甘雨とほのぼのするだけ (ゆき。。)
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甘雨とほのぼのするだけ

 

「...さい!起きてください!そんなところで寝たら風邪をひいてしまいますよ」

微睡みから愛しい人の声によって現実に引き戻される。

どうやら夜食後にそのままうたた寝をしてしまったらしい。

「おはよう、甘雨。この後はまだ残業?」

起き上がった僕の隣に座り込んできた甘雨にそう問いかける。

「そうなんです。海灯祭関連の報告書が山ほど...」

申し訳なさそうな顔をしたあと、恥ずかしそうな顔で可愛いお願いをしてきた

「ですから...その...軽食を作っていただきたいのです」

こう見えても彼女は食いしん坊なのだ。僕は大好きな彼女のために笑顔でこう答える

「了解、とっておきの清心料理を作っておくから日付が変わる前には帰ってきてね」

甘雨は少し驚いた顔をしたあと笑顔で残業に向かっていった。

「残業に行く顔じゃなかったな...」

僕のつぶやきは璃月の喧騒に吸い込まれ、いつしか一抹の寂しさが心に残るのだった。

 

 

 

 

「ただいま戻りました!」

日付が変わる少し前、満面の笑みの甘雨が帰ってきた。

「可愛い。...じゃなくておかえり、甘雨」

寂しかったからかつい本音が漏れてしまった。冬の寒さ以外の要因もありそうなほど顔を真っ赤にした甘雨がこう答えた

「いきなり言われて照れちゃいました。なんか恥ずかしいですね。ありがとうございます。」

照れながらいそいそと家に入る甘雨を迎え入れながら彼女の話に耳を傾ける。

「今日、刻晴さんに「甘雨、最近日付が変わる前には必ず帰るけど男でもできたのかしら?」と聞かれたんです。それを聞いた凝光様が「ただでさえ蛍からも熱心に召集がかかるのにそんなことある?」と言っていたのですがどう答えるのが良かったのでしょう...」

それを聞きながら僕は甘雨のために作った清心のサラダを食卓に置いてこう答えた

「とりあえず食べてみてよ!香菱にこの前教わった絶雲の唐辛子とスイートフラワーのドレッシングをかけてみたんだ」

言うが早いかあっという間に平らげてしまった甘雨に僕は唖然としながらこれは作りすぎない方がいいと密かに決めるのだった。

「清心は生に限ると思っていたんですが、なかなかどうして素晴らしいものですね!あなたが作ってくれたというのもあると思いますが...もう無くなってしまいました。」

少しもの寂しそうな顔をする甘雨に対してこう呟いた

「蛍さんが甘雨のために不思議な壺で清心を育てているんだろ?蛍さんさえ良ければまた作ってあげるさ」

さっきとは表情を一転させ

「今度は蛍さんにも食べさせてあげたいです」

とニコニコしながら言うのだった。

「で、刻晴様と凝光様が何か言ってたんだろ?」

清心のサラダで遮ってしまった会話の流れを再開させる。

「私に男ができたんじゃないかって言う話です...まぁ...その...大きい声で肯定も出来なくて...」

照れながらそう言う甘雨に愛おしさを感じ頭を撫でながら答える

「まぁ、その辺は甘雨に任せるよ。どの道蛍さんには言ってあるんだしそのうち知られると思うけど」

「確かにそうですね...今度時間が出来た時に言ってみますね」

僕もまた忙しくなるなと思いつつ、甘雨と共に布団に潜り込んだ。

 

 

 

「そういえば稲妻に行くそうじゃないか」

布団の中でのふとした僕の呟きに眠そうな声で甘雨が答える

「蛍さんのお兄様の手がかりを探すのが目的らしいです。まさか南十字船団と稲妻人が共に行動しているなんて...凝光様が嘆くのも少しわかる気がします」

「稲妻はあまりいい噂も聞かないし、いざと言うときは蛍さんのわーぷ?ですぐ戻ってくるんだぞ」

照れからか身を捩らせた甘雨に対し、僕はさらにこう続ける

「でも美味しそうなレシピがあったら教えてね、甘雨用にアレンジしてあげるから」

今すぐにでも飛び出しそうなくらい目を輝かせた甘雨に苦笑いしながら、いつも通りの璃月の夜が更けていくのだった。




続く...かも?


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甘雨に手のマッサージをするだけ

深夜のノリで書いたので文章が変な可能性があります...大目に見てください


「ふぁ...おはようございます...」

今日は滅多に来ない甘雨の休みの日。いつもよりやや遅めの時間に目を覚ました最愛の人に向かって挨拶を返す。

「おはよう、甘雨。ちゃんと疲れは取れた?」

「おかげさまでよく眠れました...ただ少しお腹が...」

眠そうな目を擦りながらそう零す彼女の頭を撫で、微笑み合う。

「朝ごはんの準備出来てるから早くおいで。朝市で新鮮な野菜が手に入ったんだ」

食いしん坊な彼女に向かってそう言い残し、寝室を後にする。

 

「うわぁ...!とっても美味しいです」

幸せそうにサラダを食べる彼女を見ながら今日の予定を考える。

「今日はせっかくの休みだし、甘雨のやりたいことをやろうと思うんだけど、なにかある?」

「そうですねー...今日は家でのんびり過ごしませんか?あなたとゆっくりしたいです。」

恥ずかしそうにそう返す甘雨に心の中で悶えながら平静さを装いこう提案する。

「そうだ、最近マッサージの勉強をしてるんだけど疲労が溜まってる場所とかある?リラックス出来ると思うんだけど。」

 

食後ののんびりした時間の中、甘雨は恥ずかしそうに手を見つめながら言った。

「最近書き物やら弓やらで手を使うことが多いので手のマッサージをお願いできますか?ちょっと恥ずかしいですけど...」

顔を僅かに赤らめながらそう言った彼女の手を取り、火照りが移った僕の顔を隠すようにマッサージを開始する。

 

「甘雨の手、とっても好きなんだよね。なんて言うか...この手で色んな人を支えて来たんだなって思うと込み上げるものが」

手のひらを少し強めに押し込みながら僕はそう零す。

「そう言って貰えると嬉しいです。帝君に比べればまだまだですが...でも、ありがとうございます。」

「帝君の後を追うってのは甘雨にとって大事なことかもしれないけど、僕からしたら甘雨は必要だし、居て欲しい存在なんだからもっと自信持って!」

彼女の手をにぎにぎしながら言いすぎたかなと思い顔を上げる。

「ばか...」

真っ赤な顔でそうこぼす彼女に胸が高鳴る。

邪な気持ちを払うように深呼吸をし、マッサージに集中する。

 

何分たっただろうか。彼女の方を見るとすやすやと寝息を立てて幸せそうに眠っている。

すっかり昼食時になってしまったので、彼女に毛布を掛けたあと、昼食の準備に取り掛かる。

今日は甘雨がレシピを稲妻から持ち帰った天ぷらを作るつもりだ。もちろん清心もある。

蛍さんが朝早くにいつものお礼といって持ってきてくれたものだ。

 

 

「甘雨、起きて。お昼ご飯できたよ」

「ふぁ...おはようございます...」

朝と全くおなじ反応をする彼女のお腹が可愛らしい音を立てる。

「おなかすきました...」

「今日は、甘雨がこの前稲妻からレシピを持ってきた天ぷらを作ってみたんだ。天つゆというものが分からなかったからとりあえず塩と醤油しかないけど...」

「天ぷらですか!?嬉しいです」

すごい勢いで食卓についた甘雨を横目に料理を並べていく。

「朝、蛍さんが日頃のお礼ですって言って清心を持ってきてくれたから天ぷらにしてみたんだ」

「清心の...天ぷら...ですか??これは...とても美味しいです」

花が咲くような笑みを浮かべて幸せそうに食べる彼女を見ながら今夜の献立はどうしようか、と頭を悩ませるのであった。

 




手フェチです。珊瑚宮さんほしい...


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甘雨と休日の午後ものんびりするだけ

心の中の二人称がが甘雨だったり彼女だったりとブレブレですが許してください...


 

 

甘雨に手のマッサージをして、天ぷらを堪能した日の午後。午前と同じようにのんびりした時間が流れていた。

 

「そういえば帝君が亡くなってからもうすぐ1年か...毎年のように行ってた迎仙儀式がなくなるって言うのはなんか変な感じだな。」

「そ、そうですね...。でも大丈夫です、帝君が居なくても璃月はもう動き始めてますから...」

ソファーでくつろぐ僕の問いかけに、庭先で瑠璃百合の手入れをしている甘雨が反応する。

「七星の方々と甘雨が居てこそ、って感じだよな。よし、璃月代表として感謝の意を...」

「さ、さっきも言ってもらったので大丈夫です...ちょっと...恥ずかしいですし」

顔を上げ僕の方を見て、甘雨は少し顔を赤らめる。

 

ちょっとした沈黙の後、甘雨が思い出したかのように話し始める。

「そういえば少し前に、凝光様が天然の瑠璃百合を入手して蛍様に贈っていたんです。」

「天然の瑠璃百合か...そりゃ凄いな。入手した凝光様も、それを贈られた蛍さんも」

瑠璃百合と言えば、天然のものはとても高価で知られる花だ。

「確か、玉京台で甘雨が育ててたよね?」

「確かにそうですが...あれは手が加えられているものなのでそこまで希少ではないんですよね」

庭先で花の手入れをしている甘雨を眺めながらふとあることに気づく。

「あれ?野菜も育て始めたの?食欲を抑えきれる自信がありません...って最初言ってたのに」

まだ整えたばかりで真新しい畑を見ながらそう問いかける。

「そ、そうなんですけど...」

甘雨は一気に顔を赤くしたあと、こう続ける

「あなたの作ってくれる料理が美味しいので、せっかくなら自分が育てた野菜を使ってもらいたいなって...思って」

可愛らしい独占欲を抱く彼女に近づきながらこう返す。

「それじゃぁ、朝市に行く頻度が減るかな?朝も甘雨と居られる時間が増えそうだ。」

野菜と花の手入れをする彼女を後ろからそっと抱きしめる。

「あの...急には...恥ずかしいです」

作業をしているからか、照れからなのかいつもより少し高めの体温の彼女にこう囁く。

「甘雨、好きだよ。」

抱きしめていた僕の腕を解いた彼女はこちらを振り返り、抱きつきながらこう返す。

「私も...好きです。」

高鳴る胸の音は隠れるはずもなす甘雨の耳に届く。

「鼓動、早くなってます。ふふっ」

幸せそうに笑う彼女の奥、街の方から蛍さんが歩いてくるのが目に入る。

「か、甘雨、蛍さんがこっちに向かってるよ」

「ほ、本当ですか!?」

名残惜しそうに僕の胸から耳を話した甘雨がいそいそと道具を片付け始める。

 

 

ある程度片付いたタイミングで、蛍さんとパイモンちゃんが甘雨に話しかける。

「甘雨さん、清心どうだった?」「オイラたちの壺で育てた特別な清心だぞ!」

「とても美味しかったです!天ぷらにして作ってくれたんですよ」

会話に入るのも申し訳ないなと思った僕は少し早めの夕食の準備をしながら3人の会話に耳を傾ける。

「でも、清心って苦いんだろ?天ぷらにしてもオイラは食べれないと思うな...」「パイモンには今度私が作ってあげようか?」

「蛍さんの料理も美味しいですから、生よりは食べやすいと思います!もし無理だったら私が食べますよ?」

「それは甘雨が食べたいだけじゃないのか!?」「甘雨さんブレないね...」

 

楽しそうに会話をする彼女たちの声をBGMに、野菜の下ごしらえを行う。

いつもあんな風に楽しそうに蛍さんの旅に同行してるのかと思うと、一抹の寂しさを感じた。今夜は甘雨に旅の話をしてもらおう、と決意しながら。

 

 

 

──その日の夜

「...ということがあったんです。稲妻ではずっと雷雨の場所やとっても大きい桜の木など、様々な場所がありました。雨の場所ではとても重宝されました...!」

嬉しそうに布団の中で稲妻での思い出を話す彼女にこう返す。

「甘雨はどこにでも引っ張りだこだな、さすが甘雨。蛍さんとの旅も順調そうで良かったよ。」

寂しいなんて口に出せずに取り繕ったような笑顔で返事をする。

「蛍さんとの旅もいいですけど、やっぱり私の帰る場所はここしかないです...」

作り笑顔に気づかれたか、そうしたかっただけなのか分からず、抱きついてくる甘雨を受け止める。

「私がさっき蛍さんと話してる間、寂しかったですか...?」

改めて言われると情けなくもなるが、どうやら僕は彼女にかなり依存してしまっているらしい。

「甘雨が蛍さんととても楽しそうにしてて...旅の話とか全然聞かないなって思って、なんとなく寂しかった」

「大丈夫ですよ、私はここに居ますし、いつでも返ってきますから。今日は抱き合ったまま...寝ましょうか」

そう言った甘雨は、僕を抱きしめる手に力を込める。負けじと抱き返し、そのまま眠りにつく。

 

こうして今日もまた名前のない夜が更けていていくのであった──

 




か、甘雨ママッ...。
異様に寂しくなる時あるよね、あるよね?(圧)


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雨の日の嫉妬心(微ヤンデレ注意)

多分人によってはあんまり好きな展開じゃないかもなので許して、、、


 

 

 

雨───

嫌われがちなこの天気だが、僕は雨が大好きだ。なぜなら...

 

「うーん...やっぱり雨の音を聞くのは好きですが...贅沢すぎる気がします。」

はにかみながら僕に話しかける最愛の彼女が家にいるからだ。

 

「雨の日は人の出入りも少ないし仕事も少ないんだろ?家でやればいいさ。」

庭先に腰かける彼女の横で同じ音を聞いていた僕がそう返す。

そぼ降る雨模様は朝から変わらぬまま、昼過ぎの今に至る。午前中は「お触り禁止!」ばりの仕事っぷりを見せていた彼女も、昼食後は雨の音を聞きながらのんびり過ごしていた。

 

「ふぁ...少し眠くなってきました...」

可愛らしい欠伸をこぼす彼女に僕は返事をする。

「僕の膝、使う?枕の方が気持ちいいかもだけど...」

「ありがとうございます...角に気をつけますね」

そう言いながら彼女は僕の膝の上に頭を乗せて横になる。雨足が強くならないか不安だが、昼寝程度なら大丈夫だろう。

 

数分後、眠そうな声の彼女が話しかけてくる。

「そういえば、稲妻が開国してからしばらく経って色々情報が入ってきましたけど、何か面白いことはありましたか?」

「そうだなぁ...八重堂の小説も最近よく見かけるようになったし、向こうの料理とかも見かけるようになったけど、現人神って呼ばれてる人のことが気になるかなぁ。神の目を持った人と何が違うんだろう、って。」

「珊瑚宮さん、ですか...。最近彼女は蛍さんと共に行動するようになってその縁で何度か会話をしたことがありますよ」

「へー、そうなんだ。どんな感じの方なの?」

そんな人も仲間にする蛍さんは凄いなぁと思いつつ彼女に問いかける。

「戦術にとても詳しい方で、軍師と呼ばれていましたね。...ってその人に興味があるんですか?」

起き上がってこっちを見てきた彼女の目は少しハイライトが消えていて、この話をしたことを少し後悔する。心無しか雨音も少し強まった気がする。

「い、いや...さっきも言ったけど、その人は神に近いのかなって疑問に思っただけで...」

雨の日の涼しさなのか、冷や汗なのか分からない悪寒を感じながら後ずさる僕に彼女はこう続ける。

「私に絶対ここに帰ってくるって言わせておきながら、他の方に興味を持ってしまうなんて...私はもう要らないんですか...?」

僕と知り合う前に見たような冷たい表情で迫ってくる彼女に申し訳なさを感じながら返事をする。

「ごめんな、少し気になっただけなんだ。でも甘雨が1番だから安心して。信じて貰えないかもだけど、本当だから。」

震える彼女のことを抱きしめつつ、背中をさする。

「私、最近仕事と蛍さんの手伝いで全然あなたと同じ時間を過ごすことが出来なくて...色々と不安だったんです。さっきの言葉で気持ちが溢れてしまって...ごめんなさい」

強く抱きしめ返してくる彼女に愛おしさを感じながら静かになった雨音に耳を傾ける。

どうやら彼女は僕の膝の上で僕に抱きつきながら眠りについてしまったようだ。

少し前の僕と同じような考え方をした彼女に嬉しさを覚えつつ、二度と他の女性の話は自分からしないようにしよう、と違うのであった。

 




珊瑚宮さま、引きました。最近めっちゃ使ってるのでそれに嫉妬して欲しいなって言うところから今作に至ります。共依存みたいなのすごく好きなんですよね...。


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甘雨の仕事について行くだけ ※月逐い祭ネタバレ注意

1周年おめでとうございます!
意外とミーハーな留雲借風真君、可愛い。
食料調達、こんな裏話があったらいいなと妄想しました。


 

 

 

月逐い祭の開催まで後少しとなったある秋の日。僕は甘雨と共に軽策荘に来ていた。今日は仕事の手伝いだ。

 

「それで、何を探せばいいんだ?」

横を歩く彼女に問いかける。

「タケノコです。それも飛びっきり上品質な」

「タケノコ、ねぇ...。この近辺はタケノコの産地だけど見える範囲はあらかたもうダメになってるだろうなぁ...」

竹になりつつあるタケノコたちを横目に竹林を進んでいく。

「それにしても、僕が着いてきても良かったの?重要事項とかうっかり聞いちゃったりしない?」

「大丈夫ですよ、ある方からの個人的なお仕事なので。」

のんびりと竹林を進みながら、楽しそうな彼女と共にそんなことを話しつつ、さらに奥へと進んでいく。

 

竹林の奥の方から何やら声が聞こえてくる。

「気をつけてください、宝盗団です。」

僕を庇うように矢を番えた彼女がそう言ってくる。

「僕は足でまといだろうし、少し下がってるよ」

少し後ろに下がった後、彼女の氷の矢が放たれる。

 

 

「ふぅ...ひとまず片付きましたね。」

苦戦のくの字も無いまま宝盗団たちを片付けてしまった甘雨に一層の愛を感じつつ彼女に近づく。

「さすが甘雨、見てて惚れ惚れしちゃったよ。いつ見ても美しいなぁ」

「そ、そんなに褒めないでください...」

さっきまでの凛々しさとは一転、頬をあからめる彼女の手を握り、タケノコ探しへと戻る。

「さっきので甘雨のこと、もっと好きになっちゃった。見る機会が無い方がいいのは分かるけど、やっぱりあの背中がいいよなぁ」

美しい背中のラインに思いを馳せて話しかける。恥ずかしさからなのか、強めに手を握り返してきた彼女は無言のまま僕を引っ張って歩いていく。

 

「これとかいいんじゃない?」

あれから数刻後、やっとのことで見つけた上質なタケノコを前にテンションが上がる。

「サイズも色もいいですね...!これにします!」

彼女も嬉しさからか、普段より大きめの声で返事をする。

「じゃあこれをゲットしたら昼食にしようか。さっきあそこに生えてるスイートフラワーを見つめてたでしょ」

少し遠いところに群生してるスイートフラワーを指さしながら甘雨を揶揄う。

「み、見てたんですか!?恥ずかしいです...どうしてもお腹がすいちゃって...でもあなたの昼食があるから、って我慢してたんです」

「嬉しいことを言ってくれるね...それじゃ、掘ろうか」

 

昼食後、近くに生えてた木の幹に寄りかかりながら甘雨と食後ののんびりした時間を過ごす。

「大丈夫ならでいいんだけど、誰からの依頼だったの?」

「うーん...まあ多分問題は無いと思うので教えますけど、あまり言わないでくださいね。留雲借風真君からの依頼です。」

少しだけ小声になった彼女が予想以上のビッグネームの名前をあげる。

「それ、、こんなところでゆっくりしてていいのかな?一刻も早く届けるべきなんじゃ...」

不安になる僕に対し、彼女は何気ない顔でこう返してくる。

「多分大丈夫です。月逐い祭までもう少しありますし、とりあえず用意するだけでいいと言われているので...それよりも、すこし昼寝をしてもいいでしょうか...」

秋の陽射しと食後の眠気でうとうとし始めた彼女に肩を貸しながら、こんなこともあろうかと持ってきておいた娯楽小説を読み始める。

 

「『モンドのメイド騎士』ねぇ、甘雨の例もあるし案外本当にいるんじゃないか...?」

人々に囁かれる様々な噂をまとめた本を読みつつ、やや傾いてきた日を見て、彼女を起こす。

 

「甘雨、そろそろ行くよ。。ちょっと日も傾いてきたし」

「ふぁ...はぃ......。って、かなり長いこと寝てしまいました...。いつもはこんなに寝ることないんですけど、寝心地が良くて...」

眠そうな目を擦りながら立ち上がる彼女に手を貸しながらさっきまで読んでいた本の話をする。

 

「メイド騎士、、ですか...またほかの女の人の話ですか?」

「あ、あくまで都市伝説だから、ほら、ね?いると思う?っていうはなしをしたいだけだよ」

若干の悪寒を感じつつ、彼女はちゃんと返事を返してくれる。

「メイド騎士、心当たりがありますよ。蛍さんとたまに冒険をしています。頑丈なシールドと巨大な剣を振り回して戦うんです。」

まさかの知り合いという事実に、自分の愛する彼女が普通の人ではなかったことを思い出す。

「な、なるほど...これはあんまり他の人には言えないな...」

 

望舒旅館に着く頃にはすっかり夕方になっていた。今日はここで1泊することにした僕達だが、甘雨は仙人さまのところにタケノコを届けにいってしまった。

すぐ戻ります、と言ったのでのんびり部屋で待つことにする。

 

少し離れただけで寂しさを感じ始めた僕自身に若干の嫌悪感を抱きつつ、今夜は彼女に甘えようと思うのだった。




こんなものを書いておきながら推しCPは甘刻なんですけどね。
甘雨が刻晴のことをさん付けで呼ぶのか、って驚いたのと同時に公式からの供給過多で語彙力を失うオタクになっていた、、。


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甘雨と秋の味覚を堪能するだけ

もうすっかり秋ですね、、

追記:蛍の口調を修正。


 

月逐い祭も終わりに近づいたある秋の日。甘雨曰く、今日は事務仕事が忙しくて帰りが遅れるとのことなので、腹ペコで帰ってくる彼女を労うべく秋の味覚を振る舞うことにする。

秋の味覚、と言えば栗とか松茸とか秋刀魚などが挙げられるが、菜食主義の彼女が食べられそうなものでレシピを試行錯誤する。

「こんにちは!」

キッチンで頭を悩ませていた僕の耳にふと声が届く。蛍さんが来たようだ。

「蛍さん、こんにちは。生憎だけど甘雨は今日、忙しいらしいんだ。何かあるなら伝えておこうか?」

「こんにちは、今日は採れたての松茸と栗をお裾分けに来た。」「オイラたちがわざわざ持ってきてやったんだぞー!感謝しろよな!」

そう言ってたくさんの食材が入った籠を掲げる蛍さんとえっへんと胸を張るパイモンちゃんから籠を受け取る。

「こんなに沢山、わざわざありがとう!ちょうど夕飯で甘雨に特別なものを振舞おうと思ってたんだ。」

「どういたしまして、甘雨さんは戦闘の時に遠距離から援護してくれるからとても助かってる。気にしなくていい。」「そうだぞ!甘雨の攻撃は氷がパシュッってなってオイラたちも助かってるんだ!」

さすが甘雨、どこでも引っ張りだこで凄いな、なんて感想を抱きながら蛍さんたちの話に耳を傾ける。

「っと、ごめんなさい、他にも用事があるからこの辺で失礼する。甘雨さんには近いうちに稲妻に行くと伝えていただけるとうれしい。」「またなー!次こそはオイラにも料理を食べさせろよ!」

まるで嵐のように去っていく2人を見送りながら改めて今夜のレシピを模索する。

 

すっかり日も落ち、夜が更けて来た頃、玄関から彼女の帰ってくる音がする。

「ただいま...帰りました...ふぅ」

いつもより疲れきった声の彼女に我慢できなくなった僕は抱きついた。

「お疲れ様、甘雨。今日もよく頑張ったね。」

軽く抱き返してくる彼女がこう返事をする。

「暖かいです...ふふっ、ありがとうございます。お腹、ぺこぺこです。夕飯おねがいしてもいいですか?」

恥ずかしそうに耳元でそう囁く彼女の荷物を受け取りリビングへと向かう。

「ちょっとまっててね、もうすぐ出来上がるから。いつ寝てもいいように先に着替えておいで」

「そうですね、そうします。」

いそいそと部屋に入っていく彼女を尻目に今日のメインディッシュを完成させる。松茸のとてもいい香りが部屋に広がる。ちょうどお米の方も出来たようだ。

「ふわぁ...とてもいい香りです...」

いつの間にか戻ってきた彼女が頬に手を付きながらうっとりとしている。

「昼間に蛍さんとパイモンちゃんが松茸と栗を持ってきてくれたから今日はそれを使った秋の味覚堪能レシピにしてみたんだ。」

「蛍さんと話したんですか...むぅ...私が早くあなたに会いたいと思いながら仕事してた時に...まあいいです」

日に日に依存度が増している彼女に冷や汗を書きつつ、机に料理を並べていく。

「松茸は贅沢にバター焼きにしてみたんだ、そしてこっちは炊きたての栗ご飯!自分で作っておいてあれだけど、美味しそうだなぁ」

「早く...早く食べたいです!」

子供がナイフとフォークを机にトントンやりそうな程食欲を募らせる彼女に愛しさを抱きつつ、ご飯をよそって渡す。

「「いただきます」」

お淑やかで百合の花のように歩く姿が美しい普段の彼女を知る人が見たら驚きそうなほど、それでいて上品な食べっぷりを見せる彼女に作ってよかったとしみじみ思う。

「ん〜...この松茸の香りとバターの塩気が絶妙にマッチして、まるで秋が鼻から抜けていくような...こっちの栗ご飯は栗の甘さとコメの甘さが喧嘩をせずに共存していてどんどん食べ進めてしまいます...」

「おかわりはあるから、ゆっくり味わってね」

幸せそうに、嬉しそうに食べる彼女を見てるだけでお腹いっぱいになりそうだ。

「料理王決定戦に出てたら間違いなく優勝してると思います!それくらい美味しくて好きな味です...」

「僕は甘雨だけに料理を食べてもらいたいから料理王決定戦には興味はないかな」

僕の発言に少し顔を赤らめた彼女が少し怒ったような口調で返事をしてくる。

「いまは食事中なのでそういうドキッとする発言は禁止、です」

そんな会話をしながら存分に舌鼓を撃つのであった。

 

「うぅ...まだおなかいっぱいです...。」

その日の夜。布団で横になる僕の横で食べすぎたらしい彼女がそうこぼす。

「運動しなくてはいけませんね...」

小さい頃の姿にコンプレックスを持っている彼女にとって、太るというのは死活問題のようで、時々こうやってストイックになるのだ。

「あぁ、そういえば近いうちに稲妻に行くからよろしくって蛍さんが言ってたな。また冒険でもするんじゃないか?」

「まだどうやら行ってない島があるようなので...そこの探索だと思います。その時に沢山歩き回るから食べ過ぎも大丈夫ということで...」

僕の前だと時々自分に甘いところを見せる彼女をみて、こういうところも可愛いんだよな、と1人頷く。

「ところで、今日はお仕事たくさん頑張ったので、ご馳走以外にもご褒美があっていいと思うんです...!」

布団の中でわざわざこっちを向いてそう行ってくる彼女にこう返す。

「よっしゃ、何でもいいぞ、何して欲しい?」

「ぎゅーして、なでなでして欲しいです...」

甘えるように僕の手を握ってくる彼女の要望に答えるべくぎゅっと抱きしめて頭を撫でる。

「はぁ...落ち着きます...。」

横になりながら抱きしめ合うというやや不自然な体制ながらも、どうやら彼女はご満悦のようだ。

「...すき、です」

耳元でぽしょりと彼女が呟く。

「僕もだよ」

優しく頭を撫でながら僕は返事をする。

「もぅ...好きって言ってください...」

少し不機嫌そうに抱きしめ返す力が強くなる。

「ごめんごめん、僕も甘雨のこと大好きだよ」

「や、やっぱり恥ずかしいです...」

僕の胸元に顔を埋める彼女がぐりぐりと頭を胸板に押し付けてくる。よっぽど恥ずかしかったらしい。

 

なんてやり取りをしながら夜が過ぎ去っていく。

秋はまだ、始まったばかりだ。




いつもより文字数多くない...?
夜中に書いてるせいでとてもお腹すきました。
原神の中だと松茸はどうやら春の食材らしいですがまあ細かいことは置いておいてください。



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甘雨にメガネを渡してみるだけ

メガネ有り無しは好みが別れると思いますが、秘書ならやっぱりメガネでしょって事で書いてみました。実際可愛いと思う


 

甘雨が蛍さん達と行っていた探索も一区切り着いたある日のこと。午前中は玉京台で滞っていた仕事を済ませ、午後からは持ち帰って来た少しの仕事をこなす彼女と僕はまったりした時間を過ごしていた。

「ふぅ...久しぶりに落ち着いた時間を過ごせます。仕事は好きですが、あなたとの時間の方が今の私にとって大切です...なんて、少し照れますね」

探索に力を入れていた頃も一応夜には帰ってきていた訳だが、そこから残った仕事をこなして眠りにつく生活を送っていたので、まともに会話するのが4日ぶりくらいだったりする。

「僕も甘雨とこうやって過ごすのんびりした時間がとても好きだよ。」

仕事をこなす彼女にお茶を渡しつつ、そばに腰かける。

「甘雨、ちょっといい?」

「なんでしょうか?」

「近頃巷で流行っているらしいファッションアイテムをプレゼントしようと思って。というか付けて欲しいって言うお願いなんだけど。」

そう言って彼女にあるアイテム──メガネを渡す。

「レンズが入ってない伊達のメガネなんだけど、どうかな?」

「つける分には問題ないですが...どうでしょう?」

そう言って僕の方を見てくる眼鏡っ娘甘雨に僕は見事に心を撃ち抜かれる。

「あー...これはね...甘雨...」

「は、はい...」

言葉を詰まらせた僕に対し、不安になったのか心配そうに見てくる甘雨に対し言葉を続ける。

「めっっっっちゃ可愛い。似合ってる。とっっっても可愛い。」

語彙力を失ってしまった僕の熱烈な褒め言葉に顔を真っ赤にした甘雨は小さい声でぽしょりとこう呟く。

「もう...ばか、です...」

「と、とにかくこれはつけるのは家の中でだけってことにしてもらっていい?」

こんなに可愛い甘雨を他の人に見せたくない、なんて醜い独占欲からそんな言葉が口からこぼれる。

「他の人に見られるのは恥ずかしいので...大丈夫です...。」

むず痒いしばしの沈黙の後、彼女が口を開く。

「とりあえず、あなたが可愛いって言ってくれるので気が向いた時につけようと思います..。」

 

しばらく経って、日も傾きはじめた頃。

「仕事おわりました...ってあれ、寝ちゃってますね...。隣、失礼します」

夕飯の下ごしらえを済ませ、ソファで寝落ちしてしまった僕の横に彼女が腰かけてくる。

「いつも、ありがとうございます...起きた時にメガネをかけた私が隣にいたら驚いてくれるでしょうか...」

優しげな顔で僕の頭を撫でる彼女が呟く。

 

頭を撫でられる感覚に目が覚めた僕は、近くに人の温もりを感じ目を開ける。

「おはようございます、よく寝れましたか?」

「んん...ふぁ...ぉはよう、膝枕しててくれたの気づかなかった。ありがとね」

どうやら僕は膝枕に移行する時に目が覚めないほど熟睡していたらしい。

「って、甘雨、メガネつけててくれてるんだ。やっぱりすごく可愛いよ。似合ってる。美人秘書って感じだ。」

「もぅ...寝起き早々それですか...ふふっ、ありがとうございます」

そう言って見下ろしてくる彼女の顔はうっすら赤く染っていた。

 

うっかりメガネ姿の甘雨を目撃してしまったパイモンちゃんと蛍さんが僕のところにやってきたのはまた別の話。




他にも書きたいことは色々あったんですが、上手く話が繋げられなくて若干短めです...。


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甘雨の誕生日をお祝いするだけ。

甘雨誕生日おめでとう!
誕生日メールをくれた甘雨とは誕生日の価値観が違うってことで許してください


12月2日、今日は僕にとって最も重要な日だ。

 

 

遡ること3日前。甘雨の誕生日プレゼントに何を贈ったらいいか相談するために、璃月に滞在してるらしい蛍さんの元へ向かっていた。

「蛍さん、こんにちは。今ちょっと大丈夫かな?」

万民堂でパイモンちゃんと買い物している所へ話しかける。

「問題ない。パイモンとおやつを食べに来てただけだから。それで、なんの用?」

辛そうな料理を食べて涙目を流しているパイモンちゃんを尻目に要件を話す。

「なるほど。甘雨さんの誕生日に何を贈ったらいいか分からない、と」

「蛍さんもなにか用意するとしたらそれと被っちゃいけないし、なかなかいい案も浮かばなくて...」

「私からはとっておきの聖遺物を渡す予定だから問題ない。あなたからは...手作りのものとか良さそう。」

それを聞いたパイモンちゃんが話に入ってくる

「甘雨はおまえの手作りならなんでも喜ぶと思うぞ!冬っぽいものとかで良いんじゃないか?」

「パイモンたまにはいい事言うね」

どうやら蛍さんもこの案に賛成のようだ。

「なるほど、その路線でいってみるよ、2人ともありがとう!これ、僕の奢りってことにしとくから。」

お礼がわりに2人の支払いを済ませ、万民堂を後にする。

「ああいうところを甘雨さんは好きになったのかもね」「だな!」

後ろでこう会話してるとも知らずに...。

 

 

その日の夜。遅くまで残業してたらしい甘雨を出迎える。

「思ったより遅くなっちゃいました...ただいま、です」

「おかえり、甘雨。近頃冷え込むけど寒くなかった?」

寒さで頬が紅潮してる甘雨を抱きしめ、こう続ける。

「んん、やっぱり冷えてるな。先に風呂にする?」

「ふふっ、お風呂よりも温まることをして貰っているので大丈夫です。お腹すきましたし」

恥ずかしそうな声色の彼女をもう一度だけ強く抱き締め、リビングへ向かう。

 

 

「そういえば今日、万民堂であなたと蛍さんが親しげに会話しているのを見たという話を耳にしたんですけど、何してたんですか?」

若干ハイライトの消えた目で甘雨が聞いてくる。暖房が効いてるはずなのに、心做しか温度が下がった気がした。

「少し相談事があって蛍さんを探しに行っただけだよ。万民堂にたまたまいたからそこで要件を済ませたんだ」

「なるほど...私に相談してくれなかったのが悲しいですが...まあそういうことにしておきます」

少し悲しそうな表情の彼女に罪悪感を感じつつ、心の中で3日後まで待ってくれと唱えるのだった。

 

 

そして3日後に話は戻る。

「おはよう、甘雨。誕生日おめでとう」

「ふぁ…おはようございます…ありがとうございます」

眠そうな目を擦りながら洗面所から出てきた甘雨はそのままもぞもぞとコタツに入り込む。

「コタツって、いいですね…また寝てしまいそうです」

「甘雨ですらだらけてしまうコタツの魔力、恐るべし…って感じだね。朝ご飯、できたよ」

キッチンから顔を出し、彼女をリビングへ誘う。

「もう、揶揄わないでください…いただきます」

「あ、そうだ甘雨、今夜は豪華な料理を用意しておくからできれば残業なしで帰ってきてほしいな」

「大丈夫ですよ、昨日のうちにほとんど終わらせてしまったので今日はほとんど皆さんのサポートをするだけだと思います。料理、楽しみにしてますね」

 

 

「では、行ってきます。」

「いってらっしゃい。気をつけてね。」

誕生日と言えど朝から仕事に向かう甘雨を送り出し、コタツに入りながら誕生日プレゼントの仕上げにかかる。

我ながら良い出来かもしれない。喜ぶ彼女の笑顔を想像し思わず表情が綻ぶ。

 

 

すっかり日も落ちた頃、時間通りに甘雨が帰ってくる。

「ただいま、戻りました。」

両手いっぱいの清心を抱えた幸せそうな笑顔の彼女を出迎える。

「おかえり、甘雨。また随分とたくさんもらったね」

「月海亭の皆さんから貰いました...お仕事中に少し摘んでしまったんですけど、まだまだあります。うーん、幸せです」

そう答える彼女の荷物を受け取り、リビングに入る。

「今料理持ってくるから手を洗っておいで」

「んん~...とっても美味しそうな匂いです...」

そう言い残し洗面所に向かう彼女を見送りながらキッチンに入る。

「よし、いい具合に炊けてるな。うーん、我ながら美味しそうだ。」

予想以上に美味しそうに炊けた清心の炊き込みご飯をよそい、食卓に並べる。

「あとは、絶雲の唐辛子とスイートフラワーのドレッシングをかけた清心のサラダと、メインディッシュの仙跳牆(せんちょうしょう)をよそって...っと」

「うわぁ...!とっっても美味しそうです...!」

食卓に並べ終わった時にちょうど洗面所から戻ってきた彼女の声から嬉しそうな様子がひしひしと伝わってくる。

「さぁ、食べようか。」

「はい!」

「「いただきます」」

上品ながらもすごい勢いで料理を食べ始める彼女に嬉しくなった僕は話し始める。

「この仙跳牆、甘雨のためだけに作ったオリジナルなんだ。清心とか人参とかを3日くらい前からずっと煮込んでた。」

「どうりでとってもおいしい訳です...今までで1番美味しい料理かもしれません...幸せです」

「こっちのサラダは昔作って好評だった料理で、炊き込みご飯の方は少し味を薄目に作ったんだけどどうかな?」

「とっっても美味いです!仙跳牆との味のバランスが良くて、うっかり食べすぎてしまうかもしれません...」

「食べすぎちゃったら、蛍さんに冒険に連れて行ってもらわないとね」

軽口を叩く僕に彼女は拗ねたように返事をする。

「もう...からかわないでください...」

 

「あ、そうだ甘雨。せっかくの誕生日だしおもてなししていいかな?」

程よく食が進んだ頃、僕が提案する。

「もう充分もてなされる気もしますが...せっかくなのでお願いします」

それを聞いた僕は匙にご飯を乗せ、彼女の口元に近づける。

「はい、甘雨、あーんして」

「えっ、あっ、あーんですか??は、恥ずかしいんですけど...」

「いいからいいから、ほら、あーんして」

恥ずかしそうに口を小さく開けて口を開ける彼女にご飯を食べさせる。

「どう、おいしい?」

「恥ずかしすぎて味が分かりません...こんなにドキドキするんですね、これって」

「味がわからなかったなら、もう1回してあげようか?」

「ちょ、ちょっと待ってください...次は私があなたにする番です」

そう言うと彼女が僕に向かって匙を向けてくる。

「はい、あーんしてください♪」

弾むような声でそう言ってくる彼女に従い口を開ける。

「どうですか?美味しいですか?」

「これは...思ったより恥ずかしいし、本当に味か分からないな...普通に食べよっか」

「それがいいと思います」

 

 

「「ご馳走様でした」」

「うーーん...本当に蛍さんに冒険の件をお願いした方がいいかもしれません...」

「美味しそうに食べてくれて嬉しかったよ。明日からはしばらくヘルシーなレシピにするね」

食べ過ぎたことを心配する甘雨に提案する。

「ありがとうございます...すっかり胃袋掴まれちゃいましたね。」

「大好きな人に離れて欲しくないからね、僕だって頑張るさもちろん。さ、食事も終えたしちょっとまっててね、渡したいものがあるんだ。」

 

 

リビングに戻り、コタツに入り込んだ甘雨の正面に座り込む。

「甘雨、お誕生日おめでとう。ちょっと歪になっちゃったけど、僕からのプレゼント」

3日前から夜なべしてつくりあげた手編みのマフラーを渡す。

「わぁ...!こんなにすごいもの、ありがとうございます...」

「実は甘雨に何を渡したらいいか全然思いつかなくて3日前に蛍さんに相談に乗ってもらってたんだよね。」

「そういうことだったんですね...ふふっ、これは本当に嬉しいです」

「この時期かなり冷え込むし、マフラーなら暖かいかなって。色も悩みに悩んだけど甘雨の髪の色に近い色にしたんだ。」

嬉しそうに甘雨がマフラーを首に巻く。

「どうですか?似合ってますか?」

「あぁ...これは...マフラー渡したの失敗だったかなぁ...」

「え、、似合ってませんか?」

「ごめんごめん、そうじゃなくて。あまりにも可愛くて、璃月の人みんな振り返っちゃうんじゃないかなって。」

「もしかして、嫉妬ですか?ふふっ、大丈夫です、私が好きなのはあなただけです。」

テンションが上がったのか、足を伸ばして座ってた僕にこたつの下で足をぶつけてくる。

「えいっ、えいっ。」

「ちょ、甘雨、くすぐったいっ...」

「夕ご飯の時にからかってきたお返しですっ、えいっ」

足の裏をなぞられるような感覚にぞくっとする。

「ああっ、もう、暴れないでください。」

「こうなったら、僕もお返ししてやる。えいっ。」

こたつの中で激戦(?)が繰り広げられる。

 

 

数分後。我に返って落ち着いた僕に甘雨が話しかけてくる。

「誕生日プレゼントと、美味しい料理とっても嬉しかったです。感謝を伝えるために...少しだけ積極的になります...」

そう言うと彼女は立ち上がり僕とこたつの間に入り込んでくる。

「はふぅ...前も後ろも暖かい...です。」

僕の方に寄りかかってくる彼女を後ろから抱きしめる。

「甘雨、好きだよ。大好き」

「私もあなたのこと大好きです。」

下から見上げるように返事をしてくる彼女のことを強く抱きしめる。

「私、とっても幸せです。今までの長い人生で1番幸せです。」

「ありがとう、甘雨。僕のこと好きになってくれて。」

「私の方こそ、ありがとうございます。あなたと出会ってから毎日とても幸せです。」

ぐりぐりと体重をかけてくる彼女を受けとめ、甘くむず痒い沈黙を楽しむ。

 

 

「あの...これだけプレゼントを頂いておいてワガママ言うのも気が引けるんですけど、1つだけおねだりしてもいいですか?」

「誕生日じゃなくても聞くつもりでいるけど、いいよ、言ってみて」

こたつの温もりを惜しそうにしながら甘雨が向かい合って僕の上に座ってくる。いつもより積極的な甘雨にドキドキしながら、彼女を抱きしめる。

「えと...その...口付けを...して欲しいなと」

緊張したような顔で見上げてくる彼女に自分の顔が真っ赤になるのを感じる。

「わ、分かった...ちょっと待ってね....落ち着くから」

彼女の緊張がすっかり僕にも伝播してしまったらしく、高鳴る鼓動を落ち着けるために深呼吸をする。

「よし、だ、大丈夫だ。ちょっと恥ずかしいから、甘雨、目を瞑ってくれる?」

「ふふっ、緊張してるの可愛いです。分かりました。」

目を瞑った彼女が顔を上げ、お互いの距離が近づく。

「...んっ」

普段耳にすることの無い艶めかしい声にさらに顔が熱くなる。

お互いを抱きしめる力が強くなり、啄むようなキスを繰り返す。

 

唇が離れると名残惜しそうな彼女と目が合う。

「ふふっ...きもち、よかったです」

舌なめずりをしてそうな笑顔で僕に微笑んでくる。

「やっぱりキスって恥ずかしいな...」

さっきよりも少し離れた距離で会話を続ける。

「からかってきたお返し、です。」

「さっきもそう言ってたよな...」

「誕生日なので大目に見てくださいね」

幸せそうな顔で僕の胸元に頭をぐりぐりしてくる彼女を抱きしめながら、からかう頻度を減らさないと身が持たないな、と密かに思うのだった。

 

 

その夜。明日からマフラーをつけていきます!と嬉しそうにいいながら眠りについた彼女の頭を撫でながら、これから毎年、何年経っても幸せに過ごせることを祈りつつ、誕生日が過ぎていくのだった。

 

 

 

 

「甘雨さん、幸せそうだね。あんなに甘えてるところ初めて見たよ。」

「うわぁ...なんかこっちまで恥ずかしくなってきたぞ...」

「誕生日プレゼント、渡せなかったね...頑張って甘雨さんに知られないように秘境行ったのにね。」

「さすがのオイラもあそこに割り込む勇気はなかったぞ..」

「また今度渡そっか、パイモン」

 

 

後日、甘雨と僕のこたつでの1幕を目撃してしまった旅人から取っておきの聖遺物を渡されたのはまた別の話。




いつもの3倍の文字数になってた。マフラーの色はみ空色という色をイメージ。


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甘雨とおやつを堪能するだけ

 誕生日のミニキャライラスト可愛い...ってなって書きました。


 

 

甘雨の誕生日から数日経った休日のある日。

 

「そういえば昨日蛍さんから『渡しそびれた誕生日プレゼントを渡したいから明日の昼頃に家に行く』っていう伝言をもらったので、後ほど来ると思います」

「あれ、蛍さんからまだ受け取ってなかったんだ。相談に行った時に渡すものは決めてあるみたいなこと言ってたのに」

休日ののんびりした昼をこたつの中で過ごす。

ふと、気になったことを甘雨に質問する。

「ところで、なんで家の中でもマフラー巻いてるの?」

「それはもちろん、あなたからのプレゼントを蛍さんに自慢したいからです!」

前に乗り出してきそうな勢いで返事をしてくる彼女に苦笑いで返す。

「流石にマフラー巻いてこたつに入ってたら暑くない?」

「大丈夫ですよ、職場の方でもずっと巻いてますし」

どうやら肌身離さずつけているらしい彼女に作ってよかったなと嬉しくなる。

 

「おーい!甘雨ー!!」

玄関の方からパイモンちゃんの声が聞こえてくる。どうやらきたみたいだ。

「蛍さん、パイモンちゃん、こんにちは。寒いだろうから上がって上がって」

二人を玄関で出迎え、リビングまで案内する。

「ちょっと待って」

蛍さんに突然呼び止められる。

「これ、特別なスイートフラワーを集めてきた。甘雨さんにお菓子を作ってあげて。私は甘雨さんにプレゼント渡してくるから」

袋に入った大量のスイートフラワーを手渡される

「おぉ、こんなにたくさんわざわざありがとう。おやつの時間に間に合うように作ろうかな…ってもうリビング行ってるし。」

家に材料あったかなと思いつつ、後を追うようにリビングへ入る。

「甘雨さん、遅れちゃったけど、誕生日おめでとう。」「これ、オイラたちからのプレゼントだ!」

こたつで丸くなってる甘雨に蛍さんがプレゼントを渡す。

そのシーンを見届けた後、ケーキを作るためにキッチンへ入っていく。

蛍さんから受け取ったスイートフラワーでお菓子作りに取り掛かる。リビングの方から甘雨の恥ずかしそうな声が聞こえてくる。

 

小一時間後、ちょうど盛り付け終わった頃に甘雨と話し終わったらしい2人が家を後にする。次の冒険の話でもしてたのだろうか。

「あれ、何作ってるんですか?もしかして蛍さんが言ってたスイートフラワーの、、」

キッチンを覗き込んだ甘雨に返事をする。

「流石甘雨、その通りだよ。ちょうど完成したからおやつを食べよう」

「わぁ…!今お茶を用意しますね!」

いそいそとお茶の準備をした彼女と共にリビングへ向かう。

「さぁ、食べようか。我ながら美味しそうにできたんじゃないかな」

「とってもいい香りです…いただきます」

幸せそうに食べる彼女を見ながら僕も食べ始める。

「すごい、無糖なのにちゃんと甘い味がする。蛍さんよくこんなの見つけてきたな」

「結構苦労したらしいですよ。さっき話してくれました。んん〜…おいしいです」

甘雨が食べながら器用に返事をしてくる。

「そうそう、聞いてください!私の誕生日の夜、蛍さんがプレゼントを渡しに家まで来てたらしいんです。それで…その」

急に口ごもる彼女に対し嫌な予感を抱く。

「…たんです」

「ん?もう一回言って?」

「だから!!見られてたんです!!私たちがこたつの中でいちゃいちゃしてたのが!!」

顔を真っ赤にして声を張り上げる彼女に対し僕も顔が熱くなる。

「え、本当に?さっきの蛍さん妙によそよそしいなと思ったら、、なるほど。若干気まずかったのかな」

「謝ってくれたから別にいいんですけど、、見られたのが恥ずかしいです…」

思い出してさらに恥ずかしくなったのか、彼女のお菓子を食べる手が早くなる。

「それでなんか申し訳なくなってスイートフラワーを探してきてくれたらしいんですけど、、」

「あぁ、なるほどね。蛍さんから玄関で急に手渡されてびっくりしたよ」

「おかげでこんなに甘くておいしいお菓子が食べれたのは嬉しいですけど、、うぅ…」

恥ずかしそうな彼女に対し、別の話題を持ち込むことにする。

「自分で言うのもアレだけど、マフラーのことはなんか言ってた?」

「とても似合ってるって言ってくれました!パイモンちゃんはなかなかやるな…って可愛らしく言ってましたよ」

「それはよかった!まぁ、実際めちゃくちゃ似合ってるし可愛いからね」

「もう、すぐ褒めてくれるのは嬉しいですが、恥ずかしいのでほどほどにしてください…」

そういうとお菓子の最後の一口を口に放り込む。

「ごちそうさまでした。蛍さんには後日改めてお礼を言っておきますね。」

「よろしくね。あ、後このスイートフラワーたまにでいいから手に入れたいってことを伝えて置いてほしいな」

手に入る機会が増えれば甘雨に振る舞えるレパートリーが増えるしね、と心の中で呟きつつ、休日のほのぼのとした時間が過ぎていくのだった。




推しの誕生日は祝日にしません?


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甘雨とパーティーを堪能するだけ

クリスマスですが、バイトで忙しいので急いで書きあげました...


 

 

 

年の瀬も押し迫った12月の24日。

蛍さんからクリスマスという概念を聞いた僕は甘雨と二人でパーティーをすることにした。

年末など関係なく仕事に出向いた彼女にサプライズという形になりそうだが、喜んでくれると思う。

 

誕生日以降頻繁に冒険に駆り出されている甘雨のために、比較的ボリュームのある料理を拵える。とは言っても食べられるものが限られている彼女を驚かせるメニューを考案するのは大変だ。

今朝入手した蓮の花と自宅で採取した人参を少し小さめに切り、ラズベリーをベースとしたソースを作る。

あらかじめ炊いておいたお米の上に形を整え盛り付けたら四方平和の完成だ。

以前僕の誕生日の時に彼女が作ってくれたとても思い出深い一品であり、そこそこボリュームもあるということでメインディッシュは完成。

デザートにはカボチャの甘みを生かしたパウンドケーキを作る。もちろん砂糖は使わない。

 

一通り完成させた頃、甘雨が帰ってくる。

「ただいま、戻りました。」

髪やマフラーが少し濡れている。

「おかえり、甘雨。少し濡れてるけど雨でも降ってた?」

僕と目が合うと甘えるように手を伸ばしてくる彼女を抱きしめる。

「はふぅ…暖かいです….。濡れてるのは少し雪が降ってたからですかね」

「まぁここにいても寒いだけだしリビングに行こうか。」

 

甘雨が着替えに入ったタイミングを見計らって急いで料理を机に並べる。

真ん中に四方平和を置いて、両脇にはサラダとケーキを並べ、彼女がくるのを待つ。

「メリークリスマース!!!」

「め、めりーくりすます????」

可愛らしく首を傾げながら席につく彼女に僕は言葉を続ける。

「さぁさぁ、今日のためにご馳走を作ったから食べよう食べよう」

「わぁ…これもしかして四方平和ですか??」

目を輝かせながら聞いてくる彼女に返事をする。

「そうだよ、昔僕の誕生日に作ってくれたのが嬉しくて、今日のためにこっそり練習してたんだ」

「この脇にあるの、もしかして清心ですか?美味しそうです…」

「それもちょっと前から準備しておいた清心の塩漬けだね。味が濃いから米と一緒に食べてね。くれぐれもだべすぎないように」

「もう、それくらいわかってます…」

拗ねたように料理を取り分ける彼女の頭を撫でつつ、ごめんごめんと返事をする。

「さて、食べようか」

「「いただきます」

 

「ん〜!この四方平和とてもおいしいです!私が作るやつよりおいしい気がします…」

「確かに我ながら美味しくできてると思うけど、僕にとってはやっぱりあの時の甘雨が作ってくれたやつの方が美味しいかなぁ」

「お互い様、ですね」

目を合わせてどちらからともなく笑みが溢れる。

「この漬物、とってもおいしいです。四方平和の薄めの味付けも相まってずっと食べれてしまいます…」

「最近冒険で忙しそうにしてるからね。食べごたえのある物を作ろうと思って思いついたんだ。」

「いつも私が好きなものばかり作ってくれますけど、たまにはあなたが好きなものを作ってもいいんですよ?」

「うーん、昔はお肉とか好きだったんだけど、甘雨と生活しているうちに野菜メインの生活に慣れてきちゃってね。それに、試行錯誤した料理をおいしいって食べてくれる人が近くにいるから僕はそれで満足かなって」

ふと、甘雨の食事の手が止まる。何かまずいことでも言ってしまっただろうかと、冷や汗が流れる。

「そういうところ、本当に大好きです」

目を合わせて柔らかくそう言ってくる彼女に心臓が高鳴る。顔が熱くなるのを感じる。

「あれ、もしかして照れてますか?ふふっ、今日は私の勝ち、ですね」

悔しくない敗北感といまだに高鳴る心臓を抑えるために無言で料理を食べ進める。いつまで経っても彼女に勝つことは出来なさそうだ。

 

「さて、デザートのパウンドケーキを食べようか、、ってもう切り分けてるし」

「えへへ、、ちょっと我慢できませんでした。とっても美味しそうなのが悪いんです!」

美味しそうに食べ始める彼女に、疑問に思ったことを聞く。

「なんの抵抗もなく食べ始めてるけど、食べられないものが入ってるかも、とかは思わないの?入れるわけないんだけどさ」

「前にも言ったかもしれませんが、匂いでわかります。それに、あなたが作るものは安心して食べられるっていうのは分かりきっているので」

そんな無条件の信頼を寄せてくる彼女に対し、短時間で二回目の敗北を喫した気分になる。

「ありがとう、甘雨。」

そう返すことしかできない自分に対してむず痒さを感じながらもケーキを食べ進める。

 

食事の後、こたつで一息ついていると、同じくこたつに入った甘雨がこう問いかけてくる。

「来年も同じように過ごせたらいいですね…あなたとの時間がこの先ずっと続いてくれると嬉しいです。」

「そうだなぁ、来年のクリスマスはもっと美味しくてたくさんの料理を作りたいなぁ」

「楽しみにしてますね」

ほのぼのとした時間が続く中、ふと窓の外を見るとしんしんと雪が降っている。

「雪、積もりそうだなぁ。明日はもっと暖かい服装をしないと寒いかも」

「そう、ですね…」

こたつでうつらうつらと船を漕いでいる甘雨を抱き寄せ、ベッドまで運ぶ。

 

ふと立ち止まった甘雨がこんなことを口にする。

 

 

 

 

「ところで、クリスマスってなんですか?」




予約投稿万歳(血涙)


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甘雨と大晦日を過ごすだけ。(超短編)

ギリギリセーフ。まだ年末です。


今年も残すところあと30分ほどとなった大晦日の夜。僕と甘雨はコタツに入って1年をふりかえっていた。

「今年もいろいろあったけど、1番の変化は甘雨が蛍さんと冒険に行くようになったことだよね」

「そうですね、今年の最初の方に蛍さんから猛烈なラブコールを頂いて...」

「最初は一緒に過ごせる時間が減るから断ってくれってお願いしようとしてたんだよね、実は」

僕の突然のカミングアウトに、彼女が驚いたような声を上げる。

「そう、なんですね...。なんか嬉しいです」

「でも結果的には、ちょっと嫉妬もしちゃうけど甘雨が楽しそうだから止めなくてよかったよ。」

「私だってかなり嫉妬してるんですよ?蛍さんと話してるのを見るのも嫌なくらいに」

「お互い様だね、僕達」

「ふふっ、そうみたいですね」

 

「そしていざ冒険に出るってなったら数ヵ月後にいきなり"あの"稲妻に行くって言うんだから止めておけばよかったっておもったよね。」

「蛍さんからかなり期待されてましたし、知らない土地を一緒に冒険するのも楽しかったですね」

「まあ甘雨が居ない日の夜は1人寂しく過ごしてるけど」

「知ってますよ、だって私が帰った時にとても嬉しそうな顔してるんですもん。ああ、この人私いない時寂しかったんだなって思うと嬉しいような、むず痒い気持ちになりますね」

滅多にない甘雨からの攻撃に顔が熱くなる。

「まぁ、そりゃもちろんそうだよ。甘雨のことはずっと考えてるし、ずっと一緒にいればいるほど、どんどん好きになっていくんだよね」

僕がこう返すと、甘雨の顔も一気に赤くなる

「嬉しい、です。私もあなたの事をずっと考えているし、同じ時間を共有すればするほど全てが幸せな思い出で定着しています」

そうして思い出を語り合って少しした後、僕は彼女に提案する。

「そろそろ日付も変わりそうだし、布団に入ろうか。風邪ひいちゃうしね」

「そうですね、そうしますか。新年を迎えるまでもう少しだけお話したいです。」

 

 

布団の中に入り、どちらかともなく身を寄せ合う。

「今年一年、甘雨のおかげで楽しかったし、新しいことにも挑戦できたし、新鮮な日々をありがとう」

「私の方こそ、同じ日々の繰り返しだった私に新しい日常を定着させてくれてありがとうございます。あなたとの月日が永遠に続くことを願っています。」

 

 

 

遠くの方で鳴り響く鐘の音を耳に、幸せな沈黙を楽しむ。

 

愛しい彼女との日々がこれからも続いていくことを祈りながら...




せーーふ!


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甘雨と正月を楽しむだけ

まだ小正月ということで...(バイトが忙しかったんです)


 

 

 

大晦日の夜。布団に入った僕達は、遠くの方で鳴り響く鐘の音を聞きながら、こう呟く。

「あけましておめでとう、甘雨。今年も僕と一緒に1年をすごして欲しい。」

「あけましておめでとうございます。今年もあなたと共に過ごせますように。」

 

甘雨との新しい一年が幕を開ける。

 

 

朝。

「んー、よく寝た。初日の出とか関係なくすっかり太陽が昇っちゃってる...」

外の明るさによって目が覚めた僕は隣で寝息を立てている甘雨のことを眺める。

冬にもかかわらず朝からしきりに鳴いている鳥の声が早く起きろと急かしているかのようだ。

「うーーん、可愛い寝顔。寒いしもう少しだけ横になろうかなぁ」

誰に聞こえるわけでもなくそう呟いた僕は温もりの残る布団に再び横になる。

彼女の寝息に耳を傾けながら、外の雪がどれくらい積もって居るかと思考を飛ばす──

 

 

 

「ふぁ...朝、どころかもう昼ですね...少し寝すぎてしまいました...」

目を覚まし起き上がった甘雨は隣で寝息を立てる彼の方を見つめる。

「ふふ、今日はどうやら私の方が早起きのようですね。うーーん、でもやっぱり布団が暖かすぎるのでもう少しだけ寝ましょうか...」

そう呟くと彼女は布団に入り、彼に抱きつき再び眠りにつくのだった。

 

 

「んー、寝てしまってた...うわ、もう昼過ぎっぽいな...」

どうやらあれこれ考えているうちに二度寝をしてしまっていたらしい。横を見ると甘雨が僕の腕に抱きつきながら寝ている。可愛い。

「おーい、そろそろ起きて、甘雨。もう昼すぎてるよ多分」

すやすやと寝息を立てる彼女の方を揺する。

「んー...起きてます....」

「いやいや、寝てるじゃん」

「起きてます.....」

そんな意味の無い攻防を繰り返し、漸く彼女を起こすことに成功する。

「甘雨、忘れてるかもしれないけどお正月だよ?」

そう聞くや否や、座ったまま眠ろうとしてた彼女が目を見開く。完全に忘れていたらしい。

「はっ...!し、新年から恥ずかしいところを...えと...暖かいあなたが悪いんです!」

何としても僕のせいにしたいらしい彼女の頭をひとなでし、食事の支度に向かう。

「ご飯作るからちゃんと起きるんだよ?今日は面白いことをしようと思ってるからね」

「もう、子供扱いしないでください...」

彼女が洗面所に向かうのを確認したあと、キッチンへと向かう。

新しい1年の幕開けも、幸せに染っていた。

 

 

「それで、さっき言ってた面白いことってなんですか?」

食事を終えてのんびりしていると、甘雨が話しかけてくる。

「ああ、それを話すにはまず...庭に出ようか」

彼女と共に庭へ出る。真っ白に降り積もった雪で景色は一変している。

「雪だるまをつくろう!」

「雪だるま、ですか?」

訝しげに聞いてくる甘雨の視線を感じつつ製作に取り掛かる。

「ほらほら、甘雨も手伝って」

「起きた時からソワソワしてるなぁと思ったら雪遊びがしたかったんですか?仕方ないですね、手伝ってあげます」

優しげな言葉と共に彼女が僕の近くにしゃがみこむ。

「それで、どうすればいいんですか?」

「大きい雪だるまを作りたいから手頃なサイズの木の棒と目に使えそうな石を探して欲しい」

「分かりました、ふふっ、何だか子供と遊んでるみたいです」

テンションが上がってしまったことに若干の恥じらいを感じつつ、我を忘れるために雪玉政策に取り掛かる。

 

 

「そういえば、雪だるまといえば、少し前に蛍さんとモンドの方たちが作っていましたよ」

棒と石を見つけてきたらしい甘雨が話しかけてくる。

「へー!そうなんだ。じゃあそれに負けないような雪だるまを作らないとな」

「まあ蛍さんたちはドラゴンスパインの豊富な雪で作ってましたけど...」

「それは...勝てなさそうだ、、っと、よし。元の形はこんな感じでいいかな」

「結構大きいサイズになりましたね」

甘雨と同じくらいのサイズの雪だるまだ。

「ちょっと気合が入っちゃって...」

恥ずかしそうに言う僕に彼女が質問してくる。

「棒は横に刺せば良いですか?」

「そうだね、石は目になりそうな位置に置いておいて。僕は家から秘密兵器を持ってくるから。」

そう言うと僕は家の中に入る。

「ダメになりつつある人参と、マフラー編んだ時に余った糸で作った手袋を持って、と」

 

庭に戻ると甘雨がニコニコしながらこっちを見ている。

「どうしたの?そんなにニコニコして」

「見てくださいこの雪だるま。近くに落ちてた葉っぱを眉毛にしたんですけど、すごくあなた似ていると思いませんか?」

「いやいやそんなに...って確かに少し似ているかも。」

少し悔しくなった僕は持ってきた人参と手袋を雪だるまに付ける。

「これで僕には似てないでしょ」

「...ふふ...ふふっ...ふふふ」

口を手で覆いながら不気味に笑っている彼女に質問する。

「なんでそんなに笑ってるんだよ、、似てないよな?」

「その怒ったような表情、そっくりです...ふふっ...」

どうやら彼女のツボに入ってしまったらしい。

「まあ、そこも含めてあなたのことが大好きなんですけど、ね」

「好きって言ったらなんでも許してくれると思ってるな??まあそうなんだけどさ...」

「私この雪だるま気に入っちゃいました。蛍さんの知り合いにお願いして溶けないようにしてもらいます」

「まあ気に入ってくれたならいいけど...」

 

寒さを忘れるほど楽しんだお正月。彼女と過ごす1年はまだ始まったばかりだ。




感想ありがとうございます。励みになります!


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甘雨と初夢の話をするだけ

1月は実質正月です


 

 

 

新しい歳を迎えた次の日、1月2日の朝。僕と甘雨はこんな話をしていた。

「甘雨は初夢、見た?いつも通り気持ちよさそうに寝てたけど」

寝起きでまだ眠そうにしている甘雨に質問する。

「そういえば今日、でしたね...えっと...その...初夢、ですか...」

口ごもる彼女にさらに質問を重ねる。

「もしかして、嫌な夢とかだった?」

「いえ、そういう訳では無いんですが...えっと...」

恥ずかしそうな反応をする彼女を見て、核心に気づいてしまう。

「もしかして、僕の作った清心とスイートフラワーの料理に囲まれている夢?」

「な、なんで分かったんですか...!その通りです...」

僕の話に目を見開いて驚く。

「甘雨のことならなんでも分かるさ、食いしん坊だってこともね」

いつも通りのからかいに、いつも通りの反応を返してくれる。

「美味しい料理をいつも作ってくれるあなたがいけないんです...もう...」

「でも毎回残さず食べるどころか、おかわりも求めてくるよね?」

「それは...あなたの料理に私の胃がしっかりと掴まれてしまったからです...もう離れられません」

朝から甘い幸せな時間を堪能する。

 

「そういえば、あなたはどんな夢を見たんですか?」

一息ついた後、甘雨が質問してくる。

「それはもちろん、言わなくてもわかるよ

逆に質問で返されると思っていなかったのか、彼女が戸惑ったような表情をする。

「えっと.......自分で言うのも恥ずかしいんですが、私の夢、でしょうか...」

「ご名答。今日の夢にもちゃんと僕料理を食べて僕に向けて幸せそうに笑う甘雨が出てきたよ」

「あなたって、私の事本当に好きですよね...むず痒いですけど嬉しいです」

夢以上の笑顔で僕に笑いかけてくる彼女。

「でも、一つだけ言いたいことがあるんだ」

可愛らしい笑顔の彼女にひとつ呟く。

「甘雨の夢、僕出てきてないよね?」

すると、彼女の表情が笑顔から気まずそうな表情に一変する。

「えっと...出てきてない、です...」

「まあ確かに、今までの人生の長さを考えると、僕とすごした時間なんかつい最近のことなんだろうけどさ...」

柄にもなく拗ねた僕に、バツが悪そうな顔の甘雨が僕に向かって抱きついてくる。

「もう、拗ねないでください...ちゃんとあなたのこと大好きですよ。すぐ嫉妬しちゃう所も、美味しい料理作ってくれるところも、あなたが私のことを呼ぶ時の声も、全部全部大好きです。」

耳元で愛の言葉を囁いてくれる彼女のことを強く抱きしめる。

 

「そうだ、私にいい案があります」

耳元でぽしょっと甘雨が呟く。

「私と一緒に、二度寝しませんか?」

そういうや否や彼女が布団と共に覆いかぶさってくる。

彼女の香りと温かさに包まれながら、あっという間に眠りに落ちていくのだった....

 

 

起きた時にはすっかり夕方になってしまっていたが、今度はしっかり僕の夢を見てくれたらしい。

 




初夢、バイトしてる夢でした。チクショー!!


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甘雨に手紙を書くだけ

甘雨PU記念です。バイト代突っ込んでアモス弓引きます。

お気に入り200件ありがとうございます!


 

 

 

 

ある休日の昼下がり。珍しくこの時間まですやすやと眠っている甘雨の横で僕はぼんやりと考え事をしていた。

幸せそうに眠る彼女の寝顔も小さな寝息も今は僕だけのものと考えると少しだけ幸せになる。

朝からやろうと思っていた仕事を思い出したが、幸せそうに眠っている彼女をもう少し見ていたいと思い今日くらいは...と思考を中断して再び布団に潜り込む。

 

 

甘雨の寝息をBGMに2度寝に入ろうと思った時に、ふとある考えが頭をよぎる。

日々の感謝とありったけの愛を込めて甘雨に手紙を書こう、と。

即断即決、早速書き始める。

素直な気持ちを込めて、甘雨が明日も明後日も僕と共に笑っていられるように。

 

 

読み返すと恥ずかしくなるような手紙をこっそり枕の下に忍び込ませた後、謎の気まずさを感じた僕は起きる支度をして食事の準備に取り掛かる。

手紙の恥ずかしさをいい感じに忘れてきた頃、甘雨がリビングに入ってくる。どうやら起きたらしい。

「おはようございます...ふぁ...」

「おはよう、甘雨。昨日は遅くまで持ち帰った仕事をしてたのかな?」

「そうですね...海灯祭も近いので何かとやることが多くて...ところで、その...」

まだ少し眠そうな彼女が僕に聞いてくる。

「枕の下の手紙のこと、なんですけど...」

「それがどうかした?」

「もしかして...浮気とか、してないですよね?」

急に目のハイライトが消えた彼女が顔を寄せて問い詰めてくる。

「いやいやいや、有り得ないって。ていうか手紙読んでなんでそうなるの?」

「だって急にあんな...あんな恥ずかしい手紙を急に書くなんて不自然です」

「まあ確かに僕も書いた後に読み返して恥ずかしくなったけどさ」

未だにジト目で睨んでくる彼女に対し、言葉を続ける。

「僕が後にも先にも好きなのは甘雨だけだし、一生を捧げるのも甘雨だけだよ」

「ぅ...照れます...じゃなくて、そんな言葉には騙されませんよ。じゃあなんで急にこんな手紙書いたんですか」

照れる仕草をしたと思えば再び問い詰めるように顔を寄せてくる彼女に答える。

「いやー、その、甘雨の寝顔みてたら好きだなーって気持ちが溢れちゃって...」

「ぅ...寝顔、みてたんですか」

「幸せそうに寝ててとても可愛かったからしばらくの間眺めてたよ」

僕の言葉を聞いて顔を赤らめた彼女が先程と打って変わって恥ずかしそうな声で問いかけてくる。

「どれくらいの間みてたんですか...私の事」

「うーん...20分くらいかな?この寝顔を見れるのは僕だけなんだなって思うと嬉しくなっちゃって...」

「20分ですか!?うぅ...恥ずかしくてあなた以外のところにはお嫁に行けないです...」

耳まで真っ赤になった彼女をみて、そういうところが好きなんだよなと思いつつ食事を食卓に運ぶ。

「どう転んでも僕が甘雨のこと貰うから大丈夫だよ、気にしないで」

恥ずかしがりモードから我に返った(?)甘雨が席に着く。

「そういう、しれっとドキドキする言葉を言うの、良くないと思います...」

 

 

 

後日、甘雨さんにプレゼントだよ!!って言いながら血相を変えた蛍さんが強そうな武器を持ってくるのはまた別の話。




フフフ...バイト代がある俺は無敵...アモス当てたあと甘雨の凸を進めてやるんだ...



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甘雨に看病してもらうだけ

推しの背中の☆5武器、なんて美しいんでしょうか


 

 

 

海灯祭が幕を開けた直後のある朝、普段より重く火照った身体とともに目が覚める。

前日夜遅くまで甘雨の手伝いをしていたせいか、はたまた連日の疲れがまとめて来たのか、どうやら風邪をひいてしまったらしい。

朝食の支度と積み重なった今日の用事に対しどうしようかと頭を悩ませていると、隣で寝ていた甘雨が目を覚ます。

「...ん...ぁ、起きてたんですね、おはようございます...ふぁ...」

「あぁ...おはよう、甘雨」

「元気がないみたいですけど、、大丈夫ですか?」

僕の声色に覇気がないのを感じ取ったのか、彼女が質問してくる。

「うーん...どうやら少し熱があるっぽいんだよね。でも大丈夫だと思う。」

「熱...ですか。最近ずっと私の事務仕事手伝ってもらってましたし、疲れでしょうか...」

「まあそうだとしても甘雨が気にすることじゃないよ」

「でも...万が一があったら大変です...私が言えることではありませんが今日はしっかり休んでくださいね」

「甘雨がそこまで言うならそうするよ。ありがとうね。それと、朝食の準備できなくてごめん」

僕が謝ると、怒ったように頬を膨らませて僕に布団をかぶせてくる。

「もう、私だって料理くらい出来ます。あなたほど美味しいものは作れませんが...。とにかく、寝てください」

甘雨が寝室から出ていったあと、ぼんやりと考え事をする。

 

しばらく考え事をしていると、次第に頭痛が酷くなり、心做しか熱も上がったような気がする。

甘雨が部屋のドアを開ける音がする。

「仕事、行ってきますね。って...かなり息荒いですけど本当に大丈夫ですか...?」

「行ってらっしゃい...さっきより悪化してるかもだけど、寝てれば多分大丈夫だよ」

すると甘雨が僕の額に手を当ててくる。

「かなりの高熱じゃないですか...仕事休む旨を伝えてきます。流石に心配です」

「ごめんね...甘雨...ありがとう」

「いつも私がお世話になりっぱなしなので、これくらいはさせてください」

そういうと甘雨が急ぐように部屋から出ていく。

 

 

数十分後、甘雨が戻ってくる。

「戻りました。急用で休むってことを伝えたあと、不卜盧で薬を貰ってきました」

「本当にありがとう、、甘雨」

「いいんです。あなたには一昨日から言ってましたけど、どっちにしろ明日から休暇を取るつもりだったので気にしないでください」

「そういうことなら...遠慮なく甘えさせてもらうよ。とりあえず、もう少し寝て様子を見てみるよ」

「はい、ゆっくり休んでくださいね」

 

 

昼頃、目を覚ます。

額に感じる冷たい心地良さは甘雨が用意してくれた濡れタオルだろうか。

朝からは多少良くなったものの、未だに酷い頭痛と倦怠感が体を包んでいる。

「あ、目を覚ましたんですね。ちょうど良かったです。お粥、持ってきました」

「濡れタオル、ありがとうね。お陰様でちょっと楽になったよ。」

甘雨がお粥の乗った盆を持って僕のそばに腰かける。

「とりあえず、お粥作ったので食べれるだけ食べて、しっかり体調治してくださいね。」

僕が匙を手に取ろうとしたところを遮るように彼女がびしっと言ってくる。

「私が食べさせてあげますね」

「え、いや、自分で食べれ...」

「私が、食べさせて、あげますね。」

有無を言わさぬ迫力に口を開けることしか出来ない。

「はい、あーん。...熱くないですか?」

優しい味が口の中に広がる。

「ちょっと熱いかな、でも美味しいよ」

「そういえばあなた猫舌でしたね...ふふ、そういうことなら...」

そう言うとお粥をよそった匙を自分の元へ近付ける。

「ふー、ふーっ....はい、あーん」

「い、いやこれはさすがに恥ずかしいというか...」

熱の火照りなのか恥ずかしさの火照りなのか体温が上昇する。

「せっかく私が作ってあげたんですから、しっかり食べてください。はい、あーん」

上手く言いくるめられてしまった気がするが、大人しく口を開ける。

「ありがとう...うん、、やっぱり美味しい。とっても優しい味がする」

「そう言って貰えて嬉しいです。まだ食べれそうですか?」

「食べれる、、けど、自分で食べるよ」

さすがに恥ずかしいので、彼女にお願いする。

「ダメ、です。私の方もちょっと楽しくなってきたので最後まで食べさせてあげますね」

今日は甘えさせてもらうと言った手前、これくらいの恥ずかしさは我慢するべきだらななんてことを考えながらお粥を食べさせてもらうのだった。

 

 

 

昼食後、薬も飲んだ僕は再び横になり、眠気に身を委ねようとしていた。

すると、もぞもぞと甘雨が布団に入ってくる。

「甘雨、近くにいてくれるのはとても嬉しいけど風邪移っちゃうから、離れて、、ね?」

「半仙は風邪をひかないので大丈夫ですよ、それにあなたがさっき熱で魘されてる時に私の名前呼んでたのを聞いてドキッとしちゃいまして...」

どうやら無意識に彼女の名前を呟いていたらしい。

「え...なんか恥ずかしいな...。でも風邪引かないってことなら、横にいてくれると嬉しい」

「そ、それと...」

恥ずかしそうに言葉を発する彼女が、僕の腕に抱きついてくる。

「私、氷の神の目を持っているので少しひんやりしていると思うんです...」

心地よい冷たさと甘雨の香りにドキドキする。

「私を、氷の抱き枕だと思ってしっかり風邪、治してくださいね」

そう言うや否や、僕を抱きしめる力が強くなる。

横に好きな人がいる幸せをかみ締めつつ、たまには風邪をひくのもアリか...なんてことを考えながら今度こそはと眠気に身を委ねる。

 

 

結局、甘雨のおかげで翌朝には元気になっていたが、彼女に抱きついて寝てしまう癖が着いてしまうようになってしまったのはまた別の話──。




半仙が風邪をひかないって設定、多分ないけど大目に見てください()


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甘雨とバレンタインを過ごすだけ

僕には縁がないのですっかり忘れてました(照)


 

 

 

海灯祭も終わり、賑やかだった璃月の街並みに寒さと静けさが戻ってきた2月の半ば。港から磯の香りではなくチョコレートの甘い香りが漂ってきそうなそんな日の一幕。

 

 

 

「最近、甘雨の帰りが遅い...」

夕飯を作り終え、甘雨の帰りを待つだけになった僕は、ふとそんなことを呟いた。

海灯祭も終わり、忙しい事務仕事も片付いたと言っていたがここ数日はいつもより数刻帰りが遅い。なにか別の用事でもあるのだろうか...。急に不安になっていると、ここ数日とは一転していつも通りの時間に甘雨が帰ってくる。

 

「ただいま、戻りました。」

僕のプレゼントしたマフラーを巻いた甘雨を玄関で出迎える。

「おかえり、甘雨。今日はいつも通りの時間だね」

さっきまでの嫌な考えが脳裏を過り、棘のある言い方になってしまったことを後悔する。

「今日は何としてもこの時間に帰りたかったので...もしかして、寂しかったですか?」

微笑むような表情の彼女が揶揄うように言ってくる。

「まぁ...寂しかったかな。とりあえず夕飯食べたあと、話があるからね」

そう言い残し、リビングへと戻る。

 

 

 

夕飯後、食器洗いを手伝ってくれた甘雨に質問をする。

「甘雨、なんで最近帰りが遅かったの?言ってくれれば夕飯の支度遅らせたのに」

「えーっと...それは」

なにやら言い淀んでいる彼女に近づく。

「なんで、遅かったの?」

目を逸らした彼女が後ずさる。

「あることの練習をしてて...」

パッとしない物言いの彼女にさらに近づく。

「それは僕に言えないことだった、ってこと?」

彼女の背が食器棚に当たり、僕の顔が近づく。

すぐ目の前に甘雨の綺麗な顔がある。

「ふふっ、もしかして嫉妬してくれたんですか?」

逃げるように可愛く揶揄ってくる彼女にさらに迫り、頭の横に手をつく。

「これ以上は逃げられないよ。なんで遅かったか教えてくれるよね?」

彼女の顎に手を当て僕の方を見るように顔をあげさせる。

まるでキスしそうなほど近づいた彼女の顔に僕の心臓が少し跳ねる。

「か...顔が、近い...。てっ、照れます...」

耳まで真っ赤にした彼女に愛しさを感じつつ、返事を待つ。

「バレンタインの...チョコの作り方を教わってたんです...」

震える声でそう返す彼女にさらに質問をする。

「誰に渡すの?」

ほぼゼロ距離で見つめ合っている状態で会話を続ける。

「も、もちろん、あなたに決まってます。刻晴さんから、そういうイベントがあると聞いたので...」

ほぼ予想通りの答えが返ってくる。

「ありがとう、でも少しだけ不安だった。ほかの男の人と一緒にいたらとか、色々考えちゃって」

彼女の横に置いた手を下げ、食器洗いの続きをしようとした僕に対し、甘雨が僕の肩を掴んで来る。

いつの間にか僕と甘雨の位置が入れ替わり、彼女が僕の頭の横に手を置いてくる。

そして、同じように鼻がふれあいそうな距離で一言、

「私にはあなた以外の男性なんて必要ありません」

そう言った後に軽く口付けをしてくる。

「私がたくさん練習して作ったチョコレート、後で渡しますから楽しみにしててくださいね。」

 

脳の処理が追いつかない僕は、飛び出そうなほど跳ねている心臓の音を聞きながら、残りの洗い物を処理するのだった。

 

 

「はい、私からの本命チョコ、です」

可愛らしいラッピングがされたハート型のチョコレートをはにかむような笑顔と共に手渡してくる。

「ここ数日で練習したので、あんまり美味しくなかったらごめんなさい。一応刻晴さんには味見をしてもらったんですけど...」

「僕なんかのためにありがとう、お返しは気合を入れて作らなきゃな」

「数日だけですけど、寂しい思いをさせてごめんなさい。その代わり明日は休みを頂いたので、貴方と過ごしたいです」

むず痒い心臓の高鳴りを落ち着かせるためにソファに座った僕の上に、甘雨が座ってくる。

「もう、逃げないでください。もうひとつの本命チョコ、渡しますね」

 

触れ合った彼女の唇は今まで味わったどんなチョコよりも熱く、甘かったことだけは永遠に忘れないだろう。

 

 

 

どうやら壁ドンのドキドキ感を気に入ったらしい甘雨が頻繁に強請ってくるようになったのはまた別の話。




なにこの話。甘くね?


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甘雨にホワイトデーのお返しをするだけ

何をお返しにしようかリアルに10日くらい悩んだんですよね


 

 

 

 

春一番と共に梅の花の香りが運ばれてくる3月の頭。寒さのピークを超えた璃月の活気も芽吹きのように上り調子になりつつあった。

 

「うーん...なにかいい案はないかな」

暖かい日差しの下で庭をぼーっと見つめながら、僕は愛しの甘雨からバレンタインに貰ったチョコのお返しを考えていた。

14日まではまだ10日程あるが、早めに決めておく方が良いだろう。

「誕生日に身につけるものは渡したし、お菓子とかも難しいだろうし...うーん...」

「最近は暖かくなってきたのでマフラーは大事にしまっておきますね」なんてことを言ってた甘雨のことを考えていると、ふと庭先にある清心の花が目に留まる。

「花束...はなんかつまみ食いしそうだし...よし、この案で行こうかな」

我ながらいいアイデアだなと思いつつ、そばに寝そべる。暖かな陽気に包まれながらうとうとしてしまう。

 

 

 

「ただいま戻りました...」

夕刻、甘雨が帰ってくる。

「あれ、居ませんか?いつも出迎えてくれるのに...って、そんなところで寝てたら風邪ひいてしまいます。」

縁側で寝そべっている彼を見つけると、心配するような顔で甘雨が近づく。

「ほら、起きてください、まだ夜は冷えるんですから」

そうやって寝ている彼の肩を揺すり、起こそうとする。

 

 

「ん...ぁ...寝ちゃってたのか...あれ、甘雨おかえり」

見上げると愛しい甘雨の顔が目に入る。

「もう、こんなところで寝てたら風邪をひいてしまいます...ただいま、です」

僕のことを見下ろすように見ている彼女が返事をしてくる。

「いやー、ついうっかりうとうとしてしまって...出迎えできなくてごめんね」

「ちょっとだけ寂しかったですけど、可愛らしい寝言聞けたので許してあげますね」

そう言って揶揄うように微笑んでくる彼女に対し返事をする。

「え、なんか恥ずかしいこと言ってた!?」

「んーっと...甘雨大好きって呟いてました」

「あー...まあ確かに甘雨と過ごしてる夢見たけど声にまで出てたか...」

すると驚いたような表情をする彼女がこう言ってくる

「まぁ...寝言は言ってなかったんですけど...私の夢、見てたんですね。なんか、照れます...」

「え、これもしかしてカマかけられた?」

少しだけ悔しくなった僕は続けてこう返す。

「まぁ...夢の中の甘雨よりも、こうやって僕の目の前にいる甘雨の方が可愛いけどね。」

「もう...すぐ調子のいいこと言って...ほら、疲れた私のために夕ご飯作ってください」

そう言って僕の背中を押す彼女の耳は、少しだけ赤くなってるような気がした。

 

 

ホワイトデー当日、10日ほど前から制作していたプレゼントを大事にケースに入れ、甘雨の帰宅を待つ。

最近再び建築された群玉閣の中に甘雨は入ったことあるんだろうか...なんてどうでもいいことを考えていると、彼女が帰宅した音が聞こえる。

「おかえり、甘雨。今日もお疲れ様」

「ただいま、戻りました。」

そう言って微笑んでくる彼女を抱きしめようとすると声がかけられる。

「あっ、抱きつくのはちょっと...」

その一声で僕は硬直してしまう。

「え、ごめん...」

すると慌てたような彼女が

「あぁいや...嫌とかではなくて...その...今日は少しだけ暖かくて汗ばんでしまったので...恥ずかしいというか...」

と恥ずかしがりながら言ってくる。

「まぁまぁ、僕は気にしないから、ね?」

「そういうことなら...」

抱きつこうとした姿勢で硬直したままの僕に遠慮気味の彼女が抱きついてくる。

「ここ最近、あなたから清心みたいないい香りがします...んん...落ち着きます」

その言葉に少しだけドキッとした僕は彼女の耳元でこう囁く。

「夕飯の前に甘雨に渡したいものがあるから、ちょっと着いてきてくれる?」

「はい、分かりました...」

名残惜しそうに僕から離れつつ、部屋に戻る。

 

 

部屋に戻り、荷物を置いて着替えた甘雨にプレゼントを渡す。

「はい、これ。ホワイトデーのお返し。あんまり出来栄えも良くないし数も少ないけど...どこかに飾ってくれると嬉しい」

「これ、清心...ですか?ケースに入ってますけど...」

「プリザーブドフラワーって言う、枯れないように加工した花だね。頑張って作ってみたんだけど、これだけしか成功しなくて...」

花束と言うには少なすぎる量のケースに入った清心を見た彼女が目を開いて返事をしてくる。

「え、これあなたが作ったんですか...?すごい...すごいです。ちょうど職場の机の上に置くものが欲しかったんです...ありがとうございます」

嬉しそうに清心を見つめる彼女に僕は言葉を返す。

「水やりは必要なくて、湿気とか気温が高くないところなら多分数年くらいは大丈夫だと思うけど、もちろんつまみ食いはダメだよ?」

すると怒ったような口調で返事が返ってくる。

「さすがに食べないですし、最近はあなたの食事で満足しているんで大丈夫です、すぐそう言って揶揄ってくるんですから...」

「ごめんごめん、それにしても喜んでもらえたようでよかった。沢山失敗しちゃって花束っぽくはなくなっちゃったけど許してね」

「こんなに凄いものを貰ってとても幸せです...本当に、あなたには敵いませんね...。大好きです...」

またひとつ、幸せそうな彼女の笑顔が見れたことに幸福を感じながら取り留めのない甘雨との日々を送っていくのだった。

 

 

プリザーブドフラワーをプレゼントしてからというもの、職場で机に置いてある清心の花をうっとりした目で見つめることが増えたらしい甘雨の仕事量がさらに増えたとか増えないとか...そんな噂を耳にするのはまた別の話。




主人公くん...スペック高すぎでは?


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甘雨とエイプリルフールにゲームをするだけ(超短編)

思いついたので走り書き。雑です


 

 

 

「そういえば甘雨、今日は何の日か知ってる?」

日付が変わって4月1日。僕は甘雨と寝る前にのんびりとした時間を過ごしていた。

「うーん...日付変わりましたよね...?あ、エイプリルフール、ですか」

少し眠そうな声で甘雨が返事をしてくる。

「そうそう。誰が言い出したか分からないけど嘘をついても良い?みたいな日だよね」

「なんか細かいところでルールとかあったりしますよね、午前中に限定するとか」

彼女が寝転がりながら僕の方を見てくる。

「そこで、今から甘雨に嘘をつこうと思います。」

「...はい?それはどういう...」

「えー...おほん。最近料理開発に手詰まってて、かと言って他の国の料理を食べさせる訳にも...ってことなので文句言わないでね」

「え、はい?えっと...」

彼女が困惑した表情をする。

「さぁ、僕はなんて言いたかったでしょうか。」

「あー、あー...。そういう事ですか。えっと、他国のアイデアを採り入れた新しい料理を開発したので味わってね...ってことですか?」

「おー、ご名答。ってことでもうすぐお披露目出来そうだから期待しててね」

「え、本当ですか...!楽しみにしてます...!」

彼女が嬉しそうな笑顔をうかべる。

「さて、次は甘雨の番だよ」

「う、えっと...急に言われても...」

一瞬考えるような仕草をした後、喋り始める。

「わ、私は、あなたのことが...き、き...きら......ダメです...いくら嘘と言ってもさすがに言えません...」

そんな愛らしいことを言ってきた甘雨に僕は思わず抱きついてしまう。

「ごめんごめん、ほんの遊びのつもりだったんだけど...まあ嬉しいこと言ってくれたし僕的には満足だけど...」

甘雨が僕を抱きしめる手に力が入る。

「もう...いじわるはやめてください...私は嘘偽りなくあなたが大好きなんですから...」

「ごめんごめん...よしよし」

そう言うと僕は彼女の頭を優しく撫でる。

「それにしても、もっと簡単な嘘でも良かったのに」

「咄嗟に言われても困ります...」

「まあそうだね、ごめんね。まぁ...自分に素直な甘雨とっても可愛いなぁって思って思わず抱きしめちゃったけど」

僕がそう言うと彼女が急に黙り込む。

そしてしばらくした後、

「ふふっ...騙されましたね。わざとそうすれば抱きしめてくれるかなって思ったんです。」

そう言うと彼女が少し僕から離れて得意げな顔をしてくる。

「え、え?ほんとに??もしかしてさっきの全部演技だったの!?」

「まぁ...こっちが嘘なんですけどね...あなたに対して嘘の気持ちを言えなかったのは本当ですよ、あなたもまだまだ、ですね」

気づいたら僕の1枚上手を行ってた甘雨に対し、まだまだ勝てないななんてことを思いながら、抱きしめあったままお互いの体温とともに眠りにつくのだった...。

 




早くこれになりたい


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甘雨と昔のことを思い出すだけ

月見てたら書きたくなった


 

これは僕と甘雨が今みたいに一緒に住む前、まだ片想いだと思っていた頃の話。

 

 

 

「ねぇ、甘雨」

静かになった夜の璃月を歩きながら、煌々と輝く満月を背に甘雨に話しかける。

「はい?なんでしょう」

彼女が僕の方を見てくる。

「月が、綺麗だね」

恥ずかしくて目を合わせられずに遠くの方を見て言う。

「月...ですか?たしかに綺麗ですけどそれが何か?」

 

「あれ、思ってたのと違う」心の中の僕がそう呟いてくる。もしかして甘雨はこの言い回しを知らないのでは、だとしたらすごく恥ずかしい...。なんて賑やかな心の中と裏腹に落ち着いて返事をする。

「あの月に手が届いたらなぁ...」

違う、思ってた返事と違う。どうやら動揺が激しすぎてつい訳の分からない発言をしてしまった。甘雨に可哀想な人だと思われてしまう。

 

「ふふっ、あなたもそういうロマンチックなこと言うんですね。」

あたふたしている胸中を知ってか知らずか、楽しそうに彼女が笑いかけてくる。恥ずかしくて顔から火が出そうだ。

「いや、これはその...思わずでたつぶやきというか...一緒に居られるのが幸せだなって思って」

ぎこちない笑みを浮かべながらも何とか返事をする。

「そう、ですか..」

ぽしょりと呟く彼女の声は、困惑しているようだった。

 

き、気まずい...もうすぐ自宅についてお別れだというのにあれから一言も発せない...。どうしよう、気持ち悪いと思われたかも...。

相変わらず心の中で賑やかに騒いでいたら、自宅までたどり着いてしまった。

「えっと...甘雨...さん、」

あれからずっと無言だった彼女に話しかける。

「送ってくれてありがとう、本当は僕が送るべきなのは承知してるんだけど、、」

「その事は大丈夫ですよ、まだ私も残業がありますし、それに私の方が戦えますから。」

なんてかっこいいことを言ってくれる彼女に胸が高鳴る。

「それと...」

数瞬前とは裏腹に小さな声色で言葉を続けてくる。

「月には、今なら手が届く...と思います。それに、私にとっても月はずっと綺麗でしたから。」

月明かりに照らされて女神のような笑顔をうかべる彼女に対して、"見蕩れる"なんて言葉じゃ足りないほどに言葉を失ってしまう。

 

今なら手が届く...ってOKの返事だよな!?マジで?本当に?

一瞬の硬直の後、再び心の中が騒ぎ始める。

「何か反応してください...恥ずかしいです...」

甘雨の呟きにハッとした僕は返事をする。

「ごめん。めちゃくちゃ可愛くて見蕩れてた。それと、遠回しにせずに次はちゃんと言うね。甘雨、君のことが大好きです。真面目に働く姿も、眠そうにする姿も、幸せそうに食事をしている姿も全部全部好きです。良ければ僕とお付き合いしていただけませんか?」

 

「はい、私でよければ喜んで」

 

 

 

 

 

「なんてことがあったよなぁ」

「そうですね...最初急に月の話始めた時はなんのことかと思ったんですよ。その後にすぐ気づいた私を褒めて欲しいくらいです」

僕の横で並んで寝転んでいる甘雨と昔話に花を咲かせる。

「ほぼ無意識で呟いちゃってたからなぁ...まさかその日のうちに返事を貰えるとは思ってなかったし、変な人だと思われたらどうしようとか心の中は大パニックだったけどね」

「私もあの日に気持ちを伝えようって思ってましたから...あなたの家に着くまで緊張してて...」

「だから無言だったのか...まぁ、今となってはいい思い出だけどね」

「そうですね...こうやって今話してるのもいつかの思い出になるんでしょうか」

「僕にとっては毎日が大切な思い出だよ。どの一日も替えがたい大切なね」

 

 

窓の外で煌々と輝く月に見守られながら僕らの思い出はまたひとつ心に刻まれていく──




落ち着きないですね主人公君。デートの胸中とかこんなもんです。
私にとって月はずっと綺麗だったというのは私も昔からあなたのことが好きでしたって意味らしいですね。分からんわ


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甘雨に寝かしつけてもらうだけ

寝れない夜にちまちま書いてました


 

 

いつも通りの平穏な日々を送っていたある夜の事。

 

 

 

 

 

「甘雨...ごめん、起こしちゃった?」

寝付けずにゴロゴロしていたところで甘雨の目が覚めてしまったらしい。

「どうしました?」

眠そうな声で問いかけてくる。

「いや...なんか今日全然寝付けなくて」

「何か嫌なことでもあったんですか?」

心配そうに甘雨が僕の方へ近づいてくる。

「そういう訳でもないんだけど...ごめんね、甘雨は明日も仕事だろうし静かに目を瞑ってるよ」

「それならいいのですが...」

さっきよりも近い距離で再び眠り始めた彼女の横で瞼を閉じながら寝ようとする。

「...だめだ...寝れない...」

"良い体制"を見つけることが出来ずに悶々と5分か30分か分からない時間を過ごす。

「明日早く起きないといけないんだけどなぁ...」

頭の中で羊...もとい甘雨を数えようとしたものの結局寝れずどうしたものかと頭を悩ませる。

 

「あの...本当に大丈夫ですか?」

あれから体感では1時間ほど結局寝付けないまま過ごした頃に再び甘雨が話しかけてくる。

「ごめん、なんか全然寝れなくてさ...」

「うーん...分かりました、ここは私があなたのために一肌脱いであげます」

そういうや否や彼女が僕のことを抱きしめてくる。

「こうやって抱きしめて、背中をトントンしてあげます」

「か、甘雨、、これはさすがに恥ずかしっていうか...その...」

まるで子供を寝かしつけるかのように優しい強さで背中を叩いてくる。

「よーし...よーし、私がそばに居ますからね...」

抱きしめられた状態で耳元で囁かれる甘雨の甘い声が、僕を眠気へと誘ってくる。

「甘雨、ありがと...」

「いいんですよ、たまには甘えてくださいね」

耳元で感じる彼女の吐息にくすぐったさを感じながら、襲い来る眠気に身を任せる。

「男性の背中って、やっぱり大きいんですね...素敵です」

なんて蠱惑的な発言が聞こえた気もするが、彼女の腕の中ですっかり安心してしまった僕は漸くの眠りにつくことが出来るのだった。

 

 

翌朝。

「甘雨!寝坊なんて珍しいね、このままだと遅れちゃうよ!?」

おそらく僕のせいで、いつもより遅い時間に起きてきた甘雨に対し声をかける。

「起こしてくれてありがとうございます...急いで準備しても時間がなさそうなので...朝ごはんは申し訳ないですが食べずに行きますね」

「元はと言えば僕のせいだからね...軽く食べれそうなものを包んでおいたから行く時に渡すね。本当にごめん。」

「ありがとうございます、気にしないでください。あなたの温もりが心地よすぎて寝すぎてしまっただけですから...。」

 

大慌てで支度を済ませ、玄関で甘雨に包みを渡す。

「あなたが夜寝かせてくれなかったから寝坊しました、って言っておきますね」

外に出る直前、笑顔で僕にそう行ってくる。

「い、いやそれは誤解を、、事実だけど...」

「ふふっ、冗談です。行ってきますね」

甘雨が人差し指を立てて僕の口元に押し当て、眩しい笑顔で笑いかけてくる。

「い、行ってらっしゃい...」

初夏の陽射しよりも眩しい笑顔だった彼女に対し、完全に言葉を失ってしまった僕は、あざとすぎる甘雨もアリだな、なんて思いながら熱くなった顔を見られないようにいそいそと玄関のドアを閉めるのだった。

 




あざとい、でもそれが良い...。
メイドの日なんて概念もっと早く知ってれば書いてたのに...無念。


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甘雨に××されるだけ(ヤンデレ注意)

ヤンデレです。苦手な人は気をつけてね。


 

 

 

 

──やばい、やばいやばい。どうしてこうなった!?両手はベッドに縛り付けられてるし、ろくに身動きも取れない...この状況にやぶさかでは無いと思っている自分もいるけど...。

 

 

甘雨に監禁された。僕の心の中はもう大パニックを起こしている。朝いつも通りに起きて、甘雨が用意してくれた飲み物を飲んだあと急に眠くなって...気づいたら両手をベッドにしばりつけられていた...。前々からちょっと僕に対する独占欲が強いなとは思っていたけど、まさかこんなことになるなんて...。

 

 

 

「おや?目が覚めました?おはようございます」

 

いつも通りの笑顔のはずなのに、どこかいつもと違う迫力を感じる。

 

「あ、あぁ...おはよう甘雨」

 

外はもう暗いしどれだけの時間寝てたかは分からないけど、どうやら僕を放置して仕事にいってたみたいだ。ずっと座った状態で居たためか、腰やら尻やらが少々痛い。

 

「今日からあなたの身の回りのことは全部私がやりますから、安心してくださいね」

 

僕の顎を片手で持ち上げるように手を添え、彼女が目線を合わせてくる。状況が未だに理解できない僕は、「あぁ...」と返事をすることしか出来ないのだった。

 

 

 

「夕飯、食べさせてあげますね。」

料理をお盆に乗せ、そんなセリフとともに甘雨が部屋に入ってくる。

 

「はい、お口開けてください、あーん」

普段なら甘々とした状況に胸を躍らせるところだが、あいにく僕にそんな余裕はない。

 

「あ、ありがとう...美味しいね」

 

「ふふっ、あなたのために特別なもの、入れましたからね...」

 

目の前に料理の乗った匙を差し出しながら彼女が話す。

「けつえ──あっ、愛情とか」

 

わざとらしく"しまった"みたいな顔をしているがそんなことよりも聞き捨てならない言葉が聞こえた。

 

「いま、血液って言おうとしたよね?本当に入ってないよね??」

「ふふっ」

 

目が、全然目が笑っていない。せっかく作ってくれたものだし、食べないわけにもいかず、一体何が入ってるのか分からない料理を食べさせてもらう。

 

ふと、匙でも彼女の顔でもなく、手元に目が移る。

 

「手、怪我してるけど大丈夫?消毒とか…」

「あぁ、これですか?愛情の証ですよ、料理を作ったときに少し、ね」

 

愛おしそうに自分の手の傷を撫でる甘雨に対し、寒気が走る。

 

「おや?顔色が悪いですが大丈夫ですか?体調悪かったら言ってくださいね」

「いや、体調というか手は痛いけど」

「手、ですか?それは我慢してくださいね。」

「ソウデスカ…」

 

 

食器を片付けたらしい甘雨が部屋に戻ってくる。

 

「さて、私がどうしてこんなことしたか気になりますよね?」

足を伸ばして座るような状態の僕の膝の上に彼女が馬乗りになってくる。

 

「も、もしかして昨日の…」

「もしかして、見られてないと思ってました?あの女性の方は誰なんですか?」

 

ハイライトの消えた目で迫ってくる。

「以前少し料理を教えたことがあって…それでお礼に食事でもって言われて…本当に何もなかったよ、信じて甘雨」

 

すると、唇の端を少しあげた甘雨が鼻がふれあいそうな距離まで近づき、僕の頬を両手で挟み込んでくる。

 

「あなたが私のこと大好きなのは知っています、でもこれはお仕置きです。覚悟してくださいね?」

 

その言葉を聞いた瞬間、反射的に目を瞑ってしまう。

 

「んむっ!?…ちゅ…んっ…ちょ、甘雨、まっ…んんっ…」

今までの啄むようなキスと比べ物にならない激しいキスをしてくる。

 

数十秒、いや、数分経っただろうか。一方的に口内を蹂躙された僕の唇から甘雨の唇が離れる。扇状的な唾液のラインが今までの激しい行為を表すようだった。

 

「これで、わかりましたか?あなたには私だけがいればいいんです。」

「ごめん、僕が悪かったから、この手を解いてくれないか?」

「まだ、反省できてないようですね?」

 

すると今度は僕の首元に甘雨が近づいてくる

刺すような痛みが数回僕の首に走る。

 

「あなたが私のものだっていう印、たくさんつけておきました。ふふっ、これくらいにしておいてあげますね」

そう言って僕の手首を解いてくる。

両手が自由になった僕は、甘雨に抱きつく。

 

「えっ、あの、ちょっと」

お返しと言わんばかりに彼女の首元に吸い付く。

 

「んんっ…ちょっと、くすぐったいです」

「これ、今のお返しね。僕のだっていう印、ちゃんと付けておいたから」

 

首元から唇を離し、目を合わせる。

 

「当たり前じゃないですか。他の人に触らせることすらさせませんよ、あなたのための私の身体なんですから。」

 

 

やっぱり甘雨って独占欲がかなり強いのでは...。なんて心では思っていながらも彼女のハイライトの消えた瞳から目が離せない僕がいるのだった──。

 




我慢できなかったッ...溢れる妄想が我慢できなかったんだ...ッッ


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甘雨とキスをするだけ

そろそろR15タグつけるべきでは?



 

 

 

「そういえば今日はキスの日...らしいです」

甘雨と朝食を食べていたある朝のこと。突然甘雨がそんなことを言い出した。

 

「へぇ、そうなんだ...キスの日、ねぇ」

「なので...その、後でひとつお願いしてもいいですか?」

 

俯きがちに言ってくる彼女に、大方内容を察しながらも頷く。

 

 

「今日も朝から美味しいご飯、ごちそうさまです。それで、その...」

食事が終わってすぐに甘雨が話しかけてくる。

「き、今日は...沢山、キスをして欲しい...です」

頬を赤らめながらも確固たる意志を持って僕に向かって願いをぶつけてくる。

 

「わかったよ、とりあえずこっち、来て」

僕の向かいに座ってた甘雨を隣に呼び寄せる。そしておもむろに立ち上がり、彼女のほうを見る。

「甘雨、目を瞑って」

「は、はいっ...」

 

緊張したように僕の前で目をぎゅっと瞑っている彼女の顎に軽く手を添える。華奢な方がビクッと軽く跳ねる。

そしてそんな彼女に心奪われた僕はだんだんと近づいていき──

 

 

ふーっ、と甘雨の耳元に息を吹きかける。

「ひゃっ!?も、もう、何ですか!」

可愛らしい声を上げた後、鋭い目線で見上げてくる。

「もう、あなたなんて知りません、仕事いってきます。」

 

ぷいっと僕に背中を向け、食器を片付け始めた甘雨を呼び止める。

「ごめんって、なんかいつもやられっぱなしだからたまには反撃しようかとおもって、、」

「もう...キスに期待してたのに...」

 

すねたように顔を俯かせる様子に罪悪感を覚えた僕はお詫びも込めて提案をする。

「明日もたくさんキスしてあげるから、許して、ね?」

それを聞いた甘雨が嬉しそうに顔を上げ、にこやかに返事をしてくる。

「ふふっ、そこまで言うなら許してあげます。」

 

あれ、今のもしかして演技だったのでは、、なんてことを考えてる僕に対し、甘雨が目を瞑ってこちらを見上げてくる。キスをしろ、ということらしい。

「仰せのままに」

さっきと同じように、しかししっかりと唇に向け軽いキスを落とす。

「ふふっ、満足です。仕事、行ってきますね。」

花が咲くような愛らしい笑みを浮かべ、彼女がキッチンを後にする。

 

 

荷物をもって外まで見送る。

「はい、いってらっしゃい。頑張ってね、今日は仕事といっても午前中は蛍さんの手伝いなんでしょ?」

「そうですね、どうやら私の力が必要みたいで...」

最近蛍さんは僕に気を使ってかめったに甘雨に声をかけないが、どうやら今回は難敵らしい。

「じゃぁ猶更気を付けてね。」

「では、改めて行ってきますね。」

「あ、ちょっとまって」

そういうと僕は彼女に近づき、キスをする。

「はい、おまじないね。行ってらっしゃい」

「は、はい...行ってきます...」

すたすたと足早に歩いていく彼女の耳がほんのり赤くなってるのを僕は見逃さなかった。

 

 

 

「ただいま戻りました。」

夕刻、甘雨が帰ってくる。

その声が聞こえた僕は急ぎ足で玄関まで行き、何も言わずにキスをする。

「おかえり、甘雨」

「えっ、あ、はい、ただいま、です」

ほんのり赤みが差した頬で僕に向け微笑んでくる。

「可愛い...」

「もう、またそういうこといって...」

どうやら思ったことが口から出てしまったみたいだ。

 

少し恥ずかしくなった僕は、甘雨の荷物を床に置き、彼女を抱きしめようとする。

「あ、あの...最近暑くなってきたうえに午前中は外で戦ってたので汗かいてしまったんですけど...」

身じろぎして抵抗してくるが、無視して抱きしめる。

「大丈夫、僕は気にしないよ」

「私が気にするんです...」

と言いつつも僕の背中に手をまわしてくる。

 

「無事に帰ってきてくれてよかった」

彼女の耳元でぽしょりとつぶやく。

「心配してたんですか?大丈夫です、どこにも行きませんよ」

「まぁ、そうだけどさ...と、とにかく夕飯食べよう夕飯」

抱きしめる前よりも恥ずかしくなった僕は急いでリビングへと戻り、夕飯を食卓に並べるのだった。

 

 

夜、布団に入って甘雨から今日のことを聞く。

「層岩巨淵の奥深くまで行ってたのか...そこで蛇みたいな敵と戦った、と。昼頃に街で蛍さんと会ったし本当に午前中に終わったんだ...すごいな」

「えぇ、とはいえマッピングも終わってましたし、ワープして戦うだけだったので」

「あぁ、あの不思議な力か...」

 

「そんなことより、昼に蛍さんと会ったってどういうことですか」

この前みたいに若干ハイライトの消えた目で甘雨が聞いてくる。

「いやいや、街中ですれ違ったときに少ししゃべっただけだよ。甘雨さんが今日いつもより張り切ってたけどなにかあったのかって聞かれたんだけど」

「あぁ...えっと、それはですね」

もぞもぞと僕のほうに近づき、こう言ってくる。

「今日頑張ればご褒美にキスをおねだりしようと思いまして...」

そんな可愛らしい理由に思わず頬が緩む。

 

「甘雨、おいで」

彼女のことを抱きしめ、キスをする。

「んっ...ちゅ...はむっ、んんっ...」

お互いを強く求めあうような深いキスを何度も繰り返す。

 

「あの、朝に言ってた明日もたくさんキスしてくれるっていう約束、変えてもいいですか?」

ゼロ距離で見つめあいながら、甘雨が言ってくる。

「ん?別にいいし、なんならお願いとかじゃなくても毎日キスしたいけど」

「ま、まぁキスのことは置いておいてですね...その...あなたと一つになりたい、で...んんっ」

言い切る前に彼女の口を塞ぐ。先ほどのキスよりも長く、深く求めあい...

月明かりが僕らの影を映し出し、その影は何度も身体を重ねあい...お互いが眠りにつくのは空が白んできたころだった。

 

 

 




感想や評価、読んでくださる皆様いつもありがとうございます!


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甘雨と泡沫夢幻の夢

6月の第1日曜日はプロポーズの日らしいので、この2人の少し先のお話を...。


 

 

 

 

 

 

「甘雨...甘雨さん、僕と結婚してください」

新月軒で食事を終えた後に、緊張したような震え声の彼から紡ぎ出された言葉は、私が長らく待ち望んだ一言でした。

 

「......っ!よ、喜んで」

歓喜のあまり涙が出そうな私がなんとか言葉を繋ぎ、OKの返事を返します。

そして愛しの彼から差し出される指輪。時期的に何となく予想はしてましたけど、本当にプロポーズされるとは思いませんでした。

 

彼に告白されたのは、月が綺麗な日の事だったのを今でも覚えています。一緒に食事をした帰りに、月の話をして、その去り際に──。

 

そんな思い出が頭の中を一瞬で駆け回るほど、幸せに包まれてしまいます。夢見心地な私に向かって、彼が話しかけてきます。

 

「甘雨が僕のこと大好きって信じてたし、でも少し怖かったんだよね」

そんな可愛らしい彼の言葉に思わずにやけそうになってしまいます。

 

「ふふ、大丈夫ですよ、私はどこにも行きません」

私の身体は彼だけのものです。彼も私だけのもの...その照れたような微笑みも、料理をしている真剣な横顔も、全部私が独占しています。

 

彼が渡してくれた指輪を見て、ニヤニヤしている私に対して、彼が話しかけてきます。

 

「気に入ってくれたみたいでよかったよ。甘雨の誕生石であるターコイズを選んだんだ。石言葉は成功、繁栄。璃月を支えてきた甘雨にピッタリかなって」

少し得意げに話してくる可愛らしい彼を見つつ、その言葉に耳を傾けます。

 

「私、肌身離さずつけてます。本当に嬉しいです。」

幸せに包まれていた私ですが、気づいたら結婚式の日になっていました。

 

私としたことが、ここ数日の記憶が全くありません...。他の方に何も言われなかったので問題はなかったと思うんですけど...。

神父さん...煙緋さん?、よく見たら周りは知ってる人だらけですし、留雲借風真君も出席されています...。

 

「それでは、誓いのキスを...」

 

え、結婚式ってこんなハイテンポでしたっけ!?あれ???

「甘雨、キスするね」

緊張した顔の彼が近づいてきて、私の唇を...

 

 

 

 

 

 

「─よ、──風邪ひくよ、甘雨そんなとこで寝てたら...って、起きたねおはよう」

「あ、おはようございます...あれ、キス、は?」

 

式場に居たはずのにいつの間にか家にいます...左手に指輪が...ない、落とした、、?

 

「あの、私の指輪、見てませんか?」

私の問いかけに対し、彼が頭に?を浮かべたような顔をしてきます。

「指輪?いつの間につけてたの?」

「え、結婚指輪...なんですけど」

そう言うと彼はとても泣きそうな顔をして言ってきます。

「え、甘雨...誰と、、結婚」

「もちろん、あなたとですけど...もしかして、夢...」

その言葉を聞いた彼は微笑みながら私に言ってきます。

 

「ふーん、僕と結婚する夢見てたんだ?」

「う、だって...結婚の話最近たくさん耳に入って...それで...あなたとの結婚生活を考えてることが多くて...」

夢だったことに落胆してしまいますが、夢の中よりもかっこいい彼にドキドキしてしまいます。

 

 

 

どうやら僕と結婚した夢を見ていたらしい寝起きの甘雨に対し、返事をする。

「僕との結婚生活、ね...」

一瞬彼女の口から結婚指輪の話が出た時にはドキっとしたが、どうやらそんな可愛らしい夢を見ていたらしい。

「前から言っていたけど、今日の夕飯は新月軒に予約とってあるから準備しておいてね」

「はい、もう準備はできていますよ」

 

 

「いやー、美味しかったね。たまには外食ってのもいいね。」

美味しい料理に舌鼓を打った後、のんびりした時間を過ごす。

「確かに美味しかったですけど、やっぱりあなたの料理の方が美味しいと思います」

「へぇ、嬉しいこと言ってくれるね。ありがと」

 

食べ終わった食器を下げてもらった後、背筋を伸ばして甘雨と向い合う。

「えっと…甘雨…甘雨さん、僕と結婚してください。」

そう言って僕はプロポーズの言葉と共に結婚指輪を渡そうとする。

 

感極まったように目を潤ませ、口を両手で覆い隠した甘雨から出てきた言葉は

「……っ!よ、喜んで」

 

 

僕たちの将来を約束する、そんな返事だった。




泡沫夢幻は儚い、とかそういう意味です。
でもこれ二重言葉では...?(今更)


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甘雨と夏の夜を堪能するだけ

短いです


 

 

 

 

いつの間にか季節は夏に移り変わり、昼間は日陰を歩くのも億劫になってきた頃の話。

 

僕はいつも通り夕方に帰ってきた甘雨を玄関で出迎える。

「おかえり、甘雨。今日も暑かったね」

「はい、ただいまです。屋内で仕事してても汗ばむくらいには暑かったですね。」

汗を拭く仕草が色っぽく、甘雨の顔から思わず目をそらす。

 

 

ふと、甘雨が見慣れないものを持っていることに気づく。

「あれ、その持ってるやつ何?」

「あぁ、これですか?ライアーっていうモンドの吟遊詩人が使ってる楽器で、蛍さんから借りてきちゃいました。」

自慢げにみせてくる甘雨に癒されつつ、返事をする。

「とりあえず夕飯食べてから詳しく話を聞かせてよ。」

「そうですね、私もお腹すいてますし...」

 

 

夕飯を食べ終わったあと、甘雨に話しかける。

「ライアー、とっても興味深いけど、なんで借りてきたの?」

「蛍さんが演奏してるのを聞いてとても音色が綺麗だったのであなたにも聞いて欲しくて...」

「へえ、そこまで言うなら楽しみにしておくよ」

「ふふ、寝る時にきかせてあげますね。練習してきたので」

 

 

夜の用事もあらかた片付け終わり、あとは寝るだけになった頃、満を持して甘雨の演奏を堪能することになった。

「えっと、なんで寝るところで正座してるんですか?」

「演奏してくれるって言うから、しっかり聞かないと、と思って...」

「逆に演奏しづらいのでやめてください...」

恥ずかしそうに僕に対し横になるように言ってくる。

 

「あれ、部屋の明かりも消しちゃうの?」

「はい、教えて貰った曲が眠りやすくなるような曲なので、あなたが寝てもいいように」

「甘いよ甘雨、ちゃんと演奏を最後まで聴いてあげるからね」

「なら私は、あなたを寝かせてあげます」

何故か勝負の様相を呈してきたが、僕はいそいそと横になる。

 

月明かりがライアーを持つ甘雨を照らし、まるで天女のように神々しく、美しい彼女に視線が奪われる。

「ふふっ、ちょっと緊張しますね」

あんなに美しい人が僕に笑いかけてくれていると思うと、嬉しさが込み上げてくる。

「では...」

 

彼女が演奏を始めると、ライアーの優しい音が響き渡る。

上手いなぁと思いながら聞いていた矢先、甘雨が口ずさみ始める。

 

ねむれ ねむれ 愛しい人よ

 

優しい音色と声色に、僕は眠気に抗えるはずもなく...

 

 

「っと、寝てしまいましたか。ふふっ、練習した甲斐がありました。続きはまた明日、きかせてあげますね」

 

幸せそうに微笑む甘雨が僕の隣に入り込み、すぐに眠りにつく。窓の外では、虫たちが優しい音色で鳴いていた。

 




モンハンのせいで指が逝ってしまってまともに文字が打てない...
音ゲーイベントの時に思いついたネタなので寝かせすぎた感。


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甘雨と一緒に料理をするだけ

PU記念です。ってことにしておきます。


 

 

 

秋、といえば真っ先に思い浮かぶのは食だと思う。

かくいう僕も食いしん坊な甘雨のおかげ?もあって真っ先に食を思い浮かべてしまう。そんな秋の一幕。

 

「甘雨は今日休みなんだっけ?」

残暑も落ち着きつつある初秋のある日。

「そうですね、蛍さんのスメール探索が予想以上に早く一息ついたらしいので、今日は何も予定がないですね」

いつもより遅い朝食を食べつつ、そんな他愛もない話をしていた。

 

「うーん、じゃぁ今日は何かしようか」

「何か、ですか?」

可愛らしく首を傾げる甘雨に見惚れつつ返事をする。

「例えば、一緒にお料理とかどう?」

「一緒に…料理、一緒に…とても良いと思います!」

目を爛々とさせながら顔をこちらに寄せるように返事をしてくる。

「可愛い...あ、いや、じゃぁ買い出しからだね」

「ふふっ、聞こえてますよ」

 

 

「そういえば甘雨って秋といえば真っ先に何を連想する?読書とか、芸術とかあるけど」

買い出しを終え、帰宅中に徐に甘雨に話しかける。

「うーん、職欲の秋、でしょうか」

僅かの間顎に手を当て可愛らしく考えた後に返事がくる

「それ、僕が思ってる“しょく”と違うよね?」

笑い半分で彼女の方を見る。

「まぁ、少し前までの私はそう答えたと思いますね」

「え、じゃあ今は?」

「それはもちろん、食べる方の“しょく”です!あなたの料理はどれも最高で…うっかり食べ過ぎてしまうこともしばしばあるので…」

彼女の発言に思った以上に照れてしまった僕は、そそくさと彼女の手を引っ張りながら璃月の街を歩くことしかできないのだった。

そんな僕は当然手を引っ張られて歩く甘雨の顔がうっすら紅潮しているのに気づくわけもなく、後日町の人に揶揄われたのはまた別の話。

 

 

勢いに任せに昼間の街で手を繋いで歩いてきたという事実を忘れたまま、帰宅後すぐに料理へと取り掛かる。作るのはもちろん清心を用いたオリジナルの四方平和だ。

「うぅ…この清心、とっても美味しそうです…」

「いや、それ盛り付けるやつだからね、甘雨。つまみ食いしちゃダメだよ」

「分かってますけど...美味しそう...です」

少しでも目を離すとつまみ食いをしそうな甘雨とともに調理を開始する。

 

「じゃぁ甘雨は人参を切ってくれる?」

「切り終わってます!」

ところが調理を始めた瞬間、彼女の高い秘書能力のなせる技なのか機敏に動く甘雨に対し、普段料理をしている僕が置いていかれそうになっていた。

「え、これ僕いらなくない?」

「何を言ってるんです?あなたがいないとこんなにしっかり動けませんよ、真横で料理しているところをたくさん見るためにすぐに作業を終わらせているんです」

「な、なるほど?」

今日何回目かわからない彼女の勢いに押し切られる形でとりあえず納得した僕は、普段調理している時より近くにいる愛しい人の存在に緊張しながらも調理を進めていた。

 

「痛っ」

ふわふわした気持ちで調理をしていたためか、蓮の実を切っているときにうっかり自分の指を切ってしまう。

「だ、大丈夫ですか!?すいません、私が近くで見ていたせいですよね…」

自分では大したことない傷だと思っていたところに、自分のせいで怪我をしてしまったと思ったのか、慌てた口調の甘雨が僕の手を掴んで傷をまじまじと見てくる。

「結構血が出てるじゃないですか…」

「大丈夫大丈夫、ちょっと消毒すれば治るよ」

「怪我した時は…えいっ」

突然、彼女が僕の指を咥えてくる。

「!?!?!?」

僕が声にならない声をあげているのを気にせずにさらに舌を這わせてくる。

「はいっ、これで消毒できましたよ」

得意げに言ってくる彼女に対し、疑問を口にする。

「それ、どこで身につけた知識?」

「留雲借風真君から聞きました!こうすると消毒になるって」

「あの鶴仙人…これ僕以外にやっちゃダメだからね?」

おばあちゃんの知恵袋じゃないんだから、と頭を抱えつつ調理に戻る。

「大丈夫ですよ、女性の場合は絆創膏を巻いて終わりですし、あなた以外の男性には触りたくもないので」

調理の手を止めゆっくりと彼女の方を見る。よかった、目のハイライトは消えてない。

 

「よし、完成」

紆余曲折ありつつ、無事に完成したオリジナル四方平和を食べ始める。

「ん、今日はいつもより美味しいな、やっぱり甘雨が手伝ってくれたから…」

「いつもより美味しいですね、それにうっすらあなたの血の味もしてなおさら…」

彼女の発言に咽せかける。

「冗談ですよ、冗談。ほら、水飲んで落ち着いてください」

結局彼女の揶揄いには勝てないな…と思いつつ食事を堪能するのだった。




完凸、成し遂げました
やっとガチャ禁から解放される...


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甘雨とお月見するだけ

満月が綺麗すぎるので書いてしまいました。


 

 

 

 

「はい、これお団子。初めてだったからちょっと見た目悪いけど」

「わあ、ありがとうございます。さすがですね」

「夜にこうやってゆっくり月を眺めるのもいいね」

「"お月見"をあなたと出来るなんて最高に幸せです」

月明かりの下、空を見上げながらもふたりの影はぴったりと寄り添っていた。

 

 

 

僕がお月見のことを蛍さんから聞いたのはつい最近のこと。どうやら稲妻にある団子というスイーツを食べながらのんびりと月を見るらしいのだが...。

 

「ただいま、戻りました」

夜を半袖で出歩くのもギリギリになってきた頃、蛍さんから聞いたお月見を甘雨としたいと思いながら、帰ってきたばかりの彼女に話しかける。

「おかえり、甘雨。今日もお疲れ様」

「はい、ありがとうございます」

そう言って微笑んでくる彼女を無意識に抱きしめる。

「えっと...何か、ありました?」

耳元で囁かれる愛しい声に脳が痺れる。無意識に抱き締める力が強くなる。

「大丈夫、ですか?」

心配そうな彼女の声に焦った僕は返事をする。

「ああ、ごめんごめん。完全に無意識だった。いやー、今日も可愛いね本当に」

「もう、心配したんですから」

 

なんていつもと変わらない他愛のない掛け合いをしながら食事の席に着く。

「今日は夕飯を少なめにしてあります。」

「な、なんでですか...」

まるで世界の終わりかのような絶望的な表情を浮かべる甘雨に対し、言葉を続ける。

「夕飯の後でデザートが...あります」

「デザート...ですか...ふふ...それは......とても楽しみです!」

先程の表情とは一変、満面の笑み...というかニヤケ顔に変わった彼女と共に夕飯を食べ始める。

 

「そういえばこの前ちょろっと話してたけど、どうして蛍さんのスメールの探索が予想より早く終わったんだろうね」

不意に疑問に思ったことを甘雨に問いかける。10日ほど探索の手伝いで帰りが遅くなると思いますと言っていた甘雨が3日も早く帰ってきたとなっては逆に心配してしまう。

「あぁ、それは"森の精霊さん"に手伝ってもらったからだって言ってましたよ。あまり私の出番がなかったので詳しくはわからないんですが...」

「へぇ...世の中不思議なこともあるもんだなぁ。パイモンちゃんも不思議だけど」

「そういえば確かにそうですね...」

 

いつもより少なめの食事を食べ終わり、食器洗いをしていると、甘雨が隣にやってくる。

「あれ、どうしたの?」

「ふふ、私もお手伝いします」

「最近やけに手伝ってくれるけどどうしたの?」

「一緒に並んで料理をしてから、こうやってあなたの隣で同じ作業をするのいいなぁって思いまして...」

そんな嬉しい発言に動揺してしまった僕はお皿を落としかける。

「おっ...と、危ない危ない」

「もう、気をつけてくださいね」

彼女が心配するような表情で僕の方を見てくる。

「いやぁ、あまりにも嬉しいこと言ってくれるからちょっとドキッとしちゃって...」

「落としたお皿で手を切っても、もう指は舐めませんからね?」

 

「よし、じゃあデザートを食べるんだけど、今夜は満月だしどうせなら縁側行こっか」

「満月は何回も来るのにどうしてまた?」

「蛍さんから聞いたんだけど、稲妻では夏が過ぎた満月の日に月を見ながらお団子っていうお菓子を食べるらしいんだ」

「へぇ...確かにそんな話を聞いたことあるような...ないような...」

 

 

「それじゃ、お団子持ってくるからちょっと待っててね」

そう言い残し、お団子を取りに戻る。ちょっと不恰好だけど、初めてにしては美味しそうにできた気がする。

「はい、これお団子。初めてだったからちょっと見た目悪いけど。」

「わあ、ありがとうございます。さすがですね」

甘雨の隣に腰掛け、のんびりと月を見ながら食べ始める。

「お、思ったより美味しくできてるな。ただお砂糖入れてないからすごく優しい味になってるけど」

「あなたらしくてとても良い味だと思います、とても好きな味ですよ」

 

「夜にこうやってゆっくり月を眺めるのもいいね」

「"お月見"をあなたと出来るなんて最高に幸せです」

「月が綺麗ですね、なんて言ったの懐かしいなぁ」

彼女に告白した月夜の記憶が蘇る。

「あの時よりずっとずっと、あなたのことが好きです」

そんな嬉しいことを言ってくれる彼女の手を、空いた方の手で握りしめる。

「僕も、毎日どんどん好きになってる。いつもありがとう、甘雨。大好きだよ」

「こちらこそ、いつも美味しい料理とか他にもいろいろ、ありがとうございます。」

 

お互いに手を握りしめたまま、いつまでも月を見上げているのだった。




読んでいただきありがとうございます!


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甘雨がメガネをかけるだけ

原神2周年おめでとうございます!
そんなことよりメガネ甘雨可愛いがすぎる...ありがとう公式...


 

 

 

 

 

「あれ、甘雨、久しぶりのメガネ姿だね」

ある朝、いつも通り起きてきた甘雨をキッチンから覗き見ると、1年くらい前に僕が渡した伊達メガネをかけていた。

「はい、昨日机の掃除してたら出てきて、たまにはかけてるのもいいかな、って思いまして」

「なるほどね...とっても似合ってるよ、朝からありがとう」

すると甘雨がキッチンまで来て僕の方に近づいてくる。

「どうしたの?」

何かを期待するような表情で僕の方を見上げてくる。

「か...可愛いって思うなら、頭撫でてください」

珍しく僕におねだりをしてくる彼女に心臓が跳ねる。

 

 

ゆっくり彼女の頭に手を乗せ、頭を撫でる。

彼女の美しい青髪からふんわりと甘い香りが漂ってくる。

「ん...ふふ、幸せです」

気持ちよさそうに目を細め、微笑んでくる。

「朝から可愛いね...甘雨」

たまらず、彼女のことを抱きしめる。

「あの、少しいいですか?」

耳元で甘雨が囁いてくる。

「鍋から煙出てますよ」

「え"」

どうやら朝食は1品少なくなりそうだ。

 

 

「そういえばさっきの事だけど、おねだりしてくるなんて珍しいね」

いつもより少なめの朝食を食べながら、雑談に花を咲かせる。

「たまには積極的になってみたら?って言われたので...あんまり自信ないんですけど...」

「まあ僕はそんなに気にしてないけど、甘雨のことが好きって気持ちは変わらないし」

「そ、それは分かっています...けど」

少し顔を赤らめ下を向きながら、小さい声でこう聞こえてくる。

「私もあなたのことが好きっていうのをもっとしっかりと伝えたくて...」

その不意打ち発言に思わず照れてしまった僕も下を向いてしまい、なんとも言えない沈黙がその場を支配する。

「と、とにかく、恥ずかしいからそんなに無理しなくても良いからね?」

 

 

その日の夜。

「あれ、甘雨またメガネしてくれてるの?」

「可愛いって言ってくれるので...でも職場だと疑問に思われそうなのであなたの前でだけ、ですけどね」

「ありがとう、可愛いよ甘雨」

恥ずかしいのか、甘雨がゆっくりと僕から目をそらす

「何回言われても、慣れないです...」

 

「そうそう、そういえば言って欲しいセリフ?があるんだけど」

「セリフ、ですか?」

おもむろに話題を切り出す。

「メガネかけた状態で「お触り禁止!」って言って欲しい」

少し呆れたような顔をした後、

「もう、仕方ないですね...ん、んんっ...」

軽く咳払いをし、凛々しい表情で望んだセリフを言ってくれる。

「お触り禁止っ!」

 

「なんか...メガネの状態で言われるとまた違った雰囲気になるね...触っていい?」

あまりの感動に思わずセクハラ発言をしてしまう。

「まぁ...あなたになら...良いですよ?」

なんてことを上目遣いで言ってくる。

「甘雨!!好き!!!」

思わず抱きついてしまって僕に対し、甘雨が僕の頭を撫でながらこう行ってくる。

「私も大好きですよ。ふふっ」

 

どうやら眼鏡っ娘甘雨に僕は勝てないようだ。

 




これからも本作品をよろしくお願いします。
感想、とても励みになります。


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甘雨と夜空を見上げるだけ

完凸してからモチベが無になってしまった


 

 

 

 

「今夜は流星群が見えるらしいです」

澄み渡った星空が冬の訪れを表すようなある日、甘雨がそんなことを言ってきた。

「へぇ、突然またどうしてそんなことを?」

「蛍さんのお知り合いの占星術師がそんな話をしてたんです」

ここのところ忙しく空を見上げる余裕もなかったなと思い甘雨にこんな提案をする。

「じゃあ、今夜、というか寝る前は一緒に夜空を見上げようか」

「ふふ、大賛成です」

楽しみと言わんばかりの彼女の笑顔はどの季節も可愛いなと思いつつ夜を心待ちにするのだった。

 

 

寝る前、風邪をひかないようにとひとつの毛布にくるまりながら2人で夜空を見上げる。

「この星空は甘雨が生まれるずっと前から変わらないのかなって思うと不思議だよね」

「私に年齢の話しないでください...とはいえたしかに不思議ですね」

ぼーっと見上げながら交わす二言三言が静かな夜に響き渡る。

すると突然、

「あ!見えました!」

いつもより高いトーンの甘雨の声が左からする。

「え、嘘、見えなかったんだけど」

「ふふっ、流れ星競走は私の先制ですね」

いつの間にか始まってたらしい競走に出遅れてしまった僕はひとつも見逃すまいと先程よりも目を開きながら空を見上げる。

 

「お、見えた!ちょっと長かったから1.5ポイントにしていい?」

「ダメですよ、1は1です」

そんなじゃれあいをしながら5分ほどだった後、そういえば、と甘雨が話を始める。

「流れ星が流れてる間にお願いごとを3回心の中で言うとその願いが叶うかもしれないって占星術師の方が言ってましたよ」

「へぇ、面白いね。お願い事かぁ...次チャレンジしてみようかな」

3回、となると短めのお願いが良いのかな、なんて考えているとタイミングよく流れ星が見える。

 

「いや、間に合わないよ3回は」

「私も間に合いませんでした...そういえばその占星術師の方は金欠らしくて"モラくれモラくれモラくれ"って言っているらしいですよ」

そんな裏話を聴きながらふと思ったことを話す。

「星を見るイベントしたらお金入ると思うんだけどな...凝光様に提案してみたら?」

「む、確かにいいかもしれないです...帝君がこの国を作る前から星空があるって考えるとまた考え方も変わるかもしれないですし」

そんな真面目な話もしつつ、視線は相変わらず上を見ている。

 

すると、一際長い流れ星が流れる。今しかない!そんなことを思いながら願い事を唱える。

「間に合った!」

「間に合いました!」

2人ほぼ同時にそんなことを言うので顔を合わせて笑ってしまう。

「甘雨は何をお願いしたの?」

「え、それ聞きます...?そういうあなたの方から教えてください」

「そりゃもう、"ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒"ってお願いしたよ」

そういうと、甘雨の方から恥ずかしさを隠すようなくぐもった声が聞こえてくる。

「んぅ...不意打ちは...ズルいです...」

どうやら照れたらしい彼女が少しだけ僕の腕を握ってくる。

「ほら、甘雨はなにをお願いしたのか教えてよ」

「えっと..."一緒にいたい一緒にいたい一緒にいたい"ってお願いしました...」

そんな愛くるしい発言に心臓を鷲掴みにされた僕はどうにかくぐもった声で返事をする。

「な...なるほど、ちょっと甘雨の気持ちがわかったかも...これは恥ずかしいね」

照れ隠しのために彼女の手を握り、熱くなった頬を冷やすように空を見上げる。

 

「お互いの願いを叶えるために、ずっと一緒に居なくちゃね」

「もちろん、私はどこにも行きませんしあなたの事を離しませんよ?」

 

 

余談だが、流れ星競走は2ポイント差で甘雨の勝ちとなり、翌日の夕飯が少しだけ豪華になるのだった。




1ヶ月に1話を最低ノルマとしたい...。
皆様いつもありがとうございます。


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甘雨と推しの話をするだけ

セーフ...なのか?


 

 

 

 

「甘雨って"推し"って言う言葉知ってる?」

おもむろに甘雨に話しかける。

「推し...ですか?なにかをこう...ぐっ...と?」

「いや、それは"押し"ね。推しってのは...人とかをこう、めちゃくちゃ好きだー!ってなることなんだけど」

実はよくわかってない僕も曖昧な表現しか出来ない。

「え...それって愛とか好意とかと何が違うんです?」

「う...確かに。うーん...聞いた話だけど雲先生のファンの人が雲先生を推してるぜ!って言ってたし、そういうことを言うのかも?」

港にいたおっちゃん達から小耳に挟んだような話を彼女に話す。

「うーん...確かにそういう文化的なものを表現する方は素晴らしいと思いますけど...そういう感情を人に対して感じることはあまりないですね」

「まあそれもそうか、長いこと生きてれば文化って移り変わるし、見慣れたものになってしまうかもだしね」

ふーむ...たしかに感覚が違うのかなと思いつつ会話が途切れかける。

 

「あ!でもそういうことなら居ますよ、私の推し」

「え、本当?どんな人?」

推しが居ないという発言に納得していた僕は意表を突かれる。

「あなたです。」

「え?」

「あ な た です」

「いや聞こえてるし、それに僕は一般人なんだけど」

「料理中のあなたとか、真剣な表情で何かを考えるあなたとか、時々私の顔を見て恥ずかしそうにするあなたとか...全部めちゃくちゃ好きだー!ってなりますよ?」

突然の甘い発言に思わず目を逸らしてしまう。

「いや...そういうことじゃないと...思うんだけど」

「そうやって目を逸らしちゃうところとかも好きですよ」

「いや...だからあの...」

たじたじになる僕を見て更に火がついたのか、僕を褒め殺しにしようとしてくる。

「おかえりって私を迎えてくれるときも、おやすみって言ってくれるときも、全部好きですよ?」

さすがに恥ずかしくなった僕は話を切り上げようとする。

「あの...わかったから、その辺で...ね?」

「ダメ、です。この話を持ち出したのはあなたからなんですから。」

そう言ってさらに僕に抱きついてくる。

「んー...たまにはこうやって私から抱きついてすりすりするのもアリですね...」

彼女の甘い囁きと香りに包まれながら恥ずかしさよりも幸せが僕を包む。

「ふふ、"推し"って素晴らしいですね...ふふ」

楽しげに微笑む彼女を見て、まあこういうところが甘雨が僕の推しである所以なんだよな...なんて思いつつ、ほのぼのとした時間をすごしていくのだった。




11/04(いい推しの日)ってことで、滑り込み投稿。
誤字とかあるかもです。

追記─
50,000UA突破しました!皆様読んでくださりありがとうございます。今後ともネタ補充に四苦八苦しながらになりますが、よろしくお願いします。


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甘雨と二回目の誕生日をお祝いするだけ

今日は祝日です


 

 

 

落ち葉が増え始めた11月終わり。僕にとって一番大事な日─甘雨の誕生日が迫っていた。

 

「うーん...今年は何にしようかなぁ...」

あと一週間ほどで誕生日を迎えるというのに、僕は未だにプレゼントに迷っていた。

 

色々考えながら街を歩いていると、お茶を飲みながら講談に耳を傾けている男性に目が行く。

「あの人は...確か往生堂の...って、プレゼントあれがいいか」

突然閃いたプレゼントの案を忘れないうちに買いに行くことにする。あとは料理も考えないとな...

 

 

誕生日前日の夜、布団に入った僕は隣にいる甘雨におもむろに話しかける。

「そういえば甘雨ってアクセサリーとかつけないの?」

「アクセサリーですか...別に私に必要ないかな...と思いまして」

「まぁ確かに甘雨はいつでも可愛いとは思うけど」

「寝る前に恥ずかしいこと言わないでくださいよ...もう」

隣でもぞもぞと動く甘雨に少しだけ近寄る。

「ごめんごめん。おやすみ、甘雨」

「おやすみなさい。また明日、です」

 

 

翌朝。

「甘雨、お誕生日おめでとう。今後1年が甘雨にとって幸せでありますように。」

「わ、ありがとうございます...!もうそんな時期でしたか...」

眠そうな目で洗面所に向かおうとする甘雨にお祝いの言葉を贈る。

「はい、プレゼント。出来れば付けて欲しいな、って」

「これは...イヤリングですか?」

「そうそう。普段髪で耳は隠れてるけど、ちらっと見えた時にあったらいいなって...」

「そういうものなのでしょうか...でも嬉しいです、後で着けたところ見せてあげますね」

 

洗面所に行く甘雨を見送り、朝食を並べ終える。ちょうどそのタイミングで甘雨が洗面所から出てきた。

 

「どうですか?似合ってますか?」

甘雨の耳元で輝く小さな清心の耳飾りに目を奪われる。

「いい…すごく似合ってるよ」

無意識に彼女の耳を触り、まじまじと見つめる。

「えっと…嬉しいんですけど…くすぐったいです」

そう言いながら僕の胸元で身を捩る甘雨に対し「ごめんごめん」と謝りながら、彼女の頭を軽く撫でる。

「とっても似合ってるよ、ありがとうね着けてくれて」

先ほどの耳元での余韻が抜けないのか、少し潤んだ目で僕のことを見上げて、甘雨がこう返事をしてくる。

「こちらこそ、素敵なプレゼントをありがとうございます。大切にしますね」

「まぁでも、戦いの時に邪魔だったら外してもらっていいからね」

「その時は腰の飾りと一緒につけるので大丈夫ですよ」

 

どうやら僕のプレゼントは神の目と同等に大切らしい。

 

 

「じゃぁ甘雨、いってらっしゃい。夕飯は豪華な物を考えてるから、楽しみにしててね」

朝食を食べ終え、いつものように仕事に行く甘雨を見送る。

「はい、行ってきます。とその前に一つお願いが…」

僕の方へ近寄って、小声で彼女が呟く。

「いってらっしゃいのキス、してほしいです…」

照れながらそう言ってくる彼女の顎を優しく持ち上げ、唇を落とす。

 

「ふふっ、ありがとうございます。行ってきますね。」

彼女が出ていった後、あまりの可愛さとあっという間だったキスに呆然としたまま、僕はしばらくその場を動けずにいた。

 

 

「甘雨、誕生日おめでとう」

「刻晴さん、ありがとうございます」

窓際で仕事中だった甘雨に刻晴が祝いの言葉をかける。

その瞬間、空いていた窓から風が入り込む。

「その耳飾り、とても素敵だと思うわ。どうしたの?」

風でなびいた髪の隙間から、耳飾りがちらちらと見えている。

「これは、ふふ…大切な人からのプレゼントです」

 

その時の甘雨の笑顔は、今まで見た中で一番可愛かったと、後に刻晴は語るのだった。




耳元にちらっと見えるイヤリング、とてもえっちだと思います。


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甘雨と誕生日の午後を過ごすだけ

寝不足につき、誤字等あるかもです


 

12月2日、朝、仕事に行く甘雨に誕生日プレゼントを渡し、夜に向けて買い出しに行こうとしていた正午。

「ただいま、です」

出かける準備をしていたら、玄関から甘雨の声が聞こえてきた。

「あれ?早かったね、どうしたの」

「いや、それが…誕生日くらいは大切な人と過ごしたら?って刻晴さんに言われまして…」

「それで帰ってきた、と」

「あの、迷惑とかだったらまた仕事に戻りますけど…」

不安そうに僕の方を見てくる甘雨の頭を軽く撫でて、返事をする。

「いや、一緒に過ごそうか。今から買い物に行こうと思ってたんだけど、一緒にどうかな?」

「はい、もちろん喜んで着いていきます」

今日も彼女の笑顔は眩しかった。

 

二人で並んで昼間の璃月を歩いていると、隣にいた甘雨がそういえば、と話しかけてくる。

「璃月の街中に結構ワンちゃんいるじゃないですか。名前をつけて呼んでるんですけど、違う名前で呼んでも反応するワンちゃんがいるんです、それがとっても不思議だなって」

「へぇ…犬ってすごいんだなぁ。まぁとりあえず何か呼ばれたから反応している、みたいなこともあるかもしれないけど」

犬と戯れる甘雨を妄想しながら歩いていると、犬が二匹僕たちの方に近寄ってくる。

甘雨はその場に座り込んで、犬と戯れ始める。

「苦雪、今日はお友達を連れてきたのですか?」

直前まで妄想していたシーンが目の前で繰り広げられ、思わず僕はにやついてしまう。

「あれ、あなたもワンちゃんが好きなんですか?可愛いですよね、ワンちゃん…」

犬に癒されて笑っていると勘違いしたのか、あなたも撫でてみては、と彼女が言ってくる。

とはいえ、動物が好きなことに変わりはないので二人で犬をしばらく愛で続けたのだった。

 

「思ったより時間をとっちゃったな」

「ごめんなさい、ワンちゃんが可愛くてつい」

予定より押してしまったが、引き続き買い出しを続ける。とはいえ、僕の前で見せるデレっとした声とはまた違う甘い声が聞けたので割と満足はしていた。

「ぼくが一人で歩いててもあんなに犬が近づいて来ないんだけどなぁ」

「まぁ、そこはほら、色々ありますから…」

まぁいいけど、と一言こぼし、食材をチョイスする。

 

その後は何事もなく帰宅した僕たちは家の中でのんびりとした時間を過ごす。

「あの、少しだけ甘えてもいいですか?」

ソファでくつろいでいる僕の隣に、甘雨が腰掛けてくる。

「もちろん、でも珍しいね、何かあったの?」

「いえ、そう言うわけではないんですけど…今日くらいはわがまま言えるかなって思いまして…」

恥ずかしそうに甘雨が僕の腕にくっついてくる。ふわりと甘雨の香りがして、心拍数が上がる。

「いつでも甘えていいのに…」

「誕生日っていう理由がないと、恥ずかしいので…」

そこで話が途切れ、腕に彼女の温もりを感じながら幸せなひと時を過ごす。

やはり、彼女と過ごすほのぼのとした時間ほど幸せなものはないと思う。

 




俺、あの犬になりたい(誕生日ミニイラスト)


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甘雨と誕生日の夜を過ごすだけ

誕生日メール、あれは間違いなくデートの誘い


 12月2日、甘雨に誕生日祝いの料理をふるまった後、僕と甘雨はのんびりした時間を過ごしていた。

 

「そういえば聞いた話なんですけど、月を眺めながらぼーっとするのってとっても心地よいらしいんです。私がいつも月海亭でいつも飲んでいるお茶をいただいてきたので、一緒にお月見しませんか?」

「僕でよければ喜んで」

あまり多くはない甘雨からの誘いに、少しうれしい気持ちになる。

 

 甘雨とともに月が見える縁側に移動し、のんびりと話し始める。12月にしては暖かい涼風と美しい月光の下、ひざ掛けをシェアしながら僕はこの時間を堪能していた。

「今日もそうだし、最近甘雨って帰ってくるの早いよね?」

「そうですね、最近月海亭の秘書たちがとてもよく働いてくれるので、例年より仕事が少ないんです。」

お互いの顔を見るわけでもなく、月をのんびりと見ながら会話を続ける。

「なるほどね。まぁ僕と出会った頃の甘雨は忙しそうすぎて見てられなかったもん」

「その節はすいませんでした...。でも最近はおかげさまであなたと過ごす時間が増えたのでとてもうれしいです。」

そう言うと甘雨が少しだけ僕に近づき、手を重ねてくる。

「ふふ、こうやってあなたとのんびりする時間とっても好きです。」

彼女の手をやさしく握り返して、再び静寂が訪れる。

 数分、お互いに無言の時間を楽しんだ後、あることを忘れていたことに気づく。

「お茶淹れるの忘れてたね、準備してくる」

「すっかり忘れてましたね、私の机に置いてあります。お願いしますね」

 

 お茶の準備を終え、持っていこうとしたとき甘雨がやってくる。

「あれ、今持っていこうと思ったんだけどどうしたの?」

「いえ、少しだけさみしくなってしまいまして...」

そんな愛らしいことを言ってくれた彼女とともに先ほどまでいた縁側にもどる。

 

「ふぅ...落ち着くねやっぱり」

「あなたといるのも相まってとても大好きな時間です」

そんなうれしいことを言ってくれる彼女に質問をする。

「さっき寂しかったって言ってたけど何かあった?」

「特に何があったというわけではないんですが、誕生日だなって思った後になんとなく寂しくなってしまいまして...」

「大丈夫だよ、僕はどこにも行かないし」

「それはわかりますけど...いえ大丈夫です、ありがとうございます」

月明かりの下でもわかるほど、寂しげな表情を一瞬だけ浮かべた彼女をやさしく抱きしめる。座りながらだからか、多少強引になってしまったが、それでもしっかりと抱き返してくる。

「しばらくこうしてようか」

「ありがとうございます...とても安心できます...」

彼女の温もりを腕の中で感じながら、耳元で囁く。

「あらためて、お誕生日おめでとう。これからも僕だけの甘雨でいてね」

「こちらこそ、私だけのあなたでいてくださいね」

 

 冬空に輝く月明かりの下で、僕らは静かにキスをした。

 

 

 

 




公式からの供給ほど捗るものはありません。


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甘雨とクリスマスイブを一緒に過ごすだけ

テイワット、クリスマス概念がないからプレゼントとか多分渡さない。


 

 

12月24日、去年はサプライズという形で迎えたクリスマスだったが、今年は甘雨に予め言ってある。満面の笑みで美味しいお料理が食べられるんですね!楽しみです、と言われてしまったために普段よりたくさんの量を作ってしまったことはまぁ多分気付かれないだろう。

なんてことを考えてると、甘雨が帰宅したようだ。

 

「ただいま、戻りました」

玄関に出て甘雨を出迎える。

「雪、降ってたんだ。頭とか肩とかについてるよ」

そういうと僕は彼女についてる雪を軽く落とす。

「あ、ありがとうございます。ふふ、ちょっとくすぐったいです」

その発言通りくすぐったそうに身を捩る彼女のことが愛おしくなり、そのまま頭を撫でる。

「あの、、もう雪ついてないと思うんですが…」

「甘雨の髪、いつもよりしっとりしてるね。ずっと触っていたいかも」

「えっと、嬉しいんですけど…ここ玄関なので…その…」

指摘され、ここが玄関だったことを思い出す。

「ごめんごめん、うかうかしてると料理冷めちゃうね」

「せっかく楽しみにしてたんですから、もう…」

 

 

「「いただきます」」

そういうと僕たちはいつもより少し豪華な料理を食べ始める。

「わ、この炒め物美味しいです…これも美味しい」

右へ左へ視線を動かしながら美味しそうに食べる甘雨を見てこの姿を見られるのは自分だけなんだななんてことを感じる。

「あれ、私の方が清心多くないですか?いいんですか、頂いてしまって」

「もちろん、そのために多く盛り付けておいたからね、遠慮なく召し上がれ」

「ふふ、そういうさりげない気遣い、とても嬉しいです」

そんな話をしながら食べ進み、作りすぎてしまったなんて懸念も無くなるほどに綺麗に食べ切ってしまった。

「流石に食べ過ぎてしまいました…」

「それ何か記念の度に言ってない?」

「これは…あなたの料理が美味しすぎるのがいけないんです…普段もとても美味しいですけど、なんというか時間かけてるんだなっていう美味しさが…」

太ったらどうしましょう…なんて言ってるのを聞かなかったことにして一足先にコタツに入り込む。

 

「あ、ずるいです、私も入ります」

洗い物は私がやりますから、と言っていた甘雨が片付けを終え、僕の方にやってくる。

「隣、失礼しますね」

「え、隣?正面じゃなくて?」

「寒いので…同じ場所に入りたいなって思いまして…」

「そういうことなら喜んで。」

そういうと嬉しそうに入ってきて並んで座る。

「ちょっと狭くない?」

「足だけじゃなくて体も暖かいので全然問題ないです、ふふ」

 

ややあって、再び甘雨と喋り始める。

「そういえばもうすぐ海灯祭だけど、また忙しくなるのかな?」

「そうですね、年明けくらいから帰宅するのが遅くなりそうです」

以前よりは仕事量が減ったとはいえこの時期は仕方ないか、と自分を納得させる。

「ですから、夕飯は先に食べていただいて大丈夫ですよ?」

「んー、一緒に食べたいし、何より暖かいご飯食べてほしいから僕も時間をずらすよ」

「冷めてても美味しいですけど…そういうことなら毎日決まった時間に帰れるようにしますね、ありがとうございます」

なんて話をしていたが、ふと甘雨が聞いてくる。

「そういえばですけど、なんで今日は豪華な料理だったんですか?」

「あぁ、クリスマスだからね。まぁ一年お疲れ様会だと思ってくれれば」

「なるほど、お料理とても美味しかったです。いつもありがとうございます」

僕の方を見て微笑みながら彼女が言ってくる。

「いえいえこちらこそ、いつも一緒にいてくれてありがとう」

そう言って笑いながら雪降る聖夜を過ごすのだった。

 

 

急に真顔になった甘雨がふとつぶやく。

「そういえば、去年も聞いたと思うんですけど。クリスマスってなんですか?」




甘雨とコタツ入りたい。


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甘雨と海灯祭を祝すだけ(任務ネタバレ注意)

甘雨が沢山出てきてとても満足でした


 

 

今年も、海灯祭の時期がやってきた。

僕は例年のように朝早くから忙しそうに仕事に奔走する甘雨を見守っている。彼女がしっかり休むように言って欲しいとの刻晴様からの指示を受け、特別に自宅で仕事をしている甘雨のことを監視...しているのである。今日も可愛いなぁ...。

 

 

「もう...私だって最近はちゃんと休むようにしています」

少し不満げに甘雨が零す。口調とは裏腹に手の動く速さは尋常ではないが。

「まあまあ...甘雨のことを思ってだから、ね。それに僕は仕事をしている甘雨が見られて嬉しいし」

 

僕の言葉に驚いたのかうっかり紙を落としてしまう。

「ごめんごめん、拾うよ」

「いえ、自分で拾いま...」

お互いが同じ紙を拾おうと手を伸ばし、必然的に手が触れ合う。

「「あっ...」」

咄嗟に手をひこうとした僕だったが、甘雨にしては珍しく、僕の手をしっかりと握ってくる。

 

「どうしたの?」

僕がそう言うと、甘雨は慌てて手を引く。

「あっ...いえ、つい最近人探しを手伝った時に少ししんみりした話を聞いてしまって」

いつもはお触り禁止!と言ってきそうな彼女だったがどうやらいつもとは違うらしい。

「甘雨、少し休憩しようか」

「でも...まだたくさんお仕事が」

少し躊躇う彼女にもう一押し声をかける。

「もし間に合わなかったら僕のせいにしてくれていいから、ほらおいで」

手を広げて控えめに抱きついてくる彼女を受け入れる。

「僕はね、甘雨。キミが他の男の人と喋ってるだけで嫉妬しちゃうくらい甘雨の事が好きなんだ。」

抱きしめている彼女の背中が少し熱を帯びる。

「はぃ...」

消え入りそうな声が耳元で聞こえる。

「だからさ、甘雨が嫌だって言うまでそばに居るよ。この先もずっと」

息を飲む音が聞こえる。

 

数瞬後、甘雨が言葉を紡ぐ。

「私が嫌というはずありません。あなたはいつも私のことを支えて、お世話をして、そばにいてくれます。寿命だって、何とかしてみせます。」

少し抱きつく力が強くなる。まるで僕らがひとつになってしまいそうな程に強く抱き締め合う。

 

何分こうしていただろうか、どちらかともなく離れる。

「ありがとうございます、お仕事に戻りますね」

そう言って机に向かう甘雨の後ろ姿は、さっきまでと違ってとても幸せそうで、楽しそうであった。

 

 

夜。海灯祭のメインステージが開催されるとの事で、港の方に赴いていた。

「毎年思うけど、すごいよなぁこのお祭り。」

「璃月だけでなく、協力してくれる全ての人のおかげです。こうやって毎年引き継がれるのもありがたいですね...」

僕らは少し離れたところからステージを眺めている。あまり聞き馴染みのない音楽だが、不思議とワクワクする曲だ。

「この案、私が七星に提案したんです。音楽やったらどうかって。」

甘雨もテンションが上がっているのか自慢げにそう話してくる。

「へぇ...凄いね甘雨は。みんな楽しそうだし大正解だ。」

「まぁ...元は他人の提案なんですけどね、蛍さんたちがどうにかならないかと私に相談してきて」

「でもちゃんと形にしたのは甘雨でしょ?やっぱり璃月には必要だね、甘雨は」

ステージを眺める彼女の横顔が少し遠くなった気がした。

「何を言ってるんですか、私はあなたがいなければ、あなたが支えてくれなければ仕事以外はあまり出来ない人なんです。」

そう言うと僕の手を甘雨が握ってくる。

 

ステージは佳境を迎え、花火が上がる。そして皆がそれぞれの想いを霄灯に乗せ、空へと飛ばす。いい一年を過ごせますように、そう願いながら──

 

 

海灯祭を祝して。

 




あけましておめでとうございます。今更感はありますが本年も本小説をよろしくお願いします。


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甘雨のお菓子作りを見守るだけ

最近忙しいのでクオリティ低めです


 

 

 

海灯祭を終え、忙しそうだった甘雨もうとうとする時間が増えていた2月の半ば、もといバレンタイン当日。どうやらたまにはしっかり休めと刻晴さんから言われたらしく、今日は甘雨のお仕事が休みなのである。

「私...休日何してましたか?お仕事ですか?」

久々の手持ち無沙汰に違和感があるのか、甘雨がそんなことを聞いてくる。

「いや...そういえば確かに...僕とくっついてるかお昼寝してるか...くらい?」

「休日...何したらいいんでしょう。」

「そうだな...僕が言うのもなんだけど、今日はバレンタインだしお菓子作りとかしてみたら?」

僕がそう提案すると、その手があったと言わんばかりの表情を浮かべ、返事をする。

「それ、素晴らしいですね...お菓子作りしてみます。ふふ、楽しみにしていてください」

 

しばらくして、お菓子の甘い香りが部屋に漂い始める。

「~♪」

キッチンの方からご機嫌な甘雨の鼻歌が聞こえてくる。気づかれないようにこっそりと彼女の様子を伺う。

「あの...私の事見てるの気づいてますからね」

「ごめんごめん、、料理してる姿が新鮮だったからつい」

甘雨にしてはめずらしいジト目を浮かべながら僕のほうを見てくる。

「とはいえ私も料理をしているあなたのことを見ていることもありますし...少し恥ずかしいですけど許します」

「え、そんなに僕のこと見てたの?」

彼女から飛び出した発言に思わず驚いてしまう。

「もしかして気づいてなかったんですか...?」

「そう...だね、集中してることも多かったし」

 

少し気まずいような沈黙の後、甘雨が話しかけてくる。

「あの、これ味見してくれませんか?」

僕の前に彼女の手が差し出される。

「はい、あーんしてください」

「いや、自分で食べ「あーんしてください」

ぐいっと先程よりも目の前に差し出された手を見て、仕方なく口を開ける。

「ん、美味しいじゃん。ていうか砂糖使ったの?」

「自分では食べないので、よりおいしくするために使ってみました」

「あれ、食べないの?」

「今日はバレンタインってことなので、あなたに渡すつもりでしたよ」

そんな彼女の発言に思わず心臓が跳ねる。

「お、おう...少し照れるね」

「ふふ、そういうことなのでもう少し待っていてくださいね」

そんなふうに笑いかけてくる甘雨を見て、何度目か分からない心臓の高鳴りを覚えるのだった。

 

「お待たせしました、私からのプレゼントです」

そう言いながら小皿に乗ったお菓子を持ってくる。

「普段あまり作らないので、失敗しているかもしれませんが...」

「ありがとう、味見した時美味しかったし大丈夫だよ」

甘雨から小皿を受け取り、食べ始める。

「ん、とっても美味しい」

「それなら良かったです」

「ありがとう、美味しかったよ。」

「どういたしまして、です。日頃の感謝と愛を込めておきました...」

そんなことを言ってくれる彼女を近くに呼び寄せる。

「こちらこそいつもありがとうね、大好きだよ」

甘雨の美しい青髪を撫でながら愛を囁く。

 

傍から見るとお菓子よりも甘い空間がそこに拡がっているのは明白だった。

 




月イチ投稿目指してますが、なにぶん忙しいもので...。


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甘雨と愛してるゲームをするだけ

推しのPUと誕生日が同じって運命では??


 

 

「そういえば甘雨、面白そうな遊びを耳にしたんだけど」

4月の忙しさも落ち着き、久々にのんびりした休日を過ごしていた僕が、街中でふと耳にした遊びを提案する。

「遊び、ですか?どのような?」

椅子に座って読み物をしていた甘雨が顔を上げて聞き返してくる。

「メガネ姿もやはり最高だな...ってそうじゃなかった、えっと"愛してるゲーム"ってやつなんだけど」

「あ、あいしてるげーむ...?なんですかその名前...」

甘雨が少し呆れたような顔で僕の方を見てくる。

「まあルールは簡単、2人で向かい合って"愛してる"って交互に言って照れたり笑ったりしたら負けっていう遊びなんだけど」

そんな説明を聞くや否や、訝しげな表情から一転立ち上がるような勢いで返事をしてくる。

「やります!さあ今すぐやりましょう!」

「い、いや甘雨、キャラ崩壊してるから、ね?」

声を張り上げた彼女に対し思わず後ずさってしまったが、どうやらお気に召したらしい。

「お、おほん。とにかく、早速やりましょう。」

 

向かい合って座りなおした僕たちは僕の先攻でゲーム、もとい戦いを開始した。

「では僕のターンから。んんっ...愛してる」

決まった。会心の愛してるが出た。我ながらいい愛してるだったと思う。

そんな会心の一撃をうけた甘雨は...

「...」

圧倒的無反応。完全にすんっとしていた。いや...頬が少し赤くなっている。可愛い。

だがこれではゲームは終了できない。続行だ

 

続いて甘雨のターン。

「では私の番ですね。絶対に勝って見せます。では...愛しています」

っっ...危ない。うっかり目を見開いて笑った後に彼女を抱きしめるところだった。手ごわい。さすがは甘雨だ。次は僕のターンだ

 

「次こそ決めてやる。いくぞ。甘雨、愛してる。」

先ほどの攻撃と負けず劣らずのいい愛してるが決まった。彼女の表情を見てみると...すこしニヤついてる。可愛い。でも普段の仕事場では絶対に見せないような表情をしている。僕だけの特権かもしれない。

おっと、そんなことを考えていると彼女の攻撃が始まる。

 

「なかなか手ごわいですね、では...私の番ですね。一番、愛しています」

一番...だと、多少ルールから逸脱してるかもしれないが...可愛いから許す。それにしてもあの恥ずかしそうな顔...とてもかわいいな。

「あの...ちょっと口元緩んでいません?」

彼女の可愛さをのんびりと考えていたが彼女の発言で現実に戻される。

「いやいや、ニヤついてないって、たぶん...」

「まぁいいです、多少は大目に見てあげます」

 

さて、気を取り直して僕のターンだ。先ほどは多少譲歩されたが...まぁここで勝てばいい。

「愛しているよ、甘雨」

今回のは会心ではなかった気がするが...彼女のほうを見ると真っ白で美しい肌が首元まで赤くなっていた。

「あれ、甘雨照れてない?顔すごく赤いけど」

「...て、照れてません!」

「さっきの譲歩はこれで無しだな...」

「仕方ないですね、次は私の番です。」

僕は油断していた、彼女の愛らしさと可愛さを。そして笑顔の破壊力を知らなかったのだ。

「愛しています。」

そのたった一言で負けを確信した。あんな笑顔に勝てるはずがない。そう、僕は彼女から目を逸らしてしまったのだ。頬が熱い。より一層惚れてしまった。

 

「僕の負けだ...あんな笑顔見せられたら勝てないよ...より一層好きになっちゃった」

「ふふっ、そうですか...えへへ...ありがとうございます」

そういって幼げに笑う彼女の笑顔もまた、僕を負かすには十分な破壊力だった。




スターレイルと資格の勉強で忙しかったです...


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甘雨が誕生日を祝ってくれるだけ

自分の誕生日だと思って読んでいただいても構いません


 

 

「あの...お誕生日おめでとうございます」

ある朝、珍しく僕より早く起きていた甘雨が開口一番そう言ってきた。

「んお...おはよう、僕の誕生日覚えててくれたんだ」

「はい、おはようございます。もちろん大好きな人の誕生日ですから、忘れるわけがありません」

使用人のようにテキパキとカーテンを開けたり僕の着替えを出したり...寝ぼけ眼で彼女の姿をうっすらと見る。

「ん...ん?甘雨、そのヒラヒラした格好は何?」

「あ、これですか?めいど服?と言うモンドなどで使用人が着る格好です。今日は私が1日身の回りの世話を致しますので、どうせならと可愛らしい格好をしてみたのですが...」

寝ぼけ眼を擦りながら起き上がった僕の前で甘雨がそのめいど服とやらを僕に見せるようにひらひらふりふりしてくる。

「かわいい...なんかいつもはしゃきっとしてる印象だけど今日はふわふわだね」

「可愛いって言って貰えて嬉しいです。あ、お着替えの手伝いは...」

立ち上がった僕に対しそんなことを言ってくる。

「いや、さすがに自分でやるよ...少し恥ずかしいし」

「そう...ですか。わかりました」

少ししゅんとしたような表情に申し訳なくなり慌てて弁明をする。

「ごめんね、今日1日楽しみにしてる」

彼女頭をひと撫でして、軽く唇を合わせる。

「ふふ、もちろんです。でも、お触りは禁止ですよ?」

 

 

「はい、こちら朝食です。美味しいかは...分からないですけど」

元々が従者だったからか、さすがに様になる動きで僕の前に食事を並べる。美味しそうだ。

「んん!美味しい!ここまで美味しいと僕の立場が危うくなっちゃうな」

僕の隣で不安そうに様子を見ていた甘雨に感想を伝える。

「いえ、そんな...あなたの料理があるから私は頑張れてるんです!」

なんて嬉しいことを言ってくれる。

「ああそうだ、今日は休みなの?」

「はい!どうやら七聖召喚の大会があるらしく、今日は一日休業とのことで...ちょうど良かったです」

なんて説明を聞きつつ、朝食を食べ進めた。

 

「ご馳走様でした、美味しかったよ」

隣にいた甘雨に感想を伝えると、満足そうな笑顔をうかべた。

「お粗末さまです。それと...これ、プレゼントです」

そういうと彼女は僕に小さい箱を渡してくる。

「開けても?」

「いいですよ」

開けると、中には瓶に入った清心があった。

「これは...清心?の造花か」

「はい。あなたが私に贈ってくれたのは本物だったんですけど、お揃いにしつつも少し違うものにしようかとおもいまして...」

「え、手作り?」

「一応...細かいところとかはあまり見ないでいただけると...」

小さい瓶に入った清心の造花を眺める。造形はまさに清心、さすが甘雨と言ったところだ。

「甘雨これ、作ってて食べたくならなかった?大丈夫?」

ふと疑問に思ったことを彼女に伝える。

「そ、そんなこと、ないですよ」

僅かに目を逸らしつつそう返答があった。

お腹を空かせながら僕のためにプレゼント作ってくれた甘雨が愛しくなり、立ち上がって優しく抱きしめる。

「ありがとう、甘雨。今までで1番いい誕生日だ」

「どういたしまして、そのいい誕生日を毎年私が塗り替えたいです...ふふ」

僕を抱きしめる力が僅かに強くなる。

「それと...今日はまだこれから、ですよ?」

耳元で艶かしく呟いた甘雨に、期待を抱かずにはいられなかった。

 

 

──夜。

「ねえ甘雨、またあのめいど服っていうの、着てくない?可愛かったんだけど」

「た、たまになら...」

布団に入りそんな雑談をする。

「それと、プレゼントありがとうね。僕の机に飾らせてもらったよ」

「ふふ、私の仕事机にはあなたからのプレゼントがあるから、これでお揃いですね。お昼時とかに見てるとお腹すいてしまいますけど...」

「間違っても食べないでよ!?」

「さすがに大丈夫です...多分」

「それはそうと、改めて一日ありがとうね」

「いえ、お誕生日おめでとうございました。これから先もあなたの傍で、あなたと共に。あなたとの"契約"を守ります。」




自分の誕生日こうされたいという妄想が詰め込まれました。
清心の造花は実際に僕が誕生日に友人から貰ったものです。クオリティ高い
最後の一言で使った"契約"という言葉は彼女にとって最大級の愛情表現だと思っていただければ。


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甘雨が広告塔になるだけ

コラボ衣装のスタンプ、使えるようにして欲しいなぁ。


 

「今日の午後、お時間ありますか?」

いつも通り甘雨と朝食を食べていると、突然そんなことを聞いてきた。

「うん、午後の予定は特にないけどどうしたの?」

「璃月には無い外国の飲み物屋さんが港内で初出店するとのことで、その広告に私と申鶴さんに声がかかったんです。それで、写真機による撮影がすんだあとは時間があるので、良ければ一緒に過ごしたいなと...」

甘雨からのデートのお誘いに内心歓喜しながらもそれを悟らせないように返事をする。

「もちろん、喜んで」

「ありがとうございます」

清心よりも美しい笑顔を浮かべた彼女に目を奪われる。こんな可愛い人の隣歩いていいのだろうか...などと考えてしまうが。

食事を終え、集合場所と時間の連絡をしたあと、いつものように甘雨はお仕事へ向かった。急いで洗い物を済ませた僕は、彼女の隣に立つふさわしい格好をするために四苦八苦したのであった。

 

待ち合わせより半刻ほど早く到着した僕は、港にできている人だかりから少し離れた場所で時間を潰す。あの人だかりは一体何だろうか...。しばらく経っても数が減るどころか増え続ける人だかりが気になり、近づく。その中心に甘雨はいた。

「本当に私で良かったんでしょうか...」

「相手方がそう指名したのだ、深く気にすることでは無い」

どうやらもう一人の女性が申鶴さんなのだろう。甘雨は見慣れない格好をしている。可愛い。

「あの、この人だかりは一体...?」

とりあえず近くにいた女性に尋ねてみる。

「あら、あなた知らないの?稲妻で流行している甘い飲み物が璃月に初めてお店を出すのよ。試作品を頂けるらしくて私もそれを飲みに来たのよ。それにしても月海亭の秘書さんと隣の長身の女性...美しいわ」

どうやら皆試作品とやらが目当てらしい。甘いものへ縁がない僕としてはあまり関係ないのでいそいそと退散しようとした。

 

「あの、私の大切な人に何か用ですか。」

そんな声とともに僕の腕が抱きしめられる。いつの間にか、甘雨が僕の隣に来ている。

「この人だかりは何かこの方に聞いてただけだよ、大丈夫何も無いから。お姉さんもすいません...」

人だかりがこちらを見ている気がしたが、少し離れた所へ行く。

「本当に何も、ないんですよね?」

少しハイライトの消えかけた目で甘雨が僕を見てくる。

「ないない、僕は甘雨一筋だから」

「とりあえず信じてあげます。それに予定よりも早く来てくれたので」

「ちょっと早すぎた気もするけどね。それよりその格好どうしたの?とても可愛いけど」

「これですか?どうやら撮影用の衣装らしいんですが、そのまま差し上げると言われたので、あなたとのお出かけに着ていこうかと。」

「なるほどね。僕の甘雨を広告塔にしようとした人をどうしてやろうかと思ってたけど、そこまでしてくれるなら感謝しないとね。」

「あなただけの私です、ふふ。」

甘雨が優しく微笑んでくる。

「そういえば撮影はもう終わったの?」

「あ、終わりましたよ。でも一応申鶴さんに挨拶してくるので、もう少し待っててください。」

軽い足取りで人だかりの方に戻っていく甘雨の後ろ姿をぼんやり眺める。どうやら試作品の配布が始まったらしく、手にカップを持つ人がちらほらいる。幸せそうな顔、驚いた顔、悩むような顔。様々だが大方受け入れられたように見える。

なんてことをぼーっと考えていたら甘雨が戻ってくきた。

 

「おつかれさま、じゃ行こうか」

「ありがとうございます。あの、これよかったらどうぞ」

甘雨が僕に周りの人が持っているものよりも大きなカップを僕に渡してくる。

「これは?」

「私のいただいた分だったんですけど、その...全部飲んだら太ってしまうので一口だけ飲んだ残りです」

試作品、とやらを見てみると、確かに甘そうだ。だんごと...牛乳?美味しいのだろうか。

「まあそういうことなら、いただきます」

不思議な食感と甘さが口の中に広がり、甘さに感動しているとふと、彼女の唇が目に入る。

「ふふ、間接キス、ですね。」

耳元でそんなことを囁いてくる甘雨の声は、飲んでいるもを何倍も甘く、蕩けるような味わいにしてしまうのだった。

 

「そうは言うけど甘雨、顔が少し赤いよ?」

「そ、それは気のせいです、、、」

僕の反撃の言葉にさらに耳を赤くした甘雨がスタスタと歩いていくのを後ろから追いかけ、2人の影が重なり、璃月港に溶けていくのだっ




多分甘雨はこんなことしないけど、俺の中ではする。多分癖が出てるとは思う。スイマセン

あんまりあとがきに色々書くのは好きではありませんが直近はフォンテーヌ観光とリアルが忙しく更新できませんでしたゴメンナサイ。
コラボ衣装めちゃくちゃ可愛かったし、なんならオーケストラの方はアニメーションのシーン切り取ってGIF画像作るくらい最高でしたね。
ネタ切れ感が否めませんが推し活ライフは無限に続いてるので降りてくれば書きます...。
ではまた次の話でお会いしましょう。皆さまも良き原神ライフを。


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甘雨と誕生日の日もほのぼのするだけ

モチベと暇がなくてフォンテーヌ全然できてない!


年の瀬も迫り、朝晩の冷え込みも酷くなってきた12月の2日。どれだけ忙しなく時が過ぎようとも、忘れることの出来ない日がやってきた。甘雨の誕生日である。

この日へ向けて半年ほど前から様々なプランを考えていたが、結局何も決まらないまま当日を迎えてしまった。

「おはよう、甘雨。昨日はお疲れだったね?」

朝食の準備をした後、部屋に戻ると既に甘雨は起き上がってぼーっとしていた。可愛い。

「おはようございます。すみません、早くに寝てしまって...。」

「いいよ、まあ少し寂しかったけどね。ちゃんと休めた?」

「おかげさまで。それよりも、寂しかったなら...ふふ、こっち来てください」

寝起きで眠そうな目のまま、僕のことを暖かい布団へと誘ってくる。当然僕は抗うことも出来ないまま彼女へと抱きつく。

「んふぅ...暖かいね」

「あなたも、お布団より暖かいです」

柔らかな抱き心地と温もりでこのまま寝そうになるが何とか踏みとどまる。名残惜しそうに僕の方を見てくる甘雨に心苦しさを感じる。

「お誕生日おめでとう甘雨。」

そう耳元で囁いて頭を一撫でしつつ寝室を出る。

「今のは...ずるいです」

なんてことを後ろで呟かれていたことを僕は知る由もなかった。

 

「じゃあ、いただきます。」

2人で朝食を食べ始める。会話の内容はなんてことのない世間話だが、そんな時間が僕は好きだ。

「そろそろ冬の野菜が出てくる頃だね。何か食べたいものとかある?」

「そうですね...寒いですし少し辛みがあるものがいいです。」

「了解、夜はそれっぽいもの考えるね」

「ありがとうございます。ふふっ、今日も頑張れそうです。」

こんな会話をしながら朝の時間を堪能したのだった。

「ただいま、戻りました。」

外の冷気と共に、甘雨が帰宅した。

「おかえり。今日もお疲れ様。」

そう言うと共に彼女を抱きしめる。ひんやりしているが、それと共に温もりも感じる。

「ふふ、やっぱりあなたに抱きしめられるの好きです。」

甘雨の荷物を受けとり、そのまま食卓へと座る。

「今日は甘雨の誕生日だから、少し気合を入れたよ。遠慮せず食べてね。」

「わぁ...!どれも美味しそうです。いただきます。」

「どうぞめしあがれ。」

目を輝かせながらどれから食べましょう...とつぶやく彼女を微笑みながら見守る。

「いつも美味しい料理をありがとうございます...。ただあの...最近忙しかったので冒険に出れてなくて...私太ったりしてません?」

数瞬前のキラキラした表情から一転、少し曇り気味の表情を浮かべたその落差に笑いをこぼしてしまう。

「笑ってる場合じゃないんですよ...もう」

「ごめんごめん、どんな甘雨も可愛いとは思うけど、そういうことじゃないよね。僕は気にならないけど、時間できたら少し散歩とかしようか。」

「いいんですか、?よろしければぜひ...。あ、これ美味しいです。」

にこにこしながら料理を頬張る彼女に愛しさが込み上げてくる。

「大好きだよ」

自然と溢れたその言葉に自分自身も驚く。

「ありがとうございます、私も大好きです。なんか少し照れますね...。」

誕生日と言えど、いつもと変わらない日常をすごしいつもと変わらない愛しさがそこにはあった。

 

「ごめんね、大したプレゼントもなくて。だいぶ前から考えてたんだけど全然思い浮かばなくて...。」

甘雨と共に布団に入ったあと、ふとそんなことを呟く。

「大丈夫ですよ、私にとって求めてくれるあなたがいて、そんなあなたを私も必要としてる。そんな日常が既にプレゼントなんですから。気にしないでください、いつもありがとうございます。」

その言葉を聞いて色々と込み上げてしまった僕は彼女に抱きついてしまう。

「ふふ、よしよし。いつもはかっこいいのにこういうところは可愛いの、とても素敵だと思います。」

そう言いながら優しく僕の頭を撫でてくる。

そのままだんだんと意識が遠くなり、睡魔の誘うままに眠りについてしまう。

 

「あら、寝てしまいましたか。もう、仕方ないですね。」

そう言いながら優しく頭を撫でるその姿は、仕事に追われ残業尽くしだった頃とはまるで違う、長生きした仙人ではなく1人の少女のようだった。

「あなたのおかげで、契約のために生きていた頃よりもずっと楽しく色づいた日々を送れています。本当に、出会ってくれてありがとうございます...大好きです。」

すやすやと眠る彼にキスを落とし、彼女自身も共に眠りにつくのだった。




甘雨さん、ママみが強いですよあなた。


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甘雨とのんびり釣りをするだけ

誕生日メールと誕生日イラストからネタはひっぱりました。
コロコロ甘雨、可愛いんだろうなぁ。


 

甘雨の誕生日の翌日。

今日は甘雨が同僚から勧められたという釣りへ来ていた。

「いやー、気持ちいいね。外でのんびりするのは」

「そうですね。ただ少し、眠たくなってしまいます。」

川辺に腰かけのんびり釣り針を垂らしているが、まだ1度も当たりはない。ぽわぽわと眠そうな表情をうかべる甘雨の方を眺めていると、少し強い風が吹く。水面がキラキラと輝き、風になびいた水色の髪も美しくなびく。

そのあまりにも美しい姿に見とれてしまい、糸を引く気配に気づくのが遅れてしまう。

「あっ!ひいてますよ。あぁ...逃げられちゃいましたね。もう、よそ見なんてしてるからです。」

少しジト目で僕の方を見てくる甘雨に、君を見ていたなんてことは言えずにぼーっとしてたと適当な言い訳をする。

「せっかく私が用意した釣り餌なんですから、無駄遣いしないでください。」

ジト目の次は可愛らしいプク顔を浮かべ、あまり彼女がしない表情の連続に僕の頬が緩んでしまう。

「ごめんごめん、ちゃんと集中するから、ね?」

「もう、次逃がしたら怒りますよ?」

「が、頑張ります、、、」

そう言うと、真剣な顔で釣りと向かい合う。が、当然そんなすぐに当たりが来るはずがない。

 

「最近、蛍さんがフォンテーヌで連続少女失踪事件を解決したらしいですよ」

数分の沈黙の後、突然そんなことを甘雨が話し始める。

「なに、そんな名探偵みたいなこともしてるの?」

「らしいですね、パイモンさんが自慢げに語ってくれました」

「想像できるなぁ、こう、腕を腰に当ててえっへんってしてるの」

「可愛いですよね、あれ。そういえば...話は変わるんですけど、留雲借雲真君に最近お会いしてない、、ですよね?」

「ないけど、どうして?」

「いえ、急に今思い出したことがあって...。留雲真君が立て板に水を流すかのようにつらつらと私の恥ずかしい過去をあなたに聞かせるって夢なんですけど...」

「ああ、小さい頃はコロコロとしていて山頂から転がり落ちたっていう...?」

「もう!その話はやめてください...本当恥ずかしいんですから...って、なんで知ってるんですか!」

「えーっと...秘密、、ということで、、、」

僕に掴みかかりそうな程の剣幕でそう言ってくる甘雨をなだめる。

「あれって夢じゃなかったんですか!もう...次会ったら文句を...」

 

なんて歓談をしていたら急に甘雨の釣竿の糸が引っ張られる。

「おっとと、逃がしませんよ」

ぐぐぐ、と強く糸が引かれている。

「おおお、すごい力だ。手伝おうか?」

「んん、大丈夫です。呼んだ時には手伝ってくださいね」

そう言うと真剣な顔をして魚?と向き合う。

あっちへ行ったりこっちへ行ったり。離れたり近づいたり、甘雨の腕がプルプルしてきた頃に魚も観念したのか水しぶきとともに釣り上がる。

「はぁ...はぁ......つ、釣れました...おっと、逃がしませんよ」

そう言うと近くにあったバケツに魚を入れ座り込む。

「お見事、大物だね」

「ふふ、初めての割には大きいのが連れたんじゃないでしょうか」

そう言うとどちらかともなく笑い合い、彼女の頭を撫でる。

「さすがです、甘雨様」

「む、なんかむず痒いからやめてください、あなたも様付けで呼びますよ?」

「うーん、確かにくすぐったいね、いつも通りでいいか。」

なんてことを並んで座りながら話しつつ、あっという間に昼食の時間である。

 

「今日は甘雨の手作り、楽しみだなぁ。」

「あまり期待しないでくださいね、あなたの方が上手なのはわかっているので...」

「大丈夫だよ、美味しいもん」

そう言うと、彼女がカバンから出した容器を受け取り、並んで食べ始める。

「うん!やっぱり美味しい。この環境ってのも相まって最高だね。ありがと、甘雨」

「ふふ、どういたしまして。我ながら良い出来だと思います」

自然と方を寄せあって座りながら食事をする甘雨を遠くから見守る仙人─もとい留雲借風真君は満足そうに笑い、良い相手を見つけたなと一言零し、飛び去るのだった。




甘雨と釣りに行きたい人生でした。


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甘雨と海灯祭を過ごすだけ

任務の流れと多少違うところがあります。ご注意を。

それはそうと、衣装最高すぎませんか?


 

 

日々が目まぐるしく過ぎ去り、今年も海灯祭の時期がやってきた。連日甘雨は忙しそうにあちらこちらへと駆け回り、自宅でもなにやら考え込むことが多くなっていた。

 

「甘雨、甘雨さーん?おーい」

返事がない。どうやら考え込んでいる間に寝てしまったようだ。

「毎日お疲れさま」

寝てる彼女に毛布をかけ、頭を軽く撫でる。

「ひゃん!?ミント、角、、うう...って、あれ、あなたでしたか」

頭を撫でるやすぐに飛び起きた甘雨に、慌てて声をかける。

「大丈夫?変な夢でも見た?」

「あ、いえ、、少し前のびっくりした記憶が蘇っただけで、大丈夫です。」

「ごめんね起こしちゃって、最近忙しそうだもんね」

甘雨の横に並んで座り、再び頭を撫でる。

「ふふ、ありがとうございます。でも大丈夫です、仕事のことではなくて、その...」

「あ、仕事は終わってるんだ...さすがだね。それで?」

恥ずかしそうに僕の方を見ながら言葉を続ける。

「海灯祭、私と一緒に回りませんか?もちろん凧揚げも。」

「もちろんだよ、でも大丈夫なの?蛍さんとか、申鶴さん、?とかは」

「はい、もう言ってあります。一緒に回りたい人がいるから、と。蛍さん、というよりパイモンさんからはお見通しだという表情をされましたけどね」

ジト目を向けてくるパイモンちゃんのことを想像してしまい、頬が緩む。

「何となく想像できるなぁ、まあそういうことなら、当日楽しみにしてるね。」

「はい!私も楽しみです。」

 

迎えた海灯祭当日。朝から甘雨は出かけてしまっているので僕一人で待ち合わせ場所へと向かう。そこには...

「あの...似合って、ますか?」

黒と青を基調としたドレスに身を包んだ甘雨が居た。

「えっと...それは...」

そのあまりにも美しい姿に言葉を失う。

「留雲真君から頂きました...」

「えと、すごく綺麗だ...。よく似合ってる」

「ふふ、少し恥ずかしいですけど、そう言って貰えて何よりです」

そう言って笑う甘雨の手を取り、並んで歩き始める。

 

「髪型もすごく似合ってるね、自分でやったの?」

「はい、たくさん練習しました...上手くできてるかまだ不安ですけど」

「まあ、上手くいってる状態を僕は分からないけど、とても可愛いとは思うよ。」

璃月の街中を歩きながらそんな会話をする。

時折人々の視線を感じる。見慣れない格好をしている甘雨へ向けられるものなのか、はたまた僕に対してなのかは分からないが、美しい彼女の隣を歩いているのが自分であることが少しだけ嫌になる。

 

「どうしました?」

少しだけ手を握る力が強くなってしまい、甘雨が心配してくる。

「少しだけ甘雨の隣を歩く自分が嫌になっただけだよ、大丈夫」

僕がそう言うと、彼女は立ち止まり、僕の方を見上げてこう言ってくる。

「あなたはとても素敵な人です。私の生活に楽しみと笑顔を沢山くれました。だから、心配しないでください。誰がなんと言おうと、あなたの事が大好きですから」

そんな彼女の言葉に、思わず照れくさくなり目を逸らしてしまう。

「ふふ、そういう可愛いところも好きですよ」

街中ということを忘れそうになるくらい、心臓の音がうるさい。

「ありがとう、これからもずっと甘雨のことを愛しています。」

「雰囲気も相まって恥ずかしいです...」

お互い顔を赤くしながら手を繋ぎ、再び街中を歩く。

先程までの不安は消え去り、幸福感で満たされていた。

 

「ねえ、甘雨。」

「なんでしょう?」

空に上がっている沢山の凧を見ながら僕はつぶやく。

「海灯祭を祝して。」

「はい、海灯祭を祝して。」

振り返った彼女の笑顔は、他でもない僕だけが見れる笑顔だった。




海灯祭、最高でした。角をこっそり触りたい。


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