ウルトラ列伝~音の章~ (アテル)
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過去の光
設定集
ご拝読ありがとうございます。コメントも・・・コメントもしていって・・・(小声)
なーんで最初にこれを投稿しなかったのか本当にわかんない。世界観わかりずらいし説明が雑なんだよいいかげ(ry
表主人公:円日 光輝(マドカ・コウキ)
学校:花咲川高校 3年A組
身長:175㎝
誕生日:8月20日
好きな食べ物:フライドポテト
嫌いな食べ物:魚介類
趣味:料理 ツーリング
紗夜、日菜とは幼馴染
優しく、正義感の強い青年
Roseliaのマネージャーとして日々活動中
最近circleのスタッフとして雇われた
紗夜に対して好意を抱いているがヘタレなせいであまり関係が進展しない
料理の実力は上手であるが裁縫はまるでダメ
忙しい月子に代わってたまに氷川家の夕食を作りに来る
二輪免許をもっておりRoseliaの荷物持ちになることもしばしば
身体能力は高いが何かスポーツをやっているわけではない
氷川家とはお隣さん
ある日、ティガになる力を手にする
表ヒロイン:氷川 紗夜(ヒカワ・サヨ)
学校:花咲川高校 3年A組
身長:161㎝
誕生日:3月20日
好きな食べ物:ジャンクフード ガム・キャンディ
嫌いな食べ物:にんじん
趣味:なし
幼い頃から一緒に育ったため光輝とめちゃくちゃ距離が近い
心の奥では光輝のことが好きだがまだ自覚していない、かわいい
最近光輝がポテトを作るようになり財布への負担が減ったらしい
裏主人公:影山 翔(カゲヤマ・ショウ)
学校:花咲川高校 3年A組
身長:179㎝
誕生日:11月8日
好きな食べ物:グラタン
嫌いな食べもの:アイス
趣味:ゲーム(主にNFO) 特撮鑑賞
光輝とは中学からの親友、クラスすら離れたことがないらしい
かなりのゲーマーで最近はNFOに熱中、燐子とあこのギルドに属しておりよく3人でプレイしている
NFO内のジョブは魔剣士、剣に魔法で属性を付与するスタイルでプレイをしておりギルド内の近接戦最強
かなりの寒がりで真夏にエアコンなしで生活できるやべーやつ
特撮が大好きでニチアサは欠かさずチェックする
まずあこ特撮沼に沈め現在は燐子を沼に沈めようとしている
実は一人暮らし
裏ヒロイン:白金 燐子(シロカネ・リンコ)
学校:花咲川高校 3年A組
身長:157㎝
誕生日:10月17日
好きな食べ物:ホットミルク
嫌いな食べ物:セロリ
趣味:オンラインゲーム クロスワード
翔とはゲー友であり二人であこの実質的保護者になることもある
最近翔に勧められ特撮に興味を持ち始めた
円日 奏(マドカ・カナデ)
身長:158㎝
好きな食べ物:野菜
嫌いな食べ物:煮物
趣味:ゲーム
光輝の母
氷川姉妹は娘のような扱い
ゲームガチ勢でたまに大会に出て優勝して賞金をもらってくる
ゲームは格ゲーしかやらない
光輝のバイクは彼女の賞金から出ている
料理はゲテモノしか作れない
円日 淳(マドカ・アツシ)
身長:178㎝
好きな食べ物:肉 酒
嫌いな食べ物:野菜
趣味:ドライブ
光輝の父
氷川姉妹は娘のような扱い
光輝が料理できるようになるまで彼が円日家の台所に立っていた(だが料理は光輝の方が上手)
光輝を小さい頃から車に乗せていたのに光輝自身はバイク派になってしまったことにかなりショックを受けた
陽平とは大学時代からの付き合いでよく酒を交わしている
酔いやすいくせによく飲むので最近ノンアルしか飲めない
氷川 月子(ヒカワ・ツキコ)
身長:168㎝
好きな食べ物:ジャンクフード
嫌いな食べ物:なし
趣味:料理
氷川姉妹の母
光輝は息子のような扱い
光輝が紗夜に好意を抱いていることを知るとすぐに二人をくっつけようとしだした
光輝の料理の師匠
大手ファストフード店の本社で新メニューの開発をしている
最近は彼女の代わりに夕食を作ってくれる光輝をいることが楽しみ
氷川 陽平(ヒカワ・ヨウヘイ)
身長:160㎝
好きな食べ物:ジャンクフード
嫌いな食べ物:しいたけ
趣味:研究
氷川姉妹の父
光輝は息子のような扱い
氷川家ジャンクフード好きの元凶
月子をジャンクフード堕ちさせるのに一番苦労したらしい
大学で教授をしているが自分の研究に夢中になってたまに講義を忘れる
家族思いで休日は家族のために時間を費やす
もはやジャンクフードと研究と家族でこの男はできている
妻より低い身長がコンプレックス
氷川 日菜(ヒカワ・ヒナ)
学校:羽丘女子学園 3年B組
身長:156㎝
誕生日:3月20日
好きな食べ物:ガム・キャンディ ジャンクフード
嫌いな食べ物:味の薄いもの
趣味:アロマオイルづくり
紗夜の双子の妹
光輝とは仲のいい友達
本人曰はく「光輝とおねーちゃんがくっついたらるんっ♪ってしそう」とのこと
次郎丸(ジロウマル)
翔の飼い犬
野良犬として町を徘徊していた時に翔と出会い飼われることになった
何よりも昼寝が好きなぐうたら
紗夜に一番なついている
月島 まりな(ツキシマ・マリナ)
ライブハウスCiRCLEのスタッフ
30過ぎになるのにまだ結婚はおろか彼氏すらいない自分に危機感を覚え男漁りもとい合コンに花子とよく行く
だが仕事はきっちりとするため利用者からの信頼は厚い
園崎 花子(ソノザキ・ハナコ)
ライブハウスCiRCLEのスタッフ
まりなと同い年でよく男漁りに行くもいまだ理想の相手は見つからない。その様子は6Vまで妥協しないポケモントレーナーのよう
よく光輝に手を出そうと誘惑するが本人が興味ない&晴人に叱られるダブルパンチを喰らう
男関係以外はかなりハイスペック
容姿はゲームのまりなさん(染み付いたさん付け)の隣に立つスタッフと同じ
大空 晴人(オオゾラ・ハルト)
ライブハウスCiRCLEのスタッフ
ガサツな性格でよく花子に叱られる
一児のパパでたまに職場に連れてくる
年はまりなや花子とあまり変わらない
大空 明里(オオゾラ・アカリ)
晴人の娘
たまに晴人に連れられて手伝いをする
手伝いをする様子はつぐみに匹敵するほどの天使具合でCiRCLEの隠れアイドルとしてかわいがられている
設定集まで読む人っているのかな・・・
ぜひ本編も読んでください
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プロローグ
いきなりすんごいgdgdなんだが大丈夫だろうか・・・
それでは本編どうぞ
-3000万年前-
人が到底住めないほど荒廃した都市で、4体の巨人が争っていた。彼らの戦いは、都市を跡形もなく消し去るほど凄まじかった。赤と紫のラインのある巨人は他の3体の巨人を圧倒し、赤と黒の巨人、紫と灰色の巨人を石像にして、封印した。
味方を失い劣勢に立たされる。黄色と灰色の巨人は赤と紫のラインのある巨人に語り掛ける。
「ねぇダイゴ、どうして私たちを裏切ったの?私、あなたに何かしちゃった?もし私があなたにとって気に入らないことをしたのなら謝るわ。だからお願いダイゴ、理由を話して」
今にも泣きそうな声で巨人は語るも、赤と紫のラインのある巨人・・・ダイゴは何も反応しない。
「ダイゴお願い・・・。あなたが必要なの・・・。あなたがいないと私、どうしたらいいか」
だがダイゴはまるで気にも留めず両手を胸の前に突き出し、そのまま開いてエネルギーを貯める。
「ダイゴ・・・どうしてなの・・・ダイゴ!」
ダイゴは胸の前で両手をL字に組み、黄色と灰色の巨人に光線を浴びせる。光線を浴びた巨人はその目に涙を浮かべながら石像になっていく。
「ダイゴ・・愛して・・・」
彼への愛の言葉も告げられないまま巨人は完全に石となった。
「すまない、カミーラ、ダーラム、ヒュドラ」
ダイゴの後悔の言葉はあまりにも遅すぎた。
時は流れ・・・2018年4月3日。
桜が満開を迎え春休みが終わりを告げ始めた季節、満開の桜が咲く川沿いを歩く2人の学生がいた。
「なんで始業式ってあるんだろうな。午前だけやるなら別に休みでいいじゃん。後から紙わたせばいいよな。なぁ翔」
そう愚痴りながらも通学路を歩く彼の名は円日 光輝(マドカ・コウキ)、私立 花咲川高校の新3年生である。
「校長の話が長くなきゃいいのにね。でも1学期はクラス替えがあるから多少は楽しみだよ?」
そう楽しそうに話す彼の名は影山 翔(カゲヤマ・ショウ)、光輝の中学からの親友であり、光輝と同じ花咲川高校の3年生である。
「クラス替えって言ってもどうせまたお前と一緒のクラスだろうし大してワクワクしないんだが・・・」
「でもお前紗夜ちゃんと一緒になれるかどうか緊張してんじゃねーの?」
「なっ、なんでここで紗夜が出るんだよ///」
氷川紗夜(ヒカワ・サヨ)、光輝とは家が隣の幼馴染である。そして光輝は紗夜に対して好意を抱いている。普段光輝は紗夜と2人で登校するのだが、今日は始業式があるため生徒会役員の紗夜は光輝より先に登校している。
「そういうお前こそ、燐子ちゃんと同じクラスかどうか不安じゃねーの?」
「俺は大丈夫だけどりんりんが大丈夫かちょっと心配だな。人見知りだし」
白金 燐子(シロカネ・リンコ)、翔のゲー友で親友。NFOというオンラインゲームで知り合い、仲良くしている。
そうこう話しているうちに花咲川高校の校門が見えてくる。
私立 花咲川高校、1世代前は女子高だったが突然共学に変えたらしい。噂では校内の治安関係らしいが真相は不明。
「さてと、お待ちかねのクラス発表ですよっと。」
校門の前に張り出された紙に生徒が集まっている。その中には金、桃色、水色、オレンジなど色とりどりの髪色の子がいたり、猫耳型の髪型の子がいたりと個性豊かである。
ちなみに光輝は黒髪、翔は茶髪と割と普通の髪色である。
しばらく光輝が物思いにふけっていると翔が走ってきた。どうやらもう自分のクラスを確認してきたようだ。
「光輝、今年も同じクラスだ。よろしくな」
「もう見てきたのか。何組だった?」
「A組だったよ。あ、ちなみに紗夜ちゃんもりんりんも同じだったよ」
「・・・そうかよ」
素っ気ない態度の光輝だが長い付き合いの翔は内心凄く嬉しいことを分かっていた。
「以上で・・・始業式を・・・終わります・・・」
始業式は滞りなく終わりHRに。
HRといっても最初なので自己紹介なのだが・・・中学の頃から外部入学を加えただけ、かつ1学年2クラスしかないとなれば3年生の今はほとんどの生徒のことを知っているためあまり必要ない。しかも私立故に教師もほとんど変わらないため担任からもほぼ全員認知されているという本当に意味のない時間であった。
そのあと担任より来週からの修学旅行について軽く説明を受けて下校ということになった。
「じゃあ紗夜。また明日な」
「あら?今日は晩御飯を作りに来てくれるんじゃなっかたの?」
「ああそうだったな。じゃあまた後でな」
「ええ、楽しみにしておくわね」
簡単な会話を交わして別れる光輝と紗夜、
「翔君・・・今日のスピーチ・・・どうだった・・・かな?」
「ばっちりだったよ。これなら明日も大丈夫だな」
「うん・・・。そうだね・・・」
「それじゃあまたNFOで、がんばってな」
「翔君も・・・またね・・・。今日は・・・レイドボスの討伐・・・。ギルドの皆さんと・・・頑張ろう・・・」
なんかイチャつきかけている翔と燐子。
他にも昼をどうするか、修学旅行の持ち物を一緒に買いに行こうなど多種多様な会話が聞こえるにぎやかなクラスである。
光輝はこの日常が続くと思っていた。
自分の大きな使命も知らぬまま・・・。
予告
21世紀、巨大な悪が人類を襲う。
侵略、そして破壊。
やっと築いた平和が危ない。
このピンチを救うのは彼しかいない。
3000万年の時を超え、究極の勇者がよみがえった。
空想小説シリーズ『過去の光』
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1話『修学旅行』
あとがきは次回予告に使うのでここを作者の感想書くとこにする
正直二つに分ければよかったと思ってる。すまんかった
今回出てくる旅行先にはどこも行ったことありません。変なこと書いてたら許して
夏休み終わるまでにもう1話上げたい
2018年4月9日
「なーんで修学旅行が東北なのさ・・・」
「しょうがないじゃない、中学の頃に京都の方に行ったから高校では別のところに行きたいってことで決まったんだから」
「そうは言っても普通外国とかじゃん」
「でも東北の方は行ったことないのでしょう?なら楽しんだ方がいいわよ」
「ま、それもそうか」
光輝と紗夜は新幹線内で駄弁っていた。今日は花咲川高校の修学旅行、行先は福島、宮城、岩手、青森、秋田、山形の順で東北地方一周である。行先に対し不満を抱く光輝であったがそれとは反対に紗夜は少し楽しそうである。
「そういや昨日の夜少し騒がしかったけどなんかあったの?」
「ああ、それね。明日からしばらく修学旅行だからいなくなるわって日菜に伝えたらあの子、大騒ぎしちゃって・・・。お土産はー?とか、どこ行くのー?とか・・・。あの子らしいといえば・・・そうかもね」
「あー、日菜なら言うな」
氷川 日菜(ヒカワ・ヒナ)、紗夜の妹。所謂天才という部類で1度見たものを完璧に再現できる。昔から姉のことが大好きでよく姉の真似をしていた。ただそのせいで一時期姉妹の中が悪くなってしまった・・・が今は元の仲のいい姉妹になっている。ちなみに仲が悪くなってしまっている間、光輝はいつかもとに戻ることを信じて二人を支えていた。
「でしょ?でも、去年の私だったらそんなことも気づけなかった。こうやって日菜と元通りになれたのはあなたのおかげ。ありがとう、光輝」
「ど、どういたしまして///てか、なんで急に///」
「あなたにそれほど感謝してるってことよ」
紗夜はそう言って微笑む。光輝にはその微笑みがなによりも美しく見えた。
『次は~福島~福島~』
ここからは各班に分かれて県内散策し時間になったら集合場所に集まり、次の県に移動する。この動きを4日間するのが修学旅行の予定だ。ちなみに光輝の班のメンバーは光輝、紗夜、翔、燐子である。
ただもう今はもう昼食時なのでだいたいの班は駅周辺で昼食を食べてから目的地に移動する。光輝たちも例にもれず駅周辺で昼食をとる・・・前に駅前のデパートでNFOグッズ販売店によってグッズを買う(光輝はやっていないため買わなかったが)。もちろん燐子の提案である。気を取り直して近くのハンバーガー店でハンバーガー4個とトレイ1枚分山盛りのポテトを買って食べる。
「氷川さんと・・・円日さん・・・そんなに・・・ポテトを・・・食べるん・・・ですか?」
「勿論。なんたって大好物ですから。」
「私はそんなにポテトを食べません。光輝が勝手に注文しただけです」
「はいはい分かったよ。紗夜はそんなにポテト好きじゃないもんな」
「そうよ。でも光輝、そんなに買ったのならちゃんと残さないこと、いいわね」
目の前で繰り広げられる痴話喧嘩を見て翔と燐子は苦笑する。
ちなみに20分後、ポテトはほとんど紗夜の中に吸い込まれていった。
「お~、結構暗いな~」
昼食を食べた光輝たちはあぶくま洞に来ていた。あぶくま洞は約8000万年かけた鍾乳洞であり中は幻想的な雰囲気になっている。
「翔君・・・大丈夫?」
「無理・・・寒い・・・死ぬ・・・」
翔は極度の寒がりであるために洞窟に行くのはあまり向いていない。だが既に翔はベンチコートを着ている。それでもなお寒がるのはなかなかである。
「やっぱり福島って言ったら喜多方ラーメンだよな。はー、洞窟で冷えたからだが温まるぜ」
そんなことを言う翔だがまだベンチコートは着込んだままである。
「せやなー」
「はあ~幸せやな~」
「せやなー」
「やっぱラーメンって言ったら醤油だよな~」
「せやなー・・・というと思ったか!ラーメンならやっぱ塩だろ!」
「んだとぉ!?醤油の素晴らしさしっかり教え込んでやらぁ!」
店内で騒ぐ光輝と翔を見て紗夜と燐子は苦笑する。
「・・・あの2人は何をしているのでしょう」
「プライドをかけた・・・喧嘩・・・でしょうか。私たちからすれば・・・くだらない・・・ですが」
「ちょっと二人とも!店内で騒がしくしないでください。お店に迷惑が掛かるでしょう」
ラーメンの味で喧嘩するほど平和な修学旅行だったがその平和に突如崩れだす。
その時、店のテレビから流れているニュースから不穏な言葉が聞こえる。
『速報です。先程、モンゴルにて体長60m級の巨大生物が出現しました。巨大生物は現地軍の活躍により地中に潜りましたがその後の行方は分かりません。しかし、巨大生物の出現は現地の人々に大きな不安を残しました』
店内にいた誰もに衝撃が走る。
「・・・そんなことが・・・あり得るのかよ・・・」
「だが実際そういうことが起きた。いくら遠いとこで起きたていっても注意しとかないとな」
「なんだよ翔、やけに冷静だな」
「特撮見てたらよく起きるような話だからな。単に見慣れてるってだけだ。ただそんな漫画みたいな話が起きてるってことが異常だがな」
ニュースではそのまま現地の人へのインタビューが流れているがちゃんと聞けている人はほとんどいない。入ってきた情報があまりにも大きすぎてまだ整理しきれていないのだ。
やがて情報の整理が済むと人々は他人事としてニュースを見始めた。
その考えが災いだとも知らずに・・・。
店を出た光輝たちは集合場所である福島駅前に向かう。その後、宮城に移動してホテルに泊まる予定だ。しかしこのまま修学旅行を続行していいかという問題がある。光輝は修学旅行を続けたい思いと続けて大丈夫だろうかという思いを抱えたまま電車に乗るのだった。
その後、集合場所についた光輝たちだったが教師たちが修学旅行を続行していいのか議論をしていた。結果としては修学旅行を続行するという結論になった。教師たち自身も楽しみたいという気持ちもあったのだろう。そして何より自分たちは関係ないという心理が大きかった。
そしてそのまま何も問題は起きずホテルにたどり着いた。その間生徒の間では巨大生物の話題で持ち切りだったという。
深夜、光輝は不安で眠れずロビーにいたところに紗夜がやってきた。
「どうした?眠れないのか?」
自分のことを棚に上げ紗夜に話しかける光輝だったがその紗夜から聞こえてきた言葉は普段からはとても考えられないほど弱弱しかった。
「ねぇ・・・光輝。私たち・・・これから大丈夫かしら」
紗夜の不安は最もなものだった。いくら外国だといっても相手は未知の生物。いずれは自分たちも襲われてしまうのではないかという可能性が紗夜の不安を大きくした。
「今はまだ大丈夫でもいつかは襲われてしまうのかしら」
「・・・そうかもな。でももしそうなったら俺が守ってやる。って言えたらいいけど生憎俺はそんなに強くないから言ってやれない。でも!紗夜のために俺はできる限りを尽くすさ。約束だ」
これは彼の純粋な思いであり優しさでもあった。紗夜の不安を取り除くことはできなくても和らげることはできる。できる限り。
「ええ。約束」
その優しさはちゃんと紗夜にも伝わった。
翌日、今日は宮城と岩手の観光をする。光輝も紗夜昨夜とは打って変わって明るい表情をしている。
「ここが仙台城跡地か。剣士の血がたぎるぜ!」
「あれ?翔君が使ってるのって・・・西洋剣・・・だよね?」
「・・・りんりん・・・チッチャイコトハキニシナーイ」
仙台城、この地方を収めていた伊達氏の居城であり今は跡地となっている。(wiki調べ)
「これが・・・笹かまぼこですか。本当に笹みたいな形状をしていますね」
「・・・俺、魚、無理」
「光輝、お前まだ魚嫌い治ってないのかよ。てか、これ練り物なんだから大丈夫だろ・・・」
「だって練り物でも原料魚だもん」
仙台名物笹かまぼこ。普通のかまぼこと違ってかまぼこの形状を笹のようにしているところが特徴であるが他にも食感なども普通のものとは違う。
モグモグ「あ、俺これ好きかも」
「うん・・・私も。よく見るやつと違って・・・・結構・・・柔らかい」
「お土産として買っていきたいですが残念ながら要冷蔵なので難しいですね」
その後、光輝たちは昼食を抜いて岩手に来ていた。昼食を食べていないだけあって他の班よりも早めである。
「皆さん・・・本当に・・・やるんですね?」
「あたぼうよ。付き合わせて悪いな、りんりん」
「ううん。それは・・・大丈夫・・・なんだけど・・・。氷川さんまで・・・大丈夫・・・・なんですか?」
「ご心配ありがとうございます、白金さん。ですが・・・あの2人に目にもの見せてやらないと。ですがそれまでは観光です。早くいかないと時間が無くなってしまいます」
そういう紗夜の顔には悪い笑みが浮かんでいた。
今、光輝たちの眼前には洋風な赤レンガで作られたモダンな建物がある。ここは岩手銀行赤レンガ館。元は岩手銀行の本店として建てられたが今はこうして歴史的建造物として一般公開されている。
「翔君・・・剣士の血・・・だったら・・・こっちの・・・方が・・・滾るんじゃ・・・ないかな?」
「あー、確かにそうだね。こんな感じの洋風なレンガ建築の方がNFOっぽいな」
「・・・紗夜、何言ってるか分かる?」
「ええ。影山さんの言っていることが的を得ていることはよく分かるわ」
「あーそうだった紗夜もハマってたんだっけ、NFO」
以前一度Roselia全員(光輝と翔も含めて)で翔、燐子、あこのやっているNFOというゲームをやったことがありその時に紗夜がハマったのだ。そのハマり具合は驚きもので日菜が光輝に構ってもらえないとSOSを出すほどである。
「とりあえず3人とも・・・NFOで盛り上がるのもいいけど・・・観光なんだから中入ろっか」
赤レンガ館の観光を終えた光輝たちは盛岡八幡宮に来た。ここは盛岡の総鎮守(だいたい神様界の知事的なもの)である由緒正しい神社である。
「予約の時間まで少ししかないからまきで行くぞ」
「しょうがないか。アレ出来ない方が残念だし」
「そうですね。わざわざお昼を抜いてきた意味がありません。早めにお参りだけして行きましょう」
こうして光輝たちは参道を進み拝殿に着いた。拝殿は漆塗りの赤が目立ちとても神々しい様相だった。賽銭箱の前に立ち4人は5円玉を投げ込み2拝、2拍手し各々の決意を誓う。
「(俺はこの1年間、Roseliaを支えてきた。そして・・・1年越しにFWFへの挑戦権が取れるコンテストが来る。ここから先、今まで以上に厳しくなるだろう。だから・・・俺は紗夜を・・・紗夜たちを支え続ける!俺にはこれしかできないけど・・・これからもあいつらが笑えられるように!)」
「(私はRoseliaに入って大きく変わった。今までの私からはとても想像できないくらい。日菜と向き合えたのもその一つ。日菜と向き合う勇気を持てたのは光輝のおかげ。でも以前なら・・・彼の言葉も聞かなかったでしょうね。だからその変化を次のコンテスト、そしてFWFで見せる!そしてRoseliaの氷川紗夜としての音を・・・見つけ出す!)」
「(もうすぐでFWF。みんなの夢の部隊。Roseliaの一員として楽器が弾けなくともあいつらのためにできることはたくさんある。できることをする。それってすごくかっこいいことだってここに来て知ったんだ。だからそれをする。それが・・・俺のやらなきゃいけないことだ!)」
「(友希那さん・・・今井さん・・・氷川さん・・・円日さん・・・そして・・・あこちゃんと・・・翔君。今までみんなのおかげで私は進んでこれた。みんなに背中を押してもらってここまでこれた。そして今度は・・・その集大成。だから・・・Roseliaのみんながいれば・・・大丈夫!)」
「「「「・・・」」」」
神社とは本来己の決意を神様に伝える場所。そして神様はその決意に応えお力添えをしてくださるという。
お参りが終わった後の4人の顔はどこか清々しい顔をしていた。
「よし、お参りも終わったし、アレに行くか」
ここまで長く引っ張ってきたアレだが岩手・・・というか盛岡に来たらすることは一つ。
「よっしゃー!わんこそばやっぞー!」
わんこそばである。いわずと知れた盛岡名物。光輝たちはこれに挑むために昼食を抜いたのである。
「おー!」
「早く行きましょう。絶対に勝ちます」
ちなみに本来は光輝と翔だけが希望したため場合によってはなくなる可能性があったが確実にするために光輝が
「紗夜、俺に勝ったら何でも好きなことしてあげるから頼む」
と切り札を切って紗夜も参加することになったという経緯がある。
店内に入りわんこそばを注文する。その後準備始まりがいよいよ開戦の時が迫る。
準備が終わり・・・
「「「「いただきます」」」」
開戦のゴングが鳴った。お椀にそばが入りそれを食べる。
10分後・・・
「ハダハダヒヘフ!(まだまだいける!)」
「ヒョフーヒョフー(余裕ー余裕ー)」
「ホンホンヒヒハフヨ(どんどん行きますよ)」
まだ余裕そうである。
20分後・・・
「ハ、ハダハダ(ま、まだまだ)」
「ヒャハレヘ・・・ハマフハ(やられて・・・たまるか)」
「ハンヘフハ?ホフヘフハ?(何ですか?もうですか?)」
少し辛そうである。
30分後・・・
「ホ、ホウフホヒヘ・・・ハヒヒュッハヒ(も、もう少しで・・・80杯)」
「ハハハハ・・・ヒ・・・ヘ・・・フ・・・(まだまだ・・・い・・・け・・・る・・・)」
「ホヘハハホフフホヒヒヘホウヘフヘ(これならもう少し行けそうですね)」
「ごちそう・・・さま・・・でした」
一人かけそばを食べていた燐子が食べ終わり、男子勢は虫の息、紗夜は涼しい顔してそばを食べているというなかなかにカオスな状況だ。
40分後・・・
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「フ、ホホホホヒフイヘフヘ(む、そろそろきついですね)」
「翔君・・・円日さん・・・大丈夫・・・ですか?」
男子勢が動かなくなった。
45分後・・・
「ふぅ・・・ごちそうさまでした」
結果・・・光輝91杯、翔95杯。そして・・・紗夜126杯で紗夜の圧勝である。今回の敗因は元から大食いの紗夜がなんでもというやる気ぶち上げ剤を与えられ最強核の強さだったことだろう。当然の結果である。
その後、10分ぐらいして男子勢の意識が戻り集合場所に移動していた。あとはホテルに移動して今日の日程は終わりである。青森に移動する電車の中で紗夜は光輝にお願いを伝えた。
「光輝、勝ったからお願い、あったわよね」
「ああ、そうだな。なにがいい?」
「また今度光輝にご飯作ってもらいたいわ」
「それくらいならお願いされなくても作るのに」
「私がそうして欲しいのよ」
「じゃあそれでいいけど」
こうして修学旅行2日目は幕を下ろした。
翌朝、人々を絶望に叩き落すニュースが流れた。
『緊急速報です。昨夜、イースター島にて体長50m級の巨大生物が出現しました。巨大生物はその後北西に向かって飛び立ちましたがその後の行方は分かりません。これに対し政府は2日前にモンゴルに出現した巨大生物と合わせて[怪獣]と分類し、防衛の準備を進めていると発表しました』
突如として現れた2体の巨大生物もとい怪獣。奴らがあまりにも巨大すぎることと未知であること。この事実は人々を恐怖に陥れるには十分すぎた。だがこんなところで学生生活最後の修学旅行を終わらせるわけにはいかない花咲川高校3年生、日本に来ると確定したわけではないと教師たちに力説し怪獣が出た時はすぐに近くの避難所に避難し担任に連絡を取ることを条件に続行を許可してもらったのであった。
新青森駅からバスに乗ること30分・・・ここは日本史の授業で絶対出る場所、三内丸山遺跡である。
「うへぇ・・・なんでここに」
「なんで修学旅行で勉強しなきゃならんだ・・・頭痛くなりそう」
「文句言わないでください。修学旅行は本来勉強するものなんですから」
「行って・・・みたら・・・案外・・・面白い・・・かも・・・しれません・・・よ?」
それもそうかと気持ちを切り替えて近くにあった看板に目を向けると・・・
「壁画展?こんなの事前に調べた時にはなかったよな?」
「新しく始めたのでしょう?今から行くんだから、見に行けばいいじゃない」
こうして光輝たちは遺跡内に入っていき壁画展を開催しているところまで足を進める。壁画展はここと書いてある看板まで行くと地下への通路があった。どうやら展示物は地下にあるようだ。通路を通り地下に行くと大きな壁画があった。壁画には土偶のようなものと人型のものが戦っている様子が描かれていた。周りには山が描かれており、単純に考えるとおそらく怪獣と同じくらいの大きさだろう。紗夜、翔、燐子はよくわからないという表情をしていたが光輝だけは巨人と思われる絵をじっとっ見つめていた。
「(何なんだ・・・この絵から感じる懐かしさは・・・)」
「これ、最近発掘されたばかりであまり研究が進んでないんですよ」
不意に後ろから声をかけられ4人はびっくりする。
「ああ、すいません。私、ここの研究員をしています。沢渡と申します」
「よろしくお願いします。それで、この壁画が最近発掘された・・・と」
真っ先に沢渡に声をかけたのは意外なことに光輝だった。
「ええ、第一発見者が言うには急にこの通路が開いたというんですよ。ですが地盤沈下にしては空き方が不自然なのでそうとしか考えられないんですよ。不思議な話ですよね」
「そんなこともあるんですね」
「そうですね。で、この壁画なのですが・・・文字が全く書かれてないのであまり研究が進まないんですよね。もしかしたら教科書が書き換わったりなんて思いながら研究をしています。それくらいしないとモチベーションが上がらなくて・・・。おっと、話過ぎてしまいましたね。では、ゆっくりしていってください」
「ありがとうございました」
「いえいえ、それでは」
そういって沢渡は地上に出て行った。その後もしばらく光輝は壁画とにらめっこしていた。
大分時間が経ち遺跡を出て4人は駅に移動していた。
「光輝、あなたなんでずっとあの壁画を見てたの?」
「いや、なんかあの巨人?に懐かしさを感じてさ・・・。よく分かんないんだけどね」
わけのわからない答えに紗夜は首を傾げ、これ以上は聞いてもよくわからないだろうと追及するのはあきらめた。
「よくわからないけど・・・まあいいわ。大分満足したみたいだもの」
そうして駅にバスが着き、次は電車で秋田に向かっていった。
秋田に着いた4人はまず昼食をだ。食べるのは秋田名物、きりたんぽ鍋である。
「きりたんぽいいね~」
「春に・・・食べるものじゃ・・・ない・・・けどね」
ホウッという効果音が出そうな位温まる翔と燐子。一方・・・
「ほら・・・紗夜アーン」
「こ、光輝・・・こんなところでしなくてもいいじゃない///」
あーんしようと見せかけてきりたんぽの中ににんじんを入れることで紗夜の人参嫌いを克服させようとする光輝と案外まんざらでもなさそうな紗夜だった。
「ほらほらいいからいいから、アーン」
「うぅ・・・あーん///」
「どう?美味しい?」
「えぇ、おいし・・・ん?光輝、もしかしてこれ中に・・・」
「人参入れたけど」
驚いた紗夜は慌てて口の中の人参をお茶で流し込む。そして今度はお返しと言わんばかりに鍋の鱈をつかみ光輝の口元に持っていく。
「ほら光輝?あーん///」
「あーん」
それに対し光輝はなんのためらいもなく鱈を食べた。好きな人のあーんならば嫌いなものでも食べないという選択肢はない。結局自分だけダメージを受けた紗夜は心の中でもう二度とあーんをしないと誓ったのであった。
「私たちは・・・何を・・・見せられてるん・・・だろうね?」
「こういう時じゃないとアタックできない、しかもアタックが地味な哀れな男かな?」
ちなみにそれ以降光輝が鱈を食べることはなかった。
きりたんぽ鍋を食べ終えた光輝たちは北秋田市に移動した。駅から目的のくまくま園まで歩いていると突如周りの景色が変わった。さっきまで舗装された並木通りを通っていたはずがいつの間にか木々が生い茂る森に立っていた。
「え?ここどこ?」
「私たち・・・さっきまで・・・道路を・・・歩いていた・・・はずじゃ」
「とにかく今は動くのは危険です。まずは落ち着いて現状を確認しないと・・・ちょっと光輝!どこに行くの!」
急に光輝が走り出した。慌てて3人は追いかけるが足の速い光輝に追いつくことはできずに少しずつ差が開いてしまう。紗夜が必死に呼び止めるも光輝は全く反応せず誰かに導かれるようには走り続けた。しばらく走っていると急に光輝が止まった。やっと追いついた3人が辺りを見回すと・・・
祠がぽつんと立っていた。
「私は地球星警備団団長ユザレ」
たどりつた謎の祠からユザレが現れる
ユザレは何を語るのか、光輝たちに何を求めるのか、そして突如現れた怪獣たちはいったい何なのか
次回『大異変』
お楽しみに!
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2話『大異変』
アスティオン様、snowRoselia推し様、お気に入り登録ありがとうございます。
いつかあのクソダサタイトルと紹介文を直したい
「光輝、勝手な行動はしないで!はぐれたらどうするの!」
「え?どうしたの?」
「どうしたのもなにもあなたがここに来たじゃない!」
「?どゆこと?ていうか、ここどこ?」
なんと光輝は無意識に走ってここに来たというのである。
「それはこっちのセリフよ!・・・ごめんなさい、少し怒りすぎたわ。光輝、あなた本当にどうしたの?遺跡の時からなんだか変よ」
「うん、俺もそう思う。光輝、お前どうしたんだ?」
「どうしたのって言われても・・・俺には全く心当たりがないんだよな」
「え・・・そんな」
「ん?どうしたのりんりん?」
「今・・・現在地を・・・確認・・・したの・・・ですが・・・ここは・・・さっきいたところから・・・30㎞くらい・・・離れた・・・ところ・・・なんです。それも・・・こんなところ・・・に・・・そんな祠は・・・ないんです」
燐子があり得るはずのない事態を語り状況はさらに混乱を極める。その現実から目を背けようと紗夜が否定する。
「そんなこと、あり得ません!きっと森の中でGPSがうまく読み込めて・・・
ガタン!
「キャッ」
突如物音がし音がした方向を向く4人。物音がしたのはどうやら祠からのようだ。
「あれ・・・さっきまで・・・しまっていた・・・はずじゃ」
見るとさっきまでしまっていた祠の扉が開いて中が丸見えになってしまっている。祠の中には円錐のような形をした機械が入っていた。そして機械の正面の小窓が開き中からホログラムが投影された。投影されたホログラムには白髪に白い衣装と全身白一色の初老の女性だった。警戒する光輝と翔だったがお構いなしに女性は語り始めた。
『私は地球星警備団の団長ユザレ。このタイムカプセルが起動したということは、地球に再び危機が訪れているということ。我が末裔たちよ、ティガの巨人を蘇らせ、地球を守るのです!』
「地球の危機・・・まさか、怪獣のことか!」
翔の予想は当たっていた。
『その証拠に、大地を揺るがす怪獣ゴルザと空を切り裂く怪獣メルバが現れたはずです』
「ゴルザ・・・まさかモンゴルに出た奴のことか」
「じゃあ・・・メルバは・・・イースター島・・・の」
「それに対抗できるのは、ティガの巨人ってやつなんだよな!」
「ちょっと光輝!この人の言ってることを信じるの!?」
紗夜はまだユザレのことを信じていないようだ。
「でもこいつは怪獣が出たことを言い当てた。話だけでも聞く価値はあるはずだ」
「影山さんもですか!?」
「それに・・・私たちが・・・ここにいるのも・・・本来・・・あり得ないこと・・・なんです。だから・・・話を・・・聞く・・・だけでも」
「白金さんまで・・・わかりました、話は聞きます」
タイミングを見てユザレが話す。
『この時代から3000万年前、地球は闇に襲われていました。地球が闇に完全に覆われてしまうと思ったその時、宇宙より光の巨人がやってきて闇を封印しました。闇の脅威が去った後、巨人はその肉体を地球に残し、本来の姿の光に戻り、母性に帰っていきました。その肉体がある場所の1つがティガのピラミッドです』
「ん?なんでお前は今がお前の時代から3000万年前だと分かるんだ?」
『このタイムカプセルには人工知能を搭載しているからです』
「それで、巨人を・・・巨人を蘇らせる方法は何なんだ!」
『巨人を蘇らせる方法はただ一つ・・・』ザザ
だがここでノイズが入ってホログラムが途切れてしまう。
「な、復活の方法を教えずに探せって・・・そんな無責任な」
「とにかくピラミッドを、巨人を探そう!」
「探すって言ったって光輝、あなたどこにピラミッドがあるか分かるの?そもそも巨人が入るような大きなピラミッドが今まで見つからないことがおかしいのよ!」
「それは・・・」
「ピラミッド・・・もしかしたら・・・あるかも・・・しれません。それも・・・近くに」
「ほんとか!りんりん!」
「うん。前に・・・ネットの掲示板で・・・見たんだけど・・・秋田の・・・山奥で・・・ピラミッドを・・・見たって話・・・なんだ。でも・・・見た・・・数分後に・・・消えちゃったん・・・だって。もしかしたら・・・嘘かも・・・しれない・・・けど・・・確かめてみる・・・価値は・・・あるんじゃ・・・ないかな?ほら・・・これ・・・写真」
そういって燐子が見せた写真には奥の方に虹色のピラミッドのようなものが写っていた。ぱっと見合成跡もなく素人目からしたら本物と思えるくらいだった。
「ナイスりんりん!でも・・・まずはここがどこか知らなきゃどうしようもないよな」
そう、今4人はどこにいるかもわからない状況、ピラミッドを探す以前の問題である。どうやってこの状況を打破しようか、あーでもないこーでもないと4人が話し合っていると段々周りの景色がボヤけてきた。
「あら?なんだか周りが白く・・・」
「何ですか・・・これ。一体・・・何が」
「紗夜!俺のそばから離れないで!」
「りんりん!こっちに!」
周りが完全に白くなり4人は光に包まれる。そして目を開けると・・・河原に立っていた。
「うぅ・・・ここはどこですか?」
「あれ・・・ここって」
周囲を見渡し、何かに気が付いた燐子が慌ててスマホを見る。しばらくして燐子がスマホの画面をみんなに見せた。
「ここ・・・この写真の・・・場所じゃ・・・ないですか?」
燐子が見せた写真に写っている川、森、そして前方にかかっている吊り橋。確かに、先程燐子が話していた掲示板に載っていた写真と風景が似ていた。
「確かに・・・似ている」
「じゃあ・・・もしかして、あっちにピラミッドがあるかもしれないっていうことか!」
そういって光輝は吊り橋の方へ走り出した。川の上流特有のごつごつした岩場も抜群の身体能力を使って上に落ちるがごとく登っていった。
「ちょっと光輝!待って!」
紗夜も追いかけるが川の上流に位置するこの場所は走りにくく岩を超えるのにも一苦労するような場所であるため光輝になかなか追いつけない。紗夜に続いて翔と燐子も追いかけたがぐんぐん進む光輝に差を広げられて行く。光輝が吊り橋のところまで進んだとき、何もない原っぱだった前方に虹色に輝くピラミッドが現れた。ピラミッドを確認した光輝はより勢いを増して進む。
進み続けること10数分、光輝はようやくピラミッドに辿りついた。だが周りを1周回っても入口らしき場所が見当たらない。もしかすると上の方にあるのかもしれないと思い、ピラミッドを登ろうとしたところピラミッドの表面に触れることが出来ずに手がすり抜けた。驚いて手を左右に振るとピラミッドの表面はただ光っているだけで何もないことが分かった。覚悟を決め光輝はピラミッドの内部へと入っていった。
光輝がピラミッド内に入って少し経った後、ようやくたどり着いた3人が光輝と同じようにピラミッドの表面に突っ込み内部へと入った。ピラミッド内はかなり眩しく、入った直後は目が開けられなかったが少し経つと目が慣れ開くことが出来るようになった。目を開き、一番最初に見えたのは・・・3体の巨人の石像だった。向かって右側にそびえ立つ巨人は頭部に3本の角が生えており、左側の巨人は頭部に大きな角が1本生えていた。そして中央の巨人は頭部が滑らかに削られたような細さで肩から胸にかけて3本のラインが入っていた。さらに3体共通として胸に突起があった。
「・・・巨人だ」
「これが・・・ユザレさんの言っていた・・・光の・・・巨人」
翔と燐子が感嘆している中、紗夜が1人巨人を眺めていた光輝のもとに駆け寄った。
「光輝!急に飛び出さないで!びっくりするじゃない!」
「ああ。ごめんごめん紗夜、巨人がいるって思ったら居て立っててもいられなくってさ」
「光輝、あなた、なんでそんなに巨人のことに真剣なの?本当に変よ、今日のあなた」
そこに歩み寄ってきた翔も口を開く。
「ほんとだよ。確かにこういうことで1番熱くなるの光輝だ。でも普段のお前だったらもう少し落ち着いてる」
壁画に1番食いついたのも、ユザレに対して巨人のことを聞き出そうとしたのも、このピラミッドに真っ先に走り出したのも、すべて光輝だった。翔の言う通り光輝は人ためによく動く人間だった。困っている人がいれば、立場関係なく必ず助けに行く。生徒会が困っていてら自分が生徒会でもないのに手伝ったこともあった。後輩から悩みを相談されたときは、真摯に向き合って相談者自身が満足いく答えを出せるように手助けしたこともあった。そんな光輝でも今回のようになるのは珍しい、いや、初めてだった。この件の何がそう彼を動かすのか、紗夜と翔は疑問に思っていた。
「いや大したことじゃないんだけどね・・・この巨人から感じるんだ。懐かしさを。ま、よくわかんないんだけどね?」
訳の分からない返答に2人は首を傾げる。その反応に対し、全く同じ反応をするものだから光輝は吹き出し、また巨人の方を見た。
「にしても・・・こんなのどうやって復活させるんだよ。全く分からん」
「ホント・・・どーしたらいいものか」
また議論が始まった。途中、光の巨人なんだから光を上げたらいいじゃないという安直な意見もあったが既に十分明るいという至極真っ当な反論を受けまたスタートに逆戻りするなど議論は難航していた。
議論を重ねること数十分、そろそろおやつ時になる頃に4人のスマホが一斉に鳴り出した。慌てて確認するとそこには・・・
『秋田市市街地にモンゴルに出現したものと同個体かと思われる怪獣出現。それに伴い、秋田県内の全住民に避難指示が発令されました。』
という緊急速報が表示されていた。
「逃げるぞ!」
「でも・・・逃げるって・・・言っても・・・こんな山奥じゃ」
「とりあえず、さっきの河原に行こう!」
だがここで光輝が声を荒げて反論する。
「じゃあ巨人は!巨人はどうするんだよ!」
「光輝!逃げなきゃダメ!死んだらどうするつもりなの!」
だが紗夜も強く反論する。このままでは光輝が死んでしまいそうな気がして・・・。光輝も渋々それを受け入れ、4人はピラミッドから先ほどまでいた河原に逃げた。だが、辿り着いた瞬間、今1番聞きたくない声が聞こえた。
『ゴオオア』
『キャアアオ』
ゴルザとメルバが、ピラミッドにやってきたのである。
ティガのピラミッドに襲い掛かる超古大怪獣
「やめろーーー!」
絶望の中に、一筋の希望が現れる
次回、『巨人の目覚め』
お楽しみに!
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3話『巨人の目覚め』
山の影様、お気に入り登録ありがとうございます
宿題がひと段落着いたんで書きます
やっとティガを出せる・・・長かった
実はこの回2日で書けました。戦闘シーン書くのたのちい
光輝たちが河原に逃げた時、紫の2足歩行の怪獣・・・ゴルザと赤の大きな翼をもつ怪獣・・・メルバが現れた。現れたゴルザが頭部からお得意の超音波光線を放ちピラミッドを光の粒子に変えていく。サラサラとピラミッドが崩れ、巨人の石像が露わになった。そして完全にピラミッドを消し去った時、メルバもようやく地上に降り立った。ついに揃った2体の怪獣はその魔の手は巨人たちに忍び寄る。なんと、石像を壊し始めたのだ!始めはメルバがハサミのようになっている手を使って3本角の巨人の肩を抉る。
ゴルザもメルバに続き1本角の巨人の脚部を尻尾で破壊し石像を倒す。倒れた衝撃で巨人の体は大破してしまう。片腕は外れ、足もなくなった巨人の体を、紗夜と燐子は直視できなかった。あまりに惨たらしく、気分がすぐれなくなった燐子はその場に座る。翔は燐子の介抱をするために燐子の下に行く。その時、
「やめろーーー!」
光輝が叫びながら走り出した。翔も紗夜も大声を出して光輝を呼び戻そうとするが光輝は無視して走り続けた。
だが怪獣は見向きもせずそのまま3本角の巨人までも破壊する。メルバが空から巨人の頭を粉々し残った体にも嘴で抉るという残酷な方法で巨人を破壊した。
光輝は近くにあった石ころを拾い、それを怪獣に投げつけるなどして何とか怪獣の意識を引き付けることに成功した。ゴルザは頭部から超音波光線を、メルバは目からメルバニックレイを出して邪魔者を排除しようとする。だが光輝はうまくそれらを躱し、逃げ回っていた。しかし数分間し続けると光輝の体力も限界が近づき動きが鈍くなる。このチャンスを逃すほど怪獣たちも甘くなく攻撃の密度はどんどん増す。さらに外した攻撃も森の木に引火し気が付けば光輝の周りは火の海となっていた。
「クソッ!ここまでだっていうのかよ!」
メルバがトドメのメルバニックレイを発射する。それはまっすぐ光輝も所へ飛んでいき・・・大爆発を起こした。
「光輝ーーーーーー!」
その様子を見ていた紗夜からは大粒の涙が溢れ出た。たった1人の大切な幼馴染を失った。そのショックはとても大きかった。幼い頃から共にいた、一緒に過ごした時間は紗夜の人生の大半を占めるほどに。光輝がいない生活など考えられないほどに光輝の存在は生活の1部になっていた。そんな彼が突然自分の前からいなくなった。光輝のことを思い出すと1番はじめに思い浮かべるのは彼の優しい笑顔だった。すべてを包み込むような笑顔は、紗夜の心の支えでもあった。この笑顔が見たくて頑張ったことさえもあった。次に思い出すのは彼が自分を励ます姿だった。練習の時、ライブの前、必ず彼は自分に励ましの声援を送ってくれた。それを聞くだけでそれまでの緊張が消える位、彼の声援には力があった。そして2日前に彼が言ったことが忘れられなかった。
『紗夜のために俺はできる限りを尽くすさ。約束だ』
彼は自分に言ってくれた。できる限り尽くすと。でもこんなことを彼女は望んでいない。自分の近くにいてくれること、それが紗夜にとって1番嬉しいことだった。
「全然・・・尽くせてないじゃない」
涙はまだ止まない。
「ちくしょう・・・ちくしょーーー!」
翔からも涙がこぼれていた。中学の時に出会い、これまで過ごしてきた親友。共に過ごした時間の長さこそ紗夜に劣るが時間の濃さは紗夜にも劣らない。2人の趣味は全く合わなかった。だが2人にはどこか通じるところがあり、自然とよく話すようになっていた。翔にとって光輝は一番の心が休まる存在でもあった。それほどの大切な親友が突然会えなくなった。そのショックは翔の心を大きく傷つけた。
紗夜たちが涙を流す奥ではゴルザが最後の巨人を破壊しようとしていた。
光輝は夢を見ていた。自分が巨人となって大勢の怪獣と戦う夢だった。周りを見ると自分以外にも巨人はいた。戦いが始まると巨人たちはいっせいに怪獣に向かっていった。もちろん自分もそれに加わった。胸の前でL字に腕を組み光線を放ったり、怪獣を投げ飛ばしたり、空を飛んで上空にいる怪獣を落としたり。だが光輝はその戦いの中で懐かしさと少し悲しさを感じた。
急に場面が変わり光輝は町中に立っていた。向こうには女性がこちらを見て立っていた。誰が見ても美しいといえるであろうその女性に愛しさを感じていると彼女はは笑顔でこちらに近づいてきて話しかけてきた。
「も~ダイゴ、遅いじゃない。待ってたんだからね」
「遅れてごめんね、カミーラ」
知らないはずの彼女の名前を言ったところで、背中に衝撃を感じて夢から覚めた。
目を開けるとゴルザが自分を踏みつけようとしていたので光輝はとっさに手で防ごうとした。だがいつまでたっても前に出した手が重いことに疑問を感じ恐る恐る目を開けると・・・自分の手だけでゴルザの足を防げていた。ならばと思いっきり手を前に出すとゴルザが吹き飛んだ。ようやく立ち上がることができ、周りを見ると先程は見上げるほどの大きさだった怪獣たちが自分と同じくらいの大きさになっていた。それだけじゃない山は腰ぐらいの大きさになり、河原には小さくて見にくいが紗夜、翔、燐子がしっかりいた。
「(なんでみんな小さくなって・・・いや、俺がでっかくなったのか?)」
足元を見てみると先程怪獣に壊された石像の破片が2体分転がっていた。
「(もしかして・・・俺は・・・光の巨人になった。そういうことなのか・・・)」
そう、怪獣にとどめを刺される直前、彼の体は光となり、巨人の体内に溢れ、光の巨人として現代に蘇ったのである。銀の体に赤と紫のライン、肩から胸には金色のプロテクター、胸には青く光るカラータイマーがあり、その顔は仏のようだった。
「巨人が・・・巨人が蘇りました!」
突然の燐子の大声に、涙を流していた2人も顔を上げる。燐子の指さす方向には、つい先刻まで石像だった巨人が立ち上がっていた。なぜか巨人が彼自身の体を見ていると、起き上がったゴルザが突進してきた。完全に油断していた巨人は突進を喰らい大きく吹っ飛ぶ。
「ジュワッ」
だが巨人はすぐに立ち上って左手を伸ばし右手にこぶしを作って臨戦態勢をとる。ゴルザが再び巨人に突進するが今度は突進を受け止め、横に投げ飛ばした。そしてメルバに向かっていきその顔面に強烈なパンチを喰らわせる。ひるんだメルバに巨人はチョップ、キックと畳みかけるが起き上がったゴルザの超音波光線を背中にもろに受け、膝をつく。すぐさまメルバは反撃をする。3発の連撃を受け巨人は吹っ飛ばされるがまた立ち上がり構え直す。
「フッ」
その時だった、山奥からから飛行機のプロペラの音が聞こえてきた。その方向に目を向けると軍の飛行機数機が怪獣と巨人めがけて飛んできていた。援護が来たと思い巨人はホッとするが現実はそうはならなかった。飛行機が機関銃を向け、巨人諸共打ってきた。巨人は咄嗟に紗夜たちをその身を使って守った。何百発も銃弾を背中で受け、巨人は苦しそうな表情を見せる。
「グワアア」
「私たちを・・・守った?」
その巨人の様子を見て、紗夜はそう呟いた。
やがて銃弾の雨が止み、うまく防ぐことでダメージを抑えた怪獣たちが反撃を仕掛ける。まず、メルバが大きく振りかぶり近くいた飛行機を1機落とす。それに続きゴルザも光線で次々と墜落させていった。残った飛行機は上空へと逃げるがメルバが追いかけるべく翼を広げ飛び立とうとする。やっと立ち上がった巨人が阻止しようと向かうがゴルザの尻尾攻撃に阻まれ転倒する。そこにゴルザが馬乗りとなりひたすら殴打をする。
『ピコンピコンピコン』
巨人の胸のカラータイマーが赤く点滅しだし巨人のピンチが訪れた時、紗夜が声を張り上げて巨人に声援を送った。
「頑張ってください!負けないで!」
巨人は紗夜の方を見て頷き、その声援に応えるべく、力を振り絞る。ゴルザの腕を持ち上げ、その頭に頭突きして自分から引っぺがす。そして起き上がりゴルザの首を掴んで投げてから倒れたゴルザの尻尾を掴んで振り回しまた投げる。大ダメージを受けたゴルザは起き上がれない。この隙に巨人は腕を斜め前に広げ空を飛ぶ。そして今まさに飛行機を打ち落とそうとしているメルバに上昇しながらアッパーをかけ地上に落とした。メルバが落ちる様子を眺めていたが振り向きホバリングしていた飛行機の方を見た。パイロットと目を合わせるとすぐにまた地上に降りた。
「俺たちを・・・守ったのか?この巨人は・・・」
巨人は地上に降り立ち再び構えるが、ゴルザが地中に逃げようと穴を掘っていた。先程の投げがよっぽど堪えたらしく、もうゴルザに戦意は欠片もなかった。だが巨人もここで逃がすわけにはいかず追いかける、しかし間にメルバが入り込み邪魔をする。メルバニックレイを放ち攻撃を仕掛けるが巨人はバク転してこれを躱す。そして大きく跳躍しメルバの顔に飛び蹴りを喰らわせメルバが転がる。身の危険を感じたメルバはメルバニックレイを放ちながら翼を広げ飛び立つ。それに合わせ巨人も飛ぶが単純な飛行速度だとメルバの方が速くすぐに見失ってしまった。巨人は追うのを諦めて、その姿を光に変え姿を消した。
元の姿に戻った光輝は数時間前見たばかりの祠を見つけた。祠はまた急に開きユザレのホログラムを投影した。
「うおっびっくりしたぁ。でユザレ、なんか用があるのか?」
『巨人を蘇らせる方法はただ1つ、光輝が光になること。その巨人の名は・・・ウルトラマンティガ!』
「・・・俺に戦えって言うんだな」
『巨人になれるのはあなただけ、その胸のスパークレンスが何よりの証拠』
そう言われ光輝が胸のあたりを探ると制服の内ポケットから棒状のトーテムのような物が出てきた。日光に当てると優しく光るそれがユザレの言うスパークレンスだろう。
「上等だ!俺はこの力で、守って見みせる!」
光輝はユザレの言葉と自分の運命を受け入れ、決意の言葉をユザレに伝えた。それを聞いたユザレは、険しい顔をして消えた。段々周りが白くなり数秒後には光輝は森の中に立っていた。運悪くそこは坂でバランスを崩し光輝は坂を転げ落ちる。転がり終わった頃にはさっき銃弾の雨を受けた背中が痛み、涙目になっていた。だがそこは偶然にも紗夜たちがいる河原の近くですぐに見つけることが出来た。
「お~い、みんな~」
痛む背中を抑えながら手を振って呼びかけると、翔と燐子は幽霊でも見たような顔をして驚き、紗夜は光輝のもとへ駆け寄り抱き着いた。
「心配・・・したじゃない!」
よっぽど泣いていたのか目元が真っ赤に腫れ、上目遣いで光輝に怒る紗夜。だが光輝は紗夜に抱き着かれた嬉しさと恥ずかしさ、抱き着かれた衝撃でまた痛む背中の痛み、上目遣いで怒る紗夜に対して可愛さ、紗夜を泣かせてしまった申し訳なさで心がぐちゃぐちゃになりあまり紗夜の話を聞けなかった。
紗夜が説教し続けること数十分、やっと説教が終わり光輝から離れた紗夜と交代に今度は翔が光輝に説教をした。
「俺から言うことは3つ!まずは俺らを心配させるな!俺も心配した!俺にとってはお前は大事な親友だ!お前がいなくなるなんて俺は嫌だからな!」
「うっ・・・すまん」
「俺だけじゃないだろ!」
「・・・みんな、今回は心配をかけてすまなかった」
これに関しては光輝自身も申し訳なさを感じていて素直に謝った。それと同時に自分が巨人になったことは話せないと感じた。もし話せばまた心配させてしまうから。
「次に、お前なんで怪獣の攻撃もろに喰らってピンピンしているんだ?」
この質問は光輝にとって一番聞かれたくなかった。ついさっき巨人に関して秘密にすることを決めたからだ。必死にその時のことを思い出し言い訳を練る。
「ああ、あれね。ええっと・・・あれは・・・そう!怪獣の攻撃がたまたま少しずれて当たらなかったんだよ!」
さすがに苦しいかと思いみんなの反応を見てみると・・・
「そうか、運のいいやつめ!」
あっさり信じていた。紗夜も燐子も胸をなでおろしていて光輝はちょっとした不安を抱いた。
「そして最後!今まで何してた!」
これはさっきに答えに合わせればいいからそこまで難しくなかった。
「吹っ飛ばされて気絶していた」
「そうか、ケガとかはないか?」
「ああ、実は背中がチョー痛くt・・・
ここで光輝の意識は途切れた。
「光輝、光輝!しっかりしろ!おい!」
「光輝!光輝!」
「円日さん!しっかり!」
背中のダメージが大きく、光輝は倒れてしまう。既にさっきまでいた軍の人間はおらずここは山奥。結局こ光輝は翔がおぶって近くの病院まで運んだ。
3日後・・・4月14日
怪獣が出現したこと、撃破されていないことから花咲川高校の修学旅行は中断し東京に帰った。だが紗夜は2日間目が覚めない光輝の世話をつきっきりでしていた。
「おはよう、紗夜」
正午過ぎに光輝は目覚めた。微笑みながら光輝は言った。
「もう、遅いわよ」
紗夜も優しく笑っていた。
2人が東京に帰ってきたのはそこからもう1日経ってからだった。
修学旅行から帰ってきた光輝たちは、束の間の平和を過ごしていた
だがその平和もすぐに消え去る
久良々島で発見された怪獣、ガクマを研究所に輸送する計画が実行される
次回、『怪獣輸送作戦』
「ウルトラマンティガ!」
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4話『怪獣輸送作戦』
そろそろコメディっぽい場面を書きたいとおもう今日この頃、皆様どうお過ごしでしょうか。私は感想が欲しいです(強欲)
ヴァンヴァ様、tori@様、お気に入り登録ありがとうございます
怪獣解説は要るのかについてアンケートを作りました。よろしければ投票していってください
4月15日、たまの日曜日。
『東京~東京~』
他の生徒より4日遅れて光輝と紗夜は東京に帰ってきた。新幹線から降り、自宅のある方向の電車に乗り換える。光輝と紗夜は家が隣同士なので同じ帰り道を歩く。15分ほど歩くと、二人の自宅が見えてくる。
「じゃあ紗夜、ありがとな」
「別に気にしなくていいわよ、私がそうしたかったんだもの。でも、もう心配かけないでよね」
「うん」
軽い挨拶を交わし互いの家に入った。
「ただいまー」
「おかえりなさい、心配したわよ」
安堵した表情で光輝の帰りを玄関で待っていたこの女性は円日 奏(マドカ・カナデ)、光輝の母である。専業主婦だが料理がド下手。
「光輝!無事だったか!よかったー」
奏の隣に立つこの男性は円日 淳(マドカ・アツシ)、光輝の父で円日家の大黒柱。酒バカな一面もある。
「心配かけたね、父さん、母さん」
「ほんとに、心配ばっかかけて・・・。無事に帰ってきたこと、後で氷川さんとこにも報告しに行くのよ」
「はーい」
さすがに今行くのも迷惑なので荷物を片付け、昼食を作り、少しだらけてから行くことにした。
1時半過ぎ・・・光輝は氷川家のインターホンを押した。
『はーい』
自分だということを名乗り開けてもらう。
「光輝君、いらっしゃい。どうしたのよ?」
中から出てきたのは紗夜たちの母、氷川 月子(ヒカワ・ツキコ)だった。
「こんにちは月子さん、今日はちょっと生存報告というかそういうのをしに来ました」
「そういうことね。分かったわ。上がって」
「お邪魔します」
そういって光輝はリビングに向かう。
「あ、光輝!おかえり~」
「光輝、いらっしゃい」
「光輝君、よく来たね」
日菜、紗夜、そして2人の父、氷川 陽平(ヒカワ・ヨウヘイ)がリビングにはいた。
「えーこの度は多少のケガこそしましたが、無事に帰ってきたことを報告しに来ました」
「ははっ、光輝君が無事で何よりだよ」
「あっそうだ、光輝とおねーちゃん、怪獣とか巨人とか近くで見たんだよねー。どんな感じだったの?」
急に日菜が話題を振った。
「あれ、紗夜。まだ話してなかったのか」
「ええ、こういう話は3人でしようと思ってね」
紗夜の一言で日菜の顔が笑顔で埋め尽くされる。
「おねーちゃんありがとう!るるるるんっ♪て来たよ!」
そういって日菜は紗夜に抱き着く。るんっ♪とは、日菜の口癖である。意味はよく分からなくても慣れれば案外通じるらしい(光輝談)。
今までの紗夜ならそもそも日菜と日常的な会話をしようとすらしなかった。だが今回は自ら日菜に関わろうとした。これは紗夜が成長した証でもあった。
「もう日菜!離れなさい」
顔を赤くした紗夜は日菜を引きはがす。積極的に会話はしようとしてもこういうことにはまだ慣れていないようである。
「ちぇー。あ、それでそれでー、どんな感じだったの?怪獣と巨人」
「そうだよ紗夜、俺あの時気絶してて知らないんだよ。教えてくれよー」
2人揃ってキラキラという効果音が付きそうな目で紗夜を見る。
「そんなに見られると話しにくいわよ・・・。それで、何が聞きたいの?」
「俺は巨人がどんな姿をしていたかかなー」
「あたしは怪獣と巨人の名前かなー」
「じゃあまず巨人の姿ね。巨人は銀色の体で体中に赤と紫のラインが入っていたわ。それに額と胸にクリスタルみたいなのもあったわね。肩には金色のプロテクターみたいなのもあったかしら。私が覚えているのはこれだけよ」
紗夜の説明は正確でなおかつ分かりやすかった。
「なるほどね・・・。ありがとう、紗夜」
「ええ。それで・・・日菜は何を聞きたかったの?」
「あたしは怪獣と巨人の名前かなー。もしまたでできたら話してみたいし」
「怪獣と巨人の名前?怪獣の方は紫のがゴルザ、赤いのがメルバだそうよ」
「すごーい!おねーちゃんなんで知ってるの?さすがおねーちゃん!」
日菜の真っ当な疑問は光輝が答えた。
「それはユザレってやつが教えてくれたんだよ。地球に大異変が起きるって」
光輝の話を聞き日菜はポカンとする。しばらくして急に大声を出した。
「すっごーい!!何それ!どうやって聞いたの?ねーねー教えてよー」
好奇心の塊である日菜のスイッチが入る。その後十数分間光輝と紗夜は日菜に質問攻めにされていた。
「あ、そうだ!巨人の名前は?」
「巨人の名前は知らないわ」
「ティガ」
光輝が呟く。
「ティガ?」
「!?ああ、ユザレがそう言ってたじゃん。ティガのピラミッドってさ」
紗夜に問われ光輝が慌てて答える。
「ティガ、ティガティガティガ!いいじゃんティガ!でもね~、ティガだけじゃ物足りないかな~」
「そうだよな~、なんか前に着いた方がよさそうだよな~」
光輝が誘導する。
「ジャイアント?スーパーマン?るんっ♪てこないな~」
日菜が悩み続けること1分。そろそろ光輝がウルトラマンという単語出そうかと思っていた頃、日菜が突然、ひらめいたー!と叫んだ。
「ウルトラマン、ウルトラマンティガ!」
やっと出てきたその単語に光輝が強く反応する。
「それだ!それだよ日菜!」
イェーイと2人でハイタッチをする。
「ウルトラマン・・・超人・・・いいじゃない」
紗夜も納得したかのように頷く。
その時、光輝のスマホが鳴った。確認してみるとRoseliaのメンバー、今井 リサ(イマイ・リサ)からの連絡だった。
「どうしたの?」
紗夜が問う。
「リサからおかえりって」
「あ、そうだ。おねーちゃん、光輝にぎゅーっしたの?」
突然日菜から爆弾が投下される。
「!?日菜!ななななんでそれ知ってんの!?」
光輝が動揺して日菜に聞く。
「リサちーが教えてくれたよー。紗夜が光輝にハグしたんだってーって言ってたよー。おねーちゃんもやるねー」
日菜がニヤニヤしながら答える。
「え?私そんなことしたかしら?」
紗夜の会心の一撃、光輝に9999ダメージ。光輝にとってはかなり嬉しい出来事だったがそのことを紗夜が覚えてないという衝撃が光輝の胸を貫いた。
「えーっとねー」
そう言い日菜はスマホをいじる。やがて一枚の写真を紗夜に見せた。
「ほら!」
日菜が見せた写真には光輝に抱きつきながら説教をしている紗夜が写っていた。
「・・・光輝、私、こんなことしていたの?」
「うん、してた」
紗夜の反応から察したと思うが紗夜が光輝に抱き着いたのは無意識だったようだ。
光輝の答えを聞き、紗夜の顔が青ざめる。
「ごめんなさい光輝!」
そう言って紗夜は物凄いで自室に逃げ込んだ。天岩戸のごとく固く閉ざされた紗夜の部屋を開けるために、2皿の山盛りポテトが消えたという。
ちなみにその夜、翔のスマホに鬼電がかかってきたらしい。
3日後・・・4月18日
円日光輝の朝は早い。5時半には起きて家族の朝食と弁当を作る。朝食のメニューは白米、味噌汁、サラダの和食セット。円日家のルールである。この時にニュースを見ながら作るのが彼の流儀だ。テレビをつけるがここ最近のニュースは怪獣の話で持ち切りとなっており今日も代り映えのない話が続く。
『先日研究所に輸送中に自衛隊の護衛艦から逃亡した怪獣、ガクマは未だ発見されず人々には大きな不安が消えておりません』
この怪獣が発見されたのは3日程前、久良々島にて灰色の2本角で4足歩行の怪獣が発見された政府が発表した。この怪獣は現地の民話に基づきガクマと命名され研究所に輸送されること、そして既にガクマは生命活動を停止していることも併せて発表された。このことに対し当時怪獣はどこに行ったのか、巨人は何の目的で現れたのかなどの報道をしていたテレビは嚙みついた。噛みついたといっても最初は賛成派が圧倒的に多数だった。だが事件は起こった。護衛艦に乗せて輸送中、事件は起こった。生命活動を停止していたはずのガクマが再び活動を再開した。護衛艦の乗員は全滅、ガクマは逃亡。最悪の結果だった。余談だが、光輝はこの件を後から知ったため現場に駆けつけることが出来ず、それ以降はスマホとリンクするタイプの腕時計をつけ始めてこまめにニュースを確認するようになった。そしてガクマを取り逃がした自衛隊と政府に批判が殺到した。確認や想定が甘いなどそれはもう凄かった。
7時半過ぎ・・・完成させた朝食を全員が食べ終る。淳は弁当を持って出勤、奏は洗濯をする。光輝も学校に行く支度をする。制服に着替えスパークレンスを懐に入れ、鞄を持ち家を出る。家を出て真っ先に向かうのは隣の氷川家、ここでまだ起きてないだろう日菜を起こす。
「日菜~、起きろ~」
そう言いながら光輝は日菜のベッドを揺らす。本人を揺らすよりこっちの方が起きやすいからだ。何十秒か揺らしていると日菜が跳ね起きる。
「あっおはよー光輝。あれ?おねーちゃんは?」
「確かに今日はまだ会ってないな、珍しい」
日菜は起きるのは遅いがすぐにちゃんと意識を覚醒させるタイプだ。起きてすぐに光輝と会話をする。話に上がった通り、いつもなら紗夜はとっくに起きていて、光輝とリビングで会って、一緒に日菜を起こしに来る。だが今日はまだ紗夜を見ていなかった。日菜が支度をするため光輝は日菜の部屋を出て紗夜の部屋に向かう。ノックをして部屋に入ると紗夜はまだベッドの中ですーすーと寝息を立てて眠っていた。予想通りの様子に光輝は思わず笑みをこぼしすぐに紗夜を起こすためにベッドのそばに行き、声をかけようとするが・・・出来なかった。穏やかな顔で寝ている紗夜に見とれてしまい起こすことが出来なかった。しばらく見ていると・・・
「おねーちゃん!もう朝ごはんだよー!あれっ?おねーちゃんまだ起きてないんだ?」
日菜が紗夜の部屋にやってきた。もちろんノックはしていない。
日菜の大声で紗夜はようやく起きた。だがまだ眠いらしく目をこすっている。
「日菜?こんな朝早くから大声出さないで頂戴・・・」
欠伸をしながらベッドを出ようとすると横には光輝がいた。
「あら光輝、おはよう。今日は早いわね」
「いや紗夜が遅いんだよ」
苦笑しながら光輝が答える。それを聞き紗夜は慌てて部屋の時計を見る。そこには無慈悲にも寝坊を告げる時刻が刻まれていた。
その後、紗夜は慌てて支度をし学校に向かった。光輝と紗夜の通う花咲川と、日菜の通う羽丘は反対方向なので家の前で別れる。電車を乗り継ぎ、最寄り駅で降りる。駅から出て、川沿いを少し歩けば、3階建ての校舎、私立 花咲川高校に到着だ。
教室に入るとまず鞄の中身を出し翔のもとに向かう。
「おはよう、翔」
「よっ、光輝。今日は遅いな」
「ああ、紗夜が寝坊してな。それより今日もポテト、頼むぜ」
「りょ・・・量はご容赦を・・・」
「そこは財布全開・・・だろ?」
光輝が最近翔に教えてもらったセリフを言って煽る。実は翔が紗夜が光輝に抱き着いた件をリサに写真付きでばらした罰として、光輝に1週間毎日ポテトをおごる羽目になっている。こうしてしばらく駄弁っていると教室のドアが開き担任が入ってくる。
「おーいお前らー、朝のSHRはじめっぞー」
それを聞き、生徒たちはいっせいに自分の席に戻る。光輝もその例に漏れず自分の席に戻り朝のSHRが始まる。彼は朝のSHRの担任の話を聞き流しながら1限目の準備をする。そしてSHRが終わり1限目までのちょっとした空白もまた駄弁って終わる。こんなくだらないがどこか平和で幸せな光景が、このクラス、いやこの学校には溢れていた。
時は進み昼休み、適度にニュースを確認し授業を聞き流した光輝は翔と昼飯を食べていた。
「2年の頃には4人で食べていたのに・・・今では2人で食うのにも慣れたな」
「確かに。始めは光輝が紗夜ちゃんと一緒に昼飯食べないのが違和感ありまくりだったのにもう見慣れたもんだ」
「それを言うなら翔と燐子ちゃんが一緒に・・・中学の頃はそうか」
紗夜と燐子は新生徒会発足後から昼食をほとんど生徒会室で食べるようになった。会長や役員としてやるべきことが山ほどあるらしい。
再び時は進み放課後、午後も午前と同じような過ごし方をした光輝は翔とハンバーガーショップに来ていた。
「ポテトL3つ」
「うげっ」
光輝の注文の量に翔が短い悲鳴を上げる。そのお値段なんと約1000円!本当に財布全開である。注文を終え席に着くと翔が光輝に聞いた。
「なあ光輝、本当にもう大丈夫なのか?」
「?」
「体のこと」
「ああ、それね。もう大丈夫だよ」
爽やかな笑顔で言う。
「もう元通りに動かせるし、大丈夫だって」
「お待たせしました、ポテトL3つですね?」
「はーい」
ポテトが届く。光輝は早速3本掴み口に運んだ。ここで急だが説明しよう!光輝はポテト愛の力によりポテトのイッキ食いに最適の体になっているのである。そのため3本食いも余裕でこなせるのだ!ちなみに常人がポテト3本イッキ食いなんてすると結構きついぞ、気を付けよう!
そのまま光輝はポテトをあっという間に平らげた。翔はこの後バイトがあるため店先で別れ光輝は家までの道を1人歩く。満開の時期を過ぎ、葉っぱがちらほらと出始めた桜を見ながらゆっくり歩いていると急に地面が揺れだした。その数秒後にどこかで大きな音がした。慌ててその方角を見ると・・・ニュースではよく見た灰色で2本角の怪獣・・・ガクマが雄たけびを上げていた。
『ゴオオオ』
地底からガクマ、天空からメルバが襲来する
2大怪獣の前に追い詰められていくティガ
さらに炎と共に一人の戦士が現れる!
次回『炎魔戦士』
お楽しみに!
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5話『炎魔戦士』
10月に英検と中間テスト、11月に期末テストあるので投稿頻度落ちます、許して
らったた様、お気に入り登録ありがとうございます
『ゴオオオ』
地中から出てきたガクマが雄たけびを上げる。その咆哮はすさまじく、離れているはずの光輝にまでその衝撃が伝わってきた。そして地上に出てきたガクマは口から怪光線を出した。その光線を浴びた場所が石になったことが遠目でも確認できた。その様子を眺めていた光輝はハッと気づき、周りに人がいないことを確認してから、懐からスパークレンスを取り出す。そしてスパークレンスを天高く掲げウイングを開く。神々しい音と共に光輝の体は光に変わっていく・・・。
ガクマが現れた都市部は騒然としていた。ガクマの怪光線の能力を知ると体が震えあがり、その岩を食す様を見て、悲鳴が上がった。逃げ惑う人々は我先に避難所に殺到する。その中には先程生徒会の仕事を終え、下校途中の紗夜の姿もあった。
「(光輝・・・今どこにいるの?お願い・・・出て)」
紗夜は自分の携帯で光輝に電話を掛けていた。だが何度も掛けても流れてくるのは永遠と思えるほどのコール音と、反応がないことを表す機会音声しかない。彼女の家族の安否を確認することも忘れ、彼女はただ光輝に電話を掛けることしか出来なかった。
街を石化させ食べるガクマの前に突如、光と共に巨人が現れた。銀色の体に赤と紫のライン・・・ウルトラマンティガである。ティガはガクマを前にして左手を伸ばし、右手に拳を作り、構えた。ガクマは現れた敵に対して雄たけびを上げ戦う構えを取る。
『チャッ』
『ゴオオア』
今、戦いの火蓋は切って落とされた。まずティガが間合いを詰めガクマに鋭い蹴りを入れる。よろめいたガクマにさらに回し蹴りを叩き込む。さらに起き上がった顎を掴み腹部にも膝蹴りを入れる。鮮やかな連撃を喰らいガクマは大きなダメージを喰らうがそれを諸共せず反撃をする。ガクマはその巨体を活かしティガにのしかかる。上に乗っているガクマをどかそうとパンチやチョップをするがガクマはびくともせず、さらに角から雷撃を発射する。
『グワアア』
ティガの悲鳴が辺りに響く。だがティガもやられているばかりではない。ガクマの角を掴み、その手に雷撃を受けながら角ごとガクマを持ち上げる。そして腹部に膝蹴りを入れガクマがひるんだその隙に脱出をする。そして再び体制を立て直し今度はガクマの背中に馬乗りし、再び攻撃を仕掛ける。だがガクマは背中からも雷撃を放ちティガを背中から引きはがす。雷撃を受けたティガはすぐにガクマから距離を取り再び構え直す。またしてもにらみ合うティガとガクマだったが今度はガクマが仕掛けた。ガクマは口から石化光線を放つ、がティガは高く跳躍しそれを躱す。そしてそのまま空中で一捻りしガクマの頭部に飛び蹴りを入れる。さらに顎にアッパーをかけその体を起こし巴投げをする。その衝撃で、道路に駐車されていた自動車たちは跳ね上がり、大破した。幸い近くに人がいなかったため死者は出なかったがもしこの時近くに人がいたと思うと恐ろしい。それほどまでに彼らの戦闘は壮大なものなのである。一方投げ飛ばされよろめくガクマにティガはとどめを刺そうと必殺の構えを取る。両手を前に突き出しそれをエネルギーを貯めながら開く。
『ガアアア』
が、その時・・・
ティガの背中に衝撃が走った。あまりに咄嗟のことで受け身を取れず、ビルを巻き込みながら大きく吹っ飛ぶティガだったがすぐに起き上がり衝撃が来た方向を確認するとそこにはメルバがいた。
『キャアアアオ』
咆哮を上げるメルバに対し、ティガは構えを取るがまたしても背中から衝撃を受ける。そこには先程とどめを刺そうとしていたガクマがいた。2体の怪獣を前にして、ティガはピンチに陥っていた。再びガクマが雷撃を放つ。ティガはそれをよけるがよけた先でメルバのメルバニックレイの直撃を受けさらにダメージを負ってしまう。間髪入れずガクマが自慢の爪でティガの体を切り裂く。ティガはあえて大きく飛びのき距離を取るがメルバはそれを許さない。飛翔してその大きな足でティガに真正面から飛び込んでいく。ティガは受け止めきれず吹き飛ばされる。
『ピコンピコンピコン』
倒れたティガは苦しそうにもがく。さらに胸のカラータイマーも赤く点滅しだした。このカラータイマーはティガが戦える残りの体力を示す。赤く点滅しだしたということは残り体力がわずかだということだ。
体中の力を振り絞りティガは再び立ち上がる。その先には、並んでティガの首を狩ろうと待ち構える2体の怪獣、メルバとガクマがいた。ティガと怪獣たちはにらみ合い辺りにはカラータイマーの点滅音のみが響いていた。一瞬とも、永遠とも思える間にらみ合っていた両者が再び激しい攻防が繰り広げられようとしたその時、ティガと怪獣たちの間に1本の大きな炎の柱が上がった。数秒間に渡って吹き上がっていたそれが消え、その中には・・・
巨人がいた。
黒をベースにに所々白いものが巻き付いているその体はごつごつしており、筋肉質な印象を持つ。胸には白く光る心臓のようなものがあり、またその顔は哀しそうな顔をしており、涙を流しているようともとれるような表情をしていた。手足は鋭く、特に手先には長い爪が生えていた。後ろ姿だけでも悪魔のようにも思えるその姿を見て、ティガはさらに警戒を強める。だが現れたその巨人はチラとティガの方へ振りむき、再び怪獣を見据えた。そしてガクマの方へ走り出した。ガクマの頭部へかかと落としをしひるんだガクマをメルバとティガの方から離す。ティガは不思議に思いつつもせっかく作ってもらったチャンスを見逃すまいとメルバにかかっていった。メルバニックレイを払いのながらメルバへ走る。そしてメルバにチョップを叩き込みローキック、さらにメルバを一本背負いで投げ飛ばす。身の危険を感じたメルバは前回と同じように飛翔して逃亡をしようとする。それを見たティガは顎を引き、瞑想していた。
「(今のままじゃあいつには追いつけない。もっともっと速く、誰よりも・・・)」
空を自在に駆け回る己の姿を想像する。風を切り裂き、誰よりも速く飛ぶ自分を。その時、ティガの額のクリスタルが紫に光る。
『ンンン・・・ハッ』
そしてティガほ己の両手を額の前でクロスさせ、エネルギーを一点に集中させる。そして腕を勢いよく開き貯めたエネルギーを体中に行き渡らせる。全身に渡ったエネルギーはティガの体色の赤い部分を紫にした。空を駆ける紫の戦士、ウルトラマンティガ スカイタイプの誕生である。スカイタイプとなったティガは空中にいるメルバめがけて飛び上がり、圧倒的な速度を見せつけメルバに追いつき鋭い蹴りを入れ地面に叩き落した。土煙と地響きを出しメルバは墜落した。ティガも地面に着地しとどめを刺そうと必殺技を構える。両手を開き、エネルギーを貯めながらアーチを描く。その手がてっぺんで重なった時両手を合わせて左腰に持っていく。そして貯めたエネルギーを右手に集中させ手先から光弾として発射する・・・
ランバルト光弾!
放たれた光弾に胸を貫かれたメルバは大爆発を起こし絶命する。
一方の謎の巨人とガクマの戦闘も決着がついたようだ。巨人が炎をまとった飛び蹴りをガクマに入れた。タフだったガクマだったがいよいよ耐え切れずその体を石に変え絶命する。
戦闘を終えた2体の巨人は向き合う。夕日に照らされながら、一言も会話することはなかったがそこには互いを信用しているような雰囲気があった。そして謎の巨人はその身を炎に包み姿を消した。それを見届けたティガも天高くへと飛び去って行った。
『♪~~~~~~』
ティガから人の姿へ戻った光輝は自分のスマホが鳴っていることに気が付いた。確認してみると紗夜からの着信だった。慌てて出ると紗夜は泣いていたのか少しぐずった声だった。
「もしもし紗夜?」
『光輝!?無事なのね?ほんとに光輝よね?』
「無事だよ。今どこにいるの?」
『避難所にいるけど・・・。光輝はどこにいるのよ?』
紗夜はやっと光輝と連絡が取れ声色が落ち着いてきた。
「ん?今帰り道だけど・・・。紗夜、迎えに行く。ちょっと待ってて」
『ええ。待っているわね』
「りょーかい」
『早く来・・・』ピッ
「ん?今なんて?」
紗夜の最後の言葉を聞かずに電話を切ったことを後悔しながらも紗夜のいる避難所に向けて体を動かした。まだ戦いの影響で体は痛むしお腹はすくしで正直しんどいが今はそんなことは言ってられない。体に鞭をうち歩きだす。
「今日はラーメンかな~。あれ?袋麺ってあったっけ?」
移動中に他の人の安否を確認しようと電話アプリを開くとそこにはおよそ3分間に渡って紗夜からの着信が来ていた。その量に驚きつつも、ティガになる前に着信がかかってきた覚えがないため、自分がティガになれるのはだいたい3分間何だろうと悟った。
その後、家族やRoseliaのみんなの安否を確認しながら避難所である公園に到着した光輝は紗夜を探していた。一人ずつ確認しながら探すこと数分、紗夜はみんなとはぐれた場所で一人ブランコにいた。
「紗夜!」
「!光輝・・・」
光輝が呼びかけると紗夜は安堵の顔を浮かべ光輝の下へ走ってきた。
「お待たせ」
「もう、遅いじゃない」
「ごめんって」
「それじゃ、帰るわよ」
「ん」
「でもその前に、光輝、あなた私の電話に出るまで何してたのよ」
紗夜が痛いところを突いてくる。
「ええっと・・・それは・・・あの・・・その・・・」
「何?」
「逃げ遅れた人を助けてた・・・かな?」
しどろもどろになりながらも嘘をつく。
「かなって何よ・・・。まあいいわ。無事で何より」
何とかごまかしきれたようだ。
「じゃあ改めて、帰るか!」
満面の笑顔で紗夜に言った。
「そうね」
それに合わせ紗夜も優しく笑いながら答えた。
二人はゆっくりと家に帰っていった。半分隠れ、橙色に染まったお天道様に照らされ、他愛もない会話をしながら、笑顔を絶やさず。そして家まであと少しという時に光輝が一言呟いた。
「あ、晩飯の食材がない」
そのあと2人は慌ててスーパーに買い物に行ったのだった。
パスパレのロケで豆腐を食レポすることになった日菜
果たして日菜は豆腐を攻略できるのか
次回、『豆腐を超えて』
お楽しみに!
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6話『豆腐を超えて』
Amesupi様、お気に入り登録ありがとうございます
アンケートは多分あと5話前後はやってると思います。ぜひ投票をしていってください
書いてて思ったこと、豆腐要素完全に蛇足だった
Q.4話に2018年なのに2021のゼンカイネタ入ってるのなんで?
A.全部ピンクの悪魔が時空を歪めたのが悪い()
4月17日・・・
「あ、それと日菜ちゃん。来週のロケでお豆腐の食レポがあるから、よろしくね」
「ええええええええええ!!!!!!」
とある事務所の一室で、日菜の叫び声が響く。どうしてこうなったか、それを説明するには昨日に戻る必要がある。
4月16日・・・
桜がまだ舞うその日、日菜の所属する5人組のアイドルバンド、Pastel*Palette、通称パスパレはとあるケーキ屋にてテレビ番組のロケを行っていた。ケーキ屋に来た目的はただ一つ、ケーキの食レポをするためだった。机の上には薄いピンク色をし、その中にはクリームで形作られた桜の花がチャームポイントのロールケーキが5つあった。
「うわ~、すご~~い。見て見て!真ん中のクリームが桜の花みたいになっているよ」
パスパレのまんまるピンク担当、丸山 彩(マルヤマ・アヤ)が運ばれたケーキに感想を言う。
「見ただけで春を感じることが出来ますね!」
続いてふへへグリーン担当、大和 麻弥(ヤマト・マヤ)も感想を述べる。
「ん?けど、この桜の花、なんかちょっと曲がってない?」
その時、るんっ♪とブルー担当、氷川 日菜(ヒカワ・ヒナ)から指摘が飛ぶ。よくケーキを観察すると、日菜の指摘通りクリームで作られた桜の花が若干歪んでいた。
「そ、そうかしら・・・?」
すぐさまおしとやかイエロー担当、白鷺 千聖(シラサギ・チサト)がフォローする。
その後、彩のフォローもあり大事にならずに済んだ。が、
「あの・・・このスポンジ部分も、とてもきれいよね。ピンク色が春の景色を思わせt・・・
「これってたぶん食紅使ってるんだよね?すごいねー、食紅って。こんな色が出るんだー」
千聖の言葉を遮り、日菜が失言を重ねる。
「ひ、日菜さん・・・」
麻弥が日菜を抑制する。
「そ、それでは、お待たせしました!いよいよ試食タイムです」
「やったー!早く食べようよ~!私、お腹が鳴っちゃいそうだよ~」
「中のクリームには、イチゴやマンゴーといった春が旬のフルーツがなんと5種類も入っているそうよ」
千聖の一声で5人が食べる体制に入る。
「私も待ちきれなくなってしまいました!みんなでいただきましょう!」
パスパレ最後の一人、ブシドーホワイト担当、若宮 イヴ(ワカミヤ・イヴ)も気持ちを述べる。
「だね!それじゃあみんなで・・・
「「「「「いただきまーす!」」」」」
5人が一斉にケーキにフォークを入れる。そして一部を切り取り己の口に運ぶと・・・
「「「「「はむ・・・っ」」」」」
そのまま頬張った。そして咀嚼しその味を楽しむ。
「・・・ん?」
「あ、あれ・・・?」
だが、5人の間に不穏な空気が漂う。味のしないクリーム、ぱさぱさの生地。到底美味しいとは程遠い味が口の中に充満していた。
「うわー、これまっずいねー」
多分全員が思っていたであろうことを、日菜が口にした。
「「「「っ!?」」」」
日菜の衝撃的な発言に、他の4人が動揺する。
「ちょ、ちょっと、日菜ちゃん・・・っ!」
「あたし、これ苦手な味ー。これなら2位のクレープの方が美味しくなかった?日菜ちゃん的には、ちょっとギブかなー」
千聖が日菜に待ったをかけるがそれでも日菜は止まらない。
その後、必死のフォローで日菜の分を食べた彩がむせてしまったり、イヴがきっぱりと美味しくないと発言したりと、ロールケーキが美味しくないということが誰の目にも明らかになってしまった辺りで千聖がカメラを止めるように頼んだ。
時は戻り再び4月17日。
日菜は千聖から昨日のことについて説教を受けていた。店のものに対し『美味しくない』と言ったこと、それについてずっと話していた。子役として幼少期からこの芸能界に携わっていた千聖だからこその指摘なのだろう。その口調からは日菜のこと、そしてパスパレのことを本気で心配していて、大事だということが十二分にも伝わってきた。そしてその説教の締めとして千聖が日菜にこう言った。
「パスパレをどんなアイドルにしたいのか、あなたがどんなアイドルになりたいのか・・・。何がパスパレのためになるか・・・。そのことをもっと意識して考えてね。あと、来週のロケは今回のようなアクシデントは絶対に許されない。それを・・・分かっていてね。」
その口調は厳しく、だがとても優しかった。
「うーん・・・わかった。あたしもパスパレ好きだもん。それがパスパレのためになるなら、考えてみるよ」
それに対し、日菜が答える。
「・・・その言葉が聞けて、少しだけ安心したわ」
さっきまで漂っていた緊張した空気が、その千聖の一言で和やかになった。そして千聖は次の仕事があるためその場を後にしようとする。その時に、ああ、そうだったわねと言いながら日菜の方を向き、一言。
「あ、それと日菜ちゃん。来週のロケでお豆腐の食レポがあるから、よろしくね」
「ええええええええええ!!!!!!」
今日一番の大声が出た。
ちなみにだが、日菜は豆腐等の味の薄いものは嫌いである。
その夜・・・
日菜は自分の部屋でうなっていた。日菜は昼間に千聖に言われたことが気になっていた。自分がどんなアイドルになりたいのか。今まで楽しいからとアイドルをやっていたため改めてそうやって言われると分からなくなってしまった。そうやってうなること数十分、突然日菜の部屋にノックが響く。入っていいよ~と返すとドアが開き部屋の中に入ってきたのは彼女の姉、紗夜だった。
「おねーちゃん?どうしたの?」
「あなたのうなり声がうるさいのよ。どうしたの?」
どうやら結構大きいな声が出ていたらしい、そう思いもう今日は寝ることにしようとする。
「ああ、ごめんね。おやすみ、おねーちゃん」
「待って。あなたがそんなに元気がないところを見ると、何か悩み事があるんじゃないの?私でよかったら、相談に乗るわよ」
紗夜のその言葉を聞くと日菜は紗夜に自分の悩みを打ち明けた。
「うん、ありがとー、おねーちゃん。昨日のロケの話、知ってるよね」
そう、昨日のロケの件は既に紗夜は知っており、今日学校にて紗夜が千聖に手作りクッキーでお詫びをしていた。
「ええ、あなたがロケで『美味しくない』っ言ったあれよね。白鷺さんが叱ってくれると思ってあえて私は叱らなかったけれど」
「それでね、今日、千聖ちゃんにそのことについて叱られちゃったんだ。その時にね、アタシはどんなアイドルになりたいのかって聞かれたの。それが全然分かんなくてさ」
悩みを打ち明けている間、紗夜は真剣な顔で、ただ相槌を打っていた。そして日菜が話し終えてしばらくした後、紗夜が口を開いた。
「・・・。日菜、あなたは今のままで満足?」
「?アタシはパスパレのみんなとアイドル出来て満足だけど・・・」
「じゃあ言葉を変えるわ。あなたはアイドルになってどんなことをしたいの?」
「う~ん・・・、あっ、おねーちゃんたちと一緒にライブしたい!」
「それはまた今度ね。他には?」
「う~ん。分かんない?」
疑問形で答える日菜。それに対し紗夜は微笑みながらツッコんだ。
「どうして疑問形なのよ。まあいいわ、今はまだ分からないのでしょう。だったら焦って答えを出す必要はないわよ。あなたがやりたいことが見つかるまで、ゆっくり悩めばいいのよ。それで、もし見つかったらそれができるようなアイドルがあなたの理想になるわよ。私がそうだったようにね」
「ん-・・・。そうだね!別に考えなくてもいっか~」
「ちゃんと答えを考えることを忘れちゃだめよ」
「は~い」
「それじゃあ、私は自分の部屋に戻るわ。おやすみなさい」
「あ、そうだ。ねー聞いてよおねーちゃん。次のロケで豆腐の食レポしてって言うんだよ!ひどくない!?」
口を尖らせて紗夜に愚痴を言う。
「私部屋に戻るって言ったわよね・・・。どうせ豆腐嫌いな人でも大丈夫なものなのでしょう?日菜が適任よ」
「そうだけど~。アタシは味が薄いのが嫌いなだけなのにな~」
その後、姉妹で仲良く雑談をしていると、いつの間にか時計は日を跨いでいた。それに気づき二人はもう寝ることにした。お休みといって別れ布団に着き、その日は幕を下ろしたのだった。
翌日・・・4月18日、登校中にて。
光輝と紗夜は並んで歩いていた。しばらく歩いているとふと光輝が珍しく寝坊をしていた紗夜に質問した。
「そういや紗夜、今日寝坊なんてしてなんかあったのか?」
「それがね、昨日日菜がうなってて、私が相談・・・出来たのかは分からないけど、とにかくあの子の話を聞いてあげたのよ。その後、つい色々話し込んじゃって・・・」
「それで寝るのが遅れた・・・と」
紗夜の言葉を光輝が継ぐ。
「ええ。それでその時に出た話題なんだけど、また今度日菜が豆腐の食レポをするらしいのよ。だけどあの子凄く嫌がってて」
「あの事務所えげつないことするなー。多分日菜が豆腐苦手なの知ってやってるんだろうけどね。あんまいい方法とは思わんけど」
「私も言ったのよ、どうせ豆腐が苦手な人向けだって。まあ、あの子が苦手なのはあくまで味が薄いものだけど」
「そこなんだよ。豆腐が味濃いのもなんか変だしな。・・・練習するか」
「そうね・・・え?」
その夜・・・
「光輝、何?これ?」
光輝、紗夜、日菜の三人で夕食を食べていた。ちなみに奏は今日から大会で遠くへ、淳、月子は会社の片づけ、陽平は研究発表のために出張中である。日菜がプルプル震えながら光輝に問う。日菜が指をさすお椀の中には豆腐がしっかりと入ったお吸い物があった。
「見ての通り豆腐だ。日菜がまた今度豆腐の食レポするって聞いたからその練習。せめて慣れとけ。それにほら、苦手なもん食ってるのはお前だけじゃない。俺も、ほら」
そういって光輝が指さすは先程のお吸い物。その中にはかまぼこが入っていた。さらには人参も。
今日の夕食の目的は日菜の豆腐慣れ。いずれ冷ややっこなどもチャレンジするが今回は慣らし。また、条件を平等にするために光輝はかまぼこを、紗夜は人参を食べることになっている。また極力食べやすくするために味は濃いめにもしてある。
今日の献立はラーメン、マル〇ンハンバーグ、お吸い物である。汁物が気にしてはならない。
「紗夜~。人参俺のとこに移そうとしない。」
光輝に呼ばれ紗夜はビクッとする。その衝撃で人参が音を立てて光輝のお椀の中に入る。
「あーあ、まあいいや。紗夜、苦手なもの克服するんだからそういうことはNGね」
紗夜は少し涙目になりながら光輝をにらみつける。少し胸が苦しくなるが光輝は食べ始める。それに続き紗夜、日菜も食べ始める。その後今日あったことなどを話しながら楽しく食事をする。
いつもより時間はかかったがそれでも完食し片づけをする。ちなみにラーメンはほぼ光輝が一人で完食した。
翌日の夜・・・
「えー!光輝また豆腐なのー!?」
「つべこべ言わずにほら、今日も味濃くしてあるから」
そういって出されたメニューは豆腐ハンバーグ、しかもデミグラスソースがたっぷりとかかっていた。
さらに翌日・・・
「・・・光輝、今日も?」
「ステーキ」
「えっ!!」
「ほい」
ステーキはステーキでも豆腐ステーキが出てきた。
それからも日菜の豆腐特訓は続いた。日を増すごとに豆腐への抵抗は薄れていき、だんだんと受け入れるようになっていった。そして・・・
撮影前日
「日菜、今日は冷ややっこな」
「えー!」
日菜から悲鳴が上がる。ここ2週間前後、毎日豆腐を食べてきたがやはり
「文句言うな、撮影明日なんだろ?」
「日菜、いくら苦手なものとは言え撮影でそんな悪態ついてはいけないわ。この前白鷺さんにも言われたのでしょう?」
光輝と紗夜から説教を受け、日菜も観念する。
「はーい」
日菜は不満そうに箸で豆腐を大皿から取り自分の皿に運ぶ。そこに醤油をドボドボかけよう日菜を止め、適量かけさせた後、光輝も大皿から豆腐を取る。その時、光輝はふと気づいた。紗夜がまだ食べていないのである。
「あれ?紗夜、食べないの?冷ややっこ。取ろうか?」
「冷ややっこ位!自分で取れるわよ」
そして大皿から自分の皿へ取ろうとするが・・・箸からこぼれ机へ叩き落された。幸い木綿だったため大きな被害はなかった。
「ダメじゃんおねーちゃん。無駄に力入れちゃー」
「無駄な・・・力・・・」
「あー、紗夜。やっぱ俺がと・・・「余計なお世話よ。光輝はそこで見てて!」おっ、おう」
光輝が世話を焼こうとしたところで紗夜が反論し手を引く。そんな紗夜を見ている光輝の脳裏には、去年までの日菜を拒絶している頃の紗夜の姿が浮かんでいた。自分を追い詰め、そのせいで他人にもつい強く当たってしまう姿が。原因は豆腐なのに、ついその頃の姿が重なり、苦しそうなのにどうしようもできない自分に対し罪悪感が湧いてくる、原因は豆腐なのに。
「どうよ、まさに完璧じゃない」
そんなどうでもいいような思考にとらわれているその時、紗夜の言葉で光輝の意識は現実に引き戻される。紗夜の方を見るとプルプルさせながらもなんとか豆腐を皿にのせ、ドヤ顔をしている紗夜がいた。その様子を見て、先程までの自分の思考は杞憂だったな、と安堵する。
「甘いねー、おねーちゃん」
「甘い?何が?」
「それは木綿だから上手く出来たんだよ。今の手つきじゃ、絹ごしは取れないねー」
日菜が紗夜を煽る。言ってる本人は悪意を込めてるわけではないのだが、どうしても言い方から苛ついてしまう。日菜よ、先週の件から何を学んだのか。
「じゃあ光輝、絹ごしを出して!」
「えぇ・・・。一応あるけど今からー?」
「そうよ!このまま終わるなら、豆腐の角に頭をぶつけて死んだ方がマシよ!」
そこまでか!と心の中でツッコミをしながら絹ごし豆腐を取るために冷蔵庫に向かう光輝であった。
少し経ち、先程まで木綿豆腐が入っていた大皿の中には絹ごし豆腐が入っていた。
そして紗夜は豆腐を掴むが・・・豆腐は二つに割れ紗夜の箸から落ちる。落ちた豆腐は氷水が入っている大皿に水しぶきを上げて入る。
その工程を繰り替し豆腐が8つに割れた頃、日菜がやっぱりね、と呟いた。
「な、何よ!豆腐なんて!こんなのはスプーンですくえばいい話じゃない!」
「いや紗夜が言い出したんでしょ!」
そうツッコミながらも光輝は確かに紗夜が豆腐をちゃんと箸で取っているところを見ていないことを思い出した。スープに入れた時はお椀を伝って掬っていたしその他の時には箸で刺していた。らしくないとは思っていたが追及することもしていなかった。どうでもいい謎が解けた気分がした。
ちなみに皿にぶちまけられた豆腐は後でミキサーにかけデザートにして3人で美味しく頂いた。
4月28日・・・、土曜日ということで世間はお休みムードである。そんな日の朝、日菜は光輝に叩き起された。
「日菜!今日撮影なんでしょ!早く起きんと怒られるぞ!」
「は~い」
ぶつぶつと文句を言いながらベッドから出てくる日菜。
「あ、そうだ。光輝!今日って午後暇?」
「まあ、一応暇だが・・・」
今日の午前はRoseliaの練習があるが午後はリサのバイトで練習がないため暇である。
「それじゃあおねーちゃんと一緒に撮影見に来てね!」
「オンエアまで待つじゃダメ?」
「ダメ」
「はい」
日菜の圧に屈した光輝は諦めて従うことを選ぶ。
その後朝食を食べさせ、見送りを終えた光輝は紗夜に先程の件を報告しに行く。
「紗夜、今日の午後日菜が撮影見に来てだって」
「はあ・・・全くあの子は。しょうがないわね」
そう言いながらもしっかりと口角が上がっているのを光輝は見逃さなかった。
「じゃあそういうことだからよろしくね」
「ええ、準備が出来たら行くわ」
「ん、待ってる」
そう言い、光輝は自宅へ帰った。なんだかんだ言いながら撮影に行くことを楽しみにしながら。
撮影を進めるパスパレに忍び寄る黒い影
光輝は日菜たちを守れるのか!
次回『明日への選択』
それでは皆様、投稿遅れて申し訳ありませんでした!
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7話『明日への選択』
タイトル見て皆さん思うでしょう、あれ、りんりんの誕生日は?と。すいません全く準備してませんでした。ま、まあ・・・本編内に日付振ってあるしー、いつかやればいいしー(本当にすいません)
あと前回を読んでくださったら分かると思いますが『さくら色ストロール』の改変です。決してストーリー作りがめんどくさいという訳ではありません、信じてください()。自分の考えとしてはどうせオリキャラ出すんだしこのキャラで作る原作ストーリーも悪くはないんじゃね?です。もちろんオリジナルストーリーも作りますし、極力オリジナル要素を入れますが結構こういった原作改変的なの多いです。ご容赦を。(この話を投稿するタイミングであらすじにも書いておきます)
4月28日の昼下がり、円日光輝は後ろに
「ごめんなさい光輝、ちょっと・・・その・・・気になることがあって」
「そっか。でももしなんか話があったらいつでも聞くよ」
どうやら光輝の予想は当たったがここはあえて深追いせず気にしないことにした。もしいつか自分が頼られた時まで待とう。そう心の中で誓った。
それはそれとして今日の目的を果たすために二人は公園の中に足を進めた。公園はかなり広く、休憩所としてお茶屋もあった。偶々撮影しているところもそこに近いためそこのお茶屋で見学(無許可)することにした。お茶屋で光輝は団子と煎茶、紗夜はケーキと抹茶を頼んでちょうど日菜たちが見えるところに腰掛ける。
光輝はいざ撮影を見ようとすると紗夜の視線がこちらに来ていることに気が付く。
「紗夜、団子一本食べる?」
「!じゃ、じゃあお言葉に甘えて・・・///」
「はい、あーん」
「それはいいから!///」
照れ顔も可愛いなあと惚れ直してから自分の団子の櫛を一本紗夜の皿にのせて再び日菜たちの方に目を向けた。
一方パスパレでは・・・
休憩時間中、パスパレのメンバーは会議をしていた。どうやら今回の撮影は一緒に出ている女優のハルカがメインで、自分たちは引き立て役なのではないかと疑い始めたのだ。
「千聖ちゃんは、これでいいと思っているの?」
この状況をよろしくないと考えている日菜は千聖に問いかける。
「・・・この状況も、考えようによっては悪くないと思っているわ。要所要所で目を引く彩ちゃんのポジションは印象に残るし、パスパレを覚えてもらうきっかけになるはずよ。それにこれはお仕事。あくまで与えられる役割のみ徹する。プロとして、そうすべきだと考えているわ」
それに対し、千聖はプロとしての立場を貫く。
「そうすべき、か~。それじゃあ麻弥ちゃんは?今回のロケ、納得してるの?」
だが日菜は納得していない様子で麻弥にも意見を求める。
「・・・納得はしていません。ですが「じゃあさ、もっとパスパレらしくやろうよ!」
麻弥の言葉を聞き、日菜が口から出かかっていた言葉が出た。その言葉に対し他のメンバーが興味を示し、日菜が詳しく話そうとしたその時・・・
「ちょっとすいません。日菜さん、お話があります」
パスパレのマネージャーが声を掛けた。それに対し、少し不機嫌になりながら日菜は返事を返しマネージャーの方を向いた。一方他のメンバーは突如現れた警戒しながらも2人の話に耳を傾けた。
しかし・・・マネージャーは日菜の鳩尾を殴り、一発で気絶させた後、倒れた日菜を担いだ。
その場にいた全員に衝撃が走る。悲鳴を出すものもいれば、混乱し慌てふためくものもいた。またその様子は光輝たちにも見えていた。光輝はそれを見て、すぐにパスパレのもとに駆け寄り、日菜を担いでいるマネージャーに殴りかかる。だが、渾身のパンチはひらりと躱され、逆に回し蹴りを入れられ、吹き飛ぶ。そしてマネージャーは姿を変えた!人の顔をしていたのがグニャリと音を立てて、顔の側面からは6本の足が生え、不気味な笑みを浮かべる、まさに宇宙人の姿になったのだ。宇宙人は自分の周りを怪光線を出して薙ぎ払った。辺りに煙が立ち、それが収まった頃には宇宙人と日菜の姿はもうなかった。
「・・・日菜を探してくる、お前らは逃げろ」
「待って。なんで光輝君がここにいるの?」
「後で!」
そういって光輝は駆けだした。
「行っちゃった」
「コウキさん、なんだかいつもと様子が違いましたね」
「多分日菜さんが攫われたことが相当頭に来たんでしょうね・・・。大切な幼馴染ですし・・・」
「とにかく、私たちもとりあえずスタッフさんと合流するわよ」
そういってパスパレのメンバーがスタッフと合流しようとした時、後ろから声がかけられた。
「あの、皆さん大丈夫ですか?」
それを聞き皆が振り返ると声の主は紗夜だった。
「ああ、紗夜ちゃん。やっぱりいたんだ・・・。ああ!別にがっかりしたとかじゃないからね!光輝君がいたから紗夜ちゃんもいるのかな~って思っただけで!」
「・・・それは分かっていますが。というより、どうして私がいつも光輝と一緒にいるような扱いになっているんですか・・・」
「そりゃあ・・・ねえ?」
「そうね・・・」
「まあ・・・そうですね・・・」
彩、千聖、麻弥が歯切れ悪く答える。
「お二人はシンコンフウフでいついかなる時も共にいるのではないのですか?」
イヴが爆弾を投下し彩たちは吹き出す。ちなみにこういう時は新婚夫婦ではなく相思相愛が正しい。
「な、何を言ってるんですか!決してそんな関係ではありません!第一!まだ付き合ってもいません!」
顔を真っ赤にしながら紗夜は否定する。
「と、とにかく、まずはスタッフさんたちと合流を・・・ふふふ」
「千、千聖ちゃん・・・ダメだって・・・ふふふふ」
「もう!白鷺さんに丸山さんまで!やめてください!」
紗夜が2人に注意を促し2人は深呼吸をする。ちなみにその3人に隠れて麻弥も深呼吸をしていた。
少しして2人が落ち着いたところで再び話し合いを始める。話し合いの結果、とりあえずスタッフと合流してその後安全を整えたうえで日菜を待つ、ということだった。
そしてスタッフと合流して先程の旨を伝えると、はじめはスタッフも反対したが彩たちの猛プッシュに押され、渋々了承した。
日菜が目を覚まし写ったのは天井だった。現状が全く掴めないためとりあえず自分の記憶を探る。
「(ええっと、アタシは今日撮影に来てて、お昼休みにみんなと話しててそれで・・・)」
「お目覚めかな?氷川日菜」
声の方を向く。するとそこには銀色の顔から6本の足が生え不気味な笑みを浮かべ、体色と同じ色をした鎧を着ている宇宙人が立っていた。
「まずは自己紹介からしよう。私は自由と自然を愛す星、レスカウト星系のマノン星から来た者だ。この星ではマノン星人とでも名乗っておこう。そしてここは我々の宇宙船内だ」
「すっごーい!宇宙人なの!?その顔どうなってるの?触らせてー。ねーねー」
「ええいやかましい!先に俺の話を聞け!」
日菜の態度にマノン星人が怒号を飛ばす。
「コホン。我が母星、マノン星は今、砂漠化が進み滅亡の危機に瀕している。そこで我々、マノン星人はこの星を移住先として決定した。青い海が満ち、緑の大地があふれるこの星はマノン星人が住むのに相応しい星だ。だが君たち人類がいた。自然を破壊し続けるだけの人類にはこの星に住むのは相応しくない!だが君は違う!我々と同じように自由を愛し、自由に生きている!君は我々と共にいるのが相応しい。どうだ?君さえよければ、地球を我々に引き渡してはくれないか?その際は君の望みを好きなだけかなえてあげよう」
マノン星人はこう高らかに話した。
「ん~、ヤダ」
白い歯をむき出しにして日菜は否定した。
「そうかいそうかい、快く受け入れて・・・え?ヤダ?」
「うん、ヤダ。なんだか君はるんっ♪ってしないんだもん、やっぱりみんなと一緒の方がアタシはいいかな~」
「くっ、やはり子供か。自分の状況が分からんのか・・・。君は今軟禁されているんだ、私の気分次第でいつでも君を殺すこともできるんだよ」
不気味な笑みをより濃くしてマノン星人はさらに脅しをかける。
「まずは軽めの痛みを味わってみるかい?それが嫌ならさっさと地球を渡しますと・・・ギャッ」
日菜を脅すマノン星人は後頭部に激しい痛みを覚えた次の瞬間、自分の体が宙に浮いていることに気が付いた。
「光輝!」
そう、光輝がマノン星人を蹴り飛ばしたのだった。
「貴様、あの時の・・・。そんな馬鹿な、どうやってここまで・・・」
「あ?罠のこと?あんなのよけてきた」
マノン星人の船内には外部からの侵入対策にトラップが大量に設置されている。エネルギー弾を放つだけの簡易的なトラップだがそれも数百となれば相当な弾幕だ。よく見ると光輝の体のあちこちはエネルギー弾がかすったような跡があるがそれでも直撃した様子はない。
「さあ、俺の幼馴染、返してもらうぜ」
光輝は怒りを込めた声で話す。
「日菜、あっちに走れば出入り口につながる!船から出てそのまままっすぐ行けば駐車場に出るからそこからみんなのところに行け!」
「でも光輝は?!光輝はどうするの?!」
「俺のことはいいから!早く!」
光輝に急かされ日菜は光輝が指さした方へ走り出す。だがそれを許すはずもなくマノン星人は日菜の前に立ちふさがるが・・・
「おらぁ!」
光輝がマノン星人に組みかかる。その隙に日菜は2人の間を潜り抜けていった。
「くそぉ!」
マノン星人が怒りをあらわにし光輝に殴りかかる。だが光輝は冷静に躱し先程日菜が出て行った方へ移動する。しかし怒り心頭のマノン星人はそれを気にも留めず再び殴りかかる。それもひらりと躱されさらに一撃入れられてしまう。しばらくそんな戦闘を繰り広げていると突如2人がいる通路のランプが赤く点灯したと思うとエネルギー弾が発射された。光輝はエネルギー弾すらもひらりと躱すが光輝を攻撃することしか頭になかったマノン星人は体中にエネルギー弾を受ける。
「グワアア!」
かなりのダメージを受けマノン星人は辺り一面を破壊しその場に膝をついた。
「おのれ・・・人間ごときに負けるなど・・・おのれええ!!!!」
雄たけびを上げながらマノン星人の体がぐんぐんと巨大化する。やがてそれはティガと同じくらいの大きさまでになった。
マノン星人の船から脱出した日菜は光輝に指示された通りの方へ走っていた。走り続けているとやがてパスパレのメンバーと、紗夜が見えたため走る速度を上げる。そしてそのままみんなのもとに飛び込んだ。
「みんな~」
「あ、日菜ちゃん。って・・・うわっ!」
「ちょっ日菜ちゃ・・・」
「日菜さ・・・」
「ヒ・・・」
受け止めきれず5人全員倒れてしまう。
「日菜!危ないじゃない!」
「おね~ちゃ~ん」
紗夜の説教も聞かず紗夜に抱き着く日菜。
「もうっ」
「えへへ~」
屈託のない笑顔を見せる日菜に、紗夜も怒るに怒れなかった。
「そういえば、光輝は?」
「光輝はあの宇宙人と戦ってるよ。アタシを逃がしてくれた」
先程の笑顔とは打って変わって真剣な表情で日菜は答えた。
「・・・今は逃げましょう」
「何を言うんですか白鷺さん!光輝を見捨てるのですか!?」
「いいえ、その逆よ、紗夜ちゃん。光輝君が必ず生きてるって信じて、今は逃げるのよ」
「ですが!」
「紗夜ちゃん、私は光輝君が大丈夫だって信じてる。それに紗夜ちゃんが一番信じてあげなくちゃ。ね?」
彩もウインクをして紗夜を説得する。
「・・・」
それでも紗夜は逃げるという選択が出来ずただ下を向くことしか出来なかった。だが突如、轟音がその場にいた人間の耳に響く。音のした方を向くとマノン星人がいた。だがその大きさは先程は到底違った。巨人、そうとしか表せない大きさだった。巨大化したマノン星人は足元の方を見ると・・・踏みつけた。高笑いをするマノン星人だったが、突如光と共に現れたティガに蹴られ、転げた。
「ティガ!」
「ティガ・・・来てくれたのね」
日菜、紗夜が感嘆の声を上げる。その後ろではスタッフたちが連絡をしようとしたり、カメラの準備をしたりしていた。
「ティガ?ティガって何ですか?」
イブが日菜たちに問いかけ、その後ろで彩、千聖、麻弥も頷く。
「ティガっていうのはねー、あの巨人の名前!」
「日、日菜さん。後ほどその話詳しく伺っても構わないですか?」
そう言った途端、1人のスタッフが日菜に声を掛けた。ティガのことがよほど気になるらしい。
「うん、いいよ~」
日菜はそれを指でOKマークを作り受け入れた。その後、別のスタッフが、
「みなさん、ここは危険です。まずは避難しましょう」
と呼びかけ、紗夜も渋々だがそれを了承した。
ティガはみんなが逃げたのを確認し、マノン星人と対峙する。起き上がったマノン星人もティガを見据え構える。互いにしばらく見つめ合い走り出した。距離を詰め、互いのチョップがぶつかり合う。その後、互いの腹に蹴りを入れ合う。互いに蹴られた箇所を抑えながら後退しする。だがその直後、マノン星人が右手から破壊光線を出す。ティガは腕をクロスさせ防ぐがマノン星人からの追撃のドロップキックを防ぎきれず蹴り飛ばされる。しかしティガはすぐに起き上がり、さらに襲い掛かろうとするマノン星人の腕にティガの腕から発射したエネルギー弾、ハンドスラッシュを当てひるませる。そこにすかさず飛び回し蹴りを叩き込む。それをもろに喰らったマノン星人は回転しながら大きく吹っ飛んだ。よろけながらも起き上がるマノン星人の目に必死に逃げる紗夜たちが写った。好機と思ったマノン星人は右手から再び破壊光線を紗夜たち目掛けて発射した。その行動を見て、ティガはすぐに自分の体を倒し紗夜たちをかばった。
『グワアア』
「また・・・」
「ティガって、やっぱり私たちの味方なのかな・・・」
紗夜、彩は呟き、後ろの方ではスタッフがカメラで撮影をしていた。
十数秒間受け続けたティガだったが力を振り絞りハンドスラッシュを放つ。ハンドスラッシュはマノン星人の顔に直撃し破壊光線も止んだ。ティガは脱力しその場に倒れる。だがマノン星人は倒れたティガの首を掴み持ち上げ、数発腹にパンチを叩き込んだ後、ドロップキックを叩き込んだ。ティガは吹っ飛び轟音を響かせながら地面に打ち付けられる。
『ピコンピコン』
加えてティガのカラータイマーも点滅し、ピンチに陥る。さらにマノン星人は追撃を与えようと再びティガの首を掴み持ち上げ、破壊光線を喰らわせようとするが・・・その時、火炎弾がマノン星人に命中した。マノン星人はティガを放して後退する。マノン星人から解放されたティガは、火炎弾が発射された方向を見ると、先日助けてくれたあの巨人がいた。
『キリ』
巨人がティガ側に駆け寄る。ティガも立ち上がり再び構える。
『チャッ』
『キリ』
マノン星人も構え、2人を見据えた。まずはティガがマノン星人に殴りかかるが、前転で躱される。だが起き上がった直後に巨人が飛び蹴りを当て、マノン星人はティガを巻き込んで吹っ飛ばされる。2人はすぐに立ち上がるが若干早く立ち上がったティガがマノン星人にチョップ、パンチと連撃を浴びせ、最後にアッパーを入れる。だがしかしマノン星人はあえて大きく飛びのき、巨人を踏み台にして体勢を立て直した。そして両手から破壊光線を出し、ティガと巨人を苦しめる。ティガはこれまでのダメージのせいかすぐに膝をついてしまう。一方巨人はすぐにそれを払いのけ、マノン星人に果敢に攻め込む。蓄積ダメージの差だろうか、巨人とマノン星人は一進一退の攻防を繰り広げていた。やがてティガも起き上がりマノン星人に攻め込む。ティガと巨人は連携が取れているとは到底言えないが、その連撃は確実にマノン星人にダメージを与え、少しずづマノン星人の攻撃する余裕を奪う。だがそうやってばらばらに攻撃するといずれ隙が生まれる。ティガのチョップと巨人の突きのタイミングがが重なったその時、マノン星人は2人の腕を叩き落とし、ティガに顔面にパンチを直撃させる。ティガはひるみ、顔を抑えながらすぐに後ろに下がる。その間にも巨人は攻めるが、マノン星人はそれを流し、巨人に反撃をする。
「(このままじゃ・・・。くっ、しょうがない、玉砕覚悟で!)」
向こうでは巨人がマノン星人に投げ飛ばされる。それを見たティガは意を決して体中の力を振り絞りマノン星人にタックルをする。ティガはすぐに起き上がりまだ倒れているマノン星人と距離を取る。手を前に突き出しそれを開きながらエネルギーを貯める。エネルギーが溜まったところで、胸の前にL字に両手を組み、右手から発射する・・・
ゼペリオン光線!
ゼペリオン光線はちょうど立ち上がったマノン星人の胸に直撃し、マノン星人の体を、爆発四散させた。
『ガアアア・・・ハッ!』
マノン星人が爆散したことを見届け、巨人は炎に包まれ消え、ティガは彼方に飛び去って行った。
2週間後・・・5月12日
「ほらは~や~く~、始まっちゃうよ~」
「日菜!引っ張らないで。服が伸びちゃうじゃない・・・」
「日菜、まだ10分前だろ・・・」
昼過ぎ、紗夜と光輝は日菜の手によって氷川家のリビングに引きずり出されていた。今日は件の番組の放送日だ。なんでもあの後スケジュールの調整が出来ないためごり押しで撮影したらしい。ソファの前で3人並んで座り、時間を待つ。光輝は今日自宅で見るといったのだが日菜が有無を言わさず引っ張り出してきた。
やがてタイトルコールが流れ番組が始まる。始めは公園の桜の風景が映され、やがてハルカさんとパスパレのメンバーのパートが始まる。序盤は彩の失敗が少し目に着いいたが中盤からその様子は一変、6人が仲良く公演を散歩する和やかなものに変わった。そのまま見続けること数十分、次に一行が向かったのは光輝と紗夜が色々買ったあの茶屋に来た。
『ここでは、皆さんに豆腐ソフトクリームを食レポしていただきます!』
「「え?」」
スタッフのセリフを聞き、光輝と紗夜が日菜の方を見る。
「なんかね~、千聖ちゃんに後で聞いたんだけど~、スタッフさんの連絡が間違ってたんだって~」
「・・・それ俺毎日魚食べなくてよかった?」
「・・・私が毎日人参を食べたのは何だったのよ!」
「光輝、もう豆腐出しちゃだめだからね」
「・・・当たり前だ」
ガックシと肩を落としながら光輝が言う。しかしまた顔を上げ画面を見ると・・・
「(でもまあ・・・あれがなかったらこんな顔もなかったのかもな・・・)」
そこにはパスパレのメンバーと笑いながら食レポをしている姿があった。そう考えると案外豆腐修行もいい仕事をしたと思う。
「よし日菜、今日の晩飯は日菜が決めていいぞ。何が食べたい?」
「ん~、ポテト!」
「それ以外」
「え~」
「(やっぱり、守り切れてよかった)」
今ある幸せをかみしめながら、光輝はそう思うのだった。
FWF予選に向けて日々順調に鍛錬を重ねるRoseliaのメンバー
だがリサはその順調が逆に不安を感じてしまう
次回『空回り』
お楽しみに!
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8話『空回り』
ここのとこ毎日早く投稿しろという幻聴がします。テストが終わったら強化期間するので許してください
光輝君の見た目の設定がないのは単に作者のそういう知識不足です。イケメンの定義が欲しい。お好きな見た目(何なら読者自身)にでもしてあげてください。
前から思ってたんですけど3話の伸びは何ですかねぇ。是非他の話も見てください
Amesupi様、春採 慎吾様、deportare様、お気に入り登録ありがとうございます
金義理様、感想投稿ありがとうございます
なんか小説内のスケジュールがキツキツですけどそこは愛嬌ということで許してくださいごめんなさい
富、名声、力、この世の全てを手にした女、ガールズバンド王、都築 詩船(ツヅキ・シフネ)。彼女が死に際に放った一言は、女たちをバンドへと駆り立てた。
「やりきったかい」
女たちは、武道館を目指し、夢を追い続ける。
「・・・っていうのを思いついたんですがうちのキャッチコピーにどうですか?」
「光輝君・・・オーナーはまだ死んでないから。勝手に殺すのはダメだよ・・・」
「じゃあまりなさんがなりますか?」
「私もまだ死んでないから!」
世はまさに・・・大ガールズバンド時代!
4月28日・・・
ガールズバンドの中でも屈指の本格派、Roseliaは今日、ここ、ライブハウスcircleで練習をしていた。
「あら、もうこんな時間なのね・・・。今日はもう終わりにして片づけをしましょう」
そう言うはRoseliaのリーダー、元孤高の歌姫、湊 友希那(ミナト・ユキナ)。
「はーいっ!りんりん、しょー兄。今やってるイベントの攻略法一緒に考えながら片付けしようよ!」
友希那の指示に元気よく答える紫のツインテールがチャームポイントのこの少女は大魔姫、宇田川 あこ(ウダガワ・アコ)。
「うん・・・いいよ」
「はいよぉ。じゃあ光輝、予約とか任せちゃっていいか?」
あこの呼びかけに燐子と翔も乗っかる。この3人はNFOというゲームを一緒にプレイする仲なのだ。
「りょーかい」
そう言い光輝は部屋を出る。
その後ろでRoseliaののママ、今井 リサ(イマイ・リサ)が不安そうな表情をしていた。
「・・・リサ、どうしたの?」
そんなリサを見て友希那はリサを心配する。
「えっ!?あ、いやいや別に。友希那こそ、どうしたの~?何か考え事?」
「いえ、私は特に・・・いつも通りよ」
「そ、そっか。ふ~アタシちょっと外の空気吸ってこようかな。みんなお願いしちゃっていい?」
「今井さん・・・大丈夫ですよ。いつも片付けを・・・いっぱいやって・・・貰ってるので」
「そうだよ、リサ。本来こういうのはマネージャー(笑)の俺や光輝がやるんだから」
言い忘れていたが光輝と翔はRoseliaのマネージャーをしている。マネージャーと言っても全体のスケジュール管理や雑用ぐらいしかできないため本人たちは(笑)と思っているが。
「あはは、みんなありがとね。それじゃ、おつかれ~☆」
そしてリサは自分の荷物を片付け、そそくさと部屋を後にした。
「・・・今井さん?」
その様子を見た紗夜はリサの態度に違和感を覚えた。
「すいません、皆さん。私も外の空気を吸ってきても大丈夫でしょうか?」
「大丈夫ですよ紗夜さん!あこ達がやっておきますよ」
「ありがとうございます」
そして紗夜も自分の荷物を片付け、部屋を後にした。
リサはcircleに併設されているカフェにえ思案に耽ていた。
「(はぁ・・・。な~んか空回りしちゃったかな~?・・・けど、やっぱり言わないのは変・・・だよね?)もしかして、いざフェス!ってなったらまた不安になっちゃったとか?音楽の向き合い方とか、お父さんのこととか・・・」
「今井さん、お疲れ様です」
その時、紗夜がリサに声を掛けた。
「うわ!紗夜!?後ろから急に出てこないでよ~」
「そんな言い方、失礼じゃない」
リサの言い草に紗夜が呆れて言う。
「ご、ごめん・・・びっくりしちゃって」
「考え事ですか?」
紗夜が本題に切り込む。
「あ~いや、アタシのことっていうか・・・友希那のことなんだけど」
「湊さん?普段と変わらないように感じたけれど・・・」
「そこが問題なんだよ!だってそろそろ『FUTUR WORLD FES.』に向けたコンテストの申し込みが始まるんだよ?けど友希那、ホントにいつもと変わらないし・・・。今年はコンテストも、フェスにも出ないつもりなのかな?」
「そんなことはないでしょう」
そう、Roseliaとは元々友希那が父の仇のために音楽界の頂点とも言える『FUTUR WORLD FES.』に出ることを目的に結成されたバンドなのだ。そこから紆余曲折あって今のようになり、全員で『FUTUR WORLD FES.』に出ようと日々努力を重ねている。
「フェスについて何も言わないってことは友希那、また悩んで1人で抱え込んでるんじゃないかなって思って心配でさ」
「私たちはずっとフェスに向かって進んできた。湊さんだってそうでしょう。湊さんを信じて、もう少し見守ってもいいんじゃないかしら?手を差し伸べるには早すぎるわ」
「うう、そうかなあ・・・心配なんだよ~。フェスって、友希那の1番の夢だったからさ。なんの迷いもなく出場してほしいっていうか・・・」
「ところで今井さん?『あなた』はどうして『FUTUR WORLD FES.』に出るの?」
「それは、Roseliaとしての高みを目指したいから。頂点の景色を見たいから。だよね?」
リサは紗夜の問いに迷うことなく答えるリサ。
「・・・そう」
リサの答えに紗夜は難色を示す。
「紗夜~、そろそろ行くよ~」
その時、紗夜を光輝が呼び出す。
「それじゃ今井さん、また」
「あ、うん。お疲れ」
そして紗夜はその場を去る。
取り残されたリサは1人頭を抱える。
「今の質問・・・アタシ、間違ってたかな?(Roseliaとしての高みを目指す。頂点へと向かう。Roseliaとしての誇りを大切にして。そのために、楽器の練習をして、もっともっとメンバーとして相応しくなりたいって思ってて・・・)アタシは?『アタシ』はどうしてフェスに出るんだろう。このまま、フェスに出ていいのかな?」
「リサ、行くわよ」
「うん、分かったよ友希那・・・」
いつもの元気を見失ったままリサは帰路に着いた。
翌日・・・4月29日
「今日の練習も楽しかった~」
「うん・・・今日・・・私・・・いつもよりうまくいった気がする」
「えっへへー♪あこもそうなんだー!」
「お、じゃあ今日はトッピングつけてやる!」
「「ありがとう、しょー兄(翔君)!」」
circleからの帰り道、今日は珍しく7人で帰っていた。あこ、燐子、翔の3人が先行する。
「友希那、こないだ出た数学の宿題、ちゃんとやったー?」
「・・・締め切りまでまだ時間があるわ」
「またそう言って、ギリギリまでやらないやつでしょー?」
後ろではリサ、友希那、光輝(with バイク)、紗夜が並んで歩いていた。
「今井さんは相変わらずね」
「?どうしたの~、紗夜?」
「面倒見がいいとうか、なんというか」
「確かに、ずっとみんなの面倒見てくれてるもんな」
光輝も紗夜に続いてリサを褒めちぎる。
「ちょ、ちょっと照れるな~。でもちょっと過保護すぎたかな?けど、宿題はちゃんとやらないとだよ、友希那」
「もう、分かったわよ」
頬を赤く染めながら友希那がそっぽを向く。
「ふふ・・・」
「燐子、笑わないで」
そして前方を歩いていた燐子がくるっと振り向き友希那に笑いかける。
「ごめんなさい・・・。でも・・・本当にお2人は素敵な関係だなと・・・思って・・・幼馴染って・・・いいですよね。もちろん、円日さんと氷川さんのお2人も」
「それでも、今井さんは少し、過保護すぎる時があると思います」
「え~、ご飯作りに来てもらっている紗夜も随分と過保護な扱い受けてるんじゃないの~?」
リサがニヤニヤと紗夜ににじり寄る。
「今井さん、それとこれとは事情が違う・・・ちょっと、その手は何ですか!ちょっ・・・やめっ・・・」
「うりゃうりゃー」
リサが紗夜の体中をくすぐる。くすぐりは紗夜には効果抜群なようで身をよじり悶える。
「あはは!」
その様子を見てあこが笑う。そしてその場に和やかな雰囲気が漂った。
ほどなくしてして友希那、リサと別れ5人になる。
「じゃあ俺準備があるから先に行くから、また後で」
「おう、任せた」
そのまま翔も走り去る。
さらにしばらく歩くと1軒の店が見えてくる。店の名はラーメン銀河、翔のバイト先である。
「たのもー」
「ここは道場じゃないっつーの」
「へいらっしゃーい」
「お、来たな」
店内に入ると翔、同じくこの店のバイトの佐藤 ますき(サトウ・マスキ)、そして店長が出迎えた。
「「「こんにちはー」」」
「おっちゃん、塩」
「私は普通ので」
「あこはチャ-シュー麺で!」
「私は・・・味玉を・・・」
「はいよ、大盛2つチャーシュー麵1つ、並トッピング味玉1ね。トッピング代は翔のつけと」
店長が注文の確認を取る。
「ちょっと!私は大盛など頼んでません!」
「でも紗夜先輩並だと替え玉頼むじゃないですか。あと光輝先輩、ここは醤油しかないっていつも言ってるじゃないですか」
ますきがツッコミをする。それに対し紗夜は顔を赤くして顔を伏せることしか出来なかった。
その後、店長から飯を食っとけと言われた翔とますきも加わり6人でラーメンを食べたのだった。
[食事中の一幕]
「光輝先輩、最近紗夜先輩との進展はどうですか?」
麺をすする光輝にますきが近づいて聞く。ますきも今をときめくぴちぴちのJK、そういう色恋沙汰には興味深々なのだ。
「・・・全く。なんか紗夜が俺に抱き着いてくれたけど無意識だったらしい。やっぱ難しいのかな~、幼馴染恋愛って」
「(それ大分いいとこまで来てるんじゃ・・・)じゃあデートとか誘ったらどうですか?」
「デートかぁー。また今度やってみるかー。サンキュー」
「(後で翔先輩から抱き着いた件聞いてみっか)お役に立てて何よりです」
やけにつやつやした肌を光らせながら返すますきであった。
5月1日・・・
放課後の羽丘女子学園、ここには友希那やリサ、日菜にあこなど多数の生徒が通う進学校である。この羽丘の3ーAには、友希那、そしてリサがいた。
「リサ、そろそろ練習に行きましょうか」
「う、うん!あのさ、友希那。ちょっと見てほしいのがあって・・・これ」
そういってリサは友希那に数枚の紙を渡す。そこに書いてるのは詞だった。
「これは?リサが書いたの?」
「う、うん!その・・・アタシもRoseliaの一員として、もっとできることを増やしたいと思って。前見せたのよりもいい詞が書けてると思う!それで、もしイケそうならこの詞に曲をつけてみんなで演奏したいなーなんて・・・」
友希那は渡された紙をじっと見る。
「・・・『青薔薇 咲き誇る庭園』」
「ど、どうかな・・・」
全体を読んだ友希那は一息つきこう言った。
「・・・青薔薇はもう、私たちの足元に咲いているわその道を歩くあなたには、何が見えている?」
「え・・・えっと・・・頂点への道?高みへの道、なのかな」
突然の友希那の言葉に動揺しながらも答えるリサ。しかしその様子を見て、友希那は言葉を続ける。
「・・・そう。悪くない詞だと思う。以前見せてもらったものよりも洗練された言葉が並んでいると思う。でも・・・。この詞は歌えない。少なくとも、私は歌えないわ」
冷たく言い放った。
「え・・・ど、どうして?悪いとこがあるなら教えて!あの、アタシ・・・」
「練習に行きましょう」
リサの言葉を遮り友希那が歩き出す。それにつられてリサも追いかけて行った。
その日の練習の休憩中、リサはcircleのカフェにいた。
「・・・はあ。(友希那に言われたことが気になって練習に集中できないよ・・・。何がダメだったんだろう・・・)・・・青い薔薇・・・花言葉は、不可能を可能にする。それが咲き誇っているのがRoselia・・・。友希那の言う通り、もうアタシたちの足元には青薔薇が咲き誇ってるんだよね・・・。Roseliaの誇りを大切にしようって言ったあの時から・・・。青薔薇が咲く道、青薔薇が導く道。アタシは何が見えるんだろう?」
「今井さん。調子はいかかですか?」
「うわあ!?ねえなんでこの話だと紗夜は後ろから急に出てきてばっかなの?ビックリするじゃ~ん」
ぎこちないながらも笑顔で話すリサ。
「こんなにシリアスなシーンでメタなこと言わないでください」
「あ、うんごめん。それで紗夜?どうしたの?」
「・・・何かあったんですか?今日のあなたの調子、いつもより悪いように見えたから・・・」
「全然うまくいかないんだ、作詞」
「作詞?」
「うん。アタシ最近作詞をしててね~。今日友希那にできた歌詞を見せたんだけどさ、これじゃ歌えないって言われちゃって。あなたには何が見えてる?って聞かれたんだけどさ、それも分からないんだ。アタシ、『Roselia』として見えちゃいけないものが見えてるのかな?」
リサの顔にジワリと涙が滲む。
「やっぱりアタシ、まだまだなのかなあ?『Roselia』としてできることを探そうと思ったけど、作詞もダメだし、練習も足を引っ張っちゃうし・・・。やっぱりダメだな~アタシ」
「冗談でもそんなことを言うもんじゃないわ」
「・・・ありがと。でもさ、やっぱり思っちゃうんだ。アタシはみんなより劣ってるって。グスッ」
「やめなさい」
「・・・紗夜?」
「やめなさい。それ以上は聞きたくない。・・・私はあなたのことをRoseliaのメンバーとして信頼しています。これは以前にも伝えましたよね。私は心からあなたのことを信じています。だから、あなたが今言った言葉の意味を考えて。あなたの言葉は、あなたの背中を信じ、預けた相手にどう伝わるか・・・」
「あっ・・・!ごめん、紗夜!」
「仲間を信頼するということ。それがどういうことなのか考えてください。・・・私は今、あなたに裏切られたような気分です」
そう言い残し、紗夜はcircleに帰っていった。
「・・・最悪だ、アタシ」
リサは涙をぬぐいながらcircleに戻っていった。
「浮かない顔だな、リサ」
circleに戻ったリサに、光輝から声が掛けられる。今日の光輝はcircleのスタッフとして来ていた。
「なんかあったのか?さっき紗夜と話してたけど」
優しい笑顔で尋ねる光輝。意を決したリサは事の経緯を光輝に話した。リサが話している間、光輝はただ相槌を打ち話を聞くことに徹していた。やがてリサの話が終わると光輝は口を開いた。
「リサはさ、もっと俺らのこと頼ってくれればいいのに」
「え?」
光輝が言ったことに思わず聞き返す。
「リサはいつも1人で頑張りすぎなんだよ。もっと俺や、みんなに相談してみればいいじゃん。相談さえしてくれればできる限りのことはするよ。みんなも多分、いや、絶対。1人で頑張ることも必要な時はあるさ。でも、今はその時じゃない。確かに俺なんかは作詞のこととか全然分かんないけど、何か協力できないことはないか考える。いつでも頼っていいんだよ」
「・・・そっか。アタシ、今までみんなのこと頼ってない。せっかくのバンドなのに・・・。はは、ダメだな、アタシ」
「またそうやって自分を卑下する~。リサのおかげでRoseliaがあるようなとこもあるんだし、もっと自分に自信持たなきゃ」
「うん、ありがとう。光輝」
「おう、行ってこい」
リサは最高の笑顔で感謝を告げ、光輝は最高の笑顔で送り出した。
その日の夕方、光輝と紗夜はいつも通り光輝のバイクに2人で乗り帰っていた。珍しくお互いに何も話さない中、光輝が口火を切る。
「紗夜、今日リサから聞いたよ。リサの悩みとか、紗夜が言ったこととか」
「!・・・そう」
紗夜は1度驚きの表情を見せたがすぐに淡泊な反応をする。
「よく言ったと思うよ。そうやって人の悩みを聞いてあげる人はなかなかいないもん」
「・・・でも・・・私は・・・今井さんに強く当たってしまった。傷つけてしまった・・・」
「でも紗夜がそんだけ強く言ったってことは、それだけリサのことを大事に思っているから言ったんだろ?それはリサにも伝わってたよ。大丈夫、紗夜はちゃんとできてたさ」
「・・・」
紗夜はうつむいたまま何も言わない。
「大変なことをやってくれて、ありがとな」
紗夜は相変わらずうつむいたままだったが、その顔には一筋の涙と、微笑みの表情があった。
Roseliaの面々のもとを次々訪れるリサ
彼女らはそれぞれの思いをリサにぶつける
「リサ」
「リサ」
「リサ」
「今井さん」
「リサ姉」
「今井さん」
次回『花々を連れて』
お楽しみに!
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9話『花々を連れて』
この話の途中ではライダーベルトが出てきます。当ててみてね(この小説はウルトラマンがメインです)
ここ最近ウマ娘にはまって絶賛リセマラ中です。新しい小説思いついたんで年明けまでにリセマラ終わってたら書きます
書いてる途中方便を入れそうになったのはここだけの秘密
5月2日・・・
ここは羽沢珈琲店。商店街の一角に佇む喫茶店だ。開店して少し経ち人の波も落ち着いてきた頃、店内の端っこにひっそりといた燐子に声が掛けられる。
「やっほー☆ごめんね、急に呼び出したりして」
声の主はリサ、同時に、燐子をここに呼び出した張本人である。
「いえ・・・今井さん・・・何かあったんですか?」
「あー、えっと・・・その、燐子に本を貸してほしくて。それか、おすすめの本があれば教えてほしいんだ」
「どんな本を・・・探しいてるんですか?」
「あー、なんだろ。詩集・・・とか」
「詩集ですか?」
思ったりもしなかったジャンルに思わず聞き返してしまう燐子。
「うん。最近アタシ作詞してるんだ。まだまだの出来だけどね~。アハハ。それで、創作意欲とか、詞選びとか。そう言ったのを何か貰えたらなあって」
「わかりました。じゃあ・・・今から・・・私の家に・・・探しに・・・行きましょう」
「えっ!あたしとしては早い方が嬉しいけど今から行って大丈夫なの?急に行っちゃって。次の練習の時でも大丈夫だよ!」
「いえ・・・もし・・・創作意欲を求めて・・・詩集を読みたいのなら・・・直接見て・・・自分で選んだほうがいいですし。頼られて・・・嬉しい・・・ですし・・・何よりも・・・今井さんの・・・力になりたいんです。バンドメンバーとしても・・・その・・・お、お友達・・・としても」
少し頬を赤らめながらリサに思いを伝える燐子。
リサは光輝が言っていたことをようやく本当に理解できた気がした。
「燐子!うん、ありがとう!(燐子は・・・アタシのことを信頼してくれている。アタシのために何かしようとしてくれている。多分、みんなも同じ。そうじゃん。忘れちゃダメじゃん、こんなに大切な事。アタシ1人で生きてるわけじゃない。頼ってもいいんだよ。その分、アタシも頼らればいいんだから)」
その日の午後・・・
リサは羽丘の体育館にてダンス部の部活をしていた。今は休憩中、リサは皆の所から離れ、1人読書をしていた。彼女の手にある本は詩集。午前中に燐子のもとから借りてきたものだ。
「(わ、この表現素敵・・・。でも、アタシにこんなに素敵なの書けるかな・・・)」
「・・・え。リ・姉。リサ姉」
顎に手を当て、深い思考に漬かっていたリサだったが誰かから声を掛けられ帰ってくる。
「あ、あこ!?どうしたの?」
「リサ姉が読んでた本がりんりんが持ってたのとおんなじ本だから気になったんだ~。リサ姉大丈夫?最近お疲れな気がするから心配だよ~」
「何だそんなことか~。心配かけちゃってゴメンね。最近ね、アタシ、作詞してるんだ。ま、まだまだだけどね。それで、何かヒントがないかなあ~って燐子に借りたの。でも頑張ってもなかなかいい言葉が出てこなくてね~」
リサの悩みを聞き、あこは少し唸った後、閃いたと言わんばかりに顔を上げリサに思いを伝えた。
「あこもそういうことあるよ!そんな時はね、あこの好きなものとか、なんであこがいるのかとか考えたんだ!そしたら、いろいろヒントが見えてきたの!・・・結局、うまく伝えられなかったんだけどね」
あははと乾いた笑いを付け加える。
「なんでアタシがいるか・・・か。あこ、ありがと。あこって最近ほんとしっかりしてきたね~☆」
「ほんと!?やったあー!それじゃリサ姉、そろそろ練習再開だよ!一緒に行こ!」
「あ、もうそんな時間かあ~」
リサとあこは2人並んで歩いて行った。
「(アタシがいる理由・・・。『Roselia』のリサとしてある理由・・・)」
夕方・・・
リサは部活終わりに今日の夕食の食材を買いに商店街に来ていた。
「え~っと、後はネギと白菜と・・・卵・・・牛肉・・・かな」
誰が見ているわけでもないのにリサは元気に見せようと母親から送られたメールを読み上げる。だが彼女の心の仲は先程あこに言われたことが引っかかっていた。
「(アタシが『Roselia』としてある理由なんて・・・友希那のお世話に近いとこがあるもんねえ・・・。こんな気持ち、こんな理由、歌詞になんてできない。じゃあどうすれば・・・)」
ひたすら迷いながら商店街を歩いているとペットショップから見慣れた顔が出てきた。しかもドッグフードを食べながら。・・・ドッグフード?
「・・・翔?何食べてるの?」
「おお、リサじゃん」
「質問に答えて!」
「ドッグフードだけど?」
「ドッグフードは人間の名前じゃないよ」
鋭いツッコミが入る。
「ほらドッグフードって栄養豊富だし」
「まずくない?」
「ほら、味覚に集中しなければ」
「できないよ!」
「ご飯私が作ろうか?」
「あくまで栄養補給だから大丈夫だよ」
こいつは何を言っているのだろうか。リサの脳みそは理解が追いつかない。
「そういやリサはどうしてここに?」
「おつかい。そういう翔こそなんでここに来たのさ」
「次郎丸のドッグフードと俺の晩飯用の食材買いに」
「ほんとになんでドッグフード食べたの?」
「リサ、最近大丈夫か?」
「え?」
突然の質問に困惑の色を見せるリサ。
「いやさ、最近のリサはなんか張りつめてた・・・っていうかなんっつたらいいかな~。まあ、そんな感じだったからさ」
「あーうん何言ってるか分かんないけどなんとなく分かった。つまり最近のアタシはなんか変だったと」
「そういうこと。なんか困ってるなら話聞くぜ」
「あ~じゃあできるだけすぐとか嬉しいかな。できればだけど」
「じゃあ今からするか」
「え?今から?ちょっ・・・」
翔はすぐさまリサの手を取り自宅方向に走り出した。ドッグフードしか買っていないがこういったつっぱししり気味というか行動力はあるが少し抜けてるところは彼らしいところである。リサを引っ張りながら走ること10数分、一軒のアパートにたどり着いた。ここが彼の自宅である。102と書かれた扉の前で足を止め鍵を開ける。
「らっしゃい、リサ」
翔に招かれて入った彼の部屋を見て、リサは意外に思った。走り気味な翔らしからぬきれいに整頓され、爽やかな雰囲気がした部屋だった。だがその爽やかな雰囲気に相応しくないものも同時に目に入ってくる。部屋の隅に重ねられたおもちゃたちだ。自分が幼少期見たことのある物から全く見たことのないゴツゴツした感じの物まである。中でも一番に目を引いたのがガラスケースに入った物。自分がまだ幼稚園生の頃に流行っていたガラケーのような物が着いた銀色のベルトが飾られていた。そのすぐ横には赤と黒で彩られた腕時計のような物も飾られていた。リサにはこれの価値は分からないが、とりあえず何か凄いものということは伝わった。さらにその下に目を向けると他にもまだまだあった。スペードが正面に描かれているものやダイヤが正面に書かれているものなど4個ほどのベルトがあった。
「まあなんだ、急に連れてきちゃったけど・・・出来ればでいいさ。話してくれないか?リサの悩み。その・・・俺も気になるからさ」
「あ、うん。じゃあ・・・」
そしてリサは自分が作詞していること、友希那に歌えないと言われたこと、紗夜や光輝、燐子、あこに言われたことを話した。
「・・・こんな訳だよ。で、今あこに言われた『Roselia』としてのアタシの原点。まあ友希那の世話焼き・・・になるのかな。にたどり着いたんでけど・・・これじゃだめだなって。アタシ、どうすればいいのかな。こんな状態じゃ『Roselia』に相応しくないよね」
リサの独白を受け、翔はすぐさま言い放った。
「リサ、Roseliaにこだわる必要ないんじゃないか?あと世話焼きがRoseliaに相応しくない理由はやめてくれ刺さる」
「あっゴメン。それで・・・『Roselia』にこだわる必要ないって?」
「いやさ、リサの話聞いてるとRoseliaとしての歌詞を書こうとしてるじゃん」
「そうだね。でもそうじゃない?『Roselia』で演奏するんだから」
「確かにそうだな。でもさ、それならRoseliaの誰が書いてもいいよね」
翔の言葉を受けてリサは黙り込む。
「リサは確かに『Roselia』のベーシストだけど『今井リサ』でもあるだろ?だったらさ、『今井リサ』でしか書けない歌詞を書けばいいんじゃないかな」
「アタシでしか書けない・・・歌詞」
「そ、言うなればリサらしい歌詞、かな」
「『Roseliaじゃない・・・アタシらしい歌詞。・・・いいの?そんな我儘・・・」
「我儘なわけあるか。作詞なんだから」
引っかからないわけではない。一個人の個人的な感情をバンドでやっていいのか、みんなはどう思うのか。だが、それでも、リサはそうしたいと思った。やってみてもいかもしれない。やってみたい、やってもいいんだ。リサの心の中にある迷いが少しずつ溶けていく。それは波紋のように広がりリサの心を満たしていく。彼女はもう、迷わない。
翌日・・・
「・・・」
「・・・」
厳粛な空気が流れていた。ここはcircleに併設されたカフェ。ここでリサは友希那に書いた歌詞を見せていた。翔からの助言を受けた後、リサは一夜で歌詞を書き上げたのだった。
「(やっぱり緊張するよ~!ていうか、深夜のテンションで書いちゃってから変なとこありそう・・・。ヤバ、急に不安になってきた)」
「・・・素敵な歌詞ね」
「えっ、ホント!?」
「ええ、この詞なら、Roseliaとして歌えるかもしれない」
「ホント!?いいの!?Roseliaとして歌ってくれるの!?」
友希那に言われた言葉があまりにも嬉しすぎて何度も聞き返すリサだった。
「ええ、リサらしいいい詞だったわよ」
「~~~~!友希那!ありがと!それじゃあ早速、今日の練習でみんなにも見せてみるよ!」
大きくガッツポーズをして全身で喜びを表すリサであった。
circle内のスタジオにて、リサは自分が書いた歌詞をメンバーのみんなに見せていた。
「今井さんらしい温かみのある、素敵な詞ですね」
「ああ、本当にリサらしい」
紗夜、光輝が称賛の言葉を贈る。
「リサ姉、歌詞できたんだね!」
「あたたかい風景が・・・浮かんでくる。とてもいい詞だと思います」
「リサ!いいじゃんこれ!」
続いてあこ、燐子、翔も褒めたたえ、翔に関してはリサに向けてサムズアップも送る。
「ありがとう。これはアタシが小さい頃に見た、音楽が広がる風景、アタシの音楽の原点なの」
「それを詞にした、というわけね」
「うん、そういうこと」
「今井さんらしさが出ている詞だったのは、そういうことだったのね」
「最初はさ、Roseliaらしさを気にしすぎちゃっててぜんぜん自分の言葉にならなかったんだ。でもみんなに相談して、色んなことを言われて、やっと出来たんだ。だから、ありがとうね」
リサが思いをみんなに伝える。お礼を受けたメンバーはそれぞれ、照れたり、どこか誇らしくしている者もいる。反応こそそれぞれだったが、思いは皆一つ。『こちらこそいつもありがとう』だった。
「あのさ、友希那・・・。今年はその・・・フェスに出るよね?」
ここで、リサが本題に切り込む。
「?ええ、当然よ。今年はトップの成績で必ずフェスに出る」
友希那の決意は変わらなかった。
「だよね。あ~~よかったあ・・・。友希那、何にも言わないからまた悩んでるのかと思っちゃったよ~」
「フェスのことでもう悩んだりなどしないわ。みんな、当然出るものだと思って、何も言わなかっただけよ」
「友希那、それはいいんだけどマネージャー(笑)の俺らにはせめて伝えてくんない?あの、申し込みがさ」
「うん、それは流石に・・・」
翔と光輝が友希那に懇願する。
「あ、そうだ!マネージャーのお二人さん、1つお願いがあるんだけど」
「「「「「「?」」」」」」
リサ以外が首を傾げる。
「コンテストの申し込み、まだなんだよね?」
「ああ、そうだけど」
翔が答える。
「あれ・・・アタシにやらしてくれないかな。アタシの中の決意と覚悟を、もっともっと確かなものにしたくて。お願い!」
「それくらいならもちろん大丈夫だよ。っと確かここら辺に・・・」
そう言って翔は自分の鞄を漁り、中から1枚の紙を出した。
「ほい」
そしてリサにそれを手渡した。紙の内容はコンテストの募集だった。
「うん、ありがとう」
空には『虹』が輝いていた。
GWも終盤に差し掛かる中、光輝と紗夜がデートに行くことになった
果たして二人の仲は進展するのか
次回『天弓に見守られて』
お楽しみに!
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10話『天弓に見守られて』
大語様、ニックネームは忍者様、お気に入り登録ありがとうございます
キリエルアーツ購入しました、これで5月まで息できます
それとクリスマス紗夜さん可愛すぎな(実はクリスマスRoseliaと聞いて血反吐吐きそうになってた)
話数ごとのUA数見るとプロローグでふるいにかけられてるんですよね・・・
プロローグだけ書き直そっかな・・・(しないやつ)
デートしたことないから書くのがすごく難しかった・・・
投票はあと4話で締め切ります
5月3日・・・
リサの作詞騒動の翌日。今日も今日とてRoseliaは練習をしていた。その休憩、粗方その場の整理を終え、一息ついていた光輝にリサが話しかけた。
「ねえ、光輝。これバイトの店長からもらったから上げるね。紗夜と行ってきなよ」
リサから差し出されたのは映画のチケット。しかし封筒に入っていて中身が見えなかった。そこで取り出そうとした光輝にリサが注意を促す。
「ああ、開けないで。ほら、お楽しみにさ。ね?」
瞬間、光輝は悟った。これ押し付けてきたやつだ、と。しかし断る理由もないため深追いせず受け取る。
「ありがと、紗夜と行ってくるよ。そうだな・・・いつがいいかな~」
「惚気ないの!」
「惚気てないわ!寧ろ不安なんだが・・・」
紗夜のことを女性として好きな光輝だったが紗夜が果たして光輝のことを男として好きなのか分からないことがかなり不安だったりする光輝。アプローチをしないからである。
「じゃあさ、デート行ったら?明後日」
「明後日!?確かに練習ないけど・・・」
「善は急げだよ~!ほら、早く紗夜誘う!」
「分かった分かった!練習終わったら誘うから!」
結局リサに押され、誘うことが確定になったのであった。
夕方・・・
練習が終わり各々が帰路に着いた頃、光輝はようやく意を決して紗夜をデートに誘った。
「紗夜、リサから映画のチケットもらったからさ、明後日見に行かない?」
「いいじゃない」
「そうだよな・・・。やっぱり・・・え?」
「行きましょうって言ったのよ」
案外あっさりOKを貰い脳の処理が追いつかない。
「あ、うん。思いのほかあっさりOK貰ったもんで驚いちゃって」
「光輝の頼みごとを私が断る訳ないじゃない・・・///」
「///」
紗夜は自爆して顔を真っ赤にし、光輝は照れて顔を真っ赤にしていた。端から見ればゆでだこカップルとでもいうべきだろうか。それほどまでに今の二人はそっくりだった。
「///とにかく、明後日映画に行こうな。それと修学旅行の時の約束、あれも一緒にやろかなって。もちろん、紗夜だけに作るよ」
血迷ったか光輝よ、いつもは言わないような勘違いを生みそうな言葉をぽんぽん言い出した。
「私のために料理を作ってくれるのよね。楽しみにしてるわ」
微笑みかける紗夜。その笑顔を見て光輝はさらに顔を赤くする。光輝はそのまま急いでバイクに跨り紗夜に早く乗るように催促する。紗夜はその様子を見て笑いながらバイクに跨る。光輝はそれを確認し、エンジンをふかしながらバイクを走らせた。
5月5日・・・
デート当日、朝早くから2人は光輝のバイクに乗って家を出た。待ち合わせするなどの考えは2人には全くなかった。ムードもへったくれもないカップルだ。そのままバイクで風を切ること数十分、目的地である大型ショッピングモールが見えてきた。このショッピングモールの中にはスーパーや洋服店はもちろん、数々の雑貨店が並び、さらに映画館もあるというから驚きだ。やっぱ、都会ってスゲーや。そんなこんなで2人は店内に入り真っすぐ映画館を目指す。道中、辺りを見回すと平成最後のゴールデンウィークということでフェアやらなんやらで気合が入っていた。
「さてと、いったい何の映画なのかなっと」
映画館に入り券売機に着いた辺りでリサに言われた通り律儀に当日にチケットの中身を確認するとそこに入っていたのはなんと・・・
「『8月の怪異』。あーホラーだったかあー。どうする紗夜?ホラー苦手ならやめるのもありだけど・・・」
「いえ、行くわよ」
「・・・ホラー怖くないの?」
「幽霊なんて実在しないのよ?恐れる必要なんてないわ」
若干ドヤ顔で言い放つ紗夜。しかし光輝は知っていた。そういうことを言う人は大抵ダメだということを。
「そ、そっか・・・。じゃあとりあえず席取りに行こっか」
「そうね」
そのまま2人は、席を取り、ポップコーンとドリンクを注文してスクリーンの方に向かっていった。そして上映の時刻を迎えた。映画の内容は夏休みを迎えた大学生のグループがホラースポットに行くというテンプレ寄りの物だったが、かなり作りこまれていた。途中にグループの1人で、一番屈強な人が怪異に巻き込まれて行方不明になってしまい、日に日に極度のサバイバル生活と怪異に悩まされ、不安定になっていくのはリアリティを感じる対策だったと光輝は語る。
だが、映画の最中ではホラーシーンがあると紗夜がすぐに光輝の服の裾をキュッと摘まんでいた。ホラー苦手なのをばれたくないという気持ちと、あまりにも怖くて安心が欲しい2つの感情が入り交じり、顔を真っ赤にしながら。
紗夜はまだ恐怖が抜けきってないのか、顔を真っ赤にしながら光輝の裾を摘まみながら、光輝と共に映画館を出る。光輝も紗夜に配慮しいつもより少し歩く速度を落とす。流石に長い映画の中で半分くらい抱き着かれていると光輝も少しは慣れ、顔はあまり赤くなっていなかった。
「面白かったわね」
「ビビりながら言っても説得力ないよ」
「それはそれ、これはこれよ!」
「はは、そうかもね。で、紗夜。まだ怖いならそこらへんでちょっと休憩する?」
「いえ、大丈夫よ」
「また強がって・・・。こんなとこ知り合いに見られたら一番恥ずかしがるの紗夜なんだから・・・。早く一人で歩けないと大変だよ?」
「あら?光輝だって顔真っ赤にするのに?」
少し意地悪な笑みを浮かべる紗夜。だがそれもすぐに打ち破られた。
「あれ?紗夜ちゃんに光輝君だ。こんにちは。もしかして・・・デート?」
「「あ」」
松原 花音(マツバラ・カノン)の登場によって・・・。
そんなこんなで映画が終わり昼下がり、ちょうどお昼時なのでそのままフードコードへ直行することに。昼食はもちろん赤と黄色のハンバーガーショップだ。ポテトセットにポテトLを2人分注文し席を取る。
「よかったのか?せっかくのお出かけなのにいつもとおんなじので?」
注文を待つ間、少し雑談をしていた時、光輝が紗夜に問いかけた。
「光輝と来るからここがいいのよ。光輝と食べるなら、ここが一番なの」
だが、紗夜は光輝の心配を吹き飛ばすかのように微笑みながらこう言った。光輝も、こう言われてしまえばもうこれ以上何も言えないし、何よりもそんな風に言われたことが嬉しかった。そして再び雑談を始める。といっても、普段から行動のほとんどを共にしているため、話すことといえば幼少期の思い出話や、たまに行ってみたい場所やしたいことなど今後についてのことくらいだが。
その後、2人は注文したものをあっという間に平らげ、手早く片付けてフードコートを出る。しかしその後の予定をほとんど決めていないためぶらぶらと散策することにした。広いモール内をぶらりと歩いているとふと紗夜が1つの店に視線を送っていた。光輝はそれに気づき視線を追うとそこには飴の専門店があった。知る人こそ少ないが紗夜のジャンクフードに並ぶ好物の1つが飴だ。ちなみにもう1つはガムである。
紗夜は光輝に自分が行きたい店がばれたことに気づくとすぐ様視線を元に戻し、何事もなかったかのように足を進めようとしたが、光輝は紗夜の腕を掴み、飴専門店の中に突き進んでいった。店内に入るとさすがは飴専門店、古今東西様々な飴が取り扱われていた。イチゴの味がする今でも定番な飴から甘じょっぱい味がする懐かしい飴、他には多種多様なものが形どられた飴があった。始めこそ少し恥ずかしがっていたが、気づけば並ぶ飴たちを真剣な表情で吟味していた。そんなこんなで見て回っていると紗夜がある品の前で足を止める。光輝も一緒にそれを確認すると、そこにはあんこ飴と書かれた袋が積み重なっていた。紗夜の方に目を向けると紗夜は目を輝かせそれを見つめていた。
「紗夜?それ気になるの?」
「ええ、以前食べたことがあってとてもおいしかったの。まさかもう一度見つけることが出来るなんて思わなかったから。これを買おうかしら」
「ふむ、そんなに紗夜が絶賛するなら俺も買おうかな」
光輝は積み上げられた袋から1つを取って会計しに行く。紗夜もそれに続き袋を1つ取って光輝と同じ方へ向かっていった。
飴専門店から出た2人は再び散策を開始する。特に行く当てもなく歩いているとふと、ゲームセンターが目に入る。光輝は現在時刻を確認するとまだ2時半頃、晩御飯の食材調達と帰宅、調理の時間を考えてもまだ時間に余裕がある。そこで光輝は紗夜にゲームセンターに行くことを提案する。
「紗夜、ゲーセン行かない?」
「いいじゃない。宇田川さんや白金さんが言っていた音ゲー?というのもやってもみましょ?」
「お、いいね」
そして2人はゲームセンターに入っていった。
「くっそ~難しいなこれ」
「そうね・・・。もう一回、もう一回しましょう!」
「あたぼうよ!」
ゲーセンに入って10分ほど、2人の嘆きが聞こえる。2人が挑むは某太鼓のゲーム、結果は大敗。ちなみに難易度は下から2番目である。再戦を決め機体に百円玉を2枚入れる。そしてバチを構え直しゲームに挑む。
その15分後、2人はクレーンゲームに挑戦していた。太鼓の方の結末はまたしても大敗、一度もクリアに至ることはできなかった。なので今度はクレーンゲームをしようという訳だ。今2人が狙っているのはNFOに登場するキャラクターのフィギュアで犬のようなキャラクターだ。現在操作しているのは紗夜、アームを操作しゴールである穴を狙う。しかしあと一歩という所でアームから転げ落ち壁に激突、再び元の位置に戻ってしまう。悔し気で、でもどこか楽しそうな顔をしながら操作を光輝に代わる。だが光輝もまた同じように失敗をし紗夜に無念を託す。そんなことをもう10回は繰り返している。互いにどうしたら突破できるかを話し合い、試行錯誤しながら回数を重ねる。だが話し合い、どうしたらできるのかを模索することが2人にとっては楽しく、夢中になれた。2人がやっとのこさフィギュアを手に入れられた頃には、財布から野口が2、3枚ほどなくなっていたが、それでも2人にとっては思い出に残る、素敵な時間が過ごせた。
獲物を獲得し、達成感に満ちた表情でゲームセンターを出た2人が次に向かうは食品売り場。ここで今日のもう1つの目的である『紗夜だけのため』の晩御飯の食材を調達する。『紗夜だけのため』というのが非常に大事で今日はこのためだけに円日家、氷川家共に外泊をし、家を空けてもらっている。始めは晩御飯を外で食べてもらうだけのつもりだったが何故か話が飛び今日は2人だけの時間になってしまったのだった。
「紗夜?今日は何食べたい?」
「そうね・・・スパゲッティ・・・かしら」
「スパね、りょ~かい」
そして光輝は頭の中でメニューを考える。まずはどのスパゲッティにするかだ。一口にスパゲッティといっても種類はたくさんある。そのためまずはどんなスパゲッティがいいのかを確認しなければならない。
「どんなスパがいいとかはある?」
「今のところは特にないわね」
一番悩む答えが返ってきてしまった。だがこれは逆に言えば他の料理に合わせて変えればよいということ。なのでまずは主菜を考えることにしよう。
「(今日の昼がハンバーガーだったから流石に変えた方が・・・。いや、豚肉でもありだしな・・・。ええい!こういう時は直観でいいんだ!・・・思い浮かばない。翔がうらやましい・・・)」
こういう時にズバッと決められる親友をうらやましがりながら光輝は悩み続ける。やがて諦めがついたのか紗夜に問うことにした。
「紗夜、メインディッシュは肉か魚どっちがいい?余った方はどうせスパに入るけど」
「そうね・・・お肉がいいかしら」
「ん、それじゃあ煮豚かな。それでいいか?」
「勿論よ」
「じゃあ後はサラダかな~。あ、デザート何にする?」
「そうね・・・ぜんざいなんてどうかしら」
「お、いいね。てことはスパは和風なやつね・・・。じゃあ買うものだけど・・・スパゲッティが確かちょっと足りないから買うとして、他にはツナ缶かな。野菜の類はまだ余裕あったはずだからいいとして・・・煮豚用の豚肉と・・・。あ、醤油買わなきゃ」
作る料理が決まったためその材料をリストアップし買わなければいけないものを確認つつスマホにメモをする。そしてそれが終わるとメモを確認しながら買い物をしだした。どれがいいだの次はこっちだよだの端から見れば完全に夫婦の雰囲気を醸し出しながら2人は順調に買い物を終え、残すは帰宅のみになってしまった。
「あっという間だったな」
「そうね。でも、とても楽しかったわ。ありがとう、光輝」
柔らかな笑みで光輝に感謝を述べる紗夜。
「こっちこそ・・・ありがとな///」
「ふっふ」
「何だよ~///」
「いえ、照れてる光輝を見ると可愛いなって思ってね」
「俺だって男だからその・・・可愛いって言われると複雑なんだけど///」
「!大きな虹ね」
2人がショッピングモールの外に出ると空には大きな虹が掛かっていた。だが光輝はその虹に違和感を持つ。自分の記憶を辿っても雨が今日降った記憶がないし、地面を見ても特に雨が降った跡が見当たらない。不思議に思いつつも特に気にせず足を進める。
そのまま2人はバイクに乗って夕日に照らされながら駆け抜けていったのだった。
デート帰りの2人に災厄が訪れる。
虹の中に迷い込んだ2人
2人は無事生還できるのか
次回『虹の中で』
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11話『虹の中で』
はい年末のやること確保
ぽてりゅう様、お気に入り登録ありがとうございます
今年はこれで最後です。フォーエバー2021年
書いてるとなんか紗夜さんの性格が原作とかなり違うって感じるんですよね・・・。違和感なくかけてるか不安になる
5月5日・・・
光輝と紗夜のデートも一旦幕を下ろし残すは2回戦のおうちデートとなっていた。ここはショッピングモールからの帰り道、空には輝く夕日と
虹をくぐった先に広がる風景は木、林、森。建物が立ち並ぶ都会とはまるで別世界の樹海が広がっていた。
「え?ここ・・・どこだよ・・・」
「私たち、先程まではちゃんと道を走っていたはずじゃ・・・」
突然様変わりした風景に戸惑いを露わにしながらも光輝は走ってきた方向に振り替える。しかしそこにあるのは辺りと同じく樹海が広がるだけだった。
「・・・えええええええええええ!」
絶望的な状況にただ叫ぶことしか出来ない光輝であった。
少し経ち冷静になった2人は現状の確認をしだした。既視感を感じながらも手始めに現在地の確認をした。がそこはお約束というべきだろうか、スマホは圏外、GPSは反応をせず現在地は分からずじまい連絡も取れないお手上げ状態だった。そして次は持ち物の確認。とりあえず今持っているものを確認すると晩御飯用に買った食材たち、光輝の趣味でバイクに常備していたサバイバルナイフ、後は互いのバックに入っていた財布やら今日の戦利品やらスマホやらだけだった。現状どうやっても元居た場所に変えることが不可能に近いわけであり、このまま息絶えるなど論外である。なのでこの環境下で生き残ることしか選択肢がなくなっているわけだがサバイバルの基礎である火をおこすものが欲しいのだが・・・それもない。
「・・・紗夜、どうしよう・・・」
「どうしようって・・・私に聞かれても困るわよ・・・」
「「・・・」」
詰んだ。本当に詰んだ。きりもみ式で火を起こせるような器用さがないことはお互いよく理解している。また2人ともサバイバルに詳しいわけでもない。他の火の起し方など分かる訳ない。買い物袋の中にあるもので火を使わず食べられるものはスパゲッティ用のツナ缶ぐらいしかない。これではすぐに食料が底をついてしまう。
「とりあえず食べ物のことを考えるのは後にしましょう」
「そうだね」
次に寝床だ。今は5月、まだまだ夜は寒い。まあこれはバイクを寝る直前に軽く走らせて温めればよいのだが。そして最後はバイクだ。光輝のバイクは2人乗りを想定してオフロードに対応できてないネイキッドバイク。つまりこのバイクで移動は至難の業、素直に手押しが無難だが何分重いためそんなに移動できないのが難点だ。
「現状はこんなもんか・・・」
「そうね・・・。思ったより大変な状況じゃない」
「そうなんだよね~。果たしてどうしたもんか・・・」
「とりあえずどこか開けたところに出ましょう。詳しくはそこからね・・・」
「おっけ。じゃあ行くとしますか」
そして2人はゆっくりと、道なき道を進みだした。
進むこと1時間ほど、日はほとんど落ちて、ちらほらと星が輝き始めていた。
「ここらへんでいっか」
「そうね。ここならある程度の広さもあるしちょうどいいわね」
「うっし、じゃあ荷物広げるk・・・ゴオオオオオオオ
大地が揺れる。地がなり、木々はざわつく。音のした方向を見るとそこには銀色のボディに所々赤いラインが入り、羊のような角をした怪獣がいた。怪獣の足には円いライトが2つ当たっており怪獣はその発生源を見つめていた。
「!?怪獣!なんでここに。・・・紗夜、荷物とバイクもってそこらの木陰に隠れてて」
怪獣を確認した光輝は一時は動揺を見せたが、すぐに神妙な顔つきになり紗夜に避難を促し、走り出す。
「待って!光輝!」
紗夜も慌てて呼び止めつつ光輝が残したバイクと荷物を拾い追いかける。紗夜に誰かが話しかける。ここで行かせちゃダメだ、と。誰かは分からない。もしかしたら紗夜の本心かもしれない。紗夜はその言葉に従い足を動かす。だが、2人の距離は広がる。紗夜に映る光輝が小さくなる。やがて光輝が見えなくなって少し経った時、紗夜の目に眩い光が飛び込んできた。
怪獣の前には1台の車があった。車には男が乗っており、彼に向けてライト点けて威嚇をしていた。だがそれは間違いだった。彼の名はシルバゴン、彼の一点の黒が一点もないその眼にはおびえる
ティガはシルバゴンにドロップキックをしながら現れた。頭部に刺さったその一撃はシルバゴンをよろめかせ、その口に咥えている鉄塊が地面に零れる。ティガもシルバゴンも体勢を立て直し、緊迫した空気が流れる。まず、シルバゴンが尻尾でティガに攻撃する。ティガはそれを躱し、シルバゴンの胸元に渾身のパンチを喰らわす。だが、強靭なシルバゴンの体には何のダメージも入らず手を払われ、逆にはたかれてしまう。たった1発のビンタなのにそれはティガに大ダメージを与え、大きく退き膝をつく。シルバゴンはティガという
『グアアアアア』
ティガが悲鳴を上げる。噛みつかれた肩からは光の血が溢れ出す。強烈な痛みがに襲い掛かり、体に上手く力が入らない。ティガは手を震わせながらも、額の前に手をクロスさせ、体中にエネルギーを張り巡らす。そしてティガクリスタルを白く輝かせ体を青紫一色から赤、青紫の2色。所謂いつもの状態であるマルチタイプに変化させる。マルチタイプになったティガは、いまだ肩に噛みついているシルバゴンに目を向け、手に光エネルギーを込める。そして拳を光らせ、シルバゴンの目を狙って渾身のパンチを当てる。パンチを喰らったシルバゴンは、目から火花を吹き出しながらティガの肩から口を離す。そしてシルバゴンは目を抑えながらティガと距離を取る。パンチを放ったティガは肩から光を吹き出しながら立ち上がる。
『ピコンピコン』
いつもより早いペースでカラータイマーが鳴り出す。どうやらエネルギーを使いすぎたようだ。
『ハッ!』
だが、ティガは全エネルギーを込め、シルバゴンにチャージ動作を省いてゼペリオン光線を放つ。マノン星人の時ほどの威力はないが、真っすぐ伸びた光線は確かにシルバゴンの目を捕えた。シルバゴンまたしても目に大ダメージを受け、火花を吹き出す。
『グシャアアアア』
悲鳴の方向を上げたシルバゴンはどこかに逃げだし、その姿を消した。その様子を見届けたティガは、カラータイマーが鳴り止むと同時に光の粒子となり、散った。
ティガとシルバゴンが戦っているのもお構いなしに紗夜は走り続けていた。光輝を探し続け、丁度戦闘が終わった頃、紗夜はようやく光輝を見つけた。
「ふー!ふー!」
左肩から大量の血を流し、必死に痛みに堪える光輝を。
「(ここは・・・どこだ・・・)」
光輝が問う。だが誰もそれに返事をするものはいない。彼の前に広がるのは黒。一面に広がる闇だった。そして急に闇が消え、そこにはレンガ造りの都市が広がっていた。そしてそこには・・・
「(・・・ユザレ!)」
自分が初めてティガになったあの日、自分の運命を伝えたあの存在、ユザレがいた。
「ダイゴ・・・。あなたはこの光を受け継ぎ、ウルトラマンティガとなって、闇を払うのです!」
ダイゴ、初めて聞く名だが不思議と自分のことだと分かった。
「上等だ!俺はこの力で、守って見みせる!」
あの時と同じ言葉が勝手に口から出てきた。そしてユザレからスパークレンスを差し出され、光輝ことダイゴはそれを受け取る。周りには大勢の聴衆がおり、彼らは皆、ダイゴコールをしていた。そしてダイゴはスパークレンスを使って・・・
「・・・あれ?紗夜?」
夢から目を覚まし、ゆっくりと目を開けるとすぐそこに紗夜の顔があった。しばし目をパチパチさせ、完全に見えるようになるとようやく今の状況を認識し始める。どうやらいつの間にか気絶していたようだ。
「あれ?これ紗夜膝枕してくれてる?」
「光輝!恥ずかしいからそれは言わないで頂戴!///」
照れながら言う紗夜にまたも惚れ直しつつ光輝は自分の体を起こそうとするが、左肩に強烈な痛みが走り、すぐにやめる。すぐさま痛みがした左肩に目を向けると、血はしっかりと拭われ、バンダナでしっかりと固定されていた。しかし、かなりの血が出ていたのか、彼の着ている服には赤黒い大きなシミが出来ていた。
「まだ体を動かしちゃダメよ!安静にしてなくちゃ・・・。ねえ・・・光輝、何があったのか教えて頂戴・・・。そんな大けが、よっぽどのことがなきゃしないわよ」
紗夜が心配した顔色で光輝に問う。光輝はぼやけた記憶の海を探り、確かな記憶を掘り起こしてゆく。
「(ああ、そうだ。俺はあの怪獣にやられてそれで・・・。なんて言い訳するかな~)」
「・・・光輝?」
「いやさ~、怪獣とウルトラマンの戦いのええっと・・・その・・・衝撃波?みたいなのに巻き込まれてね・・・。そこら辺の木にぶっ刺さっちゃってさ~。あはは・・・」
変な汗が流れるのを感じる。一瞬紗夜から疑いの目を向けられた気がするのを感じるがまたすぐにいつもの雰囲気に戻る。どうやら何とかごまかせたようだ。そう感じ光輝は心の中で息をつく。そして痛みも引いてきたので、ゆっくりと腰を上げ、紗夜の膝から頭を離す。まだ名残惜しさもあったが、紗夜の負担を考え、早々にやめることにした。
その後、先程の戦闘で起きた森林火災から火だけを回収してキャンプをすることに。
「いや~、上手く火を回収できてよかったあ~」
「火災から火を取る人なんてあなただけよ」
パチパチと火の粉が舞うキャンプファイヤーもどきを前に2人は座っていた。
「でもこうでもしなかったら火を取れなかったからさ」
「まあ・・・そうね」
ここは先程光輝が倒れていた場所から離れ、少し広い場所。勿論風上にいる。今は質素な夕食を終え、2人でゆっくりと星空を眺めていた。
「・・・ねえ、光輝。あなたがそんなに人に優しくする理由って・・・何かしら。あなたは今日、襲われている人を見て真っ先に走りだしたわ。何がそんなにあなたを人のために行動させるのか、それが気になるの・・・」
ただ、怖かった。今回はまだ生きていたがこのままではいつ、光輝が死んでしまうか分からない。その不安が、紗夜をさらなる恐怖に陥れる。なぜ自分がこんなにも光輝に固執するか、分からないまま。
「どうして・・・か・・・」
光輝の脳裏に浮かぶは懐かしいと思わしき風景。
『ありがとう!』
モヤが掛かって殆ど覚えていないが、この言葉だけははっきりと思い出せた。誰が言ったのか、いつ言われたのかなんてものは分からない。ただ、光輝にとってそれは、すぐに忘れるようなくだらなくてでもかけがえのないほどに大切なものだと、そう感じた。
「もう・・・覚えてないかな・・・。ただ・・・」
「ただ?」
「凄くくだらなくて・・・大切なのは覚えてる」
「・・・そう、なのね」
そのまま2人は星を見ながら静かな時間を過ごした。
「(・・・俺が・・・俺が弱かったから・・・守れなかった・・・)」
光輝の眼にちらつくユザレとの会話。
『上等だ!俺はこの力で、守って見みせる!』
これまでもニュースなどで怪獣災害による死傷者のことを聞く度に胸を痛めてきた彼だが、いざ目の前でその事実を突きつけられ、改めて自分の戦う意味が分からなくなっていた。
「(・・・)」
そしてもう1つ、肩の傷だ。バンダナで固定され、血ももう出ていないはずだがまだ痛むその傷は、よほどの大けがだったことを突きつけてくる。痛むたびに見えるあの怪獣との死闘。肩を抉られ続ける痛みは、トラウマとなって彼の心をいたぶる。戦うことへの恐怖。これまであまり感じなかった感情が、心を縛る。
「(・・・もう・・・生半可な覚悟で戦うなんて出来ない・・・。こんなんじゃ・・・ダメなんだ)」
彼に見える光は目の前に揺れる炎しかなかった。
翌日、いつのも癖か、はたまた遮る物がない故に目に飛び込んでくる朝日のせいか、日の出から間もない頃にはもう光輝は起きていた。左腕丸ごと固定されているため、片手でパスタを茹でる。朝露を集めた水を昨日から頑張って消さずに残した火で沸かしたお湯に昨日買ったパスタを半束入れる。いつこの森から出れるのかも分からないため食料は節約しなければならない。貧しい素パスタだが、しょうがない。
「♪~」
鼻歌を鳴らしながらしばらく調理していると、紗夜が起きてた。眠い目をこすりながら、光輝の下に歩いてくる。
「おはよう、光輝」
「ああ、おはよう紗夜。すぐに朝ごはん出来るからゆっくり待ってて」
「そんなこと言ってられないわよ。ほら、私も手伝うから」
「ありがとね」
軽い微笑みを交わしながら2人で朝食の準備をする。皿も何もないためそこら辺で拾い鍋として扱っていたものでそのまま食べることにする。囲炉裏を真似し、自分たちよりも1段下に準備した火を眺めながら、2人は今後について話し合っていた。とりあえずは朝食が終わったら紗夜が食料を探すことを光輝が渋々了承し、茹で上がったパスタを食べることにした。
「「いただきます」」
『グシャアアアア』
紗夜を見送り、物足りなさと心の中で格闘していた光輝の耳に、もう二度と聞きたくない声が届く。左腕に巻き付くバンダナを外し、懐からスパークレンスを取り出し、いつもより拳に力を込めて光に変わろうとスパークレンスを天高く掲げる。だが・・・ウイングを開くことはなかった。スパークレンスのウイングは変身者自身が強い意志を持って開く。時が止まったかのように動かないそれに対し、光輝は何度の変身の念を送るが変わらずじまい。シルバゴンと戦い受けた大きな傷。忘れることのできない痛み。そして殺されるかもしれないという恐怖。それが彼の体に、心にへばりついて、広がり続ける。次戦ったら本当に死ぬかもしれない。その疑いが彼の心を縛り、戦う決意を、覚悟を削ぐ。そしてついに、恐怖に心を支配された彼の震える腕から、スパークレンスが零れ落ちた。
再び現れたシルバゴンに対し恐怖で変身が出来ない光輝
そして現れる出口の虹
光輝の勇気が燃え盛ると時、深紅のティガが姿を現す
次回『戦う意味は』
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12話『戦う意味は』
こっちとあっち(新作)は交互にやっていくつもりでござんす
英検終わったんで頑張りますん
フユニャン様、岳瑠様、お気に入り登録ありがとうございます
隙自語、スパークレンス25買いました。残念ながら中古ですが
『ゴトッ』
音を出して落ちたスパークレンスを見つめながら光輝は膝から地面に崩れ落ちた。震えが止まらず、両手で体を包み込む。それでも震えは止まらない。震えながらも恐る恐る上を見るとそこにはこちらも見つめるシルバゴンの姿があった。
「うわあああああああああ!」
光輝には、ただ叫ぶしか出来なかった。
そんな光輝に対し、シルバゴンはその身を食そうと首を伸ばすが・・・
「光輝危ない!」
間一髪紗夜により助けられた。
紗夜に手を引かれ、何とかシルバゴンの口から逃れる。しかしシルバゴンがそう簡単に諦める訳も無くもう一度2人を食べようと口を伸ばす。
「光輝!逃げるわよ!」
紗夜の一言でハッと気づく。
「・・・うん。そうだね。逃げよう」
そして2人は森の奥へと逃げ出した。シルバゴンもそれに続き2人を追い回す。シルバゴンが口から火球を吐き、2人の近くで爆発が起こる。その度に木々が倒れ、地が揺れた。時にはすぐ横で、時には目の前で起きるそれをかいくぐりながら2人は走り続けた。だがそれも長くは続かなかった。ついにその火球が2人の真後ろに着弾し、爆炎を上げる。2人はそれに巻き込まれ大きく吹き飛ばされた。運悪くその先は軽い坂になっており、2人とも坂を転げ落ちてしまった。そして2人の意識は闇に沈んでいった。
一方のシルバゴンは先日のティガとの戦いで目を負傷し、動くものしか捉えることしか出来なくなってしまった。坂を転げ落ちる2人は見えていたが、その後気絶した2人を確認できなくなったシルバゴンは、そのまま森の奥へと代わりの食料を求め消えていった。
「ううう・・・」
シルバゴンが消えてから小一時間程した頃、坂の下で気絶していた光輝が目を覚ます。うめき声を上げながらも起き上がり周囲を確認する。すると自分の近くで紗夜が倒れているのを確認する。
「紗夜!」
慌てて駆け寄り状態を確認する。抱き寄せて顔を確認するとわずかながら呼吸が確認できた。そして他の箇所も確認すると右腕に大きな傷が見つかった。もう血は止まっていたが一応ということで、光輝は自分の服を破り、その布で紗夜の傷口の砂や石ころを取り払う。作業中に何度も左肩が痛んだが決して作業の手は緩めなかった。
「(俺が・・・俺があの時戦えていたら・・・紗夜は怪我しなかったのか?)」
一通り作業を終え、紗夜を楽な体勢にさせた後、光輝は悩んでいた。怪獣に怯え、何人、何十、いや何百人もの救えず、ましてや1番守りたかった大切な人ですら守り抜けなかった自分はウルトラマンとして相応しいのか。
光輝の脳裏にあるものが浮かんだ。過去に2度、自分を助けに来てくれたあの黒と白の巨人だ。光輝は彼が羨ましく思えた。迷いなく戦うその姿勢は、まさに『ヒーロー』そのものだった。一方自分はどうだろうか。ただ偶然手にした力で、何とかなるだろうという思いで戦っていた、身内に手を出された怒りで戦っていた。・・・ヒーローになりきっていた。そうではないのか。光輝にはもう、光が見えなかった。
「うう・・・。ここは・・・?」
その時、ようやく紗夜が目を覚ました。
「ああ、紗夜。おはよう」
先程までの悩んだ表情を隠し、紗夜に笑顔を向ける。
「・・・っ」
紗夜が立ち上がろうとすると、右手に痛みを覚える。痛みがした方を見ると傷があった。だがその傷口はやけに綺麗だったため紗夜は不思議に思う。
「ああ、それ俺が軽く拭いといた。ホントはもうちょっとちゃんとやりたかったけど水がないもんでね」
「それだけでも十分よ。ありがとう。光輝こそ、肩は大丈夫なの?」
「まだ痛むことはあるかな~。それでも大分楽になったよ。さ、紗夜。立てる?」
光輝が紗夜に手を差し出す。
「そんなことしなくたって大丈夫わよ。でも、ありがとね」
口ではいらないといいつつも光輝の手を取って立ち上がる紗夜だった。
立ち上がった2人はキャンプ地へ帰るために現在地を確認しようとする。木々に遮られながらも歩きながら探していると2人はあるものを見つけた。
「・・・紗夜、あれ」
「ええ・・・。まさか・・・」
2人の視線の先には、橙色に染まった太陽と共に7色に輝く虹があった。特に雨が降ったわけではない。その虹の存在はすぐに推測が付いた。元の場所に帰れる。その結論に至った。そう、ここ数日現れていた不可解な虹はシルバゴンの生息する次元が光輝たちがいた次元と繋がった時に生じた時空のゆがみなのだ。
「紗夜、先に行ってて。俺、荷物取ってくるから」
「それなら私も行くわ」
「いや、それは危ないんだ・・・」
光輝は虹を確認すると共にもう1つも発見してしまった。
『グシャアア』
シルバゴンが、来る。
紗夜は森の中を1人で駆け抜けていた。極力シルバゴンに見つからないよう木々に張り付くようにしながら走る。走る中、紗夜は光輝のことを思った。
「(光輝は・・・どうしていつも他人のために頑張るのよ。どうしていつも自分を大切にしないのよ!)」
人が泣いていたらその人を笑顔も取り戻すために奮闘する。時に無茶をし、怪我を作ることもあった。木に登って降りれない猫を助けるために木に登り、着地に失敗して足を捻挫、今となっては懐かしい子供のころの記憶。紗夜が覚えている限りでは初めての光輝の無茶だった。それがいつしか自分や、友人たちを守るために背中を血だらけにするほどの傷を負ったり、見ず知らずの人のために怪獣を恐れず走り出したり。そして今度は自分のために怪獣をおびき寄せると言い出した。
「(私は・・・私は・・・あなたが大切なのに・・・)」
紗夜の眼に涙が溜まる。
「光輝は・・・私の大切な・・・大切な・・・」
言葉が詰まる。紗夜にとって光輝は大切な幼馴染、それは間違いがなかった。だが紗夜の中にそれとは別の意味がある。紗夜は言いながらそれを感じ取る。それが何なのかは分からない。今の紗夜にはただ光輝が大切。それだけしか分からなかった。
「紗夜・・・無事でいてくれよ!」
光輝も森を走り抜ける。時折後方を確認しシルバゴンをおびき寄せているか確認する。しっかりついてきているのを確認し、また速度を上げる。そろそろキャンプ地が近くなってきたため一旦森を使ってシルバゴンを撒く。木に張り付くように動きシルバゴンを惑わしつつようやくキャンプ地にたどり着いた。光輝はすぐさま荷物を纏め、バイクを走らせようとする。
だが、まとめている最中、野原にスパークレンスを見つける。あの時光輝が落とした状態で放置してきたのだ。光輝はスパークレンスを拾い上げ、懐にしまい、バイクに跨る。
『グシャアア』
シルバゴンが近づいてきたのを感じると、バイクは走りだした。
「はあ・・・はあ・・・」
紗夜は肩で呼吸をしながら虹の前に辿り着いた。だが未だ後ろの方から怪獣が暴れている音がする。
「?」
先程遠くから見たときわずかに薄くなっているそれに対し、紗夜は疑問を覚えた。
「(まさか・・・もう消えかかっているというの・・・?光輝、急いで)」
その時、紗夜は後方から暖かな光を感じた。
「ティガ!来てくれたんですね」
振り返り見つけたティガに対し、紗夜は安堵を覚える。
「・・・ティガ、光輝のことを・・・。お願いします」
ティガに想いを託し、紗夜は虹の奥へと消えていった。
バイクで森を走り抜ける最中、光輝は考えていた。
「(戦いのは・・・正直怖い。傷つくのは・・・痛いし怖い。じゃあ今まで、
光輝は必死に記憶を辿った。そして思いだした。
遠い昔、泣いている女の子を笑顔にした。たったそれだけの事。
「(そうだ。俺が人助けしてきたのは、誰かの涙を見たくないからだ。誰も悲しんでほしくないから、頑張ってきたんだ)」
誰だったか、いつだったか、どんなことをしたのか。もう忘れてしまった。だが光輝の心にはその時に持った思いが強く残り、光輝の優しさの源になっていた。
「(もう誰も悲しませない)」
脳裏に浮かぶ昨日の出来事。シルバゴンが鉄塊を咥えていた時の悔しさと怒り。
「(もう、誰も失わせない)」
「(みんなに・・・笑って生きていて欲しい・・・)」
「(例え戦うのが怖くたって・・・誰かが死ぬ方が怖い)」
紗夜が、光輝の眼に映った気がした。
「(紗夜も・・・みんなも・・・絶対に守る!)」
バイクの速度を上げる。みるみるうちにシルバゴンとの距離が離れる。そして数百メートル離れたところでバイクを降り、懐からスパークレンスを出す。
「それが俺の戦う理由・・・それが俺の・・・勇気だ!」
スパークレンスを前へ突き出す。そして両手で別々の軌道で輪を描く。そしてスパークレンスを天に掲げウイングを開き光輝をティガに変える。
右腕を突き上げながら巨大化したティガを前にし、シルバゴンは驚く。だが巨大化したティガの左肩からは、前回の戦闘同様、光の血が漏れ出ていた。夕日が輝き、少し近くには短いが虹もかかっている。そんな不思議で幻想的な風景の中、死闘が再び幕を開けた。
『ハッ』
まずはティガがシルバゴンに、右腕に光のエネルギーを貯めてパンチを放つ。輝く拳を受けたシルバゴンは後ろに下がり、ティガを見据える。一方のティガはシルバゴンを殴り飛ばした後すぐに腕を額の前でクロスさせ、全身のエネルギーを集中させる。
「(戦え・・・守り抜け・・・俺が信じた勇気を持って!)」
腕を広げるのと同時に、貯めていたエネルギーを全身にかけ巡らせる。
ティガの体は赤く変色し、怪力の戦士、ウルトラマンティガ パワータイプへと変化を遂げたのだった。
『ピコンピコン』
既に負傷していることに加え、タイプチェンジにさらにエネルギーを使ったことでティガのエネルギー残量が少なくなってゆく。だがティガは動ずることもなくシルバゴンに電撃をまとわせたパンチを叩き込んだ。シルバゴンは火花を散らし、その硬い皮膚に亀裂を作りながら後ろに下がる。そこにティガは電撃をまとわせたキックの追撃を与える。もろに食らったシルバゴンは倒れるがよろめきながらすぐに立ち上がる。
『ガアアアア』
ティガはシルバゴンが倒れている隙に必殺技の準備に移行した。両手を広げそれを大きな輪を描くように動かしつつ全身にエネルギーを取り込み、集めたエネルギーを胸の前で光の球体としそれを両手で包み込む。
『ハッ』
そして貯めたエネルギーを右手に集約し、右手を突き出して光の流れとして貯めたエネルギーを発射する・・・
デラシウム光流!
デラシウム光流をその胸に直接受けたシルバゴンは木っ端微塵に爆発した。それを見届けたティガはその体を光に変え、もとの光輝の姿になった。
ティガから戻った光輝はすぐにバイクを走らせる。不慣れなでこぼこしている道を慎重に進んでいく。
「!?虹が・・・短くなっている!?」
紗夜と別れた時は麓がなんとなく見えていたはずが、今ではアーチの上の部分しか見えなくなっていた。しかもさらに短くなるのが見てよく分かったのだ。光輝は慌ててバイクのスピードを上げる。石を巻き上げ、時々ぐらつきながらも進んでゆく。
「くっ」
それでも世界は残酷だった。虹は止まることを知らず。どんどん短くなってゆく。
「間に合えええ!」
だが光輝も決して諦めなかった。ひるむことなく加速を続ける。ようやく目的地が見えた時には、虹はもう消えたも同然だった。それでも、それでも彼は諦めない。間に合うことを信じて進み続けた。
あと10m・・・
肌で感じる、この先に元の場所が待っていると。
あと8m・・・
今はただ、己を信じ、走ることしか出来ない。
あと5m・・・
もう今虹がどれ程の長さなのか、全く分からない。
あと2m・・・
やれることはすべてやった。
あと1m・・・
全てが決まる、運命の時。
あと0m・・・
光輝の瞳に映ったのは、鬱蒼と茂る木々ではなく家が立ち並ぶ住宅街にいた。
「帰って・・・これたんだ・・・」
喜びを噛みしめるように言う光輝の下に、紗夜が近づいてくる。
「光輝・・・」
光輝はバイクを降り、紗夜の手を取る。
「今日は・・・こうして帰ろ?」
「ええ///」
光輝は夜の闇の中で紗夜という光をその肌で感じていた。
FWFのコンテストに向けて、順調に練習を重ねるRoselia
そんなRosaliaにフェスの後という未来に悩む
次回『暗闇の中』
お楽しみに!
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13話『暗闇の中』
一応大まかな流れは決まってるんですがいかんせん細かい描写がね・・・
投票は今回で締め切りです
5月16日・・・
光輝たちが不思議な森から命からがら抜け出してから1,2週間ほど経つ頃、世間は怪獣、宇宙人、そしてウルトラマンと謎の巨人について持ちきりだった。
まずは怪獣。世界全体で奴らに立ち向かうことが決定。一国で怪獣が出現したときはすぐに他国も出動するということが決まった。
次にウルトラマンと謎の巨人。まずはマノン星人の件から世間に広まってきたウルトラマンティガの名称が正式に採用。それと同時に、共に出現する謎の巨人を、ウルトラマンⅡ型と呼称し、ティガと共に監視対象と認定された。
最後に宇宙人。各国が地球軌道上に軍事衛星を配備。未確認生物が発見された場合には電撃やミサイル攻撃がなされるようになった。これがつい先日起動。電離層に対し3本のミサイルと強力な電撃が発射された。後にカメラの映像より宇宙船は確認されず、代わりに電離層に新種の生命反応が検知された。科学者たちはこれを『クリッター』と命名し、地球の在来種として図鑑に載ることになったのだった。
世間がざわめくそんな中、Rosaliaの面々は今日も今日とて練習に励んでいた。もうすぐFWFの予選ともいえるコンテストが開催される。それに向けて彼女らの練習にも熱が入っていた。
「コンテストに向けてみんなますますやる気がみなぎってるよな~」
「そうだな。俺らも手伝いがいがあるってもんだよ」
光輝と翔はスタジオの片付けをしながら話し合っていた。
「新曲の準備も順調だし、まさに順風満帆ってやつ?」
「ははっ、間違いねえや」
「あ、そうだ。この後翔の家行ってもいいか?久しぶりにさ」
「おう、いいぜ。俺と次郎丸の2人暮らしだ。別に迷惑はないさ」
「ではお言葉に甘えさせてもらってと。ふう~、こんなもんか」
「じゃあ撤退だな」
そして2人はスタジオを後にするのであった。
夕方・・・
光輝と翔、そして紗夜は翔の自宅へと向かった。
「ただまあ~」
『ワン!』
「お~次郎丸!今日は・・・あれ?」
翔が家に入った途端、出迎えてくれた翔の飼い犬の柴犬、次郎丸(ジロウマル)は翔を素通りし紗夜に飛び掛かった。
「ちょっと・・・次郎丸・・・。急に来たら危ないじゃない」
強めの言葉に聞こえるがその言葉に厳しさはなく、緩み切った口調だった。
「お邪魔します。にしても本当に次郎丸って紗夜になついてるよな」
「全く、どうしてここまで差が出るのか・・・。ほら、次郎丸、一旦戻ってこい。後でまた撫でてもらえ~」
翔が手を次郎丸に向けた時・・・。
「あ、こら。爪立てるな。お前いつから猫になったおい次郎丸、ほら」
『ザシュッ』
「はいお茶」
頬に大きなガーゼをつけた翔が光輝と紗夜に缶の緑茶を差し出す。
「相変わらずの部屋だな」
変身アイテムやフィギュアを飾る棚、パソコンデスク、勉強机、ちゃぶ台、次郎丸の生活スペースのみという殺風景な部屋。これが翔の家である。
「必要最低限でいいんだよ」
「それでも・・・装飾品の類が全くないのはどうかと思いますが・・・」
「ま、気が向いたらね」
一生やらないやつ。それがこの男、影山 翔である。
そしてしばらく雑談をし時計が7時を回ったあたりで光輝と紗夜は帰宅。再び翔と次郎丸の2人生活が始まった。
「っても・・・次郎丸は寝てるし実質は俺1人なんだけど」
未だに寝ている次郎丸。そもそもこの犬普段から食っちゃね食っちゃねを繰り返すような犬なので翔からしたら慣れっこである。
「さてと何かやることやること・・・お、ちょうどあことりんりんが入ってるな。俺も混ぜてもらおっと」
NFO。NeoFantasyOnlineの略称であり、翔、燐子、あこを筆頭に日本、ひいては世界にその名を轟かせているMMORPGである。
『syo~参上~』
『あ、しょー兄!やっと来た~!』
『翔君、(^0^)/。今日はコンテストも近いしデイリークエスト済ませるだけにしよっか(*’∀‛*)』
ちなみに燐子は文章になるとキャラが変わるタイプである。
その後、デイリークエストを消化して休憩中、3人は雑談に洒落込んでいた。
『アプデ待ちになっちゃったね』
アプデ待ち、それはプレイヤーへの誉め言葉でもありながらプレイヤーを悩ませる言葉でもある。
『そうだね~。でも、しょー兄とりんりんとやってれば全然飽きないよ~』
『ふふっ(*’艸‛)私もそうだよ』
『全く、嬉しい言葉を言ってくれちゃって』
しばしの沈黙が流れる。
『今日はもう終わるね、おやすみなさい』
『おう、俺も落ちるかな。お疲れ様。あこ、りんりん』
『お疲れ様(\’ω‛)翔君、あこちゃん』
そして翔はパソコンの電源を切った。
「?なんかあったのかな、あこのやつ」
今日のあこに対する微かな違和感。それが胸につかえて仕方がない翔だった。
翌日 5月17日・・・
空は薄い雲が覆い、所々漏れ出る日光が眩しい。
『昨夜、太平洋上空で旅客機が一機墜落しました。墜落した機体は太平洋上に浮上していますが・・・機体の半分が食い散らかされているように見えます。政府はこれを怪獣によるものだとし、対策を急いでいます。各国からも軍の派遣が発表され・・・』
翔はいつもと同じようにニュースを聞き流しながら学校の仕度をしていた。
『ピロン』
スマホに来た通知を確認する。
「うっわ今日休みかよ。各自非難の準備を・・・か。ベルトとフィギュアを箱詰めしておくかな」
そしてスマホを閉じてまたニュースに耳を傾ける。
『中を見ますと・・・うっ』
だが見始めてすぐにこの音声と共に映像が途切れてしまった。何か事故でもあったのだろうかと翔は不安を募らせた。程なくして画面に
『只今編集中、しばらくお待ちください』
と表示が出た。無編集では流せないほどの映像ということだろう。
どうしようもないのでとりあえずRosaliaのグループチャットを開く。
『今日花咲川休みだけど練習どうする?』
『おはよー☆羽丘は普通にあるから予定通りかな~』
『リサ姉!あこたちは今日午前だけだよ!』
『あれ?1年はそうなの?』
『なんかそうみたい。お姉ちゃんは午後もあるみたいだからホントに1年生だけみたい』
『でしたら・・・午前は自宅で各自過ごして、午後は先に行けるメンバーで行っておく・・・という形でどうでしょか』
『私もそれでいいと思います(o’・ω-)b』
『俺も賛成で』
『アタシもそれでいいと思うよ~』
『あこも~』
『では賛成多数ということでその方針で行きましょう。湊さんには今井さんから伝えておいてください』
その後、特に何かが起きる訳でもなく、その日の練習は終了した。
夜、翔は昨日と同じように燐子とNFOを遊んでいた。
『あれ?今日あこは入ってないのか』
『(˘・ω・˘)そうだね。何かあったのかな?』
『昨日も何か変だったし・・・大丈夫かな?』
『ん~どうなんだろ( ̄人 ̄;)・・・後で電話してみよっかな?』
『いや、一旦抜けてすぐに掛けに行く?』
『そうだね!早い方がいいもんね(`・ω・´)フンスッ!』
『じゃあそうするか』
一度NFOから抜けて3人のグループチャットを開く。
「お、出たかあこ」
『あ、どうしたのしょー兄?』
『翔君だけじゃないよ・・・あこちゃん』
『りんりんも・・・』
「あこ、なんか最近調子悪いのか?」
『ううん、そんなことないよ』
だがその声に覇気はない。
『でも・・・元気なさそうだよ・・・』
『・・・』
「あこ、無理にとは言わない。もし話せるなら話してくれればいいから」
『・・・』
『あこちゃん・・・』
『2人にはなんでもお見通しだね・・・』
あこはゆっくりと言葉を紡ぎだした。
『あこ、この前考えたんだ。FWFが終わった後、あこたちはどうなるんだろうって・・・』
「・・・」
『・・・』
あこの言葉に、翔と燐子は何も言えない。
『FWFが終わったら・・・Rosalia、終わっちゃうのかな・・・』
「そんなことない!」
翔は反射的に言葉を発す。だが翔が言葉を放ったその時にはもう、あこはいなかった。
「・・・俺、あの時、もっと早く言えたはずなんだ。こんなのじゃ、ヒーローになれっこないよな・・・」
『翔君・・・』
残された2人は反省会をしていた。
『そんなこと・・・ないよ・・・。だって・・・翔君は・・・ちゃんと言えたじゃん。それだけでも・・・すごいよ』
「・・・それでも・・・あこには届かなかった・・・」
『・・・明日』
「?」
『明日・・・みんなで・・・もう一回話そう・・・。そしたら・・・きっと大丈夫』
「りんりん・・・。そうだな、明日、直接会って、また話そう」
『ふふ、いつもの・・・翔君だ。それじゃあ・・・お休み』
「ああ、お休み」
「こういう時・・・ホントのヒーローだったらどうするんだろうな・・・」
理想の姿と程遠い今の自分を見て、ため息をつく翔だった。
翌、5月18日・・・
この日を経験した人は後にこの日のことを『地獄』、そう語った。
「未来は・・・絶望しかないの・・・?」
『キャアアア』
燃える町、泣き叫ぶ人々
その日、東京は地獄と化した
次回、『まだ見ぬ未来』
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14話『まだ見ぬ未来』
そんなことはどうでもよくて・・・
紗夜さん!誕生日おめでとう!!!
ちなみに今回はほとんど出番ないですごめんなさい
この小説の前書きであんまりバンドりについて触れてないんですが一応ちゃんとプレイはしています。26フルコンが限界ですが()
今後も新作と同時進行でちょっとずつですが進めていきますので是非ともお付き合いください。かなりの長編になるのでほんとにまったり進めていきます
今回からウルトラマン・怪獣解説をあとがきでやっていきます
ワジマ様、当麻たん様、アカツキ 不知火様、お気に入り登録ありがとうございます
増えていくUA数とお気に入り数がやる気に繋がるので感想と一緒に是非お願いします
5月18日・・・
連日続く怪獣災害についての報道に人々は怯えていた。その恐怖を前に、だんだんと世間の機能がマヒしていた。
「え~。ペットショップ休業かよ~」
午前10時。次郎丸のドッグフードを買いに行きつけのペットショップに来た翔だったがなんと休業中。仕方がないので他のペットショップやコンビニに行くことにした。
「これも怪獣のせいなのかよ・・・。はあ・・・」
肩を落とし商店街を歩く。普段は活気づいている商店街だが今日はかなり人通りが少ない。どうやら皆家で家族との最後の時間を過ごそうとしているようだ。
「全く・・・いくら昨日怪獣が日本に来てる可能性が高いっつったって急に怯えすぎだろ・・・」
そう。昨日の夜、旅客機を墜落させた怪獣と同一個体と思われる怪獣が日本、それも千葉県沖の上空を飛行しているということが報道されたのだ。4月にあったガクマの件ではこうはならなかった。恐らくその件で怪獣の恐ろしさを再認識したのだろう。
『パリーン』
ガラスが割れたような音が鳴り響く。翔が音の正体を探すと遠くで5人ほどの不良グループが店の窓ガラスを叩き割っていた。
「いつから世紀末になったんだここは!」
翔は迷わず走り出した。
「グハッ」
まず翔が1人を吹き飛ばす。
「てめー何しやがった!」
それにキレた別の1人が翔に殴りかかる。だがその鉄拳をひらりと躱し腹に2発の拳を叩き込む。
「こ、このやろっ」
あっという間に2人を無力化され、残るメンバーも殴り掛かる。
「ふっ、はっ」
だが翔は迫りくる拳を受け止め、あっという間に間合いを詰めみぞおちに強烈な肘を入れる。
「だあー!」
次にバットで叩き潰しに来た不良の攻撃を躱し腹に鋭いけりを入れる。そしてバットを足を使って拾い上げ、最後の不良目掛けて振る。
「へっ、へなちょこが」
だがそれは躱され、翔の背後を取った不良が殴り掛かる。
「へなちょこはそっちだ」
「へ?」
詰めが甘いのか、相手の技量を見誤ったのか。不良は翔の裏拳でのびきってしまった。
「大丈夫ですか?」
不良を片付け終わった翔は店内に入り中にいる人の安否を確認する。
「ええ、おかげさまで。ありがとうございます」
中にいた店主の男性が翔に礼を言う。
「いえいえ礼には及びませんよ。それより・・・このガラスは・・・」
「それは自分たちで何とかしますよ。それより、お礼の品を・・・」
「いいですよそれは。けががなかったということが何よりです」
「そうですか・・・。ですが、このお礼はいつか必ず」
「じゃ、じゃあ俺はこのくらいで・・・。それでは!」
そうして翔は慌てて店を出た。
「行ってしまった・・・。まだ名前も聞いてないのに・・・」
正午頃・・・
いつも通り、燐子とあこを迎えに行ってcircleに向かっていた。どんよりと曇った空を眺めながら、ゆっくりと歩く。翔は燐子と肩を並べながら、時折あこの方に目を向けていた。昨日の今日なのでやはり心配である。燐子も同じようにあこを心配していた。うつむき、歩幅を短くして歩くあこに合わせ、ただ道を進む。会話もなく、重い雰囲気が辺りを満たしていた。
その時、3人の頭上に影が通った。その一瞬の出来事に判断が追いつかず、何が起こったのか理解する頃にはもう、それは始まっていた。
『キャアアア』
産声に近い金切声が爆音と共に響き、遠くで建物が倒壊する音が聞こえた。
「「「「「~~~~~~!」」」」」」」
何人もの悲鳴が混じり合い、何を言っているのか全く分からない。
そう、怪獣が来たのだ。薄く広がった肩のような翼、そこから生えている少し平べったくて、黄色い目が鈍く光る顔、ゴツゴツと隆起して、少しグロテスクな見た目の腹部、そして横に広い頭部とはアンバランスな足を持った怪獣、ガゾートがこの東京の中心地に降り立ったのだ。
「・・・。燐子、あこ連れてできるだけ郊外に逃げて」
「え・・・。翔君はどうするの?」
「逃げ遅れた人の避難」
「危ないよ!・・・行っちゃった・・・」
1人都心に向かって進む翔。燐子の静止が彼の耳に届くことはなかった。
「しょー兄!」
突如、あこもその後を追って走り出した。
「待ってあこちゃん!」
そしてあこを追って燐子も人の波に逆らいながら、その波に消えていった。
「もしもし光輝!そっちは無事か?」
翔は都心に向かって走りながら光輝に電話を掛ける。
『こっちは今circleに向かってる!あそこの地下ステージになら安全なはずだ。そっちの方は?』
「とりあえずあこたちを郊外に避難するよう言っといた。今から避難誘導してくる」
『はあ?翔何言ってんだ!危ないだろ避難しろ!』
「無理な話だね。俺を誰だと思って?』
『んなこと聞けるわけ・・・切りやがった・・・」
「あいつ、危ない真似しやがって・・・」
通話を切られた光輝はツーツーとしかならない自分のスマホを見ながらため息をつく。
「(・・・まずいな、翔がやらかす前にティガになって怪獣を)」
自分の横で一緒に逃げている紗夜を確認する。生半可な言い訳では恐らく振り切れないし逆に紗夜を巻き込んでしまうだろう。
「circle・・・」
そうこうしているうちにcircleに辿り着く。
「まりなさん!」
光輝は真っ先に店内にいるだろうまりなに声を掛ける。
「あ、光輝君!早く早く、地下に避難して!」
怪獣が出た時に地下を避難所にすること。これは以前から店で決めたことでありもう実行してくれていた。
「いえ、俺は逃げてる人に呼びかけるので・・・。紗夜をお願いします」
「ちょっと光輝!何言ってるの!あなた肩の傷まだ癒えてないじゃない!無茶しないで一緒に!」
「ダメだ紗夜。ここに逃げれることを知らない人は大勢いるはずだ。今ここで俺たちが呼びかけなきゃ、救える命も救えなくなうわっ!」
また爆発音がし、今度は地震も発生する。
「紗夜、一刻を争う事態なんだ。頼む」
「じゃあ私も手伝うわ」
「紗夜ちゃん、それはダメだよ。そういう危険な事態に対応するのはスタッフの役目、だから紗夜ちゃんはステージに避難して」
紗夜の同行をまりなが静止する。
「ホントは光輝君にも頼みたくなかったんだ。でも・・・お願いできる?」
「任せてください。じゃっ」
そういうや否や光輝は店を飛び出る。
「ほら、紗夜ちゃんも」
「・・・はい・・」
後ろでそう聞こえた後、光輝は速度を上げる。胸元からスパークレンスを取り出し、いつでも変身できるように準備をしながら逃げ惑う人々に声を掛ける。
「あそこのライブハウスに避難できます!早く逃げてください!」
ありったけの声で周囲に伝える。1人がcircleの方に逃げるとそれを追って人の波が向きを変える。
「あっちの方で避難所があります!逃げてください!早く!」
その後も声を張り上げ人々を誘導していく。
「大丈夫ですか?」
補助が必要な人の手助けも忘れずにさばき続け、少しづつ人が少なくなっていく。
「みんな!早く逃げて!」
「しょー兄!」
ひたすら都心に向かって走っていた翔はあこに呼びかけられて足を止めた。
「あこ!それにりんりんまで!逃げてって言っただろ!?」
「じゃあなんでしょー兄は逃げないの?!一緒に逃げようよ!」
あこの正論に翔は少し言葉が詰まる。
「っ・・・。俺はやることがあって・・・」
「2人とも、危ない!」
燐子の呼びかけを聞いた翔は咄嗟にあこと燐子を抱き寄せて飛び退いてその場から離れた。3人が離れたすぐ後に3人がいた場所で爆発が起きた。ガゾートが放ったプラズマ光弾が着弾したのだ。さらにプラズマ光弾の勢いは止まることを知らず次々に爆発音が響き渡る。しばらくし爆発音がようやく収まったタイミングで3人は顔を上げ街の光景を見て絶句した。ビルがなぎ倒され、家は燃え、煙と血の匂いがごちゃ混ぜになった悪臭が漂っていた。
「そんな・・・」
燐子が悲観の言葉を漏らす。
「嘘・・・でしょ・・・」
その悲惨な光景を目にし、あこは涙目になりながら膝をついた。
「未来は・・・絶望しかないの・・・?」
街の悲惨な光景とそれを見て絶望の表情を浮かべる親友たちを見て翔は、
「ぐすっ・・・」
「?」
群衆の声にかき消され、光輝の耳に届くはずもない声。誰かの泣き声に違和感を感じる。住宅街に目を向けるとアパートの3階で男の子が床に小さく座り泣いているのが窓から見えた。それを見た光輝は人をさばくのをやめ、そのアパートに駆け出す。
「(くそ、ティガの巨体じゃうまくあの子を救い出せない。直接乗り込むしか・・・)」
アパートの中に入り階段を上る。
『キャアアア』
人の流れを見つけたのだろうか、ガゾートの鳴き声と足音が近づいてくるの感じる。
「おらあ!」
勢いを増して階段を上り切り、窓から確認した方の部屋のドアを無理矢理開ける。
「大丈夫か!」
「お兄ちゃん・・・誰?」
「俺のことは後だ!それより早く逃げるよ」
中で泣いていた男の子を抱え上げ、階段を降りようとした時。
『ドーン』
爆音と共にアパートが揺れ、傾く。
「下がやられたか・・・」
『ズドンズドン』
足音がより近くなる。
「飛び降りるぞ!」
「え?」
嫌な予感がし、窓に向かって走り出す。スパークレンスを構え、すぐに変身できるようにし、ガラスを割りながら外に飛び出る。
だが飛び出した数秒後、ついさっきまでいたアパートが爆発した。そして爆風が光輝たちを襲い、光輝は体制を崩す。
「「うわあああ」」
その衝撃で光輝はスパークレンスを手放してしまう。男の子の方は何とか離さず、空いた手でさっきよりも男の子を強く掴む。空中でうまく制御が効かず、くるくると回り続ける中、光輝は必死に打開策を考えた。
「(どうする・・・せめてこの子だけは守り抜かなきゃ・・・。ティガになって助けるのはもう不可能だ・・・。・・・もう考える余裕がない!頼んだぞ、俺の体!)」
光輝は空中で何とか身をひねり、自分の背中を地面に向けた。
衝撃に備え目を閉じ、歯を強く噛む。
「うぐっ」
地面につき、背中から痛みを感じながらも転がって男の子が下にないように気を付ける。
「(クッソ・・・。意識が・・・。ここから・・・逃げなきゃ・・・)」
だがその願いは叶わず、光輝は両手に抱える男の子と共に意識を手放した。
無力さを痛感し、悲観していた翔の耳にキーンという高い音とガゾートの放つプラズマ光弾とは系統の違う爆発音がした。
音の正体に目を向けると3機ほどの戦闘機がガゾートに向けてミサイルを放っていた。だが当のガゾートは小石を投げられた程度の痛みなのか少し気にしただけで気にせず破壊に勤しむ。
「・・・とにかくあこ、りんりん!早く逃げよう。circleなら地下に避難できるはずだ」
意を決して翔はあこと燐子に提案をする。だがその時、翔の嫌な予感が強い反応を示す。慌ててガゾートの方を見るとこちらの方を真っすぐ見据えて一歩、また一歩と近づいてくるガゾートがいた。その口には多量のよだれと飲み込めずに口にぶら下げている何着かの服があった。
「あこ!りんりん!こっちだ!」
翔は迷わずあこたちの手を取り、ガゾートから逃げた。たまたま残っていた狭い路地に逃げ込みその巨体からできる限り逃げようとする。だがガゾートはあっという間に3人に追いつき、建物を破壊しながら追いかけてきた。3人は倒壊し、頭上から降り注ぐ瓦礫を搔い潜りながらがむしゃらに走った。
『キャアアア』
だがガゾートは3人の前に降り立ち、3人を捕食しようとにじり寄る。
「・・・(こいつらは・・・
さっきまでこびりついていた彼のプライド、
翔はガゾートに向かって走り出し、大声で叫んだ。
「変身!」
翔が叫ぶと地面がひび割れ、そこから炎の柱が噴き出した。翔はその炎に包まれ、やがて炎の柱が消えた時にそこに立っていたのは、黒い体にあちこちに白いラインが流れる巨人、ウルトラマンⅡ型だった。
ウルトラマンⅡ型はガゾートにアッパーを掛けダウンさせる。そしてあこと燐子を優しく手で包み、circleの前まで運びそっと下ろした。
「しょー・・・兄?」
震えた声で問いかけるあこにⅡ型は力強く頷き、ガゾートに向かっていった。
『キリッ!』
腰を落とし、両肘を曲げ腰につけ、手の甲を相手に見せる。まるで空手の構えのような体勢でガゾートと対峙する。
『キャアアア』
ガゾートも負けじと咆哮を上げ、プラズマ光弾をⅡ型に連射する。それらをⅡ型は腕で払いのけ、爆炎が上がる中ガゾートに向かって走り出す。距離を詰めたⅡ型は炎を纏ったパンチをガゾートの胸に当てる。さらに休む間もなく殴打を浴びせ、ガゾートは大きく跳び退き、ビルを破壊しながら倒れる。倒れたガゾートだが、すぐに立ち上がり自分の足元にプラズマ光弾を連射した。爆炎が上がり煙が充満する。
煙が晴れた頃にはガゾートの姿は影も形もなく、Ⅱ型は戸惑う。
「(くそっ、逃げたか・・・)」
だがそれは誤算だった。ガゾートが逃げたと思い込み、隙をさらすⅡ型の背中にプラズマ光弾が命中する。Ⅱ型が振り返ると、空を駆け回るガゾートがいた。
「(しまった、空か!まずい、俺に空を飛ぶ手段はない!)」
その時、ガゾートがプラズマ光弾を連射した。すかさずⅡ型はガードをするが連射された光弾全てを受けきることはできず数発被弾してしまう。
『キリイイ!』
思わず膝をついてしまうがすぐに立ち上がる。だが立ち上がった彼の眼前にいたのはガゾートだった。先程までは遥か上空にいたはずが、今では地上スレスレをこちら目掛けて飛んでいる。その圧倒的速度に驚く間もなく、ウルトラマンⅡ型はガゾートの突進をもろにくらう。速度が乗ったその一撃は重く、Ⅱ型は地面に倒れてしまう。
だが彼も弱い男ではない。力を込めて再び立ち上がる。それでもその反撃の芽も許さぬガゾートはまたしてもⅡ型に突進を掛け、Ⅱ型をダウンさせる。そして2発の大ダメージを受け身をよじり痛みをこらえるⅡ型に、上空からガゾートがダイブする。
『キリイイイイ!!』
瓦礫が舞い上がり地面が大きく揺れる。Ⅱ型はガゾートの巨体をその身に受け止めさせられ、悲痛な叫びを出す。
Ⅱ型はパンチは肘打ちで上に乗っかるガゾートに抵抗するが、ガゾートはそれを意に介さず鋭い牙をⅡ型の肉体に刺した。
『キリイイ!』
悲鳴を上げるⅡ型。絶体絶命のこの状況になす術なくやられるのか、そう思ったその時、Ⅱ型の脇からはみ出ていたガゾートの顔面が爆発した。
『キャアアア』
突然の爆発に驚き、悲鳴を上げて荒ぶるガゾートにⅡ型は渾身のパンチをし、体から離す。すかさず蹴りを入れ、さらにガゾートと距離を作る。その隙に立ち上がり、謎の爆発源を探す。後方を確認すると、バズーカを担いだ軍人がこちらを見て白い歯を出して笑っていた。Ⅱ型もサムズアップして彼に応えた。そしてガゾートに方を向くとまたもやガゾートのあちこちで爆発がしていた。そこには先程の3機の戦闘機が列を成してガゾートに攻撃していた。
『キリッ!』
彼らが作ってくれたチャンスを無駄にしないために、戦闘機に気を取られているガゾートに飛び蹴りを入れる。
胸に強烈な蹴りを貰ったガゾートは後退し、再び上空に飛び上がった。そしてまたもプラズマ光弾を連射するが今度は不意打ちでも初見でもない。Ⅱ型は手から獄炎弾を放ちプラズマ光弾を相殺する。そしてガゾートはまたも同じようにウルトラマンⅡ型に突進をするが跳び前転され避けられてしまう。
「(ティガの真似事になっちまうが・・・これで決める!)」
立ち上がったウルトラマンⅡ型は両腕を右胸の前で十字に構え、十字の交点から獄炎を放った。獄炎は伸びていき、やがて上空を飛行しているガゾートに命中しガゾートの肉体を爆発四散させた。そしてガゾートの爆発と共にそれを覆っていた雲も霧散し、オレンジに染まった空が顔を出した。
「(これが俺の必殺技だ!名前は・・・そうだな、『インフェルノシュート』)」
ガゾートを撃破し、一息ついたⅡ型は、戦闘を助けてくれた軍人たちにもう一度サムズアップをし、その姿を炎の柱で包んで消えていった。
「「しょー兄!(翔君)」」
戦いを終え、瓦礫の山と化した東京を眺めていた翔にあこと燐子が呼びかける。
「2人とも・・・」
まさか来るとは思っていなかった翔は2人を見て驚きの表情を見せる。
「どうして今まで言ってくれなかったのさ!しょー兄がウルトラマンだって!」
「しー、声が大きい!」
「あっごめん・・・」
翔に叱られ、口を手で覆って下がるあこに合わって燐子が問いかける。
「ねえ・・・翔君、どうして・・・私たちに言ってくれなかったの?」
燐子が諭すよう聞くと、翔はバツが悪そうに燐子の顔を見た。
「・・・笑わない?」
「笑わない」
翔は意を決して独白を始めた。
「『ヒーローになりたいから』。これが俺が2人・・・いや、誰にも俺が変身していることを明かしていない理由だ。俺の中で『正体不明のヒーロー』でありたいっていう気持ちが芽生えちゃてな。そんなくだらないプライドを持っていたからだな、このザマだよ」
瓦礫で埋もれ、荒廃した東京を見ながら翔は続けた。
「何がヒーローになりたいだよ。俺がもっと早く戦っていれば、こんなにはならなかったはずなのに」
「「・・・」」
自嘲的に話す翔に、2人はかける言葉が見つからなかった。
「ま、そんなヒーローになれなかった男が俺だ。呆れちまうよな」
『パン!』
乾いた音が響く。一瞬、翔は何が起こったのか分からなかった。だが後から遅れてやってくる頬に何かが触れたという感覚が、燐子にはたかれたという事実を認識させられる。
「りんりん・・・」
「いつまでも後悔してちゃダメだよ!」
燐子の魂の叫びが翔の心に響く。
「ずっと後悔して・・・くよくよして・・・立ち直れない人がヒーローになれるわけないよ!いつまでも!・・・自分の失敗を反省して・・・救えなかった人の・・・気持ちを背負って戦い続ける。例え今はそうじゃなくても・・・それを続けていけばいつかは・・・ヒーローになれる!翔君だって・・・いつかはきっとなれるのに・・・どうして投げ出しちゃうの!?」
「・・・」
改めて街の風景を見る。
「救えなかった人の・・・気持ち・・・」
「そうだよ・・・翔君だって・・・そうすれば・・・」
「あこも!あこも応援する!しょー兄なら絶対できるって!」
「2人とも・・・ありがとう!」
翔は沈みゆく夕日を見ながら決意を固めた。
1週間後・・・5月24日
都心は少しづつ復興が始まり、ガゾート襲来を飲み込み、また新たな1歩を人々は歩みだした。
そんな頃・・・
「それでは!第1回しょー兄の名前を決めようの会を始めます!」
「「いえーい」」
翔の家で翔、燐子、あこで会議をしていた。
「議題はしょー兄が変身した姿の名前をもっとかっこよくしようです」
「その通りだ。正直俺の中でウルトラマンって呼ばれるのは少し頂けないので別の呼称が欲しい」
「それでは会議、スタート」
こうしてわちゃわちゃした会議は始まった。
3人が話している間に、この1週間で起こったことを軽く説明しよう。
ガゾートが撃破され、崩壊した都心であったが、被害が都心に集中していたことが功を奏し復興の目途は早い段階でついた。そして現在絶賛復興中だ。きっと1か月もすれば活気も戻ってくるだろう。
次に光輝についてだ。ガゾートから男の子を守った彼は3階から落ちたということで重傷を負ったが、驚異的な回復力で復帰し、今は日常生活に戻っている。幸い、光輝の住んでいる所も被害はそんなになかったのでもう不自由なく生活できている。
そしてFWF予選についてだ。当然延期が決定され、開催日は6月末を予定し着々と準備が進められている。
最後にあこについてだ。3日前、Rosaliaの面々で集まった時に翔と燐子があこにそのことについてみんなに相談するように促した。すると帰ってきた反応はFWFが終わってもRosaliaは続ける、終わらないというものだった。進むべき道はいつか見つける。例え暗闇の中でも、進むべき道を探し歩く。そう誓いを立て、練習に精を出している。
「そうだ!翔君・・・『キリエル人』って知ってる?」
「あこは知らないなあ・・・」
「それじゃあ・・・話すね。『キリエル人』って言うのは大昔から・・・人類と接触している謎の生命体なんだ・・・。人類はこの『キリエル人』に導かれている・・・っていう都市伝説ができるほど高度な知能をしていて・・・」
こうして燐子は淡々と『キリエル人』について解説していった。その間、翔はなぜか終始無言だったがあこがノリよく反応するので燐子はそれに気づかず話していた。
「それで・・・ほらこの絵、翔君が・・・変身する姿に・・・ちょっと似てるでしょ?この絵は実際に『キリエル人』に会ったっていう人が描いたんだ」
燐子があこに見せた画像には、確かにウルトラマンⅡ型と形状が似ている青くぼやけた人型の絵が描かれていた。
「だから・・・この『キリエル人』から・・・ちょっと名前を貰って『キリエロイド』・・・なんて名前はどうかな?」
「『キリエロイド』・・・『キリエロイド』か・・・」
さっきまでだんまりだった翔が急に反応する。燐子に貰った名を反復し、感触を確かめる。
「さっすがりんりん!我が漆黒の感性に触れる名を考えるとは・・・」
「うん、いい名前だ。『キリエロイド』。これから、もし俺が変身してるときに俺のことを呼ぶならこれで呼んでくれ」
「そっか・・・気に入ったようで何よりだよ・・・」
「(ああ、こんな平和が・・・続けばいいのに・・・)」
3人で仲睦まじく1つの話題で盛り上がる。どこにでもあって、今までもやってきたことの幸せを改めて翔は実感した。
炎魔戦士 キリエロイド
身長 52m 体重 4万2千トン 出身地 不明
政府が命名した正式名称は ウルトラマンⅡ型
東京に住む青年、影山 翔が変身する戦士
素早い格闘術が得意。長年特撮で培った戦闘センスが時折光る
手先から『獄炎弾』という火炎弾を放つことができ格闘術と組み合わせることで幅広い状況に対応できる
必殺技は『インフェルノシュート』 腕を十字に組み、その交点から獄炎を放ち相手を焼き払う。その温度は摂氏10000度を誇る
次回予告
夏、光輝はcircleのスタッフとして新たな企画を実行する
着々と準備が進む中、影が忍び寄る
次回、『beyond 』
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15話『beyond 』
引けたのは3章紗夜さんです。違う、そうじゃない
最近平均文字数がどんどん上がっていってる・・・。おかしいな、最初のころは4500文字くらいを基準にしてたのに
6月15日・・・
連日の雨で湿気を鬱陶しく感じる梅雨。
先月破壊されつくした東京ももう復興を果たしつい先日、ついに学校が再び始まるなど日常が返りつつあった。
この1ヶ月、今まで日本に集中していた怪獣災害だがその規模は世界各地に広がっていた。ハワイでバードン、アラブにタッコング、ドイツにディノゾールなど数多く出現し、その度にウルトラマンティガこと円日 光輝は世界を飛び回っていた。
『ピロン』
今日もまた光輝愛用の携帯電話一体型腕時計から怪獣出現の通知が鳴る。
「まりなさーん!買い出し行ってきます!」
「OK!みんなの分のアイスも買ってきてー!」
「分かりました!」
circleを勢いよく飛び出した光輝は走りながら腕時計からニュースを確認する。
「えっと今回は・・・アメリカか」
光輝は懐からスパークレンスを取り出し光に変わる。光となった光輝はそのままアメリカに飛び立ちあっという間に怪獣の暴れている農村部に辿り着いた。
クワガタを彷彿とさせる顎、甲虫そのものの強靭な体をした磁力怪獣 アントラーとの戦の火蓋は切って落とされた。
「ただいま帰りました~」
「「「「「「こんにちは~」」」」」」
アントラーを撃破した光輝は買い出し帰りにたまたま出会ったRosaliaの面々と共にcircleに帰ってきた。
「はーいいらっしゃい。光輝君もシフト上がって練習に行ってね」
「ありがとうございます。それとこれ、釣銭と買ってきた物です」
カウンターの上に買い物袋をドンと置き、練習部屋の鍵を持ってRosaliaを案内する光輝にまりなが声を掛ける。
「光輝君、結局明日のロッキンスターフェスには・・・」
「すいませんやっぱり行けません」
ロッキンスターフェス。それは年に一度開催されるバンド界のお祭りである。そしてここ、circleからはRosaliaのライバルバンドであるPoppin'Partyが出場するのだ。さらに今年のフェスではライブ配信を行うという前代未聞のプロジェクトも行われるため運営スタッフは大忙しである。ここcircleからも園崎 花子(ソノザキ・ハナコ)と大空 晴人(オオゾラ・ハルト)の2人が現在応援に向かっているのである。
「まあ明後日がFWFなら仕方ないか~。うん、頑張ってね、みんな」
そう、なぜ光輝がそんな大忙しの時期に手伝わないのか。それは明後日にRosaliaの目標であるライブ、FWFが控えているからである。ロッキンスターフェスの翌日ということで遠方から来た人には両方を楽しみやすいという日程であるのだが、その両方に関係する者からしたら過酷な日程なのだ。
そもそも今年の開催が危ぶまれていたFWFだったが、ガゾート出現から復興を果たしてすぐに街の活気づけの意味も込めて急ピッチで準備が進められFWFの予選が開催。そこでRosaliaは堂々の1位の評価でFWF出場権を獲得したのだった。
そういう訳で光輝はRosaliaの練習を優先し、明日は練習に参加することにしていたのだ。
「あ、まりなさん。明日は俺たちが貸し切りってことでいいですか?スタッフは俺以外総出ですし俺もみんなに付きっ切りになっちゃうので」
「OK!ちゃんと片付けと翌日の準備してくれればいいから~」
2日後・・・6月17日
あれからいつの間にか2日経ちFWF本番、Rosalia7人は楽屋にて本番前最後の準備をしていた。
「間もなくですね」
準備を終え、紗夜が呟く。
「ええ、いよいよね」
「・・・すごいね。思い描いていたステージに立つ前ってこういう気分なんだ」
友希那、リサと言葉を繋げる。
「どんな気分?」
光輝が問う。
「ん~、なんていうかな。・・・『無』、かな」
「『無』?リサ姉どういう事?」
「こう・・・緊張しない、落ち着いた?っていうか・・・」
「確かにそんな感じはするわね。不思議と落ち着く」
「懐かしいな~最初はあんなにガチガチだったのに・・・」
リサのその一言を皮切りに思い出話に花が咲く。最初のライブから各々の成長、そして今の自分。
「っと・・・もう時間だ。そろそろ俺たちは行かなきゃな。行くぞ、光輝」
「了解。みんな、最前列で応援してる。頑張って」
「一発かましてこい。俺たちの分も、頼んだぜ」
光輝と翔がにかっと笑い部屋を後にする。
「ええ、行ってくるわ」
そして友希那も紗夜、リサ、あこ、燐子を率いてステージへと歩みを進めた。
楽屋を出た光輝と翔は早歩きで観客席に向かう。
「にしても、まさかこんなに早く目標に届くとは。信じてはいたけど・・・やっぱり驚くな」
「そうだな。2年か、あっという間だったよ。始めの俺が紗夜にくっつく様にいた頃が懐かしい」
2年前、その頃の紗夜は信条の問題でバンドを転々としており、光輝はただそれに付き添っていた。そんなある日、偶然友希那の歌を聞き紗夜は友希那とバンドを組むことを決心。それがRosalia誕生の瞬間だった。
「あの頃はまだ紗夜と日菜の仲が良くなかったからな・・・。そんな気持ちをぶつけるような演奏が見てて苦しかった。悔しそうに、悲しそうに弾くその姿は俺にとっては自分の力のなさの象徴でもあったんだ。変な話だけど」
「ずっと言ってたもんな。どうやったら紗夜ちゃんと日菜ちゃんが仲良くできるか、昔みたくなるかって」
翔も自らの記憶に残っているその頃を思い起こす。
「それでも2人はまた仲良くなった。紗夜ちゃんも前向きにギターに向き合えるようになった。それは勿論2人の力もあるけど光輝。お前自身の力も間違いなくある。そこは誇ってもいいんだ」
「・・・それもそうだな。ありがとな、翔」
お礼を言いつつ翔の肩を軽くはたく。
「お安い御用さ。・・・よし、しんみりしたのはここまで。これからは・・・」
そう言いつつ翔は背負っていたリュックからハチマキとペンライトを取り出す。
「本気の応援モードだ!楽しんでいくぞ!」
「おお!」
光輝も同じものを取り出す。そして2人は席を取ってくれている日菜の所に向けて歩く速度を更に速めた。
「改めましてお疲れ様、りんりん、あこ」
FWFは大盛り上がりの後に幕を下ろし、翔、燐子、あこの3人は感想を言いながら帰ろうとしていた。
「えへへ、それほどでもあるよ!なんたって我が名は大魔姫あこ!だからね!」
「私も・・・今日は頑張ったって・・胸を張って言える」
「よし!今日は俺がなんか奢ってやる!」
素直に喜ぶ2人を見て翔は慰労会を提案する。
「やったー!」
「いいの?翔君?」
両手を上げ、万歳しながら喜ぶあこ。それを見ながら翔は燐子に返事をする。
「勿論。みんな頑張ったんだし、それにあんなに凄いライブを見せて貰ったんだ。そのお礼も兼ねてだよ」
「じゃああこはポテト!」
「それだけでいいのか?FWFの大舞台を終えたんだぞ。もっと贅沢していいから」
翔は生活費があまりかからないため光輝に比べるとかなり懐が暖かい。夕食2人分などそこまでダメージにならないのだ。
「じゃあお寿司!」
「回るやつな」
「ふふ・・・」
仲良く歩く3人は、街の光に溶け込んでいく。
「「いただきます」」
一方、光輝と紗夜はファミレスで2人だけの打ち上げをしていた。
紗夜は運ばれてきたパフェをまじまじと見つめ、それからソフトクリーム部分をすくい口に運ぶ。
「美味しい」
口の中を甘味で満たし、それからソフトクリームを喉に流し、端的に感想を述べる。
「?光輝は食べないの?」
「っ!ああ、食べるよ今すぐ食べるうん(紗夜に見とれてたなんて言えない)」
光輝も恥ずかしさと一緒に餡蜜を掻き込む。だが・・・
「ゲホッ」
きな粉を気道に入れてしまいむせてしまう。
「もう・・・何やってるの」
そんな光輝を見て呆れた様子で紗夜が光輝の世話を焼く。
「ごめ・・・。ふぅ、ありがとね」
紗夜からタオルを受け取り口元を拭い取りつつ感謝を伝える。
「美味しいのは分かるけど急いで食べるのは感心しないわね。ゆっくり味わって食べないとダメじゃない」
「あはは・・・(確かに美味しいけどそういう理由じゃないんだよなあ・・・)」
その後、2人はゆっくりとスイーツを楽しみ、一息ついたところで光輝が改めて紗夜に労いの言葉を掛けた。
「紗夜、FWFお疲れ様。演奏すごくよかったよ」
「ありがとう。でもそれは光輝や影山さんが私たちのために色々頑張ってくださっているからよ。だから私からもお礼を言わせて。ありがとう、光輝」
「そんなことないよ。俺はできることをしているだけ」
「それがすごく助かっているって言ってるのよ」
「そっか・・・」
光輝は思わず笑みをこぼした。今まで幾多の感謝を言われてきたが何度言われても少し照れてしまう。
「紗夜。これからも頑張ろうね。Rosaliaとして」
「そんなの当たり前じゃない。FWFはあくまで目標。頂点を目指すのがRosaliaよ」
「さ、帰るわよ」
「そうだね。早く帰って、日菜からのマシンガントークを貰いますか」
「ええ、そうね」
互いを見つめ合い笑う。そして店を出た2人を乗せたバイクは夏の夜を駆けていった。
「・・・」
友希那は夜空を眺めながらゆっくり歩いていた。
「ゆ~きな。どうしたの~、そんなに難しそうな顔してさ☆」
そんな友希那にリサは両肩を叩きながら呼びかける。
リサの手を優しくどけながら友希那は答える。
「ついに・・・FWFを終えたのだと思うと・・・不思議な気持ちになったわ・・・」
「・・・そっか・・・」
「でも、悪い気持ちじゃない。寧ろ、誇らしい」
友希那の口角が少し上がった。
「友希那、よっぽど嬉しいんだね」
「嬉しい?」
友希那がリサの方を見て問う。
「うん。こうやってみんなの目標を超えて、友希那自身の悩みも乗り越えて。お疲れ様、これからも・・・頑張ろうね、友希那」
「ええ」
友希那が力強く頷き、2人は夜空を眺めた。その時、1本の流星が空から流れ落ちる。やがてそれは数を増していき、無数の流星が空を覆った。
「あら、流れ星」
「縁起いいね~☆何お願いしよっか?」
リサの提案に同意し、2人は胸の前で手を合わせて祈る。
「(これからもずっと・・・Rosaliaのみなと大好きな歌が続けられますように)」
「(これからもずっと・・・Rosaliaのみんなも、友希那も、私も、幸せでいれますように)」
「・・・さ。友希那。帰ろ?」
しばらくの沈黙の後、顔を上げ、組んでいた手を解きつつ提案する。
「そうね。お父さんも、お母さんも、待ってる」
友希那もそれに応じ、また歩き出す。
流星群に埋もれながらも輝く月が2人を優しく見守っていた。
翌日・・・6月18日
光輝は今日も降り続ける雨を眺めながらため息を吐く。
「全く・・・こんな雨じゃ誰も練習しに来ないだろうに・・・」
今日はcircleで店番だ。特に客も来ないのにただレジ前に立ち尽くす事に嫌気を覚えつつ他にできないことを探しては既に全部終わっていることを思い出す。こんなことをもう何回しただろうか。
「全く、先明るい若者がそんなでっかいため息吐くんじゃないの」
「そう言いますけどね花子さん」
光輝は目を細め少し睨むように目線の先にいる女性を見る。少しウェーブのかかったポ二ーテールに目を引かれるが顔やスタイルの良さも光っており、ぱっと見は光輝と同年代だ。これでももう四半世紀は生きているのだから人間見た目で分からないものだと実感せざるをえない。
「確かに今日はお客さん少ないね~。ま、あたし的には楽でいいけどね」
花子は手を後ろに組み、鼻歌を歌いながら語る。
「ま、それもそうですけどね・・・」
基本じっとすることのできない光輝は同調するフリをしながら会話を終わらせる。これ以上花子と話し続けていたら地雷を踏むことが目に見えているからだ。
再び沈黙が訪れる。何分経っただろうか。そんなことさえ忘れて暇を持て余していた頃、店のドアが開く音がした。
「よっ、おつかれさん」
ドアを開けて入ってきたのはガタイのいい大男、晴人だった。
「あ、晴人さん。お疲れ様です」
「光輝もお疲れさん。すまんな、今日急にシフト入ってもらう感じになっちゃって」
晴人は傘を雑に丸め、近くにある傘立ての端にねじ込む。丸め方が適当すぎるせいで深く刺さらず無理矢理押し込んでいた。
「それくらい構いませんよ。そんなにすることありませんでしたし。確か・・・会議でしたっけ」
この男、今何気に嘘を吐いた。光輝ももう高校3年生、そう、受験勉強をしなければならないのだ。バイトに喜んで飛びついたのはただ受験勉強をサボる口実が欲しかっただけに過ぎない。
「その通り。ついでに接客もお願いしようってなったんだけど・・・この有様よ」
がらんとした店内を見渡しながら晴人は語った。
「それは俺の考えが及ばなかっただけです。今日のお客さんは少ないなんて簡単に想像できたのに断りを入れなかった、それだけです」
「でも光輝君の頼まれたら断らないところ、あたしは好きよ」
「はは・・・ありがとうございます・・・」
またこれだ。思わず光輝は顔をしかめた。花子は何かにつけて光輝に好意を伝えてくることがある。しかも毎回お茶らけていうのだ。そして大概この後に続くのは・・・
「ねえ~光輝君、やっぱりあたしと付き合わない?大人の魅力、教えてあ・げ・る」
こうやって交際の申し込みをしてくるのだ。毎回やけにノリが軽いので返答に困ってしまう。冗談に本気のことわりを入れことがつまらないし場の空気を悪くするのだ。
「は~な~こ~?光輝が困ってるからやめろって言ってるだろうが!」
花子の前に晴人が立ち怖い顔で睨む。花子はヘビに睨まれたカエルの様にその場で固まって動かなくなってしまった。
「全くお前は、いい加減妥協をして男と付き合えばいいだろ!どうせお前のことだからモテてるんだろ!未成年の、しかも既に好きな子がいる奴に手を出そうとして恥ずかしくないのか」
ガミガミと叱る晴人から視線を逸らした光輝は今日何度目かのため息をまた吐いた。
その夜・・・
いつの間にかcircleのドアノブに掛けてある『OPEN』の看板も『CLOSE』に変わっていた。だがそんな時間帯でも従業員は働かなければならない。光輝、花子、晴人、そしてロッキンスターフェス関係で先程はいなかったまりなの4人はcircleの従業員室で会議をしていた。
「(毎度思うけどここ絶対もっと人増やした方がいいよな・・・)」
全従業員たったの4人という絶望的人材不足を憂いながら光輝はまりなの話に耳を傾ける。
「というわけで・・・ロッキンスターフェスを受けまして、うちのとこもリモートライブをすることになりましたー!」
「会議の意味は?」
「まりちゃんあたしたち置いてけぼりなんだけど」
まりなの宣言に晴人と花子がツッコミを入れる。
「みんな慌てないの。今日はの議題はそのライブの日程と参加バンドをどうするかや準備の役割なのよ」
「先に聞きたかったです」
光輝も負けじとツッコむ。漫才をしに来たのだろうか。
「という訳でまずは日程なんだけど・・・」
「2週間あればなんとかなるんじゃない。所詮リモートを付け加えるだけでしょ」
手を元気よく上げつつ花子が意見を出す。だがまりなはその意見を人差し指を左右に振りながら否定した。
「ところがどっこい、チケットをどうするかが一番の問題よ」
「そんなのロッキンスターフェスと一緒じゃ・・・」
晴人が言いかけた所でハッとする。
「そう、ロッキンスターフェスは元々大きなイベントなの。だから結構あっさりチケットが売れた。でもここ、circleは所詮東京の1ライブハウス。そこが主催するイベントに対して日本全国のどれだけの人数が見たいのかなんて未知数なのよ」
「普通の料金で売ったら・・・」
「予算が分からないわ」
この一言で場がシーンと静まり返った。予算が決まらないなら動きようがないではないか、皆の考えることは一致した。
「もしこれでリモートのチケットが売れないのに高い機材を買ったらどうするの。大赤字をどう対処するの。そもそも起こさないためにはどうしたらいいの。それをみんなで話し合うわ。そしてもし、大赤字が出た際は・・・」
全員が息を飲む。
「連帯責任ということでみんなのお給料を減額するわ」
話し合いは夜通し行われた。
ウルトラマンティガ マルチタイプ
出身 不明
身長 ミクロ~53メートル
体重 4万4千トン
活動時間 3分
東京の高校生、円日 光輝が変身する光の巨人の基本形態
能力のバランスが優れており、多種多様な光線技を駆使する
キックと投げ技をメインとした格闘を繰り広げ、そこに光線技を絡めてどんな状況でも一定の活躍を見せる
必殺技は『ゼペリオン光線』。エネルギーを貯め、腕をL字に交差させてから放つ。威力はティガの技の中でもトップクラス
次回予告
circle主催のライブが決定し、忙しく日常を送る光輝
だがそんな時でも魔の手は迫っていた
頑張れウルトラマンティガ、紗夜を取り戻せ
次回、『幸せを届けたいから』
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