魔法少女リリカルなのはR (ZG)
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スタート革命

駄文ですがよろしくお願いします!


いつも同じ夢を見る。

何もない暗闇の中に鎖に縛られた赤い竜がいる。その赤い竜の視線の先には俺がいた、そして俺はいつもと同じように触れようとするとその龍は一枚のカードに変わった。

だが、それを見る前に夢が終わる。

 

 

 

「・・・・・・くん」

 

女の子の声が聞こえる。

その声につられて目が覚める、手には何も描かれていないカードがあり、目の前には一人の女の子がいた。

 

「リュウくんおはよう!」

「おはよう、なのは」

 

その子は今俺がお世話になっている高町家の末っ子高町なのはだ。

 

「お母さんがご飯出来たから呼んできてって」

 

そう言うなのはに連れられた先には全員がそろっていた。

 

「今日は起きるのが遅かったな龍希」

「いつもは一番に起きてるのに今日は最後だなんて、よっぽど昨日の練習が厳しかったんじゃないの?」

「教えたことをどんどん吸収してくれるから歯止めが利かなくてな」

「あんまり無理させちゃダメよ、まだ小学生なんだから」

 

上から士郎さん、美由希さん、恭弥さん、桃子さん、身寄りのない俺を引き取ってくれた恩人で大切な家族だ。

 

「みんな揃ったことだしご飯にしましょうか!」

 

士郎さんと桃子さんのラブラブっぷりに苦笑いをしながらご飯を食べ終わると、俺となのはは学校の準備をする。カードもお守りのように懐に入れて、準備が終わるとバスに乗った。

 

「おはようなのは!リュウ!」

「おはようなのはちゃん、リュウくん」

 

バスの奥の席から金髪の少女アリサ・バニングスと紫髪の少女月村すずかが声をかけてきた。

 

「おはようアリサ、すずか」

「おはようアリサちゃん、すずかちゃん」

 

俺となのははアリサとすずかに挨拶すると二人が空けたスペースに座る。

学校に着くまでいつも通り休日の事とかの話をして過ごすのだった。

 

 

 

 

それから時間が過ぎてお昼休みの時間、4人は屋上で昼食を食べていた。

 

「アリサちゃんとすずかちゃんは将来の事もう結構決まってるんだよね?」

「家は父さんと母さんが会社経営者だし、いっぱい勉強して後を継がなきゃ…くらいだけど」

「私は機械系が好きだから法学系で専門職がいいなと思ってるけど」

「なのはは喫茶翠屋の二代目じゃないの?」

「う~ん、それも一つなんだけど何か他にもやりたい事がある気がするの」

 

将来何をやりたいか、ね。

なのはは迷っている様だがアリサとすずかの二人はある程度決めているらしい。俺はどうだろう?特にやりたいこともなく、俺を引き取ってくれた高町家の人達には恩返しをしたいが何かができるわけでもなく、自分を捨てた親の事も興味がない。大人になったら何かやりたい事の一つでもみつかるのだろうか?

そんな事を考えていると、いつの間にかアリサがなのはの上にまたがり口を引っ張っていた。

またなのはが自分を卑下する様な事を言ったんだろう、そろそろ昼休みが終わる時間なのでアリサを宥めると3人を連れて教室に戻るのだった。

 

 

 

学校が終わり塾へと向かう道の途中でなのはが急に立ち止まった。

 

「どうかしたのか、なのは?」

「今、声が聞こえたような…」

「声?聞こえなかったわよ、すずかは?」

「私も聞こえなかったと思うけど…」

 

あたりを見回しているとなのはが急に走り出した。

俺たちもなのはを追って森の中を進む、暫くしてなのはに追いつくとなのはの両手にはフェレットの様な生き物が抱えられていた。傷は深くなさそうだけど随分と衰弱していたようで獣医さんに預けて、俺たちは遅刻ギリギリの塾へと向かうのだった。

・・・・・・あれは本当にフェレットなのか?

 

 

この出会いが、なのは達の運命を変えることは誰も知らなかった。

そしてそのフェレットに触れた時、龍希の懐に入っていたカードが赤く光っていたことも、まだ誰も気づいていなかった。

 

 

 



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革命Ⅰ

フェレットを先生に預けた翌日、そのフェレットが何故か家にいる。

いつの間にか名前もついていた。

なんでも、病院から脱走したフェレット(ユーノ)を偶然外に出ていたなのはが家に連れてきたらしい。

 

 

龍希が説明を受けながら朝食を食べている中、テレビでユーノを預けていた病院の近くで自動車事故が起きたというニュースが流れていた。

 

 

 

 

 

学校に着くとなのはがアリサとすずかに昨日のことを話していた。

 

「そっか、昨日のフェレットなのはちゃんのとこにいるんだね」

「昨夜あの病院の近くで事故があったって聞いたから心配だったのよ」

「傷も大丈夫そうだし、暫くは家で預かることになったんだ」

 

二人にユーノの事を話しているなのはの表情は凄いことになっている。

昨日から少し様子が変だったが何か隠し事でもあるのだろうか?

すずかとアリサもそのことに気づいたようだ。

 

そうこうしているうちに先生が入ってきた。

授業はいつも通り受けているのだが表情がコロコロ変わる、やはり様子がおかしい。

 

授業が終わりいつもの4人で帰る帰り道。

すずかとアリサと別れなのはと一緒に帰り道を歩く途中、急になのはが明後日の方向に振り向いた。

 

「ごめんリュウ君、先に帰ってて!」

 

こちらが声をかける暇もなく、なのは走り去っていく。

一体どうしたんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、暫くするとなのははユーノを連れて帰ってきた。

いつの間に外に出て行ったんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日、この町で不思議な事件が起きたり、なのはが夜遅くに出掛けて道端に倒れていたり、色々不可解なことが起きてはいるが、変わらぬ日常を楽しんでいる。

 

今日は父さんがコーチをしている翠屋JFCの試合の日だ。

一応チームに入ってはいるが、店の手伝いであまり練習に参加していないので試合に出ることはそこまでないのだが、メンバーに欠員が出て急遽参加することになった。

 

「急にすまんな、リュウ」

「気にしないで父さん、俺だってチームに入ってるんだから偶には出なきゃ!」

 

父さんと話しながらウォーミングアップをしていると観客席の方から声が聞こえてくる。

 

「頑張ってね、リュウ君!」

「偶にはいいとこ見せてよね、リュウ!」

「応援してるよ、リュウ君」

 

3人に手を振って答えると後ろで父さんが小さく笑っているのに気付いた。

 

「モテモテだな、リュウ」

「からかわないでよ、父さん」

「嬉しいんだよ、人と関わるのを怖がっていたリュウにあんな友達ができたことが」

 

俺の頭を撫でながら昔のことを懐かしむように話す。

ウォーミングアップが終わるとチームで練習をし、体が温まってきたところで試合開始となった。

翠屋JFCは父さんがコーチをしてるだけあって強いチームだ、正直俺の出る幕がない気がするが、皆に応援されているのでそういうわけにもいかない。

俺はパスを回しながらチャンスをうかがう、何度か点を入れられそうになるも、キーパー達がそれを防ぎ俺達は攻め続ける。

 

「龍希、頼むぞ!」

 

ゴールの近くまで上がっていた俺にボールが回ってくる。

ボールを受け取り、最後のディフェンスを抜きシュート!

キーパーもボールを止めれずそのままゴール。

一点を取ることができた。

その後、チームメンバーが続き点を取り2対0で試合終了、翠屋JFCの勝利でこの日の試合は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合が終わり祝勝会ということで皆で翠屋でごちそうになっている。

 

「お疲れ様、リュウ君」

「試合凄くかっこよかったよ、リュウ君」

「お疲れ、リュウ」

「ありがとう皆」

 

なのはがユーノを連れてきているので俺達4人は外の席でお茶とケーキを楽しんでいる。

皆で話していると不意にアリサがユーノの事を聞いてきた。

 

「ねえ、ユーノって本当にフェレットなのよね?」

「まあ、フェレットにしては変わっているような気はするけど・・・・・・」

「先生も変わった子だねって言ってたね」

「にゃははは・・・・・・まあ、ちょっと変わった子だけども賢くて可愛いフェレットだよ、ユーノ君は」

 

そう言い終わるとユーノに「お手」と言い手を出した。

ユーノはそれに反応すると「キュ!」と鳴き、なのはにお手をした。

やっぱりこのフェレット賢いな。

 

ユーノの可愛さに充てられたアリサとすずかが撫でまくっていると、店の中からチームの皆が出てきた。

どうやら解散の時間みたいだ、「こっちも解散しようか」と声をかけようとするが、なのはが何かに気が付いたようでメンバーの一人を見ている。

 

「どうした、なのは?」

「ううん、何でもない、アリサちゃんとすずかちゃんはこれから予定があるんだよね?」

「そうね、私はパパとお出かけ!」

「私もお姉ちゃんとショッピング!」

「じゃあ、そろそろ解散しますか」

 

席を立つと、店から出てきた父さんが声をかけてきた。

 

「おっ、みんなも解散か?」

「はい、お招きいただきありがとうございました!」

「試合かっこよかったです」

「二人ともありがとうな、帰り送っていこうか?」

「迎えに来てもらうので大丈夫です」

「私も大丈夫です」

「そっか、気を付けて帰るんだぞ」

「「は~い!」」

 

二人が帰った後なのはと父さんは家に帰り、俺はお店の手伝いをすると言い別れることになった。

 

「また後でね、リュウ君」

「うん、また後で」

「試合が終わったばっかなんだから早めに休むんだぞ、リュウ」

「は~い」

 

 

 

 

 

 

 

お店から帰る途中、巨大な木を中心に道のあちこちに根っこが生えていた。

突然起きたことに驚愕していると、ポケットに入れていたカードが光る、次から次へと起こることに困惑した次の瞬間にはピンク色のビームの様な光が放たれ、巨大な木や根っこは消えていた。

・・・・・・あれは何だったんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てが終わるころには、カードに黒いシルエットが現れ、その手の甲には星の上に拳が描かれたマークが浮かんでいた。



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革命Ⅱ

突如町に巨大な木が生えた事件から数日、町は元の姿に戻り、住人も元の暮らしに戻っている。

 

 

たまに思うのだが…高町家はともかくとしてこの町の住人も中々にぶっ飛んでいる気がする。あれだけの事件が起こっているのに何もなかったかのように過ごしているなんて、普通ではない気がするが…そういえば海鳴市には『夜の一族』という吸血鬼がいる。なんて噂を聞いたが、まぁ誰かが流したほら話だろう。

 

 

そんな事を考えながら、今はユーノを連れて森の中を散歩している。

今日は兄さんや忍さん(すずかの姉で兄さんの恋人)達がいるので、お店の手伝いは大丈夫と言われたので久々に一人で散歩を、と思っていたのだが、出る直前にユーノが付いてきたのでそのまま一緒に来ている。

 

「よくなのはと出掛けてるみたいだけどここは初めてか?」

 

肩に乗っているユーノにそう聞くと返事をするように「キュ!」と鳴く。

 

「最近はここに来ることは無かったからな~・・・・・・・・・?」

 

森を歩いていると視界の隅に何かが光ったような気がした。

それを拾おうとする直前にユーノが森の外に走り出した。

 

「ユーノ⁉」

 

俺は拾った宝石の様な物をポケットに入れるとユーノを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

「ユーノの奴どこに行ったんだ⁉」

 

ユーノを追いかけて行ったのはいいものの完全に見失ってしまった。

町中を探し回る中一人の女の子が声をかけてくる。

 

「あの…さっき森の中でジュエルシードを拾いませんでしたか?」

「ジュエルシード?」

「はい…ずっと探してて、あなたが拾ってたと思うんですが…」

 

その言葉を聞いて、俺はユーノを追いかける前に何かを拾ったのを思い出した。

 

「あぁ、これの事?」

 

そう言いながらポケットから宝石を取り出す。

 

「これ、君の落とし物なの?」

「ええっと…それはその…」

 

歯切れが悪いが、俺はその子にジュエルシードと呼ばれる宝石を渡しす。

その子は突然渡されたことに驚いたようだった。

 

「何で?って顔してるけど特に理由は無いよ。強いて言うなら、君が悪い子ではなさそうだから」

「そんな理由で…」

「理由なんてそんぐらいでいいんだよ、それに人を見る目には自信がある!」

 

胸を張ってそう言うとその子は小さく笑った。

 

「フェイト」

「?」

「私の名前、フェイト・テスタロッサ、あなたの名前は?」

「龍希、白蓮龍希だよ。皆はリュウって呼んでる」

「私もリュウって呼んでもいい?」

「勿論!じゃあ俺もフェイトって呼んでいいか?」

「うん、ありがとう、リュウ」

 

そう言って夕焼けに照らされたフェイトの笑顔は、とても綺麗だった。

 

 

その後、フェイトに翠屋の事とか、高町家や友達のことを少し話、また会うという約束をして別れた。

 

 

 

 

 

家に帰るとユーノがなのはからおやつをもらっていた。

あの後なのはと一緒に帰ってきたらしい。

こいつ…こっちは町中探し回ったっていうのに!

 

 

部屋に戻るとポケットからカードを取り出した。

あの事件から黒いシルエットが浮かび上がっているのだが、日に日に色がついていってる気がする。それと同時に最近やけに体に力がみなぎっている感覚がある、今日町中を駆け回ってもそこまで疲れなかったのはそれのせいだろう、これもこのカードと関係しているのか?

疑問を抱えながら眠りにつく。

 

 

 

夢を見る・・・・・・・・・いつもの夢とは違う夢。

見慣れた栗色の髪の少女と金髪の少女、二人が戦う夢。

俺は・・・・・・何を見ているんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての歯車が揃い、かみ合い、全てが動き始める。

鎖が砕け解き放たれる時はすぐそこだ。




次の回で…次の回で戦闘に入れる…はず!


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革命Ⅲ

「ユーノ~おいで~!」

 

家の母さんと姉さんは可愛いものが好きだ。だからユーノは家にいる時大体どっちかに可愛がられている、少々母さんは可愛がりすぎだと思うが。

 

「本当にユーノは賢こくて可愛いね~」

「賢すぎるような気もするけどね」

「ほかの子よりちょっと賢いだけだよ~、気にしない気にしない」

 

ユーノを撫でている姉さんとそんな会話をしているとドアが開いた。

外出する準備を終えた兄さんがリビングに入ってきたようだ。

 

「なのは、まだか?」

「うぅ~ごめん、もうちょっと~」

 

後はなのはの準備が終わるのを待つだけらしい。

 

「リュウはもう準備終わったみたいだな」

「うん、持ってくものとか特にないし、準備することなんてほとんど無いからね」

「何々、3人ともお出掛け?」

 

姉さんは聞かされてなかったのか、そう聞いてきた。

 

「ああ、なのはとリュウがすずかちゃんにお誘い頂いてるらしくてな、その付き添いだ」

「なるほど、恭ちゃんは忍さんに会いにいくと」

「まぁ、付き添いのついでにな…」

 

姉さんにそう言われると少し照れたように顔を背けて答えた。

忍さんはすずかの姉で、俺の兄こと高町恭弥の恋人だ、俺も色々と世話になっている。

そんなこんなでしばらくすると、元気な声が聞こえてきた。

なのはの準備がようやくおわったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すずかの家に着くとメイド長のノエルさんに出迎えられた。

 

「恭弥様、なのはお嬢様、龍希お坊ちゃま、いらっしゃいませ」

「ああ、お招きにあずかったよ」

「「こんにちは~」」

 

ノエルさんに案内された先にはすずか、アリサ、忍さんが集まっていた。

傍にはメイドのファリンさんもいる。

 

「恭弥、なのはちゃん、リュウ君いらっしゃい」

「ああ」

「こんにちは、忍さん」

「こんにちは~」

 

軽く挨拶を済ませた後、忍さんと兄さんは部屋に行き、ノエルさんとファリンさんはお茶を用意しに席を外している。

この部屋に残っているのは俺達4人にユーノと大量の猫だけになった。

兄さん達が部屋から出ていくのを見ていたアリサが口を開く。

 

「本当になのはのお兄ちゃんとすずかのお姉ちゃんはラブラブよね」

「ふふふ、お姉ちゃん、恭弥さんと知り合ってからずっと幸せそうだよ」

「家のお兄ちゃんは…昔より優しくなった気がするかな」

「表情には出さなかったけど、今日忍さんに会うの楽しみにしてたみたいだしな」

 

膝にのっけた猫を撫でながら話をしているとほんの少し雰囲気が変わった。

 

「今日は元気そうでよかったわ」

「え?」

「最近なのはちゃん、元気なかったから」

「何か悩んでるなら、話してくれないかなって…」

 

アリサとすずかがなのはに向かってそういった。

二人もなのはの様子が変わったことを気にしていたんだろう。

その後はユーノが猫に追いかけられたり、それに巻き込まれてファリンさんが転びそうになったりと色々起きたが、今は皆でお茶を飲みながら会話を楽しんでいる。

 

「ユーノ君⁉」

 

なのはの膝にいたユーノが急に森の方に走り始めた。

なのはもユーノを追いかけて森に入っていく。

俺もついていこうとするがなのはが大丈夫というので3人で待つことにした。

 

「ユーノ、どうしたのかしらね」

「まぁ、ユーノが勝手にどっか行くのはよくあることだから」

「そうなの?」

 

俺は前に森でユーノに置いていかれた時の事を二人に話した。

もう過ぎたことだからと笑い話にしているが二度と経験したくは無いことだ。

そういえばフェイトとはあれから会っていないが元気だろうか?

そのうちなのは達に紹介したいと思っているのだが連絡先を知らないからなぁ…

 

「なのは遅いわね…」

「なのはちゃん大丈夫かな…怪我してないといいんだけど」

 

戻ってくるのが遅いなのはの事が心配になった二人がそう零した。

 

「流石に遅いな…ちょっと探しに行ってくる」

「二人はここで待っててくれ」

「気を付けてね、リュウ君」

「なのはの事頼んだわよリュウ」

 

 

 

 

 

 

 

 

森に入ってしばらくするとポケットに入れていたカードが光り始めた。

 

「またか⁉」

 

最近よく光るカードをポケットから取り出すが、そのタイミングで自分のすぐそばに気配があるのに気付く。その気配は様子を見ているという感じではなく、明確な敵意を感じるものだ。

カードを見ればいつもとは違う光り方をしている。

 

「俺に危険を知らせているのか?」

 

カードに気を取られた瞬間、物陰からその気配の主が飛び出し襲い掛かってきた。

とっさに横に転がり避け、そいつを見るとそいつは見たこともない化け物がいた。

猫のような部分があるがその姿は猫とはかけ離れ鋭い牙や爪が生えている。

 

「なんですずかの屋敷にこんな奴が!」

 

ひたすら繰り出される猛攻をよけながらその額に拳を打つが…

 

「つぅ…効くわけないか…!」

 

拳の痛みに怯んだ一瞬の隙をつかれ爪の一撃を喰らってしまった。

奇跡的にほとんど怪我はないが木にたたきつけられた痛みで上手く動けない。

 

「やばいな…これ」

 

化け物がゆっくりと近づいてくる、このままとどめを刺すつもりだろう。

逃げようともがくがやはり体がうまく動かせない。

 

「くそ!…こんなところで・・・・・・」

 

化け物が爪を振り下ろす。

爪が振り下ろされるその瞬間、ポケットから落ちていたカードがまばゆく光ると同時に炎が立ち上り化け物は吹き飛んだ。

 

「おまえは・・・・・・」

 

炎が消えその中にいたものの姿が見えた。

そこにいたのは赤い装甲を身にまとい蒼い剣を装備した龍だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勇ましい咆哮が森に響き渡る。

全てが始まる本当の合図だ。

 

 

 

 

 



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革命Ⅳ

森中に咆哮が響き渡る。

それは目の前にいる赤い龍から発している。

変化したカードには目の前の龍の姿と名前が描かれている。

 

「燃える革命 ドギラゴン?・・・・・・⁉」

 

今度は俺に変化が起きた、そのカードを拾った右手に見たこともないマークの様な物が浮かび上がっている。

星の上に拳が描かれたマーク、そのマークが浮かび上がると同時に俺の胸元から光る球体が現れ、その球体はマークと共鳴するように光を発した。

 

「次から次へと、一体何が起きてるんだ⁉」

 

光が収まるとそこには一冊の分厚い本が目の前にあった。

さっきの球体が変化したのか?

 

『マスターの危機を確認』

『マナの活性化完了』

『ドギラゴンの召喚に成功』

「マナ?ドギラゴンの召喚?」

 

困惑する俺をよそにその本はひとりでにしゃべり続ける。

何かの確認が終わったのか今度は俺にしゃべりかけてきた。

 

 

遺失物(ロストロギア) 革命の書 起動完了』

『おはようございます。マスター』

「マスターって俺の事?それに革命の書?」

『はい、私は革命の書であなたはマスターです』

 

さらに問いかけようとするが、すぐそばで大きな音が鳴る。

さっきの化け物とドギラゴンが戦っている音だろう。

 

『危機的状況により手早く説明します』

『私は遺失物(ロストロギア)革命の書、マスターであるあなたとクリーチャーを繋ぐ魔導書です』

『ドギラゴンもそのクリーチャーの一種で、マスターを守る為に召喚に応じました』

「じゃああの化け物は?」

『あれはロストロギア ジュエルシードが現地生物を取り込み暴走した姿です』

「・・・・・・俺はどうすればいい?」

『暴走したジュエルシードは封印する必要があります。その為にはダメージを与えなければなりません』

 

そう言った革命の書は俺の手の上に降りてきた。

 

『マスターとドギラゴンは精神が繋がっています』

『ドギラゴンに指示を出せばその通りに動いてくれるでしょう。あとは私に記録されている魔法でダメージを与えることもできます』

 

見ればドギラゴンの攻撃に化け物は避けるのに精一杯のようだが、動きが速くドギラゴンの攻撃が当たっていない。

 

「何か動きを止められれば・・・・・・」

 

俺がそうつぶやくと革命の書が一枚のページを開いた。

そのページを見た俺は不敵な笑みをこぼすとすぐさま行動に移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドギラゴン達は戦いながらどんどん奥へと動く。

俺は身体強化の魔法を使い先回りしてドギラゴンに指示をする。

 

(そのままこっちに追い込んでくれ!)

 

それに応えるようにドギラゴンは大きな咆哮をあげる。

目的地に仕掛けを施すと今度は魔力弾を何発か形成した。

 

(作戦とも呼べるようなものではないけど上手くいってくれよ・・・・・・!)

 

ドギラゴンに追われた化け物がこちらに向かってくる。

ギリギリまで誘い込み魔力弾を放つ。

 

「シュート!」

 

放たれた魔力弾は化け物の足元で爆発した。

だが化け物は着弾する寸前に飛び、回避する。

それを見た俺はすぐさま次の魔法を発動させた。

俺の後方に着地した化け物の足元で魔法陣が浮かび上がり赤い鎖が拘束する。

 

「設置型バインド起動、拘束完了!」

『お見事です、マスター』

「あとは頼んだぞドギラゴン!」

「ドギラアァァァァ!」

 

動きを封じられた化け物にドギラゴンの強烈な一撃が直撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが終わると化け物は一匹の猫に戻りその傍にはどこかで見た宝石が転がっていた。

革命の書は俺の中に戻りドギラゴンも革命の書に入った。そういえばいつの間にか腕にはめられているこの腕輪は何だろう?ドギラゴンのと同じマークも彫られている。

ジュエルシードの封印を終え地面にへたり込んでいるとユーノの鳴き声が聞こえる。

いつの間にか近くに来ていたみたいだ、しかし焦っているような様子にただ事ではないらしい。

走り始めたユーノを追いかけると、そこには気を失い倒れているなのはがいた。ユーノはこの事を伝えに来たようだ。

俺はなのはを抱えすぐに屋敷に戻る。

 

 

暫くして目を覚ましたなのはが言うにはユーノを追いかけていた時に転んで気を失ったらしい・・・・・・本当にそうなのだろうか?

なんにせよ、なのはに怪我がなくてよかった、不思議な体験をしたばかりだが今はそれを喜ぼう。

 

 




やっぱり戦闘描写が下手すぎる!
ようやく龍希の初戦闘が終わりました、ここからはどんどん原作に絡んでゆくので次回も楽しみに待っていてください!





・・・・・・そろそろ龍希の設定を出そうかな?


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革命Ⅴ

すずかの家での一件から、学校や稽古の合間を縫って俺は革命の書に魔法の事やクリーチャーたちの事を学んでいる。

 

「つまり・・・・・・魔法っていうのは空気中にある魔素をリンカーコアに取り込んで魔力にし、それをおまえやデバイスに記録されたプログラムと体内の魔力で発動すると」

 

『デバイスを使わずに魔法を発動する魔導士もいますが、大体はデバイスをつかいます。』

『デバイスには種類がありますが…今はいいでしょう。次はマナの勉強です』

 

俺の中には魔力のほかにマナという物も蓄積されているらしい。

 

『マナはクリーチャーの世界において生命活動に必要なエネルギーであり、クリーチャーが生み出すものです。ちなみにマナを魔力の代用にして魔法を使うこともできます』

『魔力と違うのはリンカーコアに溜め込むのではなく、体中に循環させるところです』

『極稀に人の中にもマナを生み出せる人が現れ、何らかの理由でこちらの世界に来たクリーチャー達はマナに引き寄せられてその人間と契約する場合が大体です』

『あなたの場合は相当なレアケースですね』

「お前を通して契約しているからか?」

『それもありますがマナと魔力を併せ持っていることです』

 

本来、魔力とマナは同時に併せ持つことがほぼ不可能で必ずどちらかがもう片方を糧に魔力かマナを生成し結果的にどちらかしか残らない。俺のはリンカーコアとは別にマナを溜め込む器官が出来ているからお互いに食い合わないようになってるとのこと。

 

「そういえば、この腕輪は?」

 

そう言って腕を見せるとそれにも答えてくれた。

 

『それは革命軍と契約した証です』

『火の革命軍のリーダーであるドギラゴンと契約したことによって火の革命軍との繋がりが今のマスターにはできています』

『そのつながりを辿って火の革命軍のクリーチャー達がこれからやってくるでしょう』

 

そういう物なのかと腕輪に触れていると革命の書は別の話を持ち出した。

 

『それはそうとマスターはレアな交友関係をもっているのですね』

「レアな交友関係?」

『あなたは既に魔法を使える資質を持つ友人が4人いますよ』

「・・・・・・え?」

『魔法文化のない地球でこんなに出会えるとは引きで言えばVレアですね、いやVVレアというべきか』

「い・・一応聞いておくけど・・・・・・それって…誰?」

『アリサ・バニングス様、月村すずか様、高町なのは様、フェイト・テスタロッサ様の4人です』

「えぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法の練習をしながらジュエルシードを探す日々がしばらく続いていたが、今回はジュエルシードも魔法の練習も忘れてみんなと温泉旅行だ。

宿に着くとそれぞれの部屋に荷物を置き、早速温泉に向かう。

 

「キュウー!キュウー!」

 

女湯と男湯で別れようとしたところでアリサに抱えられたユーノが突然暴れ始めた。

 

「うわわ、突然どうしたのよ」

「急に暴れちゃだめだぞユーノ」

 

アリサの手の中で暴れているユーノが助けを求めるようにこちらを見てくる

どうやら女湯に行くのがよっぽど嫌らしい。

 

「…もしかしてお前オスなのか?」

 

そう聞くと勢いよく首を縦に振った。

 

「じゃあユーノはこっちで預かっとくよ」

 

俺がそう言うと、なのは達が不満の声を上げるが男湯の人数少ないからと納得してもらった。

 

「ふぁ~」

 

温泉に浸かると気の抜ける声が出た。

ユーノも気持ちいいのかお湯を入れた桶でうたた寝をしている。

 

「いい湯だった~」

 

温泉から出るとまだうたた寝をしているユーノを起こさないよう慎重に歩く。

随分、長風呂をしていたようでなのは達は先に行ってしまったようだ。

なのは達を探しながら旅館を探索していると女の人とすれ違う、特に会話をするわけでもなく一瞬こっちを見ただけで温泉に向かったその人からは僅かに魔力を感じた。

 

(ただの偶然か?)

 

そんな事を考えていると近くでアリサの怒号が聞こえてきた。

いつの間にか目を覚ましたユーノが声の方に向かって進みだす。

それに続くように俺も歩き始めた、言いようのない不安を感じながら。

 

 

 

 



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革命Ⅵ

お久しぶりですZGです!
大分期間が開いてしまい申し訳ありません。
大学受験やらなんやらのごたごたが一通り片付いたのでこれからはドンドン投稿していくつもりなのでよろしくお願いします!


それでは革命Ⅵどうぞ~!


あの後なのは達に合流すると、機嫌の悪いアリサを宥め4人で旅館を探検したり、

卓球をしたりと昼の時間は存分に満喫した。

 

夜、寝る前にファリンさんが本を読んでくれて、読み終わる頃にはアリサ達はぐっすり眠っていた。

俺ももう寝ようと瞼を閉じるがなのはとユーノが念話で会話をしていると革命の書が教えてくれたので二人には悪いが盗み聞きさせてもらう。

 

少し後ろめたいものを感じながら聞いていると昼間にあった人の事やジュエルシードの事を二人で話しているようだ。

 

『やはり二人でジュエルシードの封印をしているようですね』

(最近の夜遅くの外出もそのためみたいだな)

『ジュエルシードの封印は危険です、いくらなのは様が優秀でも十分な訓練を受けてない現状を考えると止めさせるべきでは?』

 

確かになのはの事を思うのなら止めさせるべきなのかもしれない、だけど・・・・・・

 

『最初はユーノ君のお手伝いだったけど、今はもう違うよ。私がやりたいと思ってやってることなの』

 

・・・・・・今のなのはを説得するのはきっと無理だろう、だったら俺のやる事は一つだ。

 

(二人を守ろう。その為にもお前とクリーチャー達の力使わせてもらうよ)

『了解しました。マスター』

 

 

 

なのはとユーノの会話が終わってからそう時間が経たないうちに近くでジュエルシードの反応を検知した。

二人が先に向かうのを確認すると俺も後を追う。

 

 

 

反応があった場所には何故かフェイトがいた、傍には昼に会った女の人もいる。

近くの木の陰に隠れて様子を伺う、どうやらジュエルシードの封印はもう終わっているらしい。

 

「探し物ってのはやっぱりジュエルシードだったのか…」

 

でも何の為に?

なのははユーノに頼まれて、ユーノも危険だからとジュエルシードを封印していたがフェイトの目的は一体?

疑問が浮かび上がるが今は考えていても仕方がないだろう。

ユーノとフェイトの使い魔と名乗る人はどこかに消えていった、転移魔法で場所を変えたらしい。

残されたなのはとフェイトもジュエルシードをかけて戦い始めている、今は戦闘を始めた二人を止めなくては・・・・・・

 

「ユーノの場所は分かるか?」

『すでに発見済みです』

「よし、メラッチ!ドラッチ!」

「メラッチ!」

「ドラッチ!」

 

俺が革命の書から取り出した二枚のカードを投げると、二匹の赤い鳥が炎と共に現れた。

「燃えるメラッチ」「ラブ・ドラッチ」この子たちはあの後俺の前に現れた火の革命軍のクリーチャーだ、メラッチはドギラゴンの物に似ている剣をドラッチはゴーグルとサイリウムの様な物を持っている。

 

「お前たちはユーノを助けてやってくれ」

 

そう言うと二匹は飛んで行った。

問題はこっちだ、二人の戦闘はとてつもなく激しいものになっている。下手に間に割り込もうものなら多分一撃で落とされる。

 

「どうしたもんかねこれ…」

『理想はバインドでのフェイト様もしくは両名の拘束ですが』

 

ああも動き回られると捕らえるのが難しい。特にフェイトが速すぎる!

なのはには申し訳ないが隙が出来るまでは動く訳にはいかない、今は様子見に徹しよう。

 

 

 

 

なのははフェイトのスピードに良く喰らいついているが恐らく勝ち目はないだろう。フェイトの動きを見れば分かる。経験も技術も今の段階では差が大きすぎる、それに人間相手に魔法を使うのも初めてなんだろう、段々と追い詰められている。

勝敗を分けたのは砲撃魔法の打ち合いだった。正面からの撃ち合いで勝ったのは砲撃の出力を上げたなのはだったが、砲撃でフェイトを見失ったなのはの背後をフェイトはとった。しかしフェイトが振るった刃はなのはに届く事は無かった。

 

「リュウ…くん?」

「何でここにいるの…リュウ…」

「流石にこれ以上は見過ごせないな」

 

フェイトの武器を掴んでいる手から血が滴り激痛が襲う、流石にバリアジャケットと防御魔法を使っていても厳しいか…だけど十分だ!

 

「・・・・・・!」

 

俺がやろうとしている事を察したのか咄嗟に離れようとするがもう遅い。

フェイトをバインドで捕まえた。

 

「話を聞かせてもらうよ、二人とも」

 

 



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革命Ⅶ

「ちょこまかと逃げるんじゃないよ!」

「何で使い魔を作れる程の魔導士がこの世界にいる⁉あなた達の目的はなんだ?」

 

フェイトの使い魔アルフの攻撃をひたすら避けながらユーノは問いかける。だが「あんた達には関係ない!」と一蹴され攻撃が激しくなっていく。

アルフから逃げ続けていると空が激しく光る。なのはとフェイトが魔法で撃ち合っている光だ。

 

「あれは・・・・・・!」

「余所見してんじゃない!」

 

なのは達に気を取られた一瞬の隙をついてアルフは距離を詰め爪を振る。だがすんでのところで蒼い剣が割り込みその爪を防いだ。

 

「何⁉」

「ドラッチ!」

 

今度は別の方から飛んできた赤い鳥がアルフの横腹に体当たりをしてアルフを突き飛ばした。突然の事にユーノが困惑しているといつの間にか真上にいた別の鳥がユーノを掴んで持ち上げる。

 

「メラメラァ!」

「君たちは…」

「魔力とは違う力を感じる…これは…マナ?まさかクリーチャーなのかい⁉」

 

この二匹の鳥、ファイアーバード炎たちは龍希がユーノを助ける為に送った「燃えるメラッチ」と「ラブ・ドラッチ」だ。

それを見たアルフは最初は驚愕していたもののすぐさまフェイトの方に駆けだした。

 

(まさかこの世界にクリーチャーの契約者がいるなんて…こっちにあれが来たってことはフェイトの方に契約者が行ったはず!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「話を聞かせてもらうよ、二人とも」

 

フェイトをバインドで拘束した俺は二人にそう言い放つ。

 

「何でリュウくんが魔法を…」

「前にすずかの家に行った時暴走したジュエルシードに襲われてな、そん時に使えるようになった」

 

なのはの質問に答えると今度はフェイトの方を向く。

 

「何でジュエルシードを集めているのか教えてくれるか?・・・・・・フェイト」

「リュウには・・・・関係ないよ」

「だとしてもジュエルシードは危険な物だ、それを集める理由が分かるまで返すわけにはいかないよ」

 

そう言うがフェイトは口を閉じたまま何も言わない。どうしたものかと悩んでいると後ろにいたなのはがフェイトに喋りかけた。

 

「ねえ、やっぱり話し合いじゃ駄目なのかな?」

「言ったでしょ・・・・・・話し合うだけじゃ・・言葉だけじゃ何も変わらないって」

「だけど!」

「・・・・!」

 

咄嗟になのはを突き飛ばし防御魔法を発動する。すると鋭い爪がぶつかり激しい衝撃が襲ってくる。

 

(予想よりも戻ってくるのが早かった!)

「リュウ君後ろ!」

「・・・・・!しまった!」

 

背中に激痛が走る。防御に気を回した隙を突かれてフェイトが振ったデバイスの一撃をもろに喰らってしまった。そのまま制御が出来ず水面にたたきつけられる。

すぐに水中から飛び上がるが既にフェイト達の姿は消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法を解いて地面に降りる。なのはが近くに降りてくるのを確認すると上からメラッチ達の声が聞こえてきた。向こうも無事に戻ってきたようだ。

 

「なのは!」

「ユーノ君!怪我は無い?それにその子達は・・・・・・」

「燃えるメラッチとラブ・ドラッチ、俺と契約したクリーチャーだ」

「龍希・・・・やっぱり君が彼らの契約者なのか…」

 

俺は革命の書を実体化させユーノに見せる。恐らくこれを見せればユーノは納得するだろう。

 

「それは…革命の書⁉」

『YES、私はロストロギア「革命の書」で、白蓮龍希は私のマスターです』

 

ユーノは突然現れた革命の書に驚愕したすると同時に納得したようだ。一方なのはの方はよくわかってないみたいで首を傾げている。

 

「あの屋敷に行った時に龍希から魔力を感じてたけど…本当に魔導士になってたなんて…」

「まぁ、俺も最近出来るようになったばかりだから使える魔法も仲間のクリーチャーも少ないんだけどな」

「じゃあ僕となのはがジュエルシードを集めてた事はその時に?」

「まあな」

 

俺とユーノが話しているとなのはが声をかけてきた。

 

「あの子の事知ってるの?」

「・・・・ああフェイトっていうんだ、少し前に会って友達になったんだ、その時はフェイトが魔導士だったなんて知らなかったけどな」

「フェイトちゃん・・・・・・」

 

なのははフェイトの名前を呟くと空を見上げる。さっきまで戦っていたフェイトの事を思っているんだろう。

 

「今度はちゃんとフェイトちゃんともお話したいな」

「なのは…今は宿に戻ろうジュエルシードを集めていればまたフェイトに会える」

「それに魔導士と初めて戦ったんだ、今は休まないと」

 

その言葉になのはは「うん」と答え宿への道を歩き始めた。だがその道中、なのはの表情から影が消えることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 



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革命Ⅷ

「いい加減にしなさいよ!」

 

喧騒に包まれていた教室は一つの怒号により静まり返る。

変わらないと思っていた日常は些細な切っ掛けで崩れ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅館での一件が終わった後、俺達は何時も通りの日常に戻っていった。

だが、あれからなのはの表情から影が消えることは無く、理由も話そうとしないその様子に遂にアリサの堪忍袋の緒が切れたんだろう。

 

「アリサちゃん落ち着いて…」

「そんなにあたし達と話すのがつまらないなら好きなだけ一人でぼーっとしていなさいよ!」

「その…ごめんね、アリサちゃん」

「・・・・・・っ!行くよ、すずか!」

「ちょっとアリサちゃん!」

 

アリサは教室から出ていき、すずかもそれを追いかけて教室から出て行った。

俺の席はドアの近くなので当然二人が通り過ぎるのだが、アリサはこっちを一瞥してすぐ通り、すずかはすれ違う時に小声で「なのはちゃんの事お願い」と俺に言いアリサを追って行った。

 

「ま~たアリサに怒られたな」

「いいの…今のはなのはが悪いから」

 

そう悲しそうな笑みを浮かべてなのはは答えた。

無理もない、なのはは昔から辛い事や苦しい事、悩み事を全部一人で抱え込んでしまう悪い癖がある。今は大分良くなっているが直った訳では無い、ましてや魔法の事やジュエルシードの事も絡むこの話を無暗にアリサとすずかに話すのは危険すぎる。

それがこの悪い癖に拍車を掛けて悪化させているんだろう。

 

「アリサも言い過ぎだけどさ、なのはの事を思って言ってるのは確かだよ」

「うん…」

「もう少し経てばアリサも頭が冷える、大丈夫」

 

 

 

 

 

 

それから時間が経ち、放課後になっても二人の蟠りがなくなる事は無かった。

流石にこの状況で一緒に帰るわけには行かなかったので今日は別々で帰ることになった。何時もと同じ帰り道だが何時もとは違う状況、どうにか励まそうと言葉を選んでいると不意になのはが服を引っ張る。何時もとは違う弱弱しい力で。

 

「少し寄り道していこう?」

 

今にも消えてしまいそうな小さな声でなのははそう言った。

俺はそっと頷くとなのはの手を握り歩き始める。湖の見えるあの公園なら少しは気も紛れるだろうか・・・・・・

 

 

 

 

ベンチに座り湖を眺めているとなのはが一年の時の事を話し始めた。

すずかやアリサと親友になる切っ掛けになった話だ。

 

「あの時のアリサは中々に困った子だったなあ、すずかにちょっかい掛けてたところをなのはが止めようとしたんだったよな」

「うん・・・・・すずかちゃんのカチューシャを盗ってからかってたのを私がぶって怒ったら大喧嘩になって」

 

その時の事は今でも覚えている。クラスメイトに呼ばれて現場に来てみれば取っ組み合いの大喧嘩、何んとか二人を止めようと間に入った俺が引っかかれたりして一番痛い目にあってたっけ。

 

「そんでそれを止めたのがすずかだった」

「大きい声で「やめて」って…その喧嘩の後から少しずつ二人と話すようになって仲良くなったんだよね…」

「・・・・・・何回喧嘩したってまた仲直り出来るよ」

 

昔も酷く落ち込んだなのはに何も出来なかった。あれから時間が経ったのに結局俺はこうやってありきたりな言葉をかける事しか出来ない・・・・・・・・・・・・だから…

 

「…アリサとすずかには言えなくても…」

「…?」

「せめて俺を頼ってくれ…出来る限りなのはの力になりたい」

 

 

うんと笑顔でなのはは答える。

なのはの悩みや苦しみが分かっているのに、真面に励ますこともできない自分が唯々恨めしい。

家に戻ると帰りに買ってきたたい焼きをユーノと一緒に食べる。今日学校であったことを話すと申し訳なさそうな表情をした。

 

「別にユーノが悪い訳じゃないよ」

「でも…なのはを巻き込んだのは僕だ」

「他にどうしようも無かったんだ、しょうがないさ」

 

そんな話をしていると誰かが階段を降りる音が聞こえた。

準備が終わったなのはが降りてきたんだろう、俺はたい焼きを食べ終わるとユーノを肩に乗せ立ち上がる。

 

「なのはを巻き込んだと思うのなら…なのはをサポートしてやってくれ、全力でな」

 

そう言うとユーノは強く頷いた。ちょうどなのはも降りて部屋に入ってきた、今日も三人でジュエルシードを探しに行く。

きっとそれが終われば元の日常に戻れる・・・・・・・・・・・・その時にはフェイトも一緒に入れればいいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物語の幕が上がり劇は進む

 

 

 

 

 

 

ほんの小さな異物を含んだ物語が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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革命Ⅸ

更新が遅れてしまい本ッッッ当にすみませんでした!
気づいたら前回の更新から四か月もたってしまいましたが、ようやくの更新です。相変わらず文量は少ないですが更新ペースは何とか上げようと思いますので、改めてよろしくお願いします!


日も落ちて今は夜七時。

辺りには仕事帰りの会社員や買い物を終えて帰路に着く人たちであふれかえっていた。

 

「もうこんな時間、そろそろ帰らないとまたお兄ちゃんに怒られるかも」

「そろそろ帰ろう。あんまり遅くまで探して心配させるわけにはいかないしな、それにこんな広い街であんな小さい宝石を探すのは感知魔法を使っても時間が掛かる」

「うん。魔法で無理やりジュエルシードを起動させる手段もあるけどこんな所でやったら、どれだけの被害が出る事か…僕はもう少し探してみるよ」

 

そう言いユーノがなのはの腕から飛び出した。人の姿じゃない分動きやすいしその方が効率的ではあるが、それよりもジュエルシードの発掘者としての責任を感じての行動なんだろう。

 

「二人は先に帰ってて、あっ僕の分の晩ご飯ちゃんと取っておいてね」

「わかった。あんまり遅くなる前に帰って来いよ」

「気を付けてねユーノくん」

「うん!そっちもね」

 

そう言い残すとユーノは街の中に消えていった。

 

「じゃあ俺達は帰ろう」

「うん・・・・・・あっ…待って、そろそろアリサちゃん達のお稽古が終わる時間だ」

 

そう言うとなのはは携帯を開く。アリサ達からメールが来てないか確認してるようだ。あの後、結局二人とも碌に会話もせずに別れたので解決に至ってはいない。

 

「メール来てたか?」

 

龍希がそう聞くと、なのはは少し俯きながら無言で首を横に振った。

 

「大丈夫だよもう少ししたらきっとくる」

「うん…」

 

二人は家に向かう、ジュエルシードの捜索も早いとこ終わらせないといけないがこっちの方も早く何とかしないとな・・・・・・

ままならないことばかりだと悩んでいると、突如激しい音と共に遠くのビルの屋上から緋色の光の柱が出現した。

 

「あの光は…あいつらまさか!」

「リュウくん!」

「行くぞなのは!」

 

龍希はすぐさま駆けだした。既に後手に回ってしまったが、これ以上遅れてしまえば最悪の事態になると理解したからだ。

恐らく、あそこにいるのはフェイト達で、あの柱はフェイトの使い魔アルフが発生させているのだろう。だがそんな事は大した問題では無く、二人がやろうとしている事が途轍もなく危険な問題だった。

 

「こんな場所でジュエルシードを起動させる気なのか⁉革命の書!」

『了解しました。マスター』

「レイジングハートもお願い!」

 

革命の書を呼び出しバリアジャケットを装着していく。来ていた服は、赤いラインの入った白いコートとズボンや装甲に変わり、手足に装着されたガントレットやグリーヴには鎖が巻き付いている。バリアジャケットの装着が終わると、背部に装着されている装甲に魔力を送る。そうすると装甲が展開し魔力で作られた翼が発生した。

 

遠くで、ユーノが結界を貼っているのを革命の書が感知した。周囲への対策はユーノに任せて、龍希となのははフェイト達を止めようと、そのまま加速して一気に柱の出現場所に向かう。だが、こちらの接近に気づいたフェイト達がビルから飛び出し、そのままこっちに向かってくる。

 

「真正面から迎撃⁉…だったら!」

 

龍希は、フェイトの動きを止めようと射撃魔法を放つが、龍希達を上回るスピードに加速したフェイトに尽く避けられ、懐に入られるとすぐさまデバイス『バルディッシュ』が振るわれる。すんでの所で防御に成功はしたものの、完全に意表を突かれた龍希は、フェイトの背後から接近してきているアルフに気づくことができなかった。

 

「リュウくん!」

 

なのはの声でようやくアルフの存在に気づいたが、既に飛び掛かってきているアルフに反応が遅れ、クリーチャーを呼び出す事も、魔法を使う時間もない。咄嗟に右手を体を庇うように前に出し、少しでもダメージを軽減しようとする。そのまま直ぐに来るであろう痛みにこらえるため、歯を食いしばるが、アルフの牙が来ることは無かった。なぜなら龍希とアルフの間に目掛けてピンクの魔力弾が放たれたからだ。そう、なのはの魔力弾だ。アルフは回避していたので当たらなかったが、龍希も攻撃を喰らわずに済んだ。そしてアルフが離れた一瞬の隙を突いて、無数の緑の鎖がフェイトに襲い掛かり、フェイトは止む無く後退する。なのはとユーノの攻撃で、相手が離れたことでようやく解放された龍希も、二人から距離を取る為になのはとユーノの元まで下がる。

 

 

今の一瞬で経験と技術の差を改めて思い知らされた龍希は、冷や汗をかきながらも二人を見据える。何から何まで不覚を取ったが、もう油断はしない。まだ戦いの夜は始まったばかりなのだから。

 

 

 

 

 



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革命Ⅹ

ぼんやりと覚えているのは、薄暗い部屋と培養液の入ったケースに入れられている子供たち。周りには、白衣を着た大人たちが慌ただしく動く中、自分の目の前にいるその男は気味の悪い笑みを浮かべながら語り掛ける。

 

『君はどちらかな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人気も明かりもほとんどない夜の中、4人の魔導士と1匹の使い魔だけが一触即発の状態でその場にいた。

 

龍希は油断することなく、フェイトとアルフを正面に見据え、なのはとユーノはその後方で構えている。一方のフェイトとアルフも迂闊に動くことはせずに距離を保ったまま仕掛けようとはしない。

長いようで短くも感じる時間を静寂が包む。しかし、それは直ぐに破られた。龍希達がいる場所の近くで光の柱と共にジュエルシードが起動したからだ。

 

「見つけた」

「あいつらの相手は私がやる、フェイトはジュエルシードを」

 

フェイトはアルフに「うん」と答えると、そのままジュエルシードの方へ飛んでいく。龍希はそれを追いかけようとするが、アルフが飛び掛かり進めず、攻撃を回避しながら反撃で魔法弾を放つがそれらも軽々と避けられる。

何んとか距離を放そうにも、懐に張り付くように追ってくるうえに、丁度なのはとアルフのあいだに龍希を挟むよう動いてくるので援護も難しく、なのはが追う素振りを見せると狙いをなのはに変えて、飛び掛かり、爪を振り下ろす。近くにいたユーノが攻撃を防いだおかげで二人は傷一つ無く、アルフも二人から大きく離れるように後方に飛び、龍希の放った魔法弾を回避する。

 

「まずいよリュウ、このままじゃ!」

「分かってる。フェイトに回収させるわけにはいかないな」

 

龍希たちはフェイトとアルフがジュエルシードを回収している理由を知らない。だが、ユーノからその危険性は聞かされている。フェイトと接点がほとんどない、なのはとユーノはともかく、龍希は多少フェイトの人となりを理解しているつもりだ、だからこそ余計にフェイトがジュエルシードを集めたその先の目的が分からない。決して私腹を肥やす様な人間ではなく、恐らく自分たちよりも先に魔導師になったフェイトがジュエルシードの危険性を把握していないとも思えないからだ。

 

「…なのは、俺が合図をしたらユーノを抱えて一気に飛べ」

「リュウ君?」

「このまま3人で相手してたんじゃしょうがないからな、それに、フェイトと話をしたいんだろ?」

 

そう問われたなのはは少し顔を俯かせるが、すぐに顔を上げ、力強く「うん」と答えた。それを見た龍希はニィと笑い革命の書を取り出し、ページを捲り一枚のカードを引く。それを掲げるとカードが赤く光り輝き一体のクリーチャーが現れる。

 

「ボルッチ!」

 

それは金色の拳を持つ赤いファイアーバード「燃えるボルッチ」だ。

 

「ボルッチ少し力を借りるぞ」

 

龍希がそう言うと、ボルッチは嬉しそうに鳴きながら周囲を飛び回り、やがて赤い火の玉となり、龍希の身体に入り込んだ。ボルッチを取り込むと、龍希の身体を激しい炎が包み込み白いバリアジャケットを赤く染める。恐らく本能的にだろう、あれをさせるとまずいと感じたアルフは再び爪を振るい、襲い掛かるが。爪が当たる瞬間に炎の中から金色の手がアルフを掴む、防御でも、回避でもなく掴まれるという事を想像しておらず、驚くアルフをよそに、龍希を包んでいた炎が風に流され消えていく。白いバリアジャケットは炎の様に赤く、胸の部分には何時もの色とは違う、赤い革命軍の紋章が施され、両手の鎖があった場所には金色の籠手が装着されている。

 

「いきなりの試運転だけど少し付き合ってもらうよ、お姉さん!」

 

爪を掴んでない方の腕で思い切り殴りつけると、アルフは後ろのビルに叩きつけられる。いい手ごたえは感じなかった、殴られる寸前に防御をしたのだろうが、多少の隙を作れた。そう判断するとなのはに目配せをする。それを合図にユーノを抱え、なのははフェイトを追い、ジュエルシードの方へ向かう。なのはに気づいたアルフはフェイトの方へ向かうのを阻止しようとするが、今度は龍希がそれを邪魔する。

 

「こんのぉ…フェイトの邪魔をするんじゃないよ!」

「邪魔するよ、少なくとも集める理由を教えてくれるまではね!」

 

拳と爪がぶつかり凄まじい衝撃を放つ。片方は大切な主人の為に、もう片方は命よりも大切な友の為に、お互いに引くことは無く。激しい格闘戦を繰り広げ続けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し離れたビルの屋上で妙な形のロボットがその光景を見ていた。丸みを帯びた体に水色のカラー。一見どこかマスコットの様にも見えるが、そのイメージを壊すかのように搭載された兵器の数々が異様な存在だと物語っている。

ロボットは戦闘に加わるでも、妨害をするでもなく、ただ見ている。観察をするように、観測をするように、データを収集するように。それが創造主に課せられた役目だから・・・・・・



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革命Ⅺ

前回から気付けば一年以上放置していた不良作家ですが戻ってきました!
不定期ではありますが、また続けていきますのでよろしくお願いします!


人気のない街に激しい衝撃と音が響く、その中心地にいるのは、拳と爪を何度もぶつけ合い周囲を破壊しながら戦う龍希とアルフだった。

なのはとユーノをフェイトの元へ向かわせて、アルフが二人を追わないよう、常に至近距離での格闘戦を仕掛けていた龍希だが、革命の書のサポートを受け、ボルッチの力を身に纏っていてもアルフに対して決定打を打てずにいた。

 

「ちょっと…まずいかな…これは」

『リミッターを掛けているとはいえ、ぶっつけ本番での戦闘ですからね。負担は抑えきれません』

 

革命の書の機能は魔法関連を除けば大きく分けて二つ、一つはクリーチャーの使役。もう一つは今龍希が使っているクリーチャーを身に纏いその能力を得るというものだ。一つ目の使役はただ魔力かマナを使いクリーチャーの召喚を行うだけの機能だが二つ目の機能は違う。魔力とマナ両方を使いクリーチャー纏うのだが、召喚とは比べ物にならない量を消費する上、本来そういう風に出来ていないクリーチャーと融合に近い状態に無理やり持っていくので、魔導師の体への負荷も激しい。無論、その分身体能力の向上、武装の追加、クリーチャーの能力を得る等、恩恵を得ることが出来るのだが、繊細な調整とそれを使う魔導師に合わせたシステムの最適化を終える事で得られるそれらを、まだ完了していない龍希は完全には受けられず、無理やり使っている状態だった。

 

(無理は承知!それでも使ったのは魔法戦より勝ち目があると判断したからだ!)

 

革命の書に魔法戦の訓練を受けたとはいえ、にわか仕込みの技術でどうにかなるような相手ではない。

勝つにしろ時間稼ぎをするにしても、今の状況を打開するためにこの手段を選んだ。そのおかげか先ほどよりも幾分か戦えてはいるが、攻めきれずじわじわと力を消費し負荷が増していくばかりの現状に焦りを感じていた。

 

「しつこいんだよアンタ!」

 

既に数えきれない程の打ち合いを得て、決して自分に届かない相手と確信したのにも関わらず、倒れない。倒せない。傷を負うたびに、より苛烈に攻め続ける龍希にアルフは苛立ちと共に微かな恐怖を感じ始めていた。打ち合う度に爪で切り裂かれ。打った拳を防ぎ、躱し魔力弾も悉く撃ち返した魔力弾に相殺されほとんどの攻撃を防がれてなお、攻撃の手を緩めず。それどころかますます激しくなっていく。

 

「まだ倒れるわけにはいかないんでね!」

 

なのは達の邪魔はさせないという思いだけが今の龍希を奮い立たせている。アルフが放った魔力弾を魔力弾で相殺し、拳を放つ。爪ではじかれ大きく体制を崩すが倒れるほうに魔力で足場を作り、逆立の様に地面に手をつき体を捻り、回し蹴りを放つ。体制が崩れた状態から反撃をされるとは思っていなかったのか、反応しきれずに直撃を受けたアルフはビルに激突する。

 

(ようやく一撃!畳みかける!)

 

確かな手ごたえを感じた龍希は追撃を加えようと加速。アルフの魔力を頼りに魔力弾を放ち、更に両籠手に魔力を集中させ魔力弾と共に接近する。魔力弾はアルフの周囲を囲むように着弾させ逃げ場をなくし、本命の拳を叩き込む……が……

 

「なめるんじゃないよぉぉぉぉ!」

 

凄まじい風が起こり煙が晴れると、そこに居たのは先ほどまでいた狼ではなく、狼の耳と尻尾を生やした人だった。狼の姿から人の姿へと変身したアルフが放った拳がぶつかり合い、今までの比にならない程の衝撃が迸る。

 

「その姿でも戦えるのかよ⁉」

「アンタなんかに時間を掛けてる暇はないんだよ!」

 

力比べは拮抗したものの、弾かれた瞬間に四肢をオレンジ色の鎖が拘束する。

 

「このタイミングでバインド⁉なんて器用な!」

 

すぐさま鎖を引き千切るが、壊したそばから新たな鎖が巻き付き身動きが取れない。そして次の瞬間には鎖に引っ張られ宙に舞う。見ればアルフが鎖を掴み地面に叩きつけようと振り回しているのだ。

 

「解析!」

『間に合いません!』

「とっとと落ちろぉぉぉぉぉ!」

 

付近のビルを破壊しながら振り回され、痛みと衝撃で気絶しそうな意識を無理やり繋ぎ止め何とか脱出する術を必死に考える。時間を稼ぐにしろまだ墜とされるわけには行かない。

 

(叩きつけられる瞬間に装備をパージしてその衝撃で脱出する!)

『無茶ですマスター!賭けにしても分が悪すぎる上に成功しても戦力が大幅に落ちます!』

(それでも虚をつくにはやるしかない!)

 

意識を今までよりも集中させる。地面に叩きつけられる瞬間その一瞬を使いアルフの虚をつかなければ確実に負ける。そう理解しているから無茶な手段でも躊躇なく行わなければならない。

革命の書はそんなマスターをサポートするために可能な限りの魔力をバリアジャケットに集中させ威力タイミングの微調整をする。

 

「カウント!」

『5…4…3…2…』

 

革命の書のカウントでタイミングを合わせ、衝撃に備えようと更に意識を集中しようとした瞬間。視界の外から眩い光が入って来た。

 

「⁉」

(意識がそれた!今ならいける!)

 

アルフの意識がそれた一瞬を使いバリアジャケットをパージし脱出する。パージしたバリアジャケットを炸裂させ目くらましをすると同時にすぐさま再構築、上昇し反撃に移ろうとするが、革命の書から制止される。

 

『マスター、なのは様の方から異常な魔力反応が発生しています』

 

さっきの光と衝撃はなのは達の方から発したものだった。そして革命の書が感知した異常を龍希もようやく認識する。なのはの魔法でもフェイトの魔法でもない、明らかな異常事態それの原因を理解するまでそう時間はかからなかった。

 

「フェイト?……っ!」

 

それを感じ取ったアルフは目の前にいる龍希に眼もくれずその発生源へと向かった。龍希もそれに続く様になのは達の方へ向かう。

 

「頼むから無事でいてくれよ……っ!」

 

緊張が解けて無視していた痛みに襲われるがそれを無視し先を急ぐ、ひたすらになのは達の無事を祈りながら。

 

 

 



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