SAO事件の日記 (闇の翼)
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SAO βテスター

ソードアート・オンライン。

 

縮めて《SAO》と呼ばれる。

 

そんなゲームが2022年10月31日に発売した。

 

このゲームは活気的だった。

世界初『フルダイブ型』の『VRMMORPG』である。

 

フルダイブというのは頭全体をすっぽりと覆い、VR用ハード『ナーヴギア』を被る。

『リンク・スタート』という言葉を合図に。

 

正式サービスは11月6日だ。

だが、発売する前に約2ヶ月間の『βテスター』が行われた。

私はそれに運良く受かり、βテスターに参加した。

 

それの最終日。

 

1人で洞窟を探索していると前方に1人の少年が居た。

 

『珍しいな、こんな所にソロプレイヤーだなんて』

 

「そういうアンタもだろ」

 

少年は振り向きこちらを向く。

真っ黒な服を着ている。

『黒』とても呼ぶか。

 

『ふっ、それはお互い様だな。…見たところレベリングか?』

 

「ああ、ここの敵硬い割にレベリングにうってつけだからさ」

 

『確かに、他の人たちがいないから穴場だな。最終日だと言うのに2人しか居ないもんね』

 

「ああ、アンタ名前は?」

 

『リーナだよ、そちらは?』

 

「キリトだ。ここで会ったのも何かの縁だ。パーティ組まないか?」

 

『いいよ、始めて組むから失敗するかもね』

 

「大丈夫だよ、俺がフォローしてやる」

 

 

 

 

 

****

 

これが《英雄・黒の剣士》キリトとの出会いだった。

 

 

パーティ組み始めてから3時間後。

βテスターの終了の時間が近づいてきた。

 

「さて、そろそろ終了だな」

 

『ああ、もう少し早く会っときたかったな。ソロも良いけど、阿吽の呼吸のパーティもなかなかに悪くない』

 

「その通りだ。…次会う時公式サービス開始の時だな」

 

『うん、同じ服装でログインしとくよ。わかりやすいでしょ?』

 

「ああ、頼む。んじゃ、またな」

 

『ん、またね』

 

 

《βテスターが終了致しました》

 

 

 

 

そんな声を聞いて現実世界へと戻る。

 

現実世界へ戻り目に映るのは、机の上に散乱したゲーム機とPCだったり、思いついた詠唱の単語を書くノートだったり様々なものが置かれている。

 

 

自分が使うものだけを置いた結果、物を探すのに苦労する机となっている。

 

SAOが公式サービス始まるまでに机の上片付けよう。

 

 

 

 

…不意にため息が出る。

好きな時間に起きて、好きなだけゲームして、好きな時間に寝る。

そんな自堕落な生活を1年間送り続けていた。

 

いや、自分の衣食住は自分でしているか。

俗に言う私は《不登校》という奴だ。

 

学校という集団で何かするというのが私は苦手だ。

集団行動とか全員で足並み揃える行進とか。

あんなの社会に必要ないじゃん。

 

まぁ、その愚痴は置いといて。

 

私の名前は黒瀬 律奈(くろせ りな)だ。

中学生2年生。

 

 

 

 

 

 

この先、デスゲームに取り込まれる事をその時の私は知らない。




久しぶりに投稿するのが新規小説な闇の翼でございます。

SAO、簡単なあらすじしか知りませぬ。
そんなに詳しくないのでwikiさん見ながら頑張ります。


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デスゲーム 開始

2022年11月6日 日曜日。

 

今日遂に《SAO》の公式サービスが開催された。

 

 

時刻は13時過ぎから開催される。

 

 

私は12時過ぎに起きて、朝ごはん…兼昼ごはんを軽く食べ、机の上を残っていたノートを片付ける。

 

 

 

 

***

13時過ぎ。

 

『ナーヴギア』を装着し、『リンク・スタート』する。

 

 

 

アバター制作に入る前に自分の体を触るよう指示される。

なぜなんだろう。

 

そして、チュートリアルが終わり、『始まりの街』《転移門広場》からスタートする。

 

よし、レベリングの為近くの草原でモンスター狩るか。

 

 

 

ちなみに、私の姿は青髪のロングヘアで140cmぐらいのアバター設定である。

 

 

髪色だけ現実世界と違う。

 

 

約2時間後。

 

後ろから声をかけられた。

 

振り向くと黒い格好している少年と赤髪のアバターがいた。

 

『キリトと…誰だ?』

 

「オレの名前はクラインって言うんだ!よろしく!」

 

『そうか、クライン、よろしく。私はリーナだ』

 

「リーナ、突然呼びかけて悪ぃ。こいつ、初めてのVRゲームをするみたいでさ、手馴れてる俺をみて声掛けたようなんだ。1人じゃ、説明しにくいかと思ったから…」

 

 

『なるほど、良いよ。指南してあげるよ』

 

 

 

 

 

 

それから軽く2時間ほど。

クラインに教えながらパーティ特有のコマンド、スイッチをしたりしていた。

 

 

 

スイッチというのはスキルを発動した時に硬直が発生するのだかそれをゼロにする。

 

また、スイッチすることにより交代で回復出来るというメリットも。

 

 

『もう17時か』

 

「えっ、17時!?やべぇ17時半にピザが届くんだった!そろそろ落ちねぇと!」

 

「用意周到だなぁ」

 

「おうよっ!冷めたピザは嫌だからね」

 

『確かに冷めたピザはチーズ固まってるからねぇ…』

 

ピザかぁ、良いな。

私夜ご飯何も用意せずにゲーム始めちゃった…。

 

「あ、そうだキリト、リーナちゃん。オレ飯食い終わったら《始まりの街》で他のゲームで知り合った人らとフレンドになるのだが、おめぇらもしないか?」

 

『嬉しいけど、私やめとくよ』

 

「俺もやめとく」

 

「そっか、まぁいつか会えるだろうしな‪w」

私は人間関係拗らせたくないという理由で断る。

『ま、このメンバーだけでもフレンド登録しようや』

「ああ、嬉しいぜ」

「ありがと」

 

クラインからのフレンド申請を丸ポダンを押してフレンドになる。

 

キリトとも同様にだ。

 

 

 

『んじゃ、お別れだな。またな、キリト、クライン』

 

「ああ」

 

「おうよっ!またな。リーナちゃん」

 

そう言って私は街へ戻る。

 

スキルは取れなくとも各武器だけは1つずつあって欲しい。

熟練度貯めたいし。

エクストラスキルとかあればそれ見つけ出したいなぁ。

 

コレクター魂が滾る。

 

そう、私はゲームを極め続けるのが好きな人間だ。

 

武器商人のNPCに話しかけ、片手直剣以外の武器を買う。

 

よし、これでフィールドにでも探索しに行こうかと思った時、

 

 

――リーンゴーン、リーンゴーン

 

と鐘の音が街中に鳴り響く。

 

 

ん?イベントあったっけ…。

周りを確認してみると他のプレイヤーも空を見上げている。

 

――何かしら起こるな。

 

そう思った時、青い光に包まれた。

 

―転移か。

 

転移先は…どうやら《転移門広場》の様だ。

 

周りには異変がない。

いや、大勢のプレイヤーが居る。

 

上は……。

 

赤黒い空間が空を支配していた。

ソレは徐々に人の形を保っていき、巨大なローブ姿の人になる。

 

広場に広がる混乱の声。

 

《プレイヤー諸君、私の世界へようこそ》

 

それをかき消すかのような声が響く。

 

これがデスゲームの始まりだった。



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デスゲーム 説明

突如《転移門広場》に転送された大勢のプレイヤーが目にしたのは赤黒い大きなローブ姿の人だった。

 

ソレは『茅場晶彦(かやばあきひこ)』と名乗った。

 

その人物はよく知っている。

『ナーヴギア』の基礎開発者であり、SAOの開発ディレクター…。

 

そんな人がどうして…と思うが、ログアウトポダンが無い事についてかな…。

 

《プレイヤー諸君は、既にメインメニューからログアウトボタンが消滅している事に気付いていると思う。しかしゲームの不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではなく、《ソードアート・オンライン》本来の仕様である。》

 

 

考えていた事が当たり歓喜する……が次の言葉で消し飛んだ。

 

《諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることは出来ない》

 

…不具合ではなく仕様。

 

どこかにシステムの穴無いかな。

ここからSNS見れたりしたら外の状況分かるのだかなぁ…。

自分で検索するというのもあるだろうけど、システムAIがどこかに居るかな。

それ探すの目標にするか。

 

 

 

 

《……また、外部の人間の手によるナーヴギアの停止、或いは解除も有り得ない。もしそれが試みられた場合──》

 

 

 

《──ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる》

 

…脳死か。

 

《なお、この条件は、外部世界では既に当局及びマスコミを通して告知されている。その警告を無視してプレイヤーの家族友人がナーヴギアの強制除装を試みた例が少なからず存在し、その結果》

 

 

 

《既に230名のプレイヤーが、アインクラッド及び、

 

 

現実世界からも永久退場している

 

 

既に230名が死んだ…。

 

脳死で。

 

 

どこからか、脅しだろ、オープニングの演出なんだろう、と震えた声が聞こえる。

 

だが、それはウソでは無いというのを叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

《そして、十分に留意してもらいたい。諸君らにとって《ソードアート・オンライン》は、既にただのゲームではない。もう一つの現実と言うべき存在だ。……今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。HPヒットポイントがゼロになった瞬間》

 

 

 

 

 

そこから先は聞かなくても嫌でも察した。

 

 

 

《諸君のアバターは永久に消滅し、同時に……諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される》

 

 

無理やりナーヴギアを取ろうとしたら脳死で、ゲーム内でHPが無くなれば現実世界からも死亡。

 

…ちっ、無理ゲーかよ。

 

 

《諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。先に述べたとおり、アインクラッド最上部、第100層まで辿り着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすれば良い。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを約束しよう》

 

第100層の最終ボスを倒すか。

 

上等じゃねぇか。

死なないように100層目指そう。

 

「第100層だとぉ!?ベータじゃろくに登れなかったと聞いたぞ!」

 

どこからか馴染みのある声がする。

これはクラインか。

 

ベータ…ベータテストの事なのだが、8層ぐらいまでしかたどり着けてないはずだ。

 

それを第100層まで。

…何年も幽閉させてそうだ。

 

《それでは最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠として。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれたまえ》

 

 

プレゼント?

メニューからアイテムを探すと手鏡が増えていた。

 

何故。

 

それをオプジェクト化すると周りから悲鳴が聞こえた。

 

周りを見てみると、次々と光の柱に包まれて姿が変わっていった。

 

女性防具であるスカート姿の男性や、男子防具であるズボンの女性などが変わった姿として現れていた。

 

リアルの性別になっている…?

 

手鏡を見てみると、肩まで届きそうな細めのツインテールに、水色に近い青色の髪色。

 

目つきは狐のような細めで右目が黒、左目が濃褐色の瞳。

 

リアルの自分の姿だ。

日本人にしては珍しいオッドアイ。

そのせいで、幼少期よくいじめられていた。

 

『リアルと同じ格好をして現実味を…って事か』

 

状況を分析していると茅場が話し始める。

 

 

《諸君は今、なぜ、と思っているだろう。なぜ私は──SAO及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのか? これは大規模なテロなのか? あるいは身代金目的の誘拐事件なのか? と》

 

 

 

《私の目的は、そのどちらでもない。それどころか、今の私は、すでに一切の目的も、理由も持たない。なぜなら……この状況こそが、私にとっての最終的な目的だからだ。この世界を創り出し、観賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成した》

 

 

 

 

 

 

《……以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の──健闘を祈る》

 

 

そう言って茅場晶彦は消えていった。

 

とりあえず…やる事は遠めの村に行きたい。

近くの狩場は埋め尽くされるだろうから。

 

けれどガチの初心者の為のガイドブック提供したい。

アルゴと接触したい。

 

その為に広場を離れる。

 

静寂だった転移門広場は1人の少女の恐怖の叫びがトリガーとなり、騒騒しいものとなっていった。

 

そりゃ、遊びでゲームしたのに遊びじゃなくなった。

 

ゲーム内での死=現実世界での死になったからな。

 

 

ある程度路地裏を進んだ先に彼女はいた。

 

『アルゴ。ちょっといいか』

 

「ん?オイラのことを呼ぶから誰かと思えばリーちゃんか」

 

 

彼女は『鼠のアルゴ』としてβテストにいた。

私はその時ちょくちょく彼女に会って情報とか買っていたから常連扱いだ。

 

 

『まぁねぇ。…第8層までのフロアボスの攻略情報いるかい?』

 

「それは、βテストのダロ?…だが、欲しいナ」

 

『おk〜』

 

 

 

 

 

それから30分間。

 

第8層までの攻略情報をアルゴに話した。

 

「ありがとナ。コルがあまり無いカラ、出世払いで良いカ?」

 

 

『ん、全然大丈夫よ、私は話しただけだからね。まぁアルゴの気の済むように。…何があったら連絡するからフレンド登録よろしく』

 

アルゴにフレンド申請を投げてその場を後にする。

 

 

時刻は18時過ぎ。

レベルは5。

ステータス振り分けは俊敏(AGI)を多めに分けていて、筋力(STR)をその次に多く振っている。

 

よし、回避優先で次の村まで行くか。

夜になるとモンスターは凶暴性を増す。

それに気をつけながら『ホルンカ』を目指す。

 

まぁ、少しレベリングもしながら進むけど。

 

 

 

 

 

 



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ホルンカ

ホルンカについたのは21時だった。

多分真っ直ぐ向かってたのなら1時間で着いたんだろうけど。

 

早くここに来たかったのは有能な『アニールブレード』が報酬となるクエストがあるからだ。

 

しかし、それを達成するには自走捕食植物《リトルネペント》からドロップするアイテム《リトルネペントの胚珠》が必要。

 

だが、普通のネペントからドロップせず、《花付きのネペント》からドロップする。

その確率1パーセント。

それと同じくらいの確率で《実付きのネペント》がリポップする。

 

それを攻撃してはダメだ。

攻撃したら爆発し周囲のネペントに囲まれるという恐怖。

 

良くβテストの時に実付きを攻撃して爆発されネペントに囲まれたものだ。

周囲のネペントが集まるから上手く立ち回れる方ならレベリングに最適だな。

 

 

入り口から遠い民家でそのクエストは発生する。

それを受注してホルンカの外れの森へ向かう。

 

 

 

それから1時間後。

 

《リトルネペントの胚珠》がドロップした。

リアルラックが高いのだろうか、私は。

 

普通なら3、4時間粘って出すものだと思うのだが…。

 

しかし、ドロップしたのなら依頼主に渡しに行こう。

 

村に行く前に川があったので釣具を作り、魚を釣る。

 

 

簡単な木の棒と糸と針金で出来る簡易的な釣り竿の完成だ。

ソレを作った時工作スキルがLv1になった。

 

…生活系スキルがどのぐらいまで実装されているのかが気になる。

 

釣りスキルや料理スキル、鍛治スキル…そこあたりのスキルはありそうだな。

 

 

鍛治は鉄と武器があれば強化出来そうだな。

くず鉄なら持ってたから宿行ったら強化してみよ。

そうこう考えている内に1匹目が引っかかった。

ソレを魚に逃げられないように木の棒を動かしながら手前に持っていく。

釣れたのはアジ。

 

 

…5匹ぐらい釣るか。

夜ご飯は魚だな。

 

 

何気に私お昼から何も食べてないや。

忘れてた‪w。

 

 

 

 

 

それから15分後。

残りの4匹を釣り終えて計5匹となった。

よし、村に戻ろう。

 

 

 

 

《ホルンカ》 宿

 

ホルンカに戻り、依頼主にクエスト達成の旨を告げ、無事に片手直剣『アニールブレード』をゲットした。

 

 

 

お腹減った。

魚調理するか。

 

 

 

宿主のNPCに台所使う旨を言い、使えることになった。

台所はNPCに言わなくとも勝手に使って良いそうだ。

やったね。

いつでも調理出来る。

 

 

ちなみに釣れたのはアジ3匹、フグ1匹、カンパチ1匹だ。

 

5匹釣ったけど、2匹調理でいいかな。

フグとカンパチ、アジ1匹はストレージ行きで。

 

ちなみに、アイテムストレージは新鮮のものは新鮮で、暖かいものは暖かいままで出される。

時間停止が付与されているか。

 

 

アジ2匹とも塩焼きでいいかな。

頭切り落として鱗や内蔵とかも全部取って、よく洗って……。

 

塩まぶして。

ちなみに塩は岩塩から削り出して使った。

 

使う度に削るのめんどくさいから持っている岩塩を全て塩にした。

相当な量となったけど。

 

フライパンに軽く油を引き火を付ける。

水分を切ったアジを熱したフライパンに乗せる。

 

両面ともこんがり焼けたらそれで完成。

 

 

《アジの塩焼きが2つ完成しました》

 

そんなシステムアナウンスを聞く。

 

へー、これで料理完成ってことか。

これで夜ご飯食べれる。

 

 

 

 

 




魚はリアルの魚です。
SAOIFでは釣りが実装されていたようですが、私は釣りをしたことが無いのでリアルの魚になりました。

まぁ、変わる可能性ありますけど……。




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鍛治

夜ご飯のアジ2匹を食べ終わり、鍛治スキル取得の為鍛冶屋に来ていた。

 

 

 

 

 

熱したくず鉄をハンマーで叩く。

 

それが《鍛治スキル》取得の条件だったのだろう。

 

システムが働き、自動で体が動く。

 

片手直剣を左手で支えながら鍛治用ハンマーを右手で振るう。

 

 

 

……8回、9回、10回。

 

 

 

最後の槌音がカァーンと高く響く。

 

 

 

装備ウィンドウを開き、末尾に+1が増えていることを確認する。

 

 

 

あれ、成功しちゃった。

 

器用さ(DEX)少ししかあげてないのに。

 

 

 

ま、ともかく鍛治スキルゲット。

 

武器作成は…熟練度上げてスキルポイントも消費して《片手直剣作成スキル》とかを取ってなおかつ、スキルロッドに入れないと作れないのか。

 

 

 

んー、少しめんどくさいけど、熟練度あげるためにしばらくは強化しまくるしか無いか。

 

 

 

強化をしまくり、最大強化をしたらその次は進化が出来ると。

 

進化すると武器の名前が変わり、攻撃力なども増える。

 

 

 

ふむ、鉱石が無いから最大強化までは行けないな。

 

 

 

ちなみに、これらはチュートリアルの中に隠れていた文章達だ。

 

 

 

βテストでは攻略に命かけてたから、デスゲームと化した《SAO》では生活系スキル取りながら前線攻略の方に行きたいな。

 

 

 

もう夜も遅い。

 

寝よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

《2022/11/07》

 

9時

 

起きて自分の部屋じゃないという不安。

 

 

 

VR空間で寝落ちしたのは何回かあるけれど、起きて一瞬は困惑しちゃうな。

 

 

 

それが、クリアされるまで続くのか。

 

最後の方慣れそうだなぁ。

 

朝ごはんはフグの刺身かな。

 

台所に立ち、フグを捌く。

 

 

 

鱗を取り、皮を剥ぐ。

毒素の元である、肝臓を取り除く。

三枚おろしにして薄く1口大に切る。

それを塩で頂く。

 

 

 

 

今日は鉱石集めと料理に使える物達を採取しながらレベリングするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

12時。

 

 

 

 

 

―ピコンッ

 

 

 

フレンドからメッセージを受信した音がなる。

 

 

 

【リーちゃんへ

 

昨日の情報ありがとナ

 

お陰で初心者向けのガイドブックが完成したゼ。

 

リーちゃんには情報提供してもらったから無料で渡すヨ 空いてる時間教えてクレ。渡しに行くカラ】

 

もう完成したのか。

早いなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

【アルゴへ

 

もう完成したのか。

 

今から転移門広場に戻るよ。

 

食材系見つけたいし】

 

アルゴにメッセージを送信する。

 

 

 

私の今のレベルは7。

 

スキルスロットは3つ。

 

私は『戦闘時回復』と『鑑定』、『鍛治』を装備している。

 

レベル12になったらスキルスロットもう1つ増えるから『裁縫』を装備したいな…。

 

 

 

あと、片手直剣の熟練度が50になっていたので、《クイックチェンジ》という派生スキルを取得する。

 

 

 

派生スキルというのは、熟練度が50上がる度に複数の中から1つ選べるスキルだ。

 

 

 

例えば、『索敵』なら、『索敵同時ボーナス』とか『索敵距離増』とか魅力溢れるスキルだ。

どれにするか悩める問題でもある。

 

 

 

クイックチェンジは、片手武器のほぼ該当する派生スキルで、武器を装備し直すには最大5つの順番がある。

 

それを取得している事で、

 

 

①ウィンドウ開く

 

 

②ショートカットを押す

 

 

 

の2段階で済む。

 

 

 

 

 

《転移門広場》

 

 

 

ホルンカにある転移門から転移門広場へと転移する。

アルゴに《転移門広場》に来たことをメッセージに送る。

そしたら、隣の湖畔公園に来てくれと言われた。

 

 

 

 

 

 

 

湖畔公園は噴水があったり、道沿いに屋台が展開されている。

焼き鳥やったり、コーヒーやったり…。

 

 

 

 

 

デートスポットとしては良さそうだな。

噴水広場の壁に彼女は居た。

 

 

 

 

 

『お待たせ、アルゴ』

 

 

「大丈夫ダヨ」

 

『何部作れた?』

 

 

 

「100部。文字だけの攻略本となってるから、モンスターの写真も欲しい所ダナ」

 

『だったら、モンスターの写真あるのだがいる?』

 

欲しいナ」

 

『ああ、渡す。私、モンスターの写真、ドロップアイテム、纏めてるからさ。モンスター関連は無償提供するよ。マップ類は適任プレイヤーいるだろうし』

 

 

 

「ありがとナ、リーちゃん」

 

 

 

『ああ、大丈夫さ。また何があれば連絡してくれ』

 

 

 

そう言ってその場を離れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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トールバーナ 会議

アルゴと離れた後、調味料などをNPCから買い、ホルンカに戻る。

 

ここを拠点として、鍛冶屋開くか。

素材集めとしてフィールド出る事あるからその時、HPが危険なプレイヤー居たら援護に入ろう。

 

 

 

 

 

***

 

そんな生活を続けていたら、12月にはいった。

 

未だに第1層は攻略されていない。

《デスゲーム》が開始されてから約3週間。

 

死者数は1000人も上回った。

 

今日も元気に鍛冶屋開くかぁと思った時、キリトが現れた。

 

「お、今日も開くのか」

『開くつもりだよ。やっぱ、生産職と戦闘職一緒にするのキツいね〜』

 

「…そうだろうな。明日…の夕方トールバーナで第1層攻略の会議が開かれるんだが知ってるか?」

 

『いや、知らなかったな。参加しよ』

「良かった」

 

『教えてくれてありがと。トールバーナの方で店開くよ』

「ああ」

 

 

 

トールバーナの転移門に移動し、すぐ近くに噴水広場がある。

そこに隣接するように鍛冶屋を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果と言えば、トールバーナの方で開いた方が稼げた。

最前線組が迷宮区に篭ってレベリングしてるからだろうな。

今日だけで修理を何回したことか。

 

 

 

 

そして、翌日。

 

 

午後4時。

 

《第1層攻略会議》が始まる時間。

 

隣の広場を見てみると大勢のプレイヤーが集まっていた。

 

 

総勢46 人。

それが噴水広場に集まったプレイヤーの人数だ。

 

私は奥側に居たアルゴの横に立つ。

 

「リーちゃん、来たのカ」

『ああ、キリトが教えてくれたお陰で』

「前線としてカ?」

『そのつもりだが…。鍛冶スキル取ってるやつ居ないだろ?それの宣伝にでもなれたらなと思って』

 

 

アルゴと世間話をしていると、パン、パンと手を叩く音がした。

音がした方を見てみると、青髪の男性が声を上げていた。

 

「はーい、5分遅れちゃったけど、そろそろ会議始めたいと思いまーす!オレの名前は《ディアべル》!職業は気持ち的に《ナイト》をしていマース!」

 

SAOにシステム的な《職業》は存在しない。

各プレイヤーは与えられた複数の《スキルスロット》に自由な選択で各種スキルを設定し修練できる。

 

例外として、生産スキルを習得している者は《鍛冶屋》、《お針子》、《料理人》などの職名で呼ばれる場合がある。

実際私が名乗っているのもあるけど。

戦闘職は聞いた事がなかったが、どんな職名を名乗ろうと個人の自由だしな。

 

 

 

 

「……今日、オレ達のパーティーが、迷宮区あの塔の第2層に続くフロアボスの部屋を見つけた!」

 

 

 

ディアベルの言葉を聞いて、広場にどよめきが走った。

 

…そこまで到達しているのか。

私も行ったけど、15層で断念したや…。

 

「オレ達はボスを倒し、第2層に到達して…このデスゲームをいつかきっとクリアできるってことを、はじまりの街で待っている皆に伝えなくちゃならない! それが、今この場所にいるオレ達の義務なんだ! そうだろう、皆!」

 

 

熱の籠ったディアベルの言葉に、所々から「あぁ…」などと賛同するような声が聞こえてきてから、喝采するように拍手の音が鳴り響く。

 

 

 

 

「オッケー! それじゃ早速だけど、これから攻略会議を始めたいと思う。まずは六人の《パーティー》を組んでみてくれ!」

 

 

その言葉に私は頬をピクリとする。

学校で言う、2人1組になってねーとやつじゃねぇか。

ぼっちだった私は先生と組んだり、中の良さそうな2人組の中に無理やり参加させられたり…。

 

嫌な予感しかしない。

 

周りが着実と6人パーティを組む中、2人組のパーティが居た。

そこに参加させてもらおう。

 

そこまで移動したら、相手が誰か分かった。

 

キリトともう1人。

 

『キリト〜。パーティ組もっ?』

「オレは良いけど」

「私は大丈夫よ」

 

『良かった。……えっと、よろしくね?アスナさん』

 

キリトにパーティ申請を送り、左上にキリトとアスナと2人分のHPバーが見える。

 

「どうして、私の名前…」

 

『パーティ組むの初めて?左上にパーティメンバーとHPバーが増えてると思うけど…。ああ、顔は動かさずに…』

 

顔を左方向に向けようとした彼女に動かさないように指示を飛ばす。

 

「なるほど、よろしく」

 

 

「ちょ、まったんかぁ!!」

 

無事にパーティも組めてホッと一息ついてると、広場に響き渡った声。

 

 

特徴的なダミ声赤いサボテン男は続ける。

 

「攻略する前に、1つ!詫び入れなぁあかんやつおるやろ!?」

 

「話をする前に名前聞かせて貰えないかな?」

 

「わいは《キバオウ》ってもんや」

彼は1歩、2歩と進み出て、噴水の前まで達したらこちらを振り向いた。

 

「キバオウさん、詫びとは?誰にだい?」

 

「はっ、決まっとるやろ。今まで死んで行った約1000人のプレイヤーに、や。奴らが何もかんも独り占めしたから約1ヶ月で1000人も死んでもうたんや!せやろ!?」

 

彼が言おうとしている事は理解した。

 

「キバオウさん、君の言う《奴ら》は元……ベータテスターたちの事かな?」

 

腕組みをしたキバオウが厳しい表情で確認する。

 

「決まっとるやろ。ベータ上がりどもはこんクソゲーが始まった日からダッシュで始まりの町から消えていた。9000人ものビギナー見捨ててな」

 

「奴らウマイ狩場やボロいクエストなど独り占めして、ジブンラだけポンポン強くなって。……こん中にもいるはずや。ベータ上がりを隠してボス攻略の仲間に入れてもらおうとする小狡いヤツらが」

 

「そいつらに土下座させて、溜め込んだ金やアイテムをこん作戦の為に吐き出してもらわな、パーティメンバーとひて命は預けられんし、預かれへんとわいは言うとるんや!」

 

確かに、私はベータ上がりでデスゲームと化したその日から始まりの街を脱出していた。

しかし、素材集めの時にHP危うい人が居たら助けには入ってたから、そんなに…いや、1000人も死んでるから少なくはないか。

 

「発言いいか」

 

その時、ハリのあるバリトンが夕暮れの広場に響き渡る。

 

頭はスキンヘッド、身長は…190ぐらいある。

背中には両手斧。

肌はチョコレート色で顔は彫りの深い顔立ち。

 

「オレの名前はエギルだ。キバオウさん、あんたの言いたいことは、元ベータテスターが面倒みなかったから、ビギナーがたくさん死んだ。その責任を取って謝罪・弁償しろと言いたいんだな?」

 

「そ、そうや。アイツらが見捨てへんかったら死なずに済んだ1000人や!しかも、ただの1000人ちゃうで。ほとんど全部が他のMMOじゃ、トップ張ってたベテランやったんやぞ!アホテスター連中が情報やらアイテムやら分け合っとったら、今頃、2層やら、3層やら突破できとったんじゃうか!?」

 

「あんたはそういうかも知れんがな、情報ならあったぞ?」

そう言ってアルゴが作って各町の道具屋に委託していた、表紙には丸い耳と左右3本ずつのヒゲを図案化した《鼠マーク》のエリア別攻略本だ。

 

「このガイドブック、あんただって貰っただろ。ホルンカやメダイの道具屋で無料配布されてるんだから」

 

「無料配布…だと?」

隣で小さく呟くキリト。

 

『え、お金払ったの?』

 

「ああ、1冊で500コル…」

 

『初版だったからじゃない?コルもそんなにないのに、最初から無料配布はキツイでしょ』

 

「私も貰った…」

 

「タダで?」

 

その言葉にアスナはこくりと頷く。

 

 

 

「――もろたで。それがなんや 」

 

「このガイドはオレが新しい村や町に着くと必ず道具屋に置いてた。あんたもそうだろ。情報が早すぎると、思わなかったのか」

 

「せやから、早かったらなんやねん」

 

「こいつに載ってるモンスターやマップのデータを情報屋に提供したのは元ベータテスターたち以外には有り得ないってことだ」

 

プレイヤーたちが一斉にざわめく。

 

キバオウはぐっと口を閉じ、その背後でディアべルがなるほどとばかりに頷く。

 

 

「いいか、情報はあったんだ。なのにたくさんのプレイヤーが死んだ。その理由は彼らが他のベテランのMMOプレイヤーだったからだと考えている。このSAOを他のゲームと同じ物差しで測り、引くべき所を見誤った」

 

 

「――けど、今はその責任を追求してる場合じゃないだろ。俺たち自身がそうなるかどうか、それがこの会議で左右されるとオレは思っているんだがな」

 

エギルという両手斧使いの巨男の態度は堂々としており、意見も真っ当だ。

 

エギル以外の誰かがソレを言ったとしても、反論されてるだろう。

 

「キバオウさん、君の言うことも理解できる。オレだって右も左も分からないフィールドを何度も死にそうになりながら、ここまでたどり着いたからさ。でも、エギルさんの言う通り、今は前を見るべき時だろ?――元ベータテスターだって……いや、元テスターだからこそ、その戦力はボス攻略に必要なものなんだ。彼らを排除して、攻略が失敗したら意味が無いじゃないか」

 

 

 

ナイトを自称するだけのことはあると思わせる、爽やかな言い方だった。

元テスター断裁すべしという空気が穏やかになるのを感じて安堵する。

 

「皆それぞれに思うところはあるだろうけど、今だけはこの第1層を突破するのに力を合わせて欲しい。どうしても、元テスターと一緒に戦えないって人は抜けてもらっても全然構わないよ。ボス攻略ではチームワークが何より大事だからさ」

 

会場をぐるりと一周した彼は最後にキバオウを見つめる。

しばらくは見つめ返していたキバオウだったが、押し殺すような声で言った。

 

「………ええわ、ここはあんさんに従うわ。でもな、ボス戦終わったら白黒つけさせて貰うからな」

 

振り向き、装備をジャラジャラ鳴らしながら集団の前列まで引っ込む。

 

 

 

結局それがこの会議の1番のハイライトだった。

迷宮区は最上階に続く扉を見つけたという事だったし、ボス攻略しようにも扉を開けて《ポップ》…湧出させないといけない。

 

その姿を見ないとどんな敵でどんな武器を使っているのかなどが分からないからだ。

ベータの時の情報も言いたいが、せっかく溝が浅くなったのにわざわざ広げたくないものだ。

 

 

 

 

 

 



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トールバーナ 会議後

会議が終盤にさしかかろうとする時、ディアベルが「他に何が話したい方いるかな?」と言ってくれたので名乗りをあげる。

 

『どうも、皆さん初めまして。ホルンカによく居た人間なら分かるだろうけど、鍛冶屋をしていたリーナだ。これから迷宮区に突入する者、武器の攻撃が低くてなかなか倒せれない者、いるだろ?』

 

ハッと驚くプレイヤー達。

武器そのままで攻略していたのが大半だったのかな。

驚きの声が混じっていた。

 

『それなら、NPCの鍛冶職人を当てにするよりかは、プレイヤーの俺の方が成功率良いぞ?武器は作れないが、強化・進化なら、リーナにお任せだ。武器とお金と素材、を持ち寄って、月・水・金の3日間昼の12時から18時までの6時間、この街の噴水広場の近くにて、開いているから来なよ』

 

 

『俺の話はこれで終わりだ。ディアベルさん、会議終わりだろ?終わりなら素材集めしに行きたいんだが…』

 

 

「ああ、終わりだよ。ありがとう。リーナさん。さぁ、これで今日の会議終わりだ!」

 

「解散!!」という彼の言葉に広場を後にする。

 

その前にディアベルとエギル、キバオウの3人にフレンド申請を送る。

個人的にやり取りしたいと思ったからだ。

 

「リーナ!」

 

転移門に手を掛け、迷宮区に移動しようとした時、後ろから声をかけられる。

 

『アスナ、どうしたの?』

 

「私も参加していいかな?」

『もちろん。迷宮区、15層から行くよ』

 

「ええ」

 

 

****

 

それから3時間後。

空腹が増してきた為、食事をしに迷宮区からトールバーナに戻る。

 

アスナのレイピアの使い方は実に見事なもの。

スキルのタイミングや、スイッチのタイミングがぱっちりなんだ。

 

元々はソロプレイヤーじゃなかったんだろうな。

 

『ここが私の拠点しているところだ』

 

トールバーナで鍛冶屋を開いていた建物の中に入る。

 

アスナに先にお風呂入るようにして、私は料理を作り始める。

 

鍛治スキルをスキルスロットから外し、料理スキルをスロットに入れる。

スキルスロットから外したスキルの熟練度はゼロにはならない。

 

これは嬉しい仕様。

 

イノシシ系エネミーの肉を使った鍋を作る。

 

 

 

 

 

****

 

30分後

 

完成した鍋料理を見てアスナは驚いていた。

 

『まだ簡単な調理工程の物しか作れないけどね…』

 

「それでも凄いじゃない。発売されてからまだ1ヶ月経ってないのに…。料理スキルまで…」

 

 

『生産職極めたいからね〜。ま、食べよう』

 

 

 

 

 

*****

 

30分後

 

 

鍋という暖かい物を食べ、暖かいお風呂にも入った影響だろうか、アスナが凄く眠たそうにしていた。

 

『そのまま、寝ときな。この部屋パーティメンバー以外入れないようにしてあるから』

 

「ん、ありがと…」

 

アスナはここ4日間辺りずっと迷宮区に篭っていたそうなので、精神的にも疲れが溜まってたんだろうなと推測。

 

適度に休ませないと。

体が壊れてしまう。

 

 

時刻は22時。

 

 

あと1時間ばかし、裁縫スキルを高めよう。

最初は布面積が少ない下着しか作れないが、熟練度が増えていく度に、クッションやらコートやらズボンが作れるようになる。

 

服を作るために熟練度を上げていく。

 

ちなみに裁縫スキル取得の条件は糸と針を持ってスキル発動モーションになる。

3組ぐらいの下着の上下を作り終わった時、不意に部屋の扉がコン……コココンと3回ノック音が聞こえる。

 

このノック音はアルゴか。

部屋を出てアルゴと話す。

 

「よぉ、リーちゃん」

『アルゴ、どうした』

「スキル取得の条件教えて欲しいナと」

『どのスキル?』

「色々とナ」

 

『分かった、判明してて私が持ってるスキルだけ伝える』

 

そう言って、鍛治スキル、裁縫スキル、料理スキル、工作スキル、釣りスキルのやり方を教える。

特定の物を持って特定のモーションを起こしたら後はシステムが自動的にやってくれるのだ。

 

釣りスキルに関しては釣り上げるのに、力は必要だけど…。

 

「ありがとナ。お礼の5000コルだ」

 

『ん、せんきゅ』

アルゴのストレージから、私のストレージに5000コル付与される。

 

それから、しばらく世間話をしてアルゴはその場を後にした。

 

 

明日早く起きて、《香水》使ってレベリングしに行くか。

 

 

 

 



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《隠しボス》

翌日

 

8時。

 

 

 

良く眠っているアスナを叩き起こし、朝食を取る。

朝食を食べながら今日の事を話し合う。

 

と言っても、迷宮区に籠らず、ホルンカ近くの森で《香水》を連続的に使って現れる隠しボスを倒すのを目標に。

 

 

《香水》というのは《リトル・ネペントの発芽》から作られるものだ。

モンスターを強制的にスポーンさせるアイテムでもある。

 

キリトにも隠しボス倒しに行ってくるとメッセを飛ばす。

何があった時のために場所も添えて。

 

 

 

 

 

*****

ホルンカ近くの森

 

 

ホルンカ近くの森は少しプレイヤーで賑わっていた。

危うく《実付きのリトル・ネペント》を攻撃してしまわないようにしないと。

 

その中で1つ気になるパーティーを発見。

弓を装備しているプレイヤーが2人いるだけのパーティだ。

本来ならば近接武器を装備している人がいるのが普通なのに、彼女たちは弓矢で近接もしながら遠距離でたまに攻撃していた。

 

 

『君達、珍しいね、弓が2人なんて』

 

「ええ、そうね」

 

薄着の露出度が高い彼女が答える。

『私はリーナ。隣にいるのがアスナだ。君達は?』

「シノン」

「コハルです…」

『シノン、コハル、良ければパーティ組まないか?見たところ、発芽目当てでしょ?私何個か香水あるしさ、それ使ってレベリングしない?』

 

 

「良いわね、是非お願いするわ」

 

「でも、貴方たちにメリット…ありますか?」

『弓使いと一緒に戦えるってのがあるよ。私自身まだ弓扱ったこと無いからさ…。それに、上層になるにつれ、遠距離攻撃が出来る弓使いをこんな所で失いたくないってのがある』

 

 

「わかりました。お願いします」

コハルが承諾したのを確認してパーティ申請を送る。

 

 

『じゃ、1個目使うね』

 

使ってリスポーンするのは《リトル・ネペント》達だ。

 

場所によってスポーンするモンスターは違う。

欲しいドロップ素材によって、《香水》を使うエリアを変える場合がある。

 

まぁ、この場合《リトル・ネペントの発芽》目当てでもあるから好都合だ。

 

 

*****

 

順調に狩っていて、《香水》が5個目を使おうとした時、紫髪の大鎌を持った彼女に話しかけられた。

 

 

「貴女達、何してるの?あまり使いすぎると……」

 

 

そんな彼女の声はモンスターの咆哮でかき消された。

 

一瞬の硬直。

咆哮で動けないでいる他のプレイヤー達を逃がすようにモンスターのヘイトを稼ぐ。

 

隠しボスの名前は《インディスクリミナント・グラットン》。

植物系のモンスターで、両腕がムチのようにしなやかに動くモンスターだ。

 

「たぁぁぁぁ!!」

 

私の視界を塞ぐような形で前に出てきたキリトはヘイトを貰っていた。

 

『常に側面におれ!攻撃は俺達の直前に!』

 

キリトと紫髪の彼女にパーティ申請しながら話す。

 

背後から短剣のソードスキル《サイドバイド》を放ち、アスナにスイッチする。

 

シノンとコハルの弓が当たっているのを確認しながら、片手昆のヘイト上昇攻撃スキル7連撃の《ブルータル・ストライク》を放つ。

 

突如、モンスターの体から紫色の何かが出る。

 

『毒った!!スタン攻撃仕掛ける!』

 

1歩踏み出し、《ストライク・ハート》を放つ。

多少攻撃速度が遅いこのスキル、敵の行動不可能時に放つのが良いのだが、上手く放つ事が出来た。

 

「スタン!あともう少しだ!」

 

キリトがそう叫ぶ。

 

細剣にクイックチェンジして、《リニアー》の構えを取る。

 

『アスナ!一緒に!』

 

「分かったわ」

 

アスナと同時に《リニアー》を放つ。

突如《インディスクリミナント・グラットン》の体が青く散っていく。

 

 

 

『勝った……』

 

「勝てたわね」

 

「LAは!?」

 

 

大鎌の少女が勝利に浸る間もなく、キリトがLAの確認。

 

「ドロップ品は……私だわ。弓みたい」

 

シノンが公表。

弓使いのシノンが引いたのならラッキーじゃん。

 

「そっか、じゃ、俺は帰るわ」

 

LAの確認だけして帰るキリト。

うーん、印象悪そぉ…。

 

『はいよ、忠告遅かったけど、助けに来てくれねありがとね?ミトさん』

 

「ミトでいいわ。リーナ」

 

『はーい。シノンやコハル達どうする?まだ続ける?』

 

「新しい弓ゲット出来たのは嬉しいけど、弓矢が心もとないから街へ帰るわ」

 

「私は…疲れたので帰りたいです」

 

 

 

『じゃ、お別れかな?アスナは?』

 

「まだまだ平気よ」

 

『おk、フレンド申請だけして帰ってね』

「ええ」

「分かりました」

 

シノン、コハルとフレンドになる。

 

 

『……んで、アンタらはどうするんだ?』

 

 

「ミト、ミトなのね?生きて…」

 

アスナがミトを抱きしめる。

 

『ある程度アスナから聞いている。第1層にしては珍しい鼠のモンスターって《スプリー・シュルーマン》だろ?あれのドロップはレイピアだったはずだ…。それ、持ってるよな?』

 

「ええ、持ってるわよ。アスナ、ごめんね」

 

『なら、ある程度強化しよ。――私の貸家に帰ろうか』

 

 

 

ミトをフレンド登録をしてからトールバーナの自分の借りている家に戻る。

 

 

 

 

 



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強化・会議

「凄いわね」

 

ミトが感嘆の声を漏らす。

 

『でしょー?とりあえず強化方向は、3S3Qぐらいか?』

 

 

「ええ、3S1A2Qでもいいかと」

 

『あー、それもありか。アスナどうする?』

 

 

「S?Q?なんの事かしら?」

 

『あー、武器の強化システムの事だ。SAO内に置ける…な』

 

武器の強化システムをアスナに2人で説明する。

 

パラメータは《鋭さ(Sharpness)》、速さ(Quickness)正確さ(Accuracy)重さ(Heaviness)丈夫さ(Durability)の5つのパラメータがある

強化したいパラメータによって、専用の強化素材アイテムを要求される。

 

どれかのパラメータの強化に成功する度、装備アイテム名に+1、+2という数字が付与されていくが、その数字の内訳は武器を直接タップしてプロパティを開かないと分からない。

 

プレイヤー間で取引の際は全部言うのがめんどくさいので、仮に+5で内訳が鋭さ3速さ1正確さ1丈夫さ1の場合、《3S1Q1A1D》と略すのが基本となっている。

 

だから、さっきミトが言っていた《3S1A2Q》は鋭さ3正確さ1丈夫さ2となる。

 

 

『アスナ、ストレージ共有化して。素材確認するから』

 

 

 

アスナがアイテムストレージを共有する。

 

 

『うん、この素材なら3S、1Aも出来るね。2Qは素材が無いね……』

 

「だったら3Sだけお願い」

 

 

『分かった』

 

アスナから素材と武器を受け取り、溶鉱炉のボップアップメニューで製造モードから強化モードに変更。

そして、強化の種類を設定して素材を炉に流し込む。

 

 

素材が真っ赤に熱され、やがて炉の中を青い光《正確さ(アキユラシー)を示す色》に染め上げた。

 

レイピアを鞘から取り出し、火鉢に似た形の炉に横たえる。

青い光はたちまち細い刀剣をも包み込み、剣全体が薄く青く輝き始めた。

 

――あと、もう少し。

 

2人が真剣に見ている中レイピアを鉄床の上に移動させ、右手に鍛冶ハンマーを握り、高々と振りかぶる。

 

部屋中に槌音が響き渡る。

強化に必要な打撃数はたったの10回。

製造と比べて遥かに楽だ。

 

一定のペースで槌音が鳴る。

 

――9回、10回。

 

全行程が完了し鉄床の上のレイピアが一瞬眩く輝いた。

 

 

『これで完成だ』

 

「ありがと!お金はどうしたらいいかな?」

 

 

『友情価格で1000コルで』

 

本来ならば強化回数×素材の多さとかにより値段は変わっていく。

3Sなら、3500当たりが妥当かな。

 

これからも贔屓にしてくれそうだから、という理由で安くしているけど。

 

 

『昼時になったがミト達は?』

 

「あー、黒パンしかないけど…」

「私は……何も無いわ」

 

『黒パン何個ある?』

 

「8個」

『6個頂戴。6コル渡す。硬いから牛乳やらでふやかしてフレンチトースト作ろうと…思うが食べる?』

 

「是非!」

「鍛治スキルに、料理までも持ってるというの?」

 

 

アスナに6コル渡して調理開始する。

 

『まぁねぇ、食べ終わったら会議までに弓スキル上げたい』

 

作る所から始まるが……と小さく呟く。

 

 

 

 

 

********

フレンチトーストを食べ終わり、弓の作成に取り掛かる。

 

必要な素材は鉄鉱石と蜘蛛の糸、木材だ。

 

 

弓は3種類ある。

訓練期間が短い『弩弓』(クロスボウなど)、『短弓』(普通)、訓練期間が長い『長弓』がある。

 

それを1種類ずつ作る。

 

 

 

 

約1時間後

 

鏃につける状態異常効果を持つ、毒、麻痺の小瓶を100本ずつ作る。

 

 

 

『よし、完成』

「鍛治って、凄いね」

 

『アスナもしてみる?』

「大変そうだからやめておく」

 

「ただいまー」

アルゴに迷宮区のマップを貰いに行ったミトが戻ってきた。

 

『おかえり、丁度こちらも終わった所でさ』

 

「なら、良かった。完全に網羅しているマップでは無いけど…」

 

『まだ見ぬお宝ありそうな感じかな……。まぁ、行ってみよう!!』

 

 

 

*****

 

 

それから3時間後。

第18階中盤まで進んだ時だった。

 

私の視界にメールが来た。

 

それを開いてみると、

 

[リーナ

既に会議が始まっているが、何処にいるんだ

キリト]

 

 

 

『キリトからメール。第1層フロアボスの会議始まってる……ってのが』

 

「え、あ、私のパーティメンバーからも届いてた…」

「来た道引き返すしかないわね」

 

『ああ、先進んでモンスターハウスに出くわしたくない…』

 

もう既にモンスターハウスと対峙した後なので、懲り懲りだ。

 

 

 

 

 

*****

トールバーナ

広場。

 

私達3人が広場に来た時、ボスの正体が判明していた。

 

ボスは約2mの巨大なコボルド。

名前は《インファング・ザ・コボルドロード》。

武器は曲刀。

取り巻きに金属鎧を着て長斧を構えた《ルインコボルド・センチネル》が3匹。

 

ここまではベータの時と一緒だ。

 

取り巻きはボスのHPバーが1本減る度にリポップされていた。

だが、それはベータの時の話。

ボスが残り最後の半分まで差し掛かったらもう1回リポップしてきそう…。

 

そしてそれを確認するかのように《アルゴの攻略本》がNPC露天商に委託販売されていた。

 

判明した名前はもちろん、取り巻きの《センチネル》の解説で4回リポップするというのが分かった。

 

だが、今までの攻略本には書いてなかったのが1文。

 

 

《情報はベータテスト時のものです。現行版では変更されている可能性があります》

 

 

と真っ赤なフォントで書かれていた。

 

「――ともかく、今はこの情報に感謝しよう!!」

 

 

「かなり攻め込んだな」

隣にいるキリトが小さくつぶやく。

 

『これで、データベスターってのわかっちゃう可能性あるのにね……。キリトメールありがと』

 

「良いよ。俺1人パーティに危うくなる所だったよ…」

 

 

ボスの詳細がアルゴの攻略本である程度分かった。

それを元にディアベルはパーティにナンバリングする。

 

7つの6人パーティを重装甲の(タンク)部隊が2つ、高機動高火力の攻撃(アタッカー)部隊を3つ。

 

そして、長モノ装備の支援(サポート)部隊が2つ。

 

壁隊2つはボスのダケを交互に受け持つ。

高火力隊は2つはボス攻撃専門、もう1つが取り巻き殲滅優先、支援隊は行動遅延スキルをメインに使い、ボスや取り巻きの行動を阻害する。

 

そして、余り物の私達のパーティは取り巻き殲滅部隊の取りこぼしを狩る。

 

シンプルだが、破綻する要素が少ない。

デバフしか使えないからバフ要素のスキルがあればな…とは思うが。

 

 

 

 

「明日、朝10時にこの広場集合で!解散!」

 

そんなディアベルの声を最後に会議は終わった。

 

キリトとアスナと別れて、自室で調合アイテム作りに帰る。

調合スキルというので回復アイテムやら、鍵付きの宝箱を開ける鍵を作ったり出来る。

 

店売りで扱っているのが大半だが、なんせお金がかかる。

効果が高いほどに値段も跳ね上がるし。

 

出来るものなら自分で作った方が素材集めと調合の時間だけで済む。

 

簡易的なポーションなら作れるから、ソレをある程度と耐性ポーションも作れる分作ってから寝よう。

 

 

 



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第1層フロアボス攻略

12月4日、日曜日

午前10時

 

 

 

広場に集合した後、ディアベル達パーティを先頭に迷宮区タワーまで進んでいく。

 

時折左右からモンスターが現れる事以外は遠足っぽい。

 

 

「……ねぇ、貴方達は、ここに来る前、他の…MMOゲーム?ってのした事あるの?」

 

「ああ、まぁね」

 

『した事あるね〜』

 

「そのゲームでもこんな感じだったの?和気あいあいみたいな…」

 

 

「それは……」

 

『あんまり、無かったな。大概コントローラーとかでキャラ操作しながらだったし、チャット欄に打ち込むタイミングはなかなか無かった気がする』

 

「ボイスチャット搭載のでは違うけどな」

 

『うん、その通り』

 

 

****

 

午前11時

迷宮区到達

 

 

 

 

 

午後12時半

最上階踏破

 

 

 

 

ここまで死者が出なかった事に私は安堵する。

途中危うい所はあったが、索敵しながら敵がいたら弓を射ってた。

 

それを見てディアベルが指示を出していた。

接敵されそうになった長モノ部隊リーダー1人以外を下がらせ、重めのソードスキルを使わせてモンスターをノックバック。

 

すぐさま近接武器装備のメンバーとスイッチ。

 

その指示振りは日頃からリーダー職に慣れていなければとてもできることでは無い。

 

「さてと…。もう一度確認しようか」

真剣な顔付きでキリトが言う。

 

「ええ、そうだね」

 

『私が一番最初に目やら手やらに射つんだよね』

 

「ああ、そして、俺が相手の長斧をソードスキルで跳ね上げる、そして…」

 

「私のリニアーで…」

 

『上手くいけたら良いけどな…。まぁ、私は全体見とくよ。弓だし』

 

 

ちらりと、前を見るとディアベルが7つのパーティを綺麗に並ばせ終えた所だった。

 

「皆、死なずに戦おう…!」

 

ディアベルは銀の長剣を高々と掲げながら、大きく頷く。

他のレイドメンバーも各々の武器をかざし、頷き返した。

 

 

 

「――――行くぞ!」

 

短く叫び、大扉を押し開けた。

 

 

 

一寸先は闇のように見えたが、1番先頭のディアベル達が進む度に左右にある松明がボッと音を立てて燃え上がっていく。

 

ソレが奥まで続き、ようやく部屋の全体が見えてきた。

ついでにフロアボスの姿も。

 

記憶通りの《インファング・ザ・コボルドロード》、右手に骨の斧、左でにはバックラーを携え、腰には約1m半の湾刀。

 

HPは4本バー。

これが私達の倒すべき敵。

 

《インファング・ザ・コボルドロード》が雄叫びをあげ、周囲から取り巻きのセンチネルが3体出現する。

 

 

「戦闘、開始ッ!」

 

ディアベルが叫び、周囲のプレイヤーも雄叫びをあげる。

 

『行くか』

「ああ、行こうぜ」

 

取り巻きのヘイトを集めるため、真っ先に駆け出した、E隊のリーダー、キバオウと《センチネル》のソードスキルがぶつかり、火花が散る。

 

 

―――――――――――――――

 

弓の性質上、低い所から高い所へ射るのは味方を巻き込む恐れがあるので向いてないが、高い所から射るのは安全に撃てる。

 

壁走で《センチネル》の後ろを取り、ジャンプでうなじに3連射る。

 

壁走で背後を取り、ジャンプで防具のない所へ射る、それが基本だ。

 

極たまにボスにも攻撃を仕掛ける。

ボスに攻撃した時に少し違和感を感じた。

 

 

腰にかけている武器は《曲刀》カテゴリだったはず、それなのに、あまり反っていない。

 

…って事は《刀》カテゴリか。

 

 

 

敵を囲んた時に範囲攻撃スキルが刀スキルにあったような気がする。

 

キリトに確認しよう。

 

 

キリトの近くに戻った時、キバオウが近くにいた。

 

「あんじょう、そこのセンチネルのLAはあんたらにくれてやる」

 

「どうした」

 

キリトが片手直剣でセンチネルにトドメをさしながら言う。

 

『あのボス《曲刀》カテゴリの武器ではない』

 

「なっ……よく見てみると《刀》カテゴリなのか?」

 

 

『正解。刀スキルって強大な範囲攻撃あったよな?』

 

 

「って事は、死人が……」

 

 

『ソレを出さない為にもディアベルに伝えようと思う。今ならボスのHPは残り2本だし』

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

ボスとの打ち合いに忙しいディアベル隊。

味方の間を通り抜け、ディアベルに武器が刀という事を伝える。

 

「刀スキル、分かるか?」

『ああ、わかる。俺とキリトだ』

 

「指示、任せるよ」

 

『任せて』

 

 

ボスの体力は1本と半分。

 

 

アイテムウィンドウから毒瓶を取り出し鏃に塗る。

1番は麻痺なんだろうけど今は体力の減る毒を使う。

 

両腕、両足に慎重に射抜く。

 

 

 

『残り1本!』

 

ボスが腰にかけていた、刀を引き抜く。

長い刀身、大太刀ぐらいかな。

 

引き抜いたと同時に取り巻きが3体出現する。

 

――行くか。

 

壁走りを実行し、ボスの肩へ乗り移る。

 

顔面へ飛びハンマーで振りかぶる。

スキルもなんも乗せていない普通のなぎ払い。

 

空中で前転一回転し、弓で目を射抜く。

 

受け身を取りながら床に落ちる。

 

「スタン!!」

 

 

誰かのその声に、紫色の大鎌を持った少女が紫色の刀剣を輝かせながら駆け抜ける。

 

 

4連撃。

体力残り半分。

 

『キリト!』

「アスナ!」

 

同時に叫ぶ、呼ばれた本人達は刀身を輝かせながら、前へ切り進む。

 

 

キリトは片手直剣ソードスキル《レイジスパイク》、アスナは細県ソードスキル《リニアー》を同時に放つ。

 

2人の圧倒的な威力により《インファング・ザ・コボルドロード》はポリゴン状の粒子となって消える。

 

終わった。

【 Congratulations】のウィンドウが現れる。

 

 

――突如、激しい頭痛に襲われる。

立てれない程にだ。

座り込み、視界が暗転する。

 

 

 

 

 

目を開けるとソコは、SAOのアニメを見ている女性が1人。

年齢からしてみたら20代前半だろうか。

 

アニメのシーンは黒い格好している男性と赤と白のコートを身に纏っている高齢の男性が戦っている。

 

《私もこんな世界行けたらなぁ。まぁ五感支配する機械が高いからなぁ》

 

よく見てみるとテーブルの上にはSAOのゲームが何個か置かれている。

その事から彼女はSAO好きなんだろう。

 

 

――そしてSAOに関する記憶が脳内を駆け巡る。

 

そうか、彼女が私の前世的な人物なのか。

 

 

「……ーナ!…リーナ!」

 

声がして目を開けると私を揺さぶるアスナの姿。

 

「大丈夫?」

 

「あ…ああ。大丈夫だ。第1層クリア出来たから、安心しちゃったの」

 

 

先程の光景は、SAOが解放される直前のシーン。

黒い格好はキリトで、赤と白はヒースクリフ。

 

……アスナを血盟騎士団に入れたくないな。

ギルド作れば良いのか。

能力高いスキルを持った人達を集めて、死なせないように。

 

 

 

 

「よしっ!第1層フロアボスクリアだ!!みんなお疲れ様!LA取った人は誰かな?」

 

「俺だ」

 

ディアベルの声にキリトが答える。

あぁ、ディアベルが生きた。

彼が生きる事で影響がどこまであるかだな。

 

「申告ありがとう、キリト君。それはそのまま持っていて。さぁ、第2層転移門を解放しに行こうと思う。今から呼ぶ人は着いてきて。それ以外は申し訳ないんだけど、トールバーナに戻って無事攻略できた事を言って欲しいんだ」

 

 

ディアベルのその言葉にしっかりと聞いてくれるプレイヤーの方々。

 

 

 

 

 

 

 



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