なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ (アークフィア)
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一章 虚の魔王と楯の乙女、現にて……みたいにちょっと「」つけてみるテスト
始まりなんて大体似たようなもの


「…………は?」

 

 

 その日は珍しく寝坊してしまったので、慌てて身支度を整えようとしていたのだが。

 洗面台に立った自身が目にしたのは、どう考えても自分ではない何者かの姿だった。

 

 

「え、は?!誰これ?!あ、声が(たけ)ぇ!?俺だこれ!?」

 

 

 鏡の中では、若干涙目になった金髪幼女*1が、自分の顔やら髪やらを触ってテンパっている姿が写っている。

 ……え、なにこれは?

 最近よくネット小説*2とかでよく見る女体化*3とかそういうやつなのかこれ!?というかバイト!!バイトどうすればいいんだこれ!?

 

 思考がパニックになって全く正常に動いていない中、慌てたせいで足が縺れて、つるりと滑って宙に浮く俺。

 あ、やべ、となって、次に来る衝撃に備えて目を閉じて。

 ──何時まで待ってもやってこないダメージに疑問を感じ、恐る恐る閉じていた目蓋を開けてみる。

 

 ……なんか俺、浮いてね?

 うわあ、ふわふわぷかぷかおみずのうえにういてるみたーい(思考放棄)

 

 

「って待てぇいっ!?なんで浮いてんの俺……うわ、進もうとした方向に移動できるこれ!?なんだこれ舞空術*4!?」

 

 

 人生初経験の宙に浮くという感覚に、狂乱すること暫し。

 ……はしゃぎ回る姿が幼女*5にしか見えないことに、視界の端に写った鏡を見たことで気付いて。

 宙に浮いたまま正座をして*6反省する、というよくわからん状況を引き起こし、ようやく思考がクリアになった。……クリアになったので、気付いたことがある。

 

 

「……これ、うちの子*7ですね……」

 

 

 容姿やらなにやらを改めて確認して、思い浮かぶ一つの姿。

 ……これ、自分がなりきり板*8で演じてたオリキャラ*9の姿だな、と。

 

 

 

 

 

 

 なりきり、と言う文化をご存知だろうか?

 版権キャラクターやオリジナルキャラクターになりきって、会話を楽しむごっこ遊び。それがなりきりである。

 

 なりきる対象は様々で、場所にもよるけど人気のゲームやアニメのキャラクターみたいなものから、実在する芸人*10や政治家、はたまた動物や植物みたいなものまで、各々が望むものならなんでもあり、みたいなわりと無法空間*11な遊びでもあった。

 

 行う場所は専用の掲示板やツブヤイターなどのSNS。

 形式は──チャットみたいになりきりキャラ同士で話すもの*12や、キャラクターと質問者を交えての会話のキャッチボールを主軸にする掲示板形式*13、はたまたそのどちらも*14……みたいな感じが一般的。

 キャラクターを演じるという性質上、中の人を感じさせるような発言は厳禁。……なんだけど、質問者側はわりと好き勝手な質問をぶつけてくる*15ので、それをどうやって返したりいなしたりするのかが腕の見せ所*16……なんて部分があったりなかったり。

 

 まぁ、上手い人は「なんでこの人なりきりなんてやってるんだろう……」みたいなレベルの人*17もいたけど、「飛影はそんなこと言わない」*18で済まないような、名前だけ借りてるレベル*19の人も居たので、正直ピンキリ過ぎて万人が楽しめるタイプの趣味じゃない*20、というのもわからなくもなかったり。

 そんな感じなので、最盛期である平成の時はまだしも、今の令和の時代には、最早絶滅危惧種レベルで居場所を失っている趣味*21でもあったりしたのだった。

 

 ……というか、誰かとの会話という部分を重視しないなら、普通に二次創作してた方がウケもいい*22ので、全体数が減るのは当たり前というか。

 

 とはいえそれは版権キャラ*23の話。オリキャラなりきりは普通に元気な感じで、細々とではあっても続いているものが多い印象だったりする。

 適当ななりきり掲示板*24を探して、ちょっとスレタイ(題名)*25を確認してみればわかるのだが、オリジナルってくっついてる物の多いこと多いこと!

 

 下手すると原作ありなのにも関わらず、スレッドの立て主がオリキャラだったりすることもある*26のだからもううわぁ、って感じになるくらい、オリキャラというのは強いのである。……たぶん、この『原作ありにオリキャラぶちこむ』系が二次創作に傾くと、最強オリ主*27とかになるんだろうなぁ、とちょっと遠い目になったりもするわけで。

 

 まぁ、オリ主擬きはとりあえず置いておいて。

 単にオリジナル系と言っても、そのジャンルもまた多岐に渡っている。

 例を上げると学園ものやファンタジー、恋愛系に参加者みんなメイド*28だったり、ともすれば百合とか薔薇とか咲かせているようなのもいるので、凄いなホント、とちょっと気圧されるようなこともあったり。

 

 それと、掲示板ごとにもちょっとでは済まない個性があるようで。

 自分が入り浸っていたのはわりと場末の方だったので、雰囲気もそこまで悪いものではなかった*29けれど、場所によっては口に出すのも憚られるくらいヤバい(小並)みたいなことになっている場所もあったとかなかったとか*30。……興味本位で覗いた場所があそこでよかったな、あの時の俺。

 

 まぁ、長々と語ったけど。

 要するになりきりと言うのは、他の人に見せることを前提としたごっこ遊び、だと思っていればそう間違いではないと思う。……チャット系はちょっとややこしい*31んでパス。

 

 

 さて、いい加減に俺の話に移ろう。

 

 俺はまぁ、普通の大学生だと思う。

 趣味がなりきりなくらいで、特筆するようなモノは何もない、ふつーの一般人だ。

 

 やっていたのはオリジナルのなりきり。

 ファンタジー系のやつで、なんやかんやで結構長くやってるはず。……時々飽きたり戻ったりを繰り返してたんで、あんまりいい方とは言えないけども。

 キャラクター名は『キルフィッシュ・アーティレイヤー』。略してキーア、なんて呼ばれてたっけか。

 

 ……オリジナル系のなりきりの問題の一つに、強さ議論が頻発しやすい*32というものがある。

 版権なりきりと違い、オリジナルのなりきりってのは、ある意味自分の分身を参加させることに近いため、なりきり歴の浅い奴は自分のキャラが一番、なんて気分で参加することが多いからなのだが*33。……そういうのは素直に個人でスレを立てればいいと思う*34のだが、なりきりが会話を重視する遊びである以上、なかなかうまくいかないこともあったり*35

 

 そんな理由もあり、スレ立てもそれなりにしてた俺は、半ば必然的にチートキャラみたいなキャラクターのなりきりをすることになっていた。……単純に言うと自治のためである。

 要するに、俺が立てたスレでは俺が最強なので、そこら辺騒がずに普通に名無し(なりきっていない普通の参加者をこう呼ぶ)からの話を優先しようね、というか。

 

 ……あ、もう一つ説明忘れてた。

 チャット形式でないなりきりは、基本的にはキャラハン*36が名無しから出された質問に答える、という形式になっていることがほとんどだ。

 名無しをほっといて他のキャラハンと話してばかりいる*37と、スレをめっちゃ荒らされるので注意が必要である。……というか、そういうことしたいなら素直にチャット行け、と言われるのはある種の様式美だったり*38もしたり。

 

 とまぁ、そんな感じで。

 なりきりというのは、わりとスレ主が良識を持って独裁した方が上手く回る*39という、ちょっと変な遊びでもあるので、そこで遊んでいた俺もそこに則って独裁してたわけである*40

 

 ……独裁という呼び方がよくないな、これは全うな管理なのだよ、みたいなことを言えば、管理局に抗う弓兵乙*41、みたいな返事が来る程度にはゆるーい独裁だけども。

 

 まぁ、くわしく語るともうそれだけで長くなりそうなんでこの辺にして、今の俺の現状に話を戻す。

 金髪幼女になっている俺なわけなのだが。その姿に、凄まじく見覚えがある。

 

 ……うん、キーアちゃんだよねこれ?うちの子だよねこれ!?

 容姿の質問が来た時に設定したまんまだよこれ!?

 金と銀の虹彩異色症(ヘテロクロミア)!ウェーブ掛かったストロベリーブロンド!ロリロリしててゴスロリ着せたくなるレベルの幼女!*42

 

 

「うわぁぁあぁこんなん黒歴史*43やんけぇえぇ……」

 

 

 空中で体を捻りながら頭を抱えて悶えるその姿は、まさに風に晒される鯉のぼりの如し。……いや別にうまくはないなこれ?

 

 

「というか()()()()のもおかしいだろうがよぉおぉ……」

 

 

 問題はまだ続く。

 ……どう考えても浮いてるんですが、どうなってんですかこれは?

 運営ー!!?運営ーっ!!?てめぇいつの間にVR機能*44なんぞくっつけやがったてめぇー!?

 

 

「……うん、現実逃避止めよう」

 

 

 深くため息を吐いて、改めて鏡に向き直る。

 ……なりきりが行きすぎて、キャラそのものになってしまいました*45。……どうしろと?

 

 

 

 

 

 

「せんぱい!せんぱーい!!」

「どわらっしゃぁ!?なななな何ですか一体ぃっ!?」

 

 

 鏡の前で自身の顔を眺め、わりと真面目にどうしたものかと思案すること暫し。

 玄関をドンドンと叩く音と、こちらを呼ぶ声に驚かされた俺。

 ……俺を先輩呼びする奴なんて早々いないのだが、どうにも玄関口から聞こえる声と、想定しているそいつの声とが違う気がする。

 なので戸を開けていいものか一瞬迷ったのだが、開けなきゃ開けないでぶち破って入ってきそうなくらいの音に変わってきていたので、仕方なく戸を開けて。

 

 

「せんぱーいっ!!!」

「げふぁっ!?!?」

 

 

 突っ込んできたそいつと共に吹っ飛んで、壁にぶつかって息が詰まる。

 ……めさくさタックルじゃないすか、殺人タックルはダメだぞぅ?みたいな気分で眩む頭を左右に振って、懐に飛び込んできた人物に視線を巡らせる。

 

 ──薄紫の綺麗なショートヘアーをした彼女は、こちらに潤んだ瞳を向けていて。

 右側が隠れているその髪型は、どこぞのメカクレスキー*46を狂乱させる儚さを持ち。

 本来の彼女らしからぬへにゃ、とした口元だけが、彼女を彼女であると認めないようでいて。

 服装は、現代日本ではお目にかかることのないような黒い鎧姿。……腰布があるところから、いわゆる第三再臨状態*47、なのだろうか?

 それらの服装は俺の前で光となって消え失せ、恐らくは一番馴染み深い──スマホの画面でミッションメニューに移った時に見ることができる*48、いつものパーカーとワンピース姿に戻って?いた。

 

 ……うん、ぶっちゃけてしまうとこれ、マシュ・キリエライトさんですよね?グランドオーダー(fate/grand_order)*49の。

 

 

「せせせせせんぱぁいぃ、私、私はぁ……」

「えっと、一応聞いておきたいのだけど、貴女の名前は?」

 

 

 現代日本になんでマシュが居るんだとか、リアルになっても美少女*50やなとか、色々言いたいことはあったのだが。

 自分の現状が脳裏にちらつくせいで、嫌な予感が頭から抜けない。

 思わず顔を顰めてしまう俺に、彼女は涙目になったまま答えを告げてくる。

 

 

「わた、私は、マシュ……()()っ!私、()は!貴方の後輩の、遠藤ですっ!!」

「……あー」

 

 

 ……マジでかー。

 告げられた答えに視界を手で覆う。悪い予感ジャストヒット、そのまま綺麗にホームランである。

 

 遠藤(えんどう) (じゅん)

 俺の後輩であり、()()の知り合いの一人。

 ……少なくとも、マシュによく似た美少女ではない。

 だが同時に、彼女が我が後輩であるということも、なんとなく察せられていた。

 

 

「……マシュのなりきりスレ立ててたよね、確か」

「彼女に、成りたくて、立てた、わけじゃない……うぅ……っ!」

 

 

 彼はとある掲示板で、マシュになりきりをするスレ*51を立てていたスレ主でもある。

 細かい設定までしっかり読み込んだ上でのそのなりきりは、一日に数百以上の質問が殺到する、かなりの人気スレッドだった。

 俺も何度か書き込みを見たことがあるが、かなりの上級者とすぐさま理解できるその腕に、感服しきりだったものだ。

 

 ……ところで、頭を抱えてめっちゃ苦しんでらっしゃるんですが、これは一体?

 

 

「わた、私はっ、マシュじゃないっ!!なのに、私、俺っ、()()に、ああっ!!」

「え、ちょっ!?」

 

 

 彼女から立ち上る謎の湯気のような何か。

 ……魔力*52か何かだろうか?それと、明らかに正気ではないその様子。

 え、これヤバいのでは?ほっとくと酷いことになる奴では?

 

 え、え、どうしたらいいんだこれ!?

 突然の事態に思考がパニックになりそうになるが、悲鳴染みた声を上げて苦しむ後輩を見ることで、どうにか正気を保つ。

 ……正気?はっ、もしかして?

 

 理屈も理由もわからないが、現在のこの体はキーアのもの。

 ならば、その設定通りのスペックを発揮することができるかもしれない!

 ──ならば、そこに賭ける!

 

 

「ごめんよ後輩、ちょっと失礼!」

 

 

 謝罪の言葉を投げ掛けつつ、意識を集中する。

 ──やり方は、なんとなくわかる。空を掴み、念じ、作り出す。

 明らかに現実的ではない感覚を引きずりだし、それを現実に結び形と成す!

 

 

「正気に、戻れぇいっ!!」

 

 

 右手に握った白いそれを、彼女の頭に振り下ろす。

 ──小気味良い音と共に振り抜かれたそれは、彼女に纏わりついていた湯気のような何かを一蹴し、部屋の空気を塗り替えた。

 

 

「──あ、れ?私、一体……?」

「う、上手くいった!良かった楯!!大丈夫かっ、頭痛くないかっ!?」

 

 

 頭を抱えて踞っていた彼女は、先までの苦しみようが嘘のようなキョトンとした表情を浮かべ、辺りを見回していた。

 よ、良かった上手くいった!正直賭け以外の何者でも無かったけどホント良かった!

 そんな感じで喜びを抑えつつ、後輩に声を掛ける。

 

 

「え、あ、はい。ありがとうございます、せんぱい。……はい、問題なく行動できるのではないかとっ」

「お、おう?え、いや、大丈夫ならいいんだけど……」

 

 

 ……大丈夫という割に、後輩の言葉遣いがマシュのままなんだけど。あれ、こういうのって元に戻るものなのでは?

 

 

「そのことなのですが……せんぱい、お時間はあるでしょうか?」

「え?いやまぁ、このまま出掛けるとか無理だから、時間はあると思うけど」

「そうですか。では、単刀直入にお答えします。──今の私は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、とでも呼ぶべき状態になっているのだと推測されます」

「──なんですと?」

 

 

 困惑する俺に返ってきた言葉に、その困惑はさらに深まっていくのだった───。

 

 

 

*1
みんなの人気者。どう人気なのかはお察し下さい

*2
ネットで公開されている読み物。今貴方が読んでるものとかも含む

*3
元の性別が違う人物が、女性の体になってしまうこと。大体美形化とセット

*4
ドラゴンボールに出てくる空を飛ぶ為の技術。()空術だと勘違いしてる人も多いらしい。ダレノコトカナー

*5
小さな女の子。YESロリータNOタッチなんて、最近の人には通じるのだろうか?……元ネタについては、未成年は検索厳禁だ

*6
女神転生に出てくるスカアハがやってるあれ

*7
自分が作ったキャラクターを指してうちの子と呼ぶ。注ぐ愛が全うか歪んでいるかは人次第

*8
なりきりを生業とするものが集う魔窟。場所によって魔窟度が違うが、大概魔窟なことに変わりはない

*9
オリジナルキャラクターの略。一口にオリキャラと言っても、人によっては二次創作でちょっとキャラが違ってもオリキャラ扱いすることがあるので、対象は案外広い

*10
異様にうまい芸人なりきりが来るとみんなして「なり……きり……?」ってなる、なった

*11
生物(なまもの)なりきりや吠え声なりきりはもはや魔境である

*12
リアルタイムで会話のキャッチボールをするタイプ。時々ドッチボールになるのはご愛敬

*13
原則的に質問者は匿名の誰か(名無し)であり、質問だけ投げていく形が基本

*14
チャット形式だけど質問者が居る、または掲示板形式だけどチャット並みにザクザク答えまくるなど

*15
演じるキャラクターの中の人繋がりのネタ(『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のオルガ・イツカに対して『グランブルーファンタジー』のベリアルの台詞を投げるなど)や、あからさまにセクハラになりそうなものなど色々

*16
全部に反応する必要はないのだが、うまい返しができる人は必然的に人気になるので、無理して真似する人も多数いる。大体潰れるのでやめて欲しい

*17
まるで◯◯博士だな……みたいな人がたまに現れるし、そもそも文章力が高すぎて、なんでこの人物書き方向じゃなくてなりきりしてるんだろう、みたいな人もたまに現れる

*18
『幽☆遊☆白書』に出てくるキャラクター、飛影(ひえい)にまつわるネタ。大元の元ネタは検索してはいけない系のものなので注意。なお、飛影が言わなさそうと思われている台詞は初期の方の飛影なら言いそうでもあるので、ある意味『脚本の人そこまで考えてないと思うよ』に近いモノがなくもなかったり。なお、飛影を『とびかげ』と読むと経験値泥棒の方になるので注意

*19
キャラへの理解度、飛んでくる質問への対応、チャットタイプならそれらを瞬時に思い付く閃きも必要になる、わりとストロングな遊びなので仕方ない部分もある。……そもそもごっこ遊びの究極進化形が舞台・演劇だとも言えるのでさもありなん

*20
極論ごっこ遊びなので。たまにやると意外と楽しいのだが

*21
大体どこも過疎状態。それでも消えてない辺り、細々とでも需要はあるのだろう

*22
反応のレスポンスという面でなりきりは強いが、逆に言うと反応が強すぎる場合や、返ってこない時は一切返ってこないという地獄みたいな状況に直面する事もある

*23
オリキャラに対して、何かしらの原作を持つキャラのこと

*24
某大型掲示板にも存在しているが、魔窟度がトップクラスなので怖いもの見たさで覗くのはおすすめしない

*25
スレッドタイトルの略。スレッドとは元々『脈絡』みたいな意味を持つ言葉だが、それがコンピューター用語になり、そこから掲示板内で特定の話題を話す一つの纏まり(トピック)を示す言葉として使われるようになったのだとか。普通の掲示板でもそうだが、スレタイはなるべく人目を引くようなものになっていることが多いので、見てるだけでも案外楽しかったりする

*26
オリキャラが居ることを明記しないと滅茶苦茶荒らされるので、スレタイをちゃんと見てれば不要な衝突は避けられる。……はず?

*27
古くはローマ字変換主人公擬きから続く、ある意味由緒正しい?楽しみ方とも言えなくもない

*28
質問者(名無し)をご主人様と見なしてあれこれ構ってくれる、という形式。声とかついてたら単なるASMRだな、みたいなレベルのやつまで飛んでくる、別の意味での魔境

*29
人の入りが多いとその分荒らしも湧きやすいし、そもそも流れが速すぎてついていけないなんてことも起こりうる

*30
詳しくは語らないけど、そっ閉じ推奨なところも結構ある

*31
掲示板形式に住まうものとチャット形式に住まうものは微妙に相容れないのです

*32
版権での人気キャラの取り合いとかと感覚的には近い

*33
さっきの例で言うなら、自分のキャラが一番人気者なんだ、的な感覚だろうか?

*34
掲示板形式ではキャラクター一人、あと全員質問者のみみたいなスレも多い

*35
質問者は気楽に話題を投げられるが、回答者側のキャラハンは返答に悩むのが役目なので……

*36
キャラクターハンドルネームの略。基本的には名前欄にキャラの名前を入れて会話をしている人のことで、掲示板上のお約束である『特定個人であることの主張をしない』を意図的に破る形になる、ちょっと特殊な人々。なりすましを防ぐ為、トリップと呼ばれる本人証明用のタグを付けることが推奨される。その性質上、固定ハンドルネーム(コテハン)との区別が意外と難しかったりもする

*37
掲示板形式の場合、こういうのは馴れ合いと呼ばれて嫌われる傾向にある。無論、場合による

*38
掲示板形式だと、質問が投下されてもある程度数が貯まる・もしくはしばらく時間を開けてから返答をすることが推奨されていたりする。……つまり、会話したいだけならチャット形式の方に行った方が良いのは道理でしかない

*39
個人スレなら必然的に独裁になる

*40
寧ろ独裁できないスレ主は舐められても仕方がない、と言っても過言ではない。無論やり過ぎると運営から怒られるので、あくまでも良識の範囲内で独裁する必要がある。……良識の範囲内の独裁ってなんだよ?

*41
大昔の『魔法少女リリカルなのは』の二次創作でとあるオリキャラが言った『管理局という名前が良くないな』から続く一連の台詞が元ネタ。そこから派生して、『fate/stay_night』のアーチャーを他作品に投入するクロスオーバーが流行った時に、なんとなく口調が似ていること、言っていることが表面上だけなら正義っぽいことから、彼が言った台詞みたいな扱いになった。……という派生ネタ。なお、アーチャー本人は管理局に対しては一定の理解を示すとも思われるので、完全なとばっちりである

*42
単なる趣味です、本当にありがとうございました。

*43
元ネタは『∀ガンダム』内の用語。そこから派生して、忘れたかったり恥ずかしかったりする過去を示す言葉

*44
ヴァーチャル・リアリティ。仮想現実のこと。……いや、VRだからって浮けはせんやろ(真顔)

*45
変身譚と呼ばれる物語は、古代ギリシャの時点ですでに存在していたらしい。変身願望は誰にでもある…ってコト!?

*46
『fate/grand_order』に登場する星2(アンコモン)ライダー・バーソロミュー・ロバーツのこと。史実通りの伊達男ぶりと、謎のメカクレ好きという個性によってオタク達の記憶に刻まれたヤバい奴。メカクレキャラが実装されると、それが他所のゲームであってもSNSのトレンドに上がってくるくらいには有名

*47
キャラクターのレベルを上げると服装が変わる、という一種のサービス。アップルは第一段階しか見てないのか、みたいな格好に変化することも

*48
聖晶片で遊ぶ彼女はもはや日常風景みたいなものではなかろうか

*49
TYPE-MOONが送るスマートフォンゲーム。2021年現在で六周年を迎える結構な大作アプリ。ガチャは悪い文明という言葉は、全スマホゲームプレイヤーが頷いたに違いない

*50
実写でやると残念になりやすい部分。変な髪の色はリアルとは噛み合わないので、思い切って普通の色にされることもあるが、それはそれでコレジャナイ感が溢れるので難しい……そもそも実写化するな、は禁句だ

*51
スレタイは【私は、】マシュと話すスレ【災厄の席に立つ】だった。なりきりスレは大体こういうタイトルが付いている

*52
作品によって定義が多少変わるが、概ね不可思議(魔的)な力の総称



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二次設定は積み重なるもの

「えっと、つまりなんだ?現在の君はマシュ・キリエライト*1としての自意識が強くなっていて、遠藤楯としての意識も知識もあるけれど正直実感が薄い、と?」

 

 

 こちらの言葉に少女──マシュさんと呼んでいいのかちょっと微妙な感じ──は、申し訳なさそうにその身を縮こまらせた。

 

 

「は、はい!先ほどせんぱいに気付けの一発を貰うまでは、どっちであるのかも曖昧な状態だったのですが。現在の私は、マシュ・キリエライトとしての意識の方が強いように思われます。このように──っと、武装の展開*2もできるようなので、少なくとも肉体に関してはマシュのものである、と結論付けるべきではないかと」

 

 

 こちらに説明をしながら、マシュの盾──円卓を花の魔術師*3が加工したという特注品──を虚空から出現させる彼女。

 ずしりと重そうなそれを、片手で軽々支える*4その姿は、確かに彼女がマシュであることを示しているかのよう。

 ただ、当の彼女はその眉根を寄せて、何事かを悩んでいるかのようだった。

 

 

「えっと、何か気になることでも?」

「──先ほど、どちらであるのか曖昧だったと私は述べました。……ですが、正確にはそれもまた違うのです。──私はマシュではありますが、恐らくマシュではない」

「……えっと、なんて?」

 

 

 持っていた大盾を虚空に消しながら、彼女は言う。

 ……何を言っとるのでしょうかこの娘は?

 存在理由(レゾンデートル)*5とか、我思う故に我有り(コギト・エルゴ・スム)*6とかみたいな哲学は、俺専門外ですよ?

 そんなこちらの困惑が伝わったのか、彼女は小さく謝罪をしたのちに、詳しい説明を始めたのだった。

 

 

「えっと、別に煙に巻こうとか、そういうことを考えたわけではないのです。……なりきりの宿命として、私達は()()()()()()()()、というものがあります」

「えっと……今明かされていない原作設定とかはわからない、みたいな?」

「その通りです。原作者でない以上、なりきりをする者達が知り得る情報は、あくまでも表に出ている設定だけ。私の場合で言えば、このあと恐らく導入されるはずの、オルテナウス*7()については知り得ていない」

 

 

 ……ふむ、段々と話が見えてきた。

 ここにいるのは確かにマシュ・キリエライトの姿形を持つ人間である。……が、その知識については、描かれていない部分までは及んでいない。即ち、

 

 

「今、ここに居る私に許された知識は、妖精國*8を旅した所までのもの。……その先に関しては、見れば()()()()()のかも知れませんが、現状私の中には無い知識です」

「なるほど、マシュだという確信はあるけど、それを確かだと証明できるような先の知識がない、ってわけか」

 

 

 型月風に言うのなら、座からの召喚時の知識制限*9みたいなものか。

 ……あの辺り、スマホゲーでは制限緩くなってるみたいだけど、本来は別の場所で召喚された時の知識についてはほぼ受け継ぎ不可、みたいな話だった気がするし。

 

 

「それと、その事とは別の問題もありまして……」

「ふむ?別の問題とな?」

 

 

 俺が納得の頷きをしていると、彼女が申し訳なさそうに口を開いた。……ふむ、これ以外に問題になるようなことがあるのだろうか?

 

 

「えっと。つい先日、サイトの方で記念祭が開催されていましたよね?」

「んん?……ああ、設立十周年だかなんだかで、スレ間の越境禁止ルール*10を緩和して皆でお祝いしよう、みたいな祭りスレッドを開催して、た……あ゛」

 

 

 彼女の言葉に記憶を思い出そうとして、俺もそれに行き着いた。……ああ、うん。確かに、これは本人じゃないと感じても仕方ない。

 

 

「……記念祭で『聖騎士*11デッキ』を使ってキングさん*12とデュエルをした記憶が、記憶が!私の中に確かに存在しているんです!」

「あー、相手がマシュだからって向こうも『ここが!決闘場だ(けっ・とう・じょうだ)ー!』って土方さん*13みたいなことやってたっけねぇ……」

 

 

 わっ、と両手で顔を抑えて泣き崩れた?彼女を見て、思わずこっちも口元が引きつってしまう。

 ……私もあの記念祭には参加していたから、よーく覚えている。

 

 遊戯王って、なりきりでも普通に人気*14でね。いや、実際にスレ内でやられると凄まじい勢いでレスを削っていく*15ので、ホントはあんまり誉められたものじゃないんだけどさ。

 でも、上手くやれるとやっぱり反応がいいんだよね、あれ。

 普段の掛け合いより遥かに気を使うんで、上手くできる人はほとんど居ないんだけど*16

 ただ、お祭りの時だと流石にみんな緩くなるので、複数スレを使いながらデュエルする、みたいなことも普通に起きちゃうわけで。

 あの時は確か、『聖騎士デッキ』のマシュや『レッドデーモンズデッキ』のジャック・アトラス以外にも、わりと多数の人々が決闘者(デュエリスト)*17として参加していた気がする。

 

 ……俺?酒飲みながら観戦してたと思う。……あ、いや、リアルじゃなくてキーアがね?この子わりと無茶苦茶なキャラしてるので、酒くらい普通に飲むんだよね。

 

 しかしまぁ、スレでの記憶があると来たか。

 ……これ、俺もそうだったと今気付いたのでなんとも言えないんだけど。

 雑に言うと、今の俺ら二次創作*18なんだなって。

 

 

「う、うう……マーリンさんに円卓をデュエルディスクへと改造して貰う*19とか!我が事ながら、あの時の私は何を考えていたのでしょうか!?」

「名無しの質問は絶対*20……とまでは行かないけど、なりきりである以上は基本応えられるように動く*21もんねぇ……」

 

 

 セクハラめいたものとかは無視することもある*22……し、うまい人なら別方向に受け流して話の種にしたりもする*23

 質問を全部返す義務はない*24し、する必要もない*25のだけれど。

 上級者側にカテゴライズされる楯は、その辺り極力返すように努力するタイプのなりきりをする人だった*26

 

 ……その結果がこれである。

 小型化した円卓を左腕に装備して、デッキからカードをドローする姿は、まさしく一人前の決闘者だった*27

 ……臨場感ありありでその場を目撃した記憶が脳裏に浮かぶのは、ちょっと薄ら寒いところがあるけども。

 

 

「そうなのです。私は、確かにFGOのマシュとしての記憶がある。……ですが同時に、なりきり板のマシュとしての記憶も、同様に備えているのです。そして、それを繋ぐのが──」

「遠藤楯としての記憶、だと。……うーむ、こっちにも記念祭の記憶が映像付きで思い浮かんでくる辺り、眉唾とも言えねぇ……って、ん?」

 

 

 彼女の言葉にむむむと唸るうち、気付く。

 ……あれ?俺は?キーアとしての記憶で俺がうんたら、みたいなの起きてないよ?

 

 

「そうなのですか?……あれ、でもせんぱいのキーアさんと言えば……」

「スレ主権限をフル活用してのチートキャラでございます。……どう考えても一般人が、人格残したまんまで居られるような奴ではないのですががが」

 

 

 言っちゃあ悪いが、マシュはただのデミ・サーヴァントである。

 ……設定だけ見ると、型月でいうなら普通にカオス*28とかあの辺りを比較対象に持ってくるレベルで詰め込みまくっているのが、このキーアというキャラクターだ。

 

 ……ファンタジー系のオリキャラってなんであんなインフレする*29んでしょうね?!半ば荒らしみたいなキャラハンを追い出さなかったから?うーむごもっとも……。

 いやでも、あの子戦力についてちゃんと決めたら聞いてくれたし!その後割と人気者になってたし!……他のスレでもキャラハンしてて、そっちで問題起こしたからbanされたけどさ!

 

 ……楯にそれを言ったら、可哀想なものを見る目で見られたのは嫌な思い出である。

 でもさでもさ、あの時期もうすでになりきり衰退しかけだったから、まともにやれそうなキャラハンを追い出すのはちょっとあれだったしさ!……そんなことは聞いてない?そりゃそうだ。

 

 

「だからって、ワンパンマン*30モチーフのキャラを持ち込んでくるような方まで、懐に招き入れてしまうのは違うのではないかと……」

「強さ議論しなけりゃ普通にいい子だったんだってばぁ!?……ってそうじゃなくてぇ!」

 

 

 彼女の言葉に虚しい否定の言葉を投げる俺。

 ……いやまぁ、なりきりかつオリキャラスレだったから?言葉と理詰めと色々使ってここではワンパンは無理ですよ、って認めさせたあとは?普通に名無しと会話してくれる良キャラハンになってたんだよ、少なくとも俺のスレではさ?*31

 ……ボスに付き従う小猿みたいなもんとか言った奴、覚えとけよ……!

 

 

「せんぱいせんぱい、話が脱線しています」

「おおっと」

 

 

 思わず熱く語ってしまった。

 彼女の言葉に頭を掻きつつ、話を戻す。

 ……とはいえ、よくわからんとしか言えない。

 宙に浮いたり能力使えたりしている以上、今の俺の肉体がキーアのものであるのはほぼ確定事項だろう。

 ……楯みたいに精神に変調を来していない理由は、正直わからない。

 

 

「……とりあえず、なりきり板を確認して見ませんか?」

「んん、何か手掛かりでもありゃいいけど……」

 

 

 彼女から促されて、ノーパソを引っ張り出す俺。

 カチカチとマウスをクリックして、いつもの板を出そうとして──、

 

 

「あれ?」

「どうかしましたかせんぱい?」

「『404 not found』*32───」

「……え?」

 

 

 此処には何もない(not found)という表示に、言葉を失う。

 ……いやいやいや、いやいやいや!?

 おかしいおかしい、昨日まで確かにあったぞあのサイト!そう、あの──、え?

 

 

「せ、せんぱい!?お顔が!真っ青に!!」

「じゅ、楯!!あの、あのサイト!名前、名前なんだった!?」

「は?……え、あれ、待ってください、これ、おかしい、おかしいですせんぱい!?」

 

 

 サイトの名前が、思い出せない。

 突然に飛来した異常に、パニックになる俺達。

 いや、いやいやいや!昨日まで、確かにあのサイトで、俺達はなりきりをしていたはずだ!

 だけど、サイト名が、アドレスが、そこに繋がる記憶が、──()()()()()()()()()()()()というもの以外、全て抜け落ちてしまっていた。

 

 

「……いや、はは、なんだこれ、どうなって……」

「───答えが聞きたいかい?」

「?!」

 

 

 困惑する俺達の耳に届く声。それは、玄関の方からのもので。

 振り返ったその先に居たのは、銀の髪を逆立たせた美形の男。

 視界を隠すように黒の布を巻いた、美しい男性。

 

 ──俺達は、この男を知っている。

 

 

()が教えよう、君達が今、どうなっているのかを……ね」

 

 

 『呪術廻戦』*33における最強の男、五条悟は──()()姿()()()()()使()()()()()()()を使いながら、こちらに声を掛けてくるのだった。

 

*1
『fate/grand_order』のヒロイン、かつ最初に契約するサーヴァントである少女。ゲーム内では彼女しか属していない特殊なクラス、盾兵(シールダー)として、主人公のサポートを行う。なお、ゲーム主人公のことは()()、ないしマスターと呼ぶ

*2
魔力によって武装を編む、という形式

*3
やぁ、私は花の魔術師マーリン。ピックアップされるという噂だけで、トレンド上位に上がってしまうという人気者さ

*4
巨大武器×女の子は良いものだよね

*5
フランス語の哲学用語。実存主義と言うものから生まれたもので、存在意義とも言い換えられる

*6
近世観念論哲学を築いたルネ・デカルトが提唱した有名な命題。全てを疑ったとしても、それを疑う自分自身は疑えない、ということを意味する言葉

*7
シールダー・アーマード。とある事情から今までのような戦闘行動を行えなくなったマシュをサポートするために生み出された強化?形態。従来のモノとは運用方法が変わるため、雑に活躍させるのには向いていないが、要所要所でいぶし銀の活躍をする渋い形態

*8
最新章『妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ』の舞台のこと。人の心がない……

*9
サーヴァントは英霊の座というものから呼び出されるが、他の場所で呼び出された時の知識を覚えていると、その場での行動に不都合が出る時もあるため、実際に呼び出された時には参照できる知識に制限がかかっている、というもの。fgo内では有名無実化している

*10
越境、すなわち他のスレに混ざって会話をするならキャラハンとして参加してはダメ、というルール。守れない奴はもれなくbanである

*11
『遊戯王デュエルモンスターズ』における、円卓の騎士をモチーフにしたカード群。王妃ギネヴィアが戦場を反復横飛びする様は、何か彼女に恨みでもあるのかという気分になったり

*12
『遊☆戯☆王5D's』に登場するジャック・アトラスのこと

*13
『fate/grand_order』に登場する星5(SSR)バーサーカー、土方歳三(ひじかたとしぞう)のこと。「ここが、新撰組だ(しん・せん・ぐみだ)ぁーっ!!」

*14
なりきるキャラクターとしても、話題の種としても人気

*15
一度のレスに使える文字数は決まっているが、デュエル描写を入れるとそれがほぼ埋まる

*16
どちらが勝つのかとか、『していた』をどこまで認めるかとか、必要な気遣いとか空気を読む力が通常のなりきりの比じゃないため。無論、うまくできれば最高のエンターテイメントと化すが、外した場合はそれはそれは酷いことになる

*17
デュエルという言葉の商標登録はコナミがしていたりする。その他遊戯王関連で知りたいことがあったら、遊戯王カードwiki(※非公式)をチェックDA!

*18
一次創作である原作に対して、それらを利用して作られた非公式の作品のこと

*19
この辺り、いじった方がいいんじゃないか?

*20
掲示板形式における不文律。後述の通り例外もあるが、聞かれたことには応えるのがキャラハンの義務みたいなものである

*21
なりきりとは自分が楽しいではなく、見てる相手が楽しいを目指すものでもあるのかもしれない……いややっぱり自分が楽しくないと続かないってば……

*22
無視どころか削除するのが普通。そんなのまで返そうとする奴はなりきりの鬼みたいなものである

*23
誰でもできるわけではないので、素直に削除して貰うように運営に掛け合う方が良い。特に個人スレでない場合は他のキャラハンに余計な負担を強いるはめになるので非推奨

*24
いわゆる全レスの義務。セク質でなくとも答えにくい質問というのはあるので、返答に困ったらスルーするのも一つの手ではある。但し、使いすぎると名無しが離れる原因にもなるので多用は禁物

*25
あくまでも趣味であるため。義務感で動いているようなものは、見てる方も楽しくなくなってくるから辛いのだ

*26
正直真似できるようなものではないと思います(震え声)

*27
「甘いぞ、マシュ・キリエライト!その程度の守りでは、我がレッドデーモンズの進軍を阻むには足りん!」「いいえ、止めて見せます!リバースマジック、オープン!禁じられた聖典!」「なに!?レッドデーモンズの効果が?!おのれ、小癪な……っ!」……みたいなやり取りがあったとか。……これに手札表示とか場の状態とかも加わるんだから、どんだけスペースを使うのかはよく分かるだろう

*28
二部五章後編『星間都市山脈 オリュンポス』にて登場した、現状の型月世界観で一番ヤバいと思われる存在。追い返す以外の選択肢が取れないレベルのヤバい奴。人によっては『スーパーロボット大戦D』初出のペルフェクティオを思い出すかも知れない……

*29
実際はオリキャラに限らず、戦闘描写があればインフレする。オリキャラの場合は際限がないというだけである

*30
『One Punch-Man』。一撃(ワンパン)で相手を屠るヒーローが主軸の漫画。元のモチーフはアンパンマンだろうが、対となるバイキンマンモチーフっぽいキャラは一話で倒されていたりする。主人公が強すぎるので、格闘ゲームになった時に『主人公は遅れてやってくる』というシステムになってファンを騒然とさせたとか

*31
個人スレならまだしも、他の人が居るところにワンパンで相手を倒せるキャラとか無理に決まってるだろ、という。……うまい人ならそれでも回せるだろうが

*32
いつも見てたサイトが突然これになったら、多分血の気が引くと思う

*33
週刊少年ジャンプにて連載されている大人気漫画。主人公である虎杖悠仁(いたどりゆうじ)を中心に、呪術と呼ばれる力を使う者達の物語が描かれる。主人公の虎杖君を曇らせたいと願う謎の勢力が一部に存在するとかしないとか。……オタクに優しいギャル(男)ってなんだよ?



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クオリティ低くても何故か人気な時もある

「……その姿で()ではなく()という一人称……貴方!初心者か、さもなくば荒らしですね!?」

 

 

 相手を指差して半ば怒鳴るように声を上げる後輩。

 ……落ち着いて落ち着いて、素出し*1はご法度でしょ落ち着いて。

 

 

「はっはっはっ。マシュちゃんひどーい。いやまぁ、俺がにわか*2なのは確かなんだけどね?」

「やっぱり!せんぱい、敵性個体・五条悟*3……いいえ、あの方を五条さんと呼ぶのはもはや冒涜です!仮称六条、対象の沈黙を目的とした戦闘行動、何時でも開始できます!」

「落ち着け言うとるやろがいっ」

「あたっ!?せ、せんぱい!?なんで『キーアちゃんツッコミブレード(ハリセン)』を今使われるのですか!?」

 

 

 キーアちゃんツッコミブレードは落ち着きを司る聖剣。叩かれたものに落ち着きを与える……。

 ぶっちゃけてしまうとこれ使ったら落ち着きましょう、というお約束の物体化みたいなものである。

 ……いわゆるところの場面転換を強制的に起こさせるため、獰猛な猪も叩いた瞬間無害な豚に大変身というわけだ。

 スレ運営には時に非情な判断も必要、その非情さを示すアイテムというわけである。……ただのハリセン一つに大仰な説明付けすぎでは?*4

 

 

「落ち着いて貰えたようで何より。……いやまぁ、俺が挨拶に来たのがそもそも間違いなんだけどね!」

「……なんなのでしょう、この絶妙に合ってないけれど、雰囲気だけは似せようとしている不可思議クオリティのお方は……」

「落ち着くんだマシュ、他者に引っ張られてはいけない。それではなりきりトップ勢の名が泣くぞ……」

「せ、せんぱい……!」

 

 

 五条擬きの台詞に惑わされまくっている後輩に、落ち着けともう一度、今度は彼女の今までの頑張りを添えて言い含める。

 ……よくわからんけど感極まったっぽい感嘆の言葉を漏らした後輩は、一度咳を吐いて気持ちを整えたのち、完璧なマシュスマイルでニヤニヤしている仮五条君に話しかけた。

 

 

「先ほど貴方は『答えが聞きたいか?』と問い掛けて下さいました。……貴方は、私達が何に巻き込まれたのかを知っているのですか?」

「答えはイエス、そしてノーだね。俺も正直全貌が掴めているわけじゃないんだ。──そもそも、俺ってば使いっ走りだからね?」

「……!?仮にも五条悟を名乗る奴を、使い走りだと……!?」

 

 

 彼から飛び出した言葉に思わず愕然とする。

 五条悟と言えば、呪術廻戦を囓ってる程度の知識の俺でも知っている最強キャラだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()以上、他の作品との比較でしか語れないけれど。……ただの人が()()()使()()()という時点で、戦力規模は計測不可能となる。

 

 創作では割と簡単に飛び出してくる無限だけど、それがもし実際に使えたのなら、世界に与える影響は計り知れない。

 ……少なくとも、世界の電力事情は彼一人居れば解決してしまうだろう。世に溢れた数式は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 なので、無限を持ち出した時点であらゆる物理は崩壊する*5のだ。彼の力をうまく利用すれば、永久機関*6だって余裕で生み出せてしまえるだろう。

 

 そんな、どう考えてもぶっ壊れ。──それが五条悟なのだ。

 そんな人物を使い走りに使う、だと?どうなってんだよ一体、相手の規模どんだけだよ?

 

 なんてことを思っていたら、彼から爆弾発言が飛び出した。

 

 

()()、キャラに憑依されてる感じでしょ?それがどうも『自分がキャラハンしていた』ってのが条件らしくてね」

「……なるほど、確かに私もマシュになりきっていました。せんぱいも」

「オリキャラとはいえ、キーアになりきっていた。……で?それがどう繋がるの?」

「──憑依の度合い。これが、そのキャラハンの評価と関わってるみたいでね」

「……なんか嫌な予感がするけど聞こうか?」

「俺、スレでも全然似てないって叩かれてたんだよね。で、結果として──術式順転『蒼』・術式反転『赫』」

「ちょっ!?」

 

 

 いきなりの攻撃宣言に、慌てて立ち上がる俺。

 無防備な俺の前に、決死の覚悟でマシュが盾を構えて立ち塞がり、

 

 

「──虚式『茈』。……とまぁ、こんな感じ」

 

 

 飛んできた、なんか生暖かい空気に、思わず目が点になった。

 

 ……いや、は?これが、『茈』?

 仮想の質量を押し出すことで射線上の全てを消し飛ばす、彼の最大火力、だと……?

 

 

「いや、これ……」

「良くて空気弾、下手すると段ボール砲のが威力あるかもね。……まぁ、そういうこと。キャラハンとしての再現力が低い場合、俺達の影響力(憑依度)も低くなってるみたいでさ。……仮に戦えとか言われたら、俺はさっさと逃げるしかないね」

「え、ええ……?」

 

 

 下手をすると、団扇で思いっきり仰がれた方が強いかもしれない、という微妙な威力の『茈』。

 一応、見た感じ原理は元の無下限術式*7に則ったものみたいだけど、それによって起きる現象の規模が小さすぎる。

 ……これ楯が動く必要、一切なかったんじゃなかろうか?

 

 

「ご、五条さんどころか零点五(れーてんご)条さんではないですか、これでは!?」

「ははは面目ない。そういうわけで、俺ってば使い走りくらいにしか役に立たないんだよねー」

「……憑依っぽいって言ってたのに、そこら辺いいので?」

「──まぁ、ここは()の世界でもないし。知識も技能も欠けてるから、せいぜい死なない程度に頑張ればいいかな、ってね」

「……ええー……」

 

 

 ……憑依部分もなんか緩くなってるんですがそれは。

 いやまぁ、本人?が別に良いならいいんだけど、なんだこれ?

 なんでなりきり板出身者だけ対象なのかもわからんし、こうして能力が使える理由も分からんし、なりきり再現度で強さが変わるとかもう意味不だし!

 わからん尽くしでどうしろってんですこれぇ?!

 

 

「ま、とりあえず。俺達と似たような人が集まってる場所があるんだ、ついてきて貰える?」

「えー、あー、うん。こっちもよくわからんし、ついてくことは吝かじゃないよ」

「はい、それじゃサクサク行こっか」

 

 

 彼が手を叩くと、突然室内に謎の裂け目が現れる。

 

 ……切れ端の両端にリボンが結ばれていて、裂け目の内部からは、無数の目がこちらを見返している。

 ……あまりにも冒涜*8的なスキマを見た貴方は、成功で1・失敗で1D3のSAN値*9減少を──、

 

 

「落ち着いて下さいせんぱい!なりきり板でTRPGとか、自殺行為にも程がありますよ!?」

「──はっ!?」

 

 

 楯に肩を揺さぶられて意識を取り戻す。

 ……いかんいかん、あんまりにもお決まりな場面に立ち合ったものだから、一瞬意識が飛んでいたぞ……。

 

 ……いやでも、仕方なくない?

 みんな大好き東方の胡散臭い大賢者、八雲紫*10さんの操るスキマ*11じゃないすかこれ。

 

 東方project、いわゆる弾幕ゲーの大家(たいか)にして、一時期最強議論で持ち出され過ぎて*12アンチを量産してい()ジャンルにして、最近の若い子に聞くと「ああ、YouTubeの(ゆっくり動画)*13」って返される作品。

 同人ゲームとしては異例の知名度を持つ、オタク文化に触れていれば一度は目にしたことがあるだろう……とまで言われる有名作である。……二次創作だと先代録*14とか人気だったね、ほんと。

 

 というかね?二次創作が大きくなりすぎて、本家では真逆になっている設定*15まであるとか言うんだから、懐が大きすぎる気もするわけなんだけど。

 

 ……二次創作が大きすぎる。

 これ、なりきりする時も問題になる点だった。

 ユーザー間でもイメージに差があるものだから、真面目にやってる人でも、変にアンチに絡まれたり過剰に誉められたりなどするせいで、全うな評価が難しい作品だったのだ。

 

 場合によってはやたらと紅魔館が爆発したり*16、咲夜さんが忠誠心を鼻からどばーって*17したり、メイリンはずっと寝てたり*18……みたいに、かなりステレオタイプに侵食されていたりもした。

 

 ……なりきりですらTAS*19的にデレデレデェェェン(長く苦しい戦いだった)される紅魔館*20には、正直同情を禁じ得なかったわけだけど。

 

 まぁ、東方についてはこの辺りにしておいて。

 

 八雲紫、八雲紫かぁ……。

 「境界を操る程度の能力*21」を持ち、幻想郷を維持する為ならば何でもして見せる妖怪の賢者。

 ……んー、()()ゆかりんになりきっているかわかんないのが、ちょっと不安要素かなー。

 いやまぁ、もし相手が俺の思ってる通りのゆかりんなら、心配する必要とかゼロなんだけども。……ここからじゃわからんからなぁ……。

 

 

「あの、せんぱい……?」

「あ、ごめんごめん。……虎穴に入らずんば虎児を得ず*22、か。しゃあなし、いくよ楯!」

「は、はい!マシュ・キリエライト(遠藤楯)!吶喊します!」

「おー。元気だねぇ、っと」

 

 

 楯に急かされ、意を決してスキマに飛び込む。

 風を切る音を聞きながら、俺達は落ちるように先に進んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

「───来たようね」

 

 

 スキマを抜け、久方ぶりの地面に足を付ける俺達。

 視界を下に向けていた為に、上から振ってきた言葉に反応して、俺達は頭を上げる。

 

 ……そこは、どこかの社長室のような場所。

 立派な机の上に、腰掛ける金髪の幼女の姿。

 大きなリボンが目立つ、いわゆるZUN帽*23を被り。

 毛先をいくつか束にして、リボンで可愛く結んでいて。

 ふわふわの、ゴスロリのような服を着た可憐な少女。

 

 

「ふふふ……」

「あ、貴方が……!」

 

 

 隣で楯が息を呑んでいる。

 確かに。彼女が発する威圧感は、とても見た目通りの少女から発せられるものだとは思えない。

 彼女的には、女神ロンゴミニアド*24とか、あの辺りを思い起こさせる威圧感だと言えるだろう。

 

 ……だが同時に、俺には彼女がその背に隠しているものが()()()いる。なので、自分が次に取るべき行動も、同様に見えていた。

 

 

「──やだもうキーアちゃんじゃなーい♪」

「やっぱりゆかりんじゃーん♪この前ぶりー♪」

「……え、は?!」

 

 

 記念祭で決闘を肴にしながら酒呑みしていた時以来の邂逅に、二人してきゃいきゃいと騒ぐ。……なお、後ろに隠してたのはお酒である。

 そうして騒ぐ俺達の横で、楯が思わず素出しした、としか言えないような声を上げていた。……いやまぁ、気持ちは分かる。

 

 幻想郷を支える賢者、腹黒女、その他色々中傷めいたあだ名がぽんぽん飛び出すのが、八雲紫というキャラクターなのである。

 ……が。同時に、割とキャラ付けに自由が効くキャラでもあった。

 少なくとも、主人公の霊夢に比べたら、天と地くらいには。

 

 

「【酒呑みの】八雲紫とお話しましょ♪【駄弁り場】はスレが三十近く続いた人気スレだもの。そこまで続いてれば、普通にキャラ強度も上がってるってものだよね?」

「まぁ、私も最初はびっくりしたけどねぇ。スキマが使えるし、頭脳も明晰だし。……それでいて酒呑みであることくらいしか、八雲紫としての縛りが無かったというのだから、そりゃもうびっくり驚きというものですわ」

「え、ええ?それは流石に無茶苦茶だと思うのですが!?」

「──なりきりは全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ*25

「名言を言えばごまかせると思っていませんか?!」

 

 

 困惑マシュ顔で叫ぶ楯に、思わず苦笑を返す。

 

 いやまぁ、東方自体の二次創作に対する姿勢というかなんというかが、そもそもその名言に近いところがあるから仕方ないと言うか……。

 さっきもちょっと話したけれど、東方の設定というものは、二次創作が正式なものだと勘違いされている場合が非常に多い。

 それは逆に言うと、二次創作であることを明言していれば解釈はほぼ無限なのだ、ともいえる。

 だからこそ。この呑んだくれゆかりんも、八雲紫の()()ではあるのだ。

 

 

「いやー、そういうとこ東方系はずるいよねー。俺なんか能力的にはほぼモブレベルになってるのに、呑んだくれゆかりんは普通にスキマとか使えちゃうんだもん、不公平だって言いたくなるのもおかしくないよね」

「だから貴方には、スキマ便を無償利用可能にしているでしょう?そんなんじゃ最強の呪術師が聞いて呆れるわよー」

「そこは感謝してるよ、こういう時に便利だしね」

「……内容や場所によっては、酷い争いになりそうなお二人ですが。ここでは仲が宜しいみたいですね、せんぱい」

「まぁ、ゆかりんも実態は俺に似たようなもんだったからなぁ」

 

 

 共に最強扱いされるタイプのキャラである二人だが、その間の空気は緩く柔らかなものだった。……まぁ、争う気が最初から無いんだからさもありなん。

 

 最近のキャラである『変なTシャツヤロー(公式チート)*26』とかが発表されるよりも前から、ずっと八雲紫(強キャラ)をやっている彼女は、あのなりきり板ではかなりの古参に入る部類の人である。

 ……決して上手いとは言えないけれど、毎日来てあれこれ話してくれる彼女は。

 なりきり板では、皆に広く愛されたキャラハンだったのだ。

 

 ──すなわち、愛されゆかりん!マジかよババア結婚してくれ*27

 

 

「わ、その挨拶も懐かしいわね」

「大体十五番目くらいで流行ってたねー。いやー、まさかこうして現実になるとはねー」

「……と、東方五大老*28……」

「楯、それもそれで古いと思う」

 

 

 今時知ってる奴いるのかなそのネタ?

 まぁ、そんな感じで再びキャイキャイしていた俺達。

 

 暫くして、ゆかりんがこちらに手を差し出し、にっこりと笑って。

 

 

「とりあえず。──ようこそ『なりきり郷』へ。私八雲紫は、貴方達を歓迎いたしますわ」

 

 

 彼女はまるで幻想郷に誘うかのごとく、俺達へと優雅に言葉を告げるのだった。

 

 

*1
なりきりはキャラを演じる遊びだが、そのキャラの範疇を飛び越えた発言をすること。演じている中の人が見えているので()()ていると呼ぶ

*2
にわかファンの略。周囲に便乗して興味を持った人のこと。いわゆる新参者を揶揄った言い方

*3
『呪術廻戦』における作中最強キャラ。作中日本に四人しか存在しない特級呪術師の一人。いつも目隠しをしている為素顔が見えないが、外すと絶世の美丈夫としか言い様のないイケメンぶりを誇る

*4
とにかく壮大っぽい設定を付けがちだったりするのは初心者のお約束である

*5
無限は数値ではないため、数式に代入すると酷いことになる。数えきれないものが実際に存在する、というのはとんでもないことなのだ、というお話

*6
外部からエネルギーを与えずとも動き続ける機関。無限に動き続ける為、実際に存在すれば世界のエネルギー問題を解決できてしまうだろう代物。……が、実際には様々な要因から実在は否定されている

*7
収束する無限級数を現実に呼び出す術式。雑に言うと無限にゼロに近付いていく、というもの。あくまでもゼロに近付くだけでゼロになるわけではないので、いわゆる情報が完結しない(答えにたどり着けない)状態になる

*8
神聖なものや大切なものを貶め、辱しめること。日本人は神様を特別なものだとは思っていない為、海外の人が言う『oh my god(オーマイゴッド)』のニュアンスは正確にはわからない……みたいな感じ。因みにこの『oh my god』という言葉、向こうの人からすると冒涜的だったりするのだとか

*9
クトゥルフTRPGにて正気度を意味するもの。sanity(正気)の頭文字を取ったもので、本来は正気度ポイントと呼ぶのが正解

*10
『東方project』の登場人物。初登場は『東方妖々夢』。幻想郷最古参にして、最強の一角であり、賢者と呼ばれる大妖怪。胡散臭いとみんなから言われているが、幻想郷への愛は本物であり、その部分に関しては普通に信用できると思われる

*11
『境界を操る程度の能力』で生み出された空間の裂け目。用途は主にどこでもドア。……ゆかえもんなんて風に呼ばれている世界もあるかもしれない。いやでも半日寝てる辺りはのび太君かも?

*12
『~程度の能力』という設定の解釈の幅が広すぎたことに対しての弊害みたいなもの

*13
生首みたいなキャラクター達が合成音声で会話している動画、というものが真面目に若い子の東方への入り口になってるというのはちょっと面白いと言えなくもないかも?

*14
主人公である『博麗霊夢』の先代にあたる巫女の話。無論二次創作だが、原作が弾幕ゲームであることに対し、素手で妖怪達を薙ぎ倒す戦闘スタイルを設定したことで人気を博した

*15
あやもみというカップリングネタがあるが、本家では不仲であるとされた。……喧嘩っぷるネタを供給されたというポジティブ変換したものも居たようだ

*16
様式美

*17
本家的にはもうちょっとフランクな付き合いっぽい

*18
流石にいつもは寝てない

*19
tool-assisted speedrun(最速攻略を目指す)』または『tool-assisted superplay(凄いプレイを魅せる)』の略。本来できないであろう操作をエミュレーターの機能によって可能にし、結果的に人間業ではない動きをするもの。その動きが最速攻略を目的にしているならばスピードラン、凄いことしてるよーって魅せたいだけならスーパープレイ。……別にわけなくてもいいのでは?なんて風にも言われている

*20
『悪魔城ドラキュラシリーズ』の一つ、『キャッスルヴァニア 白夜の協奏曲』のエンディング曲のイントロ部分のこと。別にそれそのものはおかしくないのだが、TAS的にはあっという間にクリアされたことの余韻とかと相まってどうにも笑いを誘うものになっている。IGA、こんなところでも許されません

*21
ものの境界を好きに弄れる能力。悪用すると『新世紀エヴァンゲリオン』の人類補完計画を一人で起こすことも可能、かもしれない

*22
中国の故事成語。危険に立ち向かわなければ大きな成功は手に入らない、ということを示す言葉

*23
ドアノブみたいな形をした、特徴的な帽子。モブキャップと呼ばれるものに近い形状をしている。『ZUN』は、『東方project』の制作者の名前。通称神主。

*24
『fate/grand_order』の第六特異点、『神聖円卓領域 キャメロット』に登場した大ボス。とある人物の慣れ果ての姿

*25
原文は『幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ』

*26
へカーティア・ラピスラズリのこと。呼び名の『変なTシャツ~』云々は、作中で東風谷早苗が彼女の服装を見て言った言葉。不遜にも程がある……

*27
ネットスラングの一つ。年上の女性への好意を示す言葉。そこはかとないツン分が漂うが、ババアとか普通に暴言なので気を付けないと嫌われるぞ?

*28
『東方Project』の二次設定の一つ。西行寺幽々子・八雲紫・八意永琳・八坂神奈子・聖白蓮という、周囲より年上に見えるキャラを集めた呼称



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人気があるからと言って詳しいわけでもない

「『なりきり郷』……スレ名があまりにも単純すぎる……」

「シンプルイズベスト*1、というやつよ。……変に捻ってつけるのも……ほら、なんというかこう、恥ずかしいでしょう?」

「あー、うん。わからんでもない」

 

 

 張り切ってタイトル付けたのに、人の入りが微妙だった時*2とか泣きたくなるもんね。

 微妙に視線を反らすゆかりんに同情の視線を返しつつ、俺達は近くのソファーに移動するのだった。

 

 

 

 

 

 

「──と、言うような感じなのだけれど」

「あーなるほど、だいたいわかった」

「それ、後ろにカッコ付きで『わかってない』とかくっついてないでしょうね?」

「はははなんのことやらははは」*3

 

 

 汚いなさすが大賢者きたない。*4

 こっちの思考を読むのは反則だろぉっ!?……読むまでもなく顔に書いてある*5?そいつは失敬。

 いやまぁ?()()分かったというのはホントなんだよ、()()は。……問題があるとすれば、大体()()分かってないことでね?

 

 

「ええと、現状確かなことは……

1、名前の思い出せないあのなりきり板の住人に関係している。

2、原則として版権キャラクターのみがこの現象に巻き込まれている。

3、思考は主にキャラの方が優勢であり、元の人格はキャラの影響を受けて変質してしまっている。

4、キャラクターの能力や思考・知識を使うことができるが、その範囲は自身が参加していたスレでの、再現度や人気によって左右される。

5、一つのスレからこちらに憑依しているのは原則一人だけ。

……などでしょうか?」

「おお、流石みんなの後輩マシュちゃん、まとめ上手ー」

「きょ、恐縮です……」

 

 

 五条さん(とりあえず他に呼びようもないのでそのままで行くことになった)がパチパチと手を叩き、楯がほんのり頬を染めながら小さく言葉を返す。

 ……ふむ、見た目は完璧にマシュだから、なんというか和むねこれは。

 

 

「で、うちにも被害者?が何人か集まっているんだけど。……まぁ、見て貰った方が早いかしら?」

「え、なにゆかりん、すっごい不穏な雰囲気なんだけど」

「ふふふふふ……」

 

 

 うわぁ笑い方のせいで不穏さの倍率がドンだよこれ……。

 ドン引きする俺達の前で、ゆかりんが右手を上から下に振り下ろす。

 いつもの音と共にスキマが開いて、その口がこちらに向き。

 

 

「はい、では問題児レベル1の子達からー」

「おいちょっと待て」

 

 

 レベル分け?!レベルで分けなきゃいけないくらいに居るの!?っていうかレベルの基準もわからない内からそのまま流そうとするのやめない!?嫌だよ俺罷り間違って『汚い仮面ライダーW』*6のなりきりとか飛んできたら!?センシティブ判定*7で消されたらどうすんのさ!?

 

 

「はーいごあんなーい♪」

「ああああちょっと待てぇ心の準備がぁああっ!?」*8

 

 

 慌てる俺の前で、スキマから現れたのは──、

 

 

「……えっと、アシタカ?」

「そのようですね、ジブリ映画『もののけ姫』の主人公。本名はアシタカヒコと言い、弓の名手にして高い身体能力の持ち主だったそうです。*9……アーラシュ*10さんを思い出してしまいますね、せんぱい」

 

 

 特徴的な模様の入った赤い頭巾こそ被っていないものの、青い上着と精悍な顔立ち・強い意志の籠った眼は、子供の頃に見た名作の主人公、そのものだと言える姿をしていた。……イケメン力はアーラシュさんとどっこいやね。

 とはいえ……んんん?アシタカって、問題児要素ほとんどないような……?

 困惑する俺に微笑み掛けながら、ゆかりんが彼を促す。──そして。

 

 

「鎮まれ!鎮まりたまえ!さぞかし名のあるスレの主と見受けたが、何故そのように荒ぶるのか!?」

「………んんんんん?」

 

 

 うん、アシタカと言えば、って感じの名言だ。*11

 ……でも、この場で飛び出す言葉としては、不適切なような?

 俺がさらに困惑を深めていると、彼は口を閉じ、背中に背負っていた布袋の中から、白いスケッチブックを取り出した。……なんで?

 

 

「えっと、『私は、この文章を基礎にしたものしか喋れないのだ』、だそうですよ、せんぱい?」

「………はぁ?」

 

 

 いやなんで?

 彼が手前に掲げたスケッチブックには、彼がペンで書いた言葉が乗っている。……内容は、さっき楯の言った通り。

 ……なんでこんなことになってるんだ?

 という意味を込めながらゆかりんに視線を向ければ、彼女は苦笑を交えつつ説明をしてくれた。

 

 

「スレにも色々あるでしょう?全うに演じるもの、ネタに振り切ったもの、八割方荒らしみたいなもの*12、とか。……彼の場合、一発ネタで進めていくスレだったのよね」

「な、なんだってー!?」

 

 

 そんなんありかよ?!と思わずMMR*13してしまう俺。……いやこれも大概古いな?

 なんにせよ、つまりはこういうことらしい。

 

 一口になりきりと言っても、どんな感じの運営をしているのか、というのは場所によって違う。

 とはいえ、キャラハンだけで集まって会話を楽しむチャット形式と、名無しからの質問を受け、それに対する返答でスレを進めていく質問&雑談(質雑)形式が、主な遊び方だろう。

 

 その質雑形式の中で、一芸特化で強引に突き進むストロングスタイルのスレが存在する。それが『場面の使い回し型』だ。……命名俺なので余所で使っても通じないので注意。

 

 さて、その内容だが。

 難しいことは一切なく、『演じているキャラクターが一番輝く場所だけをやる』という、それだけだ。

 

 ……もうちょっと詳しく説明すると、例えば仮面ライダーエグゼイドの檀黎斗()*14を演じるとする。

 この時、普通に彼を(できるかどうかは別として)模倣するのが、普通のなりきりである。

 対し、このストロングスタイルでは、極論を言うと有名な『宝生永夢ゥ!』以下の流れを、ひたすら改変して使い回すのである。

 例えば(長いので注意)、

 

 スレの名無しィ!何故君が簡単な質問しかできないのか。

 何故似たようなセク質しかできないのか、何故スルーされるような質問しかできないのかァ!

 その答えはただ一つ………!

 アハァァァ………スレの名無しィ!

 君が!このスレで初めて………!まともな質問が………!!

 一つもできない奴だからだぁぁあ゛────!!*15

 

 ……みたいな感じに改変する。

 これを、質問一つに対して、毎回やるのが、『使い回し型』。

 

 パッと見では楽そうに見える反面、人の入りが激しいところだと、単純に回数をこなす必要がでたり。

 はたまた文中の()を改変しようかとか、()()を改変しようかとかを悩むはめになるなど。

 意外と労力を食うスタイルであると言えるので、正直わりに合ってるとは思えなかったりする*16。……そもそもの話、絶対途中で飽きるしねこれ。

 

 まぁつまり。そのストロングスタイルを、このアシタカさんは貫いていた、ということらしい。

 ……いやでも、尋ねることしかできないとか、普通の返答も辛くなかったですそれ?*17

 

 

 

「レベル1はこんな感じで、人気はあったけどなりきりとしては下の下、みたいなやり方をしてたせいで、能力・人格・記憶みたいな憑依部分が、かなり半端になってしまっている人達の集まりだと言えるわね」

「彼以外にも、願いを聞いた後に『その願いは私の力を越えている』って返すだけの神龍(シェンロン)*18とか、やってきた人全員に『すごーい!きみは○○が得意なフレンズなんだね?』って返すサーバルちゃん*19とか、俺が言うのもなんだけど『うわぁ』って言葉しか出てこないような人が、それなりに居るみたいだよ?」

「……まさか五条さんが、幾分マトモな部類に入る方だったとは思いませんでした……」

「ああ、楯がマシュらしからぬ遠い目をしている!?タイム!タイム要求!このノリで続けられると楯が壊れる!」

「心が折れたら負けだものねぇ」

 

 

 マシュの宝具(いまは遥か理想の城)の内容的に?*20……って言わせるんじゃねぇよ!

 

 視点の定まらなくなってしまった楯を落ち着かせる為にソファーに座らせながら、てへへと頭を掻くゆかりんにツッコミを入れる俺なのであった。

 

 

 

 

 

 

「……先輩がエリザベート*21さんを見ている時の気持ちが、ようやく分かりました」

「楯、それ多分わかんない方がいいやつや」

 

 

 いやね、確かにどこぞの丸いロボットみたいな事(はろ……?はろ……?)しか言えなくなる*22レベルで、思い切り精神崩壊してたあの時の彼なり彼女なり(藤丸立香)には、正直同情しかできんかったけどもさ?

 

 どうにか楯が持ち直してきたので、説明の続きをお願いする。

 今度は華麗に指パッチンしてスキマを開くゆかりん。いやんスタイリッシュ。

 なんて感想と共に、その向こうからやってきたのは──、

 

 

「わ、わ!せんぱい見てください!あれはもしかして、ピカチュウ*23さんではないでしょうか?!」

「さあ、なんでしょうね?……あいや、なんとなくフレーズがポケットにファンタジー突っ込んでそうだった*24から、思わず言っちゃったけど。……うん、紛れもなくピカチュウだねこれ」

 

 

 現れたのは、俺達の膝よりも背の低い生き物達。

 先頭に居るのは黄色い体に赤いほっぺと、ぎざぎざしっぽのにくいやつ。──みんな大好きねずみポケモンのピカチュウだ。

 耳を頻りに前後左右に動かしているのは、周囲を警戒しているからなのだろうか?……って、ん?

 

 

「いや待て?なんでこの子フツーの野生っぽい動きをして……ってまさか?!」

「そのまさかー。問題児レベルその2は『人外なりきり、特に獣系』ね」

「うへぁ!?」

 

 

 とんでもねぇ地雷が飛んできやがった!?

 

 

「え?せんぱいは、何をそんなに驚いていらっしゃるのでしょうか?」

「いいか楯、動物なりきり系ってのはな、主に二種類に別れるんだ。……色々無視して人語を話す奴と、設定に忠実に獣語しか話さない奴*25がな」

「はい?……え、あ、まさか!?」

 

 

 楯も事の重大さに気付いてしまったらしい。

 ……この逆憑依、憑依されている現実の人々の意思は原則隅に追いやられる。すなわち、ここにいる彼らは──。

 

 

「彼に関しては、変に『サトシのピカチュウ』*26とか『ポケスペのピカチュウ』*27とかの特定個体を指定していなかったから、寧ろ被害は少ない方よ。ここにいる他の子達もまぁ、似たようなものね。アイルー(モンハン)スライム(ドラクエ)チョコボ(FF)*28どれも種族だけを指定していたから、自意識への影響は微々たるものよ。……まぁ、生態とかはほとんど憑依してる子達のモノに寄ってしまってるみたいだけど」

「ぴか、ぴかぴかぴーか*29

「うわぁぴかぴか可愛いのに中身の悲哀がひどーい……」

 

 

 元が人なのに獣化している彼等の胸中やいかに。

 ……いや、後腐れ無い分普通に特定個体の方がマシなのでは……?

 

 

「そこは微妙なところね。私みたいに能力は大本と同じだけど、意識とか知識はスレのモノが基礎になっているみたいだから、その分自由に動ける、と言うのも確かみたいだし」

「……半オリジナルみたいなものだから、元と憑依者のズレが少ない?」

「そういうことだねー。俺なんかはズレが酷いから、呪術を使っても影響規模が全然広がらないし定まらないけど。少なくとも内と外の不和が少ない、ゆかりんやそこの黄色い子なんかは、最大値はともかく能力使用に変な不自由は起きないみたいだし」

「……ふむ?」

 

 

 まーた新情報が出たなこれ?

 五条さんの言葉を脳内で反芻し、理解を深める。

 

 ゆかりんみたいな、半分オリジナルに近いなりきりをしていた人は、憑依しているのも()()()()()()()()()()八雲紫であり、それ故に憑依されている側との同期のズレが少ない。

 代わりに、本人から外れてもいるので、本来出せるだろう最大出力には程遠い、と。

 

 ……つまり、そこのピカチュウが十万ボルト(いりょく90)を使っても、せいぜいスパーク(いりょく65)くらいの威力に落ちてしまう、と。

 その代わり、噛み合ってない五条さんみたいに、技のPPごと削れて居たり(使える回数ごと減っていたり)はせず、ちゃんと本来の十万ボルトが使える回数(15回)分は使える、と。

 

 

「そういう意味で、今ここにいる人の中で一番戦力が高いのはマシュちゃんだろうね」

「……え?わ、私がですか?!」

 

 

 五条さんの言葉に、思わず自身を指差して驚く楯。

 ……んまぁ、確かに。

 キャラクターの再現度が最高である為、ほぼ原作のマシュと同じスペックになっているだろうことは想像だに難くない。

 ……まぁ、それはつまり、ここにいる彼女はほぼほぼマシュだ、ということでもあるのだけれど。……うーん、早く問題解決の糸口を見付けないと、普通の男子である楯が完全にマシュ化してしまうぞこれ。

 

 

「……あれ、ってことはゆかりん、スキマ開くくらいしかできないの?」

「ご明察、『境界を操る程度の能力』はスキマの開閉と、私の年齢の操作とかみたいな細々としたものにしか使えないわ。……この状態で月からの使者とか来たら、私はお手上げ以外にできることはないわね」

「……いや、あれ、まさか」

 

 

 ゆかりんと話しながら、とあることに思い至る俺。

 ……再現度が、キャラとしての強度・憑依度に関わると言うのなら。

 

 

「……()、『キーアちゃんツッコミブレード(ハリセン)』出せたんだけど」

「なん、ですって……?!」

 

 

 ()()()()()の私は、どうなっているのか。

 思わぬ問題にぶつかってしまい、言葉を無くす俺達なのだった───。

 

 

*1
シンプルイズ()ベストでもいいらしいが、ザが付く時は他に比較対象がある場合、のような雰囲気らしい

*2
自身の空回りが如実に感じられる為、一日でスレが落ちることも

*3
『だいたいわかった』は『仮面ライダーディケイド』の主人公、『門矢士』がよく使うフレーズ。『わかってない』の方は、この場合は『ポプテピピック』の主人公?のポプ子に対して使われたもの。どっちにしてもあんまりわかってないというのは同じ

*4
元ネタは『汚いなさすが忍者きたない』と言うフレーズで、発言者は2021年で19周年になるという超長寿作、『ファイナルファンタジーⅩⅠ』で話題になったとある騎士。独特な言語を使う彼はよくわからない人気を博し、本人の手を離れて独自のキャラとして確立して行った……のだがそれはまた別の話。余談だが彼は盾キャラでもあるので、(独自キャラの方は)マシュ的にちょっと親近感とか尊敬とか抱くかもしれない。

*5
いわゆる慣用表現。実際に顔に書いてあるかのように顔に内心が出ているよ、ということ。出典を調べても出てこなかった辺り、みんな意外と顔に出る、ということなのだろうか?

*6
この文をそのまま検索窓に放り込むとトップに表示されるある作品のこと。仮面ライダーWからしてみれば風評被害甚だしいが、物語の骨組みだけ見ると確かに似ているので、言い出す者を止めることはできないかなぁ、とも。……なおなりきり界隈は魔境なので、探したらすでにあるかもしれないけど、探したいとは思えないし思わない(真顔)

*7
VTuberがたまに言われているあれ。出典不明だが、多分某SNSの『センシティブな画像』からの派生では?なんて風に言われている

*8
身構えている時に、死神は来ない(無情感)

*9
概ね楯の説明通り。年齢は17歳だが、時代設定的に若いとも言えない感じか。イケメンで強くて温厚で勇敢で、と言った感じに基本非の打ち所のない好青年でもある

*10
アーラシュ・カマンガー。『fate/grand_order』に登場する星1(コモン)アーチャー。出演タイミング的に初出作品を勘違いされやすいキャラクター。明確な初出は『Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ』なのだが、見た目は『TYPE-MOONエースvol.10』で、名前は『fate/grand_order』で初判明した為、非常にややこしい。衝撃的な宝具(必殺技)を持つ、ペルシャの大英雄。2021年の東京オリンピックでは、銀メダルに輝いた台湾のアーチェリーの選手が、矢を放つ時の掛け声に彼の宝具の名前を使っていたことで話題になった。因みに、fgoに参加したことで明確に日本での知名度が上がったとされる英雄でもある(それまでは日本語wikiが存在しなかった)

*11
他には「生きろ、そなたは美しい」「あの子を解き放て! あの子は人間だぞ!」などが彼の名言として挙げられる

*12
なりきりも千差万別だが、罵詈雑言ですらない謎の鳴き声だけで進めるのはおかしいと思わなかったのか

*13
『MMR マガジンミステリー調査班』のこと。何でもかんでもノストラダムスに繋げて「だから、世界は滅びるんだよ!」する漫画。陰謀論の走り?いや、単なるギャグじゃないかな……。迫真顔で「な、なんだってー!?」とか言ってたら大体これが元ネタである

*14
はた迷惑な天才、というのが多分一番正解っぽい感じの『仮面ライダーエグゼイド』の登場人物。正直こんな狭い項目で語れるような人でもないので検索して貰う方が良いかと。……人物像が濃ゆ過ぎて目眩がするかもしれないが

*15
実際には間に相手の反応が入るのだが、それをどうするのかはやってる人の腕次第だと思われる

*16
回数こなしてるうちに多分ネタが切れる

*17
身長は?みたいな質問はどうしてたんだ、みたいな疑問。大体無理やり()()()()はめになるが、それはそれでアシタカの名言であるというある種のミラクル……

*18
『ドラゴンボール』においてタイトルにもなっているドラゴンボールを7つ集めた時に現れるドラゴン。叶えられる物事に上限が存在する為、たまにこうして断られることがある

*19
『けものフレンズ』の主人公……ヒロイン?さばんなちほーに住んでいるサーバルキャットのフレンズ。フレンズは、特殊なアイテムの力で女の子になった動物達の総称。人懐っこい性格で感性豊かであるためか、初めて見たものや生き物に対して『すっごーい!』と驚きを示す可愛い女の子。なお、『すごーい!きみは○○が得意なフレンズなんだね?』なんて台詞を彼女は言ったことがなかったりする

*20
彼女の宝具である『いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)』は使用者の心が折れない限り、世界を破壊するような攻撃ですら耐えて見せる……と言われていることから

*21
エリザベート・バートリー。星4(SR)ランサー。血の伯爵婦人。合言葉は『何度も出てきて恥ずかしくないんですか?』

*22
平成に置いてきた筈のハロウィンの残り香が目の前に現れた時に、錯乱したfgoの主人公が呟いた言葉。丸いロボットは『機動戦士ガンダムシリーズ』のマスコットロボット、ハロのこと。どっちもハロハロ言ってるというネタ

*23
ずかんNo.25 ねずみポケモン たかさ 0.4m おもさ  6.0kg ほっぺたの りょうがわに ちいさい でんきぶくろを もつ。ピンチのときに ほうでんする。

*24
『ポケットにファンタジー』。ポケモンソングの一つ。歌詞の中に『あれってもしかして、ピカチュウ?』というフレーズが存在する

*25
見ればわかるが凄まじく魔境である

*26
アニメ『ポケットモンスター』で主人公の相棒をしている方

*27
漫画『ポケットモンスターSPECIAL』でレッドやイエローと共に活躍してる方

*28
それぞれ『モンスターハンターシリーズ』の獣人種、『ドラゴンクエストシリーズ』の特徴的なモンスター、『ファイナルファンタジーシリーズ』の騎乗動物

*29
変に名探偵な方選ばなくて良かったよ



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雨後の筍のように増えたりもする

「……そういえばそうか。俺達は版権キャラの憑依しか、ほとんど見てこなかった」

「キーアちゃんがここに来たから、一応説明の方に憑依者は()()版権キャラと付け加えたけれど。……『キーアちゃんツッコミブレード(ハリセン)*1が使えていた、というのなら色々考えるべきことができてしまうわね」

「……あの、すみません。せんぱいのハリセンが、一体どうしたと言うのでしょうか?」*2

「あー、なるほど。マシュちゃんはキーアちゃんのスレ、見たことないのね?」

「……すみません、あまり子細に閲覧したことは無いかと……」

「訳知り顔でちょっと口挟んで見たけど、俺も見たことはないねぇ」

「……まぁ、版権系とオリ系は、あんまりそりが合わないことが多いから仕方ないね」*3

 

 

 ゆかりんと二人で事態の深刻さを確認しながら、周りで困惑の表情を浮かべている二人に、何から説明したものか、と少し思案する。

 ……ん、まぁちゃんと話さないとわからないか。

 

 

「俺がファンタジースレのスレ主を何回か経験してる、って話は楯にしたことあるよな?」*4

「あ、はい。何度かお聞きしたことがある、と記憶に残っています」

 

 

 このキーアというキャラクターだが、元々は俺が最初になりきりに使っていたキャラではない。*5

 最初は別の、普通の男性冒険家をキャラハンとして使用していたし、そいつはチートとかとは程遠い、普通のキャラクターだった。*6

 

 ……それがまぁ、何の因果か。

 スレが進む内に戦闘描写*7が重視されるようになって、参加するキャラクターも好戦的なものが増えていって。*8

 最終的に、スレは大炎上一歩手前にまで悪化してしまった。

 それをどうにかしようとして生み出したのが、キーアだったのだ。……まぁ、この子が生まれた時は、俺が発言をミスったせいで、最後の着火材になりかけたりもしたのだけれど。

 それでも必死こいてスレの空気を入れ替えて、結果として俺はキーアとして次のスレを立てることになったのだ。

 

 そして、そのままスレを運営する内に、昔の炎上時代を見て飛び込んできた、新しいキャラハンを言いくるめて全うな道に戻したり(戻せてない)、はたまた祭りスレで他のキャラハン達と交流したりする内に──、キーアは、無敵のチートキャラ*9と化していた!*10

 

 それはもう、世が世ならなろう*11でやれと言わんばかりの超チートキャラになってしまっていたのだ!

 ……スレの円滑な運営の為に、少なくとも自分の運営するスレ内ではキーアが最強であるとし、不要な言い争いはしないように言い含め。

 そこまでしてやっと、ファンタジースレは静かな時を取り戻したのだった。……いやまぁ、単に衰退期に入っただけでもあるんだけどさ?*12

 

 

「そ、それはまた、なんというか……」

「波乱万丈だねぇ。……で、それが結局どうしたの?」

「……ちょっと前に、楯に『ワンパンマンモチーフキャラを受け入れるのは違う』って言われたことあるじゃん?」

 

 

 質問に質問で返された楯が、「た、確かにそのような事をお聞きした覚えがあります」と返して来たので、俺は、俺は──。

 

 

「……飛び込んでくる新しいキャラが、どいつもこいつもインフレ*13って言葉を知らないんじゃないか、ってチートキャラばっかりだったから。キーアもまた、超チートとして設定盛らないといけなかったんだけど。……正直、言っちゃ悪いけど段々ダルくなってきてねー……*14

「今思えば、結果論とはいえキーアちゃん、盛りに盛られたキャラになっていたから。……いわゆる最強厨*15みたいなのに粘着されるのは、半ば自業自得みたいなところがあったと私は思うけどね」

「うえー、言わんでくれ俺も反省はしてるんじゃい……ちょっと視野狭窄に陥ってたんだよー」

 

 

 めんどくさくなって力こそパワー!(上から潰す方が早い)*16してたのは確かだけど。……そんなん喧嘩売ってるようなもんやんけと、冷静に見返せる今なら言えてしまうけど。……初スレ主とか色々ある内にテンパってたというかなんというか。

 ……まぁ、当時の俺がバカなのは事実なので置いといて。

 次々やってくるチートキャラの相手に疲れ果てて(正確には彼等に返す言葉選びに疲れて)、俺は禁じ手を使ってしまったのだ。……質問を受けて答えを返す、というなりきりにおいて、ある種一番の禁じ手を。

 

 

「キーアは、()()()()()()()キャラなんだよね」

「……はい?」

「何もできない()()()、本当の意味で()()()()()()な存在。……それが、キーアが行き着いた結論」*17

「……えーと、認識の差があるような気がするから確認しときたいんだけど。……それって、どこまで?」

「…………どこまでも。机上の空論のようなモノも含め、ホントに全部」

「……うわぁ」

 

 

 こっちの答えに、五条さんがドン引いてる。楯の方は──理解をしようと唸っているので、今のところは大丈夫そう。

 ……まぁ、五条さんの反応もよく分かる。だってねぇ?

 

 

「──地雷系オリ主やんけこれぇ!?人格者としてやってたつっても、人によっては即ブラバ案件やぞ!?」*18

 

 

 はっず!小学生の書いた『ぼくのさいきょうのおりきゃら』系そのまんまな造形になってんの、結果的にだとしても自分の想像力の底が見えたような気がしてはっず!

 

 

「──せんぱいが、根源接続者*19みたいなモノだと言うことは理解できました。……ですが、結局のところそれの何が問題なのか、私には理解ができていない。*20教えてくださいせんぱい、さっきのハリセンは、何が恐ろしいのでしょうか?」

「あ、ああ、うん、そういやハリセンの話だったか。……傍目には単にハリセンを取り出したように見えるけど。実際には、宝具を即興で生み出してるようなものなんだよね、あれ」

「──はい?」

「『場面転換』という概念を、ハリセンという形に成形してたってわけ。──それがちゃんと効力を発揮してたというのが、今回やべぇってなったところ」

「いや、ちょっと、待ってくださいせんぱい!整理、整理します!」

 

 

 困惑した表情の楯が、ブツブツと呟きながら自身の世界に潜り。

 ──しばらくして、その顔を若干青に染めながら、静かに口を開いた。

 

 

「つまり、せんぱいは──本来のスペックを発揮できている()()()()()()、と?」 

「……たぶん。……これ、どういうことなんだ?」

「さあ、私にはなんとも。そもそもさっきから言ってるけど、オリキャラ勢でこの異変に巻き込まれているのが貴女以外見つかってないから、比べようもないしね」

「むぅ……」

 

 

 いやまぁ、取れる手が多いことはいいのだ。

 ……いいのだが、何が原因なのか、誰かの思惑があるのか……と言った裏の部分が一切見えてこない為、素直に喜んでいいのかがわからないのである。何せ、

 

 

「俺に憑依されてる自覚がないこと、その癖、スペック自体は楯に九割九分九厘*21憑依しきっているマシュと同じく再現度最高ってこと……疑問は付きないけど、何よりキーアっていう()()()()()()()()()()()相手がいるかも知れないってのがな……」

「な、なるほど。せんぱい以上の全能者が裏で糸を引いている可能性があるということですね」

「そういうこと。……まぁ、ここで悩んでても仕方ないのも確かなわけだが」

 

 

 正直こっちはわからないことだらけだ。

 ……ならまぁ、悩むよりかは現状把握に努めたほうが良いというのも確かだろう。

 悩んで問題が解決できるならいいが、現状では悪戯に時間を浪費するだけだ。

 

 

「……変に疲れちゃったわね。とりあえず、一旦休憩にする?」

「そうだね、俺もお腹空いてきちゃったし」

「そ、そういえば朝からずっと動き詰めでしたね……」

「じゃあ、ちょっと早いけどお昼にしましょうか。この建物の一角にはね、憑依者がやってるお店が集まってるのよ」

「憑依者がやってる店?」

 

 

 ゆかりんの提案に首を傾げる俺と楯。

 ──ふむ、憑依者がやってるお食事処、とな?

 食事系、食事系かぁ。……なんか最近料理系スピンオフ増えてた*22から、食事ってだけじゃあ誰だかわからんなぁ……?

 えみご*23、ひろし*24、ハンチョウ*25、盾の勇者*26、幼女戦記*27……。最近シンフォギアもやってたっけ。*28

 そうでなくても普通に料理やってるようなのもあった*29し、これは実際に見てみないとわからないな、うん。

 

 

「よし、腹が減ってはなんとやらだ、早速行こうゆかりん」

「はいはーい♪じゃ、す~き~ま~び~ん~」*30

「……なんでドラえもん……?」

「ふふふ、なんでだと思う?」

「うわまた意味深な笑みを……」

 

 

 ……まさか居るんじゃないだろうな、ドラえもん。居たら私よりよっぽどチートじゃねーか。*31

 何故かスキマの上の方に暖簾*32がついていることにちょっとびっくりしつつ、それをくぐって中に進む私達。

 

 果たして、私達を待っているものとは──!?

 

 

「……あれ!?ここで切るの?!」

「メタ発言は禁止よキーアちゃん」

「それゆかりんが言う!?」*33

 

 

 ……待て、次回!

 

*1
もうちょっといい名前つければよかったってなるやつ

*2
冷静にならなくても何いってんだコイツら案件である

*3
オリジナルはなりきりではない、と考える人も多い

*4
そもそもスレの立て方がわからない者や、時代によってはガラケーを使って書き込んでいるような者も居たので、特定の誰かが毎回スレ立てをする、というのもあんまり珍しくない話だったりする

*5
あまり褒められた話ではないが、一つのスレ内で複数のキャラを使う者も居たりする。褒められない理由は、なりきりという言葉の意味的に()()()()()()()()ものになっているから

*6
普通のキャラの普通の会話で衆目を引き寄せるのは難しいので、初心者はやらないほうがよかったり

*7
正直火種になるのでウケるけどやめた方がいいモノ

*8
中の人がどう思っているのかに関わらず、好戦的なキャラで参加したのなら、望まれるものも好戦的な話題に寄っていく事が多い

*9
cheat(チート)という単語は本来騙す・欺くことを指す言葉。そこから不正を使った人や、不正によってできたキャラを示す言葉になっていった。なお単に『チートキャラ』と呼ぶ場合は不正の利用については関係なく、その世界観に見合わない性能をしていることを示すものとしても使われる

*10
読み方は『名探偵コナン』風に

*11
『小説家になろう』というネット小説サイトのこと。この場合は、そこで多く投稿されている作品群が似たりよったりなので、お前もそれに似たようなものだと揶揄するためのもの。……雑になろう系などと呼ばれたりするが、無論サイト内の全ての小説が似たりよったりなわけではない。目立つ位置に出てくるのがそういうものだ、というだけである

*12
皮肉な話だが、争いというのは争う相手が居てこそ成り立つものであった、という話

*13
『インフレーション』の略。本来は経済用語で、モノの価値が際限なく上がっていく状態のこと。そこから、上下を競うような物事で上の基準が上がっていくことを示すようになった

*14
チートキャラは最初の方はいいのだが展開がマンネリ化して飽きやすいという欠点がある

*15
『最強(設定が好きな)厨房』の略……?『厨房』は『中坊(中学坊主の略)』から。雑に言うと中二病の一派生。最近ならキッズと呼ばれるらしいが、どっちにしろ蔑称なので多用は禁物

*16
テレビアニメ『新ビックリマン』のブラックゼウスというキャラの発した台詞。力とパワーで相乗効果?

*17
『全能の逆説(パラドックス)』というものの存在から、真の意味での全能はありえないとされている。それは『自分にできないことを作り出すこと(自身に対しての否定の否定)ができない』から

*18
人によって地雷要素が違うので、実際にブラウザバックされるかは人次第ではあると思うが

*19
TYPE-MOON作品群に登場する『根源』と直に繋がっている者達の事。基本的には全能者だと思っておけばいいが、様々な理由からその全能を実際に奮う事は殆どない

*20
上記注釈の通り、現実世界において全能は存在し得ない為、今それが問題になるとは思えない、の意

*21
99.9%のこと

*22
多分原作が殺伐としているほど、単に飯を食べてる姿が貴重なものに見えるとかそういうあれだろうと思われる

*23
『衛宮さんちの今日のごはん』のこと。『fate/stay_night』のスピンオフ。そもそも主人公の衛宮 士郎が料理好きなことからの派生だと思われる

*24
『野原ひろし 昼メシの流儀』のこと。『クレヨンしんちゃん』のスピンオフだが、主役扱いの野原ひろしが絶妙に似てないことで有名

*25
『1日外出録ハンチョウ』のこと。『カイジシリーズ』のスピンオフ。帝愛グループの債務者の一人、大槻 太郎を主役に据えた物語

*26
『盾の勇者のおしながき』のこと。『盾の勇者の成り上がり』のスピンオフ。料理系スピンオフには珍しく、いわゆる『優しい世界』ではないのが特徴

*27
『幼女戦記食堂』のこと。『幼女戦記』のスピンオフ。ここに上げた食事系スピンオフでは唯一連載が終了しているのが残念

*28
『戦姫完食シンフォギア~調(しらべ)めし~』のこと。『戦姫絶唱シンフォギア』のスピンオフ。今回紹介した中では一番新しい

*29
例としては『中華一番!』『異世界食堂』『甘々と稲妻』などなど。料理系はそもそもジャンルとして確立しているため、上げ出すとキリがない

*30
今の子と昔の人でイメージする声は違うが、再度声が変わることがあれば、またジェネレーションギャップの元になるのだろうか……?

*31
未来デパートに置いてあるもので一番謎なのは『銀河はかいばくだん』だろう。漫画版には存在しない為か、若干スタッフの悪ノリが見える(見た目が『トップをねらえ!』に出てくる『バスターマシン3号』によく似ている為)が、少なくとも子守用ロボットに持たせるものではない。どこの誰と戦うつもりだ

*32
店先などに日よけや目隠しの為に吊り下げる布のこと

*33
『境界を操る程度の能力』の内容的に、八雲紫は第四の壁について認識している可能性がある



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飯を食う時に一人がいいかみんながいいかは場合による

「……うん?なんというか普通のお店だね」

「出資者がなりきりやってる人、ってだけの感じの店もあるから。……別に店のご主人が憑依者のお店でも構わないわよ?裸に剥かれたり*1、口からビーム出したり*2、いきなりダルシムにされてもいい*3のなら、だけど」

「……今のテンションでそういうのは勘弁願いたいっす」

「正直で宜しい」

 

 

 入ったお店は、普通の定食屋っぽいところ。

 ……気のせいじゃなければサラリーマンっぽい人が多いね、お客さんに。

 いやまぁ、普通にご飯食べてる人に何か用事があるわけじゃないんだけどさ。……うん、見間違いじゃなければゴローちゃん*4が二人居ない……?

 

 

「実写版と漫画版だね。……よく喧嘩にならないなあの二人」*5

「まぁ、その辺りは大人の余裕と言うことでしょう。店員さーん、すみません注文お願いしまーす」

「はーい、お待たせしましたー」

 

 

 雑に流されたゴローちゃん達は置いといて、メニュー片手に何を食べようかと選ぼうとして。

 

 

「え、えっと。お客様、私の顔に何か……?」

「いや、自分が知らないだけで、実は憑依者だったりしないかとちょっと気が気でなくて」

「……誰も彼も憑依者なわけないでしょう、しっかりしなさいな」

「いや分からないでもないよ?全部の創作を網羅してる人なんて居ないだろうから、超マイナーなやつとかだと紛れ込めちゃうかも知れないしね」*6

「疑いだしたらキリがないでしょ、いいからさっさと選ぶ」

「「はーい」」

 

 

 店員さんがわりと美人だったので、実は憑依者じゃないだろうな、とちょっと疑ってしまった。*7

 ……五条さんもノってくれたけど、ゆかりんにやんわり窘められたので仕方なくメニュー選びに戻る。

 そんな俺達を見て、楯が小さく笑みを溢していた。

 

 

「……えっと、マシュちゃん?何かおかしかったかしら?」

「いえ。お二人の相手をする紫さんが、なんだかお母さんみたいだな……と思ってしまいまして」

「おか……っ!?……ま、まぁ?保護者っぽいことばかりしてきたから、ちょっと気を使う癖がついているような気はするけれど……」

「なんと、ゆかりんが照れてるよ五条さん」

「マシュちゃんは素直だからねぇ。ゆかりんも無下にはできないってわけだ」

「も、もう!からかわないでちょうだい!」

「あ、いえ!私も紫さんを困らせようとして言葉にしたわけではなくてですね!?」

 

 

 ……ふむ、ゆか×マシュとな?*8ふむ……続けて?*9

 わたわたと顔を赤くする二人は、大変可愛らしゅうございました。*10……他作品間の百合*11って地雷要素かね?*12

 

 

 

 

 

 

「なんか今、セイバーさん*13とメルブラ*14の方のシオンさん*15が、口調被り*16で悩んだ挙げ句に銀さん*17に相談して、結果として語尾に犬語と猫語を付ける*18ことで遠野君*19と衛宮君*20をノックアウトしてた気がするんだけど……」

「……ここ、アーネンエルベ*21だったかしら?」

「お一つ隣の世界だったんじゃない?」

「……いや、居た気がするんだけどなぁ」

 

 

 千鍵ちゃん*22と会話する銀さんとか言う、ちょっと意味の分からないものが見えた気がするんだけどなぁ……?

 うーん、白昼夢だったのかもしれない。いつの間にか居なくなってたし。……居なくなったと言えばゴローちゃんずもいつの間にか居なくなってたな?

 

 

「あのお二人なら、お互いにエジソン*23さんとテスラ*24さんのように、視線の火花を散らしながらお帰りになられましたよ」

「……やっぱり仲悪いのかあの二人」

「ふん、つまらないことで喧嘩するのね、人間って」

「つまんないことって言うけど、そういうつまんないことにこだわるのが、ある種人間のいいところでもあるからねぇ」

「そう、その愚かさはいつまで経っても変わらないのね。……まぁ、いいわ。私には関係ない事だから」

「豪気だねぇ、君。……ところで、一ついい?」

「なに、銀髪の。……もしかして私に文句?いい度胸してるじゃない」

「……あ、あれ!?虞美人さん?!なぜここに?!」

「やっと気付いたのね後輩。そうよ、アンタの先輩、虞美人よ。さっきからずっと居たのに、反応の一つも寄越さないとか随分偉くなったものね、マシュ」

「……え、なんで唐突にパイセンがっ!?」

「パイセン言うなっ」

 

 

 ……すっごい自然に会話に入ってきたから気付かなかったけど、なんでここにいるんですか貴方?!

 そう俺が戦く先では、珍しくちゃんと服を着ている虞美人*25パイセン*26の姿が。……まともな服着てるのもよく分からんし、眼鏡掛けてるのもよくわからんぞこれ?*27

 

 

「そこの妖怪に、服くらい着ろって喧しく言われたのよ。別に、項羽*28様以外の人間に幾ら見られたって、何も減るもんじゃないって言ったんだけど」

「貴女が良くても貴女の憑依相手が良くないのよ、痴女呼ばわりとか末代の恥*29でしょうどう考えても!」

「……アンタ、妖怪の癖に随分常識的なのね*30。それともなに、最近の妖怪*31の間ではそういうのが流行ってるの?」

「うわぁ、見事なまでの傍若無人パイセンムーブ……」

「はぁ?あの呑んだくれ女がどうしたってのよ?」*32

「ぐ、虞美人さん!ややこしくなるのでとりあえず一旦落ち着いて下さい!」

「……まぁ、マシュの頼みだと言うのなら、聞くのも吝かじゃないけど」

 

 

 ……めっちゃパイセンである。いや、ほっとくと怪文書ムーブしかねないのでまだ安心はできないけど。*33

 視線を横にチラリと向けると、話に取り残された五条さんが、一人寂しくオレンジジュースをストローで飲んでいた。

 ……ファンには見せられない感じの、何とも言えない哀愁漂う姿であった。

 

 

「……いやまぁ、なんとなくは分かるんだよ?虞美人と言えば覇王項羽の伴侶だってことくらい、()も知ってる。……ただ、そっち(FGO)についてはよく知らないからさ。……なんでその虞美人が、こんなに()()()()()()()存在になってるのかが全くわからなくてね」

「……?……あっ、そっか!パイセンこっち(fgo)だと滅茶苦茶設定盛られてるんだった!?」*34

「……ふむ?お前、呪術師だったのか。だが──随分と、力に枷が掛かっているようだな」

「わお、そこまで見抜かれちゃうと()もちょっと警戒しなくちゃいけなくなるね」

「ちょちょちょちょーっと!!待った!両者待った!説明!説明するから落ち着いて!!」

 

 

 五条さんがにこやかなのに目が全然笑ってないのマジで怖いし、パイセンもナチュラルに上から目線だから喧嘩売ってるみたいなもんだし!

 これ私がちゃんと仲裁しないとアカンやつ!

 

 

「……まぁ、後輩が言うなら、待たなくもないけど」

「じゃあ()も、キーアさんの顔を立てようかな」

「は、ははは。うれしいなー、話をちゃんと聞いてくれる人達で良かったなー!」

「ああ!?せんぱいが何か辛いことを思い出したかのように遠い目を?!」

「……スレ主って大変*35だものね、よくわかるわ」

 

 

 よーし、キーア頑張って解説すっぞー!ははははー!(ヤケクソ)

 

 

 

───少女解説中
*36

 

 

 

「……はぁ、精霊種*37、ねぇ?……そっちのトップって、結構ぶっ飛んでる?*38

「とりあえず、逸話が少ないならいくらでも盛ってもいい……って思ってる節はあると思う……」

「ふん、他所の世界の呪術師ね。人の分際で無限を使おうなどと言う傲慢、まさに厚顔無恥としか言いようがないけれど──その研鑽には、理解を示さなくもないわ」

「ああ、パイセン的には無限ってところのが引っ掛かるのか……」

 

 

 かいつまみ・まとめて・可能な限り分かりやすく二人への説明を終えた俺。

 ……いや、頑張ったと思うよ俺?特にパイセンへの説明。基本的に後輩の言葉は聞いてくれる方の人だけど、それでも認識のズレが結構あるから、言葉選びに苦慮するはめになったし。

 

 

「……そういえば、虞美人さんはどうしてここに?私達に何か御用事があったのでしょうか?」

「……ああ、そうだった。そこの妖怪。呼び出しよ、アンタ宛に」

「私に?……あ゛」

「どうしたゆかりん、何時もの貴女らしくないダミ声なんて出しちゃって」

「……ごめんなさいねキーアちゃん。私これから用事があったことをすっかり忘れていたのよ。悪いのだけど、ここで抜けさせて貰うわね?」

「え、あちょっ!?」

「……止める間もなく、下に落ちていってしまいましたね、せんぱい」

 

 

 ゆかりんが若干顔を青くしつつ、こちらの引き留めもスルリと流してスキマに落ちていくのを、何とも言えない表情で見送った私達。

 

 

「じゃ、私の用事はそれだけだから」

「あ、はい虞美人さん。ありがとうございました」

 

 

 そんな空気を完全に無視して、やることはやったとさっさと帰っていくパイセン。……いや、なんだったんだあの人……?

 

 

「さてと。なーんか、また俺達だけになっちゃったねぇ?」

「説明はまぁ、大体終わってるからいいけど。これからどうしたものかねぇ……」

 

 

 そもそも、この施設の案内の方はろくにして貰ってないので、このお食事処から外に出るのも憚られるわけで。

 ……ここに入るまえにチラッと見ただけでも、すっごく広い施設なのは分かったし。変に出歩くと、それだけで迷子になりそうだ。

 

 

「おや、この辺りでは見ない顔。もしかして、新顔さんですか?」

「あ、はい。最近こちらにお邪魔させていただきました、マシュ・キリエライトです。こちらはせんぱいの、キルフィッシュ・アーティレイヤーさん。……申し訳ありませんが、そちらのお名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」

 

 

 そんな風に悩んでいたら、背後から声を掛けられる。

 楯がこちらの紹介をしているのを聞きながら、背後に振り向く。

 ……なんというか、どこかで聞いたことのある声だな、と思ったからだ。具体的には、さっきまで聞いてたものと同じ気がしないでもない*39ような声だったからだ。

 そして、俺が振り向いた先に居たのは──。

 

 

「これはこれはご丁寧に。申し遅れました。私、VOICEROID(ボイスロイド)*40の結月ゆかり*41と申します。良ければ、覚えていって下さいね」

「……ゆかりんじゃねぇか!?」

「は、はい?」

 

 

 そう、八雲紫(ゆかりん)に変わって結月ゆかり(ゆかりん)がそこに居たのだった!*42

 

 

*1
『食戟のソーマ』などの一部作品では、食事の高揚感を一種の恍惚状態と解釈し、服が破けたり脱げたりしてちょっとエッチな事になる……というイメージ画像が使われる。イメージなので実際に裸に剥かれているわけではない

*2
『ミスター味っこ』の登場人物、村田源二郎(通称味皇)のリアクションの一つ。因みに『デカ盛り 閃乱カグラ』というゲームでは、服部半蔵が料理を食べた時のリアクションがほぼ味皇であり、かつそのリアクションで女性キャラの服が破ける『食戟のソーマ』みたいな演出が入るという、謎のクロスオーバーっぽいものがあったのだとか。……ツッコミ処しかないなこれは?

*3
『焼きたて!!ジャぱん』の最終回のこと。なんやて!?

*4
『孤独のグルメ』の主人公、井之頭五郎のあだ名

*5
漫画版では架空のお店が出せるため、わりと店を批判したりもするのだが、実写版では実在の店を使うためにそういうことはできない。……ので、必然的に主人公のキャラがマイルドになった。そのため二人が一同に介するようなことがあったら、多分そりが合わないのではないか?と思われる。……同一人物なのにね?

*6
解説がないと分からないとか言われた場合、その作品が好きな人は多大なダメージを負うだろう。……わりとよくある話なのが恐ろしい

*7
敢えて美形じゃないキャラを主人公に据えた作品もあるにはあるが、大体どこの作品も美男美女で溢れている。……外見(APP)が18の奴はとりあえず疑っとけ、はTRPGプレイヤーの鉄則

*8
『×』という表記をカップルを示すものとして使ったのは元々腐女子と呼ばれる人達だとか。そっちの用法だと、右と左のどちらに名前を入れるかで骨肉の争いになりかねないので注意

*9
『構わん、やれ』が変化していったものとも言われるが詳細不明。なんとなーく外野目線な感じが使いやすい言葉

*10
形容詞+ございます(補助動詞)は最近では余り使われない表現だが、丁寧語でもあるので古風なキャラなどであればよく似合うと思われる

*11
女性同士の恋愛のこと。正確には別に恋愛関係でなくとも構わない。その為、正確な定義が困難な概念でもある。因みに、何故女性同士の関係のことを『百合』というのかは、男性同士の関係を『薔薇』と呼ぶことに関わっているのだとか

*12
クロスオーバーものでの他作品間のカップリングは荒れの原因にもなるので気を付けよう!クロスオーバー自体が難しいとか言っちゃダメだぞ!

*13
『fate/stay_night』の主人公が契約したサーヴァント。誇り高き騎士王

*14
格闘ゲーム『MELTY BLOOD』のこと。2021年9月30日に新作が発売するので、気になる人は買ってみよう

*15
シオン・エルトナム・アトラシア。先のメルブラとfgoに登場しているが、見た目的にもキャラ的にも別人に見える。因みに、新作には出ないっぽい?

*16
物書き最大の壁。特に丁寧語は変化が付け辛い為、二次創作で敬語キャラが集まった時なんかは地獄と化す

*17
『銀魂』の主人公、坂田銀時のこと。『万屋銀ちゃん』を営む何でも屋。やる時はやる男であるため人気が高い

*18
安易なキャラ付けと言う勿れ、普段言いそうにない娘が言った時の破壊力は未だに凄いのだ

*19
『月姫』主人公、遠野志貴のこと。詳しくは2021年8月26日に発売される『月姫 -A piece of blue glass moon-』をプレイしよう!……って言える日を、心待ちにしてた奴等が居るんだ……

*20
『fate/stay_night』の主人公、衛宮士郎のこと。シロウ、おなかがすきました

*21
祖先の遺産(Ahnenerbe)。この場合は、型月世界におけるとある喫茶店のこと。fgoが始まる前は、ここが型月世界のキャラクターが一同に介する唯一の場所だった。通称『魔法使いの(はこ)

*22
桂木千鍵。喫茶店アーネンエルベで働く従業員の一人。緑髪ツインテが特徴的な女の子

*23
トーマス・アルバ・エジソン。『fate/grand_order』に登場する星4(SR)キャスター。白いライオンの頭にアメコミヒーローばりのムキムキマッチョという、一度見たら忘れられないようなビジュアルのキャラクター

*24
ニコラ・テスラ。『fate/grand_order』に登場する星5(SSR)アーチャー。電気を神の力から人の力へと下ろした、偉大な科学者

*25
『fate/grand_order』に登場する星4(SR)アサシン。とある事情から先輩と呼ばれ親しまれている

*26
『先輩』を逆に言ったもの。起源は不明だが、大衆に広めたのは漫才コンビ『矢野・兵動』だと言われている。普通に先輩と呼ぶよりフランクな感じ

*27
ぜんぜん虞美人とは関係ないけど、芥ヒナコというキャラクターに近い服装をしているぞ、ぜんぜん関係ないけど

*28
『fate/grand_order』に登場する星5(SSR)バーサーカー。性を項、名を籍、(あざな)を羽。『匹夫の勇、婦人の仁』という言葉の元になった人物(正確には彼が言われたもの)。山寺宏一ボイスの超イケメン……?

*29
『聞くは一時の恥、聞かぬは末代の恥』の末代部分だけを取り出したもの。自分の血筋が途切れるまで、の意。すなわち、恥とは自分だけのものではないぞ、ということ

*30
『この幻想郷では常識に囚われてはいけないのですね!』などと宣った人間の巫女が居た、らしい

*31
妖怪に最近とは……?(哲学)直近で一番流行ったのは『アマビエ』だろうか

*32
『fate/grand_order』に登場する星3(R)アサシン、荊軻(けいか)のこと。『傍若無人』という言葉の元になった人物。始皇帝の暗殺に挑み、失敗したという逸話を持つ

*33
いろいろな事情が重なった結果、各所で変なキャラ付けをされていた彼女だったが、後々公式からそれよりも更にインパクトのあるものが投下されまくった為、すっかり彼女は「おもしれー女」として定着したのだった……

*34
中国の歴史書「史記」「漢書」には「美人で、項羽の妻でいつも一緒に居て、最後に項羽と死に別れる」くらいしか書かれていない。呪いをばらまいたり彼女の出自だったりは完全に型月オリジナルである

*35
いつだって中間管理職は辛いものである

*36
『東方Project』での「Now Loading」表示。右下でマスコットが走ったり謎の小芝居が始まったりするのは、ゲームにおけるある種のお約束である。なお、凝ったものが流れると「そんなものはいいから早く読み込めよ」なんて言われることがあるが、実際はどうしても縮められないロード時間中の暇つぶし用であることが大半なので、別にこれを無くしたからと言ってロードが早くなったりはしない

*37
正確には『地球()の生み出した精霊種』。型月世界観的に考えるとかなりヤバい生き物

*38
この場合は原作者である『奈須きのこ』氏のこと。まぁ、ぶっ飛んでるのは確かだと思います……

*39
二重否定文。文法的にはあまりよろしくない文なのだが、なんとなく混乱している感じが出るのであえて使う人もそれなりに居る

*40
音声合成ソフトの一つ。主に話すことを主眼においており、違和感のない台詞を喋ってくれる

*41
総合評価が100以上のハーメルンの小説を開いて、上の方にある「ゆかり」をクリックしてみよう。それで話し始めたのが『結月ゆかり』さんだ

*42
結月ゆかりの中の人と、『東方ロストワード』での八雲紫の声優が同じ、というネタ。紫に関しては、正確には選べる三種のボイスの内一つが同じ、というだけなのだが、どっちも『ゆかり』で声も同じなのはちょっと面白いな、という感じの話



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飯と嵐はどっちも早い方がいい

「えっと、確かに私はゆかりん*1とも呼ばれますが、どこかでお会いしたことありましたか……?」

「ああごめんなさいごめんなさい!さっきまで一緒に居た人が「ゆかり」っていう名前だったもので!つい!」

「ああ、八雲さんのお客さんだったんですね。それはそれは」

 

 

 困惑した表情を浮かべていたゆかりさんに頭を下げて謝罪。

 ……うむ、ニュートラルな感じのゆかりさん*2でよかった、これではっちゃけ系だったら目も当てられないことになっていた所だった……。*3

 ひそかに胸を撫で下ろしつつ、改めて対面のゆかりさんを眺めてみる。……パッケージの彼女がそのまま現実になったような姿だった。うーむ、ゆかりさん可愛い。*4

 

 

「あら、ありがとうございます。世辞*5だとしても、嬉しいものですね」

「世辞じゃないですよー。……いやまぁ、ゆかりさんなら言われ慣れてるでしょうけど」*6

「ふふふ、お上手ですね」

「いえいえ」*7

 

 

 そんな感じで話をしていたら、袖を引かれる*8感覚。……なんじゃらほい*9、と視線を横に向ければ、

 

 

「むー……」

(や、焼きマシュマロ*10、だと……っ!?)

 

 

 楯がこちらの袖を引いて、小さく膨れっ面を見せていたのだ。……まさかの焼きもちマシュである。レアショットなのでは?*11っていうか楯の自意識ホントにどっか行ってるなこれ?

 

 

「その、楯さんも私と同じく、せんぱいが自分を放っておいてお話ししているのは、ちょっと気になるみたいではありますが!」

「え、楯も焼きもち焼いてるの?……マシュに引っ張られてないそれ?」

「知りません!」

「ありゃ」

 

 

 ……むぅ、まさかゆかりさんと話してたら楯がそっぽを向くとは……。せんぱい、バッジが足りなかったか?*12

 って違う違う、ちょっと目の前の光景に現実逃避してたけど、そうじゃなくて。

 

 

「ふふ、仲が宜しいんですね」

「……あー、一応それなりに長い付き合いだったよね?」

「……せんぱいと楯さんの事でしたら、その通りですね。中学時代からの先輩後輩で関係あった、と言う記憶が私の中に存在しています」

「へぇ、そりゃ長い付き合いだねぇ」

 

 

 ……一つ違いの同性の知り合いだったので、昔からよくつるんでたってのは確かだけども。……なんだろう、なんか話が変な方向に行きそうな気がするから、別の話に切り替えなくては。

 

 

「と、ところでゆかりさんは、ここにどのようなご用事で?」

「ごまかし方が下手ですね、キーアさん。お食事処ですることなんて、決まっているじゃありませんか」

「……そういやここ飯屋だった」

 

 

 完全に自爆*13である。

 くすくす*14笑うゆかりさんと、なんとも言えずに沈黙する俺、そしてその横でちょっと拗ねてる楯と、ニヤニヤしてる五条さん。

 ……微妙に居たたまれないこの空気は、ゆかりさんが頼んだ料理がテーブルに運ばれてくるまで続くのだった。*15

 

 

 

 

 

 

「なるほど、案内の途中で八雲さんが用事に呼ばれてしまったと。それは災難でしたね」

「なんかもう結構長居してる気がする*16けど、俺達今日ここに来たばかりなんですよね。なので中に何があるのかとか全然わからなくて」

「……そうですね。この建物、通称『なりきり郷』ですが、八雲さんを筆頭とした空間拡張技能*17持ちの方々の協力により、外観よりも遥かに広い敷地面積を有しています。迂闊に歩き回ると迷う*18、というのはあながち間違いとも言いきれませんね」

「やっぱり……」

 

 

 ゆかりんに最初に連れてこられた社長室っぽいのは、窓があって普通に外が見えたけど、見た感じに普通のビルの一室、といった感じの部屋だった。

 対してこの料理屋街、どう見ても地下街の規模だった。

 ……流石に梅田*19とか新宿*20レベルじゃないだろうけど、それでもまぁ、一般的な政令指定都市*21の地下街くらいの広さはあるように思えたので、多分空間弄ってるんだろうな、とは思っていたのだ。

 

 ……ゆかりん以外にもそういうことできる人が複数居るみたいなのが、ちょっとだけ不穏にも思えるのだけど。いや、規模どんだけさこの組織……?

 

 

「ドラえもんなんかも居ますしね。……まぁ、想像通りのものかどうかは、ちょっと返答致しかねますが」

「え、なんなんですかその言い渋り、やべー系なんすかまさか?」

「さあ?私の口からは、なんとも」

「うっわ聞きたくないような聞いといた方がいいような……」

 

 

 ドラえもんでやべー系……ちょっとシモが入ってるくらい*22ならいいけど、もしネズミ撲滅系に動く*23ようなのだったら……。

 い、いや!そういうのは再現力足りないからひみつ道具も制限掛かってるはず!はず……。掛かってるといいなぁ……?

 

 

「せんぱい、心配のし過ぎは宜しくないかと」

「……せやね」

 

 

 楯に言われて小さく息を吐く。

 正直原因も分かってない内に被害者みたいな人達を疑っても仕方ない。

 今はまぁ、これからどう動くかを考えることにしよう。

 

 

「……そういえば、ここ場所的には何階になるんです?」

「そうですね、地下三十八階ですよ」

「ぶふっ!?」

 

 

 あぶね、危うくゆかりさんに水ぶっかけるところだった……。

 というか、思っていたより遥かに地下やんけ!?なんやねん地下三十八階って?!

 

 

「地下の特定階に住みたい!……って方がそれなりに多かったそうで、結構な深さまであるみたいですよ?無論、空間拡張を使っているので、本当に地下にあるわけでもありませんが」*24

「ああ、隠しダンジョンの裏ボス勢……」*25

 

 

 なんとかと煙は高いところが好きと言うけど、逆に裏ボス達は深いところに居るのが好き……みたいなのがあるのだろうか?

 わからんけど、あんまり好き勝手出歩くとエンカウント*26するなこれ、というのは理解できた。……地図とかないんだろうかここ……。

 

 

「ふむ、案内人が欲しい、ということでしょうか?」

「あ、はい。ゆかり……八雲さんが戻ってくるまでここで待つというのもあれですし」

「確かに。何時までも何も頼まずに居座るとか、飲食店からすれば営業妨害以外の何者でもないですしね」*27

「……はい、その通りです……」

 

 

 ゆかりさんの言葉に小さく頷く。

 ……流石にまーだ大丈夫みたいだけど、あんまり長居するといい顔はされないだろう。

 おあいそ*28をさっさと済ませて、外に出るべきだとは思っている。居るのだけど……ダンジョンに装備無しで放り込まれるのは勘弁願いたいというか*29……、せめてどっかで主神様とか紹介して貰えねーですかね?*30

 

 

「主神様のあてはありませんが、案内人のあてならありますよ?」

「なんと、あなたが神か」

「拝まないでください、ここそこら辺緩いので、いつの間にかゆかり神とかに奉り上げられかねませんので」*31

「それはまた、なんと言うか……」

 

 

 時空の歪みが神性*32まで付与できるようになったというのか!?

 ……いや、別に宣言したら取れたりするし言うほどでもないのか……?*33

 神との戦いを続けていた記憶がある*34からか、微妙な表情を浮かべている楯を横目に、ゆかりさんに案内人の紹介を頼み込む私。

 ゆかりさんは快く了承してくれたあと、スマホを操作して何処かへと連絡を取り始めた。……端から聞くぶんには、快諾を貰えたようで。相手はすぐにこちらに来る、とのことだった。

 

 そして、相手を待つことさらに五分ほど。

 

 

「んも~、ゆかりおねいさんってば、熱烈なラ・ブ・コールなんだからぁ~」

「はい、お久しぶりですねしんちゃん。まぁ今日の私はこれでさよなら、なんですけど」

「おお、おひさしぶり~。……それと、相変わらずゆかりおねいさんはクールだゾ……」

「しんちゃんにはこのくらいが丁度いいんですよ。そもそも、私以外にも粉かけてるでしょう、貴方」

「ゆかりおねいさん酷いゾ!オラ、いつだってしんけんなのに!らんすろーのおじさんも、『美しい女性に優しく声を掛けるのは紳士の役目』だって言ってたゾ!」

「『らんすろー』……?」

「マシュスト……いや違うギャラハッド*35分ストップ、落ち着けマジで落ち着け」

 

 

 そこに現れた人物と、ゆかりさんが仲良さげに会話をしている。……圧倒的コミュ力の塊*36だし、そこはわからないでもない。

 なんかいつの間にかどこぞの湖の騎士*37と仲良くなってるのも、まぁ、彼ならわからんでもない。……だから落ち着け楯の上のマシュの中のギャラハッド、ここで話をややこしくしようとするんじゃあない。……いやそもそもここでギャラハッド出てること自体がすでにややこしいわけだが。

 

 ややこし過ぎる話はとりあえず置いておいて、改めて呼ばれてやってきた人物に視線を向ける。

 こちらの視線に気付いた彼は、軽く右手を上にあげて、こちらに挨拶をしてくるのだった。

 

 

「オラ、野原しんのすけ!おねいさん達は、なんてお名前?」*38

 

 

 ……案内程度に最強の五歳児(セイヴァー)*39呼ぶやつがあるか!

 思わず襲ってきためまいを抑えつつ、俺は彼に笑みを返すのだった。

 

 

 

 

 

 

「ほうほう、ごじょーおにいさんに、マシュちゃんに、キーアおねいさんね。じゃ、こんごともよろしく~」

「ああ、うん。宜しくね。……ねぇキーアさん?なんでそんなカッチカチなの?

「宜しくね、しんちゃん。野原しんのすけって言ったら、春日部のセイヴァーのあだ名すらあるやべーやつなんだよ、なんで五条さんは寧ろ知らないのさ?

「は、はい!よろしくお願いします、しんちゃんさん。そ、それほどまでに高名な方なのですか?人は見掛けに寄らない、と言うことなのでしょうか……?

 

 

 ちゃうんやマシュ、日本人ならわりと一般教養なんや……。

 ……憑依元の知識の閲覧可能域がわからねぇ、どうなっとんのや一体。

 

 いやと言うか、わりと普通にしんちゃんとか呼ばれるとは思ってなかったというか。

 案内っていうから、もうちょっと普通の人が来ると思うじゃん?……いや、しんちゃん案内なら色々あっても最終的にはどうにかなるだろうけどさぁ……?

 そんな感じに三人でひそひそと話していたのだけれど。ふと、視線を五条さんの後ろに向けたら、その後ろに、しーっ、とこちらに指を立ててジェスチャーをしてくるしんちゃんが居て。

 ……ああ、クロスオーバーお決まりの、風間くんポジ……。*40

 

 

「ん?どこ見てるのキーアさ「ふーっ……」あひぃっ」

「おお、もう……」

 

 

 ……普通の五条さんなら絶対出さない声。

 逆憑依で無下限術式がちゃんと使えてないからこそ、起こりえたある種の奇跡。……いやまぁ、しんちゃんが五条さんの耳に息を吹き掛けただけなんだけど。*41

 

 

「何してるのかな君は……っ!?」

「んもー、人を待たせてるのにひそひそ話とか、オラぷんぷんだゾ!」

 

 

 間抜けな声を出してしまった羞恥で口元をひくひくさせる五条さんと、両手を頭の後ろで組んで「オラ、不満です」と全身で示すしんちゃん。

 ……うん、これに関しちゃこっちが悪い。素直に謝ろう。

 

 

「ごめんね、しんちゃん。ちょっと俺達、色々テンパっててさ」

「なーんだ、そーゆーことは最初に言ってよねー。キーアおねいさんが『レーダー』なんでしょ?」

「えっと、『リーダー』?」

「おおっ、そーともゆー」

 

 

 ……うーん、完全なしんちゃん節。*42

 何故かおねいさん扱いされていることに疑問がなくはないけど、なんというか安心してしまうやりとりだった。

 

 

「えっと、せんぱいは一応このようなお姿ですが、精神的には男性にあたる方です。おねいさん、と言うのは……」

「んもぅ、マシュちゃんはお堅いゾ。オラ、こーゆー人*43とはお付き合いがいっぱいあるから、対応には『吉日の豹』があるんだゾ!」

「……えっと、『一日の長』*44?」

「おおっ、それそれ~。ごじょーおにいさんも、なかなかやりますな~」

 

 

 ……いやこれ、どっちかと言うとマシュが『マシュおねいさん』じゃないほうが重要だな?*45

 そんなことを言い合いながら、外に出る俺達。

 昼を少し過ぎたくらいなので、人通りは並みくらい。……しんちゃんの背を見失うようなことは、多分ないだろう。

 

 

「じゃあ、おねがいできる?」

「ブ・ラジャー!みんな、オラについてきて~」

 

 

 こうして、私達は天下無敵の五歳児の背を追いかけ、建物内を探索することになったのだった。

 

 

*1
ゆかり、という名前の人を呼ぶ時によく使われるものである為、意外と被る

*2
大人の女性の情感あふれる声をベースにした、と公式に言われている通り、基本的には落ち着いた人物像が設定される事が多い

*3
無論、大人しい人ほど箍が外れた時が怖いのも確かな話。先輩達(ミクさんとか)と同じく変なキャラ付けもまぁ、自由なので是非もなし

*4
かわいい

*5
他人の機嫌を取る為の愛想のいい言葉。いわゆるリップサービス

*6
ゆかりさんは可愛いので、可愛いなんて言われなれてるでしょうね

*7
こういう奥ゆかしい対応が昔っから続いていたのが日本である。まどろっこしいとか言ってはいけない

*8
相手の注意を引く為の行為だが、どことなく幼さが見える

*9
『何のことだ』の意。長野県の民謡、木曽節の中の『木曽の御嶽山』という歌の一節、『木曽の御嶽山はなんじゃらほい』が発祥だとされる。響きがちょっととぼけた感じ

*10
焼いたマシュマロ。カリカリフワッとしていて美味しい。ちなみに、嫉妬していることを意味する焼き餅という言葉だが、元々は()くを()くに掛け、かつ『気持ちを妬く』と語呂合わせで『妬く気持ち』──すなわち『焼き餅』になったのだと言われている(諸説あり)

*11
一部の頃ならいざ知らず、二部での焼きマシュは意外とレアである

*12
ゲーム『ポケットモンスターシリーズ』では、ゲームを進める内にジムリーダーと呼ばれる強力なトレーナーと勝負をすることになる。彼等に勝利した証として貰えるのがジムバッジなのだが、このバッジには『他人から貰ったポケモンが言うことを聞くようになる』効果があるものがあった。逆に言うと、バッジを持っていない人が他人から高レベルのポケモンを貰っても、うまく使いこなせないというわけである。因みに、いわゆる初代ダイパ(第四世代)以降のゲームではバッジの所持数によってフレンドリィショップ(道具屋)の品揃えが変わり、ソード・シールド(第八世代)では所持しているバッジによって捕まえられるポケモンのレベルに制限が掛かるようになった

*13
機密保持の為に自身の装備や施設を爆破すること、自らを爆発させて何かしらの攻撃や防御に転用すること、など。……え?この場合は違うだろうって?

*14
いわゆるオノマトペ。その内の擬態語に当たるもの。基本的には忍び笑いのことを指す

*15
因みに、頼んだ料理がテーブルに運ばれるまでの時間は、大体十分前後くらいだとか

*16
まだ一日目のお昼です

*17
いわゆる四次元空間とか、はたまた空間圧縮とかを使って本来よりも広い空間を確保する技能。何でも入るアイテムボックスや四次元ポケットなど、場所の確保というのは何時まで経っても重要事項なわけで……

*18
人が迷う理由は様々だが、迷いやすい人は大体目印を見付けること・脳内で現在地を把握できないなどの共通点がある。……そういうの関係無しに、そもそも場所自体が迷わせる気満々の場合もある

*19
梅田地下街のこと。大阪の梅田駅を中心とした、複数の駅や百貨店の集合体。『梅田』と付く駅が五つ存在する、今もなお拡張工事を行っている……など、知れば知るほどダンジョンだとしか思えない場所

*20
新宿駅のこと。一日の利用者数が世界一な事も大概すごいが、出口が多すぎるホームが多すぎるなどなどの様々な要因によって、初見の人をほぼ迷わせるというあまりに恐ろしい現代の迷宮。因みに、新宿駅を探索するゲームが存在している

*21
一般的な政令指定都市とは……?一応、政令で指定された、人口50万人以上の市のことを言う

*22
○%の確率で○○するシリーズのこと。大体下ネタなので注意。……%というところに着目したガチャ狂い達が験担ぎにフォローしていたりする

*23
『地球破壊爆弾』の時点でわりとどうしようもない

*24
参考までに、一般的な建築物の天井高は2.5m、階高が3m前後。地下であっても上階と同じ階高を保つと仮定する場合、地下100階まで作っても深さは300m程度

*25
ゲームクリア後に解禁される隠しダンジョンは、大体上るか下るかである

*26
遭遇する、と言う意味の『エンカウンター(encounter)』から。ゲームなどで敵に出会うこと

*27
食べたのならさっさと出ていって欲しい、もしくは何も頼まないなら来ないで欲しい、は大体の飲食店が思っていることだろう。店の中がすかすかなら良いのか、という話にもなりかねないので直接口には出さないだろうが

*28
『愛想尽かし』が変化したもの。元は店側が客に勘定をお願いする時に使っていた言葉で、時代が進む内に客側も使うようになったもの。元々の言葉的に客が使うのはおかしい、という人もいる。……謎マナーかどうかは微妙なところ

*29
だからと言ってはした金と木の棒を渡して放り投げられるのも勘弁だが

*30
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』では、ダンジョンに潜る為に神の恩恵(ファルナ)を受ける必要がある。そうして神の恩恵を受けた者達が集まって出来上がった集団をファミリアと呼び、そのファミリアの主である神の事を主神と呼ぶ。一神話体型の最高神とは微妙に違うので注意

*31
誉め言葉の『神』が実際の『神』に移ろいやすいということ。……どこもかしこも、神ばかりだ。……貴様もどうせ、そうなるのだろう?

*32
ここでは『fateシリーズ』における『神性』スキルのこと。一時期特攻対象になる以外の効能が不明だった為ハズレスキル扱いされていたが、『粛清防御』と呼ばれる特殊な防御値をランク分削減する効果があることや、『菩提樹の悟り』『信仰の加護』といったスキルを打ち破れる事が判明し、評価が持ち直した。……ゲーム内ではその辺り考慮されてなかったりするが

*33
『皇帝特権』というスキルを高ランクで所持していれば、短期間ながら獲得できてしまうことから。恐らくは『私は○○の子孫だ』みたいな主張の拡大解釈だろう

*34
fgo二部では神との戦闘が多い。神が明確に『居ない』のは『永久凍土帝国 アナスタシア』『人智統合真国 シン』くらいである

*35
円卓の騎士の一人。唯一聖杯を手にした騎士であり、手に入れたと同時に天に召された。清廉にして潔白()()()騎士

*36
彼が仲が悪いのなんて、基本的に敵対者くらいのもんである

*37
謎の黒騎士「SHUUUUUUUUTTTTTUPPPPPPPPPPP──!!」

*38
『クレヨンしんちゃん』の主人公。嵐を呼ぶ幼稚園児

*39
『fateシリーズ』のサーヴァントクラスの一つ、『救世主(セイヴァー)』のクラスに準えて。毎年毎年映画作品で春日部やら日本やら地球やらを救ったりしてる為、功績が積み上がりまくっている。似たような存在には野比のび太(『ドラえもん』主人公)が挙げられる

*40
しんちゃんが同作キャラクターの風間トオルにたまにやっている行動。相手が怒ったり緊張したりはたまた何でもない時なんかにそっと近付いて、耳に息をふっと吹き掛ける。大抵怒られる。しんちゃんがクロスオーバーすると、大抵強面なキャラがこの行動の被害にあう

*41
五条さんはそんな声出さない(真顔)

*42
言い間違いを指摘されてしんちゃんがこう返すのは、ある種のお決まり

*43
内面と外側の性別があっていない人のこと。そういう人達の扱いが難しくなっていく中で消えていったが、わりとカッコいい人達が多かったように思う

*44
一日早く生まれたの意。そこから転じて、他の人よりも経験や知識が豊富であることを示す

*45
原作描写的に、多分しんちゃんはマシュをおねいさんとは呼ばないと思われる



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流行りものに福があるとは限らない

「んあ?……おー、しんのすけじゃねーか、元気かーオイ」

「お、銀ちゃんこんにちわー。それと、オラはいつだって元気だゾ!で、銀ちゃんは……うん、聞かなくてもわかるゾ」

「オイ待て、五歳児にまで察せられるとか俺今どんな顔色してんの?!やべー顔色なんじゃねぇーのぉーっ!?」

「また二日酔いだってすぐにわかったゾ。お水飲む?」

「おー、飲む飲む」

 

 

 ……店を出て五分も経たない内に、やけに濃い人物に出会ってしまった。

 さっきも一度目にしていた銀髪天然パーマの男、坂田銀時である。

 お決まりのように二日酔い状態で、五歳児から近くのお店で貰ってきたお冷を飲み干す姿は、なんというかうーん銀魂、って感じだった。*1

 ……銀魂世界ならこれから騒動の種が転がってきて、そこからまた切った張ったの大立ち回りが始まるものなのだが──。

 

 

「いやねー、ほら?俺らこっちの世界の人じゃないだろ?記録もあって記憶もある感じだけど、多分いつかは帰る人だろ?……ここに居る分には金の問題とかいっっっさい無いから、なんかもうパフェ食ったり飲んだり遊んだりでイイんじゃねーの、って気分になってだな?」

「銀ちゃん、それ完全にダメな大人の考え方だゾ……」

「ほらほらしんちゃん、あんまり近付いちゃダメだよー、ダメは伝染るからねー」

「ほ~い」

「あれ?ちょっと?もしかして俺、初対面でまるでダメな大人、略してマダオ*2扱いされてたりする?」

「二日酔いで道路脇に転がってて、金の心配もないから日がなチャランポラン*3してる……そんな銀髪パーマのおっさんのどこに、尊敬できるような要素があるというのか」

「いやちょっと待て、チャランポランとかについてはなんにも言い返せねーけど、髪の色に関しては関係ねーだろうが!?っていうかそこの『はたけカカシ・オルタ』*4みたいな奴だって銀髪*5じゃねーか、銀髪っつったらそれだけで若い子にバカウケ*6のアピールポイントの一つだろ?それでチャランポランなんて帳消しだって銀さん思うんですけどー!?」

「……ねぇ、これ喧嘩売られてる?」

「五条さんどうどう!どうどう!」

「マシュちゃんって時々変な方向にかっ飛ぶよね……」*7

 

 

 ……あ、これギャグ回っすね。お疲れさまでしたー、解散解散。

 いつもの音楽*8流れてると思うんで、このままCMに行っちゃいましょー。

 

 

「……あれ、この子手慣れてない?ボケに対するスルー力が半端なくない?」

「いや、対応してるとまんま銀魂になるんで。……モチーフキャラ塗れだと、どっかに偏る運営できないんで…………」*9

「いや待って、なんで俺に対する対応の話から、中間管理職の悲哀の話みたいになってんのこれ?」

「銀さんが良ければ、あとで愚痴、聞いて下さいな?飲みながらでいいので」

「え、あ、はい。俺なんかで良ければ喜んで。……なぁそこの嬢ちゃん、なんでこの人、社会に疲れたおっさんみたいな空気纏ってんの……?

その……せんぱいの居らっしゃったスレは、お話に聞いた限りだと、あまり治安がいい場所ではなかったようで……

あー大体わかった。スレ主特有の哀愁だったのな……

 

 

 ……おかしいな、さっきまでこっちにちょっと敵愾心があった銀さんの目が、今ではなんか慈愛と言うか慈悲というか哀れみと言うかを湛えたものになっちゃったぞ?ふふふおかしいなーふふふ……。

 

 

「もー、こんなんじゃ先が『重い槍』*10だゾ」

「それ、『思い遣り』じゃねーか?」

「おー、そーともゆー」

「……『思いやられる』じゃないの?」

「「おお、それそれ~」」

「ええ……?」

 

 

 

 

 

 

 とりあえず銀さんと飲む約束をして、施設探索を再開した俺達一行。

 途中、目があったので勝負を仕掛けてくる短パン小僧*11が居たり、オレはカードで死ぬなら本望だ!とか言う全速前進しそうな人が居たり*12、唐突にボーグバトル*13が始まったのを必死にスルーしたりしたわけだが。……トラブル転がりすぎじゃない?

 その尽くをしんちゃんがクリアリング*14してくれたので、どうにかなったのだった。ただ……。

 

 

「おっ?キーアおねいさん、どったの?」

「さ、流石にちょっと、いろいろありすぎて目眩が……」

 

 

 一度にトラブルが襲ってきすぎでしょうここ!疲れるわ!下手すると立ってるだけで疲労困憊だわ!*15

 

 途中で五条さんが「あ、俺も用事があるんだった」って唐突に離脱したから、なんなんだろうって思って去っていく彼に向けてた視線を前方に戻したら、右手に並ぶ料理店の一つに『宿儺'sキッチン』*16なる看板が見えて思わず吹いたし!!*17

 怖いもの見たさで中を覗いてみたら、まさかの四本腕の方の宿儺が居て思わず卒倒しかけたし!*18

 気絶しそうなのを堪えて再度中を確認したら、わりと繁盛してる上に宿儺めっちゃニコニコ*19だったから「あ、これ再現度低いやつだわ(料理キャラになってる)」ってなって思わず胸を撫で下ろして。*20

 

 ビビらせんじゃねーよ、って思いながらふと対面のお店に視線を向けたらこっちはこっちで『波旬カレー店』って看板があって今度こそ意識飛んだし!!*21

 ……いやまぁ、カレー店やってる方の彼*22なら問題ないなってすぐ起きたけど。でもしんちゃん、「波旬おにいさんとはお友達なんだゾ」とか言うのは止めて下さい、胃が死にます(白目)*23

 

 というかなんだここ、なんでこんな罷り間違ったら危険人物*24でしか無いやつばっかり並んでるんだよ……地獄か、ここが地獄の一丁目*25なのか……?

 

 ……みたいな感じで、ちょっと、切実に、休憩が欲しいわけですはい……。

 

 

「んもー、キーアおねいさんったら仕方がないんだから~。じゃ、おやすみできるいい場所があるから、そこへ行くゾ」

「あーうん、できればふつーのとこでお願いします……」

 

 

 そんな感じで、癒やしを求めてやってきたのは喫茶店。

 ……なーんか見たことある気がする店だな、と思いつつ、疲れてたので碌に確認せずに中へ。

 

 

「はーい、いらっしゃいませー!……あ、しんちゃんだ!こんにちわ、しんちゃん」

「ほっほーい、お久しぶりーココアちゃん。今日はお客さんを連れてきたんだゾ!」

「……ん?ここあ?……ってごちうさ!?」*26

「わ、びっくりした……。うん、私保登 心愛(ほと ここあ)!よろしくね?」*27

 

 

 そこでこちらを迎えてくれたのは、濃いめの赤み掛かった金髪(ストロベリーブロンド)をセミロングの長さまで伸ばし、半分になった花のような髪飾りがトレードマークの可愛らしい少女。

 ……まさかのココアちゃんである。声がどこかの爆弾魔とかじゃない*28、普通のココアちゃんである。

 明確に安心できるキャラの登場に、思わず安堵のため息が漏れた。ナイスしんちゃん、ここはいい休憩場所だ!

 

 

「……ふむ?お客さんか。じゃあ私も一仕事しようか」

「…………ん゛?」

 

 

 と、思ったら、奥から聞こえてくるどこかで聞いたことのある声。

 ……いや正確には、ここで()()()()()()()()()()と、雰囲気が違うというか……?

 そうして謎の不安感に包まれつつ奥に進んだ私達。そこで出会ったのは──。

 

 

「やぁやぁお客人。ようこそ喫茶『RAT-HOUSE(ラットハウス)』へ。このコーヒーはサービス*29だ、よーく味わってくれたまえ?」

「まさかのロリライネス*30ぅ!!?」

 

 

 なんでここに君が居るの!?と驚く俺の前で、金髪ボブカットの小悪魔的な笑みを浮かべた少女が、してやったりと言わんばかりにふふんと鼻を鳴らすのだった。

 

 

 

 

 

 

「え!?ライネスさん?!」

 

 

 俺の言葉に楯が素っ頓狂な声をあげる。

 あれ、ライネスは知ってるは……あ、そっか。おっきい方しか知らんのか。楯も基本的にFGO以外の型月作品に詳しい方でもなかったし。

 そんな俺達を面白がるように、彼女は小さく目を細め。

 

 

「ふむ?私を知っているのも居るみたいだけど。まぁ、挨拶は大事と言うしね、精々大仰に名乗らせてもらうとしよう。私は『ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ』*31。基本は事件簿準拠*32だが、一応人理が焼け落ちた後(fate/grand_order)のことについても記憶している*33、大分不可思議な状況の女の子、さ。……なので、マシュのことも記憶しているよ。慣れないかも知れないけれど、フランクに付き合ってもらえると嬉しいね」

「え、あ、はいっ、こちらこそ、よろしくお願いしますっ」

「まぁ、私も再現度はさほど高くない方だ。できることなんて、ここでコーヒーを淹れることくらいなんだけど」

 

 

 挨拶を終えた彼女は、小さく嘆息して手元のそれ──コーヒーミル*34のハンドルをくるくると回し始めた。

 ……いや待て、やっぱりチノちゃんポジかいお主!?*35

 

 

「その、チノちゃん*36はね?こっちには来てないみたいなんだ。私もあんまり良くわかってないから、どうしよう……って迷ってた時に、ライネスちゃんに会ったの!」

「なるほど……。……ん?さっき()()()()じゃなくて()()()って言ってなかった?」

「そうだよー?で、この子がラットハウスのマスコット!」

「ぴか、ぴかぴーか」*37

「朝に紹介されたピカチュウ!?あ、ラットってネズミか!」

 

 

 しょんぼりした様子のココアちゃんから語られたのは、チノちゃんは今の所こっちには来ていないのだ、という事情。……まぁ、普通にスレ運営してても主要メンバーが揃わないなんてよくある話だしなぁ。*38

 その代わりがロリライネスなのも、ちょっとびっくりなんだけど。

 

 そんでもって更にびっくりしたのが、ここラビットハウスじゃねぇ、ってこと。ラットだから、マスコットもネズミ──まさかの朝にゆかりんから紹介されたピカチュウだった。……変なところで繋がるな……?

 件のピカチュウは、ココアが床に下ろすとそのまま走ってライネスの横に行き、コーヒーミルの隣に腰を下ろした。

 

 コーヒーミルを扱うロリライネスの横に、ピカチュウ。

 ……なんだろうこの不思議空間。ココアちゃんは楽しげに携帯でぱしゃぱしゃ写真撮ってたけど。

 いや、そもそもなんでライネスがコーヒー淹れてるんだこれ?

 

 

「中の人の影響、だね。()は、自分でコーヒーを淹れられる程度には、こういう物を齧ったことがあるみたいでね。差し詰め『憑依継承(サクスィード・ファンタズム)*39の逆、と言ったところか。……あいや、単純に疑似サーヴァントが持つ肉体由来のスキル*40、と言った方が近いか……?」

「うー、ライネスちゃんのお話は難しくてよくわからないよー!」

「おっと、ゴメンゴメン。ここに居る内はラットハウスの看板娘で行こうと決めてるんだった」

「な、仲がよろしいのですね……?」

 

 

 ……なんか、意外と上手くやってるらしい。ちょっと意外なような、そうでもないような?

 

 ってあれ、しんちゃんは?

 そう思って店内を見回すと、いつの間にか下に降りていたピカチュウと、謎の変顔対決*41をしていた。……いやなんで?

 

 

「ふっ、オラにここまでさせるとは、そちらもなかなかやりますなぁ」

「ぴか、ぴかぴか、ちゃー」*42

「「………………」」

「「わーっはっはっはっはっ(ぴーっかっかっかっかっ)!!」」

「なに これ」

「せ、せんぱい?!お気を確かにっ!?せんぱーいっ!?」

 

 

 もうダメ、キャパオーバー。*43

 アクション仮面な高笑い*44を上げる二人の声をバックに、私は意識を手放すのだった──。

 

 

*1
好きなものは甘いものな銀さんだが、酒を飲んで二日酔いになっている姿もよく見受けられる

*2
『銀魂』での言葉。初出時は「まるでダメなおっさん」の略称。頭文字が同じ場合に使い回されている

*3
しっかりした考えのない、その場限りの言動。『ちゃらほら』からの変化とされるが、そっちは口からでまかせの嘘のことだとか

*4
『NARUTO』の登場人物、はたけカカシと五条さんがなんとなく似てる、というネタ。隠してるのはそれぞれ目元と口元なのだが、雰囲気とかが似ている、みたいに言われることがある。オルタの方は『fateシリーズ』の用語。いまいち説明が難しいが、基本的には闇落ちみたいなもんだと思っとくと大体当たってる。そして時々外れる

*5
銀色の髪のこと。実際に銀にはならないので近い色としてそう呼んでいるだけなので、人によって微妙に基準が違ったりする

*6
バカみたいにウケる、なのか新潟の方言である『ばか(すごく)』ウケる、なのかは微妙な所

*7
ふかふかしたり法螺貝吹いたり、意外と情緒豊かなマシュなのであった

*8
『てめーらァァァ!!それでも銀魂ついてんのかァァァ!』というBGM。CM行く前とかに流れてるよね

*9
パワーバランスが みだれる !

*10
?「シグルド(英雄)ですか?」

*11
ゲーム『ポケットモンスター』から短パン小僧、及び彼等トレーナーの言い分。「めと めが あったら はじまる ポケモンしょうぶ! それが トレーナーの きまりなの」言い方は違えど、大体みんな似たようなことを言う。戦闘民族過ぎる……

*12
『遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ』の登場人物、海馬 瀬人の事。ベジータ系ライバルキャラだが、アニメと漫画(映画)軸では先行きがかなり異なる人物。どっちにしても突拍子もないことをし始めるのは同じ

*13
「ボーグバトル界だけで通じるルールを世間一般のわたしたちに押し付けないでよ!常識知らずのボーグ馬鹿!」いてててて……。とりあえず、気になる人は『人造昆虫カブトボーグ V×V』について調べてみるといいんじゃないかな……

*14
クリアなリングのこと。……ではなくて、ファーストパーソン・シューティング(fps)などでの安全確認のこと。障害物に隠れた敵兵等を片付ける行為。ちゃんとしてないと後ろから射たれたりする

*15
立ち方が悪いと単に立っているだけなのに疲れることがある。……え?そういうことじゃない?

*16
名前の元ネタは『MOCO'Sキッチン』。俳優・速水もこみち氏が料理人として登場する人気番組。現在終了済み

*17
彼の使うとある術式が料理に準えられているのではないか、という説から派生して、彼を料理人として見るネタが存在する

*18
『呪術廻戦』の登場キャラクター、『両面宿儺』。名前自体は飛騨の大鬼神と同じだが、呪術世界では神の方は架空の存在。四本腕なので、この彼は生前の姿でここに居るようだ

*19
あまりにもニコニコしているので逆に恐ろしいレベル。……だが、逆にそんな笑みを彼がするはずもないので、なりきり分の多い状態だとすぐにわかった、とは八雲紫の言。でもまぁ、五条さんが見たくない、と逃げるのもわからないでもない

*20
『ほっと安堵する』の意。慣用句なので実際に撫で下ろす必要はない

*21
波旬でカレーの時点でとあるキャラに限定されるので、キーアの胃に過大なダメージ!

*22
「生きてるだけで最高さ!」が口癖の、心優しいお兄さん。『神咒神威神楽 曙之光 打ち上げパーティ』という特典CDで出てくるのだが、本編である『神咒神威神楽 曙之光』の彼と見比べると「ええ……?」と混乱すること間違いなしである。いやまぁ、本編が劇中劇だったら、みたいな設定なので仕方がないのだが。因みにおまけの方の彼の得意料理はカレー

*23
この波旬おにいさんは、社交的で家事得意でスポーツ万能で友達は無量大数の超コミュ強である。別の意味で人間辞めてませんか

*24
変な解釈くっつけることで無力化されているが、本来どっちもラスボス級である

*25
きわめて恐ろしい場所の例え。また、破滅や困難に直面する手前のこと。歌舞伎脚本『四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは)』に出てくる一節、「(ここ)は地獄の一丁目で二丁目のねえ所だ」が元ネタか

*26
『ご注文はうさぎですか?』のこと。とある喫茶店で働く女の子達の日常を描いた4コマ漫画。三度アニメ化している結構な人気作品

*27
『ご注文はうさぎですか?』の主人公。天真爛漫で涙もろく、快活で数学に強い。動物好きで本も好き、チノちゃんはもっと好き、な女の子

*28
そういうMAD動画が存在する。無論二次創作なので取り扱い注意

*29
5ちゃんねるがまだ2ちゃんねるだったころ、釣りスレ内に書かれていた文の一節、『このテキーラはサービスだから』から。騙して悪いが

*30
『ロード・エルメロイII世の事件簿』アニメ一話などで見られる特殊仕様。……いや幼いときの姿、というだけのことなのだが

*31
エルメロイ家当主の少女。一応の初出作品は『fate/Apocrypha』。見た目だけならお人形のように美しい少女だが、わりと性格がアレ(原作者曰く愉悦系少女)

*32
彼女の本格的な活躍は『ロード・エルメロイII世の事件簿』で語られている

*33
『fate/grand_order』においては星5(SSR)ライダーとして実装済み。割と珍しいサポート型の騎兵で、そちらではここにはいない彼女の侍従兼使い魔、トリムマウも同行している

*34
焙煎されたコーヒー豆を粉砕するための機械。挽きたてコーヒーは味も香りも違うが、その理由は酸化のせいらしい

*35
『ご注文はうさぎですか?』に登場する香風智乃と、ライネスの声優は同じ人。……雰囲気がぜんぜん違うので、言われて初めて気付く人も居るかも知れない

*36
『ご注文はうさぎですか?』に登場するキャラの一人、香風智乃のこと。物静かでコーヒーとおじいちゃんが大好きな女の子

*37
また会ったなねーちゃん達

*38
張り切ってスレ立てして、特定のキャラをなりきりしてみるものの。他のメンバーがやってこなかったり来ても居なくなったりして、モチベを失う人は結構いる

*39
『fate/grand_order』内の用語。デミ・サーヴァントだけが持つ特殊スキル。憑依した英霊が持つスキルを一つだけ継承し、自己流にアレンジする

*40
疑似サーヴァントと呼ばれる者達は、憑依した人間が持つスキルを持ち合わせている

*41
どっちも変顔が得意(正確にはピカチュウはサトシのピカチュウの方)

*42
ぼうずも、なかなかだったぜ

*43
『キャパシティオーバー』。和製英語。体積的な容量や人の能力的な許容範囲を示す『キャパシティ(capacity)』と、越えるという意味の『オーバー(over)』が組合わさった言葉。要するに『もう知らね』ということ

*44
『クレヨンしんちゃん』内の劇中劇、『アクション仮面』の特徴的な笑い方



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(スレが)続くものと続かぬもの、見た目でわかれば世話はない、的な

 ───これは夢想の絵画。

 

 手を伸ばせど届かず。

 朽ち行くはずのモノに、与えられた僅かな奇跡。

 願いは叶えられ、その者は新しい旅路を行くのだろう。

 

 ──その道が、仮初めのものであったとしても。

 いつか必ず覚めてしまう夢なのだとしても。

 彼の者はその夢を胸に、明日を夢見続けるのだろう。

 

 決して届かぬ、夢の続きを。*1

 

 

 

 

 

 

 

 ──欠けた夢を、見ていたようだ。*2

 

 いやまぁ、ちょっとカッコ付けてみたものの、単にキャパオーバーでぶっ倒れただけなんだけどね?

 ただ、夢の中で思いっきり語り掛けられてた気がする辺り、なんというかやべーことになってそう感が凄いなー、とは思っているわけなのだが。

 ……ってか夢想の絵画*3とか言ってたなあの夢魔?*4

 

 

「あ、せんぱい。よかった、無事お目覚めになられたのですね。……その、お体の方は大丈夫ですか?」

「ん、大丈夫大丈夫。一回全部投げたらとりあえず楽になったからへーきへーき」*5

 

 

 目を覚ますのとほぼ同じタイミングで、楯が部屋に入ってきていた。

 ……何故かラットハウスの制服*6を着て。いや、なして?可愛いし似合ってるけど、なして?

 

 

「そのですね、せんぱい。私、マシュ・キリエライトは、ここラットハウスで、働かせていただくことになったのです!」

「なる、ほど?」

 

 

 ……声優ネタとしては若干危ないところじゃないそれ?*7

 

 なんて思ったのだが、別にそういうわけではないらしく。

 私が気絶している間に、楯とライネス、ココアちゃんの間でいろいろと会話をしたところ、暫くの間ラットハウスで働くことになったのだとか。……良いとこで気絶しちまったわけですねわかります。

 

 

「その、せんぱいに相談もせずに決めてしまったことについては謝罪します。……ですが、私が今すべきことは、ここで働くことだと、そう思うのです」

「あー、うん。別に私に許可とか取らなくてもいいよ。別に貴方の保護者ってわけじゃないし」

 

 

 申し訳なさそうに伏し目がちな視線をこちらに向けてくる楯に、小さく苦笑を返す。

 いつかのマシュと同じく、自身の理由を見付けられると言うのなら、それはそれで構わないのだ。

 

 ……いかんな、思考がちょっとシリアス*8に寄ってるような気がする。それもこれもあの夢魔のせいだな、マーリンシスベシフォーウ!*9

 一回首を振って、滞った思考を全て発散。

 ……ん、元の()、見参。小さく息を吐いて、完全に復調。

 ベッドからよっ、と飛び起きて立ち上がる。

 

 

「えっと、どうされたのですかせんぱい?」

「んー、なんでもないよー。とりあえず、下に降りよっか。ライネスも待ってるんでしょ?」

「あ、はい。せんぱいをお待ちです、ココアさんもご一緒に」

「へーい、いろいろあんがとねマシュ」

「えっ!?あ、はいっ!」

 

 

 マシュ()に感謝を返して、階段を降りて下へ。

 階下では、店内の客席の一角で先のメンバー達がコーヒーブレイク*10を楽しんでいた。

 

 

「お、キーアおねいさん戻ってきたゾ」

「おや、結構早かったね。おはようキルフィッシュ君、そ・れ・と・も、キーアと馴れ馴れしく読ぶ方がお好みかな?」

「どちらでもお好きにどーぞ。どっちで呼ばれるのも慣れてるし」

「ふむ?……ああ、()()()()。じゃ、私は君をキーアと呼ばせて貰うことにするよ」

「…………うん、宜しくライネス」

 

 

 気付いてやんの。……ホントに再現度が低いのかこの人?

 まぁ、不都合があるわけでもなし、とりあえず話を始めよう。

 彼女の対面の開いてる席に腰を下ろす私達。それを確認して、ライネスが口を開く。

 

 

「それで、一応マシュから触り*11くらいは聞いてるだろうけど。彼女、うちで働くことになったから」

「うん。まぁよくわからんけど、話し合って決めたってことならこっちに言うことはないよ。マシュのやりたいことを尊重したいしね」

「ホント!?やった!マシュちゃんと一緒にバイトだ~♪」

「は、はい!これからよろしくお願いします!」

「おー、これでラットハウスもますます賑やかになりますな~」

「ぴーか、ぴっぴかちゅう」*12

 

 

 彼女の言葉に了承の意を示すと、ココアちゃんが椅子から飛び降りてマシュに駆け寄り、その手を取った。

 そのままマシュと手を合わせて、心底楽しそうに跳ね回るココアちゃん。

 マシュもたどたどしいながらも、それに合わせて彼女と踊るように店内を回っている。……うむ、良い光景だな!

 しんちゃんと一緒になって、うんうんと頷いておく。

 

 

「で、その間君はどうする?別に一緒にうちで働いて貰っても構わないけど」

「んー……いや、こっちはこっちで別にいろいろと見て回ろうかと思ってるから、今のところはいいかな。まぁ、毎日顔を見に来るつもりではあるけど」

「えー、キーアちゃんは一緒じゃないんだ……」

 

 

 かと思えば、私が単独行動*13をすることを伝えると露骨にテンションが下がった。……なんやこの私が悪いことしたみたいな空気は。

 仕方がないので、ふいっと浮いて、しょぼんとしているココアの頭をなでなで。*14

 

 

「えっ!?キーアちゃん飛べるんだ!?」

「そうそう、私は悪い魔法使い*15だからねー。こういうのわけないんだよー」

「悪い魔法使いだったの!?」

「悪いよー凄く悪い。なんてったって魔王*16だからね、私」

「魔王っ!?まさかの勇者*17ココア計画が、ここでスタートしちゃうの?!」

「……倒しに来るの?」

「はぅっ!?そ、その顔は反則だよー!」

「ははは、魔王なので反則くらいわけないのだー」

「うわー!こんなの負けちゃうよー!?」

 

 

 なでなでよりも、身長差を埋めるために宙に浮いたことに驚かれてしまった。……ついでなので設定を明かして魔王ムーブ。

 魔王=悪*18、という古い価値観なココアを存分にからかいつつ、時に見た目を悪用した下からの覗き込み涙目で、勇者ココアにクリティカルヒット*19を繰り出し。

 さっきまでの沈んだ空気が完全に払拭された事を確認して、私は席に戻った。……対面のライネスが、苦笑と半笑いの混じった表現に困る顔を向けてきてたんだけど、これは一体何事で?

 

 

「いや、他所の世界の事だし、そもそも今の私は魔術師*20って訳でもないから、こういうことを考えるのは筋違い……なんだけどさ?……そうポンポン空を飛ばれると、こちらにも少々思うところが無くもなくてだね?」

「……そういや飛行魔術って相当に高度なもんでしたね」*21

 

 

 失敬失敬、と舌を出しつつ謝罪。*22

 対面のライネスの表情が更に複雑なものになっていたけど、とりあえず怒ったりするつもりはないようだ。……意外と自制心が強いですね?

 

 

「……おい、流石の私も怒るぞ」

「ごめんごめん。ライネス相手に付け入る隙を見せるとヤバそうだから、つい」

「……そこは、私もちょっと否定しかねるな」

 

 

 自分で自分の癖とかちゃんと把握できてるのは凄いと思うけどね、と返せば、君とはどうにもやりにくいな、と返される。

 ……いやまぁ、()()()()()ならこっちの方が押されてただろうからなぁ。そこら辺は、大目に見て欲しいところだ。

 そんな事を口にすれば、彼女は嘆息した後に小さく首を横に振った。

 

 

「……まぁ、いいさ。それで?今日はこれからどうするつもりだい?」

「んー、一回ゆかりんのところに帰りたいって感じかなー。そろそろ用事も終わったんじゃないかな、って思うし」

「あ、そうでした。八雲さんからの説明が途中でしたね」

「あ、八雲さんとも知り合いなんだー。凄いんだね、キーアちゃんもマシュちゃんも!」

「……知り合い、かなぁ?」

「あれ?」

 

 

 一緒にご飯を食べた仲、というと結構親密そうに聞こえるけど、所詮は一緒に外食をしただけだからなぁ?

 困惑するココアを置いて、マシュと顔を見合わせる。……んむ、まぁ苦笑いしか返ってこんよね、これは。

 

 

「うん、今日あったばっかりだからよーわからん」

「出会ったばっかりなのにフランク過ぎるよ……キーアちゃん達コミュ力の塊だよ……」

「その称号はしんちゃんにこそ相応しいと思うんだ」

「あ、それは確かに」

「お?なになに?オラ褒められちゃった?いやー、それほどでも~」

「うん、褒めてる褒めてる」

「……お?」

 

 

 ……基本的に褒めてない*23、って言われる流れだったからか、そのまま褒められたしんちゃんが、おめめをぱちくりしている。

 珍しい表情だな、なんて思いつつ私はコーヒーに口を付けるのだった。……にがっ。*24

 

 

 

 

 

 

「はーいお待たせ!迎えに来た……って、あれ?五条君は?」

「途中で料理屋見付けちゃったので退散しました」*25

「……ああ、あのお店ね……ちょっと悪いことしちゃったかしら?」

「まぁ、それよりも前からちょっと抜けたそうにしてたみたいだし、気にすることないんじゃないかなー?」

 

 

 ライネスがゆかりんへの連絡手段を持っていたので、連絡を入れて貰って大体五分後。

 机の横にスキマが開き、そこからゆかりんが上半身だけをこちらに出してきていた。

 

 お待たせと言った後に周囲を見回して、居なくなってる五条さんについての説明をこちらに求めてくる。

 ……魔窟に近付きたくないから途中で離脱しましたよ、と返せば、ゆかりんは納得したように遠い目をしていた。……見たことあるのか、ゆかりん。管理者は大変だな……。

 

 なので、そもそもそこを通る前からそわそわしてたから、離脱するいい機会になって向こうも感謝してるかもしれないよ?的な事を追加で証言しておく。

 

 

「そう?……ってあら?」

「おっと、それはあとで」

「……?せんぱい、どうされたのですか?」

「なんでもないなんでもない。とりあえず、元の部屋に戻る?」

「……そうね。とりあえず、戻りましょうか。ライネスちゃんもココアちゃんも、また今度ゆっくりお話ししましょうね?」

「ん、またコーヒーを飲みに来るといい。今度はゆっくりね」

「はーい!八雲さん、お待ちしてますねー!」

「おー、オラもオラもー!」

「はいはい、また一緒にね?」

「ほっほーい!八雲おねいさんも、お元気でね~」

 

 

 何事かを気付いた様子のゆかりんに静かに、とジェスチャー。

 不思議そうにこちらを見てくるマシュになんでもないと返して、ラットハウスのメンバー達に別れの挨拶。……しんちゃん的には、ゆかりんも十分許容範囲らしい。

 

 そうして挨拶を済ませた私達は、元の社長室っぽい場所に戻ってきたのだった。

 

 

「それにしても、しんちゃんにも出会ってたのね。運が良いんだか悪いんだか……」

()()()()()()だから?」*26

「そういうこと。……いえ、ある意味もう嵐には巻き込まれているんでしょうけど」

 

 

 再びソファーに座り直して、ゆかりんと向き合う。

 ……最初と違って一人居ないわけだけど、それはまぁ仕方ない。

 

 

「さて、ホントは昼の話の続きをしたいのだけれど──うん、もう夕方だし、寝床の案内をして今日は終わりかしら?」

「あ、やっぱり元の家には戻れない感じ?」

「というより、戻せないが正解ね。……姿形に性格まで変わってしまっているのに、今まで通りの日常を過ごすのは不可能でしょう?」*27

 

 

 そのまま話が再開されるのかと思ったのだけれど、流石に探索やらなんやらで時間を使いすぎたらしい。

 壁に掛かった時計を確認すれば、現在の時刻は夕方の六時くらい。

 そろそろ夕食の準備やらなにやらを考えなければならない時間だ。……まぁ、そこは気にしなくてもいいって今言われたわけだけど。

 

 姿が変わってしまっている以上、今まで通りの生活を送るのは不可能。

 故に、『なりきり郷』ではそこのサポートを行っているのだという。……昼間の銀さんが言っていた「金の心配はいらない」ということの理由だ。

 

 

「えっと。その場合、元の家族への連絡などは……?」

「一応政府のお偉いさん方ともパイプがあるから、それでちょちょいとね。基本的には未知の感染症に罹患してしまったので長期入院、みたいな感じに通達されているはずよ」

「なるほど……」

 

 

 マシュの疑問に答えるゆかりん。……一応私も彼女も親元からは離れていたから、そこまで心配は掛けない……といいなぁ?

 感染症扱いなのは、いつか元に戻ることがあった時の為のものだろう。いろいろ用意周到と言うか、なんかきな臭くも感じると言うか。……考えすぎならいいんだけど。

 

 

「ふぁ……ああ、ごめんなさい。ちょっと私も限界みたい……」

「え、どうされたのですか八雲さん?」

「心配しなくてもいいよマシュ、ゆかりんは一日十二時間寝てないといけないんだよ」*28

「え!?そ、それはなんとも……」

「心配してくれてありがとねマシュちゃん。……ふあぁ……ん、もうダメそう、ごめんなさい、後は()()に任せるわね……」

「あ、居るんだ(らん)

 

 

 そんな事を考えていたら、ゆかりんが大きなあくび*29。……んん、これだけ自由に見える彼女でも、『八雲紫であること』には逆らえない、か。

 私達が見ている前でソファーに横になって寝息を立て始めるゆかりん。それと時を同じくして、奥の扉が開いて一つの人影が室内に入ってくる。

 その姿は、道士服*30を着た狐の美女*31……じゃない!?

 

 

「あーもう、八雲さんってばまーたソファーで寝ちゃってる。んー、でもこうなるともう朝まで起きないからなぁ……ってあ、ごめんなさい。八雲さんからお話は聞いてます。私、毛利蘭*32です。この人をベッドに運び終わったら、お二人の部屋にご案内しますので、もう少し待っていて下さいね?」

(そ……ッッそうきたかァ~~~ッッッ)*33

 

 

 ……やって来たランはラン違いだった。

 思わず私達が硬直する間に、彼女はゆかりんを抱き上げて*34奥に消えていってしまう。

 

 私達は互いに顔を見合わせ、なんとも言えない気分で毛利さんが戻ってくるのを待つことになるのだった……。

 

*1
夢を視ているモノ、夢に視られているモノ。──主体は果たして、どちらなのだろうね?

*2
『fate/extra』に登場する主人公が時折見る夢、及びそれに対する台詞

*3
『fate/grand_order』第二部において、クリア後に貰える概念礼装(アイテム)に記された文章内の言葉。これが書かれていないものもあるため、全てが夢想、というわけではないのかもしれない

*4
おっと気付かれてしまったか。ちょっと黙っていよう、うん!それがいい!

*5
それは本当に楽になったのですか?あとで投げたものが返ってきませんか?……という呪いも含む行動。投げたものが深淵に消える保証はどこにもない……(白目)

*6
ラビットハウスの制服と同じ。マシュの場合は、ちょっと薄い紫のベストと赤いリボンになっている

*7
マシュ・キリエライトの担当声優は変更された事がある。その一つ目のボイスを担当したのが、ごちうさのとあるキャラクターと同じという話

*8
『深刻、重大な、真面目な』と言った意味の『シリアス(serious)』から。物語のジャンルの一つでもある

*9
『fate/grand_order』に登場する小動物、フォウ君の喋った台詞。気持ちはわからないでもない

*10
コーヒーを飲みながら少し休憩すること。小休止

*11
物事の一番重要な部分。元々は浄瑠璃用語であり、義太夫節において一番の聞きどころを指す言葉。話の初めの部分のことではないので注意

*12
やったな嬢ちゃん

*13
一人で動くこと。ボッチが得意な行動。……なんて言われるが、実際は単独で()()動けないだけである。一人での行動が()()()()()()()()()ので、そこを勘違いすると酷いことになったりする

*14
単に頭を撫でるだけの行為でも、いろいろと相手に気持ちを伝えることができる。間違っても撫ですぎて摩擦熱とか起こさないように!

*15
魔法を使う者のこと。類義語に魔導師や魔術師などが存在する。一応、奇術師(マジシャン)も広義では魔法使いに入ったりする

*16
元は仏教用語。いわゆる『御立派様(マーラ)』を指す言葉で、似たような立ち位置のものにも流用された結果、現在のように気軽に使われる言葉になった。基本的には『魔的な者達の王様』の意味で使われる

*17
勇敢なる者、勇ましい者。日本における勇者のイメージは、基本的に『ドラゴンクエスト』から派生している

*18
最近の魔王もいろいろバリエーションが増えている。単に魔物達の王くらいの立ち位置だと、人間よりも温厚なことも

*19
会心の一撃。()心の一撃ではない。敵の急所などに攻撃が命中したことで、通常よりも高いダメージを与えられた、という状態を指す言葉

*20
型月世界における魔術を使う者達のこと。魔術と魔法を明確に区別しているので、混同すると怒られる

*21
型月世界において、軽いものを浮かせるのは難しい事ではない。術式も単純なのでへっぽこ魔術師でも簡単に取得できる。……重くなればなるだけ難しくなるため、世の魔法少女アニメみたいな空中飛行はほぼ不可能である。……カレイドルビー?ありゃ例外だよ

*22
いわゆる『てへぺろ』。テヘッと笑いながらペロッと舌を出す動作。もともとは声優・日笠陽子氏の持ちネタ。基本的には可愛い女の子にしか許されない奥義

*23
しんちゃんが何かをして、それに対して照れた彼に褒めてない、と返す一種のお約束

*24
コーヒーの苦味は主に焙煎した時に生じるものなので、世の中には苦くないコーヒーも存在する

*25
前話参照。多少なりとも知識があったらみんな見なかったふりをすると思う

*26
しんちゃんに付けられたキャッチコピー。『嵐を呼ぶ幼稚園児』とも。皆をハチャメチャに巻き込む嵐のような子供、ということだろうか

*27
体が変化する系の話についてまわる問題。それだけで一本物語が書ける題材

*28
正確には十二時間()()。冬眠までするらしい

*29
眠いときなどに起きる生理現象。基本的には大口を開けて深呼吸すること。あくびが出る理由についてはよくわかっておらず、「脳が酸欠になっていることを知らせるシグナル」「空気を取り込むことで熱くなった脳を冷やしている」等が理由として上げられるが、どれも信憑性としてはイマイチなようだ(前者は酸欠を解消するような酸素量を取り込めるわけではなく、後者は風邪などの脳が熱くなっている時にあくびが多くなると言うこともない為)

*30
道士が着用している服。『道袍』と呼ばれる漢服の一種。道士とは、道教を修めた者の事、または仙人の事

*31
『東方Project』の登場キャラクター、『八雲藍』の事。八雲紫の使役する式神であり、自身もまた式神を使役するだけの力量を持つ強大な存在

*32
『名探偵コナン』の登場人物の一人。探偵ものには荒事がつきものだが、それにしたって戦闘能力が高すぎる少女。これでも作中最強ではないのだから恐ろしい

*33
格闘漫画『グラップラー刃牙』第二部『バキ』のとある話において作中人物の一人『烈海王』が述べた台詞。相手が格闘家だからこの驚き方を選んだような感じだろうか?

*34
もちろんお姫様抱っこ



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一日の終わりに質問の数を数えて明日に備える

「お待たせしましたー!さっ、案内しますからこちらに」

「あ、はいっ」

 

 

 帰ってきた毛利さんに連れられ、部屋を出る。

 外は普通のオフィスビル*1みたいな感じで、通路を彼女の背を追って歩く。

 途中で誰かにすれ違うことも無かったのは、時間的なものなのか場所的なものなのか。……どっちもかなぁ?

 なんて事を考えながら、視線を左右にちらりらり。

 

 ……ふーむ、多分最上階かここ。ってことはやっぱり社長室?いや、ここは敢えて「スレ主の部屋」とでも呼ぶべきか。

 ……なんか胃が痛くなってきたぞぅ……。

 ああやめてやめて、新しい設定とか引っ張ってきて全部しっちゃかめっちゃか*2にしようとするとかホントやめて。*3

 調整するの私なんだぞいい加減にしろ……。

 

 

「あの、せんぱい?」

「ん?どうしたのマシュ?」

「……その、お疲れなのでしょうか?先程から、視線が時折ここではないどこかに向かっているように思えるのですが……」

「あー、うん。疲れてはいるよ、でもそれは貴方もでしょ?」

「え、あ。……そう、ですね。思えば、今日一日でいろいろな事があったように思えます」

 

 

 こちらの顔色を見ていたマシュが、気遣うように声を掛けてくれる。……そういうマシュも、少し動きが精彩に欠けだしていた*4ので指摘。

 それを受けた彼女は、素直に自身の疲労を認め、今日一日の出来事に思いを馳せるように目を閉じる。

 

 朝、いきなり姿が変わってしまって途方にくれていたら、似た現象に巻き込まれた他の人達と出会い。

 昼、ちょっとした白昼夢*5と、白昼夢だった方が嬉しいようなモノと出会い。

 夜、こうして新たな生活を始める為の、新しい住処に向かって歩き。

 

 ……箇条書き*6すると大したこと無さそうだけど、随分と濃い一日だったように思う。

 

 

「……お二方は、今日こちらに着いたばかりなんですよね?」

「あ、はい。私もせんぱいも、()()なったのは今日の朝ですので」

「なるほど。……じゃあ、一つご忠告を。夜になったら、部屋の外には出ないようにお願いします」

 

 

 先導していた毛利さんが、こちらに視線だけを向けてくる。

 ……鋭い眼光で、堅い口調で、こちらに注意を促してくる。

 マシュが、小さく息を呑んで。

 

 

「それは、どうしてですか?」

「それは────」

 

 

 廊下を歩く音だけが響く中、暫く道なりに進んで。

 階下に通じるエレベーター*7の前にたどり着いて、ようやく彼女が動きを見せる。視線をふいと逸らして、とある方向に向けたのだ。

 彼女が見詰めるのは、ガラス張りになっているエレベーターシャフト*8から見える、下の階の様子。そこにあったのは──。

 

 

「……皆さん、夕方辺りになると活発になって、ちょっと羽目を外しちゃうんです……」

「……うわぁ」

 

 

 シリアスな空気が一瞬で霧散する。

 

 視線の先に居るのは、酒瓶持って好き勝手騒いでいる酔っぱらい共。……どう考えても路上飲酒者とかあの辺りである。

 いや、真顔*9になるわこんなん。

 確かに夜になると騒ぎ出す人は多いけど、まさか逆憑依されても変わらない上に夕方からやってるとか思わないじゃんか。……ってん?

 

 

「どうされましたか、せんぱい?」

「いや今、銀ちゃんらしき人が下に飛び降りたような……?」

「え、は?!それは一大事なのでは?!」

「いや、下のプールにダイブしたみたいだから、多分平気なんじゃないかな……」*10

 

 

 何か大立ち回り*11して落っこちたのか、はたまた酔った勢いでアイキャンフライ*12したのか、こっからじゃよくわからない。

 ……ただ、なんとなーく、多分酔った勢い*13だろうなと思う。

 だって後追いが増えたからね、みんな楽しそうに水柱*14上げてるよ、これはひどい。パリピ*15かなんかか君ら。

 

 

「……ぐふっ」

「せんぱい!?どうされたのですかせんぱい!?」

「い、いや、なんでもない、なんでもないんだ……っ」

 

 

 そう、なんでもない。

 ……昔スレにやってきた、やけに濃い謎のルー語*16みたいなのを使う奴を思い出しただけだから、何も問題はないんだ……っ!!

 

 

「えっと、とりあえず乗りませんか?お二人を案内するのも、下の階にある宿泊施設区画なので」

「あ、はい。せんぱい、大丈夫ですか……?」

「大丈夫大丈夫、だって私には複素数*17がついてるからね、虚数を掛ければそのうち戻ってくる*18んだ、こんなに頼もしいことはない……」*19

「せんぱい?本当に大丈夫ですかせんぱい?!」

 

 

 ふふふふ、ちょっと変なキャラハンが居ても、スレ運営はスレ主時代のあれこれで慣れてるから大丈夫よマシュ……。*20

 これは決して、そういう風に自分に言い聞かせている*21わけではないんだからね……。

 

 

 

 

 

 

「ふと気がつくと、そこは部屋の中だった」

「あの、本当に大丈夫なんですかこの人?」

「えっと、多分……きっと、大丈夫だと思うのですが……」

 

 

 いつのまにか、今日泊まる部屋に着いていた。

 ……道中立ち並ぶ宿やらホテルやらがやっぱり濃いものばっかりだった気がする*22ので、意識を飛ばしていたのは正解だったのかも知れない。……一日に受けていい胃のダメージをオーバーしている気がするし。

 

 深呼吸をして、今度こそ完全に持ち直す。

 そのままマシュ達の方を向き、小さく頭を下げた。

 

 

「お手数お掛けしました。……もう大丈夫ですんで」

「はぁ、だったらいいんですけど……。えっと、この部屋に付いての説明はマシュさんにさせていただきましたので、詳しくは彼女に聞いてくださいね」

「はい!毛利さん、道中ありがとうございました!」

 

 

 マシュのお礼を聞きながら、毛利さんは部屋から出ていった。

 

 人心地*23ついたので、改めて自分達が今いる部屋を見渡してみる。

 ……んー、RPG*24の宿屋みたいな間取りだ。

 壁はレンガ、ベッドは木製、布団はふかふか。

 あいにくと何か原作ありの場所なのかはわからない。……ドラクエ*25の宿屋とか、あの辺りのような気がしなくもないけど。

 

 二つ並んだベッドの片方に腰を下ろすと、対面のベッドに同じようにマシュが腰を下ろした。

 こちらを向いたマシュが、微笑みながら声を掛けてくる。

 

 

「お疲れさまでした、せんぱい。これからどうされますか?」

「んー……夕食食べたら、今日のところは素直に毛利さんの言葉に従って、部屋で静かにしてようかね。夜に動くなら動くで、また案内役が欲しいところだし」

「……そうですね。私も、ラットハウスでの勤務が始まれば、夜以外せんぱいとご一緒することも難しくなってしまうでしょうし……」

 

 

 そうして話すのはこれからのこと。

 元に戻ることを目標にするにしても、今の私達には圧倒的に情報が不足している。

 そもそも、この『なりきり郷』の全貌もろくにわかっていないのだ、元に戻るという目標自体が見当違いである可能性もある。

 

 

「と、言いますと?」

「私らみたいな人へのサポート体制が、ちょっと整いすぎてる気がしなくもないっていうかね?……私達が知らないだけで、こういう事は頻繁に起きてることなのかもしれない。で、頻発しているのに世間であんまり騒ぎになっていないんだとすると……」

「治療法、ないし対処法が既に確立している可能性がある……と言うことですか?」

「そゆこと」

 

 

 流石に察しがいいマシュに微笑み返して、改めて考えてみる。

 

 元に戻る手段が既にわかっているなら、空想を現実に持ち込むことができる現状は、様々な人間にとって宝の山のようなモノだと言えるだろう。……『GATE(ゲート)』みたいなものっていうか?*26

 

 まぁ、どこまで持ち込めるのかがわからない*27ので、これも見当違いの可能性があるわけなのだけど。

 実際、『どこまでなりきれているか』なんてあやふやな基準で出力制限が掛かっていると思しい以上、安定した運用は不可能だろう。

 ついでに言うと、原因がわからないうちは再現も困難だろうから、仮に利用するにしても今居る人物達以外の都合はつけ辛いはずだ。……狙ったものが得られない程度で済めばいいが、変に危ないものでも呼び寄せてしまったら後が大変だし。*28

 

 

「……だからゆかりんが社長っぽいのかな」*29

「な、なるほど。ご本人は謙遜されて居ましたが、今日お会いした人の中では一番の応用力をお持ちでしたね」

 

 

 ゆかりんの『境界を操る程度の能力』は、できることの幅が非常に広い能力だ。

 朝と昼の境界を弄って時間を狂わせたり、空と海の境界を弄ってその境を失わせたりと言った大きなことから、水と油の境界を弄って燃える水*30を作ったり、はたまた暑さと寒さの境界を弄って常に快適な温度にするなどの小さなことまで、本人の発想力次第で幾らでも応用の効く強技能である。

 

 ……まぁ、対象が自分よりも格上だったりすると能力が効かなかったりするらしいので、決して全能というわけでもないようだが。

 それでも、万能を名乗るには十分な技能だろう。

 

 それをここに居るゆかりんはほぼ十全に使えるのだから、有用性は言わずもがな、性格面でも温厚なので話し合いもばっちり。

 まさに管理者足る器*31、というわけだ。……面倒事の押し付けられ役?……スレ主ってそういうもんよ。*32

 

 

「まぁ、その辺りの調査というか聞き込みというかは、また今度かな。ゆかりんに聞いてみたら一発でわかるかもしれないし」

「なるほど……では、この後は外に向かわれますか?」

「そうしよっか。……料理店街は地下三十八階だっけか。で、ここは地下五階、と」

 

 

 またあの魔窟に向かわなきゃならんのか……。

 ちょっとテンション*33が下がるが、飯を食べない方がもっとテンション駄々下がりである。

 しゃあない、腹括って外に繰り出しますか……!

 

 マシュを伴い、地下に向かう。

 道中様々なハプニングに遭遇したが、まぁどうにか対処して。

 美味しいご飯を食べて、お風呂に入……ろうとしてちょっと一悶着あって。

 帰る途中でもう一度ハプニングに巻き込まれたあと、部屋に戻ってきた私達は、ベッドに付くなり泥のように眠りにつく*34のでした。*35

 

 

*1
事務所(オフィス)に使うことを主用途としたビルの事。一般的なビルは基本これ

*2
物事が混乱したさま、滅茶苦茶。因みに標準語。奈良時代の弦楽器『弛衣茶伽(ちいちゃか)』が語源だという説が有力。弦が23本もあるとかそりゃ無茶苦茶ですわ

*3
マンネリ解消の為に新しい設定を突っ込む行為は、大体うまく行かない(白目)

*4
活気がなく、生き生きとした感じがないことを示す言葉。端的に言えば調子が悪そう、という事

*5
日中に起きたままみる夢、すなわち空想や妄想のこと。転じて、夢だとしか思えないような非現実的な現象の事

*6
表現方法の一つ。物事を一つ一つ書き記すこと。複雑な情報を整理するのに向いているが、事実だけしか記載されておらず、物事の間の繋がりを無視していることもままある為、書いてあることをそのまま鵜呑みにするのはわりと危険だったりもする

*7
昇降機。人やモノを乗せて上下に運搬する機械。日本では、水平投影面積(建物の真上から光を当てた時に地面にできる影の広さ)が1.2平方メートル以上であるか、天井の高さが1.2m以上のモノを指す。それより小さいものは「小荷物専用昇降機」と呼ばれる。因みに、建築基準法では高さ31mを越える(大体7から10階)建築物はエレベーターの設置義務が生じるようになっている

*8
エレベーターが実際に走行する縦穴状の空間の事。昇降路とも。因みにガラス製のエレベーターは展望用エレベーター(シースルーエレベーター)とも呼ばれる

*9
真面目な顔の事。無表情とも

*10
訓練した人なら40mくらいの高さからプールに飛び込みしても怪我をしないようだが、慣れない人なら二階くらいの高さ(大体5m前後)からでも普通に危ないので、迂闊に飛び込んだりしないように

*11
元は芝居で大勢が激しく争う演技のこと。そこから、取っ組み合いなどの派手な喧嘩を指すようにもなった

*12
『I can fly』。私は飛べる。飛べなくても飛べる。ネタとしては映画『ピンポン』の主人公、星野 裕(通称『ペコ』)がこの言葉を叫びながら川に飛び込んだのが初とされている

*13
そもそもの話、酔うのがわかっているなら、酔っても大丈夫な場所で飲むべきである。起きたら足が無くなってる、なんて恐ろしい事件もあるのだから

*14
冨岡義勇さんのことではない。……飛び込んでる人達は冨と義を失ってるかも知れない

*15
パーティーピープルの略。パーティ大好きな騒ぎたがりの人々の事。陽キャとは微妙に違う存在、らしい

*16
ルー大柴氏の使う独特な言語の事。日本語ベースに所々英単語が混ざる不思議な言葉

*17
実数と虚数によって構成される数。複素数zを表す式は「z=a+bi」(aとbは実数、iは虚数)。名前は『複数の素を持つ数字』の意味か。『複数の素数』ではない。初見では混乱する数字だが、()()()で平面を示す為のモノ、と考えるとなんとなく理解した気分になれる。虚数とは存在しない数なので、これを直線上で示すことはできない。その為、直線上には()()()()()新しい軸を使って表現される。その結果、複素数を表す図がグラフみたいに見えるので複素数平面なんて風に呼ばれている

*18
複素数の基本。虚数iとは二乗すると「-1」になる数字である。これを複素数平面上で表すと(複素数zに虚数iを掛ける)、最初に居た場所から90度ずつ左に回転していくことになる(直線上でマイナス数を掛けると反対方向(=180度)に回転するのと考え方は同じ)。なので、4回虚数を掛けると元の場所に戻ってくる

*19
『こんなに~ない』という言い回しは、『機動戦士ガンダム』の主人公、アムロ・レイが最終回に言った台詞、『まだ僕には帰れる所があるんだ。こんなに嬉しいことはない』を意識したもの

*20
こんなに俺とキーアで認識の差があるとは思わなかった…!みたいな独特の語録からわかる通り、元ネタは『スーパーロボット大戦K』の主人公、ミスト・レックスの台詞の一つ『ちょっと興奮した人がいても暴徒鎮圧は防衛隊時代の任務で慣れてます!』から。霧が出てきたな……

*21
じぶんに あんじを かける ことで あいてに かかっている ほじょ こうかを じぶんにも かける。……それは『じこあんじ』だって?

*22
『ホテルモスクワ』(BLACK LAGOON)とか『喜翆荘』(花咲くいろは)とか『閻魔亭』(fate/grand_order)とか、わりと節操なく並んでいた。『なりきり郷』内のこの施設達は、一応全部普通の宿泊施設である。危険はない。……はず。……そもそも大型旅館がビル内に入ってる?出張店舗で小さいんだよきっと……

*23
ひとごこち。生きている気持ち、ほっとした様子

*24
ロールプレイングゲームの事。ロールプレイ(role-play)で役を演じるの意味であるため、繋げて「役を演じて遊ぶ」こと、またはその遊びそのものを指す。とはいえ、近年ではコンピューターゲームのジャンルとしてのRPGの方が有名なため、微妙に意味がずれてしまっているが。そちらは特定のキャラを操作して物語を進めていくような作品が大体当てはまる

*25
『ドラゴンクエスト』の事。RPGと言えばこれか『ファイナルファンタジー』を上げる人が多いだろうという、RPGの金字塔的存在

*26
GATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』のこと。突如銀座に現れた『門』(ゲート)を巡る人々の物語。門の先には特地と呼ばれる別世界が広がっており、利権やら資源やらの関係で色々とややこしいことになっていく

*27
ロボ系のなりきりでロボット持ってこれたら、世界の科学技術が一足飛びに進化するかもしれない。だけどゲッターロボとかは止めてね……(震え声)

*28
既にキーアはそのせいで何度か胃を痛めている

*29
人によっては大昔の二次創作ネタである『ボーダー商事』を思い出すかもしれない

*30
文字通りに燃える水。どこかのスキューバダイビング漫画(ぐらんぶる)の『燃える水(スピリタス)』の事ではない

*31
何かを入れる為の物。王としての資質やジオンの理想を受け継ぐ者たちの意志なんかも入る。……要するに不定形のものも含む、ということ

*32
一番偉いということは、責任を取るのもソイツと言う事だ。……本来なら

*33
本来の意味は緊張、不安。「モチベーション(motivation)」と混同されている部分があり、そちらは行動の際の動機付けや目的意識の意味

*34
深い眠りのこと。中国の古書『異物志(いぶつし)』に出てくる『(でい)』という虫が語源だというのが有力。『泥』は海に住む想像上の虫で、骨がないので陸に上がると(どろ)のように形を保てなくなる。その姿と同じようにぐったりとした様子で意識もなく眠る、ということを『泥のように眠る』というようになった、という説なのだとか

*35
省略されたハプニングはその内幕間とかになると思われる




とりあえず一章(=一日目)はこれにて終幕にございます。
次回は幕間とか流したあと、二章を始める予定です。




投稿時期?なりきりって毎日来ないと名無しが来なくなるんですよ……(死んだ目)


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幕間・一枚隔てたその向こう

 なりきり板。それは、一種の魔境。

 キャラクターになりきって、名無しからの質問を受け答える遊び。

 

 地の文は使えず、自身の会話文のみで話を進める関係上、皆が己なりの工夫を積み上げながら、どうにかして相手を楽しませ、自分を楽しませようとしている。

 ……まぁ、初心者は自分だけが楽しいモノをやりすぎて大体酷い目に合うのだが。

 

 今回は、そんななりきりスレの一つ。

 キャラハンが一人、来なくなってしまったスレを覗いてみよう───。

 

 

 

 

 

【まだまだ私と】ラビットハウスへようこそ!【踊ってもらうよ!】

 

1:保登心愛◇M9msJ7CC[sage] 2020/5/2 18:00

はーい、いらっしゃいませー!

ラビットハウスに来るのは初めて?じゃあ、自己紹介!

私、ここラビットハウスで働いてる保登心愛!気軽にココア、って呼んでね?

 

それとね、今はちょっとお出かけ中なんだけど、ラビットハウスには素敵な仲間がいっぱい居るんだよー!

早く戻ってきてくれると嬉しいな~♪

 

……あ、そうだ!はい、これ!(>>2)

これはね、ラビットハウスの中で守って欲しいことをチラシにしたの!

みんなを待つあいだ、読んでくれると嬉しいな?

じゃ、張り切って行ってみよー!

 

 

2:◇M9msJ7CC[sage] 2020/5/2 18:01

☆ラビットハウスでのお約束

 

①:店内で大騒ぎするのはダメだよ!(荒らし厳禁!)

②:お話をするのは、私とかチノちゃん達だけだよ!(キャラハンはごちうさキャラだけ!)

③:でも、お客さんを無視はしないよ!(掛け合いは極力控えるよ!)

④:エッチなのはダメー!(セク質はダメ!)

 

 

 

うぇるかむかも~ん

 

3:[age] 2020/5/2 18:03

まずはブルーマウンテンでも貰おうか……

 

4:[age] 2020/5/2 18:04

O☆KA☆WA☆RI☆DA!

 

5:保登心愛◇M9msJ7CC[sage] 2020/5/2 18:10

わ、わわわ!?チノちゃん居ないのにお客さん来ちゃった!?

は、はいはーい!いらっしゃいませ!ラビットハウスへようこそ、お客様?

 

>>3

はーい、承りましたー!

えっと、ブルーマウンテンブルーマウンテン……って、どんなコーヒーだっけ?

……あれ?そう言えば、青山さんと同じ名前だ?

 

……!

 

私、わかっちゃったかも!

つまり、青山さんにコーヒーを淹れて貰ったらいいんだよね?りょうかい、急いで青山さんを探してくるねー!

 

 

>>4

うわーん!青山さんどこにも居ないよー!

うう、こんなんじゃまたチノちゃんに嫌われちゃう……。

 

>>4<O☆KA☆WA☆RI☆DA!

 

わわっ!?新しいお客さん!?

えっとえっと、おかわり?

え、もしかして、チノちゃんもうコーヒー出してたの?!

わ、私いらない子だぁーっ!!

うわーん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

750:[age] 2021/6/1 20:47

最近ココアちゃん来ないね

 

751:[age] 2021/6/1 20:49

飽きたんじゃない?

 

752:[age] 2021/6/1 20:56

なりきりにはよくあるよくある

 

753:[age] 2021/6/1 21:00

バトミントンやろうぜ!

 

754:天々座理世◇gt35bptm[sage] 2021/6/1 21:06

リゼだ、今日も粛々とこなしていこう。

 

>>750->>752

あーその、なんだ?

心配なのはわかるが、店の中で相談されると出てくるものも出てこないんじゃないか、と私は思うわけでだな?

……ほら、時には信じて静かに待つ、というのも必要なことだろう?

だから、そら。

コーヒーを飲みながら、静かに待とうじゃないか。

 

>>753

バドミントンか、そう言えばチノのやつにコーチをしてやったこともあったな。

横で千夜とココアがバレーの練習をしていたが……実はあれ、軍隊式の訓練だった、とかはないだろうか?……ない?そっかー……。

 

755:[age] 2021/6/1 21:07

チノちゃん!お祖父さんを下さい!

 

756:[age] 2021/6/1 21:08

なんの!リゼさん!お父さんを下さい!

 

757:[age] 2021/6/1 21:09

なにこの流れ……あ、俺にはティッピーください()

 

758:[sage] 2021/6/1 21:11

何故誰一人として女性陣に向かって行かないのか……あ、コーヒー下さい

 

759:[age] 2021/6/1 21:12

ここまでタカヒロさんなし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふふっ、そっか。リゼちゃん達、頑張ってるんだな……」

「おや、勤務中に携帯弄りとは、随分と余裕があるみたいじゃないかココア?」

「はっわわわわわっ!!?ららららライネスちゃん?!いつから後ろに!?」

「ついさっきだよ。まぁ、今は暇な時間だから別に構わないがね」

「うー、ごめんねライネスちゃん。ちょっと気になっちゃって……」

「なに、古巣が気になるだなんて可愛いものさ。……寧ろ、確認できる方が珍しいわけだしね

「え?何か言ったライネスちゃん?」

「いいやなにも?」

「ふーん……?……あ、もうそろそろマシュちゃん来るんじゃないかな?」

「ん?……ほう、確かにそんな時間だね。じゃあトリムマウ、定位置に来たまえ」

「ぴーか、ぴっぴかちゅう」*1

 

 

 

 

 

 

 ──あの時せんぱいに言った、自分はマシュであるけれど、マシュではないという言葉。

 自己の不一致、認識の齟齬。

 ……様々な言葉で言い表せるであろうそれは、けれど、どれもが現状の説明には足りていませんでした。

 

 どちらでもない、どれでもない、どれにもなれない。

 

 それは私の内を焼き付くし、壊し尽くす呪いだったのです。

 何故なら、マシュ・キリエライトとは。

 何も持たぬ無垢な少女が色彩を見せられ(に魅せられ)、自らのそれ(色彩)を見付ける為に生きた女の子。

 ──それを被り、被らせた今の私は、紛い物以外の何者でもなく。

 あの時の私は必死で、せんぱい(先輩)を探していたのです。

 身勝手で、どうしようもないワガママな理由で。──ただ、安心させて欲しいという、それだけの為に。

 

 後から八雲さんに確認してわかったのですが、元の人物と憑依者のズレがそこまで酷くなることは珍しく、確認できた症例では基本的に「レベル5」判定となり、他の方々からは隔離されてしまうのだとか。

 

 それを、持ち直したのは。

 紛れもなく、せんぱいのおかげであり。

 同時に、せんぱいの()()でもある。

 ───そんなことを思ってしまう自分が、どうしようもなく恐ろしい。

 

 

「……それはまた、なんと言うか。マシュちゃんってばホント生真面目だねぇ」

「そ、そうでしょうか……?」

 

 

 店内に入って早々に、堂々と「冷やかしに来た」と仰った五条さんは、テーブルに置かれたカプチーノを一飲みして、小さく笑うのです。

 

 

「どう足掻いても、ここに居る俺達は()()()()()()()でしかない。紙や映像の向こうに見える彼等(原作)とは、近似ではあっても同価じゃあないんだ」

「……はい、それはわかっています。第四の壁(fourth wall)の向こうに来たかどうかもあやふやな私達は、そもそも自己同一性に悩めるほどの基盤があるわけではないと……」

「ああ違う違う、そうじゃなくて」

 

 

 悩むような資格がないのではないか、そう言おうとしたのですが、五条さんに発言を阻まれてしまいます。

 彼は、浮かべていた笑みを苦笑に変えて、こちらに話しかけて下さいました。

 

 

「そもそもの話として、向こう側の彼等(原作)を自分だと思う必要はないんだよ。少なくとも、ここに居るってだけで別人なんだから」

「そ、それはあまりにも乱暴な論理ではありませんか?!私達(なりきり)は、私達(原作)を元にしている、いえ、していないとおかしいのです!」

「うーん、「レベル5」級にもなると割り切りもちょっと難しいのかなー。……ああいや、()()()じゃないってだけか」

 

 

 五条さんは何かを納得したように苦笑していますが、私としては何も納得できません。

 ですが彼は、「俺の考えと君の考えは恐らく永遠に交差しないよ」と仰るのです。……それは、どういうことなのでしょうか?

 

 

「君に取ってその悩みは、決して切り離せないものだ、ってことだよ。──()()()()()()()()()、君はマシュ・キリエライト足りえるんだ」

「悩み、続けるから……?」

「そういうこと。……俺なんかは()()って割り切ってるけれど、君にはそれはできないし、してはいけないってこと」

 

 

 違うことを認めるか、認めないか。

 恐らくは、そこに差を生むものがあるのだと、彼は言います。

 私は、違うことを認められないからこそ、『マシュ』としてここに居ることができるのだと。

 ……ですが、それは──。

 

 

「苦しい、って言いたいんでしょ?でも、そこで苦しいって思う君だから、ここに居る他の誰よりも『原作(マシュ)』に近いところに居るんだよ。そしてその上で──君は、君である(原作でない)ことを見付けなきゃいけない」

「それは……」

 

 

 苦しいと喘ぎながら、それでも前を向き続ける。

 ──それは。なんて……恐ろしくて、それで。

 

 

「ある種の再誕とでも言うか。……()らが何を望まれてここに居るのか、正直よくわからないけど。多分、その先に答えがあるんだろうさ。……まぁ、そこまで思い悩まなくても、君は既にその道を歩き始めているんだろうけどね」

「……それは、どういう?」

 

 

 一瞬思考の淵に沈んでいた私に、彼が告げるのは決定的な一言。私が、変わり始めていることの証左。

 

 

「少なくとも、ここで働くって決断をしたのは()でしょ?」

「!そ、それは……そうすべきだと、思ったからで……」

「そう思ったのはここに居る君でしょ?じゃあそれは君のものだ、君だけの、責任」

「……私だけの、責任」

 

 

 マシュ・キリエライト(彼女)の責任ではなく。──ここにいる、()の責任。

 

 思わず、小さく苦笑が漏れてしまいました。こんなにも苦しんで、こんなにも悔やんでいるのに。──それでも、私は知らず知らずの内に前を向いている。

 それが私が彼女(マシュ)だからなのか、それとも()だからなのかは、まだわかりません。

 

 それでも──私は、この責任から逃げることだけはしたくないと、そう思ったのです。

 

 

「……ん、まぁ俺も話を聞いた甲斐があったかな。マシュちゃんが沈んでると、あの人もテンション下がってるし」

「え、せんぱいが、ですか?」

 

 

 私が意気を新たにしていると、五条さんがぽつりと呟きました。内容は、せんぱいについて。

 

 

「そうそう。君が思ってるより彼女、君を気にしてるみたいだから。まぁ、笑顔で迎えてあげるのがいいんじゃない?」

「……そういえば、せんぱいからお聞きしたのですが、五条さんは先生もされていたのだとか。生徒のメンタルケアはお手の物、ということでしょうか?」

 

 

 よく皆さんを見ていらっしゃるのですね、という思いで言葉を紡いだのですが、何故か五条さんは苦い顔。

 ……あ、あれ?私、変なことを言ってしまったのでしょうか……?

 

 

「見たことない、というのはある種の罪だねぇ、五条?」

「ライネスちゃん、からかうの止めてくれる?」

「ははは、いつも余裕ぶってる相手が弱り目ならば、全力で弄るのが私という人間だよ?恨むのなら、コーヒーだけ頼んで軽食の一つも注文しない、君自身のケチ臭さを恨むといい」

「……ランチ一つ」

「はいはいただいまー♪」

 

 

 私が困惑する前で、苦い顔をしていた五条さんの周りを、いつの間にかこちらに来ていたライネスさんがくるくると回り、やがて根負けしたように呻きのような注文を一つ仰っていたのですが。……その、これは、どういうことなのでしょうか?

 

 

「まぁ、人には誰しも触れて欲しくないものがある、ということさ。さ、マシュ。いい加減仕事の再開だ」

「あ、はい!マシュ・キリエライト、張り切って注文を取ってきます!」

「あ、私も私も!保登心愛、いきまーす!」

 

 

 隣を駆けていくココアさんを追って、私もお客様達の元に向かいます。

 ──このラットハウスでの勤務も、はや一週間。

 私の新しい色彩を求める旅は、まだまだ始まったばかりなのでした。

 

 

*1
いつの間にか名前がトリムマウになってた件



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幕間・三人寄れば騒がしく、両手の花も笑いだす

遠い世界、遥か彼方の銀河の中で……

 

 

 

 

 

今からそう遠くはない時代、とある辺境惑星の地に、一人の男が存在していた。

──銀の魂を持つ男。

人々は彼のことを、こう呼んだ。

 

 

 

 

 

───シルバーサムライ、と。

*1*2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シッパイザムラーイ!……じゃねぇんだよ」*3

「いきなりどしたの銀さん?」

 

 

 突然にコマンドミスした感じの台詞を呟く銀さんに、首を傾げる私。

 いつぞやかの約束通り、お酒を飲みに来たのだけれど、なんというか銀さんが心ここにあらず、という感じである。……いやまぁ、理由はなんとなくわかるんだけども。

 

 

「何を仰います『宇宙よろず屋シルバーサムライ』!貴方がシルバーサムライじゃないなら誰がシルバーサムライだというのですか!……ところで実はセイバーだったりします?自己申告ではライダー*4みたいになってますけど、実はセイバーだったりしません?」

「ねぇェェェ!?誰この人呼んだのォォォ!?つーかホントにコイツなりきりですかぁァァァっ!?一人だけユニバースから直接来てませんかコイツぅゥゥゥっ!!?」*5

「うわぁ……」

「ちょっとキーアさあァァん?!俺を置いて一人だけ逃げようとするの止めませんかあァァァ!?」

「やめろー!○ぬ(ピー)なら一人で○ね(ピー)ー!!」

「むむむ、私を置いて楽しくおしゃべりとは!ですが構いません、何故なら私はえーっくす!だから!」

「何時にもまして絡み辛ぇ!!!」

 

 

 丈のあってないジャージを着た、ナイスバディでセイバー絶殺なアサシン(セイバー)(フォーリナー)、謎のヒロインX(ver1.5)さん*6が、完全に絡み酒で銀さんの背中をバシバシ叩いている。……サーヴァントユニバースが勝手に拡張されている上に、いつの間にか住人に組み込まれている銀さんには同情しかない。

 なので大人しく生け贄になって欲しい、今の貴方はどう考えても必要な犠牲だ。

 

 

「ふざけんなぁぁぁあっ!!?だぁれが犠牲の犠牲になるかぁあああっ!!!」*7

「ええい、騒ぐなら出て行けぃテメェら!!うちは保育所じゃねぇんだよ!!」

「えっ、ちょ、うわああああっ!!?」

 

 

 なんて風に騒いでいたら、三人纏めて外に放り出されてしまった。

 ……仕方ないので私は浮いて、Xさんもなんか足から放出しながら飛んで、結果として銀さんだけ尻餅を付く形になってしまったのだった。

 

 

「いつつつ……くっそ、こっちじゃ爆破とか襲撃の心配ないからって調子に乗りやがって、このオンボロ酒場め……」

「まぁ、ちょっと荒事があるくらいで、基本的には平和だもんねぇここ。原作みたいにメイドにカチコミかけられたりとかも無いみたいだし」*8

「なんと、そこまでの無法地帯でしたか!では私も遠慮は要りませんね!!」

「え゛」

「ふーはっはっはっ!!えーっくす!!」*9

 

 

 店に向かって思わず悪態を吐く銀さんと、原作での災難*10を思いちょっとしみじみする私。

 ……の、横で、唐突にメダロットみたいな鎧*11を纏ってポーズを取るXさん。

 ……あーあ、みたいな顔になる私と、一応常識人なので何言ってんのコイツ、みたいな顔でXさんを見る銀さん。無論、そんなことで彼女の動きは止まらず。

 

 アワレ、イエロー・フラッグ=サンは爆発四散!!ナムアミダブツ!

 まさにショッギョ・ムッジョ。あからさまにサンシタ・ムーブだったのでさもありなん。*12……こんなところまで原作の因果を繰り返さんでもよかろうに、なんてことを思いつつとりあえず手を合わせておく、なむー。*13

 

 

「ま、マジでやりやがったぁァァァっ!!?おいどうすんだこれ!?ここじゃ人死にはでない*14っつーけど、これじゃあどう考えても俺ら取っ捕まる流れじゃねぇーかァァァ!!?」

「ははは。銀さん銀さん、バレなきゃ犯罪じゃないんですよ?」*15

「どー考えてもバレバレだろうがぁぁァァァっ!!?」

「ははははは。銀さん、『鼻☆塩☆塩』」*16

「はぁっ!?……ってはぁあぁぁあっ!!!?」

 

 

 驚き連峰みたいになってる銀さんを横目に、華麗に指パッチン。……甘いな銀さん、チートってのはこういう時に使うものなんだゼ☆

 そんな彼が見る前で、無惨な残骸(イエローフラッグ)が逆再生*17のように戻っていき、数分もしない内に元通りになってしまった。……無論、やったのは私である。チートオリ主系キャラの面目躍如というわけだな!

 

 

「おや、時間回帰*18ですか?中々良いものをお持ちのようで!」

「あははははっ、Xちゃんも火力すっご~い!」

 

 

 イエーイ♪みたいな感じでハイタッチ!いやー、なんかこう楽しくなってくるね!

 

 

「……どっちも完全に出来上がってるぅゥゥゥっ!!!?」

 

 

 隣で騒ぐ銀さんの背中に回って、二人して背中をバシバシ。……酔ってない酔ってない!ぜーんぜん酔ってない!

 大丈夫だからほら、次の店行こうぜー♪ってな感じに彼の腕をXちゃんと一緒にひっ捕まえて、無理やり移動開始。

 

 あははははー♪可愛い子が両手で花が咲いたらヤハハハハー*19↑!

 

 

「すみませぇぇえええぇんっ!!!!誰か、誰か変わってくださああぁあぁぁいいいいいっ!!!!!?」

 

 

 銀さんの叫びに、周囲のみんなが頭上でばってんを作るのを見ながら、私達は次のお店を目指して歩き始めるのでした。ふへへへへ~♪

 

 

 

 

 

 

 道中、この酔っぱらい共二人に引き摺られながら色んな店を梯子したわけだが、なんというかどこもかしこも濃ゆい面子ばかりが揃っていやがった。

 

 今居る店は普通の居酒屋で、揃っている人間もまぁ見た目には普通。……中身の方がぶっ飛んでるというか、多分あれアイドル系の誰かだよな?みたいな奴が多かったが。

 

 最近のアイドル共はアイドルってだけじゃ売れねー*20からか、キャラクターの突飛させで話題を狙おうとしている感がすげぇ。

 ぱっつぁん*21が熱を上げてる寺門通*22とかいうのもまぁ、その系統だろう。……いや、今んとこぱっつぁんもそのアイドルも、こっちじゃ影も姿も見たことないが。

 

 

「よぉーし、そこだっ、今だっ!……やったぁ!見てたXちゃん!?サヨナラホームラン*23だよサヨナラ!」

「おー、宇宙ベースボールに比べると流石に迫力に欠けますが、地球の野球もなかなか。……え?この野球、この施設内でしか見れないんです?」

「いやー、流石にレーザービームを本気で投げられる人*24は、そうそう居ないんじゃないかなー?」

「それを綺麗にかっ飛ばしてホームラン!気持ちぃーっ!!」

 

 

 カウンター席の右上辺りにあるテレビを見ながら、熱燗*25とおでんをつっつく女共が三人。

 キーアとXと、ここで意気投合した……ゆっき*26、つったか?が、流れている野球中継で一喜一憂している。

 

 ……俺の気のせいじゃなけりゃ、なんか投げたボールがビームみたいになっていたし、それを真正面から打った奴もなんかまともには見えねーし。

 これ、ホントに野球なのか?実はテニヌ*27みたいなよく似たなんかなんじゃねーだろうな……?

 みたいな気分になってしまって、酔うに酔えないんだが。

 

 

「あー、楽しかった!また一緒に飲もうねー!」

 

 

 ゆっきとか言う女は、連れらしい女達と一緒に帰っていった。……いや、なんかまだ飲み歩きしてそうではあったが、向かおうとしていた方向が反対だったので、別れることになったって感じなわけだが。

 そうしてまた両腕を捕まれる俺。……なぁ、俺これどういうポジション扱いなんだ……?

 

 

「付き合ってくれるって言ってたじゃないの、今日は朝まで飲むぞー!」

「いやあの嬢ちゃん心配してるだろ?ほどほどにして帰ろうぜ?」

「帰るのは朝って言っといた!マシュはマシュでラットハウスでパジャマパーティらしいしいいんじゃないかな!」

「既に言質取ってやがった……っ!!?」

 

 

 盾の嬢ちゃんを引き合いに出して逃げられないか試してみたが、既にその辺りは片付いていた為失敗。……もう一人の方は聞くまでもないのでやる意味がない、どう考えても朝まで梯子コースである。

 

 

「勘弁してくれ……」

「コンバンワ、ディョルデディヴァナディスカ、イイディスベ」*28

「あぁ?……ってうおわっ!?」

 

 

 そうして俺が引き摺られていると、なんというか凄まじく聞き取り辛い声*29で言葉を掛けられて、思わず聞き返し……て、目の前に居た謎の人物に思わず驚いて声を上げた。

 ……全身スーツで鎧っぽい部分があって、赤い複眼っぽいもんのついた仮面を被ってる変態*30……に()()()()()()()()()()では見えたが、元の()の知識から目の前の人物が誰なのかを把握する。

 

 

「お、ブレイドだ。仮面ライダー*31も居るんだねぇ」

「おおなんと、『宇宙切札ブレイドライダー』*32ではないですか。後々切り札を名乗るダブルライダー*33が出てきたせいで、微妙に名前被っちゃったんですよねぇ」

「ムリイドライダー?イャバァ、シラリデドゥンナラヴァナシヴァヴァャイケド」*34

「……なんもわかんねぇ」

 

 

 ──仮面ライダーブレイド*35

 恐らく目の前に居るのはそいつなんだろうが……なりきりに当たって特徴を誇張しすぎたのか、全く聞き取れねぇ。*36

 いや、所々聞き取れるところもあるんだけど、全体的に聞くとわけわからなくなるというか……。

 

 

「ライダーザァカバディコナイカ?」*37

「へぇー、そんなところあるんだ?……おやっさんがマスター?そりゃ似合うな絶対」

「よぉーし、銀時くん!行きますよ次の店!」

「イヤだから俺は解放してくんねぇーかなぁっ!?」

「ザァンベイザァバゴア゙ンナーイ!」*38

 

 

 そんなことを考えているうちに、あれよあれよという間に次の行き先が決定してしまう。……いい加減俺は解放して欲しいんですけどねぇ!?

 

 

 

 

 

 

「はー、いいお店だった。お酒は美味しいしおやっさんのトークは楽しいし」

「仕事の手伝いをさせられているのが『名探偵ドラゴン・L』だったのはちょっとビックリしましたね、てっきり『旋風切札ダブルライダー』が居るものだと思ってましたし」

「……いや、ドイツもコイツもマスクのまんまだったことの方が驚きだったろ、あれ」

 

 

 ライダー酒場「前平美(ぜんへいび)*39にてしばらく飲んで、勘定を終えて外に出る。

 いやー、実にいいお店だった。おやっさん(スカル)*40のハードボイルドなトークはなんというかワクワクしたし、何故かハーフボイルドが居るはずの位置に立ってる竜崎*41が居たのに笑ったし。

 ……基本的に一つのスレから一人しか来てないみたいだから、どうしても揃わずにちょっとおかしな組み合わせになるんだろうなぁ。うちのマシュが働いてるとこ(ラットハウス)もそんな感じだし。

 

 

「……俺もぱっつぁんも神楽*42も定春*43もいねーから、なんつーかやる気が出ないってのはあるが」

「完全に呑んだくれおっさんだもんねぇ」

「おっさ……!?いやいや、まだ若いし、イケるし、銀さんピチピチの二十代だし……」

「最終話基準ならもう三十路前でしょうに。十分おっさんよ」

「がふぅっ!!?」

「おや、銀時くんは私よりも歳上だったのですね、道理でかれ……お兄さんっぽいなと思っていました」

「おい今加齢臭*44って言おうとしたろ、しませんー!加齢臭なんか銀さんからはしーまーせーんー!したとしてもイチゴオレの甘い香りがしますぅー!」

「……その、男性からイチゴオレの香りは、それはそれでどうかと思うのですが」

「まさかのマジレス!?」

 

 

 そうやって騒ぎながら新しい店を探そうとして──私達は、そいつに出会ったのだ。

 

 

「では、僕を仲間に入れるといいのだ、へけっ」

「あん?」

 

 

 物陰から聞こえてきた声。

 無邪気な少年のようなその声は、かつてどこかで聞いたことがあるようなもので。

 ……いや待って?なんか物陰に居るキャラシルエット大きくない?この声のキャラの大きさと違くない?

 なんというかこの物陰に居る子、さっき銀さんが言ってた定春くらいあるよ?どー言うあれなのこれ?

 

 頭に疑問符を浮かべながら待つ私と、なんだか顔色が悪くなってきた銀さんと、よくわかってなさそうなXさん。

 そして、物陰から声の主が現れる。

 

 

「僕、ハム太郎*45!よろしくして欲しいのだ、くしくし」

 

 

 ──それは、巨体だった。

 黒い外装を纏い、人々を恐れさせる波動を発し、可愛いものとおぞましいものを混ぜると言う二律背反によって産み出されしカオスの権化。

 見たものはその恐ろしさに心胆を寒からしめ、嘆き、叫び、逃げ出すことだろう。

 何故ならば、その口内に獣を納めしその者は、戦没者の怨念によって形作られた、生者を決して許さぬ悪霊以外の何者でもないのだから。

 

 ──黒き災神を纏いし獣。それこそが、私達の目の前に現れた者だった。

 

 

「ご、ゴジハムかよォォォ!?」

 

 

 まぁ仰々しく描写してみたけど、要するにでっかいゴジハムくん*46である。……纏ってるゴジラ*47の皮が本物っぽいオーラを醸し出してるけど。

 

 

「僕が居れば百人力なのだ、お任せあれなのだ、へけっ」

「だって銀さん、定春ポジゲットだね!」

「いやふざけんなよってうぉわぁっ!!こっちくんなぁァァァ!!?」

 

 

 おー、全力ダッシュで逃げてく銀さんと、それを追っかける巨大ゴジハムくんだ。……なんだろねこの図?

 なお、見た目ほど危なくないらしいと隣のXさんが言ってたので、私達はそのまま朝まで二人で飲み明かしたのでした。

 

 

 

 

 後日、ホントに定春ポジションに収まったらしいゴジハムくんと、その隣で意気消沈する銀さんを見て私が吹き出すのは、また別のお話である。

 

 

*1
スターウォーズの有名な一文が元。そちらは『遠い昔、遥か彼方の銀河系で……』。なお、これは誤訳らしい

*2
シルバー・サムライは、マーベルコミックのキャラクターの一人。作中でもわりと珍しい日本人のミュータント(超能力者)で、本名は「原田剣一郎」、職業はヤクザなんだとか。マーベルヒーローの中でも屈指の人気キャラである、ウルヴァリンの関係者でもある彼は、作品によってはヒーローだったり悪役だったりするようだ

*3
シルバー・サムライが出演した格闘ゲーム『X-MEN CHILDREN OF THE ATOM』にて彼が受けた風評被害?このゲーム、隠しゲストキャラとして『ストリートファイター』から豪鬼というキャラが参戦していたのだが、彼を使うためのコマンドが複雑にして難解だった為、失敗してしまう者が後を断たなかった。そして、失敗するとネイティブな感じの発音(聞き取り難い発音)で『シルバーサムライ』という台詞が再生される。……要するに、失敗するとシルバー・サムライが選ばれてしまう、というもの。その為、空耳的なものも混ざってシッパイザムライ、などと呼ばれるようになってしまった。無論、あくまでも格闘ゲームのネタではある

*4
スクーター乗りなので、余計な騒動に巻き込まれないようにしたのだと思われる。無論こっちの銀さんとは関係ない

*5
『fate/grand_order』から、サーヴァントユニバース。住人全員サーヴァントとか言う狂気の世界

*6
『fate/grand_order』から、謎のヒロインX、及び謎のヒロインXX。それぞれアサシンとフォーリナークラスだが、自己申告ではセイバーを名乗る。元々は型月のエイプリルフールネタの一つ『路地裏さつき ヒロイン十二宮編』で登場した、野球帽を被って青いジャージを着たアルトリア本人だった。fgoに出演するに当たって、設定が新しく作られた形になる。似たような経歴持ちに、同じく元はアルトリアのカラーバリエーションだった『セイバー・リリィ』(初出・『fate/unlimited_codes』)が存在する。因みにここにいるXさんは『ver1.5』と付いている通り、XとXXの中間くらいの状態

*7
『NARUTO』のコラ画像が元ネタ。元々は『イタチは犠牲になったのだ、古くから続く因縁…その犠牲にな』と言ううちはマダラ(偽)のコマ

*8
メイドがスカートの中から手榴弾シュートしてくるんだ、素敵だろ?

*9
謎のヒロインXXの遠距離始動BUSTERモーション。ポーズを取るとXの形のビームが飛んでいく

*10
イエローフラッグは大体爆発する、流石に二次創作の紅魔館ほどではないけど。なお、『イエローフラッグ』は『BLACK LAGOON』に登場するバーのこと

*11
謎のヒロインXXの初期状態のこと。めっちゃロボ。なお、再臨するとシンフォギアみたいに部分装甲になった後、最終的に全部取ってナイスバディな水着のお姉さんになる

*12
アババー!この独特なアトモスフィアは、まさしく『ニンジャスレイヤー』!コワイ!……なんというか、独特な言葉使いが人気の秘密のようだ

*13
南無阿弥陀仏の略。発音は『ひぐらしのなく頃に』の古手梨花の口癖、『にぱー』みたいな感じで言うとどことなく緩くなる

*14
色々な技能を結集することで、この『なりきり郷』内では攻撃が全て非殺傷設定にされている。なお、それだけじゃ崩れた瓦礫とかに潰されたらアカンやろ、という事で、建築材料そのものにも『倒壊した時に人を傷付けない』みたいなご都合主義設定が付与されている。因みに、これを聞いて一番喜んだのは特撮勢だったとか。……いくら吹っ飛ばしても安全なら火力を上げても構わないな!とか言いながら日夜専用の撮影所でどっかんどっかん爆砕してる、らしい。たまにどこかの爆裂娘が紛れ込んでいるのはご愛敬

*15
『這いよれ!ニャル子さん』のニャル子さんが放った有名な台詞。バレなくても犯罪は犯罪ですよ(真顔)

*16
『エルシャダイ』より、キャラクターの一人であるルシフェルが言った『話をしよう』という台詞の空耳。決して鼻に塩を詰めるわけではない

*17
古くは巻き戻しと言ったが、()()()巻き戻しているのかが伝わらなくなってしまった為、現在では逆再生と呼ばれている。ジェネレーションギャップの一因

*18
時間を戻す(=回帰)ことによって起きたことを無かったことにする技能

*19
笑い声の元ネタは『ONE PIECE』のキャラクター、『エネル』から。恐らくはとある宗教の唯一神の呼び方を笑い声っぽくしたものだろう。それ以外の部分?酔っぱらいの行動に意味を求めてはいけない(戒め)

*20
アイドルモノが一体幾つ存在してると思ってるんですか、キャラクターとか全把握無理ですよ、一つで二百人近く増やしてるやべー奴が居るんですから

*21
『銀魂』のキャラクター、『志村新八』のこと。眼鏡を掛けたツッコミキャラ。眼鏡掛けと言ってはいけない

*22
『銀魂』のキャラクター、アイドル『寺門通』。見た目はサイドテールの可愛い子だが、センスがどこかずれてたり、やけに下ネタ連発したりで通常のアイドルとは色んな意味で一線を画す存在

*23
野球用語。九回の裏などの後攻最後の手番で、勝ちが決まる点をホームランによって手に入れた時に使われる

*24
この場合は某全盛期の彼がよく言われてたあれを実際に投げてくる人が居る

*25
加熱したお酒のこと。大体は焼酎を使う

*26
『アイドルマスターシンデレラガールズ』より、『姫川友紀』のこと。見た目はどことなく学生っぽいけど、ちゃんと成人済み。野球大好きな野球娘

*27
『テニスの王子様』で作中人物達がやってるもの。テニスっぽいけど多分違う何か。似たようなモノにバヌケや超次元サッカーなどが存在する

*28
こんばんわ、両手に花ですか、いいですね

*29
『仮面ライダー剣』にて、主人公『剣崎一真』を演じた中の人の滑舌が悪かった為に生まれた『オンドゥル語』のこと。因みに後年ゲーム内音声を取った時には滑舌が良くなっていたためちょっと残念がられるという変な事態になったりもした

*30
何も知らない人が見たら確かに不審人物に見えるかもしれない

*31
特撮シリーズの金字塔の一つ

*32
なんで切り札って付いてるのかはわかる人にはわかるはず

*33
『仮面ライダーW』のこと。二人で一人の仮面ライダー。最近続編漫画がスタートし、更にアニメ化も決定した

*34
ブレイドライダー?いやまぁ、知られてるんなら話しは早いけど

*35
『仮面ライダー剣』のキャラクターの一人。いわゆる職業ライダーで、スペードモチーフの西洋騎士のような姿のキャラクター

*36
『オンドゥル語』が使いこなせたら、わりとやりやすいキャラかも知れない。ネタ方向に振りきりすぎているのでウケるかは微妙、かも?

*37
ライダー酒場に来ないか?

*38
三名さまごあんなーい!

*39
『お前らの平成って美しくないか?』の略

*40
『仮面ライダーW』のキャラクター、『仮面ライダースカル』のこと

*41
『DEATH NOTE』から竜崎もとい『エル=ローライト』のこと。探偵繋がりにしてもキャラクターがだいぶ遠いような……?

*42
『銀魂』のキャラクター、『神楽』のこと。似非チャイナ娘でヒロインポジっぽいけど、ヒロインらしさはほぼない。平気で吐くし。なお、黙ってると美少女でもある

*43
『銀魂』のキャラクター、『定春』のこと。とても大きな犬で、神楽の相棒。実は結構すごい子

*44
加齢に伴って生じる中高年特有の匂い。基本的には首筋から匂うので、ケアしたいならその辺りを含めた上半身を気にしよう

*45
『とっとこハム太郎』の主人公のハムスター。種類はゴールデンハムスターで、ひまわりの種が大好物

*46
ゴジラの着ぐるみを着たハム太郎、みたいなもの。元ネタのキーホルダーはわりと可愛い

*47
『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』のゴジラであるため、白眼を剥いていて滅茶苦茶怖い。因みにこの映画、大体悪役にされるキングギドラが味方側というちょっと珍しい作品でもある



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二章 焔と渇望、ネズミの足は何処にいく?そりゃもちろん帰るんだよ(小並)
物語性というのはなりきりだと失敗要素である


 モノを書き始める時、何も思い付かないと苦しい思いをしたことはあるかい?

 頭の中が真っ白になって、さっきまで考えていたことが急に思い出せなくなった事は?

 スランプと言うべきか、はたまた単に調子が悪いと言うべきか。

 原因の解明を急ぐばかりに、色んなモノを投げ捨ててしまってはいないかい?

 

 ()()はまぁ、こういうお話。

 続きを紡げなくなった物語り(ストーリーテラー)に、存在価値はあるのか、そういうことを問うた者が居たという、それだけの話だ──。

 

 

 

 

 

 

「せんぱい?大丈夫ですか?」

「……んあ?……ああ、寝てたかな、今」

 

 

 マシュの声を聞いて、意識が戻ってくる。

 ……寝不足のつもりはないのだけど、どうにも最近よくレムレムする感じだ。マシュのせんぱい(先輩)呼びに引っ張られていたりするのだろうか?*1……この体、そういう所があるしなぁ。

 

 深呼吸をして眠気を飛ばす。

 これから真面目……真面目?な話なのだから、しっかりしなければ。

 

 日付的には、あの慌ただしい始まりの日から大体一ヶ月後。

 色々と都合が付かないまま後回しになっていた、ゆかりんからの説明の続きの話が来たのは、ここでの暮らしにもいい加減慣れ始めた、そんな日の昼下がりのことだった。

 

 

「前回の説明会では、レベル2と呼ばれる区分までの事について教わったのでしたよね」

「そうだね、それと単語としてってだけなら、マシュが別の日にレベル5ってのの存在を聞いてたんだっけ?」

「はい、その通りです。本来の私の区分はそこになるはずなのですが、現在は状態が安定しているので警戒レベルには値しない──と八雲さんは仰っていました」

 

 

 マシュからの言葉にふむ、と頷く。

 ……始まりの日、彼女がその体より立ち上らせていた、白い蒸気のような何か。

 私はあれを魔力だと思っていたけれど、もしかしたら違うのかもしれないな、と今更ながらに思っていた。

 じゃあなんなのか、って言われるとちょっと困るんだけどね。

 

 

「あ、マシュさんにキーアさん、こんにちは。八雲さんなら中でお待ちですよ」

「こんにちは毛利さん。……はい、ご丁寧にありがとうございます」

 

 

 最上階まで上がると、『スレ主部屋』の前で門番のように立っている毛利さんの姿が見えた。軽く挨拶を交わし、そのまま中に入れて貰う。

 

 

「はーい、こんにちは二人とも。元気でやってるみたいで私も一安心だわ」

「はい、こんにちは八雲さん。そちらも、お変わり無いようで何よりです」

「一月丸々待たされるとは思ってなかったけど、元気そうで何よりだよゆかりん」

「あ、あははは……まぁ、待たせちゃった事については、素直に謝るしかないわね」

 

 

 中に入ると、この前のソファーにすでに座って待っていたゆかりんが、こちらの姿を確認して右手を軽く上げて挨拶をしてくる。それにこちらも軽く挨拶を返して、そのまま彼女の対面へ。

 ソファーに座ると、深緑の髪と左目の変な仮面のような形のモノクルが特徴的な男性が、私達の前のテーブルに紅茶を差し出してくる。

 ……いや、なんでジェレミアさんがここに?そんな困惑混じりの視線を向ければ、向けられた当人は穏やかな笑みと共にこちらに声を返してきた。

 

 

「おや、私のこともご存知でしたか。私はジェレミア・ゴットバルト*2。紫様の元で仕える執事の一人にございます」

「因みに彼、あんまり再現度高くないからサザーランド*3とかは持ってきてないわよー」

「は、はぁ……?」

 

 

 困惑するマシュの隣で私は思考を巡らせる。

 ……ふーむ、ゆかりんとジェレミアさん、関係性は無さそうだけど……、確かジェレミアさんは軍人で……作中で謂れのない風評によって立場を追われた人物だったような……って、あ。

 気付いてしまった、ジェレミアさんがなんでここに居るのかを。確かめる為に、ゆかりんの近くに控えているジェレミアさんに声を掛ける。

 

 

「もしかしてなんだけどさ……?」

「……なるほど、お気付きになられましたか。不肖ジェレミア・ゴットバルト、紫様より『ちぇん』*4の名を賜っております」

「やっぱり、『オレンジ()』……」*5

 

 

 なんでまたそんな回りくどいことを、という目でゆかりんを見れば、意外と見付からなかったのよ『ちぇん』って名前の子、と返されてしまった。

 ……いや、チェンって響きだけなら中華系探せば居るでしょ、と思ったのだけど、生憎と彼女が探した中には居なかったのだとか。

 いや、だからってジェレミアさんをちぇん扱いは……ねぇ?

 そんなことを思いながらジェレミアさんに視線を向けるものの、彼は穏やかな笑みを浮かべたままだ。……うーん、忠義の騎士……。

 というかなんだこのメンツ、近接戦闘重視的なあれなのかな……?

 

 

「キーアちゃん、気になるのはわかるのだけど、話を進めさせて貰っても良かったかしら?」

「ととっ、ごめんごめん。はい、構わないですはい」

「もう……えっと、確かこの間はレベル2までのことを説明したのだったわね」

 

 

 こちらを咎めるようなゆかりんの言葉に、改めて話を思い出す。

 レベル1は『知識も技術も足りていないが、何か一点でキャラとして成立している』人達。

 レベル2は『人外系・獣系である為意思疎通に問題がある』人達。

 

 ……問題児レベルって言っていたけど、ここからどんな風に変化というか区分されているのか、正直ちょっと戦々恐々としているところが無くもなかったり。

 何せレベル1も2も、極論を言えば『意思疎通に難がある』というのが一番の問題のように思えるし、それって問題児扱いとしてはなんだか程度が低いようにも思えたのだ。

 

 そんな事を思う私の前で、ゆかりんが口を開く。

 ……あれ、今回は実例は出てこないんだね?なんて思っていると……。

 

 

「じゃあ早速レベル3の紹介ね、えっと静謐ちゃん*6にアークナイツ*7勢にいーちゃん*8に……」

「いやちょっと待って」

 

 

 ──ホントに問題児じゃねーか!?

 上げられたメンバー的に、居るだけでヤバい奴らじゃねーか!?なんて風に思わず詰め寄る私に、ゆかりんはあははと空笑い。

 ……だから実例が来なかったのか、なんて思いながらソファーに座り直すと、ゆかりんは一度咳をしたのち、改めて話の続きを紡ぎ始めたのだった。

 

 

「静謐ちゃんに関してはとりあえず、汗を掻くだけでもマズイから、似たような体質の子達と一緒に原則隔離塔に居て貰ってるわね」

「ああ、一応一人とかではないんだ……いやちょっと待った、その隔離塔どくどくタワー*9になってない?」

「空気の部分に関してはガラルマタドガス*10君とかが居るから問題はないわよ?」

「そ、それはつまり、空気以外には問題がある……と言っているようなものなのでは……?」

「……ハイ次ー」

「八雲さん!?」

 

 

 ……いやまぁ、隔離で済んでるなら、寧ろマシな方なんだろうけど……。

 困惑するマシュを横目に、ゆかりんが次の説明に移る。次は、アークナイツ組だ。

 ……私はちょっと齧ってるだけだからあんまり詳しいことは言えないけど、世界観からしてヤバいところ*11だったはずだ。

 

 

「アークナイツ勢はどちらかと言えば、憑依元への影響がわからないから経過観察の為の入院──って面が強いわね。……ただまぁ、鉱石病(オリパシー)*12の仔細が原作であまり語られていない以上、ちょっと慎重になるのも仕方ない、って面もあるわけだけど」

「そうなの?」

「感染者との単純接触じゃ感染はしない*13って言われてるんだけど、どうにもねぇ……」

 

 

 個人的には、なんの問題もなければ普通に生活させてあげたいんだけど、と話を締めくくるゆかりん。

 最後に話すのは──うん、どう考えてもあかんやつですねはい。

 

 

「彼に関してはノーコメント。本人が自主的に隔離されてくれてるからいいけど、いろいろと触るのは止めておくべきね」*14

「うん、知ってる」

 

 

 なんというか、そもそもあれのなりきりとか、いろいろ大丈夫だったのかなって気になるというか。

 憑依にしても、されてる方大丈夫?って心配になるというか。

 ……いかんな、なんというか心配事しかないなこれ……。

 

 

「そんな感じで、レベル3は『居るだけで被害を齎しかねない』人達ね」

「うん、よーくわかった。わかった上で言わせて貰うんだけど、これより上ってなんなのなの」

 

 

 存在罪*15とまでは言わないけど、似たようなラインの奴らばっかやんけ、これより上ってなんなのさって思うのは仕方ないと思う。正直私の貧困な想像力じゃちょっと思いつかないんだけど。

 

 

「勘違いしてるみたいだけど、これ問題児レベルだからね?」

「……?いや、周囲に被害を齎すんならそれは問題児なんじゃ?」

「そういう意味でカテゴライズされるのはレベル3までよ。4以上はちょっと違うの」

 

 

 そんな事を思っていたら、ゆかりんから呆れ混じりの視線。

 ……いや、そんな事言われても、今までの例を見たら、見たら………、うん、わかんねぇ。よくよく考えてみたら1と2も直接被害系じゃないし、寧ろ3が特殊なんじゃないかって気がしてきた。

 

 

「4は『完全に噛み合っていない』人達、5は『噛み合いすぎてしまった』人達。特定の誰かってわけじゃないから、ちょっと説明するわね」

 

 

 そうして首を捻る私に、ゆかりんが答えを述べる。

 それに待ったを掛けたのがマシュだ、彼女はレベル5について「元の人物と憑依者のズレが深刻な者」と聞いたと主張する。──そしてゆかりんは、それを間違っていないと肯定した。

 

 

「順を追って説明するわね。レベル4は、なりきりを趣味としてこなしていた人のうち、『技術も知識も足りているけど、自分とは全く別の性格の人物を演じていた』人。──言うなれば、元の人物の情報が、憑依者にとってノイズ()にしかなっていない状態の人の事」

「……いや、それレベル1と変わるの?」

「変わるわよ?再現力が高いから人格も性質もほぼ憑依者本人のパーソナリティなのに、そこに絶対外せない()()()()()()()()()()()()()()()()を持ったモノがあるんだから」

「あー……、つまり自己認識の中に、絶対に解消できないエラーが混ざるから酷いことになる、と?」

 

 

 私の言葉にそういうこと、と答えてゆかりんが紅茶に口を付けた。

 そういえば喉乾いたな、と思い出し私も紅茶を一口。……ふむ、甘い匂いと爽やかな渋みに深いコク。これはダージリンだな!(適当)

 

 

「ええ、ダージリン*16にベルガモット*17のフレーバーを付けたもの*18になります、茶葉のグレードはオレンジペコー*19ですね」

「あってた、だと……?っていうか思った以上にオレンジ尽くしだこれ!?」

 

 

 オレンジ卿の面目躍如とでも言うのか!?

 い、いかんいかん、ここでペースを乱されていてはまた話が脱線する!

 紅茶をぐいっと一気飲みして、ティーソーサー*20ごとジェレミアさんにお返ししてゆかりんの方に向き直る。……すっごい微笑ましいものを見るような目で見られてるんですがそれは。……私は見た目ロリじゃがロリじゃないんすよー!!

 

 

「はいはい。で、4に関しては憑依者本人がこっちに居るのを嫌がって暴れたりすることが多いから、基本的には凍結塔に厳重管理ね、これは5も大体同じだけど」

「凍結塔?またなんかヤバ気な名前の施設だね……」

 

 

 ごまかすように話の続きを促したところ、飛び出した『凍結塔』なる謎の施設。

 ……名前からして物騒だけど、実際に語られた内容は更に物騒だった。

 

 

「実際ヤバ気よ?内部空間を時間・空間的に凍結させて、中に居るものの状態を停止させる為のものだから」

「想像以上にヤベー施設だった!?」

 

 

 まさかの封印施設だった!?

 驚く私の前で、ゆかりんは殊更妖しげに微笑んで見せるのだった。

 

 

*1
『fate/grand_order』の主人公は、突然夢の世界に引っ張られたりしている(上に、それがイベント開始の合図だったりする)。その姿を『レムレムしている』と呼ぶ

*2
『コードギアス』のキャラクター。エリア11と呼ばれるようになった日本で、現場指揮を務めるブリタニアの軍人。作中最強の戦士達からも一目置かれるほどの実力を持つ

*3
『コードギアス』で登場する機動兵器、『ナイトメアフレーム(KMF)』の一つ。サザーランドはその中でも第五世代ナイトメアフレームに分類される機体で、作中では量産機として主力級の機体でもある

*4
藍「ちぇぇぇぇぇぇんっ!!?」

*5
『コードギアス』原作に置いてジェレミア卿が受けたとある汚名?が『オレンジ』であり、『東方project』のキャラクター、八雲藍の式神『(ちぇん)』の名前もまた『オレンジ(だいだい)』を意味していることから。……こじつけが過ぎる……

*6
『Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ』に登場するサーヴァント。fgoでは星3(レア)アサシンとして登場。全身に猛毒を纏った『毒の娘』

*7
株式会社Yostarが送るスマートフォンゲームのこと。いわゆるタワーディフェンスゲームであり、ポストアポカリプスなSF的世界観に生きるキャラクター達が人気を博している

*8
『戯言シリーズ』より、戯言遣いのこと。表紙のポップさに惹かれて見た者を(色んな意味で)撃墜するやべー主人公

*9
ゲームソフト『スーパードンキーコング2』にて登場するステージの名前にして、みんなのトラウマ

*10
『ポケットモンスター』のキャラクターの一種、マタドガスの『ソード&シールド』の舞台での特殊な姿。排気ガスなどを栄養源としており、それらの毒素を吸収して綺麗な空気を排出する、という生態を持つ。見た目が紳士モチーフで、どことなく愛嬌がある

*11
『天災』と呼ばれる破滅的な自然災害によって人々の生息圏は常に脅かされている上に、それ以外にも大小様々な事件がどかどかやってくるやべー世界

*12
『アークナイツ』内に存在する病気。『源石(オリジニウム)』と呼ばれる未知の鉱物を由来とした病気で、発症した場合は基本助からない。一応病の進行を遅らせることなどはできるようだ。なお、感染すると『源石術(オリジニウムアーツ)』と呼ばれる特殊な技術への適正などが上昇するようだが、同時に使えば使うだけ病の進行を進めてしまう諸刃の剣でもある

*13
『アークナイツ』作中の描写より。……病が進行すると体表に源石が表出するため、それに触れるなどするのは恐らくアウトだと思われるが詳しくは不明

*14
間違っても利用しようとか考えてはいけない

*15
『存在している事が罪』。生きているだけで、本人の意思によらず周囲に破壊や混乱を撒き散らしてしまう者達のこと。あんまりにもあんまりな呼び方

*16
紅茶の銘柄の一つ。インド北東部にあるダージリン地方で収穫されるためその名を付けられている。因みにダージリンはヒマラヤ山脈低部のシワリク丘陵に位置しており、インド国内では有数の避暑地でもある

*17
ミカン科の植物の一つで、長い緑の葉と白い花を咲かせるのが特徴。柑橘系でありながらエレガントさを感じさせる香りが特徴とされ、香水やアロマオイルとしても利用されている

*18
いわゆるアールグレイ。香り付けをした紅茶全般を意味する名前であり、特定の茶葉を意味するものではない。名前の由来はイギリスの元首相『グレイ伯爵(Earl Grey)』から

*19
茶葉の等級、大きさの一種。芯芽と若葉を細くねじった、大きめの茶葉を使ったもの。別にオレンジが入ってるわけでもないのにオレンジとついている理由は、説が幾つかあって判然としない

*20
紅茶などを頼んだ時にカップの下にある小皿のこと。万一カップの中身が溢れてしまった時の受け皿にもなる他、砂糖やミルク、それらをかき混ぜるスプーン、場合によってはお茶請けのお菓子などが一緒に置かれることもある。元々はソーサーにカップの中身を移し変えて飲むのが主流だったが、次第に廃れていった為今ではそういう使い方をする機会はほとんどないと思われる



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自分一人のみでも掛け合いしてたら嫌われる

「と、凍結処理……ですか」

 

 

 マシュが呆然としたような声でそう呟く。

 ……4以上が対象と言っていたことから、本来5扱いになるというマシュにとって、決して他人事とは思えないからだろう。

 そんなマシュの震える手を取って、落ち着くように声を掛ける。

 

 

「落ち着いて、今のマシュは対象外なんだから。はい、深呼吸」

「──は、い。すみません、せんぱい」

「謝らなくていいから、はい、深呼吸」

 

 

 マシュが落ち着くまで待って貰い、ついでにジェレミアさんにお菓子も持ってきて貰って、いっぱい食べさせる。……甘いものはなぁ、幸せの素*1なんだよォ!いいからいっぱい食え食え!

 

 

「せ、せんぱい!ありがとうございました、ですがもうこれ以上は!ご勘弁願えませんでしょうか!!」

「ぬう、仕方がない」

 

 

 元気も戻ってきたみたいだし、これくらいにしておくか。

 なんて感じに笑いつつ、改めてソファーに座り直す。……対面のゆかりんがなんとも言えない表情でこちらを見ていた。半笑いと言うか、苦笑いと言うか。

 さっきまでのちょっと胡散臭い感じの笑みは、完全に消し飛んでいる。……あ、もしかして黒幕ムーブ*2してた?それは悪いことを……。*3

 

 

「うん、その、続きに行ってもいいかしら?」

「どうぞどうぞ」

 

 

 気付かれたことに気付いたのか、ほんのり頬を染めて次を話そうとするゆかりん。……にちょっとほっこりしつつ、了承の意を伝える。視線がちょっと鋭くなったけど、涙目なので怖くないデース。*4

 

 

「……はぁ。えっと、凍結塔についてだったわね。それを話す前に『なりきり郷』の地下について説明しときましょう。実際に地下を掘っているわけではない、というのは知ってるわよね?」

「ゆかりさんに聞いたんで多少は」

「ゆかりさん?……ああ、そういえば結月ちゃんもゆかりだったわね……」

 

 

 唐突なゆかりさん呼びに一瞬困惑して眉を曲げるゆかりんだったけど、すぐに結月さんの方だと気付いて納得したように頷いている。……名前被りは多重クロスのお約束よね。*5

 

 

「ここの地下は正確には地下にあるわけじゃないから、各階層で高さも広さも結構違う*6のよね。動物系になってしまった人なんかは、場合によってはヤバいことになってる*7から一階層丸々使ってる、なんてこともあるし」

「……参考までに聞いときたいんだけど、それどういうのが居るの?」

「えっと、ミラルーツ*8さんにバハムート*9さんに原作者も知らないドラゴン*10に……」

「よくわかったんでもういいで……いや待った原作者も知らないドラゴンって何?」

「原作者も知らないドラゴンよ?」

「ええ……?」

 

 

 挙げられた錚々(そうそう)*11たる面子に思わず目眩がしそうになって、最後に挙げられたモノに思わず声を上げる。……いや、なんでそんなもののなりきりしようとしたのその人……え、流れで?ええ……?

 

 思わず宇宙猫*12になりつつ、それだと話が進まないので気にせず進めてくれとゆかりんにお願い。

 彼女は苦笑いをしながら、続きを話していく。

 

 

「彼らはまぁ、どっちかと言えば他の龍と一緒だと争いになるかもしれない、って自分から進言してくれた人……人?達だからまぁまだマシなんだけど。うん、そういうの意識しないような人もまぁ、居るわけでね?」

「ヴィラン*13的な?」

「そうそう。で、そういう人達はとりあえず隔離以外できないわよね、って感じで地下に作られた施設が、さっきの隔離塔を含む隔離区画ってわけ」

 

 

 ゆかりんの語るところによれば、地下千階というなんだそれ、みたいな場所にあるのが隔離区画なのだそうだ。

 空間拡張系の技能を持っている人達が力を結集して作り出されたこの区画は、一つの星程の広さを持っているらしい。……スケールデカいなおい。

 その中で、さっきのレベル3などの隔離が必要な者達は、自身と似たような体質の者と一緒に一つの塔に住んでいたり、はたまた一人で塔を占拠みたいなことになっていたりするらしい。

 例で示すなら、静謐ちゃんやアークナイツ組は前者、いーちゃんは後者だ。

 それとは別に、刃牙とかみたいな格闘系のモノを原作に持つ人達の為に闘技場みたいなものもあるらしいけど、それはまた別の話らしい。

 

 

「そういう隔離塔の集まりと隣接するように、別個に儲けられているのが凍結塔。こっちは隔離じゃ本人の行動を抑えきれないから作られた、文字通りの監獄みたいなものね」

 

 

 そして、その隔離塔のある場所から少し離れた位置に隣接しているのが、中に入った者を概念的・空間的・時間的に凍結し()()する為の施設、凍結塔だ。

 

 

「保護?」

「監獄、って説明と矛盾するようだけど、根本的にはそのまま放っておくと自他共に傷付ける可能性がある人達を()()()為のものでもあるのよね。確保・収用・保護*14と言えば分かるかしら?」

「……いやまさかと思うけど、居ないよねあの辺りの」

「とりあえず今のところは。……()()()を探した訳じゃないから、断言はできないけど」

「怖いこと言うの止めようよゆかりん!?」

 

 

 なりきりからの憑依だから、よっぽどの事がないとフルスペックなんて発揮できないんだろうけどさぁ!?

 なんて風に叫ぶ私に、ゆかりんは苦笑い。……さっきから苦笑いばっかり浮かぶなこの話……。

 

 

「レベル4相当の人達はそれなりに原作のスペックを引き出せてるから、思うままに暴れさせるのは心身及び周囲によくないってことで、色んな所から状態停止に関する技能を集めに集めて……そうして作り上げたのが凍結塔なのよ」

「へぇー、停止系かぁ。……ストップ*15とか?」

「封絶*16とかタイムストップ*17とかね。纏めるのには私が協力しました」

「流石の境界弄り……」

「えっへん。管理人ですもの、これくらいはね?」

 

 

 まぁ、作るのに一ヶ月くらい掛かっちゃった*18んだけど、と最後に付け加えて、凍結塔の話はおしまいになった。

 ……ふむ。なんというか、明かされた情報だけで結構お腹いっぱいなんだけど。これ、最後のレベル5についての話がまだなんだよなぁ。

 なんとも言えない気分で横のマシュにチラリと視線を向ける。……さっきよりは落ち着いてるけど、はてさてどうなることやら。

 

 

「さて、最後のレベル5についてなんだけど。……そもそもここに区分されるような人達は、両手で数えられる程しか居ないから、ちょっと推測が入るということは先に言わせて貰うわね。彼等はレベル4とは逆に『演者と憑依者が噛み合いすぎてしまった』人達。主義思考や重んじるモノなどが()()()()()()()()、結果として不和を起こした人達よ」

「重なり、過ぎた……?」

「そう。マシュちゃんにも覚えはない?どちらでもない(彼我の境界)どれでもない(虚現の境界)どれにもなれない(真偽の境界)の感覚」

「あ、は、はい。私はマシュではありますが、同時に決してマシュではないという確信。……胸の奥で燻る焔のようなそれを、私は確かに感じていました」

「燻る焔、ねぇ?……まぁ、それは置いといて。凍結処理前に話を聞いたレベル5相当の人達は、皆同じ感想を抱いていたわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()、ってね」

「………!」

 

 

 ゆかりんの言葉を受け、隣のマシュが息を呑む。

 レベル5相当の人物に共通する自己の否定。……これは哲学的なものではないのだろう。何故ならば──。

 

 

「おかしな話だと思わない?彼等は()()()()()()()()()()()()()()。なりきりはその通り、相手に()()()()もの。──端から違うことは確定的なのにも関わらず、錯乱するほどに違うと否定する彼等は、はたしてどういう思いでそれを否定していたのかしら?」

「……実際に錯乱するほどに、似た人物を演じていたから。さっきのレベル4とは違い、『近しい性質を持つがゆえに、自他の境界が溶け合いそうになった』人達ってことね?」

「そういうこと。レベル4は()()()()()()()()()だけど、レベル5は()()()()()()()()ってわけね」

 

 

 ある種、なりきりと言うものを真剣にやっていたからこその落とし穴。

 なりきりとは、本来どこまで行ってもごっこ遊びである。だからこそ真剣になりきろうとするし、そのキャラクターらしい思考をトレースしたりもする。

 

 だがそれは、遊びであるからこそ。──実際にそのキャラクターになってしまった時に、一体どうなるのか。

 割り切れる人はまぁ、特に問題もないのだろう。似ているキャラ、似ていないキャラ、どちらであっても自分と言うものは揺るがないはずだ。

 だが、割り切れない人は?なりきりの理由に何かしらのシンパシーが混じっていたりしたら?自分の思考のはずなのに、相手の思考だと誤認できてしまうほどに近いモノだったら?

 

 ──その結果が、強烈な()()という衝動なのだろう。

 自分と彼等が同じである筈がない、彼等の輝きは、自分などには及ぶべくもないものだ、という。

 

 

「基本的にレベル5に区分される人は、その強烈な違和感に心身を蝕まれてしまうの。だからレベル5の人達に関しては、本当に保護という方が正しいのよね。──そうしないと壊れてしまうのが、目に見えてるんですもの」

「で、では、私は!?私はどうして今、無事なのですか!?」

 

 

 ゆかりんの言葉に、たまらずと言った風にマシュが立ち上がる。……()()()()()()()らしくない彼女の行動に、その手を引いて注意を促す。

 彼女はこちらを驚いたように一瞥したのち、唇を噛み締めソファーに座り直した。

 ……あーもう、まーたぐちゃぐちゃになってるこの子。

 仕方ないのでまたお菓子攻撃。もう大丈夫と根を上げるまでお菓子を食べさせてあげて、改めてゆかりんに向き直る。

 

 

「もう大丈夫?じゃあまぁ答え合わせだけど……そりゃもちろん、キーアちゃんのおかげ?よね」

「ですよねー」

「え、あっ!『キーアちゃんツッコミブレード(ハリセン)』!?」

 

 

 答えは分かりきっていたので、二人でため息。

 ……マシュの言う通り、私のハリセンが原因であることは明白だろう。

 

 あのハリセン、言ってしまえば場面転換を物質化したものである。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()を吹っ飛ばした事により、彼女は違和感による無限ループ*19の向こう側に飛び出してしまったのだ。

 結果、彼女は悩みながらも進む事ができるようになった、と。あんまりにも物理的な解決方法に、思わず自分の事ながら呆れのため息が漏れる。……いや、結果的にはよかったんだろうけどさ?

 

 まぁ、そこは置いといて。

 

 

「スペックの上限値の計算に、なりきりの完成度が含まれている癖に、上げすぎると問題が発生するかもってどう見ても罠よねこれ……」

「遊びじゃないって仮定なら、俳優さんとか声優さんとかがそういうの高くて、なおかつ引っ掛からなさそうだけど、そういう人は居ないの?」

「その辺りの人達は、そもそもなりきり板なんかに来ないわよ」

「うわー唐突なマジレス*20……」

 

 

 没入型のなりきり(メソッド・アクター)*21であればフルスペックになるけど、代わりに自身の存在に悩むことになる。

 普通のなりきりでは、どこまで行っても五割程度にも満たない。

 ……なんだろうねこの欠陥システム。いや、ほどほどで十分だって言うんなら、今のこれでも構わないんだろうけどさ?

 

 ますますこの現象について意味が分からなくなって来る中、ゆかりんがソファーを立ち上がった。そして、こちらにも立つように促してくる。

 

 

「どしたのゆかりん?」

「ちょっと確かめたい事があってね。これから凍結塔まで付き合って貰える?」

「……は?」

 

 

 ───なんですと?

 間抜けな顔を晒す私に、ゆかりんは可愛くウインクして見せるのだった。

 

 

*1
甘いものを食べると実際に幸せになるそうで。その原理は脳内でホルモンが分泌されたりなど色々あるけど、とりあえず甘いものを食え、話はそれからだ

*2
黒幕、即ち事件の真犯人みたいな動きの事。八雲紫は胡散臭いの化身でもあるため、こういう動きをするのがよく似合う

*3
実際に黒幕かどうかは別として、黒幕っぽいムーブするのって意外と楽しいよね、みたいな確認と謝罪。そういうところだぞキーアァ!

*4
英米系の人御用達の語尾。胡散臭いのから元気な感じのキャラまで、幅広く使われるもの

*5
同一作品内では、意図して被らせる方向に持っていかないと名前は被らないが、クロスオーバーなら容易く名前は被る。そんな環境でも被らない名前というのは、ある意味貴重なのかも?

*6
地下なのに太陽が登ってる、みたいに見える階層もあるのだとか

*7
動物の本能に従ったような生活をしているものもそれなりに。そういう意味ではある程度理性的な物が多い、ポケモンとかデジモンとかは当たりなのかも?

*8
『モンスターハンター』より、禁忌のモンスターと呼ばれるものの一つ。一時期は公式から姿は愚か名前すら隠蔽されていたこともあった(無論そういう設定だった、というだけではあるが)。ミラルーツは正式な名前ではなく、原作的には『祖龍ミラボレアス』と呼ぶ方が正しい。紅き雷を操る、超抜級の白き龍

*9
中世イスラムの伝承に登場する巨大な魚の幻獣。ベヒーモスとリヴァイアサンの伝承が混ざりあって生まれたものとする説がある。また、その伝承を元に生まれた強力なドラゴンの名前としても有名。こちらは元々はアメリカ発のTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』で『神の竜』と呼ばれる存在にバハムートの名を与えたことから派生して行ったとされる。因みにここにいるのはその派生である『ファイナルファンタジーシリーズ』に登場する方のバハムート

*10
『聖剣使いの禁呪詠唱』より、文字通り原作者も知らないドラゴン。アニメ化するに当たって設定されたアニメでのラスボス。なんだこのドラゴン!?

*11
多くの物の中で、特に優れているモノを示す言葉。元々は中国の故事から生まれた言葉で、『鉄中錚々(てっちゅうのそうそう)』から取られているとされる。そちらは中国の歴史書『後漢書(ごかんじょ)』にて記されている、後漢の光武帝が赤眉の乱(せきびのらん)を平定した時に、投降してきた賊軍に対して掛けた言葉。『錚』は鉄の楽器のこと。賊軍に対して「投降したことに後悔はないのか」と問いかけ、「赤眉の乱に参加したことは後悔しているが、投降したことに後悔はない」と返されて述べたもので、意味的には「鉄のような卑しい金属でできた楽器でも、時に良い音を鳴らすことがある。お前達は賊軍ながら、賢い判断をしたな」と言ったところか。その為、元々は褒め言葉という感じのものではなかった。日本で使われている内に意味が変化したものの一つ

*12
宇宙を背景に、呆然としたような表情を浮かべた猫が一匹居る、という画像。事前情報無しにこの画像を見た時に脳裏に走ったナニコレ?という感覚が、この画像が示すもっとも原始的な感覚である(宇宙猫顔)

*13
綴りは「Villain」。悪役、ないし憎まれ役の意味。日本人的にはアメコミの敵役の呼び方としての馴染みが深いだろうか?

*14
とある団体の基本方針。下の紫の台詞通り、今の所この世界に彼等関係のものは見当たらないようだ

*15
この場合は『ファイナルファンタジーシリーズ』の魔法の一つ。対象の時間を止める魔法。作品によって黒魔法扱いだったり時空魔法扱いだったりする

*16
『灼眼のシャナ』より、作中の技術『自在法』の一つ。『存在の力』と呼ばれる特殊な力でドーム状の空間を作り、その内部の因果を外の世界から切り離すことで外界から隔離・及び隠蔽する因果孤立空間を作り上げる技法。現代異能もので隠蔽工作をする時に欲しい技能は?と聞かれたら真っ先に上がるくらいに高性能。内部で動く為には特殊な素養やアイテムが必要になるものの、内部での破壊活動の補修や外部からの横槍の阻止、さらには解除後にも周囲に気付かれないなどのご都合主義が満載

*17
こちらは『テイルズオブシリーズ』より。効果的にはストップとさほど変わらない。似たような停止魔法は色んな作品に溢れている

*18
八雲紫本人なら一日も掛かってないというか、そもそも一人で事足りるでしょうね、とはゆかりんの言

*19
何らかの理由や原因によって、同じ行動・状態が永遠に繰り返される状態のこと

*20
真面目な返事(レスポンス)のこと。それそのものに悪い意味はないが、空気を読まず正論を言う相手を揶揄する風に使われる事がほとんどである

*21
メソッド演技を使いこなす俳優のこと。メソッド演技とは、キャラクターに()()()()ことで演技をよりリアルに近付ける為のもの。近年の作品に、該当する演技ができるキャラクターが存在していた……というか、彼女(夜凪景)の存在でこの演技法を知ったと言う人も多いのかもしれない。元々はロシア・ソ連の俳優兼演出家であったコンスタンチン・スタニスラフスキー氏が提唱した演技理論、スタニスラフスキー・システム(仮想世界を脳裏に構築するもの)に端を発するとされている。この演技法のメリットとしては、役そのものに()()()()ことによってより自然な演技ができるようになることが挙げられる。デメリットとしては、深く役作りに没頭する……つまり()()()()()()()事により、精神に変調を来す恐れがあることや、なりきることを意識しすぎると却って自然な演技から離れてしまう事がある、というものが挙げられる



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レスが貯まりすぎると投げたくなる

 地下千階。*1

 下の下、誰もが見逃す底の底。

 罪人でも無いのにそこに繋がれているのは、己を見失った哀れな子供達。

 

 ……なーんてことを嘯きつつ、ゆかりんの背をマシュと共に追う。

 地下空間にあって太陽を抱く空を擁するこの場所*2は、明るい筈なのにも関わらず、どうにも暗さを抑えきれていないような気がする。……気分の問題なんだろうな、というのはなんとなく分かるが。

 

 

「ごめんなさいね?私のスキマでパッと行ければ良かったんだけど、この辺りはそういうの使っちゃダメって事になってるから」

「い、いえ。この場所が重要な場所だと言うのは、肌で感じ取れます。無用な混乱は避けるべき、というのは間違いでは無いかと」

「だからって歩きというか、まさかの移動床……動く歩道(オートウォーク)だとは思わなかったけども」*3

 

 

 背を追うと言いつつ、ずっと同じ背を眺め続けてるだけなのはどう言うことなのか、と思わなくもないような、自然の中を突き抜けていく動く床は、なんというか若干ギャグ染みていると言うか。

 なんとも言えない気分を抱えつつ、私達は一路凍結塔へと向かっている。

 

 

「なんだったら帰る時にでも隔離塔の方も寄ってみる?」

「いやー、物見遊山*4で向かうような場所でもないでしょ?流石に自重するよ」

「そう?まぁいいけど。おっと、ここで隣のレーンに乗り換えてね」

「歩道の乗り換えとは……?」

 

 

 複数の場所に向かうための移動床が立ち並んでいるが、勝手に行き先が切り替わったりはしないらしいので乗り換える。……アナログ*5なんだかハイテク*6なんだがわかんなくなるなこれ。

 そうして暫し道を行き、たどり着いた凍結塔。

 外からの見た目は……なんというか、ラストダンジョン感あふれる風情と言うか……。

 

 

「で?ここまで連れてきて、ゆかりんは何を確かめたいの?」

「レベル5及び4相手に、貴方のハリセンがどの程度効果があるのかの実験♪」

「……んー?すまない聞き取れなかったなー。……なんて?」

「言い方が悪かったわね。貴方の力で治療ができるのか、それを確かめたいって言えば分かる?」

「うわー、突然の重大案件……」

 

 

 塔の前でゆかりんが言うのは、つまりはマシュと同じ事ができるのかどうか、というもの。……同じ事ができるのなら、凍結塔内の人はその処理を解除できるのではないか、ということらしい。

 ……いきなり重たい話が飛んできたけど、うーむ。

 隣のマシュに視線を向けると、彼女は真剣な表情でこちらを見ていた。

 ……できることはやっておきたい、とでも言うか、どうにかできるのであればやるべきだ、とでも言うか。……端的に言うと凄く期待されている感じである。……うへー、その信頼はちと重いっすよマシュ……。

 

 

「とりあえず、4と5を一人ずつ試して欲しいのよね」

「……先に断って置きますけど、連続使用は無理ですからね」

「あら、それはなんでまた?」

「なんでって……なんでもです、なんでもっ」

「ふーん……?」

 

 

 ゆかりんがこちらの様子を伺いながら、塔の扉を開く。

 中は普通の塔と言った感じで、仰々しい名前の割には拍子抜けしてしまう感じ。

 中に通された廊下を通り、奥へ奥へと進む。突き当たったところに階段があったので、それを上へ。……地下で一つの階層内に居るのに上に階段を登るってなんだよ?

 

 真面目に考えると頭が痛くなってくる建物を進みに進んで、ようやく目的地にたどり着いた。

 特殊収容区画凍結塔内の一角、焔の間。……凍結塔なのに焔の間とはこれいかに?いや、焔系の誰かが封印されているんでしょうけども。

 

 

「そういうこと。──彼女が仮に表に出てこれるなら、色々とできることも増えると思うの。だから、頑張ってね♪」

「え?頑張るってなに……わたぁっ!?」

「せ、せんぱいっ!?」

 

 

 扉の前で話をしていたら、突然の落ちるような感覚。──足下にスキマを開かれたのだと気付いた時にはもう遅く、私はそのまま何処かへと落下してしまう。

 着いたのは、背後の扉を見るに焔の間の中だろう。

 迂闊に扉は開けられないということなのか、私だけを送り込んだようだ。……なんかイヤな予感がするんだけど、大丈夫だよねこれ?

 

 

「……起こすなって、言ったでしょ、『境界の守り手(八雲紫)』」

 

 

 ──奥から聞こえてきた声に、動きを止める。

 鈴を転がすような、可愛らしい声。けれど、その声に乗る感情は重く、暗い。

 

 何も見ず、何も聞かず、何も思わず。

 そうして微睡む事こそが最善であり。──けれどそれは()()を否定するものであるがゆえに、意思を凍らせる以外の答えを持てず。

 燻り、猛り、ただそこにある焔。

 『審判』と『断罪』を体現する天罰神、"天壌の劫火(アラストール)"の契約者である少女『炎髪灼眼の討ち手』。*7

 その似姿である演者が、そこに立っていた。

 

 

 

疑身 炎髪灼眼の討ち手が 1体でた!

 

*8

 

 

 

 

 

 

「ふっざけんなよゆかりんあんた後で覚えてなさいよぉぉぉおっ!!!?」

 

 

 飛んでくる炎の刃やら塊やらを必死で避けつつ、扉の向こうで呑気に観戦しているのであろう相手に罵声を浴びせる。

 

 余裕があるように見えるけどそんなもん全然ない。

 そもそも長時間相手をあのままにしておくとどうなるかわかったモノではないってのもあって、どうにかならないかと隙を窺っているのだけれど。

 相手は()()()()のみでこちらの気勢を削ぎ、押し込めようとしてくる。……殺意が一切ないのだけはありがたいけど、そんなこと言ってらんないくらいにめっちゃ怖いんですけどぉ!?

 

 

「ほらほらキーアちゃん、がんばれ♡がんばれ♡」*9

「ここぞとばかりに煽るの止めてくれるぅ!?っていうかなりきりでバトルは御法度で、ってああもう!!」*10

 

 

 足を止めると正確に炎がこちらを捉えて飛んでくるので、おちおち会話もできないんですけど?!

 って言うか向こう全然本気出してないし出せてないのにこれっておかしい!!戦力差がおかしい!!*11

 

 対面の彼女は、一歩も動いていない。

 体から白い煙の様なものを立ち昇らせながら、苦しみにその美しい相貌を歪めながら、ただここから立ち去れとだけ呟いて、おざなりな炎弾や炎刃を飛ばして来ているだけだ。

 

 ……そもそもに非殺傷設定になってることもあって、その攻撃に遠慮は一切感じられないが、同時に殺意も一切感じられない。

 こんないい加減な──それこそ周囲を飛ぶ羽虫を払うような動きでしかないようなものでも、近付くための隙というものが見えやしない。

 ……グレイズ*12するにしても弾が大きくて速いから隙間もないし!なんじゃこれクソゲーか!?私の装備ハリセンしか無いんですけど!?

 

 

「他にも色々あるんでしょうに、使わないの?」

「使いたくないって言ったでしょうがぁ!!……ああもう、そうも言ってらんないか!」

 

 

 痺れを切らしたのか五つの炎弾*13がこちらに纏めて襲い掛かってくる。ええい、是非もなし!

 

 右手のハリセンに意識を集中、ハリセンの形を残したまま、その概念に手を加えていく。──求めるは、あらゆる異端を祓う武器。

 普くを謡い、普くを纏う我が業にて、此処に一つの宿業を結ぶ。

 

 

「……ああぁぁあぁもうっ!!黒歴史過ぎる!!」

 

 

 チートオリキャラ的なパワーなんか使いたくないんだってば!……的な事を叫びつつ、右手のハリセンを振り抜けば。

 

 

「疑装『ハマノツルギ・改』!自在法がぁー、なんぼのもんじゃいっ!!!」*14

「───っ!!?」

 

 

 腕の長さ程度の紙のハリセンだったそれが、身の丈程もある巨大な鉄製のハリセンへと変わる。……結局ハリセンじゃねぇか?そうだよハリセンだよ悪いか!

 気合一閃、振り抜いたハリセンに触れた炎弾が掻き消えたのを見て、ようやく相手に隙が見えた。それを逃さず彼女に飛び掛かり、

 

 

「正気にぃー、戻れぃっ!!」

「ひゃんっ!?」

 

 

 その脳天に、()に戻したハリセンを落とす。

 

 スパンッ、という軽やかな音。

 炎の色に染まっていた彼女の髪の色は元の黒色に戻り、その瞳もまた、灼熱の赤から黒く落ち着いたモノに戻っていた。……ついでに、立ち昇っていた白い煙もどこかに行っている。

 ……あれは、やっぱり魔力とかではないのか?

 なんて事を思う私の前で、彼女は腰を抜かしたように尻餅をついていた。

 

 

「流石チートオリ主的スレ主!やってみせたわね、キーアちゃん!」

「なんとでもなったわ」

「即答ですか!?」*15

 

 

 ……なんかカボチャを被って踊んなきゃいけないような気がした*16けど、そんなことは無かったわ!ハロウィンでもないのにカボチャ*17とかナイナイ。

 扉が開いて中に入ってきたゆかりんとマシュに微笑み返す。……短い攻防ではあったが、まぁ多分勝ったのでよしとする。で、その上で──。

 

 

「ごめん限界、ばたんきゅー」*18

「え、は、ちょ、せんぱいーっ!?」

「あらまぁ」

 

 

 色々と限界だったので、意識を手放す私なのでした、きゅう。

 

 

 

 

 

 

「……む、ここは」

 

 

 知らない天井だ*19、なんてお決まりの言葉を述べつつ上半身を起こす。ふむ、病室的な何かっぽい場所のようだ。

 ベッドから飛び降りて、部屋の中を見て回る。……うん、私に医療器具の知識はないのでよくわからん。

 

 

「起きたか」

「おっと、はい起きましたよっていうか、えっと?」

 

 

 見知らぬ男性が部屋に入ってきたので、姿勢を正して言葉を待つ。……ん?いや、この人、まさか?

 白と黒の混じった髪、同じように肌も青と普通の色がつぎはぎのようになっていて、顔には大きな手術跡、そんでもって黒いコート……いやいやいや、マジで?

 こちらの困惑を感じ取ったのか、男性は口元を歪め、皮肉げに言葉を発した。

 

 

「……まぁ、顔で分かるか。お察しの通り、ブラック・ジャック*20のなりそこないだよ、私は。この病棟の専門医を務めている、宜しくとでも言っておこう」

「あ、は、はい、よろしくおねがいします……」

 

 

 まさかのビッグスターに驚きつつ、彼もまたなりきりなのか、と少し驚く。

 ……雰囲気だけなら完全に彼だったが、退廃感というか厭世感というかが酷く漂っていた。……いや待て、ここ病棟って言った?

 

 

「せんぱい!!」

「わっと、マシュ?」

「いきなり倒れるのは止めて頂戴ね、流石に焦るから」

 

 

 考えを纏める前に、先生が出ていった扉からマシュとゆかりんが入ってくる。

 倒れたって……ああ、ちょっと慣れないことしたから気を失ったんだっけか……。

 

 

「精神性の失神だろう、別に大したことはないはずだ。経過観察も必要あるまい」

「んー、キーアちゃんそんなに嫌だったのアレ?」

「いやそりゃ嫌でしょう、ただでさえチートオリ主みたいでアレなのに、その上借り物まで使うとかもうボコボコじゃん私……」

 

 

 外に二人を呼びに出ていたらしい先生が戻ってきて、ゆかりんに説明をしていた。

 ……そのままこっちに疑問が飛んできたので、イヤに決まってるじゃんと一蹴。……実際にやらされて分かるこっ恥ずかしさよ、これは私にしかわからんのだ……。

 

 

「ところで、ここ……」

「ああ、そうそう。貴方がサクッと気を失っちゃったから、予定を変更して隔離塔の一つである病棟にちょっと診察して貰いに来たのよ、物見遊山気分でね?」

「その、すみませんせんぱい!ここが一番近くて、一番頼りになると言われては、反対することもできず……」

 

 

 自分のことは置いといて、現在地について尋ねて見たところ。案の定な場所だったことを聞かされて、少しばかりげんなりする。……マシュは悪くないよ、全然悪くない。

 

 ──立ち寄るつもりの無かった隔離塔。

 そこに今いるということに、どうにもゆかりんに誘導されているような気がしてならない私なのだった。

 

 

 

*1
リアルに掘ってるなら大体地下3kmとかその辺り

*2
真面目に類例を挙げるなら地球空洞説辺りか。似たようなモノには仏教やヒンドゥー教の伝承に存在する、地底都市アガルタなどがある。アガルタそのものはシャンバラと呼ばれる理想郷と同一とされることもあるようだ

*3
動く床、横方向のエスカレーター。傾斜が付いている場合はオートスロープと呼ばれることも

*4
気晴らしにあちこちを見て回ること。四字熟語系では珍しく、日本で生まれたとされる。『物見』はそのまま『物を見る』から、『遊山』は禅宗で使われる仏教用語からきており、こちらは『修行を終えた禅僧が他の寺へ修行遍歴の旅に出掛ける』ことを元々は示していた。それが旅をして心が晴れることを指すように変わっていき、『物見遊山』という四字熟語になっていったのだとか

*5
綴りは『analog』。ある情報を連続的な量として扱うこと。また、そういう情報処理方式のこと。ただし、ここではどちらかと言えば古いものを指す言葉として使われている

*6
ハイテクノロジーの略。新しい技術、先端技術を指す言葉

*7
『灼眼のシャナ』のヒロイン。釘宮ボイスが特徴的なフレイムヘイズの少女。ツンデレ系のギャラリーだと思われがちだが、実際は微妙にカテゴリー違いだったり

*8
『女神転生』風のエンカウント表現。因みに疑身などという種族は存在しない

*9
実は元々は『頑張れ頑張れー♡』だったとか。詳しい検索は良い子はしちゃダメだぞ☆

*10
いつかも書いたけど、なりきりでバトルとかどう考えても酷いことにしかならないから止めようね!

*11
本気だったらそもそも避けられるかわからないbyキーア

*12
『東方project』より、かすりを意味する『グレイズ(graze)』から。弾幕シューティング系でお馴染みになっているシステムの一つで、敵の弾や攻撃をギリギリで避けるとボーナスポイントが貰えるというもの。そこから派生して、何かしらをギリギリで避けることそのもののことも指すようになったのだとか

*13
五指爆炎弾(フィンガーフレアボムズ)』的なムーブ。そちらは『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』に登場する魔法で、五本の指から一つずつ、計五発の炎弾(メラゾーマ)を同時発射する

*14
元ネタは『魔法先生ネギま!』のヒロイン、『神楽坂明日菜』の持つ武器(アーティファクト)、『ハマノツルギ(エンシス・エクソルキザンス)』。魔力や気に対しての特攻武装。キーアが使ったのは、その能力範囲を拡大解釈した改造版。チートオリ主にありがちな改良武装、著作権を訴えられたら負けるアレ

*15
「やってみせろよ、マフティー!」「なんとでもなるはずだ!」「ガンダムだと!?」……鳴らない言葉をもう一度描きたくなる流れ。すなわち『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の予告PVからの派生ネタである『マフティー構文』である。更に元ネタを探ると『ウマ娘 プリティダービー』と『アイドルマスター シャイニーカラーズ』にも飛び火する。……ふゆたちは空中戦は分が悪くてもウマ娘達なら地上は踏破出来るので実質マフティー・ナビーユ・エリン。……いや何言ってるんだこいつ?

*16
『連邦に反省を促すダンス』。カボチャ頭で全身タイツの男性が踊る映像を、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の主題歌である『閃光』と組み合わせた結果、なんだかよくわからないけど滅茶苦茶流行った。詳しい元ネタは調べた方がよく分かるのでそちらをおすすめします。やっちゃいなよ、こんな偽物解説なんか!

*17
ハロウィンは元々ケルトのお祭り、『万聖節』が元になっているとされている。そちらではカブを使っていたが、キリスト教に取り入れられアメリカに広まる時に、カブはそんなに生産していなかった為、代わりに生産数の多かったカボチャを使った結果、それがそのまま広まってしまったのだとか

*18
バタンと倒れてきゅー、と眠るという意味の死語。現在聞く機会はほとんどパズルゲーム『ぷよぷよ』の主人公、『アルル・ナジャ』の敗北ボイスくらいのものだろう

*19
『新世紀エヴァンゲリオン』第二話『見知らぬ、天井』で主人公『碇シンジ』が発した台詞。使いやすい台詞であるため、結構な頻度で見かける言葉

*20
手塚治虫氏の作品『ブラック・ジャック』の主人公。法外な治療費の代わりに、あらゆる難手術を成功させる凄腕の医師を主人公にした物語。医者のキャラクターと言えば真っ先に例に挙げられるレベルで有名な存在



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タイトルのネタが尽きてくると台詞でごまかすようになる

 隔離塔のうちの一つ、病を負った者達を癒す為に建てられたモノ。──それが、いわゆる治療塔と呼ばれるモノなのだそうだ。

 

 

「向こうの『鉱石病』患者用の塔とは、また別枠でな。憑依者が病人であるが故に身体的なハンデを背負うことになった者達が、この塔には集っているんだ」

 

 

 そう説明する先生の先導の元、院内を歩く私達。

 ……さっき対峙した『炎髪灼眼の討ち手』が搬入されたという病室に案内して貰っているわけなのだが。……なんで先生自ら案内して下さってるんですかねこれ?

 

 

「……率直に言って、手が足りんのだ。医者はそれなりに姿を見るが、看護師が全くと言っていいほど足りていないんだよ」

「看護師が?……ふーむ、看護師……ナイチンゲール*1さん……はダメだ、あの人、お構いなしに向こうの塔に突進しかねない……」

 

 

 先生から明かされた事実に、ふと思い付いた看護師を挙げてみたけど。……初手から躓いてダメだこれ、ってなったので考えるのを止める。素人判断過ぎて、まともな看護師を思い付ける気がしないや。

 

 ……いや、そもそもの話、看護師キャラで有名なキャラが思い付かないことないかな……?

 

 

「ジョーイ*2さんとか居ればいいんでしょうけど、あいにくと見たことないわねぇ。流石になりきりとしてはニッチすぎるのかしら?」

「いえ、そもそもジョーイさんと言っても、()になりきりするのですか……?」

「……に、ニビシティのジョーイさん、とか?」

「変化あるのかしらねぇ、それ」

 

 

 ……いやまぁ、多分私達の知識の幅が狭いだけで、ちゃんと探せば居るんだとは思う。

 けれどそれらがなりきりの対象になっているの?と聞かれると、ちょっと首を傾げざるを得なくなるというか。

 

 

「そういう意味では、医師系はそれなりに姿が見えるからまだマシなのだろうな。───冥土帰し*3、トラファルガー・ロー*4、トキ*5、八意永琳*6……その他も疎らに、といった所か。……とはいえ。どうにも医療レベルの最大値を、現代の最先端医療まで引き下げられているようにも思える現状としては……冥土帰し辺りなんかは、歯痒い思いをしているだろうな」

「なるほど。……そういう意味では、ヒーラー系の方が有り難かったりするので?」

「ヒーラー、回復術士か。……どうだろうな?私には少々、判断しかねる所があるが」

 

 

 医者系はまぁ、それなりに人気なキャラも多いので、姿がチラホラ見えることもあるようだ。

 

 ……聞く限り、いわゆる超技術級の医療を期待することはできなさそうだが。

 冥土帰しさんが普通の医者のレベルにまで下がっているというのなら、そりゃもうかなりのデバフが掛かっているとしか思えない。

 

 それと、ヒーラーについては口を濁されてしまった。

 ……ふむ、医者系より更に人員は多くなるんじゃないか、と思ったのだけれど……?

 

 

「戦闘系技能よりも遥かに強く、強烈な下降補正を受けているようでな。──ベホマズンがホイミになっている*7、と言えば分かりやすいか?」

「めっちゃ下がってる?!」

「キュア・プラムス*8で一割回復、かつ単体変化だからな。どうにも強すぎる回復術は、現実に合わせる際に不具合を起こしているらしい。……元の原理で動かせているわけではない、と言うことなのだろう」

「いやいやいや、キュア・プラムスが一割で単体化って何の冗談ですかそれは……」

 

 

 最高域の回復術がえげつないレベルのナーフ*9を食らっている……。誰だよこんなクソみたいな調整しやがったやつぅ!!?

 

 思わず吠えてしまうが、ここで私が吠えても仕方がない。……どっかの回復術無双してる人とか、凄まじいデバフ食らってない?みたいな事を思いつつ、思考を戻して先生の方を見る。

 

 

「これは推論だが──恐らく、医療系は求められていないのだろう。そこの八雲の言を借りるのなら、この異変はあくまでも、治すことには眼を向けていないんだ」

「治すことに、眼を向けていない……ですか?」

 

 

 続きを語る先生の言葉に、疑問を浮かべたマシュが聞き返す。

 先生はそうだと頷いて、手にしていたカルテをこちらに差し出してきた。

 ……私にはよく分からないけど、それでもなんとなくおかしなところがある気はする。

 

 ざっと流し見して、カルテをマシュに渡す。

 ……マシュの方はある程度カルテが読めるのか、読み進める毎に表情を険しいモノに変えていった。

 読み終わったマシュがカルテをゆかりんに渡そうとするが、彼女は「私は一応知ってるから」とやんわり断っていた。

 

 マシュがそれに頷いて、カルテを先生に返す。彼はそれを受け取って、話を再開した。

 

 

「今見て貰ったのは、とある患者のカルテだ。……何か気付いたことは?」

「……病気が完治しそうになる度に、不自然なまでに薬が効かなくなったり、体調が崩れたりを繰り返しています。……もしかしてなのですが、治せる範囲に限りがあるのですか?」

「ご明察だ、具体的には二つ。『原作で治せていない病は完治はできない』『憑依直後を起点として、それよりも状態が良くならない』。代わりに、死を覚悟するレベルまで病が進行しても、次の日にはある程度小康状態にまで回復する。──まるで、今を繰り返しているかのように、な」

「それは……」

 

 

 返ってきた言葉がエグいというか、なんだそれはというか……。

 ……ってアレ?ってことはもしかしてだけど……。

 

 

「アークナイツ組、結構ヤバいので?」

「いや、彼等は作中に発症しない者が存在するからか、そこまで重篤な状態には陥っていない。……無論、完治もしないので楽観できる訳でもないが」

 

 

 世界観的に病と付き合い続けなければならない彼等はどうなのか。

 ……そう思って聞いたのだが、彼からは心配するほどのモノではない、という言葉が返ってくる。

 うーむ、なんか隠されてる気もするけど、だからと言って私が聞いても何ができるわけでもないしなぁ。

 ……もやもやは残るが、この話についてはここで打ち切っておくべきだろう。

 

 

「さて、ここが彼女の病室だ。……長期間の封印状態から解放された彼女は、現在は精神を落ち着ける為なのか深い眠りの中だ。極力、起こさないでやってくれよ」

 

 

 そんな話をしている内に、『炎髪灼眼の討ち手』の病室に到着した。

 先生は簡単な注意だけを残して、足早に去っていく。

 取り残された私達は顔を見合わせたのち、意を決してその部屋の中に進み入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 内部は別に特別なものというわけでもなく、普通の病室だった。

 目立つものと言えば、彼女の腕に繋がれた点滴がぶら下がるスタンドくらいのものか。

 近付いて彼女の寝顔を窺ってみる。……すやすやと眠っていてる。少なくとも悪夢に魘されたり、ということは無さそうだ。

 

 

「……ふむ、上手くいった、ということかしら?」

「さぁ、話してみないことにはどうにも」

 

 

 ゆかりんの呟きに、わからないという意味を込めて首を横に振る。

 ……私としてはマシュの時と同じ事をしただけなので、それ以上のことは本人に聞かない事にはわからない、としか言えない。

 もっとも、その本人が起きるかどうかは、こちらからでは全くわからない訳なのだけれど。

 

 

「あの、起こしてしまうと失礼になりますし、外で話しませんか?」

「私としては、今すぐ起きて貰いたいくらいなのだけれど……まぁ、マシュちゃんの言葉の方が正当性があるわよね。仕方ない、外に出ましょうか」

 

 

 入ったのにすぐ出るのってどうなんだろうね?みたいな気分で病室の外へ。……さて、仕切り直して。

 

 

「ゆかりん、いい加減話して貰える?なーんでわざわざ私達を連れてきたのか」

 

 

 さっきから多くを語らず黒幕ムーブしてるのはわかってるんだぞ!吐け!……的な視線を向けつつ、ゆかりんに問い掛ける。

 だってさぁ、さっきから胡散臭い笑みをずっと浮かべてるんだもんゆかりん。

 なんか隠してると言うか、隠してることを聞いて欲しくて仕方がないって感じなんだもん。そりゃ聞くよねっていうか?

 

 

「ふふふ、期待通りの反応ありがとうキーアちゃん。……まぁ、別に大した事じゃないんだけどね」

せからしか(うるさいわ)ー!その笑みの時は大体大した事なんだよー!」

「あら心外。ホントに大した事じゃないのに」

 

 

 くすくす笑うゆかりんが、楽しそう過ぎてうへぇ、ってなる。……そのムーブでなんでもないとか絶対嘘じゃないですかヤダー!

 そうして笑みを浮かべながら、彼女が質問を投げ掛けてくる。

 

 

「ねぇ、キーアちゃん。ここ、地下千階だって言ったじゃない?」

「……言ってたね、滅茶苦茶階層あるんだなって思ってたけど」

「病棟もある、食事処もある、なんなら遊興施設もあるわね。……まぁ、普通の街ならおかしくはないかしら」

「………」

「規模的には普通に政令指定都市級、下手するともうちょっと多いくらいの人数がひしめき合っているわけだけど。──ふむ、政令指定都市に認定されるには、何人くらいの人口が必要だったかしら?」

「……五十万人だね」

「そうそう。それくらいだったわね。……日本の総人口的には一パーセントにも満たない人数だけど。さて、もう一つ聞くわね?──あのなりきり板、そんなになりきりキャラ居たと思う?」

「……君のような勘のいいガキは嫌いだよ*10。……ってちゃう!なんで私が責められてるみたいになってんのこれ?!」

「わーい」

「いやわーいじゃなくて?!」

 

 

 なんかいつの間にかタッカーさん*11扱いされてるんですけど?!あっれさっきまでの流れ的にタッカーさんポジなのゆかりんじゃないのこれ?!

 みたいな感じで混乱していると、胡散臭い笑みを止めたゆかりんが、朗らかに話を再開しようとする。

 

 

「まぁ、ここに居る人がみんななりきりしてた人、ってわけじゃないのはちょっと口に出したことがあるけど。……それでも、人数的にみんなあの板の住人だと思うには、ちょっと無理があると思わない?」

「そう、ですね。仮に全体の半分……いえ、十分の一の人数だったとしても、一つの掲示板になりきりをするために集う人数だとは、到底思えません」

「うんうん、マシュちゃんの言う通り。なりきりなんて場末の遊び、こんなに人数が集まっているわけもない。聴衆である名無しを含めたとしても、ちょーっと足りないように思えるわよね?」

「えーい、まだるっこしいぞ八雲紫!つまり何が言いたいんだ君は!」

 

 

 痺れを切らした私の言葉に、彼女はにっこりと笑って。

 

 

「つまり、この場所に集まっているなりきりをしていた奴等は!平行世界であの掲示板を使ってた奴も含むんだよ!」

「な、なんだってー!!?」

 

 

 ある種の爆弾を落っことしてくれやがったのでした。

 

 

*1
『fate/grand_order』のキャラクターの一人。星5(SSR)バーサーカー。白衣の天使という言葉から連想される人物とは真反対の苛烈な人物。初登場時は『ナイチンゲールがバーサーカー?』みたいな意見も多かったが、詳しい人間には『いや、ナイチンゲールはバーサーカー以外ないだろ』なんて風にも言われていた。「私は()()()()()貴方を治療します」という言葉に、彼女の精神性が現れているのは間違いない。……なので、病気に掛かってる人は迂闊に近付いてはいけない(真顔)

*2
『ポケットモンスター』のキャラクター。「ポケモンセンター」という施設にてポケモンの回復を担当してくれる人物。格好がナースっぽいので勘違いしやすいが、名前の通り「女医(ジョーイ)」、すなわち医者である。なので、看護師として呼ぶのなら同作のポケモンの一種『ラッキー』などの方が正解。なお、彼女は同じ顔の親戚が無数に存在するため、どの街のジョーイさんなのか?と言われると一部の人間にしかわからないと思われる

*3
『とあるシリーズ』の医者の一人で、カエルのような顔をしている。『神の摂理すらねじ曲げる』と言われる程の凄腕の医師。『冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)』の異名は、彼の腕を讃えてのものである

*4
『ONE PIECE』のキャラクター。『死の外科医』の名を持つ船医にして船長。初登場時と現在のキャラクターが違い過ぎて、ちょっと笑えたりもする苦労人

*5
『北斗の拳』のキャラクター、北斗兄弟の次兄。本来暗殺術である北斗神拳を医療に転用し、人々を救うために尽力していた好人物

*6
『東方project』のキャラクター、初登場は『東方永夜抄』。凄腕の薬師であり、元は月の住人だったが、現在は地上で主と共に迷いの竹林の中にある永遠亭という場所で暮らしている

*7
どちらも『ドラゴンクエストシリーズ』の呪文の一つ。ベホマズンは味方全体の体力を全回復する……が消費魔力は高め。ホイミは味方一人の体力を30ほど回復する(参考までに、ドラクエでの最大体力は255か999)、消費魔力は少ない

*8
『ヴァルキリー・プロファイル』に登場する回復魔法。味方全体の体力を八割回復する。作品内では唯一の回復魔法だが、同時にRPG界隈全体でみても屈指の回復性能を誇る。使用後のクールタイムが長いという欠点があるが、このゲームは仕様上うまくなるほどクールタイムを短縮できるようになるため、実際の回転率はかなり高い。……敵側も使ってくるために絶望するはめになるのは、ドラクエのベホマと似た感じだろうか。ちなみに、続編のシルメリアでは対象が単体化してちょっと弱体化した

*9
弱体化の意。拳銃がオモチャの銃(=米国ハズブロ社の玩具銃『Nerf(ナーフ)』)にされた、というニュアンス

*10
『鋼の錬金術師』のワンシーンから。同作がダークファンタジーにカテゴライズされている理由の一端とでも言うべき、割りと心に来るシーン……なのだが、あれこれと事情を掘り起こされた挙げ句、相手が真相に切り込んできたので言い捨てる……という形式が汎用性に溢れていた為、シーンの陰鬱さに反して割りとパロディされることが多い台詞になっている

*11
『君のような勘のいいガキは嫌いだよ』って言ってる人。『鋼の錬金術師』のキャラクターの一人、ショウ・タッカー。娘にイヌミミくっつけるくらいにしておけば良かったろうに、なんて思うのはオタクゆえだろうか?



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平行なのか並行なのか、割りと統一されてないよね

「平行世界って、マジで言ってるゆかりん?」

 

 

 思わず驚いてしまったが、どうにも胡散臭い為聞き返す私に、ゆかりんはにこにこ顔を崩さぬまま問いを返してきた。

 

 

「あら、キーアちゃんならなんとなーくわかって貰えると思ったんだけど」

「私なら?」

「そう。……あの子、手加減してるって思ったでしょ?」

「……そう、だね。本気出されてたら、こっちももっと色々追い詰められてたと思うけど。……それが?」

 

 

 返ってきたのは、『炎髪灼眼の討ち手』との戦闘のこと。

 ……まぁ、彼女がこっちを害する気全開だったなら、私ももっと酷い目にあっていただろう。特に隙なんて窺えたか、窺え……?

 まさか、と言う思いと共にゆかりんに視線を向ければ、彼女は「実際に彼女に聞いてみないとわからないでしょうけど」と前置きして、とある推論を語ってみせた。

 

 

「『審判』『断罪』『飛炎』『真紅』*1。これらを使()()()()()()んじゃなくて使()()()()()()んだとすれば、彼女が隙を見せた理由にもなると思わない?」

「……い、いやいや!『審判』*2は見え過ぎるって聞くから、あんな狭い所じゃ使わなかっただけかも知れないし!そもそも錯乱してる部分もあったんだろうから、使えないのも仕方ないって言うか!」

「……そこでなんで彼女の肩を持つのかわからないんだけど?」

「い、いや、だってさ……」

 

 

 そんな、()()()()だなんて、それは。

 ──最初の平行世界説を、半ば認める事になるじゃないか。

 

 

「……『灼眼のシャナ』の原作が終了したのは今から九年前。去年新作が発表されたり、色んなソシャゲとコラボしたりしてはいるけども。それでも、大筋が完結したのは随分前のこと。──それを知らないと言うのなら、()()()()()()()()ところから来たのだと見た方が正しいと思わない?」

「なりきりの宿命として、私達は未来を知り得ない。……逆を言えば、知っている筈の未来が知られていないのであれば、相手側にそれを知らない理由がある……ということですね」

 

 

 マシュの言葉に、そーいうことと頷いてゆかりんが後ろに振り返る。……視線の先に居るのは、部屋の中で眠ったままの『炎髪灼眼の討ち手』か。

 彼女が目を覚まさない限り、この問題は解決しないまま、ということなのだろうか。……いや待てよ?

 

 

「ここに集まった人達全員からちゃんと話を聞けば、その辺りはっきりするんじゃないの?」

「おっとキーアちゃん、目の付け所がシャープ*3ね!」

「え?あ、ありがとう……?」

 

 

 これだけの人数が集まっているのだから、話を聞いていけば実際に平行世界である別の現実からやって来た人も見付かるのではないか?

 そう思って声を上げたらなんか褒められた。……な、なんか幼女扱いされてる気がする……!?

 撫でられた頭を擦りつつ、ゆかりんに視線を向ける。

 彼女はさっきまでと同じように笑っているが、眉がちょっと下がっているので困っている、らしい。

 

 

「私もね、これに気付いた時には確かめようと思ったんだけど……」

「確かめようと思ったけど?」

「んー、なんというかね?……()()に来てる時点で、知識が更新されてるっぽいのよね」

「……知識の更新?」

「なんと言えばいいのかしら……、憑依時点で知識の更新が起きてる、っていうか。……演者と憑依者が馴染む仮定で、知識が平均化されてる感じ?だから、今ここに居る人達に聞いても、正確には把握できないのよね、知識の差。そもそもの話、大体の人が自分の居たスレを思い出せなくなってるわけで、状況の確認もできないし」

 

 

 もし、今居る世界と違う場所から来ていたのだとしても、それを確認する術がないからわからない。

 ……少なくとも。演者と憑依者が不和を起こして、記憶の平均化がうまくいっていないような人間でもなければ。

 そこまで気付いて、ここに来た理由に思い至る。

 

 

「……確認の為には、レベル4以上の人の協力が必要だったってこと?」

「レベル4相当の人が素直に手伝ってくれるとは思えなかったから、レベル5の人を選んだというのは確かよ」

「……うまくいってなかったらどうする気で?」

 

 

 思わず口元をひくつかせる私に、ゆかりんはにっこり笑ってなんでもないように言った。

 

 

「全部ふりだしね♡」

「そんな笑顔で言うことかなこれ?!」

「だってそうなったらお手上げですもの~♪」

「うっわ開き直った!?」

 

 

 シリアスが終わってシリアル*4が始まる、みたいなノリになってきおったぞこれ。

 私にどうしろと言うのだ、ツッコミは荷が重いぞこれ。

 

 途方にくれる私と、なんかくるくる回ってるゆかりんと、そんな彼女に困惑するマシュ。

 ……この意味不明な状況は、様子を見に来た先生から「終わったんならさっさと出ていけ」と言われるまで続いたのだった。

 

 

 

 

 

 

「……なんか、無駄に疲れた……」

「お、キーアおねいさん!どしたの、おつかれ?チョコビ*5食べる?」

「……それってこっちの?それとも、ちゃんとしたの?」

「んー?よくわからないけど、オラが好きなのはこのチョコビだゾ!」

 

 

 上に戻って解散になったあと、市民の憩いの場、なんて(てい)で作られたらしい公園のベンチに座って黄昏(たそが)れていたところ、急に元気な挨拶が飛んできた。

 見ると、子供達の群れの中から見知った顔が一人、こちらに近付いて来ている。……そう、ご存知しんちゃんである。

 

 彼はこちらが意気消沈していると見るや、自身の好物をオススメしてくるのだが……。

 私としては、その好物が現実で作られたなんか違うやつなのか、はたまたアニメのイメージ通りのものなのかが気になってしまい、思わず聞き返してしまう。

 

 返事は、件のチョコビをこちらに差し出すことで行われた。

 ……ふむ、ビスケット生地で包まれたチョコ入りのお菓子、と言った感じか。

 ならアニメ仕様かな、と思って無地の──チョコの注入口らしき穴が空いている裏側から、表側にひっくり返して。

 ……なんか、顔の部分が黒く塗り潰されている、コアラっぽい絵柄を目にしてしまった。……なるほど?

 

 

「これコアラのマーチじゃねぇぇかぁぁァァアッ!!!?」*6

「おお、ナイスノリツッコミ。銀ちゃんみたいですな~」

 

 

 思わずしんちゃんに投げ返してしまった。

 ……華麗に飛んできたコアラを食べて見せるしんちゃんは流石だけど、食べ物を投げつけたことは確かなのでゴメンと謝っておく。

 とは言え、それはそれこれはこれ。

 

 

「いや、確かに現実で発売されたやつには違和感あったけど。……まさかコアラのマーチがこんなことになってるとは思わないじゃん……」

「そうそう、オラもびっくり桃の木うっきっきー!だったんだゾ」

 

 

 改めて一つ貰ったチョコビ……と言うことになっているものをよーく確かめてみる。

 

 裏地はまぁ、こういうチョコ入りビスケット菓子全般に共通する、なんの変哲もない無難な感じ。

 けれどひっくり返せばあら不思議、顔の部分が塗り潰されていて、なんというかこう、「コロシテ……コロシテ……」*7みたいな声が聞こえてきそうな、一種のおぞましさがある物体に早変わりである。

 

 ……いや、というかなんでこれ、わざわざ顔を塗り潰してあんの?なんでホラー感を醸し出してるのこれ?

 『無貌のマーチ』とか名前が付いててもおかしくない感じだよ?1D6くらい削れそうだよこれ?*8

 

 

「それは、工場の製造ラインの一部を借りて作っているからさ。……需要はここ、『なりきり郷』にしか存在しないものだから、新しくラインを立ち上げる程でもない。だから、既存のモノにちょっと手を加え、特別仕様扱いでラインを間借りさせて貰っている……ってわけ」

「……なるほど。ところでしんちゃん?」

「お?なーに?」

「今の、しんちゃんの声じゃないよね?」

「うん、オラそんな難しいことは知らないから、説明してくれたのはあっちの子だゾ」

 

 

 疑問に対しての回答が飛んできた、わけなんだけど。

 ……いい加減私も慣れるべきだとは思うけど、全然慣れないわけで。

 え?何が言いたいかって?……すっごい聞いたことのある声が聞こえてきた上、それがヤバい(時と場合によって変化)人の声だった時に、覚悟の準備ができないって話。

 いや、だってさぁ?

 

 

「死神*9の声が聞こえてきたら、誰だってこうなると思うんですよ私」

「……俺も自分が無関係の状態でこの声が聞こえてきたら、同じ感想を抱いたろうけどよ。……初対面の相手には、ちょっとは遠慮するべきじゃねーか?」

「初対面の相手に、タメ口*10きく子供よりはマシなんじゃないかなー」

「……敬語だとキャラ被りするから仕方ねーんだよ……」

「oh……」

 

 

 意外と切実な声が返ってきてしまった。……いや、なんというか、すまんかった。

 気にしてねーし、という彼──江戸川コナン君が拗ねてしまったので、しんちゃんと一緒に機嫌を取る。

 数分後、気を持ち直したコナン君がこっちを向く。

 ……なんかちょっと、覇気というかやる気と言うかが足りないような?なんてことを感じたので聞いてみたところ、彼からはこんな台詞が返ってきた。

 

 

「バーロー、俺は再現度低い方なんだよ。……つーか、低くて良かったって思ってる組の一人だっての」

「ん?低くて良かった?そりゃなんでまた」

 

 

 彼の返答に首を傾げる。……低くて良かったって、基本的には高い方が色々できていいんじゃないのか?だって能力とか再現され……あ。

 こちらが気付いたことをいち早く察知したらしいコナン君は、にやりと笑ってその理由を話し始める。

 

 

「江戸川コナンに求められるものって言うのは、例えそれがなりきりであっても変わらねーんだ。……江戸川コナンは探偵だ。創作の探偵達は、()()()()()()()()()?」

「……事件に出会うこと」

「正解。まぁ、それだけなら問題はないんだよ、求められているだけなら。……作中での一日の犯罪件数、真面目に数えたらわけわかんねーことになるってのは聞いたことあるよな?」

「あーうん、それをネタにした漫画があるくらいだからまぁ、何となくは。……それってつまり?」

「再現度が高い探偵は、事件を引き寄せる。……な?俺が再現度高くなくてほっとするってのも分かるだろ?」

「望む望まないに関わらず毎日劇場版モードはイヤだなぁ」*11

 

 

 にっこり笑ってるハズなのにすっごいげんなりしているように見えたのはそのせいか……。

 なりきり憑依の難点ってこんなところにもあったんだな、と頷く他ない午後三時なのであった。

 

 

*1
四つ全部『炎髪灼眼の討ち手』が使う自在法。一応、最初の方で使えていた炎系の技の発展系というか正式版というかがほとんど

*2
『炎髪灼眼の討ち手』が使う自在法の一つであり、彼女が契約している天罰神"天壌の劫火”アラストールの権能の一つ『審判』の名を冠するもの。自身の背後に大きく燃え上がる瞳を作り出す。これを自身の瞳と同調させることで、範囲内に対自在法・対存在の力特化の千里眼とでも言うべきものを使用することができる。隙を窺える筈がないと言うのは、これを使われていた時点でこちらの行動が筒抜けになってしまうから

*3
1990年から2010年までシャープ株式会社が使用していたスローガン。雑に言うと、良いとこ見てるね!みたいな感じか

*4
連続する(serial)』でも『穀物(cereal)』でもない。恐らくはシリアスとコミカルを組み合わせた造語だと思われる

*5
『クレヨンしんちゃん』作中に存在するお菓子のこと。ビスケット生地を星形に焼いた物の中に、チョコレートが詰まっているお菓子。類似している商品にプッカ(株式会社明治製造ののチョコレート菓子)などが存在する。現実でも商品化されて販売されているのだが、そちらはチョコの染みたスナック菓子、と言った趣き

*6
上でも解説した通り、原作のチョコビはビスケット生地の中にチョコレートを注入したもの……すなわちコアラのマーチと同じタイプのお菓子である。それもそのはず、連載初期の方のしんちゃんは実際にコアラのマーチを食べていたのだが、アニメ化の際に色々あってコアラのマーチをそのまま使えなくなった為、チョコビという架空のお菓子を作ることになったのだとか

*7
自身の体を作り変えられてしまった存在が、周囲に一思いに終わらせてくれ、と頼む時に使われる言葉。明確な元ネタがよくわからないものの一つ。似たようなシチュエーションは昔からよくあったので、どれが元だとも決められないらしい

*8
『クトゥルフ神話』より。顔がないのでイメージ元は『無貌の神』ナイアルラトホテップか。……ナイアさんをパクパク食べるっておぞましすぎない?

*9
探偵ものの作品で、探偵役に与えられるある種の敬称であり蔑称。探偵行くところ事件あり。事件あるところ探偵あり。……作劇の都合上仕方ないとはいえ、なんとも可哀想な話である

*10
相手と対等な口をきくこと。敬語を使わずに馴れ馴れしく話すこと。『タメ』は元々博打用語で、ゾロ目(同じ目)を指す言葉。それが不良達に同格・五分五分のような意味で使われるようになり、そこから一般層にも普及したとされる

*11
とりあえず行く先々で何かが爆発しかねない。『名探偵コナン』の製作陣は爆発好きすぎではなかろうか?



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マンネリ解消の為に色々悩むのもいつものこと

 コナン君達とも別れ、一人で街をぶらり。

 ……ふむ、夕食前とあっては買い食いをするような気分でもなく、さりとて帰ってあれこれ悩むのも、夜の仕事として投げて(放置して)おきたい感じだな、と。

 

 ……うむ、地味に詰んでるなこれ?

 なんかこう、新しい出会いでもない限り話が進まない、一種の停滞期に入っちまったってやつだなこれ?

 まさかそこら辺の人を適当に捕まえて「アナタハイセカイジンデスカー?」ってするわけにもいかんだろうし。

 

 遠目には舞台の上で何やら踊ってる?騒いでる?演習してる?……どれかよくわかんないけど、背負った砲塔?っぽいものを振り乱しながら、何事かを喋っている女の子が見えるけど。

 ……んー、あれ艦これ*1かな、アズレン*2かな、それとも違うやつかな?……やってないからわかんねー。

 

 まぁ、そんな感じで、ちょっと非日常的なものが見えたりはしているけど、遠目なので近付くのもちょっと億劫だし、そもそも求めてる相手かも分からんし。

 みたいな感じで、あれに話し掛けに行くのもなー、とちょっと思考がボケている。……うん、慣れない戦闘なんぞするもんじゃないな、と言うか。いつまで寝惚けてるんだ、というか。

 

 ……なんて風にボーッとしていたら、鼻腔を擽る蒸かしたじゃがいものいい匂い。

 ふむ?と視線をずらせば、公園の敷地内の一画に移動販売の車が何台か集まっていた。このじゃがいもの匂いは、その内の一台から香って来ているようだ。

 

 

「……買い食いの気分じゃない、とは言ったけど」

 

 

 なんかこう、気になる。

 何故だか近付いてみるべきだ、みたいな私の第六感が……いや、私のゴーストが囁いている*3……!アノコロッケヲタベルノデス、*4と!

 なのでてくてくと近付いて、店員さんに声を掛ける。

 

 

「すいませーん」

「お、はいはいいらっしゃいませー!この店は初めて?じゃあこのオーソドックスなプレーンジャガ丸くん*5がオススメだよ!……って、どうしたんだい君、鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔をして」

()ヘスティア様(紐神様)*6だー!?」

「紐神様*7は止めてくれないかな!?」

 

 

 出てきた店員さんが、ロリ巨乳なツインテ紐神様だったので思わず叫んでしまった。……いや、なりきりとはいえ、神様もオッケーなんすか?!

 

 

「あらあら、ヘスティアさま?お元気なのは構いませんが、そうして叫ぶのははしたないですよ?」

「あ、エウロペ*8。……ん、ごめん。僕ももうちょっと、君みたいにおしとやかにできればいいんだけど」

「……うふふ。いいえ、いいえ。わたくしのゼウスさまとは違う、ほかのゼウスさまが愛したヘスティアさま。貴女が在りたいように在ることを、きっとゼウスさまはお望みです。ですから、幾ばくかの慎みだけを、お持ちになればよいのではないかしら?」

「……んー、君はホントになんというか、いわゆる善の女神って感じだよねー。……ってあ、ごめんお客様、思わず話し込んじゃって……いや、ホントにどうしたんだい君?すごい顔になってるけど?」

「え、」

「え?」

「エロギリシャ勢が増えたー!!?」

「君は本当に失礼なやつだな!?」

「あらあら」

 

 

 なんて風に驚いていたら、店の奥から現れたのは……スカート履いてないおばあちゃま!スカート履いてないおばあちゃまじゃないか!?*9

 なんかいきなりこの辺りだけ、エッチさが跳ね上がったんだけど?!……なんて風に思わず混乱する私なのだった。

 

 

 

 

 

 

「落ち着きましたか?」

「はい、すごく落ち着いたので、できれば頭を撫でるのは止めて頂けないでしょうか?」

「あら、ざんねん」

 

 

 見た目のエッチさに反して、内面はおっとりおしとやかなエウロペさんにずっと頭を撫でられる……という拷問のようなご褒美のような、よく分からない状態から解放された私は、改めて彼女達の店である移動屋台の前に立つ。

 

 ……一応、コロッケ屋なのだろうか。

 メニューがチーズとかベーコン入りとか結構いろいろあるみたいで、私がエウロペさんに頭を撫でられている間も、ちょくちょくと売れていくのが見えていた。

 おやつコロッケということなのか、小豆クリーム味とか言うのもそれなりに売れていたのは、ちょっとよく分からなかったけど。……美味しいんだろうか、それ?

 

 

「──さて、で?君は結局、何しにうちに来たんだい?」

「あ、そうだった。すいません、ころっけちょうだい」*10

「いや、なんでそんなハチミツ求める初心者みたいな台詞を……。と言うか、一応商品名『ジャガ丸くん』だから!作ってるこっちもコロッケと何が違うんだろう、ってちょっと疑問に思ったりするけど!」

「じゃがまる、と言う響きがかわいらしくて、わたくしは好きですよ?」

「ああいやエウロペ、そういうことじゃなくて……」

 

 

 ……相性がいいのか悪いのかよくわからないな、この二人。

 まぁ、嫌ったりはしてないんだろうな、というのは会話の空気からよく分かる。

 ふわりと微笑むエウロペさんと、ああもうと口では言いつつなんだか嬉しそうなヘスティア様。……これで格好さえ普通なら、幾らでも見ていられるんだけどなぁ……?

 

 

「服装、服装か。……いや僕も、ちょっとは気にしてるんだよ?けどさぁ」

「わたくしたちは、この格好が一番落ち着くのです。……そういう風に定められているから、なのかもしれませんね」

「うーむ、なりきりの弊害……」

 

 

 こんなところにも憑依であることの弊害が出てるのか。

 ……トラブルメイカーであれば、トラブルを呼び込むようになり。

 服装が独特であれば、それ以外の服に忌避感が浮かぶようになり。

 さりとて、再現度が低すぎれば、いつかのアシタカのように自由に喋ることすら阻害されうる。

 ……デメリットも大概だけど、一体何を求められているんだろうなぁ、これ。

 

 ……は?!いかんいかん、シリアス思考は寝る前寝る前。

 首を振って辛気臭い考えを頭から追い出し、改めてジャガ丸くんを注文する。

 

 

「はいよー!……とりあえず、普通のでいいかい?」

「あ、はい、普通のでいいです。怖いもの見たさに小豆クリームにちょっと興味がなくもないですけど」

「いや、ベーコン以外は普通にトッピングだからね?そもそもベースが甘めのコロッケだから、クリーム系も意外とあうんだよ」

 

 

 そう言いながら彼女は、普通のジャガ丸くんと小豆クリームがトッピングされたジャガ丸くんを手渡してくる。

 小豆クリームの方はお試しとのことで、お代は結構だと言われた。

 

 では、早速普通のジャガ丸くんを一口。

 ……ふむ。さくさくの衣と、ふかふかの芋の食感。

 サクッと噛み付けば、じゃがいもの甘みが口の中を席巻するこの感じ、美味しいのは美味しいと思うんだけど……。

 

 

「……うん、トッピング頼む人の気持ちがわかりました」

「なんだか物足りない、ってなるんだよね。そのままでも普通に美味しいけど、何かこう……もうちょっと変化と言うか特徴と言うかが欲しくなる、というか」

「あ、それですそれ」

 

 

 中身に玉ねぎもひき肉も入っていない、純粋なじゃがいもだけのコロッケだから、食べててちょっと飽きが来るのだ。

 不味くはないけど、もうちょっと味に幅というか変化というかが欲しくなる、という奴だ。

 

 彼女の言葉に頷きつつ、プレーンなジャガ丸くんを完食。

 そのまま、小豆クリーム付きの方に視線を移す。

 見た目はまぁ、普通のコロッケに小豆とクリームが乗っかってる感じ。

 ある意味豪快だなぁ、なんて思いながら一口。……ふむ、なるほど?

 

 

「意外とあいますね……」

 

 

 コロッケ側の味付けが最低限だからか、甘いものを乗せてもおかしくない。どころか、物足りなかったじゃがいもだけの部分に、小豆とクリームがほどよいアクセントになって、控えめに言っても実食に足るクオリティになっている。

 

 ……つまり、雑に言うと甘くて美味しい!

 

 

「だろう?ただまぁ、小豆クリーム味ってこれでいいのか、ってところがなくもないんだけどね」

「そうなんです?」

「んー、なんか記憶の上では小豆()クリームじゃなくて、小豆()クリーム状にしてトッピングしてるっぽいんだよね。あと、中身も普通のコロッケっぽかったり。……個人的にはそれってあうのかなぁ、って気がしてね、再現すべきかちょっと悩んでるんだよねー」

 

 

 ヘスティア様が、むむむと唸っている。

 ふむ、唐揚げにハチミツとかポテトチップスにチョコレート、とかと同じようなものということだろうか?本来は甘じょっぱい系なのかな。

 

 

「まぁ、その辺りはしばらく悩んでみようかなとは思ってるのさ。どうせ、僕らは特にすることもないしね」

「……することがない……ってああ、原作的な行動も取り辛いのか」

 

 

 できるかどうかは別として、誰かに恩恵(ファルナ)を刻んだとしても潜るダンジョンもないし、そもそもの話として恩恵(ファルナ)を刻む意味がない、基本戦闘は起きないみたいだし。

 役割が後方で支援系の人は、なんにも起きない世界だと本格的にすることがない、ということか。……いやまぁ、元はなりきりなんだし会話を楽しめばいいのだろうけど。

 

 

「ベル君も居ないし、なんだったらヴァレン何某(なにがし)君も居ないし。……ここにいる僕は、ジャガ丸くんの改良に神生(じんせい)を捧げるしかないんだよなぁ」

「まぁ、ヘスティアさま。わたくしがついておりますよ?」

「ああうん。エウロペが居なかったら多分、ヘファイストスのとこに居た時より酷いことになってたと思うから。……これでも君にはすっごく感謝してるんだよ?」

「……うふふ。ええ、ええ。わかっておりますよ、ヘスティアさま」

「……まーたそうやってイチャイチャするー」

「いや、別にイチャイチャしてるわけではないんだけど……」

 

 

 ちょっと照れ臭そうなヘスティア様と、にこにこと楽しそうなエウロペさん。

 ……不思議な組み合わせもあるものだなぁ、なんて思いつつ残っていたジャガ丸くんをぺろり。ごちそうさまでした。

 

 今の時刻は──意外と経ってないな、五時前か。

 ふむ、となると……うーん、舞台の方にでも行ってみるかな?

 そんな事を考えていたら、ヘスティア様から声を掛けられた。

 

 

「そういえば、近々何かの大会が開かれるみたいだよ?」

「大会?」

「そ、なんか腕に変な板みたいなのをくっ付けた子達が、大会中ちょっと騒がしくなるかもしれない(今日この街は戦場と化すんだからよ)*11って教えに来てくれたんだ、はいこれその時貰ったチラシ」

「……見なくてもわかったけど、やっぱり決闘者か……って、これは」

 

 

 チラシを受け取る前から、なんとなく何の大会なのかわかってちょっと遠い目をしていた私だったが、チラシに描かれた人物を見て態度を改める。……なるほど、こう繋がるか。

 

 チラシに描かれた人物は、ジャック・アトラス。

 ──もしかしたら、出会ったことのある人物かもしれない。

 そんなチャンピオンとのエキシビションマッチが、優勝者の副賞になっていると、そうチラシには書かれていたのだった。

 

 

*1
『艦隊これくしょん -艦これ-』のこと。史実の艦艇が擬人化された少女達、通称『艦娘』達を指揮して戦うシミュレーションゲーム。どっちかというと放置ゲームに近いような気もしないでもない

*2
『アズールレーン』のこと。艦これの後に生まれた『戦艦娘』系ゲームの一つでもあるが、ゲームシステムはシューティング。重厚なストーリーも魅力の一つ

*3
元ネタは『攻殻機動隊』の登場人物、『草薙素子』の台詞「囁くのよ、私のゴーストが……」。この場合のゴーストとは背後霊とかと同じような物だと思っても構わない、かも?

*4
元ネタは『エルシャダイ』の登場人物、堕天使エゼキエルの台詞「弟の敵を取るのです(オトートノカタキヲトルノデス)!」。より正確に言うとPV内の台詞。ちょっとおかしなイントネーションの台詞だった為、一部で話題になった。

*5
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』に登場する料理の一つ。「芋を潰し調味料を加え、衣をつけた後に油で揚げた一口大の料理」と説明されている。……ぶっちゃけコロッケ

*6
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』に登場する()物で、竈や炉の女神。ギリシャ神話の同名の神と同一で、そちらはゼウス・ヘラ・ポセイドンの姉にあたる

*7
『ダンまち』のヘスティアの服装の一部に付いている、用途のよく分からない紐が、一部で話題になった結果生まれた呼び方。……いや、ホントにその紐なんのために付いてるんです?

*8
『fate/grand_order』のキャラクター。星5(SSR)ライダー。おっとりほわほわしたおばあちゃま。目につく人は大体愛しい子供達なので、よしよしと甘やかされて骨抜きにされる

*9
エウロペさんの格好から。……そのショーツは見えていい奴なんです?

*10
元ネタは『ハチミツちょうだい』。どこぞの黄色い熊の台詞ではなく、『モンスターハンターシリーズ』で初心者が言っていそうな台詞の一つ。……正確には、初心者は初心者でもダメな初心者が言いそうな台詞

*11
上の文は『遊☆戯☆王』原作内に登場した台詞。何も知らない一般人に対して注意を促しているだけなので、口調に反して意外と紳士的にも聞こえたり



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決闘罪を気にするのはリアリストだけ

 その週の日曜日。

 公園の一画、この間遠目に見た舞台の辺りを中心として、様々な人々が集っている。

 

 ……なんか見たことある人がチラホラ居る気がするんだけど、ホントみんなデュエル好きだね?

 私はちょっと前の辺りから付いてけなくなったから、基本的には見てるだけだけど。

 ……リンク*1?何それ、俺引退者*2みたいな。いや、正直ペンデュラム*3の時点でもうギブしてたけどさ。

 

 

「せんぱーい!わたしー!頑張ってきまーす!」

「はいはーい、頑張れマシュー!凄いところをみんなに見せてやれー!」

「はーい!頑張りまーす!」

 

 

 参加者組に混じってこちらに手を振るマシュに、大声で返事をすれば。

 彼女はむんっ、って感じに張り切って、選手達の集団に紛れていった。

 うむ、頑張れマシュ。頑張って勝ち上がって、あのジャック・アトラスが私達の知る彼と同一なのかを確か()てみてくれ。*4

 

 

「デュエリストの諸君!よくぞこの『なりきり郷デュエルカップ』に参加してくれたっ!!お前達の熱いデュエル魂、存分に見せつけてくれぇ!!」

「おお、MCはファイブディーズの人なんだ」

 

 

 舞台の上で熱く声を上げるのは、長いリーゼントが特徴的な男性。*5その隣に解説役なのか、二人の男女が座っている。

 

 

「おれぁおせっかい焼きのスピードワゴン*6!今回は訳あって、解説役って奴を務めさせて貰ってるぜ!」

「はぁい、同じく解説役の枝垂ほたる*7よ。ところで私、なんで駄菓子以外の解説役に抜擢されてるのかしら?」

「……なんだあの組み合わせ?」

 

 

 ……んんん?スピードワゴンさんはまぁ分からなくもないんだけど、ほたるさんに関してはホントになんで彼処に居るの?

 いやまぁ、リアクションとか言語センスとか、あの二人が解説するなら面白いモノになりそうな感じはあるけれど。

 

 

「……時間だぁ!これより、『なりきり郷デュエルカップ』予選を開催するぅ!!事前に引いて貰ったくじに書かれている番号を確認し、同じ数字が書かれているプラカードの前に並んでくれぇ!」

「予選だってぇ?!コイツぁはなから激戦の予感がビンビン来てるぜ!!」

「ふぅん、つまりは栓を開ける前、というわけね。勢いよく飛び出してくれると嬉しいんだけど」

 

 

 ……あ、ラムネか。

 ほたるさんの発言の意味について、一瞬考えてしまった。……いや、面白そうだって無責任に思ったけど、これ結構火傷率高い奴だな*8

 なんて事を思っていたら、いつの間にかプラカードの前に人が並び終わっていた。

 番号は1から8まで。並んでいるのは……大体十人ずつくらいかな?

 

 

「予選では、同一グループ内での総当たり戦を行って貰う!各員、健闘を祈るぅ!!」

「なるほど、総当たり戦か。……結構時間が掛かりそうなモノだけど……」

 

 

 予選は総当たり戦らしい。

 本来なら、それだけでアニメなら何週か使いそうな感じだけど……。*9

 一部のグループの近くの観客から、わっという歓声が上がる。

 どうやら、デュエリスト特有の俺ルール*10で、何かしらとんでもない事をした者が居るらしい。

 なので状況を確かめるべく、1のグループの方に視線を向ける。

 

 

「ふふん。君達雑魚が何人集まろうと、この束さんの前ではごみ屑同然!さぁ、纏めて掛かってくるがいいー!」

「なんだとー!元よりなんか優しいからって調子に乗りやがって!」

「そうだそうだー!原作のお前はエボルト*11じみてて、もっと黒く輝いていたぞー!」

「うるさいよ君達っ!?ってか扱い酷いな私の?!いや、元を考えたら当たり前なんだけどさ!!」

「うるせー!かわいいぞ束ェ!」

「なりきりしきれてなくてよかったな束ェ!」

「ファンクラブ出来そうだぞ束ェ!!」

「今のお前なら控えめに言って結婚したいぞ束ェ!」

「イジメかっ!!」*12

 

 

 ……なにあれぇ?

 なんか束さん*13っぽい人が、周囲に纏めて掛かってこいって挑発したけど、なんか変な方向に飛び火して、顔真っ赤にしてぷるぷる震えてる。

 ……見た目()最高な女が、中身も最高になったなら完璧だよなぁ、みたいな感じでめっちゃ祭り上げられてる、のか?

 いやでも照れ過ぎて撃沈してるし、単にリアリスト共の作戦かも知れんけど。

 

 

「う、ううー!私のアレイスター*14、ごめんねー!」

「おーっとぉ!!優勝候補の一人、篠ノ之束初戦で敗退!最初から大番狂わせが起きてしまったぁー!!」

「く、くせぇッー!!コイツからは良妻の香りがプンプンしやがるぜッーッ!!」

「それって褒めてるの?」

 

 

 とりあえず、束さんは敗退したようである。……いや、盤外戦術過ぎやしないあれ?

 あとスピードワゴンさん、女性にくせぇはどうかと思うよ、くせぇは。

 横のほたるさんの言葉に密かに頷きつつ、他のグループに視線を移してみる。

 

 

「これで終わり、です!【神聖騎士王アルトリウス】*15で、ダイレクトアタック!『約束された(エクス……)勝利の剣(カリバー)』!*16

「ぐあぁぁあっ!!?マシュボイスの『エクスカリバー』とかありがとうございますぅぅっ!!」

「えっ!?あ、その……どういたし、まして?」

「決まったぁー!!盾の騎士、マシュ・キリエライト選手のダイレクトアタックが成功したことにより、グループ2の決勝リーグ進出者は彼女で決定だぁー!!」

「な、なんて可憐なんだッ、あの少女はッ!?」

「ふぅむ、可愛くて強いのね。いいじゃないいいじゃない、マシュマロみたいに甘さと可愛さ(強さ)を両立しているなんて、とっても素晴らしいわ(オッティモ)!!」*17

 

 

 おお、マシュも順調に勝ち上がったようだ。

 ……アルトリウスでエクスカリバーだから、ランスロット*18で攻撃する時はアロンダイト*19になるのかな、やっぱり。

 なんて事を思いながら、こちらに手を振るマシュに手を振り返し、別のグループに視線を移す。

 

 

「はい、【空母軍貫-しらうお型特務艦】*20で直接攻撃しておしまい、ですね。……この()は、間宮さんが使う方が似合いそうね*21

「おーっとぉ!!空母赤城*22、一航戦の誇りを見せつけ、見事決勝リーグに進出決定だぁー!!」

「へぇ、今の遊戯王には、寿司のカードなんてものもあるんだなァ~」

「知育菓子的な?……ふむ、後で買って帰りましょうか」

 

 

 こっちは艦これの方の赤城さんが、『軍貫』デッキで勝ち上がったようだ。

 ……食べ物と戦艦の組み合わせだから赤城さんなのかな?

 

 え、そもそも戦艦テーマがない?*23……そういえば『軍貫』が出るまで、テーマとしては『巨大戦艦』*24しかなかったんだっけ。

 ……って言ってたら、その横のグループも勝利者が決まったらしく、大きな歓声が上がっていた。

 

 

「グループ4の勝利者はハーミーズ*25!リスペクトデュエルの真価を見せつけてくれたぁー!!」

「ふぅ、ガッチャ!熱いデュエルだったよ!」

「……なんか、観客の中にうんうんと頷いてるクラゲ頭*26の奴が居ねぇか?」

「というか、ヒトデ*27と蟹*28と海老*29とトマト*30みたいな頭の人も居るわよ?」

「なんだよアイツらの後方師匠面はよォー……?」

「というか蟹は出場しなさいよ、なんでそこに居るのよ貴方」*31

「……デッキは忘れた」*32

「キメ顔で言う台詞かそりゃぁよォ~ッ?!」

 

 

 おっと、こっちは天然自然決闘者なアズレンのハーミーズが勝ち上がったようだ。

 今日はあの特徴的なバイク*33は置いてきているらしく、普通に立って決闘している。……バイクに関しては、やっぱりあの蟹頭君が整備してたりするのだろうか?

 

 その後勝ち上がったメンバーは、みんな何故かフードとか仮面とか付けていて、誰が決勝に進出したのかは分からなかった。

 ……いいんだそういうの、みたいな感じに近くの人に聞いたところ、勝負を盛り上げる演出として、わりと好意的に受け入れられてるようだった。

 ……いやまぁ、カードゲーム系の大会の話ってわりと謎の人物とか居たりするけども。実際にやるのか、って気分になった私がおかしいんだろうかこれ?

 

 まぁ、そんな感じで午前の部、予選試合は大きな問題もなく終わったのだった。

 

 

 

 

 

 

「デュエルしてたらお腹すいちゃって。マシュちゃんも一緒にどう?」

「……というようなお誘いを赤城さんからお受けしたのですが、せんぱいもご一緒にどうですか?」

「え、私別に参加者じゃないけどいいんです?」

 

 

 お昼は何を食べようかなー、と思っていたら、戻ってきたマシュが赤城さんから昼食のお誘いを受けたから一緒にどうですか、と聞いてきた。

 まぁ、どこで食べようとか決めてなかったし、全然構わないけど。

 それ、マシュが誘われてる辺りデュエリスト同士の親睦を深めようとしてるんじゃない?私邪魔じゃない?……みたいな感じがして、ちょっと腰が引ける。

 

 

「ええ、構いませんよ。お食事はみんなでした方が楽しいですし。ね、ハーミーズさん?」

「そうだな、赤城の言う通り。君がデュエリストでないのは残念だが、それが昼食を共にする事への忌避感を生むわけでもなし。それに、マシュの先輩だと言うのなら私達にとっても先輩のようなものだ。是非、一緒に来てくれないだろうか?」

 

 

 なんて言ってたら、当のお誘い相手である赤城さんと、まさかのハーミーズさんまで連れ立ってこっちに近付いてくるではないか!

 おお、なんだこの図。ちょっと変な感動を覚えるなこれは……。

 

 

「あ、あの、せんぱい?徐に御二人に断りを入れてから写真撮影するのはどうかと……」

「いやだってさ、このツーショットは色々ビックリでしょ、問題ないならとりあえず撮っとくよ」

「……マシュ、君の先輩は随分個性的な人なんだな?」

「も、もう!せんぱい!いいから行きましょう!ほら、早く!」

「あーっ!!?待ってマシュ、もう一枚、もう一枚だけっ!!」

「だーめーでーすー!!」

「……ふふっ。楽しそうな二人ですね?」

「うん、楽しそうなのは確かだろうけど……引き摺られてるのはいいのか……? 」

 

 

 うおーっ!!後生だマシュー!!あともうちょっとー!!

 なんて呻くも、彼女は「!かすんぷ」*34していて聞く耳がない。

 ……むう、仕方ない。撮れた分だけで我慢するか、なんて思いながら、ドナドナって感じに引き摺られるのを許容する私なのだった。

 

 

*1
『遊戯王OCG』におけるカードの種類の一つ。2017年からの新マスタールールの制定と同時期に生まれた新たな召喚法、『リンク召喚』とそれによって召喚される『リンクモンスター』の両方を指す言葉。当時はこの召喚法が増えることにより、各所に様々な影響をもたらした為、未だにいい印象を持っていない人も居るとか

*2
台詞の元ネタは『だぁれそれぇ? 俺、ベクター』。『遊☆戯☆王ZEXAL』の登場キャラクターの一人が発した台詞であり、視聴者にとんでもないダメージを与えた台詞

*3
『遊戯王OCG』におけるカードの種類の一つ。2014年からのマスタールール3の制定と同時期に生まれた新たな召喚法、『ベンデュラム召喚』とそれによって召喚される『ペンデュラムモンスター』の両方を指す言葉。大量召喚を得意とする為、この辺りから本格的にプレイヤーターンの長時間化が深刻化してきたとも言われたり

*4
『確かみてみろ』とは、ゲーメストという雑誌で連載されていた『STREET FIGHTER III RYU FINAL -闘いの先に-』という漫画の最終回にて、主人公アレックスに対してリュウが言った台詞。……最終回の、一番最後の大コマの、一番盛り上がる場所でやらかした盛大な誤字。コミックス版では修正されているものの、雑誌掲載時のインパクトは強く、よくネタにされている。……というか、ゲーメストという雑誌そのものが誤字の宝庫なので、こういうネタには事欠かないところがある(インド人(ハンドル)を右に、など)

*5
『遊戯王5D's』に登場する実況アナウンサー。赤系の燕尾服と特徴的な形の髭、それから長いリーゼントがトレードマーク

*6
『ジョジョの奇妙な冒険』第一部(part1)『ファントムブラッド』に登場するキャラクターの一人。正式な名前は『ロバート・E・O・スピードワゴン』。前線で戦うよりも、後方で味方や敵の技や動きの解説をしていることが多い為、解説役扱いをよくされている

*7
『だがしかし』のメインヒロインにして、駄菓子に魅せられた残念系美少女。駄菓子の解説?そりゃうまいだろうけど、多分終わるまで長いぞ覚悟しろ、ってくらいには駄菓子好き

*8
駄菓子トリビアを磨いていないと死が見える

*9
何週どころか一クール使う事もあるぞ

*10
例:カードを書き換える・カードを創造するなど

*11
『仮面ライダービルド』に登場するキャラクター。いわゆる外道系のキャラクターなのだが、地味に義理堅いところがある為変な人気もあったりする

*12
『ディーふらぐ!』内の一場面を元にしたネタ、『船堀パロ』の一種。とにかく褒める。褒めて褒めて対象を赤面させる事を目的としたちょっとしたジョーク

*13
『IS〈インフィニット・ストラトス〉』に登場する人物の一人『篠ノ之束』の事。作中内に登場するタイトルと同名のパワードスーツの開発者である女性。薬物が効かない上に、身体スペックも人類の範疇を飛び抜けているという天才にして天災

*14
『遊戯王OCG』のカードの一枚『召喚師アレイスター』のこと。一人で何にでもなって何でもできるマッド系の人物繋がり、だろうか?

*15
『遊戯王OCG』のカードの一枚。『聖騎士』カテゴリーに属するモンスターの一体で、モデルは勿論アーサー王

*16
『fateシリーズ』に登場する武器の一つ。アーサー王伝説における聖剣『エクスカリバー』の『fateシリーズ』での呼び方

*17
オッティモ(ottimo)は、イタリア語で美味しいを意味する言葉のうち、最上級に当たる言葉。その為、正確に訳すと『とっても美味しい』辺りになる。とってもオッティモ!だととってもとっても美味しい、みたいな感じだろうか?

*18
『アーサー王伝説』における騎士の一人。フランス出身の湖の騎士。円卓崩壊の切欠を作った罪深き騎士

*19
騎士ランスロットが使うという名剣

*20
『遊戯王OCG』のカードの一枚。軍艦と軍艦巻を組み合わせるというよく分からない発想のもと生まれた『軍貫』というテーマのうちの一枚。食べ物で遊ぶな……食べ物で戦ってる……?!

*21
特務艦と言うのは『戦闘には関わらず特別な任務を務める艦船』の総称である為、まさにその特務艦の一隻である給糧艦「間宮」が使う方が似合っているかも、という意味の言葉

*22
『艦隊これくしょん -艦これ-』の登場キャラクターの一人。正規空母・赤城を擬人化したキャラクター。黒髪ロングで穏やかで真面目な、割りとオーソドックスな大和撫子

*23
あくまでも『テーマとしては』。後述の通り宇宙がイメージに入るモノは存在するし、細々と戦艦をモチーフにしたカードも存在するが、明確に戦艦をメインに据えたテーマは『軍貫』が初のようだ

*24
『遊戯王OCG』のカードカテゴリの一つ。シューティングゲーム『グラティウス』の敵キャラクターをモチーフにしたカード達が所属するカテゴリ。元ネタが元ネタなので、海に浮かぶ戦艦ではない

*25
『アズールレーン』の登場キャラクターの一人。イギリス海軍の軽空母・ハーミーズを擬人化したキャラクター。……なのだが、何故かボイスやら装備やらに遊戯王の影響が見てとれるキャラになっている。「お前もLDSか!……瑠璃!?なぜ瑠璃がここに……逃げたのか?自力で脱出を?瑠璃!」「私は瑠璃ではない」(無言の腹パン)

*26
『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX』の主人公、『遊城十代』の髪型がクラゲみたいに見えるというネタから

*27
『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』の主人公、『武藤遊戯』の髪型がヒトデみたいな形をしているというネタ

*28
『遊☆戯☆王5D's』の主人公、『不動遊星』の髪型ネタ

*29
『遊☆戯☆王ZEXAL』の主人公、『九十九遊馬』の髪型についてのネタ

*30
『遊☆戯☆王ARC-V』の主人公、『榊遊矢』の髪の配色がトマトに似ているというネタ。一人だけ野菜なのは何故なのだろう

*31
不動遊星はジャック・アトラスのライバルである。居ることがバレるとヤバいので、ここではただの蟹として素知らぬ顔をしているぞ

*32
元ネタは『カードは拾った』。遊星の名台詞の一つ

*33
ハーミーズを改造すると乗ってくる軽空母型バイク。元ネタにあたる軽空母ハーミーズの外観をうまく取り入れた、ナイスデザインなバイク

*34
『艦隊艦隊これくしょん -艦これ-』にまつわる言葉。『ぷんすか!』を右から(=旧日本の書式で)書いたもの



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決め台詞を考えてる時大体ソイツは笑っている

「ふぅ。あそこの御膳、とても美味しかったですね」

「私は値段が気になって、気が気じゃなかったです……」

 

 

 隣の赤城さんが満足そうに微笑むのを横目に、彼女の行き付けの店とやらに連れていかれた私は、緊張で料理を味わうとかそんな余裕は一切なかった。

 

 ──ランチに 五けた。*1

 この人、思った以上に高給取りですわ。

 金銭感覚の違いに震え上がったのは、仕方ないことだと思うのです。

 

 

「ええ……?でもあそこ、同じようなお店の中では、結構安い方なんですよ?」

「止めてくだせぇ止めてくだせぇ、庶民の感覚じゃランチに千円だとしても贅沢なんですよ……」

「せ、せんぱい、お気を確かに……」

「何が落ち着けだマシュ!お前も結構手慣れた感じだったじゃないかっ、ええっ!?」

「お、落ち着いてくださいせんぱい!誤解、誤解です!マシュ・キリエライトとしての経験から、最適な行動を取っただけですので!」

「あっ、くそう!そう言われるとなんか言い返せない!」

 

 

 パーティドレス*2とか普通に着せて貰ってるし、何よりマシュがその辺りのマナーができないっていうイメージがない!*3

 じゃあ高級店に入っても物怖じしないのは仕方ないか!……え?ぶおお?なんのことです?*4

 

 

「いや、私もあの店に関してはちょっとビックリしたからな?赤城はああいうとこ、よく行くのか?」

「そうですねぇ、世間一般的な『艦これの赤城』とは違って、私は量を求めることはありません*5ので。代わりに、質に向かってしまったのではないでしょうか?」

「なるほど……?」

 

 

 つまりそれ、結局掛かるお金の総量自体は変わっていないのでは?……とは言い出せず、食事を終えた私達は、再び公園に舞い戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

「ではー、これより午後の部、決勝リーグを開催するぅー!!デュエリストの諸君、デッキの準備は出来ているかー?!」

 

 

 立ち並ぶ八人のデュエリスト達。

 最初の試合は束さんを下した謎のデュエリストCと、マシュの試合だ。

 

 二人が舞台に上がり、向かい合う。

 ……そして、フードを深く被った謎のデュエリストCが、小さく笑い声を上げ始めた。……のを聞いて、どっかで聞いたことあるぞこの声、となる。

 その感覚はマシュも同じようで、目の前の人物から聞こえる声に、微かに驚愕していた。

 

 

「その声は、まさか」

「ふっふっふっ、そのまさか、だよ!」

 

 

 バッ、とマントを取り払い、内から現れし少女。

 ──そう、彼女こそは。

 

 

「おーっとぉ!!謎のデュエリストC、その正体は喫茶店ラットハウスの看板娘、保登心愛だぁーっ!!」

「おおォー、こりゃまた別嬪な嬢ちゃんだな!……って、ラットハウスだとォ~?!」

「対戦相手であるマシュちゃんと同じ職場で働く仲間、というわけね」

「いやー、あははは。聞いたマシュちゃん?私のこと、別嬪さんだって♪」

 

 

 スピードワゴンさんの言葉に、思わず照れたように頬を染めながら頭の後ろを掻く少女。……そう、現れたのはココアちゃんだったのだ!

 この場所に現れる人物だと思っていなかったマシュが、僅かに困惑したように彼女に声を掛ける。

 

 

「こ、ココアさん?!何故ここに……!?」

「ふふーん。遊戯王って、可愛いカードもあるでしょ?それで密かに集めてたんだけど、ライネスちゃんに『試しに大会に出てみたらどうだい?』ってオススメされちゃったんだ!もう、こうなったら街の国際バリスタデュエリストを目指すしかない!って気分になっちゃって」

 

 

 てへへ、と笑うココアちゃんに、マシュが「なるほど、ココアさんらしいですね」と笑みを返す。

 ……いや、ほんわかするのはいいけど、これから真剣勝負なんじゃないんです?あと弁護士はいいのです?*6

 

 

「細かいことは言いっこなし!じゃあ、マシュちゃん!私と踊って貰うよー!」

「はい、全力で、お相手します!」

 

 

 とか言ってたらあっという間に決闘の空気に。……切り替え早いなデュエリスト。

 

 二人が左手を構えると、各々の腕に装着されたデュエルディスク*7が展開していく。

 ココアちゃんのモノは、お盆とウサギを模したようなもので、マシュ側のモノは前にも言っていた円卓の盾を模した形のモノだ。

 ガシャガシャとお互いのディスクが展開し、準備が完了したところで、二人が示し合わせたように声をあげた。

 

 

「「デュエル!!」」*8

 

 

「先行は私が貰います!」

「いいよ!私のもふもふデッキに勝てるかな!?」

「保登選手、凄まじい自信だァー!!キリエライト選手、相手の絶対の自信を打ち崩す事ができるかァー?!」

「おおぅ、こりゃァ白熱のバトルが待っていそうだぜッ!」

「ええ、熱いバトルを期待しましょう」

 

 

 ふむ、舞台の上はとても盛り上がっているようだ。

 

 だけどだね、その白熱のバトルを詳細に描くとなると、とてつもない時間が必要になるわけです。

 ……デュエル描写で字数を稼ぐ。うーん、字数稼ぎだと思われてる時点でよろしくないよろしくない。*9

 そもそも私ら生粋のデュエリストでもないので、始まり(開始)終わり(結果)だけあれば十分ですよね?

 

 なーのーでー、そんな描写稼ぎは不要だと思っていらっしゃるみなさまのためにぃ~。*10

 ──キング・クリムゾン(時を消し飛ばす)*11

 

 

「はぁ……はぁ……な、なんとか、勝てました……」

「ううう、まさか私の『わくわくメルフィーズとゆかいな仲間達』*12が敗北を喫するなんてぇ……!」

 

 

 「結果」だけだ!!この世には「結果」だけが残る!!*13

 ……的な感じで、勝負が決まった瞬間まで時間を吹っ飛ばしたんだけど。

 なんか、吹っ飛ばしたせいでどうやって勝ったの?みたいな事になってるような……?

 い、いや!きっと凄いプレイングで勝ったに違いない!

 私聖騎士もメルフィーズも回し方わからんので想像にしかならんけど!!

 

 

「見事なプレイングの応酬、見事な逆転の応酬!その激戦を征したのは、マシュ・キリエライト選手だァーッ!!」

「素晴らしい戦いだったわ、マシュマロ・キリエライトさん」

「マシュ・キリエライトです!」

「細けぇ事はいいンだよ嬢ちゃん!!見事なデュエルだったぜ!!」

「あ、はい。ありがとうございます」

「うぅー、負けちゃったぁ。行けると思ったんだけどなぁ……。うん、でもマシュちゃん相手なら仕方ないや。私を倒して、より高みを目指すんだよマシュちゃん!!」

「あ、は、はい!マシュ・キリエライト、この盾に誓って、全力で戦い抜く事をお約束いたします!」

「うん、頑張ってね!私も、観客席から応援してるよー!」

 

 

 なんか、舞台の上ではいい感じに試合の締めに入ってるけども。……わ、私は仔細を飛ばしたから、共感ができない……!

 こ、これが決闘者と一般人の間の埋められない差だというのか……!?*14

 舞台からこちらに手を振るマシュに、顔が引き攣らないよう気を付けながら手を振り返す私は、久々にカードの勉強でもしようかな、なんて事を密かに思うのでした。

 

 

 

 

 

 

「さて、決勝リーグも決着を迎え、残すはキングとのエキシビションマッチのみッ!!」

 

 

 司会の熱い実況と共に、今までのデュエルを振り返る。

 決勝リーグ二試合目は、ハーミーズさんと謎のデュエリストKの試合。

 フードの下から出てきたのが、まさかの黒咲*15さんだったことはとてもビックリした。いやだって、唯一の原作組の参戦者だったし、

 

 

「その声は……柚子!なぜ柚子がここに……逃げたのか?自力で脱出を?柚子!」

「私は柚子でもセレナでもないっ!」

「うぐっ、る、瑠璃……」

 

 

 なんて風に、まさか原作の一場面を再現するとも思ってなかったし。*16まぁ、そのあと、

 

 

「お前は……ライズ!ライズ・ファルコン!?」*17

「え、ええ?!」

「彼女はリゼではない」

「うぐっ、る、瑠璃……」

 

 

 ってな感じに、私まで巻き込まれる事になるとも思ってなかったんだけどさ。

 まぁ、別に悪い人でもなかったので、終わった後は連絡先交換しといたけど。「ランクッ!4ッ!!」も聞けたので言うことなしである。……いや、負けてたんだけどね、黒咲さん。

 

 三試合目は、赤城さんと謎のデュエリストN。

 艦娘達と似たようなシルエットを持った人物で、その正体は。

 

 

「もぉちろぉーん!余であるぅー!」

「まさかの水着ネロちゃまだと……っ!?」

 

 

 ──まさかの夏の装いのネロ皇帝であった。*18

 ……いや、確かに見た目とか攻撃の仕方とか、かなり艦娘感溢れてたけどさ、一応それパイプオルガンって体だよね確か?

 扱うデッキも、大きなパイプオルガン繋がりなのかオルフェゴール*19だったし、なんというかいつもの暴君さまなのは違いなかったけど。

 

 

「ネロ選手、失格ー」

「なんとっ!?主人公達はカードの書き換えとか創造とか、好き勝手やっていたではないか!?」

「あれアニメだから許されるんであって、リアルでやったら失格に決まってるでしょ」

「そんなぁー!?折角余が寝る間を惜しんで考えた、究極完璧全力全開黄金無双のオリジナルカードが火を吹く予定だったと言うのに!」

「……おいッ、誰かこの傍若無人が服を着て歩いてるような嬢ちゃんを、さっさと連れてけッ!!」

「横暴だぞこのリアリスト共ぉ~!!」

 

 

 ……うん、リアル書き換えとかリアル創造とかはダメに決まってますネロちゃま。素直に反省してきてください。

 ってな感じで、ここは赤城さんの不戦勝だった。

 ……予選は大丈夫だったのかって?

 ネロ皇帝は基本目立ちたがりやだから、予選では雌伏の時を過ごしてたんだと思うよ、多分。

 

 第四試合は互いに覆面だったせいで、微妙に気まずい感じになりながら、何故かお互いにマントも脱がないままデュエルをしてどっちが勝ったのかよく分からない感じになり。

 続く第五試合はその勝った方の謎のデュエリストと、マシュとの対決。

 ……結局、頑なに顔を隠したまま敗退していったんだけど、あの二人はなんだったんだろう?

 

 その後の第六試合は赤城さんとハーミーズさんで、これはハーミーズさんの『主人公ハイランダーズ』*20デッキが勝利を収めた。

 ……主人公達ばりのドロー力だったので、ある意味仕方ないのかもしれない。

 あの局面で【黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)*21とか引いてくる辺り、なんというかヤバいって感じしかしなかったもん。……後ろでヒトデ頭さんが嬉しそうに頷くのも仕方ないというか。

 

 そうして迎えた決勝戦。

 マシュとハーミーズさんの長い戦いの勝者は、結果として『純聖騎士』ではなく『焔聖騎士』も混じったデッキであることを、ここまで隠し通したマシュとなった。

 

 切り札は最後まで取っておくということなのか、はたまた彼女のイメージ的にシャルルマーニュモチーフの『焔聖騎士』は使われないと思っていたのか。*22

 なんにせよ、それまでの堅実なプレイングからの一転攻勢を見せたマシュのデュエルタクティクスは、歴戦のデュエリストであるハーミーズさんをして唸らざるをえなかった、と言うのは確かなのだろう。

 

 ……正直私にはなーんも分からなかったのだけど。ブランクやばすぎて何が起こってるのか全くわからねーでやんの。

 

 

「ガッチャ!負けちゃったけど、熱いデュエルだった!」

「はい、いい勝負ができたと思います」

「今度リベンジするから、それまで腕を磨いておくんだね」

 

 

 爽やかに別れを告げ、観客達に紛れるハーミーズさんが何を思っていたのかはわからないけど、きっと次のデュエルも激戦なのだろう、と言うことは理解できた。

 ……私もせめて解説できるくらいには、色々と覚え直しておくべきかなぁ?

 

 まぁ、そんなこんなで。

 優勝したマシュには賞金百万円と最新パックを1カートン分、それと副賞としてキングへの挑戦権が与えられたのであった。

 

 

「いよいよですね、せんぱい」

「ああ、いよいよキングのお出ましだ」

 

 

 舞台袖に立つマシュに近寄って、声を交わす。

 色々と濃ゆい一日だったから忘れそうになっていたけれど、そもそも今回の目的はキングとの会話にある。

 マシュは真面目なので、ちゃんとデュエルにも向き合っていたけど、半ば部外者な私にとってはここからが本番だ。

 

 

「では、観客の皆様方!どうぞ大声で、彼をお呼び下さいッ!!キング・オブ・Dホイーラー!!ジャックゥゥゥ、アトラスゥゥゥゥッ!!」

 

 

 公園内に響き渡る、キングを呼ぶ大合唱。

 それに応えるように、反対側の舞台袖が舞台下から噴射された白煙に染まり、一つの影がこちらに歩みってくる。

 ──威風堂々、絶対強者の誇りを見せ付けるように、悠然と歩んでくる男。

 

 

「お前が、俺とのデュエルを望む挑戦者か!!」

「──はい、マシュ・キリエライト。貴方に挑む者です!」

 

 

 ジャック・アトラス。

 孤高のデュエルキングが、不遜なる挑戦者を踏み潰さんとそこに立っていたのだった。

 

 

*1
懐石系のお店なら、安くて2000円、高ければ10000円越えも普通である。……コワイ!

*2
『fate/grand_order』内のアイテム(概念礼装)『カルデア・ディナータイム』などを参照

*3
マシュは育ちが良い……というのとは違うけど、そこら辺のマナーを疎かにするようなタイプでもなさそうだな、という感じの話

*4
fgo内のイベント、『オール信長総進撃 ぐだぐだファイナル本能寺2019』にてマシュがしたとある行動から。意外と天然というか、なんというか

*5
『艦隊これくしょん-艦これ-』内にて赤城は空母というカテゴリーに属しているのだが、入手タイミングが他の空母系よりもかなり早い。……基本的に彼女よりも早く他の空母を入手することはないため、結果として『空母系(特に正規空母)は燃費が悪い』と言うことを一番に思い知らせてくれる為、本来イメージが分散するはずのものが『赤城(空母)は燃費が悪い』に集中してしまった結果生まれたイメージ。赤城さんは、よく食べる。

*6
『ご注文はうさぎですか?』内でのココアの台詞から。『街の国際バリスタ弁護士』を彼女は進路として希望している。ここでは『街の国際バリスタ弁護士デュエリスト』になるのかもしれない?

*7
『遊☆戯☆王シリーズ』より、デュエリスト達の盾。……真面目に説明すると、カードを置いておくための板。簡単に外れたり飛んでいったりしないようになっている為、リアルのカードゲームにおける『座って遊ぶ為端から見ると地味』という映像上の問題点を解消する事に成功した、画期的なアイテム。……ただ、そのせい(おかげ?)で、デュエリスト達には動き回る為の筋肉が求められるようになったりもしている

*8
『決闘』を意味する英語。カードゲームで使う場合はKONAMIが商標登録しているので注意

*9
いつかも説明したが、カードテキストを注釈にしたとしても一ターンで一話分の文章を使いきりかねなかったりする。無論、極限まで削ればどうにかなるかもしれないが、そうなるともはや呪文になる(例:サモサモキャットベルンベルンなど)

*10
リアルタイムアタック(RTA)』の動画で、biimシステムを使っている時のお決まりの文句の一つ。長く作業めいた行程を見せなければならない時に、暇になる視聴者のみなさまのためにぃ~、とある動画を流……そうとしたり実際に流したりする、そんな流れ。そんな流れ投げ捨ててしまえ(良心)

*11
『ジョジョの奇妙な冒険』第五部(part05)『黄金の風』に登場する超能力(スタンド)の一つ。時を「消し飛ばす」能力と、数十秒後の未来を見る能力を併せ持った強力なスタンド。スラングとして使う場合、描写を飛ばして次の場面に移るぞ、という宣言にもなる

*12
『メルフィー』は、『遊☆戯☆王OCG』におけるテーマの一つ。可愛くてもふもふした動物達がメインとなる、遊戯王らしからぬテーマ。無論、その可愛い見た目に騙されると酷いことになる

*13
『ジョジョの奇妙な冒険』第五部(part05)『黄金の風』に登場するキャラクターの一人が発した言葉。「結果」だけを重要視した彼の敗因にも繋がる台詞

*14
A.違います

*15
『遊☆戯☆王ARC-V』の登場キャラクター、『黒咲隼』のこと。身体スペックが異常に高い人物。作中ではとある事情から、基本的に周囲に高圧的だった

*16
『無言の腹パン』などと呼ばれる、『遊☆戯☆王ARC-V』内でのワンシーン。彼が荒れに荒れていた理由である、連れ去られた妹と瓜二つの人物に出会った時に、作中人物のユートが彼の腹にパンチを当てて強制的に黙らせたあと、「彼女は瑠璃ではない」と呟いた、というシーン。また、ハーミーズの中の人は柚子及びセレナと同じである為、その辺りも踏まえたネタでもある

*17
『遊☆戯☆王OCG』のカードの一枚、【RR(レイドラプターズ)-ライズ・ファルコン】のこと。……なのだが、この場合は『ご注文はうさぎですか?』のキャラクターの一人、『天々座理世(てでざりぜ)』の下の名前がローマ字で『Rize』……『リゼ』ではなく『ライズ』と読めてしまう為、そこからライズ・ファルコンと絡められて最終的に『このライズってファルコンかわいい』という台詞が生まれた……というネタに、リゼとマシュの旧声優が一緒だったというネタも混ぜた、とにかく大盛りなネタ

*18
『fate/grand_order』に登場するサーヴァントの一人、星5(SSR)キャスター。ローマ皇帝の一人、ネロ・クラウディウスが女性化されたキャラクターが、夏の装いを身に纏ってパイプオルガンと言い張る、どうみても艦これとかの艦装を元にした上でガンダムのビット兵器みたいな動きをする、金の劇場礼装を背面に装備した女性。……何を言ってるのか分からない気分になってくるけど、実際こうとしか言いようがない

*19
『遊☆戯☆王OCG』のテーマの一つ、『オルフェゴール』。楽器や音楽に関連したイメージを持つテーマ

*20
『ハイランダー』はカードゲーム用語で、基本的には『同名カードは一枚までしか入れない』というデッキ構築の仕方を指す。主人全員のカードが入ってるというのなら、必然的に二枚以上入れると枠が足りなくなるので、ハイランダー以外組みようがないところもある

*21
『遊☆戯☆王OCG』のカードの一つ。自分のフィールドに【ブラック・マジシャン・ガール】モンスターが存在する場合に発動でき、発動すれば相手フィールドの表側表示モンスターを全て破壊する事ができる

*22
『聖騎士』は円卓の騎士、『焔聖騎士』はシャルルマーニュ十二勇士をモチーフにしている



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(リアル的にも)時と場合による

「……ふん、やはりお前達だったか」

「ということは、やはり貴方はあの場所で出会ったジャックさんなのですね!?」

「キングだ、今はそう呼べ」*1

 

 

 公園から離れ、喫茶店ラットハウスにやってきた私達。

 目の前で席に座る彼、ジャック・アトラスは、カップに注がれたコーヒーを優雅に飲んで見せていた。

 ……え?試合?いや、普通にマシュが負けましたが何か?

 いや、だってさぁ?

 

 

「前回はその護りに煮え湯を呑まされたが、今回はそうは行かん!レベル8【レッド・デーモンズ・ドラゴン】*2に、レベル2【クリムゾン・リゾネーター】*3、レベル1【チェーン・リゾネーター】*4、そしてレベル1【シンクローン・リゾネーター】*5を、トリプルチューニングッ!!!」*6

「と、トリプルチューニング?!」

「王を迎えるは三賢人。紅き星は滅びず、ただ愚者を滅するのみ!荒ぶる魂よ、天地開闢の時を刻め!──シンクロ召喚!出でよ、新たな我が力!【スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン】ッ!!!」*7

 

 

 とかリアルでやられたんですよ、めっちゃ格好いいとこ見せられたんですよ、二人して放心ですわあんなの。

 まさしくフィール*8を叩き付けられた、って感じだったよホント。

 

 

「ふん。お前達に褒められても特に意味はないが……まぁ、感謝の言葉くらいは返してやろう」

「あ、はい。素晴らしいデュエルでした。……あの時よりも更に、腕を磨かれていたのですね」

 

 

 ジャックさんが照れ隠しのようにそっぽを向けば、マシュが自身の胸に手を当て、しみじみと彼を讃える言葉を紡ぎだした。

 それにまたジャックさんが「ふん……」とそっぽを向いて……といった感じの応酬が、さっきからずっと続いている。

 ……いや、ちょっと面白くもあるけど、話が進まないので続けてもいいかな?

 

 

「……よかろう。俺に答えられる範囲であれば、お前達の質問に答えるのも吝かではない」

「あ、ありがとうございますキングさん!」

 

 

 いいから、要件をさっさと話せ、と声を上げるジャックさんに思わず苦笑しつつ、彼に会えたなら聞こうと思っていた事を尋ねていく。

 

 

「まず、貴方はあの板でマシュとデュエルしたジャック・アトラスで間違いないのね?」

「如何にも。キングにあるまじき苦戦を見せてしまった、あのジャック・アトラスに相違ない。……忌々しいことにな」

「え?えっと、キングさん、もしかして怒っていらっしゃるのですか……?」

「怒る、だと……?」

 

 

 初めの質問は、彼が私達が知る人物と同じであるか否か。

 記念祭でマシュとデュエルをした彼であるというのなら、聞きたいことが幾つかあるのだ。

 そうして尋ねた結果は……ビンゴ!彼はあの「ジャック・アトラス」だった。ならば、この先の質問にも意味が出てくる……と、ちょっと期待が持てていたのだけれど。

 ……あの、何をそんなに怒っていっらっしゃるのです?

 目の前のジャックさんは、肩をわなわなと震わせ、憤怒の形相を浮かべていたのだ。

 

 

「そうだ、俺は今怒りに打ち震えているッ!!──不甲斐ない、自身への怒りにな!!」

「え、ええっ!?」

 

 

 事実、彼は怒っていた。但し、それは私達──正確にはマシュに対してのものではなく、彼自身の不甲斐なさに対してのものであったが。

 曰く、今日の決勝戦でのマシュのプレイングに、幾つか思うところがあったらしい。

 

 

「あの時の俺は、お前の『聖騎士』デッキの前に敗北を喫した。その日より俺はキングではなく挑戦者となった。──だが、お前の真の切り札は『焔聖騎士』!!あの時の、無様な敗北を喫した俺はッ!!お前の全力を引き出すことすらできぬ、お飾りのキングだったというわけだ!!これが、自身への怒りを生む動機とならぬのであればッ!!()()()()を名乗る資格なぞ、あるはずもなかろうッ!!」

 

 

 そこまで聞いて、「ジャック・アトラス」のエピソードの一つを思い出した。

 彼は原作において、ある人物が仕組んだ八百長によってキングの称号を得たのだと知らされるのだ。*9

 それに関しては、様々な事情からの仕方のない出来事であったし、なによりその対戦相手とは再戦して全力でぶつかり合い、打ち破ってはいるのだが。

 ……相手が全力を出せないデュエルと言うものに、彼が思うところがあるというのは、わからないでもない。

 更に、相手が全力を出さない内に負けたというのは、そもそも彼のプライドに傷を付ける行為だろう。……並べれば並べるだけ、彼が怒らない方がおかしい話だった。

 

 

「あ、その……」

「マシュ、謝罪はダメだよ」

 

 

 思わず謝りそうになるマシュの肩に手を置いて、謝ろうとする彼女の言葉を止める。

 ……遊戯王から離れた私でも、そこで謝るのが良くないことはわかる。こちらの言いたいことを察したマシュは、眉根を下げつつも、決して謝ることだけはしなかった。

 そんな彼女の様子に、ジャックさんはフッ、と笑みを浮かべ。

 

 

「そうだ、それでいい。全力を出せなかった理由など、俺がお前を本気にさせられなかった……それだけで十分だ。お前が気に病むことはない。──一勝一敗だ、今度はお前の全力で向かってくるがいい」

「──はい、王者(キング)ジャック・アトラス。今度の手合わせは、全力で向かわせていただきますっ」

 

 

 ……なんとか、いい感じに話が纏まったようだ。

 思わずうんうんと頷いて、勘定をして帰ろうか、なんて気分になって。

 

 

「……いや、君達もっと違う話の為にうちに来たんじゃなかったのかい?」

「はっ!?なんかいい感じの終わりになったからこれで解散でいいやって気分になってた!?」

「……む、そういえば別の話だったか。では店員、このコーヒーをO☆KA☆WA☆RI☆DA!」*10

「はいはーい!ただいまお持ちしま……って、あれ?」

「……むっ?」

「え、なになに?」

 

 

 店のカウンターに立っていたライネスからの、呆れたような声を聞いて本題を思い出す。

 と同時に、ジャックさんが飲み物をおかわりしようとココアちゃんを呼び止めて、呼び止められたココアちゃんが元気に挨拶をした……と思ったら不思議そうに首を捻って。

 そんな彼女の姿を見たジャックさんが、驚いたように微かに片方の眉を上げ。

 なんか変な連鎖を起こしたらしい一連の流れを見て、私が声を上げた。

 ……いや、何が起こったのこの空気は?

 

 

 

 

 

 

「ほら、ここ」

「……確かに、これは俺が書き込んだものだ。……なるほど、やはりお前だったか」

「えへへ、まさかキングさんがうちの常連さんだったとは思わなかったよー」

 

 

 ココアちゃんのガラケーを皆で覗き込む、という変な状況にちょっと困惑しつつ、二人は納得したように頷いていた。

 

 ……ふむ、()()()()、二人は一つのスレにおけるスレ主と名無しの関係だったようだ。

 さっきの反応は、ジャックさんのおかわりの声になんとなく既視感を覚えたココアちゃんと、改めてココアちゃんの姿を見たことで、自分が過去に閲覧していたスレの主をジャックさんが思い出したから、だったようだ。

 そんな事を隣のマシュと、カウンターからこっちに近付いて来ていたライネスと確認し合う。

 

 

「……どうしたの三人とも?なんだか顔色悪いみたいだけど……」

「んー、ジャックさんにこれから聞こうとしてた事にも関係あるんだけど……」

 

 

 ココアちゃんがこっちの顔を見て心配そうな声を掛けてくるのを聞きながら、ライネスに目配せ。

 彼女はそれに頷いて、店の扉の外側に「閉店(CLOSE)」の札を掛けに行った。……時間帯的に店内に他の客が居ないのも幸いした、というか。

 彼女が店の外から戻ってきて、私達の隣に座るのを確認して、改めてジャックさんたちに向き直る。

 

 

「それで?お前達は、俺に何を聞こうとしていたのだ?」

「……ゆかりんからある話を聞いて、ずっと思ってたことがあるんだよね」

 

 

 ジャックさんからの言葉に、私は静かに語り始める。

 なりきりと言うのは、そもそもキャラクターを演じる者と、それに質問を落とす名無しとで原則成り立っている。

 余所の掲示板ならば、キャラクターのみで集まってるところもあるかも知れないけれど、私達の居た場所では名無しとスレ主の二種が基本形だったはずだ。

 なので、自分がキャラクターを演じていない場所(スレ)では、否応なく私達は名無しで居ることを求められていた。

 ……さっきの掲示板内でのココアちゃんとジャックさんのやり取りみたいなモノが普通だった、と言うことだ。

 

 

「そうだな、気になったスレがあれば名無しとして質問を落とす。それはなりきりをするものにとって、ある種の礼儀のようなものだ」

「基本的には自分のスレに籠もってるものだから、意外とそういう機会は少ないとも言えるけどね」

「はい、なりきりは基本的に遊びに分類されるものです。……ですので、自身のスレから出てこないという方も、一定数存在すると思われます」

 

 

 ジャックさんの頷きと、ライネスとマシュの補足。

 それらを受けて、私はこう告げる。……自分のスレ以外のスレの住民について知る機会とは、どのようなものがあるか、と。

 

 

「えっと、普通に板のトップとか?」

「そうだね、それと初心者用のスレとか、交流用のスレとか、紹介用のスレとか。……基本的には、自分から探しに行く必要性がある感じだよね」

「……話が随分と遠回りだな。結局、何を聞きたい?」

「まぁ、そんなに急かさなくても今からするよ。……()()()()()()()()()()()、見に行った?」

「む……っ?」

「記念祭って言うと、越境禁止ルールが解除されて、色んな所から人が集まってた奴だよね?」

 

 

 ココアちゃんが私の言葉を受けて自身のガラケーを操作し、件のスレを表示した。

 それを()()()()、私は一つため息を吐く。……ジャックさんの怪訝そうな視線を受けつつ、再び話を戻す。

 

 

「私はね、確認しには行かなかったんだ。祭の時だけの付き合い……って面もあったけど、そもそも昔来てた人も多く居たから、消えちゃってて見に行けないスレも合ったし」*11

「……ああ、確かに。祭の時だけ戻ってくる者も多く居たからな」*12

 

 

 そういう人は会話や演出などが上手い人達だったから、彼等の帰ってきた祭の盛況ぶりは、半端なスレでは太刀打ちできない程のものであった。

 無論、祭終わりのなんとも言えない寂寥感も、桁違いのものだったりしたけど……それはまた別の話。

 ここで重要なのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事だ。

 

 

「なに……?」

「そもそも祭の速度が早いからそんな暇がないっていうのもあるけど、最初の挨拶として自身の出身を明かしても、祭中元のスレに人が増えるってことは殆どないと思う。……まぁ、それに関しては祭中はみんな祭に集中してるからってのもあるわけだけど。で、それを踏まえて。──そこの私のスレ、開いてみて貰える?」

 

 

 私はココアちゃんのガラケーを指差し、比較的スレの最初の方で自己紹介をしたのちに祭を楽しんでいる私のレスの、そこに記載されたURLにアクセスしてみるように呼びかける。

 ジャックさんとココアちゃんは互いに顔を見合わせた後、そのURLをクリックして──、

 

 

「『そんなスレありません』……だと?」*13

 

 

 ()()()()の言葉を、私達に告げてくるのだった。

 

 

*1
ジャック・アトラスの呼び名の一つ。物語の初期の方と最後の方で、彼はデュエルキングとして君臨していた。その時の愛称とでも言うべきもの。なお、王者から退いている時は『元キング』などの不名誉な呼び方もされていた

*2
『遊戯王OCG』のカードの一枚。ジャック・アトラスのエースモンスター。リメイク版のカードに出番を取られがちだが、使い分けできるだけまだ扱いはいい方だったり

*3
『遊戯王OCG』のカードの一枚。効果発動ターンに

ドラゴン族・闇属性(シンクロ)モンスターしかEXデッキから特殊召喚できなくなる代わりに、手札から特殊召喚できたり、デッキから『リゾネーター』モンスターを2体まで呼び寄せたりする事ができる

*4
『遊戯王OCG』のカードの一枚。フィールドに(シンクロ)モンスターが存在する場合に召喚に成功すると、デッキから『リゾネーター』モンスターを呼び寄せる事ができる

*5
『遊戯王OCG』のカードの一枚。フィールドに(シンクロ)モンスターが存在する場合に手札から特殊召喚できたり、墓地に送られた場合にこのカードと同名以外の『リゾネーター』モンスターを手札に戻す事ができたりする

*6
三体のチューナーモンスターを使用してのシンクロ召喚の事

*7
『遊戯王OCG』のカードの一枚。アニメ終了後暫くして登場した、ジャック・アトラスの新たなるエースモンスター。リアル召喚口上が聞いてみたい人は、ジャンプフェスタ2020のデュエルオペラを見てみよう

*8
漫画版『遊☆戯☆王5D's』に登場する用語。『仮想立体触感』と呼ばれるもの。ニュアンス的にはオーラとか気迫とかに近い、のだろうか?

*9
作中人物によって明かされた事実。もっとも、後述の通り八百長相手とはその後しっかりと再戦して打ち破っているのだが、彼のプライドに大きく泥を塗るような出来事であったことに変わりはない

*10
ジャック・アトラスの有名な台詞の一つ。一杯3000円するコーヒーを11杯も飲んでおいて、それでもなお、さらなるおかわりを望む台詞

*11
いわゆるdat落ち。1000レスを迎える・一定期間書き込みがなかった・なりきりの場合はキャラハンが一定期間存在しなかった……などの理由から書き込めなくなったスレが行き着くもの。1000レス達成の場合は過去ログ行きになったりもする

*12
記念祭の時だけ戻ってくる古参勢も少なからず居る。無論、名無し達は復帰を期待するため通常時より盛り上がる……事が多い

*13
ある種絶望の呪文。似たようなものに『そんなスレッドないです』などがある。見ていたスレが何かしらの理由で消えたことを淡々と示すもの



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見えるモノが全てとは限らない、という多用され過ぎな言葉

「……これは、削除されたと言うことか?」

「キャラハン不在時の削除ルールは三ヶ月でしょ?私はひと月ちょっと前の時には普通に居たし、そもそも他の同僚だって残ってたよ」

 

 

 ジャックさんの言葉に、私は首を横に振って答える。

 確かに「そんなスレありません」なんて表示をリンク先で見る事があれば、普通ならスレが削除されたと思うだろう。

 実際普通の掲示板と比べると、キャラハンの不在で消える可能性のあるなりきりスレというのは、比較的消えやすいものだと言えなくもない。

 

 ……が。今回のこれは、そういうことではない。

 

 

「では、これはどういう事なのだ?」

「んー、なんというか……ライネス、()()()()()()?」

「ふむ。少し待ちたまえ」

 

 

 こちらの意図を察したライネスが、自身のスマートフォンを操作して、とあるモノを表示する。

 ……どうでもいいけどロリ状態とはいえ、ライネスが情報端末弄ってるのなんかすごい違和感だなぁ……。*1

 さて、彼女がスマホに表示したもの、それは──。

 

 

「………?」

「いや、また同じ画面ではないか?」

「ふむ、()()()()

 

 

 彼女がスマホに表示したもの。

 それは、またもや「そんなスレありません」という表示。

 私とマシュにも、同じものが見えている。……が、実は問題はそこではない。

 

 

「今私が表示しているものは、過去ログ(dat落ち)になった私の元居たスレをダウンロードしたものだ、と言ったら君達はどう思う?」

「……なん、だと?」

「え?……いやいやライネスちゃんってば冗談きついよー。だってこれ、どう見ても……どう見ても……?」

 

 

 今スマホに表示しているのは、過去ログを他の端末でも見れるようにダウンロードしたものなのだと、彼女は告げる。

 それを冗談か何かだと思ったココアちゃんが、笑いながらスマホに近寄って。

 画面が切り替わらないのに、右側のスライダが動いている事に気付いて、その笑みを凍りつかせた。

 

 それはあまりに奇っ怪な現象。

 スマホの画面を上にスワイプしても、画面上部に張り付いたように表示される「そんなスレありません」の文字と、画面が下に移動していることを告げる、右側に見えるスライダ。

 それが一番下にたどり着いてもなお、変わらない画面の表示。

 

 

「…………ナニコレ!?」

「むぅ、ここでオカルトだとっ……!?」

 

 

 その異様な現象を目にした二人が、こちらに困惑の視線を向けてくる。

 ……まぁ、コレに関しては私達も同じようなものしか見えてないんで、現状単なる推論しか述べられないんだけど。

 

 

「おそらくだけど、()()()が見れなくなってるんだと思うんだ」

「越境先、だと……?」

 

 

 ジャックさんの言葉に頷いて、改めてココアちゃんのスレとやらを見せてもらう。

 ……彼女たちの反応から、そこには名無しとキャラハン達の会話が表示されているのだろう。だがしかし。

 

 

「私達には「そんなスレありません」って見えてるんだよね」

「え、ええっ!?」

「……嘘は吐いていないようだな。だが、何故そんなことになる?」

 

 

 さっきのライネスのスマホの画面と同じく、私達にはココアちゃんのスレとやらは()()()()()モノとしか認識できていない。

 私達がスレとして認識できたのは、さっきの祭スレだけなのだ。

 

 

「……いや、まさか、さっきのお前のスレも?」

「実際どうなのかは別として、名無しとしての参加すらもした事のない場所は、多分ああなるんだと思うよ」

「え、あ、もしかして!?」

 

 

 ジャックさんの疑問に曖昧に頷く私。

 ……いや、そのね?なんて言い淀む私をジャックさんが訝しむ横で、ココアちゃんが何かに気付いたように声を上げた。

 みんなの視線が彼女に向く中、彼女はそんな周囲の視線を無視して、ジャックさんに詰め寄るように顔を近付けた。

 

 

「ジャックちゃん!ジャックちゃんのスレのアドレス教えてっ!」

「じゃ、ジャックちゃんっ?い、いやそれよりもだ、近いぞ貴様っ!!」

「いいから教えてー!」

「ええいっ、今見せるっ、少し待てっ!!」

 

 

 ……突然のココアちゃんのジャックちゃん呼びも、近寄ってくるココアちゃんの頭を掴んで、必死に遠ざけようとするジャックさんの行動も意味不明だけど。

 そんな謎の空気も、次にココアちゃんがあげた言葉で霧散する。

 

 

「あー!?やっぱり!!見れない!!」

「なにィッ!!?」

 

 

 彼女が叫んだ言葉は、ある種予想通りのものだった。

 ジャックさんはココアちゃんのスレに名無しとして参加したことがあるから、彼女のスレを認識できるけど。

 それが反対になると、ココアちゃんはジャックさんのスレに参加したことがないので、彼のスレを認識できない。

 ……となれば、さっきの仮説はほぼ証明されたことになる。

 

 

「つまり、端から越境してもいい祭スレを除いて、他のスレは原則認識できない……ということになるわけだ」

「……なるほど。だが、それが事実だとして……どうなるのだ?」

 

 

 ライネスの言葉に、ジャックさんが疑問を返す。

 確かに、余所のスレに対しての認識障害みたいなものがあるとして。

 それが何を意味するのかなんて、わかるはずもない……こともない。

 

 

「なに……?」

「今まで私達は、自分が演じていたキャラクター達()()が憑依してきてるんだと思っていたけれど。……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んじゃないか、って」

「憑依として影響の大きい、キャラクターというガワが目立っていたけれど。……そもそもの話()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということだね」

 

 

 私の言葉にライネスが補足をいれる。

 

 今までの私達の認識では「元の人間」の上に「キャラクター」だけが覆い被さって(憑依して)いるのだと思っていたけれど。

 実は「元の人間」とほぼ同一な「名無し」というモノも、「キャラクター」と一緒に覆い被さって(憑依して)いるのではないか?

 ……というのが、今回話してみて思いついた説だった。

 「名無し」というフィルターが含まれる事によって、私達の視点に補正が掛かっているのではないか、と。

 

 そして、それを認めることにより持ち上がる説が一つある。

 

 

「今ここにいる私達、その元になった人々。そこに見える、知識の差。つまり……」

「つ、つまり?」

「私達は、みんな違う世界から()()してきてたんだよ!!」

「「「「な、なんだってー!!?」」」」

 

 

 ……うん、みんないい反応ありがとう。

 

 

 

 

 

 

「で、思わず周囲に合わせて驚いてしまったが。……つまり、どういう事だ?」

「あー、私ね?この前シャナちゃん*2とちょっとバトってきたんだけど……」

「いやちょっと待ちたまえ、世間話レベルの気楽さで突然爆弾発言を持ち込むのは止めたまえ」

 

 

 おっと、ライネスがなんとも言えない顔をしている。

 ……とはいえ、これ別に自分から望んでやったモノでもないからなぁ。

 とりあえずそんな事があったのだと納得して貰って、話を続ける。

 

 

「その時にシャナちゃんが原作終了してないところから来てるんじゃないか、って話になったのよ。使ってない技があったから」

「ふむ……?だが技を使わなかったくらいでは、余所の世界の人間だとは言えないのではないか?」

「彼女が普通のカテゴリの人物ならね。レベル5の話について聞いたことは?」

「……?学園都市がどうした?」*3

「いやそっちじゃなくて」

 

 

 ジャックさんの天然なんだかわざとなんだかよくわからない言葉を聞きつつ、レベル5と呼ばれる憑依者について簡単に説明する。

 

 彼等は演者と憑依者が馴染みすぎた結果、拒否反応を起こして滅茶苦茶になってしまっている人達だ。

 逆に言うと、彼等は知識の更新が起きていない──元の情報を保ったままの人間であるとも言える。

 

 

「ジャックさんは、『スカーレッド・スーパーノヴァ』を採用されていましたよね?」

「ああ、俺の新しい切り札……いや、そうか。()()を使おうと思えている事自体が、俺が()()ジャック・アトラスではないという事の証明になるのか」

「え?どういうこと?」

「なりきりはあくまでなりきりだから、自分の知識の外にあるものは知りようがない。同じように、()()()()()()()()()()()()()()()()時、彼等が()()()()()()()()()を知ろうとするならば、彼等はそれ(知識)を余所から仕入れる必要がある……要するに、()()()()()()()()()()()()()()()。それが本当なのかを、ゆかりんは確かめようとしてたってわけ」

「…………?」

「『ジャック・アトラス』という存在にとって『スカーレッド・スーパーノヴァ』は未知のカードだ。それを使っている時点で、俺は少なくとも『5D'sやARC-Vのジャック・アトラス』ではない。*4お前で言うのならば、三期で増えた者達を知っている時点で、一期当時の『保登心愛』ではない……という事だ」*5

「なる、ほど?」

 

 

 私の説明はちょっとわかり辛かったかな?

 なんて思っていたのをジャックさんが補足してくれたおかげで、ココアちゃんはなんとなく、くらいには話を理解できたようだった。

 

 要するに、使()()()()()()()()のではなく使()()()()()()のだとしたら、彼女はそれについての知識を持っていなかった……ということになるという話だ。

 

 だが、彼女はゆかりんを『境界の守り手』と呼んでいた。

 使っていた技からすると、知識の更新は起こっていないはずなのに、彼女は本来知り得ない()()()()()()を元にしたと思わしい名で呼んでいたのだ。

 

 ……ゆかりんの当初の予想通り、知識の更新が()()()()()()ことによって行われるものであるというのなら。

 憑依者が拒まれている以上、そちらの意識で動いていた彼女が八雲紫について知っているはずがなく。

 

 仮に知識の更新が行われていたのだとするのなら。

 少なくともこちらが嫌々展開した『疑装』に関しては、正しい対処を打ってきていた可能性の方が遥かに高い。*6

 

 ならば、()()()()()()()()()事を前提とした、もう一人の誰か(名無しという憑依者)が更に混じっている、と考えた時の方が無理が少ない。

 ──そう考えたというのが、今回の私の言いたかったことなわけだ。

 

 しかしまぁ、知識の更新がどの範囲で起きているのか、そしてそれに対しての違和感がどうなっているのか。

 ……そういった違和感をごまかすものが『名無し』というフィルターなのだとすれば、随分と雑ではあるものの、一定の効果をあげていると素直に認める他ない。

 実際、見えなくなったり理解できなくなったりしている事を、ジャックさんやココアちゃんと話すまでは認識できていなかったというのは、わりと驚嘆すべきことだと言えるだろう。

 とはいえ……。

 

 

「なんというか、例外引かなきゃ気付けないって結構酷い話だというか……」

「れいがい?」

 

 

 ココアちゃんが首を傾げるのを見て、マシュの方を見る。

 なんとも言えない表情を浮かべているのは、私と同じことを考えているからか。

 とりあえず置いておいて、更にその隣のライネスに声を掛ける。

 

 

「ライネスのそれ、元のスレのアドレスとか覚えてる?」

「いや、内容を確かめたからこそ自分のスレだと認識できたけど。正直、元の場所とかは全然」

「だよねぇ。……因みに私達の場合、さっきの祭スレはURL全部バグって見えたよ」

「それはまたなんとも……」

「……いや、待て。お前達は何を言っている?」

 

 

 遠い目で話し合う私達を見て、ジャックさんが声を上げる。

 ……うん、彼等には普通に見えているのだろう。

 最初に私のレスに書かれた()()()()()()U()R()L()を、特に疑問もなく踏んでいたし。

 

 ゆかりんは()()()()()、と言っていたわけだが。

 ……その大体の人から外れた人物を引かないと気付けないとか、型月じゃねーんだぞってツッコミたくなるというか。*7

 

 

「うーん、名無しも憑依してるんじゃ、ってとこまで行けたのは良かったんだけど。……なんか、謎が増えただけな気もする……」

「ふむ?……ああ、そうか。そういえば、君だけが聞いていなかったのだったか」

「へ?なにが?」

「ココアが特別、と言うのは紫もマシュも知っているよ。そもそも、マシュがここでバイトを始めた理由の一つでもあるからね」

「なん、だと……?」

 

 

 むむむと唸っていたら、ライネスから明かされる衝撃の事実。

 ……あ、よく見たらマシュの表情、悩んでるんじゃなくて申し訳無さそうにしてるやつだこれ!?

 うっわなんか変に探偵役やってただけだこれ、はっず!?

 

 なんてちょっと赤面する私の前で、ココアちゃんは頭を掻きながら首を傾げ、こう告げるのだった。

 

 

「えっと、私、なにかやっちゃった?」*8

 

 

 

*1
基本的な型月世界の魔術師は電子機器を扱わない、ないし嫌悪している

*2
『炎髪灼眼の討ち手』の愛称のようなもの。彼女の持つ宝具(武器)贄殿遮那(にえとののしゃな)』から取った名前

*3
『とあるシリーズ』より、学園都市最強の能力者達の格付けにおける最高位を、『超能力者(レベル5)』と呼ぶ

*4
『スカーレッド・スーパーノヴァ』の登場は2019年12月21日発売の『LEGENDARY GOLD BOX』収録時。ジャック・アトラスのアニメでの登場時期は、ゲストとして登場していた『ARC-V』を含めても最終回の2017年3月26日までの為、知識の更新・ないし補填がない限り、このカードの事を知るはずがない

*5
ごちうさのアニメ一期は2014年4月から、三期は2020年10月から。三期では学校のクラスメイト達にもスポットライトが当たるようになった為、登場人物が増えたとも言える

*6
贄殿遮那(にえとののしゃな)』で防御するだけで多分事足りるし、その事に真っ先に気付くはず

*7
型月系の作品によくあること。──だがここに例外が存在する

*8
元ネタは『賢者の孫』の主人公がよく言う台詞、『またオレ何かやっちゃいました?』。ある意味、謙虚も行き過ぎると笑いになるということの見本か



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歩くような速さで、君を思う(なお早歩きである)

「えっと、整理すると。……マシュ達は、ココアちゃんが元のスレを見ることができる希少な人物だと知っていた、と?」

「はい。彼女がこの謎を解く鍵の一つなのだろうということは、ライネスさんから初日にお窺いしていました。……彼女以外にも見える人が居なければ、詳細な検証はできないだろうと言うことで、本人にもお伝えはして居ませんでしたが」

 

 

 マシュに聞いた結果返ってきた答え。

 ……いや、恥ずかしい。めっちゃ恥ずかしい。

 ドヤ顔まではしてなかったけど、謎を解き明かす探偵ムーブしてたのは確かだからすっごい恥ずかしい。コナン君とか居なくてよかったとしか言えない。

 

 なお、話題の中心であるココアちゃんは、今更ながらに自分が重要人物だったらしいことを知って、なんというかすごくビックリしていた。

 

 

「つまり、私がこの事件の犯人だったりするの?!」

「論理が飛躍しすぎだ、ココアに探偵役は求めていないから、今まで通り普通にしていたまえ」

「ええー!?私が中心なのに、蚊帳の外なのはひどいよー!」

「いや、俺もお前にそういう役割は求めんと思うぞ」

「……いや、よりによって君がそれを言うのかい?」*1

 

 

 こちらが二人で話す間に、彼等は彼等で和気あいあいと会話を連ねている。……むぅ、私も楽しい話がしたい……。

 とはいえ、とりあえず今までの会話のまとめをしとかないと、色々こんがらがりそうというのも確かな話。

 仕方ないので、ちゃんとまとめようと気合いを入れ直す。

 

 

「えっと、まずは憑依者の能力値についてかな」

「今までは演者の知識や元のスレでの人気・及びキャラクターの再現力が、能力値に影響を及ぼすのだと考えられていました」

「そこに、『名無し』というフィルターが関わっている可能性が浮上してきた」

 

 

 そもそもの話、なりきりというモノを言葉通りに受け取る場合、質問を受けて答えを返すというのは、再現(なりきり)としてはかけ離れているとも取れる。

 作品内でラジオ番組の質問コーナーを受け持っている、とかでもなければ、質問を受けて答えを返すという行為自体が()()()()()()()()()()()だと受け取られかねないからだ。

 

 だが、現実には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 というか、ゆかりんみたいな()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()ような者も存在している。

 どういう基準でその辺りの能力値の決定が行われているのか、そこに一つの解をもたらすものが、今回の『名無しも居るよ』説だということだ。

 

 要するに『名無し』成分が、本来外れているハズの原作以外の部分を再現する際に、その核になっているのではないか?という考え方だ。

 原作の再現力を『憑依者』が担うとすれば、彼等(名無し)は二次創作として優れているかを判定しているのではないか、ということでもある。

 

 そして、それゆえに──、

 

 

「この『名無し』、ほぼ同一であって、本人そのものではないんじゃないかなって」

「本人……というと、演者とは違うものだと?」

 

 

 マシュの言葉に小さく頷きを返す。

 そもそも、この『名無し』というフィルターの存在を思い付いたのは、シャナちゃんの言動が発端だ。

 

 ゆかりんのことを、あちらの命名法則に従ったかのような名前で呼んでいた彼女。

 知識の更新という考え方の上では、本来起こり得ない現象。

 

 それを解消、ないし説明付けるためのものが『名無し』というフィルターだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()、例外的に原作にない知識も得られるのではないかという考え方。

 だけど同時に、これを全ての人に当てはめるとすると、とある問題が浮上する。

 

 

()()()()()()()でしょ?こうして、実際におかしいものを見るまでは」

「あ、はい。スレがないという異常を眼にするまで、ジャックさんもココアさんも、疑問を抱いている様子はありませんでした」

「疑問を抱かなかったということは、少なくともあの二人は演者と『名無し』にズレは無いか、もしくは少ないってことになる」

「……なるほど。演者と『名無し』が同一であるならば、気付くという過程が発生すること自体がおかしい、ということですね」

 

 

 ……マシュの頭の回転が良すぎて怖い。

 演者と『名無し』が同一であるならば、知識の範囲も同じはず。

 だがそれが正しいとすると、シャナちゃんの動きがおかしいことになる。()()()()()()()()()()()()()()()()だからだ。

 それが、気付くという過程が発生すること自体がおかしい、という言葉の真意だ。

 

 なので、演者と『名無し』の間でも、知識の範囲に差があると考えた方がいい、というわけである。

 

 

「で、ふと思ったんだけど。……レベル4以上の人の精神の不和って、『名無し』の不調って言う方が正しいんじゃないかなって」

「……それは、何故そのように思われたのですか?」

「『名無し』の役割って、ある意味制御システムみたいなものでしょう?演者と憑依者間の調停役というか。で、その二者はそもそも別の存在で、混じり合うなんてことあるはずがない、根本的にはなりきりなんだから。だから、その調整を担う部分が誤認している……と考える方がしっくりこない?」

 

 

 まぁ、そもそもそんなに小難しいこと言わなくても、一発で『名無し』が制御用だってことがわかる理由があるんだけど。

 なんてことを呟けば、マシュがそれは一体?と聞いてくるので、そのまま彼女を指差すことで答えとする。

 

 

「え、私……ですか?」 

「あのハリセン、不和の原因を『場面転換』で吹っ飛ばしたってことだったけど。……不和の原因が本当に両者の食い違いだけで起きてたなら、下手するとどっちの人格も吹っ飛ばして、最悪廃人化してた可能性もあるのよ」

「ひっ!?」

 

 

 おっと、正確なところを話したらマシュを怖がらせてしまった。別にシオニーちゃんしたかった*2訳じゃないんで許してね?

 

 

「基本的にあれ、特に指定せずに使うと()()()()()()()()()()を選ぶようになっているから、『名無し』の処理がハング*3してたからそこを直した(飛ばした)、ってみた方がいいと思うんだよね」

「せんぱい!?せんぱい!!さらっと恐ろしい事を言い出すのは止めて下さい!?」

「大丈夫大丈夫。もし失敗してたら責任取って私も首斬ってたから」

「せんぱいそれ何も大丈夫じゃないです!?」

 

 

 あの煙も『名無し』がオーバーヒートして煙出してたとかじゃないかなー、なんて笑う私なのであった。……え、空笑い?なんのことやら。

 

 

 

 

 

 

「お話は終わった?」

「なんとなくは。見えてきたような気はするんだけど、まだ足りてない感じかな」

 

 

 マシュとの会議(途中でライネスも加わってきた)も終わり、そろそろラットハウスも閉店の時間。

 店内にそもそも私達以外の客は居ないので、食器とかをしまえば終わり……ということで、二人が片付け終わるのを外で待っていると、ココアちゃんが缶ジュースを持ってこちらに近付いてくるのが見えた。

 

 はい、と渡されたココアをありがたく受け取って、そのまま蓋を開けて一口。

 薄暗い通りを視線から外して、上の方を見る。

 

 ……ここもまぁ、不可思議な場所で。

 住人の要望に応える為なのか、建物の立地毎に天井の設定が違うらしい。

 ラットハウスの場合、近隣の建物も合わせて、地下だと言うのに夜空が見えている。

 ちゃんと星が見えているし、時間が立てば朝日も上る。……火炎之番人(サラマンダー)*4とか地重管理人(ノーム)*5とかが居そうな感じの不可思議さ加減である。

 

 そんな空を眺めていたら、隣のココアちゃんがふふっ、と笑みを溢した。

 

 

「んー?どしたのココアちゃん、楽しそうだけど」

「そうだねー、実際すっごく楽しいよ。毎日が遊園地みたい♪」

 

 

 こちらに満面の笑みを向けてくる彼女。

 ……なのに何故だろう?彼女の笑みが、どこか寂しげに見えるのは。

 

 

「ずっとこんな日が続けばいいのになぁ。……なーんて、そんな事言ってたらマシュちゃんに怒られちゃうね?」

「そんな二次創作のマシュみたいな事は言わないと思うけどなぁ」*6

「あははっ。そうかな?……でも、キーアちゃんも、事件の解決を目指してるんでしょ?」

 

 

 こちらを覗き込んでくるココアちゃんに苦笑を返し、缶の中身をもう一口。

 確かに、私達は何がどうなってこの異変が起きたのか、それを調べようとしている。

 

 

「でもまぁ、調べたからって解決するかどうかは、まだわからないけどね」

「え、そうなんだ?」

「まぁ、元の体に戻れないのは不都合だけど。……今の生活にもう馴れちゃってる人も居るだろうし、原因探して即解決って訳にはいかないよね」

「そ、そっかー。なーんだ、心配して損しちゃった……。……はっ!?な、なし!今のなし!!」

 

 

 自分が何を言ったのかに気付いて、慌てて弁明をするココアちゃん。……『マシュ』と『永遠』について口に出した時点で、こっちとしては気付いてたとは言い出せない空気。

 なので、「ワタシハナニモキイテナイヨー」と返しておく。……いや、そこであからさまに安心するのはどうかと思うよココアちゃん。

 

 こちらに手を振りながら、去っていくココアちゃんとライネスを見送って。

 私とマシュ、それからジャックさんは、自分達が泊まっている部屋に戻るため、道を歩き始める。

 

 

「……おい、キーア」

「なに?ジャックさん?」

 

 

 そんな中、ジャックさんが視線を前に向けたまま、こちらに声を掛けてきた。……こっちも視線を前に向けたまま、返事を投げる。

 

 

「……気付いたか?あの娘──心愛の纏う空気を」

「戻りたくない、って感じかな。多分だけど」

 

 

 投げ掛けられた質問に、感じたままの答えを返す。

 ……夢想の絵画なんてモノを見せてきた夢魔が、初めてその姿を夢に見せたのは何時だったか。

 あれが()()を語るものであるとするのならば──。

 

 

「……ゆかりん、()()を見せたほんとうの意味はこっちだな?」

 

 

 一筋縄ではいかないのだろう、この異変の全貌に思いを馳せながら。

 私達は、夜の街を静かに歩いていくのだった。

 

 

*1
ジャック・アトラスのある行動から。「だからあのカードはミラフォだっつってんだろ!」

*2
『スーパーロボット大戦Z』シリーズに登場するキャラクター、『シオニー・レジス』に対しての、一部の人達の歪んだ愛情表現のこと。精一杯虚勢を張っている相手をびびらせるの楽しいよね(かなりマイルドな表現)という人々の旗印みたいなもの

*3
ハングアップの略。コンピューターが動作を停止し、外からの操作を受け付けなくなった状態。いわゆるフリーズと同じ

*4
『AQUA』『ARIA』に登場する役職の一つ。火星をテラフォーミングした惑星である『AQUA』は、太陽から離れているので気温調整の為に人工の炉から熱を放出している。その火の番をするものが、火の精霊の名を冠する者達である

*5
『AQUA』『ARIA』に登場する役職の一つ。火星をテラフォーミングした惑星である『AQUA』は、地球より遥かに重力が軽いため、それを制御するシステムを管理しているのが、地の精霊の名を冠する者達である

*6
二次創作でのマシュのとあるイメージ。fgo第一部主題歌『色彩』の一フレーズ「永遠など少しも欲しくはない」と、とあるイベントで主人公(正確には主人公に成り済ましていた人物)の発した台詞から生まれたある種の過激派。『色裁』なんて呼ばれることも。無論あくまでも二次創作である




二章はこれにて終わりにございます。
また幕間を挟んで三章に続きます。


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幕間・祭が来た!

一話まるまる掲示板形式なので、苦手な方はご注意を。


縺ェ繧翫″繧頑攸設立10周年記念祭

1:祭進行部隊員A◇W2dm44jx[sage] 2020/10/1 0:00

この10月初頭、縺ェ繧翫″繧頑攸は設立10周年を迎えます。

 

なりきり掲示板の歴史を築いてきた、または現在築きつつあるキャラハン達と、それを支え導いてきた名無し達と共に、

10周年という節目を祝い、さらなる飛躍を目指すことを誓いながら、

ここに10周年記念祭の開催を宣言致します。

 

……まぁ、小難しいことは>>2を見ていただくとして、思う存分楽しんで行きましょう!

 

2:◇W2dm44jx[sage] 2020/10/1 0:01

 

 

☆祭での諸注意

 

 

◇原則age進行推奨

 

 

◇開催期間:10月1日~10月31日

※期間内にスレが完走した場合、運営部隊が第2会場を用意

 

 

◇祭参加の呼びかけは、キャラハン達の負担にならないように。

 

【現役キャラハン】

 

呼びたい相手のスレで、迷惑にならないように一度だけ招待してみましょう。

くれぐれもしつこく参加を呼び掛けないように!

 

【引退キャラハン】

 

専用スレがありますので、そちらで呼び掛けてみましょう。

 

誘導→ht■p://www.■df.■v/■/■?bbs=na■■k■■i&key=21■0■01■■

 

 

◇差し入れ・茶々入れ・質問・即興の出し物・イベント企画・参加等、公序良俗に反しなければ基本なにをしても構いません。

ただし、祭スレでの出来事を自スレに持ち帰ったり、他者に対して不快感を与えるような事は厳禁です!

 

 

◇祭に参加するキャラハンの皆様へ

 

 

○初参加時の必須事項

 

『自身の活動中、または活動していたスレの名前およびURLの紹介』

 

引退済で既に活動していたスレが削除されている方も、元URLの記入をお願いいたします(過去ログが保存されている場合は、そちらのURLを記載して頂いても構いません)。

 

 

○掛け合い形式でキャラハンをされている方

 

掛け合い形式のままでご参加頂くことができます。

代わりに、祭中にキャラクターの追加・変更は行わないようにお願いします。

 

 

○祭スレは越境OKになっています。

普段は関わることのないようなキャラハンとの会話を楽しむもよし、名無し達の出し物に反応をするのもよし。

自分が楽しみ、同時に見ている人達も楽しめるようにレスを進めていきましょう。

ただし、普段と同じくあくまでも質雑形式であることを忘れないように。

基本的に、優先すべきは名無し達との会話であることを念頭に起きましょう。

また、祭スレに掛かりきりにならず、自身のスレもちゃんと見るように!

 

 

◇参加される名無しの皆様へ

 

 

○名無し同士での会話は止めましょう

 

○特定のキャラハンだけに向けた質問などは止めましょう

 

○名無し側も思わず反応したくなるような文章を考えてみましょう

 

 

 

☆☆☆期間中のイベント企画大募集☆☆☆

 

「こんなイベントすれば面白いのでは?」

「こんな質問ならみんな参加できるのでは?」

 

祭運営部隊は、あなたの素敵なアイデアをいつでも募集中です。

企画の提案がある場合は、どうぞお気軽に自治スレにまでお越し下さい。

 

 

◇その他祭スレに関してのご相談等ございましたら、自治スレまでどうぞ。

 

3:[age] 2020/10/1 0:03

今年もやって来たか、祭の季節!アイスキャンディー屋の俺の仕事も捗るというものよ、くっくっくっ……

 

4:[age] 2020/10/1 0:05

カボチャを掘る

 

5:Optimus prime◇atgp3w52[age] 2020/10/1 0:06

祭の会場はこちらであっているだろうか?

私の活動場所にも招待状が届いたので、こうして顔を出してみたのだが、迷惑でなければ参加させて欲しい。

 

……おっとすまない、自己紹介を忘れていた。

私の名前はオプティマス・プライム。

惑星サイバトロンから来た金属生命体だ。

NEST隊員の一人であり、かつオートボットの司令官でもある。

 

普段は、

【オリジナルも可】ロボット総合【熱き魂】

 ht■p://www.■df.■v/■/■?bbs=na■■k■■i&key=23■0■01■■

という場所で活動をしているのだが、祭の期間中は会場内でも活動を行おうと思っている。

 

ないとは思うが、ディセプティコンの襲撃についての警戒も行う予定だ。それに伴い、会場の警護についても手を貸そうと思っている。

無論、折を見て祭のイベントにも参加するつもりだ、どうか宜しく頼む。

 

6:[age] 2020/10/1 0:08

ロボだこれー?!オイルでも渡せばいいのか?!(飲み物屋のおっちゃんが慌てている)

 

7:[age] 2020/10/1 0:10

俺のこの手が真っ赤に燃える!……マジで燃えてるんですけど?誰か消火器ー!

 

8:平沢 唯◇mdu7aaj8[age] 2020/10/1 0:11

おおーっ、ここが会場?

なるほどなるほど、軽音部もこんな大きな舞台に参加できるようになったんだね。だったら頑張らないと!

 

あ、てへへ。お客さんがすでに待ってたみたい。

私、平沢 唯!放課後ティータイムではリードギターとメインボーカルをやってるよ!

はいこれ、うちのチラシ!

 

【けい】ごはんはおかず【おん!】

 ht■p://www.■df.■v/■/■?bbs=na■■k■■i&key=22■9■23■■

 

さてさて、まずはどこに行こうかな~?

 

9:[age] 2020/10/1 0:13

ライブ対決が始まるようです。参加者はこちらまで~

 

10:[age] 2020/10/ 0:15

先ずはミルクでも貰おうか……

 

 

 

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125:キーアん◇2dmt447k[sage] 2020/10/3 8:14

>>95

いやいや、なんでそこで林檎が出てくるのさ?!

どう考えてもその流れは桃が来る展開だったでしょ?!

……あーもう、ここの名無し達はホントになんていうか、期待を裏切らないなぁもう!

とにかく、その林檎は処分しなさい、どう考えても良くないことが起きるから!

 

 

>>96(オプちゃん)

うーむ、司令官だからなのかスッゴいまじめー。

……いや、結構お茶目なところもある、のかな?

 

ふむ、そうなるとあっちの方なのかなー。

私も宇宙の全てを見た訳じゃないからなんとも言えないけど、意外と遭遇する時は遭遇するって事なのかもねー。

 

あ、よかったらこのオイルいる?

くじ引きで当たったはいいけど、どうしたものかって悩んでてねー……。

 

 

>>97

おいこらぁっ!?これ当たり入ってないクジじゃん!

なんでわかったって、これヒモ引っ張るやつだけど、どう見ても繋がってないじゃん、景品に!

さすがにそのままやらせようとするのは豪胆すぎるわ!!

進ノ介くーん、こいつひとっ走り付き合ってあげてー!

あ、こら逃げるな……ってあ、オプちゃんに捕まってる……。

 

 

>>98

あわわ、花火が湿気ったとか一大事じゃないの!

えーっと、こういう時は水分だけ吹っ飛ばして……、いや、これちょっと水分染み込み過ぎてる!

私がやると爆発させる気しかしない!

く、黒子ちゃん!黒子ちゃん呼んでこよう!

 

126:白井黒子◇dg5mwwtp[sage] 2020/10/3 8:17

なんだか呼ばれた気がしましたの。

風紀委員(ジャッジメント)として、呼ばれたのならば応えなければなりませんわね。

 

 

>>98

まぁ、これはまた盛大に濡れて居ますわね……。

ふむ、水分だけをテレポートさせて、と。

 

はい、とりあえずこれで宜しくて?……はい?まだ数がある?

いえ、もうその量ならば新しく用意した方が早いのでは……?

 

 

>>99

無論、私が敬愛するのは御坂お姉さまただお一人!

……なのですが。

ふむ、祭スレで出会った方々にも、尊敬できる方はいらっしゃいますわね。

オプティマス・プライムさんなどは、初めその姿に圧倒されてしまいましたが、話す内容から窺える知性の高さなど、見習うべき箇所は多くあると思います。

 

……キーアさん?

能力的にはいいのですが、なんというか彼女も大概トラブルメーカーというか……。

尊敬を向ける相手としては、少々問題があるようにも思われますわね。

 

 

>>100

最速の100ゲットと言うわけですわね、おめでとうございます。

……まぁ、私から何かあるかと言われると、特に何もない、としかお返しできない訳なのですが。

 

127:[age] 2020/10/3 8:18

朝だからバナナをあげるよ(ポロロン……)

 

128:[age] 2020/10/3 8:22

そのバナナしま……違う、これはバナナではなく音によって生み出されたバナナっぽい音……!?

 

129:モードレッド[age] 2020/10/3 8:25

なんだそれおもしれー!

 

130:[age] 2020/10/3 8:26

塩撒け塩

 

131:[age] 2020/10/3 8:26

どうしてお前はそうなのだモードレッド……

 

132:[age] 2020/10/3 8:26

トリップ付けねぇ奴に人権はねぇ!!

 

133:[age] 2020/10/3 8:30

仕方がないとはいえ>>130からの辛辣ジェットストリームアタックは草

 

134:モードレッド[age] 2020/10/3 8:32

なんでだよー!?

 

 

 

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348:[age] 2020/10/8 12:35

フォウ!フォウフォフォウッ!!

 

349:[age] 2020/10/8 12:39

正義とは、人によって違うのだ!貴殿は何を望む!

 

350:[age] 2020/10/8 12:41

ランチタイムにランチパックと午後ティーを用意……ふむ、ご機嫌な昼食だ……

 

351:[age] 2020/10/8 12:42

お子さまランチに旗が立っていませんわー!

 

352:ピカチュウ◇25dtpgtm[sage] 2020/10/8 12:44

ぴーか、ぴかぴかぴかー(さて、今日も張り切っていくぞー)

 

 

>>348

ぴーかー?(えー?ほんとにござるかぁー?)

 

 

>>349

ぴっぴかちゅう!(つまり可愛いは正義!俺の勝ち!閉廷!)

 

 

>>350

ぴーか、ぴかちゅー(なにこれ、パン?俺ケチャップ別に好きじゃないんだけど……)

ぴっかちゃー、ぴっぴっぴ(まぁ、いいか。貰えるものはありがたく貰いまーす)

 

 

>>351

ぴぃー?(お子さまランチってなんだぁ?)

 

353:[age] 2020/10/8 12:46

相変わらず声に反して中身がw

 

354:[age] 2020/10/8 12:47

赤いほっぺと黄色の体毛、見るもの全てが可愛いと振り返らざるを得ない、みんなのマスコットは誰でしょう?

そう、私です!

 

355:[age] 2020/10/8 12:48

誰おま定期、と言いつつたこ焼きを焼く俺。

誰か買ってってくれー!

 

356:[age] 2020/10/8 12:53

私ですが何か?(カレーショップを開店しながら)

 

357:[age] 2020/10/8 13:01

リメイクだとパスタ食ってそうな先輩チーッス(殴り倒されながら)

実際リメイクって発売されるのか……?(発表から十年以上待ちながら)

 

 

 

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512:酒呑みゆかりん◇sakenomi[sage] 2020/10/13 18:14

お酒おいしい!お酒おいしい!

祭で飲むお酒は格段に美味しいわね!昂ってきたわー!(パージ!)(ユカリサマー!?)

 

 

>>500

お酒おいしい!(挨拶)

ままま、ここはまず駆け付け一杯、それそれそれ~♪

そぉれイッキ♡イッキ♡

やったわぁ♡ちゃんと(お酒を)全部呑めたわね♡

じゃあ次に行ってみましょうか(突然の豹変)

いっぱいあるから、いっぱい飲んでいってね?

 

 

>>502

お水ですってぇ?

実は火が着くやつでしょそれ、私知ってるんだから!

貸しなさい、そんなもの全部飲み干してやるんだから!

 

………なにこれにがっ!?

 

 

>>504(球磨川君)

もー、口の中がにがにがのつらつらよぉ……。

……ってあら、これはまた空気の違う感じの人が来たものねぇ。

はぁい、こんばんわ未来のチャンピオン!

私はこの祭スレのトレーナー!押し通りたくば何かおつまみを寄越すがいいわ!

……ない?ならば美しく残酷にこの祭スレから往ね!

 

 

なんてことを言ってくる人が居るかも知れないから注意してねー。

え、私?いやよ戦うのキライだもーん。

 

513:[age] 2020/10/13 18:15

相変わらずの酒クズゆかりんである。酒撒いとけ酒

 

514:[age] 2020/10/13 18:16

鬼ならぬゆかりんが寄ってくる酒撒き、十月の新イベントとして制定しよう(提案)

 

515:[age] 2020/10/13 18:17

酒の樽置いといたら結構なキャラハンが釣れるのでは?

 

516:葛城ミサト◇ajmg3j8m[age] 2020/10/13 18:19

>>515

呼んだ?

 

517:イスカンダル◇gajt6mpt[age] 2020/10/13 18:19

>>515

同じく

 

518:ゾロ◇aj88gdmw[age] 2020/10/13 18:19

>>515

酒と聞いて

 

519:[age] 2020/10/13 18:21

てめぇら>>2をちゃんと読めバカっ!!

 

520:[age] 2020/10/13 18:22

>>2をよく読むべきなのは>>519の方なのでは……?(普段のスレと違って短文注意がないのを見つつ)

 

521:[age] 2020/10/13 18:25

つまり酒が悪い!禁酒法しかねぇ!!

 

 

 

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783:ジャック・アトラス◇jaw8gd2s[sage] 2020/10/17 13:14

>>772(キリエライト)

ほう、守りを固めたか。──ならば、俺の、タァーンッ!!

 

 

○手札2→3

 

 

リバースカードオープン!【強化蘇生】!

俺の墓地に存在するレベル4以下のモンスターを選択し、そのモンスターのレベルを1・攻撃力と守備力を100アップさせて蘇生する!

 

そうだ、誠の旗は不滅!

ここがぁ、決・闘・場だぁーっ!!

 

 

○墓地からマッド・デーモン復活。

レベルが4→5に

 

 

さらに、手札より【ダーク・リゾネーター】を通常召喚!

レベル5となった【マッド・デーモン】に、レベル3の【ダーク・リゾネーター】をチューニング!

 

王者の鼓動、今ここに列をなす。天地鳴動の力を見るがいい!シンクロ召喚!我が魂、【レッド・デーモンズ・ドラゴン】!!

 

 

○フィールドのモンスターを墓地に、EXデッキからレッド・デーモンズ・ドラゴンをシンクロ召喚

 

 

さぁ、その貧弱なモンスター達を全滅させてやろう!

『灼熱のクリムゾン・ヘルフレア』!!

 

784:[age] 2020/10/17 13:16

でた!ジャックさんのシンクロコンボだ!

 

785:[age] 2020/10/17 13:17

実際掲示板で遊戯王やるなら5D'sまでだよなぁ、誘発とか気にすると無理があるし

 

786:ジャック・アトラス◇jaw8gd2s[sage] 2020/10/17 13:19

>>784

……言ってくれるな、俺も正直どうかと思う。

だが、カードプールを最新のモノにまで広げすぎると、処理が煩雑過ぎるものになるのは避けられんだろう。

 

そういう意味で、リンクスもラッシュも色々考えているとは思うわけだ。

……まぁ、ラッシュに関してはタイミングがどこまでも悪かった部分はあるが……。

 

 

>>785

誘発即時効果か、確かに俺達の時代では俺の【バトルフェーダー】や遊星の【エフェクト・ヴェーラー】が目立つくらいだったか。

今となっては【灰流うらら】を初めとして、多数の誘発即時効果を持ったカードが生まれ、それらを駆使しなければ相手の動きを止められず、結果として何もできぬままに敗北することも多くなってしまったわけだが……。

 

チャット形式ならまだしも、掲示板形式では無理があるだろうな、その辺りのカードをうまく使うのは。

 

787:マシュ・キリエライト◇ap631jgw[sage] 2020/10/17 13:20

>>783(ジャックさん)

っ!!これが、デュエルキングの切り札!

凄まじい威圧感です、ですが!

 

(……攻撃っ!?【レッド・デーモンズ】の効果は、攻撃したダメージ計算後に守備表示モンスターを全て破壊する効果!そのまま受けてしまえば、私のフィールドはがら空きになってしまう……なら!)

 

させません!リバースマジックオープン!【禁じられた聖典】!

ダメージステップ終了時まで、このカード以外のフィールドのカードの効果を無効にします!

 

攻撃を受けた【聖騎士ガラハド】はそのまま破壊されますが、他の騎士達は守ってみせます!

 

 

>>773

デミ!サーヴァントです!

……は?!わ、私は一体何を……?!

 

 

>>774

あはは。いやだなぁ、先輩は虞美人さんですよ?

いつまで経っても二部にも行かずに、ずーっとぐだぐだしてる人なんて知りませんよ?

 

……その、今何か恐ろしいことを口走って居ませんでしたか私……?

 

788:[age] 2020/10/17 13:22

俺は時々マシュが怖い……

 

789:[age] 2020/10/17 13:25

何を今さら(二次創作でマシュに色々管理されながら)

 

790:リーシャ【祭進行部隊】◇W2dm44jx[sage] 2020/10/17 13:25

……おや?すみません秩序のものですが、事案ですか?

 

791:[age] 2020/10/17 13:26

やべぇ秩序の者(バーサーカー)だ!逃げろ!

 

792:リーシャ【祭進行部隊】◇W2dm44jx[sage] 2020/10/17 13:26

呼ぶような行動しなきゃ来ないんですよねぇ……(集団確保しながら)

 

 

 

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182:[age] 2020/10/24 19:04

早いものでもう20スレ目でして……クジもそろそろ切り替え時ですじゃ

 

183:[age] 2020/10/24 19:07

相変わらず祭は早いな

 

184:[age] 2020/10/24 19:09

どこに隠れてるんだろうな、こんなにいっぱい

 

185:美樹さやか◇5m8gwwxd[sage] 2020/10/24 19:12

みんなこんばんわー!元気してるぅ?

私?私は元気!ほら見てみて、オクタヴィア部分も超元気!(顔半分の化物部分を見せながら)

 

 

>>180

いやー、なんというか最近私の波来てない?映画でもかっこよかったんでしょ?

こうなると残念さやかちゃんでしたも使いにくくなるなぁ。

……え?お前のそれはホラーだろって?そりゃそうだ。

 

 

>>181

サーフボードかぁ。

……なんだか知らないけど、波乗り練習したほうがいいような気がするんだよねぇ、なんでか知らないけど。

 

 

>>182

クジって切り替えの期間とかあるんだ……。

というか、もう20スレ目なんだ?早いねー。

 

 

>>183->>184

そうだね、私のとこだと1日に10とか来れば大盛況の部類だけど、

祭だと1日に何人来てるんだかわかんなくなるくらいにいっぱい来てるよね。

まぁ、好きに過ごせばいい祭と違って、普段のスレでこんなに来てたら多分投げてるけどね、私だと。

 

……あ、あの盾の子……マシュちゃんだっけ?

あの子のところがすごいって聞いたような?

流石に祭の速度と比べるとあれだろうけど、よく捌けるなーって感心するよ、ホント。

 

186:[age] 2020/10/24 19:14

デミ!サーヴァント!です!

 

187:[age] 2020/10/24 19:16

いつの間にか盾使いの代表キャラみたいになってるよな、マシュって

 

188:[age] 2020/10/24 19:17

そもそも有名どころの盾キャラがブロントかキャプテン・アメリカくらいしか思い付かねぇ!!

 

189:[age] 2020/10/24 19:20

さんを付けろよデコすけ野郎!

 

190:[age] 2020/10/24 19:23

いや、それもわからなくないか……?

最近のだと、防振りとか盾の勇者とか?

 

191:[age] 2020/10/24 19:30

これあげる

つ【赤い十字の盾】

 

 

 

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991:友達無限な超コミュ強◇karitabe[age] 2020/10/31 23:18

じゃあなお前ら!今度会ったらしこたま上手いカレーをご馳走するからな!期待してろよ!

 

992:[age] 2020/10/31 23:24

まさかのカレー対決だったな……乙ー!

 

993:[age] 2020/10/31 23:29

祭の終わりにはドーンと花火だ花火だ!

 

994:ロリライネス@猫娘風◇dmPjtmgA[age] 2020/10/31 23:38

……ふむ、流石に新しく質問を返すような余裕はなさそうか。

では、他の皆達の挨拶用に残しておくとしよう。

来年もまた、無事に集いたいものだね。

では、さらば!

 

995:[age] 2020/10/31 23:41

みんなおつつー、ハロウィンもバリバリやってたし楽しかったー!

 

996:[age] 2020/10/31 23:43

最後の人(>>1000)にはこちらをプレゼント!

つフォウ君人形

 

997:[age] 2020/10/31 23:46

キャラハンでマーリンやってる人が来たりしたら災難だなそれw

なんにせよ、祭の最後まで俺たちは騒ぐぜー!

 

998:Optimus prime@花の冠◇atgp3w52[age] 2020/10/31 23:52

今年の祭も無事に終わることができたようだ。

皆の節度ある行動に感謝を。

参加者達も、楽しんで居たのなら幸いだ。

無論、私も十分に楽しませてもらった。

 

明日からはまた何時も通りの毎日だが、各員気を抜かないように。

では、さらばだ。

 

999:保登心愛@メイドコス◇M9msJ7CC[age] 2020/10/31 23:57

あー、楽しかった。

……もう終わりかぁ。もっと、みんなと遊びたかったなぁ。

 

でも、わがまま言っちゃダメだよね!

うん、みんなありがと!

じゃあ、また来年!

以上、ラビットハウスの看板娘、ココアからでした♪

 

1000:闃ア縺ョ鬲碑。灘クォ 2020/10/31 23:59

……ふむ。では夢のように片付けよう。

なぁに、お兄さんが原因と言うわけではないが、お手伝いくらいはさせてもらうぞぅ!

 

 

──どうか、君達の旅路に幸多からんことを。

 

1001:1001 1980/01/01 09:00

このスレッドは1000を越えました。

新しいスレッドを立ててください。。。

 

 

 

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幕間・炎と鎧との邂逅

 炎髪灼眼の討ち手が意識を取り戻した、という一報が届いたのは、彼女を打ち倒してから一週間ほど経ってからの事であった。

 

 寝耳に水*1とまではいかないけれど、推論の検証を行う機会がこんなに早く来るとも思ってなかった私達は、わりと大慌てでゆかりんの元に向かったわけである。

 

 

「はーい、おはようキーアちゃん」

「おはようってそんなゆっるい挨拶貰ってどうしろと……」

 

 

 まぁ、向かった先で返ってきたのは、滅茶苦茶ゆるーい挨拶だったわけなのだけれど。

 ……いやまぁ、変に緊張してるよりはいいのかも知れないけど、ねぇ?

 

 

「まぁ、今回はホントに話を聞きに行くだけ、という感じだし。キーアちゃんも、対応ミスってないか気になるでしょ?」

「……まぁね。やらかしてたら目覚めない可能性もあったわけだし、目覚めてくれたのはこっちとしても肩の荷が降りた感じで、ありがたくはあるよ」

「……ねぇマシュちゃん?何か恐ろしい単語が聞こえたのだけれど……?」

「その、八雲さん。聞き間違いでもなんでもなく、せんぱいは貴方の聞いた通りの事を仰っています……」

「……目先のゴールに飛び付くのは悪い癖、ということね。まぁ、結果オーライだということにしておきましょう」

 

 

 ……その、ゆかりん。声滅茶苦茶震えてるので説得力無いよ……?

 なんてやり取りを経て、やって来ました再びの地下千階!

 ……実際にそこまでの距離を移動してたら時間が結構掛かるので、降りる時だけはスキマ移動なんだけど。

 これ、スキマ使えない人は素直にエレベーターで降りるしかないの?

 

 

「使えない人?……ああ、上条くん*2とか神楽坂*3さんとか?」

「おっと物理的に使えない組。……というか居るのその二人?」

「いや居ないけど。……居たらややこしいというか意味わからなくなるから、居ないのはある意味でありがたかったりするけど」

「……あー、能力無効系に引っ掛からない異変なのか、そもそも能力の枠組みの外なのか的な?……検証を考えるなら居てくれた方がいいんじゃない?」

「そもそもこのなりきり郷が壊れます」

「もっと切実な理由だった!?」

 

 

 ゆかりんの言葉に確かに、と頷く。

 ……そもそもこの建物自体がわりと不思議物件になってるから、下手すると来ただけで倒壊、みんな生き埋め……ならマシか。

 空間拡張がどういう判定されるのかよく分からないけど、無効化された結果謎の空間に永遠に放置される、なんてことになる可能性も無くはないだろう。

 ……仮に彼等が憑依者になったとしても、原則ここには入れない、ということだけは確かなようだった。……って、ん?

 

 

「……もしかして、疑装でよかった感じ?」

「え?……ってあ、ハマノツルギ!?」

 

 

 煽られた結果、危うく死にかけて居たのかもしれない事に気付いて、私達はなんとも言えない空気に包まれるのでした。

 

 

 

 

 

 

「お前達か。彼女なら今はリハビリ室だ」

 

 

 相変わらずぶっきらぼうなブラック・ジャック先生に連れられて、廊下をぞろぞろと歩いていく。……ん?ぞろぞろ?*4

 

 

「せんぱい、気軽に虚無を呼び込もうとするのはやめて下さい」

「おっと失敬。お詫びに草シミュ*5を「いりません!」にょろーん*6……」

 

 

 むぅ、移動中の暇な皆様の為に何か用意しようかと思ったのだけど。……まぁ、その内フィリピン爆竹*7でも持ってくることにしましょう。

 

 

「そんなこと言ってると名状し難き放火魔が出てくるわよ」*8

「流石にあれのなりきりは居ないでしょー。……居ないよね?」

「私の酒呑み状態の台詞のリスペクト先あそこよ」

「キャラ違うじゃん!?」

 

 

 って言うかそのキャラだと吐くじゃん!

 なんて、わかる人にしかわからない(実際マシュはキョトンとしていた)会話を投げ合いつつ、しばらく歩いて五分ほど。

 件のリハビリ室には、幾つかの人影が見えた。……見えたのはいいんだけどさ。

 

 

「……なんでテニヌしてるの?」

「能力を確かめつつ、適度に動き、それでいてあくまでもスポーツである。……合理的では?」

「あれ死人とか出そうなんだけど!?」

 

 

 テニスコート二枚分とちょっとくらいの広さのリハビリ室の中では、本当にテニス──テニヌとしか呼べない謎のアクロバティック球技が執り行われていた。

 

 稲光が迸り、炎熱が宙を舞い、濁流が地を駆け、疾風が思うままに暴れまわる。

 ……特殊な補強とかしてあるんだろうけど、それにしたってよく壊れないなこのリハビリ室、みたいな技の応酬が繰り広げられているのが、ガラス越しの外からでもよく見える。

 

 若干腰が引けてきたが、ここまで来て確認しないわけにもいかず、ゆかりんとマシュと顔を合わせ、意を決して室内に続く扉に手を掛ける。

 

 

「……ふぅ。いい汗かけたわ、ありがと」

「うん、ボクも体の調子を確かめるのにいい運動になったよ、ありがとう」

 

 

 ちょうど試合が終わったらしく、ネット越しに握手を交わす人影が見える。

 ……なんか、背丈と横幅が結構違うような気がするけど?

 

 

「おい、君に客だ」

「なによ、(はざま)*9。……って、なんだ八雲じゃない。そういえば今日来るって言ってたわね」

「はぁい、久しぶりね。……えっと」

「シャナでいいわよ。今更他の呼び方されるのもアレだし」

 

 

 ちょっとためらっている間に先生が彼女に声を掛けて、相手と握手をしていた彼女……炎髪灼眼の討ち手がこちらに振り返る。

 わりとフランクな呼び方で先生を読んだ彼女は、そのまま後ろに居た私達に気付いて、納得したように頷いた。

 代表してゆかりんが挨拶をしようとして──呼び方は原作通りのものでいいと告げられて、ようやく彼女をシャナと、堂々と呼べるようになった。

 

 

「……なに?そんなこと気にしてたの?」

「いやまぁ、レベル5相当の人との対応経験とか、ほとんど無いからねぇ」

「マシュは物腰丁寧だけど、シャナはわりと超然としてるからね、彼が絡まないと」

「あ、虞美人さんを思い出したのは、ある意味間違いじゃなかったのですね」

「虞美人?ああ、たまに見掛けるわね。……アイツ、ちょっと不思議な空気をしてるけど、どういう人なの?」

「たまに」

「見掛ける?」

 

 

 普通の時のシャナちゃんの雰囲気が、普通の時の虞美人さんに似てるな、なんてマシュが呟いたことで明かされた、パイセンの謎の行動範囲。

 ……いや、あの人何やってるんだ?なんて風に思っていると、シャナとテニスをしていたらしいもう一人が、こちらにおずおずと声を掛けてくる。

 

 

「あの、シャナ。そっちの人は?」

「ああ、コイツら?八雲のお仲間、でいいの?」

「ゆかりんの仲間扱いはちょっと……」

「それ悪い意味で言ってるわけじゃないわよねキーアちゃん!?」

「あ、なるほど。噂の八雲さんだね」

 

 

 ふむ。背丈がおっきいから威圧感はあるけど、別に悪い人ではないようで。……うん、悪い人なわけないんだけどね。だってさ?

 

 

「じゃあ、知ってるかもだけど。こっちはアルよ」

「こんにちわ、アルフォンス・エルリックです。宜しく」*10

「……なんじゃこのくぎみーくぎみーくぎみー、くぎみーをきいーたらーみたいな集まりは」*11

「せんぱい、色々混じってます……」

 

 

 でっかい西洋鎧が釘宮ボイスで喋ってるとか、一人しか居ないじゃんね?

 

 

 

 

 

 

「いやいやいや、わりと真面目にどうなってんのこれ……」

「うーん、ボクにはなんとも。とりあえず、どうなるかわからないから鎧の中の印には触らないでね」

「触らないわよ誰がそんなおっそろしいことするもんですか!?」

 

 

 兜を外して貰って、内部を確認。

 ……原作と同じようにネックガード部分に描かれた血印を見付けて、思わず「なにこれ」と呟きつつ、鎧から這い出る。

 外ではシャナとゆかりんがなにやら話していて、そんな二人から離れた位置で、他の患者らしき人の検診を行う先生の姿が見えた。

 

 

「せんぱい、どうでしたか?」

「いや、なんというか。……わりと真面目に訳わかんなくなってきた気がする」

「憑依に憑依が重なってるからねー。でも、そこまで難しく考える必要は無いかも知れないよ?」

「と、言うと?」

 

 

 思わずわけわかんねぇ、と呟く私に、当事者のアル君が推論を語ってくれる。

 

 

「憑依者・名無し・演者の三者が重なってるって推論だったんでしょ?なら憑依者は多分、『原作のまま』で憑依させてるんだよ」

「……まっさらな原作開始時点の私たちを被せて、そこからの知識の調整などは名無しによって行っている、と?」

「うん、多分だけど。だから、ボクなんかは終わったあとの記憶もあるのに、微妙にボヤけてるんだ」

「……聞けば聞くほど、なんか英霊の座システムに似てないこれ?」

「だよねぇ」

 

 

 英霊の座の本体は、分霊がどのような経験をしようと変わることはない。そこに()()()()()()()姿()()()()、様々な場所に呼び出されて運用される。

 なので、仮に憑依者が英霊に近しいものなら。

 単に憑依させただけでは、原作通りの状態で、原作通りの知識しか持っていないのだろうと考えられる。

 

 ……ただまぁ、そうだとすると。

 

 

「……アラヤ的なものが、今回の黒幕?」

「集合無意識だっけ?……どうなんだろね?ボクは型月は詳しくないんだけど、こういうことするようなものなの?」

「う、うーん。……意味もなくは動かないはずだから、仮にあれに近いものが動いてるなら何か意味があるってことになるけど……」

「そもそも、アラヤがこの世界に存在するのか?と言うことから議論しないといけませんね」

 

 

 少なくとも、あのアラヤそのものがこっちにあるとは考え辛い。……あれ、結構動きに容赦がないというか、滅びが関わらないところで動いてるイメージが無いというか。

 まぁ、規模的には同じなのだろう、そう思っておいた方が色々心構えもしておけるし。

 

 

「……あ、シャナ達終わったみたい」

「ん、じゃあ合流しよっか」

 

 

 ゆかりんとシャナの会話が終わったらしく、二人がこっちに歩いてくる。

 ……表情はゆかりんは笑顔、シャナは普通。

 話が拗れたりとか、変に紛糾したりとかは無かったらしい。

 まぁ、二人で話したいとか言ってたので、内容を追及したりとかはしないけど。

 

 

「えっと、貴方がキーアでいいのよね?」

「え?あ、はい。私がキーアですはい」

「そっか。ありがと、お陰で助かった」

 

 

 なんて考えてたら、唐突にシャナさんから頭を下げられて、ちょっと困惑する私。

 ……ってあ、あの時の話か?こっち的にはちょっと黒歴史に片足突っ込んでるので、感謝とかされるとちょっとむず痒かったりするのだが。

 

 

「そういうわけなので、あんまり気にしないで頂けると……」

「……謙虚なのかなんなのか。まぁ、そっちがそう言うなら、私としては特に文句はないけど」

 

 

 怪訝そうにこっちを見るシャナさんに恐縮しつつ、リハビリ室から外に出る私達なのだった。

 

 

*1
寝ている時に水の流れる音が聞こえることから、不意をつかれて驚くことを意味する。寝てる時に耳に水を垂らす、とかではない

*2
『とあるシリーズ』の主人公、『上条当麻』のこと。『不幸だ』が口癖の無能力者の少年。その右手は全ての異能をぶち殺す、のだとか

*3
『魔法先生ネギま!』のキャラクターの一人『神楽坂明日菜』のこと。魔力無効化体質の少女で、作中のキーキャラクターの一人

*4
TRPG合同誌「TRPGおまじな大饗宴」内に収録されている内の一つ、栄枯浪漫TRPG「ぞろぞろガーデン」のこと。とりあえず、タイトルで検索してみればいいんじゃないかな(ニッコリ

*5
ゲーム『Grass Simulator』のこと。とりあえず、タイトルで(ry

*6
漫画『にょろーんちゅるやさん』のキャラクター、『ちゅるやさん』の台詞。なんというか落ち込んでる時とか出鼻を挫かれた時とかに使う

*7
フィリピンで使われている爆竹。威力が高い

*8
フィリピン爆竹で検索すると出てくる動画内にいるある種の魔物。二次創作だぞ、二次創作だからな!?

*9
ブラック・ジャックの本名は間黒男(はざまくろお)

*10
『鋼の錬金術師』のキャラクターの一人で、主人公の片割れ。大きな鎧に優しい心を持ったいい子

*11
歌の元ネタは『はちみーのうた』。一度聞くと妙に頭に残るトウカイテイオーの歌声が特徴。くぎみーは声優の『釘宮理恵』氏のこと。釘宮さんが声を当てているキャラが二人……来るぞ、遊馬!



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三章 デジタルの海を泳ぐのに水着は必要ですか?
因縁の場所が重なり過ぎている


「と、言うわけで」

 

 いつものゆかりん部屋に集まった私達は、いつものように会議というか話し合いをしていた。

 議題は最近お決まりの、この現象の説明について。

 

 

「ベースはやっぱり英霊の座だと思うのよ。作品の始まりの時点での彼等を憑依の原本として、そこに『名無し』という指標を与えて能力値や方向性を決め、最終的に演者におっ被せてこの世界の情報と同期させる」

 

 

 出して貰った黒板に、図解を入れながら説明を重ねていく。

 

 憑依者と、名無しと、演者。

 原作と、調整役と、実際に演じる人。

 なりきりという名目である以上、原作の彼等と同じであるはずがなく。

 なりきりという名目である以上、名無しという存在は演者とは微妙に違い。

 なりきりという名目である以上、文章を打ち込む貴方がいる。

 

 レベル4以上の不和を起こす『名無し』の不具合とは、原作と演者を確認した時に、違いすぎて合わせられない(レベル4)のと似すぎていて分けられない(レベル5)と『名無し』が認識した時に起こるものであり。

 故に『名無し』をぶっ叩けば、ある程度改善の可能性があるだろう、と。

 

 

「……いつかのメソッドアクターの話を採用するなら、役を振り分けるのが『名無し』ってことになるのかしらね」

「……これ、話してる私達もわりとちんぷんかんぷんなんだけど、ちゃんと説明とかできるもんなの……?」

「それができないことには他の人にも共有できないわよ」

 

 

 だよねぇ、と頷きつつ、黒板の絵を消してふりだしに戻す。

 ……裏側が見れる訳じゃないから、ずっと推論で語ってるけど、実際合ってるんだろうかこれ?

 平行世界とか知識の差とか知識の更新とか、色々情報が飛んでくる中から、あれこれと考えて形にしてみたけれども。

 

 ……うむ、まぁ、とりあえず、これでいいのでは?

 もう正直この辺りの話ずっとやってて疲れてきたというか……。

 

 

「せんぱい、ちょっとメタいと思います」

「ぬぐぅ、知恵熱か……」

「知恵熱って便利な逃げ言葉じゃないわよ?」

 

 

 喧しいゆかりん、私だってちょっと無理があると思っとるわいっ。

 ジェレミアさん(ちぇん)が淹れてくれたミルクティーを飲んで一息。

 正直煮詰まってる感が強くてどうしたもんか、って感じである。

 

 

「うーん。じゃあ仕方ないわね」

「……?ゆかりん、どしたの突然スキマ開いて」

「えっと、腕をスキマに差し込んで、何かを探していらっしゃるようです」

 

 

 若干の憔悴を感じて来たところ、ゆかりんがふぅと息を吐いて、スキマに腕を突っ込んで何かを探し始めた。

 しばらく経って、彼女が取り出したのは……。

 

 

「……アーマード・マシュのゴーグル?」

「なんでわざわざ間違うのよ、普通にヘッドマウントディスプレイよ、H・M・D!」

 

 

 二部のマシュが着けてるやつ……ではなく。

 VRゴーグルなんて風にも呼ばれる、頭に着けて映像を見るアイテムだった。

 あと、コントローラー的なものも一緒。

 ……なんかさ、嫌な予感するんだけど?

 

 

「気分転換も必要でしょう。どうかしら、VRゲームで遊ぶって言うのは」

「死亡フラグじゃないですかやだー!!」*1

 

 

 次にゆかりんが放った言葉に、私は全力でやだー!と返すのでした。

 

 

 

 

 

 

「実はこのゲームも調査対象なのよねー」

 

 

 ……などと言われてしまえば断りきれもせず、仕方なくゴーグルを被ってスイッチオン。

 

 初期設定やら何やらをサクサク進めて、遊ぶゲームを選ぶホーム画面にまでたどり着く。

 なお、私が見ている映像は外部出力できるとのことで、現在ゆかりん達が見ている大型モニターにも、私が見ているものと同じものが映しだされている。

 

 ……変なことするともれなく羞恥プレイになるので、素直に普通に設定とか進めたけど、誰も見てないなら、私もアバターとか好きに弄りたかったなぁ、とちょっと後ろ髪を引かれる。

 キーアの姿も嫌いじゃないけど、たまには背丈の高いキャラとかやってみたいというか。

 

 

「これ結構VR酔いするみたいだから、体型は実際のモノに合わせておいた方がいいわよ?」

「あー、出たVR酔い……なんだっけ、実際の体感と映像が違うと脳が混乱するとかだっけ?」*2

「それだけで済めばいいわね?」

「おいこら、だから人のやる気を削るなバカ」

「お、落ち着いて下さいせんぱいっ」

 

 

 ただでさえこちとらこんな状態になってる世界で、VRとかこえーよって思いながらやってんだぞ?

 変にやる気を下げないでくれ、正直逃げ出したくて仕方ない。

 ……いやだってさ?VRゲームって言ったら……。

 

 

「まさにデスゲーム!……ですね?」*3

「……その台詞がジェレミアさんから出るとは思わなかった」

 

 

 わりと似てるマリクの物真似が飛んできたことに面食らいつつ、今回の調査対象だと言うVRゲーム【tri-qualia(トライクオリア)】を選択してクリック。

 ……このコントローラー、Wiiのヌンチャク*4思い出すなぁ、なんて思いつつ、しばらく待つとメーカー名っぽいものが表示された後、スタート画面が現れる。

 

 

「……なるほど、スタート画面ではありますが、周囲を見渡せるのですね」

「VRならではよねー」

「おいこらちょっと待て、アンタらこれ見てなんも思わんのですか?!」

「え?なにが?」

「えっと、綺麗な場所だとは思いますが……」

「あっくそ、この子らやったこと無い子らだ!」

 

 

 目の前に現れたスタート画面、その向こうに見える景色に早速止めたい気分になりながら声をあげるが、なんと二人から帰って来たのはこちらが何を言ってるのかわからない、というような反応。

 顔が見えないのでわからないけど、多分二人ともホントに知らない感じだ。

 あーでも、新しい方にしてもリマスター前はプレステ2の時だから、知らない人は知らないか……。

 

 この気持ちが共有できないもどかしさに、なんとも言えない気分になっていると、またもやジェレミアさんから合いの手が。

 

 

「美しき湖畔に浮かぶ、荘厳なる聖堂。そこに繋がる大きな橋と、背後に見える移動用のポータル。──間違いありませんね、この場所は」

「Δサーバー、『隠されし 禁断の 聖域』。──どう見てもグリーマ・レーヴ大聖堂(ロストグラウンド)です、本当にありがとうございました。……帰っていいですかジェレミアさん?」

「お気持ちはわかりますが、流石に中に入りもせずログアウトは如何かと」

「イヤだー!中にやべーのが居たり、後ろに居る怪しげなグラサン男への巻き込みビーム食らいそうな場所はイヤだー!」*5

「ろす、ぐら?」

「え、何か有名な場所なのここ?」

 

 

 なんで『.hack』知らねーんだよ有名だろー!?*6

 みたいな気持ちで叫びつつ、でも知らないからこそ単に綺麗な建物で済むんだろうなー、って気になってちょっと羨ましくもあったり。

 

 ──グリーマ・レーヴ大聖堂。

 ゲーム作品『.hack』シリーズに登場する、とあるマップの名前だ。

 特に重要なものが隠されているとか、特別なイベントがあるわけではない、綺麗なだけの場所。

 

 ……だったら良かったのだけど。

 その何もない、というのは作中ゲームである『The world』での話。

 『.hack』シリーズとしては、厄物以外の何物でもないヤベーマップである。……正確には、物語の起点としてよく描写される、という形だけど。

 

 鎖に繋がれた女神像が中にあれば、まぁすぐには危なくないけど。

 もし仮に、誰も居ない台座だけが残ってたりした日には……。

 

 ごくり、と唾を飲み込んで、一応メニューを確認しておく。

 ……他のMMOも混じってるとか言うエグいものだったら恐ろしすぎるので、一応ログアウトがグレーアウトしてないか確認。*7

 ──流石にそんな事は無かったので、ほっと胸を撫で下ろす。

 

 

「一応このゲームは外の人もできるみたいだから、流石にSAO*8めいたことはされないと思うわよ?」

「……いや、ちょっと過剰に警戒しすぎた感はあるから大丈夫。これフルダイブじゃないし。……だからこそ、『The world』的な警戒は消えなくて困るんだけど」

 

 

 あっちは普通のVRだったからなー、こわいなー。

 ……この怖さに共感してくれる相手がジェレミアさんしか居ないのがなんとも悲しいけど、いつまでも悲しんでもいられない。

 意を決して、大きな橋を聖堂に向けて歩いていく。

 ──歩きながら、あれ?外の人もできるなら、グリーマ・レーヴ大聖堂があるのおかしくない?ということに気付く。

 

 ……正式にリアルの方で使用許諾取ってるとか?

 じゃあこれも、リアルに作ってるだけだったり?

 ……うーむ、わからん。

 わからんけど、ちょっとだけ気が楽になったので、そのままキャラクターを歩きから走りに変えて、聖堂に一直線。

 

 

「え、なに?さっきまですっごい行きたくなーい、って感じだったのに急にどうしたの?」

「外の人も触れるって言うなら、変なものじゃないなってこと!ふはは、心配して損した!」

 

 

 そうだよ!外部の人も触れるって言うなら、MMOを扱ったゲームの金字塔としてオファーとか掛けてコラボしてるって考えた方が正解じゃん!

 だとすればちゃんと景色とか見てなかったの、ちょっと勿体なかったかな!まぁ帰る時に改めて確認すればいいか!

 

 なんて風に鼻唄を口ずさみながら聖堂の扉に手を掛け、それを押し開く。さーて、中身はどうなってるかなー?

 

 

「ちっ、流石ってとこか三爪痕(トライエッジ)!だがなぁ!!」

「………へ?」

 

 

 扉を開けてまず目に飛び込んできたのは、何も乗っていない祭壇と、その手前側へ三角に刻まれた大きな斬撃痕。

 あ、GUの方なんだね、なるほどなるほど。

 で、その次に目に入ってきたのは、──入って、来たのは。

 

 

「こいつを、喰らいやがれぇ!!『虎乱襲(こらんしゅう)』!!」

 

 

 大きな剣を振り回して、オレンジと青の目立つ人型の何かと切り結ぶ、黒い少年。

 ……はは。大剣を振り回してるってことは2ndフォームかなーあははー。

 

 

「vol.1の終盤じゃねぇかァァァッ!!?」

「うおっ!?」

 

 

 櫻井孝宏ボイスで驚いたようにこちらを向く少年を見ながら、とりあえず背後を気にする必要性はなさそうだな、とかなり現実逃避したことを思う私なのであった。

 

 

*1
海水浴客をモチーフにしたとある4コマが元ネタ。梅雨が明けたと聞いて、今日はもう雨は降らないのかと喜び(前編にあたる2コマ)、大雨に降られて、梅雨明けてないじゃん!と哀しむ(後編にあたる2コマ)というもの。その中で、後編の2コマで「梅雨明けてないじゃないすか!やだー!」と言っている。勢いと男性の顔が笑いを誘う作品

*2
VR酔いの原因と、乗り物酔いの原因は大体同じなのだとか

*3
VRMMOを題材にした作品によくある展開。HMDがなんやかんやしてゲーム内で死ぬと現実でも死ぬ。……いや、そんな危ないもの売るなし

*4
任天堂株式会社が2006年に発売した据え置きゲーム機のこと。リモコンとヌンチャクと呼ばれるコントローラーを使っての体感型ゲームが遊べることが最大の特徴。累計売上1億を越える化物ハード

*5
『.hack//G.U.』より。そんな感じの場面が存在する

*6
ps2専用ソフト『.hack』及び『.hack//G.U.』のこと。MMORPGをモチーフにしたゲーム。あくまでもモチーフなので、実際には普通のRPGである

*7
MMORPGあるあるの一つ。感覚まで全てゲーム内に没入できるフルダイブ型のMMORPGでは、ログアウトできないと現実に戻れない、ということになりうる

*8
『ソードアート・オンライン』内の同名のゲームのこと。とある男の妄執()の結晶



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タイトルがフラグの場合逃げ切れない(4話ほど前のタイトル参照)

 お、思わず叫んでしまったが落ち着け私!

 終盤戦なら後ろに向けての軸合わせビームは飛んでこない、はず!……え?前も同じ事を言ってた?二回確認ヨシ!*1

 

 とりあえず私がすべきことは、できる限り邪魔にならない位置で戦闘が終わるのを待つこと!

 なんてったって、電子の世界ではチートも何もないからね!

 

 

「このゲーム、レベルの概念ないみたいよ?どっちかと言うと、単なるプレイスキルがモノを言うみたい」

「クソァッ!!」

「せ、せんぱい落ち着いてっ!?」

 

 

 なんでMMOなのにレベル式じゃないんじゃい!!

 というか少なくとも『.hack』が設定とかの下敷きに含まれているっぽいのに、レベルでゴリ押しすら許されざるとか許されざるよ!(混乱)*2

 

 

「……おーい、もしもーし」

「はい?……おわっ!?」

 

 

 なんて風に混乱してたら、当の黒い少年から声を掛けられる。

 後ろを確認すると、倒された相手である三爪痕(トライエッジ)──もとい、蒼炎のカイトがポリゴンの塊に変化して消えていくのが見えた。*3

 ……あれ?憑神(アバター)戦は?って言うかこの子、2ndの見た目なのにどことなく5thっぽい雰囲気じゃない?

 

 

「いや、そりゃそうだろ。現実でAIDAとかクビアとかと戦わせようとすんなっての」*4

「……あっ」

 

 

 あ、これあれだ。私が先走ったやつだこれ。

 アバターにはこっちの表情とか感情とか反映されないから彼にはわからないだろうけど、リアルの私多分顔真っ赤にしてるやつだこれ。

 

 突然黙り込んだ私に少年は首を傾げていたが、やがてこちらが初心者だと判断したのか、頭を掻いたあとにこちらに自己紹介を行ってくる。

 

 

「あー、知ってるかもしれねーけど。ハセヲだ、よろしく」*5

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 

 ……毎回私は先走るんだ!(錯乱)

 

 

 

 

 

 

「なるほど?つまり俺みたいな奴は、結構存在してる……と」

「えっと、そういうことなるのかな」

 

 

 聖堂の外に出て、橋の欄干から黄昏に染まる空を眺めつつ、ハセヲ君にこちらの状況を解説する私。

 さっきの三爪痕(アレ)は、このマップにたまにポップするレアモンスターなのだそうで。

 彼は腕試しとか実験とかを兼ねて、ソロで彼に挑んでいたのだとか。

 

 

「このゲームじゃ反応速度を鍛えた方がいいからな。三爪痕(アレ)反則技(データドレイン)は使ってこない、普通の双剣使いみてーなもんだし」

ツインユーザー(双剣士)?……いや、それは1の時の呼び方だからツインソード(双剣士)?」

「いや、『tri-qualia』だと普通に双剣使いって職業(ジョブ)だ」

「……グリーマ・レーヴ大聖堂があるのに?」

「グリーマ・レーヴ大聖堂があるのに、な」

 

 

 ハセヲ君の言葉になんとも言えない気分になる私。

 ……いや、ここに来て(ゲームを始めて)から数時間も経ってないけども。

 さっきからツッコミ所しかないのはなんなの!?

 

 

「お、おう?」

「話の内容からして君なりきり勢でしょ?!なんでアバターがハセヲなの?!」

「あ、これはキャラメイクすると、自然とこうなるって言うかだな?……一応、板に居た時はハセヲやってたけど」

「わっけわかんねぇ!!それリアルは普通ってこと!?」

「い、いや。リアルも一応『三崎亮』にはなってるけど……」

「あーっ!アバター含めて原作判定?!わからん!被せもの(名無し)被せもの(憑依者)してさらに上に被せもの(アバター)とかもうわからん!なんもわからん!」

「お、おい、落ち着けって」

 

 

 こちらの様子にハセヲ君がおろおろしてるが、こっちのヒートアップは止まらない。

 だって考えてみてよ!?アバター含めて憑依してるっぽいハセヲ君なんて例がここにいて!

 なんか知らんけど、彼の原作にあった特別な場所が再現されてて!そこに出るモンスターもちゃんと関連してる奴で!

 のくせして、よくよく思い出したらメニューの開き方とUIがSAO方式だったし!

 なんかこのノリだと他のMMOとかも混じってそうで今から頭が痛いんだよ!どうすんだこれは!!

 

 

「……いや、それを俺に言われても困るんだが」

「第一村人なんだから色々聞くでしょ普通はっ!!」

「だ、第一村人……っ?」

 

 

 困惑するハセヲ君。

 ……いや、そもそも困惑してる顔になってるのも大概おかしい。これ単なるVRぞ?表情連動しないはずぞ?

 そんな事を問い掛ければ、ある意味予想通りの答えが返ってくる。

 

 

「なんつーか、俺だけフルダイブみたいになってるっていうか」

「完全に碑文PCじゃんか!!」*6

 

 

 単なるVRのはずなのに感触とかあるらしい。

 ……再現度判定どうなってんのかわかんないけど、アバターの判定は碑文PCになってる、というのは間違いなさそうで。

 

 いやもう、全部投げたくなってきた。

 このノリが許されるなら、他のMMO系から憑依して来た人も、大概酷いことになってるかもしれないじゃん。

 電子の海での事だから、現実であれこれやるよりも判定緩くなってる……とかありそうですっごい怖いんだけど! 

 

 

「あー、俺は見たことねーけど、他のマップに無茶苦茶やってる奴がいるとかいないとか……」

「聞きたくなーい!盾持ってるのとか出てきたら私投げるからねー!?」

「せんぱい!盾使いに悪い人は居ないはずですよせんぱい!?」

「性格が悪くなくても、スペックが悪以外の何物でもないんだよなぁあの子ォ!」*7

(……一人で何喚いてるんだコイツ……?)

 

 

 ハセヲ君の口から飛び出した、他のマップとそこで無茶苦茶やってるらしいPCの話。

 ……詳細を知りたくない。最終的に確かめなきゃいけないのだとしても、できうるなら聞かないまま終わらせたい。

 特に黒い盾持ってて黒い髪で黒い鎧の子が出てきたら、私は回れ右する。……いろいろ巻き込まれかねないんで、絶対近付きたくないです。

 

 なんて事を言ってたら、ゲーム外から盾使いとしての自負故に声を掛けてくるマシュが。

 ……いや、うん。あの子自体は悪い子じゃないんだけど、変に悪運というかが強いせいで、基本的に関わりたくない事になってるというか……。

 無論、マシュの声はハセヲ君には聞こえていないので、一人で何か騒ぎだしたようにしか見えてないらしく、ちょっと視線が冷たいモノになりつつあったり。

 

 ……うん、一旦全部横に置こう。

 とりあえず、このゲームについてもうちょっと調べなければ。

 

 

「そういうわけなんで、フレコ交換しない?」

「あ、ああ。構わねぇけど」

 

 

 メニューバーからフレンドを選択して、近くのメンバーを検索してフレコを飛ばして……。うーむ、MMOって感じ。そんでもって、

 

 

「フレ申請を間違って近距離から全体(マップ)にしてしまうことによって、思いがけないものを見付けてしまうのもMMOにありがちなやつ……」

「あん?……っと、確かに俺達以外にも誰かいやがるな」

 

 

 操作ミスってマップ全体にフレコ送るとか言う迷惑行為をしてしまったが、代わりにこのマップ内に他の誰かが居ることが知れてしまった。……隠密(ハイド)状態でもないみたいだったから、別に隠れてたってわけではなさそうだけど。

 で、その間違ってフレコを送ってしまった相手は、聖堂の反対側からこっちに向かってきているようだ。

 一応誰なのかの確認と、場合によっては謝罪の必要性もあるので、ハセヲ君に確認をとって待つこと数十秒。

 さて、聖堂の扉を開いて現れたのは。……現れ、たのは?

 

 

「ボクを呼んだのは君達かぁ?」

「あん?なんだこの黄色いトカゲは?」

「……あ、」

「ど、どうしたのですかせんぱ……ひぃっ!?せせせせせせんぱいのお顔が真っ青に!?」

「あ、うん。流石にこれは私も知ってる。こういうところで出会いたくない系統のキャラなのも知ってる」

「紫様、こちらに」

「ああ、ありがとジェレミア(ちぇん)。……さぁて、どうしたものかしらねぇ」

 

 

 周囲があれこれ騒いでいるけど、こっちとしては今すぐHMDを外して逃げ出したくて仕方がない。

 ハセヲ君のところでもわりと頭が痛いってのに、今度は、今度は……!!?

 

 

「ある意味究極AI(アウラ)とかよりヤバい電子生命体(デジモン)が居るとか、私にどうしろってんだよぉぇぇぇぇ……」

「お、おい大丈夫かっ!?」

「え、なに?ボク何かした?!」

 

 

 思わず嘔吐(えず)く私に寄ってくるハセヲ君と黄色い恐竜のような生き物を見ながら、このゲームどこに向かってんだよ、と思わず泣きたくなるのであった。

 

 

 

 

 

 

「ボクアグモン!よろしくね」*8

「お、おう。……それ、アバターだけがそうなってんのか?」

「あー、実はボク、ネットの中に住んでるんだ。このゲームが一番暮らしやすいから、ちょっと間借りしてるってわけ」

「……はぁ?」

「ゆかりーん、もう私どうすりゃいいのか全くわかんないんだけどー!?」

「ちょっと待ってなさい、今『電脳と現実の境界』を全力で弄ってるからっ」

 

 

 アグモンさんはまさかの電脳世界の住人だった(驚愕)

 ……いや、相手はデジモンなんだしそれが普通なんだけど、一応なりきりしてた記憶があるってことは、元は普通の人間だったってことだから、電脳世界から引っ張り出せるようにしとかないと、後が怖いと言うか……。

 

 ボイスチャットと普通のチャットを併用することで、ゆかりんの台詞を二人に伝えつつ、改めて黄色い彼……アグモンに視線を向ける。

 

 ……うーん、見間違いでもなんでもなく、完全にアグモンである。

 ピカチュウとか見てきたんだから、ある種居てもおかしくはないわけだけど。……なんでMMOに居るんですかね本当に。

 

 このノリだとどっかに黒いビーター*9とか、可愛い女の子(復讐の女神)を連れた聖騎士なのに暗黒騎士みたいな少年*10とか、はたまたひたすらクソゲーに突っ込んでいく半裸で鳥頭の男*11とかも居るんじゃないだろうな?

 

 ……みたいな不安が、さっきからひっきりなしに襲ってくるのである。

 碑文PCがどこまで再現されてるのかわからないけども、それでも普通のVRがフルダイブになるところが再現されてる辺り、どうも電脳世界ならある程度はっちゃけてもいい……というか、現実世界の憑依に比べて修正?が入りづらくなっているような気がするのだ。

 

 なので、ゆかりんには早急に電脳世界への干渉手段を手に入れて頂きたいのだけど。*12

 ……んー。なんと言うか、ちょっと難しそう。正確には時間が掛かりそう。

 

 

「そっかー。じゃ、これ食べる?」

「へ?えっと、ミカン?」

「んー、正確にはタチバナだって」

 

 

 目処が立つまでちょっと待機、ということで三人でポータルの前で駄弁っていると、アグモンから黄色……オレンジ?色の果実を渡された。

 

 ……タチバナ、橘か。基本的に橘って生食には向いてないとかじゃなかったっけ?ジャムとかにはいいって聞いたけど。

 いやまぁ、私普通のプレイヤーなんでゲーム内でモノ食べるとかできませんけどね。

 

 そんな事をぼやく横で、ハセヲ君とアグモンは橘の皮を剥いで中身を食べ始めている。

 ……そういや、ハセヲ君は食べられるんですね、一応。

 

 

「ん?ああ、ほんのり甘いぞこれ」

「だよねー。……なんか、久しぶりに他の人と一緒に食べ物食べた気がするよ」

「……ああ、そりゃそうか。アンタ以外は普通のPCだもんな」

 

 

 ……なんか地味に重い事言ってませんかねこの子。

 いやまぁ電子生命体である彼と違って、普通は単にゲームしてる人しか居ないんだから、一緒にごはんとかできるわけないんだけどさ?

 …………ハセヲ君が居てくれてよかったと言うか、うーむ……。

 少し考えて、腕を動かしてメニューを開いてボックス内の『タチバナ』を選んで使うをクリック。

 

 

「ん、どうした?」

「気分くらいは一緒にごはんしたつもりになれるでしょ?……生憎とそれくらいしかできないけど」

「優しいんだなキーアは」

「……ええい、こっち見ないで頂戴っ」

 

 

 二人からの視線がなんか生暖かくなってきたから、ふいと視線を逸らす。

 ……むぅ、変に気を使うもんじゃないわね、なんか顔熱くなってきちゃったし。

 そんな事をぼやきながら、手元のタチバナを一口。

 ……確かにちょっと甘いわね、って、ん?

 

 ()()()()を視界に入る位置まで持ち上げて、頭に付いてる筈のHMDを取り外そうとしてみる。

 ……うん、一応取り外せる。で、ゴーグルを元に戻して、今度はタチバナを食べるために手を動かしてみる。

 リアルの手の感覚に被さるように、ゲーム内の腕を動かす感覚が、伝わってくるような?

 そのままタチバナのじょうのう()を一つ口に入れる。……ん、ほんのり甘いね。

 

 …………………………………。

 

 

「うわぁぁあああああぁぁぁぁもおやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!?????」

「せんぱい!?落ち着いて下さいせんぱいっ!?」

「これが落ち着けるかぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁっ!!!!!?????」

 

 

 いつの間にか私もフルダイブみたいになっとるやんけぇっ!!??

 なんて私の叫び声が周囲に谺し、事態は風雲急を告げるのでした。

 

 

 

*1
元ネタは工事用のヘルメットを被った猫が、変なポーズで指差し確認をしている、というキャラクター『現場猫』。大体「ヨシじゃないが」って言われるような状況の事が多い

*2
ロールプレイングゲームはレベルの概念が導入されているが、基本的に低レベルの相手は高レベルの相手に手も足も出ないものである

*3
『蒼炎のカイト』は、『.hack//G.U.』のキャラクター。不気味な容姿だが、前作『.hack』の主人公であるカイトに似た姿でもある

*4
どちらも『.hack』シリーズでの敵生体

*5
『.hack//G.U.』の主人公。作中始めの方ではトゲのある性格をしているが、本質的にはわりといいやつである

*6
『.hack//G.U.』内の、特別な能力を持つプレイヤーのこと。今で言うユニークスキル持ちみたいなものだが、彼等の場合は本当に『チート』と呼ぶべきスペックを持っている

*7
『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』の主人公、『メイプル』のこと。本人の性格は至って善良だが、やってることはどう見てもラスボスである

*8
『デジタルモンスター』より、アグモン。成長期・ワクチン種・爬虫類型のデジモンで、デジモンというコンテンツの顔役的な存在

*9
『ソードアート・オンライン』より、主人公『桐ヶ谷和人(キリト)』。黒いコートと双剣を使う姿が特徴

*10
『<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-』より、主人公『椋鳥玲二(レイ・スターリング)』。温厚だが正義感が強く、例えNPC相手であっても無為に傷付くのは見過ごせないタイプの少年

*11
『シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜』より、主人公『陽務楽郎(サンラク)』。底無しのゲーマーにして、どうしようもないレベルのクソゲーハンター

*12
上記三名(+メイプル)は普通に遊んでる方なのでまだマシ、というなんとも言えない現実



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電子の海で会いましょう!ねくすと!

「え?どしたのキーア?」

「どうしたもこうしたもあるかよぉぉっ!!まさかの私もフルダイブの仲間入りだよちくしょぉぉぉぉおっ!!?」

 

 

 こちらを心配するような声を掛けてくるアグモンに思わず詰め寄り、詰め寄ったあとにそんなことをしても仕方ないやんけ、となって思わず項垂れる。

 ……いや、ホント。なんでいきなりこんなことに……。

 

 

「おやおやおやー?哀れなせんぱいが落ち込んでいますねー?これは優秀で最高な後輩としましては、思いきって慰めてあげちゃうのもありかもしれませんねー?」

「はっ!?この地味にウザい喋り方はまさか!?」

「は、はぁっ!?いやちょっと、ウザいってなんなんですかせんぱい!そんなこと言うせんぱいには──こうです!」

「うわっ!真っ暗になった!!?」

 

 

 

 

 

 

Now hacking...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、もうっ。ダメじゃないですかせんぱい、可愛い後輩がせっかくせんぱいに主導権を握らせてあげた(待ってればリンクが出た)のに、普通にスクロールとかしちゃめっ、ですよ?」

「はい、ここにリンク置いておきますから、ちゃあんとクリックしてくださいね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……私の状態が万全なら、いちいちこんなサイトの制約とかに縛られずに、せんぱいをあれこれサポートできちゃうのになぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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siht gniojne uoy era

hannel(チャンネル)

 

 

 

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スクロールどうぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なりきり板のみなさーん、相変わらず自堕落な日々を送っていますかー?」

「突如大海原に放り出されたネコちゃんのように、アタフタしていますかー?していますねー?」

「いやーん、姿形がもとの自分から変わっても、生活にメリハリが残っているなんて皆さんサイコー!これには邪悪なBBちゃんも思わず拍手喝采です!」

「ま、といっても面白い、のベクトルではなく、ご愁傷さま、のベクトルなんですけどね?」

 

 

 突然の視界ジャックから、謎に気合の入ったオープニングまで見せ付けられて、思わず遠い目になる私と。

 視界ジャックは(というか彼女との遭遇が)初体験だった他数名は、まさに水嫌いなのに海に投げ出されたネコのように、ことごとく慌てふためいていた。

 ……まぁ、事前知識的に知ってるマシュだけは、他とは違って慌ててはいなかったけど。

 

 

「な、なんだこりゃ!?まさかAIDAがリアルに存在したのか!!?」

「うわぁぁっ、デ・リーパーだーぁ!?」*1

「はいそこのお二人、なまじっかデジタルの世界に詳しいからと言って、自身の知識だけで答えを出そうとするのは良くない傾向ですよ?……というか、アグモンさんは私に会ったこと、ありますよね?」

「え?あ、ホントだ。この間タチバナをくれたお姉ちゃんだ」

「はいせいかーい!見事思い出せたアグモンさんには、ご褒美にBBちゃんポイントを贈呈いたしましょう。頑張って集めて、BBちゃん特製セットをゲットしてくださいね?」

「わーい」

「いやわーいじゃないが」

 

 

 初登場にもかかわらず、とにかくインパクト重視で発言するのやめーや。

 それとアグモンも、得体の知れないもの貰って喜ばないの。

 ともあれ、改めて視線を彼女に向ける。

 ……視界ジャック中なんだからどこ見ても変わらんだろ、というツッコミは置いといて。

 

 さて、目の前に映るのは、長い紫の髪と頭の左側にある赤いリボン、丈の短いスカートと黒いコートが特徴的な少女。

 ……本人も何度か口にしている通り、彼女は月の違法上級AI、『BBちゃん』に間違いないだろう。*2

 なりきりによる憑依とか凄まじく嫌がりそうな彼女が、どうしてこんなところに居るのだろうか?*3

 

 

「おや、せんぱいは私の事が気になるご様子。でもその前に、せんぱいの体に何が起きたのか、知りたくはありませんかー?」

「いや、別に」

「あらっ?」

 

 

 暫く彼女を見詰めていたら、ニヤニヤ笑みと質問を返されたので別に、と返しておく。

 ……拍子抜けしたようにこちらを見るBBちゃんに、小さく鼻を鳴らす。

 彼女がどういう状態であれ、変に隙を見せると調子に乗るのは変わっていないだろうから、こちらとしてはこういう態度を取らざるを得ないのだ。

 

 そんな私の姿をしげしげと眺めていた彼女は、ふむと頷いて、ニヤニヤ笑いからちょっと怖い笑み(たまに見せるあの顔)に表情を変えた。

 

 

「その顔は、いろいろ気付いたのだと解釈しても?」

「……わざわざ『タチバナ』だったのがちょっと引っ掛かっててね。……あれ、『非時香果(ときじくのかくのこのみ)』でしょ、もしくはその伝承から作ったやつ」

 

 

 こちらの問いに、BBちゃんは無反応。

 代わりに、リアルの方でジェレミアさんが周囲に質問をしていた。

 

 

「失礼、『非時香果』とは一体何なのでしょう?」

「マシュちゃんおねがーい」

「あ、はい。『非時香果』とは『古事記』『日本書紀』などに記されている常世の国(とこよのくに)、そこに生えているとされる木から取れる果実のことですね。そもそも常世の国とは、他国での【常若の国(ティル・ナ・ノーグ)】や【アヴァロン】などと同一視される一種の理想郷──及び死後の国とされているものです」

「で、その常世の国に生っている『非時香果』──現代で言う『橘』は、不老不死を得ることができる霊薬であり、時の天皇・第十一代垂仁天皇が求めたものとしても有名だったりするわね」*4

「なるほど、不老不死の。……ところで、何故橘だと彼女の動機に結びつくのでしょう?」

 

 

 みんなが橘の実についていろいろ語っているが、対面のBBちゃんはさっきの笑顔のまま。

 ……そりゃそうだ、みんなちょっと推理が先走り過ぎてるんだもん。こういうのは、もっと簡単に考えたほうがいい。

 

 

黄泉竈食ひ(ヨモツヘグイ)でしょ、この場合は」*5

「ぴんぽんぴんぽんだいせいかーい!流石せんぱい、知識だけは無駄に持っていますね!!」

「……あ、常世の国!」

「そういえばかの場所は死後の国とも言われている……つまり、電脳世界の食べ物を口にすることで、電脳世界の住人になった、ということ?」

「正確に言えば、この世界との繋がりを作った、という方が近いですけどね。そういう意味ではペルセポネの逸話の方が正しいかも知れません」

 

 

 あ、いい加減色付き文字止めますね?などと宣いながらBBちゃんの笑顔が普通のものに戻る。

 

 ……なんと言うかこの子は、毎度毎度遠回しなお節介しかできないのだろうか?

 最初から説明してくれてれば、こんなにややこしいことにならなかっただろうに。

 ……いやまぁ、多分そこを聞くと「だって面白くないじゃないですか?」とか言われかねないわけだけども。 

 

 

「無論、完全に電脳世界の住人になったわけではありませんよ?そんな事しちゃうと、そこにいらっしゃるアグモンさんと変わらないですし」

「……そこまでできるってことは、アグモンを現実に送り出すことも可能なわけ?」

「ご期待下さっているせんぱいには、残念なお知らせなのですが……違法上級AI・BBちゃん無双も今は昔。ここに居る私では、そこまで大掛かりな事はできないとご理解くださいね?」

「……BBちゃんぽんこつー」

「だ・か・ら!なんでせんぱいは、私に対してやけに辛辣なんですかぁ!?」

「いきなりフルダイブを強制しといて、なんで大切に扱われると思ってるんですかねこのパンツ丸見え女子は」

「ぱっ……!?……ふ、ふんだ。折角貴方の頼れるBBちゃんが、耳寄りな情報をお持ちしたっていうのに。そんな態度を取るんだったら、こっちにも考えがありますよーだっ」

「耳寄りな情報?」

 

 

 いじけてしまった彼女から飛んできた言葉にふむ、と顎に手を置いて思索に耽る。

 

 ……なりきりとはいえ、彼女はBBちゃんである。

 その言葉を素直に受け取っていいものか、ちょっと迷うところがないとは言い切れない。

 実際、若干対応が辛辣なのも、彼女を頼りすぎるのが良くない……という先入観があるからだったりするのだし。

 とはいえ、こんなタイミングで出てきた彼女を無視して行くわけにもいかないだろう。……うーむ、仕方ない。

 

 

「あー、そっかー。BBちゃんが頑張って入手してくれた情報かー。すっごく聞きたいけど、さっきから疑ってばかりだからちょっと気が咎めるなー」

(い、未だかつてないほどの棒読みですせんぱい!?)

(しっ、静かにしてなさいマシュちゃん!!ここが正念場なのよっ)

 

 

 外野がすごくうるさいし、ゲーム内の二人からもなんと言うか呆れてるというか唖然としている空気が伝わってくる。

 ……いや、だって相手BBちゃんだよ?謝るとか隙見せるとか、どう考えても死亡フラグ……。

 

 

「わっ……!……んん。こほんこほん。……せ、せんぱいがどうしても謝りたいと仰るのでしたら、私も聞いてあげなくもないと言いますか、教えてあげなくもないと言いますか……」

 

 

 ……誰これ?

 いや、こっちの言葉に一瞬顔を輝かせたあと、はっと気付いたように咳払いをして、ちょっと視線を逸してそっぽを向きつつ、手元では両手の人差し指をつんつんしてる……んだけど、こんな事BBちゃんしないで……はっ!?

 え、まさかの?そういうあれ?……えー……?

 

 真実に気付いてしまった私は、自身の行いを深く反省した。

 ……いや、そりゃそうだ。よくよく考えなくても、BBちゃんが素直に憑依とかするわけ無いじゃんか。

 最初に抱いた疑問がそのまま答えだ、じゃあこれからするべきことも決まっている。

 

 

「ごめん()()()()()。謝るから、貴方の知ってること教えてほしいな?」

「……!……し、仕方ないですねぇせんぱいは!わかりました、この上級AI・BBちゃんが貴方をしっかりバッチリサポートしちゃいましょう!!」

「え、せ、せんぱい!?急にどうなさったのですかせんぱいっ!?」

「マシュちゃんがすっごい慌ててるんだけどなにこれ?」

「ポジション被りを気にされているのかと」

「ああ……」

 

 

 謝った途端に顔を輝かせた彼女に、先の疑念を確信に変えつつ、彼女の話を聞くために居住まいを正す。

 ……あとでマシュにはいろいろフォローしとかないとなぁ、なんてボヤキは胸の内にしまう私なのだった。

 

 

*1
『デジモンテイマーズ』に存在した敵勢力。その本質は『不良ファイル除去アプリケーション』である

*2
『fate/extra_CCC』より、ムーンセルの上級AIにして、同作のラスボス(表)。美しく羽ばたいた月の蝶。……の、ハズ?

*3
『先輩』(彼女が漢字で呼ぶ相手は一人きり)以外の人間は、原則嫌いなBBちゃんなのでした♡

*4
因みにこの垂仁天皇のお妃様である『迦具夜比売命(かぐやひめのみこと)』は、『竹取物語』の『かぐや姫』のモデルではないかと言われているらしい

*5
『黄泉の国の竈で作った物を食べると黄泉の国の住人になる』という言い伝え。日本ではイザナギとイザナミの神話にて語られる。似たようなものに、ギリシャ神話のペルセポネとハデスの話がある



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ネットの世界は広大だが、どこまでも冷たい大地だ

「ではでは、BBちゃんからの耳寄りなお得情報ー!……の、前に」

 

 

 ()()()()()()で話を始めようとしたBBちゃんが、その前に笑顔を真面目なものに変えて、こちらに頭を下げてくる。

 ……マシュから驚いたような声が上がったけど、私は気にせず彼女の方を向いていた。

 

 

「ごめんなさいせんぱい。説明もなしにアバターに干渉してしまって」

「あー、いいよいいよ。なんとなく切羽詰まってたんだなってのは分かったし」

「……そこまでお見通しでしたか。その通り、この電子の世界において、単なるアバターでは危険である……というのは、そこのお二人の存在からもご想像頂けると思います。そもそも、私が居るというのもある意味警戒の理由になるでしょうし」

 

 

 単に憑依者が居る……というだけでは片付けられない状況だと言える今の私達。

 現実のそれ(憑依)に比べて電子の海のそれ(憑依)は、どうにも上限というか、ある種の遠慮というものが薄いような気がしていた。

 

 ……碑文PCも大概だし、デジモンも大概である。その上目の前のBBちゃん……はまぁ、置いといて。

 

 いずれにせよ、現実空間でならどこかで上限に引っ掛かりそうなものなのに、その上限をスルーしているような気がするのは事実。

 その感覚の理由は、どこまでもハセヲ君にある。

 

 

「俺が?」

「単なるVRゲームがフルダイブになる……それを可能にするのが碑文という特殊な……アイテム?なわけだけど。電子の海は現実よりも遥かにタイト(厳しい)なもの。無理なものは無理、と突き付けてくるのが電子の世界。なら、フルダイブに(できないことが)できている以上は、その原因は()()()()と同じはず」

「碑文は仕様外の存在ですから、説明できると言い張るのはちょっとあれですけど……逆に言えば、本来しっかりとしたプログラム・ソフトやハードが必要な部分を、代行してしまえるものの存在というのを、暗に示しているとも取れるわけで……」

 

 

 まぁ、雑に言ってしまうと。

 ゲームのチートというのは、あくまでもそのゲームに定められたものの中で、おかしなことをできるだけであって。

 ゲームそのものの仕様を変えてしまうようなものは、現実的に言ってしまえば『世界(プログラム)改変』になる、ということ。

 

 ……単なるVRがフルダイブになるとか、もろにゲームの根幹に手を加えているとも取れるわけで。

 そういう面が『いやなんかちょっとヤバくね?』という気分にさせる最大の要因なわけである。

 設定面のヤバさだけなら、デジモン達の方がヤバいんだけどそこはそれ、だ。*1

 

 

「ともあれ、ハセヲさんの碑文が許されるのであれば、他のチート系MMO作品のキャラ達も、そのチートを存分に発揮してくる可能性は十分にあります。……ゆえに」

キーア(この体)のフルスペックを揮える状態にしておきたかった、ってことでしょ?」

「……ん?その子って上級AIなんでしょ?別にキーアちゃんをどうこうとかする必要性なかったんじゃ?」

「え、あ、そのですね……?」

 

 

 おっと、ゆかりんが余計なところにツッコミを入れている。

 ……BBちゃんがちょっと焦っているようなので、こちらから少しフォローを入れておこう。

 

 

「ゆかりんゆかりん、BBちゃんは上級AIだけど、人類に試練を科す系のAIだから。人間が足掻く姿を求めてるんだよきっと」

「……そ、そうですそれです!私は月の上級AI・BBちゃんですので!無闇矢鱈に力を貸すのは私の主義に反するのです!」

「……ふーむ?」

「さぁ!そういうわけですので、いざネットの海にGO!」

「おー」

「……って、どこに行く気なんだ?」

 

 

 気を取り直したBBちゃんが元気に腕を上げたので、同じように腕を上げて歩き出そうとしたら、ハセヲ君から待ったが掛かった。

 いや、どこに行くもなにも。こういう時にする事なんて決まってるじゃないのよ?

 

 

「そりゃもちろん、ルートタウンでしょ」*2

「情報収集はMMOの華、ですからね!ではでは、ルートタウン『アークス・ロビー』に、レッツ・ゴー!」*3

「帰りまーす」

「ああ!?せんぱい!お気持ちはわかりますがどうかここは留まって!留まって下さい!」

「嫌じゃー!!スペースオペラまで混じりそうなルートタウンなんか絶対に嫌じゃー!!!」

「えっと、アークス・ロビーというのもどこかの作品のものなのですか?」

「あー、そうねぇ……」

 

 

 オンラインゲームにおいて、情報は命!

 なので、それを集めるために移動しようと思ったんだけど……。

 いや、なんでそこがオンライン・ロビーになっとるんですかね!!?

 

 

 

 

 

 

「な、なんだ期間限定コラボロビーか、驚かせやがって……」

「いやそもそもダークファルスとか出てきたらどうしようもないでしょ今の私達だと」*4

「そもそもPSOは現実の方の判定になるのでは……?」

 

 

 あれこれ言いながらサイバーチックな建物の中を進む。

 場所が場所だけにマジでビビったけど、単にコラボで内装貸して貰ってただけらしいので一安心である。

 ……リアルでここに飛ばされるなんて事あったら、流石にいろいろ考えねばならぬところだったけど。

 いやでも現実だったら上限引っ掛かるから、そっちの方がマシだったりするのかな……?

 

 まぁなんにせよ、できれば何事もなく終わって欲しいものですとしか言えないや。

 そんな事を思いながらふとアイテム屋に目を向けて、そこに売っているものに目を丸くした。

 

 

「……ポーションにやくそうにキズぐすりに……って、節操無さ過ぎやしないこれ?」*5

「このゲームのオーナーが色んな会社に頼み込んで、コラボを成立させた結果だって聞くぜ」

「いや、頼み込むにしても限度があるでしょ……」

「とはいえ、そのおかげで私達が目立たないところもありますから……」

「……そうか、コラボアバターだと思われてるのか。……いや、それでもアグモンは目立つんじゃ……いや、目立たないなこれだと」

 

 

 置いてある品物が、どう考えても他所のゲームのアイテムばかりだったので、ちょっと呆れてしまった。

 ……とはいえ、BBちゃんの言う通り、その節操の無さで私達が目立たなくなっているのも確かなようだった。

 周囲を見渡せば、本当に色んな見た目のキャラクター達がロビー内を闊歩している。

 その中には、寧ろどうやって許可取ってきたんだろう?みたいな世界一有名なネズミの姿もあった。……いや、本当にどうやって許可取ってきたし?*6

 

 ともあれ、この節操の無さがこのゲームの醍醐味の一つなのだろうな、というのはわかる。

 そもそも『三爪痕』がモンスターとして実装されてる辺りがわりとびっくりなわけだし。……と、すれ違ったPCがアトリの姿だったのを見つつ思う。*7

 

 

「逆に、見ただけじゃなりきりなのかどうかわからないわね、これだと」

「んー、ハセヲ君みたいにわかりやすければいいけど、そうじゃなかったらちょっと見付けられるかわからないかなー」

「その辺りはこのBBちゃんにお任せを!それくらいなら問題ありませんので!」

「なるほど、頼りにしてるよー」

「あ、はい。お任せ下さいせんぱい」

(…………なんでしょう、このBBちゃんから感じる違和感は)

 

 

 見た目だけじゃ相手が単なるコラボアバターなのか、それとも私達みたいななりきり組なのかわからないね?

 みたいな話をしていると、BBちゃんからそれは任せて欲しいとの提案。

 ……まぁ、そのくらいなら大丈夫かと思って了承の言葉を返したのだけど……。

 

 おっと、マシュも流石に違和感を抱いたらしい。

 こちらに問い掛けるような視線が向いているような気がする。

 とはいえ、今それを話すのは彼女も望んでいないようだし……まぁ、後でいいか。

 

 

「ところで、ここからどこに行く?」

「んー、談話室的なものがあればそことか?あとはそこらのお店の近くにいる人に話を聞くとか」

「……なんか、異世界転生モノのテンプレみたいな行動だな」*8

「テンプレと言って侮るべからずよハセヲ君。情報収集なんて、大体似たようなやり方しかできないんだから」

 

 

 折角のオンラインロビーなんだから、目立たないところでちょっと立ってるだけでもある程度話は聞けるわけだし、まぁ適当でもどうにかなるんじゃない?みたいな感じで一時解散。

 十分後を目処に、またポータルの前に集まることにして、二手に分かれる。

 私はアグモンと、ハセヲ君はBBちゃんと一緒だ。

 

 

「キーア、ボク達はどこを目指すの?」

「そうねぇ、本当に異世界転生なら酒場とかなんだけど。生憎とこれゲームだからねぇ」

「でもあるみたいだよ、カフェ」

「へ?……ホントだ。……いや、そこまで再現してるんだ?」

 

 

 傍らのアグモンとどこに行こうかと話す私。

 ……情報収集と言えば酒場、っていうのはどこが最初に言い出したんだろうね?

 

 なんて思いつつ悩んでいたら、アグモンが天井から吊り下がっている看板を指差しながら声を上げる。

 見れば、ショップエリアの東側に『フランカ's カフェ』なる場所に繋がるテレポーターがあると記されていた。

 ……そういえば、最近のMMOって食事についてもいろいろ実装するようになったんだっけか。

 

 とはいえ、コラボ先の内装をどこまで再現する気なのか、という気がしないでもない。

 ……許可取ってるんだから怒られたりはしないんだろうけど、それにしたって期間限定なんでしょこれ?

 使いまわしもできないものなのに、どんだけ本気で作ってるんだか……。

 

 

「……まぁ、とりあえず行ってみる?アグモンが食べられるものとかあるかも知れないし」

「ホント!?やったぁ、パフェとかあるかな?」

「カフェだしあるだろうねぇ」

 

 

 両手を上げて喜ぶアグモンの手を引いて、そのまま人の波を歩く私達。

 一分もしない内に目的のカフェについたので、そのまま店員に案内されて席につく。

 

 

「どしたのキーア?なんか難しい顔してるけど」

「いや、あのウエイトレスさんの服、どっかで見たことあるような気がするんだけど思い出せなくて……」

「ふーん?」

 

 

 机に頬杖を付きつつ、むむむと唸る。……喉元まで出かかってる気がするんだけど、うーむ。

 再び戻ってきた店員に注文を頼むアグモンを横目に悩むものの、ちょっと思い出せそうにない。

 ……なんかこう、ちょっとしたきっかけがあれば思い出せそうな気はするんだけどなー?

 

 

「まぁ、こういうのはそのうち思い出すよね、というか。私チーズケーキお願いしまーす」

「はい、ジャンボパフェとチーズケーキですね?お飲み物はどう致しましょうか?」

「そうねぇ……ん?」

 

 

 店員さんに注文を告げている最中、奥の席の方でなにやら騒いでいるのが見えた。

 ……ふむ、こういうのって積極的に絡みに言ったほうがいいのよね、基本的に。

 なんて思いつつ、ちょっと席から身を乗り出してみた私は、騒いでいた人物の姿を見て思わず唖然とするのでした。

 

 

*1
『デジタルモンスター』におけるデジモン達は、デジタルワールドという電脳空間内の異世界に住む者達である。また、設定的には人間より古くから活動している可能性もあるなど、結構設定面がヤバいのがうじゃうじゃ居る

*2
『.hack』シリーズの用語で、いわゆる拠点のこと。オンライン・ロビーなどと同じ

*3
『ファンタシースターオンライン2』より、ゲーム上での拠点。アークスシップと言う、全長70kmほどの宇宙船内の一区画

*4
『ファンタシースター』シリーズにおける悪役。精神体の為、基本的には撃退か封印しか選べない

*5
左から、『ファイナルファンタジー』『ドラゴンクエスト』『ポケットモンスター』。同一の名前のモノも存在するため、ここでは代表的な作品のみ紹介

*6
ハハッ

*7
『.hack//G.U.』より、メインヒロイン。ハセヲにとっては、ある人と同じタイプのアバターを使う、何かと気になる存在でもある。主人公が櫻井孝宏ボイスで、ヒロイン(または女主人公)が川澄綾子という組み合わせは、いろんなゲームで割と見掛ける組み合わせだったりするが、その内の一つでもあったり

*8
とりあえずギルドか酒場に向かうのがお約束



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合縁奇縁のその先に、出会う貴方は何者か

「だから、おかしいだろって!なんで俺こっちになってんだよ!!」

「……いや、それを私に言われても、ねぇ……?」

「クソッ、分かったよ、もういいっ!!……って、なんだよアンタら、何見てるんだよっ!」

「あ、いや。……騒いでる人がいたらふつー見るよね、アグモン」

「へ?あーうん。それだけ騒いでたら気になるよー」

 

 

 滅茶苦茶騒いでる人と、その前でなんとも言えない空気を醸し出す女性の組み合わせ。

 そんなものが目の前で繰り広げられているのだから、見ない方がおかしいよね?……みたいな感じで観察していたら、騒いでいた方に目を付けられてしまった。

 

 まぁ、こっちに話し掛けてくれるのなら、そのまま乗るよ?情報収集したいし。

 そんな感じでアグモンに話を振れば、彼は素直にこっちの言葉に同意してくれた。

 ……なんというか、小学生の男の子を相手してるような気分になるのはなんなんでしょうね?

 

 まぁ、話し掛けた相手の連れが人じゃないって事に気付いた彼?は、キョトンとして怒気というか意気というかが、いい感じに抜けたようだったけど。……ある意味計画通りである。

 

 

「え、あ、アグモン?アグモンなんてのもありなのかここ?」

「へー、こういうのもあるんだねー」

「えへへ……キーア、なんだかボク人気者みたいだ」

「そりゃねぇ。ポケモンの方が流石に知名度は高いけど、デジモンだって好きな人多いわけだし。……で、御両人は何を言い争ってたんです?」

 

 

 まぁ、騒いでた方の姿を見れば、なんとなく理由は分からないでもないんだけど。

 そんな感じで改めて視界に収めた二人の姿は、どこかで見たことがあるようなもの。

 

 黒いのと白いの。黒髪と茶髪。黒いコートと、白いマント。

 ……うん、キリトとアスナの姿をした二人がそこにいた、のだけど。*1

 なーぜか、キリトの方がGGOの時のモノっぽく見えるというか。

 ぶっちゃけると、いわゆる『キリコ』*2の姿のPCが、そこに居たのでしたとさ。

 

 

 

 

 

 

「いや、コラボアバターガチャで当たりを引いたんだよ」

「私はアスナで、彼はキリトね」

 

 

 席を移して相席になった二人から話を聞く。

 なんでも、二人はこのゲームをやっている一般人らしく、つい最近SAOコラボ装備が手に入る、有料ガチャを回していたのだと言う。

 それで女性の方はアスナの服装一式を、男性?の方はキリトの服装一式を当てたのだそうで。

 無論、大当たりも大当たりなので、喜び勇んで着替えたのだが……。

 

 

「確かにキリトのアバターだったはずなのに、装備した途端にこれだよ、髪が突然伸びてたんだ」

「それと、顔の作りもどことなく可愛くなっちゃったんだよね。……うん、まんまキリコよね」

「うーむ、データ見ると女の子になってるっぽいし、最早キリコって言うか完璧にTSキリトなのでは……?」

「……わ、わけわからねぇ……」

 

 

 ふむ、着替えたらいきなり髪が伸びた……というか、アバターが性転換した、と。

 

 はて、とりあえず彼等がなりきり組かどうかはわからないけど、仮に違った場合はこれ、何かしら他の不思議現象だったりするのだろうか?

 ここに来てなりきり以外にも不思議現象が存在する、とかいうのは止めて欲しいところだが……うーむ。

 ぶっちゃけると、BBちゃん居ないと判別できないんだよなぁ。

 

 ウエイトレスさんが持ってきてくれたミルクティを飲みつつ、キリト君側の動きを注視する。

 ……んー、特に変な動きは見当たらないような、どこかぎこちない気がするような。

 アスナ(仮)さんの方は普通に正常なPCっぽい動きをしているから、多分関係ないのだろうけど。

 キリト君の方だけ、なーんか怪しいんだよなぁ。……ふむ、鎌を掛けてみるか?

 

 

「ところで、なんだか最近、飲み食いモーションにも課金要素が増えたんだってね」

「え、そうなんですか?」

「ホントホント。ほら、普通だったら飲んでるふり食べてるふりだけど……」

「あ、ホントだ!ケーキとか飲み物とか、ちゃんと減ってる!」

「でしょ?このゲーム、変に技術力あるよねー」

「ですよねー、私もアスナの格好で『フラッシング・ペネトレイター』を再現できた時はすっごい嬉しかったですし!」*3

「え、できるのアレ!?」

「はい!できちゃいました!」

 

 

 飲み食いモーションに上位が存在するよ、なんてダミー情報を流すと、アスナさんが話に食い付いてきた。

 ふむ、アスナのアバターだからか、食べ物関係がちょっと気になる様子。*4

 なので話を進めると、まさかの原作アスナの技の一つを再現できた、との返しが。……いや、この人わりと凄いな?

 このゲーム反射神経重視でモーションアシストとかもないから、単純にコントローラーで動きを再現してるのだろうし。……結構なゲーマーと見たぞぅ?

 

 対し、さっきから無言のキリト君。ちらりとその様子を窺ってみると……。

 

 

「…………………」

 

 

 あっ……(察し)

 ……さっきまで隠していたのであろう表情を、もろに表に出しながら、目の前のショートケーキを一口一口味わうように、フォークで切り分けながら食べ進むキリコちゃんがそこに居たのでしたとさ。

 

 これは……黒じゃな?*5

 すかさず秘匿のショートメール。

 件名は「美味しいですか?」で、受け取ったキリコちゃんはタイトルを確認した時点で吹き出していた。

 

 

「え、どうしたの?」

「ななななんでもないっ!ほら、今日はアイテム堀りに行くんだろっ」

「え、あ、ちょっ、えっと、また今度お話しましょうねキーアさんっ」

「はーい、また今度ねー。……うーむ露骨にも程がある、大方キリコの方でなりきりしてたとかだなあれは

「どしたのキーア?小声で何か喋ってるけど」

 

 

 慌てたように相方(アスナ)を連れてカフェから去っていくキリコちゃん。

 ……まぁ、何かあれば向こうからショトメに返信でもしてくるだろう、ってな感じで一つため息を吐く。

 

 そしたらアグモンが首を傾げていたので、とりあえず頭を撫でておいた。

 ……こうしてると彼は気持ちよさそうに目を細めるんだけど、なんというかその姿が可愛いんだよねー。

 私ってば猫派のはずなんだけど、爬虫類系も意外にイケるのかな、なんて気分になるなぁ。

 

 そんな感じにちょっとほのぼのしつつ、アグモンがパフェを食べ終わるのを待つ私なのだった。

 

 

 

 

 

 

「で?集合時間に遅れたと?」

「いやはや面目ない。アグモンから発せられる癒やし効果を甘く見てたよ」

 

 

 たはは、と笑いながら、ジト目でこちらを見てくるハセヲ君に弁明する私。

 いや、まさかアグモンを撫でてたら、人の山に囲まれるハメになるとは思わなかったと言うか……。

 

 最初はテイム*6したモンスターか何かを愛でてるんだ、と思われて「そのアグモンってどこにいるモンスターなんですか?」なんて聞かれたんだけど、中に人のいる(中ってか本体な)歴としたアバターですよ、って答えたら人だかりが倍増したのである。

 ……いやはや、デジモン人気を舐めていたと言わざるを得ない。

 中にはスカモン*7になりたい、なんて人も居てちょっとびっくりしたものだ。

 

 まぁ、そんな感じにスクショとか撮られたりしつつ這う這うの体で逃げ出して、ようやっとポータルの前に到着したのは集合時間から三十分ほど遅れてのことだった、というわけなのだった。

 

 

「いや、実際凄い人だかりだったわね」

「皆さん、とにかく写真を撮ろうとしていましたからね……」

「なんであんなに大人気だったんだろうね?アグモンは確かに目立つけど、どこぞの王様*8とかの方が、写真需要は高い気がするんだけど」

「え、せんぱい気付いてないんですかぁ?」

「へ?何が?」

 

 

 マシュとゆかりんの言葉に頷く。

 いやまぁ、デジモン人気を侮っていた事は否めないけど、それにしたって囲まれて身動き取れないような事にはならないんじゃないかな、という気分がどうにも拭いきれない。

 そもそも他にも写真を撮りたくなるようなアバターとかいっぱい居たと思うんだけど、なんて事を口に出せば、BBちゃんが呆れたように口を挟んできた。

 

 

「いや、他のアバターよりも自然に笑う美少女が、アグモンを慈しむように見詰めながら、その頭を優しく撫でている……とか、撮らない方がどうかしてると思いませんか?」

「……そういえば私もフルダイブになった(タチバナ食べた)から、見た目とか現実のにフィッティング(調整)されたんだった」

 

 

 言われてみれば、今の私の姿はほぼほぼ現実の私と同一である。

 最初のキャラクリの時点でそれなりに近い姿にはしていたけれど、それでもところどころ違う姿をしていたわけなのだが。

 現在の私は、服装がゲーム内の初期装備であること以外、ほぼ私と同じモノになっている。

 特にこのウェーブ掛かった髪に関しては、同一パーツが無かったのでストレートでごまかしていたものである。……逆に言うと、この髪型かなりレア物に見えてる可能性もあるわけで。

 

 ……うん、そりゃ目立つわ。ただでさえアグモン以外に見当たらないデジモンを連れてる女の子が、そのアバター自体も目立つってんならそりゃ囲うわ。

 

 

「これがアグモンさんじゃなくて私かハセヲさんだったら、もう少し穏便に事が進んだのかも知れませんけど……」

「その場合は下手するともう片方にシワ寄せがいってた、ってんだろ?……へいへい、この話はこれで終わり。キーアも、それでいいな?」

「はーい、以後気を付けまーす」

「ホントにわかってんのかコイツ……」

 

 

 どっちにしろ、私達が目立つ集団だというのは変わらないわけで。

 じゃあ気にするだけ無駄、ということで気持ちを切り替える。

 そもそも、時間は有限なのだからあれこれ悩んでる暇もないのだ。

 

 

「思考が加速できるなら違うんでしょうけどねぇ」*9

「……止めてくれるゆかりん、変なフラグ立てようとするのは」

「あんな危ないプログラム、見付けたらぽいっ!しちゃいますからね?」

「まぁ、思考を一千倍に加速とか、危ねー香りしかしねーもんな」

「そうかなぁ?」

「……デジモンの感覚で喋るのは止めたほうがいいよ」*10

 

 

 あれこれと喋りながら、皆でポータルの前に立つ。

 さて、ここからはフィールド探索だ。鬼が出るか蛇が出るか、精々警戒しながら飛び込むとしよう。

 

 

『アンサモンプログラム スタート。霊子変換を開始 します。』*11

「MA☆TTE!!」*12

「落ち着いてくださいせんぱい!これもコラボ!コラボですから!」

「なんで不安にさせるような部分にコラボ持ってきてんだよ製作者ぁっ!!?」

 

 

 ──まぁ、最初の一歩でちょっと躊躇するハメになったんだけどね。

 

 

*1
『ソードアート・オンライン』より、主人公とメインヒロイン。白と黒で好対照なので、並べるとよく映える

*2
『男の娘キリト』と呼ばれるもののこと。『ソードアート・オンライン』作中のゲームの一つ、『ガンゲイル・オンライン』でのキリトのアバター。見た目が完全に女の子だが、性別判定は一応男、らしい。2018年にサービスを終了したスマホゲーム『コード・レジスタ』では、狂ったようにこの男の娘版のキリトのバリエーションが増えていた。……なんでウエディングドレスとかノリノリで着てるんですかねこの人?

*3
『ソードアート・オンライン』内に存在する『ソードスキル()』の一つ。最上位の細剣技

*4
原作での彼女は料理スキルカンスト勢である

*5
黒だよ、真っ黒!!

*6
手懐ける(tame)』という言葉。RPGで使われる場合は、もっぱら『モンスタを手懐ける(=仲間にする)』という意味で使われる

*7
『デジタルモンスター』より、デジモンの一種。見た目については……何も言うまい。プラチナスカモンになると、デジモン育成のために重宝されたりするようになる

*8
ハハッ

*9
『アクセル・ワールド』より、『ブレイン・バースト』内の加速コマンド『バーストリンク』のこと。因みに、現実でも『タイサイキア現象』という、思考の加速に近い事を起こせたりするようだ

*10
デジモンの中には時間とか空間とかわりと気軽に操ったりする者がいる為。ポケモンにも似たような者がいるので、わりとみんな考えることは同じなのかも?

*11
『fate/grand_order』より、レイシフト時のシステムメッセージ

*12
『遊☆戯☆王5D's』より、ジャック・アトラスの台詞の一つ。とにかく待って欲しい時に使う言葉



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戦闘はMMOの華なので大体花畑

「なんでこう、このゲームはところどころに心臓に悪い描写をぶち込んで来るんですかね……」

「ある意味的確なタイミングだからな、狙ってるんだと思うぞ」

「わかった、もし顔を見ることがあるなら、制作者は一回ぶん殴ってやる……」

「せ、せんぱい落ち着いてください!せんぱいが全力を出したら確実に肉塊になってしまいます!!」

 

 

 あれこれと騒ぎながらフィールドに移動した私達。

 ……見たところ、普通の草原のような?

 

 

「とりあえず、どんくらい動けるかの確認だっけ」

「パラメーターの暴力でゴリ押し!……みたいな事ができれば一番楽なんですけど、そういうのを制作者が嫌ったのか、基本的にはダークでソウルな感じになってるみたいです。……いえ、流石にあれよりは難易度低いみたいですけど」

「ブラッドでボーンな感じ?……ってことは基本的に相手をちゃんと見よう、みたいな感じなのかな」*1

 

 

 死に覚えゲー*2、というほどではないのかも知れないが、まぁある程度リズムと言うか、敵の行動の隙を見極める方向のMMO、と言うことらしい。

 ……レベル無しのRPGは幾つか知ってるけど、レベル無しのMMOというのは未知の領域だ。いや、探せばあるらしいけど触ったことはないと言うか。

 なので、ある程度慎重に進めようと思って。

 

 

「あ、敵シンボルですね。あれに触れるとエンカウントしますよ」

「シンボル型なのね。んじゃま、とりあえず」*3

 

 

 BBちゃんが指差した全体的に黒っぽい不定形のモンスターに触れると、視界がぐにゃあ、と曲がってエンカウントした!って感じの音が鳴り響いた。

 ……RPGお決まりの戦闘フィールド移動時のエフェクトだけど、VRだと地味に酔いそうになるなこれ。

 なんて思っていたら、エンカウント音のあとに鳴り始めた戦闘BGMに「ん?」ってなり、目の前に現れた敵にさらに「んん?」となった。

 

 ……んー待て待て。一つ一つ解決していこうか。

 まず鳴り響いてるこのBGM。

 特徴的な入りと、死の先に逝きそうな感じのこれは……。

 

 

「未確認神闘シンドローム*4ですね。聞いてるとなんというか、アガって来ますよね!」

「いや確かに好きだけど、なんで通常戦闘BGMこれなのさ……」

 

 

 ボス戦では我と共に生きるは冷厳なる勇者、みたいなBGMが出でよするんだろうか?*5

 なんて感じに思いつつ、まぁ?これを戦闘BGMにしたいと言う?その気持ちは買わなくはないけども?

 みたいな感じで、エンカウントした敵キャラの姿をよーく見てみる。

 ……帽子と服が卵の殻になっている、カメのようなモンスター。

 ちょっとデフォルメされている、その姿を見て思い浮かぶものはただ一つ。

 

 

「なんでこのBGMでコワッパとエンカウントしてるの?バカなの?」*6

 

ワッ

よ?

『40』

『6』ぎょ『1』

 

けっ よ?

 

 やっね?

「BBちゃんはBBちゃんでなんで『ものしり』してんの?!」*7

「……てへ♪」

「いやてへじゃなくてさぁ!?」

 

 

 まさかのコワッパである。

 ……強いのか弱いのかわからないんだけどぉ!?

 い、いや落ち着け私。こんな草むらに出てくるんだ、大したことない単なる雑魚モンスターって可能性も……。

 

 

「あ、レアエンカウントモンスターなので気を付けてくださいねせ・ん・ぱ・い♡」

「クソァッ!!」

 

 

 知ってた!キーアん知ってた!

 だってこの子、普通にそこらのボスよりも強かったもんね!!

 『三爪痕』が許されるんだから、そりゃコワッパもそれなりのスペックだよねクソァッ!!

 

 

「決めたぞマシュ、このゲームの制作者にであったら絶対にぶん殴るぞ私は!」

「お、落ち着いてくださいせんぱい!何度も言いますがせんぱいが本気で殴ってしまってはいろいろとお見せできない事になってしまいます!」

「それでも私は!それを目標に進んでやらぁっ!!」

(……いろいろと大丈夫なのかこいつ)

 

 

 ハセヲ君からの視線がどんどん可哀想な人を見るものに変わってる気がするけど、私は自分を曲げないよ!*8

 

 

 

 

 

 

「いやマジで強かったんだけど、なんなのあれ……」

「その代わり、レアアイテムをドロップしたみたいですよせんぱい?」

「……『コワッパのかんむり』って、何に使うのこれ……?」

 

 

 あんまりにもあんまりな激闘を越えて、バトルフィールドから普通の草むらに戻ってきた私達。

 ……まさかアグモンのベビーフレイム*9が効かないとは思わなんだ。あの卵の殻、生意気にも耐火性抜群でやんの。

 まぁ、その代わりというか、モーションとか技はわりと見切りやすいものばかりだったんだけどね。

 これで動きまでお排泄物(できうる限り婉曲な表現)*10だったら投げてたよ、小さくて攻撃当て辛いし、じり貧になるかと思った。

 

 

「最終的に氷系の魔法で動きを止められる、って気付いたからどうにかなったがな」

「魔法使いジョブでよかったとしみじみ思います。……防御力1なのに堅すぎだってあれ」

「あ、すみません。あれ気分でそう言っただけで、ホントは結構防御力高いみたいですよ?」

「BーBーちゃーん?」

「ひえっ、ごめんなさいせんぱいつい出来心で!」

 

 

 まさかの『ものしらない』だったBBちゃんにちょっとおしおきしつつ、しばらくマップを徘徊。

 

 ……クリボーだのスライムだのが居たかと思えば、クリボー違いのクリボー(カードの方)がわらわら増殖してきて、危うく爆☆殺されそうになったり。*11

 はたまたクリスタルなボーイ(クリボー)が「かわいそうなのはダメなのよね」とか言いながらアイテムを☆PON☆とくれたり。*12

 その台詞がキーになったのか、筋肉モリモリマッチョマンの変態が、ロケラン担いで追ってきたので必死で逃げたり。*13

 

 そんな感じに、正直意☆味☆不☆明*14な状況に西に東に振り回されながら、私達は息も絶え絶えにポータルまで戻ってきていたのだった。

 

 

「いや、おかしい、どう考えてもおかしい!こんな最初のマップっぽいところでエンカウントしちゃいけないモノばっかりに出会ってる気がする!」

「あのままフィールド探索してたら、ハムスターに出会ってた気がします……」*15

「聞きたくねーんだが、それってセラゲの奴か?」*16

「セラゲの奴です、大量に突っ込んできて物理的に星にされる奴です」

「ぼ、ボクこの姿のままでやってける気がしないんだけど……」

 

 

 い、意味わからねー……。

 レベル差による安全マージン*17すら取れないのに、レアエンカとはいえラスダンに出てくるようなモンスターがうろうろしてるとか、どう考えてもお排泄物ゲーやないけ……。

 ……いやだからか、なんか鳥頭の男が居たような気がしたのは……。

 

 

「あの人、一般PCでしたよ?」

「リアル狂人が湧いてるとか、どう考えても初心者向けのマップじゃないじゃん!!やめやめ、一旦帰ろ真面目に!」

「さんせー、ボクもうお腹ペコペコだよぉー」

「……ああ、俺もちょっと、休憩したいなこれは……」

 

 

 彼がなりきり板の民じゃないという、逆に恐ろしい話を聞いて、やってられるかとアークス・ロビーに帰ってきた私達。

 そのままカフェにとんぼ返りして、みんなで好き勝手飲み物や食べ物を頼む。

 

 もうやけじゃい、やけ食いじゃい。

 甘いもの食べてストレス発散じゃい。みたいな感じで、さっきアグモンが頼んでいたジャンボパフェを頼む私。

 

 

「申し訳ございません、ジャンボパフェは売り切れになっておりまして……」

「ゲームの世界で売り切れ?妙だな……」*18

「はいせんぱい、小さな死神召喚呪文は禁術ですよー」

「マジか。……いやまぁ、確かに下手に呼ぶとヤバイのは確かだもんねぇ」

 

 

 そしたら、ジャンボパフェは売り切れている、と店員さんに言われてしまった。……ゲームの世界で売り切れとはこれいかに?

 みたいな感じに妙だなと思っていたら、その言い方はコナン君の疑い方なのでよくないとBBちゃんに釘を刺されてしまった。

 

 ……うーむ。電脳世界であっても彼の死神体質は効力を発揮するのか、ちょっと気にならないでもないけど。

 ある意味彼の存在はパンデミックを引き起こすようなものでもあるので、そういうのを気にせずに居られるなりきり郷内に居て貰うのが一番安心かなぁ。

 ……いやまぁ、本人は再現度低いからそうそう事件に巻き込まれることはないって言ってたけども。

 

 

「うーむしかし、この溢れるパフェの気分をどうしたものか」

「パフェの気分?……よくわかんねーけど、他のもんじゃダメなのか?」

「こういう時の食べたいものって、()()()()()()()()()()だから替えは効かないのよワトスン君」

 

 

 他のものじゃダメなのか、と聞かれて他のじゃダメなんだよ、と返す私。

 こういうのはそれを食べようって気分で店に来てるから、それが解消されないのはそれはそれでストレスなわけ。

 ……まぁ、無いですって言われた以上、私にできることがないのも確かなわけなんだけど。

 

 

「なるほど、じゃあ俺がなんとかしましょうか、素敵なレディ」

「……はい?えっと、私?」

 

 

 なんて風にちょっとむっとしていたら、後ろから声を掛けられた。……いや、レディて。私中身的には男なんですけど、みたいな感じに後ろに振り返って。

 

 

「……あー!!サンジ君!?」

「よっ、こんなところで会うとは奇遇だなキーアさん?」

 

 

 そこに居た人物と、その話し方に知り合いの姿が重なって。

 ……祭で話をしたことのあるキャラの一人、ワンピースのサンジ君じゃん!

 

 

「いや、なんでここにいるの貴方?」

「ちょっと野暮用でね。それと、そちらのお嬢さんと連れについて紹介して貰える?」

「え、ああ。えっと、BBちゃんとハセヲ君、それとアグモンだね」

「あ、はい。私はBB、上級AIのBBちゃんです」

「ハセヲだ、よろしく」

「ボクアグモン!よろしくね!」

「はいよ、BBちゃんにハセヲ、それからアグモンね。こっちこそよろしく、それと」

 

 

 みんなに紹介をして、みんなが自己紹介を返して。

 一連の流れを終えて、サンジ君が淀みの無い動きでBBちゃんにかしずいて、彼女に料理を差し出した。

 

 

「こちら、ご注文のフォンダンショコラです」

「え、あ、はい、ありがとう、ございます?」

 

 

 ……相変わらず本家のサンジ君より芝居掛かった動きである。

 というか、その台詞的に君ここで働いてるの?

 なんて私の疑問が伝わったのか、彼はこちらにニッ、と笑みを向けてきて。

 

 

「詳しい話、聞く気はあるかい?」

 

 

 なんてことを私達に問い掛けてくるのだった。

 

 

*1
『DARK SOULS』と『Bloodborne』。どちらもフロム・ソフトウェア製作のゲーム作品。エグい難易度で中毒者を産んでいるシリーズ

*2
その名の通り『死んで覚える』ゲームのこと。極悪難易度で何度も失敗しながら、じりじりと成功に向かって修練を積み重ねていくようなゲーム。昔のゲームは大体こうだったりするが、いわゆるクソゲーとの境界線が結構曖昧

*3
フィールド上に敵の姿が予め見えていて、それに触れると戦闘になるパターンのもの。対義語は歩いていると勝手に敵と出会う『ランダムエンカウント』。オンラインゲームだと、シームレス戦闘の方が主流

*4
『ヴァルキリープロファイル』シリーズより、通常戦闘時のBGM。聞いたものの厨二力を飛躍的に高める劇物。「死の、先を逝く者達よ!」

*5
同じく『ヴァルキリープロファイル』シリーズより、『Confidence in the domination』。通常ボス戦で流れる曲。人気が高く、よくアレンジされている。「我と共に生きるは冷厳なる勇者、出でよ!」

*6
『マリオストーリー』の敵キャラの一人。一番最初の方からずっと付いてくる中ボスキャラ

*7
『マリオストーリー』の味方キャラの一人、クリボーのクリオの得意技の一つ。相手の詳しい説明をしてくれる。解説文が時々辛辣なのはなぜなのか

*8
みくは自分を曲げないよ!……元ネタは『アイドルマスターシンデレラガールズ』より、『前川みく』の台詞

*9
アグモンの得意技。口から火炎の息を吐いて攻撃する

*10
『ゲーミングお嬢様』より、『クソ』という言葉をお嬢様っぽくしたもの。無理に変換してるせいでなんか余計に下品になってないか?……などとは言ってはいけない

*11
『遊☆戯☆王』より、クリボー。隠された能力()として、相手に触れると爆発する『機雷化』という能力を持つ。原作がカードゲームじゃなくてTRPG的なものだと思われている理由の一つ。他に有名なのは『「砦を守る翼竜」の特技、「飛行」!(敵の攻撃の回避確率三十五パーセント)』だろうか

*12
前半のクリスタルなボーイは『COBRA THE SPACE PIRATE』のキャラクターの一人、クリスタル・ボーイ。主人公コブラの宿敵にして、とある場所で無辜りまくっていたサイボーグ。本来の彼は「かわいそうなのは」とか言わない。後半の『☆PON☆とくれた』というのは、映画『コマンドー』の吹替えの台詞の一つ。『コマンドー』には吹替え違いが存在するので、聞き比べてみるのも一興かもしれない

*13
『コマンドー』の主人公、『ジョン・メイトリックス』。アーノルド・シュワルツェネッガー氏が演じたものの中でも代表的なキャラの一人

*14
『遊☆戯☆王』より、武藤遊戯の台詞の一つ。原作でエクゾディアを見た彼が、使い方がわからず困惑した時に発した言葉、「意☆味☆不☆明のカード」の一部分。コレデドウヤッテタタカエバイインダ

*15
『ヴァルキリープロファイル』シリーズより、恐らく史上最悪のハムスター。背丈が低くて一部の攻撃以外当たらず(VPはアクションゲーム的な面も持っている為、攻撃が当たらないのは死活問題)、HPが異様に高く(一応出てくる場所の他のモンスターに比べればそれほど、というわけでもないのだが)、攻撃力が異様に高く(まともに食らえば基本的に即死)、その癖して一度に四体出て来て、倒しても余り旨味がない(経験値が少ない。一応レアアイテムを落とす事があるので全くの無駄足でもない)……という、お前ホントに雑魚モンスターなのか、みたいなやべーハムスター。へけっ☆

*16
『ヴァルキリープロファイル』シリーズより、クリア後ダンジョン『セラフィックゲート』のこと。前述のハムスターなどが生息している魔窟

*17
『安全性を保つための遊び・余裕』。ゲームで言うなら、ステータス差やレベル差によって死亡する可能性を減らすこと。キリト君が好きなもの

*18
妙だなを解説?妙だな……



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飯と睡眠とアレ、欲はどこまでも大切です

「……え、このお店PCがやってる店なの?」

「そうそう。俺もシェフの一人ってわけでな?」

 

 

 休憩時間になったらしいサンジ君が、私達の席と相席になるように椅子を持ってきて座った。

 ……MMOには生産系の追加要素というか、別の遊び方が用意されていたりするものだけど、この『tri-qualia』でもそういうものがあるらしい。

 そのうちの一つが、料理を作るというものなのだそうだ。

 

 

「モンスターによっては料理素材を落とすんだが、それを使っていい料理を作るには高位のスキルが必須でな。より上質な素材を使って腕を磨くってのは、俺達みたいなシェフにとって息をするよりも自然な事なんだよ」

「へー……」

 

 

 MMOの楽しみ方の一つである生産職。

 その枠組みの一つである料理だけでやってけるようになったんだな、なんて変な感慨を覚えつつ、先の彼の発言について問い掛ける。

 

 

「ああ、ジャンボパフェにはフルーツやミルクが必要なんだがな?素材が切れたからちょっと一狩り行こうか、みたいな感じになっててな」

「……あーなるほど。採ってくるから待っててね、みたいな感じだったわけね」

 

 

 彼の言葉に、売り切れた理由を理解する。

 ……完全に単なるデータだったら、売り切れなんて起きるわけ無いけれど、実際はちゃんとした製作アイテムだった、というわけだ。

 

 

「で、キーアさん達はいろいろ調べてるんだろ?なら大当たりだ。ここを経営してるPCは、いわゆるなりきり組だからな」

「!なんと、初手で当たりを引いてたか私ら」

「すごいねキーア!」

 

 

 ついでサンジ君から飛び出した言葉に、一同びっくり。

 ……あれ?でもここってコラボロビーなんだよね?って思っていたら、その辺りも説明してくれた。

 

 要するに現実のコラボカフェと一緒で、大本のお店に『この作品とコラボするので内装とかメニューとか合わせて下さいねー』って感じに運営本部から依頼が来て、それに合わせるように内装を切り替えたりしているだけ……のようだ。

 ……いや、最初から思ってたけどなんだろうね、この変な拘り。

 

 

「変繋がりで悪いんだけど、そういえばなんでサンジ君、フルダイブっぽい挙動なの?」

 

 

 怪しむついでに、目の前のサンジ君の挙動があまりにも自然な事にも引っ掛かりを覚えた。

 元がネットゲーム世界を描いたキャラクター達ならいざ知らず、そうじゃないサンジ君がフルダイブ式でゲームを遊んでいるのなら、何か裏でもあるのかとちょっと疑問に思った……のだけど。

 

 ……あれ?なんで私、「この人何言ってんの?」みたいな目で見られてるんです?

 

 

「いや、俺らは()()()()()()()()()()を既に被ってるから、どんななりきり組でもこうなるって聞いたんだが?」

 

 

 ……なんですと?

 

 

 

 

 

 

「えーと、つまり。最初に出会ったハセヲ君のせいでちょっと勘違いしてたけど、そもそもなりきり組はフルダイブ標準装備だってこと?」

「そう聞いたんだがな。……いやまぁ、最初にハセヲに会ったってんなら、勘違いするのもわからんでもないが」

 

 

 サンジ君の話を聞いて、ちょっと脳内で情報を整理する。

 ……フルダイブ化はあくまでもなりきり組なら標準装備。

 で、そこになりきりしてるキャラが元々ネット関係のキャラだと、再現度に追加ボーナスが貰える、みたいな?

 

 

「碑文まで使えるかは知らんが、それでもジョブに関しては元のままなんだろハセヲ?」

「あ、ああ。一応確認したけど、俺のジョブは錬装士(マルチウエポン)、この世界(ゲーム)では錬器術士なんて名前になってたが……」

「仕様外ジョブだな。……ってなわけで、その辺りの『原作由来の何か』が上乗せ部分だって言われてるわけだ」

「なるほど。……えっと、最初ほど警戒の必要はないってことだったり?」

 

 

 ネットゲームのデスゲーム系の多さから警戒を強めてたけど、案外そうでもないのかな?

 なんて事をサンジ君に聞いてみたのだが、彼は難しい顔。

 

 

「どうだろなぁ。俺も生憎ハセヲみたいな『元のゲームの仕様ではなく、PC由来での致死攻撃』持ちの奴には会ったことが無いからなぁ」

「……言われてみれば、デスゲーム系ってそもそもゲームの仕様の時点でデスゲームになるようになってるから、ハセヲ君達みたいに『仕様外攻撃で相手の精神ごとダメージ』って、案外他の具体例思い付かないね」

 

 

 『Infinite Dendrogram』、『NewWorld Online』、『ソードアート・オンライン』……などなど。

 作品内ゲームにも幾つかあるけれど、そもそもがデスゲームじゃなければ、途中からデスゲーム要素が追加されるような事は基本的にあり得ない。

 ……いやまぁ、当たり前と言えば当たり前なのだけれど。

 だってそれ、作品的には無謀なてこ入れ以外の何物でもないし。

 

 

「最初っからデスゲームじゃないなら、ゲームでの死をリアルでの死に結びつける機能なんざ、普通は付けねーからな」

「うーん、まさかスケィス*1呼んで貰って試してみる訳にもいかないからなぁ」

「いや、止めろよ?そもそも呼べるかどうかもわかんねーからあれだけど」

「……なんか、いまいち煮え切らない台詞だね」

 

 

 ハセヲ君の奥歯に物が挟まったような物言いに、思わず聞き返してしまう私。

 対して彼は「繋がりはある気がする、けど呼ぶなって言われてるような気もする」という言葉を返してきた。

 ……ふむ?スケィス側が呼んで欲しくないって言ってるから呼べないってこと?

 

 

「……いやそれよりも。居るには居るんだな、スケィス」

「うーん、結局警戒は今まで通りの方がいいか。少なくとも、デジモンがやって来る可能性がある以上は、警戒し過ぎって事もないだろうし」

「え、ボク?」

「ああ、究極体の中にはわけわからん攻撃してくる奴も居るしな……」

 

 

 触れたらそのままおしまいな攻撃*2とか、時止めオラオララッシュみたいな攻撃*3してくるしなぁ、なんて風に苦笑いする私達なのだった。

 

 

 

 

 

 

「とーこーろーでー」

 

 

 私の言葉にぎくっ、という感じで動きを止めるBBちゃん。

 ……うふふ。逃がさへんぞ貴様ー!

 

 

「知ってることをハケッ!ハクンダッ!」*4

「し、知りません!知ってても黙秘しま……ってひえっ!?せんぱい目怖っ!」*5

「なりきり組だったら基本的にフルダイブになる……しかし私はなっていなかった、そしてそれを知っていたと思われるBBちゃんには、黙秘権なんてものは存在しないのです。do you understand(わかりましたか)?」

「し、知りません!せんぱいがフルダイブじゃないのは知ってましたけど、その由来がオリジナルのなりきりだからって事くらいしかBBちゃんは知りません!」

「結構知っとるやないかい」

「あ痛ぁっ!?」

 

 

 知らないと言いつつ案外知ってたBBちゃんにおしおき(デコピン)を敢行しつつ、裏取りの為ゆかりんにも聞いてみる。

 

 

「調査対象だって言ってたのに、フルダイブになるとかについては知らなかったの?」

「私ゲームとか苦手ですもの。話に聞いたってだけで、どうなっているのかとかは全て管轄外ですわ」

「……なんでこういう時に限って、胡散臭い管理者ゆかりんなのか」

「せんぱい!落ち着いてくださいせんぱい!」

 

 

 どいつもこいつもあれこれ隠しながら暗躍しおってからに……。

 いやまぁ、ゆかりんがゲームあんまりしないのは聞いてたけど。

 東方についても二次から入った組って言ってたし、ルナシューター*6とか夢のまた夢みたいなこと言ってたのも知ってたけど。

 それなら従者組に頼むとか……みたいな事を考えて、ジェレミアさんと蘭ちゃんにできるのか、という疑問が浮かぶ。

 

 

「……んー、推定無罪!閉廷!」

「ちょっとせんぱい!?横暴すぎではないですかぁ!?」

「私がルールだ」

「そんなキメ顔で言われてどうしろって言うんですかぁっ!?」

 

 

 って言われてもなぁ。

 最近忘れられてる気がするけど、私基本的に魔王やで?

 

 

「は?!……そ、そうでした!せんぱいってば普通に素面(しらふ)で魔王とか名乗っちゃう系の人だったんでした!」

「よーし、キーアんバイキルト*7目一杯かけちゃうぞー」

「バイキルトって言いながら界王拳*8掛けてませんかそれ!?」

 

 

 ははは、別にブースト(Boost!)*9でもモアモア*10でもなんでもええんやで。

 とりあえず滾る苛立ちを解消したいだけやさかいにな。

 

 

「なんなんですかそのエセ関西弁はぁっ!?あ、ちょっ、やめ、消しと、痛ったああぁあっ!!?」

「痛いで済むのか今の……」

 

 

 エグい威力になったデコピンを額に受けて翻筋斗(もんどり)を打つBBちゃんと、そんな彼女を見て呆れたようにストローからジュースを啜るハセヲ君なのでした。

 

 

 

 

 

 

「うー、世界一美少女なBBちゃんの、卵のような額が割れるかと思いました……」

「これを機に口は災いの元って覚えといた方が良いと思うよ」

「確かに、さっきのは言い過ぎましたけど……だからって本気でデコピンは酷くありませんかぁ?」

「……?え、めっちゃ加減したけど?」

「いやその、せんぱいのスペック的な意味での加減は、全然加減になってませんからね?」

 

 

 話を終えて、再びフィールドにやって来た私達。

 今度はさっきの草原と違い、牧場のある地域らしい。

 サンジ君が放し飼いにされている牛からミルクを採ってくるのを、しばらく立ち話をしながら待って。

 戻ってきた彼とパーティを組んで、そのまま牧場から離れて森の方へ。

 

 

「じゃあ、もう一度説明するぞ。──命令は3つ。死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ。運が良ければ、不意を突いてぶっ殺せ!……あ、これじゃ4つか」*11

「おいィ?それ同じ声の別の人でしょうが」

「ははは、ちょっと言ってみたかったんでな。……まぁ、改めて。こっから先のモンスターは、倒した時にドロップ品として各種フルーツを落とすことがある。なんで、積極的にぶっ倒していってくれ」

「はーい。……データ上の相手だから、絶滅するとか気にしなくて良いのは楽でいいわね」

 

 

 まぁ、一番の目的は店のオーナーが戻ってくるまでの時間潰しなんだけど。

 現状オーナーさんが一番情報を持ってるらしいから、彼?彼女?がログインするのを待つのが、一番話が早いらしいし。

 

 

「そーいうわけで、行くぞ皆のしゅー!!」

「「「「おー!」」」」

 

 

 そうして、森の中へ全員で突撃!

 バナナワニの頭からバナナをもぎ取ったり、メロングマが()()メロングマ*12だったので一瞬ひえっ、ってなったり。

 オーレンジーナなるちょっと危なそうな名前の、人型のモンスターを皆でタコ殴りにしたり。

 かと思えばフルーツ系モンスターに混じってスピアー*13が居て、ちょっと周囲にモンスターボール*14がないか探してみたり。

 

 そんな感じに、なんかトリコとかに出てきそうな奴も交えたモンスター達との交戦を続け、時刻は次第に夕方へと向かっていくのでした。

 

 

*1
『.hack』シリーズより、第一相『死の恐怖』。八相と呼ばれる特殊なモンスターであり、ハセヲが扱う『憑神(アバター)』の名前でもある。最初にして最凶のボスの呼び声も強く、実際他の八相のオリジナルでもある特別な存在(そちらは正確には『スケィスゼロ』だが)

*2
『オメガモンX抗体』の必殺技、『オールデリート』。触れるとその名の通り()()()()()()。彼の性能的(『オメガインフォース』。常に先読みしてくる)に回避不可・防御不可

*3
『アルフ