宮女の探偵コンビ (アッシュクフォルダー)
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第一話 本の盗難事件

私の名前は、白井仁奈、

宮益坂女子学園の高等部一年生で、

幼馴染の探偵の助手をしている。

 

そんな、私には、自慢になる相棒がいる。

 

「やっぱり、図書室は落ち着くな…」

 

「フフッ、六花って、本当に、

本が好きなんだね」

 

「はいっ!だって、本を読めば、読むほど…

とっても、幸せで楽しい気持ちになるんです!」

 

浅野六花、私の大切な相棒で、

私のよき理解者で、幼馴染です。

 

 

そんな、ある日、事件が起きました。

 

ガシャーン!

 

「何でしょうか?」

 

「奥の小部屋で、何かあったんでしょうか?」

 

「行ってみましょう!」

 

「えっ?ちょっと、仁奈ちゃん!」

 

 

しかし…

 

「鍵がかかっている…」

 

「本が盗まれている!

それに…荒らされている形跡がある」

 

「うぅ…」

 

「六花ちゃん、大丈夫?」

 

「う…うん…」

 

 

 

このことを、私と六花のクラスメイトである、

桐谷遥、天馬咲希、星乃一歌に話すのだった。

 

「それって、つまり、密室事件?」

 

「えぇ?それって、怖い!怖いよ!」

 

「でも、変なんです、盗まれていたり、

荒らされていた、部屋には、窓が無かったし…」

 

「それも、確かに変だな…」

 

「じゃあ、本を盗んだり、荒らした、犯人は、

この部屋から、どこに逃げたんだろう…?」

 

「ねぇ、目撃証言聴いてみようよ!」

 

「私じゃないからね!」

 

「咲希が、そんなことするはずないって」

 

「私もしない、図書館には、用事が無いからね」

 

「じゃあ、一歌ちゃん、咲希ちゃん、遥ちゃんは、

一切関与していていないってことだね…

じゃあ、誰が犯人何だろう?」

 

「あの…」

 

「どうしたの?六花ちゃん?」

 

「さっきから、引っかかっていることがあるんですけど…?」

 

「えっ?」

 

「もう少しで、何かが思い出しそうなんです…

何かが、引っかかると言うか…何て言うか…」

 

「六花、何か思いつきそうなの?」

 

「えっと…えっと…」

 

「これは…インスピレーションが働いている印だ!」

 

「すごい!もう、犯人に目星がついたの!?」

 

「あの!私、この事件の真相がわかったかもしれません!」

 

「えっ?本当に?探偵じゃん!」

 

「ただの、推理小説オタクかと、思っていたけど、

案外違うんだよ、六花は」

 

「そ、そうなんだね…」

 

(ど、どうしよう…もう少しで思いつきそうなのに…

今まで読んだ本は、頭の中の図書館に、全てしまっています

何かを感じれば、その情報を、いつでも、

引き出せることが出来ますけど、明日になったら、忘れてしまう…)

 

 

六花はメガネを外して、おさげを解いた…

 

「あれ?六花ちゃん、どうしたの?

イメチェン?」

 

「この私が、推理してさしあげますわ!」

 

「なんか急に、アクティブになったんだけど!?」

 

「この事件の犯人は…」

 

「この事件の犯人は!?」

 

「青山先輩です!」

 

「青山先輩?」

 

「あっ、昨日、事件を目撃した、証人者だ!

まだ、近くにいるはずです!

行ってみましょう!」

 

「ねぇねぇ、私も付いてきてもいい?

探偵の助手やりたかったの!」

 

「咲希ったら…うん、いいと思う」

 

「よーし!この事件の謎を一緒に解くぞー!」

 

 

宮益坂女子学園 高等部 2年A組の教室にて、

 

「青山先輩、ちょっと、いいですか?」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「貴女が、図書館を荒らして、本を盗んだ、犯人ですね!」

 

「えっ…?」

 

「あの時、鍵に触ったのは、青山先輩だけです!

他のみんなは、先輩の言葉を信じただけで、

誰も鍵には触っていません!

そうですよね?仁奈さん!」

 

「えぇ、バッチリ見ました!」

 

「そう、先輩は、嘘をついていたんです!

本当は鍵は、かかっていないのに、

その嘘を隠すために、ドアが、破壊されていたんです!

この密室のトリックを作るために!」

 

「でも、証拠はあるのかよ?」

 

「ありますよ!この携帯です!

偶然、図書館に落ちていたんです!」

 

「あっ、図書館に用事の時に、

置いちゃったんだった…見つけてくれて、ありがとう」

 

「そうですか、うっかりですか…

じゃあ、これは何なんですか!」

 

そこには、ガラスが破壊された音が、

鳴っていた。

 

「この音、ガラスが破壊されている音!」

 

「先輩は事前に、本を盗んでは、荒らしていたんです!

その時の音を、最初から、録音していたんです!」

 

「そして、見た時は、携帯が落ちていて、

違和感があるなと思ったら…

これ、青山先輩のものだったんですね!

違いますか!」

 

「図書館にある、監視カメラを見たら、

一目瞭然ですね」

 

「後輩の癖に…生意気な!

でも、いいんだ、私がやったんだ…

だって、どうしても、読みたかった本だから…」

 

「それで…盗むようなマネを…」

 

「うん」

 

こうして、盗まれた本は、無事図書館に戻るのだった。

 

宮女の探偵コンビの活躍は、続くのだった。



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第二話 咲希の一日助手!

宮益坂女子学園の高等部の探偵コンビ、

浅野六花と白井仁奈の前に、一人の依頼人がやって来た。

 

彼女の名前は、天馬咲希、

そんな、彼女の依頼は?

 

「ご用件は何でしょう?」

 

「ねぇねぇ!あたし!探偵の助手になりたい!」

 

「えっ?探偵の助手ですか?」

 

「えっ、えっと…」

 

「あたし!感度しちゃった!

本当に、密室トリックを解結するなんて!

もう、惚れ惚れするよ!」

 

「アハハ…ありがとうございます…」

 

「だから!今度は、あたしが、事件を解決するぞー!」

 

「そう簡単に事件は、転がっていませんよ」

 

「そうですよ!事件が起きるとは、限らないんですよ!」

 

「そっかーじゃあ、事件があったら、

あたしを呼んでね!一緒に解決したいから!」

 

「わ、わかりました…」

 

 

後日、事件が起きた!

 

依頼人は、花里みのり、

そんな、彼女の依頼は?

 

「ペットの犬が、いなくなったの!」

 

「えっ?」

 

「名前は、サモちゃんって、言うんだけど、

目を離したすきに、いなくなったの!」

 

「わかった、じゃあ、私と咲希が、

必ず、一日で捕まえます!」

 

「本当に?ありがとう!」

 

「じゃあ、咲希さんを、呼びに行ってくるから」

 

「うんっ!でも、どうして、咲希ちゃん?」

 

「咲希さん、私の助手になりたいって」

 

「そうなんだね!咲希ちゃん、仁奈ちゃんの助手になるんだね!」

 

「一日だけだけどね、じゃあ、呼びに行ってくるね」

 

 

こうして、仁奈は咲希を呼びに行った。

 

「よーし!名探偵、咲希の出番だね!」

 

「みのりさんの犬を探しに行くから、

そんな、推理に必要な要素は、全くないから!」

 

「みのりちゃんの犬を探すことか…

なんか、探偵っぽい!」

 

「それじゃあ、探しに行きますか」

 

「おーっ!」

 

 

こうして、仁奈とみのり、咲希の三人で、

サモちゃんを探しに行くのだった。

 

「あっ、そう言えば、六花ちゃんは?」

 

「浅野六花は、頭脳と知能、それと、推理担当だから、

今回の依頼は、体力勝負だから、

私と咲希さん、それに、みのりさんだけで、いいかな…って、思って」

 

「そっかー、あっ、後、あたしのことは、咲希でいいよ!」

 

「私の事は、みのりでいいよ!」

 

「えっ?じゃあ…咲希、みのり…行くよ!」

 

「あっ、こっちにいるよ!」

 

「みのり、どうしたらいいの?」

 

「私に任せて!」

 

そっと…近づいて…見事に捕まえるのだった!

みのりは、ペットの犬に、首輪をつけるのだった。

 

「何とかなったね」

 

「うんっ!何だか、探偵って感じ!」

 

「全然、活躍していないけどね」

 

「でも!こうして、お気づきになって、

よかったかも?」

 

「そうだね!」

 

「そうですね、私も、よかったと思います」

 

こうして、また、事件を解決するのだった。



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第三話 ウソは毒の味

宮益坂女子学園の高等部の、図書室には、

浅野六花と、白井仁奈という、二人の探偵コンビがいました。

 

「事件ですよ!仁奈ちゃん!六花ちゃん!」

 

そこには、天馬咲希ちゃんが、やって来た。

やれやれ、今日も彼女が依頼人なのか…

 

「大変なの!東山先輩が、グランドで倒れているの!」

 

「それは…事件ですね、

わかりました、現地に向かいます、

行きましょう、六花」

 

「う、うん」

 

グランドにて…

 

「あれっ?東山先輩は?」

 

「病院に運ばれて、治療中だ」

 

「どんな事件があったんですか?」

 

「スポーツドリンクを飲んだら、

突然、倒れて…

本人に聞いたらね、毒を飲んだような感じがするって、

言うから、だから、二人に頼んでみたの!」

 

「ありがとうございます…

さて、まずは、目撃証言から、行きましょうか」

 

「あの中で一番怪しいのは…塚川先輩だよ!

あの人、東山先輩と同じ、サッカー部に所属していて、

ライバル視していたんだよ!

スポーツドリンクや飴を渡すなんて、不自然だよ!」

 

「でも、スポーツドリンクを直接渡したのは、

別の人ですよね?」

 

「えっと…名前は確か…1年D組の渡辺裕子!」

 

「えっ?私は…その…やっていません!

だって、東山先輩は、私の憧れですから…」

 

「実際に持ってきたのは?」

 

「東山先輩の父親だよ?」

 

「でも、父親ですよ?それは、あり得ない気がします」

 

 

六花は思うのだった。

毒が入っているのは、スポーツドリンク?

それとも、飴?

 

「塚川先輩が犯人だよ!」

 

「違う!そんな、卑劣なマネは絶対にしない!」

 

「じゃあ、一体、誰が!?」

 

「わかった気がします!この事件の犯人が!」

 

「六花ちゃん、わかったの?」

 

「わかったんです、東山先輩に毒を飲ませた犯人が!」

 

「適当なこと言わないでよ!」

 

「いいえ、私が突き止めます!この事件の真相を!」

 

と、六花は、おさげを解いて、メガネを外した。

 

「東山先輩に毒を飲ませた犯人は…

渡部裕子さん!あなたですね!」

 

「えっ、なんで、私!?」

 

「あらかじめ、毒を仕込んでいたんです。

そして、手を握り、東山先輩にスポーツドリンクを飲ませて、

その毒が付いている部分に口を付けていたことで、

東山先輩の体の中に入ったんです!」

 

「証拠はどこにあるの?」

 

「直接、スポーツドリンクと飴を持ってきたのは、

東山先輩の父親であり、差し替えは不可能です、

そして、見たら、あなたの右手に、毒が付着しているからです!」

 

「うぅ!!」

 

「どうやら、真相に辿り着いたみたいですね」

 

「そうよ、私がやったのよ」

 

「どうした、あんな事を…」

 

「憎んでいたの、東山先輩のマネージャーを

一生懸命やってても、無視されるから、

だから…」

 

「それだけの理由で…」

 

「もしものことがあったら、どうするの?」

 

「…私、警察に出頭してくる…」

 

「なんて、残酷な理由で…」

 

こうして、残酷な形とはいえ、事件は解決した。

東山先輩は、一命を取り留めるのだった。

 

 

 



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第四話 一緒に歌いたい気持ち

白井仁奈の前に、天馬咲希が、やって来た。

 

「あっ!仁奈ちゃん!お疲れ様!」

 

と、いきなり、ハグしてきたので…

 

「ちょっと!いきなり、何するんですか!」

 

「ご、ごめんね?仁奈ちゃんに、会いたくて、つい…」

 

「そうでしたか、これでも、私は探偵の助手です。

この前なんか、みのりさんの犬を探すのに、

大変でしたよ…」

 

「えぇ?そうだったの?すごい!

みのりちゃんのペットを探していたの?」

 

「えぇ、探すのも、一苦労でしたよ…

調査のご依頼は、宮益坂女子学園の図書室へ、

六花さんと私が、一日で事件を解決します」

 

仁奈は咲希に、探偵の名刺を渡すのだった。

 

「わ~!本当に探偵だったんだね…」

 

「何か、困りごとがありましたら、

よろしくお願いします、

あっ、バンド活動は、どうですか?」

 

「バンド活動は…楽しいよ!

上手く言っている方だと、思うくらい!」

 

「そうですか、こんど、浅野さんと一緒に行きたいですね」

 

「来てくれるの?もちろんだよ!

ちょっと、恥ずかしいけど…

観に来てくれると、嬉しいな!」

 

「最近、音楽にも興味を持ち始めて…

聴きに行きたいな…って、思っていて…」

 

「そうなの?ぜひ、聴きに来て来てよ!

仁奈ちゃんも、一緒に歌おうよ!」

 

「歌えるかどうかは、わかりませんが…

浅野さんも、誘ってみようかな?」

 

「人数が多い方が、楽しいもんね!

ぜひ、誘ってきてね!」

 

「浅野さんは、一日で、記憶をリセットするから、

当日に言わないと、都合が悪いですから…

うん、誘っておきますね」

 

「うん!楽しみにしているね?」

 

 

当日

 

「咲希さん」

 

「この人が?」

 

「仁奈ちゃん!おはよ~!

来てくれて、ありがとう!」

 

「はじめまして、浅野六花です」

 

「天馬咲希です!会えて、嬉しいな~」

 

「よろしくお願いします…」

 

「それで、私たちは、何を歌ったら、いいのですか?」

 

「私たちの、オリジナル曲かな?

知っててくれたりする…?」

 

「歌詞を見て、音楽を聴いたら、

恐らく、歌えると思います」

 

「頑張ります!」

 

「ホントに?嬉しいっ!楽しみにしているね!」

 

「よーし!頑張る!」

 

「その意気だよ、六花」

 

そして、楽屋にて、仁奈と六花は、

咲希たちの前で、歌の練習をした。

 

「すっごくよかったよ!二人とも!

一瞬で、歌詞を覚えられるなんて!」

 

「六花さんの、記憶力は、一流です。

ただし、眠ったら、リセットされますけどね、

しかしながら、その覚えたことは、

寝なない限り、完璧に覚えていますから」

 

「すごい、記憶力…」

 

「それで、探偵を?」

 

「はい、浅野さんは、私の良きパートナーです」

 

「そう、言ってくれると、嬉しい」

 

「それじゃあ、練習再開するよ」

 

志歩の掛け声の元、六人で、歌の練習をするのであった。



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第五話 秘密の白バラ

宮益坂女子学園の図書室、

ここは、図書委員をやりながらも、

探偵をしている、白井仁奈と浅野六花という、

通称、(宮女の探偵コンビ)が、いるのであった。

 

「今日も平和ですね…

昨日は、歌を歌って、疲れました…」

 

すると、一人のクラスメイトから、

依頼が届くのだった。

 

「大変!シャワー室で、私の親友が襲われたの!」

 

「それは、大変、貴女の名前は?」

 

「私は、西田美奈、

親友の、右田由奈ちゃんが、何者かに襲われたの!

助けて!」

 

「わかりました、依頼を引き受けます、

行きましょう、浅野さん」

 

「うん」

 

幸い、親友の由奈は、意識を取り戻したけど、

犯人とアリバイのある人に、目撃証言をするのだった。

 

「私は、生徒会室に居ましたよ?

会長の仕事の手伝いで…」

 

「私は、ずっと、部室にいました」

 

「私は、部員たちを指導していたよ?」

 

「私は、もう一人の子と一緒に、

教室で勉強していたよ?」

 

「アリバイが取れましたね」

 

「ちょっと待って!私たちを疑っているの?」

 

「となると、やっぱり、西田さんが犯人?」

 

「ちょ、ちょっと!私は!

由奈を発見して、図書室で、依頼をしただけで…」

 

「ウソを付いている、可能性だってあるんだぞ!」

 

浅野六花の心は、ピンチに陥っていた…

 

(どうしよう…このままだと…

西田さんが、犯人になっちゃう…)

 

「どうする?六花?」

 

「わ、私の話を聞いて下さい!」

 

「わかった、聞こう」

 

「わかりました!私が犯人を突き止めます!」

 

犯行時、校内にいた、女子生徒五人が容疑者、

だけど、西田さん以外の、四人がアリバイがある。

 

「この事件の犯人は…斉藤有海さん!貴女じゃないですか?」

 

「有海さんって…野球部のマネージャーで、三年生の?」

 

「はい、調べてみたところ、

犯行時、貴女は部室で、洗い物をしていたと、

言っていましたよね?」

 

「そ、そうだけど?」

 

「でも、実際は違う、実際は、右田さんとの仲が悪く、

殺害をしようとした、違いますか?」

 

「フフッ…よくわかったな…

そうよ!私が、右田さんを殺そうとしたのよ!

殺せなかったけど…」

 

「でも、どうして?」

 

「憎いんだよ、アイツが、

だって、人を批判したり、悪口を言ったりする、

悪魔なんだよ?表じゃ、いい顔をして、

裏は最低最悪な、悪魔なんだよ!」

 

「だからと言って、人を殺したりするのは…」

 

「よくは、ありません」

 

「わかった、罪は償うよ、パトカー呼んで頂戴」

 

こうして、斉藤有海は、警察に連行されるのだった。

 

事件は次々と解決していく一方、

宮益坂女子学園内で、不穏な動きが、目立つのだった…



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第六話 白井仁奈と浅野六花

浅野六花は、彼女のプロフィールノートを確認すると、

3月3日のひな祭り生まれの15歳。O型

身長153㎝ 体重40㎏ スリーサイズ 79-54-80

 

宮益坂女子学園高等部の制服に、

黒ぶち眼鏡と白髪三つ編みが特徴の女子高生。

探偵だが、記憶が一日(正確には眠るまで)しか持たないため、

基本一日で事件を解決している。

そのため、「最速の名探偵」・「忘却探偵」などの異名を持つ。

1日以内だと記憶力は非常に優れている。

やむなく日をまたいで活動する場合、ひたすら睡魔と戦う、

または、仁奈にお願いして、資料を作り

翌日確認して、推理の続きを行うらしいが、

本人としては、一日で解決したいという、気持ちが強い。

 

基本的には1日以内で解決できない事件は引き受けず、

この体質ゆえに事前の依頼予約も受け付けないが、

このお陰で突発的な事件に巻き込まれる厄介にとって、

五本の指に入る名探偵となっている。

 

過去の経歴は、一切不明だが、

相棒の白井仁奈曰く、両親がいなく、

白井仁奈の父親の、白井壮吉に拾われて、

それ以来、仁奈と六花は彼に育てられるようになる。

 

普段は制服姿の六花だが、

浮かれると肌の露出が多い砕けたファッションになる。

仁奈曰く、一度着た服は二度と着ない、らしく、

私服は、一着しか持っていないとの事。

 

仁奈が言うには、

長期にわたる事件は、引き受けておらず、

あらゆる、機密を平然と平気で踏み込める、

度胸が六花には、あるらしい。

 

何せ、一日で忘れてしまうからだ。

 

「何を話しても、寝たらリセットか…」

 

「はい、何を話しても、見ても、

一日経てば、忘れます。

仁奈や、咲希さんと出会った事実は、

明日になると、消えて無くなりますから」

 

そのため、咲希からも、

会う度に、初めましてと言われるのが、

若干、辛かったりするらしい。

 

そのため、高校受験の時も、

ぶっつけ本番に近い状態だった。

 

記憶の特性上、覚えられないからだ。

そのため、仁奈のお手製の五教科のテスト資料で、

彼女は、見事に、宮益坂女子学園の

中等部に通うことになった。

 

そして、高等部に進学するのだった。

 

 

そして、今日、六花は、一歌と咲希と遊びに行くそうだけど…

大丈夫かな…?と、心配するのだった。

 

「大丈夫なの?六花?」

 

「大丈夫です。だって、私のプロフィールノート、

ちゃんと、仁奈ちゃんが、書いているじゃないですか」

 

「そ、そうだけど…」

 

少なくとも、一歌や、咲希、みのりやこはねは、

私と六花にとっては、友達のような存在だ。

 

 

 



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第七話 奪われた宝石

白井仁奈と浅野六花の元に、

依頼人がやって来た。

 

「あっ!探偵さん!探偵さん!

あたしの依頼を聞いてくれませんか?」

 

「貴女の名前は?」

 

「鳳えむです!

咲希ちゃんから、聞いたんだけど、

一日で事件を解決する、

すっごい探偵さんだって!」

 

「まぁ…一応、一日で解決は、出来ますが、

依頼にもよりますが…今回は、どんな依頼ですか?」

 

「演劇部の催しで、ロミオとジュリエットを、

やるみたいだけど、天使役の女の子が、

怪我で出らなくなったの!

だから、六花ちゃんに天使の役、

やってもらおうかと思って!」

 

「そうでしたか、いいですよ」

 

「うん、やってみる」

 

「よーし!セリフも無いけど…

お礼はするから、天使役をお願いします!」

 

「わかりました、鳳さん、

その依頼、私たちが引き受けます」

 

こうして、仁奈と六花は、えむからの依頼を引き受けるのだった。

 

 

しかし、いざ、演劇部を覗いてみると、

犯行予告が届いていた。

 

「これは…!」

 

「犯行予告…?」

 

(エメラルドは、頂いた。

無事に、小森里奈を返したければ、

決して、警察に連絡するな)

 

「里奈ちゃんって…あたしと同じクラスの演劇部の子だ!」

 

「鳳さんと、同じクラスのですか?」

 

「うんっ!この子ね、演劇がすっごく上手でね、

時々、教えてもらっているんだ」

 

「でも、これ、イタズラなんじゃ…」

 

「よーし!名探偵えむが推理しちゃうよ!」

 

「素人が推理してはいけません、ここは、

私たちに、任せてください!

だって、依頼されているので」

 

 

「あっ!いた!」

 

「貴女は…私と同じE組の?」

 

※仁奈と六花は1年E組

 

「はい、演劇部の、小島七海です。

里奈ちゃんが、何者かにさらわれて!」

 

「それは、何時頃から?」

 

「昨日までは、いたけど…

今日は見ていないですね…」

 

 

「そうですか…」

 

 

後日、犯人と思わしき人から、

図書室に、犯行予告が届いていた。

 

「これは…第二の犯行予告!?」

 

「…」

 

(フェニックスワンダーランドに来い、

そこで、小森里奈が、いる)

 

「むむむ!これは!名探偵えむの出番だね!」

 

「フェニックスワンダーランドに、彼女がいるのか?」

 

「うんっ!きっと、そうだよ!早速行ってみようよ!」

 

「でも、場所を突き止めないと!」

 

「この暗号を解けば…待ってて…」

 

こうして、仁奈と六花とで、

場所を突き止める、暗号を解き、

その場所へ…

 

その場所とは…古い倉庫だった。

 

「ここが…里奈ちゃんのさらわれている場所?」

 

「そうみたい」

 

すると、そこには、里奈ちゃんが倒れていた!

 

「小森さん!」

 

「うぅ…私は…どうして、ここに?」

 

「無事でよかったですね」

 

「無事で、よかったね!」

 

あっ、ここに、手紙が落ちている。

 

仁奈がそれを読むと…

 

(見事な推理だったよ、居場所を突き止めるとはね、

でも、エメラルドは、頂きました。

そして、ボクに会う事は、出来るかな?

では、いずれ、会おう、怪盗キッド)

 

「怪盗キッドって…」

 

「世間を騒がしている、あの怪盗キッド!?」

 

白井仁奈と浅野六花は、

いずれにしろ、怪盗キッドと、会える日は、

果たして、来るだろうか…?

 



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第八話 探偵の休日

白井仁奈と浅野六花は、二人でデートに行っていた。

 

デートの途中、迷子の女の子を見かけたので、

話しかけてみた。

 

「おねーちゃん達、わたし…迷子なの…」

 

「迷子…あっ、私たちに任せてください!

私たち、探偵なんで!

人探しも、仕事の内ですから!」

 

「あの…お名前は?」

 

「わたし…コヨミって、言うんだ…」

 

「じゃあ、コヨミちゃん、

お母さんは、必ず私たちが見つけ出します!」

 

「ありがとう!おねーちゃんたち!」

 

こうして、私と六花とで、

コヨミのお母さんを探すことになったのですが…

 

そう簡単には、見つかりません。

 

 

すると、六花がコヨミの体を嗅ぎだす。

 

「…!六花、何しているんですか!?」

 

「これは…メロンソフトクリームの香り」

 

「メロンソフトクリーム?

あっ、向こうに、ソフトクリーム売り場がありましたね、

行ってみましょう」

 

 

しかし…

 

 

「コヨミちゃん、お母さんはいますか?」

 

「ここには…いない…」

 

「うーん、あっ、案内地図があります!」

 

「本当ですね、案内図が建てられています、

これで、ヒントを得れば…」

 

「あっ、おもいだした!」

 

「何か、思い出したの?」

 

「いぬのコロにバイバイしてね、

はしをひとつわったの、

それでね、おおきなふねをみてね…」

 

「だとしたら、港の方という、

可能性がありますね」

 

「仁奈ちゃん、わかったよ、

コヨミちゃんのお母さんの居場所」

 

「えっ?わかったんですか?」

 

「見てください、どの道も、

あまり変わらない様に見えますが、

コヨミちゃんの話す条件で、

この公園までいけるルートは、一か所だけです」

 

「橋を一つ渡る、大きな船とは、

恐らく、遊覧船の事だと思います。

その条件で、この公園に辿り着ける場所は…

ここです!」

 

「それじゃあ、そこに行きましょう」

 

 

こうして、コヨミちゃんの、

お父さんとお母さんに出会い、

何とか事件は解決するのだった。

 

コヨミちゃんと別れて…

 

 

「もう、夕方ですね」

 

「でも、この記憶は、一日で無くなりますので…」

 

「大丈夫ですよ、私が覚えていますから」

 

「うん、ありがとう、仁奈ちゃん」

 

「それじゃあ、私たちも、帰りましょうか」

 

「そうだね」

 

「それにしても、今日の一件、

六花さんのお手柄でしたね」

 

「そんなことないよ、仁奈ちゃんの行動力のおかげだよ」

 

「辿り着くのに、時間がかかりましたね、

後、コヨミちゃん、妙に六花さんに懐きますね」

 

「私…子どもに懐かれたこと無いけどね」

 

「過去にありましたよ?」

 

「私が覚えていないだけかな?」

 

「そうですよ、誰かが忘れても、

誰かが覚えているはずですから」

 

こうして、二人は帰路に着くのだった。

 



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第九話 能面の謎

白井仁奈と浅野六花は、旅館にやってきた。

 

女将がお出迎えをしてくれた。

 

「いらっしゃいませ、

白井様に浅野様ですね、お部屋にご案内します」

 

「これは…」

 

「たくさんの能面」

 

能面が通路の壁にズラリと並んでいた。

 

「その能面は、旅館の名物なんですよ。

我が旅館は、特設の能舞台が自慢です、

ここから、ご覧になることが出来ますよ。

ほら…旅館の川の向こうに、能舞台があるんです」

 

「能面、色々な種類があるんですね」

 

「あら、お若いのに、

能面に興味があって?」

 

「はい、本で読んだことがあるんです」

 

「そうでしたか…

もうすぐ、お部屋に到着します」

 

 

仁奈と六花は、荷物を置いた後、

温泉に向かった。

 

「気持ちがいいお湯ですね…」

 

「うん、とっても気持ちがいい」

 

 

温泉に浸かった後、仁奈と六花は、

能面の舞台を観に行くことになった。

 

 

 

能面の舞台が終わった後、

仁奈と六花と同い年くらいの、女の子四人が、

近くを通りかかった。

 

女将さん曰く、この旅館の宣伝で、モデルを雇っているらしい。

 

「この子達は、貴女達と同い年くらいで、

この旅館の宣伝モデルをやっている子達なんです」

 

「私達!モデルの卵でーす!」

 

平田 祐奈

若島 花

森井 理亜

中山 芹那

 

の四人が挨拶をするのだった。

 

 

しかし、小声で悪口を言って来た。

 

(何、この子、

メガネかけてる女の子、地味じゃない?)

 

 

すると、仁奈が反論した。

 

「貴女達には、地味に見えるかもしれないけど、

結構、すごい子だから!」

 

「そ、そうなんだ…」

 

「行こ、六花」

 

「うん…」

 

 

 

すると、フロントが騒がしい。

 

「あの、何かあったんですか?」

 

「固定電話が通じなくなっているんです!」

 

それだけでなく、

芹那の携帯電話が通じなくなっていた!

 

「アタシの携帯が通じなくなっている!」

 

 

番頭が調べたところ

 

「アンテナが壊れています、

旅館全体の電話が通じなくなっています!」

 

「えっ?」

 

「あらまぁ…」

 

「修理を頼んで来てよ!」

 

「それは、無理ですね。

先ほど、見に行ったら、道路が通行止めになっていました」

 

「でも、今、非常事態なんだよ!」

 

「細い道です。しかも、夜になったら危ないので、

明日の朝になるまでは…」

 

「仕方ないわね…」

 

「実は私達、四人のモデルは、

ネットで知り合って、今日初めて、会ったんです」

 

「そうなのですね」

 

仁奈は思うのだった。

 

(嫌な予感がする…)

 

 

仁奈と六花が、廊下を移動している時に、

女将さんと出会った。

 

「女将さん」

 

「お嬢さん達…見てください。

それが、一つ能面が無くなっているんです」

 

「えっ?」

 

「誰か持って行ったんでしょうか?」

 

「仁奈、女将さん、見て。

能舞台に明かりが灯っている」

 

「電気の消し忘れかしら?」

 

すると、妙な光景を見た!

 

能面を被った誰かが、モデルの女の子を、

襲い掛かり、その女の子が倒れていた!

 

 

山奥で起こった、犯罪事件。

不気味な能面を被った人物が、

モデル志望の女の子を襲ってしまう!

 

果たして、この事件を、

白井仁奈と浅野六花は、解決できるだろうか?

 

 



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第十話 モデル襲撃事件の真相

白井仁奈は目撃証言を集めることにした。

 

「能面を被った、変な奴が、

花ちゃんを襲ったって、どういうこと!?」

 

「私たちが見た時、倒れた花さんの傍に、

立っていて…その後、すぐに逃げたんです」

 

「幽霊じゃない!?」

 

「後、このような文章がありました」

 

(お前たちの中に犯人がいる!

罪人には罰を!)

 

「じゃあ、この中に犯人がいるの!?」

 

「これは、マズイ状況ですね…

スマートフォンも通じない、

通行止めが解除されるまで、この道は通れない」

 

「それじゃあ、能面旅館に閉じ込められたの!?」

 

「調査の必要があるみたいですね。

女将さん、泊っている人の従業員の人、

全員を教えてもらいたいです」

 

「どうして?」

 

「そ、それは…」

 

「まぁ、いいですよ。

お客様は、仁奈さんと六花さん、

それとモデルの女の子の4人だけです。

従業員は私と竹蔵、

そして、仲居と板前が一人ずついます」

 

「わかったかもしれない」

 

「六花、わかったのですか?」

 

「この事件の犯人が!

仁奈、手伝ってもらえませんか?」

 

「えぇ」

 

 

ある部屋の一室。

402号室、仁奈は能面を被った犯人が来ることを、

予め予想して、その部屋で寝たふりをした。

 

そして、能面を被った犯人に蹴りを入れた。

 

「待ちくたびれましたよ、犯人さん」

 

「仁奈!」

 

「犯人は、女将さんだったんですね」

 

「どうして、貴女達が?」

 

「ここは、開かずの間の402号室。

わたし達が女将さんの計画に気づいたのは、

この部屋の存在です。

本来なら、存在しないはずの、この部屋、

しかし、女将さんは、一切、言っていなかったんです!」

 

「それが、どうした!?」

 

「この部屋は、マスターキーしか、開けることができない

でも、女将さんに案内されて、

花さんは一切気づかなかったんです。

この部屋で、マスターキーを使い、

花さんを襲ったんです」

 

「で、でも!能面を被った怪しい人を見たけた時、

貴女達と一緒だったわ!」

 

「能面は人形だったんじゃないですか?」

 

「!!」

 

「能舞台の天井には、釣り鏡を吊るす為の、

滑車が付いているんです。

滑車から、隣の小部屋まで釣り糸を通して、

もう一方は鏡の間に固定した釣り竿のリールに繋げておく。

そこに、能面と服を着させた人形を釣り糸でぶら下げておく」

 

「調べたところ、この小部屋は、

歯車が付いていた。

釣り糸が巻き取られて、リールの釣り糸は、

歯車の動きに合わせて、少しずつ繰り出されて、

能面の人形はロープウェイのように、移動する!」

 

「あぁ、そうよ…私がやったのよ…復讐のために!」

 

「復讐…!?」

 

「モデルたちが醜いうえに、気に入らなかっただけよ!

だから、全員、殺したかった!

でも、一人も殺せれなかった!」

 

「逆恨みじゃん…」

 

「でも、罪を憎んで人を憎まずです」

 

こうして、悪夢の能面襲撃事件は、

幕を下ろすのだった…



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第十一話 対決!怪盗キッド!

また、今日も世間を騒がす怪盗がいた。

 

「怪盗キッド!今日こそ、貴様を捕まえてやる!」

 

「可愛い探偵さん、月下の淡い光の元で、

また、お会いしましょう」

 

ひらりと白いマントがなびき、

煙のようなもので、まき散らし、屋上から消えていく。

 

私たちは、その姿をじっと、見つめていた。

 

浅野六花と、この私、白井仁奈は、

怪盗キッドを捕まえるために、警部に連れてこられた。

 

しかし、また逃げられてしまったため、

捕まえることが出来なかった。

 

私は、六花の手を握りしめながら、

その光景を見ているのだった。

 

「仁奈、必ず、私たちの手で怪盗キッドを捕まえましょう」

 

「…うん」

 

繋いだ手から伝わる、圧。

六花は人一倍、正義感が強かった。

 

六花が考える人ならば、私は体力で勝負する。

そして、怪盗キッドという、宿敵を捕まえることだった。

 

数日後、私と六花の元に、怪盗キッドからの予告状が届いた。

 

(闇が月の光を覆い隠す頃、胸に秘めた貴女の記憶を

頂に参上いたします 怪盗キッド)

 

白井探偵事務所に届いた、予告状

 

(記憶)という、言葉に、引っかかっていた。

この(記憶)は、一部の人しか知らないはずなのに、

知っているような内容。

 

六花は一日で、記憶を失うことが多く、

機密性の高い事件に呼ばれることが多く、

眠った瞬間に記憶が消えるため、

目が覚めると、自分の名前すら忘れる。

 

六花が起きた時、自己紹介から初めて、

今まで何があったのか、私たちが誰なのか、

不幸中の幸いか、六花はすぐに受け入れてくれるため、

大変な思いをすることは無かった。

 

そのことから、六花の(記憶)を欲しがっていることを考えると、

間違い無い。怪盗キッドの仕業だ。

 

 

「警部、ありがとうございました」

 

「あぁ、怪盗キッドを捕まえればいいんだが…」

 

 

 

その翌日、六花の部屋に、六花の姿が無かった。

 

(もしかして、誘拐!?)

 

 

一通の手紙が落ちていた。

 

(六花は、どこかで眠っているよ。

そうだな…博物館の屋上にて、

夜中の25時、月下の淡い光の下で会いましょう。

怪盗キッド)

 

「…!!」

 

 

 

25時、私は早速、博物館の屋上へと向かった。

そこには…!

 

「怪盗キッド!今回の目的は何!?

六花の記憶を奪って何をするつもり!?」

 

「お嬢ちゃんに一つ、助言をさせてもらうぜ。

世の中には、謎のままがいい方もあるってね」

 

「…っ!」

 

「それで、僕を捕まえるの?」

 

「いいや、六花を助けるのが先」

 

「じゃあ、僕はこのまま消えよう」

 

怪盗キッドがそう言い放つと、

白いマントをなびかして、消えていった。

 

怪盗キッドが私たちに何を求めようとしたのかは、

謎のままだった。

 

何が目的なのかも、聞き出せれなかった。

誰にも言えない何かを抱えているかのように見えた。

 

「何も解決しなかったな…あっ、六花を助けに行かないと!」

 

私は六花を助けるべく、屋上の隅っこへ、

そこには、スヤスヤと眠る、六花の姿が…

 

コートがかけれれていた。

 

そして、六花の下に置かれていた手紙を読むと…

 

(お嬢さん。またいつか、月下の淡い光の下でお会いしましょう)

 

と、書かれていた。

 

「キザな怪盗…」

 

と、私は、そう呟いた。

 

 



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第十二話 謎の転落事件

早朝に、グランドで倒れている、

人物が発見された。

 

「これは…?」

 

「どうやら、転落死らしいけど、

ドームの真ん中で、倒れるなんて、

どう考えても不審ね…」

 

「あっ、どうも、糸川です。

階級は警部です」

 

私と六花は、糸川警部と一緒に、

現場を調べていた。

 

「転落死とはいえ、

どこから、倒れたんでしょうか…?」

 

「死体についてですが、

百田良太郎さん」

 

「有名な方なんですか?」

 

「なにせ、キャッツの野球選手で、

ベテランの選手で、ピッチャーだったからな」

 

「それじゃあ、練習中に心臓発作で倒れているわけじゃ…」

 

「当初は、そう考えていましたが…」

 

「どうも、転落死だったみたいです。

高所から落下して、全身を強く打って、

死亡したようなんです」

 

「高所って…どこから落ちたっていうんでしょうか…?」

 

「ですよね」

 

「全身打撲によるショック死…即死でした」

 

「自殺か他殺か、あるいは事故か、不明です。

遺書らしきものはなかったです」

 

六花は考える。

 

「それじゃあ…ピッチャープレートにつまずいて、

転んだ事故とか?」

 

「それは…あんまりな死に方…」

 

「遺体の発見時の服装などは?」

 

「えっと…いわゆる、ランニング用のジャージ姿でした。

グローブやボールは無かった」

 

「じゃあ、この説は却下」

 

(六花、真面目に考えていたの!?)

 

「理論上、一流の単距離ランナーが、

全力疾走して、固い壁にぶつかれば、

即死出来ると聞いています」

 

「その理屈で、野球選手なら、ボールを投げる勢いで、

転べばと…?」

 

「いえ、言いませんけどね。

ただ、犯人はそう見せかけようとした、可能性はあります」

 

「えっ?」

 

「まだわからないけど、

何らかの人の意図が絡んでいるように思うの」

 

 

「事故だった場合でも、故意が絡むことなんて、

あるんですか?」

 

「ありますよ。

どんな事故も、誰かが何かをした結果、

起こるものですからね」

 

「そういえば、この球場は使われていないのですか?」

 

「現在は、営業停止中です。

試合の予定は、全てキャンセルされています」

 

「一日でも早く、この球場を使用可能にするために、

仁奈さんと六花さんに依頼がいったのもあるかと…

いつまでも、マスコミに面白がられる訳にも、

いきませんからね」

 

「マスコミが、面白がっているんですか?」

 

「マスコミというよりは、ファンですね。

ピッチャーがマウンド上で死ぬ。

ちょっとした、お祭り騒ぎですよ」

 

「ゴール!」

 

「どうしたの?六花?」

 

「お祭り騒ぎに水を差すのは、気が引けますが、

これが、私たちの仕事ですからね」

 

「糸川警部」

 

「はい」

 

 

「日差しを遮るものが無いので、

ベンチで続きを話してもいいですか?」

 

 

こうして、三人はベンチに座るのだった。

 

(遮るものが無い、空から転落したと推測出来るのか?

飛行機から落ちたって説も出ている位だ。冗談半分だが)



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第十三話 不審な死の謎

六花が口を開く。

 

「お祭り騒ぎに水を差すのは気が引けます。

これが私…いや、私たちの仕事ですから」

 

「えぇ、そうですね、六花」

 

「糸川警部」

 

「はい」

 

「どこか、他の場所で飛び降りた、

百田さんを誰かが運んできた。

と、見るべきでしょうか?」

 

「えぇ、でも、それはないんですよ。

死体を移動させたら、必ず痕跡が残りますから、

死斑や死後硬直の具合で、

今ではかなり正確になっているんです」

 

「今は…か」

 

「?」

 

「百田さんの今はどうだったんですか?」

 

「はい、ベテランと言えば、

聞こえはいいですが、体の故障も多かったようで、

勇退を勧められた時は、非常に嫌がっていた素振りを、

見せていたようで、(死ぬときはマウントで)

という、一点張りですからね」

 

「死ぬときはマウントで死にたい…」

 

「インタビューの発言ですから、

脚色されている可能性もありますし、

自殺…と疑われる、もっともの要因になっています」

 

「ふむ、自殺説、意外と濃厚ですか?」

 

「成績が伸び悩んでいたのは事実ですが、

遺書はありませんし、あくまで世間がというか、

マスコミがというか、自殺じゃないのに、

そう思われたら、嫌でしょうに。

いくら、名誉の死と語られても…」

 

「名誉の死…か」

 

「え?それって、どういう?」

 

「仁奈!キャッチボールしたい!

気分転換に!」

 

「も~う…六花ったら…」

 

「あのね、仁奈、私、始球式の経験があるの!」

 

「んな訳あるか!」

 

と、仁奈は六花に、ボールを投げつけた。

六花はキャッチした後、投げ返す。

 

「ようやく、私を振り回す、六花に…

って、六花?」

 

六花が倒れていた!

 

「大丈夫?」

 

「こんなところで、私が死なれたら、

ファンが泣くし、幻想でしかない」

 

「何が言いたいの?」

 

「マウンドの上で死にたい。

という、彼の発言を真に受けた、熱烈なファンが、

彼の望みを叶えてあげた線。

つまり、殺人というケース」

 

熱烈なファン。確かに想定するべき容疑者だ。

 

熱烈どころか、熱狂的なファンが、

成績を落としていた、百田良太郎を見るに堪えず。

 

「ただ、そんな人間が、そばにいたら、

何となく、思い浮かびますが…」

 

「六花、何かわかる?って、六花!?」

 

六花は網をよじ登っていた!

 

「危ない!降りて!」

 

「私はボルダリングが得意です!

忘れちゃったけど!」

 

ボールを取った直後、六花は落ちた!

 

それを仁奈が六花をキャッチした。

 

しかし、六花は気絶してしまい、

記憶がリセットされてしまう!

 

「六花!」

 

「おはようございます」

 

「大丈夫…って、言ってられないか、

記憶がリセットされたし」

 

「はい、意識はクリアされています」

 

「…意識があって良かった…

ということは、やっぱり…」

 

「貴女は誰ですか?」

 

「白井仁奈。後で詳細を教えます」

 

「ねぇ、もしかして、私、始球式に呼ばれたんですか?」

 

「違う」

 

仁奈は六花に、事件の経緯を伝えるが…

 

「何を言っているのですか?

バックネットによじ登った訳ないでしょう?

適当なことを言わないでください。

そして、この人は?」

 

「糸川警部です」

 

「後、六花、前も後ろも、土まみれよ」

 

「あっ、失礼」

 

事件は、まだまだ続きそうだ。



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第十四話 真犯人は誰だ!

仁奈は改めて、事件の詳細を、六花に言った。

 

「なるほど、そういうことでしたか」

 

「そして、百田良太郎が落下したのは、

マウントで」

 

「いえ、そこが落下点とは、限りません」

 

あっ、そうだった!

記憶を失っているから、また同じ話を!

 

「ですが、死体は移動させたら、痕跡が残るし…」

 

「移動させたら…ですよね?

つまり、死体じゃなかったら、移動させても、

わからないのでは?」

 

「いや、それは違う話」

 

「えっ?」

 

「確か糸川警部の話によると、

百田さんがあの辺りから、落ちると仮定しましょう。

致命的なダメージは負いました、

(ほぼ即死)です。ですが、彼はまだ生きていた。

生きていたんです。這うようにして、

マウントまで移動して、そこで、絶命された」

 

「確かに説明は付くけど、

金網に上る理由もわからない上に、

グラウンドやジャージに痕跡が残るはずだ」

 

「そうですね、じゃあ、誰かが運んできたのかな?」

 

マウントで死にたい。という彼の想いをくみ取って、

少なくとも、マウント上で転落死の説明は付く。

 

あくまで短距離なら。

 

「だとしても、私が落ちたと、天承される、

このバックネットでは、ないでしょうね」

 

「所説みたいに言われてもね…」

 

「こんな、か弱い私が落ちても、

ケガ一つありませんからね」

 

「そうね、彼の体重で、ここを登る自体は、

無理だと思う」

 

「なるほど。一応、他のフェンスも見てみましょう」

 

「ここの警備体制は、どのようになっていましたか?

夜中に忍び込むことは、可能でしょうか?」

 

「関係者以外立ち入り禁止でした。

この辺りは、治安が悪い所ですから」

 

「逆に言えば、関係者なら、立ち入ることが可能かと」

 

「ふむ…やはり、フェンスから落下した線は無いですね」

 

「球場の外という、可能性も否定できません。

まぁ、周辺に高層建築物は、無かったです。

名誉の死…も、気になるところです」

 

「このフレーズが、私には、

それが、この事件の肝で、ある気がして、

ならないんです」

 

「名誉の死…名誉の死…名誉の死…」

 

「念仏を唱えるつもり?」

 

「いえ、私、ちょっと走ってきます」

 

「ちょっと、り、六花!?」

 

数分後。

 

「仁奈!糸井警部!」

 

「はやっ!」

 

「ありがとうございます!

仁奈や警部のおかげで、事件の真相が推理できそうです!」

 

「えっ?」

 

「仁奈と一緒に探偵が出来て、良かったです!

仁奈と共に、探偵が出来て、とても、光栄です!」

 

「罪悪感が半端無い上、それを今、ここで言っちゃうの!?」

 

「じゃあ、桃井良太郎さんは、どこから、落ちたんですか?」

 

「それじゃあ、説明します。

どこから、地面に落ちたのではなく、

どこの地面から落ちたのか、

を、問うべきです。例えば…」

 

六花が下に指を指した。

 

指を指したのは…マンホールだった。

 

「ここです」

 

「どうして、マンホール?」

 

「今から説明します」

 

「はい」

 

導き出した、事件の真相は!?



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