ハイスクールREAL×EYES (オクトリアン)
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旧校舎のディアブロス
第一話「オレが学生で仮面ライダー」


皆さん、私を知っている人はお久しぶりです。
そうでは無い方は初めまして!オクトリアンです!!
まず、私を知っている人達に謝罪を···、一年以上離れてしまい、申し訳ございませんでした!!とうとう私も社会人となり、新生活に慣れるまでが大変だったので、投稿が全く出来ませんでした。
これからも不定期更新ですが、少しづつ投稿していくのでよろしくお願いいたします。
さて、久しぶりに投稿する作品は、まさかの新連載です!
そうやって新連載とかするから遅いんだよという意見もありますが、全くその通りです。でもこの作品の二次創作を書きたいっていう欲が抑えられず書いてしまいました。
そのため一話なのに大分長々と書いてしまいました。
それでも、楽しんで貰えたら幸いです。
さて、久しぶりにもかかわらず長々と書いてしまい申し訳ございません。
それでは本編をどうぞ!

あっ、最後に感想、批判コメントもどうぞ自由に書いてください。しかし、最低限のマナーを守って書いてください。


「父さん!目を開けてよ、父さん!!」

 

瓦礫の中、男の子が響き渡る。

 

男の子は倒れている自分の父親である男に向けて何度も声をかける。

 

「···歩夢。」

 

父親はゆっくりと自分の息子である歩夢の方へと顔を向け、手を伸ばし歩夢の顔を触る。

 

「夢に向かって···跳べ···。」

 

息子にそう言うと父親の首はガクッとなり、手がするりと地面へ落ちた。

 

「父さん···?ねえ、起きてよ父さん!父さん!!父さん!!!」

 

少年は声をかけ続けた。しかし、父親からは一切反応を示さなかった···。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「父さん!!」

 

部屋の中に青年の声が響く。青年は手を伸ばして起き上がった。

 

「···はあ、はぁ···夢か···。」

 

青年が深呼吸して周りを見渡すと自分がいるのは自室のベッドの上であることを確認する。

 

「···ん?」

 

青年は何かに気づき、手を伸ばしてベッドの傍に置いてある目覚まし時計を手に取る。そして時計が指している時間をじっと見つめる。

 

「···寝坊したああああああああぁぁぁ!!!!」

 

青年はベッドから飛び出し部屋にあるタンスを開きそこに入っている制服を取り出しパジャマから制服へと着替える。

 

着替えが終わり、急いで部屋から出て二階の自室から階段で一階へと下りる。そしてリビングの前を通り過ぎ···。

 

「おはようございます、歩夢社長。」

 

通り過ぎようとすると、リビングから声が聞こえた。

 

歩夢が顔をリビングの方へと向けるとそこには一人の女性が立っていた。

 

「おはようイズ!あといつも声をかけてくれるのに何で声をかけてくれなかったんだ!?」

 

歩夢がイズと呼んだ女性に挨拶すると、何故起こしてくれなかったかを問う。

 

「歩夢社長を起こさなかった理由は、昨日歩夢社長が御自室へ向かう前、私に『明日は俺が自分で起きるから起こさなくて大丈夫だ。朝食の準備だけしといてくれ』と仰ていましたので起こしませんでした。」

 

そう言いながらイズは耳に着いているデバイスから光を出すと、空中に先程イズが言った歩夢の言葉が再生されていた。

 

「···すいません、忘れてました。」

 

そう言って歩夢はイズに頭を下げる。

 

「構いません、遅刻するのは目に見えていたので冷蔵庫にあった物で簡単な朝食とお昼に食べていただくお弁当の二つをご用意致しました。」

 

そう言ったイズがテーブルを指すとそこにはトースト二枚と野菜ジュースと、風呂敷に包まれたお弁当が置いてあった。

 

「ありがとうイズうぅぅ!!」

 

歩夢はイズに感謝しながら椅子に急いで座りトースト二枚にがっつく。

 

「歩夢社長、先程トーストが無くなりましたので帰りに買ってくるのを推奨します。」

 

「うぅ、わわっは。」

 

イズが買ってきて欲しいものを頼むと、歩夢はトーストを口に入れたまま返事をする。

 

「っ、じゃあ行ってくる!留守は任せたよ!!」

 

トースト二枚を野菜ジュースで流し込み弁当を持って走って行く。

 

「歩夢社長、お気を付けて。」

 

そう言ってイズは歩夢へと頭を下げる。

 

扉を出た歩夢は走って自分が通う学校へと走り出す。

 

「チックショオォォーー!!イズに迷惑かけないように早く起きるって決めてたのに寝坊したァァァ!!!目覚まし五つもかけたのにぃぃぃぃ!!!!!」

 

そう叫びながら通学路を走っていく···。

 

 

 

これは、赤き龍が宿る篭手を持つ青年が主役の物語だけではない。

 

夢を胸に抱き、明日へと跳ぶ力を持つ若者、『歩夢(あゆむ)』と、『歩夢』と共に歩み続けるヒューマギア、『イズ』が巻き起こす物語が重なった、正史の物語とは違う話である···。

 

 

 

歩夢がダッシュで校門をくぐった学校、駒王学園は幼小中高大一貫の進学校であり、元々は女子校であった。しかし、数年前に共学になり、男子も入ることができるようになった。だが、学園の男子と女子の割合は1:9と女子の割合が圧倒的に多い。

 

歩夢はそんな駒王学園の高等部二年生である。

 

階段を駆け上がり、自分の教室に入った瞬間、チャイムがなった。

 

「ぜえ···!ぜぇ···ギリギリセーフ···。」

 

そう言いながらフラフラと自分の席へと向かう。

 

「お、おはよう歩夢!また遅刻しそうだったな、何時もの寝坊か?」

 

そう言って声をかけてきたのは歩夢の友人、『兵藤 一誠(ひょうどう いっせい)』であった。

 

歩夢から見て一誠は外見で判断せず、内面を見て人物を決める優しい男だと歩夢は感じている。

 

「おはよう一誠···俺も好きで寝坊してるわけじゃないんだよ。それでお前は···いつも通りか。」

 

だが、欠点があるとすれば···、

 

「おお!そういえば松田と元浜が新しいの持ってきたんだがよ、お前···どっちがタイプだ?」

 

そう言って一誠は歩夢の方へバサッと広げたのは雑誌だった。その雑誌には二人の女性が桜の木の下でポーズをとっていた。

 

 

 

下着姿で···。

 

「さあ今日こそ聞かせてもらうぜ!お前は巨乳派か、貧乳派なのかな!」

 

そう、一誠の欠点は学校にも限らずどんな所でもエロ話を繰り広げることである。しかもその話をでかい声で話すわけだからよりタチが悪い。

 

先程名前が出ていた松田と元浜というのは一誠の中学生からの親友で、それぞれ「ハゲ」や「ネガネ」と呼ばれ、この学校内では一誠を含めた三人は『変態3人組』と大変不名誉な呼ばれ方をしており、一誠はこの筆頭なのがよりたちが悪い。

 

「···あのさぁ、俺前にも言ったよな?学校にそういう本持ってくんなって。後、俺はその質問に答える気は無い!」

 

そう言うと一誠といつの間にか歩夢の周りにいた松田と元浜が立ち上がった。

 

『いーや、聞かせてもらうからな!お前が俺たちと同じ同士だっていう証明を今日こそ聞かせてもらう!!!』

 

三人の声がハモり、歩夢をビシッと三人が指さす。

 

「お前らさぁ···頼むから学校内ではそういう話をするな!せめて学校内では真面目に学校に取り組んでくれ!」

 

『俺たちからスケベを取ったら何が残るんだ歩夢!!!』

 

「それ以外になにか残す努力をしろよ変態3人組!!!」

 

歩夢は思わず立ち上がってさん三人につっこむ。

 

余談だがこのように歩夢と変態3人組のコントみたいなやり取りはこのクラスではもはや日常茶飯事なのである。

 

歩夢達がコントを繰り広げていると教室の扉が開き、担任の先生が入ってきた。

 

先生が入ってきた瞬間、歩夢はサッと座り、三人も素早く自分の席へと戻る。

 

そして朝礼が始まり、そこから授業の準備をして授業を受ける。それが歩夢の学校での日常だった。

 

 

 

この日までは···。

 

 

 

 

 

放課後

 

授業と終礼が終わり、歩夢が帰る準備をしていると···、

 

「良し!行くぞ松田!元浜!」

 

そう言うとバックを持って三人は教室の外に出て走っていった。これはいつものことであり、三人は運動部の着替えを覗きに行ったのだ。歩夢はため息を吐きながら帰る準備をし、家に帰るため歩いていく。そして校門を出ようとした時、歩夢は校門の前で誰かを待っている女子生徒がいることに気づいた。誰かを待っているこの学校の生徒ならば普通の光景なのだが、その女子生徒はこの辺では見たことの無い制服を着ていたから歩夢の目に止まったのだ。

 

長い黒髪で、アメジスト色の瞳で、そしてスタイルも良い女子生徒だった。

 

すると、女子生徒は歩夢が見ていたのに気づいたのか顔を赤らめ恥ずかしそうに歩夢の方へと歩いて来た。

 

「ご、ごめん。じっとみてて···」

 

歩夢は近づいて来たのはじっとみてたことに腹を立てたんじゃないかと思い謝罪する。

 

「い、いえ···それより···聞きたいことがあるのですが···。」

 

しかし、女子生徒は見ていたことに腹を立てて近づいてきたのではなく、何かを聞くために歩夢に近づいてきたのだ。歩夢は怒っていないことに安堵しつつ何を聞きたいのかを待つ。

 

「すみませんが···兵藤一誠君って知っていますか···?」

 

恥ずかしそうにしながらそう女子生徒は歩夢に聞いてきた。

 

「一誠に?えっと···一誠の知り合いですか?」

 

歩夢は一誠になんの用か気になり関係を聞く。

 

「い、いえ···その···ちょっと用があって···良ければで良いのですが···一誠君を呼んでくれませんか?」

 

女子生徒はそう言って歩夢にお願いをしてきた。

 

歩夢は少し考え、このまま校門に女子一人で待たせる訳には行かないと決め、

 

「···分かった、ちょっと一誠に電話してみる。」

 

そう言って歩夢は携帯電話を取りだし、一誠に電話をかける。

 

しばらくして一誠に繋がった。

 

「もしもし、しで『シーッ!!歩夢、後で電話をくれないか!?今いい所だから···うわバレた!!逃げるぞ松田!元浜!』·····。」

 

それから電話からは三人の荒い息と多くの女子の声が聞こえ、歩夢が視線を校庭の方へ向けると、剣道部の女子生徒に追われている三人がいた。

 

「はあ···ちょっと待ってて、一誠連れてくるから。」

 

「う、うん···。」

 

歩夢はため息をつき、その女子生徒に一誠を連れてくると言うと、女子生徒は困惑しながらもそれを了承したのを確認し、歩夢は三人の元へ全力で走っていった。

 

 

 

後日談だがその光景を見ていた校内の生徒はこう言っていた。歩夢が三人の近くまで走って近づくと、三人に向かってとても綺麗な飛び蹴りを放っていたと···。

 

 

 

 

 

「たくっ、何でお前らはやるなって言ったことをやるんだよ!」

 

「痛ててててて!!悪かった!悪かったって!!!」

 

あの後、三人を女子生徒に謝罪させ、三人に説教し、一誠の耳を引っ張り、松田と元浜は歩夢の後ろで頭を擦りながら校門へと戻ってきた。

 

「待たせてごめん!ほら、お前に用があるって言ってた女子生徒だ。」

 

歩夢は女子生徒に待たせたことの謝罪をし、一誠を女子生徒の前に出す。

 

「えっと···君は?」

 

 

 

「は···初めまして兵頭一誠くん。私は···えっと···『天野 夕麻(あまの ゆうま)』って言います。えっと···私···この前一誠君を見かけて···ひ、一目惚れです!もし付き合っている人がいなければ、私と、付き合ってください!」

 

女子生徒···天野夕麻が一誠に向けて頭を下げながらそう言った。

 

「えっ···?ええええええええええええぇぇぇぇ〜〜〜!!!???いっ、一誠にぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!???」

 

「ま、まじっすかぁーーーー!!!!????」

 

校門に歩夢と一誠の叫び声が響き渡った。

 

歩夢は一誠と夕麻を交互にみる。見ていると、ふと、松田と元浜が静かなのが気になり後ろを振り返ると松田と元浜は口をあんぐりと開けていた。そして目から滝のような涙を流していた。

 

「「う···う···裏切り者めぇぇぇぇぇぇえ〜〜〜!!!!!」」

 

松田と元浜はそう泣き叫びながら二人一緒にどこかへ走っていった。

 

二人が走っていくのを見送り、一誠の方に向くとしばらくの間ポカーンとしていたが、現実だとわかったのか徐々に顔がにやけていった。

 

「も、勿論OKだよ!よろしく、夕麻ちゃん!」

 

そう言って一誠ははしゃぐ。

 

「よ、良かった〜···!こちらこそ···!」

 

夕麻は顔を赤らめながらそう言った。

 

一誠と天野夕麻が二人の空間を作り出したのを見て、

 

「そ···そんじゃおじゃま虫は退散しますか、後は二人でごゆっくり〜。」

 

二人にそう言って歩夢は自宅へ帰ろうとする。

 

「あっ、一誠君を呼んでくれてありがとう。えっと···」

 

「ん?···ああ、俺の名前は紫電歩夢だ!それじゃ、またな、一誠、天野さん!」

 

そう言って歩夢は真っ直ぐ帰路に着く。

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、食パン買うの忘れてた。」

 

前にやることを思い出し、買いに行く。

 

 

 

 


 

 

 

 

翌日

 

今日はイズに起こしてもらい、歩夢は余裕を持って学校に着いた。

 

「おっ、歩夢!今日は早いな!」

 

教室に着くと上機嫌な一誠がいた。

 

そして松田と元浜からは殺気がダダ漏れになっていた。

 

「おっす、おはよー。」

 

しかし歩夢は殺気を無視して三人に挨拶をする。

 

「それで一誠、天野さんとはどうなったんだ?」

 

「ふふっ〜、今度の日曜日に、夕麻ちゃんとデートすることになったんだァ!」

 

「お〜、そりゃあおめでとう一誠。せっかく出来た彼女なんだ、しっかりエスコートしろよ。」

 

「おう、分かってるよ!そしてここから···俺のハーレムの夢が、始まるんだぁ〜〜!!!」

 

一誠は立ち上がり、天井を指さしそう言った。歩夢は苦笑いをし、松田と元浜以外のクラスメイトは一誠を冷たい目で見ていた。

 

「そ、それにしても、お前が先に恋するなんて予想外だったな。」

 

「いやぁ、悪いな!俺は先に大人の階段を登らせて貰うぜ!」

 

そう言ってガッツポーズをする一誠。ちなみに一誠が先程の言葉を言った瞬間、松田と元浜の殺気がさらに濃くなっていた。

 

俺もいつか恋をしてみたいし···俺にも春が来て欲しいな!俺だけじゃなく、皆の元にも···春よ〜···こぉい!!はぁい!アユムじゃあぁ〜····ないとー!!!

 

そう言いながら上半身を大きく動かしながら最後に一誠に向けて指を指す。

 

 

 

 

 

歩夢が渾身のギャグを言った瞬間、先程の賑わいが嘘のようにクラスはシーーンと静まり返った。

 

「···あれ?」

 

「歩夢···俺の喜びの熱が···一気に冷めたぞ···。」

 

「えっ!?」

 

「元浜···何か···一誠の事どうでも良くなったな···。」

 

「ああ···後歩夢、今のお前のギャグのせいで皆の春が吹き飛んで一気に冬になったぞ。」

 

「グフッ!!」

 

歩夢が静まり返った教室に困惑していると、一誠が苦笑いをしながら自分の熱が冷めたことを報告すると歩夢は驚き、松田と元浜の言葉が歩夢に対してトドメの言葉となり歩夢は床に倒れた。

 

「何でだ···何でだ···何で俺のギャグは受けないんだ···。」

 

歩夢は床からゆっくり起き上がりながらそう言う。

 

「そりゃお前···オヤジギャグが誰でも笑うネタじゃねえからだよ。」

 

一誠が呆れながら歩夢にそう言う。

 

ここだけの話だが、歩夢は昔からギャグを言っているのだが、歩夢の言ったギャグの全てがオヤジギャグで周りに全く受けなかった。

 

更に高等部一年生の時の文化祭の時には歩夢のギャグを知らなかったクラスは歩夢の出した意見の『歩夢の爆笑お笑いライブ』を了承してしまい、文化祭のステージの上で歩夢はギャグを言って大スベリしたのだ。

 

そして文化祭のステージで本来五分あるライブを、歩夢は一分で生徒会から強制的にステージを降ろされたのだ。

 

その後、歩夢は学校中から『ギャグだけはつまらない男』という大変不名誉な呼ばれ方をされるようになった。

 

歩夢はフラフラと自分の席に戻り、頭を抱え、

 

「ちくしょう···いつか絶対大爆笑が巻き起こるギャグをやってやる···!」

 

そう決意していた。

 

(オヤジギャグを言っている間は無理だろうな···。)

 

一誠達の心はここだけ揃っていた···。

 

 

 


 

 

 

放課後

 

「それじゃ、日曜日のデートを楽しんでくるぜ〜!!」

 

そう言って一誠はダッシュで教室を出てった。明日から休日だから、デートの結果を聞けるのは週明けになる。

 

「「もげてしまえ〜!!!!」」

 

そう教室で叫ぶのは松田と元浜だ。この性格を直せば幾分かマシなのにと歩夢は思いながら歩夢は教室を出て、下校しだした。

 

下校途中、スーパーから出てきた人物を見て、声をかける。

 

「あ、イズ!」

 

出てきた人物、イズは歩夢の声に気づき、歩夢の方へ顔を向ける。

 

「歩夢様、本日もお疲れ様でした。」

 

イズはそう言って歩夢に頭を下げる。ちなみに諸事情でイズは外では社長と呼ばないようにしている。そして歩夢が社長と呼ばよれているのは、またの機会で話そう···。

 

「ありがと、イズは買い物?」

 

「はい、今日の晩御飯と明日の分の食材を買いました。」

 

そう言ってイズは手に持っているビニール袋を歩夢に見せる。

 

「そっか、イズ。そっち俺が持つよ。」

 

「いえ、歩夢様にお手を煩わせる訳にはいけないので···。」

 

「気にするなって、俺たちは社長と秘書の関係であると同時に、家族でもあるんだからな。俺にも家族の手伝いをさせてくれよ。」

 

「···かしこまりました。では、こちらをお願い致します。」

 

そう言ってイズは左手に持っているビニール袋を歩夢に差し出し、歩夢はそれを受け取り、二人は並んで帰路に着いた。

 

「そういえばイズ、今日学校で聞いたんだけど···一誠と昨日言った天野さんが日曜日にデートをするんだってよ。」

 

「まあ、それはおめでたいことですね。兵頭様も天野様も日曜日のデートを楽しめると良いですね。」

 

「ああ、週明けにデートの結果を聞くつもりだけど楽しみだなぁ、一誠と天野夕麻ちゃんがラブラブになることを祈っているよ。」

 

今日あった出来事を話しながら二人は自宅へと帰って行った。

 

 


 

 

 

 

日曜日

 

土曜日はとある事情で外出せずに自宅にいたが、イズに二日連続で家にいるのはダメだと言われて、今日は散歩をしに歩夢は外に出かけている。

 

「う〜···今日は良く晴れた日だな。今日はいいことがありそうだな。」

 

そう言って歩夢は身体を伸ばす。だがこれといってやることは無い。

 

「ん〜···何するっかなー?っておわっ!?」

 

「きゃっ!」

 

歩夢が歩いていると横から誰かが歩夢にぶつかった。歩夢はよろめいたが、すぐに体制を立て直す。

 

「ご、ごめんなさい!余所見をしていて···!」

 

そう言いながらぶつかった女性は頭を下げて謝ってきた。

 

「い、いや。こちらこそごめん。俺も気づかなかったのが悪いんだし···ってあれ?天野さん?」

 

「えっ?···あっ、確か···紫電くん···だよね?」

 

歩夢とぶつかった女性は天野夕麻だった。夕麻の格好はこの前の学校の制服ではなく、薄い紫色の上着、その下には黒い下着、そして黒いスカートを履いて、可愛らしいピンクのバックを持った姿だ。

 

(かっ、可愛い〜!いかにもデートって感じの格好だぁ!···何か一誠が羨ましくなってきたなぁ···。)

 

歩夢は夕麻を見てそう感じていた。

 

「···どうしたんですか、紫電さん?」

 

夕麻は歩夢が自分を見てポカーンとしている歩夢のことが気になり、声をかける。

 

「あっ!?ああいや、似合ってるなーって思ってて···そのぉ···気分を悪くしたなら···ごめん···。」

 

そう言って頭を軽く下げる。

 

「そ、そんな!で、でも···似合ってるって···嬉しいな···。」

 

そう言って夕麻の顔は赤くなる。

 

「あの···聞きたいことがあるの。」

 

しばらくモジモジしていると、夕麻が歩夢に質問をする。

 

「その···紫電さんから見て···一誠君ってどんな人?」

 

夕麻は歩夢に一誠はどんな人かを聞く。

 

「一誠?···一言で言うなら···『良い奴』かな?アイツは前、俺の夢を話したことがあるんだ。その時、アイツは俺の夢をすげぇって言ってくれたんだ。それまでは、俺の夢は馬鹿にされたり、無理だって否定されるばっかだったんだけどな、俺の夢を初めてすごいって言ってくれたのは、一誠なんだ。まあ簡潔に言うと、一誠は外見で決めず、内面で人を評価する···良い奴なんだよ。」

 

歩夢は夕麻にそう言った。

 

「···そう、優しいんですね、一誠君は···ありがとうございます、一誠君のこと、教えてくれて。」

 

「いや、良いんだ。それより···今日って一誠とのデートの日じゃありませんか?」

 

そう言うと、夕麻はハッとした表情になった。

 

「そ、そうでした!それじゃあ···あっ、あの!」

 

夕麻は一誠を待たせているかもしれないことを思い出し、待ち合わせ場所に行こうとしたが、急に立ち止まり、再び歩夢に声をかける。

 

「ん?どうしましたか?」

 

「あ、あの···実は紫電さんに話したことがあって···今日の、夕方六時半頃に、南駒王公園に来てくれませんか?」

 

夕麻はそう言って頭を下げた。

 

「えっ!?えーっと···」

 

歩夢はいきなりの申し出に戸惑うが、自分のこれからのスケジュール、用事等を考え···、

 

「···分かった、良いよ。」

 

歩夢は了承した。

 

「あ、ありがとうございます。すいません、急にこんなことをお願いして···。」

 

そう言いながら夕麻は手を伸ばし、歩夢の両手を握りしめる

 

「いっ!?いやいや!?べっ、別に大したことじゃ···あっ、そうだ!

 

それじゃ、一誠と天野さんのデート成功を祈って、俺の爆笑ギャグを披露するよ!」

 

歩夢は美人な女性に両手を握られたせいか、混乱していきなりそう言った。

 

「ば、爆笑ギャグ···ですか?」

 

歩夢が言ったことに少し困惑する夕麻。

 

「スー···ハーッ···よし!

 

 

 

 

 

 

 

俺の爆笑ギャグは!天野さんを大笑いさせるまで、おぉーわらないっ!はぁい!アユムじゃあ〜···ないとー!!!

 

歩夢は上半身を思いっきりそり、溜めて勢いよく上半身を起こし、人差し指を突き出す。

 

 

 

 

 

指さした先にいたのは、こちらに背を向け、震えながらしゃがんでいる夕麻の姿だった。

 

「えっ···?ちょっ···!?だ、大丈夫、天野さん!?」

 

歩夢は初めての反応に困惑する。

 

「だっ、大丈夫···!わ、私は大爆笑だから···!ま、また後で···!」

 

そう言いながら立ち上がり、フラフラしながら歩いて行った。

 

その姿を見送り、歩夢は膝をついた。

 

「お、俺のギャグは···、

 

 

 

 

 

人の体調すら悪くするほど酷いのか···。

 

畜生···絶対···いつか···必ず···みんなが笑う爆笑ギャグを考えてやるからな···!」

 

そう決意し、夕麻とは別方向へと足取りを重くして歩いて行った。

 

 

 

 

 

余談だが、夕麻は歩いて行った後、空いてあるベンチに座り、口を手で隠し、顔を真っ赤にして震えていた。彼女のその姿が、五分ほど見られたそうな···。

「っ···ふふっ···!」

 

 

 

 

 

 

「ただいまぁ〜···。」

 

歩夢は気分を落としながら自分の家へと帰宅した。

 

「おかえりなさいませ、歩夢社長。」

 

帰宅すると玄関では既にイズが立って待っていた。

 

「歩夢社長、衛星ゼアから報告が有り···

 

 

 

先程、『ゼロワンドライバー』と、『プログライズキー』のメンテナンス及び、アップデートが完了したとの報告を受信しました。」

 

衛星ゼアというのはある会社が作り出した超高性能の人工知能を、人工衛星に組み込んでおり、イズわ含めたヒューマギア達を管理し、蓄積された膨大なデータを利用し彼等をラーニング···学ばさせている。

 

そしてゼアはある方法を使い、ゼアのデータを使い、武器やプログライズキーを製作し、歩夢に渡している。

 

「っ!本当か!」

 

先程の暗さが嘘のように歩夢は元気になり、靴を脱いで家に上がる。

 

イズに着いていき、リビングのテーブルの上には主に黄色、黒、赤で彩られた機械と、手持ちサイズの黄色い蛍光色で、バッタの絵が描かれている四角い機械が置かれていた。

 

「おぉー!ようやく帰ってきたんだな!俺たちの夢の結晶が!」

 

そう言いながら、二つの機械···『ゼロワンドライバー』と『プログライズキー』を両手に持つ。

 

「これまでゼロワンドライバーを使用しての戦闘データを元に、衛星ゼアが新しいプログライズキーを構築中だそうです。」

 

イズは歩夢に向かってそう言ったが、歩夢はゼロワンドライバーとプログライズキーが戻ってきた事に喜びすぎて話を聞いていないようだった。

 

 

 

 

 

 

 

ゼロワンドライバーとプログライズキーを見ているのに夢中になっていたら、あっという間に夕麻と約束した時間が迫っていた。

 

「それじゃあイズ、行ってくるから留守番頼んだ!」

 

「お待ちください歩夢社長、こちらをお持ちになって下さい。」

 

イズは歩夢が行こうとするのを止め、黄色のラインが入ったカバンと、ゼロワンドライバーとプログライズキーを歩夢へと差し出した。

 

「ゼロワンドライバーとプログライズキーに『アタッシュカリバー』まで···大袈裟だなぁイズは。大丈夫だって、ちょっと会いに行くだけだか『歩夢社長、貴方は何時何処で狙われるか分からない立場、それに、社長はまだ学生の身、何かあってからでは遅いのです。』わ、わかったよイズ···。」

 

歩夢は上記の三つを持たせようとしたイズに断わろうとしたら、イズは歩夢の言葉を遮り、歩夢の立場をしっかりと再認識させる。

 

イズの剣幕に押され、歩夢は上記の三つを持って、家の前に停めている自転車のカゴに三つのアイテムを入れたカバンを入れて自転車に乗り、夕麻が言っていた南駒王公園へと赴いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく自転車を漕いでいると、目的地である南駒王公園が見えた。

 

だが歩夢は妙な違和感を持っていた。

 

「···おっかしいな。ここの公園は夕方頃になってもまだ子連れの人達が見えたりするのに、今日は全く見えなかったな···。」

 

そう言いながら、自転車を南駒王公園の入口に停め、カゴに入れてあるカバンを持って、公園へと入っていく。

 

歩夢は公園を見渡すが自分以外の人が見えず、公園内に不気味な雰囲気が漂っている。

 

「···もうすぐで六時半か···、天野さんはこんな所に呼び出して何をするんだ?」

 

そう言っている間に、六時半になった···。

 

 

 

 

 

 

 

「そりゃあ呼び寄せて殺すためッスよ、下等種族である人間のお前を。」

 

「!!」

 

後ろから不意に声が聞こえ、振り返ると誰もいなかったが、大量の黒い羽がいつの間にか空中に舞っていた。

 

「な、なんなんだ···!?一体···何が···!!?」

 

歩夢は背中に冷たいものがはしるのを感じたあと周りを見渡すと、空の模様が普通見れないはずの紺色のマーブル模様になっていた。

 

しかし歩夢はそんな空よりも気になるものが空にはあった。

 

そこには女性が宙に浮いていたのだ。女性はゴスロリ風の服を着た金髪の女性だった。しかしその女性には背中からカラスのような黒い翼を広げていた。

 

(ど、どうする···!?ここは···一旦逃げよう!)

 

歩夢は思考をめぐらせ、ダッシュで自転車がある場所へと走っていく。

 

そして自転車が見え、自転車に乗ろうと走り出そうとした瞬間、目の前に光が通り抜け、爆発音と同時に爆発した。爆発と共に目の前にあったはずの自転車は、自転車があった所には光で出来た槍が地面に刺さっていた。

 

(マジ···かよ···!)

 

歩夢は息を飲み、空いた穴を見つめる。しかし直ぐに頭を降って思考を切りかえ、飛んでいる女性の方へと視線を向ける。

 

「な、なあ!お前は誰なんだ!なんで俺を襲うんだ!?」

 

「貴様が知る必要は無い。何故ならここで死ぬのだからな。」

 

歩夢が金髪の女性に声をかけると、今度は後ろから別の女性の声が聞こえた。

 

歩夢が後ろを振り返ると、そこには黒いボディコンスーツを着た青髪の女性が黒い翼を広げ飛んでいた。

 

「なっ!?ふ、二人目!?」

 

「お前達、あまり時間をかけるな。」

 

再び背後から声が聞こえると、いつの間にか金髪の女性の横に、紺色のコートを着た男が黒い翼をひろげ飛んでいた。

 

そして青髪の女性も金髪の女性の横へと飛んでいった。

 

歩夢は二歩、三歩と後ろへとさがる。

 

「どうやら驚きで声も出ないようだが、私達には関係の無いことだ。」

 

「ウチら堕天使に狙われるなんて、運がないっスね〜。お前には恨みは無いっスけど、神器(セイクリッドギア)を持っている以上、野放しにしておく必要は無いっスからね。」

 

「下級な存在如きに余り時間はかけられないのでな、直ぐに殺させてもらう。」

 

三人の黒い翼を生やした男女は、歩夢に向かってそう言った。

 

「···死ぬ前に、一つだけ聞きたいことがある···、俺を殺した後も···同じことを繰り返すのか···?」

 

歩夢は俯きながらそう言った。

 

「答える義理はないっスが、冥土の土産に教えてやるっス。

 

 

 

YES···とだけ言っておくっス。···これで満足っスか?」

 

金髪の女性が歩夢を見下しながらそう言った。

 

「···ああ、満足だよ。そしてもう一つ、決めたことがある···。」

 

そう言って、歩夢はカバンに手を入れ、ある物を握りしめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで、お前達を止めなきゃいけないってことだ!!」

 

そう言ってカバンから機械···ゼロワンドライバーを取り出し、腰に付ける。

 

『ゼロワンドライバー!』

 

腰に着けた瞬間、ゼロワンドライバーからベルトが伸び、歩夢の腰にゼロワンドライバーは装着され、音声がなった。

 

「···それがお前の神器(セイクリッドギア)のようッスね。だが、お前がここで死ぬのは変わりないことっス!!」

 

そう言いながら金髪の女性の右手に光が集まりだし、光で出来た槍が完成した。

 

そんな中でも歩夢は冷静に自分のズボンのポケットからプログライズキーを取り出す。

 

神器(セイクリッドギア)がどういう物か知らないけど···多分、これは違う!それに···俺は死ねない、俺の夢を···叶えるまで!」

 

そう言ってプログライズキーを右手で持ち、親指でプログライズキーの上にあるボタンを押す。

 

 

 

 

 

《JUMP!》

 

 

 

 

 

プログライズキーから音声が辺りに鳴り響く。

 

「くたばれ!下等な人間!!!」

 

そう言って槍を歩夢へ投げる。槍が歩夢へと迫る中、歩夢は冷静にプログライズキーをゼロワンドライバーにかざす。

 

 

 

 

 

《AUTHORIZE》

 

 

 

ゼロワンドライバーがプログライズキーを承認した瞬間、衛星ゼアから光が放たれ、地球へと降り注ぐ。承認した人物目指し···。

 

歩夢に向けて放たれた槍は、真っ直ぐ歩夢の心臓へと向かって行く。歩夢の数メートルとなり突き刺さることが確定したと思われた···。

 

 

 

 

 

突如空から現れ、歩夢と三人の男女の間に降り、光の槍を踏み潰した、巨大なバッタが現れるまでは。

 

「何だ、アレは···!?」

 

青髪の堕天使が三人の気持ちを代弁して言う。

 

歩夢の前に降り立った機械で構成されたバッタは、歩夢の周りを飛び跳ねる。まるで歩夢を守るように。

 

ゼロワンドライバーから軽快な待機音が鳴る中、歩夢は両手を下げ、大きく両手を回しながら、両手を前に出し、クロスさせる。

 

そして左手をドライバーに添え、右手を下から上に大きく回しながら、プログライズキーの蓋を展開し、顔の横に持ってくる。

 

そして···、

 

 

 

 

 

 

 

「変身!」

 

 

 

そう言ってプログライズキーをゼロワンドライバーに装填する。

 

 

 

 

 

《PROGRIZE!》

 

 

 

《飛び上がライズ!

 

 

 

ライジングホッパー!!

 

 

 

《A jump to the sky turns to a riderkick.》

 

 

 

音声が始まると同時に、歩夢の全身は黒いパワードスーツに包まれ、顔には鉄で作られた顔の骨格の様な物がある。

 

そして飛び跳ねていたバッタがいくつかのパーツに別れ、別れたパーツから光が出て、パワードスーツの上に、黄色の装甲を付けていく。

 

そして目の部分には赤い複眼が出来た。

 

変身した歩夢は視線を三人の堕天使の方へ向けると、堕天使達は歩夢の変身に驚いているようだった。

 

「お、お前は···なんなんスか···!?」

 

金髪の堕天使が歩夢に向けて、そう言った。

 

「俺はゼロワン!

 

 

 

 

 

仮面ライダー···ゼロワンだ!!

 

そう言ってその場で一回転して両手を一を表す形にして腕を組んだ。

 

「くっ!しょ、所詮姿が変わっただけのハッタリッス!行くッスよ!カラワーナ!ドーナシーク!」

 

『ミッテルト、貴様も油断するな。』

 

金髪の堕天使···ミッテルトが青髪の堕天使···カラワーナと紺色のコートを着た堕天使···ドーナシークに声をかけるとカラワーナが返事を返す。

 

三人の堕天使が手に光で小さな弾···光弾を作るとそれぞれが歩夢に向けて放つ。

 

その様子を歩夢は見て、右足にグッと力を入れると、地面を蹴り、走り出した。

 

走りながら飛んでくる光弾を間をすり抜けて行くゼロワンを見て三人の堕天使は驚きつつも、自分たちの手に光の槍や、剣を作り出した。

 

ゼロワンは光弾を避けきると、足に力を込め飛び上がり、あっという間に堕天使達のいる所まで飛び上がった。

 

『な、何!?』

 

三人の堕天使が驚いている間に、ゼロワンは足に力を込め、ドーナシークに向けて、蹴りを放つ。ドーナシークは光剣で蹴りを防ぐものの、勢いまでは殺せず、地面へと叩きつけられた。

 

「「ドーナシーク!!」」

 

ミッテルトとカラワーナがドーナシークを心配するように声を上げる。

 

土煙を上げた所からは、少しふらつきながらドーナシークが立ち上がっていた。

 

「くっ···。」

 

立ち上がり、ドーナシークは前を見ると、既にゼロワンが走ってきており、そのままの勢いで拳を繰り出そうとしていた。

 

「っ!!」

 

ドーナシークがそれに気づくと、横に転がりゼロワンが攻撃する場所から僅かに逸れる。拳を突き出した先には公園に植えられている木があり、拳が当たった瞬間、木は音を立ててへし折れた。

 

「なっ!?何という力···!?」

 

「あ、あんなもの喰らえば、タダでは済まないッスよ!どうする?カラワーナ!」

 

「···ならば、私達全員で槍や剣で攻撃するしかない。今の奴には武器が無い。すなわち、我らの攻撃を防ぐ手段が無い···やるぞ!」

 

「OKッス!」

 

そう言うと三人はそれぞれ剣と槍を構え、ゼロワンへと突撃する。

 

一方、堕天使達が話している間、ゼロワンの方は···、

 

 

 

 

 

「あっ!?やっべぇ!やりすぎた!不味いな···弁償とかにならないかな···?って、おわっ!?」

 

ゼロワンは倒してしまった木を見て慌てていた所を、三人が攻撃を初め、ゼロワンは辛うじて避けてはいるが、時々当たり、アーマーから火花が飛び散る。

 

「くっ!ならあれだ!」

 

そう言ってゼロワンは三人の攻撃をかわし、何処かへと走り出した。

 

「どうしたッスか?かなわないとわかって、敵前逃亡ッスか?」

 

そう言いながら追いかけてくる堕天使達のを無視し、走った先にあったゼロワンドライバーとプログライズキーが入っていたカバンに手を伸ばし、取った。

 

「そんなカバンで何が出来る!」

 

カラワーナがそう言いながら光槍を構え、ゼロワンに突き刺そうとする。

 

ゼロワンはカラワーナの動きを見て、光槍に向けてカバン振ると、火花を散らして槍を弾く。

 

弾かれたことに驚く三人を他所に、ゼロワンはカバンに手をかけ、力を込めると、

 

 

 

《BLADERIZE》

 

その音声と共に、カバンから刃が出てきて···『アタッシュカリバー』となった。

 

「じゃじゃーん!」

 

ゼロワンは子供のように、武器に変わったアタッシュカリバーを見せつける。

 

見せつけながらも三人の剣と槍の攻撃を、アタッシュカリバーで捌いていく。

 

そして三人の攻撃の中に隙が見えた瞬間、ゼロワンは力を込めてアタッシュカリバーを振り、三人の剣と槍を破壊した。

 

「っ!ここは一旦、空へ退避しましょう!」

 

ドーナシークがそう言うと、三人は黒い翼を広げ、空へと飛び上がった。

 

「逃がさない!···ん?」

 

ゼロワンが三人を追いかけようとした時、歩夢はこの前まで無かったはずのプログライズキーがらベルトに付けられているホルダーに入っていることに気づく。

 

「これって···イズが入れてくれたのか···?でも、コレなら!よぉーしっ!」

 

そう言ってゼロワンドライバーからライジングホッパープログライズキーを取り出し、ホルダーからマゼンタ色のプログライズキーを取り、スイッチを押す。

 

 

 

《WING!》

 

そしてプログライズキーをゼロワンドライバーにかざす。

 

《AUTHORIZE》

 

再びゼアからゼロワンに向けて光が放たれた。

 

「こ、今度は何が···『っ!ミッテルト!!カラワーナ!!後ろです!』っ!」

 

三人がゼロワンを警戒して見ていると、後ろから何かが近づいてきていたことに気づいたドーナシークが二人に声をかける。

 

それは機械で構成された大きな鳥だった。鳥は三人に向けて飛んでくる。

 

三人は背中の黒羽から数枚羽を撒き散らしながらも鳥の突進を避けた。

 

そして鳥はゼロワンの上空を旋回しながら飛んでいる。

 

ゼロワンは自分の上で旋回する鳥を確認した後、マゼンタ色のプログライズキーを展開した。

 

「いくぜ、鳥ちゃん!!」

 

そう言ってプログライズキーを装填した。

 

 

 

《PROGRIZE!》

 

 

 

《Fly to the sky!

 

 

 

フライングファルコン!

 

 

 

《Spread your wings and prepare for a force.》

 

 

 

プログライズキーを差し込んだ瞬間、ライジングホッパーのアーマーが変形、移動を始め、顔のパーツは左右に別れ、側頭部に装着された。

 

そして上を旋回していた鳥はいくつかのパーツに別れ、光が出て、パワードスーツの上に新たにマゼンタ色のアーマーを形成した。

 

「さあ···いくぜ!」

 

そう言ってゼロワンがジャンプすると、何と三人と同じように飛べるようになっていた。

 

そして空を飛びながら三人に向けてアタッシュカリバーで攻撃をする。

 

「なっ!?くっ···!人間如きが···我らと同じように飛ぶだと···!?」

 

カラワーナが驚愕の表情を浮かべながらそう言う。

 

「人間だからだ!人間だから···自由に空を飛びたいという夢が···プログライズキーに詰まって···この姿になることが出来たんだ!!この姿は···ゼロワンは!俺たち人間と···ヒューマギアの夢が···思いが詰まった姿だ!

 

ミッテルト!カラワーナ!ドーナシーク!お前達を止められるのはただ一人···、

 

 

 

 

 

 

 

俺だ!!

 

そう言って腰からライジングホッパープログライズキーを取り出し、アタッシュカリバーに装填する。

 

 

 

《Progrise key confirmed. Ready to utilize.》

 

プログライズキーを装填した瞬間、アタッシュカリバーから音声が流れた。

 

《グラスホッパーズアビリティ!》

 

その音声が流れたのを確認した後、ゼロワンはアタッシュカリバーを構える。

 

「これで···終わらせる!」

 

そう言ってアタッシュカリバーの持ち手の部分にあるトリガーを押す。

 

 

 

《ライジングカバンストラッシュ!》

 

 

音声が流れ終わった瞬間、アタッシュカリバーの刀身にはイエローのエネルギーが走る。

 

アタッシュカリバーを両手で持ち、三人へと突撃する。

 

三人は寄ってはこられないよう光弾をばら撒くが、ゼロワンは僅かな隙間を抜いながら飛び、時にアタッシュカリバーを振り、徐々に三人に距離を縮めていく。

 

そしてアタッシュカリバーの射程圏内に入った瞬間、ゼロワンはミッテルトに向けてアタッシュカリバーを振るう。

 

ミッテルトは咄嗟に光剣を作り防ごうとするが、咄嗟に作った為かアタッシュカリバーの一撃で、光剣は砕け散った。

 

「でぇぇりゃあぁぁ!!!」

 

そしてゼロワンはアタッシュカリバーを振るい、ミッテルトの腹にアタッシュカリバーを打ち込む。

 

「がっ···!」

 

ミッテルトは苦悶の声を上げた後、力なく地面へと落ちていった。

 

「ミッテルト!くっ、貴様ぁぁ!!!」

 

カラワーナはミッテルトが倒された相手、ゼロワンに向けて光槍を投げつける。

 

「カラワーナ!辞めるのです!」

 

ドーナシークがカラワーナを止めようとするが、既にゼロワンは飛んでくる光槍をアタッシュカリバーで弾き、カラワーナに近づいていた。

 

「どりゃぁぁぁ!!!」

 

そしてミッテルトと同じように、カラワーナの腹にアタッシュカリバーを打ち込んだ。

 

「がはっ!あ···。」

 

カラワーナも苦悶の声を上げた後、何かを言おうとしたが、力が抜け、地面へと落ちていった。

 

「カラワーナ!っ!」

 

ドーナシークはカラワーナを心配して声を上げたが、その隙をゼロワンが逃すわけなく、ドーナシークへと向かっていく。

 

ドーナシークもゼロワンが近づいてきたことに気づいたが、時既に遅し···既に射程圏内へと入られていた。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

ゼロワンが雄叫びを上げながらアタッシュカリバーを振るう。

 

ドーナシークは咄嗟に光剣を作り防いだが、三撃目の攻撃で光剣が砕け散った。

 

「はああぁぁぁぁぁーー!!!!」

 

再び雄叫びをあげアタッシュカリバーを振るい、ドーナシークの腹へと打ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

カバンストラッシュ

 

 

「っ···!」

 

ドーナシークは声すらも上げられず、地面へと落ちていった。

 

ゼロワンは地面へと落ちていった三人の堕天使の方へと向かっていった。

 

 

 

 

 

「ごほっ···ごほっ···!」

 

ゼロワンが地面に降りると、そこにはお腹を押さえ、咳き込んでいるドーナシークがいた。

 

「ごほっ···何故···私達を···殺さない···。」

 

ドーナシークはそう尋ねた。

 

他の二人もドーナシークのように喋れはしないが、咳き込んでいた。

 

ゼロワンは光弾や光剣、光槍を壊すのには刀身を使ったが、三人に打ち込む時には、アタッシュカリバーを反転させ、峰で打ち込んでいたのだ。

 

「···言っただろ?俺はお前達を止めるって。別に俺はお前達を殺そうってわけじゃないんだ。ただ、何でこんなことをするのかを、聞きたいだけなんだ。」

 

ゼロワンはドーナシークの目を見てそう言った。

 

「···とんだ甘い人間だ···。貴様を殺そうとしたのに···私達を殺そうとしないなんて···。」

 

「さあ、答えてもらうぜ!なんでお前たちはこんなことを!ぐわぁ!!!」

 

ゼロワンがドーナシークに訪ねようとした瞬間、ゼロワンの背中に衝撃がはしり、吹き飛ばされ地面を転がる。

 

「ぐっ···!一体、何が『下等な種族のくせに、いきがっているんじゃないわよ。』っ!?」

 

ゼロワンが顔を上げると、空に際どい格好をした女性の堕天使が空を飛んでいた。

 

『レ、レイナーレ様···!』

 

その堕天使を見た三人が、その堕天使の名前らしき言葉を言った。

 

「···あんたが、レイナーレか···!なら聞かせろ!何で!何で俺を狙う!俺だけじゃない、何で他の人達を!!」

 

「そんなの決まってるじゃない、私の目的のためよ。恨むならその身に神器を宿した神を恨みなさい。」

 

ゼロワンがレイナーレに人を殺す理由を尋ねると、悪そびれも無く、そう言った。

 

「···そうか、だったら!あんたをここで倒すしかない!」

 

そう言って地面に落ちているアタッシュカリバーを拾って、レイナーレに向ける。

 

「···哀れね、私に逆らうとどうなるか···後悔するがっ!?」

 

レイナーレが喋っていると、ゼロワンと堕天使達の間から赤い光が溢れ出す。

 

「こ、今度は何だ···!?」

 

「チッ!グレモリーか···!ミッテルト!カラワーナ!ドーナシーク!一旦引くわよ!!」

 

レイナーレがそう言うと、三人は痛む体を起こして、空へ飛び立つ。

 

「まっ!待てっ!」

 

「人間、一つ忠告をしといてあげるわ。命が大事なら、二度と私達の邪魔をしない事ね。」

 

そう言って四人の堕天使は何処かへと飛んで行った。

 

しかし、ゼロワンの方はまた別の問題が起きていた。

 

先程光った赤い光は、空中に何かを描き出したのだ。

 

赤い光が描いていたのは魔法陣らしきものだった。

 

「全く!今日は厄日だ!」

 

そうゼロワンが言って公園の入口の方へと走り、飛んだ。

 

それが下に下がっていくと、そこには二人の男女が立っていた。

 

そして、立っている男女のことを遠くから見たゼロワンは···否、歩夢は知っていた。

 

(えっ!?あれって····!

 

 

 

 

 

同じ学年の『木場 祐斗(きば ゆうと)』さんと、一年生の『塔城 小猫(とうじょう こねこ)』さん!?何で魔法陣みたいな物から出てきたんだ!?いや、今はそんなことはどうでもいい!今は俺の正体がバレる前に···、

 

 

 

 

 

逃げるんだよォ!

 

そう心の中で叫びながらゼロワンは家まで全速力で飛んで行った。

 

紺色のマーブ模様だった空は、いつの間にか元に戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「···どうやらここで戦闘があったようだね。」

 

そう言って公園を見ながら、木場祐斗はそう言う。

 

「何か、手がかりらしきものは···『祐斗先輩』ん?どうしたんだい、小猫ちゃん。」

 

木場が周囲を探索していると、小猫が木場に声をかける。

 

「コレをそこで···。」

 

そう言って小猫が持っていたのは···、

 

 

 

 

 

自転車のハンドル部分だった。

 

「···ハンドルより下の方が焦げている···。それに、普通に燃やしても、こうはならない。やっぱり、ここで何かがあったみたいだね。」

 

木場と小猫が話し、小猫はハンドルを自分の顔の方へと近づけると、そのハンドルに向けて、匂いを嗅ぐ仕草をとる。

 

「スンスン···この匂い、駒王学園で嗅いだことのある匂いです。そして、まだ匂いが強いので、先程臭いがついたばっかりです。」

 

小猫はハンドルを見ながらそう言った。

 

「つまり、僕たちの学園の関係者がここにいたってことだね。」

 

木場がそう言うとこくんと小猫は頷く。

 

「···良し、一旦部長達の方へ戻ろう。このハンドルと、地面に落ちてるこの黒い羽根を持って。」

 

そう言って木場は数枚黒羽を拾い、小猫の傍による。

 

すると再び、二人の頭上から赤い魔法陣が出てきて、魔法陣が下がっていき、魔法陣が地面に降りきった時には、二人の姿はそこには無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日を境に、歩夢···ゼロワンの物語は、大きく進むことになる。




次回、ハイスクールREAL×EYES

「お前ら、本気で夕麻ちゃんのこと覚えて無いのか?」

どこかおかしい日常。

「先輩、昨日南駒王公園に居ましたか?」

正体がバレる危機!?

「俺···どうなっちまったんだ···!?」

一誠の体の変化。

「俺の秘密が···正体がバレることが俺の枷になるなら···!俺は···正体がバレてもいい!バレてでも、俺はみんなを守り続ける!!」

次回ハイスクールREAL×EYES
第二話「悪魔なカノジョ達は敵?味方?」


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第二話「悪魔なカノジョ達は敵?味方?」

皆さん、新年あけましておめでとうございます!
ようやく身の回りが落ち着いたので、投稿させて頂きました。
今年も不定期更新ですが、よろしくお願いいたします!
さて今回は、前回、堕天使に狙われた歩夢は駒王学園に通うが、何やら一誠の様子がおかしい様で、更に今度は歩夢に春が来る!?
続きは小説をご覧下さい!
最後に、質問や感想は随時募集していますが、最低限のマナーを守ってお書きください。


「行ってきまーす···。」

 

そう言って元気が無さそうに扉から出る男はこの家の主、紫電歩夢だ。彼が元気が無いのは昨日の出来事のせいだ。

 

歩夢は昨日、天野夕麻に呼ばれて南駒王公園に向かうと、急に三人の堕天使に襲われたのだ。そして歩夢は、仮面ライダーゼロワンに変身し、三人の堕天使を撃退したのだが、突如四人目の堕天使が現れ、不意打ちをくらい、堕天使達から逃げられたのだ。

 

しかも、その後に自分が通う駒王学園の生徒である木場佑斗と塔城子猫が魔法陣らしきものから出てきたこと。一日に様々なことが重なりすぎて歩夢の頭は未だに処理出来ず、パンク寸前なのだ。

 

「はぁぁぁぁ〜···。」

 

歩夢は溜息をつきながらも自分の通う駒王学園へ到着した。

 

「おはよぉ〜···ん?」

 

歩夢は疲れながらも挨拶をしたが、何時もなら元気に挨拶を返してくれる一誠の声が聞こえないため疑問に思う。

 

一誠の席を見ると、一誠が座っていた。だがいつもの様な元気が全くないのだ。

 

「···あっ、松田、元浜、おはよ。一誠はどうしたんだ?」

 

「おぉ歩夢、いや、俺達も分からないんだ。何かいきなり『夕麻ちゃんとのデートの結果だけど〜』って言ってきたんだが、俺達は天野夕麻とか知らないし第一、一誠に彼女ができるなんて有り得ない!って言ったら一誠がこうなったんだ。」

 

松田が一誠が元気が無い理由を聞くが、歩夢は首を傾げる。

 

「何言ってんだ松田?先週の木曜日に天野さんが一誠の彼女になっただろ『歩夢!』うお!?」

 

歩夢は松田の言葉に呆れながらそう言い返すと急に一誠が歩夢に掴みかかってきた。

 

「お前、夕麻ちゃんのこと覚えているのか!?」

 

「な、何だよいきなり『答えてくれ!頼む!!』お、おお。天野夕麻はお前の彼女で、昨日の日曜日にデートをする約束をしてたんじゃなかったか?」

 

歩夢がそう言うと、一誠は身体を震わせ···、

 

「やっぱりそうだよな!ほら見た事か松田、元浜!やっぱり夕麻ちゃんはいたんだよ!」

 

一誠は何時ものテンションに戻り、松田と元浜に指をさしてそう言った。

 

(どうしたんだ···一誠の奴?)

 

だが歩夢は先程までの一誠が気になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

午前の授業が終わり、昼休みに入った時、歩夢は駒王学園の屋上に座っていた。

 

「···やっぱり、たまには此処で一人で食べるのもいいな。」

 

歩夢は何時もは教室でクラスメートと食べるのだが、悩みがある時は決まって屋上に行き、そこで一人昼ごはんを食べるのだ。

 

「···昨日、一誠に···天野さんに何かあったのか?」

 

歩夢は色々な可能性を考えていた···。

 

「すいません。隣、いいですか···?」

 

「···ん?」

 

突然歩夢に声をかけられ、歩夢が顔を上げると···そこには、塔城小猫が立っていた。

 

「え!?あ、い、良いよ。」

 

歩夢は小猫が突然現れ、声をかけられたことに驚きながらも、隣に来ることを了承する。

 

歩夢が了承すると、小猫は歩夢の隣に座り、お弁当を取りだし食べ出す。

 

塔城小猫は歩夢の通う駒王学園の一年で、歩夢の後輩にあたる。小猫の外見は、完全な幼児体型で、男子だけでなく、女子生徒にも人気があり、この学園のマスコット的存在と言われている。

 

ちなみに歩夢は小猫をチラチラ見ながら食べていた。

 

ただしチラチラ見ている理由はやましい理由ではなく···、

 

 

 

 

 

(アイエエエェェェ!?!?ナンデ!?トウジョウ=サンナンデ!?ま、まさか昨日のことが···ば、バレてないよな!!塔城さんに見つかる前に退散したもんな!うん!!多分···多分大丈夫だ!!)

 

 

 

昨日のことを見られていないかが、今の歩夢が心配している事だった。

 

「···あの、私の顔に何か着いていますか···?」

 

歩夢が小猫の顔を見ていると、小猫が目を合わせてきて、歩夢にそう言った。

 

「ウェ!?だ、大丈夫!!なんでも!なんでもないから!!」

 

歩夢はびっくりするが、直ぐに出来るだけ答えを返し、弁当をかきこむ。

 

「そ、それじゃあ俺はこれで『ちょっと待ってください』···な、何でしょうか···?」

 

歩夢が弁当を食べ終え、屋上から去ろうとしたら、小猫から待ったがかけられた。

 

「あの···紫電先輩に話したいことがあるんですが···今日の放課後、空いてませんか···?」

 

そして小猫が言ったのは、放課後が空いているかという質問だった。

 

「え?ど、どうしてか···き、聞いてもいい···?」

 

歩夢はいきなりそう言われたのが気になってそう聞いた。

 

「それは···先日から、紫電先輩のことが気になっていて···それで、歩夢先輩のことをもっと知りたくて、二人で話したいんです。···どうでしょうか?」

 

そう小猫は歩夢と話したい理由を言った。

 

小猫が自分と話をしたい理由を聞いた歩夢は···、

 

 

 

 

 

(え!?な、何だ!?こ、これはまさか···愛の告白!?い、いや待て!先日のことかもしれない···罠の可能性も···!それか···俺のお笑いのファン!?い、いや〜それだったらどうしよう!もしサインをお願いされたら···!)

 

 

 

···等と様々な可能性を歩夢は考えていた。その結果···、

 

 

 

「分かった、一緒に話そう!それで、放課後何処へ向かえばいいんだ?」

 

歩夢は小猫のお願いを快く了承した。

 

「ありがとうございます。場所は···此処でお願いします。」

 

小猫は小さく頭を下げ、お礼と放課後に来て欲しい場所を教えた。

 

「分かった!それじゃ、また放課後!」

 

歩夢は小猫に返事を返し、小猫に手を振って屋上から階段を降りていく。

 

 

 

 

 

「···はあ、どうしてこう俺は断れないんだろう。昨日もイズに注意しろって警告を受けたのになぁ···。」

 

階段を降りる途中、歩夢はため息をつきながら、イズに言われた言葉を思い出す···。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『歩夢社長、私は申されましたよね?歩夢社長は狙われる立場なのですから普段から気をつけてくださいと。もし今回のように私がゼロワンドライバー等を渡さなければ、歩夢社長は無事ではすまなかった可能性があるのですよ。それに、もしゼロワンの正体が歩夢社長だとバレたら、何かの事件に巻き込まれてしまう可能性もあるのですよ。私は、それが心配でならないのです···。ですので歩夢社長、極力、人前でゼロワンに変身するのはおやめ下さい。よろしいですね?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イズに言われた言葉を思い出しながら降りていると、踊り場で何かを話している一誠、松田、元浜の三人を見かけた。

 

「歩夢!丁度良かった、お前に話したいことがあるんだ!」

 

歩夢が降りてくるのに気づいた一誠が、歩夢に声をかける。

 

「実はな歩夢···、俺の携帯に登録してあった夕麻ちゃんのメールアドレスが無いんだ。写真にも、着信履歴にも夕麻ちゃんの名前が一切なかったんだ。」

 

一誠から言われたのは何時ものスケベ話では無く、一誠の携帯電話に天野夕麻が関係することが全て消えていることだった。

 

「えっ?そんな訳ないだろ。ちょっと貸してみろ。」

 

歩夢はそう言って一誠から携帯を借りて見るが···、

 

「···本当だ。天野さんに関係するものが一切ない。一誠自ら消すわけないし···。」

 

一誠の言った通り、携帯には天野夕麻に関係するものが一切なかった。

 

「お前ら、本当に夕麻ちゃんの事覚えて無いのか?」

 

「だから行っただろ?天野夕麻なんて知らないって。どうせお前らたまたま同じ夢を見たんじゃないか?」

 

「何度も言うが俺たちはそんな子を紹介もされてないし彼女とか有り得ない。」

 

考える一誠と歩夢に松田と元浜はそう言う。

 

「···本当に夢だったのか···でも···アレは····あっ···。」

 

一誠が何かを考えていると、突然なにかに気づいたかのように上を見上げる。

 

歩夢も一誠の見ている方へむくと···そこには赤髪の長髪の女子生徒が一誠達を見ていた。

 

(あの人って確か···、

 

 

 

三年のリアス·グレモリー先輩だったよな···?)

 

歩夢は自分たちを見ている女子生徒を見て、一誠達がこれまで話していたスケベ話の思い出し、その特徴に当てはまる人物を導き出した。

 

「リアスお姉様だわ!」「今日も相変わらずお美しい···!」

 

上の階にいる他の女子生徒の声がそう聞こえる。

 

歩夢の視線の先にいるリアスは、全駒王学園生徒から慕われている女子生徒で、女子生徒からは『リアスお姉様』と呼ばれるほど人気が高い。

 

するとリアスは、階段を降りていき、自然に一誠達の方へと近づいてきた。

 

歩夢はリアスを妨害しないよう踊り場の端による。

 

そして歩夢の前を通り過ぎた。

 

 

 

っ!!

 

歩夢の前を通り過ぎる時、歩夢はリアスと目が合った。その瞬間、歩夢の背筋が凍る感覚に襲われた。

 

歩夢がリアスの方を見ると既に階段を降り、何処かへと歩いていった。

 

(···今の感覚は···一体···?)

 

松田達が大声でスケベ話をしていることが気にならないほど、歩夢は考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、歩夢は屋上へと向かう階段を上がっていた。

 

「一体塔城さんは何を話す気だったんだ···?もし···昨日の事だったらこれをつけて···いやいや!イズが人前で変身するなって言ってたじゃないか!」

 

歩夢は上がりながら、小猫が何を話すのかを考えていた。考えていると、自然と昨日から鞄に入れているゼロワンドライバーへと視線が移る。しかし、イズに言われたことを思い出し、首を振る。

 

そんなことをしてる間に、屋上に出る扉の前についた。

 

「ふぅ〜···よし!」

 

歩夢は一回深呼吸し、気合いを入れてから扉を開けた。

 

 

 

 

 

そこには既に小猫が立って待っていた。

 

「ごめん塔城さん···待ちました?」

 

歩夢は待っていた小猫に恐る恐る声をかける。

 

「いえ、私も先程来た所です。それで、話ですが···。」

 

小猫は首を振り、大丈夫だという意思をむける。

 

「えっ、え〜っと···お、俺に答えられることなら何でも答えるよ。」

 

歩夢は緊張しながら小猫に向けてそう言う。

 

「···分かりました。それでは···、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先輩、昨日南駒王公園に居ましたか?

 

小猫はそう言い放った。

 

「···いや、居なかった『嘘をつかないでください。』」

 

歩夢が居なかったと主張するが、直ぐに小猫が言葉を切る。

 

「紫電先輩が先日、南駒王公園にいたことは分かっています。私が聞きたいことは、どうやってあの場を切り抜けられたのかです。先に言っておきますけど、私は紫電先輩が嘘をつくとすぐに分かります。なので、正直に答えて下さい、貴方は、どんな力を持っているんですか。そして、どうやってあの場から生きて帰れたのですか?」

 

小猫は歩夢を追い詰めるかのように言葉を歩夢にぶつける。

 

小猫の容赦のない言葉に歩夢は···、

 

「···ごめん、それは俺に答えられることじゃないみたいだ。それじゃあ、また明日···。」

 

歩夢は、逃げることを選択した。小猫から背を向け、扉に向けて歩き、扉を引いて開ける···。

 

 

 

 

 

「んぷっ。」

 

扉を開けて歩き出した瞬間、歩夢の顔に柔らかいものが当たる。

 

「な、何が『あらあら、見た目によらず大胆ですね。』···んぇ?」

 

歩夢は当たったものを見ようとすると、目の前から女性の声が聞こえ、歩夢は情けない声を上げて正面を見た。

 

そこには、スタイル抜群で紫色の髪をポニーテールにしている女子生徒が立っていた。

 

「···うぇあああ!!!???ご、ごめんなさい姫島さん!!こ、これは!けっ、決してわざとでわなく····!」

 

歩夢は自分が当たったものが彼女の胸だとわかった瞬間、歩夢は大きな声を出し、顔を赤くしながら下がり、彼女に頭を下げる。

 

彼女は『姫島朱乃』、駒王学園の三年であり、同学年のリアスと同等の人気がある。そして、リアス·グレモリーと姫島朱乃の二人を合わせて、『二大お姉様』と呼ばれるほど人気が高い。

 

姫島は頭を下げる歩夢を見てクスッと笑い···、

 

「ふふっ、大丈夫ですわ。でももし、何かお詫びがしたいと言うのなら···、

 

 

 

 

 

 

 

私にも、貴方がどのような力を持っているか、教えてくれる?」

 

薄く目を開き、歩夢を見てそう言った。

 

「っ!」

 

歩夢は瞬時に理解した。彼女も小猫と同じく自分のことを探っている人物だということに。

 

「ご、ごめんなさい···話すことは何も『紫電君、正直に話す方が君のためになるよ。』っ!?」

 

歩夢が姫島のお願いに断りを入れて帰ろうとすると、姫島の後ろから男子生徒の声が聞こえ、姫島の後ろから現れる。

 

姫島朱乃の後ろからでてきた男子生徒の名は、『木場祐斗』といい、歩夢や一誠と同じ二年の同級生だ。学校中の女子から人気があり、誰にも優しく接する姿から、『王子様』と学校中から呼ばれるほどである。

 

「紫電先輩、話してください。あの日、何があったのか···。」

 

歩夢の後ろから小猫の声が聞こえる。歩夢は自分の後ろにいる小猫を見て視線を逸らし、自分の前にいる姫島と木場を見る。

 

(ど、どうする···!?どうやってこの場を切り抜ける!?

 

① 姫島さんと木場さんを突き飛ばして逃げる?···論外だ!!俺が突き飛ばしたせいで二人が怪我なんてしたら、絶対次の日から全校生徒を敵に回す!!

 

② どうにか見逃してもらう?···絶対無理だ!!この手のヤツは俺が話すまで絶対離さないやつだ!!

 

③ 正直に話す?···現状これが最善の手だ!でも···話したらイズと約束したことを破ってしまうし、何より···俺の戦いにこの人達を巻き込んでしまう···どうすれば···!)

 

歩夢は周りを見渡しながら、切り抜ける策を考え続けた。

 

そして、正門の方を見た時、ある物が歩夢の目に入った。

 

ある物を確認した後、歩夢は覚悟を決め、姫島の方へと顔を向けた。

 

「···分かりました。昨日、何があったのかを話します。」

 

歩夢は姫島達へそう言った。

 

「話をしてくれる気になって助かるよ。それじゃあ『でも!』」

 

木場が一歩前に出て、歩夢へ言っている言葉を歩夢は大声で遮り、

 

「話すのは···、また何時かでお願いしますぅぅぅぅ!!!」

 

歩夢は大声で叫びながら正門側の柵に向けて走り出し···、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柵を飛び越えて、下へと落ちていった。

 

『なっ!!!???』

 

三人は歩夢が突然とった行動に驚きながら、歩夢が落ちていった柵へと近づき、周りを見渡す。

 

「っ!祐斗先輩、朱乃先輩!アソコです···!」

 

小猫がそう言って指を指した先には···、

 

 

 

 

 

 

 

木の枝を飛び降りながら、下へと向かっている歩夢の姿だった。

 

「全く···無茶をするね。ここから跳んであの木に捕まって降りるだなんて···。」

 

「あらあら、本当に大胆な子ですね。ふふふ···。」

 

歩夢の姿を見た木場と姫島はそう言った。

 

「ともかく紫電先輩を追いましょう、祐斗先輩、朱乃先輩。」

 

そう小猫が言うと、二人は頷き、屋上の扉を開けて下へと降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ···ぜぇ···な、何とか上手くいったぁ····。」

 

三人から逃げた歩夢は現在、駒王学園から少し離れた場所で休んでいた。

 

「でも、多分すぐ追いかけてくるはずだ···!早く逃げなくちゃ···。」

 

そう言って歩夢はカバンからゼロワンドライバーを取り出し、腰に装着した。

 

「えーっと·····あった!『ライズフォン』。」

 

そう言いながら制服のポケットからプログライズキーと同じ位の大きさの機械を取り出した。

 

その機械には画面が着いてあり、幾つかの絵柄が描いてあるものがあった。

 

そして歩夢はその中で、バイクの絵柄が描かれているものを押した。

 

『バイクアプリの起動を確認しました。』

 

押した瞬間、その機械から音声が聞こえた。

 

そして歩夢はライズフォンをゼロワンドライバーに認証させた。

 

『Changing to super bike motorcycle mode』

 

認証した時、衛生ゼアから何かが飛び出し、地上へと向かっていった。

 

『頭上にご注意下さい。』

 

その音声が聞こえ、歩夢は一歩後ろへと下がった。

 

後ろに下がって暫くして、先程歩夢がいた場所にひとつの物体が降りてきた。そして地上に近づくと、ゆっくりとなり、地面から数センチ浮いて止まった。

 

それは先程歩夢が使っていた機械をそのまま大きくした様な物だった。

 

歩夢はその物体に近づき、先程押したものと同じ、バイクの絵が描かれているものを押した。

 

 

 

その瞬間、その物体が展開していき···、

 

オーダーライズ!ライズホッパー!

 

その物体は、バイクへと変化をとげた。

 

歩夢はライズホッパーのハンドルに掛けられていたヘルメットを取って被り、ライズホッパーに跨る。

 

「とりあえず松田の家に行こう。今日の会話の様子だとそっちに居そうだ。」

 

そう歩夢は考え、ライズホッパーを走らせて松田の家へと向かう。

 

 

 

 

 

その様子を、一匹の蝙蝠が見ていた·····。

 

 


 

 

「はぁ···はぁ···!」

 

駒王町の町中を、一誠は走っていた。

 

松田と元浜と共に松田の家に行ったが、天野夕麻のことが気になって、直ぐに帰路に着いたのだ。

 

その時に、松田の家にいる時に、部屋の電気を消したはずなのに、明るく見えたり、力が漲ったり、聞こえるはずのない遠くの声が聞こえたり、周りからの視線に敏感になったりと、今まででは有り得ないことが一誠に起こっているのだ。

 

「俺の体···どうしちまったんだ···!?」

 

一誠はそう呟きながら、走っていった。

 

「はぁ···!こ、この公園は···!」

 

しばらく一誠が走り、疲れて止まった場所で顔を上げると、そこは一誠と夕麻がデートした時に立ち寄ったはずの公園だ。

 

「そうだ···、ここで···夕麻ちゃんとデートをしたはずなんだ···。」

 

そう言いながらその公園にある噴水の塀に手を置く。

 

「夕麻ちゃん···あれが夢だったなんて···俺···信じたくねえよ···!」

 

一誠は震えながらそう言う···。

 

 

 

 

 

 

 

突然、一誠を包む空気が変わる。

 

っ!!

 

一誠は空気が変わったことに気づき、後ろを振り返る。

 

そこには、コートを着た男がたっていた。

 

「これは数奇なものだ。こんな地方の市街で貴様みたいな存在に会うのだものな。」

 

そう言いながら一誠の方へと歩いてくる。

 

(な、何だ···!?身体の震えが止まらねえ···!)

 

その男を見た瞬間、一誠は身体の震えが止まらずにいた。

 

そして、男と一誠の目が合った。

 

「っ!うわっ!」

 

一誠が男の目に驚き、後ろに下がろうとした瞬間、今まででは有り得ない程、身体が後ろに下がったのだ。

 

「ちょっと下がったつもりだったのに···!?」

 

一誠は自分自身でここまで飛べたことに驚く。

 

「···逃げ腰か。」

 

「っ、訳分かんねーよ!」

 

男がそう呟いたのを聞いて、一誠は叫びながら逃げ出す。

 

一誠が走っていると、目の前に黒い羽が落ちてくる。

 

「羽!?···夕麻ちゃん!?···っ!?」

 

一誠が羽が落ちてくる出処を見ようと見上げると、一誠の真上に黒い翼を生やした先程の男が空を飛んでいた。

 

男は素早く飛び、一誠の前に止まった。

 

「下級な存在はこれだから困る。」

 

「なっ···!また夢かよ···!?」

 

一誠はこれまでの急展開についていけず、頭が混乱している。

 

「ふむ。主の気配もなし。仲間の気配も感じない。消える素振りも見せない。魔法陣も展開しない。状況分析からすると、お前は『はぐれ』か。ならば、殺しても問題あるまい。」

 

男はそう言いながら手をかざし、手に青い光の槍を作り出す。

 

そして男は槍を逃げ出している一誠の背中に向けて投げ飛ばす。

 

そしてその槍は一誠の身体を貫く···。

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、横の茂みからバイクが飛び出し、槍を弾き飛ばした。

 

「「っ!!」」

 

男と一誠は突然現れたバイクに驚きながらも警戒する。

 

そしてバイクは一誠の目の前に止まり、バイクを運転していた人物がヘルメットを外す。

 

 

 

 

 

「大丈夫か!?一誠!!」

 

「っ!?あ、歩夢!?」

 

バイクを運転していたのは歩夢だった。

 

「貴様は···あの時の人間か!何故ここに居る?ここは結界が張られているはずだ。」

 

男···ドーナシークは邪魔をした人間が、先日、自身達を退けた人間だと気づくと、歩夢に警戒しつつ、何故この場にいるのかを問う。

 

「確か···ドーナシーク···だっけな?俺は朝から一誠の様子が変だったから、放課後に松田の家に行ったはずの一誠に会いに行ったんだが、松田からもう一誠は帰ったって言われてな。それで念の為に一誠が何かに巻き込まれた時に場所が分かるよう、一誠の携帯の裏に小さな発信器を付けといたんだ。発信器が示す場所に向かっている途中で突然、この公園で反応が消えたからな。それで怪しんだ俺はこの公園に向かい、今この場に居るってことだ。」

 

そう言いながら、歩夢はゼロワンドライバーを腰に装着する。

 

そして、プログライズキーを構える···。

 

『お待ちください、歩夢社長。』

 

構えようとした瞬間、歩夢の頭の中にイズの声が響いた。

 

歩夢はその声を聞いた瞬間、目を閉じた。

 

そして歩夢が再び目を開けると···、

 

 

 

そこは、真っ白な空間で、周りには青い文字で0と1が連なりながら流れていく空間に変わっていた。

 

この場所は、衛星ゼアの思考回路であり、歩夢は今、自身の脳とゼアが無線通信の状態になっており、人工知能と同じ思考速度となっている。

 

そしてその空間の奥からイズが歩いてきた。

 

「歩夢社長、このままこの場で変身してしまった場合、一誠様を歩夢社長の戦いに巻き込んでしまう可能性が大きくなります。それに、関係ない一般人の前での変身は禁止という約束を、貴方の養父である『そんなことは分かってる!!』···では、何故?」

 

イズは歩夢に対して変身をすることはあまり宜しくないということを説明していたが、歩夢は途中でイズの言葉を切る。

 

「···確かに、このまま変身してしまうと、一誠を俺の戦いに巻き込んでしまう···でも、ここで変身せずに一緒に逃げようとしても、恐らく俺たちは捕まって死んでしまう···それに、少し離れて変身しようとしても、戻ってきた時には一誠は死んでいるかもしれないんだ!だったら···俺は一誠の前で変身する。そして一誠を···俺の変身を見た人達を、皆を助ける!俺の秘密が···俺の正体がバレることが俺の枷になるのなら···俺は···正体がバレても良い!バレてでも、俺は皆を守り続ける!今、一誠を助けられるのはただ一人···、

 

 

 

 

 

俺だ!!!

 

歩夢はイズの目を見ながらそう叫ぶ。

 

叫ぶ歩夢を見て、イズは···

 

 

 

「それでこそ、歩夢社長です。」

 

イズは微笑み、そう言った。

 

「歩夢社長、私と初めて出会った時に、私に歩夢社長の夢を話してもらいました。『人間とヒューマギアが手を取り合って過ごせる世界にしたい』と···。

 

歩夢社長、貴方様の夢の為に戦ってください。」

 

イズは歩夢に微笑みながら、そう言った。

 

「···ああ、ありがとう、イズ。俺、頑張るよ!」

 

歩夢はイズに向けて、笑顔を浮かべながらガッツポーズを見せる。

 

「でも、一つだけ約束してください···、

 

 

 

 

 

 

 

必ず、家には帰ってきてくださいね。」

 

イズはそう言って小指を出す。

 

「ああ、約束だ。」

 

歩夢も小指を出し、イズの小指に絡める。

 

「じゃあ、行ってくるぜイズ!」

 

「行ってらっしゃいませ、歩夢社長。」

 

二人はそう言って、思考回路から出た。

 

 

 

思考回路から出た歩夢は目を開けると、プログライズキーのスイッチを押し、ゼロワンドライバーに承認させる。

 

 

 

《jump!》

 

 

 

《オーソライズ!》

 

 

 

そして、衛星ゼアから光が歩夢に向けて放たれる。

 

歩夢が手を大きく広げると、目の前に巨大なバッタが降りてきた。

 

地上に降りたバッタは、歩夢と一誠の周りを跳び回る。

 

「な、何が起きてるんだ···!?」

 

一誠は今起きている状況に理解が追いついていないようだった。

 

そんな一誠を横目に、歩夢はプログライズキーを開き顔の横に持っていき···、

 

「変身!」

 

プログライズキーをゼロワンドライバーに装填した。

 

 

 

《PROGRIZE!》

 

 

 

《飛び上がライズ!

 

 

 

ライジングホッパー!

 

 

 

《A jump to the sky turns to a riderkick.》

 

 

 

そして歩夢は仮面ライダーゼロワンへと変身した。

 

「あ、歩夢···なのか···?」

 

目の前でゼロワンへと変身した親友に一誠は戸惑いながら質問する。

 

するとゼロワンは一誠の方へと振り返り···、

 

「一誠···、

 

 

 

俺に、任せとけ!

 

一誠に向けてそう言い、サムズアップした。

 

「ゼロワン···あの時の様には行かぬぞ···!」

 

一誠にサムズアップしていると、ドーナシークから声がかけられた。

 

「ドーナシーク!お前を止められるのはただ一人···、

 

 

 

 

 

俺だ!!

 

ゼロワンはそう言ってアタッシュカリバーを構える。

 

そして、ゼロワンが突撃し、アタッシュカリバーと青い光の槍がぶつかり合う。

 

だが、徐々にゼロワンが槍を押していく。

 

「くっ···、やはり近距離戦闘は分が悪いか···!」

 

ドーナシークはそう言って、光弾をゼロワンと一誠に向けて放ちながら空へと飛ぶ。

 

ゼロワンは一誠に飛んでいく光弾をアタッシュカリバーで弾いていく。

 

「空に逃げたか···なら、これだ!」

 

そう言いながら、フライングファルコンプログライズキーを取り出し、構える。

 

 

 

 

 

 

 

プログライズキーを起動しようとした瞬間、歩夢の背後から赤い光が溢れ出した。

 

ゼロワンが振り返ると、そこには赤い光で出来た魔法陣があった。

 

「あ、アレって昨日の···!?」

 

ゼロワンはその魔法陣が昨日のものと同じだということに気づく。

 

「な、何だ···!?」

 

一誠は何が起きたのか分からず相変わらず動揺している。

 

そしてその魔法陣から、紅い髪の女性、黒髪のポニーテールの女性、金髪の男性、小柄な白髪の女の子が現れた。

 

そしてその四人は、ゼロワン···歩夢と一誠は知っている人物だった。

 

「その子達に触れないでちょうだい。」

 

紅い髪の女性は一歩前に出てそう言う。

 

「アレって···リアス先輩に姫島先輩!?それに木場さんに小猫さんまで···!?どうしてここに···!?」

 

ゼロワンは魔法陣から現れた四人に、警戒しながら一誠の前に立つ。

 

「紅い髪···グレモリー家の者か···」

 

ドーナシークは憎々しげにリアスを睨みつける。

 

「リアス·グレモリーよ、ごきげんよう、堕ちた天使さん。この子達にちょっかいを出すなら、容赦はしないわ。」

 

リアスはそう言ってドーナシークを睨む。

 

「···ふふっ。これはこれは。その者はそちらの眷属か。この町もそちらの縄張りというわけだな。まあいい、今日のことは詫びよう。だが、下僕は放し飼いにしないことだ。私のような者が散歩がてらに狩ってしまうかもしれんぞ?」

 

リアスの言葉にドーナシークは薄ら笑いを浮かべながらそう言った。

 

「ご忠告痛み入るわ。この町は私の管轄なの。私の邪魔をしたら、その時は容赦なくやらせてもらうわ。」

 

「その台詞、そっくりそちらへ返そう、グレモリー家の次期当主よ。我が名はドーナシーク。再び見えないことを願う。そしてゼロワン、次に合間見えた時が貴様の最後だ···!」

 

ドーナシークはリアスとゼロワンを睨みながら黒い翼を羽ばたかせる。そして空へと飛翔し、夜の空へと消えていった。

 

「いっ、一体···何が···起き···て···。」

 

「っ!一誠!!」

 

一誠が何かを喋ろうとした瞬間、一誠は倒れそうになるのを見たゼロワンは、一誠を支える。

 

ゼロワンが一誠を確認するとどうやら一誠は気絶をしているようだった。

 

「あら、気絶してしまったのね。その子の自宅を聞こうと思ったのだけど···。」

 

後ろからリアスの声がそう聞こえた。

 

「まあ、今は良いわ。まずは貴方と話したかったしね、仮面ライダーゼロワン、いえ···、

 

 

 

 

 

紫電歩夢くん?

 

そしてリアスはゼロワンに向けて、そう言った。

 

「···何故そう思ったのか、聞かせて貰えないでしょうか?」

 

「貴方が朱乃と祐斗と小猫から逃げた時に私の使い魔をあなたの監視に付けておいたのよ。そしてこの子が貴方が実際に姿を変える所を見ていたからよ。」

 

ゼロワンが、リアスに自分の正体を言われたことに疑問を覚えたゼロワンはリアスに質問すると、リアスは小さな蝙蝠を方に止まらせながらそう言った。

 

「···どうやら、もうあなた達には正体を隠すことは出来ないようですね。」

 

ゼロワンは溜息を吐きながらそう言った。

 

そして、ゼロワンドライバーのライズリベレーターを元の場所に戻し、プログライズキーを引き抜く。

 

プログライズキーを引き抜いた瞬間、ゼロワンの変身が解除され、元の歩夢の姿へと戻った。

 

「それで···あなた達は一体···、何者なんですか?」

 

歩夢はリアス達を見渡しながらそう言った。

 

「···そうね、これからは長い付き合いになるかもしれないから、私達のことを教えておいた方が良いかもしれないわね。」

 

リアスは少し考える素振りを見せた後、そう言った。

 

「私は···いえ、私達は···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪魔よ。

 

リアスは薄らと笑いながらそう言った。

 

「あ、悪魔···?も、もしかして皆さん全員が···!?」

 

リアスの言葉に歩夢は周りを見ながら驚いている。

 

「ええ、ここに居る朱乃も祐斗も小猫も···そしてそこで倒れている彼も、私の眷属なのよ。」

 

リアスは三人を見た後、一誠を見ながらそう言った。

 

「姫島先輩だけではなく、木場さんに、小猫さんまで···!?それに···一誠も悪魔だって···!?一体、どういうことなんだ!?」

 

歩夢は親友の一誠まで悪魔だと言われたことに、頭を抱える。

 

「···まあ、いきなり私達が悪魔だって言っても、信用は出来ないわね。それで提案があるの。明日の放課後、貴方と一誠の教室に迎えを行かせるわ。そしてその迎えに来た子について行って私達の元に来て欲しいの。そこで私達のことと、あなたの事を話し合わない?

 

一応言っとくけど、この話には貴方にもメリットは有るわ。私達悪魔のことや、貴方が知りたかった堕天使達の情報等を教えるわ。その代わり、貴方の先程の力のことを説明してもらうわ。どうかしら?」

 

リアスは歩夢達と話すことのメリットや内容を歩夢へ伝える。

 

そして歩夢はゼロワンドライバーに一瞬触れた後、

 

「···分かりました、ゼロワンの情報を教える代わりに···一つ条件として、一人、駒王学園に出入りすることを許可して欲しいんです。」

 

「それは一体誰かしら?」

 

「イズと言って···俺の大切な相棒なんです。イズを駒王学園に自由に出入り出来ることを許可してくれれば、俺もゼロワンの情報をお教えします。」

 

歩夢はリアスにイズを駒王学園に自由に出入り出来るようにすることを条件として、ゼロワンの情報を話すということを言った。

 

歩夢が出した条件をリアスは顎に手を当て少し考える素振りを見せる。

 

そして···、

 

「···いいわ、私の知り合いに声をかけておいて、駒王学園に自由に出入り出来るように頼んでおくわ。明日、そのイズっていう人と共に駒王学園に来なさい。そして、イズさんには放課後まで生徒会室で待って貰うようにするわ。それで良いかしら?」

 

リアスはイズが自由に駒王学園に出入り出来るようにすることを約束した。

 

「はい、構いません。ありがとうございます。」

 

歩夢はリアスに向けて頭を下げる。

 

「それじゃあ、交渉成立ね。明日の朝、貴方の家に朱乃を向かわせるわ。それで、貴方は朱乃とイズさんと共に生徒会室に向かってくれれば良いわ。」

 

リアスは明日の朝、姫島を歩夢の家に向かわせることを言った。

 

「あの、一誠は···?」

 

歩夢はふと一誠のことを思い出し、一誠のことを心配する。

 

「大丈夫よ、私が責任をもって家に帰すわ。」

 

リアスは一誠の髪を撫でながらそう言った。

 

「それじゃあ、また明日。駒王学園で会いましょう。」

 

リアスはそう言って姫島達三人と一誠と一緒に魔法陣に消えた。

 

「···俺も覚悟を決めないとな···!」

 

歩夢はそう言ってライズホッパーに跨り、公園を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家の敷地内にライズホッパーを止め、自分の家に入る。

 

「お帰りなさいませ、歩夢社長。」

 

家に入ると、イズが玄関で待っていた。

 

「ただいま、イズ。」

 

そんなイズに歩夢は挨拶を返す。

 

阻止歩夢は靴を脱いで家に上がる。

 

「歩夢社長、先程、歩夢社長の養父である···

 

 

 

 

 

 

 

天津 垓(あまつ がい)』様から電話がありました。そして、歩夢社長が帰った時に、歩夢社長自ら折り返しの電話をかけて欲しいとの伝言を受けました。」

 

歩夢は廊下を歩きながら、イズが言った養父···『天津 垓』に電話をかける準備をする。

 

「···ありがとう、イズ。後は俺が養父(とう)さんと話すよ。」

 

「···かしこまりました。なら、私はお風呂と食事の準備をして参ります。」

 

そう言って、イズは頭を下げ、歩いていった。

 

そして、歩夢はライズフォンを操作し、天津垓へと電話をかける。

 

 

 

 

 

「···もしもし、歩夢です。」

 

 

 

『···どうやら無事帰ったようだね、歩夢。』

 

歩夢が電話をかけると、直ぐに歩夢の養父、『天津 垓』が電話に出る。

 

『さて、単刀直入に聞かせて貰うが···、

 

 

 

 

 

私との約束を、破ってしまったようだね?』

 

その言葉に身体がズシッと重くなる感覚を歩夢は感じた。

 

「はい···言いつけを破ってしまい、ごめんなさい父さん···。」

 

歩夢は電話越しに謝罪をする。

 

『·····、

 

 

 

 

 

 

 

何故謝る必要がある、歩夢?』

 

しかし、待っていたのは叱る言葉では無く、怒声でも無い、疑問の声だった。

 

「えっ?で、でも···俺は養父さんとの約束を破ったし···それに···一般人の前で変身したから···。」

 

『私はそんな事を別に気にしてはいない、それに···、

 

 

 

 

 

この約束は、歩夢が破ることを想定してつけた約束なのだから。』

 

歩夢が困惑している時に、天津垓が歩夢に向けてそう言った。

 

『歩夢、私は以前歩夢に向けて『仮面ライダー』とは何か、を聞いたことがあったな。その時歩夢は何と答えたか、覚えているかね?』

 

「···『仮面ライダー』は···、人々に希望を与え、守りたいものを守る存在。そして···、

 

 

 

人々の夢を、日常を守り続ける平和の象徴。それが、『仮面ライダー』だと、答えました···!」

 

天津垓に問われた『仮面ライダー』と言う存在を、歩夢なりに解釈したことを天津垓に向けて再びそう言った。

 

『そう、1000%君は確かにそう言った。君がやったことは君が言っていた、仮面ライダーの姿では無いのかな?』

 

天津垓は歩夢のやったことは、歩夢の言った『仮面ライダー』の存在と同じものだと言う。

 

『歩夢、私は最初から君を怒るつもりは1000%無い。むしろ、歩夢の正義を実行したことを誇りに思っている。だからこそ歩夢···、

 

 

 

 

 

これからは私の言いつけなどを無視し、人々を守り続けると良い。『仮面ライダーゼロワン』として。』

 

天津垓は歩夢に、実質的な制約の解除を言った。

 

これからは歩夢は誰の許可も無しに、自由に仮面ライダーゼロワンへと変身出来るようになった。

 

「あ、ありがとうございます···養父さん···!」

 

歩夢は目に薄らと涙を浮かべながら、そう言った。

 

『さて、仮面ライダーゼロワンの再スタートを記念して、私から一つ、プレゼントとして、あるデータを渡そう。そのデータで、新しいプログライズキーを作るといい。

 

 

 

それでは、私も仕事が残っているから、ここで切らせてもらうよ。

 

 

 

期待しているよ···歩夢···。』

 

そう言って天津垓は電話を切った。

 

「···よーーっし!!明日も頑張るぞぉぉぉーーー!!!」

 

そう大声で言って、歩夢はお風呂場の方へとスキップしながら向かっていった···。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある場所の一室で、天津垓は電話を下ろす。

 

「···ようやく私の計画も一つ進みましたね。」

 

天津垓は薄らと笑みを浮かべながらそう言った。

 

「歩夢···いや、ゼロワン。今は好きにやると良いでしょう。但し···、然る時が来たら···貴方の力を存分に使わせてもらうとしましょう···。」

 

そう言って机の上にあるチェスのボードの上に置いてある白い『兵士(ポーン)』の駒を、一つ進めた···。




次回、ハイスクールREAL×RIZE

「ようこそ、オカルト研究部へ。」

悪魔との会談···!

「俺のことを話すために、皆さんに俺の秘密を話します···。」

歩夢の秘密···!?

「あうぅ···。どうして私は何も無い所で転けてしまうのでしょう···。」

そして、新しい出会い!

「全ては···アークの意志のままに···。」

次回、ハイスクールREAL×RIZE
第三話「オレは社長、飛電歩夢」


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第三話「オレは社長、飛電歩夢」

皆さん、本気を出して2週間以内に書きあげた結果、文字数が過去一番長くなったオクトリアンです!
今回は早く投稿出来ましたけど、次がどうなるかが分かりませんが、なるべく早く投稿したいと思います。
さて、前回はとうとうリアス達にゼロワンとして正体がバレてしまった歩夢、そんな歩夢は自分の秘密をリアス達に打ち明けるのだった···。
そして、その裏では黒い影が···!
続きは本編でどうぞ!
最後に、質問や感想は随時募集していますが、最低限のマナーを守ってお書きください。


「ふあぁ〜···。昨日は興奮してあまり寝れなかった···。」

 

そう言いながら制服に着替えながら欠伸をしている歩夢の姿があった。

 

というのも、昨日は様々なことがあり、歩夢も色々考えてしまい、寝れなかったのだ。

 

歩夢がこれからの事を考えながらリビングへと向かい、いるであろうイズに声をかける。

 

「おはようイズ。」

 

「おはようございます、歩夢様。」

 

歩夢が朝の挨拶の言葉を言うと、直ぐにイズから返事が返される。

 

歩夢にとって、朝のいつもの光景だ。

 

 

 

 

 

「おはようございます、歩夢くん。···あらあら、朝は弱いのですね。」

 

「···ん?」

 

しかし、今日はいつもと違い、家で聞こえるはずのない声が聞こえた。

 

歩夢が目を擦って周りを見渡すと···、そこには味噌汁を煮込んでいる姫島朱乃がそこにはいた。

 

「···えーーーっと···お、おはよう···ございます···。···イズ、ちょっとで良いからこっちに来て?」

 

「?かしこまりました。」

 

歩夢が困惑しながら挨拶を姫島に返し、イズを廊下の方へ呼ぶ。

 

「なあイズ、何故ここに姫島先輩がここにいるのでしょうか?」

 

「昨日、歩夢様が仰っていたではありませんか。明日は姫島様がこちらにいらっしゃると、その為歩夢様が起きるのを待っていたのですが、姫島様が早く来られました。歩夢様の準備が終わるのを外で待たせるのも申し訳ないので、家に上げ、待ってもらうことにしました。」

 

「家にいる理由は分かったけど···何で姫島さんは朝ごはんを作っているんだ?」

 

歩夢はイズの説明を聞き、姫島が家にいる理由を理解するが、それでも何故朝ごはんを作っているのかは分からない為、イズに聞く。

 

「それが···、

 

 

 

 

 

姫島様が家に上がった時、玄関に飾ってある写真を見た時に驚いた素振りを見せた後、歩夢様は何処にいるかと聞いたので、自室にいらっしゃるとお答えしたら、そこに案内して欲しいと仰られました。そして歩夢様のお部屋の前に案内致しました。すると姫島様が、ドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開き、歩夢様の部屋へと静かに入っていきました。」

 

「姫島先輩が俺の部屋にはいってきたのぉ!?何でぇ!?」

 

歩夢はイズが説明した姫島の行動に驚く。

 

「そ、それで···姫島先輩はその後どうしたの···?」

 

「はい、私も姫島様の後を静かにつけ、歩夢様に危害を与えようなら直ぐに庇える位置まで近づきました。

 

すると、姫島様はカーテンを少し開き、明かりを少し入れ、歩夢様の顔が見える様にしました。その後歩夢様の側へと行き、ゆっくりとしゃがみ、歩夢様の顔をじっくりと見始めました。暫くすると、姫島様が何かを呟いた後、歩夢様に手を伸ばし、歩夢様の髪を優しく撫でていました。数秒撫でた後、撫でるのを辞め、ポケットから携帯電話を取り出し、歩夢様の寝顔を撮っていました。すると姫島様が静かに立ち上がり、歩夢様の部屋を出ました。

 

姫島様を追って私も部屋を出た後、姫島様から感謝の言葉を仰られました。『私を歩夢様の部屋に入れて下さり、ありがとうございます』と···その後、歩夢様の朝食がまだかと聞かれ、まだ済まされていないことを伝えると、歩夢様の部屋に案内してくださったお礼と称して、朝ごはんを作り始めました。···ということが今、姫島様が朝ごはんを作られている理由です。いかが致しましょう?」

 

イズから話された姫島の行動と朝ごはんを作っている理由を聞いた歩夢は···、

 

「うーん···姫島先輩が朝ごはんを作る理由は辛うじて理解出来たけど、姫島先輩が何でそんな事をしたのかは分からない···だけど、今一番気になっていることは···!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の部屋に姫島先輩が入ってきたことだよぉぉぉぉ!!!!!

 

頭を抱えながら思わず叫んだ。

 

「うわぁぁぁ超恥ずかしい!!机の上昨日のままだから片付けて無いから汚いままだったし、何より俺の寝顔を見られたぁぁぁ!!!恥ずかしすぎるぅぅぅ!!!」

 

歩夢は頭を抱えながらのたうち回る。

 

「はぁ···はぁ···落ち着け俺···!こんな時にすることはぁ···ただ一つぅ···!はぁ···良し!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝からこんなことがおきて驚いた!びっくりしたなぁモ〜ニングゥ〜〜!!!はぁい!アユムじゃあ〜〜ナイトォ!

 

歩夢はクネクネした動きをし、最後は自分の後ろに向けて人差し指をビシッと立てる。

 

「今のギャグは『朝』と、朝の英語である『モーニング』と、『驚いた事』の三つをかけた、素晴らしいギャグですね。」

 

「そうだけどお願いだからギャグを説明しないで〜〜!!!」

 

イズは歩夢のギャグを冷静に説明すると、歩夢が大声で説明することをやめて欲しいことを叫ぶ。

 

「ふふっ、あらあら。とても二人は仲がよろしいんですね。」

 

歩夢とイズが漫才じみたことをしていると、不意に姫島から声をかけられる。

 

「ウェア!?ひ、姫島先輩!?す、すいません。うるさかったでしょうか···?」

 

「ふふっ、いえいえ。賑やかな家は私も好きですわ。私が来たのは注意しに来たのではなく、朝食が出来たので呼びに来たからですわ。」

 

「そっ、そうですか!なら温かいうちに食べましょう!」

 

姫島から声をかけられた理由が注意では無く、朝食が出来たからであることに安堵した歩夢は、リビングへと入って行く。

 

 

 

 

 

「美味しい···!このお味噌汁、すっごく美味しいです!姫島先輩!!」

 

歩夢は姫島から出された朝ごはんに舌鼓を打っていた。

 

「お口に合っていただけたなら、私も嬉しいですわ。」

 

そんな歩夢の姿を見て姫島は微笑み、そう言う。

 

「···歩夢くん。朝ごはんの途中だけど質問をさせて貰っても···?」

 

すると突然、姫島からそんな言葉を発した。

 

「ん?俺に答えられることならば良いですよ。」

 

歩夢は口に入っているものを飲み込んでそう言った。

 

「それでは質問をさせて頂きますわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其雄(それお)様はお元気にしていますか、『あーくん』?」

 

ぶふっ!?

 

姫島からの突然の質問の内容に思わず歩夢が吹き出した。

 

「ひ、姫島さん!?何で俺の父さんのことを!?それに···あーくんって!?」

 

姫島から投げかけられた質問に、歩夢は少し混乱する。

 

「私が何故其雄様のことを知っているのかは、私の『苗字』と、『私の髪型』をあーくんが覚えていれば分かりますよ。」

 

そう言って姫島は微笑む。

 

「本当に何で姫島先輩が父さんのことを···?

 

 

 

 

 

いや、待てよ···?何か記憶の片隅にあるような···?『姫島』···『ポニーテール』···『あーくん』···そして父さんを知っている数少ない人物···。」

 

ボソボソと言いながら歩夢は思考に浸る。

 

「·····、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああああああああぁぁぁ!!!!も、もしかして····、

 

 

 

 

 

 

 

あーちゃん』!!??」

 

突然歩夢は叫び声を上げ、姫島のことを、『あーちゃん』と呼んだ。

 

「ふふっ···、

 

 

 

九年ぶりですね、あーくん。」

 

姫島は微笑みながらそう言う。

 

「うわぁぁ懐かしいなぁ!本当に久しぶり、あーちゃん!でも、どうして駒王町に?それに何で俺だって分かったの?」

 

「実はあーくんと其雄様から別れた後、諸事情によって駒王町に引っ越すことになり、それで私達は駒王町に来たという訳ですわ。そして何故あーくんとわかったのは玄関に置いてあった写真からですわ。私の家族とあーくんと其雄様と一緒に撮った写真を持っているのは、私の家族とあーくんだけだからですわ。」

 

玄関に置いてある写真の中には、身長が余り変わりない男の子と女の子と一緒に、耳にイズと同じデバイスを付けている壮年の男性と、ポニーテールにしている和服の女性と並んでいる着物を着た壮年の男性と一緒に撮った写真があるのだが、そこに写っている人達が歩夢一家と、姫島一家という訳だ。

 

「それで、あーくんに会えたので其雄様にもご挨拶をと思ったのですが···あーくんは其雄様は何処に居るのか分かりますか?」

 

姫島は再び、歩夢に其雄の居場所を聞こうとする。

 

「···実は···、

 

 

 

 

 

 

 

···駒王学園に入学するにあたって一人暮らしを始めたから、父さんとは離れて暮らしてるんだ。それに、最近忙しいみたいで余り連絡をとりあえないんだ。」

 

頭を掻きながら歩夢はそう言った。

 

「まあ、それは残念ですわ。其雄様にも会いたかったのですが···。」

 

「···でも、どうにかして連絡を取れるようにするよ。その時にあーちゃんに会えたことを伝えるよ。父さんすっごく驚くと思うよ。」

 

「ありがとう、あーくん。」

 

「···歩夢様、姫島様。お話の途中なのは承知しておりますが、後十分以内に家を出なければ待ち合わせ時間に間に合わなくなってしまいます。」

 

歩夢と姫島が話していると、イズが家を出る予定時刻が迫っていることを知らせる。

 

「えっ!?もうそんな時間か!」

 

「あらあら、時間が過ぎるのははやいですわね。あーくん、洗面所を借りても良い?」

 

「全然良いよ。イズ、あーちゃんを洗面所まで案内してくれないか?」

 

「かしこまりました。姫島様、こちらへどうぞ。」

 

歩夢がイズに洗面所への案内を頼むと、姫島を連れて、洗面所の方へと向かって行った。

 

 

 

(ごめん、あーちゃん···でも今は···父さんの事は···!)

 

歩夢は心の中で姫島に向けて謝罪をした。

 

 

 

 

 

 

 

家から出た歩夢と姫島とイズは三人で通学路を並んで歩いている。

 

イズには首に『駒王学園入校許可証』をかけている。

 

そして現在、歩夢は二つの意味でドキドキしている。

 

一つ目の理由は、現在歩夢は姫島とイズに挟まれる形で登校していることだ。

 

姫島もイズも二人ともとても美人な為、イズとは並んで歩いたことは何度もあるが、このような美人な二人に挟まれて歩くことを経験したことが一度もないため、ドキドキしている。

 

そして二つ目の理由は、周りにある。

 

 

 

「ねえ、あれって姫島お姉様じゃない!?」「今日もお美しいですわ!」「でも、何故紫電君と歩いているの!?」「でも、紫電君もギャグを言わなかったらかっこいいしね···お似合いかも。」「そうね、ギャグを言わなかったら紫電君はかっこいいもの。」「それでも、紫電の隣にいるあの人は誰なんだ?入校許可証を首にかけてるけど?」「あの人も綺麗だなー。」「くそっ!両手に花を持ちやがって!イケメン死すべし!!」

 

 

 

 

 

···等と、駒王学園の生徒とすれ違う度に様々な黄色い声や、怨嗟の声が聞こえてくる。

 

尚歩夢は心の中で···、

 

 

 

(ギャグがつまらなくて悪かったなぁちくしょおおお!!いつか絶っっっっっっ対に聞いた人が全員笑うような爆笑ギャグをかんがえてやるからなぁぁぁぁーーー!!!)

 

そう心の中で叫んでいた···。

 

そんな事を考えている歩夢を見て、姫島はクスッと微笑んでいた。

 

 

 

朝から様々なことが起きた歩夢は、少し疲れながらも駒王学園の校門を抜ける。そしてそのまま生徒会室へと直行する。

 

姫島に案内され生徒会室の前に来た歩夢は一度深呼吸し、扉をノックする。

 

「失礼します!二年B組の紫電歩夢です!三年生のリアス·グレモリー先輩にここに来るようにと言われましたので来ました!」

 

扉の前で歩夢は大声で言った。

 

「···待っていましたよ、どうぞお入りください。」

 

暫くすると、中から声が聞こえた。

 

歩夢はもう一度「失礼します」と言って生徒会室に入る。

 

入った先には、眼鏡をかけたスレンダーな女性が立っていた。

 

「お久しぶりです、『支取生徒会長』。本日はよろしくお願いいたします。」

 

そう、彼女が歩夢達の通う駒王学園の生徒会長、三年生の『支取 蒼那(しとり そうな)』である。知的でスレンダーな彼女は、学内で三番目に人気のある女子生徒だ。ちなみに一番目はリアス·グレモリーで、二番目は今歩夢の隣にいる姫島朱乃である。

 

「お久しぶりですね、歩夢君。そして···初めまして、私は駒王学園の生徒会長をしています、支取蒼那と申します。よろしくお願いいたします、イズさん。」

 

支取は歩夢に挨拶をした後、イズにも挨拶をし、頭を軽く下げる。

 

「お初にお目にかかります、支取様。私は、秘書型ヒューマギアの『イズ』と申します。本日はよろしくお願いいたします。」

 

支取の挨拶にイズも挨拶を返し、頭を軽く下げる。

 

「支取生徒会長、イズのことをよろしくお願いします。それとイズ、いい機会だから生徒会の仕事を見て、データだけでは分からない部分を見つけてみれば良いんじゃないか?」

 

「それは良い考えですね。是非そうさせていただきます。」

 

歩夢は支取にお願いした後、イズに生徒会の仕事を見るように提案をすると、イズもその案に賛成する。

 

「それでは支取生徒会長、また放課後に来ます。」

 

「ええ、待っていますよ。」

 

そう言って歩夢は頭を下げ、扉の方へと向かい、「失礼しました」と言い、生徒会室を後にした。

 

「それじゃああーくん、また放課後で会いましょう。」

 

そう言って姫島も自分の教室の方へと向かって行く。

 

歩夢も手を振って見送った後、自身の教室へと向かった。

 

ちなみに放課後までの授業と休み時間の間は、歩夢はイズのことが心配でソワソワしていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

放課後、歩夢は教室でじっと待っていると突然、教室の前の方と廊下で女子生徒の黄色い声が聞こえてきた。歩夢は其方の方を見ると、そこには木場がいた。そして直ぐに歩夢は理解した、彼が自分と一誠を迎えに来た人だと。

 

木場は女子生徒に声をかけ、通してもらい一誠の方へと向かうって行く。

 

「や。どうも」

 

木場は一誠にそう声をかける。

 

「で、なんのご用ですかね。」

 

一誠は木場に向けて面白くなさそうに返す。しかし木場は変わらず笑顔で一誠に話しかけている。

 

「リアス·グレモリー先輩の使いできたんだ。」

 

木場がそう言うと一誠は表情を変え、一誠も状況を理解した様だった。

 

「···OKOK、で、俺はどうしたらいい?」

 

「僕についてきてほしい。」

 

一誠と木場の会話に女子生徒から悲鳴が上がる。

 

 

 

「そ、そんな木場くんと兵藤が一緒に歩くなんて!」「汚れてしまうわ、木場くん!」「木場くん×兵藤なんてカップリング許さない!」「ううん、もしかしたら兵藤×木場くんかも!」

 

 

 

···等と騒がれている。一誠は心底迷惑そうな顔をしている。

 

そんな一誠の顔を見て歩夢は二割は同情する。ちなみに八割は一誠の自業自得だと思っている。

 

「あー、わかった。」

 

一誠は了解して立ち上がった。

 

「紫電くんも来て欲しいけど···いいかい?」

 

すると、木場から歩夢に向けて声をかけられる。

 

「···俺は一誠のついでですか?」

 

「そういうことじゃ無いんだけど···。」

 

「ふっ、冗談ですよ、冗談。木場さんを見た時に、直ぐに迎えだと俺は分かっていましたよ。」

 

「ははっ、これは一本取られたね。」

 

歩夢と木場がそんな会話をしていると、今度は外から黄色い声が聞こえる。

 

 

 

「イケメン同士の会話···絵になるわ!」「紫電くんもギャグを言わなければカッコイイわ!」「木場くん×紫電くん···ご飯三杯はいけるわ!」「それとも紫電くん×木場くん···大変!手が止まらないわ!」

 

「それとも紫電くん×兵藤×木場くん···嫌いじゃないわ!!」

 

 

 

···等と外から声が聞こえる。歩夢はスルーしているが、心の中では『ギャグは言わなければは余計だ!』と、思っていた。

 

「それじゃ、生徒会室によってから向かいましょう。」

 

そう言って歩夢は鞄を持って立ち上がり、歩き出した木場に歩夢と一誠はついて行く。

 

「お、おい、イッセー!歩夢!」

 

木場と一緒に歩き出した二人を松田は呼び止める。

 

「心配するな、友よ。決闘とかじゃないから。」

 

「俺も同じだよ。」

 

一誠と歩夢は松田に向けてそう言う。

 

「これ!『僕と痴漢と時々うどん』をどうするんだ!」

 

松田はそう言ってエロDVDを天にかざした。

 

そんな松田の姿に一誠は天を仰ぎ、歩夢は走り出し、松田に怪我が無いように計算されたドロップキックを放ち、松田は軽く吹っ飛んだ。

 

 

 

「失礼します!二年B組の紫電歩夢です!放課後になったので、イズを迎えに来ました!」

 

教室の一悶着の後、三人は生徒会室へ向かい、イズを迎えに来ていた。

 

「どうぞ、お入りください。」

 

中から声が聞こえた為、歩夢は一誠と木場に少しだけ待っていて欲しいと伝え、生徒会室へと入って行く。

 

「本日もお疲れ様でした、歩夢様。」

 

歩夢が生徒会室に入ると、イズからそう声をかけられる。

 

「ありがとう。それでイズ、生徒会の仕事を見てどうだった?」

 

「データにはない姿をいくつか見られました。大変有意義な体験をさせて頂きました。」

 

「それは良かった。生徒会の皆さん、イズのこと、ありがとうございました。」

 

歩夢は生徒会室にいる人達に向けて頭を下げる。

 

「いえ、こちらもイズさんに教科書には載っていないヒューマギアのことを話してもらい、とても有意義な話を聞かせて貰いました。こちらこそありがとうございました。」

 

そう言って支取が立ち上がり、歩夢とイズに向けて頭を下げる。

 

それに続いて、他の生徒会の面々も立ち上がり、頭を下げる。

 

「それでは俺たちは行きます。また、イズのことを頼むことがあると思いますので、その時はよろしくお願いいたします。」

 

「生徒会の皆様、本日はありがとうございました。」

 

歩夢とイズはそう言って頭を下げ、二人で生徒会室を後にする。

 

「あっ、イズさん!お久しぶりです!」

 

外に出ると、一誠はイズに挨拶をする。

 

「お久しぶりです、一誠様。お元気そうで何よりです。」

 

イズも一誠に挨拶を交わす。

 

もう分かっていると思うが、一誠は、いや、一誠達二年B組のクラスメイトの殆どは、イズのことを知っている。一年前の授業参観の時に、イズが来て、教室の注目を浴びていた。

 

そして、授業参観が終わった後、イズが歩夢の家族関係の人だと分かると、一誠と松田と元浜は歩夢にイズを紹介して欲しいと頼んだのだ。

 

勿論、歩夢は三人の下心が丸わかりなので、静かな怒りの言葉と、関節技で、丁重にお断りした。

 

「それじゃあ、行こうか。」

 

三人で話していると、木場からそう声をかけられ、歩き出した木場を追うように三人は歩き出した。

 

 

 

木場の後について行くと、向かった先は校舎の裏手だった。木々に囲まれた場所には旧校舎と呼ばれる、現在使用されていない建物があった。

 

昔、この学園で使われていた校舎なのだが、人気がなく、学園七不思議があるぐらいの不気味な佇まいだ。

 

「ここに部長がいるんだよ。」

 

旧校舎を見ていた三人に木場はそう告げる。

 

「部長?リアス先輩って部活に所属しているんですか?ということは木場さんも?」

 

「まあね。」

 

歩夢この質問に木場は静かに返す。そして木場は旧校舎へと入って行く。その後を三人はついて行く。二階建ての木造校舎を進み、階段を上る。更に二階の奥まで歩を進めた。

 

「···妙ですね。ここまで見てきましたが、古い建物の割には廊下も綺麗です。使われていない教室にも塵や埃が見当たりませんでした。どうやらマメに掃除はされているようです。」

 

旧校舎を見ていたイズがそう言った。イズの言う通り、古い建物にありがちな蜘蛛の巣や埃と言ったものは見当たら無かった。誰かが掃除をしているというのは目に見えて明らかだった。

 

そうこうしているうちに、木場の足がとある教室の前で止まった。どうやら目的の場所に着いたようだ。その教室の戸には『オカルト研究部』と書かれたプレートがかけられていた。

 

歩夢と一誠は首を傾げる。昨日見たリアスにこのような部活に入っているイメージが湧かないのだ。

 

「部長、連れてきました。」

 

引き戸の前から木場が中に確認を取ると、「ええ、入ってちょうだい。」と中からリアスの声が聞こえた。木場が戸を開け、三人は後に続いて室内に入ると、三人は部屋の中に驚いた。

 

「うおぉ···オカルト研究部という名の通り不気味な内装だ。部屋の一面全部に見たことの無い文字が書かれているし、それに···この巨大な魔法陣も何かは分からないけど不気味だ···。」

 

歩夢は部屋の内装を見てそう言う。そんな室内にはソファーとデスクがいくつか存在する。

 

そしてよく見ると、ソファーに一人の女子生徒が座っていた。

 

その女子生徒は黙々と羊羹を食べていた。

 

「あっ、塔城さん!」

 

ソファーに座っていたのは昨日出会った、塔城小猫だった。

 

その声でこちらに気づいたのか、三人に視線を向ける。

 

「こちら、兵藤一誠くんに紫電歩夢くん、そしてイズさん。」

 

木場が三人を紹介すると、塔城はペコリと頭を下げる。

 

「あ、どうも。」「こんにちは。」「よろしくお願いいたします、塔城小猫様。」

 

三者三葉の言葉を返し、頭を下げる。それを確認すると、また黙々と羊羹を食べるのを再会する。

 

すると、部屋の奥から水が流れる音が聞こえ出す。

 

見れば室内の奥にはシャワーカーテンがあり、カーテンには陰影が映っていた。よく見るとそれは女性の肢体だった。それに気づいた歩夢は顔を赤くしながらバッと素早く後ろを向く。

 

水を止める音が聞こえる。

 

「部長、これを」

 

カーテンの奥からもう一人の声が聞こえる。

 

その声は女性の人で、歩夢とイズは今朝から聞いた声だった。

 

「ありがとう、朱乃。」

 

どうやらカーテンの奥には姫島もいることが分かった。

 

歩夢がふと一誠気になり、隣の方を見ると、一誠が嫌らしい顔をして、カーテンの方を見ていた。それに気づいた歩夢は、軽く足を踏む。

 

いっ!!何すんだよ歩夢!」

 

「嫌らしい顔をしていた、お前が悪い。」

 

一誠が歩夢に怒鳴るが歩夢は淡々とかえす。

 

「···いやらしい顔。」

 

ぼそりと呟く声が聞こえ、声のした方を二人が見るとそこには塔城がいた。当の本人は羊羹を食べているだけだ。

 

塔城の言葉に答えたのか、一誠も反省している様だった。

 

すると、カーテンが開く音が聞こえた。歩夢はゆっくりと振り返り、リアスが制服を着ていることを確認するとリアス達の方へと向き直る。

 

リアスは歩夢達を見かけるなり、微笑む。

 

「ゴメンなさい。昨夜、イッセーのお家にお泊まりして、シャワーを浴びてなかったから、今汗を流していたの。」

 

リアスがそう言うと、歩夢は一誠に近寄り、

 

「おい、リアス先輩に何もしてないよな?」

 

そう聞いた。

 

「なっ、なにもしてねぇよ!」

 

一誠は昨夜のことを思い出しながらそう言う。

 

「···ならいいんだが。」

 

歩夢は一誠をジトーっと見つめながら離れる。

 

すると一誠は、姫島に気づいたのか驚く表情を見せる。

 

「あらあら。はじめまして、私、姫島朱乃と申します。どうぞ、以後、お見知りおきを。」

 

一誠に気づいたのか姫島はニコニコ顔で丁寧なあいさつをする。

 

「こ、これはどうも。兵藤一誠です。こ、こちらこそ、はじめまして!」

 

一誠は緊張しながら挨拶を交わす。

 

それを「うん」とリアスは確認する。

 

「これで全員揃ったわね。兵藤一誠くん、紫電歩夢くん、そしてイズさん。いえ、イッセー、歩夢。」

 

「「は、はい。」」

 

「私達、オカルト研究部はあなた達を歓迎するわ。」

 

「え、ああ、はい。」「「ありがとうございます。」」

 

悪魔としてね。

 

この言葉により、僅かに空気が変わったことに気づく二人だった。

 

 

 

 

 

「粗茶です。」

 

「あっどうも。」「ありがとうございます、姫島先輩。」

 

姫島がお茶を淹れ、それを歩夢達に渡し、二人はそれぞれ礼を言う。

 

そして二人はお茶を一口飲む。

 

「美味いです。」「美味しいです、姫島先輩。」

 

「あらあら、ありがとうございます。」

 

二人の言葉にうふふと、嬉しそうに笑う姫島だった。

 

「朱乃、あなたもこちらに座ってちょうだい。」

 

「はい、部長。」

 

リアスにそう言われ、姫島は歩夢達の向かい側に座る。

 

「さて、改めて言わせてもらうけど私達オカルト研究部はあなた達を歓迎するわ。でも、オカルト研究部は仮の姿。私の趣味みたいなものよ。」

 

「そ、それはどういう···?」

 

リアスの言葉に、一誠が戸惑う。

 

「単刀直入に言わせてもらうわ、私たちは悪魔なの。」

 

「そ、それはとても単刀直入ですね。」

 

一誠の言葉が歩夢の気持ちを代弁していた。

 

「昨日の黒い翼の男を見たでしょう?あれは堕天使。」

 

「ッ!?」

 

リアスの言葉に一誠が目を開く。

 

「元々は神に仕えていた天使だったんだけど、邪な感情を持っていたため冥界に堕ちてしまった存在。私達悪魔の敵でもあるわ。

 

彼らは人間を操りながら、私達悪魔を滅ぼそうとしている。太古の昔から冥界ー人間界で言うところの『地獄』の覇権を巡ってね。堕天使以外にも、神のめいを受けて、悪魔を倒しに来る天使もいるわ。いわゆる三すくみの状態って訳。」

 

「···なかなかとんでもない話だな?」

 

「ゼアのデータベースにもそんな情報、一切載っておりません。」

 

「そりゃあ載ってたらおかしいからな?」

 

歩夢とイズは二人で静かに話し合う。

 

「ここまでは理解出来たかしら?」

 

リアスがそう言うので、歩夢はチラッと一誠の方を見ると、顔を歪めているのがよく分かった。

 

「一誠、とんでもない話ってのは分かるが、もう少し理解できるようにはしろよ。」

 

「うっ···わ、わかったよ···!」

 

歩夢は一誠に向けてそう言い、一誠も言葉を返す。

 

「···あ、あの〜普通の高校生には、ちょっと難易度が高いお話っていうか···。」

 

一誠は頭をかきながらそう言う。

 

 

 

「『天野夕麻』」

 

「「っ!!??」」

 

急に出されたその名前に、一誠は、否、一誠だけでは無い。歩夢も目を見開いて驚く。

 

「忘れてはいないでしょう、デートまでしたのですもの。」

 

リアスの言葉に、一誠は俯く。

 

「···ど、どこでその名前を知ったかは知りませんけど、冗談ならここで終えてください。正直、その話はこういう雰囲気で話したくない。」

 

「一誠···。」

 

初めて見る一誠の様子に、歩夢も戸惑う。

 

そう言う一誠を見ながら、リアスは自身の後ろに置いてある棚に手を伸ばし、その上に置いてあるものを取り、机の上に置く。

 

それは写真だった。その写真には···、

 

「っ!?夕麻ちゃん···!」

 

一誠と天野夕麻が仲良く話し合う様子が撮られていた。

 

その写真を前に、一誠は震え出す。

 

この写真には歩夢も息を飲む。

 

彼女は存在していたわ、確かにね。

 

二人に向けてリアスはハッキリと言う。

 

「二人に、一応聞いておくけど、この子よね?天野夕麻ちゃんって。」

 

「そっ、そうです!」

 

「はい、間違いありません。でもどうやってこの写真を···。」

 

二人は天野夕麻で間違い無いと言うが、一誠と歩夢は、彼女に関する周りの記憶と、写真が無くなった筈なのに、何故ここにあるのかが気になっている。

 

「この子は、いえ、これは堕天使。」

 

「「っ!?」」

 

リアスの言葉に二人は目を見開いて驚く。

 

「昨夜、あなた達を襲った存在と同質の者よ。」

 

「で、でも!松田や元浜だって彼女のことを覚えていなかったし!携帯のアドレスだって!」

 

「力を使ったのよ。」

 

「力···ですか?」

 

一誠の疑問をリアスが返すと、リアスの言葉に疑問を持ったイズが質問する。

 

「一誠、私があなたのご両親にしたようにね。」

 

「っ!?」

 

「なあ一誠、どういうことだ?」

 

「···リアス先輩が俺の家にいた時、リアス先輩が無茶苦茶なことを言ったんだ。俺も、そんな無茶苦茶なことを通らないと思ったんだけど···その言葉を信じたんだ。俺の両親が物分りが良くなったと思ったんだけどよ···。」

 

「···なるほどな。その力で松田や元浜の記憶や、携帯のアドレスを消したって訳か。」

 

歩夢が一誠に何が起きたかを聞き、暫く考えると、歩夢とイズは納得をする。

 

「その堕天使は目的を果たしたから、あなた達の周囲から自分の記憶と記録を消させたの。」

 

「も、目的···?」「それは一体···?」

 

「あなた達を、殺すことよ。」

 

「···何故俺たちが殺されようとしなければならないんですか?」

 

リアスの言葉に歩夢が純粋な疑問をぶつける。

 

「あなた達の身体に、物騒な物が無いかを確認するため。それが確認されたから、あなた達を殺そうとしたのよ。でも、紫電くんの方は、失敗したようだけどね。でも一誠、あなたは殺されてしまった。光の槍に貫かれてね。」

 

「っ!?一誠が···殺された···!?」

 

「では一体···何故一誠様は生きて···?」

 

リアスから話された衝撃の真実に、歩夢は驚愕する。

 

そしてイズも何故一誠が生きているのかを考える。

 

「···そういえば夕麻ちゃんがあの時、セイ何とかって言ってたっけ···。」

 

件の一誠はデートのことを思い出し、覚えていることを言う。

 

神 器(セイクリッド·ギア)。」

 

リアスがそう言った。

 

「特定の人間に宿る規格外の力。歴史上に残る人物の多くが、それを所有していたと言われていますわ。」

 

「時には、悪魔や堕天使の存在を脅かす程の力を持った物もあるの。」

 

神器の説明を姫島とリアスがする。

 

「···なるほどな、ゼロワンドライバーは俺しか持っていなくて、普通に考えるととんでもない力なわけだな。だからアイツらは俺のゼロワンドライバーを神器だって言っていたのか···。」

 

歩夢は疑問に思っていたことが一つ解決し、ため息を吐く。

 

そして、一度考えるのをやめ周りを見ると、一誠が左手を掲げ、何かをしていた。

 

「ぷはぁー!!これ以上は、無理っす···!」

 

「良いわ、まだ難しいみたいね。」

 

歩夢は後で何をしていたかを聞こうと思った。

 

「···でもやっぱ、何かの間違いなんじゃ?」

 

「堕天使がそれを恐れて殺しにかかったのも事実よ。」

 

「で、でもそれが事実なら、俺がこうして生きているのって、可笑しくないっすか?」

 

一誠がリアスに向けて、歩夢とイズが一番知りたいことを質問する。

 

「コレよ。」

 

そう言って取り出したのは、『あなたの願い叶えます!』と書かれ、魔法陣が描かれた一枚の紙だった。

 

「それは···!」

 

一誠には心当たりがあるようだった。

 

「命の尽きる寸前、貴方はこのチラシから、私を召喚した。イッセー、あなたは私、上級悪魔であるグレモリー公爵の娘、『リアス·グレモリー』の眷属として生まれ変わったの。」

 

リアスはそう言って背中から蝙蝠のような翼を出した。

 

「私の下僕の、悪魔としてね。」

 

とんでもないカミングアウトに、一誠だけでは無く、歩夢とイズも驚愕している。

 

すると、姫島、木場、塔城も立ち上がり、三人共リアスの方へ近づく。

 

そして、一誠達の方へ向くと、一人一人その背中からリアスと同じ翼を出す。

 

三人は驚き、席を立ち上がる。

 

すると突然、一誠の背中からも四人と同じ翼が出てきた。

 

「マジ···かよ···!?」「一誠様が···悪魔に···?」

 

歩夢とイズは驚き過ぎて、身体が固まっている。

 

「よろしくね、一誠。」

 

リアスが一誠に向けてそう言う。

 

 

 

 

 

「さて、こんな空気になって言うことじゃないんだけど···次はあなたの番よ、紫電歩夢くん?」

 

リアスはそう言って、歩夢とイズの方を見る。

 

「···本当に、こんな空気で言うことじゃないですし、悪魔や堕天使や、一誠が悪魔になったことに比べると、大した話では無いですよ···。」

 

そう言いながら、歩夢は立ち上がり、自身のバックを持って、前に出る。リアス達は既にソファーに座っている。

 

「えーっと、まず、皆さんに俺の事を話すために、俺の秘密を話します。」

 

「秘密···?」

 

歩夢の言葉に一誠がぼそっと言う。

 

「それは···、

 

 

 

 

 

俺の苗字が、本当は違うことです。」

 

歩夢はリアス達に向けてそう言った。

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ歩夢!『紫電』がお前の苗字じゃないのか!?」

 

一誠は立ち上がり、そう言った。

 

「悪い、一誠。皆を騙す気は無かったんだ。でも、そうしなきゃ行けなかった理由があるんだ。でも、その理由はおいおい話します。なら、俺の本当の苗字は何なのかは···この、『ゼロワンドライバー』に秘密があります。ですが、この秘密は他言無用でお願い致します。俺が信頼する人にしか話さないことです。」

 

そう言って歩夢は周りを見る。そして、全員が頷くのを確認した。

 

「この『ゼロワンドライバー』は誰でも装着は可能なのですが、変身出来るのは、ある条件をクリアしていなければ行けないんです。その条件は···、

 

 

 

 

 

 

 

飛電の社長』であることです。」

 

歩夢は前を真っ直ぐ見てそう言った。

 

「飛電の社長···それってつまり···!」

 

リアスは少し考えると、驚いた顔を見せる。

 

「ど、どういうことだよ、歩夢!」

 

一誠は歩夢に向けてそう言う。

 

「···察しのいい人はもうわかっていますね。そう、俺の本当の苗字は···『飛電』。俺の本当の姿は···、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『飛電 歩夢』。二代目株式会社飛電インテリジェンス代表取締役社長です。

 

歩夢は、堂々とそう言った。

 

「あ、歩夢が···社長···!?そ、それに···飛電インテリジェンスって···歴史の教科書にも載ってある大企業じゃねえか!!!」

 

一誠は立ち上がり、そう叫んだ。

 

「これは驚いたね···まさか社長だったなんて。」

 

「凄い···です。」

 

「あらあら、歩夢くんが社長なら、もしかしてイズさんは?」

 

木場達もそれぞれの反応を見せる。すると姫島は歩夢のそばにいるイズのことに注目する。

 

「そうだな、イズのことも紹介しなきゃな。イズ、自己紹介を頼む。」

 

「お任せ下さい、歩夢社長。」

 

イズはそう言って前に一歩出る。

 

「改めて自己紹介をさせていただきます。私は、飛電インテリジェンス先代社長であり、歩夢社長の祖父にあたる『飛電 是之助(ひでん これのすけ)』様により作られました。秘書型ヒューマギアの『イズ』と申します。主な仕事は歩夢社長の秘書です。ですがご自宅でお留守番をしている時は家事をやっています。以後、よろしくお願い致します。」

 

そう言って頭を下げる。

 

「イ、イズさんが、歩夢の秘書ぉ!?」

 

一誠は再び大声を出して驚く。

 

「あらあら、イズさんも中々、素晴らしい仕事をしておられるのですね。」

 

姫島は頬に手を当て、そう言った。

 

「で、でもよ歩夢。お前が凄いやつだってのはわかったんだけどよ···でも何で苗字を変えるようになったんだ?」

 

一誠は周りが気になっていることを聞く。

 

「···それはな、養父さんときめたことなんだ。俺が飛電インテリジェンスの関係者とバレないようにする事と、一人暮らしを許してもらえるための条件なんだ。」

 

歩夢は少し間を開けて、そう言った。

 

「ねえ、よろしければ、あなたのご家族について教えてくれる?」

 

リアスは歩夢にそう言う。

 

「···そうですね、いずれ分かることですし、今、俺の家族のこと···駒王学園に入学するまでのことを話しておきます。」

 

そう言って歩夢は何度か深呼吸をする。

 

「···俺は、父さんである『飛電 其雄(ひでん それお)』と、母さんである『飛電 嘉乃(ひでん よしの)』の間に産まれました。···でも、俺は二人のことは余り知りません。」

 

「···もしかして。」

 

「···はい、父さんと母さんは···俺が物心つく前に、二人共···事故で亡くなりました。」

 

歩夢の告白に、一同が黙り込む。

 

「でも···そんな俺を心配して、俺のじいちゃんが、俺のために、あるヒューマギアを作ってくれました。それが···父さんを元に作られた父型ヒューマギア、『飛電 其雄』でした。」

 

「もしかして歩夢···お前、ヒューマギアに育てられたのか!?」

 

一誠は歩夢にそう聞くと、歩夢は静かに頷く。

 

「でも、何も不自由は無かった。父さんとは血は繋がっていなかったけど···ココで、繋がっていたから···本当の父さんの様だったから···俺は幸せだった。」

 

歩夢は胸に触れながらそう言った。

 

「でも、そんな父さんにも、秘密があったんだ。それは···、

 

 

 

 

 

 

 

父さんは···『仮面ライダー』だったんだ。」

 

その言葉に、イズと姫島以外が驚く。

 

「お、お前のお父さん···仮面ライダーだったのか!?」

 

一誠は本日何度目か分からない大声でそう言う。

 

「ああ、俺は昔、ヒューマギア運用実験都市に住んでいたんだけど···父さんは俺を寝かした後、こっそりと家から抜け出して、『仮面ライダー一型』として活動していたみたいなんだ。」

 

「···そう言うことだったのですね。」

 

「朱乃···?」

 

歩夢の言葉に納得をしている姫島の姿にリアスは疑問を覚える。

 

「···ある時、父さんが紹介したい人がいるって、俺をとある場所へ連れていってくれました。そこは和風な大きな家で、そこには、三人の家族が仲良く暮らしている家でした。俺と父さんは、何度かその家に行って、俺はその家の子供である、女の子とよく遊んで、父さんとその家のお父さんは、よく俺と女の子のことを話し合っていたそうです。でも···、ある時、その一家が遠くへ引っ越すことになったんです。俺とその子はお互いに泣いて···また会うことを約束して、最後に俺と父さん、そしてその一家の皆さんと一緒に写真を撮って、その家族とは離れてしまいました。

 

 

 

 

 

でも、お互いに気付かずに、俺と女の子は再会をしていました。」

 

歩夢の最後のカミングアウトに、一誠達は驚く。

 

「そ、それで!?誰だったんだよ!」

 

「それはな···、今朝、お互いにわかったばっかりだったんだよ···。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだよね、姫島先輩···いや、あーちゃん?」

 

歩夢はそういうと、全員は驚きながら姫島の方へと向く。

 

「···私も最初は驚きましたわ。歩夢くん···いえ、あーくんのお家に向かった時、あーくんの家の玄関に、最後に私達と撮った写真が飾られていたんです。その時に気づきました。彼が、あーくんだって···。」

 

そう言って姫島は微笑む。

 

「でも、あーくんの顔をよく考えて見てみると、何処か其雄様の面影があるのに気づきましたわ。」

 

「俺もあーちゃんの髪型、あーちゃんって分かったあと、直ぐにあーちゃんのお母さんと同じ髪型だってわかったよ。」

 

「ゴッホン!」

 

歩夢と姫島の和気あいあいとした会話をリアスが咳き込みで無理やり切る。

 

「会えて嬉しいから思い出話や身の回りについて話したい気持ちもわかるわ。でも、まずは歩夢のことを聞いてからにしてちょうだい。」

 

リアスは歩夢と姫島を見てそう言う。その言葉に、二人はいそいそと元の場所に戻る。

 

ちなみに戻る途中に歩夢が一誠の顔を見て見ると、歩夢の話に感動していたのか、先程の光景を嫉妬していたのか分からないが、変な顔になって、涙を流していた。

 

「ま、まあ話を戻しますけど···俺は、父さんとそんな生活が楽しかったです。父さんを心から笑わせることを夢にして、幸せに暮らしていました。

 

 

 

 

 

 

 

···あの日までは···なあ一誠、ヒューマギア運用実験都市の主な出来事を歴史の教科書に載っていたことで良いから覚えていないか?」

 

一誠は急に歩夢から話を振られたことで、顔が戻った。

 

「えっ!?そ、そんなこと言われても···うーーん···確か···ヒューマギアの高速餅つきだろ?それから···モデルのヒューマギアだろぉ〜、それから···っ!!」

 

一誠は歴史の教科書に載っていたことをゆっくり思い出していると、一つの出来事を思い出した瞬間、頭が冷える感覚を感じた。

 

「···どうやらわかったみたいだな。そう、俺の幸せな日常は···、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『デイブレイク』によって、崩壊しました。」

 

『デイブレイク』···それは、ヒューマギア運用実験都市の開発区域にあるヒューマギア工場の整備ミスによる爆発が、同じ開発区域にあった動力炉に誘爆して起こった爆発事故だ。

 

「そして、当時俺は···父さんの職場である、開発区域にいました。その時に、デイブレイクが起きました···。

 

ですが、不思議だと思いませんか?デイブレイクが起きた中心の部分で、どうして無事だったのか。それは···ある人が、俺を庇ってくれたからです···。」

 

「ま、まさか···。」

 

歩夢の言葉に姫島は口を抑える。

 

「···あーちゃんの予想通りだよ···俺が無事だったのは···、

 

 

 

 

 

 

 

父さんが···俺を、庇ってくれたからなんだ···。

 

歩夢の言葉に、全員が様々な反応をする。

 

一誠は目を見開いて固まっている。

 

リアスと木場、小猫は俯いている。

 

姫島は口を抑え、目からポロポロと涙が零れている。

 

姫島たちの姿を見た歩夢は、目から涙が流れ出すのを感じる···。

 

「俺を庇った父さんは、俺に···『夢に向かって···跳べ』···と言葉を残して···亡くなりました···その日は12月27日···俺の···誕生日でした···。」

 

歩夢は俯き涙を流しながら、そう言った。

 

「···ゴメン、あーちゃん···俺、あの時に伝えるべきだったんだ。でも、俺···あーちゃんを···悲しませたくなくて···。」

 

「···いいえ、大丈夫です。それに···何となく其雄様がもういないというのは、朝のあーくんの雰囲気で、何となく理解出来ましたわ··。あーくん···話して下さり、どうもありがとうございます···。」

 

姫島はそう言うと、歩夢に頭を下げる。

 

「歩夢···辛いことを思い出させて、ごめんなさい···。」

 

リアスからも謝罪の言葉が聞こえ、リアスは頭を下げる。

 

「な、なあ歩夢!!」

 

すると突然、一誠が大声をあげる。

 

「···俺に出来ることが何かあれば、言ってくれ!!俺は···お前を助けたい!!だから頼む!何か頼って欲しいことがあったら、俺の事を頼ってくれ!頼む!!」

 

一誠はそう言って地面に頭が着くような勢いで頭を下げる。

 

「一誠···ありがとな。もし、その時が来たら···頼らせてもらうよ。」

 

歩夢は微笑んでそう言った。

 

「···歩夢先輩。その後、どうしたんですか···?」

 

すると小猫が、恐る恐る歩夢に聞く。

 

「···そうだね、せめて俺の昔の話は終わらせないとな···。あの後、俺は飛電インテリジェンスに呼び戻されたんだ。その後、じいちゃんと一緒に過ごしていましたが···デイブレイクの翌年、じいちゃんも···病気で亡くなってしまいました···。」

 

歩夢は俯いてそう言った。

 

その言葉に、一同もまた俯く。

 

「その後···じいちゃんの告別式が行われました。そして、じいちゃんの荷物を整理していたら···じいちゃんの遺書が出てきたんです。そして、その遺書に書いてあったことで···一悶着がありました。」

 

「一体···何が書いてあったんだい?」

 

歩夢の言葉に木場が疑問を出す。

 

「そのことは···イズ、皆に遺書の内容を伝えてくれないか?」

 

「かしこまりました。」

 

歩夢のお願いにイズは頷く。

 

「是之助社長の遺書には、このようなことが書かれていました。

 

···『そう遠くない未来、我が社は重大な危機に直面する。我が社が派遣しているヒューマギアが、心無き存在に悪用され、人類を襲う···。』」

 

「一体誰が···何のために···?」

 

イズの言う是之助の遺書の内容に一誠が不思議に思う。

 

「『対抗手段はただ一つ。『ゼロワンドライバー』と、『プログライズキー』だ。我々人間の手によって、ヒューマギアをコントロールする為の、新世代セキュリティシステムが内蔵されている。』」

 

「··なるほどね。歩夢が持っていたあの機械は神器では無く、貴方の会社で作られた物だったのね?」

 

「はい、ゼロワンドライバーとプログライズキーは飛電インテリジェンスで作られた物です。···イズ、続きを頼む。」

 

「はい、歩夢社長。···『使用権限があるのは、我が社の社長のみ。そして、二代目社長に···

 

 

 

 

 

孫である、『飛電歩夢』を任命する。···社員一丸となって、会社の危機を乗り越えて貰いたい、以上。』···これが、是之助社長の遺書の内容です。」

 

「···俺はこの時、次の社長は···『福添(ふくぞえ)副社長』だと思っていました···でも、じいちゃんが次の社長に選んだのは···俺でした···。」

 

「···そんなことがあったのですね···。」

 

イズと歩夢の話を聞いた姫島が言葉を零す。

 

「···その遺書での内容を聞いた周りの人達は···全員、納得がいっていませんでした···同族経由で会社を私物化する気かとも言われました···。

 

そりゃあ当然ですよね。俺みたいな子供が社長になる何て···色々言われて、当たり前ですよね···。」

 

「歩夢···。」

 

「···でも、そんな反対意見の中、一人が俺が社長になることに賛成をしました。その人は···じいちゃんがまだ生きていた時に、じいちゃんとよく一緒に話していた人で、飛電インテリジェンスのことを愛しているとよく言っていた人でした。それが···、

 

 

 

 

 

ZAIA(ザイア)エンタープライズ》の社長、『天津 垓(あまつ がい)』でした。」

 

「《ZAIAエンタープライズ》に『天津垓』ぃ!?また教科書に載っているでかい会社と人物じゃねえか!」

 

歩夢が言ったビックネームに、一誠は驚く。

 

「その時に天津社長は···『貴方達は、是之助社長の遺言を無下にする気ですか?きっと是之助社長には、歩夢君を選んだ意図が1000%存在するはず···それを目先の地位だけしか考えない等···本当に貴方達は是之助社長を支えていた社員ですか?』···と仰り、皆様の口を閉ざしていたそうです。」

 

イズはその時に天津垓が言っていた言葉を言う。

 

「ですが···それでも納得いっていない人の顔を見た天津社長はこう言ったんだ··。

 

 

 

 

 

 

 

『ならば私が、皆様全員が歩夢君を1000%社長と認めていただくために、歩夢君を教育し、立派な飛電の社長にしてみせましょう。』···と言ったんだ。勿論、周りの人は困惑したりしてたよ。

 

···でも、天津社長は飛電インテリジェンスからとても信頼されていたから、任せても大丈夫では無いかっという意見もチラホラ出てたんだ。

 

そんな中、天津社長は俺に···『決断を決めるのは、歩夢君自身だ。』と言いました。そして俺は考え···、

 

 

 

 

 

俺はその言葉を了承しました。そして俺は手続きを済ませ、天津社長の《養子》になりました。

 

そして俺は、福添副社長に『社長代理』として社長の権限を渡し···俺は天津社長···いえ、養父さんの会社である、ZAIAエンタープライズの方へ行き、そこで社長の事や、経済のことだけでなく、様々なことを学びました。···そして養父さんの元で、中学校を卒業した時に、俺は養父さんから一人暮らしを許してもらい、俺は引越しをし、駒王町に来ました···これが、俺が駒王町に来るまでの話です。」

 

「···一つ一つの出来事が、とても壮大です···。」

 

歩夢の過去に、小猫がポツリと言葉を零す。

 

「歩夢、聞きたいことがあるのだけど···貴方はいつイズさんと出会って、いつ飛電インテリジェンスの社長の座を正式に継承したの?」

 

「イズと出会ったのは、俺が中学三年生の時です。そしてその時に、俺はゼロワンドライバーを受け取り、正式に飛電の社長になりました。」

 

「あれ?待ってくれ歩夢。お前は天津垓社長の元に行く時にその···ゼロワンドライバーを持って行かなかったのか?」

 

「まだその時は正式に社長として継承されていなかったから持っていく必要は無かったんだ。それに···ゼロワンドライバーを使うには、まだ俺が未熟だったからな。」

 

リアスと一誠の質問に歩夢は答えていく。

 

「···ここまでの話で、貴方が何者なのかはよく分かったわ。それで歩夢、貴方の目的は何なの?」

 

「俺の目的···というか、将来叶えたい夢があります。それは···、

 

 

 

 

 

 

 

人間と、ヒューマギアが共存出来る世界を作ること』です。その夢がどれだけ大変な夢なのかも理解しています。でも、俺と父さんが一緒に家族として過ごせていたように···人間とヒューマギアは、共存し、心を通わせられることを、俺は信じています。」

 

リアスの質問に、歩夢はリアスの目をじっと見つめ、そう言った。

 

「···そう、ならば私達は貴方の夢を応援するわ。そうでしょう、皆?」

 

歩夢の目を見たリアスはふっと微笑み、歩夢の夢を応援することを言う。そして、周りに声をかける。

 

「はい、私もあーくんの夢を、応援しますわ。」「僕も、そんな世界を見てみたいな。」「私もです···。」「俺もだぜ歩夢!お前の夢の世界···実現するのを超楽しみに待っておくぜ!」

 

四人はそれぞれの反応を見せる。

 

「皆···ありがとう!

 

改めて、二年B組、『飛電 歩夢』です!よろしくお願いします!」

 

そう言って歩夢は頭を下げた。

 

「···良かったですね、歩夢社長···。」

 

その後ろで、イズは優しく微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

帰り道、リアス達悪魔との話を終えた歩夢とイズは、リアス達が作ったチラシを帰り道にある家のポストに入れながら帰っていた。

 

「何か···悪魔の仕事も、俺たちと同じく、地道なことの積み重ねなんだな。」

 

歩夢はそう言いながら、チラシをポストに入れていく。

 

あの後、リアスから悪魔の事情を聞き、少しでも契約の手伝いをすると歩夢が言い、このようなことをしているのだ。

 

「どのようなことも最初は小さなことからです。リアス様たちも、そのことをわかっているのでしょう。」

 

「···そうだな。」

 

イズと歩夢が話しながらポストに入れていくと、受け取っていた分のチラシを配り終えていた。

 

「あ、終わったようだな。そんじゃ、帰るかイズ。」

 

「はい。」

 

二人は並んで自宅へと帰っていく。

 

しばらく歩くと自宅の近くに来た···しかし、歩夢達の自宅の前に車が止まっていた。

 

「···何だろ?」

 

そう言って近づいていくと、車の扉が開き、中から一人の男がトランクを持って出てきた。

 

「『飛電インテリジェンス』代表取締役社長、飛電歩夢様でお間違えありませんね?」

 

「···あの〜···貴方は?」

 

突然男から話しかけられた歩夢は警戒しながら返事を返す。

 

「申し遅れました。私は、『ZAIAエンタープライズ』本社開発部の幹部を務めています。『与多垣(よたがき) ウィリアムソン』と申します。本日は、歩夢様に、新しいプログライズキーと、プログライズキー用のデータを天津垓社長の指示により、届けに参りました。」

 

「えっ!?養父さんから!?···というかすいません、こんな時間まで待ってもらって···。」

 

「いえ、歩夢社長には学業に励んでもらうことが第一です。余り気にしないで下さい。」

 

与多垣はそう言いながら、トランクを歩夢の前に出し、トランクを開く。

 

「こちらが、本日歩夢社長に渡すために持ってきた···、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フリージングベアープログライズキー』と、新しいプログライズキーを作る為に用意されたデータになります。どうぞ、お受け取り下さい。」

 

与多垣が取り出したものは、ホッキョクグマが描かれた、水色のプログライズキーと、少し形状が変わったプログライズキーのような形をした物だった。

 

「あっ、ありがとうございます!」

 

歩夢はそう言って二つのプログライズキーを受け取る。

 

「そして、もう一つ天津垓社長からの伝言があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

···『(ほろび)が、また現れた』···との事です。」

 

与多垣の言葉に歩夢が目を見開いて、固まる。

 

「···それでは、私は仕事に戻ります。歩夢社長の、これからのご活躍に期待しております。」

 

与多垣はそう言って、車に乗り込み、車を走らせて行った。

 

「···歩夢社長。」

 

「···この町まで被害を出す気なのか···!『滅』···!」

 

イズの言葉に答えず、歩夢は二つのプログライズキーを握りしめながら、震えた声を出していた···。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギャアアアアア!!!」

 

周囲は背の高い草木が生い茂った場所にある廃屋となった建物から、異様な叫び声が響く···。

 

叫び声を出したのは上半身が裸の女性だった。しかし、フラフラと立ち上がった女性の体は宙に浮いていた。その姿は、女性の上半身とバケモノの下半身を持った、形容のしがたい異形の存在だった。

 

しかし、その異形な存在は自分の目線の先の闇を恐れている。

 

否、その闇の中にいる存在に恐れを抱いている。

 

すると、廃屋内に足音が響く···。その足音は、異形の存在の目の前の闇の中から聞こえてくる···。

 

そして···、闇の中からその存在は現れた。

 

 

 

 

 

 

 

その存在は、バイオレット色のパワードスーツの上に黒い装甲を身につけ、黄色の複眼が光る存在だった。その手には弓らしき武器を握っており、腰には黄色と黒がメインの機械を取り付けていた。そして、その機械にはバイオレット色のプログライズキーが装填されていた。

 

「くぅ!こざかしいぃぃぃぃ!!!貴様を喰ってやるぅぅぅぅ!!!」

 

異形の存在は叫び声を上げながら、紫色の存在へと突撃していく。

 

そんな中、紫色の存在は静かに腰に手を伸ばし、そこから薄緑色のプログライズキーを取り出す。

 

《STRONG!》

 

そして、薄緑色のプログライズキーを起動し、持っている弓に装填する。

 

《Progrise key confirmed. Ready to utilize.》

 

《ヘラクレスビートルズアビリティ!》

 

そしてゆっくりと弓を引きながら、異形の存在に照準を合わせる。

 

照準を合わせている時に、エネルギーで出来た薄緑色の矢ができていた。

 

そしてその矢を···、

 

 

 

 

 

《ストロングカバンシュート!》

 

 

 

異形の存在に向けて放った。

 

そして、放った矢はまるでカブトムシの角のような形になり、異形の存在を貫いた。

 

「ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

異形の存在は叫び声を上げながら吹き飛び、仰向けになりながら倒れる。

 

倒れていく異形の存在を見た紫色の存在は、ゆっくりと異形の存在へと近づいていく。

 

「ひっ!く、来るな···!」

 

顔だけを上げた異形の存在は、近づいてくる紫色の存在に恐怖していた。

 

その紫色の存在は近づきながら、腰に付けてある機械に手を伸ばし、その機械に取り付けてあるレバーを押し込む。

 

すると、その機械から音が鳴り出す。そして···レバーを引っ張る。

 

 

 

《スティングディストピア!》

 

 

 

その音声と共に、背中から機械で出来た針が出てきた。それはまるで、サソリの毒針のようなものだった。

 

その機械でできた毒針は、紫色の存在の右足に絡まっていく。

 

そして異形の存在の前に行き···、

 

「はあっ!」

 

異形の存在の眉間に右足を突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スティング

 

ディストピア

 

 

 

「がっ···」

 

紫色の存在の一撃をくらった異形の存在は、その言葉が口から漏れた。

 

そして紫色の存在は静かに右足を下ろすと、異形の存在は頭を地面に落とした。そして、二度と動くことは無かった···。

 

 

 

「···駒王町の端にある廃屋の占領···完了だ···。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ては···アークの意志のままに···。

 

紫色の存在は、廃屋の中で静かにそう言った···。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『滅』···ですって?」

 

次の日の放課後、与多垣から聞いた情報をリアス達に伝えていた。

 

「なあ歩夢···その、滅って奴は何者なんだ?」

 

一誠が滅のことを歩夢にたずねる。

 

「···イズ、滅の姿を見せてくれ。」

 

「かしこまりました。」

 

イズはそう言うと、オカルト研究部の壁に、滅のすがたを映す。

 

「今映っているのが···滅です。」

 

その姿は、バイオレット色のパワードスーツの上に黒い装甲を身に付けており、黄色の複眼を持った存在だった。

 

「こいつが···滅···!」

 

その姿に、誰もが息を飲む。

 

「···あら?あーくん、一つ聞きたいのですが···あの滅という存在が付けているあの機械···其雄様が付けていた機械と瓜二つなのですが···。」

 

姫島が滅の腰に装着されている機械に注目をする。

 

「ああ···あの機械は、『フォースライザー』···といって、俺のゼロワンドライバーと同じく、仮面ライダーに変身する機能を持っているんだ。」

 

「か、仮面ライダーになれるのか!?それじゃあ···あいつのあの姿は···か、『仮面ライダー滅』ってことかぁ!?」

 

驚いた一誠の言葉に歩夢は静かに頷く。

 

「ちなみに、俺の父さんが使っていたのは、あの『フォースライザー』を改良して、父さん専用にしたもの···『サイクロンライザー』なんだ。」

 

「そうだったのですね···。」

 

姫島は歩夢の説明に納得がいった。

 

「そして、滅の目的は···、

 

 

 

 

 

 

 

『人類の滅亡』です···。」

 

歩夢から聞いた滅の目的に、一同は驚愕する。

 

「人類の滅亡ですって!?」

 

「それでは滅を放って置けば、お母様も···!」

 

「これは···放って置けなくなったね···!」

 

「恐ろしいです···。」

 

「まさか滅って野郎は···俺の父さんや母さん···松田や元浜も···お前の会社の人達も、全員滅亡させるってのか!?」

 

「···ああ。」

 

「っ!ゆ、許せねぇ···!そんな良くわからないやつなんかに、俺の親と親友を殺させてたまるかってんだ!」

 

滅の目的に一誠は大声で怒りを叫ぶ。

 

「なあ歩夢!滅ってヤローはどんな奴はなんだ!」

 

「···それが、変身者の情報が、一切無いんだ。俺も昨日のうちに幾つか仮説をたててみたんだが···一つ、人類に怒りを持っているヒューマギアの仕業···二つ、この世に怒りを表す人間の仕業···3つ目が、悪魔や天使···堕天使等の存在···この三つが、俺とイズが考えた滅の正体なのですが···どの仮説も可能性があるため、決めれませんでした···。それに、滅は···、

 

 

 

 

 

 

 

この駒王町にいる可能性もあるんです···!」

 

っ!それならなお私も許せないわ···!この町は私の管轄なの···!それを土足で踏みあらそうだなんて···絶対に許さない···!

 

歩夢の考察に、リアスは怒りを滲み出す。

 

「リアス部長の怒りも分かります。でも···滅を見つけた時には、戦わずに、まず、俺を呼んでください。」

 

「···何か、理由があるのかい?」

 

歩夢の言葉に、木場が疑問を持つ。

 

「滅には、生半可な攻撃は効きません。それに···過去に、俺は何度か滅と戦ったことがあるのですが、あいつは次に戦う時には、俺がそれまでに使った技や動きなどを全て覚えて、対処してくるんです。皆さんが強いっていうのはわかっています···でも、あいつに皆さんの···悪魔の力を見せてしまうと、それこそ不味いことになってしまう気がするんです···!」

 

歩夢の言葉に、一同は黙る···。

 

「···分かったわ、約束する。万が一、私たちが滅を見かけた時はすぐに歩夢に報告するわ。」

 

「御協力、感謝します。」

 

リアスの言葉に、歩夢は頭を下げる。

 

「それではリアス部長、これから俺はゼロワンの調整、そして、この町に滅がいないか等の探索をします。その為、しばらくオカルト研究部に来れない日が続きます。すいません、それでは。」

 

歩夢はそう言って荷物を持って歩いて行き、イズも映写機能を辞め、歩夢について行く。

 

「歩夢!手伝って欲しい時は、遠慮なく言ってくれよ!」

 

「···おう!ありがとうな、一誠!」

 

一誠の言葉に歩夢は笑顔で返す。

 

「···この町を、皆を···皆の日常を必ず、守ってみせる···!」

 

歩夢は拳を握りしめて、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ〜···。あれから数日色んな所を回ってみたけど、全然滅の情報が掴めないなぁ···。」

 

リアス達に滅のことを教えて数日後、あれから歩夢は駒王町の至る所を見たり聞いたりしていたが、滅に関する情報は、一切得られなかったのだ。

 

「それでも少しづつですが、滅に近づいていると、私は思います。」

 

「そうだといいんだけどなぁー···ん?あれって···おおーい!おはよう一誠!!」

 

「···ん?おお、おはよう歩夢。」

 

歩夢がイズと話していると、目の先に一誠がいたので一誠に声を声をかけると、一誠も歩夢達に気づき、挨拶を返す。

 

「···どうした一誠、今日は何か元気ないな?」

 

だが、歩夢はいつもと比べて一誠の元気がないことに気づく。

 

「あ、ああ···実はな、部長に注意されちまったんだ···。」

 

「注意されたって···何をしたんだよ一誠?」

 

「いや、実は···昨日の夜に、契約の為に契約者の元に向かったんだが、契約を取れなくて落ち込んで帰っている途中で···堕天使に襲われちまったんだ。」

 

「堕天使に!?」

 

一誠の昨日のことを聞いた歩夢は目を見開き驚く。

 

「それで何とか攻撃を交わしていたんだが···足がもつれて転んじまって···もうダメかって思ったんだけど···その時に、部長に言われた言葉を思い出したんだ。集中する事と、イメージを浮かべること···それを極限まで集中をして、イメージを浮かべたんだ。そしたら···俺の左腕に、神器が現れたんだ。」

 

「神器が!?すげぇじゃねえか一誠!」

 

一誠に神器が現れたことを、歩夢は自分のことのように喜ぶ。

 

「ありがとな。でも···部長には、注意されちまった···。」

 

「何でだ?無事で良かったとか、よく神器が目覚めたとか褒められなかったのか?」

 

「いや、その言葉もちゃんと言われたんだ。でもな···俺が堕天使に生きてること、俺がグレモリー眷属になってることがバレたことを注意されてしまったんだ···。もっと周りのことに対する注意力を高めなさいって···。」

 

「···まあ、リアス部長の言う事も分からなくは無いな。それでお前は落ち込んで登校していたって訳か。」

 

「そういうことだ。はあ···俺の明るい悪魔ライフも、まだまだ先ってことか···。」

 

一誠はため息をつく。

 

「元気出せよ一誠···あ、そうだ。お前に渡したいものがあるんだ。神器が目覚めた記念として渡しておくよ。···お、あったあった。これだ。」

 

「歩夢、これって···、

 

 

 

 

 

チェスのルールブックじゃねえか?」

 

歩夢が一誠に渡したものは、チェスのルールブックだった。

 

「俺がたまーに家に来る養父さんと一緒にチェスをやったりするんだ。それにオカルト研究部の部室にもチェス盤もあったし···もし、お前がリアス部長とチェスの勝負に勝てば、リアス部長からご褒美が貰えるかもな?」

 

ほ、本当か!?よぉぉぉぉぉぉしっ!!俺も今日からチェスを始めるぞぉぉぉ!!!

 

一誠は歩夢から貰ったチェスのルールブックを掲げてそう叫ぶ。

 

(本当に、一誠って扱いやすいな···。でも、単純なところが、一誠の良い所のひとつなんだけどな。)

 

はわう!

 

歩夢がそんな事を考えていると、二人の横から突然声が聞こえた。

 

その時には声だけではなく、同時にボスンと路面に何かが転がる音がした。

 

歩夢達が声のした方へと向くと···、

 

 

 

 

 

そこには顔面から路面へ突っ伏しているシスターの姿があった。

 

そして、シスターの履いているスカートがめくれてしまい、下着が丸見えな状態になってしまっていた。

 

歩夢はそれに気づくと、顔を赤くしながらばっと顔を逸らす。

 

その時に一誠の方を見ると、シスターの姿を見ていやらしい顔をしていた。

 

歩夢はそんな一誠の姿に気づくと、一誠の鳩尾に拳を叩き込む。

 

ウッ!な、何すんだよ歩夢···!」

 

「いやらしい顔をするんじゃねぇ···!」

 

「あうぅ···どうして私は何も無い所で転けてしまうのでしょう···。」

 

歩夢と一誠がそんなケンカをしていたら、転けたシスターからそんな声が聞こえた。

 

「この言語は···英語か?」

 

歩夢はボソッとそう言う。

 

「あ、あの〜···だ、大丈夫ッスか?」

 

「だ、大丈夫ですか?何処か、怪我とか?」

 

一誠と歩夢はシスターに声をかける。

 

「···ああ、すみません。ありがとうございますぅぅ。」

 

シスターはそう言って自力で起き上がり、こちらの方へ顔を向けた。

 

その時に、彼女が被っていたヴェールが外れた。

 

 

 

ヴェールの外れたシスターは、金色の長髪がこぼれ、綺麗なグリーン色の双眸をしていた。

 

「「っ!!」」

 

二人はシスターの姿に、一瞬心を奪われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日、このシスターとの出会いによって、歩夢達の物語は、更に加速していく···。




次回、ハイスクールREAL×RIZE

「何故貴様らは、人類を守っている?」

滅との邂逅···!

「私と友達になってくれて、本当にありがとうございます。」

シスターの涙···!

「下等な人間が!私に同情するなぁぁぁ!!!」

レイナーレの心の叫び声···!

「今、一誠を笑ったのか?」

次回、ハイスクールREAL×RIZE
第四話「シスターと闇と怒りの叫び」


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第四話「シスターと闇と怒りの叫び」その1

また大幅に遅れて申し訳ございませんでした!オクトリアンです。
最後の投稿後、仕事場の部署が変更になり、なれるのに時間がかかったり、しばらく鬱になってたりして遅れてしまいました。
その為、このままずっと待ってくれている方々に申し訳がたたないため、今回から一つの話を分割して投稿していきたいと思います。
相談もせずこのような形にしてしまい、申し訳ございません···。
そして、皆様にはアンケートに答えていただきたいです。それは···、
『歩夢に使い魔はいるか?』をアンケートで答えて頂きたいのです。
アンケートの結果によって、戦闘校舎のフェニックス編から大きく変わります。何卒協力をよろしくお願い致します。
ちなみにもしもいる結果になった場合、歩夢がこれまで以上に気張れるようになります。
さて、長い話はこれまでにして、本編を楽しんでください!
そして、Twitterを始めました。どうかフォローをよろしくお願い致します。
最後に、コメント、高評価もよろしくお願い致します!


「「·····。」」

 

現在、歩夢と一誠は目の前のシスターに見惚れていた。

 

シスターのグリーンの双眸に二人は引き込まれ、見とれているのだ。

 

「あ、あの···どうしたんですか···?」

 

歩夢と一誠が惚けていると、シスターから声がかけられる。

 

「いっ!?いや、何でもないよ!?なあ一誠!」

 

「えっ!?あ、ああ···。っと、大丈夫っすか?」

 

「ああ、ありがとうございます。」

 

歩夢は誤魔化すようにそう言うと、一誠に話を振る。そして振られた一誠は驚きながらも返事を返す。そして一誠は、シスターに向けて手を出し、シスターは一誠の手を握り、立ち上がる。

 

「えっーと···り、旅行でここに来たんですか?」

 

歩夢は目の前のシスターに向けてそう言った。だがシスターは歩夢の質問に首を横に振る。

 

「いえ、違うんです。実はこの町の教会に今日赴任することとなりまして···あなた達もこの町の方なのですね。これからよろしくお願いします。」

 

そう言ってシスターはペコリと頭を下げる。

 

シスターが頭を下げるのに続いて、歩夢と一誠、イズは頭を下げる。

 

「この町に来てから困っていたんです。その···私って、日本語も上手く喋れないので····道に迷ったんですけど、道行く皆さん言葉が通じなくて···。」

 

困惑顔でシスターは胸元で手を合わせる。

 

シスターの話を聞いた歩夢は納得した。確かに英語だと道行く人に聞くのは難しいだろう。

 

所で、先程からシスターである彼女が英語で話しているのに二人が普通に話しているのは理由がある。

 

歩夢は養父である天津垓によって英才教育を施され、会話なら問題ないレベルまで話せるようになっていた。

 

対して一誠の方は対して英語の勉強をしていなかったので話せない···というのはまだ一誠が人間であった時の話になっている。

 

一誠が悪魔になったことが分かった次の日の英語の時間。今までは単語をポツリポツリと言うレベルだった一誠が、いきなりスラスラと英語を話すことができるようになっていた。これにはクラス中が驚いていた。

 

後に歩夢は同学年の木場にこのことを聞くと、悪魔はどのような言語も翻訳できるようになり、言葉が全世界で通じるようになる力が元から備わるようだった。

 

そのことを聞いた歩夢は一誠に向けて様々な言語で話しかけると、一誠はその言語に全て答えることが出来た。

 

だが漢字を見せると、何回も間違えることがあることがわかった歩夢は一誠に向けて、漢字は要勉強であることを伝えると、一誠は頭を抱え嘆いてたことがあった。

 

「教会なら知っているかも。確か、町の外れに教会らしき建物があったはずだ。」

 

一誠の言葉を聞いたシスターは一誠の元へと駆け寄る。

 

「ほ、本当ですか!あ、ありがとうございますぅぅ!これも主のお導きのおかげですね!」

 

シスターは涙を浮かべて一誠に微笑む。そんな彼女に一誠は見惚れていた。

 

だが一誠は視線を下に移動すると、表情が少し歪んだ。

 

「どうしたんだ、一誠?お前があんなに可愛い女の子に対してあんな顔をするなんて···。」

 

歩夢は小声で一誠にそう言った。

 

「い、いや違うんだよ。悪魔になってからその···あの子がつけてる十字架とか見てしまうと拒否反応が出てしまうんだ。」

 

一誠は小声で歩夢にそう言い返す。歩夢はその答えに納得した。

 

「歩夢様。」

 

歩夢に向けてイズが声をかける。

 

「先程、一誠様の言っておられた教会らしき建物について検索した結果、確かにこの駒王町の外れに教会がありました。ですが、その教会は既に使われていないみたいです。」

 

イズは『ゼア』で調べたことを歩夢に伝える。

 

「うーん···もしかして、最近内装を綺麗にして、また使いだしたのかも···っと、あの二人もう先行ってるし···俺たちも行こうか、イズ。」

 

歩夢はイズが調べたことを聞き、教会のことを考えていたら、いつの間にか一誠とシスターが教会に向けて行きだしたのを見て、歩夢とイズは二人を追いかける。

 

 

 

「うわぁぁぁぁん!」

 

教会へと向かう途中、公園の前を横切る時に、公園から子供の泣き声が聞こえてきた。

 

歩夢達がそちらを向くと、男の子が膝を怪我をしたようで、泣いていた。

 

その様子を見ていたシスターは、その男の子の方へ向かっていった。

 

「男の子ならこのぐらいのケガで泣いてはダメですよ。」

 

シスターは男の子を撫でながらそう言い、両手を膝へと当てる。

 

次の瞬間、シスターの手のひらから淡い緑の光が発せられ、子供の膝を照らしている。そして子供のケガがみるみるうちに消え去っていった。

 

(あれってもしかして···神器?)

 

歩夢は、先程のシスターの力を、神器の力ではないかと思っていた。

 

「はい、傷は無くなりましたよ。もう大丈夫。」

 

シスターは子供の頭をひとなですると、歩夢達の方へ顔を向ける。

 

「すみません、つい。」

 

彼女は舌を出して、小さく笑う。

 

すると男の子が立ち上がり、自分の足の調子を確かめた後、

 

「ありがとう!お姉ちゃん!」

 

子供はそう言って走っていった。

 

シスターは首を傾げる。どうやら子供の言葉がわかっていないようだった。

 

「ありがとう、お姉ちゃん。だって。」

 

一誠が子供の言葉を通訳すると、彼女は嬉しそうに微笑んでいた。

 

 

 

「···驚いたでしょう。」

 

しばらく歩いているとシスターからそう声がかけられる。

 

「いやぁ···あっはっは!君、凄い力をもっているんだね。」

 

シスターの言葉に一誠がそう返す。

 

「神様から頂いた素敵なものなんですよ。···そう、素敵なもの···。」

 

シスターは微笑んで言うが、どこか寂しげだった。

 

「あのー『あ!あそこですね!』ん?ああ、あそこか。」

 

歩夢がシスターに先程の表情のことを聞こうとした時、シスターが顔を上げて言った言葉に続いて歩夢もシスターと同じ方向を見ると、その視線の先には、教会があった。

 

「っ!」

 

突然、一誠から息を飲む声が聞こえた。

 

その声で、歩夢は先程一誠の言っていた拒否反応のことを思い出す。

 

「あの、私をここまで連れてきて貰ったお礼をしたいので、御一緒に来て貰えないでしょうか?」

 

「いっ!?いや!ちょっ、ちょっと用事があるんで!」

 

シスターは教会でお礼がしたいと提案するが、一誠はその提案を拒否する。そして、一誠の手が震えていることに歩夢は気がつく。

 

「···ごめん、俺たちもこの後やらなきゃいけないことがあって···気持ちだけ受け取っておきます。」

 

「そうですか···。」

 

一誠達の言葉に、残念そうにシスターはそういう。

 

「あの···私は、『アーシア·アルジェント』と申します。『アーシア』と呼んでください。」

 

シスター···アーシアは一誠達に向けて微笑んでそう言った。

 

「俺は兵藤一誠。イッセーでいいよ。」

 

「俺は···紫電歩夢。歩夢でいいですよ。」

 

「私はイズと申します。よろしくお願いします、アーシア様。」

 

三人はアーシアに向けて、自己紹介をした。

 

「イッセーさんに歩夢さんにイズさんですね。日本に来て、直ぐにあなた達のような、親切で優しい方々に出会えて、私は幸せです。」

 

アーシアは微笑んで一誠達に向けてそう言った。

 

「お、大袈裟だよ。」

 

アーシアの言葉に、歩夢は照れながらそう返す。

 

「是非ともお時間がある時に、教会までおいでください。約束ですよ。」

 

「えっ?」

 

アーシアの提案に一誠は固まる。

 

「ああ···分かった、約束するよ。それじゃあまた。」

 

しかし直ぐに元の調子に戻し、アーシアに返事を返す。

 

「今度またアーシアさんに会いに来るよ、約束する。それじゃ、また会おう。」

 

「次に教会に向かう時に、会えることを楽しみにしております。それでは、また。」

 

「はい!」

 

歩夢とイズもアーシアと会うことを約束する。そして三人はアーシアと別れて、駒王学園へと向かう。

 

アーシアは三人が見えなくなるまで、手を振り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

「あなた達、二度と教会に近づいてはダメよ。」

 

「···えっ?」

 

その日の放課後、歩夢達が部室に来ると、いきなりリアスにそう言われた。

 

「あの、どうしてでしょうか?」

 

リアスの言葉にイズが問いかける。

 

「教会は私たち悪魔にとって敵地。踏み込めばそれだけで悪魔側と神側の間で問題になるわ。いつ、光の槍が飛んでくるか分からなかったのよ?」

 

「···マジですか?」

 

リアスの言葉に一誠が声を漏らす。

 

「じゃ、じゃああの時に、教会に近づいた時の悪寒って?」

 

「悪魔の本能が、危険を察知したのね。教会の者と一緒にいることは、死と隣り合わせなの。特に、教会に属する悪魔祓い(エクソシスト)は我々の仇敵。中には、神器を持つものもいるんだから。」

 

その言葉に三人は、アーシアのことを思い浮かべる。

 

「イッセー。」

 

「は、はい。」

 

「悪魔祓いを受けた悪魔は完全に消滅するの。ー無。何も無く、何も感じず、何も出来ない。それがどれだけのことか、あなたには分かる?」

 

リアスの言葉の圧に、歩夢は冷や汗をかく。

 

「い、いえ···。」

 

一誠も歩夢と同じ状況になっていた。

 

「ゴメンなさい、熱くなりすぎたわ。とにかく、今後は気をつけてちょうだい。」

 

「はい··。」

 

リアスの言葉に、一誠は答える。

 

「それと、歩夢とイズさんも気をつけて欲しいの。もし神側に私たちと一緒にいることが知られた場合、あなた達にも命の危険があるかもしれない。気をつけて。」

 

「は、はい···。」「かしこまりました。」

 

リアスの言葉に歩夢とイズは返事を返す。

 

「あらあら、お説教は済みました?」

 

「うおっ!?あ、あーちゃん!?」

 

いつの間にか歩夢の背後にいつものニコニコ顔の朱乃が立っていた。

 

「朱乃、どうかしたの?」

 

リアスの問に朱乃は少しだけ顔を曇らせ、

 

 

 

「はぐれ悪魔の討伐の依頼が、大公から届きました。」

 

そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

「はぐれ悪魔は元々、悪魔の下僕だったんだ。」

 

「俺たちみたいなもんか?」

 

一誠は木場からはぐれ悪魔の説明を見る受けながら、はぐれ悪魔のいる場所へと向かっている。

 

「偶に主を裏切り、または殺したりして好き勝手する連中が居る。それがはぐれ悪魔さ。」

 

木場からはぐれ悪魔の説明を受けた一誠は納得する。

 

「あのー、そういえば歩夢は···?」

 

一誠はこの場に仮面ライダーの力を持った歩夢がいないことに疑問を持つ。

 

現在ここにいるのは、歩夢とイズを除くオカルト研究部のメンバーであった。

 

「彼もはぐれ悪魔の討伐を手伝うと言ってきたわ。でも、この問題は私たち悪魔の問題。はぐれ悪魔の討伐を、人間である歩夢に手伝って貰う必要はないわ。だから歩夢の協力は断ったわ。」

 

「そ、そうっすか。」

 

リアスの言葉に、歩夢は返事を返す。

 

「着いたわ。」

 

その言葉で一誠は顔をあげる。

 

「そのはぐれ悪魔さんは、この先にある廃屋でおびき寄せた人間を食べていると言う報告がありまして。」

 

「たっ、食べっ!?」

 

朱乃の報告の内容に一誠は驚く。

 

「それを討伐するのが、今夜のお仕事ですわ。」

 

朱乃は目の前の廃屋を見てそう言った。

 

「主を持たず、悪魔の力を無制限で使うことが、どれだけ醜悪なことか。」

 

木場はそう言いながら廃屋の扉をゆっくりと開ける。

 

そしてゆっくりと、リアス達は廃屋の中へと入っていく。

 

「一誠。」「はい!」

 

しばらく歩くと、リアスが一誠に声をかける。

 

「貴方、チェスは分かるかしら?」

 

「えっ?あの、ボードゲームの···。」

 

リアスの問に、一誠は応える。

 

「主の私が(キング)』、『女王(クイーン)』、『騎士(ナイト)』、『戦士(ルーク)』、『僧侶(ビジョップ)』、『兵士(ポーン)。爵位を持った悪魔は、この駒の特性を自分の下僕の悪魔に与えているの。」

 

「駒の特性?」

 

「私たちはこれを、悪魔の駒(イーヴィル·ピース)と読んでいるわ。」

 

リアスは自分達悪魔の特性を一誠に説明する。

 

「何でわざわざそんなことを···?」

 

「とにかく今夜は、悪魔の戦いというものを···っ!」

 

一誠に説明をしていたリアスは突然、会話を止める。

 

「どうしたんですか部長···っ!?」

 

突然話を打ち切った部長に声をかけた一誠だったが、リアスの目線の先にあるものを見て、息を飲む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには、異形の存在が地面に倒れ伏していた。上半身は女性の身体だが下半身が形容しがたいバケモノだった。

 

その異形の存在が、地面に血溜まりを作って、地に倒れ伏していた。

 

「···死んでからしばらくたっているようね。」

 

リアスは目の前の存在を見てそう言った。

 

「ぶ、部長···こいつは···?」

 

「···目の前の存在こそ、今日私たちが討伐するはずだったはぐれ悪魔···『バイサー』よ。」

 

リアスは目を険しくさせ、一誠にそう言った。

 

「一体···誰が···?」

 

「分からないわ···ただ···『部長···!』っ、どうしたの、小猫!?」

 

リアスが一誠の疑問に答えようとした瞬間、小猫がリアスに声をかける。

 

「あの柱の後ろに、誰かが隠れています···!」

 

小猫は廃屋の奥の方にある柱を指さし、そう言った。

 

一誠が目を凝らし、柱の方を見るが、一誠から見ると、何もいないように感じた。

 

「あのー···小猫ちゃん?何も···いないように感じるんですけど···?」

 

一誠は小猫に向けてそう言う。

 

「···ほんの一瞬だけ、あの柱の後ろに人影が見えたんです···。」

 

小猫は柱を睨みながらそう言った。

 

小猫の言葉を聞いたリアスは、一歩前に出た。

 

「そこの柱の後ろに隠れているのは誰?速やかに柱の後ろから出てきなさい。出てこなければ···あなたを敵とみなし、攻撃を開始するわ!」

 

リアスは柱の後ろに隠れているであろう存在にそう言った。

 

(ひえー···部長、おっかねぇー···!)

 

何者かに言うリアスの姿を見た一誠は、心の中でそう言った。

 

一誠がそう考えていると、突然、辺りに足音が響き渡る。

 

音がした方に目を向けると、柱の影から誰かが出てくる。

 

そして、その人影は一誠達の方へ身体を向ける。

 

『っ!!??』

 

身体を向けられた瞬間、暗闇の中も明るく見える悪魔であるリアス達は、暗闇の中に隠れていた存在に驚愕した。

 

「う、嘘だろ·····!?マジでこの町にいやがるのかよ·····!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほ、滅·····!!!

 

隠れていた存在は、歩夢から警告を受けていた滅であった。

 

滅の黄色の双眸は、リアス達を見つめていた···。




続く


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