最強の俺より異世界が最強 ~魔物は強すぎるけど魔王を倒してハッピーエンド目指そう~ (ナナシリア)
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第一章 何をすればいいの⁉魔王退治⁉
確認用


 

 

 

 目を覚ますと、デストロとギルダーさん達の戦いが繰り広げられていた。ギルダーさん達、というのは助けが来ていたからだ。

 

 リドラさんか、と思ったが――謎の男たちが2人。怪しいことこの上ないが、この際仕方がない。

 

 俺は、もう一度立ち上がり、戦おうと体を起こす。その瞬間、俺の全身には激痛が走り、その場に倒れこんでしまう。

 

「勇者様。無理をしたら死に至ってしまうかもしれません」

 

 俺に向かって話しかけたその声は、リーゼロッテ先生のもの。おそらくリーゼロッテ先生が治療してくれたのだろう。そうでなければ全身の痛み程度の傷で済むはずがない攻撃を食らったはず。

 

「リーゼロッテ先生……ありがとうございます」

 

 リーゼロッテ先生は、俺と喋り治療しながら、魔術によって、戦っているギルダーさん達の援護を行っているようだ。

 

 こんな所業、一般の魔術師では到底不可能。そもそも魔術の二重展開すらも苦戦するレベルであるというのに、リーゼロッテ先生は攻撃魔術の五重以上の並列展開、さらに治癒魔術という、攻撃魔術とは別系統の魔術をも同時に発動させる制御力。もはや神業としか言いようがない。

 

「リ、リーゼロッテ先生、魔力は大丈夫ですか……?」

「大丈夫です。勇者様は喋らない方がよろしいかと」

 

 余裕綽々の表情でこちらに微笑みかけるリーゼロッテ先生。

 

 そんな時、デストロとギルダーさん達の戦いに進展があった。謎の男の一人がデストロに斬りかかると、デストロはその場から姿を消したのだ。

 

「はっ、逃げやがったか」

 

 謎の男たちの片割れが悪態をつくと、その男が突然、魔術で作り出した馬から降りたばかりのギルダーさんを斬ろうとするが、もう片方がその剣を受け止める。

 

「良助、急に人に斬りかかるなよ……」

「邪魔すんなよ、界人。その男は神国の人間だ」

 

 ギルダーさんに斬りかかった、良助と呼ばれた男は、仕方なくといった様子で剣を下す。

 

 その瞬間、良助が動き始めたのを俺の目が捉えていた。

 

 思わず左腕を目の前に翳す俺に対し、良助は剣撃を食らわせる。俺の左腕に良助の剣が食い込み、血が流れだす。俺は右手でエクスカリバーを拾い、良助に向かって攻撃を加える。

 

 良助は容易く俺の攻撃を回避すると、すぐさま剣を構えなおし俺に向かって突撃する。その時、界人と呼ばれた男が俺の目の前に立ちふさがり、良助の剣を払い落とす。

 

「良助、それ以上動いたら即座に斬る」

「無理だな。今の俺は魔王との契約は切れてる。【堕悪】の権能が発動しうる状態だ。権能なしでほぼ互角だった以上、お前に勝ち目はない」

「全くその通りだな。だから……そこに勇者の君、手伝ってね」

 

 そういって、界人と良助は同時に動き始める。手伝ってと声をかけられた俺は左腕の痛みに気を取られ、呆然としている。

 いつの間にか全身の痛みは取れている。

 隣でリーゼロッテ先生が緊張を燻ぶらせている気配を感じる。

 界人と良助が剣をぶつけ合う金属音ばかりが訓練場に響き渡る。

 

 俺は、無意識的に踏み出し――身体を切り裂かれる音と激痛に全身の感覚を奪われる。

 

「お前に参戦されると厄介なことになりそうだ」

 

 崩れ落ちた俺の視線の先の、ニタリと笑う良助の姿が印象的だ。

 

「良助」

 

 辛うじて保っている意識が、目の前の情報を脳に流す。界人と良助の持つ剣から、神器た覚醒する時のような、いや、それ以上の膨大な魔力が流れ出す。

 

「《因果の覚醒(フューチャー):アロンダイト》」

「《記憶の覚醒(メモリアル):レーヴァテイン》」

 

 その膨大な魔力が引き起こす事象は、間違いなく神器の覚醒であったが――格が違う。ただの覚醒ではない。

 

 強大な魔力に触発され、俺も自らの右手のみで覚醒を引き起こす。竜星の覚醒(ドラゴニック)とはまた別。事象の規模では目の前の事象には敵わないが、対抗は可能。

 

「闇の心よ、覚醒を引き起こせ。《魔の覚醒(イーヴィル):エクスカリバー》」

 

 それは、良助の昏い心から着想を得て引き出された覚醒体。その能力は、相手のエネルギーを吸収し、自身の強化あるいは回復に使うこと。

 

 覚醒の瞬間に得る情報によれば、吸収といっても万能ではなく、格上には聞きづらかったり効果が薄く、格下に対しても制御が難しかったり同時には1人からしか吸えなかったり、万能ではないみたいだ。

 

「はっ、まだその程度の覚醒か」

「この程度とか言うんじゃないよ、良助」

「全く失礼な。時には言っちゃいけない事実もあるんだよ」

 

 長く短い戦いが幕を開ける。



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確認②

 界人の活動した権能に触発されたのだろうか。権能が花開くための条件など知らないが、とにかく俺は権能を入手するチャンスに恵まれた。

 

「【精霊】の権能、か?」

「その通りだよ」

 

 俺の言葉を聞いた、【精霊】の権能をの授与者が認める。その魔力は、どこか既視感があった。

 

「……既視感があるな」

「ボクは時空の精霊、クロノスだ」

 

 その魔力は、俺が普段呼び出している時空の精霊クロノスの魔力と全く同じだ。時空の神クロノスとも近い性質をしている。

 

「普通は試練を課されるらしいが、どうなんだ?」

「キミのことはこれまでずっと見てきてよく知ってるよ。この様子なら、権能を渡しても問題なさそうだね」

 

 クロノスは俺の方に手を翳し、権能を渡してくる。同時に、【精霊】の権能についての情報が湧き出してくる。

 

「なんだこの、ぶっ壊れ……」

「【精霊】の権能の能力は、魔力を消費して扱う技の消費魔力をすべてなくす、というものだよ。ほかにもいろいろあるけどね」

 

 いろいろ、とはいうものの、いろいろで収まるほどの能力ではない。精霊から好かれる体質になったり、権能としては弱いが、一般の持つ能力と考えるには強すぎる。

 

「じゃあ、元の世界に戻すね。たまにはボクも呼び出してよね」

「ああ、わかった」

 

 

 

 そうして、俺が身構えると、周囲の景色が白一色からぼろぼろの部屋へと切り替わる。そういえば、アリアの部屋をぶち壊しながら戦っていた。

 

 視界の端に男の攻撃が入ると、俺はひらりとステップを踏んで攻撃を躱し、【時間】の権能と【精霊】の権能を併用し、消費なしで男の時間を止める。

 

「お前ら、行くぞ!」

 

 俺が時間を止めた隙に、界人と良助が2人で協力して封印術を使う。どうやら大人数で放つ儀式魔術に近い術のようだ。

 

 大きな魔術が2人の手の平から放たれ、2つの封印術が合流して男を封じる。

 

「終わったか」

 

 男は水晶のような欠片の中に封じられ意識を失う。そののちにはその水晶がどんどん小さくなり、片手サイズになって界人の手に収まった。

 

「うん、僕たちの勝利だ」

 

 界人が答える。

 

 アリアの部屋は荒れに荒れているが、致命傷を負った人は1人もいない。完全勝利といえるだろう。

 

「俺は次は神都の方を見に行く」

 

 そういって、俺は急いで部屋を出て神都へ向かった。

 

 

 

 そこには多くの魔王軍がいたが、神国の騎士や兵士もかなりの数がいて、そこの心配はしなくてよかった。奥の方で騒ぎになっているのが見えた俺がそちらへ向かってみた。

 

 その先にいたのは、リドラさんと、大きな魔力を持った、おそらく魔王軍の男だった。



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