出撃!第一部隊の隊長さん!! (夕陽に影落ち)
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物語の始まり



こんばんわ。蒼羽彼方とかいう小説を書いてるおじさんです。
いやー、久しぶりにリザレクションを手にとってやってみたら面白いのなんの。 で! そういえば極東って他所からアラガミ動物園とか激戦区とか地獄とか呼ばれてるらしい、と言う設定を思い出しまして……

そこで最大戦力張ってる第一部隊の隊長さん!!(主人公)がほかの支部?とかに休息もかねて応援に行ったり、色んなことに振り回されたりするだけのシナリオです!

ガッバガバ設定とご都合主義、圧倒的駄文の自己満足のための小説ですが、読んで楽しいと思ってもらえれば嬉しいです。

時系列はリザレクションがエンディング迎えてフェンリル極東支部も通常通り活動し始めたくらいです。ソーマのノヴァの残滓回収作業はまだ終わってないくらい?

アリウスノーヴァまだ倒してないです。初期神機系統縛りがきつい……




 

 

 

 

 

ここは極東支部。そして俺はこの地獄で戦力としてトップに立たされている第一部隊のリーダーだ。あ"ーークソ熱っちい……

 

 

「んっっで!! なんで地下街で暑苦しい堕天種共とダンスパーティーしなきゃなんっねぇんだよおおぉぉお!!ッッッラぁ!!」

 

『ごめんなさい! ごめんなさい! 本当はグボロ・グボロの堕天種一体とザイゴート堕天種を数体討伐するだけの任務だったんですよぉ!』

 

「しゃあッねえよヒバリちゃん!! 『でも――!』 高熱適応したグボロがマグマの中に潜られてたら! 精度の粗い探知で発見なんて不可能だろッ! 堕天シユウも戦闘の音聞き付けられて集まったみたいだしナぁ!! んなくっそ! 曲芸タマゴがうぜぇ! ポンポンポンポン毒吐くなや!!」

 

 

そう、本当は高温に適応した堕天種グボロとザイゴートの討伐で終わる筈だった。今の状況?正直言って笑えねぇよ。

シユウ堕天種(火)が3体とグボロ・グボロ堕天種(火)が2体、おまけに倒しても倒しても湧いて2~4体をキープしてくるザイゴート堕天種(火)。ゴポゴポと沸き立つマグマの熱も相まって、暑苦しいダンスパーティーだ。水飲みたい。

 

ふざけやこっちは神機強化のためにウロヴォロスから混沌翁晶・闇晶、翁骨剥ぎ取ってきたんやぞ!

 

あーーソーマがクソッタレな職場と愚痴を吐くのもしゃーないなー。サカキ博士ぶん殴るぁー。

 

 

『コウさん! サカキ博士から撤退命令です! 手に負えなくなっているなら撤退を許可するって!』

 

 

よぉッしナイス博士! 帰ったら初恋ジュース一気飲みな! もちろん大ジョッキで!

 

そのあと、ヴァジュラの強個体が帰投ポイントにたむろしていたので、泣く泣く地下街に戻って理不尽にキレ散らかして殲滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ゜~~~~~……」

「リーダー、大丈夫……ではなさそうですね。お疲れ様です」

 

榊支部長からの無茶振り依頼をギリギリでこなし、疲れを引き摺りつつも日常に浸るべくロビーでくつろいでいたら、アリサがやってきた。

ああ、アリサ……普段は辛辣な君が、今だけは天使に見えるよ……

 

「随分とまた無茶をしたらしいじゃないですか。今度はなにしたんですか?」

「やー、そんなには無理してないよ。ちょっと手に負えなくなってきただけ、ね?」

「………………(ジト目)」

 

じ~~…と無言の圧を掛けながら此方を睨むアリサ。

いや、まぁ、ちょっと、こっちにも後ろ暗いところはあるよね、とさすがに耐えきれなくなって視線を逸らすが、アリサも隣にやってきて顔を捕まれ、強制的に目を合わされる。

 

「リーダー、今度はどんな無茶をしたんですか?」

「いや!ホントに無茶とかじゃなくt―――」

「話してください」

「だから」

「話せ」

「……………」

「リーダー?」

 

はぁ、とため息を吐いて、今回の任務と内容があまりにも違ったことを愚痴に溢す。

俺は嫌な気持ちになったり苛ついてくると、どうしても態度や口が悪くなる。だからなるべくこんな姿を見せたくないんだけどな。

リンドウさん助けた時もブチ切れて、その場にいた第一部隊の皆とリンドウさんからはしばらく距離置かれたし。

 

いやまぁ、さすがにアラガミ化してたとはいえ、四肢切り落として下顎から胸まで抉ってコアをぶん殴るとかされたら引かれるよね? ごめんね?

 

「あの、聞いてて思ったんですけど、それ全部博士が悪いですよね? ただでさえ地下街は高熱の極地適応型アラガミが出やすいのに、単独で任務に当たらせるとか……標的以外の乱入も考えて、せめて二人以上は付いていった方がよかったのでは?」

 

うん、それは本当にそう思う。

だけど今、終末捕食のトリガーは引かれてノヴァは月に飛び立った。その際に残されたノヴァの残滓の影響でアラガミが活性化し、アラガミの個体数も激増、個体ごとの強さも上昇した。

 

具体的には、小型のアラガミなら5匹以上の群れは当たり前、過去一多いのは総計27体のザイゴート、オウガテイルなどの小型種とコンゴウ、シユウの中型種、ヴァジュラ2体、サリエルとクアドリガが一体ずつの大軍団。

今でこそ少しずつながら落ち着いてきたが、それでも平均で10体前後のそんな群れが普通に出てくるようになった。

 

「ってことで防衛班や偵察班の皆も大忙しだ。アリサもこの前、ヴァジュラの討伐任務で痛い目見たろ。つまるところ人員が足りてないんだ。だから俺の単独任務も多くなる」

「………それは」

 

【第一部隊隊長 御原コウ 榊支部長から呼び出しが掛かっています。至急、支部長室まで出頭願います。 繰り返します。第一部隊隊長 御原コウ 榊支部長から―――】

 

「あーらら、呼び出し食らっちった。しゃーないな。行かせてもらうか」

「あっ……」

 

アリサが何か言いたそうに此方を見るが、支部長から呼び出されているためあまり構ってやることも出来ない。

すまんな、と言って頭を撫ででエレベーターに向かう。

後ろから小さく「ドン引きです…」と聞こえたのは無視しよう。

 

 

 

 

◇◇◇アリサside◇◇◇

 

 

最近、リーダーに回る任務が多すぎる。

そう思ったのはいつ頃からだったか。私は、リーダーに撫でられた頭を抱えて小さく愚痴をこぼす。

 

「ドン引きです。私たちだって仲間なのに……貴方にはそんなに頼りなく見えるのですか……」

 

事実、私たち第一部隊のメンバーと、リーダー……隊長の実力は大幅に開いている。

シオちゃんが月に行って、リンドウさんのアラガミ化を止めた辺りから、その変化は出てきた。

 

サリエルを拳で叩き落としたり、飛びかかってきたヴァジュラを神機で打ち返したこともあった。

 

急激な変化は、リーダーに何かしらの負担が絶対に出てくるはず。

そんなことを思っていると、サクヤさんから召集命令がかかった。

 

「………今は、考えても仕方ない、かな」

 

もやもやした気持ちを抑えて、サクヤさんのところに行く。

 

 

 

◇◇◇支部長室◇◇◇

 

 

「よく来たね。予想していた時刻よりも162秒早い。行動が早いのはいいことだと思うよ。うん」

 

相変わらず独特な雰囲気持っているな、ペイラー博士。

 

「ま、任務終わって暇だったんでね。ゆっくりしてただけですよ」

 

実際はあんたの無茶振りを引き受けてアリサに愚痴を聞いてもらってたんだけどな。

 

「ふーむ、これは少し悪いことをしてしまったかな? どうやら、戦い続ける戦士の僅かな休息を奪ってしまったようだね」

 

冗談交じりにそう言っているが、薄く開いた狐目からは申し訳無さの含んだ視線を感じる。

 

「まぁ、それはいいとして、だ。私自身、君には少しばかり色々なことを頼みすぎていると思っていてね。この際だから、ゆっくりと羽を伸ばしてみないか、と提案をしたくて君を呼び出したのだよ」

「提案、ですか」

「そう。提案だ。支部長としての立場から任せる任務でもなく、技術者としての立場から言う素材の調達でもなく。君自身が受けるかどうかの選択ができる提案だよ」

 

要するに、最近色々と頼みすぎたからお休みをあげる、というだけの話だ。普通ならこんな好条件を逃す理由はない。今が、人員の足りなさすぎる時期でなければ。

 

確かに上手い話しだ。だがこういったものは裏があるのは当然と捉えるのが当たり前。とくに支部長になった榊博士は、そういう面が強い。隠れて色々なことをやる。

 

「具体的には?」

「そうだね………」

 

少し考えるような仕草をして、榊博士はこう述べた。

 

「他部署への出張なんてどうだろうか?」

 

と。

 

……なるほどね。

理由は不明だが、しばらく俺を極東支部から遠ざけておきたい、と。

打てる手は打っておくか。

 

 

 

 





見切り発車なので非ブックマーク推奨。
長ければ二年くらい投稿しない可能性もあるよ(死目)


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出張前に打つ手

前回の、あらすじ~

主人公→以下主
「無茶振り任務の榊博士ぇ」

アリサ→以下ア
「最近、リーダーばっかり無茶し過ぎです…」

榊博士支部長→以下サ支
「最近色々頼みすぎてたからお休みあげるね☆」





支部長から呼び出された帰り、俺は神機格納庫に足を運んでいた。

 

「やーや整備員諸君、今日も俺らの生命線の整備お疲れさん。リッカ君はいるかね~?」

「まーた変な口調で……いやなんでもないす。リッカちゃんあっちで見ました。はい」

「ありがとよ、ほい」

 

ぺほ、と男性整備員の胸ポケットに、低ランクではあるが嗜好品配給のチケットをいれてやる。飴か香辛料のキツイ干し肉(名称はストレートジャーキー)くらいしか貰えないけど、それでも貴重なチケット。こんな高価なのを…と苦笑いされながら見送られた。

 

いいんだよべつに。無茶振り任務も報酬は良いから大盤振る舞いできるぞ。べつに俺贅沢とかほとんどしないから、配給チケットが余るんだよね。下手したら10枚単位で換金する。

っとここらへんかなー?

 

「よー、リっちゃん。やってるー?」

「あっコウくんもう来たんだ。また出撃命令が出たの? まだ神機の整備終わってないよ?」

 

だろうな、と返しながら談笑する。

 

楠リッカ。

神機の整備員をまとめるこの部署のリーダー。

懐が深いというか、性格がザックリしてるというか、良い意味でいい性格をしている好人物。

 

彼女自身はアーク計画に乗らず地球に残った側だが、アーク計画に賛同して地球を見捨てた人間に対しても「家族を、大切な人を守る決断をした人の何が悪い」とバッサリ斬り捨てる気持ちのいい性格をしている。

 

かく言う俺も、彼女の人柄には助けて貰うことが多い。

そんなカリスマ性を持つ彼女だからこそ、ゴッドイーターの基盤を支える整備士のリーダーをやれているんだろう。

 

「今日はちょっと、リッカに相談があってな」

「私に、って言うのは珍しいね。神機のこと?」

「いや、実はな……」

 

リッカに、支部長から呼び出されてしばらくは他の支部に出張することになったと説明をする。

その間に技術者でもあり、支部長としての立場もあることでやることが広がった榊博士が何をやるか、それとなく探って欲しいとお願いもする。

 

「あの人なら、やりかねないか……」

「すまんなリッカ。何かしらをする気ならお前にも話は行くだろうし、できればでいい。とんでもないことをやるつもりだったら止めてくれ」

「……ま、できる範囲で頑張るよ」

「頼んだ。見返りは用意しとく」

 

お互いにクスクスと笑い合う。

……ふと思い出したが、結構前に俺が提案したアレの進捗はどうなんだろうか、と気になる。

 

「あっ、そうだった。ねぇコウくん、この前話してたアレ……試作品だけど完成したよ!」

「おおー! 出来たか! 効果の検証は……試作品だからまだか」

「うん、だからこれは個人的なお願いだけど……」

「いーよ、やる。試す相手はオウガテイルでいいよな?」

「ありがとう! これで、少しは対応できるようになれるかな……」

 

少しだけ俯いて、震える手で胸元を押さえるリッカ。

あれは、そう。神機格納庫にヴァジュラテイルが侵入したときの事だ。あの時リッカは、俺がリンドウさんの神機を使ってヴァジュラテイルを倒さなければ、アラガミに食われて死んでいてもおかしくなかった。

だが、そんな経験をした彼女だからこそ、この提案に乗ってくれたんだろう、と勝手で悪いが思っている。

 

「そうなるために、この装備を開発したんだろ?」

「うん」

 

顔を上げた彼女の顔は、芯の通った戦う者の顔をしていた。

 

「神機じゃない、対アラガミ用の対抗兵装……これが完成すれば、私たちでも小型種の足止めくらいならできるようになるはず」

 

そう言って、棺のような形をした神機の保管装置に手を掛ける。

ガシュン、という音と共に保管装置のロックが外れ、中からいくつかの円筒形の装置と神機のショートブレードパーツ程のサイズの剣、側面にオレンジのラインが通った輪っかが出てきた。

 

「特殊オラクル武装、仮称【バインドスティンガー】!」

 

スティンガー……刺し傷、剣の英訳か。

……かっこよ。もうそれが正式名称でいいじゃん。

 

「と、もう一つ。バインドスティンガーの失敗作から出来た、使い捨て前提の小型板【バインドチャクラム】」

 

側面にオレンジのラインが描かれて…違う、これは……

 

「中に入ってるのか」

「ご名答、その通りだよ。当たらなかったら回収して使い回せるけど、当たればそこから吸着して、注入されるようにしてみたんだ。弱いけどホーミング機能も付けてるから、そうそう外れないと思うけどね」

 

そう、リッカに開発を頼んでいたのは神機の使えない整備士や警備員などが使用することを前提とした、対アラガミ用の補助武装の開発。

 

「スティンガー型の武器はカートリッジ式にして繰り返し使えるようにしたよ。この円筒形のカートリッジに、ホールドトラップのオラクル配列を弄って安定性を犠牲に拘束力だけを求めたオラクルを使うって聞いた時はびっくりしたけど」

「代わりに刀身部分で制御機構を組み立てるのはなかなか良い案だったろ?」

「まぁ、苦労はしたけど、結果的に出来ちゃったし」

 

剣柄と刀身との間には、カートリッジを嵌めるための穴がぽっかりと空いている。峰から刃の部分にかけてまで差し込めるような穴が。

強度が心配だがこれはこれでいい。極論、これに強度なんて必要ないからな。

 

「いいね。最高」

 

互いに拳をつくり、打ち付け合う。

 

「それにしても、最初に聞いた時は驚いたなぁ」

 

腕を組んで胸元の二つの果実を支えるように持ち上げる彼女。何故と聞けば速攻で答えが帰ってきた。いやぁ、意外とリッカさんもご立派なモノをお持ちで……

 

リッカさん曰く、普通のゴッドイーターなら、アラガミを倒すための自分の神機の強化、補強パーツ、強化パーツなど、究極的に言えば自分を強くするための依頼をリッカに注文してくるもの、とのこと。

 

俺のような補助武装やアイテムの開発を頼んできたゴッドイーターは、彼女が整備士になってからは初めてらしい。

 

「いや、確かに神機の強化は大事だろ。強くなればなるだけ生存率も、アラガミを倒せる可能性も高くなるし」

「それじゃ、なんで君はわざわざアイテムの開発を頼んできたの? 確かに君は強いけど、それは君が神機を強化し続けた結果だけ、ってこと?」

 

そういう訳じゃなくてだな……と言葉を続ける。

ゴッドイーターとしての実力があり、扱う神機が強ければ確かに生き残れる。だけど、それだけではないのだ。

 

「いつの任務だったかな……俺が下手打ってヴァジュラの雷撃に巻き込まれてさ、スタンを食らったんだ。その時にさ、一緒に任務に来てくれてたソーマとタツミさんがヴァジュラを倒してくれたんだよ。

 

俺に飛びかかろうとしてたヴァジュラを、タツミさんがスタングレネードで牽制してソーマがホールドトラップで拘束。そのあとすぐにチャージクラッシュの溜めに移って、その間にタツミさんはヴァジュラの後ろ足を斬り続けてて、ホールドが溶けた瞬間にダウンを取った。

 

で、そのあとはソーマがヴァジュラの顔面に結合崩壊を起こして、スタンが抜けた俺とタツミさんで仕留めた」

 

そこで思ったわけだ。アイテムの使い方次第で一方的に有利な状況を作り続けることができるなら、アラガミを足止めすることが可能なら、リッカが襲われたケースのようなことが起きても対処が可能ではないか、と。

 

「まぁ、そんなわけで、非戦闘員にもある程度対抗手段があればなってことでこんな物を作って貰ったわけだ」

「……本当に君は、お人好しだね」

「おう。ホールド効果を持つオラクル細胞ってことで、オラクル細胞を持っているやつなら大抵効果あるから、新人ゴッドイーターが技術局に生意気な態度取って来た場合の制圧にも使える。囲んでリンチしてツバキさんに突き出してやれw」

 

それは流石にかわいそう、とリッカは言うが、俺たちゴッドイーターの活動を支えてくれているのは、神機の整備や強化をやってくれている技術局だ。

それを疎かにする奴には手加減しなくていいと思う。

是非痛い目を見てくれ。

 

「それじゃあ、ヒバリちゃんに任務の発行は申請しておくから、準備が出来たら受理してね。満足行く結果を待ってるよ」

「おー」

 

さて、それじゃ俺は、俺の仕事をさせて貰いますかね、っと。

サクヤさんは部屋に……リンドウさんとお取込み中でしたら申し訳ないので後でメッセージ飛ばしとこう。

 

 

 

◇◇◇エントランス・ロビー◇◇◇

 

 

 

「ってことで! 今日はジーナさん来れないから、居住区の見回り、代理で入ってくれ!」

「いや何が「てことで!」なんですかタツミさん。俺は俺でやることもやりたいこともあるんですけど?」

「何だ、急ぎの用事か?」

「そんなことはないけど……」

「なら大丈夫だろ。なぁ、頼むよ……」

 

ロビーに出てくるなりいきなり引っ張られてそれはないだろう。自室に戻ってサクヤさん宛にメッセージ飛ばしてたら、もう神機の準備と試験任務の発注しといたよ、ってリッカちゃんからメッセ来たんだが?

 

「俺、これから仕事なんだけどなぁ……」

「悪いが御原。俺からも頼む、正直なところ人手が足りていないんだ。シュンのやつもあまりやる気がないし、そういう状態で戦っていれば、いつか余計なミスを生む。小さな失敗も多く積み重なれば無視できない歪みになる。何よりあいつは口が悪いからな……子供の多い居住区の見回りには向いていない」

 

ブレンダンは相変わらず慎重派か。

や、悪くはない。タイミング以外は。

臆病者と揶揄されることもあるが、慎重なのはいいことだ。何より、俺は堅実に事を進めていくブレンダンは好ましいと思っている。

 

「……幾つか、条件付きでいいならそっちも手伝う」

「おっし! ありがとうなコウ! 俺たちに出来ることなら、大抵のもんはこなしてやるさ!」

「協力に感謝する。御原」

 

ということで、新装備の実験d…んっん。検証のお手伝いさんをゲット。

居住区の住人には悪いが、アラガミが侵入してくれるとこっちの仕事も出来るからありがたいかな。

 

出ないなら出ないで外に狩りに行くが。

 

 

 

 




主「タツちゃんタツちゃん。新装備あげりゅ(^∇^)」

大森タツミ→以下タ
「お、どしたどした」

ブレンダン→以下ブレ
「新しい装備か。俺も少し興味があるな」


主「(実験台は多いほどいいよね……(((´^ω^)」



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エリック生存回!

前回のあらすじ〜

タ「防衛任務の人が足りないんで助けて!」

ブレ「俺からも頼む」

主「なら新装備の実験台おなしゃす」

2人「「えっ?」」



「よし、それじゃあ各々装備に携行品に準備出来たら、ヒバリちゃんに声をかけておいてくれ。俺はもう終わっているから先に行く。外で会おう」

「俺は少し、準備する時間が必要だな。いつもは小型種しか出てくることはないんだが、ノヴァの影響か先日の任務で中型種が出てな……想定していたとはいえ、スタングレネードを多めに使ってしまったんだ」

 

タツミはそういって出撃ゲートに、ブレンダンはエントランスで出店を開いている万事屋に、そして俺は2人分の新装備を神機保管庫にいるリッカから―――

 

 

「フッ…僕だって、あの鬼で外道で鬼畜なあいつに投げ込まれた死地を華麗に生き抜いた猛者だからね!今更小型のアラガミ程度に不覚を取ることは無いさ」

 

………おんやぁ?(鬼で外道な暗黒鬼畜スマイル)

 

「いやエリックさん、あの人の入隊任務の時にオウガテイルに食われかけたって聞いたんですけど」

「エリック先輩〜。過去はいくら嘆いても変わらないんですよー」

「拭い去ることは出来るさ。過去……それは謂わば、スタート地点のようなものなのさ。情けない自分と決別するためのね」

 

なるほどなるほど……

慢心マシマシでオウガテイルに食い殺されかけた君を鍛え直し、育てた俺を鬼と申すか。

それなりにキツかっただろうが確実に実力の底上げに繋がった筈が外道と罵るか。

そのスタート地点に立たせてやったというのに、挙句の果てには鬼畜とまで言うか。ハッハッハ……(笑)

 

席を立った俺は幽鬼の如く気配を消して脱力し、エリックの背後に抜き足差し足忍び足で忍び寄る。全装備消音スキルLv10付きよりもなお静かに。

 

「確かに僕は強くなったさ。まぁ、あれだけ死線に放り込まれ続ければ大抵の戦闘には恐怖心なんて抱けなくなるのは必然かな……」

「いやエリックさん、隊長さんにどんなスパルタ指導受け……あっ」

「先輩〜……全力ダッシュで逃げ、るのはもう遅いですね〜」

「君たち何を言っ――」

 

 

 

 

 

 

「エー、リィ、クくぅーん……」

 

 

 

「ヒィ……」

 

「「うわぁ……」」

 

ぬるり、という擬音が相応しいだろう。

ウロヴォロスの触手じみた動きでエリックの背後から抱き着き、腕を絡めて首を抑える。まるで蛇に睨まれたカエルのように動けなくなった彼の横顔のすぐ近くに口を寄せ…

 

「『A・B・C』ィー……」

 

と囁いた。

 

「イぃヤァァ(ry!!!!」

 

逃ガサナイヨ?

 

 

◇◇◇エリックが発狂したので十数分後◇◇◇

 

 

 

「なるほど、防衛班の欠員補充に僕も連れていくと」

「足ガックガクですよエリ先〜」

「ABCって何だ…?」

 

そこな青年、エリックと同じ内容であるなら其は修羅の道ぞ。

 

おふざけもそろそろ、タツミさんとブレンダンがもう待っている筈だ。急いでエリックを連れて行かなければ。

 

「そういや、偵察班に枠二つ新人配属があるって話があったな。その話、お前らか?」

「あっ、そうです!外から来て、晴れて ゴッドイーターになりました芦名コジロウです。よろしくお願いします!」

「同じく新人のエンリです〜。よろしくお願いします〜」

 

ほぉん。

長めの黒髪を後ろで束ねた男が芦名、エンリはゆるゆる金髪三つ編みを一纏めにして胸まで……巨乳か。アリサ並だな。

 

「じゃ、新人2人組との顔合わせも済んだし、エリック連れて行くからまたな」

「ご愁傷様です、先輩…」

「先輩がんばぇ〜(*´∇`)ノシ」

ズルズル、ズルズル……

「ちょ!?コジロウ君、エンリ君!?助けたまえよ!?いやっ!待って!?助けて!!イヤァァァ―――「そぉい!!」グハッ……」

 

襟を引っ掴んでズルズル引き摺られながらも、往生際悪くジタバタと足掻いているエリックを首トーンで気絶させて黙らせる。

2人の引き攣った顔は見なかったことにしよう。

それがいい(´-ω-)ウム

 

 

 

◇◇◇フェンリル管轄・居住区◇◇◇

 

 

あれからヒバリさんから新装備の試験運用の任務を受けて、リッカが待っていた神機保管庫にも寄った。試験前の新装備なので、壊れても替えが利くように予備も含めて3セットあったそれを受け取り、2人のいる所まで走った。

ちなみに剣1本、カートリッジ2個にチャクラム4個で1セットらしい。

3組あったので2つをエリックに押し付けた。体力作りだ、励め。

 

「ゼヒェ…ゼヒェ……ま、待ってくれ……これ予想以上に重いんだが……!?」

「ゴッドイーターだろ頑張れ、もうちょっとだから。ほら、おぉーーい!タツミさぁーん!」

 

声を高く張り上げて遠くに立つタツミさんを呼ぶ。

装備ケースをふたつ抱えて運び終わったエリックがブレンダンから水を貰って、「嗚呼、神よ……」と大げさに感謝しながら飲んでた。

タツミさんからは遅いとお叱りを受けてしまったが、まぁ事実だから仕方ないだろう。人手追加したから許しておくれやす。

 

「で、コウ。遅れた理由はエリックがいる時点で予想がつくが、ふたりが運んできたこれはなんだ?」

「最初に言ったでしょ?幾つか条件をつけていいなら、仕事を手伝うって」

「その条件とやらがコレか」

「だな。リッカたち技術局に頼んで作ってもらった新装備だ。エリック含む防衛班3人には、戦闘時にコレを使って貰って感想を聞きたい。あ、俺じゃなくてリッカに直接言うのでも大丈夫だ」

 

わざわざ俺が3人分の意見をまとめて報告するのも面倒だから、是非リッカ及びこれを作った技術班に直接言ってもらいたい。

 

「具体的には、どういった装備なんだい?」

「案外、乗り気だなエリック。急に新しい装備を使えと言われて、不安じゃないのか?」

「待て待てふたりとも。まずはコウの話を聞こう」

 

長いこと付き合っていると分かるが、わりと聞き上手なタツミさんが二人をなだめてこちらに視線を向ける。

話してくれって目だけで会話できるのは凄いよな。

 

ということで(説明略ry

 

「なるほど、拘束力を強化した罠を装備にしたのか」

「そういうこと。ホールドの性能を上げた代わりに安定性が死んだから、装備に制御装置を付けただけ。理論上だけなら大型種にも一撃で効くぞ」

「割と頼もしい装備だな。正規品になれば支給されるのか?」

「如何に相手が強大とはいえ……動けない相手を一方的に追い詰めるとは華麗じゃないな。まぁ現状、手を選んでいる場合では無いのは確かか」

 

そう。

エリックの言う通り今は手を選んでいる場合ではなく、なりふり構わず殲滅を執行するのが最善手。

ノヴァの影響は広く強い。アラガミは強くなったし、タフさも以前のそれより数段上がった。要するに倒しにくくなったので、今まで通り、水際で留めていられるような膠着状態の対応だと食い破られる。その先は、アラガミによる蹂躙だ。

 

「そういうことだエリック。新型の俺やアリサは、戦い続けられるようにオラクルの補充手段があって旧型神機使いの皆よりも生還率が高いから、こういった装備はあまり必要は無いけどな。

この装備の意味は、アナグラ内にアラガミが侵入した際に抵抗手段の無い整備士や従業員が生き残るためにある。人的資源が減れば俺たちゴッドイーターも死にやすくなるから」

「神機の整備や消費する資源の生産は、技術や知識が無ければ不可能だから、という事だな。なるほど、自らの手が届かない場所を守るための装備、か」

 

そゆこと。

 

「じゃあ説明も終わったし、防衛班の見回りと行こうぜ」

「「「応!」」」

 

 

 

◇◇◇ブリーフィングルーム◇◇◇

 

 

コウが防衛班と見回りに出たのとほぼ同時刻。作戦会議室では地表に残されたノヴァの残滓沈静化の業務に駆け回るソーマと第一部隊隊長の御原コウ除く第一部隊メンバーが、サクヤの招集に応じて集合していた。

アリサ、コウタ、リンドウ、サクヤの4人である。

 

 

「で、サクヤさん。任務を受注していないのに私たちに招集をかけるなんて、何かあったんですか?」

「いやアリサ、どうせまたコウだろ?あいつ最近、また無理してるみたいだし」

「あー、何だ。俺が隊長だった頃より相当ヘビーな仕事量こなしてるからなありゃ」

 

居ないのをいいことに言われ放題ですね。

確かに、一般ゴッドイーターの平均ミッション受注数が週間30前後に対して、御原コウの一日の受注数は20から30。

実際には受けていないものの、乱入や別任務のエリアを通り過ぎる際の遭遇で倒してしまったアラガミをカウントして含むと、そうなってしまうのだ。事後処理として任務報酬も入るし。

ソーマもここに居たら休めと言うだろう。

 

「皆には単刀直入に言うけれど、あの子……最近働き過ぎなのよね」

 

一同、頷くなりため息をつくなりして同意を示す。

第一部隊のメンバーは、極東支部の主戦力という面子もあり他のゴッドイーターよりも仕事量は多い。

だがしかし、その度を超して隊長の彼が請け負う量が多すぎるのだ。

サクヤはそれを問題視し、今回の招集は、隊長に掛かってる負担を分散しようという名目で集まってもらったのだ。

 

「あのーサクヤさん。そういえばなんだけど、コウのやつ隊長に出世してからは任務終わってすぐにどっか行くし、やってること全然知らないんすけど」

「サクヤさん、私もリーダーがミッション以外でどんな仕事をしているかとか、聞いたことがないです」

「ああ、そこからなのね……」

 

あの子は本当に何も話してないのね、と呆れながら、サクヤはリンドウにお願いして説明を投げる。前任者のリンドウの方がその辺は詳しいだろうから。

 

「えーっとな、まず隊長の仕事だが、アラガミを討伐して帰投した後は報告書をまとめたり隊員のコンディション管理くらいで殆ど仕事は無い。お前らと同じで色々と兼任でもしてなきゃ仕事は少ねぇのさ。

あいつの場合は、榊のおっさんが無茶な任務を吹っ掛けてるからその関係で忙しいんだろ」

「無茶な任務って……」

「特務っていう秘密の任務だ。ほら、前に第七部隊がウロヴォロスのコアの剥離に成功ってアナウンスされてたことあったろ。あれは俺が特務で討伐したやつのことさ」

 

その言葉に息を飲むアリサとコウタ。

二人は、如何にリンドウが強いと知っていても実際にその指標となるものがなかったために漠然とした感覚でしか無かったそれが、どれほど高い壁なのか理解したのだ。

 

「ちなみに現隊長もウロヴォロス程度ならソロで倒せるぞ」

「実際に倒してるかどうかは分からないけどね」

 

倒してるかどうかは分からないサクヤは知る由もないが、事実、何十と連戦してるレベルで倒している。堕天種や接触禁忌種を含めて。

 

「後は……そうだな、確か聞いた話じゃオペレーター業務もやってるし榊のおっさんと論文考察したり神機関係のオラクル技術工学もやってる、のか?オペレーター業務の話は、俺が特務で出た時にあいつが観測してたことあるから間違いじゃねーな」

「兼任しすぎでドン引きです……」

「何をどんだけやってんだよ隊長……」

「まぁそんな訳で、働きすぎてる隊長を少しでもいいから助けてあげようってことよ」

 

思ったよりオーバーワークで過労死しそうな隊長だった。

 

「と、そうだったわね。さっき自室のターミナルを覗いたらあの子からメールがあってね。他支部の戦力援助の名目でしばらく休むそうよ、彼」

「えっ」

「それってつまり、リーダーがしていた仕事量が……」

「嫌な予感しかしないんでおじさん降ろさせt」

「「(無言の肩ガッ)」」

「諦めてね、リンドウ?」

 

 

頑張れ。第一部隊。

 

 

 




今後出そうか迷ってるエリックの後輩2人
設定はしっかり練ってるんだよなぁ……

芦名コジロウ
近接神機ショート、シールド
アラガミの攻撃を受け流すのが得意なタイプ。
手数のあるショートと防御範囲の広いシールドでアラガミの間合いでも確実に安全圏を作る身軽なブレンダン。
「突っ込んで、弾いて、突いてバックステップ……」

エンリ・カテジナ
遠距離神機アサルト(ガトリング砲)
誤射の無い近接カノンといえば理解すると思う。
地味にバレットエディットが得意で散弾や爆発弾をよく仕込む。のったりとした温厚な普段からは想像もつかない苛烈さでアサルト弾を撃ち続けたり、わざと懐に飛び込んでゼロ距離で散弾(遅延爆発式)を打ち込む。こわい。
たくさんオラクルアンプル持ってる。
「あはははっ!楽しいね?痛いよね!?綺麗だね!!怖いよねッ!?」




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いざぁ……

戦闘メイン回。
しばらくご無沙汰いたしておりました。
ブレワイ楽しいけど収集癖のある自分は鞄の管理が……


 

 

 

ズン……ズン……と、結構な重量を持った足音が、身を隠している壁の向こう側から地面を通して響いてくる。

 

「いやー、出ちまったなぁ大型種」

「フフ、いかに華麗なる僕とはいえ、ヴァジュラ相手では単身突撃などしないさ。だから地味に壁の外へ押し出そうとするのやめてくれないかな押すなやめろあっ待って足出てる足出てるから!」

「エリック囮してこいほら。大抵の戦闘には恐怖心なんて抱かないんだろ」

「無謀だ。やめてやれ御原」

 

こちら防衛班。

内側の壁と居住区の見回りが終わったので外壁まわりの点検を行っておりますっと。アラガミ防護壁の外壁はアラガミの接触が多くてとても劣化しやすいから、アラガミが食い破る前に修復する作業を繰り返さないといけない。

で、その修復場所に来たは良いが……

 

ヴ ァ ジ ュ ラ が 出 ま し た

 

うーん。よりによって強個体。

 

「やっぱ倒した方がいいか?」

「無理に倒すのは返って危険だと思うが………たしか、事前に確認した資料を見た限りここのアラガミ防護壁の近くは大きなヒビが入っていたはずなんだ。修復履歴もまだ出ていなかった。相手は大型種、そして見る限り強個体だ。戦闘で崩れたりでもして中にあいつが入ってでもみろ、民間に相当な被害が出る」

 

そう言い切るブレンダン。

こういう時の情報の事前準備は流石の一言だ。

 

「けどよぉブレンダン、奴さんがここに居座られちゃ修復作業も出来ねぇんだぞ?討伐した方が良くないか?」

「僕もタツミに賛成だね。今は大丈夫でも、どうせいずれは壁を破壊しようとする。壊れかけているのなら、むしろ壁の破損が広がる前に華麗に倒してしまう方が良いじゃないか」

 

あ、そうだ。こういう時こそ…

 

「折角なら、新装備試してみればいいじゃん。チャクラムの投擲なら接近もしなくていいし、複数人の強化ホールドでどれだけ動きを封じられるか見とけば?」

「……分かった。それで行こう」

 

ふふふ……! 新装備に使われているのは、ホールドトラップの拘束性能を強化したオラクル!

つまり、動きを封じて一方的にボコれば勝てる!いかに強個体といえど延々とホールドかけ続けて殴り潰せば勝てるだろ。

そうと決まれば作戦会議だ。

 

「まず俺がチャージ捕食を準備、エリック、たしか爆発系のバレット持ってたはずだよな?」

「ああ、準備している」

「よし。それ使って一瞬でいいから目を潰して注意を引け。その隙に捕食する。そのあとの行動は遊撃と周囲警戒を。タツミさんとブレンダンは俺が食らいついたのを確認してチャクラムを投げてくれ。その後ブレンダンはチャージクラッシュの準備とタツミさんは前に出てヘイト管理。その間にリンクバーストで援護する」

「捕食を避けられたら?」

「タツミさんのスタングレネードでカバーをお願いします」

「「了解」」

 

さーて、大筋は決まった。それじゃあ……狩りますか!

 

 

 

 

 

ヴァジュラに動きなし。ガシャリガシャリと壁のすぐ傍の車を捕食している。あれか?お前も電気使うからってバッテリーとか電子回路とか機械製品食べてんのか?

 

チャージ、開始。

 

 

ーギギ、ギチギチギチ……ズジュル……

 

重い金属のような何かが粘着質の液体にまみれて擦れ合うような、不快で歪な音を立てながら、黒く生物的な神機の捕食形態が刀身の周りから生えていく。

神機捕食形態、一式の個人的魔改造版【八咬み大蛇】

ミズチの広範囲捕食と回避、強襲型の獄爪から発想を得た、追尾型の捕食形態。

7つの捕食口と一際大きい捕食口でガッツリオラクルを食う。

 

「(おいおいおーい、なんか前に見た時より更に禍々しくなってないか?)」

「(気のせいですよー(棒)リッカに頼んで改良はしてもらいましたけど)」

「(完全に原因それじゃねぇか!!)」

 

ドン引いているタツミさんを放置して、右隣にあるビルの陰で隠れているエリックにアイコンタクトをとる。

……せっかくリッカが頑張ってくれたのになぁ。

 

ーいつでもOK

ー了解、撃つ

 

 

数秒後、エリックのいる崩落したビルの隙間から青い閃光と炸裂音。そして音に反応し振り向いたヴァジュラの鼻先に虹色の爆発が起こった。

 

不意を突かれた動揺と爆発の衝撃で怒号を撒き散らしながら、完全にエリックのいるビルの方向へと意識を向ける。

 

その隙を待っていた!

 

「喰らいつけよッ!」

 

爆発的な勢いで7つの捕食口が伸び、それを追って大きな口が喰らい掛かる。命中。

と、同時に左右に飛んだブレンダンとタツミさんがバインドチャクラムを投げてヴァジュラにヒット。

 

予定通りホールド効果が発動し、ヴァジュラは行動不能。ブレンダンはチャージクラッシュのオラクルを蓄積して、タツミさんはヴァジュラの顔面に飛びかかる。

 

――食い終わった。

 

捕食口を引き戻して即座に銃形態へ換装。

弾種設定をヴァジュラから食い取ったアラガミバレットに変更。

 

「バースト行きます!」

 

【八咬み大蛇】で入手できるアラガミバレットは5つ。2人に2連射ずつ受け渡すことで二段階までバーストを引き上げる。余った1発はエリックに撃ってバースト状態にさせることでオラクル回復を補助。

俺はそのまま、銃形態で砲撃を続ける。

 

「うぅおおおおおお!!!」

――ガギッガガガッガガガッ! ギィン!

 

バーストの乗ったタツミさんの剣戟は凄まじい。

切りつけながら飛び上がるライジングエッジから、空中での三連撃を終えた直後、エアステップで滞空時間を伸ばしてまた三連撃。連撃の締めに滑空攻撃というお手本のような空中連撃で、地上に降りてからも着地の反動を溜めにして連撃の乱舞。絶える間もない連続攻撃をしながら、それでいてスタミナ管理も欠かさないからこの人は恐ろしい。

 

流石は防衛班の隊長。

 

「タツミ!下がれ!」

 

ブレンダンのチャージクラッシュも溜まりきった。

タツミさんがブレンダンとヴァジュラの直線上から飛び退いた瞬間、巨大な剣状に膨れ上がったオラクルのオーラが解放された。

 

咆哮と共に踏み込み、振り落とす。

 

「ハァァアアア!」

 

ヴァジュラの頭が地面に強制的に叩き落とされ、グチャグチャに潰れる。しかし極東基準のアラガミはこの程度で潰れることは無い。それでもなお、死なず。

割れた顔面とその下の肉が緩衝材の代わりになって、奥のコアを衝撃から守っているのだ。

普通なら即死のはずの重症を負いながら、ゆっくりとヴァジュラは体を持ち上げる。

 

「……ほんっと、嫌になるほどタフだねぇ」

「仕方がないさタツミ。ここは極東なんだから」

 

エリックとタツミさんは、他支部の援助に行ったことあるらしく、極東とそれ以外ではずいぶん違うという。だからどれだけ極東が……というか、極東のアラガミが異常か分かるらしい。

 

「戦闘音で耳のいいアラガミ共が寄ってくるのも嫌だし、サクッと仕留めるよ。ブレンダン!割った顔面削ぎ落とせ!」

「承知した!」

「援護する!……あれ今のフラグじゃね?」

 

タツミさんがスタングレネードの閃光で目を潰せば、すくい上げるような横薙ぎに振るったバスターブレードでブレンダンがヴァジュラの鼻から上を削ぎ落とす。

首の付け根、うなじの場所に青と金が混ざったヴァジュラのコアがわずかに露出する。

 

「獲った」

 

エリックの銃撃がコアごと首を抉り、

 

「オォラァッ!」

 

俺がヴァジュラの真上に跳び上がって捕食、コアを摘出する。

ヴァジュラ沈黙。討伐成功。

エリックの銃撃でコア割れたかと思ったけどヒビ1つ入ってなかった。小型ならまだしも、中型以上のアラガミは完全な状態のコアを摘出するのが難しく、下手に手を出すより壊す方が早くて確実。もし取り出すことが出来れば結構な高値で買い取って貰える。

これは出来高報酬も期待できるな。

 

「よし、終わったな」

「ああ、外壁修理のマーカーをつけて帰るぞ」

「よくあるフラグ回収って早いのが多いよな。耳のいいアラガミ……多分コンゴウ、とか......」

『防衛班の皆さん!聞こえますか!?緊急です!』

「はい来たぁ!」

 

急にどうしたタツミさん。コンゴウが何?来たの?

 

『第二接触禁忌種ハガンコンゴウを中心とした中規模の群れが接近中です!』

 

「まさかのタツミさん預言者説!?」

「いやフラグ立てたのコウだからな?」

 

フラグってなんだフラグって。

それより、敵の規模はどれほどだろうか。中規模の群れなら小型あわせて50体は超えないはずだ。その程度なら俺一人でも片付くし、ささっと終わらせよう。

 

「オペレーター、で、アラガミの種類と数は?」

『えっ?あっ、御原大尉いるんですね!なら一安心です!

えー、接触禁忌種はハガンコンゴウ一体のみ、大型種がヴァジュラ2体とサリエル、中型種はコンゴウが3体とその堕天種、シユウ2体です。

小型種を捕食しながら近付いて来ています。オウガテイルやザイゴートは逃げたものもいますが大半が食べられてますね。進路上のコクーンメイデンは言わずもがな全滅です。

あ、それとこの群れとは関係ないですが、クアドリガ堕天種が近くのエリアで発見されていますのでお気をつけて』

 

うっわ思ったより居た。

しかも小型がいない分身代わりの盾や障害物が少なくてちょっと厄介だな。

しかも近くにクアドリガの堕天種がいる、と。あいつデフォで硬くてタフだし嫌いなんだけどな……リーク状態になると面倒だし。

しかし、

 

「いやまぁ、1人で倒せるけども……」

「おっ、やる気かコウ?」

「ん、無理って範囲じゃないし」

「俺たちじゃ、まだあの数を相手にするのは無理だな……」

 

そう、難易度的には1人で倒せる範囲だ。詳しく聞くに強個体のアラガミはいないらしいし。

……そういえば任務受けるときにまだフリーのやつ残ってたような。ヴァジュラとハガンコンゴウのフリー任務が残ってたのは覚えてる。

 

「オペレーター、残ってるフリーランスのミッションにこいつら全部居ないか?できるなら受けときたい」

『マジですか。はい、ちょっと確認しますね……ああ、居ますね。

【破顔大笑】ハガンコンゴウ1体の討伐。

【双虎の乱】ヴァジュラ2体の討伐。

【空の覇者】サリエル1体とシユウ2体の討伐。

【大猿の宴】コンゴウ3体とその堕天種の討伐。

となっています。

 

…………ハガンコンゴウの発生はエイジス跡地、そこから愚者の空母にいたサリエルとシユウ、鉄塔の森で捕食活動中だったコンゴウ……最後は贖罪の街でヴァジュラと合流ですか。道中のアラガミを従えてまぁ……こちらに攻め入る気ありすぎでしょう』

 

仕方がないさ、それがアラガミなんだから。

しっかし、よくもまぁここまでゾロゾロと引き連れて来たものよ。

 

「それ全部受けるわ。ちょうどハガンコンゴウとヴァジュラの素材欲しかったんだよな。あとは小遣い稼ぎで」

『はい、承知しました。受注処理はこちらでやっておきますので』

「よろ」

「いやー、流石だねキミは。あの群れを単騎で狩る気とは……」

「おっ、よかったらエリックもやるか?」

「お断りしておくよ。僕まだ死にたくない」

「ハガンコンゴウだけでも殺らない?」

「接触禁忌種を第1世代の僕にぶつけてこないでくれる?殺す気かな?」

 

その程度じゃ死なねぇクセに。お前には最低でも大型種相手に生身で逃げ切れる程度は仕込んだわ。

 

ーガラガラガラ……ガシャン べギィィ……

 

っと、瓦礫の隙間からかき分けるみたいにしてコンゴウ……いや、ハガンコンゴウのお出ましだ。

うわー、後ろからもゾロゾロと。

 

「じゃ、お気をつけて」

「死ぬ……わけないだろうけど怪我しないようにな!」

「健闘を祈る」

「先に帰って、暇なら修理班呼んどいてくれ。それまでには終わらせる」

『御原大尉、受注処理終わりました。それでは、通信終了。帰還した後に書類認証があるのでお忘れなく』

 

プッという回線が切れる音がしてオペレーターの声が消える。

さ、ここからは俺の仕事だ。

俺は重い腰を上げて神機を肩に担ぐ。

 

「さー、お仕事しますか」

 

【はいはい分かりましたよカレルさん!はぁ、やりますって……それじゃあ今から、ジャストタイム始めますよー!】

 

突然、支部内外に全体放送でなんか聞こえてきた。

しかもこれさっきのオペレーターだし、ジャストタイムってそれ賭け事じゃねーか。計ったタイムにどれだけ近く予想できるかってやつ。

 

おっとと、向こうさんもヤル気みたいだし、BGMの代わりとでもしようか。

 

【大尉の討伐タイムで賭けるなんて雨宮さんに知られたら殺されますよ?】

 

あ、なるほど。カレルのやつ死んだな。こんな馬鹿の騒ぎをあの人が見逃すはずないし。

これは知らないフリしてるほうが愉しいな。

 

「クックック……全体放送になってるのは意図的なのかねぇ……」

 

【随分と面白いことをしているようだなカレル・シュナイダー】

 

アッーーー!ダメです雨宮教官!伏線回収早い!もう嗅ぎ付けたのかこの人!?

 

【ヒッ!?あ、雨宮さんいつから!?】

【馬鹿が騒ぎ出した頃だ。賭け事の胴元がどうとかカレルが言っていた辺りから居た】

 

あーあー、カレルが主犯格か。これはご愁傷さまで。

シユウの滑空突進は見切りやすい。見切って潜り抜け様に胴体輪切りではい終わり。おっ、鳥神翼じゃん。レアレア。

 

【はぁ、全く馬鹿者が多い……】

 

ツバキの姐さんもご愁傷さまで。

 

【どうせ聞こえているんだろう、御原大尉?】

カチカチカチ

「あら、バレてたっすか?」

【えっ?】

 

無線のチャンネルを合わせて受け答える。

そいコンゴウ、抱き潰しは上が安置だ。代わりに爆弾でも抱いてろ。

そしてオペレーター。お前全体放送になってるの気づいてなかったのか。

 

コンゴウに身代わりとして抱かせた爆発球で顔面が割れて両腕も消し飛んだ。あー、素材が……猿神面が……

 

【当然だ。というより、貴様も全体放送になっているのに気がついていただろう?なぜ止めなかった】

「そっちの方が面白いからですね。主にカレルが」

【……はぁ……】

 

ため息吐かれた。

っとシユウ、回し蹴りの後の硬直はいい的だぞ。後頭部がガラ空きだ。油断大敵、隙を晒したお前には貫通弾をプレゼントしてやろう。

うぉ、浮神丹!いいの出たな!

 

【まあいい。とにかく、お前の出張先が決まった。所用で伝えるのが遅くなったが問題ないだろう。10分以内に片付けて支部長室まで来い。榊支部長が話したいと言っていた】

「ういっす、了解です」

『気のない返事はやめろ。お前は着任時から態度が軽い』

「はい教官。善処しますよっと」

 

サリエルの光弾とヴァジュラの雷球を避けながら適当に答える。直す気?無いよそんなもの。

それにしても、10分か。無理じゃないけど、今のペースだと大型種を処理するのには30分弱かかる。

コンゴウ堕天種は火に弱い。股下を滑り抜けて斬りつけざまダウンさせ、排気パイプの結合破壊を狙って背中に爆撃弾をくっつけまくる。

残った普通のコンゴウも同じ様にして爆破。素材がー、とか考えたけど、よく思い出すとコンゴウ系のアラガミはめっちゃ素材の在庫余ってた(笑)

さて残るは……

 

「さ、前菜は平らげた。次はメインディッシュだねぇ。活きのいい虎が2匹、瑞々しい果実が1つ、金箔で彩られた猿の肉……クク、どいつもこいつも美味そうだ」

 

サリエルちゃんはデザートにでもとっておくかね。女の子は最後のお楽しみだ。

 

「遠慮なく、たらふく喰わせて貰おうか!」

 

それからきっちり5分後、デザートに残しておいたサリエルの胸のコアを捕食して帰投した。

 

 

 




書きたいネタは結構ある

ネタからネタへ繋ぐ話が上手く作れない

何度も練り直し

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よくあると思いますこんな循環
なるべくはやく投稿したいけどね
自分の文章力の無さがちょっと嫌になりそう


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それぞれの思惑

放置してた悪気はなかった。
書く気力が湧かんかったん……許せとは言わん


◇◇◇支部長室◇◇◇

 

 

 

捕食した素材をリスト化してターミナルで確認し、品薄になってきていた雷系素材が補充出来たことに満足しながら支部長室に入る。特務の内容を聞く時にいつも思っていたが、やっぱりいつも通り、パチパチカチャカチャしながら忙しなく指を動かしている榊支部長が居た。

地味にうるさい。

 

いつもその状態のまま淀みなく会話の受け答えができるのを見ていて、この人完全な並列思考出来てる説が俺の中にある。

 

「予想より382秒遅かったね。何かあったかい?」

「ツバキさんにカレルが説教されてるのを見てました」

 

ツバキさんの後ろから煽り顔で首から上だけ上下にぴょこぴょこしたり足腰の動きだけで回転運動したり『見よ!この!無駄の無い!無駄にイラッとくる無駄な動き!!』してたりとかしてました。

楽しかったです。

 

「……ああ、彼か。同情でもしたかい?」

「まさか」

 

おどけるように肩を竦めてくすりと笑う。

ゴッドイーターは、常にアラガミと命の奪い合いをする仕事だ。仮にも命をかけて戦っている俺らの仕事を賭けにした奴には同情する余地もなく。

というか博士、あんた支部長になってから権限増えて、今は監視カメラ自由に覗き見できるだろ。

そんな視線に気づいたのか、榊博士はくすくすとこちらを見て笑っていた。

 

ため息をついて首を振る。

それよりも本題だ。俺はどこに飛ばされるかなっと。

 

「で、榊支部長?俺は一体どこに向かうんで?」

 

おそらくは、しばらく帰って来れないような辺境の支部に飛ばされるだろうな、とか予想して榊博士に問いかける。

で、ポロッと俺が居ない間に何やるのか言ったりとかしてくれないかなー。

 

「ふーむ、こちらとしても色々と考えたんだけどね……君の経歴を振り返って見たが、やはり君には士気やリーダーシップ、単純な個の強さなど戦力的な意味で極東支部に強い影響力がある。そこで君の遠征の表面的な理由を覚えているかね?」

「えっと、確か……『アラガミに対抗しうるゴッドイーターの数が少数の、または実力が不足している支部へと赴き、現地のゴッドイーターの育成、指導による支援』くらいなら」

「うん、それが分かっていれば十分だよ。知ってとのおり極東のアラガミは、フェンリル本部が調査した限りどの支部よりも危険度が高い。まぁ要約するに、ここで戦い慣れている君にとっては、他の支部で戦うアラガミは取るに足らない存在だろうということだ」

「つまり?」

「率直に言うと、君に他支部で教官役の真似事をしてもらいたい。極東と違って至極簡単な任務ばかりで済むはずだし、君の休養にもなると思うが、どうかな?」

 

ははーん?なるほど?つまりそういう事か。

博士が言いたいのはこうだ。

『私がやりたいことには時間が掛かる。なので、育成や指導を指示することで時間を稼がせて貰うよ。その間に研究が進めば良し、完成まで至ればさらによし』

とこんな感じだろう。

 

「加えて、君の神機にも長期的なメンテナンスに入って貰うため、私とリッカ君で用意した実験機の使用をしてもらうことになる」

「長期メンテナンス、ですか。理由は?俺の神機は、毎夜リッカと格納庫で丁寧に手入れしているはずなんですが」

「知っているよ。君が最近、神機のオラクル工学にも手を出していることを含めてね。だが、異常が見られたのは神機の本体、心臓部とも言えるアーティフィシャルCNSなんだよ」

 

ああ、なるほど。それじゃ、まだオラクル技術学の浅い俺は手出しできない場所だ。理由付けにはうってつけだな。

 

それに、俺の強みは神機そのものにもある。戦力低下による長期滞在になることも見越しての事か。

ッチ、流石博士だ。厄介な条件をつけてきやがった。

それに、その実験機ってのにもなんか仕掛けありそう……

 

「ま、その程度なら引き受けますよ。神機の件も了解しました」

「うむ、ありがとう。そして君の休養先だが————ドイツにある中央ベルリン支部だよ」

 

めっちゃ辺境の支部じゃねえかよちくしょうが。

まぁ、やるようにやれば、なるようになる……かな?

 

 

 

◇◇◇榊博士side◇◇◇

 

 

 

「ふぅむ、やはり君は……」

 

私は、彼の出ていった扉を睨みながら(狐目なので眉間に皺を寄せている様にしか見えないだろうが)自分の思考を纏めていく。

 

「バイタルチェックの………… オラクルとの親和性……… しかし彼は…… いや彼の細胞は…… アラガミ化とはまた違う……ふむ、実に興味深い。興味深いが、実に危うい」

 

ここ数週間、彼のバイタルチェックの結果をパーソナルデバイスに表示する。

そこに出てくる数字は、まさに『異常』。

 

「瞬間的なオラクルの増強、回復自己強化の促進……麻酔も効きにくくなっているような……いや違う。投与された時点から捕食されているのか」

 

オラクル細胞というものはあらゆるものを『捕食』する。それは共存している細胞すらも捕食対象の範疇に入る。にもかかわらず、彼の体に取り込まれているオラクル細胞は、侵食行動を受けて食われた細胞の代替として人の細胞と同じ働きをする。

 

彼の体……いや、彼に限らずだが、ゴッドイーターという存在は、言い換えればオラクル細胞による侵食を受けている人間を治療法を模索しながら応急処置している状態と言っても過言ではない。

が、しかし彼のバイタル値そのものには異常は無い。

うーむ、実に謎だよ。いち研究者として解き明かしてみたいね。

 

「彼ならばあるいは……いや、人の身で神に至る、しかしてそれは神というものだろうか?疑問は尽きないが、彼が扉を開く鍵になってくれることを祈るのみ、か」

 

やはり、彼の体は実に興味深い。それと同時にとても危ういものでもあるのだがね?

 

ヨハン……もしかしたら、人が神に至るまでそう遠くはないかも知れないよ。

 

 

 

◇◇◇神機整備・楠リッカside◇◇◇

 

 

私は頭を悩ませる。

ん?何でって?そりゃあ、あの無理無茶無謀の三拍子をダッシュで駆け抜けてる彼がおかs、じゃなくて彼の神機がおかしいから。

 

「ふぅ……ブレード部分の侵食配列にも異常なし。残ってるので考えられるのは変形器官と本体部分なんだけど……」

 

んんん……何が原因なんだろう?

最近まで割りと大人しかった彼の神機が、いきなり大量のオラクルを欲しがるなんて……進化?っていうか強化されたがってるのかな?

でもこの子、これ以上の強化なんて出来ないしな……

 

「リッカさん、もう半日以上神機見てますけど」

「ぉふぁあ!?」

 

ちょぉぉぉぉい!?いきなり声掛けないでよ!!

考え事中に話しかけられるとびっくりするでしょ!!

 

「整備班の掟、第三項!」

「作業の途中で声をかけない……て言っても、あんたもう朝から9時間以上にらめっこしてるんですよ?他の奴らも心配してます」

「ふぐっ」

 

うっ、痛いところを突かれて言葉が出ない……

いや、うん、ちょっと夢中になっちゃっただけでね。

 

「俺が早番で整備班入る前からいるんすけど、集中したら時間も周りも見えねぇのまっっったく変わらないですね?」

「うぅぅぅ……」

「あんたココのチームリーダーなんすからしっかりしてください」

「ごめんなさい……ゆるして?ね?」

「可愛く言ってもダメっすよ!」

 

ちっ、整備4班のオジさんはイチコロだったのに。

 

「ほっほ、あんまりリッカちゃんをイジめなさんな若人よぃ」

「あっ、オジさん!」

「尾路さん、完全に孫を見る目でリッカちゃんを庇ってますけどこの人の生活サイクル知ってますか?」

「…………無理は、いかんよ?」

 

正論で殴られてしまった……

オジさん!あなたそれでも私のおじいちゃんなの!?

と、まぁ別に、コントはそこそこにしておいて。

 

「さて、揃ったね」

「お呼びされて来ましたよっと」

「ふぉふぉふぉ」

 

この2人を呼んだのは、他でもない私だ。

オラクル工学では私以上のキャリアと知識量をもつ、今は監督役として色々と助言やサポートをしてくれる尾路さん、そして神機の整備班からは私と同じ感覚を持ってる西治さん。

 

「まっ、リッカさんの頼みですし、やってやれないこともないでしょうよ」

「リッカちゃんから手伝って欲しいと聞いて、極東で手を貸さん奴なんぞおらんじゃろうよ」

 

本当、頼もしい2人だよ。

 

「それじゃあ始めようか。今回の課題は、毎度無茶ばっかりしてるあの人の神機の調整、及び、不調の原因の調査!正直、この子以上に気難しい子はいないから、心してかかるように!」

「「おうよ!」」

 

それにしても榊博士……私がコウくんと繋がってるの知っててこの依頼回してきたな。

ごめんなさいコウくん。榊博士が何かやってるのは分かるんだけど、調べるのはしばらく時間かかりそう。

それよりも、まずは君の神機をどうにかしないといけないから。

 

「さ、正念場だね。気を張って行こう」

 

両頬を叩いて気合いを入れ直す。

待っててね。

 

 

 

◇◇◇嘆きの平原◇◇◇

 

 

 

『はい、ということでリンドウさんが大型種を討伐したので、御原大尉には残った小型種の掃討をお願いしますね!』

 

はいよーヒバリちゃん。

リンドウさんの後始末に駆り出された俺氏、遠征に持ってく実験機の試用も兼ねて単独任務に出撃す。

 

「今更ながら小型種の相手って、他の奴らも手伝わせた方が早く終わったんじゃないの?」

『皆さん色々と忙しいですから……(コウさんが遠征に行くって話があるから、その分の仕事の穴埋めに奔走してるんですけどね)』

「皆さんお仕事熱心だことで。で、なんか本音漏れてた気がするんですけど?」

『いえそんなことありませんよ? そろそろ始めてください。他の小型種もミッション領域周辺に集まってきています!』

「りょーかいっ」

 

本心だだ漏れだよぉヒバリちゃん。ゴッドイーターの聴力舐めんな。

てか周りからも集まってきてるのか。それはいけない。余計な仕事は増やさないに限る。

 

「さて……」

 

と、一言呟いて神機……実験機を一、二度振り払って背筋を伸ばす。手に持つそれは、黒い配色を基調とした、おそらくサリエル原種を材料とした神機。

 

こいつは元々、第1世代のショート型神機でちょっとした曰く付き。その神機を榊博士がお祓いと称して新型にコンバージョンしたらしいが……うん。

実験機として作り直された今は、同種のサリエルから作ったスナイパー、タワーシールドを装備した神機として俺の手元にある。

 

「……お前も災難だな。また、戦場に駆り出されるとはな」

 

こいつの元の持ち主は、過去にアラガミ化したと聞いている……その末に辿った末路も、俺の権限でも詳しく調べることは出来た。

彼女の冥福は祈るが、感傷に浸る気は無い。ある日突然、呆気なく命を取り零して死んで当然、それがゴッドイーターだ。

 

『……時間です。任務を開始してください』

「御原コウ、出撃する」

『ご武運を』

 

その日、黒に染まった神機を振るい、千に迫るアラガミの全てを斬り伏せたゴッドイーターが、静かに哭いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー【また、同じ血の味……】

 

 

 

 

 

 

 

 







オリ設定集そのいち

・強個体アラガミ(強化・固有変異体)
通常のアラガミ(極東基準)が更に強くなっているやつ。
硬くてデカくてタフい。強個体のヴァジュラがタイマン張って第二形態になったピターの羽をもぐもぐしていくって言えば分かるはず?

ちなみに今の極東基準でオウガテイル通常種一体は他支部基準で中型種2体分くらい。強個体オウガテイル=他支部の大型種並の硬さとタフさというインフレ。ノヴァ許すまじ。

接触禁忌種の強個体?
普通にわいてくる接触禁忌種をおやつ代わりに食べてる化け物。ただし極東では日常茶飯事で主人公及び第一部隊を筆頭に狩られている。





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