〜ハイスクールD×Dに転生したらしい〜 特典は『市丸ギン』…ってはぁ!? (四木シロ)
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転生後のプロローグ
プロローグ


side???

 

俺は死んだ。

 

死んだことにさえ気づかずに死んだ……らしい。

なぜこんな曖昧な表現かというと、

 

『貴方は死にました。あなたには二つの選択肢が あります。

①記憶を消去し、輪廻の輪に還る道。

②記憶を持ったまま、別のどこかの世界に転生する道。

2つ目の道を選ぶ場合には特典がランダムで与えられます。

転生先についてもランダムに決められます。ご自由にお選びください。

何かご不明な点があれば備え付けの電話から以下の番号にお問い合わせください。

 

お問い合わせ先 0120-○○○-XXXX 』

 

 

自分が死んだという旨が書かれた書置きと備え付けの固定電話、そして周りを見渡せば異常とも 取れるほど真っ白な部屋にドアが二つ…。

①と②の看板が掛けられているところからして、あのドアの先がそれぞれの道なのだろう。

 

「どう見ても神様転生(テンプレ)だよなぁ…」

(というか、あの世ってフリーダイヤルなのか?)

 

ーこのあと滅茶苦茶お問い合わせしたー

 

取り合えず現状分かったこと、

1、自分は列車事故に巻き込まれたこと

2、自分の家族がちゃんと自分の死を乗り越えたこと。

3、輪廻の輪に還る、というのは今までの記憶をすべて消し、同じ世界に生まれなおすこと

(稀に消すのに失敗するらしいが)

4、大量の死者が出たため、あの世はその対応に追われていること

5、上司がバックレやがったふざけんな

 

以上だ。後半愚痴じゃねえか。

うーーーん、死ぬ前の世界にそこまで愛着もないしなぁ、②でいいか!

そう思いつつ現状の非現実感にワクワクしながら、②のドアに手をかけた。

 

そして、ドアを開けた先には……

 

 

 

 

『転生先』、『特典』と書かれた箱があり、上に丸い穴が開いていた。

 

……うん、雑ゥ!!!

 

何このアナログ!もう少し近代的でいいじゃん!ファンタジーでいいじゃん!

空中に投影される感じでもいいじゃん!俺の少し前までの期待感返してよぉ!!

はぁ~(ため息)、まあいいや早速引いていこうかね。

 

ゴソゴソ……ッス

 

「転生先は…『ハイスクールD×D』か、確か二次創作小説で読んだぞ。パワーインフレがすごいんだっけか?

ま、一般人が過ごすにはそこまで危険性もねぇでしょ。」

 

ピロリロリーン! ッス!

何か立った気がするが気のせいだ。気のせいだろう。気のせいだよね?(震え声)

さて、気を取り直してお次の特典はっと、

 

ゴソゴソ……ッス

 

「えーーっと、なになに?………『()()()()』ってはぁ!?!?

 

ところでだが、皆様はBLEACHなるマンガをご存じだろうか?アニメでもいいぞ?

『市丸ギン』というのはその中に出てくるキャラクターの中の一人でもなかなかの人気キャラなのである。詳細はネタバレの恐れがあるから言わないよ?

と、まぁあまりのネームバリューに俺は動転してしまった。そう、してしまったのだ。

俺は動転してしまったあまり、自分の、周りの変化を見落としてしまっていたのだ。

そう、()()()()()()()()()()()()()()()という変化を

 

こんなところまでテンプレかよぉぉぉぉぉぉ!!!!

 

そうして、『()』は『ボク(市丸ギン)』になった。




初めまして、四木(よつぎ)シロです!この度は自分の作品を読んでいただきありがとうございます。何分初めての試みなので、色々と拙い部分があると思いますがよろしくお願いします。
また、『こうしたほうがいいよ!』等のアドバイスや感想など言っていただければありがたいです。


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転生後のプロローグその1

どうもです!四木シロと申します!!今話から転生後のお話となります。…で、書いてみた感じ原作突入までまだ少しかかりそうです。また、このお話からオリキャラが出てきます。苦手な方はブラウザバック推奨です。それでもいい方はどうぞ!


俺がボク(市丸ギン)になってから5年が経った。

 

え?急展開すぎやって?しゃーないやん、誰もボクが赤ちゃん時の話なんて興味ないやろし、

何よりボクが思い出したくないんや。なんで意識はっきりしたまんま授乳を受けなあかんの。今生で死んだら絶対にあの世に文句言わなあかん。

まぁ、こうして転生できたわけなんやけど、あの世での通りならここは『ハイスクールD×D』の世界なんやろうけど、今のところこういった問題はないなぁ。

そう、この“世界”は問題ないんよ。問題は貰えた特典のほうなんよなぁ。今のボクの容姿はまんま、幼少期の市丸ギンになってる。

いや…まんま!?特典として斬魄刀だけ~、とか能力系か思うたら容姿なん!?あの世への文句が一つ増えたみたいやなぁ…

さらには、ここまでの話から分かるかわからんけど、口調が京都弁になってる。この(市丸ギン)肉体に引っ張られるみたいやね。

(作者は京都弁を話さないのでできるだけ再現?しようと思いますが、おかしい点はあると思います。by作者)

 

そんなこんなで転生したボクは今何をしているのかというと……

 

「『君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 焦熱と争乱 海隔て逆巻き南へと歩を進めよ』破道の三十一!赤火砲!!

 

ボカ――ン!!

 

適当な山中で鬼道を試してます。だってここハイスクールD×Dの世界やで?何かしらの自衛策は欲しいやん?ちなみに、実験の結果は……

 

ゲッホ!ゲホゲホ!!ゲッッッホ!!

っの、能力系…付けてくれてたみたいやね。あの世の運営の皆様、文句言うてすんませんでした。」

 

……結果は成功ととっていいか失敗ととっていいかはわからんけど鬼道は使えた……暴発はしたが。とりあえず、能力系は使えるみたいや。あとは瞬歩と斬魄刀かな?白打(はくだ)は体術やからどうとでもなるやろうし。

 

「………………瞬歩ってどうやるんや?」

 

あれって霊体やないと出来ひんのちゃうかったけ?今のボクは受肉をしている状態なわけで、

 

「あれ?っちゅうことは今のところは瞬歩…無理?」

 

ま、まぁ?瞬歩出来ひんと死ぬ…ちゅうわけでもないし?問題あらへん、あらへん!(震え声) ウン、モンダイアラヘン…アラヘンッテイウタラアラヘン。

問題あるんやろうなぁ、この世界速い人多いやろし。

 

「あとは斬魄刀なんやけど……。」

 

現状ボクは()()()()()()()()()。生まれてこの方刀なんて持ったこともないし、見たこともない。

 

「鬼道も使えるのに、斬魄刀がないっちゅうのも考えづらいんやけどなぁ。」

 

この問題は考えてもしゃーない…これも自分の身を守るためや、今できることをやっていこか。

 

「目下の問題は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この汚れとケガ、どう親に説明しよか?」

 

気が付けばもう夕暮れ時で、家に帰らなあかん時間になっていた。ところで、話変わるけど今世のボクが生まれ落ちた家についてやけど…

 

「こぉら、ギーン?何ですか、そのけったいなケガと土汚れは?どないしたらこんなに汚れるんです?説明しなさい。」

 

「いや、ちゃうんすよ、お母さん様。これはあの、公園の木に登ってたら落ちてもうただけでして。」(早口)

 

「ふーーん?おかしなこと言いはりますなぁ?木から落ちた、という割には背中側はほとんど汚れてあらへん。そのくせ、正面はえっらい汚れ様ですねぇ?」

 

「いや、あの、腹側から地面にダイブしたんです。」

 

「へぇ?腹から落ちはったのに正面にケガしはらなかったんで?」

 

「え、えぇーーと、そのぉ…」

 

「ギン、詰みだよ。諦めな?こうなった母さんには勝てない。」

 

目の前におわす、銀髪で和服にエプロンを着けた見た目10代といっても通るような女性は、今世の我が偉大なるお母さん様、『市丸 華(いちまる はな)

 

そして、ボクに諦めろと言いつつ隣で同じく正座をしている、見た目20歳代ぐらいで白髪長身の男性が、今世の父親である、『市丸 彼方(いちまる かなた)

 

「見捨てんといてくださいよお父さん様。諦めたらそこで試合終了やってどこぞの先生も言ってはったやないですか。」

 

「そうやって現実逃避するのもおすすめしないかなぁ。火に油を注ぐだけだし。」

 

「へぇー?彼方さんはうちのことそう思ってはったん?わかりました、お望み通り説教追加やよ。」

 

「なにやってるん、お父さん。口は災いの元ですよ?」

 

「ギン?なに他人事みたいに言うてはるんです?あなたも説教追加や。」

 

「ほんま何やってくれはるんですか、お父さん様。」ガックシ…

とまぁ、こんな感じで案外普通の父母ボクの三人家族の家庭に生まれ、こうして無事説教を受けているわけで、あ、わかってると思うけど、今世のボクの名前はちゃーんと『市丸 ギン(いちまる ぎん)』やよ?

 

「…………ちゃんと聞いてるん?ギン?」ゴゴゴゴ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えらい恵まれて、幸せな家庭に生まれたなぁ、ボク。

 




読んでいただき、ありがとうございます!今回書いてみて気づけば2000字近く書いてました。(*ノωノ)テレッ 読者様はどのくらいの文量がいいでしょうか?また、今回京都弁に初挑戦したわけで、言葉的におかしい部分もあると思いますのでそこも含めて感想等いただけると嬉しいです。

以下、市丸家の開示可能な情報です。

『市丸ギン』・・・この話の主人公(現在5歳)、見た目はギン幼少期のまんま。
         なお、話し方が作者の技量によりぐちゃぐちゃの恐れあり。
         今のところ使える力は鬼道のみ。

『市丸彼方(かなた)』・・・絶賛妻に尻に敷かれてる市丸家の大黒柱。基本優しいが、
             締めるところはしっかりと締めるタイプ。標準語を話す。
             見た目とても若く見られがち…天然ジゴロな部分も?

『市丸華(はな)』・・・市丸家の実質的な主、ギンの京都弁は母親譲り。夫と同様に
           見た目が若く見られやすく時たまギンの姉と言われることも?
           やっぱこの人ようj(ここで文字が途切れている)


っぷはぁ!!(生還)
では、次のお話でお会いしましょう! <ドォーーコォーーーヤァーーーー? 
ッヒィ!それじゃあまたです! ニーーゲルンダヨーーーー!


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転生後のプロローグその2

こんにちは!四木シロです。今回はジャンプで言う修行回です。まだオリキャラメインになっていますが読んでいただければ幸いです。


ー1時間後ー 

side:ギン視点

 

や、やっと説教から解放された…。

やあやあ皆さんこんにちわ、市丸ギンやよ。今やっとこさお母さん様からの説教から解放されたんやけど。

 

「ボクが説教されるんはわかるんやけど、父さんはなんで怒られっとったん?」

 

「あぁ、それね。実は今度の週末母さんと出かける約束があったんだけどね、その日に休日出勤が入っちゃったんだよね。で、しかもそのことを母さんに言うの忘れちゃってさ、それで怒られてた。」

 

「なるほど、そらキレられますわ。」

 

「でも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怒ってる母さんもかわいかったなぁ。」(〃´∪`〃)ゞ

 

「息子ん前であんま惚気んでください。砂糖吐き散らかせたいんですか?」

 

うちの夫婦仲は悪ぅないんよな。むしろ良すぎるといってもええ。この家に生まれてこれて幸せモンや思うとったけど、いい意味でうちの困った点やね。いってらっしゃい・いってきますのキスは当たり前やし、記念日とかにはデートいうて、僕を預けて一緒に出掛けとこともある。ただ、そのせいで毎回のろけを見せられて砂糖吐きそうになるボクの身にもなって欲しいねんなぁ。まぁ温かい家庭であることには変わりないんやけどね?

 

ギン視点:side out

 

ー3ヶ月後ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side:第三者視点

 

 

破道の三十一!赤火砲!!

 

 放たれたバレーボール大の赤い火球が10m先に吊るされた的に向かって飛び、的を粉々に破壊した。

 

「…とまぁこんな感じや。力の流れ、ちゃんと感じられました?()()?」

「うん、ちゃーんと見えたで()()()。」

 

現在、ギンは鬼道を習っていた。自分の()()()()()市丸 華(いちまる はな)に。

 

なぜこうなったのか、それは少し時間を遡る………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは1か月前のことだった。ギンが鬼道を使えることがわかった日から2ヶ月が経ち、あれから毎日のように鬼道の修行をしているが、少し行き詰っていた。

 

「うーん、改めて思うとこん身体(市丸ギン)ハイスペック過ぎるなぁ。破道なら七十番代まで、縛道なら六十番代までならもう使えるし…あぁでもアカンなあ、詠唱破棄だけがうまくできひん。」

 

そう、詠唱破棄がどうしてもできていなかった。だからどうやったらできるのかずっと悩み、周りが見えていなかったのだ。さっきのセリフを()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あら、ギン。もうそないに鬼道使えるん?さっすがうちの子ぉや♪」ニコニコ

「そこは『うち()』の子って言ってほしいかなー?華さん。」

 

・・・・・・。

 

ううぇ?!なんで二人とも(父さんと母さん)ボクの部屋ん中おるん?!!」

 

「あら、うちらはちゃんと声もかけたしノックもしたんよ?」

 

「で、何にも反応がないし部屋の前に来たら来たで、ウンウン唸り声が聞こえるからノックして入ったってわけ。」

 

そう言いながら目の前に座っている二人。市丸家の家は少し小さめの武家屋敷であり、和風の家である。そのため、あまり部屋の防音はしてあるが、完全とは言えない程度のものだ。故に、ギンの唸り声が部屋の外から聞こえていたとしても仕方のないことなのである。

 

「ど、どこから聞いてたん?」

「改めて思うと~ってところからかな?」

「ほとんど最初からやないですか…。」

「あぁ、ギンが鬼道が使えるんは2()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ!!??

 

「お父さんと一緒に一時間説教受けた日あったやろ?そん時にやたら強い霊力の残滓つけて帰ってきたなとは思っとったんよ。で、それが連日続くもんやからもしかしたら?って。」

「ギンは気づいていなかったみたいだけど一度修行を二人で見に行ったこともあったんだよ?」

 

母さんを抑えるのに苦労したよ、と苦笑いの彼方に、あん時すぐにでも抱き着きたかったんにほんに彼方さんのいけず、と返す華。

 

「さっきからツッコミどころ多いんやけど?母さんのその口ぶりから察するに二人とも鬼道使えるん?」

「正確には母さんが使えるよ。でもその前に僕たちのことについて話さないとね?」

「そうですね。まずうちの家系について、うちは代々退魔の家系でな?特別な力を持ってるんやけどギンはもう知ってるやろ?」

「鬼道、やろ?」

「そ、ギンはなぜか独学で使えてるみたいやけど。まぁそういうわけでギンのはうちの家系の遺伝っちゅうわけや。」

「ん?母さんの家系の遺伝なのはわかったけど、父さんの方は?」

「僕の方は普通だよ?精々独自の剣術があるくらいさ。」

 

「お父さん、それ『普通』言いません。」

「というか、彼方さんの()()が精々とか冗談きついですわ。」

「えー。」

 

 

「さて、うちらのことは話したわけやけど。」

「そろそろ、ギンのことが聞きたいかな?」

 

第三者視点:side out

 

 

 

 

side:ギン

うーん、あそこまで聞かれてしもうたんやったら、もう隠すのは無理やろなぁ。ってもどこから話せばええんかなぁ?」

 

「ギン、ギン言葉に出ちゃってるから。」

「なんやこん子がここまで子供らしいん初めて見たんちゃうやろか?」

「話しづらいんだったら僕たちが質問する形にしようか?」

「せやね、それやったら答え方も簡単やし考えもまとめやすいやろ。」

「うん、その方がありがたいわ。」

 

「じゃあ最初はうちから、ギンってさ()()なん?今まで触れとらんかったけど、小学1年生でその精神の成熟具合は大人びてるとかのレベルちゃうで?」

ん?

「だって、特にこれといった我儘も言わへんし、学校ん事聞いても年相応の無邪気さもないやろ?言っとくけど、ギンを育ててきた中でうちらが困った事ってこの幼気の無さぐらいやで?」

「あ、あー確かに。今更ながら考えるとおかしすぎるか…うわ、それも迂闊やったなぁ。」

 

ほんまに今更過ぎるなぁ。なぁんで今まで気づかんかったんやろ、思わず頭抱えてもうた…

 

「ボク自身の話となると、えらく奇想天外やしなぁ。念のために言っときたいんやけど、今からボクが言うこと全部ほんまのことやから。」

 

そうして、ボクは今までのことをすべて話した。自分が転生者であることも、この(市丸ギン)身体が前世のアニメキャラであることも、前世で知っていたから鬼道を使えたことも、そして、この世界が『ハイスクールD×D』の世界であること、全部や。

 

「まぁ、信じられんやろうし、世迷言と捉えてもらってもかまへんよ。ボクも聞く側になったとき頭おかしいんか?って思うし。なんなら、気持ち悪い子ぉや、て捨ててもr

 

あぁ、アカンなぁ、声震えてきた。気持ち顔熱いし視界もにじんできよったわ。でも言わなあかん。こん人らに迷惑はかけられへん。でもボクは最後まで言い切ることが出来ひんかった。次の瞬間には目の前が真っ暗になり、少しだけの息苦しさを覚えた。でも、不快な感じはせえへんし、頭をなでられている手からは温もりを感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、ボクは今、母さんに抱きしめられてんのか…

 

 

「今までよう頑張りはったね」

 

 

「言えるわけあらへんかったよね、怖かったやろ?言ったとしても気味悪がられて拒絶されるかもあらへんし。人が一番怖がるんは『拒絶』や。自分のことを否定され、距離を置かれんは嫌やからな。よう言うてくれたなギン、ほんまおおきに。」

「ただ、一つ付け加えるとしたら、僕たちがギンを捨てることなんて絶っっっっっ対無いから。それでも、ギンは疑い深いだろうから言わせてもらうよ。」

 

二人がお互い見合わせた後、せーのっ、と呼吸を合わせて

 

 

「「ギン、僕ら/うちらの子どもに生まれてきてくれてありがとう。そして、愛してるよ。」」

 

「ギンは生まれた時からギンやったんやろ?」

「なら、君は僕らが愛する『息子のギン』であることに変わりはないさ。」

 

言い方はちょいと変わってるけどな、と笑顔でこちらを見ている二人。息子がとんでもないこと言うてんのにボクから目線を外すことなく真っ直ぐに見てくる。

 

 

 

 

 

あぁ、ほんまに。ほんまに今更ながら気づいたわ、ボクはこん二人のこと大好きなんやな。二人に嫌われたないから隠してきたし、誤魔化してきた。二人の迷惑になりたなかったから我儘も言わんかったし、我慢もしてきた。でも、もう我慢はできそうにないなぁ。

 

「ボクの話信じるん?もしかしたらデタラメ言いよるんかも知れへんよ?親の気を引きたい子どもの妄言かもしれへんのに…」

「そういう子は自分からそんなこと言わないよ?それにさっきも言ったよ?『僕らはギンを愛してる』って。信じるよ。だってほかでもない息子のことだもの。」ギュッ

 

そう言うと、ボクと母さんを包むように抱きしめてくれた。

 

「むぅ、お父さんに言いたいこと大方言われてしもた。ギン、同じこと言うようやけどうちもあんたのことを信じとるで?つまり、何が言いたいか言うと、うちらはギンのことを信じてる。ギンもうちらのこと信じてくれん?あと、今までしっかりとした姿見せられ続けた子から聞いたことがあないすごいことやよ?ギャップがありすぎて逆に信憑性が増すってもんや。こう言い方したほうがギンもわかりやすいやろ?」

 

やから、と続けて

 

「安心しぃ、もう…()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

すでに限界やったのに、ほんま親ってすごいなぁ。

 

 

 

そこからはもう決壊に次ぐ決壊やった。前世も合わせて過去最大に泣いた。後日、二人曰く『赤ちゃんの時よりも泣いてたのでは』とのこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ギン?落ち着いた?」

「っグス、ん、なんとか。」

「なら、ギンにもっと言っておきたいことがあるんやけどいい?ええっと、言っておきたいことは全部でぇひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ、いつ、むぅ……」

そう言いつつ指を折っていく母さん。えーと、皆さん…ボクは過去最大の号泣を見せた後、説教を受けるようです…小言どんどん増えてってるしぃ(泣)。ふと、父さんの方を向くと、すっ、と抱擁を解き、離れてった。すれ違いざまに、

 

(僕も思うところはあるからね。ちゃんと受けるように。)ニコッ

 

と言ってった。こん時が初めてやったなぁ…父さんに対してゾッとしたん。

 

「ギン?まずは、親を舐めへんように。再三言うようで悪いんやけど、うちらはギンのことを愛してる。そのことはちゃーんと覚えとき。次に……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー説教終了ー

 

 

「はーい。華さん、一旦そこまで。ご飯温めなおしてきたよ。」

「そう言えばご飯の前でしたね。まだ言いたらへんけどこの辺にしときます。」

「ハイ、リョーカイデス。」

「あ!あと、ご飯の後鬼道のことについて真面目に話すことあるから。」

「ハイ、リョーカイデス。」

「ギン、()()()()()()。悪乗りがすぎるで?ほんまに真剣な話や。」

「あ、ういっす。」

 

 

ー食事終了ー

 

「じゃあギン、わかってはるとは思いますけどその力、鬼道はまず人前で見せんこと。そして少し被るけどむやみやたらに使わんこと。」

「それはもちろんわかっとります。」

「それならよろしおす。」

「でも、それなら修行んときどうするんです?」

「ギンは気づいてなかったみたいやけど、前ギンが修行してたときは周りに結界を張ってたんよ。やから今度から結界の修行も一緒にしまひょ。そん時はちゃんとうちか、お父さんに言ってからやるように。」

「ん、父さんも結界張れるん?」

「ええ、ギンの修行を流石にうち一人で見るには予定が合わないときとかに交代してもらったので。」

 

(まぁ、さすがにそのためだけに結界の張り方を教えてほしいって言われるとは思わへんかったけど…)

 

「ほんなら次です。これが一番重要なことですけどギン修行してた鬼道は前世での知識が基にしてたんよな?」

「うん、そうやけど?」

「それなら、どれぐらい合致してるんかすり合わせしまひょ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、大体あってはりますね。なら、最後に今後の鬼道の修行の予定やけど…」

「あー!お母さんだけズルい!僕だってギンに色々教えたい!」

「ほなら、父さん剣使える言ってはりましたよね?それ教えてもらうことできます?」

「うん!大丈夫だよ!!けど、剣を教える以上、かなり厳しくすると思うけど…いける?」

「なんや、鬼道の修行が軽い言われてるみたいに感じるんは気のせいやろか?」

「いやっ!別にそういった意味で言ったわけじゃないよ?!」

「あのー、修行に関してはボクの身体の成長に合わせてくれるとありがたいなぁ思うんですけど。あと、どちらか体術も教えてもらうことってできます?」

「「なら僕/うちが!!」」

「むー!なら母さんと僕の二人で体術は見るってのはどう?」

「賛成です。なら、鬼道の修行と並行してこれからの予定を改めて決めまひょ。」

 

 

…の結果。

 

 

「あの、これかなりハードスケジュールやないですか?」

 

月・水…鬼道

火・木…剣術

金・土…体術(交互)

 

「流石に詰め込みすぎかな?」

「じゃあ、こんなのはどうです?」

 

月・水…鬼道

火・木…剣術

金…体術(交互)

 

「あんま変わってる気ぃしないんですが?」

「あら?週休二日やからまだ優しめやないの。」

「そう言えばギンが自衛のために鬼道を修行してたのはわかったけど、それ目的だったらこんなに過密にしなくてもいいんじゃない?」

「確かに自分“だけ”守るんやったらこれは行き過ぎなんでしょうけど、それじゃあ足りないやないですか。自分以外にも、その、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()を守るなら。」///カオマッカ

 

 

「「あぁもう!うちの息子がこんなにもかわいい!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーそして時は現代に戻り修行場である山の中ー

 

「今のが詠唱破棄時の霊力の流れです。あと、ギンは鬼道を扱う時、何をイメージしてはりますか?」

「そらその鬼道の発動されたときの形や色です。」

「なら今度はその鬼道の効果も含めてイメージしてみたらええよ。赤火砲で言うたら的に当たって破壊するところや断空やったら空間を二つに分けることとかやね。」

「なるほど、確かにそこまでイメージしたことあらへんかったな。」ッスゥー、ハァー

 

さっきの母さんの霊力の流れも含めてイメージして……

 

『赤火砲』っ!」

 

放たれた火球はギンと的とのちょうど中間地点で消滅した。

 

「あら?ほんまにいけてもうた?……………ぐえっ!」<ギーーーーーン!!

ほんまに!!うちの子はー!!もうっ天っ才!!」ギューー!

「いや、あのっ!途中で消えても打てるんですが…」

「なに言うてるん!ほんにこの子は!ちょこっとアドバイスしただけで詠唱破棄成功させといて天才言わんでなんて言うん!!」ワシャワシャ!!

「だぁぁぁ!もうええやないでしょ!!」バッ!

「あぁん、こんいけずぅ。もうちょっと撫でさせてえな。うえぇぇん、ギンがぐれた~。」

「ほら修行、しますよ!!」

「むー、まぁええわ。じゃあ再開しよかって言いたいとこやけど今日は体術メインやよ。」

 

 

 

 

 

「全身に巡らしぃ、途切れさせへんように!とめどなく!…そこ!霊力に気ぃまわしすぎ、拳が疎か!」

 

 

今の修行は霊力を身に巡らせながら組み手を行うっちゅうやつで、母さんに身体の霊力の流れを見てもらいながら少しでも流れや集中が乱れたりしたら言葉とともにしばかれるんよ。そう、()()()()()。ボコられると取ってもらってもええよ。さて、ところで皆に問題です。ボクは今どこにいるでしょーーか?…………正解はなんと!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空中です

 

 

「っ!!ぐっ!がっ!!」ゴロゴロ!

 

「ほら、どないしたん。はよかかって来ぃ。」

「げほっ!げほっ!…クッソ。もう一回!!」

 

ていうかこれ、ほんまきついんやけど…少しでも気ぃ抜けへんし、精神的にも追いつめられる。気ぃ抜いた次の瞬間には地面との熱烈キッスが待ってんねんよなぁ。

 

 

ギン視点:side out

 

 

ー修行終了ー

 

side:第三者視点

 

「がむしゃらに攻撃すればええってもんやないで?体の内と外の力の流れを意識しぃ。攻撃するんときにバラバラにぶつけても威力が弱なるだけになるで。」

 

まぁ、こればっかりは慣れな難しいかな、と死体(満身創痍なギン)の横にしゃがみ、ニコニコしている華。

 

「ハァ、ハァ、か、母さんは合気も使ってるんやっけ。」

「まぁ力の流れ云々は確かに合気始めてから掴んだかなぁ。ギンもやってみる?」

「…実際に今体感してるんで遠慮しときます。」

「仕掛ける側と仕掛けられる側やと色々と違ってくるもんやで?」

「うーん、でもこれ以上あれもこれもってなると器用貧乏にならへん?」

「そうかもしらへんけどやるだけやってみぃひん?もしそうなりそうになったらうちが止めるよって。」

「確かに母さんの言うことも一理あるか。」

 

このあとギンはさらに転がされることになるのだったが、当の本人はまだ知らないのだった。

 

 

ーまた後日 父との修行の一面ー

 

「ってことになったんよ。」ブン!ブン!

「へー、それならこっちでの体術は少し抑えたほうがいいかな。体の使い方が違うだろうし、それでケガでもしたら元も子もないしね。」

「助かります。楽とは思うていませんでしたけど、ちょっち辛いんで。」ブン!ブン!

「ハハハッ!やっぱり母さんの修行はきついのかい?」

「そらきついですよ。もう鬼ですよ、鬼。」ブン!ブン! スン!

「ん、今少しブレたね。素振り10本追加ね。」

「ここにも鬼が居はった…」

 

まだ子どもの身体故に軽めであるがそれでもかなりギリギリを責めた修練であることには変わりなかった。それでもそれについてこれたのは持ち前のメンタルとスペックの高さが功を奏したのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

このしごきの成果がみられる機会は案外すぐそこに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます、四木シロです。今回は主人公の背景暴露回とちょこっと修行回で詠唱破棄を習得しました。まだまだ未熟な駄文ではありますが、次回やっと、やっと原作に関われます。次も読んでいただけたら幸いです。ではまた!!
あと、以下主人公両親の情報です。

市丸華
『容姿』…武装少女マキャヴェリズムの因幡月夜が少し成長した姿。…盲目じゃないよ?
『能力』…鬼道がメイン。BLEACHの鬼道は大体使える。

市丸彼方
『容姿』…食戟のソーマの司瑛士。
『能力』…剣術がメイン。何やら実家が特殊な剣術を扱うらしい。


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転生後のプロローグその3

どうも皆さん、四木シロです。前回、原作介入と言いましたが…

すいません!嘘言いました!思ったより話が膨らんでしまいました。ですが、次話からは絶っっっ対にしますので!どうか!どうか!ごようしゃをぉぉおぉぉぉぉ!



side:第三者視点

そこは森の中の少し開けた場所、その中心には大きめの岩がありその上にはギンが座禅をしている。と、突如座っているギンに向って巨大な蒼い炎が飛ばされた。対するギンはじっと座禅をしたままで動こうとしない。

 

「縛道の八十一

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『断空』

 

炎がギンを飲み込むことはなく、その一線から全くそちら側へ進むことができないようだ。

 

「7時の方向、距離40m、ってとこかな?」

 

「正~解!さっすがギンやね。断空はもう完ぺきといってええし、探知の方もばっちりやん。もう探知だけで言うたらうちら以上かもしらへんね。」

「でもまさか『双蓮蒼火墜』を撃ってくるんは思うてませんでしたよ…座禅をし続けなあかん修行やったからじっとしてましたけど内心ヒヤヒヤやったんすからね?」

 

ギンが行っていた修行とは『座禅をしているギンに向って鬼道を放ち、それを断空で防ぎ、その放たれた方角と距離を当てる』という簡単なものだったのだが、今までは下級の破道系鬼道だったものが今回は中級である『破道の七十三・双蓮蒼火墜』であった。

 

「いや~、ギンならもうこんくらい防げるやろな―って思ぉてね?実際防げたやん。」

「もし防げんやったらどないするつもりやったんですか…」

「そん時はそん時♪」

 

はぁ、とため息をつくギンと満面の笑みを浮かべている華。

 

「そう言えば、お父さんとの修行はどうなん?」

「鬼畜度で言うたら母さんと変わりませんよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー回想シーンー

 

 

 

 

さぁギン、始めようか!

「なんでそないイキイキしてはるんですか…説明ください、説明を。」

 

ギンと彼方は向き合っており、それぞれ木刀を構えている。

 

「だってギンもそろそろ木刀を振るうことには慣れてきただろ?で、そろそろ試合形式もいいんじゃないかな?…と。」

「なんや段階えらいすっ飛ばしてる気ぃしますけどまあええわ。試合するんはいいですけど…まさか本気でやるんですか?虐待ですよ?」

「加減するに決まってるじゃないか!!流石に僕に子どもを虐待する趣味はないよ!?」

「わかってます、冗談ですよ。ほなそれなら…」ッス

「うん、それなら」ッス

 

「「よろしくお願いします。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

そこからはひどいものだった。彼方から繰り出される斬撃に対しギンは何とか防げている状態。躱し、逸らし、時には転がり、正面から打ち合わないをしないようにしていた。恐らく、まともに競り合っていたとしたら木刀はギンの手から弾かれ、すぐに勝負は決まっていただろう。さらに、彼方の剣は徐々に鋭さを増しているように見える。

 

「すごい!すごいよギン!正直こんなに打ち合えるとは思ってなかったよ!これならもう少しギアを挙げてもいいね!」

(まだ上がるん?!こちとら凌ぐんで精一杯やのに!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのぉ、その……ごめんなさい。」

ハッ、ハッ、ハッ…。こう、なる、前に!止め、て、ください、よ!」

 

試合からかれこれ30分程、時間にすると短いようにも感じるが当事者にとってはその何倍もの時間に感じたことだろう。

結果としてギンがバテ、彼方にクリーンヒットをもらった形になった。

 

「ハッ!ハッ!…スゥー、フゥー!……なんで、二人とも加減を途中からできひんくなるんです。」

「いやー母さんともよく話すんだけど、あまりにギンの吸収が良くってね?ついつい楽しくなってしまうんだよねぇ。」

 

(【悲報】両親がもしかしたら戦闘狂かもしれない件。)

 

「それでシバかれるボクの身にもなってください。」

「ハイ、ホントウニモウシワケゴザイマセン。でも、本当にギンはすごいよ!僕がギンの歳の頃は今みたいな攻防なんて全然できなかったよ!?」

「攻防なんて言えるもんやなかったですよ。ただボクは直観に正直に動いただけです。実際父さんの動き、ほとんど見えへんかったんよ?」

「それでもだよ。ギン、これは正直自分で言うのもなんだけど僕はある程度強い。」

「ほんまに自分で言うのも、ですね。」

「いいから、聞いて。僕はある程度強いんだ。その僕とその幼さで30分も戦えるなんて、誇ってもいいことだ。けれど、だからといって驕ってはだめだよ?」

「もちろんわかってますよ。」

「うん!それならいいんだ。」

 

 

 

ー回想終了ー

 

 

 

「あらぁ、えらい鬼やねぇ。」

「なんや鬼が何か言うてはりますわ。」

「おん?そない言うなら鬼らしく()()()()()()()()()()()?」フフフッ♪

「ゔぇ?!!冗談ですよね?これ以上は死んでまいますって!殺す気ですか?!ほんまに冗談ですよね?」

「さぁ♪どないしましょ?さて!時間も時間やからそろそろ帰ろか?」

「いやっ!流さんとってください!こっちにとっては死活問題なんです!」

 

 

第三者視点:side out

 

 

 

side:市丸ギン

ハイどうも、そんなこんなで家に帰ってきたギンです。現在、三人で晩御飯を頂いているわけやけど…

 

「改めて、ギンの天才っぷりには舌を巻くわぁ。もう最近ではうちが教えられることも少ななってきとるし。」

「確かにねぇ、母さんから聞いたけどギン?ギンが話した試合の話はもう何年も前のことじゃないか。今ではかなり長時間戦えるだろ?」

「それでも全然二人には及ばないやないですか。」

「まぁ流石に、ねぇ?」

「たった数年で追いつかれたとなったら」

 

「「うちら/僕らの面目が立たへんよ/ないよ。」」

 

そう、修行を本格的に始めてからもう4年が経った。でも、まだ二人には一度も勝てたことないんよなぁ。まぁ流石に少しは腕上がったとは思うねんけど…。

 

「あぁ、でも家事の腕やったらもううちらと同じくらいやないん?」

「確かに、このおひたしとかもかなりおいしいよ?」

「その点においてはまぁ伊達に二度目の人生送ってないちゅうことやね。」

「そう言えば、ギン、母さん、今週末さ久しぶりにみんなで出かけない?」

「わあ!そらええね、最近ギンの修行やらなんやらで忙しかったし、息抜きにもちょうどええやろ。」

「うん、ええ気分転換になると思うし。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた週末…今ボクらは車で少し遠方に来ており、その道中で足止めにあっとった。

 

 

「ですからぁ、これから先は通行止めなんですってぇ。」

「いえ、僕は回り道を知りませんか?と聞いてるんです。」

「そんなのぉ、聞かれてもわかりませぇん。」

 

父さんと作業員とおぼしき人が言い争っとる。どうやら通行止めみたいやね。といってもここは山道。この道以外回り込めそうな道もない。そして何よりこの作業員たち…不審な点が多すぎや。1つ、作業や言うてんのになんも看板を道中見かけへんかった。2つ、作業する割に作業員たちが軽装すぎる。3つ、これが一番やけど作業車、軽トラやレッカー車などが一切見当たらん。怪しさ満点、役満や。一応、周囲の探知やっといたほうがええかな…

 

 

 

 

ん?なんやこれ。

すると、父さんと言い争っとる作業員にほかの作業員が寄ってきた。

 

「もういいんじゃないッスカ、先輩?どうせこんなところで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

は?

 

瞬間、ボクの視界は火で埋め尽くされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギン!華!無事か!?」

「うちもギンも無事やで。」

「そない大声出さんでも聞こえてます。」

 

もう視界に火が見えた時点でボクと母さんは車の外に飛び出し、父さんのそばに寄っていた。

 

「軽口叩けるくらいには冷静みたいだね。」

「そらあんだけ怪しかったら警戒の一つもしますよ。というかこんくらい出来へんかったら修行の時点で死んでます。」

「まあねぇ、もしギンが下手うってたらうちらが修行付けた意味があらへんもん。」

「二人とも、おしゃべりはここまで。お相手さんが来たみたいだよ。」

 

「てめぇら!どうやって抜け出しやがった?!いや、それはもうどうでもいい!お前ら普通じゃねえな?俺らのことを見られた以上、生かして帰すことはできねえ!ここで死んでもらう。」

 

(自分から尻尾出してきよったくせに)ボソッ

「ギーン?そういうんはわかってても言わへんの。お相手さん可哀想やろ。」

「だーかーら、二人とも緊張感~。」

 

「クソが、舐めやがって…まずはそこのクソガキからぶっ殺してやる。」

 

「「あ"?」」

「はーい、お二人さん落ち着いてくださいねー。」

「「いや、自分らの子ども馬鹿にされて怒らないわけないでしょ/やん。」」

「せっかくのお誘いや。断るんは失礼やろ?」

 

それに、と続けて。

 

 

 

 

 

 

 

「丁度今日お披露目しよう思うとったんですわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは数か月前、いつもの修行場にて…

 

「やっぱり、わからへんなぁ。」

 

今まで保留にしていたけど、ボクが転生した時に与えられた特典。『市丸ギン』と書かれてた割には能力が少ない。言ってしまえば範囲が狭いんよな。斬拳走鬼の内二つしか使えへんってのも中途半端な気ぃするし。

ん?『()()』?そういえばここはあの世界なんよな

…って…こと…は?

 

「あるよな?あれ…。うわぁ。これ…ボクのポカやん。」

 

あれの発現方法って自分の中で一番強いものをイメージするんやったっけ?原作主人公みたくやってもええけど、ボク(市丸ギン)っていうたらあのフレーズよな。

 

君が~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『君が明日蛇となり人を喰らい始めるとして、人を喰らったその口で僕を愛すと咆えたとして、僕は果たして、今日と同じように君を愛すと言えるだろうか』

 

 

 

その言葉をつぶやくとともにボク自身が何かに包まれるのを感じる。いや、感じるんだけやない。実際にボクの胸を中心としてBLEACHの死神におなじみの死覇装(しはくしょう)が広がっていく。ん?隊長羽織?そないけったいなもん着けとらんよ。そこまでまだボクは強くないし、驕れるわけないやん。

 

「ギン。その姿は…一体?」

「…なんやえらい真っ黒な着流しやね。」

「説明は後でします。ここはボクに任せてもらえます?」

「すごく気になるところだけど、わかった。勝算はあるんだよね?」

「少しでも危なそうやったら手ぇだすからね?しっかり勝って来ぃ!」

「ほんま二人ともおおきに。」

 

さて、じゃあいっちょやろか!

 

ギン視点:side out

 

 

 

side:第三者視点

 

「はっ!こけおどしか?恰好が変わっただけだろ!」

 

ぞろぞろと鉄パイプを持った男が10人ほどギンにゆっくり向っていく、それに対してギンも同じようにひたひたと歩いていくが、突如その姿がぶれるように掻き消えた。

 

「「「なっ!」」」

 

あまりに突然のことで男たちが動揺したと同時に見ていた景色がガラッと変わった。

 

「…縛道の四『這縄』。まあ一本三人が限界かな。」

 

男たちが自分のことを見ると腰に光の縄のようなものが巻かれ、三人一組で縛られていた。男たちはわからなかっただろうが、ギンがやったことは簡単で、瞬歩で近づき這縄で縛っただけである。

 

「「「はぁ!?」」」

 

「彼方さん、今の見えた?」

「どうにかギリギリだね。修行時とは比べ物にならない。何倍も速くなってるよ。」

「しかもギン後述詠唱なんて高度なもんまで…。なんや成長がうれしいはずなんやけど、少し寂しくも感じるなぁ。」

「僕も複雑な気分だよ。多分これが巣立ちを見る親の気持ちなんだろうね。」

 

 

 

「さて、拘束し終わったわけやけど、なんで通行止めなんてしてはったん?」

「い、言うわけないだろ!」

「…破道の十一『綴雷電(つづりらいでん)』」

 

ぎゃあああああ!、と拘束されている男たちの一つのグループから悲鳴が上がるとすぐに静かになった。

 

「なんで?早よ答えなどんどん電撃強くしてくで?」

「た、頼まれたんだよ!!ここから先は誰も通すなって!顔は隠してたからわからねぇしどこの誰かも知らねぇ!報酬が良かったからそこまで気にしなかったんだ!」

「その依頼はこの先の『追いかけっこ』に関係あるん?」

「は、はぁ?!追いかけっこ?何の話だ!」

「なるほどなるほど…どうやら嘘はついとらんみたいやね。」

「じゃ、じゃあ!」

「うん、オ ヤ ス ミ♪

 

バチバチバチ!

 

あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!

 

今度は拘束されてるすべてのグループが一斉に悲鳴を上げて気絶した。

 

「華さん。」

「うん、彼方さん。思うとることは一緒やと思う。」

 

 

 

「「うちの子、容赦なさすぎ…」」

 

 

 

「…ストレス、かなり溜まっとったんかもな。」

「確かにこの数年間、まともな息抜きをギンはしてこなかったかもしれないね。」

 

「何をコソコソ話してはるん?」

「「ヒェッ!!」」

「……何も悲鳴を上げんでも。」

「と、ところで!さっきギンが言ってた『追いかけっこ』って何のことだい?」

(露骨に話をそらしてはるけど、ナイスや!彼方さん!)

「露骨やけどまあええです。実は車ん中おった時から感知してたんやけど、この姿なるとさらに範囲が広がるんですわ。まぁ端的に言うとボクら以外にも襲われてる人らがいるみたいです。で、」

 

「「それを助けに行きたいんでしょ/やろ?」」

 

「まぁほんとなら僕らも一緒に、って言いたいところだけど…探知範囲が広がって見つかったってことはかなり遠いんだよね?」

「うちらと一緒だと遅すぎて間に合わない可能性の方が大きいやろうし、今のギンの霊力からも考えると場合によってはギンの足手まといになってまうか…」

 

予想外の反応に戸惑っているギンが口を開いた。

 

「…ふつーこんな時反対するんやないですか?というか反対される思うてたんやけど…。」

 

「正直、今のギンを止められる気がしないんだよねぇ。」

 

スペック的にも、気持ち的にもね?、としょうがない、とでも言いたげな父さん。

 

「それにね?手が届くのに手を伸ばさないのは…きっと後悔してまう。どれだけ時が経とうがきっと…ね?」

 

それで取りこぼしたんならなおのことね?、と苦笑いの母さん。でも、と続けて。

 

「ギンが自分自身こと話した時に一度うちが言った思うけど。」

 

「「『この世界は物語や無い』」やろ?流れはあったとしても、全てが同じっちゅうわけやない。わかっとるよ。」

「うん。わかっとるんならええよ。うちから言うことはもうない、気ぃ付けていってき。ただ!条件がある。それは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……以上や。復唱してみ。」

「1、自分の命を最優先にすること

2、戦況が不利なら即座に撤退すること

3、自分の正体は秘密にすること

4、絶対に帰ってくること

5,助けた後はいつもの修行場に行くこと」

 

「僕からも条件出そうかと思ったけど、母さんの分で十分かな?」

「よし!ちゃんと覚えたみたいやね。ほな気張って来ぃ!

はい!

 

返事とともに瞬歩で感知した方へと向かっていく。二人が遠ざかっていき、すぐに見えなくなった。

 

 

 

ちゃんと無事で帰って来ぃ……

母さんの声が聞こえた気がした。

 

ギン視点:side out

 

 

 




さて、読んでいただきありがとうございます!四木シロです!前回原作介入って言ってたのにできなかった無能です。楽しみにされていた方、誠に申し訳ございません。今回は主人公の本格的な覚醒回でした。もう少し派手にしたかった(切実)。自分の文才が未熟なせいでっ!!
さて、次回はホントのホントに原作に関わっていきます。こんな未熟な作者の作品ですが、楽しみに待っていただけたら嬉しいです。あと、どんなことでもいいですので感想などをいただけたらモチベーションがゴリゴリアップしますので、書いていただければ幸いです。ではまた、次回で!









襲われてんのは誰なんやろなぁ?


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転生後の原作介入

えーーっと、気付けば評価に色がついていて困惑を隠せない四木シロです。
今回はとうとう…、とうとう!原作介入です。やっとここまで来れました。楽しく読んでいただければ幸いです!では本作、第4話どうぞ!


side:第三者視点

 

森の中を黒い影が通り過ぎてゆく。瞬歩でスピードを上げながら走っているギンの姿がそこにあった。ギンは今、死覇装を身に纏い、お祭りにあるような狐のお面を顔につけている。

 

(これ(お面)やけにしっくりくるなぁ。)

 

それはギンが両親と別れる直前…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギン!これも持って行き!」

「なんやこれ?狐のお面?」

「正体隠さなあかんのに顔丸出しはまずいやろ?一応軽い認識阻害の術式もかけとるから役に立たん、なんてことはあらへんと思う。」

「わかりました。おおきに母さん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(襲われとる人らの反応はどんどん近づいとる!手遅れなる前に…間に合え!)

 

焦る気持ちを抑えながらギンはさらにトバして森の中を突き進んだ。

 

第三者視点:side out

 

 

 

side:????

まさかあの人がいない今日に限って襲撃にくるなんて…!どうにかここまで逃げてこれたけどこのままではじり貧だわ…。

 

「お母様ぁ、どこまで逃げなきゃいけないの?もうあたし足痛いー。もう歩けないー!」

 

「ごめんなさい、もう少しだけ頑張れる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()。」

 

あの人がこの襲撃に気づいてくれればいいけど。それは望み薄よね、せめてこの子だけでも……

 

「いたぞ!あそこだ!!」

「手こずらせやがって!とうとう追い詰めたぞ!」

 

まずいもうここまで、思ったより早すぎる!

 

「どうか!どうか!私はどうなっても構いません!この子だけでも助けていただけませんか?!」

「お母様何を言ってるの?!お母様がいなくなるなんてやだよ!」

 

「それはできぬ相談だ、朱璃。薄汚れたものと結ばれたお前もその血を受け継いだその忌子も生かしておくことはできぬ。ここで死んでゆけ。皆の者……殺れ。」

 

刀を携えた男たちがじりじりと近づき、刀を振り下ろす!

 

「朱乃!」「お母様ぁ!」

 

この子だけは!絶対に!

 

「お母様何してるの!なんであたしを抱きしめてるの!?逃げようよ!」

 

私と朱乃に向けられ、迫ってくる凶刃。ああ、あなた。生きられなくてごめんなさい。でも、この子だけは、朱乃だけは絶対に守って見せるから。この子のこと…私の分までお願いね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、待てど暮らせど()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

姫島朱璃:side out

 

side:第三者視点

「縛道の八十一『断空』。なんとか間に()うたみたいですね。というか、子どもがまだ諦めとらんのにその親が真っ先に諦めるってどうなん?」

 

朱乃を抱えている朱璃ごと抱え男たちから離し、その間に立ちはだかったギン。朱璃たちに刀が突き刺さる寸前で断空が間に合ったようだ。

 

(あっぶな!ほんまに間に合わん思おうた…ギリギリ届いてよかったわ。というかこれ、姫島襲撃かぁ。バチバチに原作介入やん。まあしゃーなし、ひとまず今は…)

 

瞬間、ギンの姿がブレ、断空に阻まれていた男たちが弾かれるように吹っ飛んだ。

 

「貴様!何処の者だ!まさか、もうバラキエルの手の者が来たというのか!」

「そんなん敵相手に言うわけないやろ。」

「これは姫島の問題だ、貴様らに介入される筋合いはないわ!」

「知りませんよ。知りません。途中から聞こえてましたけど、そんなん勘当してはい、おしまい。でええやないですか。というか御家(おいえ)の歴史だか誇りだかどうでもええんですわ。ただ、『()()()()()』のために子どもの幸せ奪うな、いうだけです。」

「そんなもの…そんなものだと!?ふざけおって!だが、一人だけでこの大人数を相手にするつもりか?」

「逆に、ボクがなんも用意してへんと思うんですか?」

 

いつの間にかギンの手にはオレンジ色の紐の様なものが握られており、それは先ほど吹き飛ばされた男たちに繋がっていた。

 

「着火…」

 

「「「なっ!!!」」」

 

ギンがつぶやいた後男たちを中心に大きな爆発が起きた。

 

「な、なにが…。(さっきの瞬間移動と言い、大爆発と言い、この子は一体!?どうやら敵ではなさそうだけど。)」

 

(っ!こら確かにきついなぁ。霊力も集中力もかなり持ってかれてもうたか…。)

 

ギンが用いたのは『赤火砲』を練りこんだ破道の十二番『伏火』をさらに縛道の二十六『曲光』で覆い、見えなくしたもの。それを最初に殴り飛ばしたときにつけていたのだった。これはBLEACHの原作、十刃全面戦争編で雛森桃が用いたものである。そしてこれは作中同様にかなりの霊力と集中力を要するものであり、ギンはそれをかなり消耗してしまっていた。

 

「お兄さん誰?あたしたちの味方なの?」

「まぁ、そんなところやね。お嬢さんお名前は?」

「朱乃。姫島朱乃。」

 

ええ名前や。とギンが答えるとすぐ、爆発によって起こった土煙の中から苦無(くない)が朱乃に向けて飛び出してきた。

 

「っ!!あっぶなぁ…。」

 

咄嗟にギンが庇い朱璃たちは無事だったが、代わりにギンの右腕に刺さってしまっていた。

 

「貴方、腕が!」

 

大丈夫です。と答えつつ苦無を引き抜き、警戒を強める。徐々に煙が晴れ、男たちが見え始めた。

 

「ふん!どうやら少しはやれるようだな!!しかし、我らはこの日のために集められた精鋭、この程度やられはせん!」

 

地に伏すもの、攻撃に激昂するもの、完全に意識を失っているもの、男たちの容体は様々であったが、立っているものと伏しているものは半々であった。

 

「その精鋭の半分がもう機能してへんみたいやけど?」

「そちらこそ、その片腕は動かしづらそうだな。減ったとはいえ、この人数を相手にするにはきついのではないか?今逃げ出すのなら見逃してやらんこともないぞ?」

「いやいやこんなんかすり傷ですよ。それにそんな悪モンの常套句言わんでもええですよ?逃げてもどのみち口封じで殺すつもりでしょうに。」

「ふっ、当たり前だ貴様がここに来た時点で貴様が死ぬことは確定している。」

「スゥー、ハァ…。そっちも殺しに来てるんや、こっちもそれ相応の対応をせなアカンやん。」

 

自分に言い聞かせるようにそういったギンは腰に手を当て構えるようにしながらつぶやくようにこう続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいで…神槍

 

 

第三者視点:side out

 

 

 

side:ギン

「おいで…『神槍』。」

 

構えていた手に重みが生じる。と同時に、

 

(おっそーーーーーい!!)

 

頭の中に少年の様な声が響いた。

 

(堪忍な?案外呼び出す機会がなかったんよ。)

(そーれーでーもー!僕はもっと早く呼ぶことできたと思うなー!)

(まーまー、それに関してはほんま堪忍してな?今丁度力借りたいんやけどお願いできひん?)

(仕方ないなぁ。今回はまぁ折れてあげるけど、今度からもっと早く呼んでよね!)

(おおきに。)

 

 

 

 

 

「貴様!その刀!どこに隠し持っていた!」

「だから敵に言うわけないですやろ…。っとその前に。」

 

敵から視線を外さず、朱璃たちにしか聞こえないように…

(今から簡易的な防御結界張るんで絶対にそこから出らんようにしてください。)

(あなたはその怪我でどうするの!?それにさっきのあんな複雑な術式!消耗だってあるでしょう!)

(さっきも言いましたけどかすり傷です。ボクはただの本命が来るまでただ時間稼ぎするだけです。まああわよくば倒しますけど。)

「お兄さん大丈夫?」

 

朱乃がこちらを見上げるように見てくる。まあ初対面相手に自分の命握られてるようなもんやからなぁ。不安がるのも当たり前やけど、この子の目はボクのことを本気で心配してる目や。ほんにこんな状況で優しい子やね。

 

「心配してくれておおきに。でも大丈夫やよ。朱乃ちゃんこそ大丈夫?安心しぃ、絶対にボクが二人とも守ったる。それでも、怖かったら目ぇ(つむ)っとき」ナデナデ

「///」

「っと、流石に馴れ馴れしすぎやな…堪忍な?」

 

ついつい撫でてもうた…アカンアカン、気ぃ緩みすぎやな。

 

「ほな、結界張りますよ?縛道の七十三『倒山昌(とうざんしょう)』」

 

朱乃たちを囲むように逆四角すいが現れ、覆っていく。

 

「さてさて、ここから先、進みたかったらボクを殺してから行ってくださいね?ただボクも大人しく殺される気ぃもないんで、殺す気で行かせてもらいます。」

 

さあ、行こか?神槍。(やっと暴れられるんだね、ギン。)

 

「ほな始めよか、と言いたいところやけど…」

 

方角的にあっこらへんかな?

 

「ふん、どうした我々に背を向けて。今更おじけづいたか?」

「いやいや、ただ邪魔モン掃除しようってだけですよ。」

 

倒山昌後方、木の上に向けて鞘から抜いて切っ先を向ける。

 

「はんっ!刀かと思えばよもやそんな貧相なものだとは…。そんなもので我らの相手をするつもりか。」

「なんやえらい好き勝手言いはるな。この子は貧相なんやない、この子は『脇差』や。まさか名家姫島の者ともあろう方が刀の種類もわからないとは思わへんかったなぁ。まあ確かに()()()()()()()()()()()()。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

射殺せ、『神槍』

 

ギン視点:side out

 

side:第三者視点

 

「射殺せ、『神槍』」

 

そうギンが解号唱えた瞬間、刀身が一気に伸び、木の一角に突き刺さる。突き刺さるとともに、ぎゃあっ!と悲鳴が上がり、その木から肩に切り傷を負った男が落ちてきた。

 

「あんま野暮なことせんとき、自分らに気づいたんボクやで?この距離なら絶対に見逃さへんよ。」

「ちっ!仕損じよって…。しかし、貴様の言う通り不意打ちはできぬようだ。」

「先に言うとくで。こっからは全員、腕の一本は覚悟しぃや?」

 

 

 

ーほな、行くで?ー

そう聞こえた時にはもう遅かった。すでにギンは男たちの目前にまで迫っており、気づいたときには一人串刺しにされていた。

 

「があっ!」

「まずは一人…。」

「てめっ!」

 

一番近くにいた男がギンに反応し、斬りかかろうとするが相手は小柄な小学生だ。上手く一人目の身体で隠されそのまま突貫され、また一人神槍に貫かれる。

 

「二人…。」

 

すぐさま神槍を抜き、付着した血を振り払う。そして真横に構え、また解号を唱えた。

 

「射殺せ、『神槍』。(まだや、まだまだ!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()())……っ!ここっ!ぜぇああ!

 

神槍がグングン伸びてゆき、その長さのまま前方を薙ぎ払らうように振るわれる。

 

っスパ!ゴゴゴゴ!

 

まわりの木々を切り倒しながら男たちを神槍が襲う。倒れた木々によりまたもや土煙が上がる…。

その煙が晴れ、周囲は死屍累々であった。先刻までは10人以上いた男たちが今では半分以下にまで人数が減っている。

 

「さてさて、結構今ので削れたかな?」

(言うても流石精鋭。強い奴だけ残った感じやな…。それはそれとして、今ので気づいてくれたらええんやけどなぁ)

 

強者が残ったと言えど、それでも無傷というわけにはいかず、全員どこかしらに傷を負っていた。

 

「貴様…。無茶苦茶しおって。これだけの兵を集めるのにどれだけ時間がかかったと思っている!」

「やかましいな…知らん言うてますやん。」

 

そう言いつつ、またもやギンの姿が掻き消える。

 

 

 

ガキン!!

 

流石に目が慣れたのか、現れた瞬間に男も刀を合わせ鍔迫り合いに持ち込む。

 

「二度はない!」

「チッ!」

 

ギリギリ、と競り合いが繰り広げられていると突如ギンの動きが固まった。

よく見るとギンの足元に先程の大薙ぎで倒れた男がギンの足をがっちりと掴んでいた。

 

「我らをナメるなよ!奴らは姫島の汚点!子、共々生かしておけんのだ!」

「…別にナメてへんよ。それに…さっきも言うたけど、あんたらの都合で家族の幸せ、壊してええわけないやろ。しかも生まれてきた子どもにまで罪に問うなんざ自分ら、神にでもなったつもりなん?断言するで、『()()()()()()()()()()()』。あと、この襲撃、自分らの暴走やろ。姫島なんてデカい家がこんな大事で何かしらの契約や規定を定めんわけない。もしくはその前にことを終わらすつもりやったんかな?ところでさっきあんた、ボクにナメんな、って言うてはったけど、ボク一人如きにこの体たらく……()()()()()()()()()()

 

競り合っている男の肩にギンが指先を向け…

 

破道の四『白雷(びゃくらい)

 

鋭い雷が肩を貫く。痛みにたじろぎ、数歩後ろに男が下がった瞬間に…

 

射殺せ、『神槍』

 

足を掴んでいる男に神槍()()を向け始解により刀身が伸び、突き刺さる。男が手を離したすきを逃さず、ギンは神槍を支えに地を蹴り上げ勢いそのままで目の前の男の顎先をかすめるようにように鋭い蹴りをを放った。瞬く間に二人を戦闘不能にしたギンだったが、気付けば周囲を囲まれていた。

 

「囲め!だが、重なるな!あれの恐ろしさは貫通力だ。点ではなく包囲でじりじり詰めていくぞ。」

 

(こら困ったな、残りの霊力とかも鑑みるとこのレベルでこの人数、全員片づけんのは厳しいか…。

!!…あはは、これは流石にご都合主義が過ぎるな。ならとる手は一つやな…。)

 

「先程の勢いはどうした?急に大人しくなったが、とうとう諦めたか?」

鉄砂の壁、僧形(そうぎょう)の塔、灼鉄熒熒(しゃくてつけいけい)湛然(たんぜん)として終に音無し

「何をボソボソと言っているのだ、命乞いなら聞かぬぞ?」

「いやぁ?命乞いなんてまさか?!ただ単に、()()が戦う必要がなくなっただけですよ。今は目印を作っただけや。ほら上、見てみぃ。」

 

ピッ!と上を真っ直ぐ指差し、全員の視線を誘導する。その先には五本の大きな鉄柱が浮かんでいた。全員がその存在を認識したであろうタイミングでギンは手を合わせ…。

 

縛道の七十五!『五柱鉄貫』!!

 

途端に包囲網の頭上にあった五本の鉄柱が落下し始め、本日三回目の土煙が上がる。さらに、その中を黒い影が高速で動き回っており、所々で剣戟の音が響いた。土煙が上がると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()、そこにはいた。

しかし、ギンもただで疲れ果てたわけではないようで、男たちもかなり、刀傷が増え、出血量が少なくない量になっていた…。

 

「フゥ、フゥ、フゥ。最後に破れかぶれになったようだが、誰も削れることはなかった…貴様の決死は無駄なことだったようだな。」

「いやいや、フゥ、最低限の仕事はできたみたいや…。ボクがやったんは数を減らすことと()()()()()()()()。あとは時間が稼げればそれでええんよ。ところで、そこ(鉄柱のそば)おっててええの?あんたらが誰相手にケンカ売ったん忘れてるんちゃう?」

 

 

ピカっ!!

 

 

 

ドシャーーーン!!!

 

何の前触れもなく、強大な雷が襲撃者を襲う。それは『神の雷』と呼ばれた男が得意としたもの、そして此処に居ないはずであった者が放った技であった。

 

「そこの者。君には感謝してもしきれない。よく私の妻と娘を守り抜いてくれた。君がいなければ私は大事なものを二つも失うことになっていただろう。ここからは私に任せて休むと良い。」

 

空から降りてきたのは堕天使『バラキエル』朱璃の夫であり、朱乃の父親である。真打登場!と言いたいところだが…

 

「その任せる相手、もう黒焦げになってますよ?」

 

ギンの言う通り襲撃者たちはバラキエル登場時の大落雷によって戦闘不能になっていた。落雷だけではそこまでなっていなかっただろうが、『五柱鉄貫』が避雷針の役割を果たし、雷を集中してしまったことと、ギンがその前に切りつけ、出血してしまったため、集中した雷が流れやすくなっていたこと…この二つが重なったことで敵の殲滅という惨状が出来上がってしまっていた。

 

「まさかあの程度で倒れるとは、いや君がかなり削ってくれていたおかげか?そんなことより、妻と子供を助けてくれたこと、改めて誠に感謝する。君がいなければ少なくとも二人のどちらかが死んでしまっていたことだろう。」

「気にせんでください。って言いたいところですけど、あえて言わせてもらいます。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()?」

 

突然の罵倒にバラキエルは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。

 

「何言われてるかわからん、って顔してはりますね。ボクが言うてるんはなんで姫島のもんと結婚したんになんも対策せず、なに奥さんと子どもほっぽってるん?ちゅうことです。姫島との盟約やらなんやら有るにしろ無いにしろ、一部が暴走する恐れとかもあったやろうに護衛の一人もつけんのはおかしいでしょ。他にも色々ありますけど、まあ、その表情を見るに貴方自身が一番わかってそうやな。」

 

ギンの説教(?)が繰り広げるなか、徐々にバラキエルの表情が苦々しく変わっていった。

 

「確かに、今回の件は私の落ち度だ。あまりにも私の想定が甘すぎていた。もし、これで妻か子どものどちらかもしくは二人とも失っていたとしたら私は私自身のことを許すことができなかっただろう。」

「それがわかっているだけで十分です。」

 

ああそれと…、とバラキエルに向って歩きながらギンは続けて…。

 

「これはヒト全般に当てはまるんですけど、気持ちや思いは胸に秘めてるだけじゃ相手には伝わらないんですよ。さとりとかでもない限り、口にして伝えんとわかんないもんです。」

 

バラキエルの隣を通り過ぎる瞬間にボソッと、

 

(娘さん、今回の件で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ケアしてあげてください。もう結界は解いてあるんで…。)

 

バッ!!とバラキエルが振り向くとそこにはもうギンはいなかった。

 

「結局、彼?の名前も真意も聞けなかった…。煙に巻かれたままにされてしまったか。」

 

ギンの発言のせいか、夜が更けているせいか、頬を撫でる風がやけに冷たく感じるバラキエルであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、森の中。バラキエルたちの下からとうに離れ、いつもの修行場へと向かうギンは今回の戦いを思い出していた。

 

(今回は割と斬拳走鬼、どれも上手くできた。けど…あの人ら(襲撃者たち)を刺した感触…まだ手に残ってる。それに多分、()()()………よな。)

 

思い浮かぶは、最初に二人を刺した場面と足を掴まれ身動き出来ず、その対処として神槍を倒れている男に突き刺した場面。それに対してギンは困惑していた。他人とは言え命を奪った()()()()()()、何にも感じていないことに…

 

(確かにこの(死覇装の)姿になるときある程度覚悟を決めていたとはいえ、なんも感じんのは想定外やなぁ。気持ちまでこの身体に引っ張られるんか?)

 

悶々と悩んでいるうちに気が付けば目的地にたどり着いていた。

 

「さて、ふたr グボァ!!

 

到着した瞬間いつぞやの様に衝撃がギンを襲う。

 

遅い!!今何時や思うとるん?!ケガは?!」

「ギン。腕にケガしてるね?ちゃんと応急処置でもすぐに手当てをしなくちゃ。ほら、こっちおいで?」

「ケガ?!なんですぐ言わへんの!すぐ治療せな!早よ横なりぃ!」

 

すぐさま華に膝枕をされ、横になるギン。

 

「…母さん。回道も使えたんやね。」

「今はなんも言わんでええ、よくよく見たら霊力もカツカツやないの。今だけでも休んどき。」

 

 

 

 

 

 

 

「よしっ!傷は塞げたし、出血も止まったな。感触はどぉ?」

「うん、痛みも引いたし、違和感もないし……あら?」

 

腕を少し上げ下げし、感触を確かめるが、何故か腕が震え始める。

 

「おかしいなぁ?治療は正確にできた思うけど…。っていつまでそのお面着けとるん?暑苦しいやろ。さっさと外しぃ?………震えはこのせいかぁ。ギン、なんで()()()()()どこかほかにも痛いん?」

「…え?」

 

ギンが戸惑いながらも手を顔に当ててみるとそこには雫がついていた…。ギンは泣いていたのだ。

 

「な、なんで?」

「……。なにか今回の戦いであったん?良かったらギンの感じたこと、思うたことなんでもいいから教えてくれん?」

 

ギンは涙声ながらも、自分が恐らく人の命を奪ったであろうこと、そしてそれに何も感じていないことを話した…。

 

 

 

「多分、それ勘違いやで?何にも感じとらんわけない。今やっと気持ちが追い付いたんやないかな?じゃなきゃ今頃涙なんて出てこぉへんやろ。大丈夫、ギンの感情は死んでなんかおらへんよ。」

 

安心させるように頭を撫でながら、優しい声で答える華。

 

「お母さんの言う通りだよギン。」

「うぉっ!びっくりした!おらんと思うたら…。」

「少し、用事があったからね。それと続けるけど、ギンの感情はちゃんと生きてるよ。で、殺してしまった人に対してだけど…。こればっかりはギンがどう整理つけるか決めなくちゃいけない。ただ、ギンがどういった形で整理をつけたとしても僕たちは責めないよ。忘れるもよし、ずっと覚えてるもよし。こう言っては悪いけどどこまで行っても死んだ人間のことだからね、どう受け取ろうがギンの勝手、ってね。」

 

少し投げやりすぎかな?と微笑む彼方に対し、少し俯き考えているギン。数分、悩んだ後ギンは顔を上げる。

 

「どうやら、気持ちの整理はついたのかな?」

「うん、ボクは……

 

 

 

 

 

 

 

 

多分、殺した相手のことは忘れんと思う。やけど、潰れるほど背負う気はない。今回は向こうも殺す気やったからなおさら…。何より潰れてまうくらいなら忘れると思う。」

「…割とドライに考えるんだね。ああっ!もちろん責めてるわけではないよ?!」

「これがもしボクが事故的とか思いがけず奪った命なら背負うつもりやよ?でも今回はどちらも覚悟を持って臨んだ戦ったわけやし、場合によっては侮辱に当たるやろしね?」

「うん、なんやギンらしくてええと思うよ?で、他にも何か思うところがありそうな顔しとるけど?」

「なぁんでバレてんの?……まあ、せやね。今回ではっきりしたんやけど、ボクはボクが生きたいように生きる。当たり前のことかもしらへんけど、母さんたちに話したみたいに、この身体は『BLEACHのギン』に似とる…。ただ()()()()()()()()()()()()ボクはボクで、彼は彼や…。

やから、生きたいように生きる…。好きに救うし好きに倒す。」

 

どうやら、ギンはあっちの(BLEACH)ギンを意識しすぎていたようで、それも相まって今回感情が一時的なバグを起こしたようだ。というより、転生などと超常な経験したにもかかわらず今までメンタル面で問題が起きない方がおかしかったのだ。両親への告白時に取り乱したのは膨れ上がったものが少しガス抜きされただけで根本的には解決できていなかった。それが今回、自分は彼とは違うと自覚したことにより、ギンは本当の意味で()()()()()()()()×()()()()()()()()となった。

 

「よかった、実はお母さんとそのことで相談しててね。今までのギンはどこか心と体がぎくしゃくしているように見えることが多々あったんだ。」

「いつか指摘しようか思うたけど、うちらはそんな体験したこともないし、言うても薄っぺらな言葉だけで説得力もないやろ?自力で解決できたようで何よりや。他にも悩み事とかあったら全然相談してくれてもかまへんからね?うちらはギンの親なんやから…。」

「そん時は是非頼らせてもらいます。」

「それじゃ、そろそろ帰ろうか?ギンはもう疲れたろう?この毛布を羽織って、僕がおぶって帰るから。はいっ、別に寝ててもいいからね?その姿のこととかはまた明日改めて聞くから。」

「今は言葉に甘えとき。ギンはまだまだ子どもなんやから。」

「おおきに、母さん、父さん。」

 

父の背におぶさった瞬間、ギンの意識は薄れていき、すぐに寝てしまった。子をおぶる父親とそれに連れ添う母親…その光景は間違いなく家族そのものの姿であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして時はかなりあっという間に過ぎ去り、ギンは1()6()()になった。

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます、四木シロです。今話はいかがでしたでしょうか?何分戦闘描写は初めてでいくつも拙い部分もあったと思います。それでも上手く伝えられたららいいのですが…。実はアンケートを新しく作りまして…、作中での支店の変化についてです。もしかしたら作中でコロコロ視点が変わって読みずらいのでは?と思い始めたので、お聞きしたいと思います。
また、感想や誤字指摘などしていただければとてもモチベーションが上がるので書いていただければ幸いです。


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旧校舎のディアボロス
読むのと実際に見るのじゃ衝撃が違うなぁ


こんにちは!四木シロです!今回からはいよいよ本格的な原作開始です。各原作キャラクターの口調や行動が違和感なく書けてればいいのですが…。では、お話スタートです。


side:第三者視点

ここはとある学園…。その校庭に男子生徒が三人、川の字になって寝っ転がっていた。

 

「なあ、元浜、松田、俺たちは何のためにこの学校に入学してきた…。」

「我が駒王学園は女子高から共学に変わって間も無ぇ。よって男女比率は圧倒的に女子が多く、また海外からの美人留学生も多い。男子にとっては夢のような環境だ。」

「しかし我らは入学してこのかた、彼女等はできたこともない…。」

「ああ~彼女欲しいなぁ。」

「言うな、空しくなる。」

 

この三人は『駒王学園の変態三人組』と悪い意味で有名であった。最初に問いかけたのが『兵藤一誠(ひょうどういっせい)』仲間内ではイッセーと呼ばれている。次にその問いかけに答えたのが『元浜』通称『エロメガネ』。最後に答えたのは『エロ坊主』こと『松田』だ。以上、『変態三人組』の大まかな紹介である。

 

「おっと、そろそろ行かねえと。」

「? どうしたんだよ松田。」

 

イッセーが松田に問いかけると…、振り向いた松田は、鼻の下を伸ばし切った顔でグッ!と指を立ててだらしなくにやけていた。

 

 

 

 

 

 

場所は校庭から変わって体育館裏、三人はコソコソしながら移動していた。

 

「いやぁ実はいいスポットを見つけてな。」

「まったく、それを俺たちに言わずに行こうとするなんてズルい奴だ。」

「抜け駆けなんてさせねえからな?俺たちもしっかり楽しませてもらうぜ!」

 

三人が話しているスポットというのは、今流行りの店でもなく、世間一般の高校生の遊び場であるカラオケ屋やゲーセンのことでもない…。()()()()()()()のことである!!これが『変態三人組』と呼ばれる所以である。今三人が向かっているのは女子剣道部の更衣室であり、その裏手に覗けるような穴が開いているのを松田は見つけていた。

 

「さあ、ここがそのスポットだ。ここからは静かにな?あまり騒ぐとバレちまうからな。」

「わかっている。さあ、この先には桃源郷が…。」

「っておい!これ頑張っても二人しか見れねえじゃねえか!お前らどっちか途中で変われよ?!」

 

いざ、穴から覗こうとしていると突如後ろから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、こらアカン。」

 

何処からともなく声をかけられる。三人が目を向けるとそこには手を後ろに組みながらこちらに近づいてくる市丸ギンの姿があった。

 

「ゲッ!市丸ギン?!なんでこんなところに!?」

「なんやえらい嫌われてるなぁ?それと…こないなところ、はお互い様やろ?君らこそ何してるん?まさか、また懲りずに覗きなんてしよう、なんて言うんやないやろね?」

「イヤ!ベツニ?ってうぉ!!!!」ベシャッ

 

イッセーがしどろもどろになっていると後ろにいた元浜と松田に突き飛ばされ、前のめりに倒れてしまう。その隙に二人は逃げようとするが……。

 

「逃がさへんよ。」

 

ギンは後ろに回していた手を片手だけ前に出した。

 

「…縄?」

 

そう、ギンの手には縄が三つ握られており、ギンはそれを思い切り引っ張った。引っ張った瞬間、シュパァン!!

と三人の足に縄が括り付けられており、引っ張られた衝撃で逃げ出そうとしていた二人は地面に突っ伏すこととなった。

 

「な!いつの間に?!!」

「そら君らがここに来た時やけど?縄を罠として穴の前に置いといただけやよ。」

「まさか我らより先に来ていただと?!」

「あからさますぎやと思わへんかったん?「「「まさか、先に自分だけ覗いたのか???!!!」」」んなわけないやろ。穴見っけた時点で剣道部に言うて段ボールで向こう側から塞いでもろうたわ。」

「我らの桃源郷をぶち壊すとは…貴様それでも男か!?」

「なんでそうなるん…?まあ、それは置いといて、これで君らは逃げられんくなったわけやけど…個人的には投降をお勧めするで?」

「こちらとて、無抵抗で捕まるわけにはいかんのだ!こうなればここで貴様をボコしてでも逃げてやる!」

「よく言った元浜!それでこそ男だ!ここで日ごろの鬱憤を晴らすことができるチャンス!」

「松田の言う通りだぜ!モテない男の苦しみを思い知りやがれぇ!」

「「やめろイッセー!その言葉は俺たちにも効く!」」

「えー?ほんまにやるん?ボク荒事は苦手なんやけど……しゃーないか。」

「松田!元浜!ジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!隊列を組め!!」

「「了解!!」」

 

イッセーの声を皮切りに三人組が縦一列に並び、ギンへと突っ込んでいく。対するギンは後ろに組んでいた手を前に回し、隠されていたものが明らかになった。その手には竹刀が握られており、ギンも変態たちに突っ込んでいった。あわや激突するかと思われたが、ぶつかる直前にギンは跳び上がり、イッセーの肩を足場として思い切り蹴り飛ばし、

 

「何?!俺を踏みd…おっぶええ!!」

 

イッセーは地面との熱烈なキスをすることになった。

さらに跳び上がったギンはそのまま後ろ二人を跳び越え、その途中で竹刀を一番後ろにいた松田は空中ひねりの勢いも乗せた竹刀の胴薙ぎを叩き込まれる。

最後に残った元浜は着地したギンの踏み込みとともに返された竹刀で松田と同じく胴に強烈な一本をくらった。

ここまでおよそ3秒。一連の(一方的な)攻防が瞬く間に終わり、しーん、と静寂が流れるが…その静けさはすぐに歓声が上がり打ち破られ、その場を包み込む…。歓声の発生源はいつの間にか周囲を囲んでいた女子たちであった。

 

「ほい、いっちょ上がりっと…。」

「……ど、どこが『荒事は苦手』、だよ。」

「動きが全く見えなかった…。これがモテる男の力か……。」

「まさか我々のジェットストリームアタックを正面から破るとは…ガクッ。」

「まったく、ボクをネタに巻き込まんでもろて。」

 

三人を制圧したギンはフゥ、と一息ついて…。パンパン、と手を叩き…

 

「ほらほら、お客さんのみんなも解散しぃ。時間は有限やで?少しでも充実した練習しぃや?」

 

ええー、と残念そうな声が上がるが、渋々女子たちは部活へと戻っていったが、ギンがそのうちの一人に声をかけ、

 

「はい、村山さん。竹刀おおきにね。これで教科書の貸しは返したで?」

 

実は以前、授業の教科書をギンが忘れてしまい、それを隣のクラスである村山から借りたことがありそのお返しとして剣道部の更衣室の見張りを頼まれた、というものだった。

 

「本当にお返しなんていいのに。」

「まあまあ、それだとボクの気ぃが済まないんで。」

「そ、それなら!今週末一緒に遊びに行かない?」

「お誘いは嬉しいんやけど、堪忍な?今週末は少し予定が入ってもうてるんよ。また今度誘ってくれへん?誘ってくれておおきにね?」

「そっか~、残念。」

「ほんま堪忍な?」

「いいよ、気にしないで!じゃあね!見張りありがとう!!」

「ほな、また。」

 

さて、このやり取りをまじかで見させられていた三人はというと……。

 

「「「…ッ!!……ッ!!!!…………ッ!」」」

 

血涙を流しながら、声も上げず泣いていた…。先程の竹刀による肉体的ダメージに合わせて目の前でこの男(ギン)のモテようを見せつけられたことによる精神的ダメージでもはやグロッキー状態。そんな彼らをギンはいそいそと縛り上げ職員室まで引きずっていく。どこからか某出荷のあの歌が聞こえてきそうだが、そんな状況の中……

 

「なんで覗きの素晴らしさがわからねーんだよ!市丸ギン!お前さてはムッツリだな?!」

 

と覗きの素晴らしさを力説するイッセー達。松田と元浜がそうだ、そうだ、と続けている。

 

「人様に迷惑かけとんのに何言うてるん?君らこの学園じゃなかったら即退学もんやよ?それに、誰かに迷惑をかけるぐらいやったらムッツリでも構わへんよ…ボクは。大体、こんなことして、女の子の心に傷を残しでもしたらどないするん?最悪、男性恐怖症なるで?こないな事したら余計モテへんくなるやろうに、そんなんせんかったら君らモt…。」

 

ーーーモテそう、と続けようとしたギンであったが、引きずっている三人をちらっと見た後、また前を向きなおし、

 

「ごめん、前言撤回するわ。君らの中で希望がありそうなんは一人くらいかな?」

「おい!なんで言い切った!!あとその一人って誰だ!」

「いや、嘘言うたとしても傷つけるだけやなぁ、と思うて。あと、ボクが言うた人は君らの想像にお任せします。」

 

後ろでやいのやいの聞こえるが無視し、気が付けばすでに職員室前まで来ていた。

 

「すんませーん。いつもの三人連れてきました~。」

 

ギンがノックしながら声をかけると、中からドドド、と地響きが聞こえてきた。

 

「またか!?お前ら何度やれば気が済むんだ!」

 

中から出てきたのは生活指導員も兼任している男性体育教員…。因みにガチムチである。

 

「じゃあ、あとお願いします。」

「おう、市丸もありがとな!」

 

先生にイッセー達を預け、去ろうとするギンだったが、途中で、あっ、と声を上げて…

 

「今回は未遂なんで程々にしてやってください。」

「市丸の言いたいこともわかるんだが、何しろこいつらは常習犯だからなぁ…。まあ頭の隅くらいには置いておこう。」

「ボクも言うてみただけですからそこまで気にせんでいいですよ。すんません、失礼します。」

 

縛られている三人には、バイバーイと手を振ってギンはその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず惚れ惚れするような太刀筋だったよ、ギン?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いきなり声かけんでや、()()?びっくりするから。」

 

ギンが階段前を通り過ぎようとすると、突然声をかけられ少しビクッとしてしまう。階段に目を向けると、そこには金髪碧眼の美少年がちょうど階段を降りているところだった。

 

「ごめんごめん、ギンを見かけたから居ても立っても居られなかったからさ。」

 

こちらに笑顔を向けるこの美少年は『木場裕斗(きばゆうと)』。ギンと同じクラスで所謂クラスメイトである。また、お互いに下の名前で呼び合う程度には仲は良いようだ。

 

「いつも言うてるけど、発言に気ぃ付けや?捉えられ方によってはボクらにホモ疑惑が浮上すんで?」

 

そう、先程も言ったがこの駒王学園は元女子高である。つまりは()()()()()()も多いのである。世間で言う、腐った方々が…。

 

「ねえ、あそこ見て!」 「うそ!金銀王子様揃い踏み?!」

 

また、ギンと木場はその顔の良さから『駒王学園の金銀王子』とも呼ばれている。そんな二人がなにやらよさげな会話をしているのだ…

 

「やっぱり『市×木場』かな?」「いやいや『木場×市』でしょ!」「純朴王子に迫られ、逃げられない飄々王子……良い!」

 

恰好の養分となるに決まっている。

 

「ほら言わんこっちゃない。思春期だからしゃーないとしても、題材にされる身からしたらたまったもんやないんやで?」

「あはは、ごめんごめん。でも、ギンとは仲良しでいたい気持ちは本物だからね…。避けたりしないでくれたらうれしいかな?」

「誰もそないなこと言うてないやろ?ボクだって裕斗とはいい友達でいたいわ。」

 

「「「キャー!」」」

 

「ギン?君分かってて言ってないかい?」

「はて何のことやら?」

 

ギンは肩をすくめながら笑って言った。

 

「ほんで?要件は?」

「あれ?要件がなきゃ声をかけちゃいけないのかい?」

「アカンことはないけど、顔に出とるで?僕は君に用がありますよー、いうて。」

「やっぱりギンにはバレちゃうか…。用というよりお願いなんだけど、明日の放課後少し手合わせ願えないかな?」

「明日かぁ…。ゴメンな?明日は少し外せへん用事があるんよ。ほんま堪忍な?」

「そっかぁ…。用事があるなら仕方ないね…。分かったよ。」

 

断られると捨てられた子犬のような表情になる木場。

 

「全っ然納得した、っていう顔には見えへんよ?ゴメンって、そない顔せんとてぇな、代わりと言っちゃあなんやけど来週の月曜なら空いとるから、そこでならええで?」

 

とギンは謝りながら木場の頭を慰めるように撫でた。

 

「ギン?僕もう頭を撫でられるような歳じゃないんだけど?」

「なら、機嫌直しぃ。いつまでもしけた表情するもんやないよ。」

 

本人たちはじゃれあっているようなつもりだろうが、あまりにも周りへの被害が大きすぎた。ギンたちの周囲の道の角や陰では血だまりができており、その中心に女子生徒がぶっ倒れていた。絨毯爆撃もかくやな威力と攻撃範囲である。しかもごく一部は回避不能かつ致命攻撃。木場はギンの手をそっとどかしながら…

 

「とりあえず、言質はとったからね?来週の月曜日、忘れないでよ?」

「はいはい、まったく…決まったとたんにええ笑顔してからに…。」

 

ほな、/それじゃ、と言い別れた二人。過ぎ去った後は血の海(女子たちのほとばしる情熱で)であった…。

 

 

 

 

 

 

 

時は過ぎ、フォーカスは変態三人組へと……三人は説教+反省文を終え、駄弁りながら帰ろうとしていた。三人並んで歩いていると、ふと、イッセーの足が止まった。イッセーは振り返って校舎の一角を見ており、彼の眼は綺麗な緋色を映し、完全に心を奪われていた。視線の先には一人の女子生徒が…。それは駒王学園の中でも絶大な人気を誇る『二大お姉様』が一人、『リアス・グレモリー』が緋色の髪をたなびかせ、教室からこちらを見ていた。

 

「イッセー?どうしたんだよ?」

「ん?ああ~ありゃあ三年のリアスお姉さまか。やめとけやめとけ、手を出した瞬間、この学園の生徒全員を敵に回すことになるぞ?俺たちも含めて。」

「いや流石に俺もわかってるって!ただ…なーんか目があったような気がしたんだよ?」

 

イッセーが首を捻っていると松田と元浜はお互い目を合わせ、同時にイッセーの肩に手を置き…

 

「「気のせいだ、童貞乙。」」

「なっ?!それはてめーらもだろうが!!」

「それを言い出したらケンカだろうがよぉ!」

「よろしい、ならば 戦争(クリーク) だ。」

 

ぎゃいぎゃい言っていると、気が付けば校門まで三人は来ていた。だがそこで、今度は松田と元浜の動きがピタっと止まった。急に止まるものだからさっきまでじゃれ合っていたイッセーはそのまま二人にぶつかってしまった。

 

「痛っ!おい二人ともどうしたんだよ。」

「…おいイッセー。お前知り合いに黒髪長髪美少女いるか?」

「はぁ?いやいねえけどよ。なんだよ藪から棒に。」

「今我らの先にその美少女がおってだな、その美少女がお前のことを恋する乙女のような目で見ていいるのだよ。これはことがことなら…事案ですぞ?」

「俺らの友情にひびが入るな。ことことなら、な?」

 

えぇ?マジでそんな知り合いいねえんだけど…、と言いつつ元浜たちの言う方に目を向けると…黒髪に映える白いワンピースを着た、イッセー達と同い年くらいの女の子が門前に立ってこちらを輝く笑顔で見ていた。

 

「いや?やっぱり俺の知り合いじy「あ、あの!!」

 

「あのっ!兵藤一誠さんですか?」

「あ、ああそうだけど…君は誰かな?多分初対面だと思うんだけど…。」

「私、天野夕麻(あまのゆうま)って言います。えっと…。その……!

 

 

 

 

 

 

 

 

ひ、一目惚れです!!付き合って下さい!!

 

・・・・・・

 

「は、はい」

「やった!じゃあこれ、私の連絡先です!明後日の日曜にデート行きませんか?!プランは一誠さんに任せます!決まったら連絡ください!そ、それじゃあ!!」

 

嵐のような騒ぎが過ぎ去り、しーん、とその場は静まった。しかし、それは本命の大嵐が来る前の静けさであった。

 

「おやおや?」「おやおやおや?」

「松田さん?」「なんですか?元浜さん?」

「どうやらぁ、ここにぃ、裏切り者がぁ、いるぅ、みたぃ、デスヨ?」

「あらあらあら、それは大変ですわねぇ。急いで粛清しなくてはなりませんわねぇ。ねぇ?元浜さん?」

 

ギギギと音を立てながら振り返るイッセー。そこには鬼の形相の松田と元浜(修羅)がその表情に似つかわない言葉遣いとトーンで物騒な話をしていた。あまりのその二人の気迫に気圧されたイッセーは何をとち狂ったのか、

 

「ッハ(笑)!」

 

挑発するという火に油を注ぐようなその場を収めるとは逆方向に全力で舵を切った。後に起こったのは言うまでもなく…まさしく大惨事大戦であった。怨嗟の化身と化した二人に対し命からがら逃げきったイッセーは家の自室のベッドの上でようやく自分に念願の彼女ができたことを実感し、その事実を噛み締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ…

 

「なーんや、きな臭いなぁ。この気配……

 

 

 

 

 

いらんもんが入ってきたみたいやね?」

 

 

 

 

 

 

 

そして日は流れて……

イッセーの待ちに待った、初デートの日がやってきた。

 

「一誠、どうしたのそんなにソワソワして?」

「いや!何にもねえよ!っと、もうこんな時間か!じゃあ行ってくる!」

「あ、行っちゃった…。まったく、どこに行くかくらい言っていきなさいよ。」

「まあまあ、一誠の歳ならあれくらいヤンチャでいいんじゃないか?」

「いったいどこの誰に似たのかしら?」チラッ

「ははは、いったい誰だろうねぇ?」プイッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん!夕麻ちゃん、待たせちゃった?」

「いえいえ、全然待ってませんよ?今来たところです。ってこれ、言うセリフ逆ですね。」フフッ

「はは、確かに。それじゃ早速行こうか?」

「そうですね、行きましょう!エスコートお願いしますね?結構楽しみにしてたんですよ?」

「うっ!退屈させないよう頑張るよ。」

 

こうしてイッセーの初デートはスタートした。無難なウィンドショッピングに始まり、お昼は近くのレストランで…。午後からはもっと楽しませるぞ!と意気込むイッセーだったが、出鼻をくじかれることとなってしまった……

 

 

目の前のこの男によって。

 

「あれ?兵藤君、えらい別嬪さん連れとるね?もしかして彼女さん?」

「イッセー君?知り合い?」

「いやこんな奴しらないし、関わりたくもないね。さっ、行こうか夕麻ちゃん。」

「なんや連れへんなぁ。まあええわ。…ん?兵藤君、兵藤君、ちょっち耳貸して?」

「ああん?なんだよ。男に言いよられる趣味ねえぞ俺は。」

「ええからええから、彼女さんにカッコ悪いとこ見せたないやろ?」ボソッ

ハァ?話が見えねぇんだけど…。

襟!襟裏にサイズシール付きっぱやで?内緒話のフリして取ったるから。ジッとしぃ。

マジかよ!?くっ!頼りたくはねえけど、背に腹は代えられねえ。頼む。

 

ギンがイッセーに耳打ちするように近づき、イッセーがギンに隠れて見えなくなった隙に素早くシールを剥がした。

……イッセーのポケットに何かを仕込むついでとして。

 

 

「もう、二人で何話してるの?彼女を放っておくのはどうかと思うな~?」

「堪忍したってな?ちょっと秘密のデートスポットを教えとったんで。」

「ええ~、どんなとこ?」

「それを言ったら秘密の意味がないでしょ?後のお楽しみっちゅうやつです。さて、そろそろお邪魔虫は去りますね。ほなまた~。」

「オイコラ!そんなの俺知らねえんだけど?!」

 

イッセーの小声の抗議を無視して、ギンは足早に人込みへと消えていった。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「ったく、あいつ…。ごめんね夕麻ちゃん、あんな奴気にしなくていいからね?さ、デートの続きをしよう!」

 

イッセー達は気を取り直し、デートを再開した。楽しい時間というものはあっという間に過ぎるもので、気付けば既に日が暮れ、二人はデートの最終地点である噴水公園に来ていた。

 

「ここが穴場のスポット?」

「ま、まあね。結構綺麗だろ?(急ごしらえで考えたなんて言えねぇー。)」

「うん、確かにいい所だね。…ここがいいかな時間的にも。」

 

夕麻はそう呟きながらイッセーに振り向く。

 

「イッセー君?私たちの今回が初デートじゃない。記念に叶えてほしいお願いがあるんだけどいいかな?誰か来る前に…。」

「う、うん。俺にできることなら何でも言ってよ。(『誰か来る前に』?!シチュエーション的に…ま、まさかキス?!)」

「ありがとう。じゃあ…

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()

「……???ごめん、もう一回言ってくれないかな?なんか聞き間違えたみたいだ。おかしいよな?死んでくれ、って聞こえるなんて…。」

「あら、何も聞き間違えてなんかいないわよ?どうやら貴方は計画の邪魔になりそうなの。だからここで死んでもらうわ。」

 

ドスッ

 

「…え?ゴフッ」

 

イッセーの胸から光の槍の様なものが飛び出しているように見える…いや、正確には夕麻の手からそれは伸びており、イッセーの胸に突き刺さっていた。それに気づいたイッセーはすぐさまとてつもない痛みに襲われる。

 

(痛い痛い痛い痛い痛い痛い、痛い!!なんっだよコレ!!なんで俺刺されてんだ?!ヤバいヤバいヤバい!)

 

光の槍は引き抜かれ、それと同時にイッセーは地面に倒れ伏した。

 

「恨むなら貴方に神器(セイクリッドギア)を与えた主を恨みなさい?それと、貴方とのデート悪くなかったわ…初々しいガキみたいでw」

 

そう嘲笑をこぼし、背中に黒い翼を生やして空へと飛び立っていく夕麻。それをただ見ていただけのイッセーはヒューヒュー言いながらも自分の胸に手を当て、改めて自分の現状を実感した。

 

(うわ、手ぇ真っ赤だ…これ致命傷だろ…)

 

イッセーの周囲は自分の血で水たまりができており、誰が見ても助からないであろうことは明白であった。

 

(見渡す限り、赤、紅、緋…ああ、緋色と言えば…綺麗だったなぁリアス先輩。どうせ死ぬならその前にあのでけぇおっぱい揉みてえなぁ…まあもう無理か。)

 

そんなことをイッセーが思っている横で、その周りには魔法陣のような何かが広がっており、その中心にはギンがイッセーのポケットに仕込んだあの奇妙なチラシがあり、光を放っていた。魔法陣と共鳴するようにさらにチラシの光が強くなり、目もくらむような今までで一番の光が放たれたかと思うと…

 

 

 

 

そこには先程までイッセーが思い描いていた、

()()()()()()()()()が魔法陣の中から出てきたのだった。

リアスはイッセーを一瞥すると蠱惑的に微笑み、

 

「あら?やけに強い思いに惹かれて来てみれば…貴方、面白いわね。いいわ、助けてあげる。」

 

ーだから、私のために生きなさい?ー

 

そうリアスが言った瞬間、先程とは比べのもならないほどのまばゆい光がその場を包んだ…。

 

その現場を誰かが見ているのには気づかずに…

 

 

 

 

「ふぅ、どうやら吉と出たみたいやね。でも、兵藤君には悪い事してもうたかも…一発殴られる程度で済めばええなぁ。」

 

それは公園のすぐそばのマンションの屋上、黒い影がそこをじっと見ていた。

 

「さて、見届けたしそろそろ行こか?」

 

そう言って影は町の中へと消えていった…。

 

 

 

翌日、イッセーは自室にて()()()()()目を覚ました……おっと、どうやらそうでもないようだ。いつもと変わった点が一つあった。それは()()()()()()()()()()である。イッセーが昨日の一件でパニクる直前、そこへ…

 

「イッセー!いつまで寝てんの…ってあんたなんで上裸なのよ!起きてるんだったら早く着替えなさい!風邪ひくわよ?!それと、時間大丈夫なの?」

 

母が部屋に入って来、矢継ぎ早にまくしたてる。そして最後に付け加えたような母の言葉通りにイッセーが部屋の時計を見てみると…遅刻ギリギリの時間となっていた。

 

「ヤッベ!?」

 

イッセーは頭がぐちゃぐちゃになりながらも急いで学校へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ自分に起こった変化を自覚しないままに……。

 

第三者視点:side out




まいど!四木シロです!今回も読んでいただきありがとうございます。現在下に視点についてのアンケートもありますので、回答していただければありがたいです。また、感想や誤字報告などもしていただければ幸いです!では、ほなまた。


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なんや忙しないなぁ、知っとる?これ一日の出来事やで?

こんにちは、四木シロです!お気に入り750以上!?!? い、一体何が?(困惑)
投稿が少し空いてしまい申し訳ありません。今回は少し難産でした。また、今話ではTSキャラが出てきますので苦手な方はブラウザバック推奨です。それでは早速どうぞ!!


side:イッセー

ヤバいヤバいヤバい!このままじゃ遅刻しちまう!!

よう、皆!俺は兵藤一誠!現在通学路を遅刻しないために全力疾走中なんだ!って俺は誰に向かって言ってんだ?ーーーというか…日光ってこんなにまぶしく感じてたか?今まで。あとなんか体もだるいし…

 

「って!こんなこと考えてる場合じゃねえ!急がねえと遅刻しちまう!!」

 

…ん?あれっ?もう学校の門見えてんじゃん!なんかいつもより着くの早くねぇか?

とか思っていたら門が今にも閉められそうになっているのが見えた。

 

「ま・に・あ・えぇぇぇ!!」

 

ズサーーーー!!

 

トッ!ッパ!カンッ!ッザ!

 

ふい~、ギリギリスライディングで間に合ったか……ん?なんか俺と別の音しなかったか?不思議に思った俺は横を見ると、

 

「いや~危ない危ない。ギリギリセーフやね。」

 

 

 

「なんでてめぇがいるんだよ市丸ギン。」

「そない邪険にせんとってぇな。あと、なんでおるんってそら寝坊したからやよ?」

 

ったく、なんでいけ好かない野郎の顔を二日連続で見なくちゃ…そうだ、ついでに聞いてみるか。

 

「なあ市丸、お前きのう「兵藤君、これ急がなほんまに遅刻してまうんやない?」ってそうじゃねえか!ヤッベェ!」

 

 

「まだボクから言うわけにはあかんのよ。」

 

後ろで市丸が何か言ったような気がしたが、よく聞こえなかった。まあ、市丸のことなんざどうでもいいか!今は遅刻しないことの方が先決!

 

 

何とか遅刻にならず、教室にはたどり着けた…。

 

「っだはぁ!朝っぱらから疲れたぁ!」

 

「おいおい、遅刻ギリギリなんてHなDVDで夜更かしでもしたか?イッセー。」

「うるせぇぞ松田。」

「いや、松田氏。もしかしたらウス=イホンかもしれないぞ?」

「うるせぇつってんだろ元浜ぁ。」

 

席につくといつもの二人が声をかけてきた…。

 

「このツッコミのキレの無さは重症だな。ホントに大丈夫か?」

「確かに。ホントにしんどいなら保健室に行けよ?」

「いや、体がだるいのはホントなんだけどさ、昨日の夕麻ちゃんのデートから記憶が曖昧なんだよ。っていうか、お前らあん時襲い掛かってきたの忘れてねえからな?」

 

 

 

「「()()()()()()()()()()()()()」」

 

「はぁ?」

「というか、今イッセーの口からありえない単語が聞こえなかったか?」

「そうだな、よもやイッセーから『彼女』なんて言葉が出るとは…。ああ!もしかして二次元の方か?」

「いやいや、覚えてねぇわけねぇだろ?!」

 

ついつい声を荒げてしまい、周囲の視線が突き刺さる…

 

「オッホン!ほんっとに、覚えてねぇのか?」

「ああ、まあ覚えてないっていうより知らないって感じだけど…何か証拠はないのかよ。例えば写真とか。」

 

そう言えばそうだ!あの時何枚か写真を撮ったはず、それを見れば二人とも思い出す………おい待ってくれよ嘘だろ?!

 

「おい、どうした?早く出してみろよ。」

「ねぇ!どこにもねぇ!昨日何枚も撮ったはずなのに…。最初にもらった連絡先まで!」

「いよいよイッセー氏の妄想説が濃厚になってきたな。写真以外にも証人とかいないのか?」

「!!!」

 

そうだよそうだよ!いたじゃねえか…あの日当日に会った奴が!!つーか、さっき聞こうと思ってたのになんで忘れてたんだよ俺。

 

 

 

「昨日?ボクは会うてないで?なんせ一日中家におったわけやし…。」

「何かそれを証明できるものあるか?」

「なんなんアリバイ確かめるとか、自分ら警察かなんかなん?まあええけど…ほら。」

 

そう言いつつ市丸は一枚の写真を見せてきた。そこには市丸ん家のリビングと思われる場所のソファーでテレビを背にしてカメラに向かってピースしている市丸が映っていた…。テレビにも時間が映っており、俺と会っていたはずの時間に撮られたのがわかる。というか……くそっ、無駄にイケメンで腹立つ。

 

「悪ぃな、どうしても確認したいことがあってな。」

「なんや、せっかく見せたのになんで不機嫌になっとんの?」

「別に、ただ面にムカついただけだ。」

「『ただ』、で済ませたらあかんと思うんやけど…。」

「ほらな?イッセーの妄想とまでは言わねぇけど記憶違いなんじゃねえか?これだけいないって証拠があっちゃあな。」

「あれ?ボクの発言ノータッチ?」

「そうそう松田氏の言うとおりだ。今日はもう帰ろうぜ?んでもって帰ってHなもんでも見れば気持ちも切り替えられるだろ。」

「・・・・・・。」

「そうだな、今日はもう帰るか。」

 

やっぱり夕麻ちゃんとのデートは夢だったのか?

 

イッセー:side out

 

side:第三者視点

イッセーたちに軽い取り調べを受けたにもかかわらず、礼の一つも言われないままガン無視を連発してくらったギンは柱によりかかりつつ項垂れていた…。そこに近寄る生徒が一人…

 

「もう話は良いのかい?ギン。」

「ええ言うか、向こうに切り上げられたんやけどね?裕斗。どうやらもうええみたいや。」

「そっか、ところで…今日が何の日かギンは覚えてるかい?」

「そらもちろん。()()()、やろ?場所ならもう取ってもろうてるで。」

「相変わらず用意がいいね。じゃあ早速行こうか。」

 

そろって教室を出る二人。二人は試合のこと(前話参照)を話したつもりだが、教室内では暴風が吹き荒れていた。

 

「えっ?やっぱりあの二人って…。」

「会話だけ見るとマジで付き合って1ヶ月とかのカップルみたいなんだよなぁ。」

「あれで付き合ってないとかマジ?」

「え?突きあtt「「ちょっとダマレ」」」

 

そんな話が繰り広げられているとも知らず、木場とギンは剣道部の道場を借りて二人とも防具を身に付けず向き合っていた。

 

「防具を着けようとしてないところを見ると…それ程本気でやってくれると思っていいのかな?」

「まあ、あんだけ熱烈にせがまれたらなぁ。それ相応の対応せな礼儀に反するやろ?」

「フフッ、その対応にはありがとうって言っておこうかな?」

「まったく…嬉しそうな顔しよってからに。っとこんだけギャラリーいてるんやから誰か審判役頼めますか?」

「では、剣道部部長の私が。」

「え~部長ズル~い。」「私が出ようと思ってたのに…」

「おおきにです。」

「ありがとうございます。」

 

そう、剣道部の道場を借りているということもあり、二人の周りは剣道部の部員が囲んでいた。いや、よくよく見ると剣道部以外の生徒もちらほらと見えるなんとも耳が早いことだ。この二人は有名人でもあるので当たり前と言えば当たり前だが…。

 

「ルールは何でもあり、寸止めの一本勝負でいいよね?」

「それでええよ。お互いに剣()やなくて剣()をやっとる身やからその方が色々とやりやすいやろ。」

「では、両者ともに準備はよろしいですか?」

「ええです。」

「大丈夫です。」

「では…

 

 

 

始め!!!

 

掛け声とともに二人の姿が搔き消えたと思うとすぐさま中央で激しい鍔迫り合いが起こる!!

 

「流石、速いね。」

「そっちこそ。」

 

(言うてもこれ、本気でやれば押せるな。力的にはボクの方が上なんかな?いや、向こうさんも全力いうわけやないみたい…一般人[?]相手には本来の力は出せんゆうわけか…)

 

しかし、ギンが思考に一瞬気を取られた隙を木場は見逃すはずもなく、鍔迫り合いから一気にギンを押し返し一転攻勢に出る。木場は袈裟懸け、逆袈裟、胴薙ぎ、などと怒涛の攻めをみせるがギンはそのことごとくを的確に捌いていく。

 

「簡単に防いでくれるね。」

「いやいや、全然簡単やないよ?」

 

木場は袈裟懸け、ギンはそれを竹刀を両手で支えた形で再度起こる鍔迫り合い…先程よりもぎちぎち、ギリギリと竹刀から音が上がりそうなほど押し合いが繰り広げられる。そして今回の競り合いに勝ったのは……

 

 

 

 

ギンであった。

 

「っ!!」

「足元がお留守やで?」

 

そのギンの声が聞こえたかと思うと、木場の視界は突如として90度回転した。何が起こったかというと…ギンの足払いによって木場の体勢が崩されたのだった。さらに倒れてしまった木場に向ってギンの竹刀が叩き切ろうと迫ってくるが…間一髪、木場は横に転がることで躱し、その勢いで立ち上がり体勢を立て直した。

 

「まだまだ!」

 

ーーードンッ!!

、とバカデカい踏み込みの音とともにギンが攻め込み木場の反撃を許さない。その苛烈さはギンは竹刀を使っているにもかかわらずまるで槍を使っていると周囲のギャラリーに思わせるほどの突きの嵐だった。しかしそんな嵐の中、木場はその突きを逸らし、時には弾くことでしのぎ、その顔には焦りなど微塵も感じられない。そんな木場の防戦が続くかと思われたが、

 

(…ここだ!!)

 

木場は突きの連打の隙間を上手く縫い、切り上げをもってギンの竹刀を跳ね上げた。その少しの時間に木場は素早くギンの背後に回り込み、胴へと一閃を打ち込もうとする。これで勝負が決まったか?!とギャラリーの全員がそう思ったが、次の瞬間、ギンは()()()()()()()()()竹刀を脇の隙間から竹刀を伸ばし、鋭い突きを放つ。木場は寸前にそれに反応し竹刀の腹で突きを受けた衝撃で大きく弾かれたように後退した。今二人がいる位置はこの試合が始まった時丁度お互いがいた位置であった。

 

「フフッ、本当に楽しいね、ギンとの試合は。」

「でも楽しい時間はいつかは終わるもんや。」

「そうだね。そろそろ決着をつけよう。」

「そこには大賛成や。あんまりヒトの部活場所とるんも悪いしなぁ。というか、こっちの体力もそろそろアカンしな…

「何か言ったかい?」

「いいやなんも?これが最後や…いくで?」

「うん、来いっ!」

 

両者構えつつ、それと同時に場の空気もより張りつめていく。その終わりは突然に訪れた…二人とも一斉に飛び出しぶつかり合い数合打ち合い、三度激しい押し合いとなった。

 

(こっちは割と本気でやっとんのに向こうは力隠しとんのは理由があれど少し癪や。悪いけど本気出してもらうで裕斗?)

 

(……!!!)

 

押し合いのさなか、ギンの雰囲気が変わったと思いきや木場の表情が険しくなり今まで以上の強さでギンが押し負け、弾き飛ばされる。木場は一瞬困惑した顔をしたが、好機を逃すようなことはせず、さらに追い打ちをかけるため一気に詰め寄る。今度はギンに不意を突く隙を与えないためにも最速で、真っ正面から。木場は詰め寄りつつ、少し体勢の崩れているギンと目が合った。いつもと違うギンの少し見開かれた目を見た瞬間木場は、

 

ゾクッ

 

とんでもない寒気に襲われ、ピタっとその足を止めた。当の本人は蛇に全身を締め付けられるような錯覚に陥っていた。その悪寒は木場の勘違いではなく、ことは一瞬だった…。

ギンは押された体勢から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。あまりのことに木場は全く受け身を取ることもできず、横になったままギンに竹刀を突き付けられる。

 

そこまで!勝者……どっち?」

「「まあ、ボクの/僕の負けですね。

 

 

 

ん?」」

「最後に倒れていたのは僕なんだからギンの勝ちだろう?」

「いやいやいや。太刀取りなんて邪道をやってもうたんやから『剣士』としてボクの負けや。裕斗の勝ちやろ?」

「でも……」

「いや……」

「しかし……」

「…こら平行線やな。審判さん!決めてもろてええですか?」

「うーん…。なら市丸君は反則行為で、木場君は最後の一手という点を考慮して…引き分けってことにしましょう。以上、試合終了。礼!!」

「「ありがとうございました。」」

「二人ともいい試合をありがとね?部員にもいい刺激になったわ。」

「いえいえ、こちらこそわざわざ場所を貸していただきありがとうございました。」

「自分からも、審判役共々ありがとうございました。」

 

 

 

 

 

 

試合が終わり、ギンが荷物のまとめ帰りの準備をしていると木場が近づいてきた。

 

「ギーン?合気をやってるなんて聞いてないんだけど?あと、最後の競り合いの時やってくれたね?」

「ん?そら言ってへんかったからね。太刀取りの件はわかるけど、競り合いの時?ボクはなんもしてへんよ?」

 

ギンはしらばっくれたが、木場の言う通り、最後の競り合いの時ギンは木場に本来の力を出させるために木場()()()殺気を飛ばしていた。そのため、木場は少々冷静さを欠き、合気で投げられても対応が遅れたのだった。

 

「今回は勝負がつかなかったけど、今度は絶対に負けないからね?」

「受けて立つ…って言いたいとこやけど、できればこんな疲れるんは遠慮したいわ。」

「あはは、ギンならそういうかなって思ってたよ。じゃあまた明日。」

「おう、ほなまた。」

 

そう言いあってお互いに道場を後にした。

 

第三者視点:side out

 

side:ギン

いやぁ強かった強かった。まさかあんな速いとは思わんかった。

しかも本来の力はまだ全開やないときた…向こうが全力で来られたら今度は勝てるか本気でわからんなぁ、合気も通用せぇへんやろし。因みに今時間はもう夕暮れを越えて夕飯時、ボクは帰宅中なのだが、実は実家から出て父さんの知り合いから特別価格で一軒家を借り、一人暮らしをしている。

 

「ただいまー…言うても誰も返事h「おや、遅かったね。おかえりなさいギン。」……なんでおんの?()()()()。」

 

一人暮らしのはずの家に帰宅し、扉を開けるとそこには銀髪長髪碧眼の()()()がエプロンを着て立っていた。そう、『美少女』や。原作やと原作主人公(兵藤君)のライバルでかなりの強キャラとして出てきてて、そこでは『男』として描かれていたはずなんやけどなんでかこの世界では女の子になってるんよなぁ。

 

「なんでって、好いた男の家に女が来るのは変かい?こういうのを『通い妻』って言うらしいね。」

「せやね、聞き方が悪かったわ。()()()()()入ってきたん?合鍵なんて渡した覚えはないんやけど…。『ピピピピッ』ん?……いやどうやったかは分かったわ。」

 

ポケットのスマホから音がして見ると、『すいません、止められませんでした』の一文。あの王子様でも止められなかったんならしゃーない。

 

「というか、『通い妻』なんて言葉よう知ってたなぁ。」

「私が教えたにゃん♪」

 

こらこら王子さん?くせ者が二人なんて聞い取らんよ…

 

「なんやヘタレの野良猫が迷い込んでたみたいやな。保健所さん対応してくれるかいな?」

「ちょっ!ヘタレとかひどいにゃん!!」

「ヘタレ言われるん嫌やったらさっさと証拠集めや、()()?」

「いや、もうあらかた集め終わったにゃん…あいつらポンポン情報吐きすぎにゃん。おかげであちこち駆け回る羽目になったにゃん。」

「だから最近見かけんかったんか…なら後はしかるべき場所で明かすだけ…この短い間ですごいやん。」ポンポン

「いやそんな逆に素直に褒められると照れるにゃ♪」///

「で?」

「『で?』って?」

「妹さんにはもう会うたん?」

「……」

 

黒歌の頭を撫でている手に力を込めて、

 

「く~ろ~か~?あんだけボク言わんへんかった?妹さんに早よ会ってあげな一層疑心は深まるばかりやって。」ギリギリ

「に"ゃ"ーーー!ギリギリはやめてにゃーー!!!」

「まったく…『クイックイッ』ん?」

「黒歌だけ頭撫でられてズルい。」プクーッ

「(なんやこのかわいい生物は…)はいはい、ご飯作ってくれておおきに。」ナデナデ

「フフフ。あれ?ご飯作ったって私言ったっけ?」

「まあこんだけええ匂いさせとればね?それに今着けとるそれ、ボクがよう使うてるエプロンやよ?」

「ああ、悪いけど勝手に使わせてもらったよ。そうか、ギンが良く使っていたのか…道理で君の匂いがすると思ったよ。」

「さらっと変態じみた発言せんで?そんなボク匂う?」

「いや、そんなことはないさ。いい匂いだよ?ところで……そこの黒歌はいいのかい?なんだか痙攣しているけれど。」

「おっと、忘れてた。」パッ

「にゃんのこれしき。愛の鞭と思えばなんのそのにゃ。」

「はいはい、バカなことやってないでさっさとリビング行くで?折角ヴァーリが作ってくれたんが冷めてまう。」

 

~少年少女、食事中~

 

「「「ごちそうさまでした。」」」

 

「ほんまに美味しかった。また料理の腕上げたんやない?」

「確かに。今までのラーメン狂いのヴァーリとは思えないメニューだったにゃ。まさかあのヴァーリからバランスのいい食事が出てくるなんて…やっぱりギンの説教が聞いたのかにゃ?」

 

そう、今日の献立は『生姜焼き・ワカメのサラダ・みそ汁・ご飯』というものやった。そして以前ヴァーリの食生活を聞いたときにあまりにもラーメン、ラーメン、ラーメンばっかりと酷すぎたため、割と本気で叱ったんやったっけ。

 

「で?今日はどうしたんだい?ギンがあんな遅い時間に帰ってくるなんて珍しいじゃないか。」

「帰宅時間が把握されてんのには突っ込まへんけど…。ちょっとした野暮用やよ。」

「ふむ…体のあちこちに見える擦り傷や内出血を見ると一試合した感じかな?」

「うん、鋭すぎて少し引くわ。ちょっとの情報から推測するにしても的確過ぎやわ。」

「なるほど、どうやら合ってるみたいだね。だとしたらその相手には嫉妬してしまうな。」

「いやいや殺し殺されのガチなやつやなくてフツーに競技的な試合やから…。」

「相変わらずヴァーリは戦闘狂なのにゃ~。」

 

ピリッ!

 

「ん?」「ほう…」「にゃっ!」

「どこかのバカが悪さをしてるみたいだね。」

「しかも、これ光の力ってことは堕天使の可能性が高いにゃん。ってどうかしたのかにゃ、ギン?」

「…ちょっとこれはまずいなぁ。…ちょっと出てくるわ。ベッドとか自由に使うてええから早う寝とき、夜更かしは美容の敵やよ?…折角の別嬪さん、損なったらもったいないで?ほな、行ってきます。」

 

こら急がな。間に合わん、なんてなったらしゃれならん!少し焦りつつ、家を飛び出した。

 

 

 

 

「ねえヴァーリ?」

「なんだい黒歌?」

「ギンってああいうとこズルいわよね。」

「おいおい、顔が真っ赤だぞ?それにいつもの猫語尾も抜けてるじゃないか。」

「鏡を見て言いなさい、あんただってトマト色じゃないのよ。」

 

ギンが家を出た後そんな会話があったとかなかったとか…

 

ギン:side out

 

~時は少々遡り…~

 

side:イッセー

今は21時過ぎ…やっぱりなんだか体の調子がおかしい。まず視界。今は夜のはずなのに夜目が利く、なんていうレベルじゃないくらいによく見えている。次に体。朝あんなに体が重くてだるかったはずなのに今は嘘のように体が軽い。昨日の記憶といい、何だってんだよ…。

 

「だーめだ、どうにも気分が晴れねぇ。ちょっと散歩にでも出るか…。」

 

どうにも心のモヤが晴れないため物理的に気分を変えていこう。

 

 

特に目的地も決めずに歩いていたが、気が付けば夕麻ちゃんに刺されたあの公園に来ていた。

 

「やっぱり、記憶違いとかじゃないよな。」

 

噴水の前でたたずんでいると一人誰かこちらに近づいてくるのが見えた。

 

「ほう、こんなところにいるとは…主人はどうした?それともはぐれか?まあどちらでもいいか。」

「えーっと…すいません、どちら様で?」

「む、私の正体もわからぬか…。なりたてなのか?それともこちらを油断させようとしているのか…どちらでも貴様を殺すことには変わりないのだがな。」

 

トレンチコートの男は物騒なことを言いつつ右手にはいつか見た光の槍が握られていた。

 

「!!…それは?!」

「ほう、光の槍はわかるようだな。ならば余計にここから生かして返すことは……できん!!」

 

男から途轍もない殺気を放たれたかと思うと次の瞬間、男は目前まで迫ってきていた。

 

「うおっ!!」

 

下がろうとしたが石かなにかに躓いて尻もちをついてしまった。しかしそれが功を奏したようで今、俺の頭上を槍が通過していた。オイコラ!毛何本か持ってかれたぞ?!

 

(なんて言ってる場合じゃねえ!早く逃げねえと!!)

 

男に背を向け脱兎のごとく駆け出した。

 

~そして時は戻って現在~

 

「はぁ、はぁ、はぁ…くっそなんで振り切れねぇんだよ…。」

 

住宅街を全力で走っているのに男との距離が一向に離れない気配がない…男は()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「何かしてくるかと思えば何もせず、ただ逃げるだけか…どうやら勘繰りすぎたようだな。よもや結界にも気づかぬとは―――」

 

後ろからの声が突然途切れたかと思うと…

 

「もう貴様に用はない。死ね

 

後ろにいたはずの男がいつの間にか前方から襲い掛かってきた?!どうにか体を捻り、光の槍の一突きを躱すが、ブロック塀を背にした俺にもう逃げ場などなかった…

 

「がぁ!!」

 

槍が俺の身体を貫通し、後ろのブロック塀に突き刺さる。槍は俺の身体を焼いているようで、辺りに人の焼ける嫌な臭いが充満した。

 

(熱い、あつい、アツい、アツイ!!)

 

刺される痛みと別に焼ける痛みによって声も出せない。あまりの痛さに意識も飛びかけ朦朧とした状態の中、死を覚悟したが…ふと、俺に刺さっていたはずの槍が目の前の男とともに消失した。

 

「なんや、危ないとこやったなぁ?兵藤君?」

「ゴホッゴホッ。なんでお前がいるんだよ……市丸ギン。」

 

イッセー:side out

 

side:第三者視点

イッセーの目の前にいたのは市丸ギンであった。

 

「それ、朝も似たようなん聞いたなぁ。ただの散歩やよ?」

「散歩って…って!ンなこと言ってる場合じゃねえ!早く逃げろ、殺されるぞ!!」

「なに心配してくれるん?ボク、君に嫌われとる思うてたけど、兵藤君は優しいんやね?でも…僕が逃げてもうたら君、殺されるやろ?それに、流石に(見殺しするんも)二度はゴメンや。」

「(二度目?)俺のことはいいからほっとけ!死にてえのか?!」

「心配おおきに。でも逃げへんのは変わらへんよ?兵藤君は知らんと思うけどボク、強いから。」

 

そうこうしているうちに、男がイッセーたちの前に現れた。所々焦げている部分があるあたり、どうやらギンに攻撃されたようだ。

 

「貴様、普通の人間は結界で近寄れないはず…どうやって入ってきた。」

「んー?結界?そんなんボク知らんで?途中でちゃちな紙切れはあったけど…もしかしてあんなもんを結界言うとるん?冗談やろ?」

「貴様ぁ…!」

「おい市丸!?なに怒らせること言ってんだよ!?」

「まあまあ、見とき。」

 

明らかに怒っている様子の男が一歩踏み出した瞬間、その足元から大爆発が起こった。

 

「なっ!」

「うんうん。やっぱり『曲光』と『伏火』、『赤火砲』の組み合わせは使えるな。」

 

爆風から顔を庇いつつ驚くイッセーとどこか満足気なギン。しかし、そんな爆発の中男は出てきた。その表情から明らかに先程の怒りは全くと言っていいほど見られず、冷静にこちらを観察していた。

 

「あらら、あんまし効いてない感じ?」

「いや、矮小な人間の術にしては効いたぞ。先程の爆発…俺を最初に飛ばした時に仕込んでいたのか?」

「はて?どうやろな?」

「答えぬか…。まあいい、まだあったとしてもそれを想定して動けばいいだけのこと。」

「っ!!」

「ぐぇっ!?」

 

ギンがイッセーの襟首をつかみ、引きずるように下がった。二人がさっきまでいた場所には光の槍が2本突き刺さっていた。

 

「…どうやら仕込めたのは先の一発だけだったようだな。」

「 」

「ほんま無茶苦茶やな…もしほんまに何発もあったらどないする気や。あと兵藤君、いつまで呆けとるん?腰抜かしとる場合ちゃうで?」

「たかが人の術で私が死ぬわけもない。…だがどうやらここまでのようだ。」

「…ふぅ、思ったよりも時間かかったみたいやなぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうね。これ以上私の眷属をイジメるのはよしてもらおうかしら。」

 

戦場に緋色が降り立つ。そこに姿を現したのは駒王学園3年の『リアス・グレモリー』その人であった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。堕天使さん?これ以上やるというのなら本気で全面戦争になりかねないわよ?」

「いやいや、こちらとしてははぐれを善意で消しておこうと思っただけなのだがね…。今度から誰の者かわかりやすいように名札でもつけておくといい。今日のところは退くとしよう。」

「待ちなさ「私のことを追うのもいいが、その場合貴様の眷属はどうなるかな?」ッチ!!」

 

男は背中から黒い翼を生やし、その場から離脱していく…。

敵も去り、一息ついたところでドサッとギンたちの後ろから音が聞こえた。それはイッセーが倒れた音であった。

 

「っ!!イッセー!?」

「…大丈夫。どうやら気ぃ失ってるだけみたいです。敵もおらんなったから安心したんやないですかね?」

 

ギンは素早く駆け寄り、脈や軽い触診をしたところ気絶をしただけのようだ。ただ、とギンは続けて…

 

「ボク治療系には疎いんで、グレモリー先輩頼めますか?」

「あ、貴方も貴方であんまり動揺していないのね…。問い詰められるものだと思っていたのだけど。」

「いやまぁこんな時こそ冷静にならなあかんでしょ。それにもう夜も更けてもうてますし…後日先輩から説明もしてくれはるんやないですか?」

「ええ、そのつもりだから明日私の使いを送るわ。」

「わかりました。改めて、兵藤君の治療の方頼んでええですか?」

「勿論、私の眷属だもの。自分の眷属の面倒は自分で見るわ。」

 

そう言いつつ、イッセーを肩に担ぐリアス。

 

「ほな、リアス先輩また明日。」

「ええ、また明日。イッセーについてはこちらに任せなさい。」

「それじゃ「市丸君!」…はい。」

「遅くなったけど、私の眷属のことを守ってくれてありがとう。礼を言うわ。」

「いえいえ、言うてほとんど役にも立てへんかったんで。それに、先輩がもう少し遅れてたらボクも殺されてたと思いますし…。」

「あらそう?私はそうは思わないけど?だって貴方見たところまだぜn「先輩。早よせな兵藤君のケガもっと酷なりますよ?後遺症でも残ってたらえらいことですし。」そうね。今日のところはそういうことにしといてあげる。」

 

そう言ってリアスはコウモリのような翼を背中から生やし、飛んで行った。

 

「『()()()()()()()』ねぇ…。あんま突かんでほしいんやけどなぁ。」

 

そうぼやきながらもギンは帰路についた。

 

おまけ

 

「好きに使うてええとは言うたけど、流石にソファーで寝られるんは気が引けるわ。」

 

ギンの目の前にはソファーで横になっている二人(ヴァーリと黒歌)。しゃあないなぁ、と呟いたギンはそっと起こさないようにヴァーリ、黒歌の順に二階の空いている寝室へと運んで行った……

 

 

 

()()()()()()()

 

「お休み。ええ夢を。」

 

運び終えた後そう言いながらギンはそっと扉を閉めた。その時、二人の顔が少し赤みがかって見えたのは気のせいだろう。




こんにちは、四木シロです!今回も読んでいただきありがとうございます!前書きでも言いましたが、投稿がかなり空いてしまい、申し訳ありません。実は一度書いてたものが吹っ飛んだり、戦闘シーンの描写に難航したりで少々手こずりました。
感想、高評価等をしていただければモチベーションがとてつもなく上がるので、どうか!!どうか!!(切実)


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結構重めのCO(カミングアウト)のはずなんやけどちょっと軽すぎひん?

はい、すいません。遅くなりました四木シロです…大変お待たせいたしました。今回は本格的リアス陣営との接触です。楽しんでいただければ幸いです。ではどうぞ!!


side:第三者視点

リアス・グレモリーとの接触した翌日。

コトコト

ソファーで寝ていたギンはそんな音ともに目を覚ます。

 

「ん、ん~?」

「あ、起きたかにゃ?おはよう、ギン。」

「おはようさん、くろか。あさごはんつくってくれたん?おおきに。」

「にゃはは。寝起きでギンがフニャフニャだにゃ~。おはようのキスでもするかにゃ?」

「…かお。」

「顔?」

「かお、あろうてくるわ。」

「にゃ~!おはようのキスは無視かにゃ!?」

 

嘆く黒歌をガン無視してそそくさと洗面所に向かうギン。何かとマイペースである。

 

「むー!」

「何をむくれているんだい黒歌?」

「にゃー、ギンがつれないのにゃ。」

「なんだい、いつものことじゃないか。」

「まぁそうにゃんだけど…っと、ヴァーリおはy」

「おはよう黒歌。私の顔に何かついてるかい?」

「…ヴァーリ、悪い事は言わないからこっち座りなさい。」

「???」

「寝癖、ひどいわよ?」

「…お願いしよう。」

 

すると、ギンがリビングに戻ってきた。

 

「やあ、おはようギン。」

「うん、おはようさん。ヴァーリ。こうして見るとなんや姉妹みたいやね。」

「ほう、因みにどちらが妹かな?」

「「そら/そりゃヴァーリやろ/よ。」」

「むぅ。」

「流石に現役でお姉ちゃんやってる黒歌には勝てへんやろ…。」

「ヴァーリは昔から身だしなみを疎かにしがちだから困るにゃ。」

 

困ると言う割には黒歌の顔にはどこか満更でもなくどこか嬉しそうだった。

 

「今日の黒歌はなんだか機嫌がいいな。」

「まぁね。なんせ今朝は珍しいギンの寝顔が見れたからにゃ。」

「な!?ズルいぞ黒歌!」

「フフン。早起きは三文の徳とはよく言ったもんにゃ!」

「ぐぬぬぬ…。」

 

なぜ、この二人がギンの寝顔でこんなにも盛り上がっているのかというと…。ギンは人前で寝ることはあんまりない。両親からの英才教育(鬼しごき)によって誰かが近づこうとするとそれがそれなりに信頼している人でない限り、たとえ眠っていても起きてしまうのだ。ある意味ギンからの信頼の形が表に現れる瞬間である。まあ今回は昨夜の堕天使との交戦の疲れも原因ではあるのだが、それでもギンの寝顔はそれほどにレアなのだ。

 

「まあまあ、そんにゃに残念がらなくても写真に撮ってるからあとで送ってあげるにゃ♪」

「ほんとか黒歌!?ぜひ頼む。」

 

「二人とも聞こえとるで。黒歌、肖像権侵害やで?写真の削除を申し渡す。」

「嫌にゃ♪」

「…しゃあないな。妹さんにお姉ちゃんは盗撮する犯罪者やった言うとくわ。」

「にゃ!?それは卑怯にゃ!」

「ギン。」

「ダメや。」

「どうしてもかい?」

「どうしてもや。」

「ギン。」

「しつこいでヴァー……リ。」

 

そこには上目遣いでギンをじっと見て懇願しているかわいい生物(ヴァーリ)がいた。

 

「……そんな顔してもダーメ。」

「なんにゃその間は。」

「惜しい、あともう少しか。」

「兎に角、ダメなもんはダメや。」

「じゃ、じゃあ!私はヴァーリにしか渡さないから!絶対にそれ以外には見せもしないし、渡さないって条件はどうにゃ?」

「うーん、それならええん…かな?」

「やった!」

「決まりにゃ!じゃあこの話はここまで!ほらほら朝ごはんが冷める前に食べるにゃ。」

(黒歌が条件まで出すんやったら、そこまで大事にもならへんやろ。ただ、)

「せやね、黒歌がそこまで言うんやったらボクも妥協しよか。…でももし、それを破った場合黒歌の妹さんに今までの君の恥ずかしエピソード言うたるからな?」

「にゃにゃにゃ!?ちょ、ちょっと待つにゃギン!!」

「さーて、ヴァーリ。折角黒歌が作ってくれた朝ごはんや、早よ食べよか?」

 

食事の準備を着々と進めていくギンとヴァーリ。そしてその後ろで『ぎにゃー!!』と悲鳴を上げながら悶絶している黒歌を無視してあっという間に準備は終わった。

 

「「「いただきます。」」」

 

色々と話しながらも食事は進んでいきあらかた食べ終わった頃、話題は昨日の事へと移っていった。

 

「で、結局昨日はどうなったの?」

「やっぱ暴れてたんは堕天使やったわ。そこんとこはどうなん?」

「ふむ…そんな話は聞いてないな。完全にそいつらの暴走だね。」

「あらー。…総督さんに文句頼むわ。」

「うん、任された。」

「あ!そう言えばギン、堕天使以外にも昨日会ったでしょ?」

「ん?ああ、リアス先輩やね。」

「それ、大丈夫だったにゃ?」

 

どうしても黒歌はその過去から悪魔に対してはやはりいい印象は持てないようだ。

 

「大丈夫やと思うで?グレモリー家はそない悪い話聞かへんし、それに実際に会うて話した感じ、悪い人ではないみたいや。」

「ふーん。まあギンが言うならいいんだけど…。」

「ところで…ギン。時間はいいのかい?」

「げ、そろそろ出なアカンな。さっさと準備せなね…ごちそうさんでした。黒歌、かなり美味しかったで?」

「うん、お粗末様にゃ。食器については任せてにゃん。」

「私も手伝おう黒歌。」

「助かるにゃ♪」

 

流し台まで食器を持って行ったギンはお礼を言いつつ、自分の部屋へ登校の準備しに行った。

 

 

 

「ほな、行ってきます。」

「はい、行ってらっしゃいにゃ!鍵はいつもの所に入れとくから安心するにゃ。」

「…それはええんやけど、勝手に漁らんでよ?」

「保障しかねるにゃ!」

「堂々と言わんで欲しいわぁ…。ほんまに妹さんに言いつけよかな?」

「それだけは勘弁してほしいにゃ!!」

「なら、せぇへんって約束できる?」

「………するにゃ。」

「私も見張っておくから安心して行くといい。」

「ヴァーリもどちらかと言うとそっち側(黒歌側)なんやけど…。」

「それよりも。今日グレモリー嬢と会うんだろう?ギンに限って万が一もないだろうけど気を付けてね?」

「ん、そらもちろんやけど…。ヴァーリ頼むから黒歌しっかり止めてな?」

「私そんな信用無い?」

「自分の胸に手を当てて考えなさい。…ふぅ、ほな行ってきます。」

「「行ってらっしゃーい。」」

 

ギンは少し頬を緩めて玄関を出た。

 

第三者視点:side out

 

 

side:ギン

時間はあっという間に過ぎ、気付けば放課後…。

 

「ギン。リアス部長から君たちの案内を頼まれたんだ。ついて来てくれるかい?」

「ん。、りょーかい。」

「驚かないんだね?」

「…なんとなく気がついてはおったよ、()()。」

「へぇ。」

「ほらほら、もう一人連れてかなアカンのやろ?早よ行かん?」

「そうだね。一誠君の方も迎えに行こうか。」

 

そう言って、裕斗と一緒に兵藤君のいる教室へと向かうと…。

 

 

 

 

 

「ねえねえ、あれって…。」

「金王子の木場様に銀王子の市丸様じゃない!?」

「別クラスの二人がうちのクラスに何の用だろう?」

 

「有名人は大変やねぇ。金王子?」

「他人事じゃないよ?銀王子。」

「まぁ冗談はさておいて兵藤君呼ばな。」

「そうだね。ちょっとすいません。」

「はっ!はい!!」

「兵藤一誠君はいますか?」

 

ーザワザワー

 

「えっ!?あの変態兵藤に!?」

「いったいどんな用だろう?」

「市丸様もいるってことは先週みたいに兵藤が何かやったとか?」

「でもそれじゃあ木場様がいるのはなんで?」

 

「おう、木場。呼んだかよ。って市丸もいるってことは…。」

「うん。リアス部長の遣いだよ。」

「分かった。すぐ準備するからちょっと待ってろ。」

 

 

「準備できたぞ。」

「これからどこ行くん?」

「そう言えば、どこに行くか言ってなかったね。今から行くのは旧校舎。僕たち『オカルト研究部』のあるところさ。」

 

 

 

 

 

 

「で、いつツッコミ入れようか思うたんやけど…。どしたんその顔。」

 

今裕斗と兵藤君の三人でリアス先輩のもとに向っているのだがその兵藤君が何故かボロボロなんよなぁ。例えるなら顔面ア○パ○マンレベルで。昨日の傷とはまた別件やと思うけど…。

 

「あ、ああこれか?そうだ!聞いて驚け市丸!!」

「なになに急に勢いづいて。」

「今朝なぁ、起きた時に隣に誰がいたとおm「リアス先輩やろ?」…まぁそうなんだが、なんと裸だったんだよ!お互いに!!」ドヤァ

「いや、そんな『羨ましいだろ!!』って顔されても困るんやけど…。」

なん…だと…。市丸、お前まさかその年で枯れてんのか?他に言うことねぇのかよ?!」

「一線超えるんやったらバレへんようにな?」

「違う!そうじゃねぇ!!」

「ていうか、不名誉なこと言わんといてや?誰も枯れてなんかないわ。でも、君のその傷の理由分かったわ、そのことあの二人(元浜と松田)に言うたやろ?」

「おまっ!なんでわかった?!」

「そら君の事やから自慢するんはわかりきっとるし、する相手と言ったらあの二人しかおらへんやろ?…そう言えば今朝なんやリアス先輩が男子と一緒に登校して来はったって騒がれとったけどあれ、君か。」

「二人とも、着いたよ。」

 

駄弁っているうちに旧校舎についたようだ。

 

「ここって…。」

「旧校舎やね、都市伝説や七不思議とかでも有名やけど…、ここ人が出入りできたんやな。」

「失礼します。二人を連れてきました。」

 

『オカルト研究部』の看板がかかったドアを開け、目の前に広がるは一言で言えば異質。部屋は薄暗く、なんというかオカルトと言ったらこれ!というような儀式に使うようなグッズが色々と置いてあった。

 

「うわぁ。」

「なんや『ザ・オカルト!!』ってな感じやなぁ。…ん?」

 

ふと、ソファーに座りお菓子をパクパクと食べている白髪ショートカットの少女に目が行った。

 

「あぁ、彼女は『塔城小猫(とうじょうこねこ)』さん。僕たちの一つ下だよ。」

「どうも。」

「『塔城小猫』ちゃんと言えば!駒王学園内でもトップレベルの可愛さで駒王学園のマスコットキャラクターとも呼ばれるレベルのカワイ子ちゃんじゃねえか!!まさかオカルト研究部に入っていたとは…。」

「相変わらず、そういった情報にはえらい強いんやな…兵藤君は…。」

 

そう言うとまたお菓子を食べるのを再開した。よう食うなぁ。

 

「?あげませんよ?」

「いや、おなか一杯やから大丈夫。別に取らへんよ。ところで裕斗、こん子もやっぱり?」

「それについても部長からお話があると思うよ。」

「りょーかい。」

 

じっと見てしまったため何か勘違いを与えてしまったようだが、その塔城さんがまだこちらを見ていた。

 

「ボクになんかついてます?」

「いえ、ただ…。」

 

と言って食べるのを中断した塔城さんはすっとこちらに寄ってきて、

 

「おや?」

「な!!」

 

すんすん、と服の匂いを嗅いできたのだった。…ん?ちょっと待って?な、なにが起きてるんや!?

 

「え、え~と…。と、塔城さん?ボクそんな匂います?」

「!?!?い、いえ!!すいません突然。なんだか懐かしい匂いがしたのでつい。」

「い・ち・ま・るーー!!またお前はなんて羨ましい!!」

あらあら、なにやら面白いことになってますね。

 

そこに、ボク、兵藤君、裕斗、塔城さん以外の声が響いた。

 

「こんにちは、遅くなりました()()()()。」

「いえいえ、木場君。こちらも少し説明を始めるのに時間がかかりそうなので構いませんよ。」

「うぉぉぉぉ。まさかの二大お姉様の一人、『姫島朱乃先輩』!!」

「あれ?リアス先輩が見当たらないんですが。」

「すいません、リアスは実は…」

 

そう言いつつカーテンから出てくるのは濡れ羽色の髪を後ろで束ねた『姫島朱乃(ひめじまあけの)先輩』。そのすぐ後ろではなにやらシャワーの音が流れてきた。

 

「実は昨日かなり疲れたようで、今身だしなみを整えているところなのです。なので少々お待ちください。」

「なら、それまで自分は外で待っておきますさかい準備が整い次第呼んどってください。」

「あらあら、よろしいんですか?」

「おいおい、市丸。もったいないぜ?あのリアス先輩の裸が布一枚隔てた先にあるのに、漢としてお前は何も感じないのかよ?」

 

先程よりもボルテージが明らかに上がった兵藤君がまくしたてる。

 

「いや、兵藤君こそ何言うてるん。女性がお風呂に入っとんのに男が同じ部屋におるんは倫理的にどうなん?百歩譲って付き合いのある裕斗はいいとして、僕や君がおったら気も休まらんやろ。まぁ、ボクが勝手に出るだけやから君に強制するつもりもないんやけどね。」

「むぅ、市丸の言うことも一理あるか…俺も出たほうがいいですかね?」

「一応部長の方からは居ても構わないそうですが…」

「お言葉に甘えさせていただきます!!」

「君もブレへんねぇ。」

「いやらしい顔。」

 

唐突な辛辣な言葉。発せられた方向を見ると、そこにはお菓子を食べる少女が…。これにはボクも裕斗も苦笑い。案外言葉の切れ味鋭いんやね。

 

「なら僕はギンについていくよ。お客さんだし何かあったら大変だしね?」

「では木場君、頼んでいいですか?」

「はい、任せてください。」

 

そう言って二人して部屋から出た。

 

 

しばらくして、中から声が掛けられ、二人は中へと戻っていった。

 

「どうぞ、座って頂戴。」

 

机には人数分のお茶が置かれており、リアス先輩と対面する形でボクと兵藤君が並んで座った。

 

「失礼します。」

「さて、どこから話せばいいのかしら?」

「どこからと言われても…昨日の事とかもう何がなにやら…。現実味があまりにもなさ過ぎて…。」

「そうね、そのことを話すなら私たちのことも話した方がいいわね。私たちはね…『()()』なの。」

「は?」

「ちょっと待ってください!!悪魔?何かの冗談っすか?」

「『()()()()》』」

「っ!!」

 

その一言に兵藤君に明らかな動揺が見えた。

 

「…先輩、冗談がキツイですよ。あんまりそれ、聞きたくないです。面白い話でもないですし。」

「あら?知りたくないの?なんであの日あなたが襲われたのか、なんで皆その女のことを忘れているのか。」

「ぐっ…」

「先輩、あんまイジメんとってください。早よ話進めましょ。」

「それもそうね。結論から言うわ…イッセー、貴方を襲ったのは『堕天使』と呼ばれる奴らよ。天野夕麻を含めてね。」

 

それからリアス先輩はつらつらと説明していった。堕天使について。天野夕麻のこと。そしてそれに関する記憶処置について。だが、イッセーは中々納得はしてへんようで…

 

「いやいやいや!それらが本当である証拠はどこですか?!言っちゃあアレですけど、人の古傷抉っておいて、何か明確な証拠がなきゃしまいには本気で起こりますよ!」

「私たちが天野夕麻のことを覚えていることが証拠にはならないかしら?」

「…できれば目に見える形がいいです。」

「そうねぇ…。まずは私たちが悪魔であることから証明しましょうか…。」

 

少し悩んだ様子を見せた先輩は制服をちょっとはだけさせると、バサッ!っとその背中からコウモリのような翼が飛び出した。しかも、様子が変わったのはリアス先輩だけやない。

 

「なっ!木場や小猫ちゃんまで!?」

「…。」

「これで信じてくれたかしら?それに、ここにいる悪魔は私たちだけじゃないわよ?」

 

そう先輩が言うとものすごいスピードで兵藤君がこちらを振り返って見ていた。

 

「?あぁ、ギンは違うわよ?…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。まあ正確に言うと『転生悪魔』になってもらったのだけど。」

 

違和感とかなかった?と聞くと彼の表情が驚きに染まる

 

「なにやら思い当たる節があるみたいね?そこで、イッセーが襲われた日(あの日)のことになるのだけど…」

 

そこからは原作通りの説明が行われた。

先輩が来た時にはもう致命傷であり、助けるために『悪魔の駒』(イーヴィル・ピース)を使って悪魔にしたこと。そうした悪魔は転生悪魔と呼ばれること等…。

 

「ここまではいいかしら?」

「実感は沸きませんけど、なんとなくはわかりました。でも、なんで俺が堕天使?でしたっけ?に襲われるんですか?こう言っちゃあれですけど、俺一般人ですよ?」

「そうね、そのことも説明しときましょうか。イッセー、貴方襲われたとき何か言われなかったかしら?」

「えぇ?ちょっと思い出すんで少し待ってください。ムムム……。」

 

唸る兵藤君からふと「あ、」と声が漏れた。

 

「もしかして、セイなんちゃらってやつですか?」

「フフ、正解。それが貴方が襲われた原因でしょうね。貴方が襲われた原因になったものは『神器』(セイクリッド・ギア)と呼ばれるものよ。」

「そう!セイクリッド・ギア!!セイクリッド・ギアだ!確かに言ってました!」

「『神器(セイクリッド・ギア)』は聖書の神が作り出したという強大な力を持つ武器や道具などのことを指すの。そしてそれらは特殊な反応を持っていて、イッセーが襲われたのはこれを堕天使が感知したからでしょうね。」

 

因みに、ボクの持つ斬魄刀『神槍』は斬魄刀を無理やりこの世界の神器として押し込んだ形やから、そういった反応もほとんどなく、少し隠すだけで感知できなくなるみたいやね。なんせこの距離でも(同じ部屋におっても)気付く様子もないし…。因みに、隠し方は仙術使いの黒歌のお墨付きや。

 

「???、でも俺はそんなの持っていませんよ?」

「大抵の神器はその所有者の中に隠れているの。そうね…イッセー、貴方が一番強いと思うものを想像して頂戴。」

 

そう言われた兵藤君は目を閉じ、しばらくすると突然…

 

ドラグソ波!!

 

・・・・・

 

「う、うん…思い浮かべるだけで、別に叫ぶ必要はなかったのよ?」

「……っ!…………っ!」

「つ、つい…って笑いすぎだぞ市丸ゥ!!!」

 

アカンアカン、笑いすぎた。腹痛すぎる。しかし、叫んだ甲斐があったか彼の腕には籠手が装備されていた。

 

「『龍の手』(トゥワイス・クリティカル)。能力は所有者の力を2倍にする。シンプルな能力ね。」

「おぉ!…おぉ?」

「まぁ、イッセーのことについてはこんなところかしら。さて、改めて…兵藤一誠君、市丸ギン君。この度は私の管理不行き届きにより、二人に多大な迷惑をかけたこと、グレモリーの名においてここに謝罪します。」

 

そう言うとリアス先輩だけでなく、ここに居るボクと兵藤君以外の全員が一斉に頭を下げた。

 

「いや、いやいや!頭を上げてください!別に俺たちは気にしてませんから!!な、なぁ?市丸?」

「…兵藤君には悪いけど、君みたいに気にせぇへんのは無理や。」

「な!?」

「でも、事後の対応の丁寧さ…そして兵藤君の処置も鑑みて、先輩たちの謝罪を受け入れます。」

「お前は!!先輩に助けてもらっておいてなんだよその態度は!!」

 

ボクの態度に腹が立ったんか兵藤君が胸ぐらを掴み上げる。制服が伸びるから勘弁してほしいんやけど…

 

「兵藤君はさっきの先輩の話で理解せぇへんかったん?ボクらは()()()()()()()()。それに、兵藤君こそ何考えてるん?君、『人間』じゃなくなってもうたんよ?親御さんたちにそれなんて説明するん?」

「そ、それは…」

「親御さんが亡くなるまで秘密にするん?いくらなんでも無理あるやろそれは。

 

 

 

 

…とまぁ建前はここまでや。」

「は?」

「勘違いせぇへんでほしいんやけど、ボクは別に先輩のこと許さへんって言うてるわけやないで?というかさっきの先輩の言葉思い出してみぃ。なんで改まって畏まった謝罪したと思う?しかもわざわざ『グレモリーの名において』なんて仰々しい前振りまでつけて…。考えるに、先輩は悪魔業界でそこそこの地位、もしくは権力を持つ立場なんやろう。それも踏まえての謝罪いうことは、この問題はなぁなぁで済ますわけにもいかんいうこと。それやったらこちらもちゃんとした対応せな先輩の立場がなくなってまう。やからこそのあの返答や。…わかったら、こん手ぇ離してほしいんやけど。ええ加減苦しなってきたし…。」

「わ、悪い!それとスマン。市丸がそこまで考えてるなんて思ってなかった。」

「別にええよ気にせんで。そこまで怒れるんは君の優しさ故やろうし…。何よりそれは君の美点や。ただ、少しケンカっ早いんは直さなあかんで?」

「やっぱり気になるわね、その年でそこまで頭の回転が早いのはかなり珍しいと思うのだけれど…。色々と聞かせてもらえないかしら?あなたの事を。ギン?」

「先輩の反応からして察してましたけど、やっぱり()()()()()()()()()()()。それやったら、まずはボクの家柄から話しましょか。」

 

 

 

と言っても割と簡単に済む話なんですけど、ボクの家は退魔系の家でした。おおっと、そない身構えんでください。『()()()』。過去形です。貴女方悪魔を滅する気ぃも毛頭ないんで。そういうわけで、人よりもそういったものに対する感知能力が高いんです。なんで、あの場にも居合わせることができましたし、両親から護身術の稽古もつけてもらってたんで少しは動ける言うだけの話です。

 

「っとまぁ、ボクについてはこんな感じですかね。」

「俺を助けてくれた時の変な術ってお前ん家の奴だったのか…。」

「貴方の出自はわかったわ。それと聞いておきたいのだけれど、私たちが悪魔だってことは…」

「前々から気づいてましたよ?」

「もしかして、ギン。昨日の試合の時の寒気って…」(前話参照)

「あぁ、裕斗アレなぁ…。こっちは全力でやってんのに向こうは違うなんて腹立つやん?っていうお子様じみたボクなりの我がままよ。」

「やっぱり、どうりで反応が薄いわけね。さて、あらかた話し終えたわけだけど…。そう言えばイッセー。」

 

と先輩はゴソゴソと一枚のチラシを机に出した。そこには『願い事、叶えます。』と書かれた如何にも宗教勧誘に使われそうな怪しげなチラシであった。

 

「これに見覚えはないかしら?」

「なんですか、これ?」

「やっぱりわからないのね…。これは私たち悪魔を呼び出すために使われる媒体。ほら、裏に陣が描かれているでしょ?あの日私が貴方のもとに来れたのはこの紙のおかげなの。本当に覚えはないのね?」

「はい」

「ということは一体誰が…」

「あぁ、それボクですね。」

「そう、ギンが…。」

「そうか、市丸が…。」

 

「「って、貴方が/お前が?!」」

 

「いや、兵藤君に関しては覚えとるやろ?あの日の昼に会うたやん。そん時に入れさせてもらいました。で、そのことで兵藤君には謝らなあかんことがあるよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「はぁ?」

「言うたやろ?ボクは家柄、感知能力が高いって…だからあん時に天野夕麻が堕天使やって気付いてたんよ。」

「あの時って…ああ!もしかしてシールはがしてもらった時か?!」

「そうそう、リアス先輩たちのことは知っとったからね。兵藤君には悪いけど、面倒ごとは勘弁したかったんよ。でも、知り合いが殺されるんのも目覚めが悪いからってことで仕込ませてもろうたわけなんやけど。まぁこうは言ってもただの言い訳や。君を見殺しにしたことに変わりない、何されても文句は言えへんよ。」

「いや、そんなことする気ねぇよ。」

「いやでも、」

「でももストもねぇの!今俺は生きてるからいいんだよ。そもそも、お前がチラシ入れてくれなきゃ死んでたんだし…。それでもお前が気にするんだったら、昨日助けてくれた分でチャラだ!いいですよね、先輩。」

「そうね、プラスマイナスで言えば、イッセーの言う通りだと思うわ。それに、私からすれば不謹慎だけど新しい眷属を得られる切っ掛けになったわけだしね。なにより、本人がこう言っているんだからそれを尊重したら?」

「そう言われたら、ぐうの音も出ないんですが…。」

「さて、話したいことは大方話し終えたかしら?」

「部長、勧誘の話がまだです。」

「っとと、そうだったそうだった。一番大事なことを忘れてたわ。ありがとう朱乃。」

「勧誘?」

「そう。ギン、貴方の身体能力やその退魔の術を見込んで誘うんだけど、貴方も悪魔になってみない?まだ『悪魔の駒』は残っているのよ。」

 

そう言う先輩の手には黒のチェスの駒が浮いていた。うーん。確かに純粋な身体能力の向上と、長い寿命も魅力的なんやけどなぁ…

 

「お誘いは大変ありがたいですけど、()()丁重にお断りさせていただきます。」

「理由を聞いても?」

「正直言うとそない大層な理由やないんですけど、簡単に言えばボクはまだ人間でいたいからです。それに、兵藤君を致命傷から持ち直した回復力を見ると、とっといた方がええでしょ。もしボクが死にかけてて、尚且つ駒も残ってて、そん時に先輩の気が変わってへんかったら使うてくれてもかいませんよ?」

「そう、なら悪魔への勧誘は今のところは諦めるしかないみたいね。それなら一応『オカルト研究部』の方には入ってもらえるかしら?そうすれば何かあった時に守れるから。」

「なるほど、後ろ盾ですか…。確かにそれだったらボクとしても助かりますね。」

「!!なら!」

「ええ、喜んで入らせていただきます。」

「よっし!!」

「リアス。はしたないですよ。」

「いいじゃない朱乃。裕斗の友達が入ってくれるのよ?喜ばしい事じゃない。それにこれまでの堅苦しい空気は疲れるのよ。」

 

(グレモリー家は身内への情が厚い言う噂はこの様子を見る限り嘘はないみたいやね)

 

「あの~、市丸に聞いたのはわかるんですけど。俺には入る云々は聞かないんですか?」

「あら?眷属であるイッセーに拒否権があると思って?」

「あっ無いですね。」

「それとこれはギンにもだけど、オカルト研究部にこれから入るのだから今後は私のことは『部長』と呼ぶように。」

「「了解です。『部長』。」」

 

兵藤君は明らかにはしゃいでいる。余程入れたんが嬉しかったんやろうな。まぁ気持ちはわからんでもないけど…。こんだけ綺麗どころが揃っとったらなぁ。

 

「よろしい。最後に何か聞きたいことはあるかしら?」

「ボクからはなにも。」

「あっそれなら俺から一つ。」

「何かしらイッセー?」

「俺が悪魔に転生したってことは理解できたんですけど、具体的に何がどう変わったか教えてくれませんか?」

「そう言えばそこら辺の説明をしていなかったわね。そうねぇ…朱乃ー?丁度いい依頼なかったかしら?」

「そうですねぇ…これなんかどうでしょう?『はぐれ悪魔バイザーの討伐』」

「ふむふむ。ランク的に見学に丁度いいかしらね。イッセーは行くことは確定として…。ギンはどうする?」

「面白そうなんでついていってもええですか?」

「かまわないわよ?でも一応自分の身は自分で守るようにして頂戴ね?」

「勿論です。なんならボクの実力も知っといた方がええですか?」

「そうね、その方が都合がいいかしら…。なら途中から参加してもらうからよろしくね。その時は裕斗をつけるからそのつもりでね。」

「よろしゅう頼むわ裕斗。」

「こちらこそよろしくねギン。」

「よし!なら今夜21時に、○○××廃工場集合。遅れないように!!」

 

さて、リアス眷属の力を見せてもらおかね。




この度はかなり更新遅くなり申し訳ございません。四木シロです…チラッと見たらUAが50,000以上、お気に入りが1,200以上と驚愕が隠せません。ただちょっとプレッシャーがガガガ…。できれば今後は更新が早くなるように……できたらいいなぁ。感想を送っていただければより一層の励みになりますのでお気軽に書いていただければ幸いです!誤字報告の方も見受け次第送っていただければありがたいです!!では、次回をお楽しみにお待ちください!!では、また。


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初!はぐれ悪魔!!with悪魔講義!!って油断したらあかんよ?

はい、毎度更新が遅くなりました。どうもこんにちは四木シロです。まぁごちゃごちゃ言うのもアレですので本編どぞ!!


廃工場に集まったオカルト研究部。そこでリアスからの『はぐれ悪魔』についての説明が行われた。

 

ーはぐれ悪魔とは呼んで字のごとく主の下から逃れた悪魔で、力に溺れ理性を失い人を襲う危険な悪魔であるー

 

ギンはそれを聞きながら内心

 

(まぁ、はぐれの比率は純粋な悪魔より断然転生悪魔に多いんやけどな)

 

と独り言ちた。そんな中、部員以外の声が響く。

 

「いい匂イがスる。あマいのカナ?それトモ…まずいノかな?」

 

その声に全員に緊張が走り空気がひりつく。声のする方を見ると棚の間から一人の女性が姿を現す…上半身裸で。

 

「ウオォォォォ!」

「兵藤君うるさい。緊張感大事に。」

「先輩。下品です。」

「朱乃、結界をお願い。」

「はい部長。」

 

しかし、そんなイッセーの勢いもすぐに減衰した。なぜなら、その女性の下半身を見てしまったから。それは四足獣のようだが、既存の動物のものではなかった。恐らく猪や鹿、更には爬虫類やほかの動物のものが混ざり混ざってその結果、名状しがたいものとなってしまったのだろう。

 

「うげぇ…美人なのにもったいねぇ。」

「吐くんやったらそこの角でやってな?」

「ギンは大丈夫なのかい?」

「まぁそこまでやね。」

「はぐれ悪魔バイザーね?依頼により貴女を討伐するわ!」

「ダレがやラレるか!返り討チニしてやル!!」

 

ーアアアアアアアアアアアア!!ー

 

ビリビリと工場全体が震えるほどの咆哮を上げると、バイザーの姿がミチミチッ、グチャッ、ブチブチ、などと音を立てながらさらに変化していった。咆哮が治まる頃にはもうバイザーの面影はなく、体格も数倍にまで膨れておりもはや混合獣(キメラ)のようであった。

 

「それじゃあ、二人とも、悪魔についての講義を始めるわよ。」

「今ここでっすか?!」

「大丈夫よ。皆バイザーよりもずっと強いもの。まずはそうね…小猫!!」

「はい!」

 

リアスの号令とともにギンの隣にいた小猫が飛び出す。

 

「それじゃ、まず第一に悪魔の駒はその形通りにチェスの駒みたいに種類があるの。そしてそれぞれに能力があるのよ。」

 

リアスによる講義が行われている中、飛び出した勢いそのままでバイザーへと突貫した小猫だったが、変異前にはなかったバイザーの突然伸びてきた尻尾によってカウンターをくらい弾き飛ばされてしまう。そしてそのまま工場の壁に激突する。その勢いと強さは生じた土煙が物語っていた。

 

「小猫ちゃん!!」

「あらあら。新人さんの前だから張り切りすぎたみたいですね。」

「大丈夫よイッセー。言ったでしょ?皆バイザーよりもずっと強いって。」

 

リアスの言葉を証明するように起きた土煙から小猫が平然とした様子で出てくる。どうやらカウンターに対しては腕をクロスし防いだようだ。

 

「講義の続きよ、悪魔の駒には種類があり、それぞれ能力があるって言ったわよね?小猫の持つ駒は戦車(ルーク)。そして『戦車』の持つ能力は圧倒的な防御力と攻撃力。ほら、見てみなさい。」

 

言われた通り目をやると丁度、小猫がバイザーを殴るところだった。

 

「フッ!」

「ギャアッ!」

 

驚くべきはその音。ガコン!!、とその華奢な身体のどこからそれほどのパワーを出すのか、さっき吹き飛ばされたとは思えない威力。くらったバイザーはと言うと、変異してかなりの重量と体積が増加しているにもかかわらず、パンチの威力でかなり後退させられている。しかし、そこでバイザーは何かハッと気付いたかように一定のラインからビタッ!!っと止まった。

 

「それじゃあ次は…裕斗!!」

「はい。それじゃ行ってくるよ。」

「おう行ってr」

 

イッセーが返事を言い終える間もなく木場はその場から消え、気付けば木場はバイザーの頭上まで跳んでいた。木場は消えたのではない。ただ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「裕斗の持つ駒は騎士(ナイト)。その能力は…って言わなくても見たらわかるわね。その特徴は機動力の向上よ。イッセーが目で追えないくらいのね。どうやらギンには見えていたみたいだけれど。」

 

リアスの言ったことは正しく、ギンの目にはしっかりと木場がバイザーに接近し、ジャンプするまでの

一挙手一投足ハッキリと見えていた。

 

「まぁ、このくらいって言っていいのかわかりませんけど、出来ひんかったらそもそも堕天使相手にケンカ売りませんって。」

「それもそうね。それと、これは悪魔の駒とは関係ないのだけれど裕斗もイッセーと同じく神器持ちよ。」

 

その言葉に答えるように空中の木場の手にはいつの間にか剣が握られていた。

 

「木場の神器ってあの剣か?」

「その解答じゃ三角ね。

 

 

 

 

 

裕斗の神器は剣自体じゃなくて剣を造る創造系の神器よ。」

「たタき落とシてやる!!」

 

バイザーが木場を迎え撃とうと腕を伸ばすが、それは叶わなかった。木場の背後に雷を纏った剣がどこからともなく5本現れ、

バイザーの腕を地面と縫い付けた。

 

「裕斗の神器の名前は魔剣創造(ソード・バース)。持ち主の想像する魔剣を造ることができるわ。」

 

迎撃するはずだった腕を縫い付けられ、完全な無防備になったバイザーに木場の持っていた剣が襲い掛かる。

 

「ガァアアアアアアア!!うデが!腕がァぁぁァァぁ!!」

 

見事木場の振るった剣はバイザーの腕を一刀両断し、すぐに木場はその場を離れた。

なぜならリアスのもとを既に離れていた姫島がバチバチ言わせながらいい笑顔を浮かべていたそこにいたのだから。

腕を再生させたバイザーの前に死神(姫島)が立っていた。

 

「最後に朱乃ってもう…もう少し待てなかったのかしら?」

「うふふふ♪私も混ぜてくださいな。」

「イッセー、ギン、最初に言っておくことがあるわ。朱乃は『究極のS』よ。」

「「見ればわかります。」」

 

目の前の光景は悲惨と言う他なかった。そこは言うなれば地獄。バイザーの周りには雷が降り注ぎ、

それをバイザーは必死に避けていた。そして姫島はと言うと…

 

「うふふ♪うふふふふ♪」

 

恍惚とした表情を浮かべていた。『究極のS』。その言葉に違わずバイザーを襲う雷はどれも急所を外されており

しかし、足の先など痛覚が通っているとされる場所を的確に撃ち、時に回避させ、時に防御させ、

それに伴う再生によって着実にバイザーを疲弊させていった。

 

「朱乃の持つ駒は女王(クイーン)。駒の能力は…わかるかしら?ギン?」

「チェスの駒で言う『女王』は確かほかの大駒を合わせたような動きやから…ってまさか?」

「そのまさか、『女王』は『戦車』の攻撃力、防御力と『騎士』の機動力を併せ持つ。

因みに、もう一種類『僧侶』って言う駒があるのだけど、その能力は魔法力の向上となっているわ。

この朱乃の雷の威力が高いのは本人の地力もあるけど『女王』が僧侶(ビショップ)の能力も持っているからでもあるわ。」

「なるほど…」

 

納得するイッセーを傍目に、今までじっとしていたギンが動き出した。

 

「ギン?どうしたの?」

「いえいえ、そろそろ選手交代でしょう?部長としてもボクの実力知りたいでしょうし…」

 

スタスタとドS化した姫島のもとに近づき

 

「いいですね、いいですねぇ!ホラホラァ!!避けなきゃ当たっちゃいますよ!」

「ていっ。」

「痛っ!」

 

拳骨を握った手で軽く小突いた

 

「!?」

「あはは…」

「あら?」

「うぉぉぉい!」

 

背後でなにやらキーキーとうるさいがギンは無視した。

 

「気ぃつきましたか?姫島先輩?」

「何をするんですか?ギン君。」

「ボクらは彼女を討伐しに来ただけで、甚振りに来たわけやないんですよ?やりすぎです。」

「ですが!せっかく楽しくなってきたというのに…」

「先輩は部長の『女王』なんですよね?」

「そ、それがどうかしたんですか?今何の関係が?」

「副官である先輩はリアス眷属の中で一番見られるゆう事です。なのにそんなんでええんですか?

リアス眷属はこんなもんなんだ、って下に見られませんか?」

「む、むぅ~。」

「そないむくれんでください?なにもするな言うてるわけやないんです。

時と場合を考えてくださいってだけで…」

 

そう言って姫島の頭を撫でるギン。

 

(あら?この感じ…前にも?って私は何を考えて…。)

 

「やっぱりギン、貴方悪魔にならない?朱乃の暴走を抑えられるのは貴重な戦力なんだけど。」

「答えはあん時と変わりませんよ~部長。というわけで、交代です姫島先輩。」

「やっぱりギンが使うのってそれなんだね?」

「そらまぁ、ぶら下げてるもんは飾りやないよ?」

 

そう、ギンの腰からは一振りの刀が着けられていた…

 

「…かなりの再生能力を持ってるみたいやけど、度続く負傷でそれも限界やろ?」

 

ギンの目の前にはシュウシュウと音と煙を立てながらうずくまっているバイザーが…。

再生時の煙によってその姿全体が一瞬隠れる。

 

「ならどうなるか。修復も追いつかず、かと言って黙ってこのまま消えるか?

いや違う、その中間、ケガの無い頃に戻る。つまりは小さくなる。若返り、言うわけや。」

 

煙が晴れるとそこには先程の巨躯の女はおらず、バイザーと思しき幼い少女がいた。しかしその容姿に似合わずその目には変わらない戦意を滾らせ、こちらを睨んでいた。そしてその少女の姿が掻き消え、耳を劈く轟音が響き渡る。思わず体が硬直してしまっていた一同はすぐに周囲を警戒するが、そこにバイザーの姿はなく、よくよく見るとギンの姿もないことと先程まで何もなかったはずの壁に大穴が開いており、それが外まで続いていることに気付いた。一同はすぐにさっきの轟音がバイザーが壁を壊して外に出た音だと察した…

 

 

 

それにギンが巻き込まれたことも。

 

 

急いで外に向かう一同が目にした光景は、凄まじい、の一言に尽きた。その視線の先ではバイザーの攻撃をギンが凌いでいた。しかし言うは易く行うは難し、だ。バイザーはまず小さくなったことでスピードがかなり上がっており、その持ち前のスピードで以て接近戦に持ち込んでいた。かなりの速度の拳や足に襲われているのだが、それに対しギンはギリギリのところで体を逸らし、半歩ずらすなどして躱していた。そんなバイザーのラッシュの合間の隙を見計らい、ギンはその腕を掴み、一本背負いの要領で投げ飛ばした。空中で体勢を立て直し何とか受け身をしながら着地したバイザーとそれをじっと見るギン。少しばかり沈黙が続いたが、その沈黙を今度破ったのはギンであった。鞘に手をやり、鍔を押し上げ、すらぁっとその刀身を露わにする…。それは何の変哲もない刀であり、一見何もおかしなところはないように見える。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(おおきに、『神槍』。)

 

そう、ギンは神槍を始解し、脇差から一般的に刀と呼ばれる長さまで伸ばしていた。まぁ、今回は神器持ちとバレるわけにはいかないため死覇装は纏わずの戦闘なので瞬歩は使えないのだが、ギンの様子を見る限り何ら問題はなさそうである。刀を抜いたのを見たバイザーは投げられたのも踏まえ、近距離戦は不利と思ったか、背中から触手を何本も伸ばしギンへと向ける。

 

一本、瞬きをする間もなくギンの顔面へと迫る……すんでの所で切り払われた。

 

二本、三本、一本目に隠れるようにして同じように迫る……いつの間にか切られていた。

 

四本、五本、軌道は同じようにして目前で左右に分かれ挟み撃ちにする……一歩引かれて重なったとこ

ろを切られた。

 

六本、四本五本目と一緒に伸ばし、頭上から一気に振り下ろす……上段で防がれダメージは与えられなかったが少し動きが止まる。

 

七本、地面スレスレの横薙ぎで足払いをかける……六本目を力ずくではねのけられ、跳躍によって躱される。

 

八、九、十本、三本をまとめ、強度を上げ、なぎ倒す勢いで振るう……刀を腕で支えるように防がれる。

 

かなりの勢いと力であるはずなのにビタッと触手は止まり、バイザーがどんなに力を入れようとしてもギンは一歩も動くことなどなかった。

 

「ッフ!!」

 

ギンが気迫のこもった声を上げると触手たちをはねのけ、あっという間にバイザーのもとにたどり着き、斬りかかろうとする。ギンが刀を振り上げた時にようやくバイザーも反応できたようで、残っていた触手を総動員して壁を作るがギンはお構いなしとその壁ごと切り伏せた。バラバラ、と触手が落ち切り口から遅れて血が飛び出す。その滴った血が地面に落ちその部分が溶け落ちる。

 

(酸、か…。まぁ関係ないかな?)

 

切れた触手を振り回しその強酸性の血を振りまくが、その先には既にギンはおらず、その血を搔い潜って神槍がバイザーの胸を刺し貫く。

 

「ガハッ」

「終わりや」

 

神槍を引き抜き、叩き切った。

 

 

 

 

力尽き、とうとう膝をつくバイザー。どうやらもう抵抗する力も尽きたようである。残心していたギンはリアスの方を振り向いた。

 

「もうええですかね?最後頼んます、部長。」

「え、ええ。貴方ってよく嘘つきって言われない?今日学校で『少し動ける程度』って言ってたけど、全然それ以上じゃない。」

「いえいえ、じぶん力あんまりひけらかすんが好きやないだけですよ。」

「まあいいわ。はぐれ悪魔バイザー、何か言い残すことはあるかしら?」

「…さっさと殺せ」

「そう。」

 

リアスの構えた手に魔力が集中し、徐々に高まっていく…それに合わせて空気もピリピリとプレッシャーが強くなる。

 

「なんすか、あれ。」

「どう見てもフツーの魔力弾やないデショ。」

「フフフ♪ご明察です。グレモリー家はある魔力で有名なのですよ。その魔力は『消滅』。その力から部長は巷では【紅髪の殲滅姫】なんて呼ばれていたりするんですよ?」

「うへぇ、おっかないですわぁ…」

 

魔力をチャージしていたリアスがゆっくりとバイザーが近づいていく…どうやら準備が整ったようだ。

 

「それじゃあ、さようなら。」

 

リアスの腕が振るわれ、それに沿うように魔力波が炸裂した。

 

「うわっぷ!!」

「っと」

「あらあら♪」

 

その場に爆風が吹き荒れその余波がギンたちを襲う。

 

「キャッ!」

「よいしょ!」

 

爆風は小柄な小猫を攫い、フワッと浮かび上がりそうであったがギンがその腕を掴み、踏みとどまることができた。

 

「塔城さん大丈夫?」

「あ、ありがとうございます///」

「グギギギギギ…」

「羨ましそうに見るんやないよ兵藤君。」

 

辺りに爆風による土煙が充満し、リアスが一仕事終えたように一息ついて、気を緩めながらこちらを向いていた…。

 

「みんなお疲れさm」

 

しかし、そのリアスの背後の煙がおかしな動きを見せた。煙を割いて伸ばされる触手、そのすべてがリアスを害そうと牙をむく。

 

部長!!

「っ!!」

 

一番に動き出したのはイッセーであった。

悪魔のスピードでリアスのもとまで行き、そのまま抱きかかえるようにして後方へ下がった。

入れ替わるようにして次に動いたのはギン。

触手をすべて切り落とし、

 

(破道の五十四っ!這炎!!)

 

紫の炎の円がバイザーに触れた瞬間、炎が上がる。正真正銘力を使い尽くし、その場に崩れ落ちたバイザー。その目には憎悪が浮かび、射殺さんばかりに目の前のギンを睨みつけていた。それに対しギンは…

 

()()()()()()

 

その言葉にバイザーは目を見開いた。今まで自分を狙ってきたのはどちらかと言えば姫島の様に狩りの対象として見ていた…のに目の前の男は自分に『恨んでいい』と言ったのだ。その言葉は相手は自分と対等なのだと言外に言っているようにも感じ、そんな風に言ってくるやつなど今までいなかったのだ。その上この男は続けて言った。

 

「恨んでええ、許さんでええ。君にはその資格がある。ただ…()()()()()()()()()

 

バイザーは今度こそ目を剝いた。

 

ーき・づ・い・て・た・の?ー

 

正しく発音できていたたかわからない、でも確かめなければならない。

 

「あんだけあからさまやったらね?まぁ気づいとんのはボクだけみたいやけど…けど安心しぃ、君の思いは無下にはせぇへんよ。やから心配せずもう休んでええんよ?」

 

ーあ・り・が・とー

 

今度は、今度こそはしっかり言えただろうか?伝わっただろうか?重くなった瞼に従い徐々に意識が落ちてきた頭の中でそれだけが気がかりだった。

 

 

 

 

「じゃあ頼んだで?」

 

後ろのメンバーに聞こえない声でギンが呟くとどこからか、にゃーんと猫の鳴き声が聞こえた。チラッと後ろを見るとイッセーがリアスに対して謝り倒していた。近づくと徐々に会話が聞こえてくる。

 

「ほんっっっとに!!すいません!!」

「いえ、そんなに謝らなくてもいいのよ?おかげで助かったわけだし…」

「ただいま戻りましたよーっと。」

「ああ、お帰りなさいギン。貴方もありがとね?」

「いえいえ、ところでこれは?」

「実は…」

 

 

 

イッセーがリアスを抱え、バイザーの攻撃から逃れ退いた時、退いたところまでは良かったが問題はその後。新米悪魔であるイッセーはスピードを出したはいいが止まり方がわからず、さらには足をもつれさせ見事ヘッドスライディングを決めた。リアスを抱き寄せていたため彼女自身には怪我がないことが不幸中の幸いであった。

 

 

 

「で、それに申し訳なくなった兵藤君はこうなってると…」

「ええ、できれば彼を戻してくれないかしら?私じゃどうやら逆効果みたいなの。」

「はぁ~、しゃーない。ほら!兵藤君!」

「な、なんだよ、市丸?笑いたきゃ笑えよ…かっこつけて飛び出した挙句、最後の最後で大失敗した俺の事なんか…」

「ボクが言いたいことは一個(いっこ)だけや。」

「…ゴクッ」

「……おおきに、助かったわ

「へ?」

「部長が襲われた時、多分ボクやったら間に合わへんかった。しかも、あん時ボクら以外は咄嗟のことで動けへんかったし…」

 

なんなら、ボクは君の声で動けたようなもんやしね?と続けて

 

「で、大体よ?この間まで一般人やってた君がこん土壇場であない動けた時点でたいしたもんや。力加減についてはこれからおいおいやっていけばええやろ?部長さんもケガしてないみたいやしそれでええやないの。」

「う、お前に褒められるなんて…。っていうかなんであんな早く動けたんだ?俺。」

「なんや気付いてへんかったん?ほら、自分の腕見てみ?」

 

そう言われイッセーが自分の左腕には籠手が出現しており、それはイッセーの神器『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』であった。

 

「無意識的に使うてたみたいやね。確か能力は力の倍化やっけ。やからあない速かったんやね。さて、ボクがさっき言うたことも踏まえて部長さんの話を聞こか?」

「その言い方はズルいんじゃない…ないかしら?…コホン。イッセー、それにギンもありがとう。おかげで誰もケガなく、無事バイザーを討伐できたわ。」

 

心なしか『誰も』と『無事』を強調しながら高らかに言うリアス。

 

「ギンも言ったけど、イッセー。貴方が助けてくれなかったらまず間違いなく私はバイザーの攻撃を受けていたでしょう。正直、貴方がここまで動けたことに驚いているわ…。そう言えばギン、バイザーのは?」

「バッチリ倒しましたよ?あ、でも燃やし尽くしてもうたんで死体の方は諦めてください。」

「魔法を使ったの?」

「まぁうちの術、とだけ言うときます。」

「そう、じゃあ一件落着!!ということで解散しましょうかしら?朱乃、結界を解いて頂戴。」

「はい、部長。」

「あ!ところで部長!」

「何かしら、イッセー?」

「俺に使われた駒の能力って何なんですか?」

「あぁ、そう言えば言ってなかったわね。イッセー、貴方の駒は兵士(ポーン)。能力は…」

「能力は?」

「ないわ。」

「無い!?」

 

余程ショックだったのか、それとも緊張の糸が切れ気が緩んだからのか、イッセーはその場から動かなくなってしまった。それをスルーしてリアスは部員全員を見渡すと、ふと、一人に目が行った。

 

「朱乃?」

「……」

「朱乃?朱乃ってば!」

「!!はい、どうかしましたか、部長?」

「どうかしたって、そっちこそどうかしたの?何か考えふけっていたみたいだけど。大丈夫?」

「いえ、何でもありません。大丈夫ですわ。」

 

(結界を解いたときの違和感…例えるなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()…そんな違和感。気にしすぎですかね?)

 

「ほら、イッセー。いつまで白くなってるの。早く帰るわよ?」

「……」

「…だめだこりゃ。裕斗と小猫、引きずってもいいから連れて帰るわよ。」

「「はい。」」

 

リアスの声に応え右手を木場が、左手を小猫が掴み言われた通り引きずるのもお構いなしに引っ張っていく。

 

「変わろか?」

「いいえ、大丈夫です。」

 

引きずられている張本人はというと、ーー無能無能無能無能無能ーーとうわ言の様に呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一行が去った後、月を雲が隠し夜の闇も相まって真っ暗な廃工場。バイザーが最期にいたと思しき炎上跡、小さな影があった。跡を前にして蹲り(うずくま)その足元は何か水滴が落ちたように濡れ、また小刻みに震えており、それが泣いているであろうことは想像に難くない。

 

「やっぱり居はったんやね」

 

突如として挙がったその声にビクッと肩を跳ねさせ、その方向に視線を向ける。

 

「まいど、こんばんは」

 

そこにいたのはさっき帰ったはずのギンであった。それに合わせるように月を隠していた雲が動き、徐々に月明かりがその影を照らす…。ローブを羽織っていたそれは暗闇も相まって姿が見えていなかったが、月明かりによってその姿がようやくはっきり見えた。そのローブから覗く顔はまだ幼く、どこはかとなく()()()()()()()()()()()

 

「君はバイザー(あん子)の身内で合うてるかな?」

「……。」

「だんまりか…。それとも喋れへんのかな?参ったなぁ、これじゃ埒明かへん。」

「…姉を殺したヒトが何の用ですか。」

「良かった、口が利けへんわけやないんやね。というか君は彼女の妹さんか…」

「質問に答えてください。それとも今度は私を殺しに来たんですか?」

「う~ん…。別にそんなつもりもあらへんよ?ただ、君をお姉さんに会わせようってだけやよ。」

「!!あってるじゃないですか。殺した姉に私を会わせるんでしょ、言い方が違うだけじゃないですか。」

「?なんや会話がかみ合うてへんね。というかボクは君のお姉さんを殺してへんよ?」

は?

 

空気が一変する。目の前の少女からギンへと向けて突き刺さるような殺気が向けられているが、向けられている本人は全くのどこ吹く風…。

 

「まぁ百聞は一見に如かずってね」

 

ギンは何もない空間に手をかざしカーテンを撫でるように手を滑らせるとそこにある空間が裂けていく。そこには先程死んだはずのバイザーとそれを治療している黒歌が居た。

 

「姉さん!!」

「にゃ!!ギン!!遅いにゃ!!早くこっち来て手伝うにゃ!!」

「ボク、鬼道と違って回道の方は苦手なんやけど…」

「何言ってるにゃ、誰のせいでこんなに治療してると…」

「ハーイ、テツダイマース」

 

バイザーを挟んで黒歌の反対側に座り手を当てて回道を使っていく。

 

「な、なんで姉さんが…?いえ、そもそもなんで敵である貴方が治してるんですか!?もう訳が分かりません!!」

「あー、治しながらやから大雑把に言うと今回の一件、臭すぎたんよ。」

「臭すぎた?」

 

治しながらチラッと少女の様子を見ながらギンはそう、と続けた。

 

「まず、今回は最初から標的の『捕縛』やなくて『討伐』が依頼者の要望やった。」

「それは…はぐれ関係の依頼なら珍しくもないのでは?」

「確かにはぐれの依頼では討伐が多いけど、それは完全に異形化して暴走してもうた相手に多い。それに対し今回は完全に人型相手にもかかわらずの要望。」

「そうだとしても、それだけで姉さんを助けるには根拠が弱いのでは?」

「もちろんそれだけやないで?理由は後二つある。一つ、これはさっきのにかぶるんやけど、討伐依頼が出てる割にはこん子は理性がはっきりしすぎてた。それに意思の疎通もできとったしね?それなのに『捕縛』や『確保』の一文字すら見せへんのは少しおかしい思うたんよ。」

「最後の一つは?」

「依頼者。」

 

ギンは短く答えた。

 

「へ?」

「依頼者がなぁ、どうもどっかで見たことある名前やなぁ思うたら。そこにいる黒歌の資料で見た名前やったんよ。で、よくよく思い出せばそいつ悪ーい噂しかあらへんし…。で一応黒歌に裏取ってもろうたらビンゴ、って言うだけ。」

「ほんと、急に頼んでくるもんだから大変だったにゃ!ギンはもっと感謝してほしいにゃ?」

「お、ようやっと喋った言うことは」

「うん、もうこの子は大丈夫にゃ!ていうかギン。苦手とか言ってその…回道?だっけにゃ?そこら辺のやぶ医者よりも治療上手かったのにゃ。」

「黒歌に比べたら全然やよ。」

「まぁいいにゃ…。ほら、もう少ししたら目を覚ますと思うわ。だから、そんな離れたところにいないで傍にいてあげなさい。」

 

ギンと一緒に立ち上がり、少しバイザーから離れると、よろよろと覚束ない足取りでバイザーのそばで膝をつきその手を取り、その温かさを確かめるように大事に、大事に抱きかかえるバイザー妹はまた肩を震わせ泣いていた。さっきとは真逆の感情をその内に溢れ返させながら…

 

 

 

それを離れたところから見ているギンと黒歌は、というと…

 

「黒歌。」

「ん、にゃ~に?」

「おおきに。」

「どうかしたのかにゃ?急に改まって」

「黒歌のおかげであの姉妹を助けられたわ。」

「ふふん。もっと感謝するがいいのにゃ~」

「うん、本当におおきに。」

「…なんか調子が狂うにゃ。いつもならここらへんで落とすか貶すかするはずにゃのに…」

「それだけボクが感謝してるゆうことやよ。」

「まぁ、ギンが感謝するのは嬉しいんだけど()()はやりすぎだと思うのにゃ。」

「それに関しましては本気で悪かったと思うてます。」

「あとで彼女たちにもしっかりと謝るといいにゃ。」

「はい…」

「ギンはにゃんでバイザーに妹がいるんだってわかったのにゃ?」

「??」

「いや、彼女見つけた時に『やっぱり…』って言ってたから」

「ああ、そういうこと…これは妹さん時の説明にもつながるんやけど…バイザー、途中から今みたいな小っちゃい姿になりはったんよ、なのにその姿になったとたん外に飛び出したんよな。屋内の方が障害物もあって小さい体の方がスピードも相まって有利なはずなのに。」

 

一呼吸置いた後ギンはさらに続ける。

 

「その前からおかしな点はあったんよ。あるエリアへの攻撃をいやに嫌ったり、その場所への攻撃自体をさせないように立ちまわったりね…。やから、あぁ誰か、ないし何か守ってんかなぁって思うたんよ。彼女に理性がちゃんとある思うたんもこれが理由やね。あと、壊れている演技がわざとらしかったし…」

「へぇ、よくそこまで見えていたにゃあ」

 

ここまでで会話は途切れる。

 

「……」

「……」

「ところでギン?ギンがあの姉妹を助けた理由ってほかにもあったりするのかにゃ?」

「なんです?藪から棒に…」

「もしかして私たち(私と白音)が重なったんじゃにゃいかにゃあ?って」

「さぁてねぇ?……ところで黒歌さん?」

「なんにゃぁ?」

彼女(バイザー妹)へのあの言葉。珍しく猫語尾も消えてましたが、そちらこそ小猫()さんと重ねたんやないですか?」

「さぁてにゃぁ?」

「……」

「……」

「あ、そう言えば」

「??今度はなんにゃ?」

「久々に会うた妹さんはどうでしたか?お姉ちゃんとして」

!!!そらぁ、もう!!めっちゃめちゃ可愛くなってたにゃん!!

「うわ、うるさ」

「もぉ~あんなにきれいで可愛くなっちゃったら変な男が付きそうでお姉ちゃん心配にゃ!!」

「なら早よ仲直りしぃや?」

「……」

「…なんでそこでだんまりなるかなぁ?」

「うぅ、こればっかりは仕方ないにゃん。」

「はぁ(*´Д`)~、あぁ、妹さんで思い出した。今後二人が仲直りするまで黒歌はスキンシップ禁止な?今日なんか匂いで訝しんではったし、塔城さん。」

「にゃにゃ!!??」




というわけで、バイザー回で救済は完全オリジナルです。そして……
更新遅くて申し訳ありません、四木シロです。本当に遅くなり申し訳ございません。ちょっとリアルが立て込んでいました。感想や誤字指摘、評価していただければとても!とても!!励みになります!!!では、また次回にお会いしましょう。では、


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なかなかヘタレ発言やったと思うんやけど?

ええ、皆さん大変長らくお待たせいたしました。お久しぶりの四木シロです。
今話はかなりオリジナル要素が多く、かーなーり悩みました。
・・・長々と話してもアレですね。ではどうぞお楽しみくださいm( _ _ )m



side:バイザー

 

私は今、一本道の真ん中に立っている。意識がどこかフワフワしてかろうじて自分が道の上にいることだけはわかった。周りは暗闇に包まれており、ただ延々と道が続いている。前を向けば光が射し逆光となり、振り返るとただただ闇が広がっていた。…とりあえず、光の方に向かおうか?

 

 

 

 

 

 

かれこれ結構歩いたと思うが光が大きくなることもなく、近づいているような気もしない…。そして歩いているうちに少しだけ意識がはっきりしてきて、自分のことを思い出してきた…。私は確かあの青年に斬られ、死んだはず…。ということはここは天国か地獄かの分かれ道だろうか?日本(ジャパン)では閻魔様が生前の罪を裁くというが、実際はそんなこともないらしい。まだまだ、天国は遠そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩き始めてから体感的にかなり経ち、光も最初に比べ近くなったようにも感じる。しかし、まだ夢心地のように感じながらも少し気がかりなことがある。それは妹のことだ。あの青年は任せておけ、と言っていたがあの子は私が死んだことで沈んではいないだろうか…。いや、おそらく悲しみに暮れるだろう。それくらいは姉として分かる。一番困るのは私の後を追うことだが、それはあの青年が防いでくれると思いたい。そんなことを考えていると、急にグイっと後ろに引っ張られる。目を向けると一本の手が私の腕をガシッと掴んでいた。その力は強く、かなりの勢いで後ろに引きずられていく。その恐怖感は一気に私の頭を冷えさせて、夢心地からパニックに陥る。

 

「い、いや!離して!!」

 

悲鳴を上げようと、暴れて体をよじろうともその手は離されることもなく、むしろ引きずるスピードがさらに上がる。

 

(もう少し…!もう少しで楽になれるのに…!!)

 

あぁ、やはり私は天国には行けないんだ…。悪魔が天国に、というのもおかしい話だが、何もこんな仕打ちをしなくともいいだろう。それなら、気が付いたあの時点で地獄に落とされた方がよかった。目の前に餌を吊るしておいて、

届くのではないかと希望を持たせておいて、

道半ばで奪わずともいいだろう…!恐怖と絶望からその視界を滲ませながら光が遠のいて行くのをジッと見ることしかできず、自分の無力さが嫌になる。心がその絶望に染まりかけた時、腕を掴んでいた手とはまた別の手が私の右手を握ってきた。

ーーーあぁ、本格的に地獄が私を捕らえに来たのか

そう一瞬考えがよぎるが、その手は今までとは大きく違った点があった。()()()()()()()()()()()()()()()()。その手には生きているもの特有の温かさがあった。そしておぼろげに懐かしいような、見覚えがあるように感じた。そしてそれはすぐに確信に変わる。

 

(そうだ、そうだ…!そうだった!!)

 

この手は、長年繋いできた、ずっと離さなかった手だ!大切にしたい、守り抜きたいと思っていた手だ!どうしてすぐに気づけなかったんだろうか、この手を忘れるはずなんかないのに…この妹の手を!!その手にじぶんの手を添え、強く握る。先程とはまた違った意味で視界が滲んでくる。ふと、では自分が見ていた光とは何だったんだろうか?

と光の方を見るとヒュッと息をのむ。私がさっきまで天国だと思っていた光はその姿を変えていた。あんなに明るかったはずの光が打って変わって闇すらも飲み込むようなドス黒さと禍々しさを放ち、こちらを飲み込もうとじわじわとにじり寄って来ていた。迫りくる恐怖に取り乱しかける。

 

ー--…てよ

 

しかしその時、いつもよく聞いたあの子の声が私の耳朶を打つ。その声は私の恐怖を抑え込み、もはや闇と変わらない光に向けて生唾をのみながらも言う。

 

「私は…まだ…そちらに行くわけにはいかない」

 

あの子(あの青年)に任せたけど、一度は諦めてしまったけれど、あの子の姉は私だけなのだ。それにさっきの声…

 

ーーーきてよ。早く起きてよぉ…お姉ちゃん…

 

あんな嗚咽交じりの声を、妹の声を聴いてしまったなら、姉として、なにがなんでも起きなくてはならないではないか…。そう自嘲気味に笑いながら、私は意識が本当の意味で浮上するのを感じた。

 

バイザー視点:sideout

 

side:第三者視点

 

現実ではさっきまでいた外から場所を移して元の廃工場に戻り、どこからか持ってきた毛布の上にバイザーを寝かす形で一同は見守っていた。

 

「そない睨まんといてや?」

「う"う"う"う"…」

「これに関しては全面的にギンが悪いにゃ。」

 

…なにやらひと悶着はあったようだが、それはバイザーを運ぼうとした時ーーー

 

「な、何するんですか!!」

「何って…こんまんま目ぇ覚ますまで外に放置するんも不味いやろ?段々冷えてきとるし」

 

ギンはバイザーを抱えようと傍にしゃがむが、妹に警戒させる結果となった。

 

「???何がアカンの?」

「ギンにしては珍しいプレミにゃあ?」

「プレミ?」

「黒歌クーーイズ!今のバイザーの()()()()()()()()()()()()()()()にゃ?」

「格好?……あー、そう言えばそうか。うん、これは確かにプレミやなぁ」

 

そう、今のバイザーはリアスたちの攻撃を、さらにはギンの鬼道を受けてボロボロになってしまっている。つまりはほぼ裸のような状態である。

 

「ほらほら、男子は先にお姫様のためにベッドメイクでもしてるにゃ♪」

「はいはい…。妹さんも配慮がたらんでゴメンな?」

「……」プイッ

「たははは…」

 

ーーーということもあり、バイザーのそばにいながらも絶賛威嚇中である。

そしてついに、移動中も片時も離さなかった彼女の手にピクッと反応を見せた。

 

「!!お姉ちゃん!?」

 

姉の手をさらに強く握り呼びかける。その声に反応するようにバイザーの瞼がゆっくりと開かれた。

 

「んんっ…」

「おはようさん。いや、時間的にはおそようさん、かいな?」

「よかった、あんまり起きないもんだから何かミスしたかと思ったにゃ!」

「よかった…姉さん。本当によかった…」

「私は…死んだんじゃ…」

「あ~()()()()()言った手前、格好がつかへんねんけどな?」

 

『あないな事』とは…

 

ーーー恨んでええ、許さんでええ、君にはその資格がある。ただ、あとのことは任しとき

 

「あそこでああでも言わんと大人しくしてもらえへんかったやろ?」

「っ!!まさか()()()()私たちを!!ぐっ!」

 

バイザーが起き上がろうとしたが、体に力が入らず尻もちをつくだけとなってしまう。

 

「こらこら、傷は治っても体力は戻ってないんだから、じっとしてなきゃダメにゃん」

「勘違いせんといてほしいんやけど、別にボクらは君らを改造したやつらの仲間やないよ?」

 

バイザーの肩を抑え、改めて寝かせる黒歌。

 

「…そうじゃないという証拠は?」

「もしボクが仲間やったら、横の彼女(ヘタレ)を差し出さなあかんくなるなぁ」

「横の……あ、」

「なんか今不名誉な謂れを受けた気がするにゃ…。」

「言われたなかったら、早よ塔城さんに会いいや?で、分かってもらえたみたいやね」

「私も有名になったもんにゃあ」

「妹さんの方はわかってへんみたいやけどね」

「ん?んん??」

 

バイザーは納得顔をしていたがその妹は意味が分からず、頭上に?(クエスチョンマーク)を浮かべていた。

 

「確かにギンがアイツらとグルだったら今頃私は実験台に逆戻りにゃ」

「黒歌は君のお姉さんと同じはぐれ悪魔なんよ」

「同じなんてそんな!黒歌さんは私よりも上の上、S級じゃないですか!」

「まぁまぁ、等級なんて今はどうでもいいじゃにゃい。さっさと本題に入るにゃ」

 

ギンに話すように少し照れながら促す。

 

「そうやね…本題言うのは君たちの今後についてや」

「今後…?」

「君は死んだことになっとる。バイザー、君はもう自由や」

 

ただ、とギンは続け

 

「それも向こうさんが気付かん限り、って言う期間限定のもんや…君らはこれからどうするん?何か当ては…」

「……」

「その様子から察するになさそうやね…。なら君らに提案や

1つ、このまま今まで通り二人で生きていく

これはあんまり建設的ではないなぁ。さっきも言うたけど、また追手が出されるのが関の山やろうしね。

2つ、悪魔側に保護してもらう

木の葉を隠すなら森の中みたいにバレるん可能性は低い。一応、ボクの伝手で信頼できる人に君らを任せることもできるんやけど…」

 

ギン曰はく、狙っている奴らが奴らなだけに権力で出られた場合面倒だ、と

 

嫌だ!!

 

突然バイザー妹から拒絶の声が上がる。

 

「まぁそうなるわなぁ…。君らからしたら悪魔を信頼できるわけあらへんし無理にとは言わへん。なら、

3つ、堕天使側に保護してもらう

これが一番無難やない?聞いた話によればはぐれ悪魔の保護もやってるみたいやし、こっちにも伝手もあるから割かし待遇はいいと思うで?」

 

さぁ、どないする?、そう言いギンは二人を見やる。

 

…つ目の

「ん?」

4つ目の選択肢は駄目ですか?」

「「4つ目?」」

貴方の下に降ることはできないでしょうか?

 

・・・

 

「「「はぁ!?!?」」」

 

「いえ、考えたのですが…

まず1つ目は問題の先送りで根本的な解決にはなっていません。

次に2つ目は私も妹もあいつらに振り回されるのはもううんざりです。

最後に3つ目については比較的安全かもしれませんが以前…」

 

~それは二人が駒王町にくる少し前~

 

「ねぇ、あいつは!?」

「まだ追ってきてる!!」

 

バイザーは妹を俵のように担ぎ屋根の上を激走していた。そしてその数メートル後ろから

 

???「おい待てって!ちょっと体を診(見)させてほしいだけなんだよ!!」

 

明らかな不審者が追いかけていた。声からして男性であることは確かだがボロボロの服装やサングラスを掛けているため年まではわからない。さらにはその男の発言が二人の恐怖感をさらに駆り立てた。

 

「そんなの信じられないわけないでしょ!?」

「発言が変態おやじのそれじゃないの!!」

 

背筋に走る悪寒と立った鳥肌を無視しながら走る二人(一人)は思いを馳せる。

なんでこうなったのか、と

 

事の始まりは路地裏で二人が寄り添って蹲っているところに男が足を止め近づいていき、

 

「お前…はぐれか」

 

その一言を聞いた瞬間バイザーはすぐさま妹の首根っこを掴みながら男との距離を開けるように後方に飛び退く。なぜバレたのか、どこの追手なのか、などの驚きや疑問を頭の隅に追いやり相手をうかがうバイザーであったが、その背に嫌な汗が伝う。それもそのはず…

 

(……わからない?)

 

相手の力量がわからないのだ。今まで二人を狙ってきた者達は大きく分けて2種類いた。

一つははぐれ悪魔を討伐しようとする者。

そしてもう一つ、過去にはぐれ悪魔の被害を被った一般人。

後者は大抵、記憶処理によって被害自体をすり替えられるので可能性は低い。ので、おそらくこの男はカタギではないのだろう。しかし過去に二人を追ってきた者たちはその自分の大なり小なりの力を隠すことなくひけらかしていた。にもかかわらず、目の前の男は侮りもせず、かと言ってこちらにビビっているわけでもない。そんな不気味とも取れる男が再度口を開く。

 

「あー、そんなに警戒しなさんな。別にオレは悪魔陣営関係者じゃねえから」

「…ハッ!それを鵜吞みにできるわけないでしょ」

「それもそうか…」

「………」

 

そうして二人の間に数舜の静寂が流れ、男がそれを破った。

 

「その術式、○○○のか…」

「……ッ!?なぜそれを!!!」

「わー!待て待て!!オレは技術屋なんだよ!だからそーいう事にも詳しいんだ!」

「……こだ」

「あん?」

「どこの技術屋なんだ、と聞いている!」

「んー、別に言ってもいいか?堕天使陣営だよ。これで満足か?」

 

男が口にしたのはバイザーたちがこうなった原因である奴らの名。やはり奴らの仲間か!?と敵意をむき出しにするバイザーたちに慌てたように、少しばかりの諦めも含んだ弁解を伝える。これは言うつもりなかったんだがなぁ、と付け加えて。

 

「診てやろうか?」

「ッ!!」

「オレも技術屋の端くれだ、何かできるかもしれねぇ。何より…」

 

ーーー興味がある。

 

その目をバイザーは()()()()()。奴らの目だ。何かに魅せられ、それに手を伸ばす。どこか純粋で、無邪気で…()()()()()()()()()目だった。そしてその目はバイザー達にとってトラウマであった。そんな目の先にいるバイザーは恐怖で身が竦み、金縛りにあったかのように動けずにいた。

 

「ん?おーい?」

 

恐がらせちまったかな?と男が声をかけるがバイザー達に反応はない。男の声など耳にも入らないバイザーはふと、足元の妹が目に入る。妹もバイザー同様に恐怖に蝕まれていた。体を小刻みに震わせ、呼吸も少し過呼吸気味で顔色など死人のように悪いと言っていい。それに気づいたバイザーは自分を鼓舞し、体の支配権を恐怖から奪い返して妹を抱え壁を蹴り逃亡を謀った。

その結果、上記のようになったのだが…。

 

 

 

余談だが、この追いかけっこは男が別にやって来た大柄な男とその取り巻きに抑えられている間に二人が逃げ切る、という結果に終わった。

 

 

 

「と、言う事がありまして」

「あぁ~、まさか…」

「それって…」

 

ギンと黒歌は同時に同じ人物を思い浮かべていた。

どちらも思い浮かべたのは堕天使のトップであり、変人としても知られている人物。二人は顔に出していたが幸いにしてバイザー達はそれに気付くことはなかった。

 

「…まぁ堕天使側に行きたないんはわかったわ。でもなんでボクに拘るん?自分で言うのもなんやけど大したもんやないで?」

「端的に言えば恩を返したいのです。貴方達のおかげで私は今もこうして妹と居られます。そうでなければ、今頃私は妹一人残してあの世行き…。妹が無事の保証もなかったでしょう」

「いや、だとs「それに!!」……」

「それに、貴方自身は大したことないとおっしゃられましたが、貴方の力は私が身をもって知っています。

 

どうか、私に仕えさせていただけませんか?」

「んぐっ…」

「ギーン?負けにゃ、負け。即否定できない時点で詰みにゃよ。というかギンも渋るほどデメリットにゃいにゃんね?」

「え、それは?」

「そもそもうちらがギンの家に入り浸ってる時点で隠蔽性はお墨付きにゃし、確か部屋も余ってたから広さもモーマンタイにゃ!

にゃんにゃらこのまま見捨てる方が目覚めが悪いんじゃにゃいかにゃ?」

「見捨てるて…言い方」

「今更一人二人増えたところで……ねぇ?」

「そら自分らが勝手に入ってくるからやろ。……ハァ、ええよ認めたる。で、さっきから蚊帳の外やった妹さんはそれでええの?」

「気付いてたなら入れてほしかったんだけど。…そんなのいいわけないでしょ、姉を傷つけた相手の世話になるなんて。でも、認めるしかないじゃない私達に頼る当てなんてないし、自衛する強さもない。なら、貴方の方がいくらかマシよ」

 

苦虫を嚙み潰したような顔でそう答えるバイザー妹。

 

「というか、どこでそんな信頼を得たんか…」

「ギンは一人っ子だからピンと来ないかもしれにゃいけど、姉にとって妹はにゃによりも大事にゃのよ?」

「ええそうですね。貴方は何のメリットもないのに私の妹を庇ってくれた…。それだけで十分です」

「わ、私は別に信頼はしてないわよ!?信用はしてもいいかもだけど…

「ほんなら二人ともウチで面倒見る、で本当にええんやな?」

 

「ええ、妹共々よろしくお願いいたします」

「まぁ仕方なくよ、仕方なく」

 

憮然としている妹の頭をバイザーに押さえられながら頭を下げる二人。話がまとまってきたところで、黒歌がふと

 

「そう言えば妹ちゃんの名前はなんて言うにゃ?」

「確かに聞いてへんかったな。なら、丁度ええし簡単に各々自己紹介でもしよか?」

「はいはーい!にゃら私から!皆さんご存じ!美少女はぐれ悪魔の黒歌ちゃんにゃ!!」

「「「・・・」」」

 

四人の間に流れるのは少しの沈黙。ちょっと吹いた風が肌寒く感じたのはきっと季節の変わり目のせいだろう…。そうと言ったらそうなのだ(念押し)。

 

「にゃにか言えにゃ!!」

「自分で美少女言うてたら()()()()()()…」

「真似るにゃ!」

「まぁ、自称美少女は置いといて…。ボクは市丸ギン…一般人や」

「逸般人(笑)の間違いじゃにゃいかにゃ?」

「オーケー、黒歌後で覚えときや。ほい、お次は?」

「では、私が。私はバイザー、知っていると思いますがはぐれです。ところで、お二人は私達の能力についてはご存じですか?」

「確か身体を変化させてへんかったっけ?それのことかいな?」

 

リアス達との戦いを思い出しながら指摘したギンに対して感心したように頷くバイザー。ギンの言う通りバイザーはさっきの戦いでは最初自身の足を変化させケンタウロスの様にし、そして今は妹よりも少し小さな姿をとっている。

 

「流石ですね()()()。私は自身の身体を他の動物に変化させることができます。」

 

(((様?)))

 

バイザーの説明(途中引っかかるワードがあったが)を他のメンバーは大人しく聞いていた。

 

「ただ自由に変化できるかと言えばそうではなくて、変化する動物は今まで私が食べた生物に依ります」

 

この様に、と声に合わせて彼女の右手がみるみる変わっていき、鳥の翼にタコの触手が絡まったように変化した。これにはギンも黒歌も驚き、少し目を見張る。

 

「って、ギンは見てたんじゃにゃいの?」

「いやいやあん時は土煙とかで変わる瞬間のとこはよう見えんかったんよ。っていうか複数種類同時にできるんや?」

「ええ、工場内でのケンタウロスもどきは四足類のを何種類か掛け合わせて作りました」

「なるほどなぁ…んで?最後は?」

「あたしよね?

あたしはシェス

バイザーお姉ちゃんと同じくはぐれよ。そして能力は、これ」

 

そう言うとバイザー妹改め、シェスは両手を胸の前で祈るように組み、なにやら力を込めると手の隙間から光がこぼれた。シェスが手を開くとそこから小ぶりなウサギがぴょこんと飛び出し…

 

いったぁ!!

 

ギンに後ろ回し蹴りを喰らわせた。

 

「私の能力はお姉ちゃんと少し似てて、私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

おいで、とウサギを呼び手の中に収めるシェスの胸元を見るとそこには不自然な孔ができており、黒い靄が丁度シェスの心臓の上あたりを覆っていた。

 

「私が作り出した生物の基になっているのは私の魔力でもなく私の身体自身…。だからあまり大きなものも作れないし数も出せない。しかもお姉ちゃんと一緒で今まで口にした生物限定って言う制約付き」

 

そうぼやきながら手に乗せたウサギをシェスが撫でるとウサギは黒い霧となり、シェスの空いている孔へと戻りそこにはもう孔はなくなっていた。

 

「ボクに蹴り喰らわせたんはノーコメントかいな?」

「ハンッ!」

「鼻で笑うんやけどこの小娘」

「私が生み出した生物は私の心理状況に大きく影響されるの…。つまりはそういうことよ。私からは以上よ」

 

もう話すことはない、と言うようにそっぽを向くシェスにバイザーは苦笑いしながら再度頭を下げる。

 

「改めまして市丸様、妹共々よろしくお願いします。」

「さっきから言おう言おうと思うっとったんやけど、その『様』って何なん?」

 

別に敬称はいらへんで?と肩をすくめながらギンが指摘するが、バイザーはいたって当たり前のようにキョトンとした顔で

 

「???いえ、これからは市丸様に仕えるのですからそれに相応(ふさわ)しい態度でなければなりません」

「…マジ?」

「マジのマジ、本気と書いてマジと読むくらいには本気ですよ」

「えぇ…」

 

困惑を隠せないギンは額に手を当てて天を仰いでしまった。助けを求めるようにチラリと横を見れば顔を背けプルプル震えている駄猫が見えたので軽くはたく。消去法で残った一人に視線をやるとため息をつきながらも答えてくれた。

 

「私たちのご主人様になったんだから‟そう”命令すればいいじゃない」

「それ採用。バイザー、あとシェスにもいらんと思うけど言うとくわ。面倒を見る言うたけどあくまで関係は対等や。これは絶対に譲らんd、ってあからさまに悲しそうな顔をするんやないよバイザー。あと、なんでキミはそない驚いとるん?シェス」

 

いや、だって…と口ごもるシェスの顔には困惑の色がありありと出ている。それほどに先程のギンの言葉は彼女にとって意外なものだったようだ。その彼女にギンは目線で以て言葉の続きを促した。

 

「だって、今までの男たちだったら調子に乗ってさっきの言葉は絶対に出てこないもの。『対等』だなんて…というか少なからずシモみたいな命令が出されるんだって思ってたし…」

 

まぁそうしたらあんたを蹴っ飛ばして姉さんを引きずってでも逃げてたけど…と続けるシェスに対し黒歌が肩に手を置きながら言う。

 

「ギンにそういうのを期待しちゃダメにゃん。そっち方面に走らにゃいことにおいては信頼してもいいんだけど」

 

瞬間、ギンの背筋に悪寒が走り、嫌な汗が流れた。

 

!?!?!?

 

 

 

…なんなんその目ぇは」

「この通り()()()としては困ったもんにゃのよねぇ」

 

黒歌の目は【野生】のそれであり、捕食者の顔をしていたのは見なかったことにしよう。

 

「とまぁ話は逸れたけどそっちの面は気にしにゃくてもいいわよ。私が保証してあげる」

「ふーん、それならいいんだけど」

 

まだシェスの不信感は拭えていないようだったがとりあえずは納得したっようだ。ひと段落着いた、と思いきや未だに不満の色が濃いバイザーが重い口を開くー-

 

「力、ですか?」

「ん?」

「私の力が足りないから。貴方様に仕えるに値しないということですか?!」

「ん-?何を曲解しとるしらんけどそういうつもりで言うたんやないで?」

「ならなんで!」

()()()()()()()()

 

はっきりと、取り付く島もなくギンは断言した。そしてさらにギンは続ける。

 

「そもそも、ボクは王と家臣みたいな上下関係がそない好きやないんよ。まぁ一般人には従者とかは荷が重い」

 

自嘲するように言葉を連ねるギン。

 

「つまるところ、ボクにとっては後ろで(かしず)かれるよか隣で一緒に笑っとる方が好みっちゅうだけの話や」

 

そう言いながら先程の自嘲とはまた別の笑みを浮かべるギン。丁度そこに月明かりが後光の様に射し、そこだけどこかの絵画を切り抜いたような美しい光景が広がっており…

黒歌は目を抑え直視できず、

バイザーは胸を押さえ、

シェスはそっぽを向いているがその耳はどこか赤い。

 

「ちょっ!?皆どないしたん?!」

「ギンは自分の容姿についてもっと知った方がいいにゃん」

「…こればっかりは黒歌さんに賛成ね」

 

「やはり私の判断は間違いじゃなかった」

 

ギンの話に三者三様の反応を見せた女性陣。……しかし、約一名には逆効果であったようだ。

 

「市丸様、申し訳ございません。先程のお話をお聞きした上でなお伏してお願いいたします。どうか私に貴方様に仕えさせてはいただけませんか?」

 

そう言いながらバイザーがとった行動はまさかのDO☆GE☆ZA。

 

「ちょちょちょっ!なに土下座なんかしてるん!?頭上げぇや!」

「いいえ!!市丸様が良いと言うまでこの頭、上げるわけにはいきません!」

「いったい今のどこに君の琴線に触れる部分があったんや…」

 

今のなかなかなヘタレ発言やったと思うんやけど?と肩をすくめながら呆れるギンに対し、バイザーは微動だにせず一向に頭を上げる気配はない。

 

「だぁぁぁ!!ええよ!根負けや、好きにしたらええ!」

 

その言葉に勢い良く顔を上げたバイザー。その目は少女のようにキラキラと輝いていた。そんな嬉しそうなバイザーにギンは、ただし!と一言断りを入れ、

 

「ただし!ちゃんと理由は聞かせてもらうで?それと、敬語とかの言葉遣いにとやかくは言わへんけど…けどやな!?

 

 

 

 

せめて…せめて『様』付けだけは堪忍してくれへん?」




お楽しみいただけましたでしょうか?どうも皆さん、お久しぶりの四木シロです。
本当に今回は長らくお待たせして申し訳ございません。実際エタリかけましたが、なんとか続けることができております。これも全ては評価や感想、そしてなにより読んでくださる読者様方のおかげです。以後、今回の様に空けることがないよう精進していく所存なので、何卒宜しくお願い致します。



感想や評価と誤字指摘、心よりお待ちしております!!


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