君と居ると笑わずにいられない (まかみつきと)
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 雁州国首都、関弓山。

 凌雲山の麓に広がる街よりやや高いところに位置する雁国大学。

 ここは、雁各地や周辺国からよりぬかれた精鋭たちが集う、厳粛な学び舎である。

 

 

 弓射場から池を巡り中庭へと続く瀟洒な回廊を、数人の学生が歩いていた。

 今、弓射の講義が終わったのだろう、一同の顔には若干の疲れと開放感がある。

「お疲れさん、文張」

 明るい茶色の髪の青年が、傍らを歩く灰茶色の髪をした青年の肩を叩いた。

 文張と呼ばれた青年は、まったくだと言わんばかりの顔で溜息をつく。

「必修とはいえ、こればっかりはなぁ」

「そう嘆くなって。なんだかんだ言って、やっぱりお前飲み込み早いよ。最初から比べりゃ相当上達したぞ」

「……そりゃ、最初なんて酷いもんだったからな」

 苦笑した青年が、同輩を見てにこりと笑った。

「少しでも上達したんなら、鳴賢のおかげだ。ありがとな」

よせって、と照れたふうな鳴賢が、文張---楽俊に指をつきつけた。

「おだてたって特訓はやめないぞ。お前、今日の講義はもうないんだろ。夕方馬術の練習しないか」

「ああ、ええと……ありがたいんだけどな。このあと友達が来るんだ。大学のなかを見学したいってんで、案内する予定なんだよ」

 答える楽俊の黒い瞳が微妙にさまよったのに、鳴賢は気づいていないようで。

「なんだそうか。じゃあまたあとだな」

 世話好きだが、けしておしつけがましくはない鳴賢は、あっさりと首肯して、俺は講義があるからと手をあげた。

 気のいい友人に返礼すると、楽俊は回廊を外れ中庭の木立の下に座り込んだ。

 晩春のうららかな陽光を、萌えたばかりの新緑がそこここで遮って、黄金と緑の紗幕のような光が降り注いでいる。

 枝を渡る風はまだ涼しいくらいだから、疲れた体にはありがたい。

 大きく息をついて楡の古木に背を預ければ、どんな豪華な寝台で横になるより心地良かった。

 来訪の時間にはまだ間がある。すこしくらい休んでもわるくないだろう。

 目を閉じていたのは一瞬のような気もしたし、かなりの間熟睡したような気もする。

 ふとなにかの気配を感じて薄目を開けると、目に染みるような緋色の糸が視界に入った。

 自分を覗き込むようにしているのは、簡素な袍を身につけた、翠の瞳の少女。

 長い緋色の髪が、端麗な貌を艶やかに彩っている。

「---楽俊、目が醒めた?」

 降ってきたのは、微かに笑いを含んだ、柔らかい声。

「……陽子?」

 甘い半睡のなか、まだぼんやりしている頭で、ええと、と考える。

 陽子が来ている。

 ということは。

「うわ、おいら寝てたのか?!」

 一気に覚醒して慌てる青年を、緋色の髪の少女が笑って押しとどめた。

「大丈夫、楽俊は寝過ごしてないよ。私が早く着きすぎただけなんだ」

「そうか、ならいいけど……」

 どうやらたいして時間はたっていないらしい。太陽はさっきとあまりかわらない場所にある。

 立ちあがって、楽俊は頭をかいた。

「正門まで迎えに行こうと思ってたんだが、その前にちょっとと思って座ったら、寝ちまったらしい。かんべんな」

「私のほうこそ、起こしちゃってごめん。勉強で疲れてるんじゃないのか?」

 すまなげな少女に首を振る。

「いんや、そうじゃねえ。さっきまで弓射の講義だったんだ。だから、言ってみれば緊張疲れってやつだな」

「ああ、それで人の姿なんだ」

 得心がいったらしい陽子が笑った。 

 彼女は、楽俊が半獣であることになんのこだわりもない。

 海客---蓬莱育ちであるがゆえに偏見の先入観がないといえばそれまでだが、むしろ半獣のいない世界から来た身でありながらここまで気に留めないというのも面白い。

『鼠でも人の姿でも、楽俊は楽俊だ』

 陽子はいつもそう言って微笑む。

 姿なんか関係ない、と言い切れるのは、陽子が自分というものを持ち、自然体で相手の存在を受けとめることができるからなのだろう。

 半獣であることが辛いと思わないが、どんな自分でも受け入れてくれる相手がいるというのは、不思議と安堵するものなのかもしれない。

「どれくらい寝てたんだろうな。陽子はいつ来たんだ?」

「ん、ほんのちょっとまえだよ。気持ちよさそうに寝てたから、起こすのもどうかと思ってね」

「別に、声かけてくれて良かったんだぞ」

「だって、楽俊の寝顔なんてそう見られるものじゃないし、堪能しておこうかなと」

「堪能って」

 楽しそうに笑われて、楽俊は額を押さえた。

 天真爛漫といえば聞こえはいいが、どうもこの少女は人並みはずれたことをするきらいがある。それは彼にとってけして不快ではなく、むしろ向けられる好意を嬉しいとは思うが、いい年をして呑気な寝顔を見られるのは気恥ずかしいことこの上ない。

 まあ陽子のこういうところは今に始まったものではないから、あとは慣れるしかない。やれやれと頭を振った。

「それにしても、よくおいらの居場所がわかったな。探したのか?」

「いや、班渠が教えてくれたんだ。楽俊が木の下で昼寝してるって」

 うわぁ、と思わず天を仰いだ。

 陽子の足元で、微かにくぐもった笑い声がする。

「昼寝しているとは申しませんでしたよ。お休みですと申し上げたはずですが」

 笑い含みの使令に咎められて、陽子が口を尖らせる。

「裏切り者」

「こら」

 斜め上から叱れば、ぺろりと舌を出した。上目遣いで青年を見る瞳が笑っている。

「楽俊が寝てたのは本当だろう?」

 まあな、と笑って楽俊は歩き出した。

「さて、受付に申請はしてきたんだろ? どこから見たい」

「どこからでも!」

 顔を輝かせて笑う少女につられて、思わず声をあげて笑った。

 

 




雁国の大学内が見学可能かどうかは、存じ上げません・笑

一つのお題ですが、視点が変わるので3連・おまけの4段構成になります。


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 雁の大学を見学に行ってはどうですか、と陽子に言ったのは、冢宰の浩瀚である。

 朝も落ちついてきたことだし、政以外にも視野を広げておいた方がいいでしょう、というのが冢宰の提案だったが、ここしばらく書類に埋もれるようにして昼夜を問わず仕事をこなしていた陽子への、ご褒美兼休養なことは明白だった。

 学府ではあっても国官育成施設のようなところだから、学生以外では見て廻れる場所にも限界があるだろうが、齢五百年を数え学問も栄える雁と慶では、大学の内容も天地の差にちがいない。

 国土だけでなく国政と王を支える有能な官を育てる為にも、雁大学の見学は悪い提案ではなかった。

 もちろん、陽子にそれだけの任務が任されているわけではない。

 大学など教育を扱う専門の官はちゃんといるし、なによりこちらの学問、しかも雁の大学などで講されるような小難しいものを、陽子がわかるはずもない。

 なにを見てくるにしても、雰囲気がどうだったとか人数がこれくらいとかその程度しか報告できないのはわかっている。

 浩瀚もそこに期待しているわけではなく、息抜きにしてもただ余暇をもてあますよりは理由があったほうがいいということらしい。

 どちらにしろ、滅多にない機会であるには違いない。あとで聞かされた祥瓊や鈴などは、異口同 音に「たまには休んでいいってことね」と完全に休暇扱いしたものである。

 

 手際よく書類を仕分けながら、浩瀚が日付を確かめた。

「折りよく大学もいまは試験の時期から外れているそうですし、部外者がちょろちょろしていてもさほど気にはされないでしょう。手続きは取っておきますから、主上は誰か案内してくれる人に声をかけておいてください」

 ちょろちょろって……と白い目で浩瀚を見た陽子だったが、たかが十七、八の小娘が睨んだところで、海千山千の冢宰に通じるはずもない。

 しれっとした顔で供手すると、目下王宮最強の人物はこれで連絡は終わりとばかりに堂室を退室していった。

 強引な冢宰に呆れながらも、陽子は笑みが零れて仕方なかった。

 誰か案内してくれる人、と浩瀚は言ったが、雁の大学に知り合いなど、陽子は一人しかいない。

 (らん)のやりとりはしているものの、滅多に会えない友人。

 休みついでに彼に会ってきなさいと、そういうことだと思っていいのだろうか。

 自分で連絡を取れというからには、今日の執務はもうないのだろう。

 暇なときにでも目を通しておこうと思っていた瑣末な書類は、浩瀚が持って行ってしまったから、これはしなくていいという意味。

 すぐに連絡をとって、彼の時間が取れる日を聞いて、自分の予定を調整して。

 浮かれて自然弾む足で廊下に出た。そこへ裳裾を綺麗にさばきながら歩いてきた娘が、にこりと微笑む。

「あらお仕事終わったの?」

「うん、いまさっき」

 よかったこと、と(ねぎら)う女史を、陽子は満面の笑顔で拝んだ。

「祥瓊、忙しくなければ鸞鳥をよろしく。大至急で」

 忙しくなければと言いながら大至急と矛盾に満ちた王命を受けて、祥瓊が目を見張った。

「大至急とはただごとじゃないわね。なにがあったの?」

 眉をひそめる友人に、笑ったままで片目をつぶる。

「教えるから、鸞を連れてきて。お茶でも淹れておくよ」

「承知致しました、主上」

 あらまぁと笑った祥瓊が、おどけて拱手する。

 紺青の髪が楽しげに翻るのを見送って、堂室に戻った。

 たまにはこんな嬉しいことがあるのなら、王様稼業も悪くない。

 窓辺に置かれた卓机で鼻歌交じりにお茶を淹れながら、陽子はなんと言って彼に知らせようかと考えだした。

 




雁大学見学会行き直前の陽子。
見事に短くて申し訳ありません。(きりがよかったので)

『黄昏~』で王が相手でも平気で説教かます浩瀚様が大好きです。
彼は厳しいけどちゃんと息抜きもさせてくれる人、という印象。
一番楽俊を慶に引きぬきたいのは、陽子ではなくこの人ではないかと・笑
ところで、空位中、慶の大学は機能してたんでしょうか。
つーか、今やってんですか?レベル高くなさそうだなぁ(失言)



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 並んで中庭を歩きながら、陽子が満面の笑みで傍らの青年を見上げた。

「改めて、お久しぶり、楽俊」

「ああ。顔合わせるのは、ほんとに久しぶりだな」

 鸞を交わしているから声は聞けるが、直接顔を見て話したのはずいぶん前のことのような気がする。

「元気だった?」

「おいらはかわりねえ。陽子こそ、無理してねえか?」

 問い返されて、陽子はくすりと笑う。

 楽俊はいつだってそうだ。自分は平気だ、と言い、そういうお前は元気か、大丈夫か、と聞くのだ。

 彼らしい気遣いに、胸の内が暖かくなる。

 この暖かさが、とても好きで。

 それはたぶん、二人で旅をしたあのころから変わっていない。

「祥瓊たちが無理なんてさせてくれると思う? 玉葉より厳しいからね、鈴も祥瓊も」

 そりゃ怖いなあと、楽しそうな青年の声。

 ひとしきり笑って、楽俊がさて、と言った。

「大学内、といってもなあ、講義中のところはみせられねえし、空き教室見たって仕方ないだろ。陽子は何が見たいんだ?」

「まずは全景、かな。どんなところに何があって、何を教えてるとか、そういうの」

 そうか、と頷いた楽俊は、陽子を見晴らしのいい丘に案内した。

 丘といってもここは凌雲山の一部である。山全体から見ればちょっとした隆起に過ぎないが、学内を見渡すにはちょうどいい場所だった。

 やや強い風が、二人の髪を巻き上げる。

「よくこんなところ見つけたね」

「入学して最初の頃にな、陽子とおんなじで大学の全体をみたくてうろついてたらここをみつけたんだ」

 考えることは一緒だな、と顔を見合わせて笑う。

「あれが正門だな。陽子もあそこから入ってきたろう。そこから正面が、主な教室のある建屋で、手前で横にそれると中院」

「楽俊が寝てたところ」

 半畳を入れる陽子に、それは忘れろ、と苦笑って、周囲を巡る回廊を指す。

「あの回廊は、学内の全ての場所を繋いでるんだ。一番遠いのが馬場。馬術の講義はここだな。それと、弓射場がそっち」

「あの囲いの中だね」

「そうだ。下手な奴等が見当違いの方に飛ばしても、外には被害が出ないよう、壁が高くなってる」

 軽快に笑った陽子が、楽俊を見上げた。

「弓射の講義、どう?」

「うん、なんとか的に当るようにはなった」

 興味津々で見上げる陽子に、楽俊が笑う。てらいのないもの言いをされて、陽子が吹き出した。

「なんとかって」

「ほんとになんとかだ。最初なんか、飛びもしなかったからなあ」

 楽俊は見栄を張らない。

 できることはできる、できないものはできないとそのまま言い表す素直さは、どうやら母親譲りのようだ。それがいかにも率直で明朗な彼らしい。だから、陽子に会ったばかりの頃、自分は頭がいいと言ったのは、根拠のない自慢ではない。

 なにしろ少学を出ていないどころか、その下の学校ですらまともに講義を受けていないのに、名高い雁の大学に主席入学を果したのである。これで謙遜されたのではただの厭味にしか聞こえない。

 そんな楽俊にも苦手なものがあるとは、弓射の話を聞くまでは思いもしなかった。

「鳴賢が、弓と馬を特訓してくれるんだ。その成果ならいいな」

 そうなんだ、と陽子は楽しそうに聞いている。

「私は剣なら教えられるかもしれないけど、弓となるとやったことがないな。冗祐はできるのかな」

「陽子が弓を持ってどうする。そういうのは専門のやつがいるだろ」

「それもそうか」

 納得した陽子に、楽俊が笑う。

 この少女は人ではない。仙ですらない。

 号で言うなら、慶東国王、景。

 この世界に十二人しかいない、至高の存在。

 本来なら景女王と呼びならわすのが当然だが、楽俊はただ陽子、と気さくに呼ぶ。

 女王だとか海客だとか半獣だとか。そんな煩わしいものは、二人の間にはないから。

「陽子はどうだ、仕事は」

 王様業は、とはさすがに言えないから、外では仕事と言いかえる。

「浩瀚がばっさばっさ片付けていってくれるから、格段に楽になった。そのかわり、ものすごく厳しいけれど」

 どこか引きつった顔に、今度は楽俊が吹き出した。

「しごかれてるか。ものすごく切れるお人だとは、風漢様からうかがってはいたけどな」

 風漢、つまりお忍びの延王から陽子の近況を聞くことがある楽俊も、浩瀚の話は耳にしていた。

 慶の朝にいるのでなければ雁に欲しいくらい優秀だという一方で、これ以上煩い奴を増やしたくないしと延王が言っていたところをみると、陽子の表情にも納得がいく。

「怖いとか気が短いとかじゃなくて、にっこり笑って容赦ないっていうのかな。理詰めで淡々と説かれるんだけど、あの笑顔が出た瞬間に『ごめんなさい!』って叫びたくなるかんじ」

「……ああ、わかるような気がする」

 雁の朝にも、同じような人物がいる。道理で延王が顔をしかめるわけだ。

「祥瓊や桓魋殿も、皆元気か?」

「元気だよ。祥瓊たちも会いたがってる。遊びにくればいいのにって」

 はは、と二人で笑う。

 関弓と尭天は遠い。騎獣や使令を使っても、そう易々と往復できる距離ではない。

 遊びに、と言うほうも言われるほうもそれを承知ではいるが、やはりたまには顔を見たくもなるのが友人というものだ。

「桓魋が、弓が苦手なら教えてやろうかって言ってたけど」

「そりゃあありがたいが、どんな弓を引かされるかと思うとなあ」

 大学の弓射はあくまで儀礼であるから、所作も優雅で典礼に近い。軍で教える弓術とは、そもそも挙措からが違うのだ。

 まして熊の半獣である桓魋の扱う弓など、到底引けそうにない。

 かつて鼠の姿で熊に変じた桓魋に担ぎ上げられたことがある楽俊は、その怪力に仰天したものだ。

「まさか、桓魋と同じ弓なんて引かせないと思うよ」

 想像したのか、誰もそんなの引けないよと陽子が笑い転げる。

 なにしろ大の大人分の重みはあろうかという鉄槍を軽々と振りまわす将軍である。

 彼が張った弓など誰にも扱えないだろう。

 さんざん二人で笑ったあとで、改めて学舎をまわる。

 まだ講義中の教室も多く、学生にはさほどすれ違わなかったが、幾人かは楽俊に目を留め、傍らの陽子に不思議そうな視線をよこした。

 それでもあえて声をかけてくる者はなく、「『景王、雁国の大学に忍び込む』ってとこだな」と楽俊が笑った。

 あらかた見てまわったあと、学生用の堂に場所を移した。備え付けのお茶を片手に取りとめもなく喋りながら陽子が帳面を広げ、そこに楽俊が学内の様子をあれこれと書きつけていく。

「講義の内容は雁でも慶でもそんなにかわらないんじゃねえかな。国によってなにに重きを置くかは違ってくるが、基本にそれほど差はねえはずだ。まあ、これは乙老師や他の人がよく知っていなさるだろう」

 さらさらと綴られる達者な文字に、頷いて聞いていた陽子がふと溜息をついた。

「……今更だけど、楽俊て字が上手いよね」

 どうしたいきなりと聞けば、私の字なんてミミズの寝言みたいなんだもん、と拗ねる。

 とんでもない例えに楽俊が笑った。

「まだ覚えたての陽子から見りゃそうかもしれねえけど、おいらだって父ちゃんに比べたらまだまだだぞ」

「だって、浩瀚も感心してたよ。祐筆にもこんないい字を書く者は少ないって」

「誉め過ぎだ、そりゃあ」

「だってあの浩瀚だよ。お世辞なんか言うと思う?」

「……お世辞というより試されてる気はするけどな」

 陽子には聞こえないよう、口の中で呟いた。

 誉められていい気になったら、たちまち叩き落とすような人物な気がする、とは延麒が言った台詞

だが、なにしろ権に媚びずその能力だけで冢宰に抜擢されるような男である。一筋縄ではいかない。

 なに? と目を瞬かせる陽子に、なんでもねえと答える。

「第一、乙老師とかほかのお人とか、おいらなんかより字の上手い人なんてたくさんいるんじゃない

のか?」

「遠甫の手は達者過ぎて真似できないし、景麒は線ひとつ引くにもああじゃない、こうじゃないってうるさいし、祥瓊もあれでけっこう厳しいし」

 景麒、という名だけは声を潜めたものの、陽子は眉根を寄せて指を折った。

「そうだ。楽俊、なにかお手本かいてくれないか?」

「手本?」

 そう、と少女が頷く。

「手習いのお手本。楽俊の字って読みやすいから、目標にしたいし」

「おいらで手本になるかはあやしいけどなぁ」

 苦笑いながら、楽俊が筆を取る。

 開きなおした白紙にゆったりした運びで綴られたのは、陽子にも見覚えのある一文だった。

「仁道をもって治ること……なにも大綱をもってこなくたっていいじゃないか」

 たぶん王になって最初に書かされたであろう文句である。陽子が口を尖らせるのも無理はない。

 想像したとおりの反応に楽俊がくすりと笑った。

「見覚えのある物のほうが書きやすいだろ。乙老師に書かされたか?」

「景麒」

 憮然とした陽子に、なるほどなぁ、と頷いた。

「まあ、楽俊が書いてくれたと思えば、気分も変わるけどね」

 気を取りなおして、陽子が楽俊から筆を受け取る。

 眉を寄せ、息を詰めて筆を動かす陽子の横顔に、楽俊は吹き出しそうになるのを懸命にこらえた。

 陽子は一生懸命に書いているのだから、笑われるのは不愉快だろう。

 そうは思うのだが、その生真面目さが面白いやら可愛いやらで、なんとも可笑しい。

 一行書き終えようやく息をついた陽子は、隣人の様子がおかしいことに気がついた。

 卓子に肘をつき、こちらから微妙に顔を背けて、片手で顔を覆っている。

 その肩が、小刻みに震えていた。

「……楽俊、なに笑ってるの」

 不機嫌を固めたような声に、楽俊の肩がよけいに揺れる。

「人が真剣に書いてるのに、なんで笑うんだ!」

「陽子は真面目だからなぁ」

 憤然とする少女に、指の隙間から、涙の滲んだ黒い瞳が笑った。

「手習いに、そんな真剣になることないんだぞ。書けば書いただけ上手くなるんだから、最初から

綺麗に書こうなんて気負わなくたって、丁寧に丁寧に、って心がけるだけでいいんだ。そうすりゃ、そのうち上手くなる」

 くつくつと笑いながら、まだ口を尖らせている陽子の頭を撫でてくれる。

「だって……書類の一つ、手紙の一つもまともに書けないんじゃ、情けないじゃないか」

 代筆はたいがいが景麒。その流麗な文章の最後に、まるで子供の落書きのような自分の御名を見

たときの気分は、楽俊にはわかるまい。

「しょうがないだろ。陽子はこっちの文字を知らないんだし、むこうでは筆を使って字を書かない

って言ってたじゃねぇか」

「そうだけど……」

 筆を持ったことなど、小学校の書初めくらい。それだって、大したものは書いていないのだ。

「あーあ、こちらに鉛筆があったらな」

 鉛筆とは言わないまでも、ペンがあればもう少し書きようもあるのだが、いかんせん毛筆は扱い

にくい。

「ないものねだりしてねぇで、練習することだな。おいらだって最初はそんなもんだったんだ。

あとは練習練習」

 隣では、まだ楽俊が笑っている。ひがみのせいか、たいそう楽しそうに見える顔を睨めつけて、

溜息をついた。

「どうにも筆運びが上手くいかないんだ」

 筆と鉛筆では手の動かし方からしてまったく違う。丁寧に丁寧に、と内心唱えつつ、一字二字と

書きながらぼやく。

 達筆の楽俊に見られながら下手な字を書くのは気恥ずかしいが、せっかく教えてくれているのになにもしないのでは申し訳ない。

 陽子の手元を見ていた楽俊が、つと席を立った。

 なに、と思うより先に、背中から抱えるような体勢で右手を取られる。

「楽俊?」

「ただ字を書くよりも、基本を覚えた方がいいな」

 陽子の手ごと筆を持ち、ゆっくりと大きな字を書いた。

「永?」

「永字八法、というな。この一字の中に、筆運びの基本が入ってんだ。これが綺麗に書けるように

なれば、他の字だって上手くなる。まずはこれを練習してみちゃどうだ?」

 とめ、払い、と数えながら、ひとつずつゆっくりと筆を運んで行く。

 幾度かそれを繰り返して、陽子が溜息をついた。

「楽俊は教え方が上手いな。うちの教師陣は、誰もこんなこと教えてくれなかった」

「まあ、これは筆を持ち始めた子供に教える方法だからなあ」

 渋面を作る陽子を見て、椅子に戻った楽俊が笑う。

「字も文も、そうそうすぐに身につくもんじゃねえ。焦ることはねえさ。気長に構えて、しばらく

は代筆を頼んでおけばいい。そのうちいやでも自分で書かなけりゃならなくなるんだから」

「うん、そうする」

 にこりと笑った陽子は、楽俊の手の動きを思い出しながら、ゆっくり筆を運ぶ。

 線の引き方、筆の強弱。

 口で言われただけではさっぱりわからなかったことが、手を取って教えてもらえばこんなにわか

りやすい。

 横から見ていた楽俊が破顔する。

「ん、いい字だ。たいしたもんじゃねえか」

「ありがとう。楽俊のおかげだ」

 一度筆を置き、黒々とした墨跡を眺める。

「楽俊も、相当練習したの?」

 問われて、楽俊がちょっと口の端を上げた。

「そうだなあ。なにしろ手本が父ちゃんだろ? 手本と自分の字の落差が、子供の目にも激しくてなあ。最初はもう、今の陽子以上にがっくりしたような覚えがある。で、そのあとはもうひたすら真似して書いてたな」

 小さな鼠の子がしょんぼりと肩を丸める姿を想像して、陽子が笑う。

 だいぶ冷めてしまった茶碗を口に運びながら、二人ともなんとなく字の書き散らされた帳面を眺

めた。

「おいらのうちはそりゃもう貧乏だったから、墨も紙もそうそうは買えねえ。だから、普段は土間

とか庭先で地面に書いてたな。地面はなんべんでも書きなおしがきくだろ?書いちゃあ消し、書い

ちゃあ消しってしてたからすっかり土が柔らかくなっちまって、母ちゃんに土間に畑でも耕してん

のかい、ってよく笑われたもんだ」

 楽俊が懐かしげに笑って話すのを真顔で聞いてた陽子が、手元の筆を手に取った。

「……そうだな」

「ん?」

 怪訝そうな声に薄く苦笑を浮かべて、じっと筆を見る。

「……蓬莱には、物が溢れていた。要るものも、要らないものも、小金を出せばなんだって買え

たんだ。だから、物のありがたみというものを知らなかった……わかろうともしなかった」

 ちょっと可愛いからと使いもしないペンやノートを買って、すぐにそれを忘れてしまう。

 小遣いは親から貰い、それを当たり前だと思っていた。

 戻れもしないほど離れてから初めてわかる、あちらの世界の歪み。

「どんなものも誰かが作ってくれたもので、それをあがなう金は、親が額に汗して働いたものだ。そうやって手に入れた物を大切にするなんて当たり前のことなのに、私はそんなこと思いもしなかった」

 そうやって溢れたごみが、大地を埋めるほど積もって。

 なんて浅はかな自分。

 なんてうつろな世界。

「大事に、大事にしないといけないんだね」

 一文字書くための筆も、墨も、硯も、紙も。

 楽俊が丁寧に、と言ったのは、筆運びだけではなくて、使う道具ひとつひとつに心をこめて、という意味なのかもしれない。

 作ってくれた人に感謝を。

 手に入れることのできる境遇に感謝を。

 なにより、道具そのものに感謝を。

 例え本人は無意識でも、楽俊は万事にそういうところがあった。

 だからきっと、これも陽子の単なる想像ではないだろう。

「丁寧に、丁寧に、だね」

 微笑んで顔を上げた陽子の目に、意外なほど真面目な楽俊の表情が映った。

「楽俊?」

 呼ばれた青年が、ん、と笑う。

「やっぱりお前はすごいな、陽子」

「すごいって……なにが?」

 きょとんと見返す少女に、楽俊が破顔した。

「わからなくっていいんだ。陽子はそのままでいろな」

「なにそれ、わからないよ、楽俊」

 眉を寄せる陽子の頭を、彼女のそれよりひとまわり大きな手が撫でる。

 陽子はいつだって前を向いて歩いている。

 迷いながら、悩みながら、それでも歩くことはやめない。

 きっと、と楽俊は思う。

 彼女に統べられる慶の民は幸せだろう。

 かの国の王は、民と同じ目線に立って考えることができる人なのだから。

「ねえ、どうかした?」

「いんや、なんでもねえ。さて、戻る前に街でなにか食っていくだろ?」

「そりゃあ食べるけど……」

 はぐらかされた陽子がぷうとふくれた。睨まれて、楽俊がわざとらしく余所を見る。

「なんだ、行かないのか? せっかく陽子のために安くて美味い店、探しといたんだけどなあ」

「行く!」

 安くて美味い、と聞いて緋色の髪が飛び跳ねた。豪華で高価な料理よりも、下町の安くて手軽な

食べ物の方が好きなのは変わらないらしい。

 満面の笑みを浮かべた次の瞬間、まんまとのせられたのがわかったのだろう。しまったといいたげな表情で卓子に突っ伏し、うう、とか唸っている。

「……どうせ私は単純だとか、思ってるだろう」

「なに、単純で悪いことねえさ。おいらだって単純だもんなあ」

 まだ卓子にかじりつくような姿勢の陽子の頭を軽く叩く。

「そら行くぞ、陽子。早くしないと混んじまうからな」

 あしらわれた風情の陽子は口を尖らせたものの、休みをもらった時間は短い。

 なにより、わがままに付き合ってくれる友人相手に長くすねていられるわけもなく、よし、と声を上げて立ち上がった。

「じゃあご飯につられるとしますか!」

「おう、存分につられてくれ」

 安いけどな、安いのが大事だよ。

 そんな他愛ない応酬でも、直接交わせることが嬉しいから。

 二人して笑いながら、堂を後にした。

 




なんか、当初の予定からずかずか離れて行ったのはなぜでしょう。
へんだなぁ。楽俊が陽子に手を取って字を教えるだけだったんだけど。
肝心のところが印象薄くてごめんなさい。あー、なんか淡白な文章なのはぜんぜん変わらんなー。

《永字八法》の名前をぽこりと忘れて、お習字習ってる同僚に聞きに走ったのは、ここだけの話。や、調べるの面倒だったもんで。
アニメではなにやら不可解な文字でしたが、壁先生が「かろうじて筆談は出来た」と言ってる所を見ると、ほぼこちらの文字と同じということでいいんでしょう。きっと。



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おまけ

 

 よいしょ、と掛け声をかけて、鳴賢は荷物を抱えなおした。

 分厚い書籍が数冊。

 蔵書の豊富な雁の大学には珍しく図書府にない書籍で、友人たちのなかで持っている者から皆が借りて廻っているものだ。

 ずしりと腕にかかる負荷に溜息をつきながらなんとか同輩の堂室に辿りつき、不作法にもその扉を足で蹴った。

 なにしろ両手で抱えてなお重い本の束だから、普通に叩こうにも手が空かないのだ。

「文張ぉ、頼まれてた本持ってきたぞ。開けてくれよ」

「ああ、ありがとうな」

 悪い悪いと中に入れてくれた楽俊が、鳴賢から荷物を受け取った。と、その重さに顔をしかめて書卓の上に載せる。

「これだけあるとさすがに重いな」

 人の姿でいたからよかったけど、鼠の恰好なら本に潰されたかもしれねえな、と苦笑う。それをここまで運んできた鳴賢も、やれやれと溜息をついた。

「ほんとだよ。で、お前の次が玄章な。まだあと二、三人いるから早いとこ廻せって」

 重荷から開放された鳴賢が勝手に牀榻でくつろぐ。

 早速本を広げていた楽俊が頷いた。

「ああ、わかった。あとで曉遠に礼しないとなあ」

「酒でも奢ってくれればいいってさ。……けどあいつ、ものすごく酒呑むんだよなあ。皆で出し合っても足りるかな」

 過去の酒盛りを思い出して、渇いた笑いが二人の口から漏れる。

「ま、いつもの店ならそんなに高くもねえし、大丈夫だろ」 

 いつもの店、と聞いて、鳴賢はちらりと楽俊を盗み見た。

「そういや文張、昼間あの店に来てたか?」

 本を書き写しているのだろう、筆を片手に振り返った楽俊が目を瞬かせる。

「なんだ、鳴賢いたのか? 声かけてくれりゃ良かったのに」

「いや、俺はすぐ出ちまったからな。お前かなあと思ったけど、連れがいたみたいだし」

 楽俊はそうかと頷いて本に戻ったが、その後ろ姿に鳴賢は内心ごめんと手を合わせた。

 彼等を見かけたのは、実を言うと店ではない。

 講義が終わって堂室に戻る途中、楽俊を探して堂に顔を出した。学内を案内すると言っていたから、もしかして堂にいるかもと考えたのだ。

 大学の同輩として挨拶を、と思ったのも確かだが、楽俊の友人とやらを見てみたいという好奇心の方が勝っていたわけで。

 どんな奴だろうと興味津々で覗いた鳴賢だったが、朋輩の連れを見て、かけようとした声を喉の奥にひっこめる羽目になった。

 一瞬少年かと思ったが、貌を見て思いなおす。

 鮮烈な緋の髪と澄んだ翠の瞳をした、明るい顔立ちの少女。

 少女は、楽俊が手もとの紙に何やら書きつけているのを覗きこんで、くすくすと笑っていた。

「……なあ、あの子、親戚かなんか?」

「いんや、友達だ。巧にいたときに会って、一緒に雁に来た」

 答えながらも、本をめくる楽俊の手は止まらない。その背を見ながら、鳴賢は複雑な気分だった。

 あんなふうに笑う楽俊を、鳴賢はあまり見たことがない。

 わりあい誰にでも人当たりのよい楽俊だが、大勢と交友があるわけではない。

 笑って騒げる仲間なごくわずかだし、自分といるときはどちらかといえば押さえ役で、苦笑はしても大笑いするようなことは少ないのだ。

 そんな彼を見てき た鳴賢からしてみれば、さっきの楽俊はまるで別人だった。

 二人で顔を見合わせて笑いあい、からかったり怒られたり、手を取って丁寧に教える姿はとても自然で、なにより楽しそうだった。

 緋色の髪の少女は、質素な袍を着てはいても顔立ちは際立って美しかった。

 格好も動作もまるで少年だが、大輪の花のように人目を引く。絹や玉で着飾れば、公主なみに綺麗になるにちがいない。

 以前楽俊を訪ねてきた娘も相当美しかったが、彼女とはまた趣の違う美人に見えた。

 群青の髪の娘が清雅だとすれば、今日見た娘は華麗。

 堂にいた学生はそれほど多くはなかったが、彼等も二人に気付かれないよう、横目でちらちらと様子を伺っていた。

 それにしても、あれだけの美少女を前にして、こいつはなんとも思わないのだろうか。あんな顔で微笑まれたら、心騒がずにはおれないだろうに。

 この朴念仁め、と背中を蹴り飛ばしてやりたいが、そんなことをすれば覗き見が露見してしまう。

 寝転がった姿勢で、鳴賢は口を尖らせた。

 だがおそらく、とも思う。

 彼女の魅力は外見よりも内面なのだろう。飾らず凛としていながら、喜怒哀楽がはっきりしていて小気味いい。そのまっすぐな翠の瞳には、傍らの青年への絶対の信頼があった。

 そして、それを受け止める楽俊の目にも。

 恋人というよりは仲のいい兄弟のようだったが、そのぶん親愛の情が見て取れて傍目にも幸せそうだった。

 つーかさぁ、と鳴賢は内心ごちる。

---お似合い過ぎなんだよ。

 人の姿をした楽俊は中背でやや線が細く優男という風情だが、それがむしろ彼の持つ雰囲気とあいまって、柔和で堅実な印象を与える。

 頭の良さは折り紙つきだし、性格もいい。さすがに表立っては騒がないものの、あれでなかなか女生徒たちの間で の評判は悪くないのだ。

 悪意ある(やから)が、折りあるごとに楽俊を半獣半獣と貶めて爪弾きにする理由の一つが、実はそこにある。

 他国の半獣でありながら賢くてひととなりもまっすぐで、そのうえ見栄えもさほど悪くないとなれば、そりゃあ選民意識の強い大学の連中には嫌がられるだろう。

 本人はさっぱり気づいていないだろうが。 

「あいつは海客なんだ。巧で拾って、それからこっちの付き合いだな。こっちのことがさっぱりわからねぇから、たまに教えることもある。ま、手習い程度だけどな」

 親切な説明に、ふうん、と気のない返事を返して、壁向きに寝返りを打つ。

「……お前さぁ、明日の講義、人の姿でいったほうがいいぞ」

 唐突に言われて、楽俊はきょとんと振り返った。

「なんでだ? 明日は弓射も馬もねえぞ?」

「駄目。しばらくは人の恰好で講義に出ろ」

「めいけ……」

「いいから! 絶対!」

「……わかった」

 腑におちなげな楽俊の返事を背中に受けて、鳴賢は溜息をついた。

 二人の様子を見ていたのは鳴賢だけではない。日頃楽俊を見下している連中も、あの場にいたのだ。

 彼らをして割りこませなかったのは、一にも二にもそれが非日常の光景だったからだが、明日になれば奴等もなにか言ってよこすに違いない。

 そうでなくても気に入らない俊英の半獣が、美少女と楽しそうに語らっていたのだ。たとえ会話の中身にどれだけ色気がなかろうとも、妬まないはずがない。

 せめて余計な口実を与えないように人の姿で、あとは自分が目を光らせていればなんとかなるか。

 幸い、今期はほとんど二人一緒の講義を取っている。人の姿になったらなったで、これも口さがないことを言われそうだが、それは鳴賢が言わせなければいい。

 講義の内容そっちのけで対応策を練りながら、鳴賢はまた深い溜息をついた。

「文張、明日の晩飯奢れよ」

「ええ?! なんで……」

「奢れったら奢れったら奢れ!」

「……め、鳴賢?」

 鳴賢の剣幕に、引きつった声がする。

 明日になれば、いくら鈍い文張でもわかるだろう。

 ……わかって欲しい。できれば。

 それにしても、なんでこいつは美人とばっかり知り合いなんだ、と思ってしまうのは、まあ年頃の青年としてはいた仕方ないということで。

 怜悧だがいまひとつ機微に疎い年少の友人に、一食ぐらい奢ってもらわねば気がすまない鳴賢だった。

 

 

初稿・2004.12.11




暁遠と玄章は、こちらが初出でした。

というわけで、鳴賢視点のおまけ。
本来こっちを先に書いていたので、「二人を繋ぐ糸」で鳴賢が陽子の瞳の色を知っている設定になってしまったわけです。
小説は並列で書くもんじゃねーなー。

あ、楽俊はモーションかけられてもわかんないくらい機微に疎い方向で・大笑


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