが、戦力の決定的差ではないことを教えてやるわ!」

 シャ○みたいなことを言い出したぞ。

 薫さんは早速、杖をヴィネに向けた。

「スキル発動! 『エクスプ……』」

 俺は慌てて薫さんの身体を抑え、スキルを使うのを止めた。

「ちょっと、何するの! 優馬くん! ちょ、おっぱい触ってるんだけど!」

「待ってください! え? あ、すみません! けど、薫さんのスキルはMPの消費が激しいんですからまだ打たないでください!」

「わ、分かったわよ! けど、どうするの?」

「留衣さん、綾女! 三人で隙を作りましょう! 薫さんはいつでもスキルを発動できるようにしておいてください」

「分かったわ。みんな、頼んだわよ」

 薫さんは俺の作戦にひとまず納得してくれた。

 

「よし、それじゃまずは私から攻めるわね!」

 留衣さんが槍を片手に単独でヴィネに向かって特攻していった。

「えい! えいえい!」

 必死に槍を使って突きにいく留衣さんだが、ヴィネはそれを嘲笑うかのようにひょいひょいと避けた。

「あはははは! そんなノッロイ攻撃、当たるわけないかろう! よしんば、当たってとしても大して痛くもないけどな!」

 さすがに留衣さん一人でヴィネから隙を作り出すのは厳しいだろう。

「しょうがない……役に立たないかもしれないが俺も行くか」

 俺は意を決し、突撃しようと考えた。しかし、綾女が俺の肩に触れてきた。

「優馬くん、ここは私が行くわ。スキル発動、『高速移動』!」

 綾女はスキルを発動し、ヴィネに向かっていった。

 かなりの速さでヴィネの背後に回り込む。

 綾女はヴィネの首元めがけて躊躇なくクナイで刺そうと心みた。

「へぇ……結構速いんだね」

 ヴィネは後ろの向いたまま、綾女がクナイを握っている右手首を掴んだ。

「く……! は、離して!」

 だんだんと綾女の体力ゲージが減っているのが確認できた。

 触れると体力を吸い取る力を持っているのか、握力でダメージを与えているのかは分からない。いずれにせよ、かなり力に差があるのは確かだ。

「なら、お望み通り」

 ヴィネは片手でポイと空高く放り投げた。

「綾女ちゃん!」

 薫さんは駆け出し、宙に放り出された綾女の身体をお姫様抱っこでキャッチした。

「あ、ありがとうございます。薫さん……」

「ううん、気にしないで! 無事で何よりだわ!」

 おお、百合百合しいな。見ていて少しドキドキする。

「あーあ。みんな弱っちくてがっかりだ。もっと我を楽しませる者はおらぬのか?」

 ヴィネは退屈そうにあくびをし始めた。そんなヴィネの態度を見て、薫さんはイライラした様子で歯切しりをしていた。

「もう我慢できない! 優馬くん、悪いけど、撃たせてもらうわ!」

「え……ちょっと、薫さん!」

「『エクスプローーーーージョン』ッッ!!!」

 止める間も無く薫さんがスキルを発動させる。

 ヴィネの真上に強大な炎の塊が降り注ぎ、轟音が鳴り響いた。

 レベルが上がったことだけあって、最初に見た時よりも威力が増している。

 

 これは……やったか?

 

 爆風によって巻き起こった煙が徐々に消えていくと、ゆっくりと人影が見え始めた。

 ヴィネはあれほどの攻撃を喰らっても平然とした様子で立っていた。

 

「今のはなかなか良かったぞ。褒めてつかわそう。それでも我を倒すにはまだまだであったがな」

 ヴィネのステータスを確認すると、彼女の体力ゲージが五分の一ほど減少していた。一応効いてはいる。効いてはいるが、今の俺たちでは倒せないだろう。

「はぁ……仕方ないわね。留衣。ここは私が引き止めるからみんなを連れて街へ行きなさい」

「な、何を言ってるんですか! そんなことできません! みんなで街まで逃げましょう!」

 留衣さんは薫さんの言うことに反対のようだった。だが、薫さんの言う通り、このままでは全滅、パーティは崩壊する。

 全員で逃げたところですぐにヴィネに追いつくだろう。

 誰かが時間を稼ぐ必要があるように思えた。

「ここで私が死んでもまたレベル1からやり直すだけよ。すぐにまたレベル上げるからさ」

「いや、でも……」

「でもじゃないの! お願いだから言うことを聞いて!」

 

 二人が口論しているのをヴィネは退屈そうに黙って見ていた。

 ヴィネは攻撃してこないのか? 

 いつかバチか、不意打ちでも仕掛けてみるか。

 

 俺は戦闘画面を開き、スキルを選択した。

 どうせまた発動しないだろうが、ものを試しと使ってみることにした。

「スキル発動、『痴漢』!」

 すると、突如選択画面が現れた。

 

 ――対象者、ヴィネ 次の中から陵辱する部位を選んでください。『胸』『尻』

 

 なんだ、これは……!?

 

 謎の選択股に戦慄しながらも、俺は胸を選択した。

 

 ――胸でよろしいですか? 『はい』『いいえ』

 

 『はい』を選択すると、さらに文章が出てきた。

 

 ――了解しました。存分にお楽しみください。

 

 画面が閉じられると、目の前に等身大のヴィネの立体映像のようなものが現れた。

 

 本物と思わず見間違えそうになるくらいのクオリティである。

 頭や腕に触れてみようとすると擦り抜けた。

 脚や尻部分も同様であった

 

 そして、胸におそろおそる手を伸ばすと、『ムニュ』とした柔らかい感覚が伝わった。

 

「はうぅ……!」

 リアルの方のヴィネが雌のような声を上げた。

 柔らかい……

 こ、これは……立体映像のヴィネの胸を揉むと、リアルのヴィネにも俺に触られている感覚を共有するのか!

 

 俺は強く立体映像のヴィネの胸を揉んだ。なかなか大きめなサイズのヴィネのおっぱいは弾力が強く揉み応えがある。

 

「な、なんだ……これは……突然、身体が熱く……ああああ!」

 ヴィネは身体を真っ赤にさせ、地面に突っ伏した。

 

「え? 何、急に? ってか、優馬くん。何でこんな何もないところでイヤらしい手つきをしているの!?」

 

 『こんな何もないところ』と、薫さんが言っているのを察するに、この立体映像は俺以外に見えていないのだろうか?

 

 留衣さんも綾女さんも不思議そうに俺を見ていた。

「今、スキルを使ってます! 攻撃するなら今です!」

 服越しからコリコリとした感触の乳首の位置を触って確認し、そこを重点的に攻めた。

 

 

「はあぁあうん……♡ な、なんだこの感じは……の、飲み込まれそうだ。このままではやられちゃうぅ……ここはみ、見逃してやる……」

 ヴィネはガクガクと身体を震わし、だらしなく涎を垂らしており、快楽に溺れているような顔をしていた。

「うわ! なんか、すごいことになってる……」

 ちょっと薫さんが引いていた。

「て、『テレポート』」

 ヴィネが突っ伏している場所に黒い魔方陣が生まれると、シュンとどこかに消えていった。

 

「はぁ……なんとか追っ払うことができたわね! あいつを倒せなかったのは悔しいけど。それにしても、どうして急にスキルが使えるようになったのかしら?」

 薫さんが訝しんだ様子で俺を見つめ、訊いた。

「多分、相手が女性だからかと……」

 俺のスキル、『痴漢』は女性が相手の時に発動するスキルなのだろう。

 先ほどのヴィネのように格上にも効果は抜群のようである。

 

「ふーん、ある意味で最強のスキルね。優馬くんにぴったり」

 薫さんがそう言うと、

「うんうん」

 と留衣さんも納得したように頷いた。

 そんなにぴったりのスキルだろうか……

 

 ちなみにこの戦闘により、俺たちのレベルは7に上がったのだった。



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恐ろしいスライムによって、美少女達の服が溶かされちゃいます!

「ようやく街についたわね!」

「そうですね」

「ええ」

「いやぁ、長かった……」

 みんなはそれぞれ、街についたことを喜んだ。

 

 ヴィネとの戦闘後、俺たちは森を再び歩き、一時間ほどしてようやく街にたどり着いたのである。

 この街には西洋風の建物や猫耳を生やした亜人、トカゲっぽい二足歩行の生き物など、ファンタジーの世界であると彷彿とさせるようなあらゆる種族の者達がいる。

 

 

「始まりの街、シベラ……」

 マップを開き、マップに記載されているこの街の名前を呟いた。

 シベラにはあらゆる建物がそびえ立って降り、非常に興味がそそられる。

 マップを拡大すると、たくさんの面白そうな名所があるのを確認できた。

 武器屋にギルドハウス。

 さらには、闘技場まであった。

 

「よし! まずはギルドハウスに行きましょうか!」

 薫さんがそんなことを提案してきた。

「ギルドハウスですか?」

 留衣さんが質問すると、薫さんが「ええ」と呟いた。

「小○家にな○うとか、そういう感じの話だと、大抵ギルドハウスに行っておけば間違いないわ!」

 だめだこりゃ。伏字で隠しきれてない。丸わかりである。

 というか、このゲームは何をしたらクリアになるのだろうか。

 

 俺たちはマップを確認し、シベラの東方面のギガ地区というところに移動し、ギルドハウスへと向かった。

 ギルドハウスは木造建ての大きな建物。

 建物には次々と冒険者が出入りしていた。

 ドアを開けると、『カランカラン』と鈴の音が鳴った。

 

 中にはたくさんの冒険者と思わしき人たちがテーブルの椅子に座り、雑談や食事、なかには飲酒をして楽しんでいた。

 

 奥へと進み、カウンターのお姉さんに薫さんは話しかけた。

「あの、クエストを受けたいんですけど、お願いできますか?」

「ちょ、薫さん! いきなりクエストをするつもりですか?」

「当然でしょ! ファンタジーの世界といえばクエストよ! これは世界の常識なの!」

 はぁ、世界の常識なのか。

 すると、受付のお姉さんが微笑んだ。

「クエストですね。冒険者カードはお持ちですか?」

「いえ、持ってません」

 薫さんが冒険者カードを持っていないことを伝えると、受付のお姉さんは突如、透明な水晶を取り出した。

「では、今から冒険者カードを作成します。一人づつ、この水晶に手をかざしてください」

「それじゃ、私から行くわ」

 薫さんが水晶に手をかざすと、水晶は水色の眩い光を放ち始めた。

「うわ!」

 眩しくて思わず目を瞑る。ゆっくりと目を開けると、水晶の横にプラスチックの材質でできているようなカードが置いてあった。

「こちらが冒険者カードになります。ご確認ください」

「えーっと、名前、カオル。職業、魔法使い。レベル、7。クエスト達成数0。ランクD」

 薫さんはカードに書いてある内容を声に出して淡々と読み上げた。

「こちらの冒険者カードは、マジックアイテムの一種です。みなさまのレベルが上がったり、クエストを達成すると自動的に更新されます。

 また、こちらのランクですが、ランクが上がるにつれ、この街の施設の優待制度を受けることができます。

 たくさんクエストをこなすほどランクが上がりますので、頑張ってくださいね!」

 その後、薫さんに続いて俺たちも冒険者カードを作成した。

 

「それでは、クエストを受けたいということですが、あちらの掲示板にクエストの依頼書が貼ってあります。こなしてみたいクエストの依頼書を一枚選んでここに持ってきてください」

「分かりました。それじゃ、みんなクエストを選ぶわよ!」

 

 受付から数メートルほど離れた掲示板に移動し、一つ一つ俺たちはクエストの依頼書を吟味した。

「グリガザンマウンテンに生息するボルケーノフェニックスドラゴンの討伐。難易度SSS。報酬金額三千万ゴールド。うん、これは流石に厳しそうね」

 こんな、クエスト受ける奴いるのだろうか? 見た感じ、伝説の勇者やチート性能持ちの異世界転生者でもなければこなせそうにないぞ。

「皆さん、これなんてどうですか?」

 綾女が一枚の依頼書を取り、俺たちに見せてきた。

 ――屋敷に潜む、ライセイトスライムの討伐。報酬百万ゴールド。難易度D

「おお! いい! 薫さん、これにしましょう!」

 留衣さんが歓喜したがどういうわけだか、薫さんは浮かない表情をしていた。

「いい? 綾女ちゃん。スライムを舐めちゃいけないのよ。もしかしたらなんでも食べるスキルを持ってたり、食べたものを解析して自分の能力にしてしまうとんでもないスライムだっているかもしれないでしょ? あーテンペスト、テンペスト」

 どうみても、あれのこと言ってるよなぁ……

「けど、難易度はあまり高くないですよね? 受けてみませんか?」

 俺がそう言うと薫さんは訝しんだ表情を浮かべつつも、やがて、

「そうね。受けてみましょうか」

 と承諾し、俺たちはこの依頼を受けることに決めた。

 

 依頼書を受付に持っていくと、すぐに受付のお姉さんはクエストが行われる屋敷の場所を教えてくれた。

 ギルドハウスから徒歩十分。

 

 ギガ地区の商店街の近くにある大きな屋敷。

 そこにライセイトスライムがいるらしい。

 

「それにしても本当に大きい屋敷ね……」

 薫さんは屋敷のあまりの大きさに圧倒されていた。俺も同感である。

「今のアパートよりも良さそう。こんなところに住んでみたいなぁ」

 留衣さんは仮にも大家さんである薫さんの前でとんでもないことを言った。

「え? 何だって?」

 薫さんは留衣さんを睨みつけた。

 どうやら、難聴ではないらしい。

「いえ、何でもないですよ」

 そんな薫さんに対して笑顔で返す留衣さんだった。

「それにしても、これどうすればいいんですかね? ノックすれば誰か出てくるんでしょうか?」

 綾女がドアを指差し、困ったような表情をした。

 現代の日本であれば、インターホンのボタンを押せば事足りるのだが、この世界にはそんなものはない。

「そうね、しょうがないからノックしてみましょう。ごめんくださーい! クエストに来ましたー!」

 薫さんは『ドンドン』とまるで借金取りみたいにドアを激しく叩いた。

 中々の迫力である。

 留衣さんと綾女さんは軽く引いていた。まあ、俺もだが。

 

 すると、ドアが開いた。出て来たのは白髪でメガネをかけた執事服の男性。

「どうも。お話は伺っております。あなた方さまがスライムの討伐を引き受けてくれるという冒険者の方々ですね。今日はよろしくお願いします」

 深々とその男性は頭を下げた。

 さっき、依頼を引き受け、ギルドハウスに出たばかりなのだが、もう依頼を受けたことはこの人に伝わっているらしい。

 舞台設定的になんとなくこの世界に電話はないと思われるのだが、何か特別な連絡手段みたいなものがあるのだろうか。

「よろしくお願いします。それで、あなたがスライム討伐の依頼を?」

「いえ。申し遅れました。私はこの屋敷ではたらく執事のラリアと申します。スライム討伐の依頼をしたのはご主人様です。あなた様方をご主人さまの元へとご案内します。どうぞ、お入りください」

 ラリアさんは俺たちをどこかの部屋へと案内した。

 入り口からまっすぐ歩き、数十メートル先にある、焦げ茶色のドアの前まで案内すると、ドアを開けてくれた。

「お入りください」

 俺たちは案内された部屋の中に入った。

 

 中にはアンティークの置物がいくつか置かれており、大きなテーブルの向こうに複数の椅子があり、そのうちの一つに、頭の禿げた中年のおっさんが座っていた。

 葉巻を口に咥え、豪華そうなヴェストと白い長ズボンを着用しており、いかにも成金という感じがした。

「これはこれは、冒険者のみなさま、どうぞおかけください」

 おっさんにそう言われ、テーブルを挟み、おっさんの向かい側にちょうど四つ並んでいる椅子に俺たちは座った。

 ラリアさんは俺たちに香ばしい香りがする紅茶を出してくれた。美味しそう。

 俺は紅茶を一口飲んだ。うん、やっぱり美味しい。

 すると、おっさんから只ならぬ雰囲気を俺は察知した。

 何やら、舐め回すようないやらしい視線で薫さんたちのことを見ているように思えた。

「まずは自己紹介をさせていただきます。この屋敷の主人のペトムと申します。この度は依頼を引き受けてくれてどうもありがとうございます」

 ペトムというおっさんは名前を言い、自己紹介を始めた。

「こちらこそ、カオルと言います。職業は魔法使いです」

 薫さんが自己紹介を始めると、

「ルイと言います。職業は騎士です」

「あ、アヤメって言います! 職業は忍者です」

 続くように留衣さんと綾女も自己紹介をした。

 そんな中ただ一人、自己紹介をせずに俺は黙っていると、ペトムが訝しんだ様子で俺のことを見た。

「あなた様は?」

「えっと、ユウタと言います。職業はその……変質者です」

「ふ……」

 鼻で笑いやがった! この野郎!

「失礼。それで、クエストについてなんですが、私の屋敷の二階の部屋に魔風石が飾ってあります。魔風石は強い魔力を持っているのです。その影響なのか、部屋に一ヶ月おきにライセイトスライムが生まれるのです。

 みなさまにそれを退治していただきたいのです。お願いできますかな?」

「ええ、もちろん! ちなみに、何匹くらいいますか?」

「ざっと十匹ほどです」

「なら、大丈夫そうです! さっそく退治に向かいます!」

 紅茶を飲み終えた後、ラリアさんに後についていき、スライムのいる部屋へと向かった。

「こちらになります。お気をつけて」

 今度はドアを開けてくれないラリアさん。自分で開けるということなのだろう。

「よし……それじゃ行くわよ!」

 薫さんが中に入り、続いて俺たちも中に入る。

 部屋の中はペトムがいた部屋とは違い、こぢんまりとしており、本棚がいくつもあった。

 そして、奥の方にはガラスでできたディプレイケースがあり、中には魔風石と思われる虹色に輝く大きな石が展示されていた。

「ねぇ、あれスライムかな?」

 留衣さんが魔風石が展示されている方向を指差した。

 ディスプレイケースの横には黄色いスライムがいた。

 

 大きさは予想よりも結構小さめである。

「そうっぽいわね! 早速、倒しましょう!」

 薫さんが杖をスライムに向けた。

「ちょっと! こんなところでスキル打たないでください! 薫さんのスキルは周囲の被害が大きいんですから!」

「ちぇー……」

 薫さんはいじけるように口を尖らせた。ちょっと可愛い。

「それじゃ、私と綾女ちゃんがスライムを倒してきます! 綾女ちゃん、行こうか!」

「はい!」

 留衣さんと綾女はスライムを倒しにいった。

「くらえ!」

 スライムに留衣さんが槍で一突きすると、スライムはあっけなく消滅した。

「やりましたね! あとはもういないんですかね? 十匹くらいいるっていう話でしたけど」

 綾女は周りをキョロキョロと確認した。

 すると、綾女の近くにある本棚と本棚の隙間から、何かが飛び出してきた。

「キャ!」

 綾女が悲鳴をあげると、三匹のスライムが綾女の身体全体に纏わりついた。

 そして、あろうこととか一瞬にして、綾女の服を溶かしてしまった。

「ひゃぁ……!」

 一瞬にして、全裸になってしまい、羞恥の表情を受けべる綾女。

 あくまで、綾女の姿はゲーム上のアバターにすぎないとは言え、アバターは綾女のモノホンにそっくりであるため、リアルの綾女の全裸を見ている気になる。

 わずかに赤みを帯びた黄色い素肌がとても艶かしい。

 小さい胸は幼さを感じさせ、乳首の色はまだ誰にも汚されていない……

「だ、ダメよ! 優馬くん! あなたにはまだ早いわ!」

 薫さんが俺の目に手を当て、視界を防いできた。

 くそ、いいところだったのに……

 

 綾女のつるぺたな全裸姿をしっかりと脳内に記憶しておきたかった。

「あ……!」

 薫さんがそう言うと、なぜか手を下ろした。

 

 先ほどまでローブを纏っていた薫さんは全裸になっていた。

 二匹のスライムは逃げるように別の方向へと移動した。

 薫さんの二つの果実はまさに昨日見たときと同じく、暴力的とも言える大きさのものであった。

 下の毛の生え具合も昨日見た時と同じく、逆三角形の形に整えられている。

 薫さんの全裸は男の理性を一瞬で狂わせるには十分な破壊力をしている。

 全く、このゲームの再現率(エロへのこだわり)に驚かされる。

 

「ゆ、優馬くん……ちょっと、ラリアさんに服を貸してもらうよう頼んでくれないかしら?」

 薫さんは恥ずかしそうに胸と秘所を手で隠し、俺の頼んだ。

 恥ずかしそうに顔を赤らめている薫さんの姿にグッときそうになる。

「わ、分かりました」

 部屋を出ると、いつのまにかラリアさんがいなくなっていた。

 

 おかしいな、さっきまでここにいたのに。トイレにでも行ったのか?

 

 俺は階段を降り、ペトムがいた部屋に向かおうと思った。

 しかし、階段のすぐ隣の部屋から何やら話声が聞こえてきた。

 気になり、開けてみるとその部屋には、背を向けた男二人がいた。

 おそらくペトムとラリアさんである。

 何かに夢中になっており、俺に全く気づいた様子がなかった。

「見てみろ、ラリア。この女性! なかなかいいだろう?」

「左様でございますね。見た目も麗しい……つるぺたなのもまたそそられます」

 つ、つるぺた!? なんだなんだ? 俺は気になり、二人にゆっくりと近づいた。

 すると、

「おお……なんとすごいパイの持ち主なんだ! これはなかなかの上玉だな」

「ええ、すごいおっぱいです」

 二人が見ていたのは鏡のような道具である。

 だが、ただの鏡ではなく、映し出されていたのは薫さんたちがいた部屋であり、へんな鏡を使ってペトムとラリアは綾女と薫の淫美な姿を覗き見していやがった。

「いやぁ、やっぱりこの依頼はいいな。少々高かったが、スライムが生まれる魔風石を買ってよかった。次々とバカな冒険者が引っ掛かってくれて満足だ。いっそ、クエストを受ける条件は女性のみにしたほうが良さそうだな!」

「ご主人さま、さすがにそれは怪しまれます」

「それもそっか! あははは!」

 覗きをするためにこんな大掛かりなことをするとは、こりゃたまげた。

 俺はバレないようにその部屋を出たあと、適当な部屋へと入り、ペトムに無断で衣類を二着手に入れ、二階へと向かった。

 

 戻ったら薫さんにこう告げようーーこの屋敷にエクスプローションを撃ってくださいと。



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大家とホテルへ

 服を入手した俺は薫さん達のいる部屋の扉の前へと戻った。

 少し扉を開け、

「ここに服、置いておくので着終わったら呼んでください」

 そう言い残し、扉の近くに服を置いておいた。

「了解! ありがとう」

 薫さんの声が耳に届く。待つこと、およそ三分。

 

「入ってもいいわよ」

 

 薫さんの声を聞き、ゆっくりと部屋の中へと入った。

 薫さんが着ているのは緑色のオーバーコート、そして赤いマント。

 下は茶色いダボっとしたズボンを着ている。

 綾女は黄色いチュニックのような服、青いズボンを履いている。

 

「すみません。服、男物しか見つからなくて」

「別にいいわよ。後で買いましょう。それより、スライム全部倒したからペトムさんに報告しましょう」

「待ってください。実は……」

 

 俺はペトムの悪行を赤裸々に話した。

 元々、女性の冒険者を覗くための依頼であること。

 そのためにスライムが生まれる魔風石を購入し、この部屋に飾っていること。

 最初は「フムフムと」頷きながら真面目に話を聞いていた薫さんだったが徐々に顔を真っ赤にさせ、肩を震わせた。

 

「あんの変態糞親父! この私の身体を見てたのね! この……『エクスプ』」

「ここで打たないでください!」

 この場で爆裂魔法……じゃなかった、スキルを発動させようとする薫さんを俺は諌めた。

「だって、悔しいじゃない!」

「そうだよ、優馬くん! 私もこのままじゃ納得できない! あいつ、ゲームのキャラクターでしょ? 倒そう!」

 綾女も薫さんの意見に賛成のようだが、このゲームのクオリティが高すぎて、すっかりあいつがゲームのキャラクターということを忘れていた。

「た、確かに……」

 一理あると思ったが、NPCとはいえ、さすがに倒すと言うのは気がひける。

「私も力を貸すよ!」

 留衣さんもペトムを倒すという案に乗ろうとしてきた。

 このクエストはスライムではなく、依頼主を討伐して完了するものだったのか。

「しょうがない……やりますか! けど、倒すのはなしですよ! ちょっと諌めるくらいにしてやってくださいね」

「オーケーオーケー! 任せておいて!」

 

 薫さんはグッとサムズアップをした。

 

 俺たちは部屋を出ると、ペトムを探しに屋敷の中を徘徊した。

 先ほどペトムのいた部屋に入ったものの、もぬけの殻であった。

 他の部屋も探索したが、一向にペトムの姿が見つからない。

 

「おかしいわね。どうしていないのかしら……」

 薫さんが訝しんだ表情で呟いた。声質には苛立ちがこもっているのが分かる。

「あの部屋の中を覗く鏡。もしかしたらこっちの話し声も筒抜けだったのかもしれないですね」

 俺がそんな推測を述べると、留衣さんが驚愕の表情でこっちを見つめてきた。

「それって、クーデターを起こしたことがバレたってこと?」

「おそらくは」

 

 ペト厶達からしたらAVを見るような感覚で薫さん達を覗いていたのだ。

 AVを無音で見る男の人などいるだろうか。

 否――いない。(俺はAVを視聴したことはないが。)

 すると、俺たちのいるところから反対側の廊下側に何者かが走ってくるのに気が付いた。

 

「みなさん、何か来ます!」

 俺がみんなに告げる前に綾女が叫んだ。近づいてきたのは甲冑を着ている何者かであった。

 こちらに来るや否や奴は問答無用で俺に殴りかかってきた。

「うお!」

 間一髪、パンチを避けて距離を取る。

「スキル発動、『フレイムランス』!」

 留衣さんがスキルを使い、炎を纏った槍(ランス)で奴に攻撃を仕掛けた。 

 しかし、奴は片手でそれを軽々と受け止めた。

「う、嘘!」

 留衣さんが力を込めるがビクとも動かず、甲冑野郎は槍を掴んだまま、腕を振り上げた。

「ひゃ!」

 槍を持っている留衣さんの身体がぐわっと上に上がり、『ブン』と甲冑野郎は槍を投げた。

 槍とともに身体を投げられた留衣さんは激しく地面に身体を打ちつけた。

「いたた……あれ、痛くない」

 

 ゲームだからであろう。しかし、留衣さんの体力ゲージは五分の一ほど減った。

 この甲冑野郎、かなりの手練れである。

 俺は奴のステータスを確認した。

 

 ――NAME:ラリア LEVEL:20 MP:600 JOB:執事

 

「あんた、ラリアさんか」

「……左様でございます」

 甲冑に身を纏ったラリアが言葉を発した。最初にあった時のような穏やかな口調とはかけ離れた重々しい渋い感じの声だった。

「全く! 優馬くんから全部聞いたわ! あんた達、私たちのこと覗き見してたんですってね! あー、汚らわしい汚らわしい!」

「……」

 薫さんの罵倒を聞き、ラリアは黙りこくった。マスクによって表情は全く確認できない。

「否定はしない。だが、お前達は知りすぎた。ご主人様の更なる飛躍のために、ここで消えてもらう」

 

 ラリアはボクシングのような構えを取った。

 武器を全く持たないラリアであるが、こうして対峙するとどう攻めていいか分からない。

 というか、レベル差がやばい。ヴィネの時といい、どうしてこうレベル差のあるやつと戦うことになるのだろうか。

 もうちょっと、少しずつレベルアップしていきたいものである。

 

「スキル発動、『高速移動』!」

 正面から素早い動きで、ラリアに接近する綾女。

 だが、向かっていったはずの綾女は反対方向に吹っ飛んでいった。

 ラリアは右腕を前に伸ばしていた。

「パンチしたのか……全く見えなかった」

 どうやって倒せば良いのだろうか。俺は既に敗戦処理の方法について検討し始めていた。

 綾女の体力を確認すると、一気に半分にまで減っていった。

「綾女、大丈夫か?」

「う、うん。大丈夫」

 綾女はゆっくりと立ち上がる。それにしても綾女のあの動きにあっさりと見切るとは、ヴィネよりレベルが高いのも頷ける。

「悪いがお前達はここで『ゲームオーバー』だ」

 

 一歩、そしてまた一歩と死の誘いを行う死神のようにラリアが近づいて来る。いまにも処刑用BGMが流れてきそうな雰囲気だ。

 さらに耳にこびりつけそうになるようなその足音はゲームと分かっていながらもドクンドクンと恐怖心を煽ってくる。

 

 ――終わった。

 

 そう思った時、戦闘画面の『スキル』という文字の色がいつもと違うことに気づいた。

 いつもは青色なのだが、今は赤色に点滅されている。

 スキル画面を開くと、知らないスキルが追加されていた。

 スキルの名は――追い剥ぎ。

 なんだ、そのスキルは。

 まぁ、ダメ元で使ってみるか。

 俺はスキル、『追い剥ぎ』をタッチした。

 

 ――対象者、ラリアでよろしいですか? 『はい』『いいえ』

 俺は『はい』を選択すると、

「ひゃ!」「え!」「うわ!」

 薫さん達がそれぞれ声を上げた。

 

「な、なんだこれは!」

 

 ラリアさんは老体とは思えないほど素晴らしい筋肉がついている裸体を俺たちの前にさらけ出していた。

 というかち○こがでかくて羨ましい。

 ラリアさんの甲冑はどういうわけか俺の横に置いてあった。

 そこで俺はハッと気が付いた。

 

「薫さん! スキルを使ってください! みんなは伏せて!」

「わ、分かったわ! 『エクスポローーーーーーーーーーーーーージョン』!」

 おそらく、いつものラリアであれば避けることは容易かったことだろう。

 しかし、全裸になったことは思いの外心理的に大きく揺さぶられたようで、避けるという判断を大きく鈍らせた。

「ぐわわぁあああああああ!」

 

 ラリアさんの真上に赤い複数の魔方陣が発生し、そこから爆炎が降り注ぐ。

 その強大な爆炎はラリアさんを飲み込んだ。

 爆風もかなりのもので、体勢を低くしたものの、数メートルほど俺は後方に吹き飛ばされた。

 

 煙が巻き上がり、徐々に薄れていくとうつ伏せでラリアが寝っ転がっていた。

 体力は残りわずかである。いくら、ラリアでも文字通り生身であれを受けきることは難しかったようである。

 

「む、無念……」

 ラリアはそう言い残し、気を失った。敵ながらあっぱれであった。

 お前のことは忘れない。トドメは刺さないけど。 

「それじゃ、ペト厶を探してとっちめましょう!」

 薫さんは高らかに杖を上げ、そう宣言した。このやる気を見る限り、ボコボコにする気満々である。

「そうですね」

 

 しかし、いくら探してもペト厶が見つからないため、俺たちは宝石など金目の物を持っていき、屋敷を後にした。

 金目の物を盗むというのは盗賊のようだが、報酬は貰えないし、むこうも覗きをしたし、そもそもゲームなので罪悪感は全く感じない。

 

「あーもう! ペト厶の野郎、どこに行ったのよ! むかつくわぁ!」

 薫さんはペト厶に報復することができないことに対し、苛立ちを覚えた。

「しょうがないですよ。屋敷の外に逃げた以上、もうどうしようもありません」

 諭すように俺は言うと、薫さんは「フゥ……」と息を吐いた。

「まぁね。けど、このままじゃ納得いかないからこうするわ! 『エクスポローーーーーーーーージョン』!」

 スキル名を薫さんが唱えると、強大な爆炎を生み出し、屋敷にそれをぶつけたが、炎は一瞬にして消されてしまった。

「ええ!? 何で?」

「何か魔法対策に特殊な造りを施しているのかもしれないですね。あの屋敷」

「う〜〜〜〜! 本当に腹立たしいわ!」

 

 その後、俺たちは宝石を買い取ってくれるお店をマップで探し、そこに向かった。

「ではこちらが四百万ゴールドになります。ご納めください」

 店員から計四百万ゴールドを受け取った。プラチナ色の金貨が計四百枚。

 見た目的には金貨というよりかは銀貨という印象を受けた。

「みんな、一人百枚づつで問題ないかしら?」

「俺はそれで構いません」

 薫さんの問いに俺が答えると、留衣さんと薫さんも続くように頷いた。

 

「しかし、これ鞄とかにしまいたいわね」

 

 薫さんがポツリ呟く。俺たちは鞄や何かを入れる袋を持っていない。金貨四百枚は革で出来た大きな袋に入れられ、渡された。

 袋を持ち、移動するといざ戦闘をする際に邪魔になりそうである。

 

 俺は操作画面を確認すると、『アイテムボックス』という項目をタッチし、『収納する』と『使用する』という選択肢があることに気が付いた。

「薫さん、一枚金貨貸してください」

「え? いいけど。はい」

 

 薫さんから一枚の金貨を受け取り、『収納する』を選択した。

 すると、手に乗せた金貨が一瞬にしてまるでマジックのように消えた。

 『使用する』を選択すると、今度は『アイテム』と『金貨』という項目が出てきた。

 さらに、『金貨』を選択する。

 

 ――所持金10,000ゴールド。いくら使用するか入力してください。

 

 俺は100と入力した。

 すると、百枚の金貨が俺の目の前に降り注いだ。

 他の三人はびっくりした様子で俺のことを見つめている。

 それは金色に輝いており、まさに金貨という感じである。

 さきほど、店員から貰った金貨とは明らかに違うようである。

 どうやら両替することもできるようだ。

 

「みなさん、この金貨、アイテムボックスに収納できるようですよ」

 俺はみんなに収納の方法を伝えた。操作自体はとても簡単である。みんなはそれぞれアイテムボックスに金貨を収納した。

「いやぁ、便利ね。このアイテムボックス」

 ごもっともな意見を薫さんは呟いた。確かに便利な機能である。

「そうですね。ただ、上限がどこまでなのか気になりますけどね」

「まぁね。それはおいおい分かってくることでしょう。まだ始めたばかりだし大丈夫よ。それよりも私、ちょっと服を買いたいんだけど」

「私も買いたいです!」

 

 薫さんと綾女は新しい服を買いたいと申し出た。

 今、二人が着ているのはペトラの屋敷にあったもので、サイズがまるで合っていない。

 

「そうですね。それじゃ買いにいきますか」

 そういうと、薫さんはなぜかガシッと俺の腕を掴んできた。ん? 何か柔らかいものが……

「それじゃ、行きましょうか。優馬くん」

「ええ!?」

 みんなで行くんじゃないのか。そんな俺の考えを無視するかのようにどこかに連れて行く薫さんだった。

「ちょ、ちょっと薫さん!?」「優馬くんと二人でどこに行くんですか!?」

 留衣さんと綾女さんは慌てて呼びかけたが、

「それじゃ二時間後、またこの場所に集合ね!」

 そう言い残し、どこかに俺を引き連れ移動した。

「薫さん、せっかくだし、みんなで行きましょうよ」

「ダメ! ちょっと優馬くんに付いてきてほしいところがあるのよ!」

 

 付いてきて欲しいところ? どこだろうか。

 たくさんの建物が立ち並ぶ商店街へと入り、人気の少ない裏通りに行くと、薫さんが立ち止まった。

 俺の目の前にあるその建物はレンガでできているのだが、ピンク色でどうにも奇怪な印象を受けた。率直に言って、なんかエロそうである。

 

「ここよ、優馬くん」

「ここは……」

 マップで確認してみた。

 ――ラブホテル:盛りのキャット 評価:4つ星

「そ! ラブホよ!」

「な、なななな……なんでこんなところに!?」

「決まってるでしょ! 良いことするためよ! ほら、入りましょう!」

「あ、ちょっと!」

 半ば強引に俺はラブホの中に入れられた。

「いらっしゃいませ」

 ヒゲを生やしたアラサーくらいの歳に思えるハンサムな男性がフロントに立っていた。

「大人二名、お願いします!」

「かしこまりました。それでは部屋にご案内いたします」

 

 薫さん。俺、未成年なんですが。

 案内された部屋にはシャンデリアが吊るされており、さらにピンク色の絨毯が敷かれ、枕が二つ置いてある大きい高級そうなベッドが置いてある。

 そして、磨りガラスで仕切られているお風呂もある。

 

「うふふふ。なんか、ドキドキするわね。優馬くん」

 薫さんはベッドに座り、妖美な笑みを浮かべた。これからしようとすることを嫌でも想像してしまい、心臓の鼓動が否応にも高まってくる。

「あ、あの。これってゲームの世界ですよね。気持ち良くならないんじゃ……」

 

 少なくとも戦闘では痛みは全く感じなかった。

 まぁ、ムラムラはしそうだが。というか絶対にする。いや、現在進行形でしている。

 すると、薫さんが立ち上がり、俺に近づき、股間に乗っている葉っぱを剥がした。

 忘れているかもしれないが、職業である変質者の俺の服装は股間部分が葉っぱで隠しているだけであとは全裸である。

 俺が完全なる裸になると、いやらしい手つきで股間を弄ってくる薫さんだった。

 

「あぁ……!」

 気持ちよすぎてあっという間にイキそうになった。一瞬にして込み上げてくる射精感。

 これは仮想空間の出来事とは思えない。

 薫さんは目をトロンとさせ、俺の股間を弄るのを止めた。

「ふふ……プレイする前に調べたのよ。このゲームは現実と同じように気持ち良さを感じることができるってことをね。さぁ、優馬くん。たくさんしましょう。仮装世界だから、思いっきり私の身体を堪能していいからね……」

 

 薫さんは服を脱いだ。

 柔らかい大きな膨らみを持った果実を携えている薫さんの全裸は一瞬にして俺の理性をかき消してしまう。

 昨日、現実世界で見た時と何一つ変わらない魅力的な身体(ボディ)をしている。

 

「薫さん……」「優馬くん……」

 

 キスをすると、昨日薫さんとキスをした時と同じように唇から薫さんの温もりが伝わってくる。

 ああ――温かい、とても温かい。



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VRセックス

「優馬くん……」

 濃厚なキスを交わした後、薫さんはうっとりとした眼差しで俺を見つめてきた。

 薫さん茶色い虹彩、そして黒い瞳はしっかりと俺の顔を捉えていた。

「脱ぐわね」

 

 そういうと、薫さんは自身が着ている緑色のオーバーコートを脱ぎ出した。

 下着はスライムによって溶かされているため、たわわな胸が曝け出される。

 大きな胸はツンと張りの弾力を保っている。

 

「おお……やっぱり大きいですね」

「そんなまじまじと見られると恥ずかしいわね……」

 薫さんは顔を赤らめ、そう言った。いつも堂々と振舞っている薫さんと今とのギャップにものすごく萌えた。

 俺は我慢できなくなり、たわわに実っている二つの果実に手を伸ばした。

「ひゃん!」

 薫さんの感じる声を聞き、一気に興奮度が高まる。

 ゲームの世界にてあくまで薫さんのアバターのおっぱいに触れているのだが、本物のおっぱいに触れているのと変わらない感触である。

「すごい……本物に触っているみたいな感触です……」

「わ、私もよ……揉まれている感触がしっかりと伝わってくるわ……」

 自分の手からおっぱいの弾力、温もり、心地良さがしっかりと伝わってくる。

 俺は二つの大きな双丘が作り出す谷の間へと顔を埋めた。

「あらあら。優馬くんったら、赤ちゃんみたいね」

 

 よしよしとまるで赤ん坊のように薫さんに頭を撫でられ、あやされた。薫さんから壮大なる母性が感じられる。

 さらに両頬から幸福の圧力が訪れる。

 薫さんのおっぱいからはなんだかミルクのような優しい匂いがした。 

 とても落ち着く。いっそこのまま永遠にこうしていたいとまで思ってしまう。

 

「こんな深くまで顔を埋めて……悪い子ね……」

 

 自分の股間から快楽を受けているのを感じた。

 薫さんは俺の肉棒に触れ、何とも言えぬ心地良さを感じさせた。

 根元から裏筋をツーとなんども撫で上げては、先っぽの部分を適度な力で摘んだり離したりてきて股間を刺激してくる。

 さらに時々、玉をいじり、会陰部分を刺激してくる。

 身体から電撃が走るような悦楽が身体を満たしていった。

 

「気持ち良いです……薫さん……」

 俺の股間を弄っている反対の手で薫さんは俺の乳首を刺激してきた。

 薫さんはかなり男を気持ち良くする技術に長けている。

 一体、これまでどれくらいの数の男性を気持ち良くさせていったのだろうか。

「ふふ……私もよ。優馬くん……」

 

 おっぱいに埋めていた俺に対して、両手で薫さんは頭を掴み、ぐっとおっぱいから引き離した。

 じっと薫さんは俺を見つめてくる。

 俺の理想を反映させたような可愛らしさと大人っぽさを兼ねそなえた薫さんの顔は、見ているだけで眼福である。

 その上、俺に対し自分のおっぱいを見せている。こんな幸せはそうそうないだろう。

 俺と薫さんは数秒ほど見つめあった後、無言のまま互いの唇を重ね合わせた。 

 この唇の感触――昨日、薫さんとキスした時と全く同じ感触である。

 現実世界の俺たちは勝手に身体が動き、キスを交わしているのではないかと思った。

 それほどまでのリアリティを感じるのである。

 薫さんの唇から離れると細い唾液の糸を引いた。

 

 心臓がバクバクと激しい鼓動を奏でている。

 

「下も脱ぐわね」

 そう言うと薫さんは履いている茶色いズボンを脱いだ。

「ノーパン……なんですね」

 ズボンの下は何も履いてなかった。

 オスの本能で逆三角形の形に整えられているアンダーヘアである薫さんの性器にすぐに視線がいく。

「さっき、スライムにパンティを溶かされちゃったからね」

「そ、そうですか……」

 薫さんの割れ目を見たせいでさらに興奮度が高まった。

 こんな綺麗な人が一糸纏わぬ姿で近くにいると理性の一つや二つ、飛んでもおかしくはない。

「ふふ……挿れたい?」

 

 俺の心情を察したかのように薫さんは訊いた。

 挿れたい――挿れたいに決まっている。

 こんなエッチな姿を見て、挿れたくならない男性なんてこの世にはそうそういないであろう。

 

「はい」

 そう答えると薫さんは蠱惑的な笑みを浮かべた。

「いいわよ……けど、挿れる前に優馬くんの舌でこれを気持ちよくしてくれないかしら?」

 

 薫さんは割れ目を自分の人差し指と中指で広げた。ピンクと赤みを帯びた少々グロテスクな中身が垣間見える。クンニをして欲しいらしい。

 俺は自分の顔を薫さんの割れ目へと近づけた。

 ツンとした独特の刺激臭がする。

 ぺろっと俺は割れ目を軽くひと舐めした。

 

「あぁん……!」

 薫さんは目を瞑り気持ち良さそうに声を出した。

 ピチャピチャと俺は薫さんのマ○コをひたすら舐めまくった。

 舐めれば舐めるほど、薫さんのアソコからは愛の雫が滴り、溢れてくる。

「あぁん! ゆ、優馬くん! ちょ……強く舐めすぎ!」

 薫さんは身体を仰け反らせた。その反動で大きいおっぱいがプルンと激しく揺れ、ただでさえ存在感の大きい胸が更に強調された。

「薫さん! もう俺、我慢できません! 挿れます!」

 ガチガチの硬さを帯びた自分の肉棒を割れ目に侵入させる。

 ズブズブと薫さんのま○こに自分のち○こを挿れる。

 

 根元まで侵入させると、ブツブツとしたヒダのついた肉壁が俺の肉棒に圧力を与え、刺激してくる。

 肉棒が入っている薫さんの中は暖かく、まるで全身が薫さんで包まれているかのようである。

 

「昨日も思ったけど、本当優馬くんのおちんぽ、おっきくて気持ちいいわ……」

「薫さんのま○こだってあったかくて気持ち良いですよ……」

 かなりの締まり具合で気を抜いてしまうと、すぐにでも発射してしまいそうになる。

 俺はゆっくりと腰を動かした。

 最初はゆっくり――徐々に、徐々に腰を振る速さを加速させていった。

 パン、パン。

 

「あん! あぁん!」

 突くたびに薫さんが雌の声を出す。

 俺は腰を振りながら、薫さんのベージュ色の乳首をコリコリと弄った。

「ああ! 乳首はダメ!」

 

 巨乳は感じにくいと聞いたことがあるが、薫さんはそんなことはないようである。

 俺は薫さんの乳首に吸い付いた。目一杯、薫さんの体液を味わった。

 おっぱいから母乳が出ているというイメージをしながら吸い付いていく。

 

「ふふ、そんなに吸っちゃって、本当に悪い子……」

 耳元で薫さんが囁いた。身体がゾクゾクっとする。

 更に興奮することになった俺は激しく腰を振った。

 

 グチュグチュと接合部分からやらしい水音を奏でる。

「ああ! 出る……出ます! 薫さん!」

「いいわよ! 出して! 中に出して優馬くん!」

 ドピュっと精液が薫さんのま○こへと放出された。

 出す瞬間、身体が痙攣した。

 すべてを出し終えると薫さんの中から肉棒を抜いた。

 

「はぁ……はぁ……気持ちよかったわ。優馬くん……」

 薫さんは仰向けになって寝っ転がった。

 割れ目からは先ほど俺が放出した精液が垂れていた。

 事後の状態に加え、素っ裸でベッドの上に横たわっている薫さんの今の姿はとてもエロい。

 さっき、出したばかりだと言うのにまた硬くなってきた。

 

 すると、突然勝手に操作画面が開き、こんな説明文が出てきた。

 

 ――先ほどの性行為シーンを自動撮影しました。閲覧したい場合は「メニュー」→「冒険の記録」→「???」を選択することで閲覧できます。

 

 マジかよ。すごい機能だな。よし、後で見よう。

 

「ねぇ、優馬くん」

 薫さんが話しかけてきたので俺は彼女の方を見た。

「はい?」

「良かったらもう一回しない?」

 心が踊った。願ってもないことである。もっとしたいと思っていた。

「いいですよ」

 

 むくりと薫さんが起き、俺にキスをしてくる。

 互いを抱きしめる形で唇の感触を確かめ合う。

 

 二回戦の始まりである。

 

 

 

 

 歩けど、歩けど似たような雑木林が眼に映る。

 今歩いている坂道はかなり急で、いつもなら何ともないこの坂も、調子の悪い今の我にとってなかなかの苦行である。

「うぅ……さっきから身体の様子が変である……」

 

 我は自分の家を目指して歩いておった。

 とある冒険者と一戦交えた際、おかしな攻撃をくらい、身体の調子がおかしくなったのである。

 

「また勝手に……何なのだ? この感覚は……ムズムズする……」

 

 我は自分の胸に触れた。弾力の強い自分の胸を触れていると不思議な感覚がやってくる。

 とある冒険者から受けた胸への攻撃がムズムズというか変な気分にさせられ、ずっとこんな調子なのである。

 痛みこそないが、身体に異常をきたすところを見ると、間違いなくあれは攻撃の部類に入るのであろう。

 現に呪いのように勝手に自分の胸に触れてしまう。

 そして、今までなら絶対に考えもしなかったこんな考えをしてしまう。

 

「誰かに我の胸に触れて欲しい……」

 坂を登りきり、開けた場所へと出た。

 そこに三角形の黄色いテントがポツンと立っていた。

 ここらへんはたまにであるが、冒険者がやってくることがある。

 おそらく中に冒険者がいるのであろう。

「もう我慢できぬ……」

 我はテントへと向かった。テントの中に入ると茶髪のツインテールをした女性の冒険者が寝転がっていた。

 

「え? どちらさまですか?」

 その冒険者は驚いた様子で我のことを見た。

 我が抱いたその冒険者の印象は小柄で可愛らしいという印象。

 おおよそ冒険者には向かない体型をしている。もしかすると冒険者ではないかもしれぬ。

 まぁ、今はそんなことはどうでもよいか。

「我の名は『ヴィネ』。魔王に仕えしもの。貴様ら冒険者を抹殺するのが我の使命である。貴様は冒険者か?」

「はい、まぁ……」

 その女性は冒険者であることを認めた。

「そうか、名は何と言う?」

「えっと、ミチルって言います」

「ミチルか。いつもであれば貴様ら冒険者は見つけ次第、抹殺するところだが、今日は特別に我の言うことを聞けば見逃してやろう!」

 そう宣言するとミチルは驚いた様子で我を見つめてきた。

「はぁ……ありがとうございます。それで何をすればいいんですか?」

「わ、我の胸を触って欲しい……」

 改めて言うと何だか恥ずかしいものである。

「え? 胸を……ですか?」

「そうだ! や、やれ! さもなければ今ここでお前の冒険は終わることになるぞ!」

 ミチルを脅すと奴は訝しんだ様子で我に近づいてきた。

「分かりました。では失礼します」

 

 ミチルはためらいなく、我の胸に触れた。なんだか今まで感じたこともないような心地の良い感覚が身体を満たした。

 段々と身体の中が熱を帯びてくるようであった。

 

「は、はぁ……身体が……熱い……」

 ミチルは我の様子を見て、悪魔的な笑みをし、こう囁いた。

「ちょっと触られただけでこんなに気持ちよくなっちゃうなんて……どスケベな魔族さんなんですね♡」



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レズセックス

「ああ……とても気持ち良いのだ」

 ミチルという冒険者は慣れた手つきで我の胸を揉み、心地良さのあまり頭が麻痺しそうであった。

「すっごい敏感なんだね。それじゃ、ここはどうかな?」

 ミチルは右手を我の股下へと伸ばした。

「はうううぅぅぅ……なんなのだ。これは……」

 ミチルに股下に弄られるとそこから『クチュクチュ』という謎の音が出始めた。我の身につけている下着からヌルヌルとした液体が染み付いているのが分かった。

「感じてるんだよね? ヴィネちゃん。こんなに濡れてるもんね」

「ど、どうして勝手におしっこが出るのだ……うぅ、恥ずかしい……」

「おしっこじゃないよ? これは愛液……気持ち良くなったときに出る液体だよ」

 ミチルは股下を弄っていた右手を我に見せてきた。ぬるっとした透明な液体が付着しており、それをミチルはぺろっと舐めた。

「ヴィネちゃんの……美味しい……」

 我から分泌された謎の液体を恍惚に満ちた表情で舐めるミチルを見ていると何故か胸がキュンと熱くなり締め付けられるようであった。

 

「ヴィネちゃん……」

 ミチルが我の唇を奪い去った。

 初めて交わす他者との口付けはとても甘美なもので、ミチルの温もり――そして柔らかさが伝わってきた。

「んん……」

 思わず声が漏れる。閉じている目を開けるとミチルの大きな双眸が我を見つめていた。ミチルはくっきりとした鼻立ちと白い肌をしており、とても綺麗な顔をしている。

「キス……しちゃったね……」

「う、うむ」

 ミチルは我の身体を抱きしめてきた。そして耳元でこう囁いた。

「もっと気持ち良いことしようね?」

「ひゃうう……」

 

 ミチルは再び我の胸を触ってきた。しかし、先ほどまでとは違うのがドレス、下着の中へと手を入れ、直で触ってくるという点。

 それは服越しから触られるよりもはるかに気持ち良かった。

 

「ああ……しゅ、しゅごい気持ち良い……」

 気持ち良すぎてどんどん理性が失われてゆく。

 しかし、良いところでミチルは我の胸を触るのを止めた。

「み、ミチル……」

 するとミチルは可愛らしい膨れっ面を我に見せた。

「ヴィネちゃんだけ気持ち良くなっててずるい。私のも揉んでよ」

 

 ミチルは我の手首を掴み、ミチルの大きな胸へと誘導した。

 手からこの世のものとは思えない柔わらかさと暖かさが伝わってきた。

 初めて触る他の者の肌に我はとても緊張する。

 ぎこちない手つきで先ほどミチルが我にしたようにミチルの胸を触り続けた。

 

「ふふ。ヴィネちゃん。とっても上手だね。お互い服を脱いで触ろうか」

 そう言うと、ミチルはあっけらかんとした様子で自身の白を基調とした踊り子の衣装を脱ぎすて、全裸になった。

「おぉ……」

 ミチルは同性だというのに見ていて惚れ惚れしそうになるくらい素晴らしいプロポーションをしている。

 透き通るように白い肌、そしてぷるんと大きく膨らんだ二つの胸は淫美な雰囲気を醸し出している。

「ほら。私も脱いだしヴィネちゃんも脱ごう!」

 服を脱ぐように促すミチル。

「だ、だが……」

 人がいる前で服を脱ぐというのは抵抗がある。正直、ものすごく恥ずかしい。

「恥ずかしがらなくてもいいよ! 女しかいないんだし!」

 我は渋々服を脱いだ。ドレス、タイツ、下着を脱ぎ全裸になった。

「ヴィネちゃんもすごくいい身体しているね! 毛もフサフサ……あ! この尻尾本物なんだ!」

 ミチルは我に生えている尻尾を撫でた。

「ああ……ん……ミチル、尻尾は止めてくれ!」

 身体中に電撃が流れるほどの気持ち良さが流れてきた。思わず身体を仰け反らせた。

「ヴィネちゃんは尻尾が一番弱そうだね」

 ミチルは柔らかい手つきで我の尻尾の先端から根元まで滑らせた。

 これはさっき胸を触られた時よりもはるかに気持ちが良い。

「ああ……ら、らめぇ……ミチル……尻尾は本当にらめぇ……」

「ふふ……ヴィネちゃん可愛い……」

 首筋をペロペロと舐めてくる。まるでミチルは我の気持ちの良い箇所を知り尽くしているようであった。

 そして左手で我の乳首をコリコリと弄ってきた。

「ああ……もうなんだかおかしくりそうである……」

 

 身体中が熱くムズムズするような不思議な感覚。

 戦闘で相手を殺す時に感じる快感とはまた違うこの感覚。

 こんな気持ちの良いことがあったのなんて今まで生きていて全く気がつかなかった。

 

「ほらほら。ヴィネちゃんもちゃんと私の身体を触って」

 ミチルは我の前へと移動し、両手で胸を揉んだ。

 我もミチルの胸を揉んでやる。

「はぁ……はぁ……とっても気持ちいいぞミチル……」「んん……ヴィネちゃん……上手だね……♡」

 ミチルも気持ち良くなってきているのか、徐々に息遣いが荒くなってきた。

 我の身体からはたくさんの汗が出てきている。

「ヴィネちゃん。お互いのおっぱいを擦り合わせてみようか」

 

 ミチルは自分の胸を我の胸に押し付けてきた。

 大きなミチルの胸が我の胸へとぶつかり互いの胸の形が変形した。

 

「ああん……ヴィネちゃんのおっぱい柔らかいね……」

「ミチルの方こそ……大きくて、とても気持ち良いぞ……」

「ふふ……ありがとう。女の子にそう言われたのは初めてだよ」

 互いに身体を上下に小刻みに動かし、胸に刺激を与えていく。

 するとミチルは自分の胸を我の顔へと押し付けて来た。

「ふご……!」

 

 大きな胸に顔を埋め、一瞬窒息してしまうのではないかというほどの圧力を感じた。しかし、とても気持ち良い。

 ミチルの胸はミルクのようなほのかに甘く優しい香りがしてきて、徐々に心が安らいでいった。

 

「ふふ……ヴィネちゃん。何だか赤ちゃんみたいだね」

 ミチルは優しい手つきで我の髪を撫でてきた。

 まさかこんな小娘に赤ちゃんなどと評されてしまうとは……だがこの状態であれば否定はできない。

 ミチルは我の顔から胸を離し、股下を手で弄ってきた。

「そろそろここも物寂しくなってきちゃったんじゃない? ヴィネちゃん」

「ひゃああううん……み、ミチル。そこは……」

 

 ミチルの黒い大きな双眸にはこれから巻き起こることを楽しみにしているような期待の光が灯っていた。

 ミチルは自分の指を我の股下の奥深くまで挿れてきた。

 指を小刻みに動かされ、股下からたくさんの愛液と呼ばれるものが滴ってきているのが分かった。

 

「すっごい……たくさん出てるね。ヴィネちゃん」

 股下から指を離すと、ミチルは股を開いた。我の股下に生えている毛はミチルには全く生えておらず、ツルッツルである。

 割れ目の中が垣間見え、我と同じようにミチルからもそこから愛液がわずかに滴り落ちている。

「お互いのおまんこを擦り合わせれば気持ちよくなるよ。ほら、ヴィネちゃんもこっちによって」

 ミチルは我の腕を掴み、身体を引き寄せて来た。

「座って」

「う、うむ」

 ミチルの言う通り、我は正座した。

「ほら、股を開いて」

 恥ずかしげもなく股を開いているミチルは我に自身と同じような体勢を取るよう求めてきた。

「わ、分かった……」

 羞恥を感じつつも我は股を開き、ミチルの方へと見せた。排尿するところを他者にこんなにはっきりと見せるなどと初めてのことである。

「私のおまんことヴィネちゃんのおまんこを合体させればすっごい気持ち良くなるよ♡」

 ミチルは自身の割れ目と我の割れ目とを重なり合わせてきた。

「あぁうあ……なんだこの感触は……」

 気持ち良さの大波がどっと押し寄せて来た。一瞬で飲み込まれてしまいそうになる程のこの快感。

 ミチルは腰を動かし、さらに我に刺激を与えてくる。

「どう、気持ちいいでしょ? そう言う私も実はこうして女の子同士でイチャイチャするのは初めてなんだけどね。ヴィネちゃんも腰を動かして」

「う、うむ……」

 

 ミチルの言う通り、我は腰を動かした。というか、身体が勝手に動くと言った方が正しいだろうか。

 我の股下、いやミチルが先ほどから言っているおま……んこと呼ばれているものが徐々に熱くなってきており、さらに密着部分からクチュクチュという音が大きくなってくる。

 

「ああ……ヴィネちゃん。私もうイく……イキそう」

「み、ミチル……『イく』ってのは何なんだ?」

「ふふ、気持ち良すぎておかしくっちゃうってことかな?」

 ミチルは微笑むとこれまでよりも速く腰を振り、さらに我に大きな快楽への波を与えてくる。

 腰を振る反動で先ほどからプルンプルンとミチルの大きな白い胸が揺れていた。

「ああ! ヴィネちゃん! 私もうイくね!」

 するとミチルの割れ目から尿が出るよりも凄まじい勢いで透明な液体が『ジョー』と出て来た。

「ああ……」

 ミチルのその姿を見て、何故か我はものすごく興奮した。すると、我の割れ目からも同様に透明な液体が出て来た。

「……ッ♡ ──……っ、ッッ♡♡」

 声にならない声とともに、自分の身体が痙攣を始めた。液体が出ると、我らはテントの中で仰向けになって寝転んだ。

 

 ──そうか、これが『イく』ということか。



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瑠夏さんの襲来

「それじゃ、今日はお疲れ様!」

「じゃーねー優馬くん!」

「また明日、学校で!」

 

 三時間弱ほどゲームに費やした俺たちは一度ゲームをやめ、続きは日曜日にすることになった。

 そして薫さん、留衣さん、綾女は自分の部屋へと帰ることになった。

「それじゃ、また日曜日によろしくお願いします」

 三人を玄関まで見送った後、リビングへと戻った。

 

「ふぅ……疲れたなぁ……」

 バタンとベッドに上に倒れ込んだ。

 部活での練習後、ゲームまでし、更にはゲームの中で薫さんとエッチまでしたので身体を疲れていた。

「寝るか……」

 

 目を閉じるが、なかなか寝付けなかった。思い出されるのはゲームの中で薫さんと交わった記憶ばかり。

 ゲームの中であんなにエロいことをしたわけだが、現実の俺の身体には先走り汁の一つも出ていなかった。 

 それにゲームをする前は綾女とエッチする直前まで行ったため、不完全燃料である。

 

「抜くか……」

 パンパンに膨れている肉棒へと手を伸ばした。自分の人差し指と薬指が肉棒に触れると「待ってました」とばかりに肉棒がピクピクと痙攣した。

 小刻みに手を動かし、自分の肉棒を刺激していく。

「薫さん……」

 

 薫さんのエッチな姿をオカズにしごいていく。

 薫さんの大きくて綺麗なおっぱいを想像するだけでイってしまいそうである。

 手をさらに速く動かし、発射直前まで達した時だった。

 

 ――ピンポーン

 

 くそ、いいところで。ここは居留守を使おう。

 俺はインターホンの音を無視してオナニーを再開した。

 

 ――ピンポーン

 ――ピンポーン

 ――ピンポーン

 

 うるせぇ。越○製菓かよ。

 痺れを切らした俺は玄関へと向かい、扉を開けた。

 

 すると、

「やー! 遊びに来たよー!」

 顔を真っ赤にさせ、どっからどう見ても酔っている留衣さんの妹、瑠夏さんがやってきた。

 瑠夏さんはピンク色のシャツと白いミニスカートという洒落た格好をしていた。

「る、瑠夏さん……どうしたんですか? この時間に」

 時刻はすでに夜の十一時を回っている。ちなみに俺は明日も学校である。

「いやー! さっきまでサークルの飲み会に参加してたのよ! ちょっと良い男探そうと思ってたんだけど正直全く良い男いなかったわー!」

 肩をバンバンと叩きながら瑠夏さんは説明した。そういえば留衣さん、瑠夏さんは今日、サークルの飲み会があるって言っていたな。

「そ、そうなんですか……それでどうして俺の部屋に?」

「ちょっと優馬くんに会いたくなってね! それじゃ上がるわね!」

 瑠夏さんはズカズカと俺の部屋に上がり込んだ。

 このアパートの住人は勝手に俺の部屋に上がりすぎではなかろうか?

「わー! 優馬くんのベッドだぁ!」

 瑠夏さんは俺のベッドを見るや否やバタンとベッドの上にダイブした。

 膝を曲げ、体勢的に瑠夏さんのスカートの中が丸見えとなっていた。ムチっとしたエロい脚をしている。

「ふふふ、優馬くんの匂いがする」

 クンクンと瑠夏さんは俺が使っているベッドを嗅ぎ始めた。昨日と全く違う瑠夏さんの行動に俺はなんだかドキドキした。

「優馬くん!」

 パンパンと瑠夏さんは布団を叩いた。

「な、なんですか?」

「横に来て」

 

 可愛らしく微笑む瑠夏さんに俺の心臓の鼓動は高まった。

 酔っている瑠夏さん。超可愛い……

 俺は瑠夏さんと横に並んだ。香水の香りが鼻腔をくすぐり、それがさらに性欲を倍増させることになった。

 

「えへへへ……優馬くん……」

 酔ってるせいなのか、俺の肩に手を回してきた。

 お互いの距離が近くなり、瑠夏さんの茶色い瞳が俺を覗き込んだ。

「る、瑠夏さん……」

 

 すると、柔らかい感触が自分の唇から感じた。突然のキスに性欲の歯止めが効かなくなった俺は瑠夏さんの胸を揉んだ。

 ムニュっとした弾力が強く柔らかい感触が自分の手から伝わる。

「いきなりおっぱい揉むなんて優馬くんはエッチだね」

 瑠夏さんは立ち上がると、ピンク色のシャツと白いミニスカートを脱ぎ去り、下着姿になった。

 

「ほらほら、優馬くんも脱いで?」

「は、はい……」

 瑠夏さんに言われるがまま俺は服を脱いだ。

 

 瑠夏さんも白のブラジャーをとると、ポロンと大きなおっぱいが目の当たりとなる。

 白く、釣鐘型の形の山に淡いピンク色の突起物が乗っかったおっぱいは相変わらずエロく、そこから大量のフェロモンが放出されているように思えた。

 さらに紫を基調としたセクシーなパンティを脱ぎ去ると瑠夏さんは正真正銘、一糸纏わぬ姿になった。

 

「ほら、優馬くん。それも脱いで」

「分かりました……」

 瑠夏さんに促され、パンツを脱いで俺も全裸となった。

 全裸状態の男女がすることはこれはもうひとつしかない。

「優馬くん……」

 瑠夏さんが抱擁してきた。瑠夏さんの温もり、心地よい柔らかさが身体全身に伝わってくる。

「それじゃ、優馬くん……しよっか?」

 

 耳元で囁く瑠夏さんの言葉にゾクゾクと性欲が湧き上がってきた。

 瑠夏さんは俺に対して、股を開いた。割れ目が広がり、その中はしっとりと液体で湿っているのが確認できた。

 昨日も思ったが瑠夏さんの下の毛って銀色なんだな……

 

「瑠夏さん。生でしても良いんですか?」

「うん! 良いよ!」

 

 もう理性がほとんどない俺はその言葉通り、自分の肉棒を欲望の赴くままに瑠夏さんのまんこの中へと突っ込んだ。

 激しく――激しく腰を振った。

「あん! 優馬くんのおちんぽ、気持ちいい♡」

 瑠夏さんは顔を赤くし、アヘ顔のような表情で感じている。

 突くたびにさらさらとした瑠夏さんの銀色の髪がなびく。

 両手を使い、力を込めて瑠夏さんのおっぱいを揉む。

 

「おっぱい! らめ! そんなに! あん! 激しく揉んだら……」

 だんだんと気持ちよくなって来たせいか、瑠夏さんはどんどん「あん! あん!」と喘ぎ声が大きくなっていった。

「あああ! 瑠夏さんの! あったかくてすごい気持ち良いです!」

 

 自分の肉棒全体に瑠夏さんの膣壁のヒダが纏わりつき、尋常ではないほどの刺激、快楽を与えていく。

 もうダメだ――イってしまいそうだ。

 

「イく! イきます! 瑠夏さん!」

「良いわよ! 出して! たっくさん出して!」

 

 身体中に電撃が走るほどの快楽が流れると徐々に力が抜けていき、同時に肉棒から『ドピュドピュッ』と出ているのが分かった。

 出した。瑠夏さんのまんこの中へと。

 

 肉棒を抜くと、割れ目からツーと白い白濁液が流れていた。

 瑠夏さんは法悦に満ちた表情で自分の割れ目を見つめ、割れ目から出ている白濁液を手に取った。

 

「もう……こんなに出すなんて……優馬くんは本当にエッチ♡」

 自分が出した性液を瑠夏さんは見せつけてきた。

「す、すみません……」

 俺が謝ると瑠夏さんは「ふふ」と微笑み、ぺろっと手についた性液を舐めた。

「謝るなくてもいいよ。それよりも続き……するよね?」

「は、はい!」

 

 こうして俺と瑠夏さんは二回目のエッチを開始することにした。



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裸エプロン

「朝か……」

 

 目を覚ますと瑠夏さんが寝息を立てて寝ていた。

 美女が俺の横に寝ていると言う非現実的な状況(シチュエーション)はいまだに夢では無いかと錯覚してしまいそうになる。

 瑠夏さんはベッドから上半身を起こしており、眠そうな目で俺は見つめていた。綺麗な瑠夏さんの上半身はカーテンから差し込む朝日で照らされた。

 

「ふわあー……おはよう、優馬くん」

 瑠夏さんは服を着ていないため、生乳を俺に晒し出している。

 相変わらずとてもエロい身体だな。

「おはようございます……あの服着てください、瑠夏さん」

 顔を背けながらそう言うと、瑠夏さんはニヤニヤしながら俺に近づいてきた。

「なーに? 昨日、あんなに私とヤッタって言うのに、今更私の裸を見て照れてるのー?」

 ツンと瑠夏さんは人差し指で俺の頬に触れてきた。く……すごいドキドキする。

「瑠夏さん。朝ごはん作るから待っていてください」

 

 コホンと咳払いし、俺は台所に向かおうとした。

 料理すると言ってもオーブントースターで食パンを焦がし、サラダを作るくらいなのだが。

 

「それじゃ、私が料理するよ! 優馬くん、エプロンはある?」

「ええ、まぁ。ありますけど……」

 俺は押入れから無地で青色のエプロンを取り出した。

「ちょっと、それ借りるね!」

 瑠夏さんは俺からエプロンを取り、裸の状態でエプロンを着用した。

「どう? 裸エプロンだよ! 興奮する?」

 瑠夏さんは身を翻し、裸エプロンを着た自身の身体を俺に見せつけてきた。

 

 興奮する。全裸よりもなんだかかなり興奮する。いや、興奮がカンストしたと言っても過言ではない。

 大きい瑠夏さんのおっぱいはエプロンを大きく押し上げ、後ろ姿はプリッとしたとてもキュートなお尻が惜しげも無く曝け出されている。

 そのまま後ろから挿入したいくらいである。

 

「ええ、まあ……」

 可能であれば写真を撮りたい。十枚くらい。いや、もっとたくさん。

「写真を撮ってもいいよ?」

「いいんですか!?」

 驚きのあまり声が裏返ってしまった。慌てすぎだろ俺。

「嘘! ちょーしに乗っちゃダメだよ! それじゃ、適当に冷蔵庫の食材を使って料理するね!」

 瑠夏さんはそう言い残し、台所へと向かった。ああ、撮りたかったな。

 

 待っている間、俺はテレビを点けた。

 いつもやっているさして面白くもないニュース番組を見ることにした。

「へー、新しいがん治療発見か。すごいなぁ」

 

 十五分ほど待っていると、瑠夏さんがお皿を持って部屋に戻ってきた。

 

「優馬くん、できたよ!」

「ありがとうございます!」

 配膳を手伝い、俺と瑠夏さんはテーブルの近くに置いてある椅子に腰を掛けた。

「うわぁ……美味しそうですね」

「そう? ありがとう」

 瑠夏さんが作った料理は卵焼きと大根と玉ねぎを使用したサラダ、そしてトーストである。

 ちなみに俺は卵焼きが作れない。スクランブルエッグは作れるのだが。

 

「それじゃ食べようか。いただきます」

「い、いただきます!」

 手始めに卵焼きを口に入れると、ふわっとした感触が口の中に広がった。

 俺好みの程よいしょっぱさの味付けがされている。

「どう美味しい?」

「はい! 美味しいです!」

「良かった! 卵焼きってさ、大概甘いのが好きな人としょっぱいのが好きな人に別れるよね。優馬くんはどっち派?」

「うーん……別にどっち派って言うのは無いんですけど、強いて言えばしょっぱいほうが好きですかね!」

「そっか! 私もなんだけど、お姉ちゃんは甘い方が好きなのよね! だから卵焼きは自分たちで別々に作ることになるのよね」

「へー、そうなんですか!」

 

 たわいもない話を瑠夏さんとしているといつの間にか時間が進んでいることに気が付いた。

 テレビの画面を見るとすでに七時五十分である。

 

「あ! もうこんな時間! 俺、もう行かないと!」

「そうなの? なら、私も出たほうが良いよね?」

「いえ、鍵渡しておきます。今日も部活があるので、終わったら瑠夏さんと留衣さんの部屋に鍵を取りに来ても良いですか?」

「うん、良いよ。待ってるね!」

 俺は鍵を瑠夏さんに預け、部活用の鞄と教科書類が入った鞄を持った。

 

「それじゃ、行ってきます!」

「行ってらっしゃーい!」

 

 裸エプロンの瑠夏さんは手を振って俺を見送ってくれた。 

 ちょっとこれ、カップル……いや、夫婦みたいではなかろうか。

 

 俺は駆け足で学校へと向かう。

 明日はもっと余裕を持って登校しよう。

 

「ふわぁ……」

 歩いているとあくびが出てきた。昨日、夜遅くまでゲームしたのに加え、瑠夏さんと深夜までハッスルしていたせいであまり寝ていなかった。

 これは授業中、居眠りするかもしれんな。

「おはよう、優馬くん」

 学校に来ると綾女が挨拶してきた。綾女は薄い茶色の長い髪をゴムでポニーテールに結っていた。

「おはよう。昨日は楽しかったな」

「そうだね! また日曜日もやるんだよね。楽しみだなぁ」

 嬉しそうに微笑む綾女であった。本当にビーストファンタジーをまたプレイするのを楽しみにしているようである。

「まぁ、おかげで俺は寝不足だけどな」

「ふふ。授業中に寝たらダメだよ」

 注意を促す綾女であるがそれは無理そうである。

 

 そして案の定、今日の授業の大半を寝て過ごしたのだった。 

 しっかり睡眠を取った俺は部活へと向かったのだが、今日の練習メニューは走り込みなど体力トレーニングばかりでなかなかハードだった。

 

 練習着から制服に着替えた後、アパートへと帰るべく俺は校門へと向かった。

 すると、校門に人影が見えた。一瞬、暗くて誰か分からなかったがやがてその正体が判明した。

 

「お疲れ優馬くん。一緒に帰ろ」

 校門の前で待っていたのは綾女だった。両手で鞄を持っている。

「え……ああ……」

 まさか、俺と一緒に帰るためにここでずっと待ってたのだろうか。部活のメンバーと更衣室と話し込んでしまい練習終わりからすでに一時間ほど経過していたのだが。

 

「今日の練習、ハードそうだったよね! 優馬くん、疲れたんじゃない?」

「ああ、もうヘトヘトになったよ」

「石崎さん。やっぱりバスケ上手いよね。さすがキャプテンって感じ!」

 それに加えて石崎さんは未知瑠さんとよろしくやってるからな。

 羨ましい限りである。

 

 すると、綾女さんは突然恥ずかしそうな態度を取った。

「あ、あのさ……今日、優馬くんの家に行っても良いかな?」

 

 これは昨日、薫さん達に邪魔されて中止になったが続きをしたいということであろうか。

 しかし、俺はここであることを思い出す。

 俺は今自分の部屋の鍵を持っていない。瑠夏さんに預けっぱなしであった。

 

「いや、今日は綾女の家に行きたいんだけど、良いかな?」

「え……」

 綾女は頬を朱色に染めた。純情そうで初々しいその仕草は俺の胸をキュンと締め付けるようであった。

「い、良いよ……」

 

 恥ずかしげな表情を見せながらも綾女は俺を家に上げることを許可してくれた。

 

 そして、ようやく俺たちはキンキィ梅田の前に辿り着いた。

 まだ新しい外装をしているこのアパートであるが、中々家賃が安いのが特徴である。

 さらに住人は奇しくも綺麗な女性が多い。

 留衣さんと瑠夏さんが住んでいる203号室、俺の部屋の202号室を通り、綾女の部屋の201号室の扉の前まで移動した。

 

「お邪魔します」

 俺は綾女が住んでいるアパートへと上がった。俺の部屋と全く同じ間取り。

 しかし、中は女性らしい置物や甘い香りで満たされていた。

 ピンク色の絨毯に可愛らしいぬいぐるみなどが置かれている。しかし、この部屋の中では異彩を放つ少年スポーツ漫画もいくらか置いてある。

「優馬くん。恥ずかしいからあんまり部屋の中見ないで……」

「え? ああ、すまん……」

 好奇心のあまりつい、部屋の中を観察してしまっていた。

「優馬くん。私、先にシャワー浴びて来るからここで待ってて。テレビ見ててもいいから」

「ああ。分かった」

 

 相槌を打つと、綾女はバスタオル、着替えを持って部屋から出て行った。 

 じっと部屋で待っていると「シャー」という水の流れる音が聞こえ、否が応でも良からぬ想像をしてしまう。

 綾女が裸でシャワーを浴びているシーン。 

 昨日、綾女と良いところで終わってしまったため卑猥な妄想をしてしまうのである。

 

「あかん……落ち着け、俺」

 

 だんだんと俺の愚息は大きくなり始めてきた。

 気を紛らわせるため、2、3、5、7、11と頭の中で素数を数え始めた。おかげで少し愚息は収まってきた。

 すると、ポケットに入れているスマートフォンから『ポン』という通知音が聞こえてきた。

 スマホを取り出し、電源を入れると薫さんからLINEが来ていた。

 実は昨日、ビーストファンタジーをプレイした後、お互いに連絡先を交換し、『パーティ』という名のLINEグループを作ったのである。

 

 薫さんから送られてきたのはこんな文章であった。

 ――日曜日の午前中、一緒にショッピングに付き合ってくれないかしら?

 

 突然来た薫さんからのショッピングの誘い。

「薫さんと一緒にショッピングか……」

 考えるだけで心が踊った。すぐに文字を打ち、薫さんにLINEを送る。

 

 ――良いですよ。よろしくお願いします。



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綾女との初体験

「お待たせ、優馬くん」

 綾女がシャワーから戻って来た。綾女の髪は水で滴っており、普段学校で見せる姿とは一味違った艶やかな色気を醸し出している。

「あ、ああ……」

「優馬くんもシャワー浴びて良いよ? はいこれ、タオル」

「ありがとう」

 

 俺は黄色いバスタオルを受け取り、シャワーへと向かった。

 服を脱ぎ、先ほどまで綾女が全裸となり使っていた浴室に入ると、シャンプーの香りが鼻腔をくすぐった。

 

 先ほどまでここで綾女が全裸姿となりシャワーを浴びていたのである。

 俺もシャワーで汗を落とし、浴室に置いてあったいつも綾女が使用しているであろうシャンプーを拝借した。

 俺が使っているシャンプーは『メリット』であるが、綾女はなんだか高級そうなシャンプーを使っていて少し使うのは気が引けたが2回シャンプーのポンプをプッシュした。

 出て来た透明なシャンプーを水で軽く浸し、手で泡立てる。

 髪にゴシゴシとシャンプーを付着させて後、お湯で流し落とした。

 

 さらにいつも綾女が裸体を洗うのに使っているボディソープも拝借し、自分の体を洗った。

 

 きっと俺が部屋に戻ったら綾女は俺とヤるつもりなのであろう。昨日は薫さんたちが乱入してきて中途半端なところで終わってしまったが。

 これから巻き起こる卑猥な妄想をすると、愚息は大きくなっていった。

 必死に精神を沈め、シャワーを終えて、俺は綾女の部屋に戻っていった。

 

 綾女はリビングに置いてあるベッドの上に腰を掛けていた。

 ベッドの上にはうさぎの絵柄がプリントされた掛け布団が敷かれている。

 

「綾女、シャワーありがとう。このタオルはどうしたらいい?」

「そこのハンガーに掛けてもらえる?」

 綾女は折りたたみ式のハンガーを指差した。それには何枚かのタオルが掛けられていた。

「分かった」

 俺はハンガーにタオルを掛け終えると、綾女に近づいた。

「優馬くん、ここに座って」

「あ、ああ……」

 

 綾女に促され、彼女の横に並んで座る。

 浴室に入った時にもしたシャンプーの良い香りが鼻腔をくすぐった。

 すると、俺の右肩に軽い重さを感じた。ふと横を見ると、綾女が俺に寄っ掛かっていた。

 トロンとした眼つきで俺を見上げる綾女。年相応のあどけない顔立ちをしている綾女であるが今のその表情は自分の欲望を必死に訴えようとする雌の表情となっている。

 

「あ、綾女……」

「優馬くん……キス……しよ?」

 

 数秒ほど俺たちは見つめ合い、俺たちは口づけを交わした。

 綾女のキスは薫さんや留衣さんの上手いキスとは違い、まだ慣れていないと感じさせるものであった。

 しかし、恥ずかしそうにキスをするその姿は俺の欲情を駆り立てた。

 パジャマ越しに綾女の胸を揉む。むにゅっとした柔らかい感覚が手から伝わった。

 

「あ、あん……」

 昨日、綾女のブラジャーを見たから分かるのだが綾女の胸はあんまり大きくない。貧乳と言っても差し支えないほどの大きさである。

 貧乳は感じやすいと聞いたことが、そのせいか綾女は気持ち良さそうな顔をしている。

「綾女……気持ち良いか?」

「う、うん……」

 

 頷く綾女に対し、俺は綾女の着ているパジャマを脱がすべくパジャマの裾を掴んだ。

 特に抵抗することもなく、俺にパジャマを脱がされる綾女。

 赤を基調としたセクシーなブラジャーが眼に映る。

 さらに俺はブラジャーのホックに手をかけ、脱がせる。

 目に入るのは小さめなおっぱいとツンと勃っている綺麗なピンク色の乳首である。

 大きなおっぱいも良いが小さいおっぱいというのも中々蠱惑的でかなりそそられる。

 

 俺はペロっと舌で綾女のおっぱいを舐める。

 

「ひゃあぁん……優馬くん……」

 ブルブルっと身体を痙攣させる綾女。予想通り、綾女は乳首攻めに弱いようである。

 俺は思いっきり綾女の乳首に吸い付いた。

「優馬くん……さっきから吸いすぎだよぉ……」

 

 綾女の言葉を無視し、さらに強く吸い付いた。さらにもう片方のおっぱいを左手で強く揉む。

 そうすると、さらに綾女の痙攣が強まった。

 気のせいかもしれないが綾女の生乳はほんのりと甘い味が出ているような気がする。

 しばらく綾女のおっぱいを舐めていると綾女がモジモジと股間部分を抑え始めた。

 

「優馬くん……ここも気持ち良くしてくれないかな?」

 綾女は立ち上がるとズボンのパジャマを脱いだ。履いているパンティはブラジャーと同様、赤を基調としたセクシーなものであり、深いシミを作っていたのが確認できた。パンティも脱ぐとしっとりと割れ目が濡れているのが分かる。

「こ、ここも舐めて欲しいの……」

 

 膝立ちし、指で愛蜜の詰まった割れ目を広げる綾女。中はピンク色っぽく、とても綺麗であると感じた。

 俺はその要望に応えるべく四つん這いになり、舌で綾女の秘所を刺激した。

 はっきりと確かめたわけではないが、おそらく綾女は処女である。

 

 誰にもまだ汚されていないであろう綾女の秘所を俺は弄んでいる。

 そう考えると興奮度がかなり高まった。

 

「ひゃ! あぁん……優馬くん……そんなに……ああ!」

 

 とても淫らな表情をしながら快楽に浸る綾女であった。自分の性器を舐められ気持ち良くなっている。

 舐めれば舐めるほど綾女から分泌される愛蜜の量が増えていった。

 

 俺は途中で綾女の秘所を舐めるのを止めた。

 

「え……あの……優馬くん……」

 

 物足りなさそうな顔で綾女は俺を見つめた。それは自分をめちゃくちゃにして欲しいと言いたげな表情である。

 俺はズボン、そしてパンツを脱ぎ自分のイチモツを綾女の顔の前に曝け出した。

 

「綾女。これ……舐めてくれないか?」

「え……」

 綾女は心底驚いたような顔を俺に見せた。さっきまで綾女のおっぱいやまんこを舐めたせいで自分の愚息はガッチガチに固くなっているのである。

「嫌か?」

「ううん……やってみるね」

 

 恐る恐る舌で俺の肉棒を舐める綾女であった。慣れない感じで俺の肉棒を舐めている綾女の姿はとても興奮する。

 ペロペロと裏筋や先端部分を舐める。ザラザラとした感触が俺の敏感な部分を刺激するが、なんだか物足りない気分になった。

 

「綾女、これを口で咥えて欲しいんだけど、良いか?」

「う、うん……」 

 俺の指示通り綾女は俺の肉棒を咥えた。頰を細め、上目遣いで見つめるその姿はものすごいエッチである。

「ひほひいい? ひゅうはふん?」

「ああ。そのまま顔を上下に動かしてくれ」

 ゆっくりと綾女は顔を上下に動かした。もどかしいような、得も知れぬ快楽がとめどなく肉棒に押し寄せてきた。

 気を抜けばあっという間にイってしまいそうである。

「き、気持ち良い……すごい気持ち良いよ綾女。もっと奥の方まで咥えて欲しい」

「うう……」

 

 苦しそうな表情で綾女は奥の方まで俺の肉棒を咥え、舐めてくれる。

 必死になって俺の要望に答えてくれる綾女はなんと健気なのだろうか。

 

「綾女……もっと音を出して舐めてくれないかな?」

 すると、綾女は『ジュボボボ』というやらしい音を出しながら舐めた。苦しいのか綾女は涙目になっていた。

 そんな綾女の姿を見て、自分の性欲をコントロールできなくなった。

「で、出る! 出るぞ!」

 突如湧き上がってくる射精感と同時に、俺は発射することを告げた。

「ん、んんん!!!」

 

 ドピュドピュッと大量の精液が綾女の口内で発射された。綾女の口から肉棒を抜くと、綾女は涙目の状態で口を開けていた。

 口の中には俺が出した大量の白い液体が入っている。

 

「綾女。それ飲んで」

 端的にそう綾女に告げると、綾女は苦しそうに口を閉じ、『ゴクン』と精液を飲み込んだ。

「はぁ……すごい優馬くんの精液」

 俺は綾女の頭を軽く撫でた。

「飲んでくれてありがとう。それじゃ早速、しようか」

 

 綾女にフェラをしてもらった後、俺たちは性行為(セックス)を始めることにしたのであった。



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ラスボス降臨

「綾女……挿れてもいいか?」

 俺は綾女の割れ目の前に自分の肉棒を近づけている。

 まだ誰にも挿れられてこともない綾女の割れ目に挿れようとしているのである。

「う、うん……」

 こくりと綾女は頷いた。その表情には幾ばくかの恐れと緊張をしていると感じた。

 俺は綾女の言葉を聞き、無言のまま自分の肉棒をゆっくりと綾女の割れ目の押し挿れた。ズブズブと挿入っていく様を綾女は苦しそうな様子で眺めていた。

「綾女、痛いか?」

「うん、少し……」

 接合部分から愛液とともに、処女が失われた証である血が流れ出た。

「徐々に痛くなくなると思うから少し我慢してくれ」

 

 綾女にそう言い聞かせ、俺はゆっくりと腰を動かした。綾女のマンコは誰にも使われていないだけあって、ものすごく締め付けが良いと感じた。

 締め付け具合が今まで経験した女性の中でもっとも強いと感じた。自分のチンコがとても気持ち良くなってきた俺は徐々に腰を振る速度を速めていく。

 

「ゆ、優馬くん……な、なんだかだんだん……気持ち良くなってきた……」

 顔を赤くさせ、快楽に溺れる雌の表情をする綾女。その表情はさっきまで処女であったとは思えない。

「そうだろ? もっと気持ち良くさせてやるからな」

 俺は綾女の控えめな胸についているピンク色の乳首を指で摘んだ。

「ああん! ち、乳首……気持ち良い!!」

 乳首を俺にいじられ、上も下も綾女はビンビンに感じているようだった。

「綾女……」

「う、うん……」

 

 淫らな表情をしている綾女に我慢できなくなった俺は彼女にディープキスをした。

 俺にキスされた綾女は身体の力を脱いており、顔を確認するとアヘ顔のような表情と化していた。

 俺はひたすら腰を動かしつづけ、綾女はそれに合わせるように「あん……あん……」と可愛らしく喘ぎ声を出し、だんだんと大きな声へと変わっていった。

 

「ゆ、優馬くんのおちんぽ……お、奥まで当たって……おかしくなっちゃいそう!」

 綾女は身体を大きく逸らし、天井を仰ぎ見た。なんてエッチな姿なのだろうか。

「俺も……すっごい気持ち良い……もうだめだ。出そう!」

「え? ちょっと待って! まだだめえええええ!!!」

 膣内(なか)出ししようとする俺を止めるべく叫んだ綾女であったが、性欲の歯止めが効かなくなった俺は大量のザーメンを発射させた。

 湯水のように注がれた白い液体はあっという間に綾女の膣内を満たし、ねっとりとした白で染め上がった。

「ああ……ゆ、優馬くんのあっついのが注ぎ込まれちゃったよぉ……」

 呆然とした様子で自分の性器に注ぎ込まれた性液を綾女は見つめた。

 

「どうだ? 綾女、気持ち良かったか?」

「うん……できればもう一回したいな……」

 物欲しそうな顔で綾女は俺にねだった。さっきまで処女だったというのに、早くも性行為(セックス)の快楽の虜になったそうである。

 

 ◇◇◇

 

「魔王様! 城に二名の冒険者が攻めて来ました!」

 私の部下であるメイルが慌てた様子で私に告げてきた。このところ、私の城に冒険者がやって来ては私の首を狙ってくる。やれやれ、全くいい迷惑である。

「そうか。では直ちに部隊を集結させ、ここまでやって来るのを食い止めよ」

「い、いえそれ……」

 部下は何か言いづらそうな様子で俯いた。額には大粒の汗が流れている。

「どうした?」

「精鋭を掻き集めて冒険者を食い止めるよう指示したのですが、全く意味を成しませんでした」

「なんだと?」

 精鋭部隊をか。これは少々、めんどくさそうだ。

 

 すると、バタンと私がいる部屋の扉が開いた。颯爽と現れたのは、緑色の髪をした杖を持ち、メガネをかけている女性。

 そして鞘に収まっている長い剣を携えた目つきの鋭い男性だった。

 

「ようやくたどり着いたぞ。魔王よ」

 男の冒険者が不敵な笑みを浮かべながら私にそう言った。

「貴様ら、ここになんのようだ?」

「何の用? 決まってるでしょ! あなたを倒しに来たのよ」

 女性は微笑みながら私に杖を向けた。

「私を倒せば何かなるのか?」

 そう訊くと男の冒険者が頷いた。

「ああ。特典が貰えるんだよ。このビーストファンタジーの世界で、最初にお前を倒した冒険者にはすごい特典が貰えるって運営から聞いている」

「淳ー! 何貰えるだろうね? 噂じゃ、ハワイ行きのチケットとからしいけど。もしそうだったら一緒に楽しもうね!」

「ああ、そうだな!」

 この二人の話が全く見えてこない。ビーストファンタジー? 何の話だ。

 

「魔王様! お下がりください。ここは私が何とかしてみせます!」

「ま、待て! メイル!」

 メイルは短刀を取り出し、冒険者二人に向かっていった。

 

「へぇ……私たちとやろうっていうの。いい度胸ね……」

「名前はメイルか……あの羊野郎、レベル三十か。そこそこ高いな」

 ブツブツと呟く男の冒険者は鞘から剣を抜いた。抜き身の刃は黒く怪しく光っている。

「スキル発動、『豪炎剣』!」

 メイルが刀で切られると、メイルの体から大きな炎が生まれ、身体全体が包まれた。

「あ、熱い! 魔王サマーーーーーーーー!!!」

「め、メイル!」

 助ける間も無く、メイルは灰となり、朽ちていった。

 

「淳ー! やるね! この調子で魔王を倒そうね!」

「ああ! ちゃちゃっと倒して特典とやらをもらおうぜ」

 

 こいつら……私の部下をあっさりと殺しやがった。

 私も冒険者やモンスターの命を奪うことはある。しかし、少なからず命を奪う瞬間というのは心を痛める。

 当然のことである。命というのはかけがえない存在なのだから。

 しかし、こいつらは笑いながらメイルを殺した。まるで遊戯(ゲーム)のように。

 もう……ただではすまさない。

 

「おい、貴様ら。貴様らはフィアンセ同士か?」

 すると、二人の顔が赤く染まったいくのが分かった。

「そ、そんなフィアンセだなんて! 付き合ってはいるけども!」

「ええー!? いずれ結婚しようねって言ってくれたじゃん、このこの!」

 二人は仲良さげにじゃれあった。今からこの仲睦まじい二人に地獄というのをみせてやろう。

「もういい。貴様らはここで死ぬ。せいぜい楽しむが良い」

「ふん、ようやくやる気になったってわけね。えーっと、レベルは……ええ!?」

 女の冒険者が私を見ると驚いたような声を上げる。

「智賀子、どうした?」

「ど、どうして魔王のレベルがゼロなの?」

「ぜ、ゼロ? どういうことだ?」

 何やら二人はレベルがどうとか訳の分からない話をし始めた。

「おい、来ないならこっちから行くぞ……」

「ふん! レベルゼロの魔王なんか一撃で倒してやるよ! スキル発動、『火炎剣』!」

 淳という冒険者が持っている剣から炎が放出され、私に一太刀浴びせようと素早く私に接近して来た。

「くらえ!」

 真上に振り落としてきた剣を私は片手で掴んだ。

「う、嘘だろ!? 防がれた!」

「あ、淳!」

 女の冒険者が男の冒険者の技を止められたのを見て、心配そうに叫んだ。

「貴様はしばらくここで大人しくしているがよい。『パラリシスワールド』」

「か、体が……」

 相手を長時間麻痺させる魔法を男の冒険者に掛けた。男の冒険者は必死に我の魔法に抗い、身体を動かそうと抵抗していたが全く動けない。

 次に我はターゲットである女の冒険者に近づいた。

「や、やめて! 来ないで! さ、『サンダークラッシュ』!」

 強烈な雷魔法を女の冒険者が私に打ってきたが、私の魔法、『ブラックシールド』で防御した。

「う、嘘! 何で効かないの!?」

 女の冒険者の頭に手を翳した。そして、呪文を唱える。

「もう貴様は我には抗えまい。『ブラウンウォッシング』。娘よ、服を脱ぐ捨てよ」

「は、はい……」

 

 女の冒険者は涙を浮かばせながら私の言う通り、着ている服を脱ぎ始めた。緑色のローブ。白を基調とした下着を羞恥に溺れている表情で抜いでいった。

 たわわに実った二つの果実と生え茂った熟れた雌の性器が露わになる。

 

「お、おい! 智賀子! 何してるんだよ!」

「分からない。何でか勝手に服を抜いじゃうの……」

 優越感を感じた私は微笑みながら男の冒険者に説明してやった。

「我の魔法の力だ。貴様はせいぜいそこで貴様の女が私に犯されるのを指を咥えて見ているが良い。まぁ、指すら咥えられないと思うがな」

「ま、魔王ーーーーー! やめろ! やめてくれえええええええ!」

 自分のフィアンセを犯されそうになっているのを見て、涙目で懇願する男の冒険者である。だが、止める気など毛頭ない。

「まずはしゃぶってもらおうか。小娘よ」

 ズボンとパンツを脱ぎ、私のイチモツを女の冒険者に見せつける。

「は、はい……」

 恥ずかしそうに私のイチモツな舐める女の冒険者である。そんな様子を男の冒険者は泣きながら見ていた。

「ああ、智賀子。ダメだ……やめてくれ」

「ふふ……まだだ。これからもっと楽しんでやるぞ。覚悟しろ」

「ふぁい、魔王様……」

 

 ペロペロと私のイチモツを舐める女の冒険者の頭を撫ででやると、彼女は雌犬のように従順に返事をするのであった。



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魔王の能力

「よしよし、いいぞ。もっと舌を遣って舐めるがよい」

「ふ、ふぁい……分かりました」

 女の冒険者は器用に舌を遣い、私のイチモツを舐める。

 

「ふむ……中々上手いぞ。褒めてつかわす」

「あ、ありがとうございます……」

 涙目になりながらも礼を言う女の冒険者であった。徐々にドM精神が芽生えてきたのだろうか。

 

「ああ、智賀子……もうやめてくれ……」

 絶望に満ちた貌(かお)で懇願する男の冒険者であった。必死に私の魔法から脱出しようと頑張ってはいるものの、全く抜け出せる気配はない。

 当然のことである。私の魔法から逃れるには私と同程度の実力が必要となる。

「貴様はせいぜいそこで黙って見ているが良い。おい、娘。股を開け」

「はい……分かりました」

 躊躇うことなく自分の股を開く女の冒険者。徐々に私の指示に従うのが心地良くなってきているかのようであった。

 その証拠に割れ目からしっとりとした液体が出てきている。

 

「おい、娘よ。その中に何を挿れてほしい?」

 ツーと指で割れ目に沿って撫でながら私が訊くと、女の冒険者は『はぁ、あぁん……』と荒い息遣いをしながらこう答えた。

「魔王様のおちんぽが欲しいです……♡」

 

「う、嘘だろ! 智賀子!」

 信じられないと言わんばかりに男の冒険者が叫んだ。所詮、下等な人間同士の愛などその程度に過ぎないだろう。

「良かろう、私の力で貴様を絶頂させてやろう」

 私のイチモツを女の冒険者の性器へと挿入していく。

「ああん……! す、すっごい気持ち良いです!」

 恍惚に満ちた表情で私のイチモツを挿れらた感想を述べる女の冒険者であった。

 私は色んな角度から突いてみる。雌というのは突く角度によって、一番気持ちの良いところが変わるのである。

 突くたびに「あん!」という喘ぎ声を出すが、何度か突く中で一番大きい声を出したのを私は聞き逃さない。

 

「なるほど……ここか。ここが一番気持ちいいんだな?」

 ピンポイントで一番感じるところを突いてやると、

「ああん! そうです! もっとそこを突いてください!」

 とまるでヤリマンのように懇願してきた。

 

「智賀子! 目を覚ませ! 止めるんだ!」

「無理……だって淳! 魔王様とのセックス……淳のよりも……はるかに気持ち良いんだもん!」

「そ、そんなぁ……」

 男の冒険者は自身のフィアンセが犯されているのを見て、泣き崩れた。

 

「ふん……泣くでないぞ。淳とやら。貴様にも後で美味しい思いをさせてやろう」

「魔王様……それって一体? ああん!」

「ふん、娘よ。貴様は何も考えず、ひたすら快楽に溺れているが良い」

「はい! 魔王様あぁ!」

 接合部分から熱い液体が滴り落ちる。『ぐちゅぐちゅ』と音は強まり、突くたびに女の冒険者の緑色の髪は靡き、プルンプルンと豊満な胸が暴れるように揺れていた。

 

「そろそろ出すぞ……」

 パンと女の冒険者の大きいお尻を叩き、膣内射精(なかだし)してやることにした。

「だ、出してください! 私のおまんこを魔王様のでいっぱいにしてーーー!」

 

 

「や、やめろーーーー! 魔王ーーーー!」

 男の冒険者の必死の叫びを私は無視し、思いっきり女の冒険者の膣内(なか)へと発射した。

 

 

 △△△

 

 俺の名前は武藤淳(むとうあつし)。

 このビーストファンタジーを始めたのはつい先日。

 彼女の秋村智賀子(あきむらちかこ)とともにゲームを始めた。

 このゲームを始めようとしたきっかけは二つあった。

 

 まず一つはRSFラボが開発したゲームであるということ。

 電化製品から自動車まで幅広く扱っているRSFラボが開発する機器はどれも評判が良く、更に性能が良い。

 そんなRSFラボがゲームを発売すると聞いて、とても心が踊った。

 俺は普段はサラリーマンとして過ごしているが、ゲーマーとしても活動している。

 

 もう一つゲームを始めた理由に、このゲームの世界で性行為を楽しめると言う点。

 公式サイトに書かれていた訳ではないが、まとめサイトにはそう書いてあった。

 ビーストファンタジーをプレイ中、俺は智賀子と共にゲーム上のホテルへと赴き、ヤってみることにした。

 

 噂は本当であり、ゲームとは思えないほどのリアルな性行為を楽しむことができた。

 ゲーム上での行為なので、生でヤっても妊娠する心配もない。

 俺たちはゲームプレイ中に何度もし、愛情を深めていった。

 

 

 

 そんな俺の彼女は今、魔王に犯されていた。

 

「おい、娘よ。どうだった?」

「しゅ、しゅごい、気持ち良かったです……」

 トロンとした虚ろげな表情で微笑みながら答える智賀子。俺との性行為の時はここまでエロい表情は決して見せない。

 

「くそ、智賀子……」

 智賀子のマンコからは魔王とやった証である白い液体が流れていた。

 

 あくまでゲームでの出来事だと分かってもショックを感じずにはいられない。

 

「おい、男の冒険者よ。気分はどうだ?」

 魔王は俺に近き、感想を求めた。

「最悪だ……」

「そうか。では、これから貴様の気分を良くしてやろう」

「え?」

 

 魔王の身体が突如、眩い光に包まれた。

『セックスチェンジ』

 そう唱えると、魔王の身体が徐々に変化していった。

 

 額に一本のツノを生やし、背の高い筋肉質の身体、強面である魔王の姿は背の高めな長いオレンジ色の髪のグラマラスな美人の女性の姿へと変貌した。

 

「うふふふ……どうかしら? この姿は?」

 とても蠱惑的な姿をしている魔王が俺に感想を求めた。

 智賀子よりも大きい胸を持ち、やや黒みを帯びた素肌はとても唆られる。

 

「お、お前……本当に魔王か?」

「ええ、そうよ。私は性別を変えれる魔法が使えるの。これであなたを気持ちよくしてあげるわ……あなたの彼女の前でね!」

 ウィンクしてそう宣言する魔王。「ふふっ」と微笑み、その笑みには草食動物を狩る肉食動物を彷彿とさせるような獰猛さを感じた。

 

「それじゃ、ちんこを出しなさい」

「く……」

 魔王の力によって、指令を逆らえずズボン、パンツを下ろし、自分のちんこを曝け出した。

「それじゃ、舐めてあげるわ」

 魔王はパクッと俺の肉棒を咥えた。咥えられているところからゾクゾクっとした快感が湧き上がった。

 

「うわ!」

「ほう? ひほひいい?」

 上目遣いのエロい表情で気持ちいいか聞いてくる魔王。魔王のフェラは智賀子のよりもはるかに上手かった。

 

「き、気持ち良い……」

 感想を述べると魔王はさらに「ジュルジュル」とやらしい音を出しながらさらに強く舐め上げていった。

 

「あぁあ! ダメ! イく……イっちゃう!」

 魔王はバキュームフェラで一気に俺の性液を吸い上げた。『ドピュドピュッ』とたくさんの性液が魔王の口が注ぎ込まれていった。

 

 先っぽを綺麗に舐めとると、肉棒から口を離し、大きく口を上げ、俺が出した性液を見せつけ、『ゴクン』と飲み込んだ。

 

「ああ、すっごい美味しかった……」

 淫靡な表情で俺の性液の感想を述べる魔王。いつも智賀子に、自分の性液は不味いと言われ、飲んでもらえることがなかったので、性液を誰かに飲んでもらえてとても嬉しかった。

 

 魔王はまだ物足りないガチガチに反り上がった肉棒を一瞥すると鼻で笑い、下着を脱ぎ去り、一糸纏わぬ姿となった。

 

 黒いブラジャーを外す瞬間、『プルン』と弾力のあるおっぱいが揺れ、パンティを取ると、逆三角形のアンダーヘアが付いている割れ目が丸見えとなった。

 

「おい、貴様。もう魔法は解いているぞ。望みならそのまま自分のフェアンセとヤるが良い」

 魔王は先ほどの魔王とのセックスが忘れられないのか一人、自慰行為に耽っている智賀子を指差した。

 

「いや、魔王と……いえ! 魔王様とセックスしたいです!」

 俺は本心を魔王様に告げた。きっと魔王様とする方が智賀子とするよりもはるかに気持ち良いだろう。

 

「ほう、良いのか?」

「はい!」

 ニヤッと魔王様が微笑むと、俺の肉棒を掴み、跨るような体勢でゆっくりと割れ目へ挿入した。

「うう……!」

 魔王様が挿入すると『グチュッ』という水音とともに肉棒に全方向からなんとも言えないほどちょうど良い圧力が押し寄せ、とめどなく肉棒を刺激していった。

「どうだ? 気持ち良いか?」

「は、はい……」

 はっきり言って、智賀子のマンコよりもはるかに気持ちが良い。

 魔王のマンコはとんでもなく締め付けが良かった。ねっとりと、ヒダのついた肉壁が纏わりついてくる。

「ならば、もっと気持ち良くしてやろう」

 ガン、ガンと激しく腰を振る魔王は、腰を突くたびにプルンプルンと激しくおっぱいが揺れていた。

 とんでもない迫力である。柔らかそうで大きくて……ものすごく触ってみたい。

「ふふ……おっぱいを味わたいか?」

 俺の視線に気が付いたのか、魔王がおっぱいを味わいたいか訊いてきた。

「は、はい……」

「よかろう」

 正直に答えると、魔王は俺の顔におっぱいを押し付けてきた。

「ふご!」

 圧倒的圧力が俺の顔に襲いかかってきた。しかし、柔らかく、ほんのりとした女性らしい甘い香りが鼻腔をくすぐる。とても至福な圧力である。

 

「ふふ……人間の男というのは本当におっぱいが好きだな……」

 魔王は身体を小刻みに動かし、ムニムニとおっぱいの感触を与えてくる。本当に気持ちが良い。このまま圧死してしまいたい。

「それじゃ、そろそろフィニッシュと行こうか」

 魔王はおっぱいを押し付ける体型から上半身を起こし、再び腰を激しく動かした。

「どうだ? 気持ち良いだろ? イって良いぞ」

 魔王の言葉通り、俺はイくことにした。一気に射精感が湧き上がってくる。

「い、イく!」

 魔王の膣内にフェラした時とは比ではないほどの性液が発射された。その量は凄まじく、魔王のマンコから肉棒を抜くと、白い液体がポタポタとたくさん溢れていた。

 

「フェアンセとの愛を誓えぬ愚かな人間よ。安らかに眠るが良い」

 ぐったりと寝転がっている俺に魔王が魔法を放とうとした。

「魔王様……すっごい気持ち良かったです」

「そうか。ではさらばだ。『ブラックエクスペリエンス』」

 大きな黒い煙が俺を取り囲みとHPゲージがどんどんと減り、やがてゼロになる。

 

 そして画面上に表示される――『GAME OVER』の文字。



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初デート

 少し肌寒い風が吹き込む日曜日の十時手前。世間は休日ということもあり、たくさんの人で溢れかえっていた。

 俺は池袋駅東口である人と待ち合わせをしていた。

 もうそろそろ来る頃だと思うが。

 

「お待たせ〜優馬くん!」

 後ろから声がし、振り返ると薫さんが駆け足で俺の元へやってきた。

「お、おはようございます……薫さん……」

 たどたどしく俺は薫さんに挨拶した。というのも薫さんの格好にドキッとしたからである。

 今日の薫さんの格好は白いシャツと水色のプリーツスカートに身を包み、垢抜けた印象を感じさせた。

「ごめん、待った?」

「い、いえ! 俺もきたばかりです!」

「そう、良かった。それじゃ、行きましょうか」

 

 俺と薫さんはショッピングモールを目指して歩き始めた。

 歩くことわずか一分、俺たちは目的地へと辿り着いた。

 俺たちが入るのは池袋PARCO店。

 俺は地方から来たため、ここに入るのは始めてである。

 

「そういえば、薫さん、今日は何を見るつもりなんですか?」

「行けば分かるわ。ついつきて」

 薫さんに言われるがまま、お店の中を徘徊した。

 

 そして、着いたお店はなんとランジェリーショップであった。

 

「あ、あの……薫さん、ここって……」

「そう! 新しい下着が欲しくてね。優馬くんに選んで欲しいの」

 清々しいほどの笑顔でそう言う薫さん。

 ま、まじか……俺が薫さんの下着を……

 なんと幸せな、いや違う。なんと難易度が高いことか。

 

「それじゃ、入るわよ!」

 俺の右腕を掴むと、薫さんは強引に俺をランジェリーショップの中へと誘導した。

 お店の中には様々な色の下着が備えられており、中には少し際どいデザインのものもある。

 薫さんはじっくりと一つ一つ下着を観察すると、一つの下着を手に取った。

「これなんてどうかしら優馬くん?」

 薫さんが見せつけてきたのは上下ピンク色のとてもセクシーな下着だった。

 以前、留衣さんが着けていたものと少し似ている。

 ただ、留衣さんのは紐パンで、薫さんが持っているのは少々面積が少ないくらいの普通のパンティなのだが。

「い、いいと思います」

「うふふふ。そっか」

 まるで俺の反応を楽しむかのように訊いてくる薫さんである。

「ちょっと試着してこようかな」

 薫さんは試着室の方を一瞥した。

「優馬くんにも見てもらいたいんだけど」

「ええ!? そ、それはちょっと……」

「何よー。私の裸、見たくせに」

 薫さんは唇を尖らせ、不満そうにそう言った。

「ちょ、ちょっと……そんな大きな声でやめてくださいよ」

 確かにそうなのだが……そもそも下着姿を試着室で異性に見せるというのはありなのか? そういうカップルとかもいるのだろうか。

「ふふ。まぁ、いいわ。それじゃちょっと試着してくるわね」

 薫さんはピンク色の下着以外にも何着か持って試着室へと向かった。

 

 手持ち無沙汰になった俺はスマホを取り出し、電源を入れる。

 すると、留衣さんからLINEが来ていた。

 

 ――今日、ビーストファンタジー会あるから18時くらいに優馬くんの家に行くね! 瑠夏も来るけどいい?

 この前、大学の飲み会(合コン)でいなかった瑠夏さんも来るらしい。

 特に断る理由はない。

 

 ――いいですよ。よろしくお願いします。

 

 ぺこりとお辞儀しているクマのスタンプと共に返信する。

 スマホを弄りながら待っていると、試着室から薫さんが出て来て戻ってきた。

「ごめん、優馬くん。待たせたわね」

「いえ。どうでしたか?」

 良いものがありましたか? という意味合いを込めて訊いたのだが、薫さんは不満そうな表情をする。

「なんかイマイチ、ピンと来ないのよね。もう少し見てもいいかしら?」

「はい、勿論です」

 もとより薫さんの行きたいところに付き合うつもりであった。少し恥ずかしいが、もう少しここに留まるくらいどうってことない。

 

 薫さんは真剣な表情でゆっくりとお店の中を移動した。俺も薫さんの後を追う形で移動する。

 やがて、薫さんは『ピタッ』と足を止めた。

 

「これ、良さそうだわ……」

 薫さんが手に持ったのは、黒いスケスケなレースの下着であった。

 

「ちょ、ちょっと派手じゃないですか?」

 エロい。最初に受けた印象はそれだった。

「えー!? そうかしら。優馬くんはこういうの……嫌い?」

 上目遣いで訊いてくる薫さん。嫌いじゃないけど。ええ、嫌いじゃありませんとも。

「き、嫌いじゃないですけど……」

 そう答えると薫さんは蠱惑的な笑みを浮かべた。

「そう。それじゃこれも試着して来るわ。優馬くんにも見て欲しいんだけど……」

 少し恥ずかしそうな表情でおねだりする薫さん。

「そ、それはちょっと……」

 やんわりと断るとぐいっと薫さんは体を近づけ、距離を詰めて来た。薫さんの甘い香りが鼻腔をくすぐる。

「お願い……」

 あざとくも、とても可愛らしい表情でお願いしてくるので、くらっと来そうになった。

「わ、分かりました」

 薫さんの甘い誘惑に負け、薫さんの下着姿を見ることを承諾した。

 本来であれば、これは喜ばしいことである。

 普通の男性であれば土下座してでも見たいくらいのことだろう。

 付き合ってもいないのに薫さんのエロい姿を見れるというのはかなり幸せなことである。

「それじゃ、行きましょうか」

 二人で試着室へと向かう。これからこのエロい下着を着けた姿を俺に見せて来ると考えると心臓がバクバクと鼓動していた。

 

 薫さんは試着室の扉を開けて、中へと入る。

「それじゃ、用意が出来たら声かけるから待ってて」

「分かりました」

 扉を閉めると、薫さんの姿は見えなくなった。しかし、衣服を脱ぐときに発する擦れる音が嫌が応にも耳に届く。その音のせいで色んなあらぬ想像を駆り立てる。

 しばらく待っていると、

「優馬くん、用意が出来たから入ってもいいわよ」

 扉越しから薫さんの声がした。いよいよか……

 

 俺は恐る恐る扉を開け、試着室の中へと入る。

 

「ど、どうかしら……?」

 薫さんは顔を赤らめ、俺に感想を求める。

「う……あ……」

 俺の目の前にいるのはとても美しい女性。

 上半身のみが下着姿で下はちゃんとスカートを履いていた。

 小柄な体格とは反比例するかのようななとても大きな双丘を面積の薄い透けているブラジャーで多い隠しているが、肝心のところが隠しきれていない。

 

「どう? へ、変じゃない?」

「い、いえ……すごい素敵だと思います……」

 あまり胸を直視しないようにしながら感想を述べた。やばい……超良い。

 

「そう。それは良かった」

 薫さんは俺に嬉しそうな表情を見せると、俺の方へと近づいて来た。

「ちょ、ちょっと……薫さん!?」

 薫さんは自分の胸を俺の身体に押し付けて来た。『ムニュ』っとした至福な感触が押しつけられている場所から伝わる。

 

「優馬くん、この下着姿を見て、エッチな気持ちになる?」

 薫さんは「はぁ、はぁ……」と荒い息遣いをしながらそんなことを訊いてくる。

 する――するに決まっているであろう。

「し、します!」

 そう答えると薫さんは発情している表情からニッコリといつもの様子に戻った。

「そう。なら良かった。これを買うことにするわ。それじゃ、着替えるから出てくれる?」

「え? はい、分かりました」

 想像の展開とは違うことに俺は少し落胆しながらも試着室から出た。

 

 試着室の外でしばらく待っていると、薫さんが出て来た。

 

「それじゃ、ちょっと買って来るわね!」

 薫さんは先ほど試着した下着を購入すべくレジへと向かった。

 そういえばあの下着はいくらするのだろうか。

 

 薫さんは袋を手に持ち、俺のところへと戻って来た。

「お待たせ! ごめんね、待たせちゃって」

「いえ、この後どうします? まだお昼ご飯は早いですよね?」

 先ほど時刻を確認したが、まだ十時半前であった。

 昼食にするには早すぎると思った。

 

「ちょっと見たい映画があるのだけどいいかしら?」

「ええ、良いですよ。何の映画ですか?」

 薫さんはスマホを取り出すと、見たい映画に関する情報が書かれているサイトを俺に見せてきた。

 こ、この映画は……

「薫さんもそれ好きなんですか! 俺も見たいと思ってたんです! 見に行きましょう!」

「優馬くんもこれ好きなのね! もう少しで開始時刻だし、見に行きましょうか!」

 俺たちは池袋PARCO店を後にし、映画館へと向かった。

 池袋駅の西口を出て、到着したのがシネマサンシャイン池袋である。

 映画館な中へと入り、チケットを購入する。

「優馬くん、何か飲み物とかいる?」

「はい、コーラにしようと思います。薫さんは何か飲みますか?」

「そうね……私もコーラにしようかしら」

「それじゃ、二人分買ってきますね」

「ありがとう。お願いするわね」

 薫さんからお金を受け取り、コーラを二つ購入する。そして、コーラを店員から受け取り薫さんの元へと戻る。

「お待たせしました! これどうぞ」

「ありがと。それじゃ、入りましょうか」

 薫さんに促され、俺達はチケットに指定された部屋の中へと入った。

 部屋の中ではこれから見る映画の主題歌が流れていた。

「私、中学時代から漫画読んでたのよね。優馬くんも原作読んだことある?」

「ええ。よく中学校の頃、読んでました。改造人間編が一番好きで何回も読み返してましたよ」

「あー! 2が初めて出るのもそこだったわね! 私、あの形態が一番好きだったわ! バチバチって髪が細かく逆立ての、あれ超かっこいいって思ってたわ! 3は個人的に好きじゃないのよね」

「そうなんですか? 俺は結構、3も好きなんですけどね。でも、3を使っての勝利シーンが原作じゃないからあれは確かに不遇の形態ですね。神やイエロー、そして勝手の極みが出たせいで3に変身する意味もなくなりましたし」

「そうね。今回の映画には勝手の極みは出るのかしら……」

 薫さんとコアな話をしているうちに映画が始まった。

 部屋の中の照明が落ち、スクリーンに10分ほど予告が流れた後、『No more映画泥棒』と違法動画のダウンロードの禁止と映画の撮影はNGだぞと釘を刺された後、ようやく映画が始まった。

 

 映画の内容は平たく言って最高であった。

 主人公の生い立ち、宿敵の悲しき過去、切れ味鋭いギャグもしっかりと描かれていた。

 そして、最後の戦闘シーンは大迫力であった。

 最新技術のCG駆使して描かれた戦闘描写は俺の心を滾らせた。

 本編が終わり、主題歌とともにエンドロールが流れる。いやぁ、良い歌だ。終わったらスマホに曲をインストールしよう。

 映画が終わると俺達は映画館を後にした。

 

「いやー! 面白かったわね! 想像よりも遥かに良かったわ!」

 俺も薫さんと同じ意見だった。賛否両論あるかもしれないが宇宙の帝王が萌えキャラのように描かれていたところも良かった。

「そうですね。薫さん、そろそろお昼ご飯にしますか?」

「そうね、そうしましょう」

 近くのパスタ屋に俺達は入った。中は空いており、俺はミートスパゲティ、薫さんはカルボナーラを注文した。

 注文してから10分ほどで料理が届いた。

「初めて入りましたけど、美味しいですね。このお店」

「でしょ? 私の行きつけで良く来るのよ」

 昼食を食べ終えると俺達は池袋駅へと向かった。

「薫さん、この後どうします?」

「そうね……ビーストファンタジー会までは結構時間あるし、秋葉原に行かない?」

「いいですね! 行きましょう!」

 

 秋葉原と言えば、日本屈指の電気街である。電化製品のみならず、アニメやゲームのグッズ専門店もたくさんある。

「よし! そうと決まったら行きましょう!」

 池袋駅から山手線で20分、秋葉原駅へと着いた。

 改札を通り、電気街口を出るとラジオ会館やゲームセンターなどが目に入った。

 今日は日曜日とあってたくさんの人が電気街を歩いていた。

 秋葉原に来るのは中学校の修学旅行以来である。

 

「それじゃ色々見て回りましょうか!」

「はい!」

 

 俺と薫さんはたくさんのお店を物色した。

 ラジオ会館、animate、とらのあな、まんだらけなど、どのお店も品揃え豊富であり、地元のお店や仙台のお店よりたくさんのアニメグッズが売られていた。

 薫さんは今日見た映画のグッズを中心に買い、俺はバスケ漫画のグッズをいくつか購入した。

「そろそろ帰りますか」

 時刻を確認すると17時過ぎになっていた。

「そうね……でもその前に、ちょっとついてきてくれる?」

 そう言われて俺は薫さんに付いて行った。

 

 薫さんに連れてこられたのは秋葉原UDXの前。

 そこは電気街が立ち並ぶ通りよりも人気が少なかった。その代わり、手を繋いで歩いてるカップルを何組か見かけた。

 薫さんは俺のことをまっすぐ見つめた。

 

「優馬くん……聞いて欲しいことがあるの……」

 薫さんは緊張した趣でそう切り出した。

 茶色の双眸が俺を覗きこんでくる。

「な、なんですか?」

「私と……付き合ってくれないかしら?」



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再びビーストファンタジーの世界へ

「私と……付き合ってくれないかしら?」

 

 頭の中で何度も薫さんが言ったことを反芻した。

 信じられないことに薫さんがこの俺に対して告白したのである。

 しかし、薫さんの表情を真剣そのものである。

 夢ではないかと思い、自分の頬を抓ってみたくなった。

 

「えっと、その……」

 なんて返したらいいのか俺は迷ってしまった。

 薫さんに告白されるなんてものすごく光栄なことであるのに。

 ものすごく嬉しいのに。

 

 それでも今はまだ「こちらこそよろしくお願いします」と返答する気が起こらない。

「ダメ……かしら?」

 そんな俺の様子を察してか、不安そうな表情で訊く薫さんだった。

 自分でもどうして「こちらこそよろしくお願いします」と言えないのかのか分からない。

 

 いや、実のところ理由は何となく分かっている。

 自分は誰を好きなのかまだ分かっていないのである。

 薫さんは確かに魅力的な女性である。

 こんな美人と毎日、デートやセックスできるなんてまたとない機会であろう。

 しかし、俺は留衣さんや瑠夏さんのことも気になっている。

 それと綾女のこともそれなりに好きになってしまっていた。

 

 我ながらとても贅沢な悩みであると思っている。しかし、それでもあっさりと薫さんと付き合うという決断を下すことができない。

 

「気持ちはものすごく嬉しいです……けど、少し考えさせてもらってもいいですか?」

 そう告げると薫さんは顔を伏せてしまった。

 砂時計の砂がゆっくりと流れ落ちるかのように沈黙が続き、気まずい時間が流れていった。

 俺たちを横を通る通行人はこちらを一瞥していった。

 やがて、薫さんが重々しく口を開く。

「うん、分かった。答えが決まったら連絡して頂戴」

 道に咲き誇る一輪の花のような可憐な笑みを浮かべる薫さん。

 こんな優柔不断な俺の答えを待ってくれるなんて、なんと良い人であろうか。

「あ、ありがとうございます!」

「良いのよ。それよりもそろそろビーストファンタジー会が始まるし、帰りましょうか」

「そうですね」

 秋葉原で買い物を終えた俺たちは駅へと向かった。

 四駅ほど電車で乗り継ぎ、最寄駅から歩いて五分、キンキィ梅田へと到着した。

 

 自分の部屋である202号室へと入り、薫さんとたわいもない話をしながら待っていると、やがて『ピンポーン』というインターホンの音が聞こえてきた。

 

 玄関へと向かい、扉を開けると瑠夏さん、留衣さんそして綾女が立っていた。

「こんばんは、優馬くん。今日もよろしく」

 サラサラとした金色の髪に触れながら挨拶する留衣さんは、鼠色のパーカーにジーパンというラフな格好をしていた。

「よろしくお願いします」

「今日は私もいるからクリア間違いなしよ! こう見えて私、ゲーム強いのよね! 高校時代は天才ゲーマーRと呼ばれていたからね!」

 某仮面ライダーに出てくる研修医のような二つ名を持った瑠夏さんは銀色の髪を黒いゴムで束ねており、留衣さんはゲームコントローラーがプリントされた個性的なTシャツを着ていた。

 

 そのTシャツは生地が薄いため、瑠夏さんの大きめなおっぱいによって押し上げられ、歪な形のコントローラーとなってしまっていた。

 

「瑠夏さん。すごいTシャツですね、それ」

「これ? 良いでしょ。これ着るとゲームの調子上がるのよね! ノーコンテニューでクリアしてやるわ!」

 ドヤ顔で言う薫さんであるが、なかなかこういったデザインのTシャツを着る人はいないのではなかろうか。

「優馬くん、中に入ってもいい?」

「ああ」

 綾女が中に入ってもいいか訊くので、俺は三人を中へと招き入れた。

 

「来たわね! 三人とも!」

 部屋に来た三人を見た薫さんは活き活きとした表情で立ち上がった。

「留衣、レベルはどれくらい上がった?」

「えーと、私は三十くらいですかね。瑠夏は四十くらいまでレベル上がりました」

 留衣さんはVRゴーグルを5つ、箱から取り出した。

「薫さんはあれからプレイしてたんですか?」

 俺が訊くと薫さんは首を横に振った。

「いえ、このところ仕事が忙しくて全くしてないわ。だから、ゲームを留衣と瑠夏に貸してたの」

 薫さんの言う仕事とは大家業のことだろうか。

「そうなんですか。それにしても二人ともすごいレベル上げましたね」

「うん、先週、大学の授業をほとんどサボってビーストファンタジーしてたからね」

「それ、大丈夫なんですか?」

 清々しいほどの笑顔で大学の授業をサボったことを述べる留衣さんであるが、単位とかその辺、問題ないのだろうか。

「一週サボったくらいで大したことないわよ! それに特典も欲しいしね」

「特典?」

 瑠夏さんから出た言葉(ワード)に俺は反応した。

「うん。ビーストファンタジーに出てくる魔王を先に倒したプレイヤーには豪華特典をもらえるって運営から言われているのよね」

「まだ倒したプレイヤーはいないんですか?」

「ええ。まだビーストファンタジーが発売されたからまだ一週間ほどしか経っていないのも理由なんだろうけど、誰も魔王を倒せないってのは少し不気味よね。だから、レベルを上げて、大勢で魔王討伐に向かおうと思ってたの」

 大勢で魔王討伐に向かうということは、今日、魔王を倒しに行くということか。

「瑠夏さん。俺も綾女も全然レベル上げてないんですよ。レベル的に瑠夏さんたちと行っても足手まといになるだけなんじゃ……」

「そんなことないわ! 絶対に人数は多い方が有利よ。それに、魔王のお城に向かっているうちにいくらかレベルが上がるはずよ」

「そうね。ただ、私たちを連れて行くってことは豪華特典は山分けってことでいいのよね?」

「はい! それで良いよね、瑠夏?」

「うん、勿論!」

「よし! 交渉成立ってことでそれじゃ、早速プレイしましょうか!」

 薫さんの言葉に促されるかのように俺たちはVRゴーグルを装着し、ゲームを起動させた。

 

「いやぁー久々ね!」

 薫さんの声が聞こえ、振り向くと四人が装備を武器を持って立っていた。

 自分の姿を確認すると、やはり股間に葉っぱが乗っただけのほぼ全裸の状態。

 俺の職業は変質者。戦闘ではほぼほぼ役に立たないが、相手が女性の場合は、『痴漢』というスキルで戦力をゼロにできるある意味チートなスキルを持っている。

 また、性別に関わらず相手を全裸にさせるスキル、『追い剥ぎ』も持っている。

 瑠夏さんはこの前、ビーストファンタジーをやった時はいなかったため、ステータスを見てみることにした。

 

  ーーNAME:ルカ JOB:アーチャー 武器:弓、矢 SKILL:フリーズアロー LEVEL:41

 

 瑠夏さんのアバターは白筒袖、黒い袴を着ており、うちの高校の弓道部員のような格好をしていた。

「瑠夏さん、レベル高いですね」

 ちなみに留衣さんのレベルは33になっていた。この二人が俺たちの中で圧倒的にレベルが高い。

「まぁね。それにしても優馬くんの格好、それやばくない?」

 瑠夏さんは必死に笑いをこらえようとしていた。

「そ、そこには触れんといてください……」

 俺だってこんな格好は真っ平御免であるが、この職業の仕様上、服を着ることができないのである。

 この前のペトムの屋敷でのクエストの際、ペトムから奪った服を着てみようと試みたのだが、どういうわけだか、着たら服が『パーン』と破裂した。パーンと。

 何度やっても服が破裂し、変質者は服を着ることができない職業であることを理解した。

「それより、早く魔王の城に向かおう。瑠夏、場所は分かってるの?」

 薫さんが瑠夏さんに魔王の居場所について訊く。

「はい。魔王の城はシベラからかなり離れた『シークアイランド』っていう島にある『デビルマウンテン』と呼ばれる山にあります。」

 デビルマウンテン……まんまなネーミングセンスだな。

「その島にはどうやって行けるの?」

「船です。港にシークアイランド行きの船があるので、それに乗ります」

 なんと船一つで魔王の城まで行けるのか。瑠夏さんもいるし、すぐに魔王を倒せそうな気がしてきた。

「そう。それじゃ、港まで案内してもらっても良いかしら?」

「はい、分かりました」

 

 留衣さんと瑠夏さんが先頭を歩き、俺たちは二人の後を追う。

 

「ここが港です」

 留衣さんが立ち止まると、船の方を指差した。

 マップを確認すると、この場所の名前が表示され、『シベラの港』と記載されていた。

「ちょうど出航するようなので、みなさん乗りましょう」

 留衣さんに促され、みんなはじっくりとマップを確認していた俺を残し、船へと向かった。

「あ、ちょっと待ってください!」

 俺も急いでみんなの後を追う。ゆらゆらと揺れている船の扉を潜る。

 中に入ると立派なエントランスが視界に飛び込んだ。あたりを見渡すと装備やポーションなどが売られている売店がいくつかあった。

 受付へと向かい、留衣さんは白を基調とした海員制服を着た船員に話しかける。

「すみません、シークアイランドまでお願いします」

 船員は俺たちの姿を確認すると、

「五名様でございますね。それではお部屋の方へ御案内いたします」

 俺たちを部屋まで案内した。

 案内された部屋はキンキィ梅田の部屋よりも倍くらい広い部屋であり、大きなテーブルと椅子が六つ置かれてある。また、透明な窓が備え付けられており、そこから太陽光を反射させたキラキラした水面が揺れている海の様子を眺めることができた。

「到着までこちらでお待ちになっていてください。エントランスはいつでも出入り自由になります。大浴場もございますが、こちらは有料になりますので、利用する際はエントランスにいる係員までお声掛けください」

 船員は説明をすると、「それでは良い旅を」と言い残し、部屋から出て言った。

「いやー、良い部屋ね」

 瑠夏さんは窓の近くへと移動し、船の外の景色を眺めた。

 『プオーン』という蒸気の音とともに船が動き出す。

 船はゆっくりと加速し、グラグラと船内が揺れた。とてもゲームとは思えないほどのリアルな乗り心地である。

「私ちょっと、売店に行ってきます。ちょっと武器を見てみたいので」

 綾女は売店へと向かおうとした。

「私もちょっと売店見たいな。ねぇ、綾女ちゃん、一緒に行かない?」

「はい、ぜひ! 行きましょう!」

 綾女と留衣さんは売店へと向かった。シークアイランドまでどれくらいかかるのだろうか。

 待っている間、結構暇になりそうだな。

 

 すると、薫さんの様子がおかしいことに気が付いた。顔を青くし何やらうずくまっている。

「薫さん、どうかしたんですか?」

 俺が尋ねると、

「酔った……」

 と、端的に薫さんが返答した。

 

「え? 酔ったって……」

 まだ乗ってから三分も経っていない。もう酔ってしまったのか。

「ちょっと、ここでセーブしてログアウトするわね。着いたら教えてちょうだい」

 何と薫さんは船内でログアウトしてしまった。

「まじか……」

 部屋に残ったのは俺と瑠夏さんのみとなった。

 瑠夏さんは窓の景色を眺めていたが腕を大きく伸ばし、「ふわぁ……」とあくびをした。

「暇ねぇ。ねぇ、優馬くん、一緒に看板に行かない?」

「ええ、良いですよ」

 瑠夏さんの誘いを快く受け入れ、俺たちは看板へと向かう。

 部屋から出て、近くにある階段を登るとすぐに看板に出ることができた。

 

「うわ……!」

 眼に映るのはあたり一面の水色の海。複数のイルカが泳いでいるのが見えた。

 本物のような潮風が吹き込み、俺の気分を高揚させた。

 本当に冒険している雰囲気になる。

 

「いやー、すごい眺めだな。ミチル!」

「うふふふ。そうね」

 俺と瑠夏さんのいる反対側から声が聞こえてきた。

 俺たちと同じ乗客の人だろうか。振り向くと、

 

「なぁ、ミチル。誰もいないしいいだろ?」

「もう……しょうがないわね……」

 ヴィネと踊り子の衣装を着た女性の冒険者が熱い口づけをしているのが見えた。

 黒いツノ、尻尾を生やし、露出の多い黒いドレスを纏った少女――あれはヴィネだ。間違いない。

 

 ヴィネの方を凝視しているとステータスが見えた。

 

 ――ヴィネ LEVEL30 体力1000 魔力250

 

 最初に会った時はレベル15だったのが倍にまでレベルが上がっている。

「ヴィ、ヴィネ……」

 戦慄しながらポツリと呟くと、俺の声が聞こえてしまったのかヴィネがキスをやめ、こちらの方を向いた。

 

「お、お前はあの時の……」

 ヴィネが俺のことを睨んだ。臨戦体型に入ったのか、ヴィネの体から黒いオーラのようなものが浮かんできた。

 

「ちょっと、優馬くん。何なの、あの子?」

 そう言えば、瑠夏さんはあの時いなかった。ヴィネと会うのはこれが初めてとなる。

 

「あいつはヴィネっていう魔王の手先です。あいつに俺たちは全滅させられそうになりました」

 すると、ヴィネとキスをしていた冒険者が俺を指差した。

 

「あれがヴィネちゃんが前に言っていた恐ろしい冒険者? ってか彼、すごい格好してるね」

「ああ、そうだ。奴は我の身体を弄んできた……」

 まるで親の仇のように俺を睨むヴィネ。

「ちょっと、優馬くん、あの子に何したの?」

 瑠夏さんはジト目で何をしたか訊いてきた。弄んだって……あながち間違ってないかもしれないが。

「いや、そんなやばいことはしてませんよ……」

 それにしてもヴィネと一緒にいる冒険者、未知瑠さんにそっくりだな。

 その冒険者を観察しているとステータスが出てきた。

 

 ーーNAME:ミチル JOB:踊り子 武器:なし SKILL:流麗なる舞 LEVEL:20

 

 いや、やっぱりこれ未知瑠さんなんじゃないか? 姿、形がクリソツである。名前も一緒だし。

 

「あの……もしかして未知瑠さんですか?」

「もしかして、優馬くん?」

 俺が訊くと未知瑠さんはパッチリと大きく目を開けた。

 俺のことに気が付いたようであった。

 

「そうです。やっぱり未知瑠さんでしたか。どうしてヴィネと一緒に?」

「色々合ってね。それよりも優馬くんこそ、何でそんな格好でプレイしてるの?」

「そりゃあ……職業が変質者なもんで服を着ようとしても着れないんです」

「そ、そうなんだ……」

 未知瑠さんは口に手を当て、プルプルと身体を震わせた。笑いを堪えているのが一目で分かる。

 

「ミチル! こいつらをやっつけるぞ!」

「えー!? 一応、私の後輩だからあんまり戦いたくないんだよね」

 ヴィネの申し出に困ったような表情をする未知瑠さんであった。こっちにはヴィネよりもレベルが高い瑠夏さんがいるものの、相手は二人。

 しかも現在の俺のレベルは7である。俺はほとんど戦力にならないだろう。

 しかし、未知瑠さんは戦うことに消極的だ。いいぞ、そのまま断れ。

 そうすれば一対二。いや、実質一対一になるか。

 

「何? やろうっていうの?」

 身の危険を感じたのか瑠夏さんは弓と矢を取り出す。今こそ、『天才ゲーマーR』の力が発揮されるのか。

 

 すると突如、船がグラグラと激しく揺れ出した。

 

「うわ! ちょっと、何なの!?」

 体勢を崩しかけた瑠夏さんは手すりに掴まった。

 

「あ、あれは……!」

 ヴィネが左方向を指差し、視線を移すと某サメ映画に出て着そうなくらいのサイズの大きなサメが船と平行するかの如く泳いでいた。

 ちょくちょく船を体当たりしては船を揺らしてくる。

 捲き上る水しぶきのせいで顔を濡らしてしまった。

「あれは……サメ?」

 俺がポツリと呟くと、瑠夏さんが俺の横にやってきた。

「そう言えば、公式サイトに船には低確率でサメが襲ってくることがあるって書いてあったわ。確率的に2パーセントらしいけど、まさかこんなところで引いちゃうとわね」

 瑠夏さんが説明すると、弓構えを取る。

 しっかりと的(サメ)を狙い、弦を引く。

 

「スキル発動! 『サンダーアロー』ーー!!!」

 雷を帯びた矢がサメに向かって飛んでいく。

 矢はサメに身体に直撃するも身体に突き刺さることなく、あっけなく弾かれてしまった。

 

「嘘……! 全く効いてないの?」

 俺はサメを凝視し、ステータスを確認した。

 

 ――バイオレンスシャーク LEVEL45 体力1500 魔力0

 

 名前からしてやばそうなモンスターである。一応、瑠夏さんが放った攻撃は効いているようで、バイオレンスシャークに表示されている体力ゲージが少し削れていた。

 

「小癪なサメめ! これでも喰らうが良い!」

 ドス黒いオーラを纏ったヴィネが右手で漆黒のエネルギー弾のようなものを作り出す。

 

「喰らえ! 『マジックバレット』!」

 ヴィネの攻撃は直撃した。爆炎が巻き起こり、煙が消えるとやはりあまり体力が減らないようでバイオレンスシャークは悠々と泳いでいた。

 

「おい、ヴィネ。一時休戦だ。あいつを倒すのを手伝ってくれ」

 俺が共闘を持ちかけると、ヴィネが腕を組みながらニヤッと微笑んだ。

「よかろう。貴様らを倒すのはあのサメの後にしてやる」

 

 こうしてヴィネと共闘することになったが、魔王の城までの道のりは予想よりも遠そうである。



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サメをぶっ倒せ!

「マジックバレット! マジックバレット! マジックバレット!」

 再びヴィネは何発も連続でバイオレンスシャークへ魔弾を打ち込むが、あまりサメの体力は減らなかった。

 ヴィネが魔法を打ち込むたびに水しぶきが顔や身体を濡らす。

 奴は勢いよく船に体当たりしてきては、グラグラと船を揺らし、こちらの足場を悪くする。

 

「本当、厄介なサメね!」

 瑠夏さんは背中の矢筒から一本の矢を取り出した。

 ゆっくりと弓を引き、鮫に狙いを定める。

 鮮やかに行われた射法はまさに手練れのよう。瑠夏さんは弓道の経験があるのだろうか。

 

「サイクロンアロー!」

 矢はジャイロ回転しながら鮫に飛んでいった。一直線に矢はサメへと向かい、見事、奴の身体を貫き、四分の一ほど体力を削った。

 

「おお!」

 感激した俺は感嘆の声を叫んだ。瑠夏さんはなぜか続けて攻撃をしようとはせず、じっとサメの様子を伺っていた。

「大丈夫ですか? 瑠夏さん」

「うん。さっきのスキルでMPを使いすぎちゃって。少しの間、スキルは使えそうにないわね」

「大丈夫ですよ。だいぶ、サメの体力も減らせましたし」

 しかし、俺の予想はデパ地下で売られているスイーツよりもはるかに甘いものであると思い知ることになる。

 海の奥深くにサメは潜り、姿をくらました。

「あいつ、どこに行ったんだ?」

 注意深く、水面を観察していると、突然大きな水しぶきが巻き起こった。

 大量の降り注いだ水に驚き、俺は一瞬目を瞑る。

 ゆっくりと目を開けると、鋭い歯が並んでいる大きな口が目の前にある。

 

 あ、オワタ。バクッとサメは俺の身体を吞み込もうとしている。

 

「しゃがんで!」

 瑠夏さんの声が聞こえた。反射的に頭を下げた。

 サメは俺の真上を通り抜けて行った後、船の手すりを飛び越え、再び海の中へと舞い戻る。

 

 ――ドクン、ドクン。

 

 心臓が大きく振動している。もし避けなかったら確実にゲームオーバーであった。

 まさか、直接俺たちを攻撃しに来るとは。まさにバイオレンスなシャークである。

 

「大丈夫? 優馬くん」

 未知瑠さんが心配そうに俺のもとへ駆け寄ってきた。

 

「平気です。それよりも、未知瑠さん。未知瑠さんが持っているスキルはどんな能力なんですか?」

 俺は未知瑠さんのスキルを聞いてみることにした。ヴィネや瑠夏さんよりレベルが低いがレベルは二十。

 持っているスキル次第では立派な戦力となるだろう。

 

「私のスキルは自分のフィジカルを強化するスキルだよ。あと、味方の魔法を強化するスキルも持ってるんだ」

「魔法の強化……なら、ヴィネと相性が良さそうですね」

 俺がそう呟くとヴィネが「ふふん」と上機嫌に鼻を鳴らした。

「そのとおりだ。我とミチルは相性バッチリである」

「なぁ、ヴィネ。お前のパワーアップした魔法ならあのサメを倒せるか」

「愚問だな。余裕だ」

 腕を組んで自信満々に答えるヴィネ。赤い双眸を見つめると、闘志が迸っているのが分かった。

「そうか、なら俺と瑠夏さんで隙を作る。隙ができたらお前の全力の魔法であのサメをぶっ倒せ」

「ほう、任せてもいいのだな?」

 

 ひしひしとプレッシャーが伝わってきた。

 全く――たかだかゲームだってのに、面白くなってきたじゃないか。

 

「おう。任せてくれ」

「話はまとまったようね」

 瑠夏さんが俺の肩に手を置いて来た。

「瑠夏さん、あのサメの隙を作って欲しいんですけど、協力してもらえますか」

「役割がちょっと不服だけど……まぁ、いいわ。美味しいところはその魔族の子に上げましょう。私のスキルであのサメの動きを止めてやろうじゃないの」

 

 ヴィネと同様、瑠夏さんの目に闘志が宿る。背中の矢筒から矢を取り、狙いを定めた。

 

 しかし、先ほどまで船と並んで泳いでいたサメの姿がまたもや水中へと消えた。深いところへダイビングしたようである。どっから襲ってくるか。

 俺は神経を研ぎ澄ませた。

 そして、次の瞬間。背後から大きな水柱とともに、サメが俺たちの背後から飛び出して来た。

 

「な……」

 意表をつかれたのか、瑠夏さんは驚愕の表情をする。大きなサメの口は瑠夏さんの身体を余すことなく飲み込もうとしていた。

「危ない!」

 

 俺は反射的に瑠夏さんを突き飛ばし、強引にサメの攻撃を回避させた。サメは俺にまっすぐ向かってくる。

 俺はゲームオーバーになるがしょうがない。

 

 そう悟った時であった。

 

「スキル発動! 『バーニングスピアー』ーーー!」

 

 聞き覚えのある声が耳に届く。俺の横を炎を纏った人物が通り過ぎる。

 赤とオレンジの色が入り混じったメラメラと光る炎を纏ったランスをサメが鋭い歯で齧る。

「ぐぐぐ……!」

 スキルを発動させたのは留衣さんであった。美しい顔立ちの留衣さんはサメと力比べをし、苦悶に満ちた表情をしている……ちょっとエロい表情である。

 

「お、お姉ちゃん!」

 突如、参上した留衣さんに瑠夏さんは驚いたように声を上げた。

「さっき、船が揺れたから看板に駆けつけてみたの。こいつを倒すの手伝って上げるわ! おら!」

 留衣さんはブンとランスを振り回すと、サメが宙を舞った。

 ボチャンという音とももに再び水中へと戻った。

 

「すごいね。あの二人」

 俺の横にやってきた綾女がポツリとそう呟いた。綾女も看板に来てくれたようである。

「ああ、さすがにレベルが高いだけあるな」

 この数日間、留衣さんと瑠夏さんはそうとうこのゲームをプレイしたのだろう。

 

 ……大学の授業を犠牲にして。

 

「私達にも何かできることないかな?」

 俺と同じくらいのレベルである綾女が訊いてきた。役に立とうとするその志は立派であるが、バイオレンスシャークのレベルは45。

 

 ヴィネに啖呵を切っておいて実に情けない話であるがレベル10にも満たない俺たちが出向いても足を引っ張るだけであろう。

 

「よしておけ。ここは留衣さんと瑠夏さんの任せよう」

 すると、一瞬悲しそうな表情を見せたが、納得したかのような表情へと変わっていった。

 

「うん、そうだね」

 

「サンダーアロー! サンダーアロー! サンダーアロー!」

 瑠夏さんはトチ狂ったかのようにサメの近くの水中に矢を次々と放つ。

 放たれた矢には雷のようなものがほとばしっており、矢が水面に触れるたびに『バチバチ』と感電したかのような音が聞こえてくる。

 

「グオオオオオ!」

 サメは苦しそうに雄叫びを上げた。水面からひょっこりと顔を出したまま動きを止め、無防備な状態となった。

 

「ちょっと! サメの動きを止めたわよ! 早く魔法を放って!」

 瑠夏さんはヴィネに今すぐ魔法を使うように促す。

 

 ちなみにヴィネはというと、

「うふ……ミチル。いいぞ。もっとだ……揉んでくれ」

「うふふふ……ヴィネちゃんったら♡」

 未知瑠さんとが抱き合った状態でお互いの胸や尻を触りあってはキスを幾度となく繰り返すという百合に満ちた世界へと没入していた。

 

 お互い、恍惚に満ちた表情で上(おっぱい)と下(おしり)の、そして大きいのや小さい、それぞれの双丘を揉んで悦に浸っている二人は百合百合しく、それはなんとも言えぬ、怪しい色気(エロス)を醸し出している。

 

「ねぇ、優馬くん。あれ、もしかして未知瑠さん? それとあの子、前に始まりの森であったヴィネって子だよね?」

 綾女はすぐにヴィネと、その抱き合ってる人物が未知瑠さんであることに気づいた。

「そうだ。この船に乗ってたらしくて、偶然ここで会ったんだ。一緒にあのサメをぶっ倒すことに協力してくれることになった」

 

「ちょっと! 何、イチャイチャしてるのあんた達! 早く攻撃して!」

 瑠夏さんが顔を真っ赤にさせブチ切れながら叫ぶと、二人は百合百合フィールドを解き、気怠そうにヴィネはサメの方を見つめた。

 ヴィネはいいところを邪魔されて不服のようである。

 未知瑠さんも物足りなさそうな顔をしていた。

 

「分かった、分かった。今すぐ、そのサメをぶっ倒してやろう」

 両腕を上げたヴィネは先ほど打ったものよりもさらに大きなサイズの黒いエネルギー弾のようなものを作り出した。

 密度の濃い、ドス黒いエネルギー弾は実にかっこよく、厨二病をそそられた。

「す、すごい……」

 不意に自分の口から感想が溢れた。レベルの低い俺でも分かった。この攻撃はかなりの威力となりうるもの。おそらくこれ一発でサメを倒せるだろう。

 

「ぐおお……オオオオおおぉぉ!」

 感電の束縛から強引に脱出したサメは再び水中を飛び出し、船に向かって来た。

 強大な口がヴィネへと襲いかかる。

「危ないヴィネ! 避けて」

 心配そうに未知瑠さんが叫んだ。

 しかし、ヴィネはそんな未知瑠さんの心配を他所(よそ)に回避せず、真っ向から魔法を繰り出した。

「安心しろ。未知瑠。くらえサメ公、『マジックランチャー』!」

 球体の黒いエネルギー弾から直線上のぶっといビームが発射された。

 その黒いビームは見る見るうちにサメの体全体を飲み込み、骨すら残さず消滅させてしまった。

 やがてビームは空の彼方まで飛んでいった。

 

「ふぅ……まぁ、こんなもんだな」

 

 さすがに疲れたのか、ヴィネは片膝をついた。

「ヴィネちゃん、大丈夫?」

「ああ、心配かけてすまないなミチル。大丈夫だ」

 差し伸べたミチルの手を掴むヴィネ。この二人はまるで親友や恋人のような何か硬い絆で結ばれているようであった。

 

「ヴィネ。あんた、結構やるのね」

 瑠夏さんはバイオレンスシャークにトドメを刺したヴィネの力を認めたようであった。

「貴様もな。そう言えばまだ名を聞いてなかったな。貴様、名はなんと申すのだ?」

「瑠夏よ。それよりも、どうする? ここで今、私と戦う?」

「いや、今は気分が乗らぬ。遠慮しておこう。いずれあの魔王の城でやり合おう」

 

 ヴィネは前方を指差した。その先には急斜面の山がそびえ立っており、その頂上に黒いお城のような建物が見えた。

 あれが――魔王のお城か。

 

「そう、分かったわ」

「では行くぞ。ミチル。我に掴まるのだ」

 すると、『バサッ』という音と共に黒い禍々しい羽が出てきた。

 

 羽をゆっくりと羽ばたかせるとヴィネの身体が中に浮く。

 そんなヴィネの腰に未知瑠さんはしがみついた。

 

「ミチル、お前、結構重いな」

「ひどーい!」

 ヴィネの言葉に抗議する未知瑠さん。すると、未知瑠さんはぐいっと、

顔を俺たちの方へと向けた。

 

「綾女ちゃん、優馬くん。次にあった時は敵同士だから、倒しちゃっても恨まないでね! それじゃ、バイバーン!」

 そう言い残すと、ヴィネと未知瑠は魔王の城へと向かって飛んでいった。

 

「未知瑠ちゃんとヴィネちゃんか……思わぬ強敵が現れたね、瑠夏」

「ええ、でも絶対に倒してやるわ。そして、魔王を倒して豪華商品ゲットよ!」

 

 ヴィネの力にも臆することなく、相変わらず魔王を倒すことに闘志を燃やす瑠夏さんだった。

 

 すると、軽快なBGMとともにアナウンスが流れた。

「まもなく、シークアイランドに到着します。お降りの方はご準備をお願いします」

 

 準備を整え、船から降りる俺たち。いよいよ、これから魔王の城を目指すのである。

 果たして、無事に魔王の城まで辿り着くことができるのか。

 俺たちの冒険はまだまだ続く。



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もう一人の変質者

「それじゃ行きましょうか」

 留衣さんと瑠夏さんが先頭になり、俺たちパーティは魔王の城へと向かい歩を進めた。

 船から降りた俺たちはいよいよシークアイランドへと足を踏み入れる。

 船酔いで一時的にログアウトしていた薫さんも、到着後は再びこのビーストファンタジーの世界へとログインした。

 

 留衣さんと瑠夏さんはマップを確認しながら歩いていく。

 海辺を通り過ぎると、いつの間にか深い森の中へと入っていった。

 ずんずんと俺たちは勾配の大きい傾斜地のような道を進んでいく。

 立ち並んでいるのは沢山の大きな木々と雑草であるが、森の中はちょうど人が一人通れるように木と木の間が間隔を開けて生えており、一方通行となっていた。

 また、木に生えている葉によって、日差しが遮られ、森の中は薄暗く、なんとも言えない不気味な雰囲気が立ち込めていた。

 

 ――ガサガサ

 

 突如、草むらの中が動いた。草むらから現れたのはトラのようなモンスター。

 ただ、普通のトラと違うのは毛並みの大半が赤い体毛で形成されていること。

 

 じっとそのトラを見つめていると、奴のステータスが表示された。

 

 ――レッドタイガー LEVEL30 体力800 魔力100

 

「お姉ちゃん! モンスターだ! 戦おう!」

「ええ、そうね!」

 瑠夏さんと留衣さんとレッドタイガーを見るや否や、すぐさま戦闘態勢へと移行した。

 その様子に気づいてか、レッドタイガーは牙を剥き出しにし、「グルル……」と唸った。

 次の瞬間、奴は大きく上に飛び上がった。

「来るよ! お姉ちゃん!」

「ええ!」

 留衣さんが上空から降り注ぐレッドタイガーの引っかき攻撃を避けた。

 紙一重で避ける姿はとてもカッコ良かった。

「スキル発動! 『フレイムスピア』!」

 炎を纏った槍(ランス)をレッドタイガーにぶつけた。

 苦しげな表情で奴は後ろへと飛っとび、体力ゲージが三分の一ほど減ったのが確認できた。

 

「逃がさないわ! 『トラッキングアロー』!」

 三本ほど瑠夏さんが矢を放った。身の危険を察知したのか、レッドタイガーは慌てて矢から距離を取るが、矢はまるで意思を持っているかのように軌道を変え、奴を追尾する。

 かっけぇな。あの技。瑠夏さん、こんなスキルも持っていたのか。

 逃げ続けていたレッドタイガーであったが、体力がなくなったのか奴は動きを止めた。

 グサグサグサ。

 

 三本の矢はレッドタイガーの中に突き刺さる。

 レッドタイガーはバタンと目を瞑って倒れた。苦しそうな表情をしていて、何だか可哀想である。動物保護団体が見ていたら激怒しそうだ。俺は幾ばくか心を痛めた。

 

「やった! ナイス、瑠夏!」

「お姉ちゃんも良い攻撃だったよ!」

 瑠夏さんと留衣さんはハイタッチを決めた。さすがは姉妹。戦闘も非常に息ピッタリであった。

「やるわね。二人とも。この調子でお願いするわ」

 薫さんは二人に賞賛の声を送る。妙に上から目線であったが、薫さんは特段何もしていない。まぁ、それは俺と綾女もなのだが。

「ありがとうございます。それじゃ、進みましょうか」

 

 その後もパイオゴリラだの、アカシックファンキーだの変な上、妙にレベルが高いモンスターが俺たちの行く手を阻もうと現れたがその都度、留衣さんと瑠夏さんが倒してくれた。

 

 そんな寄生プレイの結果、俺と綾女そして薫さんは何もしていないのに、レベル15まで上がった。

 

 やがて、勾配の大きかった道から徐々に歩きやすい平らな道へと変わっていった。

「もうすぐ森を抜けそうですね」

 留衣さんはマップを確認しながらそう呟いた。

「割と簡単につきそうね。もう直ぐ、洞窟に到着するわ。洞窟を通り抜ければ魔王の城よ」

 瑠夏さんの説明によると、洞窟を通る必要があるらしい。洞窟か。なんだかゲームっぽいな。まぁ、ゲームなのだが。

「ん? みなさん! あれ見てください!」

 綾女が突如、前の方向を指差した。何者かが俺たちを待ち構えるように立っていた。

 それも二人。

 

「これは気をつけたほうが良さそうね。よし!」

 薫さんが持っている杖を前に掲げた。

「ちょっと、薫さん?」

 何をするつもりですか? そう俺が聞く間も無く、

「エクスプローーーーーージョン!!!」

 

 標的二人に対し、スキルをぶっこんだ。

 轟音とともに強烈な爆炎が待ち構えるように立っている二人に降り注ぐと、爆風が立ち込め、凄まじさのあまり思わず顔をしかめた。

 

「すごい攻撃力……私のスキルより攻撃力高いかも」

 薫さんのスキルを目の当たりにした瑠夏さんがそう評した。レベル的には瑠夏さんの方が圧倒的に高いにも関わらず、瑠夏さんのスキルの威力に匹敵するらしい。

 薫さんはとんでもない職業を引いたのしれない。

 

 煙が晴れると、待ち構えていた二人は何事もないように立っていた。

 

「嘘……全然効いてなくないですか?」

 綾女は震えた声で呟いた。留衣さんが「そうね」と相槌を打つと、

「ここは慎重に近づこう」

 瑠夏さんが皆にそう言い聞かせ、ゆっくりと向こうにいる二人に近づいた。

 

「五人か」

 俺たちが出会(でくわ)したのは俺たちのパーティ人数を数えた身長が高めで、茶色を基調とした何かの革で出来た服を着た男と、

「見て見て、お兄さん! すごい美人の人ばっかりだ。えへへへ……」

 気色の悪い笑みを浮かべた海のような水色の髪をした小柄な少女であった。

 男はともかく、少女の姿を見て俺は驚いた。

 

「あ! お兄さん、あの人も『私と同じような』格好だ! きっと私と同じ職業だよ!」

 水色の髪をした少女が俺を指差す。

「お前、毎回思うんだがその格好見られて恥ずかしくないのか? しかも男にさ……」

 呆れたように男はその少女に疑問をぶつけた。

 少女が男に対し、『お兄さん』と言っているのを見ると、二人は兄妹だろうか。

 

「まぁ、ちょっと恥ずかしいけどゲームだし」

 少女は見せびらかすように胸を張った。そんな少女の姿を男は恥ずかしそうに目を背けた。

「ま、まぁそうだがよ」

「何? もしかして私のエッチな姿みて発情した? 全く、お兄さんは相変わらずエッチだなぁ。自分の妹に飽き足らず私の身体まで。なら、気持ち良くさせてあげるよ。えへへへ……」

 ん? なんか二人の話を聞いてると、ますますこの二人の関係性が分からなくなったぞ。

 その少女が変態的な笑みを浮かべると、ゲーム画面を素早く操作した。

 

「スキル発動、『手淫』」

 少女がスキル名を唱えると、突如いやらしい手動きをさせた。

 

「う……! やめろ、アオイ」

 どうやら少女の名はアオイというらしい。男は顔を赤くさせ、股間を押さえ込んだ。

 

「な、なんかやばい人と会っちゃたわね……」

「そうですね。どうしましょう……」

 薫さんたちは二人の様子を見て、ドン引きしていた。

 

 アオイという少女とはいうと、ほぼ全裸の格好で申し訳程度に乳首と割れ目の部分を葉っぱで隠していた。

 

 俺はアオイという少女を見つめ、ステータスを確認することにした。

 

 ーーNAME:アオイ JOB:変質者 武器:性欲 SKILL:手淫 LEVEL:50

 

「レベル50? しかも、俺と同じ変質者か!」

「優馬くん、そこだけ聞くと自分を変質者って公言している人みたいだね」

「……」

 ごもっともだと思い、俺は何も言えず黙りこくった。すると、アオイは俺をジロッと観察した。

「そうだよ。ふーん、レベル15か。それにしても君もなかなか良さそうな身体してるね。えへへへ……」

 

 恍惚に満ちたアオイの表情を見て、俺はすぐさま悟った。

 こいつはやばい奴であると。多分、頭のネジがぶっ飛んでいるのだと思う。きっと超が付くほどのド変態であろう。

 

「俺たちは魔王の城に行きたいだけだ。ここを黙って通すつもりはあるか?」

 すると、アオイとともにいる男がどこからか某特撮で見かけるような変身ベルトのようなものを取り出した。

 それは金属でできており、男の腹に当たると、ベルトが伸び、自動的に男の腰回りに巻きついた。

「ない。俺たちはここにやってくる冒険者を倒し、経験値を増やしているんだ。ついでにアイテムもいただく」

 

「なるほど、PKってわけね……」

「瑠夏さん、PKってプレイヤーキラーのことですか?」

 俺がそう尋ねると瑠夏さんが「ええ」と頷いた。

「そうよ。私も何度かあったことがあるわ。しかも、単純にアイテムを奪うだけじゃなく、私の身体を弄ぼうとしたのよ! まぁ、返り討ちにしたけど。けど、まさかこんなところにまでいるとわね」

 さすが瑠夏さん、いや天才ゲーマーRである。

「あんたらも豪華特典が狙いなんだろ? 悪いがそれは俺たちがいただく。あんたらを倒したら魔王の城へと乗り込む。ここで俺たちの経験値になってもらうぞ」

 俺は男のステータスを確認した。

 

 ーーNAME:シンヤ JOB:仮面狩人(かめんハンター) 武器:イベントカード SKILL:トランスフォーム LEVEL:0

 

「か、仮面ハンター?」

 すると、留衣さんがプルプルと身体を震わせて、戦慄するかのようにシンヤという男を見つめた。

 

「か、仮面ハンターって一万分の一で出るという伝説の職業じゃ……」

 いや、それよりもどう考えてもこの職業あれだろ。

 絶対、あれを意識してるだろう。

 

「悪いがここであんたらは全員、ゲームオーバーだ。やるぞ、アオイ!」

「まぁ、仕方ないか。豪華特典の為だしね。豪華特典、旅行券とかだったらいいな。旅行先でカナエとあんなことやこんなことをえへへへ……」

 アオイは何やら卑猥な妄想をしたのか、不気味に笑い出した。

 

「お姉ちゃん! 相手はたったの二人! やってやろう!」

「そ、そうね! 薫さん達は少し離れてください!」

 留衣さんに支持された俺たちは四人から距離を取った。

 すると、シンヤという男は腰につけているホルスターからカードを一枚取り出し、変身ベルトに差し込んだ。

 

『ガチッと! ガッチーン! ビルドアーーープ! カマ、カマ、我オカマ!』

 そんな音声がベルトから流れた。もうあれだ。

 楽しい時を作る企業、バ○ダイに訴えられてしまえ。

 

 すると、シンヤの顔に突如、白い不気味な仮面が装着され、手には大きな鎌が出現。

 さらにステータスに変化が起こった。

 

 ーーNAME:シンヤ JOB:仮面狩人(かめんハンター) 武器:イベントカード SKILL:トランスフォーム LEVEL:45

 

「レ、レベルが上がりやがった」

「え? 優馬くん、本当? うわ! 本当だ!」

 俺の呟きに疑問を感じた綾女はシンヤのステータスを確認したようである。

 レベル0からレベル45へと進化(エボリューション)した。

 

「さぁ、地獄を楽しみなぁ!」

 シンヤはブンブンと鎌を振り回し、痛いセリフを吐く。いや、意識しすぎだろう。

「お姉ちゃん! 気をつけて!」

「ええ、任せて!」

 留衣さんが槍を力強く握り、シンヤに対峙するように構えた。レベル的には留衣さんの方が10くらい低いが大丈夫だろうか。

 

「それじゃ、私が他の人たち相手だね」

 アオイが俺たちに向かって妖艶な笑みを差し向けた。

 それにしても、無駄な毛が一切生えていないつるっつるのその美しい身体はどこか現実離れしているような雰囲気を持っていた。

「あんたみたいな変態は私、一人で十分よ! スキル発動! 『ポイズンアロー』!」

 紫色に発光した弓がアオイに向かって飛んでいった。

 ネーミング的におそらく毒効果がある弓なのだろうか。

 瑠夏さんが放った弓の速度はかなりのものであると思った。しかし、

「よっと」

 

 驚くべきことにアオイは自分の立っている場所から一歩も動くことなく、右手で弓を掴んだ。

「嘘!?」

 瑠夏さんは驚愕の表情をした。驚くのも無理はない。普通はあんなの絶対に取れっこない。

「えい!」

 掴んだ弓をそのまま瑠夏さんに投げた。

「く……!」

 アオイが投げた弓は瑠夏さんの肩へと刺さった。

「瑠夏さん! くそ、よくも瑠夏さんを! スキル発動! 『高速移動』!」

 綾女はすかさずスキルを発動し、高速移動でアオイの背後に回り込み、回し蹴りをした。

 しかし、アオイはそれを大きくジャンプすることで避けた。

 綾女の力強い蹴りは空を切る。アオイは空中で3回程回り、綺麗な水色の髪がなびいた。

 

「無駄な力が入ってるね。もっと楽にしないと。『追い剥ぎ』っと」

 ポンと軽く綾女の身体に触れた。すると、

 

「いやあああああああああ!!!」

 

 パーンと綾女が着ていた忍者服が弾け飛んだ。あっという間に綾女は一糸纏わぬ姿になった。

 

 控えめな大きさの胸とそこに乗っかっているピンク色の小さな突起物。

 若くて張りのある素肌にうっすらとわずかに茂っている毛と割れ目。

 それはアバターとは思えないほど、リアルな綾女の全裸であった。

 やはりこのゲームのエロのこだわりはすごい。

 一体、どうやってこんな正確なアバターを作っているのだろうか。

 

「えへへへ……結構、いい身体してるね」

 アオイは自分の指をずぶずぶと綾女の割れ目へと突っ込んだ。綾女は快楽に陥ったのか、だらしなく涎を垂らし始めた。

「ああ……ひゅ、ひゅごい。ひほいい……」

「あれあれ? 少し刺激が強すぎたかな」

 アオイはペロペロと綾女の乳首を舐め始めた。舐める度に綾女の身体が『びくんびくん』と痙攣する。

 

 俺はこの異様な光景を見て、不覚にも興奮してしまっていた。

 他の人も同じなのか、全員が綾女とアオイの行為に注目している。

 戦闘中だった留衣さんとシンヤまで二人を凝視していた。

 

「よし、そろそろイかせてあげるね」

 アオイは綾女を地面に寝かせると、グッと綾女の又を開かせた。

 とても生々しく瑞々しい綾女の割れ目の中身が見え、興奮度が跳ね上がる。

 そして、アオイは割れ目を包み隠す役目をしていた葉っぱを取る。

 なんと、ツルッツルであった。アオイの下の毛はツルッツル。

 アオイも股を開き、綾女の割れ目と自身の割れ目を結合させる。

 ゆっくりとアオイは腰を動かした。

「あん……き、気持ち良い……」

 綾女が顔を赤くさせ、徐々に息を切らし始めた。

「うへへ……わ、私も気持ち良くなってきちゃった……」

 アオイも悦に浸ったような表情でだんだんと腰を振る速度を速めていく。接合部分から『グチュ、グチュ』という激しい水音が鳴り響いてくる。

 すると、綾女の体力ゲージが減っていることに気が付いた。

 

 止めないと。そう思ったのだが身体が動かない。 

 いや、正確には動かしたくないと言った方が正しいか。

 

 二人のレズセックスはとても淫らで美しく、記憶のメモリの中に永久に保存しておきたいと思ってしまった。

 二人の合体によって接合部分から滴り落ちてくる雫は地面を濡らし、雑草たちの栄養へと変わる。可能であれば今この瞬間だけ、俺はあの雑草になりたい。

 

「あん! らめ、そこ……ひゃ!」

「うふふふ……もうそろそろ限界かな?」

 綾女とアオイ以外の者は二人が織りなす行為を見入っていた。

 

 やがて、綾女は絶頂を迎えた。

「やばい、イく! あ……あ……あ……あ……」

 まるで壊れたスプリンクラーのように綾女の性器(まんこ)から『ジョー』と大量の潮が吹いた。

「いや……だめ、止まらない……」

「もう、イくの早いよ」

 アオイは綾女から勢いよく吹き出る潮を顔面で浴びながら、ペロペロと割れ目を舐めた。

 綾女の身体からキラキラと光る粒子が出始めると、綾女の身体が半透明になり始めた。

「お、おい! 綾女!」

 呼び止める間も無く、やがて体力ゲージが0になると、綾女の身体は完全に姿を消した。

 

「ちぇ……良いところだったのに」

 不服そうな表情でアオイは立ち上がった。

「おい、綾女はどうしたんだ?」

 俺が訊くとアオイはこちらを一瞥した。彼女の顔はべっとりと綾女から出た液で濡れており、とても淫らであった。

「あの子はゲームオーバーになったよ……それよりもまだムラムラが収まらないし、君ちょっと相手してよ」

 獲物を狙うようなアオイの蒼い双眸が怪しく光った。

「お兄さん。私、この人と相手して良いよね?」

「ふん、勝手にしろ」

 アオイが訊くと、シンヤはぶっきらぼうに返答した。

「あれれ〜? 嫉妬してるのかな? あとでいつもみたいにカナエと私の3Pでお兄さんの慰めてあげるから、怒んないでよ」

「怒ってないし……ってか良いわ! 3Pとか! お前がヤりたいだけだろ」

 この男、真面目そうな顔して3Pとかヤッてんのか。

 

 しかも話を訊く限り、自分の妹と――なんてやろうだ。

 俺は二人が話している隙に戦闘画面を操作する。

「スキル発動、『痴漢』……」

 二人に聞こえないよう、ポツリと呟いた。

 

 ――対象者、アオイ 次の中から陵辱する部位を選んでください。『胸』『尻』『性器』

 

 初めて使った時は選択肢が『胸』と『尻』の二つだけだったのに対し、レベルが上昇したせいなのか、今回は『性器』という選択肢が追加されている。

 

 三つの選択肢の中から俺は胸を選んだ。見た所、アオイの胸は小さめである。

 何かで、貧乳は感じやすいとかなんとか聞いたことがある気がする。

 

 ――了解しました。存分にお楽しみください♡

 

 自動的に画面が閉じると、目の前に等身大のアオイの立体映像のようなものが現れた。

 

 アオイの立体映像の胸を弄ぶ。ベージュ色の乳首を重点的に攻めた。

 

「ひゃ! あぁん……」

「どうしたアオイ?」

 喘ぎ声を出したアオイにシンヤは異変を察知したようであった。

「胸がなんかムズムズする。多分、変質者の子が私を陵辱してるんだと思う……えへへへ、結構ドSな子みたい……」

「なんだと? あの野郎……」

 怒ったような声を出すとシンヤは鎌を俺の方へと向け、近づいてきた。

 あかん、一撃でも喰らったらゲームオーバーもありえるぞ。

 

 一方、陵辱されているアオイは快楽に満ちた表情のままこちらを見つめ、

「ユウマくんだっけ? どっちが真の『変質者』か勝負といこうか」

 そう宣言してきたのであった。




 今回の話では別の長編作品である『覗いた先にあるもの、それは妹』のキャラを二名ゲスト出演させていただきました。
 今回の話で登場したのはある日、部屋の覗き穴から妹の着替えを見てしまい、実の妹に抱いてはならぬ感情を抱いてしまった主人公、伊藤慎也(いとうしんや)と超絶変態美少女、清水葵(しみずあおい)です。

 『覗いた先にあるもの、それは妹』もぜひ読んで見てください。


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戦いの先にあるもの、それは変態の称号

「ちょっと待ってよ。私を忘れてない?」

 ゆっくりと俺に近づいてくるシンヤの元へ留衣さんが金色の髪をなびかせながらやってきた。

 

「そう言えば、まだ闘いの途中だったな」

 シンヤは持っている大きな鎌を留衣さんへと向ける。それに対抗するかのように留衣さんも手にしている槍(ランス)をシンヤに向けた。

 

「行くぞ」

「どっからでも」

 

 砂時計のように流れる沈黙の時間。そして、

「フレイムランス!」「デスラッシュ!」

 同時に聞こえてきた二人の声。

 

 武器と武器、金属と金属が激しくぶつかり合う音が戦いの狼煙(のろし)のように鳴り響く。

 

「ほう……なかなかやるな……」

「そっちもね!」

 二人は目にも止まらぬ速さで幾度となく攻撃を繰り返す。

 その度、激しい金属音が鳴り響く。

 

 キンキンキンキンキン!

 

 やがて、シンヤの体力ゲージがわずかに減っていたのが分かった。

「少しばかり本気を出すか……」

 そう言うと、シンヤは腰のホルスターから一枚の黒いカードを取り出した。

 変身ベルトにカードを差し込むと、「イベント、シールド」という電子音声が流れた。

 すると、シンヤが鎌を持っている反対の方の腕に盾が装着された。

 

「た、盾……!?」

 突然の防具の出現に留衣さんが戸惑いを感じたようである。

 

「どうした? 来ないならこっちから行くぞ!」

 果敢に留衣さんに対して攻撃を仕掛けていくシンヤ。一発、一発がダメージが大きそうな斬撃を留衣さんはランスで相殺させていった。

 

 キンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!

 

 先ほどよりも金属と金属がぶつかり合う音が激しくなった。

 

「く! 厄介な攻撃ね!」

 留衣さんは後ろへと下がり、シンヤから距離を取る。

 そして、

「スキル発動、『バーニングランス』!」

 身体全身に炎を纏った留衣さんはものすごいスピードでシンヤへと突っ込む。

 そんな留衣さんの攻撃に対し、シンヤは盾を掲げて、腰を落とし、防御態勢へと移行した。

「スキル発動、『パーフェクトシールド』!」

 

 キーーーーーーーーーーーーーン!

 

 耳が痛くなるような今日一番の激しい金属音があたり一面に鳴り響いた。

 

「う、嘘……!」

 シンヤが持っている盾によって、完全にスキルを防がれてしまった留衣さんは驚愕の表情を見せた。

 まさか、こんなにあっさりと防がれてしまうとは。

 

「これで終わりだ……」

 シンヤは鎌を持っている手に力を込めた。すると、その鎌の刃は突如、黒色に怪しく発光した。

「スキル発動、『ヘル・スラッシュ』!」

 鎌の激しい斬撃は鎧ごと留衣さんの身体を切り裂いた。

「うわ!」

 留衣さんははるか後方へと吹っ飛ばされてしまった。驚くべきことに地面には切り裂かれた跡が縦数メートルに渡って出来上がっていた。

 

「な、なんて攻撃だ……」

 自然とそんな感想が漏れた。はたして留衣さんは無事だろうか。

 まさか、もうゲームオーバーになっているのでは。

 俺は留衣さんの方へ目を向けると、留衣さんの体力ゲージが半分ほど減っていた。

 

「留衣さん、大丈夫ですか?」

「うん、平気……けど、さっきのは効いたよ」

 留衣さんは普段のおっとりとした様子からは考えられないほど、闘志に満ち溢れているような険しい表情をした。

 

 ゲーム画面を操作し、アイテムである回復用のポーションを取り出し、グビッと飲んだ。

 留衣さんの体力は瞬く間に全回復した。

 

「シンヤ君。ここからは本気で行くからね……覚悟はいい?」

「できてるよ」

 シンヤが返事をすると、留衣さんは腰を落とし、一気にシンヤへと向かって駆け出した。

「スキル発動、『アクセレイト』!」

 スキル名を唱えると一気に留衣さんの動きが加速した。目にも止まらぬ速さ――いや速すぎて影分身のような複数の残像が出来上がった。

 

 おそらくは綾女が使っていたスキル、『高速移動』よりも性能は上だろう。

 

「な……速い!」

 シンヤは留衣さんの速度に唖然としていた。無作為に鎌で斬撃を繰り出すが、その攻撃は留衣さんを捉えることはなく、虚しく空を切る。

 

「スキル発動、『サンダーランス』!」

 雷電を纏った槍(ランス)をシンヤに喰らわせる留衣さん。

「ぐあああ!」

 シンヤの身体に雷電が迸った。麻痺したかのように彼は動きを鈍らせた。

 見事に形成逆転したようである。

 

「はぁ……はぁ……ちょっとお兄さん、ピンチそうだね。助けに行かないと」

 スキルによって俺に胸をいじられているアオイは感じているかのように顔を赤くさせながらも、シンヤの助太刀しに行こうとした。

「させるか! 瑠夏さん、今のやつに攻撃お願いします」

「わ、分かったわ!」

 俺に胸を弄られ、動きが鈍っている今のアオイであれば、きっと攻撃が命中すると画策した。

「スキル発動、『サイクロンアロー』!」

 瑠夏さんは螺旋状に回転する矢をアオイに向かって打った。

 当たれ、当たれ、当たれ……

 

 心の中でそう願った。しかし、

「おっと」

 顔に命中しようとしていた矢をアオイは身体を逸らして躱した。

 なんという反射神経をしているんだ、この化け物は。

 

「今度はこっちから行くよ、ユウマくん」

 アオイは獲物を狙うような獰猛な瞳を差し向けると、一気に俺との距離を詰めた。

「う……!」

 サファイアのように煌めく青い双眸が俺を覗き込んだ。

 アオイはぺろっと股間を捲ると、「うへへ……」と変態的に微笑んだ。

 股間の亀頭が顔を出し、アオイとご対面となった。

「や、やめろ! おま……」

 止めるも間も無く、アオイは俺の肉棒に淡いピンク色の唇を近づけ、咥えた。

「ぐ……!」

 湿った粘性は俺の肉棒を包み込む。アオイは頬を凹ませ、裏筋を徹底的に舐めてきた。

「ああああ……!」

 気持ち良い。あまりに気持ちよすぎて頭が変になってしまいそうだ。

 

「うわ……」「優馬君……」

 瑠夏さんと薫さんは俺がフェラされている様子をドン引きしてような目で見ていた。

 恥ずかしい……でも、感じちゃう!

 くそ、この女。エロい表情でしゃぶりやがって。

 

 だが……。

 だが、それでも。

 

 薫さんがしてくれたフェラの方が遥かに気持ち良かった。それだけは確実に言える。

 

 俺はがっちりとアオイの頭を掴んだ。

「うおおおお! こんなもの……効くかぁ!」

 生殖本能によって深く沈んでしまった理性を無理やり引き上げ、アオイのフェラに抵抗した。

 自分の肉棒とペロペロと舐めているアオイの口を引き剥がす。

 

「ああ、ちょっと! 良いところだったのに……」

 アオイは非常に不服そうな表情をした。そんなにフェラがしたかったのか。

 なら、やっぱりしてもらうか……いや、そうじゃない。

 

 俺はガッチリとアオイに抱きついた。柑橘系の甘い香りが鼻腔をくすぐる。

 アオイの身体は形容しがたいほど、柔らかな印象を抱いた。

「え? ちょっと、何?」

 さすがにびっくりしたのか、アオイは驚いたような声を出した。

 

「瑠夏さん、薫さん! 俺ごと攻撃してください!」

「「「えええ!?」」」

 瑠夏さんと薫さん、そしてアオイは驚いたような声を出した。

 

 どうせこのまま魔王の城に付いて行っても、レベルが低い俺は大して役には立てない。

 ならば、ここでゲームオーバーになっても構わないと考えたのである。

 

「早くしてください!」

「ちょっと、本気!? 離して!」

 アオイがジタバタと暴れ出した。

 

 …………って、力つええな、この女! 脱出されそうなんだけど! あかん、どうしよう。

 

「くそ!」

 俺はアオイの首元に息を吹きかけてみた。すると、

「ひゃあアゥううん……!」

 アオイは感じたかのようなエロい声を出し始めた。どうやら耳元が弱点のようである。

 俺はここぞ! とばかりに『フーフー』と息を吹きかけた。

 

「ああぁうん! らめ……許してぇ……!」

 アオイは涙目になりながら、許しをこった。おお、なんかゾクゾク……いやいやいや! そんな場合じゃない!

 

「今です! 瑠夏さん! 薫さん! 俺ごと攻撃してください!」

「ええ! 何を言ってるの!?」

 パッチリと大きく目を開き、大声で叫ぶ薫さんと、

「早く、その子から離れて!」

 と指示する瑠夏さんであった。

 

「ダメです! こいつは俺が押さえておかなければ絶対に防御されます! いいから早くやってください!」

 俺は持てる力を全て出し、息を吹きかけながらアオイを押さえつけた。

 

 すると、ドンドン薫さんの表情が恐ろしいものに変わり、顔色はギア2のような赤色へと変化していった。

 

「くそ……そんなに優馬くんに息を吹きかけてもらって……何て羨ましいのかしら!」

 ちょっと、薫さん?

 何を言ってらっしゃる?

 

「エクスプローーーーーーーージョン!」

 薫さんは高らかに杖を上げ、スキルを発動させた。

 ああ、ここで俺もゲームオーバーか。俺は覚悟を決め、目を瞑った。

 

 後は任せましたよ。

 爆炎が俺の視界を赤く染めた後、爆風はそれを白く染め上げた。

 これでゲームオーバーか。

 

 しかし、しばらくすると視界が開けてきた。

 

 俺もアオイもまだゲームオーバーになっていなかった。

 しかし、アオイの体力ゲージは半分ほど減っている。

 自分の体力ゲージを確認すると残り僅かとなっていた。

 

「あ、危なかった……今のは危なかった」

 俺に抱きつかれているアオイが焦った様子でそう呟いた。

「お前、何をしたんだ?」

「私のスキルでバリヤを張らせてもらったんだよ。あれが無かったらさすがにやばかったよっと!」

 アオイは俺の拘束から脱出すると、素早い動きで薫さんに接近した。

 

「な……」

 薫さんの表情が強張った。

 まずい、このままでは薫さんはアオイにやられる。

 俺は咄嗟に『あるアイテム』のことを思い出した。

 俺は画面を素早く操作し、『あるアイテム』を取り出した。

 先ほど、船から降りる前に買っておいたアイテムである。

 船の売店のスキンヘッドのおっちゃんがこう言っていた。

「このアイテム、兄ちゃんにやるよ! こいつぁ、俺が作ったすげぇアイテムさ! 対象を選ぶと一回このボタンを押すとそいつと自分の位置、もう一回押すと体力、さらにもう一回押すとすごいものと入れ替えることができるんだ!」

「すごいものって何ですか?」

「ふふ、秘密だ」

 おっちゃんはいたずらっ子のような笑みでそう説明してくれた。

 

 取り出したアイテムは『入れカエル』という背中に赤いボタンが付いている可愛らしいおもちゃのカエル。

 

 ボタンを押した。

 ――誰と位置を入れ替えますか?

 おお、本当に位置を入れ替えられそうだ。

 複数の選択肢に中で俺は薫さんを選択した。カエルは『ゲコ』と鳴いた。

 

「スキル発動! 『追い剥ぎ』!」

 薫さんに向かって、服を破裂させるスキル、『追い剥ぎ』を使った。

 しかし、

「残念だったな!」 

「え……」

 アオイは唖然とした表情を見せた。俺と薫さんの立っていた位置を入れ替カエルによって、チェンジしたため、追い剥ぎの対象者は俺になった。

 しかし、元から俺は素っ裸である。自分で言ってて恥ずかしくなってくるが。

 さらに俺は入れカエルのボタンを押す。

 

 ――誰と体力を入れ替えますか?

 俺の体力は残りわずかである。俺はアオイを選択した。

 

 俺とアオイの体力が入れ替わり、優位性が大きく変化した。

「うそ! なんで!? 何、そのアイテム!」

 いやぁ、良かった。このアイテムを手に入れておいて。

 可能であるなら魔王戦で使うべきなのだろうが、仕方ないよな。

 

 さらに俺は新しいスキルを発動させた。

「スキル発動! 『射精バスター』!」

 初めて使うスキル。一体、どんなスキルなのか。

 すると、俺の肉棒はムクムクと大きく膨れ上がり、ググッとアオイの方へ向いた。

「へ!?」

 なんだか股間がムズムズと手コキされているように気持ち良くなってきた。

 すると、

「うわあああああ!」

 アオイが取り乱したように叫んだ。

 まるで消火器のようにとめどなく白い液体が勢いよく発射され、アオイに身体や顔にかかった。

 とめどなく発射されるその液体はアオイの髪、身体、顔をひどく汚した。

 俺は気持ちよさのあまり膝がガクガクと震えてきた。

 このまま腹上死してしまうのでは、とさえ思った。

 

「うわ……」「ゆ、優馬くん……」「えぇ……」

 俺の異様な光景に薫さんと瑠夏さんはおろか、シンヤと留衣さんまで戦いを止め、ドン引きした様子で俺を見つめていた。

 

 性欲全てを出し切ると同時に、アオイの体力ゲージがゼロとなった。

 

「君って……私以上に変態だね……」

 小さな身体に大量の白い液体を浴びせられ、死んだ魚のような目になったアオイはパタンと地面に倒れこむと、身体が消滅した。

 どうやらゲームオーバーになったようである。

 

「あ、アオイーーーーーーー!!!」

 シンヤは耳が痛くなるような大声で叫ぶと、ログアウトしたのかどこかに消えた。

 

 なんだかよく分からないが追っ払うことに成功したみたいである。

 ……………………一応は勝ったが、女性陣からの心象は最悪になったのではなかろうか。



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占い師と野球拳

 非常に手強かったシンヤとアオイを退けた後、俺たちは洞窟を潜り、魔王の城へと向かった。

 綾女は残念ながらゲームオーバーになってしまったが、復活できる場所はシベラにある教会なので、綾女を残し俺たち四人で進むことにした。

 シンヤとアオイとの戦いの後、全員セーブをし、ログアウトした後、話し合ったのだが、綾女は「私に構わず、魔王の城に進んでください」と主張したため、そうすることにしたのである。

 

 ちなみに綾女は現在、俺に部屋にあるテレビで『カ』から某ギャンブル漫画が原作のDVDを視聴している。

 ゲームをクリアするまで、綾女にはここでゆっくりしてもらうとしよう。

 

「着いたわね……」

 ポツリと薫さんが呟いた。

 俺たちの前にそびえ立つ魔王の城。

 大きく黒い禍々しいお城はなんとも言えぬ圧力と存在感を感じさせた。

 

「みなさん、行きましょう」

 留衣さんが先陣を切って、前へと進んだ。中に入ると、薄暗い照明が蝋燭の炎によって灯されている。

「結構、怖いわね……」

 ポツリと瑠夏さんが呟く。確かに怖い。中は恐ろしく静かで、突然何かが現れそうである。

 進んでいるうちに一つの扉を発見した。

「扉だね。どうする、お姉ちゃん?」

「進むしかないと思う。薫さんもそれでいいですか?」

「ええ、構わないわ」

 

 留衣さんはゆっくりと扉を開けた。

 部屋の中は先程とは打って変わり、明るい照明であった。

 机の上に水晶玉が置かれてあり、椅子に女性が座っている。

 さらにその後ろには扉がある。

 

「ようこそ、私の部屋へ!」

 女性が立ち上がると、警戒心を解きそうになるほどの愛想の良い笑みを俺たちに差し向けた。

 

 その女性の年齢は二十歳前後くらいの女性。

 黒を基調とした魔女っぽい服を着ていた。

「誰? あなた」

 瑠夏さんはズカズカとその女性に近づき、女性の正体を訊いた。

 俺は真っ先にその女性のステータスを確認する。

 

 ――NAME:スズカ JOB:占い師 武器:水晶 SKILL:ルーム LEVEL:45

 

「私の名はスズカ。偉大なる魔王様の従順なる手先。どうぞゆっくりしていって」

 ご丁寧に挨拶するスズカであったが、瑠夏さんは不機嫌そうに顔をしながら、スズカの横を通り過ぎた。

 

「悪いけど、あなたに構っている暇はないわ。ここから一刻も早く出してもらうんだから!」

 ドアの取手に手をかけるが、ドアは『ガチャガチャ』と音を立てるばかりで一向に開く気配はない。

 

「無駄よ。その扉は私が許可するか、私を倒さない限り開くことはないわ」

 意地悪っぽく言い放つスズカに対し、瑠夏さんは問答無用でスキルを放った。

 

「スキル発動、『フレイムランス』」

 炎を纏った槍をスズカの身体めがけて突き刺しにいくが、彼女の周囲に青白いバリアが突如出現し、瑠夏さんの攻撃を防いだ。

 

「うわ!」

 バリアに弾き飛ばされた瑠夏さんは尻餅をついた。

 

「無駄よ。この部屋では暴力行為はできない。あと、ここで行う勝負は私が提案するものよ」

「て、提案するもの……何よそれ!?」

 瑠夏さんが槍を向けて訊くと、スズカはゆっくりと立ち上がった。

 

「ずばり……野球拳よ!」

 

「「「「は?」」」」

 俺たち四人の声が重なった。野球拳ってあれだろうか?

 

 やーきゅーうーすーるーならー♪

 こーゆーぐあいにしやしゃんせ♪

 

「聞こえなかった? 野球拳よ。じゃんけんで負けたら服を脱いでいく素晴らしい競技。この部屋ではじゃんけんで負ければ服が自動的に脱がされるシステムなのよ。すごいでしょ! 対戦形式は私との一対一形式を繰り返して全滅したらあなたたちの負け。一人でも勝てれば通してあげるわ。どう考えてもあなたたちの方が有利だと思わない?」

 

 確かにそうだ。こちらには四人いる。人数的に全滅するとは考え難い。

 しかし……。

 

「ちなみにお前と野球拳して、服が全部なくなったらどうなる?」

「その場合はゲームオーバー! シベラの教会から復活することになるわね!」

 俺が質問すると赤裸々にスズカは答えた。さらに俺は質問を投げかける。

「一対一が終わるごとにお前から剥ぎ取った衣服はお前の元に戻るのか?」

「ええ、そうね。例えば私がパンツ一丁の状態で勝って、次の対戦相手が控えていても次の一対一が始まった時点で私は服を着た状態で対戦することになるわ。けど、それでもあなたたちの方が有利よ。違う?」

「まぁ、そうだな」

 確かにこちらが有利なのは間違いない。それは確かなのだが……。

 

「さ! 分かったら始めましょう! 最初は誰から来る?」

 有無を言わせず、野球拳を始めようとするスズカ。

 すると、留衣さんが挙手をした。

「私が行きます!」

「ちょっと、留衣さん! 大丈夫なんですか?」

 俺が訊くと、留衣さんが振り向いた。

「うん! こう見えてもじゃんけん強いし、それに私が一番、服を着込んでるしね!」

 確かにそうだ。留衣さんは鎧を纏っている。着ている数ならこの中では一番多いだろう。

「いいわ。決まりみたいね!」

 ゆっくりと留衣さんはスズカの元へと歩み寄る。

「留衣、気をつけてね!」

「頑張れ! お姉ちゃん!」

 薫さんと瑠夏さんは留衣さんにエールを送った。

 

「それじゃ……覚悟は良いかしら?」

「勿論」

 

 留衣さんが頷いた。いよいよ始まる野球拳。

 すると、部屋の中から軽快な音楽が流れるとスズカは謎のダンスを披露した。

 

「やーきゅーうーすーるーならーこーゆーぐあいにしやしゃんせ♪」

「「「「……」」」」

 全員がドン引きした様子でスズカを見つめるも当の本人は気にせずダンスを続けた。

「アウト! セーフ! よよいのよい!」

 スズカはグーを出した。

 留衣さんが出して手は……チョキであった。

 

「はい! あなたの負けね!」

「へ?」

 すると、シュンと留衣さんが着ていた鎧がたちまち消え、鎧はいつの間にかスズカの足元に置いてあった。

「さぁ、二回戦よ。続けましょう」

「く……今度こそ!」

 

 しかし、その後も二回連続で負けてしまった留衣さんは下着姿になってしまった。

 美しい金色の髪、そして、留衣さんの色白い肌から形成される見事なボディラインの下着姿は大変魅力的であると感じた。

 

 すると、突如頭に軽い衝撃が走った。薫さんが俺の頭を叩いたということに気づくまで少し時間がかかった。

 

「なーに、魅入ってるのかしら? 優馬くんったら?」

 俺がジロジロと留衣さんの下着姿を見ていたことを薫さんに咎められた。

「す、すみません……」

「もう……優馬君は本当にエッチね。それにしてもあのスズカって子、かなりじゃんけん強いわね」

 悔しそうに薫さんがそんな感想を漏らすと、スズカは俺たちに柔和な笑みを見せた。

「そりゃそうよ。私にはあなたたちがどんな手を出すか分かるんですもの」

「はぁ? そんなわけあるわけないでしょ!」

 不服そうな表情で留衣さんの主張を否定する留衣さんであったが、スズカは決して余裕そう態度を崩そうとしなかった。

「それが本当にわかっちゃうのよ。あなたの視線の動き、姿勢、息遣い……並外れた観察眼によってあなたの出す手を予測することができるわ!」

 

 そこは「私の占いによって予知できるわ!」って宣言するんじゃないのか。

 職業占い師だろ、お前。

 しかし、本当だとすると厄介である。

 要約すると、イカサマしないEカードの利○川先生である。いや、ちょっと違うか。

 

「それにしても、女性が脱いだ服って本当良い匂いだわ……」

 スズカは留衣さんから手に入れた服を悦に浸ったような表情でくんくんと嗅いでいた。

 こいつも漏れなく変態だったか……。

 

 すると、突如俺に脳内に圧倒的閃きが思いついた。

 

「そんなの、どうやって勝てば良いのよ……」 

 スズカの強さに嘆いた薫さんは頭を抱え出した。

 そんな薫さんを他所に俺は手を挙げた。

「すまん、ちょっと良いか?」

「何かしら?」

「勝負を一回で決着が着くようにしたいんだが」

「というと?」

 他の四人の視線が一斉に俺に集まる。

 背中に冷や汗を掻きながらもゆっくりと言葉を発した。

 

「次のじゃんけん、留衣さんが勝てばスズカの服を全て没収。その代わり、負けたらここにいる全員の服をお前に渡す。これでどうだ?」

 俺の提案に薫さんと瑠夏さんが過剰に反応した。

「ちょ、ちょっと何言ってるの!?」「お姉ちゃん、まだ一回も勝ててないんだよ!? 絶対、危ないって!」

 

「ふーん、大した自身ね。まぁ、こっちは構わないわ」

 相手からの許可は貰うことはできた。ならば、今度は身内の許可が必要だ。

「留衣さん、ちょっとこっちに来てもらえますか?」

「へ? う、うん……」 

 三人に告げるとある作戦。最初こそ、半信半疑で聞いていたが、やがて三人は納得してくれた。

 

「分かった。優馬くんの作戦を信じる」

「ありがとうございます。必ず成功させてみせます」

 この作戦で必要となってくるのは『タイミング』である。

 

「さぁ、私たちも準備は出来たわよ。勝負を再開しましょうか」

「グッド!」

 まるでダー○ーのような決めセリフを吐いたスズカ。

 

 すると、またもや軽快な音楽が流れた。陽気にスズカがダンスを踊り出す。

 もう勝ったと慢心しているようである。その油断が命取りであると福本伸行作品の愛読者なら気がつくだろう。現に俺は気が付いた。

 

「アウト! セーフ! よよいのよ……」

 ここだ――俺はアオイの時に使用したアイテム、『入れカエル』を取り出した。

 このカエルのおもちゃのようなアイテムは頭についているボタンを一回押すと選んだ対象者と自分の位置、もう一回押すと対象者と体力、さらにもう一回押すと対象者とすごいものを入れ替えることができるらしい。

 

 アオイのときに二回までボタンを押したのだが、実は対戦後、すぐに興味本位でもう一回押してみたのである。

 するとこういうメッセージが出て来たのである。

 

 ――誰と身体を入れ替えますか?

 

 この入れカエルは三回ボタンを押すと他人と身体を入れ替えることができる。

 

 まぁ、案の定作った理由はエロ目的なんだろうが、今の状況(シチュエーション)、使うのにはとても適している。

 俺は迷うことなく対象者に留衣さんを選んだ。

 

「へ?」

 俺の身体に入れ替わった留衣さんの声が耳に届いた。俺の視界には今まさに何かしらの手を出そうとしているスズカの姿が。

 ちなみに留衣さんに指示した作戦はこう。

 

「チョキを出してください」

 四人で作戦会議した時、俺は留衣さんにそう指示した。

「パーを出すと言う根拠があるの?」

 薫さんの質問に対し、俺は頷いた。

「はい。奴は留衣さんの傾向を見切って『ある法則』にしたがって出す手を変えています。十中八九、次出す手は『パー』です」

 

 ちなみにこれは真っ赤な嘘である。要は留衣さんが次出す手を俺が知ることが出来ればそれで良かった。

 スズカは相手の行動を見て、出す手を決める。

 今この瞬間、奴は留衣さんがチョキを出すと思っている。

 

「これが大人のグーよ!」「ふははは! 掛かったな!」

 自信満々に言い放つスズカに対し、俺はパーを出してやった。

 一応言っておくが、後出しではない。

 

「な……」

 スズカの表情が強張った。某漫画であれば『ぐにゃ〜』という音が聞こえてきそうだ。

「ど、どうして……確かにチョキを出すつもりだったのに……」

「そう、確かに留衣さんはチョキを出すつもりだった。だが、今の俺は留衣さんではない」

「な、なんですって……」

 スズカが膝を崩し、座り込むと戦慄した様子で俺のことを見上げた。

 

「留衣さんの身体と入れ替わり、咄嗟に出す手をチョキからパーに変えた。出す手は留衣さんから聞いてあったからな。ちなみに今の俺は留衣さんではなく、優馬だ」

 プルプルとスズカは体を震わせた。

「い、イカサマよ! そんなの! 身も体も対戦者である彼女がジャンケンしないといけないでしょ! ノーカウントよ! ノーカン! ノーカン!」

 高らかに腕を上げ、某班チョーのようにノーカン節を奏でるスズカであったが、着ている服が瞬く間に無くなり、綺麗な全裸姿へと変貌した。

 

 Dカップくらいの大きさの綺麗な形をした胸は茶色い乳首が乗っかっており、割れ目には黒い芝生がたくさん茂っていた。

 

 ふむ、中々良い身体だな……。

 

「いやああああ! 見ないでー!」

 キラキラと光の粒子を発しながらスズカは消滅していった。

 どうやらゲームオーバーとなったようだ。

 

 すると、ガチャっと硬く閉ざされていた扉が開いた。

 やがて、俺と留衣さんの入れ替わっていた意識が元に戻った。

「もーう! 優馬くん、急に私の体と入れ替えるなんてびっくりしたよ!」

 留衣さんは頬を膨らましながら俺に軽くデコピンしてきた。

「す、すみません」

「でも、勝てたし良いや! それじゃ、先に進もうか!」

「はい!」

 

 果たして次はどんな敵が待ち受けているのか。

 一抹の不安を感じつつも、俺たちはさらに奥へと進む。



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魔王との戦い

 スズカを撃破した俺達はその後、さらに城の中を彷徨い続けた。

 途中で頭が三つあるライオン、黒色の大きな蛇、刀を携えたゴリラなど様々なモンスターに出くわしたが、その都度、留衣さんと瑠夏さんが倒してくれた。

 

 やがて、俺達は大きな扉の前へと辿り着いた。

「ここに魔王がいるのかしら?」

 薫さんは訝しんだ様子で鋼鉄で出来た、赤く重々しい扉を眺めた。

「そうだと思います! 早速中に入りましょう!」

 留衣さんは扉に手をかけ、前に重心を預けた。鈍い音とともにゆっくりと扉が開く。

 中には長いレッドカーペットが敷かれており、その先に足を組んで座っている人がいた。

 さらにその横には二人立っていた。

「誰かいるわね」

 警戒心に満ちた表情で薫さんが呟いた。

「そうですね。警戒して行きましょう」

 留衣さんと薫さんを先頭にゆっくりと奥にいる人へ近づいた。近づくに

つれ、金色に輝く椅子に座っている者の横に立っている二人が、未知瑠さんとヴィネであるのが分かった。

「ようやく来たか。待っていたぞ」

 ヴィネが腕を組んで、大胆不敵にそう告げた。『ようやく来たか』と言っているが、そんなに時間は立っていないはずである。

「優馬くん、綾女ちゃんはどうしたの?」

 未知瑠さんはパーティに綾女がいないことに疑問を感じたようである。

「魔王の城に向かう途中でゲームオーバーになりました」

「そっかぁ。それは残念。ま、優馬くんもここでゲームオーバーになるんだけどね!」

 どうやら未知瑠さんは完全に魔王側のようだ。俺は未知瑠さんとヴィネの真ん中に位置する椅子に座っている、額に一本のツノを生やした男に目をやった。

 おそらくはこいつが魔王。

 赤いマントを羽織っており、やや長いオレンジ色の髪の魔王は何とも言えないワイルドさと逞しさ、そして威圧さを感じさせる。

 俺は魔王のステータスを確かめた。

 

 ――ライラック LEVEL0 体力??? 魔力???

 

「レベル0だと?」

 勝手にこいつを魔王であると思い込んだが、もしかして、魔王ではないのだろうか。幾ら何でも0ってことはないであろう。

 しかし、体力、魔力が測定されない。

 それが非常に不気味であった。

「未知瑠さん、この人が魔王ですか?」

「そうだよ。とっても強いから帰った方がいいよ」

 すると、瑠夏さんは矢筒から一本の矢を取り出し、弓を引くと、それを魔王へ向けた。

「帰らないわ。こいつを倒せば、豪華特典が貰えるんだから。スキル発動! 『サンダーアロー』!」

 矢を放つと、矢から稲妻が迸った。『バチチチ……』と音を立てる矢は魔王へ向かって飛んでいく。

「マジックバレット!」

 ヴィネは黒いエネルギー弾を発射し、瑠夏さんが放ったサンダーアローにぶつけた。

 二つの攻撃がぶつかり合ったことで激しい衝撃波が発生した。

 どちらの攻撃も同じくらいの威力で、やがてどちらも消滅してしまった。

 

「お前の相手はこの私だ」

「ふん、いいわ! やってやろうじゃない!」

 ヴィネと瑠夏は戦いを始めた。激しく技を次々と放つ様はさながらゲームのようで(実際そうなのだが)、思わず魅了される。

「よし、なら私が魔王を倒してやるわ! スキル発動! 『フレイムランス』!」

 留衣さんが持っている槍(ランス)から炎が放出された。

 その槍を魔王へと突きにいく。

「スキル発動! 『豪炎の舞』!」

 未知瑠さんの身体から赤々しいオーラのようなものが放出され、魔王の前に移動すると、留衣さんが持っている槍を片手で受け止めた。

「魔王様を倒す前に私が相手をします」

「そう。なら、お手合わせするわ」

 留衣さんと未知瑠さんの戦いが始まった。

 瑠夏さんとヴィネさんが遠距離攻撃主体での戦いであるのに対し、こちらは肉弾戦が主体である。

 逞しい二人の戦いぶりは見ていて飽きることがない。

 

 残ったのは俺と薫さんのみ。魔王は気怠げな表情で俺たちのことを見つめてたい。

「ねぇ、優馬くん。私たち、魔王と戦った方がいいのかしら?」

「いや……俺たちが戦ってもやられますよ」

 俺と薫さんのレベルは20前後。留衣さんと瑠夏さんのレベルよりもはるかに低い。ヒソヒソと話していると、魔王は「ふわぁ……」と退屈そうにあくびをした。

「黙っているのもつまらんな。おい、貴様ら。かかってこい」

 鋭い視線を向けた魔王が俺たちに命令した。

「偉そうね、あなた。いいわ! やってやろうじゃない!」

 魔王の言葉に触発された薫さんは杖を掲げた。

「ちょっと、薫さん!」

 止める間も無く、薫さんはスキルを発動させる。

「エクスポローーーーーージョン!」

 魔王の頭上に巨大な炎が降り注ぐ。耳が痛くなるような爆音が鼓膜を振動させる。

 

 白い煙が消えると、魔王の姿が徐々に見えてきた。魔王は青いバリアのようなものを張って、薫さんの攻撃を防いでいた。

 バリアには僅かながらヒビが出来ていた。

「今の一撃、なかなかであったぞ」

 魔王は薫さんの攻撃を褒めると、ゆっくりと立ち上がった。一体、何をしてくるんだ?

 俺は牽制がてら、スキル、『追い剥ぎ』を使うことにした。

 

 ゲーム画面を素早く操作し、スキルである『追い剥ぎ』を選択する。

 

 ――対象者、ライラックでよろしいですか? 『はい』『いいえ』

 

 俺は『はい』を選択する。すると、

 

 ――この対象者には追い剥ぎは使用できません。

 

 とメッセージが出てきた。

 

「な、なんだと……」

「今の……スキルを使おうとしたのだな。おそらくは我の着ている物を奪い去るスキルであろう」

 俺が使おうとしたスキルをズバリ言い当てた。魔王はゆっくりと俺達に近づいてきた。

「薫さん、後ろに下がってください!」

「わ、分かったわ!」

 薫さんに後ろに下がってもらった。自分で言うのもなんだが、薫さんより俺の方がはるかに戦闘では役に立たない。

 魔王に薫さんのスキルを当てることができれば、ある程度体力は削ることができるはずだ。

 再び、薫さんがスキルを発動できるMP量に回復するまで、なんとか時間を稼いでやる。

 

「そんなに我の服を脱がせたいのなら、お望み通り裸になってやろうぞ」

「は?」

 すると、魔王から禍々しいオーラが放出されると、

「セックス チェンジ」

 と唱えた。

 

 強面の身体とイカツイ表情の魔王はみるみるうちに姿を変え、背の高めな長いオレンジ色の髪の美人の女性の姿へと変貌した。

 

 ちなみに全裸である。スタイル抜群の身体をしており、巨乳である薫さんのよりも大きいのではないだろうかという思うくらい立派なものを携えていた。

 やや黒みを帯びた素肌は何とも言えぬエロスを感じさせた。

 

「お、お前……本当に魔王……なのか?」

「ええ、そうよ。私は性別を自在に変えることができる。さぁ、楽しみましょう」

 そう告げると突如、魔王が俺にキスをしてきた。

「う……」

 魔王の甘い香りが鼻腔をくすぐる。ぎゅっと抱きしめられ、優しく柔らかい感触が俺の体全体に伝わってくる。

「ちょっと! 何してんのよ!」

 薫さんの怒った声が聞こえた。薫さんは抱きついている魔王を必死に引き剥がそうとした。すると、魔王は薫さんの頭に手をかざした。

「『ブラウンウォッシング』。そこで這いつくばっていなさい」

「ぐ……」

 薫さんは悔しそうに地面へと這いつくばった。見たところ、相手に命令を下すことができる能力らしい。

「さぁ、楽しみましょう……」

 魔王はにっこりと微笑んだ。薄黒いプルンと大きく揺れるおっぱいを見つめた。

 このエロい身体をした魔王に身を委ねたい。

 そう俺は思ってしまった。



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さらばビーストファンタジーの世界

「どうした? 冒険者よ。私のこのおっぱいが気になるのか?」

 魔王は見せつける様に暴力的とも言える大きさのおっぱいを俺の顔に近づけてきた。

 ごくりと生唾を飲み込む。褐色のおっぱいとそこに乗っかっているピンクの大きめな乳輪と乳首は何とも言えぬエロスを感じさせた。

「き、気になってなんかいない……」

 しかし、魔王は間髪入れず自身のおっぱいを俺の顔に押し付けて来た。

「ふ、ふご……」

 顔から至福の感触を感じる。柔らかくって気持ち良い。生暖かく、それでいてミルクのような甘い匂いがする。その物体から、生命の神秘を感じられた。

「ふふふ、男の人間は本当におっぱいが好きなのだな」

 魔王のパフパフはとても心地良く、このまま永遠にし続けてもらいたいと思った。

「優馬くん……」

 切なさに満ちた薫さんの声が耳に届く。

 ごめん、薫さん。

 魔王に身体、本当に心地良いんだ。このまま身を委ねたい。

 

 ――最愛の方が悲しんでいます。このまま魔王に身を委ねますか?

 

 突如、俺の目の前にそんな説明文が現れた。なんだこれは。

 

「は……」

 『はい』と答えようとした。

 しかし、俺は今日のビーストファンタジーをプレイする前にした、薫さんとのデートを思い出した。

 一緒に映画を見たり、ランジェリー店に入ったり、秋葉原を巡ったり――とても楽しかった。

 

 このまま魔王に身を委ね、快楽の波に溺れてしまいたかったが、理性がそれを食い止めた。

 

 あぁ、そうか。

 俺はやっぱり、薫さんのことが好きだったんだな。

 

 ――もう一度聞きます。このまま魔王に身を委ねますか?

 

「いいえ」

 反射的にそう答えた。

 ダメに決まっている。俺は薫さんのことが好きなんだ。このまま、魔王に喰われてたまるか。

 

 ――『魔王の誘惑』に打ち勝ったことにより、あなたの職業が『変質者』から『勇者』へと変わります。

 

 すると、俺の上から眩い光が降り注ぐ。

「うわ!」

 魔王は驚きの声を上げ、咄嗟に後ろに下がった。

 光に包まれ、その光が消えると自分の服装が変わっていることに気づいた。

 股間に葉っぱ一枚乗っかっているものだったのが、厚い生地で出来た緑を基調とした服を着ており、腰には剣が収められていた。

 

「嘘……優馬くんの服装が変わった……職業は勇者で、レベル……は0!?」

 薫さんは驚愕の表情で俺を見つめた。魔王に掛けられた魔法が解けたのか、薫さんはゆっくりと立ち上がった。

「貴様……何者だ?」

 戦慄した様子で俺の正体を訊く。

 魔王はいつの間にか女性の姿から元の姿へと戻っていた。

 

「通りすがりの……天才ゲーマーだ! 覚えておけ! 今からお前を倒してやる。Are you ready? 答えは聞かないけどな!」

 腰に収められている剣を抜き出す。剣はズッシリと重量感があり、刃の部分は鏡のように磨かれていた。

 俺はその剣を魔王に向ける。

「ふん」

 魔王は鼻を鳴らすと、右手を俺に向けた。

「マジックバレット」

 右手から黒いエネルギー弾を発射させ、俺に撃った。

 黒い弾はものすごい速度で向かってくる。

 ヴィネが使っている魔法と同じものだが、弾のサイズは魔王の方が一段と大きい。

「はああああ!」

 黒いエネルギー弾が俺にぶつかりそうになるタイミングで、勢いよく剣を振り落とした。

 すると、その黒いエネルギー弾はたちまち真っ二つに割れ、俺の後ろへと移動し、勢いよく爆発した。

「な、なんだと……」

 魔王は驚きのあまり、口を開けていた。

「今度はこっちから行くぞ」

 俺は戦闘画面を操作する。スキル一覧を確認すると、使えそうなものがあったので、それを選ぶことにした。

「スキル発動、『高速移動』」

 このスキルは綾女が使っていたスキル。このスキルにより、一瞬で魔王の背後に回り込むことに成功した。

「な……」

 魔王が振り向いたがもう遅い。防御をさせる暇もなく、さらにスキルを発動する。

「スキル発動、『ヘル・スラッシュ』」

 剣が黒色に発光し、その剣で魔王の身体を斬った。このスキルはシンヤが使っていたものだ。もっとも、ヤツが使っていたのは剣ではなく、鎌であったが。

「ぐああ!」

 魔王が苦しそうに悶え出した。切傷からポタポタと血が滴り落ちており、痛々しい光景であった。

 

「魔王様!」

 魔王のピンチに見かねたヴィネが俺と魔王の戦いに参戦しようとしたが、

「サンダーアロー!」

「ぐあ!」

 雷の矢がヴィネに刺さり、奴の動きを止めた。

「悪いけど、行かせないわ」

 ナイスアシスト、瑠夏さん。これで心置きなく魔王にトドメをさせる。

 

「薫さん! 今、スキル使えますか?」

「へ? 使えるけど……」

「なら、お願いします! 同時に撃ちますよ!」

「わ、分かったわ!」

 職業が勇者になったことで、薫さんのスキルも使えるようになった。

 俺は剣を、薫さんは杖を上に掲げた。

 

 

「「エクスプローーーーーーーーーーーーーーージョン!!!」」

 

 魔王の上から大きな爆炎が降り注ぐ。その炎は今まで薫さんが放ったものと比べ物にならないほど規模が大きく、対戦中であった未知瑠さんの身体も巻き込むように飲み込んだ。

「え? ちょっと……うわーーーー!」

 未知瑠さんの叫び声が耳に届いた。

 

 部屋中を白い煙が包み込む。煙によって一分間ほど、周囲の様子が分からなかった。

 徐々に煙が晴れてくると、魔王が地面に蹲っているのが確認できた。

 驚いた。まだ魔王が倒れていない。しかし、体力ゲージを確認すると、HPは残りわずか。

 未知瑠さんの姿が見えない。おそらくはゲームオーバーになったのだろう。

 

 俺は魔王にトドメをさすべくゆっくりと近づいた。すると、ヴィネが慌てて駆け寄った。

「ま、待ってくれ! 魔王様を見逃してほしい!」

 ヴィネは俺に土下座をした。

「優馬くん! 気にすることないわ! そいつらはゲームキャラクターなんだから!」

 瑠夏さんは魔王にトドメを刺すよう俺に指示した。

「ふん、貴様ら冒険者……いや、ゲームプレイヤーからしたら我らのことなど、『命』を持つ存在だと思っていないかもしれないが、我らだって生きている。この世界で生を受け、知らずのうちに魔族としてゲームプレイヤーに襲われる……貴様らにこの苦しみが分かるか! これまでにも何人もの部下が殺されて……我らは殺されるために生まれてきたのか!?」

 魔王は自分をゲームのキャラクターだと自覚しているようである。

「お前らは死んだら生き変えられないのか?」

「ああ、同じキャラクターはまた生まれるが、元の人物とは別の人物だ。貴様らは死んでも問題ないみたいだがな」

「そうか……」

 ゲームキャラクターがきちんと自我を持っており、生きたいと願っている。

 俺はこの二人にトドメを刺すのに気が引けた。

「お願いだ! どうか勘弁してほしい! せめて、我の命で勘弁して欲しい!」

「ダメよ! 魔王を倒さないと、特典が貰えないんだから。優馬くん、早くトドメを刺しちゃって」

 瑠夏さんはあくまでも魔王とヴィネをゲームキャラクターとして割り切ってい見ているようだ。

 すると、魔王がゆっくりと立ち上がった。

「もうよい、ヴィネ。『父親』としての最期の指令を聞いてくれ……次の我によろしくな」

 魔王は諦めたような表情でヴィネにそう依頼した。

「魔王様……い、いえ、父上! そんなこと言わないでください! 例え……設定であったとしても、あなたは私の父上です! 他に誰にもいません!」

 感極まったのか、ヴィネは涙を零し始めた。ああ、ダメだ。やっぱり俺にはトドメを刺せない。

 

「すみません、瑠夏さん。俺、この二人は倒せないです。いや、倒させたくないです。もし、瑠夏さんが二人に攻撃するのなら、俺は瑠夏さんを倒します」

 ゆっくりと剣を瑠夏さんに向ける。

 瑠夏さんに静かな敵意を見せたが、彼女は表情を崩すことなく、俺を見つめ、やがてため息をついた。

「分かったわ。私じゃ優馬くんに勝てなさそうだしね」

 瑠夏さんはあっさりと諦め、画面を操作を始めた。

 あっさりと俺の意見に瑠夏さんは納得してくれたようである。

「そうだね、綾女ちゃんも暇にしてるだろうし、帰りましょうか」

 瑠夏さんと留衣さんは先にログアウトしてしまった。

 

「貴様ら、我らを見逃してくれるのか?」

「ああ、そうだ」

 魔王はびっくりしたような表情をしていたが、やがて和やかな表情に変わった。

 口元を緩め、軽く頭を下げた。

「変わった冒険者だな、貴様。お礼という訳ではないが、今度来たらたっぷりサービスしてやるぞ」

 魔王は露出の多い服装を着た先程の女性の姿に変身し、誘惑するかのように谷間を見せてきた。

「おぉ……」

 魅入っていると、薫さんに頭を叩かれた。

「いて!」

「何まじまじと見てんの! もう!」

「す、すみません……それよりも、デートでの告白の件なんですが……」

「な、何?」

 薫さんは目を丸くさせ、慌てただした。可愛い。

 

「俺からも言わせてもらいます。俺と付き合ってください」

 頭を下げて返事すると、顔を真っ赤にさせ、俯くと俺に腕を掴んだ。

「い、いいけど……。それじゃ、私に魔王とのキスを見せつけたんだから、私にもキスしてちょうだい」

 

 薫さんを目を瞑り、キス待ちの表情をした。ああ、すっごく可愛い。今すぐしたい。したいのだが……。

 

「薫さん、せっかくですがから、ここではなく『現実の世界』でキスしましょう。いや、キス以外も……」

 薫さんは目を開けると、拗ねたように唇を尖らせた。

「わ、分かったわよ! それじゃ、帰ってとっととするわよ!」

「みんながいる前でする気ですか!?」

「別にいいじゃない!」

「いやー、それはちょっと……」

「問答無用!」

「は、はい……」

 薫さんの勢いにおされ、思わず頷いた。

 

 俺と薫さんは操作画面を開いた。後は『ログアウト』の項目をタップすれば、現実の世界に戻る。

「二人とも達者でな」

 魔王が俺たちに手を振る。

「ああ、魔王とヴィネも倒されないように注意しろよ」

「ふははは! 脆弱な冒険者など、返り討ちにしてやるのだ!」

 元の調子に戻ったヴィネは高らかにそう宣言した。

 ビーストファンタジーの世界に住む魔王とヴィネ。

 どうか、これから楽しく暮らして欲しい。魔王と部下ではなく親子として。

「それじゃ、また」

 

 こうして、俺と薫さんはログアウトし、ビーストファンタジーの世界を去った。

 

 後日、俺の元にどういうわけか豪華特典という名の『あるもの』が届くことになるのだが、それはまた別の話である。



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自宅デート

 金曜日の夜八時過ぎ。俺は一人部屋でくつろいでいた。すると、ピンポーンとインターホンの音がなった。

 玄関に向かい、扉を開けると、外に立っていたのは薫さんだった。

「こんばんわ、優馬くん」

「あ、薫さん」

 

 家でくつろいでいると、薫さんがやってきた。手にはタッパを二つ持っていた。

 

「ご飯、作ってきたの。食べる?」

「ありがとうございます」

 タッパを受け取り、俺は薫さんを部屋の中へと入れた。ちょうどご飯を食べる前だったのでベストタイミングである。

 

 ビーストファンタジーでの告白にて、俺と薫さんはめでたく恋人同士となった。

 恋人になってから、何度かデートをしたのだが、意外にも薫さんはキス以上のことを迫って来たりはしなかった。

 別にそれでも良いのだが、正直物足りないという気持ちは少しある。

 

 俺は今日の薫さんの突然の訪問で、何かを仕掛けてくるのではないかと察した。

「それじゃ食べましょうか!」

「そうですね、いただきます」

 タッパの中には肉じゃがが入っており、箸でジャガイモと肉を摘み、口に入れた。

「どう?」

「すごく……おいしいです!」

 じゃがいもには味がしっかりと染み込んでおり、実に美味であった。肉も柔らかくてとても美味しい。

 肉じゃがを食べていると、無性にご飯が欲しくなった。

「薫さん、俺ご飯食べようと思うんですけど、薫さんもいりますか?」

「うん、いただくわ」

 二人分の茶碗に米をよそい、それをテーブルの上に置いた。薫さんは「ありがとう」と微笑みながら茶碗を受け取った。

 

「いやぁ、本当に美味しいです。これだけでご飯何倍もいけます!」

「そう……最高の『オカズ』ってわけね」

 俺を見つめながら薫さんは蠱惑的に微笑んだ。赤いメガネの奥にある薫さんの茶色い双眸は何やらどう猛な光を放っているように見えた。

「え、えぇ。まぁ、そうですね……」

「それじゃ、これはどうかしら?」

 すると、薫さんは自分が着ているピンク色のTシャツをぐいっと捲り上げた。

「ぶほ!」

 思わず口に含んでいる米を吐き出しそうになった。

 突如、眼に映るったのは、薫さんの大きなおっぱいとそれを覆い隠す生地の少ないセクシーな黒いブラジャー。

 恥ずかしくなって思わず目を背けてしまった。

「な、何をしているんですか、薫さん……」

「あらあら? 好きでしょ。優馬くん。おっぱいで何杯もいけちゃわない?」

「いけちゃわないですよ……おっぱいでご飯を食べるなんて、サイコパスじゃないんですから」

 動揺のあまり、自分が何を言っているのか分からなくなってきた。

 薫さんは「ちぇ……」と不満そうにTシャツを元に戻した。

 本音を言えば、薫さんのおっぱいを見ながら食べていたかったが、口には出さないことにした。

 

 肉じゃがとご飯を食べ終えた俺は皿洗いし、それも終わると、ベッドの上に座り込んだ。

 ご飯を食べたせいか、どっと眠気が押し寄せてくる。必死であくびを噛み殺した。

「眠い?」

 薫さんが俺の隣に座り込んだ。俺の顔と薫さんの綺麗な顔との距離が近い。

 泣きぼくろがある薫さんの表情は実に大人っぽいが、ちょくちょく見せてくる子供っぽいギャップもこれまでのデートや日常生活で見せられてきた。

 そこが実にたまらないのである。恥ずかしすぎて、本人には直接言えないが。

 

「そうですね。ちょっと」

 正直に答えると、薫さんがパンパンと自身の膝を叩いた。

「私の膝の上に寝てもいいよ?」

 ドクンと心拍が大きくなった。薫さんは短めのスカートを履いている。

 これは、薫さんの生膝の上に寝れるチャンスなのでは!?

「そ、それじゃ、お言葉に甘えて……」

 ゆっくりと頭を薫さんの上に乗せた。薫さんはまるで俺に心中を察したかのように、スカートを少し捲って、見せつけるように白い脚を曝け出した。程良い肉のついた脚は実に艶かしい。

 

 予想通り、薫さんの膝は柔らかくてとても気持ち良かった。

「どう? 優馬くん」

「すっごく……良いです」

 薫さんを見上げるように見ると、大きなおっぱいによって、薫さんの顔が隠れてしまっていた。

 いやぁ、すごい大きいなぁ。

「今、大きいって思ったでしょ?」

「いえ、滅相もございません」

 すごい、サトリなのか。サトルくんなのか。サトルーーーーー!!!

 

「誤魔化してたって無駄よ。無駄無駄。視線で分かっちゃうんだから」

 薫さんが「ち、ち、ち」と人差し指を立てて、指を揺らす。

 やれやれだぜ――心の中でそう呟いた。

 すると、薫さんが優しい手つきで俺の頭を撫でてきた。

 薫さんの手はすべすべして、とても心地良い。撫でられていると、遺伝子レベルで気分が安らいでくる。

「うふふ……優馬くん、可愛い」

 薫さんは暴力的な大きさの胸を俺の頭に当ててきた。

「ちょっと、薫さん……」

 困ったような声をあげるが、俺は内心興奮しまくっていた。

 柔らかくって、大きくって、プニョプニョしていてすごい気持ち良い。

 

 徐々に股間が硬くなってきたのが自分でも分かった。

 理性が崩壊しかけた俺はたわわに薫さんに実っている禁断の果実に手を伸ばした。

 右手にムニュっとした感触が感じられた。指が吸い込まれいるように何でもできる証拠(薫さんのおっぱい)へと沈んでいった。

 部活中、どんな状況でもシュートの外れたボールをもぎ取れる俺の大きな手でも薫さんのおっぱいを全て掴み取ることはできなかった。

 

「あぁん……優馬くん……」

 感じたように薫さんが甘い吐息を漏らす。その表情はとても淫らで雌を感じさせるようであった。

 俺は立ち上がり、自分の唇を薫さんの唇に重ね合わせた。

「んん……」

 俺たちは身体を寄せ合い、濃厚なキスを始めた。

 舌を薫さんの口の中に挿入し、お互いの舌を絡ませ合う。 

 薫さんとのキスはまるで麻薬のように刺激的で、時間が止まったかのような不思議な感覚に陥らせるのであった。

 一度キスを止め、お互いに見つめ合う。うっとりとした様子で恋人の表情を観察し合う俺たちはやがて、一つの決断を下す。

 

「エッチ、しましょうか……」

「そうですね」

 

 カップルになって以来、初となる行為(セックス)をするのであった。



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優しいセックス

 薫さんは自分が着ているピンク色のTシャツを捲し上げる。 

 先ほど見た薫さんが身につけている黒いブラジャーが眼に映る。

 

「ほら、優馬くんも脱いで」

「分かりました」

 薫さんに促されるままに服を脱いでいく。俺の股間ははち切れんばかりに勃起していた。

 薫さんもスカート、ブラジャー、パンティを脱いでいき、全裸になった。

 

 相変わらず薫さんはとてもエロい身体をしている。

 おっぱいは少し身体が動くだけで、プルンと大きく振動し、やや大きめの乳輪に乗っかっているベージュ色の乳首はツンと立っていた。

 アンダーヘアも初めて見た時と同じく、逆三角形の形に整えられており、とても綺麗である。

 

「うふふ、優馬くんのおちんぽ、すっごく大きくなってるね」

 薫さんは人差し指でツンツンと、肉棒をつついてきた。少し触られているだけだというのに、とても気持ち良い。

 俺は薫さんにこんなことをお願いした。

「薫さん、俺の舐めてくれませんか?」

「全く、しょうがないわね」

 ニッコリと微笑むと、薫さんはパクッと俺の肉棒を咥えてきた。

 ねっとりとした薫さんの粘液によって、どんどん肉棒が滑り気を帯びていく。

 薫さんの口の中は生暖かくてものすごく気持ち良い。

 

「ひほひいい?」

 頬を細めながら、上目遣いで訊いてくる薫さんの表情はエロくてたまらない。

「き、気持ち良いです……」

 気持ち良すぎて、身体の芯からイっちゃいそうである。

 

 すると、薫さんは「ジュル、ジュル、ジュル……♡」と卑猥な音を立てながらさらに強く肉棒を舐めてきた。

 快楽のせいか、脚がガクガクガクとしてくる。すでに肉棒にはヌルヌルとした先走り汁が流れ始めていた。

 

 薫さんは嬉しそうに微笑みながらぺろぺろと舐めてくる。そんな薫さんに対して、少しばかりイタズラしたいという気持ちが湧き上がってきた。

 俺は薫さんの頭をグッと押さえ込む。

「んん!?」

 薫さんは眉をひそめ、苦しそうな表情を俺に見せる。俺はグッと腰を前に突き出し、肉棒を薫さんの口の奥深くまで挿入した。

 さらに腰を前後に動かして、快感を手に入れようとした。

「うん! うん!」

 薫さんは涙目になりながらも必死にフェラを続けた。やがて、射精したいという欲が最高潮に達した俺は薫さんの口の中に性液を思いっきり吐き出してしまった。

「あぁ、気持ち良い……」

 まるで性液が薫さんによって、吸い込まれていくようであった。

 薫さんは肉棒から口を離し、苦悶に満ちた表情をしながらも『ごっくん』と飲み込んだ。

 薫さんの目は先ほど涙目になっていたせいか赤くなっており、立ち上がるとぐいっと顔を近づけてきた。

「もーう! いきなり、ちんこを奥まで突っ込むなんてひどいよ!」

「す、すみません……」

 確かにちょっと調子に乗りすぎてしまったな。すると、薫さんがぎゅっと俺に抱きついたきた。フレグランスの香りが鼻腔をくすぐる。俺の胸より少し下の部分から薫さんの柔らかいおっぱいの感触が感じられる。

「それじゃ、そろそろしよっか♡」

 耳元で甘く囁く薫さんの声はさっき射精したばかりの俺の理性を崩壊させるのであった。

 抱き合ったまま俺たちはベッドの上へと倒れこむ。

 じっと見つめ合い、二、三回軽くキスをする。抱きついていることで、薫さんの大きな弾力のあるおっぱいは押しつぶされ、ムニュっと形を変えていた。

「優馬くん、挿れてもいいよ?」

「はい……」

 薫さんの挿入する位置に狙いを定め、ゆっくりと肉棒を近づける。肉棒の先端部分は『ちょん』と禁断の扉の入り口に触れた。

 

 ぐ、ぐ、ぐと力を込めて挿れていく。薫さんの膣の中はキツキツで、ヒダのついた肉壁が幾度となく圧迫してくるようであった。

 腰を振るたびにキツキツの薫さんのマンコが締め付けてくるようですぐにイってしまいそうであった。

 だが、俺は射精するのを必死に止め、腰を振り続けた。すぐにイってしまうと、薫さんに早漏男だと思われてしまうかもしれない。

「あん! あん! ゆ、優馬くんの……すっごい気持ち良い!」

 薫さんの喘ぎ声はあまりにもエロく、あっという間に射精欲を高ぶらせてきた。

「あああ!」

 必死で射精するのに抗っていたが、我慢できなくなりすぐにイってしまった。ドピュっと白い液体が薫さんの膣内に注ぐ込まれる。

「うぅん。あら。優馬くんったら、もう出しちゃったの?」

 結合部分をうっとりとした表情で見つめながらそう訊いてきた。

「す、すみません! こんなに早く出しちゃって!」

 慌てて薫さんのマンコから自分の肉棒を抜き、必死で薫さんに謝った。

 俺が早漏野郎だと失望してしまったかもしれない。

 そう考えると思わず泣きそうにすらなってくる。

 すると、薫さんがポンポンと頭を軽く叩き、やがて優しい手つきで撫でてきた。

「いいのよ。早く出しちゃうってことは、それほど私の身体を気持ち良いって思ってくれているんでしょ。すっごく嬉しい……」

「か、薫さん……」

 薫さんを見つめると、確かに薫さんの表情には失望した様子が感じられない。それどころか嬉しそうにすら見える。

 薫さんは、本当に……女神のようだ。

「さぁ、続きを楽しみましょうか。まだ一回じゃ物足りないでしょう?」

「はい、あの薫さん。バックでさせてもらえませんか?」

「バックで?」

「はい」

 

 たまにエロ動画でバックでエッチしているのを見かけるのだが、実際にやったことがないので、どういうものなのか少し気になっていた。

「ええ、良いわよ」

 薫さんはベッドの上でぐいっと俺に見せつけるように白く大きなお尻を向けてきた。

 こうして近くで改めてみると、薫さんのお尻、結構大きいな。胸も尻も大きい。

 最高の身体ではないか。尻の割れ目をじっくりと観察していると、小さな穴が見えた。これがアナルというものか。薫さんは毎日、ここから排泄を行なっている。

「ちょ、ちょっと優馬くん。そんなに恥ずかしいんだけど……」

 薫さんが羞恥に満ちている。そんな薫さんの尻の割れ目をぺろっと舐めた。

「ひゃぁ!」

 薫さんはとても大きな声を出した。薫さんの大きなお尻。おっぱいとはまた違うエロさがある。

 俺は膝立ちし、肉棒を後ろから薫さんのプクッとした女陰へ挿入した。

「うぅん……」

 薫さんは苦しそうなそれでいて、気持ち良さそうな声を出す。

 四つん這いの態勢で俺に挿入されている薫さんはまるで犬のようだ。

 俺はパン、パン、パンと激しく薫さんの中を突いていった。

「ん、ん……」

 薫さんは必死で声を出すのを抑えていた。

「薫さん、もっと声出しても良いんですよ」

「だ、ダメよ……うちのアパートの壁、そんなに厚くないから隣の部屋の綾女ちゃんや留衣と瑠夏に聞かれちゃうわ」

「そ、それは困りますね……」

 だが、俺は薫さんにもっと気持ち良くなってもらいたい。

 その一心でなおも俺は激しく薫さんを突いていく。さらに重力に負け、下に垂れているエッチなおっぱいを両手で掴む。

 手と股間から至福の快楽が感じられる。

「薫さんのおっぱい、本当気持ち良いです……」

「だ、ダメ……そんなに強く揉まないで!」

 顔を真っ赤にさせながらそう懇願する薫さん。しかし、俺は逆にもっと強く揉んだ。

「あぁん!」

 さらに薫さんが激しく声を上げた。

 出したい。こんなエロい身体をした薫さんに溢れんばかりの自分の性欲を吐き出したい。

「薫さん、イきます!」

 ドクドクドクと先ほどの射精とは比べ物にならないほどの量の性液が出た。

 薫さんのマンコから肉棒を抜くと、ツーと白い液体が垂れていた。

 薫さんは「はぁ、はぁ……」と息を切らし、ベッドの上に仰向けになって寝っ転がった。

 腕で顔を隠す薫さんであったが、代わりにおっぱいと性器は丸見えであった。

「もう、優馬くんのエッチ……」

 俺は薫さんの横に寝っ転がった。

「でも、気持ち良かったですよね?」

 俺が訊くと、薫さんが俺に方を向いてこう答えた。

「うん、まぁね」

 ニッコリと微笑む薫さんは実に淫靡であった。



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姉妹

 私、朝日瑠夏はサークルの飲み会に参加していた。

 月に二回ほど行われる飲み会は、半ば合コンと化している。

 しかし、飲み会にやってくる男は自分語りばかりするウェイ系の男やオタクで童貞くさい男ばかり。

 今回もハズレだなと思った。

 

「どう? 楽しい、瑠夏ちゃん?」

 サークルの先輩が私に話しかけて来た。金髪で香水の香りを漂わせているこのチャラい先輩は見境なく女の子に話しかけると噂されている。

「ええ、まぁ……」

 顔を引きつらせながらも、私はそう答えた。うっざ。早くどこかに行って欲しい。

 すると、先輩は私の隣に座り、さりげなく脚を触ってきた。

 ゾワっとした悪寒がし、背中がゾクゾクと震えてきた。

 殴りたい。今すぐグ○ンインパクトでこいつの腹に決めて灰にしてやりたい。

 

「瑠夏ちゃんは休みの日は何してるの?」

「えっと、買い物したり、お姉ちゃんと出掛けたりですかね」

「へー! お姉ちゃんいるんだ! いくつ? 可愛い?」

 こいつ、まさかお姉ちゃんもターゲットにするつもりか。本当、節操ないな。血流が全てチンコに行っているのではないだろうか。

「私の一つ上で、今年で21になります。同じ大学に通ってます」

「そうなんだ! 瑠夏ちゃんと同じ学部?」

「そうです。同じ部屋に暮らしてます」

「そうなんだ! シェアハウスかー。いいね!」

「そんな良いものでもないですよ」

 確かにお姉ちゃんと一緒にいるのは楽しいが、一緒に暮らすとなるとそれなりにトラブルや喧嘩が起こる。

 一度、別々に暮らそうかと話し合ったこともあるくらいだ。

 

 その後は先輩のくだらない武勇伝を延々と聞かされる羽目になるが、それをなんとか耐えきると、飲み会は御開きとなった。

 

「瑠夏ちゃん、良かったら俺ん家に来ない?」

「ごめんなさい、ちょっとお姉ちゃんと会う約束をしているので」

 パコる気満々の先輩の誘いを軽く躱した。

 別にお姉ちゃんと約束はしていない。

「そっか、それは残念。それじゃ、また学校で」

「はい」

 

 トボトボと暗い夜道を歩いていく。

「はぁ、誰か良い人現れないかな……」

 ふと夜空を見上げ、まばらに輝く星々を眺める。

 綺麗に輝いている星々を見ていると、なんだか気分が沈んでいく。

 いや、気分が乗らない原因は分かっている。

 その原因は一週間前の出来事。

 

 ビーストファンタジーを終えた後、薫さんが私たちにとんでもない宣言してきた。

「みんな、聞いて! 私と優馬くんなんだけど、付き合うことになったわ!」

 

 私とお姉ちゃん、綾女ちゃんはお互いの顔を見つめ合い、

「「「えぇー!?」」」

 と絶叫した。

 

「ちょっと、薫さん……ここで言わなくても良いでしょ?」

 優馬くんは慌てた様子でそう言った。どうやら冗談ではないようだった。

「ほ、本当なんですか!? 薫さん?」

 驚いた様子でお姉ちゃんが薫さんに訊くと、

「ええ、そうよ」

 とはっきりと答えた。

 

「えっと、どっちから告白したんですか?」

 恐る恐る私が薫さんに尋ねると、薫さんは「私からよ」と答え、ぎゅっと嬉しそうに優馬くんの手を握った。

 優馬くんは顔を赤くし、恥ずかしそうに薫さんから目を背けた。

 なんだ、その初々しいカップルのようなやり取りは。

 

 私の心に見えない刃がズキズキと突き刺さって来るようだった。

「そ、そうなんですか……」

 衝撃の事実に戸惑いを感じつつも、必死に平静を装った。

 優馬くん、私とエッチしたのに。いや、そういえばお姉ちゃんともしてたか。

 

 でも結局、優馬くんはお姉ちゃんでもなく私でもなく薫さんを選んだ。

 薫さん、私とお姉ちゃんよりも年上なのに。

 優馬くんは年上好きだったのだろうか。

 

 

 

 そうこうしているうちに、家の前に辿り着いた。

「ただいまー」

 鍵を開けると、お姉ちゃんがリビングの中におり、何やら壁に耳を当てていた。

「ちょっと、お姉ちゃん……何してるの?」

「しー! 瑠夏! 静かにして! 今良いところなんだから」

 私はお姉ちゃんが一体、何に聞き耳を立てているか気になったので、私もお姉ちゃんの横に並ぶように壁に耳を当てた。

 そこで聞こえて来たのは――

 

「あん! あん! ゆ、優馬くんの……すっごい気持ち良い!」

 こ、これは薫さんの声!?

「薫さんのおっぱい、本当気持ち良いです……」

 これは優馬くんの声だ。

「だ、ダメ……そんなに強く揉まないで!」

 

 間違いない。二人はセックスしている。私は優馬くんの気持ち良さそうに喘ぐ声を聞き漏らすまいと神経を研ぎませた。

 

「あぁん!」

「薫さん、イきます!」

 

 それ以降は二人の声は聞こえなくなった。どうやら終わってしまったようだ……いや、イったのか。

 自分の身体が何かを求めるように熱くなっているのを感じた。

 

「すごかったね、瑠夏」

「う、うん……」

 優馬くんの気持ち良さそうな声を聞いてしまったおかげで、身体が疼いてきた。

 

「えい!」

 すると、いきなりお姉ちゃんが私の身体に抱きついてきた。お姉ちゃんの柑橘系に良い匂いが鼻腔をくすぐる。

「ちょっと、お姉ちゃん!?」

「うふふ、瑠夏。久々にエロいことしましょうか?」

 お姉ちゃんは私にキスをしてきた。

「んふ……」

 柔らかいお姉ちゃんの唇の感触が感じられた。お姉ちゃんの唇は生暖かくてキスをされているとなんだか心地良くなってくる。

「瑠夏、どーせ今日も良い男の人に会わなかったんでしょ?」

 見透かしたようにお姉ちゃんが訊いてきた。まぁ、良い人に会っていれば今頃は男といる。

「まぁね」

「それじゃ、私と慰め合いましょうか。瑠夏も優馬くんのこと好きだったんでしょ?」

「うん、やっぱりお姉ちゃんも?」

「もちろん」

 お姉ちゃんは少し悲しげな表情を見せると服を脱ぎ始めたので、私も服を脱ぐ。

 互いに全裸になり、じっくりとお互いの生まれたままの姿を見つめ合った。

 お姉ちゃんのおっぱいの大きさは私のよりも大きくて羨ましい。

 

 金髪の色白でハーフのような綺麗な顔立ちをしているお姉ちゃんの裸は女同士なのに、見ていて少しドキドキしてくる。

「瑠夏のおっぱい、良い形してるね!」

 ムニュっと、力強くお姉ちゃんは私のおっぱいを揉んできた。

 不意に揉まれて「あぁん」と気持ちの良い声を出してしまった。

「お姉ちゃんも相変わらずおっきいね!」

 お返しとばかりに私はお姉ちゃんの大きいおっぱいを揉み返した。

 手には柔らかい感触が感じられる。

 

 久々にお姉ちゃんとエロいことして傷を舐め合うのも、悪くないなと思った。



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隣人の妹と優馬の妹

「ふふ、瑠夏。ちょっと強く揉みすぎだよ……」

「お、お姉ちゃんこそ……」

 お互いの胸を揉み合っている私たちは感じ始めたせいか、徐々に息が荒くなってきた。

 

「瑠夏、一回手を揉むの止めて」

「うん……」

 私はお姉ちゃんの柔らかい胸を揉むのをやめ、手を離すとお姉ちゃんは抱きつくように私の胸と自分の胸をぶつけてきた。

 

 四つの大きな球体は『ムニュっ』と音を立てるのではないくらい形を大きく変形させた。

 胸からお姉ちゃんのおっぱいの体温が伝わり、高揚感が高まってくる。

 私の乳首は感じたように勃ってしまっていた。

 

「なんか瑠夏の乳首、勃ってるね……相変わらず、綺麗なピンク色で羨ましい……」

 お姉ちゃんはそう言うと、私の胸に顔を近づけ、絶妙な舌使いで私の乳首を刺激するお姉ちゃん。

 吸い付いてはパッと、口を離し、また吸い付く。

 その動作を幾度となく繰り返した。気持ち良い。

 お姉ちゃんは舌で人を気持ち良くさせるのがとても上手い。

 歴代のお姉ちゃんの彼氏はさぞや美味しい思いをしてきたことだろう。

 

 お姉ちゃんは私のおっぱいを舐めるのを止めると、ツルッツルの割れ目を自らの指でクパァ……と開いた。

 開かれた割れ目から少し赤っぽく、ちょっとグロテスクな中身が見えた。

「瑠夏、ここ舐めてくれない?」

「分かった」

 

 お姉ちゃんのマ○コに顔を近づけると突き刺さるような刺激臭が鼻腔を通り抜ける。

 ぺろっと湿ったお姉ちゃんの割れ目を舐める。

 

「あ、ああん……♡」

 お姉ちゃんは気持ち良さそうに淫らに声を上げた。その声を聞くと、ゾクゾクっと興奮が湧き上がる。

 さらに私は犬のようにペロペロとお姉ちゃんの割れ目を舐めていった。

 舐める度にお姉ちゃんは「あん!」と声を出していく。

 

「気持ち良い? お姉ちゃん」

「うん、とっても!」

 お姉ちゃんはまるで飼い犬をあやすように私の髪をナデナデした。お姉ちゃんに撫でられているとなんだか心地良くて、安心する。

 

 すると、お姉ちゃんはベッドに寝っ転がると、綺麗な白い脚を開いた。

 

 お姉ちゃんのとても綺麗なお裸体は、男が見たら一瞬で勃起してしまうだろう。

「ねぇ、瑠夏。一緒に気持ちよくなろう?」

「うん」

 

 私もベッドの上に移動し、脚を開いた。私のマ○コもお姉ちゃんとエッチなことをしていたせいでグチョグチョに湿っていた。

 これはベッドのシーツをたくさん濡らしてしまいそうだ。

 

 私の割れ目とお姉ちゃんとの割れ目を密着させる。ぶつかり合う瞬間、『グチュッ』という大きい水音が鳴り響く。

「瑠夏、腰を動かして」

「うん」

 私たちはゆっくりと腰を動かした。全身の血が股下に集まって来るようにどんどん、マ○コが熱を帯びていく。

 お姉ちゃんとのレズセックスはぶっちゃけ、今までの彼氏とのセックスよりも遥かに気持ち良い。

 

「はぁ、ああん! 瑠夏のおまんこ、すごく良い!」

「わ、私もお姉ちゃんの……あったかくて、すべすべで……気持ち良い!」

 

 しばらくの間、マ○コを擦り合わせていたが、やがて快感が絶頂に達した。

 

「お姉ちゃん、私、もうイっちゃう!」

 自分の割れ目から噴水のように潮が吹き出した。

「る、瑠夏……!」

 お姉ちゃんも絶頂に達したのか、私と同じように淫潮を惜しげも無く発射した。

 綺麗な形をしたマ○コから吹き出す液体はそこら辺の高級酒とは比べ物にならないくらい世の男たちに価値がありそうだ。

 

「いっぱい……出しちゃったね」

「うん」

 お姉ちゃんは上体を起こし、覆いかぶさるような体勢で私を見下ろした。

 

「まだ、イケるでしょ?」

 お姉ちゃんは手で私の割れ目を撫で上げた。自分のマ○コから電撃が流れるような快感を感じる。

 さっきイったばかりだと言うのに、もっとお姉ちゃんに自分の身体に触れて欲しいと思った。

「うん」

 私が頷くと、お姉ちゃんは「ふふっ」と蠱惑的に微笑み、ゆっくりとキスをした。

 この時間ができるだけ長く続いて欲しい――失恋のショックからかそんなことを私は思った。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 薫さんと共に激しくセックスした後、俺たちはシャワーを浴びた。

 薫さんは明日も仕事があるらしく、自分の部屋で仮眠をとるすると言ったため、薫さんの部屋の前までお見送りすることにしたのである。

「それじゃ、優馬くん。おやすみなさい」

「おやすみなさい」

 薫さんは少し寂しげな表情で部屋へと戻っていった。

 しばらく薫さんの部屋には入っていないが、ちゃんと掃除しているだろうか。

 

「さてと、戻るか」

 自分の部屋に戻ろうと歩いた瞬間、スマホから着信音が流れた。

「誰からだろう?」

 スマホに表示されている発信者を確認すると――何と相手は妹であった。

 

「あいつか……」

 心に鉛のような重みを感じつつも電話に出ることにでることにした。

「もしもし?」

「あ、お兄ちゃん! 久しぶりー!」

 スマホ越しから明るい声が耳に届く。

 

 俺の妹、竹内愛子(たけうちあいこ)は俺の一つ下で現在、中学三年生である。

「おお、久しぶり。夜遅くにどうした?」

「どうしたって……お兄ちゃん。東京に行っても連絡してねって言ったのに全然連絡しないんだもん! こっちからかけちゃった」

「そうか、悪かったな。色々と部活とかで忙しくてな」

 これは紛れもない事実である。練習がある日は毎日八時過ぎまで体育館で練習している。

 

「そっか、大変なんだね。どう? 上手くやってる?」

「ああ」

 努力の甲斐あってか、最近はちょくちょく五対五の練習でも使ってもらえるようになった。

「そうか、ちょっと安心したよ! ねぇ、ゴールデンウィークは戻って来るでしょう?」

「あー、そうだな……でも、練習試合とかもあるしな」

 今年のゴールデンウィークは10連休なるらしい。全部、部活の練習や試合で埋まるとは思えないが、あまり長い時間、地元で滞在することはできないだろう。

 となると、帰省するか迷う。

 

 それに、『あの時のこと』を思い出すと身の危険を感じてしまう。

 正直なところ、今はできるだけ愛子とは会いたくない。

 

「お兄ちゃん……もし来ないなら私がお兄ちゃんのところにいこっかな……」

 突然、愛子の声が低くなった。恐ろしい提案に俺は思わず戦慄した。

 

「は!? 何でだよ!」

「だって、どーせお兄ちゃんのことだからまともなもの食べてないでしょ? 私がちゃんとしたものを作ってあげるよ!」

「え、遠慮しとく」

「えー? 何でー?」

 何でもこうしてもない、俺に身の危険が危ないからである。

「料理なら大丈夫だ。ちゃんとしたものを食べてる」

 俺は出来るだけ外食を控え、慣れない自炊に精を出している。

 それに、毎日という訳ではないが頻繁に留衣さんや薫さんがおかず(料理の方の)を提供してくれる。

 

「まさか、お兄ちゃん……彼女できた?」

「は!?」

 先ほどの台詞(セリフ)だけで俺に彼女がいると見抜きやがった。何という洞察力だろうか。

「出来たの?」

「ち、違う! とりあえず、こっちには来るな! ゴールデンウィークは帰って来れるか、部活のスケジュールが分かったら連絡するから! それじゃ、また!」

「え……ちょっと、お兄ちゃ……」

 強引に話を切り上げ、俺は通話終了ボタンを押した。

 

 危ない危ない。愛子が俺に恋人が出来たなんて知ったら、何をしでかすか分かったもんじゃない。

 

 愛子は俺を溺愛している。

 自意識過剰じゃないか? と思うかもしれない。

 だが、地元の石巻市からここに引っ越す前の日――俺は愛子に童貞を奪われそうになったのである。



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妹の暴走

 この俺、竹内優馬は中学時代、地元ではそこそこ名の馳せたバスケット選手だった。

 

 ポジションはフォワードで、チームの点取り屋として試合で活躍していた。

 宮城県代表のチームとして、全国大会に出場することもできた。

 残念ながら二回戦で負けてしまったが。

 

 中学時代、宮城県でバスケの強い明声高校に進学したいと考えていたのだが、残念ながらそこからは声がかからなかった。

 しかし、運良く東京にある高校のパーバード学園から声がかかった。

 

 パーハード学園から声がかかった際、俺は早速親に相談することにした。

 バスケに打ち込む為、俺は親にパーバード学園に進学したいと告げたのだが、親は最初、そこへの進学に乗り気ではなかった。

 どうやら親は俺に近くの高校に通って欲しかったようであった。

「優馬、別に無理して東京の学校に通う必要はないんじゃない?」

 お母さんは暗に推薦の話を断れと言ってくるのであった。

「で、でも……せっかく特待生として入学できるんだし……」

「バスケだけじゃなく、今後のことも考えたら一般入学した方がいいわよ」

「う……」

 確かに母親の言うことも一理ある。

 特待生で入学するということは、部活で成果を出さなければいけない。

 もし仮に何かの事情で部活を辞めた場合、高校そのものをやめる必要があるのである。

 だが、俺はそれでもバスケが打ち込める環境に身を置きたかった。

 

「お願いだ! お母さん。俺を東京の学校に行かせて欲しい。絶対にすごい選手になってくるから」

「なぁ、母さん。優馬もそう言っていることだし、認めてもいいんじゃないか?」

 俺と母さんのやり取りを聞いていたお父さんが助け舟を出してくれた。

 

「もう……あなたったら、甘いわね」

「優馬が必死で練習してるのはお前も知ってるだろ? 子供のことを信じてやるのも親の務めだ」

 お父さんの言葉を聞き、しばらくの間、口を閉じて考え込むお母さんであったがやがて「はぁ……」と呆れたようにため息をした。

「もう……分かったわよ。いい? 優馬。たまには連絡よこすのよ」

「うん! ありがとう」

 

 こうして俺は親から東京の高校進学の許可をもらうことができた。

「ただいまー」

 ちょうど、親の説得が終わったタイミングで妹の愛子が帰ってきた。

 

 愛子もバスケ部に所属しており、引退している俺とは違い、バリバリの現役である。

 愛子は練習着のまま帰宅したようで、汗で青色の練習着が少し濡れているのが分かった。

 

「おかえり、愛子」

 俺が愛子にそう告げると、愛子は不思議そうに俺とお母さん、そしてお父さんのことを見つめた。

「なんか、あったの?」

「優馬が東京の学校からスカウトが来てね。その話し合いをしてたの」

 お母さんが愛子に説明すると、愛子は茶色い双眸を大きく開き、口をパクパクとさせた。

 

「お、お兄ちゃんがスカウト!?」

「ああ。すごいだろ」

 俺は少し胸を張って愛子に告げると、愛子はきっと俺を睨んできた。

「え……まさか、お兄ちゃん。そこに行くつもり?」

「ああ、そうだ」

 すると、愛子は物凄い形相で俺に差し迫った。ぐいっと胸ぐらを掴んでくると、鋭い目つきで俺のことを睨んだ。

「嘘でしょ!? ねぇ? 東京に行っちゃうなんて、嘘だよね!?」

「ちょ、ちょっとどうしたの? 愛子? お母さんもお父さんも賛成したんだけど……」

 ただならぬ愛子の様子にお母さんが心配そうに訊くと、愛子は「もう知らない!!」と言い放ち、部屋に戻ってしまった。

 

「ど、どうしたんだ……あいつ……」

 すると、お父さんが俺の肩にポンと手を置いた。

「きっと、愛子はお前が遠くに住むことになるのが寂しいんだろう」

「そ、そうなのかな……」

 

 俺と愛子は小学校まではそれなりに仲が良かった。

 しかし、中学に上がってからは会話する時間がめっきり減り、どこかお互いを避けて過ごしていた気がする。

 俺は兄妹なんてそんなものだと思っていた為、特段気にしてはいなかったが。てっきり俺は愛子に嫌われているものだと思っていた。

 あいつは俺がいなくなって寂しいなんて思うのだろうか。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 推薦で高校に進学することを決めた俺は一層、自主練に精を出した。他の選手に負けないようにするため、毎日必死で練習を続けた。

 

 それと、アパート探しも行った。パーバード学園には寮がないため、住むところを探さなければならなかったのである。

 スマホやパソコンを使って、いろんな物件紹介サイトを探しに探した。

 

 都内のアパートはどこも家賃が高い。五万以上が相場で、高いところだと十万を超える。まさに家賃のインフレである。

 

 物件を探していた時、俺は偶然にもあるサイトで『キンキィ梅田』というアパートを見つけたのである。

 

 家賃は四万弱で、最寄駅からも近く、アパートの近くには食堂やコンビニもあるという、まさに超優良物件であった。

 さらにアパートの中を仲介業者に見せてもらったところ、とても綺麗な部屋であった。

 俺は最初、事故物件なんじゃないかと思い、『犬島える』で検索したり、仲介業者の人に聞いてみたりした。

 

「事故物件では無いですよ。他の部屋も同じ値段ですし。アパートの大家さんが若い方であまり大家業に力を入れてないんです。趣味のようなものだからこの値段にしてるんだそうです」

「はぁ……そうなんですか」

 趣味で大家業をしてるって、すごいな。

 入居したらちょっと大家さんに挨拶に行った方がいいかな。

 

 入居日を決め、着々と引っ越しの準備を勧めてくれた。

 引っ越しに当たって電気、ガス、水道の契約等があり、お父さんとお母さんが大変そうにしていたのを覚えている。

 

 引っ越し前日、引っ越し業者が家にやってくると、俺は全ての荷物を引っ越し業者に渡した。

 次の日に荷物を東京のアパートで受け取ることになる。

 引っ越しの前日は新しい生活が始まるという高揚感でワクワクしていた。

 

 その日の夜。

 

「いよいよ、明日か……」

 俺は明日に備えて早く寝ようと思った。

 ベッドに入ろうと、ベッドの上にある布団を捲った。

 すると、

 

「……」

 色白い顔が俺を覗き込んだ。それは見覚えのある顔であった。

 

「うわ!」

 ものすごく、びっくりした俺は声を上げた。なんと、布団の下に愛子がいた。

 

「……」

 無言のまま愛子はベッドから出てくる。

 俺は愛子の姿を見て、ぎょっとなった。

「あ、愛子……なんで服着てないんだ?」

 愛子は生まれたままの姿で俺の前に立ちはだかった。白く華奢な身体は我が妹ながら実に色っぽく、成長段階の膨らみは背徳的なエロスを感じさせる。

 下の方は……ほとんど生えてないな。

 無言のまま、ズンズンと俺に近づいてくる。

「お、おい……愛子。何か喋れよ……」

「……」

 しかし、愛子は喋らない。俺は後ろに下がっていき、やがて壁際まで追い詰められた。

 ドンと、強い音が聞こえ、壁が振動した。

 俺の顔の横に愛子の手が置かれた。

 

 これが壁ドンか。俺がされるとは夢にも思わなかった。

 愛子は俺に息がかかってしまいそうなくらいまで顔を近づけこう言った。

 

「お兄ちゃん……お兄ちゃんがいなくなったら私、寂しい。だから……せめて、私とエッチしてほしい」

 一瞬、愛子が何を言っているのか分からなかった。すると次の瞬間、自分の唇が熱くなっていることに気がついた。

 

 どうやら俺は愛子にキスをされたようだ。



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俺の妹がえっちを求めすぎる。

「ん、んふ……」

 愛子はピタリと俺の身体に密着し、濃厚なキスをする。フレグランスの甘い香りが俺の鼻腔を突き刺す。

 さらに愛子は寝間着のズボン越しから肉棒を手で弄ってきた。

 そのやらしく滑らかな手つきは心地良く、あっという間に股間は硬くなってきた。

 

 すると、愛子はキスをやめ、うっとりした表情で俺のことを見つめる。

 俺が履いているズボンに手を掛け、ゆっくりと下ろした。

 俺は愛子にズボンが降ろされているのを黙って見ていた。

 ズボンを脱がされたことで脚が冷たくなる。3月下旬とは言え、まだ少し肌寒い。

 さらに愛子はパンツに手を掛け、躊躇うことなく一気にずり下ろした。

 

「ちょ、愛子……!」

 俺の肉棒は自分の意思とは無関係に大きくそそり勃っている。

 いくら血の繋がった妹とはいえ、キスを奪われ、手コキまでされてしまっては、こうなって(勃起して)しまうのも不思議ではない。

 

「お、お兄ちゃんの……おちんぽだ……」

 えへへ……と愛子は涎を垂らしながら、恍惚に満ちた表情で俺に肉棒を見つめた。

「お、おい……愛子、何する気だ?」

「何って……決まってるでしょ?」

 愛子は真顔で俺のことを見ると、力強く俺の肉棒を掴んだ。

「うわ!」

 先ほどの手コキとは比にならないほどの快楽。生の状態で股間を触られるというのは想像を凌駕するほど心地よかった。

 

「お兄ちゃんのおちんぽ……硬くて、すっごくおっきい……」

 シコシコシコと絶え間なく、愛子は俺の肉棒をシゴいてくる。

 さらに、愛子は自分の顔を股間の下に近づけると、ぺろっと睾丸を舐めた。

「あぁ……!」

 睾丸の部分から愛子のザラザラとした舌の感触を感じる。愛子の粘液は生暖かい。

「すっごい、先っぽから白いのが出てきた……」

 愛子は真顔で肉棒の先端部分を見つめ、右手の人差し指で先走り汁を摘まみ取った。

「これがお兄ちゃんの性液か……」

 俺に見せつけるように、性液を右手の人差し指と親指の間を開いたり閉じたりして、性液の感触を確かめた。

 愛子はふふ、と微笑むとぺろっと指についた俺の性液を舐めた。

 

「美味しい……お兄ちゃんの性液。程よくネバネバしてて、ちょど良い濃さだよ」

 褒められているのかどうなのか、全く分からない。

 

「お兄ちゃんの、もっと、欲しい……!」

 すると、愛子はパクッと俺に肉棒にしゃぶりついた。

「あ、愛子……」

 愛子は顔を上下に動かし、フェラを開始した。愛子が俺に肉棒をしゃぶっている。

 

 一度だって想像したことがない光景だ。

 

 今までエロい想像する上で、オカズにしたのは同級生の女子くらいで、愛子をオカズにしたことは一度もない。

 しかし、今の光景はどんなエロい妄想よりもエロかった。

 エロすぎて不覚にも俺は愛子に自分の性欲をぶち撒けてやりたいというおぞましい気持ちを抱き始めた。

 

「おにいひゃん、ひほいい?」

 上目遣いで訊いてくる愛子の表情はさらに俺の欲情を駆り立てる。

「あ、あぁ……」

 すると、愛子はしゃぶるのをやめた。肉棒は愛子の粘液でたくさん湿っており、外気に触れたことで肉棒部分がひんやりとした。

 

 愛子は肉棒を手で上方向に持ち上げると、裏筋部分を根元から一気に舐め上げた。

「ぐわぁ……愛子、すっごい気持ち良い……」

「お兄ちゃん、裏筋が弱いんだね」

 何度も、何度も愛子に裏筋を舐められ、射精欲を煽られ続けてしまった俺は絶頂直前まで着ていた。

 その証拠に脚がガクガクと震えてきた。

 そんな俺に異変に気づいたのか、愛子が俺にこう訊いた。

 

「お兄ちゃん、もうイっちゃいそう?」

「あ、あぁ……」

「それじゃ、出していーよ♡」

 首を傾げ、可愛らしく微笑んだ愛子は再びパクッと俺の肉棒にしゃぶりついた。

 

 愛子の口の中はあったかい。愛子は舌で肉棒の周りを時計回りに一周しながら舐めると、ぐ、ぐ、ぐ、と顔を動かした。

「あ、あぁ……愛子の口の中、気持ち良い……」

 俺がフェラの感想を言うと、愛子が嬉しそうにしているのが分かった。

 その証拠に愛子の瞳からキラキラとした光彩を放たれている。

 

「おにいひゃん、はひへ、はひへ」

 出して、と射精を促す愛子はさらに顔を早く動かし、さらに強く肉棒を舐めた。

 

「あ……そ、そんなに強くな、舐められたら、で、出る……」

 自分の身体から一気に力が抜けていった。

 

 まるで全身の血が全て股間部分に集まり、血は全て性液に変換されて愛子の口に注ぎ込まれるようだ。

「ん、んふ……」

 愛子は少し苦しそうな表情で俺の肉棒から流れ出る大量の性液を口で受け止めた。

 俺が全て性液を出し終えると、愛子は大きく口を開け、俺が出した性液を見せつけると『ごっくん』と飲み込んだ。

 

 愛子は満足そうな表情を見せると、

「お兄ちゃんの、すっごく美味しかったよ」

 そう感想を言い、俺の身体に抱きつく。

 

 射精したばかりのせいか頭がボーとしており、本能のままサラサラとした愛子の亜麻色の髪を撫でた。まるで絹のようにスベスベとした触り心地であった。

「お兄ちゃん、私、もう、我慢できない……」

 愛子は自分の割れ目を指を使って広げた。愛子の成熟しきっていない割れ目はものすごく湿っていた。

 しかし、愛子の頬は赤く火照っており、これからしようとする行為を待ちわびるその表情はまさに成熟した女性(メス)であった。

「お兄ちゃんとえっちしたい……」

 立った状態のまま、愛子は割れ目に俺の肉棒を近づけ、挿入しようとした。

 

 ゾクッと嫌な予感がした。

 

 愛子の割れ目に俺の肉棒の先端部分が触れそうになる。

 しかし、俺は愛子の肩を掴み、挿入を拒んだ。

「お兄ちゃん?」

 愛子は不思議そうな表情で俺を見つめた。

 

「愛子、兄妹でえっちするなんてだめだ。もし、愛子が妊娠してしまったらお父さんとお母さんが悲しむ。ここまでにしよう」

「やだ、もっとお兄ちゃんとえっちなことしたい」

「こ、ここまでにするべきだ!」

 

 さっきの射精によって、若干賢者モードに入った俺は愛子とのえっちを拒んだ。

 しかし、愛子の意思は俺の想像よりも遥かに固かった。

 

「もししてくれないなら、今すぐ叫んでお父さんとお母さんを呼ぶよ」

「な……」

 お、脅してきやがった。

 なんて恐ろしいことを言うんだ。こんな状況をお父さんとお母さんに見られたら弁明の余地はない。

 

「わ、分かった……だが、えっちはまだダメだ。ゴムだってないしな。それ以外で勘弁してくれ」

 不満そうな顔をしたが、愛子は頷いた。

「分かった。次はちゃんとえっちしてね。ゴム用意してくるから」

「あ、ああ……」

 次ってことはえっちするのはまだ諦めないのか。

「それじゃ、お兄ちゃん。今度はお兄ちゃんが私を気持ち良くしてくれる?」

「分かった」

 まだ妹との淫らな行為を終わらすことができない俺だったが、そんな状況を嬉しく思う自分もいた。



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栗とリス

「さぁ、早く……お兄ちゃん、気持ち良くしてよ」

 愛子は上目遣いでおねだりしてきた。

 その表情は女性らしさを感じさせるように艶っぽいもので、とても興奮してきた。

 

 こうして改めて愛子の身体を見ると、とてもエロい身体をしている。

 胸(おっぱい)は中学二年生にしては大きめで、程良い肉つきをした身体をしている。

 恐らく、愛子の同級生は愛子をオカズにしていることだろう。

 

 愛子の綺麗な亜麻色をした後頭部の髪に触れ、ゆっくりとキスをした。

「ん……」

「うふ……」

 俺と亜希子はお互い、感じたような声を漏らす。キスの最中、舌を絡めて、生暖かいトロリとした愛子の舌の感触を味わった。

 愛子はそんな俺に対し、俺の頬や玉を触れながら、熱い息を弾ませる。

「お兄ちゃん……愛子、いますっごくドキドキする」

「そっか」

 すると、愛子は俺の背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめてきた。

 

 身体全体から愛子の柔らかさと温もりが伝わってくる。

 愛子の秘所から生える淡い芝生の感触が下腹部に伝わり、否応にも快楽への刺激を煽ってきた。

「うふふ……お兄ちゃんのおちんぽ、また大きくなってきてる」

 ハグを止めた愛子はぎゅっと、俺の肉棒を握ってきた。

「あぁ……お兄ちゃんのおちんぽ、私のおまんこに入れたいなぁ……」

 愛子は俺に肉棒を握ったまま、挿入はせず、ギシギシと上下に腰を動かした。

 恐らくは脳内で俺とセックスしているのだろう。

 

「お兄ちゃん、やっぱり入れちゃダメかな?」

「だ、ダメだ……」

 一瞬、「いいよ」と言いそうになったが、なんとか理性を引き戻し、挿入を拒んだ。

 今ここで愛子とセックスしたら取り返しのつかないことになる。

 

「そっか、分かった。ねぇ、お兄ちゃん。私のここ、さっきからめっちゃ濡れてるんだけど、お兄ちゃんの手で気持ち良くして」

「ど、どうすればいいんだ?」

「クリトリスを触って」

 愛子は左手で割れ目を開き、反対の指で、ツンツンと指差した。

「わ、分かった」

 恐る恐る、俺は愛子のぷっくりとした陰核に触れる。

「あん……」

 愛子は俺に陰核を触られ、感じような声を漏らす。

「お兄ちゃん、もっと……強く」

 さらに強い力で俺は陰核を触れた。すると、愛子はさらに息を荒くした。

 

「愛子、気持ちいいか?」

「う、うん……」

 すると、愛子は俺の手を掴んだ。

「お兄ちゃん、私のおまんこ、舐めてくれない?」

 愛子が俺に自身のマンコを舐めるように懇願してきた。

 俺はびしょびしょに愛液で濡れた愛子のマンコを見つめる。

 

 ごくりと生唾を飲み込んだ。エロい、あまりにもエロすぎる……

 血の繋がった妹のマンコに俺は欲情しているのである。

 

「分かった」

 本能の赴くままに俺はぺろっと愛子のマンコを舐めた。「あん……」と気持ち良さげな愛子の声が耳に届く。

 顔全体を愛子のマンコに当てがると、熱気と湿り気が顔中を包み込んだ。

「お、お兄ちゃん……いいよ、気持ち良い……」

 

 ほとんど理性が崩壊している俺はペロペロと愛子のマンコから分泌している液体を舐めた。

 さらに愛子の腰を抱き寄せ、淡い茂みに鼻を擦り付ける。ほのかに甘い香りとわずかな尿のようなツンとした香りが鼻腔を通り抜ける。

「お兄ちゃん、私、もう、イっちゃいそう……」

 愛子の膝がガクガクと震え始めた。

「愛子、良いんだぞ。イっても」

 さらにペロペロと愛子の陰茎を重点的に舐めると、愛液の量がさらに増した。

 

「ああ、ダメ、もうイっちゃう!」

 顔にものすごい水圧が押し寄せた。あまりの勢いに驚き、愛子の割れ目から顔を離すと、愛子の割れ目から大量の潮が吹き始めた。

 

「す、すごい……」

 思わず、そんな感想が口から溢れた。女性が潮を吹くところをこの目で見るのは初めてである。

 

 潮の幾らかは俺の顔にかかった。潮を愛子が出し尽くすと、愛子はがっくりと膝を折った。

 

「ああ、気持ち良かった……」

 息を切らす、愛子に俺は「大丈夫か?」と声を掛けると、愛子は俺の顔をじっと見つめた。

「うん、お兄ちゃん。今度はちゃんとエッチしようね。それと、東京に行っても頻繁に連絡してね」

「ああ、約束するよ」

 

 

 ◇◇◇

 

 あの日以来、俺は愛子に連絡していなかった。

 愛子の方も昨日まで俺に連絡することはなかった。

「はぁ……」

 部活帰り、俺は重々しい足取りでアパートへと向かった。

 部活のスケジュールを今日、顧問の先生から言い渡されたのだが、ゴールデンウィークの最初の六日は、練習や練習試合を行い、残りの四日は休日にするようであった。

 

 帰省すべきかどうか迷う。

 帰省したら、愛子は俺に対して性行為を迫ってきそうだ。

 そんなことをされたら、理性を抑えることができるのか自分でも分からない。

 

 アパートについた俺は鍵を開け、中へと入った。

 電気を点けて制服を脱ぎ、シャワーを浴びる。スマホをいじりながら髪を乾かした。

 今日の部活かなりハードであった。

 早いところ眠りにつきたいと思い、冷蔵庫に入れておいた惣菜とご飯をチンし、急いで口にかきこんだ。

 歯を磨き、寝る準備は万端。俺はいつも使っているベッドへと向かい、掛け布団をめくると、白い顔が俺のことを覗き込んだ。

「うわ!」

 驚きのあまり、俺は後ろに仰け反った。ふ、布団の中に誰かがいる……

 

 すると、かけ布団の中から何者かが出て来た。

 

「久しぶりだね、お兄ちゃん」

 

 ベッドの上に立ち、ニッコリと不気味に微笑むその人物はまぎれもなく俺の妹の愛子であった。



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夜這い

「久しぶりだね、お兄ちゃん」

 ベッドの上で愛子が不敵に微笑んでいる。一体、どうして愛子がここにいるのだろうか。

 愛子は英語のロゴが入った赤いシャツとホットパンツと黒のニーハイを履いていた。

 

「あ、愛子……どうしてここに?」

 俺が訝しんだ様子で訊くと、愛子はベッドから降り、俺との距離を詰めた。すると、ふわりとしたフレグランスの匂いが漂った。

「待ちきれなくて、来ちゃった……」

 愛子はえへへ……と微笑んだ。その仕草は可愛らしく、少しときめきそうになる。

「き、来ちゃったって……父さんと母さんにはちゃんと言ったのか?」

「うん、言ったよ!」

 

 両親よ、そこは止めてくれよ。

 仮にも女子中学生一人が東京に繰り出すって結構危ないことだと思うぞ。

 俺は両親に対して思わず呆れ果てた。放任主義にも程がある。

 

「マジか……それより、中にはどうやって入ったんだ?」

「大家さんに頼んだらあっさりと入れてもらえた! あの薫さんって人、いい人だね!」

 

 薫さん、もはや俺の部屋を自分の部屋のように思っている節があるぞ。いくら大家さんとは言え、勘弁して欲しい。

 

「薫さんか。全くあの人は……」

「これでGW中、ずっとお兄ちゃんと一緒だね!」

 

 ニコニコと愛子が微笑む。純粋無垢な笑顔と整った顔立ちと相まって、可愛らしい。

 しかし、過去に襲われたせいで、愛子の心の奥底に獰猛な野生を隠している気がしてならない。

 

「はぁ……なんでこんなことに」

 不安だらけで俺はため息を零した。少なくとも愛子がいる間は薫さんとはエッチできない。

 さらに、愛子が仕掛けてくる誘惑に必死で耐える必要がある。これはきついなぁ。

 

 できるだろうか……いや、できるはずだ! 俺は今まで複数の女性とエッチをしてきた。

 童貞だったあの時とは比べ物にならないくらいレベルアップしたはずだ。

 

「お兄ちゃん! お腹空いたでしょ?」

「え? ああ、まぁな……」

「せっかくお兄ちゃんのところに来たから、お料理してあげるね!」

 

 愛子は俺に料理を振舞ってくれると言ってきた。

 普段、俺は大したものを食べないので結構ありがたい。

 

「そうか、ありがとう」

「ううん、それじゃゆっくりと待ってて!」

 

 そう言い残した愛子はキッチンへと向かった。

 一人、リビングに取り残された俺は木製の椅子に腰を掛け、テレビを入れた。

 偶然入れたチャンネルでは何やらよく分からない実験をして出演者が騒いでいる。

 じっと黙ってみていたが、一体何が面白のか俺には分からない。

 

 そんなつまんないテレビを見つめながら、俺は愛子に襲われそうになった時のことを思い出していた。

 

 ――愛子の透き通るような白い素肌。

 ――愛子のぷっくりと膨らみかけの胸(おっぱい)。

 ――愛子の淡い毛の生えた秘所(おまんこ)。

 

 いつの間にかムクムクと下半身がテントを張り始めた。

 

 あかん、あかん。静まれ、静まれ……

 

 噴水のように湧き上がる性欲を、俺は必死に押さえ込んだ。

 キッチンからは、トントントンとリズミカルに包丁で何かを刻む音が聞こえる。

 一体、何を作っているのだろうか。

 

 待つこと、およそ二十分。キッチンとリビングが通じる扉が開いた。

 

「お待たせー! お兄ちゃん」

 愛子が鍋を持ってリビングにやって来た。手にはキッチンミストをつけている。

 それよりも俺は愛子の格好に突っ込まずには居られなかった。

 

「おい! 愛子、なんだその格好は!」

「え? 裸エプロンだけど……」

 愛子は可愛らしく首を傾げる。サラッとした亜麻色の髪が愛子の肩にかかる。

 

 裸エプロン――文字通り、裸の状態でエプロンを着用することである。

 ちなみに以前、瑠夏さんも同じことをした。あれはとてもエロかった……まぁ、愛子のも十分にエロいのだが。

 

「そうじゃなくて! なんでそんな格好してるんだよ!」

「この方が、お兄ちゃんも欲情してくれるでしょ?」

 

 愛子が蠱惑的に微笑む。頬を朱に染め、うっとりとした表情で見つめる愛子は実に美しい。

 

「そ、そんなことは……」

「うふふ……好きなだけ、この格好見てもいいからね」

 愛子はエプロンの裾を持ち、秘所が見えるか見えないかの瀬戸際まで捲し上げ、俺に見せつけてきた。

「や、やめろっておい……」

 

 俺は思わず顔を背けた。

 愛子は満足げに微笑むと再びキッチンへと戻り、他のお皿を取りに行った。そんな愛子の後ろ姿を俺は眺めていた。

 

 ぷりっとしたお尻が眼に映る。ああ、とてもエロい……もう自制心をコントロールできる気がしなくなってきた。

 

 料理の乗ったお皿を全てテーブルの上に並べ終えると、俺たちは夕食を食べることにした。

「それじゃ食べよっか。お兄ちゃん」

「そうだな」

 

 いただきますをし、俺は料理を食べることにした。鍋の蓋を開けると、モワッと美味しそうな匂いがする湯気が出てきた。

 鍋の中を覗き込むと、カレーが入っていた。

 

「カレーか、美味しそうだな」

「でしょでしょ? 頑張って作ったんだよ!」

 愛子は褒められて嬉しいのか、興奮気味にそう言った。ちなみに愛子の格好は相変わらず、裸エプロンである。

 

 俺はカレーをご飯が入った大きめなお皿に装った。スプーンで一口、カレーランを食べた。

 

「どう、お兄ちゃん?」

「うん、美味しい」

 率直な感想である。ピリッとした絶妙な辛さと、コクのある味わいでとても美味である。

「そっか、良かった。ねぇ、お兄ちゃん。高校生活って楽しい?」

「ああ、それなりに楽しいぞ」

「具体的にはどんなところが楽しいの?」

「うーん、そうだな……」

 

 俺は愛子にこの一ヶ月に起きた楽しい出来事を話した。

 もちろん、エロ要素は抜きで。

 

 愛子には話さなかったが、個人的に一番面白かったのは、俺と薫さん、留衣さん、瑠夏さん、綾女の五人で集まってビーストファンタジーをプレイしたことである。

 

 ゲームをやったのは久々であったが、大勢でのプレイはとても楽しかった。

 また、みんなで集まってプレイしたいが、薫さんと付き合ってからは留衣さんや瑠夏さんと関わる機会が減った。

 

 そのことを少し寂しく感じている自分がいる。

 

 やがて、夕食を食べ終えると、愛子は「お皿洗ってくるね」と食器を持って、キッチンへと向かった。

 

 ご飯を食べたせいか、俺は少し眠くなってきた。

「ちょっとだけ、横になるか……」

 ベッドの上に横たわり、スマホを弄った。

 時刻を確認すると、既に夜の九時を回っていた。

「もう、こんな時間か」

 

 ウトウトしてきた。やばい、ここで寝たらダメだ……

 しかし、俺は睡魔に負けて目を閉じてしまった。

 

 

「お兄ちゃん……」

 耳元で、愛子の囁く声が聞こえ、俺はゆっくりと目を開けた。腹部に何やら重みを感じる。

「あ、愛子!?」

 愛子が全裸姿で俺の腹に跨るように座っている。恍惚に満ちた表情で俺のことを見つめていた。

「やっときた……お兄ちゃんと……エッチできる時が……」

 

 ハァハァ……と息を荒くしている愛子は自分の右手に持っているものを俺に見せつけてきた。それは輪っか状の物体――そう、コンドームであった。



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玉舐め、挿入

 愛子は俺のズボンを手を掛け、脱がした。さらにその下に履いているトランクスも脱がした。

 そして、パクッと反り立つ肉棒にしゃぶりつく。

「う……!」

 痺れるような感覚が全身を駆け巡る。

 すっごく気持ち良い。前にフェラしてもらった時よりも一段と気持ち良くなっている気がする。

 

 愛子のやつ、腕を上げたな。いや、口か。

 

 上目遣いでイヤラシイ表情で見つめる愛子の表情はとてもエロかった。

 頬を細めており、『じゅるじゅるじゅる』と激しく水音を立てて、絶え間なくフェラを続ける。

 自分の肉棒はねっとりとした愛子の唾液によって湿っていった。

 

「気持ち良い? お兄ちゃん?」

「あ、ああ……」

 すると、愛子はフェラをやめ、顔を睾丸の下まで持っていった。

 そして激しく睾丸をペロペロと舐めた。

 

「ああ、気持ち良い……」

 気持ち良さのあまり、俺は思わず身体を仰け反らせた。睾丸を舐められるというのが、こんなにもとめどない快楽をもたらすものだとは思わなかった。

 

 愛子に睾丸に舐められることによって、睾丸の中にたくさんの性液が作られていくような気がした。

 

「お兄ちゃんはどこが一番好き? 裏筋?」

 愛子は睾丸から裏筋にかけて、一気に力強く舐め上げた。

「はぐわぁ……」

 気持ち良さのあまり、変な声が出た。

「それとも先っぽが好き?」

 次に亀頭の部分を重点的に責めてきた。

「それとも、こんな風に咥えられるのが好きなのかな?」

 パクッと肉棒を咥えた。ものすごく焦らされたせいで、ヌルヌルとした先走り汁が出始めた。

「やっぱり、玉が好きなの?」

 再び、睾丸を愛子は舐めた。睾丸を舐めながら、愛子は右手で俺の肉棒を握りしめ、ゆっくりとシゴいていった。

 肉棒から『クチュ、クチュ』という音が奏で始めた。

 うっとりとした表情で愛子は手コキしながら俺の肉棒を見つめた。

 

 やがて、射精感は絶頂に達した。

「あぁ……愛子、俺もう出そう……」

 俺が出そうであると宣言すると、愛子はここぞとばかりに口を開け、俺の射精に備えた。何やら愛子の表情は得意げであった。

「いいよ、出しても……」

 そして、俺は『ドピュ、ドピュ』と大量の白濁液を愛子の口に放出した。

 

 愛子は嬉しそうな表情で全て口の中に収めこみ、『ごくん』と飲み込んだ。

 

「久しぶりにお兄ちゃんの性液飲んだら、私、興奮してきちゃった」

 愛子は膝立ちし、自身のグッチョリと濡れた性器を見せつけてきた。

 

 割れ目からはしっとりとした液体が滴っており、愛子は割れ目を自身の指で開いた。

 

 尿道口の上にあるプニッとしたクリトリスが目に映った。

 あの日、触れた愛子のクリトリス。

 俺はゆっくりと手を伸ばし、優しい手つきで愛子の性感帯を愛撫した。

 

「んふ……」

 愛子は感じたかのような声を漏らす。俺はさらにクリトリスを弄った。

 愛液がどんどん溢れ出してくる。俺は舐め回すようにエロい愛子の姿を見つめた。

 

 俺は割れ目に顔を近づけ、愛の蜜をペロッと舐めた。

 愛の蜜は酸味のある、ほのかに甘い味であった。

 

「ん……お兄ちゃん、すごい気持ち良いよ」

 しばらく舐めた後、俺は膨らみかけの愛子のおっぱいを両手で鷲掴みした。

 両手から押し返すような張りのある、柔らかい至福の感触がした。

 しばらく、揉み続けていると、徐々に愛子の息遣いが荒くなり、身体を痙攣させた。

 

 すると、愛子はさっき出したばかりの肉棒を掴み、シコシコとしごいてきた。

 出したばかりだと言うのに、再び射精感が訪れた。

 

「お兄ちゃん……」

 愛子は俺の唇に自分の唇を合わせた。俺の唇から愛子の温もりを感じた。

 愛子とのキス――とても甘美であった。

 

 キスを終え、俺と愛子は見つめ合う。俺はサラサラとした亜麻色の愛子の髪を撫でた。

 

「お兄ちゃん、今日はゴムあるし、エッチしよ?」

「そう……だな……」

 自分でもびっくりするほど、愛子のセックスの提案を受け入れることができた。

「それじゃ、お兄ちゃん。脱いで」

 俺は着ている服を脱ぎ、全裸姿になった。

 全裸姿で向かい合う、俺(あに)と愛子(いもうと)。

 

 他の者が見れば異様な光景であろう。

 現実世界にて、兄妹が裸で向かい合うことなど普通ありえるだろうか。

 いや、ありえない。

 

 近親相愛は官能小説など、非現実世界でのみ許される行為である。

 

「それじゃ、お兄ちゃん。ゴムつけてあげるね」

 愛子は手慣れた様子で俺の肉棒にコンドームをつけた。コンドームの圧迫感は中々のもので、締め付けられる感じが心地良かった。

 

「それじゃ、お兄ちゃん。挿れて」

 恐る恐る、俺は自分の肉棒を愛子のしっとりと湿った割れ目へと近づけた。

 

 ごくりと生唾を飲み込む。亀頭が割れ目に触れた。

 さらに腰を前の方に動かすと、ニュルッと、吸い込まれるかのように肉棒は割れ目の中へと――挿入った。

 

 それは俺にとって、とても感動的な光景であり、欲情を一気に駆り立てることとなった。



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幸福な世界へ

「き、気持ち良い……」

 俺の肉棒が愛子のマンコの中に入っている。

 信じられない光景である。

「お兄ちゃん、気持ちいいよぉ……」

 愛子は気持ち良さそうに甘い吐息を漏らしていた。

 俺はゆっくりと腰を前後に動かし、愛子の膣を突いた。

「ん……ん……」

 突くたびに愛子は喘ぐような声を出す。その可愛らしい声はさらに俺の欲情を昂らせた。

 それにしても、愛子の膣の中はものすごい気持ち良い。

 例えるなら、肉棒に無数のイソギンチャクがまとわりついているかのようである。

 

 身体の奥底から、種を残すための液体がどんどん肉棒に込み上げてくるようで、すぐに射精寸前まで達してきた。

 

「お兄ちゃん、もっと突いて……」

 俺は無言のまま頷き、さらに腰を突く速度を速めた。

 パン、パンという音が部屋の中に鳴り響く。

 

「いい……いいよ、お兄ちゃん……」

 さらに、愛子のおっぱいを手で揉むことにした。

 手と股間。

 両方から至福の感触が伝わる。

 

「愛子。俺、もうイキそう」

「うん、一緒にイこう……」

 

 全身の力が抜けていくような感覚が訪れた。肉棒から白濁液が放出されるが、コンドームをつけているため、その液体は愛子の膣内に届くことはない。

 

 性液を出し尽くし、すっきりした肉棒を抜くと、愛子の割れ目から大量の潮が吹いた。

 

「あぁ……」

 愛子は口元を抑え、身体を痙攣させながら潮を吹き出し続けた。中々の勢いであり、俺の顔にいくらかかかった。

「愛子、いっぱい出たな」

「うん」

 愛子のマンコに目をやると、潮を吹き出したせいで、ビッチョリと濡れていた。

 ぺろっと、愛子のマンコを舐めた。

「ひゃぁ……!」

 さらに舐め続けると、気持ち良いのを我慢するかのように、愛子は蛇のように身体をクネらせた。

 しばらく舐め続けていた俺だったが、舐めるのを止めると、愛子はこんな願いを言ってきた。

「お兄ちゃん、もう一回しよ?」

「そうだな」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「なんていうことなの……」

 優馬くんの家に合鍵で忍びこんだ私はとんでもない光景を目の当たりにしていた。

 優馬くんが妹とセックスをしている。

 

「お兄ちゃん! すっごい! もっと突いて!」

「ああ……分かった!」

 まるで何かに取り憑かれているかのように、腰を振り続けていた。

 私とのセックスよりも数倍も気持ち良さそうである。

 

 私は悔しいのを耐えるために、下唇を噛んだ。

 優馬くんがセックスをしているのは、自分の妹。

 本来であれば、身体の関係を持つことは許されない存在である。

 

 それなのに、優馬くんはとても気持ち良さそうに性行為をしていた。

 私は悔しくて仕方がなかった。裏切られたという思いでいっぱいになった。

 

「あ、愛子……い、イく!」

 次の瞬間、二人は他の部屋の住人に聞かれることなどまるで御構い無しとばかりに、絶頂に達した声を出した。

 

 私は優馬くんとセックスする時、いつも聞いているはずなのに、その声はまるでホラー映画に出てくるやばいモンスターの呻き声のように感じた。

「優馬くんのバカ……」

 二人には聞こえないようにポツリと呟き、私は部屋を後にすることにした。

 

 トボトボとした足取りで自分の部屋に向かうと、途中で綾女ちゃんと出会った。

「あ、薫さん! お疲れ様です!」

「お疲れ様。今帰り?」

「はい。部活帰りに本屋に寄ってたら遅くなっちゃいました!」

 綾女ちゃんは右手に本屋で購入したと思われる袋を持っていた。

「本屋で何か買ったの?」

 すると、綾女ちゃんはここぞとばかりに目をキラキラと輝かせ、顔を近づけた。

「はい! 『筋肉モリモリマッチョの男に脅されています。』の最新刊を購入したいんです。すっごいんですよ、この話! 薫さんはBLとかに興味ありますか?」

「いや、あんまりないかな……」

 そう答えると綾女ちゃんはしょぼーん(´·ω·`)としたような表情になった。

 

 男同士の恋愛ものについては、私はあまり理解を示すことができなかった。

 決してBLにのめり込む人を悪く言うつもりはないが。

 

「そうですか……でも、もし興味が湧いたらいつでも言ってください! 貸しますから!」

「ええ、分かったわ」

 

 綾女ちゃんと少し話した後、自分の部屋へと戻った。

 すぐさま、私はベッドの上にダイブする。

 

「うぅ……優馬くん、ひどいよぉ……」

 先ほどの光景を思い出すと涙が溢れてきた。

 せっかく付き合って楽しくなってきた頃だというのに、他の女(しかも自分の妹)とセックスに興じるなんて、あんまりじゃないだろうか。

 

 十五分ほど泣き続けていると、スマホから着信音が鳴ったことに気が付いた。

 画面を確認すると、瑠夏さんからLINEが届いていた。

 

 ――薫さん、お疲れ様です。今度のGW、良かったらみんなでまたビーストファンタジーしませんか? アップデートされて、新しい街にいけるようになったらしいですよ!

 

 ビーストファンタジーか。確かに楽しかったが、今は優馬くんと合わせる顔がない。

 

 断ろう。

 

 スマホで返信文を書こうとした時だった。

 

 ピンポーン。

 

 扉からインターホンの音が聞こえた。

 

「はーい!」

 玄関の扉を開け、外で待っていたのはサガワな配達人であった。

「宅配便です。こちらにサインをお願いします」

 宅配便? 何かを頼んだ記憶はなかった。少し、不思議に思いつつも、私は配達物を受け取ることとした。

 

 配達物をリビングまで運んだ。配達物の中身は中々重かった。

 緊張しつつも、箱の中身を開けた。

 

 中に入っていたのはVRゴーグルであった。ビーストファンタジーで使う時のものと似ているが、デザインが微妙に異なっている。

 

 サイズは全体的にコンパクトになっており、ゴーグル部分がかっこよくデザインされて、近未来感を感じさせるものであった。

 さらに、箱の中には手紙が入っていた。

 

 ――ビーストファンタジーをクリアされたあなたへ、こちらの非売品のゲームを配布します。クリアした方には『幸福な世界』を提供いたします。

 

 幸福な世界。

 あまりにも胡散臭い手紙に、思わず苦笑いが溢れるのだった。



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灰色かバラ色か。

「お兄ちゃん……すっごく気持ちよかったね……」

「ああ、そうだな……」

 

 俺と愛子はヘトヘトになるまで幾度となく身体を交わせた。ゴムを付け替えては何度も何度も愛子の膣の中を突いたのであった。

 おかげで、部活した時以上に汗をかいてしまった。

 

「お兄ちゃんとセックスしたら汗かいちゃった。お兄ちゃん、ちょっとシャワー借りてもいい?」

「ああ」

 

 愛子は全裸のまま着替えを持って、シャワーへと向かった。

 俺はバタンとベッドの上に横たわった。

 

 さて……改めて、愛子が俺の家に来てしまったわけだが、これからどうしようか。

 GW中、愛子が家にいると、俺が薫さんと付き合っていることがバレるのは時間の問題である。

 もし、俺と薫さんが付き合っていることを愛子が知ったら何をしでかすかわからない。

 いや……もしかしたら愛子が薫さんから鍵を借りた際、話の流れで付き合っていることを愛子に話してしまっているのかもしれない。

 最悪の場合、愛子は破局させるため、俺たちがセックスしたことを洗いざらい、薫さんに話してしまう可能性もある。

 

 そう考えると、理性が崩壊していたとはいえ、愛子と一線を超えてしまったことを激しく後悔した。

 というか、妹とセックスするなんて、とんでもないクソ下衆野郎である。

 賢者タイムの今、激しく自己嫌悪に陥った。

 

 ――ピンポーン

 

 正解は越○製菓よろしく、扉からインターホンの音が鳴り響いた。

 

「まさか……」

 薫さんがやって来たのではないかと思った。俺は外にいるのが誰か確認するため、急いで服を来て、玄関の扉の前へと移動した。

 居留守を使っていると、薫さんは勝手に部屋の中に入ってくる。

 今、薫さんに部屋の中に入られるのはまずい。

 ゆっくりとドアスコープを覗き込むと、外に居たのは、薫さんではなく佐川の宅配員のようだった。

 安堵した俺はガチャっと扉を開けた。

 

「宅配便です。こちらにサインか印鑑をよろしくお願います」

 宅配員は爽やかな笑顔を差し向け、伝票にサインか印鑑を押すように指示した。

「すみません、ペン借りてもいいですか?」

「はい、どうぞ!」

 宅配員からペンを受け取り、小さな丸に自分の名字を記入した。

 

「毎度!」

 宅配員は俺に配達物を渡すと、そそくさと帰っていった。

 

 受け取った荷物はずっしりと重い。中には一体、何が入っているのだろうか。

 

 俺はリビングへと戻り、箱を開封してみることにした。送り主を確認すると、『RSFラボ』という記載があった。

 

 緊張しつつも箱を開けると、中にはVRゴーグルが入っていた。

 

 以前、ビーストファンタジーをプレイした時に使ったものに似ているが、よく見るとデザインが異なっている。

 全体的にすっきりとしており、どこか近未来を感じさせるようなかっこいいデザインとなっていた。

 さらに、箱の中には手紙も入っていた。

 

 ――ビーストファンタジーをクリアされたあなたへ、こちらの非売品のゲームを配布します。クリアした方には『幸福な世界』を提供いたします。

 

「幸福な世界……」

 あまりにも突拍子の無い言葉に思わず、苦笑しそうになったが少しプレイしてみたくなった。

 

「お兄ちゃん。何それ?」

 シャワーから戻った愛子は頭の上にバスタオルを乗せていた。

 俺の隣にやってくると、ボディソープの良い香りが鼻腔をくすぐった。

 愛子はピンク色の寝間着を着ており、興味津々とばかりにVRゴーグルに視線を写していた。

 

「ああ、RSFラボっていうゲーム会社から送られて来たんだ。前にビーストファンタジーってゲームをやったことあってな。それの豪華特典だと思う」

 すると、愛子は目を大きく見開いた。

「へー、あのゲームを。お兄ちゃん、すごいね! うちのクラスでも何人か挑戦してたけど、誰もクリアした人いなかったよ!」

「そうなのか」

 まぁ、俺も実際のところクリアしたかどうかは微妙なところである。

 結局、魔王を倒すことなくゲームを終えたのだから。

 

「お兄ちゃん、やってみたら?」

「ああ。愛子もやってみるか?」

「うん、けどお兄ちゃんから先にやっていいよ」

「そうか、ならお言葉に甘えて」

 俺はVRゴーグルを装着して、ゲームを起動した。果たしてどんなゲームなのだろうか――

 

 

「どこだ、ここは?」

 辺りを見渡すと真っ白な空間が果てもなく広がってた。

「ようこそ、ハッピーワールドへ」

 突如、俺の目の前に緑色の髪をし、背中から翼が生えている女性が出現した。

 

「えっと、あなたは?」

「私の名前はガブリエル。神に使えしもの。あなたにとって世界とはなんですか?」

「な、なんか壮大な質問だな……」

「では、質問を変えます。この世界は誰によって出来ているのでしょう?」

「それは……人間じゃないのか?」

 すると、ガブリエルはニッコリと微笑んだ。

「その通りです。このハッピーワールドの世界もディレクター、グラフィックデザイナー、プログラマーと数々の人間の手によって作られました」

 

 どうやらガブリエルは自身がゲームの世界の住人であることを認識しているようである。

 そこはビーストファンタジーに登場した魔王と一緒のようだ。

 

「では、あなたが住んでいる世界も人間によって出来ていると思いますか?」

「そりゃあ……まぁ」

 今のこの現代社会において、建物や乗り物といったものなど、全て人間が作り出したものである。

 人間が今の世界を作りだしたと言っても過言ではない。

「それは複数の人間によってと意味でしょうか?」

「ああ」

 ガブリエルがバサッと翼を広げ、ゆっくりと宙に浮かび上がった。

 

「それは違います。あたなの世界は『ある一人』の人間によって生み出されています」

「どういうことだ?」

 言っている意味が全くわからなかった。

「これをご覧ください」

 俺の前に二つの立体映像が映し出された。何かの細胞のような形をしたものであった。

「なんだこれ?」

「銀河ネットワークと脳細胞の映像です。右が脳細胞。左が銀河ネットワーク。どうです? 形が良く似ていると思いませんか?」

「言われてみればそうだな」

 確かに二つの映像は酷似していた。

 だが、それが一体どうしたというのだろうか。

「宇宙全体……いや世界は一人の人間によって生み出されています。思考、いや創作物という行為によって」

 そんなバカなと思いつつも、少し興味深い話であった。

「一体、誰によって作られているんだ?」

「それは私にも分かりません。ですが、このゲームを開発したディレクターは、一人の創作者によって今の世界が作られたものだと考えています」

「い、いくらなんでも、そんなことないんじゃないか?」

 一人の人間によってこの世界がよって作られた――少しロマンがあるように感じるが、もしそうだとしたら俺はさしづめ、脇役として作られたんだろうな。

 

「まぁ、ひとまずその話は置いておきましょう。あなたに体験してもらうゲームはあるかもしれない世界」

「あるかもしれない世界?」

「ええ、パラレルワールドという言葉はご存知ですか?」

「ま、まぁ……」

 

 パラレルワールド――世界において、ある時点から分岐し、分岐前の世界と並行に連なる別の世界のこと。

 

「あなたは一人の女性と結ばれた」

「ど、どうしてそれを……」

「細かいことは気にしないでください。あなたは高校生活において、複数の女性と知り合った。他の女性と結ばれた場合、どんな未来が待っているか気になりませんか?」

 それは確かに気になる。ぜひとも見てみたい。

「気になるけど、見れるのか?」

「はい。この扉を潜ってください。他の女性と結ばれた場合、どんな未来が待ち受けているのか、自分の目で確かめるのです。その上で、あなたが自分の未来をどう進むべきか考えてみてください」

 突如、俺の目の前には白い扉が現れた。俺はドアノブに手をかける。

「分かった。行ってくる」

 俺がそう告げると、ガブリエルが俺の肩にポンと手を置いた。

 

「あと、これだけは言っておきますが、あなたは決して脇役なんかじゃありませんよ。創造主によって作り出された、正真正銘の『主人公』です」

「え? それは一体……」

「おそらく、このゲームによって、あなたの未来が『灰色』になるか、『バラ色』になるか決まります。私は後者になることを望んでいます。ではご武運を」

 意味深なことを言い残すと、ガブリエルがどこかに姿を消した。

 

 よく分からないがまぁいい。俺は白い扉を開け、中に入った。

 

 留衣さんに瑠夏さん。それに綾女。

 彼女たちと結ばれた場合、一体どんな未来を辿るのか、この目で確かめるとしよう。



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瑠夏さんルート1

 白い扉を潜ると、目の前に映る景色は河原であった。生暖かい風が俺の頬を伝う。

 すぐには思い出せないがなんだか、見覚えのある場所であった。

 そうだ、ここは……小さい頃、家族とともに何度かここの河原に訪れたことがあった。

 

 どうやら俺は今、仙台市にいるらしい。

 俺は一体、どこに行けばいいのだろうか。

 そう考えていると、なぜか不思議と行くべき場所を理解しているかのように自然と足が動いた。

 

 徒歩で地下鉄まで行き、地下鉄に乗り、仙台駅へと向かう。

 さらに仙台駅から徒歩五分ほど歩いて着いたのは大きなマンションであった。

 

 ここが俺が住んでいる家――何となくそう理解することができた。

 エレベーターを使って七階まで登る。七階の『701号室』がこの世界の俺が住んでいる部屋であった。

 

 ポケットに入っていた鍵で扉を開け、中に入る。

「ただいまー」

 そう言ってみたものの、誰も出迎えてはくれない。おそらく一人暮らしをしているのだろう。

 

 部屋の中は意外と綺麗に片付けられていた。さらに、部屋の中にはオーディオプレイヤーや大型テレビなど、割と豪華そうな電化製品が置かれていた。

 この世界での俺は一体、どんな仕事をしているのだろうか。

 

 今更ながら気が付いたが、俺は高級そうなスーツに身を包んでいる。

 スマホを取り出し、連絡先を確認してみると、『取引先の社長』や『お得意先の重役』といった仕事関連と思わしき連絡先がいくつも登録されていた。

 

 連絡先から察するに営業関連の仕事だろうか。

 今後の就職活動の参考にさせてもらおう。

 しばらくの間、スマホを弄っていたが、俺はあることに気が付く。

 LINEの履歴を確認すると、瑠夏さんと毎日のようにやり取りをしていた。

 

 『おやすみ』というメッセージや、明らかにカップルが使うようなスタンプを多用していた。

 

 なるほど、この世界は俺と瑠夏さんが付き合っているんだな。

 丁度その時、瑠夏さんからLINEが来た。

 

 ――お疲れ様! 優馬くん、今日仕事が終わったら家にお邪魔してもいい?

 

 俺はすぐに『いいよ!』というメッセージ+スタンプを送った。

 

 大人になった瑠夏さんはどんな感じなのだろうか。あんまり激変したりはしてないと思うが。

 

 瑠夏さんが来るまでテレビを見て時間を潰すことにした。

 宮城テレビ放送のとあるローカル番組を懐かしいという心境で視聴した。

 

 テレビを視聴した後は、料理を作ることにした。どこで覚えたか、手慣れた手つきで料理を作ることができた。

 作った料理はというと、冷蔵庫に入っていた食材を使用した春巻きやお味噌汁。さらに豚肉を使って、生姜焼きも作った。

 

 ピンポーン。

 

 インターホンの音が鳴り響いた。俺は玄関へと向かい、扉を開ける。

「優馬くーん! 会いたかったよ!」

 扉を開けるやいなや、スーツ姿の瑠夏さんが俺に抱きついてきた。柑橘系の甘い香りが鼻腔をくすぐる。

 瑠夏さんの大きめな胸の感触がスーツ越しから伝わってきた。

 

「ちょ、ちょっと瑠夏さん……」

 抱きつく瑠夏さんを引き剥がそうとしたが、瑠夏さんは「ごろにゃ〜ん」と猫のような鳴き声を出し、離れようとしない。

 

 くそ! 可愛いな!

 

 瑠夏さんは不思議な表情で俺のことを見上げた。

「ちょっとどうしたの? 急にさん付けなんて。なんか……高校生の時みたいだね」

「あ……いや、なんでもないよ」

 そうか、この世界ではカップルになっているから俺は瑠夏さんのことを呼び捨てで呼んでいるのか。

 俺は瑠夏さんを部屋の中へと招き入れた。

「瑠夏、もうご飯は食べた?」

「いや、まだだよ」

「そっか。ご飯作ったから一緒に食べよう」

 俺は食卓の椅子へと腰を掛けた。

「うん! うわぁ、すっごい美味しそう! いただきます」

 

 瑠夏さんは俺が作った料理を美味しそうに頬張った。瑠夏さんの容姿は社会人になってからも特に変わった様子はなかった。

 いや、変わったところはある。そう、何だかより一層綺麗になった気がするのだ。

 銀色の髪艶はますます磨きがかかり、肌は雪のように色白く美しい。

 

 ご飯を食べ終えた瑠夏さんは満足そうに背伸びをした。

「美味しかったわ。お皿、片付けておくわね」

「ありがとう」

 

 食器類を片付け終えた瑠夏さんはリビングに戻ってきた。

「ねぇ、優馬くん。シャワー借りてもいい?」

「うん、良いよ」

 すると、瑠夏さんはソファーに座っている俺の隣へと移動し、耳元でこう囁いた。

「今日、するでしょ……?」

 ゾクゾクと、身体から電撃が迸るようであった。嫌が応にも瑠夏さんの裸姿が想起される。

 

「う、うん……」

 瑠夏さんのエロい誘惑に俺は思わずドギマギしてしまった。

「それじゃ、バスタオルも借りるね」

 瑠夏さんはタンスからバスタオルと寝間着、下着を取り出した。

 どうやら俺の家に瑠夏さんの寝間着や下着を置いておいてるらしい。

 

 瑠夏さんはシャワーを浴びに風呂場へと向かった。

 

 

 

「あ〜、さっぱりした〜」

 頭にバスタオルを乗せた瑠夏さんが満足したような表情で戻って来た。

 体全体からモワッとした白い湯気が出ていた。

「優馬くんも浴びてきたら?」

「うん、そうするよ」

 俺も着替えとバスタオルを持って、シャワーを浴びるべく風呂場へと移動した。

 何だかとても緊張する。セックスにおいて、セックス前の準備中が一番緊張すると言っても過言ではない。

 

 シャワーで汗を洗い落とし、ボディソープを身体に付けて身を清める。

 すでに俺の息子は大きく膨れ上がっていた。

 静まれ……静まるんだ! 俺の息子よ!

 

 シャワーを終えた俺はリビングへと戻った。

 

 瑠夏さんは顔を紅潮させて、ベッドの上に座り込んでいた。

 俺も瑠夏さんの横に座り込んだ。

 

 じっとお互いの顔を見つめ合う。

 瑠夏さんの顔は陶器人形のように美しく、薫さんに勝るとも劣らないほどの魅力があった。

 

「ん……」

 瑠夏さんは甘い吐息を漏らし、俺の唇に自身の唇を重ね合わせてきた。

 柔らかい唇の感触は瞬く間に俺の理性を奪い去った。

 

 俺は寝間着越しから瑠夏さんの胸を揉んだ。

 瑠夏さんは俺の膨らんでいる股間を触ってきた。

 

 舌を絡ませながらディープなキスを続けていたが、徐々にお互いに息が荒くなっていった。

 

「優馬くん、脱ごうか……」

「うん……」

 俺と瑠夏さんは身に纏っている服を脱いでいった。俺が全裸になると、瑠夏さんは下着姿で留め、何故かそこからは脱ごうとはしなかった。

 

「優馬くん、脱がせてくれない?」

 瑠夏さんは恥ずかしそうにおねだりしてきた。

 その仕草がとても可愛らしい。

「わ、分かった……」

 恐る恐る、俺は瑠夏さんのピンク色のブラジャーに手を回す。

 ホックを外し、ブラジャーを取ると、目の前にポロンと大きいおっぱいが飛び出した。

 相変わらず、大きく張りがある。

 社会人になっても垂れ始めた兆しは見えない。

「お、おっきい……」

 以前、見た時と同じように白く、釣鐘型の形をしており、乳首はこの世界で俺に何度か吸われているためなのか、淡いピンク色からベージュ色に変わっていた。

「い、いつものことだよ」

 恥ずかしそうに顔を背ける瑠夏さん。さらに俺はブラジャーとお揃いのピンク色のパンティに手を掛けた。

 

 ゆっくりと脱がせる。瑠夏さんは正真正銘、全裸へと変貌した。

 

 腰回りは細く、胸は大きい瑠夏さんの身体は世の男の大半が好きそうな身体をしている。

 とてもエロい肢体を見つめていると、思わずクラクラしてきそうだ。

 

 俺は瑠夏さんの敏感な部分に顔を近づけ、幾度となく舌を這わせた。

「ん……ゆ、優馬くん、気持ち良い……」

 

 徐々に、瑠夏さんの敏感な部分から愛液が出てきた。

 俺はゆっくりと欲望に滾る自身の肉棒で瑠夏さんを膣内を貫いた。

 

「あ――ぁつ、、あぁ――……! ん、き、気持ち良い……も、もっと、お、奥まで、つついて――優馬くん……っ!」

 息遣いを荒くしながら懇願する瑠夏さん。快楽に溺れる表情がさらに俺の官能を昂らせた。

「瑠夏、瑠夏……!」

 瑠夏さんの名前を呼びながら腰を降るたび、瑠夏さんの口から甘い喘ぎが溢れる。

「あぁ、優馬くん……優馬くん……!」

 俺たちは何度も何度もお互いの身体を求め合い、そのまま抱き合って、ベッドに横たわった。

 

「優馬くん、すっごい気持ち良かった」

「俺も……すごい気持ち良かったよ」

「またしようね♡」

「うん」

 

 俺と瑠夏さんは抱き合いながら、そのまま一緒に深い眠りへと落ちていくのであった――



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瑠夏さんルート2

 瑠夏さんとセックスをした次の日。

 俺は深い眠りに落ちていたが、誰かに身体を揺すられ、目を覚ました。

 

「起きて、優馬くん」

「ん……」

 ゆっくりと目を開けると、瑠夏さんの茶色い双眸が俺の顔を覗き込んでいた。

 上体を起こし、腕を伸ばすと「ふわぁ……」と、自然に大きなあくびが出た。

 

「おはよう、瑠夏」

「おはよう、優馬くん」

 瑠夏さんはすでに普段着に着替えていた。どうやら普段着も俺の家に置いてあるようであった。

「優馬くん。今日は仕事休みだし、どこかへお出かけしない?」

「ああ、そうだな」

 

 俺と瑠夏さんは一緒に朝ごはんを食べ、外出の支度をした。

 外へ出ると天気は晴天で、眩しい朝日が俺の顔に突き刺さる。

 街路樹は日光を浴び、ささやかな風で枝が揺れ、それに併せるように木陰がゆらゆらと揺れている。

「いい天気だね」

「うん、最初はどこに行く?」

 これといって行き先を決めていない俺は、瑠夏さんがどこに行きたいか訊いた。

「ちょっとー、そこは男が決めるところだよ。優馬くんに任せる」

「そうか、分かった」

 瑠夏が行き先を任せるというので、俺はどこに行くかを考えることにした。

 考えていると、ふと久々に行きたいところを思いついた。

「なぁ、瑠夏。青葉城公園に行きたいんだけど、いいか?」

「うん! 行こう!」

 

 俺たちは徒歩で仙台駅へと向かった。仙台駅からさらに、仙台市内の観光スポットを循環するシティループバスに乗車した。

 

 このバスは一回乗車につき、どこまで乗っても大人260円で乗ることができ、お得な一日乗車券もある。

 仙台に観光した際には是非とも活用して欲しい。

 

「お乗りの方は前に詰めてご乗車ください!」

 案内人に指示され、俺と瑠夏さんはバスの奥側へと向かった。運良く二人分の席を確保し、座ることができた。

 

「発車します」

 重々しいエンジン音とともにモダンな雰囲気を醸し出している外装のバスは発車した。

 

「あちらに見えますのは、定禅寺通りです。定禅寺通りには仙台の名所が数多く所在しています。12月には光のページェントが開催され、街路樹一帯にLEDライトによる電飾が施されます」

 バスの運転手は定禅寺通りに関する説明を始めた。

 

 光のページェントについて詳しく説明すると、仙台市の都心部である定禅寺通りと青葉通りのケヤキ並木に数十万のLEDライトを取り付けて点灯する。

 

 市民ボランティアが『杜の都・仙台』を象徴する定禅寺通りと青葉通りのケヤキ並木にイルミネーションを施したのが始まりらしい。

 

 しばらくの間、バスに乗っていると、広瀬川に掛かる橋に差し掛かった。広瀬川に流れている水面はキラキラと太陽光を反射させ、幻想的に輝いていた。

 

「こちらの川は広瀬川です。仙台市のシンボルとして親しまれている川であります」

 

 東京に来てから地元の石巻市や仙台のことを忘れていたが、やはり宮城県は良いところであるとつくづく実感した。

 やっぱり、GWは実家に帰ることにしよう。

 

「まもなく、青葉城公園に到着します」

 いつのまにか青葉城公園に到着直前まで来ていた。260円を支払い、バスから降りる。

 

「優馬くん、行こっか」

 瑠夏さんはぎゅっと俺の手を握ってきた。

「うん」

 恋人繋ぎした俺たちは赤い鳥居を潜り、石でできた階段を登る。階段を登り切ると、いくつものベンチがあり、その奥にはフェンスが立てかけられていた。

 

 フェンスの前にはたくさんの観光客が高度120メートルから仙台市の眺めを見渡していた。

 

「いい眺めね」

 俺たちも例に漏れず、仙台市の街並みを眺めた。何度見ても良い眺めである。

 たくさんのビルが並び都会の雰囲気を醸し出しつつも、自然が豊かであることを実感させられる、木々や広瀬川の景色。 

 小さい頃、家族との旅行で函館山からの函館市の夜景や通天閣の大阪の街並みを眺めたことがある。

 

 いずれも良い眺めだったと思うが、それでも俺は青葉城公園から見る仙台市の街並みが一番好きだ。

 

「そうだな」

 後ろを振り向くと、青葉城公園のシンボルである伊達政宗像の前でたくさんの観光客が写真を撮っていた。

 

「私たちも写真撮る?」

「うん、撮ろう」

 俺と瑠夏さんは伊達政宗像の前に移動した。瑠夏さんはスマホを取り出し、カメラを自撮りモードに設定した。

「よし! それじゃ、優馬くん、撮るよ。もっと近づいて」

 俺はスマホの撮影範囲内に収まるべく、瑠夏さんの方に身体を寄せた。ふわりと、心地良い香水の香りが鼻腔をくすぐった。

 

「はい、チーズ!」

 『パシャッ』というシャッターの音とともに、俺と瑠夏さんの姿がカメラに収められた。

 

「うん、しっかり撮れてる」

 写真を確認した瑠夏さんは満足そうに頷いた。

 

「瑠夏、ちょっと展示館見たいんだけど、いいかな?」

 青葉城公園には、青葉城資料展示館という青葉城や伊達政宗について学べる博物館がある。

「うん、いいよ」

 瑠夏さんが快諾したので、俺たちは大人二人分の入場料を支払い、展示館の中へと入った。

 中には伊達政宗を始めとする資料や甲冑が展示されていた。

 展示館の中を一通り回った後、CGシアターに入る。

 ここの展示館では決まった時刻にCGシアターにて、青葉城及び伊達政宗の解説動画が放送される。

 動画の内容はとても分かりやすく、初めて見る観光客にオススメな内容だと思った。

 

 伊達政宗が行った数々の実績。

 青葉城の間取りや建てられた経緯等、歴史の勉強の手助けになったと言っても過言ではない。

 

 すっかり堪能した俺たちは展示館を後にした。

「いやぁ、面白かったな」

 感慨深く感想を漏らすと、瑠夏さんも「そうだね」と同意した。

 

「ねぇ、優馬くん。私、水族館に行きたいんだけど、いい?」

「うん。それじゃ行こっか」

 

 海の杜水族館に行くため、俺たちは再びバスに乗車した。



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瑠夏さんルート3

「やっと着いたね。優馬くん」

「うん、そうだね」

 

 青葉城公園に訪れた後、俺と瑠夏さんは仙台駅へと戻りJR仙石線に乗った。

 最寄り駅から徒歩十五分ほどして、水族館へと辿り着いた。

 コンクリート造りの水族館の前では、土曜日ということもあってか、たくさんの観光客が建物の中に入っていくのが見えた。

「それじゃ、ちょっと入場券買ってくる」

「うん、ありがとう」

 売り場へと向かい、二人分の入場券を購入する。

 

「はい瑠夏、入場券。早速中に入ろうか」

「うん!」

 瑠夏さんと手を繋ぎ、建物の中へと入った。

 水族館の中は薄暗く設定されており、入り口から少し進んだところにはとても大きな水槽が置かれていた。

「うわぁ! サメがいる!」

 瑠夏さんは水槽の前まで移動し、目を爛々とさせながら水槽を見つめた。俺も瑠夏さんの横に並び、水槽の中にいる海洋生物達を観察した。

 イワシの群が同じ方向に泳ぎ、一方でエイはのんびりとした様子で水中を漂っている。

 多種多様な海洋生物が大きな水槽の中で優雅に泳いでいく様はなんだか生命の神秘を感じた。

 

「優馬くんは好きな魚とかある?」

「うーん、特にないかな。瑠夏は?」

「私はやっぱりペンギンね!」

 なるほど、ペンギンか。しかしペンギンは……

「ペンギンは鳥だけどね」

「し、知ってるし! 話の流れでついそう答えちゃっただけ!」

 顔を赤くさせ、恥ずかしそうに答える瑠夏がなんだか愛おしくて仕方なくなった。

 

 その後も様々な海の不思議な生き物を見て楽しんだ。

「わークラゲだ! ねぇほら見て、優馬くん! クラゲだよ!」

 瑠夏さんはクラゲを興奮冷めやまぬ様子で見つめていた。

 俺もクラゲを観察した。

 プカプカと水中を漂うクラゲは見ていると心が無になっていくようだ。

 俺はふと、クラゲのいる隣のあるカニの水槽を見つめた。

 

 二匹のカニがお互い近くで向き合っているが、じっとその場に止まり動こうとはしない。

 カニの近くでは泡がプカプカと発生してはプツンと潰れて消える。

 俺はふと、小学校の国語の授業で習った『やまなし』のワンシーンを思い出した。

 クラムボンは一体、なんなのか考えたが結局、先生は教えてくれなかったし、正体は今もなお謎に包まれている。

 一説によると、クラムボンは泡だと考えられており、俺も泡だと考えている。

 まぁ、クラムボンがなんでも構わない。きっと自分がこれだと思うもの、それこそがクラムボンなのだろう。

 

 その後も館内を楽しんでいた俺たちであったが、イルカショーの会場にてたくさんの人が集まっているのが見えた。

 

「ねぇ、優馬くん。せっかくだしイルカショー見ていかない?」

「うん、いいね。見て行こうか」

 瑠夏さんがイルカショーを見たいというので、会場へと向かうことにした。

 ベンチに腰をかけるとトレーナーの人が前にやってきた。

 

「みなさま! これより、イルカショーを始めさせていただきます!」

 

 トレーナーの人は笛をつかってイルカを自分の近くに誘導する。バケツに入った魚を一匹取り出し、高らかにプールへと放り投げた。

 イルカは勢いよく水面から飛び出し、3回転しながらジャンプし、口で魚をキャッチした。

「すごい技だね! 優馬くん!」

「うん! すごかった」

 トレーナーとイルカの息はぴったりでその後もハイジャンプや輪くぐりなどの技を披露した。

「それでは最後に大技、『ロケットジャンプ』を披露したいと思います!」

 トレーナーはゆっくりとプールの中に入っていった。

 

 イルカとトレーナーはお互い見つめ合うと、ほぼ同じタイミングでプールの奥深くまで潜り込んだ。

 三秒ほど会場が静まりかえったが、水飛沫を上げながら、イルカとトレーナーの姿が現れた。

 イルカは自分の鼻の上に乗ったトレーナーを放り投げるようにジャンプした。

 トレーナーの方はイルカのサポートによってさらに高く舞い上がり、宙で一回転した。

 

「「「おおー!」」」

 見事な技に観客は盛大なスタンディングオベーションを送った。

 

「いやぁ、優馬くん。面白かったね!」

「そうだね」

 

 イルカショーを見た後、俺たちは水族館を後にした。

「ねぇ、優馬くん。この後、ちょっとアウトレットモールに行きたいんだけどいい?」

「うん、もちろん」

 

 アウトレットモールに着いた俺たちは、施設内にあるレストランで昼食を食べることにした。

 俺達が入ったのは海鮮料理を扱うレストランで、俺は海鮮丼を注文した。生エビやサーモン、マグロ、イカといった豊富な魚介類がたくさん乗っかっている。

 ちなみに瑠夏さんは生マグロ丼を注文した。こちらもまたぎっしりと新鮮な生マグロが乗っかっていてとても美味しそうである。

 

「いただきます」

 俺は醤油を海鮮丼にかけて一口食べた。

 脂が乗ったサーモンは豆腐のように柔らかく、白米と一緒に食べると、さらに美味である。

 他にも生エビやマグロといった食べ応えのある魚介類の数々の濃厚な味わいに舌鼓を打つ。

「美味しいね、優馬くん」

「うん」 

 

 お昼ご飯を食べ終えた後、俺たちはアウトレットモールで買い物をした。

 瑠夏さんは楽しそうな様子で買い物を行い、服を数着購入し、俺も帽子と財布を購入した。

 

「いやぁ、久々にここ来たけど、すごく楽しかった! 優馬くん、そろそろ行こうか」

「うん」

 

 アウトレットモールを後にした俺たちは手を繋ぎながら徒歩で駅へと向かう。

 最寄り駅から電車に乗り、仙台駅へと戻った。

 

 東北の玄関口と言われる仙台駅では相変わらず多くの人が行き交い、改札を潜っていた。

 西口から外に出ると、外はすでに薄暗くなっていた。

「優馬くん、暗くなって来たね」

「そうだな」

「ねぇ、せっかくだし展望台に行かない?」

「いいね。行こうか」

 

 仙台駅の近くにはAER展望台という場所がある。

 仙台屈指の夜景スポットと言われており、東北一の美しさを誇る夜景を展望台から眺めることができる。

 エレベーターを使い、展望台まで登った。有名な夜景スポットということもあってかカップルが多く、仲睦まじげに夜景を眺めていた。

 

 俺たちもガラスの前まで移動し、夜景を眺めることにした。

「うわぁ、すっごい綺麗……」

 瑠夏さんはうっとりとした様子で仙台市の夜景を眺めた。

 高層ビルや建物から漏れる光の数々が、暗闇の中で幻想的な光景を作り出している。

 俺も思わず、夜景を魅入っていた。

 午前中に見た青葉城公園から見た眺めとはまた一味違う良さがある。

 

 すると、瑠夏さんは俺に腕を掴み、じっと見つめてきた。

「ねぇ、優馬くん」

「何?」

 緊張した様子で何かを話そうとする瑠夏さんであった。

 一体、何を話すつもりだろうか。

「私と結婚しない?」

 突然、瑠夏さんから逆プロポーズを受けた。あまりの衝撃に言葉がでない。

「付き合ってもう五年くらい経つし、そろそろかなって思うんだよね。どうかな?」

 

 瑠夏さんとの結婚。

 決して悪いこととは思えない……いや、むしろこんなに嬉しいことは無いといってもいいだろう。

 なんたって、こんな美人を人生の伴侶にできるのである。

 だが――

 

「ごめん、瑠夏。結婚はできない」

 ドクンドクンと自分の心臓が激しく振動していた。断るのはやはり辛い。

「どうして?」

 とても悲しそうな表情をする瑠夏さんを見て、罪悪感に苛まれそうになった。

「俺……やっぱり、あの人のことを忘れられない」

 

 すると、さっきまで俺がいた展望台が消え、あたり一面真っ白な空間へと変わった。

 

「なるほど。それがあなたの出した答えなわけですか」

 俺の目の前に突如現れたのは、ガブリエルであった。

「ガブリエル……ああ、そうだ」

「結婚を受け入れていればさっきの世界で暮らしていけたのですよ? まだ間に合いますがどうしますか?」

「遠慮しておくよ。俺は……今の世界で生きていきたい」

 俺が答えると、ガブリエルは意味ありげに微笑んだ。

「そうですか。それでは、次は別の方と結ばれた世界をお見せ致します。よろしいですか? それともハッピーワールドはここで中断しますか?」

「いや……見る」

 俺がそう答えると、パチンとガブリエルが指を鳴らした。

 黒い扉が現れ、俺はゆっくりとその扉を潜っていく。

 

「では、ご武運を」

 

 果たして、次の世界は誰と結ばれた世界だろうか。

 不安と期待を胸に膨らませながら次の世界へと向かった。



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綾女ルート1

「こ、ここは……」

 俺は瑠夏さんと結ばれた世界を見た後、再び白い扉をくぐった。

 くぐった先に俺がいたのはバスケットコートがあり、アリーナと思われる建物の中であった。

 俺の周りには黒いユニフォームを来たバスケの選手が各自、ストレッチをしている。

 

「おう! どうした? 優馬」

 バシッと誰かに肩を叩かれた。痛い。

 後ろを振り向くと、そこには見知った顔が立っていた。

「い、石崎さん!?」

 俺の肩を叩いてきたのは、俺が通うパーバード学園のバスケ部主将、石崎渉さんであった。

 今と同じ角刈りの頭をしているが、いつも見ているよりか一段と身体付きが逞しくなっているように思えた。

 よく見ると、石崎さんが来ているユニフォームには見覚えがある。

「なんだよ? そうだよ! 俺が『アルベルク東京』の4番の石崎だ! まさか、記憶喪失にでもなったかぁ〜? なんてな、あははは!」

 石崎さんは陽気に笑い焦げた。耳が痛くなるような胴間声である。いつも聞いている声よりもなんだか一段と渋い。

 

「石崎さん、大事な試合前だっていうのに……相変わらず、気楽ですね」

 俺と石崎さんの元にやってきたのは少し焼けた黒い肌でくりっとした大きな目が特徴の内山将吾であった。

 なんと、省吾もまた俺と同じチームで、しかもプロバスケ選手となっていたらしい。

 確かに前に試合で一緒にプレイした感じだと、省吾も上手かったがまさかプロにまで登りつめるとはな。

 

「まぁな! それにしても同じ高校出身で、『四人』も同じプロバスケのチームのスタメンになるなんて凄いことだよな!」

 四人という言葉に思わず反応しそうになった。

 つまりもう一人、私立パーハード学園出身でアルバルク東京に加入したやつがいるってことだ。

 誰だろうか? 俺は辺りを見渡し、見知った顔を探し出そうと思った。

 

「おい! お前ら、そろそろ本コートに向かえ!」

 俺から少し離れたところにいた、監督と思われる初老の男性が本コートに向かうよう促した。

 今、俺がいるコートはアップに使うためのコートのようで、試合をするコートは別に設けられている。

「よし! お前ら、行くぞ!」

 真っ先に石崎さんが先陣を切り、本コートへと向かった。他のメンバーも続けて本コートへと向かう。長い廊下を歩き、本コートへと通じる扉へと辿り着いた。続々とメンバーが本コートの中に入っていった。

 俺もコートの中に入ろうとした時だった――

 

「優馬くん!」

 俺を呼ぶ声が聞こえてきた。振り向くと、そこの立っていたのは綾女であった。

「綾女……」

 

 いつも見るビビり染めしている薄い茶色い髪が真っ黒い色に変わっているが、小顔で整ったこの顔立ちは間違いない。綾女であった。

「いよいよファイナルだね! この試合に勝てば優勝だね!」

 どうやら今から戦う試合は決勝戦のようであった。マジかよ。

「あ、ああ……」

 今知ったことであるが、俺は何食わぬ顔で頷いた。

 

「優馬くん……私、嬉しかったよ。ファイナルで優勝したら結婚しようって言ってくれたこと」

 この世界の俺はどうやらバスケの試合で優勝したら結婚しようという明らかに負けフラグとしか思えないようなプロポーズをしたらしい。

「綾女……」

 しかし、綾女がとても嬉しそうに可憐な笑顔をこぼしたため、思わずドキッとしてしまった。

 

「優馬くん、プレッシャーを掛けるわけじゃないけど……絶対に勝って欲しいな」

 綾女の言葉を聞き、ドクンと心臓が大きく鼓動した。

 今まで俺は誰かの為にバスケをしたことはない。

 俺がバスケをするのは基本的に自分の為であり、それが普通であると今まで考えていた。

 しかし、綾女の真剣な願望を聞いていると、どうしてもこの試合、綾女の為に勝ちたくなってきた。

 

「もちろん勝つさ。それじゃ、行ってくる」

 俺はそう綾女に言い残し、ゆっくりとコートに入っていった。



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綾女ルート2

 本アリーナに入ると、観客席は人で埋まっており、他の選手は黙々とシューティングをしていた。

 

 すごい人の数だ。

 この世界はあくまでゲームの世界とはいえ、何だか緊張してきた。

 俺もたたみ式のボールカゴの中からボールを一つ取り、コートの中に入ってシューティングを行うことにした。

 

 スリーポイントラインの手前からシュートを放つ。

 ボールはクルクルと回転しつつ綺麗に弧を描き、リングの中へと吸い込まれていった。

 

 よし――今日は結構調子が良さそうだ。その後も黙々とシューティングを続けていると、俺の横でシューティングをしている一人の見知った顔に気が付いた。

 

 このツンツン頭……間違いない。

 それは佐々木輝であった。この世界ではあいつもまた俺や石崎さん、内山と同様に私立ハーバード学園からアルバルク東京に入団したようだ。

 

 やがて甲高いタイマーの音が鳴り響き、いよいよ試合の時間がやってきた。

 

「みんなー! 今日はアルベルク東京の応援に来てくれてありがとうー! 試合をする前に何点か連絡事項だ!」

 

 会場内にアナウンスの声が流れた。石巻に住んでいた頃、ちょくちょくプロバスケの試合を見たことがあるが、何だか懐かしいなと感じた。

 

「応援する時はみんな一緒に声を合わせてくれ! オフェンスの時は『オ、フェンス! オ、フェンス!』と、ディフェンスの時は『ディ、フェンス! ディ、フェンス!』と掛け声を出して欲しい! シュートが決まったら盛大な拍手をすると、選手たちのモチベーションが高まるぞ! また、会場内での飲食、選手たちへのサインの要望はご遠慮ください」

 アナウンスによる一通りの説明が終わると、監督が「集合」と声を掛けた。

 俺を含め選手一同は監督の元へ輪になって集まる。

 

「いいか? いよいよ決勝戦だぞ」

 監督の表情は真剣そのもので思わず緊張が走った。しかし、監督の真剣そうな表情はすぐに緩やかな笑顔へと変わっていった。

「だが、気負うことは何もない。いつも通りプレイしていけ」

「「「「「はい!」」」」」

 

「それじゃ、アルバルク東京のメンバーを紹介していくぞ! まずはアルバルク東京のキャプテン、四番、石崎渉! 今日も派手なダンクを頼むぞー!」

 観客から『ワー』という歓声が湧き上がった。石崎さん、ものすごい人気のようである。

 

「続いて冷静沈着、アルバルク東京の司令塔。内山将吾!」

 石崎さんに続いて、内山さんが紹介された。内山の背番号は五番のようであった。

「アルベルク東京の大黒柱! 破壊力抜群のプレーからついたあだ名は『大魔王』。椎名太郎!」

 六番の選手が紹介された。身長は見た感じ二メートルをゆうに超えていそうである。

 

 椎名太郎という選手の紹介が終わると、軽快なBGMがピタッと止まり、重々しくも壮大なBGMが流れると、会場の雰囲気が一変した。

 

「今日の試合は一体何点取るのか!? 今日も頼むぞアルベルク東京のエース! アンストッパブルスコアラー、佐々木輝!」

 佐々木がコートに入ると、石崎さんの比ではないくらいの歓声と拍手が沸き起こった。

 佐々木は大人気の選手のようである。心なしか女性観客の声が多い気がする。佐々木はすらっと背が高くてイケメンだし当然と言えば、当然か。

 そして、BGMがさっきの軽快なものに戻っていった。

「決めろ必殺3ポイント! シューティングガード、八番! 竹内優馬!」

 最後に俺が紹介された。そこそこの拍手と歓声が起こったが、残念ながらいいところ佐々木の半分くらいといっただろう。

 俺はコートの中に入り、整列をした。観客席からはたくさんの人の熱烈な視線を感じた。コートを照らす照明が少し眩しい。

 

 試合が始まる前の空気というのは、なんとも言えない独特さがある。

 俺はこの空気が割と好きだ。いよいよ、試合が始まるんだなと実感が沸いた。

 

 俺たちのチームのスタメン紹介が終わると、アウェイチームのスタメンがコートに整列した。

 一応言っておくとアウェイ側の選手の紹介はない。

 そして、この時に俺は気がついたのだが、相手のチームは『仙台90NTS』であった。

 この世界の俺は故郷である宮城県のチームの仙台90NTSに入ろうとは思わなかったのだろうか。まぁ、あくまでゲームの世界だし、深く考えても仕方がないか。

 

 

「まもなく試合の始まりです」

 アナウンスがそう告げると、サークルラインの中へ椎名が入った。

 

 審判がボールを高らかに投げる。椎名と相手選手がほぼ同じタイミングでジャンプした。

 

「よし!」

 椎名がジャンプボールを制し、弾いたボールを内山がキャッチした。先ほどのアナウンサーの助言通り、観客は「オ、フェンス! オ、フェンス!」と応援を開始した。

 内山は素早いドリブルで、そのままフロントコートへとボールを運んだ。

 

「へい!」

 相手のディフェンスが遅れ、フリーの状態となった俺はキャッチボイスをした。内山はすかさず俺にパスをする。

 パスを受け取ると、クイックモーションでスリーポイントシュートを打った。シュートは危なげなく決まった。

 

『ワー!』

 俺がシュートを決めると、『優馬! 優馬! 優馬!』という歓声が湧き上がった。

歓声を受けるとなかなかテンションが上がるものだ。

「ナイス、優馬!」

 石崎さんは『バシッ』と肩を叩いた。痛い。

 俺はディフェンスすべく、すぐさまバックコートへと戻った。

 こちらのディフェンスはもっともなシンプルな形態であるマンツーマン。

 ちなみにマンツーマンとは『一対一』のことを指し、常に特定の相手選手に対して一対一でくっ付いて(マークして)ディフェンスする。俺のマークマンは九番である。

 

 相手の九番は味方のポイントガードからパスを受け取り、トリプルスレットの態勢をとった。

 パスか、シュートか、それともドリブルか――

 

 右――相手がドリブルをしてきたため、すかさず対応した。しかし――

「ふっ……甘いな!」

 すぐさまクロスオーバーでドリブルの進行方向を左へと切り返し、俺を抜き去った。

 

「ヘルプ!」

 ゴール下へと突っ込んでいった九番を椎名がすかさず、カバーしにいった。九番はフリーになった椎名のマークマンである十番にパスをだした。

 

「オラ!」

 十番はパスを受け取るとすかさずダンクをかました。会場がシーンと静まり返った。

 凄まじいまでの力強いダンクシュートである。もしここが仙台90NTSのホームであったなら、大歓声が起きていただろう。

 

「ドンマイ、ドンマイ! 取り返すぞ!」

 石崎さんはすかさず声を出した。

 さっきのは俺のミスだ。しっかりディフェンスをしないと。

 

 続いて俺たちのオフェンス。内山は佐々木にボールを入れた。相手のディフェンスもマンツーマン。

 佐々木以外の選手は試合前に監督が出した指示通りゴールから遠ざかっていった。俺もゴールから離れたところでポジショニングを行う。

 

 この戦法は『アイソレーション』というもので、一対一が強い味方の選手にボールを渡したら他の選手はゴールから離れるというもの。

 こうすることで、相手を抜き去った時に相手のディフェンスはカバーしに行きにくくなる。

 

 佐々木がボールを持ったまま動こうとしない。会場全体が固唾を呑んで佐々木動向を見つめていた。

 

 そして、次の瞬間――目にも止まらないほどの速さで相手のディフェンスを抜いた。

 

「カバー!」

 佐々木のドライブに対して、相手のディフェンスがカバーしに向かったが、佐々木は味方にパスすることなく、そのままダブルクラッチシュートを決めた。

 

「す、すげぇ……」

 自然とそんな感想が口から溢れた。シュートも見事であるがその前のドライブ。

 あれほどの速さは俺にも到底出せそうにない。

 

 しかし、相手も負けておらず、すぐさま相手のセンターにパスを回し、パスを受け取ったセンターは椎名を強引に押し込んでシュートを決めた。

 

「ドンマイ、ドンマイ! 行くよ! 優馬!」

 内山が俺に声を掛けてくれた。

「おうよ!」

 

 

 内山からパスを受け取り、フルドライブからのストップジャンプシュートを放つが、ボールは相手の人差し指と薬指に掠めた。

 シュートはリング手前にあたり、『ガゴン』と大きく舞い上がった。

 

「貰った!」

 石崎さんは空中で外れたシュートを片手でキャッチし、なんとそのままダンクシュートを叩き込んだ。

 

「「「「「ワー!」」」」」

 

 石崎さんのスーパープレイに会場が沸いた。こうして見るとものすごいジャンプ力である。

 

 その後も試合展開は、一進一退の攻防を繰り返し、お互い六点差以上の差がつくことがなかった。

 序盤こそ、佐々木はガンガン点を取っていたが、徐々に疲れが出てきたのか、他の選手にパスを回す回数が増えていった。

 そして、四クォーターの残り時間は3分弱となった。

 

「澤邊!」

 佐々木のマークマンである七番にボールが渡った。相手の七番はチェンジオブペースで佐々木を切り崩すと、センターライン一歩手前でジャンプシュートを放ち、決めた。

 

 点差は八点差まで広がってしまった。監督がすかさずタイムアウトを取る。

 

「すまない」

 佐々木は先ほど相手に抜かれてしまったことを詫びた。

「気にするな。八点差くらい、すぐに返してやるさ」

 石崎さんは励ますように佐々木に声を掛けた。監督は『パン』と手を叩いた。

「そうだ。勝負はまだ終わってないぞ! いいか? ここからは優馬。お前を中心に攻めるぞ!」

「お、俺ですか!?」

 この重要な局面でまさか自分を中心に攻めることになるとは思っていなかったため、不安に駆られた。

「ああ、そうだ。今日のお前の得点はチームの中でも一番多い。好調の日と言ってもいいだろう。自信を持ってシュートを打っていけ!」

 確かに今日の俺のシュートはスパスパ入っている。絶好調だと言ってもいい。ここがゲームの世界だからなのかもしれないが。

 とはいえ、正直プレッシャーが半端なかった。

 

「優馬、安心しろ。仮に外しても俺と椎名でリバウンドを取ってやる! 思いっきり打っていけ!」

「石崎さん……」

 石崎さんの言葉に少し気が軽くなった。タイムアウトの時間が止まり、再びコートの中に入った。

 

 観客席にふと視線を見ると、綾女の姿が確認できた。真剣な眼差しでコートを――いや、俺を見つめていた。

 

 綾女……見ていてくれ。

 

「絶対に勝つ」

 

 

 残り時間、2分53秒。八点のビハインド。ここから一気に逆転を狙う。



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綾女ルート3

 タイムアウトが終わり、試合は俺たちのオフェンスから再開した。

 観客席から観客の「ファイトー!」という声援が聞こえてくる。

 内山が素早くボールをフロントコートに運ぶ。

 観客は「オーフェンス! オーフェンス!」と大きな声を出し、精一杯応援してくれた。

「優馬!」

 内山は俺にパスを回した。パスを受け取った俺はすかさずリングを見る。

「チェック!」

 俺をマークする相手の11番がチェックの声を出した。激しいディフェンスに思わずパスを戻そうと思った。しかし――

「攻めろ! 優馬!」

 石崎さんが攻めるよう指示を出した。よし、行ってやるか。

 一つシュートフェイクを入れると、相手はすかさず反応した。シュートの体勢から咄嗟にドリブルに切り替えて、ゴール下へと向かった。

 相手は俺のドリブルに対し、スライドして付いてきた。なかなか厳しいディフェンスだ。

 

 だが、そのまま突っ込んでやる。

 

 俺は強引にレイアップシュートを打とうとすると、相手は俺のシュートのタイミングに合わせてジャンプした。

「打たせるか!」

 相手は俺のシュートをはたき落とそうとした。

 なら――これならどうだ。

「な……!」

 驚いたような声を出す相手。

 俺はブロックを躱すべく、アンダーハンドでふんわりとボールを浮かせて打った。

 

 このシュートはプロレイアップと言われるシュート。

 ちなみに某バスケ漫画では主人公から『へなちょこシュート』と呼ばれたりする。

 

 俺が放ったプロレイアップシュートは危なげなく決まった。

 シュートを決めると、観客が盛大な拍手と声援を送った。

 

「みんな当たるぞ! オールコートプレスだ!」

 残り時間は二分半ちょっと。

 石崎さんは勝負所とばかりにフロントコートからディフェンスを仕掛けようとした。

 

「「「「おお!」」」」

 石崎さんに促されるように俺たちはディフェンスを仕掛けた。積極的にボールを奪いに行くが、相手もさすがにプロ。慌てて攻めるような真似はしない。

 冷静にボールを運び、ゆっくりとパスを回した。

 

「チェック! チェック!」「ボールボールボール!」

 内山と佐々木が相手のガードにダブルチームを仕掛け、ボールを奪い去ろうとした。しかし、相手のガードは慌てる様子を見せず、冷静にフリーの選手にパスを出そうとした。

 

 ここだ――俺はパスを受け取ろうとする選手に近づいた。

 

「淳!」

 相手のガードはパスを出した。俺はパスコースを読み取り、パスをカットすることに成功した。

 

「ナイスカット! 優馬!」

 前を走っている佐々木にパスを出す。佐々木はボールを受け取ると、素早いドリブルでゴール下まで切れ込み、レイアップシュートを打った。

 

 しかし、後ろから走ってきた相手の選手がブロックに飛び、ボールは相手の手に触れ、シュートの軌道が狂い外れてしまった。

 

「オラァ!」

 走っていた石崎さんが相手の後ろからランニングリバウンドをもぎ取る。

 

「優馬!」

 スリーポイントライン手前で待ち構えて俺は石崎さんからパスを受け取り、シュートを打とうする。

「甘い!」

 相手がブロックに飛ぶが、俺はまだシュートを打たない。

「な……フェイクか」

 その通り。俺は深呼吸し、スリーポイントシュートを放つ。

 

 ボールは縦回転し、綺麗な弧を描きながら、リングに触れることなく決まる。

 これで点差は三点差まで縮まった。

 

 ここで相手がタイムアウトを取った。

 

「よしよし! いいぞ! 優馬! どんどん積極的にシュートを打っていけ!」

 監督がパンパンと手を叩き、俺に声を掛けた。

「はい!」

 

 相手チームの方に視線を向けると、声を小さくして黙々とミーティングをしていた。

 この試合終了間際で何か奇抜な策を打ってくるとは考え難いが、とにかく警戒しなければならない。

 

 やがて、タイムアウトが終わり、試合が再開する。相手のオフェンスから始まり、相手はゆっくりとした立ち回りを行った。

 シュートクロックが切れる直前。

 相手のセンターにボールが入った。

 相手のセンターは椎名をゴール下まで強引に押し込み、シュートを決めた。

 こう言ってはなんだが、相手のセンター。正直言って、椎名より実力が上だ。

 これで点差は再び5点差に広がった。

 

「ドンマイ! 取り返すぞ!」

 テンションが下がり掛けた俺たちに石崎さんが声を掛けた。

 さすが石崎さん。こういう時は本当に頼りになる。

 

 俺たちのオフェンス。

 内山からボールを貰い、攻めようとドリブルを仕掛けるが、ディフェンスが厳しく、中々抜けなかった。

「ち……」

 抜けないと判断した俺は佐々木にパスを回した。そして、佐々木をマークしているディフェンスにスクリーンをかける。

「ナイス、優馬!」

 佐々木は俺のスクリーンを利用し、ドリブルでゴール下まで突っ込んだ。

「スイッチ!」

 俺をマークしていたディフェンスがマークを切り替え、佐々木にディフェンスする。

 そのまま佐々木は構わずシュートを打とうとしたが、相手のディフェンスが二枚ブロックに飛んだ。

「打たすか!」

 佐々木は二枚飛んだことでフリーになった俺にパスを出した。

「ナイスパス!」

 俺はパスを受け取り、そのままバックシュートを決めた。

 これで再び点差は三点差。

 

「ナイスだ! 当たるぞ!」

 石崎さんがフロントコートからディフェンスを仕掛け、俺たちも積極的にボールを奪いに行く。

 しかし、相手は相変わらず慌てた様子を見せることなく丁寧にパスを回し、慎重に時間を使ってくる。

 もう残り時間は僅かとなっていた。

 

「くそ……取れない……」

 シュートクロックが切れる直前、相手チームの9番が外からシュートを打とうとした。

 

「オラァ!」

 石崎さんが豪快なブロックをかました。

 会場が一気に湧き上がる。すかさずルーズボールを内山が拾った。

 

「走れ!」

 内山の声がコート中に木霊する。反射的に俺はフロントコートに走り出した。内山は俺にパスを出した。

 『キュ、キュ』というバッシュのスキール音が聞こえてくる。

 相手のディフェンスが追っているのだろう。

 俺の前方にはディフェンスがいない。チラッとタイマーを確認すると、残り時間は僅かだった。このままレイアップシュートを決めてもおそらく次のオフェンスの機会はこず、一点差で負けとなる。

 

 俺はスリーポイントライン手前で急ストップした。

 

 そして、そのままシュートを打つ――すると、俺の後ろを走っていた相手の選手はブロックに飛んだ。

 しかし、相手のブロックはボールに触れることなく、空を切った。勢い余った相手は俺に身体に激しくぶつかった。

 

 

 ピーーーーーーーーー

 

 

 激しい笛の音が会場に轟いた。

 俺が放ったスリーポイントシュートはクルンとフープを一回転した後、リングに収まった。

 

「バスケットカウント! ワンスロー!」

 

 一瞬、会場が静まり返り、

 

「「「「わーーーー!」」」」

 

 と激しく盛り上がった。

 

「ナイスだ! 優馬!」「よく決めた!」「俺はやってくれると信じていたぜ!」「グッジョブ!」

 

 チームメイト達が次々と俺に賞賛の声を投げかける。

 

「みんな、安心するのはまだ早いよ。まだ勝負は終わっていない。全力でフリースローを打つけど、もしも外したらリバウンド頼む」

「ああ!」「分かった!」

 リバウンドを担当する石崎さんと椎名が元気よく返事をした。

 

「フリースロー、ワンショット!」

 審判が俺にボールを渡した。会場が一気にシンと静かになる。

 いつも通りルーティンをこなし、シュートフォームに入った。

 とても緊張する。果たして俺はこのフリースローを決めることができるだろうか。

 

 すると、観客席のところで綾女の姿を目撃した。

 綾女は目を瞑り、お祈りのポーズをしている。

 

 よし。

 

 深呼吸し、俺は『シュッ』とシュートを放った。

 

 すると、シュートはリングの奥に上がり、ボールは大きく跳ね上がった。

 外してしまった――そう思ったがボールはガン、ガンと二回ほどフープをバウンドした後、リングに収まった。

 

 会場が一気にヒートアップする。残り時間は残り二秒。相手チームはボールインし、ブザービーダーを打とうとするが打つ前に、試合終了の音が虚しく鳴り響いた。

 

 試合は見事一点差で俺達、アルベルク東京が勝利した。

 やった。俺たちは勝ったんだ……

 勝利の余韻に浸りながら整列をした。

 

 

 

 試合が終わった後、そのまま俺たちは都内のホテルへと移動し、祝勝会を上げた。

「みんな! 今日はよくやったな! 今日は思いっきり飲んで楽しむぞ! 乾杯!」

「「「「乾杯!」」」」

 

 監督が乾杯の音頭を取り、俺は周りの選手とグラスをぶつけ合った。

 『カチャ、カチャ』というグラスとグラスがぶつかり合う心地良い音が響きあう。

 ぐびっと一口ビールを飲んでみた。

 この世界の俺は成年済みであるため、お酒を飲んでも問題ない。

 

 味は正直言って、あまり美味しくない。なんか苦かった。

 しかし、仲間達とお酒を飲むという行為はなんとも言えない幸福を感じた。

 

 

 祝勝会が終わった後、俺はまっすぐ、自宅へ帰宅した。

 

 

 鍵を使って家に中に入ると、リビングのソファーに綾女が座っていた。

「おかえり、優馬くん」

 俺が帰ってきたことに気が付いた綾女はおかえりと声を投げかけた。綾女は眠いのか虚ろげな瞳をしている。

「おお、ただいま」

 俺が返事をすると綾女が俺に近づき、じっと顔を見つめてきた。

 綺麗な綾女の顔を見ていると、心臓の鼓動がどんどん速くなってきた。

「ん……」

 綾女が俺にキスをしてきた。綾女の香水のような香りが鼻孔をくすぐり、官能的欲求が湧き上がってきた。

 お互いの舌を絡ませ合い、ディープなキスを三十秒ほど楽しんだ。

 綾女がキスを止めると、ぎゅっと身体を抱擁し、俺の耳元でこう囁いた。

 

「優馬くん……今日、久々にシたいんだけど……いい?」

「ああ……シようか……」



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綾女ルート4

 綾女とキスを堪能した後、俺はすぐさまシャワーへと向かった。

 熱い湯を顔から体全体に浴びていると徐々に酔いが覚めていくようであった。

 十分ほどシャワーを浴びた後、リビングに戻った。

 綾女はベッドの上で寝間着姿で待っていた。

 

「待たせてごめん」

「ううん……大丈夫だよ」

 綾女はベッドの上から立ち上がると部屋の電気を消した。

 

 たちまち部屋の中は漆黒の闇へと包まれる。

 

 暗闇の中で俺たちは濃厚なキスを交わした。

 お互いの口に中に舌を入れ、ザラザラとした舌の感触、口の中の粘膜の感触を余すことなく確かめ合う。

 一度キスを止め、じっと綾女の顔を見つめる。

 

「優馬くん、脱ごうか……」

「そうだな」

 

 俺と綾女は立ち上がり、着ている寝間着を脱ぐことにした。

 綾女が着ているのはピンクを基調とした寝間着。

 ウサギを彷彿とさせるようなデザインであり、実に乙女らしい。

 まぁ、乙女といってもすでに綾女は成人していると思われるが……

 

 綾女が寝間着の上の方を脱ぐと、紫色の花柄模様が施された大人っぽいブラジャーが見えた。

 俺のイメージでは綾女は貧乳のようだった気がしたが、目の前にある綾女の胸は深い谷間を形成しており、想像よりもかなり大きい。

 俺のおっぱいスカウターから推測するに、Dカップくらいはあるように見える。

 

 まさか……『成長』したのか。

 

「おお……」

「ちょっと、そんなジロジロと見ないでよ。恥ずかしいじゃん……」

 思わず綾女の成長し、膨らんだおっぱいに目を奪われていると、綾女は恥ずかしそうに文句を言った。

 恥じらいを見せる綾女の様子はいつもと違った雰囲気を醸し出しており、とても唆られる。

 

 俺も寝間着と下着を脱ぎ捨て、いつでもセックスできる状態になった。 

 綾女は寝間着の上を脱いだまま、なかなか脱ごうとしない。

 

「なぁ、綾女。脱がせていいかな?」

 焦(じれ)ったくなった俺は思わず、そんな提案を持ちかけた。

「えぇ!? いや、自分で脱ぐよ……」

「いいって! 気にするな!」

 

 俺は綾女のブラジャーのホックに手をかけ、綾女がつけている紫色のブラジャーを半ば強引に剥ぎ取った。

 

 プルンと綺麗に実った二つの果実が闇夜に出現する。

 やはり初めて見た時よりも明らかに成長していた。

 胸の成長は高校生くらいで止まるものだと勝手に思い込んでいたがどうやらそれは間違いだったらしい。

 

 上半身裸になった綾女は観念したかのように立ち上がると寝間着のズボンを脱いだ。

 綾女はブラジャーとお揃いの紫のセクシーなショーツを履いていた。

 

 ゆっくりとショーツの裾に手を掛け、少し恥ずかしそうにずり下ろした。

 ふっさりと茂っているアンダーヘアーが実に艶めかしく、俺は舐めるように綾女の裸体を見つめた。

 

 ベッドの上で見つめ合う全裸の男女。

 心臓の鼓動音と同期するようにチクチクチクと時計の針の音が規則正しく鳴る。

 これから起こりうる未来は『セックス』という尊い行為以外にあるだろうか?

 いや――ない。

 

 じっと綾女の顔を見つめ、吸い込まれるように綾女の唇に吸い付く。

 綾女の身体を引き寄せ、女性特有の柔らかい感触を堪能する。

 綾女の実っている二つの果実を本能の赴くまま揉み扱く。

 

「あ……ん……いぃ……!」

 胸を揉まれている綾女は気持ち良さそうな声を出す。

 綾女の喘ぎ声を聞き、俺の興奮度はより一層高まった。

 俺は綾女の乳首に吸い付いた。

 初めて綾女とセックスした時はピンク色の乳首をしていたが、大人になったためか、黒色へと変色していた。

 

 また、綾女の乳首は汗をかいているためか、塩分を含んだほんのりとしょっぱい味がする。

 すると、綾女は足をモジモジと動かし始めた。

 俺は綾女の乳首を舐めるのを止め、こう尋ねた。

「綾女、挿れて欲しいのか?」

「う、うん……」

 綾女は素直に頷いた。俺はベッドの上で立ち上がり、大きく剃り立つ肉棒を綾女の顔に近づけた。

 

「挿れる前にさ、俺のこれ……舐めてくれないか?」

 俺は綾女に対し、自分の肉棒を舐めて刺激する行為――フェラを求めた。

「うん、分かった」

 綾女はパクッと俺の勃起した肉棒にしゃぶりついた。

「うぁ……」

 至福の快楽が肉棒全体から感じられる。綾女は顔を上下に動かし、絶え間なく俺の股間を刺激してくる。

 何とも心地良いことか。

 

「ゆうはふん。ひほひいい?」

 肉棒を咥えたまま気持ちいいかどうか訊いてくる綾女。

 頬を細めている綾女の表情はエロい以外の何者でもない。

 

「ああ、すっごい気持ち良いよ」

 気持ち良さのあまり、膝がガクガクとしてきた。

 さらに綾女は顔を上下に素早く動かした。動かすたびに黒くて綺麗な綾女の髪が靡く。

「あ……やばい……い、……いく……!」

 

 次の瞬間、肉棒から性液が発射された。ドピュドピュっと勢いよく綾女の口の中に性液が注ぎ込まれる。

 

 綾女は肉棒を離し、ぺろっと舌舐めずりするとごくんと俺の性液を飲み込んだ。

 

「あぁん……優馬くんのザーメン、すっごい美味しかった……」

 恍惚に満ちた表情で綾女は俺の性液の味を述べた。

「そ、そうか。それは良かった」

 

 性液を出して少し疲れた俺はベッドの上に座り込んだ。

 すると、綾女は股を開き、しっとりと愛の蜜で濡れた性器(おまんこ)を見せつけた。

 

 大陰唇はぷっくりと膨れており、陰核は膨張していた。

 先ほど射精したばかりであったが、綾女の秘所を見ていると、すぐに精力が戻ってきた。

 自分の肉棒を綾女の小陰唇よりも内側にある膣の中に挿入していく。

 綾女の膣壁はなかなか窮屈である。その窮屈さが心地よいセックスの快楽をもたらしてくる。

 

 正常位の体勢でガンガンと腰を振り、綾女の膣の中を突いていった。

 

「ん……あん……あん……あぁん……!」

 綾女はオーガニズムに達したかのような声を漏らした。

 感じている綾女の声を聞くと、興奮がさらに高ぶる。

 さらに腰を降る速度を上げると、性器(ちんこ)と性器(まんこ)の結合部分から『グチュ、グチュ』というイヤらしい音が聞こえ始めた。

 

「あ……で、出る……イく!」

「出して……私の中を優馬くんでいっぱいにして……!」

 

 ――ドピュドピュドピュドピュ!!!

 

 先ほどのフェラの時とは比べ物にならないほどの量の性液が綾女の膣の中に注がれた。

 綾女の膣から肉棒を抜くと、綾女の肉壺はねっとりとした白で染まっていた。

 綾女は満足げな表情で天井を仰いでいた。

 

 今の淫美な綾女の姿をずっと記憶に残しておきたいと思った。

 

「優馬くん、すっごく気持ち良かったよ……」

「俺もだ」

 綾女は上体を起こすと、俺の表情を見つめ、キスした。

 

「ねぇ、もう一回しよう?」

「そうだな」

 

 その後、もう一度セックスした後、俺たちは同じベッドの中で身体を寄せ合って眠りに落ちた。

 

 

 

「気がつきましたか?」

 

 目を覚ますと、俺は真っ白な空間の中におり、ハッピーワールドのゲームキャラクターであるガブリエルが俺の顔を覗き込んでいた。

 

「ガブリエル……どうしてここに?」

「答えを聞いておこうと思いましてね。さっきの世界で、あなたはもうじき綾女さんに結婚を迫られます。結婚を申し受けますか? もし結婚を申し受けるのであれば、あなたをさっきの世界で暮らしていけるようにしてあげましょう」

 

 申し受ければ――おそらく元の世界には戻れないということか。

 ならば、答えは決まっている。

 

「遠慮しておくよ。次の世界に連れていってくれ」

「ふむ……良いのですか? 結構、お似合いだと思うんですが」

 確かにそうかもしれない。俺と綾女が結ばれる世界も悪くはないだろう。

 

 だがそれでも。

 

 薫さんのことを完全に忘れることはできない。

 

「ああ、構わない」

「そうですか。では、こちらが次の世界への扉です」

 ガブリエルは『パチン』と指を鳴らすと、白い扉が出現した。

「ありがとう」

 

 ガブリエルに礼を言い、白い扉を潜った。

 

 さて、次はどんな世界だろうか。次はおそらく留衣さんと結ばれた世界だろうがそこでは俺がどんな職業に就いているのかとても気になる。

 

 

 

「こ、これは……」

 俺の目の前には信じられない光景が広がっていた。

 

 半壊したボロボロの建物。

 地面には生ゴミが散乱しており、数羽のカラスが生ゴミを漁っていた。

 そして、ゾンビのような動きで道を歩く全裸の女性達。

 

 その女性達は目を赤くし、顔色は青白く極端に悪そうであった。少なくともまともな人間には見えない。

 女性の一人が俺に気づく、恐ろしい目つきでギロッと俺を見た。

 

「ひ!」

 

 思わず、声を上げると、ダダダとその女性が駆け寄ってきた。

 他の女性達も俺の存在に気づき、群がるように接近してきた。

 

「オトコーーーー!」

「セイシーーーー!」

「チンコーーーーー!」

 

 下品な言葉を発しながら俺に近づく女性達。

 たくさんの全裸の女性に迫られるという字面だけ見れば、世の男性陣からとても羨ましがられる状況かもしれないが、俺は命の危機を感じた。

 

 

 俺はすぐに逃げようとした。すると、

 

「はぁ!」

 

 突如、俺の目の前に誰かがやって来た。その人は金色の髪をしており、デニムのショートパンツと白のポロシャツを着ていた。

 

 右手にはなんと、『日本刀』を握りしめていた。

 

「観念しなさい! 感染者ども!」

 その人は日本刀で的確に俺に遅いかかってきた女性達の首をスパッと、いともたやすく切り落とした。

 

 ボトボトボトと女性の生首が地面に転げ落ち、頭部を失った女性達は首から大量の血を噴射させる。

 

 あまりにおぞましい光景に俺は思わずゲロを吐いた。

 

「オエ!」

 地面に吐瀉物が落ち、酸味のある匂いに思わず顔をしかめる。

「ちょっと! 大丈夫?」

 

 俺を助けてくれた人は俺の背中を顔を見ると、なんとその人は……

 

「る、留衣さん……?」

「ゆ、優馬くん?」

 

 紛れもなく朝日留衣さんであった。



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ふたなり冒険者と魔王の娘その1

 ユウマという冒険者と壮絶な戦いを繰り広げた我はこの『ビーストファンタジー』の世界で平凡な毎日を過ごしていた。

 今日も我は城の訓練場にて、部下と修行をしていた。

 

「マジックバレット!」

 

 我の得意技、黒い魔弾――『マジックバレット』を我の部下であり、褐色肌と大きな二本のツノが特徴である部下のポックに発射した。

 

 ポックは父上の直属の部下であり、強さは我と同じくらいである。

 

 

 

「やりますな! ヴィネ様! 私も手加減なしでいきます!」

 

 ポックは黒い魔法陣の中から三叉の槍、『トライデント』を取り出した。

 

「こい!」

 

「はい! 『デス・バイオレット・スティッチ』!」

 

 ポックは漆黒のオーラを身に纏い、トライデントで我に突き刺しに来た。

 

 この技を喰らったらさすがの我も大ダメージである。

 

「ふはははは! 面白い! 行くぞ! 『ハイパーマジックバレット』!」

 

 ありったけの魔力を込めた黒い魔弾をポックに向けて発射する。

 

 魔弾とトライデントはぶつかり合い、力勝負の膠着状態となった。

 

「ぐぬぬ……」

 

「ぐ……」

 

 巨大なエネルギーのぶつかり合いにより、激しい爆発を引き起こした。

 周囲に爆風が吹き上がる。

 

「ぐあ!」

 

 我とポックはお互いに壁際まで吹き飛ばされ、背中を強く強打した。

 

 

 

「いてて……勝負は引き分けだな」

「そうですね、ヴィネ様」

 

 訓練場がボロボロになったため、修行を中断することにした。

 

 

 

「最近、冒険者の奴ら攻め込んで来ませんね」

「そうだな」

 

 ユウマとの戦闘後、めっきりこのお城に冒険者が来なくなった。

 まぁ、平和なのは結構なことなのだが、正直なところ毎日暇でしょうがない。

 ミチルのやつも忙しいのか連絡が来なくなった。

 

 

 

「ヴィネ様、ポック様! 大変です! 冒険者がやって来ました!」

 

 門番兵が慌てた様子で冒険者が攻め込んで来たことを伝えた。

 

「そうか、よし! 我が直々に向かおう!」

「ヴィネ様、ここは私が」

「いや、最近戦いに飢えていてな。ここは我に任せてほしい」

 

 ポックは悩んだような表情を見せたがやがて、

 

「分かりました。ご武運を」

 

 と我が向かうことを認めた。

 

 

 

 城門の前に向かうと、そこには見知った顔がいた。

 

 

 

「ヴィネちゃん! 久しぶり!」

 

 なんと、訪れたのはミチルであった。

 ミチルは最後にあった時と同じような踊り子の衣装を着ている。

 

「み、ミチル! 久しぶりだな!」

 

 ミチルは我の姿を見るや否やぎゅっと抱きついてきた。

 相変わらずミチルの身体はムニュっとして柔らかい。

 

「や、やめろ……ミチル……」

「えー、照れてるの? 可愛いなぁ」

 

 ひとまず我はミチルを我の部屋に案内することにした。

 

「ミチルは何か用事があって来たのか?」

「うん、実はそうなんだ。倒すのを手伝って欲しいモンスターがいるんだよね」

「モンスター?」

 

 ミチルが一緒に倒すのを協力してほしいというモンスター。

 ミチルは我から見てもかなりの腕前を持つ冒険者である。

 

 相当強いモンスターなのだろう。

 

「うん、『フェンリル』っていうモンスターなんだけど、協力してくれないかな?」

「うむ、良いぞ。最近、特に何もすることなくて暇だったからな」

「良かったありがとう!」

 

 我がモンスター狩りに協力することを承諾すると、ミチルは嬉しそうに笑顔を綻ばせた。

 

「ああ。それじゃ、早速向かうか」

「待って、ヴィネちゃん。実はもう一つ、目的があって来たんだ」

「なんだ?」

 

 すると、なんとミチルは突然衣装を脱ぎ出した。

 

「な、何をしているのだ!?」

「見て見て!」

 

 ミチルは全裸姿になった。

 ふっくらとした胸、きゅっとしたくびれ、ツルツルの股下は同姓の我が見てもドキドキする。

 

 そして、驚くべきことにミチルの股下には細長い物体が生えていた。

 

「そ、それは……」

 

 父上が生やしているものであった。

 本来であれば女性には生えないものだ。

 

「うん! おちんちんだよ! ビーストファンタジーのアップデートでつけれるようになったんだ!」

 

「そ、そうか……」

 

 堂々とその長いものをプラプラさせるミチル。

 マジマジと見るのも恥ずかしいので目を背けた。

 

「ヴィネちゃん、何恥ずかしがってるの! ちゃんと見て!」

「し、しかし……」

 

 見てと言われても、恥ずかしいものは恥ずかしいのである。

 

「せっかく、おちんちんが生えたんだし。すごいことしよう……ね? ほら、ヴィネちゃんも脱いで」

「う、うむ……」

 

 ミチルに脱ぐように促され、渋々我も身につけているドレスとタイツを脱ぎ去り、全裸になった。

 

 

 

「さてと……それじゃしようか」

 

 我とミチルはお互いに濃厚なキスを交わした。我の胸とミチルの胸がぶつかり合い、自分の胸からミチルの胸の心地良い感触が伝わってくる。

 

 ミチルのキスはなんというか、不思議な安心感がある。

 

 まるで体全体がミチルで包まれていくような――そんな感覚だ。

 

 

 

 キスを止め、整ったミチルの顔を見つめる。ミチルは小顔で色白で本当に可愛らしい。

 しかし、視線を下に向けるととミチルの股下には大きな肉棒が付いている。

 そのギャップが堪らなく興奮する。

 

「ねぇ、ヴィネちゃん。私のおちんちん挟んでくれない?」

「う、うむ。やってみる」

「あと、ヴィネちゃん。ちょっと『おちんちん』って言ってみて」

「な……なななな! 何故だ!」

 

 自分の身体がなんだか熱くなっているのが分かった。自分の血が沸騰しているようであった。

 

 

 

「言って欲しいから。ねぇ、お願い。ちょっと言ってみて」

「うぅ……お、おちんちん」

「え? よく聞こえなーい!」

 

 ミチルはワザとらしく耳に手を当てた。

 

「お、おちんちん!」

「もう一回! もう一回!」

 

 ミチルはパンパンと笑いながら手を叩き、再び『おちんちん』と我に言わせようとした。

 

「ミ、ミチルの……おちんちん!」

 

 涙目で我が言うと、ミチルはゾクゾクとした表情で大きく剃り勃ったグロテスクな肉棒を我の前に突き出した。

 

「よくできたね! それじゃ、挟んでくれる?」

「う、うむ……」

 

 ミチルの言う通り、我は自分の胸でミチルの肉棒を挟んだ。

 

 

 

「はぁ……す、すごい……ヴィネちゃんのおっぱい、すごく気持ち良い」

 両手で胸を押さえ込み、肉棒に圧力を掛けていく。

 段々と肉棒が熱くなっていくのを感じた。

「ねぇ、ヴィネちゃん。ちょっと上下に動かしてくれる?」

「わ、分かった」

 

 ミチルに言われた通り、上半身を上下に動かしていく。

 

 谷間からミチルの肉棒が出たり、入ったり、出たり入ったり……なんともエッチな光景であった。

 

「しゅ、しゅごい……これが男の子の感覚なんだ……」

 

 ミチルは息を荒くさせ、口からは涎を垂らし始めた。やがて、

 

「あぁん! もうだめ! イキそう!」

「え……うわ!」

 噴水のように白い液体が高らかに跳ね上がり、我に顔と胸にぶっ掛かった。

 

「み、ミチルから出た液体、すごいヌルヌルなのだ……」

 

 飛び出た液体は不思議な匂いがした。

 食べ物で例えるのであれば、クラーケンの丸焼きに一番近いか。

 

「ねぇ、ヴィネちゃん。ここに入れて良い?」

 

 ミチルは我の股下にそっと触れて来た。我の割れ目部分からしっとりとした液体が出ており、ミチルに触られ、電撃を流されたかのような感覚が迸った。

 

「あ……」

 

 気持ち良くて思わず変な声が出てしまう。

 

「ヴィネちゃんのおまんこに入れたいの」

「う、うむ……」

 

 我は部屋に置いてあるシベラの郊外にある魔力の樹で作られた高級ベッドに寝っ転がった。

 

 そして、ミチルが挿入しやすいように股を開く。

 

 ミチルはぺろっと我の股下を舐めた。

 

「あぁん……」

 

 背筋がなんだかゾクゾクとしてきて心地良い。ミチルは何度も何度も我の股下を舐めた。

 

「ミチルちゃんの愛液、すごく美味しい。それじゃ、入れるね」

 

 ついにミチルは我の股下に大きな肉棒を入れた。

 

「ぐ……」

 

 一瞬、鋭い痛みが走り、目頭に涙が浮かぶ。

 

「痛い?」

「す、少し……だが大丈夫だ。続けてくれ」

「うん、分かった」

 

 ミチルは頷くと、挿入を続行した。ズブズブズブと肉棒が奥まで挿入される。

 

「それじゃ、動くね」

 

 そう言うと、ミチルは腰をゆっくりと動かし始めた。規則正しいリズムで腰を振る。

 痛いだけだった我の股がだんだんとむず痒いような気持ち良さに変わっていた。

 

 

 

「あ……ん。あ、あぁん……い、いいのだ。ミチル。もっと……もっと激しく突いて欲しいのだ……」

 

「うん、分かった」

 

 さらにミチルは早く腰を振る。股下はすでに液体がぐちゅぐちゅという音を立てている。

 

 実に気持ち良い。

 今まで胸を揉み合ったり、キスをしたり、股下を擦り付けあったりしたことはあるが、ミチルとの行為がこんなに気持ち良いのは初めてである。

 

 父上から人間はよく今のような行為をすると言っていたが、その理由が良く分かった。

 

 こんな快楽。一度、体験してしまえば病みつきになる。

 

「ヴィネちゃん。私もうだめ、イっちゃいそう……」

「いいのだ……イっても」

 

 そして次の瞬間、我の中に熱いドロドロとした液体が注ぎ込まれていくのが分かった。

 

「あぁ……ひゃあああぅん……あぁああん……!」

 

 我は身体を仰け反らせ、思いっきり叫んでしまった。ミチルは全てを出し尽くした後、肉棒を抜いてベッドの上に横たわった。

 

「ヴィネちゃん……すごく気持ち良かったね♡」

「うむ……」

 

 ミチルは我の頭をポンポンと撫でた。ミチルに頭をポンポンされていると安心する。

 

 

 

 すると、部屋の外から何やらドタドタドタという誰かが走っているような音が聞こえた。

 

「ヴィネ様! どうされました! 今の叫び声は一体……」

 

 なんと、ノックもせずいきなりポックが我の部屋の中に入って来た。

 

「え……」

「あ……」

 

 ポックは全裸の我の姿を見て、唖然としたような表情となった。

 

「すみません! 私は何も見ていません! はい! そう、何も見ていませんとも! ヴィネ様が人間と淫らな行為をしていたなんて、私は見ていませ……」

「貴様……スーパーマジックバレット!!!」

 

 

 

 ポックを気絶させた後、我は奴に記憶の一部を消去する魔法を掛けた。



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ふたなり冒険者と魔王の娘その2

「ようやくついたね!」

「うむ、そうだな」

 

 ミチルと共に魔王の城を飛び出してからおよそ二時間後、『フェンルリ』が生息するという災いの山の頂上へと辿り着いた。

 災いの山には手強いモンスターが多数潜伏しており、ミチルと協力して現れるモンスターをなぎ倒し、なんとか頂上まで辿り着くことができた。

 しかし、せっかくの苦労の末に頂上に辿り着くもたくさんの岩があるだけで、フェンルリはおろか、他のモンスターすら見当たらない。

 

「フェンルリとかいうモンスター、見当たらないな」

 我がポツリと呟くと突然、

「ぐおおおおおん!」

 というけたたましい雄叫びが耳に届いた。

 

 我の横に素早い何かが横切った。

 忽然と現れたのは銀色の毛並みをした狼型のモンスターであった。

 

「出たわね、フェンルリ……」

 ミチルが緊張した様子で対峙した。こいつがフェンルリか。大きくてとても強そうなモンスターである。

 我とフェルリの間は五メートルほど離れているが、ここからでもビシビシと突き刺さるような魔力が伝わってくる。

「マジックバレット!」

 我は先手必勝とばかりにフェンルリに魔法攻撃を放った。

 黒い魔弾は見事フェンルリに直撃し、煙が舞い上がる。

 しかし、フェンルリは何事もなかったかのようにこちらを見つめている。

 

「な、なんだと……」

 我の魔法をモロに喰らったのにも関わらずケロッとしている。

 思わず恐怖を感じ、足がすくみそうになった。

 こんなことは初めてである。

 

「ヴィネちゃん! ここは私がサポートするわ! スキル発動! 『援護の舞!』」

 ミチルは美しい洋舞を披露する。すると、我の体の底からたくさんの力が湧き出てくるのを感じた。

「す、すごい! 力が湧いてくるぞ! よし、スーパーマジックバレット!」

 先ほどより数段大きな魔弾をフェンルリに当てた。

 

「ぐおおおおんんん!」

 ウォンルリが鼓膜が破れそうなくらいの声を張り上げた。

 耳を塞いでなんとか気を失いそうになるのを耐えた。

 

「効いてる! 効いてるよ! ヴィネちゃん!」

「そ、そうか!」

 ミチルはモンスターの体力を数値化して見れる能力を持っている。

 いくらか体力が削れているのを確認したのだろう。

 気持ちが前向きになるのもつかの間、ウォンルリは大きな炎の球を我に向かって吐き出した。

「な……」

 想像を絶する速い炎の速度に避けることができない。すると、我の前にミチルがやってきた。

「スキル発動、『防御の舞』!」

 ミチルは右足を軸足にして激しく回転し、炎の球を自身のスキルで受け止めた。

 激しい爆風が巻き起こり、我は数メートルほど後ろに吹っ飛んだ。

 

「み、ミチル! 大丈夫か?」

「ヴィネちゃん、私は大丈夫だよ!」

 

 ミチルは平気そうに我に顔を向けるが、身体は傷だらけとなっていた。

 フェンルリというモンスターは想像以上に強い。

 戦いが長引けばこちらが不利となるだろう。

 

「ヴィネちゃん。私が時間を稼ぐから、特大の魔力を込めた攻撃をフェンルリに撃って欲しい。いける?」

「うむ、任せてくれ!」

 まだミチルから授かったサポートスキル効果は続いている。

 フルに魔力を込めた我の魔法攻撃なら、おそらく奴を倒せるはずである。

「よし! それじゃ任せたから!」

「うむ!」

 

 ミチルはフェンルリを挑発するように奴の周りを動き回った。

 

「おーい! こっちだよ!」

 

 フェンルリの引っ掻き、噛み付き攻撃等を紙一重で躱していくミチル。

 しかし、徐々にフェンルリの攻撃が当たり始め、ミチルの動きも鈍くなっていった。

 ミチルの動きに痺れを切らしたのか、再びフェンルリは炎の玉をミチルに吐き出そうとした。

 

「危ないミチル!」

「大丈夫! ヴィネちゃんは気にせず、集中して! スキル発動! 『回避の舞』!」

 ミチルはフェンルリが吐いた炎の玉をスキルを駆使して避けた。

 

「まだだ……もっと、もっと魔力を!」

 ありったけの魔力を自分の両腕に集める。

 

 集まれ我が魔力。

 貫け魔族の誇り。

 放つは我の殺意なり。

 

「ミチル! そいつを我に誘導しろ!」

「おっけー! こっちだよ!」

 

 ミチルはフェンルリを誘導しつつ、我に向かって走ってきた。

 ミチルは我とぶつかりそうになると、我の頭上を飛び超えるように大きくジャンプした。

 フェンルリは意表を突かれたのか、「ウガ!?」という間抜けな声を上げた。

 

「ふははは! 掛かったなこの間抜けな犬めが……こいつで終わりだ! 『ゼロ・グリッド・マジックバレット』!!!」

 

 我はフェンルリの体長よりも大きい黒い魔弾を発射した。

 黒い魔弾にフェンルリが飲み込まれ、魔弾は空彼方まで飛んでいき、やがて激しく爆発した。

 

「た、倒したのか?」

「うん、そうみたいだよ! 体力ゲージがゼロになったみたい!」

 

 すると、我とミチルの前に突然透明なビンが現れた。

 

「なんなのだこれは?」

 

 我はビンを手に持ち、中身を覗き込んだ。なにやら白っぽいドロっとした液体が入っている。回復薬の一種だろうか。

 

「多分、レアアイテムだよ。フェンルリを倒したから現れたんだと思う。ヴィネちゃん、飲んでみたら?」

「え、いいのか?」

「うん! ヴィネちゃんのおかげでフェンルリを倒せたわけだし!」

「そ、そうか。では遠慮なく飲ませてもらうぞ」

 

 我はビンの液体を飲んだ。味はなんというか――変な味だ。正直あまり美味しくはない。

 だが、きっと魔力が上がったりと何かしらの変化が起こるはずだ。

 

「どう? 何か変化はある?」

「いや……何もないな?」

 

 特に変わった様子はない。

 しかし、なんとミチルは突然、我の股下を触ってきた。

 

「本当? どれどれ……」

「あ……」

 

 何かが大きくなるのを感じた。まさかこれは……

 

「なんだ、ちゃんと『生えてきた』じゃん」

 

 我の股下にはミチルと同じ、本来男にしか生えない物体が生えていた。

 

「み、ミチル……まさかこのことを知ってたのか?」

「うん、まぁね。すごい、ヴィネちゃんのおちんちんすっごい熱くなってる……」

 

 ミチルは我の下着に手を入れ、直で生えてきたものを弄ってきた。

 

「あぅ……か、体が……なんか熱い……」

「ヴィネちゃん。気持ち良い?」

「き、気持ち良い……」

 

 身体中がゾクゾクとしたように気持ちが良い。するとミチルはピタッと手を止めた。

 

「もっとして欲しいならお願いしないとね? ヴィネちゃん」

「お、お願いだ。もっとしごいてくれ……!」

「違う違う。『私の童貞おちんぽをシコシコしてください』っていうの! ほら、言って! 言わないとしごいてあげないよ」

 

 ミチルはなんという恥ずかしい言葉を我に言わせようとするのか。

 だが、気持ち良くして欲しい。

 我の生えているもの……『おちんぽ』をイかせて欲しい。

 

「わ、私の童貞おちんぽを……シコシコしてください!」

「はーい! よく出来ました!」

 

 ミチルは我が着ていたドレスと下着を脱がせた。

 我の肉棒はグロテスクなほどに黒ずんでおり、大きく剃り上がっていた。

 

「うわぁ……ヴィネちゃんのおちんぽ、肌の色よりも黒ずんでるね」

 

 ミチルは我の肉棒を力強く握りしめた。

 我の肉棒は文字通りミチルの手中に収められている。

 イくもイかぬもミチル次第。

 

「う……あ……」

 

 気持ち良くて声が出る。そしてミチルは規則正しい一定のリズムで我の肉棒をしごいていく。

 

 シコシコシコシコ。

 

 先端部分からは徐々に白い液体が先走り始めた。

 

「あぁ……イく、イッてしまう!」

 

 快楽が絶頂に達しようとした時、再びミチルはピタッとしごく手を止めた。

 

「み、ミチル……」

 

 急に止められたのが悲しくなり、涙目でミチルを見つめるとミチルはよしよしとあやすように我の頭を撫でてきた。

 

「ヴィネちゃん。そんなに悲しそうに表情しないで。これからもっと気持ち良くしてあげるから。ヴィネちゃん。全部脱いで?」

「わ、分かった」

 

 ミチルに促されるまま、我は着ている服を脱ぎ去った。ミチルも自分の着ている服を脱ぎ、全裸となった我とミチルはじっとお互いの体を見つめ合う。

 

「ほら見て。ヴィネちゃん。私のおちんぽ、勃起してるんだよ。どうしてだと思う? それはヴィネちゃんが気持ち良さそうにしているのを見たからなんだよ」

「う、うむ……」

 

 ミチルは我のおちんぽを自身のおちんぽに当ててきた。

 

「こうして……おちんぽと……おちんぽを……擦り合わせると……気持ち良いでしょう?」

 

 蠱惑的な笑みを見せるミチル。

 腰を動かし、おちんぽを擦り付けてくる。ミチルのおちんぽの感触が我のおちんぽから感じられて気持ち良い。

 

 我の腰も何かの魔法の掛かったかのように勝手に動き出した。

 

「き、気持ち良い。我のおちんぽとミチルのおちんぽがぶつかり合って……」

「そう、私たち『おちんぽセックス』してるね……」

 

 先端と肉棹にミチルの性液が付着し、ヌルヌルとしてきた。

 腰を振るたびにミチルの玉がプラプラと大きく揺れ動いている。

 

「あぁ……す、すごい……なんなのだこれは……」

「ヴィンちゃん。一緒に……射精しよ……本当なら男の子しか体験できないこと……一緒に体験しよう……」

 

 ミチルの言葉を聞き、体から何かが吹き上がるような感覚が訪れる。

 そして、ミチルとほぼ同じタイミングで――白い液体が吹きだした。

 

 二つの肉棒から発射される白い液体。

 ミチルから出たのが我の体に、我から出たのがミチルの身体のぶっかかった。

 

「すごい……ヴィネちゃんから出た性液……」

 

 ミチルは自身の身体に掛かった白い液体を指で掬い取ると美味しそうに舐めた。

 

「ヴィネちゃんも舐めてみ?」

「う、うむ……」

 

 我は白い液体を舐めてみた。どんな味がというと、苦味を含んだ茶のような感じであるのだが、我の嫌いな味ではなかった。

「どう?」

「お、美味しい……」

 

 その後もミチルとともにここでは描けないくらい凄まじいことをしたのだが、二時間ほどすると我から生えてきたものは何事もなく消えた。



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留衣さんルート1

 再び主人公サイドの話に戻ります。


「まさか……本当に優馬くんなの?」

 俺に襲いかかってくれた人から助けてくれたのはまさかまさかの留衣さんだった。

 金色の髪にハーフを彷彿とさせるような美しい顔立ちは今と全く変わっていなかった。

 

「留衣さん! 俺です! 優馬です!」

 俺が立ち上がると留衣さんは刀を俺の顔の前に突きつけた。

 

「待て! 動くな!」

 留衣さんは警戒しているのか、鋭い目つきで俺を睨んだ。

「る、留衣さん……」

「本当に優馬くん? あの時、死んだはずじゃ……」

「あの時?」

 すると、留衣さんはこんな質問を投げかけた。

 

「それじゃ、自分の出身地は言える?」

「はい。宮城県石巻市です」

「私の妹の名前は?」

「瑠夏さんです」

「私のスリーサイズは?」

「し、知りません……」

 質問を答えると瑠夏さんはゆっくりと日本刀を鞘にしまった。

 おい、なんだ最後の質問。

 

「とりあえず本物の優馬くんだって信じるよ。こっちに来て」

 

 行くあてもない俺は留衣さんに付いていくことにした。

 俺はこの世界について訊きたいことが山ほどあった。

 

「留衣さん、あのトチ狂ったような女は何なんですか?」

 

 正気を失ったような表情をし、下品な言葉を叫びながら俺に向かって来た女。普通の人間ではないのは明らかであった。

 

「え? 覚えてないの?」

「は、はい……」

 

 この世界の俺であれば知っていることらしい。

 だが、別の世界からこの世界に来たばかりの俺はあれが何なのかさっぱり分からない。

 

「あれは『インフェクティド』と呼ばれる、マサによって感染させられた人よ」

「マサ?」

「ええ」

 

 留衣さんが頷くと、事細かにこの世界が荒んだ状況に陥った原因を語ってくれた。

 

 今から一年程前、『マサ』と呼ばれる宇宙人が地球にやってきて、地球を侵略することを宣言したこと。

 

 マサは『とある能力』によって、女性を感染する力を持っていること。

 

 インフェクティドになった女性は感染していない女性に噛み付くことで感染を拡大させ、さらに男を見つけるとテクノブレイクを引き起こすまでイかせようとすること。

 

 どれもにわかには信じられない内容だった。

 

「宇宙人……本当にそんなものが?」

「信じられないかもしれないけど本当だよ」

「薫さんや瑠夏さん、綾女は無事なんですか?」

「薫さんや綾女ちゃんは連絡が取れないから分からない。けど、生きてるって信じてる」

「る、瑠夏さんは……」

 

 恐る恐る訊くと、留衣さんは俺の方を見ず、

「瑠夏はインフェクティドになったよ。止むを得ず、私が殺した」

 とんでもない事実を告げた。

 

「そ、そんな……」

 

 思わず地面に倒れそうになった。

 この世界にはもう瑠夏さんはいないなんて。

 

「落ち込むのは私たちのアジトに着いてからにして」

「え、アジト?」

「うん、この先に感染していない人間の生き残りが住んでいる集落があるの。とりあえずそこに案内する」

 

 留衣さんと共に歩いて約二時間、木々が生え茂った森の中を通り、やがて、いくつものテントが張ってある開けた場所に出た。

 

「ここが『レジスタンス』のアジトだよ」

「れ、レジスタンス……」

 

 すると、テントの中から一人の女性が出てくると、こちらに近づいてきた。

 

「お疲れ様です! 留衣さん!」

 

 茶色い髪をした女性。整った顔立ちをしており、年齢は俺と同じくらいだろうか。

 ボロボロのズボンとシャツを着ていて露出が多く、少し目のやり場に困る。

 

「お疲れ、花苗ちゃん。私が出掛けている間、何か変わったことはなかった?」

「はい! それで……そこの方は?」

 

 茶髪の女性は訝しんだ様子で俺を見つめた。

 

「紹介するね。私の知り合いの竹内優馬くんだよ!」

「た、竹内優馬です。よろしくお願いします」

 

 俺は花苗という女性に対してぺこりとお辞儀した。

 

「初めまして! 私、伊藤花苗(いとうかなえ)っていいます。なんか、久々に男の人見ました!」

「そ、そうですか……留衣さん、この世界にはもうほとんど男の人がいないんですか?」

「うん……海外はどうなのか分からないけど、日本じゃほとんどインフェクティドに襲われてほとんど生き残っていないね」

 

 この日本において、男はごく僅かのようである。

 なんだかR18の創作物でありがちな展開になってきた。

 

 

「優馬くん、私が守ってあげるから任せておいて!

 留衣さんはドンと自分の胸を叩いた。そして『プルン』と揺れた。

 こんな時にも関わらずエロいと思ってしまった。

 

「は、はぁ……よろしくお願いします!」

「とりあえず、今日はもう遅いからあそこのテントで休んでて! 私が使っているテントだけど、好きに使っててもいいよ」

 

 留衣さんは赤いテントを指差した。

 

「留衣さんはどうするんですか?」

「私はちょっと食料を調達しに行ってくる。優馬くんはテントで待っててもらっててもいい?」

「分かりました」

 

 俺は留衣さんが使っているというテントの中に入ることにした。

 中には寝袋といくつもの箱が置かれている。

 

「とりあえず、休むか」

 俺は寝袋には入らず、そのまま横になって目を閉じた。

 

 

 

 

「ふわぁ……よく寝た」

 

 あくびをしながら腕を伸ばし、身体をほぐした。

 三時間ほど寝ただろうか。かなり熟睡した気がする。

 

 俺は立ち上がってテントの外に出た。寒い風が吹き抜ける。

 留衣さんはまだ戻っていないようだ。大丈夫だろうか。

 

 その辺を歩いていると黄色いテントの前に差し掛かった。

 確かこのテントは花苗が使っていたものだ。

 

 俺は花苗のテントを横切ろうとした――その時だった。

 

「あん!」

 

 淫美な声が俺の耳に届いた。このテントだ。このテントの中から声がする。

 性欲という名の欲望に身を任せ、鍵などついていないセキュリティゼロのテントの中を覗き込んだ。

 

「ん! あ……ひゃぁ!」

 

 

 テントの中では花苗が全裸となり、自分の指で性器を弄り、自慰に耽っていた。

 花苗の肌は色白く、美しい芸術品のような肢体は見ていると理性を崩壊させる魔道具のようであり、いつの間にか俺の股間は大きくテントを張っていた。




 花苗ちゃんは自作『覗いた先にあるもの、それは妹』に登場するキャラクターです。
 気になる方はそちらもご拝読いただければと思います。


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留衣さんルート2

 気がつくと俺は花苗のオナニーに魅入っていた。

 

「はぁん……あぁ……ああん!」

 花苗は自身の秘裂に指を入れ、小刻みに動かして快楽に溺れていた。

 それにしてもなかなかいいスタイルである。

 巨乳――というわけでもないが、乳房は釣鐘型の形をしており、とても良い形をしている。

 

 淫美な表情で快感(エクスタシー)を感じているその表情はまさに雌(メス)そのものであった。

 

 いつのまにか俺はズボンのチャックを下ろし、自分の股間を素手で弄り始めていた。

 花苗とともに俺も自慰を行う。

 

「あぁん!」

 花苗は近くに誰もいないと思ってか、とても淫らな声を上げる。

 それと同時にプルンとおっぱいが大きく揺れた。

「うぁ……」

 声が漏れそうなのを必死に押さえ込んだ。

 もしも、花苗に覗いているのをバレてしまえばえらい目にあうことだろう。

 

 やがて、花苗は右手で自分の胸を揉み始めた。

 人差し指でクリクリと自分の乳首を弄る花苗はひたすらにエロかった。

 

 触ってあげたい――いつのまにかそんな邪(よこしま)な感情が湧き上がってきた。

 この男が少なくなった世界では、おそらく彼女の身体を慰めてくれるような異性がいないのだろう。

 

 もしそうであるならば、俺が彼女を気持ち良くしてあげたいと思った。

 

 さらに花苗は自身の秘裂を激しく指で刺激した。秘裂はしっとりと濡れているのが、ここからの位置からでも分かった。

 これはもうすぐイくな。

 そう感じ、俺も手を扱く速さを速めた。

 

 花苗がイくと同時に射精しようと思ったのである。

 

「あぁん! やばい、イっちゃう!」

 よしイけ。

 次の瞬間、俺の目に映ったのは花苗が激しく潮を吹き出す光景であった。

 そこで予想だにしない事が起こった。

 射精した――と同時に、

「あぁ!」

 自分の口から想像以上に大きい声が出てしまった。

 

「だ、誰!」

 俺は咄嗟にテントの扉の隙間を閉め、その場から離れようとした。しかし、

「もしかして、優馬さん?」

「……」

 

 バレていた。まぁ、当然か。この集落に男は俺一人しかいないしな。

 

「の、覗いていたんですか?」

「ご、ごめんなさい……」

 謝って済む問題でもないのだが、テントの外で俺は謝罪した。

「中に入って貰えます?」

「え?」

「いいから入ってください……さもないと留衣さんに言いつけますよ」

 

 花苗にそう言われ、俺は恐る恐るテントの中へと入った。

 テントの中に入るのは全裸の女性。

 先ほどまで自慰行為に耽っていた花苗であった。じっと見上げるように俺のことを見据えていた。

 

「か、花苗さん。すみません、声が聞こえてきて……その……つい……」

 俺は深々と頭を下げた。すると、花苗は立ち上がった。程よく膨らんでいる胸に思わず視線がいきそうになる。

 

「私のことを覗いたのはこれが二人目ですよ。全く……」

 

 花苗は呆れたようにため息を吐いた。

 二人目? 俺の他にも同じことをした人がいたのだろうか。

 

「優馬さん。手に白いの付いてますけど、もしかしてオナニーしてたんですか?」

「ま、まぁ……」

「そうですか。実は今日、優馬さんを見て、ちょっとある人を思い出して……」

「えっと、それって恋人?」

「いや……まぁ、似たようなもんです。こうして、私のことを覗いたり、優馬さんはちょっとあの人に似てますね」

 

 花苗は俺の肩を掴むと、息が顔にかかりそうなくらい顔を近づけて来た。

 

「優馬さん。お願いがあります」

「な、何でしょう?」

 

 俺を覗き込む花苗の茶色い双眸がキラッと光り輝いたように見えた。

 

「私とセックスしてくれませんか?」

「え……でも……」

「お願いします。しばらくしてなくてその……うずうずするんです」

 

 ハァ、ハァと荒い息をする花苗は俺が返事をする前に唇を重ね合わせてきた。

 

「ん……」

 

 脳内が『花苗にキスされた』という思いで満たされた。花苗の唇は柔らかく、一気に情欲を掻き立てる薬のようであった。

 俺は全裸の花苗を引き寄せ、柔らかな身体の感触を余すことなく堪能した。

 キスを止めた後、花苗は俺の耳元で、

「優馬さん、脱いでください。早く一つになりましょう……」

 とゾクゾクするようなことを囁いた。

 

 俺はテントの中で着ていた服を脱ぎ捨て、全裸になった。

「うわぁ……」

 花苗は恍惚とした表情で口元を抑えながら俺の肉棒を見つめた。

 そして、顔を肉棒へと近づけ、『パクッ』としゃぶった。

 

「う……」

 肉棒から至福の快楽が流れ出す。花苗は弧を描くようにザラザラとした舌で肉棒を舐める。

 

 一度、しゃぶるのを止めると、今度は玉をペロペロと舐めた。

 

「き、気持ち良い……」

 玉を舐められるのはとても気持ち良い。この時、俺は『睾丸は男の性感帯なのだ』とはっきりと実感した。

 

 睾丸を舐めていた花苗は根元から先端まで一気に舐め上げた。

 

「うあぁ!」

 

 気持ち良さのあまり情けない声が思わず出てしまう。

 そんな反応を花苗は楽しむかのように何度も何度も舐めあげた。

 

「や、やばい……イキそう」

 すると、花苗は再びパクッと肉棒へとしゃぶりつき、顔を上下に動かし始めた。

 

 なんとまぁ、フェラが上手い子なのだろうか。

 今まで何人かの女性にフェラしてもらったが花苗が一番気持ち良いかもしれない。

 

 それに頬を細めたこの表情、エロいとしか言いようがない。

 

 やがて、射精の我慢が近づき、肉棒は爆発をしたかのようにドロッとした性液が流れ始めた。

 花苗は少し苦しそうな顔をしながら俺の性液を全て口内で受け止めた。

 

 全て性液を出し尽くすと、花苗は肉棒から口を離し、飲み込んだ。

 

「優馬さんの性液、美味しかったです。優馬さん、今度は私のここに優馬さんのあっついの流し込んでください……」

 

 花苗は床に倒れこむとぱかっと股を開いた――と同時にくっきりと花苗の秘裂の中身が見えた。

 

 ぷっくりとしたヒダ肉は愛液で濡れていて、俺の挿入を今か今かと待っているようであった。

 

 俺は花苗の太腿を手で触れ、挿入の位置を確認すべく肉棒を割れ目へと近づけた。

 

「そ、それじゃ……挿れるよ?」

「はい……」

 

 花苗が頷くと、俺は花苗の秘裂へ肉棒を挿入させた。

 

 花苗は一瞬、苦しいような表情を浮かべるが「あぁん……」と呟きながら元の表情へと戻っていった。

 

 花苗の膣内はキツキツとしており、ヒダ肉が離さんとばかりに密接に肉棒に絡みついてきた。

 

 ゆっくりと腰を動かし始める。動かすたびに肉棒を花苗の肉壁が刺激し、より深い快楽の底へと誘う。

 

 花苗も快楽を感じている女性の表情へと変化した。

 

「こ、こんなに気持ち良さそうな顔をして……花苗さんはエッチですね」

「え、エッチなんかじゃないもん……」

 

 腰を動かし、花苗の白い釣鐘型のおっぱいを揉んだ。

 両手、下腹部から尋常ではないほどの快楽が感じられる。

 

「優馬さ……ん……き、気持ち……い……あぁん! もっと! あぁん! もっと激しく……突いて……ああ!」

 

 花苗は身体を痙攣させ、もっと激しく突くように懇願してきた。

 俺はさらに力強く胸を揉み、そしてピストン運動を速めた。

 

 突くたびに花苗の茶色い髪の毛が靡く。

 

 本当、なんて綺麗な子だろうか。

 早く、早くこの子の膣内に俺の性液を注ぎ込みたい。

 

 生物としての生存本能が強くなっていった。

 

 ドピュドピュドピュ――俺は身体を仰け反らせながら花苗の膣内で射精した。

 

「あぁあ! 中(おまんこ)がすっごい熱い……」

 

 全て射精した後、肉棒を抜くと、花苗の秘裂からポタポタと白い液体が溢れていた。

 

 花苗は放心状態のように天井を見つめていた。

 俺は花苗の隣に並ぶように寝そべり、花苗の見つめた。

 

「優馬さん……」

 花苗は顔をこちらに向け、

「んん……」

 濃厚なキスを始め、身体を引き寄せた。

 

 

 その後も俺は情欲が収まることをしらない花苗と何度か交わることとなった。



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留衣さんルート3

 花苗と濃厚なエッチをした後、俺は一度留衣さんのテントに戻ることにした。

 

 しかし、テントに戻るも留衣さんはまだ戻っていないようであった。

 

 

「まだ戻ってないか……」

 

 

 俺はテントの中にある椅子に腰を掛けた。

 

 仕方ない。ここで大人しく待っているとするか。

 

 しかし、特に何もすることがなくとても暇であった。

 

 そこで、俺は留衣さんのスーツケースに目を向けた。

 

 

「……」

 

 

 留衣さんのスーツケース。一体、何が入っているのかすごい気になる。

 

 異性の私物ってなんだかすごく気になってしまう。

 

 俺はゆっくりとピンク色のスーツケースに手を伸ばした。

 

 

 ダメだと分かっていても開けたくなるこのパンドラの箱――いや、パンドラボックス。

 

 

 開けたらス〇イウォールの惨劇が起こったりして……なんてな。

 

 

 恐る恐るチャックを開け、中身を確認した。すると、

 

「う、うわぁ……すごい」

 

 思わず感嘆の声が漏れた。

 

 

 中には留衣さんのものと思われる下着類がたくさん入っていた。

 

 

 

 心臓がバクバクと激しく振動している。

 

 

 これまで何人かの女性とセックスしてきたが、異性の下着を漁るというのは合意の上で成り立つセックスとは違い、背徳感があってとてもドキドキする。癖になってしまいそうだ。

 

 

 

 スーツケースの中に入っている下着のうち、一つを手に取った。

 

 

 シフォンの水彩の花柄が入ったパンティをじっと見つめる。

 可愛らしいデザインだ。なるほど。留衣さん、こういうのを履いているのか。

 

 

 パンティのクロッチの部分を自分の鼻に当てた。

 

 

「ああ、留衣さんの匂いがする……」

 

 

 ちょっと汗臭くて甘いような匂いは嗅いでいると、まるで大麻を吸引しているかのようにラリってしまいそうだ。

 

 

 

 

 しばらく匂いを堪能していると

 

 

「優馬くん?」

 

 

 と聞いたことのある声が聞こえた。

 

 

 

 おそるおそる、後ろを振り向くと驚いたような表情で留衣さんが俺を見つめていた。

 

 

「る、留衣さん……」

 

 

 あかん。どう言い訳しようこれ。さーと血の気が引いていくのを感じた。

 

 

「私のパンツ、嗅いでたの?」

 

「は、はい……」

 

「そ、それ……三日前に履いたやつだからちょっと恥ずかしんだけど……」

 

 

 留衣さんは口元に手を当て、恥ずかしそうに顔を赤らめた。

 

 

「だ、大丈夫です! すっごく良い匂いでしたから!」

 

 

 狼狽した俺はフォローになっているんだかなっていないんだが、よく分からないことを口走った。

 

 

「そ、そう……それは良かった」

 

 留衣さんは俺の横に座った。ふわりといた女性特有の良い匂いがする……と言いたいところだが、少し泥っぽい匂いがした。

 

 

 

「優馬くん、これ。取ってきたからあげるね」

 

 留衣さんは俺にとりたまのたれ味を渡してきた。

 

「あ、ありがとうございます。留衣さんは食べたんですか?」

 

「うん、私はさっき食べてきたよ」

 

 

 

 次の瞬間、『ぐー』というお腹が鳴る音が聞こえた。

 

 これは俺のものではない。留衣さんのお腹から鳴った音だ。

 

 

 

「留衣さん……本当は食べてませんね?」

 

「うぅ……」

 

 俺は缶詰を開けて留衣さんに渡した。

 

「食べてください」

 

 

 俺はゲームの世界にいるためか、空腹を感じていなかった。

 

 なぜか性欲は現実の世界の通り感じるのだが。

 

 

「ゆ、優馬くんも食べないと」

 

「俺は大丈夫ですから」

 

 

 留衣さんはテントの中に置いてある黒いカバンの中から割り箸を取り出した。

 

 

「それじゃ、二人で食べよ?」

 

「分かりました」

 

 

 結局、二人で分けて食べることにした。パチンと留衣さんは割り箸を二つにおり、やきとりを一つつまんだ。

 

「はい、あーん……」

 

 

 留衣さんがやきとりを俺の口元に近づいてきた。留衣さんは目を爛々とさせ、ニッコリと微笑んでいた。

 

 

「る、留衣さん。ちょっと……一人でも食べれますってば……」

 

 

 俺がそういうと、留衣さんは少し不機嫌そうな表情を見せた。

 

 

「えー? 食べてくれないの?」

 

「わ、分かりましたよ……」

 

 

 渋々、俺は焼き鳥を食べた。焼き鳥は甘だれで美味しく味付けされていた。

 

 今度は留衣さんが口を開けた。

 

 

「優馬くん、私にも早く……」

 

 

 俺は缶の中にある焼き鳥をつまんで、留衣さんの口元に近づけた。

 留衣さんは嬉しそうにその焼き鳥を頬張った。

 

 

「うーん、美味しい……」

 

 

 可愛い。

 

 

 美味しそうに焼き鳥を食べる留衣さんは年上の女性というよりかはあどけない少女のようで心にグッとくる。

 

 

 ごくんと焼き鳥を飲み込むと、今度はうずらの卵をつまみ、「あーん……」と俺の口元に近づけてきた。

 

 

 俺は卵を口に入れ、噛んで卵の味をしっかりと堪能した。

 

 うん、やはり美味しい。

 

 

「すごい……優馬くんが私の卵、美味しそうに食べてる……」

 

 

 俺は思わず吹き出しそうになった。

 なんか、俺の周りの女性って下ネタ言う人多くないか?

 

 

「へ、変なこと言わないでください!」

 

 

 こんな茶番を繰り返し、お互いに焼き鳥と卵を食べさせあった。

 

 缶の中が空になると留衣さんは満足そうにパンパンとお腹を叩いた。

 

 

「はー! 美味しかった。優馬くん、ありがとうね」

 

「い、いえ……」

 

 

 

 留衣さんが俺の身体に寄っかかってきた。

 程よい重さが自分の肩から感じられる。

 

 

「優馬くん……聞いてほしいことがあるんだ……」

 

「な、なんでしょう……」

 

「さっきね、マサの居場所を見つけたの。明日、マサのところに向かうつもり」

 

 

 

 マサは地球にやってきて、日本をインフェクティドだらけにした張本人である。

 

 会ったことはないが、話を聞く限りだとかなりやばいやつなのは間違いない。

 

 

 

「そうですか」

 

「うん、私はマサを倒しに行く。もしかしたら……死ぬかもしれない。だからその前に……」

 

 

 留衣さんは俺と向かい合うような体勢で俺の肩を掴み、

 

「私とエッチしてくれない?」

 

 と真剣な表情でお願いしてきた。

 

 



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留衣さんルート4

「私とエッチしてくれない?」

 留衣さんは真剣な表情で俺にそうお願いしてきた。

 

「えっと、その……」

 

 返答に困っていると、留衣さんは悲しげな表情で、

「やっぱり嫌かな」

 と呟いた。

 

「そ、そんなことはありません!」

 俺がエッチするのにためらっているのは、先ほど花苗とたくさんエッチしたせいで性欲が湧き上がってこないというのが一番の理由であった。

 

「ほ、本当?」

「え、ええ……」

 

 留衣さんは繊細な手で俺の股間をゆっくりとまさぐってきた。

 もう性欲は残っていないと思っていたにも関わらず、留衣さんに触られた股間はむくむくと大きくなってきた。

 

「大きくなってきたね」

 蠱惑的な瞳を向ける留衣さんに対して、種を残す為の生存本能が湧き上がってきた。

 

 ゆっくりと留衣さんがその整った顔を近づけてくると、

「ん……」

 柔らかな唇を重ねてきた。

 

 その感触は大人の色気があって、とても官能的であった。

 さらに留衣さんは身体を自分の身体の方へと引き寄せてきた。

 大きな胸(おっぱい)の感触が伝わってくる。

 俺は初めて留衣さんとセックスした時のことを思い出した。

 

 キンキィ梅田に引っ越したあの日、俺は留衣さんと瑠夏さんと一緒に食事をした。

 瑠夏さんがコンビニに向かった隙に、留衣さんが俺を誘惑し、セックスへと至った。

 留衣さんの膣内はキツキツで締め付けが良く、たくさん射精した。

 

 母親の果実(おっぱい)を求める子供のように、本能的に留衣さんのおっぱいに手が伸びた。

 服越しからたわわな胸を揉んでいく。

 留衣さんはそんな俺に対し、射精を促す手つきで俺の肉棒をズボン越しからしごいていった。

 

「留衣さん……気持ちいいです……」

「ふふ、私もだよ。優馬くん」

 

 ニッコリと微笑む留衣さんに対し、さらに欲情を昂ぶった。

 

「あの……留衣さん。服脱いでくれませんか?」

「うん、分かった」

 

 留衣さんが頷くと、着ている服を脱ぎ始めた。

 

 下着姿、そして、全裸姿になり少し恥ずかしそうに秘所を手で隠して俯く留衣さん。

 純情そうな乙女のようでとても可愛らしい。

 

「おお……」

 

 思わず感嘆の声を上げた。

 

「ちょっと恥ずかしいから優馬くんも脱いでよ」

「分かりました」

 

 留衣さんに促され、俺は服を脱いで全裸になった。

 

「ふふ、勃起してる」

「そうですね」

 

 愚息は花苗の時にたくさん射精したというのに、立派に屹立していた。

 

「やっぱり……優馬くんの身体は正直なんだね」

 留衣さんはギュッと俺に抱きついてきた。

 背徳的な柔らかい感触に俺の肉欲のボルテージはさらに上昇する。

 

 薄暗く狭いテントの中で俺たちは舌を絡ませ合い、何度もキスを繰り返した。ザラザラとした留衣さんの舌の感触はすごくいやらしい。この舌で肉棒を舐めて欲しい。

 

 一度キスを止め、俺は留衣さんに依頼することした。

 

「留衣さん、フェラしてくれませんか?」

「もう、しょうがないなぁ……」

 

 少し困ったような表情を見せた留衣さんはパクッと俺の肉棒にしゃぶりつき、『じゅぶ、じゅぶ、じゅぶ』といやらしい音を立てながらフェラを開始した。

 

「お、おぅ……」

 

 思わずビクッと身体が跳ねた。花苗のフェラも上手かったが、留衣さんのフェラもかなり上手い。

 

 気を抜くとすぐにでも射精してしまって、留衣さんの口の中を性液で満たしてしまいそうだ。

 

 留衣さんは上目遣いで肉棹をさすりながら、フェラを続けてきた。

 

「こんなに先走っちゃって……本当に悪いおちんぽさんだね」

 

 留衣さんは一度フェラを止めると、先端部分を指で突き、玉から先端にかけて一気に舐め上げた。

 

「あぁあ!」

 ゾクゾクとする快楽に思わず情けない声を出してしまった。

 その動作を留衣さんは数回繰り返した。

 まるで俺の反応楽しんでいるかのようであった。

 

 それにしても、この位置から留衣さんを見ると、本当に良い身体をしている。

 

 膨らんだ二つの果実は大きく、乳輪と乳首はピンク色ですごくエロい。

 秘所のところはツルツルである。そういえば、初めて留衣さんとセックスした時もツルツルであったが、これは剃っているわけではなく体質なのだろうか。

 

 俺は留衣さんの金色の髪を撫でた。

 少しガサついていたがそれでも触っているとまるで猫を撫でているかのように落ち着いてくる。

 

「うぁ……で、出そう……」

 

 留衣さんは肉棒から口を離し、手で肉棒を握るながら立ち上がった。

 

「まだイっちゃだめ。出すなら口の中じゃなくて、ここで……ね?」

 

 肉棒を自らの割れ目へと近づけた。

 

「挿れるよ?」

「は、はい……」

 

 留衣さんは俺の肉棒をゆっくりと膣の中に沈めていった。

 俺がピストン運動を始めると、キツキツの膣内のヒダ肉が肉棒に絡みついてきた。

 

「あぁうん……! 優馬くん……すごい……激しい!」

 

 ピストン運動された留衣さんは気持ち良さそうに身体を仰け反らせて喘ぐ。

 俺は両手でプルンプルンと理性を失ったかのように暴れ出すおっぱいを両手で掴み、さらに速い速度で腰を振った。

 

「優馬くん……優馬くん!」

「る、留衣さん……!」

 

 お互いの名前を叫び合い、ほぼ同じタイミングで絶頂に達した俺たちは身体をぶるりと痙攣させた。

 

 そして、俺は留衣さんの膣内で射精してしまった。

 全てを出し尽くした後、俺たちはテントの床に並んで寝っ転がった。

 

「優馬くん、気持ちよかったね……」

「はい……」

 

 チュッと優しくキスをし、留衣さんの髪を撫でる。ずっとこのままでいたいと思っていたが――

 

「留衣さん! 敵襲です!」

 

 突如、テントの中にレジスタンスの人が入ってきた。花苗ではない。別の女性である。

 その女性は全裸姿である俺たちを見て察したのか、たちまち顔を赤くし、テントから出ていった。

 

「す、すみません! お楽しみ中にお邪魔して! でも緊急事態なので応援よろしくお願いします!」

 

 留衣さんは不満げな表情をすると、急いで服を着始めた。

 

「くそ、インフェクティドの奴らめ。皆殺しにしてやる……」

 

 ブツブツと着替えながら物騒なことを呟き始めた。怖い。

 とある漫画で『交尾を邪魔されて怒らない生き物はいない』というセリフがあったが、おそらくそれは本当なのだろうと留衣さんを見てつくづく思った。

 

 服を着た留衣さんは日本刀を持ち、出口へと向かった。

 

「優馬くんは危ないからテントの中にいて」

 振り向かずに俺にそう告げ、戦場へと向かう留衣さん。

 

 テントの中にいてと言われたものの、いてもたってもいられなくなった俺は服を着て、外の様子を見に行くことにした。

 

 外に出ると、地面にたくさんの死体が倒れていた。どれも深い切り傷がついている。多分留衣さんがやったのだろう。

 当の本人は誰かと正対しているようであった。

 

 その人物は見覚えがあった。薄い茶色い髪をした整った顔立ち。見間違いもない。

 渡嘉敷綾女だ。

 

 綾女と結ばれた世界の綾女と異なり、なんだか殺伐とした雰囲気が伝わってくる。

 そして、どういうわけか花苗の頭に拳銃を突きつけている。

 おそらくであるが、綾女は感染しているわけではない。

 感染しインフェクティドになると理性を失い闇雲に人に襲いかかるからである。

 

「綾女!」

 

 俺が叫ぶと、留衣さんと綾女は驚いたかのような表情を見せた。

 

「ゆ、優馬くん。テントの中にいなさいって言ったでしょ!」

 

 珍しく留衣さんが怒り出した。しかし、こんな状況で黙っていろというほうが無理だ。

 

「すみません。留衣さん」

「優馬くん。信じられない……生きてたんだ」

 

 綾女の銃を持つ手はプルプルと震えていた。

 

「綾女、どうしてこんなことを?」

「どうしてって? それは私が選ばれた人間だからだよ!」

「ど、どういうことだ?」

 

 すると、突然綾女は自分の腕に銃で撃った。

 

「い、一体何を……!?」

 

 撃たれた腕から大量の血が流れ出した。

 

 しかし、その腕の傷はみるみるうちに治っていった。綾女は治っていく様子を俺たちに見せつけるように腕を上げた。

 

「分かる? 私はインフェクティドになったの。それもしっかりと理性も保てるほどのね……」

 

 衝撃の事実に思わず俺は頭を抱えそうだった。綾女がインフェクティドだって?

 再び綾女は花苗に銃口を突きつけた。

 

「この花苗とかいう女はどうでもいいけど……マサ様から留衣を連れてくるように言われているからね。それにしても優馬くんが生きていたとは……とっても嬉しいよ」

「どうしてだ? どうしてこんなひどいことを! 理性が残っているなら、俺たちに協力してくれてもいいだろ!」

 

 綾女は俺を目掛けて発砲した。銃弾は俺の頬をわずかに掠めた。

 

「協力だって? 冗談じゃない! 私はマサ様の偉大なる思想に惚れ込んだの。ただセックスをして、無意味に繁殖し、無駄に消費を繰り返す愚かな人間共の味方をするなんてぜっったいにやだね!」

「もういいよ、綾女ちゃん。元々、明日マサのところに行くつもりだったし大人しく付いていくよ。だから花苗ちゃんを離してくれる?」

「ダメだよ。こいつは大事な人質。マサ様のところに案内するまではこのままだよ」

「そう分かった」

 

 留衣さんは鞘から日本刀を抜いた。刀身は月光に当たりギランと怪しく光った。

 

「待て。一歩でもそこから近づくとこいつの頭を撃つよ!」

「留衣さん! 私のことは気にしないください!」

 

 花苗が叫ぶと、綾女は花苗の頭からわずか横に向けて発砲した。

 

「ひ!」

 

 脅しのつもりなのだろうが、花苗はひどく怯えた。

 

「うっせえぞ! この腐れビッチが! いいから大人しくしてろ!」

 

 おおよそ綾女とは思えないほどの汚い言葉遣いだ。これも感染した影響だろうか。

 

「綾女ちゃん。近づかなきゃ……いいんだよね?」

「は?」

 

 綾女は留衣さんの言葉を聞き、睨みつけた。

 

「飛ぶ斬撃を見たことはあるかしら?」

 

 留衣さんはシャッと何もないところを日本刀で切りつけた。

 

「な……!」

 

 綾女は驚きの声を上げた。なんと、銃を持っていた綾女の腕がすっぱりと切れてしまった。綾女は何が起きたのか分かっていないようだ。

 

「はぁ!!」

 

 今度はエックスを描くように日本刀で斬りつけた。

 綾女の身体にエックス形の切り傷ができた。

 

 漫画やゲームで見るようないわゆる飛ぶ斬撃というもの。留衣さん、こんな芸当ができたのか。

 

 いや、それよりも――

 

「ぎゃあああ! 傷が勝手に! な、なんだこれは……」

 

 綾女はバタンと地面に倒れ込んだ。

 

「綾女!」

 

 俺は急いで綾女の元に駆け寄った。

 

「おい! 死ぬな! 綾女!」

 

 綾女はゆっくりと手を上げた。その手を俺は握りしめる。

 冷たい。生きている人間とは思えないほどだ。

 

「傷が深すぎて再生できない……ゆ、優馬くん……どうか、マサ様を殺さないで……」

 

 そう言い残すと綾女は目を閉じてしまった。綾女の首筋に指を当てて、脈を確認すると止まっていた。

 

「綾女! 綾女! うわああああああ!」

 

 ゲームの中とはいえ、知り合いが死ぬのはあまりにも辛すぎる。

 思わず自分の目から涙が流れていた。

 

「ゆ、優馬さん……」

「花苗ちゃん。危ないところだったわね」

 

 留衣さんのことを見ると、留衣さんはびっくりするほど平然としていた。

 俺は怒りのあまり、留衣さんの胸ぐらを掴んだ。

 

「どうして綾女を殺したんですか! 話し合えばどうにかなったかもしれないのに……」

「無理だよ優馬くん。綾女ちゃんは私の仲間を目の前で何人も殺した。それに感染もしていた。私は感染者が誰であろうと斬る。それがたとえ……優馬くんでもね」

 

 容赦のない言葉を吐く留衣さんの瞳には強烈な復讐の炎が灯っているようであった。

 

「だけど……そんなの……」

 

 留衣さんの計り知れない覚悟を垣間見た俺は何も言えなくなってしまい俯いた。

 俯いた俺の頭を留衣さんは優しく撫でてきた。

 

「優馬くんはやっぱり優しいね。できればずっとそのままでいて欲しい。優馬くん、私がいなくてもしっかりね」

 

 次の瞬間、頭部から強い痛みが走った。留衣さんに殴られたのか。

 徐々に気が遠くなっていく。

 

 気を完全に失う直前にこんな言葉が聞こえた。

 

 

 

「じゃあね、優馬くん。愛してる……」



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留衣さんルート5

「う……ん……」

 

 しばらくの間、気を失っていた俺はテントにいることに気が付いた。

 徐々に視界がはっきりとしてくると、花苗が俺の顔を覗き込んでいた。

 

「優馬さん! 気がつきましたか?」

「か、花苗さん……」

 

 俺はゆっくりと上体を起こした。周囲を見渡すも留衣さんの姿が見つからない。

 

「無理しないでください! まだ休んでいた方が……」

「留衣さんは? 留衣さんは一体どこに?」

「留衣さんは秋葉原の方に向かいました。マサとの決着をつけにいくって……」

「そ、そんな一人で?」

「はい……」

 

 バカな。いくらなんでも危険すぎる。

 留衣さんがいくら強くても敵のアジトに単身で乗り込むなど自殺行為もいいところだ。

 

「お、俺も行きます!」

 

 俺は立ち上がろうとした。しかし、身体に鈍い痛みが走りうまく立ち上がることができない。

 

「無茶です! 危険すぎます! ここは大人しくしていましょう!」

「何言ってるんですか! 留衣さんを放っておくなんてできません! 俺は意地でも助けに行きます!」

 

 身体に鞭を打ち、立ち上がった。テントに置いてある木刀を手に持ち、外に出る。

 

「よし……行くか!」

 

 秋葉原を目指して歩き出そうとした。薄暗かった空は徐々に明るくなり始めていた。

 木刀を力強く握りしめ、目的地を目指して歩を進める。

 

 建物は寂れており、完全にゴーストタウンのようでった。

 日本の首都である面影をもはや残していない。

 前方から何かが近づいてくるのに気づいた。

 

 正気を失ったような表情をし、涎を垂らしながら近づいてくる女性――インフェクティドだ。

 幸いにもインフェクティドの数は一人。

 これならなんとか俺にも倒せるかもしれない。

 木刀を握っている手に力を込めた。

 

「セイシー! チンコー!」

 

 勢いよくインフェクティドが俺の元に駆け寄ってきた。

 感染前はさぞや美人であったであろう、そう思わせるような顔立ちをしていた。

 

「オラァ!」

 

 近づいてくるインフェクティドの頭を思いっきり木刀で殴りつけた。

 インフェクティドは思いっきり倒れ込んだ。 

 

 よしいける。

 

 このまま奴の頭に打撃を与えて頭をかち割ってやる。

 俺はインフェクティドの頭に狙いを定めて木刀を振り落とした。しかし、

 

「セイシ、セイシ……」

 

 俺の渾身の一撃をあっけなく片手で防いでしまった。俺が考えていた以上にインフェクティドの戦闘力は高かったようだ。

 仮にも俺は運動部であるため少なからず常人よりは強いと思っていたが、普通のインフェクティドよりも戦闘力が低いのだと今更ながら痛感させられた。

 

「うわ!」

 

 インフィクティドが俺を押し倒してきた。

 形勢逆転となり、そのままインフェクティドは濃厚なキスをしてきた。

 

「んふ……」

 

 みずみずしいキスの感覚に思考が停止する。いつの間にか股間に至福の快楽が流れ出した。

 おそらく手コキさせられているのだろう。

 なんというイヤラシイ手つきだ。

 

 あっ。

 

 イッてしまった。どんどん頭がボーとしてくる。

 その後も幾度となく射精させられ、股間に痛みが走った。

 やがて、痛みはおろか感覚がなくなってきた。

 

 俺はこのまま腹上死するのだろうか。

 留衣さんを助けることはおろか一目見ることもできず。

 なんと惨めな最後を遂げるのだろうか。

 

 死を覚悟した瞬間、『パン』という甲高い発砲音が耳に届いた。

 

 俺をキスしていたインフェクティドはバタンと横に倒れ込んだ。頭部には小さな穴が出来ていた。

「だ、大丈夫ですか! 優馬さん!」

「花苗さん……どうしてここに?」

 

 なんと、俺を助けてくれたのは花苗であった。

 

「勝手に一人で飛び出していくもんだから心配になってついてきたんですよ! 全く無茶して……早くそのおぞましいの、閉まってください」

 

 花苗は恥ずかしそうに自分の茶色い髪の毛をかき分けた。

 テントで散々見ていたくせにそんなに恥ずかしいものか。

 俺は自分の局部をしまい、立ち上がった。

 うぅ……股間がまだヒリヒリする。

 

「花苗さん。悔しいけど俺が助けに行ってもほとんど留衣さんの役にはたちないと思います。けど、留衣さんを助けに行きたい。だから……一緒に付いてきて欲しいです」

 

 俺は深々と頭を下げて花苗にお願いした。

 

「仕方ありませんね。私も日頃から留衣さんには感謝していますし、いいでしょう。私も付いて行きますよ」

「あ、ありがとうございます!」

 

 こうして、俺と花苗は共に留衣さんがいるところへと向かうことにした。

 秋葉原に向かう途中、何度かインフェクティドに遭遇したがその都度花苗と協力して撃破していった。

 花苗と遭遇してから約一時間後、ようやく秋葉原の電気街へと到達した。

 

 秋葉原――今でこそオタクの聖地として知られる秋葉原であるが、第二次世界大戦後の日本において、闇市として発展していた。

 ジャンク品及び家電量販店が中心の電気街であった秋葉原であるが、時代の流れの共にゲームショップ、アニメショップ、アイドル劇場などが出来上がり、現在の秋葉原が出来上がった。

 

「ようやく着きましたね……」

 

 花苗が警戒した様子であたりを見渡した。アニメショップやゲームショップなどの建物はすでに寂れており、この時間ならいつも賑わっているオーディオ会館には全く人気(ひとけ)がなかった。

 

「そうですね。留衣さんは一体どこにいるんでしょうか」

 

 俺がそう呟くと同時に大きな発砲音が耳に届いた。

 

「優馬さん! 今の音!」

「ええ、行ってみましょう!」

 

 俺と花苗は走って発砲音が聞こえた方向へと向かった。

 

 中央通りの交差点ではたくさんのインフェクティドが密集しており、留衣さんが必死に応戦しているのが見えた。

「はぁ! はぁ!」

 留衣さんは日本刀で次々とインフェクティドの首を切り落としていった。

「私たちも助けに行きましょう!」

 花苗が留衣さんを救いに向かった。俺も花苗の後を追うように向かう。

 

「留衣さん! 助けに来ました!」

 

 花苗が留衣さんに声を掛けた。

 すかさず二体のインフェクティドの脳天に鉛玉をぶち込む。

 

「留衣さん! 大丈夫ですか!」

 

 俺は近くにいたインフェクティドを木刀で殴りつけた。

 

「花苗ちゃん! 優馬くん! ど、どうしてここに?」

「説明は後です! 今はここのインフェクティドを殲滅しましょう!」

「ええ! そうね!」

 

 三人でインフェクティドと交戦し、なんとか全て倒しきることができた。

 ほとんどは留衣さんの功績であるが。

 

「な、なんとか倒せたね……それよりどうして二人ともここに来たの?」

 

 留衣さんは額の汗を手で拭った。息を激しく切らしており相当疲労しているようだ。

 

「留衣さんが心配になったからですよ。黙って出ていくなんてひどいですよ」

「優馬くん……ありがとう」

 

 突然、前の方から『パチパチ』という拍手の音が聞こえてきた。

 

「いやぁ……まさか人間がここまでやるとはね。驚いたよ」

 

 俺たちの前に颯爽と現れたのは病人のように色白い肌をした銀髪碧眼の少女であった。

 その少女は白を基調とした着物を身に纏っており、浮き世離れしたような美しさとどことなく儚さを感じさせた。

 

「マサ……」

 留衣さんが今まで見たことのないような険しい表情で少女を睨みつけた。

「マサ? こいつが……」

 

 留衣さんから話は聞いていた。

 

 マサ――こいつがこの世界をインフェクティドだらけにした張本人。

 

 マサと目が合った。すると、奴は蠱惑的な微笑みを浮かべた。

 

「お前、中々良い男だな。私が直々に貴様を気持ち良くしてやろう」

 気持ち良く……いや、それは間違いなく死を意味する。

「優馬くん下がってて!」

 

 留衣さんの指示を受け、俺は一歩後ろに下がった。

 

「ここであなたを殺すわ!」

 

 刃をマサに向け、宣戦布告した留衣さんは地面を強く蹴り込み奴を切りつけた。

 

「うふふ……久しぶりね」

「あ、あなたは……どうしてここに!?」

 

 留衣さんの前に突如現れた人はあっさりと斬撃を手に持った鉄扇で受け止めた。

 茶色い髪をし、赤いメガネを掛けた人物。

 間違いなくその人物はキンキィ梅田の大家さん――梅田薫さんであった。

 



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留衣さんルート6

「か、薫さん……」

 

 俺たちの前に現れたのはなんと薫さんであった。

 驚きのあまり言葉が出なくなりそうであった。

 

「久しぶり……ってほどでもないか。このゲームの中では時間が立っても現実の世界じゃ一日も経過していないみたいだしね」

 

 その言葉を察するに俺と同じくゲームプレイヤーとして参加しているようだ。

 このゲームの世界における薫さんではないのだろう。

 

「薫さん、どうしてマサと一緒に?」

「どうしてって? それは私がこの世界で生きていくことを決意したからよ」

「え? それは一体、どういう……」

 

 薫さんは俺が質問する前に鉄扇で斬りかかってきた。

 

「危ない! 下がって!」

 

 俺は留衣さんの言う通り、一歩前に下がった。『カーン』という金属と金属がぶつかり合う甲高い音が響く。

 

 鉄扇での斬撃を留衣さんが日本刀で防御してくれた。

 

「留衣……あなた、やっぱり強いわね。思い出すわ。ビーストファンジターのこと」

「懐かしいですね。よく一緒にプレイしましたね……」

 

 その後、留衣さんと薫さんによる斬撃の打ち合いが続いた。

 素早い留衣さんの攻撃を薫さんは鉄扇と素早い身のこなしで防いでいった。

 

「留衣さん! 援護します!」

「ちょっ……ま……!」

 

 止めるまでもなく花苗が薫さんに狙いを定め、発砲した。

 しかし、銃弾は薫さんに当たることなく、横から現れたマサの肩に命中した。

 

「薫の邪魔はさせんぞ。お前ら二人は私が相手をしてやろう」

 

 マサがゆっくりと俺たちに近づいてきた。

 一歩づつ近づいてくるたびに異様なプレッシャーが感じられた。

 身体に悪寒がし、冷や汗がとめどなく流れてくる。

 

「震えてるのか? 当然だ。私は地球人とは次元が違う存在。お前らとはもはや生物としての格が違うのだ」

 

 銃弾が当たった肩の傷が一瞬にして回復してしまった。

 

「くそ! この、この!」

 

 パンパンと花苗はひたすらマサの身体に銃を撃ち込むも全く意を介した様子を見せず、俺たちとの距離を縮めてきた。

 

「終わりだ」

「ひ!」

 

 マサは腕を振り上げ、鉄扇で花苗の身体を切り裂こうとした。

 やばい、このままでは花苗が殺されてしまう。

 

「やめろ!」

 

 俺は木刀でマサに応戦しようとした。

 しかし、木刀はマサの鉄扇によってあっさりと斬られてしまった。

 

「な……」

「お前は黙って見ていろ」

 

 頬に強烈な痛みが走った。殴られたと認識するまで少し時間がかかった。 

 背中をコンクリートの柱に激しく打ち付けてしまった。

 

「ひ……た、助けて……」

 

 花苗が泣きそうな表情で俺を見つめた。

 しかし、脚がガクガクして動かない。

 

「や、やめろー!」

 

 

 

「マジックバレット!」

 

 聞いたことのあるような声が耳に届いた。

 

「うわ!」

 

 見たことのある強烈な黒い魔弾がマサに命中した。

 まさか……けど、あいつしかいない。

 

「随分と無様だな。ユウマよ」

 

 褐色肌、黒いツノ、尻尾を生やしたその人物は間違いなくヴィネであった。

 

「ど、どうしてここに?」

「ちょっと、優馬くん!? 大丈夫?」

 

 なんと、ヴィネの隣には未知瑠さんもいた。

 

「未知瑠さんも……どうしてここに?」

「うーんとね。ヴィネちゃんと一緒にクエストしていたら時空の裂け目みたいなものに吸い込まれてさ、ここに辿り着いたんだ」

 

 ビーストファンジターの世界とこの世界が通じたということか?

 ゲームの開発元が同じだから起きたのだろうか。

 

「それより、今直してあげるね!」

「え?」

「スキル、発動。『癒しの舞』!」

 

 未知瑠さんが華麗に踊ると、見る見るうちに俺の身体の傷と痛みが治った。

 

「す、すごい……一瞬で治った」

 

 ここでもビーストファンジターのスキルを使うことができるのか。

 

「おい、ユウマよ。このいけ好かない娘は私たちが相手をしよう。お主はそっちを助けてやれ」

 

 ヴィネが留衣さんの方を指差した。身体中傷だらけで大分疲弊しているようであった。

 

「留衣さん!」

 

 俺は急いで留衣さんの元に駆け寄った。

 

「終わりよ!」

 

 薫さんが攻撃しようとするのを止めるべく、留衣さんの前に立った。

 

「やめてください! 薫さん!」

 

 薫さんはピタッと動きを止めた。

 

「優馬くん……」

「薫さん、どうしてこんなことを……」

 

 薫さんは腕を下ろし、ものすごい形相で俺を睨んできた。

 

「私、見てたの。優馬くんが妹さんとエッチしてたの……」

「え……」

 

 み、見られていたのか。

 全く気が付かなかった。

 

 

「すごい、気持ちよさそうだったわよね。優馬くん」

「す、すみません……」

「私とどっちが気持ちよかったかしら?」

 

 怖い。さながら今の俺は蛇に睨まれた蛙のようだ。

 しかし、悪いのは圧倒的に俺の方だ。

 

 弁明の余地はない。

 

「えっとその……」

 

 薫さんは呆れたようにため息を吐いた。

 

「もういいわ……ここで殺してあげるわ! 覚悟しなさい!」

「分かりました」

「へぇ……覚悟を決めたのかしら?」

「はい」

「ちょっと! 優馬くん、何言ってるの!」

 

 留衣さんが俺の肩を揺さぶってきた。

 

「留衣さん。伝えておきたいことがあります」

「え、何……?」

「俺は別の世界からやってきました。そこにいる薫さんもです」

「え……どういうこと? 頭おかしくなっちゃったの!?」

 

 まぁ、いきなりこんなことを留衣さんに言っても戸惑うだろう。

 しかし、それでもハッキリと伝えておかなければならない。

 

「この世界の留衣さんも……とっても素敵です! けど、やっぱり俺は……」

 

 俺は薫さんの方に向かって走り出した。

 

「薫さんが好きです!」

 

 『ヒュッ』という空気を切り裂く音と共に首に強烈な痛みが走り、徐々に意識が遠くなっていった。

 

 俺と留衣さんと結ばれるはずだったルートの世界はこれにて幕を閉じる。

 

 

 

 

 

「どうでしたか? 優馬さん」

 

 気がつくと、俺は何もない白い空間にいた。

 

 俺の目の前には柔和な笑みを見せるガブリエルが椅子に座っていた。

 

「ガブリエル……どうでしたかって。見ての通り殺されたよ」

「まさか薫さんがあなたと妹さんの性行為を見ていたなんて思ってませんでしたか」

「そりゃあ、まぁ……」

 

 容赦ない言葉を投げかけるガブリエルに俺は思わず顔を伏せた。

 すると、カブリエルは立ち上がり俺の肩を軽く叩くと、

 

「やり直したいですか?」

 

 と訊いてきた。

 

 俺は顔を上げた。透き通るような蒼い瞳が俺を覗き込む。

 

「で、できるのか?」

「はい。ですが、チャンスは一回切りです。失敗は許されませんよ? もしも失敗したら、あなたは灰色の高校生活を送ることになるでしょう。それでもやり直す覚悟はありますか?」

「ち、ちなみにやり直さなければどうなるんだ?」

「私が薫さんの記憶を書き換えます。とりあえずはあなたと妹さんが性行為しているのを見たことは綺麗さっぱり忘れるでしょう。やり直さなくても一応は楽しい生活を送ることができると思います」

「そうか……でも、やり直すよ」

 

 躊躇わずに俺が答えるとガブリエルは大きく息を吐いた。

 

「妹さんのあなたへの愛はかなり大きいですよ? ちゃんと拒否することができますか?」

「ああ、必ずやってみせる。色んな世界を見てきたけど、やっぱり俺は……薫さんと結ばれたい」

「分かりました。それでは、ご健闘をお祈りします」

 

 夢の中にいたような意識が徐々に現実世界に戻っていった。

 

 俺はベッドの上で寝転んでいた。ゲームをするためにつけていたVRゴーグルは身につけていなかった。

 

 スマホに電源を入れ、日付を確認した。

 

 今日の日付は4月25日。

 

 妹が突然、やってきた日である。

 

「ほ、本当に過去に飛んだんだな……」

 

 これから俺は妹からの誘惑を徹底的に拒否らなければならない。

 



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一人暮らしを始めた僕の高校生活は……

 4月25日にタイプスリップした俺はすぐにベッドから起き上がり、シャワーを浴びた。

 

 もう少しで『あいつ』がやってくることだ。

 

 シャワーから浴び、服を着終えると『ピンポーン』とインターホンの音が鳴った。

 

 来たか――俺は意を決して玄関へと向かった。

 扉を開けると、俺の実妹である愛子が立っていた。

 

 タイムスリップ前と同じく、英語のロゴが入った赤いシャツとホットパンツと黒のニーハイを履いており、長めの亜麻色の髪をゴムで纏めている。

 

「待ちきれなくて、来ちゃった……」

 愛子は「えへへ……」と可愛らしく微笑んだ。

 

「愛子か。久しぶりだな」

 努めて冷静に言うと、愛子は目を大きく見開いて俺を見つめた。

 

「お兄ちゃん。驚かないんだね」

「ああ。それより、愛子。ちょっと付いてきて欲しいところがあるんだけど……いいか?」

 

 俺は靴を履き、愛子の手首を掴んだ。突然の俺の行動に愛子は戸惑っているようであった。

 

「う、うん。別にいいけど……」

 

 俺が案内したのは俺の真上の部屋の302号室――つまり、薫さんの部屋である。

 

「お兄ちゃん、この部屋は?」

「俺の彼女の部屋だ」

「え……」

 

 愛子は明らかにショックを受けたように顔を強張らせた。

 しかし、そんな愛子に構わず俺はインターホンを押した。

 

「はーい!」

 ドタドタドタと薫さんの足音が聞こえてきた。

 

「あ、優馬くん! その女の子は?」

 

 薫さんが扉を開け、俺たちの前に姿を現した。

 薫さんはピンク色のキャミソールと青いショートパンツという肌の露出が多めの姿をしていた。

 

「妹の愛子です。ほら、愛子。俺の彼女さんに挨拶して」

「は、はじめまして……愛子と言います。お兄ちゃんがいつもお世話になっています」

「愛子ちゃんって言うんだ! すごく可愛いわね! 二人とも良かったら上がって!」

 

 薫さんに促され、俺と愛子は部屋に上り込むことにした。

 薫さんと付き合ってから、薫さんの部屋をちょくちょく片付けているが、薫さんは相変わらず部屋を散らかしていた。

 

 脱ぎっぱなしの下着が床に落ちている。

 

「ちょ、ちょっと薫さん! なんですか、これ!」

 愛子は顔を赤くし、薫さんの際どいデザインの下着を手に持った。

 

「ああ、これね。今日さっき、シャワー浴びた時に脱いだやつだわ」

 ほう、さっき脱いだやつか……

 

「愛子、それを俺に貸してくれ」

「え!? 何に使うの?」

 

 愛子は驚愕の表情で俺を見つめた。失礼なやつである。

 俺がそれを使って変なことをすると思ってやがるのか。

 

「何って……洗濯機に入れるんだよ」

「わ、私が入れてくる」

 

 こいつ……俺の大事な仕事を奪う気か!? 

 AIに仕事を奪われた時の気持ちはおそらくこんな感じだろう。

 

「ダメだ! 愛子にはまだ荷が重すぎる!」

「何が!? もういいからこれ洗濯機に入れてくるね!」

 

 有無を言わせぬ勢いで愛子は洗濯機が置いてある洗い場へと向かった。

 ちくしょう。

 

「ふふふ……私の下着を見て、スイッチ入っちゃたの?」

 薫さんは俺の背後に回り込み、背中にたわわな胸を押し付けてきた。

 

「えっと、その。ま、まぁ……」

 

 俺は振り向き、薫さんにあるお願いした。

 

 まずは愛子が俺を性的な意味で溺愛していることを説明し、本題に入る。

 果たして薫さんは首を縦に振ってくれるだろうか。

 

「ええ、分かったわ」

 

 よし、それじゃ作戦実行だ。

 

 

 

 

「お兄ちゃん……って何してるの!?」

 リビングに戻ってきた愛子が声を荒げた。

 

「ん……うふ……優馬くん」

「ん、か……薫さん……」

 

 俺と薫さんは今まさにキスをしていた。

 しかも、愛子の前で堂々とだ。

 キスを止め、真顔で愛子にこう告げる。

 

「何って……見ての通りキスだよ。カップルなんだから当然だろ?」

「そ、そうかもしれないけど……せめて二人っきりの時にしてよ」

 

 愛子に正論を言われた。

 だが、今はそんな正論を一気に切り捨てていく。

 

「そうだな。それじゃ、愛子。お前は先に俺の部屋に戻っていてくれ」

「ええ!?」

 

 愛子が素っ頓狂な声を上げた。

 

「悪いけど愛子ちゃん。私からもお願い」

 薫さんも便乗するように愛子にお願いした。

 

「わ、分かりました……」

 

 愛子は顔を引きつらせながらも部屋を後にした。よし、ここからが本番だ。

 一体、何をするのかと言うと。

 

「それじゃ、優馬くん。ちょっと電気を消すわね」

 薫さんは部屋の照明を豆電球だけ残しておく状態にした。

 

「それじゃ……しましょうか」

 

 暗闇の中で男女二人は快楽の沼へと落ちていく。

 

 

 

「ん……」

「薫さん……おっきくて気持ち良いです……」

「もっと私のおっぱい触って、しゃぶってもいいのよ?」

「では、失礼します」

「やん! ふふ、そんなにしゃぶって……相変わらず赤ちゃんみたいね」

「薫さん。俺のこれ、挟んでもらえます?」

「うん、いいよ。優馬くんのおちんちん、私の胸で気持ち良くしてあげるね。ん……ん……すっごい、硬くて大きいわね……優馬くんのおちんちん……」

「はぁ……ん……や、やばい……」

 

「ひゃ! す、すごい……いっぱい出たね……きゃ、ちょっと、優馬くん!」

「か、薫さんのアソコ……すごく濡れてて……興奮します……」

「ん……そ、そんなに激しく舐められたら……あ、あぁん……!」

 

「お兄ちゃん。薫さん」

「あ、愛子……いつからそこに?」

「さっきからずっと見てたよ。随分と楽しそうだね……」

「まぁな」

 

 ここまでは俺の想定内であった。しかし、

 

「私も……お兄ちゃんにしてほしい……」

 

 予定が狂った。

 まさかここで愛子が発情して、セックスをねだってくるとは想定外である。

 

「なら、愛子ちゃん。私たち三人で楽しみましょう!」

「え?」

 

 薫さんがとんでもない提案をした。

 俺が考えていた作戦は薫さんとのセックスを愛子に見せつけて、俺への溺愛を無くしてもらう予定であった。

 

「いいわよね? 優馬くん?」

「ま、まぁ……薫さんがいいって言うのなら」

 

 いいのか? 本当に? 実の妹と3Pするってことだぞ?

 

「それじゃ失礼しますね……」

「すごい……愛子ちゃん。とっても良い体してるわね!」

「ちょ、ちょっと……薫さん……いきなり胸を揉まないでください」

「ふふ、それじゃ優馬くん。揉んであげて」

「わ、分かりました……それじゃ、揉むぞ。愛子……」

「うん……」

「うん……わ、私の胸が……お兄ちゃんに揉まれてるよ……気持ち良いよぉ……」

「あらあら。だらしなく涎まで垂らして……愛子ちゃんは本当に優馬くんが好きなのね……私もだけど」

「ふぁ……か、薫さん!?」

「優馬くんは耳元が弱いからね……こうして……舐めてあげると……ビクンって震えて……本当……可愛い……」

「お兄ちゃん……」

「ん……おにいひゃん……」

「あら。我慢できなくてキスしちゃったのね。それじゃ私も……」

「ん……」

「はぁ……お、お兄ちゃん……もう私、我慢できない……早く挿れて……」

「ダメよ愛子ちゃん。彼女なんだから私が最初!」

「そんな横暴です! じゃんけんで決めましょう!」

「望むところよ!」

「「最初はぐー! じゃんけんぽん!」」

「やった! 勝った! それじゃ、優馬くん……私に挿れてちょうだい……」

「は、はい……それじゃちょっとゴムを……薫さん?」

「きょ、今日は安全日だから膣(なか)に出しても大丈夫よ……だから生でやりましょう……」

「分かりました……」

「ん……しゅ、しゅごい……優馬くんのあっついのが中に……」

「薫さんの中……キツキツですっごく……」

「ん……あ……あぁん……や、やばい……いい……あぁん……!」

「薫さん……もう……これは……い、イきそうです!」

「あぁん!!」

「はぁ……ああ……」

 

 

 

「あーあ。こんなに中に出して……本当、とっても元気なおちんぽさんね♡」

「お兄ちゃん。今度は私の番だよ。私も今日は安全日だから安心して膣(なか)に出してね」

「ほ、本当だろうな?」

「うん。ほら、早く挿れて」

「ああ、それじゃ挿れるぞ……」

「う……あぁん……」

「ぐ……す、すごい気持ち良い……」

「優馬くん。私とどっちが気持ちいいのかしら?」

「しょ、正直に言うと、同じくらい……」

「ふーん、そう……」

「あの、薫さん。つねってくるのやめてください」

「あ……お、お兄ちゃん……もっと……奥まで突いてよ……そう……そんな感じで……もっと、速く……もっと……あ……あぁん!」

「愛子……お前のおまんこ……すっごく気持ちいいよ……」

「薫さんと……あぁん! ど、どっちが……」

「お、同じくらい……うあ! あ、はぁあ……」

「お、お兄ちゃんの種(タネ)が私の中でいっぱいになったよ……」

 

「えーい!」

「うわ! 薫さん! なんですか!? 急に抱きついて!」

「愛子ちゃんに私と同じくらい気持ち良いなんて言うから妬いちゃったわ! 今度はもっと優馬くんを骨抜きにして情けない顔にしてあげるんだから!」

「お兄ちゃん。私もまだ満足しきれてないからもう一回しよう」

 

 果たして俺は腹上死せずに、朝を迎えることができるのだろうか。

 そんな不安を抱えつつ、薫さんと愛子の三人で長い夜を過ごしていった。



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バラ色でした

 愛子が家にやってきた日からすでに一ヶ月あまりが経過した。

 あの日の夜の後、俺は愛子と共に実家に帰省し、地元でゆっくりと過ごした。

 東京に戻ってから一ヶ月あまりが経過し、今は六月の上旬である。

 梅雨の時期に入り、雨が続く日が多くなってきた。

 

「いやー、今日も部活大変だった。足が痛い……」

「そうだね。石崎さん、最近すっごく張り切ってるしね」

 

 部活の帰り道。俺は綾女と一緒に歩いて帰っていた。

 歩いている途中、綾女はなぜか立ち止まった。

 

「綾女?」

「優馬くん、実は優馬くんに見せたいものがあるんだ」

 

 綾女は鞄からガサゴソと何かを取り出そうとしていた。

 

「見せたいもの?」

「うん……あった!」

 

 綾女が取り出したのは薄い本であった。表紙にはやけに顎の鋭い男が二人裸で抱き合っている絵が描かれている。

 

 注意深く観察すると、誰かに似ていることが分かった。

 まぁ、大分美化されているのだが。

 

「おい、綾女。まさかそれ……」

「そう! 優馬くんと石崎さんのBL本だよ! 今度のコミケに出品してみようと思うんだ!」

 

 綾女は鼻息を荒くながら説明した。

 

 こいつ、なんというおぞましいものをビルドしやがったんだ……

 ハザードレベル7の危険物質である。

 

「おい、それをよこせ!」

「ダメだよ! これは昨日徹夜で完成させたものなんだから! それにすでにデータをクラウドに保存してるから燃やしても何度でも蘇るよ! ラ◯タのようにね!」

「このやろう! バ◯ス! バ◯ス!」

 

 綾女としばらくじゃれあった後、俺たちはキンキィ梅田の302号室に向かった。

 今日、俺達は留衣さんの家に来るように言われていたのである。

 

 その理由はと言うと――

 

「「「ハッピーバースデー! 優馬くん!」」」

 

 『パン』というクラッカーの音が部屋に鳴り響いた。

 留衣さんと瑠夏さん、それに薫さんがクラッカーを持って暖かく出迎えてくれた。

 

 テーブルには大きなバースデーケーキと美味しそうな料理が並べられていた。

 

「留衣さん、瑠夏さん……薫さん。ありがとうございます」

「私からも改めておめでとう。優馬くん」

「ああ、ありがとう綾女」

「さぁみんな! 今日は私の大事な彼氏の誕生日だから楽しく過ごしましょう!」

 

 薫さんはケーキにロウソクをさし、炎を灯して部屋の照明を落とした。

 ケーキに刺さっているロウソクの数は16本。

 

 俺はめでたく十六歳を迎えた。

 

「「「「ハッピーバースデートーユー! ハッピーバースデートーユー! ハッピーバースデーディア……」」」」

「優馬く〜ん♫」

 

 おお、薫さん。結構美声だな。

 カラオケとかめっちゃ得意なんじゃないだろうか。

 

「「「「「ハッピーバースデートーユー! おめでとー!」」」」

 

 四人が「わー!」と拍手し、盛り上がった。

 俺はケーキに顔を近づけ、息を吹きかけロウソクの火を消した。

 

「さて、それじゃみんな食べましょうか!」

 薫さんはナイフでケーキを人数分に切り分けた。

 

「ところで優馬くん! 十六になった感想は?」

「えっと、なんかもう十六なんだなって感じですね」

「もーう! 優馬くんったら! 二十歳(ハタチ)超えてる私には辛い言葉だよ! これからもよろしくね、優馬くん!」

「こちらこそよろしくお願いします、留衣さん!」

 すると、瑠夏さんがコンコンと俺の肩を突いた。

 

「ねぇ、優馬くん。もしも私とお姉ちゃん。付き合うならどっちにする?」

 瑠夏さんが究極の二択を聞いてきた。

 

「えっと、そうですね……どちらも素敵ですけど、どうしても選択しなければならないってなると瑠夏さんですね」

 留衣さんと結ばれる世界に行ったらゾンビだらけだったしな。

 

「えー!? 優馬くん、ひどーい! もしも私が優馬くんの彼女だったら優しくしてあげるのにな?」

 

 留衣さんは可愛らしくウィンクした。

 とてもキュンとくる仕草でくらっと来そうになる。

 

「ちょっと、留衣! 私の優馬くんを誘惑しちゃダメよ!」

「ねぇ、優馬くん。今度、佐々木くんとのBL本書くから読んでくれる?」

「読むか! そもそも、俺を題材にしてBL本を作るのはやめろ!」

 

 ご飯を食べた後、俺たちは『ビーストファンタジー』をプレイした。

 アップデートされたビーストファンタジーの世界を五人で目一杯楽しんだ。

 

「こいつら……超鬱陶しいわね! 私の魔法で殲滅しちゃうわ! スキル、発動! 『エクスプロージョン!』」

「わー! 薫さん! こんな洞窟で魔法使わないでください! 全滅しますよ!」

「なら、ここは俺に任せてください! スキル発動! 『インビジビル』!」

 

 透明人間になるという世の男性全員が欲しいであろうスキルを発動し、二体のゴリラのモンスターを撃破した。

 

「やるじゃん! 優馬くん!」

「いえいえ、それほどでも!」

 俺は瑠夏さんとハイタッチした。

「よし、私も負けてらんないね! 『エレキランス』!」

「留衣さん、私も助太刀します! 『高速移動』!」

 留衣さんと綾女はモンスターに果敢に立ち向かっていった。

 

 

 

 

 

 

「いやー、楽しかったですね!」

「そうね。あら、もうこんな時間。今日はもう遅いし、お開きにしましょうか」

「それじゃ、最後はお二人の熱いキスで締めましょう!」

 綾女がここぞとばかりにキスをするよう促した。

 

「えー? みんなが見てる前でそんな、恥ずかしいわよ」

「「「キース! キース!」」」

 

 三人が手拍子し、キスをするように囃し立てた。

 俺は真っ直ぐ、薫さんを見つめる。

 薫さんは照れたような表情でサラッとした黒い髪をいじりながら俯いた。

 とても可愛らしい仕草でグッときた。

 

「薫さん……」

「優馬くん、これからもよろしくね」

 

 チュッと、薫さんの唇に自分の唇を重ね合わせた。やはり、薫さんとのキスは落ち着いて心地良い。

 

「「「ヒュー! ヒュー!」」」

「ちょっと、ちょっと! 三人ともからかわないの! それじゃ、みんな。また一緒にゲームしましょうね!」

 

 こうして俺のためにわざわざ開催してくれた誕生日会はお開きとなった。

 俺はひとり部屋に戻り、物思いにふけるながら窓から空の景色を眺めた。

 空にはたくさんの星が浮かんでいた。

 

「都会の空も……結構綺麗なんだな」

 

 上京し、一人暮らしを始めてから毎日が新鮮でとても楽しかった。

 美人の女性達と一緒にゲームして、エッチなことをして。

 

 本当に……

 

 

「一人暮らしを始めた僕の高校生活はバラ色でしたよ。神様……」



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